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1969-03-18 第61回国会 衆議院 大蔵委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年三月十八日(火曜日)     午前十時四十分開議  出席委員    委員長 田中 正巳君    理事 金子 一平君 理事 倉成  正君    理事 毛利 松平君 理事 山下 元利君    理事 渡辺美智雄君 理事 只松 祐治君    理事 村山 喜一君 理事 竹本 孫一君       大村 襄治君    奧野 誠亮君       木野 晴夫君    正示啓次郎君       辻  寛一君    中村 寅太君       西岡 武夫君    坊  秀男君       本名  武君    村上信二郎君       山中 貞則君    阿部 助哉君       井手 以誠君    北山 愛郎君       久保田鶴松君    中嶋 英夫君       平林  剛君    広沢 賢一君       広瀬 秀吉君    岡沢 完治君       河村  勝君    田中 昭二君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         大蔵政務次官  上村千一郎君         大蔵省主税局長 吉國 二郎君         大蔵省証券局長 広瀬 駿二君  出席政府委員         大蔵省銀行局保         険部長     新保 實生君         建設省計画局宅         地部長     播磨 雅雄君         自治大臣官房参         事官      岡田 純夫君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 三月十七日  委員河野洋平君及び西岡武夫辞任につき、そ  の補欠として水田三喜男君及び椎名悦三郎君が  議長指名委員に選任された。 同日  委員赳名悦三郎君及び水田三喜男辞任につき、  その補欠として西岡武夫君及び河野洋平君が議  長の指名委員に選任された。 同月十八日  委員小松幹君及び春日一幸辞任につき、その  補欠として北山愛郎君及び岡沢完治君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員岡沢完治辞任につき、その補欠として春  日一幸君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 三月十四日  国税審判法案横山利秋君外十二名提出衆法  第四号)  国税通則法の一部を改正する法律案内閣提出  第三〇号) 同日  国税不服審判所設置反対に関する請願外二件(  小川三男紹介)(第一三七四号)  同(高田富之紹介)(第一三七五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申し入れに関する件  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第五三号)      ————◇—————
  2. 田中正巳

    田中委員長 これより会議を開きます。  連合審査会開会申し入れの件についておはかりいたします。  目下運輸委員会において審査中の国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案日本国有鉄道財政再建促進特別措置法案及び久保三郎君外九名提出日本国有鉄道鉄道施設の整備に関する特別措置法案につきましては、本委員会の所管と関連がありますので、先刻の理事会で御協議いただきましたとおり、運輸委員会連合審査会開会を申し入れたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 田中正巳

    田中委員長 御異議なしと認めます。よって、連合審査会開会を申し入れることに決しました。      ————◇—————
  4. 田中正巳

    田中委員長 次に、租税特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。久保田鶴松君。
  5. 久保田鶴松

    久保田(鶴)委員 大蔵委員会は、御承知のように出された税法に対してどの議員さんも国民負担を軽くするということにはみな考え方は同じだと私は思う。ところが、あなたのほうの上のほうからこうせいああせいというようなきつい税の取り立ての法律案が出される。こういうことから、今回あなたのほうから土地税制改正法案が出されている。この法案改正は、大企業やあるいは大きな不動産業者等に対する厚い税制改正であると私たちは思うのであります。  そこで、この出されております土地税制に対しての内容を見てみますと、五年以上保有している個人土地譲渡促進するために、譲渡所得課税は、従来の半額合算課税方式をおやめになりまして、そして時限的な分離課税を導入しようとすることでありますが、ところが四十五年、六年中に売り渡した土地は一〇%の税率となっております。と同時に、四十七年あるいは八年中の分は一五%、また四十九年、五十年は二〇%の分離課税となっております。ところが、その中で五年以下の土地譲渡所得は四〇%の分離課税である。したがって、個人住居用財産の売り買いは一千万円の特別控除制度を創設しよう、と同時に現行の買いかえ制度をやめようと、こういうようなこともお考えである。私は、そうした意味から、特に収用対象土地に対する特別控除考えておられますが、これが土地問題の解決に役立つかどうかということを疑問に思っておるわけであります。この土地値上がり等につきましては、大臣も御承知と思いますが、十三年となりますと、それで十倍以上になっております。この十倍以上になっておりますのに、大企業土地問題等については、これはこの含み資産がふくれ上がっているということ、また、法人土地を持っておられる方等に対しましては、この問題に触れていない。これは非常に片手落ちになるのではないか。したがいまして、零細な個人土地を、これをいじめようとするかというようなことにわれわれは考えられるわけであります。したがって、こうした法案をお出しになることによって、こうした法人関係の大会社あるいは大きな不動産業者と、それから個人の小さい土地を持っておる人たちとの関係等において非常に不公平——まあうわべを見ればもっともなような感じはするのですけれども、掘り下げてみますとそうではない。水の上のあわみたいな法案であって、こういう点はわれわれは真剣にこの審議の場を通じて考えなければならぬと思いますが、大臣、この点どうお考えになっておりますか、聞かしてもらいたい。
  6. 福田赳夫

    福田国務大臣 この政府原案は慎重に審議をいたしまして、現時点においてはこれ以上の手はあるまい、こういうふうに考え結論であります。決して水のあわのごときものではありません。  まず、個人土地につきまして、五年以上の長期にわたる保有者がこれを手放すという際に税額を軽減する、分離課税のもとに税率も低くする、こういう措置をとります結果、土地放出、つまり供給ですね、これが非常に促進をされる、こういうふうに見ております。久保田さんのところなんかはどうか知りませんけれども、私どものところには多数の国民から反応がきておるのであります。非常にいい、私は手放します、また手放したいと思っておったが、法律案が通るまで待って、それができたらすぐやりたいというふうに考えますとか、これは非常に大きな反響を呼んでおる。私は、この結果かなり大きな土地放出が行なわれる、こういうふうに見ておるのであります。  それから、五年以下の個人保有土地ですね。これは従来よりも重課されるということになるのでありますが、これはまだ私はあまり反響を身に感じませんけれども、おそらくこれは需要を抑制する、つまり投機のために買うというようなものが少なくなっていくのであろう、これは経済の動きの必至の結果がそうなってくるというふうに見ておるわけであります。  そういうことを考えますと、個人に対する今回の土地税制、これは効用が少ないというふうには決して考えておりません。かなり大きな影響を及ぼすであろう、こういうふうに見ておるのです。  それから、法人土地の問題につきましては、御指摘のように、従来はかなりこれは投機、そういうような傾向があったと思うのであります。しかし、今回はこの買いかえ制度を廃止いたしまして、それにかわって非常に制限された国家的目的の場合に限って買いかえ制度を認めるか、こういうふうにいたしましたので、従来の弊害はこれを調整し得る、こういうふうに確信をいたしておるわけです。  税制調査会におはかりもいたし、これはかなり念入りに念入りにと練っていただいた結論でございます。もちろん、この税制土地問題を解決せいというのは無理な話なんで、これはやはり税制は補完的な役割りしか持ち得ないものでございますが、その補完的な役割りにいたしましても、今度の税制はかなり大きな力を発揮するのではあるまいか、かように見ておるのであります。
  7. 久保田鶴松

    久保田(鶴)委員 大臣のおっしゃることも、実はわからぬではないのですが、おっしゃった中で、長期保有土地譲渡所得に対しまして、時限的な分離比例課税方式を導入することといたしておられます。ところが、これによってどの程度土地供給促進がはかられるかどうか、こういうことを、大臣、どうお考えになっているでしょうか。
  8. 福田赳夫

    福田国務大臣 どうも数字でどのくらいということは、見当はつきません。つきませんが、これは案外多いのじゃないか。いままで東京あたりでも個人として土地を持っておる、こういう人がおるわけです。広大な土地を持っておるが、一度に売ると税金が高くなる。それで切り売りしてというような中途はんぱなことを考える人が多いわけです。今度は思い切ってそれを放出できる、こういうことになりますのです。私はずいぶん多数の人から、今度の税制で私ようよう踏み切ることにいたしましたというようなことを言われる人に接するわけでございますが、これは数字でここでどうということは申し上げることはできませんけれども、かなり多くの供給が見られるだろうと確信をいたしております。
  9. 久保田鶴松

    久保田(鶴)委員 大臣のおっしゃるように、これは相当大きくその供給がやられるのではないかというお話でございますが、ところが、この制度の採用によってある程度供給の流動が、これはあり得ると思いますけれども、その制度で比較的大規模土地所有者が、先ほど申し上げますように、有利になっていくのではないか。そういたしますと、土地成金が非常に多くなってくるのじゃないか。
  10. 田中正巳

    田中委員長 久保田君、もう少し大きい声で発言してください。   〔委員長退席倉成委員長代理着席
  11. 久保田鶴松

    久保田(鶴)委員 また、社会的のひずみの拡大と申しましょうか、そういうようなことに大きく影響するのではないか、こう思うのですが、どうでしょうか。
  12. 福田赳夫

    福田国務大臣 格別土地成金がどうのこうのということはないと私は思うのです。気軽に土地を手放す。そういう結果、地価需要供給関係から安くなる、あるいは上がりがなだらかになる、そういう影響はあると私は思いますがね。したがいまして、土地成金というような見地から、むしろ逆の影響を見るのではあるまいか。つまり、土地成金というのは、地価が高くなればそういう傾向になるわけでございますが、しかし、この税制措置の結果は、地価が安くなる、上がりがなだらかになるという結果になると思いますので、私は、この措置の結果、土地成金を醸成するというような動きに回るとは考えません。
  13. 久保田鶴松

    久保田(鶴)委員 そこで、申し上げました分離比例課税税率は大体二年ごとに行なわれてきて、それが大体五%ぐらいずつ上がっているけれども土地はそれ以上にいままで上がってきております。今度はその土地上がりを押えようというような、うわべだけの今度の出された法律案内容とは思いますけれども、しかし、それとうらはらの結果がくると思うのですが、そこまで考えていらっしゃいますか。
  14. 福田赳夫

    福田国務大臣 この税率が二年ごとの刻みで上がっていきますのは、地価が上がるからということはないのです。地価が上がれば、それにつれまして税金それ自体が変わってくるのですから、上がり影響をパーセンテージに応じて受けるわけですが、税率を上げますゆえんのものは、早くお売りになったほうがこれはお得ですよという趣旨を込めておるわけであります。これによりまして、二年先まで持っていくというよりは、ひとつこの一、二年のうちに売っちゃおう、あるいは五、六年先まで持っておるというのを、三、四年のうちに売ってしまおう、こういうふうにして、当面土地放出供給を潤沢にし、地価対策に貢献しよう、こういうねらいなんです。地価が上がるだろうから、それを踏まえて税率を高くするのだという考えじゃございません。
  15. 久保田鶴松

    久保田(鶴)委員 そういたしますと、譲渡所得分離課税として、これからどんどん開発していく土地等もできてきますが、その開発等によってそういうような土地ができてきた場合、それらのいわゆる見込み税と申しましょうか、あるいはそこにあがってくる利益を一いま地方は非常に財源難で困っておりますと同時に、地方税が高くてみんなが困っている。だから、そういうところにあがってくる収入、これを申し上げますように、地方税軽減等に持っていかれる考えはあるかないか。
  16. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは公共事業をやる、その公共事業によって、その公共投資利益に均てんする反射的利益として、それの利益に均てんする人に対し特別の課税をしたらどうだ、こういう御意見かと思いますが、考え方としてはまことにそのとおりだと私は思うのです。いま、あるいは高速道路ができまして、あるいは汽車が開通します、その駅だとかあるいはインターチェンジであるとか、そういう周辺の土地利用価値というものは、それによって飛躍的に増大をする、こういうことになるわけなんです。その飛躍的に増大をする土地価格は、これはまたそれに伴ってまた高騰するわけであります。したがって、その社会的投資、国の投資によってそういう土地価格の騰貴というような利益を受ける人に対し、その利益を、それを行なう事業主体である国家とか地方公共団体であるとか、そういうものに幾ばくか貢献をなすべし、そう考えるべき問題である、そういうふうに私は考えます。私も常々何とかしてそういうことはできないものだろうかということを考えておるのでありますが、さてこれを実行しようという際に、どこまでがそういう公共投資による反射的な利益であるかという限界、これが非常にむずかしいわけなんですね。インターチェンジをつくりましたが、さあその一キロ四方がそうなのか、あるいは五百メートル四方がそうなのか、そういう点になりますと、まことに判定困難である。そこで、そういう形でなくて、いろいろな形の他の税によって一般所得としていま捕捉しているというのが現状でございますが、お考えとしては私は全く同感ですが、実行はなはだ困難である、頭をひねっておるところでございます。
  17. 久保田鶴松

    久保田(鶴)委員 まあ考え方は同じだ、こう大臣はおっしゃいますが、考え方が同じなら、ぜひそれをやってもらうようにひとつ努力してもらいたいと思いますと同時に、特に特定の地域または一定の規模以上の空閑地等で、これを売り地目的として長く持っている人、長くでなくても、こういうような土地を持っている人に対して、空閑地税、これは私たち前からやかましく言うておる問題ですけれども、こういうような税を取るということの考え方、これはどうでしょう。大臣は何回も聞いていらっしゃると思うのですけれども……。
  18. 福田赳夫

    福田国務大臣 その考え方も私はあなたと考え方の筋は同じなんです。土地というものは、鉱工業製品のようにつくるわけにはまいらない。これはもう普通の商品じゃなくて、いわば国民財産ともいうべきものであり、土地所有権というものが認められてはおります。おりますけれども、その土地を所有しておるその人は、一億国民利益のためにこれを最高度に活用するという趣旨においてのいわば信託を受けているというふうに理解すべきものではあるまいかとも考えておるのです。私は、そういう考え方からいうと、まず住宅宅地にいたしましても、それが宅地以上に必要な面積を保有しておるというようなことは、土地に対する考え方としては適当でない、こういうふうに考えます。またしかし、そういうことを税の面でやるかというと、私は税の面で考うべき問題ではなくて、税はあくまでも補完的な立場に立つべきものである。これは土地政策に対する根本的な問題から解決していくべきものである、こういうふうに考えるのであります。しかし、補完的と申しましても、何がしかの効果はあるんですから、税ということを考えないわけではありませんけれども、これも先ほど御指摘がありました公共負担というような問題と同じく、どういう部分が空閑地であるのか、これは必要の限度をこえておるのであるかという判定になりますと、これがまた非常に困難であり、また、かりに困難をおかして基準をつくりましても、脱法的なやり方というものは幾らでもこれは行なわれ得るわけであります。そういうことを考えてみますると、にわかに空閑地税というものを具体的に実行するということがむずかしいことになるのであります。しかし、土地政策全体としては、だんだんだんだんそういう方向でこの問題を考えていかなければならぬ、そういうふうに考えてはおるのであります。
  19. 久保田鶴松

    久保田(鶴)委員 私のいろいろお聞きする点に対して、大臣は、私ども考え方と同じようなことであるけれども、それは実行がなかなか困難だというお答えをしていらっしゃるようでございますが、私、そういうことをここでこうしていろいろ大臣にお尋ねして審議していても、あまり実のりのあることにならぬので、ぜひ私は、やはり審議の場として審議いたしている問題等に対して、それを大臣にただして、いいことはいいことだから、いいことならぜひそれは実現するようにしたい、しょう、こういうはっきりしたお答えをひとついただきたい。  と同時に、今度は、土地買いかえ制度について、個人土地の交換の譲渡制度を廃止されるということだそうですが、居住用資産特別控除を引き上げる問題がここに考えられなければならぬと思うのです。そのために公共機関への売り渡しによる譲渡所得は低い税率にする、またはそういうようなものをある程度までの免税点等にしなければいけないと私は思うのですが、これはどうですか。
  20. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 今回居住用資産買いかえによる特例、それから事業用資産買いかえに関する特例を一応廃止をいたしまして、居住用資産買いかえにつきましては、土地政策にプラスになる特殊な買いかえだけを新しく認めるという制度をとったわけでございますが、居住用資産買いかえをやめました関係で、居住用資産、実際に自分が住まっている家を売るという場合には、必ず他に代替の資産を求めることが普通であろうということから、普通の家屋程度のものを取得するものはそれを可能にするという意味で、千万円の特別控除を新しくつくったわけでございます。従来は御承知のとおり買いかえは無制限でございまして一億円の買いかえも可能であったわけでございますけれども、半面においては、家を売って老後アパートで暮らそうという人が買いかえができないために、フルに課税を受けておったという矛盾が非常に指摘されておりましたので、その点はこの千万円控除で公平がはかられるであろうということで千万円控除を設けたわけでございます。  特殊な場合の譲渡については、事業資産居住資産を通じてでございますけれども、たとえば収用対象事業によって買い取られるあるいは収用を受けた場合は、従来どおり千二百万円の控除を置いておりますし、さらに従来、収用法適用があった住宅公団区画整理方式による団地開発のために取得した資産につきましては、収用法適用がなくなったわけではございますけれども経過的措置として六百万円の控除を認める、それから従来ございました特定規模以上の団地を取得する場合の特別控除三百万円も存置いたしますと同時に、新たに文化財保護法規定によって文化財に指定されたものを国によって買い取られる場合、その他類似の買い取り請求権のある場合については、三百万円の控除を特設する、新しく設けるというようなことで、実際上の公平をはかってまいったわけでございます。   〔倉成委員長代理退席委員長着席
  21. 久保田鶴松

    久保田(鶴)委員 いま固定資産税等の問題にもお触れになりましたが、したがいますと、ここで固定資産税等についての大衆負担増大をさせないような方針を立てて、そこで農地等課税標準は大体評価額が三分の二、もしくはこれを免税等に持っていくというようなことの考え方はお持ちでございますか。
  22. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 固定資産税につきましては、御承知のように、三十九年度に全面的な評価がえを実施いたしました。その後三年に一度評価がえを実施する法律上の規定になっております。四十二年度は特例によりまして評価がえをしなかったわけでございます。四十五年度にその評価がえの時期が参ります。税制調査会等におきましても、今回の土地税制改正は、いわば流通関係の税の改正でございますので、保有課税としては来年度の固定資産税評価がえにあたってできる限り適正評価をするようにということを言っておりますが、三十九年度の評価におきましても、農地については特別の評価方式がとられておりまして、御指摘のように、実際上他資産と比べてはかなり低い評価がされているわけでございます。今後四十五年度にそれをどうするかということが一つの問題であるかと思います。これにつきましては、目下実施庁において慎重に検討いたしておるわけでございます。
  23. 久保田鶴松

    久保田(鶴)委員 いろいろいまお尋ねしています問題等について問題があるのですが、そこで、こういうような問題を根本的に解決するために、私は大臣に特に考えてもらいたいと思います点は、申し上げましたように、審議の場を設けて審議して法律をつくっても、その法律に基づいて——全国税務職員は五万人おられますね。五百の税務署がありますが、ここに働いていらっしゃる方々等については、これは法律よりも政令通達解釈、こういうものによってすべての仕事をしていらっしゃる、こういうことが多いのです。政令によってその解釈に基づいて税務職員仕事するということより、やはり法律に基づいて仕事をしてもらわなければならない。その法律に基づいて仕事をしてもらわなければならない法律を守らずして、政令通達、こういうものでかってな解釈をしてしまう。  そのことをもっと突っ込んで申し上げますると、大体人手不足と申しましょうか、法人税関係等において一応わかるようになるまでには私は十年かかると思うのです。十年かかるのに、十年かかってなかなか課長や署長になれないのだ。したがって、せっかく国民税金給料を払って一人前にした人を、今度は給料のいい大きな会社からひっこ抜きに来まして、脱税と申しますか、税金を安くするというような方法の方面に回ってしまうというようなのが私多いと思うのです。そこで、その職員人たちは新しい人が入ってくる。新しい人は十分わからない。そこでいま申しました通達政令等によってかってな解釈納税者がいじめられている。大きなところはそうじゃございません。公認会計士等がおってこれは問題じゃないのです。けれども、一番困っているのは中小企業零細業者あるいは一般納税者等であろう、こう思うのです。  したがって、先ほどからいろいろ申し上げますような問題等についても、問題が残されてくる。特に主税局がいろいろ骨組みされまして、それに基づいて国税庁が国税局、税務署にこの通達といいますか、これを出されて、そしていま申し上げるような問題が起きてくるのです。どうでしょう。こういう点をもっと根本的に、国民が納得して払える税金——いまほとんどそうじゃございませんよ、大臣。あなた方、雲の上にいらっしゃるからわからないけれども、下のほうは、主税局あたりは下から上がってきてよくおわかりと思いますけれども、大体そういうことでしょう。違いますか。そういう点について、もっとほんとうに納税者のために——日本国民税金払わぬというような考え方はしておりません。納得のいく税金ならみな払いたい。自民党の委員さんにいたしましてもそうだと私は思う。国民は納得できる税金を払う、納得のいかない税金は払ってはいかぬ、そういうことでみんながここで審議している。それがいま言うた通達とか政令とかいうもので変えられてしまう。その点具体的にはっきりしたことを答えてもらいたい。
  24. 福田赳夫

