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1969-06-06 第61回国会 衆議院 建設委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年六月六日(金曜日)     午前十時五十二分開議  出席委員    委員長 始関 伊平君    理事 天野 光晴君 理事 大野  明君    理事 金丸  信君 理事 草野一郎平君    理事 田村 良平君 理事 井上 普方君    理事 佐野 憲治君 理事 吉田 之久君       伊藤宗一郎君    池田 清志君      稻村左近四郎君    進藤 一馬君       丹羽喬四郎君    葉梨 信行君       廣瀬 正雄君    堀川 恭平君       森下 國雄君    山口 敏夫君       阿部 昭吾君    岡本 隆一君       金丸 徳重君    島上善五郎君       福岡 義登君    山崎 始男君       渡辺 惣蔵君    内海  清君       北側 義一君  出席国務大臣         建 設 大 臣 坪川 信三君  出席政府委員         建設政務次官  渡辺 栄一君         建設省都市局長 竹内 藤男君         建設省道路局長 蓑輪健二郎君         建設省住宅局長 大津留 温君  委員外出席者         警察庁交通局交         通規制課長   玉田 茂芳君         運輸省自動車局         整備部長    堀山  健君         建設省住宅局建         築指導課長   前川 喜寛君         参  考  人         (日本道路公団         総裁)     富樫 凱一君         参  考  人         (日本道路公団         理事)     片平 信貴君         専  門  員 曾田  忠君     ――――――――――――― 六月六日  委員伊藤宗一郎辞任につき、その補欠として  宮澤喜一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員宮澤喜一辞任につき、その補欠として伊  藤宗一郎君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 六月五日  自転車道整備等に関する法律の制定に関する  請願(山本政弘紹介)(第八一一七号)  同(三宅正一紹介)(第八二五四号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  建築基準法の一部を改正する法律案内閣提出  第一〇五号)  道路に関する件  都市計画に関する件      ――――◇―――――
  2. 始関伊平

    始関委員長 これより会議を開きます。  理事会の協議により、道路に関する件について調査を進めます。  この際、おはかりいたします。  本件調査のため、本日日本道路公団総裁富樫凱一君理事片平信貴君を参考人として御出席を願い、意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 始関伊平

    始関委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人からの意見質疑応答の形式でお聞きすることにいたしたいと存じますので、さよう御了承願いたいと存じます。     ―――――――――――――
  4. 始関伊平

    始関委員長 質疑の通告がありますので、これを許します。井上普方君。
  5. 井上普方

    井上(普)委員 五月二十六日に待望の東名高速道路全線開通をいたしたわけでございます。開通したときには、私どもも大きい喜びをもちまして開通式出席いたしました。大臣開通式にはにこやかなお顔ではさみを入れられるというような行事が行なわれたのでございますが、その後、東名高速道路におきましては非常に大きい事故が頻発いたしておるのでございます。その頻発しておる事故のうちで、道路公団側責任があるように新聞にも書かれておる、これらの点につきましてはどういう御認識を道路公団なり建設省側はお持ちになっておるか、ひとつこの点をお伺いいたしたいと思うのです。
  6. 坪川信三

    坪川国務大臣 お答えいたします。  最近の東名高速道路を中心といたしましての事故が頻発いたしておりますことは、まことに遺憾のきわみでございますとともに、憂慮にたえない次第でございます。  いま御指摘になりましたごとく、東名高速道路全線開通以後の事故発生状況を御報告いたしますが、五月二十六日から六月三日までの事故発生件数は八十件に及んでおります。そのうち、大井松田-御殿場間の事故件数は二十九件でございます。全線のおもな事故形態は、追突が十三件、車両以外のガードレール等への衝突が十九件、横転転覆が十三件、対車両接触が十一件。原因別で見ますと、ハンドル操作不適当が二十件、前方不注意が十件、速度違反が七件というような状況でございます。  また、東名高速道路都夫良野及び吾妻トンネル事故発生の実態とその措置について御報告を申し上げたいと思いますが、五月二十六日の東名高速道路開通後、都夫良野トンネル――延長千七百メートル――においては七件、吾妻トンネル延長三百五十メートルでございますが、このトンネル内で四件、計十一件、事故車台数が三十台の交通事故発生したようなわけでございます。大体交通事故発生の日は、五月の三十日、三十一日、六月の三日というので、それぞれ雨天日に生じているということの現象でございます。  また、原因について見ますと、摩擦係数が低いということ、内装の問題、運転技術の問題、あるいは前後の線形等が重なったものということが原因のおもなもあと考えられるので、六月一日からこの隧道の坑口手前に「速度落とせ」の標識を設置いたしますとともに、坑口付近を一車線にしぼると同時に、当面の処理としてトンネル内の舗装摩擦力を高めるために、六月二日、三日、都夫良野トンネル内に弗化水素酸液及びワイヤブラシによる処理試験的に実施いたしました後、六月四日より本格的に両トンネルに実施を始め、六日に完了する予定でございます。その間の作業については、交通量の少ない深夜を選びまして、交通を国道二四六号線に迂回させて作業を行なっております。  また、その他の原因対策等について今後調査を進める考えでございます。  もう一つは、高速道路における走行マナー、これらのPR状況でございますが、高速道路における走行マナーを高めるために、インターチェンジの入り口において安全走行のパンフレットを配付するほか、本線上の跨道橋に横断幕を設置しております。また、ラジオ等高速道路の情報を提供する際に、特に安全走行の方法についてもPRをしております。また、走行前の点検、二番目には制限スピードの厳守、三番目には急ブレーキ、急ハンドルの禁止、四番目には一、二時間ごとの休憩、五番目には車間距離の保持、これらの点に重点を置きまして、PRと、また走行マナーについての注意を促しておるような状況でございます。  また御質問について逐次お答えを申し上げたいと思います。
  7. 井上普方

    井上(普)委員 実はこの五月の二十六日に開通いたしまして以来、非常な事故発生いたしまして、特に都夫良野吾妻トンネル内における事故が相次ぎました際には、道路公団並びに建設省側はどうしているかというと、ただいま大臣が言われたように運転技術の未熟だ、あるいは疲労度の蓄積にあるんだ、あるいはまた運転マナーが悪いんだというような新聞発表がなされたのでございます。しかし、その後、あまりにも多いというので、当局側調べてみますと、路面工事欠陥があったということを新聞指摘せられるに至ったわけであります。そしてこの東名高速を間に合わすのあまり、走行テストも行なってない、スリップテストも行なってないということが新聞発表せられまして、これは国民ひとしく一大衝撃を受けたと思うのです。いままででございますれば、私も十三年間、いまでもハンドルを握っておりますが、交通事故といいますと、大体運転者が悪いというように見られがちであったわけなんです。しかし、道路管理者における責任というものがここではっきりと出てきたわけなんでございまして、特に都夫良野あるいは吾妻トンネル内におきましては、二十二件のスリップ事故があって、そして三十台も事故が起こる。かつまた、いままでに死者も何人か出ておるわけであります。これらを見ますと、この道路がすべるようにできている。新しい技術を入れたけれども、フランスサルビアシム工法というのですか、これは初めて道路公団が採用したけれども、それのスリップテストもやってない、こういうのでこの東名高速道路の供用を開始したという事実が新聞紙上に出ておる。これはほんとうなんでございますか。私は重大な問題を含んでおると思うのでございますが、いかがでございますか。
  8. 片平信貴

    片平参考人 道路公団片平でございます。  ただいま御指摘の、都夫良野トンネルにおける路面欠陥があったのではないか、それからテストを行なっておらなかったのではないかという御質問でございますが、このサルビアシムという舗装は、一年前の日本坂トンネル、それから薩た、静岡県内で行ないましたトンネル最初使いまして、その際にサルビアシム摩擦係数を測定しております。それでこれは大体八十キロのスピードで〇・三から三八くらいの摩擦係数が出る。それでこれは安全であろうということで施工いたしました。それで幸いにして日本坂その他のトンネルにおいてはいままでそういうために事故は起こっておりません。それから今回の都夫良野トンネルにつきましては、正式の走行自動車によるテストではなくて、ポータブル摩擦係数測定器テストをやっております。それでこれはやはり〇・三以上出ております。したがって、八十キロで〇・三という数字でございますが、これは御承知と思いますが、スピードが百キロになりますと、〇・三の――舗装の種類によっても違いますし、タイヤによっても違いますけれども、八十キロから百キロに上がりますと、摩擦係数が減ってまいります。百キロになると、たとえば〇・二八とか二七に減ってくる。百二十キロになるとさらに減ってくるという現象がございます。それで、われわれの道路全体の設計に使っております摩擦係数数字は、大体百キロで〇・三くらいのものを目標にしまして、見通し距離とか、そういうものを設計しているわけでございます。  それで、今回の場合に原因がいろいろ考えられると思いますが、前後の道路がわり曲線半径が小さな半径であること、それから特に雨等の場合には、曲線半径が小さくて勾配があるということで速度を押えてきて、トンネル内で少し安心感を持ったのではないかというふうにわれわれは判断しているわけですが、この問題につきましては、実際にその事故が起こったときにどのくらいのスピードで車が走っていたかということを確実に記録しておりません。それで、今後あそこのトンネルを使いまして、あの前後の道路スピードと、それからトンネル内でどのくらいのスピードが通常出ているか、それから車頭間隔がどのくらいあるかということを調査したいと思っております。  なお、いまのすべりの問題につきましては、先ほど大臣からお話がございましたように、きのうときょうと二日で全部さらに摩擦係数を上げる工法をやりまして、けさ報告によりますと、八十キロで〇・四から四三五ぐらいの数字に上げることができました。この摩擦係数は、トンネル以外のほかのアスファルト舗装に比べますと、それよりも少し高いくらいの数字になったと思いますので、これでしばらく様子を見たい、こういうふうに考えております。しかし、いずれにしても、あそこのトンネルで再三において事故を起こしたことは、たいへん申しわけなく思っております。今後あらゆる手段を講じて、事故がないように処置することを真剣に考えたいと考えております。
  9. 井上普方

    井上(普)委員 道路局長に伺いますが、この摩擦係数というのは大体どのくらいなければいかぬということは、道路構造令規定されておるものでございますか。
  10. 蓑輪健二郎

    蓑輪政府委員 特に道路構造令では規定しておりません。ただ、現行の道路構造令でいいますと、設計速度というものがありまして、その設計速度は普通の場合は大体六十キロ程度でございますが、それに合わしてすべてのものを安全につくるという考えでやっているわけでございます。
  11. 井上普方

    井上(普)委員 構造令にこの摩擦係数がない、しかも六十キロで大体設計しておるというお話でございますが、都夫良野トンネルにいたしましても、また吾妻トンネルにいたしましても、制限速度八十キロになっているはずです。八十キロでございますから、かなり高い摩擦係数がなければならないと思う。ところが、新聞に、現場の係官が、サルビアシム工法によってやった道路がプラスチックの膜をかぶったようになっておって、そして摩擦係数も〇・四なければならないのが〇・三以下になっているということを発表しているのです。この点はどうなんですか。  それから、いまのお話でございますと、百キロで〇・三あるように設計がなっておるのだというお話でございますが、百キロで〇・三でありましたならば、八十キロではもっとあるはずだと思うのです。おそらく〇・四、先ほどあなたのおっしゃったぐらいの、いま直したぐらいの摩擦係数が出てこなければならぬと思うのです。そうしますと、あなたのおっしゃっておる八十キロの場合に、摩擦係数というのは、つくった当時においてはもっと低かったのではございませんか。私はこの新聞記事をずっと拝見いたしてみますと、明るいところから暗いところに入ったので、照明で目がなれなかったのだろうとか、あるいはまた、何が悪かったのだろう、技術が悪かったのだろうというようなことばかりを最初はおっしゃっておられる。事件がどんどん発生してくると、これは調べてみなければならないということでお調べになったはずなんです。まことに無責任といわなければならないと私は思うのです。しかも、こういうような事件が起こったならば、必ずどこに責任があるかという責任の追求が行なわれるべきはず、刑事上の責任が起こってくると私は思うのです。ところが、そのトンネルの中において、道路路面を直す前に、摩擦係数が一体幾らあったのかということをあなた方はお調べにならずに直してしまった。としますと、一面からいえば、これは証拠隠滅ということにも相なりかねないと思うのです。(「罪人扱いだ」と呼ぶ者あり)これはまさに罪人扱いですよ。国家賠償法規定を適用すべき事件がたくさんあるのですよ。道路構造上悪ければこれは直さなければいけないのです。その際には、まずトンネルの外で試験するのと、トンネルの中において試験するのとは、トンネルの中は湿気の関係とか、気温の関係とか等々ありまして、外と内との間においてはこれは路面構造が違ってきておると思うのです。同じ手法をもって仕事をいたしましても当然違ってくると思うのです。あなたが技術屋でありましたならば、これくらいのことは技術屋の良心でわかるはずなんです。そうでしょう。それを、トンネルの中における試験も全然やらずに、テストもやらずに直してしまったというのは、一体どこの――急くあまりとおっしゃいますが、責任回避といわれてもしかたないと思うのですが、どうでございますか。
  12. 片平信貴

    片平参考人 ただいま私の説明がちょっと――もう一度正確に申し上げます。  われわれの道路全体の見通し距離設計する場合の根拠といたしまして、縦方向摩擦係数は、これは雨が降っているしめったときでございます、八〇キロで〇・三というのを大体基準にしてとっております。これはまたスピードが違いますともちろん変わりますけれども、八〇キロでは〇・三の摩擦係数十分見通し距離がとれるようにということで設計しております。したがって、構造令摩擦係数規定がないということ、それは確かにないのでございますけれども、前方にものを認めて、そしてブレーキをかけてとまるという距離を計算するためには、八〇キロのスピードで〇・三という係数を使っているわけでございます。したがって、逆に申しますと、しめった状態で道路摩擦係数は〇・三以上ないといけないということは、まず申し上げられると思います。  それから、いまのトンネルの中の摩擦係数の問題でございますけれども、都夫良野以外の、静岡でやりました、これもトンネルの中の舗装でございます、外の舗装ではございません、それでやはり〇・三八から〇・三五くらいの摩擦係数サルビアシムを使った場合あった、こういうことでございます。  それから都夫良野トンネル自体につきまして、事故発生につきまして摩擦係数調べてみたところが、最低は〇・三ちょっと、大体〇・三以上の摩擦係数があった、こういうことになりますと、やはり八〇キロ以上のスピードか、そういうオーバーではないだろうかとわれわれは判断せざるを得なかった。しかし、あそこのトンネル場所そのものが八〇キロ以上のスピードが自然に出るような――と申しますと、われわれは幾ら八〇キロに制限いたしましても、周囲の環境でどうしてもスピードが出るというような状況にあったとしますと、これは一日も早くもう少し高い摩擦係数に直さなければいけない、こういう考え方がわれわれの考え方であったわけであります。それで急遽摩擦係数を増した、そして、けさの結果を申しますと、八〇キロで〇・四三五というような数字が出たから、まず百キロ程度のもので走ってもだいじょうぶなんじゃないか、こういうふうに判断した、こういうことでございます。
  13. 井上普方

    井上(普)委員 あなたは、先ほども、正式の試験はやらなかった、試走はやらなかったけれども、ポータブルでやったと言われたが、それはどういうことでございますか。
  14. 片平信貴

    片平参考人 正式の試験と申しますのは、大型のトラックを改造したようなものに車輪がついておりまして、それを八十キロで走らせまして、それでその車輪ブレーキをかけて摩擦係数をはかる、こういう設備でございます。それからポータブルのものというのは、ちょうど振り子が動くようなもので、その振り子路面の表面を摩擦いたしまして係数をはかるという、わりにハンディなものでございます。それは、実際の車両走行テストとそのポータブルのものとの間にはある関係がございまして、大体の見当をつけることができる、そういうものでございます。
  15. 井上普方

    井上(普)委員 それで、係数とかなんとかおっしゃいますけれども、事故が事実吾妻トンネル都夫良野に集中して起こっておる。これは工法上のミスであるということは私は否定できない事実だろうと思うのです。ところが、それを正式に調べずして、すなわち、あなたの言う正式な試走によって調べることなく、いきなりポータブルでやったこと自体にも私は一つの問題があると思うのです。さらにはまた、一体事故があれだけ相次いだあとで、正式にお調べになったのでございますか、どうなんでございますか。
  16. 片平信貴

    片平参考人 ただいま申しました、修理前の八十キロで〇・三というのは、走行車を走らして測定した結果でございます。
  17. 井上普方

    井上(普)委員 そうしますと、いままでの朝日新聞なり毎日新聞記事というのは誤りであったと考えて差しつかえないのでございますか。朝日新聞がここにもございますが、あなたもお読みいただいてけっこうでございます。(「新聞必ずしも真実ならず」と呼ぶ者あり)間違っておるならば正さなければならないし、どうなんでございます。
  18. 片平信貴

    片平参考人 ここにたしか〇・三と書いてあると思いますが、それは間違いじゃないと思います。〇・三以上あればいいわけでございます。
  19. 井上普方

    井上(普)委員 「不十分だったテスト」と書いてございますが、この点はどうでございます。
  20. 片平信貴

    片平参考人 それは、開通をする前は、いまのポータブルのものではかった、それが大体〇・三以上あるという係数にあったということでございます。そういう意味から申しますと、本来なら、開通をする前に走行車を走らしてテストすればよかったのかもしれません。しかし、通常の場合、ほかの、トンネル以外のところでも、全線にわたって摩擦係数をはかるということは実はいたしておりません。それは、摩擦係数アスファルト配合とか、そういうもので大体きまってくる。ですから、同じ配合のものについて一度テストをやれば、そんなに変わった数字は出るはずがない、こういうことも事実でございますので、必ずしもテストをしなかったことが手抜かりであったということではないけれども、これだけ事故が起こったということになりますと、やはり走行車でもテストしておったほうがより正しかった、こういうふうに考えます。
  21. 井上普方

    井上(普)委員 新聞には、おたくの公団塙克郎技術課長さんはこうおっしゃっておられます。  「フランスからはスリップ防止に役立つと売込んできた。しかし二月ごろ、すべり摩擦試験車を走らせたところ、この工法フランス側のいい分とは逆なことがわかり、テストが不十分なまま採用したことを後悔した。問題になっている二つトンネルは、五月二十六日の開通に間に合うように必死で仕上げたもので、試験車を走らせる余裕もなかった」、こういうととが六月五日の朝日新聞に出ているのです。これはどうなんです。このとおりなんですか。それともこの新聞記事誤りなんですか。どうなんです。ひとつお読みになって御答弁いただいてけっこうです。
  22. 片平信貴

