運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1969-01-09 第61回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年一月九日(木曜日)     午前十時二十五分開議  出席委員    委員長 平岡忠次郎君    理事 藏内 修治君 理事 篠田 弘作君    理事 菅波  茂君 理事 三原 朝雄君    理事 岡田 利春君 理事 八木  昇君    理事 池田 禎治君       佐々木秀世君    進藤 一馬君       三池  信君    多賀谷真稔君       中村 重光君    細谷 治嘉君       渡辺 惣蔵君    田畑 金光君       大橋 敏雄君  出席国務大臣         通商産業大臣  大平 正芳君         労 働 大 臣 原 健三郎君  出席政府委員         通商産業政務次         官       藤尾 正行君         通商産業省鉱山         石炭局長    中川理一郎君         通商産業省鉱山         保安局長    橋本 徳男君         労働省労働基準         局長      和田 勝美君         労働省職業安定         局長      村上 茂利君  委員外出席者         通商産業省鉱山         石炭局石炭部長 長橋  尚君         参  考  人         (石炭鉱業審議         会会長)    植村甲午郎君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  石炭対策に関する件(石炭鉱業審議会答申に  関する問題)      ――――◇―――――
  2. 平岡忠次郎

    平岡委員長 これより会議を開きます。  参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  石炭対策に関する件について、本日参考人として、石炭鉱業審議会会長植村甲午郎君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 平岡忠次郎

    平岡委員長 御異議なしと認めます。よって、植村甲午郎君を参考人とするに決しました。      ――――◇―――――
  4. 平岡忠次郎

    平岡委員長 石炭対策に関する件について調査を進めます。  この際、参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中にもかかわらず御出席をいただき、ありがとうございました。  去る十二月二十五日、石炭鉱業審議会答申が出されましたが、この際、答申に関する諸問題につきまして、忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  それでは、まず石炭鉱業審議会を代表いたしまして、答申の概要について御説明をお願いいたします。植村参考人
  5. 植村甲午郎

    植村参考人 御指名がございましたので、ごく簡単に――むしろ前に一ぺんお話し申し上げたことがございますので、その後の経過等を加えまして、簡単に申し上げたいと思います。  御承知のように、昨年の四月二十六日に、通産大臣から、今後の石炭対策についていかがあるべきかという諮問があったわけでございます。その後だいぶ長くかかったのでございますが、昨年の暮にやっと最後の結論に到達した。これは何分にも、御承知のように、四十一年の七月に、抜本的安定対策についてという御諮問がありまして、これに対する一つの案ができまして、運用にかかったわけでございますが、これはいろんな原因がございますが、一番大きなところは、エネルギー革命と称せられる、石油、あるいはさらには将来問題としましては原子力というようなものも非常な関係がございまして、エネルギー界の様相がだいぶ変わったわけで、これと、国内経済情勢も違ってまいった点がございまして、それで、どうも所定の大体五カ年間でやりあげるという対策が、途中でこれはやり直しといいますか、もう一ぺんやらなくちゃならぬというような状況にあったことは御承知のとおりでございますが、この競合エネルギーとの関係、それから日本経済が非常な発展を遂げてまいりましたので、したがって、この従業者対策というふうな点につきましてもなかなか困難な点があったりいたしまして、現状においては、いわば一日も放置しておくことができないというような一つのむずかしい場面に到達いたしました。そこで、この状況のもとに、いかがあるべきかということでございます。  御承知のように、コストの面その他から、石油との関係がございますしするので、一体日本石炭というものについてどう考えるかということにつきましては、前にも申し上げましたが、結局製鉄原料炭原料炭というものにつきましては、これは一方製鉄業を国際的に運営していくという面からも、できるだけ国内炭というものを持っていきたいという点が一つございます。もう一つは、一般炭につきましても、一般需要という面につきましては、だんだんに石油のほうが便利だというので、需要はそうは期待されない状況にありますけれども、ただ、いわば電力用炭というふうな関係につきましては、これはなお相当需要考えていけるというふうな状況がございます。したがって、原料炭はある程度のものは確保したい。それで一般炭の、条件のいい山から出てくる品質、コストともにやれるという山がございます。そういうものを合わせまして、需要のほうを大体の見当をつけるということができようか。  これに対応して、日本石炭業としてどうやっていくかということになりますと、これはどうしても政府として相当厚い助成がないとなかなかむずかしい点がございますが、これもひとつせい一ぱいやっていただく。そして、それじゃその財源はどうなるかということから申しますと、これは石炭業の立場からいいますと、幾らでもたくさん助成がありますれば楽なわけでありますけれども、これは経済全般から考えまして、おのずからそこに限度があると申しますか、たまたまこの前のときに、この特別会計をつくっていただいて、石油輸入関税の一部を使わしていただいているということがございますので、これを一つは延長して、さらに四十四年、本年度から五カ年間というふうなものをやっていただきたい。石油需要が増しますものですから、したがって関税収入も多くなってまいりますが、これをひとつできるだけフルに使わしていただきたい。要するに、そのワク内で一つの何らかの方策を立てたいというところから始まっているわけであります。結局そうなりますと、ただいま申し上げたような原料炭中心にしました一つ再建確保対策というもの――それにいたしましても、やはり非常に条件の悪いところというものは、逐次閉山せざるを得ないという形になる。これは地域経済との関係も、申し上げるまでもなく大きいわけでございますしいたしますから、いわばこれはなだらかといいますか、あまり大きな影響が一度に出るようなことでなく、逐次いきたいというような観点、それから同時に、それにつきましても、やはり閉山の費用というものがあるわけでありまして、これらも、できるだけその閉山の場合にも、地域経済等に与える影響の少ないようにしていきたいというようなところを主にいたしまして、大体の計画が組まれたわけでございます。  なお、それでは出炭規模をどうするかという問題が非常に問題になるわけでありますが、この前のときには、エネルギー全般関係として、総合エネルギー調査会におきまして、大体五千万トンくらいを標準にして考えていくということでございましたが、今度はそうはまいりませんのと、何らかの一応のめどは立てなくてはならぬわけでありますが、同時にそれを無理やりに確保する、あるいはそれ以上出てはいけないというふうなことは、あまりにスティックした形で考えることはいかがであろうかということで、大体の計算上の標準としましては、三千五百万トン程度四十八年度において、ならしますと大体平均四千万トンくらいになるわけでありますが、そのくらいの出炭ということをめどに置いて、いろいろな計算をしたわけであります。今度の場合は、つまり与えられたる与件について、そのもとに、企業経営者また従業者一体となって努力をしていただく。その場合に、コストが大体見合ってそしてやれるのを積算してみたところが、いまの三千五百万トン程度ということを考えておりますが、プラスになってきたということはもちろん少しも否定するわけではなくて、むしろ歓迎すべきことであると思いますが、同時に諸条件関係で、だんだんやっていくうちに、いわば三千五百万トンが切れる状況になったという場合がありましても、これまたやむを得ざることであって、無理にこれをつじつまを合わせるというふうなことも、むしろ適当でないのじゃないかというふうな形で進んでいるわけであります。  なお、石炭位置づけについて、総合エネルギー調査会のほうで、この前のときは五千万トンを見当にしろということでありましたが、今度はそうでない形でありますが、これは総合エネルギー調査会にもはかりまして、そしてあちらといたしましても、一つ考えをまとめていただいたわけであります。  一つは、現在の出炭規模というものを今後ともそのまま維持することは困難になったということは認めざるを得ない。ただその場合に、原料炭については、できるだけ国内炭によることが望ましい。そこで国内のこともさることながら、原料炭海外開発というようなものについても考える必要があるのじゃないかということが一つございます。こういうようなことも別途計画をして考えるべきであるということになります。それからもう一つは、火力発電所中心にした相当程度需要が期待できるから、これも考えていくべきである。同時にやはり全体の趨勢からいいますと結局、石油、あるいはさらに先にいきますと原子力になるわけでありますが、転換をしていくということも避けがたい情勢であるが、これは石炭の面並びに今度需要者のほうの電力等の面についても、その転換がスムーズにいくように心得ろ、こういうような意味答申ができたわけであります。そういうような形で、今回はいま申し上げたような方針のもとに、案が組まれたということでございます。  これから、それでどうやらいけるかどうかという点については、現実の問題としますと、山元の事情の問題もありますし、自然条件変化等善悪両方ともあるわけでありますが、一応の計算をしてみまして、どうやらいけるのじゃないかというふうに考えます。
  6. 平岡忠次郎

    平岡委員長 植村参考人、恐縮ですが、時間が非常に制約されておりますので……。
  7. 植村甲午郎

    植村参考人 そういうようなことで、すでにごらんになっておるような案として、最後にきめたわけであります。これはだいぶむずかしい問題でございますので、たいへん長い間、私としては踏み切りがなかなかつかない点もあって、いろいろな角度から検討していただいてきまった、こういうような経過になっておりますので、どうぞよろしく御審議を願いたいと思います。     ―――――――――――――
  8. 平岡忠次郎

    平岡委員長 これより質疑に入ります。通告がありますので、これを許します。中村重光君。
  9. 中村重光

    中村(重)委員 植村会長に対しまして、企業経営体制労務対策の二点についてお尋ねしてみたいと思います。  植村会長は、いわゆる植村構想において、管理会社というものが、今後の日本石炭鉱業の最も適切なものであるという考え方の上に立って提起されたのだと思うのであります。ところが、答申ではきわめてあいまいな形でたな上げされるということになっておる。ところが、この答申に対しまして、御承知のとおり、各方面から痛烈な批判がなされている。石炭鉱業の将来に対するビジョンがないではないか、あるいはまた、総合エネルギーの中におけるところの位置づけがなされていない、労働者不在答申である、大手を中心とするところの石炭資本、あるいはまた金融資本を救済する案にすぎないではないか、そうしたもろもろの批判がなされておるのでありますが、植村会長はいまもなお植村構想が最も適切なものとお考えになっていらっしゃるのかどうかという点を、ひとつお答え願いたいと思います。  また、新聞報道でありますが、運営よろしきを得るならばやれる、こう言っておられるようでありますが、それはどういうことをさすのか、具体的にひとつお聞かせ願いたい。  いま一点は、新聞報道によりますと、あなたの構想に近いところの自由民主党の根本政調会長構想として、いわゆる三社案なるものができておるのであります。これに対して、どういう見解を持っておられるかという点でございます。  労働対策についてお伺いするのでありますが、この答申を読んでみますと、労務対策といたしましては、「労働環境は、必ずしも十分とはいいがたい状況にあることにかんがみ、炭鉱労働者の定着および確保閉山に伴う離職者に対する退職手当ての充実、」云々、こういうことを書いておるのにすぎないのであります。御承知のとおりに、炭鉱労働者はきわめて低賃金の中に働いている。鉄鋼関係労働者は六万七千円の賃金、ところが大体同率の賃金でなければならぬといわれておる炭鉱労働者は四万八千円の賃金にすぎないのであります。そうして、きわめて労働強化が押し付けられておる。高温多湿の悪い環境の中に働いている炭鉱労働者に対して、こうした低賃金の中で、しかも労働強化で働かせられておる労働者の心境はどういうことか。それから、労働災害というものは、炭鉱労働者は減っておる、にもかかわらず、死亡事故というものが四十二年では二百四十八人。四十三年になりますとこれがふえまして、二百九十人に達しておるのであります。こういうことでは、炭鉱労働者は安心して炭鉱では働くことができない。したがって、離山をしていくということになっておるのであります。このことが、今日石炭鉱業が危機におちいっておるところの最大な原因であると私は思うのであります。今日まで三回にわたるところの石炭答申に基づく政策が失敗をしたということは、ここにあるのである。したがって、今回の答申には、いわゆる労務対策に対するものが、私は中心的な柱でなければならなかった、またそのことを期待しておったのであります。しかし、いま申し上げますように、きわめてあいまいな、十分とはいえない案というような答申に至っては、私は、植村会長がどうしてこのように労働者を軽視しておる答申をされたのか、全く理解に苦しむのであります。そして、この審議会におきましては、労働者代表の強い反対にもかかわらず、一方的に押し切ってしまったということ。この答申に対しまして、労働者はこういう見解を示したのだ。そのことをはっきり書いて、炭鉱労働者ほんとうに安心して働く、一人一人の労働者がこれならやれるのだというような気持ちになる、それを確認するというような条件をつくりあげていくというようなことが必要であるということを政府に促していくというぐらいの答申であるべきであったと私は思う。そういうことがなされていないというところに、今日炭鉱労働者の大きな反発となり、いわゆる労働者不在答申であるという批判をし、三万四千の炭労傘下労働者は、総理にあるいは通産大臣に、石炭経営者に対して退職届けを提出しておるということが、新聞で伝えられておるのである。これらに対して、植村会長はどのようにお考えになっていらっしゃるのか、まずこの二点についてお聞かせを願いたいと思います。
  10. 植村甲午郎

