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1969-06-17 第61回国会 衆議院 商工委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年六月十七日(火曜日)     午前十時四十七分開議  出席委員    委員長 大久保武雄君    理事 宇野 宗佑君 理事 浦野 幸男君   理事 小宮山重四郎君 理事 藤井 勝志君    理事 武藤 嘉文君 理事 中村 重光君    理事 堀  昌雄君       天野 公義君    内田 常雄君       遠藤 三郎君    小笠 公韶君       小川 平二君    大橋 武夫君       海部 俊樹君    神田  博君       鴨田 宗一君    黒金 泰美君       小峯 柳多君    菅波  茂君       田中 榮一君    橋口  隆君       増岡 博之君    松野 幸泰君       石川 次夫君    大原  亨君       加藤 清二君    勝澤 芳雄君       佐野  進君    千葉 佳男君       中谷 鉄也君    古川 喜一君       武藤 山治君    塚本 三郎君       吉田 泰造君    近江巳記夫君       岡本 富夫君  出席国務大臣         通商産業大臣  大平 正芳君  出席政府委員         特許庁長官   荒玉 義人君  委員外出席者         厚生大臣官房審         議官      高木  玄君         厚生省薬務局企         業課長     信沢  清君         専  門  員 椎野 幸雄君     ————————————— 六月十七日  委員丹羽久章君、増岡博之君、勝澤芳雄君、田  原春次君及び伏木和雄辞任につき、その補欠  として松野幸泰君、菅波茂君、中谷鉄也君、大  原亨君及び岡本富夫君が議長指名委員に選  任された。 同日  委員菅波茂君、松野幸泰君、大原亨君及び中谷  鉄也辞任につき、その補欠として増岡博之君、  丹羽久章君、田原春次君及び勝澤芳雄君が議長  の指名委員に選任された。 本日の会議に付した案件  特許法等の一部を改正する法律案内閣提出第  七四号)      ————◇—————
  2. 大久保武雄

    大久保委員長 これより会議を開きます。  この際、公聴会の件について御報告いたします。  特許法等の一部を改正する法律案についての公聴会開会に関する諸般の手続は、さきに委員長に御一任願っておりましたが、理事各位と協議の結果、公聴会は来たる六月二十七日金曜日午前十時三十分より開会することといたしましたので、以上御報告申し上げます。
  3. 大久保武雄

    大久保委員長 特許法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。大原亨君。
  4. 大原亨

    大原委員 特許法改正について質問するわけですが、私がきょう質問いたしますのは、大体化学製品物質特許の問題でございます。御承知のように、現在の制度製法特許というふうにいわれておるわけですが、私も専門家ではないわけです。そこで、野党の皆さん方はもちろんですが、与党の委員皆さん方も、私の質問の途中で、あまり妨害になってはいけませんが、関連質問はどんどんしてもらいたい。そういうことで、これは自由にひとつ議論をして、特許法改正にあたってかなり本質的な問題であるということに気がつきましたので、慎重に結論を出してもらいたい、こういう気持ちですから、委員長ひとつその点はお含みの上で、私もそういうつもりですから、お願いいたしたいと思います。  今回の法律改正は、公開制にいたしましてもすべてそうですが、立法趣旨は、七十万件に及ぶ滞貨の一掃ということを繰り返して力説してあるようであります。しかし、そういう事務能率を促進するという面でこの改正趣旨が目的を達するかどうかという問題と一緒に、特許法はやはり政策上の観点から議論をする必要がある、非常に大切な問題がある、こういうふうに思うわけであります。  そこで、私いままでの議論を聞いてみますと、化学物質特許の問題は近い将来の課題だというふうにいわれておりますが、私は、そういう点については若干問題があるのではないかと思います。  そこで、まず最初にお尋ねするわけですが、七十万件の滞貨の中で化学製品が占める比率は大体どのくらいか、それから化学製品の中で、きょう私が問題を取り上げる端緒になりましたのは医薬品ですが、医薬品の占める割合は大体どのくらいであるか、これをひとつ本論に入る前にお聞かせいただきたいと思います。
  5. 荒玉義人

    荒玉政府委員 的確なお答えになるかどうかあれでございますが、一応現行法は御承知のように方法特許だけでございますが、大体化学関係というふうに理解していただきますと、約九万件ございます。六十八万件の未処理案件がございますが、そのうちの約九万件、それから医薬関係が約二万件というふうに一応なっております。
  6. 大原亨

    大原委員 私の手元資料では、部門別特許出願件数表で、この特許庁公報の一これは何も困らせるために言っておるわけじゃないので申し上げるのですが、九七ページに出ておりますが、化学関係として三〇・三%で、件数昭和四十二年で、大体この資料を見てみますと、化学製品が三〇%くらいを占めておるようです。そうすると七十万件といたしますと、三、七、二十一万件くらいがこの出願件数の中にある、二十一万件見当は少なくともあるのではないだろうかというふうに思うのですが、つまり滞貨の中で化学製品は非常にウエートが高いのじゃないかと思うわけですが、いまの御答弁はどうなんですか。
  7. 荒玉義人

    荒玉政府委員 大体一般的に申しますと、機械関係というのが一番おくれております。そういう意味では、いま先生おっしゃったように、化学関係よりはむしろ一般的でございますが、機械関係が大体平均よりおくれています。化学関係というのは、そういう意味ではむしろ一般的からいえばおそくないほうでございます。しかも、出願化学関係は非常に近年になればなるほど相対的に多くなっている。したがって、未処理案件という中からいえば、先ほど申し上げましたように約九万件ぐらいとお考え願いたいと思います。
  8. 大原亨

    大原委員 そこでお尋ねするわけですが、その物質特許については近い将来の課題であるというふうにどの文書を見ても出ております。答申にもそういうふうに出ておるわけですが、現在の化学製品の場合における方法特許製法特許と、それから近く課題になるであろう物質特許長所短所についてお答えいただきたいと思います。
  9. 荒玉義人

    荒玉政府委員 一般論を申し上げますが、たとえばポリエチレンならポリエチレン、これがかりに新規物質といたしますと、方法は、御承知のように高圧法あるいは中圧法あるいは常圧法と各種の方法が次から次へ発明されてまいるわけであります。そのとき物質、つまりポリエチレン特許を与えますと、あとからいろいろな方法が出てまいった場合に、前の物質特許制約を受けるというのが物質特許だと思います。物質特許のいい面は、化学関係でございますと、やはり何といいましても新しい物質を発見、発明するということが一番発明としての効果も多いわけでございます。したがいまして、最大発明に対して特許を与えるというのは特許法の面からみればしごく当然でございます。その意味からいえば、本来物質特許というものは認めてしかるべきだという角度からの議論があると思います。現行法物質特許を認めてございませんのは、一つは、方法あとからあとから発明される、その場合に、物質特許がございますと制約を受けるわけでございます。そうしますと、新しい方法発明する意欲がなくなるのではないかというのが一般的な方法特許だけを認める考え方の基本だと思います。もう一つは、やはり特許法といいますのは、もちろん発明保護すべきでございますが、国の工業水準というものを度外視して考えられないわけでございます。日本化学工業も最近急激に成長してまいりました。三十四年法のときにも、いろいろ物質特許医薬特許を認めるべきかどうかという論議が重ねられてまいったわけでございますが、当時は、まだ日本化学工業水準先進国並みでない時代でございました。物質特許を認めますと、やはり研究のやり方から変えていかなければいけない面がございますが、当時はそういった面で欠くるところがあった。つまり化学工業全体の水準から見て無理があったというのが三十四年以前でございますが、最近は昔日の面目を一新している次第でございますので、そういった面に化学工業全体の政策から見てこれを取り上げるべきかどうかということが当然考えられてこなければならないと思います。そういった化学工業政策という面からの判断がこの問題を考える場合の最大観点ではないか、かように思っております。
  10. 大原亨

    大原委員 現行化学製品製法特許と、これからの課題物質特許についての成果、いうならば長所短所という問題は逐次申し上げることにいたしますが、しかし、今回の立法趣旨からいいまして、たとえば公開制をとるというわけですが、公開制をとりますと、物質特許でない現行法ではすぐまねができるのではないか。簡単に模倣ができる。方法だけ変えて構造式やその他をちょっと変えれば化学製品については特許がとれるということになると、一面では権利保護されないという面と、一面ではやたらに類似方法について防衛的に特許申請をして件数をふやしていく、こういうふうな側面があるのではないですか。ですから公開制公開制で、他の制度を結びつけて滞貨を一掃するということとは逆の現象が出てくる可能性はありませんか。
  11. 荒玉義人

    荒玉政府委員 公開制度の採用に関連いたしまして、いまの問題に対しましては、確かに物質特許があったほうが、そういう改良発明公開されてまいりましても、物質特許というのは、先ほど申し上げましたように、非常に強い権利でございますから、全部権利侵害になってまいるわけでございますので、そういった面からいたしますと、公開になった場合には、権利保護という面から見れば、やはり物質特許を認めたほうが私はいいかと思います。ただ問題は、先ほどから言いましたように、物質特許の問題は発明者権利保護と同時に、あるいは全体としてその国の化学工業水準から見てどう考えるかという、産業政策面の配慮を同時にしなければならない問題でございます。したがって、そういう面の考慮を国全体として払っていくという意味では、単なる特許法の条文でございますが、発明保護というだけの観点からこの問題を見ていくことは私は適当ではないのではないかと思います。ただ、いまおっしゃいましたような模倣出願が出るのではないかということでございますが、公開趣旨は、早く発明公開いたしまして、そうしてそれをベースに、新しい化学の場合でございましたら、新しい方法が出てくるということを期待するわけでございます。したがいまして、公開されてそれを基礎に新しいりっぱなものが出てくるということは、これはむしろ公開趣旨から見て適当だと思います。ただちょっと改良したものが出てくるのではないか、これはむしろそれが特許に値するかどうかという問題でございます。あるいは出願がかりにふえましても、そういうものがはたして請求する値打ちがあるかどうか、あるいは特許に値するかどうかというところでチェックしていけばいいのではないか、かように考えております。
  12. 大原亨

    大原委員 それでは具体的な問題に入るわけです。化学製品の中で医薬品はかなりのウエートを占めていると思うわけですが、通産省管轄厚生省管轄で、企業のその監督助成についてのなわ張りがあるわけですが、医薬品については、これは企業監督助成等にいたしましても、原則的に厚生省がやっていると思うのです。その中で、たとえば農薬なんかでしたら農林省がやっているということになると思うのです。厚生省薬事法で新しい薬をどんどん許可するわけですが、これについて、あとでいろいろと政策上の問題について議論したいと思うのですが、厚生省新薬許可する際には、新薬許可特許関係は大体どうなるのか。つまり特許権侵害したような——侵害というか侵害するおそれのあるような、あるいは侵害する新薬であっても、厚生省はそれに関係なくどんどん許可しているのかどうかということですね、それはどうなんですか。厚生省新薬許可するのに一年間どのくらい大体許可しておって、そうしてこれは特許とは関係なしにどんどん許可するのか、もし特許権侵害したような場合にはどういうことになるのか、こういう点をひとつ関係を明らかにしてもらいたい。
  13. 信沢清

    信沢説明員 お話しのように、新薬製造につきましては、厚生大臣品目別に個々に承認をいたす、こういうたてまえになっております。その際、特許法との関係でございますが、たてまえは特許法の問題は一応ネグって審査をやるわけであります。したがって、その物質について特許侵害しているかどうかというようなことは一応審査本筋からは離れた議論としてわれわれ扱っておるわけでございます。ただし、実際問題といたしまして、いまお話しのように非常に深い関係があるわけでございますので、私ども関係の官庁と御連絡をいたしまして、承知できました範囲内ではその点について事実上タッチをする、こういう立場審査をいたしておるわけでございます。  なおお話のございました製造承認件数でございますが、四十三年度の実績で申しますと、輸入を含めまして約四千五百件でございます。ただし、そのうちいわゆる新薬、つまり化学構造式からいいましても全く新しいものであるとか、あるいは適応症から申しましても全く新しいものと申しますのは約四十でございます。したがってそれ以外のものは、いわば物質から見ました場合には既知物質であるが、その製造について承認申請が出される、こういうようなわけになっております。
  14. 大原亨

    大原委員 そうすると、医薬品製造とか開発につきましては、これは現在の方法特許物質特許に変えた場合にはどういう影響がありますか。
  15. 信沢清

    信沢説明員 先ほど私の御答弁ことばが足りなかった点があるかと思いますが、全く特許の問題を無視して審査をしているというわけではございませんで、私ども審査のたてまえは、あくまで医薬品として有効であるかどうか、またこれを使いました場合に十分安全であるかどうか、この点を主眼に置いて審査をしているわけでございますので、さような意味では本筋審査からはずして考えている、こういう意味で申し上げたわけでございます。  そういう意味から申しまして、いまのお話のような特許制度が変わるというような場合に、全くその影響がないということは申し上げませんが、少なくとも審査をいたします考え方なり態度というものにつきましては、大きな違いがないと思います。ただし、先ほど先生お述べになりましたように、厚生省医薬品企業につきまして通産省と同じような産業助長行政立場もあるわけでございますので、さような面から考えますれば、これはまた別の大きな問題があろうかと思います。
  16. 大原亨

