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1969-07-09 第61回国会 衆議院 産業公害対策特別委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年七月九日(水曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 赤路 友藏君    理事 田村 良平君 理事 橋本龍太郎君    理事 藤波 孝生君 理事 河上 民雄君    理事 島本 虎三君       伊藤宗一郎君    地崎宇三郎君       葉梨 信行君    佐藤觀次郎君       浜田 光人君    山口 鶴男君       岡本 富夫君  出席政府委員         経済企画政務次         官       登坂重次郎君         厚生政務次官  粟山  秀君         厚生省環境衛生         局公害部長   武藤一郎君         水産庁次長   藤村 弘毅君         通商産業政務次         官       藤尾 正行君         通商産業省企業         局立地公害部長 矢島 嗣郎君         通商産業省鉱山         保安局長    橋本 徳男君  委員外出席者         経済企画庁国民         生活局参事官  宮内  宏君         厚生省環境衛生         局公害部公害課         長       橋本 道夫君         自治大臣官房企         画室長     近藤 隆之君     ――――――――――――― 七月九日  委員中井徳次郎君及び米田東吾辞任につき、  その補欠として佐藤觀次郎君及び山口鶴男君が  議長指名委員に選任された。 同日  委員佐藤觀次郎君及び山口鶴男辞任につき、  その補欠として中井徳君及び米田東吾君が議長  の指名委員に選任された。     ――――――――――――― 七月八日  自動車排出ガス規制強化に関する陳情書  (第六三四号)  亜硫酸ガス排出防止対策に関する陳情書  (第六三五号)  公害による被害者救済制度確立に関する陳情  書  (第六三六号)  大気汚染防止関係事務の委任に関する陳情書  (第六三七  号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  産業公害対策に関する件(水質汚濁対策等)      ――――◇―――――
  2. 赤路友藏

    赤路委員長 これより会議を開きます。  産業公害対策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。河上民雄君。
  3. 河上民雄

    河上委員 私は、この委員会におきまして、先般、産業廃棄物処理の問題が今後の公害対策の非常に重要なポイントになるのではないかということを警告いたしまして、政府対策をお尋ねしたのでありますが、最近、国連のウ・タント事務総長が、事務総長の立場において発表されましたステートメントによりましても、産業廃棄物処理の問題は、大気汚染並びに水質汚濁と並んで、公害の中の三大要素であるということが強調されておるのでございます。ところが、最近私の選挙区であります神戸市で、この問題に関しましてきわめて見のがすことのできない憂慮すべき事件が相次いで起こっております。これは単に地域的な問題ではなくて、工業地帯全体に関係する問題だと思いますので、政府のこれに対する対策をあらためてお尋ねし、今後この産業廃棄物処理に対する責任那辺にあるかをこの際明らかにしていただきたいと思うのであります。  神戸市に兵庫区というところがございまして、この兵庫区は、山を越えた奥地もかなり含まれておる非常に広大な行政区でありまするけれども、その道場町というところで、砂利採取業者砂利を洗浄するための沈でん池をつくって事業をしておりましたが、砂利採取が終わりまして立ち去ってしまったわけでありますけれども、その沈でん池尼崎のあるペイント会社に売り払いまして、産業廃棄物専用処理場にしてしまいました。そして日夜その沈でん池あとで、当然有毒物を含んでいると思われますペイントドラムかんなどを焼いたり捨てたりしているようなことで、付近の住民に大きな心配を引き起こしておるのであります。ここで私がふしぎに思いますのは、砂利採取法改正によりまして、砂利採取業者はその沈でん池あと地をそのまま放棄することなく原状復帰する責任を負うたはずでありまするけれども、それが改正法ができましたあともこのようなことが見のがされておる。しかもその砂利採取業者が、工場に、別な企業者に売り渡すことによりまして、責任の所在がはなはだ不明確になってしまっておる、こういうような問題が一つあるわけであります。  もう一つは、産業廃棄物処理場にどの企業も非常に困り果てておる。そこで、自分工場の近所ではどうにもしようがないので、少し奥地のあるところに場所を買いまして、そうして運搬会社を雇って、いわば下請のような形で運ばせて処理をしている、こういうようなケースが現に起こっているのであります。ところがそれが孤立した一つケースかと思いましたが、その後また、同じ神戸市で葺合区というところがございますけれども、その布引貯水場に流れ込む布引川の上流で、廃油を詰めたドラムかんが多数捨てられているということが発見されました。その廃棄されましたドラムかんが、この貯水場に対する汚染というような影響を及ぼしはしないかということで、非常に心配しておるのであります。そこで神戸市の水道局では、一時その布引川からの水をとることを中止するとともに、捨てた業者を突きとめて、一応全部ドラムかんを回収さしたという事件があるわけでございます。  これらの二つ事件、いま二つでございますけれども、今後こういった事件がますます多くなるのじゃないか、こういうことが心配されるのであります。  そこで、ここにお伺いしたいのは、一体こういう産業廃棄物処理責任はどこにあるのか、また政府はそれをどういうような対策で対処しようとしておられるのか、通産省並び厚生省の御見解を承りたいと思います。
  4. 藤尾正行

    藤尾政府委員 お答えを申し上げます。  ただいまの御質問の第一点は、砂利採取によります砂利穴処理が不十分である、こういうことで、この問題を一体どうするのかという御質問だと思います。砂利採取業は、古い採取法によりましては届け出制、事後に届け出ればよろしいというようなことで、きわめてその規制が甘かったわけでありますけれども、あまりにも全国的にいろいろな問題が起こっておる、こういうことで、昨年の八月末から施行されております新しい砂利採取法によりまして、これは事前の認可制をとりますとともに、完全な埋め戻しということを条件にいたしまして、運用をさせておるはずであります。したがいまして、御指摘のような、砂利採取穴をそのままにいたしまして、そうしてそれを第三者に売り払って、そうしてその砂利採取あとの穴を、またかってに第三者が使っておるということになりますと、これを売り払いました砂利採取者、これの責任といいますものが、まず第一に採取法という法律によりまして取り締まられなければならぬ、かようなことに相なるわけであります。したがいまして、第一点といたしましては、この問題についての法の運用ということ、並びにこれの規制、これが完全に行なわれておることが当然でございまして、完全に行なわれていないということになりますと、その責任者であります建設省その他が当然責任を負わなければならぬ、かようなことに相なると存じます。しかしながら、ただいまの神戸市のお話は、どうも昨年の八月以来のものでないようでございます。そこで、この点がきわめてあいまいになっておるわけでありますけれども、いずれにいたしましても、こういったことをやたらに乱用するということは、旧法適用を受けておりましても、許されるべきでない、かように思いますので、今後各省間の連絡を厳にいたしまして、そういうことのないように取り締まってまいりたい、かように考えております。  第二の点は産業廃棄物の問題でございます。砂利穴産業廃棄物を捨てたとか、あるいは砂利穴でなくとも、ドラムかんに詰めて捨てたとかいうようなことは、まことに法の盲点をくぐっていくというものの処理方法でございまして、私はかようなことは許されてしかるべきでない、かように考えます。したがいまして、こういった産業廃棄物責任ということになりますと、第一義的には、その産業廃棄物廃棄いたしました当の企業といいますものが負うべきであるということでございます。と同時に、この企業といいますものに、こういった廃棄物の乱用と申しますか、そういったことを許しておるということになりますと、当然これは、企業を監督いたしております通産省責任になるということに私はなろうと思います。したがいまして、御指摘の点は、那辺にその責任があるのかということを十二分に調べさせていただいて、その責任をとりたい、かように考えております。
  5. 武藤き一郎

    武藤(き)政府委員 ただいまの産業廃棄物の問題でありますが、最近工業都市におきましては、非常に産業廃棄物の問題が問題になっております。現在の法体系では、清掃法で、市町村が、特殊の汚物あるいは多量の汚物につきまして、特別の規定がございますが、現行法規定だけではもう処理ができない、具体的には、たとえば埋め立てにしましてもあるいは海洋投棄にしましても、いろいろの問題がありまして、それがいろいろの公害問題を起こしておるということでございます。さきに都市センターにあります清掃事業近代化に関する委員会におきまして、いろいろ検討されまして、膨大な検討資料が現在発表になっておりますが、これらをもととしまして、厚生省といたしましては、この都市ごみあるいは産業廃棄物の問題につきまして、長期的並びに短期的な対策を早急に立てたいということで、近く審議会等にも諮問いたしまして、とりあえず明年度から計画的な処理体制というものに着手をいたしたい、かように考えております。
  6. 河上民雄

    河上委員 いまの通産政務次官お答えによりますと、神戸で起こりました、尼崎工場神戸市の兵庫区の中に捨てたという事件については、砂利採取法の問題が関連しておるわけですが、砂利採取の跡地を売り払った企業者旧法適用を受けておる……(藤尾政府委員「のようでございます」と呼ぶ)ということのようでありますが、それは確かでございますね。——その場合、われわれは、新法も完全に規制が行なわれておるかどうかということについて心配をしておるわけでございますけれども、しかし旧法の場合、もうガンもハトも飛び立ったあと責任追及というものは、具体的にどうされるおつもりなのか、その点をちょっと伺いたい。
  7. 藤尾正行

    藤尾政府委員 ただいま御指摘問題等は、比較的これは簡単な経路のようでございまして、廃棄物廃棄をいたしました工場Aといいますものが、Bという砂利採取者からその土地の売り渡しを受けておるということが明確になりましたならば、当然そのBという砂利採取者が、旧法のたてまえによりましても、その砂利穴を放置しておいていろいろな問題を提起した、こういうことになりますから、わりあいにその追及が容易ではないかというような考え方をするわけであります。その際に、Aという産業廃棄物廃棄いたしました工場等に注意をいたしまして、その処理をさせるということが現在では第一義になりますけれども、同時に、その砂利穴地を埋めないで、そのままの形でこれをAという工場に提供した旧地主と申しますか、砂利採取者、そういったものに対しても、Aを通じてその責任を考えさせるということは十二分にできることだ、かように私は考えます。
  8. 河上民雄

    河上委員 旧法では、そういう場合処罰がなかなか困難ではないかと思うのです。ましてや彼らは、もう売っちゃったんだから、おれの責任でないというようなことになりはしないかということを非常におそれるわけでございます。その点についてはもう少し明確な経路がわかりますと、今後の対策上非常に有意義だと思うのでありますが、それについていまここでお答えしていただけなければ、また後ほど具体的にどういう措置をとられたか、この委員会に御報告いただきたいと思うのであります。
  9. 藤尾正行

    藤尾政府委員 さよういたします。
  10. 河上民雄

    河上委員 なお、この二つケースで明らかになりましたのは、次のような事情だと思うのです。その一つは、工業会社産業廃棄物の捨て場に困りつつある。どのケースもいままである特定のところ、工場内あるいはどこか西宮の郊外とか、そういうところに捨てておったのですけれども、一ぱいになってしまってどうにもしようがなくなったということで、新しい捨て場を求めておるということですね。つまり捨て場に困っておるということが一つ。それからもう一つは、企業が直接捨てないで、下請運搬会社との間に契約を結んで、そしてその運搬会社がちゃんとやるという約束をしたから、われわれのほうはまかせたんだという言い分をとっておるということですね。第三に、葺合区の布引貯水場へ捨てた運搬会社の弁明によってわかったのでありますけれども、神戸市の清掃局へ持っていったところが、ドラムかん大量投棄はだめだといわれて、それでしようがなくてあちこちさがしておったら、何か前からたくさん捨ててあるところがあったんで、ここならいいだろうというので一緒に捨てちゃった、というようなことを言っておるわけなんです。そうしますと、こういう産業廃棄物という新しい一種のごみですが、地方公共団体がこれを受け取る責任があるのかどうかということがあまりはっきりしておらぬのじゃないか、そういう感じがするのであります。  先日、私はNHKテレビの「一〇二」をちょっと見ておりましたら、広島市でポンコツ車を無責任にあちこちに捨てるものが多くて困っておる。そこで、これが一体遺失物なのかごみなのかということで、市と警察の間で論争があって、もし遺失物だと警察が六カ月預からなければならぬ。しかし、そうなると、どうも警察はとてもそれだけの能力がない。最終的にはごみということで、市が不承不承引き受けることになったということなんでございますが、先ほど厚生省部長さんのお話によりますと、清掃法処理するんだというたてまえにはなっているようでございますけれども、地方自治体としては、新しいケースであるがゆえに、ほんとうに自分のほうで引き受ける責任があるのかどうかということがきわめてあいまいなんじゃないかという気がするのでございます。  こういう、いまいったような二つケースから出ております一つ傾向というものは、どうも最終的には、市、公共団体がかなり責任を負わなければならなくなってくるんじゃないか。それにはそれなり体制をこの際政府として立てるべきではないか、こんなふうに思うのでありますが、その点について、政府関係各省お答えをいただきたいと思います。
  11. 武藤き一郎

