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1969-06-11 第61回国会 衆議院 商工委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年六月十一日(水曜日)     午前十時五十二分開議  出席委員    委員長 大久保武雄君    理事 宇野 宗佑君 理事 浦野 幸男君   理事 小宮山重四郎君 理事 藤井 勝志君    理事 武藤 嘉文君 理事 中村 重光君    理事 堀  昌雄君 理事 玉置 一徳君       内田 常雄君    遠藤 三郎君       小笠 公韶君    大橋 武夫君       海部 俊樹君    神田  博君       鴨田 宗一君    黒金 泰美君       小峯 柳多君    島村 一郎君       田澤 吉郎君    竹下  登君       増岡 博之君   三ツ林弥太郎君       岡田 利春君    加藤 清二君       千葉 佳男君    中谷 鉄也君       武藤 山治君    塚本 三郎君       吉田 泰造君    近江巳記夫君       岡本 富夫君  出席国務大臣         通商産業大臣  大平 正芳君  出席政府委員         特許庁長官   荒玉 義人君  委員外出席者         特許庁審査第二         部調整課長   竹内 尚恒君         専  門  員 椎野 幸雄君     ————————————— 六月十日  委員田中榮一辞任につき、その補欠として井  村重雄君が議長指名委員に選任された。 同日  委員井村重雄辞任につき、その補欠として田  中榮一君が議長指名委員に選任された。 同月十一日  委員丹羽久章君、橋口隆君及び栗林三郎辞任  につき、その補欠として三ツ林弥太郎君、田澤  吉郎君及び中谷鉄也君が議長指名委員に選  任された。 同日  委員田澤吉郎君、三ツ林弥太郎君及び中谷鉄也  君辞任につき、その補欠として橋口隆君、丹羽  久章君及び栗林三郎君が議長指名委員に選  任された。     ————————————— 六月十日  中小企業等協同組合法の一部改正に関する請願  (竹下登紹介)(第八三二二号)  同(山村新治郎君紹介)(第八三二三号)  同(岡本茂紹介)(第八四五七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  特許法等の一部を改正する法律案内閣提出第  七四号)      ————◇—————
  2. 大久保武雄

    ○大久保委員長 これより会議を開きます。  特許法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。塚本三郎君。
  3. 塚本三郎

    塚本委員 私は、この特許法につきましては、残念でありますけれども、しろうとでございますので、きわめて技術的、専門的な内容を含んでおります件につきまして、しかと核心に触れることができないかと思いますが、しかし、これがわが国の経済界に及ぼしております影響力がきわめて大きいことは、はかり知れないと思っております。したがいまして、技術的なこと、専門的なことは、先ほど申し上げましたような理由でよくわかりませんので、第三者的な立場からお尋ねをするという形で実は審議を進めてまいりたいと思っております。  最近、滞貨がどんどんとふえるばかりだということで、世間では、はたしてこれで特許そのもの日本の国にあるのか、こんな意見さえも出てきておるような実情でございます。したがって、一刻も早くこれを処理していただかなければならない、これは切実な民間の声でございます。にもかかわらず、実はその期間は長くなるばかりでございます。これをどうしたら早くすることができるか。おそらくこの改正案もまた、当局にしてみますならば、そのような国民の声に応ずべく出された一つの案であろうと思っております。この点に関しまして、このような改正案を出されるよりも、もっと根本的な手をお打ちになることが先ではないかというふうな感じがいたすわけでございます。技術的に改良改革をなさる必要も、私は認めております。しかし、何といたしましても、この問題は人手不足であり予算が少ない、こういうところに致命的な欠陥があるというふうに判断をしておりますので、まず現在まで行なわれてまいりました経緯からいたしますならば、大量に人員をふやし、予算をふやして、そしてこれを急速に片づけていく、その中で一つ一つ見つかりました欠陥を、改良改革を重ねていくというふうな立場をとるべきではないか、こんな感じがいたすわけでございます。大臣、どうでしょうか。
  4. 大平正芳

    大平国務大臣 人員確保いたしまして権利保全に周到を期すということが、仰せのとおり国といたしまして当然の責任であると思います。もし必要な要員確保が可能でございますならば、そういうことが許されるならば、われわれといたしましてはそういう方法をとるべきであると思うのでございますが、御案内のように、年々膨大になってまいります行政組織を押えて、国民の負担を軽くしてまいらなければならないという要請がございまして、三年間に五%の削減というような大方針が打ち出されておりますので、われわれの要求する人員充足という点が必ずしもままならぬ事態に逢着しておるわけでございます。しかしながら、そういう状況のもとにおきましても、ことしもある程度、百名を越す要員確保に成功したのでございますが、明年度以降も仰せのように人員充実確保には、もとよりこういう制約された条件のもとにおいてでございますけれども、大いに努力をしてまいるつもりでございます。それが要求に対しまして十分の充足を可能とするような条件が、行政組織的にも予算的にも、あるいは人材確保の上から申しましても、十分でないということを予見いたしまして、今回のような法改正によりまして当面の困難な事態を打開していこう、こういう方法も考えなければならぬというような事態になりましたことは、あわせて御了承いただきたいと思います。
  5. 塚本三郎

    塚本委員 現在の通産省の置かれている立場からいたしますならば、ただいま大臣が御答弁なさいましたその事態も、私たちは了解できるわけでございます。しかし、あらためて申し上げるまでもなく、申請された案件が急速にふえてきつつある、このような事態の中では、何と言いましても、他の各省、各庁が削減されておるのにかかわらず、百名を越す要員確保できたということは、大臣の御努力のたまものだと私どもも評価をいたすことにもちろんやぶさかではございません。しかしながら、この申請が加速度的にふえてきております、これに対処する方法を考えなければ、これはどうしようもないのではないか。だから現在の行政機構ワクの中でこれを処理なさろうとする、そのこと自体に無理があるのではなかろうか。だからこそ実はこのワクの中でどうしても処置をしなければならないということになると、あちらこちらにはねつゆが出てきてしまう。おそらく通産関係法律案の中で、過去の例の中で、これほどまでに大きく議論されておる問題はないと思っております。それは何と言いましても、外部的要因で急速な技術の進歩と改良改革がなされてきております産業経済界のこの風潮の中で、それを処理するものだけが、現在の旧態依然たる行政組織の中で処理しようとするところに無理がある。だからこそ大臣長官も実はお苦しみになっておいでになると思うので、この経済体制に対処すべきもはや体質が全然できていない、この中で消化しようとするところに、すべての無理が来ておると思うわけでございます。だからこれはもう少し広い見地に立って、しかもこれを処理するにあたりましては、それに対する審査料その他のものをとっておいでになるんだから、独立採算制の問題は後に論ずるといたしましても、まず現在の行政機構ワクそのものを根本的に再検討し直してでなければ、この根本的な解決はあり得ないと私は思うわけでございますが、いかがでしょう。
  6. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのとおりでございますが、行政組織全体に今度の総定員法というのがかぶってきているわけでございまして、これからのがれる道はないわけでございます。問題は、この総定員法全体のワク内における弾力的な措置によりまして、どれだけの必要要員充足できるかという問題に帰着するのではないかと思います。行政組織から離れて、たとえばこれを請負制度にするとかなんとかいうようなことにすれば、全然話は別でございますけれども、行政府の中で処置しようと思いますならば、全体の組織の中で、また総定員法の中でできるだけの要員充足をはかるということ以外に道はないわけでございます。
  7. 塚本三郎

    塚本委員 そこにこの問題の根本的な焦点があるのではないか。その中で大臣長官がお苦しみになっておられても、私は苦肉の策でしかないというふうに受け取るわけでございます。現に役所の中だって監督官庁がございまするし、あるいは公社公団等があるのでございまするから、何らかの形でそのワクの外でこれを処理しなければ、私はどうにもならぬというふうな感じがいたすわけです。しょせんこれをやってみられたところが、いわゆる小細工という形になってしまって、それを促進させるといたしますると、あとで議論さしていただこうと思っておりまするが、いわゆる権利保全に対する問題や審理に対する無責任さというものが暴露されてしまうということで、良心的に特許に対する審査を進めていこう、そして権利に対する保全確保し、さらに発明に対する意欲を増進さしてこう、そういう万般の配慮がなされるといたしますならば、このワクを突き破る以外にはないというふうに私は断定申し上げるわけでございます。それが不可能であるとするならば、これはもう一ぺん再検討する以外にないというふうに私は思うわけでございます。それでなければ、どこかでこちらを押えたために向こうがふくらんでいくというような形にしかなっていかないんじゃないか。だからこの点についてもう一ぺん御検討をいただくことはできないものでしょうか。
  8. 大平正芳

    大平国務大臣 確かにいま塚本委員が投げられた問題は核心をついた問題であると思います。いまの行政組織ワクから自由にならないと、特許庁としての権利保護機能が十分果たせないということはよくわかります。ただ、これは制度の大きな改正でございます。したがって、そういう問題は一つの御提案として、またわれわれが追求すべき問題として検討させていただきたいと思いますが、しかし現実には生きた経済があらゆる瞬間にいろいろな申請を用意しつつあるわけでございまして、それがだんだんとたまってきておる現実を無視できないわけでございますので、今日的な課題をどうにか果たしながら、いまあなたが言われたような根本的な問題につきましては、私どもとしても十分検討させていただきたいと思います。
  9. 塚本三郎

    塚本委員 これは適切な例でないかもしれませんが、私は特許を若干調べておりまして、こういうことが浮かんできたわけでございます。専売公社という組織がございます。     〔委員長退席小宮山委員長代理着席〕 いわゆる公社が行なっておりながら、あまり人体に益はないと思いまするたばこをどんどんと製造いたしております。最近では、女性が吸われることさえも奨励なさるかのごとき宣伝等テレビ等でなされております。このことと特許と思い比べてみるわけでございます。同じ政府監督下におきまして、全く同一視することは適当でないかもしれませんけれども国家的立場に立ったら功罪はあるでありましょうが、何も税金が入ってくるからといってそんなものはどんどんと奨励する必要はない。私は吸わないからよけい申し上げるかもしれませんが、そういう感じがいたします。女性にまですすめるような宣伝政府関係公社がなさる。逆にこれを特許庁立場に立って考えてみたらどうでございましょうか。たくさんの要員をかかえておって、そうして申請が出されてきたら半年くらいの間にイエス、ノーを出してしまう。案件は全部もうなしでございます、さあ皆さんいらっしゃい、こういう立場に立って、日本の持てる財産というのは頭脳でございます、技術でございますということでもって全世界にこの技術頭脳を売り出すのだ。日本の国に資源のない今日では人間だけが実は国家財産なんだ、だからどんどんと発明してください。そしてこれがいいか悪いか、経済ベースに乗るかどうか、そのことも相談に応じましょう。こうして特許庁が大手を広げて国民に向かってさあいらっしゃい、合理的に何か発明をしてください、こういう立場に立って、いわゆる国民からの申請を待ち受けておる。こういう立場に立つことはできないものであろうか。必要のないとおぼしき専売公社女性にまで宣伝をしておる。これも日本政府が管掌なさっておいでになる立場だとするならば、経済ベースに合うならばそれが行なわれておるという専売公社の姿を見てみまするとき、特許もまたいわゆる経済ベースの中で行なわれるものならば、同じような処理というものがなされてしかるべきだと私は思うわけでございます。あとからお聞きいたしまするが、このことによって特許料あるいは審査料等の金額が相当出てまいるようでございます。にもかかわらず、たった一つ行政機構ワクだけに縛られておるとするならば、民間立場になりまするならば、このもどかしさ、いらだたしさというものを早急に解決をしてあげるためには、そういうような体制に置くという形にするほうが国家的に利益になってくるのではないか。御検討なさるというお話がございましたが、私はこの窮屈な特許というものを調べまするについて、すぐそのことが思い浮かんでくるわけでございます。大臣の所感はいかがでございましょうか。
  10. 荒玉義人

    荒玉政府委員 ただいまの塚本先生の御質問は要するに、特許庁つまり特許処分をするところが、いわば仕事性質からいって通常の国の事務とだいぶ性質が違うのじゃないか、したがってそのあたり機構といいますのは、結局中の人に対してどうするとか、いろいろな問題が含まった意味かと思います。ただ、事務的な話で恐縮でございますが、特許というのは御承知のように出願人発明者独占権を与えるわけでございます。いわば一種の国の形成処分といいますか、権利付与する行為でございます。したがいまして、そういった行為行政組織と別なところでやれるかどうかという点が、きわめて事務的な答弁になるかと思いますが、一番の問題ではないかと私思います。ただ、おっしゃいますのは、運用その他でできるだけもう少しフリーな、たとえば金の面その他の面で実態に合うような体制かどうかという点に主眼があるかと思いますが、ただいま申しましたように、行政組織からはずすといった場合に、いま申し上げた点が実は最大の点かと思います。はなはだ事務的な答弁で恐縮でございますが、さように考えております。
  11. 塚本三郎

    塚本委員 そのことは、たばこを売ることと永久の権利、ある程度の長期における権利付与することとは同一に処置することのできないことは私も承知をいたしております。ただ大臣が、総定員法の中で、そして五%削減するという大ワクの中で縛られるとおっしゃるから、それではもはやそのことはいかんともしがたい問題なんだ。なれば通産大臣の問題ではなくて、総理大臣自身の腹がまえになってしまうという形になってしまいますので、私は、そういうふうな、通産省の中でこのワクをどうしても守る中において、いわゆる無理な人員確保をしなければならぬというふうなことになってきますれば、どうしても中で反発が起こってしまうことは当然なことだと思うのですね。     〔小宮山委員長代理退席委員長着席〕 そして、いわゆる仕事がふえてきたことは内部要因ではないと思うのですね。日本をささえておる経済的な要因であり、あるいはまた国際的なそういう要因が中心であるわけでございます。それを、この場所において、いわゆる総定員のワクがあるからどうしようもないのだ、その中でのいわゆる限界のある努力しかできないとするなら、もはや私は特許そのもの経済ベースに合わぬということを最初からあきらめてかからなければならぬという感じがいたすわけでございます。私はそれでは困るというふうに思うのでございまするが、何らかの形で、いままでのような窮屈な行政機構から一歩、いわゆる風穴をあけるといいますか、そういう処置もぜひとも必要だというふうに観察されるわけでございまが、いかがでしょう。
  12. 大平正芳

