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1969-05-09 第61回国会 衆議院 商工委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年五月九日(金曜日)     午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 大久保武雄君    理事 宇野 宗佑君 理事 浦野 幸男君   理事 小宮山重四郎君 理事 藤井 勝志君    理事 武藤 嘉文君 理事 中村 重光君    理事 堀  昌雄君       天野 公義君    内田 常雄君       遠藤 三郎君    小笠 公韶君       小川 平二君    海部 俊樹君       神田  博君    鴨田 宗一君       黒金 泰美君    小峯 柳多君       坂本三十次君    田中 榮一君       丹羽 久章君    増岡 博之君       石川 次夫君    岡田 利春君       加藤 清二君    佐野  進君       千葉 佳男君    古川 喜一君       武藤 山治君    塚本 三郎君       近江巳記夫君  出席国務大臣         通商産業大臣  大平 正芳君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      菅野和太郎君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局長    柿沼幸一郎君         経済企画庁調整         局長      赤澤 璋一君         外務省経済協力         局長      上田 常光君         通商産業政務次         官       藤尾 正行君         通商産業省貿易         振興局長    原田  明君         通商産業省企業         局立地公害部長 矢島 嗣郎君         通商産業省重工         業局長     吉光  久君         通商産業省鉱山         保安局長    橋本 徳男君  委員外出席者         中小企業庁計画         部長      外山  弘君         中小企業庁計画         部計画課長   矢野俊比古君         専  門  員 椎野 幸雄君     ————————————— 五月八日  委員勝澤芳雄君及び佐野進辞任につき、その  補欠として岡田春夫君及び河上民雄君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員岡田春夫君及び河上民雄辞任につき、そ  の補欠として勝澤芳雄君及び佐野進君が議長の  指名委員に選任された。     ————————————— 五月七日  中小企業等協同組合法の一部改正に関する請願  (内田常雄紹介)(第五八九五号)  同(永井勝次郎紹介)(第五八九六号)  同(木村武雄紹介)(第六〇五六号)  同(松野頼三君紹介)(第六〇五七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  経済総合計画に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ————◇—————
  2. 大久保武雄

    ○大久保委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済総合計画に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。千葉佳男君。
  3. 千葉佳男

    千葉(佳)委員 光栄ある新委員室のこけら落としでありますが、はたして中身がそうなるかどうか……。  昨年、法改正がありました海外経済協力関係のことにつきましてお尋ねしたいと思うのですが、その前に、二月二十三日付の毎日新聞に、北朝鮮の平壌である工業展覧会ですか、これに対する補助金を打ち切ったという記事が載っておりましたので、これについて、経済協力一般に入る前に、この考え方につきまして通産省の見解といいますか意見をお聞きしてみたいと思います。
  4. 藤尾正行

    藤尾政府委員 お答え申し上げます。  従来から、北朝鮮に対しましては、私どもといたしまして、積極的にこういったたぐいの貿易振興に関します補助金を出さないというたてまえをとっております。したがいまして、新聞にいかような報道がなされたのかよく存じませんけれども、私どもといたしましては、ただいま中華人民共和国におきます貿易展覧会に対しまして私どもの御援助を申し上げておりますが、朝鮮人民共和国におきますそういったたぐいの催しについて御援助を申し上げるという予定はいたしておりません。
  5. 千葉佳男

    千葉(佳)委員 前回四十年に行なったときはたしか補助金を出しているわけですが、今回特段に打ち切ったということは、中華人民共和国朝鮮人民共和国ですか、これに対する取り扱いが多少——多少じゃなく、まるきり不平等といいますか、取り扱いが妥当を欠くのじゃないかというふうに思うのです。特に最近三十八度線をめぐって非常な緊張を続けておるわけでありますが、こういう緊張を続ければ続けるほど、やはり日本としては、平和立国という国是からいって、この種のものにはむしろ積極的に、従来出しておった金をよけいにするというぐらいにいかなければならぬと思うのですが、それを打ち切ったという点がどうも私はふに落ちないわけであります。でありますから、前回四十年のときは出した、今回は打ち切ったという、そういう打ち切るに至った積極的な理由は那辺にあるか、もう少し詳しくお聞きしてみたいと思うのであります。
  6. 藤尾正行

    藤尾政府委員 お答えをいたします。  御案内のとおり朝鮮半島は、三十八度線を境にいたしまして北朝鮮人民共和国大韓民国との二つに分かれておるわけであります。その間にいろいろな国境紛争と申しますかいろいろな紛争も起こっておりますし、また私ども大韓民国との間のいろいろの条約上の関係、政治上の関係といいまするものがあるわけでございまして、こういった問題を踏まえましていろいろの措置をいたさなければならないわけでありまして、私どもといたしましては高度の判断を要する問題といたしまして、これは総理大臣あるいは外務大臣通産大臣はじめ閣議においておきめをいただいて、その御指示に従うべき問題であろう、かように思います。したがいまして、私どもといたしましては、通産当局が技術的にこの問題についてどうしたかということについてお答えを申し上げれば申し上げるべきところでございますけれども、この問題につきましては、担当の通商局の者が参っておりませんので、直ちに後ほど呼ぶ手配をいたしますから、この問題を御保留を願いまして、技術的な問題につきましては政府委員からお答えをさしていただくということで暫時ペンディングにお願いいたしたい、かように思います。
  7. 千葉佳男

    千葉(佳)委員 それでは十一時二十分ごろからもう一ぺんこの問題についてお尋ねしますから、経済協力一般のほうに質問を移していきたいと思います。  昨年開発援助から商品援助という新しい方式を導入しましてやられたわけですが、四十三年度過去一カ年間の実績といいますか評価といったものをまず企画庁としてどのようにお考えになっておるか、それからお尋ねしたいと思います。
  8. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 御存じのとおり、インドネシア経済援助の問題につきましては、国際会議によりまして援助することが決定いたしたのでありまして、わが国もそれで援助いたしておるのでありますが、その援助の結果どうなったかというお尋ねでありますが、各国援助したことによって大体インドネシア物価上昇が緩和したということ、あるいは為替相場が安定した、財政収支の均衡に大いに貢献したということが言えると思うのでございまして、これは数字的にはあと政府委員から説明させますが、要するにインドネシア経済の安定と復興に寄与した、こう考えておる次第であります。
  9. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 長官の御答弁を補足させていただきます。  過去一年のインドネシア経済情勢でございますが、ちょうど先月の十四日と十五日にオランダインドネシア援助国会議がございました。その席上、インドネシア政府代表は、昨年の十月からインドネシア経済は満足すべき動きを示している、それは食糧関係財政金融関係その他を含めまして全般にそういう情勢である上に、物価上昇率が大幅に下がってきている、こういう説明をいたしまして、これを裏づけ意味で世界銀行の代表もこのインドネシア経済情勢分析につきましては同じような見解を述べております。またIMF代表も、同じ会議におきまして、六八年にインドネシア国際収支は非常な改善が行なわれたという表明をいたしております。  そこで、具体的な数字でございますが、一番問題のインフレーション物価関係でございますが、これをジャカルタの生計費指数というのでとってみますと、御承知のように六五年には年間上昇率が五九四%、一年間でほぼ六倍になっております。六六年にはこれがさらに上がりまして六三五%というふうに六倍をこえておるのでございますが、六七年にはこれがずっと下がりまして一一二%くらいになっております。それから六八年に入りますと、三月以降米の生産が増加されたとか、あるいは先ほど御指摘各国からの援助が逐次行なわれたというようなこともございまして、昨年一年間での年間上昇率は八五%というふうに非常に下がってきております。特に昨年の下半期をとってみますると、月平均二・三%、半年で一四・九%という程度上昇率であり、さらにこの一−三月の指数はさらに下がりまして、月平均二%というぐあいに非常に落ちついた動きを示してきております。これは、もちろんインドネシアのいま申し上げましたような食糧の増産あるいは輸出の増進、こういったことに加えて、各国からの商品援助等が非常に順調に行なわれました結果、インドネシア国内におきますところのインフレーション物価というものが非常に平静化してきているというふうに考えられるわけでございます。
  10. 千葉佳男

    千葉(佳)委員 もう一度初めに返ってお尋ねしますが、昨年国会で論議された時代は、例のように六千万ドルをこえるかもしらぬという非常な微妙な言い方をしまして、巷間一億一千万ドルというふうにすでに伝えられておりましたが、当時の宮澤長官も決して一億一千万ドルとは言わずに、たしか六千万ドルということで最初から最後まで押し通した記憶があるのです。結果的にどのようなぐあいに金の額がなりましたか、もう一ぺんお尋ねしたいと思います。
  11. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 昨年の国会でちょうど経済協力基金法改正案が審議をされておりますときに、たまたまいま御指摘インドネシア経済援助の問題があったわけであります。その際、いま先生が御指摘のようにちょうど六七年と申しますか前年分と同じ程度、六千万ドル程度を一応予算上は計上いたしておりますということを当時の宮澤長官も答えておりまするが、なお、これはたしか参議院の委員会であったかと思いますが、委員の方の御質問に応じまして、私どもとしては、協力基金にも多少の余裕がないわけではないので、これはかりのことではございますけれどもとお断わりして、一千万ドルとかあるいは二千万ドルとかいう程度のことならば絶対にできないということではないと考えておりますと、こういうような答弁をされております。最終的に一億一千万ドルというふうに決定を見たのでございまするが、その内訳は、御承知かと思いますが、六八年度分としてきまりました、つまり実行いたしますものがそのうち八千万ドル、残りの三千万ドルは六九年度以降あらためて両国協議によりまして援助をいたしましょうという形の、いわば私ども協力意図表明というふうに言っておりますが、そういうことで協力いたしましょうという意図表明をいたしました。これが三千万ドルでございます。この合計が一億一千万ドルということでございまして、先ほど御指摘の六千万ドルが直ちに一億一千万ドルになったということではないのでございます。
  12. 千葉佳男

    千葉(佳)委員 将来使うという三千万ドルの性格について、外務省のほうになろうと思いますが、お尋ねしますが、悪く言えばおとりとまではいかぬでしょうけれども、三千万ドル将来あらためて協議をしてということが、単なる外交的な辞令ではないと思いますが、それが資金裏づけを持った約束であるのか、それとも相手方を安心させるといいますか、名目的なものとして、悪く言えばちょろまかすためにこの三千万ドルの付属交換公文があるのか、一体こういうのが、多少外交と関係してくると思いますが、三千万ドルの性格といいますか、そういったものをどのようにお考えになっているのか、お尋ねしてみたいと思います。
  13. 上田常光

    上田(常)政府委員 ただいま企画庁赤澤調整局長から御説明申し上げましたように、われわれといたしましては、いわばこれは政府意図表明であると解釈しておるわけでございまして、決してその三千万ドルを供与するとかあるいは貸すという法的義務を負ったものではない。と申しますのは、御承知のとおりにプロジェクトと申しますのは、どうせ一カ年間で全部完了するものでもございませんし、また先方インドネシア側といたしましては、自分のところの経済開発を遂行いたします上におよそどのようなプロジェクト日本側でやってくれるかということを知りたいわけでございます。そこで一応こういうプロジェクト、特に昨年度日本側がとりましたプロジェクトはかつて日本側が手がけたものでもございます。たとえば三Kダムのようなものでございますが、そういうものでございますので、そこで日本側としてもプロジェクトとしてはそういうものをとるのが適当であろう、しかしそれをいま直ちに全額について、ここでたとえば資金供与するとか貸すというような約束をするのではなくて、そういうものについては将来法令予算範囲内でなるたけ資金協力が得られるように容易にしてあげましょう、そういう意味意図表明とわれわれは解釈しているわけでございます。それはこのインドネシア側との交換公文の中にも書いてございますように、ちょっと読ましていただきますが、「わが国政府は、」わが国と申しますと、これはインドネシア側でございますが、「日本国関係法令に従い、かつ、予算範囲内において、」その交換公文にあります「事業計画表からその実施のために選出される計画を完成するため、海外経済協力基金による百四十四億円の額の範囲内での借款供与を容易にすることにより、わが国政府に」わが国政府というのはインドネシア側でございます。「わが国政府協力するであろう」こういうような言い方先方から言ってまいりまして、わが方ではそれを受けて、そのとおりである、こう申してあるのでございまして、しかもこの三千万ドルにつきましては、ここに同じく書いてございますように、この三千万ドルにつきましては「両国政府間の新たな取極によらなければならない」ということになっておりますので、昨年度の一千万ドルをこえます残りの三千万ドルは単なる意図表明でございますし、具体的にそのうちの幾らを出すかということはまた別途あらためて両国間で協定を結んで出す、こういうことになっておるわけでございます。
  14. 千葉佳男