    武藤(き)政府委員 現行法体系では、先ほど御説明いたしたとおりでございますが、先生指摘のように、いわゆる従来の家庭ごみを中心としました清掃法体系では、処理し切れないような状態になっている。したがいまして、今後そういう産業廃棄物あるいは家庭ごみにおきましても、いろいろプラスチック、びん、かん——生活の変貌に伴いまして中身が変わってきておるわけであります。これを一市町村だけで処理させていくということは、御指摘になりましたように、まずとりあえず捨て場に困る。これはそういう点で一番困るわけでございます。したがいまして、こういう新しい問題に対応するためには、清掃関係考え方広域化の観点で考えていく。したがいまして、輸送とか処分とかそういったものも、単に従来どおり燃すとかあるいは埋め立てをするというだけではなくて、いろいろ科学的な処理方法も必要でございましょうし、あるいは工場のようなものも必要になってくる、こういうことで、根本的にこの問題は考えていかなくちゃいけない、かように考えております。
  12. 藤尾正行

    藤尾政府委員 ただいま厚生省からお述べになりましたとおりでございまして、その産業廃棄物の種類によりまして、それぞれの処理方法は異なってくると思います。しかしながら、いずれにいたしましても、たとえば自動車なら自動車廃棄物というようなものはいままでなかった問題でございますので、こういった問題につきましてのいままでの考え方が、十二分に整理されていないという欠陥がございます。したがいまして、各省間で十二分に調整をいたしまして、それを処理するためにどのような措置をとっていくかということ、厚生省あるいは私どもあるいは経済企画庁あるいは自治省というようなところで早急に考えまして、十二分に処理ができるような措置をとってまいるということをお約束いたします。
  13. 近藤隆之

    近藤説明員 ただいま通産省厚生省のほうからお答えになりましたように、新しいごみの形態というものが出てまいりまして、個々の弱い市町村の力だけではそれに対処できないという事態が起きておることは事実でございます。清掃法を今後どういうふうに運用しあるいは考えていくかという問題とは別に、市町村清掃体制を強化する意味におきまして、われわれのほうといたしましても、たとえば広域的にものを考えるということで、数市町村が共同してごみ処理する、広域的にどこへ捨てるかということを考えるというような広い見地で考えるように、広域市町村圏構想というものも現在考えておるところでございます。
  14. 河上民雄

    河上委員 時間が参りましたので、私はこの程度で終わりたいと思いますが、きょうは、たまたま最近続いて起こりました二つ事件から、これは一つ大きな傾向のあらわれだというように思いまして、問題を提起したにとどめましたので、後日またあらためて、いま関係各省の御答弁の結果をこの委員会に御報告いただき、さらにこの問題の論議を深めてまいりたいと思います。ひとつよろしくお願いいたします。  それでは、これで終わります。
  15. 赤路友藏

  16. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 きょうは、最近問題になりました、木曽川アユが一万二千匹死んだのですが、この問題について、これはひとり木曽川ばかりじゃなくて、日本の各河川がこういうように汚されているのではないかと思うのですが、これは高度成長という名のもとに、工場をどんどんつくって、その結果そういうひどいひずみが出たと思うのです。  まず通産次官にお尋ねしたいのですが、一体こういう問題をどのように処理されていくのか。きょうは厚生省経済企画庁も出ておられますが、この問題は一地方の問題じゃなくて、今後相当問題になると思うのですが、その点について承りたいと思います。
  17. 藤尾正行

    藤尾政府委員 佐藤先生指摘のとおりでございまして、ただいま、この問題は名古屋通産局管内愛知県、岐阜県というようなところで起こった問題でございますけれども、しかしながら、これがこういった一地区の問題にとどまらず、将来は各地に起こってまいるかもしれないというおそれがあるという御指摘は、私は佐藤先生の御指摘のとおりだと思います。こういった問題につきまして、通産省は一体どのような措置をしておるかというきびしいお尋ねでございますけれども、残念ではございますけれども、ただいままでのところでは、この岐阜県、愛知県において起こりましたアユの問題につきましては、名古屋通産局愛知県、岐阜県というような当面の関係当局、これが集まりました東海公害委員会というようなところで取り扱っておるだけでございまして、全国的にこれを取り扱ったといういままでの例はございません。この問題を一つの問題の提起と受け、取りまして、今後とも各地でこのような問題が起こり得るという前提のもとに、研究を進めてまいりたい、かように考えております。
  18. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 実はこの木曽川は、御承知のように日本の三大河川一つで、日本ラインともいわれ、水のきれいなことでは相当有名なところでありますけれども、いま私が調べてみますと、この木曽川の下流で大体工場が二十二、三あるわけです。そのうちの犬山から上のほうで、上流にいった岐阜県側に十七、八工場があるわけであります。ところが、こういう工場を許可されるときに、排水の問題とか汚水の問題というものについて、通産局は一体どれくらい調べてやられたものであるか。いまになってびっくりされてもしかたがありませんけれども、私はこういう点に大きな抜かりがあったかと思うのです。まあ私たちも、こんなにたくさんの大きな工場があったかということを初めて知ったんですが、それは亜鉛とかカドミウムその他いろいろな被害が出てきたんですけれども、そういう問題を聞いてみますと、昭和三十七年ごろから魚がちょいちょい死んでおったのですが、それが、死んでおっても、一ぺんに今度のように死にませんから、結局うやむやにされておったと思うのですが、これはどういうような通告を受けておられるのか、これをひとつもう一度藤尾さんにお伺いしたい。
  19. 藤尾正行

    藤尾政府委員 この木曽川、特に愛知県、岐阜県におきまして、数十の工場があって、従来も魚が死んでおった、にもかかわらず、今回のこういった大量の魚が死ぬというときに至るまで、全然こういう問題を考えないで、工場設置基準というものにおいて、排水の十二分の調査をいたさなかったではないかというおしかりでございますが、そのおしかりは十二分にちょうだいをいたします。今日の段階におきまして、こういった問題が起こってから考えさせられてまいりますと、工場を設置する場合に、こういうことが起こらないように十二分の措置をさせるということは当然のことであったわけであります。にもかかわりませず、そういった点において抜かりがあったということは、これは認めていかなければならぬ、かように考えております。
  20. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 経済企画庁の方にお尋ねするのですが、木曽川アユと珪藻から、カドミウム亜鉛、こういうものの質と量を考えますと、これは急に起こった問題じゃないと思うのですね。もっと早くからこういうことがあったと思うのですが、こういう点について、水の検出の問題、あるいはたびたび県からも、こういう問題はもっと水質基準を高めてくれというようなあれもあったように聞いておりますが、この点は一体どのように御解釈され、また今度アユが死んだり金魚が死んだりなどして、初めてびっくりして処理をするということがあるので、そういうのは一体どういうふうに経企庁のほうで考えておられますか、伺いたいと思います。
  21. 登坂重次郎

    登坂政府委員 このたびのアユの問題についておしかりを受けたのでございますが、全くそのとおりでございまして、私どものほうとしては、昭和三十三年に水質基準法が制定されましてから、昭和三十三年、三十四年、三十五年と最初の指定のために調査いたしまして、三十八年にこれが第一回の基準設定を見て、その当時においては工場も少のうございまして、大体製紙関係とかあるいは繊維関係工場がおもなものでありましたから、その時点におきましては、そういう基準に該当しておらなかった。いわゆる水質基準設定をした場合に、水域指定をした場合にはそれなりに適法であった。その後急激に各工場が進出してまいりまして、そのつど、アフターケアの意味において、地方自治体当局からいろいろ御報告も願い、またこちらのほうとしても関心を持っておったのでありまするが、その後全国的な非常な工場の進出あるいは産業拡大等によりまして、あらゆる河川についてそういう水質基準設定しなければならない今日の状況になったために、経済企画庁としても、全国的に重大関心を持って、各地区水域指定水質基準設定に狂奔しておったために、当時指定したからいいというわけで、その後今日まで地方自治体におまかせしておった、ただそのつど報告を受けていた程度にすぎなかった、こういう点は大いに反省させられまして、今後水質汚濁のいろいろな原因の拡大化、そういうことに伴って、根本的にそれを改めようというわけで、このたび提出された水質基準法の拡大的な法の解釈に基づいて、根本的にただいま検討を進めたい、またそうしなければいけないと思っているわけでございますが、この木曽川については、先生指摘のとおり、昭和三十八年に指定しておった。その後うちのほうとしても、あまり積極的に考慮していなかったという点は重々おわびしなければならない、こう思っておるわけでございます。
  22. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 登坂さんにもう一つお伺いするのでありますが、木曽川アユが死んだからわかったけれども、死ななければわかりませんわね、どういうあれになっておるかということは。そこで、これは斎藤厚生大臣にも去年質問したのですが、公害の問題がたまたま木曽川で起きたということじゃなくて、全国的にこういう問題がたくさんあるのじゃないかというように心配するのですが、そういう点について、経企庁のほうではどのようにお考えになっておるのか。今度事件が起きたから、しかたがないから何とかしようということでなくて、これは日本の国民全体の問題として、相当大きな問題になると思うのです。これはたまたま、御承知のように阿賀野川の問題とかあるいは水俣病の問題とか、そういう問題がたくさんあるのですけれども、これはひとつの産業の発展のひずみで住民が犠牲になるという形になるのですが、この点はどういうように経企庁のほうではお考えになっておりますか、ついでながらちょっとお伺いしたいと思います。
  23. 登坂重次郎

    登坂政府委員 何と申しましても、産業の発展もさることながら、やはり人間の生命を保護するということが政治の根本であるし、国家の最高の目的としなければならぬのは当然でございまして、今日までとにかく各企業が急激に各地に進出してまいりまして、今日どこも公害が新たな問題として世間の注目を浴びておるところでありますし、私どものほうとしては水質を守る役所といたしまして、これは他官庁とも打ち合わせつつ、責任を痛感いたしております。  そこで、今後全水域について徹底的に見直そう、今日六十四水域をかねて指定しておるのでございますが、来年度以降はもっときびしく、産業それなりに、調和をはかりつつという問題もありますが、この委員会で御審議をいただいたとおり、人間尊重という意味から、こういう公害に対して徹底的に取り組もう、水域についても六十四水域指定しておりましたが、今日まではあまり見直しをしなかった、アフターケアを忘れていたという観点もありますので、もう一ぺんこれは再検討する必要があるというふうに考えて、今後精進いたしたいと考えております。
  24. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 厚生省にお尋ねするのですが、実は昨年、私どものほうに岩倉町という町がありまして、ここにかつてない大きな団地ができたわけです。そうしてちょうど小牧市と接触しているものですから、小牧市がここに自動車のたまりをつくって、排気ガスをあれして非常に問題になりまして、これはもちろん愛和県庁が悪いと私は思うのですけれども、初めは賛成してやったわけだが、それはたいへんなことになったというので、それで実は斎藤厚生大臣に見てもらって、処理をしたことがあるわけであります。実は今度の問題も、木曽川の水は、名古屋市民が大体二百万、それから尾張一円の人が百万、約三百万の人がその水を飲み、また私どものほうの農村はこれを用水に使っておるのですが、米にも影響するというようなことも、水の中にそういうカドミウムが入っていたということだけで、わかるのです。あとで、専門的なことは同僚の山口君が質問することになっておりますが、そういう点について厚生省はどういうような処理をしておられるのか、一体水というものがどんなに大事なものであるかということは、政務次官の皆さん御存じだと思うのですが、私どもにしてみれば、そういう水を飲んで、いますぐは症状は起きぬけれども、やがてそういうような問題が起きるのじゃないかという心配をするのです。きょうは公害部長がおられますから、その点、厚生省はどのようにお考えになっておられますか、伺いたいと思います。
  25. 武藤き一郎

