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1969-11-10 第61回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年十一月十日(月曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 平岡忠次郎君    理事 神田  博君 理事 篠田 弘作君    理事 菅波  茂君 理事 三原 朝雄君    理事 岡田 利春君 理事 八木  昇君    理事 田畑 金光君       南條 徳男君    八田 貞義君       多賀谷真稔君    細谷 治嘉君       渡辺 惣蔵君    大橋 敏雄君  出席国務大臣         通商産業大臣  大平 正芳君  委員外出席者         経済企画庁総合         開発局山村豪雪         地帯振興課長  足利 知己君         厚生省環境衛生         局水道課長   国川 建二君         通商産業政務次         官       藤尾 正行君         通商産業省鉱山         石炭局長    本田 早苗君         通商産業省鉱山         石炭局石炭部産         炭地域振興課長 真野  温君         労働省職業安定         局失業対策部長 遠藤 政夫君         参  考  人         (日本石炭協会         会長)     大槻 文平君         参  考  人         (日本石炭鉱業         連合会会長) 植田  勲君         参  考  人         (北海道石炭鉱         業協会会長)  舟橋  要君         参  考  人         (日本炭鉱労働         組合事務局次         長)      佐藤 一雄君         参  考  人         (全国石炭鉱業         労働組合書記         長)      早立 栄司君         参  考  人         (全国炭鉱職員         労働組合協議会         副議長)    遠藤 一三君         参  考  人         (北海道副知              事) 那須 正信君         参  考  人         (全国鉱業市町         村連合会会長) 坂田九十百君         参  考  人         (全国市議会議         長会石炭産業対         策協議会会長) 岡山  碧君         参  考  人         (全国石炭鉱業         関係村議会議         長会会長)   入江  誠君         参  考  人         (佐賀県杵島郡         大町町長)   藤井万四郎君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  石炭対策に関する件(石炭鉱山保安問題及び産  炭地域振興問題)  石炭鉱山保安確保に関する件      ――――◇―――――
  2. 平岡忠次郎

    平岡委員長 これより会議を開きます。  この際、おはかりいたします。  去る十月二十四日から五日間、北海道地区における石炭鉱山等実情調査を行ないましたが、その派遣委員から委員長手元まで報告書が提出されておりますので、これを会議録参考のため掲載することといたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 平岡忠次郎

    平岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――   〔報告書本号末尾に掲載〕      ――――◇―――――
  4. 平岡忠次郎

    平岡委員長 石炭対策に関する件について調査を進めます。  本日は、お手元に印刷、配付してございますとおり、午前中、石炭鉱山保安問題について、午後は産炭地域振興問題について、それぞれ参考人の御出席をお願いいたしてあります。  まず、石炭鉱山保安問題について意見をお述べいただくため、参考人として日本石炭協会会長大槻文平君、日本石炭鉱業連合会会長植田勲君、北海道石炭鉱業協会会長舟橋要君、日本炭鉱労働組合事務局次長佐藤一雄君、全国石炭鉱業労働組合書記長早立栄司君及び全国炭鉱職員労働組合協議会議長遠藤一三君の御出席をいただいております。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中にもかかわらず本委員会に御出席を賜わり、まことにありがとうございます。御承知のごとく石炭鉱山における保安問題は、事人命にかかわるきわめて重大な問題でございますので、参考人各位におかれましては、それぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。本日は時間の制限もございますので、なるべく簡単に御意見をお述べいただくようお願いいたします。  それでは、まず大槻参考人にお願いいたします。
  5. 大槻文平

    大槻参考人 日本石炭協会会長大槻でございます。  石炭対策につきましては、日ごろ格別の御配慮をいただきまして、衷心から感謝いたしておる次第でございます。本日はまた、鉱山保安確保について意見を申し述べる機会を与えられまして、厚く御礼を申し上げます。  本論に入ります前に、私はまず、去る九月二十二日、当協会の会員であります古河鉱業株式会社山田炭鉱におきまして変災を引き起こしまして、多数の人命を損傷し、各方面に対しまして御迷惑をおかけしましたことにつきまして深く責任を感じ、心からおわびいたす次第でございます。  また、その節は、本委員会におかれましても、直ちに調査団派遣等、種々御配慮をいただきましたことを深く感謝申し上げます。  その後、当協会評議員会、これは各社社長会議でございますが、この評議員会におきまして、日本石炭協会傘下各社はあげて重大災害絶滅頻発災害防止に万全を期すべく特段の努力を傾注することを申し合わせした次第でございます。  この春には、新石炭対策実施段階に入るにあたりまして、これまでの実績を謙虚に反省いたしまして、えりを正して炭鉱保安向上確保をはかるために「決意を新たにして従来にも増して一層保安優先に徹し、労使一体となって災害絶滅を期する」という決議をいたしまして、自来、昨年末の中央鉱山保安協議会答申の趣旨を踏まえまして、自主保安体制確立をはかり、生産保安の均衡を堅持しつつ保安確保のため最大の努力を続けているものであります。  当協会といたしましては、自主的に総合的保安対策検討推進するため、当会評議員会下部機構といたしまして去る昭和四十三年九月から各社社長、副社長または保安担当常務などの数名をもって構成する保安対策委員会を設けておりますし、また各社保安部長及び保安担当者をもって構成する保安協議会をしばしば開催いたしまして、保安対策検討、連絡を密にいたしております。同時に保安総合的見地から技術交流を促進し、相互意見を交換し、保安確保に寄与するために昭和四十年度から保安検討班、これは各社保安担当職員をもって構成している班でございますが、この保安検討班を設けまして、本年度は五班、十二炭鉱を巡回検討して、それぞれ意見相互に交換し、またアドバイスをしてまいりました。この保安検討班設置してからすでに三十八班、百三十三炭鉱においてかようなことをやっておる次第でございます  御承知のように炭鉱保安対策は、設備近代化保安管理教育強化の二つに大別されると思います。  第一点の設備近代化につきましては、ガス炭じん爆発等重大災害防止をはかるため、採掘区域深部移行に伴うガス対策としてのガス抜き強化自然発火ガス湧出落盤等防止をはかるための採掘跡充てん設備増強現場実態把握のための中央集中監視制御装置開発導入の推進、その他保安機器開発導入整備等をはかっておる次第であります。つきましては、われわれとしまして十分努力はいたしますが、今後さらに一そうの御援助をお願いいたす次第であります。  次に、第二点の保安管理教育についてでございますが、保安日の設定、巡回頻度強化等保安強化対策に関し結論が得られ、これが実施段階に入った直後に今次の変災を引き起こしましたことはまことに残念のきわみでございます。保安管理体制につきましては、災害を早期に発見するための係員巡回体制強化と、さらに係員指示徹底を期するための係員能力向上をはかるとともに、労使相協力いたしまして厳正なる職場規律確立に一そうの努力を払ってまいる所存でございます。  申すまでもございませんが、石炭鉱山におきまする災害絶滅を期しますためには、現場作業に当たっております従業員の一人一人に至るまで保安意識に徹して、不安全行為を徹底的に排除するとともに、不安全状態を発見して事故発生防止し得る能力を身につけることが必要でございます。したがいまして、石炭鉱山における保安教育重要性一般産業の場合よりもはるかに高いものであると考えております。保安日の有効なる実施によりまして、特に保安意識高揚並びに不安全要素の除去につとめる所存でございますが、従来にも増して現場における保安教育徹底をはかる必要を痛感いたしております。これがため、本年一月に国の補助金を得て設立されました北海道、九州、常磐の三地区鉱山保安センターの有効なる活用をはかることによりまして教育訓練徹底を期待しておるものでございます。どうか、今後保安センター運営面におきましても助成強化をお願いいたしたいと考えております。  以上、私どもの覚悟と要望とを申し述べまして、私の意見を終わりたいと存じます。
  6. 平岡忠次郎

    平岡委員長 次に、植田参考人にお願いいたします。
  7. 植田勲

    植田参考人 私は、日本石炭鉱業連合会植田でございます。  石炭政策につきましては、かねてから格段の御高配を賜わりまして、厚く御礼申し上げます。また、本日は保安問題に関しまして意見を申し述べる機会を与えられましたことはまことに感謝にたえません。  中小炭鉱は、御存じのとおりそのほとんどが一社一山であり、鉱主従業員とも保安確保を最重点に考えているのでございます。これは、人命尊重に徹するとともに、不幸にして一度大災害を起こしたならば、これは直ちに事業の破滅、炭鉱閉山につながるからでございます。いままで、大きな災害があるたびに通産大臣から警告を受けておりますが、われわれは警告のあるなしにかかわらず、自分の問題として常日ごろ保安確保に全力を尽くしておるのでございます。  災害絶滅の第一は、経営者従業員保安確保に対する万全の心がまえにあると存ずるのであります。一人の不注意あるいはちょっとした作業誤り等により大きな災害を惹起し、たっとい人命を失うことを考えるとき、炭鉱に働く者すべてが常に人命尊重を念頭に深く刻み、そうして安全確保に細心の注意を一瞬たりとも怠らないことであります。これは、友を愛する友愛の精神と、徹底した保安教育によりつちかわれるものでございます。  次に、保安施設充実であります。  最近新しい保安技術機器開発も進んでおりまして、その坑内に適合した十分な施設を整備することが必要でございます。しかし、これはあくまで各人の万全の心がまえの上において初めて役立つものであることを肝に銘ずべきでございます。  施設充実のためには多額の資金を必要としますが、炭鉱はこの資金確保に苦労しております。最近におきましては、諸先生方の御尽力によりまして、国として保安専用機器についての補助、四十四年度よりは密閉、ガス抜き等に対する補助、さらに四十五年度よりは充てん促進に対する補助が考えられておる等、助成措置がとられてまいりましたが、このことは業界として感謝しておる次第でございます。しかし保安施設はこれで十分ということはないのでございます。したがって、助成対象拡大補助率引き上げ等、なお一そうの助成強化をお願いしたい次第でございます。  以上簡単でございますが、われわれは保安問題は一刻たりともゆるがせにせず、災害絶滅を期しておるものでございますが、これに関連する助成についてこの上とも御高配賜わりますようお願い申し上げて、私の口述を終わります。
  8. 平岡忠次郎

    平岡委員長 次に、舟橋参考人にお願いいたします。
  9. 舟橋要

    舟橋参考人 ただいま指名されました北海道舟橋であります。  きょうは、われわれ石炭業界にとって最も大切であり最もおそるべき保安の問題で意見を述べよ、こういうことでございます。先ほどから石炭協会大槻さん、われわれの仲間の連合会植田さんから申し述べたことで、ほとんど保安に関する限りはもうきまっておるのですから要が尽きたと思うのであります。なお二、三の点を申し上げておきたいと思いますので、お許しを願いたいと思います。  石炭問題については諸先生方格別の御配慮をいただいておりますが、本日は、保安に関しまして意見を申し上げる機会をいただきましたことを厚くお礼を申し上げます。  保安に関する要望を申し上げる前に、私ども企業特質保安観念について一言申し上げたいと存じます。  先生方には御承知かと存じますが、私ども企業体独立中小炭鉱といって、いわゆる系統のない自立自存炭鉱でありまして、すなわち、経営者の家も資産も企業と運命をともにしております。かりに重大災害でも万一発生するなら、すなわち閉山につながるばかりでなく、破産につながるのでございます。したがいまして、保安に関しては自分の健康以上に日夜細心の注意努力を傾注しておる次第であります。すなわち、従業員一同もこの企業特質を自覚し、あるいは保安競争、入坑前後の教育等を積み重ね、保安意識高揚訓練強化を毎日の、ごとくはかっておるのでございます。幸いにいまだ大きな災害発生もなく今日に至っておりますことは、この精神の透徹したことと鉱員一同が十分にこれを守っておるということを申し上げて差しつかえないと存じております。今後も一そう努力を重ね、防いでまいりたいと存じております。  本日は時間の関係上、二点だけについて要望を申し上げたいと存じますので、よろしく御検討、御配慮のほどをお願い申し上げます。  まず第一点は、基本的な保安確保体制資金に関連した問題であります。  すなわち、保安構造と申し上げますか、いわゆる骨格構造安定整備保安環境の要諦であることは申し上げるまでもございません。しかしながら、現状資金事情では十分に掘進を延ばすことができません。たまたま断層、ガス等に遭遇した場合にはまことに不安定な生産となり、かつ災害につながる要因ともなるのであります。したがいまして、二カ年ぐらい先までの掘進ができておれば、災害根本的排除ができるばかりでなく、生産安定化にもつながると思うのでございます。この基本的なことの解決が保安確保の条件であるので、ただいま実施中の坑道進補助金制度拡大とあわせて、さらに前向きに合理化事業団より掘進増強のための融資措置検討していただきたいと思います。  次に、第二点として保安若年労働者確保対策であります。御承知のごとく、逐年老齢化し、かつ不足がちな労働事情は一面保安阻害要因ともなっておりますので、若年層確保積極的対策として炭鉱就職促進手当制度というものを検討していただきたいのであります。すなわち、坑内員として三十歳以下の者は、炭鉱に就職し三年ないしは五年勤続した場合に、三十万ないし四十万の特別手当が支給されるよう、雇用促進とともに定着化と質の向上をはかるようにお考えおきを願いたいと思うのであります。これがためには、一部は業者においても負担することはやむを得ないと存ずるのですが、石炭特別会計に予算化する措置検討していただきたい。保安は口ばかりで何ぼ申し上げても、こういうことが実行されない限りは常に災害が伴うものであります。  私は、これらを考えまして、ぜひこれはひとつ実行していただきたい、こういうように存じておるわけでありまして、時間の関係上、以上二点について簡単に申し上げまして、よろしく御検討くださいまして実行していただくようにお願いいたしまして私の陳述を終わります。ありがとうございました。
  10. 平岡忠次郎

    平岡委員長 次に、佐藤参考人にお願いいたします。
  11. 佐藤一雄

    佐藤参考人 私は、炭労事務局次長佐藤でございます。  諸先生には日ごろから石炭問題について格段の御配慮をいただいておることについて感謝を申し上げたいと思います。本日は、また、石炭産業の安定は保安確保がない限りあり得ない、こう主張しております私ども保安についての所信を述べる機会を与えてくださいましたことについて、厚くお礼を申し上げたいと思います。  また、去る九月の二十二日、古河下山田鉱において十四名のとうとい人命を奪った大災害発生に際して、さっそく現状にかけつけられ、災害状況調査をされ、十月の九日に特別対策委員会を開催願って、その事故原因等にメスを加え、再び起こしてはならない災害対策に取り組まれていることを感謝するとともに、私ども生命の不安に悩まされておる炭鉱労働者にとって、検討された結果に大きな期待を抱いていることを冒頭お伝え申し上げておきたいと思います。  保安問題の所信を申し上げる前に、この機会下山田災害について一言触れさせていただきたい、こう思っております。下山田災害発生をいたしましてから、私ども現地災害対策本部設置いたしまして、罹災者の救出はもちろんのこと、その後の保安対策について原因の究明とあわせて今日まで検討を続けてきておるところであります。  対策委員会下山田災害について出しました基本的な態度と申し上げますのは、災害の直接原因は、現在水没をいたしておりますので、取り明けをしなければその原因は明確に断定することはできませんけれども発生をいたしました下山田坑内状況調査をした結果、下山田災害というのは起こるべくして起こった災害である。特に保安を議論する以前の問題が現場調査で明らかになっておりますので、そういう立場古河経営者に対しましてその責任を強く追及をしよう、こういう結論を出しておるところであります。  坑内状況の一端を申し上げますならば、本来、完全携行しなければならないガス検定器休憩所にぶら下げておったり、あるいは携行を義務づけられておりましたCOマスクが、現場鉱員に至るまで休憩所に置いて作業しておるという事実、さらにガス自動警報器等が、所定の設置しなければならない個所に設置をされておらなかったという問題、さらにまた管理体制で一言申し上げますならば、四つ現場に一名の係員しかおらないで、四つ現場ともそれぞれハッパ作業等を行なっておるという問題等現場の中にありましたし、また保安員等ガス測定をした際に、ガス量のかなり多くあったことを検知をいたしましたけれども、当日の保安日誌というのは、残念ながら正しくガス量があったことを明記しておりませんでした。そういう下山田実情から申し上げまて、私どもは、災害というものは起こるべくして起こったものだ、こういう結論を出したところであります。特に坑内のいわゆる通気とかあるいは坑道展開採掘方式という骨格構造というのはきわめて不備であったわけであります。そういう骨格構造の問題あるいは日常保安体制について結論を申し上げますならば、昨年の十二月に出されました炭鉱保安確保というのは、一にかかって経営者姿勢にある、こういう保安答申現地ではそのまま生かされてはおらずに、いわゆる保安軽視の傾向が非常に強くなってきておる、こういうことが言えるのではないだろうか。また一つは、坑内骨格構造のおくれが、下山田のような大災害を誘発をしたということを結びとして申し上げられるのではないだろうか、このように考えております。  ふり返って、四十三年以降今日まで全国発生をいたしました大災害の例、たとえば四十三年の一月美唄発生をいたしましたガス爆発、さらに四十三年の五月に同じく美唄発生をいたしました坑内火災、四十三年の七月に発生をいたしました平和の大災害、さらに本年五月に発生をいたしました歌志内の大災害等は、骨格構造のおくれが大惨事を引き起こした、いわゆる多くの罹災者を生むに至ったという実例等を考えてみますと、骨格構造のおくれと経営者姿勢というのは、保安確保の上で欠くことのできない大きな要因ではないか、このように考えておるところであります。私ども炭労といたしまして、八月から約二カ月間にわたりまして、二十数炭鉱についてそれぞれ調査団を派遣して鉱内の事情等について調査を行なったわけでありますが、この二十数炭鉱のすべての炭鉱において、坑内骨格構造のおくれというのが非常に顕著に出ておるわけであります。もちろん、経営者姿勢にまたなければならない日常保安確保の面というのも必ずしも十分でない。特にビルド炭鉱だといわれておる三井三池炭鉱についても、COマスク携行やあるいは自動警報器設置というものも十分されておらないという現場状況に接したわけであります。  全国の掘進のおくれというのは、ことしに入りまして、保安計画等の中で保安局等においても十分調査をされたことと思いますけれども、数年前から見ますと、年間の掘進の能率というのは大体半減をしておるというのが実情であります。この骨格構造のおくれというのは、御承知のように、たとえば払いに例をとりますと、前進払い方式採掘をする、そういたしますと、坑道の保持が非常に悪くなりまして、いわゆる坑内に送られる通気の量が、ガスを十分排除しきれない通気量しか送れなくなってくる、こういう問題があります。したがいまして、風量の増大によって通気の量をふやそうとすれば、風圧の増加を招いて自然発火を誘発する、そういう循環になってまいりますので、骨格構造のおくれというのは、単に下山田ばかりではなくて、美唄歌志内、平和、今日調査をいたしました二十数炭鉱についてその現実を見ることができるわけであります。したがいまして、私どもの視点から申し上げますならば、全国炭鉱というのは、構造的な面から見て保安上まさに一触即発の危険な状況にあるのではないのかという結論さえ調査団の結果として出したという状況等について、諸先生方に御報告申し上げておきたい、こう考えております。  以上のような坑内現状から、私ども保安確保といいますか、災害防止していわゆる保安確立をはかり、そして産業の安定を確立をする、こういう点からするならば、炭鉱保安を国家の責任において管理をしていただきたい、こういう希望があります。そのために、さしあたり早急に坑内骨格構造委員会等を国の責任において設置をしていただきまして、現在稼働中の全炭鉱について坑内骨格構造現状問題点を明らかに浮き彫りさしてもらって、その改善の具体的な計画をこの委員会の中で樹立をする、こういうことをしていただきたいものだというぐあいに考えておるわけであります。もちろん、先ほど申し上げましたように、坑内骨格構造上特に危険のおそれがある、こう判断される炭鉱については、人命尊重のたてまえに立ちまして、一定期間生産を停止をして坑内の掘進を進め、その改善に当たるという緊急処置等についても、国の責任において御指導願いたい、こういう保安確保上の問題として意見を申し上げておきたいと思います。  当面する保安問題として、たとえばガス中央監視装置導入等についても積極的に諸先生方の中で御検討願って、この導入について御尽力をいただきたいものだというぐあいに思っておるわけであります。特に骨格構造の問題で、骨格構造検討委員会という一つのやり方を御意見として申し上げましたけれども、問題は、十分な検討を行なうと同時にすみやかにその実行をはかられなければならないという坑内の現況にありますので、単に検討だけではなくて、この実行をどうして進めることができるのかということに重点を置いてもらいたいというぐあいに考えておるわけであります。今日、保安行政等についてもかなり積極的な姿勢でその指導に当たっておりますけれども、経営方針の異なる多くの個別企業に、骨格構造問題を含めて、単に行政的な指導だけでは不可能であるというぐあいに私どもは判断をしております。  一例を申し上げますと、昨年の八月に国会で決議をされました保安日設定の問題というのは、約一年間かかりましてようやく保安日をつくろうということにいわゆる保安協議会としては結論を出したわけであります。その後、保安日の設立をめぐりまして、労使間で約二カ月間団体交渉が行なわれまして、その結果、ようやく九月の末に三十分の保安点検という保安日が設定をされたわけでありますけれども、九月の三日に設定をされた保安日ですら、今日まだ各山において実行がされておらない、こういう現況から考えてみますと、骨格構造改善するという大きな課題がいわゆる検討委員会結論として打ち出され、個別企業の経営方針に沿うて遂行させようとする期待は、おそらく、いま申し上げましたように保安日ですらその期待がなかなか報いられないわけでありますから、とても骨格構造改善という大きな課題というのは、個別の企業やあるいは各資本の方針によっては実行はできないのではないか、このように私どもは考えまして、保安の問題は国の責任において遂行してもらう、保安は国の管理下に置いてもらいたい、こういうことを保安立場から申し上げておるわけであります。  幸いにいたしまして、鉱業審議会の中で体制委員会設置をして、八月末に答申をいただくということになっておりますので、骨格構造というのは単に保安だけではなくて、石炭産業の安定をはかる、企業の安定をはかる、こういう意味からも非常に重大な問題でありますから、体制委員会等の中にもこの実行方法について、どの機構が、どんな方法が実行ができるのかという立場で御検討を願いたいものだということを強く御要請申し上げるわけであります。  最後に、下山田災害に伴いまして、下山田鉱の閉山という問題も巷間うわさをされておるわけでありますが、十四名のとうとい人命を失い、さらに現地の組合員として災害後の悲しみに今日まだ置かれておるわけでありますから、追い打ちをかけるように下山田鉱の閉山という、こういう課題が現地の組合員に提案されないように、先生方の中で十分政治的にも御判断を願いまして、下山田の存続等についても特段の御配慮をお願いしたい、このように考えておりますし、新聞紙上、国会の解散等も流れておりますわけでありますが、炭労傘下の各支部の中では、来年の三月までにかなりの閉山が出るのではないのか、こういううわささえ出ております。特に、昭和四十四年の閉山炭鉱というのは、石炭政策の面でわれわれが理解をしている以上の多くの閉山炭鉱を出しておりますので、政治のいわゆる空間、政治のこのすき間の間に石炭政策閉山という問題が推し進められるということだけは起きないように、先生方に特段の経過措置等についてお願いを申し上げまして、保安に対する意見としたいと思います。
  12. 平岡忠次郎

    平岡委員長 次に、早立参考人にお願いいたします。
  13. 早立栄司

    ○早立参考人 私、全国石炭鉱業労働組合の書記長の早立でございます。  先生方にはいつも石炭問題について格段の御検討、御努力を賜わっておりまして、厚く感謝を申し上げます。  ことしの五月に石炭関係の諸法案が国会で成立するに際しまして、私ども炭鉱の労使の代表がこの石炭対策特別委員会に呼ばれまして、先生方に考えを申し述べたのでありますが、それは、それぞれニュアンスの違いはありましたけれども、とにかく今度のこの新しい石炭政策をてことして炭鉱を立て直すために一生懸命がんばってまいります、労使が協力して保安確立し、災害をなくし、安全な魅力ある炭鉱をつくるべく一生懸命取り組んでまいります、という決意を表明したということであると思います。そして同時に、そのような決意の上に立って今後の政策的なアフターケアについて各面にわたって御要望申し上げたということになると思うわけであります。  私たちは今日まで文字どおりその決意の上に立って取り組み、努力してきたわけでありますが、しかしながら石炭産業現状は必ずしも当初期しましたような軌道に乗っておるとは言えない状況にあるわけでありまして、特に保安面につきましては、その後も相変わらず東天災害発生をし、そしてそのことが、その炭鉱はもとよりのこと、他の炭鉱の将来についても暗い影を投げかけるという要素の一つにさえなってきておるということを私非常に残念に感じておるわけであります。  私たちはもちろん今後もさらに一そう先ほど申し上げましたような決意のもとに炭鉱の再建と炭鉱労働者の生活の向上、しあわせの増大のために取り組んでいく考えでありますが、そのような決意を重ねてここで表明を申し上げますとともに、そのような立場から本日御下問のあった炭鉱保安問題について一、二申し上げたいと存じます。  私たち全炭鉱炭鉱保安確保について考え、同時に実践を期しておる方針の一つは、いままで中央鉱山保安協議会やあるいは石炭鉱業審議会の答申なり意見として出された事項、同時にまたそれらに関連して国会等において決議されました事項等を完全に確実に実施をしていくことであると思います。  すなわち、昨年十二月の中央鉱山保安協議会から出されましたあの保安確保に関するところの方針でありますが、これは昨年およそ一年がかりで中央鉱山保安協議会としていろいろ炭鉱保安の抜本的な対策確立すべく検討してきたその結果として答申が出されたわけであります。特にその前提として、炭鉱における災害発生要因として坑内骨格構造の整備がたいへんおくれているということ、あるいは保安機器施設の整備が不十分であるとか、保安技術現場の適用のおくれがあるとか、さらには保安教育の不徹底、鉱山労働者の保安意識の欠除、規則違反の反復、職場の規律の乱れがあるというようなこと、また保安管理体制の運用が不十分であるというようなことを鋭く指摘をされまして、その上に立って、そういう面についての対策を打ち出したのが、この昨年十二月の中央鉱山保安協議会の答申であると思います。  同時に、また、その答申の趣旨を受けて、石炭鉱業審議会の石炭新政策に関する答申の中でも、これらについての面が十分取り入れられ、特に炭鉱経営者に対する自主保安体制確立について、さらに一そう強力に努力することを強調すると同時に、それを助成するための政府としての措置助成強化というような面が答申で出されてきておると思うのであります。  したがいまして、私どもは、そのような答申に示された方向、示された事項を、まさに確実に完全に実施をしていくという立場に立って、経営者はもちろん、労働者としてもなすべきことをなさねばなりませんが、同時にまた、政府の行政面においても、そのような答申を完全に実施する立場から、それぞれ必要なる措置強化していただきたいと考えるわけであります。  同時に、私たちは、いま申し上げたように、そのような答申の方向というものを完全に実施をしていく立場から、具体的に以下若干の事項を申し述べてみたいと思います。  一つは、中央段階、いわゆる行政面についてでありますが、監督検査の際は、保安計画に基づき操業が行なわれているかどうかということを重点的にとらえるとともに、保安生産の均衡がとれた操業が行なわれるように指導を強化すること。第二に、法規違反に対しては、作業停止命令、改善等を厳正に行なうこと。第三に、石炭新政策に基づく助成については、保安状況を十分考慮して行なうこと。第四に、保安法規について、石炭鉱山近代化、新技術に即応した法規とするための抜本的な改正を行なうことを要求をし、また、企業における経営者の問題としては、第一に、保安計画の作成にあたっては、必ず労働組合と協議し合って合意を得るようにすること。第二に、坑道掘進の促進をはかり、原則として盤下坑道によるところの後退式採炭法を採用すること。第三に、保安生産の均衡を維持し、安定的操業を行なうため、主要坑道は一年、沿層坑道は三カ月程度の先行掘進を行なうとともに、常にかわり切り羽を用意しておくこと。第四に、ガス湧出の多い炭鉱については、ガス抜き対策のための掘進を促進すること。第五に、ガス、炭じん爆発、坑内火災等の災害発生に際して、被害を最小限度にとどめるための独立分流を確立をすること。第六に、自然発火防止のための巡視体制あるいはベルトコンベヤー運転時の監視体制、さらに電気機器及びケーブルの監視体制等、巡視体制の再検討と巡視の強化をはかること、等を要求をし、さらに労働者自体の問題としては、従来から実施してきておるところの保安診断提案運動の拡充をはかるとともに、法規の違反や危険だと思われる現象に直面した場合には、適切な措置を得るまでそこに就業しないという、いわゆる危険職場への就業拒否の方針をもって取り組んできておるのであります。  したがいまして、以上申し述べた事柄が、さらに一そう効率的に効果的に実施できるよう、法的、行政的あるいは財政的な助成をこの際お願いを申し上げる次第であります。  最後に、もう一点付言をいたしたいと思うのでありますが、先ほど来しばしば出ておりますように、先般の福岡における古河の下山田炭鉱災害につきまして、この調査に当たられました衆議院の多賀谷先生が、この炭鉱においては保安の初歩的なことすら実施されておらなかった、まことにけしからぬということを鋭く指摘をされました記事を私は新聞で拝見しました。まことにがく然といたしたのであります。私自身、下山田炭鉱を見たことはありませんので、先ほど炭労の代表の参考人からいろいろ調査の結果等述べられましたが、私自身は詳しいことを承知しておりません。しかし、もしそのような指摘どおりであったとするなら、経営者並びにその労働組合はまことに許しがたき怠慢であったといわざるを得ないと思うのであります。そして私たちはそれ以来そのことを他山の石として、保安に妥協なしということをあらゆる機会に強調し、組合に徹底をはかりつつあります。保安に妥協なしというかまえのもとに、先ほど来述べましたような私どもの方針の実践を期しておるわけでありますが、ただそのようなかまえによる保安の追求は、そのため場合によっては、ある炭鉱の経営維持を困難にし、閉山のやむなきに至るという現象を派生するかもしれないと思います。もちろん私たちは、炭鉱労働者の職場を確保する見地から原則的には閉山に反対でありますが、しかしながら、それだからといって保安に手心を加えることはできません。むしろ保安維持に問題があるとするなら、そのような山はあえて閉山することをも私ども自身決意をしなければならないとも考えておるわけでございます。  以上、決意の一端をもあわせ申し上げまして私の陳述といたしたいと思います。
  14. 平岡忠次郎