    片平参考人 塙技術課長はこの工事を直接担当しておりません。むしろ一般的な技術の検討をやっている課長でございます。それで、この新聞記事につきまして塙技術課長に聞きましたところが、〇・三という摩擦係数はどんな摩擦係数であるかということを聞かれたことは間違いない。それから、サルビアシム工法については、御本人はサルビアシムという工法そのものを存じておらなかったそうでございます。したがって、サルビアシム工法については存じ上げないという御返事をしたと彼は言っております。したがって、サルビアシム工法云々につきましては現地その他の取材ではなかったか、こういうふうに感じられます。  なお、塙技術課長は、「フランスからはスリップ防止に役立つと売込んできた。しかし二月ごろ、すべり摩擦試験車を走らせたところ、この工法フランス側のいい分とは逆なことがわかり、テストが不十分なまま採用したことを後悔した。問題になっている二つトンネルは、五月二十六日の開通に間に合うように必死で仕上げたもので、試験車を走らせる余裕もなかった」この最初の「フランスからスリップ防止に役立つと売込んできた。」という記事でございますが、これはこの二月ごろに売り込んできたのではございませんで、売り込んできたというよりも、われわれが静岡で去年の四月オープンしたときのトンネルサルビアシムを使っております。で、これは決してその「スリップ防止に役立つ」という売り込みではございません。白くなる。しかし摩擦係数についてはそう違わないであろう、こういうことで使いまして、しかもそれについて、では新しい工法であるから摩擦係数がどうであろうかということをテストしております。その結果は〇・三八程度摩擦係数が出ている。そうしますとこれは問題じゃないということで、静岡県では使っております。その後この都夫良野トンネルにこのサルビアシムが使われた、こういういきさつでございます。したがって、この辺については、塙君は、サルビアシムは知らないという返事をした、こういうことを言っております。  それから「テストが不十分なまま採用した」この項目も、テストが不十分というよりも、むしろ静岡でわれわれはテストをしておるということでございますので、何か少し差がありそうな気がいたします。確かに、試験車を走らせなかったということは事実でございます。
  23. 井上普方

    井上(普)委員 新聞記事には塙技術課長がしゃべっていないことが出ておったと公団側はおっしゃっておられますが、私はどうも――最初のこの公団の御発表は、これはルクスの関係であるとか、あるいは運転技術の問題であるということが言われておった。ところが、その後相次ぐ事故によって、今度は、工法上において、吾妻トンネル、それから都夫良野におきましては非常にこういう事故が出ておるので、調べてみると、プラスチックみたいなものが上にかぶさっておるのでスリップが多くなったんだというような発表になってきたわけです。そこであなた方もあわてて昨今あのトンネル内の道路を傷をつけ摩擦係数を多くしたのじゃございませんか。もしあの中における摩擦係数が低くて、八十キロで車間距離――車間距離もまた警察に聞けばよくわかるのでありますが、運転手には適当な距離としか大体規定されておらないわけなんです。スピードが八十キロであれば八十メートル車間距離を置けということは法的には認められていないと私は思うのです。あるいは百キロのときには百メートル置けということは道路交通法ではきめられていないと思うのです。これは運転手の技術としてやられておるのです。まあ高速道路におけるマナーとしておたくのほうはそういうことをおっしゃっておる。しかし、あなた方が八十キロのときには八十メートル車間距離を置いてくれということを指導されておって、それがそのとおり走っておってスリップ事故が起こって追突し、人間が死んだ、あるいはけが人が出たということになると、道路管理者としての責任が出てくると私は思うのです。そこで、道路管理者としての公団側は、このいままで二十二件にも及んでおる事故に対して一体どういう責任を――少なくとも見通しが悪かったから、都夫良野はこれは最終的に運転手の責任でございますか、あるいは道路構造上の問題なのか、あなた方はどういうふうにお考えになるのです。ひとつ総裁の御答弁をお願いしたいと思うのです。
  24. 富樫凱一

    富樫参考人 世銀のベルガーさんが見えておりましてその話がありまして、おくれまして申しわけありません。  東名高速道路が全通いたしましてから、都夫良野トンネル付近の事故が多くなりました。御説明申し上げたかと思いますが、大井松田-御殿場開通いたしましてから六月三日までに二十九件の事故がございますが、十八件はトンネルの中の事故であります。この原因をいろいろ調べておるわけでございますが、事故の当時警察の調べた結果では、それぞれハンドル操作の不適当あるいは車間距離の不保持等がございますが、このうちで不明というのが七件ございます。スリップはスリップで事故原因としてあがっておりますが、不明というのが七件ございまして、この不明のうちには、路面のスリップがあるいは原因ではないかと考えられるものがあるわけでございます。この事故は、おそらく、自動車自体の整備そのもの、あるいは運転の技術ということも関連いたしましてスリップということも関係しておるのではないかと考えるわけです。先ほど来御説明申し上げておりますが、道路のほうはアスファルト舗装トンネルの中はサルビアシムをかけておる。これは数年前からやっておりまして、首都高速でもトンネルの中はサルビアシム舗装を使っております。これはトンネル内の照明効果をあげるために使っておるわけでございますが、特に高速道路につきましては摩擦係数ということが問題になりますので、先ほど片平理事が申し上げましたように、日本坂トンネルにおきましては十分テストということをいたしたわけでございます。都夫良野トンネルにおきましてはテストがしてなかったじゃないかということが新聞でもいわれておりますけれども、これは先ほど片平理事が申し上げましたように、日本坂トンネルと同じものを使っておりますので、さらにテストということをしなかったわけでございますが、これはテストをしておいたほうがよかったと思います。そして期限が急がれておったのでテストはやめたということが新聞に出ておりますけれども、東名高速道路の全通を支配した工期は都夫良野トンネルではなくて、そのほかのトンネルが工期を支配したものでございますから、私は、都夫良野トンネルは工期を急いだためにテストをしなかったのだということはどうも当たらぬ話であると思います。事実はよく調査いたすつもりでおりますけれども、そういうことはないはずであると考えます。  それで、先ほどの七件ほどの不明の事故があり、この不明の事故の中には、路面のスリップ、摩擦係数の少ないためのものもあろうと思いますので、まずとりあえずこの摩擦係数を増す仕事を急遽やったわけでございます。これは前の仕事の欠点を隠すためにやったというようなことは毛頭ございませんので、もっぱら交通の安全のためにやったわけでございます。先ほど来申し上げておりますサルビアシム舗装でも少なくともそれだけの摩擦係数はあるわけでございますけれども、現実に事故を起こしたということは、ほかの道路摩擦係数より少ないということでございますから、それよりよけいにするということは道路管理者の義務ではないかというふうに考えて実施いたしたものでございます。なお、これで十分とも思いません。さらによく調査いたしまして、特に交通の動態を調査いたしまして、それに合うような措置を講じたいと思っております。単に摩擦係数のみならず、トンネル内の照明あるいは前後の地形あるいはその地点の気象等も影響するわけでございますので、それらも研究いたしまして、構造面ではかれる交通の安全は十分に考慮していきたいと考えます。
  25. 井上普方

    井上(普)委員 公団総裁から承りますと、責任公団側にはないのだというようなお話でございます。また一般にも、ドライバーがむちゃな運転をするのだというような考え方が横溢いたしております。しかし、一昨々年でありましたか、警察もおられますが、いままでは運転者が悪かったのだというような事故でも、当たり屋というようなものがあって、わざわざ自分で車にぶち当てて補償金を取り上げておったというような事実もあるわけなんです。  この場合に、私は言いたくはないのでございますが、総裁、中央高速道路におきまして小仏トンネルというのがございます。あそこで自動車がすれ違った場合に、ガラスにひび割れがして相当いたんだということを私ら承っておるのですが、それは一体どこに原因があるのですか。すれ違っておるときに自動車のガラスがひび割れしたのか、そこらあたりの事実を御存じでございましたら、何件ございましたか、ひとつお伺いしたいと思うのです。
  26. 富樫凱一

    富樫参考人 中央高速道路でフロントガラスにひび割れがいったということを二度ほど聞いております。これはトンネルの中ばかりではなかったように思うわけでございますが、この原因が何であるか、いまだに不明でございます。
  27. 井上普方

    井上(普)委員 総裁、二度だけじゃございませんよ。私が聞いておるのは、トンネルの中では三十件近く起こっておるわけです。それに、そこらあたりはまだお調べになっていない、どういう理由で起こったのかわからないというのは、一体どういうことでございますか。少なくとも世界に誇る高速道路をつくろうという道路公団でございますならば、十分にその付近の御研究をされてしかるべきだと思うのです。二件ほどというが、私らが聞いておるのは、まだまだ、三十件近くも起こっておる。これらの事故の究明をやっておらないのじゃありませんか。たとえ一件でありましても二件でありましても、自動車がすれ違ったためにひび割れがいったというのは一体どこに原因があるかということをお調べになる必要があると思うのでございますが、それをやっておらぬというのは怠慢じゃございませんか。どうでございますか。
  28. 富樫凱一

    富樫参考人 私の承知しておりますのは、さっき申し上げました二件ほどでございます。これの原因は単に力学的な問題ではなさそうでございます。力学的にいろいろ研究いたしましたけれども、割れる原因は見当たらないわけでございます。何の原因か、これは外国でも例があるそうでございますが、これも原因がよくわからない。どうしてそういうことになるのか、ガラスの性質にもよりましょうし、また当時の気象条件にもよりましょうし、スピードにも関係するかもしれません。非常に複雑な内容を含んでおりますので、わかりませんが、これは今後検討を続けていきたいと思っております。
  29. 井上普方

    井上(普)委員 それじゃ道路公団は、いままで小仏トンネルの中における事故は二件だけであった、こう認識されておるのでございますか、どうでございますか。
  30. 富樫凱一

    富樫参考人 そういう事故報告公団のほうに来ておりません。
  31. 井上普方

    井上(普)委員 実はここに山梨県選出の国会議員が二名おられるわけです。お伺いしますと、いずれも三十件近く起こっておると言われておるわけなんです。これが二件というお話でございますけれども、私らもふしぎに思う。いやしくも山梨県から出てこられておる方々はいつも身近に選挙民と接触せられておる方々でございますので、そういう事実はあるのでございます。報告がないということでございましたならば、これまた現地の怠慢か、あるいは研究不足であると私は思う。しかも複雑な要因が重なること、これまた私もわかります。わかりますけれども、何ゆえかというのは、日本の技術をもって少なくとも世界の最高水準の高速道路をつくっておられる道路公団としては、それくらいの事故の究明ができぬはずはないと私は思うのです。これをやられておらないというのは、私はどうもふかしぎでならないのでございますが、もう少しこういう研究をなさる熱意を示していただきたい。これが一つです。  それから、現地における事故というものは細大漏らさず公団本部にわかるようにしていただきたいのです。総裁のお耳に二件しか入っていないといいますけれども、現地においてはたくさん起こっておるのです。この事情を私はあえて追及はいたしませんけれども、こういう問題がたくさん起こっておるのですから、ひとつ御注意になっていただきたい。  さらにはまた、都夫良野吾妻の問題にいたしましても、道路構造上全然問題がないようにおっしゃいますが、日本坂トンネルにおいては事故が起こっていない、ところが、こちらのほうにおいてはたくさん起こっておる、これは一体どこに原因があると思いますか。日本坂トンネルのほうが長いのでざごいましょう。それがこちらの都夫良野とか吾妻トンネルにおいて事故が起こるのは、一体どこに原因があるとお考えになりますか。総裁のほんとうのお気持ちをお聞かせ願いたいと思います。
  32. 富樫凱一

    富樫参考人 中央高速道路において起こりますガラスのひび割れの問題は、十分に注意して検討いたしたいと思います。  それから都夫良野吾妻トンネルにおきます事故につきましては、先ほど申し上げましたように、原因不明の七件のうちには、路面摩擦係数の少ないために起こったものがあるのではないか、それは八十キロというスピード自体に対してはいいけれども、ほかの道路に対して幾らか少ないのではないか、こういうことから、摩擦係数を増す仕事をしたわけでございますが、これは私のほうは改良すべきところがあると考えておるわけでございます。さらに今後の状態を見まして、構造上の改良は十分にいたしたい、かように考えております。
  33. 井上普方

    井上(普)委員 総裁のお人柄が御答弁でよくわかるのでございますが、でございますと、都夫良野とかあるいは吾妻で起こった事故に対しましては、公団側はどういうような責任をおとりになるおつもりでございますか。道路構造上の欠陥が七件の中にあったとしますと、これは構造上の責任として国家賠償法責任があると私は思うのです。そこらあたりどういう御処置をいままでとってこられたのか、今後とられようとするのか、この点をお伺いしたい。  もう一つ、警察当局にお伺いしたいのでございますが、先ほども申しましたように、とかく運転者が悪いんだ、ハンドル操作にあやまちがあるんだ、あるいは車間距離をとらなかったのじゃないかというように現場の警察官はものごとを見がちでございます。でございますから、この都夫良野あるいはまた東名高速道路におけるところの事故につきまして、詳細にもう一度調査し直してほしいと思うのです。この点をひとつお伺いいたしたい。特に、先ほども申しましたように、私も十三年間ハンドルを握っておりますが、事故を起こすと、運転者が悪いんだと頭からきめつけてかかる態度が警察官にはありがちであります。しかし、東名高速道路の場合におきましては自動車だけしか走らないのでありますから、この点を十分に解明していただくことが、日本の道路交通上の事故を少なくするゆえんでないかと思いますので、お伺いいたしたいのです。警察当局に対してもう一度御検討をお願いいたしたいと存ずるのであります。  さらに、運輸省におきましても、きょうの毎日新聞によりますと、コロナとブルバードの自動車が、ハンドルブレーキの点と気化器の連結パイプにねじがゆるみやすいという構造上の欠陥があるということを、日本でなくて、アメリカにおいて指摘せられて、運輸省はこのコロナとブルーバードに対し部品の取りかえを急げということを申されておるわけです。でございますので、いままで大資本に対しまして非常に甘かった運輸省といたしまして、あるいは政府といたしまして、一つの大きい前進じゃないかと私は思いますが、これが日本において発表せられずにアメリカにおいて発表せられて、日本でこれがあとから追認せられるという形がとられたことに対しましては、私ははなはだ遺憾の意を表明せざるを得ないと思うのです。しかし、運輸省におきましてもこういうような欠陥指摘せられておるのでございますが、警察当局におきまして、こういうような自動車自体欠陥がある場合も、これまた運転者責任となっておるようでございますが、ブレーキに故障がいつ起こるかもわからぬというような部品をつけておった場合、個人に対して責任を負わすというのは酷であろうと思うのでございますが、この点、道路交通法上どういうように責任をとらされるおつもりか。あるいはまた、東名高速道路における事故の際に、コロナあるいはまたブルバードによる事故原因がここいらにも大きくあったのじゃないかと思いますので、ブルバードあるいはまたコロナの事故件数、最近一カ月ぐらいでよろしゅうございますが、それの事故件数を、いますぐに報告しろといっても無理でございましょうから、早急に私どものほうにお知らせになっていただきたい。と同時に、責任が自動車にある場合、新品を買ってそのまま乗っておって交通事故が起こる、自動車の欠陥によって起こるというような場合には、一体だれが責任を――いままででごさいましたならば、運転者責任がかぶさってくることになっておるのでございますが、これを変える御意思があるかどうか、製造会社のほうに責任を転嫁させるようなおつもりがあるかどうか、これをひとつお伺いいたしたいと思うのです。
  34. 富樫凱一

    富樫参考人 いままでトンネル内で起きました原因不明の七件につきましては、さらに事実関係を究明いたしまして、道路の瑕疵によるものと判断されますれば、国家賠償法による補償をいたさなければなりません。ただ、不明の分につきましては、それを実証することがはなはだ困難ではないか、いろいろの原因が積み重なっておるように思いますけれども、さらに事実関係を究明いたしたいと存じます。
  35. 玉田茂芳

    ○玉田説明員 東名高速道路で起こっております事故が、トンネルその他道路の場所的な特徴等も見られるようなものも多いわけでございますし、それからあの地域の気象状況あるいはあの付近におきます交通の特性、そういったこともいろいろ重なって起こったのではないかと思うわけでございますが、これらの事故分析につきましては十分詰めてまいりたいと思っております。現在までのところは、まだ路面状況のほかに、運転者スピードオーバーあるいは居眠りといったような運転マナーとの関連があるようでございまして、悪条件が重なっているというように見られるわけでございますが、さらに交通事故分析を進めまして原因の究明をいたしたいと考えておるわけでございます。  それから自動車の性能、保安に関する点につきます運転者責任の問題でございますが、私はこの所管でございませんので明確にお答えできないわけでございますが、これにつきましては交通局におきましても十分検討させていただきたいと存ずるわけでございます。
  36. 堀山健

    ○堀山説明員 コロナ、ブルーバードの問題でございますが、コロナにつきましては、外国にコロナを出しております日本の商社、トヨタの職員が、車を社内的にいろいろ試運転しておる間に、ブレーキパイプの一部あるいはブレーキパイプの補強装置の一部に不十分な点があったと認められるということで、これを取りかえようということになったわけでございますが、対米輸出しておる車と日本で売っておる車は若干構造は違いますけれども、その部分については同じであります。ただ、これで直接事故になった例は、国内におきましても外国でもないということでございます。ただ、そういうことをすることがよりよくなるのだということで、できるだけ早く交換をしたいという申し出があった。  それからブルーバードでございますが、これは四十三年の十一月に火災事故を起こしました。これは気化器とそれをつなぐパイプとの間の部分に弱点がございまして、これを補強する必要があるということで、その部分についての手当てをするということで、これについて全数をいま追跡して回収をしておる、こういう段階でございます。一つは、ブレーキについて、特に塩害のあるようなところについては、新しいパイプをつけなければ保証しにくいという点と、もう一つは、ブルーバードについては実際に火災事故があった、したがってそれに対して手当てをする、こういうことでございます。  したがいまして、コロナ、ブルーバードを含めまして、その他の車についても、こういう欠陥があるということを私ども承知してないもので、そういうものがあるといけませんので、総点検をいたしまして、すべての車についてそういう欠陥なりあるいは改造を要する部分について早急に処置をしたいということを考えておるわけでございます。  東名につきましてコロナ、ブルーバードが直接どういう事故があったかということにつきましては、いまの段階では私ども直接承知しておりませんので、今後警察、道路公団その他からの情報を聞きましてそれぞれの処置をしたいと思います。  それから、車両欠陥によって事故があった場合に、メーカーに責任を持たせることができるかどうかということでございますが、従来の考え方でございますと、欠陥があって事故があった場合には、メーカーあるいは販売会社が補償するといいますか、金額その他、方法はいろいろあると思いますけれども、そういうのが実例どはないかというふうに私ども記憶しております。
  37. 井上普方