    福田国務大臣 税法というのが非常に難解な面が多いように思うのです。私ども、そういう点には着目しまして、税法をなるべく国民にわかるようにというふうには考えておるのですが、こういう法律国民の金銭的債権債務に関係する非常に大きな意義を持つものでありますから、これを平易、平易とばかり気をつけておるわけにはまいらぬ。やはり権利義務の関係をはっきりさせる。そうすると、勢いこれが難解になってくるわけです。それにしても、なるべくわかりいいように、わかりいいようにというふうに心がけております。法律はそういうことで、わかりやすく、かつ、しかし権利義務の関係ははっきりさせるというたてまえでできますが、これをどういうふうにまた具体的なケースに適用するかということになると、いろんな疑義が出てき、解明しなければならぬ点が多々あるわけであります。やはり政令なりあるいは通達なりということになるわけであります。これもまたやむを得ないことかと思うのですが、法律を曲げて通達が出るとか、ましてや政令が出るとか、そういうことは絶対にあり得ないわけであります。もしありましたら、ひとつ御注意を喚起願いたいのです。よく取り調べますが、法律をいかに忠実に実行するにはどうするかという具体的方策を通達として出としておる、これが現状なんでございます。もしそれに間違いがあるということであれば、これは直ちに訂正しなければならぬ、かように考えております。
  25. 久保田鶴松

    久保田(鶴)委員 間違いがあったら話してくれということですけれども、間違いだらけなんです。そんなこまかいことを私ここで申し上げられません。いま大臣から話がありましたことに関連して、主税局のほうでもっと具体的に話してください。
  26. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 御指摘がございましたように、ただいま大臣申しましたように、法律を実施するために政令が定められますけれども、さらに省令、告示と、具体化の順序が進んでまいります。しかし、実際にそれらを適用する場合に、どうしてもさらに具体的な指針が必要であると申しますのは、各税務署において解釈を統一しないと区々な結果が出てまいりますので、それを規定する意味でさらに通達というものが出されておるわでございますが、主税局におきましては、国税庁の出す通達は一応合い議を受けまして、法律趣旨政令趣旨に違反していないということを確認する道を講じております。同時に、何と申しましても通達解釈でございますので、法律政令の予定した一般的な状態を前提にして、それの具体的取り扱いを考えたわけでございますが、非常に異例な事態があった場合には、通達自体があまり具体的になっているだけに実情に沿わないことも起こるわけであります。そういうときに、まさに御指摘がございましたように、法律の精神に立ち返ってその通達を反省する必要があるわけでございます。現在国税庁で出しております通達は、そういう意味で常に一般的な妥当性を持っているということ、個別に実際に非常に合わない場合には、それに基づいて上申するようにということを言っております。そういうように、具体的なケースでは確かに一般的な通達が一番具体的でありますけれども、具体的であるだけに、具体的ケースに通達を機械的に適用いたしますと、かえって法律の精神に沿わないことも起こるわけであります。  そういう意味で、それを救済するにはどうしたらいいかということがしばしば問題になっております。従来ございました通達の再審査という場合の協議団というのは通達に縛られておりますので、具体的な妥当性がない場合でも通達を曲げてあえて裁決することがなかなかむずかしかった。今回御提案申し上げております国税通則法改正によります国税不服審判所におきましては、従来の通達の扱いに具体的妥当性がないとした場合には、それによらずに裁決することができるということをきめまして、その場合にはむしろ国税審査会というものの判定を受けて、実際に即した解決がはかられるような道を開いたわけでございます。  御指摘がございましたように、やはり納税者が最後に納得のいく手段で解決できるように、一般的には通達は間違ったことは書いてないはずでございますけれども、具体的な事情が非常に違う場合には実際とずれることもございます。そういう場合の解決方法を、最終的には国税不服審判の立場でできるようにというのが、今回の通則法の改正内容でございます。それによってその点は一歩前進する、かように考えております。
  27. 久保田鶴松

    久保田(鶴)委員 いま通達解釈の問題、あるいは協議団の今度改正される問題等について触れられておりますけれども、その通達解釈が間違ってくる、新しい人、末端の税務署におる人は。こまかい点を申し上げませんと申しましたが、参考に一つだけ申し上げてみましょう。  ある土地において農民の人が三十人くらいおった。二千坪の土地。ある建築業者がその土地を農民から借りた。その土地を農民から借りる場合には、たんぼのことでございますから四条申請をしなくてはならない。四条申請しなくては家が建てられない。四条申請したのに対して、その建築業者に農民は土地を貸しているんだから、土地代幾らもらっているかということを税務署が調査して、それに対する所得の申告をするということが正しいと思うのです。だけれども税務署ではそうじゃない。四条申請した何千坪かの土地に対して、これが正しいとして、その二千坪なら二千坪の土地に対する更正を打とうとした。これは土地の売り買いじゃない。土地の賃料を建築業者からもらっているだ、その所得なんだ、そういう間違いがある。これは更正を打たれたら二五%の、また法律できめられておりまする重加算税というものを取られるからこれはどうにもならない、ちょっと待ったというようなことで。この土地は道路もある。二千坪の土地の中に道路もある、空地もある。こんなものまで税金を取ろうとする。税務署は四条申請が正しいと解釈する。そんなことで農民はいじめられる。農民はそんなことで、もう税務署は強いんだ、税務署はこわいんだということで税金を取られてしまうということが数々ある。これは全国を通ずるとものすごくある。そういうような解釈で末端の人が仕事されますことをあなた方は御存じでない。  だから、その通達というものが大事だ。ここでこうして私がお尋ねしてあなた方がお答えになることは、これは簡単でありますけれども、末端ではなかなかそうじゃないのですよ。いま申し上げますようなことが数々あることを御承知願いたい。どうです、私の言うこと、間違っていますか。
  28. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 具体的ケースをもう少し詳しく承りたいと思います。あとでまた伺いたいと思いますが、おそらく借用した場合に賃借によって借地権が生じたという解釈をとったのではないかと思いますが、それも具体的状況によって借地権の発生とやはり内容的に異なりますので、具体的ケースを承り、また、国税庁も来ておりますから、あとで承って御回答申し上げたいと思います。
  29. 久保田鶴松

    久保田(鶴)委員 いま申し上げますようなことが数々あると申し上げましたが、そこでその通達等の問題ですが、裁判所関係では、これはどなたも言われることばで疑わしきは罰せず、税務行政等においては、疑わしきは課税すべし、こういうようなことでやっていらっしゃる。  そこで私は、大蔵委員会は非常に重要な審議の場だと思うのですが、もうきょうの会議でかかるわけですけれども所得税の問題等についてちょっと一言触れてみたいと思います。所得税等の問題に対しましては、だれかが話したとも思いますけれども、どうでしょうか。たとえば今度の控除額の問題等について、扶養控除あるいはその他の控除についてわずかばかりお引き上げになりました。十六万を十七万にし、それから八万を十万にされましたが、そういうような引き上げをされましてもまだ問題がたくさんある。夫婦生活しておって子供があって、夫婦共かせぎをしなければ食べていけない。そうすると、おばあちゃんでも月給を払って雇う。そうすると、自分らは働いた中から源泉で取られている。源泉で取られているが、その金でまたおばあちゃんに支払いをすると控除してくれない。貧乏人には控除しないけれども、大会社には控除するということが町でいわれておる声なんですね。  そういうようなこととあわせて、特に私、大臣考えてもらいたいと思いますのは、間接税の問題です。間接税の問題等につきましても、いま申し上げますように、サラリーマンその他工場で働いている人たちが、源泉で税金を取られた残りの金で市場、百貨店その他等に行かれます場合には、また税金を取られる。大臣の奥さんでも——大臣の奥さんはあまりあれしませんでしょうけれども、そういう場面で税金を二重、三重に取られているというような点、この間接税の問題等をどの程度に——所得税とそれからいまの間接税との関係ですね。これを一ぺん聞かしてもらいたい。そしてそれに対する意見を一応述べてもらいたいと思います。
  30. 福田赳夫

    福田国務大臣 税は、根本的な考え方として、一つは公平でなければならぬ、こういうふうに考えます。それから第二は、やはり能力に応じた額でなければならない、こういうふうに考えております。第三に、私が常に心しておりますのは、税の徴収が、国民との間になるべく摩擦が起こらないような方式、こういうことなんです。その三つのことを特に税をやっていく場合において気をつけておるわけです。  いま冒頭に、貧しい人に不公平だ、こういうふうにお話がありましたが、決してさようなことではないのでありまして、所得の少ない人に非常に手厚い税制になっておる、そういうふうに考えております。特にいわゆる夫婦子三人という世帯につきましては、今回は九十三万円の所得までは免税にしよう、こういうのですから、これはかなり進んだ税制になってきておる、こういうふうに考えておりますし、また、累進税率でありまして、低い人にはかなり低い税率適用されておる。それを今回は改善いたしましてさらに低くしよう、こういうのでありますから、これもいまおっしゃるようなことじゃない、私はかように考えております。  それから、第二の問題の間接税ですね。これは私が先ほど申し上げました三つの問題点、その第三のところに当たる問題ですが、いま日本の国の税制全体を見てみますと、直接税が六割で間接税が四割だ、こういうようなことですが、これを戦前に比べますとちょうど逆になっておるのです。戦前は直接税が四で間接税が六というような状態であったわけです。それがいまは逆で、直接税のほうが重いわけです。これからの傾向を見てみますと、この直接税がだんだんと税全体の中において重きを占める、こういうようなことになっていくだろうと予想されるのであります。つまり、経済が非常な勢いで成長発展をする。そうすると、国民一人一人の所得が多くなる、また企業の収益も多くなる。そこで個人所得税、法人税、これが重きをなしていくという傾向がさらにさらに強くなっていくだろう。そうするとそこで、法人にいたしましても個人にいたしましてもそうですが、税の負担感という問題、はだざわり、この問題が大きな問題になってくるのじゃあるまいか、そういうふうに思うのであります。そういうことを考えますと、何か適当な間接税的なものでもありますれば、何かそういうものを作案をしてみたらどうだろうかというような感触を持っておるわけです。  ただ、間接税という問題になりますと、すぐこれが物価に直結をする、そういう性格を持ちます。そういうようなことから、いま物価問題のうるさいこのときに間接税を大幅に取り上げるというようなことは、政策上できないことでありまするけれども、将来の問題とすると、何か間接税的なものを頭に置きながら知恵をしぼっていく必要があるのじゃあるまいか、こういうふうに考えておるのであります。いまはしかし、考えておるというところであって、それを実施するかどうかということになると、実施はいまはできません、こう申し上げるほかないのであります。
  31. 久保田鶴松

    久保田(鶴)委員 考えておるということですが、それを実施してもらうのについてのやはり税の財源を求めなければならぬということになると思うのです。それは租税特別措置法を廃止したらいい。そこから財源が生まれてくる。それから先ほど申し上げました末端の税務署職員の手不足、これは無理な仕事をさせておる。だから、これについても財源がない、こうおっしゃるかもしれません。それらの財源等についても、これまたたくさんあるでしょう。私、ここで一々この租税特別措置法の、大きな財閥関係の大会社措置法で助けているその内容を話しますと、これは時間が相当かかってしまいますから、これはもう省略します。けれども、合理化機械等の特別償却とかあるいは航空機用揮発油の免税にしている点を税金を取るとか、あるいは輸出割増償却などの点について、これも数え上げればきりがない。そこらから財源は何ぼでも生まれてくる。  そこで、大きな人たちだけは税金はほとんどかかってないというてもいいくらいであって、その税金のかわりに政治資金で出している。こういうことをいわれている。これは私だけが知っているのじゃないのですよ。一般国民がみんな知っている。大きな会社は政治資金として税金のかわりに金を出している。だから、大きなところは税金は払わぬで済んで、その負担が貧乏人に課せられている。それが政令あるいは通達によって、手不足の末端の税務署職員が無理な解釈をして税金をよけい取れということになっているから、一般納税者は非常に困っている。こういうことが、大臣、率直な国民の声なんだ。だから私は、そういうことを根本的にぜひ実行する、実現するという考え大臣は持ってもらいたい。いま五万の職員を動員して——じゃ久保田、おまえそう言うから職員をふやそうといったって、一税務署に一人か二人なんです。一人や二人回されたって、この十二、三日ごろから十五日、ずっと見てみなさい。税務署はてんやわんやだ。あんなものは百万ぐらいのこまかいのが大かたなんだ。そんなのであんなてんやわんややっておる。主税局長、そうでしょう。そういうようなことを、もっと末端の納税者のことを考えてもらいたいと同時に、いま申し上げましたようなことを、それはここで聞いておくけれども、それはいいことやけれども、取り上げることはできないというのではなしに、大臣、どうでしょうか。
  32. 福田赳夫

    福田国務大臣 いろいろ税務行政のことをお考えくださって御親切な御注意ありがとうございますが、ただ一点、法人は政治資金を払っておるのだから、税金がかわりに安くなっておるのだというようなお話ですが、そんな関係にはないです。政治資金はあなたも一番よく御承知のとおり、これは法人が払う場合には一般の寄付、こういうものと一緒になって、ある限度があるわけなんです。それで、おそらく多くの会社がその寄付の限度以上の寄付をし、また政治献金をしておると思いますが、これはみんな税金を払っておる金でありますから、これは免税になっておるという御理解は実情に即しないのではないか。その点だけはお返し申し上げまして、あとの点は御礼申し上げます。
  33. 久保田鶴松

    久保田(鶴)委員 大臣、そうおっしゃるが、それじゃ、政治資金規正法のあれを改正しようと佐藤さんにもたびたび私たちはやかましく言っておるけれども、あれは小骨一本抜かないと言って、大骨も影も形もなくなってしまったような状態です。いま国民は、税金が政治資金とかわっておるから、政治資金規正法というものを改正して、そして大きなところから税金をうんと取りなさい。取ったら政治資金として金を出すことができないという関係から、そういう点はあなたは特に佐藤さんと何の関係だか、また大臣も大蔵畑で二回目の大蔵大臣をしていらっしゃるので、もう何もかもよく御存じなんだから、その点、よし久保田の言うようにひとつ責任をもってそうする、そういう意に沿うようにしようという答えはできませんか。
  34. 福田赳夫

    福田国務大臣 現在の税制が政治資金にさほど有利にはできておりません。今度どういう政治資金規正法が出ますか、まだ政府はきめておりませんが、この前出て廃案になったあの税制によりますと、一方において政治資金公開主義というか、非常にしぼるのです。しぼりますが、そのしぼりにしぼって出す政治資金、これに対しては税の特典を与えよう、こういう考えになっておりますが、これは今度の改正案で出るかどうかはわからない。しかし、現在の制度は少しも政治資金に対して有利な税制だというふうになっておらないのです。これはひとつよく御了承願いたいと思うのです。  それから、かりに有利になっておるというようなことがありましても、これは非常に、それがいいのか悪いのかということは議論の存するところで、政党というものの費用が、これが一体政党活動というのがいいのか悪いのかという評価につながる問題でありまして、これは簡単にここで久保田さんに私は賛成ですと言うわけにはまいりません。
  35. 只松祐治

    ○只松委員 火曜の午前中で大臣が出席しておる。しかも所得税に次ぐ重要な租税特別措置法案、こういうときに定足数が不足しておる。全員とは言わぬが半分くらい出してください、暫時休憩をして。
  36. 田中正巳

    田中委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  37. 田中正巳

    田中委員長 速記つけて。  阿部助哉君。
  38. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 大臣おいでになっておるので、ちょっと大臣のためにも、この前、本会議で、私、租税特別措置の質問をいたしましたが、大臣、これはメモの読み違いじゃなかったのですか。私、地方税の最低限の問題なんというのは聞いていない。特別措置の問題を聞いておるのですがね。大臣地方税所得税の最低限の問題なんということを御答弁されたのは、これはメモを取り違えてお読みになったのじゃないか。本会議は、私に御答弁なさるのじゃなしに、むしろ国民に対して御答弁なさるとすると、次期総理、総裁というふうに目される大臣の答弁としては、これは少しピントがはずれておるのじゃないだろうかという感じがするのですが、これ大臣一ぺんごらんになって。
  39. 福田赳夫