    武藤(き)政府委員 水の問題で、厚生省として一番関心の深いのは、先生指摘の飲料水の問題でございます。御指摘の名古屋市の水道問題につきましては、毎月一回木曽川につきましては六地点でいろいろ原水の水質検査を定期的に行なっております。その成績につきましては、現在のところ、水道法に基づきます基準にすべて合格いたしております。ただ以前に一度フェノールが混入したことがございまして、木曽川につきましては、やはり先生指摘のように、水道原水の取水点以外につきましても、常時監視をするということが必要でなかろうか、かように考えております。ただこの点は大気汚染と違いまして、なかなか技術的にも開発がおくれておりますけれども、近年外国等ではそういう問題についての技術も開発され、できますれば、日本でもこの常時監視の問題をも取り上げてみたい、かように厚生省は考えております。
  26. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 これは経企庁と通産省厚生省の方にお尋ねしたいのですが、私たちの考えでは、かつてこういうことはなかったのです。やはり一度にアユが一万二千も死ぬということは、その原因は大体工場排水にあるのじゃないかと思うのですが、工場を許可するときに、排水の問題をどのように考えて許可されているのか、水はものを言わぬから、すてばちにしておかれて、こういうような惨害が起きるということも考えられるのですが、そういう点について、私たちから考えるとどうもルーズじゃないか、いまになって、そういう問題が起きてから、ああでもない、こうでもないというのじゃなくて、そういう結果が起きるということをお考えになってやっておられるのか。  実はこの間ドイツでも、ライン川で、排水のためにだいぶオランダあたりに被害があったということを聞いておりますが、ライン川と木曽川というのは昔からちょうど同じようにたとえられますけれども、たまたまそういう問題がドイツあたりでも起きているのですけれども、こういう問題についてどういうような考え方を持っておられるのか、あるいは何が原因だという問題は検討しておられるようでありますけれども、いままでの水俣病とかイタイイタイ病の問題も相当長期にわたって原因がやっとわかった、しかし実際は、現実に水を飲んでいる住民にとってはたいへん不安な問題で、この間も横浜の水道問題で、市長が責任をとって処罰までしたのですが、そういう問題と同じことですけれども、ただこれは大きな問題ですから、だれに責任があるかということをいま押しつける気持ちはありませんけれども、一体どういう処理をされているのか。これも各省にまたがっておりますが、ひとつ各省からいろいろ御意見を承りたいわけです。
  27. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 水に対する規制といたしましては、現在水質基準法と、それからそれを実施監督する工場排水法その他の法律があるわけでございまして、木曽川につきましては、御存じのとおり昭和三十八年におきまして三項目、すなわちアルカリと酸の関係の基準、それから浮遊物質、それからCOD、この三項目につきまして水質基準設定されまして、それを受けまして、たとえば工場排水法に基づきまして、既設はもちろんですけれども、そういうものにつきましては新増設に際しまして届け出、それをチェックいたしまして、必要があれば改善命令を出す、そういうことによりまして、その水質基準が守られるように、まず施設の段階でもってチェックするわけでございます。それから、それに基づきまして、工場が操業を開始いたしますれば、はたしてその水質基準が守られておるかどうかということを、水を抜き取り検査その他いたしまして、監視する、こういうような態勢になっておるわけでございます。  木曽川上流につきましては、実際問題といたしまして、監督監視といたしましては、現在岐阜県及び愛知県が直接の監督官庁になっておりますが、それが年三、三回、各項につきまして抜き取り検査をやって監視する。それから別途関係の工場は、水質の測定義務がありまして、測定のレポートを保持しておる、こういうような態勢になっておるわけでございます。以上が現在における木曽川上流における水質に関する規制の態勢でございます。  今回、六月十四、五日に起こった問題に関しましては、先ほど政務次官からお話がございましたように、すでに東海地方につきましては、東海地方公害対策会議というものが、関係府県、関係出先機関を中心としてあったわけでございます。これが緊急に招集されまして、それ以後諸般の調査、指導その他を精力的にやっているわけでございまして、詳細は省略いたしますけれども、まず被害サイド、すなわち魚自身の内臓の検査、それから魚が食べると思われるモの検査、それから上水道の関係の取水地点における水質検査、こういう被害サイド、被害と思われるサイドにつきまして、まずもって精密な検査をやる、こういうようなことでございまして、たとえば水道につきましては、先ほど厚生省お話があったと思いますけれども、現在の水道の基準には十分合格している、問題ないというような結論も出ているわけでございます。と同時に、工場排水が問題であるということで、原因サイドにつきましても、愛知県、岐阜県にわたって、総点検をいたしたわけでございます。総点検をいたしました結果、やはり全部、一〇〇%基準どおりというわけにはまいらなかったわけでございまして、たとえばニチボー犬山工場につきましては、PH、すなわち酸、アルカリの度につきまして、アルカリサイドにおきましてオーバーしておる、こういうような事実が発見されて、直ちにこれに対して改善措置を命じまして、もうすでに、現在七月上旬ですが、七月上旬におきましては、その措置が完了いたしまして、現在においては全く問題がないと思います。  それから、これは現在の、さっき言った三項目の規制基準に関しましては、ニチボー犬山工場につきましていまPHだけがオーバーしていたというわけでございますが、その三項目以外につきましても、問題となるものは軒下あるわけでございます。シアンに関しましては、あるメッキ工場につきまして、毒物及び劇物取締法の関係をオーバーしておるという事実が一つあるわけでございます。これもまた改善措置を命じておるということでございます。それからまた、これは問題があるかどうかはまだ疑問なんでございますけれども、亜鉛につきまして、活性炭をつくっておる工場につきまして、最高三百、平均二百数十台の数字が出ている。これも問題であるので、直ちに改善措置を命じまして、百以下にするということにしております。大体、総点検の結果、問題となるものは以上三つということが現在までの調査結果でございます。  そこで、今後の問題でございますが、現在の水質基準は、さっき言った三項目だけについて行なわれているわけでございまして、これでは不十分だというような考え、批判もあろうかと思いますが、今後、今回のアユの大量斃死事件の原因究明をさらに進めまして、その原因がその他の項目にあるということになりますれば、必要に応じまして、経済企画庁が主管でございますから、経済企画庁が中心になりまして、水質基準の項目の追加というようなものも考えてまいりたいと思っておるわけでございます。
  28. 武藤き一郎

    武藤(き)政府委員 大体の工場の大勢につきましては、ただいま矢島さんのほうからお話がございましたが、水道のほかに、私ども厚生省としましては、臓物及び劇物取締法という法律を所管しておりまして、県知事がその取り締まりを行なっております。今回の、毒物劇物の関係の工場では、木曽川では六件ほどの検査をいたしまして、二件が不合格。これにつきましては、県のほうで改善措置をさせたと聞いております。  従来愛知県下におきます、木曽川だけでなくて、毒物及び劇物取締法の関係での成績を申し上げますと、四十三年には百三十件中四十三件が合格、他は不合格。それから、四十三年には九十一件中十四件が不合格ということで、だんだん改善はされてきておりましたけれども、あまり成績がよくなかったので、県のほうでもきびしく指導を行なってきていた経緯がございます。四十四年度につきましては、先ほど申し上げましたように、木曽川につきましては六件中二件が今回不合格であったということでございます。  今後の方向といたしましては、現在規制されております工場の種類をふやすということ、それから検査項目をふやすということ、この二点がやはり必要ではなかろうか、かように厚生省では考えております。
  29. 宮内宏

    ○宮内説明員 先ほどからご説明ありましたように、私のほうも水質保全法をお守しておるわけでございますけれども、従来規制のかけ方の簡単な方法を申し上げますと、沿岸にございます工場あるいは人口、そういうものから出てまいります汚濁源が、その量が流れの水に対してどういうふうに薄められるかというふうな立場から、この工場——もちろんいろいろ技術的な問題もございますけれども、この程度規制したらよかろうというふうな方法をとってきておるわけであります。それで、先ほどからお話が出ておりますけれども、三つの項目しかかかっていないということについては、確かに現在の時点でおかしいという御指摘は当たっておると思います。どんどん人口もふえてまいりましたし、工場の数もふえてきておりまして、その当時は紡績関係とか紙の関係だけで調査が終わり規制が進んできておるわけでございますけれども、これは当然ふやさなければならないということは、実は昨年のいまごろから、最初に規制した河川については総点検しなければならぬということを言ってきたわけでございます。ところが、御承知のように、水質保全法を改正していただく時期にも来ておりまして、そういうことができました暁には、従来野放しになっております規制できない項目も規制できるというふうなこともございますので、あわせて新たに総点検していきたいというふうに考えてきておったわけでございます。したがいまして、規制項目がこれでは少ないではないかという御指摘に対しては、できるだけ早く万全を期していきたいというふうに考えております。
  30. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 矢島公害部長にもう一つお尋ねしたいのですが、実は三年前に御承知の弥富の金魚がたくさん死にまして、その原因は三興製紙にあるということで、いろいろな問題が起きたことも御存じだと思うのです。そこで、通産省から私のところへ、水質基準を今度上げたからという親切なあれがございましたが、その後三興製紙は秋田県に移るということにきまったわけなんです。ところが、秋田県も、こんないやなものは困るといって、また押し返されて、また愛知県へ戻ってきたのですが、その後私調べておりませんけれども、向こうの工場長が会いたいと言っておりますが会っておりませんけれども、その処理はどういうようになったか、いまあなたから説明がございましたから、ちょうど、あらためてそのことも伺っておきたいと思う。
  31. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 三興製紙問題につきましては、相当長い間問題がありまして、通産省といたしましても、この点につきましては非常に頭を痛めまして、対策に腐心をしている次第でございますが、古い問題は先生御承知のとおりでございますから省略いたしますと、結局この三興製紙の問題を解決するためには、現在の設備をそのまま置いて、現在の操業状態をそのままといたしまして、沿岸の田畑なりあるいは金魚なり、あるいは三重県のノリその他に被害を及ぼさないということは不可能である、現在のままでおいては……、というような考えに立ちまして、やはりこの際工場の相当部分、汚濁負荷の非常に大きいようなものにつきましては、大部分これを移転する以外ないというようなことになりまして、そういう方向で指導をしてまいったのでございまして、先生がいまおっしゃった秋田県移転問題もその一つでございますが、不幸にして、秋田県につきましては、秋田のほうの地元で異論がございまして、実現を見なかったわけです。ほかの場所を探しましたところが、適当なところが見つかりましたものですから、そこに施設の相当部分を移転するということにほぼ話がまとまって、現在そういう段取りになっておるわけでございます。そういう前提で、水質基準をまず改定しなければならぬ。水質基準は昔できておるわけですが、一一〇〇PPMという水質基準があるわけです。これは木曽川の流量の変化、河床の変化等で、とても十分でないということで、まず移転して、移転したあとはちゃんとやれるということで、本年の四月一日付でもって告示がされまして、COD日間平均四五〇PPM以下という新しいシビアーな水質基準がまず設定されております。それから、移転につきましては、これは若干日数がかかるわけでございまして、現在の見通しでは、四十五年秋完了ということが一応の見通しでございます。そういうことで、その秋完了を目ざして移転の段取りを進める、こういうことでございます。したがって、その秋完了後に新しい水質基準適用されるわけですが、しかしながら、その間田植えどきについて見れば、少なくとも二つある。ことしの田植えは終わりましたが、ことしの田植えと来年の田植えと二つある。金魚に関してはシーズンが若干違いますが、おそらく二シーズンある。そういう間につきましては、暫定的に何らかの措置を講じなければならぬということで、これは行政指導によりまして、それぞれの田植えなり金魚なりのほうに迷惑のかからないように、その当該シーズンに限って、必要な操業調整をやるということにいたしまして、その操業調整の条件につきましては、それぞれ関係の地元の方と御相談して、満足がいくような形でもって操業調整をやる、こういう暫定措置を別途講じました。そういうことによりまして、本件について遺憾なきを期しておるわけでございます。
  32. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 登坂政務次官にお尋ねしたいのですが、産業の発展は非常に望ましいことでありますし、総生産から見て日本は世界第二位ということは非常にけっこうでありますけれども、そういうことのみ中心で、結局国民が犠牲になる、そういうことでは意味をなさない、こう思うのですが、その点について、通産省にも関係がありますが、産業を主体にして、あまりにも住民の福祉というものを無視しているということは、木曽川の問題で実証されたと思うのです。この点をどういうようにお考えになっておるか。ただ産業が発展すればいい——私も近ごろ四日市に参りましたが、四日市などの公害はすばらしくて、そこで黒ダイを釣ると、まっ黒なあれが出る。とてもくさくて食えぬような現状にあるわけなんですが、そういうことを政治の面からどういうふうに考えていかれるかということが一つと、先ほど矢島公害部長から、今度の損害のことについて、いろいろ工場の問題が出ておりましたが、私のほうの調査では、岐阜県の九工場の中で三工場、それから愛知県で二工場の中の一工場は、毒劇法の基準に違反しているということがいわれております。一体どういう処分をしてこの処理をなされるのか、この点は何かうやむやになっては困りますので、その二点をちょっとお伺いしたいと思います。
  33. 登坂重次郎

