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1969-04-03 第61回国会 衆議院 社会労働委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年四月三日(木曜日)    午前十時十三分開議  出席委員    委員長 森田重次郎君    理事 澁谷 直藏君 理事 竹内 黎一君    理事 谷垣 專一君 理事 橋本龍太郎君    理事 渡辺  肇君 理事 河野  正君    理事 田邊  誠君 理事 田畑 金光君       倉石 忠雄君    藏内 修治君       佐々木義武君    齋藤 邦吉君       田川 誠一君    高橋清一郎君       中山 マサ君    広川シズエ君       藤本 孝雄君    増岡 博之君       箕輪  登君    枝村 要作君       加藤 万吉君    後藤 俊男君       島本 虎三君    西風  勲君       八木 一男君    山本 政弘君       本島百合子君    大橋 敏雄君       谷口善太郎君    關谷 勝利君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 斎藤  昇君  出席政府委員         人事院事務総局         職員局長    島 四男雄君         厚生大臣官房長 戸澤 政方君         厚生省環境衛生         局公害部長   武藤琦一郎君         厚生省医務局長 松尾 正雄君         厚生省薬務局長 坂元貞一郎君         厚生省保険局長 梅本 純正君         厚生省援護局長 実本 博次君         社会保険庁医療         保険部長    加藤 威二君  委員外出席者         経済企画庁国民         生活局参事官  宮内  宏君         大蔵省主計局主         計官      辻  敬一君         通商産業省企業         局立地公害部公         害第二課長   斎藤 光雄君         専  門  員 濱中雄太郎君     ――――――――――――― 四月一日  委員本島百合子辞任につき、その補欠として  永末英一君が議長指名委員に選任された。 同月三日  委員永末英一辞任につき、その補欠として本  島百合子君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 三月二十六日  社会福祉事業振興会法の一部を改正する法律案  (内閣提出第八五号) 同月二十八日  厚生年金保険法及び船員保険法の一部を改正す  る法律案内閣提出第七七号) 同月二十七日  療術新規開業制度に関する請願枝村要作君  紹介)(第二五五四号)  同(森下國雄紹介)(第二五五五号)  同(進藤一馬紹介)(第二六八八号)  同(田原春次紹介)(第二六八九号)  同(田村良平紹介)(第二六九〇号)  婦人の働く権利確立等に関する請願多賀谷眞  稔君紹介)(第二五五六号)  カネミ米ぬか油中毒症患者援護に関する請願  (多賀谷真稔紹介)(第二五八四号)  同(田原春次紹介)(第二五八五号)  同(細谷治嘉紹介)(第二五八六号)  同(松本七郎紹介)(第二五八七号)  同(河野正紹介)(第二六五七号)  同(楢崎弥之助紹介)(第二六五八号)  原爆被害者援護に関する請願勝澤芳雄君紹  介)(第二六五五号)  衛生検査技師法の一部改正に関する請願島本  虎三紹介)(第二六五六号)  同(勝間田清一紹介)(第二六九一号)  同(小泉純也君紹介)(第二六九二号)  同(後藤俊男紹介)(第二六九三号)  同(齋藤邦吉紹介)(第二六九四号)  同(關谷勝利紹介)(第二六九五号)  同(高橋清一郎紹介)(第二六九六号)  清掃事業地方自治体直営化による転廃業者の  補償救済に関する請願小笠公韶君紹介)(第  二六八七号) 同月三十一日  衛生検査技師法の一部改正に関する請願井手  以誠君紹介)(第二七六四号)  同(堂森芳夫紹介)(第二七六五号)  同外一件(橋本龍太郎紹介)(第二七六六  号)  同(早川崇紹介)(第二七六七号)  同(臼井莊一君紹介)(第二八四八号)  同(永山忠則紹介)(第二八四九号)  同(八木一男紹介)(第二八五〇号)  同(井出一太郎紹介)(第二九一六号)  同(田畑金光紹介)(第二九一七号)  同外三件(古屋亨紹介)(第二九四二号)  医療労働者増員等に関する請願山口鶴男君  紹介)(第二七六八号)  同外五件(堂森芳夫紹介)(第二七六九号)  同(八木昇紹介)(第二七七〇号)  同外十二件(黒田寿男紹介)(第二七七一  号)  同外二件(戸叶里子紹介)(第二七七二号)  同(石野久男紹介)(第二八五三号)  同(枝村要作紹介)(第二八五四号)  同(大原亨紹介)(第二八五五号)  同外五件(岡本隆一紹介)(第二八五六号)  同(中嶋英夫紹介)(第二八五七号)  同外四件(野間千代三君紹介)(第二八五八  号)  同外二件(長谷川正三紹介)(第二八五九  号)  同(原茂紹介)(第二八六〇号)  同外一件(広沢賢一紹介)(第二八六一号)  同外二件(広瀬秀吉紹介)(第二八六二号)  同外十五件(細谷治嘉紹介)(第二八六三号)  同外十二件(三宅正一紹介)(第二八六四  号)  同外一件(八百板正紹介)(第二八六五号)  同外十件(安井吉典紹介)(第二八六六号)  同(山口鶴男紹介)(第二八六七号)  同(横山利秋紹介)(第二八六八号)  同外二十二件(井手以誠君紹介)(第二九〇一  号)  同外一件(井上泉紹介)(第二九〇二号)  同外一件(猪俣浩三紹介)(第二九〇三号)  同外一件(小沢貞孝紹介)(第二九〇四号)  同外三件(大柴滋夫紹介)(第二九〇五号)  同(加藤勘十君紹介)(第二九〇六号)  同外二件(小林信一紹介)(第二九〇七号)  同(田邊誠紹介)(第二九〇八号)  同(田原春次紹介)(第二九〇九号)  同(楢崎弥之助紹介)(第二九一〇号)  同(帆足計紹介)(第二九一一号)  同外三件(堀昌雄紹介)(第二九一二号)  同外一件(八百板正紹介)(第二九一三号)  同(依田圭五君紹介)(第二九一四号)  療術新規開業制度に関する請願戸叶里子君  紹介)(第二七七三号)  同(石野久男紹介)(第二八四六号)  同(藤本孝雄君外二名紹介)(第二九四一号)  集団給食施設栄養士必置等に関する請願(白  濱仁吉紹介)(第二七七四号)  同(奧野誠亮紹介)(第二八五一号)  国民年金制度の改善に関する請願千葉三郎君  紹介)(第二七七五号)  医療保険制度改悪反対及び医療保障確立に関す  る請願谷口善太郎紹介)(第二七七六号)  医療保険制度改悪反対に関する請願松本善明  君紹介)(第二七七七号)  出産費国庫負担に関する請願外一件(山花秀  雄君紹介)(第二七七八号)  引揚医師の免許及び試験の特例に関する請願  (臼井莊一君紹介)(第二八四七号)  同(田畑金光紹介)(第二九一八号)  同(森田重次郎紹介)(第二九四三号)  医療保険抜本改悪反対に関する請願武部文  君紹介)(第二八五二号)  同(井上泉紹介)(第二九一五号)  ソ連長期抑留者補償に関する請願江崎真澄君  紹介)(第二九四〇号)  社会保険池袋中央病院の再建に関する請願(谷  口善太郎紹介)(第二九九七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正す  る法律案内閣提出第三五号)  厚生関係基本施策に関する件      ――――◇―――――
  2. 森田重次郎

    森田委員長 これより会議を開きます。  厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。河野正君。
  3. 河野正

    河野(正)委員 本日は、いま社会的に非常に大きな問題となっております公害対策について、若干質疑を行なってまいりたいと思います。  わが国の経済が急速な進歩を逐げまして、そのことは非常にめでたいことですが、ところがこれに伴って環境汚染の問題が極端にあらわれてまいっておることは、御案内のとおりでございます。したがって、こういった環境汚染に対して強力な施策を実施しなければならぬ、これが当面の急務と思います。私ども、先般社会党として、こういった環境汚染の問題をいろいろ総点検しようというようなことで総点検を行なったわけですが、実際には、現地へ参りますと、行政指導欠除、あるいは公害対策の不統一、あるいはまた、これはいろいろな法的な規制があるわけでございますけれども、そういう規制のあり方、こういう点についてなお多くの問題を残しておることは、私どもはつぶさに見聞をいたしてまいったところでございます。しかも、こういった環境汚染という問題が、住民の健康と生活環境に対して非常に大きな悪影響をもたらすわけでございますから、私どもやはりこの公害問題については重要視しなければならぬ、こういうことになるわけでございます。  そこで、まず厚生大臣に対してお答えを願いたい点は、いま申し上げますように、公害問題が非常に社会問題化しておるけれども、なおその対策についていろいろ問題点がある。そういう点から、この公害対策に対する基本的な政府の姿勢というものについてひとつ御見解をお述べいただきたい、かように思います。
  4. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 公害問題は、もうずいぶん前から相当やかましくいわれておったのでございますが、これがほんとうに行政の面で根をおろし、これからということになりましたのは、公害対策基本法をおつくりいただいて以来のことだと存じます。もちろんその前からもやってはおりましたが、本格的に乗り出したのは基本法を制定していただいて以後のことだと思っておるわけであります。したがいまして、その後二カ年経過をいたしておりますが、政府といたしましても、できるだけの努力をもって進んでまいっておるわけでございまして、大気汚染防止法、あるいはまた騒音防止法等も制定をいたし、そしてこの趣旨に沿って今後強力に推し進めてまいりたい、かように考えております。いずれにいたしましても、産業の発展によって国民の健康がむしばまれるというようなことは、これは本末転倒でございまするから、したがって、国民の健康に支障なく、しかも産業も発展していくというように考えてまいらなければならない。やはり人間を尊重するということが第一義と、かように考えて、その基本方針のもとに施策を進めてまいる所存でございます。
  5. 河野正

    河野(正)委員 まあ、健康と産業という問題がからんでおるところに、この対策のむずかしさがあると思います。しかし、いずれにしても人命、健康というものが非常に大切な問題でございますから、そういう意味で、いま大臣がお述べになったように、健康というものが企業に優先しなければならぬ、そういうたてまえでぜひひとつ推進をしていただきたいと思います。  そこで、きょうは時間の制約等もございますから、いろいろ具体的な問題に入りたいと思うわけですが、この公害の中でも、大気汚染水質汚濁騒音、こういった問題があるわけでございますけれども、きょうは特に水質汚濁にしぼってお尋ねをいたしてまいりたい。それについて、私はきょうは北九州洞海湾における水質汚染にしぼってお尋ねをしてまいりたい、こういうように考えます。  御承知のように、政府経済企画庁は、福岡県と北九州市に対しまして、昨年の六月から八月、九月というように、三回にわたって北九州洞海湾水質調査を行なっておるのでございます。そしてその結果が三月二十五日に一応取りまとめられたわけですが、その結果の中で、特にこの水質汚染のバロメーターといわれておりまするCOD化学的酸素要求量でございますが、このCOD検出量が実は日本一であった。それからシアン、青酸でございますが、最も毒性が強いといわれておりまするシアン基準の二十五倍以上もあった、こういう結果が出てまいっておるのでございます。そういう点から、北九州関係住民というものは非常に大きな不安とショックを受けておるわけでございますが、この調査結果の実態がどういうものであったのか、ひとつ政府としての御見解を承りたい、かように思います。
  6. 宮内宏

    宮内説明員 経済企画庁といたしましては、四十三年予算を使いまして、県に調査を委託したわけでございます。それで、現在のところ中間報告でございまして、また背景調査といいますか、人口の増加の傾向だとか、あるいは会社の立地傾向とか、そういうものがまだ実は回答をいただいておりませんものですから、いろいろこれから解析を進めていかなければならないわけでございますが、一応数字といたしましては、先生いま御質問になりましたように、かなり悪い数字が出ております。その理由といたしまして、川じゃなくて奥行きの深い、幅の細い湾でございまして、その間に工場が非常に立地してきておる、あるいは港になっておりましていろいろ船の出入りがある、あるいは人口の割合に下水道の普及もあまりよくないというふうな悪い条件が重なりまして、こういう状態に立ち至っておるというふうに考えておるわけでございます。
  7. 河野正

    河野(正)委員 これは人の健康、人命に関する問題として私ども取り上げておるわけですから、ただ悪い結果が出ておるというような甘い報告では困るのであって、大臣承知のように、洞海湾というものは、見ただけでも茶褐色の海でございます。したがって、関係者は今日まで、この洞海湾において有毒物質がどのような状態で含まれておるのか、こういうことについては非常に大きな関心を持っておったところでございます。ところが、この厚生白書をいろいろ見てまいりましてもわかりますように、今日まで水質汚濁問題が深刻化しておるわけでございますけれども、それは主として都市河川水質汚濁問題が中心としていろいろ厚生白書でも述べられておる。そして、水質調査いろいろ平均値なんか見てまいりましても、江戸川、荒川、隅田川、多摩川、こういうふうな都市河川というものが中心になっておる。ところが、今度洞海湾のきわめて大きな特色というのは、海であるということですね。そして本来からいうと、大量の海水でその有毒物質というものが薄められなければならぬ。ところが、大量の海水で薄められるはずであるにもかかわりませず、この洞海湾におきまする汚染度というものが非常に極端に出てきておる。そういう意味では、やはりこの洞海湾というものは、一種の汚濁水問題としてはもう赤信号だというふうに申し上げても過言ではなかろうと思います。いままで、神奈川県の川崎であるとか、千葉名古屋大阪沖、こういったところが汚染海域として取り上げられておったけれども洞海湾の場合はそれを大幅に上回っておる、こういうことですね。ですから、そういう実態を踏まえて今後の対策というものはいろいろ進めなければならぬ、こういうふうに思うわけでありますけれども、今日まで汚染海域といわれてきた、こういう神奈川千葉あるいは名古屋大阪沖に比べて断然汚染度が高いというふうな状態を見て、大臣としてはどういうふうにお考えになっておるのか、ぜひ見解を明らかにしていただきたい。
  8. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私もいまおっしゃいました御意見に全く同感でございます。  大体、いままで汚染水域としては、河川とか、あるいは大阪名古屋等の港湾を相当主にして考えられておったようでありますが、洞海湾はそれにもまさる汚染水域だと思います。そこで経済企画庁におかれても、本年の二月たしか汚染水域に指定をされた、かように思っておるわけでありまして、この方向に従って今後洞海湾水質の保全ということに力を入れなければなるまい、かように思っております。
  9. 河野正

    河野(正)委員 いま指摘いたしましたように、神奈川川崎とか千葉、あるいは名古屋大阪沖では、COD、魚が生息する基準、これが一般的基準としては大体三ないし五PPMといわれておる。いま申し上げましたような汚染海域の中でも、神奈川県の川崎とか、あるいは千葉名古屋大阪沖では大体一〇PPM。ところが、洞海湾の奥のはうでは二四PPM、こういうふうに非常に極端な高い汚染度を示しておる。そこでこれは特に、こういう貴重なデータに基づいていろいろな対策が進められなければならぬということは当然のことだと思うのです。  そこで、ここでもう一つ問題視しなければならぬのは、今度の中間報告ではCODあるいはシアンの高い数値というものが証明をされた、こういうことです。そういうことから、関係者というものは非常に不安をつのらせておるわけでありますけれども、そういうことになりますと、関係者というものは、水俣病原因であるメチル水銀、これは一体どうであるのか、あるいはイタイイタイ病の原因であるカドミウムといったような重金属は一体どうであるのか、こういった心配、不安というものが当然出てくると思うのです。ところがこれらについて全然調査の対象になっておらぬ。これは一体いかがなものだというふうに、私どもは非常に疑惑を持たざるを得ない。これは調査としても非常に片手落ちではないか。この点について、どういう意味でこれをはずされたのか、ひとつ政府の御見解を承りたい。
  10. 宮内宏

    宮内説明員 実はメチル水銀につきましては、すでにこの調査と別に厚生省並び通産省調べられまして、そして出ておりません。それから、すでに告示を終わりまして、規制しております。  以上でございます。
  11. 河野正

    河野(正)委員 厚生省通産省ですでに調査をした、ところが出ておらぬ、そこで規制をしておる、これは全く相矛盾していますね。出ておらぬのに何で規制しなければならぬのです。  それなら、ひとつ厚生大臣お尋ねしますが、その調査の結果どういう数値が出ておるのか、ここで明らかにしていただきたい。
  12. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 通産省のほうからひとつ答えていただきたいと思います。
  13. 河野正

    河野(正)委員 いま企画庁ですか、厚生省通産省調査をして、出ておらぬという御報告がございましたから、それならば厚生省いかがですかと大臣お尋ねをしておるわけです。ですから、厚生省も出ておらぬということをおっしゃるなら、大臣が答えられてもけっこうだと思う。どうして答えられませんか。
  14. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私は、メチル水銀につきましては、これは出ておるんじゃないかと思います。それでメチル水銀排出規制も行なった、私はさように了解しておりますが、どの程度出ておって、どういう工場かは、通産省からお答えをいたします。
  15. 河野正

    河野(正)委員 これは大臣お答えになるのが全く常識的な答弁ですね。出ておらぬのに規制する必要はないので、規制したということは、当然出る可能性があるか、出ておったから、その結果に基づいて規制が行なわれたと思うのです。そういうことで政府見解が不統一状態のままでこの審議を続けられませんよ。委員長、さっそく理事会を開いてください。そんなのはだめですよ、政府見解が違うというのは。
  16. 武藤き一郎

