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1969-04-18 第61回国会 衆議院 産業公害対策特別委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年四月十八日(金曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 赤路 友藏君    理事 天野 公義君 理事 古川 丈吉君    理事 河上 民雄君 理事 島本 虎三君    理事 本島百合子君       伊藤宗一郎君    久保田円次君       塩川正十郎君    葉梨 信行君       中井徳次郎君    米田 東吾君       折小野良一君    岡本 富夫君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 斎藤  昇君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      床次 徳二君  出席政府委員         内閣総理大臣官         房審議室長   橋口  收君         科学技術庁原子         力局長     梅澤 邦臣君         厚生省環境衛生         局公害部長   武藤琦一郎君         通商産業省企業         局立地公害部長 矢島 嗣郎君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  公害に係る健康被害救済に関する特別措置法  案(内閣提出第六三号)  公害紛争処理法案内閣提出第六八号)  公害に係る被害救済に関する特別措置法案  (角屋堅次郎君外十二名提出衆法第一〇号)  公害紛争処理法案角屋堅次郎君外十二名提出、  衆法第二〇号)  公害に係る健康上の被害救済に関する法律案  (小平芳平君外一名提出参法第一号)(予)  公害に係る紛争等処理に関する法律案小平  芳平君外一名提出参法第五号)(予)  公害委員会及び都道府県公害審査会法案小平  芳平君外一名提出参法第六号)(予)  公共用水域水質保全に関する法律の一部を  改正する法律案内閣提出第九四号)      ――――◇―――――
  2. 赤路友藏

    赤路委員長 これより会議を開きます。  内閣提出公害に係る健康被害救済に関する特別措置法案及び公害紛争処理法案角屋堅次郎君外十二名提出公害に係る被害救済に関する特別措置法案及び公害紛争処理法案予備審査のため本委員会に付託されました小平芳平君外一名提出公害に係る健康上の被害救済に関する法律案公害に係る紛争等処理に関する法律案及び公害委員会及び都道府県公害審査会法案並びに内閣提出公共用水域水質保全に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。中井徳次郎君。
  3. 中井徳次郎

    中井委員 公害に係る健康被害救済に関する特別措置法案、これにつきまして、いろいろ問題がたくさんありますけれども、本日はそのうちの一、二の点につきまして、厚生大臣以下関係皆さんにお尋ねをしたいと思います。  まず第一は地域指定でありますが、「その影響による疾病が多発している地域」を指定し、こういうことになっておりますが、これは現在はどれくらいを予想されておるのであるか。指定をいたしますのは厚生大臣だと思いますが、その辺のところをちょっと御説明願いたい。
  4. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ただいまのところでは、大気汚染関係については四日市、それから水質汚濁につきましては水俣、それから神通川、阿賀野川の地帯を考えております。しかし、これに類似のものが出てまいりましたら、逐次指定をいたしてまいりたいと考えております。ことに大気汚染については、京浜、阪神等準備の整い次第指定をしなければならない実情ではなかろうか、かように考えております。
  5. 中井徳次郎

    中井委員 そうしますと、いま考えているのは三カ所ぐらいですか。
  6. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 さしあたっては四カ所です。
  7. 中井徳次郎

    中井委員 指定するのは厚生大臣ですか。
  8. 武藤き一郎

    武藤(琦)政府委員 政令指定する予定でございます。
  9. 中井徳次郎

    中井委員 政令内容はどういうものですか。政令指定するというのはどういうことですか。
  10. 武藤き一郎

    武藤(琦)政府委員 厚生省政令の案を考えまして、閣議で政令をきめていただく、こういうことになろうと思います。
  11. 中井徳次郎

    中井委員 まだきまっていませんか。
  12. 武藤き一郎

    武藤(琦)政府委員 法律が通りまして、その政令準備をします。
  13. 中井徳次郎

    中井委員 それは大体いつごろのことですか。
  14. 武藤き一郎

    武藤(琦)政府委員 大体十月をこの法律施行予定にしておりますから、そのときまでにきめたいと思います。
  15. 中井徳次郎

    中井委員 先ほどから私伺うと、大体四カ所ということでありますが、私はどうもまだまだずいぶんあるのではないかという感じがしてならないのです。たまたま新聞などに報じられておりますように、あるいはまた紛争が起こっておりますから、それを受けてやるということでありましょうが、地域的には、こういう法律が出まするというと、それならおれのほうもそうだったというふうなところが、実際はずいぶんあるのじゃないかというふうな感じを私は持っておるわけであります。そういう意味で、地域は四カ所などという消極的なことではなくて、むしろこういう法律が出ましたに際しましては、もう少し積極的な、たとえば四日市のごときは市民がやかましく言い出しました。あるいは水俣病というふうなああいうはっきりとあらわれたもの、そうでない地域で、ほんとうは相当あるのではないかというふうに私は考えます。この辺の地域指定について、もっと積極的に厚生省としては考えていただくということはたいへん必要ではないかと思いまするので、その辺のところ、私は積極的にやれという意見でありますが、大臣考え方をこの際聞いておきたい、かように思います。
  16. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 決して受け身にだけ立つ考えはございません。できるだけ積極的にやってまいりたい。それについては、地域をどう見るかということがまず先決になります。そこでその地域内においての、大気汚染であればいわゆる公害ぜんそくといいますか、そういうものの発生の多い地域をどう限るかというので、ただいまも至急に調査をするように指示をいたしております。したがって、この法律施行は十月一日でございますから、それまでに間に合うところが出てまいりましたら、ただいま申し上げました地域よりもふえるかもわかりません。
  17. 中井徳次郎

    中井委員 小さいことですが、四日市地区の近所に楠町という町がありますが、その町なども当然入る地域指定されると思うのですが、ちょっと念のために伺っておきます。
  18. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 十月までにはまだ若干時日がございますので、十分実情検討いたしまして、きめたいと思います。
  19. 中井徳次郎

    中井委員 それではこの地域に関しましてはその程度にいたしておきますが、次に、救済措置として、医療費のほか医療手当及び介護手当支給する。この医療手当及び介護手当ですが、まあ病院に入っておるというような人についてはわかりまするが、たとえば働かねばなりませんから毎日病院に通う、そして通っている間だけは生活費がそれだけ削られる、実質的に削られるわけになる、収入がないわけですから。そういう通いの患者というふうな人にとりまして、どういう措置をとられるのであるか。この点は政府としても少し考えておるということを私聞いておるのですが、これの具体策をちょっと伺ってみたいと思います。
  20. 武藤き一郎

    武藤(琦)政府委員 医療手当支給内容そのもの政令できめるようになっておりますので、最終的には政令できまりますが、いまのところ、入院患者につきましては四千円、通院患者につきましては二千円、通院患者につきましては水の関係患者に対するものを考えておりまして、大気患者につきましては、さらに検討を加えまして、入院患者と同様な状態にある方には、通院しておっても出したい、かように考えております。
  21. 中井徳次郎

    中井委員 具体的にどれぐらいのものを出すつもりでありますか。
  22. 武藤き一郎

    武藤(琦)政府委員 入院患者は四千円でございまして、通院患者は二千円でございます。
  23. 中井徳次郎

    中井委員 それは、いまのお話のやつは医療手当ですか。
  24. 武藤き一郎

    武藤(琦)政府委員 医療手当でございます。
  25. 中井徳次郎

    中井委員 そういたしますと、実質的には、交通費といいますかそういうものをここへ入れてそういう判断をしたのかどうかということであります。この点もう少し詳しく説明してください。
  26. 武藤き一郎

    武藤(琦)政府委員 入院をしまたは通院をなさっている方には、いろいろ精神的な苦痛、あるいはそのほか入院あるいは通院に伴いましていろいろ諸雑費が要るわけでございますが、そういうものを含めて、最小限の額を予算で計上したわけでございます。
  27. 中井徳次郎

    中井委員 それで皆さん説明を読んでみますると、私は特にそれに関連をいたしまして、どうも理解しにくいところがあるわけであります。それはそういう手当を出すというと、たとえば生活保護を受けているような人は、その生活保護のときの計算のしかたでは、これを収入とみなしてそれだけ生活保護を受けておる金額から減らしていくのだ、こういうことがいわれておるわけですが、これは一体どういうことでございましょうか。
  28. 武藤き一郎

    武藤(琦)政府委員 この法律生活保護との関係でございますが、この点につきましては、この法律の運用につきまして、現在厚生省部内検討中でございます。
  29. 中井徳次郎

    中井委員 そうすると、ぼくが聞いたようなことはないわけですね。
  30. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ただいま検討中と政府委員が申しましたのは、これはいわゆる収入認定する場合のいろいろな基準をいろいろ検討しておるのでありますが、この関係のものにつきましては、これは収入認定はしない。これだけよけい費用がかかるということでありますから、収入認定をしない方針でございます。
  31. 中井徳次郎

    中井委員 いまの大臣説明はそれで最終的なものですね。その辺のところ、あなたと少し違うが、どうだね。
  32. 武藤き一郎

    武藤(琦)政府委員 こまかく御説明いたしますと、介護手当の問題は、これは生活保護との関係で問題は起こっておりません。医療手当の問題は、ただいま大臣が答えたとおり、私どもは御趣旨に従って医療措置を行なっていきたい、かように考えております。
  33. 中井徳次郎

    中井委員 それはまあよろしい。きょうも朝、新聞を見ると、児童手当には収入と見ないと、新聞だと出ておりましたから、それよりもこれはうんと、何といいますか、理由のあることであります。そういうふうにはっきりといたしてないのならば、その点は了承をいたします。  ただもう一つ、本人配偶者等所得税の額が一定額以上の場合には支給制限を行なうという。根本的に公害病というのは本人責任じゃないのだ、全然。したがって、いま生活保護を受けているような人についてそれを差し引くということは正しくないのと同じように、所得税を少し納めておるからこれは金をやらぬというこのものの考え方は、私はどうもよくわからない。これは貧富の区別なく、一定限度医療手当及び介護手当は当然支給されるべきである、これは病人の責任ではないのですから。この辺のところどうでしょうか。私はどうしてもわからない。これは社会党であろうが、共産党であろうが、自民党であろうが、私は同じだと思うのですが、この辺のところ、金持ちはそれは要らぬわいというものの考え方、どうも公害というものに対する認識が足りないからこういうことが出てくるのじゃないか。公害発生した、そこに住んでおるのが悪いんだというのでは、これはどうも合点がいかない。どうですか。公害とは何ぞやというふうなところ、こういう制度を設けた考え方として、両方の側ですが、納得できません。これはどうですか。
  34. 武藤き一郎

    武藤(琦)政府委員 公害そのものが、与えておる被害者というものがあるではないかという御意見だろうと思います。この点につきましては、公害に係る健康被害救済に関する特別措置法は、やはり患者になられた方につきましていろいろの医療なり、あるいは医療関連する問題でお困りになっている方に対して手を差し伸べるという制度考えたわけでございます。そういう意味では、一応社会保障的な給付制度のたてまえをとったので、他の制度との関連上も考えまして、一応支給制限の規定を設けた次第でございます。
  35. 中井徳次郎

    中井委員 社会保障というのは社会保障かもしれないが、ただ加害者が一企業とか一会社とかというふうなものに限らないという意味では、社会保障というよりもむしろ損害賠償的な意味が私は大きいんじゃないかというふうに考えていきたいと思うのであります。そういう面からいいますると、いまのあなたの御説明では私は納得できないのであります。これはどれくらいの所得税――具体的に説明してください。本人配偶者等所得税の額が一定額以上というのは、どの程度ですか。
  36. 武藤き一郎

    武藤(琦)政府委員 現在考えておりますのは、政令で定める額は一万七千二百円、原子爆弾によりまする被害者救済に関する医療手当給付と大体同じ程度考えております。
  37. 中井徳次郎

    中井委員 原子爆弾とちょっと違いますね。これは戦争の結果だし、国全体の戦争行為といいますか…。公害のほうは、不特定多数ではあるが、原因をつくったものが、別にそれによって被害を受けたものと何も関係ないのですから。これはむしろそういう人であるならば、何といいますか、行政の中で、認定を受けないようにしてもらうとか、いろんなことはあるかもしれません、予算関係その他ありまして。しかし制度としてはこれはもうおくべきで、こんなことをするべきではないというふうに思うわけです。一万何千円の所得税といいますると、大体収入はどれくらいの人たちですか。
  38. 武藤き一郎