    大平国務大臣 いま国がやっております三公社、鉄道にいたしましても、電電公社専売公社、これは考えようによっては民間に移してもひとつもさしつかえのない仕事で、沿革的にこれは国が全額出資という形でああいう企業を経営しているわけでございます。ただ特許の場合には、いま長官からもお答え申しましたように、一つ権利形成付与という、行政権に固有の権限の領域に属する仕事をやっておるわけでございますから、これは民営でやるということはできないわけでございます。ただ、非常に人知が発達いたしまして、こういう一つのインテリジェンスといいますか、目に見えない権利形成作用というようなものも、これを処理する場合、そういうものでありながらくふうの余地がないかという点については、先ほどあなたが指摘された問題について、私は十分検討しなければならぬと思います。しかし、これは行政組織そのものをもっと根本的に考え直してみなければならぬわけで、いまの行政組織で沿革的にでき上がったものでございまして、新しい時代に十分の適応力を持っておるかというと、必ずしもそうでないものも多いわけでございますから、行政組織全体を点検いたしまして、新しい時代の光で一ぺん照明を与えて、そうして特許庁のいわゆる目に見えない権利付与というサービス、そういったものを十分にやってまいる場合にはどういう仕組みが適当かというような大きな課題が私はあると思います。そういう意味においてあなたの御質問を受けとめて検討いたしたいと思います。  ただ、第二の点で塚本さんがおっしゃるように、もうそこに限界があるのなら、あと手をあげるより手がないじゃないかということにつきましては、まだあきらめは早いのではないかと私は思うのでございます。権利保護という点はもちろん一番大事なことでございますけれども、この前の御答弁にも私は申し上げておいたのでございますが、国家権力というようなものが国民のしあわせのためにどれだけのことができるか。揺籃から墓場まで国にまかしておいたらだいじょうぶだというような、そういう極限的な福祉国家というものは実際はないわけでございます。国が保護できる幸福とか、安全とか、権利とかいうようなものは、そのそれぞれの国が持っている能力によって制約を受けるわけでございます。百点満点はなかなかとれないわけでございますが、いろいろなくふうのこらし方によって、権利保護のやり方をこのようにくふうしていけばこうなるじゃないかというくふうは、やはり依然として追求しなければならないわれわれの目的でなければならぬ。今度の改正案も、私はそういう一つの試みであると思います。たびたび申し上げているように、これでいろいろな問題が片づくなんというように甘くは考えておりませんけれども、現在の状況を一ぺん改善していく建設的な提案としてこれを評価して、われわれはこれでいろいろな問題が片づいてというように、これを大いにプレイアップする考えは毛頭ないのでありまして、これは現状の困難を一歩打開する建設的な提案として御理解をいただこうという意味で一生懸命になっている次第でございます。
  13. 塚本三郎

    塚本委員 長官にお尋ねいたしますが、実にけなげな努力というふうに私は受けとめてきた。そしてこの中身がプラスになるかマイナスになるかということについては、私は全く判断を下しかねている。ただしかし、何とかしなければならないというそのけなげな御努力に対してだけは、野党の私どもも敬意を表しておきたいと思いますが、しかし、それだけで民間が期待するような権利付与の結果を与えていただくことができるであろうか。この技術革新のテンポの早い時代に、特に自動車産業電気産業などの業界の諸君などと会ってみますとき、いわゆる勝負はわずか半年なんだという事例がたくさんあるわけでございます。このときに、実は三年、四年という歳月を待たなければならないといりような今日の事案を急速に解決をしなければならぬとするならば、あきらめよと私は申し上げるわけではございませんが、全くこのままで功を奏したとしても、わずかながら短縮をされる希望は持つことができるかもしれませんが、根本的な、いわゆる国民が期待する特許そのものに対する解決にはなり得ない。その大ワク先ほどから議論されているいわゆる行政組織に突き当たってしまうということであろうと思います。もう一度この点、なぜそれではこんなに処理がおくれてきているのかということ、おそらく外部的要因によっておくれるということは明らかな事実だと思いまするが、長官どうでございましょうか。
  14. 荒玉義人

    荒玉政府委員 出願処理関係でございますが、出願はもちろん外部要因でございます。日本が特に急増しております。大体先進工業国でございますと、年率せいぜい一、二%というところだと思います。日本の場合は、これは年次のとり方にもよりますが、十年をとれば七%近い。最近五カ年で、先般この委員会で御議論ございましたが、四ないし四・五%。したがいまして、先進工業国伸び率よりは飛躍的に高い。これは日本状態がここに反映されておると思います。一方、処理でございますが、これは日本のみならず、大体審査国におきましては世界共通した現象でございまして、一人当たりの処理件数、これは上がることはございません。下がる一方でございます。なぜ下がるか。御承知のようにまず中身が複雑になっております。審査といいますのは、御承知のように、出願中身を理解いたします。したがって複雑になれば時間がかかる。一方、理解された中身と過去のものがどういうふうな関係になるか、これが審査でございます。過去のものは減るわけじゃございません。ふえる一方でございます。そういった意味で全体の処理能力が相対的に下がってくる。したがって、出願処理のアンバランスというのがいまの状態の端的に申しました理由でございます。これは何も日本だけではございません。世界的に一つの共通した現象でございますが、先ほど言いましたように、日本出願が飛躍的だというところに、世界で最も深刻な問題をかかえているわけでざざいます。ただ、その場合に、さっき塚本先生おっしゃいましたのですが、大体特許といいますのは、きわめて早期の段階のものでございます。科学のほうでございますと、いわば実験室段階特許発明というものが出てくるわけでございます。ところが、あとで開発していく、それを生産をして、商業的な成功を博するという段階、これはやはり相当時間がかかるわけでございます。したがいまして、先ほど話がごさいましたが、大体半年という——特許ということは、通常の場合、むしろ世界的でございますが、大体二年から三年ということが一つ目標になりますのは、先ほど言いましたように、発明を達成したあとのいわばアフターケア、これにやはり企業自身が時間がかかるわけでございます。もちろん発明性質によりますが、一般的に見れば、二年ないし三年というのが少なくともいまの技術、スピードのもとにおいては一つ目標かと思います。したがいまして、われわれの目標は、やはりそのあたり、二年、三年というものをどう達成していくか。大臣先ほど言いました半年という目標では考えてございませんが、二年、三年の間を目標にどうしていくか。そのためには先ほど言いましたような人員その他の面も必要でございます。もちろん運用面の改善も必要でございます。あわせてやはりこれ以上滞貨をつくらぬという一つ制度的な保証、これが同時に必要だというのが、私は制度改正の基本的な方向ではないかと考えております。
  15. 塚本三郎

    塚本委員 基本的なことばかり議論しておりましても進みませんから、改正案中身に多少触れてみたいと思っております。  最初申し上げましたように、私はこういう技術的なことには全くしろうとでございます。ところが、ここに特許法改正に関する陳情書というものが名刺を添えて私のところに再三届けられております。私どもこういうものを読ませていただきますと、全く迷ってしまうわけでございます。長官承知でございましょうから、ちょっとおもだったものだけ読んでみます。「この制度改正に関する効果試算はすべてでたらめであり、この制度改正に適用できない。」これが一つ。それから、「この制度改正は、秘密保持の義務より外注制度を優先させる最悪の制度である。」あるいは「この制度改正は、一件当たりに要する仕事の量を激増させ、事実上審査事務を不可能にする。」あるいは「この制度改正は、審査主義を崩壊し、実務上無審査主義をとる最悪の制度である。」「この制度は、その法案の提出理由である処理の促進にならない。」「この制度は、処理の促進にならない限り早期公開のメリットが生じない。」こういうような全く極端な表現が内部から私どもに陳情書として出されているわけでございます。多少ニュアンスの違いや技術的な見解の相違ということについては、私どもは常にあり得ることだと思うわけでございます。しかし、私どもこういう技術的なことに対して、私にしてみまするならば、全くいままでに携わったことのない法案でございます。そういう中で同じ特許庁の中で百八十度の違いが私どものところに叫ばれてまいりますると、私どもは全く戸惑ってしまうわけでございます。しかも、この問題は少しもイデオロギー的なものをはさんでみたり、政治的な問題ははさむ余地のない表現が使われておるわけでございまして、実務の上から百八十度の違いが表明されておる。私は、政治的な立場においてこういうことがなされるならば、あるいは当局と労働組合あるいは審査官との立場というものもあり得ることしばしばだと思うわけでございます。そうではなくて、いわゆる実務処理にあたっておそらくこんなものはイデオロギー的なものをはさむ余地は全然ないものであり、そして実際にそのことを詰めていくならば、ある程度のことはでき得る。もちろん先のことですから、予見が違うということもありまするが、外国の例もあるでございましょうし、現実に詰めていきましたならば、私はそういう感情やイデオロギーや政治的な立場やそういうものの違いではない、いわゆる差しはさむ余地のないような明々白々たる技術的、実務的なことについて、この五項目あるいは七項目にわたりまして、全く相対立した意見が届けられるということは、私たちにとって、全く苦しまざるを得ないわけでございます。こういうことに対しまして長官はどのような御判断をなさっておいでになるでしょうか。
  16. 荒玉義人

    荒玉政府委員 まず、個々の項目の前の問題についてお答えをさしていただきます。  われわれ内部におきまして、もちろん本委員会でもたびたび申し上げましたように、答申段階以前、以後につきまして、それぞれ専門分野を通じまして、今後こういった新しい制度のもとではどうなるかということをそれぞれの分野で検討してまいったわけでございます。もちろんわれわれといたしましては、官側のそれぞれの組織を通じまして、それぞれの項目につきまして検討してまいるわけであります。一方、組合の諸君からそれぞれ具体的な話も私どもいろいろ聞いております。そして、私が全体で話すと同時に、それぞれの専門家は専門家同士で、いろいろな詰めといいますか、話し合いを進めてまいったわけでございます。しからば、専門家同士でどうしてそんなに合わないのかということでございます。これは、たとえば一番大きな問題は、要するに効果があるかどうか、これにかかってくるわけです。効果の点につきましては当委員会でもしばしばお話し申し上げたかと思います。われわれは、この制度のねらいは、要するに現在のように一〇〇%審査をするということはやめましょう、請求あるものだけやります。そうすると、大体請求率それ自身が、繰り返し申しますように、現在滞貨のものは八五%、新しいものは特許八〇%、実用新案七〇%、こういったいろいろ想定がある。こういったアンケートをそれぞれ業界でやっておりますが、それは根拠はないということになれば、そこらあたりに問題が出てくるわけでございます。あるいはこの前からも申し上げましたように、新しい制度をしきますと、一人当たりの処理が減る面がございます。たとえば審査前置制度、従来審判してやっておったものをむしろ審査でやらしたほうが合理的だということになれば、特許庁全体としては大幅に得でございますが、審査にもちろん従来にない負担がかかります。あるいは先後願の審査はどうなるか、あるいは補正が入るとどうなるか、そこらあたりでそれぞれのデータを出し合って議論を詰めてまいったわけでございます。ただ、これはある程度将来にわたる問題でもございます。そこらあたりに完全な意見の一致を見てないということが端的に申しましてございます。したがいまして、それぞれの問題につきまして、われわれとしては、むしろ私が話すというだけでなくて、それぞれの専門家同士の話し合いを進めてまいったわけでございます。先ほど言いましたいろいろの点につきまして、これはなるほど将来のこともございまして、あるいはいろいろ見方の相違もございまして、完全な意見の一致を見なかったことは残念でございます。したがって、それがまずベースではたして効果があるかどうか、それがあとで無審査になるかどうかという問題につながるかと思います。これは御承知のように無審査にしないからこういう制度をつくるわけでございます。初めから無審査でやるならば、こういう制度よりもっと端的な方法があるはずでございます。無審査といいますのは、これは経済界にむしろ悪影響があるという前提でこういう制度を考えるわけでございます。無審査になるというに至っては、これはいささか考え方が基本的に違ってくるのではないかと私は思っております。  あと外注制度、これはどういうことかと申しますと、現在公報を特許庁が発行いたしております。現在の公報は一応よろしいという段階出願公告するわけでございます。従来はわれわれの中の工場で印刷して発行しておりました自家生産でございます。しかしなかなか工場能力は急激にふえません。一方出願公告の件数は多くなりますので、外注にずっと前から切りかえております。今度公開公報の場合でありますと、特許庁のそういった面での能力の拡充といいますのは、先ほどから大臣がいろいろ人員の面で申し上げましたように、やはり何をおいても特許庁といたしましては、全体の中でも特に審査系、そういった面で重点的にやる。もちろん事務系もやるわけですが、工場の能力をそこまで拡充する余力はございません。したがいまして、公開公報はあげて外注に依存するたてまえでございます。それは現在も秘密保持義務というのがありますが、できるだけ業者も限定いたしまして、秘密保持の見地から支障のないような形でやってまいったわけでございます。今後は、公開公報はむしろ特許庁能力を拡充するよりは、秘密保持というものを確保しながら、やはり経済ベースでやっていくという問題でございまして、これはいずれがよりベターか、私はむしろ今後は外注でやるということが特許庁として絶対に必要だ、かように考えております。  あとの問題につきましては、大体以上の二点を中心とした意見でございますが、それに対しまして従来のいきさつなり私の見解を率直に申し上げた次第でございます。
  17. 塚本三郎

    塚本委員 私が読み上げましたこの陳情は三月のことでございまして、その後若干表現等はゆるやかになってきておるように、比べてみますると変わってきております。しかし、いずれにいたしましても、担当者自身が、かえって能率が落ちるのだ、こういうような表現を使っておられるのですが、私が読み上げましたのは、いってみればちょっと極端な表現が使われておるかと思われます。ニュアンスの問題じゃないということが思われるわけです。その後今日まで相当長官も御努力なさって話し合いが進められたと思いまするが、いまはこんな空気ではないというふうに受け取ってようございますか。
  18. 荒玉義人

    荒玉政府委員 三月といま先生おっしゃったわけでございますが、空気という問題からいえば、私は三月時点と残念ながら変わらないかと思っております。
  19. 塚本三郎

    塚本委員 これは実際にやってくれる諸君がこんな表現を使われておったら、まことに残念でありまするが、法改正した意味がなくなると思うのです。しかし、にもかかわらず長官大臣が熱心にこのことを推し進めようとなさっておいでになるのは、ある諸君たちの部分がこういうことであって、大勢はそうではないという確信があったから、こういうふうにこの法案を通そうと御努力なさっておいでになるのだと思いまするが、おおよそこういう考え方を持っておられる人は全体としてどんな程度でございますか。
  20. 荒玉義人

    荒玉政府委員 本委員会でもたびたび申し上げたかと思いますが、先生御承知のいわゆる署名という問題がございます。私といたしましては、だれが署名してどういうことかということを、署名した諸君にたびたび言っております。しかし、これは手元に届いておりません。したがいまして、はたして何割かという点につきましては、客観的に私は先生にお答えできるほど材料がございませんですが、まあ一部は何ぼかということでございますが、私は、いろいろ組合運動として出てきておるわけでございますが、いまの何割という点は確かでございますが、少なくとも全部がそういうことであるとは考えておりません。ただそれが五割か、四割か、何ぼかという点につきましては、先ほど言いましたように確たるあれはございませんので、さように考えております。
  21. 塚本三郎