    植村参考人 ただいまのお話でありますが、幾つかございますが、一つは、いわゆる植村構想と称する中に、一つ管理会社機構というものが考えられる、こういうような点について、いま出てきている答申は、ちょっとどこかいなくなっているようだが、実際にどういうふうなつもりか。これは、植村構想と称するものは、いわば石炭設備その他のものを切り離して、新しい会社をそれぞれこしらえる、それについて若干の株を持ち、それは消費者並びに金融機関に株主になってもらって、そして、それを通じてある程度指導といいますかをやっていこうかということを考えたわけなんです。これは一つ構想でありますが、その前段のところで、なかなかむずかしい法律問題等もございまして、結局これはやめるということになってきた。しかし、そのときの考えといたしましても、いわば、コントロールということをいいますけれども、これはやはり一つ私企業中心コントロールの形で考えていたわけであります。それにしましても、実際に実情に即した運営をやっていくのに、やはり何らかの注意をしていく必要があるのではないかというようなことから起きたわけでありますが、今回の場合でありますと、この体制の問題としましては、合理化体制委員会というふうなものを一つこしらえまして、そこで具体的な問題として考えて、それぞれやっていくということで、そのあとはどうなるかということになりますと、結局、石炭協会というふうなものがございますが、こういうふうな石炭業者の団体も、新しい事態に即して、十分に目的が達せられるようにやるということが第一段になります。あとは、今度は政府指導監督という問題で、これをやっていくというふうな形になってまいったのであります。  それから、これでどうやらいくんじゃないかということを私が言ったが、一体具体的にどういうことを考えているかというお話がございましたが、私がそう申しましたのは、予算としまして四千二百億余りのものが組まれてきて、これをどう使っていくかということは一つの問題でありまして、それぞれ配分の一応の案というものが考えられております。しかしながら、これは、ふんだんにお金があるわけではないわけでありまして、いれば必要最小限度として、国としては考えいかれるのも、これまたやむを得ないことではないか。そうしますと、この運営につきましては、業界として労使ともほんとうに奮起していただくのはもちろんでありますが、運営としては相当こまかに配慮を、政府なり関係方面でもやっていただかないといけない。だからそういう意味で適当に運用する、ほんとうに合目的的に運用するという形に回らないと、またそごを来たすおそれがある。それをやっていただければ、まずいくんじゃないか、こういう意味でございます。  それから、いまの従業者関係でございますが、第一段に、どうもこれは金融保護であり、あるいは企業保護だけじゃないかという非難があるようでありますが、これはそういうつもりは一つもありません。これは明記してありますとおりに、それぞれ犠牲相当払っていただく――事実そういう結果になるわけでありますが、ということと、それから企業自体というものがどうにかやれませんと、給与その他の問題にしましても、やりたくともできない形になりますから、企業としても、一応やれるものはやれる形にならないと困るということ、そういうことを考えますと、金融機関そっぽを向かれても、これまたなかなかやれないのでありまして、そこで犠牲はどうせ金融機関も払っていただくわけで、長期の金で低利でもって寝るような結果になるのでありますから、これは普通のプライベートの形の銀行としては辛いところでありますが、これもひとつ国策に順応して、できるだけの犠牲を払っていただきたいということはありますが、同時に、まあそうそっぽを向いちゃ困りますというような点がまたあるわけであります。その意味で、いろいろ御非難がありますが、私自身としましてはもちろんでありますが、そういうふうなことだけを考えてやっておるということはないわけでありまして、結局、石炭の問題をどう解決していくかということが本旨でございます。  これから、何と申しましても、いまの企業者も、もちろんほんとうに一生懸命裸になってぶつかっていただかなければいけない。同時に、これはもう炭鉱に働く方々というものがほんとう一緒になって、労使で一丸となっていかなければならないような困難な事態になっていることは、よく私どももわかるわけであります。そこで、一体それじゃ労働条件というものについて――どうもこれはひとつ修文の問題でありますが、はなはだ書き方が弱い、これはだいぶ検討されて直ったのでありますが、なおあるいは御不満かもしれませんが、できるだけこういう点についても考えいかなければならない。  それから、労働環境の問題にしましても、住宅の問題だとかその他の問題がありますが、これもさることながら、一体労銀というものをどう考えるかという問題が基本じゃないかというふうな御議論がありまして、これもまことにごもっともなことであり、それから鉄鋼業等との比較もありましたが、それでは一挙にやれるかということになりますと、なかなかむずかしい問題でございますが、とにかくほかの産業とのバランスというものを考えて改善をしていくという方向で、逐次努力していくということになっておるわけでございます。  それから保安の問題でありますが、これはおっしゃるとおりでございまして、これにつきましても、いままでもやっておると思いますけれども、つまり設備その他の関係はもちろんでございますが、そのほかに、保安というものに対する考え方といいますか、現実の取り組み方につきまして、ほんとう労使一体になってこれをやっていかなければできないことであります。これは特別ひとつ力を入れてもらいたいというふうな形で、考えられているわけでございます。  これは、なかなか四千何百億というお金でありますので、一般の方からいいますと、なかなかこれまた風当たりは強いわけでありますが、これはひとつこれだけのことをぜひやっていただかなければならないということで、またその中で、これを有効適切にやっていくのにどうしたらいいかというところにくるわけでございます。できるだけのことはやっていただくつもりでやっておりますけれども、どこまで御満足がいくか、これはまあいろいろな点、バランス考えていただいてやっていただく。  それから、根本構想の三社案については、これは上から三社にしろというふうな形でいくのはやはり適当じゃないのじゃないか、私は、三社案というものがいいのだということになれば何も悪いということはないのですが、結局いまの体制部会等で、具体問題として、あるいは鉱区の調整による新会社の設立だとか統合離散もあるわけであります。それから供給の問題もある、そういうふうな問題をやっていくのが現実的な第一段じゃないか。それから、そうやってみると、全国三社案というよりは、かりに常磐なら常磐というもので一社にしたほうがいいじゃないかというふうになってくれば、これはまた、そこだけできたってちっとも悪くないわけでありまして、結局はやはり自主的にそういうふうなことになりませんと、程度がありますけれども、まあこうなってくればそれがいいじゃないか、そうだなというところにきませんと、これは無理にやりましても、なかなかやること自体だって問題がありますし、やってもはたして現実の問題としてうまくいくかどうか、これは人間の問題でございますから、ほんとうにやはり一緒になるのがいいなとなってこないといけないのじゃないか。したがって、そういうふうな段階が出てくればそれはけっこうですし、それには初めからこうきめて上から命令するといいますか、そういうふうな形でいくのはいかがなものだろうか、むしろ現実的でないんじゃないかというふうに、私は考えておる次第であります。
  11. 平岡忠次郎

    平岡委員長 最初にちょっと御注意します。質問者も応答の参考人も、簡潔にお願いします。岡田利春君。
  12. 岡田利春

    岡田(利)委員 二点だけ御質問します。  いままで植村さんの御意見を聞き、今度の答申を見まして、非常に実は失望をいたしておるわけであります。いわゆる自主的自主的と言われますけれども、事実これを具体的に進める場合には、むしろ官僚統制になるのじゃないか、いわゆる植村構想であって、受けざらというものがない、自主的にそういうものをつくるべきだというサゼスチョンもない、まことに柱が抜けた答申ではないのか、との点が第一点でありまして、これで、はたして石炭が安定できるという自信がおありなのか、ひとつ明確に見解を承りたいと思います。  それから第二点の問題は、この構想でいけば、答申でいけば、むしろ石炭鉱業自身は自衛本能の立場から、閉山、縮小、分割、そうして拡大生産によってコストアップを吸収する。その結果、その単位炭鉱の寿命を縮める、こういうなだれ現象の方向にいくことは間違いがないと私は考えるわけです。しかも合理化体制部会でやると言われますけれども、この産業体制を議論するのに、単なる審議会の部会でできるとお考えになっておるのかどうか、どうもこの点について、私どもは理解ができないわけですが、この二点について、見解をこの機会に承りたいと思います。
  13. 植村甲午郎

    植村参考人 いまの合理化部会の問題でございますが、これは具体的な問題として取り上げてまいりますが、同時に、そこでやはり議論が出て、それからまた業界としてもこれを受けて立つというふうな形になる場合もございましょうし、それから業界としても、かねて具体的にどうするかというようなことで、また合理化部会との関連において、これが成立する方向へ導くというふうな問題もありましょうし、それほど無力であるとは私は思っていないわけですが、それが一つでございます。  それからもう一つは何でしたか。
  14. 岡田利春

    岡田(利)委員 結局、石炭鉱業は自主的にすべてやっていくのだ、こういわれますけれども、この政策は、結局は官僚統制になってしまう、こういう弊害があるのではないか
  15. 植村甲午郎

    植村参考人 その点につきましては、やはり企業としては自主的にやってまいりますが、政策遂行の意味においては、役所としても相当苦いことも言わなくてはならぬし、また強くやっていただかなくちゃならぬ場合がある。しかし企業としては自主的にやっていく。全体として、自主的、自主的と言うとおっしゃるけれども、結局基本はそこである。  それから、官僚統制にならぬようにするにつきましては、これはまた私ども、関係あるなしにかかわらず、関心のある問題でございますし、また国会の諸先生にしても、どうもおかしいときは御注意願うというふうなことでやっていけるのじゃないかというふうに考える次第であります。
  16. 岡田利春

    岡田(利)委員 いま植村さんがそう言われましたけれども、自主的にやるのは、石炭を採算に合うように掘るということだけなんですよ。あとはありません。そういう点よりないのですから、むしろ生産を上げる、このためのメリットを吸収して、そういう体制というものについてむしろサゼスチョンすべきではなかったのか。でないと、自主的というと結局は各企業ごとになって、むしろ企業を防衛するという本能から、閉山や縮小、分割、拡大生産をしなければ成り立っていかいから無理な拡大生産に走る、その結果、単位炭鉱の寿命を縮める、むしろこういうあやまちを再びおかすのではないか、こう私は考えるわけです。
  17. 植村甲午郎

    植村参考人 それはおっしゃるような形になるのは困るわけでありまして、企業者としましても、全体の流れというものをちゃんと見て、そして善処していくということで、変に拡張することは適当であるかどうかという問題もありましょうし、それから山はどうしてもやれぬのだということになれば、これは退却せざるを得ない。それもいろいろな点でどうしても見当がつかないというふうなことになれば、やむを得ない、退却方向へ行くということで、自主的にやれるのじゃないかと思っておりますが、これは具体問題としてどうなってまいりますか、おっしゃるようなところは、もちろん用心しなくちゃならぬところだと思っております。
  18. 平岡忠次郎

    平岡委員長 田畑金光君。
  19. 田畑金光

    ○田畑委員 端的にお尋ねいたしますが、与党の根本政調会長から、三つのブロック会社案が一応提唱されたわけです。これは政府に申し入れがなされておるわけですが、長い審議の過程で、こういう問題について、審議会の中でも御論議されたかどうか、御論議されたとすれば、そのメリットがあるかないかという判断などについてはどのように評価されたか、このことを端的に承ります。
  20. 植村甲午郎

    植村参考人 三社案についての私の考え方は、先ほど申し上げたとおりでございますが、これはずいぶん長い間の審議でございましたので、小委員会の段階において、いまの地域的統合案というふうなものも話題にのぼったことがあるわけであります。結論としますと、結局一つ官僚統制的にそういうふうな案をきめて、そして実施させるというふうなことについての問題が、私先ほど来るる申し上げたように、やはり企業は生きものでございますし、それぞれ人間がいるわけですから、やはりその連中が、一緒になってやらないといかぬぞということになりませんと、現実の問題としていい結果は見られない。それには法律か何かでもってやるよりしようがないのですけれども、そういうような強制はしたくないし、現実には結果はよくないだろう。しかし、でき上がってきた場合には、これは大きなメリットを考えてそれぞれ一部の犠牲を払ってやることでありますから、これは現実のその案を拝見しないと批評はできないわけですけれども、これはちっとも否定すべきことじゃないというふうに思っております。
  21. 田畑金光

    ○田畑委員 今度できる合理化体制部会ではそのような問題も含めて検討する、こういうようなことで、合理化体制部会ができたものと理解しますが、そのように理解してよろしいですか。
  22. 植村甲午郎

    植村参考人 これはそういうふうな問題も、そこへどなたかから提案があってかかるということは考えられております。つまり、今度の新しい計画で動き出した。すぐかかるか。かりにすぐかかっても、それはちょっと早いぞということになるのか、あるいは両三年やって、もうこの地域はみんなもその気にだんだんなってきているし、いいじゃないか、こっちから刺激してみようじゃないかという形で、また論議されるかもしれない。これはいろいろな問題がかかり得る、制限された委員会じゃないのじゃないかと、私は思いますが…。
  23. 田畑金光

    ○田畑委員 会長御承知のように、この一月から、たしか西独ではルール石炭鉱業株式会社が発足するはずです。昨年の十一月末現在では、二十九の炭鉱の中で二十三が参加を表明する。この会社発足までには、約二年の検討を重ねておるわけです。また労使あるいは政府の段階でも、あるいは三者共同で検討した結果、こういうふうなものが発足することになったわけです。さらにまた、これはお話しのように、あくまでも私企業の原則、参加するかしないかは、個別企業の自主性にまかされておるわけでありますが、同時に、政府石炭適応化法という立法的な措置によって、これに参加せざるものには政府の補助金をやらぬというようなきびしい措置もやっているわけであります。やはり今度出された答申の中で、合理化体制部会が発足した以上は、将来そのような考え方もこっちからだんだん芽が出てくるものだ、このように理解しておるわけでありますが、そのように理解していいかどうか。
  24. 植村甲午郎

    植村参考人 繰り返して申し上げますが、そういう問題も、出ていけないということはないと思います。結局、そういうふうにかりに三地域にぱっと分けることをきめるということでなくても、ある地域については、これはもう一つにまとめるのがいいじゃないかというふうになれば、これまたそれへかかるだろうし、それからほかのほうはどうだろうという論議もやられるかもしれないということではないかと思います。ただ、いまのドイツのは、胎動の期間が相当長いわけであります。また、あるいはある時期になれば、それをやるのがいいということになるのかもしれませんが、これはかけて、実際に運営してみないとわからないということじゃないかと思います。
  25. 田畑金光

    ○田畑委員 私、この三社案がいいかどうかということは、いろいろな角度から検討して、いろいろ問題があると思います。そういうふうな問題はさておきまして、鉱区の再編、統合ということは、前の答申以来しばしばいわれておりますが、実効があがらぬ。とにかく現在の法律制度のもとにおいても、やろうと思えば単なる鉱区の統合、再編あるいは流通機構の一元化の問題について勧告ということだけでお茶を濁す段階は過ぎておる、私はこういう感じを持っておるわけです。この点についてもっと法律の改正なり、あるいは官僚統制というきらいが出るかどうかは別にいたしまして、行政指導なり、これは強くなすべき問題ではないか、こういう感じを持つわけです。さらにまた鉱区の再編、統合等について、やはり今後の金融の措置というものがあげて合理化事業団に依存する、こういう比重が強くなってくるわけです。そういうことを考えてみますと、鉱区の再編、統合に伴う融資の問題等についても、この際合理化事業団の機能を強化する、こういうことも考えられてしかるべきじゃないかと見ますが、この点について御意見を承っておきたいと思います。
  26. 植村甲午郎