    井上(普)委員 私は、いまの、知らないところは知らないという御報告でいいと思います。ひとつ後ほど御報告していただきたいと思うのですが、納得のいかないのは運輸省の自動車局整備部長お話しなんです。私は、ここは建設委員会でございますので言いたくはなかったのですが、あなた方はこれがひそかに交換せられておることも御存じなかったのでしょう。コロナにおきましては、これが国内販売で五十六万四千台売られておるのですよ。ブルーバードにおきましては十万台が売られておるのです。そしてそれの四〇%ないし六〇%はひそかに交換せられておる。しかもそれは使用者側から金をとってかえているのですよ。私が自動車を持って、おかしいからといって整備工場にまいる、日産あるいはコロナの自動車会社に持ってまいりましても、直すときには銭をとられておるのですよ。そして交換せられておるのです。これは運輸委員会の仕事ではありますけれども、交通事故と大きい関係がある。ブレーキパイプが腐りやすい状況で、事故が起こらないはずはありませんよ。あなた、自動車に乗っていますか。私は十三年自動車に乗っている。こういうことが起こりやすいのです。これはまさに、運輸省は一体自動車メーカーに顔を向けているのか、国民の側に顔を向けているのかわからないと言っても差しつかえないと思う。しかもアメリカに言われて初めて日本の運輸省が動き出すがごときは、大きな国辱問題ではありませんか。あるいはまた、国民自体に対して一体運輸省はどういう責任をとるのか、まことに不明確と言わざるを得ない。これは、自動車局の整備部長でございますので、特にあなたが責任者だから、お伺いするんだ。これで事故が全然起こらなかったということは、警察の怠慢か、警察がそこまでの発見ができなかったことにも私は原因があると思うのです。特にこういうような点につきまして、あなた方ももう少し真剣に国民の健康、あるいはまた生命というものを中心にして運輸行政を行なっていただきたい、このことを一つ強く要望するものです。  同時に、警察におきましても、自動車の不備で運転者責任でない場合でも、これが運転者責任になることの可能性が非常に多うございますので、この点はもう少し内部においても検討せられて、自動車メーカーのほうばかりに顔を向けるような運輸省を相手にせずに、国民自身に責任が持てるような法体系をつくられることを心からお願いいたすものでございます。  と同時に、先ほども申しましたように、三十件近い東名高速道路事故につきましても、原因究明が困難だというのでありましたならば、公団自体に問題があったのだから、ひとつ公団側においてあたたかい処置をとっていただきたい。同時に、ハンドルの操作であるとか、あるいは車間距離に問題があるというような警察の報告でございましょうけれども、道路上においてこういう欠陥があったのだということを頭の中においた上でもう一度調べ直して、直すところは直す、また責任をとるところは責任をとるという態度を道路公団側にお願いいたしたいと思うのでございますが、総裁並びに警察当局の御答弁を承りたいと思います。
  38. 富樫凱一

    富樫参考人 道路公団といたしましては、仰せのとおり十分検討いたします。
  39. 玉田茂芳

    ○玉田説明員 御意見のとおり、十分検討いたしたいと思います。
  40. 井上普方

    井上(普)委員 以上をもちまして私の質問を終わりたいと思います。
  41. 始関伊平

    始関委員長 内海清君。
  42. 内海清

    ○内海(清)委員 ただいま、東名高速道路が供用開始されましてから今日まできわめて事故が多発しておる、こういうことでいろいろ分析されたわけでございます。私もこれに関連して若干御質問申し上げたいと思いますが、関連でございますので、ごく簡単に二、三点についてお尋ねいたしたい。  この東名高速道路は二十六日に供用開始されたわけであります。しかも今日まで高速道路を建設いたしました経験、特に名神高速道路などの建設によりまして、これがその後いろいろ分析研究された。したがって、今日のわが国の道路といたしましては最高の設計技術によって東名は建設された、こういうことに相なっておるわけです。ところが、その後供用開始されまして事故が多発いたしておるということで、われわれはこの点をはなはだ残念に思うわけでございます。  そこで、いま井上委員からいろいろお尋ねがありましたので、私はその中の一、二についてお尋ねいたしたいと思います。ことに事故発生状況を見ますと、都夫良野トンネルあるいは吾妻トンネル、こういうところに集中的に事故発生しておる。しかもこのトンネルにおける工法も他の多くのトンネルと同様である。すなわち、フランスから導入されましたサルビアシムの新工法によって施工されておる。ところが、この二つトンネル事故が集中的に発生しておる。しかも雨天の場合にこれが多いということ、これはどういうところに原因があるか、その点がいままで私が聞きました範囲ではなお明らかになっていないと思います。この点は十分ひとつ解明されなければならぬと思うのです。しかし、これに対しましては、いわゆる摩擦係数を上げるためにいろいろ行なわれておる。これで今後どういうふうな状態になってくるかがまた注目すべき問題だと思うのであります。なぜこの二つトンネルに集中的に起こり、雨天の場合に多いかということ、この点についてひとつ公団の御意見を伺いたい。
  43. 片平信貴

    片平参考人 ただいまの御質問につきまして、われわれ今後もう一度調査を続けるつもりでおりますけれども、大体いままで考えられ、あるいは感じたことでございますが、日本坂トンネル等は前後の取りつけの線形がわりによろしゅうございます。勾配もそう急でない、したがって、前後を走ってくる車はわりに平常な状態と申しますか、坂道ですと、速い車がおそい車のあとに追いつきましてだんご状態になるということがありますが、日本坂トンネルではそういうことがわりに少ない状態である。今度の都夫良野トンネルの場合に、前後とも御承知のように八十キロの設計速度でわりに小さな曲線を使っておりますので、特に雨、霧等になりますとトンネル以外のところがわりに走りにくい。トンネルの中に参りますと、御承知のように照明がついております。それからこのトンネルがわりに直線に近いトンネルになっておりますので、ここで追い越しのチャンスあるいは速度を少し上げるという感じがあるのではないだろうかということを一応懸念いたしまして、この状態を今後もう少し調べてみて、それによりまして、警察にお願いして相当厳重な規制とかその他手を打たなくてはいかぬだろうということ。それからもう一つは、先ほどから問題になっておりますすべり、摩擦のことをまず手を打った。今後、そういうトンネル内の走行状況、それからトンネル外の走行状況、それらを調査いたしまして、それによってどういう手を打つかということをさらに考えたい、こういうふうに考えております。
  44. 内海清

    ○内海(清)委員 トンネルに入る前、すなわち、トンネルの前後の線形の状況トンネル内の線形の状況、これが一番大きくあげられておるようであります。さらに勾配の問題もございましょう。ところが、こういう問題については、少なくとも名神の経験その他今日までいろいろ建設されましたハイウェーの関係から十分検討されておるべきではないか、こういうふうに考えますが、そういうことに対して今日まで十分研究されたことはなかったのですか。
  45. 片平信貴

    片平参考人 いまの線形の問題でございますが、通常の晴れた日における線形の選び方その他は、名神等につきまして十分検討いたしまして、晴れた普通の状態の場合には、いまの都夫良野の付近でもそう問題のない走行状態であると思います。ただ、霧が発生するとか、そういうことで交通の流れが鈍るであろうということは、名神の経験でわかります。それで実はあそこに霧のときにはナトリウムランプをつけまして、少しでも走りやすくする努力はいたしたつもりでございますが、御指摘のように、そういう状態になったときに、だんごになってきてトンネル内に入って解放される、そこまでの調べと申しますか、いままでそういう例がございませんものですからそういう調べがなかったということも事実でございます。そういう意味で、今後あそこで走行の状態の調べをして、場合によりますと厳重な速度規制というような方法で解決する以外、方法ないじゃないか、こういうふうに考えているわけでございます。
  46. 内海清

    ○内海(清)委員 そういう研究が十分でなかったということになれば、そのあやまちを再び繰り返さぬように今後十分研究し、調査してやっていただかなければならぬ、こう思います。  それで、高速道路トンネルに入ります前には、トンネル内で事故があったり、その他の特別なあれがあれば、標示板がつけてあるように思うのです。現在私も中央高速道路をちょっと調査してまいりましたけれども、あの標示板はもちろん運転者はたいてい知っておると思いますけれども、黒い標示板があるだけで、しろうとが見たらば何もわからないわけです。あるいは運転者の中にも十分知らぬ者がおるだろうと思う。でありますから、ああいうふうなものができた場合には、運転しながらはっきりこれが注意を引くようなことを十分やらなければならぬのじゃなかろうか、こう考えます。せっかく事故の標示板ができておりますので、これを十分活用するという意味合いから、そういう点にもひとつ注意を喚起していただきたい。いままでのところ、トンネルの中で事故があってさらに事故が重なった場合に、その運転者が標示板に気がつかなかった者があるかないか、そういうところまで一応調査する必要があると思います。この点はいかがでしょうか。
  47. 片平信貴

    片平参考人 ただいまの御指摘、電光標示板であると思います。電光で標示が出ますと、電光の上にさらに電灯がつきまして明滅しで注意を十分促すようにはなっておりますけれども、場合によりますとそれを見のがすというケースもあるやに聞いております。したがって、これにつきましては、もう少し見やすい位置に、あるいは注意を促すような方法を今後どうしたらいいか、検討してまいるつもりでございます。
  48. 内海清

    ○内海(清)委員 それからいま一つお伺いしておきたいと思いますのは、高速道路ではトンネル内の追い越しが認められておるということであります。運転者にとっては、トンネル内はトンネル外よりも環境は変わってくるわけです。そういう場合に、さっきのトンネル内の線形の関係――トンネルは大体直線が多いわけでありますが、そういうふうな関係などで、トンネル内の追い越しを認めるために事故が特に起きる、こういうことはございませんか。
  49. 片平信貴

    片平参考人 ただいまの御指摘につきましても、先ほどもお話し申し上げましたように、トンネル外の走っている状態、トンネル内の走っている状態を調べて、あまりに事故が多い、しかも八十キロ以上のスピードで走っている、これは規制は八十キロになっておりますけれども、ドライバーが八十キロ以上で走っておるということが再三あるということがわかりましたならば、場合によりましては、警察等の方と相談いたしまして追い越し禁止ということをやらなければならないかもしれない。そのためには、現在トンネルでどういうふうに走行しているかということをもう少しよく調べなければならないと思います。
  50. 内海清

    ○内海(清)委員 この点も今後の一つの問題だと思います。  次には、これは直接この席でやってどうかと思いますが、実は救急医療の対策の問題でございます。これはもちろんきょうは言ってありませんが、いずれ消防庁あるいは厚生省の方にも来ていただかなければならぬ問題だと思います。ただ、御意向を伺っておきたいと思いますことは、現在東名の救急医療対策を考えてみましても、確かに技術的には名神よりも非常に進んだでありましょうけれども、この点については私はさらに進歩していない、こう思うのであります。少なくともハイウェーをつくります以上、その管理あるいは警備、保安、さらに救急までいかなければ相ならぬと私は思うのであります。こういう一貫した管理が行なわれなければならぬと思うのであります。しかし、残念ながら、いまこの救急医療業務については主として消防庁と地方自治体がこれを担当しておる形であります。国は基準を示す程度でありまして、ほとんど財政措置してありません。もっぱら民間の開業医の善意に依存しておるという形だと思う。いろいろ事故が起きることはきわめて残念なことでありますけれども、すでに今日まで起きましたように、多くの事故が起きて、その救急医療対策についてもこれまた万全を期さなければならぬと思うのであります。しかも地方自治体がこれをやっておりますが、地方自治体にはあるいは交付金その他で多少の考慮はしてあるかもしれませんけれども、これまた地方自治体の負担になるという形であります。指定病院もございますけれども、今日インターチェンジの近くに十分なる指定病院があるかないか、こういう問題もあわせて考えますときに、まことに寒心にたえないのであります。そこで、この問題は当然今後はやはり道路公団で一貫的にこれに対処すべきものだ、そのことが最も効率的であり、最もスムーズにいくのではないか、こういうふうに私は考えておるのであります。きょうはこまかい問題は申し上げませんが、ただ、基本的に、私は、いままでのような、消防庁と、そして主として地方自治体にまかすという姿では今後いけないのではないか、こう思いますが、これにつきましてはひとつ大臣から国務大臣として、総裁からもひとつ基本的なお考えをお聞きしておきたいと思います。
  51. 坪川信三

    坪川国務大臣 先ほどから御指摘になりました諸般の問題につきまして、私からも、私の責任者としましての立場で御報告と、また私の考えを申し上げたいと思うのでございますが、高速自動車国道における事故の現況を申し上げますと、現在名神、中央及び東名の三道で約六百二十二キロメートルを供用しておりますが、その事故の実態は、事故率、すなわち一億台キロ当たりでございますが、昭和四十三年度には、名神の事故率は百四十一件、東名は百十一件、中央道は、調布-八王子間が百七十三件、八王子-河口間が三百七十一件でございます。なお、名神の実績からは事故率は供用開始後逐次減少の傾向にあるような状態でございます。  また、高速自動車国道と国道との事故率の比較におきましては、高速自動車国道のほうがはるかに少ない。大体三分の一から五分の一のような状況でございます。  事故形態からしますと、いわゆる車両の追突が最も多くございます。また、原因別を見ますと、ハンドルの操作の不適当、前方の不注視、速度違反が上位を占めておるというような状況でございます。  また、高速自動車国道における管理体制といたしましては、名神は全線交通管理のパトロールを実施しております。また、東名、中央及び名神の一部においては、一キロごとに非常電話を設置いたしまして、事故発生とともに高速道路警ら隊及び消防本部に出動を要請し、あわせて事故の排除のための措置をとっております。また、自動車国道の閉鎖性を考慮しまして、救急体制の強化についても十分考慮いたし検討を加えております。  高速自動車国道に対する救急体制の問題について申し上げたいと思いますが、高速自動車国道における救急体制は、名神においては全線交通管理のパトロールを実施しておりますことは、いま申し上げましたとおりであります。東名、中央及び名神の一部においては、一キロごとに非常電話を置いており、事故発生とともに消防本部、高速道路警ら隊の派遣を要請し、あわせて事故車排除のための措置を講じております。  本来、御承知のとおりに、高速自動車国道上の救急業務は、現行の法制に基づきますと、地方自治体の所管事務になっておるような次第でございます。しかし、地方自治体の中におきましては、財政事情によって、高速自動車国道上の救急業務を処理しきれないような財政状況の地方自治体がかなりあることを考えますときに、日本道路公団におきましては、事故処理を可及的すみやかに行ない、人命救助及び高速道路の機能保持の必要から、当該地方自治体に対しまして救急車あるいは無線機等の無償貸与をする等、でき得る限りの便宜を供与を行なっており、また今後も積極的にやってまいりたいと思うものでございますが、私は、きょうの閣議におきまして、建設大臣という立場から、最近頻発いたしておりますところの高速道路を中心としての事故発生状況、あるいはこれに対するところの問題点、あるいはこれに対する救急体制というものを国が政府の責任において一元化いたしながら緊急に措置を講ずべきであるということの実態を、ありのまま閣議において発言をいたしまして、そうしていわゆる交通対策本部の長としての責任者である床次総務長官に対して、政府の関係省庁との閣僚会議を開きまして、これらの問題点と事故発生の解明及び救急体制の一元化、及び、もう一つは、御承知のとおりに、いわゆる財政の問題がありますとともに、いわゆる警ら隊あるいは警官等の出動等において、やはりインターチェンジその他がない立場から府県によってもう連絡ができなくなってしまうというような問題点、あるいは、御案内のごとく、県によってあるいはチャンネルによって波長が違うことからくるところの無線機の連絡不備等もございますので、言いかえますならば、私は、建設省がイニシアチブをとり、また道路公団が中心になりまして、総理府、運輸省、厚生省、自治省、あるいは郵政省、大蔵省、これらの関係閣僚と緊急にその基本的な問題を推し進めていきたいという発言もいたし、閣議においても了解をいただき、また、総理もこの問題に対して非常に憂慮されまして、事の緊急性を指摘されまして、閣議が終わりました後また私が残りまして、総理と二人の間において総理の方針も十分お聞きいたしましたが、政府は全力をあげてこの不幸な事件の解決とこれらの不幸の頻発を避ける体制を整えたいという建設省並びに道路公団の方針を申し上げて、何とぞ今後ともよろしく御指導と御理解をいただきたい、こう存じておる次第であります。
  52. 富樫凱一

    富樫参考人 いま建設大臣の申されたとおりでございまして、道路公団におきましても、現在救急体制が不備であることは十分認識いたしております。ただいま建設省の御指示をいただいて御協議申し上げておるところでございますが、今後十分な救急体制がとれるように努力いたしたいと思います。
  53. 内海清

    ○内海(清)委員 いま大臣から基本的な問題でお伺いしまして、たいへん心強く思っておるわけでありますが、少なくともハイウエー時代に入りますわけでありますから、先ほど申しましたような管理、警備、さらに保安、救急、これが一貫的に行なわれなければ、一たん事故が起きました時分には人命にかかわるものであり、なおかつ多くの不幸者を出すわけでありますから、ひとつこれは国の責任において一貫的な処置のできるような措置を至急に講じていただきたい、このことを強く要望いたしておきます。いままでの状況を見ますると、その点が私ははなはだ遺憾に思います。確かに道路はよくなったけれども、この点は、名神が建設されましてから後にほとんど進歩がないと私は見ております。至急にこの問題は解決していただきたいと強く要望いたしまして、関連でございますから、終わらせていただきます。
  54. 始関伊平

