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1969-04-04 第61回国会 衆議院 商工委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年四月四日(金曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 大久保武雄君   理事 宇野 宗佑君 理事 小宮山重四郎君    理事 藤井 勝志君 理事 武藤 嘉文君    理事 中村 重光君 理事 堀  昌雄君    理事 玉置 一徳君       天野 公義君    遠藤 三郎君       小笠 公韶君    小川 平二君       海部 俊樹君    鴨田 宗一君       黒金 泰美君    小峯 柳多君       坂本三十次君    島村 一郎君       田中 榮一君    橋口  隆君       増岡 博之君    石川 次夫君       加藤 清二君    勝澤 芳雄君       佐野  進君    田原 春次君       千葉 佳男君    中谷 鉄也君       武藤 山治君    吉田 泰造君       近江巳記夫君    岡本 富夫君  出席国務大臣         通商産業大臣  大平 正芳君  出席政府委員         通商産業省通商         局長      宮沢 鉄蔵君         通商産業省貿易         振興局長    原田  明君         通商産業省繊維         雑貨局長    高橋 淑郎君  委員外出席者         参  考  人         (日本化学繊維         協会会長)   宮崎  輝君         参  考  人         (日本紡績協会         委員長)    武内徹太郎君         参  考  人         (日本絹化繊輸         出組合理事長) 市川  忍君         参  考  人         (日本毛麻輸出         組合理事長)  猪崎久太郎君         専  門  員 椎野 幸雄君     ――――――――――――― 四月三日  委員勝澤芳雄君及び佐野進辞任につき、その  補欠として八百板正君及び山花秀雄君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員八百板正君及び山花秀雄辞任につき、そ  の補欠として勝澤芳雄君及び佐野進君が議長の  指名委員に選任された。 同月四日  委員中谷鉄也辞任につき、その補欠として柳  田秀一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員柳田秀一辞任につき、その補欠として中  谷鉄也君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  通商に関する件(繊維製品輸出振興問題)  米国繊維品輸入制限に関する件      ――――◇―――――
  2. 大久保武雄

    大久保委員長 これより会議を開きます。  通商に関する件について調査を進めます。  本日は繊維製品輸出振興問題について、参考人として、日本化学繊維協会会長宮崎輝君、日本紡績協会委員長武内徹太郎君、日本絹化繊輸出組合理事長市川忍君、日本毛麻輸出組合理事長猪崎久太郎君、以上四名の方に御出席を願っております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  参考人各位には、御多用の中を本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。本日は、特に米国繊維製品輸入制限問題を中心にそれぞれのお立場から忌憚のない御意見を承り、もって本委員会調査参考に資したいと存じます。何とぞよろしくお願いを申し上げます。  なお、御意見開陳は一人十分以内にお納めいただくようお願い申し上げます。御意見開陳あと、各委員から質疑がありますので、御了承を願います。  それでは、まず宮崎参考人お願いをいたします。
  3. 宮崎輝

    宮崎参考人 私、宮崎でございます。  本日は、原稿を用意いたしませんで、メモによってお話しさしていただきますので、ことばが足らない点、あるいは妥当を欠く点があるかもしれませんが、そういう場合はあとでどうか御質疑のときに追加、訂正さしていただくようお願いしたいと思います。  ただいま委員長からお話しのように、問題を対米の輸出自主規制の問題にしぼりまして、輸出振興の問題を話さしていただきたいと思います。  御存じのように、綿についてはLTA、ロング・ターム・アグリーメントというのがありまして、日本自主規制をして以来、来年の九月三十日にこれがエキスパイアいたしますが、すでに十三年になんなんとする長期協定になっておるわけでございます。この規定を私どもが関係しております化合繊及びその他毛にも適用するということで、ニクソン選挙のキャンペーンでこれを約束しまして、そしていま直ちに、もうすでに商務長官スタンス氏がヨーロッパに出かけ、次いで必ず日本に来ると思いますが、そういうモーションを起こしておることはもう皆さま御存じのとおりでございます。  そこで、時間がたった十分でございますから、問題をなるべくポイントだけ申し上げますが、まず自主規制というものと強制的なクォータと一体差があるかという点、これは専門家の諸先生方は十分に御存じでございますが、実質的または法律的に何ら差がございません。御存じのように、綿のLTAでは、アメリカの憲法の規定によりまして、協定を結びます場合には授権立法が要りますので、それでアメリカでは農業法授権立法、授権をいたしております。それから協定を結びました場合に、どうしてもその協定に入らないというものが出てきますと、非常にアンバランスになりますので、そのアウトサイダーを規制するためにレギュレーションを出し得るという条文を農業法上の二百四条に追加しておられまして、結局は向こう言いなりにならないとレギュレーションを発動されて結局押え込まれる。何のことはない、言いなりになる以外に手はないというような法律の仕組みになっておりまして、ホーリングス法案なんかの内容をしさいに検討いたしてみますと、実質的には法律的に変わらないということでございます。  それから最近出ておりますホーリングス法案その他の、これは一ぺんアウトになりましたわけですが、法律におきましても、やはり協定を強制するというのが目的でございまして、そのおどしに、どうしても協定をやらないときには、こういう実績で押えるぞというのがこの法律やり方でございまして、そういう意味法律的にもそれから実質的にも両者に差がないということを私どもは十分に承知いたしております。にもかかわらず、アメリカがそういうことを申します理由は、やはりガット規定に真正面から触れるような措置をとりたくないという理由のほかに、行政的に自分のほうでいろいろな調整措置をする手続がなかなか困難である。その他、一ぺんこういう法律を通すと、いろいろな法律を通さざるを得なくなって収拾がつかなくなる、いろいろな理由から自主規制を言っていることは御承知のとおりでございます。  ところで、それでは化合繊について、あるいは毛についてはあとお話があろうと思いますが、自主規制をしいられる理由があるかということですが、何ら理由はございません。それは統計の示すとおりでございますが、昨年から今年にかけまして、アメリカヨーロッパも同じでありますが、いま化合繊業界は空前のブームを満喫いたしております。詳細な数字を当たることは避けますが、そういう意味におきまして、一九五六年当時の綿の自主規制を開始した当時とは根本的にその情勢を異にいたしております。またそのブーム内容といたしましても、アメリカでもすでに化合繊が全繊維消費量の過半数に達しておりまして、最近出ましたテキスタイルワールド報告によりますと、やがて三分の二になるというようなことを書いておりますが、化合繊消費増大というものは、一般繊維増大に比較いたしまして、天然繊維が横ばいまたは減るに比較いたしまして、それの数倍に及ぶ成長を遂げておるわけでございます。しかも利益その他においても非常に高い利潤を満喫いたしております。そういう意味におきまして、経済的には自主規制を他国にしいる何らの理由はないということがはっきりと言えると思います。にもかかわらず、LTAの適用を主張いたします理由は、ただニクソン大統領選挙のときに約束したということ以外に理由はないのでございまして、そういう意味で政治問題であるというきらいが非常に多いわけでございます。  そこで、アメリカではそういう主張が薄弱なために、最近どういう主張をしているかと申し上げますと、スタンスがATMIの会議演説をいたしておりますが、そのときに、アメリカ繊維だけにおける輸出入のアンバランスが一九六八年で八億ドルになった、一九六七年よりも三億ドル赤字がふえた、こういうような赤字増大があるんだから、相手からの輸出を押えてもらわなければならぬということを演説いたしております。しかし、そういうことを言いますと、日本アメリカから穀物を十三億ドル買っております。そうして十二億ドルの赤字でございまして、穀物だけ、しかも日本アメリカだけでもすでにわれわれは十二億ドルの赤字を持っているじゃないかという議論になるのでありまして、繊維全体でオール世界で八億ドルの赤字だということは、これはおよそ理屈に合わないと思っておりますが、そういうふうに理屈を変えております。  それから最近、これはアメリカのある意味分断作戦と思いますが、こういうふうに言っているんです。低コストの国から来るテキスタイル及びアパレル国内市場を撹乱する問題を解決するために新しい方法を考えなければならないというように演説をしております。しかしそういう意味においてはマンメード・ファイバーとフィラメントは除かれますというふうに解釈できます。  それからローコストの国で市場撹乱をしないものは除かれるということになりますので、たとえば英国の高級毛織物は除くというようなことから考えまして、次には、それでは市場撹乱を起こさないものはいいのかというような議論もありまして、非常に柔軟性のあるような態度で、そうしてヨーロッパにはあまり影響はないですよというようなことで、どうも近くヨーロッパに行った場合にはそういうふうにしてヨーロッパのほうを説得して、そしてガットの場に持ち込もうとしているように思いますが、これは私どもがかつてLTAのときに、これはあと武内さんから話が出るかと思いますが、非常にうまくしてやられたという経験があるのでございまして、当時の日本に参りましたボール次官がある公開の席上で言っておりますけれども自分は常に良心の苛責にたえない、悪いことをしたということを言っておりますが、つまり、そういうようにうまくしてやられないようなことがわれわれとしては非常に大事であるということを痛感いたしております。  それから、この問題はひとり化合繊に限りませんので、何らの経済的なバックグラウンドがないにかかわらず、一たんLTA化合繊等にも適用するという事態になりますと、これから、たとえばテレビその他がいまアンチ・ダンピング法アメリカで問題になっておりますが、こういう問題についても自主規制を要求されたときに、これを断わる何らの理由がないのです。そういう他の産業にも非常に累を及ぼすのでありまして、繊維産業だけの輸出の問題ではなくて、全日本通商問題に非常に大きな影響を及ぼすというような意味においてこの問題をひとつお取り扱いをいただきたいと思います。  それから繊維は、特にアパレルになりますと各地に中小企業を多くかかえておりますので、この中小企業の問題、それから日本から原料香港台湾韓国等に供給いたしまして、ここで二次製品にしてアメリカ輸出いたしておりますので、そういう意味ではわれわれの、そういう香港台湾等のいわゆる発展途上国先進国との問題にも波及いたしまして、非常に広範な国内問題及びいわゆる開発途上国先進国との問題に波及するのみならず、われわれアパレル及びテキスタイルだけがやられましても、日本輸出影響があるのみならず、日本からの原料輸出先である国がやられますから、そういう意味における大きな影響があるわけでございます。  それではどうしたらいいんだろうかというような問題がございますが、実はアンバサダー・ロスが退任するときに、彼は演説をいたしておりますが、現在あるところのガット規定を十分に活用することによってその救済ができるではないかということを言っております。これはガット十九条による特定品目輸入増大をした場合における救済規定がございますが、そういう規定を十分に活用することで可能ではないかということのほかに、アンチダンピング法とか、その他アメリカ関税法はきわめて完備しておりますので、そういう法律を巧みに利用することによって実際に問題は解決できるんだ。これはミルズがやはり演説いたしまして、いわゆるエスケープ・クローズに言及いたしておりますが、同じようなことを、例のウェイズ・アンド・ミーンズ・コミッティーのチェアマンのミルズ氏も演説いたしております。そういうことでありますから、ガットという場でこの問題を出すならば、ガット規定によってまず国内的に問題を処理すべきではないか。大体ものを買うというのはアメリカの人が買うのでありまして、われわれが置いてくるわけではないのであります。これは向こうが買いたいというから売るだけであって、要らぬとおっしゃれば売ることはできないのでありまして、商売そのものがインターナショナル・アグリーメントでございまして、しかもそういう場合に対する十分な国際条約上の配慮があるということで、解決の道が十分にあるんじゃないか。  ただ、ヨーロッパ等で強く言っておりますのは、非常にアンフェアな、アブノーマルなプラクティスがある、そういうことを言っているということがあるので、たとえば二重の為替レートを使うとか、あるいは国家の補助があるというようなことに対してはヨーロッパ側も非常にシリアスに考えておりますが、そういうような問題はあるといたしましても、十分にそういう解決方法があるんじゃなかろうかということと、また同時に一方彼らは、日本に御承知のとおり自動車の資本の自由化あるいは非関税障壁の撤廃の問題等を迫っておきながら、一方では日本からの化合繊その他に対しての輸出に対して規制をしようということは全く矛盾した政策であるのではないかというふうに考えております。  そこで、もう一つ申し上げたいのは、私はアメリカヨーロッパその他アジアの国々を回りまして非常に感じますことは、日本に対する非常に強い不信でございます。日本は必ずどこか裏でアメリカと取引するんじゃなかろうか、いろんな問題を持っておるだけにバーゲンをするんじゃなかろうかということで、私ども側の説得に対して非常に不信の念を持っております。これは目の前ではっきり言います。ヨーロッパの人もアジア人たちも、それから特にアメリカにおる人たちも言うのでありまして、おそらくアメリカから今度来るであろう人たちも案外甘く見ているんではなかろうかというきらいもいたしますので、ぜひ国会先生方にこの点をきわめてクリア日本の意思を表示していただきたいというふうに考えております。  それからもう一つ、木材の輸出制限がございましたときに、日本は報復をとるんだということを言ったのでありますが、結果においては何もできなかったということが一つまた甘く見られる原因でございまして、結局、国際間のこういう問題は、いわゆる話し合いということのムードも必要でございますが、十二分に彼らは事情を了承しておるのでありまして、いわゆる日本流東洋流の考えは通らない。たとえばLTAの第一条に、綿製品は特別の事情によってLTAをやるんだ、他の製品に及ぼさないんだということがきわめてクリアに書いてございますが、にもかかわらず、やはり合繊及び毛にこれを適用するということを堂々とこうして言ってくるわけでありまして、そういう意味において、われわれは約束したからとかあるいは話し合い解決しようとかいうように非常に甘くものを見ることは間違いであって、アメリカ人たちの非常にドライな、そしてまたバイタリティーに富んだやり方というものをよく理解をしないと、この問題の処理にわれわれは百年の悔いを残すのではなかろうかというふうに考えております。  どうかひとつこの問題につきましては、ぜひ国会の諸先生方のお力を拝借しまして、アメリカでは御承知のように繊維業者ロビースト三十数名をワシントンに置いて、常時国会人たち連絡をいたしまして、非常に国会一体となって働きかけております。日本におきましても、われわれは政府関係方面に十分に連絡をいたしておりますが、最後にこれをバックアップしていただきますのは諸先生でございますので、どうかはっきりと国会としての、与党野党を問わず、日本繊維の問題のみならず、日本通商の問題の全般に影響のある問題として、ひとつ御支援をいただくようお願いをいたします。  あまり時間もございませんので、これで失礼いたします。(拍手
  4. 大久保武雄