    植村参考人 したがって、おっしゃるとおり、具体的にやるにしても、具体問題を申し上げるのは適当でないと思いますけれども、北海道なんかにはいろいろあるわけです。これをどっちにこうやるのが一番いいかとかいろいろな問題がありますね。それと同時に、かりにそれが新会社でもできるのであるとすれば、今度は残ったほうの二つ三つの会社としまして、どういうふうな影響があるかというようなこともありますから、金融問題というのが出てくるのは当然だと思います。  それからいま合理化事業団というものをだいぶ思い切って活用されることになっておりますが、ただこれは規則をよく読んでみないとわかりませんが、いまのようなこともある程度やれるのじゃないか。ただ予算としては一応相当盛るだけ盛ってあるわけだ、こういうふうに考えておりますが、これはちょっと調べてみませんと、私はあまり詳しくないから、事務当局の方に伺って……。現在の規定でやれるのかやれないのかというような問題はわかりませんから……。
  27. 田畑金光

    ○田畑委員 それでは質問を終わります。
  28. 平岡忠次郎

    平岡委員長 大橋敏雄君。
  29. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 今度の対策石炭産業の最終的な抜本策が練られるのである、こういう呼び出しで今日まで期待されてきたわけですが、現実問題としましては、その内容は再建案としては中途はんぱである、抜本策ではないという声が圧倒的であります。  これに対しまして、二、三私は具体的にお伺いしたいと思いますが、石炭産業のいわゆる浮沈のかぎを握っているのは何といっても労働力だと私は考えるわけであります。現実は労務倒産するのではないかという声が非常に強い。しかるにこの答申の内容を見ますと、労働力確保についての内容がはなはだ乏しいという感じを受けるわけです。労務確保、特に若年労働力の確保についてどのような御見解をお持ちであるか、ちょっとこの点お尋ねいたします。
  30. 植村甲午郎

    植村参考人 いまの若年労働者をどうつかんでいくかということについては、これはだいじょうぶですよということは決して申し上げられないむずかしい問題だと存じます。しかしながらこれは環境整備というものがある程度できまして、そこでどう考えてくれるか。それから山によってこれはたいへん違うと思うのです。新しい炭田の開発なんかに着手されるような状況になってくれば先行き相当長いことは確かですから、こういうことはあるいはやれるかもしれぬ。しかしそうでない場合だったら、若年労働者を獲得するということは、地域の関係でしばらく働こうということになるにしても、なかなかむずかしいことで、私どももそれはわりあいにいけますよということはとうてい申し上げられないと思います。
  31. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 はなはだむずかしい問題である、これはもう全般の考えでありますが、環境整備だとかあるいは新しい炭田が開発されればというお話がありますけれども、そういう抽象的なことでは、もう絶対といっていいほど若年労働者確保は困難だと思います。先ほどからお話があっておりますが、三社案の問題でございますけれども、体制整備の項が答申案の中にあります。その答申案を読みますと、「石炭鉱業審議会の中に合理化体制部会を設けてこれらの問題を審議し、必要な場合には、勧告を行なうべきである。」こうありますけれども、先ほどのお話を伺いますと、要するに命令的に地域を統合するということも問題ではないかとかいろいろな話があっておりましたが、私は今度の再建の骨子は体制整備以外にはない、いまの労働力確保の問題とあわせてこれ以外にない、こう考えるわけです。今回予算措置としましては、四十八年度までに四千二百億の財源が確保されるやに聞いておりますが、これらにしても再建交付金の一千億の肩がわり等、またまた失敗するおそれもあるといわれている今日、もしもその予算等がなくなった段階においてまた手おくれであった、ここで体制整備をやり直そうなどといってももう手おくれだと思うわけです。私は、やるならばこの初年度において、最初の段階においてこれに着手すべきである、こう考えるわけです。むしろいやだいやだといっている業者に対して説得していくべきである、こう考えるわけですが、その点はどうでしょう。
  32. 植村甲午郎

    植村参考人 それはあくまでも人間同士の結合でありますので、これはやはり人的の和、ほんとうの共同一致ができませんと、現実にはいい結果にならない。いまのそういうふうな空気といいますか必要も、われわれのほうもぜひやるべきじゃないか、いいかげん少しよく考えてみたらどうだということで、ひとつやりましょうとなりませんと、これは小さい問題ならいいですけれども、三つに統合するような大きなことになりますと一そうそうだ。やはり現実を踏まえていくべきだ。それからそうなることをちっとも私は反対も何もしていない。地域統合がいいかいかという議論はまた別にあると思いますが、何らかの形で体制が整備されることは歓迎すべきことだと思うのです。ただやっぱりあくまでも無理やりにやっていい結果は出ないというふうな考えを私は持っております。
  33. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 今度の答申内容が単なる企業救済であり産業救済ではない、また金融機関の救済であるという非難の声が非常に強いわけでございます。今回も再建交付金という名のもとに一千億円の肩がわりがなされようとしておりますが、これが前回の一千億円の肩がわりの失敗の繰り返しになるのではないかという危惧があるわけですが、この点について自信はおありなんでしょうか。
  34. 植村甲午郎

    植村参考人 私は、石炭につきましてはもうこれが抜本策でありたいという意味は、いわば異積赤字の肩がわりのようなこと、こういうふうなことはもう今度限り、しかしそれでは五年たったあと政府予算を石炭のために使わないで済むのかというと決してそうじゃないと思うのです。しかしそれにはおのずからむしろ減っていく形でおそらくやられるべきで、いまの借金の始末というふうなことで何らかの措置を講ずるようなことはもうこれっきり、こう考えておるわけでございます。それでまたいけると思っております。
  35. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 それでは時間がありませんので、最後にもう一問お尋ねしたいと思います。  今回の答申が、原料炭優先と縮小という基本路線をたどった答申である、このように考えられるわけでありますが、この答申の方向で新政策が実施されると、いわゆる老朽化した、一般炭が多い九州地区での閉山がなだれ現象を起こすのではないかという心配があるわけですが、そのなだれ現象の歯どめが他にあるかないか、こういうことです。
  36. 植村甲午郎

    植村参考人 これは具体的の問題としてどういう現象が起きるか、私もそれはなだれ現象が起きたら困ると思っているのですが、与えられたる与件でそうなだれ現象が起きないで済むのじゃないかと思っているわけです。
  37. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 私たちもそういうふうになだれ現象を起こしちゃたいへんだ、なってはならないと思っているわけですが、現実にそういうなだれ現象的な姿になった場合、そういうときはどのような措置をとられるか、もしその腹案があれば少し聞いておきたいと思います。
  38. 植村甲午郎

    植村参考人 なだれ現象になったときにどうするかという問題、いま腹案というのがありませんけれども、つまり金融問題等でやむを得ざる形になる場合があるわけです。年末にしろあるいは年度末にしろ、またこの本案が通っていろいろなことが始まるにしましても、六月ぐらいにどうしてもなるのじゃないかと私は思うのですが、その間にそういうふうなことで閉山をするというようなところが起きないようには、政府のほうでも措置をとっておられる。私どももこれはぜひ一緒にやってくれということをお願いしたわけなんです。
  39. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 要するに経過措置のことで……。
  40. 植村甲午郎

    植村参考人 経過措置です。
  41. 平岡忠次郎

    平岡委員長 よろしゅうございますか。――これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人には、御多用中にもかかわらず御出席いただき、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  しばらくこのまま休憩いたします。     午前十一時二十三分休憩      ――――◇―――――     午前十一時二十七分開議
  42. 平岡忠次郎

    平岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  政府当局に対して質疑を続行いたします。八木昇君。
  43. 八木昇

    ○八木(昇)委員 時間が少のうございますので数点に限って質問いたしたいと思います。  最初に端的にお伺いをいたしますが、明日閣議があって、その際、通産大臣から石炭問題についての御提案があるというふうに承っておるのでございますが、どのような閣議への提案を大臣としてはなさるおつもりでございますか、簡潔に要旨をお述べいただきたいと思います。
  44. 大平正芳

    ○大平国務大臣 閣議決定は石炭政策の大綱にとどめたいと考えております。  第一は鉱業審議会答申、旧臘十二月二十五日にちょうだいいたしました答申を尊重して、まず第一に再建のための助成策、総額一千億円の再建交付金の交付と現行安定補給金の拡充をやるということが第一点でございます。  第二点は体制の整備でございますが、私企業のベースの上に立ちましてみずからの経営の刷新、合理化につとめるのは当然でございますけれども、個別企業の利害をこえて石炭鉱業全体の合理化のために鉱区の再編、調整、流通の合理化等、体制の整備を促進すべきであると考える。これを実現いたしますために、審議会の中に設けられる合理化体制部会で鋭意検討せしめて促進をはかるとともに、政府も必要に応じまして実施を勧告してその実効をおさめるというようにいたしたい。これが第二点でございます。  第三点は労働対策の推進でございます。  今日の炭鉱をめぐる労働条件労働環境にかんがみまして、炭鉱労働者の定着、確保、それから閉山に伴う措置、離職者対策等に周到な配慮をする。  それから第四番目が保安対策の強化でございます。これは旧臘の十二月十三日に中央鉱山保安協議会の答申がありますので、その趣旨を尊重いたしまして保安対策を強化してまいるということ。  第五点は閉山対策でございます。閉山にあたりまして、石炭関係従業員はもとよりでございますけれども、周辺地域の中小商工業者等に多大の影響があることも考えまして、閉山交付金の増額、閉山対策の改善、そういうことをうたうつもりでございます。  第六点は鉱害対策でございます。今日膨大な鉱害がなお存在いたしておりまするし、無資力鉱害の増加が現在なお見込まれる状況にかんがみまして、鉱害の処理が総合的にかつ計画的に行なわれなければならぬという考えで、鉱害対策を充実する方向を打ち出すつもりでございます。  第七番目が産炭地域振興対策の強化でございます。これは去年の十二月二十六日に産炭地域振興審議会の建議がございまして、きのう有沢会長から私のところへなお要請がございました。産業基盤の整備、事業団の事業の拡充、地方財政対策の充実、地域内の雇用の拡大と安定、そういった点を強化してまいるつもりでございます。  それから最後に財政措置でございますが、御案内のように現行の石炭対策特別会計の存続期限が昭和四十五年までになっておりますが、これを四十八年度まで延長していただく、また現行原重油関税中、暫定分の取り扱いにつきましても昭和四十六年度以降なお必要に応じて適切な措置を講ずる、そういう趣旨のものをうたい込むつもりでございます。
  45. 八木昇

    ○八木(昇)委員 大体内容はわかりましたのですが、念のために伺っておきたいと思うのであります。  御承知のように昨年末、自民党、社会党、民社党、公明党、四党の政調会長、政策審議会長会談がございまして、そこで政府与党、自民党側のほうから、いわゆる全国三社案なるもののお話があったわけでございます。したがいまして、今後石炭産業体制については、議会側におきましてはなお各党間でいろいろな話が続けられていくと思うのでございます。ところで、まあ明日御提案になるようなとおりに閣議決定を見たといたしまして、その決定は将来石炭産業体制について、事態はなお流動的であると思うのでありますが、それに対応し得るそういう幅を持ったというか機動性を持った決定である、こういうふうに理解してよろしゅうございましょうか。もっとことばをかえて言いますと、今後石炭産業体制問題について何らかの動きが出てきても、すでに十日の閣議決定を見ておるから石炭産業体制そのものについてはもう手をつけることはできないというようなことにはならないのでしょうな、という意味です。
  46. 大平正芳

    ○大平国務大臣 閣議決定は先ほど申しましたようにまあ大綱でございまして、これからきめのこまかい周到な石炭対策を実施してまいるのは政府でございます。また政府が実行してまいる上におきましては、各政党の御意見も十分お聞きしながら配慮してまいりたいと考えております。体制問題につきましては、閣議で閣議決定をお願いするのは、せっかくの再建でございますから、石炭産業の中の内外の合理性を追求してまいって再建に寄与するようにせなければならぬのは当然なことでございましょうし、審議会の中にも体制部会を設けて検討をお願いしようと思っておりまするし、政府も進んでこれを勧告していこうというくらいな気がまえでございますので、今後いろいろと御審議の道程におきまして御意見が出てくると思うのでありますが、その中で建設的なものにつきましては私ども十分摂取してまいらなければならぬと考えております。
  47. 八木昇

    ○八木(昇)委員 大臣は七日に記者会見をされたのでありますが、新聞の報ずるところによりますと、そこで次のように述べておられるようでございます。石炭再建策の答申案はその趣旨を根本から手直しすることはしないつもりだ、ただ安定補給金の配分をめぐって中小炭鉱会社から異論などが出ておるので、これについては一部手直しをしたい、なお鉱区の統廃合や流通機構の問題については積極的にもっと合理性を織り込むようにしたい、こういうふうに語っておられるようでございます。これは要するに、いわゆる石炭産業の三社案というものについては自民党の政調会長の意見とは異なり非常に消極的である、あるいはちゅうちょしておられる、こういうふうに見受けられるのでございますが、まあ諸外国の実例をいまさら申し上げるまでもなく、もうここまでくれば石炭産業がたくさんの企業に分かれているというようなことではとうてい将来の安定を望めないということは、きわめて客観的にながめてもこれはもう当然の帰結だと思うのでございます。にもかかわらず日本において政府が、またその政府の当面の責任者である通産大臣がいわゆる三社案にちゅうちょをせられるその理由ですね、その最大の理由といいますか、そこをひとつ、世間一般が納得できるように端的に、ちょうちょせられる理由についてお述べいただきたいと思うのです。
  48. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いまも御指摘がありましたように答申の趣旨を尊重するというのが私の立場でございます。せっかく八カ月間も鋭意御審議をいただいて御答申をちょうだいしたわけでございますから、それはそれなりに尊重してまいる、政府が頼んだものでございますから、そういう点が一点でございます。それから体制問題は八カ月間の審議の過程におきましていろいろと論議されて、そして一つの最大公約数というようなものが答申に盛り込まれたものと承知しておるわけでございまして、そういうものとして尊重してまいるつもりでございます。卒然と三社案といわれまして、これに賛成かどうか、こういわれますと、そういう背景、経緯を経てそういった政策がいま実りつつあるわけでございまして、それと離れて三社案というものを、一つの学術的な問題としてメリットはどうだ、デメリットはどうだというような問題として論議をする立場で私はないわけでございますので、鉱区の再編、調整、流通過程の合理化等は地域の実情に応じまして考えていくのだという姿勢で十分じゃないかということを考えておるわけでございます。  また、承るところによりますと、各政党の間でお話があったように聞いておりますけれども、そういう話題が出たということでございまして、自由民主党からは二十八日にそういう具体的な御提示は私のほうになかったのでございます。
  49. 八木昇

