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1969-04-11 第61回国会 衆議院 外務委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年四月十一日(金曜日)     午後三時二十二分開議  出席委員    委員長 北澤 直吉君    理事 青木 正久君 理事 秋田 大助君    理事 藏内 修治君 理事 田中 榮一君    理事 山田 久就君 理事 戸叶 里子君    理事 穗積 七郎君 理事 曽祢  益君       小泉 純也君    坂本三十次君       世耕 政隆君   橋本登美三郎君       福田 篤泰君    松田竹千代君       毛利 松平君    大柴 滋夫君       宮澤 喜一君    渡部 一郎君       松本 七郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         外 務 大 臣 愛知 揆一君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         外務省アジア局         長       須之部量三君         外務省アメリカ         局長      東郷 文彦君         外務省経済局長 鶴見 清彦君         外務省経済協力         局長      上田 常光君         外務省条約局長 佐藤 正二君         外務省国際連合         局長      重光  晶君     ――――――――――――― 四月八日  委員毛利松平辞任につき、その補欠として中  曾根康弘君が議長指名委員に選任された。 同日  委員中曽根康弘辞任につき、その補欠として  毛利松平君が議長指名委員に選任された。 同月十一日  委員伊藤惣助丸君辞任につき、その補欠として  渡部一郎君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 四月七日  世界連邦建設決議に関する請願小峯柳多君  紹介)(第三三六〇号)  同(三木武夫紹介)(第三三六一号)  同(村上信二郎紹介)(第三三六二号)  同(山花秀雄紹介)(第三三六三号) 同月十日  世界連邦建設決議に関する請願秋田大助君  紹介)(第三六一二号)  同(長谷川正三紹介)(第三六一三号)  日米安全保障条約廃棄等に関する請願田代文  久君紹介)(第三六八八号)  同(谷口善太郎紹介)(第三六八九号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 四月七日  米軍原子力潜水艦寄港即時取止めに関する陳  情書(第二  七二号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 北澤直吉

    北澤委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。戸叶里子君。
  3. 戸叶里子

    ○戸叶委員 佐藤総理大臣、しばらくでございます。きょうは時間があまりないもんですから、急いでなるべく簡単な質問要旨にしますから、その質問に答えた答弁をしていただきたいと思います。     〔委員長退席秋田委員長代理着席〕  まず第一に、沖繩核抜き本土並みということになりますと、当然安保条約の適用も沖繩に現時点では打ち出されてくると思います。そうだとしますと、総理が訪米なさいますときまでには、安保条約についてもその態度がはっきりしなければ交渉できないと私は思います。そこで、私ども意見は当然違いますけれども自動延長だとか、あるいは固定延長だとか、条約改定だとか、いろいろいわれておりますけれども、はっきりさせるのは当然十一月の訪米前と理解してよろしゅうございますか。
  4. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおりでございます。
  5. 戸叶里子

    ○戸叶委員 十一月前には安保条約についての態度をはっきりさせるということがまずわかりました。  そこで、政府のいわれておりますように、沖繩が七二年に予定どおり返還されるときには、当然基地の態様というのはきめられているはずだと思います。しかし、実際問題として、現在の基地本土のそれと比較しましてもあまりに違い過ぎますので、何年かかかって本土並みにするということも政府考えられるのではないか。それとも、返還と同時に本土並みに全く同じようにするという自信をお持ちになっていられるか、この点をまず伺いたいと思います。