    平岡委員長 最後に、遠藤参考人にお願いいたします。
  15. 遠藤一三

    遠藤参考人 私は全国炭鉱職員労働組合協議会遠藤でございます。  日ごろ先生方には石炭産業再建策のために特段の御尽力をいただきまして、本席をかりまして厚くお礼を申し上げる次第でございます。  保安確保は、人命尊重という基本的命題上からはもちろんのことでございますし、また石炭産業の再建のためにも不可欠な要件であり、特に昨今の労働力事情からしてその必要性がますます重要な課題となっておりますのは御承知のとおりでございます。このような背景からいたしまして、石炭産業関係する者はそれぞれの立場に立ちまして懸命な努力を払っておりまして、このため本年十月末における死亡者数は百六十六名と、昨年の同期に比しまして七十三名の減少となっており、一応の実績を示しておるわけでございますが、私たちの希求するものとはなおほど遠い状況にあるわけでございます。  保安確保策につきましては、先ほどから各参考人が述べておられますので、私は保安確保の基本的事項についてのみ簡単に申し上げることといたしたいと思います。  まず第一に、交通災害にも見られますように、規則を含めましたルールを守るという問題でございます。第二には、確固たる経営基盤の醸成であろうかと思います。最後に第三点目としまして、坑内条件の整備ではないか、このように痛感しておる次第でございます。  第一の課題は、保安統括者をはじめとする炭鉱に従事する者の保安意識並びに基本的技術にかかっているといっても過言ではないのでありまして、したがって徹底した保安教育がぜひ必要であるわけでございます。しかしながら、現在ではきわめて不十分でございまして、この際保安教育の具体的な義務づけ、そしてこれの完全な実施、さらにはこれに対する国の施策のあり方等、画期的な対策の樹立を強く感ずるものでございます。  第二の課題につきましては、第四次石炭政策によってかなりの施策が打ち出されておりますが、はたして真の再建策なり得るやにつきましてはきわめて危惧されるところでございまして、したがって一そうの施策の拡充を強く望む次第でございます。経営基盤の確立重要性は、申すまでもなくただ単に物的面に影響をするばかりでなく、従業員をして陰うつムードに追い込み、あるいは焦燥感をかり立て、このことがひいては災害を惹起する要因になるからでございます。  第三の坑内条件の整備につきましては、施設設備面にわたりいろいろございますけれども、現在最も喫緊とされますのは坑内骨格構造の整備であると思います。これが重要性は過去の重大災害が如実に物語っております。しかしながら、炭鉱の置かれている実情からして必ずしもよい状況とは言えません。このことは、当面の出炭に追われ、その余裕がなく、改善に踏み切れないからと思います。したがいまして、これが解決策といたしましては、国として一定期間中に整備改善をはかるという強い姿勢が必要であり、このためきめこまやかな、そして画期的な施策が必要と思われます。  いずれにいたしましても、懸命なる努力を前提とした自主保安と、国の有効適切な指導、施策が相まったことにより、逐次炭鉱保安改善されるものと確信するものでございます。  なお、具体的な対策につきましては、御質問の段階で述べさせていただくことといたしまして、非常に簡単ではございますが、私の陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  16. 平岡忠次郎

    平岡委員長 これにて参考人各位の御意見の陳述は終わりました。     ―――――――――――――
  17. 平岡忠次郎

    平岡委員長 これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、これを許します。岡田利春君。
  18. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 ただいま六人の参考人の方々から御意見を拝聴いたしたわけですが、私の今日の炭鉱保安確保に関する諸問題に対する認識と、きょう述べられた意見がまさしく一致していると実は拝聴いたしたわけです。したがって、あまり質問はございませんけれども、二、三点についてこの際重ねて御意見を承りたいと思います。  その第一点は、総じて述べられておりますことは、炭鉱生産構造というものが非常に不安定な状態に今日ある、こういう認識は労使ともに率直にいたしておるのではないかと思うわけです。  私は、この生産構造の不安定の原因というのは、長い鋭角的な合理化の連続、こういう中から特に今日の石炭企業の体質というものが非常に弱体化しておる。その弱体化に伴って生産構造の近代化、しかも生産構造の安定化の方向というものがなかなか確定できない状態にあるのがわが国の一般の単位炭鉱実情ではないか、こういう認識を実はいたしているわけです。  そうなってまいりますと、これからの石炭政策を進める上においても、炭鉱保安確保する両面から考えても、緊急に骨格構造の整備、そしてまたブロック別の後退式安定的な原則的な採炭方式を定著をさせる、こういう問題がわが国の石炭鉱業の安定と保安確保には欠くことのできない命題ではなかろうか、実はこういう認識をいたすわけです。そういたしますならば、政策の重点というものもやはりこの面にある程度くふうをして進めてまいらなければならないのではないか、こう私は考えます。こういう認識に立つ場合に、政策の手直しといいますかあるいはまた政策の追加と申しますか、そういうことがやはり積極的に意見として出されてけっこうではなかろうか、こう思うのでありますが、この点については大槻参考人から御意見を承りたいと思います。  第二の問題は、いま各炭鉱閉山が進められて、北炭の場合、三鉱業所、直接経営しているのは四鉱山、また三井の場合には三鉱業所、三山、さらに三菱の場合といえども、これは二鉱業所、いまのところは二山、将来三山になる。このように炭鉱数が非常に著しく減ってきているわけです。しかしいずれも経営の面から見れば、一つの単位鉱業所、単位炭鉱保安上の問題ができて、これに重点的な対策を立てる場合に、全体的な企業の経営という問題を度外視して考えることはできないのではないか。思い切ってそういう重点政策を進め、そういう骨格構造の整備をしてそれを重点的にやるとすれば、いまの炭鉱企業の体制では非常に困難が伴ってくるのではないか。これは一面の角度でありますけれども、いろいろ理由はございますけれども、そういう面から石炭産業の体制的な問題を本質的に検討する場合には当然出てくるのではなかろうか、こう思うのでありますけれども、この点について北海道舟橋参考人から御意見を承りたいと思います。  第三の問題は、労働組合側からそれぞれ意見が述べられました。私は、今日の体制で基本的な問題の解決はなかなか容易でないということはおそらく認識が一致いたしていると思うのです。そういたしますと、生命を守る緊急手段的なこの命題は、何といっても労働組合が積極的に自分の生命を守るという徹底した立場に立つ以外にないのではないか、こう私は認識をいたします。そういたしますと、経営全体に参加することは別にして、保安の面については完全に積極的に参加せざるを得ない状態に今日の炭鉱労働者は追い込まれておるのが現状ではなかろうか、こう私は判断せざるを得ないのであります。  御承知のように、いま法十五条では――これは昭和三十八年、三池の災害を契機にして、労働者の保安監督に対する参加の問題が非常に大きな政治問題になりまして、保安監督員補佐員制度、実はこの名称は私自身が編み出した名称でありますけれども、そういう形で一応法改正を行なった経過がございます。しかし今日もし重大災害があれば、炭鉱そのものが閉山につながるという認識は労使ともに一致いたしているわけです。そういう角度から考えれば、保安の面には積極的な参加というものが当然要求されてくる時点ではなかろうか、こう私は思うわけです。いわば今日の法体系のもとでは、保安監督の問題については、サゼスチョン、勧告は労働者から選ばれておる保安監督員もできるというところまで少なくともいかなければならないのではないか、これはドイツにおいてもフランスにおいても、国営、国営外の炭鉱においても、そういう点については相当積極的に意見を反映させるという状態になっておりますし、わが国の炭鉱の置かれておる現状が、そういう保安問題を度外視して炭鉱の存続はないということになれば、少なくともこの面においては思い切った認識の統一をはかり、必要ならば法改正をして、こういう具体的な提言があってしかるべきではないかということを私は考えるのでありますけれども、これは労働側の参考人からこの面についての端的な御意見をこの機会に承っておきたいと思います。  以上です。
  19. 大槻文平

    大槻参考人 ただいま岡田先生の御質問がございましたが、坑内骨格構造と申しますか坑内生産構造と申しますか、そのところに間然するところがある理由は、やはりお話しのように、長い間の合理化によりまして炭鉱会社そのものが非常に疲弊している、そういうことが一番大きな原因であることは私も大体同感でございます。しかし炭鉱を経営している者が、保安を軽視して保安はどうでもいいということでやっているわけではないのでありまして、人命尊重という観念に立脚いたしまして、悪いところは逐次改善していくという方向で、みんながそれぞれ熱心にやっておるということは私は言えると思うのであります。  それではその骨格構造を理想的な形にいますぐここでするためにどうしたらいいかということになりますと、これは相当理想的なものにするということになれば、かなり多額の金も要することと思いますので、やはり保安に支障のない程度にそれを逐次改善していくという方向で進めるべきものではないかというふうに考えられます。したがいまして、現在の炭鉱が多額の補助を受けておる状態ではございますけれども、もしかりにそういった面に追加的な保護をしていただけますならば、これにこしたことはないというふうに考えておる次第であります。
  20. 舟橋要

    舟橋参考人 現在の企業が現在のままでどうなのかということであろうと思います。私は一昨年の石炭の骨格構造の改正のときから強く打ち出しているのは、少なくも各企業ごとである限りは、これはどういう施策も不十分である。そこで私は、地区統合、北海道北海道で一本にし、九州は九州で一本にし、常磐は常磐で一本にした、三地区企業体にすべきものである、それをすると同時に、いまの保安の問題、あらゆる問題を検討して、保安の心配もない、いわゆる掘進の浅い、掘りやすいところから掘っていく、むずかしいところは保護坑道か何かにして残しておく、そして研究して危険性がなくなって掘るべきものである、こういうことを強く主張しておりました。今日でもその思想は変わっておりません。  しかしながら、ちょうどたまたま炭労さんが国営論を出された。それでこれがちょっと影が薄くなったのでありますが、私は、国営論もいまの私の意見もそう変わりがないと思うのです。しかし、今日の日本の経済組織の中で直接炭鉱だけを国営にするということはあり得ない、むずかしいと思う。したがいまして、私は自由企業の最高限度の形をとってこれを施行すべきものだ、この点を強く主張しております。そうすることによって、それじゃ保安の問題が絶滅するかといっても、それとは多少かけ離れますけれども絶滅する方法をとるにしてもきわめてとりやすいのであります。  今日の災害の中で、山はねとか、あるいはまだ研究が十分でありませんが、突発ガスという重要な問題がありますが、これらの問題も逐次研究はしておりますが、そういう問題をのけたほかの施策は、先ほど申し上げたように、少なくも一年半なり二年ぐらいの掘進を進めて、それで十分に研究していくならば、過去のような大きな災害は起こさなくても済むのだ。  それから同時に、坑道が下へ下へと延びていくおそれがあります。九州あたりはずいぶん深くなっておりますが、北海道はまだ浅いのでありますが、これらのことを考えて、どうしても企業体の合同が必要である。そしてこれをやはり自由企業のもとで施行するのだ。  もう一つは、先生方はもうすでに御承知でもありましょうが、わが国の輸出産業の一番宗たるものは鉄でありますが、現在の日本では、製鉄の原料の原料炭がもう枯渇して――枯渇といったら極端でありますが、非常に不足して困っております。これは豪州との契約が一五%ショートしている。さらに八%の灰分のところを一五%も一八%もあるものを受け取らざるを得ない状況です。豪州が千日も雨が降らないので洗えない状況で、それをあえて受け取って使っております。これが電力でありますれば、油にかかわるとかその他ありますが、鉄である限りは石炭は原料です。この原料を供給するのには、現在のところは九州の四つの原料炭の山、さらに北海道はこれから原料炭の山の開坑ができます。しかし、政府は常に、百万トンの山を三つつくるのだ、四つつくるのだと言っておりますが、百万トンの山をつくるのには三年も四年もかかる。それより、私どもは戦時中にどうしても石炭が要るということで、小型坑道をつくって、五百万トンからの石炭を十七年から十九年に増産をした実績を持っております。そういうことを考えまして、ほんとうに鉄の石炭が大事だということになれば、それらの問題を十分に考えて私はやりたい。それには少なくも現在の個々の企業ではやれないのであります。そういうこともひとつ十分に御検討願いたい。そういうことでございます。
  21. 佐藤一雄

    佐藤参考人 岡田先生の、労働組合の立場から保安問題についてはかなり積極的に保安管理といいますか保安の問題に介入をすべきではないのか、こういう御意見については同感であります。ただ下山田災害で御存じのように、あの災害現場については現地の労働組合長を含めて再三にわたって指摘をし続けてきたところであります。その結果改善がはかられたのかと申し上げますと、災害調査結果で御承知のように、あの採掘方式は変更がなかったわけであります。私どもが所見の中で申し上げましたように、日常保安管理といいますか保安の監視は、労働組合も含めて十分参画ができるようになっておりますし、相談も受けておるわけでありますけれども、根本問題のいわゆる基本になるべき保安計画であるとかあるいは骨格構造の整備、こういう問題の主導権といいますか裁量というのは鉱業権者側にあって、なかなか労働組合の意見が経営の方針まで変えることはできないというところに保安上の問題点があるというぐあいに考えております。先生が名前をつけられたといわれる保安監督員補佐員の問題でありましても、いわゆる指摘はできますけれども、具体的にその指摘なり勧告を受けて実際に作業に指示を出すというのはいわゆる鉱業権者側が持っておる職制でありますから、そういう点では必ずしも保安確保という点で労働組合の監視体制が実行段階に及ばない限りなかなか確立が困難ではないのかというぐあいに考えておりますので、先生の趣旨に同感であると同時に、その徹底とその方法についてひとつ今後御検討を願いたいと思っております。
  22. 舟橋要

    舟橋参考人 ちょっと追加があるのですが、よろしいですか。――私はいまの問題をもう少し掘り下げて研究を急いでする必要があるんじゃないか。それにはこの前の国会の付帯条件として、いわゆる体制部会というものをつくって検討するということで、あの国会ですべての四十四年度の予算が通過したはずです。したがいまして、私は、その結果がどうなろうと、どうかひとつ体制問題を取り上げて国会のほうで御審議を願いたい。私いつも残念なことには、過日も北海道に来られるのが委員長さん以下社会党の先生と公明党の方々で、自民党さんは一人も来ておらない。ここに神田先生が来ておるから申し上げますが、どうももう石炭にはしてやったからいいじゃないか、こういう気持ちが残っているのじゃないか。私はまだエネルギー問題はそんな簡単に解決のつくものじゃないと思うのです。全部外国のものによっていたら、日本がエネルギーで満足できるものじゃない。そうすれば必ずや経済に及ぼすような大きな値上がりとかあるいは問題が起きるのです。原子力の発電所ができるまであるいは原料炭が相当に国で確保できるまでの間は、やはりいまのように豪州からかってなまねをされて、一五%ショートするわ、一八%のやつをとらなければ、やめるんだというようなことを言われてどうにも手のつけようがない。そういうことのないように、石炭の問題で三千億か四千億国が使ったって、これはたいしたことはない。遠慮なしに申し上げますと、石炭は犠牲になって鉄鋼や電力が伸びた。そういうことも考えたら、この問題は早急に解決すべき問題だ。いま鉄鋼自体困っている。何とかならぬかということで北海道も協議を受けておる。そういうことなんで、どうかひとつ体制問題を急速に取り上げて検討する、こういうことをしていただきたいと思います。以上です。
  23. 早立栄司

    ○早立参考人 ただいま炭労佐藤参考人が申し上げましたことにほぼ同感でありますが、一言だけ付言をいたしますならば、言われるまでもなく、保安確保は何ものにもかえがたい人命尊重という問題と、先ほどから炭鉱経営者の代表の方方がこもごも述べられておりますように、重大災害発生すれば炭鉱自体が閉山であり、破産状態になるという問題でもありますから、炭鉱における保安確保ということは、労使対立すべき事項ではなくて、あくまでも労使全く共通の立場から追求していかなければならない問題だと思っております。したがって、そういう立場で労働組合なり労働者なりから具体的に指摘された事項等について、問題はその実施にあたって経営者のほうにちゅうちょがあるとするならば、労使共通で追及すべきこの課題に対していささか変な形なものになってきておると思うのであります。私たちはそういう趣旨のもとに、これは労使の対立ではなくて、労使共通の問題としてあくまでも追求していかなければいかぬし、そういう意味での労働者からの事保安に関する共通課題としてのこの提言、指摘については、ちゅうちょなく経営者のほうがそれを実施していく、そういう姿勢にまず完全に徹していくということが大事だと思います。もちろん先生も先ほど言われましたように、あるいは佐藤参考人が述べましたように、そういうことをより以上効果的に実施できるようないろいろな制度なりあるいは法的措置なりを御検討願うということが一番望ましいと思いますけれども、それだけにたよるのではなくて、経営者みずからの姿勢であります。同時にまた労働組合、労働者自体の姿勢に関連するということを一点付言しておきたいと思います。
  24. 遠藤一三

    遠藤参考人 現在労働組合なりあるいは労働者が保安確保に参加をするという問題につきまして、法的には、御承知のとおり各山元にございます保安委員会、それから労働者の意思反映をする方法としましての監督員補佐員という二つがあるわけでございます。私どもは中央炭鉱保安協議会の一員といたしまして、ことしの七月に、北海道の山、三つでございましたけれども、これらを調査の対象といたしまして私の見て来た範囲内で受けとめてまいりましたことは、これらが、きわめてということばは適切かどうかわかりませんけれども、適切に意思反映なりその他が行なわれている、こういうふうに判断をしてまいったところであります。しかしいままでの災害等を勘案いたしまするに、より積極的な参加は望ましいところでございます。ただ、その際制度上の問題をいろいろ論じたほうがいいのかという問題につきましては、なかなかむずかしい問題でございますけれども、むしろ私としましては、運用の問題で重視をすべきではないか、こういうように考えているわけでございます。具体的には保安委員会等におきまして、経営者はもっと積極的に保安に関する問題を労働者に提示をして、そして検討する機会を与えるといったような方法もあろうではないか、こういうように考えているわけでございます。
  25. 平岡忠次郎

    平岡委員長 田畑君。
  26. 田畑金光

    ○田畑委員 参考人各位にお尋ねいたしますが、いま舟橋参考人のお話の中で、この間の北海道調査には民社党も最後まで参加しておりますので、あなたの話の中にそれがなかったから、あらためてひとつ記憶を思い出すように御注意申し上げておきます。  それで、まず舟橋さんのお話を承って私も同感であると申し上げたいのですが、あなたのかねての持論であるいわゆる体制問題を出されたわけでございますが、地域的な統合の問題もけっこうだと思います。ただ問題は、そのことによっていまいわれている保安の問題がより改善されるかどうか、こういうことについて、地域的な統合というもののメリットをもう少し具体的に御説明いただければありがたい、これが一つです。  第二の質問として、それに関連しますが、石炭協会会長大槻さんにお尋ねします。協会会長というよりも、三菱鉱業の会長さん、こういうことでお尋ねするわけですが、先般三菱鉱業が北海道と九州に二つの鉱業所を設けられたわけですね。いわば石炭部門を分離されて、北海道と九州にそれぞれ別個の会社をつくられた。それを大槻会長が統合される、こういうことだと見ておりますが、石炭の分離ということは昨日の植村構想の中にも出ておる思想でありますが、今回、三菱鉱業が石炭部門を分離されたそのねらい、ないし、それによる今後の、協会長としてこういう方向にわが国の石炭企業をさらに指導していくというような気持ちをお持ちであるかどうか、この点です。  第三の問題として、これも大槻会長さんにお尋ねするわけですが、先般、北海道を視察いたしまして、いわゆる三菱鉱業で新鉱開発をされて、やがて操業に入る南大夕張炭鉱をわれわれは見まして、さすが三菱だな、こういう感じを持ったわけです。高度の近代的な施設設備され、あるいは高能率の生産施設を整備された。そうしてまた、今後の石炭経営の一番重要な点が労働力の確保である、こういう立場に立たれて、労働力の確保の面で一つの隘路である住宅問題等についても、新しい住宅をつくられて、そうしてこれから高能率、高賃金、魅力ある炭鉱づくりを意図されておるということはさすがである、こういう感じを受けたわけであります。ただしかし、だんだん承りますると、三菱大夕張炭鉱の望月社長のお話によりますると、労働力の確保の面に非常に苦労なさっておられるやに承ったわけであります。昨年第一線に部局を設けられて、労働力の確保を一生懸命になさっておられる。が、思わしくないということです。また、技能労働者養成のために鉱山学校なども設けられて、若い子弟の教育もなされておるように承りました。また、現在請負夫、組夫の中からの常用化のために努力をされておるが、これもそれほど成果をあげていないようなお話でもございました。あるいはまた、先般の炭鉱閉山に伴う閉山炭鉱からの離職者を再雇用するために努力を払っておられることも承りましたが、これも必ずしも期待どおりの成果をあげていない、こういうふうな問題でございまして、結局、こういうような問題というのは、要すれば、炭鉱というものが、今日坑内作業という特殊な条件にもかかわらず、労働力を吸引するだけの条件を備えていないその一番大きな問題が保安の問題ではなかろうか、こういう感じを持つわけであります。  先ほど大槻会長のお話の中にも保安の問題についていろいろ述べておられましたが、全く同感でございますけれども、ただ、炭労佐藤さんのお話を承りましても、保安日の設定、そうしてこの日は互いに一体となって総点検をしよう、また保安についてほんとうに真剣に取り組むという姿勢をお互い労使一体となってつくりあげよう、こういうような問題等についても、何か九月三日に保安日を設けられて三十分間やったが、それだけに終わった、その間、団体交渉なり労使の話し合いの中でもなかなか結論が出なかった、こういうことであります。保安の大事なことは、先ほど来皆さんのお話を聞いておりますと、国がこうやれ、予算をこうふやせ、これはもちろんわかりますけれども、やはり自主保安体制、労使が一体となって、保安こそすべての問題の先決だという姿勢が大事じゃないか、私はこういう感じを強くするわけです。私は、その点において、経営者も労働者も労働組合も、ほんとうに自分たちの生命だ、保安なくして山はもはややっていけぬのだ、こういうことを考えてみますならば、労使みずからがもっと保安に対して真剣に取り組むことが大事じゃないか、こういうことを私は考えるわけで、保安日の設定すら経営者のほうでああだこうだと時間をむだにするような交渉のあり方などというものは、真剣に取り組んでいない、私はそう指摘されてもやむを得ないと思っておりますが、この点について協会長あるいは植田会長さん、あるいは舟橋北海道石炭鉱協会長さんの御見解を承りたい、こう考えておるわけであります。  さらに私は労働組合の各位にも、いろいろお話がございましたが、保安委員会というのがありますし、先ほど来お話がございました保安監督員補佐員の制度というのもあるわけでございまして、保安法規の中では労働者の積極的な自主的な発言なり勧告の機会などが保障されておるわけでありますが、こういう制度についてなお不備があるとするならば、どういう点なのか、法律の問題なのかそれとも運用の問題なのか、この点について御所見を承りたいと思っております。  さらに、いろいろお話を承りますと、組合のほうからいろいろ勧告を出しても、経営者の皆さんがなかなか取り入れてくれない、こういうようなお話でございますが、それは予算の制約その他あるいはもっと本質的な保安に対する認識、意識の低さから、経営者が組合の要望なり勧告なりを取り入れないという面もありましょうが、こういうような点について、一体どこに問題があるのか、こういうことですね。  それから鉱山保安法の第三十八条を読みますと「この法律又はこの法律に基く省令に違反する事実があり、且つ、危害を生じ、又はそのおそれが多いときは、鉱山労働者は、その事実を鉱山保安監督局長若しくは鉱山保安監督部長又は鉱務監督官に申告することができる。」こういうような条文もございますし、その第二項には、「鉱業権者は、前項の申告をしたことを理由として、鉱山労働者に対して解雇その他不利益な取扱をしてはならない。」要すれば、経営者がやらなければ、鉱山保安法にはちゃんと国の監督権の発動を促す機会も十分法上は確保されておるわけでありますが、そういうような積極的な活動などについて、従来どのようになしてこられたのか、この点ひとつ労働組合の皆さんに御意見を承りたいと思います。  さらに私は、これは経営者の皆さん並びに労働組合の皆さんにお話を承って全部御指摘なされたことは、骨格構造の展開のおくれ、このことを指摘されたわけであります。全く私たちも同感でございまするが、この骨格構造の展開のおくれというものがどうすれば――どこに隘路があるのか、人なのか、技術なのか、金なのか、この辺をあわせてお伺いできれば幸いだと思っております。先ほど全炭鉱の早立参考人からは、具体的な数字などをあげて指摘をされておられましたが、これは組合のほうはけっこうでございますが、経営者の皆さんからこの骨格構造のおくれというものの原因は何なのか、人なのか、技術なのかあるいは金なのか、この問題について端的に御意見を賜われば幸いだと思っております。  最後に、昨年の中央鉱山保安協議会の答申あるいはまた石炭鉱業審議会の第四次答申、これを読みますと、保安の点については、特に、今後再建交付金を交付するにあたっては、保安計画を政府は審査し、保安計画がいいかどうかということをまず点検して、初めて再建交付金を支給するしないをきめる。このように勧告も出ておるし、今回、いまなされておる再建交付金の交付についてもそのような措置がとられておるわけです。したがって、保安の問題についても一歩一歩前進しておることも事実であろうと考えておりまするが、さらにこの勧告の中でいろいろ保安助成措置というものがあげられておるわけであります。その中で、すでに予算化されておるのは専用機器に対する補助ガス抜き補助あるいは密閉に対する補助、掘進坑道に対する補助金等はもちろんでありますが、この勧告の中で最後にまだ予算化されていないのが、先ほど大槻会長が指摘された充てんの補助金の問題だと考えております。やはり採掘あとの充てんをするということが、保安の面から見ても、生産の面から見ても、鉱害防止の面から見ても最も大事な問題であると私は見ておるわけでありまするが、幸い、鉱山保安局においては、来年度の石炭予算の中で保安の面についてはさらに金額の面においても新たな項目として充てんの補助金を要求しておりますが、この点について大槻会長のおことばにありましたように、当然予算化される問題だ、このように考えておりますが、一体業界において、現在の石炭企業の中において充てんということがどの程度実施されておるのか。またこれに対する認識なり理解はどの程度になっておるのか、この点もあわせて大槻会長なり植田さんなり舟橋さんから承ることができれば幸いだと思います。
  27. 平岡忠次郎

    平岡委員長 質問がたいへん多岐にわたっております。質問の相手方自身も錯綜していますけれども、整理するために、参考人の名簿に従いまして御発言をいただきたいと思います。初めに大槻参考人
  28. 大槻文平

    大槻参考人 ただいまの御質問のうち三菱鉱業の分離に関する問題に関しまして、三菱鉱業の社長としての資格でお答え申し上げたいと存じます。  私が三菱鉱業の石炭部門を分離するということを考えました第一の理由は、今次の第四次石炭政策の中で、経理面におきまして石炭部門と非石炭部門の経理を判然とさせろという一点がございます。これを突き詰めますと、やはり分離するということが一番すっきりした形ではないかというふうに考えたことでございます。  第二点は、私ども長い間三菱鉱業の中で、多いときには十六、七の鉱業所というものを一緒に経営してやってまいりましたが、組織が大きいと、従業員全体に親方日の丸的な気持ちがどうしても生まれてまいります。そこで私は、むしろ一山一社的な形にするほうが従業員全体の自立意識を高揚することになるのではないか。同時に、経営にあたりまして、一山一社の場合には非常に機動性のある経営ができる。何か一つのことをやるにしましても、多くの炭坑夫をかかえていますと、振り合いとか、向こうがこうであるからというようなことで、適切な機動性のある経営というものがなかなかできにくい面があるわけであります。そこで、こういう面から見て、この際自立意識を高揚し、そして機動性のある経営をするということが最も現状に適しておるのではないかというふうに考えたのが第三点であります。  第三点といたしまして、それでは分けた場合に、一山一社になった場合にデメリットがないかという問題でございますが、これはデメリットがあります。それは、先ほどから話に出ていますように、大きな災害を起こしたというような場合に、その山がつぶれてしまうおそれがあるわけでございます。そこで、私どもといたしましては、今次の政策によりまして、しかも残ります炭鉱が九州の高島と北海道の大夕張という原料炭の山でございますので、大体において自立できる、いまの状態でやっていけるというめどがつきました。そのついたということが分離につながるわけでございますけれども、その山で問題を起こした場合に、親会社として、分離会社が十分やっていけるというときに、できるだけ働いて親会社というものを強くしておく、そして子会社であるその分離炭鉱にもしものことがあった場合に、これを援助できるような姿勢にしておく、それにはちょうどいまが適切な時期ではないかというふうに考えたわけでございます。  第四点として、これはちょっと申し上げにくいことなんですけれども炭鉱会社が相当利益をあげたといたしましても、国の補助をもらっている関係で配当ができません。これから先十五年間というような長い年月、その間にはあるいはいろいろ考え方が変わってくるかもしれませんけれども、この十五年の間株式配当ができないということがはっきりしておるのでは、株式会社として意味がないんじゃないか。そこで私は、二つの炭鉱会社は、これは一〇〇%の子会社ですから、配当なしでもけっこうだ、しかし三菱鉱業の本体は何とか努力をして利益をあげて配当ができるという体制にしておきたい、これが理由でございます。  そういうようなことで十月一日から発足さしていただいたのでありますけれども現状において報告を聞きますと、高島も大夕張も、かなり、これは自分でやらなければいかぬで、もしものことがあったらたいへんだといういわゆる自立意識が従業員の中に漸次芽ばえてきておるという報告を受けておる次第でございます。  しかし、これから先は日本石炭協会会長の資格でお話しするのでありますが、それではおまえは全部三菱鉱業と同じような形に会社をするということを考えておるのかという御質問だったと思いますが、私はそうは考えておりません。そしてまた私どもの会社が分離できたと同じような形における分離は、どこの会社もできるという形ではないというふうに考えております。やはりその会社会社が最善と思う経営体制をとっていくべきであるというふうに考えておる次第でございます。  それから保安日の問題です。御承知のように炭鉱坑内というものは、極端にいうと一掘一進ごとに条件が変わっていくのでありまして、働いておる時間そのものが保安時間、保安日保安点検日であるべきでありますね。したがいまして、一日だけ休んで保安日としていろいろな坑内の条件その他を点検するということは必ずしも実情に合っていない、それはやらないよりはもちろんいいに違いないけれども、合ってない。そこでわれわれといたしましても、点検する、もちろん点検はするけれども、一日休む必要はないんじゃないかというところで、かれこれ団体交渉の題目になっておったように記憶しております。しかし、こういったところは私はみな十分その所定期間中にそれぞれ点検を行なっているんじゃないかというふうに考えております。  それから……。
  29. 田畑金光

    ○田畑委員 その次は、全体の骨格構造を云々するという話を皆さんうたっておりますが、もっと具体的にどこに問題があるかということを御説明していただきたいということと、充てん補助金問題。会長のお話にもありましたが……。
  30. 大槻文平

    大槻参考人 骨格構造の問題は先ほどもお話の中に出ておりましたように、私は、こうすれば一番いいということがわかっておったとしてもそれができないでおった炭鉱があったということは、やはり長い間の炭鉱の合理化、それによる疲弊、力がないというところが原因じゃないかと思います。しかし、悪いことは直さなくちゃいかぬ、安全性の高いものにしなくちゃいかぬということが根本でありますので、漸次これは改造するという方向に向かっていることは確かであるというふうに考えております。骨格構造をやらないでおる炭鉱はどのくらいあるかというお話でございますが、私全体としてそれだけの知識を持っておりません。  まあ大体そのくらいでございます。
  31. 田畑金光