    武藤(琦)政府委員 九十三万円程度ということでございます。
  39. 中井徳次郎

    中井委員 それは標準家族でございましょうが、たくさんの家族の人、いろいろ何かありまして、一年百万円以内の人、百万円を越えたらもう公害病認定を受けないなんてあこぎなことがありますか。これはこれからおきめになる。最終的な決定はまだないの。
  40. 武藤き一郎

    武藤(琦)政府委員 政令でございますので、最終的にはこれからきめるわけでございますが、医療費につきましては、いま申し上げました所得制限的な考え方はとっておりませんで、医療費の負担できる方についてだけ適用を除外しようということであります。  それから先ほど申しました一万七千二百円の問題は、大体九十三万円程度と申し上げましたが、これはいろいろな所得控除を差し引いたあとの九十三万円でございます。
  41. 中井徳次郎

    中井委員 それは知っておりますが、それにしましても、九十三万円ばかりでは何ともならないし、あなたは医療費と言いますけれども、この医療費も、国民健康保険健康保険――国民健康保険は三割分ですが、普通の健康保険では一〇〇%健康保険のほうで負担するというので、こんなことは書いてあるが、ほとんど金額は問題にならないようなことであります。九十三万円ばかりの者以上はやれないなんという、私は少なくとも五百万円くらいで切るならそれはわかりますが、今日の実態の中で一万何千円、それで原子病のときと同じだというと、そっちのほうも低過ぎるわけだ、ぼくに言わせると。これはこの際大いに改むべきだと思いますが、大臣、この辺のところ、もしきまってないならもう少しこの線を上げてもらわないことには何のために置くか。実際認定をしてやってくる、だんだん調べてくると数がだんだん減ってしまって、生活援護を受けておるか、その辺で何か小売りか何かして、ほんとうに少々ばかりの収入を持っておる店の人ということに限定されはしないかと私は思うのです。私はさっき金持ちという表現をしましたが、百万円ばかりでは金持ちにも何にも当たりはしません。これは非常に低過ぎるという感じを持つわけであります。しかもあなたのおっしゃるような医療費というものは、たいてい国民健康保険に入っておりますし、健康保険はほとんど全部ということになると、ものものしい法律はできたけれども、現実に恩恵を受けるという人は非常に数が少ないというふうに思うわけですが、その辺のところ、ひとつ大臣の見解を伺っておきたい。
  42. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 よく検討いたしまして、現に四日市あるいは水俣その他でも、市当局が中心になって、あるいは国で出しております医療研究費等を入れて、そしてある程度給付をいたしております。そういう人たちは除外されないように考えていきたい、かように考えております。いまの点も十分検討いたします。
  43. 中井徳次郎

    中井委員 市なども大切な市費でありますから…。実はこれは市単独でやれといって私は慫慂いたしました一人であります。四日市の場合は前の市長の平田君などにそれを言いまして、国がこんなような形で、君は公害公害とやかましく言っておるが、市は幾ら金を出しておるかと言ったら、何も出しておらぬ、そんなことじゃだめじゃないか、まず自分のところで始めて、それから国や県になにしなければだめだというので、ようやく千二百万円か二千万円出すようになった。その程度の数字です。でございまするから、ここのところ、今度は国が肩がわりというか、そういう形でやるんだというとき、その場合に、減ったりなんかするようなことではだめだ。だから、やはりさすがは国だ、国がいよいよ乗り出したかという形が出てこなくちゃいかぬ。いま大臣の御答弁のように、その市で受けておる人たちは、減るんじゃなくて、もっとうんとふやしていくぐらいのものでないことには、私は、この対策には相ならぬ。同じことじゃないか。まあ、助かったのは四日市の市役所だけだということになるんでは、私は意味がないというふうに思うのでございます。この辺のところをよくひとつ政府としても、積極的な方向でいくように、この点は、私は強く要望します。そうなると私は思うのですが、どうですか。最後にもう一度聞いておきたい。
  44. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 現在、たとえば四日市等で一応認定患者になっている人は、できるだけふやしこそすれ、それを減らすような考えは持っておりませんので、そういうように措置をしてまいりたいと思います。
  45. 中井徳次郎

    中井委員 大臣が大体二十分で行かれるようでございますから、あと一、二点伺っておきます。  この給付に要する費用につきましてであります。これの事務手続といいまするか、そういうものを公害防止事業団にやらすという発想でありますが、現実公害防止事業団はどういう事務をやるのですか。たとえば、公害防止事業団窓口をつくるのかどうか。それとも、そういう窓口市町村でやる、あるいは県でやるのかどうか。その辺のところをちょっと、事務手続内容説明してもらいたい。
  46. 武藤き一郎

    武藤(琦)政府委員 事業団役割りでございますが、これは国からの費用業界からの費用を受け入れまして、それから、それを地方公共団体に流す、こういう事務だけでございます。したがいまして、事務手続としましては、県または政令市市町村、たとえば、先ほどからのお話四日市の場合は、四日市市長さんが認定をされまして、本年度は何ぼ金が要ったかというツケを公害防止事業団に回しますと、事業団からそれの費用が、この法律に定める割合に従いまして、国と業界からの金が県の金と合わせて市のほうにおりていく、こういう仕組みになっております。
  47. 中井徳次郎

    中井委員 武藤君、いまちょっと、あなた、何と言われたか。これは県がやるんじゃないですか。
  48. 武藤き一郎

    武藤(琦)政府委員 第三条一項で、県知事認定をするという仕組みになっております。それで、その二項をごらんになりますと、知事の権限を市長がやる仕組み、そういう制度もとっております。したがいまして、具体的には、政令で定める市につきましては、市長が行なうことになります。
  49. 中井徳次郎

    中井委員 この政令で定める市というのは、名古屋とか大阪とかいう、ああいう市じゃないんですか。たとえば府県並みの六大都市、そうじゃないんですか。
  50. 武藤き一郎

    武藤(琦)政府委員 この政令で定める市の問題につきましては、現在のところ一定規模の――この法律で、政令市は別にきめる、こういうことを考えております。
  51. 中井徳次郎

    中井委員 ちょっと大臣、私も誤解しておって、これはいわゆる六大都市あるいは今度北九州市、そういうところだけだと思いましたが、四日市なんかもその政令で定められる。そうすると、政令で定める市という概念は、一般的にあるんですよ、武藤君。だから、これはちょっとその例外だから、この表現、これでいいんですか。法制的にこれでいいんですか。政令市政令市ということを言うわけだが、これはどうなんです、法制局あたりとの関係は。
  52. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 その点は、法制局でも十分検討したと思います。一般自治法等でいう政令市というのではなくて、この法律で定める市、したがって、実態に応じてきめていこう、こういう考え方でございます。したがいまして、三重県の場合は、県にするか四日市にするか、どちらがいいか。いままでの例からいえば、おそらく四日市がいいということを知事のほうからも言ってくるだろう、かように思っております。それは時宜に適したようにきめたい、かように考えております。
  53. 中井徳次郎

    中井委員 これはもう少しその辺のところ明らかにしないと、地方自治関係の者はみんなこれを読みまして、ああ、政令市は大きいし、経済力もあるからというので、政令市の場合には六分の一ですか、ただ、人口十万や二十万のところでは、とってもそんなものはないから、四日市なんかこれは入らないと、私は、いま説明を受けるまで聞いておりましたが、これはそうですが。その辺のところを十分明らかにしておきませんことには、将来読み違えるおそれが非常にあると私は判断をいたします。  そこで、そういたしますると、窓口はその政令市ということになりますかな。
  54. 武藤き一郎

    武藤(琦)政府委員 さようでございます。
  55. 中井徳次郎

    中井委員 それから、この費用の分担ですが、説明には、産業界というふうに表現をしておりますが、これは半額を持つ、こういうことですが、これについて、たいへんへ理屈のような質問であるが、まあまあ半分というふうなものの考え方でいいのかどうかですね。この点は、私、まあ初めは、始めるんだからまあまあということだと思いまするけれども、はたしてこれでいいのかどうか。将来こういうものでいいのかどうか。金額はいまのところたいした金額でないと思いますから、いずれにいたしましてもまあまあということでございましょうけれども、将来にわたりまして、国、県、市、産業界というふうなことを考えてみますると、やはりもう少し産業界負担部分をふやすべきでないのか。三分の二とかなんとかいう形のものが行なわれるべきでないかと私は感じるのですが、この辺のところは、事務当局で、たとえばうしろにおられる通産省の関係等との関係でこうなったのか、その辺のところの根拠をちょっと聞いておきたいと思います。
  56. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 これはまず私のほうからお答えするほうが適当かと思いますので…。  確かにおっしゃるように、六割産業界に持たせという議論もおありだし、いろいろ議論の分かれるところだと思うのでございますが、この法律は、前にも御説明いたしておりますように、大体社会保障的な行政措置としてやろう、いわゆる原因者損害賠償肩がわりをするあるいは前払いするという形でないという考え方出発をしておりますので、まあ半々ぐらいがいいところであろうかというところに落ちついたわけでございます。
  57. 中井徳次郎

    中井委員 この法律が成立いたしましたあと、一応出発点はこうなったから、今後もずっとそれでいくのだという、もしお考えであるならば、私としては非常に不満であります。これはやはり産業界がもっと率を高く持つべきであるというふうなことを考えます。  それからそれにつきまして、いわゆる産業界というものは、申し出によりというふうにこれは書いてあります。指定を受けたものというふうなこと、申し出による指定、こうなっておりまするが、この辺のところは、申し出がなかった場合にはどうなるのか。その辺のところ、法案の作成に際しましてはおそらく議論があったと思いまするが、どうでございますか。しかもそれは、国に対してあるいは市に対して直接出すのではなくて、公害防止事業団に出すわけですが、あれは確かに公害発生源工場であるけれども、その会社申し出しないというときにはどういう行政指導をするのか、この辺のところ非常にデリケートなものがあると思うのですが、説明を願いたい。
  58. 武藤き一郎

    武藤(琦)政府委員 産業界の拠出につきましては、御指摘のように十六条で法人を指定するようになっておりまして、指定される法人と事業団が契約を結んで、その担保が行なわれるわけでございますが、現在具体的に、この十六条の被害者救済のための協力財団をいま準備中でございます。その点は経団連のほうと十分打ち合わせが済んでおりますので、先生お考えのような御疑念は、いまのところないような状態でございます。
  59. 中井徳次郎

    中井委員 そうしますと何ですか、厚生大臣及び通商産業大臣指定をするというのは、東京で一本にしぼっちゃって、産業界のまあ代表的組織であるところの経団連というふうなものにまかしちゃう、こういうことですか。その辺のところですね。そうしますと、個々の業界といいまするか工場といいまするか、そういうものには直接タッチをしない、こういうことですか。そんなことでいいのかどうか。
  60. 武藤き一郎

    武藤(琦)政府委員 法律のたてまえからいきますと、民法法人であれば、申し出さえあればどれでも指定できるような仕組みになっておりますが、実際上は、現在経団連のほうでこの法律に協力をする特別の法人をいま現在準備中でございまして、それが一括して公害防止事業団と契約を結ぶという話が現在進行しております。
  61. 中井徳次郎

    中井委員 そういうことになると、わかりました。その点はわかったが、経費負担が半分になるという話は、これを六割にしよう七割にしようというとたいへんなことになりはせぬか。非常に間接的になりまするから、抽象論議が横行して、国はどうしても半分持てとかなんとかいうことになりはせぬかと私は思うのです。その辺のところ、現実に本年度としてこれをやるということになりますと、まあ十月からということになれば、半分ですか、どれくらいの金額を経団連がいまつくっておる団体が出すのでありますか、負担するのでありますか、その辺。
  62. 武藤き一郎

    武藤(琦)政府委員 十月からの分で、財界の分が四千万の予定でございます。
  63. 中井徳次郎

    中井委員 わずか四千万ばかりで、公害責任が、日本全国で、はいさようならというふうなことでは――これは八千万みんな持ってもらったらどうですか。何ですか四千万というのは、何か吹き出しちゃう。まあ十億や二十億当然出すべきだと思うのだ。これだけ世間さまで騒いで、日本の大きな去年からことしにかけての問題になっておるのに、経済界が四千万出してはいさようならというのでは、とても問題にならぬ数字ですがね。どうなんですか、その辺のところ。
  64. 武藤き一郎

    武藤(琦)政府委員 現在のところそういう額でございますが、たとえば先ほどから御議論がありましたように、地域がいろいろ拡大されあるいは給付内容も改善されてくるようになりますれば、当然この費用もだんだんふえていくわけでございます。
  65. 中井徳次郎