    武藤(琦)政府委員 厚生省は、四十二年度、四十三年度、水銀調査洞海湾については行なっておりません。
  17. 河野正

    河野(正)委員 先ほど企画庁は、厚生省通産省が行なって、メチル水銀は出ておりません、こういう御答弁でしょう。ところがいま厚生省は、四十二年、四十三年は調査しておらぬ。こういう政府の不統一見解では困るのであって、これは考え方ではないでしょう。調査をしたかせぬかは具体的な問題ですよ。事実問題ですよ、これは。そういう事実問題について政府見解が食い違うということは、これは私はあり得ぬと思うのですよ。こういうことでは審議促進できませんよ。
  18. 宮内宏

    宮内説明員 不十分な、ことばの足りない御答弁を申し上げて申しわけございません。  現地工場につきましては通産省がお調べになりました。それから、メチル水銀が体内に入る機序、あるいは蓄積いたしますと人体に危険である、そういうことについて厚生省がお調べになりました。そして、出るおそれがありますので、その工場について規制をいたしました。  以上でございます。
  19. 河野正

    河野(正)委員 厚生省調べてないと言っているじゃないか。
  20. 宮内宏

    宮内説明員 出るおそれがある工場について規制したわけです。(「厚生省は医学的な調査をしたということだろう」と呼ぶ者あり)そうでございます。
  21. 河野正

    河野(正)委員 それでは、厚生省のほうでどういう医学的な調査をなさったか、その結果をひとつここで御報告願いたい。
  22. 武藤き一郎

    武藤(琦)政府委員 ただいま宮内参事官お答えになりましたのは、熊本の問題あるいは阿賀野川の問題だと私は思います。
  23. 河野正

    河野(正)委員 私は冒頭に、大気汚染騒音水質汚濁があるけれども、きょうは水質の中で特に洞海湾についてしぼってお尋ねするということを前もってお話ししておるわけですね。いま洞海湾の問題をやっているわけでしょう。ですから、洞海湾の問題について調査したかせぬかということを、ここではっきりしてもらいたいと言っているわけでしょう。それをいまの企画庁のお話では、厚生省調べたところが、厚生省水俣病について調べたのであって、結局洞海湾について調べた経緯はない。こういう政府見解は、全く不統一じゃないですか。
  24. 宮内宏

    宮内説明員 さらに説明が不十分であったことをおわびします。  厚生省メチル水銀一般論についてお調べになっているわけでございまして、私、取り違えまして、メチル水銀についての規制がどうなっているかというふうに解釈いたしましたので、洞海湾についての通産でお調べになりました二工場におそれがあるので、先般七月一日から実施されるように告示を終わっております。
  25. 河野正

    河野(正)委員 その点は私は承知しているのですよ。ですから、メチル水銀危険性はなかったのですかと言っているわけでしょう。ないならないで、やはり科学的根拠を示して、ないということをおっしゃらぬと、ただあなたの感じだけで言ってもらっては困るのですよ。このメチル水銀被害をこうむるのはあなたじゃないのです。現地住民がこうむるのですよ。ですから、私ども住民を代表してここで申し上げておるのですから、現地住民が納得する答弁でないと困る。あなたは、ことばが足らぬ、ことばが足らぬとおっしゃるけれども、はっきり最初の答弁の中で、メチル水銀については、すでに厚生省通産省において調査したけれどもなかった、しかし心配があるから規制をするのです、こうおっしゃったでしょう。そこで大臣は、ないのに規制する必要はないじゃないか、こういうことをおっしゃっておるわけでしょう。ですから、ことばが足りぬのじゃない。あなた、はっきり、厚生省通産省調査したがメチル水銀はなかったということを前提として、お話しなさっているでしょう。ですから、ことばが足りぬのじゃないのですよ。これはあなたの前言を全部取り消してもらわなければ困る。ことばが足りなかったのじゃないのです。あなたは、誤った、うそをここで報告したじゃないですか。ことばが足りぬのと、うそ答弁したのと、これは本質的に違うのです。
  26. 斎藤光雄

    斎藤説明員 御答弁申し上げます。  当省では、通産局を通じまして、洞海湾における二つ工場について、有機水銀及びアルキル水銀の有無について検査いたしましたところ、この二つについては、検査結果はゼロでございます。正確に申し上げますと、絶対のゼロということではございませんで、これはガスクロマトグラフという装置がございますが、その装置によって検証し得る限りではのぼってこない、そういうものでございます。ちなみに、この測定方法については非常に精度の高いものでございます。  なお、先ほど御指摘の点についてもう一言ふえんいたしますと、ア法塩ビ製造工場水銀法電解ソーダ工場につきましては、なぜメチル水銀ができるかという機序につきましては、いわゆるメカニズムにつきましては、学問的になお問題があるようでございますが、経企庁の御研究によりまして、何らかの形においてそれができる可能性があるということでございますので、本来経企庁からの御答弁になろうかと思いますが、そのような御趣旨を受けまして、今回全国五十の工場につきまして、ただいまの両方のプロセスをとる工場についてでございますが、すべてメチル水銀について規制をしまして、これをガスクロマトグラフ法によって検定して、検出されなければ検出せずという規則を定めまして、この七月一日からこれを実施するという予定になっております。
  27. 河野正

    河野(正)委員 私が聞いておるのは、工場で出てきたか、出てこなかったかと聞いておるのじゃない。洞海湾にあったかどうかということを聞いているのです。
  28. 斎藤光雄

    斎藤説明員 通産省洞海湾自体の水質については調査してございません。工場の排水でございます。
  29. 河野正

    河野(正)委員 それじゃ結局、今回の調査が三度、六月、八月、九月と行なわれたわけですけれども、その中の調査対象に入ってないわけですね。ところが、青酸なりCODについてはものすごい数値が出てきた。そこで、メチル水銀についても心配があるのじゃなかろうかという疑問が現実に起こってきた。なぜこれを対象からはずしましたかと言ったら、今回の調査の以前に調査をしたけれどなかった、最初こういうような御答弁だったでしょう。ところがいまの話では、全然調査をしておらぬということじゃないですか。全然話が食い違っておるじゃないですか。
  30. 宮内宏

    宮内説明員 お答えいたします。  洞海湾の水の中では調査してございません。それで、工場で非常に精度の高い調査を、出口で、一番濃いところでやりまして、出ておりませんものですから、おそらく検出のしようがないような薄い数字になって出てくるはずだというふうに考えておりまして、調査しておりませんと申し上げます。
  31. 河野正

    河野(正)委員 それでは、先ほどの課長の答弁では、二つ工場について調査をした、こういう答弁があった。二つ工場だけで事が足りますか。そこでゼロであったから洞海湾はないという結論が出てまいりますか。やはり住民というものは、洞海湾の中にメチル水銀があるのじゃなかろうかという心配があるわけでしょう。その心配を解いてください、こう言っているわけだ。それをあなたは何か、工場調査をしたけれども全然検出ができなかった、だからだいじょうぶというような判断ですね。それは全く患者を診察しないで診断を下すようなものじゃないですか。しかも先ほど課長は、二つ工場について調査をしたとおっしゃっている。それなら洞海湾北九州地区にはどれだけの工場がございますか。たった二つ工場に対する調査をしておいて、そうして洞海湾についてはメチル水銀はないという断定を下すことは常識的ですか。それでは住民は納得できませんよ。ひとつ住民が納得するような答弁をしてください。
  32. 宮内宏

    宮内説明員 お答えいたします。  メチル水銀が出るおそれのある工場の種類といたしましては、水銀電解法による苛性ソーダをつくるような工場、それから塩化ビニールをアセトアルデヒド法によってつくる工場水銀を使うものですから、そういう危険があるわけでございまして、そういうふうな種類の工場調べていただいたのがその二工場でございます。
  33. 河野正

    河野(正)委員 その二工場以外には、水銀電解法で苛性ソーダをつくったり、あるいは塩化ビニールをつくったりするような工場はございませんか。それはないと言い切れますか。
  34. 斎藤光雄

    斎藤説明員 お答え申し上げます。  私どもは、経済企画庁における水銀部会の研究の推移とあわせまして、その結果、ただいま経企庁の宮内参事官から御説明申し上げましたア法塩ビと電解苛性ソーダ、その二つについて、当部会が発生の可能性が理論的にあり得るということでございましたので、その両工場についての排水の水質調べたわけでございます。その他についてはしてございません。
  35. 河野正

    河野(正)委員 その二工場調査だけで、洞海湾にはメチル水銀なしという断定的な判断を下すことができますかと言っているのです。
  36. 宮内宏

    宮内説明員 そういうおそれのある工場はございませんので、洞海湾にはないというふうに私は思っております。
  37. 河野正

    河野(正)委員 他に電解法を用いて苛性ソーダ、塩化ビニールをつくるような工場がもしあったとすれば、これは重大責任だと思うのです。これは責任をおとりになりますね。この点はっきりしてください。
  38. 宮内宏

    宮内説明員 従来ないと思っておりましたけれども、御指摘によりまして、訂正いたしまして調査いたします。
  39. 河野正

    河野(正)委員 これはニュアンスの相違じゃないのですよ。あなたは、もうないということを断言されたわけでしょう。ですから、いまのように、何か口の中でもごもご言って、そうして責任を回避する、そういうことでは委員会としては承知できません。これは被害をこうむるのは住民ですから。あなたじゃないのですよ。ですからこれはあなたは、非常に重大な責任を負わされておるわけです。ですからはっきり、いま言ったことは食言であって、その食言を取り消すのか、また今後に対する通産省の姿勢というものを断じて改めて、この関係住民に対して責任を負うと――これはちょっとあなたでは無理ですからね。これは通産大臣をひとつ委員会に招致してください。これはちょっと無理ですよ。理事会を開いてください。だめですよ、こんなことじゃ。
  40. 宮内宏

    宮内説明員 前言を取り消します。それで……。
  41. 河野正

    河野(正)委員 前言というのはどの前言だ。あなた、たくさん言ったから、具体的にどの点を取り消すのですか。
  42. 宮内宏

    宮内説明員 洞海湾水銀が絶対ないというふうな表現をいたしましたが、これは取り消します。したがいまして、先生の御指摘もありましたので、早急に、水の中あるいはどろの中についても、あるかないか調査していきたいというふうに考えております。(「いままで怠っておりましたのは遺憾でございます。」と呼ぶ者あり)従来行なっておりませんのは遺憾でございます。
  43. 河野正

    河野(正)委員 これは現地関係者住民というものは、非常に不安におののいているわけですね。というのは、青酸というのは青酸カリ、青酸ソーダ、これが基準の二十五倍も出ているんですからね。ですから、これは非常に重大な関心を持っていますから、そういうことならあるいはメチル水銀というものもあったのじゃないだろうか、ところがその水銀というものは調査されておらぬ、そういう点、現地においては非常に不満感がある。いま他の委員の助言によって訂正されたようですけれども、ひとつ、他の委員の助言じゃなくて、経済企画庁みずからがやはり反省する、今後強力に推進をするという姿勢をおとりにならなければ、現地住民は納得できぬと私は思うのです。  そこで、いずれにいたしましてもCOD数値が非常に高い。魚も全然住まぬというような状態だし、それから青酸も――私どもはいままで、青酸といえば、青酸カリで自殺するようなことしか知りませんけれどもね。青酸の数値というものが非常に高い。いずれにしても、直接か間接か別として、人体に重大な影響を及ぼすであろうということが予想されるから、関係者が非常に不安を持っている。そこでやはり私は、直ちに水質基準の設定というものが行なわれなければならぬと、こういうように思うわけです。この意思があるかないか、この際明らかにしていただきたい。
  44. 宮内宏

    宮内説明員 お答えします。  先ほど来やりました調査は、御承知のように概況調査でございまして、そして洞海湾水質基準を設定するためには、いわゆる基準設定のための調査という、もう少し詳細な調査がまだ残っております。そして実は福岡県といたしましては、矢部川を四十四年度に調査してくれということになっておりますので、県とよく相談いたしまして、洞海湾規制するかどうかということを決定いたしたいというふうに考えております。  なお、どうしてそういうことを申し上げますかといいますと、洞海湾の汚濁対策としては、ただ規制だけすればあと片がつくという問題じゃないので、周辺の下水道の問題とか、あるいは当然工場排水の規制の問題もございますけれども、非常に長期的に見て、すでにたまっておる底のどろのようなものも取り払わなければならぬだろうと思いますし、あるいは海に近いほうにどんどん港湾等の施設も進んでおりまして、だんだん湾が深くなっていくというふうな悩みも片方であるかと思います。その辺は十分調査いたしまして、かけていく方向では考えております。
  45. 河野正

    河野(正)委員 そういうなまぬるいような答弁では、先ほどの反省は認めるわけにいかぬと思うのです。いずれにしてもCOD数値が高い。あるいは青酸の数値が高い。そのほかフェノールの数値も高いし、アンモニア性の窒素の量も高いし、それから浮遊物質の量も高い。すべて高い数値が出ておるわけですね。ですから現地関係者も、すみやかに水質基準の設定をしてもらいたい、こういう強い要望がございます。それを、概況調査だからさらにしさいな調査をしてという間に、人体に対する悪影響というものは進んでくるわけですよ。ですから、しゅんせつとかその他いろいろあることはわれわれは承知しているけれども、まず水質基準の設定をせぬことにはこれは始まらぬのです。もちろん私どもは、水質基準の設定だけでこの問題が解決するというふうには考えていない。しゅんせつするとか、あるいは水の流れをよくするとか、あるいは工場規制をするとかいろいろありましょう。ですけれども、やはり水質基準の設定というものが私は前提になると思うのです。これは他の海域でも、洞海湾より数値の低いところがすでに指定されているわけでしょう。それをいまのように、いまから県と御相談ということじゃ困るので、これはやはり地元の関係者が非常に真剣な気持ちでおることを十分踏まえてもらわなければいかぬ、経済企画庁も。それでは、先ほど他の委員のサゼスチョンによって、あなたは何か反省されたような態度があったけれども、あの反省をそのまま私は受け取るわけにいかぬです。やはりすみやかに水質基準の設定をやる、指定を行なうという態度というものをここで明らかにしてもらわぬと、これは委員会の進行はできませんよ。はっきりしてください。
  46. 宮内宏

    宮内説明員 早急に県と御相談と申し上げましたのは、実は予算的に十一カ所指定するような四十四年度の予算を組んでおりますものですから、その点で県と御相談したいと申し上げたわけでございまして、気持ちといたしましては、早急に御指摘のとおり調査を進めて指定していきたいというふうに考えておるわけであります。
  47. 河野正

    河野(正)委員 早急じゃなくて、目途をここで明らかにしてもらいたい。
  48. 宮内宏

    宮内説明員 四十四年調査で取り上げたい、そして解析等を行なって早急にかけてまいりたいというふうに考えております。
  49. 河野正

    河野(正)委員 経済企画庁の保全課長は、調査をして四十五年には指定をしたい、こういう発表をされているのですよ。なぜここで言えませんか。そういうことが新聞記者に言えて、国会でなぜ言えませんか。――それじゃ委員長、休憩してください。そんな経済企画庁じゃ困る。
  50. 森田重次郎

    森田委員長 答弁は正確に願います。
  51. 宮内宏

    宮内説明員 その新聞の内容は、四十五年に調査を行ないたいといっているように私は聞いております。四十五年に調査をするということを発表したように聞いております。ですから、四十四年度に繰り上げて、早急に、調査が終わり次第、あるいは解析をいたしまして、指定してまいりたいというふうにお答えしておるわけでございます。
  52. 河野正

    河野(正)委員 読みますが、おそくとも四十五年度には指定水域に指定したい、こういう談話ですから、いまの参事官の答弁では納得できませんから、委員長に要求しますが、休憩をして直ちに理事会を開いて、この問題の取り扱いについて話し合いをしていただきたい。
  53. 宮内宏

    宮内説明員 四十四年度に調査をいたしまして、できるだけ早く指定いたします。できれば四十四年度内にも間に合えばやります。
  54. 河野正

    河野(正)委員 一々与党の議員から答案書を書いてもらって答弁するのではなくて、やはり行政府に責任があるわけですから、確固たる態度で臨んでいただかなければならぬと思うのです。  そこで、新聞よりは少し前進をして、四十四年度の指定もあり得るということですから、新聞は四十五年度ですから、やや自民党の示唆もあって腹をきめられたようですから、その点はけっこうですが、いずれにしても、いまのその経済企画庁の姿勢では私は困ると思うのです。一々委員の指導によって答弁をしなければならぬということは、三権分立の精神からいっても非常に問題があると思うのです。ですから、おそくとも四十五年には指定する、早ければ四十四年度における指定もあり得るということを、もう一ぺんここで整理をして答弁していただいて、私もだんだん締めくくってまいりたいと思いますから、その点をもう一ぺんきちっと交通整理して答弁してください。
  55. 宮内宏

    宮内説明員 新聞では四十五年度というふうになっておりますが、四十四年に調査をいたしまして、できるだけ早く取りまとめをいたしまして、できれば四十四年度中にも指定していきたいと申し上げます。
  56. 河野正