    ○田畑委員 私の質問の中で、保安に対する昨年の答申の中にいろいろな項目をあげられておりますが、特にその中ですでに予算化されている中には坑道掘進費の問題であるとか、専用機器に対する補助金であるとか、ガス抜きであるとか、あるいは密閉とか、こういう補助金になっておりますが、採掘あとの充てんについてこれも保安の面から見て非常に大事なことであるから保安対象にすべきであるということが勧告の中に入っておるわけですよ。あなたの先ほどのお話の中に出ておりましたから、この点についていま各会社、企業等がこういう方式をどの程度取り入れておるか、この点ですね。
  32. 大槻文平

    大槻参考人 全部の会社のことについては私十分知っておりませんけれども、私の会社だけのことを申し上げますと、二子、大夕張という両方ともガスの相当多い炭鉱でありますので、これは完全に充てんを実施しております。それから常磐炭鉱でもやはりそれを実施しておるというふうに聞いておりますが、その他の会社の炭鉱については十分知っておりません。
  33. 植田勲

    植田参考人 保安骨格構造、あれに対する――まあ個々の炭鉱によって違うでしょうが、やはり足らぬものは労働力、それから時間、日にち、それから金ですね。みな足らぬわけです。私は技術屋で炭鉱経営しておったのですが、一つ切り羽、まあ百メーター、百五十メーターあるわけですが、百五十メーターの切り羽をつくるのにこの掘進が片盤が七、八百メーター、そういうことで切り羽が百五十メーター、これをつくるのにやはり一年くらいかかるのです、後退でやろうとしてもですね。私はそういう経験を持っているんですが、そうすると、ずいぶんこの掘進の労働力、従業員が足らない。それから一年もかかれば、時間も相当かかるから相当の金がかかるわけです。それで私が経験したときには余裕を若干持っておった時代ですから、一年やって後退でずっとホーベルでやったわけなんですが、相当成績をあげたわけなんです。その金が相当かかるわけです。やはり一億程度そういうときにかかった。現在ではそういうことはなかなかむずかしいのではないかと思うのです。一つの新しい切り羽が後退式でやろうとしても、ロングでホーベルでやる、こういうことを考えたときには、やはり相当時間的にもかかるし、あるいは労働力、金というものが非常にかかって、現在はなかなかそういうことの余裕がないのじゃないか、こう思われるわけです。  そこで、保安委員会とかあるいは保安補佐員がございますが、これは運用の問題ではないかと思います。運用よろしきを得れば相当成績をあげるのじゃないか、私は経験上そう考えておるわけです。  何かほかにございましたか――以上であります。
  34. 舟橋要

    舟橋参考人 まず一番先に、この間北海道においでにならなかったという問題でおしかりを受けました。取り消します。まことにことばが足らなかったということで御了承願いたいと思うのです。  それから体制部会の問題で、どういうメリットがあるか。この問題は非常にむずかしい問題で、非常に多くのあらゆる角度から、いわゆる輸送の問題から取り扱いの問題、それを集約したものでメリットが出てくるので、私一昨年の九月十八日にその書類を提出しております。したがいまして、その書類を見ないと、速記録をとられるところで言って、あのときとまた違うじゃないかということでこの次またしかられるといけませんので、書類で提出いたしますから御了承願いたいと思います。  それから、御承知のごとくメリットの一番大きな問題は、現有北海道全体の炭鉱で労働不足なんです。これらの問題の解消が、解消とまでいかなくても流通性が、一社になりまするとこれは十分に行なえる。それから能率のあがらないところはあと回しで、能率のいいところに重点的にやる。それから北海道は非常に広いのでございまして、九州七県と四国四県と沖繩を合わせたよりも非常に広いところでございます。しかも釧路の先から函館の先まで炭鉱がございます。これらの面で錯綜輸送というものが今日非常に大きな問題であります。これがトン当たり三百円、四百円のメリットの問題も出てくるわけであります。そういうような問題等もこれはメリットの一つでありますが、メリットの問題は、先ほど申し上げましたように、私が全国三社案の問題のときに北海道全体のこと――九州のことは知りません、常磐のことも知りませんが、北海道のことだけはつまびらかにして書類を提出しておりますので、これはひとつそういう書類をあなたの手元にあるいは委員長さんのところにお送りすることにして御了承願いたい。きょうは保安の問題というから持ってまいりません。それから同時にまた得所からも私はしかられておるのです。おまえを参考人に呼ぶと、いつも脱線して三口多過ぎるから、保安の問題に関する限りは保安の問題以外のことはしゃべらないほうがよかろう、これは私そのとおりだと存ずるわけです。したがいまして、いまの問題は書類で提出いたします。  さらに渡辺先生から、一体体制部会の問題は何をしているんだということで当時北海道のときに意見があったわけです。そのときに、ここにおります炭政課長さんから、四十四年度の予算編成がなかなか忙しくて、ようやくいま終わりかけたところだ、そこへいろいろ局長さんなり石炭部長さんなりがかわるという気配で仕事がおくれておる、しかしそれも大体地についたから、今度は体制部会の問題を真剣に前向きの姿勢検討する、こういうことの話で渡辺先生はそれを了承したはずなんです。したがいまして、それはそのときに譲っておきたいと思いますが、よろしく御了承願いたいと思います。  それから保安問題を先ほど先生いろいろ聞かれておったが、これは少なくも労使のほんとうの調和的協調、いわゆるほんとうの話し合いが一番大事なことなんです。それからもう一つは、労働者が若返りませんと、老齢化するに従って、大きな災害はなくても小さい災害が毎日のごとくふえていくわけです、からだが十分じゃありませんから。その点もあわせてこの際強調しておきたいと思いますので、ひとつよろしく願います。
  35. 佐藤一雄

    佐藤参考人 田畑先生の御質問に対しまして、端的にお答えをいたしたいと思います。  一つは、保安委員会あるいは補佐員の積極的な発言等が確保されておるにかかわらず、なかなかその実情というものは困難だ、こういう私の意見に対しましては、一つは、法律的な問題でなかなかスムーズにいかないのか、あるいは運営上の問題なのか、こういう質問だったと思いますが、法律的には、御存じのように、保安委員会というのは労使双方同数で構成されておりまして、そのほかに議長というのが一名おります。意見の一致が見られない場合については、いわゆる可否同数の場合は議長がこれを決すということでございまして、事実上、保安委員会の最終的な決断というのは委員長がその力を持っているというのが委員会の運営であります。ただしばしば経営代表の方々から意見がありましたように、いわゆる保安に対する姿勢のよしあしというのが、この運営の中で、労働者側の意見を取り上げるか取り上げないかということになっておるのが実情であります。したがいまして、鉱業権者側の保安に対する姿勢が本問題を決していくのではないかというぐあいに考えております。私の所見の中でも申し上げておりますように、職場のいわゆるささいな問題は、ある程度労働者側の意見をいれながら、その改善等を行なっておりますけれども、経営の基本になるべき問題、骨格構造の問題であるとか、あるいは生産を一時中止をしても改善をしなければならないという保安改善事項については、なかなか労働者側の意見というのはいれられておらない、こういう実情を、先ほど保安日の問題を例示として申し上げたことでもって御理解を願いたいと思います。  三十八条の申告問題につきましては、私どもの組織は、従来個人の名前で申告をした場合に保安局からその個人に対して、いわゆる申告された内容が正しいかどうかということで調査に来山をいたします。当然、働いている労働者でありますから、法律的にいかに差別しちゃいかぬという規制がありましても、いろいろな意味でいわゆる制約が与えられるわけであります。したがいまして、炭労としては三十八条の申告というのは、労働組合の組織の名前で申告したらどうかというぐあいに、むしろ、法律を運用するというよりも、坑内の不安全個所を正しく保安局に指摘をする、こういう方法でかなり実施をいたしてまいりました。一つの山で一回実施をいたしますと、大体二、三十項目の申告、指摘事項というものが生まれております。下山田炭鉱の操業再開にあたりまして、私ども坑内の総点検を行なって、その改善経営者に要請をしたわけでありますが、驚くなかれ三百九十件という改善をしなければならない個所の指摘が行なわれたわけであります。先ほども大槻会長のほうから、保安日について、当然その一日休んで点検をするということではなくて、毎日改善作業をしていかなければならぬものだ、こういう説明がありましたが、趣旨はごもっともであります。しかし、現実の坑内というのは、入坑するたびに何十件かのいわゆる不安全個所というのが指摘をされるというような状況でありますので、私どもは、国会決議に基づきまして、できるだけ保安日を一日とって、全員でもって坑内を点検しながら、ふだんできないいわゆる不安全個所を改善したらどうか、こういう考え方をもって労使間の交渉に当たったわけであります。先ほど申し上げましたように、最終的には双方の一致を見まして、そこに保安局等のアドバイスもありましたから、三十分で最終的な結論を下しましたけれども、私が申し上げたいのは、少なくとも保安に前向きの姿勢がある、こういうことであるとするならば、協定を結ばれたその月からすでに保安日実施をされていなければならぬものではないのか。いわゆる細部の条件がきまらなくても、今月の保安日は何日だということで、全員が点検を積極的に行なうという姿勢が今日あってもいいのではないのか。それが約二カ月間経過をしております今日でも、なおその保安日の設定がされておらないという事実は、先ほど保安委員会あるいは補佐員の問題でも申し上げましたように、姿勢として不十分ではないんだろうかということを指摘せざるを得ないわけであります。  それから、構造のおくれの問題で田畑先生から質問がありましたけれども、私どもは、人か金か技術かという問題について、この三つとも構造のおくれの大きな要因になっているだろうというぐあいに考えているわけです。たとえば労働者が不足である、しかも経理的にきわめて逼迫をしているということから、本来進めなければならぬ掘進夫を採炭夫に流用する、こういうのが現場の状態としてかなりあります。したがいまして、私はこの構造のおくれをいかに改善をするのかということに諸先生の御配慮をわずらわしたい、こういうぐあいに思っているわけです。炭労としては、具体的にお願いをいたしましたように、骨格構造委員会、こういう第三者を含めた委員会をつくって、そうして全国炭鉱についてその現状を把握をすると同時に、この炭鉱はここまで骨格構造について改善をしなければならぬのだ、こういう基準とその裏づけになるいわゆる行政機構なりというものを含めて交渉してもらいたい。そうしないと、先生も言われましたように、三菱の南大夕張はきわめて近代化をされている、こういう所見を申し述べられましたが、三菱の炭鉱に働く労働者の生命が保障されて、違う会社に働く労働者の生命が保障されないというこの矛盾は、いわゆるその社会的な立場で是正をする必要があるのではないか。そういう点で私は、今日の構造改革というのは、その技術者なりあるいはそれぞれの資本、企業にゆだねてしまっては非常にアンバランスなことしかできていかぬのではないだろうか。したがって構造委員会をつくると同時に、その実行は、いわゆる石炭産業の体制といいますか、実行ができる内容のものを御検討願いた、その際に、幸いにして体制委員会等の問題もありますので、私どもは国営を、国管を主張しておりますけれども、この保安の問題を中心にしてとらえても、どういう形態がいいのか、どういう形態が実際実行ができるのかということはおのずから結論が出ていくものではないだろうかというぐあいに考えて、先生方の御検討をお願いしたいと思っているわけです。
  36. 早立栄司

    ○早立参考人 御質問は、保安確保のための労働者側の参加体制についてどこに問題があるかということで、制度か、運営かというような問いであるとするならば、私は先ほども若干姿勢論を申し上げましたが、制度そのものより運営に問題があるというようにお答えしなければならないと思います。同時に、佐藤参考人もちょっと触れられましたが、いろいろ実情のこまかな点について、労働者側の提言なり指摘というものについて、ある程度経営者の側としてもそれを実施する体制にありますし、またさせなければならない。労働組合、労働者としてあくまでもそれはさせなければならないと思いますけれども一つ問題になってくるのは、やはり坑内骨格構造の展開というのが生産構造そのものにかかわりのある大きな基本的な事項になってくると、こうすればいいということを知りつつも、なかなかそこにしがたい面があるいは出てくるのではないか。そのときにおいては、経営者なりあるいは労働組合代表、労働者の代表なりが、それぞれの判断として、絶対こうしなければもうきわめて危険で働けないということであれば、それはさせなければならないし、できなければやるしかないということになるわけですが、この程度、この辺まですれば大体だいじょうぶではないかという判断の置き方ですね、その辺のところが一つの問題になってくるのではないかと思います。私どもは、そこで、冒頭の陳述で申し上げましたごとく、かまえとしてはあくまでも保安に妥協なしという姿勢で、かなりきびしくそういう場合におけるところの判断というものを持っていくようなかまえを打ち出しておるわけでありますが、問題は、それらをそれぞれの山元、現場において、労使の中でどこまで徹底し消化をされるかという点だけにかかってくるかと思います。ということに関連しまして、骨格構造問題が出ておりますが、再建交付金交付の炭鉱については、先ほど先生御指摘のごとく、法律に基づきまして保安計画を提出せしめ、それらが石炭鉱業審議会の中でチェックをされ、検討されて一応了承された形になっておると思います。しかもその保安計画については、もちろん経営者が一方的に提出するのではなくて、当然これは労使話し合いの上に立って、労働組合の同意を得た計画になっておるのがたてまえであります。どこまでそれが完全にそうなっておるかということについて、私は完全に把握しておりませんが、たてまえとしてはそうなっておりますので、そういうものを足がかりとしてまず検討を進めていくということが一つであろうと思いますし、同時に問題は、下山田の場合にはたしか再建交付金交付炭鉱でありませんから、そういう意味での保安計画を提出すべき義務を課されておらなかった炭鉱だと思いますが、そういう交付金交付という形でもって義務を課せられておらない炭鉱についても、当然、労使同意の上に立ったところの保安計画の提出等を義務化するということが必要だと思います。幾ら再建交付金をもらわなくとも、安定補給金等において国からの相当の助成を受けておるわけでありますから、そういうものとの対応の上に立って考えても、再建交付金交付炭鉱以外の炭鉱についても労使同意の上に立ったところの保安計画の提出を義務化する。そしてそれらを土台として、骨格構造展開等の問題についての検討を進めていくということが望ましいのではないかと考えますので、この際申し上げておきたいと思います。
  37. 遠藤一三

    遠藤参考人 労働組合ないし労働者が保安確保について積極的に経営の中に参加をする、そのあり方につきまして、あるいは改善させる方法につきまして、それが法律上体系的なものか、あるいは運営面なのか、そのどちらが先決なのかという二者択一についての御質問かと思いますが、岡田先生の御質問にお答えしましたとおり、私としましては、むしろ経営の中に労働者が積極的に参加をしてもらうという姿勢が基本じゃないか、こういうふうに感じておりまして、その基本が運営の面にあらわれてくる、こういうふうに感ずる次第でございます。  それから骨格構造の問題につきましては、冒頭の公述でも述べましたように、やはり石炭産業の、あるいは企業の置かれている立場がきわめてきびしい情勢にあるわけですから、したがいまして、当面の出炭に追いまくられまして、なかなか問題点はわかりつつも改善、整備ができていない、しないのではないかというふうに考えられるわけでございます。もちろん、保安上絶対的に改善しなければならないというところにつきましてはやっているものと思いますけれども、一般的にいわれております後退払いなりあるいはガス抜き専用坑道なり等につきましては、生産を停止してまでも坑道の切りかえなりあるいは体制の整備をはかるというところまではなかなか踏み切れないという事情に置かれているのではないか。これは労働力の不足あるいは資金面の問題もいろいろございますけれども、そういう面からなかなかふん切りがつかないでいるのが現状ではなかろうか。したがいまして、いずれの機関にするかは別にしましても、とにかく政府なりあるいは第三者機関なりが、これは絶対構造改革が必要であるという御判断をなさった場合には、生産を停止してまでもこの坑道の整備をはかるということがぜひ必要でございますし、また生産を停止した場合のこれらの助成なりあるいは補償なりにつきましても、十分それの裏づけとなるものは御配慮を願わねばならないものではないかというふうに考えております。
  38. 平岡忠次郎

    平岡委員長 大橋君。
  39. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 すでに二人の委員から質問がありまして、問題点は大体明らかになってきたわけでございますけれども、先ほどから参考人のお話の中にもありましたように、今日の石炭産業における炭鉱災害というものは、直ちに閉山あるいは破産にまで追い込まれていく内容になっていると、私はその話を聞きながら同感というところであります。したがいまして、炭鉱災害の撲滅こそが最優先的な事柄ではないか、こういうように考えまして、まず最初に経営者側の三人の方にお尋ねするわけでございます。  ダブった質問になりますけれども、先はど労働者側の方々の御意見にもありましたように、現在の保安法、あるいは災害のたびに検討され決議がなされるわけでありますけれども、これを実行するならば今日のような炭鉱災害は起こらないのだ、要するに経営者炭鉱保安に対する姿勢がなっていない、このような指摘があっておりました。それに対していままで答弁はあっておりますけれども、まだ何となく説得力がないといいますか、なるほどという感じを受けません。ダブるようではございますが、もう一歩掘り下げて具体的にこの問題に対して、経営者側を代表する立場からお答え願いたいと思います。  もう一点は、骨格構造の展開についてでありますけれども、これはだれが見ても問題点である、しかしながらこれは技術なのか人なのか、それとも資金なのかという質問に対しまして、これはみんな足りないのだ、こういう答弁があっておりました。特に舟橋さんでしたかのお答えの中に、そういう内容の、現状ではとても無理じゃないだろうか、このような印象を受けたわけでございますけれども、これは何としても手をつけなければならない問題であろうと感じますので、この点についてもさらに、こうこうこういうふうにいけばこの問題は解決するのだというところを掘り下げて説明願いたいと思います。確かに骨格構造の問題については、労働者側の方からも、骨格構造委員会をつくって全山の内容を検討し、その内容に従って規定を設けて実施させる以外にないのではないか、このようなお話があっておりました。そういうのを含めまして答弁を願いたいと思います。  第三点は、今日の災害、特にこの前の下山田鉱のガス爆発の内容から感ずるわけでございますが、要するに炭鉱坑内状況が地上において掌握できるような体制、管理体制をつくるべきではないか、たとえば中央管理センターというようなもの、そういう意見か非常に強く出ていたわけでございますが、経営者として、そういう問題に対してはどの程度いま考えられているのか、また進行しているのか、これをお尋ねしたいと思います。  それから今度は労働者側の皆さんにお尋ねしたいわけでございますけれども保安対策の不備について経営者側に対していろいろと注文があり、指摘をしておられたようでございますけれども結論として、災害が起これば最大の被害者というのは労働者になるわけでございます。したがいまして、これは労使ともに自主保安の強力な体制に立つべきであると思いますけれども、労働者という立場から自然的に会社のほうにこういう問題を改善すべきである、こうあるべきであると要請なさるはずだと思いますが、先ほどのお話の中に、要請してもしても会社のほうはそれを熱心に取り上げてくれない、こういう話もあったようでございます。もしそういう場合は保安法の第三十八条に基づいて保安監督局に申告されることになっておりますので、これに基づいてどしどし申告すべきではないか、このような質問もあり、答弁もあっておりましたが、これについて特に佐藤さんでしょうか、下山田炭鉱について非常に深い関心をお持ちのようでございますので、たとえば今度の下山田炭鉱については、こういう問題を会社に要請したけれども取り上げてくれなかった、したがって第三十八条に基づいて鉱山保安監督局にこのように申告をしたという実例でもあれば、それを説明願いたい。それに対して監督局のほうはどのような手を打ったのか、あわせて御説明願いたいと思います。  以上でございます。
  40. 平岡忠次郎

    平岡委員長 大橋委員の質問に対しての参考人の御回答についてでありますが、午後の日程等のために時間的な制約があります。そこで、おはかりするのですが、経営者側の御三名を代表しまして大槻参考人から御開示を賜わりたい。そして、なお補足的にどうしてもというときには、どうぞ他の参考人も御発言あって一向差しつかえございません。労働者の側におきましても同様なことで、炭労佐藤参考人に御開示を願って、なお、たって補足したいというときには、ひとつ他の参考人の補足をいただきたい、かようにはからっていきたいと思いますが、参考人にはよろしゅうございますか。――それから、大橋君にもそういうことを御了承願います。  では、大槻参考人
  41. 大槻文平

    大槻参考人 毎回申し述べておりますように、人命尊重保安第一主義ということについての経営者側の熱意というものは私は非常なものだと思っておるわけであります。ただ、炭鉱という非常に特殊な作業個所のために、ときおり大きな変災を起こすために非常に大きくアピールしておりますけれども、しかし経営者側としては、それが従業員の生活にもつながり、また社会不安にもつながるような大問題を惹起するおそれがある問題でございますので、十二分に注意をしてやっているつもりであります。  私個人のことを申し上げてはなんでありますけれども、私は、全力を尽くして保安にお互いに努力するという以外に、やはり、妙な話ですけれども、神に祈る以外にないんじゃないかという考えで、私は毎朝九時に出勤しますが、出勤すると同時に、私は、自分の部屋に飾ってあります神だなに対して安全祈願を常にやっておるわけでございます。また、今回三菱鉱業を分離するにあたりまして、その分離炭鉱の安全と繁栄を祈願するために私は伊勢に行ってまいりました。こういう非常に素朴な感情、気持ち、結局、努力しても祈る以外に方法はないんだといったような感じが強いわけでございます。  私どもとしましては、これから先、保安法のもとで、労使ほんとうに話し合いをして現在の制度というものを運用するならば、災害の撲滅を期することができるのではないかというふうに確信しておるのでございます。  それから、骨格構造問題に関しましては、これは先生方の中では、あるいはどこの炭鉱もみな骨格構造がなっていないんじゃないかというふうにお考えになっておられる向きがあるかもしれませんけれども、そうではないのでありまして、炭鉱によりましては骨格構造がりっぱにでき上がっておる炭鉱か相当あるわけであります。ただ少数の炭鉱におきまして間然するところがあるわけでございますけれども、これはその炭鉱を始めるにあたりましての計画をする時期の問題もあったかと思いますが、そういうことのために間然される面もあるのではないか。また、その後におきましては、先ほど来問題になっておりますように、炭鉱従業員というものを得ることが非常に困難な状態でありますので、どうしても掘進がおくれる。したがって、生産構造上ふぐあいの点が出てきておるということではなかろうかと思います。また、資金全面についてもやはり足りないということももちろんでございます。今次の対策によりまして生き残っております炭鉱はかなりやっていける状態になっておりますので、これから先、各炭鉱ともそれぞれ骨格構造改善に全力を尽くすことだと存じております。
  42. 平岡忠次郎

    平岡委員長 植田舟橋参考人には別に補足の御意見かございますか。――では、次に佐藤参考人にお願いします。
  43. 佐藤一雄

    佐藤参考人 大橋先生がお聞きになっておられるのは、下山田の内部違反事項について申告されたかどうか、こういうことだと思いますが、下山田については、実は現地では申告制度を活用いたしませんでした。しかし、労使双方では保安委員会等を開催いたしまして、労働組合の立場から、いわゆる災害現場等についての指摘は、議事録でもおわかりのように再三行なっておるところであります。  なお、時間がありませんから最後にお願いを申し上げておきたいと思いますけれども、第三十八条の申告というのは、保安監督官が現地に行くまでにかなりの時間がかかる。現場というのは、採炭切り羽でいいますと、一片一切り羽ですから、およそ一列柱以上進行してしまうわけです。したがいまして、この三十八条に基づく申告というのは、いわゆる不安全個所を指摘する、こういう面ではなかなか活用しがたい側面を持っておるわけです。私どもが特に今回強調したいのは、たとえばCOマスクの問題にいたしましても、いわゆる全員配付することになったけれども、点検をしたところが、二割程度悪いものが出てきた。ところが、新しく補充する品物はメーカーの在庫としてないとか、あるいは保安機器開発というのが各社あるいは各研究所ごとに行なっておって、しかも予算措置が不十分のために、保安機器開発等についてもまだ重点的な開発が行なわれていないとか、そういういわゆる炭鉱保安の基本について政策の面あるいは行政指導の面でより積極的な御配慮を願いたいということを最後にお願いを申し上げて、お答えにかえたいと思います。
  44. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 最後に一つだけ。  大槻参考人に一言申し上げたいのですが、保安については経営者側はとにかく全力をあげておる、熱意も十分あると思う、要するに最後は神に祈る以外にないと思うし、自分も毎朝神に祈っている。神にお祈りされるというその精神は実にりっぱだと思いますけれども、祈る対象が問題になるわけでございますが、ここは宗教、仏法を論する場所ではございませんので、いずれ機会を得まして、この問題をじっくりとお話をしてみたい。確かにあなたのおっしゃるとおりに、最終的な問題はその辺に落ちつくのではないかと私も感ずる次第でございます。  以上です。
  45. 平岡忠次郎

    平岡委員長 前後しましたが、早立、遠藤参考人、何か補足がございますか。
  46. 早立栄司

    ○早立参考人 ありません。
  47. 遠藤一三

    遠藤参考人 ありません。
  48. 平岡忠次郎

    平岡委員長 これにて石炭鉱山保安問題についての参考人各位に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、御多用中のところ長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。      ――――◇―――――
  49. 平岡忠次郎

    平岡委員長 この際、岡田利春君より発言を求められておりますので、これを許します。
  50. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私は、自由民主党、日本社会党、民社党及び公明党を代表いたしまして、四党共同提案にかかる石炭鉱山保安確保に関する決議案を提出し、皆さんの御賛同をいただきたいと存じます。  まず案文を朗読いたします。      石炭鉱山保安確保する件(案)   鉱山保安確保は、今次石炭新政策におい  て、最も重要な柱として位置づけられたにも拘  わらず、最近、重大災害発生が相つぎ、わが  国石炭鉱業の前途にあらためて憂慮すべき問題  を提起するに至っている。今日、保安問題の解  決を怠るならば、石炭鉱業の壊滅は必至であ  る。   よって政府は、緊急かつ厳正に保安総点検を  実施するとともに、次の諸点について速やかに  適切な措置を講ずべきである。  一、深部移行に伴う骨格構造の展開の遅れを解   決するため、その対策について検討すること。  一、保安委員会保安監督員制度を含めた保安   管理体制検討を行なうこと。  一、炭鉱労働者の流動化に対応する保安教育の   充実を期すること。  一、終閉山のおそれのある炭鉱保安確保につ   いては、特別な指導監督を行なうこと。  一、遺族補償制度の抜本的改正を図ること。   右決議する。  第一点の趣旨は、先ほど来意見の交換もございましたが、最近の炭鉱骨格構造の展開のおくれが生産の不安定、さらにまた保安上ゆゆしき問題を惹起する傾向を深めておることはいなめない事実であります。まして深部移行の傾向を強めているわが国の炭鉱実情にかんがみて、現在ある掘進補助金制度等をも含めてこれらに対する抜本的な対策検討しなければならない。しかも、これは単に一局のみにおいて検討さるべき事項ではなくして、鉱山石炭局及び保安局双方連絡の上に適正な対策をすみやかに検討すべきであるというのが趣旨であります。  第二の問題は、今日、法十五条の保安監督員及び保安監督員補佐員制度、法十九条の保安委員会がございますけれども、今日の災害の傾向にかんがみて、これらの保安管理体制を根本的に検討をさるべきではなかろうか。さらにまた、最近の災害ガス爆発事故の傾向が非常に強いのにかんがみて、ガスの系統的な把握、これに対応する機能、こういう一連の管理体制についても当然検討さるべきであるという趣旨であります。したがって、これらの検討は当然中央鉱山保安協議会あるいはまたしかるべき機関において検討され、その結論を政府としてすみやかに実施するように対処すべきであるという趣旨であります。  第三点は、今日若年労働力の確保が非常に困難になっておりますし、また炭鉱労働力総体の確保も非常に困難な情勢であり、炭鉱労働者は非常に流動化しつつございます。炭鉱に働く経験を持っていても、新しい炭鉱に参りました場合には、坑内条件その他諸条件の相違がございますから、そういう意味で保安教育充実をさらに新たな角度で検討さるべきであるという趣旨であります。  第四点は、今次下山田災害の経験にかんがみて、終閉山の傾向を深めている、いわば俗にいうあがり山炭鉱、これらの炭鉱保安確保については、特別な指導監督を行なうべきであるという趣旨であります。  第五点は、本委員会でもしばしば問題になっておりますように、今日労災法における遺族補償制度というものが、現在審議会で検討されておりますけれども、自動車の自賠責が五百万円に今日値上がりをする、こういう実情にかんがみて、あまりにも今日遺族の補償制度がその額において低いばかりか、これらの検討が非常におくれておるのではないか。すみやかにこれらの問題については、今日の現状に適応するように抜本的な改正をはかるべきであるというのが、今次保安確保に関する決議案を提案する趣旨の説明であります。  すみやかに本委員会において御賛同の上、この決議を可決していただきますようにお願いいたしまして、提案の説明を終わります。
  51. 平岡忠次郎

    平岡委員長 ただいま岡田利春君外六名より石炭鉱山保安確保に関する件について決議されたいとの動議が提出されました。  本動議について議事を進めます。  石炭鉱山保安確保に関する件を本委員会の決議とすべしとの動議について採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  52. 平岡忠次郎

    平岡委員長 起立総員。よって、動議のごとく、石炭鉱山保安確保に関する件を本委員会の決議とすることに決しました。  ただいまの決議について政府の所見を承ることにいたします。大平通商産業大臣
  53. 大平正芳

    ○大平国務大臣 ただいま御採択になりました決議の御趣旨につきましては了承いたしました。またこれらの問題につきましては、新たに発足した石炭政策関係各方面との調整をはからなければならない面が多いと考えております。  このため、中央鉱山保安協議会並びに石炭鉱業審議会の場におきまして十分な御検討をお願いした上で善処いたしたいと考えておりますので、御了承をお願いいたします。
  54. 平岡忠次郎

    平岡委員長 なお、本決議の政府への参考送付等の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  55. 平岡忠次郎

    平岡委員長 御異議なしと認めます。  よって、さよう決しました。  この際、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後一時二分休憩      ――――◇―――――    午後二時二分開議
  56. 平岡忠次郎

    平岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前中、鉱山保安に関する問題について参考人より意見を聴取し、これを終了いたしておりますが、午後は産炭地域振興問題について調査を進めたいと存じます。  本問題について意見をお述べいただくため、参考人として、北海道副知事那須正信君、全国鉱業市町村連合会会長坂田九十百君、全国市議会議長会石炭産業策協議会会長岡山碧君、全国石炭鉱業関係村議会議長会会長入江誠君及び佐賀県大町町長藤井万四郎君の御出席をいただいております。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。本日は御多用中のところ、遠路わざわざ本委員会に御出席を賜わり、まことにありがとうございました。産炭地域におきましては終閉山に伴う多くの問題等があろうかと存じますので、参考人各位におかれましてそれぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。本日は時間の制限もございますので、なるべく簡単に御意見をお述べいただくようお願いいたしておきます。  それでは参考人としまして、最初に那須参考人にお願いいたします。
  57. 那須正信

