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1969-04-16 第61回国会 衆議院 商工委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年四月十六日(水曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 大久保武雄君   理事 浦野 幸男君 理事 小宮山重四郎君    理事 藤井 勝志君 理事 武藤 嘉文君    理事 中村 重光君 理事 玉置 一徳君       天野 公義君    内田 常雄君       小笠 公韶君    小川 平二君       大橋 武夫君    海部 俊樹君       神田  博君    黒金 泰美君       小峯 柳多君    坂本三十次君       増岡 博之君    石川 次夫君       加藤 清二君    佐野  進君       田原 春次君    千葉 佳男君       古川 喜一君    武藤 山治君       岡本 富夫君    近江巳記夫君  出席国務大臣         通商産業大臣  大平 正芳君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局長    柿沼幸一郎君         厚生省環境衛生         局長      金光 克己君         通商産業省貿易         振興局長    原田  明君         通商産業省重工         業局長     吉光  久君         通商産業省公益         事業局長    本田 早苗君         中小企業庁長官 乙竹 虔三君         労働省職業訓練         局長      石黒 拓爾君         自治政務次官  砂田 重民君  委員外出席者         行政管理庁行政         管理局審議官  石原 壽夫君         大蔵大臣官房審         議官      田代 一正君         大蔵省主計局主         計官      亘理  彰君         大蔵省銀行局特         別金融課長   戸田 嘉徳君         大蔵省銀行局中         小金融課長   長岡  実君         農林省農林経済        局企業流通部長 大河原太一郎君         運輸省自動車局         業務部長    渋谷 正敏君         労働省職業安定         局雇用政策課長 吉本  実君         労働省労政局福         祉共済課長   大塚 明良君         国民金融公庫副         総裁      吉田 信邦君         中小企業金融公         庫総裁     佐久  洋君         中小企業信用保         険公庫総裁   長村 貞一君         環境衛生金融公         庫理事長    大山  正君         参  考  人         (商工組合中央         金庫理事)   猪越 俊治君         参  考  人         (中小企業退職         金共済事業団理         事)      坂本  実君         参  考  人         (中小企業振興         事業団理事         長)      馬場 靖文君         参  考  人         (全国信用保証         協会連合会会         長)      服部冨士雄君         専  門  員 椎野 幸雄君     ――――――――――――― 四月十六日  委員加藤清二辞任につき、その補欠として原  茂君が議長指名委員に選任された。 同日  委員原茂辞任につき、その補欠として加藤清  二君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 四月十五日  中小企業等協同組合法の一部改正に関する請願  (山下元利君紹介)(第四一五八号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  中小企業近代化促進法の一部を改正する法律案  (内閣提出第三八号)  ガス事業法の一部を改正する法律案内閣提出  第八三号)      ――――◇―――――
  2. 大久保武雄

    大久保委員長 これより会議を開きます。  この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  すなわち、公益事業に関する件、特に板橋区のガス爆発事故について、参考人から意見を求めることとし、参考人の人選、日時等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大久保武雄

    大久保委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ――――◇―――――
  4. 大久保武雄

    大久保委員長 内閣提出中小企業近代化促進法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。佐野進君。
  5. 佐野進

    佐野(進)委員 私は、中小企業近代化促進法の一部を改正する法律案に対し、中小企業問題全般から質問をしてみたいと思います。  最初中小企業庁長官にお尋ねしますが、ことしの中小企業白書について中小企業庁長官は四つの重要な点について意見を発表しておりますが、その中で、私はことしの白書といままでの白書との内容の違いとして「国際的な観点からの分析手法を豊富にとり入れ、また将来の適応のための重大な課題である「事業転換」や「技術開発」の問題に関して、正面からとり組んで分析をこころみました。」こういうようなことを言っておるわけですね。「国際的な観点からの分析手法を豊富に取り入れた」というのはどういうことか、あと質問関連しますので、どうもたいへん大上段に振りかぶった質問になりますが、あなたが言っておられるので、ひとつ聞いておきたいと思います。
  6. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 できる限りの国際関係資料を集めたつもりでございますが、「豊富」ということばは、どうもいまこの席で先生からおっしゃられると、たいへんじくじたるものがあるのでございますが、今度の白書は、昨年の白書開放経済を迎えるに際しまして日本中小企業覚悟を促すという点を重点に企図いたしたわけでございますが、それならば開放経済を迎え、かつ日本経済高度成長で大きな変貌をしておる、その中小企業がどちらへ向かったらいいのかということに対します一つの示喚、サゼスチョンといたしまして、先進国において中小企業がいかなる国民経済上の地位を占めておるのか、この辺の勉強をいささかいたしまして発表した次第でございます。資料は、主として欧米の諸国、特に米国資料中心にいたしまして白書の中に「先進国型経済における中小企業」ということで欧米、特に米国におきます中小企業実態につきまして相当の資料を提供いたしまして、わが国中小企業との対比をいたしたというわけでございます。
  7. 佐野進

    佐野(進)委員 私も、そういう点で、去年の白書に比べるとだいぶ薄くなっておるのだから、薄くなることが新しい手法なのか、こう思って見せていただいておるわけです。しかし、そういうことはそういうこととして、日本中小企業欧米先進国中小企業と合致するような形にというか、それを見本として、そういうところにいくように指導していくんだ、こういうような言い方、いわゆる欧米先進国というか「先進国への道と中小企業」という表題にあらわれているように、そういう形が、最高責任者としてのあなたの中小企業問題、なかんずく今度の白書をつくる際における最大問題点であった、こういうぐあいに判断されていると私は考えざるを得ないわけですね、いまのお話やここにおけるところの説明や内容を見ると。日本中小企業がいま置かれておる段階の中で、欧米先進国における中小企業と同じような形、同じような条件、そういうものにいくべき条件がいま整っておる、というよりも、そういうところに持っていかなければならないのだというぐあいに判断されておるのが今度の白書の中核であるとすると、現在の中小企業問題全体の置かれておる立場というか課題というか、そういうものを比較すると、たいへんいろいろな矛盾点が出てくるのじゃないか、こう思うのですが、その表題の中における「国際的な観点からの分析手法を豊富にとり入れ」、あるいはまた先進国への道、それに中小企業位置づける、こういうことについてあなたは非常にユニークなやり方だ、こう言っておられますけれども、その中小企業白書に対する考え方からした場合、はたしてそれでいいのかどうか、若干私は疑問を持たざるを得ないと思うのですが、この際、あと質問関連があるので、お聞きしておきたいと思います。
  8. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 中小企業白書は、あらためて申すまでもなく、中小企業基本法におきまして政府国会に提出することを義務づけられておるわけであります。その義務とされております点は、まず最近の中小企業の動向について報告をいたしますとともに、とった政策について報告をするということになっておるわけでございますが、なおかつこの白書はその最初以来、また政府の種々の白書がございますけれども、この機会を活用いたしまして、国会に対しましていま申し上げました諸点を報告申し上げるとともに、中小企業業界に対しまして何らかの示唆と申しますか、向かうべき方途と申しますか、このようなことを訴えるという機会がこの白書によってわれわれに与えられておるというふうに思うわけでございます。  そういう立場におきまして、現在の中小企業業界が迎えておる最大の問題は何かというと、これはもうくどくど申し上げる必要もないことでございますけれども、要するに、労働豊富型の経済から高能率経済日本経済が移りつつある、この脱皮をいかに行なっていくか、中小企業は特に労働豊富型経済の上に栄えてまいりましたので、この脱皮をいかに中小企業業界が達成するかということがただいまの最大中小企業業界の問題でございますし、それに対しましてお力添えをすると申しますか、適切に施策を誤らないのが私の責任であるという判断をしたわけでございます。そういう意味におきまして、それならば一体日本中小企業業界参考になるものはないかと見てまいりますと、先進国――もちろん日本経済日本的な特徴、条件を踏んまえてでございますから、先進国と同様のかっこう先進国ということばはいろいろあるわけでございますけれども、欧米並みのたとえば米国と同様のかっこうになっていくということを私はきめ込んでいるわけではないのでございますけれども、これが非常な参考になることは間違いはないのではないか。とにかく人手は足りず高賃金であり、大企業との格差はほとんど中小企業もなくなっておる、高能率経済でしかも技術集約的である、こういうのが米国におきます中小企業の現状でございますので、これをできるだけの努力をして描き出すことによりまして、日本中小企業業界に対する向かうべき方途と申しますか、参考資料と申しますか、これを与えたいというのが私の気持ちでございます。
  9. 佐野進

    佐野(進)委員 私は、先進国への道というか、欧米先進国における中小企業態様が、わが国中小企業が進むべき一つ方向としてその重点を指向したということについて、いいとか悪いとか言っているのじゃないのですよ。ただ、そういうことが白書を発表するにあたっての中小企業対策中心であるということに力点を置かれて、今度の中小企業近代化促進法の一部改正も提案されておると思うのですが、そこにのみ急ぐあまり、全体的に先進国並みでないいまある日本中小企業の持つ欠陥というか脆弱面に対する対策を忘れて、あまりにも先進国中小企業に背伸びした形の中で追随しよう、こういうようなことになっていったのでは、本来の中小企業対策基本をどこに置くかという一つの論点にもなるわけですけれども、そういう面から見て、今度の白書が、何か新しい手法を取り入れようとして急ぐあまり、現実面における対策に対する指導、そういうものがなおざりになっていっておるのではないか、こういうような気がするわけなんです。したがって、そういう面について、あなた方のほうでこれは一つ問題点として、白書として中小企業者に対していわゆる示唆的な役割りを持つものであるから若干前進的なものとしてこういうものを出したんだということであればそれでもいいんですけれども、そうでなくて、日本中小企業の現況の中でいま中小企業庁が考えておる中小企業対策というものは、欧米先進国における中小企業態様実態、そういうものでなければならないんだという位置づけを無理にしようとするならば、これはやはり中小企業政策全体に対する非常に大きな転換であるとともに、その転換がいま置かれておる中小企業者実態の中で有効でないんではないか、こういうような気がするわけですが、私の考えが間違っておるかどうかわかりませんので、ひとつもう一度見解を聞いておきたいのです。
  10. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 先ほど申し上げましたように、今回の白書一つ示唆であり、参考資料であるという位置づけをしておりまするが、これはもう当然お読みいただいておる先生にはあれでございますけれども、といって、日本中小企業が現在の欧米中小企業と同じ状態になっておるわけではもちろんない、そこに非常に大きな差がある、相違がある、その相違というのは日本的現実の上に立った中小企業であり、中小企業問題であるわけでありまして、これは大企業との格差があり、この格差生産性格差のみならず金融面の調達の格差もあり、これは制度的なものと思うのでありますがございますし、さらにまた大企業中小企業の間には交渉力という単なる物的生産性では考えられない問題もある。こういうような点を十分に踏んまえまして、こういうふうな問題を解決するにつきましては、従来の中小企業政策を踏んまえ、これを引き継ぎ、さらにこれを改善しつつ、といってそれならどちらへ向かっていくのかという方向でございますが、その方向最初に申し上げましたように高能率経済、人が不足して、とにかく国民経済全部が高能率になってくる、小企業も当然高能率経済の中に組み込まれたものでなければならない、こういう方向をねらって政策をとってまいりたい、こういうことでございます。
  11. 佐野進

    佐野(進)委員 この問題、まだいろいろやってみたいと思うのですが、時間の関係がありますので前に進めますが、しかし関連がありますから、ひとつその点も含めてあとの御答弁をお願いしたいと思います。  そうすると、中小企業庁の考えておる中小企業対策、いわゆる白書の中にあらわれておる面を中心にしてこれからの施策ということになると、いま長官が御指摘になったような形の中において一番重点を置くべきものは何なんですか。いろいろ書かれてありますけれども、欧米先進国型の中小企業たらんとするために最大重点は何なのか。人手不足と言いましたでしょう。いわゆる構造面における弱点があると言いましたでしょう。その他いろいろなことがあげられましたね。その中で、それではいまの時点を含めて今後、将来何年間の時間帯の中で最も重点を置かなければならない対象というものは何なんですか。
  12. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 一言結論を申し上げますならば、中小企業を取り巻く環境中小企業がよって立っております条件、これが急激に変わりつつあるということであると思います。その急激に変わりつつある条件環境に対して中小企業はいかに適応していくか、その適応をいかに達成していくかということが中小企業者最大の問題でございまするし、その適応を極力スムーズに中小企業者立場に立ちましていかに支援するかというのが私たち立場であるというふうに考えます。
  13. 佐野進

    佐野(進)委員 そうすると、新しい環境適応する対策最大問題点であるといま言われたわけですが、適応ということは、要するにその置かれている周囲の環境変化にみずからが相対応しながら変化の中に取り残されないでいく、結論的にはこういうことになると思うわけです。結局転換をしろということになるでしょう。それではその適応条件中心は何ですか。
  14. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 これも抽象論で恐縮でありますけれども、日本中小企業国民経済の中の重要部分であるのみならず、中小企業の数は日本の各業種の中で最大のものであります。したがいまして、この中小企業をいかに振興していくかということは、国民経済を左右するのみならず、また中小企業者の生活を豊かにすることから考えましても、政治最大の問題であり、その政治の御指示を受けましたわれわれ役人の最大仕事であるというふうに思うわけであります。そういうふうに考えました場合に、新しく時代はどんどん変わりつつある。国内的にいえば労働条件マーケット条件技術条件が大きく変わり、海外では後進国の追い上げ、先進国自由化に対する進出がある。こういう場合に、この環境条件適応していくということは、転換ということば使い方でありますけれども、いまやっている仕事を変わるということが転換といたしますと、必ずしも転換を全部必要とするということではもちろんないわけであります。むしろ転換を必要とするよりも、大部分中小企業者にとりましては、自分の分担しておりますマーケット国民経済成長とともにさらに大きくなりつつあるわけでございますから、大部分中小企業者におきましては、御自分のお仕事がむしろどんどん大きくなるチャンスであると思います。ただ、その場合に、労働力が不足し、賃金が上がる、一面では技術が進み、当然中小企業が使い得る技術が進み、また、市場に出回る資金も昔からいえば豊富になってくるわけでございますので、その労働を節約し、技術資金を駆使している。たとえてみますれば、そのような構造に御自分仕事を変えていく、これも広い意味での転換だと思うわけでございますが、そういうふうな適応をしていくということが必要である。これは必ずしも受身の立場ではございませんので、むしろそういうふうな適応をしてまいりますならば、日本中小企業者は追い詰められているのではなくて、マーケットが広がっていって国民経済が大きくなっていくのだから、むしろ広く繁栄をしていくというふうに考える次第であります。
  15. 佐野進

    佐野(進)委員 あらゆる環境変化適応する対策をとることが当面する中小企業対策最大重点である。いわゆる背骨であるというふうに中小企業庁長官はおっしゃっておるし、白書もそのように書いてある。それが結局先進国中小企業と相合致した体制になるというように、いろいろなことが書いてあるけれども、白書の精神は結びついているように考えるわけです。したがって、その適応方向ということが、いま言われたように、これだけの文章に書かれた一つ文字に集約をするわけですから、いろいろなものがあるけれども、結論から言うならば、たとえば日本産業においても一次産業、二次産業、三次産業があるわけです。したがって、いまいわゆる一次産業から二次産業へ、それから二次産業から三次産業へと労働人口というか企業規模というか、そういうものも逐次移行しつつあるような形態があるわけです。こういうような一つの自然発生的に起きた環境変化、それに適応するように中小企業を存続させていくんだ、そういう存続をさせていくことに必要な施策について、中小企業庁はこれに対する援助をし、指導するんだ、こういうことになると、これは適応という表現の中で非常に誤解というか、中小企業政策というものは本来そういうものでいいのかどうかというような考え方に立たざるを得ないと思うのです。これは、転換という文字になってくれば、いわゆる一つ業界なり業種というものが時代変化の中で、たとえば東京において路面電車時代の変遷の中で、あれほどまで愛された形の中において地下鉄に転換していく、これは適応していくというよりも転換していったわけですね。あるいはそういうような業種が、中小企業の中においても、たとえば生糸の、マユをつくるという形のものがいまや化繊に転換していった。これは適応というのか転換というのか、むしろ転換ではないかと私は思うのです。そういうような一つ状態から一つ状態変化していく、そういう形に対して中小企業庁が、いわゆる受け身でなく、積極的な前向きの姿勢の中で処理する、対応する、こういうことならば、一応受けとめることができるのですが、それについても、それではそういう中におけるところの落ちこぼれというか、転換に際して転換でき得ない状態にある中小企業者というものが必然的に発生してくるわけですね。発生せざるを得ないわけですよ。したがって、そういうことに対する無原則的な適応対策転換対策に対する歯どめというかそういうもの、あるいはまたそれに対する受け入れというか、そういうものを考えているかどうかということについて、私も白書をずっと読ましていただいたわけですが、文章上においての表現は至れり尽くせり、中小企業対策については微に入り細にわたり取り上げられておるように感ずるのですが、さて、中小企業者に対して高度の政治的な立場あるいは高度の指導的な立場から、将来こうすることのほうが皆さん方はいまの状態の中において絶対間違いありませんよ、こうしなさいというような指導性については、構造改善の今度の近代化促進法の一部を改正する法律案の中で一つの萌芽というか芽は見せてはおりますけれども、全体的にはきわめて弱い。皆さん方心配しなくてもいい、こうできますよというような点についての配慮が非常に少ないように私は感ずるのです。これはわれわれの批判だからいいんで、あなた方は批判される立場なんだから、別に悪い気でなくて聞いてもらっていい。私はそういうふうにこの白書を受け取らざるを得ないのですが、その点についてあなたはどう考えるか。私はそれはいいと思うのですけれども、そういう批判もあるということについてどう認識されるか伺いたい。
  16. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 先生お話を伺っておりますと、私たちが必ずしもそういうふうに意図して欲しておるのではないというようなことが、案外しかし活字になって訴えておりました場合にはそういうふうに取られておるという点がなるほどあるんだなという感じがいまするわけでございますけれども、私たちとしては、まずその前に、転換適応の字句の使い方でございますけれども、私は、とにかく世の中が変わっていく、一言で言って、荒っぽいことばで恐縮でございますが、いろいろなことを全部含めて変わっていく、それに対して製品を変えていく、製品の変え方も、全部変えるのから製造方法を変えるのからいろいろ変え方があると思うわけです。そういうこともわれわれは適応という意味に含めて実は申し上げておりましたので、これは、製品が変わる、ないし設備が変わるということになれば、これは転換ともいえるわけだと思いますけれども、この世の中がどんどん変わっていくから、しかも、世の中は発展をしていくんだから中小企業者適応していけば心配ないんだ、といってほったらかしておこうというわけでは全然ないのでございまして、これは白書の中の転換の章にも数字を出しておきましたのですけれども、いままでのいわゆる転換者を調べてみますと、積極的に転換をした方は大体成功しておる。しかもこれは規模から見ると、大体大きな人が積極的に転換をして、規模の小さい人はどうも追い詰められて転換をしておる。追い詰められて転換をした人は三割ぐらいはうまく転換がいっていないという例があるわけであります。したがいまして、これもある意味では当然なんで、規模の小さい零細者の方は先を見通すことができない。四囲の状況がわからない、ないしは転換資金がない、技術がないという点は当然なんでございますから、私たち責任者といたしましては、こういう転換適応をしなければいけない、その能力に乏しい零細者に対しては特に政府として思い切った措置を講ずる責任が私は政府にはむしろ加重されてきているというふうに覚悟をしておるわけでございます。そういう意味におきまして、いろいろ政策手段、金融でございますとか構造対策でございますとか、いろいろな政策手段があるわけでございますけれども、そういう政策手段を密度を高く集約をして、こういう適応という面、特に適応能力に欠けている零細者に対して手厚く政策が及ぶように考えてまいりたい、やってまいりたいというのが私たちの考えでございます。
  17. 佐野進

    佐野(進)委員 そこで次へ進みたいと思うのですが、私はいま中小企業庁長官白書発表にあたって、あるいは来年度の施策を講じようとする前の考え方として、適応、そして転換、そして欧米先進国、それはいわゆる国際環境変化、国内情勢の変化ということが起きてきたという現実に対して、いかに対策をとるかということが前提になってこういうことが出てきていると思うのです。起ころうとする将来の状態を予測してこうだということよりも、むしろ起きてきた現実、これに対してどうだということのほうが強いように、いまの御答弁を聞きながら感じたわけです。そこで、この感じがいいか悪いかあとでひとつ答弁してもらえばいいと思うのですが、私は、中小企業庁長官だからそういうことは間違いないと思うのですが、きのうも石川先生ですかからだいぶいろいろ議論がなされておったと思うのですが、いわゆる日本企業対策、特に通産省の企業対策というか、産業対策というか産業政策というか、こういうものはどうしても大企業優先、大企業に対する対策をまず第一に考え、その対策の発展の中に起きてきたひずみ、そのひずみによって中小企業が受ける被害、その被害をどうやって破局的な部面にまで至らしめないで収拾するか、それが中小企業庁に課せられた役割り、いわゆる日本経済構造の中における産業政策として佐藤内閣なりが行なう政策の欠陥を糊塗する、救済する、そして破局に至らしめないそういう役割りを、中小企業庁が担当しておるのではないか、そういうような役割りをどうやって巧妙にかつ、具体的にというか、あまり中小企業者をおこらせないで済むような、あまりぜいたくをさせてはいけないけれどもあまり貧乏人にさせてはいけない、その程度で何とか息をついていけるような政策、それが中小企業庁の中4企業対策なんだ、こういうふうに感ぜざるを得ないわけですね、あなたのさっきからの私の質問に対する答弁を聞いてみても。あなたはそうじゃないと言われるかもしれないし、私の受け取り方かもしれないけれども、そういうように感ぜざるを得ないようないままでの実績等が相当多いわけですね。これに対してあなたはどう思いますか。あなたは予算折衝をしたりしながら、いまなお中小企業対策の最高の責任者として政府の中にあるわけですから、その点ひとつ聞いておきたい。
  18. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 どうも方法論で恐縮でございますけれども、中小企業庁長官は通産大臣によって任命される、したがって人事権者は通産大臣でございますけれども、行政組織としては通産省から独立した外局でございます。したがいまして、通産省の産業政策はもちろん、各省の産業政策と密接にタイアップをして中小企業庁が進むという関係はもちろんある、特に産業の相当部分を分担しております通産省の行政とは密接にタイアップはいたしておりますけれども、立場としては、私の立場は独立の立場でございまして、まず何を考えるべきかというと、中小企業者の地位を高める、中小企業を振興するということによりまして国民経済に貢献するというのが私の立場であるというふうに考えて行動しておるわけであります。いままでの中小企業庁の動きは、いわゆる大企業中心産業政策の欠陥を糊塗するということが中心にあったのではないかというお話でございますが、私は、いま申し上げましたように、中小企業庁歴代の長官中小企業振興ということをほんとうに念願してきたというふうに思うわけであります。最近になりまして私はこう思うのでありまするが、いままでとにかく戦後の日本経済は、いわば基幹産業と申しますか大企業と申しますか、これを中心にして成長を遂げてきたことは事実であり、またそれが牽引力であったと思うのであります。そういう意味中小企業政策が若干裏に隠れておったということは事実あったかという感じもするのでありますけれども、しかし最近の日本経済成長は、国内の生産主力というか経済力を全面的に駆使をしないと、この日本経済の今後の成長を確保できない、こういう面が一つありますとともに、また成長の結果のひずみということばはどうも適当じゃないかもしれませんが、成長の結果の影響を強く受ける部分、すなわち中小企業が非常に強く受けるという部分がもう一つ出てきたと思うわけであります。  第一の立場考え方から申しますと、日本経済をこれ以上円満に成長させていくためには、中小企業の体質改善をして近代化をしなければ、国民経済全部の成長のスピードが落ちる。これは機械なり繊維なり考えてみるとそうだと私は思うのでありますが、そういう重要性、つまり産業政策上における中小企業の重要性というものが新たにこのごろ出てきたという感じを強くするのが第一であります。  第二は、さっきから申し上げているわけでございますが、世の中が大きく変わっている、その圧迫を特に中小企業者が強く受けておりますので、これの除去をしなければいけないという面が中小企業庁責任として強く出てきたという感じがするわけでございます。
  19. 佐野進

    佐野(進)委員 あなたが幾らそういうことを声を大にして言われても、現実の面からすると、いわゆる日本産業構造の中にあって政府経済政策を行なう際、中小企業対策というものは、美辞麗句は一ぱい並べてあるけれども、対策としての具体化ということになってくると、大企業に対する比率というものは逐年その差を開きつつあるような感じがするわけですね。私はここでお聞きしたいのですが、たとえば四十四年度の中小企業対策費は四百三十億八千四百万、前年度比一二・八%の伸びだ、こういうのですね。今年度の一般予算の伸びはどのくらいかというと一五・八%である。一五・八%の伸びに対して中小企業は一二・八%ということは、あなたがさっきから幾ら言われておっても――こういうことを言うと、この前に大蔵大臣にそう言ったら、大蔵大臣は、いや、そうじゃないのだ、佐野さんは中小企業対策費のほうだけを見て、融資面のほうを見ないからそういうことを言うのだ、こう言っているのです。中小企業の融資面は融資面として存在するけれども、しかしそういう現在の構造上におけるところの変化に対応するために苦労しておる中小企業者に対して、どういうようになるといって希望を持たせるということは非常に重要なことでしょう。だから、こういう一二・八%程度の伸びであって、中小企業対策はこういうぐあいにやりました、こういうぐあいにやりました、私は中小企業庁長官で、通産大臣の任命は受けるけれども外局で云々と言ったって、それは言うだけじゃないですか。あなたはこれで腹が立ちませんか。中小企業庁長官として、一二・八%ぐらいの伸びしかことしはもらえなかったということについて、政府の中で中小企業対策についていかに冷淡かということに腹が立たないですか。私がこれを見たときに、私は社会党の中小企業責任者の一人だから、腹が立ちましたよ。だから大蔵大臣にも食いついたのです。  腹が立ったか立たないか聞いてみたってしようがないのだから、具体的な質問として、これは私ここのところ忙しくてまだ調べてこれなかったので、即答できなかったらあなたに調べておいてもらいたかったのだけれども、大企業との比較で、ことし大企業対策費として出された費用はどの程度のものか。金融面あとで別にしますよ。これはゼロであってしかるべきだと思うのだけれども、いわゆる日本産業政策を推進する上について、大企業を育成するための対策費というものがあらゆる費目にわたって相当程度出ておると思うのです。これが中小企業対策費四百三十億に対してどの程度のものか。いまわかれば言ってもらいたいし、わからなければあとで私のほうへ資料を出してもらいたいと思うのですが、この点について、腹が立ったか立たないかということも含めてひとつ答弁してもらいたい。
  20. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 予算は多々ますます弁ずでありまして、特に責任者の私から申しますと、この四百数十億の金は、もう十分どころか、まことに不十分な金であると思います。ただ、これは国家予算全般の中の中小企業予算ということでございますので、やむを得ずこれでがまんをしておるわけでございます。ただしかし、若干負け惜しみのようになりますが、予算額が多いからといって、必ずしもこれで政策がこの予算にスライドして厚くなるというものではない。中小企業は小なりとはいえこれは企業でございますので、一般予算を主として補助金的に支出されるわけでございますけれども、金融ベースでもって政府の力をそれに注ぎ込むという態度はやむを得ないと私は思うわけでございます。大蔵大臣のお話もそういう意味であったというぐあいにわれわれは考えているわけでございます。  それから大企業中小企業対策費でございますけれども、いま数字は手元にございませんので至急調べまして……。ただこれは、どこまでを大企業対策費として考えるか、なかなか仕分けはむずかしいと思いますけれども、事少なくとも通産大臣の管轄内の予算ということで考えました場合に、大企業に対しては圧倒的に中小企業予算のほうが比重が高いということは申し上げられると思います。
  21. 佐野進