    河野(正)委員 そこで、先ほどから話しをしておりますように、まず洞海湾汚染問題の解決は、水質基準の指定をするということ、しかしそれだけでは抜本的な解決になりません。やはりこの洞海湾の実情というものは、たとえて申し上げますとまさに一つの重病人です。ですから、この指定を行なうと同時に、今後洞海湾の水を清潔に、きれいにするためには、具体的な抜本策というものを考えていかなければならぬ。それは、しゅんせつの問題もありましょう。それから海水を導入していくという問題もありましょう。いろいろありましょうが、いずれにしても、直ちにこの水質基準の設定を行ない、そして具体的な抜本策を確立する、こういうことにならなければならないと思うのです。  それから、今日まで水の問題については、公共用水域の水質の保全に関する法律、それから工場排水等の規制に関する法律、こういう法律があって、いろいろ水質問題についての規制が行なわれてまいったわけですけれども、いま申し上げました水質の保全に関する法律にしても、排水等の規制に関する法律にしても、これは昭和三十三年にできた法律です。今日もう十年も経過している。しかもその間、日本の経済というものが非常に発展をした、工業というものが発展をしたということで、むしろその後のほうが、公害問題についてはいろいろ多くの問題を出しているわけです。そこで、やはりこの具体的な抜本策を考えると同時に、こういった水質問題に関する二法律についても、化学工業化の進んだ現在に沿うような法の体系というものが確立されなければならぬというふうにわれわれは考えるわけです。そういう意味で、これは経済企画庁も関係ございますが、あわせて厚生大臣からも、最後にこれに対する見解をお聞かせ願いたい。
  57. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 仰せごもっともに存じます。政府におきましても、ただいま水質保全法の改正を検討中でございまして、できればこの国会に出したいというので、私のほうも協議を受けております。この国会で成立のできるようになるべく近く提案をいたしたい、かように考えます。
  58. 河野正

    河野(正)委員 きょうの論議は、洞海湾の汚濁水ということでしぼってお尋ねしたわけですけれども、そういう狭い範囲でも、きょうの答弁を伺っておりますと、全く政府の指導性の欠除というものが暴露されているわけです。こういうことでは、今後公害問題が社会問題として非常に重大視されてくる情勢の中では、私はきわめて遺憾だと思うのです。そういう意味大臣も、水質保全法の改正を今国会に上程したい、これも一つの具体的な解決策だと思います。ですけれども、何といっても、やはり法を運用する政府というものが、真剣にこの公害問題に取り組まなければいかぬと思うのです。そういう意味で、きょうの経済企画庁の姿勢というものは、私は残念ですけれども、失礼な話ですけれども、落第点をつけざるを得ない。今後は、ひとつきょうの反省に基づいて、この公害問題については強い姿勢で臨んでいただきたいと思うのです。この点については、企画庁厚生大臣から重ねて御答弁をお願いして、あとの委員の問題もございますので、終わりたいと思います。
  59. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 水質の保全もまことに大事な問題でございます。場合によれば、やはり人命あるいは健康に関係をいたすわけでございますから、経済企画庁と十分連絡をとりまして、遺憾のないように推進をいたしてまいりたいと存じます。
  60. 宮内宏

    宮内説明員 水質保全法を担当しております経済企画庁といたしましては、早急に法律を改正もいたしまして、御要望に沿うように全力をあげて公害対策に取り組んでいきたいと考えております。  勉強不足で、十分なお答えで御納得いただけなかった点で、もたもたいたしまして、申しわけございませんでした。
  61. 森田重次郎

    森田委員長 西風勲君。
  62. 西風勲

    ○西風委員 まず最初に厚生大臣お尋ねいたします。  三月三十日の日でしたか、厚生省の保健所課長である鈴木課長が自殺されたわけですね。この事件については、現在司直の手でそれを明らかにする作業が行なわれているわけですけれども、あれ以後の、これは詳しいことはもちろん警察に聞かなければわからぬと思うのですけれども厚生省内でつかんでおられるあの事件の真相といいますか、内容といいますか、その後の問題といいますか、そういう点について簡単に御報告願いたいと思います。
  63. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 これはいま警察が取り調べ中の事件でございますので、内容は私のほうから御答弁するほどのものは持っておりません。ただ、警視庁の捜査二課長の談話にも、保健所課長の任意取り調べは、すでに起訴されている技官の裏づけ捜査をしたいと思って任意出頭を求めていたのだということでございまするし、厚生省自身の、私のほうで知り得た事件といたしましては、それ以外になかったのじゃなかろうか。それを本人は、こういうことでたとえ任意取り調べであろうと、二日にもわたってされるということになると、将来のことを心配して急にああいうことになったのではなかろうか、かように思っている次第でございます。
  64. 西風勲

    ○西風委員 ある新聞によりますと、薬務局の製薬課、細菌製剤課、企業課などは、課長、課長補佐あるいは係長がさまざまな研究会を開いて、その研究会について料亭やホテルを使うわけですけれども、各社にあいさつして、各社の費用でそういうことを半ば公然とやっているということが書かれております。  第二には、この新聞の見出しがたいへんあれなんですけれども、「業界べったり厚生省」というのが大見出しになっておるわけです。しかもその中で、厚生省は、いままで大手製薬会社の圧力で、薬務行政その他についてはほとんど大手製薬会社の意のままになっていて、厚生省国民のためになるような積極的な薬務行政あるいは厚生行政をやっていないというようなことを、微に入り細に入り書いておるわけであります。あるいは一昨年、医薬品の製造承認に関する基本方針というのをきめて薬務局長の名前で通達したけれども、その通達は大手製薬会社の猛反対で事実上たな上げになっているというような内容があるわけです。  さらに、これは前から問題になっているのですけれども、大手の業者だけで抗生物質協議会というのをつくって、これには大半の大手業者が入って、他の業者は、抗生物質の輸入についてはこの協議会が中心になって、事実上締め出すというような行為が行なわれているわけですね。さらには、これもあまりこまかい問題で恐縮ですけれども、ある課長が――やめた課長らしいのですけれども、業者にいつでもマージャンで勝たしてもらっていた。ハイキングや映画や出張するときでも業者の援助でやっているというようなことが書いてあるのです。しかも、これは氷山の一角である、こういう内容が書かれておるわけであります。それだけではありません。巷間のうわさで、製薬会社と厚生省との非常な深い結びつき。証拠はありませんけれども、政治献金その他をめぐるさまざまな疑惑、まさに伏魔殿ではないかといわれるほど問題が具体的になっておるわけです。  そういう点で、いまあの事件に対して厚生大臣厚生省がとられた処置は、製薬の認可について薬事審議会の機構改革をするというだけであって、何にも具体的にやってないというように世間も見ておりますし、私どもも見ておるわけです。そういう点について、あの事件に対する責任をどうするのかという問題と、これらの疑惑を晴らすためにどういうふうな積極的な手を打つのかということを明らかにしていただきたい。
  65. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 いろいろな疑惑を受けてまことに申しわけございません。私は、ただいまお読みになられました新聞は見ておりませんが、ああいった事件がありましたことにつきまして、もちろんその前からも、いろいろと歴代の大臣あるいは局長も指導監督をしておられたことと存じますが、私もさらにえりを正して、今後そういうことのないように、まず職員の公務員としての道徳的なあり方という点、また監督のしかたという点につきましても、細心の注意を払ってまいりますと同時に、御承知のように、今日非常な過当競争による競争が激しいわけでございまするので、また薬の新しい製造の申請の数も非常に多うございます。これらに対処いたしまして、今後そういうようなことが起こらないような方策を考えてまいりたい。いまいろいろと具体案を練っているわけであります。詳細は薬務局長から答弁いたさせます。
  66. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 今回の事件を契機といたしまして、医薬品の製造承認のあり方というものを根本的に改革をいたしますように、現在案を練っておるわけでございます。その具体的な内容について、いま考え方だけを申し上げておきたいと思います。  第一点は、現在厚生省のほうに参っております製造承認の申請件数というのは、年間非常に膨大な件数にのぼっておるわけであります。にもかかわらず、私どものほうの審査能力、審査体制というのがそれに対応するだけの能力を持っていない、こういうところに問題の起因があろうかと思うのでございます。したがいまして、審査の申請件数というものを今後できる限り適正なものにしていくというような配慮からいたしまして、ただいま大臣から御答弁申し上げましたように、過去に見られますような、いわゆる類似医薬品とモデルチェンジ等による医薬品の申請件数というものが、この傾向がいいかどうかということについて根本的にメスを入れたいということが第一点でございます。  それから同時に、われわれのほうの審査体制というのが非常に現状に即応できるようなものになっていないというような観点からしまして、審査能力をもう少し強化してまいりたい。審査官等を増員するなり、あるいは薬事審議会というようなものをもう少し大幅にこの面で活用をしてまいりたいというようなこと。と同時に、また具体的な医薬品の承認の基準というものを、今後鋭意早急につくってまいりたいというようなこと。それから、一人の審査官だけで審査を決定するというようなことのないように、今後合議制というものをこの審査体制に取り入れてまいりたいというようなこと。それから最後にもう一つは、厚生省だけに権限が集中している傾向がややございますので、できる限り、都道府県知事というものにある程度権限を移譲いたしまして、そして都道府県の審査能力等も今後十分整備してまいるというようなことも考えているわけでございます。そういう方向に沿って現在具体案を検討中でございます。
  67. 西風勲

    ○西風委員 厚生大臣答弁も、薬務局長の答弁も、全然納得できませんけれども、あと分業問題、要指示薬の問題で質問がありますので、この点については保留しておきます。  しかし、この際はっきり申し上げておきますけれども、もっと積極的に内容を明らかにして十分な処置をしなければ疑惑はあらたまりませんよ。厚生大臣は新聞読んでいない。あなたは大新聞を、しかも厚生省に関係のある「業界べったり厚生省」というようなことを書かれた新聞を、読んでいないというような不見識なことを、大臣、言ってもらったら困りますよ。一番先に読んでもらわなければいけないじゃないか。しかもあなたは、これについて社会的責任を明らかにしなければいけないじゃないか。読んでいないというような無責任なことで済ましているというような態度に抗議しておきますよ。だからこの点については、いずれあらためてもう少し詳細に御質問申し上げることにして、次の問題に移ります。  武見医師会会長は最近の日本医師会の新聞で、これから新しい医療制度を考えていく上で、薬剤師と医師が対等であるというようなことを考えることは、錯覚もはなはだしいし、本末転倒であるというようなことを発言しております。それとは趣旨が違いますけれども、十月三十一日の全国薬務主管課長会議というので、坂元局長、あなたは、これから医薬分業の問題を考えていく際に考えなければならぬ点が二つある、まず第一は、その前提として、薬剤師や薬局に対する国民の評価が大きく変わらなければ医薬分業はできないのだということであります。それから第二は、薬剤師と薬局の倫理の向上が必要であるということを書いてあるわけですね。薬剤師や薬局に対する国民の評価とは一体何か。あなたの認識はどういうことをさしておられるのか。さらに倫理の向上とは一体いかなる内容のことを言っておられるのか。私たちから言わせれば、あとで言いますけれども厚生省の指導の問題、薬務局の行政指導の内容の貧困さというのが、今日のような事態をつくり出していると思うのですけれども、あなたは、薬剤師、薬局の倫理の向上というふうに言われているのですけれども、これらについて、武見発言ともあわせて、これからの医薬分業における医師と薬剤師との社会的地位の問題ですね、あるいは医療における任務の分担の問題という点について、まず明らかにしていただきたいと思います。
  68. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 薬剤師あるいは薬局等に対する国民の評価、あるいは薬剤師等の倫理の向上、こういうことについては、前々からいろいろな方面で論議が戦わされていることは御承知のとおりでございます。私ども、これから本格的に医薬分業を積極的に推進しようという現段階において、薬剤師等が、ほんとうの意味の医療担当者として今後医療を担当していける、そういうような問題を真剣にやはり考える時期にまいっているということも、当然うなずけるわけでございます。  そこで、いまお尋ねの、薬剤師、薬局等に対する現在の国民の評価という問題、これは確かにいろいろな見方があろうかと思いますが、世上いろいろな方面でいわれていることは、やはり現在の、たとえば薬局の販売の実態というものを見ますと、どうも一般的な傾向として物品販売業的なやり方におちいってしまっているということがよくいわれているわけでございます。そこで、これから、先生御案内のように、医薬分業なるものを本格的にやってまいりますならば、やはり薬剤師なり薬局というものは、真の国民の信頼を受けるだけの医療担当者としての本来の任務というものを自覚をしていかなければならぬ、こういうことはわれわれ自身も考えているわけでございます。それから倫理の向上という点も、ほぼ同じような考え方から出てくるのではなかろうかと思います。医師の診断に基づく処方せんというものによって薬剤師なり薬局が調剤をするということが医薬分業だといわれているわけでございます。つまり、そういうふうに機能を分化していく、専門職員による機能の分化というものが医薬分業だといわれているわけでございます。もしそうだとしますならば、やはりここらで、国民の一部にありますような、そういう薬剤師なり薬局に対する不信感というものをわれわれはこの際回復をしていくということがこれからのあるべき方向じゃなかろうか、こういうようなことを考えまして、従来から、薬剤師会なり、あるいは薬種商なり、そういうような関係団体と、こういう面についてもし国民の一部に誤解なり不信感があるとすれば、やはりほんとうに医薬分業を推進できないかもしれぬ。どうしてもこの際医薬分業を推進するならば、そういう面についてのPRなり何なりをやっていきながら、同時にまた薬剤師なり薬局自身でもそういうような自覚と責任を感ずべきだ、こういうことがわれわれの考え方であるということを、先般の全国課長会議でも申し上げたわけでございます。
  69. 西風勲

    ○西風委員 たいへん素朴なことを聞きますけれども、医者と薬剤師は、薬についてどっちが詳しいですか。どちらが、薬について学問の経歴を持ち、実際上の経験を持つとお考えですか。これは世間では、医者のほうが薬に詳しくて、薬局というのは包装された錠剤みたいなものを売る売店のように認識されている例が非常に多いのですよ。だから、そういう点でさらに私は聞きますけれども、いま世間で冗談のようにいわれているのは、医者は薬でもうけている、歯科医師は金歯でもうけている、薬局は化粧品で生活している。これはまことに残念だけれども、大体世間の通り相場みたいなことばになっているわけです。ところが、なぜ薬局が化粧品を売らなければ――化粧品どころか、トイレに使うペーパーまで売らなければ生活していけないという状況になっているのですね。ところが薬については、お医者よりはるかに薬剤師のほうが、学問からいっても、経験からいっても、造詣が深いわけです。きちんとした専門的な教育も受けているわけですね。ところが、専門的な教育を受けている薬剤師が、本来修めた学問と経験によって業を成り立たせていくことができないというような、医療界におけるたいへんなアンバランス。医者がもうけ過ぎているとは私は言いませんけれども、同じように医療に従事しながら、医者に比べて薬剤師が、問題にならないほど社会的地位も収入も低いというような結果が、あなたに倫理向上を叫ばせるような内容を形づくっているのであって、薬剤師や薬局が倫理が低いからこうなったのではなくて、原因があってこうなったのですね。そういう点についてどうお考えですか。
  70. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 医師と薬剤師とどちらが薬のことについて専門的か、これはいろいろな見方があるかと思います。医師も、それぞれの専門的な教育を受けて、医師の資格を取得しているわけでございます。片一方また薬剤師のほうも、薬科大学等を卒業して、国家試験という制度によって資格を取得している。したがいまして、それぞれの立場において、見方は違い、扱い方はたとえ違っても、薬の問題についての専門家であることは、私は同様だと思っております。で、いま先生おっしゃられますように、現在の薬剤師に対する国民の評価あるいは社会的な地位、そういうものが医師と比べて非常に低いのじゃないか。確かに私はそういう面が一部にあろうかと思います。しかしながら、その原因は何かということでございますが、その原因は、やはりいろいろな現在の制度、仕組み、そういうものにも大きな原因があろうかと思います。と同時にまた、薬剤師なり薬局の方々が、そういう社会的な本来の任務というものを担当する、そういう自覚にやや欠けている面もあろうかと思います。それで私どもとしましては、今後医薬分業なるものに本格的に取り組んでいくためには、現在の制度、仕組み、たてまえというものを改善をしていく、これが一つの大きな柱でございます。と同時に、また医療担当者たる自覚なり責務というものを真に認識できるような雰囲気というものを今後早急につくり上げていく、こういうことも一つ大きな柱になろうかと、私どもはこういうふうに考えているわけでございます。
  71. 西風勲

    ○西風委員 厚生大臣、これから抜本改正の問題を扱っていくわけですけれども、今度は特例法の延長というのが、私どもこれは断じて同意できないわけですけれども、そのことはきょうはおくといたしましても、これから抜本改正を進めていく中で、医薬分業というのをどういう目標でやっていくか。鈴木調査会その他で、自民党の一定の考え方というのが示されているといわれておりますけれども、これはまだ公式に明らかにされたものではありませんからあれですけれども、大体どういうふうな計画で何年をめどにして医薬分業をやられるのか。同時に、医薬分業をやっていく中で、たとえば薬局の経済的な内容の充実、企業としてやっていけるような医薬分業を担当するにふさわしい薬局といいますか、それを扱うセンターといいますか、そういうものをつくらしていかなければいかぬわけですが、そういうものまで含めて、あるいは技術指導といいますか、再教育といいますか、医療担当者は、どんなにすぐれていたって、常に学業につとめてもらい教育を受けなければならないわけですけれども、そういうさまざまな点を含めて、何年を目標にして医薬分業をやるのかということが第一。第二は、そのために具体的なプログラムとしてどのようなことをやろうとされているのか、お伺いしたいと思うのです。
  72. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ただいま医療保険の抜本改正と取り組んでいるわけでございますが、近く少なくともその骨子を決定をいたしたい。いま御承知のように、党の医療基本問題調査会でもその結論を急いでもらっているわけでございます。その立て方といたしまして、いま御質問にありました医薬分業、これはやはり抜本改正の一つの骨子になると思いますが、しかし、いまおっしゃいますように、医薬分業を完全にやり遂げますのには、法律をつくって直ちにというわけにはまいりませんが、目標を示しまして、最小限度でも三年くらいはかかるであろうか。しかし実際面として、きょうの日からいえば五年くらいが最終の目的であろうか。できればもっと早く縮めたい。そして具体的な方策といたしましては、あるいは薬剤師関係の団体でも、いま御承知のように研究をしてもらっておりますけれども、協業というような事柄で一つのセンターをつくってもらうというようなことも一つの方策ではなかろうかと思っておりますが、詳しい具体的な問題は、御質問に応じて局長からお答えさせます。
  73. 西風勲