    ○那須参考人 北海道副知事の那須でございます。  本日は、石炭並びに産炭地問題につきまして所見を申し述べる機会を与えていただきましたことを厚くお礼を申し上げる次第でございます。北海道が当面しております問題点を中心といたしまして現況の説明並びに要望を申し上げたいと存じますが、お手元要望書を提出してございますので、よろしくお願いいたしたいと存じます。  まず第一は、石炭鉱業の安定についてでございますが、石炭鉱業の長期安定対策につきましては、先般の石炭鉱業審議会の答申に基づきまして本年度から再建交付金の交付、安定補給金の増額等、他産業にその例を見ない措置が講ぜられているところでありますが、現在のきびしい石炭情勢を反映いたしまして、本年度に入ってから明治鉱業の企業ぐるみの閉山をはじめ、大規模な閉山が相次いでおり、地域社会に深刻な影響を与えておりますことはまことに憂慮にたえないところでございます。  このような現況におきまして、私どもといたしましては石炭鉱業の長期的安定を強く望んでいるのでありますが、このためには個々の企業の経営安定のみならず、石炭鉱業全体としての安定の方途につきまして積極的な検討がなされるべきものと思うのであります。この点につきましては、さきの石炭鉱業審議会の答申においても述べられておるところでありまして、これが早急なる検討を強く期待しているものでありますが、特に鉱区の調整、再編等につきましてこれを積極的に推進し、合理的かつ安定した生産体制の確立をはかることが急務と思うのであります。  また、石炭の需給状況について見ますと、わが国の鉄鋼生産量の飛躍的な増加に伴い、必然的に原料炭の需要増を伴ってまいりますので、国内原料炭炭田開発に取り組むことが緊要のことと思いますので、新鉱開発の一そうの推進をお願いいたしたいと存じます。  なお、このほか、石炭鉱業の安定にとって欠くことのできない要件といたしまして保安、労働力の確保があげられるのであります。  保安対策につきましては漸次強化が見られておるところでありますが、なお重大災害発生があとを断たない現況にかんがみまして、監督指導体制の強化はもとより、保安施設充実保安技術開発保安教育徹底等につきまして一そうの配慮をお願いいたしたいと存じます。  さらに石炭鉱業における労働力の確保につきましては特に深刻な問題となっており、これが根本的な解決は石炭産業みずからが魅力ある産業とならねばならぬことはもとより申すまでもないところでありますが、当面生活環境の整備をはかるため、炭鉱住宅の改善が緊要な課題となっているのでありまして、石炭対策特別会計による住宅の新築及び改修制度並びに住宅地区改良法による炭鉱住宅の建てかえ事業につきまして資金ワクの拡大等、現行制度の一そうの強化をお願いいたしたいと思うのであります。  第二は産炭地域の振興についてでありますが、産炭地域の振興につきましては政府の施策が逐次強化されてまいっておりまして、これらの施策と相まって、地元関係者が一体となって鋭意努力をいたしてまいっているところでありますが、残念ながら、石炭鉱業の撤退によってこうむった社会的、経済的影響を補うまでには至っていないというのが現況でございます。したがいまして、私どもも産炭地域の振興につきましては今後なお一そうの努力を傾注してまいる所存でありますが、これに関連して、次の点について要請をいたしたいと存じます。  その一つは、北海道の場合、工場の導入がきわめて困難な地域がありますので、これらの地域については地域の特殊性を十分考慮の上、農林水産業さらには観光事業等、それぞれの地域に適した産業の振興を幅広くはかってまいることが必要と考えられますので、これらの点につきまして今後さらに積極的な御配慮を賜わりたいと存ずるのであります。  特に本道の産炭地域の四十市町村のうち、山村振興の要件を備えているものが二十一あるのでありまして、これらの市町村につきましては山村振興法をもあわせて適用されるよう特段の措置をお願いいたしたいと存ずるのでございます。  その二つは、企業誘致の一そうの促進をはかるため、産炭地域振興事業団の事業充実強化についてであります。産炭地域振興事業団につきましては、先般本道の支所が支部に昇格をいたしまして機構面における強化がなされたほか、工業団地の造成、進出企業への資金貸し付け等、同事業団が産炭地域の振興に果たす役割りはきわめて大きなものがあり、深く感謝を申し上げている次第でございますが、この機会に特に申し上げたいことは、本道のように立地条件に恵まれない地域に対しましては特別の優遇措置を講じていただきたいということでございます。すなわち、本道の産炭地域は、積雪寒冷の気象条件に加えまして、おおむね内陸の山間部に位置し、かつ消費市場から遠い等、幾多の不利な立地条件を有していることは御高承のとおりでありまして、このような地域は、不利な条件のもとで企業誘致を促進するためには、道路、工業団地等の産業基盤の先行的な整備を急ぐとともに、現行融資制度における金利、貸し付け比率、償還期間等につき特別の優遇措置を講じ、かつ造成団地の譲渡条件につきましても、支払い期間の延長、譲渡価格の引き下げ等の条件緩和が不可欠の要件であると存じますので、これらの点につきまして、産炭地域振興事業団の事業の一そうの強化をお願いいたしたいと存じます。  第三は、炭鉱閉山に関連する諸対策でございますが、本年度に入ってから、本道におきまして十五の炭鉱閉山発生し、地域の社会経済は深刻な影響をこうむっており、道といたしましても、この諸対策の推進をはかっているところでございますが、この点に関して御要請を申し上げたいと存じます。  その一つは市町村財政対策であります。  産炭地市町村は、これまでの石炭鉱業の合理化の過程におきましてすでに深刻な影響をこうむっているのでありますが、この上さらに今回のような大規模な閉山発生しますと、租税収入の激減を来たす反面、閉山地区の社会生活環境の整備をはじめ失対事業、生活保護費の増加等の閉山に伴う特別な財政需要が増加し、市町村財政は、収支の両面から窮迫を来たし、行政水準の低下を招くことは明らかであります。この意味におきまして、本年度から産炭地域振興臨時交付金制度が創設されましたことは、関係市町村の財政に大きく寄与するものと感謝にたえないところであります。  しかしながら、産炭地市町村の財政の窮迫はなお深刻なものがありますので、本制度の今後の運用にあたっては、予算額の一そうの増額をはかるとともに、閉山の影響の著しい市町村に対しまして特別加算額の交付につきまして御配慮をお願いいたしたいと存じます。  なお、このほか普通交付税及び特別交付税の配分の強化、地域振興対策事業についての特別起債ワクの設定、さらには閉山に伴って遊休化した公共施設にかかわる地方債の未償還元利金に対する財源措置等、産炭地市町村財政の再建と行政水準の向上のため特段の御配慮をお願いいたしたいと存じます。  次は、閉山地区の中小工業者対策であります。  これら商工業者のほとんどは、炭鉱もしくは炭鉱従業員に対してかなりの売り掛け金を有しており、その一部は閉山交付金等によって補てんされるとはいいながら、なお相当額の貸し倒れの発生は避けられない現状でございます。さらに炭鉱閉山によって今後の経営の存続に大きな支障を来たしてまいるのが実情でございます。特に本道におけるような山間部の炭鉱地帯にありましては、炭鉱閉山は即地域社会の崩壊をもたらし、商工業者の移住営業もしくは転廃業を余儀なくされるばかりでなく、今日まで営々として築いてきた土地、建物等の財産はほとんど無価値に帰するといった深刻な事態を招いているのであります。現在これら商工業者に対しましては、政府においても融資制度を設けて救済をはかっておられるところでありますが、これら現行融資制度の一そうの強化をはかるとともに、終閉山によって移住営業もしくは転廃業を余儀なくされる閉山地区の商工業者に対しましては特別の助成措置が望まれるのでありまして、この点につき特段の御配慮をお願いいたしたいと存じます。  最後に、炭鉱離職者対策についてでございますが、炭鉱離職者が炭鉱へ再就職したあと、数カ月を経ずして再度閉山の事態に直面して離職するといったまことに気の毒な事例が、今回の北星炭鉱閉山の場合においても見られますので、これらの離職者に対しましてもさらに移住資金が支給されますよう特別の御配慮を賜わりたいと存じます。  以上、産炭地域が当面しておる諸問題につきまして所見を申し述べた次第でございますが、これらの現状を御認識いただきまして、今後とも一そう御配慮を賜わりますようお願い申し上げる次第でございます。
  58. 平岡忠次郎

    平岡委員長 次に、坂田参考人にお願いいたします。
  59. 坂田九十百

    ○坂田参考人 全国鉱業市町連合会の坂田でございます。  ただいま北海道の副知事さんからおおむね私どものお願い申し上げたい点につきましてはお話しいただきましたので、きわめて簡単に申し上げたいと思います。  特に産炭地域市町村の振興につきましては、従来より国会並びに政府の御配慮を賜わりまして、この点深く感謝申し上げたいと思います。しかしながら、その御支援にもかかわりませず、関係市町村は疲弊の一途をたどっておる現状でございます。特に今次の新石炭政策実施の段階に入り、本年十月現在の終閉山の規模は、当初予定されていた三百九十万トンを大きく上回り、閉山炭鉱数四十四、その規模は六百万トンをこしておるのでございます。  この二倍に近い閉山によって影響を受けた市町村及び地域住民の不安動揺はきわめて大きく、今後も毎年引き続くであろう閉山に対する産炭地域の振興対策は、はたして十分であろうかと心配いたしているのでございます。  産炭地市町村の現況は、いわゆる六条地域の百数カ市町村にその例をとりましても、人口の減少状況は、昭和三十五年三百二十万人が同四十三年には二百四十万人と二二%の減少を来たしておるのでございます。長崎県では当時の六〇%となり、筑豊、佐賀、石狩の各地域も七〇%に減少いたしております。  市町村財政力の低下は目をおおうばかりでありまして、昭和三十五年度全国平均が六二・二でございまして、産炭地の平均が六二・四とほぼひとしい状況であったものが、昭和四十一年度には全国平均が七〇・三と上昇したのにかかわらず、産炭地の平均は四一・九と大幅に低下しておりまして、四十三年度において筑豊三七二、佐賀三一・四、長崎二五、北海道の天北留萌地区二四・五といずれも最悪の状態に置かれておるのでございます。  地域住民の生活状況を知る一端として生活保護の状況を見ますると、保護率、これは人口千人中の割合でございますが、全国平均では昭和三十五年一七・六が四十三年には一四・五と減少しているのに反し、産炭地域平均は、四十三年は六六・三と激増し、筑豊のごときは一二四・一と全国平均の約十倍に達する憂うべき現状にあるのでございます。  産炭地市町村はこのように困窮をきわめておる上に、引き続く終閉山に伴う特別支出、たとえば失対事業閉山上水道、炭鉱住宅、遊休施設の起債償還、鉱害対策等々いわゆるあと始末的経費の支出が年々増高し、住民の福利的事業、社会投資的事業に手の回らぬ状態であります。たとえば筑豊地区での特別支出は歳出総額の三分の一、筑後有明地区では実に四〇%に近い特別支出を余儀なくされておるのでございます。  次に産炭地域振興対策費、これは石炭特別会計について申し上げたいのです。もちろん、他の種種の国の援助を除外して石炭特別会計のみを取り上げることはいささか当を失することと存じますが、一応本年度の石特会計総額に対する関係予算の割合を見ますると、鉱害対策費は一二%、労働省所管対策費は本年度創設の開発就労事業費を含めて八%、産炭地域振興対策費は本年創設の臨時交付金と振興事業団出資金を含めて六・四%、事業団出資金を除きますると僅々二%弱でありまして、前に述べました産炭地域の窮乏に比し、まことにりょうりょうたる感を深くするものでございます。  以上、産炭地域の困窮状態の一端を申し上げましたが、この現状に立って最も基本的な問題点を二、三御要望申し上げ、諸先生方の御高配を心からお願い申し上げる次第でございます。  まず第一に、産炭地振興対策実施する最重点的な点として、国の関係機関の権限強化拡大をはかるべきと存ずる次第でございます。産炭地域臨時措置法第四条に、産炭地域振興審議会の意見を聞いて振興の基本計画及び実施計画を定めるよう義務づけられておりますが、計画が樹立されましても、その実施促進の権限は大臣にも審議会にもきわめて薄弱であります。これは実施事業が各省にわたり、各省所管事業と競合するものが多いためと考えられます。そこで、計画立案は各省を統合できるような機関でこれを行ない、各省によって予算化された事業についてその機関は優先実施を勧奨する権限を与えられるようになることが望ましいと考える次第でございます。次善の措置として、産炭地域振興対策費は石炭特別会計に限定せず、一般会計を加えて飛躍的に増額し、振興実施計画実施面に強力な発言権を与えるべきだと考えます。  次に産炭地域振興の具体的な面についてお願い申し上げます。  この問題につきましては、私ども全国鉱業市町連合会から石炭鉱業の長期安定策の樹立について、保安対策について、産炭地振興対策について、民生安定の早期解決について、市町村財政対策について、石炭鉱対策について、離職者対策について、産炭地における文教対策について、こうした問題を、かねて国会の先生方にもお願いしておるとおりでございます。  まず、窮乏した市町村財政への特別援助措置を講じられたいということです。閉山と過疎が続き、当分貧困の一途をたどらねばならぬ市町村も、わずかながらも向上し希望に向かいつつある市町村も、今後数年間の最も強力な援助を講じていただければ、再建可能で、民心の安定も期待できると考えられますので、地方交付税の重点的配分を強化され、産炭地補正のごとき長期安定的な助成の制度化をはかられたい。また、産炭地域臨時交付金の大幅な増額をはかる等、この制度の強化を考慮されたいと存ずる次第でございます。  なお、昨年十二月二十五日石炭鉱業審議会が答申いたしました際は、先ほど申し上げましたように三百九十万トンを目標にしておったのでございまするが、現在閉山いたしました炭鉱数、整備されましたトン数はほとんど二倍の数に達しておるのでございまして、こうした影響は私ども産炭地の市町村に大きくかぶさっておるのでございます。  たとえば閉山水道の問題ですが、これはもう答申した当時からかなり大きな閉山が出るであろう、あるいはなだれ閉山がくるであろう、あるいは集中的な閉山がくるであろうということは想像されておったわけでございます。通産省で予定されておりました三百九十万トンの倍にも当たる七百数万トンも整備されますると、この閉山水道の問題が直接市町村にかかってくるのでございます。卑近な例でございまするけれども、私の田川市におきましても、七月の二十五日までは炭鉱が給水いたします、しかしながらもう電力料も払えない、あるいは管理人の給与も払えない、市民である限りにおいては市によって給水してもらいたい、こういうような問題が突発的に起こってくるのでございます。こういう問題はひとり田川市のみでなくして、全国閉山地区の各市町村に起こっておるのでございます。  この閉山水道の問題につきましては、通産省と厚生省で協議されまして、簡易水道の予算の範囲内において整備することになっておるようでございまするが、この水道の予算が、昭和四十三年度は三十二億円の要望に対して国の予算は十七億円、四十四年度は四十八億五千万円の要望額に対しわずかに二十一億円の予算で半額以下に減り、その上継続事業が多いため、四十四年度の二十一億円の国庫補助金のうち十五億円が継続事業に充当されたため、新規分は四十八億円の要求に対し六億円しかなく、八分の一の予算額というさびしい現況でございます。このため、事業費一千万円をこえる事業は来年度以降に継続されている状態でございます。  こういう状態でございまするから、この水道問題がいかに閉山地区の市町村を苦境におとしいれておるかということが言えると思うわけでございます。  また炭住の問題にいたしましても、これは全国の数字をまとめるいとまがございませんので、九州地区だけを申し上げますと、佐賀県で七千六百二十二戸、長崎県で一万四千百九十六戸、熊本県で四千九百三十戸、福岡県で四万三千五百五十二戸、計七万二百九十九戸となっておるのでございます。いまのような来年度の閉山炭住の改修は、全国で八千八百戸のうち千六百戸でございます。そうなりますると九州だけでほとんど十カ年はかかる、こういう状態でございまして、非常にその地域の住民が困窮いたしておりまして、そうした荒れ果てた炭住に住まいする人々の子弟はどうしても不良化する、あるいは投げやり的な日々を送るというようなきわめて憂慮すべき状態が生まれてくるのでございます。この面につきましても、特に国会の先生方の力を借りまして、どうしても早期にこの炭住の改良あるいは閉山水道の整備ができまするようお願い申し上げたいと思うのでございます。  次に鉱害の問題でありまするが、これは北海道地区に鉱害はございませんけれども昭和四十一年に答申いたしました石炭鉱業審議会の鉱害部会では、昭和四十二年から昭和四十六年までの五カ年間に完全に不安定鉱害を除く鉱害は処理するということを通産当局も確約し、そうして閣議決定して実施に移すということが言明されましたが、いまの状態は、当時全国の鉱害量は八百三十一億といわれておりましたけれども、この八百三十一億という全国の鉱害量については、これは業者の意見尊重し、この数字を集計した数字がそうした数字でございまして、全国のほんとうの鉱害量が出なければ長期的計画的復旧は困難であるということから、三カ年計画昭和四十四年度中にこの調査を終わることになっておるようでございまするけれども、大体の概算数字は一千億をこす状態であろうかと思います。この一千億をこす状態であるということを認識されまして、鉱害復旧予算につきましては十分の御配慮をいただきたいと思うわけでございます。  次に、意見を申し上げて恐縮でございまするが、いろいろと産炭地域には石炭産業にかわる産業を誘致して産炭地振興をはかるということももちろん論をまたないところでございまするけれども産炭地振興対策については、ただそういう問題でなくして、やはり現在のように小さい市町村が現行のままで行政水準を上げることは非常に困難と存じます。そこで自治省では広域市町村圏を設け、市町村の振興をはかり、一般の行政水準を高めようと考えられておるようでございます。また建設省におきましても地方生活圏を設け、水利、道路等の整備をはかり地域住民の生活安定をはかる計画のようで、まことにけっこうなことと思いますが、私どもの筑豊地区では青年会議所等青壮年層から、筑豊は一本という強い要望も出ておるのでございます。また筑豊市をつくれという声は中央においてもたびたび聞かされておるのでございますが、一気に筑豊を一本にまとめることは困難かと思いますが、たとえば嘉飯山地区あるいは直鞍地区、田川郡市地区というように地理的にも合併の可能性のあるところから推進していくことは絶対必要であると存じますので、いま自治省や建設省で考えられておる広域市町村圏あるいは地方生活圏というようなものをさらに一歩前進して、過去にありました町村合併促進法をさらに強力なものにした法律を制定し、国は合併した市町村の育成に思い切った援助をされるならば、市町村の基盤は充実し、産炭地振興の速度もすみやかに進むのであろうと存ずる次第でございます。もちろん十数の市町村が合併して一つの市になりますと、財政面においても運営の面においても相当の困難は予想されます。自主運営のできるまでにはかなりの年月を要するものと存じますが、一定期間を過ぎますれば、国の援助を受けなくともりっぱに自主運営のできる市になることを信じて疑わないのでございます。現在、産炭地市町村が受けている地方交付税はばく大なものでございます。長い目で見れば、決して国の損失にはならないと確信するものであります。  以上は筑豊を例にとりましたが、全国の産炭地には同様なところがたくさんあると思うのでございます。こういう面につきまして一段と先生方の御理解をいただきまして、ただ産炭地に必要な工場誘致等だけでなくして、そうした弱いものが一つにまとまって、みんなの力でその産炭地を盛り上げていくというような方向に進みたいと存ずる次第でございます。  少しとりとめのないことを申し上げましたが、以上をもって陳述を終わらせていただきます。
  60. 平岡忠次郎

    平岡委員長 次に、岡山参考人にお願いいたします。簡潔にお願いします。
  61. 岡山碧

    ○岡山参考人 御指名をいただきました全国市議会議長会石炭産業対策協議会の岡山でございます。  私が申し述べたいとする事柄につきましては、那須参考人さらには坂田参考人からいろいろ述べられております。できるだけ重複は避けたいと思いますけれども、その点あしからず御了承いただきたいと思います。  まず、諸先生におかれましては、常日ごろ石炭政策並びに産炭地振興政策等につきまして、かねて格別の御配慮を賜わりまして、この機会を通しまして厚くお礼を申し上げる次第であります。  新政策決定以後におきましても、石炭産業情勢は御承知のように非常にきびしいものがあります。大手炭鉱企業ぐるみ閉山というものが続発をいたしまして、地方自治体の住民の生活と経済の崩壊を招きまして、行政、財政の運営に与える影響はきわめて深刻なもののありますことは、すでに皆さんも御承知と思う次第でございます。特に北海道地域におきましては、九州、常磐地域と比較をいたしますと、どうしても気象上積雪寒冷地帯であるというような大きなハンデを背負っております関係上、産炭地振興等につきましてもきわめて困難なものがあるわけでございます。そういう意味からいたしまして、冒頭心からまず産炭地域振興のための北海道対策的なものをひとつよろしくお願いをしたい次第でございます。  以下、各項目にわたりましてできるだけひとつ要約して申し上げたいと思うのです。  まず第一点は、前両参考人から述べられておりましたけれども石炭産業の長期安定策の早期確立でございます。石炭鉱業審議会の中に設けられました体制部会をひとつ早急にお開きをいただきまして、ぜひひとつ具体的なビルド対策を講じていただきたいと思う次第です。  第二点目は石炭鉱業の経営安定の問題でありますが、これにはほんとうにいろいろとあたたかい援助措置を講じていただいておりまして、感謝にたえませんけれども現状は非常にきびしいものがあります。したがいまして、安定補給金等の充実強化をはかっていただきますとともに、できるだけ民間金融機関の融資の協力を得られるような道をぜひ開いていただきたいと思う次第です。  第三点目は、日本国内ではただ一つ夕張地区で新鉱開発が行なわれているわけでございます。この事業におきましても、当面非常な困難にぶつかっておりまして、なかなかスムーズにいっておらないというのが実態でございます。そういう意味からいたしまして、開発資金の融資政策を強化して、開発促進されるようにぜひひとつ御配慮をいただきたい。お伺いいたしますところ、海外原料炭の開発等につきましても、いろいろお考えをなさっておられるようでありますが、まずひとつ日本の産業なり経済の安全保障のためには、国内の原料炭を開発する、そういう観点にぜひひとつ立っていただきたいとお願いする次第です。  第四点目は、炭鉱労務者の安定と確保のために、次の諸事項をぜひお願いしたいと思う次第です。諸先生もすでに御承知と思いますが、現在の大手ビルド鉱の中でも、いわゆる大先山クラスがどんどんやめていっております。その理由となりますのは、やはりいろいろな困難な問題があるわけでございます。この労務者問題につきましては、ともすると炭鉱労務者のいわゆる老齢化、さらには不足という点から、労務倒産をも招きかねないという苦しい実態にあるわけでございます。ましてや新鉱開発という事業のウィークポイントは、どうしても炭鉱労務者の確保以外にこの事業のスムーズな推進はあり得ないわけでございます。特にひとつ次の諸点についてよろしくお願いしたいと思う次第です。  まず第一点は、先ほども参考人から述べられましたように、魅力ある地域環境をつくるためには、炭鉱住宅をよりよいものにしなければならないと思うわけでございます。現行は御承知のように住宅地区改良法によりまして行なっているわけでございますが、これはひとつぜひ、炭鉱住宅改良法、仮称でありますけれども、こうした特別立法措置をぜひ講じていただけないものか、こう思う次第です。  第二点目は、現在の炭鉱年金制度をより充実をはかっていただきますとともに、特に炭鉱労働者の子弟、中卒あるいは高卒者が、特に北海道を例にとりまして恐縮ですけれども、その地域のほとんど三分の二以上は管外に出てしまうわけです。こういう方々が結局手づるあるいは足がかりになりまして、一家全員引き揚げていってしまうという現象はあとを断たないわけでございます。そこで私どもは、こうしたいわゆる子弟の方々の職場造成のためには、企業誘致をひとつはかっていただく以外にない、このように考えているわけでございまして、これらにつきましてもぜひよろしくお願いしたいと思います。  第三点目は、若干労働者の確保の一環といたしまして、炭鉱労働者を対象といたしました福祉センターあるいはレクリエーションセンター、こういうものを主要炭鉱地域に建設をいただきたい、こう考えるわけでございます。  なお次にあわせましてお願いしたいのは、閉山した炭鉱離職者からいわゆる次の炭鉱に再就職をする方に対しましても、できるだけあたたかい援助措置あるいはそれを促進するような制度をぜひ講じていただきたいと考える次第でございます。いろいろと法的その他の関係からむずかしい点はあろうかと存じますけれども、この点は特に炭鉱労働者確保の上からよろしくひとつ御配慮をお願いしたいと思う次第です。私どもできるだけ魅力ある職場あるいは生きがいのある生活環境をつくるために最善を尽くしてまいりたいと考えております。  第五点目は炭鉱保安の問題です。まず大先山あるいは炭鉱労務者の皆さんが離山をする大きな理由の一つにこれがあげられているわけです。現在の自主保安の体制のもとでは、どうしても災害絶滅というものを期しがたい。したがって現行のいわゆる制度そのものの中での、できるだけ国の指導管理体制強化をお願いしたいと考える次第でございます。あわせまして、特に一酸化炭素中毒患者の治療対策といたしまして、主要炭鉱地域にはぜひ高圧酸素治療室を設置していただきたい、このようにお願いする次第であります。  大きな第六点目でありますが、これは特に冒頭申し上げましたように、北海道地域に進出する企業に対しましては、積雪寒冷のいわゆる特殊事情があるわけでございますから、こうした事情をいろいろと御考察をいただきまして、事業資金の融資の比率の拡大であるとか、あるいは金利の引き下げ、さらには償還期限の延長等、ひとつ特別ないわゆる北海道対策を御配慮いただきたいと考える次第でございます。  大きな七点目は、これも諸先生北海道においでになりましたときにお願いした次第ですけれども、産炭地振興臨時措置法の適用を受けております市町村においても、山村振興法に該当する市町村があるわけです。こういう自治体に対しましては、ひとつ可能な限り、このいずれの法の適用も受けられるような措置をぜひお願いできないものか、こう考える次第でございます。  大きな八点目は、産炭地市町村財政の諸援助措置充実強化についてでありますが、当面まず第一点は、何と申しましても地方交付税の税配分についてでありますが、これはこれまでもいろいろとあたたかい、しかも御理解ある御配慮を賜わってまいりましたけれども、特に産炭地のきびしい事情を御勘案くださいまして、今後ともさらに産炭地補正的なものをこの中に強くひとつ織り込んでいただきたいと思う次第でございます。  さらに小さな二点目は、本年度閉山地域に対する措置でありますけれども、これにつきましても特別地方交付税等で、ぜひきびしい実態をひとつ御理解いただきまして、あたたかい御援助をお願いしたいと思う次第です。  第三点目は、小さな三点目でありますけれども、新しい政策で設けられたこの産炭地振興特別臨時交付金でございますが、この制度の内容につきまして次のようにお願いをしたいわけです。それは現行配分方法のほかに、合理化あるいは企業の縮小によって急減した人口をひとつ基準に加えていただきたいと思う次第です。同時にまた、交付金予算の増額についても、あわせて御配慮をお願いしたいと思うわけでございます。  さらに小さな四点目でありますが、この新鉱開発に対しまして、所管いたします自治体では固定資産税等を減免いたしまして、そのスムーズな経常なり安定の方向をとらせているわけでありますが、これはひとつどうか一般の企業誘致と同様に地方交付税によってその財源の補てんをお願いいたしたいと考えるわけでございます。  大きな九点目でありますが、閉山地区市町村の財政救済のためには、先ほどもちょっと触れましたけれども、もう一、二点お願いしたい点があるわけです。それは先ほど坂田参考人からもより具体的に触れておられました閉山地域に残留する住民の、当面はやはり水道と電気、さらには交通を確保しなければならぬわけです。これは一切やはり所管する自治体が行なわなければならないわけでございまして、これらにつきましてもひとつ特別な措置をそれぞれお願いしたい、特に水道事業については、閉山地区に対する特別の予算ワクを設けていただきたいと思う次第でございます。  それから閉山地域の学校と公共施設が、これはまさに廃墟になってしまうわけですけれども、しかしながら、起債の未償還分、利子の未償還分等があるわけであります。これらにつきましては、これはたいへん無理かとも存じますけれども、できるならば免除の措置を講じていただきたいと同時に、それが不可能な場合には、利子の補給であるとかあるいは償還期間の延長等をぜひ御考慮をお願いしたい、こういうわけでございます。  次は、閉山のために生じました税の減収額、あるいはその他閉山対策のために特別にいろいろと財源が必要でありますけれども、それらにつきましては、先ほど申し上げましたように、本年度の特別交付税で補てんの措置をぜひひとつ御配慮をお願いしたい、このように考えるわけでございます。あわせまして、事業団の整理特別交付金によるいわゆる滞納市町村税の補償の割合、これは現在五〇%になっているようでございます。この割合をできるだけひとつ引き上げていただきたい、このようにお願いをするわけでございます。  最後に、産炭地における中小商工業者に対するいろいろな取り扱い、援助の問題でありますが、これは特に那須参考人からもいろいろとお願いされておりました。率直に申し上げまして、直接的ないわゆる閉山の被害者であるということもいえるわけでございまして、その悩みというものはほんとうに深刻なものがあるわけでございます。特に閉山地域における中小商工業者に対しまして、でき得るならば一時見舞い金的な措置をお考えいただけないものであろうか。さらにまた、転廃業をする場合には優先的に更生自立できるような長期低利の金融対策等、転出のあっせん等もよろしくひとつ御指導、御援助をお願いしたいと思う次第でございます。先ほどもお話のありましたように、営々と築いてまいりました財産なりその他のすべてが、これは無価値にひとしくなってしまうわけであります。そうしたきびしい、しかも苦しい実態をよろしく御理解いただきまして、御高配を賜わりたいと思います。  なお、全国的な視野に立ちますときに、鉱害対策の問題は先ほど坂田参考人から詳しく触れておられました。よろしくお願いしたいと思いますし、さらにまた、炭鉱離職者対策の問題につきましても、これからいろいろと触れられるだろうと考えますので、この点は省略をいたしたいと思います。  いずれにいたしましても、現在の石炭産業を守っていただくという、そのことが日本のほんとうの産業なり経済を守るいわゆる安全保障という意味からも、ぜひひとつ高所から御理解をいただきまして、御援助なりあるいは御指導なりを心から重ねてお願いをいたしまして、私の意見にかえたいと思います。よろしくお願いいたします。
  62. 平岡忠次郎