    佐野(進)委員 原則論だけやっておってもしようがないと思いますが、いままで質問申し上げたことは、近代化促進法の一部を改正する法律案を審議する際に、基本的な問題として一応聞いておきたいと思っていたことをお聞きし続けてきたわけですけれども、この問題に関して最後に一点だけ長官にお聞きしておきたいと思うのです。  全般的な問題の最後で聞くわけですが、日本中小企業対策というものは、さっきから申し上げているとおり、大企業のいわゆる発展、あなたは牽引力と称されておったわけですが、発展についていけない、あるいは発展の過程の中における犠牲面が出てくる、そういうものを、ついていけるようにあと押しをする、いわゆる起きてきた犠牲に対する救済を試みる、そういうものがあなた方が行ないつつある日本中小企業対策の原則的な考え方なのか。あるいは経済の二重構造云々といわれておりますけれども、日本における大企業中心にする経済構造中小企業中心にする経済構造がありますね。この位置づけを明確に行なって、いわゆる大企業、これは下請の問題その他複雑な問題がそこにからんできますけれども、中小企業対策というものはそういう社会保障的な性格を持つものでなく、産業政策の中核としてこれを独自の分野において発展させ向上さしていく、経済面における独自性を持たせる、そういうところに指導中心を置いていくのかどうか。この点を、中小企業対策の根本原理として、ひとつ考え方をお示し願いたいと思うのです。これは通産大臣に聞くのが正しいのだけれども、きょうはいないから、あなたに聞く。  それからもう一つは、日本における中小企業は、いわゆる大企業と称せられる層が逐年増加する現況の中で、中小企業から成長して離れていく企業が相当数あるわけです。したがって、こういうように中小企業から離れていく層、これは大臣はこの前は中堅企業というようなことを言われましたけれども、この中堅企業中小企業、中堅企業と大企業ですね、いわゆる中小企業の定義の中に当てはまりながら中堅企業としての性格を持つもの、大企業の中に当てはまりながら実際上は中小企業とそう変わりはなく中堅企業として当てはまる層、こういうものをどういうように位置づけていくのか、中小企業問題を論ずる際に非常に大きなポイントになってくると思うのです。こういう点について中小企業庁長官は、原則的な質問であるけれども、中小企業対策を立てるに際して、いま私が申し上げたようなことについてどういう方針をもって対処されるのか、この際ひとつお聞きしておきたいと思います。
  22. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 まず第一の非常に根本問題でございますが、私はさっきちょっと申し上げたと思いますが、中小企業者というものが日本国民の中で非常に大きな比重を占める、この中小企業者の地位を振興するということがまず第一に考えなければいけない点で、ただし振興する手段、方法は何かというと、中小企業企業として栄えていくということでなければいけない。企業として栄えるということは、いわゆる経済法則の支配する経済社会でございますから、その支配下において競争力を持って栄えていくということでなければいけない。そういう経済法則のもとで競争力を持っている企業に育て上げていくということが中小企業政策の一番大事な点であり、これはそうなると、おっしゃるように確かに一つ産業政策であるということになると思いますけれども、しかし産業政策として当を得るならば、それは中小企業者の社会的地位を向上させることでございまするので、当然これは社会政策的な面を持つ、こういうふうに思うわけでございます。政府中小企業が競争力を持つために種々の支援措置を考えるわけでございますけれども、政府の支援措置が薄いものからだんだん厚いものといろいろあると思うのであります。薄く広くといういわゆる一般金融政策というものは、いわゆる産業政策の中に入っていくと思うのでありますけれども、だんだん厚くなりまして、同じ金融政策でも、信用保証の中の特に無担保無保証制度というふうなことになってまいりますと、相当社会政策的なものに近くなっていく、こういうふうに考えるわけであります。これが第一であります。  なお第一の御質問の中に、中小企業中心産業構造か大企業中心産業構造かというお話がございましたが、私は、これは分けて考えるべきではなくして、今度の近促法の改正でもそういう考えでお願いしておるわけでございますけれども、いわゆる構造問題というのは、中小企業同士が同種の企業、異種の企業が合理的にからみ合うのみならず、また大企業中小企業が原料供給者なりあるいは販売なりあるいはユーザーなりというふうなかっこうでからみ合っていく、そしてたくさんの大企業中小企業の歯車がからみ合って日本経済というものをつくり上げていく、それをどう効率的に考えていくかというふうな立場でわれわれ仕事をしていくべきではないだろうかと思っておるわけでございます。したがって、第一の問題はまた非常にむずかしい問題でございまするので、基本として私たちは始終勉強をしていかなければならない問題だと思います。  それから第二の御質問は、私は先生の御質問をこんなふうに解したのでございますが、一応中小企業というものは法律的に三百人、五千万円とか、零細企業は五人、二十人とかいうふうな形式的な基準でもって概念をきめて、そして格差を是正するということを一つの目標にした政策である、しかしその格差ということになれば、そういう一般的に三百人五千万円というふうなことで一つの線を引くということのほかに、ある業種で見れば三百人五千万円をこえる企業であっても、その業種の中ではいわゆるリーダーカンパニーに対して格差を持っている企業があるではないか、それはやはりその格差を是正するということを政策として重点を置いて考えるべきではないか、これは大企業政策の中にも中小企業政策の中にもあるべきではないか、こういうお話ではないかと思ったのでございますけれども、先生お話は、私もまことにそうだと思います。したがって、産業政策をやります場合、中小企業でないからいわゆる格差是正政策を念頭から放していいということでは決してないという感じがいたします。
  23. 佐野進

    佐野(進)委員 それでは時間がたちますから次へ進めます。  私は、いわゆる中小企業構造の高度化ということが白書の中における第二章に書かれておるわけですが、いま中堅というか中小企業政策の根本的なもので、特に中小と言いながら中の部面を対象にしていままで論議をしてまいりましたので、これからひとつ小、零細のほうに焦点を向けて質問を続けてみたいと思うわけです。  いま日本経済におきましては資本の自由化が当面最大課題になっておるわけですが、資本の自由化に基づいて一番大きな衝撃を受ける層は一体どこにあるか、あるいは日本経済の発展に即しながら中小企業、特に小、零細企業がその基盤を存続し続けながら繁栄をしていくにはどういうところの対策が一番大事なのか、こういうことになると、流通部門であるという答えがすぐ出てくるわけですね。しかも、この流通部門の置かれておる立場というものは複雑多岐であって、われわれも一つ業界に入ってその流通経路を調べてみたところで、一日や二日の研究では理解し得ないほどの実態を持つ業界がほとんどだろうと思うのです。したがって、そういうような部面に対して、しかし日本経済の発展に即応しながら、資本の自由化をはじめ、いろいろな形における迫害というか被害というか、そういうものを受けなければならぬ立場に立つ流通部門に対してどういう対策をとるかということは、中小企業対策として非常に重要な課題だろうと思うのです。この中にもいろいろ書いてありますが、この前流通構造改善対策審議会から答申が出され、流通部門におけるところの特に小、零細部面を持つ商業部門に対する勧告等もいろいろなされておるわけでありますが、中小企業庁として、これらの流通部門に対する対策のおもなものについて、二つか三つ例をあげて説明を願いたい。
  24. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 流通対策はいろいろな面から考えられると思いますけれども、先生も御指摘のように、実はわれわれも大臣も始終言っておるのでありますけれども、非常にむずかしい問題で、まことに至らない部門でございますけれども、一応分けますと、いわゆる物流、物的流通を改善するという方面の対策。そういたしますと当然これは大量仕入れ、大量販売というふうなことが一つ、あるいは環境を整備して、そして流通手段であるトラック等々を自由に取り入れる、こういうような手段がいろいろあるわけです。前者のものといたしましては、いわゆるボランタリーチェーンを進めていくというふうな政策とか、寄り合い百貨店を進めるというような政策等、いわゆる協業化、共同化の政策、それから後者の輸送手段等を改善するというふうなこととしては流通センター、流通団地というふうな構想、これはいろいろ及ばずながら考えておるわけであります。それから次の問題としては実は流通経路の問題があると思うのであります。と申しますのは、これは主として問屋段階の問題でございまして、流通問題で一番むずかしいのが問屋問題というか経路問題だと思うのでありますけれども、一面では、これを短絡化し短くするというふうな見地からの対策が必要であろう。あまりいい知恵もないのでありますけれども、例のさっき申し上げましたボランタリーチェーンというのをこの一つ政策として使っておるわけであります。それから商業団地というものも、これによっておそらく結果としては経路短縮が可能であろうというふうに思うわけであります。それからもう一つ大事なのは、流通部門がなぜこう複雑多岐になってきたかというと、おそらく良質なる流通資金が供給されないという面がいままでの経済組織機構の中にあったのではないかという意味から、流通部門に対する資金供給ということ、これはしかしまた従来の政府資金供給は生産業、製造業中心の方式、知恵であったために、運転資金供給が非常にむずかしいのでございますけれども、ぼつぼつ商工中金等も活用して割賦資金等を供給するということあたりから手がけております。  以上、二、三の例を申し上げます。
  25. 佐野進

    佐野(進)委員 私の聞きたいと思ったことは答えがなかったのですけれども、私は小規模な流通関係、特に商業部門に対する対策はどうかということ、まあボランタリーチェーンのことをちょっとおっしゃいましたけれども、そういう小売り商店の問題ももちろん大切でありますが、流通関係の中で国民生活に最も関係の深いのは生鮮食料品関係あるいは日用品というようなことになってくると思うのですね。こういう部面におけるところの政策というものが、国民の消費生活、いわゆる消費者行政に一番大きな効果、あるいは効果が出たり出なかったりする問題を根本的にわれわれにはだに感じて示してくれる問題だと思うのですね。こういうことに対する政策というものが流通の近代化の中における最も力を入れなければならない対象でなければならぬと思うのです。いま長官のその面についてのお話がなかったので、この白書の中には書いてあるのですが、ひとつ次への質問関係もありますので、おっしゃっていただきたい。
  26. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 二、三の例ということで、どうも落としまして恐縮でございますが、生活必需物資等小売り部門の合理化のため、その販売設備等に対しまして中小企業金融公庫、国民金融公庫を通じまして流通近代化貸し付けという制度をやっております。これにつきましては、通産の所管物資のほかに、農林所管物資に対しましては、農林当局において非常に尽力されまして、相当巨額な金が流通近代化貸し付けとして用意されております。本年度農林関係は二百十億、その他関係が三十億でございます。
  27. 佐野進

    佐野(進)委員 そこで、農林省のほうからお見えになっておられるようですから、時間の関係もありますので、あと個別の事項でお聞きしようと思いましたが、この際聞いておきたいのですが、いわゆる「生鮮食料品等の流通の近代化と消費者物価の安定に資するため、新たに農林漁業金融公庫に卸売市場近代化資金貸付制度、国民金融公庫に生鮮食料品関係小売業者に対する特別の貸付制度を創設した。」と白書に書いてあるわけです。「また食料品の流通の合理化および食料品小売業の近代化を推進するため引き続き、主要な大都市に公設小売市場を設置することとし、必要な助成を行なった。」と書いてある。したがって、いわゆる流通近代化は、小売り商百三十七万と私のところに来ているある書類には書いてあるのですが、これはどのくらいになるかわりませんが、これは生鮮食料品の中における一つ業種だけだと思うのですが、こういうような業界からは非常にこの制度については感謝はされておるけれども、まだ活用についての指導が十分でない。前年度においても環衛金融公庫が設置されるに際して、自民党を含めた附帯決議がこれに付されて、この制度ができ上がって、一般的に活用されるようになったのだけれども、事実上これに対する指導というものが非常に不足しておる。そういう面から何か積極的にこの資金を活用して流通近代化に資するということについては、環衛公庫に比較すると効果があがっていない、こういうようなことを私ども聞くのですが、農林関係のこの問題に対する現在までの取り扱った内容について、ひとつこの際説明を求めたいと思うのです。
  28. 大河原太一郎

    ○大河原説明員 先生御案内のとおり、生鮮食料品の流通近代化の一環といたしまして、小売り業に対しましては、国民金融公庫に四十三年度から特別貸し付け制度を設けまして、百三十億の資金手当てをしたわけでございます。われわれ制度発足当初でございますので、年度の途中から発足で、なかなか趣旨の徹底なりあるいは関係業者の御理解という点で十分ではないかと思ったわけでございますが、まさに小売り業者の近代化意欲とマッチしたという実情がございますし、また国民金融公庫が多年庶民金融に手なれておったというような面もございまして、実は百三十億は本年三月末に満度に消化された実情にございます。なお先生御指摘の点で、貸し付け手続とかその他の点について種々問題はございますが、何ぶん制度発足早々でございますので、これら実情を的確につかまえまして改善につとめてまいりたいというように考えております。
  29. 佐野進

    佐野(進)委員 時間がありませんから、これに関連した質問あとでいろいろあるのですが、一応この質問はこれで終わりまして、次へ進みたいと思いますが、流通近代化の問題は、それぞれ中小企業団体がいろいろな要望を出しておりまするが、その要望の中心の中に必ずこれが出てくる。これが出てくるということは、この問題を解決せずして今日の小零細規模における流通部門に携わる業者の生活の安定ということはあり得ないというところに結びついておると思うので、この面に対しては、ひとつ中小企業庁長官、ふんどしを締めてやっていただきたい。私もたいへんむずかしいと思うという先ほどの御答弁で、むずかしいということことはわかっておるけれども、わかっておるところをやるのがあなた方のお仕事なんだから、ひとつふんどしを締め直して、しっかりとした取り組みをしてもらいたいと思います。  そこで、次はこの白書にも出ておりまするし、中小企業問題ではどうしても除外することのできない指導体制の問題について、組織の問題であります。これに関連して二、三質問をしてみたいと思うのですが、いま中小企業に対する指導組織は、いわゆる中小企業団体中央会ですか、あるいはまた、商工会さらには商工会議所等がそれぞれ政府から補助金をもらいながらその業務を行ないつつあるわけですが、中小企業団体中央会からいろいろな形の要望が出されておるわけです。まことにどうも数が多くて、これだけをあれしてもたいへんだと思うような要望が出ておるわけですが、ことしの予算編成に際して、中小企業庁はこれらの部面についてどの程度政策面において生かして予算化されたか。この際、主要なところだけでもけっこうですからお伺いをしたいと思います。
  30. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 経営指導関係でございまするが、まずこの中核になっておりますのは、先生いま御指摘の経営改善普及事業として商工会、商工会議所に経営指導員を置いておる。この経営指導員を充実するということは一番大事な政策でございまするので、これにつきましては経営指導員を五千百二十一名から五千百六十三名に、経営指導補助員を三千三百六十八名から三千四百十九名に増員いたしますとともに、安心して職務に精励をしていただくために待遇を改善する、期末手当は八%のベースアップでありますが、期末手当の改善は一カ月分が二・五カ月分、このような指導員制度の中身を充実するというふうなことをまずやりましたのと、それから新しい制度として今度始めてみましたのは大都市、特に東京、大阪、名古屋等におきましては、なかなか二階から目薬的で、多数の零細層の指導が、この指導員制度では、特に先ほど御指摘の商業層の指導ができませんので、新たに東京、大阪、名古屋に小規模企業振興員制度を設けました。これは七百九十名ばかりでございます。これは民間の有力者といいますか、学識経験者と申しますか、主として商店街等の世話役の方々に奉仕的にやっていただきたいわけでございますけれども、こういうふうな新しい制度を設けまして、そのほかに中小企業振興事業団構造改善対策を行ないますとともに、業種別、産地別の指導をやっておるわけでございますけれども、この振興事業団におきます産地指導、これは事前指導及び事後指導をやっているわけでありますけれども、これの拡充をはかりますとともに、特に構造改善の必要な地区に対しましては、専門の指導員と申しますかリーダーと申しますか、これを新たに事業団の中に設けまして、これはわずか二名でございますけれども、来年度以降は大いに拡充をしてまいりたいと思います。こういうことも考えたわけでございます。
  31. 佐野進

    佐野(進)委員 長官、あなたはいろいろお話しになるんです。そのお話を承ればみんなたいへんけっこうなんです。たいへんけっこうなんだけれども、やることが全部みみっちいわけだ。去年よりわずか一二・八%しか伸びていないのだから、やろうと思ってもなかなかできないのは無理もない。無理もないけれども、ああもやります、こうもやりますということを言わないでもらいたい。こう言っては身もふたもないということになって、たいへん聞くほうもむずかしいが、小規模事業対策推進費というもので四十三年度が二十八億五千三百万円、四十四年度が三十六億五千四百万円、これが日本における全企業の八〇%を占めるといわれている小規模事業対策推進費の内容なんです。その内容をずっとこう見てくると、いまあなたが説明されたようなことになるわけです。手当を幾ら上げました、人を何人ふやしました。それも何人だね。私はふやしたことを悪いと言うのではない。手当を上げたことを悪いと言うのではない。大いにやらなければならぬ。これが小規模事業対策として必要だとしてやるなら、もう少し小規模企業の置かれている現状に対応するように、もっと積極的に取り組んでもらわなければならぬと思うんですよ。しかも話に聞けば、これをとるのにたいへん苦労したということですけれども、苦労するには苦労するような内情があるのではないか。大蔵省はお金を出すということだけではない。その中央会なり商工会議所なり商工会なりが果たすべき役割りというものについて、それほど具体的な成果をあげることのでき得ない状況下にあるという事情はございませんか。たとえば商工会議所です。東京都の二十三区では、商工会議所が小規模企業に対してその役割りを分担している。ところが商工会議所は、実際上中小企業の上の部ないし大企業のサロン的な役割り――というと中小企業の商工会議所の方々におこられるけれども、いわゆる一般小売り商といいますか、一般商工業に関係の人たちがあの商工会議所の会館において、それぞれの生活の向上なり事業の発展なりに対してどの程度利益を得る状況下にあるかということになれば、ほとんどゼロでしょう。ゼロというと、そんなことはないというけれども、商工会議所は東京でさえあなたの前任者の影山さんが行っておりますから、東京商工会議所は東京におけるところの小規模企業者に対しどのような具体的な指導をなされておるのか、あなた方は知っているわけだから、この際ひとつお答え願いたいと思います。
  32. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 先ほども申し上げましたように、大都市、特に東京、大阪等におきます商工会議所の中小企業者、特に零細層に対します指導力につきましては、十分でないことは私たちも認めるわけであります。これは商工会議所がせっかく努力をしておるわけでありますけれども、なかなかむずかしいということで、先ほど申しましたような小規模企業振興員制度というふうなものを設けようというような知恵も出しておるわけでございますけれども、商工会議所といたしましては、中小企業の専門委員会を設けまして、確かにおっしゃるように、東京商工会議所は比較的大きな商工業者も相当入っておられますので、専門の中小企業商工委員会を設けて、ここで毎日専門に中小企業問題と取っ組んでおるとともに、また零細層の指導につきましては商工会議所の出先を各区役所の中に設けまして、そして零細層の御相談、指導に努力しておるという状態でございます。ただ、先ほど申し上げましたように、決して十分でないことは私も認めます。
  33. 佐野進

    佐野(進)委員 私も区議会議員や都議会議員をやってきた経験がありますから、そういう内容についてはよく知っておるのですよ。事実上の問題として商工会議所の区役所の指導員の手を通じて商工指導をしてもらおうなんという中小商工業者はほとんどないといってもいいんですよ。私は、それが悪いということで言っているんじゃないですよ。現実の内容がそれに伴わないから政府、大蔵省のほうだって予算を出さないんじゃないか、こう思うのですよ。とすると、それに対して、都道府県に対する補助事業として、四十三年度の通産省の補助金の便覧の中で、都道府県の商工会議所に対して補助金を五十二億六千万円も出しているんですね。これは小規模中小企業対策費の中における商工会等の指導その他いろいろな問題を含めたのよりも、これは商工会議所の分も三十六億は入っておると思うのですよ、区役所等におけるところの指導員に対する経費は……。これは、入っているのか入っていないのか。入っていないとすれば間違いだ。私は入っていると思うのだけれども……。そのほかに五十二億六千万円が都道府県の商工会議所に交付されているわけですね。となると、私は商工会議所が悪いと言っているのではないけれども、通産行政の中小企業対策のいわゆる指導機関である商工会議所ないし中央会ないし商工会というものに対して、いま少しくきびしい――きびしいというのは表現が適切であるかどうかわからぬが、適切な指導監督、いわゆる補助金を出しておるだけの、その指導をやらせるだけの形がなければならぬじゃないか。それが全然ないといっていいほどないでしょう。なぜです。私はいろいろ検討してみたのですが、いま自民党の人が四人いるのか、向こうで雑談しておるから、言ったってたいして気にならないけれども、中小企業中央会の会長は自民党の代議士さんなんです。商工会議所の事務局長さんは通産省の前の中小企業庁長官なんです。そして、商工会議所に対して田中幹事長が、今度選挙があるから選挙資金を集めてくれということで東京商工会議所の事務局長に頼みに行った。よろしゅうございますと言って胸をたたいたか、たたかないかわかりませんけれども、とにかく出しましょうということになったということになると、たいへんどうも中小企業政策というものが、本来の中小企業者全体の問題としてではなくして、特定のところに問題の焦点がしぼられていくような対策、こういうふうに考えざるを得ないと思うのですが、これはあなたに聞くより大臣に聞くのが正しいと思うのですけれども、大臣がいないし政務次官もいないから、しようがないと思うけれども、そういう指導の誤りはありませんか。組織が大事だ大事だといわれながらちっともそれが生きてこないから、この際聞いておきたいと思うのです。
  34. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 中小企業者に対します指導、これは非常に難事中の難事でございまして、四百万というふうな数、この方々に対して、しかも非常にきめこまかく指導せねばいけないということで苦労をしておるわけでございますが、いま御指摘の中央会ないし商工会議所、それから商工会、この幹部の方々は、御自分の守備範囲の中小企業者に対して、非常に熱心にといいますか献身的に御指導をしておられますことは、われわれはよく知っておるわけであります。特に中央会の会長さんの方々は、大体県の中小企業者の元老の方々がほとんどでありまして、御自分の御経験を生かしますとともに、その地区における中小企業者のリーダーとして御献身になっておられるというふうにわれわれは承知しておるのでありますけれども、ただ最初に申し上げましたように、中小企業指導行政というのは非常にむずかしい、私もその点は特に痛感をしておるわけでございまして、一段とこの面の勉強をいたしたいというふうに覚悟しておる次第でございます。
  35. 佐野進

    佐野(進)委員 私は大臣が来たときにまたこれは聞きますけれども、ともかく指導をしなければいかぬですよ。お金は一ぱい出すんだから、政府からお金を出すからといって、何もあなた方の手を通じて出たからといって、あなた方のお金じゃない、国民の税金なんだから。税金で補助金が何十億も出されたりしておる団体の長が、一党一派に偏した中小企業対策というか、選挙に結びついたような形でやっておるんだというような誤解をされるような指導は、これは厳重に注意をしなければいけない。そういうようなことでないようにしていかなければならない。きょうはそこが本筋じゃないから、またそんなことばかり横道にそれてはいけませんから、これでやめますけれども、組織指導の面における――中小企業庁長官中小企業対策を真剣に考えられるならば、そういう面における指導等に対しても適切なるものがなければならぬということだけを申し上げておきたいと思うのです。  そこで、時間がだいぶたってしまいましたが、せっかくそれぞれの省から来ていただいておりますので、若干質問をしてみたいと思うわけです。   〔委員長退席、武藤(嘉)委員長代理着席〕  それでは、まず運輸省の方にこの際ちょっとお聞きして、お答えを願いたいと思うのですが、中小企業対策というと、つい生産点における工場その他あるいは消費いわゆる流通関係に関する商業者、こういう面における中小企業問題に焦点がしぼられていくわけです。今回中小企業近代化促進法の一部を改正する法律案というのが出されておるわけですが、この中で構造改善に必要なる業種指定その他いろいろあるわけですけれども、運輸省に関係するタクシー会社、小中と称せられるタクシー業者、こういうのに対する御指導はどのようにしているか。いま中小企業問題としての立場からお尋ねしているのですが、この点について、ひとつ全般的に御答弁願います。
  36. 渋谷正敏

    ○渋谷説明員 タクシー、なかんずく大都市のタクシーは、電車並びにバスと同じように、大衆の足となりまして、非常に重要な役割りを占めておりますが、このタクシー事業の政策として、ただいま先生のおっしゃるとおり近代化が非常に重要な問題となっております。その一つは事業の適正規模ということでございます。現存、東京のタクシー事業者の中でも、五十両未満の事業者数が大体四〇%を占めておりますが、これをできるだけわれわれが一応最低の適正規模と考えておりますところの五十両に早くしたいということでございまして、現在各事業者に、車をふやすことは役所の認可事項になっておりますが、この増車をするときに、零細事業者のほうに割り当ての割合を多くするという方針でまいりまして、自今この方針を踏襲いたしまして、できるだけ早く適正な事業規模にしたい、かように考えております。
  37. 佐野進