    ○西風委員 いまの大臣答弁ですと、特例法の延長で二年間ある。だからその二年間を計算に入れて、一番最初に言われた三年というので、結局いまで言えば七四年ですか、七四年を目標にして分業をやる、こういうことですね、年次で言いますと。これはやはり七四年では話にならぬわけで、もっと早くやらなければ、健康保険の赤字もなくならぬわけです。だから、国民的な医療体系を整備するためには、いまから五年もかかっていたのでは、世の中の進歩に合った医療体制というのをつくることは困難だと思うのです。世の中はどんどん変わっていきますからね、医療自身も。そういう点で、少なくとも七〇年の前半、おそくても七一、二年ぐらいまでにこの分業問題をやってもらうという必要があるのではないかと思うのです。  同時に、そういう分業をやっていくためには、薬務局長、具体的なプログラムが要るわけでしょう、薬局ないし薬剤師に対して。その分業体制にふさわしいどういうふうな諸準備を整えるかという点が必要なわけです。それをやりながら進めていかなければ、医薬分業が何年ということにきまったら、それがきまって実施されてからやるというのでは、さらに体制をつくることがおくれるわけですから、それまでにどういうふうな準備をするか。同時に、こういうものを担当している薬剤師会を中心にした、こういう問題に対する学術専門団体、あるいは広く国民的な意見を聞いてもいいと思うのです。単に業者の意見だけではなくて、広い国民医療というような視野で、どういうような準備作業をやっていくのかというような点についての具体的なプログラムが必要ではないかと思うのですけれども、そういう点について、どういうふうな準備と研究がなされているか。あるいはそれらの団体と話し合っている事実があるのかどうか。話し合っていないのなら、これからひんぱんに話し合う意思があるかどうかということをお伺いしたいと思うのです。
  74. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 医薬分業の推進方策でございますが、これは一つの非常に大きな国民的な問題であるだけに、われわれも慎重に各界の英知というものを集めて、一つの考え方というものを出していかなければならぬというようなことを考えまして、従来からいろいろな方面の御意見も聞きながら、また厚生省内部においてもいろいろなことを検討を進めてまいったわけでございます。  そこで、いまお尋ねのように、今後の推進の目標なり何なりを、どういう点に配慮を置いて計画的にやっていくのかということでございます。私どもとしましては、やはりこの種の問題というものは、つまり行政当局と申しますか、役所側で一つの線を出しまして、そしてそれに従って引っぱっていくということがはたして妥当かどうか、この点は非常に問題だろうと思っています。したがいまして、基本的な考え方としましては、やはり先生もおっしゃられましたように、関係団体、それから広くまた国民の英知というものを十分集めながら、この問題についての一つのおのずからの結論なるものを出していくべきじゃなかろうか。役所のほうで天下り的に計画をつくり、天下り的にこの問題を引っぱっていくということはいかがなものだろうか、こういうふうに考えております。幸いなことに、日本薬剤師会等が従来から鋭意この問題について一つの考え方というものをまとめて、それに基づきまして、いま逐次実施できる地域から実行している。片方また日本医師会においてもしかり。私どもとしましては、そういうような関係団体の一つの線が出てまいりますと、同時にまた与党たる自民党においても、近くそういうことについての基本的な考え方というのが明らかになると思いますので、そういうような、すべてのこの問題についての関係あるところからの御意見をいただきながら、やはりおのずからそこに、一つの目標なり計画なり、ものの考え方なり、そういうものが出てくる。そうしますると、やはりこれは国民的な一つの世論としてこの問題を考えていく、そして推進していく、こういうことが大事だろうと思いまして、そういうような機運をつくり上げるということで、いままで鋭意努力をしてまいっているわけでございます。
  75. 西風勲

    ○西風委員 大臣、戦後二十数年間、国民医療の基本的な体系を整理するためには医薬分業でなければならない――これは諸外国でも、すでに大部分の国で、先進国のみならず後進国も含めて、医薬分業が行なわれているわけですね。戦後二十数年間、これが旗じるしになりながら、いままでこれができなかったわけですね、残念ながら。それができなかったのは、ある種の団体の圧力に厚生省政府、自民党が弱いためにできなかった。それがすべてとは言いませんけれども、そういう意見があるわけですね。私どもはこの問題については、厚生大臣厚生大臣をずっと五年も十年もやられるかどうか。まあ、やられることを祈りますけれども、やられるかどうかわかりませんから、そういうことを聞くのはどうかという点もありますけれども、しかし、どういう圧力があっても、一定の計画に基づいて、医薬分業というのはできるだけ短い期間でやる意思があるのかどうか。同時に、医師会と薬剤師会、あるいはその他若干の関係団体があると思いますけれども、これらの団体を説得して、これらの団体の意見一致した姿において、医薬分業体制を整えるための積極的な政治的な努力をやる意思があるかどうかという問題ですね。これは、医師会と薬剤師会が対立したままでやられたのでは、国民の不幸ですからね。そういう点では医師会にも強く説得をする。同時に私は、薬剤師会が全部いいとは言いません。薬剤師会にも反省しなければならぬ点があると思います。今日こういう事態になったのは、薬剤師会側においても十分な努力がなかったからこういうことになっているのですから、その点については薬剤師会も反省しなければならぬ。しかし一番大きい問題は、やはり医師会を説得するという問題があるわけですね。名前をあげていいかどうかわかりませんけれども。そういう点で、そういう話し合いその他を積極的にやってもらいたいし、やる意思があるかどうかということをお尋ねしたいし、私どもがつくれという案は――大体役所が出す案は、出したら最後修正しない。修正しても、鼻くそをほじくったようなところしか修正しないというようなことじゃ話にならぬのであって、皆さんがつくられた案は、広く大衆と専門家、学識経験者に討議を求めると同時に、国民各階層の意見も聞いて、問題によっては大幅修正するというような案を出す必要がある。だから、あなた方が出した案が、一元的行政指導によってきめられるという案を提示せよということを言っているんじゃないですよ。広い検討と討論を巻き起こすために、あなたの十月三十日に言われたことばで言いますと、十年、二十年先ではなくて、二十一世紀の医療という大構想を出されているわけですから、その前に現実の問題を解決しなければ、二十一世紀どころか二十世紀が済まぬのですから、そういう点で、そうした案を早急につくって、それこそ、あなたのことばをさらにかりるならば、英知を集めて、医薬分業体制にいかなる圧力があろうとやるという御意思があるかどうか、大臣と局長のお答えを聞きたいと思います。
  76. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 できるだけ短い期間にやらなければならない問題だと思いますし、またやる意思を十分持っております。そしてまた、たとえ厚生省が事務的に案を出しましても、それはたたき台と心得ていただいて、いい意見はどしどしと述べていただいて、そして最善の案を得るのにやぶさかではございません。
  77. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 先生のおっしゃられる点はごもっともなことでございます。私どもも基本的には同感でございます。やはり関係団体というものを含めまして、広く国民の全部の層にわたって、この医薬分業というものを本気でやっていくというような機運が出てまいりませんと、ただ机上のペーパープランだけでこの問題は片づくものではないということは、十分わかっているわけでございます。したがいまして、私どもも従来から、そのような関係団体を含め、広く国民全般についてこの問題についての認識を高めるひとつの素地をつくるような努力を、都道府県を通じてやってまいったわけでございますが、なかなか困難な問題だけに、今日まで解決できない現状にあるわけでございます。したがいまして、今後は、やはりいま仰せられましたように、私どもも実は案をつくりかけております。しかし、役所の案が最善なものではないわけでございますので、関係団体、それから広く国民各階層の御意見を聞きながら、こういう国民的な大問題をそういう広い視野に立って推進をしていくという点については、全く同感でございます。
  78. 西風勲

    ○西風委員 だから、幾ら団体が大きくても、その要求が国民医療にとって正義の立場でなければそういう意見はしりぞけるという気概に燃えて、この医薬分業問題をやっていただきたい。これもきょう一ぱいで解決する問題ではありませんし、同僚、先輩の方々とも、この委員会を通して十分な討論をやって、できるだけ国民医療の体制がすみやかにできるような配慮をお願いしたいというふうに思うわけであります。  それでは次に、要指示薬の問題についてお伺いしたいと思うのです。要指示薬というのはどういうものを要指示薬というか、まずお尋ねしたいと思うのです。
  79. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 一般的に、医薬品の使い方あるいは使用方法等については、非常に細心の注意をしなければならぬことは理の当然でございます。医薬品というものは、一定の効能、効果というものを持っていると同時に、また逆のマイナス面、つまり副作用なり副反応というようなものがとかく出やすい性質のものでございます。  そこで、いまお尋ねの要指示医薬品というものについては、どういうような理論的な根拠を持っているかということでございますが、この要指示医薬品として現在法律に規定がございますのは、たとえばその取り扱い方が非常にむずかしい、つまり使用法がむずかしいとか、あるいはたとえば習慣性があるために保健衛生上のいろいろな障害が出てきやすいとか、あるいはまた耐性菌といわれるようなものを持っているものとか、そういうような特別な種類の医薬品につきましては、やはりしろうと判断でしろうと治療をしてもらっては困るというような趣旨から申し上げまして、こういう特別な種類の医薬品については、医師、歯科医師等の処方せんなりあるいは指示等によって、つまり絶えず医師等の専門家の指導下にあってこういうものを使用することが必要であるという種類の医薬品について、厚生大臣が指定をしまして、特別なものとして一定の規制を加えてやるわけでございます。
  80. 西風勲

    ○西風委員 ある薬業の専門紙によりますと、要指示薬の取り締まり強化が指示された遠因はともかく、最も近い原因は主婦連の試買によって受け身に立たされた薬務局の保身宣言である、こういうふうに書いてあるあれがあるわけであります。これについては、戦後相当長い間にわたって要指示薬というものはやってこなかったわけですね。ごく最近やってきたわけですね。相当前からやっていますか。これについて、どうも最近厚生省薬務局が時間を急いで非常に無理なことをやっている。その経過その他が明らかではないし、これをやる上でやらなければならない薬局その他に対する指導、あるいは国民に対するさまざまな啓発といいますか、あるいは医師との関係の調整、処方せんの問題も含めた調整とか、そういうことについて十分な努力がないままに、要指示薬という形で、言うならば薬局に対して一方的なしわ寄せをしておる、こういうふうに言われる向きがあるわけですが、そういう点はどうですか。
  81. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 要指示医薬品の制度というのは、戦後昭和二十三年にできて現在まできているわけでございます。これは先ほど申しましたような趣旨で、特別な医薬品につきましては、医師の処方せん等によって、医師の監督下にあって使用するという目的のためにできている制度でございます。そういうような法律の精神なり趣旨からいたしまして、この種の医薬品についての取り扱い方なりなんなりは、販売者側の薬局等においても当然でございますが、また使用する国民、消費者の立場においても、当然取り扱い方、使用方法については万全の注意を払っていただかなければならぬ性質のものでございます。私どもは、そういうような基本的な立場からしまして、従来から、この要指示医薬品の取り扱い方について、各都道府県を通じいろいろな指導をしてまいったわけでございますが、やはり依然として一部の薬局等において、法律の精神等を若干無視したような扱い方というものがあとを断っていないということで、たびたびの通達を出して都道府県等を通じて指導をしてまいったわけでございます。いま申しましたような状況が依然として続いておるというようなことで、昨年の秋に、先生のほうのお考えではやや強いような通達になってまいったわけでございますが、これは決して、一方的に薬局等を締めつけるとか、そういうような気持ちは全然ないわけでございまして、あくまでも法律に書いてあるとおり、また法律が設けられた趣旨どおりの取り扱い方なり販売方法をやってほしいということを重ねて通達で申し上げた、こういうような事情に相なっているわけでございます。
  82. 西風勲

    ○西風委員 こういうものは、実際扱っている人と一定の話し合いといいますか、協議といいますか、やはりそういうものが要ると思うのです。もちろん、その団体の言っておるとおりにするとか、そういうことは必要ないと思いますけれども、やはり一定の調整をするというようにしなければ、これはあなた方が主観的にどういう意図でやられたかは別にして、結局、医療関係の中で一番弱い薬剤師、薬局にしわが寄って、化粧品どころか、もっとそういう端物売りを広げなければやっていけぬような、そういうことを推進する。分業体制でなくて、分業を不可能にするような体制にどうも役立っている。もちろん、要指示薬として示されているような薬品について、十分な注意をしなければならぬ、国民に害のないようにしなければならぬということは当然であります。その点については私ども反対ではないわけでありますけれども、結果的にそうなっているわけですね。  そこで、この要指示薬を選定する機関は一体どういう名称の機関かということ、それからその機関を構成している人々はどういう人々で、どういう方法でその選定をするのかという点について、お尋ねしたいと思います。
  83. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 どういうような基準をもって要指示医薬というものを選ぶのか、またどういうような機関でこれを選定するのかという趣旨のお尋ねでございますが、要指示医薬品というのは、先ほど申し上げましたような趣旨の医薬品でございまするので、私どもは、この種の医薬品の選定については、非常に慎重な考え方のもとに手順を踏んでやってまいっているわけでございます。そこで、ある種の医薬品を要指示医薬品にするかどうかということにつきましては、専門家等の御意見を十分聞いております。そして過去の実例、特に臨床上の試験結果、そういうようなものも十分参考にしながら、たとえば現在は、国立衛生試験所の毒性部とか薬理部とかの専門家の意見を聞く場合、あるいは薬事審議会等の専門家の意見を聞く場合、あるいは特殊の眼科とか耳鼻科とか、そういうような分野にわたる医薬品についてはそういう方面の専門家の御意見を聞きながら、要指示医薬品にするかどうかの態度をきめていく、こういうことに相なっております。
  84. 西風勲

    ○西風委員 それでは正式な機関というのはないわけですか。
  85. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 法律上は厚生大臣が指定するということになっておりますので、本来から申しますと厚生大臣限りできめられるものでございますが、しかし事柄の内容からいって、また国民に対するいろいろな影響からいって、われわれとしましては、いわゆる役所だけで事をきめて、役所だけで事を運ぶということをしていないわけでございます。特別にどこの機関というようなものは法律ではさまっておりませんけれども、先ほど申しましたような各界の専門家なり特別な試験研究機関の結果等を十分参考にしながら、専門家の意見で事をきめるということになっているわけであります。
  86. 西風勲

    ○西風委員 私の言うことが正確でなければおわびしますけれども、要指示薬の問題については新医薬品調査会というような機関で――もちろん厚生大臣が指定するという形をとるわけですけれども、内容的にはこの調査会でいろいろ相談されている、こういうふうに聞いているのですけれども、それは間違いですか。
  87. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 いまおことばがございましたように、新医薬品調査会というのは薬事審議会の中の有力な一つの調査会でございますが、ここの中にはいろいろな方面の専門家がおられます。したがいまして、そういう専門家の御意見を聞く場合と、それ以外に国立衛生試験所等の専門家もおられますし、それ以外のいろいろな専門家、大学等のそれぞれの一流学者もおられますので、そういうところの御意見を総合してわれわれは最終態度をきめている、こういうことに相なっております。
  88. 西風勲

    ○西風委員 重ねてお伺いしますけれども、新医薬品調査会というので、正式な答申かどうかは別としまして、実質的には答申するようなかっこうで厚生大臣がそれを指定するというようなことはないわけですね。これは一部分であって、ここで相談することもあるけれども、別にここを主にして相談するというようなことはないということですか。     〔委員長退席、竹内委員長代理着席〕
  89. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 そのとおりでございます。いままでのやり方はそのとおりでございますが、私ども、いま要指示医薬品というものが非常に大きな関心を呼んでまいりましたので、今後の取り扱い方についてはどうしようかということについて目下検討中でございますが、いままでのやり方については仰せのとおりでございます。
  90. 西風勲

    ○西風委員 やはり要指示薬というのは重要な問題ですから、最終的に法律上厚生大臣が職権で指定するということになっていようとも、やはり学識経験者とか、学識経験者だけではなくて、それを聞くことによってわかるような人々、あるいは利害関係者も含めた――調査会になるのか、懇談会になるのか、協議会になるのか、どういう名称になるかしりませんけれども、そういうものをつくって、そこで納得の上で、話し合いの上でこの問題を解決するというようにされることが望ましいのではないかと思う。  私、時間がありませんから、あと二、三要望して質問を終わらなければならぬわけですけれども、一つは要指示薬の問題が、先ほど申し上げましたように、残念ながら結果的には、薬剤師、薬局に対してますます生活を困難にしていく。おそらく主観的にそう考えてやられたわけじゃないでしょうけれども、そういう結果になっているわけですから、そういう点で要指示薬の問題については四十九条の問題も含めて――四十九条の問題もきょうやりたいと思ったわけですけれども、時間がありませんからやりませんけれども、四十九条について検討すると同時に、とりあえず私が先ほど申し上げたような機関といいますか、会合といいますか、そういうものを通して、そういう協議の中でこの問題をやってもらいたいということが第一であります。  それから第二は、現在、要指示薬になっておりますのは、たしか百三十四品目ですか。これは、少し短い時間でこういう行政が行なわれたために、相当洗い直しを必要とする部分もあるのではないかというように私どもは考えるわけであります。要指示薬を撤廃せよというような意見もありますし、私どもそういう考えについても検討しなければならぬと思いますが、とりあえず今日の問題としては、要指示薬百三十四品目についてもう一回洗い直して、できたら品目を減らすというような点について、できれば一回真剣に検討してもらいたいというふうに思うわけであります。  それからもう一つは、大阪府薬剤師会から、この要指示薬品その他の問題に関して、厚生大臣に上申書が出ておるわけです。やはりこういう上申書については、それが役所の気に入ろうと気に入るまいと、正式機関に一定の回答を出すのが大臣や役所の任務じゃないかと思うのです。そういう点については、きょうまで出されておらないわけでありますから、大阪府薬剤師会から出されました上申書については、すみやかに回答をしてもらうということをお願いしたいと思うのです。それらの点についてどう考えておられるか、まずお伺いしたいと思うのです。
  91. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 御意見、三点あったと思いますが、みなごもっともに思います。よく検討いたしまして、できるだけ御趣旨に沿うように、私もそんな考えでおりますから、検討します。
  92. 西風勲