    大原委員 ちょっと私はわからぬ点があるのですが、四十三年一年間に薬の許可申請が四千五百件ある、その際にそれはみな特許申請をしているのですか、事実上はどうなんでしょう。
  17. 信沢清

    信沢説明員 物質として見ました場合に、すでに特許期限が切れているものもかなりたくさんございます。したがいまして、すべてが現に特許があるという物質についての審査をやっているわけではございませんで、詳しく内容的に分析したことはございませんが、一般的に申しますれば、すでに特許についての問題がなくなったような物質についての申請の数が圧倒的に多い、このように考えております。
  18. 大原亨

    大原委員 まだちょっとわからない点があるのですが、それは、物質特許を採用しましても、現在と新薬許可についてはほとんど変わりはない、こういうように考えてよろしいのですか。
  19. 信沢清

    信沢説明員 私が申し上げましたのは、審査に当たっての考え方について大きな違いはないであろう、こういうことを申し上げたわけでございます。しかしながら、実際問題として、先生お話しのような物質特許になりました場合に、具体的に申請される品目の数と申しますか、申請件数については、かなり影響が出てくることが考えられるような気がいたします。と申しますのは、お話しのように製法特許関係になっておりますので、同じ物質製法が違うというだけで二社あるいは数社でこれを製造するということが現在あるわけでございますので、したがって、そういうものが整理されるという形で影響が出てくる、このように考えています。
  20. 大原亨

    大原委員 つまり、現在の製法特許では、方法、過程が違えば特許権侵害の問題は起きてこないわけですから、類似薬を幾らでも出せる、こういう特徴があると思うのですね。特徴があるが、この特徴は、これは医療問題の抜本改正でも議論になっておるけれども、非常に欠陥でもあるわけですね。そうすると、類似薬がどんどん出るということになれば、これは物質特許でないものだから、特許権侵害にならない、こういうことで、どんどん出ていって、たとえば薬価基準、これは健康保険の使用の薬に登載するわけですが、この薬価基準に登載をする品目だってそういう類似薬がどんどん出ていくということになりますね。ですから、また企業の面からいいますと、薬価基準に登載して保険薬として採用して、もうかるということになれば、たくさんのメーカーが競合して製品許可を得て、そして薬価基準に登載する運動もするし、実際にそういうふうになってくる、これを拒否もできない、こういうふうな影響を及ぼすのじゃないですか。その点はいかがですか。
  21. 信沢清

    信沢説明員 お話しのような影響が確かにございます。ただ、先生指摘になりました問題は、実は二つに分けて考えたほうがいいかと思いますが、いわゆる物質自身が非常に新しい、それのものまねをする、先生ことばを借りれば類似薬ということなろうかと思いますが、そういう場合ももちろんあるわけでございますが、私どもが一番問題にいたしておりますのは、いろいろな薬をまぜ合わせまして、いわゆる配合薬の形で出てまいりますもの、これは非常に数が多い。しかも、ちょっとその中身を変えて同じような効果をねらっておる。この問題をどう処理するかという問題のほうが当面の問題では大きな問題であろう、このように考えておるわけでございます。したがって、将来特許法改正されました暁、製法特許物質特許に切りかえる、同時に、既知物質ではあるが、その混合によって従来考えられなかったような新しい医薬としての用途発明したという場合に、その部分を特許法上どう保護するか、こういうような問題も医薬特許については当然議論の対象になって出てくると思います。したがって、そういう医薬用途特許と申しますか、そういうものを認めるか認めないかという議論の帰趨によっていまの先生お話はだいぶ事情が変わってくるのじゃなかろうか、このように考えております。
  22. 大原亨

    大原委員 つまり先発メーカー技術保護するというたてまえからいけば、化学製品その他一般的な問題ですが、そういうたてまえからいえば、これはやはりいまの議論を聞きましても、物質特許にするほうが、そういう点においては先発メーカー技術保護する、そうしてやたらに模倣だけでなしに、類似薬類似製品ということだけでなしに、独創的なそういう研究のほうに企業活動を向けていく、こういう大きな方向からいえば、製法特許は非常にルーズな簡単な制度であって、これは物質特許を採用するほうが当然のことではないか、こういうふうに思うわけですね。そういう点についてはどういうふうに考えておるのですか。
  23. 荒玉義人

    荒玉政府委員 先ほど申し上げましたように、発明保護という観点から見ますれば、先生のおっしゃったとおりでございます。これはおそらく医薬の点においても全く私同じだろうと思います。ただ、現行法がそれを非特許にしておりますのは、御承知のように、物質を新しくつくるといいますのは、基礎的な部門から総合的な研究体制ということが当然必要になってまいるわけであります。ただ化学屋だけではございません、あるいはあらゆる基礎化学を含めた研究体制が樹立いたしまして初めてそういう新しい物質を発見するということが可能だと思います。医薬においてもまたしかり、そういった化学工業界あるいは医薬業界体制が一年一年進歩いたしておると私は考えておりますが、そういった面を含めてこの問題を考えていくという問題ではないかと、先ほどからそういうことで申し上げておる次第でございます。
  24. 大原亨

    大原委員 この医薬品は集中的に具体的に議論をしようと私思うのですが、日本医薬品生産量が最近どんどん上がって、高度成長経済と同じですが、アメリカに次いで世界で第二の生産量だというふうにいわれておるわけですね。それは間違いないわけですね。しかしながら、日本医薬品外国には売れないわけですね。たとえばホンダとかソニーだとかいうものは、それは模倣ではあっても、日本製造いたしますと外国でも売れるわけで、国民経済からいっても大きな役割りを果たしておるのですが、医薬品は、生産量世界第二位になっておるけれども外国には売れぬわけですね。外国に売れぬというのは、日本の量的な面、医薬品生産量はふえておるが、長官お話も一部あるけれども、どうも質的な面は国際的な評価というものは全然——全然と言ったらおかしいけれども、全く評価はされていないのではないか。そういうことが輸出量ということであらわれるのじゃないかと思うのです。生産量の点と、それから輸出が一体どのくらいあるのかという点を私はやはり問題にしたいと思うわけですが、どうなんですか。
  25. 信沢清

    信沢説明員 四十三年度の医薬品生産額は六千八百八十九億でございますが、このうちと申しますか、同じ年度に輸出をいたしました医薬品の金額は約百七十九億円でございます。したがって、生産されたものの三%足らずしか輸出をしていない、そういう点でいま大原先生が御指摘のような状態にあるわけでございます。その一番大きな原因と申しますか、いろいろ原因はございますが、やはり先生指摘のように、世界評価されるような独創的な新薬開発というものがわが国においてはきわめて少ない、こういうところに問題があろうかと思います。つまり独創的なものでありますれば、先生お話しのようにどこでも評価されるわけでございますが、そういうものが少ない、いたずらに国内市場だけを当てにして生産をしておる、ほかにも原因はいろいろございますが、そういうところに一番大きな原因があるのじゃなかろうか、こういうように考えております。
  26. 大原亨

    大原委員 それからこれに関係して、私は西ドイツやスイス等をちょっと見て回ったのですが、企業数日本はやたらに多いわけですね。どのくらい製造事業所というのですか企業数があるのですか。国際的に大体どうなんですか。比較した資料がありますか。
  27. 信沢清

    信沢説明員 正確な数字は、手元資料がございませんので恐縮でございますが、大体わが国医薬品製造業者と称するものは約二千あるというふうに考えております。製造所の数から申しますと約二千二百でございます。一方、外国事情は、実は手元資料がございませんので詳しく申し上げられませんが、私どもが一番その点で例になろうかと思いますのが、先生はもうすでに御承知かと思いますが、フランスなんかの例がいいかと思いますが、大体フランスでも数年前までは二千くらいのメーカーがあったというふうに聞いております。しかし今日ではその数は五百以下、四百程度に下がってきておるというふうに聞いておるわけで、やはり数が多いだけが問題じゃなくて、そこでどういう医薬品がつくられるかということが問題であるわけでございまして、さような観点からいたしますと、率直に申して、現在日本にございます二千余のメーカーという数は多きに過ぎる、このように私ども考えております。
  28. 大原亨

    大原委員 フランスは最近五百になったというのですが、それはドイツでもスイスでもまだみなそれ以下ですよ。日本は二千も事業所があるというのです。私は厚生省企業助成監督指導を医薬企業についてやるべきでないのじゃないかと思うのです。たとえば通産省が炭鉱の災害の安全の監督をやっている。一方では企業の助長をやっている。それと同じような面があるのじゃないかと思うのです。企業については、たとえば製薬企業について中小企業は守っていかなければならぬけれども、しかしやたらに競争企業が二千もある、世界でそんなところはない。二千もどんどん出てくるということは、皆保険下の薬事行政にも問題があるけれども監督する面と助長する面が——監督する面は生命とか健康とかいう観点厚生省がきびしくやるべきであって、企業の問題については別個の次元の問題として通産省がやるような、そういう政策が正しいのではないか。最近厚生省の中でも汚職が起きておる。あなたがやったというわけではないけれども起きておるが、ネコにかつおぶしを持たしておるようなところがあると私は思う。もちろん長所もあるけれども、その議論は私はそこまでは立ち入ってはやらないが、しかし二千軒あるというようなことは、日本特許制度やあるいは薬事行政に非常に大きな問題があるのじゃないか。特に日本でつくった医薬品は、成長産業、花形産業で株の相場を見ましても、いつも新聞に出ておるわけですし、それから大正製薬の社長さんでも大塚製薬の社長さんでも大体ベストテンに入っておる。一族郎党みんな上のほうに入っておるわけですよ。私はいまは非常に狂っておるのじゃないかと思うのです。その点について制度上も政策上もやはりこの際検討しなければならぬのじゃないか。医薬品の輸入というものは大体どのくらいあるのですか。技術の輸入と一緒に……。
  29. 信沢清

    信沢説明員 四十三年度の実績で申しますと、製品、これはバルクを含めてでございますが、金額で約四百八十三億となっております。それから技術のほうは、対価の支払いを正確に記憶いたしておりませんが、大体年間二十億円ぐらいの支払いをいたしておるはずだと思います。
  30. 大原亨

    大原委員 製品の何%か。
  31. 信沢清

    信沢説明員 技術料でございますので、製品の何%ということにするのはいかがかと思います。
  32. 大原亨

    大原委員 四百八十億円余りの輸入というと、一〇%には達しておりませんね。しかし私の資料では、こまかな議論はしないけれども、それ以上一五%になっていると思うわけだ。それは中身の問題だから議論しませんけれども日本輸出——六千八百億円というのは総生産量だけれども、これは指示価格というわけですね。生産者が卸でおろす価格でしょう。だから末端価格になれば非常に多いわけになるけれども、しかしそれにしましても輸出量が少ないというのは、申し上げたように、国際的な評価が非常に劣っておって、質が悪いということなんです。やたらに何でもかんでも薬だというふうに許可をしているということもある。それから日本の薬は国際的にインチキといっては悪いけれども、そう評価はされていない。まゆにつばをつけなければならない。逆に言うと、アメリカでもどこでもメーカーはそうだが、日本に対しては薬を輸出をして、日本を市場として、自分の国では事人体にかかわるのできびしいものだから、日本で実験しよう——日本できくかきかぬか、副作用があるかないか、これも非常にルーズだからテストして、それが立証されたら自分の国や外国に売っていこう、こういうふうな市場になる傾向があるのではないか。輸出をした場合なんかにいたしましても、三%というものは大体東南アジア等へだまして売ったと言っては悪いけれども、あまり権威がある方法で学問的に評価されているわけではない。たとえばソニーとかホンダとかいうような——ホンダもものすごい欠陥車があって、走っておればあぶなくてしょうがないそうだけれども、それはともかくとして、かなり国際的に出ていくわけだ。しかし薬については、世界第二の生産量というのに、さっぱり出ていかない。出ていくとすれば東南アジアの後進国へ出ていって、いうなればその中でお茶を濁しているという程度でしょう。輸入のほうがばく大に多くて、日本が市場になって、これは他の化学製品もそうで公害問題が起きておりますが、医薬品については日本が人体実験場みたいなかっこうになっている点がある。だからこの際、新薬許可について、薬価基準への登載、これは保険財政の赤字の議論抜本改正議論に発展するので、別の機会で徹底的に議論するけれども、しかし、そういうことから考えてみても、新薬許可についてはあまりにでたらめ過ぎる。メーカーとつうつうになっている点等もあって、きびしくやってきたわけだが、これはかなりきびしくなった。しかしもう一つ特許の問題は、いまや質的な向上をするためには、いまの特許法を転換をしなければならぬのじゃないか、これは五年後、十年後というふうなことではいけないのじゃないか、こういうふうに私は思うのですよ。あなたは薬務局の企業課長をやっておるので、あなたに全部やるのは何だけれども、審議官も見えておるが、これは大臣や局長なども一緒に議論しなければならぬ問題で、これはあらためて議論すべきだとしても、特許法をいま審議しておるわけだが、特許法の審議で、化学製品の中で医薬品の問題は事人命にかかわる問題だし、日本ではかなり成長産業で問題になっておるのだから、この問題はこの際真剣に検討する段階に来ておるのじゃないかと思うのです。これは厚生省いかがですか。あなたに大臣みたいな答弁を期待しても無理だけれども通産省がびっくりするような答弁でもいいからやってもらいたい。
  33. 信沢清