    中井委員 この辺のところは、通産省の立地公害部長は、半分でいいとお考えなんですか、ちょっと伺っておきたい。  大臣、あなた参議院に行っていらっしゃい。済んだらまた帰ってきてください。それから総務長官はどうですか。
  66. 赤路友藏

    赤路委員長 総務長官は十一時二十分に来ます。了解を求めました。
  67. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 まずこの拠出の性格でございますが、先生ただいま、四千万なら四千万払ってはいさようならというお話でございましたが、決してそういう性格のものではなくて、本来事業者というものは、因果関係がはっきりし責任がはっきりしたら、当然その責任を負うべきものでありまして、その点については産業界全体としてもそのつもりでおるわけです。ただ、先ほどから厚生省からお話ございましたように、そういうような民事上の責任というのは、なかなか裁判が長くかかったり、あるいは今回の紛争処理制度を用いてもなかなかはっきりしない場合が多い。そういうような司法上の解決がはかられるまでの間、緊急に救済をするものに対して、まあ行政救済としてやる、それに産業界も社会的責任という立場から協力する、こういうわけでございまして、まあ平たいことばで言えば、一種の立てかえ払い的な行政救済なわけでございます。それに協力するわけでございます。そのあと事業者の責任がはっきりすれば、当然いかなる金額も払わなければならぬ、こういうわけでございます。こういう性格のもので、はいさようならというものではないわけでございます。  次に、半分のことでございますが、これはいろいろ御意見もあることかと思うのでありますけれども、まあ中央公害対策審議会が基本法に基づいて設けられているわけでございます。その審議会でもいろいろ議論された結果、国、地方公共団体及び産業界の三者がその社会的責任から負担しましょう、こういう結論が出ましたものですから、それに従ってきめたわけでございまして、その三者の社会的責任ということになりますと、その三つのうちの一つの産業界は、最大限度見ても半分というのが一応その自然の結論である、こういうふうに考えられますし、現に審議会の審議の過程におきましても、産業界は半分というような線が出ておりましたものですから、それに従って半分というのをきめたわけでございます。
  68. 中井徳次郎

    中井委員 いまの御答弁は一応筋が通っておりまするが、そのところは現実にはあなたの言うように、損害賠償がはっきりすればなんということが、なかなかはっきりしないのですね。だから、それによって右から左に問題が解決するということがないから、これだけ議論になったわけであります。しかも私はやはりそういう責任論よりも、経済界としては要するに金の問題であろうと思うのであります。日本全国で四千万ばかりの金で、それで半分いけるというのでしたら、これはむしろもう国や県は御遠慮申し上げて、そして財界が全部負担をするという形のほうがすっきりとして、そのお世話だけを国や県がする。工場誘致で、こちらへ来てくれといって運動したからおまえにも責任があるという、そういう無責任なことばかりいって、おれたちも税金納めているんだから、その税金のうちからやっておいたらいいなんて、これは経済界の人のしょっちゅう言いまするくせですが、現実には、それじゃどれくらい損害賠償をしておるか、過去においてしたかということになりますと、これはほとんどゼロに近い数字なんであります。したがいまして、今日この法案が初めて出まして、公害の基本法に沿って出たのであって、ゼロから出発しておるのですから、私は何も、全体でなければこの法律案は絶対けしからぬなんということを言うものではありませんけれども、いずれにいたしましても、半分というようなことでは、世間さまの常識から見て、私はやはり始まりはせめて六割とかあるいは七割、将来はこれは何としても全部財界が持つべき、産業界が持つべき問題であると思っておるわけであります。  以上のことだけ申し上げて、床次さんいらっしゃいましたから、総理府関係紛争処理の機関につきまして、一、二点お尋ねをいたしたいと思うのであります。  地方の審査会というのができ、中央公害審査委員会というのができるわけでありますが、この都道府県公害審査会といいますか、これは各都道府県に強制的にといいますか、当然みんなどの都道府県もこれを置けというのであろうかと思って、私はこの内容を拝見いたしますと、置かなくてもいい、それで知事が代行する、こういうことになっておるのですが、この辺のところ、拝見いたしまして、ちょっと私はひっかかったものですから、大臣にお尋ねをするわけですが、どうでございましょうか。各県ともこれはおつくりになったほうがいいように私は思うのですが、どうしてこんなふうになりましたか、ちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  69. 床次徳二

    ○床次国務大臣 各府県の状態に応じまして、ふさわしい紛争処理機関を置きたいというたてまえから出ておるのでありまして、したがって、都道府県の公害審査会は、十三条によりまして、各府県が条例でもって置き得ることになっておりますが、しかしこれを置かないものにつきましては、十八条におきまして、審査会を置かない都道府県においては、都道府県知事は、毎年公害審査委員候補者を委嘱して、そうして紛争処理に当たらせるという形、いずれか選択的にいたしておるのでありますが、これは各府県の実情により、府県によりましては非常に公害のはなはだしくなっておりますもの、いまだそこまでいっていないというもの、多少種類においても違っておりますし、発生件数におきましても現在において相当差があります。したがって、その地方の実情に合わし得るように、さような形にしておる次第であります。
  70. 中井徳次郎

    中井委員 そういう御答弁があろうかと思いまするが、しかしながらいま日本の内政を俯瞰いたしますると、公害の少ないところがあるということも事実でありましょうけれども、絶無なんというところはないわけであります。四十六都道府県、置くなら一斉に置くというほうがはっきりとするのじゃないか。御出身の鹿児島県などは少ない県だろうとは思いますけれども、といって、私は絶無だとはいえない。でん粉の製作工程なんかでも、ずいぶん悪臭が出たりなんかいたしておりますから、そういう意味で、置かなくてもいいという考えは私はどうも納得できません。どうして置いて悪いのか。今度は逆に、置け、こうしたほうがはっきりとしていい。置かないほうがいいというのが、どうも私にはよくわからないのです。その辺の判断ですね。これは有給なんですか、審査会の各委員は。地方はそうじゃないんでしょう。中央だけでございまするから、経費の面ではそう変わらないと思うのですが、その辺のところ、再考の余地はありませんですか。
  71. 床次徳二

    ○床次国務大臣 地方の委員は非常勤でありますが、ただ審査会を置かなくてもよろしいということに書いてありまするが、しかし、紛争処理のための要求に応じ得るために、公害審査委員候補者というものを設けまして、そして紛争処理に、いざというときに当たり得るようになっております。結局いずれかは置かなければならないという形になっておるのでありまして、今後公害紛争というものの状況いかんによりましては、全部が審査会方式になることもあり得ると思います。現在のところでは、地方の実情によって解決してまいりたい。なお、公害紛争ということにつきましては、府県のみならず市町村におきましても、仰せのごとく地元においてやはり発生の予期されることであり、これができるだけすみやかに解決されることが望ましいのでありますので、市町村段階におきましても、苦情処理機関として、府県とともに効果をあげてもらうように期待いたしておる次第であります。たてまえといたしましては、そういう作用がやはり必要なところがどんどん出てくるのじゃないか。さような必要に応じまして、発揮できるように予定をいたしておる次第であります。経費の問題にもやはり関連しておることはしておりますが、しかし、これは地方の実情に応じましてひとつやっていただく、そして効果をあげてもらいたいというふうに考える次第であります。
  72. 中井徳次郎

    中井委員 床次さんのお気持ちはわからないわけではありませんけれども、市町村につきましてはおっしゃるとおり任意でいい。しかし府県段階になりますと、やはり候補者なんというものをきめて、むずかしいことを、そこまで中央が心配してやるのならば、むしろ都道府県公害審査会というものははっきり置くということにしたほうが、私はすっきりするし、府県によりましても、おそらくみんなつくるのじゃないかというような感じを持つのです。総務長官のほうが逆に思いやりがあり過ぎて、置かなくてもいい、非常にいいのですけれども、地方自治の本旨にのっとって、国がそこまで干渉しないというお気持ちはよくわかりますけれども、現実に、市町村でありますと、それはそうでございましょうけれども、府県はもうぱっとつくれといったほうが、候補者なんということをしまして、選定をするという煩瑣、同じことならば、もうつくってしまったほうがいいというふうに思うのですが、いかがですか。それのほうがあっさりとしていいと思うのですが、どうですか。お考え直しになるお気持ちはありませんか。
  73. 床次徳二

    ○床次国務大臣 ただいま中井委員も仰せになりましたごとく、この問題につきましては、私どもは地方の意思を十分尊重していきたいというたてまえから、選択的の余地ができておるわけでありますが、しかし公害の多いところには、当然私は審査会を置くようになると思っておるのであります。現状から申しますると、各府県も半数近く、それぞれ何らかの部局を置いておるのであります。しかしこれは、地方の関係から申しますと、枢要な事務でありまして、私は、必要と認められるところにおきましては、審査会を当然置くべきものと考えておるのであります。したがって全部が審査会を置くようになりますれば、そういうことに対して、私どもといたしましても決して拒否するものではなく、大いにそこまでやって公害紛争に当たっていただくということにつきましては、むしろ歓迎すべきことだと思っております。
  74. 中井徳次郎

    中井委員 これはいまの大臣の御答弁で趣旨はわかったと思うのですが、むしろ府県によりましては、迷うところなどがありましたら、たいへん混乱を起こす一つの原因にもなりかねない。知事は置かないと言い、議会は置けと言う、こういうふうな形のものが出てくるやに考えるのです。できたらこれは委員会で、私は自民党の皆さんの御賛成を得て、共同で修正するくらいの気持ちを持ってもらいたいと思うのです。一つそういうことを申し上げておきたいと思います。  私は、床次長官にお尋ねいたしますのは、それともう一点ございます。それは地方の審査会が、これは仲裁のときには入れると思うのですが、それ以外では、公害に関して現地の工場なんかの立ち入りができないという問題があるのですが、これはどうでしょうか。立ち入りができないと、調停だ何だといってもなかなかむずかしくなるし、そうしてそのために中央まで来て、中央からまた下っていくというふうなことでは非常に時間がかかりますし、地方の審査会が、いついかなる場合にありましても、やはり立ち入りができるという形のものが望ましいのではないか、私はこの法案を読みまして、ちょっとそういうふうに感じましたのですが、その辺のところは政府としてはどういうふうなお考えであるのか、伺っておきたいと思います。
  75. 床次徳二

    ○床次国務大臣 この法律におきましては、たてまえといたしまして、当事者間の互譲の精神によってと申しますか、話し合いによって解決するというたてまえになっておりますので、仲裁、調停ということをたてまえにいたしておるわけであります。したがって、いわゆる純然たる裁判、訴訟のごとく、とことんまで争って解決するという考え方にはなっていない。これはむしろ訴訟のほうへゆだねておるわけであります。したがってこの紛争処理機関におきましても、いわゆる仲裁を中心としてものを考えておる場合におきましては、これはお互いがその気持ちでやっておりますので、立ち入り権も認めておる。しかし調停等の場合におきましては、特に地方におきまして、これが立ち入り権を実施いたしましてやるということは、事件の解決上むしろ適当ではないのではないかというふうに考えております。特に問題となっておりますところの、非常に多数の人に重大な健康上の危険を与えるというような公害につきましては、これは中央の審査委員会の権限として、そうして中央の審査委員会におきまして立ち入り権等の権限を行使いたしまして、解決に資するというたてまえをとっておるのであります。いわゆる紛争の裁判的な機関になりますと、これは相当強い権限を持たなければならないかと思いまするが、本法に予想しておりますところの紛争処理は、いわゆる準、これは司法裁判所に準ずるほうの機関の性格が多いし、しかもその内容は調停あるいは仲裁ということを本旨としておりますので、さような形になっておる次第であります。
  76. 中井徳次郎