  6. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 たいへん申しわけないことですが、ついせんだって予算委員会で答えた当時から、あまり私自身考えは変わってないのです。したがいまして、ただいまのようにどういうようになるかということについて、もう少し時間をかしていただく、その上で結論を出す。しかし、もちろん、いまお話しになりましたように、沖繩が返ってくれば、当然本土で行なわれておる憲法はそのまま実施されるし、また特別の定めなき限り安保条約、これも適用されるんだと、かように御理解をいただきたい。私、それより以上ただいまの段階では別に変わっておりません。
  7. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私の伺っておりますのは、基地の問題に限っていま伺っているわけです。いまの本土にある基地あり方沖繩基地あり方はだいぶ違っております。しかし、七二年に返ってくるときには本土並みになるんだ、こういうことになりますと、それまでに、いまの基地あり方というものが七二年までに変えられるという自信がおありになるのか、それともそれがもっと長引くか、返ってきたけれども基地は二年たってから本土並みになるということになるのかどうか、その点を伺っているわけです。
  8. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まだ第一の七二年までに返ってくるかこないか、これが問題でございますし、また返ってくるときに、一体アメリカ基地がどんな状態であるか、これが一つの問題だと思います。私どもが出てまいりまして、とにかく返還の時期を交渉することが一つと、また同時に、その返還の時期に合わせて、米軍基地はどういうようにするか、そのこともきめる、こういうことでございますから、その点が皆さんもたいへん御心配で、早く聞きたい。ことによアイゼンハワー葬儀に参列した岸元総理大臣が、個人的意見とはいいながらもいろいろ話しておりますが、そういうことで、政府考え方は一体どうなのか、その辺にも疑問があるようですが、実は私自身としては、まだ政府考え方をそこまで煮詰めておらないということを先ほど来申し上げておるわけです。
  9. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私がいま質問しました基地の問題はあと回しにするといたしましても、これまで政府答弁では、予算委員会等を通しまして、七二年には返るのだ、こういうふうな答弁をされて、国民は大体そういうふうに了解していると思いますけれども、それ以後ということもあり得るわけでございますか。
  10. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 両三年以内に返還めどをつける、これが私が一昨年ジョンソン前大統領と共同コミュニケできめたものでございます。したがいまして、そのときから両三年のうちに出かけて、いつアメリカ沖繩返還してくれるか、この問題をきめよう、こういうことになっておりますので、いまのようになればたいへんけっこうでありますし、また、そういうことをやはり国民、また沖繩の県民も一日も早くと、かように思っておるだろうと思いますが、まだそこまで申し上げかねている、これが実情でございます。
  11. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いまの総理の御答弁に私は非常に何か疑問を持つのです。両三年のうちに返るという印象を持ち、そしてまた、七三年には返るというような答弁も、私はどこかで見たような気がしますけれども、そのことにこだわっていますと先が進みませんので、これはまたあとで伺いたいと思いますが、いま総理のおっしゃいましたように、先ごろアイゼンハワー氏の葬式に特派大使として派米されました岸元首相が、核抜き自由使用が望ましいということを記君会見で述べておられます。この行為自体については議論されたことでございますから、私はきょうはそれは避けますけれども、そこで、自由使用ということで伺いたいと思うわけです。  これまでの答弁を総合してみますと、いま政府の言う核抜き本土並みとは、私が文字どおりに言うならば、事前協議政府イエスと言えば核も持ち込めるし、戦闘作戦行動にも政府イエスと言えば出られるのだ、そしてそれは沖繩に限らず、本土もそうであるということであると思います。しかし、これは自由使用と言えない、そういうふうに理解してよろしいかどうか、この点を念のために伺っておきたいと思います。