    福田国務大臣 こういう質問じゃなかったのですか。
  40. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そういう質問じゃないんでして、私、特別措置関係についてお伺いしておるのです。
  41. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、阿部さんの質問に対して忠実にお答えいたしたつもりであったのですが、何せ質問される阿部さんは、私のほうから見ますと背を向けて話しておられるのです。したがって、お話しになることが、率直にいいますと、はっきり聞き取れない場合が非常に多いのであります。そういうようなことから、推量でこういうことを聞かれておったのかなということで答弁をする場合もありますので、あるいは本件の場合もそういうケースであったかとも思いますが……。
  42. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 これは追及いたしませんけれども、私はやはり——私、だいぶ声が大きい。からだが小さいわりには声が大きいほうで聞こえないはずはないのでありますけれども、国会の場というものをお互いにやはり国民のために発言する、答弁するという態度でお願いをしたい、こう思いまして、あまりにも違っておるので、これは大臣、メモの読み違いをされたのじゃないか、別のメモを持っていって読まれたのではないかという感じがしたわけであります。  それでは、次に特別措置についてお伺いをいたしますが、いつも私も申し上げますし、政府のほうもおっしゃるのですが、この特別措置については不断に検討している、検討しなければならぬということでありますし、皆さんのほうも不断に検討したおられるということです。また私たちも、この問題はいろいろと批判の多い特別措置でありますだけに、国民の代表として検討するのが任務だと思うのでありますが、何といっても毎年大蔵省からいただくこの減収試算書というこの程度のものでは、はたしてこの内容が適正であるのかどうかということの判定をするには、どうしてもわれわれには不十分過ぎますので、ひとつまず資料を、いますぐでなくともいいからお願いをしておきたいのであります。それは租税特別措置法の第三章、法人税法の特例の部分でありますが、これの四十二条から六十八条の二まで、ただこの間に中小企業関係や協同組合関係、たとえば四十六条とか五十一条というようなものは、これは要りません。この各条項について、資本金百億円以上、五十億円以上、十億円以上、一億円以上、以下と五段階に分けて、業種別にひとつ減収の実績、もし実績の出ていないものは減収見込み試算というものを、四十年からのものを御提示を願いたいと思うのですが、よろしゅうございますか。
  43. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 御承知のとおり、租税特別措置は個々の業種について適用のあるものもございますし、大部分はすべての法人に関連いたしておりますので、いまのような資料になりますと、これは各法人の申告書までさかのぼって調べないとできないわけです。それだけの手数を第一線にかけるというのは、私ども非常に無理である。先ほど久保田先生の御指摘もございましたので、そういう意味でそういう基礎資料をとっておりませんので、それほどこまかい資料は私どもとしてもちょっと手持ちいたしておりませんし、これからつくれとおっしゃってもちょっと無理だと思いますが、御承知のように、従来から税法では一億円と一億円以下で区別をしている、中小と大法人と分けておりますので、その内訳によってどのくらいの差がついているかという点は至急計算をしてお出しをしたい、かように考えておりますが、その業種別資本金のこまかい内訳となりますと、ちょっとこれは不可能に近いことでございますので、御容赦を願いたいと思います。いま申し上げた一億円を境とする区別については、できるだけこまかい資料を提出したいと思います。
  44. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 それでは、実際の効果を検討しているということにはならないのじゃないかと思うのです。あとでお話ししようと思っておりましたが、たとえば法人企業の実態等では、これでは不十分だけれども、一応百億、五十億、十億、一億あるいは五千万、百万というふうに分類して、資本金別、業種別で価格変動準備金であるとか、貸倒引当金等が出ているわけですね。これも私あとでお願いしたいと思うのですが、これだけぱっと見れば、これは年々洗いがえといいますか、やるわけですから、そうするともう少し長期で見ていかないと、はたしていまのそれが適正であるのかどうかというのがわからなくなるということで、私さっき御願いをしたのですが、これは私、いますぐ十日や十五日で出せとは申しません。しかし、それくらいのものができなければ、この特別措置がほんとうにどういう機能を果たしておるのかというものにならない。ここでわれわれが幾らけしからぬ、こういうのはやめろ、こういっても、効果があります、片一方は、ないじゃないか、その水かけ論で私は二年間過ごしたような気がするので、もうこの辺でそんな議論をしておるのではなく、もっとお互いに話を詰められるようなところまでいかないと、毎年こんなことをして、国会議員でございますと言うのじゃ、ちょっとこれは申し訳けないという感じもする。そういう点で、これは困難であろうけれども、これがほんとうに国民の血税を公平にやる——いまいろいろな不満がある、それをとにかく先ほど大臣の言ったように納得さして、摩擦のない徴税体制をとる、こういうことなれば、これはどうしてもやるべきだ、こう思うのですが、もう一度、困難であろうけれども、ちょっと時間がかかっても、これはやむを得ないと思います。その検討ぐらいは私、すべきだという考えですが、いかがでしょうか。
  45. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 御承知のように、税務統計まで準備金、引当金のような勘定科目ができているものにつきましては、統計で、電子計算機で集計をいたしますので実績が出ております。貸倒引当金、退職給与引当金、価格変動準備金、これにつきましては、御指摘のとおり実績を統計で具体的にとっております。したがいまして、これを十年間に分けて、その数字をお示しするということは、これは直ちにいたしたいと思います。いま読み上げますのもいかがかと思いますので、あとで数字を差し上げたいと思いますが、前の資料は私はどうもここで安受け合いができない。と申しますのは、いま申しましたように、一つ一つの申告書まで書き抜かなければならない。しかもいろいろな準備金、あるいは償却などになりますと、非常にこまかい償却計算がございますし、現在償却につきましては、償却の内訳の提出さえ納税者がめんどうだというので事務所に置いておけばよろしいということに改正をしていただいたようなわけで、なかなかさかのぼるということはできませんので、私ども研究してみますが、ちょっとこれだけこまかい資料を集めることは、かなりな手数になりますので、ごかんべんを願いたいと思います。
  46. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 一億円以上というふうに大ざっぱにしましては、これは判定のあれにならぬので、私の言うのが無理であれば、もう少し大刻みでもいいのですが、たとえば引当金、準備金なんというのを見ますと、百億以上のところに八十九社ある。それが貸倒引当金の場合には、おおむね四割以上の金額がここへ集中しておるわけですね。そうすれば、一億円以上なんという大ざっぱなものでは、これは実際の判定、検討の資料としてはどうにもならないと思う。その刻みを、私は五段階をお願いしたのでありますが、もう少し大刻みで一億、五十億、百億ぐらいのところは出ないものですか。私はこれは出すのが——出さなければ、検討しろと言っても、この試算を信用しろと言っても、これは信用することができないでしょう。これをもう少しやはりひとつ努力をしてもらいたいと思うのですが、いかがですか。
  47. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 業種別というのは、これは絶対できないのでお許しを願いたいと思います。資本金別は、あるいは大きく、企業の数が非常に少ない程度のことならできないこともないと思いますが、そのかわりそれはある程度企業の個別性をあらわしてしまうというところがございますから、その辺をある程度勘案して研究してみたいと思います。いま御指摘のございましたように、準備金、貸倒引当金などになりますと、これは百億、五十億以上のところは銀行ばかりでございまして、貸倒引当金は銀行が一番多いので、そういう結果になっておるのでございます。ほかのところは特別措置ははたしてそうであるかどうかは疑問がございますが、大きな区別でできるかどうか、ひとつ検討さしていただきたいと思います。ただ業種別というのは、なかなかむずかしいので、これはちょっとできないと思います。
  48. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 この準備金、引当金のこれには業種別は出ているんですよ。それで、この中で、たとえば引当金の場合を見ますと、業種がずいぶんあるのだけれども、金融、保険業というところが大体ここに集中しているんですね。四十一年後期においては、総額で七千三百十九億のうち、この金融、保険業だけで三千九百八十三億何がしということで、約五五%がこの業種に集中しているんですね。こういうようなことが業種別に出ているので、先ほど私がお願いしたのも、この程度の業種別ならばやはり出得るだろうし、これを出さなければ、どうにもあれだけ、皆さんのほうでは百三十八、今度は予約減税で百三十九と言うけれども、特別措置法のあれをずっと見ていきますと、これは、おそらく国民だれでも——皆さん専門家でもわからないということなら、だれもがその効果を検討しろとか幾ら税調で勧告してみたって、これはから念仏で馬耳東風で聞き流しているということになるわけです。これはやはり何らかの努力を一これだけの大きな金の問題でありますから、困難だなんていうことでは、国民承知をしないだろうと思うのです。
  49. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 御指摘のように、準備金、引当金に業種別がとられておりますのは、税務統計といたしましても、御承知のように、適用率が業種別に違うものでございますから、これをとらなければ実態がわからないということでとっていることは事実でございます。それから準備金、引当金の総額のほとんど八割近くは、この三つの準備金、引当金で出ておりますので、大体これで趨勢はわかるということがあるかと思います。ただ個別の法人への影響がわからないということで効果が判定できないというわけではない、やはりマクロで一つの判定ができるわけでございますので、私たちも必要なものはできるだけとりたいと思いますので、第一線で非常に苦労をしてもとりたいと思いますけれども、すべてにわたってそれだけこまかい資料をとるということ自体は、これはなかなかむずかしいことだと思います。できるだけ努力いたしますが、先ほど申しましたよう、に大きな区分けができれば、少し時間をいただいて検討をいたしたい、かように考えております。
  50. 田中正巳

    田中委員長 委員長より申し上げますが、ただいまの阿部君の資料要求については、後刻理事会においておはかりいたしたいと思います。  質疑を続行願います。
  51. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 それともう一つ、たいへん御無理なお願いで恐縮なんでありますが、銀行の利益というのが非常に大きいということは、国民みな知っているわけです。そこで、いろいろ新聞等でも問題になっておりますが、この銀行、それもせめて都市銀行の貸倒引当金等のものは、これがあるから、ずっと十年なら十年のあれをやればできるわけですね。これはいまでもわかるわけですか。
  52. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 適用率別でございますので、金融、保険業一般を一つにまとめて資料をとっております。ですから、金融、保険業だけを十年間ということはもちろんできます。
  53. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 それでは、これは後ほどでけっこうでございますから、せめて都市銀行の分だけ、これは少し長期にわたって出してもらいたいと思います。というのは、これは、いままで私の質問したときには、一ぺん一ぺん洗いがえをするのだ、だから、これはそう税金をまけたんじゃない、こうおっしゃるけれども、これだけ大きな金が毎年毎年ふえながらも、マクロ的に見ればずっとべたに課税対象からはずれておるわけですね、と見ざるを得ないわけでしょう。そうすると、これは少し長期のものを出さないと、はたしてそのいまの率が正しいのかどうかというものの判定はできなくなるわけで、その点でこれをお願いいたします。  次に引き当て金、これは債務性があるということで本法に直された。それと準備金、こういうものの割合、限度額というものが一体どの程度が妥当だというふうな、それぞれ違いましょうけれども、何かそういう点で一つ一つその妥当だという線を何かで判定されておる、こう思うのですが、それはどういう一いまのような形でいったら、課税上の民主的なものでもないし、公平な税体制を守るという観点からも、何か私には疑問があるわけですが、大体どういうところに限度を置いておるわけですか。
  54. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 御承知のように、引当金と準備金というのを税法上区別をいたしておりますのは、引当金は負債性引当金というものが前提になります。いわば法律的に、あるいは実際上の準法律的な意味においても、その企業において負担すべきことを義務づけられていると認められるものが引当金であります。これはその期のコストとして控除しておかなければならない性質のものであるというものが引当金として整理される。これがたとえば貸倒、退職給与引当金という系統の性質のものでございます。  それから準備金のほうは、いろいろな政策目的を達成するためにやった制度の結果として、これを全く免税にするのは適当でないとすれば、課税猶予の形として、取る場合の一つの形といたしまして準備金という勘定を起こしてそこに留保させる。ただし、これは経過的な勘定でございますから、いつかは解消されると、そのときに利益に還元される。したがって、そういう意味課税繰り延べの効果を持つ、特別措置の態様として準備金というものがあるわけでございます。  そこで率につきましても、退職給与引当金などは、現実に企業がその期末において従業員がすべて任意退職をした場合に幾ら退職金が要るかという前提で引き当てをとっているわけでございますから、これは客観的に非常にはっきりしているわけでございます。貸倒引当金は、過去の貸し倒れ率を参考にしながら、それを前提として引き当て率を定めております。準備金になりますと、これは具体的にどの程度の政策に対してどの程度の配慮を加えるかという観点が一つございますから、どれだけが必要であるかという客観的な資料というものは非常に乏しくなって、むしろ政策的な判断が多くなると思います。たとえば価格変動準備金などは、そういう意味では最近徐々に縮減いたしておりますが、その縮減することが、もし引当金であればそれだけの理由がなければならぬわけでございますが、準備金の場合にはやはり全体の特別措置のバランスその他を考えて処置をしていく、こういう性質になるかと思います。
  55. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 貸し倒れの場合には過去の実績というか率というか、そういうものを参考にしてやっておると言うが、私たちのほうでもよく会社が倒産をします。それでほんとうに生活のために働いた労務者の賃金まで払えないというときでも、銀行だけは第一担保でぎっちり押えておる。銀行だけは決して損をしないようにちゃんと貸し金は持っていっておる。そうしてほんとうに生活のために働いておる人たちが、何カ月間も働いたけれども金がもらえないというケースを私たちしょっちゅう見る。だけれども、銀行のほうは貸倒準備金——だから私、さっきお願いしたのは、実績は一体幾らあるのか、都市銀行の貸倒準備金は、過去五年間なら五年間、十年間なら十年間、こうありました、そこで実際貸し倒れをその金で払った実績は一体幾らあるのだということを見せてもらわないと、いまのお話というものは、これは私たちは合点がいかなくなるわけでしょう。いまあなたのお話からいくと、過去の実績と言われるけれども、実際貸倒準備金というものは、銀行にはばく大にある。だけれども、実績は一体どうなんだということを出してもらいたい。それがなければ、いまの貸倒準備金の率が一体正しいのか正しくないのかということがわかってこない。この準備金の場合には政策判断だとおっしゃるけれども、これは結局、最近は株式会社の民主化が要望されておるけれども、支配株主というものも相当にある。そしてそれが利潤の費用化だ、社内留保だということでいろいろ蓄積されておる。それでどの辺でやるかということは、いわゆる政策目的——政策というのは結局財界、企業のほうから強い要求があって、それと大蔵当局との話し合いをした結果、その接点がそれになっておるだけであって、ほんとうに税法上国民の公平の原則だとかいうことではなしに、資本家の要求をどの辺で満足させ、どの辺でやっていくかという資本家との話し合いでその線が引かれるものなんではないかと、私はこう非常に、皆さんからいえば、たちの悪い見方だとおっしゃるかもわからぬが、私はそう見ざるを得ない。もしそうでないと言うならば、もっと科学的な資料をぴしゃり出して、かくかくだからこの率でいかなければいかぬのだ、こうならざるを得ない。それが一つも出てこないということじゃないですか。
  56. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 新しく特別措置をつくります場合には、なぜこの率をきめたかは、御質問がない場合は申さない場合もございますけれども、御質問があればいつでもお答えしておるわけでございまして、たとえばことしの原子力の発電所の特別償却その他につきましても、従来の特別償却と同じ基準をとりながら、同時に、数年間建設がかかるという前提をとって、事前に準備金を認めるという方式をとっておりますが、これはそれだけの特別措置である、特別償却というもののいわばコロラリーとして準備金の率はきめられるわけでございまして、決して漫然とやっておるわけではない。もちろん政策をどの程度まででとめるか、たとえば特別償却を四分の一にするか五分の一にするかということは、それはあくまでもその政策に対してどの程度税法上の援助を与えるかという判断でございますから、そこで差ができることはもちろんでございます。一義的に率がきまるべき性質のものでないものが多いことは事実でございますが、それは政策をどの程度実施するかの限界によってきまるわけであります。要求に応じてきめておるという性質のものでは決してございません。これは先生もよく御承知だと思います。
  57. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 それではお伺いしますけれども、輸出振興関係の特別措置について私質問したときに、これは効果があるのです、こうおっしゃるから、では効果があるとおっしゃるなら、何で効果があると判定するのか、その資料があるなら資料を出せ、出してきたのは、通産省からこの資料が出てまいりました。だけれども、もうこれは実際に自信のない資料であるし、十分そういう判定のあれは不可能でございますから、質問されてもこれ以上はどうにもならぬのでございます、こうおっしゃって、何かあまりおっしゃるものだから、私も意地悪く質問するのもどうかと思ってそのときは打ち切ったが、少し情け深過ぎたわけでございます。これはもうだいぶたったから、じゃ皆さんのほうでこの資料も充実しただろうと思うのでありますが、これを御提示していただきたい。  税金の問題は、通産省から要求があり、企業から要求があろうとも、これを実施されるのは大蔵大臣の責任なんでして、大蔵省当局の責任においてこれはやられるわけでありまして、通産省からこれはお粗末でございますなんという資料を持ってきてもこれはどうもならぬので、皆さんのほうからひとつ御答弁願いたい。
  58. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ことしは市場開拓準備金その他を延長しておりますので、当然御質問があるかと思っておりましたが、この市場開拓準備金は、御承知のとおり、当初設けましたのは、輸出振興措置としての輸出所得控除制度がガット上許されないということになりましたために設けました制度でございます。したがいまして、そのときに率をきめたのは、準備金に直すかわりに、当時の輸出所得控除の基準の半分をとるということで、半分に縮減するという前提でいまの率がとられたわけでございます。  そういう意味で、これがどういう効果があるかという点でございますけれども、ことしこれを延長いたしましたのは、一つは、最近の輸出は非常に伸長してはいる。しかし、ことしの下期その他においては輸出に相当な問題が出るかもしれない、こういうときに期限が来てすぐ切ってしまうということが、はたしていまの日本の輸出依存の経済から見て妥当かどうかという点から判定をしたわけでございますし、御承知のように、この市場開拓準備金は途中制度を改めておりまして、最初積んだ金額は翌年から五分の一ずつくずしてまいることになっておりまして、それが去年からフルになってまいりまして、五年分が毎回くずされることになります。したがって、輸出努力をいたしませんと、毎年くずしていった部分が上回ってしまいまして、課税がふえる、つまり過去に受けた準備金の恩典が、いま逆に、もし輸出努力をしなければ課税利益として圧迫を加えてくるという状況に立ち至っているわけでございます。そういう意味から申しますと、いまこの準備金を置いておくということは輸出努力の面でかなり大きなインセンティブになる。ほかの準備金とはその点でかなり性質が違うという点が認められたわけでございます。  さらにもう一つ言えば、いま輸出が非常に微妙になってきたときにこれを直ちに廃止いたしますと、準備金を取りくずす額が、五年間据え置いたといたしましても、五年間は利益をふやす要素として出てまいります。つまり、輸出産業がこれから五年間重荷を負うわけでございます。その点を考慮して延ばしたわけでありまして、どれくらい実効があるかという数字的な基礎というものは、やはりそれは主観になるわけで、基礎としての数字を申し上げるような準備はございませんが、いま申し上げたような幾つかの点から、ことしはこの制度を拡充せずにそのまま単純に引き続き延長をするということにいたしたわけでございます。
  59. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 お話を聞いておっても、私はどうも納得できない。こういう措置をすれば、企業としてはそれはありがたいにきまっているわけです。だけれども、これがなければ輸出ができないのかといえば、そうではない。また、これは開拓準備金なんという、これから開拓するのを準備するような名前をつけておるけれども、これは実績があって初めてこの恩典にあずかるわけでしょう。  私の知っておる豆電気をつくっておるところは、小さな企業といえば小さい。五十人か六十人しか使っていない。これは製品の一〇〇%を輸出しておるのだけれども、特別措置の恩典がないのです。これはどういうことかおわかりですか。
  60. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 これはおそらく下請であるのではないかと思いますが、直接輸出をしておれば当然適用があるはずでございます。
  61. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 これは神戸大阪の貿易商がやって、貿易商から出ておることは間違いないのです。ただ私が考えるのは、ここは利益がないものだから特別措置適用してもらうわけにいかないのだ、こう思うのですがね。私はそう思っておる。そこで問題になるのは、こういう措置は、結局は大手だけがこの恩恵を受けて、実際に輸出に努力をしておるところは、これは恩恵を受けられない。もう一カ所、兵庫県の西脇というところへ私行ってみましたが、ここの繊維は、大体あれは繊維の町でありますが、生産の八割が輸出されておる。やはりここでも、どこの工場へ行ってみても輸出割り増しの特別償却とか、そういう特別措置の恩恵は受けていないのです。ここもやはり税金を納めるほどに利益が上がっていないから私は適用がないんじゃないか、こう思ってきたのでありますが、こういうことをやっていきますと、開拓準備金だとこうおっしゃるけれども、実際は貿易をした、それに対して賞与的な、恩恵的な形で出るのであって、貿易が伸びることに何がしか貢献しておるかもわからぬが、結局大手だけが恩恵を受けるという制度になってやせぬのかどうか。その辺はどうなんですか。
  62. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 先ほども指摘がございましたが、大手が非常に得をしているというお話でございますが、いま大法人で申しますと、五千しか法人数がございません。この一億円以上の大法人税金を六割払っておる。あと八十万の法人が四割しか払っておらないという状況でございますから、同じ制度の実施をいたしましても、確かに御指摘のように、税金を払えないような損のあるところには、これは特別措置として適用にならぬものでございますから、全体として八十万で四〇%、五千で六〇%という比率になっているのであります。特別措置が大手のほうに額として多くなるということは、それはある程度やむを得ない点がございます。したがいまして、現在ではできるだけ中小企業だけに適用のある、一億円以下の法人だけに、適用のあるような制度を別につくるという考え方で進んでおるわけであります。たとえば貸倒引当金を一億円以下の法人には一定のきまった率の二割増しにするという特別措置があるということは御承知のとおりであります。こういう措置考えませんと、おっしゃるように同じ特別措置をとっても、その具体的な額としての恩恵は上のほうに行ってしまうということはこれは事実だと思います。納める税金が違うという点から、これはある程度やむを得ないことではないかと思います。
  63. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 こればかりじゃなしに、いろいろな特別措置を見ますとこれはみんなそういう仕組みになっておるわけです。利益がなければ納める税金がなければ、まけてもらうはずがないのだから、そうすると大きなところだけがより恩恵を受ける。これは何だかんだと言うけれども、いろいろな政策目的、その目的の一番大事なのは、結局資本の蓄積を援助するということになるじゃないですか。
  64. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 この特別措置は、その企業自体の体質を改善するということを目的にしたものも、もちろんございます。たとえば資本比率を高めた場合の特別控除でございますとか、そういうものがそういうものだと思いますけれども、この具体的な個々の法人が税で軽くなるということを目的としているのではなくて、それを通じて必要な投資が行なわれたり、必要な方面に資金が流れたり、それをねらってマクロとしての国民経済全体が好ましい方向に行くようにと考えているわけでございますから、結果としてはある特別な法人がもうかるという結果が起こるかもしれませんが、それが特別措置の目的ではないと私は思っております。そういうことを通じて、資金の流れが産業として最も効率的に行なわれることをねらっておるわけでございまして、具体的に個々の法人がもうかる分が特別措置であるというふうには私ども考えておらないわけでございます。
  65. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そこが私にはちょっとわからないのです。皆さんは、準備金にしろ税金を取るのをちょっと延期したんだ、こうおっしゃるけれども、マクロ的にずっと長い目で見ていけば、それだけはずっと税金がかからずにいくわけでしょう。それが設備投資をする場合の資金になったりいろいろしていく。それが設備投資をすれば、またそこに償却をまけてもらうという形で、それは資本にとって——私は経済の発展を否定するものじゃないですけれども、それがあまりにも片寄り過ぎておるかどうかという判断をどこでするのかという点をお互いに見なければ、これが適当かどうかという判断がつかないじゃないですか。それで私、一番冒頭に資料をお願いしたのもそれなんです。そうすると、いまの税金はまけてやったというよりも延期してやったんだ、しかもその金額というものが全体として見れば非常に大きな金額であるということになれば、やはり資本蓄積を援助しておるのだというふうに見て間違いはないんじゃないかと私思うのですが、どうですか。
  66. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 おっしゃるとおり、個別の法人に留保がふえておるということはありますが、たとえば特別償却にいたしましても、国民経済でこの部面に多く投資が行なわれることを予定する場合に、この特別償却なら特別償却を与える、その特別償却を与えることによって資金の円滑化がはかられるために、そこに投資が行なわれることによって、国民経済として所期した形の投資が誘導される、そこがねらいだと思うのでございまして、その結果として、それを具体的にやった法人が資金的に楽になり、留保ができるということは、これは当然だと思うのです。それを通じて国民経済の要求する投資がそこへ流れてくる、それが特別措置のねらいだと思っております。したがいまして、特別措置につきましても、特別償却等は個別の機械等を指定しておりますから、それによっていま特別に投資を急がせるものは何であるかということは、これは政策としては明らかにしてあると私ども考えておるわけでございます。
  67. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 私は、あなたとの話の中にもありますように、いろいろな目的があるが、結局は資本蓄積なんで、これは私は、そういうことになれば——大臣、どうですか、特別措置という名前はつけてあるが、むしろこれは一般減税というような性格を持ってきておるのじゃないかという感じがするのですが、大臣いかがですか。
  68. 福田赳夫