    千葉(佳)委員 これはたしか七百万ドルくらい昨年焦げつき債権に対するリファイナンスをやっておると思いますが、これとの関係でお尋ねするわけなんですが、焦げつき債権はおそらくことしも当然出てくるだろう、またことしもリファイナンスするだろう、このように思いますが、昨年三千万ドルという、いま意図表明を言われましたけれども、非常にばく然としたものを一方に残しながら、焦げついた分についてはリファイナンスしていくということになりますと、こっちはこっちで去年三千万ドル、そういうふうな意図表明をした、ことしも一億二、三千万ドルにおそらく結果としてなるのじゃないかというふうに、いまの趨勢から見ますと予想されますが、そこの中でまた三千万ドルくらいの意図表明というふうなぐあいにしますと、意図表明がその分だけでも六千万ドル、こうなっちゃうわけですね。ですから、何といいますか、そういう不確定な要素をかかえながら、片やリファイナンスをやっていくというところが、どうも何といいますか、はっきりした方針がないように私ども受け取れるわけなんですが、これとの関連でどのように——単なる意図表明だけで今後とも押し通していかれるおつもりなのか、もう少し着実な計画があって、近い将来、たとえば三年なり五年なりしたらリファイナンスをもうする必要がなくなるという、そういうふうな確かな見通しがあってやっておられるのか、その辺お聞かせ願いたいと思います。
  15. 上田常光

    上田(常)政府委員 昨年確かに、先生ただいま御指摘のとおりに、さらにこのリファイナンスを七百万ドルばかりいたしております。これは債権国会議各国相談の上で、各国ともそれぞれ一定の年限まで来た債務は繰り延べてやる、条件はどうするのだということをパリの会議できめましたので、それに従ってやっているわけでございまして、これを全般的に申しますと、先生ただいま御指摘のとおりに、一方でリファイナンスをしながら、他方では将来に、意図表明でございますけれども、ある程度の問題をある意味で残しておるという点、確かにはっきりしないという御印象をお持ちかと思いますが、私どもといたしましては、根本的にはやはりインドネシア経済の建て直しにどうやって協力していくかという問題でございまして、これは各債権国みな、御承知のとおり一九六六年に東京でありましたのが初めでございますが、それからフランスやオランダ等々で何回か会議を重ねまして、一応従来のいわばスカルノ政権時分債務は、それぞれとにかくいますぐインドネシアがこういう状態になっておるときに取り立てても、これは再建できないだろう、そこで一応これは繰り延べてやろう、と同時に、いま瀕死の病人なんだから、一応カンフル注射をするような意味BE援助をしたり、その他の援助もして、とにかくインドネシアというものを一応自立できるような、ノーマルな経済状態に早く持っていくように助けてやろうというのが債権国の一致した考えでございまして、そういう意味におきまして、一方でリファイナンスをしながら、また他方さっき申しましたように、プロジェクト性格上どうしても一年きりで済まないものでございますから、ある程度意図表明をして協力を容易にしてやるというようなことを言っているわけでございます。いま一応スカルノ政権時分のわれわれの債権の繰り述べは、六七年に四千五百万ドルいたしまして、昨年、いまおっしゃいましたように七百万ドル近く、今年おそらくまた、いまのところで計算をしてみまして大体六百数十万ドルになると思いますが、それをいたしますと、あと残りはもうわずかだと思います。したがって、そういつまでもたくさんリファイナンススカルノ政権時分債務が残っているわけではございません。ただ各国とも、いませっかくインドネシア経済再建に踏み出そうとしているときに、何とかこれを助けてやろうという意味で、一方では旧債権の繰り述べも、みんなで相談した結果としてやっておるわけでございます。
  16. 千葉佳男

    千葉(佳)委員 その三千万ドルについて最後にお聞きしますが、これはこちら側からいえば意図表明ですが、一年限りにわたるわけじゃない、長期的なプロジェクトの問題だからということで、ことしは実行に移されなかったといいますが、逆にいえばそれを受け入れるだけのインドネシア側素地というか用意というものがなかったのか、プロジェクト計画をこちらに提案する、さらに提案したことを実行するというだけの素地がまだまだないというふうに見られておるのか、これを聞きまして、この三千万ドルという問題は終わりたいと思います。
  17. 上田常光

    上田(常)政府委員 インドネシア側に実行する素地がないと申しますよりも、むしろ実際の状態を御説明申し上げますと、先ほど申しましたように、たとえば三Kダムでございますが、三Kダムを完成してほしいというインドネシア側の要望がございましても、それではすぐに今年度それに対してどのくらいの金が要るのかということはわからないわけでございます。そこで、やはり調査団を出しまして、政府といたしましては、具体的にその後の三Kダムなら三Kダムの状況をよく見まして、そして今年度はどのくらいまで一体お金が要るかということもよく調べた上で出す。それからまた、そのほかのいろいろな配送電の問題ですとか、あるいは幾つかのプロジェクトがございますけれども、いずれもなるたけむだな分がないようにいたしますために、最近は特に各プロジェクトについて十分経済性を確かめました上で実際には金を出すというようにいたしておりますためにおそくなるということも、これは重要な理由になるのでございます。ですから、インドネシア側に受け入れる用意があるかないかというよりも、ある意味では問題の性質上どうしてもそうなるのじゃなかろうか。また現にインドネシア側といたしましても、開発援助に対します国内資金は十分手当てすると申しておりますし、現に、たとえば商品援助で出ておりますものは、それを売って得た見返りのルピアは、全部一般国家歳入ではなしに、中央銀行特別勘定を置きまして、経済開発についてだけ使うようにいたしておりますので、資金的な裏づけは、今後はかつてスカルノ政権時分のようなことはないと確信いたしております。
  18. 千葉佳男

    千葉(佳)委員 ではこの三千万ドルの意図表明については、今後、おそらくことし、来年続くでありましょうから、その後の経過を見てあらためて議論になると思いますが、これだけにしておきます。  昨年実施した六千五百万ドルの商品援助、それから一千万ドルのプロジェクト援助、このうちの六千五百万ドルの商品援助、これが例のBE債券ですか、それに基づいて実際取引される、こういうふうにいわれておりますが、その中で不要不急と思われるようなものがBE債券によって買われておるかどうか。その辺、食料品とか衣類とか機械類とかいろいろあるでしょうけれども、そのおおよその割り振り、割合と、一ころ騒がれた不要不急のものがあったかなかったか、その点どのように通産当局としてお考えになっておるか、お尋ねしたいと思います。
  19. 原田明

    原田政府委員 BE商品援助中身につきましては、過去におきましてやや不要不急と思われるような商品がまじる例がございました。したがいまして、テレビ、乗用車の部品、スポーツ用品、映画のフィルム、絹糸、それから生きた動物といったような、やや緊急とは思われないというような商品ネガリストに掲げまして、これをBE商品から全部のけております。したがいまして、昨年度の商品援助につきましても、こういうものは一切入っておりません。
  20. 千葉佳男

    千葉(佳)委員 それから向こうのほうの買い付けは、あくまでもBEリストに載ったとはいいながら、BE債券を買った者の恣意といいますか、そういうふうなものになるのじゃないかと思うのですが、そういう点のチェックはどのようにされておりますか。
  21. 原田明

    原田政府委員 商品援助、ボーナス・エクスポートのシステムをとっておりますたてまえは、不要不急のものを除きましてインドネシア経済復興開発というものに役立つものを、コマーシャルと申しますか経済原則に従って、最も需要が強いものにより多く購入がなされるというシステムにいたします仕組みでできておるわけであります。したがいまして、たてまえといたしましては、そのBE援助に充てられますワクの中で、食糧幾ら繊維幾らというようにあらかじめ割り振りをするということではございませんで、不要不急のものを除いたものの中では、需要度に従って、経済原則に従って取引が行なわれるという形で実施がされたわけであります。四十三年度の六千五百万ドルの商品援助円借款供与内訳としましては、いま申し上げましたようなシステムの結果、ことしの二月末現在の数字で申し上げますと、食料品約五億、繊維及びその製品が四十二億、化学品が五十八億、非金属鉱物製品八億、金属製品三十一億、一番経済の発展に必要かと思われますような機械機器が四十七億、その他が十七億で、合計いたしまして二百十億円という程度実施をされております。
  22. 千葉佳男

    千葉(佳)委員 それではこの問題、最後にもう一ぺん振り返りまして長官にぜひ確約をお願いしたいところなんですが、先ほど申しましたように、当初は六千万ドルといいながら、実際中身を見ますと、大蔵省から支出した五百万ドルですか、KR食料品も含めて、大体八千万ドルになっているようです。それと先ほど言いました例の三千万ドル上積みして一億一千万ドルという結果になったわけであります。もう一ぺん繰り返して申し上げるようですが、巷間うわさされる以上に、国際的な会議の中で日本の割り当ては幾らだというふうに当初から大体きまっておったにもかかわらず、国会の場では六千万ドルということで最後まで押し通したわけでありますが、ひるがえってみますと、こういう点はやはり国会における審議権をこの分だけ拒否するという結果になったんじゃないか、このように思うわけであります。相手のあることだからこれはしかたがないと言ってしまえばそれまでですけれども、おおよそ見当がついて、これくらいだけはというふうな場合は、やはり正直に国会の場に提出するというのが私は本来のあり方じゃないかと思うのですが、その点について長官のはっきりした決意というものを聞きたいと思います。
  23. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 海外経済協力基金につきましては、インドネシアには何ぼとか、あるいは韓国には何ぼとかいうおおよその金額は定めておりますけれども、非常に流動性があるのでありまして、その年、その国の事情によって金額の増減をやることがあるのであります。初めからインドネシア何ぼといって確定してあるわけではありません。  それから、なおこの機会に申し上げておきたいことは、海外経済協力につきましては、従来は先方から要望があればそれにこたえて協力をしておったのでありますが、本年度からは、海外経済協力基金については、少し日本の態度を改めまして、積極的に日本のほうから、こういうプロジェクトをしたらどうか、こういう森林開発をしたらどうかというようなことをこちらから申し出て、そうして、あるいは合弁でやるか、そこはわかりませんが、そうやることが相手の国の利益になるし、同時に日本の利益になるという場合には積極的に協力すべきじゃないかというふうにわれわれ考えておりますので、そういう点において、従来からの、要望があれば要望に応じて協力するという態度じゃなくして、こちらから積極的な開発調査をして、そうして協力するということで今後進んでいきたい、こう考えておる次第であります。
  24. 千葉佳男

    千葉(佳)委員 経済協力の結果的なものといいますか、反面といいますか、こちらのほうから考えた、日本の資源の確保という別な観点からもう少し質問をしたいと思ったのですが、時間の関係もありますので、これは後日に譲りまして、先ほど保留をしておりました北朝鮮の問題について、まず最初に事務当局のほうからお話を聞いて、それから大臣のほうにももう一ぺんお尋ねしたいと思います。
  25. 吉光久

    ○吉光政府委員 お答え申し上げます。いま北鮮の関係の見本市に対します補助金の打ち切り問題について御質問があったように伺ったわけでございます。いわゆる平壌展と称せられておるものにつきましては、第一回九百万円の補助金を出し、第二回も出すべく準備をいたしておりましたが、北鮮側の事情によりまして展覧会そのものが延期になりまして、その関係のものが本年秋また平壌で開かれるというふうなことになったわけであります。  今回その補助金を出すかどうかということにつきまして慎重に検討いたしたわけでございます。こういう機械振興資金で出します補助金の出し方につきまして、いろいろの角度から検討いたしたけれども、個々の海外の機械の見本市につきまして、これまでの実績等から判断いたしました場合に、相当程度営業的色彩の強いものがあるというふうなことでございますので、こういう事業につきまして機械振興資金から——これはどこで開催されるというふうなことを離れまして、こういうものにつきましては基本的には補助は行なわないというふうな基本方針を決定いたしたわけでございます。  ただ、今回の平壌展につきましてこういう直接的な補助金というふうなものの制度は実施しないということにいたしたわけでございますけれども、何か日本の機械メーカーとの関係におきまして間接的にいい制度がないかどうかというふうなことにつきまして、現在積極的に検討を進めておる次第でございます。
  26. 千葉佳男

    千葉(佳)委員 従来機械振興資金から出されておりました補助金の実績といいますか、近々一、二年でけっこうですが、対象の国の数と額と、これをひとつ教えていただきたいと思います。
  27. 吉光久