    平岡委員長 次に、入江参考人にお願いいたします。
  63. 入江誠

    ○入江参考人 全国石炭鉱業関係村議会議長会会長の入江誠でございます。  石炭問題については、参考人の三方から十分いろいろな要望について説明をされておりますので、私のほうではそれを省きたいという考えを持っております。しかし全国石炭鉱業関係村議会議長会では四十五年度に関する国の予算編成に対して要望事項を国並びに関係の皆さんに陳情しておりますので、その内容を見ていただければ十分おわかりになるというように考えております。  お手元参考資料を提出しておきましたが、五件ほど具体的な説明をさせていただきたいというように考えております。  一は、炭鉱住宅地区改良事業費についてでございますが、これは炭鉱の住宅につきまして、各産炭地の市町村では一番大きな悩みを持っておるわけでございます。炭鉱閉山になりまして、事業所が引き揚げたあとに残っておるのは、住宅の中に住んでおる前働いておった労働者、その方々が炭鉱の修理なくして、四恩、六畳の中で、雨が降ればかさをさして食事をしておるという問題が、これは特に福岡県、筑豊等に多くあるわけでございます。私は水巻町の資料を出しておるわけでございますが、これは特に建設省の住宅局がこの問題を精力的に取り上げられまして――私たちはこの住宅改良の問題については石炭局が取り上げて自主的にやってくれるものという考えを持っておったわけでございますが、石炭局に行きまして何度陳情しても、のれんに腕押しという形になっておるわけでございます。一昨年この問題については建設省が取り上げまして、大々的に炭鉱住宅の問題に予算措置をしていただいたわけでございます。  この一表から四表まで住宅改良にどれだけ町費を出さなければならないかという数字を出しております。特に産炭地区におきましては、三参考人が言われましたように、相当な収入、財源が減になりまして、支出の問題については、このようなものに取り組みますと相当な町費負担という形になるわけでございます。一表は、一戸に当たりまして百二十八万一千七百五十二円という数字になるわけです。それから国のほうのが百十五万一千四百五十一円、それから国の補助が七十六万七千六百三十三円、それから起債が三十二万五千百八十二円、それから町費負担が十八万八千九百三十六円という数字になるわけです。これは一戸建設だけでございまして、その他土地購入費等を合わせますと、相当な町費負担をしなくてはならないというような数字になっておりますので、この問題については、さっきも言われましたように、率の問題をいま一度検討していただきまして、五分の四ぐらいを補助していただきたいというようにお願いをするわけでございます。  それからいま一つは、この住宅改良の問題については特に筑豊等、宮田、小竹等においてはこれをやりたいということで貝島、古河系統の会社側に申し入れをしたわけでございますが、貝島、古河等の鉱業権者は第二の計画があるのだという形でそのままに住宅を放棄しておるというような形でございますので、石特の先生方においては、このような住宅を放棄しておる地区に対しては、鉱業権者に対して地方公共団体が要請した場合は直ちにこのものを開放してやるという形に持っていっていただきたいというようにお願いをいたします。そうしないと、住宅をそのまま放置しておりますと不良少年の巣くつにもなります。火災の予防等――それから、そのような住宅に入っておる者は、修理を全然会社が放棄しておりますので、さきにも申し上げましたように、雨の中でかさをさしてめしを食っておるというような状態になるわけでございます。このような状態でございますので、直ちに開放をしていただきたいということをお願いいたします。  それから、特に第二種公共事業費の問題でございますが、参考二の中を見ていただけばおわかりになると思います。これはやはり福岡県全体の問題でございますが、これは私どもの水巻町がやっておりますので、数字的にこれをあげておるわけでございます。これは総工費が二千五百三十四万七千円という小さな工事でございますが、この中で国が三分の二を含めまして一千六百三十九万五千円という数字になるわけです。この中で国の補助が千八十二万、その残りが町費になるわけでございまして、二千五百三十四万七千円の中に、起債、超過負担を入れますと一千四百五十二万七千円というものが自治体の負担になっておるわけでございます。これは亀井知事が福岡県産炭地の実情で昨年度先生方にお願いをいたしまして、特別第二種工事というような形で予算を取られたわけでございます。事実福岡県にこの予算を持ち帰りまして各町村の希望をとったわけでございますが、最初これだけの大きな地元負担金があろうということは夢にも思いませんので、各町村はこぞってこれの受け入れ体制をつくったわけでございます。しかしながら、事実ふたをあけてみますと、さっき申し上げましたように、半分以上の地元負担金を出さなければならないというような形になりまして、福岡県でこれを本年度受け入れておるのは財政のよいところが幾ぶん受け入れて、大半は県がこの工事を引き受けてやっておるというような現状になっておるわけでございます。私たちといたしましては、どうしてもこの第二種工事につきましては、一人頭五千四百六十三円の単価を出していただきますと町費負担というものはある程度免れるんじゃないかということで、福岡県といたしましてはこの問題で労働省等に単価を五千五百円にしてもらいたいという要請をやっておるわけでございます。先月、福岡県産炭地対策協議会のもとで、辻副知事を先頭にいたしまして陳情にあがったわけですが、辻副知事の説明では、四十五年度は四千五百円ぐらいになるのではないかという説明があったわけでございます。しかし四千五百円になりますと、約千円というものを各町村が負担をしなくてはならないという形になりますので、どうしても四十五年度には五千五百円という一人頭の単価をきめていただきたい。これによって福岡県、佐賀、長崎等におきましては、第二種工事については政府がお考えになっておるような形の改良事業ができるものという考えを持っておるわけでございます。  それと同時に、いま一点は、労働省のほうが開発事業について各町村が要請したものについて相当きびしい査定をやっておるということで、県のほうで承認をしながら労働省でそれがけられておるというような実情であるわけです。これはやはり労働省よりも産炭地の問題については県が十分認識をしておるというように私たちは考えておりますので、県が承認したものについては労働省は許可をするというような形をとっていただきたい。そうしなければ、第二種工事については県が了承しながら労働省ではねられるというような形になりますと、いつも陳情をやらなければならないというような形になると思うのです。私たちとしては陳情がないような形の政策をすみやかにとっていただきたいということをお願いをいたします。  それから三番目は専用水道の閉山に伴う引き継ぎの実態でございます。これは遠賀町、鞍手町の三菱鉱山鞍手炭鉱の水道を引き継いだ実態の数字を出しておるわけでございますが、炭鉱の水道を引き受けまして、簡易水道というような形でパイプその他相当不備になっておりますので、これを普通の形、町村の簡易水道をやる場合については相当町費をこの中に突っ込んでおるという状態でございます。この点につきましても数字的に出しておりますので、その数字を参考にしていただきまして、炭鉱地区における簡易水道に対する補助というものをいま少し強化していただきたいというように考えておるわけであります。  それから四番目は閉山に伴う町村財政の現状、これは北海道の栗沢町の閉山に伴う町の財政を数字にあらわしておるわけでございますが、この数字から見ましても、交付金の十億の増加という問題について、本年度先生方尽力によって十億の臨時交付税をいただくようになったわけですが、これが年々二五%ずつダウンをされるような形になっておるわけです。炭鉱閉山になって三五%ずつダウンをされるだけの税収入が、各自治体においてそれだけの別途の財源ができておるかという問題でございますが、私たちとしては、二五%のダウンをされる以上にまだ産炭地の財政がそれだけ収入面においては減になっておりますので、二五%のダウンを何とかこれをいま少し数字的に減らしていただきまして、十億の臨時交付税を三倍ないし四倍にしていただきたいというようにお願いをいたすわけでございます。  それから学校施設に関する地方債の現在高調べというものを、福岡県の小竹町を参考にいたしまして数字を出しておるわけでございますが、これはやはり炭鉱が増産のために一度に相当な労働力を吸収したことによって学校が不足をし、それを補うため相当な起債等をいたしまして学校を建てておるわけでございますが、このような石炭問題に伴って相当数その地区から離れていったということで、各学校は現在余っておるわけでございます。しかしながら、地方債等について年々これだけの数字を返済しなければならないというような形になっておりますし、この問題については、自治省のほうに陳情に行きますと、このようなものについては特別交付金で見ておるということを再三言われるわけでございますが、特別交付金のワクの中にこれがどれだけ見られておるか、数字的に私たちにはわからないような状態になっておるわけでございます。願わくはこのような石炭政策によって建てたものが、石炭政策によって町が大きな借金をかかえなければならないというような問題については、やはり国の責任において地方債を免除してやる、利子を免除してやるという措置を早急に立てていただきたいというようにお願いをいたします。  簡単でございますが、説明を終わります。
  64. 平岡忠次郎

    平岡委員長 最後に、藤井参考人にお願いをいたします。
  65. 藤井万四郎

    ○藤井参考人 大町町長の藤井でございます。  諸先生方にはいつもたいへんお世話をいただきまして、また施策の面につきましても、たいへんありがたい施策を講じてもらいましたことを厚くお礼を申し上げます。  御承知のように、石炭鉱業によって繁栄し、石炭鉱業の石炭町として繁栄いたしました杵島並びに多久地区は、杵島炭鉱におきまして四月十九日、明治鉱業におきまして四月の二十三日企業ぐるみの閉山となったわけであります。それに伴いまして炭鉱離職者が大量に発生いたしまして、またさらにこれらの人口が急激な流出をきわめまして、地方の経済、それぞれの問題に波紋を投げかけておるような次第であります。  このような問題に直面いたしまして、諸先生はじめ通産省、各省並びに関係機関におきましては大型地域における社会、経済の前途を憂いなされまして、炭鉱離職者対策企業誘致対策炭鉱用水対策、ボタ山危険の排除、鉱害復旧、そういうような重大問題を解決しつつあり、解決していただきましたことを住民になりかわりまして厚くお礼を申し上げる次第であります。  私ども市町村におきましては、炭鉱閉山に伴う地方財政援助措置として新しく産炭地域振興のための臨時交付金制度が創設され、産炭地開発就労事業が新規に実施されるなど、まことにありがたいきわみであります。  われわれ閉山地域の市町村といたしましても、国の施策を中心に県、炭鉱との連携を密にいたしまして諸問題の解決につとめておるような次第でございますが、急激な財政需要の増加に対し、今後とも用水、住宅、鉱害の諸対策、石炭鉱業にかわりますところの企業誘致など、地域振興の問題が山積しておる実情でございますので、今後とも諸先生方の御協力と御指導を賜わりますようにお願いを申し上げる次第であります。特に、飲料水不足のために、この前の石炭特別委員会におきまして実情を訴えましたところ、通産省はじめ諸先生方の御協力をいただきまして二千万円の経過金融措置ができましたことを重ねて厚くお礼を申し上げます。  ただいままで四名の参考人の方々が申し上げられましたが、同じような問題でダブる点もあろうかと存じますが、まず第一点は、何といいましても炭鉱離職者の中に占めます中高年齢層の者が多いわけでございますので、そういうような問題から職業訓練所の設置なり、あるいはそれに伴う企業の誘致等につきましても御協力、御推進をお願いしたいと存じます。  さらに、企業を誘致します場合に土地の造成――炭鉱の土地の造成につきましては、炭鉱かきわめて不況になりましたために、杵島炭鉱におきましても八十億以上の借財を負い、しかもその用地そのものが銀行の担保になっておる。しかもその担保の相手方の一番大きいのは開発銀行でありあるいは事業団である、こういうような面から企業を誘致する場合に非常に高額用地になるというような問題がございますので、こういうような面につきましてもひとつそういうふうな配慮をお願い申し上げたいと思います。  さらに、御承知のように臨海工業地域として大きな規模を持ちます土地造成を計画いたしております伊万里湾開発につきましても、今後ともよろしく御指導、御協力のほどをお願い申し上げたいと存じます。  用水の問題でございますが、これは各参考人ともおっしゃっておられますように、飲料水、工水、農水、こういうような問題は、実は炭鉱があります間は炭鉱に依存をいたしておったわけでございますが、炭鉱が閉鎖になりますと、どうしてもかんがい用水の問題なり飲料水の問題、あるいは企業を誘致します場合におきましても、そういうような水の不足できわめて困難になる、こういうような問題がございまして、私のところはおかげで三洋電機、住友電子、佐賀鉄工所、こういうような大きな中核企業が進出してきましたけれども、水の問題のためにきわめて困難を来たしておるようなことでございますので、こういうような問題につきましても、国がこの問題の調査事業計画、こういうような面で助成を願いたい、こういうふうにお願い申し上げる次第でございます。  鉱害復旧につきましても、有資力で十一億二千八百二十六万八千円、無資力で十八億三千五百四十一万九千円というような佐賀県の鉱害が残っておるわけでございますが、そういうような問題から、昭和四十五年度の計画といたしましては十八億の予算要求、しかしながらこの中の十五億は継続でございますので、新規に三億をするといたしましても、これが満ぱいをしませんとこの鉱害復旧ができない、こういうようなことでございますので、農地に対します調整交付金の最高限度額の制限を撤廃してもらって、それだけの必要額を出してもらいたい、こういうふうに考える次第でございます。  中小企業対策につきましてもいままでるる述べられておりますが、私のところは七千人の人口の減を見ておるために、商店街の購買力はまことに減少しつつあるような問題でございますので、国の措置を根本的に強化されていただきたい。特に中小企業信用保険制度の緩和によってその利用の促進を御配慮できないかどうか、心からお願いを申し上げる次第であります。  炭鉱住宅、厚生施設の改良につきましては、改良住宅の事業費のワクの拡大、これが根本ではないか。さっきも申し上げられましたように七万以上の炭鉱住宅が残されておりますので、そういうような面からこの点の問題につきましては十分御配慮を願いたい。  産炭地開発就労事業補助金でございますが、これは三分の二になっておりますけれども、この問題につきましてはもう少し、特交で見るとかあるいは起債で見るということを労働省のほうでおっしゃっておられますけれども、何とか目に見える対策ができないものか。大町におきましてもいま四千九百二十万五千円の開発就労事業をいたしておりますが、超過負担分として七百七十三万四千円、こういうふうなことになっておりますので、さっきもおっしゃったように、目に見えない、どこに入っておるかわからないというようなことでは非常に不安がございますので、この点につきましては目に見えるような数字を出していただきたい。というのは、申し上げれば、災害復旧並みの補助金を出していただきたい、こういうふうに考えておるようなわけであります。  それと産炭地振興臨時交付金につきましては、水巻の議長さんからもおっしゃったように、これはどんどん減ってくるわでは、われわれは炭鉱のほうの鉱産税をもらっていた分よりもどんどん減ってくるというようなことになりますし、そういうことにならないようにひとつお願いをいたしたいと存じます。  それから地方交付税の特別措置についてでございますが、この問題はきわめて深刻であります。人口が減になりつつあり、財政はきわめて逼迫をいたしておりますが、住民福祉をたてまえとしますわれわれ執行部は、どうしてもやるだけのものはやらなくてはならない、金がないというわけにはいきません。そういうふうな問題からまず第一にお願い申し上げたいのは、新産都市の問題のときに、私ども全鉱連といたしましてお願いいたしまして、公共事業のワクのかさ上げによってその補助金を年度末のときに出してくれないかというようなことで……。ところが新産都市と同じようなかっこうでございますので、佐賀県で申し上げますと、公共事業のそういうふうな精算補助の場合に、六条地域は一千万、二条地域は二千四百万、こういうような違いがございます。これは全く主客転倒でございますので、こういうふうな法律は改めてもらいたい、こういうふうに考えておりますし、四十五年度の国調になりますと、さらに人口減によって財政はきわめて逼迫をするということは目に見えておりますので、そういうような問題も人口の急減補正、こういうふうなものを大幅に採用していただくようにお願い申し上げます。  もう一点は公租公課の問題でございますが、いままでは公租公課は炭鉱から取ります場合に優先的に取っておりましたが、今日、法の改正によりまして、一般債務として取ることになりますので、半分は国のほうで払いますけれども、私のほうで計算しますと、大町の場合四五・七ぐらいの払いにしかなりません。この点につきましても何とかあとの分を全部国のほうでめんどうを見ていただけないものかどうか、こういうふうにお願いいたします。  それから国保の赤字でございますが、今日炭鉱がやりまして、ほとんど滞留いたしております人が国民健康保険に入っておりますが、これがきわめて徴収不可能な面が多いわけでございますので、これは調整金交付の中でもう少し何とかめんどうを見ていただけないか。それと、来年になりますと、本年度かせいでおりません関係上、さらにむずかしい状態になるのじゃないか、こういうふうに考えますので、国に国にというようなことばを使いますけれども、やむを得ない今日の産炭地における実情でございますので、御勘案を願って何とかしてもらいたい。  それから文教対策でございますが、起債のたな上げにつきましては、いま水巻の議長さんからおっしゃったように、私どもはこの炭鉱がふくれ上がってくるときに起債でつくりました学校が、いま一棟やっと十万で売れるというようなかっこうでございますので、そういうような起債をたな上げしてもらいたい、こういうように考えます。  それと、スラム街化しておる今日の炭鉱住宅街の中においては、不良化防止のためにも、カウンセラーを増員していただきまして、これらの善導をやってもらいたい。  それと同時に、修学旅行とか、いままで出していただいておりますような援助費のかさ上げをしていただきまして、卒業するときにだけしかやらないということじゃなくして、その前に毎年のように修学遠足ということをやりますので、こういうような面についてもごめんどうを見ていただけないかどうか、こういうようにお願いを申し上げておるような次第でございます。  だいぶ四人の方の参考人がおっしゃいましたので、はしょって申し上げましたが、あとは御質問にお答えしたい、かように存じます。
  66. 平岡忠次郎

    平岡委員長 これにて参考人各位の御意見の陳述は終わりました。     ―――――――――――――
  67. 平岡忠次郎

    平岡委員長 これより質疑に入ります。  その前に、質疑通告者が六名おりまして、五人の参考人と相交錯して質疑いたしますと、相当な時間をとると思うのです。したがいまして、全く簡潔にひとつお願いしたい、このことを重ねて委員諸君並びに参考人にお願い申し上げておきます。  渡辺惣蔵君。
  68. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 午前、午後にわたりまして参考人の方々の御意見を拝聴しておるわけですが、特に午後の自治体関係の人々のお話には全く胸に迫る思いをするわけであります。きょうはこの皆さんのなまなましいお話を聞かしていただくにあたりまして特に皆さんに一番深い関連を持つ問題について、われわれだけではなしに関係官庁の諸君も列席を願って意見を承り、そしてこのあとの委員会での皆さんの意見を実現するための討議が関係官庁の諸君の十分の心がまえ参考となりますことを期待しておったわけでございます。しかし、残念なことに、きょう列席しております役所側は、通産省、労働省、厚生省、経済企画庁であって、いま問題が集中しております肝心の自治省と文部省が出席をいたしておりません。私はこのことを非常に残念に存ずるわけであります。たまさか内部のことを触れて恐縮なんですが、二、三日前に通産省の人事異動が行なわれて、鉱山石炭局長、それから石炭部長、計画課長が転任になったばかりであります。きょう新任の局長、部長さんが列席のはずでありますが、新任された局長、部長は、きょうの参考人の方々のなまなましい生きた話を骨身に徹して聞いておいていただきたい、この問題については次の委員会――きょうは時間がありませんから、ほんとうは参考人のいらっしゃる前で直接ここで役所側にいろいろ御意見に対する質疑で明らかにすることが一番いいと存じますけれども、時間の関係上できないことを残念に思います。次の委員会等でひとつ関係官庁の人々に特にこうした問題について意見を伺うことを前提にいたして、参考人に対して質疑いたします。  それで、たいへん恐縮なんですが、全国で知事会を代表してたった一人、北海道の副知事にわざわざおいで願いました。那須副知事は私は二十年来懇意な仲で、ここで私的なことを申して恐縮ですが、非常に御熱心に石炭政策に取り組んでいられる。しかし、きょうお呼びしたのは北海道知事なんです。北海道知事をお呼びしたのであって、知事が見えなかったということは、あなたに対して非常に敬意を表しておるのですけれども、知事が来なかったということについて、私は非常に遺憾の意を表明せざるを得ない。せっかく来てくださったのにたいへんよけいな苦情を申し上げて恐縮ですけれども、あなたはその点をひとつ知事に申し伝え願いたいと思います。石炭政策につきましては、九州の福岡の亀井知事さんにいたしましても、佐賀県の池田さんにいたしましても、きわめて熱心に県の重大問題としてみずから陣頭に立ってやっておられますし、あらゆる努力を積み重ねてきたことはわれわれも認めております。しかし北海道の知事は、昭和三十五年に知事になられてからまだ一度もわれわれ国会の中ではお目にかかっていないのです。来られるのでしょうけれども、われわれを訪問したり意見を交換したことは一ぺんもないのです。これはふしぎきわまることなんです。でありますから、これは勘ぐるわけじゃないですけれども、たとえば明治鉱業の九州と北海道閉山問題でも、これは九州が勝ったのは、九州の知事が一生懸命やったからだ、北海道の知事は何もやらぬじゃないか、こういううわさまで出るくらいわれわれもまことに立場に困りますし、面はゆい思いをいたしておるわけでございますが、私はこの際、那須副知事には非常に御苦労かけて、私個人としてはまことに恐縮なんですけれども北海道知事は一体どういう姿勢でこの石炭問題に取り組もうとしておられるのか、道の基本的な姿勢をひとつ明らかにしていただきたいと思うわけであります。あなたにはたいへんお気の毒ですけれども、そういう状況にあるのですから、道の基本姿勢をどうしたらいいのか、どういうように取り組んでおられるのか、これからどうするのかという点について、ひとつ知事のきちっとした姿勢を出してもらいたい。なぜと申しますには、いま九州の方々の御意見を承りまして身にしみて思っておるのですが、若干の九州と北海道の地域差がある。それは九州は平場に炭鉱が全部ありますから、しかも長い歴史を持っておりますので、九州のほうでは山が閉山になったりいたしますと、相当の人口が滞留して、人口が加速度的に減らないかわりに、人口があべこべに地方財政の負担になって、非常にあとの対策に苦慮されたということがあると思うのです。ところが北海道炭鉱は、これは全部山奥の遠隔の地で、石炭があればこそ開かれた地帯で石炭の生産が行なわれておりますから、その山が閉山になりますと、もう地域ぐるみ全部だめになってしまう。学校のかけらも残らなくなってしまうという状況になるわけであります。それだけに、ごく最近の例でも、沼田町の明治昭和及び大刀別が閉山になりますと、たちどころに中学校と小学校は一学期で全部閉鎖、家は一つもなくなってしまって、残ったのは鉄筋のアパートだけが残る。それも野ネズミの巣や山賊の巣になっては困りますから、国有地であるから明け渡さなければいかぬ、爆薬をしかけて全部撤去しなければいかぬという状況に置かれるほど、北海道における炭鉱閉山というものはまた九州等と異なった姿があると思うのです。しかし、状況のいずれにかかわらず、地方財政の負担にかかってくることは避けがたい著しいものがあると思います。  先ほど坂田さんがおっしゃっておりましたような、三十五年度では全国の平均も産炭地の平均も弾性値の数はいずれも六二%であるという状況ですが、これが四十一年の数字でいきますと、今度は全国が七〇に、高度経済成長で地方財政は全国平均が伸びておるのに、産炭地は四一・九%にがた落ちをしている、こういう状況にあるわけです。ことにそれが市町村税の場合になりますと、歳入総額に占める市町村税の比率は、これもまた三十五年は全国平均が四二・八%で、産炭地は三七・六%であったものが、四十一年になりますと、全国は四九・五%、五〇%の伸び率を示しておるのに、産炭地は二七・八%という全く全国から見ると半減の状況にあるというのが数字で示されておるのであります。でありますから、地方財政を担当していらっしゃいます現場の皆さまがどんなに帯労しておられるかということをしみじみと感じさせられるわけであります。  私は、問題を区切りまして、特に教育の問題――前提に申し上げましたように、文部省が来ておりませんので非常に残念ですが、この教育の問題について指摘をしたいのです。  地方財政の中の市町村財政のうちにおける行政全体に対して教育費の占めておる比率が、建築費を含んで全国の平均が二一・九%だといわれておりますのに、私の地元の北海道では、夕張市で一四%、美唄市で一二・七%、三笠で一一・三%、今度北星炭鉱閉山になった栗沢町で一二%というような状況になっておって、非常に地方財政が痛めつけられておると想像するのであります。  そこで岡山さんにお尋ねいたしたいのですが、夕張市の人口、いま私の手元にある記録では四十二年度までしかないのですが、三十五年度には十万七千九百七十二名、十万八千の人口があったのが、四十三年に八万一千四百五十三人に減っておる。実に三万人近い落ち方です。その中で生活保護を受けている人が、三十五年には千二百三十六人、全体の二・四%だったのが、いま二千六百人になっておる。総人口の三一・八%を占めておる。これが四十二年ですが、いまの進行状況は一体どうなっておるのか。それから、これら生活保護者に対して市費の持ち出しが三十五年には九百万円であったのが、四十二年では七千四百万円の市費の持ち出しになっておるという数字がここにあるのですが、これが最近どういう状況にあるのかということをお伺いをいたしたいと思います。  それから、いま佐賀県の大町の町長さんが触れられておりましたが、教育上、青少年の不良化がどんなふうな状況になってきておるのかという点について、ここには一応今年七月に学校の先生方が発表した夕張の資料があるのですが、これに対する対策というものがどういうように行なわれてきておるのか、膨大な非行化が出てきておる、そういうことに対する措置等にどういうように取り組まれておられるのか、この点について。それから、そういう状況について関係上部機関、道及び政府関係等はどう措置をしようとしておられる状況にあるのか、その点についてお話をお願いいたしたいと思います。  それから次に、中小企業の問題について、これは副知事になると思いますが、私は、最近の加速度な閉山の中で地域ぐるみ――これも先ほどの九州の状況と異なった状況で、奥地にありますから山がつぶれたら全部なくなる。ですから、たとえば先ほども触れました沼田町の場合のような昭和の市街はもちろん、浅野地区の市街、もとの雨竜炭鉱の地帯も壊滅的な状態になる。鉄道も全部はずれてしまう、住まいもできないという状況にありますが、この中で引き続いて千四百名の鉱員がいた赤平の茂尻市街でも同様の現象が起こっておりますね。倒産や閉店が相次ぐ。ところが最もひどい現象が出てきておりますのは今度の北星炭鉱状況です。北昂炭鉱の場合は、栗沢町の美流渡市街が、山を中心にしてそれ以外に全く経済性のないところで、そのために町が開けてきておった。たしか百七十何戸の商店があるはずです。これの閉山に伴う売り掛け代金が三億四、五千万円であったわけですね。ところが、ここで問題になりましたのは、あなたにも御苦労かけたわけですけれども、問題は、その債権者側か――これは債権者は、山が閉山になりますと、特別閉山交付金の場合は、一般債として債権の五〇%しか渡らない。そこでこの場合、百数十名の中小企業の人々のうちの特殊な何人かの人々が会社の鉱業権を差し押えてしまったという事態が起こったわけですね。その結果、いろいろ苦労して解決されたのは、親会社の北炭が乗り出して、そして結局のところ一般債権としての五〇%は当然特別閉山交付金が出れば払う。それ以外に一五%を会社側が上のせをして、そしてするということを約束したことによって、いわゆる差し押えの抵当権の解除を行なったわけでしょう。そういたしますと、問題になってきますのは、閉山という事態がこれっきりなければいいのですが、これからまた閉山発生するという場合を想定いたしますと、純然たる中小、百人か五十人しか使っていないような山でしたらあぶないですから、初めから地元でも売り掛け債権を残さないでするでしょう。貸すということをしないようになっていくと思うのです。それがまた早く企業を転落させ、閉山金融、融資の道を閉ざされて純粋の中小企業はおぼれていくということになるが、問題は、いわゆる北炭とか三菱とか住友とかいうような大手系列の会社の場合になりますと、今度の北炭系列であった北星炭鉱閉山は尾を引いてくると思うのです。これはみんなの知恵を出して異例の抵当権の設定であったわけですが、特別閉山交付金をもらう手続の時限が切れる直前まで粘られたためにやむを得ないで五〇%に一五%を上積みすることを約束して、いわゆる抵当権を解除したということになりますから、やむを得ずやったことですし、しかし一つの前例ができましたから、自今中小企業の債権者はこの手を打っていくと思うのです。そう思われるかどうか。この次から万が一、こういう大手系列にある、山自身は赤字だとしても、大手系列だから本社の能力、経済力があり得ると判断した場合は、そうしてどうせつぶれ山ですから、義理立ててもしょうがない、五〇%なんかもらったってたまるかという、こういう感じになりますから、こういうことが一つの前例となって、これから次々と債権者が抵当権を設定して差し押えをしていくという状況が進むのではないか。また債権者から見ても当然だと思うのです。たとえば北星の場合なども、全く急転面下九月九日に提案をして、そして二十日後になったら閉山を決定してしまったというような、こういう状況については寝耳に水ですから、これはもう打開のしょうがないから、そういう非常手段をとる、こういう現象がこれから次々と類型的なものが発生すると判断しておかなければならないと考えますが、そういう状況が将来出てくるということになりますと、事前にひとつ行政指導の及ぶところは行政指導をしていき、そういうような中小企業の人々が不安定、動揺の中で現存する企業に対しても協力を警戒する状況になっていった場合、つぶさぬでもいい山をその状況の中でつぶしていく。これは金融機関も同じことになりますね、ああいう例が出てきますと。そうしますと、加速度に企業取りつぶしの契機としてそういう状況が出てくると考えるので、私は、実は北星炭鉱一つのこの新しいケースは、これは北海道だけではないと思うのです。各地において出てくる。大きな現在の石炭機構の中においては、最も盲点をつかれた形であり、中小企業としては自存自衛のためにやむを得ない措置であった。そこまで中小企業もせっぱ詰まって、義理人情抜きでやはり自分も生き抜かなければならない。長い歴史関係は歴史関係だ、こういうせっぱ詰まったところに追い込められてきておる中小企業に対してどう対処し、どう臨まれ、どういうように行政指導をなされようとするのか。こういう点について、今後の展望の上に立って、行政指導の方法について御意見を承りたい。  それから教育問題を触れました中で、もう一つお尋ねしておきたいと思いますが、これも九州に、坂田さん等の場合にこういう状況があるかないか存じ上げないのですが、北海道のことから推して九州のことを申しては恐縮ですけれども、それは閉山になりました奥地の地帯、これはどこでも出てくると思うのですが、小学校、中学はものごとつぶれてしまいますね。けれども、そこにいました高等学校の生徒の措置に市町村も府県もみんな困っておるわけなんです。なぜなら、ことに高校の三年生というのは、卒業期を控えていますから移動できないのですね。それから親の移転先で高校生を受け入れてくれないという状況です。公立学校は特に受け入れない。東京、神奈川、千葉等に来た場合、もちろん同様です。広い地帯にばらばらに来るのですから、よけい突如として来るのですから収容力を持たない。まずここで困る。そこで困りますので、親たちは高校を卒業するまで現地の学校に子供だけを単身に残していくという状況が出てきておるわけです。こういう状、況の中で、一つの資料では、たとえば北海道の白糠の町では、町があっせんし、またお金を出して、宿舎を改造し、二十五名の収容の施設をつくった。管理人の手当、食費等については再検討することになっておるが、当初の申し込みが二十四名、全員という状況、それから建物、電気、水道、管理人の維持費等は、これは町が負担しておる。沼田町の例でいきますと、これは閉山後労働組合が会社と団交しまして、会社の建物を移築したか、町へ持ってきまして、そこで新しい寄宿舎をつくって、三年生、二年生、一年生、親がそこへ置いておきたい、そこで教育さしたい、連れていっても入学する場所がないという状況にありますので、こういう白糠やあるいは沼田町等の、特に高等学校の卒業期の生徒の問題が次々と出てきておるわけです。九州の事情はわかりませんけれども、こういうような問題は、私は親たちにとっても本人にとりましても地域経済にも、非常に重要な問題であると思いますけれども、関連をいたしましてこういう問題、これは文部省が来てないので非常に残念ですが、皆さん地元でどういうようにお考えになっておるか。こういうことについてどう当の府県は――そういう町村の苦悩しておる対策について、町村にまかせてしょわせておるのか、そういうことについてどういうような指導や協力の体制をしいて、そして高校教育の面についての道を切り開いてきておられるのか。その点についてお話を伺いたいと思います。いろいろ山ほどありますけれども、持ち時間がまいりましたから、これで終わらしていただきます。ありがとうございました。
  69. 平岡忠次郎