    大久保委員長 次に、武内参考人お願いいたします。
  5. 武内徹太郎

    武内参考人 日本紡績協会武内でございます。  私ども業界に先年来構造改善の問題がございまして、御出席各位には平素絶大な御支援と御指導をいただきまして、着々業界としましてのステップを進めておりますが、今後本委員会でいろいろ御意見が出ますこの流通問題あるいは貿易問題というものが、私どものこれからの業界の大きな焦点になってくるかと存じます。宮崎参考人から私の用意しました資料につきましてもおおよそのお話がございましたので、重複します点はできるだけ避けまして、意見を申し上げたいと思います。  ニクソン大統領選挙運動中のいろいろ公約やら、あるいは大統領就任後のいろいろの機会におきます発言等によりまして、今後日本繊維製品、ことに合繊、毛その他に対します自主規制要望という問題があるいは大きくクローズアップされてくるのではなかろうかと懸念をいたしております。私ども綿の現状といたしましては、来年の秋までのLTAのもとにございますわれわれといたしましては、この綿製品に引き続きまして化合繊製品あるいは毛製品の対米輸出規制をしいられるということは、御承知のとおり現在の繊維製品は非常に複合的で、製品範囲も広がっております。そのような時代に、われわれの業界としても非常にその成り行き懸念を持っておるばかりではございません。国民経済的な見地から見ましても、御承知のように、繊維原料から流通段階まで非常に底辺の広い、また携わっておる者も、中小企業あるいは零細企業までも含めまして、非常に範囲の広い関連産業を持っておりますので、成り行きによりましては各方面に深刻な影響があるものと考えております。  御承知のように、アメリカ繊維産業は、繊維製品需要あるいは生産も、先ほどお話がありましたように非常な急ピッチな発展拡大を伴っておりまして、かつてないほどの活況を呈しております。昨年一月に公表されました米国関税委員会調査報告書でも明らかなように、保護を必要とするような状態ではございません。むしろ米国紡織業におきまする最近の新規投資額等を見ましても、昭和四十一年には十一億ドルをこえ、また昭和四十三年には八億ドルというような巨額にのぼっておると聞いております。また、たとえば設備におきましてもあるいは雇用関係等を見ましても、まずます発展を続けておるような状態であります。このようないわば強気な背景には膨大な利潤があったことはもちろん察せられるわけでありまして、アメリカ繊維製品需要に対しまするなみなみならぬ自信のほどがうかがわれます。もちろんアメリカ側にいわせますと、アメリカ繊維産業のこのような高い収益アメリカのほかの産業に比べますと必ずしも高くはないと言っておりまするが、繊維産業収益性一般産業に比較いたしまして低いということは、ひとりアメリカだけの問題でなくて、各国共通の現象でありまして、これだけで現在アメリカ繊維産業が繁栄を謳歌していることを否定することはできないと思います。  一方、アメリカ繊維製品国内消費に占めまする輸入品の比率は、繊維によってもちろん異なりまするが、綿製品毛製品あるいは化合繊製品統計で見ますると、昭和四十二年で七%にすぎません。合成繊維に限って見ますると、わずか三%ぐらいではなかろうかと思います。この割合は昨年におきましても大きな差はないものと思っておりますので、アメリカ繊維産業に対しまする大きな圧迫要因となっているようには考えられません。もちろんアメリカは、輸出国自主規制輸入制限ではないというような見解をとっておりますが、わが国立場から申しますと、先ほど参考人お話にありましたように、強制された自主規制あるいは国際協定に基づきまする貿易規制は、実質的には一方的な輸入割り当て制度と何ら変わりがないと考えられます。ガットのもとで作成されました綿製品国際貿易に関しまする長期協定は、ガットの場合におきましてもガット原則に対しまする例外な取りきめであるとされております。このような例外規定拡大ガット精神に違反するものと考えます。  以上によりまして、アメリカ綿製品輸入制限強化動きがどのように不当であるものかということを申し上げたわけでございますが、昭和三十一年から対アメリカ製品輸出自主規制交渉その他最近までのアメリカとの交渉を通じまして、いわばわれわれは規制先輩業者でございますが、その経験によりますと、アメリカは当初比較的ゆるやかな条件に基づいて交渉を開始いたしましても、交渉の進展とともに漸次きびしい規制を要求してまいりました。その結果、同協定に基づいて締結されました日米綿製品協定は、細分化された品目別規制のワクあるいは需要変化に即応し得ないような厳格な運用、きびしい輸入制限のための協定となっております。今日までわれわれ業界といたしましても大きな制約を受けてまいったと考えます。綿製品協定同様の貿易規制措置が万一ほかの繊維分野拡大されますると、将来ますます新しい分野を開拓し発展せねばならないわれわれ業界、ことに化合繊はじめ諸繊維その他の複合繊維の将来には非常な影響があるものと懸念されます。  これらの事情を御賢察いただきまして、今後LTAの期限切れも考慮に入れまして、今後予想されまする日米両国政府間の話し合い、あるいは万一にもガットの場で取り上げられるということになりました場合には、政府関係当局の強力な外交上の諸措置によりまするバックアップを、特にこの機会お願いいたしたいと存じております。  ありがとうございました。(拍手
  6. 大久保武雄

    大久保委員長 次に、市川参考人お願いいたします。
  7. 市川忍

    市川参考人 私、日本絹化繊輸出組合理事長市川でございます。お手元に大体草案を差し上げてございます。それを朗読するような形におきまして申し上げたいと存じます。  米国スタンス商務長官は、ニクソン大統領の意を受けて、化合繊及び毛に対する国際協定を締結すべく各国に近く働きかけを行なう意向を明らかにしておりますが、いまさら申し上げるまでもなく、一国の大統領が、一国内産業政治的圧力に屈して、その産業の一方的な利益保護目的として多数国家間のかかる協定を締結しようといたしますことは、自由かつ平等な通商拡大原則とするガット精神に反するばかりでなく、輸出国側にとってきわめて不利な結果を招き、かつ、わが国ひいては国際貿易全体にとっても大きな不幸と沈滞をもたらすものであると存じます。  私ども絹化合繊輸出業界といたしましては、このようなアメリカ動きに対しまして従来絶対反対の方針をとってまいりましたが、いかなる具体的な働きかけが行なわれようと、今後とも私どもは友好の各団体と密接な連絡協調をとりながら、反対立場を堅持して、国際協定の成立をはばむ精神でございます。  現在、日米両国政府の間で残存輸入制限交渉が継続されておりますこと御承知のとおりでございますが、繊維国際協定の問題を残存輸入制限その他の政治経済上の問題と関連させて、繊維の犠牲において解決するごときことのないように特にお願いを申し上げる次第であります。  アメリカ輸入制限実施に対してわれわれが強く反対いたしますゆえんは、その影響の大きいこともさることながら、米国繊維産業には輸入制限を実施しなければならないという理由はどこにも存在しないと思うからであります。この点につきましてかいつまんで御説明申し上げます。  まず最初に申し述べたいと考えますことは、日本から米国輸出されています化合繊織物の中には、米国で生産されていないか、生産されていてもごく少量であるという品種が相当量を占めているということであります。それらは、日本品としての独自性を有する商品であります。たとえば人絹織物、ナイロン、ポリエステル織物等のクレープ物という撚糸使いの織物で三十ないし四十デニールの細番手に撚糸加工を施した織物であります。米国にはこの種織物は生産されていません。一般的にいって、米国品は高度に機械化された大量生産方式であるため、その使用糸は七十五デニールから百五十デニールまでの太番手糸に限られておりまして、日本品は米国品とは競合してはおりません。わが国からは七十五デニール以上の中太糸を使用した織物も輸出されてはおりますが、これらは多色刷りの捺染品あるいはギンガムのように先染め糸を使用した織物など、製織または加工の段階で米国品にはないものをつくり出して輸出しているのであります。  次に、化合繊輸出品は、品質のくふう開発によって米国内の一般所得層の需要にこたえているということができます。米国消費者は良質で合理的な価格の商品を選択することができるのであります。また、わが国からの織物輸出には生機が相当部分を占めていまして、これらは米国でさらに加工が施されるため、繊維加工部門における雇用の増大と操業率の向上に寄与し、米国産業及び労働者はこれによって利益を受けておるわけであります。  このようにわが国米輸出品は、米国国民生活に貢献的な役割りを果たしているのであります。  第三番目に、化合繊品の対米輸出は不合理な急増をしていないという点について申し述べたいと存じます。対米化合繊輸出が顕著な伸びを示し始めましたのは一九六四年からでありますが、この時期は、米国内の衣料需要に大きな変革が生じ、米国内生産も目ざましい増大を示したのであります。すなわち、一九六五年、米国においてジュアラブル・プレス加工方法が開発され、ズボン、シャツ等にジュアラブル・プレス加工、しわの伸びないプレス加工が受け、そのためポリエステル綿混織物に爆発的な需要が生み出されましたが、米国内生産が需要を満たすことができず、供給源を日本に求めてきたのでありまして、わが国からの同織物の輸出が大幅な伸長を見るに至っております。ジュアラブル・プレス加工の開発の波紋は非常に大きなものがありまして、ポリエステル綿混織物の需要のみならず、同織物生産用としてのポリエステル綿も米国生産者みずから不足分を海外に求めるという事情にあったのであります。現在においても対米輸出の伸長は米国内のこのような需要増大に起因しているのであります。  第四番目に、米国繊維産業の業績の推移をつぶさに分析しましたところ、輸入が増加をたどった時期に国内産業は目ざましい拡大を遂げていることについて注目したいと思います。  一九五七年以来今日まで米国繊維産業は、生産、売り上げ、収益、雇用、投資等あらゆる面で著しい伸びを示し、輸入国内産業に重大な被害を与えているという事実はありません。この点は、米国関税委員会が一九六八年一月十五日大統領に提出しました調査報告書においても明らかにされております。  さて輸入品が、最も悪影響を及ぼしていると米国側が主張しております雇用面について見ますと、年々雇用総数は増加しており、平均一週当たりの労働時間賃金、生産性は大幅に伸び、紡錘、織機の稼働率もきわめて高水準を維持しております。ほんとうに輸入米国労働者に深刻かつ歴然とした影響を及ぼしているという証拠はありません。なお、米国輸出される原材料、織物はそれぞれの用途に加工されるものであり、加工部門での職を奪っているという事情にはありません。  さらに六番目に、ケネディラウンド関税引き下げは、現在の輸入増加に一そう拍車をかけるものであると米国側が脅威を抱いていることについて述べたいと思います。  米国繊維輸入関税は、一般的に高率でありまして、化合繊織物では従価換算で三五ないし四〇%と、日本の一六ないし二〇%、EECの一六ないし一九%と比較しますと高率であります。ケネディラウンドの引き下げ幅は五年間で一五%程度ですから、引き下げのメリットはきわめて小さいということができます。日本国内における労賃の上昇、諸材料の値上がりで、関税引き下げの効果は減殺され、輸出増加には結びつかないという実情にあります。  さらに七番目に、米国業界は、主要競争国の低賃金、なかんずく極東低賃金諸国からの輸入増大主張していますが、わが国に限ってみますと、米国繊維労働者の賃金と比較した場合、大幅な格差があることは認められますが、現在ではわが国繊維産業の賃金上昇率は、米国のそれを大きく上回っており、米国との差は縮まる一方で、もはや低賃金国ではなく、時間当たり賃金ではフランス、イタリアとほぼ匹敵しております。  最後に、米国側は繊維品の輸入増大米国国際収支悪化の原因となっていることを規制理由に加えておりますが、一産業輸出入バランスの悪化を規制理由とすることは納得のいかないところであります。  これまで述べましたとおり、米国側が要求しております輸入制限は、もはや経済的な問題ではなく、政治問題ということができます。  なお、繊維二次製品の対米輸出につきまして一言触れさせていただきます。昨年度二億三千九百万ドルで、全地域向け輸出の四三%ときわめて大きなウエートを対米輸出は占めており、その生産及び輸出業界の基盤は典型的な中小、零細企業であるので、綿製品に引き続き化合繊製品毛製品などについても規制をしいられると致命的損失をこうむり、失業、倒産など社会的にも大きな問題を惹起します。まして、メリヤス、縫製など繊維二次製品業界が労働力の不足、労賃の高騰、発展途上国産品との競合の熾烈化、対発展途上国特恵問題などますます深刻化する内外の輸出環境に対処すべく、構造改善、合理化などを推進し苦悩している現状においては、一そう過酷な社会問題を惹起することは必至であります。  米国消費に占める総輸入の割合は、たとえば、化合繊衣類では四%以下、化合繊製室内用品では二%以下のごとく小さく、いわんや消費に占める対日輸入のシェアはきわめて僅少であります。  以上、簡単に御説明しましたが、日本絹化繊輸出組合は、絹織物対米輸出隆盛期であった昭和三十四年ごろから米国市場における輸入制限その他諸問題対策に力を入れてまいりましたが、国内繊維業界の十年にも及ぶ執拗かつ強力な制限要求運動が六十二年の絹製品に次いでついに今回の化合繊に対する同様の動きとなって現われてまいったのであります。  わが国からの米国向け輸出額は、昨年度八千六百万ドルであり、このほか縫製加工後、米国製品輸出して民生を営んでいる東南アジア諸国に対して、わが国から供給している糸、綿、織物などの一次製品は同年度二億六千八百万ドルに達しております。これは香港台湾、韓国、フィリピン向けの合計であります。これら直接間接の輸出額を合わせると、三億数千万ドルに及ぶ化合繊輸出影響を受けることになります。  米国の提唱する国際協定の本質から見まして、これが実施されれば、化合繊貿易の様相の根本的な変化が生じ、単に対米輸出額の減少にとどまらず、わが国化合繊輸出全体の沈滞低下を招くおそれがありまして、その影響はまことにはかり知れないものがあります。  委員会におかれましても、今回の米国動き意味するところを十分御了解いただき、絶対反対の基本的立場を貫き、国際協定成立阻止に御配慮をいただくよう強くお願いを申し上げる次第でございます。  これは自由通商拡大原則とするガット精神のみならず、日米両国の真の友好促進にも沿うものであると確信する次第でございます。  以上、はなはだ長くなりまして、ことに宮崎さんや武内さんのお話しになったこととだいぶ重複しておりますが、それから二次製品関係の方がきょうお見えになっておりませんので、若干ワクを越えて二次製品の問題についてもお話し申し上げた次第でございます。どうぞよろしく……。ありがとうございました。(拍手
  8. 大久保武雄