    福田国務大臣 阿部さんはいま特別措置が資本蓄積を刺激するということに落ちつくという見方をしておりますが、結論的には私はそういうことになっていくと思うのです。つまり、この適用を受けた法人負担はそれだけ軽くなる、こういうことでございますから、蓄積に回るチャンスは多くなる、こういうことかと思います。  私は、日本の企業の体質を見てみまして、蓄積の問題というのが非常に大事だ、こういうふうに思っております。戦前は自己資本、それから借り入れ資本の率なんか見てみますると、実に七対三、あるいは場合によると八対二というような時期がありました。そういうふうに自己資本が充実されておったのでありますが、戦後だんだんとその比率が悪くなりまして、今日では二〇%の自己資本率を割るというようなところもあり、悪化してきておるのであります。これは、国際経済がこのように自由化する、貿易日本という立場をとる日本の企業体質とすると、はなはだ問題のあるところじゃないか、そういうふうに考えておるわけなんであります。したがって、租税特別措置が結果において資本蓄積になるというようなことがありましても、決してこれをじくじたるものがあるというふうには考えておりません。むしろ何とかして、これは税ばかりじゃありませんけれども、蓄積のある企業体制というものをもっと進めていかなければならぬというふうに考えておるのです。  それで、しかし特別措置は結果においてはそういうことになりまするけれども、その結果に到達する前におきまして、この特別措置のねらうそれぞれの政策目的というものがあるわけなんでありまして、これを実はねらっておるわけなんです。しかし、時勢の推移とともに、その目的が達成されたというものもありましょうし、あるいはそれを取り巻く環境が変化したというようなものもありましょう。でありますから、そのときどきの状況をよく見ながら、毎年毎年検討していかなければならぬ、そのように考えますので、今後ともそういう方向でよく勉強してまいりたいと存じます。
  69. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 大臣も、いろいろ政策目的があるが、結論としては資本蓄積になる、こうおっしゃっているし、私は資本蓄積になるのだ、こう思う。いまいろいろと資本比率の問題が出ましたけれども、比率をよくしたいという努力をもう長年おやりになったが、さっぱり直らぬじゃないですか。特別措置をやっても、比率は最近また少し下がってきておるというぐあいで、直らない。これは全体の日本の経済の仕組み、また政府の施策の間違いというか、不足というか、あるいはまた、安直に借り入れをしてやっていけるという仕組み等、またあるいは、公社債市場といいますか株式市場というものがまだ民主化していないということなのか、いろいろな原因があると思う。だけれども、現実にはさっぱり比率はよくならない。だから、そういう点でこれだけ不公平な、批判のあるものは、しかも政策目的と言うが、それのはっきりしていないものは思い切ってやはり整理してみたらどうなんだ。昭和三十年に臨時税制調査会をやったときから、もう幾たびか税調では、これを慢性化してはいかぬ、あるいはまた既得権化してはいかぬということで言っておるわけですね。だけれども、また片一方では、企業のほうでは、いままで恩恵を受けておったものがなくなったのじゃたいへんなんですね。その不満を述べておる。三十年のとき、これは読めば幾らでもありますけれども、きりがないから、ほんの一、二の企業家の意見を要約ですが、簡単に申し上げてみますと、これは異常危険準備金、最近変わりましたのもありますが、その当時のあれですから。現在資本蓄積の必要が叫ばれているときに、実質的増税をして資本蓄積を制約することは納得しがたい、あるいは渇水準備金については、これによって安定した電力の供給を行なうことができるわけで、ぜひとも必要である、こう言っておる。渇水準備金が、当時でも電力会社利益金から見れば微々たるものだと私は思う。ましてや今日はなおさらでありますが、それでも、わずかな金でもこれがなければ電力の安定した供給ができないなんという、大げさな言い分を資本家の方々はおやりになっておる。これは資本家としては当然だ。いままでまけてもらっておる税金を今度はずされて、それだけよけい取られるということはこれは苦痛には違いない。だけれども、こんなものは、もう整理すべきものは整理する段階に来ておるのが、いまの百三十八の皆さんおっしゃる特別措置の中にもこれは一ぱいある。私たちのほうはそういう見方をしておるわけですが、さっぱりその整理のほうは、ことし少しこうしました、ああしましたとおっしゃっても、大なたをふるうのは、一体いつ大なたをふるってやるおつもりなんですかね。
  70. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは一挙にというわけにはいかぬと思うのです。これはそのときどきの環境の変化、そういうものに見合いまして、その使命を達成したものは廃止をしていく、また効率の悪いものは廃止をしていく、こういうことです。また同時に、どうしてもこういう新しい制度が必要だというようなものに対しましては、新しくこれを創設していくということもまた考えなければならぬというふうに思いますが、ちょうど来年の三月一ぱいで大ものがいろいろ期限が来るのです。この機会は一つのいい検討の機会である、かように考えております。
  71. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 来年といわず、ぜひ——来年の場合には、いまからその準備にお入りにならないと、これまたチャンスを逸してしまうわけでありますし、せっかく福田大蔵大臣になられたあれでありますから、この際ぜひとも大なたをふるって整理してもらいたいと思うのであります。  次に、自治省の方おいでになっておりますか。——お伺いしますけれども、特別措置がこれだけあって、それで地方税へのはね返りというか、これによって地方税の減収というもの、これがたいへん大きな金額があるわけです。私、資料をいただいておりますけれども数字を申し上げませんけれども地方自治体にとってはたいへん大きな金額を減税をせざるを得ないという羽目になっております。これは皆さん地方自治体としては非常に迷惑なことだと思うのですが、そういうふうにはお感じになりませんか。
  72. 岡田純夫

    ○岡田説明員 政府の税制調査会でも答申がありましたように、国のほうの租税の特別措置、それが地方団体に影響してまいりまして自動的に減収になるというようなことは極力避けなければならぬというふうなことを答申をいただいております。私どもそういう考え方で、毎年度そういう検討をいたしております。ただ、国のほうでやっておりますと同じように地方団体でもやったほうがいいものもございます。また、いろいろ技術的に、三千三百からの市町村にやらせるのには困難な問題がございます。いろいろ困難な面もございますが、考え方といたしましては、極力自動的に及ぶことを回避するように考えておりまして、四十四年度で計算いたしましても、約百四十億ばかりというものは、国の租税特別措置が自動的に波及することを回避し得た、こういうふうに考えております。これでもって十分だとはもちろん考えておりません。今後もそういう考え方でもって対処してまいりたいと思います。
  73. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 自治省のほうでは、そういう自動的に地方税に及ぼすことがないように大蔵省とやはり折衝をしておられると思うのですが、どうですか。
  74. 岡田純夫

    ○岡田説明員 税調の審査の機会でございますとか、その他翌年度の税の収入がどの程度見込まれるというようなことを検討する機会に、絶えず意見を交換いたしております。
  75. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 だいぶ前から、自治体は三割自治だ、あるいは一割自治だなんという酷評すら受けておる現状で、地域住民のサービス事業をもっとやってもらいたいという要望は非常に強いわけです。しかも、地方自治というけれども、名前ばかりで、警察は取り上げられてしまった。あの警察法のときが、たしか乱闘国会の皮切りだったと私は承知いたしておるのでありますけれども、あれだけ問題を起こして警察を取り上げてしまった、あるいはまた、教育委員会は選挙をなくして任命制にした。いろいろな援助をするとか言うけれども、その地方自治がだだんだんと縮小をしてきたのは一体何が一番原因なんですか、私は金の問題だと思うのですが、どうです。警察のときの問題も、自治体ではとてもあれだけの警察を養っていけないというのがあって、自治体は強くこれに不満ながらも大きな声を出せなかったと私は思うのです。自治体財政の貧弱さがここに追い込んで、自治体の権限を縮小した、こう思うのですが、いかがですか。
  76. 岡田純夫

    ○岡田説明員 もちろん地方団体を財政的に強化しなければ、社会開発の経費でありますとかその他国の投資的経費に対応することもなかなか困難であるということで、自治省として極力、地方団体の自主財源、ことに税財源の確保ということに努力いたしております。もちろん、個々の市町村を見ますというと、たとえば住民税の減税につきましては、やはり国税とともに国民全般の税負担の軽減ということから、でき得る限りの課税最低限の引き上げその他の措置をいたしてまいらなければいけないということを片方では進めながら、極力、地方団体、ことに市町村税源の強化に努力しておるという実情でございます。もちろん財源の問題ばかりではございません。金の効率的な使用ということも大事だと考えますので、単独事業その他の充実をはかりながら、かたがた使用の効率化について指導してまいりたいと思っておりますし、また、地方団体もその方向に進んでおるというふうに考えております。
  77. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 大臣、お聞きのとおりでありまして、私たち地方に参りますと、やはり、いろいろな住民の要求が、金がないということで、なかなか実施をされていない。そういう点でまた私いままでお伺いし、わが党の委員から幾たびかここでありましたように、こういう特別措置というものが、地方自治体にまで税収を減らさざるを得ないところにあるのですが、この特別措置地方税には及ぼさないような何らかの措置をするようなお考えはないものですか。
  78. 福田赳夫

    福田国務大臣 それは、そもそもそういうことを考える基本に問題があるのではないかと思いますね。地方自治でありまするから、その地方自治団体の自主性を尊重する、この考え方からいうと、特別措置地方にそのままはね返っていくというそのことはなるべくないほうがいいように思います。しかし同時に、国の政策というものは、中央、地方一体となってやっていってこそ力強い効果を発揮する、こういうことでございますから、国がこういうふうな方向で行きたいということにつきましては、これは地方も同調してもらったほうがいいケースがしばしばあるわけであります。そういうようなことでありまするから、私は、これは一方づいた意見をきめる必要はないと思う。これはそれこそケース・バイ・ケースでいくべき問題である、そういうふうに考え、それから地方に連動してこの特別措置がいくかどうかは、そういう考え方から検討し、個別にきめていったらよかろうか、かように考えます。
  79. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そうしますと、国の政策、またこれは地方も非常に関連があることでありますから、全部を地方税にはぴしゃりと線を引いてはね返らないということではないけれども、やはり何がしか地方税にははね返らないようなものも考えてもいい、こういうお話ですか。
  80. 福田赳夫

    福田国務大臣 ものによってはさように考えてよろしいと思います。ただ、こういうことは考えてもらいたいのです。地方が国と同じ特別措置をする、こういう際には、国の法人税に対する計算を基盤としますから、非常に事は簡単です。しかし、これを違った措置をするのだとかいうことになると、これは計算上非常に複雑な事態を起こします。その点もまたケース・バイ・ケースの、そのケースを検討する場合を頭に置かなければならぬ、さように考えております。
  81. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 大体わかりましたが、大臣は、計算上はいろいろ問題があるけれども、一応検討して地方税にはね返らないものも考える、こういうことだと思うのですが、たとえばどんな措置があるか、いまここではあれですか。
  82. 福田赳夫

    福田国務大臣 ここでいま直ちにどれと言うわけにはまいりません。
  83. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 それでは最後に、たしか一昨晩のテレビかラジオで、私聞かないのだけれども、総理はおそらくここで広瀬先生の質問に答えられたと思うのですが、利子配当については一ぺんには廃止ができないけれども税率を上げる等をしながら早急にこれが全廃の方向へ行くというようなことを発言されたというようなことを報道しておったそうでありますし、たしか大臣もここで、あまりはっきりはおっしゃらないけれども、何かそういうふうにおっしゃったような気がするのです。私は、これは全廃をすぐ——来年は期限だし、できればことしからこれはもうやっていただきたい、こう思うのですが、大臣はこれに対していまどういうふうな検討をし、どういうふうな段階であるのか、お知らせを願いたいと思います。
  84. 福田赳夫

    福田国務大臣 この問題は、政策目的というか、利子につきましては貯蓄の奨励、それから配当につきましては、これは直接金融というか、そういう方向の刺激策ということでとらえてきておるわけです。これはかなりの効果をあげておる、かように考えております。それがいよいよ来年期限が来るわけなんです。この期限が来た場合には、その必要性がなくなったかどうかというような問題、それがまたどういうふうな効果をあげてきたかというような点、いろいろ検討いたしまして、そしてこれは特別措置でありますので、その特別措置であるという点も踏んまえて、ひとつ適正な結論を得たいものだ、こういうふうに考えておりますが、いまこうするという予断はいたしておりません。これはいずれ税制調査会にもはからなければならぬし、また、皆さんからもいろいろ御意見があるだろうと思うのです。これもよくお聞きをいたし、適正な結論を得たい、さように考えております。
  85. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 たいへんぼやけたお話でありますが、国会が終わればおそらくすぐにでも税調は開かれるのが普通で、もう税調の開かれることは予定されておるのじゃないか、こう思うのであります。そうすると、当然それに対して大蔵省としてはこういう形でというような諮問の補足説明でありますか、方針というのが出されるのがいままで普通のようでありますが、その場合に、皆さんのほうで大体こういう方向でというくらいのことは、これは特に大もの大臣福田さんでありますから、もうこの辺でそれくらいのものが、おおむね方向くらいはあってしかるべきだと思うのです。税調の答申を待ってとおっしゃるが、税調に諮問する場合の皆さんの基本的なお考えを私はお伺いをしておるわけです。
  86. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは税制調査会にはすなおに、皆さんどんなお考えでしょうかというふうに皆さんのお考えを聞いてみる、こういうふうにしたいと思います。また、本委員会におきましても皆さんからいろいろ御意見がある、これは白紙の立場でお伺いしておきまして、そうして最後に大蔵省としての考え方をきめていきたい、かようにいま考えております。
  87. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 これで終わりますけれども、税調へすなおに聞くとおっしゃるが、まあすなおであるかどうかは別にしまして、しかし、当然それには、大体大蔵省としては財政の、税収の問題であるとかいろいろな角度からこれを検討して、大体こういう方向というくらいのものは出されると思う。しかし、それもここでは発表しにくいということになれば、私はあえて追及はしませんけれども、それならば、税調がこれを廃止の方向へ行け、こう言ったら、またそれはすなおに取り入れるということは間違いないところですね。
  88. 福田赳夫

    福田国務大臣 税調は税調としていろいろ意見を述べられると思うし、国会でもいろいろ御意見があるわけであります。ですから、いろいろな方面の意見を総合いたしまして、最終的な判断をいたし、御審議をお願いする、こういうふうになろうかと思います。せっかく税制調査会というものがある。これは内閣総理大臣がその委員を委嘱しておる、こういうふうな機関でありますので、答申が出ますれば尊重するというたてまえだけは、これははっきりしておるわけであります。
  89. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 どうも、私やめようと思ったのだけれども、いままで見ておりますと、税調の答申を見ましても、大蔵省として都合のいいものはこれは大いに尊重しておるようですけれども、都合の悪いものはあまりこれを取り上げていないというふうに私は見ざるを得ない。いままでの答申をずっと全部繰り返して読んでみますけれども、そうなんだ。しかも、総理大臣までが言ったといって報道されておる。しかも、これが、いままで国会論議の中でも、国会の意見を聞いてと言うが、利子配当をやってくれという意見は、私、短い期間だけれども、ここでお伺いしたためしがない。これだけとにかく評判の悪い、しかもやめろという意見だけがわれわれの耳に入ってくるような問題が、大臣の耳に入らないとすれば、これは私にはどうしても解せない。もうこの辺で大蔵省当局としても、この問題に対してくらいはある程度の腹を固めておられるのが普通じゃないかということで私お伺いしておるわけであります。そういう点で、しつこいようですが、もう一度大臣に御答弁をお願いしたいと思います。
  90. 福田赳夫

    福田国務大臣 利子配当の税の特例は、これだけ見ておればないほうがいい、そういう意見がたくさんあります。しかし、また国の財政金融を運営していく上において貯蓄は一体どうなんだろうか、これは非常に重大な問題であります。そういう問題、また株式の状況はどうであろうか、これもまた重大な問題なんです。そういうようなことで、そういう面からこの税を存続すべしというふうに見られる方もまた私どものほうへかなり言ってきておるのであります。そういうようなことでありますから、やめろという意見ばかりじゃない、こういうことをお答えいたしておきます。
  91. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 やめようと思って支度したのですが、それをおっしゃると、またその効果の問題とかに入らざるを得ないわけですけれども、私は、これだけ世論も批判をしておる、総理もその方向をとろうという発言をなすったというようなことで、国会論議もほんの少しずつだけれども政府の対策に反映していくのだという明るい気持ちを持ったわけでありますけれども大臣のお話は一歩も前進をしないのであります。この問題はやはり貯蓄の効果があるとか、いろいろなことは言い尽くされた問題でありまして、これに対して皆さんのほうからの納得のいくような答弁も私たち聞いておらぬわけでありますから、これはぜひとも早急にやめる方向でひとつ御検討をお願をして、私の質問を終わります。
  92. 只松祐治

    ○只松委員 関連して。せっかく大臣がお見えですし、まだちょっと時間もあるようでございますから、一、二関連してお伺いしたいと思います。  いまの税調との関係ですが、阿部君がいま言いましたように、大体そう差しさわりがないといいますか、あるいは大蔵省側に都合のいいものは今度税調がこう答申をしたからと、こういう形で採用をし、ある意味ではそれよりももっと前に進んだ形の実施をなさいます。しかし、租税特別措置なんかは長期税制でもそうですし、あるいは四十三年度から、私はこの前ちょっと質問しましたように、米の予約減税と社会保険診療報酬の問題等もこれは触れております。しかし、こういうものには一向お触れにならない。さらにたとえば四十三年度で触れたものの中で、予約米減税については相当無理をしてでも実施しよう、こういう腹ですが、社会保険診療報酬なんかなかなか強硬です。社会保険診療報酬の問題になりますと医師会等が強い、こういうことで、この前の私の質問にもありましたように、総理がある程度前向きの答弁をされようとすると、大蔵大臣はそれを横取りして、そうさせないかのような答弁をなさる。こういうことではたいへんに困ったことだと私は思うのです。きょうも私は午後から所得税法の反対討論をいたしますけれども国民が税にこれだけ関心を持ってきて、いわば税に対する相当程度の恨みつらみを持ってきておる。こういう段階で、次期政権でも担当しょうかとお考え福田さんならば、多少国民にすかっとまではいかぬでも、希望のある方向の税制を打ち出す、こういうことでないと、なかなか佐藤さんに引き続いてのイメージチェンジができないと思う。そこで税調の答申に対する考え方をひとつ、税調も明日になりますか次になるかわかりませんが、そのときにたまたま大臣がおいでにならないといけないから聞いておきたいと思う。  それから、社会保険の診療報酬その点税調は勧告しておる。こういうものに対して、農民のただ一つの特別減税である予約米減税のほうは相当明確に出しておられましたね。しかし、同じく勧告している社会保険診療報酬の問題については一つもお触れになりませんが、どういうお考えですか。
  93. 福田赳夫