    信沢説明員 一般的なお話といたしましては、先生おっしゃるような点について私どもとかく異議を申し上げる気持ちはございません。  最初にお触れになりました輸出の問題につきまして申し上げますと、確かにおっしゃるような問題がないとは申しませんが、最近の状況を見ますと、かなりヨーロッパとかアメリカに出ているわけでございます。金額は先ほど申し上げたように総額としても少ないわけでありますが、そのうちいわゆる東南アジア、アジア州内に売られておりますのは半分でございまして、それ以外のものはヨーロッパに二六%、アメリカには二〇%というふうに、だんだん先進地域に対して医薬品輸出ウエートが伸びている、こういう事情にありますことを御承知願いたいと思います。  それから新薬承認に際して日本がいわゆるモルモット的な役割りを果たしているという点は、少なくとも最近ここ二、三年の状況から申し上げますれば、さような事実はございません。ただ実際問題として、かりにアメリカで開発された薬につきまして日本のほうが先に承認を与えるというような事実はございます。しかしながら、私ども承認審査をいたします場合、これは御承知のように薬事審議会で十分御検討いただくわけでございますが、そのオリジンの国における審査状況ということは十分しかも絶えず気をつけて審査をいたしておるわけでございます。したがって、かりにそういうふうなものがありといたしますれば、アメリカではあまり問題になっていないが日本では非常に急を要する、たとえば抗結核薬のごときものにつきましては、必ずしもアメリカで最終的な結論は出ていない、しかし、かなりの臨床例が積まれておって、もはや時間の問題だというふうな時点になりました場合に、国内の事情から判断いたしましてこれは承認をすることが適当だ、このような場合にのみ私どもとしては外国で未承認の薬についても承認をする、こういう考え方をとっておるわけでございます。  なお、最後にお話のありました特許に関連する問題は、先ほど特許庁長官からお答えがございましたと全く同じような考え方で私どもこの問題に対処いたしていくつもりでございます。
  34. 大原亨

    大原委員 これはこまかな議論はたくさんあるわけですが、最近自由民主党の中で鈴木調査会や西村調査会が医療問題の抜本対策について出したわけです。昭和四十二年には厚生省が牛丸試案を出して、そしてそれらを踏まえながら厚生大臣をやっておった鈴木さんや西村さんが会長になって最近出したわけです。しかし、この問題の政府の受けとめ方やその他の問題は別の機会に議論をいたすのですが、その答申の中で抜本改正について、医薬品開発とか製造について触れた面が御承知のとおりあるわけです。それは御承知だと思うのですが、審議官、あるでしょう。
  35. 高木玄

    ○高木説明員 ございます。
  36. 大原亨

    大原委員 それはどういう意味ですか。それを読んでみてください。
  37. 高木玄

    ○高木説明員 自由民主党の国民医療対策大綱におきまして薬事制度について触れております。  文面を申し上げますと、まず医薬分業につきましては、「おおむね五年後には全国的規模において実施されることを目途とし、一定の地域、特定の医療機関から逐次実施する」というのが一つでございます。  それから二番目の柱といたしまして、新しい医薬品開発と安全性の確保という問題がございまして、その一番は、「資本及び技術導入の自由化による開放経済体制の移行に対処して、製薬業界の基盤を強化し、国際競争力を付与するため、国は、独創的医薬品研究開発助成するとともに、新規開発医薬品についての先発企業保護するため、医薬品のための特許制度を確立する等の措置を講ずるほか、研究開発に要した諸経費を考慮する。」二番目といたしまして、「医薬品の安全性を確保し、優良な医薬品を国民に提供するため、医薬品製造(輸入)承認審査をいっそう厳正にするための措置を講じ、その際いわゆる大衆保健薬のあり方についても検討を加える。なお、いわゆる要指示薬制度について再検討を行なう。」こういった内容のことがこの大綱の中で述べられております。
  38. 大原亨

    大原委員 健康保険の特例法の改正のあり方は、抜本改正の問題とともに一番大きな問題ですが、いまお話しのように、医薬品開発と安全性の確保というところで、これはやはり「独創的医薬品研究開発助成するとともに、新規開発医薬品についての先発企業保護するため、医薬品のための特許制度を確立する等」こういっておるのです。これはつまり制度を統廃合するとか、いろいろな問題の前提としてやはりそういう問題をやらなければいかぬ、これは重大な問題だ、こういう前提条件としてここに書かれておるのですが、いうならばこれはいま議論している問題に触れている問題だと私は思うのです。だからその問題は、行政上もあるいは化学製品の中の大きなウエートを占める医薬品の面においても、特に医薬品は人体と関係があるし、あるいは保険財政の関係がある。日本のようなそういう生産量だけがふえて中身が伴わないという場合には、それは企業間の競争、働きかけが激しくて、そうして結果的には医薬品メーカーは花形産業になっておるけれども、保険財政は赤字になっておる、あるいは医薬品の公害は続出しておる、いうならば国民不在というか、そういう成長産業のあり方になっているわけですが、その問題にメスを入れるのはやはり特許問題に手を触れなければいかぬ。私は当事者に聞いてみたところが、起案した人は、そのことをいっているのだ、こう言っているわけです。特許制度をやはりいまや改革しなければいけない、この答申はこういうことをいっているのだ。しかしながら特許法改正の論議のときには、これはかなりあとの問題として議論されている。そういう点がこの法律の論議の問題に一つあるのではないか、これを一つとってみても。私はそういう点から物質特許の問題はずっと前から関心を持っていた問題だから、特許法改正についてもぜひ発言をしたいと思う理由もあるのですが、その問題は審議会の答申を見ると、もうこれはあとの問題だ、こういうふうに答申ではあと回しにしてあるわけです。その次の問題であるというふうになっている。だけれども、これはいまや日本のような先進工業国の仲間入りをしようとする中で一般的にも言えると思うが、この医薬品については三%というのは、どんな弁解をしたって、そんなばかなことはないですよ。日本の薬が評価されていないということなんだ。国際的にどこへ行ったってそう言っています。宣伝、販売その他全部日本は野放しだ、こういうことを言っている。ですからそういう点について、私はそのことを審議することが滞貨七十万件の問題と関係があるという議論ですけれどもあとで時間があればそのことを議論いたしますが、いろいろな点での問題を考えて、私は、化学製品物質特許について、少なくともそういう点についてはいまや手をつけなければ、特許法改正ということじゃないじゃないか、こう思うのです。だから目標については大体議論の対立はないわけだと思う。いつやるかという問題は問題ですが、しかし化学製品の中で、化学製品はかなりここに並んでおりますけれども、その中で一つ医薬品、毒薬品とか農薬とかそういう問題でしょうが、しかしそれにいたしましても、医薬品だけを取り上げて物質特許をも併用するような方法をとることはできないのかどうか、こういう問題がありますね。いかがですか。
  39. 荒玉義人

    荒玉政府委員 二点お答え申し上げます。  第一点はあとの問題で申し上げますが、御承知のように物質特許というのと医薬特許といいますのはそれぞれ交錯した面があると同時に、特許の対象としてはそれぞれ独立したものだと思います。と申しますのは、物質特許というのは、あくまで物質それ自身に特許を与えるわけでございます。医薬の場合は、いわば用途特許でございます。したがって新規な物質に対して医薬的な効果がある場合、既知物質に対して医薬効果がある場合、それぞれが医薬特許でございます。ただ、最近いい医薬になりますと、物質それ自身が新規だというのが多いという意味では関連いたしますが、それぞれのたてまえというものは、物質特許医薬特許といいますのは特許は二本でございます。したがいまして、特許の面から見ますと、物質特許医薬特許それぞれ一律に特許を与えておるというのが、物質特許医薬特許の相関関係ではないかと私は思います。  それから物質特許医薬特許をなぜ今回やらないかというあたりの問題でございますが、端的に申しますと、特許法改正といいますのは、これは基本的にはやはり必要な事項を重点的にやっていくというのがわれわれの姿勢、態度かと思います。審議会も、特許にはいろいろな問題がございます。その場合に、いまさしあたって必要なものは何かということからスタートいたしますと、やはり審査の促進をどうしてやっていくかといったような事項に関連している。やはり今回は重点をしぼる。もちろん早期公開というものは直接的には審査促進ではございませんが、いまの審査状況から見てやはり早期公開しなければいかぬという意味では審査そのものに直接関係した事項でございます。したがいまして、いまの物質特許医薬特許といいますのは、ドイツが昨年の改正でいたしましたが、ドイツ自身も長年の研さんの結果でございます。といいますのは、特許庁内部ですでに作業を始めておりますが、条文といたしましてはそれぞれ各号を削除すればいい問題でございますが、運用の面でどの程度の物質を許していくか、そういった非常にこまかい問題がたくさんございます。医薬特許といいましてもどの程度の段階で許していくか、そういった運用面の問題自身がきわめて大事でございますから、そういった点を現在進めております。そういういわば特許庁サイドの問題点と、先ほどから繰り返して恐縮でございますが、化学工業政策をどうしていくか、医薬政策をどうしていくかという配慮。後者の点につきましては先ほど一つの線が出ておるわけでございますが、それに対してこういう形の医薬を許すためには、業界としては将来こういう研究体制を進めていかなければいけないじゃないかという、いわば準備体制というものが要ると私は思います。したがいまして、そういった準備体制というものは、今後われわれの審査体制その他と並行して、業界にそういった新しい研究体制が可能かどうかという総合判断のもとにやるべきじゃないか、しばらく時間をかしていただきたい、私はかように申し上げておる次第でございます。
  40. 大原亨

    大原委員 私が質問いたしました中で、たとえば化学製品の中で医薬品だけを物質特許にする、こういうことが法律上できるのかどうかという問題が一つあるわけです。それから製法特許で、たとえば物質特許ということで特許をとれば、その製法の過程でいろいろなことがあっても物質特許で押えられてしまうわけでしょう。ですから物質特許発明保護していけば、いまのように過程の構造式をちょっと変えただけですぐ許可するというようなことはできなくなってしまうから、たてまえとしては製法特許物質特許等についてのカテゴリーはそれぞれ違うけれども、しかし結果としては物質特許を採用するということになれば、物質特許をとったら、もうこれはまぎらわしい製作過程の問題が入り込む余地がなくなるのですよ。その点では申請件数にもあるいは滞貨件数にも関係があるのじゃないかということを思うわけです。その点は私の認識不足かもしれない。  いずれにしましても、西ドイツが、お話しのように採用しているわけですが、スイスがどういうふうになっているか、医薬品ではかなりの先輩国ですが、スイスなどは国内でもかなり保護されていると思うが、たとえば四大医薬品メーカーなどは六割から七割、八割くらいは外国輸出しているわけです。非常に輸出をしている。というのは、国際的に非常に権威がある。やはり国内においてそういう特許制度新薬許可その他についての権威のある方法を立てないと、輸出などというものはあぶなくてできないのじゃないか、こういう側面があると思うわけですね。ですから医薬品だけを化学物質特許のほうで法制化することができるのかどうか、それをひとつ……。
  41. 荒玉義人

    荒玉政府委員 先ほど申し上げましたように、物質の中で医薬だけ特許するというのは即医薬特許でございます。医薬といいますのは、いわば用途特許でございますので、新規物質であろうが既知物質であろうが、いずれにしてもそれが薬効があるというのが医薬特許でございます。したがいまして、いま先生のおっしゃった御提案は、それは医薬特許を認めたらいいという問題と全く同じではないかと思います。
  42. 大原亨

    大原委員 自民党の西村調査会の答申にもそういうように出しておるわけですが、厚生省はそういう問題を議論したことはないのですか。
  43. 信沢清

    信沢説明員 議論したことはございます。もちろん厚生省部内だけじゃございませんで特許法全般にかかわる問題として数年前からこの議論があるように私ども承知しておりますし、先ほど先生指摘のような状態に私ども関係する業界がございます関係上、特にこの問題を早く結論を出したいということで、鋭意検討しているところでございます。
  44. 大原亨