    大久保委員長 次に、猪崎参考人お願いいたします。
  9. 猪崎久太郎

    ○猪崎参考人 毛麻輸出組合の猪崎でございます。  私が申し上げる中にはすでに三名の参考人からお話がありました点と多少重複する点もあると思うのですが、その点は御了承願いたいと思います。  米国における毛製品輸入制限運動というものは、一九六一年の十一月に当時のホッジス商務長官が羊毛諮問委員会というものを組織いたしまして、ケネディ政府に対しまして輸入毛製品に対するクォータを勧告したときから問題になっておりますので、それからこの問題がくすぶりまして、機会あるたびに表面化しておるのであります。そのつどわれわれは強硬に反対をいたしまして今日まで来ておるというのが現状でございます。特に今回のアメリカにおきます繊維品の輸出自主規制問題につきましては、すでに過般の参議院予算委員会並びに衆議院予算委員会におきましてこの問題が取り上げられ、佐藤総理はじめ大平通産大臣、それから愛知外務大臣から、米国側のこの問題に対する動きに関しまして強く反対をし、たとえ米国側から繊維品の輸出国に対する自主規制の要求があってもこれを拒否するということを確答され、日本政府反対の態度を明確に示されているのでございます。またこの日本政府の態度は、下田大使が最近スタンス商務長官を訪れられましたときに、本問題に関しまして日本政府反対態度につき強い申し入れをされたことも皆さん御承知のとおりでございます。  この問題につきましては、欧州各国におきましても、日本と同様に強く反対をしておるのでございますが、米国側におきましては、繊維品の輸出自主規制提案を断念せずに、さきにはニクソン大統領が欧州を訪問する、それに引き続きまして、今度はいわゆる大型ミッションとしてスタンス商務長官をはじめアメリカ政府関係首脳、各省の要人が四月の十一日から四月の二十六日の間にヨーロッパを訪れまして、貿易拡大目的をもって、貿易障害の撤廃ないしは緩和につきまして、欧州各国の首脳並びにEEC、ガット、OECDのトップと会談をいたし、これらの問題の解決をはかろうとされておるのであります。特に今度のミッションの中に、先ほどからお話のありますLTAすなわち国際綿製品長期協定に関する問題以来ずっと繊維問題と取り組んできておられるベテランのニーマー、商務次官補代理なんですが、この方が今度のミッションに加わっておられます。このことは、米国側がこのたびの訪欧を機会繊維品の輸出自主規制の地ならしをはかろうとしている意図を持っていることを明らかに示しているんじゃないかと考えられます。常に世界の平和と繁栄を唱え、自由貿易の理念のもとに、ケネディラウンドによる関税一括引き下げを通じて世界貿易の拡大を強力に推進してきたこの米国が、こういう措置に訴えるということはまことに遺憾でありまして、われわれは了解に苦しむのでございます。特に米国繊維産業は、先ほどからも御指摘がございましたように、売り上げ、利益率、生産、いずれをとってみましても、昨年は過去の記録的年でございました一九六六年を上回っております。そうして今年もまたさらに成長を示すであろうと指摘されております。したがいまして、米国輸入制限を必要とする正当なる経済的理由は全く認められないのであります。  皆さんも御承知のとおり、ニクソン氏が今度大統領に当選されましたのは、南部の北南のカロライナ州における特別の協力によりニクソン票がふえたということであり、これが決定的な要因になったと私は聞いておるのでございます。そのニクソンさんが選挙中に国内繊維産業保護ということを公約されておるのであります。米国における繊維業者保護の問題につきましては、これはニクソン大統領のみならず、ケネディ大統領、ジョンソン大統領選挙中に何らかの公約をしたのでございます。ニクソン大統領は就任後初めて二月の記者会見におきまして、本問題を取り上げたのであります。これにより繊維自主規制問題が表面化してまいったのでございます。特に繊維品の輸出自主規制につきましては、先ほど申し上げましたニーマーさんを同席させまして、スタンス商務長官は欧州並びに米国に対して極東、すなわち日本香港、韓国その他の低価格国からの繊維品の輸入が増加しているので、これを抑制したい。これを検討するために、ジュネーブにガットの加盟国を招集し、そこでこの問題を検討してもらいたいと申しておるのでございます。  日本製の毛織物は、先ほど御指摘ございましたように、すでに米国関税委員会報告書の中で、日本製の毛織物の平均ランデッド価格は一アール当たり四ドルであって、米国製の毛織物の平均卸売り価格を上回っておると証明されているのでございます。また、日本から米国輸出されております毛織物は絹入りの毛織物か、薄手の高級品がおもでございまして、現在米国で生産されていない品種で、米国の国産品との競合はほとんど起きていないのでございます。また日本米国向け毛織物の輸出は増加しておりますが、これは日本製品が優秀であって、関係業界の絶えざる努力と研究の結果、米国における流行をリードして需要の増加をはかったということの結果でございます。  特に私はここで申し上げたいのは、米国はベトナム戦争以来膨大な戦費の拡大、内需の旺盛、そうしてインフレという傾向になっておりますが、日本からのこういう輸出があればこそ、その需要は満足された、ここまで申し上げても、私は決してわれわれとしてはいばっておるのではないと考えているのであります。私はこの点におきまして、アメリカがしょっちゅういう、日本がイコール・グッド・パートナーとしての責任を果たし得るのではないか、まあこういうふうに考えておる次第でございます。  わが国の羊毛関係三団体は、米国毛製品輸入制限問題に対処をいたしまして、先ほどから申し上げておりますように、ずっと反対を続けてきたのでございますが、一九六〇年以来、この問題に強く反対を続けております。特に一九六五年一月、皆さんも御記憶があると思うのですが、佐藤総理がジョンソンと会談をおやりになるために訪米をされました。その前にも、毛製品国際協定反対ということにつきまして、総理に特別陳情をいたしたのでございますが、結局、五月には日米会談ということになりまして、当時のクリストファーを団長にいたしまして、労働省のブラックマン、それから先ほど申し上げました商務省のニーマーさん、それから業界代表のダーマンさん、こういうお歴々の方が東京へ来られまして、われわれと激論をやりまして、その結果、話はまとまらずに決裂と相なったのでございますが、われわれの主張が正しかったがために、今日まで毛の対米輸出は成果をあげてきたと考えております。羊毛産業界では、この問題につきましては引き続き反対の態度を続けております。過般三団体が連名で陳情を申し上げたのは、何も新しい反対の陳情ではなくして、従来の反対の再確認でございます。そしてわれわれは、政府首脳並びに通産、外務、企画庁の各担当首脳に対しまして、この点を強く陳情いたしておる次第でございます。先ほども御指摘ございましたように、米国の意図する自主規制方式といいますのは、実質的には政府規制の導入が必要でございまして、明らかな輸入制限でございます。これは国際綿製品長期協定の歴史的事実にかんがみても明らかなことと私は考えております。特に国際綿製品長期協定の第一条には、この規制綿製品以外の商品には及ぼさないということを明示しているのでございます。したがいまして、このたびの米国が意図するような輸入制限方式がガット違反となることは明確でございます。日本米国もともに真剣に世界貿易の自由拡大をはかることが、世界の平和と繁栄につながることになるわけであります。そしてガット精神に徹してこそ、世界貿易が発展するのであると私は考えております。したがいまして、アメリカ側におけるこういう構想の実現を阻止するためには、われわれ業界は一丸となって反対することはもちろんのこと、政府におかれましては、関係各国と密接な連携をとっていただきまして、米国側で考えておられる、こういう理不尽な構想というものを断念させるように、強力な経済外交を展開していただきたいと考えております。それには本問題と真剣に取り組んでおられますこの商工委員長はじめ諸先生方の特別の御協力をお願いしたいと考えておる次第でございます。  なおニクソン大統領ヨーロッパに参りました後に、われわれの顧問弁護士であるダニエル氏がヨーロッパを回りましたが、彼の得た印象では、ヨーロッパ側も、アメリカからスタンス大型ミッションが来ても、こういう交渉には応じられないという大体の見通しを得たと言っています。しかしながら、特別に私に宛てた電報で主張いたしておりますのは、エニイ・サイン・オブ・ジャパニーズ・ウイークネス・クッド・ビー・ペリー・デインジャース、もしここで日本が腰砕けになったらあぶないよ、ということを特に私のほうに電報を打ってきておりますので、どうかこのアメリカ自主規制問題につきましては、徹底的に反対していただきたいということをお願い申し上げまして、私の意見を終わりたいと思います。ありがとうございました。(拍手)     ―――――――――――――
  10. 大久保武雄

    大久保委員長 これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。加藤清二君。
  11. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私はお許しを得まして、参考人の方々に簡潔に御質問を申し上げたいと存じます。  私どもは平和をこよなく愛するものでございます。貿易は平和の基であり、貿易の破壊は平和の破壊に通ずるとの固い信念を持っております。アメリカもまた自由平等を尊重いたしまして、特にケネディラウンドに見るごとく、貿易の自由、その振興に努力していらっしゃるはずでございます。日本に対しても自由化を強く要求しておられます。にもかかわりませず、いまお話を承りますると、アメリカは自国に対する輸入に対してはきわめて強い制限を行なっているようでございます。日本品に対しましても、すでに過去において五十六品目になんなんとする自主規制と称する強制規制を強要してまいりました。ことに繊維に関する限りは、いま市川さんもお述べになりましたが、可燃性繊維、絹の制限に始まって、次はコットンの自主規制から、いわゆる長期取りきめのこの強制、まさにアメリカへの日本繊維輸出は制限の歴史であったわけでございます。そこで私が承りたいのは、いままたこのコットンにおける規制を、合繊、ウールにも及ぼさんとしている状況でございます。大統領が陣頭指揮でございます。商務長官業界の会合に出まして、堂々と、徹底的にこれをなすことを宣言いたしております。いま猪崎さんのお話によれば、専門家のニーマーを携えて欧米諸国にこの根回しに行かれる、これもすでに新聞で御案内のところでございます。このときに及んで、一体われわれ政治家、特に日本の祖国を愛する政治家としては、どのような具体策に出たならばよいか。状況はわかりましたので、一体具体的な対策は何があるか、このことについてまずお尋ねをしたいのでございます。猪崎さん、たいへんお急ぎのようでございまするので、特に今度難をこうむろうとしている合繊とウールの関係の方にこの点をお尋ねするわけでございます。特に猪崎さんに申し上げたいことは、いまちょっとお触れになりましたけれども、毛は過去においてもう再三制限に対する体験済みでございます。そのつど関係諸外国は日本の弱腰、途中なかの腰砕けを非常に懸念しておるようでございます。にもかかわりませず、過去三年間何事もなかったということは、猪崎さんの会合におけるあの一喝が効を奏したものである、かように識者は受け取っております。これについていろいろ意見をかわす向きもありまするが、あの一喝によってウールの制限がのがれ、今日まで輸出が可能であったということは、アメリカの国民にとっても、ベトナム・インフレに苦しむアメリカ経済にとっても、これはたいへんな効果のあったことである、私はさように存じておるものでございます。したがって、今日この段階においての政治家のとるべき態度、政治家と業界との協力によるところの対策等々、具体的に承りたい。
  12. 猪崎久太郎

    ○猪崎参考人 私がお答えしていいのかどうか、参考人ほかに三名おられるのですが……。  加藤先生からどういう体制をとったらいいのかという御質問がございましたが、私は、この自主規制問題は、これは経済的の裏づけは何もないということを先ほど強く申し上げておりますので、あくまで反対をするということ以外お答えのしようはございません。  それから第二点、今後日本輸出がどういうふうになるのか、そんな反対ばかりしておってそれでおさまるのかという点になるのですが、やはりアメリカの現在の実情というのは、ベトナムの戦費拡大によるインフレが非常に大きな原因になっておると思います。けさも公定歩合を上げております。そうして預金準備率もまた上げております。これほどインフレを押えにかかっておるのですから、インフレを押えようとしても過去に押え切れなかった、それがもうすでに大統領のほうにおいてインフレを抑制するという線が強く出ておりますので、インフレさえとまれば、私は、アメリカは天然資源が豊富であり、そうして過去においては六十何億ドルの貿易の黒字をかせいだ国でございますので、だんだんと輸出がふえて輸入が減っていくと思う。そうすれば、自然に解消する問題じゃなかろうか。われわれこの毛のほうに関係いたしております者は、年間二百万俵からの羊毛を輸入しております。これはたしか三億七千八一百万ドルですか、もっとなると思うのですが、五五%ぐらいしか輸出でかせいでおりません。豪州その他から羊毛を輸入いたしまして、そうしてそれを加工して外国に売るのに何が悪いか。しかもそれはアメリカが要求しておるところのファッションなり新しいデザインをわれわれがよく考えて、そうしてそのテーストに合う品物をつくって国際競争に勝ち得る価格で向こう輸出するということなのであるから、これは当然のことだと思っている。これは貿易拡大精神にのっとっておると思いますので、われわれとしてはどこまでも反対をしてもらいたい。そうしてアメリカ側にはできるだけベトナム戦争――こんなことをアメリカ側に要請していいのかどうか、われわれは業界人でございますので、これからどういうふうに折衝されていくか知りません。アメリカはベストを尽くしておる、そんなことを言うたってアジアの平和のためにおれは立ち上がっておるんじゃないかということがあると思うのですが、私は、国力という点から見まして、日本はやはり原材料を外国から輸入して、加工して輸出をしなければならぬ。それがアメリカの市場にインジュリーを与えておるということなら、それはわれわれとしては考えなければならぬ。そういう点はございませんから、ただいま申し上げたようなつもりでわれわれはやっていきたいと考えておりますので、どうぞ先生方の御協力をお願いしたいと思います。
  13. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 宮崎さんにお尋ねしたいのですが、この自主規制を強要するということは、明らかにガット、特にLTAの第一条違反である、皆さまが一致しておっしゃられました。私もさように考えております。同時に、日米友好通商航海条約第十四条違反であり、それに対する対策としては、二十四条にこれがおごそかに明記されておるところでございます。それを日本政府はいままで行なわなかった。二十四条を実行に移していないという憂いがございますが、私はアメリカ大統領は賢明だと思います。その賢明な大統領が、同業者を救うために、国民の利益と戦争インフレを緩和しなければならないという、この重大なる命題を忘れられていらっしゃるはずはないと思います。ここらあたりをアメリカの識者にもよく認識させることが必要ではないかと思います。したがって、宮崎さんにも、この期に及んでのわれわれ政治家のとるべき態度、業界のとるべき態度についてお尋ねいたします。
  14. 宮崎輝

    宮崎参考人 それでは加藤先生の御質問にお答えさしていただきます。  私は、先ほど陳述のときに申し上げましたように、またいま猪崎さんのときにも話が出ましたように、日本がいま世界から一番信用がないのです。私はヨーロッパに行ってきましたしアメリカにも行ってきました、それから東南アジア、インドまで行ってきたわけですが、全部、どう言うかといいますと、日本は当てにならぬということを私にはっきり言うわけです。なぜかといいますと、それは過去の実績がそうなんだ、たとえばLTAをまず最初にやったのは日本じゃないか、それから最近は――これはよそさんのことを言っちゃはなはだ悪いのですが、鉄の自主規制をまず言い出したのも日本だ、こう言うわけです。そのほかに、日本の外交は弱い、つまりやるべき手を打たぬと、こう言うのです。これは私が言うのじゃないのですからどうかあしからず。日本政府を非難しておるわけじゃありませんから、それは御了承いただきたいと思います。それで、こう言うのです。これは実は私は日本の外交官にも非常に同情を申し上げるのですが、先ほども申し上げましたように、たとえば木材の輸出制限をしましたね、あの法律が通りましたから。あのときに、日本の下田大使は報復をやるということを言われたわけです。ところがとうとう報復は何もできなかった。なぜできなかったかといいますと、たとえばたばこをトルコから日本に売りたいと言ってきておる。ところが専売公社が、もうたばこはアメリカたばこになれているから、味が変わる、そうすると売れなくなる、こういう専売公社の立場からの反対があるわけですね。それから小麦の買い付け先をどこかへ転換しようとしても、やはり農林省が反対するというようなことで、結局何もできなかったというふうに聞いておるのですが、これは外交官としてはほんとうに苦渋をなめておるのです。今度私はアメリカで大使と会ってきたのですが、私がその報復の話をしますと、これは諸先生方を前に置いてまことに先礼なことになりますけれども日本の政治家でそんなことができるような人がおりますか、ことばはちょっと違いますけれども、こういう趣旨でした。そういうことを実は言われたんでございます。  それで私は、やはり非常に大事なことは、この日本に対する世界の不信アメリカ側から甘く見られているその原因はどこにあるかと申しますと、もう戦後二十数年たった日本アメリカに対してもっとなぜ言うべきことを言わないか、やるべきことをやらないかということだと思うのです。そこで私はぜひ先生方お願いしたいのは、政府というのはやはり問題が多うございます。たとえば百二十一品目の制限撤廃にしても、実はなかなかできにくい。これは諸先生方もそれぞれお立場もあるかと思いますが、できにくい。その他自動車の問題もあるとかということでございまして、なかなか政府としてはギブ・アンド・テークの問題がありますからできにくいと思いますが、そういう問題とは切り離して、この繊維という問題は、あくまでも自主規制を強請されるべき何らの理由がない。こういう問題こそはっきりひとつ国会で――これはアメリカの業者というのはもう国会を十二分に活用しているわけですが、私どもはなはだ腕がありませんで活用が悪いのでございますが、要するに先生方がきわめてはっきりとこのことについて意思表示をしていただきたい。商工委員会のみならず、本会議でもやっていただいて、そうして堂々とひとつ日本政府を激励していただく。同時にまた、アメリカその他の諸外国が日本に対し抱いている不信を、国民の総意によってこうなっているのだということをひとつはっきりさしていただきたい。  それから最後に、これは先ほど加藤先生が、通商航海条約の二十四条を政府がやらぬじゃないかということをおっしゃいましたけれども、要するに、ガットの場でも必要な場合はやはり報復をやるということはきわめて常識になっております。ところが日本は報復するということを罪悪のように考えるわけです。これは日本人と欧米人とのサイコロジーの差でございますが、堂々とお互いにやっておるわけです。ですから、私は実は、日本がもしも報復をやらなければならぬときに、何をやったらいいかというので、たとえばアメリカから買っております穀物内容をしさいに調査いたしまして、どこの商社がどのユーザーに送っておるかというようなことも全部調査を済ましておりますが、こういうものを少しアメリカからフランスのものに切りかえる、カナダに切りかえるというようなことができないはずはないんです。だから、そういうことをぜひひとつ必要な場合には勇敢にやっていただく。私、実はアメリカの農業団体と非常に密接にいま協力さしていただいておりますが、一番アメリカの心配しておるのはこの農業団体でございまして、日本は、六十億ドルのアメリカ穀物輸出のうちで、先ほど申しましたように十三億ドルこれを買っております。特に大豆等は日本及びヨーロッパにおいても――ヨーロッパも四億ドル買っておるのですが、そういう意味においてこういうものがどうなるかという、一とを非常に心配して、そしてむしろ日本からヨーロッパを説得してくれということまで言われておるわけでございますが、この農業団体、われわれの味方でありますが、その味方を裏切るということは、これはまことに申しわけないことでありますけれども、しかし意思表示としてそういうことをやはりやらなければならぬ。政府がやれるように、ひとつ国会ではっきりそういう意思表示をぜひしていただくことが、私は、諸先生方お願いしたいほんとうに今日の問題でございます。
  15. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 立法府は本件に関して堂々と音思表示をしろ、そうして政府を叱吃激励して政府交渉がしやすいようにしてもらいたい、具体的には報復手段とおっしゃられましたが、その内容とするところは市場転換、市場転換をして一番困るのが日本ではなくして、アメリカの小麦耕作者であり、コットン、綿の耕作者であるとおっしゃられました。これは経済評論家のみならず、財界の皆さんが軌を一にしておっしゃられるところで、猪崎さんも、もう過去何回もアメリカとの交渉においてそれをやられたはずでございます。  そこで武内さんにお尋ねしたいのですが、あなたのところが一番歴史的に長く自主規制と称する脅迫的な態度をとられていらっしゃるわけでございます。延長に延長を重ねたはずです。一九五六年から六九年、ことしに至るまで、再々延長でまた三年延ばされた。しかし、ようやくその期限切れがもう間近に迫っているわけでございます。本件はこのLTAの第一条にも示すごとく、ガット例外規定なんです。ガット精神違反であるし、ケネディラウンド違反なんです。したがって、ここらあたりでこれを廃棄する、輸出関係国と一緒になって廃棄するということを日本としてもはかるべきではないか。漏れ承るところによると、諸外国にも廃棄の動きがあるやに承っております。これを廃棄することが、やがてそのような悪いことをウールや合繊に及ぼすということはなお悪いことであるという証拠にもなるではないかと思われまするので、御高説を承りたい。
  16. 武内徹太郎