    塚本委員 もちろん私はその点をここで言明してもらう必要もなければ、そんなことが効果があるとは思っておりません。ただ私どもが心配いたしますることは、熱心に制約せられた今日の行政組織の中で大臣長官もがんばって、この制約の中で何とかしようとする努力が実ったといたしまして、法律が成立をしたといたしましても、過半数の諸君がかえって事務が落ちるのだとか、あるいはいわゆる効果試算はすべてでたらめだというふうな受けとめ方をしておる諸君が過半数であったといたしまするならば、法律効果は全く期待できないことになる。かつて同僚議員の中から法的安定性ということばが使われたことを、私はきわめて印象的に耳にいたしております。せっかく法律ができ上がりましても、それに携わる諸君の態度がこういうことであったとするならば、あるいは中身はよかったかもしれない、しかしそれを実施するにあたって、そういう諸君がそういう態度で受ととめておるとするならば、この法律自身の安定性はきわめて少ないといわざるを得ない。だけれども、できてしまえばそれはもういたし方ないからやるのだという日本の従順なる役人の人たちの習性を見通してそういうことは心配ないのだというふうなお考えなのか。私どもが心配いたしますることは、こういう激しい、しかも最初から申し上げておりますように政治的な立場やイデオロギーの問題ではない、技術的な問題で対立しておるというふうなこの問題は、重視せざるを得ないわけでございます。このことは、せっかく御努力なさって法律ができ上がってみて、それが運用によって全くその効果の上下もまた左右されるであろうこの法律に対して、当事者からこういう意見が出ておるということに、私は憂いの気持ちを表せざるを得ないわけです。何割かということは申し上げませんが、この法律ができたときにはこういう声というものはおのずから解消させる自信があるというふうにでもおっしゃるわけでございましょうか。
  22. 荒玉義人

    荒玉政府委員 当委員会でもたびたび私申し上げたかと思いますが、前向きに、具体的に、建設的な話し合いは、従来もそうでございますが、今後も私進めてまいりたいと思います。したがいまして、やはり何といいましてもいま特許庁の置かれておる環境あるいは外部の要請——特許法というものは審査官諸君のための特許法ではございません、それは日本経済のためであり、そういった状態におきましては具体的にどうしていくかという話し合いをわれわれはもちろん過去といえ将来といえども続けてまいりまして、先生の御心配な点、つまり執行の、実施の円滑化に全責任を持ってやりたいと、かように考えております。
  23. 塚本三郎

    塚本委員 最初に私は、これはやはり基本問題にぶつかるわけでございますけれども出願件数が急激にふえてきている、片方は処理能力はこれだけなんだ、そういう中でこれをふやせば何ともならない、しかもこれからお金を取っているのだから。だからそれは並行していけば何ともならないことだと思うのですが、これが行政組織の中で無理をしていかなければならない。結局そのこと自身が、審査官をはじめとする事務担当の諸君のもとに重荷となってきておる。このことがいわゆる感情的な反発だけで済むならばいいのですが、かえってそのこと自身が無審査のような形になってしまうという、いわゆる非難というよりももう押しつぶされそうになった非鳴の芦になってきているのではないかというふうな、だから大ワクを検討しなければ、実際には効果は、根本的な解決はあがらぬのではないかと思って、最初から約三十分にわたりまして、このことを大臣長官とも話を進めてみたわけでございます。だから私は、こんな極端な表現には大勢がなっておるとは思いませんけれども、にもかかわらず、この際、いま予定されておりまする人員よりもさらにさらに要員確保すること、予算確保することこそが、こういう声をなくしていく最も大事な道だというふうに考えるわけでございます。大臣、いかがでしょうか。
  24. 大平正芳

    大平国務大臣 部内にいろいろ意見があることは私も承知いたしておりますが、これは長官がその職責におきまして十分吸収し、評価し、判断して処理いたしますことを私は期待いたして、信頼いたしております。  それから、私が実は二つの疑問を持ちまするのは、この法改正が審議会で長い間検討された、そしてそれからさらに行政組織の手順を踏んで立案された、国会に提案された、そういう長い過程を通じまして、いろいろな部内の意見というようなものは、その手順に従いまして吸収されておるはずである、またさるべきものでありまして、全然法改正に無縁な意見がばらばら出てまいりますというようなことでは、いかにも私多少疑問に思います。それから、もしかりに評価、意見の違いがあったといたしまするならば、いま長官が言われたように、特許庁の置かれたいまの状態、環境に対しての適応力をどうすれば増すことができるか、対応力を増すことができるかについて建設的な意見が、いまあなたが読み上げられました御意見の中にも出ていなければならぬはずだと思うのでございますけれども、そういったことがないことをたいへん私は遺憾に思うのでございます。私も荒玉君も、特許法改正について、ただこういう事態を何とか改善せねばならぬという一念にほかなりませんで、それ以外に何らも邪念がないわけでございます。われわれがこういう態度で日に日に対処してまいりますならば、部内の方々それから部外の方々にもだんだん御理解をいただいていくものと私は思いますし、またそうしなければならぬと思います。しかしながら、たびたび申し上げますように、法改正が万能であるとは決して思ってはいないわけでございまして、いろいろな制約がございますけれども、行政能力を向上、充実させていく上におきまして、予算人員等の増強につきましては、各方面の理解を得まして格段の努力を傾注いたしまして、実をあげてまいらなければならぬと考えております。
  25. 塚本三郎

    塚本委員 なればこそ、私はけなげな御努力というふうに申し上げておるわけでございます。この問題に対して対案がないということ、私もそのとおりだと思います。大臣自身でさえも、いってみるならば制約された中における権限しかこの問題についてはないような、なぜならば、総定員法という大ワクの中でしか処理ができない、こういう最初からある程度の壁をもう背負っておられるという立場でございます。そういたしますと、よけいに組合なりあるいは審査官の諸君はさらにさらに追い詰められた立場でしか表現をすることができなので、あるいは彼らは彼らなりに、こうしたならばいいんじゃないかというような御意見があったかもしれない。その点長官どうでしょうか。このままではだれもいいとは思っておらない、だから何らかしなければならないということの彼らの集積がここへにじみ出てきたと私は思っておりまするが、そのことは内部の携わっておる諸君といえども、決してどうでもいいという気持ちはお持ちではないと思うわけです。何らか具体的にどうすべきかという意見を吸収するような機会をお持ちになったことがあったでございましょうか。
  26. 荒玉義人

    荒玉政府委員 役所の中、組織を申し上げて恐縮でございまするが、普通のルートは、それぞれの職域を通じて、改正問題その他の意見をそれぞれ持ち上げまして、そしていろいろ内部の企画委員会を中心にいたしまして、特許庁として今後どういう問題をどうすればいいかと検討するのが普通のルートでございます。改正でいえば、それぞれの改正委員会がございまして、技術の専門家、事務の専門家、それぞれが集まりまして、それぞれの各部各課を通じまして、こういう問題についてはこうしていく、とやるのが、いわば通常組織でございます。問題は、そういった官側の通常組織と別に、御承知のように組合もございます。そういう諸君との話し合いは別で並行的にやってまいるわけであります。昨年の四月十九日に、いわば今度の改正の骨子であります審議会の中間報告があるわけでございます。したがいまして、そういった過程を経る前におきましても、具体的にそれを組合諸君に私は申しまして、具体的にどうすればいいのかという話は、私も聞きました。私だけではございません。そういう形でお互いに討議を重ねていく。ただ何回かやる過程におきまして、先ほど言いました、残念でございますが、たとえば人員を飛躍的にふやせばいいんじゃないかという意見はもちろんございます。これも、先ほどからの御審議で申し上げたように、それだけでは解決策にはならぬ。したがいまして、たしか大臣も申し上げたことかと思いますが、われわれといたしましても人員予算、当然必要なものは将来といえども確保しなければいかぬ。ただ、人員を拡大して問題を解決するということになりますと、やはり解決策として、それだけではなかなか全部事が済まないということでございますので、その他そういった具体的な話で、ほんとうにわれわれが考えなければいかぬという問題を、やはり私も討議いたします。そういった形でさらに一そう、いまの官側のルートだけでなくして、そういった具体的、建設的な意見をわれわれとしても討議してまいりたいと思いますが、先ほど言いましたような制度改正を含めた討議の過程におきましては、やはり人員増ということ以外に、なかなか建設的な意見を聞かれなかったのは残念でございます。さような状況でございます。
  27. 塚本三郎

    塚本委員 私は、最初申し上げましたように、この問題は全くしろうとでございます。技術的にわかりませんものだから、率直に耳に届いた意見としていまお聞きして、私は立場を持っておるわけではございません。だが、客観的に、ほかの事務処理の問題でありますれば、行政官庁の上からの指示、命令が消化されてしかるべきだと思っております。しかしこの法律案自身は、いわば処理をいかに促進させるかということだから、内部の意見というものに大きな比重を加えていかなければ効果をあげることができないという意味で、その最も大切なものが違った形で出てきておることを、私は重ね重ね残念に思っておるわけでございます。しかし、いまお聞きいたしてみますと、人員増以外には声が出なかったということでございますから、それ以上突っ込んでお聞きするわけにはまいらぬと思いますが、こういう声がございますね。かえって個人の発明家に対する発明意欲を減殺をしてしまうのではないか。おそらくこのことは、いわゆる審査あるいは請求の料金の問題等にからんでこういう意見が出てくるのではないかというふうに思いますが、この意見に対しては長官、どうでございましょうか。
  28. 荒玉義人

    荒玉政府委員 その意見は、まず中身を私の承知した限りで申し上げますと、一年半で公開をしていく。そうすると、現在では御承知のように一応審査をしておおむね仮合格、よろしいというところで出願公告をいたします。出願公告いたしますと、現行法では、特許権と同じ効果、差しとめ請求権だけは認めていない。今度改正法規で認めますが、いわば特許権と似た法律効果を持っていく。公開されると補償金請求権では非常に発明者にとって問題ではないか、ポイントは私はそこじゃないかと思います。実はたびたび説明会を私全国でいろいろやりまして、最後に一番大きな発明協会の説明会でそういう話が出まして、どちらに賛成するかということを最後に話しておったようでございますが、むしろ発明者の意欲を阻害するというほうがその場合では少なかった。もちろんこれは全部ではございませんが、主としてそれにポイントがあると思います。それにつきましては、発明者の意欲というものは、できるだけ早い時期に審査を終わってもらって一人前の特許権を得るということが、真の発明者の利益ではないか。したがいまして、今度の請求制度というものは全体を早くしょうということでございますから、そういう意味発明者の利益に合致していくということを私申し上げておるのでございます。ただ問題は、公開されてから補償金請求権でどの程度の保護があるか、当委員会でのしばしばの論議の点はそこでございます。それにつきましては、この前から申し上げましたように、補償金請求権というものを与えることによって、さらにそうしますと、この前から議論があったかと思いますが、裁判所に行かなければいけない。そうすると小発明者は裁判になかなかいけないし、困るじゃないかという問題がございますが、それはわれわれといたしましては、何らかのあっせん機関、これは発明協会のほうに御了承を得まして、本年度五百万必要ならば予備費から出すということで話をしております。そういった機関を通じまして、小発明者の方々の利益を保護していきたいということによりまして、いま申し上げましたような点を補っていきたい。したがって全体としては、本改正をしたために発明者の意欲がそこなわれるというふうには考えられない。もちろんそういった方々の意見も私聞いておりますが、全体を観察してみたときに、さらに一歩前進していくというふうに考えております。
  29. 塚本三郎

    塚本委員 この改正案が通りました暁の結果と、これが通らなくてこのまま現行法でいくのと、長官立場で、何年くらいかかって結論が出るのか、その処理に要する年月ですね。通ったときと、このまま現行法でこれからいく、たとえば二年後あるいは三年後というのを想定してみたときに、あくまでこれは試算でありまして、先ほどの組合の一部の方の御意見で見ると、でたらめだという試算がありましたが、しかし長官長官なりにおそらくこのことに誠意を傾けてあらゆる御検討をなさっておいでになると思いますが、改正案が通った場合と、現行法でいく場合と、いわゆる年月においてどんな見通しの差が出てくるか、この点はどうでしょう。
  30. 荒玉義人

    荒玉政府委員 当委員会で問題になりました与件を差し引きまして結論だけを端的に申し上げますと、大体現在は御承知のように要処理期間が四年七カ月、これはもちろん平均でございます。四十三年度はいわば未処理処分が六十八万件ございます。そうして処理いたしましたのが、十四万五千件、もちろん処理能力は年ととも一に増大はいたしますけれども、一応現在の時点で六十八万件を十四万五千で割りますと、大体四年七カ月の審査期間でございます。それを、一応四十八年度をとりまして二年六カ月を目標に考えております。もちろんさっき言いました出願の予測とかあるいは人員をどれだけ投入するか、あるいは請求率が幾らあるか、あるいは新しい制度のために一人当たりダウンするか、そういうのを全部勘案してそう考えております。やらない場合には大体四年一カ月ぐらい、したがいまして四十八年度を見ますと差し引き一年六カ月程度の差があるというふうに一応の見通しを立てております。
  31. 塚本三郎

    塚本委員 四十八年度のときに荒玉長官が現在位置においでになることはまずないと思います。おいでになるならばどんなものだといって胸を張って歩いていただくこともできるでしょうし、できなかった場合、実際あのときの試算は全くでたらめであったと組合の諸君から非難を受けることもできるでしょう。しかし日本行政組織から言いまして、そのときにはまだ二人ぐらい長官がおかわりになるという過去の例から考えてみまするとき、このことはあくまでも推定にほかならぬと思います。しかし長官がそのように確信を持って述べられますることについて私はそれを承っておくことにいたします。  先日当委員会で、一つの会社で最も多いのは七万からの出願が出ておる、こういう発言が実はありまして、申しわけない話でございまするが、最初から申し上げておりますとおり、私はこの件についてはしろうとでございまするので、異様に聞こえたわけでございます。六十八万件という膨大な未処理があるというと、私ども目をまるくするのでございますが、しかし一方、一つの会社で七万から出願がなされておるということは、さらにさらに異様なことだというふうに思うわけでございます。そんなに万を数えるような出願をする会社が幾つもあるのでございましょうか。
  32. 荒玉義人

    荒玉政府委員 先般の委員会で私申し上げましたのは、上位三社、いわゆるビッグスリー、そのときたしか概数で七、八万件と申しましたが、もっと正確に言いますと、四十四年三月におきましてはこれらの上位三社、大体電気関係でございますが、六万八千八百十六件、ただし三十九年以降ですが、大体三十九年でカバレージはほとんどなると思いますが、これは上位三社でございます。
  33. 塚本三郎