    福田国務大臣 予約米に対する減税措置につきましては、私は四十三年度米についてはいたさない、こういう方針であったわけであります。しかるに、国会側におきまして各党共同で御提案があったわけです。私は、国会で御決議がありました以上、これを尊重せざるを得ないという立場に追い込まれたわけなのであります。特にあなたの社会党では、いろいろ問題はあるが、これは存続すべきであるという御主張が本会議でしたかあったわけであります。で、各党の御意見を尊重した、こういうことなので、これは御了承されておることと思います。  医療費については、まだそういう問題に遭遇いたさないわけであります。医療費の問題は、これは多年問題になっていて、そういうことで私の頭にこびりついている問題であります。いま厚生省が医療団体に頼みまして、その実態調査をやるというような段階にあるわけであります。そういうような調査の結果等を見まして、また考えてみたい、かように考えております。
  94. 只松祐治

    ○只松委員 予約米減税のほうはそのとおりです。農民の唯一の減税、そういう特別措置というのは、勤労者を含んで全体の中でもそれだけです。あとはいまの社会保険診療報酬の医者の問題がある。これも圧力団体だから、いま言ったように、調査をしておる、こういうことですが、四十三年度の税調は同じような態度で勧告をいたしております。だから、するなら公平にしなさいということです。予約米減税も、確かに米がだぶついているから、米の需給状況だけから見れば予約米減税ははずしたほうがいい。しかし、農民に対する課税措置というようなことを考えれば、これは社会党が言うような理由が出てくるわけです。だから、するならば公平にしなさいということです。  さらに続いてお尋ねしますが、利子所得その他配当所得の問題にいたしましても、総理は何とおっしゃったか、本会議でこういうことをおっしゃいましたね。法人関係で一ぺんちゃんと納税をしておる、そのあとの配当だからというような議論をされて、本会議場で説明されましたね。あなたも同じお考えでありますかどうですか。
  95. 福田赳夫

    福田国務大臣 そういう理由も入っておると思います。これは、いまの配当課税制度を改めるということは、法人税のもとのほうまで関係してくる大問題なんですね。軽々には手がつけられない問題でありますが、これは皆さんの御意見等をとくと承って根本的に考えてみたいというような感じを持っております。
  96. 只松祐治

    ○只松委員 関連ですからそんなに長く言いませんが、たいへんこれは誤った議論です。たとえば、いま夫婦共かせぎというのがきわめて多いわけですね。女子の労働者が非常に多い。そして男女平等ですから、私たちが二分二乗方式さえ言っているくらいですから、貯金を別々になさっておる。ところが、土地を購入するあるいは家を建てる、御主人のものだけでは金が足りないから奥さんのものを幾らか出す、あるいは貯金を全部出して家を建てる、こういうことになるとどういうことになりますか、奥さんのものがもろに贈与税にかかりますね。この家は何の金である、この土地は何で買ったということですぐ贈与税がかかる。所得税はちゃんと引いて、そして貯金した金にも贈与税がかかるのですよ。ささやかなマイホームを建てようとすると。しかもそこで万が一不幸なことがあって、おやじがなくなって奥さんのものになったということになれば、またここで遺産相続税というのがかかってくるのですよ。私はそういう例を見ているのです。贈与税でもってやられてすぐ遺産相続税がかかる。所得の発生するところ、常に税金というのをあなた方は取るわけです。課税するわけです。しかし、法人の場合だけ、すでに法人税で税金を納めておるから配当にはしないのだ、こういうときだけの都合のいい税の理論というのはありません。私は、またほかの日にこの問題論議をやりますけれども、そうやって額に汗して働く人間からは、私たちが常に言うように、何でも税金を取る。ところが不労で、資産所得を得る人、こういう人はあらゆる角度から見のがしてくる。ここらにも租税特別措置の大きな欠陥があるし、私たちの言う利子とか配当とかの所得税の不合理性というものもあるわけです。そういう点は、幾ら大臣が財界の要望とかそういう面からいろいろ働きかけがあるからとおっしゃっても、これはなかなか国民は納得しません。しかもそういうところまでいままで考えは及ばなかった。いま夫婦共かせぎその他非常に多くなりました。そういう点の不合理性、非合理性といいますか、そういうものを多くの人々は知るようになってきておる。それをいつまでもそういうものには二分二乗方式もまだ研究の段階でできない、あるいは贈与税なんかも一つも手をつけない、そして配当所得や何か依然として続けていく、これでは国民は納得しません。まあ関連ですからこれでやめますけれども、そういう問題についても抜本的にひとつお考えをいただきたいし、やはり税体系というものは、一本の筋の通ったすっきりしたもので税制というものをつくっていただきたい。その御所見だけをひとつ聞いておきたいと思います。
  97. 福田赳夫

    福田国務大臣 いろいろ御意見がありますが、いずれも将来の税制にあたって考うべき重要な論点に触れておられる、かように存じます。御意見もとくと拝聴いたしましたので、いろいろ考えてみたいと思います。
  98. 田中正巳

    田中委員長 本会議散会後再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時三分休憩      ————◇—————    午後五時二十一分開議
  99. 田中正巳

    田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。北山愛郎君。
  100. 北山愛郎

    北山委員 私は、租税特別措置につきまして、若干の問題点についてお尋ねをしたいのでありますが、時間もおそくなっておりますから、できるだけ簡潔に二、三の問題点だけをお尋ねいたします。  租税特別措置は産業経済政策のための特別の減免措置であって、特典を受ける納税者一般納税者との間に負担の不公平をもたらすから、目的が達成されたときはすみやかに廃止すべきである。これは大蔵省編集の「図説日本の財政」という中にあるわけなんです。そういうのは当然だと思うのですが、私は、この特別措置というのは、言うならば税法を通ずる補助金的性格を持つものではないか、こういうふうな感じがするわけであります。産業政策として一方では補助金を出すとかいろんな行政措置をいたしますが、税法の上でその目的を達するための一種の補助金的な性格を持っているのじゃないか。これは予算委員会における公聴会の佐藤公述人の意見の中にもありましたが、そういう性格を持っているんじゃないか、こう思うのでありますが、この点について大臣のお考えをお聞きをしたいのであります。
  101. 福田赳夫

    福田国務大臣 補助金といい、税における特別措置といい、その果たす作用はお説のとおりです。全く同じだと思います。
  102. 北山愛郎

    北山委員 そこで、補助金ということになりますと、だれにどういう目的で幾ら出したか、その始末はどうなったかということを明らかにするのが財政上の当然の常識ではないかというふうに考えるわけであります。ところが残念ながら、この租税特別措置につきましてはしり抜けになっておるのではないか。毎年特別措置の減収見積もりというのが出てまいりますけれども、その計算の基礎がどうであるか、そういう点についてはさっぱり説明が足りないというようなことでまことに遺憾に思いますし、また、われわれの同僚も毎年の国会におきましてこの点を追及いたしておるわけです。しかし、ことしも相変わらず去年と同じような単なる項目ごとの見積もりの金額が羅列をして出てまいるということであります。まことに私は遺憾に思うのであります。  そこで、大臣にお尋ねしますが、二月十九日だったと思いますが、予算委員会一般質問の中でわが党の堀議員が質問されまして、この租税特別措置の推計の方法それから減収見積もり、これはその当時まだ出ておりませんでしたものですから、その数字とそれを算定した方法、それをあわせて国民の前に公開すべきであるということで、そのときに大蔵大臣もそのとおりにいたしますと答弁しておるわけであります。ですから、そのとおりにいたしますということになれば、ただ項目ごとの金額を従来のとおり並べたのでは足りないのではないか。その金額がどのような計算で出てきたか、数字である以上は思いつきでただ書いたものではないと思うのでありまして、その数字の算定の基礎があるはずであります。これをあわせてお出しになるのが当然ではないか。また、それがこの前の予算委員会における大蔵大臣の言明を実行するものではないか、こういうふうに考えますので、この点をお答えいただきたいと思います。
  103. 福田赳夫

    福田国務大臣 お話しのとおり、予算委員会におきまして、私はその算出の基礎を明らかにするというふうに申し上げたのですが、何ぶんにもその計算が非常に複雑で多岐にわたるものですから時間がかかっておるのでありまして、まだ出しておりません。おりませんが、大体というところのものができましたので、もう御説明できる段階になっております。——それじゃ書類で明日提出することにいたします。
  104. 北山愛郎

    北山委員 これは当然の措置だろうと思います。明日のそういう資料を拝見した上でいろいろと検討したいと思うのでありますが、この二月十九日の予算委員会で、同時に堀委員が昭和四十一年度の利子所得減免措置による減収見積もり額、それについて質問をされた。相当詳細な計算の基礎をもとにして説明をして、政府の見積もりがたしか二百七十億、これに対して堀議員の計算によれば四百八十億ということで、この点はどうなんだという指摘があったわけであります。大蔵省の側としてはあとで検討した上でお答えをしますということでございました。ところが、この四十四年度の非課税措置による減収試算の中に、「利子所得分離課税及び税率の軽減」の項目を見ますと、四十三年には二百六十億でありましたものが一挙に四百七十億にふえておるわけです。堀議員の主張したのは四百八十億、これは四十一年ですね。だから大体においてこれに近い数字に変わっておるわけです。そうなりますと、従来の大蔵省の二百七十億とかあるいは二百六十億という数字は、やはり堀議員が指摘するように間違いであったのではないか、こういうふうに推定されるのですが、この点はどうですか。
  105. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 御指摘のとおり、ことしの減収額の見積もりでは、分離課税による減収額は四百七十億になっておりますが、これは事情を申し上げますと、堀議員の計算は私どもと突き合わしてみましたら、大体といっては失礼でございますが、大体正確であると思います。と申しますのは、堀議員は四十一年の計算をなさいましたが、四十一年の課税実績が国税庁の年報で最近になって発表されました。その現実のものを基礎にして堀議員は御計算になったので、これはもう間違いないと思います。私ども当時四十一年分を計算する際には、もちろん実績はわかっておりませんでした。三、四年前の実績しかわかっておりませんでしたし、四十一年には、御承知のように少額貯蓄の非課税の範囲が四十年に百万円に拡大されております関係で、少額貯蓄に相当の額が流れるであろうという想定で当時見積もりをいたしまして、少額貯蓄のほうに相当多くの減少額を見込んだわけでございます。具体的に申し上げますと、少額貯蓄による非課税を四百億、それからその結果として課税利子の軽減を二百七十億と見ておりました。現在になって結果が判明いたしましたところが、非課税貯蓄のほうはそれほど移行がございませんで、その結果として課税利子のほうが多く残ったのであります。その結果を計算いたしますと、堀議員の御指摘のように約四百七十億程度になる。そのかわり非課税貯蓄のほうが二百億程度減るという結果になるわけでございまして、これは事実その見積もり方は少しといいますか、少額貯蓄非課税のほうに寄り過ぎると見た結果がそういう結果になりましたが、総体としての利子の特例による減収額はほとんど変わりがないという結果でございます。  今度は、私どもは四十四年を見積もりますときには、ちょうどその非課税貯蓄がふえました四十一年の実績がそっくり堀議員の御指摘のように出てまいりましたので、今度はその非課税貯蓄の分がはっきりいたしました。その関係で四百七十億という額を見積もっておりますが、現在は御承知のとおり一五%の分離課税になっておりますから、当時よりは特例の割合が五%減っております。したがいまして、貯蓄は伸びておりますけれども、減収額は四百七十億にとどまっておるということでございますので、事後的に見ますと確かに私どもの計算が見誤っておったことは事実でございます。
  106. 北山愛郎

    北山委員 その点は、利子所得分離課税等による見積もりは、四十一年だけじゃなくて四十三年まで二百六十億ということになっておるわけです。ですから、ことしになって指摘されて訂正をしたというようなかっこうに結果は見えるのですが、これは堀議員のことでございますから、あとでいずれ堀さんのほうから質問があると思うのであります。そういうような印象を私受けるのですが、大体そういうふうに了解していいのですか。
  107. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ただいま申し上げましたように、堀委員がお使いになりました資料と同じ資料を私どもも国税庁のほうから入手をいたしまして計算をいたしましたので、四十一年のその非課税貯蓄の実績は確実につかめましてその誤りを訂正した結果、四十四年分は利子分離課税分を多く見積もり、非課税貯蓄のほうを少なく見積り、ということであらかじめ計算をしておったわけでございます。御承知のとおり、あの堀委員の御要求がありました翌々日くらいにもう印刷物を提出したわけでございますから、その点は私ども同じ計算をして、ミスはすでに発見をしておったということではございます。
  108. 北山愛郎

    北山委員 そこで、確認をしたいと思うのでありますが、租税特別措置による四十四年度の減収見込み額は、国税のほうで三千二百二十六億、それから続いてこれに関連をする地方税のほうで千八十九億、合わせまして四千三百十五億、国税、地方税を合わせて租税特別措置関係では四千三百十五億、こういうことでございますか。
  109. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 そのとおりでございます。
  110. 北山愛郎

    北山委員 それからなお、地方税自体の中にやはり産業政策その他の特別措置があるわけで、これについては自治省から資料をいただいておりますが、四十四年度の固定資産税、電気ガス税あるいはいろいろな諸控除、そういうようなものを合わせますと千百三十二億ということでございますが、それで間違いないですね。
  111. 岡田純夫

    ○岡田説明員 そのとおりでございます。
  112. 北山愛郎

    北山委員 そうすると、租税特別措置関係では国税地方税を通じて四千三百十五億、それ以外に地方税独自で減免措置が千百三十二億でありますから、総計すれば五千四百億ぐらいになります。大体そういう規模だと思うのですが、それ以外に国税のほうで地方税と同じように租税特別措置以外の措置でもって、法人税法なり所得税法なりあるいは関税暫定措置法なり、いろいろな方面に減免措置があるわけなんです。そういうものの一覧表はございますか。
  113. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 私どもが御提出申し上げているのは内国税だけでございますので、関税のほうはこの中へ入っておりません。それから、そのほかに特別措置とおっしゃいましたが、特別措置としては内国税としては従来からこれだけということで申し上げておるわけであります。
  114. 北山愛郎

    北山委員 ただしかし、必ずしも大蔵省の計算あるいは区分の方法というのは一貫してないですよ。たとえば昭和四十二年の減収額を見ますと、その中には重要機械類の輸入関税の免税というのが特別措置の中に入っておるのですよ。そうしておいていまこれははずしてある。ですから、必ずしも一貫してない。それと同じようなものは関税暫定措置法にもありますし、明らかにこれは政策上の免税のようなものがありますし、それから似たようなものがやはり法人税法なりにあるわけなんです。これは議論が、法人税そのものの性質、本質についての議論の余地はありますけれども、たとえば法人の受け取り配当の益金不算入の問題ですね。それの計算というものはありますか、どの程度になりますか。四十四年度であるいは四十三年度で、大体法人が受け取る配当ですね。配当金は利益に見ないという計算をしておる、非課税になっておる。これは課税するとするならばどの程度になるか、そういうふうな計算はありますか。
  115. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 受け取り配当の益金不算入によって、これは法人税がそれだけ減ると申しますか、かけてないと申しますか、その額は四十一年度の実績で見ますと大体千五十三億と、こまかい数字を申し上げますとなっております。  なお、先ほど御指摘がございました、四十二年までは実は関税の特別措置の一部を入れておりましたが、御指摘のように、関税についてはまだほかにもございますのでかえって不統一になるというので、内国税だけに改めたのが四十三年からでございます。
  116. 北山愛郎

    北山委員 同じような性質のもので、特別措置法にはまとめてはおらないけれども、いまお話しになったような関税暫定措置法の中に同じような政策減税があるわけですね。ですから、四十二年度にはこの輸入関税の免税も入れておったわけです。むしろ私は、特別措置そのものの計算は別として、それ以外の似たような措置については地方税と同じようにずっと一覧表として網羅されたものがあるべきじゃないか、こういうふうに考えるのです。ということは、いずれにしても特別措置法によらなくともやはり産業政策、経済政策上の特例であるならば、これは大臣が言われましたとおりに、補助金的な性格を持っておるということになりますと、それは明確にする必要があるわけです。したがって、この表以外にそれに似たような産業政策、経済政策、その他の政策目的のための減免措置、これは別途に項目別に整理をすべきものじゃないか、明らかにすべきものじゃないか、こういうふうに思うのですが、どうですか。
  117. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 関税関係につきましては、ただいま申し上げましたようにこれに含んでおりませんけれども、ほかの法律で減免しておるもの、たとえば所得税自体でも生命保険料控除なんというものは本法にございますけれども、生命保険料控除、損害保険料控除等はいずれも、これも一つの産業政策と申しますか、貯蓄政策と申しますか、一種の特別措置的なものであるということでこの表の中に入れておりまして、そういう意味では内国税としては私どもが見たところの特別措置的なものは特別措置法だけに限らず掲げておるつもりでございます。ただし、特別措置法の中でも、たまたま特別措置法にあげておりますけれども、実は実質的には本法であるべきもの、たとえば配当の控除を減らしまして、配当に対する法人税率を軽減しておりますいわゆる配当軽課措置による分、これは本法的なものの形の変わったものといたしまして計上してないわけでございます。したがいまして、特別措置的なものは内国税に関する限りはあの表に網羅したつもりでございます。
  118. 北山愛郎

    北山委員 いずれ、その今度のいわゆる特別措置の減収見積もりの算定の方法、そういうものを拝見した上で、場合によってはいろいろ同僚議員等からもお尋ねがあるかと思うのでありますが、私は先へ進みまして、この特別措置の効果の問題です。効果が達成されたならすみやかに廃止すべきことはこれは当然であります。また、達成しがたいものは再検討すべきではないかと思うのです。また、別個な弊害のあるようなものは直ちに廃止をしなければ弊害が大きくなるだけだ、こういうふうに思うのであります。  そこで、これは午前に阿部議員からもお尋ねがあったわけですが、いわゆる資本構成を改善するための特別措置があるわけであります。内部留保を充実するというような政策、そういう目的のための減免措置があります。ところが、現実はむしろその政策とは逆に、だんだんに企業の自己資本比率というものが下がってきておる、こういうことなんですが、これは結局政策目的というものが達成されておらないということだから、少なくとも再検討しなければならぬじゃないか。ただ漫然と資本構成をよくするのだといって、いつまでも減免措置をしておくわけにいかぬのじゃないかと思うのでありますが、どうでしょうか。
  119. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは弱ったものだというか、ずいぶん企業の収益状態なんかもいいし好調に動いておるわけでございますが、さてその資本構成、これはまあ非常に悪いわけです。しかもだんだん、わずかながらではありますけれども悪化していくような傾向がある。これはまあ一つには、設備投資を間接金融によったほうが、直接金融によるよりは有利じゃないかという条件があるわけなんです。つまり、まあ普通利回りの配当をしようと思うと、そうすると利益金をその倍ぐらい用意しなければならぬというようなことになる。ところが、間接金融を使っていくという形になりますと、これが金利としてまあ経費になってくる、こういうようなことで安上がりだ、こんなこともあるいは響くんじゃないか。それからもう一つは、やっぱりわが国の資本市場です。それがまだまだ弱体である、こういうようなことにも原因があるのじゃないか。とにかく今日のこの状態というものは好ましからぬ状態なんで、何らかくふうをこらして改善をしていく必要があると痛感をしている問題点の一つであります。
  120. 北山愛郎