    武内参考人 先ほど宮崎参考人が、このLTA発足当時のボール次官が苛責の念にたえないというようなお考えを持たれたという御発言がありました。私ども業界は、先ほど申しましたこのLTA長期協定先輩業者としまして、いろいろ反省もしておるわけでございますが、簡単にこのLTA発足当時から現在までの状況も申し上げたいと思います。  われわれ業界は、戦前はもちろん戦後におきましても、現在のように近代産業がまだ十分国内に発達しておらない時代に、国内の衣料を整え、あるいは外資をかせぎまして、国民経済の再建あるいは発展のために原料諸物資の輸入のもとをかせぐということには懸命の努力をいたしてまいったつもりでございます。そのようなまた自負も持っておるわけでございますが、綿製品は戦後幸いに復元も早く、経験もございましたので、製品輸出ということにも当時といたしますれば懸命の努力を傾けました。これは生産者のみならず、商社その他相携えて官民一致の努力の結果と存じております。その結果、一九五〇年代後半におきましては、アメリカのほうにも非常に日本綿製品のラッシュが起きまして、当時ある品目に限りましては一方的な自主規制も行なってまいったわけでございますが、御承知のように、一九六一年、ケネディ大統領が国内の繊維産業の助成という意味からセブンポイントの政策を打ち出しまして、その中に国際協議の場をつくれという項目がございました。それに従いまして、先ほどお話ありました当時のボール国務次官があるいは欧州を回り、日本にも立ち寄りまして、そうして日本の協力を要請されたわけでございます。その当時われわれの先輩、当時の関係御当局の方々とボール次官との話し合いにおきましても、次官は、これは自由貿易実現へのステップである、あるいは漸次貿易は拡大していくべきものである、日本の従来とっておりました一方的な規制も十分に尊重する、香港その他からの綿製品輸入の急増ということについては将来十分考慮するというようなお話がありました。高官のわざわざの来朝でもあり、当時の日米友好的な関係からも、われわれ業界といたしましては、そのようなことは基本的には理解できるということで参加をいたしまして、いまお話のありましたように一九六二年の短期協定あるいはその後二年、三年と限りますわれわれの称します旧協定あるいは暫定協定その他を経まして、現在一九六八年から七〇年までの御承知の三カ年の長期協定下にございます。対象品目も綿製品六十四品目という分類になっております。また規制のワクも、グルーピングが大体四つございますが、非常に縦横の規制の中にあることは御承知のとおりでございます。いまお話のありました一九七〇年の期限を控えます一年前と申しますと、この秋になりますが、お話しのそういったようなこの協定に対しまする将来の問題につきましてのアプローチは、いずれこれはあることと存じます。そのようなことで、われわれ業界としましても、これにつきましては十分対策を考えねばなりません。またちょうどいまスタンス長官等がヨーロッパに回られ、あるいは日本にもミッションが来るということは、まさにこの長期協定の発足当時のステップと同じような考えがあるというように考えざるを得ないわけでございます。したがいまして、合繊、毛等に対しまする新しい協定ということは、われわれとして非常に影響も多いことでございますので、絶対に反対でございますし、今度エクスパイアすべきこの協定につきましても、これは関係当局とも十分検討いたしまして、その交渉のタイミングなりあるいは内容なり、ただいまお話のありました、もちろん廃棄ということは完全なわれわれとしての要望ではございますが、その間の国際上あるいは外交上のいろいろなステップにつきまして十分慎重な検討をいたしまして、従来いろいろと――何かここに被告に立ったような感じがいたしますが、正直者がばかを見ないという対策をとってもらいたいと考えております。
  17. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私は市川さんにもちょっとお尋ねしたい点がございましたが、与えられた時間が終わりましたので、後日に譲りたいと存じます。ただ、アメリカにおきましても本件に関しましては歴史的にパストーレ委員会がございます。同時に、近ごろは、ミルズ歳入議長が両院の協議会をつくって、この対策をしておられるようでございます。それに負けないように、本院もその対策並びに組織をつくると同時に、その意思を本委員会の中で行なうだけではなくて、かの地に行って、直接関係議員たちと会って意思の疎通をはかることが、日米友好の関係を一そう助長する基であると思います。私は、この件が一つ間違って日米友好のきずなが阻害される、きずなが切れる、こういうことを非常におそれるということを申し添えまして、質問を終わります。
  18. 大久保武雄

    大久保委員長 猪崎参考人には御多忙のところたいへんありがとうございました。どうぞお引き取りを願います。  武藤嘉文君。
  19. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 時間がたいへんおくれておりますので、なるべく簡単にお話を承りたいと思います。  先ほどから、いろいろ四人の参考人の方々から承っておりまして、私どもも全く同感でございます。実際問題として現在アメリカ繊維産業は非常に好況であり、またいまお話ございましたように、各製品ともほとんど競合していない、あるいはまた、シェアにおいても非常に小さいものである、こういう点からも、あるいはまた綿製品協定を結びましたいきさつからまいりましても、またガット精神からまいりましても、すべて私どもは、今度のこの輸入制限に対する動きというものは、あまりにもアメリカ自分のベトナム戦争あるいはその他の国内の問題に対して必ずしも適切な処置でなかったために国際収支が悪化をした、それと先ほどお話ございましたようなただ単なる大統領選挙のそういう政治的な問題にからんで起きておるというところにおいて全く承服できない、こういう気持ちを持っておるわけでございます。  それはそれといたしまして、私、先ほどお話を承っておりまして、もう一つこういう点はどうであろうか、こういうことも考えられないであろうか、そしてそういう点についてはアメリカは考えておるのかどうか、これを承りたいと思いまして、特に最近アメリカからお帰りになりました宮崎さんにお答えをしていただければたいへんありがたいと思うのでございます。  こういうアメリカ輸入制限措置は絶対とられては困るのでございますが、万が一とるといたしました場合、それは当然先ほどもお話ございますように、日本に対してだけではなくして、ヨーロッパ各国に対してもこれは行なわれるだろう。そうなってまいりますと、現在、ヨーロッパのイギリス、フランスそれぞれポンド、フランが非常に弱くなりまして、国内の経済の建て直しに一生懸命になっておる最中でございますが、こういう輸入制限がこれらの国にもとられてまいりますと、当然現在以上に国際通貨の不安を招くのじゃなかろうか。そうなってまいりますと、結果的にはドルの不安というものがまた起きてくる。そうなると、ドルの建て直しをやるために、国際収支の改善という一つ目的もあるんじゃなかろうか。そういうたてまえからいたしますと、かえってそういうことを望んだことが結果的には望まない方向へいく、逆の方向へ来るんじゃないかという感じが私はするのでございますけれども、こういう点についてアメリカでそういう考え方を持っておる人があるのかどうか、その点についてお聞きをいたしたいと思うのです。
  20. 宮崎輝

    宮崎参考人 それではお答えさしていただきますが、実はスタンス演説はまさにそれに触れております。スタンス自身が、LTAのようなことを合繊及び毛に適用することについてはよくないんだ、いまおっしゃるようなインフレーションを防止しようとしておるのに弊害があるんだということが一つと、もう一つは、ヨーロッパその他の国々が、今度は、いろいろなやるべきことをやってくれない、たとえばアメリカから輸出しようとしても、それをチェックするというようなことになって、大きなマイナスが出るんじゃないかというような意見がある、しかしながらこれは誤りである、こういうふうに言うております。ですから、スタンス演説をよく読んでみますと、そういうようなことを言っているのみならず、商務省内部においても意見がいろいろあるということを演説の中にはっきり言うております。ですから、武藤先生がいまおっしゃいましたように、そういう世論、意見アメリカ政府の内部、業界はむろんでございますが、新聞の社説等に盛んに最近出ております。ですから、これは決して一方的な意見だけではないんでございますが、ただ、ここで一つ申し上げたいことは、そういう点をよく配慮いたしまして、ヨーロッパに対しましては、先ほど私が陳述いたしたときに申し上げましたように、彼らは、演説の中にローコストの国から入ってくるテキスタイルアパレル、それによる市場撹乱、ディスラプションを処理するために新しい方法を検討せねばならない、こういうふうに演説しております。といいますのは、ヨーロッパから出ていますのは、ほとんどフィラメントとファイバーなんです。それですから、ヨーロッパではフィラメント、ファイバーというものがアメリカへ行っておるわけですからあまり影響ないじゃないか、こういうふうに説得するつもりのようです。日本の場合は、同じように私どもはファイバーとフィラメントをつくっておりますが、日本から織物にして一番出ておりますのは、エステルと綿、エステルと毛の混紡が、織物が一番よけいに出ておるわけです。日本の場合はそうですが、ヨーロッパアメリカ間はもちろんそういう織物、二次製品も出ておりますが、主としてやはりフィラメントとファイバーである、こういう意味においてあまり影響がないじゃないか、こういう説得のしかたをする。  それから第二は、つまり市場撹乱を起こしてなければいいんだということですから、英国からの毛織物、これは高級毛織物と称して盛んに行っているんですが、こういうものは入れないんだ、こういうことで英国の反対を緩和したいというような方法を考えておりますが、しかし英国は香港をかかえておりますから、またこれはほかの国と立場が違いますが、そういうふうにして、私が申しましたように、ヨーロッパではやられるのはほとんどイタリアの低級な毛織物だけなんだ、あまり弊害はありませんよ、ねらいは日本及び香港台湾、韓国ですよと、こういってヨーロッパをなだめようとする。そうしてガット会議を開かせて、そこで多数でわれわれを押え込む、こういうような方法に出ているということは、もうくろうと筋の常識になっておりまして、そういう意味で先ほど申しましたように、アメリカ内部でもいろいろな議論はあるし、反対はあるけれどもスタンス氏という人は一つはローヤーでございまして、繊維の問題がいかに大きなインフルエンスがあるかということをまだ十分に御勉強になってないようでございます。にもかかわらず、なぜこんなに急ぐかということは、私どもはいろいろ聞いてみますと、おくれると夏休みになる。そうすると、ヨーロッパのほうで、もう暑中休暇だからやめようやというて時間が延ばされる。アメリカ国会の議員さんたちもお休みになるというので、その前に早くやっつけようというのがどうも本心のようでございます。そういう意味で非常に大急ぎでやってくるということでございまして、私は、お説のとおり、全くいろいろな逆作用になるということをアメリカの識者は現に心配し、言論界も公正な意見を吐いておりますから、スタンス氏のおっしゃるのが決してアメリカの世論を代表しているとは思いませんけれども、ただニクソン氏がああいうふうに選挙のときに約束した、約束もさせられた。サウスカロライナのサーモンド議員に約束させられて、あの州の票がとれたということも原因でございまして、私は、そういう意味において、この問題は経済問題からもうすでに離れている、したがって政治的に問題だと申し上げた理由でございます。そういうことでございますから、決してアメリカ内部でもスタンス意見を全面的に支持しているんではないということを、スタンス自身が認めているということを申し上げたいと思います。
  21. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 それに関連いたしまして、実は私、いまのお話を聞いておりますと、これはたいへんむずかしいことじゃないかという感じがいたしてきたのでございますが、こういう問題については、私どもの党内におきましても、この問うちいろいろ意見がございまして、その一つの考え方としては、とりあえずアメリカへ行く前にヨーロッパ人たち話し合いをしてみたらどうだろうか、過去においてはヨーロッパ繊維業者というものは、たいへん日本に対して心配をしておるといいますか、日本の進出に対しては脅威を持っておる、そういう点においてむずかしいかもしれないけれども、私が先ほど申し上げましたような観点に立って、いまヨーロッパの政治家とわれわれ日本の政治家が話し合ってみる必要があるのではなかろうか、そうして共同戦線を張ってアメリカにぶつかろう、という意見も実は正直私どもの党内であったわけでございますが、そういう点については、いまお話を承りますと、これはかえってむずかしいのじゃなかろうかという感じをいまいたしておるのでございますが、その点については、やはりそれはむずかしい、それよりも直接ぶつかってくれ、直接ぶつからなければいけない、こういうふうに私ども考えを改めていくべきなのか、あるいは一応そういうヨーロッパの政治家とも話し合って、世界経済の大きな立場から話をもっていくということも一応効果があるのかどうか。その辺についてもう少しお話を承りたいと思います。
  22. 宮崎輝

    宮崎参考人 これは私は非常に僣越で、私の範囲を越えた御質問でございますが、私がヨーロッパ人たちと会った印象では、ヨーロッパで一番しっかりしているのは政府であるということでございます。もちろん政府の背後には政治家がおられるわけでございますが、ヨーロッパは政治家あるいは政府というのですか、政治家を含めての政府は非常に信頼に値する。しかし、業界は、どちらかといえばヨーロッパの人はカルテル主義でございまして、アメリカのような自由奔放に競争してやるところとは少し違いますので、多少そこにニュアンスの差がございます。それで私はいろいろな人に会ったわけですが、私は、武藤先生のおっしゃいました政治家同士のお話をいただくということは、これは非常にけっこうだと思いますけれども、やはりアメリカの行政府というものは非常によく勉強しておりまして、法律その他の制度に非常に詳しい人たちばかりですが、ヨーロッパでもやはり政府人たちは非常によく詳しく研究をしておられるようでございまして、この人たちヨーロッパの政治家がよく提携せられる。日本においても、ひとつ日本政府の通産、外務のエキスパートの方々がいろいろなことを御存じでございますし、また私ども業界もまた違ったニュースソースなり情報を持っておりますから、そこらあたりはよく御協力申し上げまして、そしてやはりこの時間は、決して簡単にLTAなんというのはまとまるはずはありませんから、かりに話が進むにしましても、そんなに簡単にいくはずがございませんので、適当な時期に、政府を入れまして、また私どももできましたら材料を提供いたしまして、そうして必要なときにひとつこれは与野党を問わず一致してそういうことをしていただくことがいいのじゃなかろうか、もうしばらく時期を待っていただくほうがいいのじゃなかろうかというふうに考えております。
  23. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 次に、こういうことは絶対反対をして、何としてもわれわれは防がなければいけない。そのためには、いまお話のございましたように、われわれだけではなくして、政府とわれわれ国会がほんとうに一体となって、また場合によれば業界の御協力もいただいて、防がなければならないわけでございますけれども、それには、先ほど加藤委員も少しおっしゃっておられましたが、私は何らかの、ただ反対ということだけではこれはどうにもならないのではなかろうか。でき得るならば具体的な手段をこちらも考えて対処していくべきではなかろうか。その意味においては、先ほどもお話がございましたが、一つには外交的な面において、こういうことは今後の日米の友好関係を悪くするおそれがある、そういう面においてお互いにパートナーシップを持っていかなければいけない、両国はこういうことがあってはいけないというような大義名分論、これもけっこうでございます。ただそれではどうも私は弱いような感じがしておるわけでございます。たとえば、先ほど市川さんのお話の中にございましたように、残存輸入制限品目との取引は困るというようなお話もございましたが、確かにアメリカ側からすれば、この日本残存輸入制限品目が百幾つもあるということ、あるいはまた最近いわれております自動車の自由化をもっと早くしろというような話も出ておるわけでございますけれども、私どもとしては、先ほどのいわゆる市場転換のお話とあわせて、こういう面につきましても私は真剣に前向きに取り組むべきではなかろうか。たとえば輸入制限品目の中にございますグレープフルーツというようなものは、最近非常に自由化の方向に向かおうと政府も考えてきておるようでございますが、そういうものは国内で直接生産されないものである。そういうものについては自由化してもかまわぬのではなかろうかというような考え方を打ち出すというのも私は一つの考え方ではなかろうか。あるいはまた自動車の自由化という問題につきましても、これは自動車の業界ともまたお話し合いをしなければならないし、業界によく御理解を賜わらなければいけないと思いますけれども、現在アメリカへの自動車の輸出、またその自動車が現在アメリカのどういう方向へ売られておるのか、承るところによれば、いわゆる家庭における消費というものに日本の自動車というものが相当に進出しておるということも聞いておるわけでございます。そういう面においても、私は繊維よりは相当この自動車というものは国際競争力が強くなってきておるのではなかろうか。ということならば、繊維というものは、現在構造改善という形においてどんどんこれから国際競争力を強めるためにお願いをしておる最中においては、そういうようなほかの面で何か積極的にこっちが打って出る、ただ向こう反対を受けて立つのではなくして、こちらから具体的なものを持って積極的に攻めていくというのも、私は今後の一つの政策のあり方としては考えていくべきではなかろうか。こう考えておるのでございますが、その点について、これはどなたでもけっこうでございますが、御意見をいただけるならば非常にありがたいと思います。
  24. 武内徹太郎