    大原委員 私は、そのことは他の政策面、医療保険の抜本改正からいっても、取り上げて今回の改正においてやるということが政府与党としては意識分裂のない一致した方向じゃないかと思う。そういう議論があったものについては、どんどん取り上げていくということが必要じゃないか、こういうふうに思うわけです。長官は準備をしてからと言われるのですが、しかしこれはなかなか利害関係が錯綜しまして、計画的に準備をするというふうにいいましてもなかなか私は問題ではないか。物質特許を取り上げるとすれば、大体いつをめどにやっておるわけですか。
  45. 荒玉義人

    荒玉政府委員 本委員会でその点申し上げたかと思いますが、残された問題、先ほど医薬化学物質あるいは実用新案の基本的な問題、また将来PCTつまり特許の国際協力に加盟する前提条件はいわゆる多項制の問題でございます、そういった意味で事務的な問題の詰めばすでにやっておりますが、そういったものを全部総合いたしまして、大体数年後には一つの成案を得たいというスケジュールで万般の準備を進めております。
  46. 大原亨

    大原委員 それはたとえば昭和四十九年にPCT体制への移行がなされる、それで昭和四十九年ごろまでには化学物質特許についての結論を出すということなんですか。
  47. 荒玉義人

    荒玉政府委員 おそくともその時期までにはわれわれの基本的な方針を確立したいと思っております。
  48. 大原亨

    大原委員 そこで、私はそういう御方針についてはわかったわけですが、医薬品の問題にこだわるようですが、医薬品の問題で抜本改正関係をして、もう少し積極的に、たとえば政府提出の原案を修正するということになれば、厚生省はどうですか、猛烈に反対しますか。趣旨は賛成だが、そのことは反対だ、こういうことになりますか。
  49. 信沢清

    信沢説明員 問題がたいへん大きゅうございますので、私から御答弁申し上げるのは適当でないかと思いますが、先ほど来申し上げておりますように、この問題についての考え方と申しますのは、私ども先ほど特許庁長官がお答えになっていることと同じような考え方を持っているわけでございます。ただ、先生は当然そのことを御承知になっておっしゃっておられると思いますが、厚生省立場から申しますと、もう一つ、薬を使うという立場にもあるわけでございます。特に医療保険において公的医療の場でこういう薬を使う、こういう立場にあるわけでございまして、片方で独創的な医薬品研究開発を助長するというような意味合いから申しますれば、当然医薬品について特別な特許制度というものを考える必要がある、こういう考え方があるわけでございますが、反面、特許を認めるということはある種の独占を認めることになるわけでございまして、したがって、価格の問題等についてそれを調整するような有効な運用上の仕組みというようなもの、あるいは一たん特許をとりましたあとにそれが実施されないというような場合に、どういうふうな手当てがあるか、もちろん現行特許法にもその場合の手当ては十分法律的にあるわけでございますが、具体的な運用にあたってどういう問題があるか、やはりこういうような面からの検討も必要だというふうに私ども考えているわけでございます。したがって、結論的に申し上げますれば、方向としてはおっしゃる方向にいきたい、しかしなお運用の面で検討する必要があるのじゃなかろうかというのが、私どもの中のただいまの段階における議論でございます。
  50. 大原亨

    大原委員 西ドイツが物質特許に踏み切ってやっておるわけですが、その場合には、いうなればいま後段に言われた独占による弊害、そういう問題についてはどういう制度をとっているのですか。
  51. 荒玉義人

    荒玉政府委員 西独の場合は、一般的な公共の利益のために制約をするという規定だけでございます。比較して日本を申しますと、大体日本はいまの公共の利益というのは特許法九十三条でございます。九十二条に、先願特許権者の権利を利用しなければ後願の特許権者が利用できない、いわゆる利用関係の場合に、先願の特許権者はある程度特許制約を受けるというのが九十二条でございます。したがいまして、ドイツは日本の九十三条だけでございます。日本はかりにやるにしても、いまの利用関係物質方法の場合は利用関係は明らかになるわけでございます。九十二条のチェックをいたしまして、後願のりっぱな発明者が実施できるような体制にあるという意味からいいますと、ドイツよりむしろ日本のほうが特許権者は制約を受けますが、特許になった後願者のほうは実施できるという体制にあると考えています。
  52. 大原亨

    大原委員 だからそういう点については、何も問題ないじゃないですか。独占をしてひとり占めにしてこれが実施できないと、こういう研究の成果というものが一般の国民の利益のために実施をされないというふうなそういう弊害というものはないじゃないですか、いかがですか。
  53. 信沢清

    信沢説明員 私が申し上げましたのは、法律的な制度としては、お話しのように整っているということは十分承知をしているつもりでございますが、先ほどお話の出ておりますように、特許の運用面についてもいろいろなお御検討なさるべき事項があるように伺っておりまするし、同時に、私ども立場から申しましても、先ほど申し上げたような意味合いで、なおよく両面からの研究をした上で考えるべきじゃなかろうかというのが、現在の議論の中心課題になっているということを申し上げたわけでございます。ただし、方向としては、先生先ほどお話しの方向を目ざして、私ども研究いたしている、こういうことでございます。
  54. 大原亨

    大原委員 それでは厚生省にもう一回聞きますが、厚生省の牛丸試案を受けて、自民党が各方面の意見を聞いて出した医療の抜本対策の基本方針の中にはこの問題を取り上げておるけれども、これは当分実施しない、こういうことですか。
  55. 信沢清

    信沢説明員 早急に実施すべき問題というふうに考えているわけでございますが、この国会で御審議いただいている特許法改正に間に合うように審議をしなければならないというほどには考えておりません。
  56. 大原亨

    大原委員 そのことについてとやかく言うわけではないが、これは抜本改正についての基本的な前提条件だ、文章でこういうふうに説明しているわけですが、しかしそういうことが何も実施されないで、そして患者の負担をふやすとか、保険料を上げるとかいうようなことだけでやるから問題になる。そういうことをやるから、政府としてそういう問題について統一的な政策がないから問題になるわけですよ。いまや保険財政の赤字の問題ははっきりしているわけです。いうなれば、これは医薬品メーカーの過当競争あるいは医薬品メーカーの手によって混乱しているものである。その助長行政監督行政を厚生省がやっているわけです。これはもちろん専門的な分野だから、通産省化学工業局にまかしたらまだ悪くなるということがあるかもしれない。そういう面では、厚生省が、よくわかっておるものが監督するということもあるが、しかし、それが弊害となって出た場合にはどうにもならぬということになるから、この問題についてはけじめをつけるということについて目途を示さなければ、たとえば健康保険の特例法なんかの小手先のことをやって患者負担をふやしていくということは主客転倒の方法だといわれてもしようがないのじゃないか、こういう議論が出てくる、しかし、あなたとの間で私がこれをやったってしょうがないけれども特許法改正の問題としては、この問題は非常に大きな問題であって、そういうことを伴わないで滞貨の一掃についてやるといっても、私はかなり問題があるのではないかというふうに思う。しかし、これは逐次やっていくという見通しについてはお話があったわけであります。その点については、私は若干議論をはしょってやっておりますから、結論的な議論にはするつもりもないし、なっていないわけですが、この問題は、後の参考人をお呼びするなりいろいろなときに、そういう物質特許についての関心を持つ専門家もあるようですから、そういう議論等を十分にお伺いして、それからやっていきたいと思います。  それから、これに関連しまして、工業所有権に関するパリ条約、昭和三十三年にリスボンで改正されたわけですが、日本昭和四十年に加入の手続をとっているわけですね。そのパリ条約に加盟をいたしましたこととこの物質特許との関係、これは一体どうなるかということを、念のためにここでひとつ記録にとどめたい。
  57. 荒玉義人

    荒玉政府委員 パリ同盟条約の基本的な考え方は、いわば特許要件、特許の中で一番大事な、そういった点は各国内法にゆだねておるということでございます。リスボン会議におきましても、実はいろいろ議論ございまして、本会議は同盟各国に対して、各国がその国内法制において新化学物質特許保護を規定することの可能性を検討することを勧告する、こういった条文を条約の中に入れまして、できるだけ早い機会に各国が物質特許を採用するような一つの意思統一といいますか、そういうことをしたらどうかという案が出ましたが、各国いろいろ利害が相反しまして、結局、条文の中には入れておりません。したがいまして、条約の関係だけから申しますと、そういった問題はその国が独自に判断すべき事項だというたてまえになっております。
  58. 大原亨

    大原委員 それは各国で、方法としてはともかくといたしまして、独自に判断をする。しかし日本はかなり化学産業では先進国ですからね。特に申し上げたような医薬品等の問題もあるので、当然条約の精神からいえば、これは早く取り上げるということになると思います。  それからその条約の問題とも関係しまして、PCTとの関係におきまして、現在の単項制に対して多項制を採用することが問題になっておるわけですね。これもやはり物質特許と同じような展望で日本政府は日本特許法等改正においては対処する、こういうように考えてよろしいのですか。
  59. 荒玉義人

    荒玉政府委員 PCT問題につきましていまの物質特許の多項制の問題は、ちょっと取り扱いが違うと思います。PCTといいますのは、御承知のように、特許要件をすべて統一するというのはございません。PCTといいますのは、できるだけ各国が審査の負担を軽減するということでございまして、特許要件をすべて加盟国は同じものでなければならないという前提はございません。したがいまして、物質特許をしなければ加入できないという問題ではございません。ただし多項の問題は少し違いまして、これをいわば方式といっておりますが、そういった方式につきましては、やはりこの際統一していく。したがいまして、多項制を採用しなければPCTに加入するということにはならない。そういう意味では多項の場合必須要件でございまして、ちょっと物質特許の場合と性質が異なっておるのがPCTの考え方でございます。
  60. 大原亨

    大原委員 それから、ちょっとこれは関係して一問だけ質問するのですが、特計関係で四つの項目がある。商標、商号の問題ですね。商標の問題で、これはこまかなことで、長官お答えできるかどうかあれですが、新聞やテレビ等で商標を掲げて宣伝します。それから新聞、テレビで商号、これは法務省の管轄ですが、商号を掲げて宣伝しますね。その際に、商標とまぎらわしい商号を掲げて宣伝をするということは、どちらが優先するかという問題もあるでしょうが、商標権の侵害、商号権の侵害ということになるでしょうが、これはその境は大体どこですか。
  61. 荒玉義人

    荒玉政府委員 商標権は、いわば登録になって商標権が発生するわけでございます。たとえば、商号を使った場合も、それは商標の使用ということになるはずでございます。いまテレビ等で使いましても——いわば商標の使用といいますのは、広告に使いましても商標の使用でございまして、したがいまして、商標権者がございますれば、商号といえども商標権に抵触した使用ということになれば、商標権侵害という問題が起きるかと思います。
  62. 大原亨

    大原委員 それでは、きょうはこれで打ち切るわけですが、この参考人の中に私どもが意見を聞きたい人があるわけです。この物質特許の問題については、政府の統一方針ということ等とも関係いたしまして、私も関心を持っていろいろと資料を集めた、実際はそういうことであって、今回滞貨を一掃するというこの改正の精神からも、この問題は私は議論をしたいという面があるわけです。しかし、それらの問題等はまた後の機会に譲るといたしまして、政策上の問題を抜きにして事務的な問題だけをやるというのは、私はまたおかしいのじゃないかと思うし、また来年大改正をやるというふうなわけにはいかぬわけでしょう。いまちょうど文教委員会では著作権の問題が問題になっていますね。これと同じような、よく似たような議論がなされておるというふうに思うわけですが、そういう点から考えてみて、両麦相まって法律は改正するということがやはり望ましいのではないか、こういう点を感ずるわけです。そこらで、こういう問題はあと後々に議論をしていきたい、こういう意見だけを付しておきまして、私の質問は協力をするという意味におきまして終わりたいと思います。
  63. 大久保武雄

    大久保委員長 本会議散会後再開することとし、この際、休憩いたします。    午後零時六分休憩      ————◇—————    午後三時十九分開議
  64. 大久保武雄