    ○西風委員 それでは最後に。先ほど申し上げましたような、出したものに対しては当然返事を出してくれますね。どんな団体であろうと、大きかろうと小さかろうと、厚生省に対する問い合わせがあったら出していただきたいということを申し上げるとともに、医薬分業については、それこそ二十一世紀の医療というものを目ざす現実的な過程ですから、これが具体的なプロセスですから、これに対しては堂々とした態度で、医薬分業について、いかなる圧力にも屈しないで、正しい国民医療という立場を貫いてやっていただきたいというふうにお願いしたいと思います。  それからもう一つは、先ほど申し上げました、これは薬務局長からも答弁してもらわなければいかぬわけですけれども、百三十四品目の洗い直しについて一回検討してもらいたいというふうに思うのですけれども、その点どうですか。
  93. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 先ほどの第一点の特別な機関を設けるということについては、要指示薬品制度というものが非常に重要な意義を持つ段階になってきておりまするので、今後、将来どうするかということも含めまして意義が大きいと思います。したがいまして、そういう観点からいたしますと、いままでは確かにいろいろな方面の意見を聞いてきておりますけれども、今後はやはり一定のそういう仕組みというものが必要かと思いますので、何らかの形でわれわれもそういう方向で、要指示薬品を指定する際の一つのたてまえというものを明確にさしてまいりたい、こういうふうに思っております。  それから第二の、要指示薬品の品目の洗い直しでありますが、これはわれわれ関係団体等からたくさんの御要望をいただいておりますし、またわれわれ役所自身も、前々からそういうような認識を基本的に持っておりました。したがいまして、昨年くらいから本格的にこの洗い直しの検討を進めてきておりますが、何ぶんにも過去のいろいろな事実が積み重なって今日に来ておるような事情もございますので、一挙に解決するということが困難な面もございますが、鋭意いま洗い直しの検討を進めておりますので、もしそのような案ができましたら、十分関係団体等の御意見も聞きまして最終結論を出すようにいたしたい、かように思っております。
  94. 西風勲

    ○西風委員 厚生大臣、医薬分業についてこの際あらためて決意を明らかにしていただきたいということと、それからもう一つは、薬務局長、そういう作業をするについては、私どもはいまきわめて短い時間でしたけれどもいろいろ質問したわけですから、できるだけ私ども報告してもらいたいということをお願いしておきます。
  95. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 医薬分業は熱意を持ってやりたいと思っております。
  96. 西風勲

    ○西風委員 これで終わります。
  97. 竹内黎一

    ○竹内委員長代理 ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  98. 竹内黎一

    ○竹内委員長代理 速記を始めてください。  次に大橋敏雄君。
  99. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 私は看護婦問題についてお尋ねいたしますが、最近とにかく看護婦問題、特に看護婦不足ということから大きな社会問題を呼んでおるように私は感ずるわけであります。  まず、最初にお尋ねしたいことは、このような看護婦の不足問題、看護労働問題を窮状に追い込んだ大きな原因は何か、これをお尋ねするわけであります。
  100. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 看護婦の不足問題が、御指摘のように非常に大きな問題になってまいりましたが、この看護婦の供給計画は、かねてから厚生省といたしましても努力をしてまいっておりまして、現在入学定員で申し上げれば看護婦が約一万、准看護婦が約三万三千という程度の入学定員の増加というところまでこぎつけておりますし、十年間に約二万六千四百程度の入学定員の増加がはかられた、こういうようなところまでまいっておりまして、就業人員も二十五万三千人というところまで増加はしてまいったわけであります。しかしながら、一方におきまして、医療の需要、特に看護婦を最も必要といたします病院の病床というものの増加も非常に顕著でございまして、大体一年間に四万ベッド以上というものが平均いたしましてふえてくる、こういうような状況にもございましたために、供給力のほうの拡充をしたにもかかわらず、なかなか思うほどに十分な供給ができなかった。その上に、御承知のとおり新しいいろいろな勤務体系という問題が出てまいりまして、一そうそういった面の不足感を強くした、こういうふうに考えておるわけでございます。
  101. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 ただいま、看護婦不足の大きな問題は、ベッドの急激な増加あるいは勤務条件の問題というようなお話でありましたが、この需給のアンバランスのほんとうの意味の解消は、看護婦の養成に関するいろいろな問題が大きな欠陥になっているのではないか、私はこのように思うわけであります。したがいまして、看護婦問題の解決のポイントは、三年課程のあの看護婦養成問題、そこの増設やあるいは拡充強化ということにあるのではないか、こう感ずるのですが、その点はいかがですか。
  102. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 御指摘のとおり、看護婦についていえば、その三年課程の養成課程を大幅にふやすということが、何としましても基本でございまして、御指摘のとおりでございます。
  103. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 看護婦不足が、待遇が悪いからだとか、あるいは志願者が少ないのだというような一般的な風潮がありますけれども、現実は逆なんです。厚生省から出ております資料を見てみましても、四十三年度の一学年定員は、看護婦養成の三年課程の問題ですが、七千百七十九名の定員、それに対して志願者数が四万六千七百三十三名、受験者数が四万五百三十四名、そして入学者が六千八百七十九名、定員に対する入学者の比率は九五・八、競争率は五・九という高率を示しているわけですね。ですから私は、その志願者が少ないのじゃなくて、施設、定員の問題、ここに看護婦問題の解決のかぎがあるのじゃないか、こう思うのですが、この是正といいますか、改善といいますか、そういうことをお考えではないのでしょうか。
  104. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 いま申されましたとおり、看護婦学校、養成所等に関します志望率が約五・九倍ないし六倍という実態にございます。多少かけ持ちもございまして、ネットの数字とは言いがたいかと思いますが、御指摘のとおり志望者はまだある。私どもといたしましては、やはり将来いろいろな若年人口の減少等の傾向も出てくるかと予測されますので、せっかくそういう志望者のある間に、多くの方にやはり看護婦になっていただくということを考えるのが、最も現実的ではなかろうかと考えております。したがいまして、ぜひひとつこういう養成計画を洗い直しまして、十分そういう希望者のあるうちによき看護婦になっていただくような収容力というものを拡大したいと、ただいまいろいろ検討を進めておるような次第でございます。
  105. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 厚生大臣お尋ねしますが、いまのように、看護婦問題は、その施設の増加、あるいはその学校の定員の問題が重大な事柄になっているのですけれども大臣としてはこれについてどのような見解をお持ちでしょうか。
  106. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 やはり施設を増しまして、そして看護婦の学校に入学し得る定員を増加することが、まず喫緊の要務だと考えております。
  107. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 そのためには十分な予算の獲得が先決だと思いますが、国費、公費の導入が少ないために、志願者に応じて養成の定員を増加ができない、こういう現状を踏まえて、今後の予算措置といいますか、それを考えてもらいたい。これは強い要望でございます。  それから、現在の正看護婦の養成奨学金、現在のところ三千円ですか、それから准看護婦の養成奨学金は現在のところ千五百円ということでございますが、これも私は、大幅に増額すべきではないか、こう考えるのですが、これに対しての見解をお伺いしたいと思います。
  108. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 私どもとしましても、やはり奨学金の単価を上げたいということで、四十四年度予算折衝におきましても努力をしたところでございますが、こういう制度が、たとえば育英資金といったようなもののバランスの問題等がございまして、そういう理由のもとに単価を増額するということができなくて、人員増だけにとどまったわけでございます。私どもは、やはり志望者を多く獲得をし、安んじて看護婦の勉強をしていただくということのために、こういう奨学金というものは将来十分拡大すべきであるというふうに考えております。
  109. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 看護婦さんの勤務条件あるいは休養問題について一、二お尋ねをしたいのですが、看護婦さんの労働過重といいますか、これはひどいものでありまして、最近は、看護婦さんそれ自体に疾病が多くなる、あるいは異常出産とか流産とかが目立っているそうであります。これは大きな社会問題だと私は思うのです。  一つの実例をあげますけれども神奈川県の国立久里浜病院ですね。ここに勤務していらっしゃったある婦長さんが、去る三月の九日の日に勤務に忙殺されまして、ほんとうに自殺をした。これは遺書にそのことがはっきり書かれているわけですね。このことを御承知かどうか知りませんが、その勤務状態を私は調べてみました。そうしますと、婦長さんの勤務日程、これは一般並みで、平常通りで問題はなかったのですが、二月のある日、東六病棟、ここはアルコール中毒患者の治療病棟だそうですが、そこに勤務しておりました、たとえばAという看護婦さんが、そこの患者との間にトラブルを起こしたのですね。そういうことから、Aさんは配置転換になったわけです。したがいまして、Aさんが受け持つ勤務内容を、そのままそっくり婦長さんが代行するようになったわけです。したがいまして、その婦長さんの働きというものは二人前、こういうことになったわけです。それが七月の七日以降、ずっと二人前の働きをやってきたわけです。私はその内容を詳しく調べたのですけれども、時間の関係がありますので省略いたしますが、日勤と半日――土曜のかわりに半日という勤務があるのだそうですが、婦長さんの勤務の中にAさんの勤務内容は含まれますので、表面的には問題ありません。しかしながら、その受け持つ仕事の内容は明らかに二人分になるわけですね。もう一つ問題になるのは準夜勤――準夜勤というのは午後四時から午前一時半までだそうです。それが三日。深夜勤が午前一時から朝の九時三十分まで、これが六日間。つまりAさんのほうにはこういう勤務があったわけです。したがいまして、この婦長さんは二人分になったわけですので、一番問題になるのは、自分自身の日勤と夜勤とがダブりまして、しかも、ときには連日続けてそういう仕事に携わったということで、いわゆる殺人的な仕事内容であったわけです。そういうことから本人も悩んで、とうとう自殺行為に出たわけでありますが、こういう点について厚生省として、直接の担当官庁として大いに猛省をしていただきたいし、またこういう行政指導を本気になってやってもらいたい、こう思うのです。このことについて大臣の所信をまずお尋ねしたいと思います。
  110. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 看護婦の数が不足をしておるということから、看護婦さんたちに非常に労働が過重になっているということにつきましては、私たちも非常に責任を感じているわけでございます。その結果そういうような事態もあったということは、まことに残念遺憾しごくに存じます。今後、先ほど申し述べましたように、看護婦の増加をはかり、各病院における充実をはかりまして、少しでもいまの労働の過重を少なくするように努力をいたしたいと存じております。
  111. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 とにかく激務の中の激務だと私も感じます。しかもこの婦長さんが担当したところは、先ほど言ったようなアルコール中毒患者、いわゆる重症病棟なんですね。しかも夜勤の担当が一人なんです。ただでさえアルコール患者ですから、しかも抜け出してお酒を飲みに行くそうです。何人ものそうした患者に一人の看護婦が相手をするということは、それだけでもやはりノイローゼになるのではないか。四十年五月の人事院の勧告を見ましても、夜勤は月八日以内とすること、それから一人勤務は計画的に解消していかねばならない、また看護婦さんの産後六カ月は勤務を免除すべきである、あるいは夜勤中の休憩時間の規定を整備すること、このように、もう四十年五月には人事院から勧告があっているわけです。しかも現実はちっとも改革されていない。私は、ここに大きな怠慢があるんではないか、こう思うのです。  そこで、もう一つ、私が調べたところを公表しますと、神奈川県の三つの国立病院を調べてみました。その一つは横浜東病院、それから療養所久里浜病院、それから療養所浩風園、この三つの国立病院を見てみますと、二十二の病棟中、当直制をとっているのが一病棟あるのです。この当直制というのはよくありませんですね。それから、準深夜一名配置というのが十二病棟でありました。それから準夜一名、深夜二名配置、これが一病棟、それから準夜、深夜とも二名配置していたところが八病棟ありました。この九病棟はまあまあ二名の配置になっておりますけれども、内容を調べてみますと、これは結核、精神病棟ですね。それに産科併設というような、いわゆる重症病棟であるわけですよ。つまり、二人でもとても手が足りぬのじゃないかと思われるような病棟がかろうじて二人、そのほかは全部一人なんですね。ここに私は現実を見まして、これは本気になって改革をしていかなければならぬ、こう思うのです。したがいまして、――きょう、労働省の方、来ていらっしゃいますか。
  112. 竹内黎一

    ○竹内委員長代理 大橋君からは要求が出ておりませんでした。
  113. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 私は、むしろ労働基準法の中にこの義務規定を設けるべきだと思うのですよ。夜勤は月八日以内であるということを義務づけるべきだと私は思うのですが、厚生省としては、この点についてはどう思われますか。
  114. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 四十年に人事院判定が出まして以来、厚生省の直轄いたしておる国立病院、療養所というものにつきましても、御承知のようないろいろな不備な構造建物というものがだいぶありましたので、それ以来、看護婦の勤務条件、特に夜勤における勤務条件の改善というための環境条件の整備ということに三カ年間を費しまして、休息室、休憩室あるいは夜間の暖房、病棟間のいろんな連絡設備等々の整備をいたしてまいりまして、なるべく環境条件を早くよくするということに第一段に着手してまいっております。そのほか、看護婦の勤務体系、ただいま先生も御指摘のように、いろいろな病状、患者の種類というものの組み合わせを適切に収容いたしますことによって、少ない看護婦でもなるべく合理的な配置をするという、こういうような、いわば配置上の適正化をはかるというような努力をする、こういう余地もいろいろとあるわけでございますので、そういう点も並行してやってまいっておりますが、四十四年からは、しかし何といたしましても、そういう条件を改善いたしますためには、やはり人間をふやさなければなりませんので、本年度から夜勤体制改善というための第一年度として増員が認められてきた、こういうたどり方をしてまいっておるわけであります。  徐々に、いろいろいまあげられましたような、休憩、休息の明示の問題でございますとか、あるいは産後の六カ月の夜勤をなるべく免除する、そのための日数の延長というようなものも、実績としましては年々改善がはかられてまいっておりますけれども、しかし、二人夜勤あるいは八日制というものを完全に必要なだけ十分に達成をするというには、御指摘のとおりまだ足らない部分がございます。私どもは、やはり何としても、この看護婦さんの勤務条件のみならず、患者さん自体に対する看護という観点からも、体制の立て直しを十分やらなければならぬ、こう考えておりますので、今後ともひとつ十分大きな努力を払って、早く目的を達成できますように努力をしたいと思っておるわけでございます。
  115. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 じゃ、看護婦さんの給与問題についてちょっとお尋ねしますが、看護婦さんというのは、一人前の資格をとるためにはかなりの努力が払われております。学校に行くにしても、それから国家試験を受けるにしても、非常に長い期間を要するわけですね。まあ、看護婦さんの業務内容あるいは使命から見れば、これは大いに勉強の期間あるいは訓練の期間を長くとっていただきたいという気持ちが一ぱいですけれども、その反面、その待遇が悪いというわけですね。給与問題が全く冷遇的であると私は思うのであります。その点はどう感じていらっしゃいますかね。
  116. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 看護婦という仕事が、患者のお世話をして、かつ御指摘のような夜勤というようなものまでどうしてもやらなければならない。そういう条件に見合った処遇をしていただくということは、私ども当然必要であると考えておりまして、従来、国家公務員の看護婦さんに関しまして人事院がいろいろ勧告をなされますに際しましても、私どもはそういう点を従来からお願いを強くしてまいっております。人事院におかれましても、この点はいろいろと実態調べていただきまして、御理解をいただいているものと私どもは考えておりますが、たとえば昨年の勧告におきまして、国家公務員の国の看護婦さんの平均給与というものが、民間に比べますと八%ほど高かったという実態があるにもかかわらず、なお、一般の公務員がたしか七・八%の引き上げ率でございましたのに、看護婦さんについては八・六%程度の勧告をしていただき、一般よりもさらに高くしていただいたということは、十分その辺も御考慮いただいているものと考えておりますけれども、ただ今後、ほかの女子職業というもののいろいろな推移というものとも比較をいたしまして、バランスが失しないようなものにするべきではないかというふうに私ども考えておるわけであります。
  117. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 看護婦さんが一人前になるためには、たとえば高校卒の方でも、保健婦あるいは助産婦の資格をとるためには、少なくとも四年間学校教育を受ける。しかも、その間二回の国家試験までも受けなければならぬ。また、中卒者は、二年と三年の実務とまた二年と一年で計七年、とにかくずいぶんと長い教育期間があるわけですね。それに比して現在、正看護婦さんで二万五千六百円、高卒者の初任給が現在二万三百円から二万三千円。准看護婦さんがいま二万六百円だそうですが、中卒者の初任給が一万九千円から二万円だ。この比率を見ていきますと、ほんとうに看護婦さんは冷遇的な給与である、こう思うのです。これは大いに改革していくべきである、そう思います。  さらに問題点になっているのは夜間看護手当なんですが、これは労働基準法に基づいて支給されておりますいわゆる本俸の百分の二十五の手当の支給と別に支給されているものですけれども、一回の夜勤についてわずか百円、これは私はもう全く小ばかにした手当ではないか。夜間看護手当というからには、これを少なくとも倍額、それ以上に改むべきである、こう私は思うのです。これについてどう思いますか。
  118. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 夜間手当は、百円の据え置き時期がもう数年続いておりますので、御指摘のとおり、決してこんな百円で満足すべきものではない。私どもの要求としては、一応二百円という線を出してきましたが、まだ実現を見るに至っておりません。やはり夜間のああいう特殊な勤務状態というものを十分理解をしていただいて、これが増額を私どもはかりたい。そして看護勤務を、それ自身によってすべてがまかなわれるものではございませんけれども、そういう勤務の特殊性というものに見合う姿勢だけは、ぜひとるべきではないかと私どもも考えておるわけであります。
  119. 竹内黎一