    始関委員長 北側義一君。
  55. 北側義一

    ○北側委員 ただいま同僚の委員からいろいろな質問が、特に最近できました東名関係事故につきましてあったわけでありますが、私いま考えてみますのに、これからハイウエー時代に入る、そういう段階に現在来ておるわけですが、何といいましても――そういう道路構造上の問題点はいま言われたとおりですが、やはり一番多いのは、運転者技術的な欠陥といいましょうか、そういうものがやはり事故の大きな問題点となってきているんじゃないかと思っているわけであります。いま大臣も言っておられましたが、追突事故が非常に多い、これなんかもその一つじゃないかと思います。特に高速道路における追突というのは、スピードが出ておりますので非常に危険なわけです。その追突なんかを見ますと、やはり走っている間に追突しておる、こういう面が非常に多いと思うわけです。そういう点で、スピードの出し過ぎ、これはパトロールその他で監視をしておられる、このように大臣はいま言っておられましたが、こういう面についてのスピードの調整といいましょうか、そういうものを現在やっておられるのは、どういうやり方でやっておられるかということをまずお聞きしたいと思います。
  56. 坪川信三

    坪川国務大臣 先ほど冒頭に申し上げましたごとく、まん幕あるいは掲示その他で十分指示をいたし、あるいはパンフレットその他を手交いたしまして注意の喚起をいたすというようなこと、また、警らあるいはパトロールによってそれらの注意、勧告及び警告を発するというようなことをいたしつつ、また、いたさなければならないし、これらについて積極的に推し進めてまいりたい。  また、先ほど申し上げましたごとく、今日の閣議において、これらの不幸をあらゆる角度から各省庁が持ち寄りまして、行政上において、あるいは事務的な段階あるいは予算上の措置、あらゆるものを一元化いたしまして、そして道路公団、建設省――交通対策本部長である総理府が中心にまとめてもらわなければなりませんが、その積極的な推進は、やはり道路公団と建設省が進むべきである、こういう観点で、決してセクショナリズム的な考えを持たずに、総合的な、計画的なるすべての体制を推し進めてまいりたい。少なくとも時間的にも十分緊急をもって対策を講じたい、こう考えておりますので、御理解いただきたいと思います。
  57. 北側義一

    ○北側委員 警らとパトロールは、東名の間で一体どのくらいの台数が出ておるのですか。
  58. 富樫凱一

    富樫参考人 警察のほうのパトロールが、日に一台で十往復くらいいたしております。  それから道路公団のほうは、そういうパトロールは、道路の維持管理の面から道路の状態をパトロールいたしております。
  59. 北側義一

    ○北側委員 やはりここらに問題があるのではないかと思うのです。ああいう高速道路に乗りますと、最近の車は非常に性能がよろしいので、どうしてもスピードが出るわけですね。そういうところから追突事故が起こってきているのではないかと思うのです。それに対するパトロール――名目はパトロールということになっておりますが、実際は一台が十往復しておる、こういう実態なんですね。ここらにやはりもう少し考えなければいけない問題点があるのではないか、このように私は考えるわけなんです。こういう点も取り上げなければ、これから高速時代に入りますと、ますます事故が累増してくると思うのです。スピードを出すと事故があるのは当然なんです。それに対する対策も、やはりそういうスピードを出させないような何らかの対策を講じなければいけないと思うのです。命令を見てそれを守れば事故は起こらないわけです。それはどこだってそうなんです。そこに問題があるのですから、その点も考慮して――東名で一台じゃ話にならないですよ。これは建設省の所管ではありませんが、やはり道路を管理する大臣としてこれは当然言うべきだと私は思うのです。  それといま一つ高速道路ができて、高速道路に乗りますと非常にスピードを出すわけですが、その出入り口ですね、特に東京方面は非常に混雑しておる。私もこの間行ってびっくりしたのですが、人間の感覚として、いままでスピードをずっと出してきておるものが急におそくなりますと、出てからも事故が起こる可能性が非常に強いわけです。そういう高速道路の出入り口の道路整備、これをやはり考えなければいけないのではないか、このように私は考えておるのですが、この点どうでしょうか。
  60. 坪川信三

    坪川国務大臣 私も開通の前日現地を試乗いたしまして、視察をいたしましたが、いま北側委員指摘になりました諸般の問題は私も全く同感でございます。ことに、これは乗っている者、運転している者、また初めて通る者の心理的な状況を私もやはり憂えたのでございますが、御承知のとおりに、都夫良野トンネルあるいは吾妻トンネルというのを出てまいりますと、御案内のごとく丸ビルの三倍にも及ぶような、日本で初めての高い酒匂川橋と申しますか、あの橋がございます、そうすると、一般の人が、日本最高、しかも線形がカーブいたしておる橋というのは日本で初めてでございます、そういうような技術的な橋に対する驚嘆といいますか、魅力といいますか、それとともに、トンネルから出てまいるとすぐ富士山の景勝がぱっと浮かんで出てくるというようなことからくる精神的な、気持ちの上の緊張感というものが――景勝、富士山あるいは橋というようなところで、やはり事故発生の地点がそのようなところに多く出てきておるということを、私も道路公団総裁と一緒に参るときに道路公団総裁とも話し合ったのでございますが、総理もきょう御指摘になりましたときに、自分も心配したんだ、初めて視察を非公式にやったときに、あの付近がきっと一番事故発生をするのではなかろうかということを思ったが、そのとおりであったということなども、これは大事な問題でございますので、私はありのままのわれわれの問題点を率直に御披露申し上げまして、御参考に供したいと思います。  そういうふうなことを考えますと、私といたしましては、インターチェンジの問題、あるいは隧道に入ったときの注意並びに出たときのいまの問題点というようなPRをして、やはり運転者に十分自覚を与えておく、そのすきを与えないようにするというPRも必要である、私はこう考えますとともに、パトロールあるいは警察の協力ということは、先ほど内海議員あるいは井上議員にもお答えいたしましたごとく、やはり一貫した一つの警備、警ら体制が必要じゃないか。府県のインターチェンジのないところからくる総合的な一つの警ら、警備体制ができ得ないという問題点があります。  それからもう一つ、御参考に当委員会に御報告いたしておきたいと思いますが、私も就任以来、こうした全国的な交通事故の問題、全国的な道路対策の観点から、周知徹底、PRということが運転者その他歩行者に対する大きな仕事であるという観点から、六月からいよいよいわゆる情報センターというものを建設省に設けまして、そして事故発生状況とか交通量の問題とか、あるいは季節的な雨あるいは台風、雨量、その他風速等も十分――いまのところは大体国道、府県道を対象にいたしておりますが、それらの状況を一元的に建設省のほうにおいて周知徹底しながら全国的な交通対策をいたしたい、こういうようなことで六月から発足を見ておるような状況であります。大体十日から実際の実施に移りたい、こう思っておりますが、私は、その毎日の経過あるいは効果がどうあるかということも点検いたして、私は、建設省、道路公団が中心になって積極的にこれらの不幸の対策を打ち立ててまいりたい、こう考えておりますので、御理解いただきたいと思います。
  61. 富樫凱一

    富樫参考人 先ほど間違えて申し上げましたので、訂正させていただきます。御了承をいただきたいと思います。  東名高速道路で持っておりますパトロールカーは十二台でございます。十二台でございまして、これが時間をきめて各受け持ち区間をパトロールしております。  なお、このパトロールにつきまして、補足説明を申し上げたいと存じますので、片平理事の発言を許していただきたいと思います。
  62. 片平信貴

    片平参考人 ただいま総裁からパトロールの回数その他について御説明申し上げましたけれども、そういう状態でもなおかつ、スピードを相当出す、あるいは無理な追い越しをするという車が相当見かけられます。それで、先ほど申しましたように、都夫良野トンネルの前後につきまして交通の情勢の調査をやる。ということは、車頭間隔がはたしてどのくらいで走っているか、スピードがどのくらい出ているのかという調査をやりまして、その結果、車頭間隔が短過ぎるとか、あるいはスピードがはや過ぎるという結果が相当集中的に出てまいりました場合に、これはまだわれわれ事務当局の試案でございますけれども、適当な場所にレーダーによる速度測定装置を設けておきまして、そのレーダーで、あるスピードをこえた場合には信号を出すというような措置も考えられることであろう。これは必ずしもその場所で常にレーダー測定をやっておかなくても、そこにレーダーをときどき置きますよという標識を出すことによって、ドライバーに対して速度を制限する方法も可能ではなかろうか、こういうことを寄り寄り事務局として現在研究をしておる次第でございます。いずれにしても、交通の情勢の調査をもう少し正確にやってみたい、こういうふうに考えております。
  63. 北側義一

    ○北側委員 非常にけっこうなことなんですが、やはり早急に、いま大臣の言われたこと、またあなたの言われたことをやっていただきたいと思うのです。やはりそのような高速道路整備ができても、人命に関することですから、特にそういう問題は緊急を要するんじゃないか、このように思うわけです。  十二台というのは、スピード違反その他取り締まることができるわけですか。
  64. 富樫凱一

    富樫参考人 さようでございます。
  65. 北側義一

    ○北側委員 先ほどからいろいろ聞いておられますので、重複することは避けてお聞きしたわけですが、最後に、先ほども少し言っておられました、救急体制の医療設備、これが非常に整備されておらない。これは大臣も先ほど閣僚会議を開いていろいろ検討なされた、このようにお聞きしたのですが、実際の問題といたしまして、救急病院に指定されても、これは非常に都道府県のマイナスになるわけですが、その費用は全然国庫から出てこない、こういう問題ですから、これは道路公団のほうが責任をもって主体となってやっていくのか、また国のほうから何らかの財政措置を早急に講じなければ、やはりこれからのハイウエー時代には手おくれになってくるんじゃないか、こういう心配を私もしておるわけです。そういう点、先ほど大臣がいろいろと答弁なさったわけでありますが、その点につきましてもやはり早急にやってもらわなければいけない問題じゃないか、こう思いますので、どうかその点よろしくお願いいたします。  では、関連質問ですので、これで終わらしていただきます。      ――――◇―――――
  66. 始関伊平

    始関委員長 理事会の協議により、都市計画に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。佐野憲治君。
  67. 佐野憲治

    ○佐野(憲)委員 もう時間もだいぶ過ぎ、一時からわが党の両院議員緊急総会が開かれますので、きわめて簡潔にただしておきたいと思うのです。  まず第一点といたしまして大臣にお聞きしておきたいのですけれども、昨年からことしの一カ年で日本の上級裁判所なり下級裁判所におきまして、憲法違反の判決が三つあります。その三つの一つとしまして、屋外広告物法によります大阪府の屋外広告物条例が憲法違反の判決を受けた。このことを御存じですか。
  68. 坪川信三

    坪川国務大臣 まことに不勉強で、初めていまお聞きいたすような次第でございます。
  69. 佐野憲治

    ○佐野(憲)委員 それでは、都市局のほうで、十月九日の枚方簡易裁判所において出されました判決ですが、非常に重要な内容を含んでおると思いますので、おそらくそれらのいきさつを御存じだと思いますが、知っていれば御報告していただきたいと思うのですが……。
  70. 竹内藤男

    ○竹内政府委員 お答えいたします。  大阪府下の枚方簡易裁判所におきまして、寝屋川市内の電柱に張られましたビラが大阪府の屋外広告物法施行条例に違反するということになりました事件につきまして、岸本という裁判官から、この大阪府屋外広告物法施行条例の第二条第三項第一号の、電柱のビラ張りを禁止しております条項は、違憲であるという判断をいたしまして、無罪の言い渡しがあったということを承知いたしております。
  71. 佐野憲治

    ○佐野(憲)委員 四十三年三月三十日、高松高等裁判所の判決におきまして、愛媛県の屋外広告物条例に規定しておるいわゆる屋外広告物の問題につきまして、これはビラは屋外広告物に入らない、こういう判決をしておることも御存じですか。憲法問題に直接は触れてないのですけれども、同じような解釈で、違反判決ではありませんけれども、やはり愛媛県広告物条例の中に規定しているビラそのものが屋外広告物ではない、こういう判決を高裁でやっておるのですが、この点も御存じですか。
  72. 竹内藤男

    ○竹内政府委員 高松のほうの事件は、私のところにもちろん報告がきておると思いますけれども、私まだよく聞いておりません。
  73. 佐野憲治

    ○佐野(憲)委員 大臣にも知っていただきたいと思うのですけれども、岸本裁判官の判決理由として「表現の方法としてはテレビ、ラジオ、新聞、雑誌、機関誌、街頭演説などがあるが、だれもが簡単に利用できるものではない。電柱に張紙をして自分の思想を表現することは素朴な方法だが効果的な手段と認めざるを得ない。これを町の美観を保つために一方的に全面禁止することは、憲法二十一条に保障された表現の自由を犯すものであり憲法違反である」こういう判決の理由なんですが、同時に岸本裁判官は、なおも、言論の自由は公共の福祉のためにある程度制限されるのは当然としても、規制によって失う利益と得る利益を考え合わせなくてはならないとしており、ビラ張りを無制限に禁止し、救済の手段も講じられていないことは、言論の面で失う利益の方が多いと判断したからだ、こういうぐあいに言っておるわけですが、こういう点に対しましてどういう理解を持っておられますか。
  74. 竹内藤男

    ○竹内政府委員 お答えいたします。  実は四十三年の十二月十八日に、同じく大阪府の屋外広告物条例によりまして、奈良市の三条、大日本菊水会の塾長の方がビラを張りまして違反に問われていた事件がございます。それにつきまして、最高裁の大法廷で、四十三年十二月十八日に判断がございまして、その判決の中におきまして被告側の上告を棄却いたしております。横田裁判長は、その判決理由の中で「都市の美観を維持することは公共の福祉のためであり、屋外のビラを規制したこの条例の程度では表現の自由に対する合理的な制限といえるから条例は合憲である。」という判断をいたしておりまして、私どもも、特にビラは雨などに当たりますとあとはきたなくなりますし、また、ビラ自体が財産価値がないものでございますので、あとの管理が不十分であるという点がございまして、ビラ、張り札につきましては、特に道路上に突出しておりますような電柱等につきましてこれを張ることを美観の立場から禁止することが、決して憲法の表現の自由に違反するものではない、こういうふうな考え方をとっているわけでございます。
  75. 佐野憲治

    ○佐野(憲)委員 条例の内容にもよるのですけれども、本法におきまして第四条に規定を置いておりますね。この第四条の第二項に「都道府県は、条例で定めるところにより、美観風致を維持するために必要があると認めるときは、左の各号に掲げる物件に広告物を表示し、若しくは広告物を掲出する物件を設置することを禁止し、又は制限することができる。」そこで、第一例示として「橋りょう」、第二は「街路樹及び路傍樹」、第三の例示としては「銅像及び記念碑」、第四が「前各号に掲げるものの外、当該都道府県が特に指定する物件」、こうなっております。そこで、この法の精神からいきましても、規定から申し上げましても――皆さんのほうでは、本法の適用にあたりまして、都道府県に対しまして模範条例というのを示しておりますね。模範条例というものが問題になってまいりますのは、全面禁止の中に、銅像だとか記念碑、街路樹あるいは橋梁、こういう美観に対するところの具体的な例示をやって、そのほか特に都道府県が指定する物件、この中に電柱を入れて、しかも地域的な制限でなく全面的に禁止することが望ましい、こういう模範条例を皆さんが各都道府県に配付している、こういう事実を認めますかどうですか。
  76. 竹内藤男

    ○竹内政府委員 お答えいたします。  規制内容は条例に大幅にゆだねられているわけでございますが、各府県が条例をつくりますときに、参考と申しますか、判断の材料といたしますために、建設省でモデル条例案というのをつくっておりまして――もちろん、このとおり都道府県が条例をきめているわけではありません、各府県によって条例のつくり方は違っておりますけれども、そういうものを一応地方のほうに流しております。そのモデル条例の中にそういう規定も入っておるのは、ただいま先生おっしゃいましたとおりでございます。
  77. 佐野憲治

    ○佐野(憲)委員 いま局長の答弁のようなことで、大臣、例示をやっておるのですね。例示をして、しかも列挙しておる。銅像だとか何だとか、具体的な例示をやっておるでしょう。これに例示するもののほか、と次にいっておる。それは、各府県には特殊な事情があるだろうから、特に必要な場合は認める。特にですよ。その場合に、地域制限からはずして全地域に対しまして電柱はビラは禁止するのだ。しかしながら、広告用のペンキやその他はいいのだ。あるいはまた、農村地帯において、あるいは国会議員にしてもそうなんですが、あるいは政治的な表現の自由にしてもそうですが、それを告知する場もない、点々としておる農村地帯に、どこどこに演説会がある、どこどこに集会があるのだ、ここへ集まってもらいたいという文書を掲示する。都市計画法が施行されてこの地帯も調整区域になるのだ、これに対して説明会なり公聴会というのを要求しようじゃないか、こういう表現すらも禁止してしまう。できなくしてしまう。こういうことがこの法の国会の審議の中において予期されたことですが、例示されたもの、そのことに続いてくるのは私は当然じゃないかと思うのですが、全然逆の性格のものをここに出してくる、そういうものを建設省がいわゆる標準的条例として都道府県に示しておる。これがいろいろ紛糾の原因ともなり、またこの違憲訴訟におきまして判決が出てきておる。寝屋川におけるところの具体的な行為が、この条例そのものから見て無罪だ。しかもそういうことが、寝屋川の現状におけるところの電柱のビラに対する政治的な要求なり言論の自由、表現の自由を抑圧する、かわるべきものがない、にもかかわらず、これをやっているのは違憲だというわけで、いま局長の言うのは、具体的な問題におけるところの違憲かどうかという問題も出てきますけれども、しかし、こういう形におけるところの条例を設けることを皆さん方のほうでいわゆるモデル条例として県に示しておる。大臣のおひざ元の福井県でも大騒ぎしたらしいのですけれども、その中に、県当局は建設省から示されたところの条例である、これで知事は突っぱられておったことを、私も図書館で新聞を見ながら、なるほどと思ったのですが、こういうことはどうお考えになりますか。
  78. 坪川信三

    坪川国務大臣 具体的な実態について私、正確な勉強といいますか、判断をまだ下しかねておりますので、たいへん恐縮でございますけれども、政府委員をして答弁させます。
  79. 竹内藤男