    中井委員 この立ち入りのことにつきましては、考えてみますと、中央でないと立ち入り権がないということになると、これはまあたいへん中央は忙しかろうと思うのです。ここ数年たてばたいへん忙しくなる。そうして小さい事件まで全部東京へ出てくるということになって、私は煩にたえないような感じがするのです。  それに関連して、諸外国の実情を聞いてみますと、英国やドイツあたりのものは非常に強い権限を持っているらしくて、それはそれとして専門家がたくさんおるわけです。政府が心配しておるのは、おそらく政治的な判断とかなんとかいうものが非常に大きくなって、専門屋でない者が工場に立ち入ってかってなことを言うので、公正を欠くというふうなことをおそれておるのではないかと思うのであります。それにつきましては、やはりこういう公害に関する権威といいますか科学知識の非常にある人たち、これは通産省だろうと思うのですけれども、もっと人員をそろえてやりませんことには――私も数年前から通産省あたり、工業技術院ですか、そういう人たち説明を聞いたり、技術を研究しているところをたずねたりいたしておりますが、いかにもどうも人員が少なくて、そうして何かままごとのようなことをやっておる。特に私は、きょうは見えていませんからなんでございますが、運輸関係の自動車の排気ガスその他ああいうことの研究の場所に行きまして驚きました。非常に貧弱なんです。でございますから、そういう貧弱な人員や何かで変な立ち入りをやるというと、かえって妥当な判断が出にくいということもあろうとは思いますが、しかしこれは、紛争処理は中央の東京だけに立ち入り権ということになってくると、ほんとうに忙しくなる。その辺に対する手足とか、あるいは通産省あたりの公害に対するかまえが、どうも非常に少なくて貧弱であるというようなことを私は感じるわけですが、どうですか。  通産省の公害部長にお尋ねいたしますが、これはほんとうに科学技術を基礎とした正確な判断をいたさねばなりません。たとえば私の選挙区にあります四日市の亜硫酸ガスなんというものは、無色無臭のものだそうであります。ところが市民は、二十数万おるうちのもうほとんど九五%までは、そういう亜硫酸ガスが無色無臭なんということは知らないで、くさいにおいがする、あれがそうに違いないというふうなことで、基本的な誤解があるわけです。したがってその対策等につきましても、においがしなければいいと思っておるというふうな考え方等もありまして、そういう点で非常にやはり立ち入り権が重要であるし、その場合に専門家がそれに絶対参加する必要がある。とうしろうばかり幾ら寄って対策を立てておったところで、これはだめだと思う。その人的な構成といいますか、かまえといいますか、そういうものについて政府はどう考えておるのか。イギリスあたりには、そういう公害関係の専門の技術家がおって、それは数千名おるという話を私は聞いておりまするが、その辺のところをひとつまず通産省関係の人から説明をしてもらいたい。  最後にまた、立ち入りが地方の審査会でできないということでは、ほんとうの切実な対策は生まれない。東京からいつ幾日行くというようなことを言うて、――それは私どもの長年の経験ですが、やってくるときには、なるべく公害に影響のない、たとえば油をたくにしましても、亜硫酸ガスの一番少ない油をその日に限ってたくというようなことになりまして、どうも隔靴掻痒の感があるわけです。ですから、その辺のところについて、ひとつお答えを願いたいと思います。
  77. 床次徳二

    ○床次国務大臣 立ち入り検査の問題でありますが、今回の紛争処理につきましては、先ほども申し上げましたように、和解の仲介、調停、仲裁ということで、双方の話し合いを中心としております。いわゆる仲裁の場合におきましては、中央あるいは地方とも、この点はお互いに、何と申しますか、積極的な互譲の気持ちがあり、話をつけようという気持ちがありますので、立ち入り検査を認めているわけであります。そうして十二分に話し合って結論を出すような仕組みになっているわけでありますが、なおそのためには、地元にありましてその事情にも通じ、また当事者といたしましても、よく話し合いのできる人でありますので、その点におきまして、今日の法案の趣旨によりますものにつきまして、私は十分その認められました範囲の立ち入り権において役に立っていると思うのであります。しかし中央におきましては、やはり重大なものにつきまして、これはただいま御指摘もありましたごとく、非常に公害というものは複雑でもあるし、その検査等につきましてはむずかしい問題があるのでありまして、いたずらに立ち入りまして調停するということにつきましては、問題を非常に困難になすおそれもあるのでありますが、重要な、特に中央の審査委員会の権限とされているものにつきましては、徹底してこれを行ない得るように、すなわち先ほど申し上げましたように、調停事件でありましても、重大な健康被害にかかわる紛争など、特別な事件につきまして、社会に大きな影響を及ぼすことを考えますので、できるだけ紛争原因を明確に把握する、そうして紛争の解決をはかるために、特に調停につきましては、中央の審査委員会に対しましては立ち入り権を認めている、かようなわけであります。  なお、専門技術官につきましては、やはり審査会等におきましても、できるだけ必要な専門技術者の力を借りることが必要でありますので、十分その専門家の力を借り得る予算等も措置をいたしている次第でございます。
  78. 中井徳次郎

    中井委員 予算措置をされているといいますが、どの程度のものでございますか。いま最後におっしゃられたことをお尋ねいたします。
  79. 橋口收

    ○橋口政府委員 中央委員会は本年の十月からの出発予定いたしております。審査委員会の総経費は、人件費も入れまして、本年度三千六百万円を予定いたしております。  ただいま御質問がございました技術的専門的な調査の委託費につきましては、本年度五百万円を予定いたしております。
  80. 中井徳次郎

    中井委員 いまの、仲裁だけにはできる、しかし調停、和解の仲介等にはやれない、それは双方で言うてきたわけではないのであるから、こういうのでありますが、立ち入り検査というのは、何も一方が言うてきたからそっちをひいきにするために検査をするというふうなものではなくて、実情を把握するということであります。さっき言いましたように、非常に重要な実情を把握するものが、その材料がないというふうなことでは何ともなりませんので、これはぜひ、実情把握のためには、やはりその地元の都道府県の審査会、こういうものも立ち入り検査がやれるということでないと、私はとんちんかんな判断をするおそれを非常に感じるわけです。現実に私はそういうことを非常に感じるわけであります。  それから、そういう工場なんかたくさんございまして、そのうちのどれがそういう公害を出しているのかということさえわからない地域があるわけです、最近の科学技術の日進月歩の結果。そういう状態の中で、和解の仲介せい、調停せいといったってできないのですね。ですから、私はぜひともこれは都道府県の審査会にもその権限を与える。もう少し権威を与えませんと、全部中央に出てしまう。そうして二、三カ月たって向こうから再々来るというふうなことでは、どうも…。せっかくこの制度をおつくりになるのですから、積極的にものを解決する方向にやっていただきたいと思うのです。これは私強く希望を申しておきます。審査会のメンバーも、いろいろな構成になるかもしれませんけれども、できるだけやはり国民生活をすなおに受けとめる皆さんによって構成されることは間違いないのですから、信用なさって、それをやるということを期待をいたすわけです。  それから最後に、都道府県の審査会と中央の審査委員会関係は、裁判のように上級下級の関係にあるのか、その辺のところをちょっと伺っておきたい。地方裁判所と最高裁とか、そういう関係関連はどういうことをお考えになっているのか、ちょっと伺っておきます。
  81. 床次徳二

    ○床次国務大臣 この紛争処理機関につきましては、直接上下の関係はないのであります。しかし中央におきましては、十分な専門的知識を持って調停に当たるという趣旨におきまして、むしろ地方にふさわしくないものを取り扱う、そういうふうな処置をいたしている次第であります。  なお、先ほどお話がありましたように、本来が調停という考え方をたてまえにいたしておりますので、いわゆる立ち入り審査権というものにつきましては、原則として認めておらない。これはほかの立法例におきましてもさような形になっておりまして、したがってこの現在の法案考え方から申しますと、むしろ軽々しく立ち入りをしない、慎重に必要なものにおいては処置をするという、何と申しますか、お考えよりもきわめて慎重な態度をとりまして対処して、公害紛争を解決していきたい、そういう形をとっている次第であります。  具体的処置につきましては、さらに政府委員からお答えいたします。
  82. 中井徳次郎

    中井委員 ちょっとひっかかります。公害関係と他の立法例の、海難裁判とかいろいろなものがありますが、そのことと私はちょっと本質が違うと思うのですよ。この辺のところをできたらもう一度考え直していただきたい。現場を調べないで、調停するの、仲裁するのといったってできないと思うのですよ。そして必ず水かけ論になるわけだ。その辺のところ、どうですか。考え直される意思はおありでありますか。
  83. 床次徳二

    ○床次国務大臣 お説のような考え方があるわけであります。したがって今日の公害紛争におきましても、往々にして最後は訴訟に持っていくという気持ちが当事者に少なくないと思うのであります。したがって、紛争処理機関というものが訴訟と同じ作用を演ずるかというところに基本的な問題がありますが、わが国におきましては、最終的にはやはり裁判所の判決というものがあります関係上、その立場を考慮いたしまして、でき得る限り簡素にといいますか、敏速に結論を出す方法はないかという意味におきまして、紛争処理機関としてここにあげましたような権限を持たせておるわけでありまして、この点はわが国の訴訟との関係あるいは基本人権の問題にも関係してまいりますので、この限度にとどめたような次第であります。
  84. 中井徳次郎