    塚本委員 そういたしますると、たとえばこんな数字はつかんでおいでになりませんか。千件以上出しておりまする会社というものはどれくらいあるとかいうようなこと。私どもの常識からいたしますると、大きな会社だけで特許庁を独占してしまっておって、小さな個人の発明家やあるいは中小企業者等のそういうものが割り込む余地のないような、もう独占的に網の目を張りめぐらしてしまっておる、こんな受け取り方さえもできるわけでございますが。
  34. 荒玉義人

    荒玉政府委員 いまちょっと数字等はあれですが、当委員会でたしか中谷先生の御要求に応じまして、符号で各社の件数を出しておるはずでございます。ただ、いま先生おっしゃいますように千以上がどのくらいあるかということについては、いまちょっと集計しますが、委員会の資料としては提出済みでございます。
  35. 塚本三郎

    塚本委員 ビッグスリーだけで六万八千八百十六という出願が出ておるといたしまするならば、このビッグスリーといった特別のものだけじゃなくして、それに比例して、おそらく万を数えあるいは数千を数えるような会社が相当数あるというふうに、資料を見なければわかりませんが想定をされるわけでございます。こうなってまいりますと、私どもは真剣に取り組んで、これはたいへんなことだというふうで六十八万件に対して頭を悩ましておりましたが、いわばそういう大どころだけすっとくみ上げてしまったら、実際には個々の、私たちが接するようないわゆる一般の市井人の持つ特許というものと差別することには、法的にあるいは政治的にずいぶん問題があろうかと思います。しかし何か大きな会社だけがどっかりと特許庁の入り口に腰をおろしてしまって、そしていわゆる通せんぼをしておるというふうな受け取り方さえもできるわけでございます。これはしろうとじみた質問でございますが、いかがでしょうか。
  36. 荒玉義人

    荒玉政府委員 大企業、中小企業、個人がどういう関係にあるかというデータをちょっと申し上げますと、これは年次によって違いますけど、データがちょっと古うございますが、大体おおむねのところはわかると思って三十七年の出願で申し上げますと、特許で申しますと、大企業は六四%、中小企業は二二%、個人が一四%でございます。それから実用新案は、大企業四七%、中小企業三五%、個人が一八%、この個人はあるいは大企業的な個人もございますが、どちらかといえば中小企業が多いかと思います。全体における比率はそういうことでございます。ただこの比率は逐次大企業が比較的多くなるという傾向にはございます。以上でございます。
  37. 塚本三郎

    塚本委員 これはまた根本的な問題に移りますが、特許料の問題あるいは金の問題にからんでまいりますが、大臣どうでしょうか。一部には特許料、手数料等を今度相当値上げして、いまでも黒字になっておるのが値上げされることによってさらに金がふえてくる。だから特許でもうけぬでもいいじゃないか、こんなものはもう一ぺんもとに還元させればいいじゃないか、そして審理促進をさせればいいじゃないか。これも最初の、いわゆる行政組織ワクの外にはみ出すからむずかしいとは思いまするが、独立採算にしてやっていくならばもう少し人を入れて、いわゆる予算的な面だけ独立採算にしたならば、権限その他の問題では公社のような形にはすることがむずかしいとするならば、人員確保するためにそういうふうな方法も考えられるじゃないかという一部の意見もありまするが、いかがでしょうか。
  38. 大平正芳

    大平国務大臣 いま日本で特別会計が四十ぐらいあるんです。それで毎年の予算編成にあたりまして、特別会計をつくるとか、公社、公団をつくるとかいうようなことに財政当局が非常に憶病なんです。いわばそういう形でだんだんと行政機構がふくれてまいるということに対する警戒であろうと思います。しかし、、特許庁立場だけから判断いたしますと、ここずっと収支を見てみますと、多少収入のほうが多いようでございまして、りっぱに独立採算ができる性格のものでございまして、事情が許せば特別会計で経理するほうが私どもにとっては魅力があることでございます。しかし、一般の総定員法とかなんとかいうのはみな特別会計にもかぶりますので、それだから自由であるというわけにはなかなかまいりませんけれども、特別会計で歳入、歳出を支弁してまいるというようなことでさしつかえはないし、私ども立場から言うと魅力のある提案であろうと私は判断します。
  39. 荒玉義人

    荒玉政府委員 ちょっと事務的な説明を先にさしていただきまして見解を申し上げます。  いまの料金体系は、先般の改正で、三十四年の法律でございますが、それで改正以来、いま先生がおっしゃったように歳入超過でございます。一番新しいのは四十四年度、今年度予算、これはもちろんいま提案しておりますレートを含んだ計算をいたしますと、大体二億ちょっとの黒字でございます。ついでに来年度を申しますと、新しいレートで計算いたしまして、実は支出で、公開公報がピークになるわけでございますが、大体平年度でございますと二十万件そこそこでございますが、来年度は七十万件近いものがフルに入ってくる。大体十二、三億くらいよけいかかります。いろいろはじいてみまして、それともう一つこまかいことでございますが、特別会計をやりますと、一般会計でまかなった金額、たとえば退職金その他は全部こっちに入ってくるわけでございます。約二億以上入ってくるわけでございます。したがいまして、いまの改正のレートで計算いたしますと、ざっくばらんに申しますと、その面から見ますと、やはり四十六年度くらいで、初めて、いわば特別会計といたしまして、われわれから見れば利益になるというふうな、収支の面から見ればそういう形でございます。それで先ほど大臣から話がございましたが、人員その他は、いまのやり方でございますと、一般会計と変わりませんが、われわれねらいますのは、一種の事業的な、たとえば内部の仕事が進んで公告決定が多くなってまいりますと、いまの一般会計でございますと、公報の金が足らないわけでございます。それでは経費の弾力性がございませんし、われわれといたしましてもやはり国民に対して申しわけないわけです。そういった経費その他の弾力面というものが、おそらく特別会計になりますと、一般会計と違った形が予想されるという意味では、先ほど大臣からお話がございましたように、きわめて魅力がある制度かと思います。ただし、さきの条件は、やはりこのレートというものがある程度維持される、同時に年度その他につきましてはほかの経費全体と見合って考えていきたいと思いますが、長期的には私自身も考えたい、かように考えております。
  40. 塚本三郎

    塚本委員 私は、そういうことが可能であるといたしますならば、この出願の中で、先ほどお聞きしておりました特殊の、大きなところから大量に出願がなされてくる、いわばこういう人たちによって特許が通せんぼされておるのだから、法人の中で一千件以上出願しておるところについては、これよりも高く、特別割り増し料金でも取って、そして審査する諸君に対して何らか魅力のある、そういう作業ができるように、しろうとだからこんなことを申し上げるのかもしれませんけれども、何か大きいものだけがどっかりどっかりと仕事を持ち込んできているので、そんなことで停滞されているという事態を見ますと、これももちろん立法的にはきわめてむずかしいし、また行政的にはさらにむずかしいことも承知いたしておりますが、何か私たちしろうとから見ますと、そんなによけい出ているのは、それはもちろん大企業でありますから、利潤追求のためにやっているのだから、そんな料金よりも一刻も早く権利付与してもらうほうが大切だと彼らは考えていることでしょう。だから、たとえば法人で千件なら千件以上出願されているものに対しては割り増しでこういう料金をとる、そして独立会計の中で審査している諸君に対してもっと優遇して能率をあげていくという民間ベースのいわゆる処理の姿というものを導入するということも、これは将来的でございますが、ワクが一定であるならば、その中で解決するのは、そういうような道でもとっていくことによって審理を促進させる、処理を能率的にさせるという方法一つの大きな道として考えられるように思うのでございますが、いかがでしょうか。
  41. 荒玉義人

    荒玉政府委員 雄大な御提案でございますので、はなはだ事務的な答弁で恐縮でございますが、少なくとも人によって料金を変えるというのは、おそらく先生もむずかしいとお考えではないかと思いますが、かりに内外人別にしますと、これは条約違反でございます。もちろん大企業は中小企業の倍だといえば、内外的に不平等だという問題はございませんが、各国のレートというのも大体似たようなレートでございます。ただ、雄大な御提案でございますが、感触を言えば、たとえば発明の種類によって、A発明、B発明、C発明はどうこうということでございますが、発明の価値というものは出願のときにはわからぬわけでありまして、したがってそれが客観的に測定できるならば、りっぱな利潤を生む発明と生まない発明は料金体系が違っていいわけですが、先ほど申しましたように、発明の価値というものは出願の時点では判明できない。あるいはたとえばタームに応じまして一年で処分するものは何ぼ、二年で処分するものは何ぼということが可能ならばいいのでございますが、それ以前に、御承知のようにうちの先ほど審査期間は平均でございまして、部門別に産業別にそれぞれやはりいろいろ遅速がございます。なお横の制度で一律にタームによりましてどうこうといいましても、ちょっと実際上どうかという感じ、率直に申しますが、そういった感じがいたします。
  42. 塚本三郎

    塚本委員 確かに発明そのものに価値があるのではなくて、発明をいかに経済ベースに乗せるかということですから、問題はその審査特許の料金でこれをせきとめる、あるいはここで差別をするというわけにはいかないかもしれない。しかし、たとえばあの特許を買ったり何かする場合には、日本経済ベースで現在支払いを外国にしておるようでございます。そういうような状況経済ベースに乗せたときに、それはそれでばく大な利益を生むのですから、そのときにいわゆる特許のほうにそのうちの何割かを戻すというような方法ならば、いわゆる企業や個人における特許の使用料に対する売買がなされておるとするならば、これはその何%かをいわゆる特許をおろすときに約束をしておれば、何らか追求することによって特許庁の特別会計の中に入ってくる、こういうようなことは考えられないものでしょうか。
  43. 荒玉義人

    荒玉政府委員 いま先生おっしゃるのは、むしろ特許料だろうと思います。これは実は、かりに特別会計でやる場合に、おそらく財政当局と一つの争点がございます。大体特許料というのは特権料じゃないか、したがって特許庁の収入とはいいながら別だという考え方、おそらく事務的にやりますと、特別会計の場合に、その点が問題になるかと思いますが、それは別にいたしまして、一種の特権料的といいますか、むしろ祖税に非常に近い感じになってくるんだろうと思います。先ほど言いましたように、特別会計といたす場合には、いま先生のおっしゃったように、そういったことをひねって財源確保しなくても、これはむしろ私どもの収入からいいますと、特許料のほうが非常に大きいのであります。これは今度の問題でいろいろお聞きかと思いますが、特許料は五割増しでございますが、こういった点につきましては、これは一〇〇%各界了解していただいておりますので、もし歳入増加のためでございましたら、いま先生のおっしゃったようなひねり方をしなくても、あるいはやっていけるんじゃないか。ひねればひねるほど実際は租税的な効果ということになっていくんではないかというふうに感じられます。  それからちょっと恐縮でございますが、先ほどの千件以上の会社でございますが、国会に提出した資料を見ていただければわかると思いますが、二十三社でございます。
  44. 塚本三郎

    塚本委員 こんなことを雄大だなんて、ほめられたのか皮肉を言われているのかわからぬような御答弁をいただいたわけですが、私は最初から申し上げているとおり、技術的なことはわかりません。にもかかわらず、この改正案というものが絶対的なものじゃないというような、大臣長官も御答弁が再三あるわけでございます。その苦悩の中でけなげな、あるいは痛ましい御努力をなさっておいでになる。そうするならば、ああでもない、こうでもない。私どももしろうとなりに、何らかの形で、特に問題はむずかしいことじゃなくて、解決の道は人員と金の問題だけだ。そういうふうな考え方を私たちが持ちまするがために、実は金のひねり出しの方法でも見つけることによって、いわゆる能率を上げることによって、特にこの問題は経済の問題でございまするから、経済べースの中で合わせるために、私はしろうとなりの発想をここで申し上げておる、こういうことでございます。金の問題なら別に方法があるとおっしゃるならば、それはけっこうなことでございまするから、それでもっともっと進めて、それを実施していただくならば、内部の諸君の、こんな痛ましい叫びがわれわれのところまで届くようなことにはならずに済むのではないか。これは杞憂に終わるのではないか。もともと私どもときどき相談を受けることがありますが、特許なんといり問題は、半日聞いておると頭が痛くなってしまうような、いわゆる専門的なことでございますね。こんなことに生涯を注いで携わるという諸君は、私はいってみれば、一種性格的に異常性格者でなければ、満足にがまんできないんじゃないか。われわれのようなあき性でありますと、すぐいや気がさすか、一時間仕事したら二時間ぐらいはいわゆる気分転換をしなければもとに戻らぬのじゃないかという感じがする。そういう中で、一般の職員と同じような実務に携っておる。聞くところによりますと、やはり私どもが想定いたしますように、ときとして自殺者も出るような痛ましいこともあり得るんだということを聞きますとき、何らかの形で、諸外国の例でも、やはりこれを解決する問題は人と金よりしかたがないということに帰着するのではないか。であるならば、そういう道を通ってでもいかなければいけない。このことは何度議論いたしましても尽きませんから、そのことだけをとくと御留意をいただかなければ、せっかくのものが効果として逆になってしまうのではないかと思うわけでございますから、この点希望意見として、経済的な問題をさらにお考えいただいて、いま大臣も独立採算にすれば魅力があるとおっしゃる。長官も四十六年から独立採算のべースに乗るとおっしゃいますから、それならばけっこうなことですから、そういうような方向へ、何らかの形で明るい審査と運営ができるよりなことを、切に御期待申し上げるわけでございます。  小さいことになるかもしれませんが、おたくから出ました資料を見ますと、一人当たりに対する審査件数が、アメリカ等の場合は月と日とともにふえてきておりますね。日本の場合は、実はおたくの資料によりますと若干ずつ減っておる。先ほどの御説明によりますと、だんだん複雑になっていく、そして会社がふえてまいりますと、審査件数は減るのが普通だ。能率化したりあるいはその審査官が習熟をしたといたしましても、一人当たりに対する処理件数が減るということは、これはいたしかたのないことだと私はしろうとなりに受けとめております。しかし諸外国の例を見ますと、それにもかかわらずアメリカ等においては、もう年ごとに処理件数がふえてきておる。あるいはその他の国においてもそういう傾向にあるわけでございます。これは何か特別な処置がこのことについてなされておるからでございましょうか。その点どうでしょうか。
  45. 荒玉義人