    平岡委員長 まず、石炭対策に取り組む北海道知事の姿勢に対して、それから閉山地区の中小企業の再建問題についての所信、それから第三番目に教育問題、そのうちで高校生の転校問題ないし宿舎の問題につきましては那須参考人からお答えいただきたい。  それから第二番目といたしまして、閉山産炭地区市町村の地方財政の急速な欠陥状態についての現況を補足的に御説明をしてくれというのが岡山参考人への質問。それから第三番目に教育問題、そのうちで青少年不良化防止問題に関しては藤井参考人からお答えをいただきたい。  最初に那須参考人
  70. 那須正信

    ○那須参考人 ただいま渡辺先生から御質問をいただきました問題について、私からお答えを申し上げます。  まず第一に、石炭問題に対する基本的な姿勢ということで、お尋ねをいただいたのでございますが、実は町村知事が出てまいる予定でございましたが、よんどころない用務がございまして、私かわって出席をさせていただいたわけでございます。この点は、石炭問題に対する認識が薄いとかなんとかいうことではございません。ほんとうにやむを得ないことでございましたのを御了承いただきたいと思います。  なお、道知事の石炭問題に対する取り組み方でございますが、御案内のとおり、北海道の石炭は北海道開発当初から重要な基幹産業として今日まで発展を続けてまいりました。したがいまして、北海道開発とともに重要な役割りを果たしてきた産業でございますので、この石炭産業が流体エネルギーによって相当な影響を受けて、非常な不況で帯しい立場にあることにつきましては、これを何とか安定的な石炭産業として発展をさせるための努力は今日までしてきたつもりでございますが、先ほど来申し述べましたとおり、道としても、申し述べた要望書のとおりぜひこの実現をしていただきたいということを重ねていままでもやっております。今後ともこの石炭問題につきましては積極的に取り組んでまいる所存でございます。この点は御了承いただきたいと存じます。  次に中小企業の問題でございますが、ただいま渡辺先生がおっしゃったように、北海道の産炭地はほとんど山間僻地にございまして、もしその石炭産業がかりに閉山をいたしますと、そこに一緒に生活をしておりました商工業者は、たちどころに職を失ってしまうというような事態が発生するわけでございます。したがいまして、この問題特に中小商工業者の問題は、今後特別のお取り扱いをいただきませんと、従来の産炭地の振興の中で、比較的中小商工業者については等閑視された気配がいままであったわけでございます。今後はこの点については特に御配慮いただきたいと考えるわけでございます。  なお北星炭鉱の場合には、あの地点に二百六の企業が張りついておりまして、もしこのままあそこに従業員がなくなりますと、この中小商工業者は全部あの場所から移転せざるを得ない、あるいは転廃業せざるを得ないということで、非常に苦慮いたしております。現地にいまそれぞれの相談所を設けまして今後の相談にあずかっておりますけれども、おそらく全部あそこから転出せざるを得ないというような非常に苦しい実情にございますので、先ほど来申し上げましたとおり、こういう転廃業あるいは転出をせざるを得ない企業については、ひとつ特別な配慮をしていただきたい、こう考えるわけでございます。  なお、先ほど御指摘のございました北昂炭鉱に対して鉱業権を差し押えるというような事態が起きましたのは、先ほど御指摘のとおり、ほとんど相手方に何らの話もせずに北星炭鉱閉山実行したということが、多少地元の企業に対して感情的な問題があったことが一点ございます。それと同時に、われわれに対する何らの心配もせずに、一方的に五〇%でがまんしろということでは納得いかないじゃないか、こういうようなことで、一部の中小企業者の中でこれを差し押えするという事態が起きたわけでございますが、やはり今後も、こういう実例が出ますと、おそらく北海道の場合もまたこの問題が発生するおそれがある、かように考えるわけでございます。したがいまして、やはりこうした閉山の起きる場合には、地元の商工業者に対しても十分ひとつ事前に指導をし、事前に了解をとって行なうべきである、こういうことがなければ今後はこういう問題がおそらく発生するのではないか、かように私は心配をしておるわけでございます。われわれもできる限り側面的な指導はいたしたいと思いますけれども、この点につきましては、やはり商工業者の立場というものを十分ひとつお考えいただいて、産炭地振興をはかっていただきたい、かように考えるわけでございます。  それから、三番目に御指摘をいただきました教育の問題でございますが、私の承知している範囲では、寄宿舎の管理人等におきましては、民間に委嘱する場合におきましても、私のほうの教育庁が予算的な措置をいたしております。この点を御報告申し上げます。
  71. 岡山碧

    ○岡山参考人 財政問題についてでございます。  まず人口の推移の調べについてお答えをしてまいりますけれども、夕張の場合、昭和三十五年から今日までの人口の推移を見てみますと、昭和三十六年が一番大きくて十一万千六百八人でございます。しかしながら、自来これをピークといたしまして、今日、今年度の八月一日のこれは住民登録の人口でありますけれども、七万六千七百十三人でございます。したがいまして、約三万五、六千人近い人口の激減を見ているわけです。これはひとり夕張だけじゃないと思います。昭和三十六年でありますから約七年から八年の期間を要しているわけでありまして、これが各産炭地のきびしい実態となっているわけでございます。  さらに生活保護の現況についてでありますが、これは昭和四十三年度の決算の結果でありますが、一般会計の決算額が二十一億四千万でありますが、この中で生活保護費は二億八千六百四十九万でございます。一般会計の決算額の対比が一三・四%であります。これはまさしく昭和三十五年から四十三年度までの最高でございます。  さらに、人員的に見ましても、昭和三十五年の千二百四十九人から、今日約二千六百人にふえているわけなんです。倍以上になっています。  さらに財政需要としては、先ほど教育費の内容で若干触れておられましたが、一般会計の中で占める教育費の割合が、全国平均二一・九%、夕張は一四%で、かなり低い。これはやはり財政の非常な貧困から、どうしてもぎりぎり押えられるものは押えて、とにかく耐え忍んできておるというのが実態でございます。今日危険校舎が非常にふえてきています。これはもう限度がありますので、早急にこういう危険校舎については補修しなければならない。そういう財政需要が今後加速度的にふえていくんじゃないかというふうに考えております。  なお、こうした実情から、夕張市の場合は、もうこれまで財政の自主再建計画を立てながら、とにかく細々と住民の福祉を守ってきておるというのが実態でございまして、市税の伸びを、昭和三十五年を一〇〇とした場合に、今日の市税、これは自主財源でございます。地方交付税は除きまして、大体夕張市と同じような、同型の市と比較をいたしますと、それらの市は、昭和三十五年を一〇〇にいたしました場合に、二七〇から二八〇に伸びていまして、倍以上に伸びています。ところが夕張の場合は、大体一〇四から一〇七、八内外を依然としてさまよっているわけです。大体横ばい状態であります。これはとにかくいま申し上げたようないろいろな要素があるわけでございます。この一事を見ても、いかに産炭地市町村の財政というものが苦しいかということでございます。最近、おかげさまで地方交付税がかなり伸びてきております。したがいまして、おそらくこの市税と地方交付税の差というものは、これは当然、地方交付税がずっと低いのがあたりまえだと思うのですけれども、最近は地方交付税のほうが上になってきています。これはおそらく過疎自治体におきましても同様の現象ではないでしょうか。このような状態でございます。特に夕張市の場合には、ただ単に教育関係だけじゃなくて、水道関係もその他の公共施設も、もうとにかく老朽化いたしまして、昨年から今年にかけて、水道行政に対する重点投資も、いろいろな関係機関の御協力、御理解をいただきながら進めておるわけでございます。  とにかく市民の生命と安全、衛生を守るという意味でも、最善を尽くしているわけでございます。どうかこうした産炭地自治体のきびしい実態を御理解いただきまして、よろしくお願いしたいと思います。
  72. 藤井万四郎

    ○藤井参考人 青少年の不良化防止の問題でございますが、これはどこの炭鉱の地におきましても、特に閉山になりました炭鉱におきましては、生活保護あるいは失業保険、こういうような方法で生活を送っておるというふうな現状の中で、もう一つは、先天的な問題もございますが、家庭環境というものが、おやじが仕事に行かない、酒ばっかり飲んでおるというようなことになりますと、どうしても子供に与えます影響は非常に重大なものがありまして、非行とともに、無気力になってまいるというふうなことでございますので、そういうような問題のために、私どもの町といたしましては、役場の職員を専任で一名、中学校の先生を一名カウンセラーとして毎日補導をさしておりますけれども、それでも足りないような現状でございますし、それから、いまお話がございましたように、あき家等がございますと、やはりどうしても中学校の三年生となりますと性の問題等もございまして、いろいろな諸問題が起こるわけなんです。夜間補導というものを、私も夜間補導に参るわけでございますが、そういう夜間補導をするということも非常に困難な面がございますので、青少年の不良化防止対策としては、そういうような閉山しました市町村にはカウンセラーを、学校の先生が実はそういうふうな炭鉱閉山によりて余るわけでございますので、それを有意義にカウンセラーとして活用し、そうしてそれらの不良化を防止していくという方策を講じてもらいたいというのが、私どもの希望でございます。
  73. 平岡忠次郎

  74. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 参考人にもお聞きしたいのですが、時間の関係がありますので、役所のほうにお聞きいたしたい。  まず第一に、いま参考人から要望がありました、終閉山炭鉱の水道処理の問題、この問題については、従来は、これは優先的に扱うというので、あまり閉山炭鉱の水道問題というのは問題にならないでスムーズにいっておった。ところが、この簡易水道のいわば申し込みが全般的に多くなった時点から、ワクの関係で、閉山炭鉱水道というものが十分要求を満たし得ない状態になってきた。そこで、従来、要求額について満足すべき予算がつかなくなった。そこで継続事業が非常に多くなった、こういうことであります。  そこで、一体、厚生省としては、四十五年度の予算のすでに編成期に入っておるわけですが、今後どういうようにされるつもりであるか、それをまずお聞かせ願いたい。
  75. 国川建二

    ○国川説明員 終閉山に伴います水道の施設整備に関する予算の問題でございますが、ただいま御指摘のように、ここ一、二年来、一般簡易水道の施設要望全国的にいまきわめて高くなっておるような状況でございます。  なお、終閉山に伴いますいわゆる炭鉱の専用水道も、地元の市町村に移管します際に、施設の不良な個所等につきましては、施設費に対しまして三分の一の補助をいたす制度が三十八年度以来とられておるわけでございますが、この予算は、簡易水道の施設費の補助というワクの中で処理いたしておるわけでございます。  本年度の状況を若干申し上げますと、本年度は、簡易水道の予算が全体で約二十一億円でございます。これに対しまして、全国からの簡易水道、終閉山の水道対策も含めまして、この要望が約三十五億円ございまして、そういったことから、要望事業費全部を見ることはきわめて困難な事情がございます。  そこで、なお終閉山関係の水道施設整備費の要望を申し上げますと、福岡県がおもでございますが、山口、福岡、佐賀、長崎の四県にわたりまして、要望個所は十七カ所でございます。これに要する経費が、補助金に対しまして約一億五千万ございまして、一般簡易水道並びに終閉山それから飲料水供給施設等が簡易水道施設費の一応中身でございますが、終閉山に対しましては約一億四百万の予算を充当いたしまして現在執行いたしております。なお先ほどもお話がございましたように、今後終閉山関係事業がふえることも予測されますし、これにつきましては、県を通しまして集めました要望をもとといたしまして、四十五年度予算要求といたしましては、終閉山関係だけで約二億を計上いたすよう現益進めておるようなわけでございます。なおその二億は、いわゆる簡易水道予算全体で約三十三億でございますが、その中身でございます。  以上でございます。
  76. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 先ほど参考人からもお話がありましたように、四十四年度の閉山が三百九十万トン程度である。これは倍ぐらいです。実は私も各町村の四十四年度並びに四十五年度の水道事業計画審を見ておるのですが、私の頭に、この炭鉱閉山になるだろう、こういう予想される町村が入っていないのですね。ですから率直に言うと、まだふえるということですよね。四十五年度にはこういう炭鉱がおそらく閉山になるのではないか、そうするとこの町村からはさらにあらためて水道計画書が出るのじゃないか、こういうように考えられるけれども、ここには出ていないんです。それほど実態は急ピッチに進んでおる。ですから既往の計画でやっと間に合ったと思っても、新しい計画が出る。炭鉱は電気はとめますという、水道はとまる、そうすると一体どうするかという問題になる。それから一体その電気はだれが負担をするのだというような問題になる。人間はかなり滞留をするわけですから、私はこれはやはりひとつ優先的に考えていただかなければ困るじゃないか、こういうように思うのです。と申しますのは、三十三億予算が認められましたら約二億程度回しますというようなことでは、これは三十三億が今度二十五億になれば、これはまたこれが比例的に減るということでは、現実人間がいて、いままで水を飲んでおった、その水が断絶するわけですから、私は普通のところの扱いとは非常に違うのじゃないか、こういうように思います。そこで、これは特別考慮をお願いいたしたい、かように思いますが、どうですか。
  77. 国川建二

    ○国川説明員 来年度終閉山関係の必要経費といたしまして約二億見込んでおりますのは、これは一応各県を通しまして、おそらくその事業実施が必要であろうという推定の数字でございまして、もちろんその中身が確定いたしていない面もあるわけでございます。先ほどもちょっと参考人の方からもお話がございましたように、中には突発的に終閉山事務処理をしなければならないような事業も出てくるわけでございます。したがいまして、一応予算要求上は推定の形で出しておりますが、必ずしもこれが最後までなるかどうかということにつきましては今後の推移を見ていかなければならないと思います。しかしながら、その実態は、先ほど来いろいろお話がございましたように、またいま御指摘のように、本来飲料水でございまして、何らかの措置ができないときに水道がストップするというような最悪の事態は、これは絶対避けなければならないのは当然でございまして、場所により、現地の事情それぞれによりまして、私どもといたしましてもそのようなことがないように、いろいろ場所によって事情が違いますので、それに即応いたしまして、たとえばその水源の確保だけは絶対にする、あるいはその施設の一部分だけは、これは必ず年内にしなければならないというようなものにつきましては、ケース・バイ・ケースに重点的にいたしておりまして、水道がストップするというような最悪のことはいたさないようにいたしております。また全般的にも一般簡易水道、これも非常に施設要望が強いわけでありますが、終閉山の水道につきましては優先的な配慮を加えて、一つ一つのケースに応じまして措置いたしていきたい、現在もしておるつもりでございますが、今後につきましてもこのような点を十分配慮していきたいというように考えております。
  78. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これは政府ですから、いずれまたあらためてお聞きいたしたいと思います。  さらに次に、要望のありました炭鉱の改良住宅の問題です。建設省見えておられませんが、産炭地域振興課長のほうで問題は二つある。一つは、現在従業員が住んでおる住宅の改良問題、要するに労働条件としての問題。もう一つは、すでに離職者が滞留しておる地域のこの住宅問題。これは戦後にできた炭住をそのまま置いておくことは産炭地振興のイメージにも非常に悪い、こう言っているんですね。ですからスラム街化せんとするものをどうして早く改良するか、こういう問題。この二点があるわけです。これは産炭地域振興課長としては一体どういうように対処していくつもりであるか、これをお聞かせ願いたい。  それから時間の関係でもう一つ。これは労働省にお尋ねしたいのですが、開就事業の問題。一つは、賃金が安いといわれておるが、一体開就事業はなぜ賃金が安いのか。それから第二は雨天就労の場合の処置を言っているわけですが、雨天就労という場合に、いまの緊就にしてもあるいは失対にしても日雇い失業保険をもらっておる。ですから何らかの若干の処置ができる。港湾労働者の場合は波動性によって、港湾労働法によって調整金が出る。ですから本来ならば建設業というのは、私は港湾労働者の調整手当のような制度が必要だと思う。思いますけれども、現実、まあ建設労働法というのはないわけですから、現在の開就事業という人々は一般の失業保険の適用を受けておる。そうすると、長期的に事業が続く場合には一般の失業保険の恩恵を受けますけれども、断続的な場合は掛け金が損をするだけで、しかも雨天の場合の保障がない。これをどうして調整をするか、役所としてはどう考えておられるか。それから、このたび具体的な事件として、宮田町の某組において労働条件の要求をして労働者がすわり込んだところが解雇したという事件が起こった。解雇をするということはこれはまさに不当労働行為でありますが、それを一体どういうように考えるのか。それから、労働者がいなければ、これは機械化等によって事業をするということになれば、これは開就事業としての存在を否定することになる、一般公共でやればいいが。それは一体どういうように考えておるか。それからまた、現実に開就事業というのはどの程度進んでどれだけ効果があっておるのか。先ほど地元の負担が多いということですが、どのくらい活用をされておるのか。産炭地振興事業としては、私は、道路ができたりあるいはいろいろ工事ができますから、事業面からとらえるとそれは一つの前進した姿になるけれども、雇用関係からとらえるときわめて不安定雇用である。一体そういうような身分の安定方法があるのかどうか、これをひとつお答え願いたいと思います。
  79. 真野温

    ○真野説明員 ただいま多賀谷先生御質問のいわゆる炭住改良の問題でありますが、一番初めに過去の経緯から申し上げますと、炭住の改良につきましては、先ほど先生御指摘のように、すでに閉山になった地域の炭住の問題、それから、特に昨今、いわゆるビルド鉱地帯の生活環境が悪い、そういうことでは労務者確保に支障があるという趣旨から起こりましたいわゆるビルド鉱地帯における炭住の問題の二つあろうと思います。  過去にそれについてどういう手だてをしてきたかという点を申し上げますと、まず前者の、いわゆる終閉山がすでに行なわれまして残りました炭住地帯、すでに山がなくなっておるという場合におきましては、これはやはり地区改良といいますか、地域全体の生活環境の改善、こういう趣旨から、従来あまり利用されておりませんでした住宅地区改良法に基づきます不良住宅改良、こういう制度を活用いたしまして、四十三年度から実施いたしております。簡単に実績を申し上げれば、四十三年度には二百八十六、四十四年度には、一部二種公営も含めまして四百六十戸というような不良住宅改良の実績があがってきておるわけでございます。  それからもう一点、ビルド鉱地帯、いわゆる現に山が生きておる、今後も大いにその発展をはからなければいかぬ、こういう地域については、むしろこれは現在生きておる炭鉱自身がどういう形でそういう労働者の生活環境の改善をはかるか、こういう問題でございまして、主体は炭鉱会社にあろうかと思いますが、これに対しては、四十四年度から、いわゆる石炭鉱合理化事業団を通じます無利子融資によりまして、住宅金融公庫等からの融資に上積みしまして融資を行なうということによりまして、実質の所要資金量の九割前後のものを確保するとともに、その実効金利も五%強というような形で、低利な形での融資の道を開くという形で実施しておりまして、しかもこれは、今後五年間にわたって改良すべき炭鉱住宅の状況を勘案いたしまして逐年計画的に行なうということで、制度としてすでに発足いたしておりまして、相当な融資申し込みが来ておるように伺っております。これは今後、先ほど参考人等から要望がございましたように、炭鉱住宅問題というのは、やはりそういう会社側のみならず、主として従来閉山になりました地帯の非常にスラム化した生活環境の改善でございますが、これについては、すでに昨年そういうような問題を予想いたしまして、建設省と十分タイアップいたしまして、一年間にわたりまして地域別に全部調査いたしました。その結果が今年度の初めにまとまりましたので、それに基づいて私どものほうも建設省と数度にわたりまして連絡調整いたしまして、今年度、私どもの所管ではございませんが、建設省の、先ほど申し上げました不良住宅改良の予算として二千戸近い戸数を計上して要求しているやに聞いております。私どもとしては、まず基本としては、そういうような不良住宅改良による改良事業費の拡大ということを基礎として進める必要があろうかと思います。十分この辺は建設省と協力して進めてまいるつもりでございます。  なおこれに関連いたしまして、こういうような不良住宅改良事業を進めることは、先ほど申しましたように地方財政その他の負担の問題としてはね返ってまいるわけでありまして、この点についても現在ある制度の活用を含めまして今後十分前向きに検討してまいりたいと考えておるわけであります。  以上であります。
  80. 遠藤政夫

    遠藤説明員 開発就労事業関係のお答えを申し上げます。  まず、賃金が安いというお話でございますが、産炭地開発就労事業につきましては、現在、御承知のとおり産炭地の開発なりあるいは産炭地における炭鉱離職者その他の関連企業の失業者が多数発生いたしまして、この離職者なり関連企業の失業者を雇用させるということと、産炭地の事業開発する、この二つの目的で本年度から新しく始められた事業でございます。  従来、緊急就労対策事業でございますとか、一般公共事業にこういった人たちを吸収いたしておりましたが、一般公共事業では吸収率が低い。それから新しく事業を興そうといたしましても、公共事業のワクでは事業を興すことがきわめてむずかしい、こういうことで新しく始めたわけでございます。したがいまして、地元の産炭地市町村では、この開発就労事業を第二種公共事業というような名前で呼んでおられる向きもあるようでございます。私ども、この性格としまして公共事業と全く同一内容で、ただ失業者の吸収割合を一般公共事業よりきわめて高いものにいたしまして、こういった離職者なり関連企業の失業者の七〇%を吸収するというたてまえをとっております。その実施の内容につきましては公共事業と全く同様の施行でございます。したがいまして、賃金につきましても、筑豊で現在実施いたしておりますところの実態を見ますと、一般公共事業の賃金と全く同じ額その他の条件が適用されておりますので、その意味からいたしますと、賃金は必ずしも安いとはいえないのじゃなかろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。  それから第二点の雨天就労につきましては、これも一般公共事業では、ほとんどといいますよりも全部が一般の失業保険法が適用されております。現在はそれと同じような形で一般の失業保険が適用されるような状況でございます。ただ、多賀谷先生御指摘のように、雨天その他で事業実施が不可能な場合に、こういった人たちの生活費の問題その他いろいろ問題がございますので、この点につきましては、先生のお話の御趣旨を十分検討いたしまして、実情に即した処置を考えていきたい、こういうふうに考えております。  それから第三点の、福岡県の宮田町で起こりました、請け負った組と就労者の間の労働条件に関する団体交渉の経緯につきまして、私ども報告を聴取いたしておりますが、大半の組につきましては、両者間の話し合いが成立して円満に妥結をいたしまして、事業が遂行されておるようでございますが、ごく一部の組で交渉がうまくととのいませんで、すわり込み、ストライキといったような状態で、片や組のほうの請負業者の側がこれを解雇するというような事態が起こっておるように報告を受けております。そういった事態が起こりますことは決して私ども好ましいことではないと思っておりますので、県その他関係者の間でいま調整に努力しておる最中でございまして、報告によりますと、大体円満に解決できるような状態に近づいておるように聞いております。今後ともこういった労働条件の問題で労使の間で円満に話し合いがつきまして、せっかく始められた開発就労事業が当初の目的どおり円満に遂行されることを私ども希望いたしております。せっかくそういうふうに努力をいたしたいと考えております。  それから、こういったことのために所定の吸収率が確保できないで、業者のほうが人を使わないで機械で処理してしまうというような例があるいは今後起こるかもわかりませんけれども、こういったことは、私どものほうといたしましては、工専が完全に遂行されたといたしましても、補助条件になっております七〇%の失業者を吸収するということが二つの目的のうちの一つの大きなものでございますので、その条件が満たされないことになりますと、補助条件違反ということで補助金の交付ができにくい、こういうこともございますので、そういうことにならないように十分指導してまいりたい、そういうふうに考えております。  それから、活用状況はということでございますが、私どものほうの計画では、本年度十カ月予算で二十五億二千万円の予算を計上しておりまして、これによりますと、事業費総額が三十七億八千万円を予定いたしております。これによります失業者で就労できる人が延べで七十三万六千人、この中で、ことし初めての試みでございますので、若干計画がおくれておりまして、現在までにすでに実施中のものが約八二、三%になりますか、全体で三十四億の事業を現在実施中でございます。吸収率につきましても、現在の時点では予定どおり所期の吸収率をあげておる、こういうふうに報告を受けております。  こういったことで、実は雇用の状態が九州なり何なりに比べて不安定ではないか、こういうことを地元からもいろいろ陳情、要望等を受けておりますが、私どもとしましては、ただいま申し上げましたように、失業保険適用の問題につきましては、十分検討をいたしたいと思っておりますが、雇用期間その他で一番問題になりますのは、ことしの年度末までは雇用事業実施を継続をいたしますけれども、そういった雇用安定措置としてでございませんから、年度がわりに、一般公共事業のように年度当初にすぐ事業実施できるかどうか。もしできないといたしますと、これに現在就労しております人たちが、年度初め、新しく新年度の事業が開始されるまでの間雇用につけない、こういうことになりかねませんので、事業実施いたしております県、市、地元町村当局に対しましても、ただいまいろいろ督励をいたしまして、来年度の計画を年度当初から実施できるように、現在鋭意検討中でございます。そういうことにならないように十分配慮いたしてまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  81. 平岡忠次郎

    平岡委員長 八木昇君。
  82. 八木昇

    ○八木(昇)委員 問題はたくさんございますが、私も三つばかりにしぼって、これは藤井参考人にお伺いをいたします。同時に政府委員のほうからも私の質問に対する見解をお述べいただきたいと思います。  先ほど、藤井参考人から申されましたように、水の問題が大町町においてはやはり大きな問題だと私も思っております。そこで、一つは飲料用水の問題でありますが、従来、この坑内水を一般の地域住民も利用して飲用に供しておったわけであります。そこで、杵島炭鉱閉山になるというので、これが経過金融の対象になりまして、その際、大体ことしの九月ごろまで坑内水を従来どおり供給する、当初こういうような考え方で計画がなされたはずでありますが、その後、聞くところによりますと、ボーリングをやって仕事を促進をしておるけれども、実際に配管工事等をやって水の具体的供給ができるまでにはなお相当の期間を要するというような実情だと聞いておりますが、今日の状況はどうなっておるか、そしていつごろそのように供給ができるようになるのか。それからその間のいろいろな経費面の問題等々を町当局としては将来どのようにしようと考えておられるか、おそらくそういった資金の用意はないと思いますので、こういった実情について政府としてはどういうふうに対処するお考えであるか、これを参考人並びに政府委員の両者からお答えをいただきたいと思います。  それから水の問題としてもう一つは、やはり工場誘致をするにつきましては、特に佐賀県の杵島郡北部の場合は工業用水の問題が一番大きな問題だと思います。住友電子材料がすでに工場建設を始めておりますが、一日千トンくらい水を使う。それから三洋電機がすでに用地は買収をしましたが、これまた将来七、八百人の工員を使うということになりますから、これも一日千トンくらいの水を利用するのではないか。最近すでに佐賀鉄工所の大町工場が建設されて操業をしておりますし、近く武雄から清本鉄工が来る。それぞれがボーリングをして工業用水を地下水に依存する、こういうことになるとすれば、おそらくあの辺の水の事情からすれば、同一水脈ではないかと想像されます。そうなりますと、大体そこいら辺のところが地下水利用としては限界になるのではないか、こういうふうに感じます。  結局、私の考えとしては、杵島炭鉱五坑の坑内水、これを大町のほうまで引っぱってきて、これは北方町にありますけれども、ここの地点はちょっと距離がありますけれども、御承知のように地下水がたいへんに豊富なところで、むしろ水が多過ぎるために、三菱古賀山も杵島もついに閉山をせざるを得ないというのはそういった事情からもきておるというようなことでありますので、この炭鉱坑内水を工業用水として利用する。しかもそれを産炭地域振興事業団でやれないものかどうか、こういう意見があるということを私仄聞しておりますが、町当局としてどのようなお考えか、あるいは県当局としてどういうお考えか、そうしてそういった事柄について何らかの動きをなされておるかどうか、この問題について政府当局はどのようにお考えか、これをお伺いしたいと思います。  直方で産炭地域振興事業団が、これは坑内水利用じゃありませんけれども、工業用水を実際にやっておられるわけでありますけれども、大体今後若干の期間がかかりましょうけれども、毎日坑内の水位がどんどん上がってきておるわけでありますから、ある段階まで上がれば、そこまでボーリングをしておろせば、そう高い経費でなくて非常な多量の工業用水が供給できるのではないか、こういうふうに私としては考えますが、ここいら辺のところをお答えいただきたいと思います。
  83. 藤井万四郎

    ○藤井参考人 一番当面いたします水の問題として、飲料水はさっきも申し上げましたように、大体九月までで終わるというようなことでございましたけれども、なかなかボーリングが思うようにいきませずに、いまなお坑内水を利用しておるという現状でございます。大体今月一ぱいくらいは坑内水を利用しませんと、閉山水道のほうがうまくいかない。炭鉱の配管そのものが、自分手持ちの配管をいたしてありますために腐食度が非常に高いために、非常に困窮をしておるというような現状でございますので、せめても今月一ぱいは何とかやりくりをしながらでも給水をしていきたい、こういうように考えております。  工業用水の問題は、さっきおっしゃったように、住友特殊電子材料のほうが千三百トン、三洋電機が来年度で大体五百トン、清本鉄工が来ますと、やはりこれも五百トン程度の水、それから佐賀鉄工所のほうは、地元に掘りましたところが幸いに出ましたので、これで間に合っておりますが、問題は、同じ水脈の中に現在四本のみぞがございますので、工業用水にあまり水を揚げますと、陥没もさることながら、飲料水に事欠くというような心配が実はありますので、会社とも話をいたしまして、何とか国の力添えをいただいて、現在の五坑の坑内水を活用していってはどうかということで住友電子とも話をいたしております。しかし、これが現状のままでいきますと、トン当たり六千トンの場合に二十三円、それから二千トンの場合に三十八円、千トンの場合に四十六円、こういうふうにコスト高になりますので、それでは工業用水として使えぬのじゃないかというので、実はこれを大きく水を揚げることにしてコストダウンをしていってはどうだという話をいたしておりますけれども、なかなかいますぐこれがどうのこうのというような問題ではございませんので、千三百トンと――三洋電機の五百トンが飲料水的な水質を持たないとだめだということでございますので、これは鉄分等、いろいろその他の問題がございますので、三洋電機だけはどうにもならない。しかし、住友電子のほうは九百トンは坑内水でよろしい、四百トンは真水がほしいというような現状でございますので、その点は帰りましてさっそく県と両工業、それから町と四者会談をするようにいたしておりますが、できれば、さっき申し上げましたように国の御援助を願って何とかこの問題を処理していかないと、せっかくの工場が逃げてしまうという心配がございますので、その点を特にお願いしておるような状態でございます。
  84. 国川建二