    ○八木(昇)委員 時間がありませんので先に進みますけれども、三社案に賛成できないという内容的な御答弁はなかったと思うのですけれども、それはそれといたしまして、先ほど同僚議員が植村参考人に質問をいたしましたところ、この三社案について植村さんは、三社案が悪いとは思わない、そういうふうに自主的に各企業がなってこなければうまくいかないのではないかと思う、段階が出てくればけっこうだ、こういうふうなお答えが植村さんからなされたのでございますが、大臣のお考えいかがでしょうか。
  50. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私の立場はまた石炭特別会計の主管大臣でございまして、石炭特別会計に与えられる財源の範囲内でこれを処理しなければいかぬわけでございます。かりに三社案というものがいろいろな観点から非常にすぐれた提案であるとしても、それが特別会計に与えられた財源の中で消化できるのかどうか。大体企業の統合というようなことになりますといろいろ優劣がありましょうし、賃金の水準、鉱害、背負い込んでいる債務の状況、その他いろいろ格差があると思うのでございます。これを一本にすると、結局上位のほうに平準化が行なわれるというのが常識だろうと思うのです。そういったものを一体ファイナンスする力が特別会計にあるかというと、にわかにそれはだいじょうぶでしょうなんてなかなか言えないのが現状じゃないかと思うわけでございます。与えられた条件のもとでベストな方策を追求していくことに精力的であらねばならぬと思っているわけでありまして、私はいまどれがいい、どれが悪いというようなことでなくて、具体的なケースにわたりまして誠心誠意やってみて、合理性を追求していくというのがまじめなやり方じゃないか、そう考えております。
  51. 八木昇

    ○八木(昇)委員 ただいまの大臣の御答弁はごもっともな点があると私は思うのです。植村さんが言われるように、将来三社ということも考えられ得るという言い方は私はごまかしだと思うのです。結局この際、やはり抜本的なやり方をやる、そのために企業を統合して全国を三社にしようというのならば、各企業間には利害の対立があるわけですから、そこに何らかの、卑俗な言い方でいえばえさがなければだめだ、結局端的にいえば金が必要だ、そうするとすでにこのチャンスをはずして答申の線に沿ったような形で再建策が進められて後に三社合併をしようなどと考えても、もうそのときには第一お金がない、出す金がない。こうなれば、企業によっては新たな再建資金の交付を十五カ年年賦で受けることになったわけであるし、そうなればもう合併などというようなことをやるよりは、この際思い切って石炭掘りをやめたほうがよろしい、閉山したほうがよろしい、こういうことになることは当然だと思うわけでございますので、ここでかりに三社というような思い切ったことをやる必要があるとするならば、もうこの機会でなくちゃならぬ、こういうふうに考えるのですが、その点いかがでしょうか。
  52. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほど申しましたように、八カ月間も御専門の方々が集まって答申を練ったわけでございますから、これは一面からいうと体制論ですね。石炭政策というのは仰せのとおり体制論だと思うのです。そこで一応煮詰まったところがああいう答申になったという経過を私は尊重せなければならぬのじゃないかと思うのです。それでそれを尊重せなければならぬ立場に私はおるということを先ほど申し上げたので、そういう点から御判断いただきまして、これを一ぺん御破算にして、もう一ぺんそれじゃ石炭政策を考えるかというと、重傷の患者を前にして、もうそんな時間的余裕があるかというと、実のところ私はないと判断いたしているわけです。それじゃこの答申で満足かというと、いずれもどなたも満足していないのでございますけれども、こういう状況のもとでつくり上げた案でございまして、これは精一ぱい考えた案でございますから、まずこれでスタートさせていただくのが、いま現実的な判断として一番賢明じゃないか、そう考えておるので、この機会に、あなたが仰せのようにこの機会でなければできないのだが、もう一ぺん考え直すつもりはあるかというと、遺憾ながらいまの段階でそういう余裕はないと私は判断しておるということを答える以外にないと思います。
  53. 八木昇

    ○八木(昇)委員 それは議会に対する答弁としては、いまの段階ではそういった答弁のしかたしかないかもしれないとは思うのですけれども、しかし大臣、率直に申し上げますが、お考えいただきたいと思うけれども、いまのような炭鉱企業のありさまでは、一体今後金融機関炭鉱に金を貸すでしょうか。たとえば今後の新しい肩がわり分が、十五年間で逐次肩がわりをする、したがって、部分的に金融機関が苦干担保を抜いたとしましても、新たに、一体いまのようなありさまで、どの企業ももういつ閉山をするかわからない、いつ企業をやめるかわからない、石炭産業そのものの将来について、だれしも何らの自信と確信を持っていない、こういう現状の中で個々の企業金融機関が金を貸すと思いますか。また、現在自己資金というものはむろんのこともう絶無ですね。炭鉱は資本を持っておりません。それでやれるとお思いでしょうか。私は石炭問題についてはしろうとです。もともと電力会社の出身ですから電力のほうが専門です。ですけれども、だれが考えたってこれは抜本策になっていない、必ず行き詰まる、こう考えるのですが、どうでしょうか。
  54. 大平正芳

    ○大平国務大臣 金融機関が金を貸すか貸さぬか、これは非常に微妙な信用問題だと思うのです。そのことについて私の判断を求められても私は答えようがないと思うのですが、ただ私が心配しているのは、新しい石炭政策が出て政府が腰をきめて国会に法律案を出し、予算案も出して、それからまた炭鉱関係労使も本気になってそれでやってまいるという姿勢を何とかつくり上げて、それでまいりますならば、一番肝心な信用の軸がつくられるのじゃないか、そう考えておるのでございまして、一番私がいま心配しておるのは、あなたがいま言われたように、これはだめじゃないか、必ず行き詰まるじゃないかという声をあまりあげられますと、せっかく考えようとしておる向きもしり込みされはしないかということを心配しますので、この点私は不満足な案ではございまするけれども、何とかみんなでこれをひとつものにしようという気持ちが石炭政策を救うのではないか、また金融機関の金融を促進していくのではないか、いま祈るような気持ちで一ぱいです。
  55. 八木昇

    ○八木(昇)委員 私に与えられておる時間がもうあと十分もございませんから、あとは同僚議員からさらに質問していただくことにしまして、労働大臣にちょっと伺いたい。  今度の答申の中で、閉山の場合の離職者の退職金問題が触れてあるのでございますけれども、この退職金の問題について国が負担する額にもおのずから限度があるので企業サイドでも何らかの措置を講ずることを検討すべきである、こういうふうに書いてございます。実際には退職金額の七五%ぐらいは政府で見るけれども、残りの分については企業サイドで何らかの措置を考えろ、こういうのですけれども、実際問題として不可能だと思うのですね。労働省としてそういうことは可能であるというふうにお考えになっておるかということが一つと、それからもう一つは、それでも今後五年、十年と寿命が続いていく炭鉱の場合には何がしかのことができる企業も例外的にはあるかもしれませんが、もうこの際窓口で閉山するという山の場合は、企業側から出る金は全然ないわけです。したがって、あくまでも労働省としてはそういった閉山企業に働いていた労働者の退職金は、この際やはり一〇〇%これを保障する、こういう立場でなお積極的な努力をしていただかなければ、今後の労務倒産ということはだれからも言われておることですけれども、これに拍車をかける、こういうふうに思うのですが、労働大臣の決意を承りたい。
  56. 原健三郎

    ○原国務大臣 閉山した場合退職金等をどういうふうにするかという御質問でございまして、七五%ぐらいまでは政府のほうその他でこれをやりますが、全額これを保障するかということでござます。御承知のように一般産業には全然そういうことはございませんが、特に石炭工業について、その特種性に基づいて国の交付金でもって賃金等の負債を弁済する制度を特別に設けているわけでございますが、この交付金による弁済制度については、今回の答申において石炭政策全般から七五%、十分ではございませんが、なるべくもう少し上がるかどうか、いまその他予算折衝もありますし、十分誠意を持って尽力することを申し上げます。
  57. 八木昇

    ○八木(昇)委員 最後通産大臣にもう一点だけ伺いたいと思うのですが、私は今度の石炭答申考え方一つの弱点は、従来、石炭需要というものを最大限に確保しなければならぬというので、五千万トンの出炭があるものと見て、そうしてそれに見合う需要確保してきたわけであります。特に電力業界あたりには二千数百万トンの一般炭の引き取りというものを行政指導で強力にやってきた。ところが今度の答申は大体の考え方として、はっきりコンクリートにくくっているわけではありませんけれども、今後五カ年の間に三千五百万トン前後という出炭規模になっていくという考え方に立っておる。とすれば、現在の石炭需要の状態との間のギャップがその間短期間の間に出てくるという弱点を持っておると思う。  そこで一例を九州電力について考えてみますると、重油専焼の火力発電所は九州電力にはまだ一カ所もないわけであります。いま重油専焼の火力を二カ所ほど建設にかかっておりますけれども、現在はそういうものはまだ一つもない。ただでさえ最近発電所の設計どおりの炭というものがすでに入手難になっております。そして三池炭の混炭が勢い目立ってきて、発電所ではいろいろトラブルが発生しておるという状況を私はよく知っておるのでございます。それからもう一つは、九州の場合には産炭地に石炭をたく発電所というものをつくってきた歴史的経緯がございます。私あたりは佐賀県でございますが、佐賀県が産炭地であるのに火力発電所がないということはけしからぬ話じゃないかということでしきりと運動をいたしまして、そして唐津に火力発電所ができた。それが完成してまだ三年にもならないという状態なのに佐賀県の炭鉱は今度の時点でまさに全滅におちいろうとしておる。かつてタヌキ掘りのような小さな山まで含めますと八十からあった炭鉱が現在わずか四山になっておる。その四山がさらに全滅しようとしておる。こういうことになってきた場合に、これは流通上の問題が当然起こってきまするし、それを他から持ってくるということになってくるとコストの問題が出てくる。こうなってきておるわけでございます。それからまた発電所がこの設備転換するというような場合でも、いまはもう大型の火力発電所ですから、その火力発電所を何カ月間もぶっとめて、そして重油をたくボイラーに設備をかえるなどということはできない。そこで発電所の定期修理で、発電所をとめるその時期をねらってやらなければいかぬ。こういうのが実際の現場の実情ですから、そうなりますと、設備転換するといいましても相当の長期を要する。こういうことになりますし、転換費用もかかりまするし、石炭専焼の火力であったものをそういうふうにかえていけばコスト高になってくる。こういう現象へはね返ってくるということになるわけです。そこで私は今度の石炭対策答申は、もうなべて各企業がこれでやっていけるかどうか。それは企業の自主選択、こういう形になっておるけれども、そういう地域の特殊事情というものを十分考えて、そうしてこの地域ではいま炭鉱を全滅させてはいかぬ、こういうふうに考えられる特定地域の炭鉱については特別のまた別途の措置というようなことが考えられてしかるべきではないか。まあ自分の県のことだけ言って済みませんけれども、四つの山がある。そのうちの二つは明治鉱業の山である。そうすると、明治鉱業自体はもう全然採算がとれない状態ですから、明治鉱業は石炭企業をやめてしまう。しかし佐賀県にある二山は何とか残す。あるいは杵島炭鉱という炭鉱がありますけれども、そういう地域の特殊事情というものを考えれば、それに一般対策にプラスアルファの何らかの特別措置をしてでもそういう地域の石炭企業は少なくとも当分の間残すべきではないか、こういうふうに考えるのですが、そういう点についてのお考えを述べていただきたいと思います。
  58. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 八木委員お話しのとおり、いま物的な需要といたしましての石炭需要につきましては私どもはさほど心配はいたしていないのであります。むしろ本年度の出炭実績が四千六百万トンぐらいにとどまるであろうといった観点から見ますと、せっかく電力その他でございます需要、ことに鉄鋼業等原料炭需要からいきますと、ほしいとおっしゃっておる数字もわれわれのほうが出せないという状況にございまして、以前のように大きな生産量に対しまして政策需要をつけていかなければならないという実態はむしろだいぶ違った様相になっております。そこで問題は、それだけの実需があるのにどうして炭が出せないかという問題でございますが、これはまことに経済的な問題に帰するわけでございまして、本年度おそらく大手平均でトン当たり六百円ぐらいの赤字になろうかという想定をいたしておりますが、平均額で六百円も赤字であるということは、これは相当のいままでの現行政策における助成を加えての上での赤字でございますから、裸で計算しますともっと大きくなる。平均額で六百円もあるということは、企業によって山によっては千円に近いものもあるという状態です。そこで今回の答申は、いろいろな意味でそれらのコストの多くかかる状況というものに対しまして、あるいは安定補給金を交付する、あるいは再建交付金の交付によって金利を下げ、カットし、かつ資金繰りに困っておる状況のときに遠慮なく返済期が参るというのを十五年の割賦弁済に繰り延べすることによって資金繰りをつけてやろう。融資につきましても、合理化事業団の無利子融資で金利負担から免除さしてやろう。ここいらのところは、最終的にきまりませんとトン当たりどれくらいの助成額になるかさだかではございませんけれども、相当思い切ったトン当たり補給をやるわけでございます。やりましてもある企業、ある炭鉱にとりましてせっかくその地元に需要があるにもかかわらず、なかなか埋められないという実態が出てまいるわけでございます。これをもう一つ、電力側なり何なりからの立場から見て、もし設備の更改その他に大きな費用がかかるのだから、若干炭の値段が高くてもその地区からとっていただけるということでございますと、これはまた別問題でございますが、炭価問題も審議会の過程ではいろいろと検討いたしましたけれども、有力なる競争エネルギーがあるという観点からいって、値段を上げたならば需要そのものを喪失することにならざるを得ない、こういう観点で苦慮いたしておるわけでございます。  そこで具体問題といたしまして、御指摘のような佐賀県、あるいはその全山、採算面だけから考えればむずかしいかもしれないという予想がかりにあるといたしましたときに、経過的に何らか措置がとれないかということは、個別論といたしまして私ども今後ひとつできるだけのことは考えてみたいと思っておりますが、大筋はいま私が述べましたような筋合いからいたしまして、なかなか困難な問題であるということを御承知願いたいと思います。
  59. 八木昇