    荒玉政府委員 アメリカの一人当たりを申しますと、各国それぞれの事情がざざいますが、一応の数字を申し上げますと、一九六七年八〇・一、一九六六年七五・三、一九六五年八三、一九六三年六一、大体八〇件といいますか、そのあたり。アメリカはここにございますように一人当たり数件の差でございます。アメリカのやり方をすれば飛躍的に上がるじゃないかというお話をお聞きだと思いますが、ここにございます一人当たりに直せば数件の移動でございます。  それからどうやったかということでございますが、御承知のように、審査といいますのは、出願人といろいろ受け答えをするわけでございます。アメリカのやり方の場合、受け答えするとき出願人がよくわかるように個別的に言うわけです。たとえばこのフレームはこういうふりに直せば特許になる、次のフレームは全部削ってください、こういったお互いにサゼスチョンしながら進めていく。そうしますと、出願人も早く返事ができやすい、これでございます。いろいろ何か破天荒なことのようでございますが、つづめてみればそういうやり方でございます。一つのキャッチボールをできるだけ少なくする。この点につきましては、われわれも一昨年の十二月に、やはり出願人の応答が楽なように、できるだけ詳細な、いわゆる拒絶理由通知を出していく、回り回ってそれが早くなる、それでございます。もちろんわれわれとしてそういうやり方は、出願人の利益、同時に全体が早くなるわけですから、当然やるべきものと思いますが、いずれにしてもやはり数件の差ではないか、かように考えております。
  46. 塚本三郎

    塚本委員 それから早期公開について、どうしてもやはりこの点だけは私も心配が消えないのでございますが、いわゆる本人の権利の補償がはたしてできるであろうか。この点先ほどから御説明もありますけれども、どうも補償の請求ができるとかいうようなことですけれども、実際にはそういうことを見つけること自身でもなかなかむずかしい。現在でもそうでしょうけれども、もっともっとこの点は、やはり早期公開するということについては、確たるいわゆる権利の補償がなされてしかるべきだと思いますが、その点どうでしょう。
  47. 荒玉義人

    荒玉政府委員 その点につきましては、たびたび本委員会でもお話がございましたのですが、制度的にはやはり補償金請求権ということだと思います。現在御承知のように出願公告をしないと何も権利がないわけです。今度は公開いたしますから、制度的には補償金請求権ということかと思います。ただ問題は、それを実効あらしめるには、法律的には裁判所で権利を行使するわけでございます。もちろん当事者が話し合いがつけばそれでありますが、つかない場合は訴訟をやる、こういうことでございますが、その点たびたび本委員会でも議論になりましたことでございますが、そういった訴訟制度にプラス、やはり先ほど言いましたように発明協会を母体といたしまして、相当な金を投じまして、民間の有識者を絶えずそこに登録しておきまして、そうして事件に応じて両当事者の合意の上に紛争を事実上解決していくという一つ運用措置を含めて万全を期していきたい、かように考えております。
  48. 塚本三郎

    塚本委員 私は、この改正案の早期公開に対しては、きわめて大きなメリットがある、国家的に見ますならば。しかし逆に、特に特許庁立場からいってもその点はメリットがあると思いますが、個々の小さな発明家にとっては、これは全くいわゆるマイナスの部面になってくるのではなかろうか。補償金請求権といいましても裁判にかけなければならない。大企業なら、何千件とやっておるものなら、それは担当者一人置いておいて、そうして目を光らせておいて、一つ一つみな裁判にかけて補償金を取るというような防衛の措置もとれることでございましょう。あるいは出願をするにあたりましても、もうすでに出てしまっておるのだということを全部調べてからでなければ出願できないというようなことになって、まるきり早期公開制度というものはいわゆる大企業に奉仕するためにあるように実は結果としてなる。当局がそのようなことは全く意図しておらないという善意を私は承知しておりまするが、結果としてはいわゆる個人が、公開されておるということになると、それを見てからでなければ出すことはむだなことになります。ですから、もちろん知らぬときでもそれは出してしまうのですが、知らざることによるところの出願なら、私はいたし方ないのですが、わかっておっても、個人的なあるいは小さな会社の出願の場合におきましては、調べてしまうということはたいへんなことになってしまうというようなことで、まるきりこれは利用でき得るメリットは大企業にのみ独占的に与えるものなんだというふうに受け取られはしませんでしょうか。
  49. 荒玉義人

    荒玉政府委員 二面から大企業偏重というお話、私はそう考えません。まず第一、たとえば公開されても中小企業はサーチに人がいないじゃないか。これは先生よく大企業と中小企業のやり方を見ていただきますと、大企業は百名近い人員を持っておるかもしれません。中小企業はかりに一人かもしれません。しかしサーチすべき分野を見れば百分の一かもしれません。つまり中小企業の特色は自分の独特の分野があるということでございます。出た公開公報を、あらゆる面を全部見る必要もなければ、したがいまして、真に自分で開発をやるという企業は中小企業といえども見ることが得だし、また見るでしょう。したがって相対的な人員とは関係ないと思います。全体の、どちらが強いかという議論なら別といたしまして、やはり専門分野というものは狭い分野で固定しているわけであります。その点はあまり大中ということは私はないのじゃないかと思います。本来、無関心の方々は、公開されようが公開されまいが全然関係ないのではないかという感じがいたします。  それから補償金が取れるかどうかという問題でございます。大企業が中小企業を盗むのだ、これは少し一方的ではないかという感じがいたします。かりにあるとすれば、それぞれ相互の問題ではないか。私いろいろ各界とお話ししたわけでございますが、かりに公開されまして中小企業の面から見てもメリットがあると思いますのは、御承知のように特許発明といいますものは、あしたにでもすぐ実施できるものではございません。ものによれば試作をたびたび重ねていくわけでございます。そうすると、試作の過程においてユーザーを見つけていく。現在でございますと、幾ら秘密を守ってくださいと言いましても、何の権利もない。今度の場合は補償金請求権があるわけでありますが、現在は、試作を重ねて、そしてユーザー側の注文をとっていく場合には、保護は何もないわけであります。そういう面もあるのではないか。したがって公開すれば大企業だけ得するというふうにはどうも考えられない、残念ながらそう考えます。
  50. 塚本三郎

    塚本委員 時間が来たようでございますから、私どうもすっきりしない。もちろんこれはすぱっとした改正案でないことは当局は最初から言っておいでになりますので、その御答弁を期待することは無理かと存じますが、そういうふうに受け取ればそうでもあり得るかなと、この程度にしか実は受け取れないのでございます。  最後に、こういう制度に踏み切ったことによってきわめてうまくいっているという自信のある例が諸外国にありましたら、それだけ聞かしていただきまして、一応私の質問は、すっきりいたしませんけれども、時間が参りましたから終わりたいと思います。
  51. 荒玉義人

    荒玉政府委員 一番端的な例は、五年前に実施したオランダの例でございます。オランダが五年間やりまして、大体請求率が六割ちょっとでございます。特に外国人の出願は四割ぐらいでございます。ドイツは実は昨年十月でございますので、まだ初年度の実績しかございませんですが、一番典型的な例はオランダの例でございます。
  52. 大久保武雄

    ○大久保委員長 午後二時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十八分休憩      ————◇—————     午後二時十九分開議
  53. 大久保武雄

    ○大久保委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。近江巳記夫君。
  54. 近江巳記夫

    ○近江委員 本件につきましては、相当時間の審査をやってこられたわけであります。各委員からもそれぞれの問題点についてさまざまな質疑がございました。多少重複する点はあろうかと思いますが、私の立場からお伺いしたいと思いますので、各委員におかれましても、御了承願いたいと思います。  まず、本改正案につきましては、非常に反対が強いということであります。当然この実務に携わっておられる審査官の皆さん方の中においても、実に多くの反対がある、あるいは各種の団体からも反対がある、こういう中で、なぜこの法案を成立さすためにこの審議をこのまま続行しているかという問題であります。そこでお聞きしたいのでありますが、この改正案のメリットですね、この点をもう一度詳しくひとつ長官のほうからお聞きしたいと思うわけであります。
  55. 荒玉義人

    荒玉政府委員 御承知のように、改正案はきわめて重大な点が二点ございます。一つ出願の早期公開、一つ審査請求制度、これでございますが、それぞれのねらいは異なっております。出願の早期公開は、たびたび本委員会でも申し上げたかと思いますが、現在の状態でございますと、審査に時間がかかって、ますます出願公告になるまでの時間が長期化する。そうしますと、御承知のように、開発といいますのは、既存のものを踏み台に、さらに新たなる開発をするわけでございます。そうしますと、既存のものが早い時期に世の中にあらわれてくるということでございませんと、いわば重複研究、重複投資という弊害があるわけでございます。それを除去するためには、やはり出願から一定期間で公開する、こういうことが当然必要になってまいるかと思います。それはいわば特許審査状況から見て、早期に公開して外部の開発に役立てるというのが、出願の早期公開のねらいでございます。  それから、審査請求制度といいますのは、現在でございますと、出願がありますとすべてを審査をしているが、審査請求制度の本質は、まず発明の特質と審査能力というものとの両者から考える必要があるかと思います。発明の特質といいますのは、これもたびたび申し上げたかと思いますが、現在かりに百出願があるといたしますと、実際特許になりますのは約半数以下でございます。実際に権利になったもののうち、実施化されますのは、大体五%ないし一割でございます。これは何も日本だけでございません。大体、特許発明というのはきわめて早期の段階でございますので、実際の実施化というためには、その後の技術開発並びにいろいろ経済的な要因というものが実施化率を下げておるわけであります。そういたしますと、大体五十権利になるといたしますと、一割ですと五でございます。五%とすると二・五、つまり百分の五ないし二、三あたりがいわば発明経済効果。もちろんこのためには防衛的なものもございましょう。これは日本だけでなくて、先ほどから言いますように、発明の本質からきておるわけであります。その場合にすべてのものを審査する必要がまずあるのかどうかというのが発明の本質からくる問題でございます。片や、たびたび議論がされておると思いますが、出願処理のギャップといいますのはますます離れてくる。もちろんこのためには、けさほども議論になりましたように、処理能力の向上をはかってまいらなければならないと思いますが、やはりそのギャップがある。しからば、すべてのものを審査するという体制でなくして、必要と思われるものだけを審査していく、つまり請求があったものだけを審査するということになれば、全体としての効率が上がるのではないか。同時に、先ほど言いましたような、発明者の方々にも、すべてのものが価値あるわけではないですから、その点の御協力はお願いできるのではないかというのが審査請求制度の趣旨でございます。その結果、審査すべき件数が減ってくれば、全体として促進になる。これが両者のねらいかと考えています。
  56. 近江巳記夫

    ○近江委員 しかし、その件についてもいろいろな討議がされたわけでありますが、この件についてまたいろいろと私の立場から明らかにしていきたいと思いますが、一つ一つの問題をとらえていっても非常に大きな問題があるように思います。  たとえば公開公報の問題一つにしましても、私は一つの分類という問題をとらえて質問したいと思っておりますが、分類表自体に、たとえば一時に七十万件のそうした新技術を包含する能力があるか、こうした問題です。現在の分類表の運用では、そういう公開に伴う文献の増加量というものは出願件数と同数と見ることができるか、こういうような問題がいろいろあるわけですが、一つ一つ聞いていきたいと思います。まずその点について……。
  57. 荒玉義人

    荒玉政府委員 滞貨——滞貨というより未処理案件でございますが、七十万件一挙に公開すると分類の点はどうかということでございます。大体現在は、一応公告決定をいたしまして、そして審査官がそこで分類を確定していく。これが種目でいいますと約二万ぐらいの種目でございます。今度の場合ですと、確定分類といいますと、中身を全部審査を終わらないとわからないわけでございますが、その二万に対して、公開段階では大体六千五百ぐらいの分類でやる。二万とはいきませんけれども、大体そのくらいの分類、できるだけ副分類を併記することによりまして、民間のサーチに便利なような分類をつけていきたい、かように思っております。
  58. 近江巳記夫

    ○近江委員 分類のそうした改正というのは、新技術に非常に追いまくられているというような現状であると聞いております。そうしますと、七十万件に及ぶそうした新技術を一時に公開する場合、この分類表の運用というものが困難になってくる、これは当然予想されることであります。さらに、こうした非常に不備な分類表を使用している。そうしますと必然的に副分類の数というものがさらに多くなってくる。それによって生まれてくるこうした文献の量というものは、出願件数のおそらく数倍になるのではないか、このようにも思うわけです。この辺のところをどのように見ておられますか。
  59. 荒玉義人

    荒玉政府委員 先ほど申し上げましたのは、通常の場合ですと、受け付けまして、そして分類専門官が分類をつける。これはむしろ審査官の分類をきめるという、いわば荒ふるい的な分類でございます。今度の公開の対象になっておりますのは、それぞれが専門別の審査官の手元にございます。したがいまして、それぞれが自分の持った専門分野のものにつきまして、先ほど申し上げました分類をするわけであります。もちろんそのための準備にはいろいろ時間がかかるわけであります。それを全部われわれは計画的にそういった分類を専門別な審査官でつけるような体制で考えております。
  60. 近江巳記夫

    ○近江委員 そこでこの正確な分類をつけるということはできるわけですか。
  61. 荒玉義人

    荒玉政府委員 六千五百のものにおいては正確な分類になる。ただ、いまおっしゃったように、確定分類ですと、二万でございますから、二万の精度——精度といいますか、六千五百ですから、おのずからそこに差はあるかと思いますが、特に各分類で、そういった細分化しなければわからないというようなあたりは、先ほど言いました副分類というものをつけることによってサーチに役立てたい、こういうわけでございます。したがって、それは二万と六千五百の差はございますが、大体業界といろいろ相談しまして、それは望ましいのは完全な分類をすることが望ましゅうございますが、そのあたりでございますと、サーチに不便はないというふうな点と、われわれのほうの作業状況をにらみ合わせまして、先ほど申し上げましたような程度の分類でやっていきたい、かように考えております。
  62. 近江巳記夫

    ○近江委員 確実なこうした分類ができる、それだけのやはり力を持っておられるのは審査官しかない、われわれはこのように聞いておるわけでありますが、そういう点、正確さがやはり要求されるわけです。そうした点、この審査官が担当した場合は正確であるが、それ以外の方は審査官に比べると精度が落ちる、こういうような分類であっては、今後激増するそうしたことを考えていきますと、非常に不安になってくるわけです。その辺のところをもう少し納得できる回答をいただきたいと思うのです。
  63. 荒玉義人

    荒玉政府委員 精度というので、ちょっと私言い足らなかった面があるかと思いますが、要するに、分類といいますのは、細分化すればするほど御承知のようにむずかしくなります。細分化すればするほど利用する人は便利でございます。したがって、精度という意味は、こまかくなればなるほどそれぞれの専門分野で見なければ、精度が下がるという一般論でございます。したがって、二万のところを六千五百あるというのはそういう意味の精度でございます。したがって、六千五百がでたらめであるという意味ではございませんで、そういう一般的な意味で申し上げておるわけでございます。先ほど言いましたように、やはり二万でやるためには、最終的には審査が全部終わりませんと、きわめて確実な精度の高い分類までいかない。これは御承知のように、審査をしない状態で公開するわけでございます。したがって、それでやれる範囲というのは大体、先ほど言いましたように、六千五百程度、これも、民間も大体その程度なら不便はさしてないというあたりのところで、内部の仕事の運びと外部の要求、その両者含めて大体六千五百程度という意味でございます。
  64. 近江巳記夫