    ○国川説明員 大町の終閉山水道の問題でございますが、全体計画は、計画実施人口四千六百人と押えております。これを完全に整備して施設を改良いたしますと、事業費といたしまして約七千五百万円程度が必要だというふうに見ておるわけでございます。  そこで、単年度では実際問題としましても、また全体の仕事をするのは無理であるという判断をいたしまして、これは町並びに県あるいは通産省と相談いたしまして、本年度はこのうち事業費といたしまして約九百六十万円程度、この内容は、現在の坑内水を振りかえまして、新たに地下水水源、これは深井戸で予定いたしておりますが、この水源を設けまして、既設の配水池までパイプでもって水を送る、水源と送水施設事業を本年度の事業として実施いたしたい。これは町当局とも十分話をつけまして、この程度を行なえば当面とりあえずの問題はしのげるという形で事業を行なう予定にいたして進めております。なお残る事業費が約六千五、六百万ほどございますが、これは来年度以降において措置いたしたい。これは端的に申しますと、現在まで一応水が通っておる施設でございますが、老朽しておる部分もかなりあると思いますので、その辺はよく現地実情に即応しながら事業を来年度以降に継続して進めたい、こういうように考えております。
  85. 真野温

    ○真野説明員 先ほど杵島地区の水の問題について御質問がございました。その中で上水関係については、いま厚生省のほうからいろいろ予算措置等についてお話がございましたが、なおこのような新しい水道水源を見つけるまでの間のつなぎといたしまして、いわゆる従来から続けておる坑内水の供給を続けるために、先ほど藤井参考人も申されましたように、閉山会社からの経過金融措置として二千万措置いたしましたことは先生承知のとおりでございます。  それから第二の点の工業用水の点でございますが、この点につきましては、先生御指摘のとおり杵島地区、多久、杵島あの辺一帯を含めまして水源の非常に乏しいところでございまして、従来から私ども企業立地促進の見地からこういうような用水の確保ということについて心を砕いてまいりましたが、特に最近の終閉山に対応する企業の誘致促進の必要性から、今後もさらに全体としての方向での施策を促進してまいりたいと考えております。そのことについては、県当局及び町ともいろいろ打ち合わせいたしまして、総合的な水源調査、先ほど先生御指摘のような坑内水の利用ということも含めまして――ただコストが非常に高いとかいろいろな点もございますし、坑内水の場合に水質の問題もございます。したがって、その利用も含めて、さらにほかの河川の開発を含めて現在県当局と打ち合わせまして調査をいたしております。その上で必要な措置として工業用水を建設するという事態になりましたときには、私どもの産炭地域小水系工業用水、これに乗せましてなるべく早急にやるようにいたしたい、こう考えております。
  86. 八木昇

    ○八木(昇)委員 あとは二点だけですが、杵島炭鉱のあと地の問題なんですけれども、平たん地がたくさんございます。あと地約七十万坪のうちに平たん地が約二十万坪くらいあると実は思います。現在はペンペン草が生えてそのまま放置されておりますけれども、たいした手を加えなくても造成をすればりっぱな工業用地や住宅用地になり得ると思われる分が私の見当でも二十万坪のうち十数万坪ある、こういうふうに考えられるのですけれども、産炭地域振興事業団あたりはこれについて土地造成の計画がまだ全然ないのではないか、こう思うのです。従来の事業団の土地造成と分譲の実績等を見てみますると、佐賀県全体についてみましても、もうほとんどその九割が売却済みであります。ということは、これは端的にいえば大体買い手を見当をつけて見つけ出してから土地を造成する、いわゆる先行投資というようなことにはなっていないと私は思うのでありますけれども、ここら辺の問題について町としてどういうふうなお感じをお持ちになっておるか、それから政府として産炭地域振興事業団にどのような指導をされるつもりであるか、さらに具体的に杵島炭鉱のあと地の土地造成について産炭地域振興事業団にこれをどのようにやらせようと考えておられるか、簡単でけっこうでありますから、お答えをいただきたいと思います。  それから現在の大町町における離職者の滞留状況を簡単に町長さんから御説明いただいて、通産省側からは、この産炭地の誘致企業、これに対していろいろな金融の優遇措置をするわけですけれども、そういう場合には、一定割合の炭鉱離職者を必ず雇わなければならぬ、こういうたてまえになっておるのですけれども、実際の誘致企業、産炭地に進出した企業、これが具体的に炭鉱離職者をどれだけ雇って、だれとだれとだれをいつどういうふうに雇ったかというようなことは、どの機関でどのように確認をされるか。そして、実際には離職者の雇用される割合が非常に低いわけなんです。これを一体どのようにやっていかれるつもりか、これを明らかにしてもらいたいと思います。
  87. 藤井万四郎

    ○藤井参考人 杵島炭鉱のあと地につきましては、工場用地なり住宅用地として十分に活用していきたいというのが町の方針であります。なかんずく大きな団地、高砂団地というところがございますが、そこは約六万六千坪ございますので、これは事業団のほうと話し合いをいたしまして、事業団のほうで買い上げ、事業団のほうで土地造成をするようにというお願いを申し上げ、事業団もこれを了承いたしております。今日までは事業団は企業が来るということにならないと造成はしなかったわけでございますが、今日ではやはり産炭地の実情等よく御勘案を願って、来なくとも造成をして立地条件としての立場をとりながら売っていこうというような考えでおられるようでございます。  それから炭鉱離職者の滞留の問題でございますが、実は、私ども町当局といたしましても、炭鉱離職者が相当数出るんではなかろうかというふうに考えておりましたけれども、約三分の一程度流出をいたしましたが、約三分の二残っておるというような現状であります。その三分の二残っておりますのが若い夫婦と子供たちだけが出ていきまして、年老いた老夫婦が残っておるというような現状も相当数ありますし、さっき申し上げましたように中高年齢層の人々が残っておるというようなことで、工業用水とも関連いたしますが、そういうような面からこの炭鉱離職者の中高年齢層の働ける企業を誘致したいというふうに考えておるような次第でございます。
  88. 真野温

    ○真野説明員 ただいま八木先生御質問の二点でございますが、炭鉱のあと地利用でございますが、私ども、先ほど、先生言われましたように、産炭地事業団を通じて土地造成をいたしております。その際、本来事業団の事業として先行的な土地造成による企業誘致ということが基本であるが、現実にはなかなかそういっておらぬのではないか、こういう御趣旨でございます。  実は、産炭地事業団全部を通じまして申し上げますと、かなり先行造成をいたしまして、当初非常に譲渡が少なかった。譲渡率が低いということから、全体の資金効率の観点からやはり相当その譲渡率を高めるという必要があるということから、関連の公共事業関係、道路でありますとか用水でありますとか、あるいは誘致企業に対する勧奨ないし資金の融通というようなものを通じて努力をいたしました。実は最近非常に譲渡率が上がってまいったわけであります。そういう状況になりましたこともございますし、先ほどいわゆる終閉山地区の利用状況をいろいろ参考人からお話もございました。私どもとしましても最近における終閉山というものを考えまして、終閉山地域にできる限り企業の誘致ができるようなことを基本といたして、事業団にもそのように指導いたしておりまして、できるだけそういう意味で私も御要望に沿うように現実に事業をいたすように指導をいたしてまいりたいと考えております。ただ、御承知のように、全体として事業団の採算ないし予算というものの制約もございますし、従来事業がややおくれがちで予算消化が悪かった、これは用地取得に難点があるのでございまして、その点を含めましてできるだけ先行的な用地取得を行ない、それに伴ってできるだけ早く効率的に土地造成ができるように予算の拡大とあわせて進めてまいる所存でございます。  それからもう一点、誘致企業に対する離職者雇用の問題でございますが、先ほど先生が言われましたが、ただいま産炭地事業団では、誘致企業に対する設備資金の融資にあたりましては離職者の雇用を一定パーセントを義務づけております。実績で申し上げますと、大体四十三年度末までに、これは融資当初の計画でございますので、その後ふえたと思いますが、当初の計画において約三万五千人ぐらいの新規雇用が事業団の融資企業だけでございました。それに対して炭鉱離職者が約一万二千人弱ということで、大体基準といたしております三割程度の炭鉱離職者の雇用というものは実績において全体としてはいたしました。ただ、個々の場合におきまして、業種であるとかあるいはその場における緊急に人を集めなければいかぬという要請等から、必ずしもこういうような基準となるような雇用まで至らない場合がございます。ただ炭鉱離職者を雇わないから融資を行なわないということは非常に困難でございまして、やはり企業が進出して当該地域で活動してくれることが産炭地の振興のために相当なプラスと申しますか、寄与する点でございますので、できるだけそういう指導なり、さらには炭鉱離職者が働けるような業種、企業、こういうものをできるだけ努力して誘致するという方向をとりながら、設備資金の融資指導だとかその他いたしていきたい、こういうふうに考えております。
  89. 八木昇

    ○八木(昇)委員 実際の確認は国の機関としては出先はどこがやるのですか。これが非常に不明瞭なんです。炭鉱離職者をどの企業がどれだけ雇ったかという実際の確認をやっている責任機関はどこなんですか。
  90. 真野温

    ○真野説明員 事業団が融資の際に事業計画をとりまして、その中で雇用計画をやっております。その中にやはり炭鉱離職者を雇用させる……。
  91. 八木昇

    ○八木(昇)委員 実際に炭鉱離職者であるかどうか。それだけ雇ったかどうかということを個別にぴしゃっと確認をするのはどの機関ですか。
  92. 真野温

    ○真野説明員 融資当初においては、一応事業団でその点は口頭によってだと思いますが、具体的に一つ一つ……。
  93. 八木昇

    ○八木(昇)委員 われわれ出先で聞いてみると非常に不明瞭なんです。
  94. 真野温

    ○真野説明員 最終的に、その離職者が恒久的にどうなったかという点は――いわば近視眼的なものとして……。
  95. 八木昇

    ○八木(昇)委員 職業安定所なり何なりの機関がぴしっと押えなければいかぬのじゃないですか。だからその数字はやはり信用できないんだ。
  96. 真野温

    ○真野説明員 先生御指摘の、いかなる形で炭鉱離職者が雇用されておるかを確認できないという点は、おそらく企業発足後いろいろ経営の事情等で変化が起こった場合、あるいはその後やはり新規の雇用がどんどん年々ふえておりますから、全体として新規の部分が比較的若年層がふえてくるということは考えられます。したがって、こういう比率というのは、先ほど申し上げましたように、融資当時において事業団が確認しておる、こういうことでございます。恒久的には、あくまで全体パーセンテージまで把握はいたしておりません。
  97. 平岡忠次郎

    平岡委員長 大橋敏雄君。
  98. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 私は福岡県の坂田さんと入江さんに質問しておきたいと思います。  まず最初に、飯塚の津島というところの自衛隊の駐屯地にホーク大隊が配備されるということが政府機関で決定しているわけでございますが、九月の飯塚の市議会の定例会におきまして、野党諸君がホーク大隊配置反対決議案を提案いたしておりますけれども、賛成少数で否決されております。この賛成多数者の意見が産炭地域振興の一環であり、企業誘致と同じ経済効果をもたらすからいいじゃないか、このような考えがあるやに聞いているわけでございます。   〔委員長退席、岡田(利)委員長代理着席〕  私は、こういう軍事基地化していこうというホーク大隊の配置と産炭地振興の問題とは本質的に異なるものである、こういう考えを持っているわけでございますが、全国鉱業市町村連合会会長さんという立場から、それに対する御意見をお願いしたいし、もう一つは、関係町村議会の議長会会長さんという立場で入江さんにこの問題を聞きたいと思います。  それとその次は、炭鉱の退職者の再就職、これについては私どもは完全雇用をとにかく訴えているわけでございますけれども、このたび、先ほどでも話があっておりますように、開発就労事業が興ったわけでありますが、入江さんの話によりますと、町の負担があまりにも大きいために、実際問題として県の段階で実施されていて、町のほうはほとんどそれに該当されていない、こういうお話を伺ったわけでございますが、その点は非常に残念に思っておりますけれども、要するにこの事業の目的は、炭鉱離職者を七〇%は雇用するというのが目的でありますが、実際問題として現地立場から見られた場合、それがどの程度吸収されているかという問題であります。それが第二番目です。  第三番目は工場誘致の問題でございますが、灘炭地域の大きな問題として考えられるわけでございますけれども、いま直方のたしか鞍手工業用水というのですか、あの事業所が運転しているわけでございますけれども、供給水量の約十分の一程度が現在利用に回されている、あとの水は余り余っているということと、それからその水が供給される地域にはもうすでに工業団地が何カ所かに造成も終わっている、にもかかわらず工場がなかなか誘致されてないという話も聞いておるのですけれども、こういう点についてどこにそういう隘路があるのか、これもお答え願いたいと思います。  それからもう一つ教育問題でございますが、先般北海道に参りましたところが、高校生の転入問題が非常に深刻な問題として取り上げられておりました。先ほどからも質問があっておりましたように、要するにそれを受け入れる学校がない、また受け入れる学校が学力の差といいますか、学力差があるということから、転入試験を行なっている、まあ行なうまではいいのですけれども、試験をやったあと、その生徒に対する適切な処置がなされていない、つまり入学の保証などは全くなされていない、こういうことを聞いていたのですけれども、福岡県の場合はそういう点はどういうふうになっているかということです。それから佐賀の方のお話では、カウンセラー、いわゆる生活指導者の実情についていろいろと要望があっておりましたが、この点についても福岡の実態はどうなっておるか、お尋ねをします。  最後に、商工業者の対策でございますけれども、終閉山に伴いまして、いわゆる職業を、やむなく商業をやめなければならないというそういう地域商工業者に対していまどのような考えに立っておられるか。特に北海道の場合は、先ほど話があっておりましたように、僻地炭鉱でございまして、その炭鉱がやまれば全部根こそぎだめになっていくという非常に深刻な問題が話されておりましたけれども、福岡県の場合、多少事情は違いますけれども、やはりこれは重大な問題であると考えますので、そういう商工業対策についてはどういう考えで対処なさろうとしているのか、お尋ねをしておきたいと思います。  もう一点、これは最後ですけれども、九州は特に公害問題がひどいわけでありますけれども、地盤の沈下あるいは傾斜、亀裂、それから農地、家屋、構築物の損害ははなはだしいものだと思いますが、こうした被害者に対する賠償問題等がくすぶっております。こういう点非常に心にひっかかるわけでありますけれども、自治体の皆さんから見た場合、たとえば法律や省政令を改正したりあるいは是正したりする必要があるというところがあれば、そういう点もあわせてお答え願いたいと思います。   〔岡田(利)委員長代理退席、委員長着席〕
  99. 坂田九十百

    ○坂田参考人 第一のホーク大隊の件ですが、これは大体超低空で来る飛行機に対処するための部隊で、一個大隊二百四十名ですから、これを四カ所に分けて、一カ所は大体六十名。それでこれは飯塚といいますけれども、飯塚だけではなくして、一カ所ではなくして、これを四カ所に分割するわけであります。これは私のほうの田川市でも誘致してもらいたいという中小企業者の非常な熱心な陳情もあったわけでございます。しかし、私のほうは一個大隊のうちの四分の一が来るわけなんですから、六十名の自衛隊が来て、これで受ける町の商店への恩恵がどの程度であるのか。それからこういう部隊を誘致することによって非常な危険を感ずる、この誘致には絶対反対だという人が非常に多いわけであります。誘致しようとする側と、それからそういう部隊に来てもらっては困るというのとありまして、私といたしましては、六十名の隊員が来て受ける恩恵と、それからそうした婦女子に至るまで非常な危険な気持ちを持たせるということをはかりにかけますと、私はその危険な気持ちを持たせることはむしろ市としては取るべき道でないのではないかというように考えてみまして、誘致することを遠慮したわけでございますが、飯塚に先年産炭地振興のために千五百名の部隊が来ておる。この部隊が落としまする金がその当時大体六億円といわれておりましたが、現在では九億円この町に落ちるわけでございます。そういうような状態で隣の市が実際に恩恵を受けておる。だから少々の危険はおかしてでも自衛隊を誘致すべきであるという町部の人の声は非常に強いわけでございます。しかし反対、賛成という空気が二分いたしまして――今後、田川市のように石炭によって生まれ石炭によって育ちました町といたしましては、市民全体が一丸となって、石炭産業に依存することなく新しい町づくりをやろう、これは全市民が一丸となってやるべきだという気持ちを持っておるのでございまして、ホーク大隊を誘致することによって反対、賛成という、市民間でそうした問題で対立するということになってまいりますると、利益とかあるいは危険だということを別にいたしましても、市民が市民間で相克するということは非常に市民のためにならないということから遠慮したような次第でございます。飯塚市ではすでに千五百名の自衛隊がおられますから、ホーク大隊受け入れに賛成されたようでございます。一部に反対の空気も相当強いようでございますけれども、飯塚市議会では少数で否決されて、誘致することに決定されたようでございます。これは他市のことでございますから、私どもあまりいろいろと意見がましいことは申し上げにくいのですが、そういう状態でございます。  それから産炭地開発就労事業につきましては、炭鉱離職者は七〇%ということになっておりますけれども、これは炭鉱離職者だけでなくして、炭鉱離職者あるいは関連産業の離職者を加えて七〇%、したがって炭鉱離職者だけではない。炭鉱があって、炭鉱に関連するあらゆる事業の離職者を含めて七〇%、こういうことでございます。先ほど八木先生からも御質問にございましたが、ただ炭鉱離職者だけではない、こういうように御理解いただきたいと思います。  それから工場誘致の問題でございまするが、工場誘致の問題は、やはり産炭地という、筑豊地帯は海岸線から離れておりまする内陸地帯でございまして、交通の便が悪い、あるいは工場誘致の諸条件が整っていない、道路網の整備ができていない、あるいは水資源がない、こういうようなことでいままではおくれてまいりました。ようやく先生一方の御尽力と政府機関の御努力によりまして、やや産炭地の工場誘致の諸条件が整いつつある状態でございますので、今後は工場誘致も可能ではなかろうか、こういうふうに期待いたしておる次第でございます。  それから鞍手用水の問題は、これは三菱鉱業の採掘あとが大きく陥落いたしまして、これを、人工湖をつくり、そしてその水を給水いたしておるわけでございますが、これは水が余っておるのかどうなのか、鞍手用水の水が余りましても、田川までこの水を引くというわけにまいりません。非常に距離がございまするので、田川まで引いてまいりますると、一トン百円ぐらいにつきますから工業用水にはならないわけで、これはむしろ水巻の議長さんのほうが詳しいと思いますので、水巻の議長さんから御答弁していただきたいと思います。  先ほどから文教問題、教育問題について御質問があったようでございますが、高校生の場合は、これは県の教育庁でやっておるのでございまして、われわれに与えられましたのは中学校と小学校、これの施設をやるということでございますが、私どもの田川市では、もう高等学校に行くようになりますと、やや思想が固まっておる、わりかた不良化をするのは少ないわけであります。不良化する、要するに無気力になる、あるいは学力が低下する、これは主として小、中学校に起こってくるわけなんです。  私どもといたしましては、教育を最重点に考えておる。ということは、田川市のような貧乏市は財産を残すものがありません。したがって、人間の財産を残したい。それには初歩から初等、中等教育を最重点的にやるべきだ。こういうことで、この問題につきましては、まず不良化防止をやる。これは何がいいかということになってまいりますると、まず運動をやらせる、体育を向上させる。剣道、柔道あるいは野球、あるいは水泳、要するにそうした運動をやる人に悪い人はおりません。だから悪いことをするひまのないぐらいそういうもので鍛えていく、こういうような考え方で進んでおります。したがって、田川市の貧乏な財政の中で、昨年も五面の市営プールをつくりました。あるいは体育館をつくりまして柔剣道をやっておる。あるいは婦人会、警察、市、教育委員会、そういうものが横の連絡を十分とりまして不良化防止には懸命の努力をいたしておる次第でございます。  商工業者対策につきましては、いずれも閉山いたしました地域の中小企業者は非常に困っております。そうして今度は新しい誘致企業等が参りますと、初任給も非常に高いわけであります。したがって、地場産業を圧迫するというようなことで、非常に地場産業からいろいろと抗議が出てまいります。けれども、田川市だけが低賃金で使っていくということは、これはもう時代に沿わない。他の地区と田川市が非常に格差があるということになってまいりますと――大体、田川市及び郡から阪神あるいは中京、関東方面に年々二千三百名から二千八百名の中卒の人たちが出ておるわけです。これを、企業を誘致いたしまして親の手元から通勤できる状態に持っていきたい、そういうことと、それから中小企業者に対しては、たとえ賃金をある程度見合うようにしても採算のとれるように創意くふうをやってもらいたい。それから市といたしましては、いろいろ融資の道を開きまして、信用金庫あるいは銀行等に預託いたしまして金融の道も講じておる、こういうことでございます。  最後の鉱害について大いに意見があるわけでございます。御承知のとおり、鉱害賠償基金とそれから四つ事業団があったわけでございますが、四十三年七月一日にこれを全部統一いたしまして、政府出資の特殊法人として石炭鉱事業団が発足したわけでございます。全国統一されましてりっぱな事業団ができたのでございますから、私は、あらゆる鉱害はこの事業団に全部やらしてほしい。ところが、臨鉱法の五十五条では必ずしもそうなってないわけです。だから、鉱害の復旧は政府出資機関である特殊法人の鉱害事業団に一切やらせる、もし事業団の陣容が足らなければ外注してでもこの実施計画等をやっていただきたい、こういうふうに考えるわけでございます。この面はさきにもちょっと触れましたのですけれども、臨鉱法の改正をお願い申し上げたい、こういうふうに考えておるのでございます。  もう少し詳しく話を申し上げたいのですけれども参考人はこのくらいでやめてほしいということでございますので、このくらいでやめさしていただきます。
  100. 入江誠

    ○入江参考人 ホークの問題ですが、これは政党的の問題があるというふうに考えておりまして、住民は危険性のあるものについては反対をしております。しかし、何らかのものを誘致しなければ市町村の財政が苦しいという上に立ってそのような問題が出ておるというふうに私は考えておるわけでございます。産炭地の問題については、何かを早く引っぱりたいという気持ちが一〇〇%ありますので、心の中ではそのような危険性のあるものを誘致することについては反対ですが、産炭地の実情において誘致運動というものが起こってくるというふうに私は考えているわけでございます。  それから第二種工事の問題でございます。さっき七〇%炭鉱に関連するものを使用しなくては補助金を打ち切るということですが、このようなことをやられますと、各県でも市町村でもそれだけ使っておらない、消化し得ないという状態になっておるわけです。労働省の方はさっき賃金が安くないというように言われますが、私たちから見ますと、賃金が安いから来ないという状態になっておるわけでございます。これは私のほうでも、さっき数字的に申し上げましたが、この中で何名の炭鉱離職者並びに一般産業の失業者がこれに来るかということは疑問であるわけです。私のほうでは、入札当時に業者の中からこの質問が出まして、もし来なかった場合はこの問題については手持ちのものを使って完成せよという指示をやっております。それで七〇%を使わなかった場合は補助金を打ち切るということは、私たちはきょうここに出まして初耳でありますし、これを早急に持ち帰りまして県なり市町村でこれの対策を立てなければ、福岡県においては補助金が大半は返納という形になり、工事をやったものが全部町費の負担になるというような一大悲劇が起こってくるというように私は考えておるわけでございます。  それから町費負担が多くて、地方自治体が返納した分については、労働省のほうで失対第二種工事の中で県が予算のどれだけをやっておるかという数字を見られればわかるとおり、受け入れ体が手持ち資金が多くあるので受け入れられない、それから県としては、この問題については中央に戻すわけにいかないので、県工事でやるべきものを第二種工事に回しておる工事が相当あるわけです。これは労働省のほうで数字を見られれば出てくるというように私は考えているわけでございます。  それから三の教育問題ですが、これは高等学校の子供を持っている者が他の県等に出た場合、高校生を親族並びに友人の家に預けておるという問題は福岡県にもあるわけです。それから出る場合、教科書が違うために子供を親類等に預けて親が行っておる事実というのは、これは高校よりも特に小学校、中学校の問題が大きな問題ではないか。これはやはり教科書等の問題があって不自由をしておるという事実です。  それから商工業者の問題ですが、これはさっきも会長が言われましたのですが、水巻の実情を申しますと、日炭が閉山したときに執行部がとった処置は、早急に全部を働きに出すというような計画で、職業課を通じて他県に出すようにしたわけです。他県に出してみますと、商工業者がもうあしたから商売ができないような状態になっておるというようなことで、水巻町に一名でも置く処置をとったわけです。生活保護者でもよいから水巻町にとどまってもらいたいというような運動を起こしていった。というのは、これを全部出してしまいますと、関連して商工業者も一緒に倒れてしまうというような現状になりましたので、県外移出というものについては一応打ち切って、工場誘致その他のことをしながら商工業者の育成に努力をするという形で、特にまた炭鉱不良住宅でも取り上げて、早急に町費の八〇%というものを住宅改良に注いでおるわけです。これはやはり一名でも多く水巻町に置くという方針の中で住宅改良をやっておるというような現状であるわけです。  それから鉱害の問題ですが、これは早急に改正をしてもらいたいという要望を持っております。特に福岡県においては鉱害問題が山積をしておるわけですが、有権者でありながら鉱害復旧をする能力もない鉱業権者がおるわけです。そのようなものについてはそのまま放置した形になっておるわけです。これを早急に改めて、鉱業権者でありながら能力を持たないものについては、その鉱害は無権者鉱害同様に扱ってもらわなければ、筑豊の鉱害復旧というものはできないのではないかという考えを持っております。特に産炭地の各地区で工場誘致等の運動を起こしておりますが、さっき申しましたように、有権者で鉱害復旧をする能力のないものの鉱害復旧ができておらないために三の足を踏むというような現状になっておりますので、その点、改正をすみやかにやっていただきたいというようにお願いをいたします。  それから鞍手工業用水の問題ですが、これは水が十分余っておるというように考えておるわけですが、どのような事業計画でやられたかわかりません。それで、さっき三菱鉱業鞍手炭鉱の専用水の問題を説明をしたわけですが、ここは鞍手工業用水ができない前提の中で、この水を付近の工場団地に売れば簡易水道はとんとんでいけるという計画のもとに鞍手、遠賀町がこの簡易水道を引き受けたのです。しかし鞍手工業用水ができたため、ここから水を売るというわけにいきませんので、鞍手、遠賀の町村では約八千万というような赤字を出しておるような状態になっておるというように考えておるわけでございます。
  101. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いろいろとありがとうございました。ただ、私が聞こうという趣旨と答弁が多少ずれている分もありますけれども、時間もずいぶんだっておりますので、またの機会にあとは懇談してみたいと思っております。  ありがとうございました。
  102. 平岡忠次郎

    平岡委員長 岡田利春君。
  103. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 参考人の方々からいろいろ御意見を聞いたわけですが、私は質問するというよりも、特に北海道参考人に対してこちらのほうから要請いたしておきたい。  その第一点は、北海道総合開発計画が今日北海道の段階で策定されつつあるわけです。道議会の審議を経て十二月には知事が政府に意見書を出す、来年七月には閣議決定に持ち込まれる、こういう日程で進んでおるわけですが、特にこの第三期計画の中に、百年の間北海道の経済をささえてきたこの産炭地の振興対策についてどうも不十分ではないか、こういう見解を私は実は持っておるわけであります。もちろん産炭地振興計画昭和四十八年度まででありますけれども、わが国の石炭鉱業を展望する場合に、当然その計画もある側面としてやはり十分配慮さるべきではないか、こういう意見を私は持っておりますので、この点特に今後の審議等を通じて十分配慮していただきたいということをこの機会要望しておきます。  それから第二の問題は、土地取得の問題でありますけれども北海道の産炭地振興はほかの地域と非常に違った特殊性があることはいなめない事実です。今度の開発計画では土地取得を積極的に道として行なう、こういう計画もあるわけですし、産炭地振興事業団も支所に昇格をいたしたわけですから、この面やはり北海道の場合には思い切って土地をつくるという先行投資の型でなければなかなか企業の誘致は困難ではないか。こういう意味で事業団と綿密に連絡をとられて、ある程度先行的に安い土地を確保しておく、こういう積極的な姿勢がないと内陸の再開発というものは非常にむずかしいのではなかろうか、こういう点について特に私は要望いたしておきたいと思います。  それと、岡山参考人が先ほど述べられましたいわば新鉱開発の固定資産税の問題が出たわけですが、こういう意見は今後述べられないように私は希望いたしたいと思うわけです。むしろその面に触れられるとするならば、新鉱開発方式について不十分ではないのか、その面でむしろそういうふうにならないように新鉱開発制度というものをより充実をする、こういう立場にやはり私は立つべきだと思うのです。いま三菱の大夕張が開発が進められておりますけれども、将来北炭の清水沢炭鉱が新鉱開発になりますと、同様ケースとして地方自治体の問題になるわけです。私は、そういう意味においてはむしろ新鉱開発の制度そのものが不十分ではないのか、こういう方向で意見を述べられるほうが正しいのではないか、こういう見解を持っておりますので、この機会にこの点もひとつ要望いたしておきたいと思います。  特に北海道の場合に問題がありますのは、産炭地振興法による指定地域と山村振興法に基づく指定地域の問題があるわけです。これはいま非常に北海道の問題になっておるわけですが、産炭地振興法の指定を解除いたしますと、閉山になっても自治体に対する特別交付金ももらえない、また企業が来た場合の措置についても非常に困る、こういう問題がございます。ところが北海道の行政区画は非常に広いわけです。たとえば別海村は、香川県の離島と屋島を切っただけの面積と村の面積が同じだというくらい行政区画が広いわけですから、炭鉱の沢と農山村の沢というものは全然町村的に見ますと違う。そうすると奥地のほうの開発というものの問題点はどうしても農山村の振興法の適用を受けざるを得ない、こういう北海道特殊の問題が実はあるわけです。そこで、この両方を適用するということは今日制度上できないという問題があるのですが、これをやはり北海道実情に即応して考慮すべきではないのか、こういう点の陳情もしばしば出ておりますし、私どもも積極的にこれを取り上げておるわけですが、この機会に、経済企画庁から参っておると思いますので、この面すでに検討済みと思われますが、この点についての見解をひとつ承りたいと思うわけです。
  104. 足利知己