    ○竹内政府委員 まず適用範囲でございますが、法律によりまして、市及び人口五千以上の市街的町村の区域に限られております。それから地域によって、地域の中で規制するものと、それから、地域にかかわらず、ものによって規制するものというのが第四条にございまして、たとえば風致地区とかあるいは美観地区というような地域の中で広告物の表示、掲出を禁止または制限する条項があると同時に、その二項におきして、ものにつきまして、いまのような特定の地域に限らず、広告物の掲出あるいは表示を制限または禁止することができる。その中で、先生御指摘のように、法律では、橋梁、街路樹、銅像というものが列挙されておりまして、四号で「当該都道府県が特に指定する物件」というのがあるわけでございます。したがいまして、これは都道府県の条例できめるべきものでございますが、私どものほうの一つの目安といたしまして、モデル条例では電柱をこの中に入れているわけであります。実態はどうかといいますと、実態は、枚方簡裁の――新聞にも出ておりますように、知事の許可制にしているところ、あるいは地域によりまして、地域を限って電柱についても全面禁止をしておるところ、あるいは全く禁止しておるところというふうに、各条例の規定のしかたはまちまちでございます。と申しますのは、屋外広告物の規制というのは、やはりその土地の特性により、取り締まる必要、規制する必要が違ってくる。例がいいかどうかわかりませんが、京都市のようなところと、あるいは工業都市のようなところでは変わってくると思いますので、その点を条例にゆだねているわけでございます。モデル条例でございますので、詳しく書けばあるいはいいのかもしれませんけれども、これは一つの目安でございますので、それに準じていく、こういう実態でございます。
  80. 佐野憲治

    ○佐野(憲)委員 たとえば四条の第一項ですね。地域におけるところの制限をやる場合に、相当具体的に列挙していると思うのです。そこで、第二項におきまして、いわゆる地域を乗り越えた全面禁止、そのためには相当なきびしい制限を設けなくてはならない。これは国会の審議の過程でもそうだったと思うのです。だから、銅像だとか橋梁だとか、いろいろ例示をやっておる。それを全然性格の違うものを入れてしまいますと、立法の趣旨そのものが条例によって殺されてしまう。その指導をしたのは建設省だ。もちろん、そういう中におきまして、府県の中におきましては、あるいは一部制限なり地域制限なり、あるいはこの電柱のビラ張りに対しまして調べますと、圧倒的に全面制限をやっているのが多い。相当地域の実情なりを考えて、あるいは町村合併によって相当の山村地帯も入っている、告知する方法もない、しからば、国会報告や県議会報告、この程度はいいじゃないかということから、除外しておるところもあります。しかしながら、地域の中におきましても、第一項において具体的な制限をやっておるわけです。ですから、それぞれ地域の状況において制限するということは、電柱その他出てくると思いますね。しかしながら、一般的に地域全般にわたって禁止するのはこういうものだ、この中に電柱を指定する、特に知事が認めたものとして許されることなんだ、こんな乱暴な――しかも建設省の都市局が出しておる模範条例の中に、すっぱりと電柱に対するビラ張りを入れてしまってあるわけですね。そうすると、例示してあることと全然違ってくるでしょう。これは警察官職務執行法のときも、われわれはちょうど委員をやっておりまして問題にしたのですが、具体的に例示に違うことがあれば、当然これは法律を無効にするものだ。ですから、そういうことがあり得ない。「等」ということが入っているわけです。現に危険と考えられて「等」ということが相当問題になったというぐあいにいろいろ吟味をしたことを思い起こしますと、あんまり乱暴な、法の精神、立法の趣旨というものを乗り越えて、こういう違憲的ないわゆる疑いを持たれる、あるいはそういう判決が下されるという、そういうことをこれに例示してモデル条例として都道府県に対して出す。しかも二通りや三通りにして出しておるのじゃない、一本にして皆さん方が出しておるのですよ。この場合に対しまして、私は建設省の法律のつくり方が非常に大ざっぱだと思います。いままで国会の審議でも大ざっぱだったと思いますが、法律の目的の中に、公共福祉の増進をはかることをもって目的とする云々ということが非常に多いわけです。だから、この場合におきましても、一体公共の福祉とは何だ。皆さんは、公共の福祉の増進をはかる、こういうことにおいてすべての問題をあいまいな表現の中にとらえておるのじゃないか。最高裁判所におきましても、公共の福祉という概念は、具体的な解釈というものはまだできていないわけですね。これが公共の福祉かどうか、具体的な問題を中心として起こることであって、公共の福祉ということそのものは全くあいまいな規定にすぎないわけですね。だから、建設省の法律は非常に乱暴ですね。何かいろいろな国民の権利保護の問題を見ましても、公共の福祉を増進することを目的とするということで、すべての具体的な点が非常にあいまいな表現のもとに侵される。それは運営面において権利保護をやっていくのだと言いますけれども、いまのような憲法二十一条と関連して考えてまいりますと、こんな乱暴な指導というものが一体あるだろうか。大臣、どう思いますか。こういう具体的に例示されておる、これと全然性質の違う一本だけを出してきて、府県知事が条例で定めることができるのだから、これなんだということで、そういう場合におきましては全面禁止あるいはまた一部禁止、あるいはまた、一項にいろいろな規定がありますね、この規定ではみ出る部分に対するところの事項を挿入する、こういう場合が予想される、言うならば指導になると思います。これしかないのだ、こういう形でいくと、立法の趣旨そのものを乗り越えてしまっているのじゃないか。
  81. 竹内藤男

    ○竹内政府委員 モデル条例では、先生も御承知だと思いますが、法律に列挙してあることだけじゃなくて、それ以外にも、性格上法律に列挙してあるものと似ているものを掲げてあるわけです。たとえば郵便ポストあるいは信号機あるいは石段、擁壁というようないろいろなものが掲げてあるわけでございまして、これは先ほど御答弁申し上げましたように、最終的判断は、もちろん県議会の議決を経る条例できまるわけであります。モデル条例というのは、条例をつくりますために県のほうで参考になるようにということで私どもは出しているわけです。したがって、これは当然地域の実情を織り込んできめられるべきものだ――というのは、私このときちょうどおりませんでしたけれども、おそらくそういう指導をしながら、しかもモデル条例を示していく、こういうふうにしているはずであるというふうに考えております。何も建設省のモデル条例どおりつくらなくてはいかぬというような指導はいたしておらないつもりであります。
  82. 佐野憲治

    ○佐野(憲)委員 指導ではなくて、一本しかないでしょう。全面禁止の中に、知事が電柱にビラ張りすることを禁止するのだ、前に列挙してあるのと全然性格の違ったものがそこに入ってきているわけですね。選択の余地がないのです。しかもそれが各県議会において紛糾した最大の原因は、建設省から本法に基づく条例の指示があった、これに基づいてつくったんだ、これが紛糾の理由でもあるし――たとえば高松高等裁判所が下した判決の中において、愛媛県の屋外広告物条例が違憲だ――違憲ということばは使っていないですが、ビラ張りをする、このビラ張りは屋外広告物の対象にならないのだ、だから無罪だ、だからこの条例そのものは無効なんだという解釈をやっているのでしょう。皆さんのほうは、ビラ張りということを地域を乗り越えて全面禁止をやっているわけでしょう。そういう条例をつくりなさい――地域的な特殊性なり何なりを考えてやるという指導じゃないのですよ。一度モデル条例を出していただきたいと思います。それから愛媛県の屋外広告物条例、いわゆる高松高裁から無効だとされたビラ張りの要件を明らかにしておる規定、それから大阪府のいまの寝屋川におけるところの、皆さんが政治的な表現の意思表示として掲げたポスター、ビラ、これに対するところの判決、これらの点をひとつ本委員会に参考に出していただきたいと思います。その上でまたいろいろ審議を進めさしていただきたいと思います。  第二の点として、都市計画法が法律第百号で六月十五日公布されておる。一カ年間の期間を置いて施行される。国会の中におきましては、重大な条項が多く政令、省令にゆだねられておる。これは個人の権利関係におきましても、重大な利害関係をもたらすものである。だから早急に逐次政令、省令を制定して、できたものからやっていく。早急に、しかも逐次です。と同時に、この法がいろいろな権利関係におきましても大きな転換をもたらすものであるから、これに対するところの手続という点におきましても、国会の中におきまして修正その他をやったわけです。しかるにかかわらず、皆さんは都市再開発法を急がれる。大臣は急いでおられる。何のために急がれるか、私たちちょっと理解に苦しむのは、あの中には政令にゆだねる相当大きな問題があると思います。国会の中においてもっと論議を深めなければならなかった問題があったと思います。だから建設省の法律は非常に乱暴だと思う。何かというとすぐ、公共の福祉のためにということばで逃げてしまう。全くあいまいだ。最高裁判所が公共の福祉とは何だという解釈さえまだ出ていないという現状において、こういう用語の中にあいまいなことをやるのです。しかし、それはそれとして、一体新聞の報道するところによると、四日に施行令要綱が定まった。と同時に実施要領も定まった。十日の閣議にかけて、十四日に間に合わせるように施行するのだ、こういうことが新聞紙で伝わっておるわけです。時間がありませんから、大臣の所信だけにとどめますが、大臣、どう思いますか。一年有余かかって、国会の審議において、この法律は相当問題点がある、運営にあたっては万全を期する、だから政令、省令というものを早く出して周知徹底させるのだ、逐次やるのだといって、一体政令は幾つ出ておるのですか、なぜおくれておるのですか、大臣、その点どうお考えになりますか。
  83. 坪川信三

    坪川国務大臣 いま御指摘のごとく、新聞に政令等の案としまして報ぜられているとおりでございますが、一応、建設省としましては、政令の具体的な措置あるいは運営等につきましては、委員会あるいは本会議等で御指摘になりました点を十分そんたくいたしながら、それらの取りきめをいたしてまいりたい、また、案といたしまして現時点においてでき上がっているものについては、都市局のほうから、委員長のお許しをいただいて委員の皆さまにもお配りする措置も講じたい、こう考えておる次第でございます。
  84. 佐野憲治

    ○佐野(憲)委員 大臣、私は、なぜおくれているのですかと聞いておる。こういう重大な問題をなぜおくらかしておるか。一年間の期間があり、法はすでに公布されているわけです。公布されているからこそ、皆さまも都市再開発法を急がなければならぬというのでしょう。しかも具体的な政令の内容が明らかにされていない。これは一体どこに原因があったのですか、それを明らかにしていただきたいというのです。
  85. 竹内藤男

    ○竹内政府委員 お答え申し上げます。  私どもも施行令を早く出したいということで、法律が通りましたあと直ちに作業に入ったわけでございます。先生承御知のように、第一点は、特に農業との関係、これにつきまして農林省と相当詰めなければならない問題がございます。市街化区域にどういうものを入れるか、あるいは市街化区域に入った農地の取り扱いをどうするか、そういう問題につきまして詰めておった、それに時間がかかったということが一つであります。それから第二点は、これも先生承御知のように、都市計画の決定権限を地方におろすわけでございます。その際に、政令にゆだねている部面がございます。知事の決定と市町村の決定、これを政令にゆだねている部分がございます。それにつきまして非常に広範な各省との調整がございましたので、これで時間がかかったという点がございます。その他、開発許可の基準にいたしましても、特に調整地域におきます開発許可の問題、それから市街化区域におきましてどういう条件をつけるかというような問題につきまして、やはりこれも関係各省との調整がございましてそれに手間どったので、私どもといたしましてはぎりぎりになって政令を出さざるを得なくなったということにつきまして、まことに申しわけない、こういうふうに考えている次第であります。
  86. 佐野憲治

    ○佐野(憲)委員 私が建設省の法律のつくり方が乱暴だというのは、法を出す場合に、ここに具体的に列挙するのは非常に困難だ、あるいはまた、政令のほうがいいという場合があり得ると思う。しかし、少なくとも法案を国会に提出する場合に、こういう形の市町村と県の権限は法律にうたって、もう少し明確にしておくことが当然ではなかろうか。建設省だけが提案しているのではなく、内閣が提案しているわけですから、法律案の内容をなす具体的な政令事項なり省令事項は、すでに各行政庁間におけるところの調整ができて、本来ならば国会の中におきましてもその大体の内容が明らかにさるべき性質のものだと思います。国会の中においては政令事項に対してある程度の答弁をしながら、しかも各行政庁間の調整が進んでおるんだとして提案をしながら、実は調整に手間どったんだ、各省間におけるところのいろいろな意見の一致を見ることができなかったんだ、市街化調整区域におけるところの、農林関係におけるところの問題に対して、何ら政令に規定する内容が国会の中において明らかにされていなかった、だから国会が終わってから実は各省間の調整をやるんだ、全くこれはおかしな話じゃないですか。大臣は、大臣に就任されましてから、日本国憲法三十一条における手続の規定を一体どういうぐあいに解釈されながら国務大臣として臨んでおられますか。もう一つ、アメリカの行政手続法第四条というようなものは、少なくとも国務大臣として、いろいろな意味におきまして私は学んでおられるだろうと思います。そういう意味で比較いたしまして、日本において行政手続法がない、憲法三十一条は、三十三条に列記されていることと類似しまして司法上の手続だというような意味の解釈において、行政訴訟法なりその他は一応は整備されてまいっておると思います。行政手続には何らの前進が見られない。しかも、国民の権利保護の関係から申しましても私は重大な内容を含んでおると思います。そういう手続法があるならともかく、ない日本の現状において、行政府が、国会の審議の内容と違った意味のところにおきまして、国会を通過しましてから一カ年間たってもそこにおいてなおも調整をはからなくちゃならない、しかも、それは国民の生活なり権利の上に重大な影響を及ぼす問題が、行政権の恣意によって運ばれておるということは、私は重大な問題だと思うのですけれども、そういう点に対して大臣の所信を一応聞いて、この問題は――委員長、これにつきまして、やはり施行令の内容、それから実施要領の内容を本委員会に提示してもらいたいと思います。私たち、新聞の抜粋ですから、なかなかのみ込めないわけです。たとえば、地方団体に対する補助の問題は政令で定める、こういう問題につきましても、局長に一応お伺いしておきたいと思いますのは、地方自治団体に権限を委譲した補助金は、八十三条で、政令で定めるんだという。一体総合補助制度をとっていくのか、あるいは地方に対しましていままで建設省がやっている中央統制的な意味における補助金の配分を府県に委任するのか、これらの点が一体政令で明確になっておるのですか、どうですか。こういう点が一点と、もう一つは、施行令と実施要領とが一緒にぽかっと出てくるという、大臣、こんな乱暴な行政運営がありますか。しかも実施要領の中身を見てまいりますと、本委員会におきまして修正した条項に対しましては、こういう実施要領で軽く扱ってしまっておられるわけですね。一つは、御参考までに読みますと、「計画を決定するさい、住民や利害関係人の意見を反映させるため、公聴会の開催、書面による意見の提出が認められているが、それが必要かどうかは計画決定者の自主的な判断に任される。たとえば説明会を開催したあと、意見書の提出を求めるなどの方法もさしつかえない。公聴会の手続きは、土地収用の場合などを参考に、都道府県の規則で定めておくほうがよい。」これは一体何ですか。「市町村が定める都市計画は、議会の議決を経て定められた市町村建設に関する基本構想に則すべきことになっているが、これは都市計画の基本的なあり方について、議会の意見を反映させればよいというものであって、個々の都市計画に議会の議決は必要でない。」手続の中においてわれわれが公聴会の修正をしたことに対しまして、私権を制限する限り、住民の積極的な参加協力というものを代償として担保されなくちゃならない、それでなければ事業の実効性がないのだといういろいろなことが論議されてまいりました。その真剣な国会の審議、その中から修正案というものが生まれてまいったといういきさつも、これをもう少し政令の中において、たとえば公聴会の手続にいたしましても、土地収用法のあれに見習えぱいいのだ、かってに規則でつくりなさいなんて――手続論としても、もっと公聴会なり聴聞会なりに対するところの基準的なものをつくらなくちゃならない時期にきておるわけでしょう。そういうものをもう少し政令において具体的に規定していくならいいですけれども、実施要領の中で、われわれが原案を修正さした条項すらも、こんな軽く、さらっと水で流すような、しかも施行令、実施要領というものが一緒にぽかっと出てくる、一体こんなことは普通の行政当局でやっていることですか。また私は、建設省は行政官庁ということはわかりますよ。それだけに、国民の利害なり権利確保に対する手続論におきます実体論ももっと慎重な配慮がなくちゃいかぬと思いますね。一体こんな乱暴な規定がほかの行政府に見られますか。大臣、長い議会経験を通じましてどうお考えになりますか。
  87. 坪川信三

    坪川国務大臣 御承知のとおりに、本法律は国民生活あるいは都市政策の上において非常に多岐にわたっての重大な法律でございますので、制定をいただきました当時から、その間に賜わった各般の具体的な問題点を各省庁間において連絡調整をはかりながら十分万全を期したい、かかる考えから事務的な作業がおくれましたこと、また、行政上の手続論から、法理論の立場から御指摘になった、また御叱正になる点は、十分私も深く傾聴いたしておるような次第でありますが、いま前段で申し上げましたような実態のもとにおいてこうしたことの作業が今日に至ったこちらの立場も御理解いただけるのではないかと考える次第でございます。  いずれにいたしましても、政令等の案につきましては今日中に各委員のお手元にお届けいたしたいと考えており、また、実施要領につきましては、まだ完全にでき上がっていませんので、少しおくれますことをお許し願いたい、こう考えております。
  88. 佐野憲治