    大久保委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。佐野進君。
  65. 佐野進

    ○佐野(進)委員 いままで特許法の審議については各委員から相当長い時間にわたって質疑が続けられておるわけでありますが、私も前回原則的な問題について質問をいたしました。そこで、質問を続ければ続けるほど問題点というものが非常に複雑かつ多岐にわたっており、どうしてこのような複雑かつ多岐にわたる法律案を今度の国会に提出しなければならなかったのかという疑問を非常に私は印象として持つようになっておるわけであります。したがって、そういう点について、内容等に関連もいたしますけれども、原則的な面についても若干質問を続けてみたいと思うのであります。  私は、いろいろな法律案委員会に出されて審議をしておるのですが、今回の法律案ほどいわゆる反対の多い法律案というのは珍しい。法律案として国会に提案される場合は、特にこのような特許法という特殊な問題として改正案が出される、あるいはその手続を経る、こういうような過程の中において、言い方が適切であるかどうかはともかくとして、いわゆる根回しと称するか、十分各方面の意見が戦わされ、その結果として一つの原案が出され、委員会に出たならば、反対、賛成ということがあっても、事政策について与野党間における根本的な対立感のある法律案はともかくとして、そうでない場合、特に商工委員会等に関係する法律案は、おおむね、賛否の態度があっても、いわゆる妥協というか話し合いのつく余地が存する法案が多いのですが、今度の法律案については、そういうような妥協点を、修正するなら修正という形でどこにその根拠を求めたらいいのかということがわからないほど、いわゆる一つをいじることによって法体系全体に関連してそれが非常にむずかしい、こういうような印象を強くする法律、これが今度の特許法改正の内容であるように思わざるを得ないわけであります。したがって、私はこれから逐次質問を続けていくわけですが、大臣が来るまでの間、特許庁長官質問をして、あと大臣が来たら大臣に、関連しながら聞いていきたいと思うのです。  私は五月の六日だか七日に質問したのですが、そのとき、労働組合をはじめ各方面関係する団体における反対が非常に強い、これについては法律を審議する経過の中においても十分各方面の意見というか意向についてもこれが参酌されるような形の中で処理すべきではないかという意見を質問の中で私は言っておったと思うのでありまするが、そういうような点について、今日約一カ月半たった現在においても、それらについてたいへん好転したというような報告が私どもの耳の中には入ってこないわけであります。  そこで、私はその問題について一つ二つ質問してみたいと思うのでありますが、まず改正をしなければならない必要性の問題です。特許庁長官は、滞貨が累増する形の中で基本的に処理ができないということは発明者権利をも阻害することになる、こういうような説明をされておるわけでありますが、これに対して、いわゆる滞貨処理の問題に関して直接その衝に当たる審査官あるいは労働組合等は、この法律改正によってその目的を達成することができないんだということをまっこうからはっきりと言い切った形の中で、この法律改正は断固了承することができない、こういうことを言っておるわけであります。この問題については、もうすでにたびたび私も質問しましたし、ほかの委員の方々も質問されておるわけですが、この質問に関して、この法律案が通れば滞貨処理については絶対間違いないということについての確信のある答弁というものがいまだ長官のほうからもなされていないわけでありますが、それならば現行法でも解決できるのかということについての追及、たとえばアメリカがそういうような形の中で解決の方向に一歩踏み出し、具体的に滞貨処理に最大効果をあげているのだ、こういうことが言われておるわけですが、それに関しても、それは日本の実情に合わないのだということについての明確なる答弁もなされていない。すべてが一つの立脚点現状においてはこれ以外にないのだという特許庁当局の考え方ことばの言い回しの中で説明し納得させようとしておるわけですから、聞くほうがちっとも納得することができない、それが現在の状況だと思うのであります。  そこで、私は長官にお尋ねしたいのでありますが、どうして現行法では解決することができないのか。いわゆる滞貨処理というか発明者権利を守る、そういうような形の中で日本産業の発展をはかっていくということがどうして現行法ではできないのかという点について、ひとつ明確にこの際答弁をしてもらいたい。この改正案以外にはそれができないのだという、もうこれ以外はないのだということがあるならば、その根拠を示して説明をしてもらいたいと思います。
  66. 荒玉義人

    荒玉政府委員 少し従来の御答弁と重複するかもしれませんが、現行法でなぜできないか、もちろん絶対できないという問題ではございません。御承知のように毎印の出願と処理、これは過去十年間で、まあ年々によって事情は違いますが、約三割以上は翌年度回し、処理といたしましては六割七、八分というのが過去十年間における処理状況でございます。もちろん人員をふやせばいいじゃないかという議論はわれわれも聞いております。ただ、実際特許庁は過去十年間にわたりまして、年度によりますが、大体七、八十名近い新規の採用をやってまいりました。そういった状況でございますが、御承知のように七、八十名を採用いたします。これは審査官の要員は通常の大学卒のしかも技術関係でございます。われわれといたしましてはもちろん定員確保には努力してまいりました。同時に実員確保にも努力してまいりました。上級公務員試験合格者だけでは不十分でございますので、特別な試験制度を人事院の了解をとって、ようやく七十名ないし八十名の新規採用をやってまいったわけでございます。もちろんこれで私は十分だとは思いませんが、そういった人員の拡充の面、もちろん不十分だという御批判を私覚悟で申しますが、実際やはりいまの状況ですと、ある程度人間の採用という面においてもどうしても一つの限界がございます。そういった意味で人的な拡充を私は今後も続けていっていただきたい、かように思いますが、それだけでは問題を解決するということにはなりません。その結果が、先ほど言いましたように、大体処理が六割少々の状態でございまして、いまの累積が六十八万件というのは、きょうことしの問題でなく、長年そういった状態が続いてまいったわけでございます。もちろん人的な拡充のみならず、あるいは先ほどお話ございました運用面を改善したらいいじゃないか、私もそう思っております。同時にやらなければいかぬと思いますが、先ほどアメリカの例で申しましたが、アメリカの場合はこれは半年の短縮でございます。新しいやり方をやりましてから、大体半年ぐらいの短縮の効果をあげております。アメリカのやり方は、御承知かと思いますが、本委員会でも私申し上げたかと思いますが、要するに何も破天荒なことじゃございません。審査官が拒絶理由通知を出すといった場合に、出願人が容易に応答ができるような拒絶理由通知を出す、場合によれば面会してそこで即決する、こういったようなやり方でございます。その趣旨は、われわれも一昨年の暮れからそういったやり方をしております。それでできるだけ拒絶理由通知を詳細にするというのがその精神でございます。ただ、この場合にアメリカと同じような効果を現在あげていないのは、一つのクレームの考え方が違うところに原因がございます。アメリカのクレームは御承知のように多項制で、いわゆる請求範囲を具体的に書くというのがアメリカの制度でございますが、日本の場合にはいわゆる一項制で、クレーム自身が抽象的になりがちだといった場合に、具体的に拒絶理由通知を指摘するという意味の限界がございます。ただ、精神はやはりアメリカのやり方というものはわれわれは学ぶべき点が多々ございますので先ほど申しましたように実施しておりますが、そういった人的拡充あるいは運用面の改善その他われわれとしてなすべきことは多々あると私も思います。が、いずれにいたしましても、いまのような、もちろん人員をふやすわけでございますが、実際の状況、実充員の状況から見ましても、やはりどうしても一つの壁があるのではなかろうか。もちろん壁自身はぶち破る必要がある面もございますが、一つ審査の長期化という傾向がどうしても現行法のままでは予想される。そうしますと、御承知のように審査が平均で四年数カ月、未処理が毎年三割近く累増いたしますと、いろいろ手を尽くしましてもやはり審査が長期化するということをどうも考えざるを得ない。したがいまして、この際審査請求制度を設けましたのは、すべての発明審査する必要はないじゃないか、そうして出願人に協力していただいて、われわれの持てる審査能力をより必要なものに投じていくというのがいわば審査請求制度であります。そういった制度の運用、人員充実に加えてそういった制度改正をやっていくということが発明者の利益にもなっていく、かように考えて提案した次第でございます。
  67. 佐野進

    ○佐野(進)委員 ですから、いまの答弁でもまだ、でしょう、であろうと思うとか、アメリカのやり方もわれわれはとるのだとか、審査請求制度というものに対する考え方という形についても、滞貨を処理するという形の中で特許法の本来持つその意味、いわゆる滞貨を処理するという形の中で特許法が果たさなければならないその使命が若干制約される、それはしようがないのだという印象にいまの説明だとなってくる。いわゆる早期公開制度審査請求制度、こういうものをとることによっていわゆる発明者全体の利益に対して若干その権利を否定するようなことがあるとしても、現状の中においてはその程度のことは認めてもらえるのじゃないかなという特許庁長官としての希望、そういうものがやはりこの改正を提案する前提として思想的に存在するわけなんだ。だからこれ以外にないのだということにはならないわけだ。だから説得力がどうしても弱くなる。だからいつまでたったって足もとである人たちの了解あるいはわれわれ委員を含めた多くの人たちの了解がなかなか得られない、こういうことになってこようと思うのです。しかし、それ以上答弁ができないならしようがありませんから、私は次へ進みたいと思います。  そうすると、なおアメリカ式にあるいは審査官をふやすというか機構を改正する形の中において充実をはかっていくということについては努力をしたいということを言っておるわけです。いまの答弁の中でもいままでもずっとそうなんです。そうすると、いまの答弁の中から出てきておる思想的なもの等からいっても、結論的には、何といってもたまってしまってしょうがないのだし、いまのままの状況ではこれは解決のしょうがないのだし、結局それは発明者権利侵害することにもなるのだという、そういう考え方に基づいて今度の法律改正案を出したのだということに結びつけて説明をしておるわけですが、そうだと、その障害となるべき最大の条件は一体何なのか、そしてその解決策の対象は一体どこに求めるのかということになってくると、いまの長官答弁を聞いておる限りにおいては、結局審査官をふやそうとしても予算に縛られる、あるいは機構を充実しようとしても、体制をつくり上げようとしても、いまの状態の中ではなかなかそれが無理だ、こういうような形になるので、結論的には発明者の犠牲、あるいはまた発明者の犠牲ということばが適切でないならば、この行政上において当然果たさなければならぬ責任を一部肩がわりを民間の機関、あるいは民間の施設、あるいは民間の発明者という個人の権利、そういう方面にしわ寄せすることによって、特許庁当局はこの法律の改正によってみずからの責任をのがれよう、いわゆる責任を果たしたという形式をとろう、こういうように——これはうがった解釈だとあなたは言うかもしれないけれども、私はそう見ざるを得ないのです。行政上の不備はあくまでも行政上の不備として追及していかなければならないのじゃないか。行政上の不備を一般の人たちにしわ寄せする形の中で解決していくということは根本的に誤りではないか。いわんや役所の機構、人的配置の不足、そういう方面を現状やむを得ざるものとして把握した形の中でいま言われるような措置をとられるということについては、どうも納得できないような気がするのですが、そこいらはどうです。さっきの答弁と関連してひとつ答弁してください。
  68. 荒玉義人

    荒玉政府委員 前から私御答弁申し上げたかと思いますが、一つだけの方策でいまの問題を解決できる方法としては、私は困難ではないかと申し上げておる次第です。たとえば人員の充足でございます。私も、特許庁は現在のままで将来定員をふやさないというふうに考えてはございません。むしろやはり行政的な需要はございますから、それはふやしていかなければいけません。先ほど問題がございました運用問題、これも、目に見えないけれども審査促進の面から見て案外きわめて大事な事項でございます。そういった点は当然やるべきである。ただ、そういう二つだけで将来いまの問題を解決するにはやはり不十分でございます。したがいまして、制度改正を含めていまの事態を克服していくといういわば三本立てのやり方というものはどうしても必要になってくるという形を申し上げておる次第でございます。一つだけ、人員の拡充だけでいまの問題が解決するほど私は単純な問題とは考えていないわけでございます。そういう合わせて一本だというふうに考えておる次第でございます。
  69. 佐野進

    ○佐野(進)委員 長官、だから、私の言わんとするところは、内容にまた詳しく入るけれども、結局一つではうまくいかないということで、じゃどこにその解決の方法を求めるかということになったら、早期公開制審査請求制度というような、あるいはまた料金の問題、こういうような形の中において処理しようとしておるのがこの改正案のねらいでしょう。それが一体だれの犠牲になるかということを私は言っているのですよ。あなたのいま言われたことが発明者権利を守ることになり、滞貨の処理をするということは処理をするということでいいのだけれども、それが発明者権利を否定することになり、そして中小というか零細というか、いわゆる資力を持たざる者の権利を不当に圧迫する形の中でこの改正案によって滞貨を処理しようというようなことになるんではないか、あるいはまた現実には、そこに働く人たち、審査官を含めてそういう人たちの労働強化という形の中で——労働強化というのは適切かどうかわからぬけれども、そういういままでこの前の法律を改正した昭和三十四年ですか、法律を改正したときの中で当然果たし得られるべきものと考えられたその措置について新しいいわゆる犠牲者を——犠牲者というか、そういう対象に対して、この法律改正によって、発明に対する意欲、参加する意欲、あるいは権利を確保しようとする意欲に対して、これを抑圧し、そして件数の処理に重点を置くよりも、出願という形の中においてのその意欲に対して、これを圧縮しよう、こういうような意図がこの中に示されておると私はいろいろな形の中で考えてみたのだけれども、あなたの言われる一つ一つだけれども、もう一つの目的はこうだというもう一つの目的ということが、そういうぐあいにどうしてもとらざるを得ないのですが、そうでないという理論的な根拠、説明は一体どうなりますか。あるならあるでいいのですよ。
  70. 荒玉義人