    ○近江委員 それからまた公開後における問題として、そうしますと、この公開公報は技術文献としてそれだけの価値があるかという問題なんです。先ほど正確にできるというお話がありましたが、われわれが見たそうした現在の、またこれからもいろいろ増強はされると思いますが、そういうような状態ではたしてそれだけの精度が期待できるかという問題なんです。そうしたときに、こういう不正確な分類をつけた公開公報の発行というものが技術の早期公開のそういう目的につながるか、こういう問題なんです。その辺、どのようにお考えになっておられますか。
  65. 荒玉義人

    荒玉政府委員 六千五百程度の分類で十分役に立つと思っております。もちろんさっき言いましたように、この分類というのは、一般的にいえば、細分化すればするほど技術文献としての価値が高まるということは事実でございます。したがいまして、細分化したほうが望ましいわけでございますが、それは先ほど言いましたように、審査が一応全部終了しなければ完全なものにはならないわけでございます。六千五百の分類で百点とは言いませんが、技術文献としての価値は十二分に果たしていける、かように考えております。
  66. 近江巳記夫

    ○近江委員 この正確度という問題でありますが、この種目まで完全に指定したならば五〇%にも満たないであろう、また類のみ指定したとしても八〇%前後、そうしますと、当然分類本来のそういう目的、すなわち文献の整理あるいは文献調査ということが満足に達成されるかどうか、ほとんど不可能になるのじゃなかろうか、こういう心配があるわけです。そうしますと、そういうものにささえられた公開公報というものがはたして技術文献のそういう価値があるかという問題なんです。そういう技術文献の価値もない、ただ一片の紙片にすぎない、こういうようなことになったのじゃ本来のそういう役目というものは全然果たさないわけです。したがって、先ほどおっしゃった技術の早期公開というものにはつながらない、このように思うわけですが、その辺のところをもう少し納得できる答弁をいただきたいと思う。
  67. 荒玉義人

    荒玉政府委員 いま先生具体的にお話しになりましたのは、分類がこまかくなればなるほど、分類官といいますか、一応分類だけをやっておるところでやった場合に、分類がこまかくなればなるほど精度は下がる、これは一般的にはそういうわけであります。なぜかなれば、先ほど言いましたように技術分野は非常に広範であるからでございます。したがって、公開公報の場合は、特に未処理案件につきましては、それぞれの専門的な審査官のところで六千五百の分類でやるわけでございます。したがいまして、その六千五百というのは一番専門の審査官がやるわけでございますから、精度自身は、これはもちろん人間でございますからミスがないとは申しませんが、六千五百である限りにおきましては精度は高いものだ、かように考えております。
  68. 近江巳記夫

    ○近江委員 この文献整理あるいはそういう文献調査が非常に困難になってくる、そうしますと、今後この出願人あるいは審査官の方たちにどういうような影響が出てきますか。
  69. 荒玉義人

    荒玉政府委員 困難といいますのは、要するに六千五百で一応の目鼻がつくという程度の分類ということで考えておるわけでございます。したがいまして、もちろん会社によりますと、会社の事情であるいは現在の二万の分類でも足らない、分類を会社独自でやっておる場合もございます。したがいまして、それぞれの出願人が内部において自分の重点技術をどうやっていくかということは、出願に応じまして、それぞれの社内事情で独特にまた細部の整備をやるというのが通常の姿かと思います。したがいまして、先ほどから申し上げましたように、一応六千五百という分類でもって大体、先ほど言いましたとおり百点とは申しませんが、一応不便のない分類ではないか、そういう前提でもっていろいろな計画を進めてまいっておる次第でございます。
  70. 近江巳記夫

    ○近江委員 こういう非常に不確実な分類ということが予想されるわけでありますが、これはいずれの立場でも、出願人あるいはこの審査官の方たちにも非常に問題が出てくる。出願人は先行技術のそうした調査ができない。したがって発明や考案したものは何でも出願しなければならない。そうなってくれば当然この出願の増加ということにつながってくる。また一方、審査官の人々も先願、後願の審査というものが非常に困難となってくる。ですから、その後願が先に審査請求をされた場合、どのような先願があるか、十分なそういう調査もできない、こういうような状態になるんじゃないかと思うのですが、その辺の点、どうですか。
  71. 荒玉義人

    荒玉政府委員 企業は、まず御承知のように公開公報は何をするかというところから見ていくわけでございます。それでそういうふうな利用のしかたをした場合に、さっきから繰り返して恐縮でございますが、実際的に六千五百分類程度で一応の目的は達せられるということを業界といろいろ話しながら進めておるわけでございます。望ましいのは、もっと細分化したほうがいいにきまっておりますが、それはいわゆる公告決定といいますか、最終的に一応の特許がされるであろうという前提にならなければきまらないわけでございますから、次善の策として、その六千五百程度の分類ということによりまして不便を解消していくという意味でございます。内部の審査公開公報は即審査資料でございます。審査料はそれぞれの審査官がやはり審査に役立てるように整理をしてまいるわけでございます。したがいまして、それぞれ必要に応じて、六千五百でいいという場合もありましょうし、さらに審査資料としてもう少し細分化しなければいかぬという場合も部門によっていろいろあるかと思います。後者の場合には、やはりそれぞれ資料整備という段階で実際の審査に支障のないようにしなければいかぬ。ただその場合に、各それぞれの部門によりましてやはり同じ方法ではないかと思いますが、そういう両者あわすことによりまして民間審査資料に不自由はないような方向で解決していきたいと思っております。
  72. 近江巳記夫

    ○近江委員 もう少しお尋ねしますが、この特許庁が編集された発明及び実用新案の分類表、これによりますと、その改定というのがきわめて繁雑に行なわれておるわけです。この表をごらんになればわかりますが、その理由をひとつ詳しくお聞きしたいと思うのです。
  73. 荒玉義人

    荒玉政府委員 ちょっと御質問の趣旨からはずれるかと思いますが、分類といいますのは、技術文献を検索する場合におきまして一つの重大なよりどころになるのが分類でございます。いま先生のおっしゃった意味は、日本特許庁が公報を発行しておるわけでございますが、そういった場合に、一つの分類というものが民間のサーチにも役立ち、同時に内部の審査の分担その他に役立てるというのでいまの分類表ができておるわけでございます。
  74. 近江巳記夫

    ○近江委員 ですから、そういうような分類の改定が非常にひんぱんに行なわれておる理由は何かということを私は尋ねているのです。
  75. 荒玉義人

    荒玉政府委員 一口で申し上げますと、技術の進歩に合わせたような分類の改正をやっていくというわけでございます。たとえば、従来なかった分野が新しく出れば当然新しい分類を起こすでしょうし、あるいは従来は出願がきわめて少なかったという場合でその分野が非常に多くなりますと、細分化いたしませんと文献のサーチに役に立たないというので、逐年分類改正をやっていくわけでございます。一言でいいますと、やはり技術の進歩、出願状況というもののために分類改正を行なう必要があるかと思っております。
  76. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうした技術の進歩あるいは複雑化、こういうようなことで現在滞貨が七十万件、そうしたときにそういうような状況で適正な分類表によって分類されるかというものに返る問題でありますが、そういう点がここではっきりと、先ほど技術の進歩という問題でもこれからどれだけ技術が進歩していくかわからない。そうした場合に、そのような分類のやり方でいけるかという問題なんです。その辺どうですか。
  77. 荒玉義人

    荒玉政府委員 どうもたびたび申し上げて恐縮でございますが、未処理案件につきましては、担当の審査官のところで分類をつけて公開されるわけでございます。したがいまして、その段階で、やはり専門的な審査官のやることでございますので、正確を期していきたい、かように計画しておる次第でございます。
  78. 近江巳記夫

    ○近江委員 この出願されたそうした明細書中に記載されている技術用語、これは一般に分類喪中の用語と一致しているものですか、どうなんですか。
  79. 荒玉義人

    荒玉政府委員 分類は、技術中身を正確に理解いたしましてつけるわけでございます。したがいまして、出願人用語につきましては、出願人がどういう用語を使っておるか、いろいろの場合があるかと思いますが、発明の実体、技術の内容を理解いたしまして、この発明であればこの分類だということでございますので、書いておる用語と分類がずばり一致するかどうか、それは具体的な明細書いかんかと思います。
  80. 近江巳記夫

    ○近江委員 この分頼の指定というものは、たとえば機械科学あるいは電気、非常に大ざっぱな分担でやっておられるように聞いておるわけでありますが、そうした場合に担当する人は専任でやるのか、あるいは併任の審査官でやるのか、あるいは審査官補がやるのか、あるいは非常勤の調査員がやるのか、この辺のところが非常に問題があるのです。その辺どうなっておりますか。
  81. 荒玉義人

    荒玉政府委員 現在われわれのところで分類を担当いたしますのは分類審査室でございます。その構成を見ますと、専任でやっておる場合あるいは審査官の併任でやる場合、あるいは調査官を使う場合、それぞれ専門技術分野ごとの特性と本人の能力を考えまして、構成は三種類からなっておるかと思います。
  82. 近江巳記夫

    ○近江委員 たとえば一つの電気部門といたしますが、非常に材料が新規な化学物質、そうして製造工程に用いるそうした機械も非常に新規である、製品であるそういう電気部品としても新規である、こういった場合、どこに指定する、そういった原則はあるかないか。また公告する際も、そういう分類はどうするか、この辺のところを聞きたいと思うのです。
  83. 荒玉義人

    荒玉政府委員 先生のお許しをいただきまして、その分野ちょっと私——専門家の調整課長来ておりますが、私にかわらして答弁さしてくだされば幸いだと思います。
  84. 近江巳記夫

    ○近江委員 けっこうです。
  85. 竹内尚恒

    ○竹内説明員 お答えいたします。それぞれの案件によって違うかと思いますけれども、いま先生の御質問の電気のものにつきましては、そのものが出願されました場合には、そのもののところに主分類をいたしまして、その製造工程あるいは材料につきましては、それぞれの、製造の場合は製造装置の機械のほうへ、材料のほうは化学のほうへ分類をいたします。したがいまして、発明の要旨によりまして主分類をきめまして、関係のところに副分類をするようにやっております。
  86. 近江巳記夫

    ○近江委員 おのおのそういう技術分野について、そういう指定者は、各分野ごとにどこに分類をするのが最適であるか、それを知っておるかどうかということなんです。またその要領は、どのくらいの期間でその修得をするか、この辺の問題なんです。どうなんですか、それは。
  87. 竹内尚恒

    ○竹内説明員 分類のしかたにつきましては、入庁いたしましたときの研修によりまして、その原則は聴取しております。実際の分野に参りましてからは、その担当の審査官に指導を受けまして、審査官は、その分類のやり方、そういうものを修得し、実際の業務をやっております。
  88. 近江巳記夫

    ○近江委員 この出願の明細書あるいはこの分類表の用語というものは必ずしも一致しない。そうしますと、この分類指定者というものが必ずそれだけのエキスパートであるかどうか。そうでないとすると、それらの指定者に正確なそういう分類をさせるために、具体的にどのようにしておるか。たとえば、技術用語集をつくるとか、あるいは研修をさせるとか、そういう具体的なそれはどうなっておりますか。
  89. 竹内尚恒

    ○竹内説明員 先ほど長官が申しましたように、現在は分類審査室において分類審査室長が指導のもとにそれらの訓練をやっております。
  90. 近江巳記夫

    ○近江委員 訓練をやっておりますといったって、それがどの程度か。訓練をやっておりますといえばそれまでの話ですけれども、非常にその辺が、ことばを悪く言えばいいかげんである、われわれはこのように聞いておるわけです。それはあなたがやっておりますというならしかたがありませんけれども、そういうこの場限りの答弁という考えは捨てて、いろいろ聞いておるわけですから、ひとつ詳しく言ってもらいたいと思うのです。
  91. 竹内尚恒

    ○竹内説明員 分類につきましては、御承知のように、分類定義というものが、特に新しく分類改正いたしました分野には非常にこまかいものができております。それを教科書といたしまして、先ほど答弁申し上げましたような方法によりまして——先ほど分類室長と申しましたが、もちろん室長自体が全部をやるわけではございませんで、それぞれの専門の分類確定官というものがおりますし、実際のものものにつきましては、先輩の審査官がおりますので、そういう方によって、先ほど申しました分類定義、そういうものを使いまして訓練をする、そういうわけでございます。
  92. 近江巳記夫

    ○近江委員 この索引表のこういう技術用語についてですけれども、これは、この分類表の改定に伴って、飛躍的に増加するであろう、このように思われるわけでありますが、この索引も改定をやっておりますか。
  93. 竹内尚恒

    ○竹内説明員 索引の改定はやっておりますけれども、最近新しくつくりましたところにつきましては、その作業は全部終わっておりません。しかしそれは、やるように分類室としては計画をしております。
  94. 近江巳記夫

    ○近江委員 そういう、そうした改定もやっておりますが現在やっておりませんということはおかしい。現在やってないということですね、これは。そういうような不完全な状態で、分類はもう完全にやります、そういう大きいことは私は言えないと思うのですよ。ですから、現在、たとえば索引を調べたけれども、なかったので分類がわからないというような、いろいろなそういうことの発生が考えられるわけです。いまどの程度そういうような件が発生しておりますか。
  95. 竹内尚恒

    ○竹内説明員 いまの御質問でございますが、内部の審査官といたしましては、特に索引がないために非常に困ったという事例はあまりないと思います。ただ、外部の方が、索引がないためにどこに分類をしていいかどうかわからないというようなあるいは事例があるかと思いますけれども、それがどのくらいあるかということは、たいへん申しわけございませんけれども、私、明確にお答えするような資料を持っておりません。
  96. 近江巳記夫

    ○近江委員 今回の法改正にあたって、そういう質問が出るということは予想して、調査しておくのが私は当然だと思うのです。私の聞いている範囲では、相当あるらしいですよ。それを、正確に調査しておりません。すぐにそういう煙幕というか、そういうことを張ってしまう。よくないと思うのです。  七十万件というこの未処理出願は、きわめて短期間のうちに公開される、こうなるわけでありますが、それらのものについては、出願後相当長期にわたって分布しておるとも考えられるわけでありますが、それらが正常に処理されている場合には、そのつど改定された分類表によって分類されるということは考えられるわけです。しかし短期間のうちに公開されると、その大量の部分が、改定されない、不適当な、時代おくれの分類表によって分類されることになる。そうなると、必然的に、先ほども何回も言っておりますが、分類表の信頼度というものが非常に低下する。この辺のところはどうですか。
  97. 荒玉義人