    佐野(進)委員 五十台以下が三〇%だというのですね。
  38. 渋谷正敏

    ○渋谷説明員 四〇%近くございます。
  39. 佐野進

    佐野(進)委員 私は一日のうちタクシーに乗らない日はほとんどないほど愛用させていただいておるのですが、タクシーに乗って感ずることは、私どももきげんが悪くなればむっとせざるを得ないと思うのですとけれども、あの激しい労働、交通難の中における労働を続けておる運転手の諸君が、長時間いわゆる不愉快な状況の中で金銭を取り扱いながら乗客のサービスをするということは、たいへん過重な労働ですね。東京都におきましても、過日私どもの仲間の諸君が、実際に乗ってみようということで朝から晩まで一日乗ったのですね。それは突然乗ったんだから、その受けた苦痛というものははかり知れないものがあったと思う。それにしてもたいへんだ、たいへんだと会うたびにぼくらに言うわけですね。したがって、こういう問題については国会において必ず取り上げてくれということを都議会議員の諸君から私どもたびたび言われておるわけです。  そこで、そういうような状況になる内容をいろいろ調べてみると、やはりいま問題になりつつある日本における中小企業――これは大企業のタクシーの運転手もそうなんですが、特に中小企業はひどいのですね。中小企業としてのおくれておる面がタクシー業界に端的にあらわれておる、そういうように考えざるを得ない面が非常に多くあるわけなんです。たとえば仮眠所にしても休憩所にしても、その他についても相当不満があるわけなんですが、そういう点について、五十台以上にしなければならないということ、それは実際どういうような形の中においてできるのですか。それから、構造改善をするというようなことはほとんどできないわけですね。最大の難点は、労働者である運転手が集まらないわけです。その他、交通事情の悪化というのがその次の条件になってくるわけですね。それから、水揚げによる収入ということが一つ条件になってくるわけですね。これは運輸省としては相当突っ込んで中小企業問題として考えてもらわなければならぬし、中小企業の経営段階におけるタクシー業界状態がよくなるということは、大手の業界をよくすることに通ずるわけですね。大手が悪いのは、中小よりも小――小ということになると、全くの小は個人タクシーまであるんだから、表現が適切でないかもしれませんが、これは野放しにはできない状況にあると思うのですが、いま一度御答弁をお願いしたい。
  40. 渋谷正敏

    ○渋谷説明員 運輸省といたしましては、繰り返しますけれども、このタクシー事業の近代化のためには適正な事業規模を必要とするという見地から、将来とも車を増加させる場合には、その割合を、零細事業を優先する――優先するというと語弊がありますけれども、割合を多くしてまいりたい、そうやりまして、車両を五十両以上に拡充いたしまして、ただいま先生のおっしゃいますところの福利厚生施設等の充実をはかりつつ、運転手の確保をさせる基盤をつくってやりたい、かように思っている次第であります。
  41. 佐野進

    佐野(進)委員 突然の質問ですから、お答えにくいだろうと思うのだけれども、日本中小企業対策として、ここに資料があるんだけれども、近代化促進のためにすでに業種指定が行なわれている中小企業が百十二種類あるのですね。それで、近代化基本計画策定ベースでは百四十九業種あるのですね。そして百二十八業種については基本計画が策定されておる。最も密接に都民と接触するタクシー、これは毎日お客を乗せなければ営業が成り立たないわけですね。したがって親切、丁寧、快適、快速というか、ともかく安全で、速くて、安く行ってもらいたいというのが国民の願いなわけです。そういう面に対する近代化が、やはりあなたの言われるように必要なんでしょう。近代化という表現がどういう表現であるか別として、いまの状態でいいとだれしも思わないですね。そうしたら、こういうような中小企業対策の一環としてどうして運輸省は取り上げる努力をなされないのか。この中を見たけれども、ないのですね。
  42. 渋谷正敏

    ○渋谷説明員 中小企業近代化促進法業種指定を受けることにつきましては、業界自体がそういった熱意と意欲に燃えまして、ぜひ業種指定を受けたいということがあって初めてこの法律の真価が発揮されると思われるわけでございますが、従来は遺憾ながらタクシー業界の中にそういった機運がございませんでしたので、いまもって業種指定を受けておりませんけれども、最近になりまして、非常なそういった近代化意欲が燃えまして、来年度以降ぜひその業種指定を仰ぎたいという機運が上がってまいりましたので、われわれといたしましては、来年度以降ぜひこの業種指定を受けたいというふうに考えております。
  43. 佐野進

    佐野(進)委員 中小企業庁長官、いま受けたいと考えておるという運輸省側の答弁があったのですが、これをどうお考えになりますかということが一つ。  それから、私は中小企業白書を読んで、さっきから質問申し上げているとおり、たいへんいろいろな面において、非常によく、もう常識で考えられる点についてはこれ以外ないだろうなと思うほどのことが書いてあるわけです。これ以上ないだろうなと思うことが書いてあっても――いま言われたように、最も私たちの身近にあって、おそらく皆さんの中でもタクシーを一日一回くらいお使いになっている人が大部分だろう。長官は役所の車があるから使わないで済むだろうけれども、われわれはなかなかないから、使わなければ済まないわけです。したがってそういう点からすると、タクシーが非常に大事なんですね。大事でありながら、さっき言ったとおり、詰め所に行ってみても車庫に行ってみても、あるいはまた運転手さんの募集状況にしても、大手といえども中といえども小といえども、みんな乗務員の運転手さんが集まらないのですね。集まらないために、青田刈りじゃないけれども、日本全国をかけめぐって集めてきたけれども、またすぐいなくなるというような状況で、これはあなたがさっきから言われておる中小企業対策のまさに典型的な一つの職場なんですよ。こういうことに対して、いま業務部長は、業界の体制が整わないからだ、こう言っているのですが、業界の体制が整わなくても、必要があればそれに対して指導するというのが運輸省の責任であり、中小企業庁責任ではないか、こう思うのですが、これについてひとつあなたの考えをお聞かせ願いたい。
  44. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 まず第一の問題でございますが、おそらく運輸省とされましては、この問題を掘り下げ、組織化することの困難なこのタクシー業界に対して非常に御努力に相なった結果、業界としてもひとつ近代化促進法に指定をしてほしいというところまでいわば自助努力と申しますか、機運が盛り上がってこられたものと思います。したがいまして、私たちとしては、非常にけっこうなことでございますので、運輸省でいろいろ知恵をしぼっていただきまして、基本計画なり必要な自主計画なりをおつくりいただきまして、それをおつくりになると思うのでありますが、私たちとしては、その運輸省の御努力に対して積極的にお役に立つ面は使っていただきたい。もちろん近促法として指定をしたいという具体的なことになってまいりますならば、前向きで御相談に応ずるし、計画の策定等についても、私たちでお役に立つ点は十分使っていただきたいと思うわけでございます。  それから第二に、白書でいろいろ書いておるけれども、身近な問題としてこういうふうにころがっておるというお話、これもほんとうをいえばそうなんであります。しかし先生お話を伺っておりますと、つくづく中小企業行政というのが、単に中小企業者のために必要なのではなくして、国民のため全部に必要なのだという感を深くした次第でございます。
  45. 佐野進

    佐野(進)委員 特金課長においでになられたのですが、時間がもうありませんのでけっこうですから……。  そこで、まだいろいろ聞きたいことが一ぱいあったのですけれども、十二時十五分になりましたので、あと時間がありませんので、最後に一つだけ聞いて質問を終わりたいと思います。  そこで最後に、中小企業近代化促進法について二、三お伺いをしたいと思うわけです。  まずこの指定業種の問題については、いまちょっとほかのほうで聞きましたので省略をいたします。対象業種について、これは近代化促進法の今度の改正案に基づいて対象業種がきめられるわけですが、これはもう前の方がお聞きになったかもわかりませんが、どういうところをお考えになっておられますか。この法律の改正ができたとき、どういうところを対象業種としていまお考えになっておられるか、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  46. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 抽象的に申し上げますと、当然まず中小企業業種であるということと、第二に国際競争力を強化することが非常に緊急に必要であるということの二つが前提でございますが、当然業界の自発的な自主的な計画というものが今度の構造改善基本になって、その計画をわれわれが一緒になって承認という意味でお手伝いをするというかっこうでございますので、業界の意欲がそれだけ盛り上がってきておられるということで、それだけ必要になってくるというふうに思いますし、しかしわれわれは、その業界の意欲を引き出す努力をまたかたがたしなければならないと思っておるわけでございますが、そういう見地でもって、さしあたりの措置でございますが、業界が相当まとまってきておられますのは、たとえでございますが洋傘とか洋傘骨、それからマッチの業界、みがき棒鋼の業界等が現在のところ相当まとまってすでにいろいろ体具的な計画をお持ちだということを聞いております。
  47. 佐野進

    佐野(進)委員 そうすると、たとえばこの前繊維の構造改善で議論いたしました織布ですか、その他はどうなんですか。
  48. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 織布につきましても、綿それから絹、化繊の業界で特繊法の対象になっていない地域で今度の近促法の対象になりたいというところもあるということを聞いておりますので、具体的になってまいりますれば取り上げていくということになると思います。
  49. 佐野進

    佐野(進)委員 そうすると、いままで行なわれた特定繊維の構造改善事業、ああいう構造改善事業と、この近代化促進法に基づく構造改善事業との関係関連はどういうことになるのですか。
  50. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 並列して繊維の構造改善業種として繊維の法律で特定され、また近代化促進法の政令指定業種になるということが当然考えられるというわけであります。したがいまして、業界といたしましてはいずれの法律によりますやり方をとるかということは、業界が選択をされればいいと思うわけであります。
  51. 佐野進

    佐野(進)委員 おかしいなあ。選択の自由に基づいて繊維のような特定構造改善事業が行なわれたり、近促法による構造改善事業が行なわれる、こういうことになると、じゃ業界がその主体的な条件が整ったとき、近促法の指定業種でありながら特定繊維の構造改善事業、染色の構造改善事業と、同じような形の中における立法を要請してくる場合もあるし、この指定業種としての中から対象業種にしてもらいたいということで要望してくることもある。そういうことになると、どちらでもあなた方の選択の自由ですよ、自由はありますよ、こういうことになると何か一貫性がないように感ずるわけです。たとえば対象業種になっておる業種の中における構造改善事業については近促法による、この対象業種にならない業種については、特定の法律に基づいて構造改善事業を推進する、こういうことならはっきりわかるわけですが、同じようなものが二つあって、おまえらどっちでもいいのをとりなさいよ、その内容は全部同じだということじゃないわけですね。内容に差があるわけです。それじゃいいほうにいくのはあたりまえでしょう。どこでそういう区分けをするのですか。
  52. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 おそらく綿の織布はこの近代化促進法でも指定されると思うわけでございまするが、綿の織布の例をとりますと、これは繊維の構造改善法ですでに特定された業種でございます。綿の織布は産地別に分かれておりまして、特繊法は、申すまでもなく、産地単位の構造改善組合が計画をつくりまして、その計画を通産大臣が承認をするというかっこうで、その綿織布の中でも繊維の法律でいきたいという産地は、それできまるわけであります。しかし、この繊維の法律におきまして事業団の融資というふうな非常に有利な融資が行なわれるわけでありますが、反面また〇・六台の上乗せ廃棄というような義務も課せられておるわけであります。しかし、産地の中ではこの特繊法方式でいきたいというのも、綿織布の産地の中の全部ではございません、現在におきましてもその一部でありますので、残された産地におきましては、綿の法律のやり方の構造改善方式でいく。すなわち、一例を申し上げますと、スクラップ・アンド・ビルド方式を強化したかっこうでやっていくのか、あるいはそういう方式によらないで、今度改正をしていただきます近促法の構造改善の方式によっていくのか、そういう意味で産地の組合で選択が行なわれ得るということを申し上げたわけでございます。
  53. 佐野進

    佐野(進)委員 ぼくが間違っていましたが、織布と言ったんですけれども、織布はもうきまって、縫製ですね。まあいいです。いずれにしても、ともかくそういう混乱のないように、これは私ども悪いと言っているのじゃないので、ただ同じようなことをやるのに、近促法でもよろしい、こちらの法律でもよろしいということでなくて、やはりできるならば近促法で、あなたのほうで指定業種にするということであるならば、そういうことでおやりになったほうがいいのじゃないかという気がしたので御質問したわけです。  もう一つ、特定業種の指定の際、国際競争力を強化するためということがその特定業種を指定する際における最大の基準になるわけですね。国際競争力を強化する。この法律案全体を通じて流れることは、環境変化に対応し、特にそれが国際競争にうちかち、近代化を促進するというような形で表現されてきているわけですから、その国際競争力ということが指定業種の最高の条件になる、その指定業種になることによって構造改善事業が行なわれるということになるわけですが、その国際競争力と称するものはたいへんむずかしいですね。いろいろな角度であるわけだ。国内企業間における競争が即国際競争力に関連する場合もあるわけですね。その基準は一体どういうところに置かれておるのか、お聞かせ願いたい。
  54. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 国際競争力をわれわれは非常に広く考えたいと思うのであります。すなわち、狭い意味で申しますと、同一商品、同じ種類の商品が国際競争場裏において危機に瀕しているというふうに狭く解するわけでありますけれども、それだけではなくして、代替品を含む――これは業界がそこまで固まっているという意味で申し上げているのじゃありませんが、一例として、清酒などというものはウイスキーと代替し得るというふうな意味の代替品も競争力には入る。またさらにワンセットで国際競争力を形成しているたとえば機械の部品などは、部品は国内における親業者であるアセンブラーに供給をするわけでございますけれども、アセンブラーのアセンブリングと一緒にワンセットになって国際競争力を形成するという部品、これあたりも国際競争力に入るというふうに、国際競争力という観念は広く解釈をいたしておるわけでございます。
  55. 佐野進

    佐野(進)委員 私は衆議院商工委員会調査室で出された「要点及び問題点」というのをよく読んでみましたとき、なるほどこれはよほど気をつけて運営をしてもらわなければならぬことが相当あるなということを感じたわけです。先ほど来質問しておるように、いいことはいいことでも、そのいいことをやってうらまれる場合もあるわけです。うらまれる場合もあるということは適切な表現でないかもわからぬけれども、よかれとやって相手に悪い結果をもたらすということがあるわけです。私はそういう意味において、中小企業庁のほうでたびたび言っているように、業界における自主的な意欲の盛り上がりを待って、あるいはその構造改善を行なうのは業界の自主的な意思に基づいてと、こういうような表現の中で説明されておるということはたいへんうまい表現だなと思うのですよ。思うのだけれども、いま言われるように、指定業種をきめる際、その前提条件として、業界がそれに対応できるような体制をつくってもらってから――当然そういうことにしなければならぬけれども、そういうことに対する対策ということについて十分前向きにお考えになっていただかなければならぬということが一つあります。  それから国際競争力の問題についても、いま言われたような抽象的な表現でなく、もっと具体的に分析をしていただきたいと思うのです。いまの段階ではそれ以上言いようがないから、そういうような表現とならざるを得なかったと思うのですけれども、国際競争力が云々ということは抽象的な表現であって、具体的なものじゃないですね。  さらにもう一つ、最後に要望として申し上げることは、いつも私どもが中小企業問題を取り上げる際強調しておることですが、小規模零細企業に対してこういう構造改善事業が行なわれる際におけるいわゆるはね出しというのですか、はね飛ばされてしまうような現象のないような対策をひとつ十分とっていただきたい。  以上、私の要望を申し上げて質問を終わります。
  56. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員長代理 午後一時三十分から再開することとし、この際暫時休憩いたします。    午後零時二十六分休憩      ――――◇―――――    午後一時五十五分開議
  57. 大久保武雄

    大久保委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  内閣提出ガス事業法の一部を改正する法律案を議題といたします。
  58. 大久保武雄

    大久保委員長 まず、本案の提案理由の説明を求めます。大平通商産業大臣
  59. 大平正芳

    ○大平国務大臣 ガス事業法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  家庭用エネルギーの需要は、逐年増加の一途をたどっており、ガスは国民の日常生活に不可欠なエネルギーとして今後とも一そうその地位を高めてまいるものと考えられます。その過程におきまして主用な供給源である都市ガス及び液化石油ガスはそれぞれその特性に応じた機能を果たしてまいることが期待されます。  このうち、都市部におきまして重要な役割りを果たす都市ガス事業につきましては、近時、石炭から石油への原料転換等に伴い、経済性の見地からガス発生設備等が高圧かつ大きな容量となりつつありますが、その反面において、事故発生の防止への配慮が要請されてまいりました。  また、消費生活の向上とともに各種のガス用品が広く普及されますとともに、家屋構造変化と相まってガス用品による災害の発生の防止も重要な課題となってきております。  さらに、近年、新しい家庭用ガス体エネルギーの供給方式として、いわゆる液化石油ガス等、小規模導管供給事業が目ざましい普及を見せております。これは、導管によりガスを供給するという点で、都市ガス事業と類似の性格を持っておりますので、消費者の利益を確保するために、都市ガス事業と同様に公益事業としての規制を行ないますとともに、都市ガス事業との間に所要の調整を行なう必要があります。  このように、ガス事業を取り巻く環境は最近大幅に変化を来たしてきております。政府におきましても、このような情勢に対処すべく、ガス体燃料の供給体制のあり方につき、総合エネルギー調査会の審議等を通じて検討を進めてまいりましたが、その結果、今般ガス事業法について所要の改正を行なうこととしたものであります。  次に、本法案の概要を御説明申し上げます。  第一は、一般ガス事業者に対する保安規制の強化であります。  すなわち、ガス発生設備、主要な導管等一般ガス事業の遂行上重要なガス工作物について工事計画の認可及び使用前検査の制度を設けますとともに、このうち一定のものは設置後も定期検査を行なうこととするほか、一般ガス事業者に対し保安規程の届け出の義務を課する等、保安の確保と安定供給の達成等に万全を期することといたしております。  第二は、ガス用品の取り締まりを行なうことであります。  一般消費者等が使用する都市ガス用のガス用品について検定制及び製造事業者の登録制を採用し、指定検定機関または登録製造事業者が付した表示のないものは販売してはならないことといたしますとともに、ガス事業者は一般消費者に対しガスの消費機器の設置及び使用に際して危険防止のための注意事項を周知させ、さらに一定の事項については調査を行なう義務を課する等の規制を行なうこととしております。  第三は、液化石油ガス等小規模導管供給事業に対する公益事業規制であります。  液化石油ガス等小規模導管供給事業のうち、供給の相手方の数が五十以上のものについて、新たにガス事業法の中で簡易ガス事業として公益事業規制を行なうこととし、通商産業局長は、一般ガス事業者が適切かつ確実なガスの供給計画を有する地域にかかる簡易ガス事業の許可を行なうにあたっては、通商産業局ごとに学識経験者により構成する地方ガス事業調整協議会の意見を聞いて、一般ガス事業との調整をはかることといたしております。  さらに簡易ガス事業に対しては、技術基準適合義務等を内容とする保安規制のほか、料金の認可等一般ガス事業に準じた規制を加えることとしております。  以上がこの法律案の提案理由及びその要旨であります。  何とぞ慎重御審議の上、御賛同賜わりますようお願い申し上げます。
  60. 大久保武雄

    大久保委員長 本案の質疑は後日に譲ります。      ――――◇―――――
  61. 大久保武雄

    大久保委員長 中小企業近代化促進法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の質疑に関し、参考人として商工組合中央金庫理事猪越俊治君、中小企業退職金共済事業団理坂本実君、中小企業振興事業団理事長馬場靖文君、全国信用保証協会連合会会服部冨士雄君、以上四名の方に御出席を願っております。  質疑を続行いたします。中村重光君。
  62. 中村重光

    ○中村(重)委員 質問に入る前に委員長に注意を喚起しておきますが、定足数をそろえて質問に入りますが、何分か後にすっかり姿を消す、そうしたことでは質問を継続するわけにはまいりません。したがいまして、いまも定足数が若干欠けておるようであります。生理的現象のために外に出ているのだろうと思いますが、十分程度以内には定足数をそろえるように、ひとつ委員長から与党理事に注意を喚起をしていただきたいということを要望しておきます。
  63. 大久保武雄

    大久保委員長 承知いたしました。
  64. 中村重光

    ○中村(重)委員 通産大臣に見解をただしてみたいと思いますが、御承知のとおり、高度経済成長政策の中で産業構造は大きな変革をもたらしておりますし、また流通革命ということがいえると思います。そうしたことが中小企業に及ぼす影響というものもきわめて大きいものがあろうかと思います。そうした変革の中で中小企業に対する基本的な対策というものが明らかにされなければならないのだと思うのであります。完全に区画はできないにいたしましても、構造改善政策というものにウエートを持つのか、あるいは保護育成にウエートを置くのかという問題は非常に重要な問題点であろうと思います。いろいろ申し上げたいのでありますが、時間の関係もございますから、ひとつ端的に大臣から基本的な考え方についてお聞かせを願いたいと思います。
  65. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま御指摘のように、経済界、経済社会は空前の変革期にございます。しかも、その振幅の程度は非常に大きいし、その速度も非常に早く、かってなかった環境の変革であると思います。したがって、これは中小企業ばかりではなく、産業界全体が、しかもまた、生産であれ輸送であれ流通であれ、すべての産業界が適応力を発揮しなければならない環境変化であると思います。したがいまして、御指摘の中小企業政策といたしましても、これまでのような好況に加うるに変革期に対する適応力をどのように組織して実現してまいるかという新しい課題をになっていると思うのでございます。そこで、御指摘の構造改善に力点を置くか、保護育成に力点を置くかというお尋ねに対しましては、そういう変革に応じた適応力を発揮しなければならぬために構造改善を果敢に実行してまいるということがすなわち中小企業自体の新しい時代に即した保護であり、育成策に通ずるわけでございますので、二者択一的にどちらに力点を置くかということではなくて、構造政策の展開を牽引力といたしまして当面施策をしてまいりますることが中小企業の育成にそのまま役立つものであると思うのでございまして、私どもは、そういう基本考え方でこれからも中小企業政策の幅広い展開をはかってまいりたい、このように考えております。
  66. 中村重光

    ○中村(重)委員 お答えのとおりに、中小企業政策の全般から考えてみます場合には、構造改善と保護育成の二者択一ということではない。だがしかし、構造改善の中でどうしても取り残されていく小規模企業というものがあることは否定できない。それに対しましては、単に牽引力になるのだということで小規模企業対策というものをおろそかにしていくということになりますと、ほんとうの意味中小企業政策ということにはならない。保護育成という点についても、構造改善の中からそうした保護育成政策というようなものが付随的に考えられるということであってはならない、かように考えるわけでありますが、以下具体的な問題についてお尋ねをしてまいりたいと思うのであります。  いま大臣お答えのとおりに、この変革期における適応力を持たせるということになってまいりますと、必ずしもいわゆる金の面だけで適応力を持たせるということにはならない、中小企業全般の政策というようなものが組み合わせられて初めて適応力というものがついてくるというふうに思うわけでありますけれども、やはりこの中小企業政策の中で予算の占めるウエートというものは非常に大きいのではないか、そのように考えるわけであります。そうした考え方の上に立ちますと、昭和四十四年度の予算というものが三百八億四千九百七十九万二千円ということになっており、四十三年度は二百七十二億六千二十五万七千円で、これは額といたしましては三十五億七千五百万円程度伸びているとは申しながらも、六兆七千億の総予算の中に占める比率は〇・六四%にすぎない。あまりにも中小企業不在の予算ということがいえないだろうかというように思うのでありますが、その点に対してはどのようにお考えになりますか。
  67. 大平正芳

    ○大平国務大臣 中小企業政策というもののメリットの判断を予算額の多寡でもってはかるということの一つのメルクマールであると思いますけれども、たとえば農業のように自然の条件に制約されて資本の回転率も非常に鈍いというようなところは、御指摘のように財政的な助成をはかりまして経済のベースに乗せていく前段の仕事が多いのでございますけれども、われわれが管掌いたしておりまする中小企業は、そういうものとは性質を異にするわけでございます。したがって、農業のようなものとフラットに予算の多寡を比べますということは、必ずしも適切ではないと思うのでございます。経済のメカニズムの中で、中小企業の存立を維持し、分野を開拓していくに必要にして十分な手段が用意されるのでございますならば、必ずしも、それは予算という形式のものでなくても差しつかえはないのではないかと考えております。したがいまして、今日までの実績から見ましても、政府の取り扱っております財政投融資の領域において、大幅の財政投資資金を獲得いたしまして、それを中小企業の分野に投入するということが力点になっておるわけでございます。予算面は、御指摘のとおり、分量から申しましてたいへん菲薄ではございますけれども、事柄の性質上、それだからといって政府中小企業政策に冷淡であるというようなことに私決してならないと思うのでございます。もっとも予算自体が必要にして十分なものが確保できておるかということでございますならば、必ずしも満足すべきものだとは思うておりませんけれども、総予算の中における比率におきまして非常に少ないということが、即政府中小企業政策に対する関心と愛情の度合いをはかるものさしとしておとり願わぬようにお願いしたいものだと思います。
  68. 中村重光

    ○中村(重)委員 私も必ずして予算だけが中小企業政策のすべてであるということは考えていない。そのことは先ほど申し上げたとおりであります。だがしかし、この中小企業日本経済の中における位置づけというものをどう考えておるかということですね。やはり大きな役割り中小企業に期待しておるかどうか。そうなってまいりますと、先ほど申し上げましたように、構造改善政策の中で取り残されていくところのいわゆる小規模零細企業というものも、国民生活の中で大きな役割りを果たしておると私は思うのです。そうした小規模関係企業というものは、いわゆる融資の面よりも、手厚いきめのこまかい予算の中で保護されていかなければならない部面が私は非常に大きいのだろうと思うのです。またそうした小規模企業だけでなくても、構造改善の中におきましても同じようなことが言えると思うのです。よく私どもも中小企業の問題を、まあ古くて新しい問題として考えてくるのでありますが、一口に中小企業政策、これを積極的に国の予算面の中におきましても強めていかなければならないというようなことを言うのでありますけれども、非常に中小企業政策というものがむずかしいということを私も承知しておるのであります。予算的に、いま私が申し上げました小規模企業というものは、それじゃどういうものがあるのだろうか。商工会というものの組織をやる、指導員を置いて、そうして指導事業等をやっておる。その点ことしの予算の中におきましても、指導員であるとか、あるいは補助員というものも、特に補助員は相当大幅にふやしてきたということを私は認めておるのでありますが、そういうことは一応予算的に中小企業政策としては考えられるのだが、それ以外にそれではどういうものがあるのかということになってまいりますと、これはなかなかむずかしい。どうしても、大臣がいまお答えになりましたような財政投融資の中において、金融その他の面において、中小企業の振興をはかっていかなければならないというような考え方も出てくるのであります。しかしながら、いま中小企業の倒産等を見てみましても、労働者が不足しておるということは、倒産の中に大きなウエートを占めておるということになってまいりますと、以下ずっと尋ねてはまいりますけれども、考えてみると、共済制度におきましても、あるいは中小企業の従業員対策にいたしましても、その他予算の面でカバーし得るところの余地というものは私は相当あると思うのであります。それらのことを考えてみますと、少なくとも六兆七千億という大型予算の中において、四十三年度よりも総予算の中に占める比率が低下するというようなことは、せっかくの大臣の御答弁ではございますけれども、私は愛情ある中小企業政策とは言えないと思うのです。絶対額がふえたといたしましても、これは予算そのものが大型化しておるのでありますし、資材の値上がりその他諸経費の上昇といったような点から考えてみますと、やはり中小企業に対する愛情を持って、ほんとうに中小企業を振興していこう、日本経済の中に大きな役割りを果たしていこうとするならば、予算面に相当手厚い措置というものが考えられなければならぬと思うのです。その点はいまの大臣の答弁では私は満足できないのでありますが、どうして四十三年度の予算よりも総予算の中に占める比率を低下させるという結果になったのか、その点に対してはどのように考えておられるのか、お聞かせを願いたい。
  69. 大平正芳