    ○吉光政府委員 私、ただいま手元に全体の数字を持ち合わせておりません。至急取り調べましてお答え申し上げたいと存じます。
  28. 千葉佳男

    千葉(佳)委員 それじゃ大臣にお尋ねしますが、公平な目で見て、中国の北京の日工展に対してはたしか通産省の本予算の中で組まれておるんじゃないかと思うのですが、この機械振興資金というのは、平たくいえば自転車競技からあがったテラ銭といいますか、そういうあがりの資金のやつですから、もうすぐにその段階で格差があるように思うのです。しかもその格差があったやつを、今度はさらにそれを打ち切るということになると、同じ共産国といいながら、北京には出す、平壌には、しかも競輪からあがったテラ銭から出しておったやつさえも切っちゃうということになると、非常に不穏当な事柄になるのではないかという考えが第一番であります。  それに、先ほども大臣がいないときに言いましたが、特に三十八度線が非常に緊迫しておるときにそういうことを打ち切るということになると、やはり日本もそんなようなことを腹に一物持ちながらやったのではないかというふうな邪推も同時に呼ぶのではないか、私はこのように思うわけです。ですから、資金の出し方もお尋ねしたい一つでありますが、第二番目として、緊張が増せば増すほど、私ども平和立国という国是からいって平等な取り扱いをすべきじゃないか、このように思うのですが、大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  29. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私どもは、たびたび本委員会でも申し上げておりますとおり、政治体制のいかんにかかわりませず、グローバルに貿易の拡大をはかってまいるという態度でございます、したがいまして、貿易振興政策の展開にあたりましても、国とかのいかんによりまして模様を変えていくというようなことは、本来私どもはとるべき態度ではないと考えております。今後もそういう方針でできるだけ貫いてまいる決意でございますが、いま御指摘のように、朝鮮半島でございますとか、ベトナムでございますとか、中国あるいはドイツのように、二つの政権が非常に鋭角的な対立をしておる、日本はその一方と国交を持っておるという間柄に置かれておる事情がございます。そういった場合に、その地域における二つの政権の対立の状況、濃淡、そういったものはおのずから多少違っておるようでございます。わが国に対する要請にいたしましても、いろいろ違った濃淡があります。したがいまして、いままでの貿易の実際におきましても、比較的自由な貿易、物の輸出入、人の交流というような点が認められておるところもございまするし、非常に窮屈になっておるところもございます。これは本来望ましいことではないのでございますけれども、そういう政治的な客観情勢というものに影響を受けまして、不本意ながら若干のニュアンスの相違があるということは、現実の問題としてやむを得ないところがあることは御了解を願いたいと思います。  しかし、冒頭に申しましたように、基本の方針といたしましては、貿易振興政策といたしまして、国によって差別をつけるなどということはないようにいたすのが私どもの立場でなければならぬし、そういう方針を与えられた状況のもとでできるだけ貫いておるというのが私どもの態度でございます。したがいまして、見本市補助につきましても、将来市場性や資金の効率性などを考えて、限られた予算を有効に使うということで、政治的な配慮は加えないということにできるだけやりたいということで処置しておる次第でございます。
  30. 千葉佳男

    千葉(佳)委員 もう一ぺんお尋ねしますが、いま政治的な配慮は全然ないという大臣の答えでありましたが、最近の勇さんというのですか、蒸発した人の事件を見ましても、私も北の朝鮮人とも南の朝鮮人ともいろいろ身の回りでつきあいがありますが、あの人たちの、オーバーに言えば、同じ民族でありながら骨肉相はむということはまことに気の毒だというふうに私は市民生活をしながら感じてはおるんですが、そういうだけに、朝鮮半島と日本との問題をどのようにしていくかということは、非常に歴史的なものもあり、むずかしいと思います。むずかしいだけにこういう時期に、しかも先ほどいいましたように、たしか北京の日工展には一億五千万円くらい補助金を出したと思いますが、これはわずか九百万になるかならぬかの額でございまして、しかもそれは競輪からあげたテラ銭のようなうものから出してあるわけでありますから、そういったものまでも打ち切るということになると、相手に対する印象というものが非常に悪くなると同時に、こういうふうな緊張が高まっている現在、打ち切るということになると、大臣がいかに政治的な配慮はないとはいいながら、結果として起きてくるのは、やはり日本は南のほうに加担しておるんだなという、そういうふうな政治的な結果が出てくるというふうに私は思うわけです。ですから、主観的に政治的な配慮はないといいながら、そういうふうなことが結果として出てくるから、ぜひこの問題は復活すべき性質のものじゃないか、このように思うのですが、この点お聞きいたします。
  31. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほど多少ことばが足らなかったと思いますが、見本市の性格から申しまして、非常に営業性が高い、特に国からの補助を必要としない性質のものというようなものにつきましては、原則としてそういうものはどの地域であろうと慎むべきじゃないかというようなところにアクセントがあるわけでございまして、北鮮の場合に、政治的な配慮から、機械振興補助金のほうから出すのを取りやめるという、そういう性質のものではないということは御了解いただきたいと思います。そういうふうな点につきましては、関係者とも事実上懇談をいたしまして、皆さんの御了解も得ながら、先ほど重工業局長からお話を申し上げましたように、何らかの間接的な有効な手段があるかどうか、それらの点を真剣に検討いたしておるわけでありまして、通産省の立場というのは、冒頭に申しましたとおり、そういう政治的なもやもやとしたものになるべくインボルブしないで、できるだけ貿易の機会を鋭意追求して、グローバルな貿易の拡大をやるということの基本方針を貫き、無差別にどことも公正に公平にやってまいるという基本の方針でおるわけでございます。ただ、申しましたように、現実に非常にやっかいな政治情勢が客観情勢としてありますので、多少の制約はいつも受けておりますけれども、私どもはそういうことになるべくかかわらないようにいたすという基本の方針で運営に当たってまいる決意でおります。
  32. 千葉佳男

    千葉(佳)委員 最後に、復活するのかしないのか、こういうふうな点ずばりお聞きして終わります。
  33. 大平正芳

    ○大平国務大臣 営業性を持っている、その色彩が非常に濃厚でございますので、復活しようという考えはいまのところ持っておりません。
  34. 千葉佳男

    千葉(佳)委員 終わります。
  35. 大久保武雄

    ○大久保委員長 武藤山治君。
  36. 武藤山治

    武藤(山)委員 最初に大臣にちょとお尋ねいたします。  公害対策基本法が制定されて、第八条で環境基準を策定する、あるいは十八条で指定地域をきめる、こういうことになっておりますが、現時点で八条に基づく環境基準を地域別に、あるいわ地帯別と申しますか、どういうところを八条該当地域としたか、それから十八条の指定地域は大体どういうところを指定したか、大ざっぱな問題ですから、大臣の認識のほどをちょと伺っておきたいのでありますが、どうでございますか。
  37. 大平正芳

    ○大平国務大臣 事務当局から説明させます。
  38. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 環境基準につきましては、去る二月十二日に硫黄酸化物すなわち亜硫酸ガスにつきまして閣議決定を見たわけでございます。それで、その閣議決定の中にありますように、地域によりまして達成の時期を分けてあるわけでございまして、およそ三つのグループに分けてあるわけでございます。  第一のグループは、現在においてもきわめて汚染の度が激しい、いわば過密地帯と称するようなところでございます。これは東京、横浜、川崎、尼崎、大阪というようなたぐいのところでございます。  それから第二のグループは、いわば工業が発展しつつあるところ、発展途上の工業地帯というようなところでございまして、たとえば岡山県の水島とかあるいは千葉とかあるいは鹿島とか、そういうようなたぐいのところでございます。  それから第三グループは、現在においては工業が行なわれていない、しかし、将来の工業基地として発展するであろういわば処女地の工業地帯、こういうところでございます。そういうところはたとえばどういうところかと申しますと、大分県から福岡県にかけましての周防灘について十年後には大きい工業が興るだろう、こういうことがいわれているわけです。あるいは北のほうでは陸奥湾、小川原湖、そういうところにつきましては、これまた十年後には大いに工業が発展するであろう、しかし現在においてはまだ処女地である、こういうふうなところ、そういう三つのグループに分けてやっているわけでございます。  なぜそういう三つに分けたかと申しますと、第一のグループにつきましては汚染が非常に激しいので、一挙に目標を達成するわけにまいらぬということで、おおむね十年以内、こういうことにしているわけでございます。それから次の発展しつつあるところ、これは十年というわけにはまいらぬですが、五年以内程度にやろう。それから最後の処女工業地帯におきましては、最初の工場をつくる段階からちゃんと立地計画その他はっきりいたしまして、絶対に直ちに環境基準以内にしておくというようにいたそう、こういうような構想でもって三つの地帯に分けているわけでございます。  それから先生の御質問のもう一つの十八条云々とおっしゃいましたが、おそらくこれは十九条に基づく公害防止計画のお話だと思いますが、十九条に基づく公害防止計画につきましては、四十四年度におきましては千葉県の市原、三重県の四日市それから岡山県の水島、この三地域について公害防止計画をつくることになっておりまして、厚生省、通産省等を中心にいたしまして、現在十九条に基づく内閣総理大臣の基本方針の案をつくっておりまして、近く内閣総理大臣の基本方針が出る運びに相なるものと思っております。
  39. 武藤山治

    武藤(山)委員 今回指定されているもの、また指定されようとしているものは非常に広範囲な人口を擁する地域、そういうところをねらいとしたのか、それとも、特に人体に害が非常に強い亜硫酸ガス、そういう公害の種類によって指定を一応きめたというのか。というのは、もっと狭い地域で、たとえば人口一万とか一万五千という小さな町でかなりひどい公害のある地域もあるわけですね。私がこれから具体的に尋ねようとする栃木県の葛生町、こういうようなところは、町は小さいが、もうそれはたいへんな公害ですね。こういう地域は規模が小さ過ぎるということで指定をすることは一切考えていないのかどうか。その点はいかがですか。
  40. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 最初に申し上げました環境基準の問題は、先ほど申し上げましたように亜硫酸ガスについての環境基準をきめて、その地域を三つに分けてやったわけでございますが、葛生の問題は、後ほど御説明があると思いますけれども、公害と申しましても亜硫酸ガスの問題ではございませんで、粉じんの問題でございます。  そこで、本来ならば公害対策基本法第九条に基づきまして、亜硫酸ガスだけではなくて、粉じんもあるいは自動車の排気ガスもあるいは水もすべてやることになっておりまして、逐次やるわけでございますが、環境基準というのは非常にむずかしいものでございまして、その環境基準決定までの作業が、専門家でもっていろいろ議論していただきましたけれども、非常に時間がかかりまして、とりあえず第一号としてやったのが亜硫酸ガスでございます。もちろん葛生等における粉じんの公害の問題も、いずれは環境基準が第九条に基づきまして閣議決定になると思いますけれども、とりあえず作業の順番として亜硫酸ガスがきまって、粉じん等はあとになっておるわけでございます。
  41. 武藤山治

    武藤(山)委員 いずれは指定をされるだろうというお答えでありますから、それでそこは了解いたします。いずれとはいつかということまで詰めたいのでありますが、そこまで詰めても、おそらくいずれとは何年ごろかということも答えられないだろうと推測をいたしますから、そのいずれをなるべく早いいずれにしてもらうように期待をして、その問題は了解いたします。  そこで、前回昭和四十二年の七月十九日に公害対策委員会で私、質問をいたしました。その際に葛生町では、二十二事業所の石灰工場で働いている七百九十九各の従業員のうちで三十九年では百三十三人がけい肺の有所見者である、四十年は四十八人、四十一年は百五十五名にのぼっている。その後の統計数字はわかっていないのでありますが、わかっていたら答弁のついでに四十二年、四十三年の調査はどうなっているかも明らかにしていただきたいのでありますが、いずれにしても七百九十九名の従業員のうち百五十五各がけい肺病の有所見者として発見されておるということは、地元の人にとっては重大問題であります。さらに、その葛生に続く栃木市内の鍋山町においても、わずか百九十二名中ですでに昭和三十九年が十三名、四十年二十二名、四十一年四十名というようにけい肺病の有所見者の数がずっとふえていっているということであります。早く対策を立てなければ、これらの患者はさらに増大をする傾向があると思うのであります。そこで、できれば四十二年、四十三年のそれらの数字も明らかにしてもらいたい。同時に、これに対する対策を通産省として具体的にやったのか、私、たいへん疑わしいのであります。このときの議事録を読むと、やるという約束をしていますよ。その後通産省として具体的にどのようなこのけい肺にかからぬようにする施設、そういうものを業者にさせたのか、その指導の結果をここで明らかにしていただきたいと思います。
  42. 橋本徳男