    北山委員 困ったものであるでは困ったものなんですね。  数字的に申しますと、これは大蔵省の法人企業統計を見ますと、昭和三十五年あたりでは、平均して自己資本比率は二二・六%。現在ではどんどん下がって、いま一本調子で下がっているわけですね、一七・五%ですよ。ことに大企業ほど悪化している。資本金が一千万未満の企業については最近では一四%ぐらいのところで横ばいをしている傾向があります。ところが、一億円以上とかあるいは十億円以上の大企業はもうただどんどん低下するだけだ、こういう事態なんですね。こういう事態をそのまま見て困ったものだということで、租税特別措置もそういう政策目的の減免税特別措置を続けていっていいものであろうか。やってみたが困ったものだ、それでいいんですか。少なくとも先ほど申し上げたように、特別措置というのは単なる漫然とした減税、免税ではなく、一つの政策目的を持ったものである、しかも租税負担の公平の原則には相反する特別措置であるという以上は、厳格に考えなければならぬ、それを困ったものだという状態でこのまま続けていっていいのかどうか。もちろん私は、これは単なる税制だけで処理できない問題が含まれておると思いますよ。思いますが、そういうことはしないで、ほかの手段は講じないでおいて、相変わらず税の減免だけは続けていくということでは、私は納得できないと思うのであります。この点、明快な御答弁を願いたい。
  121. 福田赳夫

    福田国務大臣 困ったものだというのは、こういう税の措置をいたしましても、なかなか改善はしない、そういうことをさしておるわけであります。もしこの措置がないともっとひどいことにおそらくなっておるだろう、こういうふうに思うわけでありまして、こういう方向の考え方をあるいは強化しなきゃならぬかというような条件も見られるような状態かと思うんです。しかし、それもまた他の角度から見ましてそうそうは許されない、こういう問題点もあるわけです。  そういうようなことで、資本構成を一体どういうふうにしていくか、これは結局いま日本の経済が超高速度で成長発展しておる、そこに根本的な原因がある、そうにらんでおるわけなんでありますが、それにしてもこういう状態を放置することはよろしくないことであり、いろいろな方策をこらして企業の資本構成、企業内部の強化、経理状態の強化ということにつきまして努力をいたしていきたい、かように考えておるのであります。
  122. 北山愛郎

    北山委員 じゃ、先に進みますが、とにかく租税特別措置の目的が達成されないままにというか、あるいはいろいろな弊害が出ておるのに、そのまま漫然と続けておるという問題点は、ほかにもたくさんあると思うのであります。  私は、生命保険控除の問題を若干お尋ねしたいと思うのであります。今年度の減収見積もりを見ましても、生命保険料の控除ですね、これによる減収額というのは、国、地方を通じて七百十七億円にのぼるわけであります。これはもちろんその世帯にとっては一種の減税でありますから、それだけの効果はあるでしょうが、この租税特別措置の目的からするならば、これは貯蓄の助成、貯蓄の推進なんですね。貯蓄をさせるという項目の中で、貯蓄の奨励等の中に生命保険料控除というものがあるわけです。そこで貯蓄はどうかというと、なかなかこれは成績をあげておりまして、非常に生命保険加入がふえて、現在ではたしか四十兆円ぐらいじゃないでしょうか。生命保険の契約金額というのは四十兆円ぐらいに急速にふえておるわけです。昭和四十二年度の数字を見ますと、生命保険会社の保険料収入は一兆八百四十八億円です。支払っておる保険金が千七百十億であります。解約による戻し金が千三十一億でありますから、支払い保険金と解約を入れて二千七百四十一億にすぎない。利益は千三百四十二億であります。三兆数千億の資産を持っておりますから、その資産の運営利益だけで二千億ある。したがって、それだけでも保険金が払えるわけなんですね。ここまで貯蓄が奨励されたわけです。少し奨励し過ぎたんじゃないかとすら私は思いますが、一体保険会社資産をどこまでふやせばいいのですか。
  123. 新保實生

    ○新保説明員 生命保険にもいろいろ種類がございますが、一番一般的なのは普通養老保険と申しまして、二十年なりあるいは三十年なり継続して保険料をいただきまして、そうして二十年先あるいは三十年先の満期時においてそれをお払いする。その途中において死亡等の事故があった場合にはその段階でお払いする、こういうことでございます。つまり、保険料を先にいただいて二十年先に保険金をお払いする、そういう仕組みになっておりますので、どうしてもその保険料収入と支払い保険金というのはある時点においてはバランスがとれないわけでございます。日本は、御承知のように、戦後生保につきましては壊滅的な打撃を受けたわけでございまして、ほとんどゼロの状態から出発していった。しこうして先ほど先生のおっしゃいました四十兆円に達する保有契約高はございますけれども、この八〇%程度のものは最近五カ年間において成立した契約でございます。非常に若い契約でございます。したがって、満期に到来しておるのが非常に少ない。そういう事情もございまして、受け取る保険料と支払い保険金額との間に相当差があるわけでございます。  どこまで持っていくという問題でございますが、生保の資金というものは非常に長期性の資金であって、産業経済のために非常に役立っておる、そういう意味におきましてますますこれがふえていくことが望ましいわけでございます。国際的に見た場合に、日本の生命保険の資産量はどの段階にあるかということでございますが、たぶん四番目か五番目くらいでございまして、大体年率二〇%程度の伸びで今後も伸びていくんじゃないかと考えます。
  124. 北山愛郎

    北山委員 四十兆円の契約をしている。ところが、一つの問題は、物価が一年に五%以上上がるわけですね。ですから、保険金を額面百万円なら百万円かけます。それが積もり積もって四十兆円になる。それが一年に五%貨幣価値が下がれば、どれだけ一体保険金というものは、保険そのものの実効といいますか、価値というものは下がるか。二兆円下がるということでしょう。年々二兆円もあるいは三兆円もどんどんいわゆる契約者が当てにしておる受け取るべき保険金の実質の価値が下がっていく。昭和三十五年に百万円の保険の契約をした人が百万円もらっても、ただいまではおそらく六十五万円くらいの値打ちしかないだろうと思うのです。これからもおそらくその程度の物価値上がりはやもうともしないであろう。とするならば、こういうふうに貯蓄をさせるということは一体国民に対して親切なのかあるいは不親切なのか、どうなんです。
  125. 新保實生

    ○新保説明員 確かに先生御指摘のような見方も成り立ち得ると思うのでございます。しかし、生命保険というものには貯蓄という機能ともう一つは死亡に対する補償という重要な機能があるわけでございまして、加入をした段階から、まあこれは人間のことでございますから、どういう不時の事故があるかわからない。そういう補償、安心感というものが確保できる、そういうメリットがある。つまりそういう二つの機能があるわけでございます。もちろん契約者にとりましては物価騰貴によって貨幣の実質価値が下落するということは非常ににマイナスになるわけでございますけれども、まあ私どもとしましては、インフレに対して抵抗力のある生命保険を開発すべきじゃないだろうか、そういう傾向がここ数年あらわれてまいりまして、満期保険金よりも死亡補償に対する補償部分を厚くする、そういった保険種類が最近ではウエートを高めてまいっております。  また、保険金を一定不変のものとせずに、数年たてば何割増しにする、あるいは途中年度における契約者配当金を財源にいたしまして、これで保険金額を変え増ししていく、そういう意味においてインフレに対する抵抗力を強めていく。そういう仕組みの保険も今後大いに普及させるべきだ、こういうふうに考えておるわけでございます。
  126. 北山愛郎

    北山委員 考え考えとして、現実にそれだけの契約をしておれば、物価が五%上がっただけで実際に減価するのですよ、二兆円なら二兆円。三十五年のときの百万円をいまもらったって、六十何万円の値打ちしかないのですよ。これだけは事実でしょう。そういう保険をこのままにしていっていいのかどうか。しかも問題は、その三兆何千億という資産が契約者大衆の利益に還元されるのではなくて、直接には重要産業等の投資になっている、あるいは大量の株を持っている。住宅公団に出しているのはたった一〇%ぐらいしかないじゃないですか。そういうふうに大衆が年々一兆円以上の金を出して、そして数千億の金を積み立てておる。それが減価をする。これも問題ですけれども、その積み立てた金が多少とも自分たちに還元されて運用されるというならまだしものこと、それが大企業のほうへ回ってしまう。株をたくさん保険会社が持つ、土地を持つというふうに損をしないほうの運営をしている。契約者は損をしている。それが現実じゃないですか。こういうことを一体直さなければならぬじゃないでしょうか。これは生命保険だけじゃなくて損害保険でも同じです。簡易保険でも同じです。この三つを合わしただけで一年に一兆八千億の保険料を国民は払っておるのですよ。それに対して五千億くらいの保険金しか払い戻しを受けてないのです。一兆八千億も金を出して、生命の万一の場合の保険救済はもちろんのこと、交通事故にしろ何にしろその金で救済されるのですよ。それだけのものを負担している。じゃんじゃん積み立ててばかりおって、そして一方ではインフレで物価が高くなってせっかくの積み立て金を減価させる。これはもう膨大なものですよ。  私はいま三つのことを言ったのですけれども、それ以外にいろいろな、共済組合とかそういう団体の資金はどういうふうに運営されているか。これは大蔵大臣も十分考えてもらいたいと思うのです。国民はただ貯金をさせられる。生命保険料控除ということで保険をかけます。かけるが、結果としてはそういうふうになってきている。郵便貯金でも厚生年金の積み立てでも、国民年金でも簡易保険でも、あの二兆円の金は財投として政府が国民に直接還元——間接には還元されるということがいえるかもしれませんが、しかし、相当部分がいろいろな事業投資になっているのですよ。そういう財投の金も企業のほうへ流れて保険の金も流れているのですね。そして銀行へ行ったって、一般の大衆には金を貸してくれませんよ、担保がなければ。われわれが行ったって、二十万、三十万の金がやっと借りられるというふうな時代でしょう。大衆無縁の銀行なんですね。預けるほうは預けさしておいて、使うほうはそういうふうに大衆が締め出されているというのが現在の金融の状態ではないでしょうか。これは変えなければならぬと思うのです。もう極端なものです。生命保険の問題についても損保についても、明治の初めから、かつてドイツ人のマイエットという人が進言したところの国営にしておけばよかった。そうすればいまもっともっとこの保険事業というものは有効に社会公共のいろいろな福祉につながって運営されておったに違いない。いま不幸にして民営の営利事業になっているためにこういう現状を来たしている、極端な形になっている。とするならば、現在の生命保険の保険料を下げるということが一つの問題である。その積み立て金の運用をもっと大衆のために使うということである。それが当面の改善だと思います。いまのままにしておいてはいかぬと思うのであります。もっと大衆の貯蓄を大衆に還元しなければならぬじゃないか。郵便貯金だって貸さなければならぬですよ。預かるほうだけは奨励して預けさしておいて損をさせる、あるいは借りに行っても貸してくれない、こういうことでは、強い者勝ち弱い者いじめの政治じゃないでしょうか。福田さんの郷里の上州には国定忠治という弱きを助け強きをくじくという侠客がおったわけですが、昭和の福田親分はその逆じゃないか、強きを助け弱きをくじく政治じゃないか。これは単に税制だけじゃない、金融だってみなそうですよ。それが租税特別措置法律なんです。そう言わざるを得ないのです。福田大臣、何とかひとつ言ってください。
  127. 福田赳夫

    福田国務大臣 どうもたいへん手きびしい御所見でありますが、保険というものは私どもはそういうふうに考えておりません。とにかく北山さんも、保険に入ることを強制して、そして損をさしているかのごとき御立論のお話でございますが、あれは喜んでみんなが入っておるのですよ、そして有事の際の備えをしておる、こういう状態であります。決して強制はしておらぬということをとくとお含み願いたいのです。  それで、いろいろ問題がありましょう。ありましょうが、御提起された問題は保険の料率になってあらわれてきておるわけです。しかも今日保険会社といえば大体相互保険です。そして利益があれば配当として還元されることになるわけでありまして、決して企業のために一般大衆が踏み台になっておるのだというようなことはないのです。大蔵省としても責任をもってそれは監督をいたしておるわけであります。しかし、経済の進化につれまして、物価の動きというような点もあります。でありまするから、そういう点も踏まえながら、お話しのように料率の問題にはよく気をつけていかなければならぬ。私は北山さんと少し違うのですが、結果は同じになるのです。保険会社の資金の運用はもっと公共的にやってもらいたい。つまり私が考えておるのは北山さんと違いまして、この資金の使い方が大衆に直接還元されないからけしからぬという考えじゃございませんが、これは保険会社企業の自分の立場で大かたの資金の運用に当たっておるわけです。御指摘のように、わずかに一割ぐらいしか住宅政策に貢献しないという状態でありまするが、私はやはり社会資本の立ちおくれというような国全体の姿を考えてみるときに、保険会社ごと国家的庇護のもとにある企業はもっと国家目的に貢献すべきである、こういう考え方を持っておるのです。そういうふうなことをどういうふうに進めてまいりますか、いろいろ考えてみたいと思っておるわけですが、ともかく北山さんが保険会社というものをとらえまして、これが大衆収奪の機構であるかのごときお話をされておりますが、そういうものではない、大衆が喜んでこの機構に参加をするという状態にある、これは私は所見を異にするのであります。
  128. 北山愛郎

    北山委員 私、大臣とその点で議論はしませんよ。けれども、租税特別措置そのこと自体が一つの誘導政策なんですよ。生命保険料控除というもをやる。生命保険に入れば税金が安くなる。強制はしないでしょうね、入れと言っておるわけじゃないですから。しかし、それがすなわち政策じゃないですか、租税特別措置というものが。だから、その政策の結果として非常に普及しているわけなんです。私は、この生命保険の実態が、いわゆる規模として非常に大きいということにいまさらびっくりしているのです。ということは、勤労世帯でも生命保険料を月平均三千円以上納めているのです。勤労世帯の調査、これも大蔵省の資料によりますとそういうふうに出ているのです。しかも所得の少ない世帯でも相当生命保険に入っているのです。株も持っていないとか、そういうあまり預貯金のないような世帯でも保険には入っているというだけに、先ほど申し上げたように、せっかく大衆が入って積み立てておる生命保険の金が、あるいは約束した保険金というものがだんだんに物価の値上がりによって減価をするということになったら、これは政府の罪は大きいと思うのです、誘導政策をやっているのだから。しかもその状態を放置しておいてはいかぬと思うのです。  資産の運用にしても、黙っておれば保険会社は自分に一番有利な方法で有利なところへ運用しますよ。社会公共の社会資本として動かすならば、やはり一つの認可企業というか、そういうふうな政府のコントロールの中にあるのですから、その資産の運用についてこちらのほうへ方向づけるということはできるはずなんです。そうじゃないですか。これをほったらかしておるから一〇%くらいしか住宅に回らないのですよ。もう少しこれを変える気持ちはないですか。  それからもう一つは、物価がこのように恒常的に上がっていくという中で、こんなに何兆円という損失があるのです。これについては一体どうするのですか。政府はどう考えるのです。インフレだからしかたがないということですか。
  129. 福田赳夫

    福田国務大臣 第二点の運用の問題につきましては、あなたは何か直接大衆に還元しなければならぬようなことに重点を置いているようですが、私はそうは考えないのです。これは国家の発展のためにとにかく運用としてもらいたいというふうに思います。いまは住宅のほうでは協力は得ておりまするけれども、それは一割程度のものである。私は、もう少しこれの国際的目的への協力の幅を広めていただきたい、こういうふうに考えているのです。大体考え方は、こまかいことでは違うのですが、その点はまあ同じだと思います。それから物価が上がってくるということにつきましては、物価政策、上げないようにするということを考えることが先決問題でありますが、しかし、それにしてもこれだけの経済のスピードでありますと、どうしても摩擦熱というものは避け得られない。そこで、ある程度の物価騰貴というものが今後もあるということを前提にしてこういう問題に取り組んでいかなければならぬと思いますが、要するに、この問題は保険料率の問題になってくるのです。企業が保険料をお預かりする。これも一度に預かるわけじゃないので、毎年毎年分けてやるわけですから、あなたがおっしゃるような極端なことにはなりませんですが、しかし、とにかくお預かりをするわけですね。そうしてこれを運用する。運用をする場合におきまして、やはりそううまい運用方法とてないわけであります。結局金銭債権としての運用ということが主になるだろうと思う。そうすると、企業としてもそうそうもうけて物価の値上がりを償う額をお返しするというわけにはなかなかまいらぬのじゃないか、こういうふうに思うわけでございますが、しかし、この保険というものは貯金という意味もありますが、同時にそればかりじゃない、それよりもっと保険の大事な使命というのは何だというと、有事の際にこれを備えて生活に支障なからしめる、こういう役割りをしているのです。この役割りはその人の人生の刻々の瞬間、瞬間をささえておるということなんでありまするから、その点も考えまするときにはやっぱり保険料率の問題だと、こういうようなこと。それからまた、集まった資金の運用の問題に気をつけてまいりますれば、まあこういう仕組みというものはわが国の経済機構の中で重要な役割りをやっている存在である、こういうふうに考えられるのであります。
  130. 北山愛郎

    北山委員 もう少しは政治というものの力を発揮してもらいたいと思うのです。政治というのは何も強制力というのじゃないですけれども、しかし、経済を——いま話したのは、私は極端なことを言っているのじゃない。現実を、事実を言っているわけですね。そういう事態が成立している。そういう実態の一端を私は話しているわけです。それを、これは経済としてやむを得ないものだと見のがすならば、政治というものの存在理由がないと私は思うんですね。  そこで、問題は生命保険料控除の問題でありますから、ちょっと一つの提言といいますか、意見を述べておきたいのですが、損害保険料の控除であるとかあるいは生命保険料の控除だとか、そういうふうに特定控除をしないで、私は、人間も老後の保障準備金といいますか、あるいは最近では交通事故その他とてもあぶなくてしようがないのですから、異常危険準備金ぐらいは各個人だってあってしかるべきものだ。単に所得税の控除額の中に最低生活費を控除してもらう、もちろん仕事の上の必要経費も控除してもらう、それだけじゃこれはその日暮らしですね。やはり会社において異常危険準備金とか貸倒準備金とかを持つように、当然老後保障の、あるいは事故、災害に備える異常危険準備金控除というのは、名前は別としてもそういう考え方があっていいじゃないか。むしろ生命保険料控除だとかそういうふうに特定のかかった人だけが控除されるというのじゃなくて、一般的にそういう控除をすべきものじゃないかというふうに考えるわけで、これは答弁は要りませんが、お考え、御検討を願いたいと思うのです。そういう考え方をやはり持つべきじゃないか、こう思うのです。もちろんそういう老後の心配なんか要らない、やはり社会保障で完全にできるというふうな解決の方法もありますけれども、しかし、その時代までにはまだちょっと時間がありますので、現状ではむしろそういう考え方のほうが必要じゃないか、こういうことを申し上げておきます。  それから、時間がありませんから、聞くことがたくさんありますので、二、三。実はこのような租税特別措置だけじゃないのですが、いろいろな政府の産業経済政策の結果としてどういうことが起きているか、いろいろな事態が起きているのですが、一つは、資本とか生産あるいは利潤というものが大企業に集中している。これはまあここでは言いません。それから株式が一部の大株主に集中しているということですね。これは証券局長おいでになっていると思うのですが、大蔵省の資料を見ましても、株式分布状況調査を見ても、昭和三十五年に金融機関や証券業者その他法人の持ち株の割合が五一・五四%であったものが、四十年には五二・七九%にふえた。その反面で個人の持ち分は減ってきておる。それから千株未満の小さな株主ですね、そういうものの持ち株割合というものは、三十五年の七・二三%から四十年の二・七八%と激減しているわけです。それから逆に一万株以上の株主の持っておる株式の割合というのは、昭和三十五年の六五・五一%から七〇・〇八%にふえている。こういうふうな傾向ですね。これは大蔵省の資料ですが、証券会社の調査でもみなそういう傾向を示している。ですからここにありますように、大体一万株以上の株主の手に七割の株が集中している。たしか和光証券ですかの調査によりますと、十万株以上の大きな株主の手に六割、六〇%くらいの株が集中している、こういわれている。その数というのは四万三千人、こういうふうにいわれておる。その中にはもちろん法人、金融機関等があるでしょうが、そういうふうに——戦後株式の民主化といいますか、大衆資本主義とか、いわゆる株を大衆が持つのだというふうにいっておりましたが、現在ではだんだん、五万株以上、十万株、二十万株というような大株主のところに株が集中している。同時に、金融機関あるいは法人会社の持ち株で半数以上を占めている。そしてその割合がふえている、こういう傾向を示しているのですね。  ですから、いわゆる持ち株の割合というのがその企業を支配するとともに、やはり産業、経済を支配するとするならば、それらの少数の十万株以上の大株主というようなものが日本の経済全体を支配する方向に進んできているではないか、これが自民党の政府の政策の結果ではないのか、こういうふうに考えるのですが、この点について福田大蔵大臣はどのような見解をお持ちですか。
  131. 広瀬駿二