    荒玉政府委員 たびたび繰り返して恐縮なのでございますが、今度未処理案件の分類はそれぞれの専門の審査官が分類をつけるわけでございます。したがいまして、先ほどから竹内調整課長からお話がございましたが、その面における不便はないわけでございます。
  98. 近江巳記夫

    ○近江委員 この分類の指定を非常に正確にしようといろいろ努力されておられる、そういうことを先ほどから伺っておるわけでありますが、私たちの聞いた範囲によりますと、現在の分類指定の正確度というのは、ベテランの審査官の方でも八〇%程度、調査員の人の場合ですと大体五〇%以下だという驚くべきことを聞いているわけです。そうなりますと非常にたよりない話だと私は思います。ですから、その辺の正確な精度ですね、私がいま言ったことは全くただ単なる話だけなのか、あるいは実情はどうなのか、その点をひとつお聞きしたいと思うのです。
  99. 竹内尚恒

    ○竹内説明員 ちょっと繰り返すようになるかと思いますけれども、未処理案件の七十万につきましては、審査官が現在手持ちでございますので、その審査官によって最終種目までつけるというふうに考えておりますが、先生の御指摘の新法施行後のものにつきましては、先ほど長官が話しましたように約六万五千ぐらい公開分類いたします関係で、それから副分類を非常にクロスさせるということによりましてその精度を上げるようにする。それから先ほどお話ししましたように、それらをやります分類指定官につきましては、いわゆる研修というとまた何ですが、そういう訓練をいたしまして、施行までにはその精度を上げるようにやる、そのようにわれわれ考えております。
  100. 近江巳記夫

    ○近江委員 それは何回もお聞きしておるわけでありますが、私がいまお尋ねしたのは、私も発言した以上責任があるわけですから、この八〇%、五〇%というのはでたらめな数なのか、あなたが責任者としてそれを把握されておられてどういうことなのかということを聞いておるわけです。どうなんです。
  101. 竹内尚恒

    ○竹内説明員 現在の分類の実例からいたしますと、先生の御指摘のようなパーセントでございます。
  102. 近江巳記夫

    ○近江委員 この不正確なそうした分類をつけた公報というものは、当然配付されなければならない技術分野に配付されずに、技術文献としてあとでは当然役立たない、こういうことになるわけです。いまあなたが数値を認められたということはたいへんなことだと思う。この点を今後具体的にどのように改善しようと思っていらっしゃるのですか。
  103. 竹内尚恒

    ○竹内説明員 八〇%と先ほど申し上げましたのは、現在公告されております公報について八〇%の精度だということではございませんで、現在指定分類をいたしますときに、分類指定をして担当官をきめますときに、その精度が八〇%ぐらいの精度になっている、こういうふうに御理解いただきたいと思います。  で、審査官を指定いたします場合には、その間違いました二〇%分につきましては、さらに分類指定に戻すとか、あるいは審査官同士でそれをやりとりすることによって正確なところに分布するわけでございます。  それから現在の公告、公報についての分類につきましては、絶対間違いないということを申し上げるとあれだと思いますけれども審査官が公告決定の段階でつけております分類は一〇〇%正確である、このように思っております。  それから先ほど公開公報の分類を六万五千と申し上げましたが、六千五百の誤りでありますから、御訂正いただきたいと思います。
  104. 近江巳記夫

    ○近江委員 この技術公開をする場合、そうした情報の配付先の正確さということは非常に大切だと思うわけでありますが、その点計画がはっきりあるのかどうか、その辺どうですか。
  105. 竹内尚恒

    ○竹内説明員 その正確度に対する対策といたしましては、副分類をなるたけたくさんつけることによって、それから先ほど申しました種目の数が六千五百というふうに数があらくなっておる。この二つのあれによりまして、技術文献として誤ったようなところに分類させたためにサーチができなかったというようなトラブルは起こさないように、そういうつもりでやりたいと思っております。
  106. 近江巳記夫

    ○近江委員 この公開制度を導入した場合の分類審査のそういった要領というものを、私たちも内部ではありませんからばく然としかわかっておりませんし、その辺はっきりわかるように一回説明してください。
  107. 竹内尚恒

    ○竹内説明員 特に現段階でその分類の要領というような冊子その他はつくっておりませんけれども、分類といいますのは現在でもやっておりますので、もちろん公開公報をつけますについては特に新しく、現行分類とは違いまして、公開用分類ということで種目をあらくした分類を使うわけでございますので、それにつきましてはいままでと違った解釈といいますか範囲ということができますので、それは施行までの間にこういうふうに運用するというふうなものを、解説書と申しますか、そういうものをつくりましてそれによって運用する、そのようにしたいと思っております。
  108. 近江巳記夫

    ○近江委員 現行の分類指定に一件当たりに要する時間、それと公開公報の分類指定に一件当たりに要する時間とは当然相違があるわけでございますが、この相違についてどういう考慮を払っておりますか。
  109. 竹内尚恒

    ○竹内説明員 特に公開公報の場合と時間の差があるというふうには現在考えておりませんので、現在やっております分類指定と申しますか、それと同程度の労力と申しますか、それによって公開分類表も付与できる、このように了解しております。
  110. 近江巳記夫

    ○近江委員 その辺の検討がなされていないということは、この法案提出にあたって私は非常にずさんだと思うのです。そういう点に至るまで考慮しておって当然だと私は思うのです。このほかに、主分類一つだけではなくて、副分類も多数つけると先ほどお話がございましたが、当然公序良俗のそうした審査、これもあわせて行なわなければならないとか、いろいろなことがあるわけです。その辺の一件当たりに対するそういう審査の促進なんていったって、この辺のところから積み上げていかなければ、ほんとうのところは言えないわけでしょう。それを考慮していないという、そんなずさんなことは言えないわけですが、これはあなたと長官とお二人にお聞きします。
  111. 荒玉義人

    荒玉政府委員 問題は、所要の人員をどうするかということではないかと私は思いますが、現在八名に対しまして、プラス四名という増員によりまして、そういった事務の円滑化をはかってまいりたいと思います。
  112. 近江巳記夫

    ○近江委員 先ほど八〇%というような話もあったわけですが、あとの二〇%についてどうするか、その辺のところが問題になってくるのですが、これはどうするのですか。
  113. 荒玉義人

    荒玉政府委員 先ほどの竹内調整課長からの答弁と全く同じで恐縮でございますが、入り口の分類指定といいますのは、いわば内部で審査官の分担をきめるわけでございます。したがいまして、八割というのは、そういう意味でございます。内部で本来甲の審査官に属すべき書類が乙にいく、これはおれのところじゃない、君のところだということで調整といいますか、実質的に不便を解消していくという意味が、あくまで八〇じゃないか、かように思っております。
  114. 近江巳記夫

    ○近江委員 こういう信憑性ということについて、非常に疑問が残りましたが、その辺のところは、まだ解決されていないと思います。要するに、私がこの問題を出したのは、分類指定の正確さということがどれほど重要なことであるか、これを再確認していただきたい、こういう意味でこれを出したわけであります。  それでは具体的に内部の個々の機構をどうしていくか、あるいは増員計画をどうするか、あるいは分類指定者に対する研修等についてどうしていくか、この辺のところが非常に大ざっぱな答弁しかいただいていないのですが、その辺のところのもう少し計画をお聞かせ願いたいと思います。
  115. 荒玉義人

    荒玉政府委員 先ほどの四名の分類審査官の増員でございますが、もちろんこれは、出願の予測によりまして、出願が多くなれば増員をはかっていくというのがわれわれの考え方でございます。したがいまして、四名をふやしたからそれで終わりとは考えておりません。必要に応じまして増員をはかっていくという方向で考えております。
  116. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで今後おびただしい印刷物、これが考えられるわけでありますが、当然こうした公報等についても、特許庁への信頼性ということについては、これはもう正確を期してもらわなければならない。そこから信頼性というものは生まれるわけでありますが、しかし現制度におきましては、あまりにもいろいろな、たとえば印刷物一つにしても、誤りというものが多過ぎるように私は思うのです。私は事例をここに持ってきておりますので、ちょっと渡しますから前に来てください。——別に私が何も一言わなくても、それを一読されればおわかりになると思いますが、どういうわけでそういう誤りが出ているのですか。これは商標の問題でありますが、まるっきり違う人の商標がしるしてある。こんなことで、その人の権利というものが守れるのですか。あるいは実用新案の公報等についても、住所も書いてない。現在でもこんなでたらめなことをやっているわけですよ。これから膨大なそういう書類がいろいろ出るわけですが、それについて、何かあなたのほうで申し開きがあったらお聞きしますから言ってください。どういうわけでこういうことになったのか。
  117. 荒玉義人

    荒玉政府委員 御指摘の点は、公報の間違いでございます。大体左側のほうが間違いで、右のほうが訂正をした部類でございます。これは、われわれ明らかな間違いで、相すまなく思っております。
  118. 近江巳記夫

    ○近江委員 間違いでしたので相すみませんと言われれば、それまでのことでありますけれども、これは重大な——かりそめにも商標権ですからね。そういう印刷一つにおいても、こういうでたらめなことが行なわれている。この一つを見ても、私がこう言えばああ言うというようなことで、先ほどから答弁がありましたけれども、はたして法改正をしてどれだけのことができるか。あらゆる点において、こういういいかげんな、ずさんなことが一つ一つ出てきているときに、これから膨大なそういう書類、印刷等を考えていきますと、あまりにもわれわれとしては不安になってくるわけです。ひいては、こういうような商標権を含めた工業所有権という権利に対する特許庁の考え方、姿勢というもの自体が問題になってくる、私はこう思うのです。ほんとうに人の権利を守っていくという真剣な気持ちがあれば、そういうようなでたらめな間違いなんていうものは出てこないはずです。私が聞いた範囲では、四十三年の七月一日から四十四年までで四十四件もこのような誤った公報が出ている。これは内部のことだから、私にはわからないが、私の聞いている範囲ではこれだけ出ている。これはどうなんですか。
  119. 荒玉義人

    荒玉政府委員 四十四件ミスがあったという話は、私、本日初めて承りました。もちろん特許庁は、私の責任でございますが、ただ、だから全部がという点につきましては——もちろん、われわれといたしまして、千八百名の職員が日夜やっている仕事でございます。しかも大量のものをいろいろやっている過程におきまして、われわれとして間違いのないようなことを当然やるべきかと思いますが、四十四件、私、初めてお聞きしましたが、先生のおっしゃることでございますので、事実かと思いますが、私自身で調査いたしまして、国民の皆さんに御迷惑のないような仕事のやり方をしなければいけない、かように考えております。
  120. 近江巳記夫

    ○近江委員 私の聞いた範囲で四十四件、長官としては、まだ把握されておらない、ですから、こういうあらゆる点に至るまで長官は最高責任者として把握をして、そうしてきめこまかな監督指導、そういうことでいかなければ、大きく特許庁に対するそういう信頼というものはなくなってくるわけです。ここでもう少し入って聞きたいのですが、こういう間違いはどういうわけで起きたのですか。その過程ですね、考えられる範囲でひとつお答え願いたいと思うのです。
  121. 荒玉義人

    荒玉政府委員 ただいまの商標公報でございますが、私がいま聞いた範囲でございますと、編さんの過程における間違いだと承知しております。
  122. 近江巳記夫

    ○近江委員 その編さんの過程の間違い、確かにそれはそうだと思いますけれども、要するに、間違いをどうするのですか、これから。私も四十四件というのは聞いたことだから、あなたに間違いはないかと聞いたら、あなたもわからない。この正確さは私はわからないけれども現実にそのくらいはあるといううわさが出ているわけですよ。ですから、ただ編さん上の間違いだ、それだけではだめだと思うのです。今後完全を期すために、長官としてはどのようになさるのですか。こんな信頼のないことを、これはざっと見ただけでそんなに出てくる。いままで出ている公報全部ひっくり返してみたらもっと出るかわかりませんけれども、こういうようないいかげんなことをこのままほうっておくのですか、どうするのですか、これから。
  123. 荒玉義人

    荒玉政府委員 間違ったとわれわれがわかりましたときは、直ちに出願公告の公報の訂正をいたします。いま申し上げましたのは、正しいものに訂正をしたわけでございます。ただ、これは訂正でございますが、われわれは訂正しない状態にしなければいけないわけでございます。したがいまして、訂正する必要のないような事務をやらなければいけない。たまたま間違う場合には、直ちに発見いたしまして、新しく訂正公告して世の中に対する周知をしなければいけない、かように思っております。
  124. 近江巳記夫

    ○近江委員 その印刷の過程で間違ったのかということがやはり考えられるわけです。どういう過程か。あなたはいま編さん上のミスだ、このように言われたわけでありますが、われわれとしてはどこで間違ったかということはわからない。結局、公報である以上は、そういう権利ということをはっきりと認定しているわけです。そうした場合、誠実に厳正に公報に掲載する、これは当然なんです。あなたもいまその誤りは認められたわけでありますが、こうした印刷物はどこで印刷しているのですか。その辺の過程というものをもう少し言ってくれませんか。
  125. 荒玉義人

    荒玉政府委員 現在公報類の発行はいわば自家生産と外注、二本立てになっております。御指摘のこの手商標と実用新案公報、これは内部の工場で印刷をしております。したがいまして、実用新案、こちらのほうはおそらく住所がないという御指摘だろうと思いますが、これは出願書類をもとにいたしまして編さんをするわけです。ですから、編さんされたものに基づいて印刷するわけでございますので、推測で恐縮でございますが、これは編さんの段階に住所を落としたというふうに考えています。
  126. 近江巳記夫

    ○近江委員 要するに、そういうおそれがあるところについては、私はすべて原本と照らし合わせてチェックすべきだと思うのです。それからさらに、今後完全を期すために事務機構の総点検をやっていくべきだ、不完全なところを直さなければならぬ、私はこのように思うのですが、その辺長官としてどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  127. 荒玉義人

    荒玉政府委員 この公報のみならず、いま先生の御指摘の、特許庁の全部を通じましてそういった事務的な点検というものは私は当然必要だ、かように考えております。
  128. 近江巳記夫

    ○近江委員 そこで誤った場合に、当然へたをすれば実害が出ることはわかっているわけです。そうした実害が出た場合における特許庁の態度を聞いておきたいと思うのです。誤りましたからすみませんでしたでは済まぬ。それで実害についての補償の確認、それからさらに実害についての積極的な仲介を今後していくのか、その辺のところを責任ある答弁をひとつ要求したいと思います。
  129. 荒玉義人