    ○橋本政府委員 二つの御質問だと思うのでありまして、一つは、けい肺患者の問題、それからもう一つは、こういったいわゆる粉じんに対していかなる措置をとってきておるかということだと思うのでございます。私のほうで承知しておりまするデータによりますれば、四十二年度の鍋山地区におきまするけい肺患者、これは管理一、二、三といろいろございますが、全体といたしまして百六十七名でございます。四十三年度は百七十六名というふうに聞いております。葛生地区でございますが、四十二年の三月末で五百二十八名、それから四十三年の三月末で五百五十二名というふうに承知しております。こういうふうに若干現在もふえておるような状況はまことに遺憾でございますが、四十二年の六月に、この鍋山地区、葛生地区につきまして、いろいろ石灰からの粉じんが問題になりまして、特に鍋山地区は、先生承知のように、葛生地区に比べまして、われわれの承知しておりますいろいろの調査の結果によりますれば、最も悪くて、どちらかといいますれば、葛生地区に比べましてとにかく倍程度悪いというのが鍋山の四十二年度における実態でございまして、それでさっそく東京の鉱山保安監督部で関係者を招致いたしまして、鍋山地区におきまする各種の防じん施設の整備を指示いたしまして、その後計画的に実施するように指導してまいったわけでございます。いまその結果につきまして御説明申し上げたいと思います。  鍋山地区におきましては、四十二年の六月に五山の鉱業権者を招致いたしまして、粉じん防止につきましての改善指示書を交付いたしました。そういたしまして、その企業のサイドから実施計画というものを求めたわけでございます。それで実施計画が出てまいりまして、その実施計画を完全に実施するために、その後監督もし、それからまた、これは御承知のように中小企業でございますので、いろいろ資金的な手当てにつきまして後ほど御説明いたしますが、私のほうもいろいろあっせんしてまいったわけでございます。  この実施計画のおもなものは、御承知のように、この石灰工場におきまする手消化、石灰に水をかける手消化でございますが、それが最も粉じんを発生する大きな要素でございます。したがって、この手消化はやめるという一つの計画でございます。それからその次に若干進んだ施設といたしまして、機械による消化施設がございますが、単なる機械の消化では十分でございませんので、たとえて言いますれば、二重注水式とかあるいは温水式とかあるいは洗浄式といったようなものに改造したり、あるいはそれに非常に強力な集じん装置を設置するといったようなことをさしておるわけでございます。それからそれ以外に、生産の過程といたしまして、粉砕の段階とかあるいは運搬の段階といったものがいろいろあるわけでございますが、そういった施設については密閉をするように指導してきております。あるいは密閉が非常に困難なる場合におきましては、それに集じん装置を取りつけるというふうなことでやってきております。それからまた、建屋からいろいろ粉じん逸散いたしますので、建屋につきましての露出を防止するというふうなこともやってきておりまして、そうしてずいぶん最近におきましてはその状況が進んでまいっております。  それで、その進捗の状況でございますが、手消化につきましては当時八つの施設がございましたが、現段階におきましては五つだけが残っております。それで、大体五月一ぱいで一つが機械にかわります。それからあと十一月末で全部手消化はやめて機械にかえるというふうにいま進んでおるわけでございます。それから機械消化につきましても、二重注水式とか温水式といったようなものにかなりかわっておりまして、もともと十二基ございましたものが現在では八基それに転換して、もうすでに稼働しております。あとの四基につきましても、大体本年の末までには完成するというふうになっております。それ以外の粉砕施設とか分級施設につきましてもいろいろ計画が進んでおりまして、全体をながめますれば、大体今年十二月末までには当時立てましたいろいろな計画が完成するという段階になっております。それで、これは若干手ぬるいようではございますが、こういったような機械は大メーカーはつくってございませんので、この周辺の中小の機械メーカーに注文するという形でつくっておりますので、発注後若干の時間を経て逐次機械が完成しているといったような状況でございますが、今年一ぱいで大体当初の計画が完成するであろうと思います。  それから状況といたしましては、四十二年の六月と昨年の七月に周辺の紛じんの状況を調査しておりますが、昨年の七月の段階におきましては、四十二年に比べますれば、大体粉じんが半分に減っているというような状況になっております。また近々やることにはしておりますが、最近の状況といたしましてはかなり減少しているだろうというふうに考えております。  それから、こういったために必要な資金量として大体六千三百万円程度が要りますので、その半分程度を中小企業金融公庫から融資しているというような状況でございます。  また、葛生地区につきましては、葛生地区はどちらかといいますれば、鍋山地区よりも若干もともといい状態にございましたので、この地区につきましても逐次計画を立てて実施をさせておりますが、とりあえずは鍋山地区を先行させようというふうな方向で現在進んでいる次第でございます。
  43. 武藤山治

    武藤(山)委員 あなたの答弁では、会社がたいへん誠意をもってやっているような印象を受けるが、私が行ってみた印象では全く違いますね。そこに働いている従業員自身が、この間も私が演説会に行きましたら、集団陳情を受けて、前よりひどくなったというんです。おそらくあの指示書に基づいてやっているという報告を通産省にはしたのではないかという印象を強く受けたわけです。あなた自身も見たわけではないでしょうから、ここで論争しても、あなたは報告について答えるだけだと思います。なかなかむずかしいと思いますが、それにしても、この前私が質問したときには、二重注水式のか焼設備に改造するのは去年の八月に完了すると言ったんですね。それがあなたのいまのお答えでは、ことしの十一月末までに大体二重注水式あるいは温水式に切りかえるというわけなんです。それ以下のもっと重大な密閉集じん機の取りつけについては、この前、局長は、四十三年八月に完成すると答えた。あなたのいまの答弁では、密閉集じん機の取りつけについては全く触れていなくて、方法だけ機械化するというだけの答弁です。  それからもう一つは、屋家全体の密閉及び集じん機の取りつけも三年計画で業者にやらせます、これは一つもやっておらぬ。この前は四十四年度には完了するという答弁。一つもやっておらぬ。やっておりますか。いまの二つの点、密閉集じん機の取りつけと、屋家全体の密閉装置、あるいは集じん装置、これはやっておらぬでしょう、やっておりますか。やっていたら具体的にどういう会社がやっておるかをひとつ明らかにしてください。
  44. 橋本徳男

    ○橋本政府委員 まず建屋の問題でございますが、建屋の改造または建てかえにつきましては、現在すでに三つ完了しております。あと六月に一つ完了し、八月に一つ完了ということで、大体八月一ぱいには完了する手はずになっております。それ以外に、たとえば粉砕、運搬、分級、いろいろ施設関係につきましても、密閉改造したもの、たとえばそれはそれぞれの工程におきまして、バケットエレベターの密閉とかあるいは改造、これはすでに完了しております。ただ、スクリューコンベヤーというふうなものにつきましても完了しておりますが、それ以外の集じん装置の取りつけ、あるいはバイブレーターを密閉式に取りかえる、こういったことにつきましては、あと若干の時間を要して完了するというふうに聞いておる次第でございます。
  45. 武藤山治

    武藤(山)委員 あなたがいま答えていることは現場の状況を見ると全く違うのですね。それはもう粉煙もうもうとして、そこに住んでいられぬということで、また問題が出てきている。だからこれは具体的にあとで、ここで答弁を求めるのでは時間がかかりますから先ほど言った指示書の内容、どういうものを指示したか、それから彼らの実施計画、これをひとつ資料にして提出を願いたい。もし全員でなければ私だけでもけっこうですから、よろしゅうございますか。資料を出しますか。
  46. 橋本徳男

    ○橋本政府委員 さっそく資料をつくりまして提出いたします。
  47. 武藤山治

    武藤(山)委員 資料を見てからまたやりますが、大臣、大きな観点からのお尋ねでありますが、この鍋山地域と葛生地域というのは日本でも指折りの石灰あるいはドロマイト、製鉄工場でも使うそういうドロマイトの生産量のあるところであります。ここに住んでいる従業員が干しものを外へ干すと、黒いズボンが夕方にはまっ白になってしまう、それですぐぜんそくになりやすい、トラホームにもなる、いろいろな害がある。先ほどのけい肺の有所見者、この数字を見ても七百九十九名中五百五十二名というのです。半分以上ですよ。それが鍋山におきましては百九十二名の従業員中百七十六名、大半がもう有所見者である。だから緊急にこれはどうしても集じん装置を通産省が指導して取りつけなければいかぬ。また業者もやりますと言っておるのにかかわらず、状況は、行ってみるとさっぱり進んでおらぬのです。そこで市長は、これはどうしても従業員住宅を引っ越す以外にないということで、市が土地をあっせんし、そこへ通ずる道路も舗装の小さい道路をつくってやり、相当の金をかけて、去年五十戸の家をつくって集団移転をしたわけです。その場合、市の負担はたいへんなものです。この道路を整備したり、敷地を整地したりしていろいろ手伝ってやり、それ以外に助成金として家を建てるその資金を市が二百万、県が百万でございましたか、お金を出して引っ越しをさせたわけであります。そういう場合、国はそういう市町村に対して——おそらく全国でも例はないと思うのですよ、公害をのがれるために集団移転をしたという例は。そういう場合どうですか、通産省としては、大蔵省に対して、地方交付税の中で当然それを積算の基礎に見てやるような、そういう注文をしているのかしてないのか、全く交付税の中に、そういう場合の市の支出、県の支出についてはめんどう見ないのかどうか。その辺大臣どんな感覚でいらっしゃいますか。
  48. 大平正芳

    ○大平国務大臣 そういう要請を大蔵省や自治省にはいたしておりません。当該企業の問題として公害防止施設の整備充実ということにつとめさせるという方針でいままでやってきているわけでございます。
  49. 武藤山治

    武藤(山)委員 鍋山も葛生も、これはもう現地へ行ってみたらほんとうにびっくりするほどで、車の窓をあけて、その町を通り抜けるだけで、せびろも白くなりますよ。ですから、これが市民にも害がないないということは全く考えられないですね、ほこりですから。NHKでもやりましたね。屋根などは雪が降ったように白くなっているのです。ですから、葛生の問題も、先ほど部長は、将来行く行くは指定をするようになるだろうというのでありますが、ぼくは、通産省がもうちょっと思い切った強い指導を業者にすべきじゃないか。確かに中小企業でなかなか資金繰りや何か苦しいと思うのですよ。しかし、そういう場合には、やはり市民の生命を大切にするという立場から、やはり思い切った指導方針を業者まかせでなくて、もう一回検討し直す必要がある。指示書と実施計画書を一応見なければ、通産省と業者がどういう妥協をしたのかわかりませんけれども、おそらくこの指示書の内容というものも、たいへん業者に思いやりがあり過ぎて、一般住民の立場というものをあまり考えておらぬのではないか。この前の部長答弁もこれは大体守られていない。先ほどあなたは、屋家全体の密閉及び集じん機の取りつけが六月と八月の二カ月で完了をして——どういう会社ですか、この六月と八月に完了する会社は。会社の名だけ参考にちょっと言ってください。
  50. 橋本徳男

    ○橋本政府委員 鍋山鉱山は大体予定どおり完了するであろうと思うのでございます。それから横倉鉱山でございます。これは若干問題があって、あるいは少しおくれるかとも考えておりますが、この二鉱山が現在まだ改造計画実施中でございます。
  51. 武藤山治

    武藤(山)委員 大臣、先ほどの集団移転の場合、地方自治団体がそういう出費をして地元民の公害を避けるという場合に、いままでは自治省にも大蔵省にも要求してない。今後はどうですか。当然交付税の中で見積もるべきだという主張を公害対策として主張してしかるべきではないかと思いますが、大臣の所見はいかがですか。
  52. 大平正芳

    ○大平国務大臣 公害対策は、御案内のように、政府としても始めたばかりでございまして、環境基準の設定から手を染めておるわけでございます。そこで、そういう公害防除施設に要する費用をどう負担させるかということにつきましては、公害基本法でもうたわれておりますように、基本はどうしても事業者が第一義的な責任をとらなければいかぬわけでございまして、これに対しまして、金融上能力が、信用が不足でございますならば、政府のほうもできるだけ信用の補完、信用が受けられるようなあっせんをいとわないつもりでございまして、現にそうやっておるわけでございます。そういうようなやり方で武藤委員がおっしゃるようにやっていけるかどうか、これはこれから、いろいろ公害問題が非常にやかましい問題になってまいり、公害対策もだんだん整備、充実してまいらなければいかぬわけでございまして、従来のような仕組みではたしてそれに適応できるかどうか、そういうことは確かに一つの問題点であろうと思いますが、交付税交付金の配分問題ということにひっかけて考慮してみる気持はないかという御提案は、本日初めて私はあなたから聞いたわけでございまして、したがいまして、御提案のことにつきましては一応検討させていただきます。
  53. 武藤山治

    武藤(山)委員 検討してみるという大臣の誠意ある答えを信頼して、これからの処置についての成り行きを見守っていきたいと思います。  次に、三月二十一日の朝日新聞の投書欄に、横浜の公害問題について通産省と横浜の態度は対立をしていることが報道され、その投書の中の市民の考え方は、通産省がどうも業界の肩を持ち過ぎて一般市民を忘れているのではないか、こういう不満を朝日新聞の投書で読んだのでありますが、その後横浜と通産省との間における意思疎通あるいは資料の提示、そういうものは行なわれたのですか。横浜はデータを示してほしいという要望を大臣あてに出しましたね。それに対して具体的にその公害発生の状況、濃度、企業の排出する量、そういう具体的なデータについて、通産省は横浜市に示したのですか。
  54. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 まずその前に、横浜、川崎市の公害の総合事前調査について、先般一応中間的な発表があったわけですが、その性格をちょっと申し上げたいと思いますが、総合事前調査と申しますのは、最初に企業からいろいろ改善計画を出してもらいますが、必ずしもそれが十分とは言えないので、第一次の改善指導をやって、それだけでは十分でないので、さらに第二次、第三次と回を重ねまして、その間風洞実験あるいは理論計算その他いろいろな作業を伴うわけでございますが、先般一応出しましたものは、第一次の改善指導の中間的な、暫定的なものでございまして、今後さらに神奈川県、横浜市、川崎市等、地元の地方公共団体の協力を得まして、あと半年後に完成する予定のものでございます。私どもといたしましては、この第二次、第三次の調査、指導が済みまして、最終的なものができました暁におきましては、アフターケアと申しますか、そのチェックというものは、まさに公害行政の第一線にある横浜市なり川崎市にやっていただこうと思っておるわけでございますから、最終的な調査結果が出ましたときには、これを完全に横浜市にも川崎市にも御提示申し上げまして、それこそ横浜市、川崎市が中心になってそのチェックをやっていただこうと思っておるわけで、その趣旨は先般来横浜市にも申し上げて御了承を得ておる次第でございます。
  55. 武藤山治