    中井委員 御答弁、やや不満でありますけれども、時間になりましたので、私は終わります。
  85. 赤路友藏

    赤路委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  86. 赤路友藏

    赤路委員長 速記を始めて。  岡本君。
  87. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 大臣がお見えになるまで、これは前の質問の残りでございますけれども、茨城県の東海村の日本原子力発電所で起きた下請作業員が放射能で汚染したまま町を毎日、数日歩き回った、こういう事件が報道されておりますけれども、この安全管理は十分であったのかどうか。あるいは、当局の管理法をひとつはっきり明らかにしてもらいたいと思うのですがどうでしょうか。
  88. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 原電の先般の事故でございますが、これにつきましては、その後安全審査いたしまして着工いたしまして、それからいままで運転している場合に保安規定、その他全部整備した形で運転を開始いたしました。ただ、今度の事故になりましたのは、下請作業の方が入るという形のところで事故が起こっているのは、まことに申しわけないことでございます。下請が入ります場合には、一応原電でつくっております保安規定を下請に見せまして、それと契約する場合に必ずその規定を守ることということでしておりました。それからまた、下請の入ります人たちに対しての一般的教養、研修、こういうことも通常やっておったわけでございます。ただ今般の場合は、要するに、管理区域の中に入る場合には必ず作業衣を着て入るという形になっておりましたところ、向こうの調べでございますが、一部ちょっと簡単なところに飛び込んでしまったという実績がございます。したがいまして、そういうことがあることはいけないということで、先般私たちのほうから四月二日には向こうの原電の常務を呼びまして、私のほうから管理体制を十分に――ことに下請で外部から入る人たちに対して検討することと、それからいままでの点について十分調査をするということを命じました。しかし、それでは徹底しないといけないということで、四月五日には、あらためて私たちのほうから文書をもって、この徹底をはかること。それを行ないますに際しては、実施した報告を出すということをしております。それに基づきまして、向こうはいま管理規程の実施というところで、まず一番大切なことは、やはり着衣というものを全面的に貸与することにしてはどうかということで、全面貸与の形をとっております。ただこれにはくつ、洋服等、いま製作しなければいけませんので、ちょっとまだ全部はそろっておりません。それから実はその後――私たちのほうから申しましたように、いままでに、初め三月三十一日に三人ひっかかったわけでございますが、そのときの三人だけであるかどうか、それを十分徹底して調べるようにということで、現在までに大体九〇%ぐらい調べあげております。ところが、その途中で、なお三名ほどひっかかった者がまた十一日ごろに調べ上げられました。しかし、大体のところ九〇%ぐらいのところまで調査をして、大体もう間もなくその調査が終わると思います。しかし、調査とともに並行しまして、いまの管理規程の実施ということに、緻密なやり方をいま考慮して、徹底化をはかっておるところでございます。
  89. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 特に部外者、下請、ペンキ塗りに入ったわけでありますけれども、この入った人たちは全然そういうことはわからない。そうして下着を返してこない。そういうところから今度は大騒ぎをすることになったのですが、その下着はどこへやったんですか。
  90. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 三十一日にこの三名がひっかかりまして、その一人が、下着やセーターについておったわけでございます。そのセーターを取りまして、汚染された場合は必ずそれを事業者側のほうできれいにして返すということになっておりますから、汚染されたのを洗たくしましたところ、その一部が悪くなっちゃったというので、返すことがおくれておりまして、その返しましたのがだいぶ、一月ぐらいたってからだと聞いております。それで、現在では下着とセーター、それがもし汚染した場合には、新しいものと取りかえて支給するという形に変えております。
  91. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 こういう下請の人たちがこのときは何人入っているのか、あるいはまた、これ以外に、それ以前にどのくらいの人が入っているのか、数字、わかりますか。
  92. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 三月二十五、六日ごろに太平電業として入っておりますのが――いま資料をとりにやっておりますが、たしか十六名から二十名だったと思います。そのときにほかの下請業者として入っていますのを入れますと、数十名をこえていると存じます。
  93. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 いま判明したのが六名ということになっておりますけれども、あと人たちはどういうことか、これはチェックをしているかどうか。なお、そうした下着あるいは作業衣にそういった反応があるということは、即、頭あるいは外に出ているところの顔、こういうところに反応があって、その人は将来病気になるのじゃないかというのがいま非常な心配の一つなのですが、そういう点はどうか。次は、被害が出た場合の補償はどういうように考えておるのか、これをひとつ聞きたいと思います。
  94. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 最初の、数十名そのときに仕事を同じようにやったという人につきましては、下請業者を通じまして原電のほうで極力実態調査と、それから家屋にも入って調べております。それが大体九〇%ぐらい現在でき上がったと聞いております。それから、幸いに受けましたレム数は〇・〇一ミリレムでございます。これは許容量からいきますと、私たちはよく時計をつけておりますが、それを一応時間で計算しますと、時計程度のものの範囲でございます。したがいまして、これがからだに影響するということはまずないので、その点においては幸いだったと思いますが、だいじょうぶだと思います。それからもう一つの、もしもこういうことで病気になった場合ということでございますが、これにつきましては、先般来原子力委員会のほうで検討いたしまして、現在労働基準法施行規則の三十五条の四号、これで疾病の認定基準というのが改定されました。そこで、放射線に当たりました際の急性のもの、慢性のものにつきましては、みなす認定と申しますか、ある程度広く見まして、労災で取り扱うという考え方で進めさせていただいております。
  95. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 こういう下請の方々やあるいはまた一般の方は、原子力公害ということはあまりわからないわけですね。目に見えないし、色もないし。したがって、今後もっともっと対策を考えなければならぬじゃないか。いま許容限度よりも少ないのだ、こういうようなお話でありますけれども、一般の人はそう言われてもわからぬわけですよ。そういう人が町をどんどん歩いていますと、ほんとうにあぶなくてしかたがない。そこで、現行の原子力基本法あるいはその実施法の抜本対策をここで変えて考えなければならぬ、われわれはこういうように考えておりますが、その点についてどう思いますか。
  96. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 現在までの原子力の安全等に対します規則等につきましては、われわれのほうも検討いたしてみましたが、これを必ずいま変えなければいまの徹底化に矛盾が出るということは考えられません。それに基づきましてできていますいわゆる保安規定を満足に守らなければいけないというところの守り方、その点にいささかルーズなところがあったのではないかということでございまして、いわば管理規程の徹底化をはかること、それから外部からこういうところに入る方に対しての措置、これについて一応の、たとえばさくを設けまして、ここからは管理区域、ということを考えておりますが、そのさくのつくり方等についての徹底化、そういう点が非常に悪いと認められております。したがいまして、現在では下請業者等よく知らないで入る人たちに対しては、できるだけ読んでよくわかるような明示をしておくことと、それから説明すること、それから常に安全教育制度を普及していくこと、それから中に入ります場合には、徹底して作業衣から下着まで全部着がえさせること、それから汚染管理区域にあります物品は絶対持ち出さないようにして、作業具等につきましても中のもので行なうことというような形の徹底化をはかるということで進めさしていただきたい、こう思っております。
  97. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 こればかりにかかっておれませんので、最後に、静岡あたりのお茶に相当なこの反応があるというような報道もなされておりますけれども、このほうの安全管理はだいじょうぶなのか、またこの責任はだれが持つのか、これをひとつお聞きしたいのですが、どうでしょう。
  98. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 自然放射能につきましての考え方からまいりますと、ある程度のものがあるということはございます。ただそういうお茶とかあるいは農作物、牛乳等にあるという場合に、一番考えられますのが、やはりよその国で行なわれます爆発実験でございます。そういうものを行ないました場合には、われわれのほうで三十六年から、そういうものを行なったときの措置といたしましてそれに対する対策本部が設けてございます。したがいまして、海外でそういうことを行なったと同時に、対策本部のわれわれが幹事会を開きまして、その対策に関する観測体制というものを整えております。都道府県の試験場二十、国立研究所、それから各省、これをあわせまして一斉に、実験が行なわれたと同時に対策をとりまして、観測をいたしまして、万が一のフォールアウトが多いという場合の措置としては、緊急対策をとれる形というのが徹底してつくってございます。これは三十六年からそういう形をとりまして、自然放射能がふえないようにという考え方をとっております。
  99. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 この問題をなぜ私がきょう取り上げたかと申しますと、公害基本法からはずされておる。そして原子力の公害につきましては特に今後研究の必要があるし、また、これにかかると、もう処置がないわけですから、何とかしてやはりこの公害基本法の中に入れて、そして広く検討していかなければならぬ、こういう考えからいまただしておるわけでありますけれども、最後に、使用済みの核燃料、これの処置はどういうふうにするのか、あるいはその運搬方法についてひとつはっきりしていただきたい。
  100. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 使用済み燃料で一番最初に出ましたのが東海発電所の燃料でございます。東海発電所の燃料につきましては、使用済み燃料を英国に送り返して処置をしてもらうという二年間の約束がございます。その関係で本年から送り返しが始まります。東海発電所から出ました使用済み燃料が約七十トン、本年七月から三回に分けて、日立港から、向こうの船が参りまして持って帰るという形になります。それで、日本ではまだ再処理工場ができませんので、再処理工場ができますと、再処理工場でこれを処理するという形になりますが、当分の間は使用済み燃料は運搬して返すというのが現状になっております。ただ、その燃料を運搬して返しますまでは、ある程度保管しなければいけませんので、それが先ごろもプールでちょっと事故がございましたが、ああいうプールの中につけて、事業所の中にためておきまして、それで運搬するという形になっております。
  101. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 運搬規則ですか、たとえばその核燃料の使用済みのやつを置いたところに入っただけで、そうした大きな反応があるわけです。そうすると、今度それを運搬するとき、船でやる場合あるいは貨車でやる場合あるいはまた何かトレーラーで運ぶとか、英国から船が来てくれるのだったら、そこまでどういうような状態で安全にやるのか。ちゃんと国内法規ができておるのですか、どうですか。
  102. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 廃棄燃料を運搬します場合には、まず容器に入れます。その容器につきましての基準につきましては、原子力委員会で、海外の基準、IAAの基準がございますが、それを参考にいたしまして、燃料物質の輸送容器の安全性審査基準というものをつくっております。その基準に入ったものの容器に入れるという形で処理しております。  そしてまた、その容器に入りましたものを運搬する場合でございますが、運搬する場合には、運輸省のほうで運搬規則がございますが、こういう特殊なものは、例外として、個別に運輸大臣の許可を得ることになっております。運輸大臣がその許可をする場合に、われわれのほうの科学技術庁と運輸省と一緒になりまして、この運搬の方法等についての指示をいたします。この指示に基づきましてこれを運搬するという形に現在なっております。
  103. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 運搬規則についても非常に不安な点が見受けられるわけでありますけれども、きょうは時間がありませんからこの程度におきますけれども、いずれにいたしましても、しろうとの人たちは、われわれが放射能なんというのはどれだけ受けておるのやら、あるいはどうなっておるのやらということが全然わからぬ。そして注意した上にも注意してやっていただかないと、一つの例を見ましても、これは簡単に取り扱っているのではないか、こういうように考えられるわけですから、まだ規則のできていないものは強力につくっていく。それから認可にあたっても、いままでもう一つはっきりしていなかったように思うのです。いまはっきりあなたのほうから御答弁があったのですが、しっかりと原子力公害のないように、また今後われわれも監視をしてまいりたい、こう思います。  それでは、大臣が来るまでにちょっと片づけておきます。これは厚生省にちょっとお聞きしますけれども、過日の安中のカドミウム禍ですね。これが一応、現在あなたのほうで、イタイイタイ病患者が出ていない、心配ないというような発表があった、こういうように記憶するわけでありますけれども、イタイイタイ病患者認定に最も必要な骨盤のレントゲン写真もとっていない。また米の定量は調べているが、桑の葉とか野菜など、こういうようなカドミウムの汚染も調べていない。こうして、調査方法が不十分でないか、それに対して結論を下すのは非常に危険である、こう思うのですが、どうでしょうか。
  104. 武藤き一郎

    武藤(琦)政府委員 安中のカドミウムの問題につきましてのただいまの先生の御疑念でございますが、第一点は、患者が出ているような一部の報道等があるではないかという御指摘だろうと思うのです。この点につきましては、現在群馬県のほうで健康調査がほぼ終了して、現在最終的な判定を急いでいるような状況でございますので、その結論を待って、私どもとしては、健康問題についての最終的な結論を出したい、かようなことでございます。  それから、話がちょっと前後しますが、安中地域はだいじょうぶだというように厚生省は思っているのかということでございますが、この点は、厚生省の見解の全体を御判断いただければわかると思いますが、私どもとしては全く安心だというふうに申しているわけではございませんで、やはり十分監視の必要がある、また要観察地域としてよく観察すべきであるし、対策も十分とっていかなければならぬということを重ねて申しておるわけでございます。  それから、あと、桑の葉あるいはその他野菜等の調査が不十分ではないか、こういう御指摘でございますが、この点につきましては、製錬所から出ます煙だけの影響を受けているというふうに見られます丘の上の部落についての調査方についていま御指摘があった、かように考えますが、私どもとしては、昨年の夏から秋の状態におきまして、米その他排水等の調査を行ないまして大体の推定を出したわけでございまして、野菜あるいはオカボ等の問題を調査しないで推定を出すのは不正確ではないかという御指摘の点につきましては、結論そのものは、大体推定としては間違っていないと私は思いますけれども、なおそういう点についての地元での不安等ございますので、そういう点は、今後のいろいろな状況を見まして十分調査を行ないたい、かように考えております。
  105. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 大臣が参りましたが、その前にいまの件、厚生省にもう一つ念を押しておきますけれども、私どもは直接現地視察をして、イタイイタイ病の権威者である萩野博士にレントゲン写真なんかをよく見てもらったりすると、すでに初期の兆候が見えるんじゃないか、このままほっておけば必ず患者発生するんじゃないかというような――早急には結論できないけれども、一期、二期、三期、四期ですか、こういうところで、イタイイタイ病の一期、二期の症状が出ているんじゃないか、こういうような疑いを持っているというわけですから、ここのいまやっているような調査ですね、私も見てきましたけれども、それでは非常に弱いんじゃないか。したがってやっぱり症状に対する権威者というものはそう日本にたくさんいないですけれども、萩野博士あたりの意見をよく聞いて、そしていまの間に、もう大きな事故が起こらない間に患者救済しなければならぬ、こういうように思うのですが、どうですか。
  106. 武藤き一郎

    武藤(琦)政府委員 先生の御指摘のいわゆるイタイイタイ病疾患の初期の状況におきます病状だけで、いわゆるイタイイタイ病であるかどうかということを判断することは、私は医学者ではございませんけれども、非常にむずかしいように聞いております。この点、初期におきますイタイイタイ病の鑑別診断というものが非常に問題になるわけでございますが、そういう点につきましては、五月に全国的な調査の医学的な研究集会を持つように予定しております。そこであらゆる方の討論を通じまして、厚生省もその結論に従いたい、かように考えております。
  107. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 その問題はまた次に譲りまして、大臣がお見えになりましたから、公害紛争処理法案についてひとつ質疑いたしたいと思います。  この法案は、聞くところによりますと、最初行政組織法の第三条によっていたが、予算の審議の段階で第八条になった、こういうように聞いておるのですが、この三条機関と八条機関との相違について、まず明確にしていただきたいと思います。
  108. 床次徳二

    ○床次国務大臣 いわゆる行政組織法の三条機関と八条機関というのは、多少権限また組織それから組織の量、質において差が出てくると思っております。  今回提案いたしましたところの紛争処理機関は八条機関にいたしたのでありますが、現在の八条機関でもって十分所期の目的を達し得ると考えましたので、八条機関といたしたわけであります。何ゆえかと申しますと、今回置きましたところの中央公害審査委員会というのは、いわゆる準司法的な機関として、公害紛争に対しまして調停と仲裁を行なうことを主任務といたしておるのであります。この点が基本である。調停と仲裁という形で、いわゆる裁判所の判決を下すようなものとは違うという意味であります。したがってその任務を遂行するにあたって必要な事項は二つあると思いますが、一つは独立性、中立性を確保するということ、それからなおその職務を執行するのに必要な権限を持つことであります。第一の中立性と独立性を確保するための処置といたしましては、内閣総理大臣の所轄のもとに置きまして、委員長及び委員を設けておりますが、いずれも独立権限を持って行使することができるような立場になっている。なお委員に対しましては、身分の保障もある。任命につきましては国会の承認というような手続をとりまして、十分にその機関としての独立性と申しますか、中立性を確保して職権を行なわしむるようにいたしております。それからなお、第二といたしまして、その職務を行なうために必要な権限を与えておるわけでありますが、出頭命令権、立ち入り検査権等、調停、仲裁等を行なうのに必要な権限を与えておるのであります。この二点がありまするならば、私は十分に今日の八条機関でもってその職務を遂行し得ると考えております。現に紛争処理の例といたしましても、八条機関でもって設置いたしました中央建設工事紛争審査会というものもありまして、適正に運営ができるものである、所期の目的を達し得るものと考えております。
  109. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 三条機関はどうですか、それとの相違は。
  110. 床次徳二