    荒玉政府委員 今度の改正発明者に犠牲をしいたのではないか、要するに新しい技術革新の時代において、もちろんそれは審査という仕事を通じた面もございますが、やはりこれは日本だけではございません。いまの審査主義を維持するというたてまえからいいますと、私は日本だけだとは思いません。世界的な傾向としてやはり審査をいままでのように十分やっていくのはまずだんだん困難になっておる。これは御承知のように各国ともそういった問題がございます。これは原因は、先生承知のように、出願は量的にも質的にも変化してまいります。審査をむずかしくする方向になってまいります。そうしますと、従来のような形のやり方をしておったのでは、どうしても技術進歩に合っていけない。私は日本だけじゃないと思います。そうしますと、その際やはり早く出願内容を公開していかないと技術開発のスピードにおくれていくという質的な変化というものは、現在まで、将来にわたって出てきている。そういったものがやはり出願の早期公開という一つの方向かと思います。もちろんこれは全部の国がやっておるとは申しませんけれども、どうしてもそういう方向で進んでいくということがやはり技術開発を促進するという意味からプラスである。  それから審査請求制度というのは、御承知のように、もちろんいまは出願人は出願すれば全部審査してくれる、しかしそれでは発明の本質から見てむだじゃないだろうか。これも私たびたび本委員会で申し上げましたように、すべて発明がこの経済社会で価値あるというのは、もう実績がそういうことでないわけです。そうすると、ある程度出願人の側で選んでいただきたい。そうして持つ審査能力を最も有効に使っていきたい。これは先ほどから言いましたように、日本のみならず各国がやはり審査負担にたえかねておるという前提からスタートした場合に、それが技術進歩を阻害しない、なおかつ出願人の協力を得て所期の目的を達していくというのが、今度の改正でございます。したがいまして、現在と比べて犠牲とおっしゃれば、そういう面もできると思いますが、いままで特許制度が歩んできた道から、そうして発明の実態その他を考えて、この程度のことはやはり協力していただきたい。それを犠牲とおっしゃれば、現在から比べたら犠牲でございますが、むしろその程度の協力をしていただいて、それが審査主義を維持する一つの有効かつ適切な方法だというのが審査請求制度じゃないかと思っております。
  71. 佐野進

    ○佐野(進)委員 審査請求制度の内容についてはあと質問したいと思いますが、いま質問しているのは、いわゆる滞貨が累増しておる、それを解決する方法として、結論的に、役所の中における果たすべき責任を果さないで、一般民間の出願者なりあるいはその他の機関に対して一方的に犠牲を強要するものではないか、みずからの責任を放置した形の中において、他に責任を転嫁した形の中でこの滞貨問題を処理するということではないかということをいま聞きたかったわけです。まあ、大体答弁で、そういうこともあると言われればあるというような説明をしておりますから、これ以上追及はしません。あと質問をさらに進めてみたいと思うのです。  これはあとの関連がありますから進めてみたいと思うのですが、そうすると、もう一つ、結局、片やいわゆるみずからの責任を放置したということでないけれども、責任でやらなければならぬことについては、一定の段階しかでき得ない。同時にその形の中で、今日の技術革新に対応するためにという一つの名目をとらえながらも、結局は発明家の権利を阻害するかわからないと、こう言っているわけですが、もう一つ問題点として存在するものには、さっき答弁があったように、激増する滞貨、いわゆる発明出願、こういうものを処理するために内部的に人員の増加をはかろうとしても、なかなかはかることができ得ない。そうしてその問題の処理をする審査官なり、内部におけるところの人的配置というものが、一朝にしてこれを行なうほど有能なる人はなかなか集め得ない、こういうような意味における答弁が、一貫して、私のだけでなくしてなされておるように思うのですが、たとえば審査官なりあるいは事務官なり、こういうものを技術的な面、その個人の持つ能力、そういうものとの関連の中においても、そう早期に多くの人を充足するということは事実上不可能と長官は判断されますか。予算上の措置においては不可能であるけれども、実際上の措置においては不可能でない、こう判断されるかどうか、その点をひとつお聞かせ願いたい。
  72. 荒玉義人

    荒玉政府委員 私先ほど申しましたように、審査官は大体七十人、ことしは七十五名でございますが、約七、八十名ふやしてまいったわけであります。これは実際御承知のように学卒の技術者でございます。われわれは全国またにかけてそれぞれ採用のために努力いたします。御承知のようにこれは上級公務員試験を通ったのから採用するわけでございます。ことしも約百二十二名通知を出しまして、実際七十四名どまりでございます。それではいろいろ足りませんので、まあ七十四名の中は、上級公務員採用者以外の任用をいたしまして、かろうじて七十数名の採用をしておるわけであります。もちろんこれは十名、二十名それぞれ努力するというのと、あるいは倍にするという意味ではまた質が異なると私は思います。私は一年一年むずかしくなる、やさしくなるとは思いません。御承知のように企業の需要は膨大でございます。大体エンジニアの性格といたしましては、自分でクリエートするのが第一の志望でございますから、実際民間でそういう技術活動をやるということになりますと、実際問題、定員の問題もさることながら、実際の素質のある者を採用するということは、私は倍いただいてもそう簡単に倍確保できるかどうかという点においては、これは従来やってまいった点から見て、実際上困難である。ただ五名、十名、それぞれ少々質を落としてでもやるというのならこれは別でございます。さようにいままでやってまいりました。将来もおそらく、先ほど言いましたようにやさしくなることは私むずかしいのじゃないか、かように思っております。
  73. 佐野進

    ○佐野(進)委員 長官、やさしくなるのはむずかしいのじゃないか、こう言われましたけれども、たとえばこの審査官がいま百二十名のうち七十何名云々、こう言われておるのですが、しかし、実際上たとえばことしこの審査官の試験を受けられた人員は一体どの程度いるのか、去年一年間でやめていかれた審査官というのはどれほどいるのか。それからこの審査官がたとえば一般民間の企業に対して持つ社会的なウエート、いわゆる審査官というものは、役所の中で審査官であるけれども、一般民間企業におけるところのこの人たちに期待する技術的な面、その他社会的な地位というのか、そういうものを長官はどの程度把握されておりますか。いわゆる民間のこの人たちに対する需要、働きかけ、そういうものは私は相当あると思うのです。強いと思うのです。強いということは、その職場の持つ意味というものが非常に重大だということなんですね。特許庁の中に持つ審査官の果たすべき役割り、そして特許行政、技術革新に果たす審査官の役割りもこれまた重大だと思うのです。重大だと思うにもかかわらず、この審査官の定着率というか審査能力というか、そういうものが、私どもの聞く限りにおいては非常に過度に要求が負荷されていってしまうという形の中で魅力のない職場という一つの表現も出てきておるのじゃないかと思うのですが、私はそうじゃないというような気もするのですが、これはあくまでも行政上におけるところの運用がまずい、へただ、こういうところからそういう現象が出ているのじゃないか、こういうぐあいに考えるのですが、これはどうですか。
  74. 荒玉義人

    荒玉政府委員 まず第一点、受験者の数でございます。これは先ほど言いましたように、国家公務員を受けた諸君と、それから特許庁だけの二つございますが、四十四年度は公務員試験を受けた人が百七十五名でございます。内定者、そのうち来てもらいたいといってわれわれが通知を出しましたのが百二十六名でございます。実際決定いたしましたのは六十名、というのは、向こうがオーケーした者、ところが一人大学問題で欠員がございまして、五十九名でございます。それから特許庁だけの採用、これは受験者三十七名、内定者は十五名、決定者は十五名、これは通常の人事試験を通っておりませんが、大体同じ待遇をする、これは初めから特許庁へ来る。したがいまして、公務員試験の場合でございますと、約半分が来ております。  第二に、幾らやめたかという問題でございますが、これは年次によってそれぞれ違うかと思いますが、大体二十名ないし十四、五名ぐらいにお考えになっていただければ合うと思います。  なぜやめていくか。実はわれわれできるだけ引きとめたいと努力しておるわけでございます。御承知のように、審査官の俸給はこれは審査官だからといいまして特殊な俸給ではございません。大体通常の一般公務員の俸給表でございます。いわゆる何級何号俸という通常の給与表でございますが、それで審査官は御承知のように三十五年度からプラス八%、官補は四%、いわめる調整号俸をつけております。したがって、少なくとも普通の公務員よりはそれだけ優遇されておるわけでございます。なぜやめていくかということでございますが、これは一つには、やはり企業なり外部の需要というものが相当強うございます。民間企業にしろ、あるいは特許代理人といいますか、そういったあたりの需要というものが強い、これは事実でございます。企業からいいますと、従来特許セクション、あるいは特許課とかあるいは特許部等がなかった企業が、ここ十年以来急激に成長しております。そういった場合に人的なソースを特許庁に求めてくるという面もございます。あるいは外部の特許代理業務が、出願の増大とともに繁忙になっていく、そういった外の需要面が強いというのがまず第一でございます。もちろんこれはいろいろ待遇その他の問題もあるかと思いますが、大体そういった強い需要のために個人としてどうしてもやめていきたいということでございます。もちろん、さっき言いましたように、審査官の職が魅力がないから出ていくというのじゃなくて、やはりそういった外の需要というものがより優先していくというのが、毎年退職者が出ていく原因ではないかと私は思います。一般公務員と比べれば、先ほど言いましたようにやはり優遇されておるわけでございます。外の需要の関係がやめていく大きな原因じゃないか、かように考えております。
  75. 武藤山治

    武藤(山)委員 関連。長官答弁を聞いていると、どうも詭弁を弄しているという感じなんですよ。非常に肝心なところを佐野委員はきょうはしょっぱなから聞いておるのですが、さっぱり納得できるような答弁をしていない。たとえばこの法案が絶対ではないと答えてみたり、あるいは三位一体となった処理を今後したいと言ったり、いままで昭和三十五年ごろから滞貨がどんどんふえてきているという傾向はいまに始まったことではないでしょう。ずっと以前にわかっているのですよ。わかっているものをなぜもっと抜本的にやれなかったか、その壁は何か、それをいま佐野さんは聞いているのだけれども、志願者が少ないからとか、点数の悪い者までとればどうとか、全く詭弁だと思うのです。いまの特許庁自体にもっと根本的な問題があると思うのです。というのは、あなたのほうから示された昭和三十九年度からの予算書を見ると、特許庁の予算というのは収入と支出、歳入と歳出がちょうど同じような金額の範囲内しか出てないのですよ。いつも歳入のほうが多いのです、三十九年度からずっと今日まで。これが壁で、人員を思い切ってふやすこともできない。このワク内で操作しろという何らかの力がどこかから働いている。主計局かしらん、あるいは歴代通産大臣の力が弱かったからか、あるいは特許庁長官のがんばりが弱かったためか、この壁が破れなかったために滞貨を完全に解消する抜本策が立たなかったのでしょう。歳入と歳出との関係は、従来の慣例ではどういう観点から、主計局なり大臣なり閣議なり、どこからじゃまされて抜本策を立てることができなかったのか。歳入の範囲内だけで人件費からすべての経費を組んでいるでしょう。それでは滞貨解消策なんか出ませんよ。だれが見たって、これが最大のネックだと私は思うのですが、長官、率直に聞かしてくださいよ、詭弁を弄さないで。
  76. 荒玉義人

    荒玉政府委員 歳入のワクに支出が押えられる、したがって人員も押えられている、私はそういう関係はないと思います。もちろん、われわれは特別会計でもございませんし、かりに特別会計になりましても、政府全体の定員という面は別の角度から考えられておるわけでございます。御承知のように、三十五年以降、これは定員ベースでございますから、たとえば三十五年からちょっと申しますと、定員ベースで九十名、六十名、四十九名、四十一名、百十名、九十九名、百四十四名、六十七名、八十九名、八十六名——八十六名といいますのは、この前大臣が答弁した百一名に見合う、定員法の問題でございますが、そういう意味の定員の拡充をはかってまいりましたのは、やはりほかの官庁と比べれば飛躍的な拡大でございます。もちろん、さっき言いましたように、これで満足するのはけしからぬというおことばはございますが、これは政府全体としますれば、私自身十分だとは思いませんが、やはり全体としては拡充方向に行っておるというのは事実でございまして、もちろん、いま与えられたのですべて満足するという問題ではございませんが、ふやしたことも事実でございますので、そのことは御了解願いたいと思います。
  77. 武藤山治

    武藤(山)委員 しかし長官、だれが見たって、昭和三十九年から——特許庁というのは金をもうける独立採算の官庁じゃないのですよ。とにかく産業の発展を促進し、日本の英知というものをとにかく特許によって表現して大いに産業活動を発展させよう、同時にそういう独占権を持とうとする国民の権利保護しよう。金もうけの官庁じゃないのです。そういう官庁が歳入と歳出がやや同じだなんということが何年間もずっと続くこと自体が、滞貨を片づけようという視点で組んでない証拠じゃないですか。そうでしょう。ほんとうにやる気なら、定数があろうが何であろうが、それを総理大臣にまで訴えて、こうしなければ国民の権利が守れないのです、われわれのほうのこの滞貨を防ぐためにここまでは認めてくれということをあなたが主張するのは、当然長官あなたの義務だ。長官としてやれないとすれば、あなたは長官としての能力がないということか、いずれかですよ。私はそう思う。しかし私の質問は二十五日ですから、そのときにみっちり聞かしてもらいますけれども、いま佐野さんに対する答弁を聞いていると、あまりにも答弁に誠意がないから、われわれを納得させるだけの血のにじむようなあなたの具体的な説得力のある答弁がないから、私はいま腹が立って質問に立ったのです。そういう感じをわれわれに与えることはいかぬことです。もっと率直に何が壁であるかということを具体的に説明しなさいよ。
  78. 佐野進