    武内参考人 私の受け持ちではないかと存じますが、いまお話のございました刺し違え的な方法はどうであろうかというお話でございます。もちろんいろいろこれは両国の経済全体を考えまして、友好的な結論が出ることと存じます。ただ、私の考えといたしましては、わが国が欧米の先進国あるいは開発途上国から申しますといわば中進国ともいわれましょうか、その現段階におきまして、なおいろいろの自由化がおくれあるいは残存輸入品目が多いというような批判も受けると思います。ただ、現段階におきまして、わが国といたしましては、官民努力いたしまして、できるだけの自由化あるいは制限品目の減少ということに努力を続けておること、皆さん方の御努力によると思いますが、もちろん今後ハイレベルにおきます経済外交におきまして、単なる刺し違えということではなくして、両国の十分な理解と協力のもとに、いわばパイプの広い意味の貿易が伸展せねばならぬということには私ども同感でございます。
  25. 市川忍

    市川参考人 もうすでに宮崎さん並びに武内さんからお話があったのでございまして、ことに化合繊輸出組合といった立場から、宮崎さんの化繊協会とは非常によく連絡をとっております。全く宮崎さんと同一意見でございます。  これもお話があったかもしれませんが、ことに昨年この輸入制限の問題がアメリカでやかましくなった当時に、官民の会合を持ちまして、官民、業界、関連業全部一致して、これは話し合いには応じないでいこうという方針をきめておるわけでございます。それが連続しておるわけでございます。しかし、いま武藤先生のおっしゃるとおりに、これからは私個人の意見でございますが、そういう事態があるいは来るかもしれない。また友好、平和というようなことは、これはやはり年じゅう考えていかなければならない問題でありますから、そういう事態が来るかもしれませんけれども、まだ早いんじゃないか。もっと気を強くいっていいんじゃないか。  実はこれは発表すべき問題じゃないので、名前は言わずにおきましょう。アメリカのある州の知事で、しかもニクソンに相当近い人、この人が去年参って、日本及び東南アジアを、韓国、台湾、フィリピン、香港とこう回ったのですね。そうして帰ってニクソン報告しているのです。ニクソンに対して、ちょうどたまたまニクソン大統領就任が決定したときでありましたから、各地へ行って、ニクソン政権の出現に対してはみんな大いに歓迎をしておるけれどもニクソンのいわゆる保護貿易傾向に対しては非常にみんな反発を感じ不安を持っておるということを話しておる。非常に近いAか話しておる。またその知事は、日本におるアメリカの阪神におる総領事のところへ、その報告ニクソンにして、ニクソンと話し合った結果を総領事のところへ話した。その話は聞いておるわけです。やはり真実は彼も決してほんとうの保護貿易論者じゃないというようなことを言っておるわけなんで、彼も大いに考えておるのでしょうが、いまの段階においては、やっぱり強気一本で話し合いに応じないという態度がいいんだろうと私は考えております。  武藤先生、あなたのおじいさんかの時代から私はお知り合いでして、アメリカの絹織物貿易から始まって、もう五十年になります。武藤嘉門先生……。そんなことで、あなたを拝見してなつかしく存じましたので、私事をこの機会に申し上げました。
  26. 大久保武雄

    大久保委員長 武藤山治君。
  27. 武藤山治

    武藤(山)委員 参考人の方々に、二十分の割り当て時間でございますから、質疑と答弁を入れて二十分ということはほとんどこれという質問もできませんが、二、三お伺いいたしたいと思います。  四人の方とも、宮崎さんは、日本の外交姿勢はたいへん弱いという御不満を述べられ、また武内さんは、ガットの場でいかなる工作をされても断固反対の態度を貫け、また市川さんは、これはもう経済問題ではないんだ、純粋な政治問題になっているのだ、また猪崎さんは、いかなることがあっても断固拒否という姿勢を貫け、こういう強い姿勢を四人とも示されたわけであります。私も常々アメリカ輸入制限についてはそういう気持ちを持ってきた一人として、結論は同感であります。ただ業界としてやらねばならぬ手だてというものに何があるのか、また現実にどういうことをやってきたのか、そういう点をまず参考にちょっと伺っておきたいのでありますが、通産省からいただいた資料を見ると、いろいろニクソン演説から国会議員の発言、またアメリカの全米輸入業者協会の大統領あての書簡、こういうようなものを読んでみると、非常に日本を理解した発言もあるし、またアメリカオンリーのエゴを貫こうとする発言もあって、まさにアメリカの国内の中に大きな二つの、保護貿易と自由貿易という考え方が流れていることを察知することができるのであります。  特に、最近アメリカへ行ってきた宮崎さんにお尋ねをいたしますが、全米輸入業者協会が二月三日に大統領に提出をした文書、こういうようなものは全米の業界などでもかなり周知されているのかどうか。  それから、先ほど市川さんの提出された資料は、なかなか具体的に経済的な観点から制限する必要がないということを、こまごまと、しかも非常に説得力のある資料になっておるのでありますが、そういう資料は英文に直して日本の大使館を通じて業界なり協会なりあらゆるそういうグループに頒布しているのかどうか、その辺の状態をまずちょっとお尋ねしておきたいと思います。
  28. 宮崎輝

    宮崎参考人 アメリカン・インポート・アソシエーション、AIAと言っておりますが、実はそこでつくったデータというのは全部私どもの仲間でつくったデータなんです。ですから、これは私よく知っておりますが、これは政府筋はむろん、各議員にほとんど配ってございます。それからヨーロッパの関係者にも送ってあります。そういう意味で十分に周知徹底せしめてございます。  それから、その他どういうPRをしているかと申しますと、たとえば先ほど申しましたアメリカの農業団体の会議がございますときに、日本の駐米大使館の人がスピーチをおやりになる。そういうときに非常にいいスピーチをおやりいただくのでファンレターが来るというぐらいでありまして、そういうあらゆる機会を利用していろいろな、いま市川さんのお出しになったようなああいう話をしてございます。ですからだんだんにわかってきておりますが、ただ問題は、繊維の場合は御承知のようにユーザーというのは大衆の婦人子供でございますものですから、そういう消費者の組織がないんですね。それだからインポーターの組織、これは実はあまり強くないのです。それで、そのほかに小売り業者の団体、これはこの間声明を出しました。それから百貨店協会、こういうようなところ、そういう点にどんどんさっき申しましたデータを送って話をしておりまして、そういう人たちが常にこの問題を討議しておる。それと同時に、さっき言いましたように、あらゆる方面に資料を配って、この人たちに読んでもらっているということで、だんだんになるほどということがわかってきてもらっております。
  29. 市川忍

    市川参考人 ただいま先生から御指摘の点、これはアメリカにわれわれの団体の法律顧問がおるわけです。マイク正岡という二世でありますが、この点を通じて作成にも参画しておりますし、またいま事務局から聞きますと、個人的な形で配られてありますということで、要所要所へはアメリカでもちゃんとすでに渡っておりますし、さらにまた第二回目の詳細なものを、こういった同じような材料を作成中だそうでございます。
  30. 武藤山治

    武藤(山)委員 日本政府は、アメリカ輸入制限に対する対策費として三億七千五百万円でしたか、局長、予算に盛ってありますね。それはこういう業界の書類作成や何かにそのお金は配っているのですか。――わからなければあとでよろしゅうございますが、予算書を見ると、三億七千五百万円が対米関係の輸入制限反対に使う資金だということになっておると私は記憶しておるので、そういうものをどういうように有効に業界と通産省なり外務省が使うかということも、今回のような場合の一つの問題点だろうと私は思うのであります。これらについても十分ひとつ通産、外務、業界と話し合って、実効のあがるような使い方をしていただきたいと期待をいたしておるわけであります。  それから宮崎さん、いま武藤嘉文君から、輸入制限の百二十一品目がまだ日本にあり、あるいは資本自由化の問題も完全にアメリカの期待どおりいっていない、そういうものとのすりかえで輸入制限というものが繊維に転嫁されてきているという質問もありましたが、そういう動きが実際上はあるのかないのか、全く繊維オンリーの立場から、ニクソンが立候補して、そのときの公約ということで進められてきているのか、アメリカを歩いた感じでは、宮崎さん、どちらにウエートがございますか。
  31. 大久保武雄

    大久保委員長 市川参考人には御多用のところ、まことにありがとうございました。どうぞお引き取りになってください。  宮崎参考人
  32. 宮崎輝

    宮崎参考人 実はその点ですが、先ほど申しましたように、繊維の問題は十三年の歴史がございまして、毛でも五、六年たっております。ですから非常に根の深い問題で、いまの百二十一品目の非関税障壁の問題であるとか自動車の自由化の問題とは必ずしもパッケージにはなっておりません。しかしながら御承知のようにアメリカでエマージェンシーコミッティーというのができましたね。そのチェアマンのワトソンというIBMの会長が今度はペプシコーラの社長にかわったわけですペプシコーラの社長というのはニクソンと非常に仲のいい人なんです。この人がニクソンに説得されまして、繊維問題の自主規制反対するという動きから手を引きました。と申しますのは、ワトソンは自動車に関係ありませんけれども日本自由化がおくれているということに対するアメリカ側の不満は非常に強いのです。ですからムード的にやはり日本だってやっているじゃないか、アメリカでやっていいだろうというムードは確かにあおっております。そういういわゆるアンダイレクトリーの影響は確かにございます。
  33. 武藤山治

    武藤(山)委員 こういうことは参考人に別に必要ないのでありますが、アメリカは今日どんどんインフレに進んでおるし、国際収支が赤字だ。赤字内容を見ると、軍事支出が一年間に三十一億ドルも赤字になったり、政府援助が十八億ドルも赤字になる。軍事支出と政府援助だけでとにかく五十億ドルの赤字要因になっている。こういうようなアメリカの責任を、あたかも零細な繊維に責任があるようなとらえ方をして輸入制限をするという態度は、まことにけしからぬと思うのであります。ただ、ここでけしからぬ、けしからぬ、断固反対だと言っていてそのように推移するのか、がむしゃらにアメリカの強大な国家権力、軍事力、外交力、そういうものを背景にして、小国が無理やりにのまされてしまうのかという、ほんとうに理不尽なアメリカの態度でありますが、そういう態度をどうチェックできるのか、ここがやはり最大の関心事であります。こういうことを議論することは前提が間違いかもしれませんが、アメリカ政府協定でくるのかあるいは業者間の話し合い規制をさせてこようとするのか、いまの時点では宮崎さん、大体見通しとしてどちらの態度をアメリカはとってくるのが濃厚でしょうか。
  34. 宮崎輝

    宮崎参考人 業者間の話し合いというのは、御存じのとおりアメリカには独禁法がございまして、できないわけです。それでこの間、鉄の場合でも、日本及びEECの鉄鋼メーカーが手紙をアメリカの国務長官に書いたという形であれはやっているわけですが、あれでも、独禁法違反だといってアメリカの一部の人が騒いでいるわけですから、そういうような問題が一つと、それからもう一つは、今度は合繊及び毛はすでにある綿のLTAを適用しようという考え方でございますので、今度は政府協定ということでくると思っております。
  35. 武藤山治

    武藤(山)委員 そういたしますと、政府が公正かつ堂々たる外交姿勢を貫けば、これは押しつけられずに拒否できる、政府の態度いかんによって。業界としては大体そういう認識をされているわけでございましょうか。
  36. 宮崎輝

    宮崎参考人 その点につきましては、実はこういうところで申し上げるのははばかりますけれどもヨーロッパ筋の情報では、非常に政府のほうはしっかりした態度をとっておられますが、ただ先ほど申しましたように、分断作戦で、あまりヨーロッパには被害がないというような方向で問題を持ちかけられたときに、ヨーロッパ政府がどういうふうに出ていくだろうかという問題がございます。ですから、最後の問題は日本でございますし、またアメリカのねらいは日本でございまして、その日本及び隣国の韓国、台湾香港等の、日本から原料を買って、二次製品にしてアメリカに売っているこの一連のグループが結局目標なんです。ですから、私は実はこういうことを言われたのです。いままでは日本ヨーロッパについていけばよかった、しかしながら、たまには日本がリーダーシップをとりなさい。――というのは、化合繊は、御存じのように日本の生産はドイツの約倍ございます。もちろんアメリカの半分しかありませんけれども、非常に競争力もある、生産の量も多い。そういうような産業界であるならば、今度は日本がリーダーシップをとって堂々とやりなさい、これは経済的理由があるなら別だ、何も理由はないのですから、そういうときに日本が譲るような態度をとるならば、今後日本はどんな要求をされても譲らなければなりませんよ、他の産業にも無限に及びますよということを言われたのです。私は、今度は日本政府、また政府をバックアップする私ども業界が一致結束して政府をサポートし、同時に、国会先生方政府を大いにひとつ激励し、ある場合においては拘束していただいて、そして一体となってやっていただきますならば、先ほど申しましたように、ガット規定でちゃんとこういう場合の救済の条項があるわけですから、逃げ道はあるのです。また、アメリカはそのガット規定をよりシビアに国内法で縛っておりますから、これを緩和するということをミルズ自身も言っておりますし、それからやめていきましたアンバサダー・ロスも、そういう勧告をして去っておるわけでありますから、アメリカ通商拡大法の改正によっていく方法があるのではないかというふうに考えております。
  37. 武藤山治

    武藤(山)委員 割り当ての時間でございますからやめますが、アメリカはまことに身がってな、エゴを通す国だということを痛感するのであります。特に皆さんがつくる資料の中にも書かれておるのじゃないかと思うのですが、アメリカ国内と直接日本が貿易をしている量はそう多くないにしても、第三国のアメリカ系の企業から日本輸入しているもの、これを含めるとこれはたいへんな額ですね。石油などは九〇%、鉄鉱石も四〇%、銅地金が三〇%、亜鉛鉄鉱が五〇%でしょう。そういうことをアメリカ政府なり業者なりがもうちょっと理解して、日本アメリカの協調あるいは市場の形成、そういうようなものをほんとうに具体的に現実にアメリカが認識してくれるような努力あるいはPR、そういうものを日本政府として徹底的にやらぬといかぬという気がするのであります。直接取引だけの量で、たとえばアメリカ繊維輸入は八億ドルだ、そのうち四億七千万ドルが日本から入ってくるのだ、それだけを見て、どうもこれはシェアが多過ぎるというようなアメリカ業界の感じは、これは消さなければいかぬ。これは事実に反するのだ、そういうことをこれから業界の資料の中でも十分ひとつ第三国の米国系企業から日本輸入している量というものも大きく取り上げていただきたい、こういう気がするわけでありますが、所見を伺って私の質問を終わりたいと思います。
  38. 宮崎輝