    登坂政府委員 私のほうは水質保全法を預かる役所でございまして、私のほうの立場から申しますれば、やはり人間の尊重という意味において水は最も大事である、そういうわけで、ただいま御指摘のとおり、産業が非常に拡大されておる、あらゆるところの水が汚染されておる、こういうことについて、今度御決定願った環境基準というものをきびしく追及いたしまして、人間の生命に危害を及ぼすようなものがありましたら、前向きに、強力に推進いたしまして、御心配のないように、またそれが当然われわれの水質保全を預かる役所のたてまえでございますから、産業の発展というものは大事でありましょうけれども、それは第二義的なものに考えて、第一義的なものにはあくまでも人命尊重、われわれの人体に公害の起きないような、そういう環境基準をきびしくしていきたい、かように考えております。
  34. 武藤き一郎

    武藤(き)政府委員 毒物及び劇物取締法の対象工場が違反をしている事実につきましては、県当局は改善命令をかける、改善命令をかけてもなかなか従わない場合には告発をする、こういう方針だということを報告を受けております。この点につきましては、厚生省としても、その方針については了承いたしております。
  35. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 それから、それに関連して、これはどこの管轄か知りませんけれども、犬山のニチボーの工場排水が非常に悪かったということである。私、直接行ったわけではありませんけれども、表向きには排水ポンプを隠してやっておった、非常に汚水を流していた。実は、前から草井舟組合というのがありまして、石をとる商売ですが、約七、八十軒ありまして、それが東洋紡の汚水が問題があるということで、三年ぐらいかかって処理したことがありますけれども、その当時は、大体いまの金魚の問題は三興製紙、それからそういう石にべっとり泥の変なものがつくというのは大体東洋紡といわれておったのですが、今度はニチボーがやり玉に上がってきたのです。その点はどういうことになっておりますか。新聞などではいろいろうわさも書かれておりますけれども、その点はどういうようにいま処理され、解決されておりますか。これは関係省の方に伺いたいと思います。
  36. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 ニチボーの犬山につきましては、先ほど申し上げましたように総点検の結果、PHにつきましてアルカリサイドにオーバーしているという例があったわけで、改善を命じまして、現在においては問題ないと思いますが、先生の御質問の石の問題につきましては、私研究いたしておらないのでございまして、その問題がニチボーとどういう関係になるか、どういうふうにしなければならぬかということは、ちょっと本日答弁いたしかねるわけでございます。
  37. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 矢島部長、それはニチボーでなくて、東洋紡から流れる汚水の問題で、河川にある石にずっとべっとりあれがつくのです、ぬるぬるすべるくらいですね。その問題は表向きに出さずに、東洋紡と地元の舟組合の人たちの問題で、三、四年前私は片づけた。これは表に出さずにしまったのですが、それで非常に東洋紡は心配しまして、汚水の処理については、いわゆる清掃をして出すというようになって、それで全部ではありませんけれども、だいぶ片づいたということになっておるわけなんです。しかし、たまたま今度は犬山の向こうのほうでアユが死んだものですから、それでニチボーが、いまあなたが言われるような問題になったと思うのですが、通産省へは、その舟組合の石の問題については、表向きに言ったこともありませんし、それは処理をしたことでございますが、その後どうなったか、私は行っておりませんから知りませんけれども、そういう問題がありました。  そこで、私はお尋ねするのですが、アユが死んだために一億二千万円の損害である。金魚は三千万円ぐらいの損害があるのですが、こういう補償は一体どこでしてもらえるのか。私、選挙区へ帰っておりませんので、しばらくそういう陳情も受けておりませんけれども、これはアユの組合の人とか、そういう人がいろいろ県のほうにも行っておられるが、こういう補償はどこが一体責任を持つものか。それをひとつ伺いたいと思います。
  38. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 補償の問題はなかなかむずかしい問題でございますが、まず先ほど申し上げましたように、東海地方につきましては、東海地方公害対策協議会というものがありまして、それが先般来各県、各出先機関協調して、原因究明につとめておるわけでございまして、その原因究明の結果、原因が判明し、その原因者というものが確定されれば、それを前提にして、その機関がその補償のあっせんということもやることが考えられると思いますが、いずれにいたしましても、現在までのところ、不幸にして原因の究明が完成しておらないという状況でございますので、その点は何とも申し上げられないと思います。  それから、法律の問題からいえば、現在参議院に回っております紛争処理法というものもありますから、紛争処理法が成立いたしまして、十月一日から施行されれば、その紛争処理法に基づきまして、そのような機関がその処理に当たるということが考えられると思います。
  39. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 時間がありませんから、あまり長く言いませんが、藤尾さんにちょっとお尋ねしたいのですが、いま大体被害状況がわかりましたけれども、しかしこれは岐阜県と愛知県に面している川ですから、結局責任のなすり合いのような形になっておると思うのです。そこでいま矢島公害部長からも、いろいろ地方に移管された面もあるそうですが、私はこういうような川の問題は、これは当然このような大きな川ですから、国でやっぱり処理をすべき必要があるのじゃないか。そこでこういう問題は、結局厚生省通産省——私きのう話を聞きましたから、水産庁は呼びませんでしたけれども、非常に多岐にわたってくると、責任のなすり合いをやっておるような傾きもなきにしもあらずですが、しかし被害を受ける三百万の住民は、そのまま泣き寝入りするような形になると思うのです。そこで米はいま余っているから、あまりやかましくありませんけれども、米作の用水にみんなこの木曽川の真水を使っておるわけです。こういうところが住民不在の政治だと言われ、また被害を受ける者は結局泣き寝入りするような形になってしまうのですが、こういう点はもう少し高所から考えて、国家全体として、ひとつこういう損害はどうするか、またこういう被害についてはどのように処理をするかということもひとつ勘案して処理していただく方法はない・か。私らから見ると、どうも生産を中心にして、日本工業国になるということに急であって、住民のことが置き去りにされておるというようなことを心配しておるのですが、こういう点について、一体政府はどういうような見解でこの処理をされていくのか。これは私きょう大臣を要求しておりましたけれども、大臣来られませんから、あと山口委員がやりますから、言いませんけれども、一体こういう大きな問題は国で処理すべきじゃないか、地方に移管してしまうと、県というものは、愛知県、岐阜県、三重県、それぞれなすり合いになってしまって、最後はアブハチとらずというような形になると思うのです。こういう点について何か、たまたまアユが一万二千匹死んだということが一つの契機として、全国の、日本のイタイイタイ病の問題とか、あるいは水俣病、そういうような川の問題を私は処理をしていただきたい。私ら学生時代、信濃川とか石狩川には、大きなサケがまだ川に泳いでおりまして、その当時一匹二銭で売っておったことを覚えておりますけれども、日本河川という河川は、ほとんどそういうような状態になっておるということになっておりますが、実は一昨年ソ連へ行きましたときに、ソ連では御承知のように、南樺太の河川の中に、御案内のとおりサケが泳いでおるそうです。これは私たち大正十三年に樺太に行ったことがありますが、その当時にもやはり川に泳いでいたのでありますが、そういうようなことを考えると、これはここではそういう問題はありませんけれども、日ソ漁業条約の問題がもつれるというのも、やはりソ連も悪い点もあるかもしれぬけれども、日本としてこういうような水質の基準とか、あるいは近海の漁場が非常に荒されて、どんどん魚が死んでいくような状態にあると思うのです。こういう点について、国家的にもう少し考える。また住民は黙っておりますけれども、こういうような悪い水を飲まざるを得ないというような状態が全国的になっておると思うのですが、この点について、もう少し政治的に解決する方法はないだろうか。政府はもう少しそういう点に意を用いる必要がないかと思うのですが、何か御意見がありましたら伺いたいと思います。
  40. 藤尾正行

    藤尾政府委員 まことに傾聴に値いする御高見でございまして、そのとおりであります。私どもこの問題の処理にあたりまして、かりにも各県あるいは各工場において、責任のなすり合いをするというようなことがありましては、こういった事件を発端にいたしまして河川全体の問題をこれから取り上げなければならぬというところに、非常に大きなつまづきを起こすわけであります。そういうことは、ひとつ私の政治生命を張りましてもやらせませんから、ひとつおまかせをいただきまして、私は必ず行きます。やりますから、どうかひとつおまかせをいただきたいと思います。  なおサケの問題につきましては、これはもちろん農林省の水産庁にかかわります問題でございますが、実は私もあるところで、鮭鱒の専門家に伺いましたところが、わが国では高碕達之助先生が発案をせられまして、五億匹のサケの卵のふ化をやっておられるそうであります。しかしながらソ連では、現にカムチャツカだけにのぼっております自然のふ化でも、十億匹をこえておるというような話もございまして、こういった事態、事態が、日ソの漁業交渉というものに非常に大きな投影をしておるのだというようなお話を伺いまして、われわれが心して考えなければならぬ問題だというように、考えさせられたわけございます。現在、隅田川におきましても、かつて白魚が上がっていた川が、いまや白魚どころの騒ぎでないということは、これは政治のまことに至らぬ点であります。こういったことを、たとえ年月がかかりましても、元へ返すようも努力を積み上げてまいるというところがほんとうの政治でなければならぬ、かように考えますので、不肖ではございますけれども、力を合わせまして、ひとつこういった問題と表から取り組んで解決をしてまいりたい。ひとつ十分な御監視を願いますと同時に、あたたかい日をもって見てやっていただきたい、かように考える次第であります。
  41. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 藤尾政務次官から非常に熱意ある答弁をいただいたのですが、たまたま木曽川アユの問題は、非常に画期的な大きな事件で、地元は非常に大きな騒ぎをしておりますが、また県のほうでもなかなか処理がしにくいのではっきりした答弁ができないような様子でございます。しかしたまたまこういう問題が起きて、ひとつ災いを転じて福となす、そういうようなことになるように、また補償なんかの問題も、何とか出るようなことをお願いしまして、私の質問を終わります。
  42. 赤路友藏

    赤路委員長 いまの佐藤さんの質問の中で、矢島さん、工場排水調査等はすべてできておるのじゃないのですか。資料を提出できますか。
  43. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 いわゆる総点検という意味においては、できておりません。
  44. 赤路友藏

    赤路委員長 それではついでに、武藤君はちょっと気になる答弁をしておるのだが、水道原水の基準をつくるということは考えておるのですか。ただ単に常時検査をするというのか、それを通じて原水の基準をつくるのか。
  45. 武藤き一郎

    武藤(き)政府委員 現在厚生省検討中です。
  46. 赤路友藏

    赤路委員長 岡本富夫君。
  47. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 先ほど来取り上げられております木曽川の今度のアユの死んだ事件につきまして、私も、きょうは時間があまりありませんから、明確にひとつお答え願いたいと存じます。  そこで、先月の十五、十六日、木曽川アユがたくさん死んだ、大体十万匹、こういうように発表されておりますけれども、直ちに公明党では、副書記長の石田幸四郎さん、それから私どもも参りまして、そして厚生大臣に対して次のことを申し出ました。名古屋市の上水道に影響はないか、早急にその点を調査してもらいたい、あるいはまたその発生源をしっかりと調査してもらいたい、こういうことを申し出て、厚生大臣は、調査の上対策を講ずる、こういうように答えておりますけれども、どういうような調査を行ない、そしてどういうような対策をやったのか、また結果はどうなったのか、これをひとつ厚生政務次官からお願いいたします。
  48. 粟山秀

    ○粟山政府委員 名古屋市の上水道は木曽川上流水からとっておりますが、浄水処理を行なったあと市に給水しておりますので、名古屋市の水道局の水質検査成績などによると、給水の水質は水質基準に合致している。その後も原水についてはカドミウム等が検出されていないので問題がない、そういうふうに考えられております。また名古屋市の水道局は、水道原水の水質についておおむね毎年一回全項目の検査を行なっているほか、毎月一回木曽川について、その水をとっている地点を含む六つの地点で原水のシアン、クローム、フェノールなど必要と認められる水質項目について定期的に検査を実施して、その検査結果については、必要に応じて報告を求めるということになっております。
  49. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 アユがたくさん死んだこの原因の究明、これは必ずできる見通しがあるのかどうか、これをひとりお聞きしたいのです。
  50. 武藤き一郎