    ○足利説明員 山村振興法に基づきます山村の指定でございますが、これは山村の要件を満たしております町村の中で振興の緊急度が高いというものから漸次指定をしていくということになっておるわけです。ただその際に、産炭法その他特別な法律で指定されておる区域につきましては、それぞれの法律で振興計画が立てられておりまして、しかも事業実施につきましてはそれぞれ優遇措置が行なわれているということで、これは振興の緊急度がほかのものに比べて低いものであるといったようなことから、昭和四十一年に山村振興対策審議会の答申を得まして、当分の間指定を留保するということでまいっておるわけでございます。この当分の間指定を留保するということは、産炭法等の特別な法律で指定されておりません一般の山村についての指定の進捗度なり、あるいは産炭法等で行なわれておりますいろいろな施策の効果といいますか実績等を総合的に見て将来具体的に検討して、その際保留を解除していくといったような趣旨でなっておるとわれわれ考えております。御承知のように、現在一般の山村につきましては、全国で指定がほぼ半分といったような時期にきております。それから産炭法をはじめ特別な法律に基づきますものも相当時期がたっておりまして、産炭地域の中でも産炭法の恩恵をあまり受けていない地域がかなりございます。そういった事情がわかってまいっておりますので、産炭地域だけでもございませんですが、この際ひとつ再検討いたしまして、それぞれこの保留の扱いについては一応扱い方を少しはっきりしょうということで、目下検討しておる最中でございます。特に産炭地域につきましては、これはもともと法律の趣旨からいいましても、やはり国の責任である程度救済をしなければならぬというようなものかと存じますので、これは山村振興法とも非常に似通ったものでございますので、そういったことでほかのたとえば新産、工特といったようなものとはかなり違うと考えますので、産炭法についてはひとつできるだけ早い時期に山村振興法の指定も受けられるような方向で問題を解決するということで、目下関係庁とも相談をしておる最中でございます。そう長く時間はかからないというように考えておりますが、現在はっきりここで解除できるということはちょっと申し上げかねますけれども検討しておる最中でございますので、さようにひとつ御了承願いたいと思います。
  105. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 せっかく検討の最中でありますから、ぜひひとつこの点十分現地実情――大体北海道でも私の記憶では十七、八カ町村が問題の対象になるのではないか、こういう理解を実はしておるわけです。特に、まだ炭鉱のあるうちは鉱産税も入る、財政的にもある程度豊かだということが言えますけれども炭鉱がなくなって閉山しますと、沼田町のようにもう全部炭鉱がなくなってしまう。そうなると跡始末に財政のほうが追われる。山村のほうは全然むしろ手がつかない、こういう状態もある。これは産炭地振興がきかないわけですね、奥地過ぎて、沢ですから。あるいは穂別町に炭鉱があったけれどもすでに閉山している。しかし産炭地の指定を受けておるが、もうその差は全然ないというような地帯がある。あるいはこれからでも、たとえば音別町のような場合、尺別が閉山になると六割の人口がなくなって、あそこは米も何もとれぬわけです。酪農だけです。酪農と林業、ほんとうの山村になるわけです。しかし産炭地振興の適用を除外してしまうとあと始末ができないから、この指定を解除できない。こういういろいろな実例があるわけですね。ぜひその実態に触れてこの問題については解決できるように、北海道がそういう特殊的な事情である、行政区画が非常に広い特殊的な事情であるという点で、ぜひ実態に触れて検討されて解決できますように要請いたしておきたいと思います。  それから時間がありませんので、当委員会では本年の八月に体制委員会を構成して、再編成小委員会、鉱区調整小委員会を設けるということがすでに答弁なされておるわけですが、八月は過ぎてもうすでに十一月十日になってしまったわけです。一体政府として体制委員会をいつつくられて、この委員会に対して通産大臣が諮問されようといたしておるのか。この面について明確な答弁を願いたいと思います。
  106. 本田早苗

    ○本田説明員 お答えいたします。  体制委員会の発足につきましては、かねてからその必要性を御指摘を受けてまいっておりまして、検討をお約束いたしておったわけでございますが、先般第一回の再建交付金の交付も行ないましたし、それから石炭審議会の審議会長もきまりましたし、私も今回新しく鉱山石炭局長を命ぜられまして、けさほどの参考人の御意見からも、体制問題についての早急な検討の必要性を訴えられておりますし、ただいまいつからとは申しかねますが、できるだけ早く発足できるように検討を進めるようにいたしたいと思います。
  107. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 早急ということは、大体十二月に臨時国会開会予定でありますけれども、臨時国会開会中には設置されるものと理解してよろしゅうございますか。
  108. 本田早苗

    ○本田説明員 ただいま従来の経緯その他を聞きつつあるところで、直ちに御指摘のように臨時国会までに発足できるかどうかにつきましては返答いたしかねますが、できるだけ早く発足できるように努力いたしたいと思う次第でございます。
  109. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 局長、石炭部長が三日前に今度の通産人事でかわられましたのですから、きょうはその程度の答弁で一応やめておきますけれども、臨時国会にこれが設置をされないということになりますと、たいへんな問題である、こう私は思うわけです。そういう点で、この設置について鋭意、私がいま指摘しましたような方向で設置されることをこの機会に強く要請いたしておきます。  特に私はこの機会に、この委員会設置をされる場合に、当然体制的な検討の必要があるから体制委員会設置がなされると思うわけです。そこで、そのアプローチについて特にきょう簡単に触れておきたいと思うのですが、私は体制的な検討の必要性は次のような諸点にあるのではないかと思うわけです。  その第一は、石炭企業の体質が今日非常に弱体化している。そういう中で生産構造の著しいおくれ、これがなかなか解決できないというのは、きょうの委員会でも明らかになっております。したがって、その結果生産の行き詰まりと保安問題が憂慮される事態になっておるわけです。この面から体制的な検討が必要ではないかというのが第一点であります。  第二点は、流通問題は今日全国の産炭構造が非常に急速に変化をいたしまして、これに対応することはいまの政策ではなかなか困難になっていく傾向を深めるのではないか。というのは、一般炭、原料炭あるいは九州のサルファの多い炭、粘着性の強い炭、北海道のローサルファの炭、こういう産炭構造等を具体的に分析をする場合に、需要者に対してどう対応していくか、そのためにはやはり流通問題というものはいよいよ複雑困難になっていく傾向を深めておるのではないか。こういう点の解決からも体制問題の検討が必要ではないかと思うわけです。  第三点は、新鉱開発がさらに促進をされていく方向にございます。しかし、今日の新鉱開発は一企業能力をもはや越えつつあるのではないのか。いわばそういう意味において、もちろんユーザー側、消費企業の協力等の受け入れも一つの方法でありましょうし、あるいはまた、全体的に石炭企業そのものが協調して新鉱開発をする、こういうことも一つの方法でしょうし、根本的に体制を検討することも必要でしょうし、いずれにしても、今後の新鉱開発を考えても、企業の限界を越えている。こういう意味からも当然検討される必要があるのではないか。  第四点は、労働力の確保の問題であります。今日の労働力を確保するのは非常に客観的に困離でありますけれども、最低線としては、やはり何といっても雇用が一企業や一炭鉱ではなくして、継続的な雇用がなされる、このことが基本ではないのか。そうなってまいりますと、労働力が確保できなければ炭鉱は経営できないのでありますから、そういう雇用の面から考えても体制的な検討は必要ではないのか。  第五点は、スクラップ計画の進度が予想よりも早い。私の見込みでは、今年末の出炭規模は従来のわれわれの表現、呼び方から言えば大体三千八百万トン程度になるだろう、来年度中にはおそらく三千五百万トン程度に落ち込むことはもはや明らかである。そういう出炭規模の面から考えても、いまのまま推移をするということになりますと、当初の予想以上にスクラップ計画の進度が早い。この調整というものは今後とも不可能であろう。こういう角度から体制的な検討をする必要があるのではないのか。  第六点は、いままでの石炭政策の経過を分析いたしてまいりますと、やはり企業政策でありますから、産業政策という面が薄れておりますから、どうしてもこの企業の均衡を前提とする限り政策は総花的にならざるを得ない。重点施策というものは企業を越えてなかなかできない。どうしても企業の均衡になるから総花的になる。こういう面から結局はそれぞれ生かさず殺さずのような傾向を深めてきておるのが今日までの石炭政策ではないのか。こういう角度からも検討する必要があるのではないかと思うわけです。  第七点は、石炭の管理政策の実施機関及び研究開発の諸機関は、石炭企業そのものが出炭規模において縮小されてまいるわけですから、現状のままで推移することは困難であろうと思います。そういたしますと、結局石炭産業管理政策の実施機関、研究開発の諸機関というものは統合化の方向を好むと好まざるにかかわらず歩まざるを得ないだろう。こういう面も当然体制的な検討をする場合の一つの素材ではあろうかと思います。  第八点は、人事、技術的な面から、漸次この面は企業閉山をしてまいりますから、そういう点で傘下におさめておる炭鉱数が少なくなってきておりますので、人的な技術的な面の硬化、こういう傾向というものはいなめないのではないのか。この点やはり流動化して生き生きとした人的、技術的な面をさらに発展的に対処していくという角度からも体制的な検討ができるのではないのか。  第九点は機械器具の効率的利用、もちろん機械貸与制度等もございますけれども、そういう面ではさらに一そうその効率的な活用等を考える場合あるいはまた新しい技術を体系的に実践的に開発をしていく、こういうことは当然もうこれからの炭鉱は不可欠な要件であります。そういう意味では総合的に新技術の開発を頼まれていくという角度から考えても体制的な検討の必要があるのではないのか。  あるいは、従来は相当急激にスクラップが進んでまいりました。しかしこれからのスクラップ計画は、スクラップすると同時に、これに関連する産炭地振興あるいはまた雇用対策等の諸対策が並行的に進められなければならないと思うわけです。したがって、閉山及びこれに関連する諸対策をある程度計画化していく、計画の上に乗せていく、こういう場合にはやはりスクラップ・ジャッジの問題と関連して体制的な検討が必要ではないのか。  私は概略十点を実はあげてみたわけです。もちろんこれ以外に、けさほど来問題になりました保安の問題から考える場合にも、いまの企業では企業採算を度外視して存続できないのでありますから、そういう意味で思い切った重点施策が企業内でとることができない、こういう面も追加されておりますけれども、私は以上の問題を本日は提起をして、そして先ほど質問しましたように、体制委員会のすみやかな設置をこの機会に強く要望いたしておきたいと思います。  最後に、従来の石炭の出炭規模をわれわれが議論する場合に、いままで歴史的にいろいろございました、いわば六千二百カロリー、平均カロリーで換算して出炭規模をいうという場合もございますし、これがそのうち六千八十カロリーになった場合もございます。たとえば、有澤調査団の場合には、五千万トンであるけれども、実トン数では五千二百万トン程度である。平均カロリーでいうと五千万トンであるという表現をあの場合には使っているわけですね。しかし、最近は御承知のようにいままでの規格外炭の取り扱い等が変わっておりますから、実出炭ベースであっては、従来の政策の流れからいえば、それは当を得ていない表現であるということを指摘せざるを得ないと思います。いずれにしても、この問題は、やはり従来の経過にかんがみ、今後のわが国の出炭を問題にする場合、出炭の規模、生産量を問題にする場合に、経過的に統一的に把握する必要がある。この面で特に通産省として今後の石炭政策を見通して、この生産量、出炭ベースの把握のしかたについてこの機会に再度意思統一をすべきである、こういう見解を私は持っているわけです。そういう点についての検討をこの機会に、いますぐ御返事はいただけないと思いますけれども検討要望して、私の質問を終わりたいと思います。
  110. 平岡忠次郎

    平岡委員長 田畑金光君。
  111. 田畑金光

    ○田畑委員 私、この際労働省関係にいろいろな質問をしたいと思っておりますが、時間の関係もありますので、問題点だけをあげて考え方を承っておきたいと思うのです。  その第一は、炭鉱離職者臨時措置法、この法律の取り組み姿勢でございますが、三十四年にできた当時と今日の事情とが大きく変わってきておるわけです。当時は、要すれば、集中的な炭鉱閉山からくる離職者をどのように次の新しい雇用に持っていくか、その間の援護措置をどうするか、こういうたてまえでこの法律ができておるわけです。ところが、けさほど来の参考人の御意見を聞いても、今後の石炭の維持あるいは存続の前提として、どうしても労働力の確保、こういう問題に帰するわけです。そういう点から見ますならば、炭鉱離職者臨時措置法は、炭鉱から、あるいは産炭地域からどうすれば他の地域に離職者を円滑に移動させることができるか、こういう前提でこの法律ができておるわけです。しかし、今日は、いまの炭鉱の情勢から見るならば、若い労働力を炭鉱に吸収するということは事実上困難である。やはり一番確実にしてしかも効率的な労働力確保の道は、閉山炭鉱等からできるだけその長年の技術と経験を炭鉱の中に確保する、こういう点であると考えておるわけです。  そこで、労働省としては現行の臨時措置法にあるうしろ向きの法律精神ではなくして、もっとこれを前向きに炭鉱労働力を確保し、炭鉱を安定させるという前提で再検討すべきではないか、こういう感じを私は強く持つわけです。されば、いろいろな援護措置がございますが、それをこの際やめて、要すれば炭鉱離職者が残存炭鉱に行くように、それだけに援護措置を講じろ、こういう主張はいたしませんが、しかしこの炭鉱から炭鉱にという立場に立って、もっとこの法律の内容自体を洗い直すべきではないか、こういうように私は考えているわけです。現実に、この離職者臨時措置法の中で山から山に行く炭鉱離職者の援護措置というものは移住資金、それから再就職奨励金だけだ、こう私は思いますが、あるいは違っておるかどうか。とにかく雇用奨励金であるとか、住宅確保奨励金、こういう面等については、この際山から山に行く労働者についても、離職者についても、この法律の改正を当然ひとつ再検討すべきであると思うのだが、こういう点について労働省はどういう考え方を持っておるのか、検討しておるのかいないのか、この点をひとつ承りたい。  第二の問題として、私は、先ほど来問題になっておる産炭地域開発雇用対策費、この予算の運用についてでありますが、次官通達によって産炭地の一部の地域にこの事業実施されております。福岡、長崎、佐賀等であると思いますが、そうしてこの条件としては、失業者吸収率を七〇%、それは離職者並びに炭鉱閉山に伴う関連離職者、それを七〇%雇用することを条件に補助金三分の二で第二種公共事業をやっておるわけです。しかし、七〇%の離職者を雇用することを一つの条件にしておりますが、その離職者は炭鉱離職者であり、しかもそれはマル炭手帳を持っていない離職者だ、さらにまた炭鉱に伴う関連企業から出てきた離職者である、こういうようなことで、いわゆるマル炭事業といわれておる炭鉱離職者緊急就労対策事業とは条件をゆるめておりますが、マル炭事業八五%の失業者の吸収率、これは七〇%、こうなっております。しかし、前者がまるまる炭鉱離職者でなくちゃならぬ、この七〇%の場合は、産炭地開発事業の場合も、七〇%が離職者と関連事業から出た離職者――一体関連事業から出てきた離職者というのはどこでどう把握するのか。安定所で当然把握しておるのだというお答えであることはもうわかり切っておりますが、そのあたりがもういいかげんな基準である、こう私は思うのです。ましてやいま水巻町議長の入江誠氏のお話によれば、一体そういう七〇%のワクがあることを初めて労働省からお聞きした。現に福岡県は県営の事業をこの事業に切りかえてやっておる。もし七〇%という基準を守るとするならば、県市町村でこの事業をやることはとうてい不可能だ、おそらく私はそれが本音だと思います。これは請負業者が請負をやるわけでございますが、請負業者が実際この基準に基づいて炭鉱離職者の七〇%あるいは関連事業離職者の七〇%を確保することは容易でない。結局それは手持ちの人夫を使う、こういうことになっておると思う。もしこれが無理だとするならば、七〇%のワクをもう少し現実に即してゆるめたらどうかと私は思うのです。実際あなた方のやっていることは、いいかげんな基準をつくって、いいかげんにつじつまを合わしているだけにすぎないと私は思っているのです。初めからこれはわかっておる。七〇%が無理なら、実情に即するように五〇%なら五〇%のワクということにしたらどうかということです。そうしてこれは産炭地域一般に適用するようにやってみたらどうかと思うのです。初めからできないことを、そうしてつじつまを合わすようなやり方は、ひとつおやめになったらどうか。これについてどういう説明をなさるのか。  さらに、三分の二の補助金、したがって三分の一は地元負担。ところが、三分の一での負担にはとどまらぬから、地元の負担はもっと二分の一前後になってくるというようなお話もありましたが、これはまた私は、偽わりのない、末端の市町村財政を圧迫する大きな原因であり、また関係者の御苦労だと思うのです。そこで、こういう事業に対して四十五年度はさらに四十一億四千二百二十一万の予算要求をなさっておる。まあこういううしろ向きのと申しますか、末端において非常に地方財政に圧迫を加え、現にこの基準に合わすためにいろいろ無理をしなくちゃならぬそういう事業にさらに四十一億四千二百万も予算要求をされるということは、およそ私は考え方がさか立ちしておる、こう指摘したいのです。むしろこの際、産炭地事業なり、こういう予算というのは、御承知のように限られた財源の中で石炭企業をどう存続させるかという前向きの予算に重点を置くべきであるし、またほんとうに産炭地振興事業ということならば、その実績をあげておる産炭地振興事業団等にもっと融資なり出資なりの財源を確保して、本来の産炭地振興事業団が工業用地の造成であるとか、先ほど来言われておる工業用水の確保の問題であるとか、中核企業の誘致、これに伴う融資の問題、工場の建設貸し付けの問題、そうしてそこの安定した企業に中高年齢者の雇用の確保をはかるという面に、限られた石炭予算の運用をなすべきであって、労働省のいまのお話の開発就労事業のような予算をさらにこれ以上ふやすというようなことは、私は、国全体の産炭地振興あるいは石炭予算の運用についてよろしきを得ていない、こういう考え方を持っておるわけです。  この点について私はむしろ労働大臣の考え方を承りたいのですが、残念ながらきょうは失対部長さんしかおいでになっておりませんので、失対部長さんに強いことを申し上げるようだが、大臣のつもりであなたは聞いて、よく報告をするなり、またひとつあなたの関係している範囲においてお答え願いたいと思う。  私は特にきょうは資料を持っておるし、あえてここでこの資料の内容をとかく言うつもりはございませんが、炭鉱離職者緊急就労対策事業は、先ほど申し上げたように、失業者吸収率はこれはまるまる炭鉱離職者八五%を使いなさい、補助率は五分の四公共事業としてやっておるわけです。しかし、現実に常磐地域においては、この問題に関連して二、三の事故が起きているわけです。しかもこの内容については申し上げませんけれども、現に離職者でない者を離職者として使っていた、そしてその結果、土建業者が懲役刑を受ける、刑罰を受ける、こういうことなんですね。それが長い間そういうようなことが放任されていたというところに問題がある。この判決の最後のところに「所管官公庁の取扱に粗雑で適正を欠くところが多くこれが本件犯行の一因をなすこと」を明確に指摘しているわけですね。何年もの間このようなことが続けられてきたということ、それが安定所でわからなかったのかどうかという問題ですね。そこをこれは指摘しているわけですね。もっと規律を厳正に――こういう問題については次官通達でやっておるあるいは閣議決定でやっておるならば、その閣議決定、次官通達に基づいて、その指示が下部末端においてきびしく厳正に施行されるようにこそ労働省としては指導すべきなんだ。八五%という失業者の吸収率を基準としてきめておるところに問題があるとするならば、その点についてゆるめる措置を講ずるなり実情に即するなり、そういうことを私はやってしかるべきだと思うのです。私はこの事案についても、判決の内容等を読んで幾多慨嘆にたえないし、また憤りを感ずる面もございますが、この点はきょうはこの程度でおさめておきます。いずれおりを見て大臣にこの問題については質問したい、こう考えておるわけです。そういうような問題等について、私の考え方についてひとつ遠藤部長さんの御答弁をお願いしたい。  それからもう一つは産炭地振興課長にお尋ねしたいのですが、あなたの先ほど来の答弁を聞いておりますと、産炭地域に工業用地を造成し、新しい企業が進出してきた、どの程度そこに炭鉱離職者が働いているのか、それについては確たる数字をつかんでいないようですね。遺憾だと思うのです。御答弁によれば、事業団に来て、進出する企業がこの程度は炭鉱離職者を使いたい、それでこの程度炭鉱離職者を使っておるのであろうというただ推計を先ほどの数字は示しておるにすぎない。そういうようなことではまずいと思う。産炭地に企業を誘致し、雇用の安定をはかろうとするならば、最優先的にこの際炭鉱離職者――おそらく停留している人方は中高年齢の人でありましょう。あるいは身体に障害を持っておる人でありましょう。身体障害者の雇用促進というのは社会的な問題にすらもなっておるし、単独立法も必要であるといわれておる今日、私は、中高年齢者あるいは炭鉱をやめてある程度身体に不具な面を持つにしても労働能力が残存する人方については、できるだけ通産省は企業誘致にあたっていろいろな便宜を与えるわけですから、そのような指導をなすべきだと思う。そしてもう少しこれは責任を持って、産炭地に進出する企業について、炭鉱離職者の雇用を促進すべきだ、こう考えますが、この点についてひとつ御意見を承っておきたい、こう考えます。
  112. 遠藤政夫

    遠藤説明員 お答え申し上げます。  第一点の炭鉱離職者臨時措置法の運用についての先生の御意見でございます。確かに炭鉱離職者臨時措置法は、大量の炭鉱閉山、それに伴う離職者の再就職確保というような観点から、いろいろな援護措置が盛られておりまして、これの運用につきましては、私、三十七年当時第二次石炭調査団のころからこの対策を担当いたしておりまして、せいぜい努力をいたしまして、当時、離職者対策につきましては石炭審議会等の先生方からも、ちょっと我田引水になりますけれども、おほめのことばをいただいたような状況でございましたが、三十八年当時でもすでに田畑先生がいま御指摘のように、ビルド山の労働力確保の問題がすでにもうきざしておりまして、私どもといたしましては、この臨時措置法によります離職者対策に全力をあげますと同時に、一方残りますビルド山の労働力確保についても、この臨時措置法に盛られております援護措置をできるだけ運用面で活用していくことによりまして労働力の確保をはかっていこう。また一方、炭鉱に働きます坑内労働者の労働条件その他の処遇が他の一般基幹産業に比較いたしまして必ずしも十分でない、かなり格差があるというようなことから、その点につきましても労働省といたしまして、そういった労働条件、処遇をできるだけ水準を上げていくようにというふうな努力をしてまいりましたつもりでございます。当時から見ますと、炭鉱労働者はたしかその当時十四万くらいだったと思いますが、それがその当時予定されておりました十一万をはるかに下回って、現在八万くらいだと思います。したがいまして、これから残ります山の労働力確保はいろいろむずかしい問題があるとは考えておりますが、私どもは、先ほど御指摘のございました移住資金なり、就職支度金なり、これはその当時から労働力確保の面に活用いたしてまいりましたけれども、その他の面につきましても、できるだけ積極的にこういった援護措置を活用して労働力確保につとめてまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。  それから第二点の産炭地の開発就労事業のことでございますが、これは当時緊急就労対策事業というものが炭鉱離職者の就職確保という観点から始められまして、これは臨時措置法の法律の中でこの緊就という制度がつくられておりました。これも当時、先生方御記憶おありになると思いますが、第二次調査団の答申におきまして、こういった事業吸収方式が、はたして炭鉱離職者の再就職確保に適切であるかどうかといった観点で非常に議論になりまして、新しく就職促進手当の制度ができまして、こういった事業吸収方式にこの際ピリオドを打つというような形になったわけでございます。したがいまして、現在の緊就事業は、当時これに就労していた人たちがそのままその後も引き続いて就労いたしておりますだけでございます。その後新しく入ってきた人は現在ございません。ところが、その後こういった終閉山が非常に急速に進展してまいりまして、炭鉱離職者も、当時予想しておりましたよりははるかに多量の離職者が出るような状態になってまいりました。加えて、そういった大量の閉山に伴いまして、先ほどから参考人の方々の御意見にも話が出ておりましたように、大量閉山に伴う関連企業、地元中小企業等から出ます失業者も多数こういった産炭地域に発生するというような事態になりまして、必ずしもこういった事業吸収方式を否定するだけでは済まなくなってまいりました。こういった状況から産炭地各府県知事さん、あるいは産炭地の市町村長さん、関係者の方々から、産炭地の開発のための事業、同時にこういった炭鉱離職者なり、関連企業の失業者の人たちを吸収するような事業方式を新しく起こすというきわめて強い御要望がございまして、本年度から新しく開発就労事業というものを発足させた次第でございます。確かに御指摘のように緊急就労事業におきましては、労務者総就労人員の八五%を吸収することになっております。きわめてきつい制約がございます。そういったきつい制約を設けますと、今度は新しい開発就労事業のもう一つの目的でございます産炭地域の開発という事業目的と必ずしもそこらあたりでマッチしない面がございます。したがって田畑先生御指摘のように、吸収ワクを緩和したらどうか、こういう御意見も当然考えられるところでございます。したがって、緊就の場合は八五%を七〇%に緩和いたしまして、七〇%の中身は、炭鉱離職者とそれから関連企業の失業者、こういうことになっておるわけであります。この七〇%というのは実はむずかしいのじゃないかという御指摘でございますけれども、多少事業の開始がおくれておりまして、現在八割程度実施いたしておりますが、この七〇%の吸収は現在確実に履行されておるような状況でございます。御指摘のように、一、二過去の緊就におきまして、炭鉱の離職者証明が不明確であったというようなことのために、炭鉱離職者でない人たらがつまり偽りの証明でこの緊就に就労して、いろいろと不測の事態を生じたという事例もございます。その後私どもも厳重にこの点を指導いたしてまいりまして、ことに今回の開就事業等につきましては、そのようなことの万起こりませんように十分注意してまいりたい、かように考えておるわけであります。
  113. 真野温

    ○真野説明員 ただいま田畑先生御指摘になりました第四の点でございますけれども、産炭地への誘致企業における離職者の雇用状況についての把握及び誘致企業に対してできる限り離職者特に身体障害者等を含めて雇用を確保するよう指導せよ、こういう御趣旨でございました。  第一の点の誘致企業における離職者の雇用でございますが、これは現在産炭地事業団の融資にあたって一定の基準を設けまして離職者の優先雇用を促進する形をとっております。ただ、その後の企業の発展状況から、そういうような離職者がどうなっておるかということを把握しておらない、こういうことを先ほど申し上げたわけでございまして、実績におきましてはその基準を満たす雇用を見ておるわけであります。ただ、企業誘致にあたりまして、これがただ単に離職者の雇用のみならず、当該地域の経済活動の拡大ということが大きな効果でございますので、やはり離職者のみならず、その子弟あるいは関連の失業者を含めて地域経済、地域の労働情勢に大きく寄与するようにしてまいる必要がございますので、企業によっては、その職種あるいは個々の企業の方針で、ただいま事業団で行なっておりますような基準どおりの離職者の雇用という形にならない場合もございます。できる限りそういうような個々の企業の条件において、許す限り離職者の雇用を促進するように今後の指導をしてまいりたいと思います。  なお、身体障害者の雇用の点でありますが、昨近の閉山においても非常に具体的な問題になりまして、私どものほうも関連の誘致企業について、特に事業団の融資を通じてその雇用を、それを雇い入れることを要請した事実もございます。今後ともそういう点については十分配慮してまいりたいと思います。
  114. 田畑金光

    ○田畑委員 終わります。
  115. 平岡忠次郎

    平岡委員長 これにて産炭地域振興問題についての参考人各位に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、御多用中のところ、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時二十二分散会      ――――◇―――――   〔参照〕    衆議院石炭対策特別委員会派遣委員報告  石炭対策特別委員会国政調査委員派遣について、その概要を御報告申し上げます。  まず、派遣日程について申し上げます。  私ども平岡委員長をはじめとする派遣委員一行は、去る十月二十四日、札幌市に集合、札幌パークホテルにおいて、まず札幌通商産業局並びに札幌鉱山保安監督局より管内石炭鉱業の概況説明を聴取し、引き続いて、北海道北海道議会、北海道鉱業市町村会、北海道産炭地振興対策協議会、日本石炭協会北海道支部、北海道石炭鉱協会、石炭国有化推進北海道本部、全北海道労働組合協議会日本炭鉱労働組合北海道地方本部、全国石炭鉱業労働組合北海道地方責任組合羽幌炭礦労働組合及び全国炭鉱職員労働組合協議会北海道地方本部より、石炭鉱業をめぐる諸問題について、それぞれ説明並びに要望を聴取いたしました。  翌十月二十五日は、夕張市におもむき、去る五月、三菱鉱業株式会社から分離設立された三菱大夕張炭礦株式会社南大夕張開発事務所を訪れ、会社側、三菱大夕張炭礦職員労働組合及び大夕張炭鉱労働組合より会社概況等の説明並びに要望を聴取いたしました。続いて北海道炭硬汽船株式会社夕張炭鉱を訪れ、会社側、夕張炭鉱労働組合及び北炭職員組合夕張支部より会社概況等の説明並びに要望を聴取した後、空知炭田の中央部に位置する北海道電力株式会社奈井江発電所を視察いたしました。  十月二十六日は、札幌より釧路市に向かい、翌十月二十七日、釧路市の太平洋スカイランドにおいて、釧路地域産炭地振興協議会より要望を聴取し、引き続き雄別炭礦株式会社、雄別炭鉱労働組合及び尺別炭鉱労働組合より会社概況等の説明並びに要望を聴取いたしました。次いで市内石炭埠頭等を視察した後、太平洋炭艦株式会社釧路事務所を訪れ、会社側及び太平洋炭硬労働組合より会社概況等の説明並びに要望を聴取し、同日夜、釧路市を離れ、十月二十八日、札幌市に到着、全日程を終了し、現地解散をいたしました。  次に、札幌通商産業局並びに札幌鉱山保安監督局より聴取した北海道における石炭鉱業の現状並びに問題点等について、簡単に申し上げます。  北海道の石炭生産は、昭和四十三年度二、一二七万一、〇〇〇トンでありまして、全国生産四、六二八万二、〇〇〇トンの四六%を占めております。そのうち原料炭は、七二一万三、〇〇〇トンでありまして、全国生産一、二二六万六、〇〇〇トンの五八・八%を占めております。稼行炭鉱数は昭和四十三年度末で、全国一四二炭鉱のうち五九炭鉱であり、常用労務者数は、三六、一七七人、生産能率は、一人当たり月四九トンとなっております。昭和四十四年度上期は、生産実績一、〇四三万五、〇〇〇トン、稼行炭鉱数は上期末で五〇炭鉱、常用労務者数は三二、七〇九人、