    ○竹内委員長代理 関連質問の申し出がありますので、これを許します。河野正君。
  120. 河野正

    河野(正)委員 いま大橋委員から看護婦の処遇の問題についていろいろ御指摘があったわけですが、それに対する答弁というものは、ちょうど半分の答弁がなされておるのであって、すべての回答にはなっておらぬと思うのです。というのは、看護婦の処遇の問題というものは、単に公的医療機関だけではございません。これは民間にもあるわけですね。公的医療機関の場合には、人事院の勧告その他ございましょう。それはそれで高い低いの問題はあろうけれども若干考慮が払われても、民間の看護婦の処遇については一体どうするのだ、これについて全然お答えがあっておらぬわけです。そこで、民間の看護婦の処遇については一体どうするのだというふうなお答えを、ぜひひとつここで明らかにしていただきたい。
  121. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 私どもは、やはり民間のいろいろなベースといいますものが、他の場合と同じように、国家公務員のベースというものに非常に影響されておるという実態承知いたしておりますので、先ほど来申し上げましたように、国家公務員のベースがそれだけ高くなるということになれば、民間もそれによって高くなる、こういう期待を持ちまして、その期待をも含めて先ほど来のような御要望も人事院等にお願いしてきたつもりであります。
  122. 河野正

    河野(正)委員 公的医療機関の場合は、財政措置をすればいいわけですよ。ところが、民間にもそれを期待するといったって、民間はそれに対する財政措置を一体どうすればいいのですか。民間に対する財政措置は全然考慮を払わぬでおいて、公的医療機関についてはそうだから、民間においてもそのようなことを期待するということでは、満足な答弁にならぬのですね。ですから、やはり民間についても、公的医療機関と同じようなことを期待するなら、それに対する財政的な面については一体どうするのだということを、やはりここで明らかにしてもらわぬと答弁にならぬと思うのです。民間についての財政措置はどうなさいますか。
  123. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 民間の医療機関について直接財政措置をするということは、たてまえ上できがたいと存じますが、やはり診療報酬というものは、そういうものに見合うようにやっていただかなければならぬ。一般の公的機関におきましても、原則的にはそういうことの中でまかなっておるのが大部分でございますので、やはりそういう診療報酬というものが、看護婦の処遇を可能にし、かつ、今後いろいろと人数の増というものが起こってまいりますけれども、そういうものをやはりカバーしてもらうように、これを考慮してもらわなければならぬというのが、私どもの偽らざる気持ちでございます。
  124. 河野正

    河野(正)委員 関連ですからこれを最後にしますけれでも、それならば大臣として、民間に対する財政措置をどうはかるべきか、どういう決意で臨んでいくかという決意を、ここで表明していただきたいと思うのです。民間の場合は、医療費で考える以外にないでしょう。公的医療機関の場合は、人事院が勧告すれば、その勧告のあり方についていろいろな問題があったとしても、勧告があれば当然政府は財政措置をするわけです。ところが、民間の場合には金の出どころがないのですね。ですからこれは、はかるとすれば当然医療費問題が関連してくると思うのです。民間でも公的医療機関の看護婦と同じようなことを期待するというならば、やはり医療費問題で改善されなければならぬというふうになるわけですが、その点について、これは事が非常に重大でございますから、大臣からも御見解をお聞かせいただきたい。
  125. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ただいま、そういう面も踏まえて、中医協で医療費の緊急是正を審議してもらっているわけであります。なるべく早く結論の出ることを期待いたしておるわけであります。
  126. 河野正

    河野(正)委員 御承知のように、公務員に対しまする人事院勧告は毎年行なわれるわけですね。ところが、医療費というものは、いま早急に結論が出てくるのを期待するということですけれども、これは公務員のように、毎年、毎年ということになっていません。ですから、いろいろ大橋委員のほうから、看護婦が非常に冷遇されておる――私は公務員もそうですけれども、むしろ今日より多く冷遇されておるとすれば、それは民間だと思うのです。     〔竹内委員長代理退席、委員長着席〕 これは出どころがないですね。ですから、この点についてはやはり明快にお答え願わぬと、せっかく医務局長からいろいろ御回答があっても、私どもは、はい、そうでございますかと納得するわけにいかぬですね。特に公務員の場合と違って、医療費問題というのは、毎年、毎年ございません。そういうところに非常に多くの問題を、民間においては残しておるということですね。ですから、大臣としても微妙な段階ですから、なかなかお答えがしにくいと思うけれども、これは看護婦の処遇の改善ということになれば、特に民間ベースにおいてその点を改善してもらわなければならぬ。重大な課題ですから、やはり重大な決意をひとつここでお述べいただかぬと、せっかくお答え願っても、それは半分の解決にしかならぬ。そういう意味でひとつお答えをいただきたい。
  127. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 先ほども申しますように、いま中医協で審議中でございますが、そのうちで、看護婦のみならず、医療機関の人件費というものが一番の中心であろう、かように存じておるわけでございます。
  128. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 じゃ、大臣お尋ねしますが、先ほど申しました夜間看護手当ですね。現在の百円を、やはり倍額以上には改革すべきである、私はこう思うのですが、大臣、その意思はないですか。
  129. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 来年度の予算におきましては、国立病院の看護婦の夜間看護料ですか、この実現を必ずはかるように私は努力をいたしたい。必ず努力をいたしたいと思います。
  130. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 とにかく外国の深夜業の割り増し金のことが、ある本に出ておりますけれども、アメリカでは割り増し率が五〇%だ。イギリスでは週二時間までの残業については二五%、それをこえると五〇%だというのですね。そういうことがずっと詳しく書いてあるのですけれども、深夜業は心身に異常な疲労を伴うことから、外国ではこれに対し大体二五%から五〇%の割り増し賃金が支払われている。ところがわが国では、労働基準法で定めた最低の二五%を上回って支払われているところはきわめてわずかである。全然支払われていないところもある。いま河野委員からも、一般病院あるいは看護婦さんの状態のお話があったわけでございますが、とにかく医療行政の中でも看護婦問題、しかも、給与問題は、大幅に改善しなければならぬ。これがまた看護婦不足を解消する大きな内容になるのではないか、こう思うわけであります。  もう一つお尋ねしますが、全国の看護婦さんの実態調査をおやりになるお気持ちがないかということなんですが、ここ数年、このような看護婦さんの実態調査の予算というものがさっぱり計上されていないのですね。これは私は必ずやるべきであると思うのですが、この点についてお答え願います。
  131. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 看護婦の実態調査あるいは保健婦、助産婦等それぞれの対象につきまして、過去におきましていろいろな調査を行なったことはございます。しかし、ごく最近におきましては、御指摘のとおり全国的看護婦の実態調査というものはまだ行なわれておりません。ただ私どもも、単に調査するというだけではなくて、できるだけの資料は、実態調査という名前をかりなくても集めたい、こういうことで、もちろん直轄の国立機関についてもいろいろとこまかい資料を集めておりますし、またその他公的機関等からのいろいろな情報というものは収集いたしまして、毎年毎年の実態調査ということは困難でございましても、できるだけそういう動きを、いろいろなこまかい点で捕捉をしたいと努力をしておるわけでございます。ただ御指摘のように、ある時点におきましては、できますならば、現在就業しておられる看護婦さんだけではなくて、いわば家庭におられる方までも包んだような調査ができれば非常にありがたいんじゃないかというように考えておるわけでございます。
  132. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 現在、看護婦問題がきわめてクローズアップされてきているときでありますので、これはもう、私は必ずやるべきだと思う。いわゆる看護婦さんに関する総点検といいますか、まず大臣にそういう意思があるかどうかということをお尋ねしたいのですが。
  133. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私はかねがね事務当局に、看護婦の計画的な増加の問題について、ひとつここではっきりした計画を立てるように指示をいたしておるわけであります。それには看護婦の実態というものも踏んまえていなければなりません。いま医務局長が、いままでにある実態調査を絶えず補正をしていると言っておりますが、一斉的な実態調査をやる、やらぬにかかわらず、実態を十分把握できるようにいたしまして、そのもとに立って完全な計画を立てて、そして看護婦対策にあやまちなきを期してまいりたい、かように思っております。
  134. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 とにかく看護婦問題の正しい解決のポイントというものは、現状を正しく把握すること、それからだと思います。  では、先ほど医務局長ちょっと触れておりましたけれども、看護婦さんの資格を持ちながら家庭におさまっているような、いわゆる潜在看護婦というんですか、これらもともに調査してみたいというお話がありましたけれども、この潜在看護婦さんのいわゆる活用運動、これは強力に起こすべきだ。私は、現在の応急措置といいますか、これ以外にないのじゃないかと思うのです。今度の厚生省の予算を見ますと、何だか全国でわずかに八ブロックのそうした動きがなされるような内容を見たのですが、これは間違いありませんか。
  135. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 予算上からは、一応八カ所というような組み立て方になっておりますが、実は四十二年に八ブロックで実施をいたしまして、やはりその範囲がきわめて広過ぎるという反省がございますので、ことしは実行上は十二カ所程度にもう少し網をこまかくいたしまして実施をしたい。ただ、こういう家庭におられる方の町教育をいたしまして、勇気をもって、自信をもって職場に復帰していただきたいというのがねらいでございますけれども、それはやはり家庭におけるいろいろな生活と報酬というものがマッチしなければなりませんので、私どもは、やはりこういう目の荒いものではまだだめだというふうに考えております。したがいまして、都道府県等にもお願いをいたしまして、ぜひひとつきめこまかい目でやってもらいたいということで、たとえば群馬県等、すでにかなり熱意をもって始めておられますけれども、各都道府県もひとつそういう意味での小さいところで再教育をやっていただくということを強力に指導しておるような段階でございます。
  136. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 もう時間が来たようでございますので、結論的に申し上げますと、現在の看護婦の不足問題の解消の応急措置は、この潜在的看護婦さんの活用、この運動を強力に起こす以外にはない、私はこう考えるわけです。したがいまして、いま厚生省のお話を聞きますと、現在八ブロックでそのような動きをやっているけれども、現実には十二カ所ですか話を聞きましたが、私はその十倍ぐらいの動きをしなければ、単なる形式的なものに終わるのではないか、こう思います。それについて、最後に大臣の所信を伺って終わりたいと思います。
  137. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 潜在看護婦の方々に、さらに職場で働いていただくということが喫緊の要務だと考えますので、いま本年の予算は十二カ所程度しかまかなわぬと言っておりますが、できるだけ地方の協力を得まして、その数もふやし、そして実効をあげるようにいたしたい、かように考えます。
  138. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 では、終わります。
  139. 森田重次郎

  140. 谷口善太郎

    ○谷口委員 いま厚生省あるいは自民党さんのほうで、健康保険、医療保険の抜本的な改正についていろいろ御準備中であるようでありまして、それに対して、私どもも私どもなりに、根本的な改正をやりたいという意見を持っております。不幸なことに、私はいつも委員会の発言時間が短いので、なかなかまとめてやれそうにないので、機会あるごとにこの問題を取り上げていって、全体としてわれわれの構想を知っていただきたい、こういうように思いますし、きょうはその序論の序論のもう一つ序論というような意味で、具体的な問題をひとつお尋ねしたい。  例の池袋の社会保険中央病院ですね。これの廃止の問題です。この病院は社会保険庁関係の病院でありますから、社会保険診療についてたいへん模範的にやるということが巷間にいわれております。悪い意味の濃厚診療とか、あるいは差額ベッドなんかがない、そういう点においては模範的な病院として地域住民からたいへん喜ばれておったようですが、これをどうしておやめになるようになったのか、その理由をまずお聞きしたい。
  141. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 池袋の社会保険病院でございますが、これは昭和二十六年に、当時戦後で医療機関が荒廃しているそういう時期に、社会保険病院として、最初は診療所でございましたけれども発足いたしまして、二十九年ごろからベッド数二十五というきわめて小規模の病院として運営して今日に至ったわけでございますけれども、その後民間の医療機関その他の医療機関が次第に整備されてまいりまして、それにつれまして、運営状況が非常に悪くなってまいったわけでございます。それで三十五、六年ごろからずっと赤字が出だしまして、四十三年度末にはおそらく三千二百万程度の累積赤字になる、こういう経理状況が非常に悪くなってまいったということが一つございます。  それから、施設が非常に老朽になりまして、消防署関係からもその注意を受けるような、非常に劣悪な状況になってまいったわけでございます。  それでは、なぜそういうものを整備しないのかということでございますけれども、私どもといたしましては、まず、現在池袋病院が建っております敷地が、二百坪くらいの非常に小さな敷地でございます。したがいまして、そこに建て直しをするということにいたしましても、きわめて小さい病院しか建たない。せいぜいベッドをふやしましても、五十ベッドくらいの病院にしかならない。そういたしますと、はたしてあの地域に――民間の医療機関も相当ございます、それから公的医療機関もあるわけでございます、社会保険病院として、そういう小さな病院を再建する必要があるのかどうかということを、検討したわけでございます。私どもといたしましては、社会保険病院はいろいろな使命を持っておりますけれども、少なくともそういう小さな病院、これは民間の医療機関にまかせても十分だと考えているわけでございます。そういう意味におきまして、私どもといたしましては、現在非常な赤字をかかえておる健康保険の保険料をつぎ込んで病院を整備するという場合には、はたしてあのような零細な池袋の、しかも医療機関がたくさんある池袋の病院を、金をかけて整備するのがいいかどうかということを検討したわけでございます。  結論といたしましては、やはりわれわれといたしましては、ああいう病院というものは、戦後の医療機関が不足しておりますときには必要でございましたけれども、いまやそういうものは、あの地域にはさして必要じゃない、これをやめましても、その地域の方々にとって非常に医療に困るという状態でもない。それから職員につきましても、都内に社会保険病院が五つばかりございますから、そういう方面に転任していただけば職員、従業員にも御迷惑をかけることはない。そういう判断からこれを廃止するというのが一番いい方向ではないか、こういう結論に達したわけでございます。
  142. 谷口善太郎

    ○谷口委員 赤字の問題はあとでまた触れるとしまして、おっしゃったその他の理由は私ども納得いかない。私ども、京都のほうで若干こういう医療機関に関係しておりますが、二百坪ありますと百ベッドくらいの病院は建って、かなりな仕事ができるという経験も幾つか持っております。したがって、敷地が小さいから、大きな、それくらいの病院が建てられないというようなことは、理由にならないと私どもは思います。  同時に、戦後医療機関の不足したときには間に合っただろうが、いまでは豊島区全体に相当医療機関が発達したから、もう役割りは済んだというようなお考えも、これも少し事情と違うようであります。あそこに病院があるのは二つぐらいでありまして、あとはほとんどいわゆる開業医だけであります。同時に、この病院をつぶしてもらいたくないということで、従業員の諸君はむろんのことですが、市民諸君も運動を起こして、六千名余りの人たちがやはり再建をしてもらいたいという請願をやってきておる事情から見まして、むしろあそこにいわゆる模範的な病院が再建されることを、非常に積極的に地域住民は望んでおるという事情があるわけでございます。ですから、そういうことではちょっと納得がいかないのです。
  143. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 二百坪くらいの土地でございますので、無理すれば百ベッドくらいあるいはできるかもしれませんけれども、ただ問題は、あの地域に現在の二十五ベッドの社会保険病院を百ベッドにするということになりますれば、おそらくその地域の医師会からは相当の反対が出るだろう。その反対というものもおそらく、その地域には医療機関があるから、しいてそういう社会保険病院を、規模を拡大して設置する必要はないという御意見が出てくるだろうと思うのです。私どもは、たとえ医師会が反対でありましょうとも、その地域にあくまでもそういう医療機関が必要であるということならば、これは医師会と争ってでも建てるべきだと思いますけれども、あの地域に、その程度の規模の社会保険病院を、無理して建てなければならぬという客観的理由に乏しいのではないか。その地域の方々にとりましては、それは医療機関は多々ますます弁ずでございますので、幾らあってもそれはいいという御要望はわかります。しかし、そういう主観的な御要望とは別に、客観的に考えました場合に、しかもあの豊島区というのは、東京都内の区のうちでも医療機関が多いほうでございます。何か六番目くらいに多いということを聞いておりますが、とにかくあそこにそういう病院がなくても、あの地域住民の方が病気になられたときに、特に支障があるというようには私どもは客観的に見て考えられない。そういう意味においては、私どもといたしましては、社会保険病院はそのほかにもいろいろございますが、やはり貴重な健康保険の金を使って整備するならば、もう少しほんとうに地域なり、あるいは社会保険病院としての必要性が、非常に客観的に認められるという方向に金をつぎ込んでこそ、初めてそれが有効に使われるのではないか、そういうような気持ちから、私どもは現在の段階においては、あの池袋の社会保険病院を拡大して整備するということには踏み切れない、こういう状況でございます。
  144. 谷口善太郎