    ○大平国務大臣 予算の切り盛りは大蔵大臣がやっておりますので、私が総予算の中でこれだけはちょうだいせねばならぬというアプローチのしかたというよりは、むしろ個々の政策のアイテムを吟味いたしまして、ことしはこういう施策についてこの程度財政資金がほしいというような概算要求をし、それに対しての折衝を通じて、財政当局もたいへんよく理解を示してくれたと感じておるのでございます。ただ、締め上げてみると、中村委員御指摘のように、総予算の中の比率は下がっておった。これは大蔵省のほうから御答弁するのが筋合いかと思いますけれども、地方交付税交付金の大幅の増加でございますとか、国債整理基金への繰り入れでございますとか、つまり、財政固有の操作が多いわけでありまして、実態的に助成予算としての実質的な部分を抽出いたしまして、中小企業に対する助成政策との実質的な比較を試みてみますと、私は必ずしも後退をしているとは思いませんけれども、しかしこれは厳密に数字で検証してみなければわかりません。そういうことを一ぺんやってみたいと思いますが、政府全体あるいは財政当局が中小企業あるいは零細企業に対しまして愛情が乏しいとかあるいは関心が薄いとか、そういう印象は、私は受けた限りにおきましては持っていないのでございます。しかしながら、なお、御鞭撻の御趣旨もございますので、今後一そう私どもは予算の獲得に努力を惜しまないつもりでおります。
  70. 中村重光

    ○中村(重)委員 構造変革の中で、第三次産業というものが非常にふえつつある、中小企業が激増の一途をたどっておるということだって否定できないと思うのです。したがって、予算というものも当然それに伴ってこなければならないと私は思うのです。  そこで、海堀主計局次長に私が指摘いたしました点について、予算編成時においてどのようにお考えになったのか、ひとつお答えを願いたいと思います。
  71. 亘理彰

    ○亘理説明員 お答えいたします。ただいま通産大臣から御答弁がございましたようなことでございまして、確かにお話しのように予算全体の伸び一五・八%に対しまして中小企業予算の伸びは一二・八%でございますから、大勢的には大体同じような比率でございますが、こまかく申せば、多少ウエートが落ちておるということでございます。ただ、予算全体の中でどういう費目が大きくふえたのかということを申し上げますと、いま通産大臣からお話がございましたように、たとえば国債費は三八・五%伸びておる、交付税交付金は二二・一%伸びておる、それから輸出入銀行及び経済協力基金への関係の出資がふえるというようなことがございまして、貿易振興及び経済協力費は一五・九%、同じく貿易振興に関連します産業投資特別会計繰り入れば三一%ふえる、それから食管会計への繰り入れが二一・八%ふえる、そういうふうな費目に予算増加額が非常に大きく食われておるわけでございます。したがいまして、実質的に見まして、ほかの費目に比べて中小企業対策に力を入れておらないということにはならないのではないかと思っております。ちなみに、たまたまこの伸びの比率は公共事業費の伸びと同程度でございます。申すまでもないことですが、中小企業業種、業態、規模がさまざまでございますので、一律な施策ですべてに対応するわけにまいらない。その施策態様も、一般会計の予算支出もございますが、そのほかに財政投融資の中でも中小企業対策関係のウエートは約一五%でございます。それから税制もございます。財政投融資、税制、一般会計合わせて総合的に必要な中小企業の当面する情勢に対しまする高度化、近代化という施策を進めてまいるということであろうかと思います。  それから、中小企業対策費自体が確かにお話しのように金額としてさほど大きなものではないわけでございますけれども、これは非常にきめのこまかい施策をいろいろとやっておるわけでございます。  それから、これは主要経費といたしまして中小企業に直接関連する経費だけを取り出しておりますが、道路その他の公共事業であれ、社会保障であれ、もちろん中小企業並びにその関係者がその効果を受けるということは間違いのないところであります。一般会計についてもそういうことがあると思いますが、さらに財政投融資、税制合わせまして、今後とも総合的に効率の高い施策重点的に伸ばしていくようになお努力してまいりたいと思います。
  72. 中村重光

    ○中村(重)委員 中小企業予算がコンマ以下予算といわれておることは、これは数字が正直に示しておるところであります。いま主計官からお答えがございましたように、広い意味中小企業予算といえるものが相当な伸びを示しておる。しかし、全体的に予算的にほんとうに手厚い措置を講じてもらわなければならない層においてそれらしい対策というものが講じられていないというところに私は抵抗を感じておるわけなんです。  以下、関係各省からも御出席を願っておりますから、私はそれぞれの事例をもって、いかにこの中小企業対策が愛情がないかということを指摘してみたいと考えておるのであります。  なお、先ほど通産大臣は、予算だけではないんだ、財政投融資という面に相当ウエートを持つ中小企業対策を考えておるというお答えがあったのであります。それでは、中小企業の金融対策一つを考えてみましても、三機関に対するところの普通貸し付けが八千四百九十九億、なるほどこれも四十三年度は八千二百八十七億でありますから、絶対額としてはふえておる。しかしこれとても、四十四年度は四十三年度と比較いたしまして一一八%、四十三年度と四十二年度と比較いたしまして一一八・八%、これも〇・八%低下をいたしておるのであります。予算も、先ほど申し上げるとおりに、総予算の中に占める比率は四十四年度においては〇・六四%、四十三年度は〇・六五%。財政投融資も、これもまた後退をしておるのであります。  こう申し上げると、振興事業団の問題が出てくるでありましょうから、振興事業団の問題についても私は触れてまいりますが、ともかくこの政府三機関、これが中小企業者の金融難の打開のためにきわめて大きい役割りを果たしておるにもかかわらず、伸び率が四十三年度よりも後退しておるという点についてどのようにお考えになるのか、これをひとつお答えを願いたいと思います。
  73. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 先生から数字についてお話がございましたので、まず数字を申し上げますが、確かに四十四年度の三機関の伸び率は、四十三年度に比しまして一八%の伸びであります。普通貸し付けの貸し付け規模で千二百九十七億円の伸びでございますが、四十三年度の四十二年度に対します対前年度の貸し付け規模の伸びは千百四十一億でありまして、これは今年度の伸びのほうが金額的には大きいわけであります。ただ、御指摘の伸び率でございますが、確かに普通貸し付けは昨年は一昨年に対しまして一八・八%の伸びを確保したわけでございますが、昨年はちょうど金融引き締めに際会をしておったのでございますので、この引き締め時において中小企業の金融について遺憾なからしめるという趣旨ももちまして、特に貸し出し規模を大きく確保した、こういう点でございます。  なお、財政投融資の中に占めるシェアでございますけれども、財投関係におきましては、中小企業関係は四十三年度は政府財投に対して一四・四%でございましたが、本年度は一四・九%、若干でございますが、上がっております。  なお、三機関だけ取り出してみますると、四十三、四十四年度とも一二・九%でございまして、四十二年度、四十一年度に対しては、若干ずついずれも上昇したシェアになっております。
  74. 中村重光

    ○中村(重)委員 総貸し出しワクという中には自己資金というのが相当入っている。この自己資金のワクを大幅に見ることにおいて総貸し出しワクが増加したということになりましても、実際の中小企業の金融難の緩和にはなりません。ただ見せかけだということになるのであります。だから、私どもはやはり中小企業に対する財政投融資というものがその年度においてどれほど投じられるかということに期待を持ち、また注意、関心を払っておるところなんです。私が申し上げましたように、四十三年度と四十四年度を比較いたしますときに、三機関に対するところの伸び率が四十三年度よりも四十四年度は低下しておるということだけは動かすことができない事実です。四十三年度においては金融引き締め時であったというけれども、さりとて特に大きくこれが伸びたということにはならない。それならば四十四年度において四十三年度ほど金融がゆるんで、四十三年度と比較して四十四年度が大幅に中小企業の金融がゆるんでおるのかということになってまいりますと、必ずしもそうではない。やはり中小企業の三機関に対する借り入れ申し込みというものが殺到しておる。この事実は長官もお認めになるだろうと私は思うのであります。この点に対しましては銀行局からお見えでございましょうから、田代審議官から、この三機関に対するところの財政投融資というものをもっと大幅に伸ばす必要があったのではないかということについて、ひとつお答えを願いたいと思います。
  75. 長岡実

    ○長岡説明員 田代審議官はもう大蔵省を出ておりまして、すぐにこちらへ参りますので、到着次第お答えを申し上げます。
  76. 中村重光

    ○中村(重)委員 それでは、次に中小企業振興事業団についてお尋ねをいたします。  なるほど振興事業団は総事業費が七百六十三億五千万円、四十三年度が五百四十六億五千百万円でございましたから、これは相当な伸びを示しておることは事実なのであります。しかし、これとても四十四年度の自己負担分というのは二百五十一億四百万という大幅の自己負担というものがあるわけです。特に私が指摘したいのは、高度化資金の当時は、利子は無利子であった。振興事業団になりましてから二分二厘の利子がつくようになってきた。今度は、四十四年度においては五厘上げて二分七厘という金利になった。この点に対して特に無利子から有利子へ、その有利子が二分二厘から二分七厘へと引き上げられたということは、いわゆる四十四年度の予算の中における受益者負担というものが強くにじみ出ておるような感じが私はいたすのでありますが、財政投融資が相当伸びたんだから、こういうことで一方においては前向きの形をとるけれども、その分だけ利子が高くなる。受益者負担が加重してくるということになってまいりますと、一方においてはやはり足をひっぱる形になるのであります。この点に対してどのようにお考えになっておられるのかお聞かせ願いたいと思います。
  77. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 結果といたしまして、事業団によります高度化資金の最終の貸し出し金利が二分七厘になったということでございますが、これは本年度の事業団に対します融資規模、すなわち構造改善に対します商業団地、工業団地、一般共同施設等の希望が非常に殺到いたしまして、当初は前年度対比約四倍程度の事業規模業界のほうが要望したというわけであります。一般予算の伸びはこれは大体二、三〇%以内におさめねばならぬという要請もあって、非常に苦慮したわけでございますが、結局のところ、一般予算からの出資を極力ふやすとともに、しかしその出資増だけではなお業界側の要望を満たすことができませんので、財政投融資、すなわち事業団債の発行でもってこれを補完するという措置をとらざるを得なかったわけでございます。その結果事業規模として、一般案件につきましては、特に業界の要望が殺到したのは一般案件でございますが、一般案件におきましては、四十三年度対比七八%増の事業規模を確保することができたわけでございますが、構成比といたしましては、従来の一般財政の出資が二五%、財政投融資の一五%、府県負担二五%というものが、財政投融資がふえましたために、結果といたしまして一般会計の分が二三%、それに相応いたします府県負担分が二三%、そうなりますと、二%ずつ結果として引っ込みまして、その分が財政投融資一九%ということになって、有利子の金を、原資がふえましたために二分二厘の金利を二分七厘に最終的に引き上げざるを得なかった。しかしこれは事業規模を拡大するというところに重点を置かざるを得なかった結果でございます。
  78. 中村重光

    ○中村(重)委員 財政投融資は利子さえ払ってくれたならばふやしていこう、一口に言ったらそういう態度です。やはり高度化資金に対して無利子であったということは、それなりの意義と必要性というものがあったからです。これを有利子にした。そしてその次の年にはまた五厘引き上げてきた。その次どうするのかわからない。四十四年度は二分七厘であったから、今度はその他の関係のが三分五厘ということがあるから、その程度まで引き上げてもいいのではないかということになりかねない。私はそういうようなやり方というものはどうしても納得できないのであります。少なくとも何年間かは、二分二厘にしたならば二分二厘で押えておく、そして可能な限りの財政投融資をやっていく、そしてそうした対象企業の力がほんとうについてきた、その場合に若干利子を上げていく必要がどうしても出てきたならばやはり引き上げていく、そういうかまえが当然なければならないと思うのであります。この際、田代審議官もお見えになったようでありますから、ひとつ審議官からこの政府関係金融機関を補完的な機関とお考えになっておるのかどうか、最近における中小企業政府三機関に対する依存度というものが高まってきた今日においては、従来の補完的な機関であるという観念ではもう許されないのではないか。それらの点とあわせて、この財政投融資の問題、それから振興事業団の利子引き上げということが四十四年度にはなされたのでありますが、これをどのようにお考えになっておるのかをひとつお聞かせ願いたいと思います。
  79. 田代一正

    ○田代説明員 途中から参りましてまことに恐縮でございますが、まず第一に、いまの御質問を拝聴いたしておりますと、政府関係の金融機関、これをどういうぐあいに位置づけて考えたらいいかという問題であると思います。まさしくこれは補完金融機関というかっこうで生誕いたしまして現状に至っておるわけでございますが、現在中小企業融資関係におきましても構成が大体一割前後だと思います。私は今後とも中小企業問題、日本産業構造下における中小企業問題というものを考えた場合に、中小企業構造改善とかあるいは近代化、高度化という要請は依然として強いと思います。したがいまして、やはり当分の間はこういう形でもって推移するのが至当じゃないかという感じを持っております。ただ一つ申し上げておきたいことは、昨年いわゆる金融二法という法律によりまして、中小企業の専門金融機関である相互銀行、信用金庫、信用組合等につきまして、それぞれ現状に合わせましていろいろ仕組みを法律的に改正いたしまして、ますます中小企業関係の専門機関として伸張をはかるという立場でやったのでございます。そういうようなことで、今後とも中小企業金融につきましては、民間、政府ベース、政府指導と相まちまして適正な金融が行なわれるということが望ましいという気持ちでございます。  それから、私ちょっと聞き漏らしたのでありますが、どうも四十四年の貨し出しの規模中小企業三機関において若干低いじゃないかというお話だと思いますが、これは一つは、昭和四十三年の財政投融資計画を組むあるいは予算を組むという段階は、御案内のとおりちょうど引き締め下でございました。そういう点もございまして、ともすれば引き締め下におきましては中小企業にしわが寄るのじゃなかろうかという配慮もあって、かなり奮発したと申しますか、高い水準の貸し出し計画ができたと思います。最近、四十四年の問題になりますが、国民公庫とか中小公庫の窓口の勘定を見ましても、昨年の中途以降やや落ちつきぎみを示しております。たとえて申しますと、昨年の四月ごろには、国民公庫の普通貸し付けにいたしましても、金額で申しますと、前年同期比でもって一三八%、三割八分多いという申し込みがあった。それが昨年の秋以降だんだん減ってまいりまして、大体最近では、対前年同月比で一〇%増という程度でございまして、かなり落ちつきを示してきているという需要構造になってきておると思います。そういう点から彼此勘案いたしますならば、ことしの財政投融資計画は適正なところではなかろうか、こういう感じを持っております。  それから振興事業団の問題は、実は私どもの所管じゃございません。発言の資格は全然ございませんので、お許し願いたいと思います。
  80. 中村重光

    ○中村(重)委員 それでは振興事業団の問題は主計局からひとつお答えを願いましょう。
  81. 亘理彰

    ○亘理説明員 振興事業団の金利引き上げの問題について、この問題はただいま中小企業庁長官からお答えがあったような理由でございます。一般高度化資金の貸し付け需要が非常に旺盛になっておる、事業量を七八%もふやすというように、予算規模としては大幅な増加をいたしたわけでございます。もちろん利用者の側からごらんになれば、金利は低ければ低いほどよろしい、あるいは無利子であればなおよろしいということであろうと思いますけれども、これは一定の財政負担の中で政策的に与えます恩典の幅、その範囲をどういうふうに組み合わせていくかという問題であろうと思います。今度改定することになりました現在の二分七厘の金利も、これは一般的に見れば非常に低い金利でありまして、ほかにいろいろ政策金融もございます。社会保障関係、農林関係、住宅その他いろいろ政策金融がございますが、そうしたほかの政策資金利と比較いたしましても、かなり低いものになっているわけでございます。この振興事業団の事業につきましては、幸いに集団化、共同化、高度化という機運がたいへん盛り上がってまいりまして、それが資金需要の非常に大幅な増大ということになってはね返ってきているわけでございます。したがいまして、当初ねらいました政策の誘導効果というものはたいへん急速にあがりつつある、こういうことであろうと思います。したがいまして、ある程度の利率の引き上げを行ないまして、ほかの政策金利とある程度権衡のとれたものに近づけていくということにいたしまして、他方、それによって財投資金を導入いたしまして事業量の拡大をはかり、利益の均てんを広く及ぼすということにいたしましたのも、御理解いただけるのではないかと思います。
  82. 中村重光

    ○中村(重)委員 いまほかの金融機関、全産業を見る場合に、二分七厘というのは安いほうだ。しかし無利子であったという事実はあなたもお認めになるでしょう。
  83. 亘理彰

    ○亘理説明員 はい。
  84. 中村重光

    ○中村(重)委員 そうでしょう。そして無利子を有利子にしたのです。そして今度、申し込みがふえたからそれぞれ財政投融資をふやすんだ、そのかわり利子を上げなさい、これは一般の町の金融機関ならわかるわけですよ。私の言っているのは、少なくとも政府の姿勢として、そういう朝令暮改みたいなことをやってよろしいのかどうかということです。あなたのそういう考え方なら、来年はまた幾らにするかわからないのだ。そういう姿勢を私は指摘をしておるのであります。いわゆる高度化政策というものがいかに重要なのか、日本経済の中における中小企業の果たす役割りというものが非常に重要であるから、高度化政策としてこれは無利子でもって近代化設備をやる――まだまだ無利子なんですよ。それを有利子にしたのです。そして今度は、一年でもって五厘上げるというのでしょう。それでもって中小企業に対する大きな役割りを果たさせるということになるのかどうか。  それから先ほど田代審議官は、政府関係金融機関は補完的な機関であるとか、あるいは最近は政府関係金融機関に対する申し込みは非常に落ちつきを示してきている、こういうことです。私は必ずしもそうは思わない。きょうは三公庫のそれぞれの総裁または理事の方にお見えいただいておりますから、この際、率直に伺ってみたいとも思いますから、あとで続いてお答えを願いたいと思いますが、この補完的機関であるということをいまなおそのまま固守してよろしいのかどうか。たとえば環衛金融公庫をお考えなさい。設備金融においてこれが補完的な役割りを果たしているということになりますか。なるほど運転資金というものは環衛金融公庫からの融資の対象にはなっていない。設備資金は、すべてと申し上げてよろしいくらいに、これは一千万円と――もちろん大きなホテルであるとか高級料理店であるとか、そういうものは問題です。しかしそれ自体は融資の対象になっていないのだから、少なくとも融資の対象になっているようなそういう中小、小規模企業というようなものは、一応特殊のクリーニングであるとか、あるいはあとでお尋ねしようと考えておりますところの浴場であるとかいうものは、これは別であります。大体その他は一千万程度というものはもう設備資金のほとんどは借り入れができておるということなんです。そのことは補完的金融機関ということではない。やはりそうしたサービス業に対して独立した金融機関というような形においての役割りが果たされてきておると思う。  私は、政府関係金融機関においてきわめて差別的な扱いがされておる、そのことについても問題を感じております。しかし環衛金融公庫に対するところの現在の融資制度というものが特別に優遇されておるという考え方から申し上げておるのでは決してない。それはそれなりの当然のことをやっておるのだと思う。それならば、その他の三機関の一般融資の対象となっているプロパーの中小企業というものは、生鮮食料品流通近代化関係企業、環衛公庫の融資を受けている企業と比較して特に特ワクの融資の必要がないかどうかということになってまいりますと、私は、その点に対しては十分あるのだ、企業によってはそれ以上の重要な役割りを果たしておるのだ、また果たさせなければならないのだ、そのためにはやはり特利、特ワクも考えなければならないし、現在の国民金融公庫の貸し付け限度額の三百万というようなものも、依然としてこれを改めないでおるということについても抵抗を感じている。これも当然引き上げていかなければならない。だがしかし、引き上げても、絶対額をふやさなければ、いままで国民金融公庫の融資に依存をしていないところの比較的大きい企業が依存をしてくる。そして肝心の零細企業への融資が非常に狭められてくることになるのだから、貸し付け限度額を引き上げていくと同時に融資ワクの絶対額もふやしていかなければならぬということになるのであります。それらの点等々を考えてみまして矛盾をお感じにならないのかどうか。依然として補完的な役割りだ、それは一〇%だとあなたはおっしゃった。なるほどシェアは八・五%であるとか九%であるとか、ある月によっては九・五%程度となっているのです。しかしそれは財政投融資を十分やらないから、国の出資を十分やらないから、いつまでたってもシェアは八%ないし九%、そこらあたりにいまくぎづけされているというのが実態です。もっとこれをふやしていく、そしてシェアを拡大しなければならぬという考え方から、もっと出資をし、財政投融資をやるならもっとシェアは拡大をいたしますよ。八%ないし九%を低迷しているというのはもう何年間ですか。ここ十年間くらいは低迷しているでしょう。そういうことを意識的にしておいて、一〇%程度であるからしてこれは補完的な役割りだ、そういうようなことでは私は答弁にならないと思うのです。ひとつあなたのお答えを願いましょうし、三機関もこの際それぞれの立場から考え方をお聞かせ願いたい。
  85. 田代一正

    ○田代説明員 重ねてお答えいたします。いま御質問の中で、どうも政府の金融機関というのはもう少し出てもいいんだ、そうすると補完金融ということ自身がおかしいのじゃないか、そういう考え方をいつまでも持っているから財政投融資がちっとも伸びない、こういうお話だと思うのですが、補完金融というものの考え方だと私は思うのです。つまり中小企業というものにつきましては、なぜ特別に補完金融という形でもってこれほど大きなウエートの政府関係の金融機関が要るかということにつながると思うのですけれども、これは中村委員御承知のように、戦後の中小企業問題、そういう問題を踏まえてみて、そして金融のあり方から見て、民間だけにまかしておいたのでは十分な近代化、合理化はできないのじゃないだろうかという配慮から、相次いで昭和二十年代、それから最近の環衛公庫に至るまで制度ができておるわけだと思うのです。そういう意味で申しますと、私はやはり補完金融だと思うのでございます。ただ、補完金融をやる場合にいたしましてもいろんなねらい方があると思います。  一つは、国民公庫が指向いたしておりますように、小零細企業についてのものの考え方、あるいは中小企業といいましても中くらいの企業、その中小企業には、やはり設備の高度化とか近代化がおくれてはいかぬということで、中小公庫の設備資金中心にした融資のしかたというものもあるでしょう。さらには、最近の新しい傾向としまして、サービス関係、衛生水準の維持向上という観点に立ちますと、やはりおくれている分野については環衛公庫という機関が特別の金融措置をするという問題があると思います。そういうことでいまの金融体系はできていると思います。それ以外に、やはり民間の金融機関もだんだん変わってくると思います。現に私どもが考えている金融の効率化ということも、来たるべき日本経済の将来の姿を描きながら金融の生産性を極度に上げるという形で実はかかっているわけでございます。したがいまして、この両々相まちまして、私は中小企業に相当いい金融ができるということになるんじゃなかろうかという気持ちがいたしております。あるいは中村委員のお考え方と若干違うかもしれませんが、私はそのように考えております。
  86. 中村重光

    ○中村(重)委員 それでは三機関並びに中小企業振興事業団の副理事長もお見えでございますから、先ほど私が申し上げたことに対しての最近の三機関の金融の情勢、並びに振興事業団にお尋ねをするのですが、六五%が国と事業団と都道府県から融資されてきておる。三五%は自己資金であるわけです。この三五%の調達が協調融資という形になるのだと思うのでありますけれども、これは国民金融公庫はほとんど対象になってないと思うのでありますけれども、商工中金あるいは中小企業金融公庫からあとの三五%は完全に融資が確保されておるのかどうかということ、企業者はこの三五%の自己資金の調達ということについて、不当な担保、その他の要求、あるいは金融調達について相当無理をしているという事実はないのかどうか。それらもあわせてひとつお聞かせ願いたいと思います。
  87. 佐久洋

    ○佐久説明員 ただいまの御質問、二点ございますが、一つは金融の情勢がどうかということでございます。昨年の金融緩和の時期からことしの二月あたりまでの状況を見ますと、融資の申し込みがだいぶ緩慢になってまいっております。それが一つには、現実に金融緩和というそのものの効果もありましょうし、それからもう一つは、そう急がないでも借りられるという、借り急ぎの気持ちがゆるんだと申しますか、そういう影響もあったと思います。その後若干、暮れから二月ごろまでの状況と比較しますと、融資の申し込みがふえてまいっております。これはところによって非常に違うのですけれども、とても処理し切れないほどの申し込みを受けている場所もあります。これから先の見通しですが、昭和四十四年度の設備計画というのは、中小企業者はまだ具体的につくられていないのでありまして、大体大企業が設備計画を具体的にきめますと、それに即応して具体化していくという、これは年々の例でございます。これから先の設備資金の需要というのはどの程度になるか、ふえるであろうことは一応予想されますが、どの程度ふえるようになるか、その点はまだはっきりしておりません。  それからもう一つは、構造改善の場合の自己資金を完全に融資できるような保証があるかという御質問でありますが、いままで繊維の構造改善などについての融資を実施しておりますが、その場合にはほぼ完全な融資をやっております。これから先も、これはここで必ず融資するという断言はいたしかねますけれども、計画そのものが具体性を持ち効果があるということであれば、期待に沿うだけの融資をしたい、こう考えております。
  88. 吉田信邦

    ○吉田説明員 お答え申し上げます。金融の申し込み等の動向についてでございますが、これは田代審議官お話しになったとおり、また中小企業金融公庫と大体似たような傾向をたどっております。端的に申しまして、昨年の第一・四半期は非常に申し込みが高くて、対前年三八%程度の申し込みの増加であります。非常にたくさん持ち越しをつくって御迷惑をかけたのでございますが、第三・四半期から急に申し込みが落ちてまいりまして、対前年一〇%程度、第四・四半期になりましては対前年ごくわずかな増加というふうに、非常に落ち着いております。しかし、これは従来もそうでございますが、私どものところは需要が落ちるのもおくれるし、需要が伸びるのもおくれる。一般の動向に対してそういう傾向を持っておりますので、そういうことの反映ではなかろうかと思っております。したがって資金量といたしましても、現在の状況でございますれば一応特に心配はないと思いますが、しかし同時に、今後の趨勢ということにつきましては、慎重に検討しながら政府資金を要求していきたい、従来も年末には相当めんどうを見ていただいておりますので、そういう状況をにらみ合わして、年末融資の際に十分見ていただきたいというふうに考えております。また環衛公庫等の関係からの貸し付け金額の限度の問題につきましては、先生と全く意見を同じういたしております。しかし、私どもいつもはっきり申しておるのですが、私どもとしては、中小企業のうちでも小零細企業をめんどう見るということが私どもの職務でございますから、たとえ貸し付け限度が上がるとしても、それによって対象を変えるというつもりは毛頭ない、あくまでも小零細企業金融に徹していきたいというふうに考えております。  以上でございます。
  89. 猪越俊治