    武藤(き)政府委員 先ほどの御質問お答えしましたように、厚生省では毒物劇物取締法に基づきます取り締まりにつきましては、県当局を督励いたしまして、その結果につきましては改善命令等を出すように指導をいたしております。原因の問題の究明は、現在現地で対策本部が行なわれておりまして、いろいろ検討されておりますが、どういうような原因でこれが起こったかということにつきましては、なかなかむずかしい問題ではなかろうか、かように私どもは考えております。
  51. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 いま改善命令を出したというが、どこの工場にどういうような改善命令を出したのか、そうするとそれが原因に、なる、こういうことになるわけでありますが、それをはっきりしてもらいたい。
  52. 武藤き一郎

    武藤(き)政府委員 工場の名前は、ちょっと私、現在資料を持ち合わせておりませんけれども、基準をオーバーしていた事実がありますが、それが直ちに今回の事件に結びつくということは必ずしも言えないと、かように考えます。
  53. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 それはおかしいじゃないですか。基準をオーバーしておった、それに対して改善命令を出した。基準をオーバーしておったところが、結局今度の事件の原因になるのではない、そんなら改善命令をする必要はないじゃないですか、その点ちょっとおかしいと思いますがね。
  54. 武藤き一郎

    武藤(き)政府委員 先ほど各省からお話がありましたように、現在では規制対象になっております工場は、繊維、パルプだけの工場でございます。それから対象項目につきましても、PH、COD、浮遊物質というようなことに限定されていることでございまして、そのほかの物質については規制が行なわれていないことは、各省の説明でおわかりだと思います。  それから、厚生省が所管しております毒物劇物取締法の違反工場二つあるというふうに報告を受けておりますが、そういう関係がどれが原因であるかということについては、必ずしもそういう違反事実あるいは規制されていない物質であるかどうかということについては、現在のところまだわかっていないわけでございます。
  55. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 通産政務次官にお聞きいたしますけれども、この川の上流にありますところの工場が二十四ですか、この中で規制されていないというような話がいまありましたが、規制されていないようでは、これはもう野放しというようなところに原因がある、こういうように思うのですが、どうでございましょうか。
  56. 藤尾正行

    藤尾政府委員 どのようなところからいまの岡本さんの御質問が出たのか知りませんけれども、私どもにおきましては、その河川流域のすべての工場につきまして、一応の点検はいたしておるわけであります。そしていままでのPHあるいはCODあるいは浮遊物質、そういったものにつきます水質基準に該当いたしておるものにつきましては、明らかにこれを規制いたしておるわけであります。たとえて申し上げますと、ただいま矢島公害部長から申し上げましたとおり、日紡の犬山におきまして、PH中のアルカリ分が少なくとも基準よりもオーバーをしておった、こういう事実が出てまいったわけであります。したがいまして、そういった出てまいりました工場に対しましては、これは出過ぎておる、これを下げろというように厳重に注意をいたしまして、下げさせるための努力をいたしており、下げさせましたということを今日申し上げられる段階になっておる、かようなことでございますので、決して全部を規制しておらないわけでもございませんし、全部が違反をしておるというわけでもございません。その点はひとつ誤解のないようにお願いいたします。
  57. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 私のほうは現地に調査に行ってまいりまして、一つ例を申しますれば、岐阜県美濃郡の二村化学あるいは信濃製紙あるいは近江絹糸、こういうようなところは、今度の水質保全法による規制地域の工場ではないのであります。一つ一つ点検いたしますれば、水質保全法によるところの規制をされておる工場と、それからそうでない工場、こういうように分かれるわけでありますけれども、いま政務次官から、全部この規制をしておるというような話のようにぼくは受け取ったのでありますけれども、一つ一つの点検をいたしますと、私のほうの資料ではそうではない。  それはそれといたしまして、確かに現地の検査をしたのかどうか。たとえば県あるいは市、特にこれは愛知県あるいは岐阜県がやったのを聞いて、そのままうのみにしてお答えになっておるのか、これをひとつお聞きしたいのですが、どうでしょうか。
  58. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 現在工場排水規制法に基づく監督権限というのは、大部分の業種につきまして、都道府県におろしてございます。したがいまして、直接の監督責任愛知県及び岐阜県にあるわけでございまして、この愛知県、岐阜県の当局が点検の中心になることは当然でございます。しかしながら、先ほど申し上げましたように、現地の対策本部、すなわち東海地方公害対策協議会というものが、愛知岐阜の両県のみならず、各省の出先機関も入っておりまして、たとえば通産省名古屋通産局も入っておるわけでございまして、今回のいわゆる総点検に関しましては、直接の監督官庁である愛知県、岐阜県のみならず、通産局の担当官も加わりまして、合同でもって総点検をやったことになっております。
  59. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 そうしますと、いままで水質保全法によるところの規制に入っていなかった工場というものははっきりおわかりになるでしょう。どうでございましょうか。
  60. 藤尾正行

    藤尾政府委員 岡本委員の御質問とこの問題とのかみ合いが少し違っておると思うのでありますけれども、水質基準で私どもがいままで厳重に監督をいたしておりましたのは、PHと浮遊物とCODであります。しかしながら、今回の問題は、こういった三つの水質保全というものにかかわりまする基準そのものでなくて、そのほかにカドミウムとか亜鉛とか、あるいはその他シアンとかいうような毒物、そういったものも非常に関係があって魚が死んだのではないか、こういう問題が起こっておるわけであります。したがいまして、従来の水質基準指定をされております三つの基準といったものでははかれないものがここにあって、水質基準をさらに増加いたしまして、カドミウムを調べろ、亜鉛も調べろ、シアンも調べろ、マラソンも調べろ、こういうことになってまいるのではなかろうかと思います。したがいまして、これを拡大いたしてまいりますならば、いままでかからなかったものがかかってくるということは十二分にあり得ることでございます。そういった面について、いままでただ単に三つの水質基準について調べておって、それにかかってこなかった、しかしながら、さらに基準をふやしていけばかかるであろうというような問題は別途あるわけでございます。私どもの政治姿勢として、そういったものをどんどんと加えていって、そして国民の皆さま方に御安心の願えるようなりっぱな水質基準をつくり、それを守っていく、守らしていく、こういうことが非常に大事なことであろうというように考えます。
  61. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 じゃ、経済企画庁にお聞きいたしますけれども、現在御承知のように水俣病、あるいはまた富山のイタイイタイ病のあのカドミウムの原因、こういうように各所にこうした重金属によるところの被害が起こっておりますけれども、水質基準をあなたのほうで指定する場合に、いま通産政務次官から話がありましたその三つだけで、はたして、日本の国の水質を規制して、確かに河川の汚濁を防ぐことができるのか、こういうことを考えた場合に、これはもうあなたのほうが指定をしているところのいまの基準だけじゃだめだ、こうよういうにいま通産政務次官の話があった。したがって、今後経企庁といたしましてどういうように——もっともっと水質基準をきめるについて、重金属のそうした規制を行なうかどうか。これを行なわなければ、いつまでたってもこういう問題は解決しないというように思われるわけですが、どうでございましょうか。
  62. 登坂重次郎

    登坂政府委員 お説のとおりであります。私のほうでは人体、生命に危険のあるものはすべて調査し、またそれを除去しなければならぬ、こういうたてまえにおいて、木曽川については実は昭和三十八年に指定したので、当時としては製紙と紡績業しかなかったものでありまするから、それについての指定水域基準の策定をしたので、そういう三つの種目になっておる。しかし大かた今後いろいろな産業構造の変化、公害の多様化等にのっとって、これは幅広く、およそ人体、生命に危険があるものは、徹底的に環境基準の拡大というものをはかって善処していかなければならぬ。それはお説のとおりであります。そういう方向に向かって前向きに検討いたしております。
  63. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 これは早急に環境基準の前にでも、この水質基準をきめなければならぬのです。いまあなたからも答弁がありましたように、三十八年に木曽川をきめたと申しますけれども、日本の国の川全体にわたって、たとえば奥岳川あるいは渡良瀬川、すでにたくさんこうした被害が出ておるわけですから、いま三十八年当時のそれと同じ時点におけるところの水質基準規制したところで、この被害はなくならない。大体いつごろまでに、経企庁として、そうしたすべてを含んだ水質基準指定することができるような規則がつくれるか、これをひとつお聞きしたいのですが、いかがですか。
  64. 宮内宏

    ○宮内説明員 流水の水質の基準につきましては、従来この川をどういうふうに利用するか、あるいは先ほどから出ておりますように、上水道源であるとかあるいは魚介の飼育のためであるとか、それぞれの目的が河川ごとによっていろいろ多様性があるわけでございます、工業用水であるとか、農業用水であるとか……。それで、たとえば木曽川の場合でございますと、名古屋市上水が朝日のところから出ておりますというふうなことを見ながら、その当時は紡績ないし紙……
  65. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 ちょっと、委員長……。
  66. 登坂重次郎

    登坂政府委員 この水質の検査、これは各水域について各工場がそれぞれのほうに分散しております。でありますから、どこの川がどうこうということは、非常にどこでもあるいは大なり小なり問題になっておると思います。でありますから、私のほうとしては、皆さんの申し出がなくても、当然水質保全法を預かる役所としては、全域にわたって調査を進めたい。特になかんずく問題点の多いようなところから、順序としては始めなくちゃならない。ただいま六十四水域指定されておりますが、今後もっと早急に拡大する。これは方向としては前向きに、御趣旨のとおり進めたいと思います。
  67. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 そんなことを言っておるのと違うんです。実はいま経済企画庁水質基準をきめておる。それだけでは、この人体影響に対するところの、こうしたたとえばカドミウムだとか、亜鉛だとか、こういうものは取り締まれない。だからその三項目以上にこの水質基準をきめなければならぬ。これは全国の川に対してもそうしなければならない。その基準をいつごろきめられるか、こういうことを聞いているんですよ。
  68. 登坂重次郎

    登坂政府委員 カドミウム以外は、ただいまもう規制の対象になっておりまして、それは取り締まる方向でやっております。カドミウムについては今後各省との折衝が残っておる、こういう事務当局のいまの段階でございます。
  69. 宮内宏

    ○宮内説明員 その環境基準を大きく分けまして、人体に直接害のあるもの、それから先ほどちょっとお話し申し上げかけた利用の面、二つの面から考えていかなければならぬと思います。それで、たとえばメチル水銀はすでに各省との調整が終わりまして、これは全国的にすでに排出しちゃいかぬという基準をかけております。  それからカドミウム等につきましては、いろいろ人体への蓄積の過程に多様性もございまして、いわゆる許容量というふうなものがまだ明確でないのでありますけれども、各省と相談いたしまして結論が出次第、できるだけ早く規制していく、こういうふうに考えております。
  70. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 これは、このいまの委員会では時間がありませんから、もう一ぺんよく協議して、はっきりした資料を出してください、いいですか。そんな答えじゃ話にならぬ。  次に、私どもが直接こちらに行って点検したところによりますと、工場排水処理場があります。そういう施設がある。ところが、そこの工場排水施設の機械が故障しますと、そうすると、あとはもうたれ流しというのですか、もう排水処理をせずに流している、こういう事実をわれわれは見てまいりました。したがいまして、これは二つペアのものをつくっておいて、片方がこわれたら片方で処理する、こういうことでなければならない。これは私いまここで名前を言うのをちょっと差し控えますけれども、これは皆さん方がお調べになったらわかることでありますけれども、六月十四日、十五日、十六日、この間は工場はとまっていた。そういうことでありますれば——りっぱな排水施設があります、処理場があります、こう言うけれども、機械がとまっていた。私は現地の現場の人に聞いたのです。これはぐあいが悪いと思うのです。したがって今後排水処理施設についてはペアにする。片方がこわれたときには片方で回しておく、こういうようにしなければこの問題は解決しない、こういうように思うのですが、政務次官いかがでございましょうか。
  71. 藤尾正行