    武藤(山)委員 そうすると、いまは第一次調査で、中間で、暫定的な調査で未熟だから、データは川崎、横浜市には発表しない、理由はそうなんですね。そういう意味でデータの発表はできない、こういう断わり方なんですか。
  56. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 先ほどはこの調査性格なり今後のスケジュールをまずもって申し上げたわけでございますが、ただいま先生の御質問の点に触れまして端的に答弁申し上げますと、そういうふうな暫定的、中間的なものでございますけれども、今後、第二次、第三次指導を行なうにあたっては、横浜市とも十分打ち合わせてやらなければならない。と申しますのは、私どもがやるだけではなくて、横浜市も従来からいろいろな改善指導を関係の企業にやっておるわけですから、そういうものと十分触れ合わせてやっていかなければならぬ。それには両方で調査の内容について資料を交換していかなければならぬということで、先般来二、三回横浜市の方と打ち合わせて、最終結果が出る前におきましても相互に資料を交換してやっていくということになっております。
  57. 武藤山治

    武藤(山)委員 そういたしますと、部長、あなたのほうの公害第二課長が、新聞報道によると、当時、各企業の高度な機密事項が含まれておるので、他に公表しないことを企業と約束しておるということです。あなたの答弁と全然食い違っておりますね。あなたは、まだ第一次調査であり、中間であり、暫定的だから、これからは、今度、横浜にも川崎にも資料を出してもらい、通産省も一緒に資料を出しながらより完全なものをつくる、だからデータはあくまでも全部さらけ出してお互いに共同で研究するんだという意味の説明だ、いまの部長の説明は。ところが、第二公害課長の説明は、高度な機密事項が含まれておるので、他に公表しないことを企業と約束しておる。そういう約束をしておるのかおらぬのか。あなたのいまの答弁では、約束しておるとは思えない。しかし、第二公害課長の説明では、そういう約束をしておる、こうとれるのですが、どっちが真実ですか。
  58. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 まず部外に公表するとかどうとかいうことでございますが、部外に発表するということと、横浜市に御連絡するということは違うことでございまして、部外に発表するというのは、世間一般に、新聞等は詳細に公表するということでございますが、そういうことはできないたてまえになっております。しかしながら、横浜市はこれは公害行政の第一線をになっておる一種の行政官庁でございますので、これに対しては、部外に発表しないという前提で必要な資料の交換をやっておるわけでございます。端的にお答えいたしますと、そういうことでございます。
  59. 武藤山治

    武藤(山)委員 そこで、問題は、横浜市にデータを出すということは、相手は公務員ですから、公務員は業務に対する秘密を守る義務があるのですから、通産省は何らちゅうちょせずに、横浜市がそのデータを見せてくれ、どういう調査をしたんだということを具体的に資料を示してくれと言ったら、すんなり示していいと思うのですよ、私の常識でいえば。相手は公務員なんだ。それから、機密に属するという場合の機密とは何かから私はまずはっきりさせなければいかぬと思うのです。たとえば今後の通産省の調査は、非常に具体的に広範に調査をしたと思うのですよ。八十五工場について、工場別に着地濃度を予測したわけでしょう。何メートル離れたところはどのくらいSO2が落ちるかということをちゃんと工場別、煙突別に一応地域、距離別にやった。それをきちっと示さないことには、横浜市や川崎市にきちっと亜硫酸ガスの公害を避けるようにするんだといったって、その中身を示してくれぬことには適切な措置は出ませんよ。だから、私は、そこらはどうも通産省があまりにも大企業に気がねし過ぎて、そういう適切な措置のとれる資料すらも出さない、こういう態度じゃないかと思うのですよ。  そこで、機密事項とは何か、これをひとつ明らかにしてもらいたいのですよ。
  60. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 先ほど申し上げましたように、最終結果が出ましたら、それこそ先生のおっしゃる着地濃度とか、あるいは燃料の消費量とか消費計画とか、そういうものは横浜市に十分御連絡いたしまして、そしてそれを十分チェックし、アフターケアしてもらうということになっておるわけでございまして、決してそういうものを横浜市に対して示さないということでは毛頭ないわけでございます。  さらに、先ほど申し上げましたように、第一次結果は中間的なもので、あまり意味ないのですけれども、それでも今後横浜と資料交換をやっていくということになっておるわけでございます。  次に、第二の御質問の企業の秘密とは何ぞや、こういうことですが、これは事前調査というのは二年なり五年なり先の企業の設備計画、生産計画、こういうものを前提にしているわけで、その三年なり五年先におきましてどういうふうな大気汚染が生ずるかということを調査し、改善指導するのが目的になっておるわけでございます。したがいまして、企業から聴取するものといたしましては、三年なり五年後の設備計画、生産計画、それに関連いたしまして将来の新技術、共同投資、業務提携、外資導入予定というものが含まれているわけでございまして、こういう将来の新技術、共同投資計画、業務提携計画、外資導入計画というものは企業の秘密に属すると私ども考えております。それで、実は総合事前調査というのは、いわば法律に基づかない行政ベースの仕事でございまして、法的な根拠に基づいてとるのではなくて、企業に対して、公害防止は必要であるから出してくれ、ただしその内容につきまして、新技術とか外資導入計画とか、そういうようなほんとうに企業の秘密にわたるようなことについては部外に絶対に発表しない、そういう約束でもって聴取しているわけでございます。したがいまして、そういうものは部外一般に対しては発表することはしないたてまえになっておるわけでございます。
  61. 武藤山治

    武藤(山)委員 それは部長、生産計画とか、その生産計画に関連する資本の状況とか、あるいは品種、銘柄とか、そういうものについて横浜はデータをほしいなんて言ってないようですね。  じゃ、そこでさらにお尋ねしますが、各社別のSO2の排出量は秘密事項なのか。あなたの煙突からどのくらい出ていますという各社別の排出量は、一体秘密事項なのか。それから排出の条件、それぞれの会社によって違いますね。そういう条件を明らかにすること、これも機密事項なのか。それからそれぞれの地域地域の着地濃度というものも機密事項なのか。というのは、あの会社から恨まれるから、あの会社の煙突から出るのだということが明らかになるから、そういうデータは全部機密事項なのか、それはどうなのですか。
  62. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 先生指摘のような諸事項につきましては、これは先ほどから申し上げておりますように、最終的には、横浜市に最終的な結果を連絡するばかりでなくて、現在時点におきましても、必要に応じて横浜市に対しても御連絡するということで、決して横浜市に対してこれは秘密と称して隠してはいないわけでございまして、その点につきましては、数回の連絡でもって向こうの横浜市のほうも十分了解している点でございます。
  63. 武藤山治

    武藤(山)委員 じゃ通産省のこの調査データを、あたたのほうはいつ幾日横浜市に送付をし、手渡して見せてやりましたか。現在でもまだ見せてないでしょう。見たければ通産省に来て見ればいいじゃないかという態度じゃないですか。いつ幾日資料を提出しましたか、ほしいというのに。
  64. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 私はいつ幾日と正確な日にちは記憶にございませんけれども、私の承知しているところでは、二回にわたりまして横浜市の方が通産省にお見えになりまして、担当の課長と資料につきまして打ち合わせをしておりますから、その点に関しては十分満足しているものと、そういうふうに了解しております。
  65. 武藤山治

    武藤(山)委員 部長、それはいつごろですか。私も公害センターへ、川崎、横浜へ行ってもきたのでありますが、どうも部長の言うような説明とは一致しない。いつごろですか。
  66. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 正確な日にちはちょっと記憶しておりませんです。(「何日は要らないから、何月ごろと言ったらいい」と呼ぶ者あり)たしか三月中だと思います。三月中であることは間違いないと思います。
  67. 武藤山治

    武藤(山)委員 公害というのは、やはり一般市民が知らない間にだんだん健康がむしばまれ、一体どういうことになるのかというので、いま一般市民は公害問題では非常に神経をとがらしていますね。そういう不安というものを解消するためには、具体的にこういう現状をこういう形で、こういう方法でSO2がこう薄くなるんですよということを、自治体としてはやはり市民にわかるようにしなければならぬわけですが、できない。それに基づいた資料というものは、やはりきちっとしたものを持たないことには、そういう指導ができない。ところが、横浜市から通産大臣にぜひ次の諸点を考慮してくれという要請を文書でされた。それについて三月一日に企業局公害第二課長ら四人が神奈川県庁に行って、県庁へ横浜と川崎の関係者を呼んで、その要請書に対して口頭でこういうわけだという釈明をしている。その釈明の中で、通産省に資料は保管してある、そのコピーをとって横浜市に提供するというわけにはいかない、通産省へ来て見ることは可能であるが、膨大なもので、企業別のなまデータを発表されるといろいろ問題の起こるおそれもある。そのいろいろ問題の起こるおそれもあるということは、企業者側に対して通産省が困るような問題が起こるという意味だと思うのですよ。この課長の答弁は、公害をなくしてくれという市民の立場からの問題が起こるという意識じゃないような気がする。だから、私は通産省のそういう姿勢自体が問題なんだということをいま言わんとしているわけなんです。そうしなければ、ほんとうの公害というものは絶滅できない。したがって、これから地方自治団体がいろいろ業者と協定を結んで公害を撲滅しようと、とにかく協定書を結ぼうという動きが強くなっている。東京都が、美濃部さんが東京電力とやったことが一つのテストケースになり、見本になって、全国でいまそういう形で公害というものを最小限に食いとめようという動きが非常に強くなっている。そういう事態の中でこの横浜の問題が起こったということは、事が非常に重大なんですよ。今後は通産省はそういう場合には生産計画とか品目とか、あるいはこれからの外資との提携の状況とか、そういうことは直接的な公害の問題につながらないと市民は考えているのですから、そういう項目は別として、これは機密として、排出分量とか排出の計画とか着地濃度とか、こういうものについては、調査したら、それがまだ第一次調査であろうとも、それぞれの自治体が要求をしたら直ちに提示すべきであると思うが、今後こういう態度をとるということを約束できますか。
  68. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 先ほど新聞の記事を引用して御質問なさいましたが、おそらく公害第二課長が言ったということは、一つには、将来の設備計画、生産計画、外資導入計画、そういうものすべてのものは出せないということを言ったのが一つ。それからもう一つは、冒頭に私がるる御説明いたしましたように、第一次調査だけではうまくいかないわけで、従来の私どもの経験によりますと、第二次、第三次と何回も回を重ねて初めて満足すべき調査結果というものが出るわけでございまして、第一次のものだけでこれをかりに出しまして、それでもっていいというふうに世間一般が思われても困るので、そういう点で世間に誤解を生じたり混乱を生じたりするという趣旨で言ったものだと思います。しかしながら、先ほどから何回も申し上げておるように、最終結果については、それこそ横浜市等の第一線の公害行政機関にチェックしてもらうものですから、その結果というものは十分にお知らせして、それでもってやっていただく。さらに必要に応じては、部外に発表しないという前提で、中間的な場合におきましても必要な材料は提供するということに現に相なっている次第でございます。
  69. 武藤山治

    武藤(山)委員 割り当て時間が一時間ですから、あとわずかでありますので、次へ進みますが、部長あとで今回の調査をした際の、大体この辺の距離が何PPM、この辺の距離が何PPMというのを、図上でもってひとつ資料としてお示し願いたいと思うのでありますが、よろしゅうございますか。
  70. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 後ほど先生のところにお持ちいたしたいと思っています。
  71. 武藤山治

    武藤(山)委員 通産大臣、一つお尋ねいたしますが、昭和四十一年の国会でございましたか、附帯決議をつけ、亜流酸ガスの排出を規制する態度を明らかにせよ、四十二年度中に指導体制を整備すべきである、こういう決議がなされているわけです。その中で、火力発電所に対し、四十三年度中に指導体制を整え、四十四年から脱硫装置の設置に着手させること、そういうことで、当時の通産大臣もこの決議を尊重する旨の同意の表明が行なわれている。これはどうなりましたか。この決議の内容は実際に実現されるようにいま進んでいるかどうか。どうでございましょう。
  72. 大平正芳

    ○大平国務大臣 その決議の趣旨に沿いまして鋭意努力いたしておりますが、詳細のことは事務当局から説明させます。
  73. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 先生指摘国会における御決議の趣旨に沿いまして、通産省といたしましては、排煙脱硫装置については、いわゆる大型プロジェクトという工業技術院の予算に計上いたしまして、鋭意研究開発を進めてきたわけでございます。大体大型プロジェクトでもって十四億円ぐらいをかけまして、結論的に申し上げますと、本年度中には研究開発が終了する予定になっております。  具体的に申し上げますと、二つの方法がありまして、一つは活性酸化マンガン法、これは四日市でやっていますが、これはことしの三月末、すなわち四十三年度末で一応終了いたしております。ただ、これだけでは、基本設計の材料にはなりますが、詳細設計のほうはまだ十分でないので、電力業界にそのプラントを無償貸与いたしまして、引き続き本年度一ぱいさらに研究を続けさせることになっております。  それから第二番目のほうは活性炭法というので、これは千葉県の五井でやっておるわけでありますが、これにつきましては、現在テストプラントの運転試験を終わっておりまして、大体おそくも本年度中には終了するという段取りになっております。  以上が通産省が大型プロジェクトという予算によりまして研究開発をやったものの経緯と予定でございますが、この研究開発が終わりました暁におきましては、逐次その実用化のためのいろいろなテストをさらに電力業界にやってもらいまして、これを新しい発電所に必要に応じてつけるような方向で指導してまいりたいと思っております。
  74. 武藤山治