    ○床次国務大臣 三条機関といたしましては、たとえば公取委員会のごときものがあります。なおその他土地調整委員会というようなものが三条機関として設けられておりますが、三条機関のごとき大きな事務局等は、今日の状態におきましてはまだ必要がないと考えておるのであります。  なお、三条機関でありまするならば、その官庁の名称をもちまして独立に職権を行使し得る、また職員の任命権等も差が出ておるわけであります。しかし今回の紛争処理委員会におきましては、この三条委員会ほどの権限は持たなくてよろしいというところに差ができておる次第であります。
  111. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 私、そういうものの考え方に問題があると思うのです。公害で非常に困っておりますのは、患者になった人たちあるいはまた被害を受けた人たちが、はっきりした結論が出ないままに、四日市あたりではどんどんなくなっている。まことに気の毒なことです。そういう面からしますれば、この紛争処理法案をつくるのは、他の圧力に屈しないところの独立した権限を与えて、そしてやっていくような、ほんとう被害者人たちからこれなら安心だといわれるようにしなければならない。いまあなたがおっしゃったように、八条機関の調停、仲裁、和解、こういうことには準司法的なあれを持っているのだ、こういうことでありますけれども、大体八条機関というのは審議会ですか、こういうことでありますと、厚生大臣のいろいろな諮問機関みたいに、独自で自分の名前では発令できない、こういうことでありますから、相当ゆがめられるのではないか、こういうように感ずるわけであります。判断と調査はできるけれども、自分で規則、規定をつくって行使する、こういうことができなければ、いま行なわれているところの裁判へ持ち込んでずっと引っぱられる、その間にどんどんなくなっていく、これと同じような結果になりはしないかというように懸念するわけですが、その点いかがですか。
  112. 床次徳二

    ○床次国務大臣 本法に定めましたところの審査機関でありましても、独立性と申しますか、独自の権限によって公平な判断をなし得ることにつきましては、十分にその立場が保証されておるわけであります。この点はこの法律案をごらんになるとおわかりでありまするが、委員の任命はじめ委員の待遇その他におきまして、なお先ほど申し上げましたような権限等を有しておりますので、この法律において予想しております職務を遂行するには十分であると考えておるわけであります。  なお、本質的にはいろいろと御意見がありまするが、これはただいまちょっとお触れになりましたが、今日までの公害紛争処理に対しましては、とかく今日まで訴訟によって徹底的に争わなければ結論が出ないという例も少なくないというのが実態であります。したがって、紛争処理機関によりまして、裁判所と同じ程度のことをやらせて、そうして解決に導くということは、今日の状態におきましては適法でないのみならず、わが国の裁判所制度というものがある以上は、やはり考慮すべきものだと考えておるのであります。したがって、本法におきましては、当事者の間におきましてお互いに話し合って、互譲の精神をもって解決するという場合には、裁判所の取り扱いよりは著しく早く適正な結論が出るものと考えます。さような意味におきまして、この機関ができておるわけであります。当事者があくまで争って結論を出してもらいたいというような立場でありましたならば、これはやはり訴訟に行かざるを得ないというのが、わが国の制度実態でございます。
  113. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 あなたは、これは結論が出ないときには裁判所に持っていくのだ、こういうことでありますけれども、健康を害され、公害にあっている人たちは、非常に資金も乏しいし、それもまたできないわけです。実際に弁護士を頼んで多額な金を出すことができない。それがいままでの実例なんです。これは長官もよく御存じだと思うのです。だから水俣あたりは十五年もかかった。阿賀野川も長い間かかっている。また今度の富山県のイタイイタイ病の問題でも、なかなか解決しない。その間に人命が失われていく。したがいまして、この紛争処理機関こそ準司法的な権限を有する独立性を持ったものでなければならない、また中立でなければならない、こういうように私は特に感ずるし、またそれを期待しておる。国民はみなそういうふうに期待しておる。にもかかわらず第八条機関になったということは、いまお話を聞きますと、第八条委員会では、いままでは大体審議会ですから、まあ審議会でいろいろ審議されたことが、あるいは厚生大臣あるいは何大臣というふうに答申されても、それをそのとおり実行したためしがない。たとえば選挙制度審議会、こういうものなんかも、全部骨抜きになっている。こういうものを見ますと、非常に国民としては不安を感ずるわけです。そこで、この審査委員会だけはそうじゃないんだ、こういうようにおっしゃるかもわかりませんが、それに対する法的根拠をひとつお示し願いたい。
  114. 床次徳二

    ○床次国務大臣 第八条機関には数種類あるのでありまして、仰せのごとく審議会に類する八条機関ももちろんあるわけでありますが、この委員会におきましては、八条のうちにおきましても、ここの法律にその職務権限等が掲げられておりますごとく、やはり特別な独立性と申しますか、中立性を持ったところの機関として発足しておるわけであります。この実体法がありまする以上は、その趣旨に従って十分お役に立つことができる。したがって、八条機関には概して審議会が多いので、審議会くらいの仕事しかできないじゃないかということは決してないのであります。この点は、単に規定が、行政組織法の八条によって、規定を受けて設立されているだけの問題でありまして、職務権限等におきましては、普通の審議会とは非常に違っておる。先ほど申し上げましたような権限を持ち、しかも独立性、中立性を持って仕事ができるわけであります。十分これは信頼ができるものであります。なお、その機関でありましても、裁判所的な行為をすることにつきましては、必ずしも適当ではなかろう。今日におきましては、やはりどうしても裁判で争いたいという気持ちの方は裁判所において行なうのでありますが、しかし、裁判でなしにお互いに話し合いによりまして、早く適正な結論を得よう、当事者がそういう気持ちになっておりましたならば、この紛争処理機関におきましても十二分に効果を発揮し得るのではないか。この意味におきまして、この紛争処理機関を新しく設けるところの意義があるのだ、十分活用していただけるものだと私は考えておるわけであります。
  115. 橋口收

    ○橋口政府委員 総務長官から概要お答え申し上げましたが、補足して御説明申し上げますと、行政組織法第八条の機関の中には幾つかの種類がございます。先生御指摘になりましたのは、いわゆる審議会、調査会というような諮問的な機能を持ったものでございます。ただ、八条機関には、付属機関のほかに、その他の機関というのがございます。たとえば総理府で申しますと、日本学術会議あるいは青少年対策本部というような、いわば付属機関と性格の異なった機関としての位づけを受けておるものがございます。中央公害審査会、まさにそういうものとしての位置づけをいたしておるわけでありますが、それと同時に、法律案で御承知いただきますように、中央審査委員会は内閣総理大臣の所轄のもとに置くということにいたしております。所轄ということばは、これも御承知のように、監督関係が非常に薄いということを表明いたしておるわけでございます。予算とか人事の問題を除きまして、個々の行為につきましては、一切監督関係がないということを表明いたしておるわけであります。さらに委員長及び委員は独立してその職権を行なうという規定を第七条に設けております。この職権の独立行使ということも、一切の勢力から独立に職権を行使し得るということを明らかにいたしておるわけでございます。  さらに、先ほど御質問の中にございましたように、八条機関はその自分の名前において処分行為ができないのじゃないかということでございますが、これは調停なりあるいは仲裁につきましては、それぞれ独立の機関として、調停委員会あるいは仲裁委員会の名においての処分をいたすわけでございます。したがいまして、公害紛争処理法を全体としてごらんいただきますと、行政組織法上の位置づけといたしましては八条機関ということにいたしておりますが、古川委員の御質問に行政管理庁からお答えがありましたが、八条機関ではあるが非常に三条に近い機関であるという御答弁があったわけでございます。そういう意味におきまして、先ほど総務長官からお答え申し上げましたように、本法案による調停なりあるいは仲裁を行なわれるには十分な権限と組織を持つものと考えておるわけでございます。
  116. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 あなた、全体的に見た場合と、こういうお話がありましたけれども、この一緒に出てきておるのは救済法案救済法案のこの公害認定、これは公害である、こういう認定をするのは厚生大臣です。そうすると、ほんとう公害被害者を救っていこう、こういう趣旨であれば、この二つの法案が別々にならずに、公正取引委員会のようにきちっときめて、これは公害だと認定もし、そして救済もし、それから調停ができるように、あるいは裁定ができるように、そうした権限を持たしたほうが一つの関連になって、こっちで調停したものだけれども、公害認定は別だ、私らはあなた方の仲を取り持っただけだ、こういうことでは、ほんとう公害被害を受けておる人たちがよかった、よかったということはないとぼくは思うのです。したがって、いまの裁判所でも、技術的あるいはまた医学的あるいは法学的、こういうことに対してはそれぞれやはり考慮されると思うのですよ。それで、そこまでいかずに、公害である、これは公害病なんだと認定できるような、そして独自で行使できるような、そうした機関をここで強力につくったほうが、被害者救済の面から見れば非常に――これは現在の被害者救済する法案ですからね、どっちかというと。ただ紛争処理してあとは野となれ山となれ、こういうんじゃないのだから、この二つの法案が一緒に処理ができるように、近いようにつくるためには、やはり強力な三条機関にして、公取のようにぴしっと命令を出してしまう、そして処理ができるように、こういうようにこれはすべきではないか、こう私は思うし、また国民の皆さんもそういうようにみんな感じているわけです。それを特別に八条機関にした、それはどういうわけですか。
  117. 床次徳二

    ○床次国務大臣 ただいま御意見がありましたが、御意見のごとく、強力なる機関を設けるということ、これ自体も決してむだとは存じませんけれども、本質的には、やはり裁判所でもってそういう経過をとり判断をするということが、今日のわが国の訴訟の取り扱いであります。したがって、裁判所と同じようなめんどうな手続をせずして、できるだけすみやかに結論を出すというところにむしろ主眼がある、社会的に申しまして、適正な結論を早く出す、そうして対策を講ずるということが、当事者が了承し合うならばいい、むしろそういう道をつくるべきではないかというふうに考えますので、この機関が、調停と仲裁というところに主眼を置きまして設けられておるわけでございます。したがって、調停と仲裁でありますならば、八条機関でもって十分にその目的を達し得るというふうに私ども考えるわけであります。
  118. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 いまのような長官の考えでありましたら、これはもう公取も要らぬじゃないか、話は違いますけれども、そういうように日本には裁判所があるのだから、もう別に公正取引委員会なんて要らぬじゃないか、こういうようなかっこうになると思うのです。三条機関は全然要らぬ、こういうことでは、私、どうも納得できないのでございまして、せっかくこの公害紛争処理をして――紛争処理をするということは、公害病にかかっている人たち救済する、そこに目的があるわけでありまして、あなたが悪い、あなたがよくないのだ、これだけだったら何にも要らぬです。やはり救済するという観点から見れば、強力な機関でなければ、ほんとうに現在どんどん起こってくるところの――現在非常に苦しんでいる人たち、さらにこれから起こってくるところの公害被害者救済するわけにはいかない、こういうように感じるのですが、どうですか。
  119. 床次徳二