    広瀬政府委員 ただいまお示しになりましたような傾向が最近あるわけでございますが、終戦後の株式市場が再開されたころからの数字をたどりますと、昭和二十四年ごろは四百万くらいの個人株主でありましたが、それが現在では延べになりますけれども、一千六百万から一千七百万人くらい、これは大体一人当たりの銘柄が三銘柄くらいといわれておりますから、約六百万人くらいの個人株主に非常に大きく拡大している。全体の傾向はそう言えると思います。  それから、最近といいますか、三十五年くらいからの時点をとらえましてのいまの御指摘は、御指摘のとおりでございます。一時三十五年、三十六年という株式ブームのころには、かなり個人株主層が広がったのでございますが、それが最近になりまして、最近の不況もありまして、少し停滞ぎみあるいは多少減ったこともあるというようなこともございます。この原因につきましては、いろいろな判断ができると思います。けれども、一つは、やはり先ほど大臣がおっしゃったような日本の経済の成長が非常に早くて、間接金融、金融機関を通ずる金融に依存する度合いが高かった。したがって、株式市場よりも金融機関からの借り入れのほうに重点が置かれた。そのために株式市場が資本調達の限界市場というような観念になりました関係上、どうしても個人のストックマインドに悪影響を与たような感じがあったと思います。  それから、個人所得資産とそれから高度成長との関係になりますけれども個人の金融資産の増加傾向、これは二十八年から三十九年くらいまでの数字をただいま持っておりますが、この間約七倍に個人金融資産がふえているのですが、株式の発行残高はその間に十倍になっておるということは、結局個人の消化能力を越えて、当時の増資ブームもありまして株がふえた。そのために個人の消化し得ない部分が法人に吸収されていった傾向もあるのだろう。  それから最後に、最近の不況につきまして特に感を深くするのですが、証券市場あるいは証券会社に対する不信というものが三十九、四十年くらいの証券恐慌によって引き起こされまして、このために個人投資層が株式市場から脱落していったというような傾向があったと思います。  大体、事務的な判断としてはそんなところでございます。
  132. 北山愛郎

    北山委員 大臣はどうですか。——いろいろこまかい原因はあるでしょうが、とにかく大株主のところに株が集中しているということは現実ですよ。ずっとそういう傾向なんです。しかも金融機関をはじめとする法人会社に株が集中しているのです。半分以上そういうものが持っているのですよ。私は、全体的に内容を——いま問題になっておる八幡製鉄と富士製鉄の有価証券報告書を見てみたのです。そうすると、こういうことがあらわれております。八幡の株主、十万株以上というのが五百一人です。これは四十三年九月の報告です。十万株以上五百一人で、それが五三・五七%持っているのです。それから富士製鉄のほうは、五百六人です、十万株以上の大株主は。これが六七・五〇%。十万株以上という大株主が大部分持っているのです。これはもちろん個人ではなくて、個人よりはむしろ金融機関保険会社、そういうものだろうと思うのですが、そういう大株主が財界と大企業を牛耳っているのですよ。特に金融機関等が牛耳っておる。そういうふうな実態があります。この八幡、富士が、さらにたくさんの会社の株を持って、多数の企業を支配しているということになるわけです。こういう代表的な企業を見ても、大株主がその企業を支配している。個々の企業についてもそうでございます。それから産業全体として見ても、総体の株の大部分が、十万株以上というようなごく少数の大株主に集中している。そうして、その傾向はさらにどんどん進んできているわけです。  こういう事実、この傾向は、大臣はどのようにを受け取りになるか。どういうように考えられますか。
  133. 福田赳夫

    福田国務大臣 私どもの見るところでは、機関投資家中心の株主、株式の分布状態ですね、これをそう大きく変えることはできないと思うのです。しかし、逐次大衆にこれを持っていただくようにしていかなければならぬ。これがそう急にはできませんけれども、その方向をだんだん進めていくこと、これが将来の政策の一つの中心問題、そういうふうに考えておるのです。そういうようなことを考えながら、この配当課税の特別措置というようなものもお願いをして今日に至っておるわけでございます。やはり大衆がこれになじむということは、これは税の問題もございます。税で、ことに四十年だったと思いますが、配当に対する分離課税をお願いしたわけです。この措置なんかは大衆に株がなじむという上において非常に有効な手段であったと思いますが、そういう機会に証券界に対しましても、大いに宣伝してもらう、そうしてかつ株主になじんでいただくというふうにお願いをしておるわけなんです。  いずれにいたしましても、大衆が証券に興味、関心を持ってくれる、こういうことは非常に大事な問題でありますので、今後もその方向で進めていきたいという考えでおります。
  134. 北山愛郎

    北山委員 もう時間がだいぶ経過しましたので、まことに残念ですけれども先を急ぎますが、大臣や大蔵省の人たちが言うことばと実際やっている政策は、違うのですよ。なぜ一体法人持ち株がふえるかというと、法人が持っている株式に対する受け取り配当は益金不算入ですから、法人の受け取る配当金には税金はかからないということから、お互いにこれは会社同士持ち合いをしますよ。ですから、特に金融機関とか法人の持ち株がふえていくのはあたりまえじゃないですか。  あるいは、いまの利子配当の分離課税についても、あるいは配当控除にしても、だれが一体これを利用しているかといえば、やはり資産階級ですよ。大衆はそんなものは無縁ですよ。結局そういう政策をやればやるほど、資産家優遇大企業優遇の政策なんです。口では大衆といいますけれども、しかし、実際にやっていることは、ことに佐藤内閣になってからひどいのですよ。池田内閣ももちろん同じコースでありますが、佐藤内閣、四十年ころから、法人課税を安くしてみたり、その他の特別償却、もう至れり尽くせりのことをやっているのですよ。いまお話しのようなこともやったわけです。  そういうふうにして、金持ち優遇であり、大企業優遇の税制であり、先ほど申したように、生命保険だけ一つとっても、いわゆる蓄積資本を大衆から集めて、それをかってに大企業は使うといったような仕組みであり、そういう仕組みの中で経済成長は、要するに大企業、金持ち階級の肥え太る経済成長になった、こういうことだと思うのです。  ですから、この点については、もう見解の相違かもしれませんからお答えはいただきませんけれども、これは現実だと思うのです。これは非常にひどくなってきている。ひどくなってきているから、経済成長の中で、ますます個人の消費支出が減っていく、あるいは雇用者所得の割合が伸びない。労働者の数は、佐藤内閣になってから三百七十五万もふえているにかかわらず、雇用所得というのは、割合が全体の所得の中でふえてない。むしろ減っているのです。実に奇怪な現象なんですがね。そういうふうにして、大衆収奪と、物価高と、重税でやってきているから、だんだん個人消費支出が減ってくる、農村もだんだん所得が下がって伸びない。こういうことだから、景気にかげりが出てくるのもあるいは無理がないかもしれない。私は、その点について注意を喚起しておきたいと思うのです。  時間がないから、この点の議論はしませんが、最後に一つだけお尋ねしたいことは、これは予算委員会で、只松氏でしたかの質問に対して、今度の土地税制について、いわゆる長期保有している個人土地は売りやすくして、分離課税にして税金を安くして、しかし、その個人が新たに買うのには買いにくくする、いわゆる個人投機思惑を規制する、税金を高くする。ただ法人は野放しではないか。いま法人がそういう土地投資なりあるいは土地投機なりをしないかというと、これが金をふんだんに持って、あらゆる大会社というのは、子会社の不動産会社を持って、じゃんじゃん土地買いあさっている。ですから、一方において個人のあるいは農民のそういう土地を売りやすくして、どんどん供給しても、そういう会社がどんどん買ってしまう。言うならば、株も会社法人へ、土地会社法人へ、簡単にいえばこういうのが今度の土地税制ではないだろうか。なぜ一体、税制あるいはその他の政策において、法人投機、思惑、そういうふうな行動を規制できないのか。大蔵大臣、これは税法じゃなくてほかの方法でやるんですよと言った。ほかの方法って一体何ですか。建設省が来ているかと思うのですが、ほかの方法はないじゃないですか。そうでなかったら、税制以外の方法でやらなかったら、税制というのは、今後の土地税制は片手落ちですよ。いま申し上げましたような結果になりますよ。個人税金が安いから売りやすくなる。しかし、新しく個人が買うのは、将来売るときに四〇%以上の税がかかるから、個人投機は制限される。しかし、法人は野放しなんです。土地はだんだん法人に流れるじゃないですか。会社へ流れるじゃないですか。いまそういう不動産会社が、あるいは私鉄とか観光会社というのが、地方へ行って山まで買っている。じゃんじゃん買っているのです。そういうものを規制しないで土地対策が立ちますか。なぜ一体そういう対策を考えないのですか。税制の上でできない、技術的にできないとするならば、なぜほかの方法をとらないのですか、政府全体として。ほかでやるでしょう、こういうことじゃ済まないと思うのですよ。それをやらない限りは、今後の土地税制は片手落ちであって、いま申し上げたような結果になって、法人は安い土地をじゃんじゃん買えるようにいい条件ができるという結果になる。そういう点を私は心配しているのですが、その点は大蔵大臣、どういうふうにお考えになりますか。
  135. 福田赳夫

    福田国務大臣 法人につきましても、今後は買いかえ制度改正して、土地政策に非常に吻合するような形をとったことは御承知のとおりです。それから個人の場合のように、古く持っていたものには軽課する、また投機の目的をもって買うものには重課する、こういう考え方法人の場合は取り入れなかったわけです。これは技術的に非常にむずかしいのです。いろいろむずかしい点がありますが、一つむずかしい点を申し上げれば、これは会社ですから、赤字ということがある。赤字の会社投機の目的をもって土地を取得して売却する、その場合に重課をするということをした場合、一体どういう効果があるか。これはその会社の形態によって非常にその効果が違ってくる、こういうことになります。その他、これは会社という一つの経理方式を持っているものですから、土地譲渡所得を分離すると、いろいろむずかしい問題が出てくる。それからもう一つの点は、やはりこの問題は、会社個人の場合のような考え方適用した場合に、一番適用を受けるのは土地造成会社です。土地造成会社が入手する、あるいは売り払う、その土地に重課する、こういうことになりますと、この土地造成会社が非常に重い負担を負うわけです。そうなると、その会社事業がやっていけないということになる。そうすると、国の全体の土地造成事業は一体どうなるのだ。民間の土地造成にも期待するところは大きいわけですが、その事業に支障があるのではないか。それからまた、そういう会社が昔から持っておった土地なんですといって売り払う、その場合の税金は安くしてやる、こういうようなことを認めるというようなことにすれば、これはほかの大会社あたりで、土地造成会社じゃない会社がまた定款を変更しまして、それに均てんをするというようなことにもなるわけです。これは技術上非常にむずかしいです。そういうようなことで、個人分離課税方式法人には取り入れなかった。しかし、買いかえ制度につきましては非常に基本的な改正を加えた、それだけでもかなり土地政策には裨益するところがあるであろう、こう考えておるのであります。
  136. 北山愛郎

    北山委員 これで終わりますけれども買いかえ制度は改善したと言うけれども、これは当然やめなければならなかったものですよ。私、この前この委員会で質疑したことがありますが、弊害のほうが大きかったわけです。だからやめるべきであるというのが税制調査会の意見だった。それをやめただけの話です。それも、個人住居用資産買いかえについてはすぱっとやめたけれども、しかし、事業用資産の場合はいろいろと条件をつけて逃げ道をつくっている。だから、私は率直にいって、大臣がるる申されたように、会社法人の都合をいろいろと考ええてあげているのですね、大臣は。ああこうしたらああなるだろう、ああしたら会社は困るでございましょう、不動産会社が困るでしょう、そんなことを考えたら土地政策なんかできませんよ、今日のこの重要なる土地政策を。企業に対して遠慮をしないで、個人にやるなら企業にもやる。その技術的な方法はいろいろむずかしい問題もあるでしょう。しかし、それを克服してやるつもりなら、遠慮しないつもりなら、政策は何ぼでもある。いま法人土地取得というものを野放しにしているけれども、ある一定面積以上のものを取得する場合には許可制にしてもいいし、届け出制にしてもいいし、いろいろ方法があると思うのです。そういうことをやらないでおいて、そしていまのような片ちんばの土地税制を出される、これは私は納得できないのです。私だけじゃないのです。そしてまた、このまま通されたならば、いま申し上げましたように、おそらく株も法人企業に流れると同時に、土地個人の手を離れて企業のほうへ流れていく、財産資産、富というものが大きな資本のもとへ集中するであろう、こういう政策である。要するに、これは強きを助け弱きをくじくという政策である、こういうふうに思わざるを得ないのです。  そういうことを最後に申し上げて、私の質問を終わります。
  137. 田中正巳

  138. 岡沢完治

    岡沢委員 私は、社会保険診療報酬課税特例制度にしぼって質問を申し上げたいと思います。  現在、医師及び歯科医師の受ける社会保険診療報酬につきましては、もう大臣も十分御承知のとおり、実際の経費が幾らであるかにかかわりなく、収入金額の七二%に相当する金額を必要経費とみなして所得計算をすることが認められておるわけであります。  私は、あとの質問との関係もございますので、この制度の沿革を簡単に述べてみますと、昭和二十六年に社会保険診療報酬の一点単価が、医師及び歯科医師の満足を得られるだけの引き上げが行なわれなかった点を補うために、閣議了解に基づきまして、昭和二十六年分の所得税に限って、行政措置として、その所得率を三〇%とすることとされたことに始まったと記憶いたしております。その後いろいろ経過がございましたけれども、昭和二十九年十二月二十五日、議員提案によって、昭和二十九年分以降の所得税については、社会保険診療報酬にかかる所得の必要経費を収入金額の七二%相当額とする現行制度が法制化されて、今日に至っておるということだと思います。特に、二十九年の特例法案が通るに際しまして附帯決議がございます。この附帯決議を見ましても、「本法律案は、社会保険診療報酬の適正化の実現までの暫定措置であるから、政府は速に之が実現をはかるよう善処せられたい。」ということが明記されておるわけであります。その他、この特例制度に対して、税調は、昭和三十一年十二月の臨時税制調査会答申で、「社会保険診療報酬課税特例は廃止する」こと、また昭和三十五年十二月の税調第一次答申では、「この特例の不合理性、今日の所得税の軽減等考えあわせ、この特例を廃止する」と明記しております。また、昭和三十六年十二月の税調の答申でも再び「社会保険診療報酬課税特例を廃止する」さらに昭和三十八年十二月の昭和三十九年度の税制改正に関する答申、その翌年、昭和三十九年でございますけれども、十二月の昭和四十年度の税制改正に関する答申では、それぞれ「社会保険診療報酬課税特例については、負担の公平の見地からみて適当ではないので、これを廃止する」とはっきりうたっております。さらに昭和四十年十二月の昭和四十三年度税制改正に関する答申でも、「社会保険診療報酬課税特例については、早急に実態を調査したうえ、この制度の存否について検討することとする」それから昭和四十三年七月の長期税制のあり方についての答申におきましても、これは租税特別措置一般についてでありますけれども負担の公平、租税の中立性をそこなう、税制を複雑化する、特別措置の既得権化や慢性化を排除する必要があるということをうたっているわけでございます。  また政府も、昭和四十三年一月の昭和四十三度の税制改正要綱の閣議決定の際に、「社会保険診療課税特例については、可及的速やかに実態を調査したうえ、この制度改正について検討する」ということをきめておるわけであります。さらに、これは昨年九月十七日の当委員会税制及び税の執行に関する小委員会で、私の質問に対しまして吉國主税局長は、この特別措置に関連して、実態に沿わなくなっていること、ことにいわゆる科別に利益率が非常に違っておるということをお認めになった上で、「実は税務当局の中で実態調査をいま進めております。これはやはり相当広範な実態調査の上で結論を出したいと思います。」ということをお答えになっておるわけであります。  以上を踏まえまして、吉國主税局長がお答えになり、また閣議決定にもありましたような、いわゆる実態調査が現在どうなっておるのか、また、その実態調査の結果で判明したこの制度の特色と申しますか問題点等について、大蔵大臣の御説明を求めます。
  139. 福田赳夫

    福田国務大臣 まず政府委員からお答えさせます。
  140. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 この間、只松委員から御指摘がございましたが、当時申し上げたように、政府といたしまして実態調査をするということで、それによって結論を出すべきであるということでお答えを申し上げました。この実態調査と申しましても、課税の実態調査ということでございますので、実質的に調査を実施する必要がございます。この実施調査のためには相当に医師の積極的な協力が必要でございます。その点で、実地調査までは現在入っておりませんが、課税の申告につきましては、青色申告の場合は付属明細書、損益計算書の添付が要るわけでございます。それで申告をいたしまして、その場合に所得率が現在の法定のものよりも高い場合には、これは法律で当然法定の所得率によれる、それから所得率が法定の所得率よりも低い、つまり経費が七二%以上かかっている場合には、これは実際の経費率によって申告していくという制度でございますから、そういう意味では、申告ベースでは青色申告の場合に限ってその点がわかるわけであります。そういう意味で、実態調査をやる一つの手始めと申しますか、予備といたしまして、無差別抽出によりまして、その結果を集計してみました結果は出ております。これは四十二年度でございます。四十三年度は目下申告中でございます。  その結果を見ますと、全体の平均、つまり特例適用した人、特例適用しない人、全部を平均してみますと、約三八%というのが所得率でございます。しかし、特例適用した者だけを見ますと、四八%程度所得率になっております。  この問題の一番の問題は、平均ではかなり高い経費率になりますけれども、その高い経費率の人は、七二%をこえた場合には申告で実際の経費が出せるということ、したがって、平均を中心にしてかなり上下の差があるにかかわらず、実際の経費率で申告する人はそれでよろしいが、そうでない、実際の経費率がかからない人は七二%の法定率でできるというところに、実際には所得として相当な間差ができてきます。そこが問題であるということ、この問総理が言われたところの、医者の相互間でも非常に不合理があると言われたのはそこだと思います。  ただ、この調査は、調査と申しましても集計であり、かつ抽出調査でございますから、さらにこの点は四十三年分等についてより詳細な調査をすべきではないかと思っております。つまり、予備的な調査でどの程度のことであるかを概算的につかんでみようという調査でございますから、これがそのまま実態をあらわしているとは申せませんが、かなり実態を反映している面はあるのではないかというふうに考えております。
  141. 岡沢完治

    岡沢委員 けさの日経新聞によりましても、いま主税局長がお答えになった調査とおぼしき資料に基づいて、かなり具体的な記事が出ているわけであります。昨年の九月の、先ほど私が述べました質問に対しても、すでに実態調査中であるという答えがございまして、この問題につきましては、先ほど私が指摘いたしましたように、十数年来すでに問題点として指摘し続けられたきた問題であります。そういうことから考えまして、主税局長自体も、実態調査をまとめた上で具体的なものをきめたいというようなこともお答えになっていることもございまして、もう少し具体的に実態調査の結果について、現在のおまとめになった範囲でけっこうでございますからお答えをいただくか、あるいは資料の提出をいただきたい。  そうしますと、この特例によって、四十一年度はたしか百三十億の減収だったと思います。四十二年度は百四十五億と記憶いたしておりますが、四十三年度の減収見込み額等について、資料がございましたらお答えいただきたいと思います。
  142. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 四十三年度は、去年提出いたしましたのは百四十五億という数字をお出しいたしておりますが、四十四年度は、この間提出いたしました資料では三百七十億でございます。
  143. 岡沢完治