    ○八木(昇)委員 なお論争したいですが、時間がありませんので最後に一点だけ。これは局長でもけっこうです。  もうことしの六、七月ごろまでもてないという気息えんえんの山もあるわけです。新しい政策が発動されるまでもう息がもてないという山が相当あるだろう、こう思うのですが、それらについての対策というのを何かお考えになっておりましょうか。
  60. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 今回の政策は、再建につきまして、いま申しましたような相当思い切った助成を国としても乏しい財源の中から無理をしてでも出そうというのでございますが、反面、どうしても成り立たないものにつきましても、それの収束を当該地域に混乱を与えない形で円滑に処理をいたしたいということで閉山交付金その他の改善をはかっておるわけでございます。こういう点からいたしますと、かりに企業といたしましてある時点で石炭生産を停止する手続をせざるを得ないという判断をするものがございましても、新しい政策に乗って改善された閉山交付金制度なり何なりによってやめたいと思うのは、これは当然のことでございます。私どもはまたさようなことを考えております以上、新しい制度に乗せてやりたいという感じは、御指摘のとおりでございます。  そこで問題は、それまで待てないものがあるのではないかということでございます。これはおっしゃるとおりでございまして、どれくらいあるか、どんなところがどうかということは差し控えたいと思いますが、すでに昨年の春以降そういう状態にあるものは毎月めんどうを見てきておるという状況でございまして、金融機関に対しましても新しい政策の説明をすると同時に、その間つないでもらうための措置、これを経過措置と考えていますが、経過措置を新政策の中に組み込ませたいと思っております。たとえばその期間ある程度の追加融資をしたことによって、その追加融資分が銀行側の完全なる持ち出しになるということにならない仕組みというものをいま別途並行して検討いたしておる状況でございます。ある程度めどを持っておるということをお答えしたいと思います。
  61. 八木昇

    ○八木(昇)委員 終わります。
  62. 平岡忠次郎

  63. 中村重光

    中村(重)委員 通産大臣は、私の立場は答申を尊重しなければならない立場だから、こういうことできわめて耳ざわりのいい、響きのいい御答弁をしておられる。ところが、御承知のとおり植村さんの再編成構想、いわゆる管理会社案に対して、通産省、大蔵省は袋だたきにして、そしてその答申の場合でも労働者委員はもう猛烈にこれに反対をして答申というものが出されたのです。そしてまた通産大臣は明日の閣議決定の中でも、鉱区の調整、流通機構の合理化という形においてのいわゆる体制整備ということをお答えになったわけです。渡辺委員の質問に対しては、体制整備ということは石炭鉱業再建の重大なかぎだ、これはもう強力にやらなければならぬということをお答えになったわけです。私どもはあなたのその体制整備というようなこと、それは単に鉱区の調整とか流通機構の合理化といったような消極的な意味とは受け取っていない。やはり再編成をしなければならないんだ、そうした気がまえがあるというように実は感じ取っておったわけです。また過去三回にわたっての石炭政策に対する答申に基づいて政府が政策を推し進めてきた。そして国家資金を相当投入してきたが、失敗をしたのだ。だから今度また質的に変わらないような形で四千二百億というばく大な国家資金を投入をしまして、それによって石炭鉱業というものが私は再建されるとは思わない。あまりそればかり言うなと、こうおっしゃるのだけれども、私は、あなたもそういうような不安というものがあるのじゃないか、こう思うのです。したがって、根本さんの三社案なんてものはやはり熱意をもってこれを検討していくというかまえがあってしかるべきだというふうに考えます。それで、明日の閣議で決定しようとする鉱区の調整、流通機構の合理化、いままで三回の答申にもそのことが出されておって実行できなかったのですから、これからどういういわゆる法的措置をもってこれを強力に実行、実施させるというようにお考えになっていらっしゃいますか、その点ひとつお答えを願いたいと思います。
  64. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私のいまの考えは、法的措置つまり強制力を行使して統廃合の実現を期するということまで思い詰めておりません。また、そういうことをしなくても実効はあがり得るのではないか考えております。いま、答申にも示されておりまするように、体制部会というところで――労使並びに学識経験者で構成されるものと思います。まだ人選は伺っておりませんけれども、そこで十分論議を尽くされてまいりましたことは尊重してまいるつもりでございますが、私どものほうもその審議を促進させ、あるいはこれに勧告をするというようなことを通じまして十分実効をあげ得るのではないか考えておりまして、強制力を用いてというところまでは考えておりません。
  65. 中村重光

    中村(重)委員 大臣は、同僚委員の質問に先般の委員会で、三千五百万トンを押しつけるものじゃないのだ、それ以上の出炭があるならば掘ってもらってけっこうだとおっしゃった。ところが、いわゆる山ぐるみの閉山に対しては三千五百円を八千円に引き上げていわゆる特別交付金を支給される。そのことは、それ以上出炭してもいいと、こうおっしゃるけれども、現実にはそうした特別交付金を支給するということになってまいりますと、これはなまなかな閉山ということではなくて、いわゆる終閉山という形にいわゆる閉山が要求されてくる。それをどういう形で円滑に、いわゆるなだらかな閉山ということで推し進めていこうとお考えになっておられるか。
  66. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 当委員会の諸先生方も長くその関係に携わって、おられまして実情をよく御存じだと思いますが、私どもはあえて閉山を進めようなどとは毛頭考えておりませんけれども、万が一閉山せざるを得ない事態が出てまいりましたときの実態というものについては、これはもう中村委員も含めて皆さん非常に御苦心なすったと思うのでございます。実際問題といたしまして、一般閉山交付金制度で処理をいたそうとします場合に著しい超過債務があるという状態がございますと、今回一般閉山交付金制度は三千数百円のところまで改善したいと思っておりますが、それにいたしましても極端な場合は、関係をします従業員はもらえるべき退職金が三割とか四割しかもらえない、地元の商工業者も閉山交付金によりましては売り掛け金の一割とか二割しか取れないという実態が出てまいりまして、私も短い期間ではございますが諸先生方と相談しながらこの処理に苦労したことがございますけれども、なかなかそういう制度では処理し切れない、こういうことを考えまして、企業ぐるみで閉山いたします場合に、過去の累積債務というものについて一般閉山交付金制度ではどうしても処理ができない、その結果は従業員と地元の商工業者等に対してたいへんな迷惑をかけることになる、これを何とかしのぎたいというのが特別交付金制度の考え方でございます。山を閉山させるとかさせないということでなくて、閉山があります場合のこれら関係者に対する救済と申しますか、援護の手の伸べ方をどうしたらいいかということから考えた制度でございまして、決して規模に関する政策から考えておることではなくて、それら関係者に対する犠牲の度合いがあまり大きくならぬようにという、むしろそちらのほうの配慮から考えた制度でございます。これがなければ、私は地元の先生方と一緒に私どもも非常に困った状態に相なるのではないかと思うわけでございます。
  67. 中村重光

    中村(重)委員 時間がありませんから、いまのあなたの縮小再生産を決して望んでいるものではないというようなお答えに対しての議論はひとまずおかなければなりませんが、なだらかな閉山ということは言うべくしてなかなかできないというように考える。そうなってくると産炭地の荒廃という問題が起こってまいります。深刻な問題になってくるのですね。答申にも書いてあるとおり経済的、社会的な大問題だ。そのとおりだと思うのですよ。これをどうしようとお考えになっておられるのかということですね。大臣御承知のとおり産炭地振興事業団というものがあるのです。土地造成をやっているのですね。土地造成をやっておるけれども企業がなかなかやってこない。土地は遊閑地としてこれを遊ばしておるというような状態ですよ。これはもちろん全部とは言いません。だからして産炭地の荒廃を何とかして防止していこうとするならば、やはり企業誘致というものを考えいかなければならない。企業誘致をする場合は、いままでの経験からいたしまして、どうしても国の基幹産業というようなものをそこへ持ってきて、そうして関連産業を発展させていくという方向を考えいかなければならぬと思うのです。そして投資育成会社というのが御承知のとおりに東京、大阪、名古屋にありますように、こうした産炭地域とか後進地域においてこそ、そこへ行くところの企業の株を引き受けていくというような産炭地振興投資育成会社といったようなものを考えていく。そして土地造成の問題等々についても独立採算制というようなものをはずしていって、そして最もいい条件でその土地を活用させるとか、あるいは離職者に対するところの雇用の低賃金を期待していくわけですから、やはり雇用奨励金を考えていくとか、いろいろな措置を考えいかなければならぬと思う。地方自治体に対する財政措置の問題はもちろんでございますけれども、きょうは時間の関係から省略をいたしますが、そういった問題に対しては明日の閣議ではどのような措置を決定しようとお考えになっていらっしゃいますか。
  68. 大平正芳

    ○大平国務大臣 御指摘のように、産炭地振興の基本は、やはり先行投資によりましてまず基盤を整備するということ、これはいままで見ておりますと、九州地区におきましては相当進みましたけれども、北海道地区なんかはまだ比較的手簿だと私ども判断しております。いままでの実績から見てみますと、建材事業であるとか、あるいは繊維縫製事業であるとか、あるいは小規模の機械工業であるとかいうものに当面限られておりまして、御指摘の基幹工業が堂々と乗り込むという状況にまだなっておりません。それは御指摘のとおりでございます。ただ、いまの状況から判断いたしますと、都市におきましては、地価がべらぼうに高い、あるいは労働力が過度に不足しておるというような事情もございまして、最近ようやく産炭地に将来の足場を求めたいという希望者がだんだん出てきておることも事実でございますので、私どもといたしましては、振興事業団の事業の拡充、それからその融資条件、それから融資の保証の特例、そういった点を続けてまいりまして、誘致を促進してまいることとあわせて、周辺の市町村の財政に対する特別な措置もあわせて考えてまいる方向で、明日はその大綱について閣議にはかりたいと考えております。
  69. 中村重光

    中村(重)委員 それから、従来の石炭政策は、スクラップ・アンド・ビルド政策であった。先ほど中川局長のお答えによりますと、決して終閉山をこちらのほうから、政府のほうから促すものではないのだ、万が一閉山する場合のことを考えたんだ、こういうお答えだった。そういたしますと、従来のスクラップ・アンド・ビルド政策というものを変更しないのか、そのままの形で進めていくことになるのか。そうなってまいりますと、従来はスクラップ・アンド・ビルドというけれども、スクラップ・アンド・スクラップであった。いわゆる積極面であるところの鉱区の調整、流通機構の合理化、近代化といったようなこととか、あるいは新鉱開発というものには熱意を示さなかった。できるだけ閉山をすることを押えていこうとするならば、これからは従来熱意のなかった点に対してはどう対処していこうとお考えになりますか。これは大臣から……。
  70. 大平正芳

    ○大平国務大臣 今後いまの山の状況からいたしまして、有利な開発地点がそんなに多いというようには私ども見ておりませんけれども、しかしながら、そういったものがございます場合の新鉱開発というような点につきましては、合理化事業団の融資を通じまして、その道をつけていかなければならぬと考えます。
  71. 中村重光

    中村(重)委員 再建交付金についてお尋ねをいたしますが、今度は再建交付金を受ける企業に対して、原料炭三百五十円、一般炭百五十円、これを受けない企業に対しては五百円、一般炭が三百円、こういう程度支給しようという答申になっている。従来は大手の中でも、この再建交付金の支給を受けない企業があった。今度は全部この対象になるということがいわれておるわけですが、そのとおりであるのかどうか。そこで再建交付金を受ける企業というのは、これは大手だといわれておる。受けない企業、これが中小だというようにいわれておる。そうなってまいりますと、異積赤字に対しては、さきに御承知のとおり、一千億円の肩がわりをやったわけですね。これはトン当たりコストダウンは四百円といわれておる。さらにまた、一千億ということになってまいりますと、これは八百円ということになってまいりましょう。してみますと、受ける企業が三百五十円、受けない企業が五百円ということは、私はきわめて不公平であり不合理だというように考える。したがって、中小にもっと厚く、この差は百五十円というのではなくて、三百円なり五百円なりという形の差、いわゆるこの五百円を引き上げていくということが必要じゃないかということに対して、どのような見解を持っておられるかという点についてお答えを願いたいということ。  それから労働大臣にお尋ねをいたしますが、御承知のとおりに炭鉱労働者賃金というのは非常に安いんですね。高温多湿の悪い労働環境の中に働いておる。鉄鋼関係労働者は六万七千円に対して炭鉱労働者は四万八千円。そうして非常に労働強化です。大臣は山においでになったこともあろうと思うのでございますけれども、私はときたま参りますが、もう実に悪い環境の中に働いている労働者に対して、よくしんぼうしておられるものだというようにいつも考えておるのです。しかも人はどんどん減っていくのに災害の発生は非常に多くなっているのです。四十二年度には死亡事故が二百四十八人に対して四十三年度は二百九十人、このことを見ますと、いわゆる生産優先、保安軽視、人命軽視というようなことがもう現実に行なわれておるということを示しておると私は思う。今回の答申に対して労働者不在答申であるとして反発して、炭労傘下の三万四千名の労働者が一斉に退職願いを出した。これは単なるゼスチュアだとは私は思わない。これらの点に対して労働大臣はどうお考えになるかということと、通産省に対して、保安関係が生産と一緒に所管事項になっているところに問題があると思う。ほんとうに人命尊重、保安を重視していくというならば、私は保安行政というものは労働省に移管すべきだと考える。労働大臣は積極的に労働省に保安行政の移管を要求する決意をお持ちでないかどうか、通産大臣と労働大臣からいまの質問に対してそれぞれお答えを願いたい。また通産大臣は、保安行政というものを労働省に移管するというふうな積極的な態度をおとりになる考え方はないかどうか。
  72. 大平正芳

    ○大平国務大臣 第一の安定補給金の配分の問題につきましては、御指摘のように自由民主党はじめ各政党から、答申案に示されておる考え方に対しまして必ずしも実質的には公平をはかっていないじゃないか、是正の要望があることは事実でございます。私どももっともと思いましていま是正の方法を講じておるのでございますが、やはりただ安定補給金のワク内で調整をいたしますと原料炭等に影響が及びますので、別な道がないかどうかということについていま財政当局と折衝中で、きょうじゅうには何か結論を出したいとせっかく努力いたしております。  それから保安を労働省のほうに移す気持ちはないかということでございますが、鉱山保安の問題は、私どもといたしましては生産と不可分の問題でございますので、一体として引き続き最善を尽くさせていただきたいと考えております。
  73. 原健三郎