    藤尾政府委員 仰せのとおりでございまして、排水施設というものが排水の機能を果たさぬということであれば、これは排水施設ではございませんから、そういった不届きな工場につきましては、直ちにおっしゃるように二個設置させることも、これは一つ方法でございましょうし、あるいはもっと完ぺきな排水施設をさせるということも方法であろうと思います。御指摘があれば、私いま現にそれはどこの工場でどうであるということは存じ上げませんから申しわけがないのでありますけれども、御注意をいただけば、この場において直ちにやらせますから、どうかひとつ御指摘をいただきたいと思います。
  72. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 政務次官の強い決意を聞きまして、あとでこれはまたお話しします。  それで最後にお聞きしたいことは、愛北漁業組合、ここでは今度小さなアユの稚魚を大体三十万匹入れた。それ以外に天然のアユというものが大体三倍おる。だから十万匹というならば、これは数をちょっと見ただけでありましても、多量に死んでおる。そうしますと、この漁業組合の方は生活権に影響してくる。いまお聞きしますと、原因がわからない。しかもこの原因がわからないうちに、どういうことがわかったかと申しますと、経済企画庁のほうにおいて、はっきりした規制基準をきめてなかった。そのために各工場においては、水質保全法によるところの規制の対象外になっておる。こういうことになりますれば、これは直ちにいままでの政府の、要するに経済企画庁として水質基準をきめてきちんとしてなかったというところの怠慢によるものだと思う。したがってこの補償というものは、これはやはり政府のほうで考えなければならぬと私は思うのです。したがって、一つは天災ではないのですけれども、規制をしてなかったからわからないのですから、この人たちに対しては、生活権の保護をしてあげるためには、やはりそういう面を考えて善処してやらなければならない、こういうように思うのですが、どうでございましょうか。
  73. 藤尾正行

    藤尾政府委員 この問題は、あとから経済企画庁からもお答えになると思いますけれども、従来からアユはおったわけであります。これが突如として六月の十四、十五、十六の三日間について急激に死んだ、こういうことでございますから、これと工場排水との問題、関連は私はないとは申しません、必ずあるであろうと私は思いますけれども、そのうちどこの工場のどの排水がどのように影響したのかということは、直ちに現在この瞬間をもって、こいつはここの排水がこのように出たからこうだというようにきめつけるには、いささか早計に過ぎるのではないだろうか。これは私どもいままで手に入れておりますところの資料によりましても、たとえば今回死にました魚の場合には、カドミウムにつきましては〇・四PPM、これが愛知県の水産試験場で飼っております養殖のアユでは〇・一四PPM、あるいはその他の川の自然のアユでは〇・二PPM、亜鉛につきましては、死にました魚は二六OPPM、愛知県の水産試験場の養殖アユでは一五三PPM、振草川のアユは一八〇PPMということになっておりますし、また木曽川の水ゴケを例にとりますと、カドミウムは〇・五七PPMから〇・六一PPM、亜鉛につきましては四四五PPMから五二四PPMというようにございますし、一部にはシアンというような偉物が検出されたというような例もないわけではないのであります。  したがいまして、これが工場排水の中のどれであるかという点を考えてみますと、亜鉛につきましては、これはさっき御指摘になられましたように、また私どもの公害部長からも申し上げましたように、二村化学という化学工場で出しております亜鉛が二五六PPMでございまして、基準で当然あるべき一〇〇PPMをはるかにこえておったというような事例はあったわけであります。したがってこういった例につきましては、直ちにこれを一〇〇PPM以下にしろという厳命を下しまして、現在はこれは一〇〇PPM以下になっておるということもあるわけであります。したがいまして、現在東海の各県並びに各通産局あるいは厚生省の出先あるいはその他の方々の構成によりまして、東海地方産業公害連絡会議といいますものが、建設省も入りまして、いまこの原因について熱心に調べておりますから、決して現在この死因がわからないということではありませんで、調べておる最中でございますから、いましばらくお待ちをいただきまして、その結果が出てまいりますまで、これが原因であるというようにきめつけることをお待ちをいただきたいと思います。私どもも、私どもの機能をあげまして、これはいかなる原因によって発生をしたかということを突き詰めるために努力をいたす考えでございます。
  74. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 よくわかりました。じゃ死因をはっきりとつかんでいただきたい。  次に、こういうことが次々と起こりますと困りますから、監視センターをひとつ、ぜひつくっていただきたい。これを要求いたしておきます。  なお、その死因がはっきりわからないときは、これは政府としてめんどう見てあげる、そのためには保利官房長官にもこの補償問題についてお聞きしたい。これを最後に一つ申し入れておきまして、私の質問は終わります。
  75. 赤路友藏

  76. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 時間が四十分ということでございますから、そのうちの二十分は、いままで議論がございました木曽川の問題、あとの二十分は、安中の東邦亜鉛に対しまするところの行政不服審査法に基づく審査請求の問題、三つに分けましてお尋ねをいたしたいと思います。  まず最初に木曽川の問題でございますが、ただいま佐藤委員それから公明党の委員の方からいろいろとお尋ねがありました。また御答弁では、工場排水等の規制に関する法律、さらには公共用水域の水質の保全に関する法律、こちらの面からいろいろ対策を講じておられる御答弁がございました。私は、この木曽川の問題は、次に述べるところが本質ではないかと思うのです。木曽川には昔からアユが住んでおった。私の郷土でございます群馬県の利根川もアユが住んでおります。アユが生息している水域というのは、常識的に今日まで日本人が抱いておった考え方は、いわゆる清流であるということですね。したがってアユが住んでおります川は清流であって、したがって人間が飲みますところのいわば上水道の用水として十分適する水であるというのが、私たちの常識であったと思う。ところがアユが死ぬという事態が起きたわけでありますが、木曽川排水する工場の位置図を拝見いたしました。そういたしますと、いろいろ問題になっております、たとえばシアンあるいはカドミウムを出すと予想せられる森島メッキ工業所あるいはニチボー株式会社犬山工場、大同メタル工業株式会社、さらには二村化学工業株式会社、名古屋パルプ株式会社、こういうものの所在をずっと見てまいりますと、これらの工場排水を出しましたあとの下流の地域から、たとえば犬山・取水場からこの春日井浄水場を通じて、名古屋市のいわば上水道が取水されておる。さらに朝日取水場から大治浄水場を通じまして、同じくやはり名古屋市の上水道が取られている。したがってこの木曽川工場排水を出します下流から飲料水が取水されておる。これが問題ではないかと私は思うのです。したがって、先ほど工場排水の面からはアルカリ、酸、それからCOD、この三つをチェックいたしまして絶えず検査をいたしておるというお話でございましたが、私はこの木曽川のただいま申し上げた性質から考えまするならば、厚生省が定めております上水道用水基準を正確に守らせる、このことが、私はこの問題の本質でなければいかぬと思うのです。そうなれば、単にCODばかりでなしに、銅、あるいはマンガンあるいはアンモニア性の窒素あるいは塩素イオン、水銀、シアン、有機燐、あるいはクローム、鉄、鉛、弗素、こういうものもすべて検査の対象にしなければならぬでしょう。特にシアンのごときは、厚生省の上水道用水基準からすれば、検出してはならぬ部類に入っておるわけですがね。こういうものが出ておるところに、やはり問題の本質があると思います。当然この木曽川の問題については、上水道用水基準厚生省で定めておる各種の物質についてやはり総点検すべきである、私はかように思うのでありますが、とりあえず厚生次官の御見解を承っておきたいと思います。専務当局からでもけっこうです。
  77. 粟山秀

    ○粟山政府委員 その必要があると思いますし、そうすべきだと思います。
  78. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 事務当局としては、当然この上水道用水基準を守らせる必要があると思うのですが、これに対しては、今日まで具体的にどういう手だてを講じてまいりましたか。
  79. 橋本道夫

    橋本説明員 いま御指摘のございました点につきましては、水道法の関係によりまして、名古屋市の水道では、従来この事件が起こるまでは、年間の原水検査が非常に少のうございましたが、この事件発生以来非常に頻繁に原水の検査をいたしております。ただこの点につきましてはまだ私ども一この原水の水質基準と給水の水質基準というものと差がございまして、水道法には給水の水質基準は定めておるのでございますが、原水の水質基準というものにつきましては従来はございませんでした。学界等で技術的なものはございますが、その点につきまして、現在生活環境審議会の中に専門委員会を設けまして、水道の原水の水質基準ということにつきましての検討を、現在まですでに数回にわたって、専門委員会等で検討していただいております。この問題につきましてはできるだけ早く答申をいただき、それに基づきまして、基準としては、厚生省は原則としてはこういうものを考えるということを、厚生省としての水道法の対応、もう一つは、水質保全法に、どういうぐあいに経企庁の調整として行なわれるかということで処理されるべきものというぐあいに考えます。
  80. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 原水の基準と給水の基準は違いがあるべきだということは私も理解をいたします。いただいた資料が給水のほうの基準になるわけですね。そこで問題になりますのは、この原水から給水いたします場合に、たとえば消毒をするとかいう形で、大腸菌等は減らすことができるでしょう。しかし問題になります重金属ですね。銅でありますとか水銀であるとかあるいはカドミウムというものは、結局原水から給水へ持ってくる間のいわば浄水場の処理では落とすことは不可能でしょう。さらに鉄、鉛、その他も同じじゃないかと思いますが、落とせるものもあるでしょうし、落とせぬものもあるわけですね。そうなってくれば、当然この浄水の機能というものを考えて、そうして原水から給水に至る間に浄化できないあるいは落とすことのできないものについては、やはりきびしく原水についても給水の基準を守らせるということが妥当ではないかと私は思うのです。その点はいかがでしょうか。
  81. 橋本道夫

    橋本説明員 原則といたしまして、いま先生のおっしゃったことはもっともだと思われます。現在行政指導でございますが、鉱山保安法の点で、利水地点で飲用水の基準を当てはめて〇・〇一PPMとするという指導が行なわれ始めましたことは、一つの先例であるというふうに考えます。
  82. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そこで、通産政務次官もおられるわけですからお尋ねしますが、結局工場排水の法律によって、さっき言いました三つの点をチェックをしておる。しかしいま私が質問いたしましたので御理解いただいたと思うのですが、木曽川は上水道としての原水の基準というものを守らせる、これは人間の生命に関する重大な問題なんです。そういたしますと、この点はやはり厚生省とそれから通産省、あるいは水質基準につきましては経企庁の関係もございますが、十分三者が協議をして、特に私は飲用水の原水ということから、原水としての基準木曽川について守らせる、こういう処置をとるべきだと思うのです。そういう点について、通産省としてのお考えはどうですか。
  83. 藤尾正行

    藤尾政府委員 御趣旨、当然のことだと思います。もし厚生省なりあるいは経企庁から、かくかくのものについてかくかくの程度に取り締まれという御要望がございましたら、そのとおりいたします。
  84. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そこでさらにお尋ねしたいのは、シアンが検出されたという問題であります。御案内のように、これにつきましては毒物及び劇物取締法という法律がございます。この第十六条の二「事故の際の措置」というのがありますね。「毒物劇物営業者——当然メッキ工場などはこれに該当すると思うのでありますが、この劇物が「飛散し、漏れ、流れ出、しみ出、又は地下にしみ込んだ場合において、不特定又は多数の者について保健衛生上の危害が生ずるおそれがあるときは、直ちに、その旨を保健所又は警察署に届け出るとともに、保健衛生上の危害を防止するために必要な応急の措置を講じなければならない。」こう規定されているわけです。ですから、これは故意に漏らしたとかいうことじゃなくして、うっかりしてしみ出たということも当然該当すると存じます。そうしてこのようなものがしみ出たあるいは漏れたという場合、保健所なりないしは警察署に届け出る義務があるわけです。しかもこの義務を怠りました場合は、同法の第二十五条によりまして五千円以下の罰金に処する、罰則はあるわけであります。当然今回の場合も、シアンが流れ出たということになれば、十六条の二違反だと思います。罰則もある。私はあとで、通産省とは鉱山保安の問題でまたこの問題を議論したいと思うのですが、明らかにこういう法律の規定があります上以上、どこの工場がシアンを出したかということはまだ突きとめておらぬようでありますが、しかしこれは工場の性格から見れば、シアンを使っているのはどこかということはわかるわけです。当然政府なり当該県なりが協力をしてこの調査をすれば、その原因はわかるはずです。そうなれば、この法律もあるわけでありますから、厚生省当局として当該の地検なら地検にこの送致をするということも、私は当然考えてよろしいのじゃないかと思うのです。そのくらいのことをしなければいかぬと私は思うのですが、この点はいかがですか。
  85. 橋本道夫