    荒玉政府委員 問題は実害の問題でございますが、御指摘の場合は、いわば出願公告いたしまして外部から異議の申し立てが出てくる、そして異議を審査して特許するかどうかをきめる過程の問題かと思います。それでいずれにいたしましても、原本と同じものを出願公告すべきでございます。それで間違ったものは先ほど言いましたように訂正をしていく、こういうことによしまして外部に対する実害がないようにわれわれはしなければいかぬかと思っております。またそうすべきかと思いますが、ただ内部でミスがあったときどうするか。これはできるだけ作業の仕事の流れを通じましてミスが出ないようにすべきでございますが、絶対に絶無を期するかどうかという点になりますと、これは人間のやることでございますから、絶無といりわけにはまいりませんが、われわれとしてはそういうことのないようにまずすべきかと思います。ただ、実害が出たときどうするかという問題でございますが、ここにございますように、実用新案の場合でございますと住所がないという場合でございますが、これあたりは、実害という面から見ると、私はまあそう大して実害がないと思います。むしろ実害の点につきましては実害のないように私たちはやっていかなければいけない、かように考えております。
  130. 近江巳記夫

    ○近江委員 それはさっき言うておったことでありまして、もちろん実際の実害が出ておるかぼくはわかりませんが、要するに、仮定の問題かしれないけれども、実害にまで至らないでそういう訂正公告ということで済んでおるかわからないが、もしかりに実害が出た場合、その場合特許庁はどうするか、それを私は聞いている。また、その実害についての積極的な仲介を今後やっていくのかどうか、この辺のところを聞かしてください。
  131. 荒玉義人

    荒玉政府委員 先ほど言いましたように、公告いたしますと、それが異議を申し立てる期間の起算点でございます。したがいまして、われわれが訂正公告を出しますと、そのときから異議申し立ての期間が進行する。したがって、事実上二カ月待つという形をもちまして、いまの実害のないような運用をやってまいっておる次第でございます。したがいまして、あくまで訂正が出されたときから通常出願公告があったと同様の効果を持たして、そういった実害がないようにやっておるわけでございます。
  132. 近江巳記夫

    ○近江委員 けれども、あなた方もこういうような公報のミス等についてはおそらくないだろうということでやってこられた、それでもこれだけの数十件というミスが出ておる。そういう点からいきますと、実害がないと言ったって、現実にこれだけ誤ったことが印刷されておる。しかも数カ月してからそうした訂正の公報が出ておる。これは当然実害が考えられるわけですよ。実害がないとは言えないわけです。ですから、実害があった場合はどうするか、こう言っておるのです。
  133. 荒玉義人

    荒玉政府委員 公報の意味は、先ほど言いましたように公衆審査に付するわけでございます。そして、公報を出すということが公衆審査一つの締め切り期間のスタートになるわけでございます。そういう意味から言いますと、訂正を出したときから通常出願公告があったと同じような効果を持たしていくということでございます。したがいまして、これはそういうことによりまして実害がないというふうに申し上げておるわけでございます。
  134. 近江巳記夫

    ○近江委員 そういう申し出があれば、うっかりということもあるわけですよ。そういう悪らつな人はおらぬと思うけれども、そのままでいってしまうということも当然考えられるわけです。ですから、それはどういう過程でなるか、私は推測しかできませんけれども、それは専門家であるあなたが一番よく御存じである。絶対に実害がないと言えますか。あった場合の仮定で私は話しているのです。
  135. 荒玉義人

    荒玉政府委員 どうも仮定でございますが、法律のたてまえから言いますと、先ほど言いましたように、訂正があれば、本来正しい訂正の時期に出願公告があったもの、したがって、新しい訂正のときから異議の申し立て期間が出発するわけでございます。したがって、公衆は異議を申し立てることができるというわけでございますので、そういう意味でしたら実害がないのじゃないかというように考えるわけです。ただ、実害があったら国家賠償が取れるのかどうかということでございますが、その点、私自身国家賠償の対象になるのかどうか、直ちに見解を申し述べるほど——その点につきましては慎重に検討いたしますが、おそらく国家賠償かどうかという問題かと思いますが、なるかならぬか、ちょっと検討させていただきたい、かように思っております。
  136. 近江巳記夫

    ○近江委員 どういうようなケースが出てくるか、それはわれわれにはわかりませんが、いま一般論として、そういう実害があった場合はどうするか、それに対してはまだあなたは考えさせてくれということでございます。ですから、これについて私に文書をもって回答願いたいと思います。よろしゅうございますか。  それからこりした誤り等から考えて、商標権を含めた工業所有権という権利に対する特許庁の考え方、これは私もいままで一〇〇%の信頼度を持っておりましたが、非常に薄くなってきた。そこで、もう一ぺんここで再認識したいのでありますが、権利そのものの考え方が全機構にわたってどのよりに把握されておるか、長官の感想を聞きたいと思うのです。もう一点は、現在及び将来の権利に対する考え方、これを庁内で統一させる方向を見出さなければならぬ。この点についてどのようにお考えか。二点お聞きしたいと思うのです。
  137. 荒玉義人

    荒玉政府委員 御承知のように、特許法発明保護、利用して、全体の技術の発達をはかっていくことでございますので、改正法、現行法、いずれもそういう意味におきましては、特許権を通じまして権利保護をはかるということにおいてはちっとも将来といえども変わりがない。ただ先生のおっしゃるのは、おまえそんなことを言うけれども、実際の運用面で不十分じゃないかという御指摘、これは私も万全であるとは思いません。したがいまして、改正するといなとにかかわらず、そういった権利保全がなされるような、運用をしなければいけないという点については、改正法と全く関係のないことだし、従来御指摘の、欠けた点があるならば、それは改正といなとに関係なく改善していかなければならない、かように考えております。
  138. 近江巳記夫

    ○近江委員 先ほどからそういう法改正によるメリットについていろいろなお話があったわけであります。各委員からも質問が出ておりますし、そうしたことを私もいろいろと検討させていただいたわけでありますが、結局、改正しても滞貨の解消あるいは審査の促進にはほとんど効果が期待できないのではないか、こういうような不安を持つわけであります。たとえ特許庁が説明されるような効果があると仮定しても、そこに発明者あるいは出願人の著しい犠牲を伴うことになるのじゃないか。いろいろ反対されておる団体の方々の意見、私もいろいろ聞きますが、そういうことは長官のほうにもいろいろと入っておると思います。もう時間がありませんので、それは避けますが、そういう点非常に心配しております。工業所有権あるいは特許制度は、当然その前提として発明の奨励あるいは発明者保護、これが一番根本になければならぬ、このように思うわけです。先ほども強制公開、これによって発明者あるいは出願人に非常に大きな犠牲がしいられているのではないか、町の発明家あるいは中小企業発明団体、こういうところが大資本の有する団体から侵害されて犠牲とならなければいけない、そういうような要素が非常に出てきておるわけです。そうしますと、特許制度というものは根底からくつがえされていくのじゃないか、その点われわれは非常に心配になるわけです。重ねてその辺のところ、長官としてはどのようにお考えになっておりますか、また大臣にもお聞きしたいと思います。
  139. 荒玉義人

    荒玉政府委員 早期公開という意味は、技術開発をますます促進していくというねらいからきておるのはたびたび申し上げたところでございます。要するに開発といいますのは、隣が何をするかということが初めてわかって経済的な開発が可能でございます。先生御承知かと思いますが、要するに開発は非常にリスキーでございます。大体一割くらい成功すればいいわけで、そのリスキーをあえてするといいますのは、やはり特許独占があるからできるわけです。したがって、他人が何をやっておるかということができるだけ早い時期にわかるということが、いわゆる開発といいますか真の発明の奨励になる。ところが、現在ですと、御承知のように出願公告までますます時間がかかるということになりますと、そういう真の発明奨励という面からまず問題があるわけでございます。そういったところを改善していく。それで、そのために今度全体の発明、開発と個々の出願人という問題がございますが、個々の出願人の場合ですが、これはたびたび本委員会で議論があったかと思いますが、公開されるその反面に、補償金請求権という代償によりましてそういったバランスをとっていくということによりまして、発明者に代償を与える、全体の発明を奨励していくというのが、早期公開のねらいかと思っております。問題は、そういった、たとえばけさほども答弁申し上、げたわけですが、小発明だけが大企業に圧迫されるか、これは私必ずしもそういうふうな面だけではないかと思う。小発明者でも、やはり発明した時期においてすぐその技術が使えるかどうかわからないわけでございます。そうしますと、何回もテストしていく、そうして需要者を見つけていく、こういう問題。現行法でございますと、出願公告になりませんと、何らの保護はない。改正法でございますと、ある程度そういった場合にも補償金請求権という代償が得られるという面もございます。したがいまして、いろいろな面がございますが、これによって発明者権利が害され、意欲が失われるといりふうには私は考えていないわけでございます。
  140. 近江巳記夫

    ○近江委員 じゃ、早期公開あるいは審査請求制度審査前置制度、いろいろあるわけでありますが、これ一つ一つを明らかにしていけば、長官は必ずしも町の発明家あるいは中小の人々を圧迫しないと言われますけれども、これはいかに圧迫しておるかということが歴然としておるわけです。この点、先ほど大臣にもお聞きしたいと言ったんですが、大臣からも総括的にひとつお聞きしたいと思うのです、先ほど答弁……。
  141. 大平正芳

    大平国務大臣 特許制度のの目的が発明保護、奨励であり、とりわけ権利保護であるという御指摘は、長官がいまお答え申し上げたとおりだと思います。きょうの御質疑を通じまして、近江委員が公報の記載その他事務に正確を期して権利保護に遺憾のないようにしろということは、まさに頂門の一針でございまして、私ども責任者といたしまして心せねばならぬことであると思います。人間がやることでございますから、たまに間違いがないことは保証できないわけでございますけれども、ベストを尽くしまして、そういったことのないようにやることは私どもの責任であると思いまして、制度改正の有無にかかわらず、あなたの指摘された、正確を期して権利保護に遺憾なきを期せ、こういう御趣旨は十分肝に銘じて尊重いたしてまいりたいと思います。  それから、改正によりますメリット、デメリットにつきまして、いろいろ説明を聞いたが、どうもこれは十分所期の目的を達しないのではないかという論断でございますけれども、これは近江さんにお願いでございますが、もり少し御検討をいただきまして、どういうものがメリットであり、どういうものがデメリットであるか——私は、本改正には確かに御指摘のようにメリットもあり、デメリットもあると思いますけれども、メリットが多ければそういう方向に推進してまいるのが私どもの政治の任務であろうと思います。制度改正する場合には、本問題にかかわりませず、どの問題でもそうでございますけれども、保守的な現状を維持しようという考え方、それから何かこれに改革を加えようという考え方と、必ず二大潮流が相克するものでございます。この問題につきましても、いろいろの反対があることも承知いたしておるわけでございますけれども、私どもとしては、長い間にわたりまして専門家の間で御検討をいただきまして、いろいろな手順を踏みまして、今日御審議をいただくまでになりましたこの改正法案というものは、みんなが一生懸命になって現状打開の道を探求いたしておりまする熱意は、かなり各方面の理解を得られるに違いないし、メリットが多ければこそこれを志しておるものと私は判断いたしておるのでございまして、そういう意味におきまして、理解のある御鞭撻をお願いできればと思います。  それから大企業、中小企業の問題でございますけれども、私は本来、商工委員会におきましてもたびたび申し上げておりますが、大企業と中小企業を対置して論議する考え方は間違いだと思うのでございまして、経済の仕組みはたいへん入り組んでおるわけでございまして、相互の補完的な関係を大企業と中小企業が持っております。また中小企業は、先ほど長官からも申し上げましたように、ユニークな特色を持って、大企業が関心を示さない部面にみずからの生命の領域を見出して、今日生き続けておるわけでございますし、年々歳歳中小企業がふえておるというようなこともそういうことを実証しておると思うのでございまして、必ずしもこれが対立した関係にあることだけとらえて問題を論断するということはたいへん危険であると、かねがね考えておるわけでございます。また日本の社会は、近江委員も御承知のように、私はたいへん流動的な社会だと思います。今日ソニーとか本田技研とか、われわれが子供のときにはほとんど見ることのできなかった小さい町工場が、今日巨大な産業に成長しておるわけでございまして、またわれわれが子供のときに、巨大な、勢威を誇っておりました企業も、今日はもう見る影もないものになっております。これは日本の社会がそんなに制度的に壁にぶつかって制度の制約があるから伸びられないというような窮屈な社会ではないからだと思います。英国のように名門に生まれなければ役人になれない、政治家になれないという社会じゃないわけでありまして、私のような百姓の小せがれでも大臣になれる社会なんでございますから、もっとそこは流動的に幅広くお考えいただいて差しつかえないんじゃないか。これを非常に鋭角的に対立した関係においてとらえるというようなことには、遺憾ながら私はあまり賛成できないのでございます。
  142. 近江巳記夫

    ○近江委員 もう早いこと、あっという間に私の持ち時間がきてしまったわけで、非常に残念でありますが、いま大臣長官からいろいろお聞きしました。非常にそれぞれ関係者の方が責任を持ってこの法案をつくられた、それを理解していただきたい、当然そういうお気持ちも私たちもよくわかります。しかしながら、現実に第一線級の審査官の方々、この人たちの実に八十数%の人たちが本制度については反対されておる。何といったってやはり実際に仕事をする人々の意見を聞くということは、これは一番大事なんです。それは私も制度改正についてはメリット、デメリットがあることはよくわかります。それはウエートも考えなければならない。よくわかります。しかし、それだけ各種の団体あるいは審査官の方々、あるいはまた事務の人々、第一線級の人々がそれだけの反対をされておられる。いまだかつてなかった。要するに、行政の第一線の人々がこれだけそろって反対されるという法案は珍しいわけです。このままこれを通してしまっていいものであるかどうか。そういう状態になれば、働いている人々のそういう意欲も大きく喪失する。私も審査官の方々にも会いました。非常に熱心に真剣に日本特許制度というものを考えておられる。そういう真剣な態度に私も胸を打たれたわけであります。非常に困難な膨大な仕事の中で、奉仕の精神に満ちたそういう姿でやっておられる。その人たちが真剣にこれからの特許制度というもののあり方について心配されておられる。私もいろいろとそういう話を聞きまして、本法案については非常に問題がある。一つの分類の問題にしたって、これだけの時間がかかっておる。ちょっと私は入っただけなんですが、あと早期公開あるいは審査請求、あるいはまた審査前置制度、いろいろとお聞きしなければならぬ問題が山ほどある。こういう点で、時間がきてあと次の委員も来ておりますので、残念でありますがこれで質問を終わりますが、当然質問を保留させていただいて、次の機会にまた一つ一つ検討させていただきたい、このように思います。  以上をもって質問を終わります。
  143. 大久保武雄

    ○大久保委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後三時五十五分散会