    ○谷口委員 医師会が反対するだろうというのは、それこそあなた方の主観で、医師会の幹部諸君はそういうことを言っておりません。医師会はそういうことを決定したこともなければ、そういうことを言っているということはないということを言っております。だから、それはあなた方自身が何かの都合で、あそこから病院を別に移転させるとか、やめるという理由にしていらっしゃるにすぎないのでありまして、それははっきり具体的に、事実として医師会はそういうことを言っていないということを公然と言っております。  それから地域の問題は、先ほど申しましたとおり、地域住民は、ここにぜひ置いてもらいたい、再建してもらいたいという要求は、ただ主観じゃなくて、現実にあの付近からどっとこの病院に行っているというのは、資料が出ておりますのは、皆さん御承知のとおりです。  そこで赤字の問題に入りますが、この赤字の問題も、実際は十五とか二十五というベッドを持った小さな病院は非常にやりにくいことは、これも私ども若干経験しておりますからわかります。しかし、赤字の問題を見ますと、前病院長時代には、赤字といっても病院長が非常に一生懸命マイナスにするようなことでいろいろやられたそうでありますが、多いときでも月に十七万円ぐらい、三十九年のごときは月にして十二万円くらいにすぎない赤字であります。あなたは合計で三千何百万円とおっしゃいましたが、それは事実のようでありますが、こういう状態だ。それから社会保険病院全体として見ますと、四十年度で八億三千九百万円の黒字になっておる。四十一年度では五億六千百万円の黒字になっている。これは先ほど河野さんのお話にもありましたが、民間の病院と違って公的病院でありますから、全体で黒字が出ているくらいでありますから、当然これくらいの赤字は、ほかにも赤字が出た病院があるようでありますが、見ていくというのは、社会保険庁の管轄たる病院ですから、当然そういうことをやっていいというようにわれわれは考えられるのです。  したがって、現病院長はやはり再建計画を立てられたようでありますね。胃腸病院を中心とした病院にしたい、あるいはまた委託されている東京都も、再建計画を立てられた。しかし、これはすべて厚生省によって否定されたという事情があるようでありますが、この点なんかどうなんですか。病院長としても、東京都としても、そういう再建計画を持ってやればやれるという計画を出した。それを厚生省は否定をされる、こういう事情もあったようでありますが、これはどうですか。
  145. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 赤字につきましては、先ほど申し上げましたように、四十三年度末の見込みで三千二百万くらい、それまでに毎年七、八百万の、たとえば四十二年度で申しますれば七百万、四十一年度は五百三十万というぐあいに、相当多額の赤字を出しているという現状でございます。確かに社会保険病院全体といたしましては、若干の黒字を出しておりますけれども、しかし、社会保険病院はプール制ではございませんで、一応各施設ごとの独立採算でやってもらっている、こういう状況でございます。沿革上、社会保険病院を全部プール計算でやっておらないわけでございます。そういう意味におきまして、計算上は各病院の収支を合わせますと、全国六十数カ所ございますので黒字でございまするけれども、しかし個々の病院の独立採算というたてまえでやっておりますので、したがって、全体である程度計算上黒字が出ているのだから、この程度の赤字はかまわぬじゃないかということは、運営上、なかなかそうまいらないということでございます。  それから、これは確かに一度社会保険病院としてスタートさせた病院でございますので、私どももなるべくつぶさないでやれるならやってみたいということで、現に赤字がもう十年近く出ておりますけれども、ただ赤字のためにやめるということなら、もうとっくにやめておるわけであります。それをいままで、何とか立ち直らせることはできないかということで、いろいろ検討してきたのでございます。しかし、結論といたしましては、繰り返しになりますけれども、私どもといたしましては、あそこで病院としてやりますためには、相当ベッドをふやさなければいかぬ。これは先生、医師会の反対はないとおっしゃいますけれども、たとえばあの病院を百ベッドにしてやるという計画を厚生省が出しますれば、おそらく反対が出てくるということは、私どもは過去のいろいろな経験から見まして、火を見るよりも明らかだと思うのでございます。そうしました場合に、私どもといたしましてはあの辺にはいろいろ病院がございますし、それから東京都内には、相当りっぱな病院も幾らでもあるわけでございますので、豊島区の方も、たった二十五ベッドのあの社会保険病院がなくなりましても、特に非常にお困りになるということはない。したがって、もしあれを整備する金がありますれば、もう少しほかの地域の、ほんとうに客観的に見て、もっともっと医療の必要な地域の病院を整備したほうがよい、こういう結論で、私どもといたしましては、あの池袋病院を廃止したほうがよい、こういう結論になったわけでございます。
  146. 谷口善太郎

    ○谷口委員 この病院をつぶされることが、地域の諸君にとって非常に困るということで、六千名からの人たちがこれの存続ないしは再建について請願をやってきている、そういう署名をとっておる。ですから、あそこに必要でないということはちっとも言えない。交通機関が発達したのだから、たとえばこれを城東病院へ持っていくというようなことをやっても、何ともないだろうとおっしゃるけれども、資料を見ますと、ほとんど豊島区を中心にしたところから、外来患者にしろ、入院患者にしろ、言ってきているという資料も出ております。ですからそういう点ではそれは言いわけにならないと思うのですね。やはりあそこで再建すべきだと私どもは思うのであります。  それからもう一つ赤字の問題です。それは独立採算制で各病院がやっているというやり方のようでありますけれども、しかし、病院の性格からいいまして、公的病院でありますから、社会保険庁が、全体として黒字であれば、その面から見ただけでも赤字の病院を援助することはできるということを私は言ったのであって、これは公的病院でありますから、当然そこに住民が要求しており、模範的な診療をやっているということになれば、たとえ別途の財政から金を出してもこれを存続すべきだ、あるいは再建してりっぱなものにすべきだというのは当然じゃないでしょうか。社会保険庁のやっている病院の本旨からいって、そうあるべきだというふうに考えますが、そう考えませんか。
  147. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 確かに地元の方々から、池袋の社会保険病院を存続してもらいたいという要請が出ていることは、私も承知いたしております。前に申し上げましたように、確かにあの付近の地域の方としては、とにかく診療所であろうと、病院であろうと、どんな病院であろうと、一つでも近くにあったほうが便利である、そのほうが望ましいということは、どんなところでも言えると思うのでございます。しかし、私どもといたしましては、健康保険の貴重な保険料を使って病院を整備するという場合には、そういう一地域の限られた御要望だけではなくして、やはり日本全体を見て、ほんとうに医療機関の必要なところに、優先的に回すということが必要じゃないかという感じがするわけでございます。  しかも、そういう零細と申しますか、小規模の病院というものは、これはある程度民間に委託してもいい時期じゃないか。社会保険病院がやる場合には、やはり相当の規模の、しかも、相当高度の医療機械器具等を使いまして、高度の医療をやる。民間ではなかなか手が回らぬという医療を、社会保険病院でカバーするとか、あるいは全然医療機関のない、そういうところを公的医療機関が補っていくということ、民間の医療機関と公的医療機関とが併存している、共存共栄をしなければならない現在の日本の状態においては、そういう点も考えなければいかぬのじゃないか、そういう感じがするわけでございます。  そういう意味におきまして、地域の方々の御要望はわかりますけれども、しかし、これがなくても、そのために生命の危険にさらされるとか、あるいは健康上非常にぐあいが悪いということはないという判断で、われわれはそういう決定になったわけでございます。
  148. 谷口善太郎

    ○谷口委員 こういうことで繰り返しておると時間を取りますけれども、あなたは、豊島区は医療機関が充実していると盛んに言っていますが、それは開業医は相当あるようです。しかし、病院は先ほども申しましたように、池袋病院というのと鬼子母神病院というのと二つしかないのです。ですから、この社会保険病院が、どんなに地域住民にとって必要であるか、また全体としても、あそこに置くべき条件があるということは、もうはっきりしていると思うのです。ですから、そういうのはあなたのほうの理屈で、ああ言えばこうというふうに答えていらっしゃいますけれども、結局、あそこがあまりもうからぬので、つぶしちゃおうということのように思えますが、赤字ということが一番中心問題ですか。
  149. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 豊島区には――そのほか都立大塚病院というような二百ベッドくらいの病院もあるようでございます。しかし、東京都内のまん中でございますから、隣のたとえば新宿あたりに行きますると、幾らでも病院があるわけでございます。そういう意味におきまして、また豊島区だけを考えましても、先ほど申し上げましたように、公的医療機関とか、民間を含めまして医療機関も相当多い。こういうことから私どもといたしましては、しいてあの病院をあそこで拡大し建て直す必要はないということでございます。  それで、赤字であるからつぶすのかという御質問でございますが、たとえ赤字でありましょうとも、どうしても必要な病院であれば、われわれそれを再建しなければならぬということは、社会保険病院の特殊性からいきましても当然でございまするけれども、繰り返すようでございまするが、あそこを現在のままで建て直さないでおきますれば、大体、お医者さんもほとんど来てくれない。どんどんお医者さんがやめていくわけでございます。これは当然でございまして、ぼろの、きたない病院で、給料も国家公務員並みに押えられておりますから、なかなかお医者さんが居ついてくれないというのは当然でございます。りっぱなお医者さんに来てもらうためには、相当拡大して、りっぱな病院にしなければ、お医者さんもなかなか来てもらえない。そのためには、また土地も狭い。それからそれだけの必要性も、私どもはないんじゃないかと思うのであります。そういうことから、赤字だからつぶすということじゃなくて、そういう全般的な判断に立ちましてあの院院は廃止したほうがいいんじゃないか、そういう結論でございます。
  150. 谷口善太郎

    ○谷口委員 そういうことをおっしゃっても、やはり納得はできないです。医者がだんだんやめていくと言っておるが、これはやめさせているんじゃないですか。医者は、この問題が出ましたときにちゃんと四人おりまして、今度の病院長は、全社連か何かの理事を兼ねておられるそうで、実際は病院長でありながら、診療に従事しないというやり方をやっておるらしいが、それを含めると五名医者がいる。看護婦さんその他も、きちんと全部そろってその人員がおるわけだ。それで城東へ行って建て増しをされれば、その場合もこの医者で間に合うとすれば、何もそういう点は理屈にならぬのだ。結局あなた方は、これをつぶすことに全力をあげているというふうにわれわれは見ざるを得ない。そういう点からいいましても、今度のやり方では、まことに納得いかないやり方をやって、つぶす方向をやっていらっしゃる。  これをちょっとなにしてみますと、昨年の十二月六日に突然一方的に、来年、つまりことしの六月五日を期して病院を閉鎖するということを労働組合に院長が通告してきた。これがきっかけで、組合は驚いて団交を申し出ておりますけれども、この団交は拒否される。やむを得ず、都の保険課に閉鎖反対の陳情に行っております。そのうち十二月の末には、入院患者をすでに追い出している。そして、病室を封鎖している。続いて一月の初めから、職員の退職もしくは配転を、病院自身がやり出した。そういう中から、医者なんかもあっちこっち配転されておるわけでありますが、そういうことが続く間、二月の十九日には病院閉鎖の届け出を出しておる。そして診療所に切りかえる。しかも、その診療所に切りかえた後も――二月十二日から診療自身も拒否し始めた、やらなくなったというやり方をやってきております。組合が団交を要求しても、正常な形では会わないわけです。会っても、やめるということだけしか言わない。そういうやり方でずっとやってきておりまして、組合の事務所を閉鎖し、会議のために使用しておったようなそういうところを使用することに対しても、これを許さないというようなやり方で、非常に不法な弾圧を組合に加えて、病院をつぶすことに全力をあげるような弾圧を加えてきておる。三月十日から、それまでいた医者を五人全部次々に、先ほど申しましたように、他の病院に配転してしまった。あなたは、今度新しく城東病院になったときに、みんなそこへ行ってもらうということをおっしゃったけれども、これは各方面にそれぞれ配転したようです。そして四月一日には組合員も病院から追い出しまして、寿ビルの四階を残務整理所に充てるから、そこへ毎日出勤しろという業務命令を出しておる。業務命令ですから、これに反するといつでも首にするというやり方をやってきているわけです。  一方、厚生省の社会保険庁は三月三十一日付でこの病院を委託管理しております都知事に対して、返還命令を出している。同時に、建物への立ち入り禁止をやるために何か立て札を持ってきて、組合その他職員に対して、入ってはならないということを言い出して、いざこざをますます深刻にしている。そういう中でつぶそうとしているのですから、こういうやり方でつぶそうとしているのですから、ただあなた方は、この病院をつぶすことに全力をあげているとしか見られぬ。こういう非常識なやり方でも、やはり閉鎖するつもりかということをお聞きしたいのです。
  151. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 お医者さんにつきましては、これは専任のお医者さんが非常に少ないわけでございまして、最近まで二人おられたのでございますが、内科のほうのお医者さんは、開業されるということで、ことしの初めにおやめになった。それからもう一人の常勤の、これは外科のお医者さんでございますが、これはお医者さんがいないものですから、社会保険の中央病院から臨時に派遣しておったのでございますが、これも社会保険の中央院院のほうで、いつまでも池袋に出しておくわけにはいかぬということで引き揚げられまして、あとには非常勤のお医者さん、こういう体制でございまして、こちらが積極的に追い出したという形ではなくして、先生ごらんになったかと思いますけれども、ああいう病院ではなかなかお医者さんは落ちついて診療はやっていただけない、こういう状態で、追い出さなくても自然におやめになるというような状況でございます。  それから、閉鎖についてのいろいろな手続でございますが、これもたとえば入院していた患者を追い出したということではございませんで、むしろ消防署あたりから、非常に危険である、私ども見ましても、万一火事でも起きました場合には、これこそたいへんな状況になるということで、いまのような設備で入院患者を入れておくということは、社会保険病院としてむしろ責任ある状態ではない、こういう判断をいたしましたので、逐次入院患者を減らしていった、それで診療所に切りかえた、こういう状況でございます。  それで、その後、組合との交渉につきましては、これは私のほうは直接関係でございませんで、使用関係は全国社会保険協会連合会という団体が運営しております。その関係でございますので、私どもといたしましては、この病院を閉鎖いたしますために考えましたことは、やはりまず地域の住民の方にとって非常に迷惑になるかならぬかということが一つと、もう一つは従業員の方々に迷惑をかけてはいかぬという、この二点に最大の注意を払ったわけでございます。全社連に対しましても、従業員の処遇について万全を期するように、こういう注意を何回もやっておったわけでございます。  それで全社連のほうでは、その希望退職その他をつのりまして、逐次希望のある向きは退職やら、あるいは転任ということを促進しておる、こういう状況でございまして、まだ若干の方が残っておりますけれども、いまや病院は廃止されましたので、もうそれは医療機関ではございません。したがって、従業員の方は、しかし行くところがない。希望をされればどこでも配置転換をいたしますけれども、希望されないで病院に残るという従業員が、まだ若干おられるようでございますので、そういう方々と話し合いがつくまでは、やはりどこか出てくる場所をつくっておく必要があるということで、近所に事務所をつくったということでございまして、従業員の処遇につきましては、万全を期するという態度でやっておるわけでございます。
  152. 谷口善太郎

    ○谷口委員 時間がないから結論に入れというメモが来ておりますので、私も結論に入りますが、やはりあなたはいろいろおっしゃっているけれども、結局は、こういう小さな病院で、赤字が出るようなところは切り捨てていくということだと思うのです。だから、あなた方のやっていらっしゃる、この社会保険庁の病院はだいぶたくさんありますが、赤字の出ておる病院が、小さい病院でないところでもあります。小さいところでも、赤字の出ておるところがある。今度の場合は、赤字の問題はやはり一番大きな問題だろうと思うのです。いわばもうからないところ、あるいは赤字が出てつぎ込まなければならぬところ、こういうところを切り捨てろという考え方で、いま私が申しましたような、全く暴力的なやり方で従業員諸君に対するやり方をやっていらっしゃるのでありますが、今度のように、赤字が出るからといってつぶしていくということになりますと、いまの制度のもとでは病院を、どんどん、どんどんつぶすことになる、赤字の出ておるところは方々にありますから。  問題は、先ほど河野委員も言いましたが、やはり診療報酬の問題が解決されませんと――赤字が出た、これは普通の病院でもそうでありますから、開業医に至ってはたいへんな生活をしておると思う。これは診療報酬の問題を、やはり合理的に、公正に、根本的な点から改正する必要がある。この問題に手をつけないでおいて、赤字が出たらつぶしていくということになりますと、片っ端から全部つぶしていかなければならないことになる。公的病院しかり、私的病院に至っては、私が先ほど申しましたように、いろいろな問題を今後やっていきますが、やはり同じように苦しいところにおります。このために赤字問題をもし解決――これは経営者側のほうです、医療機関の側のほうの赤字の問題でありますけれども、この問題をはっきりするためには、やはり診療報酬の問題を合理的に解決する必要があるという問題が横たわっておる。これをここで私は最後に申し上げてきょうの質問をやめますが、ここに問題があって、そうでなかったら赤字のところをつぶしていくということになると、片っ端からつぶしていくことになる。そんなこと、大臣、あなた方は考えているのではないでしょう。ですから、やはり診療報酬の問題を合理的に解決するという問題、この点を根本的に検討して、赤字になったらつぶすというような、こういうばかばかしい態度、政策、やり方を変えてもらわなければならない。したがって、そういう意味でも今度の池袋中央病院をつぶさないで、再建するという方向をとってもらいたいと私は思います。  以上を申し上げまして終わります。      ――――◇―――――
  153. 森田重次郎