    ○佐野(進)委員 いま武藤さんもそう言っておりますが、私も全く、冒頭申し上げましたとおり、特許庁当局の説明というものは何人をも納得をさせる自信、確信、そういったものを前提として練り上げられたものでないことを私はたいへん残念に思うということをいつも申し上げながら質問しているわけですが、大臣、さっき大臣に質問したいところだったのですが、おいでにならない、参議院のほうにいるということだったので保留しておいたのですが、ここで長官に御質問申し上げますが、そのあと大臣の見解もあわせてお伺いしたいのです。  私がいままでずっと質問してきたことを一貫して言うならば、結論的に民間というかいわゆる発明者権利を阻害し、そこにその発明者権利について是非の判定を下す審査官をはじめ事務官、いわゆる特許庁の職員の人たちの過重なる負担、こういう二つの柱の上に、累増する滞貨を処理する方法として今回の改正案が出されたと断ぜざるを得ないように、いままで一貫した答弁の姿勢の中に私は受けとめざるを得ないわけです。そこで、そういうことがはたしてこの特許法というような国民の基本的な権利に関する法律を改正するのにふさわしいのかどうかということになると、たいへん疑問が多くなってくる。そこで、私がこの前大臣に質問したとき大臣は、あなたはデメリットのほうばかり考えながら見ながら質問しておるので、メリットのほうも見てくれというような意味答弁をなされておったのですが、私は、武藤さんもいま言われたけれども、今度のこの法律改正の中に特許庁当局として大きな柱、いわゆる三本の柱以外にもっと大きな中心的な柱を忘れているんではないか。忘れるというか、それは気がついておってもそれを意識しないで、意識することがこの法律を提出する上に大きな障害となっておるから、それについては触れないで、三本の小さな柱、その柱を立てることによって当面する問題の処理をはかろうとしておる、こう断ぜざるを得ないような印象が非常に強いのです。いまの答弁を聞きながらもそのことはやっぱり払拭できないのです。そういうことを今日、これは大臣に答弁をしてもらいたいと思うのですが、一体特許行政、発明家の保護、こういう問題については日本産業の置かれておる現状に対比してどう位置づけるのかということなんです。いわゆる今回の法律改正は、あと質問をいたしますが、手続法的な改正案の内容といわざるを得ないのですが、それにしてはあまりにも抜本的な、手続法の改正にしてはあまりにも根本的な問題を含み過ぎているわけですが、抜本的な改正を含み過ぎておるとするならば、根本的に今日の特許行政の根幹に触れた対応策、そういうものが出てこなければならぬと思うのです。表面上は手続法的な改正でありながら実質的には根本に触れる改正を意図しておる。さっきの長官答弁の中にも意図しておるわけですが、いわゆる特許行政というものの今日的な果たす役割り、いままで明治から大正、大正から昭和にかけて果たしてきたその役割り、それを法律的に整理して規定してきたこの役割りを、今日の段階においても全然変えようとしない。変えるべき客観的な条件と主体的な条件が整っているにかかわらずそれを変えようとしない。変えようとしないで、小手先におけるところの操作によって当面を乗り切ろうとしておる、こういうように感ぜざるを得ないのですが、一体特許行政というものについて、大臣、どう位置づけられたら、今日いわゆる総生産世界第二位だと言っておる、あるいは五十兆円をこえる、あるいは対外的な競争力を非常に強めなければならぬ、技術評価も含めて強めなければならぬと言われたとき、明治から大正、大正から昭和にかけて、昭和の初期ですよ、初期にかけて存在した特許行政というものを、今日のこの巨大に成長した日本産業の中において、そのままではたしてやっていけるとお考えになれますか。なること自体に矛盾をお感じになりませんか。その点について大臣の見解。特許庁長官、あなたはそういう点について気がつきませんか。あなたは特許庁長官として二年なり三年なりの任期が終わればまたほかへ行かれるから、それでいいと思うのです。しかし、特許庁にその一生を、特許行政に一生身を置いて生活する人たち、あるいわこの特許行政に対して非常に大きな期待をかげながら生活している何千何万という人たちにとっては、一年や二年の問題ではないと思うのです。こういうような人たちが今日の時点の中において特許行政に期待している、それに対して、この古い長いしきたりの中において処理をしようとすることに矛盾を特許庁長官としてはお感じになりませんかどうか。この点を二人に御意見を聞かしていただきたいと思います。
  79. 大平正芳

    ○大平国務大臣 御質問の肯綮に当たるかどうかわかりませんが、私はこう考えております。いまの日本は、技術的に見ると中進国家の域をまだ出ていないと思うのでございます。いわば模倣技術で、けさほどからも問題になっておりました大きな創造的な技術が生まれない。先進国の型を見て、今日、形の上では非常に巨大な生産力を発揮してきたわけでございますけれども、中身に入ればやはり模倣技術からそう大きく出ていない国じゃないかと思うのです。そういう意味で、資源の乏しい国といたしまして、それから平和国家として、いまから生存権を主張してまいる上から申しまして、やはり技術国家的な道標を持っていかなければならないという意味におきまして、技術行政は佐野さんの御指摘のとおり大きな転換点に立っておると思います。  それから第二といたしまして、世界全体が大きな技術革新期にあるということでございます。こういう大きな波の中にさおさしておるわけでございますから、その意味におきましてさらに技術行政の適応力というものが問われておると思います。したがって、あなたが御指摘のとおり、過去、明治、大正、昭和にかけて守株してまいりました特許行政のやり方というものがそれでいいとは思いません。大きな転換が要請されておると思います。そういう認識においては、私は佐野さんと認識をともにできると思います。ただ問題は、それではそれに対して、そういう転換点に立っておるわけでございますから、特許行政のあり方として、この時点で、この条件のもとでどうするかという方法論になりますと、あなたと若干私は所見を異にするわけでございます。と申しますのは、私がいまこの時点で、この条件のもとでと申し上げたのは、この条件というのは、特許行政というのは、これは政府の一機関であるという、そういう制約を持っておるわけでございます。政府の全体の行政組織から遊離したものではあり得ない。一つの行政組織の中でどのように位づけるかという問題はありますけれども、行政組織から離れるわけにはまいらない。したがって、全体の行政組織上の制約を、これはどなたがやっても受けるのではないかと思うのでございます。あなたの言われる御趣旨が、そういうことからも脱皮したらどうだということだったら、話は論外でございますけれども、この制約は容易に、革命でもない限りは、これは自由になり得ない。どなたが長官になっても、どなたが通産大臣を拝命いたしましても同じことではないかと思うのです。そういう条件が一つあると思うのでございます。そういう条件のもとで適応力をどれだけ発揮できるかというところが、現実のわれわれの課題であろうと思います。いままで、歴代の長官、歴代の大臣はいままでの仕組みの中で、できるだけ審査要員を充実いたしまして、山積する案件に立ち向かっていただくということで、鋭意要員の充実に努力をいたしてまいったのでございます。これは私も経験を持っておりますけれども、毎年毎年の予算編成の最後に残る一つの問題として特許庁の人員は相当高いレベルにおいてやりとりが行なわれたわけでございまして、それは特許庁の収入がどれだけであるからというような考慮は全然別にいたしまして、いかにしてそれだけの要員を充足すべきかというようなことで、相当真剣に論議をしてきたと思うのでございます。そういう対処のしかたでやってまいりましたけれども、依然として六十八万件の未処理案件が滞積しておるということでございます。この事態は、こういう私のいま第二に申し上げました技術革新期にある今日、中進国家である日本が、これから駿足を伸ばそうとするときに、せっかく知識の成果であります権利の卵を空しく倉庫の中に入れておいたのでは、これはたいへんいけないことでございまするし、といってそれを全部一定の期間のうちにこなし切るだけの要員の確保ができないということで、非常に苦悶したし、審議会といたしましても、いろいろ御審議をいただいたことと拝察するのでございますが、ここでひとつ思い切った措置として早期公開ということに踏み切ってみようじゃないか、審査請求制度を採択してみようじゃないか、こういう一つの新しいもくろみが提案されて御審議をいただいておるのでありますが、これはこういう変革期で、そうして日本の置かれた立場において、また与えられた状況のもとでは、これは非常に苦心した善意の提案である、したがってこのことについては御理解を願いたいということは、たびたび本委員会で私は皆さまにお願いをいたしたわけでございます。しかしながらこれとても、こういうことで問題がすべて解決するのでございますならば、私はもう政治も行政も楽なものだと思いますが、なかなかそういうわけにいかぬだろうと思います。しかし現状よりどれだけの改善になるかということを着実に踏まえて刈り取っていくのがわれわれの任務であるとすれば、今度の提案のメリットの面は相当買っていただいていいんじゃないかと思うわけでございます。私は特許行政のあり方といたしまして、いま与えられた状況のようなあなたの言われる今日的課題といたしましては、どなたが考えてみてもまずこういうところではなかろうか。なるほど特許制度の中には先ほどからも御指摘になっておるようないろいろな問題がありまするけれども、当面火急の問題としてこのぐらいの改正はぜひ御理解をいただいて実行さしていただきたいというのが私の悲願でございます。
  80. 荒玉義人

    荒玉政府委員 ちょっと御質問の線とずれるかもしれませんが、いわゆる特許行政といいますのは、別なことばでいえば要するに審査をするということでございます。今度の改正もやはり審査をするというたてまえを維持するための手段だろうと私は思います。極端に言いますと、滞貨を一掃するためには無審査で出せば一ぺんに解決するわけです。それでは問題である。したがってやはり審査主義を維持しながら新しい要請にどう適応していくか。したがいまして、従来の方向と私その面において基本的の差があるとは考えられません。審査をするというのはやはり審査官諸君がやるわけでございます。そういった素質の向上をはかる等々、もちろん量的な拡大もそうでございます。こういった点はますます重要になりこそすれ、ちっとも従来の路線と変わるとは私は思いません。ただ、現行法の場合ですと、これはいろいろ前提がございますが、そういった適応力がないから新しい技術進歩に即応するためという意味でございますので、基本的には従来の特許行政というものをさらに質的に確保するという意味でございますので、私はちっとも変化があるとは考えられません。
  81. 佐野進

    ○佐野(進)委員 これは大臣とも長官とも前段は食い違いはないのだけれどもあとのほうでやはり認識の差異——これは与党、野党の立場、与党というか政府側と、われわれはそれを追及する立場だから、しょうがないと思うのです。よく長官自身も言われておると思うのですが、特許庁の役所というものが昭和の初年においてはきわめてりっぱな建物であり、いわゆる大正年間に特許法を公布して、大正十年に今日の母体である新しい特許法をつくった当時における日本政府並びに当時は商工省といったのですか通産当局、あるいは大蔵当局のこの特許行政に寄せた期待というものはきわめて大きかったと思うのです。それはやはり今日工業国としての日本が前進する一つの大きな母体になったことは間違いないと思うのです。それに対して、先ほどから大臣前段のほうで言われておるけれども、いま特許行政に対する通産当局、もっと端的にいうならば特許行政を担当する特許庁が、こういう先輩の先覚的な認識すらも持ち得ないで、当面する問題に迫い回されているということは私はたいへん残念だ、そういう意味質問と意見を申し上げておるわけです。しかしこれはやむを得ないということになるのかどうかわかりませんが、時間もだいぶ経過いたしましたから、その点についてはこれ以上追及することはやめたいと思うのです。  そこで、いままでの質問に対する御意見、お答えを聞いておりますと、私は、当面する特許行政の中で、大臣がたびたび言っておるように、この改正案が必要なんだ、こう言われておるわけなんですが、当面するというその当面の限界は一体どこなのかという気がするのです。いわゆる特許行政というものは半年や一年でそれに対する取り組みが変化するというがごときものであってはならないと思うのです。一番近い特許行政の改正昭和三十四年ですから、十年前です。そうすると、これから最低の期限としても十年間はこの改正案に基づいて行政が運営されていくんだということ、いかに技術革新が激しいといえども朝令暮改は困るんですね。発明者権利が非常に阻害されるし、技術革新に対応するための措置としてもきわめて不適当だと思うのです。十年、二十年という長期的な展望に立ってこの問題の改正ということを考えなければならぬと思うのです。そういうことを考えなければならないということは当然だと思うのですが、大臣いかがですか。端的に言うなら十年ですか、十五年ですか。
  82. 大平正芳