    猪越参考人 商工中金は、御承知のとおり短期資金と長期資金を融資しておるわけでございます。先ほどお二方並びに審議官からお話がございましたように、確かに去年の下期から多少この金融が落ちついてきたという感じでございますが、最近になりましてまた非常に資金需要が旺盛になっております。特に設備資金が非常に需要が強いわけでございます。これは、おそらく中小企業のほうは、やはり事業がある程度安定してきませんと、どうしても設備をしようという意欲が出てこないんじゃないかというふうに考えておるわけでございます。こういう時勢になりまして、設備資金の需要が非常に強いわけでございます。特に本年度は、下期においてまた追加の財投もいただけるようにわれわれ努力したいと思います。何とかこれでやっていきたいと考えております。  なお構革の問題でございますが、残りの三〇%の大体五〇%程度は私のほうでやっておるわけでございます。これには別ワクを設けまして、できるだけこのほうに振り向けようというふうに考えておりますので、まずほぼ間違いなくやっていけるというふうに考えております。  以上でございます。
  90. 馬場靖文

    ○馬場参考人 事業団からお答えいたします。最初お尋ねのございました一般案件に対する金利が本年から二分二厘から二分七厘に上がるこの問題につきましては、私のほうでも、金利が上がるということは必ずしも望ましいとは考えておりません。このたびの予算の折衝の最中にも、先ほど長官からお話のございましたように、四十四年度の資金需要が非常に多うございまして、この量の確保に非常に苦労していただいておるわけでございますが、何ぶんにも一般会計予算の制限もございまして、量の確保を優先するか、多少の金利引き上げはのむべきかという問題に突き当たったわけでございますが、大蔵省のほうの考えも、相当な配慮をしていただきまして、昨年度に比べまして今年度の出資金も約二倍出していただいた。そういうふうに、一般会計の予算の措置としては、われわれも想像しないほどの取り扱いをしていただきまして、量を確保するために、どうしてもそれでもなおかつ資金量が足りないということで、本年度の特別な事情ということでやむを得ず、量を確保するためにはこの際多少の金利の引き上げをのまざるを得ないのではないかということで賛成をいたした次第でございます。しかし、来年度につきましては、今後再びこういう金利の引き上げが行なわれないようにやっていただきたいと考えております。  それから、私どもが六五%融資をいたしました残りの三五%につきましては、いままでのケースを見ておりますと、大体そのうちの一〇%から二〇%ぐらいは自己資金をもって充てておるようでございます。少ないものは一〇%程度のものでございますが、したがいまして、残りの二〇%あるいは一五%程度の大部分は実は商工中金にまかなっていただいておりまして、どうしても市中のほうで十分手当てができないというものにつきましては、私どものほうから商工中金にお願いしたりいたしまして、残りの三五%全体の調達が円滑にできるように配慮しておるつもりでございます。
  91. 中村重光

    ○中村(重)委員 乙竹長官、いまあなたお聞きのとおりです。当時あなたは長官じゃなかったのだから、あなたにやかましく言っても、どうも前任者のことだということになってしまうのですね。実は、この中小企業振興事業団をつくったということは、私は失敗ではない、これは成功であったと評価をします。しかし、これは原案は八〇%だったのです。通産大臣、よくひとつお聞き取りを願いたい。国が六〇%、都道府県が二〇%だったのです。都道府県にあまり大きな負担ワクを持たせることは地域的なアンバランスができるのです。これは地域格差が新たにできるのです。財政的にゆとりのある都道府県と非常に弱小の都道府県との間にアンバランスができる。現に設備近代化補助がそうなってきているのです。ところが、いつの間にか大蔵省の抵抗によってこれが六五%になったのです。それで今度、さっき長官が御答弁のように、都道府県の負担分を二%減したのです。しかし、そのかわりに金利を引き上げたのですね。そういうことになったのです。  それからもう一つは、三五%については商工中金、中小企業金融公庫から協調融資でもって一〇〇%保証をいたします、こういう答弁になっております。議事録を見ればわかる。私は、自己資金がある者に自己資金を使わないで全部借りなさいという自助努力を押えるような主張はいたしません。また、自分の金があって預金をして、預金金利は借り入れ金利よりも低いわけですからね、そんなばかなことをする人もいないと思います。ところが、いま振興事業団の副理事長御答弁のとおりの、一〇%ないし二〇%は自己資金だ、それでまかない切れないものを商工中金を中心にして融資の要請を振興事業団がやっていると、こう言っているのです。明らかに中小企業振興事業団を設立いたしますときの私どもに対する答弁と違う。私は、この前繊維関係構造改善のときも政務次官にそう申し上げた。まず商工中金、中小企業金融公庫等から融資をしなさい、しかしどうしても担保の関係、いろいろな形においてそれができないという場合に、自助努力という形において自己資金ということもこれはやむを得ないこともありましょう。こういった自己資金の一〇%-二〇%は自分で預金をして、それだけの遊び金があって出しているのではないのですよ。相当無理をしているのです、その一〇%-二〇%が。それが六五%は二分七厘だから安いというけれども、それを全体的に見ると相当な高金利になってきているのです。私は、そういうところに問題があるのだと言っている。だから、振興事業団をつくるときの約束を実行してもらいたいのだ。ともかく六五%、これができれば当初の八〇%まで引き上げてもらいたいのだが、それはなかなか急にはできないでしょう。だから、残り三五%は商工中金、中小企業金融公庫から融資をする。しかもその担保は、当然その設備をするものが担保になっているのですから、だからそれを二番抵当にするわけですよ、あるいは三番抵当になるわけですよ、商工中金、中小企業金融公庫から協調融資をいたしますとですね。そういうようなことで、やはり原則としては一〇〇%融資をしていく、そういうかまえでもってやってもらわなければならない。それから、来年度二分七厘という金利をまた引き上げさせるということがあってはならぬと思う。それらの点に対して、この際、通産大臣の――あなたは通産大臣であるし実力大臣だ、しかも大蔵省出身であるのだから、大蔵省に対する発言力というものも非常に強いわけだ。あなたはこの後どういう態度をもって対処されるのか、お答えを願いたいと思う。
  92. 大平正芳

    ○大平国務大臣 ことしの予算を編成するときに、これは国会の皆さんの問題ではないのでございますけれども、政府部内で、予算概算要求は前年度増二五%を天井としての要求というようなことを申し合わせまして、それで査定のボリュームを減らして能率化しようとしたのでございます。ところが、それで押えられますと、いま非常に問題になっております中小企業振興事業団の一般案件、これはたいへんな需要の高まりでございまして、また府県当局もたいへん御熱心でございまして、自由民主党側からはとんでもない話だということで、二五%の天井にかかわりなく党の要求を別に出されるというような異例なことになったわけです。しかし、昔から予算というものは飛躍しないものでございまして、二五%とるということもなかなか容易なことではないのでございますけれども、要求のように二倍もとってくる、二倍半もとってくるというようなことは破天荒なことでございまして、といってせっかく気合いがかかっているところにそういう冷たいことで対処するのもいかがかと思いまして、精一ぱいなところ財政当局にも考えていただいて、政府資金は異例なほど出していただいたわけでございますけれども、それでも要求に合わないのです。非常な距離がございます。そこで大ぜいのおしかりをちょうだいしておるようなことで、金利を若干是正することによって量の拡大をして、できるだけ多く満足していただくという方向に踏み切ったわけでございます。   〔委員長退席、浦野委員長代理着席〕 ちょうど飛行機が離陸するときにたくさんガソリンを使うようなものでございまして、あれだけの金額をかちとるためにやむを得ずとった措置でございますから、中村先生にもその点はわれわれの微衷をおくみ取りいただきたいと思うのでございます。そればかりではなく、それほどの需要の高まりを見せたというのは、先ほど大蔵省側からも説明がございましたように、政策の誘導的な効果が非常に出た証拠でございますから、皆さんの御心配で中小企業振興事業団ができて、こういう政策がとられたことがそのような理解と共感を呼んで、異例な措置をとらなければならぬほどのことになったのだという面も、おしかりばかりではなくて評価をしていただきたいと思うのです。  まず、それだけのことを前置きしておきまして、それで来年のことでございますが、来年は、私がこういうポストにおるかおらぬかわかりませんけれども、われわれはせっかく重い荷物を載せて離陸さしていただいたわけでございますから、これは安全運航に持っていかなければなりませんので、大蔵省にもいろいろな御都合がありましょうが、金利につきましては特段の配慮を加えて、設立当初のあなた方が御心配いただいたようなラインに引き戻していくように、最善の努力を払いたいと思います。非常にいろいろな事情があったことだけはひとつおくみ取りをいただきたい。
  93. 中村重光

    ○中村(重)委員 評価もいたします。批判もしなければなりません。これは私どもが批判をしなければする人はいないのです。だから私は、この批判というのは批判のための批判ではありません。私がいろいろな問題点を指摘いたしておきますことは、重要な問題点であろうと思うわけであります。役割りを果たすために実は申し上げておるのでありますから、大臣も私の真意は十分くみ取っていただかなければならぬと思います。  それで田代審議官にお尋ねをいたしますが、あなたはずいぶん落ちついたとおっしゃった。先ほど三機関のそれぞれの立場から金融情勢についてお答えがあった。私も第三・四半期、第四・四半期当時大蔵省にも何回か行った。通産省にも行きましたし、予算編成時にも行ったのです。それだけに、たいへんな努力は知っているのです。国民金融公庫だって、申し込んでから融資まで四十数日だったのですよ。それを審議官、あなたはよく御存じになっていらっしゃる。環衛公庫に至っては申し込みから融資まで七十日から八十日になったのですよ。そうして環衛金融公庫の生まれたことに喜びを感じておった環衛業者たちが、環衛公庫ができたために自分たちはプロパーの融資を受けることができなくなった。ところが、環衛公庫が十分めんどうを見てくれればいいけれども、申し込みの半分ぐらいにぶった切られてしまう。しかも申込んでから五十日も六十日も七十日も融資を実行してもらえない。つくってはもらったけれどもたいへんなことになったと言って、悲痛な声をあげたことも事実なんです。だからそれらの点も十分お考えになって、政府機関というものが補完的機関かどうかということはあなたとは意見が一致いたしませんが、私は先ほど申し上げたような考え方を持っている。開銀の大企業の融資に対して果たしている役割り、そういうものと比較いたしますと、政府三機関がいつまでも一〇%以下ということで低迷をいてしておるということについて、これでよろしいかどうかということについてあなたも十分お考えになければいかぬと思う。たとえ補完的な機関であるとあなたがお考えになったといたしましても、ここ五年も十年も中小企業に対する融資というものがいかに三機関に大きく依序しておるかという実態を考えてみますと、決して現在のような状態で十分だとはあなたもお考えにならないだろうと思う。それならばシェアを拡大していくという方向でなければならぬのではないか。その点についてお答えを願いたい。  いま一つは、国民金融公庫の三百万円の限度額は依然としてそのままにしておくお考えなのかどうか。それから一般のプロパーの中小企業の中でも特利、特ワクというようなことも考えなければならないような業種もあるのではなかろうか。それらの点についてどのようにお考えになるかもあわせてお答えを願いたい。
  94. 田代一正

    ○田代説明員 第一点の補完金融のウエートが九%とか一〇%でいつまでもいいかというお尋ねでございます。これは私、くどいお話になりますが、相対的な問題、金融と企業という問題、中小企業金融の中における民間金融と補完金融との関係ということだと思うのです。そういう意味で私はいまの姿が一〇〇%いいということには必ずしもいってなかったかもしれませんけれども、さらばといってこのウエートを一五%にしたらいい、二〇%にしたらいいというような一義的なものの考え方もしていないという意味で申し上げているわけでございます。  いずれにいたしましても、中小企業金融の問題につきまして非常に大事だということは、私も大蔵省の生活二十五年のうちで十数年間中小企業問題をやっているわけでございますので、いやというほど身にしみているわけでございます。そういうつもりで今後はかかってまいりたい、こういうような考えでございます。  それから第二点の、国民金融公庫の貸し出し限度額が三百万、これはたしか昨年のいまごろ中村委員からの御質問をちょうだいいたしまして、検討したいということを私は答弁した記憶がございます。実は昨年そういうつもりでいたのでございますけれども、さっき私が申し上げ、また国民公庫の吉田副総裁が申し上げましたように、昨年の第一、第二・四半期は国民公庫の融資状態が非常に変わった様相を示してまいりました。そういうこともございまして、もう少し様子を見たいという気持ちで実は今日まできているわけでございます。この融資の限度の問題になりますと、当然長い間据え置きになっておりました中小公庫の貸し出し限度額の問題等々いろいろな政府機関にも関係いたしますので、現在大蔵省内で関係部局と鋭意検討をしておるということを申し上げたいと思まいす。  それから第三点は、制度金融という問題の御指摘だと思います。これは今回通産省から御提案になっております中小企業構造改善という面を見てもわかりますように、やはり今後もこういった配慮をしなければいけないと思います。ただ、非常にそこで大事なことは、過去にやりましたいろいろな制度金融というのが積み重ねられて非常に複雑な体系に現在なっております。やはり必要に応じて新しい融資体系をつくるということは私は大事だと思います。しかし、同時に他面、過去にやってまいりました融資、特別融資というものの功罪も同時に抵判をする、役目を達したあるいはまた役に立たないという融資につきましてはどんどんやめていくという気持ちも片方なければならない、こういう気持ちでございます。
  95. 中村重光

    ○中村(重)委員 環衛金融公庫の問題についてお尋ねいたしますが、これは田代審議官に、それから環衛公庫から大山理事長がお見えでございますからお尋ねいたしますが、実は環衛公庫法を制定いたしました際、修正をしたけわです。国民金融公庫に対するだけの直接委託ではなくて、民間金融機関に対して直接委託をする。当時、大平通産大臣が自民党の政調会長をしておられた。だいぶこういうような問題についてがたがたいたしました。私も党の環衛特別委員長として当時の大平政調会長にもお目にかかって、いろいろと話し合いをしたワクの問題その他があるのですが、実は直接委託を民間金融機関に対してやるという修正をしたのです。法律はそうなっている。ところが、私自身みずからその修正に賛成をしておきながら否定するような言い方をするということは、これは矛盾撞着ということになってくるのですが、実はまだ生まれて間もない。はたして国民金融公庫以外に直接委託をすることのほうがいいのかどうか。国民金融公庫はいま離島等については再委託をやっているわけです。そういうことを、おそらく四十三年度途中からそれを始めたんだろうと思うのです。ところが、環衛公庫のほうではいろいろな面からやはり直接委託をしてもらいたいということを言っておるようであります。  なお私が一分の危惧を持っておりますのは、あとでお尋ねいたしますが、やはり歩積み・両建てというのがあるのです。まだ消えていない。民間金融機関に直接委託をいたしますと、その民間金融機関がこの環衛公庫の融資を利用して歩積みを要求し、両建てを要求するということになる可能性なきにしもあらず。そういう弊害を防止しなければならぬと思うのです。それらの点からして、この修正のとおりに実行すべきであるかどうか。大蔵省としてはやはりまだ時期尚早であるというふうにお考えになっておるとするならば、その点についてお答えを願いたい。  それから環衛金融公庫は三百七十一億から四十四年度は五百十億に伸びた。ところがこれは、要求は中小企業庁を窓口にしておるけれども、実態中小企業庁は全然これに関係をしていない。中小企業政策全体の金融という点から考えると、もう少し私は中小企業庁に対してそうした予算要求等に対する発言権というのか調整というのか、そういうことを持たせて、全体の中小企業政策というものに対して中小企業庁長官がもう少しすべてを把握し得る体制というものが必要ではなかろうかという感じもするのであります。このことは生鮮食料品の流通近代化の問題等も、農林省からお見えでございますから、あとで最近の情勢についてお答えを願いたいと思うのでありますけれども、これも中小企業庁長官をつんぼさじきに置くということは適当でないと思う。やはり全般の中小企業政策中小企業庁中心にして回していかなければ、ほんとうの意味中小企業政策というものをなめらかに推進していくことにはならないのではなかろうかという感じがいたします。  それぞれの点について大山参考人並びに中小企業庁長官、田代審議官、農林省等からひとつお答えを願いたいと思います。
  96. 田代一正

    ○田代説明員 まず第一点の環衛公庫の融資方式の問題でございます。これは中村委員も御存じのとおり、たしか国会修正で、単に三機関のみならずそれ以外にも委託ができる、直接委託ができるということになっておることは百も私ども承知しております。ただ、実際に設立当初といいますか、国民公庫、中小公庫、商中という三機関を通じてやれ、特に過去の経緯もございまして、国民公庫に非常に大きなウエートを持って委託が行なわれたということでございます。こういうことについてどう考えるかということでございますが、これは四十四年度予算を編成する際にも一つ問題になったわけでありますが、私どもの立場といたしましては、特に本件につきましては、実際に資金を借りる方の便宜というものを中心にして考えた。同時に直接に委託するということは時期尚早じゃなかろうかということで、しかしそれにしても僻陬の地、離島その他につきましては現に国民公庫の再委託という道はございますけれども、離島とはいかないまでも何かあきができている、何か手薄になっているという僻地がございます。そういう地区につきましては、あるいは中小公庫の代理店を拡大する、あるいは国民公庫の代理店を拡大するという形でもって修正していったらどうかというのが現在の私どもの心境、考え方でございます。
  97. 大山正

    ○大山参考人 ただいま御質問にありました環衛金融公庫として市中一般金融機関に対して直接委託をするかどうか、こういう問題についての私どもの考え方でございますが、私どもといたしましては、先ほどお話がありましたように、国会で議員修正があったという趣旨にかんがみましても、また環衛公庫として独立いたしました以上、国民金融公庫なり中小企業金融公庫なり、商工中央金庫なりにお願いして、その支店で扱ってもらうことは当然継続してお願いしなければならないが、市中金融機関に委託するにつきましては、これらを通さずに私どもから直接に委託代理をいたしたい、こういう願望を持っておるわけでございます。そのことは同時に現在の仕組みよりは、業者にとって借り入れ面においての便宜も十分はかること、かように考えておる次第でございますが、四十四年度の予算編成にあたりましても、そういうことで関係官庁にお願いしておったところでございますが、残念ながらまだ環衛公庫発足当初のことであり、十分その機能を発揮できないであろう、あるいはまたいずれにしても若干の人員増加を伴うことであるので、四十四年度においては残念ながら認められなかったような次第でございます。ただ、私どもがお願いしましたうちで業者の便宜をはかるという点につきましては、大蔵当局においても、なるほどもっともである、それには現在の委託制度はそのまま維持、存続させるが、中小企業金融公庫あるいは国民金融公庫の代理店につきまして、三百万以下の取り扱いもできるようにすることによって業者の便宜を一そうはかろう、こういうお考えがございまして、現在その作業中でございます。したがって、とりあえずはそのような業者の便宜をはかるという面でやってまいりたいと思いますが、先ほど申し上げましたような私ども公庫としての本来の願望、また国会で法案の御修正がありました御趣旨にもかんがみまして、近い将来に直接委託をぜひ実現するように関係の方々にお願いしたい、かように考えております。ただその際問題は、お話にございました歩積み・両建て等の弊害がさらに伴うということでありますと、これはまた問題でありますので、これはひとつ大蔵当局ともよく御相談いたしまして、そのような弊害がない、あるいはできるだけ少ないような形で直接委託をやれるようにしたい、かように考えております。  それから第二点の、中小企業庁を窓口にして調整してはどうかということは、政府間の問題でございますから、私の立場としては申し上げかねますので、御容赦願います。
  98. 大河原太一郎

    ○大河原説明員 お答え申し上げます。先生御指摘の当省の関係いたします生鮮食料品流通近代化資金につきましては、中小企業政策の全般的な立場からする調整という点から連絡を密にすべきではないかという御指摘なり御注意であるかと思います。本件につきましては、先生御案内のように、当資金は国民金融公庫の貸し付け制度でございます。したがいまして、正式の要求は国民金融公庫から大蔵省に出されるという関係になっております。ただし、これは当省と国民金融公庫と十分打ち合わせの上で要求するわけでございますが、その際、われわれのほうといたしましては、通産省、厚生省とも、その国民金融公庫の要求案につきまして十分事前の調整をしております。それで、通産省におきましても、中小企業流通近代化資金全般の一部という御認識のもとに調整をしております。それで、御指摘の御心配の向きは、制度発足の当初ございましたので、昨年度貸し付け開始の際、この資金をきめる際に、相当程度関係者で調整をしておりましたので、現在のところ御懸念の向きはないんじゃないかというふうに考えております。
  99. 中村重光

    ○中村(重)委員 経過は私もよく承知をいたしております。ただ、生鮮食料品流通近代化資金の問題については、資金が不足である、あるいはまたいろいろと内容的に検討しなければならぬ点があると思います。だから、それらの点に対し、私は中小企業庁と調整の面について十分緊密な連絡をとっていかなければならぬということで、そうした面はやはり何といっても中小企業庁が専門家であるわけですから、そういう点については、中小企業金融全般という点から、ただ単に形式的な窓口だけではなくて、実態の面にも合わせていくようにしなければならない、こう申し上げるわけであります。私はむだがあってもならないと思います。  それと、田代審議官、あなたに申し上げておきますが、実はいまの環衛公庫の時期尚早という問題ですね。ここで単に時期尚早ということではなくて、その国民金融公庫の融資の審査なんかに、実に無理な労働過重というか、無理な審査が要求されている。一人で一日四件も五件も調査をしなければならないという実態、それで環衛公庫は五十名からの世帯であろうかと思うのでありますが、これは中央だけなんです。末端には、今度は、五百十億になったのでありますから、それだけ資金ワクがふえた。だから調査対象も、これは国民金融公庫が中心になっておりまして、商工中金、中小企業金融公庫、こういうふうになっておりますが、国民金融公庫が中心だ。そうなってまいりますと、やはりそれだけ事務量がふえてくる。それならば当然人を配置しなければならないんです。人の配置もないから調査も粗漏になるんです。だから、責任上の問題があるからこげついたらたいへんだ、成績にさわるからというので、申し込みは頭から三割も四割もぶすっと切ってしまう、そういうようなことをやらなければならぬということになってくるんですよ。だから時期尚早である、直接委託をいまの政府関係金融機関だけにとどめるとするならば、やはり融資もなめらかに、しかも迅速に行なわれるような体制をあわせてひとつとるようにしなければならないということを実は申し上げておるのですが、これに対するお答えは要りません。もし異論があればお答えを願いますけれども、なければ、そういう点について十分配慮していただきたいということを強く要請をしておきたいと思います。  次に、設備近代化補助金の問題についてお尋ねをいたしますが、これは長官からお答えを願いましょう。四十四年度予算では二十七億八千万円だが、四十三年度は三十九億円で、これはおそらく実行ベースで三十三億円程度になっているだろうと思いますが、通産大臣、二十七億八千万円で四十三年度の三十九億円の予算より後退しておる。いろいろ答弁の中でお話があるだろうと思いますので、お答えを伺ってから私の考え方を申し上げますが、一つ一つ取り上げてくると後退ばかりですよ。批判をするなとおっしゃるかもしれないが、大事な問題ですよ。これも大蔵省は主計官でしょうから主計官からでもひとつお答え願いましょう。
  100. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 設備近代化の補助金が昨年より本年減額されたことは事実であります。実は政府の予算として前年度より減額ということは非常に珍しい例でございますが、先生すでによく御存じのとおり、毎年多額の使い残しをしているわけであります。四十三年度予算で三十九億円でありましたが、多額の使い残しがございましたので、本年度といたしましては二十七億八千万円を計上いたしましたが、これをもって使い残しが出ない程度の予算額ではなかろうかと考えておるわけであります。このからくりは御説明するまでもないわけでありますけれども、政府から府県に貸し付けられまして、同額のお金を府県も拠出いたしまして、五年の期限をもって、無利子でもって、中小企業者、特に零細層を重点に貨し付けられるわけでございます。したがいまして、この府県の特別会計の資金は、政府からの補助金と府県の拠出分と回収額とをもって回転をしているわけでございますが、問題はこの貸し付け金額になるわけでございまして、中小業者の借ります府県の貸し付け金額は、四十三年度におきましては二百十二億円であります。これはまだ見込みでございますけれども、四十二年度が百九十三億円ということでございまして、これに対しまして四十四年度は、中央政府から府県への補助金額は先ほどのように減額いたしましたけれども、回収金が相当ございますので、貸し付け金額は四十三年度の二百十二億円に対しまして二百二十一億円という金額になっておるのであります。ただ、毎年なぜこのように多額な使い残しが出たのかという点が実は問題でございまして、この設備近代化補助金は、所要中小企業者、特に小規模層が必要とする近代化機械の所要金額の二分の一を無利子でもって借りられるという非常にいい制度でございますが、これでもなお使い残しが出るというのは制度自体にどこか欠点があるのではなかろうかという点がわれわれとして勉強の対象にもなるわけでありまして、一つには、府県が企業者に貸します貸し付け限度額三百万円は若干少額ではなかろうかという点があるのでありますが、この辺につきましては、これを引き上げるべく検討をしている次第でございます。なお、貸し付け条件等についても、改善すべきものは改善をせねばならないというふうに考えております。
  101. 中村重光

    ○中村(重)委員 それでは時間の関係もありますから、主計官の答弁はいただかなくて、私から申し上げますが、改善するため検討するというのだから、それでよろしいと思いますが、半分無利子でしょう。これが毎年使い残しになる。これは明らかに欠陥があるということです。いつまでも三百万円で、そのままですよ。だから三百万円でなくて、五百万円も六百万円もやったらよろしい。そういうように少し弾力的におやりにならなければならぬ。あまりにも画一的におやりになるから、いつまでたっても進展もしなければ進歩もない。それで非常に手続もうるさい。そういうことでは、いつまでたってもこういういい制度がほんとうに生きてこないのです。あなたはそうお考えになりますか。それならば大蔵省と折衝して、ほんとうにこれらのものが有効に働くようにこの後おやりになるかどうか。それから五〇%も問題がありましょうから、これをもう少し、七〇%とかなんとかに引き上げるということを考えたらどうか。そうなるとまた利子をつけるというでしょう。田代審議官、これは無利子だから、額を上げるとこれもおそらく利子をつけなければならぬということになるのだろうけれども、とにかくその前にそうした内容実態をもっと把握する、そういうことをおやりにならなければいかぬと思う。その点はどうですか。
  102. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 確かに融資限度三百万円、すなわち機械にいたしますと六百万というのは、いまの物価と申しますか、特に精鋭化しております設備で見ますると低きにすぎると思います。したがいまして、この限度額を引き上げる折衝といいますか努力は大蔵省と一緒に相談をしてまいりたいと思います。  ただ、これは先生も御承知のとおりでございますが、実は三百万の限度額につきましては一般法則でございまして、特例が認められております。相当多額に至るまで特例を認めるようになっておるのでございますが、どういうわけか、この特例があまり活用されてない面もあるんじゃなかろうか。それは、一面では、おそらく府県の財政負担というふうな問題もございましょうし、それからもう一つの点は、さっき先生がお触れになりました、所要資金の二分の一は手金を用意せねばならないという点、この点が、手金といっても金を借りなければいけない場合が多いと思います。こういうことにもあるのではなかろうかということで、すでに機械の設備近代化資金制度を変形いたしまして、機械の貸与制度、すなわち中小業者の負担すべき手金の分も、府県が金を借りて、すなわち中小企業金融公庫からその分も金を借りて、そうして機械をリースのかっこうで割賦添付でもって中小企業者に譲り渡すという制度もすでに十数府県において発足し、非常に好評も博しておるわけでございますが、そういう制度もどんどん活用をしてまいりたいというふうに考えております。
  103. 中村重光