  12. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま言われるように、いわゆる自由使用というものは、相手方の考えどおりこれを自由に使うということだと思います。しかし、いまの日米安保条約には事前協議という条項がありまして、自由使用というような規定はございません。これはいま戸叶君が御指摘になりましたとおりでございます。この点でいろいろ誤解を生じやすい発言があったので、実は、岸特使が帰りましてからいろいろ相談してみますると、米政府に会う前に記者会見をして、個人的意見だがということで、ただいまのような自由使用ということを申しておる。しかし、アメリカ政府に対してはさような点は全然触れておりません。これははっきり私からも申し上げ得るし、また岸特使自身も、アメリカに参りまして、アメリカ政府といろいろ交渉というか話し合いは持ったようですが、しかし、さようなことは申しておらない。これははっきり確認できておるのでございます。
  13. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私どもから常識的に考えましても、岸さんは今回は特使として行かれたにしても、この問題で行かれたわけではないですから、公式にこの問題等お話しにならなかった。そういう意味では、懇談なり何なりの形ではおっしゃったと思います。しかし、自由使用のことはおっしゃらなかったという御答弁ですから、そのもののように理解をいたしますにしても、岸さんがたびたびおっしゃいますのは、この自由使用というのが私の持論である、持論であるからそういうふうに言ったまでだというように言われている。そこにも私は非常にひっかかるものがあるわけです。と申しますのは、岸さんは元首相であって、安保条約が一九六〇年に国会で審議されたきの責任者でございまして、そして問題の岸・ハーター交換公文をとりきめた当事者でございます。その当時から事前協議の本質をよく知っていらしたはずだと思います。そこで、今日、日本国民はあんまりこの事前協議にたより過ぎているので、これを何とか違うように持っていかなければいけないのじゃないか、当事交渉したことを思い出しながら、こういう発言になったのではないかというふうに私は考えるわけであります。たとえば、この事前協議というものは、お互いに必ず合意に達するとは限らない、それはそのとおりです。協議が不調のまま、一方の当事国が自分の思うとおりにすることもあるんだというような、こういうふうなことを国民に強調したいために、何か自由使用ということばを出されたのではなかろうか、こういうことを考えるのですけれども、この点はいかがでございましょうか。
  14. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま戸叶君も抵抗を感ずると言われるが、実は一番驚いたのは政府自身でございまして、ああいう記事が新聞に出ると同時に、私たいへん心配をいたしました。これはたいへんな誤解を受けては困る、かように思いまして、さっそく連絡をとったのであります。したがいまして、その後においては、よしそれが個人意見であろうと、そうかってに使ってはいない、かように私は思います。  そこで、いままでも日米安全保障条約で、この事前協議がいわゆる歯どめの役という、そういう意味にしばしば使われてきておる。これはそのこと自身が必ずしも正確だとは私は考えません。事前協議というのにもまたイエスもある、こういうことをすでにしばしば予算委員会等でもお答えしるおります。それはそれなりに御理解をいただきたいし、また岸特使も、その点では私どもと十分考え方が一致しております。ことに岸内閣時分に、これが歯どめの役になるんだという説明をしばしば繰り返しているし、また国民皆さんからも、そういう意味事前協議、そこに重点を置いたものだ、こういうふうにみんなとっていた。むしろ私どもから見ると、そういう一方的な、どこかに重点を置くという事前協議、これはやや困るのではないか。どこまでも事前協議、それを受ける日本側とすれば、自主的であること、同時にまた、日本の国益、その立場に立って事前協議に応ずる、そうして日本考え方をはっきりさす、これがいわゆる日米安全保障条約においるパートナーとして要求される事前協議、またわれわれはそういう立場事前協議に応ずるということでございます。この点は政府はしばしば申し上げておりますので、誤解のないようにお願いしておきます。また、岸特使もそういう意味では理解してくれておるようであります。
  15. 戸叶里子