    ○佐野(憲)委員 私は政令をいただきましてからもっと具体的にお聞きしたいと思いますので、きょうはやめますけれども、ただ、この法案の審議のときには保利大臣だったので、坪川さんはそのあとをお受けになったわけですから……。  そこで、一つ財政の問題につきましても、地方団体は、政令がおくれたために非常に混迷をしておるのと、その地域住民もまた、協力をする方法手段が失なわれておるわけですね。財政面一つ見てまいりましても、自治省からことし「公共施設の現況」という詳しい白書が出ておるわけですね。たとえば都市施設の問題に対して詳しく触れておりますけれども、街路一本とってみましても、昭和四十二年度の予算では、市町村に対しましては五百七十八億円だった。県に対しましては七百二十五億円使っておる。四十一年度と四十二年度を比較すると、県の場合におきましては進捗率が二・八%だ。市町村の場合におきましては、延長におきましてわずか一・五%だ、面積では一・一%だ、これだけしか進まないんだ。四十一年度の認証、これをこの率でいきますと約九十年間かかる。いわゆる建設省が事業認定をして、事業実施の中に計画されているのは四兆六千億円、この調子では九十年。四十二年度に認証されたものは五兆八千億円、これに要する年月というものは約百年だ。現に計画されておるものを実施していくために、この四十二年度の水準をもってするならば百年もかかるんだ。新しい都市施設なり新しい住みよい環境づくりをやっていくためにもっと積極的に公共投資をやるんだといわれますけれども、現在におけるところの府県なり市町村の置かれておる実情というものは、非常に重い、苦い顔をしているのは私は当然だと思います。現に認定されているものでも、四十一年度で九十年、四十二年度、予算もふえてまいっておりますから、これをやりますと百年かかる。五兆八千億円も金を要する。街路だけでもそういう数字が出てきておるわけです。これはもう少し政令において具体的に財源問題なんかを明確にしていくことが必要じゃないか、私はかように考えるわけです。  最後に、建築基準法の問題につきまして、これは重大な問題でありますから、私のほうから質問事項だけを述べますので、次の委員会においてひとつ回答願いたいと思います。これは、きょうの質疑は時間の関係がありますから、回答は次の委員会で明らかにしていただけばいいと思うのです。  昭和四十二年十二月十三日の、建設大臣からの諮問に対する建築審議会の答申ですが、この答申の中で、現実には市街地の無秩序な拡大を抑止できず、また、環境保持のための防波堤たり得ず、法違反の建築物が累積し、法的規制力は実効をあげていない現状である、こういう点を明らかにしておるわけです。と同時に、その具体的な問題点として建築執行体制の整備の重要性を強調しながらも、改善を検討する必要事項として、是正命令、工事中止命令等の遵守を確保するため必要な措置をあげて、たとえば執行罰の採用を含む罰則強化を行なうことを提案しておるわけです。この提案に基づいて現在の建築基準法の改正案が出されてまいったわけですけれども、改正案を見てまいりますとどうも納得できない点がたくさん出てくるわけであります。少なくとも建築物の敷地、構造、設備及び用途については最低の基準を定める、現在の最低の基準をいかに守っていくか、答申もその点に対して非常に配慮をいたしておるわけであります。最低の基準ですから、この最低の基準を守ることによって住居関係あるいは国民の生命、健康を守るんだ、こうなっておるこの基準法の最低基準をまた下げようとしておるのではないか。いかにして基準法が守られる方向に措置をとるか、こういう点が非常に不明確でありますので、一応これらの点に対して具体的に質問をいたしますので、この点に対する回答を願いたいと思うのです。  ただすべき第一点としては、建設省は不作為義務の強制執行は法理論的に不可能であると考えているのかどうか、あるいは可能であると考えているのかどうか、この点です。  少し詳しく述べますと、行政法上の義務の不履行があった場合、それについて、建設省としては、それを将来に向かい実力をもって履行せしめ、またはその履行があったのと同一の状態を実現する必要がある場合があるが、建設省は、このような行政法上の義務の強制執行は、不作為義務については、法理論上およそ不可能であると考えているのかいなかということであります。あるいはまた、憲法上不可能であるという見解もあり得ると思われるが、そうであるのかどうか、明確にしていただきたいのが第一点です。  第二点として、現行法においては、建築基準法違反の建築物については、実体的違法が生じた後に、その除却、移転、改築等、作為を内容とする義務を命じた場合についてのみ、行政代執行法第二条による強制執行が可能であるにとどまり、工事の施工の停止等不作為を内容とする義務を課した場合には、その不履行に対して、これを将来に向かって強制的に履行せしめる制度がないのであるが、建設省としては、かかる法律状態について格別問題なしと考えているのか、あるいはこれを改める必要ありと考えられているのかどうか、これが第二点です。そして、もし制度改正の必要なしと考えられているのであれば、その理由は何であるかを明確にしていただきたいと思います。  第三点としては、制度改正が必要ありと考えられているのであれば、いかなる制度を適当と考えられているのかについて明らかにしていただきたいのであります。実定制度を設けるにあたっての多くの他の場合におけると同様に、当面の場合においても、問題は、どれがただ一つ正しい制度であるかという絶対的な評価にかかわるものではなく、問題は、考え得る複数の諸制度のうちで長所短所比較考量すると、どれが最も合理的であり、あるいはより実現可能であるのかという相対的評価にかかわる問題であるかと思います。工事施工停止命令によって課せられた不作為義務の強制執行の制度として考え得る幾つかの制度のそれぞれについて、建設省としては、その長所短所の問題点をどのように考え、そのいずれかを具体化するにあたっての解決を要する問題点は何であると考えられておるのか、これを示していただきたいわけです。そのためには、具体的に現在問題提起をしておられる東京大学高柳信一教授の、執行罰制度によってこれを担保したいという制度改正、それから東京大学名誉教授である有泉亨さんは、裁判所命令による制度によって解決ができるのではないかという具体的な提案をされておるわけです。おそらく、建設省におきましてはそれらの提案をすでに検討はいたしておられるだろうと思いますので、それらの点を含めて次の委員会において一応見解を明確に示していただきたいと思います。というのは、立法者であり、立案者であり、かつまた執行責任を有する建設当局のこれらの問題に対する態度、考え方を明確にしなければ、質疑に入るわけになかなかいかぬと思います。ですから、私たちとしては、いま申し上げましたこれらの考え方などに対する建設当局としての明確な方針、解釈、考え方を示していただきたい、このことを要求いたしまして、一応質問を終わります。      ――――◇―――――
  89. 始関伊平

    始関委員長 建築基準法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  この際、おはかりいたします。  本案審査のため、参考人から意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  90. 始関伊平

    始関委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  なお、参考人の人選、出頭日時及び出頭手続については、委員長に御一任願いたいと存じますが、御了承願います。  この際、午後二時三十分まで休憩いたします。    午後一時二十九分休憩      ――――◇―――――    午後三時九分開議
  91. 始関伊平

    始関委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  建築基準法の一部を改正する法律案に対する質疑を行ないます。葉梨信行君。
  92. 葉梨信行

    ○葉梨委員 一昨日古屋委員から、建築基準法の改正案について大臣、局長にいろいろ伺ったわけでございます。古屋委員の現行法の改正の眼目は何かという御質問に対しまして、大臣は、三つの柱がある、一つは、違反建築物対策を推進する、第二は、大規模建築物における防災対策である、第三には、都市建築物の用途の純化と土地の高度利用促進である、こういう御答弁でございました。第二、第三の柱につきましては、建材その他の新しい材料が出現したことに対する対応策であり、あるいは第三の柱は、都市の過密化に対する対応策ということでありまして、よくわかるのでございますが、一面、違反建築物対策を推進するということにつきましては、何かちょっとわからない点があるのでございます。ということは、現行の建築基準法におきましてはっきりといろいろ規制が加えられていたはずであるのに、それが不十分であったということはどういうことであったのだろうかという点でございます。どうしていままで守られないで非常にルーズな処置しかとれなかったのだろうかということを非常に疑問に感ずるわけでございます。まずこの点について御答弁を願います。
  93. 坪川信三

    坪川国務大臣 葉梨委員が御指摘になりました本立法のねらいの第一点である問題点について、ごもっともな御意見だと私も考えるのでございます。これらにつきまして建設省が考えている問題点を申し上げたいと思いますが、いわゆる建築物が地震、火災に対して安全であるため、建築物の構造耐力、耐火建築または簡易耐火建築としなければならない建築物の範囲、特殊建築物等に設けなければならないところの廊下、階段、出入り口その他避難施設の構造、特殊建築物等の室内の仕上げの材料の制限等を定めておるのでございます。なお、建築物内の衛生の確保のため、居室の採光及び換気のための窓の大きさ、天井の高さ、便所等の構造を定めておるというのが、第一点のおもなものでございますが、御承知のとおりに、昭和二十五年に建築基準法が制定されまして以来、自後四回にわたり改正をいたしております。第一回の改正は昭和三十二年でございますが、土地利用の実態に即して商業地域内で準防火地域内にある耐火構造の建築物の建蔽率を十分の七から十分の八に緩和する等の改正を行ないました。また、第二回目の改正は昭和三十四年でございまして、防火上の観点から、耐火建築物及び簡易耐火建築物の別を設ける等防火基準を整備するほか、過小宅地の建蔽率制限の緩和、緊急を要する場合の工事施工中止命令手続の簡略化等の改正を行なったような次第であります。また、第三の改正は昭和三十六年でございまして、違反建築物対策を推進するため、違反が明らかな工事中の建築物について工事従事者に対しても作業の停止を命ずることができるとするほか、防火上の観点から、耐火建築物または簡易耐火建築物としなければならない特殊建築物にバー、キャバレー、自動車修理工場等を加える等の改正を行なったわけであります。第四回の改正は昭和三十八年でございまして、土地の高度利用を促進するため容積地区制を新たに設けることとするほか、防火の観点から、高さ三十一メートルをこえる建築物について内装制限を適用すること等の改正を行なったようなことが、本基準法の過去におけるところの改正並びに改正の目的が以上のような次第でございましたが、第五回目といたしまして、最近の御承知のような不幸なホテルあるいは旅館その他の事件考えますときに、ここに新たな観点から防火、衛生等に関するところの基準を新たに定めて立法措置を講じさせていただいたような次第でございますので、よろしく御理解を賜わりたいと思います。
  94. 葉梨信行

    ○葉梨委員 いまの大臣の御答弁を承りましたが、私がいま質問しました、違反建築物について現行法でどうして非常にルーズな状態であったかということにつきまして、事務当局より御答弁願いたいと思います。
  95. 大津留温

    ○大津留政府委員 基準法違反の建築物が多数建築されておるという現状でございまして、はなはだ遺憾に存ずるわけでございますが、この違反建築が多く建築されるという現状を生じました理由といたしましては、一つは、現行の基準法の規定が少し実情に沿わないような面も生じてきた、これはいろいろ社会経済の変動、また建築技術の進歩等によりまして社会の実情が動いたのに対しまして、基準法の規定がそれに即応して改正せられなかったという面も一面ございます。しかしながら、この違反が非常に多いという原因の一番大きな点は、これを取り締まる体制が必ずしも十分でなかった、また、県の建築主事等が、違反是正のための監督をいたしますに際しまして、人員等が足らなかったということとともに、現行規定が、監督いたすのに必ずしも十分な規定がそろっていなかったうらみがございます。したがいまして、今回の改正におきましては、建築行政の執行を県知事の段階から市町村の段階におろせるものはなるべくおろしまして、身近なところで監督を行なうということにいたしましたことと、建築監視員という制度を設けまして、常時建築現場をパトロールいたしまして違反建築を早期に発見するというような体制にいたしたのが、そのねらいでございます。
  96. 葉梨信行

    ○葉梨委員 ただいまお話のありましたような執行体制がとられれば、改正法は非常にフルに動くという御答弁でございますが、詳しくそれにつきまして伺っていきたいと思います。  いま局長が言われたように、いままでの現行法では、市町村が自発的に建築行政に参画する意思がなければ義務として行なう必要がなかったわけでございます。本改正案によって、人口二十五万人以上の市には建築行政執行の義務づけがなされ、これ以外の市町村でも、知事と協議の上、執行することができるようになりました。このことは、地域に密着した行政を行なえることであり、私どもも合理的であると思うのでございます。この措置によって、新たに特定行政庁を設置することになります市町村の数は幾らくらいございますか。
  97. 大津留温

    ○大津留政府委員 人口二十五万以上の都市が三十五市ございますが、このうち、現行規定で、知事と協議の上特定行政庁になっておるのが二十一ございます。したがいまして、今回の改正によって新たに十四市がこの建築行政を扱う市になります。また、二十五万以下の市または町村におきましても、知事と協議いたしまして建築行政の全部を行なう、あるいはその一部を行なうことができるわけでございますが、建設省といたしましては、先ほど来申されたような趣旨から、なるべくその全部または一部を行なうように指導いたしたいと思いまして、少なくとも人口十万以上の市におきましては、約百三十ございますが、なるたけ、全部を行なうか、あるいは少なくとも一部を行なうように指導していきたい、こういう考えでございます。
  98. 葉梨信行

    ○葉梨委員 ただいま御答弁のありました百三十五の市の特定行政庁に、確認行為等を行なう建築主事は約七百名いるといわれておりますが、かりに七百名が事実であるとしますと、年間九十万件の確認を行なっているわけでございまして、一特定行政庁で七名あるいは七名足らずの人員でございます。この人員で最近非常に手数のかかる確認申請や違反建築の処理に当たっておるのが現状でございますが、人手不足が非常な弱点となっているわけであります。本法改正に伴いまして特定行政庁が増加することになりまして、建築主事の不足が心配されるわけでございます。不足に対しましては、どんな手を打たれる御所存でございますか。
  99. 大津留温

    ○大津留政府委員 御指摘のように、特定行政庁が増加いたしましても、実際にこの業務に携わる専門の知識を有する建築主事が確保できませんければ、その実効があがりません。この建築主事は、御承知のように、建設大臣の行ないます建築主事の資格検定に合格した者の中から、それぞれの知事なり市長が任命するわけでございます。この主事の試験は毎年二百人前後の合格者がございます。従来の合格者の累計をいたしますと、約三千三百名に達しております。したがいまして、主事たる資格を有しながら主事の業務に従事していないという方が二千数百名おられるわけでございますから、今後特定行政庁がふえました際には、それらの方々の中から選考いたしまして主事に任命する、こういうことによりまして不足を解消したい、こういうふうに考えます。
  100. 葉梨信行

    ○葉梨委員 建築主事が行ないます確認というのは、確認申請の内容が適法であるかどうかを公権的に確定する、言ってみますと、準法律行為的な行政行為であるといわれておりますけれども、基準法の個々の規定の適用につきましては、例外規定が非常に多いわけでございます。そこで、特定行政庁の認定または例外許可制をとっているため、裁量行為が多いわけであります。建築主事がその職務権限内で自立性を保ち、または迅速公正な法の執行を果たし得るために、建築主事の地位や待遇の改善に万全の策を講ずる必要があると思うのであります。現実の待遇あるいは地位はどういう状況であるか、また、これからどういうような方向に持っていかれるおつもりでありましょうか。
  101. 大津留温

    ○大津留政府委員 建築基準法上、知事、市町村長が指揮監督をいたしまして、法律上に定められました建築をする場合に基準に合っているかどうかの技術的判断を行なうのが、建築主事の仕事でございます。違反建築の監督、あるいは先ほど申されました例外的な建築の許可というのは、これは知事あるいは市長が行ないます。そういうことでございますが、建築主事は、法律に定められました規定に基づいて技術的、専門的な判断をするわけでございますけれども、その限りにおいては、自己の責任と判断で行ないます関係上、重い責任を持っておるということが言えるかと思います。そういう職務に対しまして、現在の建築主事に対する処遇は必ずしもいいとは申せません。給与法上は地方公務員の一般職員の俸給表を適用されまして、一般の職員と同じ処遇でございますが、実際上の扱いにおきましては、主事に任命いたす場合には役付に準じた扱いをするというようなことでその一般職俸給表のワク内では処遇をいたしておりますけれども、今後この主事を確保し、大事な仕事を十分に果たしていただくためには、処遇につきましても一段と配慮をしていただくように地方庁にも要請したい、こういうふうに考えております。
  102. 葉梨信行

    ○葉梨委員 いまのお話でちょっとお触れになりましたが、業務上の権限の行使につきまして、その行政庁の長であります知事とか市町村長と建築主事の責任区分でございますが、その区分はどういう状況でございましょうか、お伺いいたします。
  103. 大津留温

    ○大津留政府委員 建築主事は、知事または市町村長の指揮監督のもとに、基準法上に定められました確認並びに検査の事務を行なうというのがその職責でございます。建築物を建築しようとする者は建築主事の確認を経なければならないということで、建築をするにあたりまして、その設計構造等を審査してもらって、法規に合致しているという確認を受けなければならない。また、建築が完成いたしました場合には、その建築主事の検査を受けまして、法規に定めております基準どおりの建築がなされたということの検査を受けることになっております。これらの業務は、知事、市町村長の一般的な管理監督のもとに行ないますが、もし法規に違反して建築が行なわれたという場合に、その工事の差しとめあるいは是正、除却等の命令を出す権限は、知事、市町村長にございます。また、先ほどお述べになりました用途上の例外的な許可をする権限は、知事なり市長にあるわけでございます。
  104. 葉梨信行

    ○葉梨委員 次に、違反建築の是正措置についてお伺いしたいと思います。  違反建築の多くは住宅でございます。その内容もいろいろございますが、その違反建築が起こる根源は、住宅難や土地の取得難等の社会的、経済的理由にあると思われるのであります。したがって、違反の防止あるいは是正措置は、単に法律の整備強化だけでは万全ではないと思うのでございまして、諸般の行政施策の協力が必要ではないかと考えるわけでございます。これについて御見解を承りたい。
  105. 坪川信三

    坪川国務大臣 違反建築物対策を効果的に、また能率的に進めるためには、単に建築行政当局によるのみではなくして、関係各省庁の出先機関等のほか、建築士会あるいは建築業界、宅地建物取引業協会等の関係団体等の協力を得まして、一体的、総合的な推進を必要とすることは、御指摘のとおりでございまして、関係省庁との協力体制につきましては、すでに通産、厚生、消防、警察等の関係各省庁と協議をいたしまして、違反建築物対策を協力して推進することといたしておりますが、建築士会等の民間団体からもこの方針に基本的に賛同を得ておりますので、改正法の施行の際には、これらの団体とも十分連絡を密にいたしまして、共同して違反対策の推進に遺憾なきを期したいと考えておる次第でございます。
  106. 葉梨信行

    ○葉梨委員 この問題の解決には、昨年成立しました都市計画法の運用もからんでくると思います。一般論としてはむずかしいかと思いますが、どういうように都市計画法と、この違反建築というか、建築基準法とを運用していくか、その点につきまして事務当局よりお伺いいたします。
  107. 大津留温