    ○中村(重)委員 答弁をひとつ簡潔にお願いします。  あなたのお答えのとおりです。とにかく金額が三百万、しかも四分の一が国、四分の一が都道府県。都道府県が財政的な関係からこれに対してもなかなかシビアーです。だからこの点もひとつ検討してみなければならぬ。それから五〇%に対しても検討してみる必要がある。それから画一的に三百万と、一律であることにも問題がある。やはり申し上げたように、もっと下げることも検討しなければならない。一律じゃありませんよ、四百万、五百万ということも考えてみなければいけないということですね。  次に、信用補完の問題についてお尋ねをいたします。どうも後退のことだけを取り上げて、私も非常に質問がしにくいのですけれども、通産大臣、この信用補完制度が非常に重要だということだけはもう申し上げるまでもないと思うのであります。ところが、信用補完制度を強化拡大をしていくためには、どうしても信用保険公庫に対して融資基金であるとかあるいは準備基金というものを拡大をしていかなければならない。出捐金も申し上げるまでもありません。ところが、どうしてか、融資基金は四十三年度において二十五億減額をいたしました。九十五億を七十億にしたのであります。それからまた今年度は五億減額をいたしました。なるほど、準備基金が四十億になったのでありますから、融資基金と準備基金を合わせると十億の伸びであります。九十五億か百五億になっておる信用補完制度を強化拡大をしていかなければならないというのに、どうしてそのために必要な融資基金というのを四十三、四十四の両年度にわたって三十億も減額をするのでございましょうか。この点に対して大臣はどのようにお考えになっておられるのでございましょうか。おそらくこれは初めてお聞きになったのではないと私は思う。準備基金をふやしたからということではこれはお答えにならない。むしろこれは大蔵省から中心的にお答えを願わなければならぬ。これは通産省よりも大蔵省の所管でありますから、大蔵省が中心にお答えを願わなければならぬのでありますが、ともかくそういう代位弁済が非常にふえてきておるのだ。だから代位弁済をするためには、準備基金がなければどうしても業務がとまってしまう。やむにやまれず準備基金というものはふやしてきたのですよ。そういうことになるのは信用補完制度の当然の帰結なんです。またこれは広い意味の社会政策的な観点からもやるのでございますから、制度が発足したとき、これは当然そのことを考えておったのです。ところが、準備基金というものがふえたからというので融資基金を減額するというようなでたらめなことがあってはならぬと思う。ところがそれをやっている。どうしてそれをおやりになるのか。これはひとつ大蔵省主計官からお答えを願いたいと思う。
  104. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 予算を編成いたしました責任者として、数字を中心にして申し上げますが、いま先生御指摘のように、保険公庫の基金には二種類ございまして、準備基金と融資基金とあるわけでございますが、準備基金は保険金の支払いに最後に充てる基金でありますので、実はこの基金は使わないでそのまま置いておきたい。保険制度発足以来八十数億の基金を保持できて、円滑に保険制度が運用されたわけであります。したがいまして国家の財政支出は、何と申しましょうか、保険制度を発展させるために必要な栄養剤ともいいましょうか、この融資基金に対して向けられたわけでございまして、融資基金を増額することによりまして、一面にはこれを元金にいたしまして中小業者が融資を受けられますし、また保証協会はその経営運転上の元金になし得たのであります。毎年七十億円前後の金が四十一年度まで投入されたわけでありますけれども、四十二年度に至りまして九十五億というように飛躍的に融資基金をふやすことが可能になったわけでございます。ところが、四十三年度に至りまして、この保険準備基金を取りくずさなければならないということに相なりました。つまり保険特別会計が、保険公庫が四十二年度で四十三億円、四十三年度で四十六億円という大きな欠損を生じましたために、この準備基金を取りくずし、なおかつこの準備基金に対して補てんをしなければならないという事態になりましたため、前向きの、融資基金中心の財政からの支出の一部を準備基金に振り向けざるを得なかったというのが実情でございます。その結果、四十三年度に至りましては融資基金を七十億に減額いたし、準備基金を二十五億ということにいたしたわけでございますけれども、四十四年度になりますと、今年度四十億弱の欠損が公庫に生ずる見込みでございまするので、どうしても準備基金は四十億程度を補てんせざるを得ない。したがいまして、相当程度保険全部に対する財政支出はふやす。すなわち十億ふえたわけでありますけれども、融資基金は六十億程度に減額せざるを得くなった、こういう結果でございます。この融資基金を減らさざるを得なくなったということは、保険制度の前向きの発展のためにまことに遺憾なことでございまするけれども、まず現在非常に重大なる時期にかかっておりますこの保険制度の健全な回復をはからなければならないというふうなことでこういう予算を編成したわけでございます。
  105. 中村重光

    ○中村(重)委員 いまあなたがお答えになりましたように、代位弁済が非常にふえてきておる。準備基金をふやさなければどうにもならぬのですよ。さりとて融資基金を減額したのでは信用補完制度というものの強化拡大にはならないですよ。後退ですよ。ましてや、四十三年度の代位弁済の比率は三%でしょう。これを二・五%に四十四年度やろうとしているのではありませんか。私が調査しておるところによりますと、約百六十億です。代位弁済のワクをそれで押えるということは、この信用補完制度をどんどん後退させることですよ。そんなべらぼうな話がありますか。私は強い憤りを感じている。この点については、それはきょうの新聞を見てもわかるとおり「代位弁済の高水準続く」、どんどん代位弁済がふえてきておるのですよ。好ましいことではないけれどもやむを得ないことでもある。あまりこのことをやかましく言ったら、ほんとうに保証協会の保証をしてもらわなければならない人は、それは信用力がないからといって、保証してもらえない結果になる。  もう一つ、代位弁済について大蔵省がお答えにならなければならないことは、信用保証協会に対する回収金に還元金というものを早くやりなさいと言っているのに、一向おやりにならない。またおやりになっているのかどうかお答えを願いたい。  いま私が申し上げているのは、私だけがしゃべっているのではなくて、質問を兼ねて申し上げているのでありますから、ひとつそれぞれの関係者からお答えを願いたいと思うのでありますが、出捐金は、大蔵省は銀行にやらせる。私も、銀行は保証の要求をするばかりでなくして、みずからの力をつけさせるために出捐金を当然やるべきだと思う。しかも、それは損金扱いになってきたのだから。ところが、保証だけを要求して、出捐金というものをなかなか出さない。そして、保証協会の保証ということはそれだけ信用力がつくんだから、その分だけ金利を安くさせなさい。それとてもほとんど実行しておりません。こういうようなことをなぜに放置しておくのかというのです。大蔵省も、これは中小企業庁も同じなんです。もう少し責任を持って対処してもらわなければなりません。こういうさかさまな政策、やるべきことをやらないで、ただ締めることだけ締める、そんなばかげたことがありますか。私はほんとうに憤慨しておるのだ。だから、ひとつそれぞれお答え願いたいし、また信用保証協会の連合会長もお見えですし、それから保険公庫の総裁もお見えですから、それぞれの関係者からひとつお答えを願います。
  106. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 まず第一の責任者は私でございますが、確かに保険制度がいま非常な事態に立ち至っております。その原因でございますが、これは一面では保険制度というものが非常に浸透して規模が大きくなった、こういう面があります反面に、またしかし、経済環境が時あたかもちょうど昭和四十二、三年ごろの経済環境がもうひとつ代位弁済を急増させたという面があったのではなかろうかというふうに、一つの客観的な情勢があったという感じがするわけであります。それとともに、関係者はいろいろあったわけであります。私は第一の責任者でございますけれども、保証協会がこの保証をする、当然保証というのは自主的な立場で広い意味での金融ベースをくずさないような審査をした上で保証すべきでありますが、この辺の態度において至らなかった点、欠ける点があったのではないだろうかというような反省。また金融機関におきましては、当然これは担保力のない借り入れ要望に対しまして、その保証をさせた上で貸し出すわけでございますけれども、当然これは保証づきの金融としては普通の金融と同様にこれは考えて審査をし、またこれが弁済が遅滞した場合には、一般の債権の回収管理と同様な注意をし管理をする、つまり、保証がついておるからすぐいきなり期限の利益を失わせて取り立てる、そして代位弁済に回すというふうなことがあってはならないと思うわけでございますし、またそうなりますと、いろいろ財的な基礎もゆらぐわけでございますが、それに対しましては非常に利便を受けておる金融機関でございますから、保証協会の財的な基礎固めには大いに金融機関も努力をしなければならないというふうな面もあるかと思います。こういうように各方面の関係者が、この日本のいま危機に瀕しております保証保険制度を改善するということで一致協力をせなければいけないということで、昨年から自主的改善措置ということでみな足並みを合わせて努力しておるわけでございまして、この努力に対しまして中小企業庁、大蔵省が一生懸命いま指導をしておる、そういう状況でございますので、必ず近くこの保険制度というものは体質的に立ち直せるということを私は信じておるわけであります。
  107. 中村重光

    ○中村(重)委員 それぞれひとつ簡潔に答弁してください。
  108. 田代一正

    ○田代説明員 まず保証協会に対する金融機関の協力という問題でございます。これは先ほど御指摘がございましたように四十二年度の税制改正、これは十年間ばかりの懸案であったのですが、やっと四十二年の税制改正で実現されました。四十一、二、三年は従来の水準に比べますと非常に高い水準に金融機関の出捐金がなされてきている。その金額を申し上げますと、四十年度が二億九千万、四十一年度が六億、四十二年度が七億五千万、四十三年度、これは二月末まででございますが七億一千万ということでございます。きわめて高水準に現在出捐金がふえておるという状況でございます。これにつきましては、私も金融団体と会う機会がわりに多いわけでございますので、会うたびにこの問題については協力をお願い申し上げておるという段階でございます。  それから、先ほど長官がお触れになりましたように、一昨年来保険会計がピンチに達したという状況でございますが、それにつきましても、金融機関自体、保証の利用のしかたに問題があるんではなかろうかということで、実は昨年十一月に金融機関の団体の代表者を私のところに呼びまして、私から幾つかの協力要請をいたしました。たとえて申しますと、期限の利益喪失の一方的な行使をやめて、事前に保証協会に協議して、立ち直る見込みのある中小企業者には融資条件の変更を行なうことも考えたらどうか。第二には、不当または安易な保証に依存するということは十分注意すべきだという式のことを金融機関の団体に申し上げた記憶があります。最近になりましてその効果も徐々に出てきているんではなかろうかというのが、保証協会からの御意見でございます。
  109. 長村貞一

    ○長村説明員 ただいま中小企業庁長官並びに田代審議官からの御答弁のとおりの数字的な内容でございます。私ども保険事業を管理しております立場から申し上げますと、当面の状態といたしましては、急激にふえております保険事故、私どものほうからいえば保険事故になりますので、保険事故をどう見るか、あるいはこれがどういうふうな趨勢になるかということが最大の関心事だと思うのでございます。いろいろ代位弁済等の原因を探究いたしますと、これまた先ほど長官の御答弁のように、いろいろな原因がございます。私どもは、当面の急激に増加しておる趨勢というものが、われわれの考えによりますと、関係機関の協力によりまして過去において見られたように平静化するのではないか、ともかくこれは自主的にやってまいることが当面の状態を運営してまいる大きな問題じゃないかというので、昨年来鋭意その方向に努力をしておるわけであります。幸いにいたしましてその後の傾向、最近の傾向から申しますれば、いわゆる事故の発生状態あるいは代弁の発生状態というものはやや平静化しているようであります。しかりといたしますならば、その傾向を推し進めることによりまして、一つの安定した基礎で保険事業を運営できるのではないかという希望のもとに現在の措置をとっておるわけでございます。さように御承知願いたいと思います。
  110. 浦野幸男

    ○浦野委員長代理 ちょっと答弁者に申し上げますが、時間があまりございませんので、簡潔に御答弁いただきたいと思います。
  111. 服部冨士雄

    ○服部参考人 保証協会といたしまして一言申し上げたいと思います。ただいま中村委員から信用補完制度につきまして、非常に御理解のある御意見を拝聴いたしたわけでございますが、保証協会といたしましても、信用補完制度の拡充強化のために融資基金の増大ということは最も必要なことと考えまして、年々政府のほうにお願いいたしまして拡充してまいった次第でございます。ただ、御指摘のございましたように、融資基金のみについてながめてみますると、四十二年度が九十五億、四十三年度が七十億、ことしが六十五億というふうに、ふえる額は減っておるのでございますが、しかしながら先ほど来お話のありますように、四十二年度以来、代位弁済は非常に増高いたしてまいっておりますが、私どもの協会の立場といたしましては、保険金につきましては、これを円滑に支払っていただくということが協会の基盤を確立する上において最も必要なことであり、機能を十分に果たしていく道であると思います。したがいまして、保険収支の改善ということは、単に保険公庫の問題でなくて、協会自体の問題といたしまして私どもは考えておるわけでございます。したがいまして、保険収支の改善のために保険準備基金を増額していただくということは、融資基金の増加とともに最も必要なことと考えているような次第でございます。幸いにいたしまして、四十三年度で二十五億円、本年度が四十五億円というように融資基金を増額願ったのでございます。したがいまして、融資基金につきましては、四十四年度の融資基金が全額投入をされますれば、五百六十三億円の額に相なるわけでございます。私ども保証協会といたしましては、この五百六十三億円を最も効率的に運用いたしまして、そうして今後の保証増大に応じてまいりたい、そうして協会の機能拡充のために努力をいたしてまいりたい、かように考えておるような次第でございます。  出捐金等につきましては、先ほど田代審議官からお話がございましたとおりでございます。協会自体といたしましても、金融機関に十分働きかけまして、今後一そうの出捐金を出していただくように努力いたしておる次第でございます。
  112. 中村重光

    ○中村(重)委員 ここでぴしっとお答えを願います。  大蔵大臣からだったとも思いますが、当時の三木通産大臣からもはっきりお答えがあったのですが、保証協会の保証づきの融資は金利を引き下げるという答弁がはっきりなされております。ところがそれをまだ実行されていない。だからこれをきちっと実行するかどうかということが一点。  それからいわゆる代弁なんかの関係もあるわけですから、できるだけこれを回収するということが必要なんです。回収するためには、やはり保証協会の意欲というものが必要になってくる。そのためには、保険公庫はいわゆる回収金の還元金をきちっと保証協会に渡すということを実行されるかどうかという点。  それから大蔵省は、これは田代審議官のほうではないのですが、先ほど私が申し上げましたように、代弁を最小限度におさめていこうということから、四十三年度は三%程度であって、なお代弁はどんどんふえてきている。これを四十四年度は二・五%、金額にして百六十億におさめていこう、こういううしろ向きのことはやるべきでない。だからしてそうしたうしろ向きのことをやめるかどうか。以上の点についてそれぞれお答えを願います。
  113. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 大蔵省から御答弁が別にあると思いますけれども、保証つきの銀行融資の金利につきましての引き下げの努力、これは中小企業庁、大蔵省協力して努力をしておる次第でございまして、相当効果が出ておるというように考えますが、今後もなお努力してまいります。  第二に保険公庫の還元金の問題でございますが、目下検討をしておる次第でございます。  それから第三に代弁の率の問題でございますが、これは公庫と保証協会、おのおの自主的に相談づくで、この程度の見込みでよかろうというふうに計画をつくっておられる数字とわれわれは考えております。
  114. 田代一正

    ○田代説明員 第一点で保証づき融質について金利を引き下げろというお話でございます。これは御案内のとおり、四十二年八月に銀行局長名で各金融団体等に協力を呼びかけております。その後いろいろ指導してまいりまして、昨年の七月前後にサンプル調査をいたしましたが、大体平均いたしまして普通の貸し出しより一厘低いという結果が出ております。なお今後ともそういう方向で努力いたしたいと思います。
  115. 中村重光

    ○中村(重)委員 それじゃこれからかけ足で質問いたします。  厚生省お見えでございますから、公衆浴場の料金の問題、環衛公庫は金融の問題があるから、まだおってもらわなければならぬ。これは御承知のとおり、戦時物統令がそのまままだ存続をしておる。最高料金が押えられておる。そこで今度は、最高料金が押えられておるから、東京都で見るごとく、全国的に公衆浴場の料金値上げでたいへん混乱をしておる。私は、この戦時物統令をやめて、一般の環衛団体と同じように最低料金ということにして、最高を押えるなとは言いません。これは大衆の生活に重大な影響を及ぼしますから、それは言わないが、方針としては、戦時物統令でもって最高料金を押えるという制度をそのまま存続していこうとお考えになっておるかどうか。であるとするならば、浴場の経営も非常に苦しいのであるが、これは多角経営ということが当然考えられなければならないということが一つ。もう一つは、かつて終戦後にありましたような公営浴場というものを市町村等に開設させるということ、そういうことが必要じゃないかというように私は考える。それらの点に対してどのようにお考えになるか。これは市町村に対して公営の浴場を設置するということについては、自治省とも関係がありますから、自治省からもお答え願いましょう。
  116. 金光克己

    ○金光政府委員 公衆浴場の、物統令との関係の料金の統制の問題でございますが、これにつきましては、御指摘のように、公衆浴場というものが国民の保健衛生に非常に関係があるということ、また公衆浴場の利用者は低所得層が多いということから考えまして、現在の状態におきましては、物統令からはずしまして統制額をやめるということは困難である、また適当でない、かように考えておるわけでございまして、今後かような問題が起こってまいりましても慎重な配慮を必要とする、かように考えております。  それから公衆浴場は、御承知のように、社会の進展に伴いまして公衆浴場利用者もわずかながら減ってまいっております。さようなことで、経営の面におきましてもいろいろと改善し合理化していかなければならぬという努力が必要なわけでございまして、そういう意味で多角経営につきましてはこれは当然考えていかなければならぬというようなことで、厚生省といたしましても、娯楽室の問題、喫茶室の問題、あるいは家族浴場の問題等、多角経営につきまして特に指導いたしております。融資の面につきましても、その点については特に配慮いたしておる、かような状況でございます。  それから次に公営浴場の問題でございますが、先ほど申し上げましたように、地域的には、経営が成り立たないというようなことで、公衆浴場をやめていくということで、その地域の住民が非常に不便をするというような問題も現在生じかけておる面があるわけでございますが、こういった面につきまして、反面そういったところには公営の浴場をつくってはどうか、かような意見も出ておるわけでございまして、そういった点につきましては公衆浴場の経営の合理化とあわせまして十分慎重に検討してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  117. 砂田重民

    ○砂田政府委員 国民の衛生保健上重要な問題でございます。自治省といたしましては、公営浴場の問題につきましては、ただいま厚生省のほうからお答えがあったように、企業が成り立たないからといって民間の企業がやめてしまうような場所、あるいは人口の急増地帯で民間の浴場経営者がないというふうな場合には、公営浴場というものをある程度積極的に考えなければならないのじゃないか、このように考えておりますけれども、実情はまだ地方公共団体から積極的にそういう意見を聞いておらない、こういう実情でございます。
  118. 中村重光

    ○中村(重)委員 環境衛生局長からお答えがございましたが、都心部はもう料金が押えられているから採算がとれない、地価が非常に上がったからこれを売ってしまったほうがましだ、こういうことでやめていくケースがあるのですね。これでは困るわけです。そうなってくると、何か多角経営をやらせることにしなければならぬ、それから公営浴場をどうしても考えていかなければならない、こうなる。ところが、多角経営をやらせるということになりましても、環衛金融公庫の限度額は一千万円、大蔵省で実は金利を、公衆浴場は物統令で困るから、七分七厘を七分程度あるいは六分五厘程度にしたらどうかと検討したこともある。ところがこれはこのままになっているのですが、クリーニングは、中小企業金融公庫の佐久さんのほうで、三千万円まで限度額の拡大をした。私は、その公衆浴場も健全な多角経営であるなら――連れ込みろみたいな不健全なものは困る、そういうことではなくて、健全な多角経営、喫茶店であるとか、あるいはいま言う健全な家族ぶろであるとかいろいろあろうと思う。あるいは鍼きゅう、あんまをクラブみたいな形でやるということもあるだろうと思う。そういう浴場と関連をする企業の多角経営、そうなってまいりますと、三千万円程度までこれを引き上げる必要があるだろうと思う。だから厚生省の考え方を聞きたいのと、環衛金融公庫並びにクリーニングでもって三千万円までの融資をやっている中小企業金融公庫総裁が、実態としていま言う浴場に対して貸し付け限度額を三千万円まで引き上げるということについては、これはあなたのほうが直接委託で担当することになるのでありますから、そのような点についてどのようにお考えになるか、それぞれひとつ簡潔にお答え願いたい。
  119. 金光克己

    ○金光政府委員 公衆浴場の多角経営に伴いましての融資限度額の問題でございますが、この問題につきましては、公衆浴場の性格から言いましても、現在の状況から言いましても、そういったことにつきましては、その必要性は一応考えられるわけでございまして、現在検討中でございます。
  120. 大山正

    ○大山説明員 ただいま環境衛生局長からお答え申し上げましたとおりでございまして、私どものほうといたしましては、現在一千万円が限度でございまして、クリーニングだけ、著しく近代化を促進するものについては、従来中小企業金融公庫がやっておりましたものを引き継いだものでございますので、三千万円を限度としております。しかし公衆浴場につきましては、お話にありますように、物統令で料金の規制が行なわれているという特殊事情もございますので、私どもといたしましては、健全な多角経営につきましては、できれば一千万円の限度を引き上げたい、かように考えておりまして、関係官庁にお願いしているような次第でございます。
  121. 佐久洋

    ○佐久説明員 いま大山さんからお答えがありましたが、環衛公庫と同意見でございます。
  122. 田代一正

    ○田代説明員 ただいまの浴場への環衛公庫の貸し出し限度額の問題でございますが、これはさっき申し上げました国民公庫の融資限度額の改正の問題と関連いたしまして、現在検討中でございます。一言申し上げます。
  123. 中村重光

    ○中村(重)委員 これは審議官、国民金融公庫の限度額の問題とはちょっと違うのです。これは物統令の関係。浴場の料金値上げで非常に混乱しているでしょう。そういう特殊事情にのっとって――クリーニングではそういうこととはかかわりなく、三千万円まで近代化を促進しなければならぬからやったのです。当時浴場については金利の引き下げを考えたのです。ところが、実はまだそのままになっているのです。だからこれはどうしても一千万円でなくて限度額を引き上げなければ多角経営にならない。だから国民金融公庫の限度額の問題は、当然検討をし、実現をしてもらわなければならぬのであるけれども、いまの浴場の限度額の問題は、それとの関連などということではなくて、独自の立場から独立して考えなければならぬ問題である。まだ検討していないならいない、検討するなら検討するとはっきり答えてください。
  124. 田代一正

    ○田代説明員 ちょっと答弁が足らなかったと思うのです。私さっき申し上げたことは、国民公庫のみならず、中小公庫等につきましてもそういう問題があるということを申し上げまして、その一環として研究したいということであります。ただいま中村委員がおっしゃったような事情は、よく存じているつもりでございます。
  125. 中村重光

    ○中村(重)委員 次に、労働対策についてお尋ねをいたします。労働力の充足の状況、これは時間の関係がありますから、私から問題点だけをあげてお答えを願いましょう。  中小企業労働対策、これはなかなかむずかしい。職業訓練をやらなければならぬ。これは身体障害者の職業訓練ということも当然そうでありましょうし、若年労働者を充足するための措置も考えてもらわなければならぬということになります。同時に、魅力ある職場ということを中小企業の職場として考える場合においては、中小企業退職金共済事業団の共済金を大幅に拡大をしていく必要がある。それらの点について、この際中小企業庁並びに労働省からそれぞれお答えを願いたいと思う。
  126. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 御指摘のように、今日の中小企業問題のキーポイントと申しますか、最大の問題が労働問題に集約されるわけでございます。おのおの分担がございますが、私たちの分担は、魅力ある職場というものは単にムード的な魅力ということではございませんで、経済的に魅力ある職場、すなわち高報酬の可能な中小企業にきたえ上げるということと、それから労働環境を整備するということ、これが私たちの守備分野であります。なお、本件に関しましては、労働省と密接な連絡をとっておりまして、労働省でせっかく御苦心でございます。
  127. 大塚明良

    大塚説明員 中小企業の退職共済事業につきましては、御承知のとおり掛け金ということが法定されておりまして二百円から二千円までの掛け金ということになっておりますが、私どもといたしましては、この制度が魅力があるかないかという点をお尋ねだと思われますが、第一に、この制度では予定運用利回りが六分二厘五毛という利率で複利で計算しております。それから第二には、一定年数以上の長期勤続の掛け金の場合には国庫補助をつけておりますし、さらに第三点として、中小企業退職事業団が行なっておりますこの事業の事務費は全額国庫補助というふうになっておりますので、そういう点から考えまして、魅力の少ない制度だというふうには考えてはおりませんが、掛け金額の決定は事業主にまかされておりまして、五百円以下の掛け金をかけておられるような事業主が約四〇%おられます。そういった点で、長期勤続した場合の退職金の金額が少なくなっておりますので、私どもとしては、この掛け金額の増加をはかっていただいて、いま申しましたようなできるだけ魅力のあるところの共済事業に持っていきたいと考えておるような次第でございます。
  128. 坂本実

    坂本参考人 ただいま共済課長さんからお答えがございましたように、私たち実際に共済制度を運用してまいります事業団側といたしましても、現在の制度自身というものは魅力がないというふうには実は考えておりません。運用によっては現実の職場で相当の退職金になり得るようにはできる。それは課長もおっしゃいますように、毎月の掛け金をどの程度にかけるかということにかかると思うのでございます。昭和四十年ごろの東京都の調べで、中小企業の退職金の相場というのが、中学卒業で三十年で百五十万、そういうことになりますと、月々千四百円ぐらいの掛け金をかけていただく、そうしなければただいま申し上げましたような退職金になりません。したがって、私どもといたしましては、できるだけ多数の事業主がまた事業団に加入していただくと同時に、掛け金につきましても、課長のおっしゃいましたような額まで適当に引き上げていただくということでできるだけ努力をしていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  129. 中村重光