    宮崎参考人 ただいま非常にいいことを伺いましたが、まことにそのとおりでございます。実は先ほど申しましたように、アメリカ日本からの輸出は四、五億ドルだ、しかし香港台湾、韓国を入れるとこれだけになるのだ、こういうことを言っておるわけなんですね。そうしますと、先生のただいま御指摘のとおり、鉄鉱石をアメリカのスチールメーカーの投資した先から買っておるわけです。石油は御存じのようにアメリカ資本でほとんど独占されて、九九%を日本輸入しているわけです。御承知のとおり直接取引では日本のほうがすでに八億ドル近く黒字になっておりますけれども、そういうものを考えますと、それはおそらく日本のほうがはるかに赤字だと思います。お説のとおりでございます。
  39. 武藤山治

    武藤(山)委員 割り当て時間でありますので、終わります。
  40. 大久保武雄

    大久保委員長 中村重光君。
  41. 中村重光

    ○中村(重)委員 宮崎参考人にお尋ねいたします。  このアメリカ自主規制に対する反対の積極的な活動を展開されておるようですが、先般韓国とかあるいは台湾をお回りになったのだと思うのですが、その際台湾であるとかあるいは韓国であるとか、こうした開発途上国アメリカ輸入制限に対する反応はどういうことであったのか。御承知のとおりに韓国、台湾から相当繊維製品先進国にも入ってきている。制限をされることは影響がもちろん大きいわけだから、これは反対であろうとは思いますけれども、特恵関税の問題等々があるわけですが、日本あるいはヨーロッパ諸国と共同でもって反対運動を積極的に展開していこうという意図があるのかどうか、その点はいかがでしょうか。
  42. 宮崎輝

    宮崎参考人 お答え申し上げます。実は香港台湾、韓国で少しずつニュアンスが違います。御存じのように韓国は一九七一年でエードがなくなるわけです。いま小麦とコットンをアメリカからもらっておるわけですが、これが一九七一年でなくなる。これは約一億ドルあるそうです。しかし、この間御承知のように新聞で発表されましたように、韓国に駐在しておられるアメリカのその方面の担当者が、どうあろうと一九七一年でエードはやめるのだということをおっしゃいましたですね。それで韓国は、それをどうしても輸出でカバーしなければいけないというので、非常に猛烈に輸出増進対策をとっておられるわけですね。これがまたアメリカでも非常に問題になっておるわけです。  それで、いままでどういうことをやっておるかと申しますと、これはあまり申し上げにくいのですけれども、実は日本原料を買いましてその一四、五%を国内に流す。そうするとコストの倍以上に売れるので、これでもうかるわけです。これがインセンティブになって輸出のドライブに使われておるわけです。こういうことをまたアメリカの人はよく知っております。でありますから、こういう問題がありまして、あまり倍々に輸出がふえておるものですから、これが特に二次製品ですから、非常にドラスチックに非常に安い値で入ってくるということはアメリカじゅうの人の非常なクレームになっております。しかしながら、われわれ以上に韓国は輸出するとなればほとんど繊維品しかない。のみならず中共やソ連には売れないわけですね。日本のように市場は、われわれはもうすでにソ連に相当売り込みをやっておりますけれども、そういう道もないのじゃないか。そうすると、結局、韓国からの輸入アメリカが押えるのであったならば永久に韓国を養ってくれ、そうしてくれということを韓国は強くアメリカに言っておるわけです。ですから私どもよりもはるかにもっと問題を真剣に考えております。  台湾は少し違いますけれども台湾LTAに非常に不満がありますのは、綿花の輸入量が綿織物の輸入量の約十倍です、量で。金額で倍輸入がある。だから半分だけは輸入超過になっているわけですね。ですからLTAそのものに非常に台湾は不満でございます。しかしながら、台湾政府がほとんどでございますし、政府が、本国といいますか本島から来た人と地元の人と必ずしも意見が一致しない。人間でいろいろな考え方が一致しない。それから台湾は国営事業が非常に多いのです。これはほとんど向こうから来た人たちがやっておるというようなことで、非常にデリケートな関係がございます。  香港のほうは、実は賃金が上がりまして、ほとんど日本の七、八〇%の賃金ベースになっております。同時に、中共からの逃亡者といいますかレフュージーが最近非常に減りまして、労働量が必ずしも十分じゃございません。ですから、むしろ香港アメリカテキスタイルアパレルのメーカーとジョイントベンチャーをつくろうという話がいま進行しております。そしてくつ下なんか、あれは関税がかかりませんから、アメリカから安くつくって持っていく。こういう事態になりますと、様相は一変するわけです。もうすでに台湾方面アメリカテキスタイルメーカーが会社をつくろうとしております。だからもう一、二年しますと、そういう様子がだんだん変わってまいります。現にスタンス演説の中に、遠い低賃金の国に出ていかざるを得なくなったと言っておりますけれども、出ていくのが当然だと言っているのです。というのは自動車なんかどんどん出ていっている。石油も出ていっている。にもかかわらずなぜあなた方は出ていかないのかと言っているので、おそらく台湾かに出ていくようになるでしょう。そういう状態でございます。
  43. 中村重光

    ○中村(重)委員 私どもこの委員会は、お話を伺いましたあとで、きょう委員長提案の形でもって、アメリカ繊維製品輸入制限に対する積極的な反対の行動を展開するように、政府に対して、そうした委員会の意思をまとめて決議をして、そうして積極的な態度を促す、こういう用意をいたしておるわけです。そこで日本政府の態度ですが、どうも私どもは消極的な感じがしてならないのです。三月十九日に下田駐米大使がアメリカの商務省に正式に申し入れをしておるのですが、それが初めてだということなんです。情報等は打診をしておったかもしれませんけれども、正式申し入ればまだやっていなかった、こういうことです。それと、いままで当委員会におきましても大平通産大臣に対して質疑をしてまいりましたが、どうも反対動きを盛り上げていくということは逆効果になるのではないかという感じもあるように私どもは感じ取ったわけです。きわめて慎重な態度をとっておるということでございます。ところが、宮崎参考人も御承知でございましょうが、この二十二日でございましたか、全米の繊維製造協会の総会にスタンス商務長官出席をして演説をしておるのですが、繊維製品自主規制に対して関係国が反対をしておるということは、これは間違いなんだ、それから自主規制が成功しないというようなことも、これは間違い、アメリカ政府をひとつ信頼をしろ、強い決意を持ってやるのだということを言っておるのであります。自主規制日本が応じなかった場合、アメリカが一方的に輸入制限まで踏み切るというようなことになるのではないか、そういったことも消息筋の中ではいろいろと取りざたされておるようでございますが、その点に対して、宮崎参考人としては、アメリカを訪問されあるいはヨーロッパを訪問された感触、それに基づくところの日本政府の現在の取り組み方ということに対して、どうあるべきかということについて率直にひとつ伺ってみたいと思います。
  44. 宮崎輝

    宮崎参考人 非常にごもっともな質問でございまして、ポイントでございますが、ここに私スタンス演説を全部持っておりますが、お説のとおり、スタンスはきわめてはっきりとそう言っております。それではLTAができなかったときにアメリカはクォータ法案を通すのかということですが、これはアメリカのことですから、私ども何ともわかりません。しかしながら、もしもクォータ法案を通すということになれば、これは鉄もその他も全部通さざるを得ないわけです。繊維だけというわけにいかぬです。全部通します。そうなったらアメリカはもう混乱だということを、ちゃんとミルズ氏が一月二十七日でしたか演説をして言うているわけです。だから自主規制に持っていくしか方法はないのだ、自分ミルズ法案というのを出したのだ、しかし結局こんなことはだめだということになった。ミルズ演説集がみなここにございますけれども。ですからクォータ法案とはいいましても、ほんとうはLTAを強制する法律なんですけれども、それもホーリングス法案ミルズ法案で多少内容は違いますけれども、しかしそれをやったらおそらく世界じゅうが問題になると思いますので、おどしにはききますけれども、そうなかなかできないのじゃないか。同時に、私考えておりますのは、ホーリングス法案が両院協議会にかかりましたとき、あれをもっと緩和して実害のないようなことにして通さないかということでミルズ氏から話があったんだそうです。それを当時のジョンソン・アドミニストレーションが反対してアウトになったのですが、あれを緩和するとどうなりますかといいますと、LTAをやった場合の時限立法とアウトサイダー規制立法とほとんど変わらぬ法律になるのです。つまり初めからLTAをやったのと同じような法律になるのですね。ここらあたりがポイントで、われわれ、専門家と十分に研究をしております。
  45. 大久保武雄

    大久保委員長 吉田泰造君。
  46. 吉田泰造

    ○吉田(泰)委員 朝から各委員がいろいろ質問がございましたので、非常に重複をする点もございますし、各参考人、非常に長いことごやっかいになっておりますので、できるだけ簡潔にお話を申し上げたいと思います。  綿製品輸入制限の問題につきましては、わが党におきましては先月の末に声明書を出しまして、政府、通産大臣、総理大臣、外務大臣に手渡してまいりました。そういういきさつがございます。もちろん朝からいろいろ各委員の質問でほとんど網羅されておると思うのでございますが、なお二、三、重複する点は御了承いただきまして御質問を申し上げたいと思います。  まず、アメリカ、欧州並びに東南アジア等、非常に精力的に動いておられます宮崎参考人にお尋ねを申し上げたいのでございますが、先ほど来の御答弁を聞いておりまして、日本の外交が非常に弱いというようなお話がございました。この輸入制限の見通しにつきまして、経済的な理由が何もないとするならば政治的な解決にまたなければいけない。その政治的な解決で、先ほど加藤委員から御質問がございましたけれども、何をどうすればいいかという御質問に対して御答弁をいただきましたが、私は再度、政府なりあるいは国会なり、このあとで商工委員会でも決議が行なわれるそうでございますが、そういう意思の表示をすることによって、はたしてそれでいいのかどうか。先ほど宮崎参考人の御答弁の中でございましたいわゆる輸入制限に対する報復的な意思表示、そういうことも盛り込んで、日本の甘い外交に対して、いろんな問題点はあるでしょうけれども、しゃんとした意見を出すべきなのかどうか。アメリカあたりを回っておいでになりまして、いま日本政府並びに国会がとらなければいけない緊急の問題、処置、そういうことについて御意見を再度ちょうだいでさましたらけっこうだと思います。
  47. 宮崎輝

    宮崎参考人 私、日本政府が決して軟弱だとは思いませんけれども、最近は非常によく外務省の方も理解していただきまして、問題の焦点は十分によくわかっておられます。申し入れがおそかったということは確かにあるかもしれませんが、実はイタリアの大使館から、こんなことを申しては何ですが、非常に心配してこちらのほうに照会がありまして、日本はどうするのかということを言ってきたのです。いや、もうちゃんと言うてありますよと言うたぐらいに、向こうでは各国の人ははらはらしておりました。しかし私が率直に感じますことは、通商問題というと、大体士農工商ということばが昔からありますけれども、商売人の仕事というものは何といいますかレベルの低いものだという、そういう意識がもしもあるとすれば、それは困ったものだと思います。しかし実際、沖繩問題というのが最初非常に取り上げられまして、アメリカの大使館はこの沖繩問題が最重点だと思いますけれども、しかしそれに劣らずやはり通商問題ということは、日本の三分の一の輸出、それが日本の成長をささえている大きなる要素なんですから、これは本気に沖繩問題と同等に扱っていただきたいという希望を持っておりますが、外務省、通産省その他の出先の方々の中に非常にエキスパートがおられまして、よくこの事情承知しておられます。それからまた同時に、われわれいろいろアメリカに頼んでいる人たちはほとんど共通に大使館にもりテインされておりまして、そのほかに私どもいろんな者を雇っておりますので、そういう意味では非常に連絡がよくいっております。  第二の、何か報復的な措置をどうかということなんですが、問題は、これは先ほども申しましたように、木材の輸出制限のときに報復するということを下田大使はわざわざおっしゃったわけです。ところが、しり切れトンボであとが続かなかったというので、ほんとうに恥をかいたというので、言えと言われれば出先の外交官はおっしゃるのでしょうけれども、言わした以上はやってやらないと、これから発言はできないわけですよ。私はそれは表現の方法はどういう方法がいいかは知りませんが、必ずやるという決意を持ってやっていただきたい。そうでないと、また言うたか、犬の遠ぼえだということで信用がないんですから、そうじゃなくて、ことばはやわらかでもいいが、必ずやるべきことはやるんだということでぜひお願いしたいと思います。
  48. 吉田泰造

    ○吉田(泰)委員 いま報復のことにつきまして御意見をお伺い申し上げましたが、意思を表示したらやることはやらなければいけない、これは政府のこれからやるべき仕事であろうと思います。ただ、そういう業界全体に対して、アメリカ業界そのものが、繊維業界だけでなくてほかの業界に、そういう報復的なファクターがあるということのPRが非常に足らぬといいますか、認識が非常に弱いのじゃないか。そういう認識のもとに繊維業界だけが、政府選挙公約だろうと思うのですが、ニクソン大統領選挙のとき、に約束をした、そういう形が出ておるのではなかろうかと思うのでございます。したがって、ほかの商品、ほかの業界についての日本政府のいわゆる働きかけが要るのではないか。そういう正しい認識の上に繊維品の輸入制限ということを取り上げないと、私は、ほんとうの当を得た日本政府反対申し入れじゃなくなってくるのじゃないか、かように考えます。それと同時に、これは先ほどどなたかの委員に御答弁がございましたが、関連する質問で、ほかの業界の認識が足らないということと同時に、たとえば日本輸入制限の百二十一品目の問題あるいは自動車自由化がおくれている問題、アメリカの意思に沿っていない問題、そういう日本に都合の悪い問題だけがクローズアップされておるのではなかろうか。たとえば、先ほど宮崎参考人がお述べになりましたところの小麦とかそういう農作物の問題に対して、各繊維業界アメリカ内の各業界内の意思の疎通があるのかどうか、この辺についてアメリカの現状をごらんになられまして御意見を承りたいと思います。
  49. 宮崎輝