    ○原国務大臣 中村委員の御質問は二つございまして、最初は鉱山の保安についてどういう措置をやっておるか、次が保安行政についてでございますが、鉱山の災害については御存じのように把握につとめて、防止につとめております。これは鉱山保安法第五十四条に基づく勧告は私のほうが行なっておりまして、昨年の十月にも北炭の平和鉱などの災害の実情にかんがみまして、労働基準局長から通産省のほうへ勧告を出しております。今後ともそういう災害防止につとめたいと思っております。  それから第二の行政ですが、労働者の生命、身体を守り、労働災害防止のための行政は、どちらかというと鉱山労働者を含めて労働省が一元的に所管するのが本来の筋ではあろうと思っております。しかし、鉱山保安行政の所管については、これは長い多年の経緯がございまして、これが今日まで通産省のほうでこれをやっていただいて、私のほうは、ときにおいて勧告権を発動いたしてやっておるという実情でございます。お説のことはよくわかりますので、なお通産大臣とよく相談していきたいと思っております。
  74. 平岡忠次郎

    平岡委員長 紺谷治嘉君。
  75. 細谷治嘉

    ○細谷委員 時間がありませんので、簡単に二点ばかり質問いたします。  今度の答申を見ますと、私は過去三べん程度ありました答申と比べてなっちゃおらぬ、こういうふうに言っていいんじゃないかと思うんです。よくこの答申企業対策であって石炭産業対策でないという批判も行なわれております。特にこの答申案をいただきまして修正表なんというのが出ております。私は正誤表かと思いましたら、これは修正表なんです。修正表にはいままでつけたことのないような文章がついているんです。これがこの答申のずさんさを如実に証明しているんじゃないかと私は思うんでありますが、端的に通産大臣と労働大臣にそれぞれのサイドからこの答申をどう評価しているのか、ひとつお聞かせいただきたい。
  76. 大平正芳

    ○大平国務大臣 石炭産業が置かれましたきびしい状況のもとにおきまして、また、政府の限られた財源の範囲内におきましてとり得る石炭政策の方向、その構造として答申に盛られた考え方に対しましては、これを十分評価いたしておりまするし、これを尊重してまいるのが私の立場であろうと考えております。
  77. 原健三郎

    ○原国務大臣 今回の答申の根本理念といたしましては、私どもの労働省の立場から申しますと、石炭鉱業の再建は、石炭鉱業従業員の労働条件労働環境等の改善と密接に結びついていなければならぬと思っております。こういうことを基本として労使一体の協力関係確保されてこそ石炭鉱業の再建が軌道に乗るものである、こういう答申をされておる点については、私どもは全然敬意を表して同感であります。  それから、労使が一体となって石炭鉱業の再建に努力することを期待していますが、労働省といたしましては、労働条件、労働福祉の向上等を促進し、石炭鉱業の雇用の安定をはかっていきたいと思っております。また一方、再建の過程でやむを得ず発生する離職者については、存続する炭鉱への再就職を円滑に進めていく、また、従来の経験を十分生かして援護対策を推進し、さらに、雇用、失業対策の停滞的であり、また、今後さらに悪化されるような産炭地域については産炭地域振興対策等も考えていきたい等々、私どもの線に沿って解決の方向は示されておる、こう思っております。
  78. 細谷治嘉

    ○細谷委員 通産大臣は、この内容には満足のようないまの態度でありますし、これを尊重していく、こういうことで終始しておるんですけれども、私は尊重しなければならぬ立場だ、こうおっしゃいますけれども、一国の通産大臣です。しかも、最後石炭対策だといわれておるこの答申というのは、これは私ばかりではなく、どなたもこの問題についてはやはり批判しておる。最大公約数だったというのでありますけれども、最大公約数であるところにいままでの経緯から問題があろうと思うのでありまして、私は、大臣のいまの答弁にはきわめて不満であります。  そこで、大臣に一言お尋ねしたいのでありますが、けさの新聞に、ある石炭研究者の投書が出ております。その石炭研究者の投書によりますと、石油資源というのはこれからは限界があるんだ、すでに諸外国では、そういう石油資源の枯渇という近い将来のこともにらんで、やがて一番資源的な豊富な石炭の液化の問題とか、あるいは高度の活用の問題とか、こういう問題に真剣に取り組まなければいかぬ時期だ、こういう投書も出ておりました。これはたいへんな資源――世界的にいって石油と比べてもはるかに豊富な石炭資源というのはあるわけでありますから、今後の石炭産業というのは、いまは一見没落しておるけれども将来性があるんだ、こういうふうにその投書者はいっております。こういう点について、大臣はどうお思いなんですか、一言お聞きしておきたい。
  79. 大平正芳

    ○大平国務大臣 わが国の国産の固有の大切なエネルギー資源でございまするし、わが国の石油率の上から考えまして重要な資源であり、それらにまつわる産業は重要な産業であるということは十分承知いたしております。  それから、石油が将来どうなっていくかというようなことは、御指摘のとおり将来非常に問題だろうと思います。わが国も鋭意内外の石油資源の開発などにも手を染めておりますけれども、それがどこまで成功いたしまするか全く見当がつかない状況でありまして、石油資源だけに安易に依存するというようなことも許されないことであろうと思います。  それからさらに、公害問題から考えまして、今後このエネルギー資源の活用状況をどのように規制してまいらなければならぬか。もちろん鉱害防止技術もだんだん進んでいくでございましょうけれども、将来の展望もまだはっきりつかめていない実情であることは御指摘のとおりでございます。そこで、そういう意味で依然として石炭エネルギー、そして石炭産業が重要なものである、いま斜陽のうき目をかこっておりまするけれども、これを見捨ててはならないというお考えに対しましては全面的に賛成であります。
  80. 細谷治嘉

    ○細谷委員 特に石炭の山というのは、一度つぶしますとこの資源というのは永久に埋もれて、再び活用できないという、こういう点に思いをいたして対策を練らなければならぬと思う。大臣もそういう基本的なことについては私の意見に賛成なんでありますから、そういう観点はやはり基本として忘れないで対処していくべきではないか、こう私は思います。  最後に一点お尋ねしたいのであります。  いま新聞等で全国三社案とかいうものが出ておるわけでありますが、先ほどの八木委員の質問に対して合理化体制部会、こういうもので検討をしていくんだ。鉱区の統合、調整、これはいつの答申にも出てきたことでありますけれども、ここ十年ばかりやられたためしがない。でありますから、今度は答申にも合理化体制部会をつくって、そういうものを検討するんだ、こういうことでありますし、また大臣はそんなことは自民党のほうから聞いておらぬ、こういうことであります。しかし、国会でこれから審議するわけだから、国会で議論された中のいいものは取り入れてもけっこうである、こういうふうに答えておるわけですけれども、私どもは四千数百億という非常に貴重な原資を使って石炭対策を立てていく。しかもこれは文字どおり最後、もうこれが四回目でございますけれども、文字どおり五回目はないという時期でありますから、先ほどあすの閣議できめるんだというんでありますし、十四日には予算の政府案がきまるんだという時間的な問題もあろうかと思うのでありますけれども、国会は長いのであります。五月いっぱいくらいあるわけでありますから、これはやはり最後の案として国会の十分な審議によってやらなければならぬ。先ほどあすの閣議で決定する、骨組だけを閣議決定するんだとおっしゃいますけれども、いままでの政府の態度を聞いておりますと、私どものどうしても賛同することはできないような内容じゃないか。もっとやはり国会で十分に練り上げて、そしてこれならばひとつ何とかこの斜陽の極に達しておる石炭産業を救えるのじゃないか、そういうものをつくり上げなければならぬのじゃないか、こう思うのであります。どうも大臣その辺には答申にこだわって、尊重という二字にがんじがらめになっておるような感じを受けるのでありますけれども、大臣のその辺の態度というものはもっと積極的であってしかるべきじゃないかこう私は思うのでありますが、いかがでありますか。
  81. 大平正芳

    ○大平国務大臣 閣議決定は先ほど申しましたように大綱にとどめるわけです。またそれがいいと考えておるのです。それでこれから実際大事なのは、石炭行政の実際が大事だと思うのでございます。それらにつきましては国会の御論議はもとよりでございます。各方面の建設的な御意見を十分摂取しながら肉づけをしていかなければならぬと考えております。従来体制論議をしながら一向実効があがらぬじゃないかという御批判でございました。従来のことは私よく承知いたしませんけれども、御指摘のように、できればこの案を最終のものにして、実のあるものにしたいというのが私どもの念願である以上は、労使とも、そして金融機関も、それから政府当局はもとよりでございますけれども、合理性の追求という点について怠慢であっては申しわけないとと思うのでございます。とりわけこれは石炭企業対策に堕してはいけない、あくまでも石炭政策としてのものでございまするから、責任者といたしまして、私がおあずかりいたしておりまする通産省一丸となって努力をしてまいっていく決意でございますので、今後の推移をよく御監視を賜わりまして、私どもがたじろぐことがございますれば、十分御注意をちょうだいいたしたいと思います。
  82. 平岡忠次郎

  83. 岡田利春

    岡田(利)委員 あす閣議決定をなされると聞いておりますので、緊急避難的に二点だけお尋ねしておきたいと思います。  いずれ深めて議論したいと思いますが、まず体制の問題ですけれども、自由民主党政調会長根本龍太郎氏は政府に対して申し入れを行なっているわけです。これは各党にも申し入れを行なった趣旨をそれぞれ通知されているわけです。この内容は、もちろん三社ということばは使っておりませんが、鉱区の統合、流通機構の改善、また再編成について十分政府は措置を講ずべきである。公式に政調会長は政府にこういう申し入れをしてあるはずです。これはわれわれ各党にすでに公式の文書で通知が来ているわけであります。先ほどの大臣の答弁を聞きますと、何かその辺がぼやけているのですが、これを受けた政府は一体どう考えているのか、与党から正式に文書で申し入れられたこの件をどう考えられているのかというのが第一点であります。それと同時に、体制問題を鉱業審議会体制部会でやるというのは、体制部会というのは最終的に――初めは考えていなかったものを体制問題が議論されて、いわば妥協の産物として体制部会を設けよう、こういうような形で答申された経過は大臣も御承知のとおりです。私は少なくとも石炭産業体制を議論するのに、このような部会で議論して結論を出すことは、これはおそらくできないだろう、このように私には考えられる。したがって、むしろ閣議決定する場合に、審議会体制部会でこれだけ各党も問題にしている体制問題を審議会答申の部会でやるなんというけちな気持ちではなくして、この点はやはりそういう趣旨に基づいて適当な機関、あるいは適当な方法で政府は誠意をもって体制問題と取り組む、こういう姿勢が明示をされ、閣議決定をされるのが私はきわめて当然だと思う。こういう点について大臣の見解を承りたいと思います。
  84. 大平正芳

    ○大平国務大臣 御指摘のように、自由民主党から「石炭鉱業審議会答申による石炭対策の実施について」というお申し入れを受けております。その中で第二として「鉱区の再編、調整及び流通の合理化等の施策を重視し、地域の実情に応じて、企業の共同行為、統合等を推進すること。」とうたわれておりますので、私どもも全然同感でございます。明日の閣議では、こういう表現で体制の整備につきましては閣議決定をお願いしたいと思っております。  それから体制部会を設けるということの評価でございますけれども、これは審議会経過最後の段階で、御指摘のように、妥協の産物として出たじゃないか、そういうなまぬるいことではだめじゃないかという御指摘でございますが、あれは私は一つの前進だと思います。合理化体制部会というのを設置しよう、そこで本格的に審議会も、労使並びに学識経験者の頭脳を動員して、ひとつ体制に取り組もうという姿勢ができたことは歓迎すべきことじゃないかと思います。ただ、それができたからよしとして、政府のほうが拱手傍観するというようなことがあってはいけないと思っておるわけでございまして、政府は絶えず最大限の緊張を持ってこれを注目し、あるいは必要な勧告をいたしまして、推進してまいる決意でございますので、これは先ほども御答弁申し上げましたように、私どもがなまけておるようでございましたら、ひとつどしどし御鞭撻を賜わりたいと思います。
  85. 岡田利春

    岡田(利)委員 答申をめぐる各界の世論、政治情勢、いわば焦点は体制問題、産業政策にかかってきているわけです。しかも、すでに与党、各党間では、この問題が議論されている。政府にも一応申し入れがあった。そうすると、もはや一答申の、いわば審議会体制部会などということにこだわる必要はないではないか。もちろん体制問題はそういう形で議論するのだということで、閣議決定はよろしいのではないか、私はそう思うわけです。この点は特に検討されて、明日の閣議に臨んでいただきたい。  なお、委員長に、いずれ本委員会では、体制委員会をつくって徹底的にひとつ議論されることを私は提案いたしておきたいと思います。  第二点の問題は、これは先ほど、一千億の肩がわりはじめ、安定補給金の拡大について述べられているのであります。特に、問題は、先ほど市中銀行が金を貸すかどうかという議論がありましたけれども、問題は政府の開銀が一体金を貸すのかどうか、あるいはまた答申に書いてあるように、政府の三銀行――中小企業の場合ですが、三機関が金を貸すのかどうか。この点で、予算上財投の関係がありますから、明確な決意がきまらないで、やはり具体的な予算措置がとれないで市中銀行に協力しなさいと言っても、これは不可能なことを言うだけです。この点については、政府機関である開銀及び中小企業の三機関の金融措置については、閣議決定の中に入るのかどうか。入るとすれば、当然それ相当の財投の予算確保という問題は、大臣として決意を持って当たるべきだ、こう思うのですが、この点についての所見を承っておきます。
  86. 大平正芳

    ○大平国務大臣 岡田委員も御承知のように、石炭に対する長期資金の供給と政府資金の供給というのは、これから石炭鉱業合理化事業団に重心を移していこうと思うのです。その利子効果を再建に吸収していくという政策をとりたいと思いますので、従来開銀に依存しておりましたけれども、こちらに切りかえていこう。ただし、開銀をそれじゃ全然無縁のものにしようというほど、こちらも無欲でないわけでございまして、開銀に、いままでのような金融ではございませんけれども、補完的にお願いする手はずをしておりまして、あわせて長期金融にも粗漏のないようにしていきたいと思います。したがいまして、閣議決定には、再建に必要な長期金融の確保をはかるため、石炭鉱業合理化事業団による無利子貸し付け制度の大幅な拡大をはかる等、所要の金融措置を講ずるというようなことにしたらいかがかといま考えております。
  87. 岡田利春