    ○大津留政府委員 御指摘のように、建築基準法都市計画法とは姉妹法ともいうべき関係にございます。都市計画によりまして、基準法で定めております住居地域あるいは商業地域、工業地域というものを具体的にそれぞれの地域に指定をいたします。そういう関係で、都市計画として定められるその地域の中身として建てられる建築物の基準建築基準法で定めている、こういう関係に相なるわけでございますが、今回の改正と昨年成立いたしました都市計画法との関係でございますが、ただいま申し上げましたように、都市計画において定められました土地利用に即しまして、市街地に建つ建物の用途、形態、構造基準法において指定をするということに相なります。また、都市計画で定めます市街化区域におきましては用途地域を定めなければならないということで、市街化区域に指定されましたところには必ず用途地域が定められる。その中におきまして開発許可が行なわれる、開発許可が行なわれて開発された地域に建物を建てる場合には、建築基準法の確認を要する、また、開発許可あるいは都市計画街路がないところに建築物を建てます場合には、私道の認定を得まして、その私道に接して建築物を建てる、こういうふうに、都市計画基準法とは全く車の両輪と申しますか、相補いまして市街地の形成をはかっていくという関係に相なっておるわけでございます。
  108. 葉梨信行

    ○葉梨委員 この間の古屋委員質問にもございましたけれども、違反建築に対しましてガスや水道、電気などの供給を断って使用禁止を行なわなければいかぬという意見がございまして、地方公共団体の中では水道の供給を停止したというような例もあるわけでございますが、一方、それぞれガス事業法あるいは水道、電気等に関する事業法のたてまえから、供給を行なわないわけにはいかないというようなことで、その調和と申しますか、どこら辺まで断固たる処置をとったらいいか、しかしまた、どこら辺からそうしては人道上いかぬじゃないかというような議論があると思うのであります。そこで、違反建築の防止措置として、これらについてはどういうような運用をなさるおつもりでございましょうか、お伺いいたします。
  109. 大津留温

    ○大津留政府委員 違反建築物に対しましては、水道、電気、ガスの供給を停止したらいいじゃないかという議論がございますが、前回建設大臣からお答え申し上げましたように、水道、電気というものは人間の生活に欠くべからざるものでもございますので、その運用によりましては、生活上非常に困難を与えるということにもなりかねません。そこで、違反建築に対する措置といたしまして、水道、電気、ガスの供給を停止いたしますにつきましては、それぞれの所管省である厚生省及び通産省とよく協議をいたしまして、まだ人が住まっていない段階における建築物で違反がありました場合に、建築行政の担当者がその工事の中止を命じ、あるいは工事の停止を命じまして、その旨を今回改正で改められました公示制度によりまして一般に公示した、同時にそのことを水道、電気、ガスの供給事業者に通知をいたしましたときに、この供給事業者がそれらの供給を停止する、こういうことに両省の間で話し合いがまとまっておるわけでございます。
  110. 葉梨信行

    ○葉梨委員 そうしますと、違反建築に対しましては迅速に発見するということが必要になってくるわけでございます。そこで、本改正案によりまして建築監視員制度が設けられたというのは、そういう御趣旨でないかと思うのでございますが、その監視員の権限はどんなぐあいになっておるか。また、かりに権限が非常に強いとすれば、今度はその権限を逆に悪用して不公平な処理があっても困るわけでございます。そこら辺についてどういうような運用をなさるおつもりでございますか。
  111. 大津留温

    ○大津留政府委員 建築監視員は、先ほども申し上げましたように、常時建築現場をパトロールいたしまして違反の状況を発見しようというねらいでございます。その現場におきまして発見した場合に命令が出せるという権限につきましては、第九条の特定行政庁の権限のうち、工事中の建物につきましてその工事の中止を命ずる、あるいは緊急を要する場合に、かりに、使用禁止あるいは使用制限の命令を出すことができる、こういう内容になっております。
  112. 葉梨信行

    ○葉梨委員 それから、局長が言われました公示制度という新しい制度でございますが、具体的にはどういうことをするわけですか。
  113. 大津留温

    ○大津留政府委員 公示の方法といたしましては、県あるいは市の公報にその旨を記載いたしますほか、現場におきまして立て札等によりましてその旨を掲示するという方法をとりたいと思っております。
  114. 葉梨信行

    ○葉梨委員 その立て札でございますが、私どもまあ新聞の社会面で読んだりしますところでは、いままでの違反建築につきましては、特定行政庁の停止命代とか除去命令等が出ても、言うことをきかないでどんどん建てて、そしてうまくごまかして売りつけて逃げてしまうというような例が多かったわけでございますが、立て札を立てて済むだろうかという疑問を持たざるを得ないのでございます。立て札と言われましたけれども、木の立て札ですか。そしてまた、引き抜かれる――これはそういうことを心配していたらきりがないと思いますけれども、どの程度の実際の効果を期待しておられるのか、お伺いいたします。
  115. 大津留温

    ○大津留政府委員 従来そういうことをいたしません場合におきましては、悪質な業者がそういう違反建築を停止命令にかかわらずどんどん行ないまして、それを第三者に売って業者は逃げてしまう。したがいまして、今度の立て札等による公示というのは、そういう善意の第三者が、この建物が違反で工事の中止を命ぜられているということを知ることによりまして、そういう悲劇を免れることができるのではなかろうか。それから、この公示の立て札は公文書の一種とみなされるわけでございますから、これをかってに取りこわしたり引き抜いたりいたしますと、刑法上の公文書投棄罪にも該当するということにも相なりますので、そういう面でも公示ということの効果があるのじゃなかろうか、こういうふうに考えております。
  116. 葉梨信行

    ○葉梨委員 そういう悪質者に対しまして行政処分を行なうだけでなくて、告発を行なう、あるいは命令の不服従者に対しましては行政代執行法の適用を徹底的に行なうというようなことをぜひやっていただきたいと思うのでございます。  さらにもう一つお聞きしたいことは、違反建築を事前に防止することができないだろうか、それに対してどういう対策を考えておられるかということでございます。
  117. 大津留温

    ○大津留政府委員 建築確認の申請がありました場合に、それを審査いたしまして、基準に反しておるものは確認をいたさないということによって防止するのがたてまえでございますが、悪質業者におきましては、確認申請の設計と違った工事をやる、あるいは中にはそういう確認の手続をとらずに建築を行なうというものがございます。これらに対しましては、やはり建築監視員が常時建築現場をパトロールいたしましてその違反を発見いたしまして、是正、工事の中止等を命ずるということが最も効果がある方法ではなかろうかと思います。中止命令にもかかわらず工事を続行したという場合には、これは罰則の適用もございますし、また、悪質なものには是正の命令も出す、それから最後には代執行で取りこわすということになろうと思います。
  118. 葉梨信行

    ○葉梨委員 そこで、この建築監視員の任務は非常に重いわけでございますが、しかし、その人数が少ない、また足りないというようなことで抜け道ができては困るわけでございます。必要にして十分な人員と必要にして十分な予算を確保される対策がおありかどうか、大臣からひとつ……。
  119. 坪川信三

    坪川国務大臣 非常に重要な問題でございます。その裏づけされるべき予算措置等につきましては、財務当局と積極的に折衝いたしまして万遺憾なきを期したい、こう考えております。
  120. 葉梨信行

    ○葉梨委員 できれば、実際にどの程度の人口の市には何人くらいというところまで伺いたいと思うのでございますが、いま具体案があれば、局長から……。
  121. 大津留温

    ○大津留政府委員 人口二十五万程度の市でこの建築行政を行ないますに必要な最低の人員は、少なくとも十四、五名は要る、こういうふうに考えております。そういうことで、全国的に各府県の職員も充実するのみならず、新たに特定行政庁になりました市の職員を確保するためには、現在この建築行政に従事しておる職員の総数が約三千名おります、これを三年ないし五年計画で四千五百人ないしは五千人程度にふやしたいということで、自治省等とも事務的に折衝いたしておるような次第でございます。
  122. 葉梨信行

    ○葉梨委員 ぜひそのまず第一段階の予定を実現していただきたいということをお願いしておきます。  次に、用途地域制についてお伺いします。  現在用途地域制を実施しております地方公共団体は、本改正案によりまして、三年以内に、用途地域を細分し指定がえを行なうことになるわけでございますが、大都市では地域により相当の混乱が予想されますので、運用には十分な配慮が必要ではないかと思われるのであります。問題は、期限内の指定がえが技術的に可能かどうかという点でございますが、まずこの点をお伺いいたします。
  123. 大津留温

    ○大津留政府委員 改正法に基づく新しい用途地域の指定は、改正法施行の日から三年以内に行なうことといたしておりますけれども、これは指定の最大限の場合に備えて三年以内というふうに規定をいたしておりますが、実際はこれよりも早く指定ができるものと考えております。先ほども申し上げましたように、新しい都市計画法の施行に備えまして、各市において用途地域の検討を進めております。それで、大都市圏あるいは新産都市等におきましては、ことしのうちに市街化区域をきめて、そこにおける用途地域の設定をすべく準備を進めておるような状況でございますので、その際には、この建築基準法の改正による新たな用途地域を一応念頭に置いて作業を進めておるようなわけでございますから、大部分の都市におきましては、少なくとも一年ないし二年以内には新たな指定が行なわれるものと考えております。
  124. 葉梨信行

    ○葉梨委員 それからもう一つの問題は、大都市におきましては、本改正案によります八用途地域では用途の純化に不足ではないか、さらに細分化しなければならないような事態が起こるのじゃないだろうか、こういう意見も聞くわけですが、その点はどうでしょうか。
  125. 大津留温

    ○大津留政府委員 改正案によりましては、従来の四用途地域を八つに細分したわけでございますが、大都市におきましては、さらに細分してこまかな用途を定める必要があるということは、確かに御指摘のとおりだと思います。そこで、現行法におきましても特別用途地区という制度がございまして、たとえば文教地区だとか、あるいは事務所地区あるいは観光地区というような特別用途地区を、それぞれその都市の状況に応じて、必要があれば都市計画の手続によって指定ができるということがございますので、これによりましてその要請にこたえることができるだろうというふうに考えております。
  126. 葉梨信行

    ○葉梨委員 それから建蔽率の問題でございますが、現行法の住宅地域内では、狭い敷地を排除するために、敷地から三十平方メートルを引いたものの十分の六を建蔽率と定められているわけでございます。本改正案では、地価の高騰や敷地難等により、敷地狭小化の実情に即して廃止することになったわけでございます。建築基準法では、本改正をもってしても敷地の狭小化を防止することは不可能であり、過密零細な市街化を抑制するためにはほかに適切な措置が必要ではないだろうか、こういう問題があるわけでございます。これに対して事務当局はどんな対策をお持ちでございましょうか。
  127. 大津留温

    ○大津留政府委員 御指摘のように、市街地の環境を維持改善するためには、建築行政だけでは不十分でございまして、都市対策あるいは住宅対策を総合的に進めてまいる必要がございます。新市街地におきましては、開発許可の制度によりましてスプロール化を防止しつつ市街地開発事業の推進によりまして健全な市街地をつくっていこう、また既成市街地におきましては、先般成立を見ました都市再開発法による再開発事業あるいは住宅地区改良法による改良事業等々をあわせ行ないますとともに、児童公園、あるいは河川敷の開放等によりまして、住宅地の中に公園緑地を整備するということによって、良好な住宅地の環境を推進してまいりたい、こう考えております。
  128. 葉梨信行

    ○葉梨委員 先ほどもちょっとお伺いしたのでございますが、繰り返して伺っておきますが、建築基準法都市計画法は、おっしゃったとおりに姉妹法のような関係にあると思います。都市計画の運用が適切でなければ、基準行政の運用にも支障を来たすという結果を見るわけでございます。そこで、本改正案によります用途地域の指定には、まだ市街化が十分されていない、道路その他都市施設の整っていない都市近郊等は、将来を見通して用途地域の指定をなさるのか、あるいは未指定としておいて、場合によってはスプロール化していくのだろうか、こういうような疑問があるわけでございます。これにつきまして大臣より御所見を承りたい。
  129. 坪川信三

    坪川国務大臣 非常に大事な問題でございますが、都市計画法と本法案との関連は、姉妹関係あるいは車の両輪のごとき間柄をもって重要なる関連性を持つ両案でございますが、御指摘になりました都市計画法の施行に伴って、今後積極的に市街化すべき地域に市街化区域を設定し、当分市街化を抑制する地域に市街化調整区域を設定することとなりました。市街化区域については全域に用途地域が指定されることとなり、また、調整区域は原則として用途地域を指定しないことになっておりますので、用途地域の指定と将来の市街化の方向とは一致していると考えられるような次第でございます。
  130. 葉梨信行

    ○葉梨委員 それから、私道のことについてちょっとお伺いいたします。  建築物の敷地は、基準法上の道路に二メートル以上接しなければならないので、建築が可能な敷地とするためには、特定行政庁の指定を受けまして私道を築造することになるわけであります。私道の維持管理は放任状態でございまして、実態はよくつかめていないようです。社会問題化したような例もございます。本改正案によりまして、私道の位置の指定にあたり、道の線形、構造等に関する基準を政令できめることになりますが、私道を行政的に把握するために、一定基準以上の私道を道路法上の市町村道に準ずることとして、不特定多数の通行するものにつきましては、地方公共団体の買い上げや、あるいは維持管理に対する必要な補助ができるように措置する必要があると思うのでございます。この点につきまして当局の御見解を承りたいと思います。
  131. 大津留温

    ○大津留政府委員 御指摘のように、私道は、公道の末端におきますいわば毛細血管というようなことで、広い意味の道路網の大事な一翼をになっております。そのうち、特に私道によりましては、一般の公衆の利用が盛んで、公道にまさるとも劣らない重要な機能を発揮しているものもございます。したがいまして、そういう幹線的な作用をいたしております私道につきましては、これを公道に移管いたしまして公共団体の責任において維持管理をはかるということが好ましいと思います。建設省といたしましては、そういうように従来から指導はしてきておるわけでございますけれども、やはり公共団体の財政事情等によりまして必ずしもそれが万全には行なわれていないということははなはだ遺憾でございますが、今後におきましても、そういう公共的な利用度が高い私道につきましては、公道に移管いたしまして公共団体の責任におきまして維持管理をはかっていく、こういうふうに指導したいと思います。
  132. 葉梨信行

    ○葉梨委員 次に、生活妨害につきまして少しお伺いいたしたいと思います。  最近の住宅難や宅地難から都市内の土地の高度利用が促進され、建築物が大型化、高層化するに従いまして、日照障害がにわかに社会問題としてクローズアップされて、裁判問題も起こっておるような状況でございます。そして最近の判例によりますと、いままでの解釈は、建築基準法は、相隣関係には基準法は関係がないとしておったのでございますが、直接の関係はなくても、いろいろの制限がある限り、間接的に日照や通風を隣の土地に期待させることを否定できないとするものがあるわけでございます。建築基準法で日照、通風等の生活妨害を禁止することが適当であるかどうかという問題につきまして御見解を承りたいと思います。
  133. 坪川信三

    坪川国務大臣 建築基準法では、住宅にはいわゆる日照が確保されていることが望ましいのでございますが、反面、都市の現状は、敷地が細分化され、また土地の高度利用の要請もきわめて強いので、日照の十分な確保ははなはだ困難な点があるわけでございます。このような現状のもとで、土地の高度利用の要請と住宅の日照の確保の要請とをどのように調和させるか非常に困難であろうかと思います。地域によっては、そのいずれに重きを置くかを考えねばなりません。このような観点から、高層住宅と低層住宅の立地を仕分けいたしまして、それぞれの地域で建蔽率及び高さの制限を設けますとともに、低層住宅専用地域といわゆる中高層住宅専用地域において、それぞれの建物の北側部分の高さの制限を設けることにいたしたような次第であります。
  134. 葉梨信行

    ○葉梨委員 現行の建築基準法におきましては、居室の採光、住宅の居室の日照、建築物の斜線制限等がございます。また、都市計画法では、用途地域高度地区の指定により、さらに改正案では、地域の細分化、住居専用地域の北側隣地境界線からの斜線制限等によりまして、日照保護の措置をとっているわけでございますけれども、具体的な規定がないわけで、細部につきましては建築士等の技術者の良識にまつところが大であるという現状でございます。既成市街地では日照保護の具体的な規制はちょっとむずかしいのじゃないかというような意見があるわけでございますが、この点につきましてはどのように規制をやっていかれるだろうか、お伺いいたします。
  135. 大津留温

    ○大津留政府委員 既成市街地内におきます日照権保護の問題は、ただいま建設大臣から御答弁申しましたような基本的な構想のもとに、改正案におきましては、いわゆる低層住宅地区としての第一種住居専用地域におきましては、五メートルの高さをこえる建物を建てる場合には、一定の割合で北側の境界線から距離を置くということにいたしました。すなわち、五メートルをこえます場合には、一メートル後退するごとに一・二五の割合で斜線を設けまして、その斜線の制限内に建築物がおさまるようにし、また、中高層住居専用地域でありますところの第二種住居専用地域におきましては、十メートルをこえます高さの建物を建てます場合に、ただいま申しましたような斜線のワク内におさまるような建て方をする必要がある。具体的に申しますと、第一種住居専用地域におきましては、二階建てを建てようとする場合には、二階の高さが六メートルといたしますと、北側の境界から一メートル離さなければならない、また三階建て、約十メートルの高さの建物を建てます場合には、北側の境界線から四メートル後退させて建てなければならない、こういう制限に相なるわけでございます。
  136. 葉梨信行

    ○葉梨委員 日照の問題につきましては、よくお日さまの光に当たらなければいかぬ、保護されなければいかぬという考え方からしまして、こういうことも言えないでしょうか。それは、住居専用地域におきまして、これは緯度によって違うと思いますが、その地方に適しました南北方向の隣接間隔の基準をきめる。北と南ではずいぶん違うと思います。一定の北側空地を義務づけまして、南側に必要空地を設けて日照を確保しない者は、みずから日照権を放棄したものとみなすというようなことで、片方だけに一方的に義務づけるのはおかしいじゃないか、こういう考え方もあると思うのです。この点は具体的に行政指導でこういうことをやれないものでしょうか。
  137. 大津留温