    武藤(山)委員 部長、あなたの見通しでは、全国の火力発電所から亜硫酸ガスが出なくなるというためには何年ぐらいを要すると思いますか。いまの研究開発はことし一ぱいで大体できるかもしらぬ。それで来年取りつけを始めるとして、既存のもの、新規のもの、全部脱硫装置をつけた発電所になるためには何年ぐらいを要すると思いますか、あなたの見通しとして。
  75. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 まず、亜硫酸ガスをなくするためには、必ずしも排煙脱硫装置によるばかりではないわけでございまして、そのほかにいろいろあるわけでございます。まず、サルファの低い原油を開発して輸入する、あるいは天然ガスを使う。天然ガスはサルファが全くございませんから、そういうものをやる。それから今度は、サルファの高い重油であっても、別途重油の段階で脱硫するということで、これも同じように大型プロジェクトで研究開発しております。それに加えていま先生指摘の排煙脱硫もやっていくということで、全国の火力発電所が全部この排煙脱硫装置をつける必要もないし、それぞれの事情によりまして、その地域の事情もあるし、その会社のいろいろな事情その他を考えて、いろいろな方法をコンバインしてやるというわけでございます。  そこで、御質問の、一体何年たったら亜硫酸ガスが出なくなるかということですが、これは先ほど冒頭申し上げました亜硫酸ガスの環境基準の問題に戻ると思いますが、亜硫酸ガスが出ないということではなくて、先般閣議決定を見ました亜硫酸ガスの環境基準、むずかしい数字がございますから、その数字の内容は省略いたしますが、要するに閣議決定になった亜硫酸ガスの環境基準というものはいつ達成されるかということだと思いますが、それはやはりあの閣議決定に盛られておりますように、第一グループの過密帯については十年、発展途上の工業地帯については五年、その他のところは即時ということが一応の見通しではなかろうかと思っております。
  76. 武藤山治

    武藤(山)委員 それはまことに機械的な答弁で、そんな答弁は、この閣議決定書を読んでみれば、五年の中間地を置いて十年後にこうするということはわかっておる。しかし横浜、川崎ではそんな長いこと、とても市民に五年先ですよ、十年先ですよとのんきなことを言ってはおれぬと思う。したがって三年くらいの間にとにかくいまの〇・〇五PPM程度にはするのだ。そのためには、いま言った開発ができたら、直ちにその装置を排煙脱硫と重油脱硫と燃料規制、この三つの柱を業界に示して、通産省はこういうふうに強力にやるのですよと、そういうものをやはり持たなければいかぬと思うのですよ。閣議できまったから十年だらだらと、これだけの期間にはこうなるだろうという。それじゃその中身を国民にきちっと示してくれと言った場合に、中間地はこうなります。確実にこうなりますと保証がないですよ。それにはあなたのほうは、燃料規制は火力発電所にはこうします、鉄鋼産業にはこうします、それから煙突の高さは現在百メートル以下のものが圧倒的だが、これを現在ある何本を百五十メートルにさせるとか百三十メートル以上にさせるとかいろいろな手だてがあると思うのです。そういう総合的なものをここであなたの答弁の中で出して、燃料規制はこういうぐあいに指導していきたい、それから排煙脱硫はこうする、重油脱硫はこう指導しているのだ。通産省がそれを本腰でやらぬことには大企業に対して規制できるものはないじゃないですか。厚生省が幾ら人体に害があるからと騒いだって、なかなか業界は従わぬですよ。やはりぼくは、その点通産省が公害問題について本腰を入れて、業者の意識というものを変えていかなければだめだと思うのです。だからそういう意味ではいまの答弁はまことに不満ですよ。そこで、そういう研究開発を進めていったら、来年はどの程度はひとつそれをつけましょう、あるいはいまの重油脱硫というのはもっと現地、原油をとったところで、アラビア石油ならアラビア石油の油田地帯で脱硫装置を政府がひとつ助成をしてやろうという考えがありますとか、何かあるのじゃないですか。燃料規制の問題、さらに重油脱硫、排煙脱硫、この三つの方法について総合的に通産省はどう考えているのか。ひとつこの三つの点をずっと説明して下さい。
  77. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 まず申し上げたいことは、先般亜硫酸ガスの環境基準が決定された際に、これは大臣を前にして私が言うのは恐縮でございますが、大臣談話というものが発表されたわけでございます。いまさがしているけれども、ございませんですが、大臣談話が発表されまして、その中で、通産省としては強力に低硫黄化対策を進めるということを強くうたっているわけでございまして、私が先ほど申し上げたのは、その点に言及しなかったので非常に恐縮でございますが、通産省としては、亜硫酸ガスの環境基準を達成するための大前提は、低硫黄化対策である、あらゆる点についてこの低硫黄対策を推進するために努力するということが言われているわけでございます。そこで、そういうことを前提にいたしましてどういうことをやるかといいますと、さっきの点について言えば、重油の脱硫、重油そのものから脱硫する、これは非常に大事でございまして、先生の御指摘のように、排煙脱硫というのは電力会社とか大きいところしか使えないので、その他の一般産業、特に中小企業につきましてはサルファの低い重油を潤沢に供給するということが一番大事でございまして、そのために通産省としては、具体的には、毎年石油業法に基づきまして新増設を許可いたしますが、その際に新増設の許可の条件といたしまして、重油脱硫装置をつける、その結果は供給するサルファ分は何%にするということを必ずうたうということにしておりまして、たとえば一昨年の場合には一・七%、昨年は一・六%と、こういうふうに具体的に供給するサルファ分を石油の新増設の許可に際して条件づける、こういうようなこともやっておりまして、逐次そのパーセンテージを下げていくということをまずやっておるわけでございます。  それから次に排煙脱硫、これにつきましても非常に電力業界を指導して、そっちの方向に向けているわけでございますが、たとえば敷地の問題で、排煙脱硫というのは相当大きいスペースを要するので、既設のものについてはつけられないところが多いのですが、新設のものにつきましては、将来排煙脱硫装置が完全に実用化されたという段階になって敷地がないというようなことになると困るものですから、そういうような敷地を確保しておくというようなことを指導するようにいたしておるわけでございます。
  78. 武藤山治

    武藤(山)委員 大臣、重油脱硫ができない。科学的に技術的にできないことはないわけでしょうね。できないネックは何ですか。重油から全部脱硫するのはいま今日日本でできないのは何がネックできないのですか。大臣どう思いますか。
  79. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほど御説明申し上げましたように、脱硫技術の開発は工業技術院を中心にしてやりまして、ことしじゅうに完成して実用化するということになっているわけでございまして、脱硫ができないというものではないと思うのでございます。武藤委員のおっしゃるのは、原油を産地におきまして低サルファにして、それで運んでくるという技術の開発の可能性じゃないかと思うのでございますが、これは私はケミストじゃございませんので、よくわかりませんけれども、現地では非常に多くの水素があるそうでございまして、そういったところに着目いたしまして、外国資本の手によって、そういった点に手が染められておるように伺っております。それからわが国におきましても、電力業界からもそういう要請があるわけでございますが、政府需要者もあるいは石油精製会社もみんな力を合わせて、現地で脱硫することについて調査を始めようじゃないか、そういう機運も出てきておるわけでございまして、私ども十分配意してみたいと思っております。しかし、いずれにいたしましても、たいへん技術開発が学問的にむずかしいばかりでなく、それを実用化する場合も非常な大量の資本が要るわけでございますから、非常な大事業であると思うのでございまして、私どもは、従来の公害政策に対応したような姿勢ではいけないので、もう少し強力な布陣をもって臨まなければならぬのではないかということは仰せのとおり痛切に感じております。
  80. 武藤山治

    武藤(山)委員 割り当て時間ですからやめますが、大臣、そこで来年度予算要求で、脱硫公団もしくは脱硫会社、いずれかを通産省として強く要求をしようということが公営事業新聞か何かに出ておったのでありますが、大臣は、そういう気持ちで来年は本腰を入れて脱硫問題を通産省としても取り上げ、公団設置か、もしくはそういう脱硫会社かを推し進めようという意欲があるかどうか、大臣にひとつ見解を伺いたい。  最後に、自動車局長には申しわけないのですが、きょうは一酸化炭素問題の質問の時間がありませんから、後日に譲りたいと思いますので、お帰りください。
  81. 大平正芳

    ○大平国務大臣 八月末の概算要求を控えまして、いま御指摘の脱硫予算をどのように確保するか、これは大きな問題の一つとしていま私どもも議論をいたしておるところです。もっとも、ただいま国会のほうの御用向きでたいへん忙しゅうございますので、なかなかそこまで、どういう形で予算化してまいるかという政策の組み立てまでいままで固まっていないのでございますが、そういうテーマを取り上げて、ベストを尽くしまして、何らかのくふうを、しかも新しいくふうをこらしていかなければならぬということは申し上げられると思いますが、これをどのような仕組みにするとか、またそこのにない手をどういう事業体にするとか、そういうようなことにつきましては、まだ国会で申し上げるというような自信はございませんので、時間をかしていただきたいと思います。
  82. 武藤山治

    武藤(山)委員 時間ですから、次に譲ります。
  83. 大久保武雄

    ○大久保委員長 近江巳記夫君。
  84. 近江巳記夫

    ○近江委員 私は、中小企業団地と八幡、富士の合併の二つの問題についてお聞きしたいと思いますが、まず団地のことについてお聞きしたいと思います。  以前、本委員会におきまして福井の染色団地の件を私が取り上げまして、それを通じて、政府のほうでは中小企業団地の総点検をする、そしてそれのいろいろな点に対してまた今後の対策を考えていく、こういうような答弁がありました。その後、経過はどうなっておりますか。まずお聞きしたいと思います。
  85. 外山弘

    ○外山説明員 御承知のとおり、高度化資金による工業団地の助成策は三十六年度から、商業団地については三十八年度からで、いま完成団地につきましても、建設中の団地についても、かなり数がございますが、現在実態調査実施しております。それで大体六月中に完成団地につきましては調査が完了できると思います。それから現在建設中のものにつきましてもこれから行ないまして、いずれ同様の実態調査を進めていきたい、こういうふうに考えております。
  86. 近江巳記夫

    ○近江委員 総点検の成果を期待しております。できるだけこの機会を通じてひとつきめこまかくやっていただきたい、これをお願いしておきます。  それから私も、団地のことにつきましてはできるだけその効率をあげてもらいたい、こういう観点からいろいろと勉強してまいりました。きょうは、あなたのほうにはすでに私もその資料を要求しておりますので御承知かと思いますが、大阪金属団地の件についてお聞きをしたいと思うのでありますが、まずここの団地の概略を聞きたいと思います。また、助成金等の金額はどうなっておるか。資金計画等はどうなっておりますか。
  87. 矢野俊比古

    ○矢野説明員 大阪鉄工金属団地の概況及び助成状況を御説明申し上げます。  同団地は、岸和田市に所在しております大阪府下の鍛造、プレス、機械、それから製かんといった業者七十企業で組織されました協同組合によります機械金属団地でございます。この団地は、四十一年度に発足をいたしまして、現在の計画では、当年度、昭和四十四年度で完成をするということで現在進行中の団地でございます。  この団地につきましての助成でございますが、土地につきましては、この団地が騒音あるいはばい煙、汚水といったような公害問題もございます関係で、公害防止事業団の造成ということになっております。建物、共同施設を含めました組合員建物というものにつきまして、大阪府と中小企業振興事業団のいわゆる国家助成というものを受けて現に進行しておりまして、四十三年度までに六十三企業が進出済みでございます。四十四年度におきましては、さらに七社が進出するという予定になっております。  なお、この助成額につきましては、いわゆる国家資金として四十三年度までに七億八千万円が支出されておりますし、四十四年度におきましては、さらに三億六千六百万円が、これはまだいろいろと診断その他の結果がございますが、一応予定されておるわけでございます。なお、これの助成方式でございますが、これはいわゆる組合一括契約方式ということでございまして、組合員個々に必要な資金あるいは組合に必要な共同施設資金、こういったものを一括組合がまとめまして、その総額に対して大阪府との契約におきまして六五%の助成を受けるというやり方でございますので、この施行にあたりましても、三和金属工業という会社と一括工事施行の契約をしているというのが現在の実態でございます。
  88. 近江巳記夫

    ○近江委員 その契約どおりのことが行なわれておればいいけれども、あなたのほうの調査でもいろいろな点がここで指摘ができると思うのです。どういう点が指摘ができるか、この契約の内容からいきますと、非常に違う点が出てきている。少なくともわれわれの税金がそういう方向に資金として出されるわけです。したがって、あくまでも契約に従った明確なそういう使い方がされなければならない。しかもその効果についてもわれわれは期待しておるわけでありまして、そういう点でいろいろと指摘のできる点はここでひとつ聞かしてもらいたいと思うのです。
  89. 矢野俊比古