    宮崎参考人 問題は私は二つあると思います。  一つは、ただいまアメリカのことの御質問でございましたけれども、私は、日本業界においても非常に認識が足りないと思います。というのは、あれは繊維だ、繊維だけでわれわれは影響ないのだという態度ではいけない。これは実は防波堤なんですね。ここでくずれたらあらゆるものがLTAになるという認識が他の業界にない。これは私ども業界の責任でもございます。しかし同時に、政府も同じことはやはり考えていただかなければならないというように思います。そういう意味において現にテレビがその問題になっております。テレビがいまアンチダンピング法で審査中なんですが、あれで百ドル割ったらもうだめなんだそうですが、それをやめるかわりに自主規制したらどうかというようなことはもう出ておるわけですよ。ですから化合繊、毛のように、全然経済的なバックグラウンドがないにかかわらず自主規制に応じたということになりますと、他の業界アメリカがもっときつい業界自主規制を申し込まれたら、それを断わる理由はないわけです。そういう意味で、これは決して日本繊維だけの問題ではない、日本産業全体の問題である、日本全体の輸出政策の問題であるというような認識を、日本業界は、政府の人はもちろん当然でございますが、する必要があるのではないかということが第一点。  それから第二点は、いま御指摘のように繊維だけではない、繊維に対してわれわれが何らかの報復のような措置をとるとすれば、農産物ということになるわけなんですが、そのときに農産物の人たちにPRがしてあるかという御指摘のように伺いましたけれどもアメリカの農産物の業界は、一番やはりこの問題を心配してくれています。で、実はその道の専門家で私どもの親しい人がいま農務次官になっておりますが、そういう意味ではアメリカの農村団体が一番この問題を心配しておるということ。これは日本だけではございません。ヨーロッパに対して大豆がいま四億ドルほどアメリカから出ておるのです。それはマーガリンになっておるのですが、マーガリンの生産を押えないとバターが余ってしようがないから、フランスが、関税を上げるわけにいきませんから、取引高税を上げるという問題がいま起こっているのですが、この問題でも実はアメリカでは大問題になっている。ですからそういう意味においては、私どもアメリカの農業団体と十分に連絡をとっていまやっております。これは先ほど申しましたように、アメリカの駐米大公使等がしょっちゅう会合に出てスピーチをしたり、そういうようなPRをいたしております。  もう一つは、日本のいろいろな非関税障壁その他がやたらとクローズアップされているということでございますが、これはもちろん先ほど加藤先生からも御指摘のように、われわれも自主規制の名において六十数品目をやられておるわけです。その中には全くほんとうの意味の強制せられたものと、そうでないものとありますけれども、こういうものもわれわれチャンスあるごとにアメリカの議員その他に話をしております。よく知っておるのです。知っておりますが、向こうの人は自分に都合の悪いときは黙っております。黙っているときはこっちのいうことを認めたというふうに思いますが、そういう意味でできる限りのことは、これは外務省その他とも連絡しましてやっております。これからもやるつもりでございます。
  50. 吉田泰造

    ○吉田(泰)委員 もう質問は尽くされたと思いますが、最後に一点だけ再度お伺いします。  この輸入制限問題でヨーロッパ、東南アジアアメリカをお回りになられまして、その各業界政府あるいは各アメリカの議員の方々にお会いになった結果、もちろん交渉のことですから相手がございましょうし、アメリカの出方にまたなければいけないということは論をまちませんが、見通しは、業界の指導者として宮崎参考人はどういうふうにお持ちでございましょうか。
  51. 宮崎輝

    宮崎参考人 これは非常にむずかしくて、来年のことを言うと鬼が笑うというくらいですし、いわんや相手のあることですから、むずかしくて申し上げられませんけれども、しかし問題はやり方だと思うのです。特にポイントは日本の腹がまえがまた一番大事だ、そう思います。
  52. 吉田泰造

    ○吉田(泰)委員 私の質問はこれで終わります。
  53. 大久保武雄

  54. 近江巳記夫

    ○近江委員 もう非常に時間がないようでございますので、一、二点だけお伺いしたいと思います。  わが党といたしましても、あらゆる機会にこの問題につきまして政府を叱喧してきたわけでございまして、これからの波及を考えてまいりますと、何としてもこれは強い態度で臨まなければならない、これは皆さん方の御意見と私たちも全く一致いたしております。そこで、皆さん方として、政府にその弱腰外交をひとつ改めてもらいたい、こういう強い要望があったわけでございますが、そういう基本的な姿勢は当然としまして、特に皆さん方として、交渉にこういう具体的な場を設けていけばいいとか、そういう具体的な政府に対するお考え、要望というものがあろうかと思うのですが、その辺のところ何か構想がありましたら、もう少しお聞きしたいと思うのです。どちらでもけっこうでございますから、御答弁願います。
  55. 宮崎輝

    宮崎参考人 戦術は言わないことということでございまして、これは相手の出方によっていろいろ変わると私は思います。実はヨーロッパ筋の方ともいろいろ打ち合わせをいたしておりますが、あの人たちは非常にうまいですから、じょうずにやっておりまして、相手の出方によっていろいろな手を打つ必要があると思います。これは日本の外務省その他の方もみな海外に駐在しておられますし、私どももいろいろ情報を持っておりますから、そのつど相手の出方に応じてやはり手を打っていく、団体交渉と一緒でございます。そういうことでよろしくお願いしたいと思います。
  56. 近江巳記夫

    ○近江委員 業界の皆さんの御意見はよくわかっておるのですが、こうした状態になった、それはもう当然アメリカのそういう情勢というものがほとんどの要因であろう、私はこのように思いますが、一面わが国のそうした綿織物業界なり繊維業界なりが、もっと秩序立った対米輸出を行なうべきであった、こういう反省の声も一部あるわけですが、これに対してはいかがでありますか。
  57. 宮崎輝

    宮崎参考人 それはまことに御指摘のとおりでございまして、問題は二つございます。つまり、なぜオーダリーにマーケッティングをしなかったかということでございますが、今度のスタンス演説でもやはりディスラクション、市場撹乱だと言っておるのです。ですから、そういう意味においてはもっとオーダリーにやらなければならぬというておるのですが、しかし最近、昔のようなワンダラー・ブラウスというようなことはありませんのです。私も今度ニューヨークで実際の取引を見てきましたけれども、値段等はほとんど向こうのアンブランデッドものよりも高いのです。そういう点は注意しておりますし、今後もやります。ただしもう一つの問題は、これは実はアメリカ側の言い分なんですが、日本ヨーロッパその他の国々とそういう一つ協定をしておるじゃないか、特に昨年末カナダとやったじゃないか、あらゆる国とやっておきながら、なぜアメリカとだけやらぬのか、これを言うのです。これは全くそのとおりです。それで私はこう答えておるのです。それは実は間違いなんだ、それぞれ一々理由はあります、ありますけれども、それは実は間違いなんで、これからは全部そういうものも撤回してもらうし、日本もさっき出ましたけれどもいろいろ自由化をやるという方向で、逆にそういう従来やっておることを訂正するという方向で解決しようじゃありませんか、こういうふうに言っております。
  58. 近江巳記夫

    ○近江委員 これは少し技術的な面に入るかもしれませんが、わが国のそうした製品が、これから非常に高級品を生産するとして、非常に安くアメリカでそのように販売ができる。そうなってきますと、アメリカの国民としては、結局具体的にそうした輸入制限というようなことに黙っておれない。そうしますと、こうした保護貿易を主張する者は結局は孤立しなければならない。こういうように、内面的な技術の面から弱めていくということも考えられると思うのです。そうしますと、わが国のそうした紡績業あるいは織布業が、現在進めておる構造改善によって、そのようなアメリカの技術を越すような水準にまでいけるかどうか、この辺のところを少しお聞きしたいと思うのです。
  59. 武内徹太郎

    武内参考人 いまお話しになりましたオーダリー・マーケティングにかね合いましてお話し申し上げたいと思います。  先ほど触れましたように、戦後わが国といたしまして、外貨獲得の面その他の面で繊維品がアメリカに進出したことも事実でございます。そのようなことで、ワンダラー・ブラウスというような一般の批判も受けたようなこともございます。ただ最近になりますと、当時と違いまして、あるいは日本の化繊、合繊、その他の原料の面におきましても十分な新しい技術の開発が進んでおおります。したがいまして、従来のあるいは労働の搾取であるとか、あるいはコストを割って向こうにフラッドするというような懸念はなくなっておるものと考えます。まして、いろいろと平素御支援いただいております繊維業界構造改善も漸次進んでまいります。いわゆる資本集約的な高度の技術、高度の製品をこれからつくり、またこれを輸出せねばならぬ立場にございます。従来とかく批判のありました、労働力を駆使して、安価にしてあるいは比較的品質の低いものというものにわれわれ志向しておるわけではございません。また先ほど一部触れましたように、現在の繊維業界は綿あるいは合繊、毛という純粋なものに限っているわけではございませんで、いわゆる複合繊維時代になっております。各企業がくふうと努力を重ねまして、アメリカその他におきます最終製品としての消費の動向を十分見きわめまして、それに適するようなものをできるだけ消費者の嗜好に合った有効需要をつくり出すものという意味の努力を重ねておるわけでございまして、その点われわれ業界のこれからの最も重要なポイントとして検討し推進してまいりたいと考えております。
  60. 近江巳記夫

    ○近江委員 もう一間で終わります。  アメリカのそういうような動きがこれからも相当根強く続いていくと思うのです。そこで、市場の問題でありますが、さらにこれからはソ連、中共等の共産圏諸国あるいはまた東南アジア等、これからどんどんと市場を拡大していかなければならない、このように思うのですが、その辺のところの見通しをひとつお聞きしたい。これで終わりたいと思います。
  61. 宮崎輝

    宮崎参考人 御説のとおりでございまして、アメリカに対するわれわれの合繊に関しましての輸出のシェアは大体一五、六%です。そこまでいま押してきておりまして、いまソ連と、天然ガスを買って合繊のものを売るとか、あるいはナホトカ港その他の港を改修して、そのかわり二次製品を売るとかということで、日ソ間の協定以外の分として貿易を拡大することを非常に努力しております。  それから中共の問題も、これは安買いでございまして、値段がものすごく安いものですから弱っておるのですが、しかしこれも一人一ポンド使えば七億ポンド出る大きな市場ですから、これはやはりわれわれとしては注目しなければならないと思っております。  それから東南アジアその他に対しましては、日本の労働力も不足してまいりましたので、紡績その他の加工工場をどんどんつくっております。  それから将来はアメリカにジョイントベンチャーをつくることも考えております。と申しますのは、先ほど申しましたようにアメリカ自身が出ていく。私どもアメリカに出ていく。そういたしますと交錯しますから、だんだん関係は変わっていくわけです。現にASP制度でヨーロッパアメリカに廃止を強く迫っておりますけれども、そのASP制度の廃止を強く主張しておる会社が、アメリカで一〇〇%の会社を今度はつくっているわけです。そうなりましたら、逆にASPを残してくれと言い出すわけです。そういうふうに経済は変わりますので、何年かたちますと、日米のこういう問題もだんだん現実の問題として解決するのじゃないか。だから、早急に変なことにならないで、少なくとも何とか時間をかせいでもらいたいということを考えておるわけでございます。
  62. 近江巳記夫

    ○近江委員 終わります。     ―――――――――――――
  63. 大久保武雄

    大久保委員長 これより大平通商産業大臣に対する質疑を行ないます。中村重光君。
  64. 中村重光

    ○中村(重)委員 きょうは宮崎参考人ほか繊維関係四団体の代表の方おいでていただいて、アメリカ繊維製品輸入制限の問題についていろいろと御意見を伺ったわけです。率直な御意見の中で私どもが感じ取ったことは、アメリカも相当強い態度が見受けられる。もちろんその態度というものは私どもいただきかねるところでございますけれども、態度は態度として、それに対応する措置が講じられなければならぬ。政府にもいろいろとそうしたアメリカ動きについて情報が入っておるとは思います。ヨーロッパ諸国においては、日本がどこまで強い態度をもって対処しようとしておるのか、どうも日本は妥協しがちだというので不信感というものもあるやに伺うのであります。また、そうした日本に対する期待と一面そうした不信というものがある。一方、アメリカとしては、スタンス商務長官が全米の繊維製造協会の総会に臨んで、強い態度、決意をもって、アメリカ自主規制を成功させる、これが成功しないというような観測あるいは関係国が協力をしないというようなことがいろいろといわれておるけれども、それは間違いなんだ、業者は政府を信頼せよ、そうした演説を実はぶっておるのであります。まあワシントンの観測筋では、スタンス長官の非常に強硬な態度に対して、もし日本をはじめ関係国が自主規制に応じないということであるならば、あるいはまた一方的な輸入制限ということに踏み切ることもあるのではないかということすら言っておるようであります。この点に対しましても参考人意見を伺ったのでありますけれども、いまアメリカが一方的に輸入制限をするということが、これはでき得ることができ得ないことかということにつきましては、それぞれの判断というものはもちろんできるわけではありますけれども、だがしかし、決して甘く見てはならない。一方的な輸入制限がないといたしましても、強い態度で自主規制を要求するであろうということが考えられるのでありますが、日本政府としては、この後どのような態度で対処していこうとするのか。ひとつ大平通産大臣の決意と、いままで対処してこられた経過についてもお答えを願いたいと存じます。
  65. 大平正芳

    ○大平国務大臣 商工委員会におかれまして、この問題を憂えられて、参考人を御招致されて、いろいろ御聴取いただきましたことに感謝いたします。  この前から申し上げておりますように、アメリカ側からいまなお公式の接触がございません。しかし想像いたしますに、遠からず私どものほうに接触があるものと考えます。四月十一日にスタンス長官がヨーロッパに行かれる。まずもちましてヨーロッパを回られた結果がどういうものであるかということに至大の関心を私どもは持っております。何となれば、ヨーロッパ繊維業界、これはわが国と利害を共通にする部面もございますけれども、同時にまた、必ずしも利害をともにする分野でないものも持っておるわけでございまして、今度のスタンス長官の訪欧のヨーロッパ的反響というものをまずよく心得なければならぬと考えておるのでございます。  その次には、日本側への接触ということになると思うのでございまして、私どもは、そういったアメリカ側動きというものに十分注意しながら、関連いたしましたもろもろの事項につきまして、いま鋭意検討をいたしておるわけでございまして、かねがね申し上げておりますように、政府も各省一体となり、また業界も各分野一体となりまして、強い態度で対応してまいらなければならぬという決意を固めておりますので、国会の御声援のもとに最善を尽くしたいと考えております。
  66. 中村重光

    ○中村(重)委員 いま大臣からお答えがございましたように、スタンス長官が直接行かれるのか、あるいはその他の高官が行かれるのか、はっきりしていないようでありますけれども、四月中旬ごろにヨーロッパ諸国を訪問する。その際、これは宮崎参考人からも情報として御意見を聞かしていただいたわけですが、自主規制というのはヨーロッパが対象になっているのではない、日本であるとかあるいは香港、韓国、こうした低コストの製品を押えることがねらいなんだということを言っているようでございます。新聞にもそのとおり報道されておるのでございますが、そうした情報というのか連絡があっておるのかどうかということ。  それから、ヨーロッパに行って意向打診をするだけではなくて、日本にも四月の下旬か五月の初旬にはスタンス長官あるいはその他の高官が来日するということも伝えられておるのであります。そうした情報が入っておるのかどうか。
  67. 大平正芳

    ○大平国務大臣 第一点につきましては、自主規制の歴史並びにこれまでの経過をずっと調べてまいりますと、仰せのような色彩を持っておることは争えないことだと思います。したがって私どもといたしましては、ヨーロッパと共同戦線を張るにいたしましても、力点の置き方、限界がいろいろあるのじゃないかと思います。そのあたりは十分吟味していかなければならぬと考えます。  第二点の、最近アメリカ側からどなたがいらっしゃるか、それはいつごろかという御質疑でございますが、まだ公式には受けておりませんけれども、やはり遠からずある種の接触という場面がくるものと覚悟をいたしております。
  68. 中村重光

    ○中村(重)委員 日本政府筋が三月七日明らかにしておるようでございますが、これはもちろん公式ではない、非公式ではあるようでございますけれども、英国政府から共同戦線の提案があったというようなことでございます。公式ではないにいたしましても、非公式にそのような提案がほんとうにされておるのかどうか。だとすると、日本はこれに対するどのような対応策というのか、それに対応する姿勢をお示しになったのか。
  69. 大平正芳

    ○大平国務大臣 具体的な御提案ではなくて、以後連絡を緊密にしようではないか、こういうことでございますので、私どももちろん異存はないわけでございます。
  70. 中村重光