    ○大津留政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、住居専用地域におきましては、一定の高さをこえる建物を建てる場合には、北側から一定の距離を置かなければならないということでございますが、先ほど大臣の御答弁にありましたように、わが国の都市の実情からいたしまして、日照が十分に確保されるということは、ただいま申し上げた制限によりましてもこれは必ずしも十分ではございません。いま御指摘になりましたように、北側に建築しようとする人も、みずから南側に一定の間隔を設けて日照をみずから受けるという方法を講ずる必要がございます。したがいまして、みずからは南側の境界にべったり建てまして、それでその人が、建築によって日照が受けられないというようなことによって日照権を主張するというのは、ちょっとかって過ぎる議論じゃなかろうかというふうに思います。  なお、御指摘のように、わが国の地形が南北に非常に長い地形でございますから、北海道と九州では、日照の受け方が、先ほど申しました基準によりましても、地域によって事情が違ってまいります。今回の基準は、全国に通ずる最低の基準という考えでございますので、その地域地域によりまして、それでは足らない、もう少しきつい制限を加える必要があるというところがございましたならば、都市計画の決定によりましてそういう基準をさらに強化するということも可能でございますが、先ほど大臣の御答弁のように、敷地が細分化されております現況から見まして、これ以上の強化はそう一般的には行なわれ得ない状況ではなかろうかというふうに考えております。
  138. 葉梨信行

    ○葉梨委員 生活妨害につきましては、この日照の被害のほかに、隣地の見おろし、通風妨害、深夜騒音、電波妨害などがあるわけでございます。これらにつきましては、本改正案によります用途地域の細分化のほかに、現行法に基づきます建築協定制度を促進したり、あるいは相隣関係法の整備強化が必要じゃないかと思うのでございます。この点につきましてはいまどういうことを考えていらっしゃるか。
  139. 大津留温

    ○大津留政府委員 その隣地の建物からの見おろしとか、通風妨害あるいは深夜の騒音、電波妨害等、いわゆる都市生活におきますいろいろな生活妨害がございます。これらは、御指摘のように、建築基準法だけではその排除に万全を期するわけにはまいりませんが建築基準法におきましては、先ほども申し上げましたように、用途地域をさらに細分し、その用途を純化いたしまして、住宅地の中からパチンコ屋だとかボーリング場というものを排除するというようなことをきめましたが、そういう規定のほか、たとえば風俗営業等取締法だとか、あるいは軽犯罪法等によりまして、他の取り締まり規定と相まちまして住宅環境の公害の防止に当たる必要がある、こういうふうに考えております。
  140. 葉梨信行

    ○葉梨委員 最後に、設備や構造につきまして数点お伺いいたします。  建築物に適用されます基準というのは、多くは建築時の最低の基準でございまして、だんだん年を経るに従って変わってくる。その経年変化と申しますか、その変化に対しまして法的な規制というのはきめられておるけれども、実態は、建築主の自主性にまかされておって、十分な監督がされていないのが実情でございます。現行法に規定されております特殊建築物に対します検査や報告制度というものは、その運用を徹底的に行なうことによりまして建築主にその実情を知らせることになり、そしてまた、適法に維持保全をはかることができるのではないだろうかということを考えるわけでございます。この点につきまして御見解を承りたいと思います。
  141. 大津留温

    ○大津留政府委員 基準法におきましては、建築に着手する前にその建築の設計計画が適法かどうかを審査いたしますが、一たんでき上がった後におきましてこれを十分監視いたしませんと、その後かってに改造したりして不適法な状況になるということになりがちでございます。そこで、御指摘のように、建物の所有者が、建物の状況につきまして定期に検査をいたしまして特定行政庁のほうに報告をするということにいたしておりますが、今回の改正によりまして、その報告は、建築士あるいは建設大臣が認定いたしました専門の技術者をしてその建物の検査を行なわしめ、それからこの報告を受けるということにいたしたわけでございます。なおそのほか、新たに設けます建築監視員が、御指摘のようなホテル、旅館というような特殊建築物につきましては、消防署等と協力いたしまして、常時現地を監察いたしまして違法を監視する、また特定行政庁といたしましては、そういう建物が非常に古くなり、あるいは設備が悪くなりまして、防災上はなはだ危険だというふうに認められる場合におきましては、その改善を命ずるというようなことによりまして、建物の維持管理の適正化をはかっていきたい、こういう考えでおります。
  142. 葉梨信行

    ○葉梨委員 この間の委員会で古屋委員からも指摘されておりましたけれども、二、三年前には鬼怒川温泉の火事、また最近では有馬温泉、それから磐梯熱海温泉の火事等、ホテルや旅館等特殊建築物の火事のたびにたくさんの人命を失っておるわけでございます。最近の建築物には内装に火災の折に多量の煙を発生する材料が使用されておりますことや、あるいは避難の誘導が適切でなかったというようなことが重なってそういう惨事が起こったのであろうと思うのでございます。こういうような不幸な事件の反省から、五月一日、施行令の改正が行なわれたわけでございますが、この施行令の改正と本建築基準法改正案の両方で建築物の防災対策が一応整備されたと言えるかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  143. 坪川信三

    坪川国務大臣 葉梨委員指摘のごとく、ここ二、三年における国内の不幸な旅館、ホテルその他の火災による貴重な人命の犠牲等を考えますときに、政府といたしましては、これらの不幸を避けるべく、建築基準法の改正をいたさなければならない、また政令の改正をいたしましたゆえんもここにあるのでございます。特に新建材等におけるところの問題につきましては、御承知のとおりに、ガラス製のものあるいはセメントというようなものもございますけれども、やはり一番悪いいわゆる発煙性の強い、また燃性の強い新建材が多く出ておりますことを思うときに、これらに対する禁止等、やはり規制しなければならない、また、御承知のとおりに、避難体制の確保、また避難階段、あるいは発煙等の防止等も含めまして、五月の政令改正を公布いたしましたゆえんもここにあるのでございます。とともに、新たにいま御審議を願っておる建築基準法の改正と相まちまして最近の国内におけるところのこうした不幸事件をぜひとも避けてまいりたい、こういうふうな気持ちで立法措置の御審議をお願いいたしておるような次第であります。
  144. 葉梨信行

    ○葉梨委員 施行令並びに改正案によりまして大臣お話しのような完全な指導をしていただきたいと思うのですが、その前に、しろうと考えですが、一つ伺っておきたいのは、いろいろな化学会社、メーカーが新建材をどんどんつくり、どんどん宣伝して売り出しまして、そしてあげくの果て、火がついたらそれがうんと燃えて、たくさんの人が死んでしまう。一体メーカーというものは、売ればいいということで、火事になったときどうかという配慮がなく品物を売り出しているのかどうか。また建設省の住宅局といいますか、監督官庁としてそういうことについていままでやはりミスがあったのかどうか、そこら辺、住宅局長に聞いておきたいと思います。
  145. 大津留温

    ○大津留政府委員 いわゆる新建材、先ほど大臣がお答えいたしましたように、いろいろな種類がございます。御承知のように、木材とかその他の天然材料が非常に枯渇してまいっております現状におきましては、これらの新建材がどんどん出て安く提供されるということは、歓迎すべきことでございます。ただ反面、御指摘のように、これらの新建材の中には、非常に煙を出す、あるいはガスを発生するというものがございまして、火災時にそういうガスあるいは煙のために窒息死するというような事故が出るわけでございますが、通常の住宅におきましては、たとえそういうような材料を使いましても、かりに煙が出ましても、普通の住宅でございますとすぐに避難ができるということでございますので、一般の住宅にまでこれらを制限するということは必要がなかろうというふうに思うのでございます。ただ、大規模な建築物とか、あるいはホテル、旅館、デパート、病院というような不特定多数の人が出入りする建築物におきましては、やはり非常の際の避難の妨げになるということを考えまして、そういう特殊建築物につきましては、そういった発煙性の材料は使用を禁止するということで指導をしてまいっておるわけでございます。従来、そういった材料の規制をいたします場合に、燃えやすいか燃えにくいかということに重点を置きまして、煙がたくさん出るかどうかというのは実はそれほど配慮していなかったというのが実情でございます。そういう従来の経緯を反省いたしまして、先般も政令改正に際しまして、発煙性というものを資材認定基準に取り入れまして、そういう燃えやすいと同時に発煙量の多い材料を制限するということにいたしたわけでございます。
  146. 葉梨信行

    ○葉梨委員 いま売り出されております建材、たくさんの種類があると思いますが、それらについては全部チェックが済んでおるのかどうか。それから、これからまた新しく化学工業の発展に伴って安くていいものができるだろうけれども、そういうものに対しましてどういう機関で検査をし試験をするか、また、その検査につきましてはどれくらいの時間をかければ結果が出るのか、そのような技術的な点につきましてお伺いいたします。
  147. 大津留温

    ○大津留政府委員 先ほど言いました発煙量の多寡をチェックポイントにいたしました新たな基準を近々に定めまして、メーカーはその基準にのっとりまして生産をいたすということに相なっております。ただ、先ほど申しましたように、一般の小住宅に使われる材料につきましては特別の制限をいたしませんので、そういう方面の需要に向ける分は、基準が変わりましても、特に生産上変更を加えるということはする必要がない、特殊建築物向けの材料をこれから製造する場合に、新たな基準にのっとって生産する、こういうことに相なるわけでございます。
  148. 葉梨信行

    ○葉梨委員 いま伺った中で、チェックする機関にどういうものがあって、どんなふうな能率でやっているかということをお答え願います。
  149. 大津留温

    ○大津留政府委員 担当の建築指導課長から……。
  150. 前川喜寛

    ○前川説明員 現在は、建築研究所――建設省の付属機関でございます。ここに試験室を設けてやっております。そのほかにも消防研究所その他の公的機関が二、三東京都にございます。それから大学の研究室が二、三、それ以外にも、実は公益法人でございますが、東京の建材試験センターあるいは大阪の総合建築試験所、こういったものがございます。中心は建設省の建築研究所がやるという体制でございます。ただ、先ほども局長が申し上げましたように、試験方法が大体固まりまして、それによる完全な試験機械を据えつけるというようなことでございます。ちょっと時間を食うんじゃないかと思いますが、できるだけ早くやりたい、こういうふうに考えております。
  151. 葉梨信行

    ○葉梨委員 最後に伺います。  主要構造部その他安全上、防火上、または衛生上重要な、政令に定める部分にJIS、JASのものを使うことになっておりますけれども、JIS、JASを使う政令で定める重要部分とはどの部分であるか、その点を御答弁をお願いいたします。
  152. 大津留温

    ○大津留政府委員 この建築物の主要構造部には、建設大臣の指定するJISまたはJASに合格した材料を使わなければならないということになっておりますが、それに準ずる主要な部分と申しますのは、たとえば、防火戸あるいは階段、あるいは戸張り、軒、こういうものでございます。
  153. 葉梨信行

    ○葉梨委員 どうもありがとうございました。  これで質問を終わります。
  154. 天野光晴

    ○天野(光)委員 関連で二つの問題について。  いまも葉梨君が最後に問題にされた、新建材の使用を制限するといういわゆる特殊建築物とは、何と何をさすのですか。
  155. 大津留温

    ○大津留政府委員 劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場、それから病院、ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎、養老院、学校、体育館、百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー、舞踏場、遊技場、倉庫、自動車車庫、自動車修理工場、こういうものでございます。
  156. 天野光晴

    ○天野(光)委員 過去における火災の災害にかんがみて、新建材を使用したということによって人命の損傷が非常に多かったということで、新建材の使用制限をするというふうに踏み切ったわけでありますが、先ほどの葉梨君の質問によりますと、新建材をチェックするその設備もまだできていないというふうに答弁を聞いたのですが、それはどうなんですか。もう完全にやっておるのですか、それとも、まだ完全にその機械等の設備ができなくてできないのか、できるとすれば、いつごろまでにそれが完了するのか。
  157. 坪川信三

    坪川国務大臣 この問題は、さっきも私が申し上げましたごとく、非常に重大な問題であり、建設省といたしましても積極的にこれらに対する対策を講じなければならぬというような観点で、私みずからも建設省の付属機関である研究所に参りましたが、実地にあらゆる方法によって新建材の発煙性あるいは燃性等をいま十分化学的に検討いたしており、その効果も非常にあげておりますので、これらの点のチェックから十分配慮いたしていきたい、こう考えておる次第でございますが、技術的な具体的な問題については、住宅局長から御答弁いたさせます。
  158. 大津留温

    ○大津留政府委員 近く試験方法をきめます。実は建築研究所がその道の一番のオーソリティですが、建築研究所に発煙性の基準につきまして研究をお願いしております。その研究はわが国では初めてだというようなことで、結論が延び延びになっております。はなはだ申しわけないと思います。それもやっと研究の成果が出まして、近く試験方法が確定いたします。それに基づきまして具体的な材料を試験いたしまして、これはどうかという決定が行なわれることになります。
  159. 天野光晴

    ○天野(光)委員 その話はそれでいいのですが、要するに、問題が起きて、すでに過去において、せんだっての磐梯熱海温泉のごときは四十人も死人が出たというような、ああいう建材はすぐにやはり使用禁止すべきじゃないかと思うのですが、その扱いはやっておりますか。
  160. 大津留温

    ○大津留政府委員 現在におきましても、ホテル、旅館等の特殊建築物には、不燃材料あるいは準不燃材料あるいは難燃材料を使わなければならない、一般の燃えやすい材料は使ってはならないということになっておるのですが、その中のいわゆる難燃材料というものの中に、燃えにくいけれども、煙が出るというのがまじっておりますので、それを排除するのが当面の課題だ、こういうふうに考えまして、先ほど申し上げましたような順序で近々にそれを具体的に取り扱うようにいたしたいと思います。  ちょっと説明を落としまして、つけ加えさせていただきます。  先般の政令改正で、ホテル、旅館等の廊下、階段、これは避難上非常に大事な部分でございますから、ここの部分に使います材料は、不燃材料及び準不燃材料に限るということで、煙を出すおそれのある不燃材料はこれを禁止することにしております。
  161. 天野光晴

    ○天野(光)委員 具体的に――局長でなくて課長でもいい。有馬温泉とか磐梯熱海温泉の火災のときに、ああいう災害をもたらした新建材は使用禁止にしたのかどうかということです。その一点。
  162. 前川喜寛

    ○前川説明員 具体的に、新建材といたしまして煙を多く出すものでございますね、これはいまのホテル、旅館、こういったものの廊下、階段には全部禁止いたしました。
  163. 天野光晴

    ○天野(光)委員 それを聞いておる。禁止いたしましたのでなしに、使った新建材の材料の名前がわかるでしょう。この間の場合はそれはきちっとしたかどうか、それを聞いておる。――それはしたのですね。  それに関連して大臣に一言お聞きして――聞くというよりも、申し上げておきたいと思うのですが、この間の磐梯熱海温泉の火災の場合に多く死傷者の出たという大きな原因は、建築基準法に基づいて許可をとった建築が、完全にし上がっていないものを使用したという問題があるわけです。消防庁の許可あるいは建設省の許可基準によって完全にできていない建物を、厚生省の許可によってホテルの営業を開始したというところに大きな間違いがあった。それで私、この前、災害対策委員会で、厚生省と建設省と消防庁の三つで最終的に全部が完成しないと許可しないようにしろという申し入れをしました。これは事務次官通牒か何かでやったらしいのでありますが、これは申し合わせ程度でなしに、根本的に三つの許可が完全になければできないという処置を講ずる必要があると思いますが、その点どうですか。
  164. 坪川信三

    坪川国務大臣 いま御指摘になりました磐梯ホテルのあの不幸な事件にかんがみまして、消防庁、厚生省並びに建設省、この三者一体になって、やはり調査あるいは巡視その他一致した行動でいかなければならぬ、これがお互い統一がとれなかったところから私はああした不幸が出てまいったということを痛感いたしまして、予算委員会においても要求されましたので次官通牒をもって、各省が一致いたしました対策を講じて各府県に通牒を発したような次第でございます。
  165. 天野光晴

    ○天野(光)委員 もう一点は、先ほど葉梨君の質問でるる御説明になった違反建築の扱い方、これは監視員を置いてやるというのですが、先ほど局長の答弁によると、悪質なものと悪質でないものとあるような答弁をされておりましたが、基準法違反であるものは全部悪質と見て差しつかえないと思うのです。局長のほうで、基準法違反であっても良質だというものがあるというのだったら別ですが、これは絶対悪質だと思うのです。処分のしかたがまずいから、いままで続々違反建築があったのだと思うのです。そういう点で、監視員の制度もたいへんけっこうだが、違反の建築物を発見した場合においては厳重に処断をする、代執行までやるのだということをきちっとやらなければ、監視員を何十人ふやしてもどうにもならないと思うのです。最終的にスピードをあげて代執行をやるということを一本きちんとしておいてもらわないと困ると思うのですが、その点どうですか。
  166. 坪川信三

    坪川国務大臣 違反が明らかに摘発された場合におきましては、工事中におきましても直ちにその停止命令を出し、また立て札を出しまして、それらに対する民間の協力をいただくというような措置も講じておるのが、法律案の改正の点でございます。また、御指摘になりましたそれらに対するところの処罰という点につきましては、十分いまの御趣旨に沿うよう処罰を厳重に明らかにせなければ、これに対応する順法精神が失われるというようなことから、これらにつきましては政令その他においても十分配慮いたしてまいりたい、こう考えております。
  167. 天野光晴

    ○天野(光)委員 たいへんけっこうな答弁のようなんですが、建てた建物を代執行で取りこわされるのが一番いやなことなんです。こわされるのならば、だれも建てない。違反して建てても大体取りこわしをしないから、どんどん建ててくるのです。ですから、強力な代執行をやって、違反建築物は全部代執行で始末をするということをやれば、違反建築なんか出てきませんよ。それをつくってしまって何年かたったら、惰性でそのままずるずる使わしておるところに問題があるのですから、その辺は、監視員制度をつくるこの法律改正にあたりまして、建設省当局はきちっと腹を固めて、違反建築物ができ上がっておれば即座に代執行で取りこわしをさせるのだという決意を表明しておいて、そのとおりやっていただきたいと思うのですが、いかがですか。
  168. 坪川信三

    坪川国務大臣 その点は全く同感であり、当然でございますので、その処置をはっきりと講じたいと思っております。また、その方針であること、また、立法の目標もそこにあることを御了解いただきたいと思います。
  169. 始関伊平

    始関委員長 次回は、来たる十一日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十三分散会