    ○床次国務大臣 おことばのように、できるだけすみやかに結論を出しまして、被害者救済するというところが大事なところだと思っておるのであります。したがって、裁判所と同様な処置をとってまいりましたら、やはり相当時間がかかる、できるだけ早く話し合いがついて結論が出ますならば、それだけ被害者も喜ぶわけであります。加害者といたしましても、これは適切な処理として考えるわけであります。両者の立場を考慮いたしまして、かような組織をつくったわけであります。おことばのように、長い間苦しんで結論を出してもらうよりも、できるだけ早く適正な結論でもって、お互いが被害を免れるし、また救済も受ける、損害補償を受けるという処置をとらせるようにいたしたわけであります。私は、今日の公害の性格というものが非常に複雑でありむずかしい問題であるという前提から、やはりこういうふうな処置が必要になってくるのだ、またこれが役立つと考えておるわけであります。
  120. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 たとえば、もっと進みまして、これはみんな人命に関係することなんです。被害者というものは。そうすると、普通、何かで突かれて殺された、そういう場合、加害者のほうのことも考慮してあげる、そういうような法律は日本にないわけですよ。だから殺人なら殺人を行なった、――確かにイタイイタイ病の問題を見ましても、たくさんなくなっているわけです。こうした人たちを根本から救っていくためには――ぼくは企業をつぶしてしまってはいけないと思います。企業企業でどんどん助成をして伸ばしていくと同時に、そうした企業が犯したところの、あなたおっしゃったように、加害者に対しては――被害者の十分納得いくような被害救済をしてあげる、ただなあなあ主義で、何というのですか、これくらいに締めておけ、こういうやり方の紛争処理であれば、これは早くできたといいながら、やはり弱いほうは一般住民です。強いほうは、企業はたくさんの裁判費用を持っておるし、また、いま一つのイタイイタイ病はカドミウムが原因であると、こういうふうに出してくると、いやそうではないという学者の反論があったりして、いつまでたっても解決しない。そういうものを裁判に持ち込むというためには非常に手間がかかる。また裁判所はそれほど専門的なことはわからないと思うのです。そこで、そのために公害紛争処理委員会というのですか、これをつくって、学者の意見も聞いて、ちゃんとして、ぴしっとそこできめて、早くしてあげる、適切な処理ができないと、八条で、このくらいでしんぼうしておけ、こういうようなことでは、せっかくつくった処理法案が生きてこない。みんな骨抜きになってしまって、しり抜けで、結局被害を受けた者が泣き寝入り、こういうことでは、せっかくつくったものが何にもならない、こういうふうに思うのですが、この点どうですか。
  121. 床次徳二

    ○床次国務大臣 いまお話しになりましたような趣旨から、実は紛争処理法案ができておるのでありまして、ただおことばの中にありましたが、この紛争処理機関では大企業のほうに押されて、十分被害者の立場を代表し得ないのではないかというような御懸念が背景になっておったかと思うのでありますが、しかし先ほど来申し上げておりますように、八条機関でございましょうとも、委員会の独立性、独自性というものを徹底的に守ってやる、委員自体の責任遂行におきましても、支障のないように制限が設けられておるわけでございまして、全く公平な立場に立って結論を出し得るわけであります。なお必要とありますならば、専門家の意見行政機関の協力を得まして、十分検討いたしまして、公正なる結論は出し得るわけであります。しかしその出すことに対しまして、事業者並びに被害者というものが信頼してまかせるというところに、初めてこの紛争処理機関の役割りを果たし得る。したがって一般の訴訟よりも迅速に結論を出し得るのではないか、私どもかように考えておるわけであります。どうしても訴訟で争わなければならぬというような気持ちでありますならば、やはりそこまで行かざるを得ない、そこまで行きますと、また非常な手間もかかる、費用もかかるというわけであります。  ちなみに費用の点から申しましても、この紛争処理機関におきましては、でき得る限り安い経費をもちまして、公正な結論を出し得るように仕組んでおるのでありまして、当事者がそれぞれ負担をいたしますが、その他の経費に対しましては、できるだけこれを軽減すると申しますか、軽い経費でもってその目的を達し得るように、委員会を運営しておる次第であります。
  122. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 私は、三条委員会にしたらどういうところにマイナス面があるのか、これをひとつ聞きたいのと、それからこの法案を見ますと、双方の合意によらなければできない。一方から、こういう被害で困っておりますというように言っただけでは裁定もできない、こういうことでは非常に弱いのではないか。加害者被害者が両方とも仲裁をやってください、こういうふうにお願いに来た分だけがこれで処理ができる、そうでないのはできないというようなことではちょっと弱いのではないか、こういうふうに思うのですが、まず三条機関では準司法権あるいは準立法権を持っておりますから非常に強力ですけれども、そうすればなぜぐあいが悪いか、これをひとつお聞きいたしたい。
  123. 床次徳二

    ○床次国務大臣 今回提案いたしました紛争処理機関におきましては、八条機関で適正な仕事ができるということが、私は積極的な理由であると思います。大をもって小をも兼ねるというたとえがございますが、大でもいいじゃないかという必要は今日ないと私は考えております。  なお、この紛争処理が、仲裁と調停ということになっておるわけでありますが、仲裁におきましては、当事者が仲裁者を信頼いたしますならば、その効果は十分あがるのでありまして、仲裁判断というものは確定判決と同様の効力を持ち得る、したがって仲裁でもって解決し得る、非常に早く円滑に、やはりこれは所期の目的を達するわけであります。なお、調停におきましては、やはり相手がそれに応ずるならば結論が出てくるわけで、したがって、非常に早く処理ができるというところに、本紛争処理の大きな目的を達することができると思っております。  なお、訴訟とどう違うかという点につきましては、政府委員から申し上げます。訴訟によりまするとずいぶん手間がかかる。これが本法のほうが非常に社会的に役立つという意味において、提案をしておる次第であります。
  124. 橋口收

    ○橋口政府委員 民事上の紛争処理制度として、日本の憲法体制のもとにおきましては、裁判所による最終的な判断予定されておるわけでございます。したがいまして、民事上の紛争がありました場合に、一方の当事者の申し立てによって、当事者間にある利益関係というものを強制的に形成するというのは、これは裁判所にのみ許された権限でございます。したがいまして、先ほど御指摘がございましたような、一方の当時者の申し立てによって最終的に当事者の権利関係が確定するということは、裁判所による判断を除いては、日本の憲法のもとにおいては許されておらないわけでございます。今回予定いたしておりまする中央公害審査委員会なり審査会におきましては、これはあくまで行政上の制度でございます。したがいまして、行政機関の判断は裁判所の前審として行なうことは可能でございますが、最終審としての判断ということは許されておらないわけでございます。したがって、一方の当時者の申し立てによって最終的に判断が下り、しかもそれに当事者が拘束されるということは、遺憾ながら日本の憲法体制のもとにおいては許されておりません。したがいまして、仲裁につきましてはあくまでも当事者の合意に基づき、第三者の委員会なり審査会の判断にまかせるという態度をとりました場合に、これが確定判決としての効果を持つわけでございまして、これが基本的な制度の限界というふうにお考えいただきたいと思います。
  125. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 あなたはさいぜんから民事、民事と、だいぶ民事を強調されておりますけれども、これは公害罪も将来つくらなければいかぬというくらい非常に世論も高まってきておる。公正取引委員会だって、ぴしゃっと独自の権限で裁定を下すことができるのです。準司法的な権限を持っておる。この、たとえば仮称公害委員会、これがそこまでは持ってはいけないという根拠はどこにあるのですか。
  126. 橋口收

    ○橋口政府委員 刑事の問題と民事の問題は、あくまでも区別して考える必要があろうかと思います。公正取引委員会についてのお尋ねでございますが、独占禁止法違反の行為につきましての公正取引委員会の審決に対しましても、裁判所の判断を仰ぐことができるようになっておるわけでございます。したがいまして、われわれこの制度考えます場合に一番苦心いたしましたのは、最終的な判断をどこに求めるか、それとの調和をどういうふうにするかという点でございます。したがいまして、公害紛争処理法案におきましては、最終的には、いかなる制度をとりましても、裁判訴訟に行かざるを得ない、そういう大きな制約の中で、どういう制度をとるのが一番合理的であるかということを考えて、仲裁、調停等についての制度に限定をいたしたわけでございます。
  127. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 現実にたくさんの方がなくなっているのです。その企業さえなかったら、その水を飲まなかったら、あるいはその被害を受けなかったらなくならないのです。ただ民事で何とかかんとか言いますけれども、これは人命ですからね。だから公害罪もつくって刑事事件で取り締まろうというようないま世論のときです。ですから、準司法権を持った、準立法権を持った強力な三条機関にしなければ、ほんとう公害被害者は救われない。これはことばどおりだと思うのですね。八条機関にしたわけもいろいろあると思います。それを何とか話されたけれども、とても八条機関ではほんとう救済ができない。いかんとなれば、力関係が違う。普通の民事のように力関係が同じならばいいですけれども、あるいは裁判に持っていったのではかわいそうだ。これは力関係が違うのだから――まして人命なんです。そういう面から見ればこれは三条機関とすべきである、こういうように私は特に強調するのですけれども、もう一度大臣…。
  128. 床次徳二

    ○床次国務大臣 三条機関にいたしたらいま仰せになりました問題が解決できるのではなくて、本法におきましても、別途医療に対する救済措置法ができておりますが、そういう措置でもって人命に対しまして配慮をいたしますと同時に、しかし、裁判機関によって解決をいたす前に、別の方法といたしまして、適正な結論を出していくことが必要なんじゃないか、かような見地から、特に仲裁、調停という形にいたしまして解決の道をはかる。私は、これによりまして、むしろ御心配になっておるようなものがすみやかに解決できて、当事者に相当利益を与えるものと思う。ただ、おことばの中に、片方が強く片方が弱いのだというような、圧力関係を受けるのではないかというような御懸念がございましたが、この委員会におきましては、八条機関でありましょうとも、先ほど来申し上げておりますように、その大なる企業の圧力というものを受けないように、独立の権限を十分に保たしてあるわけであります。  なお、被害者の経済的な貧困な者に対しましては、訴訟よりももっと安い経費をもちまして、紛争処理申し出すことのできるように配意もしてあるということを御了承いただきたいと思います。
  129. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 こればかりやっておってもあれですが、もう一つ聞きますけれども、それで不服があれば裁判へ持ち込みなさい、こういうように先ほどから何べんもあなたは突っぱねるようなことを言っておりますけれども、被害者は非常に弱い。三条機関で決定して、そしてもしも裁判になれば、今度は国家がこれをカバーしてやって、そして裁判に持ち込めば、これは国家が保証すれば非常に強力な裁判ができますけれども、いまの状態で、あなたがやっているような考え方では、おそらく被害者救済できない。いかんとなれば、すでに実例がたくさんあるではありませんか。このイタイイタイ病、水俣病、これは普通の裁判へ持ち込んでおりますけれども、ほんとう費用を出すのにどんなに苦しんでおりますか。したがって、八条機関でも裁判、こうなるのならば、三条機関にして、あとは国家がその責任を持ってあげる、これくらいの強力なものを持つべきではないか、こういうように思うのですが、どうですか。
  130. 床次徳二

    ○床次国務大臣 ただいまお話がありましたように、この紛争処理方法をとりましても、裁判に訴える道は依然として残されておる。これは並行してできるわけであります。なお、その経費等につきましては、十分考慮して、安く処理できるようにしてありますが、なお過去におきまして全部が長くかかったではないかという仰せがありましたが、過去の事例におきましては、本法のごとき機関を利用する余地がなかった。そういうものがなかったために、過去におきましては全部が訴訟に参りまして、そして被害者におきましても長い間の苦しみをせざるを得なかったという形であります。本法ができました以上は、本法もひとつ活用していただきまするならば、裁判によって結論を得る以上に、やはり現実に即した結論が得られるのではないか。さような意味におきまして、本法の処理機関が大きく役立つものと私は考えております。
  131. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 話がずいぶん変わりますけれども、これは基地公害を本法から抜いた。これについての一連の関連のあることですが、ちょっと話がずいぶん飛躍しますけれども、四月七日、長官は、ランパート米高等弁務官との会談で、沖繩の米軍基地におけるジェット機騒音など基地公害の解決のための話し合いをし、意見が一致した、こういうような報道があるのですが、どういうことが一致したのか、これをひとつ伺いたい。
  132. 床次徳二

    ○床次国務大臣 本土におきましても、基地公害が非常に大きく取り上げられておることは御承知のとおりでありまするが、沖繩におきましては、基地公害の解決というものが、全部米軍の処置に依存しておるわけであります。今日、それぞれの処置を、たとえば学校の防音装置等もいたしてはおりますけれども、しかし、本土と比べるとかなり差があるように見受けられるのでありまして、したがって、学校の防音装置の例をとりますると、町村でもってもっとやりたいという場合におきまして、やはりその町村の財政に対して本土から協力いたしまして、これを徹底させる道が残されておると思うのであります。その基地公害に対して、本土から援助いたしまして、これを協力する道を開いたならばどうかということを考えまして、ランパート弁務官と話し合った次第であります。弁務官といたしましても、そういう問題を検討しようじゃないか、そういう申し出があったことを向こうも非常に喜びまして、今後検討いたしまして、基地公害の除去につきまして、日本側の協力を歓迎するという趣旨を述べておる。具体的の方法等に対しましては、今後とも話し合ってまいりたいと思っております。
  133. 赤路友藏