    ○戸叶委員 総理の御答弁でございますけれども先ほども私が申し上げましたように、岸特使はかっては日本指導的立場にいられて、責任者としていられて、安保条約事前協議内容ということは直接タッチされて、岸・ハーター公換公文というものを出された。そういうふうな方でいられながら、今回アメリカへ行って、わざわざ核抜き自由使用が望ましい、こういうふうに言われましたのには、何か考えがあって自由使用ということばをわざわざお使いになったとしか私は思えないのです。いま御答弁を伺っておりますと、事前協議というものには——これは歯どめの役をするのだ、安保条約のときにはさんざんそういう答弁をされた岸氏である。そのとおりであると思います。私どももそうでございました。そういうふうに了解しておりました。それがだんだん今度の国会では変わってきておりますけれども、いずれにしてもそういう答弁を承っております。ところが、今回この自由使用ということをわざわざ言われたその魂胆というものが、私はどうも理解しかねる。今日の政府が言っておられるのは、核抜き本土並みという程度、そうしてしかも、それば事前協議弾力的運営ということばを私ども覚えさせられました。そこで今度は、岸さんのことばをあちこちで見ましても、自由使用だ、そして事前協議というのは、運用の面で効果をあげればいいのだ、こういうことを言われているわけです。だとするならば、この自由使用という考えというものは、いま政府の言われている核抜き本土並みとは一体違うのでしょうか、違わないのでしょうか。この面をはっきりさしていただきたい。
  16. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 核抜き本土並み、これはただいまの国民から申すと、ぜひそうあってほしい、これがもういまの国民大多数の考え方ではないかと思います。政府自身国民世論に従う、こういうことは申しておりますが、いまだかつて核抜き本土並みという表現をしたことはございません。しかし、私どもは、他の表現で、国民世論に従い、世論を無視するようなことはいたしません、こういうことを申し上げ、そういう立場交渉いたします、こういうことを申しましたが、いま論理的に、そのことは政府自身核抜き本土並み、これを意味するのじゃないか、こういうように言われることも一理あると思いますが、積極的にそこまでは申していない。  それよりも、もう一つの点は、特別な取りきめなき限り、こういう条件をつけて実は話をしています。これをなぜ私が申すかというと、この点は基本的な問題でありますから、この点が明確になることが、国民とすれば一番望ましいことだと思います。しかしながら、アメリカ交渉する当の本人としては、この問題については、こだわるようですが、最終的に十分見きわめをつけて出かけないと、国民期待を裏切るというようなことにもなりましょうから、そういう点で、政府自身はまだ慎重な態度で、最終的にはまだきめておりませんということを申し上げたわけです。だから、その点は誤解のないようにお願いして、そのことば自身をそのままとっていただきたい。いままでの予算委員会における答弁も、ただいま申し上げることのように終始しておる。私はあとであまり読んではおりませんけれども、とにかく言った気持ちがそのとおりですから、たぶん速記もそうなっているのではないか、かように思っております。  そうして、できるだけ国民期待に沿うようにと、こういうことで臨みたい。だから、早期返還も、また本土と区別をしないような、そういう方向でありたい、これは願いであります。しかし、とにかくこれは相手のあることでありますし、また、最終的な問題がきまらない限り、やはり特別の定めなき限りという条件のつくこと、これはただいまの状況ではやむを得ない、かように思っております。この点が、先ほど来、予算委員会のときとこの段階で変わっておらない、こういうことを重ねて申し上げるような次第であります。
  17. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いまの総理のお気持ちなり何なりはよくわかりました。ただ、単刀直入に言わせていただければ、核抜き本土並みという場合と、それから核抜き自由使用というような場合とでは、はっきり違うのだということが一点と、しかし、特別な取りきめがあれば、核抜き自由使用ということもあり得るのだ、そういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  18. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは当然いまのようないろいろの場合が考えられる。しかし、これは私が結論を出す場合の私の自由裁量だと思います。しかし、それにはまた前提があって、私自身は、国民の支持のもとに、国民世論に反した方向では行動しないということも実は申しておるのであります。国民の希望するもの、これは早期返還であり、核抜きであり、本土並みであるということは、ただいまは申し上げ得るかと思います。しかし、これからは国民世論にいたしましても、もちろん動きがあること、これは当然だと思います。したがって、ただいま固定してものごとをきめる、そういうことにはなかなかいかないということを申し上げたいのであります。やはりものごとが動いておる際でござい出すから、そういう点はやはり慎重に扱う、これが政府態度でもあります。