    橋本説明員 いまの御質問の点につきましては、先ほど公害部長お答えの中にもございましたが、毒物劇物法できびしく措置をとるべきものと私どもも考えております。県に対しまして照会いたしましたときも、従来は検査を重ねて指導をやってきたわけです。本年度からは、命令を受けて、改善命令をやらせて、やらないものに対しては告発するという措置をとっております。  いま先生の仰せがあった、漏れているということに対してどうするかということでございますが、その排水処理が不的確であった、基準の二PPMに合っていなかったということについては、漏れているということであって、法律違反、それをこちらに知らせていなかったのじゃないかということで、違法だということにつきましては、私どもももっともな御意見だと思いますので、県当局に対しましては、それに対してきびしい措置をとることを申し入れたい、そういうように思っております。
  86. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 ですから、先ほどの御答弁では私は不足でありますから、この点を重ねてお尋ねしたいわけでございまして、やはり十六条の二の、漏れたということに対するこの法律義務違反についても、当然私は厚生省として、いま御答弁がありましたように、当該県に対してきびしくひとつ御指導をいただきたいと思います。  次に銅の問題でありますが、銅につきましては、上水道用水基準でいきますと〇・〇五PPMということになっています。群馬県の渡良瀬川につきましては〇・〇六PPMというのを水質の基準で定めております。ところが新聞を拝見いたしましたら、銅につきましても〇・二二PPMが検出をされた。銅に対する規制というものも当然きびしくしていただかなければならぬと思います。  次はカドミウムの問題であります。先ほどお答えがありましたように、木曽川の死んだ魚の内臓の亜鉛並びにカドミウムの含有量が非常に多い。さらに問題は水ゴケについても、この亜鉛カドミウムの含有量が非常に多いということですね。私は単に死魚の内臓の亜鉛カドミウムの含有量が多いということであるならば、これはあるいは一時的に流したという場合も予想されると思うのですが、この水ゴケの亜鉛カドミウムの含有量が相当高いということは、私はやはり長期にわたって汚染されているということの証拠ではないかと思うのであります。そうなりました場合は、当然安中、あるいは対馬それから宮城県の鶯沢、この三地区厚生省としては要観察地域として指定せられたわけでありますが、私は水ゴケ等のカドミウム汚染の量が高いということであるならば、これは長期的な汚染のおそれがある。そういう意味では十分慎重な検査をいたしまして、場合によっては要観察の地域として考えていくということも必要ではないかという気がいたします。特に銅、カドミウム、特に水ゴケの長期汚染の問題について、厚生省としての御見解はいかがでしょうか。
  87. 橋本道夫

    橋本説明員 いま御指摘のございましたカドミウムの件でございますが、魚の内臓にありますデータと、昨年私どもが、まだ十分ではございませんが、金沢大学が非常に広範に調べました資料と比べますと、カドミウムに関する限りにおいては、私あまり高いとは実は考えておりません。いまのコケの中のカドミウムの濃度につきましては、私ども正確な対象資料について現在調査研究を続けておりますので、この点につきましては何とも申し上げられないということでございますが、沿岸にカドミウムを出す工場があるわけでございますから、自然のものよりも多いということは可能性としては考えられると思います。ただ、現在のこの状況で要観察地区とするかということにつきましては、私どもそこまでは考えておりません。要観察地域にいたしましたところの理由は、一日当たり〇・三ミリグラム食べておったということの全部のデータを合わせた上での判断でございます。そういうことにおきまして、ここの流水のカドミウム量というものは非常に低うございます。私ども非常に濃縮いたしました結果、〇・〇〇もう一つ下の位のカドミウム量ということでありまして、これは利水地点の〇・〇一に比べれば低いということで、これをもって要観察地域にするということは、私どもの現在の段階では必要はない、しかしながら人為的な汚染については、将来規制の方向を考えなければならない、そういうふうに思っております。
  88. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 水ゴケの場合カドミウムが〇・五七PPM、美濃加茂市の太田橋、それから江南市の愛岐大橋のところが〇・六一PPM、だいぶ高いという感じがいたしたものですからお尋ねをいたしたわけですが、問題はこういった点を十分御調査いただくとともに、繰り返し当委員会で申し上げておるのですが、カドミウム被害というものは、長年にわたって蓄積されていった結果起きる障害であるという性格を考えました場合に、初めのうちからできるだけ規制していくということが必要ではないか、そういう意味で申し上げたわけであります。したがいまして、今後引き続いてカドミウムが流出し、しかも次第に濃度が上がっていくということになりますならば、これは当然厳重な注意をしなければならぬと思うわけでございまして、この点につきましては、長期にわたって十分な対処をしていただきたいということを強く要請しておきます。  時間もあれですから、木曽川のほうにつきましてはこの程度にとどめまして、次に安中の東邦亜鉛の審査請求の問題につきましてお尋ねをいたしたいと思います。  去る六月二十八日に、私も同道いたしたわけでありますが、通産省に参りまして、あいにく大臣が御不在でございましたので、鉱山保安局長にお会いをいたしまして、の行政不服審査法に基づきます審査請求を提出いたしました。その際明らかになった問題の一つが、東邦亜鉛が、本来鉱山保安法第八条、第九条に基づきまして、施設の設置変更をいたします場合は「あらかじめ鉱山保安監督局長又は鉱山保安監督部長の認可を受けなければならない。」という規定、それからまた、その設置または変更が完了したときは、「鉱山保安監督局長又は鉱山保安監督部長の行う検査を受け、これに合格したものでなければ、使用してはならない。」、こういう規定がございます。ところが、この東邦亜鉛につきましては、施設変更をいたしたにかかわらず、認可を受けないで堂々と操業をいたしておったということが明らかになりました。工場側では、昭和四十二年十月に電気亜鉛の設備増設、月産一万一千五百トン、この認可を受けております。しかしその後認可を受けないで、昭和四十三年の四月から月産一万四千五百トンに施設を拡充いたしまして、現に操業をいたしておったのであります。そうしてこのことを、いわば隠しておったと申しますか、そのままに放置をいたしながら、昭和四十三年の十一月二十六日、月産亜鉛一万七千トンの設備拡張を申請いたしまして、本年の昭和四十四年一月二十五日付をもって、東京鉱山保安監督部長から施設変更の認可を受けているのであります。私がここにおられる河上理事あるいは参議院の田中寿美子社会党公害追放本部事務局長と一緒に、二月二十八日にこの安中の製錬所におじゃまいたしまして、設備の概況を拝見いたしました。そのときにこのようなパンフレットを工場で私によこしたのであります。これを見ますと、昭和四十三年四月には月産一万四千五百トンと堂々と書いてあります。昭和四十三年十月——昭和四十三年十月といえば、一万七千トンの申請を出す一カ月以上前ですね。月産一万七千五百トンということを麗々しく響いておって、私どもはいま月産一万七千五百トンを生産しているということを、堂々と工場長が私どもに説明している。パンフレットにも書いてある。私はこういった状況を見ますと、まさにこの東邦亜鉛の安中工場は、鉱山保安法自体を完全に無視して、堂々と施設の変更をし、増産をやっている。しかも一方におきましてはカドミウム公害が叫ばれ、しかも通産省におきましては、廃水については御調査をされたが、肝心の乾式製錬であるがゆえに問題になる排煙については、これから調査をするというような状態、現在調査はやっておるようでありますが、厚生省においても同様、そういう中で堂々とこの法律無視の施設拡張が行なわれ、増産が行なわれているということについてはまことに遺憾に思うわけです。これに対する通産省のとりました措置についてひとつお答えをいただきたいと思います。
  89. 藤尾正行

    藤尾政府委員 御指摘のとおり、安中製錬所が、正規の認可を受けないで施設の変更を行ない、あるいは落成検査を受けないで設備を稼動さしておった事実がございます。こういったことについては、これは鉱山保安法を頭から無視いたしました全くの明白な違反行為でございますので、私どもは、この問題についてはいささかの手心を加えるところなく、厳重にこれを違反行為といたしまして、検事局にこれを送るという措置をいまもう進めております。さらに、増設施設を使用するというようなことがあれば、私どもといたしましては、これを検察庁に送るという手続を進めておる最中でございますので、そういうことをさせるわけにまいりませんから、いかなる設備ができましょうとも、この問題について私どもが納得がまいりまするまでの間は、この操業の停止を命令いたしております。したがいまして、現在はこの施設の変更認可にかかわる施設は操業を中止しているはずでございます。
  90. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 いまの次官の御態度につきましては、ひとつ御答弁のとおり、断固たる決意で対処いただきたいと思うのです。  そこで問題は、現在東邦亜鉛が稼動いたしておりますのは、いわば合法的な施設は一万一千五百トン、昭和四十二年十月に認可をしております。これは私は、現在の東邦亜鉛が鉱山保安法の上からいわば適法な施設であり、操業をするとすれば、その量でなければならぬと思うのですが、ただいまのお話は、一体具体的には何トンの操業を認めるということなんですか。
  91. 橋本徳男

    橋本政府委員 前半のお答えといたしましては、政務次官がいま御答弁したとおりでございますが、私からも若干ふえんさしていただきたいと思うのでございます。  いかに地方の監督部がやりました行為にしろ、それを統括しております私どもといたしまして、こういったことについて、まことに遺憾に思っておりまして、私の責任も十分感じております。  ただいまのお答えでございますが、四十二年に認可されました数字でございまして、電気亜鉛につきましては、一万一千六百トン、これが限界でございます。それから、次に亜鉛華につきましては、千五百七十五トンというふうなことに、現在操業をダウンさしておりまして、現にそういう状態になっておる次第でございます。
  92. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 地域の住民に聞きますと、東邦亜鉛が一万四千五百トンに施設を拡充し、現に操業を始めた四十三年四月以降、非常に質の悪い水がずいぶんたんぼに流れ込んだということを、口をそろえて言っておるわけであります。したがって、通産省として、前橋地検に書類送検するという態度をおきめになったことはけっこうだと思うのでありますが、同時にこの一万四千五百トンという無許可の操業については、当然さしてはならぬ。許可前の状態に、すなわち一万一千六百トンの状態にきちっとやっていただかなければならぬ。そのとおりやっておられるそうでありますから、これは了承をいたします。具体的にはいつ書類送検いたしますか。
  93. 橋本徳男

    橋本政府委員 送検となりますと、これは手続的にもまた書類的にも非常に膨大な手続が要る関係で、現在監督部でいわゆる捜査をやっておりまして、その捜査が済み次第送検するというふうなことを進めております。しかし、これは住民その他からもいろいろそういったような問題もございますので、そういった点を明らかにいたします意味において、できるだけ早急に一切の手続を整えるようにということで指導しておりますので、何月何日というふうなことはちょっといまの段階ではわかりませんが、いずれにいたしましても、もうすでに地検との口頭の連絡その他はやっておる状況でございますし、書類が整い次第送検をさすということで、早急にいたしたいと思っております。
  94. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そこで問題は、このような事実が明らかになりましたときに、当該の工場長が次のようなことを言っておるのであります。一万四千五百トンの生産ができると判断して増設申請をしなかった、この間何度も東京鉱山保安監督部の検査を受けている、そして今度は一万七千トンに申請をしたのだ、こう言っておるわけです。そうしますと、一万七千トンの申請を昨年の十一月出して、本年の一月二十五日認可になっておるわけですね。その間、昭和四十二年の十月からこの昭和四十四年の一月二十五日までに至る間、当然東京鉱山保安監督部としては、何回も当該の工場を検査しておるはずですね。とすれば、一万四千五百トンという、いわば認可しない操業を現にやっておる。私どもが行ったって堂々とこういうパンフレットをよこすのですから、そういう事実はつかんでおったと思うのですね。そういうものをつかんでおりながら、この一月二十五日付をもって一万七千トンを認可したということは、私どもは非常に奇異に感ずるわけです。いままで無許可だったものを、一万七千トンを許可すれば、一挙に合法化されるというかっこうになるじゃないですか。私はこの点の責任は重大だと思うのですね。この点は、東京鉱山保安監督部長をいわば指揮監督する立場である局長さんなり次官としては、一体どうお考えですか。
  95. 橋本徳男