    ○中村(重)委員 通産大臣、いまお聞きのとおりですが、御承知のとおりに小規模企業に働く労働者の数が約一千万人です。ところが、この共済に対する契約者、これは企業が契約するのでありますが、これは三百八十万ですか、そうした企業の中でわずかに十万一千七百十九人、被保険者が百四十四万六千三百九十九人です。三年以上十年未満は掛け金の五%ですから、これは二百円の場合に五円でしょう。そうですね。そうすると、十年以上というのは一〇%ですね。こういった加入の状況はどこに基因するのかということになってくると、あまりにも国庫負担が少ないということですよ。これはやはり国庫負担をふやしてそうして事業主負担も軽減をするということ。そういうことでこの共済金額を引き上げていかなければ、待遇は悪い、退職金は少ない、福利厚生施設は少ない、こういうことでは中小企業に若年労働者がやってこないですよ。私はこの共済制度というものを画期的に強化拡大していく必要があると思うのです。並びにこの事業者の共済の問題だってそうなんです。国は事務費だけしか出していない。私は中小企業の予算というものを大幅にふやす必要があるということを強調するのはこういう点なんです。肝心な中小企業政策に対して予算というようなものをさかなければならぬところがシビアに押えられている。労働省全体の予算がわずかに一億九千万円でしょう、中小企業労働対策としては。これほど大きな、中小企業労働対策をきびしい条件下において何とかしなければならぬというときに、全体の予算がわずかに一億九千万円で何をされるというのか。さらに環衛団体等にありますように、長くつとめた従業員に対しては独立資金の融資の道を考える、しかもそれが共同化である場合は税制、金融面において特別の優遇をしていくというように、やはり中小企業に対して一つの職場に魅力を持たせるという対策を講じなければならぬと私は思う。そういう肝心なところが抜けているのじゃないでしょうか。中小企業対策といえば職業訓練だ、もちろんそれは大事なのであります。しかし私は、いま指摘しておるようなもう少し血の通った職場環境をつくっていくということ、それが大事ではなかろうかと思うのであります。この際ひとつ通産大臣の考え方を明らかにしていただきたいと思うのであります。
  130. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほども長官から申し上げましたように、中小企業対策上の最大の問題は労働者の確保であり、その定着である、そのために施策の力点を置かなければならぬということが、当面非常に火急であると思うのでございます。それは御指摘のとおりだと思います。ただ、これに対応して現在とられておる政策といたしまして、一応の形はできておるのでございますが、御指摘のように内実がまだこれに伴わない。さらにたび重なる改善を通じまして、より充実したものにしていかなければならぬと思うのでございます。いままで設備の改良その他に力点が置かれて、こういった方面への配慮が比較的希薄でありましたことは痛切に反省をいたしておるわけでございます。今後一そう力こぶを入れまして、着実な努力を重ねていきたいと思います。
  131. 中村重光

    ○中村(重)委員 社会保険の零細企業に対する強制加入、これに対するところの国庫負担を増額して、事業主負担を軽減をしていくというようなこと、予算面において措置しなければならない点がいろいろあると思います。ひとつこの際関係大臣とも十分話し合いをされて、きめこまかい対策を講じていただきたいということを強く要請をしておきたいと思います。いろいろありますけれども、時間の関係もありますから、いずれまた別の機会にお尋ねをいたします。  最後になるわけでありますけれども、自治省からお見えでありますから、中小企業の個人事業税の撤廃、それから事業主並びに――いま青色は全額給与制になりましたが、白色申告制度はまだ全額給与制度になっておりません。この際個人事業税を撤廃するということ、さらに事業主並びに家族従業員の全額給与制を確立をする、たいした金ではないと思います。この際これを実行する御意思があるかどうか伺ってみたいと思います。
  132. 砂田重民

    ○砂田政府委員 お答えいたします。事業税は事業活動と地方団体の行政の間の応益関係に基づいて課せられる税金でございますことは、先生御承知のとおりでございます。ことばをかえて申しますならば、事業が事業活動なりあるいは収益活動をいたすにつきまして、やはり地方団体の施設を利用いたします。その施設を利用する、行政サービスを受ける、その提供を受けているということから考えまして、これらの施設の設置をいたします地方公共団体の費用でありますとか、あるいはこれを管理をいたしますに必要な経費を、やはり企業の側も事業の経費の一部にして、事業に応分の負担を求める、こういう考え方に基づいた税制でございます。したがいまして、事業税のこういった性格にかんがみまして、いま個人事業税を完全に廃止する、そういう考えは残念ながら持っておりません。しかし個人事業税につきましては、従来から事業主の控除あるいは専従者控除の制度を設けて負担の軽減をはかってまいりまして、四十四年度におきましても、ただいま先生御指摘のとおりに、専従者控除の完全給与制に青色の場合は踏み切りました。白色の場合には、従来十一万円でございました控除額を十五万円に引き上げまして、事業税といたしましては相当大幅な軽減措置が四十四年度ではとれたのでございます。ただ、やはり引き続きまして個人の負担の軽減、合理化というものはばかってまいらなければならない、そういう方向は私どもも四十五年度も引き続いて考えていきたい、こういう考えを持っております。
  133. 中村重光

    ○中村(重)委員 四十四年度に若干改善されたということは承知いたしておりますが、この際、私は青とか白とかというようなことでなくて、中小企業の家族専従者ですから、完全給与制を実行していいんじゃありませんか。それは事業主の場合もそうなんですよ。そうしなければ、いつまでたっても弱い生業的な中小企業を、企業方向へさらにまたずっと大きく伸ばしていくことにならない。統計が示しておるとおり、企業規模が小さくなれば小さいほど転落をしていくという数字が明らかに統計に出ているのですよ。だからそういうときには、抜本的な金融、税制対策ということをきめこまかくやっていくのでなければならぬと私は思う。財政的な関係とかいろいろあることはわかりますよ。わかるけれども、全体の中でこの際お考えにならなければ――農業とバランスをとる必要があるんじゃありませんか。農業には事業税はないんですよ。そうすると、中小企業は、決して腕組みをして従業員をあごで使って経営している経営者はおりませんよ。みずから筋肉労働者ですよ。それなら農業とのバランスをとるという立場からも、個人事業税を撤廃をするということは当然ではございませんか。私はこの際、通産大臣からもこの点はお答えを願いたい。これをぜひひとつ実現をしてもらいたい、こう思います。大臣、いかがですか。
  134. 砂田重民

    ○砂田政府委員 先生がおっしゃいますような趣旨で軽減をはかってまいります。これからもなお特に零細企業の住民税による負担軽減、合理化をはかっていきたいということは、私どもはきめております。その検討も続けております。ただ、直ちに撤廃という議論に相なりますと、今日の地方公共団体の行政水準あるいは地方公共団体の財政面、こういうものをあわせこの面でのバランスもまた考えなければならない点であります。地方行政の水準が低いということは、やはりその地域社会にあります個人事業をも営業をむずかしくする、不便にする、そういう事態もまた出てまいるわけでございます。その面からのバランスも考えなければならぬ。また、所得税と違う性格を持ちました住民税が地方公共団体の行政について広くこれを負担をするという、そういう性格を持った住民税とのバランスもまた考えてまいらなければならぬ。したがいまして、今日すぐに事業税を全面撤廃ということには、私どももまだそういう意味合いから踏み切る決意はできかねるわけであります。
  135. 大平正芳

    ○大平国務大臣 税制の問題との関連で非常に深刻な問題だと思うのでございます。税制は、ほかの制度と同じように、非常に歴史的な制度でございまして、いろいろな経緯があって今日の姿になっておると思うのでございまして、中村委員が指向されるような方向政府自体も逐次前進をはかっておるわけでございます。今後自治省御当局とも十分御協議申し上げまして、そういう方向により大幅に前進ができますよう努力を重ねてまいるつもりでございます。
  136. 中村重光

    ○中村(重)委員 まだ御出席願っておりますのは、公取はもう帰られたんだろうと思いますが、行管がおられます。私がお尋ねをしたかったのは、下請の関係、それから最近の歩積み・両建ての傾向ということについて、あなたのほうから出ている資料に基づいてお尋ねをしたかったのでございます。それではせっかくお待ちですから簡潔にお答え願いたい。  それから公正取引委員会の果たす役割りが非常に大きくなってまいりましたが、実は三十四人かの要求に対して八名、欠員三名でありますから実数五名でございます。こういうようなことで重要な公取の役割りを果たすことができるのか。しかも、三人の欠員があるということとの関連から、下請と親企業との関係は最も厳正に、親企業のわがままを許さないような調査をしていかなければならぬのにかかわらず、一名減ということになっている。従来二十名であったのが十九名ということになっている。こういうことでは、親企業の下請企業に対するところの圧迫、特に最近そういう傾向が再編成の中で強くなってまいっておりますが、そういうことがはたして可能なのか。約二万の親企業に対して毎年の書類調査を含めました調査というものが、わずかに二千ないし三千、最近は若干上がっておりますけれども、四年に一回くらいしか調査ができないという実態です。そういうことで正常な状態というものを確立をすることはできない、実はこのように思うのであります。総定員法の問題で佐藤総理が答弁をしたのは、必要な部面に対してはこれをふやしていくということを答弁をしたのでありますが、公正取引委員会の人員をふやしていくという問題については、必要な部面という点においては最優先であると私は思うのでありますけれども、行管はこれらの点に対してどのようにお考えになっているのか、それぞれひとつお答えを願いたい。
  137. 石原壽夫

    ○石原説明員 定員につきましては、先生御案内のとおり、政府は総体として定員の数を縮減するという方針をとっております。その結果、これは法律定員でございますが、昭和四十四年度は昭和四十三年度の定員に比較しますと、六百十六名の減になっております。それだけでおわかりいただけるかと思うのでございますが、定員は非常にきびしい状態でございますが、そういうきびしい状態の中で数字的に純増の形として出ております役所名をあげますと、総理府本府、公正取引委員会、それから法務省、厚生省、文部省、これだけでございます。ほかの省は全部減の形になっておるわけでございます。御参考までに申し上げますと、総理府本府では公害紛争処理の問題が出まして、そのために少し頭を出す形にはなった。公正取引委員会につきましては、これは毎年度私どものほうでも非常に重要事項になっておりまして、先生御指摘のように数字は非常にわずかで御不満のことと思いますけれども、常に増員要素として考えてきておるわけでございます。それから厚生省の場合は、これは看護婦さんの問題でございますし、文部省は学年進行に伴う先生の問題、法務省は、これは登記、少年鑑別所など少年院の不足の問題で数字が頭を出しておるということでございますので、具体的な数字それ自体は非常に先生御指摘のように少ないのでございますが、重点事項としては考えておりますし、今後もその方針には変わりないものと私は思います。御指摘の点をよく理解いたしまして、今後ともよく検討していきたい、こう考えております。
  138. 柿沼幸一郎

    ○柿沼政府委員 下請代金支払遅延等防止法の施行及び歩積み・両建ての取り締まりにつきましては、現在与えられております定員の中で最善の努力をいたしておるつもりでございます。いずれも件数といたしましては年々増加する方向にございまして、その件数に応ずる仕事のやり方につきましては、できるだけくふうをいたしまして、御要望に沿っていくように努力いたしたいというふうに考えております。
  139. 中村重光

    ○中村(重)委員 歩積みの最近の傾向は……。
  140. 柿沼幸一郎

    ○柿沼政府委員 歩積み・両建てにつきましては、この問題が起こりましてから年々若干ずつ改善せられてまいっております。現在公正取引委員会といたしましては、事業者の側からの調査というかっこうでこの調査を年二回実施いたしまして、監視をいたしております。昨年の五月現在の状況は、その前回の調査に比べましてやや足踏みの状況になっておりますけれども、総体といたしましては現在なお改善の方向を向いておるというふうに判断いたしております。
  141. 中村重光

    ○中村(重)委員 それはあなたのほうから出ている資料で最近の新しい傾向というので、なかなか巧妙になってきておる。だからその歩積み・両建てをなくしてしまうことは困難だ。やはり特殊指定というようなことをやって徹底的に取り締まりをしていくということでなければどうにもならぬ。しかも歩積み・両建ての対象となるものは大企業じゃない。力の弱い中小企業ですよ。しかし金利は高い、税金は高い、それで歩積み・両建てをとられる。これでは中小企業の大企業との格差をなくして二重構造を解消するなんということは夢物語ですよ。私は、通産大臣に、中小企業基本法をほんとうに生かしていこうとするならば、こういう弱いものを強くするか、どうして現在この弱いものにかけられているところの二重、三重の重荷を軽くしていくかというところに最重点の努力をしてもらうのでなければならぬと思う。下請の問題についても、いま事務局長最大限の努力をやっているというんだけれども、実際二万二千程度の親企業に対して調査、しかも書類調査ですよ、三千二百六十一。四十四年は七千件やる予定だというけれども、こういうことはできるはずはないのです。だから、最近の傾向として、これまた再編成の中で新しい系列化の傾向、大企業の下請関係に対するところの非常な圧迫が出てきておるのです。だから、こういうことも、中小企業庁と公取委と両方でやっておられるようですけれども、これはもっと強化していくのでなければならない。このためにはやはり活動するための経費が当然確保されなければならない。同時に人である。このような重要な役割りを果たす公正取引委員会に対して、三十四名の要求に対してわずか五名を実質的に認めた。ましてやこの下請に対して一名減などということが考えられましょうか。私は大臣の誠実さを知っているから大臣の答弁をすなおに受けたい。しかし、一つ一つ問題を取り上げてみると、前進の方向ではないということです。大きく後退してきている。だからこういう問題については、私の申し上げたことに反発を感ずるかもしれません。評価しなければならぬ点があることも私は率直に認める。しかし非常に問題が多い。こういう点については、この際ひとつ大臣も決意を新たに関係各省と接触をされて、中小企業の健全な運営をはかり、大きな経済的な役割りを果たしてもらうように対処していただかなければならぬ。  それと、中小企業と大企業あるいは農協その他の団体との紛争が絶えず起こってきています。そのためには、小売商業調整特別措置法という法律の十五条にあっせん調停というものもある。ほとんどこれを活用しておりません。小売り商業の置かれている現状等をまず見ると、現在ありますような法律を十二分に活用していく、そしてそうした紛争を調整していくというようなこと等々も精力的にやっていただかなければならない、このように思うのであります。最後に通産大臣の考え方をひとつ披瀝願って、私の質問を終わりたいと思います。
  142. 大平正芳

    ○大平国務大臣 各般にわたって中小企業政策について具体的に欠陥の指摘をされ、後退の事実を指摘されて、私どもに警告をいただきましたことに対して心から感謝いたします。中小企業政策はしかくきわめて困難な問題でございまして、現在やっておりますことも、どこまで問題の本体に触れておるかということになりますと、正直に申して、じくじたるものがあるのでございます。問題は、これから私どもが深い関心と愛情を持ちまして、あらゆる政策分野についてどれだけ熱心に接近を試みるかにかかっておると思うのでございまして、そういった点につきまして精一ぱい与えられた職責の遂行のために努力してまいるつもりでございますので、中村委員におかれましても、今後一そう御鞭撻を賜わりますようにお願いいたしたいと思います。
  143. 中村重光

    ○中村(重)委員 これで終わりますが、大臣にお尋ねしておきたいことがまだ一点だけあるのです。  それは、中小企業の年金制度を農業の年金制度とあわせて検討するやに伝えられたこともあるのでありますが、現在この年金制度に対して検討しておられるのかどうか、また大臣の考え方はどうなのか伺っておきたいと思います。
  144. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 基本的な事実を御報告申し上げます。小規模共済事業団の制度の改正を近く考えねばいけないという問題があるわけです。これの一環として年金問題を検討するということで勉強をいたしております。
  145. 浦野幸男

    ○浦野委員長代理 岡本富夫君。
  146. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 通産大臣が何か用事があるらしいですから、協力して、きょうは二十問ばかりあるのですけれども、全部できません。だからこの次に譲るとして、最初通産大臣にお伺いしますけれども、先ほどから中小企業対策については政府施策に欠陥がずいぶんある、こういうことでいろいろ話がありました。私はこの委員会で先国会からずっと見ているのですけれども、政府のいろいろな対策が後手後手になっていると思うのですね。いまどんどん時代は進むわけですが、それに対して非常に後手になって法案ができて、それがちゃんと施行される時分になったらうんとおくれている。大体経済も周期がありまして、中小企業に対して景気、不景気が及ぶのがちょうど三カ月くらいおくれるのですね。私ども前に自分でやってみたが、政府施策の行なわれるのが適切に合わない、こういう面を考えまして、もう少し長期展望に立って施策を講じなければならぬ。前の中小企業庁長官でしたか影山さんは、日本ほどたくさん中小企業に対する施策があるところはないのだ、大いばりでこんなことを言うたのですけれども、結局時限が合わないのですね。これはぼくはもっともっと根本的に考えなければならぬじゃないか。それにつきましては、政権の交代があったりあるいはまた大臣がかわったり、時代が進む、こういうことによりまして、早くいえば非常に行き当たりばったりです。それで必要なときに、いま検討中です、いやいまやっています、こういうような状態、もう必要がなくなった時分に――必要でなくなるということはないですけれども、それが出てくる。そういう面を考えますと、もっともっと国家百年の大計に立った経済展望といいますか、学者を含めてそうした経済統合本部というようなものをつくって、そこで全部審議をしてそれを行政がやっていく、こういうふうにすればもっとうまくいくのじゃないか。先ほどからも話がありましたように補完制度にしましても、準備金を食べてしまった、これではもうどうしようもないから締める、こういうようなことは先ほどから聞いていておわかりだと思うのです。その点について、大事な問題ですから、まず大臣のお考え、あるいは今後の政府施策にそういうものを入れていくかどうか、これをひとつお聞きしたい。どうでしょうか。
  147. 大平正芳

    ○大平国務大臣 まず第一に、岡本委員も御指摘のように、中小企業政策が非常に多岐にわたっておりますので、私が申し上げましたとおり、その核心をついた政策の立案、実施と、つぼをついた実行が非常にむずかしいということは御理解いだだけると思うのでございます。さらに最近のように非常に振幅の激しい経済全体の大きな革新期が訪れておる、そこへ持ってきて大きな国際化の波の中に突入したというような事情が加わりまして、容易ならぬ局面に立っておるわけでございます。したがって、われわれがやっておりますことは隔靴掻痒の感を御指摘のように免れないと思うのでございます。でき得れば長期展望に立った施策を先行的に実行していくというように心がけろということでございまして、仰せのとおりでございます。したがって、私どものほうも、今後の中小企業がどういう行き方でみずからの生存を確保してまいるか、経済の中で立場を確立してまいるかということにつきましては、学者その他学識経験者を動員しまして、いろいろ御検討をいただいておるのでございまして、われわれの乏しい知識ばかりでなく、広く英知を紹集いたしまして、こういう変革期に対応した中小企業政策の立案と遂行に当たってまいりたいと思います。  それから第二の点といたしまして、現にやっておりますことは、いろいろな点に一応の手は染めておるわけでございまして、その制度が実際的確に動いて実効をあげておるかどうかという評価の問題になりますと、いろいろ御指摘になるように欠陥があるのでございます。しかしわれわれの先人がいままでやってまいりましたことの欠陥を埋め、長所をできるだけ伸ばしていくという配慮は、大きな変革期にかかわりませず、失ってならない配慮でなければならぬと考えておるわけでございます。  それから第三は、これは申すまでもなく、通商産業省並びに中小企業庁だけの仕事で事足りるわけではございませんで、政府全体に根をおろした大きな政策分野でございます。また、中小企業の世界そのものが非常に広範、多岐にわたっておりますので、業界をうまくまとめてまいるということもたいへんむずかしい仕事であり、各省庁の協力体制を打ち立ててまいるということもむずかしい仕事でございますけれども、やらなければならぬ仕事でございますので、そういった点に細心の注意を払いながら、御指摘のような方向に進めてまいりたいと思います。
  148. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 大臣に非常に進歩的に考えていただきまして、いまの答弁で一応了解できるのですけれども、今後通産行政を含めて、この中小企業対策が一番大事であるけれども、経済界全体が不況になるときがあるけれども、ここで取り返せるんだ、ここでこうなるんだ、こういうように国民が安心して政府施策についていけるような、今月、来月、この半年はこれで苦労するけれども、この半年済んだら明るい見通しがつくのだというような長期展望に立ったところの策を明らかにして、みな業界もそれに向かって進む。また国民の皆さんも、そうなれば耐えるべきときは耐えてそして明るい見通しをつくっていく。いまの状態を見ますと、経済界が非常に景気がよくなってきた、そうすると政策的にぐっと金融面は締めてしまうとか、あるいはいまの政府について仕事をしているとあるいは企業をやっているとうまくいくのだというようないままでは傾向がなかった。非常に不信感を持ちながら、こちらは、ではしようがないから自分で何とか切り開いていこうというようなことで、行き当たりばったり。若干の見通しは立てますけれども、ここに倒産の大きな原因が起こっているのじゃないか。最近ますます倒産はふえております。ですから、もう一ぺん経済を長期展望に立って見通すというような考えは、実力大臣ですからひとつ考えていただいて、政府でもっともっと強力にそういうものを考えていただけるかどうか、もう一ぺんひとつ明らかにしてください。
  149. 大平正芳

    ○大平国務大臣 きのうの本委員会における論議で計画化の問題が出ましたが、われわれは自由経済を基調にした経済の運営をやっておるわけでございまして、生産計画を企業が立てましても、それがそのまま需要にマッチするかどうかという保証がない、きわめて不安定な経済であることは岡本委員も御承知のとおりでございます。といって全然見当がつかずに膨大なる設備の投資をやり、人を雇い、原材料を仕入れるという経営はできないわけでございまして、そこに一応の実行可能な目標を持たなければ企業は成り立たないと思うのでございます。そういう意味で、先進諸国も同様でございますが、ようやくわが国経済計画というようなものを、一年間を展望いたしまして、ことしの輸出はどうなるであろうか、国内の消費がどのくらい期待できるか、財政はどれだけの需要をもたらすであろうか、あるいは設備投資とか在庫投資がどういうように行なわれるであろうとかいうような見当をつけておるわけでございます。ところが、御指摘のように、この政府が立てました経済計画というのは合ったためしがないわけでございます。それほどしかくいまの見通しは困難でございますが、しかしながら、この実績と計画の狂いを見てみますと、予想よりは結果的に大きく出ておるわけでございまして、政府が過大な見通しを投げつけて国民に努力を要請しておって、しかもその結果が非常にしぼんだ結果になるというようなことであったら困るのでございますけれども、いままでのところ、幸いに、政府が見込んだ計画よりは実際の需要が多かったという姿において推移してまいりましたことは、せめてしあわせであったと思うのでございます。だんだん計量経済技術も発達してきておりますし、コンピューターその他の機器も発達してまいりましたので、政府経済計画もできるだけ緻密なものにしまして、それが企業家にとりまして一つの目安、道標になるようなものにしてまいらなければならぬと思います。  それから第二の問題といたしまして、その中身の問題でございますけれども、このほど生産のやり方自体も非常に革新的になってまいりましたけれども、消費の内容自体が非常な変化を来たしておるわけでございます。これは世界的に変わってきておるわけでございまして、乏しい力の弱い一企業者にとりまして、そういう展望を持つということはなかなか困難であろうと思います。したがって、業界の団体でございますとかあるいは政府であるとかそういったものが、その変化実態をできるだけ究明して、そのインフォメーションをPRしていく、企業家の経営の指針にしていくというようなことを怠らないようにわれわれ経済政策を担当いたしておる者としては心がけていかなければいかぬと思います。  第三の問題は、御指摘の金融の問題でございます。金融の問題は、いままで非常に資本の蓄積が乏しかったものでございますし、外貨が枯渇いたしまして急に引き締めなければいかぬというようなことを何回も経験してきたのでございますけれども、幸いにいたしまして、ようやく日本経済も国際貸借的には黒字基調をいよいよ確立してきたようでございまして、国際収支がピンチになってきたから急に締めなければならぬというような不幸な事態は今後あまりないのではないかと思うのでありまして、日銀当局を中核といたしました金融調整につきまして十分慎重な配慮を加えてまいりますならば、大きな不幸が経済界に及ぶことはないだろうと思います。もっとも、われわれ産業政策を受け持っておる者といたしましては、しょっちゅう産業実態を見ながら、危険信号が出れば金融当局にしょっちゅう注意を喚起しておかなければなりません。最近のかげり論争にいたしましても、私どもは、いま政策を変えろと言っているわけじゃなくて、こういう懸念すべきデータが一応ありますということは絶えず注意いたしている次第でございまして、仰せのように、金融の繁閑によりまして急に黒字の倒産が起こるとかいうような事態にならぬように、きめこまかい配慮を加えてまいるつもりでございます。  なお全体の問題でございますから、いろいろ申し上げたいことがございますけれども、大まかに申し上げまして、そういう気持ちでやってまいりたいと考えます。
  150. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 ぜひひとつもっと確固たる経済統合本部をつくって指示をしていくというようなことを要求をしておきます。  次に、中小企業団地の非常なずさんさをこの前公明党の近江議員が指摘をして、こういうことが各所にあるのじゃないかということで、せっかく大事な国民の金を使ってこういうことがあったのじゃ相ならぬというわけで、総点検を提唱して、政務次官から約束を受けたわけですけれども、その後どういうようになったのか、経過をひとつ報告願いたいと思います。
  151. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 先日、福井の染色団地に関しまして、団地の造成の効果といいますか、資金が投ぜられたその資金効率というものが必ずしも十分じゃないという御指摘がございました。それに関連して、そういう団地がもし各所にあるといかぬから総点検をせよ、こういうお話があったわけであります。そのとき私は、二、三カ月以内に御報告を申し上げることができるということを申し上げたのでございますが、実は現在団地発足以来すでに工業団地が百二十一件、商業団地は四十五件に達しておるわけであります。四十一年度までに当初計画を完成して、すでに団地が店開きしておりますものが相当にのぼっておるわけでございます。そういう意味で、すでに店開きをし動き出している団地につきまして、この団地の成果、つまり中小企業の高度化政策上の成果また問題点、この点の勉強をいたしまして、そして今後の政策のもとにいたしたいということで、実は近江先生御指摘の前から、すでに数カ月前からその勉強を始めておるわけであります。そういう現地におきます成果を集めるということが二、三カ月以内にまとまるだろうというふうに考えております。しかし、それとともになお――これはでき上がった団地でございますが、でき上がった団地についてはもちろんでございますが、現に建設途上の団地につきましても、この団地助成のためにばく大な国家資金が使われておるわけでありまして、実はこの国家資金が一応府県に貸し出されて、府県が第一次責任者として団地を造成しておる、しかも府県は中小企業団体とタイアップして団地を造成しておるというふうなことになっておりまするので、この政府の投下しております資金が非常に効率的、有効に使われておるかどうか、そういう意味の監督は厳重に一ぺん行なってみる必要があるんじゃなかろうかという意味の勉強はまた別にいたしたいというふうに考えて準備をしております。
  152. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 先に、大臣がおられますから。先ほど大臣から、コンピューター時代に入った、こういうことでちょっと話があったのですが、情報産業の発展がいま非常に大きい。またこの内容を見ますと、コンピューターをそのまま買うだけの資力がみなないわけです。したがってレンタル方式をみなとっているわけですが、わが国の電子計算機産業の現状はどういうふうになっているのか、こういう面を把握なさっているのかどうか、ひとつこれをお聞きしたいのです。
  153. 吉光久