  19. 戸叶里子

    ○戸叶委員 岸特使が帰られまして、アメリカでの記者会見、国内へ帰ってきてからの記者会見等を総合してみますと、たいへんに整理されているのですね。その一点は、米軍沖繩基地を使用するのに特別に簡単な措置をとる旨明記した交換公文を取りかわすことが必要ではないかということが一つ、もう一つは、自由使用といっても、基地の無条件、無制限な自由使用はあり得ない、第三は、岸・ハーター交換公文のほかに、新たな沖繩についての交換公文をつくる考えはない、こういうふうに言われているわけです。そうだとしますと、いまの交換公文の中身を変えれば、国会承認を得なければならない。だから、そういう形ではなくて、共同声明とか、あるいは国会承認を対象としないで——そして、それはこの沖繩についてのみではない、そういう交換公文とか口上書を取りかわすとか、こういったものが今後においては考えられるのじゃないかと思います。おそらく総理は、それを伺っても、それはまだ何も考えていませんからわかりませんとおっしゃるだろうと思いますけれども、そういう点を含めまして、今後とも考えられる点についてちょっと伺っておきたいと思いますのは、沖繩基地あり方というものは、国会承認を求める文芸にするのか、いま私が申し上げましたような、求めないで済むような文書にするのか、あるいは安保条約関係文書にするのか、あるいはまた安保条約とは関係のない文書にするのか、これだけに大体限られるのではないかと思いますが、そのうちのどれを選びますか。伺っても、おそらくお答えにならないと思いますが、大体それに限られるのじゃないかと思いますが、ほかにまだ形がありますか。
  20. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 頭のいい戸叶君がいろいろ分類して、こういう場合、こういう場合、こういう場合と言われましたが、私もあまりその他の方法はないのかと思っております。  ただ、私、いまこの際に個人的な弁解をしておきたいのでありますが、自民党の中でもいろいろ議論がございます。まだこれは自民党最終版決定しないから、そういう意味だと御了承いただきたい。いわゆる強い意見もあるとか、あるいはハト派、あるいはタカ派意見もあるとか、こういうのがいろいろありまして、まだ自民党も、私自身がきめないように、最終的には決定しておりません。そこで、私の場合だと、やや複雑になりますのは、津特使は元総理、しかも私の兄だ、こういう関係で、この間にまず連絡があるだろう、連絡がなかったらおかしい、また、弟は幾ら総理  だといっても、兄貴の言うことを聞くだろう、こういうようにだんだん割り切られて、そこでこの問題を取り扱われると、実は非常に困るのです。いまも整理してお話しのように、アイゼンハワー葬儀に参列する、その特使で出かけていった。その際に発言をしたことが、これは平素岸考えていることにしろ、それが出た。これは行ってしゃべったのではなくて、その前にニューヨーク・タイムスかどこかのインタビューでそういう意見を述べた。したがって、その直後であっただけに、アメリカに行ったら、その話をトレースされると、ああいう発言にならざるを得なかった、こういうような経過もあります。それで、私自身も、先ほど申しますように、実は東京にいて、あの報道が日本に打ち返されて、非常にびっくりした。すぐワシントンに電話をいたしまして、そういう点について誤解を招かないようにしてほしい、これは特に申し上げるまでもなく、兄弟でありますだけに、また元総理であるだけに、非常に誤解を受けやすいから、そこらのところは具体的に立ち入らないように、こういうような注意を実はしたような次第であります。したがって、この問題は、ちょっと入り組んではおりますけれども兄弟の問題だが、これは別のことだ、公私の別の問題だ、これだけはひとつはっきりさせていただきたい。  また、いまの沖繩の問題と取り組みますその態度も、私は予算委員会当時と今日あまり変わっておらない。