    赤路委員長 岡本委員に申し上げます。  内閣委員会が一時から再開されております。それで、床次長官はそちらのほうに行っていただきますが、質問は保留をしておいてください。いいですね。その保留分が済まない間は審議は終わらないのですから、その点はそういうふうに取り計らいますから…。
  134. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 厚生大臣がお見えになりましたので、厚生大臣にお聞きいたしますけれども、今度の公害に係る健康被害救済に関する特別措置法案につきまして、この全体を拝見いたしますと、まず初めに財源から申しますと、四十四年度の予算の総額、ここからひとつお聞きしたいのでありますが、いかがでしょう。あるいは事務費ですね。
  135. 武藤き一郎

    武藤(琦)政府委員 この関係予算は三千四百万円でございます。――厚生省関係予算は七億六千八百万でございまして、前年度に比べまして一億六千百万の増、二六%の増でございます。
  136. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 いま厚生大臣公害病認定した患者は何人いるんでしょうか。
  137. 武藤き一郎

    武藤(琦)政府委員 厚生省患者を具体的にいま認定いたしておりませんけれども、現在各地でそれぞれ地方公共団体認定しております数を申しますと、水俣では六十九名、それから阿賀野川では二十七名、それから富山のイタイイタイは九十三人、それから四日市は三百九十二名でございます。
  138. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 この私のほうの調査、これは自治省の調べですけれども、水俣病が九十六名、イタイイタイ病が百二名、四日市ぜんそくが三百九十二名、計五百九十名。なお、紛争処理関係を見ますと、このあとずいぶんおるわけでありますけれども、これだけの予算救済できるのか。どういうようにやって、どういうように救済していくのか、この具体例をひとつ示していただきたいのであります。
  139. 武藤き一郎

    武藤(琦)政府委員 本年度の予算が少ないではないか、こういうことでございますが、医療手当が十月から、それから医療費は十一月からでございまして、医療費につきましては、来年の三月の分は翌年度に繰り越しますので、医療費につきましては四カ月分でございます。それから、額が少ないようにお感じになりますのは、患者のいわゆる保険で見ない部分につきましてこの制度考えているから、予算的には少ないわけでございます。ただ、このほか、地方公共団体が持つ分、それから企業が持つ分がございますので、その点は、それをあわせてお考えいただきたい、かように思います。
  140. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 もうちょっとはっきりしないのですが、じゃ、企業が持つ分、それから厚生省が出す分、それから各地方公共団体が出す分、これで全部でどうなるのですか。
  141. 武藤き一郎

    武藤(琦)政府委員 本年度の半年分の総医療費なり医療手当は八千三百万でございまして、その分の半分を企業が四千一百万、それから国の分は一千四百万、県の分が一千四百万、市の分が一千四百万、こういう予算の事業ワクの予定でございます。
  142. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 これはあとで一ぺん計算してみますけれども、このあなたのほうの出しておる法案によりますと、医療手当支給し、入院している者については月額四千円、通院している者には二千円、寝たっきりでつきっきり看護を受けている者については九千円の介護手当とするというように出ておりますけれども、現実に病気になってイタイイタイ病なんかにかかっておる人に対しては、どのくらいの費用が要るか、御存じでしょうか。
  143. 武藤き一郎

    武藤(琦)政府委員 富山の例を申しますと、入院が大体六万二千円、通院が一万八千円という医療費の総額でございます。
  144. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 入院が六万円、それから通院が一万八千円ですか。これは私どものほうも調べておるのですけれども、そうした人に、まあ入院して六万円も要る人に、月額四千円しか渡さぬということになりますと、どういうことですか。
  145. 武藤き一郎

    武藤(琦)政府委員 私が申しました六万円なり一万八千円と申しますのは、医療費の総ワクでございまして、そのうちの、平均的に見ますと大体七割程度は、これは保険で見られているわけでございます。その以外の分につきまして、要するに企業と国と地方公共団体で持つということでございまして、ただいま四千円なり二千円という手当の問題は、この医療費とは全く別にそういう手当を差し上げる、こういうことであります。
  146. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 現実にこのイタイイタイ病患者入院しておる、そうして治療を受けておるのが、医療費は六万円、そのうち七割は保険から出ている、こういうことなんですね。そうすると四万二千円は現実に保険のほうから出ておる。そういうことになれば、あと残りが一万八千円だ、それに対して四千円を支給する、こういうことなんですか。
  147. 武藤き一郎

    武藤(琦)政府委員 保険で見ない部分につきましては、今度の法案によりまして国と地方公共団体企業で、その残りは全部お持ちする。それ以外に、いま医療手当という制度はございません、地方公共団体で行なっておりますのは。したがって、新たに医療手当を四千円、二千円差し上げるということで、それは、先生のお話しになった点とはまた別に、その点がプラスして給付が行なわれる、こういうことでございます。
  148. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 そうしますと、イタイイタイ病患者は、現在、入院が六万円要る、そのうちの七割は保険から出る、その残りは全額見る、それ以外に四千円出す、こういうことですか。
  149. 武藤き一郎

    武藤(琦)政府委員 そういうことでございまして、その四千円、二千円の手当も、それぞれ、いま私の申しました三者で負担をする、こういうことでございます。患者さんにはいままでよりも四千円、二千円が。プラスして給付が行なわれる、こういうことでございます。
  150. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 そうすると病気になると全部見てもらえると、こういうふうになるわけですね。そこで、六万円として、その七割四万二千円を保険で見ている、こういうことになりますれば、保険というのは相互に、国民が全部集めたものですね。そうしますと、原因公害によって発生した病気と一般の病気とが混同されている、こういうふうに思うのですが、その点どうでしょうか。
  151. 武藤き一郎

    武藤(琦)政府委員 まあ病気になります場合はいろいろ原因があると思いますが、公害病につきましても、これは原因者が大半の場合はわからないか、あるいはわかったというふうになりましても、なかなかその間に争いがあるという問題で、いわゆる費用を出すめどがなかなかっかまらない、こういう実態があるわけであります。したがいまして、こういう問題につきましては、一般の社会保障制度によって行なうべきではないかという議論と、先生がお触れになりましたように、何か特別の制度をつくったらどうかというような議論があるわけでありますが、その点につきましてはなお根本的に検討すべき点が――まあそういうような問題がございますけれども、現実医療にお困りになっている方に着目しまして、保険で見ない分につきましてこの制度考えたわけでございます。
  152. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 きょうはこの問題だけやりまして、あとは次にいたしますけれども、一つは加害者がはっきりした場合は、その分は加害者から取って、そして医療保険のほうに返す、こういうことになっておりますかどうですか。これは大臣にひとつお聞きしたい。
  153. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 はっきりいたしました場合には、その保険者のほうに加害者のほうが支払う、保険者が求償できるということになっております。
  154. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 そこで介護手当ですが、これは大体いま一日家政婦さんを雇うと二千円くらいかかる。九千円ということになりますと、非常にあとの金ができなくて困るのですが、これはどうでしょうか。
  155. 武藤き一郎

    武藤(琦)政府委員 東京のような大都会では、先生御指摘のようにお困りになるわけでございますが、この点は一応一日三百円で月に九千円ということでございまして、十二分とは考えませんけれども、他の制度との均衡その他を考えまして、一応考えたわけでございます。なおこの対象の支給につきましては、十分他の制度等の運用等も考えまして、手厚い方向で考えたい、かように考えております。
  156. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 運用によって手厚い方法で考えたいというのは、金額をはっきり明示しておいて、あとは何か現物給与か何かあるわけですか。それが一点と、それからもう一点は、四日市あたりの現実の姿を見ますと、一家の中心者が病気になる、そういう場合に、自分が働かないと一家の人たちを食べさしてはいけない。そのために、夜は休養室に入って寝ているのですが、昼になるとみんな働きに行っている。ぼくは、これ、みんなどこへ行ったんですかというと、みんな会社に行っている、あるいは漁業に行っている――これではほんとうに休養はできないし、また現実に病気をなおすわけにもいかないのですが、そうした生活保障といいますか、これがこの法案では欠けているように思うのですが、どうでしょうか。
  157. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 生活保障は生活保護法によってやってまいりたい、かように考えております。四日市の現状も私もよく知っておりますが、そういったために生活に困るという場合には、生活保護法によって考えてまいりたい、かように考えます。
  158. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 普通の状態で生活が悪くなったんではないわけです。公害という相手がある。加害者があるから被害が出たんですから…。そうしたものに対して、たとえば相当な生活をしていた人たちが一変して、御主人が病気になって入院しちゃった、それで収入が困る。いまの生活保護法の限度というものは非常に過酷ではないか。しかも生活保護法も先ほどの社会保険も、どっちかといえば社会保障制度みたいなもので、国民の皆さんのお金でやっているわけですが、そうすると加害者がはっきりある。これは裁判か何かでわかってくるわけでありますけれども、この法律案を見ますと非常に過酷である。したがって生活保護もやっぱりやっていかなければならない。この法案の中に盛り込んで、そうして生活保護もしてあげると、安心して病気をなおすほうに専心できるわけです。向こうへ行きまして、ぼくはいろんな被害者の方に会ってみましたけれども、中には、私さえいなかったらということで、自殺している人さえいるのですね。そういうような面を見たときに、これは仏つくって魂入れずというような状態ではないか。したがって生活保護もこの中に入れていく、そういうように、これはあとで話し合わなければいけませんけれども、修正もしていただかなければならぬ、こういうように思うのですが、その点どうでございましょうか。
  159. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 この法案の立て方は、損害賠償という考え方ではなくて、社会保障的な行政措置をさしあたってやるという考え方に立っておるのでありますから、したがって、あるいは狭過ぎるとおっしゃるかもわかりませんが、救済の範囲はこの程度に限るということにいたしたわけでございます。もしこれが損害賠償の先渡しというような考え方であれば、いまおっしゃるようなものも含めていかなければならぬということでありますが、公害公害源を与えるものが賠償をすべきだ、こういう立て方に立って考えているわけでございます。
  160. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 企業から二分の一をとる、そして基金をつくるというようなことをお考えのように見えますけれども、企業のほうも、そうして企業のほうで公害を出しているのだから、その賠償――何も出してなかったら、これはもう出さないのですから、だからそういうような考えのもとに、やはり基金を出しているわけです。ただ社会保障政策だけである、これはちょっと性格が違うんではないか。まだはっきりわからないけれども、こちらでも公害を出している、だから救済のために先に出す、こういうような観点から見れば、社会保障とは若干ニュアンスといいますか、壁ができるんじゃないか。こういう面を考えますと、やはりいよいよ公害とはっきりわかったという場合は、その企業からとって、そしてこっちに返すのであれば、はっきりと生活保護も保障ももっともっとしてあげるべきだ。しかしいまの生活保護を受けていらっしゃる方々は、これはこれでいいんだとはなかなか言い切れないところがほんとうにたいへんだ。急にこういう病気になった人たちのことを考えますれば、もっと前向きにここのところはひとつ検討してもらいたい。これはひとつ要求しておきます。  あと五分しかないですが、公害基本法には六つの公害と名づけられるものが出ているわけですね。この間から承ったところによると、九州の水俣病と阿賀野川と富山県と四日市と、これだけにしかこれは適用できないのか、あとの分はどうするのか、これをひとつお聞きしたいのです。
  161. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 こういった公害病患者認定をできるようなものが出てまいりましたら、逐次指定をしていく考えでございます。ただいま固まっているのが、いま申しました全部で四つ。しかしそういった類型のものが他のほうに出てまいりましたら、逐次広げてまいらなければならない。阪神あるいは京浜の汚染のケースから考えますると、それも早急にそういう事態がくるのではないか、かように思っております。
  162. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 広げていくということは、それに予算もつけていく、こう解していいと思うのです。現実に大原の交差点あたりを見ますと、何か酸素吸入のマスクみたいなものを買って非常にお金も要っている。そういうような人もいますし、また尼崎あたりにも、ぼくは現実に見てきたわけですけれども、亜硫酸ガスの影響ですか、ずいぶんたくさんの患者入院している。それもまだはっきり原因をつかめず、普通の健康診断で入っている、こういうことなんですが、これは逐次どんどん広げていく、こういう考えと見ていいわけですね。
  163. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 さようであります。
  164. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 では約束の時間ですから、きょうはこれはこれで打ち切りまして、あとはまた留保させてもらうことにいたします。
  165. 赤路友藏

    赤路委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時二十九分散会