    ○矢野説明員 いま先生から御指摘がございましたように、一括組合形式である以上、組合が助成を受けまして、また組合が施行者に支払うという体制でなければならないわけでございますが、私どもの御指摘をいただきました上での調査によりますと、確かにその方式が守られていないという事実がございます。この辺について申し上げますと、三和金属工業以外に、電気工事あるいは給水工事あるいは排水工事といったものは三和金属工業の機能としては不適当だという形で、それ以外の山川産業であるとかあるい泉電機商会といったような別の請負業者が参加をしておるわけでございます。このやり方も、組合からそういった契約をすれば、これは契約を変更してまた府のほうに届け出るということが必要でございますけれども、そういう手続が行なわれておりませんし、さらに問題なのは、そういった工事につきまして各組合から組合員自身に金が渡りまして、組合員の主体性のもとでそういった工事会社と契約しておるわけでございます。  そういった実例を一、二申し上げますと、ある工業所においては五百三十万円の金が組合のプールされた資金から組合員に返りまして——と申しますよりは、その金が実は三和金属に支払われておりますが、その口座から組合員のほうに流れまして、組合員は、その特定の電気あるいは給排水工事業者と契約をいたしまして、その上で工事をしている。ただ、その結果としては支払い金額は六百万ということで、いわゆる差額約七十万に当たります金はむしろ個々の企業が自己負担になったというような状況でございますが、こういった実例が四十三年上期までに大体四十八社でございます。これの中にずっと出ておりますが、四社を除きましては、むしろ予定した工事費よりかは自己負担で払った金が多いような実情でございます。ただ残りの四社につきましても、現在帳簿整理の上におきまして、また工事が完了していないということで、まだ手持ちに押えているところがございますが、これはいずれ工事の施行が終わりますれば支払われることになるということになっております。この点はそういう点で自己負担がむしろ非常に——自己負担として支払ったということは企業にとってかえっていろいろと苦しい立場に追い込まれておりますけれども、しかし契約の方式から見ますと、本来こういうものは三和金属以外のむしろ工事業者と組合とが契約をし、そうしてその組合の口座なりあるいはまた三和金属の口座から指示をして支払う、そのために助成のほうの条件も変わってまいりますから、当然それをすることにつきまして大阪府当局にこの契約の変更の届け出をするというような手続がとられなければならなかったと思います。そういった手続を怠っておるという意味におきましては、私どものほうの助成をいたします対象からいえば、広い意味の目的外使用ということに当たりまして、いわば繰り上げ償還問題とか、そういうことの対象になり得るようなあり方に実はなっているというのが実態でございます。
  90. 近江巳記夫

    ○近江委員 あなたのほうから出された資料、私もこの資料については信用しますが、実際上各企業はそういういま報告があった形で支払いをされておる、そういうことで実際上は出血のようなところが多いわけです。しかしながら、いろいろな点で誤解を招いておるわけでしょう。こういう点、一つの団地をちょっと見ただけでも、契約方法あるいはその実行の状態について確かにこういうまずい点があるわけです。そういうわけでいろいろな疑問もさらに拡大されていく、こういうことになってくると思うのです。いずれにしても、こうしたことは、結局団地だけをつくればいいのだ、あとのそうした指導の問題あるいはそういう運用資金等を見てあげるアフターケアというか、そういう点において非常に欠けておった、こういうことであればその団地をつくった目的とだいぶはずれてくることが多くなってくると私は思うのです。そういう点、監督等の問題について非常に私はいろいろな点でまだまだ不備がたくさんあると思います。   〔委員長退席、宇野委員長代理着席〕 こういう点、中小企業庁として、また通産大臣として——私もこの問題についてはこれ以上は聞きませんが、当然公害防止事業団も相当多額な金を貸すことになっております。いろいろな政府機関が方々からそういうように手を差し伸べておる、こういうところに一つの隘路があるのじゃないか。たとえば公害防止事業団あるいは振興事業団あるいは中小企業庁、今後どういうようにどこが責任持って実際にこうした運営をやっていくのか。結局無責任なことばかりになっている。こういうことであってはならぬと思うのですね。今後どういうように実効ある運営をやっていくか。これについて政府委員それから通産大臣にお聞きしたいと思います。
  91. 外山弘

    ○外山説明員 ただいまの大阪の件につきましても、組合の一括方式という契約をしておるにもかかわりませず、工事代金の支払いとかあるいは工事の変更等に関することにつきまして個々にやっておるという点は、手続上の誤りということは全くそのとおりでございまして、まことに遺憾であると思います。こういうことがないように、やはりこれは協同組合が運営するわけでございますが、組織の整備という点、あるいは組合員が契約に対してもっと認識をしっかり持つというような点、こういった点につきまして今後とも十分指導してまいりたい、こういうふうに考えております。
  92. 大平正芳

    ○大平国務大臣 中小企業庁は、各省にまたがりまして、中小企業政策の総合調整の元締めの責任を持っておるわけでございますので、行政の問題につきましては、いろいろな機関が入り乱れて混雑いたしておるようでございます。中小企業庁が総合調整の責任をとりまして、適正かつ適切な指導をやってまいるつもりでございます。
  93. 近江巳記夫

    ○近江委員 厳密にいけば助成対象からこれははずれていくというようなお話が先ほどあったのですが、少なくともこれは現実に出血のような状況になっておるわけですよ。ただ対象がこうだからということで中小企業、零細企業に対して助成外だからというような処置を考えるのですか。これはいうならばあなた方の手落ちですよ。ちゃんと組合一括方式でやるならば当然それに対してこうすべきだという指導監督は、あなた方の監督不行き届き。それをこういうような、ただ助成対象からはずれておるからということであなた方はどういう処置を考えておられるのか知らぬけれども、それはあなた方の責任じゃないですか。どう考えていますか。
  94. 外山弘

    ○外山説明員 先ほど申し上げましたように、目的外使用という点が確かに指摘できるわけでございます。したがいまして、それをそのまま適用いたしますれば、繰り上げ償還というようなかっこうになるかと思いますが、実際の工事の変更の状況なり実態をもう少しよく見きわめまして、そうして必要な指導をしてまいりたい、その上で対策を考えたい、こういうように考える次第でございます。
  95. 近江巳記夫

    ○近江委員 あなた方の指導監督が不行き届きで結局はこういう形になっておるのでしょう。それじゃこれだけの分は返しなさい。それでなくたって中小企業は運転資金がないんですよ。あなた方が失敗したことを、そういう中小企業におっかぶせるのですか。その辺のところはやはり法の運用ということがあるけれども、中小企業庁としてあなた方の監督のミスなんだから、その辺のところをどういうふうに考えておりますか。
  96. 外山弘

    ○外山説明員 ただいま申し上げましたように、手続上のミスといいますか、その点ははっきりはしておりますが、実態上不備な工事をやっているとか、あるいは適当でない計画が内容になっているとかいう点は、まだはっきりしていないわけでございます。その辺は実情をよく見きわめまして処置をとりたい、こういうように考えます。
  97. 近江巳記夫

    ○近江委員 そういう政府のずさんな指導監督のもとに結局はこういう中小企業、零細企業がいろんな点で戸惑ったり、あるいは実際われわれが手続をするのにどうすればいいのか悩まされるわけですよ。そういう点において今後そうした施策のことについても、どうかひとつ、中小企業、零細業者にもよくわかりやすい、もっと親切な行政指導をやっていかなければならない、このように思うのですが、その点はどうですか。
  98. 外山弘

    ○外山説明員 中小企業の振興の目的に沿うよう、十分そういう点の指導に尽くしたい、こういうふうに考えます。
  99. 近江巳記夫

    ○近江委員 適宜またこれからこの団地等の問題についてもいろいろと委員会等で聞いていきたいと思いますから、どうか先ほど御答弁ありましたように、全国的によく調査し、さらにその運営をよくやっていただきたい。要望しておきます。  それじゃ、公取事務局長に富士、八幡のことについてちょっとお聞きしたいと思っておりますが、この両社に対して勧告をされた、この勧告に対して両社はさらに対応策の積み増しをやるようにいろいろと報道されておるようでありますが、そういうものが出てきた場合、公取委員会としてはこれを審査をするわけですか。
  100. 柿沼幸一郎

    ○柿沼政府委員 会社側からいわゆる対応策の積み増しというようなものにつきまして具体的な案の提出がございますれば、委員会といたしまして検討をすることにいたしております。
  101. 近江巳記夫

    ○近江委員 勧告は、これをイエスかノーかという返答を要求しておるだけ、こういう考え方をわれわれもしておったわけでありますが、そうなってきますと、いままでこの審査について、事前審査を含めて約一年かかっておるわけですよ。そうしますと、あと応急にこの対応策をさらに積み増しをする。そういうわずかな日にちしかないのにそれだけのいい対応策というものが出る可能性なんというのは考えられますか。この十五条違反を解消できるような対応策が出る可能性があるかどうか。これはわれわれ時間の問題でも非常に首をかしげざるを得ないわけですよ。ばたばたあわててするのにろくな対応策は出てこないと思う。その可能性についてはどういうふうに考えておられますか。
  102. 柿沼幸一郎

    ○柿沼政府委員 公正取引委員会といたしましては、勧告を受諾するかそれとも受諾しないかという返答を両社に求めておるわけでございますけれども、実際問題といたしまして、勧告書に指摘された違反事実が解消されるようなことになりますれば、またそれを前提として結論を出さなければならないという事態になると思います。で、これは会社側で検討すべき問題でございまして、委員会といたしましては、いまその可能性があるかないかということは予断を与えるような意思表示はできるだけ避けたいというような態度であるように伺っております。
  103. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、この勧告の内容について、九品目のうち特に主力製品の五品目が触れられていない。結局四品目だけであったわけでありますが、正式な審査もしているわけですし、あれだけ九品目全部についてもいろいろと本委員会においても問題が出ておったわけですが、それが結局出ておらないということは、これはもう全然白であったということなんですか。その辺のところはどうなんですか。もう少し内容を言ってもらいたい。
  104. 柿沼幸一郎

    ○柿沼政府委員 審査の全般につきましては、現在まだ本件事件中でございますので、また別の機会に公正取引委員会として何らかの意思表示をする時期があろうかと思いますが、勧告という結論を得るにつきましては、鉄道用レール、食かん用ブリキ、鋳物用銑及び鋼矢板の四品目について違反事実があるということで勧告の措置をとることになった次第でございます。
  105. 近江巳記夫

    ○近江委員 ところが一般では、残りの五品目も黒である、こういうことが非常にいわれておるわけですよ。またわれわれが考えても非常におかしい点があるわけです。そういう点で白なら白と、なぜ白だったかということをこの際においてはっきりと言うべきじゃないですか。どうでしょう。そういうことは現実に国会でも論議されたのですが、なぜ言わないのですか。
  106. 柿沼幸一郎

    ○柿沼政府委員 私的独占禁止法第四十八条第一項に「公正取引委員会は、」「第十五条第一項」「の規定に違反する行為があると認める場合には、当該違反行為をしているものに対し、適当な措置をとるべきことを勧告することができる。」旨定めてございます。したがいまして、この違反する行為が何であるかということを指摘いたしまして勧告いたした次第でございます。
  107. 近江巳記夫

    ○近江委員 前に私がこの質問をしたときに、正式審査の段階で検討する、そのときはまだ白とも黒ともきまっていない、未調査と、このように言われたわけです。そこで、この勧告を出すからには、当然全品目の検討ということは終わっておられるわけです。したがって、われわれとしては、この五品目はなぜ白であったかというその辺のところをはっきりと言ってもらわなければ——いままでの事前審査の段階では、ただ向こうから出してくる資料だけでやっていたわけでしょう。だから、それは白とも黒とも言えない、それはわかりますよ。だけれども、正式な審査があれば、当然あなた方だっていろいろな資料を要求できる。この点は黒じゃないかと言われたことも幾つもあるわけですから、われわれもその結果はどうだったのか、白なら白でいいですよ、われわれがそれを納得できるようにそれを論証してもらわなければ困るじゃないですか。白だから白だ、そんなわけにいきませんよ。その辺のところはどうなんですか。どのようにあなた方はわれわれにそれをはっきりさせるか、そういう点持っておるのですか。
  108. 柿沼幸一郎

    ○柿沼政府委員 事前審査の段階及び正式審査の段階を通じまして、公正取引委員会といたしましては、本件合併全般についての検討いたしたわけでございます。で、この五月七日に合併につきまして四品目に独禁法に抵触する事実があるということで勧告の措置をとることにいたしたわけでございます。現在それについて、なお事件は係属中でございますが、全般につきましては、いずれ公正取引委員会見解を申し述べることが適当な時期があろうかというふうに考えております。
  109. 近江巳記夫

    ○近江委員 その五品目は白とあなた方は判断されたんだから、それはそれでいいとしまして、われわれとしては、結局国会でいろいろ論議のあった段階では、事前審査の段階でそれはしかたがないという気持ちが強かったわけですよ。ですからそれ以上のことは聞かなかったわけです。だけれども正式に相当な審査をやっているわけでしょう。あなた方だって、この五品目はこれこれこういうわけで白であるということは堂々と発表したってかまわないでしょう。それについてはわれわれも、この辺はおかしいじゃないかということがまた言えるわけですよ。そういう点を伏せておいたままで、白ですから白ですと言うところにまだちょっと私たちもひっかかる点があるわけです。ですからそれについて、正式に、こういうわけで白であったという点のところを国会へいつ発表してくれますか。
  110. 柿沼幸一郎

    ○柿沼政府委員 従来、合併案件につきまして、特に国民経済に重要な影響を与えるような問題につきましては、その案件が全部完了いたしました時期にその概要の発表をいたしております。本件につきましてもそういたしたいというふうに考えております。
  111. 近江巳記夫