    森田委員長 内閣提出戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。橋本龍太郎君。
  154. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)委員 本会議の時間がだんだん迫っておりますので、簡単にお尋ねをしてまいりますから、簡単に、要領のいい御答弁を願います。  ただいま委員長からお許しを得ましたので、戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案について、数点にわたって御質問を申し上げます。厚生大臣会議のかげんがあるから早く出せということでございますから、大臣に御答弁を願いたい問題を一括して、先に申し上げたいと思います。  実は、現行の援護法の中においては、老齢の父母、あるいは戦没者の妻、こういう方々に対しては、特に優遇措置が講ぜられてきておった。これは長い歴史のあることであります。ところが、今回どういうわけなのか、実はこの優遇措置は消えまして、今回の改正案においては、現行の三本立ての形が一本化されてしまったわけであります。現在すでに戦後四分の一世紀近い長い時間がたちまして、戦没者遺族というのは、非常に老齢化もしておりますし、また物心両面にわたり、苦労というものも非常に大きいわけであります。そういう点を配慮して、従来続けてこられた老齢の父母あるいは妻に対する優遇措置というものを、今回おはずしになった理由は、一体何なのか。また今後はいつまでも一本化のまま、体制がお進みになるのであって、優遇措置はなさらぬということなのかどうか、まずこの点について、大臣の御答弁を願いたい。  それと同時に、これは時間の関係があるからまとめてお尋ねを申し上げます。従来から、当委員会で援護法がかかりますたびに、実は論議の的になり、何回か政府からも前進的な御答弁をいただきながら、問題の解決しておらぬもので、いわゆる軍人軍属と準軍属との処遇の格差の問題があります。準軍属の処遇というものも、今回もだいぶ改善をされてきました。これは私どもも認めます。しかし、同じ遺族、あるいは同じ戦傷病者であるのに、何ゆえ軍人軍属の遺族年金、障害年金に対し、準軍属の場合七割支給というワクをおはずしにならないのか、これについて確たる理由があればその理由をお答え願いたいし、確たる理由がないのであれば、今後その格差を縮める御努力を、厚生省としてなさるかどうか、この二点にわたって、大臣の御答弁をお願いし、それを御答弁いただきましたら、大臣御退席いただいてけっこうです。
  155. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 橋本さんは、この方面のベテランでいらっしゃいまして、これにつきましては十分御存じのはずだと思いますが、本年遺族年金の増額措置を考えました際に、いままでありました年齢的な差というものをなくして一本化されまして、これが非常に不満であるという声は、私も十分聞いております。私はやはり今日の援護あるいは恩給というものが、十分満足であれば格別でありますが、必ずしもそうとはまだいえません。したがいまして、たとえば七十歳以上の方については、もう早く世を去られるわけでありますから、早く待遇を上げていくというように考えていく必要があるのじゃないか。その方面に努力をいたしたい、かように考えます。  それから軍人軍属と準軍属、これらの差のあるのは、当然というような形で今日までまいりましたが、ただいまおっしゃいますように、軍人軍属と準軍属の間に、七割という差をつけるのが適当かどうかというと、必ずしもそうもいえないという理由もあります。これは一本でいくべきだという論もあろうと思いますので、できるだけこの差を縮めるように努力をしていきたい、かように思います。
  156. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)委員 大臣から、たいへん上品な御答弁をいただきましたので、この点けっこうであります。どうぞ大臣御退席を願います。  あと援護局長に、ある程度事務的な問題等も含めてお尋ねをしたいのでありますが、今回遺族年金、障害年金の額を、昭和四十年十月改正後の支給額の四四・八%増しという形で御決定になった。この四四・八%増額という数字の一体根拠は何か。この趣旨は一体どういうことなのか。おそらくこれは、公務扶助料等の関係であろうとは思うのですが、増額率の根拠は、一体何なのかということを、まずお答え願いたい。
  157. 実本博次

    ○実本政府委員 今回の援護法の年金の増額につきましては、全く先生お示しのごとく、恩給審議会の答申に基づきます恩給法の公務扶助料、傷病年金の増額の考え方をそのまま用いてまいりまして、そのとおりに上げていった。私、承っておりますところでは、恩給の四四・八%の根拠といたしましては、恩給審議会の答申に基づく経過措置の一部といたしまして、恩給年額の調整規定の運用の前提といたしまして、恩給年額の算定の基礎となる仮定俸給と、それから国家公務員の給与との格差を是正するために、そのうちの昭和三十六年十月から昭和四十三年三月までの消費者物価の上昇率四四・八%について恩給年額の増額をはかるということの措置に出たものでございます。
  158. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)委員 確かに実態はそのとおりなんでありますけれども、実はこれは恩給法のほうで本来議論すべきことでありますけれども、たしか恩給審議会の答申の内容からいきますと、公務扶助料の経過措置としての改定に対しては、物価の上昇率と同時に、国家公務員の給与の上昇率、この両者を勘案してということになっておったものが、今回公務扶助料の査定において、国家公務員の給与上昇分、これがカットをされておるわけなんで、将来これは恩給法のほうの改正が行なわれる際には、当然援護法のほうもそれに見合った改正がなされる、これはそういうふうに理解をいたします。  ところが、実はこの援護法という法律、あちらこちら探しますと、ずいぶんぼろぼろ落ちこぼれのある法律でありまして、大体現在改正を行なっている部分自体が、落ち穂拾いの感があるものであります。実は今度のこの大臣の趣旨説明を拝見しても、目立つ変革として、現行第一款症以上の障害年金受給者に対して支給されている一律七千円の定額加給、これを今度廃止される。定額加給制度というのは、援護法独自のものであるという感覚でおったわけでありますが、これが定額加給を廃止されて、障害年金受給者の扶養親族数に応じて加給するという制度を新設なさった。従来の方針を変えられたのでございますが、この理由は一体どういうところにあるのか伺いたい。
  159. 実本博次

    ○実本政府委員 障害年金の扶養加給のつけ方の問題でございますが、先生お示しのごとく、援護法は従来扶養加給のあるなしにかかわらず、一律に七千円という定額加給を行なってまいったわけでございますが、最近受給者の家族、生活の実態調査をやってみますと、この法律ができました当時と、もう十数年たっておりまして、非常に扶養家族数がふえてまいっている。こういうふうな実態でございまして、一方恩給法も、同じケースを見てみますと、恩給法は扶養加給の数の多寡によりまして、扶養加給額をきめていく、こういうふうなことになっておりますので、いまや生活実態の結果、むしろそういった扶養家族数に割り切ったほうが有利であるというふうな実態が出てまいったものでございますので、この際扶養家族に応じて加給する制度にあらためて改善していく、こういうことでございます。
  160. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)委員 そういう意味での前進は、これは大いに歓迎すべきことで、なおそういう方針は、ほかの部分でもおとりを願いたいと思うわけでございますけれども、それと同時に、今回の勤務関連傷病により死亡した被徴用者などの遺族に対して、特別給付金を支給することになっておりますが、これはたいへんけっこうなことなんです。  ところが、この処遇に対する基本的な考え方は、一体どういうものなのかということをお尋ねしたい。ということは、実はこれは理由があるのでありまして、勤務関連傷病ということば自体が非常にあいまいなことばなので、これは具体的にどうなのかという点もあります。同時に旧国家総動員法に基づく被徴用者、それ以外に同じようなケースとして考えられるものに、たとえば国民義勇隊の隊員、あるいは内地の軍属だとか、相当多くの種類があるわけであります。たまたま、国家総動員法に基づく被徴用者というものを、ここで取り上げられたわけであります。そういう点を考えてみますと、何かせっかくの御処置ではあるが、片手落ちの感を免れ得ない。そういう点がありますだけに、これは今回の改正に必ずしも間に合わなくて、今後改正をしていく際の参考資料にもなるわけです。これの基本的な考え方というものをお聞かせ願いたい。
  161. 実本博次

    ○実本政府委員 勤務に関連する傷病というものは、この勤務関連によりまして、障害を受けて、その結果なくなられたという方々に対します遺族の処遇ということにつきましては、一般の社会保険の制度ではやっておりませんので、あくまで一般社会保険の場合は、公務に基づくものしか考慮いたしていない、こういうかっこうになっております。  ところが、戦傷病者、戦没者の遺族の処遇につきましてだけは、こういう勤務に関連する場合を年金処遇の対象にいたしておりまして、その際現に処遇されておりますものは、軍人だけである、こういうふうなことになっておりますが、同じように動員学徒とか、あるいは徴用工員とかいったように、国家総動員法の法律に基づきます協力命令あるいは動員命令に従って、それそのものの業務上の行為でなくても、たとえばここで申し上げておりますのは、被徴用者あるいは動員学徒が、そういう動員業務に従事期間中に、結核等にかかって、そのあと退職してからなくなった、こういった場合のケースも勤務関連傷病として処遇していこう、こういうことでございます。  この場合、先生がおっしゃいますように、動員学徒とか、あるいは徴用工とかいった、同じ準軍属の中でも、総動員系統の法律上の命令に従った者以外はとってないじゃないか、それは片手落ちで不均衡じゃないか、こういうふうなお尋ねの趣旨であると思いますが、今回そういった処遇をいたしましたのは、さっき申し上げましたように、総動員法に基づく被徴用者、動員学徒等は、国の強制によって、業務に従事せしめられたということが一点。それからその業務が比較的長期にわたって継続したということなどで、軍人同様に勤務と傷病との間に因果関係の存し得る事情があるということを考慮いたしまして、そのケースにだけ処遇を考えたということになっております。
  162. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)委員 それはせっかくの善政なんでありますが、その善政がきわめてお役所的な発想でそういう線を引かれたということは、これはあまり好ましい状態ではないと私は思う。だから、ここで議論しても時間を食うばっかりですから、後日にまた残します。あらためてまたいつか議論しましょう。  こういう形でずいぶん前進はしてきたのですが、実はまだ未処遇関係でずいぶん残っておるものがある。今後一体、未処遇関係の範囲はどの程度まで広げていかれるか。また具体的にどういう方針をとって作業していかれるのか。この点についてお答えを願いたい。  それと同時に、もうまとめてお尋ねをしますが、具体的な問題として、実は軍人においては、恩給法により第五款症の傷病者まで傷病年金の支給を受けておるわけですね。ところが遺族援護法においては、同じ戦傷病者でありながら、第三款症しか処遇の対象としていない。これは非常におかしな話であって、本来当然統一をされるべきものだと私は思うのですが、その点はどうなのか。  それと同時に、今度いわゆる旧防空法による防空監視隊員というもの、これのみを今回準軍属として処遇をされた。これも前進ではあるが、先ほどのケースと同じような意味でこれは不合理じゃないか。というのは、防空監視隊員のみを準軍属として処遇をされるならば、たとえば警防団員のようなもの、同じ防空従事者でありますが、こういう方々はなぜ対象としないのか。これも先ほどの話と一緒のことであって、善政が善政にならない。むしろ片手落ちの結果を招くのではないかと思うのです。何ぶんにも私は戦争の当時小学生ですから、少し古い話はよくわかりません。いまの感覚で考えれば不合理だ。その辺は一体どういうことなのかお聞かせを願いたい。
  163. 実本博次

    ○実本政府委員 未処遇者の処遇につきましては、一昨年の十月以来、学識経験者からなります援護問題懇談会を開催いたしまして、御検討願ったその意見の趣旨に沿いまして、逐次措置を講じてまいっておるところでございまして、今回もすでに御承知のとおり、旧防空法によります防空監視隊員を準軍属の範囲に加える。あるいは勤務に関連する傷病により死亡せられました被徴用者等の遺族に対しまして、特別の遺族給付金を支給するといった措置を講じてまいっておるわけでございますが、それで、いま先生のお尋ねの恩給法では、第五款症までの方々に年金を出しておるが、援護法はどうしてやらないのか。これも実は未処遇問題の中の報告書にも出てまいっておりまして、同じ戦傷病者でありながら、法律が違うというだけで処遇されないというのは不均衡を免れない、おっしゃるとおりであります。この点につきましても、その処遇のできる方向で努力、検討してまいりたい、かように考えておるわけでございます。  それから最後にお話のございました防空従事者のうち、警防団などは敬遠して、監視隊員だけをやったのはなぜかというふうなお尋ねでございますが、これは防空従事者のうちでも監視隊員は、国の防空計画の一環としての、軍の定めた基準に従って行動したということが第一点と、それからその勤務形態も、常勤に近いものであったというふうなことなどで、警防団員その他の防空従事者と異なる特殊の事情があるということに着目して処遇をいたしたわけでございます。ただ、警防団員その他につきましては、有時の際に臨時的に出てきてもらうというふうなことでございましたので、これは別途消防庁から、こういう方々についての処遇といたしまして、見舞い金として遺族に七万円の給付をするというふうな処遇を国として考えて、同時に予算措置をしておるところでございまして、それぞれそういった形態で処遇を考えてまいるということになっておるわけでございます。
  164. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)委員 よくお役所では、前向きの姿勢でという答弁をなさるのですが、実本さん正直で、前向きと言わなかっただけたいへんりっぱなものです。往々にして、前向きの姿勢でうしろに下がるのがお役所のくせでありますから、そういう事態を起こさないように、いまの御答弁どおり、未処遇問題についても前進をはかっていただく、その御決意を伺ったので安心しました。  それから、戦没者遺族に対する特別弔慰金の問題、これがちょうどこの趣旨説明の中に記載をされておるわけでありますが、支給範囲を、死亡当時生計関係のない兄弟姉妹等まで拡大をされた。これはたいへんけっこうな話なのですが、これも少々不合理な点がある。というのは、いわゆるおじ、おばなどの三親等の親族、この中でも、現に戦没者の霊を祭っておられる方々も多くあるわけです。同じ兄弟姉妹まで範囲を拡大するなら、いっそのこと三親等の親族全部までこれを拡大すべきじゃないのか。というのは、現に弔慰金の受給者であれば、三親等内の親族、これはおじ、おばであっても支給の対象にされておるんじゃないか、そんなふうに私は記憶しているのですが、その記憶に誤りがなければ、こういう改正をされる際、そこまで範囲を拡大されてはいかがなのかということをお尋ねします。
  165. 実本博次

    ○実本政府委員 特別弔慰金の、遺族援護法上の弔慰金の受給者に三親等のおじ、おばまで加えたらどうだろうかというふうなお尋ねでございます。三親等のおじ、おばの場合でございましても、それが遺族援護法上弔慰金を受ける親族というふうなケースになっております場合は、つまりほかに適当な遺族がないという場合には、そういうおじ、おばの場合を処遇いたしておるわけでございますが、三親等のおじ、おばの場合、戦没者とのつながりが、一般的にいって非常に薄いというふうに考えられますので、特別弔慰金を支給する者の範囲から除外したわけでございます。これは兄弟姉妹の場合は何と申しましてもそういった意味でのつながりが、生計関係を持っておる、おらずにかかわらず、おじ、おばの場合よりは濃いというふうな一般的認識に基づいてやったわけでございます。
  166. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)委員 それから、戦没者の父母等に対する特別給付金の範囲も今回拡大をされたようで、父母等に氏を異にする子や孫があっても特別給付金を支給することにされた。これはたいへんけっこうなことです。ただ、こういう施策をしていかれる場合に、――これは一番最初に、大臣お尋ねした点とも実はからむわけでありますけれども、何といっても、それこそ四分の一世紀近い日時が経過した今日、終戦当時はまだ健在であった遺族というものも、非常に老齢化してきているわけであります。そういう全体の老齢化の状況にかんがみて、老父母をはじめ、遺族に対して行なう援護措置というものは、さらにきめこまかい措置というものを必要とするのじゃないか。妻においても同じであります。  私は、これ以上長い質問はいたしませんけれども、今回のこういう改正が行なわれたということは、確かに遺族援護の点では非常な前進であります。しかし、その範囲を拡大されていく中で、実はさらに問題の提起されたものもある。またその問題が、複雑化したものもある。今後こういうものを、未処遇関係等を処理をしていかれる際において、また恩給法の改正等に足並みをそろえて今後援護法の改正をしていかれる場合に、十分な御配慮を願いたい。そうして、いやしくも今日これだけの経済力を持ち、経済的にそれこそ世界的に有数な繁栄を誇る国になった日本として、こういう問題がいつまでたっても残っておること自体が、本来これは国として恥なんであります。むしろ国がみずからの足で立ち上がり、歩み出した最初に、本来処理をされるべきであった問題なのです。まあ日本という国、たまたま負けなれていなかったために、そういう手順の順番が狂い、その結果が拡大されて、いまだにこういう問題が残されているということなのでありまして、むしろ援護法というようなものが、今後もなお落ち穂拾いをいつまでも続けていかなければいけないような状況ではこれは困る。率直に申し上げて困る。今回の改正案というものは、そういう意味では非常な前進でありますけれども、次に改正される機会には、そういう点を十分配慮をした改正をお願いをしたい。  これを最後に要望して質問を終わります。
  167. 森田重次郎

    森田委員長 次回は来たる八日午前十時委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後一時四十七分散会