    ○中村(重)委員 大平通産大臣は、予算委員会の分科会におきましても、また当委員会におきましても、その他の委員会においても、アメリカ自主規制というものはこれは不当である、絶対に受け入れられない、強い態度をもって対処するという姿勢は一貫して変えておられないのであります。だが同時に、質疑応答の中で、慎重な態度をもって対処しなければならぬということも言っておられるのであります。もちろん外交交渉でございますから、慎重な態度をおとりになるということは必要であります。しかし、私どもの心配をいたしますのは、慎重がともすれば消極的になる危険性というか可能性なきにしもあらずです。慎重な態度をとるのでなければ、あまり反対を盛り上げていくということは逆効果になるというようなこともいわれておるのでありますけれどもアメリカの強い態度ということ、しかも綿製品国際協定にいたしましても、これは綿製品のみに限るということだったが、化合繊あるいは毛繊にもこれを拡大するというようなこと、来年の九月が期限切れになり、むしろ打ち切る方向ではなくて拡大強化していく方向にあるということすら考えられるのであります。その他具体的な問題といたしましては、下田大使が商務省に正式に反対の申し入れをしたのは三月十九日だといわれておるのであります。いろいろと意向打診等はやっておったかもしれませんけれどもアメリカの強い態度に対し、業界もまた結束して反対運動を展開している。そういう際に、もう少し日本政府としてのとるべき積極的な態度があっていいのではないか。それらの点に対しては大臣はどのようにお考えになっておられるのですか。
  71. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほども申し上げましたように、本件をめぐるこれまでの経過、米国側の動き等を克明にフォローいたしておる段階でございまして、アメリカ側が私どもと接触を持ちました段階でどういう御提案がございますか、いかなる御提案がございましても、十分対応できるような用意をしつつある段階でございまして、まだ御提案がないにかかわりませず私どものほうで答案を出すということは理不尽なことでございまして、目下慎重にいろいろな関連事項につきまして検討、吟味を周到に続けておるという段階でございます。
  72. 中村重光

    ○中村(重)委員 輸入制限という態度をとってまいります場合に、いままでもアメリカは歴史的にそういう保護貿易主義の中からそういう態度をとってまいりましたが、日本政府はそれに対して自主規制という形、そういう方法でもって妥協してまいっておるのであります。ところが今回は、輸入制限ということではなくて、自主規制という態度をアメリカは明らかにしておる。業界輸入制限を強く働きかけておったけれども自主規制ということに同調をするという態度をとった。そうすると、政府も議会も業界も一丸となって自主規制で押しまくってくるということが予想されるのであります。してみますと、自主規制に対する妥協というものは私はあり得ないと思う。あくまでこれに反対をするということ以外にはないと思うのであります。だからヨーロッパ等でいわれておるように、日本政府が妥協をするのではないか、そうした疑心に対して、大平通産大臣はどのようにお考えになりますか。妥協なんということが考えられるのかどうか。
  73. 大平正芳

    ○大平国務大臣 ヨーロッパがどういう観測をいたしておりますか、これは御自由でございますけれども、私どものほうで安易な妥協を腹に持っておるというようなことは毛頭ないのでございまして、たびたび本委員会でも、また他の委員会でも御答弁申し上げておりますとおり、この種の動きは、それ自体合理性がないばかりか、現実にそういう必要もないんじゃないか、名分がないように私どもは思われますので、ただ一筋に米側の反省を求めるということで貫かなければならないことは当然と考えております。
  74. 中村重光

    ○中村(重)委員 来年九月に期限が満了いたしますところの綿製品国際輸入長期協定、これにいたしましても、これを拡大をするとか、また延期をするということについて、これに応じないということはわかりきったことだろうと思うのであります。ましてや今回の自主規制に対して、日本はじめ関係国はこれに応じない、これもわかっている。だとすると、アメリカ自主規制を要求をしておるのには何か底意があるのではないか。たとえば残存輸入制限の撤廃であるとか、あるいは自動車の自由化であるとか、その他これとてんびんにかけるというようなこと等を考えておるのではないかと思うのでありますが、それらに対する観測はいかがですか。
  75. 大平正芳

    ○大平国務大臣 御指摘のように明年期限が来ます綿製品協定でありますが、これは近くガットの場で交渉が行なわれることになっております。御指摘のように、LTAは、その性格上、暫定的なものでございまして、いつまでも継続すべきものでない、そういうことを前提といたしておりますけれども、この検討にあたりましては、これまでの運用状況を十分吟味していかなければなりませんし、また、最近における各国繊維業界の動向というものも十分検討しながら、業界とも密接に連携をとりつつ検討に入りたいと考えておるのでございまして、いま非常に微妙な段階でございますので、この種の問題につきまして決定的なことを私ども立場で申し上げるのはいかがかと思うのでありまして、これは来年継続すべきかどうかという検討に入る段階でございますので、いま申し上げたようなお答えでしばらくごしんぼうをいただきたいと思います。
  76. 中村重光

    ○中村(重)委員 国際長期協定の問題に対しましては、大臣がいまお答えになりましたように、いま少しく時間的な余裕はあります。ですけれども、私が申し上げましたように、この自主規制に対して、何かてんびんにかけている、そうした底意があるのではないかということについてどのようにお考えになっておられるかということをもお答えを願いたかったわけであります。それは今度お答えを願いますが、ここで私は最後のお尋ねになるわけですから、大臣の決意のほどを重ねてお尋ねをしておきたいと思う。  私どもは、大臣に対する質疑が終わりますと、委員長提案の形をもちまして、米国繊維輸入制限に関する決議をすることに実はいたしておるのであります。大臣がいまお答えになりましたように、アメリカから正式の意思表示はなされていない。また英国その他の国からも、非公式ではいろいろ話し合ったけれども、正式に共同してそうした反対運動を展開しようというようなことも言ってきていない。そこで、日本政府としても、反対の意向は固めておるけれども、具体的に反対運動を展開する手順というのか、そういうものはまだ固めていないように考えるのであります。むしろ私が言いたいことは、英国であるとかその他の関係国から日本に対する働きかけを待つのではなくて、日本政府みずから積極的に反対運動を展開していくということであってよろしいと思う。さらにまた、公式の申し出があった後ということになってまいりますと、手おくれになるということだって考えられるのであります。だからして、政府としては、関係各省と連絡会議を持って、そして業界反対運動をさらに展開をしていく、業界はこういうことを担当しようではないか、また国会に対しても何か御要望がありますならば、そういうことも国会に対する要望は要望としておっしゃってもらう。それから政府としても、何というのか、あらゆる反対運動を成功させるために、これは当然の権利であるわけでありますが、アメリカに対して反省を求めなければならないのであります。私はそうしたもっと積極的なかまえがあってしかるべしと思う。そこにアメリカが不当な要求をすることを押えることにだって成功するであろう。あまり消極的な態度をとっておると、業界反対が非常に強い、それに対して責任者が行って演説をぶちまくる、抜き差しならぬということにだってアメリカはなるじゃありませんか。だからして、そういうことに対しては、何かもっと強い反対の行動があってしかるべきではないか。その点もう一度大臣のお考え方をお聞かせ願いたいと思う。
  77. 大平正芳

    ○大平国務大臣 これまでアメリカ側に対しましては、公式のルートを通じまして再三日本側の態度を申し入れてございます。ヨーロッパ各国とは緊密な連絡をとりつつございます。政府部内におきましては、関係各省これまた緊密に連絡をとっております。業界との関係は、御存じのように何らの疎隔なく、一体として本問題に対処しているわけでございます。いま中村委員の言われるようなことは、いずれ先方から公式の御提案を受けてから、私どもがどのようにこれに対応策を組織し展開してまいるかということになると思うのでございまして、いまの段階におきまして、まだ御提案がないにかかわらず、ああもする、こうもするというようなことを前広に申し上げるというようなことはいかがかと思うのでございまして、いま申しましたように各方面との連絡は周到に講じております。
  78. 中村重光

    ○中村(重)委員 答弁には満足しませんが、民社、公明から関連の質問があるようでありますから、これで終わります。
  79. 大久保武雄

    大久保委員長 玉置一徳君。
  80. 玉置一徳

    ○玉置委員 中村議員から質問がございまして、時間もありませんから、一言党を代表して簡単に大臣の決意のほどをお伺いしておきたいと思います。  今度の繊維に対する米国輸入制限というものは、せっかく構造改善を鋭意実施中の各種繊維製品業界各位の熱意を非常に阻害するおそれがあると思うのです。百六十万、七十万といわれる関連労働者並びに家内労働従事者、その家族は七、八百万に及ぶと思います。こういった点から考えましても、この問題については、報復措置をも含めまして、断固たる決意でひとつ取り組んでいただきたい。先ほどのお話を聞いておりますと、かつての大平外務大臣を思わずわけですが、通産大臣ですから、言うてこようが言うてこまいが、いまから断固たる態度を表明していいのじゃないかということを痛感いたします。国会のほうも、本日は商工委員会の決議で政府当局に強腰で臨んでもらいたいということを要請すると同時に、要すれば時期を見て院の決議をし、あるいは衆議院の派遣というような形で、商工委員が中心になって、世論喚起に渡米することもあり得ると思うのです。こういう強い決意でわれわれもおりますから、先ほど申しましたように、いわれない制限でございます。いわれない制限をしいられるようなときに、日本は御承知のとおり産業立国、貿易立国でないとこの狭い国土で資源が乏しい中で、一億人の人間の生活を確保し、しかも生活を向上していくということは至難のわざでありますから、そういう至上命題にのっとりまして、いままでよりもより強い態度で臨んでいただきたい。このことに関する大臣の決意のほどを伺っておきたいと思います。
  81. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私どもの決意につきましては、あらゆる機会に申し上げたのでございます。政府各省一体となりまして、業界と緊密な連絡をとりながら、断固として対処いたしますということは、再三申し上げてあるのでございまして、問題は、対処いたすにつきましていろいろな手順が要り、用意が要りますので、いま関係方面との間で周到に検討を重ねておるという経過を、中村委員にも先ほど御答弁申し上げたのでございまして、われわれの静かなる決意に何ら変わりはないわけでございます。
  82. 玉置一徳

    ○玉置委員 先ほど申しましたように、何と申しましても日本産業のまだ一番大宗でもございますし、それに関連する人間の数はおそらく一番多いんじゃないだろうか。しかも、せっかくいま困難の中を切り開いて構造改善に踏み切っておる業界もたくさんあるわけでございますので、そういう点もお考えいただきまして、断固たる措置で対処していただきたい。私たちもいまのお約束を注視しながら、委員会としてもその場その場の手を打っていきたい、かように思いますので、よろしくお願いいたします。
  83. 大久保武雄

    大久保委員長 近江君。
  84. 近江巳記夫

    ○近江委員 もう時間がありませんから、簡単に一言だけ申し上げたいと思います。  私も、この中小企業への波及、影響度というものを考えていきますと、今回のこの輸入制限の問題については、断固政府として対米交渉をやっていただきたいということを強く要望しておきます。  先ほど参考人の方々からもいろいろな御意見がございました。結局世界を回ってみて感じることは、日本が信用がない、結局それは政府の弱腰外交であると切々とした訴えがあったわけです。これはわれわれも常にそれを政府に対して言ってきたわけでありますが、基本姿勢として、これからも積極外交に転じていくかどうか。  それからさらに、これからの交渉に当たる上で、武器というもの、実際にどのような武器を持っているのか。報復措置というようなあまり穏当でないようなことばもありましたのですが、そうした武器、こういうのを持っておれば心配ないというようなものは具体的にあるのか。  またさらに、先ほどから市場の問題で、ソ連、中共等もこれから積極的にひとつ業界としても伸ばしていきたい、こういう御意見があったわけですが、それに対して政府としてどのような援助を考えておるか、簡単にお聞きしたいと思うのです。それで終わりたいと思います。
  85. 大平正芳

    ○大平国務大臣 第一の、積極外交に徹せよということでございます。私は実効であがる外交をやりたいと思うのでございまして、日本の過去の例を見ておりますと、たいへん積極的にはでな演出をやりましたときに国を誤っている例が多いのでございまして、非常にはでな演出をやるというようなことは、どうも私どもの性に合いません。しかし、近江委員の言われたことは、要するに最大限の実効をおさめるようにやれという御趣旨であると拝聴いたしまして、それに対しましては完全に同感でございます。  それから第二の点、何が武器になるかということでございますが、実は今度の動き一体どういう性格のものか、これは他の場所でも私は御答弁申し上げたことが、あるのでございますが、繊維業界を背景にした一つの政治的動きでございまして、アメリカ通商政策、外交政策等との関連がどうなっておるのかというところは、確かに御指摘のように、これに対応する武器として何が考えられるかということを考える場合に非常に大事なことだと思うのでございまして、この背景、動因というようなものを十分究明しておかなければいけないのではないか。あなたが言われる武器は私どもも用意せねばならぬ。武器はどういうものを選択すべきかということにつきましては、そういういろいろな周到な準備をして、何が武器かということを発見したいというようなことでせっかく勉強いたしておるということでございます。  それから第三の市場転換の問題でございます。私どものやっておりますことは自由企業体制でございまして、どこから原料をとってどこに製品を売るかというようなことは、原則としてこれは業者の選択、その責任にゆだねてあるわけでございますから、政府が、ここから原料を買うのはやめてこちらに転換しろとか、ここへ売るのはやめてこちらにやれとかいうような、そういう強大な権限は政府にないのであります。ただ申し上げられることは、私がたびたび申し上げておりますように、政府立場は、グローバルに、体制のいかんを問わず、貿易の拡大をはかっていく、これにはいろいろな制約がございますけれども、制約をしんぼう強く乗り越えて、可及的な拡大をはかっていくのだということを足場に持っておるわけでございますから、いろいろな場合にその大原則に返りまして――いろいろもつれてまいりますと結局そこへ返りまして、もう一度出直して戦いをいどむ。敗れればまたそこへ返っていって新たな手を考えていくというようにいたしまして、貿易の拡大をやることによりまして、非常にバランスのとれた、グローバルな、厚みのある貿易をやっていくというようにいたしたいと思っておるわけでございまして、権力的に政府が市場転換をやる、そういうようなことは私はすべきでないと思います。
  86. 近江巳記夫

    ○近江委員 終わります。     ―――――――――――――
  87. 大久保武雄

    大久保委員長 この際、委員各位に申し上げます。  繊維製品輸出振興問題につきましては、本商工委員会がかねてより重大なる関心を持ち、調査を続けてまいった次第であります。最近、米国繊維品輸入制限を行なわんとする意図は、みずから主張してきた自由貿易主義に逆行するものと思われます。しかもこのことは、わが国繊維産業にとってはかり知れない悪影響を及ぼすことになり、看過し得ない重大な問題であると存じます。この趣旨のもとに、先ほどの理事会において御協議願ったとおり、米国繊維品輸入制限に関する件について、各位の御替同を得て、本委員会の決議を行ないたいと存じます。  まず案文を朗読いたします。    米国繊維品輸入制限に関する件(案)   最近、米国は、繊維品の輸入制限への活発な動きを見せ、国際協定による輸出自主規制各国に求める意図を明らかにしたが、これは、一貫して自由貿易主義を主唱してきた米国が自ら世界の自由貿易体制に逆行する方策をとることになり、明らかにガット精神に違反するものである。さらに、米国のかかる貿易制限的措置は、各国に自衛措置を余儀なくされ、ひいては世界貿易の縮少をまねき国際協調をそこなうこととなる。また、米国繊維産業は、生産、販売、雇用とも好調を続けており、この現状からも米国のとらんとする措置はその根拠に乏しく極めて遺憾とするところである。   米国において新たに輸入制限が実現すれば、わが国の対米繊維輸出に重大な影響を及ぼし、構造改善、設備近代化を推進しつつある中小企業を主体とするわが国繊維産業及び関連産業に深刻な打撃を与えることは必至である。   よって政府は、米国政府に対し、かかる輸入制限を断念するよう強く要請すべきである。   右決議する。  以上のとおりであります。  直ちに採決いたします。  米国繊維品輸入制限に関する件を本委員会の決議とするに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  88. 大久保武雄

    大久保委員長 起立総員。よって、米国繊維品輸入制限に関する件を本委員会の決議とすることに決しました。(拍手)  この際、通商産業大臣から発言を求められておりますので、これを許します。大平通商産業大臣
  89. 大平正芳

    ○大平国務大臣 ただいま委員長発議によりまして御決議がなされたのでございますが、御決議の趣旨を尊重いたしまして、政府といたしまして鋭意善処してまいる決意でございます。(拍手
  90. 大久保武雄

    大久保委員長 なお、本件の関係方面への参考送付等の手続につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  91. 大久保武雄

    大久保委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――
  92. 大久保武雄

    大久保委員長 参考人各位には、御多用中長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、たいへん参考になりました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。どうぞお引き取りください。  次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時五十三分散会