    岡沢委員 先ほどお答えになりました所得率の科別ですね。医者の内科、外科あるいは歯科等、科別の特色等について、もう少し詳しい実態調査の結果がわかっておりましたらお答えいただきたい。
  144. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 科別につきましては判明しておりますが、この点かなり各科では問題が起きるかと思います。つまり、抽出調査であるだけに、この数字がそのまま各科で妥当するかというと、かなり問題があるので、その意味ではここで直ちに申し上げていいのかどうか、これも問題があると思います。むしろ個別に非公開でと申しますか、そういう意味で後ほどごらんに入れたいと思います。
  145. 岡沢完治

    岡沢委員 この問題は、やはり実態を明らかにすることによって当然諸方針が出てくると思うのです。非公式よりも公式の場で実態を明らかにしてもらいたい。それは、おっしゃるように、二十分の一の抽出というふうに聞いておりますが、それがもちろん完全正確のものだとは思いません。しかし、資料として国民の前に明らかにしていただく、そこから、おのずからこの特別措置に対する改正方向が生くれてくるのではないか。重ねて資料の提出を求めます。
  146. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ただいま申し上げましたように、これは申告ベースでありますだけに、今後実態調査を実地でやっていかなければならない、そういう意味ではやや不正確な資料と申しますか、実態をそのまま反映してない資料をはたしてそのまま資料として申し上げていいかどうか。たとえば問題は、科によって実際の所得はかなり違うのではないかという問題があるわけです。経費の簡単にわかる科もあるわけです。経費が非常に複雑でわかりにくいもの、あるいは総合病院といったようなものでは、所得率が実際とはかなり違っておるという面があると思うのです。これは、実は調査をした結果ではなくて、申告が出されただけの結果でございますから、それで直ちに比較することが適当かどうか。そういう点、私どもとしては一そう実態の調査をした上で確認をして申し上げる必要があるのではないかと思いますので、この段階では、全体の平均はもう間違いないということになると思いますが、科別はしばらく検討の上、私どもとして慎重な検討をした上で処置をいたしたい、かように思います。
  147. 田中正巳

    田中委員長 委員長から申し上げますが、岡沢君のただいま御要望の資料につきましては、後刻理事会にはかって結論を得たいと思いますので、御了承を賜わりたいと思います。
  148. 岡沢完治

    岡沢委員 委員長の御指示でございますから、それには従いたいと思いますけれども、ただしかし、私は、こういう実態の資料というもの、もちろんあることを前提にして主税局長はお答えだと思うのですが、やはりわれわれ大蔵委員会のメンバーが知るだけではなしに、国民の前に公表していただいて、その制度改正のたたき台に供していただき、客観的な資料で、それがもちろん抽出的なものでございますから絶対という答えは出ないと思いますけれども、やはり考えられる最大の改正の土台になるものだと思います。それだけに、ぜひ何らかの機会にこれは国民の前にも公表していただきたいということを、私は要望しておきます。  それから抽象的に、きょうの日経の記事を見ましても、科別によって差がある、あるいはまた病院と個人開業医についても、あるいは医師の収入の額等に関連しても、やはり幾ばくかの特色が見られるだろうと思うのです。主税局長はもちろんその資料を御理解の上でお答えいただけると思いますので、大体の傾向につきましても、この実態調査の結果あらわれた方向についても、この際明らかにしていただきたいと思います。
  149. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 この申告実績をもとにして考えますと、科別の差というものは、科によってはかなり差が大きいということは事実でございます。それから大規模経営で病院の形態にあるものはやはり減価償却その他が大きいために経費率はかなり高い。むしろ小さいと申しますか、中以下の病院と申しますか医者のほうが所得率は高いという傾向が見られるようでございます。
  150. 岡沢完治

    岡沢委員 では、科別について傾向としては、詳しい数字まではけっこうでございますけれども、たとえば歯科と外科、内科、産婦人科等についての特徴的な傾向はございますか。
  151. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 何と申しましても機械その他が多い外科、産婦人科というものは経費率が高いという傾向ははっきりございます。それから、それに比べれば内科、歯科等はこの申告の段階では、経費率は産婦人科、外科に比べてかなり低いという数字が申告の上では出ております。
  152. 岡沢完治

    岡沢委員 主税局長はこの前の私に対する答弁で、実態調査をまとめた上で具体的な解決方法をきめたい、四十四年度には間に合わなくとも四十五年度くらいからはこの問題を具体的に処理していきたいという趣旨の御答弁があったと思います。もうすでに実態調査もある程度まとめられた現在において、この特別措置改正方向についてどういう点を問題として取り上げようという御趣旨であるか。四十五年度の税制方向をきめる税調も近く開かれる時期でもありますので、この際、明らかにしていただきたいと思います。
  153. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 今後実態調査は実地調査というものを加味した実態調査に進まざるを得ないと思いますが、その結果を見た上で、やはりこの問題は税制調査会が再三問題にした問題でございますので、税制調査会の議を経る必要が当然あるかと思います。税制調査会が四十三年の答申におきまして、社会保険診療報酬の特例と予約米減税の特例を二つ並べまして、これを再検討することを主張したわけでございます。御承知の予約米減税というものは、単年度の特例を積み重ねてきたものですから、法律措置をとらないと自然にやまってしまう、そういうことでことしいろいろ国会のほうで御議論になったわけでございますけれども、この医師の社会保険診療報酬は期限のついていない特別措置であります。最近設けました特別措置はいずれも期限をつける、そうして期限が来たときに再検討するというチャンスを置いておるわけでございますが、この医師の社会保険診療報酬の特例は非常に古いものでございまして、先ほど御指摘がございましたように、国会の手できめられたものでございますので、期限というものはついておりません。いままで期限延長ということはなかったわけで、この期限をひとつつけることが必要ではないかという意見も税制調査会の中にはございます。そうして何しろこういう長い間続いた特例でもあり、また御指摘のように、一点単価という問題にもからんだ問題でありますので、ある程度期間をかけて慎重に検討する必要があるという意味では、期限をつけてその間に検討したらどうかという意見も税制調査会の中にはあったわけであります。その意味で再検討すべしという意味を書かれたものと思っております。  そういう意味では、税制調査会の今後の意見その他を十分伺いまして、その答申に従って私どもも事務的には立案をいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  154. 岡沢完治

    岡沢委員 主税局お答えのとおり、この特例が期限のないだけによけい十数年来も問題点を常に指摘されながら改正もされずに経過してきた。よくいわれますように、いわゆる既得化、慢性化が特別措置にとって一番こわいわけでありますが、まさにその適例ではないかという感じがするわけであります。  先ほど私は、この措置ができた立法経過等についても触れさせてもらいましたが、薬価基準、あるいは一点単価等の推移についてこの措置を必要とした当時と現在と条件が同じであるかどうか、その辺についての主税局の御見解を聞きたいと思います。
  155. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 一点単価その他の問題につきましては、御承知のように、中医協等でも実態調査をやるということを言っておるわけです。その実態調査がなかなか問題でございまして、これがいまだに公表されずにいるわけでございます。はたしてどこが均衡点になるのか、これはなかなかむずかしい問題でございますけれども、医療費の改善状況、適正化の状況というものと、税制上の問題とをどこでにらみ合わせるか、やはり私どもも、中医協の行なっております実態調査の結果も見てみなければならないと思っております。当方の課税上の実態調査、医療費のほうから見ました実態調査とにらみ合わして検討する必要があるかと思います。私どもとして、もうずいぶん違ってきたということを直ちに申し上げる段階ではないと存じます。
  156. 岡沢完治

    岡沢委員 主税局長としてはお答えにくいことかもしれませんが、私もあえて質問申し上げているわけなんで、やはり私はすなおに見た場合に、この特別措置が全く合理性を失っているということは否定できないのではないか。  この問題につきまして、私はもう一度重ねて局長に聞いた上で、最後に大蔵大臣の御見識のあるところを聞きたいのでございますけれども、七二%を必要経費として認める措置が実態と少なくとも合わない。局長自身のお答えを見ましても、科によって違う、あるいは病院と個人開業医によって違う。そういうことを考えましても、七二%と一律にきめることは不合理であることは、答弁からも見られるわけでございますけれども、さらにそれから十五年の時の経過ということがあるわけであります。そういうことを踏まえまして、この措置が合理的な根拠あるいは公平の見地から見て問題点であるということは、私は認めるべきではないかと思いますけれども、この辺についての主税局長の御見解を聞きたいと思います。
  157. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 これは申すまでもなく、所得税にいたしましても法人税にいたしましても、所得というものはそれぞれの個別の所得者の、所得税であれば収入金額と必要経費の差額として把握されるべきであります。法人税であれば総益金から総損金を引いたもので決定さるべきものであるという意味におきましては、所得率あるいは経費率を法定するということは異例の措置である、これは言うまでもないところでございます。したがいまして、この具体的な問題につきましては、やはり合理化の措置をとることが将来必要であることは、言うまでもないところだと思います。
  158. 岡沢完治

    岡沢委員 大蔵大臣にお尋ねしますけれども、いま主税局長と私との問答を聞いていただいたかと思いますが、この措置がある意味で不当に実態にそぐわない、納得のいく納税あるいは税の公平等の見地から見て、非常に問題点の多い措置である、あるいは改正を要すべき時期に来ているということについて、私はいまこのように考えるわけですけれども、大蔵大臣はどうお考えですか。
  159. 福田赳夫

    福田国務大臣 これができましたときのいきさつは、私も承知しておりますが、結局医療費と非常に大きくからまりが出ておったわけであります。その状態が今日改善されたか、重大なる変更があったかというと、また今日この時点で医療費問題というのが紛糾しておる。そういうようなことから、なかなか扱いのむずかしい問題でありますが、とにかく問題は七二という数字が実態に合っているのか合っていないのかということなんだろうと思います。その実態調査をしてみなければならぬわけです。この実態調査がなかなかむずかしいのです。いま局長が実態調査——何かいろいろ申し上げましたが、それは正確にいうと、実態調査ともいえないような調査を申し上げておるわけなんです。個々の医療機関につきまして調査する、そういうことはまだやっていないのです。そういうようなことで、一方七二という経費率の妥当性というものを判定することは、現時点ではむずかしいと同時に、今度はそれとのひっからまりがそろそろ出てきた。診療報酬、この問題が、中央医療協において医師の報酬の調査をしたい、こういうのだが、これがまたなかなかむずかしい問題で、いまごたごたしておるのはその問題から端を発しておる。こういう状態なんです。  しかし、税の体系からいいますと、なかなか問題のあるところだろうと思います。なかなかデリケートなむずかしい問題でありまするけれども、これが異例な問題であり、いつかは正常化しなければならぬ問題であるということにつきましては、私もそう考えておるわけでありますが、そういう考え方のもとに何らかの方策が見出せますかどうか、よく考えてみたいと思います。
  160. 岡沢完治

    岡沢委員 私は、福田大蔵大臣は尊敬をしておるのですけれども、非常に歯切れの悪い、国民から見て納得のできない答弁だと思うのです。自分のほうで実態調査をやっておきながら、どちらに有利になったか不利になったか、資料をお出しになりませんけれども、どう考えましても七二%の経費率というのは実態よりは一般的にいって医師の方々に有利過ぎるという結果が出ておるだろうと思いますが、それをことさらに信を置けないという立場で見ようという大蔵大臣のおことばは——これは国民感情からいたしまして、われわれの端的な直感を申し上げますと、町を歩きましても建物が改造されるのは銀行と病院ではないか。たびたびの新聞報道によりましても、医者の脱税が非常に多い。また滞納もできない一般サラリーマンから見ました場合に、率の問題だけでなしに、捕捉率の問題にしましても非常に疑問の多いこの課税考えますと、形式的な不公平以上に大きな実質的な不公平を国民としては鋭敏な直感で感じておるというのが偽らざる感情のように思います。いま新聞報道によりましても、全医師の二十分の一を抽出されての実態調査が信を置けないということであれば、私は、ほんとうにこの問題について大蔵大臣にこの制度を是正する、あるいは減縮するという御意思、御熱意があるとは思えない。これは専門家の大臣に申し上げることは非常に僭越でございますが、やはり税の最大の眼目の一つは負担の公平、それに基づいてこそ国民の納得のいく納税というものが生まれてこようかと思いますが、不公平な最たるものの一つに私はこの制度をあげざるを得ない。これに対する是正の熱意を大蔵大臣自身がお持ちにならない場合に、はたして国民が納得するだろうか。これはすなおに、単に制度としての、あるいは個人の利害を離れて静かにお考えいただくべき問題ではないか。  私は、昨年度の大蔵委員会の国政調査で広島の国税局に参りました場合に、局長のほうからも、第一線を担当する徴税官の立場からいっても、この医師の特例については、何とかしてほしいという注文がございました。私は、徴税意欲という点からも相当大きな影響力を持っている制度だと思います。まして、いまやかましいサラリーマンの立場からしました場合に、まじめに納める気にならないのではないか、そういう気がするわけでございます。そういう点からも、ぜひ前向きの御答弁をいただくべきじゃないか。  本委員会におきましても、十一日の質問に対して、総理自身もかなり積極的なお答えをしておられるのに、大蔵大臣のきょうの御答弁は、主税局長がせっかく実態調査についての報告をしておるのに、それに信を置けないということを前提にしたようなお答えでございました。これは何か他意があるような感じを私は受けるわけです。そうではないのだ、やはり大蔵省自体が主になって、国の経費を使っての思い切ってなさった調査の結果に従って、改正の方向を打ち出生主税局長が昨年の税制等小委員会お答えいただいたことと同じような趣旨の御答弁が、大蔵大臣からもあってしかるべきではないかと思うわけですが、重ねてお聞きいたします。
  161. 福田赳夫

    福田国務大臣 まだ実態調査ができておりません。これはそのとおりなんでありまして、別に歪曲しているわけでもないのです。主税局長から、さっき傾向について、大量観察というか、そういう調査のお話がありましたけれども、いわゆる実態的調査の話ではないのです。やはり実態的に調査してみないと、これはなかなかむずかしい問題——これは医療制度のできました沿革から見まして、医療報酬が一体どういうふうになっておるかという実態調査と、それから七二%というものが税の立場からどういうふうになっているかという実態調査と、両々調べてみる必要があるのではないか。それがいま非常にむずかしい問題になっておるのです。そういう状況を私はよく承知しておるものですから、そう軽々しく、ひとつやりましょうというような歯切れのいい返事をいたしませんけれども、頭にはこびりついているのです。よく諸般の状況を判断し考えてみたい、かように考えております。
  162. 岡沢完治

    岡沢委員 それでは、大蔵大臣の言われる実態調査をやる御意思があるのかどうか、やる意思があるとすれば、いつなさるおつもりか、明確にお答えいただきたい。
  163. 福田赳夫

    福田国務大臣 これがなかなかむずかしいのです。つまり、これは医療担当者の協力がないと、なかなかできない。そこに問題があるのです。これは税の問題もそうでありますけれども、報酬のほうの問題もそうなんです。そこにいまは問題がある。これが非常にむずかしい問題になってきておる。こういうことなんです。しかし、そういうむずかしさを乗り越えていかなければならぬ。どういうふうにしてやっていくかというような問題が、私どもの当面の頭痛の種である、こういうふうに御了承願います。
  164. 岡沢完治

    岡沢委員 それでは、先ほど主税局長からお答えになったあの資料は、今後のこの制度改正について判断の材料にはなさる意思はないのかどうか。診療報酬と医療体系を結びつける——これは私は、先ほど来の土地税制に関連して、土地政策税制だけではないという御答弁とも結びつけて、あまりにも場当たり的な逃げ口上ではないか。大臣がほんとうにこの問題では真剣に取り組む、特に不公平な扱いでなく、納税者の立場に立って考えようということよりも、医師会だけが頭にあるというふうにしか私には受け取れないのです。この制度は絶対に悪いという前提ではありません。私は、国民の命を守っていただくお医者さん方が適正な報酬、また適正な課税を受ける、これは大賛成でありますけれども、しかし、医師なるがゆえに、また医師会の圧力の強いがゆえにこれに屈する、あるいはこの制度が生まれる背景に、保険医総辞退という動きもあったようですし、力の強いものが勝つ、私は、これは法律の暴力と言っても過言ではないと思う。政治はむしろ弱い人を助ける、日の当たないところに日を当てるのが政治の本筋ではないかと思いますが、この制度は少なくともその逆ではないか。  これも直感的な言い方で恐縮でございますけれども地方納税者のベストテンにお医者さんがずらっと名を連ねるというようなことも、やはり端的に医師収入の特徴を示しておるのではないか。この際、医師収入の推移、この制度ができてから現在までの推移、あるいは国民の医療費負担の推移等につきましてお尋ねいたします。
  165. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 手元にいま的確な資料はございませんが、診療報酬の支払いの経過をたどってみた場合、どれくらいになっているかという数字はございます。三十八年度が各種の健康保険、国民健康保険、国鉄共済を通じまして六千九百十五億という支払いでございます。それが三十九年度には八千六百二億、四十年度は一兆四百十七億、この間の伸びが三十八年から三十九年にかけましては二四・四%の増加、四十年度は二一・一%の増加ということになって、四十一年度は実額におきまして一兆一千九百七十五億、伸びは一五%なお四十二年度は一兆三千九百二十二億、一六・三%の伸びでございます。
  166. 岡沢完治

    岡沢委員 いまの答えを見ても、おそらく医師の数はいまお答えになった比率に従って増加はしていないと思います。去年一人当たりの医師の収入はかなりの伸びを示しておるということは、おそらく数字上はっきりするのではないかと思います。この制度が生まれまして、立法化されてからでも十五年、行政措置がとられた年から考えますと十八年くらいの経過があるわけで、その間に医療費の改善、医療内容も当然変化いたしていると思います。これは薬価基準その他の是正もあったわけであります。どう考えても、この制度が現実に合うとは思えない。いわゆる合理的な制度とは思えない。また、公平なものでないことは、単に医師と他の所得者との間の不公平ということが感じられるだけの話でなく、同じ医師の中でも、いわゆる病院の勤務医と開業医、あるいは病院と開業医、それぞれ違います。先ほどの主税局長の答えで、各科によっても不公平がある。私は、公平ということをたてまえにすべき税制の上で、少なくとも問題点の非常に多い制度だということだけは、いかに大蔵大臣が、否定も肯定もされなかったのですが、ことばを濁されましても、それこそ否定できない事実ではないかというように感ずるわけでございます。  先ほど申しましたように、第一線の徴税官ですら、かなりこの制度が災いをしているということを、広島の国税局長が実感をもってわれわれ正式の調査団に対しても報告があったわけであります。また、納税者がこれによって納税意欲をそがれということは、指摘するまでもないかと思います。  いろいろ考えました場合に、私は、この制度は勇断をもって善処されるべき時期に来ておる。むしろ超党派的な立場からこの問題の是正に取り組む必要があるのではないか。四十四年度のこの制度による減収額が三百七十億。金額も大きうございますけれども、金額以上の税の不公平感による国民の納税意欲あるいは勤労意欲の喪失という、無形の被害も相当なものだということを指摘せざるを得ないわけでございまして、先ほど来のお答えにございましたように、期限の定めのない制度であるだけに、ほうっておきますとまだまだ続く可能性が、過去の例からいたしまして、あるのです。税調が、先ほど指摘いたしましたように、十数年来この問題の是正を指摘しながら、現実には出てこなかったという例に徴しましても、慢性化、既得権化というおそれの多分にある制度であるだけに、私は、ほんとうに少なくとも来年度くらいには思い切って政府としても御決断をくださるべきだと信ずるわけでございますけれども、重ねて大蔵大臣の御所見を伺って、質問を終わりたいと思います。
  167. 福田赳夫

    福田国務大臣 岡沢さんの非常に御熱心な御所見、傾聴いたしたわけでございます。これは私があなたに、そのとおりです、やりましょう、こうお答えすると非常にすっきりしますが、なかなかそう言えないのです。なかなかむずかしい問題なんです。あなたもむずかしい問題であることは御了解願えると思うのです。御所見よく承りましたので、私も税制というものはどうしてもよくしていかなければならぬ、それは十分心得ておりますから、何とかひとつ頭をひねって努力してみる、さように御了承願います。
  168. 岡沢完治

    岡沢委員 先ほどの資料を理事会で御提示いただくことを条件に、これで質問を終わります。
  169. 田中正巳

    田中委員長 次回は、明十九日水曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会開会することとし、本日はこれにて散会をいたします。    午後七時二十二分散会