    ○吉光政府委員 昨年の九月末におきます国内の電子計算機の総設置台数でございますけれども、四千百七十一台でございます。金額にいたしまして三千七百億円でございます。このうち国産機の占めております比率は、金額ベースにいたしまして約五割、半分でございます。こういう利用状況からも明らかでございますように、数年前に比較いたしますと、国産電子計算機の競争力と申しますか力は、相当大幅に向上いたしてまいっておるわけでございますけれども、何ぶんにも、世界マーケットの七割程度を占めておりますIBMをはじめとするアメリカの企業と比較いたしますと、その間の企業規模格差も非常に大きいわけでございます。したがいまして、これに基づきまして生産コストの面、あるいは研究開発投資の面、あるいはレンタル資金力等のそういう企業力全体の格差は依然として大きいわけでございまして、国産電子計算機産業振興のためにさらに特別の措置が必要ではないだろうか、このように考えておるわけでございます。
  154. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 そこで、昨年中に各メーカーが日本電子計算機株式会社に――そこから販売しているわけですが、そこにまだ未払い金が二百億ある、こういうようなデータが出ておるわけです。私がいまこれをなぜ取り上げたかと申しますと、こうした未払い金がこの電算機メーカーに出てくるということは、即これは下請に支払いが響いてくる、中小企業を大きく圧迫する、こういう考えから私は取り上げたわけでありますけれども、大臣、あなたはすぐ行かねばならぬからあれですが、情報産業機械に対してどういうような考えを持っていらっしゃるか、それをまずお聞きしたいのです。
  155. 大平正芳

    ○大平国務大臣 仰せのように、いまコンピューターはレンタルな形で利用が促進されておるわけでございまして、国産と輸入が半分半分になっておる、両方ともそういう姿で利用に回されております。そこで、もし電算機について自由化が進むというようなことになりまして、技術力の弱いわが国の電算機産業が非常な苦境におちいるということになりますと、そのこと自体がえらいことでございまするし、すでにレンタルに回してあるものが外国にとってかわられるというようなことにもなりまして、非常な混乱を結果すると思うのでございます。したがいまして、当面この育成のためには、アメリカ側から強い要請がございますけれども、自由化というところには踏み切れないので、外資法によって保護していかなければいかぬと考えております。それが第一でございます。しかしながら、いつまでもそういうことで庇護するわけにもまいりませんので、電算機そのものの技術の開発を進めなければなりませんので、これは政府がもう数年前からいろいろ予算をちょうだいいたしまして、技術の開発に努力をいたしておるわけでございまして、小型電算機になりますと相当の競争力を持ってきておると思うのであります。したがってこれを技術の開発を進めまして、りっぱな日本のキーインダストリーの一つにまで仕上げていかなければいかぬと思います。これは機械にからまった問題でございますけれども、しかしそれと同時にこれを活用することを考えなければなりませんので、私どもといたしましては、教育を拡充する、通信回線の利用を促進する、あるいは情報システムの高度化、普及というような問題、その他この産業の育成について考えねばならぬ政策を着実に進めてまいるということで、わが国においてこの産業が少なくとも基本的な基幹産業一つになっていくような施策を進めてまいらなければならぬと考えていますし、またそれはできるのではないかと考えております。
  156. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 通産大臣申しわけないですけれども、もう一度この情報産業についてあなたよく調べてもらって、次の機会にはっきり報告してください。いまの状態はいまあなたがおっしゃったよりはずっともう進んでしまっておる。どんどんわが国で使われておりまして、まだ足らぬというくらいのところまで来ておりますから、この技術のほうの開発は、調べたところによりますとぐんと進んでおります。したがって、いまぐあいが悪いのは金融ということになってきておるのじゃないか。また何か統一的な、政府が介入して、統制的なそういうやり方、あるいはまた管理的なやり方をすれば、結局産業は進まないですね。自由競争をさせたほうがどんどんいいものができて進む、これはよくおわかりだと思いますから、その点を要望いたしておきまして、大臣、ちょうど時間ですから、行ってもらってけっこうです。  私も、あと産業公害がありますので、途中で打ち切りますが、あと質問は保留して、時間の許す限り、これから質問したいと思います。  そこで、この前にも当委員会お話をしたんですけれども、近促法やいろんな政府の助成、いろんな施策を加えましても、下請と親企業、この間の格差というものはやっぱり力関係で、どうしてもぐあいが悪い、負けてしまう。下請代金支払遅延等防止法というのは、やっているけれども、これは全部しり抜けだ。この間のあなたのお話では、あと二年くらいたったら全部できるのだというような答弁をいただいたように思うのですけれども、ちょっと何かぼくは忘れたんですが、下請代金に対しては、公取と一緒に強力にやっているから、案外簡単にできるという、そういうニュアンスの話を伺ったわけですけれども、長官からもう一ぺん、この下請代金支払遅延等防止法の改正を要求して、下請、要するに中小企業を守る立場長官ですから、あなたのほうからもっと強力にこの法改正を進めていくような、進めさせていけるようなリーダーシップをとるかどうか、ちょっとお答え願いたいと思います。
  157. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 いま先生最初お話しになりましたあと二年という点は、どうも記憶がないのでございますが、私申し上げましたのは、現在の下請代金支払遅延等防止法の運用を強化いたしますと申し上げた。これはすでに四月一日から公正取引委員会と共同歩調で運用強化に乗り出しておるわけでございますが、従来は公正取引委員会中小企業庁と、おのおのその調査対象について必ずしも有機的連係が十分でなく調査をいたしまして、その調査の結果、支払い遅延の事実がございますと、立ち入り検査をする、そうして勧告をする。しかもその勧告、公表というのは、中小企業庁ではできませんので、公正取引委員会に委譲してやるということで、非常に手間ひまがかかったのであります。手間ひまがかかりまして、案件が起こりましてから一年以上かかるということで、どうも実効が薄い。これではいかぬというので、先ほど申しましたように、四月一日からこの運用の強化をいたしまして、中小企業庁公正取引委員会とおのおの対象企業を分担いたしまして、年間、私のほうが一万件、それから公正取引委員会が八千件、しかもこれはオーバーラップをしないように分けて分担をする。これは親企業でございます。そしてその次の年は交換してやる。つまり去年公取が分担したものを今度は中小企業庁、ことしの中小企業庁のものは来年公正取引委員会が分担をしてやりますとともに、立ち入り検査を非常に簡単といいますか容易にできるようにいたしますし、さらにまた勧告、公表もごく短期間にやるというようなことで、運用の強化を実は四月一日からはかったわけでございます。これによりましてこの法律の運用は相当実効をあげていくというふうに思うわけでございますが、しかし、私たち中小企業庁といたしましては、先生御指摘のように、製造業者の中の過半数、約七割は下請でございますので、中小企業政策で一番重点を置かなければいけないのは、製造業における下請関係であるというふうに感じておるわけでございます。それに対しましては、遅延防止法というふうな強権的な立場政府が直接介入することも、これは最後の手段として必要でございますけれども、しかし何よりも大事なのは、下請業者の立場を強くする、親企業者に対して十分ものが言えるように強くするという政策が大事である。それならば、その政策はというと、いわゆる近代化、合理化政策であり、またそれをささえる金融、税制の諸対策である。こういうふうな一連の政策で下請業者の立場を強くするということで、親に対しての対等の交渉力を得させる。その結果として、当然支払い条件が改善される。これが根本策であるというふうに考えておるわけでございます。
  158. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 この前ちょっと聞き違いをしたのでしょうけれども、中小企業庁で一万件、それから公取で八千件、いま中小企業が三百万ですか、大体三百万であるとしますと、これは一年ですと三百年かかるわけですね、いまのあなたの計算でいけば。
  159. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 中小企業者は大体四百万あるといわれておりますが、実は調査対象は、つまりこれは親から調べ上げようということで、親企業が大体二万六、七千だと思います、対象になるのが。したがいまして、この二万六、七千の親企業に対して、まず書面調査をいたしまして、そして先ほど申しましたようなやり方で公正取引委員会と私のほうが分担をして、年に一万八千件できるわけでありますが、親企業を調査して、怪しいと思うものは、親につながっておる中小企業、下請業者のほうも調査をするということでございますから、約二年弱でもって一ぺんは少なくとも親企業者の調査ができる、こういう数字でございます。
  160. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 時間がありませんから次に進みますけれども、それで中小企業の経営成績、こういうものを中小企業自体で改善させていく、これのためには、やはりなかなか経理――中には家計と経営とが混合しておる、公私混同しておる、こういうふうなことで非常な欠陥があって、これを改めるのがなかなかむずかしい。そこで私、提唱として、一つのコンピューターならコンピューターを置いて、そこで計算センターですか、こういうものをつくって、そうしてそこへお願いするとすぐ出てくる。事実私のほうでやっておるわけですけれども、こういうようなものを数多くその地域につくってあげる、これは政府で出資してつくってあげる。そうすると、非常に経営状態がすきっとしてきて、どこに欠陥があるということがわかってきて、非常に中小企業の育成に大きな役割りを果たすのじゃないか。こう思うのですが、いかがですか。
  161. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 先生御指摘のとおりでございまして、中小企業者の近代化は、設備の近代化ということが長年政策中心であったのでございますけれども、設備の近代化だけではどうにもならぬ。むしろ経営そのものの近代化、これは何も中小企業に限らず、日本企業先進国企業に対してこのごろどこに差があるかというと、経営力格差であるということがいわれておりますが、特に中小企業におきます経営力の近代化ということは必要であると思うわけであります。それの手段として、また特に計算事務等に従事いたします従業員の省力化ということも非常に必要でございますので、科学的な経営管理プラス人間の省力化という意味で計算センターを中小企業グループの中に設ける、そしてグループでこれを共同に利用するということは非常にけっこうなことであると思います。したがいまして、中小企業振興事業団の貸し付け対象としてこれを取り上げまして、現に四十二年度におきまして三件、四十三年度、いままでのところはまだ二件でございまして、若干数字は少ないのでございますけれども、こういう制度があるということをもう少しわれわれは普及徹底させまして、大いに活用をしていただきたいというふうに思っております。
  162. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 現在そうした企業の管理については、直接製造あるいはまた利益にならないわけです。したがって、中小企業としてはなかなかそちらの方面に手がいかないというのが現状なんです。したがって、これには特別な配慮をして、振興事業団にこういうのがあるから、これを使いなさいと言いましても、ちょうど公害と同じような関係になるのですね。それが直接利益につながらぬわけですから、もう少しこの方法を変えて、こういうものがあるのだからこれを借りてつくりなさいというのではなくして、積極的な方向が必要ではなかろうか、こう思うのですが、いかがですか。
  163. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 こういう施設につきましては、振興事業団から二分七厘の年利で、しかも十二年という長期の償却で、所要資金の六五%を貸し出すというようなことで、相当金融的な配慮はしておりますけれども、きょうも中村先生の御質疑においても出ましたように、それだけではまだときによりますと金融的な措置も不十分であるというような場合におきましては、自己資金の面におきまして、さらに商工中金、中小企業金融公庫等を活用いたしまして十分の金融的配慮をする、こういうことでさらにこの計算センターを進めてまいりたいと思っております。
  164. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 次は、先ほども話がありましたように、倒産の内容を見ますと、税金攻勢で毎年一ぺんずつやられる、そのために税金を払えなくて困って黒字倒産、こういうのが調査すると出てくるわけです。たとえば手形が不渡りになった、それを当てにして税金を払うようにしてあった、そのために払えない、こういうようなケースがさがしてみますとずいぶんある。だから売り掛け金のこげつきあるいは手形の不渡り、こうした場合に徴税猶予といいますか、いま何か三カ月ぐらいのあれになっておるのでしょうけれども、これをもっと長くしてあげる。これが一点と、それから家族従業者の給料あるいは経費というものを損金に認め、専従者控除をもっとふやしていくという考えは、長官、あなた中小企業を担当しておりましてどうですか。
  165. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 倒産は当事者の中小企業者も非常に気の毒なことでありまして、私たちもこの防止に種々全力を注いでおるわけでありますけれども、先生御指摘のように連鎖と申しますか、倒産した人の手形を持っておる人、この人は特に気の毒なわけであります。したがいまして、一応中小企業施策といたしましては、連鎖倒産を防止いたしますために、一定規模以上の倒産が発生した場合には、信用保証制度を活用いたしまして、この特例措置で防止をするということで、これは相当有効に働いておるわけでありますが、さらに徴税の面におきまして、これは大蔵省の御担当でありますけれども、あたたかい配慮をするということは現に行なわれておるようでありますけれども、当然必要なことであろうと思います。  それから次の、これは別の問題でございますけれども、家族専従者の控除につきましては、先ほど自治省の政務次官が御答弁になりました点でありますが、青色申告につきましては本年から完全控除になりましたし、白につきましても大幅に引き上げられたということで、専従者の経費をまるまる税法上損金に算入するという方向に進んでおり、それはわれわれとしてもぜひ達成しなければならないというように考えております。
  166. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 大蔵省からもひとつ明確な考えを出していただきたいのです。
  167. 田代一正

    ○田代説明員 ただいまのお話ですが、私いま税金を担当しておりませんので、税金の問題についてはお答えいたしかねます。金融の問題につきましては、ただいま長官からお話がございましたように、たしか四十年の暮れだと思っておりますが、信用保険関係の特例に関する法律ということで、連鎖倒産の場合における信用保険の特例ということでもって対応するというしかけに現在なっております。
  168. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 田代さんにお聞きしますけれども、これはこの前私が当委員会で何べんもお願いし、また要求したことでありますが、最近保証協会へ保証をお願いに行くケースが非常に多くなっております。ところが、保証協会は集めた基金の五十倍しか保証ワクがないので、ワクがないというて相当断わられておる。この面について大蔵省のほうから、五十倍を六十倍にしてとか、七十倍までも認めるとか、こういうようなはっきりした答えが出ていない。これはあなたに私は要求したはずですが、あなたはこの問題について、大蔵省として保証協会のほうにどういう連絡をされたのか、これをお聞きしたい。
  169. 田代一正

    ○田代説明員 たしかそういう御質疑をいただいた記憶がございます。その後通産省等ともいろいろ協議いたしたわけでございますが、私の聞いております範囲では、五十倍を突破した具体的なケースについて見ますと、それは必ずしも五十倍をこえるということにしなくても済むのではなかろうかという話を実は事務当局から聞いたという記憶がございます。   〔浦野委員長代理退席、委員長着席〕 たしか先生のおっしゃったとおりのことを内部で至急検討したことは事実でございますが、その結果については、そういうような話を担当部局から私が聞いたという、これは記憶でございますけれども、あります。
  170. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 直接の責任者は私でございますので、補足してお答えいたします。いわゆる定款倍率、これは基本財産の一応五十倍を保証供与の限度にしておりますけれども、現実のところ、まだ各保証協会とも基本財産の五十倍という、頭打ちというか頭がつかえて保証ができないというところは、われわれの知っておる限りではないようであります。もしこれが非常に窮屈であるという場合には、定款倍率は弾力的に大蔵省と相談して今後まいりたいというふうに考えております。
  171. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 ぼくは三べんも同じことを質問しておるのです。田代さん、あなたは記憶があると言いますけれども、あなたはここで聞いていたはずです。一ぺんちゃんと議事録を見てください。聞きっぱなし、それで済んだらしまいという、そういう大蔵省の態度ではいけないと思うのです。担当が違うからというのではなくて、ぼくはあなたと長岡さんと二人に話したはずです。それで、そういうケースがあったらと言う。長官からいま話がありましたけれども、各保証協会に聞きますと、年間五十倍一ぱいまでやってしまうと、あとどういうケースが出てくるかわからないから、やっぱり余裕を残して保証しているわけです。だから、まだ五十倍になっていないじゃないか、こういうような責め方は保証協会に対して酷じゃないか。だれか保証協会に残ってもらおうと思ったのですけれども、何か約束の時間があったらしいから帰ってもらったのですが、したがって各保証協会に対して明確な通達が行っていない。保証協会に聞くと、いや、そういうことはこちらもお願いしておりますけれども、まだはっきりした大蔵省のあれが出てない、だからできないのです。長官に聞くと、もうそれさえ出てきたらできるようになっているんだ。そこらのニュアンスといいますか、ギャップといいますか、違うように思うのです。ということは、これは大蔵省がじゃまをしているんじゃないでしょうかね。
  172. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 大蔵省と中小企業庁とは、保険制度に関しては、これはほんとうに二位一体で、非常に密接に連絡をしてやっておりまして、両者の間にそごというふうなことは全然ない、これは私が自分で体験しておるところでございます。  いまの先生の御指摘でございますが、こういう場合も考えられるんじゃないだろうかと思うのでございます。保証を受けに行った場合に、その保証協会でもって保証はやはりあたたかい態度でもちろん保証をしなければいけないのでありますけれども、広い意味では、いわゆる金融ベースということをやっぱりはずすわけにいかない、無担保制度というものがございますけれども、これはやはり限度のあることでございまして、したがって、その支払い能力なり担保にかわるべきものなり、何らかの保証を与えるのにふさわしい広い意味の担保というものを保証協会が要求するのは、これはあたりまえだと思うのであります。そういう場合に、保証協会でそれに必ずしもふさわしくない方をお断わりするという場合に、どうも保証の限度がきびしいんでというふうなことがあるんではないだろうかという、ちょっと想像を私はするわけでございますが、事実問題といたしまして、それはほんとうに想像のことでございまして、もし各府県の保証協会において、ほんとうに定款倍率五十倍が頭打ちになって、保証を供与できるんだが保証ができないというのでお困りでございますならば、私たちのほうに申請していただきますならば、もちろんケース・バイ・ケースでございますけれども、大蔵省と相談いたしまして、前向きに取り上げる用意があるということは、はっきり申し上げられる点でございます。
  173. 田代一正

    ○田代説明員 いま中小企業庁長官の申したとおりで、別に大蔵省がことさらにじゃまをするとか、そういうことは一切ございませんので、その点についての御疑念はひとつ御放念願いたいと思います。
  174. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 それじゃその点をもう一度事実を私は今度持ってきてお話ししますけれども、だれかが保証をお願いしたり何かして、それを断わる材料に使ったのではないか、あなたがいま考えているような、断わる材料に使っているのではないか。そうじゃなくして、私は理事長ですか、それに会っていろいろ話しているうちに、実はこういうことでもってもっともっと仕事したいのだけれども、できないのだ。何か頼みにいって断わる材料にしたんじゃないか、この点にあなたは疑念を持たれておりますけれども、それは違う。だからぼくは何べんもこれを言うているわけですからね。それならそれではっきりと保証協会に対して、五十倍頭打ちでなくていいのだ、その場合は中小企業を育成するためにどんどん保証してやれ。あるいはまたそのときに大蔵省に特別に話をしないと、いまの話ではきまらない。ということは、大蔵省という歯どめがある、こう見て差しつかえないと思うのですがね。したがって、ぼくらが聞くと、ああそんならいけそうだ。事実になると今度はだめになる。こういうのは近促法を適用してもらって、業者かあるいは企業がこれを借りるあるいはまた活用するというのとやはり同じケースなんですよ。ここにあるのだ、こういう対策があるのだ、こういう対策があるのだ。いよいよそれを活用して借りてやろうとすると、いろんな言いがかりをつけてだめなんです。このことでは何ぼこちらにたくさんの法律をつくったところで、現実に使えないようなものでは、これは法三章ぐらいにもっと少なくして、自由自在に使えるようにしたらいいのじゃないかという感じをぼくは持つ。これはずっと持っているのですがね。この間もある業者ですが、もうちょっとめんどうを見てやれば、税金ももう半年余裕を見てやれば何とかなるのに、期におくれて無理やり取られてしまった。それで手をあげて、そのためにまたほかの下請業者がつぶれておるというケースがあちらこちらに見受けられるわけです。だからここで審議するのと、実際の窓口とはずいぶん違うと思うのです。だからいまの長官のおっしゃった何といいますか、どうしても五十倍で頭打ちがどうしようもなかったら、私は大蔵省のほうに話をします、ここまではわかる。それは大蔵省という歯どめがある。それはちょっとやめておいてくれ、こうなっちゃうのです。だから明らかにしなければいけないと思うのです。五十倍を六十倍に、こういうのはなぜ明らかにしないのか。言うて来たほうだけは特別に考慮しよう。これは陳情政治ですよ、圧力政治ですよ。これがいつまでも行なわれておったのでは、ぼくはうまくいかないと思うのです。平等でないというのです。だからもう一ぺんこれを検討し、大蔵省と相談して、明確に各保証協会に通達できるように、五十倍が悪ければ六十倍、六十倍が悪ければ七十倍、それは無制限というわけにはいかないでしょうがね。だからその点をどこに基準を置くかということを検討して、そうしてひとつはっきりしていただきたいと思うのですが、どうでしょうか。
  175. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 五十倍という一応の線を引いておるわけでありますが、繰り返し申し上げますように、具体的なケースとして、五十倍が頭打ちで、保証をすべきケースであるにかかわらず保証ができないという保証協会がございましたならば、ぜひひとつお申し出をいただきたい。大蔵省と相談をいたしますし、その場合、田代審議官が先ほど申しましたように、大蔵省としては決してじゃまをしないということを私も確信しておるわけであります。ただ、それならば五十倍というのを全部六十倍なり七十倍にしたら余裕ができるではないか、こういう――先生も必ずしもそのお考えかどうかわかりませんけれども、しかし、そういうことは必ずしも適当ではないのであって、先生から最初お話がございましたように、やはり基本財産の何十倍というところに一応の線を引いておくということは、これは保証協会の経済基礎というものを危うくしないために絶対必要なことだと思うのであります。したがって、もしそこで保証の需要が非常にふえる、その場合に保証限度、定款倍率というものが頭打ちになるという場合におきましては、臨時的にその定款倍率五十倍を上に上げるか、ないしは基本財産のほうをふやす努力というものをわれわれも大蔵省も一緒にし、基本財産のほうがふえれば、それで保証限度はふえるわけでございまして、中小企業者に迷惑をかけないわけでありますから、その努力をするということがまず必要であるだろう。しかし、それの努力をしながらも、臨時的には倍率のほうで調整をするということも必要である。それはそのケースによりまして、ほんとうにそういうところは、さっきから先生が何べんもおっしゃいますので、おそらくあると思うのでありますが、ぜひ具体的にどこの保証協会がそういうことで困っておられるのか知らしていただきたいと思います。しかし、なおわれわれしょっちゅう中小企業行政をやってその点は心に戒めておるわけでございますけれども、われわれはそのつもりでやっておりましても、行政をやっております第一線の人たちがいわゆるしゃくし定木と申しますか、われわれの考えと必ずしも歯車が十分にかみ合っていないというふうな点がときによればある、これは事実でございます。その辺は大臣からも始終、特に中小企業行政を行なう場合には、長官一人ではない、本省の役人だけではない、その末端の者が全部自分のような気持ちで行政ができるようにしょっちゅう戒心せよということを注意されておるわけでありますけれども、先生御指摘のような点は、われわれも十二分に注意をしておるところでございます。
  176. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 それでは時間がありませんから、いまの問題は保留するといたしまして、もう一ぺんあとで詳しくあれします。  次は労働省。五十五国会のときにこの附帯決議がつけられた中に、中小企業の労務対策として、労務省の定着、福利厚生施設等の現状を十分考慮することということであったのですが、労働省としてはその後どういう手を打っているのか、それをお聞きしたい。
  177. 吉本実

    ○吉本説明員 ただいまの定着並びに福祉の関係でございますが、御承知のように中小企業におきましては人手不足がいろいろやかましく言われておるわけでございまして、この問題に対して私どもできるだけ全力をあげてそういった方向に努力しているわけでございます。基本的には、事業の共同化なり設備の近代化というものを通じまして経済力をつけていただくということが基本であるかと思いますが、労働省といたしましては、ただいま御指摘の定着なりあるいは福祉施設、そういった面に努力している次第でございます。  まず定着の関係でございますが、全国の職業安定所に年少就職者のために相談室を設けましていろいろやっておりますし、本年度には新たに年少就職者相談員というものを三百名設置いたしまして、相談業務を開始していこう、こういうふうに考えております。  また、福祉関係につきましては、いわゆる住宅その他の福祉施設の融資の関係でございまして、毎年拡充してございますが、昨年度は百三十億、これを百四十三億に本年度増額して、八五%が中小企業関係に回っているというふうに推定してございます。中小企業の場合は、特に融資率を大企業の八〇%に対しまして九〇%、あるいは利率も大企業の場合は年七分でございますが、中小企業の場合は六分五厘、このようにして融資の拡充をはかってございます。  また、本年度から特に中小企業の団体に対しまして、共同福祉施設を設けるというふうな新しい制度も拡充してございます。  それからまた、公共的な福祉施設といたしましては、中小企業のレクリエーションセンターあるいは勤労青少年センターあるいは勤労青少年ホームといったようなものを中央並びに各地に増設をいたしまして、逐次その整備をはかっていく、こういったような次第でございます。
  178. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 だいぶいろいろ並べてもらいましたけれども、現状を見ますと、結局適切でないですよ。  まず一つは、労働省としては通産省とよく連絡をとって、福利厚生施設を、要するに、宿舎とかいうものをもっともっと中小企業にあっせんできるようなことが一番大事である。  それからもう一つは、職業安定所、この態度が非常に悪い。この前も兵庫県のほうの新聞にちょっと出ておりましたが、東洋紡やあっちこっちの繊維会社が青田刈りをやりまして、いろいろ問題になっておりましたが、そういうところにはわりに態度がいいわけだ。中小企業の人たちが職業安定所のほうにお願いにいくと、全然待遇が違う。そういう面ももっともっと取り締まってもらわなければ、この中小企業に対するところの労務者の集まりはぼくはないと思う。これはひとつあなたのほうからきびしくやってもらいたい。  それからもう一つは、いま並べたような、そんな、こういう対策をやっています、こういう対策をやっています、こう言いますけれども、ほんとうにそんなことで人が寄るのだろうか、あるいはほんとうにそんなことで中小企業向けの労務者ができるのかどうか、私はちょっと疑問だと思うのですよ。職業訓練のほうは、ぼくが見ていると、少し効果をあげているのじゃないかと思いますけれども、ほかの面はほとんど効果があがっていない。これは事実を一つ一つ指摘をする時間がありませんからあれですけれども、もう少し強力に――あなた課長ですから、あなたに言ってもしようがないが、これは一ぺん事実を出して大臣に言わなければいかぬのだけれども、もっと現実に即したやり方を検討してもらいたい、これは要求しておきます。  きょうは六時までということで最初に約束してありましたので、これで一応質問を保留いたしまして、次の機会にもう一ぺんしたいと思います。  じゃ、あと残しまして……。
  179. 大久保武雄

    大久保委員長 本日の議事はこの程度にとどめます。  次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時一分散会