    橋本政府委員 その点につきましては、先生おっしゃいますとおり、確かにこの工場につきましては、排水、排煙につきましてカドミウムの問題もございますので、監督官は何回も現場検証に行っております。  そこで、実際問題として、これをつかみまして、それで問題は、その違法行為でございますが、こうい違法行為につきまして、問題は形式的な違法行為であるか、実質的な違法行為であるかといったような点につきましては、十分これは考えなくちゃならない、こういった点につきましては、問題は東京の監督部から出てまいりますいわゆる弁明書の中において明らかにされると思うのでございますが、現段階で、われわれの調査したところによりますれば、要するに形式的な違反であることは十分承知はしておる。ただ問題は出てきました申請書、こういったものを、机上ではございますが、科学的にいろいろ監督部で検査、検討していきますれば、これはいわゆる生産の増強のほかに、いわゆる鉱害予防施設が非常に増強されるというふうな形になっておりまして、それでやることによって、むしろ従前以上に改善されるというふうな科学的な検討が得られたというふうなために、形式的な問題というものを、その段階においては確かに追及をやってはおらないで、そのままの形において認可をしたというふうなことを現段階では調査し、わかっておるわけでございます。  それで、その問題、いわゆる過去の違法行為の問題ではございますが、過去における違法行為というものは、今度の認可によってその違法行為が消えるというふうにわれわれは認識しておりません。過去の違法行為は違法行為であり、それから認可行為は認可行為であるというふうにして、これは二つ分けて措置ができるというふうにも考えておりますし、さらにまた、要するに落成検査を受けないまま操業しておったということは、これは認可との関係もなく、違法性がはっきりいたしますので、そういった点につきましては、われわれも十分調査をする目的があるというふうに考えております。  それから、念のためにちょっとふえんさせていただきたいのでございますが、こういった問題につきましては、われわれのほうも三月半ばこれを承知いたしまして、その後こういった問題については十分検討し、われわれのところでは、そういった措置をとる必要があるのではないかというふうなことで、鉱山監督部だけからの意見ではこれは間違えてはいけないと思いまして、私、直接こういった申請書が出るまでに、会社の副社長を呼びまして、それで書類でもって、要するになぜそういうことをやり、どういう認識の上に立ってやったかというふうなことを書類でいただきたいということを私やりました。その背景としましては、とるべき措置はとらなければならないという考え方のもとに、実は書類をとっております。これの書類の出てきたのは、六月二十日ごろでございます。したがいまして、相当前に、われわれのほうとしては、問題を明らかにした上で、われわれから監督部に対しまして、しかるべき措置をとるような手順は進めておったことだけは御承知いただきたい、こう思っております。
  96. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 大臣がおられれば一番いいと思うのですが、大臣が残念ながらお見えでありませんから、次官にお伺いしたいと思うのですが、先ほど次官は、断固書類送検をいたしまして、きちっとけじめをつけるという御決意をお述べになりました。ところが、東京鉱山保安監督部長のほうは、昭和四十二年十月に一万一千六百トンを認可した、その後、昭和四十四年一月二十五日まで相当の期間があるわけですね。その期間に当然保安監督部の職員が現地にも行って検査をいたしておるわけでありますから、一万四千五百トンという無許可の施設変更をやっておるということは、当然つかんでおったと思うのです。それを承知していながら、何らの措置もとらなかった。しかも、四十四年の一月二十五日には、一万七千トンの認可までしたということは、私をして言わしめれば、あるいは業者と監督部との間に一種のなれ合い的なことがあったのではないかということを推測せざるを得ないと思うのです。もしなければけっこうでありますが、しかしまあ現実に、いま言ったような不当な手続がなされておるわけです。この点については、当然任命権者として、次官として——東京鉱山保安監督部長、ひいては、こういうことで各所の監督部長が、違法行為のままでこの施設変更を見のがしておるということも、ほかにもあるかもしれません。したがって、法律的な許可事項は、確かに鉱山保安監督部長にありますけれども、やはり本省として、厳重な指導といいますか、監督といいますかというものをやるべきだと思うのです。鉱山保安監督部長責任、並びに今後全般的な指導監督についての御決意を承りたいと思うのです。
  97. 藤尾正行

    藤尾政府委員 まことに仰せのとおりでございます。この間も、まことに申しわけのないことでで、輸入関税の件につきまして不心得なことをやった者が出ておるわけであります。こういったものについて、大臣も非常に心配をせられまして、かってなかったような措置を、次官に至りまするまでとらせております。したがいまして、今回の問題で、私は、鉱山保安監督部といいまするものは、保安の監督ということが主たる任務であって、保安の監督にいま一生懸命になって、その違法行為というようなものを、あるいは見落としたとかなんとかというようなことがあるかもしれませんけれども、それにいたしましても、そういったことが現に起こっておるということにつきましての責任といいまするものは、これは私は免れることはできないと思います。したがいまして、会社自体に対しまする責任のとらせ方といいまするものは、これはこれといたしまして厳にいたしますけれども、同時に部内におきましてそのような手違いを起こしたということになりましたならば、これが明確になりますれば、当然その責任といいまするものはただしていかなければならぬ。これは綱紀の問題でございますから、ただ単に東邦亜鉛の問題についてこういうことが起こったということでなくて、全般の問題といたしまして、綱紀の粛正という面から処理をいたしたい、これは私が責任をもってやらしていただきます。
  98. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 少なくとも八カ月ないし九カ月違法行為を見のがしておったという責任は、私は東京鉱山保安監督部とすれば免れることができないと思うのです。いまの次官のお答えでけっこうでありますが、どうかひとつ会社に対する措置をきびしくやっていただくと同時に、部内に対する監督というものもひとつ厳正にやっていただくことを強く要請をいたしたいと思います。  最後に、このようなことをしましたばかりでなく、いま群馬県では、東邦亜鉛が農地転用の申請を次々にいたしまして、その農地転用が許可されたにもかかわらず、これを目的外に使用しておるという事例がたくさん明るみに出まして、そして県としては、農地転用違反について厳重に調査をするということもいたすようでございます。したがいまして、東邦亜鉛の安中工場は、鉱山保安法を無視するばかりではなくて、農地法に対してすら違法行為が次々に問題になっておるのであります。こういったことは、私は、たいへん遺憾に思います。  そこで今度出ました審査請求でありますが、そういった、過去において不手ぎわを数々起こしておるという会社、その性格というものはやはり十分認識をされた上で、この審査請求につきましては、法に基づいて行なわれますところの書類審査のみではなしに、口頭弁論を十分にやる、それからさらに、現地の工場に対して立ち入り検査もやる。その場合には被害者住民の代表も当然加える。またその代理人である弁護士の人たちも、当然これに加える。そうして、できる限り科学的な総合判断をやっていただく中で、この審査請求につきましては、できる限りすみやかに、しかも厳正な審査をひとつお願いいたしたい、こう思うのでありますが、この審査に対する心がまえを承っておきたいと思います。
  99. 橋本徳男

    橋本政府委員 受理いたしましたこの審査請求でございますが、これは先生御承知のように、一種の裁判といいますか、そういう形におけるものでございます。したがいまして、私は、この行政不服審査法の定める趣旨にのっとりまして、われわれとしましては、かりにそれが内部の一部局の行為であったにせよ、この審査法の趣旨に沿って、全く中立的な立場におきまして事を運んでいきたいというふうに考えております。それから同時に、いろいろ口頭弁論その他の点につきましても、先般もこの審査請求書提出者の方にもお約束いたしましたように、増設されました施設自体を、机上のいろいろな計画だけではなしに、それが実際問題として、はたしていかなる、周辺に拡散効果あるいは公害に及ぼす影響があるかといったようなことにつきましては、いわゆるこの被害者側といいますか、そういった方の推薦する科学者、これもひとつこの検査に立ち会ってもらうなり、あるいは特別の検査をしてもらうなりということは、十分この点も考慮し、同時に被害者の方たちのいろいろな意見その他も十分聴取をいたしまして、公平な形において、できるだけすみやかにやっていきたい。しかもその間は、この不服審査法にございますように、審査法の請求の効果が発生しないための行政措置をやれというのもございますが、これは審査法によりましても、ほかの法律でその効果が発生する場合には、この不服審査法によることができないという形になっておりますので、現在は、鉱山保安法第九条の規定によりまして、現にとめておりますし、またそういった問題を解決するためには、われわれのほうとしてはとめるべきであるという考え方に立っております。さらに、そういうことはもうないとは思いますが、万一それでもなお工場のほうで操業を開始するというふうな事態が起きるといたしますれば、さらに保安法の二十四条の二の規定によりまして、鉱業の停止命令までいくというふうなことも考えており、いつでもそういった鉱業の停止命令が出し得るように、この規定の背景にはいわゆる聴聞の規定がございまして、聴聞手続をとらなければならないということにもなっておりますが、聴聞には若干の時間も要しますので、事前に聴聞をやっておくという手続も現在進めておるような次第でございまして、そういうふうな形において、住民の不安のないような形におきまして、本問題の処理に当たっていきたいというつもりでございます。
  100. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 厚生省が排煙の関係の調査もやっていますね。いつごろその点が明らかになりますか。  それから問題は、監督部が出します弁明書がおくれますと、審査がおくれるということになります。監督部の弁明書につきましてはおおむねいつごろ出る見込みであるか、事務的なことを伺っておきます。
  101. 橋本徳男

    橋本政府委員 監督部の弁明書につきましては、従来こういった不服審査法の過去の例から見てまいりますれば、処分官庁が出す弁明書はいままで大体一カ月ぐらいかかっております。ところが、事が事だけに、一カ月を要しないで、できるだけ早急にというふうなことでやっていますが、一応二十日前後ぐらいを目途にとにかく出さすようなことで、いま指導しておる次第であります。
  102. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 今月の二十日ですか。
  103. 橋本徳男

    橋本政府委員 はい。
  104. 橋本道夫

    橋本説明員 御質問のありました排煙調査でございますが、汚染調査と気象調査と両方五月末にいたしておりまして、もう一つ気象の調査をいたしております。それぞれ調査のなまのデータがあらわれるのは大体三カ月かかって出てまいります。全部を合わせて結論を出すということが基本であると思いますので、おそらくまとまるには年度末までかかるのではないか、そういうぐあいに考えております。
  105. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 最後に次官にお願いいたしたいと思います。  ただいま局長の御答弁では、鉱山保安法の第二十四条の二に基づくところの停止命令をいたします場合の公聴会の準備等もいたしておるそうであります。そういう意味で、厳正な立場でこの問題に対処をいただくことについて、たいへん御努力をいただいておる点は多といたしたいと思いますが、とにかくこういった違法続きのことをやってまいりました工場に対して、住民の側からこの審査請求が出た、私はいわば画期的なことだと思います。ただ問題は、結局通産省の下部機構であります東京鉱山保安監督部が許可いたしました行政行為に対して、通産省みずからが審査をするということでございまして、いわば子供の審判を親がする、こういうような形もあるわけであります。はたから見ますと、何かそこに甘い審査が行なわれるのじゃないかというような感じを持つのが人の常だと思います。しかし先ほどの局長の御答弁は、そういうことはない、一切中立的な立場であるという御答弁でありますが、どうかひとつ次官といたしましても、大臣とよく御相談をいただきまして、文字どおり厳正中立な立場でこの審判については行なうという、ひとつ御決意をいただきたいと思うわけでございます。伺いまして質問を終わります。
  106. 藤尾正行

    藤尾政府委員 法律は法律でございますから、東京鉱山保安監督部がやりましたことにつきまして、通産省がこれに審判を下す、これはやむを得ないことだと思います。しかしながら、御承知のとおりでございますけれども、いささかなりともこれに私情を交えるというようなことは許さるべきではございません。衆人環視のもとでございますから、そういったことでなくても、私どもは公正を期して、どなたにも納得のいただける結論を出したい、かように考えております。
  107. 赤路友藏

    赤路委員長 ちょっと私のほうから次官にお願いします。  いままでの御答弁をいろいろ聞いておりますと、次官の御答弁まことにごもっともなことです。ただ一つ心配なことがありますので……。過去の違反行為は違反行為として厳重に処分をする、こういうことなんです。いいことなんですが、ただし、これは認めるということになりそうなんですね。だから、無許可で施設したものを撤去せしめるということにはならぬ、認めるということであります。一番心配なのは、やりさえすればあとで何とかなるというような空気を全般的につくってはならぬ、だから厳重に処断するところは処断する、こういうふうにひとつお願いをしたいと思います。
  108. 藤尾正行

    藤尾政府委員 ごもっとも千万であります。
  109. 赤路友藏

    赤路委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時二十六分散会