    岡田(利)委員 時間がありませんからこれで終わりますが、私なりに検討してみますと、毎年百億程度の事業団の無利子金融だけでは炭鉱の近代化及び答申に基づく技術革新というものはできないわけです。これは自明の理なわけです。したがって、この資金がどの程度確保されるか、これに伴って市中金融機関に対して将来協力の要請をする、政府がまずこの点を明確にしないと問題は解明されないと私は思うわけです。いずれにしても、予算の時期でありますから、財投の関係でありますから、当然これはある程度のワクという問題が出てくるわけですから、この点特に大臣の決意を促して私の質問を終わります。
  88. 平岡忠次郎

    平岡委員長 田畑金光君。
  89. 田畑金光

    ○田畑委員 まず労働大臣にお尋ねいたしますが、今度の答申によれば、労働力の確保ということが大きな柱になっているわけです。労働力確保について、労働省の立場から、具体的に今後何を予算上の措置等においてやる準備があるのか、これをまず明らかにしていただきたい。
  90. 原健三郎

    ○原国務大臣 御説ごもっともでございまして、四十四年度の予算について、明日行なわれる予定の石炭対策についての閣議決定をまちまして、また、その閣議の決定の線にも盛り込みまして、この際答申の趣旨に沿って、第一は労働環境の改善をやりたい、あるいは閉山炭鉱離職者の他の炭鉱への再就職に対して援護措置を充実したい、このための経費などを盛り込みたい、こう思っております。そういう点について、これからも予算折衝で大いに御期待に沿うように尽力いたしたい、こう思っております。
  91. 田畑金光

    ○田畑委員 いまの答弁の第二点にありましたところの、要すれば、閉山炭鉱離職者について、維持炭鉱なり残存炭鉱に労働力の配置を求めるという点は同感でありますが、そのために具体的に何をやろうとされるのか、これを承ります。
  92. 原健三郎

    ○原国務大臣 以前は、他の産業に行った場合の移住資金などを出しておりましたが、今後は、他の産業でない同じ鉱山へ行く場合にもそういう資金を出すようにいたしたい、こう思っております。
  93. 田畑金光

    ○田畑委員 いまの法律の中でも、大臣の指摘された移住資金というのは炭鉱相互間において出るわけです。問題は、そのほか具体的にどんな措置をなされようとするのか。たとえば雇用奨励金等等というようなものがありますが、そういうようなものも、今度は閉山炭鉱から残存炭鉱に移る場合には、予算措置をなす用意があるのかどうか、それを承っておるわけです。
  94. 原健三郎

    ○原国務大臣 ごもっともでございまして、いままでは他の産業へ行く場合には資金の格差がございましたが、今度はそういう格差はなくしていきたい、こう思っております。
  95. 田畑金光

    ○田畑委員 そうしますと、この離職者臨時措置法の二割増し、いままでは炭鉱離職者が他の産業に行くような場合は、いろいろな援護措置がなされておりますが、今度の法律改正では、あるいは予算措置では、炭鉱離職者が同じく炭鉱に就職するような場合についても、同様に取り扱いをされるものだといこのように理解してよろしいわけですね。
  96. 原健三郎

    ○原国務大臣 そういうことでございます。
  97. 田畑金光

    ○田畑委員 大臣の御答弁で私は了承しますが、さらに、今度の答申を読みますと、企業別で労使協議制というものを進めておるわけです。しかし、やはり私は産業政策として進めていくためには、企業段階の労使協議だけでなく、産業段階においても労使協議制というものがもっと強化されてしかるべきではないか産業民主主義の立場から見ましても、あるいは経営の民主化という観点から見ましても、産業段階における労使協議制、こういうものがもっと法的にも強化されてしかるべきではないか、こういうことを考えておりますが、この点について大臣の見解を承ります。
  98. 原健三郎

    ○原国務大臣 御趣旨には全然同感でございまして、今度の答申にもそういうことが盛られております。企業だけでなく産業全体のそういう労使関係を進めていくことには大賛成でございます。
  99. 田畑金光

    ○田畑委員 大賛成であるということは、私もたいへんけっこうだと思うのです。答申にも出ておりますから、ひとつ大いにその方向でやってもらいたいと思うのですが、具体的にどのような指導なり方法で実現されるかということを実は承っておるわけです。西独の例を引くのはやめますけれども、もっと、やっぱりこのような答申が出たからには、それを裏づける具体的な措置が必要であると思いますが、どんなことをなさるつもりかそれを承っておるわけです。
  100. 原健三郎

    ○原国務大臣 お説ごもっともでありまして、私どもといたしましては労使でまずそういう話し合いを進めていただき、労働省も中に立ってあっせんなり相談なり等々して、だんだんそういう方向に歯車を回していきたい、こう思っております。
  101. 田畑金光

    ○田畑委員 ひとつ円滑に歯車が回るように労働大臣のほうとしても特段の御努力を願いたいと思います。  それから通産大臣にお尋ねいたしますが、先ほど大臣の答弁の中では、与党からこういうような申し入れがあったはずだがという質問に対して、いやそんなことは聞いていないというお話でしたが、いまの岡田委員の御質問に対しては、そのような申し出があった、これについては明日の閣議の決定の中に、たとえば鉱区の再編、調整及び流通の合理化の施策を充実し、地域の実情に応じて企業の共同行為、統合等を推進すること、このまま盛りたいというお話でありましたが、閣議決定で盛られたとすればこれは権威ある今後の政府石炭産業政策の重要な柱になると考えますが、閣議決定の権威にかけて企業の共同行為、統合等を推進する今後の具体的な施策はどういう方向に求められるのか、この実現をはかられようとするのか、その点をひとつもっと明確に御説明をいただきたいと思います。
  102. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたように、審議会体制部会がつくられます。その中でそういう方向に従って検討がなされまして体制整備が促進されると思いますが、ただ、それを手をこまねいて見ておるだけではなくて、必要に応じまして政府がその実施を勧告し、その実行を確保していくという機宜の行政措置を講じていきたいと考えております。
  103. 田畑金光

    ○田畑委員 そうしますと、体制部会において政府から提案をされて今後の企業のあり方を掘り下げて検討してもらう。それは具体的にある時限を切ってこの問題についての答申と申しますか審議会からの勧告を期待されようとするのか、そのあたりは一体どうなんですか。
  104. 大平正芳

    ○大平国務大臣 体制部会が設けられるということがきまっただけでありまして、まだ人選もきまってないようでございますが、この体制部会の陣容が整いまして、その運営につきましてとくと御相談してみたいと思います。
  105. 田畑金光

    ○田畑委員 運営について相談するといっても、これからそれができてそうしてそれに政府が、言うならばこういう問題についてひとつ検討してみてくれ、これについてはいつごろまでひとつ基準をつけてくれぬか、このように相談するのかどうか、このことをお尋ねするわけですが、問題が非常に重要な問題であるだけに、また論議もいろいろ発展しますと相当な時間もかかると思うのです。ところが今度の答申の大きな柱としては、体制の整備ということで鉱区の再編あるいは調整その他流通一元化、統合化の問題などについてそう時間をおいては、今度の答申の一番大事な体制の整備というものがたな上げになる心配はありませんか。もっと高率的にやることが、当面鉱区の再編、調整について必要なんじゃないですか、この点どうですか。
  106. 大平正芳

    ○大平国務大臣 この運営につきましては、いま田畑委員の御注意になりました点も十分頭に入れて考えていくつもりです。
  107. 田畑金光

    ○田畑委員 どうも答弁がぴんとこないのですね、どうも通産大臣らしい答弁になってよくのみ込めないのですが、鉱区の調整あるいは統合、この問題については強力な勧告権を発動するのですかしないのですか。また鉱区の統合、調整について強力な行政指導というものをなさるのかどうか。あるいはまた鉱区の調整、統合について、今後行政指導なりにあたって大局に立って協力できぬというような場合には、この援助施策について手かげんを加えるようなことで間接的に統合調整を進めていくということになるのかどうか、その辺はどうですか。
  108. 大平正芳

    ○大平国務大臣 閣議でこの体制の整備についての基本の方針をおきめいただくわけでございまして、これを受けて審議会体制部会が設けられてその運営のやり方がきまりまして、この方針に従いまして仰せの問題が円滑に進んでいくことを期待します。私ども、勧告はなくてもそれがうまくいくことが本来望ましいことでございますけれども、しかし、いま重要な問題でございますから必要に応じて政府が進んで勧告をしてその実行を確保することは十分考えておかなければならぬと考えておるわけでございまして、そういう実績を見ながら緩急よろしきを得て運営してまいりたいと思います。実効があがるようにしていきたいと思います。
  109. 田畑金光

    ○田畑委員 いまの大臣の答弁は私頭に入れておきますので、今後ほんとうに答弁のとおりやるのかやらぬのか見ていきたいと思いますが、同時に私は、鉱区の統廃合に伴って相当資金が必要だと思います。金がかかると思います。合理化事業団の資金というものが、融資というものがこれから炭鉱金融の大きな比重を占めますが、やはり私は鉱区の再編に伴う所要資金等についても、合理化事業団融資の対象の中で考慮されてしかるべきだと、このように判断いたしますが、この点はどうでしょうか。
  110. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 御意見の点は私どもも今後の問題として積極的に検討してみたいとは思います。しかし事柄の筋から申しますと、鉱区の調整でございますならば、譲り渡すほうは帳簿に記載しているだけの問題でございます。譲り受けるほうに金繰り上の問題が要るということでございますから、譲り渡すほうの都合からいたしますならば、これは相当長い期間の年賦決済等で済ましていただいてかまわない性質のものではなかろうか。特にそれを融資の制度でみるほどの実態があるかどうか。いままでの例によりましても、大体話し合いで長いタームの支払い条件で話が済んでおるということが多いわけでございます。譲り渡すほうが、いずれの場合でもいまは資金繰り必ずしも十分じゃありませんから、譲り渡す以上すぐキャッシュでほしいということが出てきました場合に、いまおっしゃったような問題が出てくると思いますが、その辺のところはひとつ検討問題として考えてみたいと思います。
  111. 田畑金光

    ○田畑委員 これはやはり私は、今後炭鉱がやっていけるものは積極的にやらしていこうという立場からこの問題も処理さるべきだと思います。いままではこうであったがということでは話にならぬと思うので、やはり鉱区の再編、統合ということが体制整備の大きな問題とすれば、体制整備に伴う予算措置、金融措置というものが当然必要になってくるし、しかもいま、先ほど来大臣の答弁、局長の答弁にありますように、炭鉱金融というものが合理化事業団中心ということになってくれば、この四千二百億のワクの運用ということになってきますので、いまの点は十分ひとつ御検討をいただいて、そのような方向に善処されることを希望したいと思います。  それから与党の申し入れの第三点といたしまして「安定補給金の配分などについては、中小炭鉱の立場をも十分考慮しつつ、施策の公平、均衡に遺憾なからしめること。」この点についても先ほど大臣からお答えがございまして、政策の均衡を保つという原則に立ってせっかく検討しておるということでありまするが、今度の答申の中で、政策の均衡を失しておるという点はやはりこの問題じゃないかと思います。と申しますことは、大臣すでに御承知のように、昨年一千億の第一次肩がわりをやっておるわけです。主として大手炭鉱です。この政策に対する均衡として中小には安定補給金措置というものがとられておるわけですね。ところがこのたびの答申の中では安定補給金は中小、大手を問わず一率になっておる。しかも第二次の再建交付金が出る、こういうことになってまいりますと、やはり中小と大手との政策の不均衡という面は安定補給金の問題で端的に出ているわけですから、この点はやはり政策の均衡という点に立って処理されることが賢明だと思うし、また当然だと考えておりまするが、この点については、もうあすおそらく石炭予算の内示があると聞いております。十分予算編成の中において考慮されていると思いますが、もう一度ひとつ大臣の見解を承っておきます。
  112. 大平正芳

    ○大平国務大臣 きょうじゅうに財政当局と、今晩おそくなりましても、話を詰めまして、あすの閣議決定までにはきめたい、そういう方向できめたいと考えております。
  113. 田畑金光

    ○田畑委員 時間が参りましたので、まだいろいろ予算編成の内容について実はお尋ねしたいと思いましたが……。  いよいよ最終的な予算が間近にきまるわけです。今度の答申に基づく新しい石炭政策が具体化するのはこの四十四年度の石炭予算ということになるわけでありますが、その予算で真に答申を忠実に守ったかどうか、こういうことは判断されるわけであります。この四十四年度の予算編成にあたりましては、十分ひとついままでの施策において前向きの、予算措置等についてはあくまでもこれを確保する、こういう立場に立って善処願いたいと思うし、また、申すまでもなく今度の答申に盛られた大きな柱については抜かることなくこれを善処されんことを強く要望したいと思います。石炭予算についても、これは最終的には各種特別会計の予算との関連でありますが、明日内示されて、十四日には閣議決定する、こういうことになるわけですか。この予算の編成についての大臣の考え方をひとつ承って、あわせて最終決定についていま質問した点についてお答えをいただきたい。
  114. 大平正芳

    ○大平国務大臣 明日閣議決定をお願いしまして、直ちに内示を受けて最終的に調整をいたしまして、十四日に総予算とともに御決定願うつもりです。
  115. 田畑金光

    ○田畑委員 終ります。
  116. 平岡忠次郎

    平岡委員長 労働大臣、お引き取りいただいてけっこうでございます。大橋君。
  117. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 まず、通産大臣とそれから労働省関係の安定局長さんにお尋ねしますが、今度の答申内容がとにかく金融救済と企業救済であって、石炭産業それ自体の再建案ではない、このようなきびしい批判の声が強いわけですが、私も炭鉱再建の骨子となるものは、何といいましてもお金の問題だ、金融措置、これは当然のことでありますが、それに並んで労務確保労務対策ですね。これと一緒保安の問題がからむわけでございますが、要するに労務確保の問題、そして金融問題、そしてさらに忘れてならぬことは体制の整備であろうと思います。先ほど体制整備の問題で植村審議会の会長さんにお尋ねしましたところ、いわゆる三社案の問題ですが、これに対してどうお考えですかと言ったら三社案については決して反対ではない、ただし業界の空気それ自体がまだそこまでいっていないようであるということ。またこれは命令的にやられる問題ではないというようなお話があったようであります。私は今度の石炭再建の最も重要な位置を占めるのはこの体制整備ではないか、こう考えるわけです。先ほども同僚委員岡田委員から石特委員会の中にもこの体制整備の小委員会をつくってはどうか、つくるべきであるという意見が出ておりましたが、これに対してまず通産大臣のほうから答えていただきたいと思います。
  118. 大平正芳