    ○近江委員 いま、積み増しをすればいけるんじゃないかというような、そういう空気が非常に強くなってきているように思うのです。それはこれからどういう積み増しをしてくるか、どういう態度をとるかわかりませんよ。しかしその辺のととろのニュアンス、あなたも記者会見のときに、結局対応策を積み増しすればいいというような発言をたしかされたと思うのですが、その辺のところも、いまは公取は非常にきびしいあれをやっているけれども、結局は認めるのと違うかというような空気が非常に強くなってきているわけです。積み増しをしてくるかどうかわかりませんけれども、私たちはここで公取としてはっきりしてもらいたいことは、本気になってあくまでも、最後まで厳正公平に、だめなものはだめであるという——この間の結果については、非常に公取として国民の信頼を取り戻した、そういう点は私も世間も非常に評価をしているわけです。だから、せっかくここまでき然としてやってきたのに、ここでぐにゃぐにゃと、いろいろそういうことが考えられるわけですが、そういうわけで、ここでぐにゃぐにゃしてもらったら困るわけです。そういう積み増しとかいろいろ考えられますけれども、公取としてこれからも厳然としてそういう態度を貫いていくかどうか。その辺のところ、いかなる外部のそういうことにも影響されない、こういう信念でやるのですかどうですか。
  112. 柿沼幸一郎

    ○柿沼政府委員 公正取引委員会といたしましては、本件合併が独占禁止法に違反するかしないかということを正しく判定するという態度をもちまして、慎重厳正な手続を進めてまいりたいというふうに考えております。
  113. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから通産大臣は今回の勧告をどのように受け取っておられるか、どのように評価されておられるか、ひとつ率直な御感想をお聞きしたいと思います。
  114. 大平正芳

    ○大平国務大臣 公正取引委員会がたいへん御苦労であったと思います。三月二十日でございましたか、合併届け出書が出ましてから、審査をされて、ああいう判断を出されたのでございまして、その労を多といたします。
  115. 近江巳記夫

    ○近江委員 非常に簡単な——御苦労であった、確かにそれはそうでしょう。しかし通産省はいままで陰になりいろいろな立場で、この両社について、通産省としてもできるだけ積極的な、——それは目立つようなことはしてこられなかった、このように思いますけれども、しかしいろいろの点で両社合併の方向で行政指導といいますか、そういうようなことをちょいちょいやって、国会でも厳正に中立でいってもらいたいということもありまして、大臣もそのつど通産省としてはそのように中立でいきますというような答弁をされてこられたわけです。  そこで、確かにいまの大臣のことばから受け取る感覚というのは、何かがっかりしたような、そういう感じにとれたわけでありますが、この両社に対して通産省としては今後指導とかそういうようなことをやっていかれるつもりですか、その辺のところを。
  116. 大平正芳

    ○大平国務大臣 合併の案件は、公正取引委員会と八幡、富士両社の間柄の当事者の問題でございます。したがいまして、この問題は富士、八幡両社の全責任において措置されることと思います。本来、政府が指示したりいろいろすべき問題ではないのです。  ただ御理解をいただきたいのは、私どもは、こういう合併の問題があろうとなかろうと、日本の産業に公正な競争が確保されて、非常にダイナミックな活力のある運営ができるという状態をいつも念願いたしておるわけでございます。今度の合併に関連いたしまして、公取が独占禁止法に違反するという事実を指摘された点を拝見してみますと、そこに競争を制限するという事実関係を配慮されて、これは違反じゃないかという指摘をされたと思うのです。また当事者である両社が、これに対しましていわゆる対応策なるものを講じて、競争制限にならぬようにするということは、日本の産業の競争力を強めて公正な競争を維持していくという上からいって、私どもは望ましいことだと思うのでございます。対応策を講じることがいけないなんと言うたら非常に間違いだと思うので、対応策を講じて競争力を保持していくことは産業対策として前向きなことでございますから、そういうようなことは鋭意会社側がやっていただくことを期待いたしております。  それから第二点といたしまして、対応策を講じる場合、公取の要求をされておるところは、八幡、富士の対応策を考えられる場合におのずから産業政策にかかわる面が出てくるわけです。たとえばニューカマーといいますか新規のメーカーが出てきて、八幡、富士と競争の立場に立って公正な競争が確保されるようになることは望ましいことでありますが、新規のカマーを育成するというような問題、その技術水準を高めていくというような問題、そういった問題は、八幡、富士はほかの会社のことでございますから、八幡、富士の能力の限界を越えるかもしれません。そういう問題が一つあると思います。  それから政府は、たとえば国有鉄道みたように需要者の立場に立つ場合もあるわけでございます。私どもは国有鉄道ばかりでなく、全体の鉄鋼行政からいきまして、需要者の保護をしなければならぬ立場にあるわけです。生産と消費のバランスがとれていく、基礎資材が円滑に生産、供給されるというような状態を保持していくのがわれわれの任務なのでございますから、そういう場合に需要のマーケッティングがだんだん広くなって、メーカーもだんだん多くなって、そこに多彩な競争条件ができていくということは、本来こういう合併問題があろうとなかろうと、われわれが毎日考えていかなければいかぬことなのでございます。したがって、こういう問題に関連してそういう政策領域にかかわる問題がありますから、そういった面については前向きに処置していくということなのでございますが、非常に筋が通ったいき方をやっておるわけでございまして、合併を奨励するとか阻害するとか、そんなちゃちなことではないのでございまして、もっと御了解いただけるような政策の筋道をとってやっておるつもりでございます。
  117. 近江巳記夫

    ○近江委員 では、大臣もいま対応策をとることを期待しておると率直な御感想をお聞かせいただいたわけでありますが、あくまで期待をしておるということだけでとどまるのか、さらにこれから対応策をどうしていけばいいか、向こうのほうからいろいろと相談等があった場合、それに対しては積極的に相談に——それは公取の問題だといわれるかもわかりませんが、それまでの段階で、やはりどうしても、大臣もそういうような気持ちでおられますし、いろいろと相談に来ると思うのですが、そういう場合についてはどうされますか。
  118. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま御答弁申し上げたとおり、産業政策の筋によりまして、これが活発な競争力を維持いたしまして、産業の活力のある運営ができるというものであれば、もう喜んで相談に乗って、大いにそれを推進していくのは当然の私の責任じゃないでしょうか。合併に肩を持つとかいうような先入観でなくて、もっとすなおに事態を見ていただきたいと思います。そういうことをどのように評価されるかは、これは公取の判断の問題で、私はもうきわめて明解に答えているつもりなんでございますけれども、ひとつ先入観を持たないようにしていただきたい。
  119. 近江巳記夫

    ○近江委員 これはあなたと私とちょっと見解が違うかもしれませんが、私としてはあくまでも通産省としては中立のそういう立場でやってもらいたい。非常にいま微妙な段階でもありますし、その辺のところをひとつ要望として、これは厳正中立にやっていただきたい。行政官庁のそういう姿勢というものは非常に——この点はどうとられるかはかってだと言われればそれはそうかもしれませんが、われわれとしてもまずこの点を強く要望しておきます。  それから財界あたりは、今回の勧告についてはきわめて不愉快であるというようなニュアンスの表明をしておるわけでありますが、そうした感情を交えたような評価もなされておる。ここでまた独禁法の改正論がぼつぼつ動き出してきておりますが、これについて大臣はどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  120. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま八幡、富士の合併の問題が事件として懸案になっておる最中でございまして、これは公取と両当事会社が鋭意その打開に当たられておるわけでございます。私どもとしてはそれを静かに見守っておるということでございます。こういう時期に、独占禁止法、独占禁止政策をどうするかというような問題、ちらほら新聞なんかに出ておりますけれども、私どもといたしましては、そういう論議はいかがなものかと考えております。
  121. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、復合企業が会社をどんどん乗っ取るというか、そういう形で、アメリカなんかで非常にいま問題になっておりますが、これに対してアメリカの独禁法は無力であるというので、そういう立場でこの改正論というものが論議されておる、このように聞いております。わが国にもこういうような復合企業、これが上陸してくることは、この間の新聞にも、キディ社と山本機械との動きが伝えられておったわけでありますが、こういう動きについて通産省としてはどのように考え、どのように対処していこうといまお考えになっていますか。
  122. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いうところの複合企業というのは、一体どういうものなのかという実体の掌握が最初に必要ではないかと思うのでございますが、まだよくわれわれはそれに精通していないのでございます。若干のイグザンプルから申しまして、全然縁もゆかりもないいろいろな会社をまとめて一つの組み合わせを考えていく仕組みのように考えられますけれども、まずそういったものがどういうものであるか、現に世界でどのようにそれが機能しておるのか、そういった点を十分調べなければならぬと第一に思います。  それから第二に、かりに日本にそういったものが進出してきたらどうなるかという問題は、目下理論上の問題でございまして、現実に山本某から私どものほうにそういう申請が今日の段階でまだ来ていないので、もしそういうようなものが参りましたならば、よく検討いたしまして、現行外資法でございますとか、独占禁止法になりますとか公取の判断が何でございましょうが、それは検討したらいいと思っておりますけれども、いままだそういう事案が現実の案件として机の上に出てきておりませんので、何ともお答えはできないのでございます。もし出てまいりましたならば、現行の独禁法とか外資法とかいう一つの仕組みがございますから、そういう範囲内においてどう判断するか十分検討してみたいと思っております。
  123. 近江巳記夫

    ○近江委員 公取の事務局長にお聞きしますが、いま大臣も、これはまだ正式な申請が来ておらないとおっしゃっております。しかし動きがあることは確かなんです。だからこれがあくまでそのまま進むと仮定した場合、これからこういう動きがいろいろ考えられるわけです。そうした点、今後公取としてはこういう動きに対してどう対処していくか、あるいは現在の独禁法でそういう点について対処できるのかどうか、その辺のところをひとつ聞かしていただきたいと思います。
  124. 柿沼幸一郎

    ○柿沼政府委員 わが国の独禁法の運用の具体的な問題として、いわゆるコングロマリットの取り締まりの問題は起こっておらないわけでございますけれども、独禁法運用の先輩ともいえるアメリカにおきまして、この問題が具体的な独禁法の問題になっておりますことは承知いたしております。先生承知のように、独禁法の合併規制の規定は、アメリカにおきましても、わが国と同様に、水平合併といわれるものの取り締まりを中心といたして構成されておるものであります。したがいまして、それと性格を異にする多角的な合併問題につきましては、アメリカにおきましても法律改正を要するのではないかというような議論が行なわれておるわけでございますけれども、アメリカの司法省は、本年度になりまして、現行法の運用といたしましてこの取り締まりに乗り出しておるわけでございます。その辺の取り締まりの情報につきましても、私どもできるだけ情報を得まして検討してまいりたいというふうに考えておるのでございます。
  125. 近江巳記夫

    ○近江委員 もう少し具体的な話を期待しておったのですが、そういう複雑な動きというものはこれからますます出てくると思うのです。そういう点を考えますと、独禁法というものはむしろ強化をしていかなければならない、そういう段階にきておるのじゃないかと思うのですね。ところが、現在国内で独禁法の改正の論議がされておりますが、むしろ逆のような改正論の話なんです。ですからこういう点、われわれとしては、これからのそういう産業政策を考えていく上において、独禁法の骨抜きということを非常におそれるわけです。私がこういう複合企業の問題をいま出したのは、やはり独禁法は今後強化をしていかなければならない、そういう一つの私たちの姿勢をここで考えて、また皆さんにも再認識をしていただきたい、こういう意味で出したわけでありますが、これは今後に残された非常に大きな問題と思います。いずれにしても、今回の富士、八幡の問題については、いまもうぎりぎりの段階に来ておるわけです。そういう点でどうかひとつ最後まで、国民は、公取の皆さんがああいう勧告を出されたことによって、いままでの不信感が払われて、非常に信頼感を取り戻したという状況でありますので、ここでぐにゃぐにゃにならないように、き然として公取委はやっていただきたい。この点を特に要望して、私の持ち時間がありませんので、これで終わりたいと思います。
  126. 宇野宗佑

    ○宇野委員長代理 中村重光君。
  127. 中村重光

    ○中村(重)委員 きょうは公取の山田委員長がお見えじゃございませんから、内容にわたって質問をすることは適当な機会にいたしたい。ただ、この際、事務局長からぜひ山田委員長ほか公取の皆さん、委員の方々にお伝えを願いたい。今回、公取の委員会において、さらにまた事務当局において、たいへん御苦労をされたことに対しましては、衷心より敬意を表するとともに、労をねぎらいたいと思うのであります。ただ、九品目すべてが黒であると私ども考えておった。それが四品目に限ったということに対しては、問題を感じております。また新聞あるいはテレビ等報道機関を通じまして伝えられるところによると、結局はこの合併が実現をするのではないか、時間的な問題であるというような報道もあるようであります。   〔宇野委員長代理退席、委員長着席〕 最終的にさらに審判という形において公取は真剣に対処していくのでありましょうけれども、これは単に合併のための道筋であったという、サル芝居にすぎなかったという批判がないように十分対処していただきたい。そのことをひとつ公取委員長ほか委員の各位にお伝え願いたいということを申し上げて、私の発言を終わります。
  128. 大久保武雄

    ○大久保委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時四十四分散会