    ○大平国務大臣 この間から御論議の、PCTでございますかへの加盟の問題等も近くに予定されておるわけでございますから、そういう実態的な面におきましては、事態の推移に応じまして改正を余儀なくされてくることが予想されると思うのでございまして、十年、十五年という時限ではなくてそういうことも考えられますけれども、仰せのとおり、一つでき上がった制度というものは、それが制度的にも運用的にも定着いたしまして能率をあげてまいるという必要があるわけでございますから、十年とか十五年とかいう一応の安定、法律的安定、手続的安定を保障していくということは、私は行政上必要であろうと考えまして、今度の制度的な改正はこれが実行に移ってうまく定着していくことを希望しておりまして、よほどの欠陥がない限りは、やはり仰せのように相当の期間安定性を持つべきものだと思います。
  83. 佐野進

    ○佐野(進)委員 長官、いまの大臣のお答えでいいですか。
  84. 荒玉義人

    荒玉政府委員 趣旨はそのとおりに私も考えております。といいますのは、PCTといいましても、それは多項制という新たなる要素が付加するわけであります。PCT下におきましても、早期公開審査請求制度というものをとっていくことは全く矛盾しないし、むしろたびたび申しますが、国際的には同じ方向でございますので、その点は先のことでございますが、むしろPCT後にも寿命を持っていく制度ではないか、かように考えます。
  85. 佐野進

    ○佐野(進)委員 私は特許法というものが改正されるということは軽女に行なうべきでないという立場に立って質問をしておるわけですが、そういたしますと、たとえば最高十年、十五年という形のままでPCTに加盟するという形になってくる場合、いま長官、大臣お二人とも、これはこの改正案の趣旨と全くと言っていいほど合致するから全然問題がない、これは重要な問題ですから問題がない、そういう御答弁がございました。御答弁があったということを前提にしてそれでは質問します。いわゆる改正が当面はないんだ、これで運営していくんだという長期的な展望に立ったということでございますから、そこで質問をしてみたいと思うのですが、それでは、この改正案というものは、いわゆる特許法におけるいままでの考え方について手続法的な改正ではなくして抜本的な改正に通ずる。私は先ほどから手続法的な改正ではないか、こういうように判断せざるを得ないという意味質問を続けてきたわけですが、いまお二人の御見解を承ると、これはいわゆるPCTに加盟した後においてもそのままの状況で続けることができるんだ。十年ないし十五年という期間これが続けられるということになれば、単なる手続でなくして特許法における抜本的改正案、いわゆる早期公開制度審査請求制度、その二つの柱を中心にして組み立てられたこの法律は抜本改正だというぐあいに理解していいわけですね。これは大臣でも長官でもいいです。
  86. 荒玉義人

    荒玉政府委員 抜本という表現だろうと思いますが、たとえばけさほど議論になりました物質特許医薬特許をかりにやった場合に、これは抜本的か。重大な特許要件を——従来非特許のものを今度は特許する、これは抜本的というか重要だというのと、いまの早期公開審査請求制度といいますのは、先ほどから申しましたように、審査主義を維持するための現段階における条件のもとにおける必要な改正であるという意味でございまして、したがって抜本的という先生の表現をどう理解するかということにかかるかと思いますが、私はやはりこの前、実用新案の簡易審査制度を四十一年に出しましたのは、あれはいわゆる審査プロパーの質を変えたという意味では抜本的だ、今度の場合は、ですから抜本と言えないとは思いませんが、審査を維持するという意味においては私は現行法と同じだろう。ただ出願があるのをすべて審査するのをやめた、それは抜本的だとおっしゃれば抜本的だ。審査主義を維持するためだといえばそれは抜本的でない。これはもう私、抜本的だとも思いますが、そういう意味で抜本的かどうかという意味を少しはき違えておるかもしれませんが、審査主義を維持するためのものだという意味では、私はそう基本的に変わっておるというふうには考えておりません。
  87. 佐野進

    ○佐野(進)委員 どうもそこのところはちょっとわからぬですな、私聞いていても。大臣どうですかね。いわゆる手続法的な改正——基本的な抜本的な問題については、大正十年、昭和三十四年と改正を続けてきたいわゆる特許行政、特許法というものですね、これについては、この原則は存置して、だんだん手続上の問題として早期公開制審査請求制、こういうものを加えたんだというような形で提案してきているんだということと、抜本的にいままで行なわれてきた特許行政に対して、いわゆる早期公開制審査請求制というもの——もちろん特許というものは審査がなければ出てこない、これは当然ですが、そういう観点からするならば、まさに抜本的な改正だというように受けとめられるわけですね。受けとめないといろいろ矛盾点が出てくると思うのですが、手続法だと規定しても、手続法の限界はそれではどこなのかということになると、非常にむずかしい問題がそこに出てくるわけですね。だからPCTに加盟するという問題と関連して、この問題の解釈というものは今次改正案の審議にあたっては非常に重大な意味を持ってくると私は思うのですよ。どう大臣お考えになりますか。
  88. 大平正芳

    ○大平国務大臣 長官専門家で、たいへん正直で、世界的な主流である審査主義というものにこれははずれた意味ではないというような点にアクセントがある意見の表明がありましたが、そういう面もありますけれども、私は今度の早期公開制審査請求制度というのは、一つの法の改正としては非常な抜本的な改正であろう、私の政治感覚ではそう思います。
  89. 佐野進

    ○佐野(進)委員 さあまたそこで抜本的改正ということになると、PCTいわゆる特許協力協定、そういうところに加盟したとしても、もうこの法律案が将来の日本、さっきも十年とか十五年とかという具体的な表現で言いましたけれども、にとって固定的な特許行政の期間になっていくわけですね。これからもう、いわゆるそういう国際的な協定に加盟したとしても、何ら日本の行政上においてはそれに制約を受けることなくこの制度が引き続いて行なわれるということになるわけですね。だから手続法的な問題ではなくして抜本的なものだといま大臣が言われた。そういうぐあいにそれは理解するということで長官も問題がないということであれば、私はそういうことになってくるとこれ以上この問題について質問を続けてみてもしかたがないという気がするわけですから、その点についてはここで一応大臣の答弁を聞いたということにしておきます。私はおそらく手続法的な改正だという答弁がなされるのではないかということで質問をしてみたのですが、そうでなく抜本的な改正だということでありますから、これは五十二国会における附帯決議の精神、趣旨、そういうものをこの法律の改正案の中に入れられたのだというような解釈、そういうことで受けとめなければならぬということになりましたから、それではこの問題は質問を打ち切っておきたいと思います。あと問題点があればさらに研究して、次の機会に私がやるかあるいはだれかにやっていただきたいと思います。  いわゆる抜本的な改正だ、PCTに加盟しても問題はないのだということがいま明らかにされたわけですが、そうなりますと、この特許法改正の問題に関して各方面からいろいろ議論がたくさん出されておるわけですが、問題は、その中においても傾聴すべき意見というものは、この改正案の内容に関連して私どもが審議していてもそう強く感ずるわけですが、この改正案を出された特許庁当局の中でも、この問題の基本になるものとして、さっきから早期公開制審査請求制があったわけですが、この二つの問題について具体的に質問をしてみなければならないということになってくるわけです。  まずこの方式ですが、今回のこの方式は先進諸国の方式の中において、どこの国の方式、たとえばアメリカ、イギリス、ドイツ、オランダその他いろいろ特許制度は現存しておるわけですが、どこの国の方式を基本的なものとして取り上げて法制化したのか、その点を長官から説明を求めたいと思います。
  90. 荒玉義人

    荒玉政府委員 大体早期公開、それから審査請求制度という二つが骨子でございますから、そういう意味ではオランダは五年前に実施しております。ドイツは昨年十月から実施しております。したがって、主として、もちろん中身でいろいろ相違しておるところもございますが、やはりそういった両国の制度並びに運用を加味いたしまして、あるいは日本に合った制度を考えているということでございます。したがって、一応モデルといえば両国の制度かと思います。
  91. 佐野進

    ○佐野(進)委員 それでは、西ドイツ並びにオランダが一つのモデル原案として存在した、こういうことでありますから、そのモデル原案である両国のいま行なわれつつある特許行政、これは法律的に確定し実施されてあるのとこのいま提案された原案との差は一体どこに求めることができますか。
  92. 荒玉義人

    荒玉政府委員 まずオランダから先に申し上げます。公開の時期はこれはオランダ、西独と全く同じでございます。それから公開方法でございますが、われわれは全文公開、これは大体ドイツ方式でございまして、オランダの場合にはリストで公開いたします。これは差がございます。それから仮保護でございますが、大体補償金という意味においては全くオランダ、ドイツと同じでございます。ただオランダの場合は特許権発生後でございます。ドイツの場合は公開と同時に行使ができる。ただし、裁判所に行きまして、裁判所がこれは特許性なしと判断すれば中止する。で、われわれは出願公告でございます。オランダとドイツのちょうどまん中ではないかと思います。それから審査請求につきましては、だれが請求できるか、これは同じでございます。出願人及び第三者、これは全く同じでございます。それから新規性の調査機関でございますが、オランダの場合は予備審査請求と本審査と二本立てでございます。予備審査はIIBで大体やることになっています。オランダの場合は新規性調査または審査請求制度どちらか選択である。西独の場合には御承知のように従来民間の機関で、ベルリンに民間の機関がございます。今度法律改正でそれを公的な機関にいたしまして、新規性調査ができる。ただし出願人はいずれか選択できる。われわれの場合は新規性調査機関というのが確定してございませんので、本審査請求一本ということでございます。それからいつまで請求できるか、いわゆる審査の請求期間、これは大体全く同じでございます。それからあとはエッセンシャルな要素じゃございません。  以上が差異でございます。
  93. 佐野進

    ○佐野(進)委員 私はきょう質問をこう続けてきたのですが、長官も大臣も熱心に答弁してくれました。熱心に答弁してくれましたが、だからそのとおりだと思う答弁がないわけです。これは全くすれ違いだということになればそれっきりですが、しかし、大臣の答弁はおおむねいつものごとくですから、私がここでどうこう言うことはないのです。何とかしてくれということですから、何とかすることがいいか悪いかということになるのですが、ただ長官、あなたは当面のやはり責任ある立場に立っておるので、いまの御答弁を聞いていても、結局質問にうまく答えようということについては相当努力をされていることを私は否定しないのですが、この特許行政をそれこそ抜本的にどう解決するかということについての熱意がわれわれのほうにぴんとこないのですね。これは一生懸命こうやってくれているのだからひとつ何とかお互いにいい知恵を出し合ってというような気持ちでない。何か肝心なところへ行くとどっちともとれるような、あるいは自信のないような、あるいは何か表現上においては適切を欠くかもわからないけれどもごまかすような、ごまかして通ろうというようなこういう形、これは特許行政の持つ本質的な、いま改正案として出されている法案そのものの持つ本質的なものじゃないか。いわゆる審議が、ほかの法律案改正特許行政というものを改正してきたことに対して取り組んできたいままでの特許庁長官というか審議会というかそういうような人たちの努力に比べると少しく拙速におちいり過ぎている、慎重さを欠いて取り組まざるを得なかったというように、いかに私どもがまじめに審議しておってもそういうことが払拭できないことじゃないかと思うのです。したがって、これはまだ審議があとあるわけですから、ほかの委員からもいろいろ質問が出ると思います。私は時間的な余裕があればもっともっと質問したいと思って整理した問題が一ぱいあるわけですが、時間がおそくなりましたので、この程度で打ち切りたいと思うのであります。しかし、少なくとも特許というような非常に重要かつ一般的にわかりにくいこういうような法律案改正しようとして取り組まれる姿勢、そういうものについてはいま少しくひとつ十分各方面、なかんずく特許行政を担当するあなたの直接的な関連する人たち、審査官であるとか組合であるとか、あるいは役所の機構にある人たちとか、こういう人たちに対しては、いまからでもおそくないわけですから、もう少し積極的な取り組み、自信を持った取り組みができるような裏づけ、これは時間がありませんから私出せませんでしたが、いまの質問する経過の中であなたのほうではいろいろ感じられたことがあると思うのです。私たちが何を意図して質問しているかということについて感じたことがあると思うので、それを生かすように十分ひとつ努力をお願いするというか要請をしたいと思うのです。  それから大臣、先ほど来申し上げておりますが、特許行政の持つ今日的な役割り技術革新あるいは経済の発展、そういうものの現状の中で持つこの役割りというものは、既存の観念を——やはり抜本改正とは言いながら抜本改正か手続改正かわからないような形の中で、どうなのかと言われたから抜本改正だと言われるような答弁のあり方ではなく、やはり真に現状に合う抜本的な取り組み、こういうものが特許行政に携わる全体的な人を満足させることに通ずるのではないかと思うわけですから、そういう面については、特許庁長官にすべてをまかせることでなく、大臣みずから積極的にこれに対する取り組み、政府としてこれらの問題に対してひとつどう処置することが今日の段階において必要かということについて積極的に取り組んでいただきたい。この二つを要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  94. 大久保武雄

    大久保委員長 本日の議事はこの程度にとどめます。  次回は明十八日水曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十九分散会