    ○大平国務大臣 それは石炭特別委員会の問題であると承知いたします。
  119. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 もちろん石特委員会の問題であります。が、先ほど石炭鉱業審議会の中で合理化体制部会というものがつくられるということが答申内容に盛り込まれている、しかしながらまだ具体的には何にもないというのでしょう。ところが、今度のこの体制整備はいまから二年も三年も先にやろうといってもとてもなされる問題ではないと思う。体制整備をやるからにはやはりお金が必要であります。今回肩がわりで一千億円等の再建交付金が出るようでございますが、あれやこれやでまたたく間に四千二百億の金がなくなるのではないか。そういうことを思うとき、お金があるうちに体制整備を完全にいたさなければならない、私はそのように思うわけです。したがって、この体制整備はタイミングをはずしてはならぬ、非常に重要な時期だと思うわけです。したがって、特別委員会で体制整備小委員会をつくる方向は望ましいとか望ましくないとか、まずその意思を表明してもらうこと、これが一つ。  それと実際に先ほど植村会長が、命令するわけにいかぬけれども反対する内容ではない、こう言っていましたが、通産大臣はこの点についてどう考えているかという問題です。
  120. 大平正芳

    ○大平国務大臣 答申を受けたままにいまの状態はなっているわけでありまして、明日初めて政府がこれに対して意思決定をする段階でございます。したがいまして、いまお申し出の体制部会の設置の問題もあす政府で決意をするわけでございますから、それを跳躍台にいたしまして、仰せのようにタイミングが大事でございますから、取り急いで陣容を固めて仕事にかかるようにいたしたいと思います。  それから第二点といたしまして、体制整備についてのおまえの意見はどうだということでございますが、これはたびたび申し上げておりますように、三社案とか何案とかいうような固まった考え方をいま私はとっていないということを申し上げたのでございます。具体に即して合理性を追求して、再建に役立つように鉱区の再編、調整、流通の合理化等は鋭意進めてまいらなければならぬと考えておるわけでございます。特定の構想に拘泥いたしておるわけではありません。
  121. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 先ほども申し上げたわけですが、植村会長さんも反対ではない、しかしながらまだその機運になっていないことと、それから命令的にこれを指示する内容ではないというお答えでした。私はいまも言いますように、体制整備が最優先事項ではないか、こう考えるだけに、くどいようですけれどもお尋ねしているわけです。むしろそういう機運をつくり、命令的ではなくともそのような方向に説得していく立場にあるのが通産大臣の立場ではないか、私はこのように考えるわけです。むしろこうあるべきではないかということを説得していく立場にあるのではないかというわけです。その意気込みはどうなのですか、ありますか。
  122. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほど八木委員の御質問にも申し上げましたように、これは私どもが置かれたいろいろな条件があるわけでございます。そういう特定の体制整備案というようなものが実行に移された場合に一体どれだけお金を食うかということがはっきりしないと、石特のほうで受けとめて消化ができるのかできないのか、私に与えられたお金石炭特別会計でのお金でございますから、それをどのように有効に使うかということが仕事でございまして、それからはみ出るようなことになりますとなかなかむずかしいのではないか考えておるわけでございますから、そういう勇気があるかどうかいま卒然とお尋ねを受けましても、まだお答え申し上げるだけの自信が実はありません。
  123. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 私は今回の答申が従来の第一次、第二次、第三次の失敗の答申と何ら変わるところがないといわれておるのはこの体制整備の姿が具体化されていない、率直にいってここにあるのじゃないか、こう思うわけであります。これに対しては本気になって取り組んでいただきたい、強い要望をしておきます。  安定局長にお尋ねいたしますが、労働力の確保が先ほど言いましたように今度の再建の中でまた最もおもな内容だと思います。ところが最近産炭地に参りまして労働者の声を聞きますと、今度の縮小均衡の答申内容を見て、ほとんどの労務者がお先まっ暗だともう悲観してしまって、無気力に近い状態にあるわけです。こうした現実問題に対して労働省としてどのように措置をとられていこうとなさるのか、ここのところをお願いします。
  124. 村上茂利

    ○村上政府委員 すでに出ました審議会答申を見ましても、それから本日通産大臣からのあすの閣議決定の骨子となるであろう事項についての御説明にもございましたように、従来のこの種の答申と違います点は、労働対策の推進ということをかなりのウエートとスペースをさいて強調しておるところじゃなかろうかと存じます。  中でも、従来石炭合理化の労働対策と申しますと、離職者対策中心であるような観を呈しておりましたが、今回の答申におきましては炭鉱労働者の定着及び確保対策、これが第一にあげられておるわけでございます。この点につきまして労働省といたしましては、石炭産業の健全な再建のためには、資金その他の問題がありますけれども、それと劣らないほど重要な問題は必要な労働力を確保することであるというふうに存じております。  ところが石炭産業現実を見ますると、経営そのものがきわめて不安定であり、これに関連いたしまして労働条件も必ずしも十分じゃない、それから社宅その他の環境を見ましても十分ではないといったようないろいろな問題が結局は炭鉱労働者に対する魅力を失わしめる、こういう結果になっておるわけでございまして、この点については答申でもすでにその点を認識して指摘をしておるところでありますが、私どもはそのような考え方を正しく受けとめまして行政実施に反映させていきたいと思っております。  そこで基本的には経営の健全安定化、労働をめぐる諸条件の整備ということが基本的に大事でありますが、当面の問題といたしましては、離職者が出ましたならば、もうすでに相当の経験を持った人でありますから、そういった炭鉱離職者は他の炭鉱への配転を行なうという点について極力努力をいたしたい、かように考えるわけであります。  従来とも、炭鉱離職者につきましては、炭鉱離職者用住宅の建設その他特段の措置を講じてまいりましたが、そういった措置を今後も集約的に実施いたしまして、まずは炭鉱離職者を他の炭鉱へ配転するという方策、それから一般労働者につきまして炭鉱を希望するといったような方々については、いま申し上げましたような諸対策を集約的に実施いたしまして、できるだけ労働力の確保をはかってまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  125. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いままでの説明はある意味ではりっぱな説明だと思いますが、いま私が聞こうとしておるのは、現地の労働者が今度の答申内容に紛動されて――紛動と言っては失礼ですけれども影響を受けて、とにかく無気力になっているという現実がびまんしているということですね。これに対してどのような手を打つのかということなんです。幾らきれいごとを言ってみても、また内容を盛り込もうとも、労働者が逃げ出してしまえばどうにもならぬですよ。再起のしようがないです。現実問題として浮き足立っている労働者に対しては、さしあたりどのような手を打つか。これを聞いているわけです。簡単でいいですよ。
  126. 村上茂利

    ○村上政府委員 基本的には、産業あるいは経営の基盤が崩壊しようとしている。それを食いとめなければ、労働力確保と申しましても、これは基盤のない問題になるわけですが、私どもは現段階において、石炭鉱業の労務者をどう確保するかという問題は、一般論じゃなくて、むしろ地域の実情を見まして具体的な手を打ちたい、かように考えております。ですから筑豊の場合はどうだとか、北海道はどうだとか、従来の炭鉱合理化によって地域的にも非常に様相が違いますので、労働省といたしましては、そういった地域の特殊性を見ながら対策を講じたい。たとえば筑豊地区でございますと、離職者対策という従来の方策だけでいいのか、新しい何らかの事業を実施いたしまして雇用の安定をはかる。そしてそれが将来の産炭地としては模様がえになりますけれども、地域の将来の開発のビジョンにつながるものとして、何らかの意味を持つといったような側面的な効果をも期待しながら、新しい事業を実施していく。筑豊地区についてはこのように考える、あるいは北海道地区については福祉施設をさらに整備する、そういった点をいろいろ考えておるわけであります。
  127. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 時間がないようですから、最後にもう一回大臣にお尋ねしますが、九州は特になだれ現象が予想されております。非常に困ったものだと思っておりますが、先ほど植村会長にこの心配を質問いたしましたところ、実施されるまでの金融的な措置が何とかなされれば、その心配も薄れるのではないかという答えがありました。経過措置として、金融対策ですね。これはなだれ現象を起こさないだけの裏づけはありますか。金融措置ができる自信といいますか、そういうものはお持ちでしょうか。
  128. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 御質問の趣旨が十分わからない点がありますが……。先行き非常に、ある時間をおいての話でございますか、当面のことでございますか。
  129. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 一般にいわれる入り口閉山というやつですね。むしろ中小炭鉱の中には、今度の答申の実施を待ちわびているところもあるやに聞いているわけです。労働者は働きたいけれども、企業のほうがやめたい、こういうことや、また金融的な問題等からばたばたと、それこそ想像もつかないほどに閉山が起こるのではないか、このような心配があるわけですね。これに対して、先ほど植村会長に尋ねたならば、おそらく金融的な問題が中心だろうから、経過的な措置として金融措置を講すれば防げるのではないかというお話があったのですが、こういう点を踏まえて通産大臣はどのようにお考えか聞いたわけです。
  130. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 答申が出ましたが、先ほど大臣お答えのとおり、明日初めて政府としての意思決定が行なわれるわけです。その後予算がセットいたしましたならば、安定補給金その他につきましての具体的な数字、それからいろいろな政策の諸条件というものを具体的に明確にして、私どもは外にお示しできるわけでございます。そこで企業側といたしましては、おそらくその助成策の中で大いに力を出してやっていこうという気持ちになっていただける方が大部分であろうという期待は持っておりますが、当該企業状況から見まして、これだけの助成があっても成り立ち得ないというものもなしとはしないという感じでおります。その際、いずれにいたしましても、助成策と相並んで閉山交付金制度の改善もいたしておるわけでございますが、進むにしても退くにしても、新しい政策に均てんをしてその上で進退をきめたいというのがあらゆる企業の立場だと思います。そういう気持ちだと思います。問題はその事態まで予算が確定し、当国会で御審議をいただいて確定するという間におきまして、金融が十分にその間をつなぎ得るかどうかという問題がございます。これはすでに去年の春ごろからそういう意味合いで答申を心待ちにしてきたという状況が続いておりますので、その間金融機関企業との間で、場合によりましては私どもも間に入りまして、答申が出るまでひとつ金融機関も見てくれということで、しのいできた経過がございます。この期間というのは非常に大切でございます。その間私ども経過金融と申しておりますが、これについての措置につきましては、十分にひとつ考えてまいってきておるつもりでございます。具体的に新政策のもとで閉山をなさいます場合、金融側から申しますと、その間何カ月かの間に金を貸して、その分だけが取れない。もともと取れない上の上積みになるということをおそれて、早く解散に追い込むというようなことがあってはいけないと思いますので、私どもといたしましては、閉山交付金制度、あるいは再建交付金制度の中におきまして、これらの経過金融措置について、ある程度国が応援する責任を持つというしかけによりまして、金融側の経過金融への協力をさせることをいま検討いたしておる状況でございます、おおよその具体案も持っておりますし、財政当局ともある程度非公式な腹合わせをやっておりまして、まずまずめどを持っておると申し上げてよろしい状況だと思いますので、もうしばらく時間をかしていただきたいと思います。
  131. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 時間が過ぎていますけれども、もう一言最後にお尋ねしますが、閉山した場合、いわゆる離職者に対して未払い賃金、退職金、社内預金等当然その労働者の権利ですけれども、これが現実には退職金などは、すでに閉山しました大辻炭鉱などはまだ四〇%くらいしか支払われていない。こういうことでは話になりませんから、今後閉山する場合には、いまいったような未払い賃金や退職金、社内預金等は一〇〇%その労働者に支払われるという対策をぜひとも今後は講じていただきたい。こう思うのですが、大臣どう思いますか。
  132. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 長期的には、なるべくそういたしたいと思っております。今度の閉山交付金制度の、私どもの考えました基本は、いま御指摘のありました大辻の例でありますとか、大日本炭鉱の例から考えまして、相なるべくは政府閉山交付金によりまして、退職金等の労働者債権の支払いに対しましては、国から出る交付金の中で相当部分がこれに充当されるという仕組みを考えたい、こういうことでおおよその目標といたしましては七五%程度のものを確保できるようなという目算で、一般閉山交付金制度につきましても、あるいは閉山特別交付金制度につきましても考えていったつもりでございます。ただ、国が企業の従業員の退職金を一〇〇%見るというわけには、ほかとの均衡もございまして、石炭産業の特殊性でこれだけにある制度でございまして、それを今回さらに改善しようということでございますので、大方の判断といたしまして、七五%くらいがマキシマムであろうという感じで、そのようなことを考えたわけでございますが、残りの問題につきましては、直ちに実行は私はむずかしいかと思いますけれども、企業内におきまして当然に退職金引き当てというものを普通の企業であれば積んでおかなければならないことでございますので、これらにつきまして何がしか企業側にもくふうをさせるということを今後の問題として考えさせたいということが答申のうたっておるところでございます。これにつきましてはいろいろまた具体案があろうかと思いますので、今後私どもに与えられた課題という意味合いにおきまして、企業側が考えるものについてどういう仕組みを考えたらいいか、今後検討してまいりたいと思っております。
  133. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 とにかく閉山していくと一番困るのは地方自治体だと思います。というのは、失業者も出るし生活保護者も出る、そういうことでいわゆるボタをかぶるのは地方自治体です。その地方自治体の苦悩というものは想像以上であります。  大臣にお願いがあるのですが、これは自治省とも緊密なる接触のもとに、そうした産炭地域地方自治団体に対して手厚い予算措置が講じられるよう努力されることを要望して終わりたいと思いますが、大臣の意見をお伺いしたい。
  134. 大平正芳

    ○大平国務大臣 そういう方向で最善を尽くします。  いま財政上の問題につきましてちょっと局長から御報告をします。
  135. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 答申にもその点には言及をいたしておりまして、地方財政対策ということで今度の石炭特別会計の財源をもちまして直接の補助をいたしたい、新しい制度を創設したい、こう考えております。
  136. 平岡忠次郎

    平岡委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時四十三分散会