参議院において私の発言がいかにも変わったかのようにとられておりますけれども、これは参議院の方がよく整理されて、各委員会における私の発言をそれぞれまとめられた。そうすると、参議院における結論が自然に出てきた、こういうことのようであります。しかし、私自身まだ最終的な決定ではありません。部分的な発言はそのとおりで、間違いございません、こういうことを実はお答えしているのです。  ただいまも先ほど来のお話でおわかりだと思いますけれども、私の発言内容については、戸叶君はそれぞれの場合でつかまえていらっしゃる。そのことを私は否定はいたしませんけれども、まだ最終的に決定版を下している、こういうところではないと御了承いただきたいと思います。
  21. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私お願いしたいのです。質問に答えていただきたいと申し上げたのですけれども総理は、この際ですからといって弁解のほうに回られたので、私の大事な質問答弁をされていないわけです。ですから、また急いでいたしますから許していただきたいと思うのですが、いま総理がいろいろおっしゃったわけですが、もう六月には愛知さんがアメリカにいらっしゃるわけです。だとしますと、いまのような態度で全然前進しないということでは、愛知外務大臣としても交渉のしようがないのじゃないかと思うのです。向こうの言うことだけを聞いてくるというわけにはいかないと思います。したがって、何らかのめどくらいは、総理愛知さんがいらっしゃるまでにはサゼストできるようなものをお持ちであるかどうか、これが一点です。  それからもう一つは、屋良さんがたいへん沖繩問題考えておられます。非常に苦しい生活をしている沖繩人たちから応援されまして、主席として当選したわけでございますから、一番沖繩人たち気持ちになって働けるわけです。そこで、屋良さんの意見総理としてもおわかりになると思いますけれどもアメリカでいろいろ交渉を進めていく上においては、いまの日本政府にまかせておくだけでなく、その土地で苦しんで、そしてその土地に責任を持っているその人の意見というものも、間接ではなくて、直接にアメリカに聞かせるということが必要ではないか。そういう意味で、愛知さんがいらっしゃるときにでも帯同して、そして交渉の前にでも話を聞かせるということくらいは考えてもいいのではないか、こう思いますけれども総理としてはいかがでございますか。
  22. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 愛知君が向こうへ出かけます前には、もちろん事前によく話し合いをするつもりでございます。これが具体的な交渉の詳細にわたらないまでも、とにかく私ども早期返還を実現したいこと、それがあまりむずかしいような条件にならないこと、これが望ましいことは申し上げるまでもないのでございますから、そういう意味の御趣旨についての話し合いはもちろんして、しかる上で、愛知君にも立っていただく、かように思います。もちろん、その場合に、相手方のあることでございますから、愛知君が出かけるのは、相当幅の広い状況のもとにおいて相手方と折衝して、話が煮詰まるようなら煮詰めてくる、こういう方向で、その基本的な方針はもちろん授けてまいるつもりです。  それから、いまの屋良君の問題ですが、私は、いまの状態なら、屋良君は自由に出かけられ得る状態だと思います。しかし、ただいま私ども沖繩の県民の方とそう変わった方向で話し合いをするつもりはございません。したがいまして、もちろん、日本政府自身としては、屋良君の考え方もよく聞いた上で出かけるつもりでございます。また、屋良自身が、いまの状態で、アメリカから琉球主席という扱い方を受けておるその立場において出かけるというなら、われわれは、日本政府考え方、これからの交渉ごとがあまり狂わないように、そこらも話し合いがしかるべきじゃないか、かように思っております。
  23. 戸叶里子

    ○戸叶委員 やはり屋良さんが間接的に政府を通してアメリカに訴えるというよりも、屋良さん自身が直接アメリカ意見を述べるということが必要じゃないか。しかも、交渉というので、結論を出すまでには、いろんな人の意見が煮詰まっていくのですから、一番大切な、一番聞かせたい意見を本人の口から向こうに伝わるような機会をぜひ考えていただきたい。これをまず一つ要望します。  それからもう一つ、もう時間がないからやめますが、最近、アメリカの繊維製品の輸入制限のために、国際協定による輸出の自主規制を各国に求めるというような意図を明らかにいたしております。それは日本の国の経済、貿易ということにもたいへんに影響することですし、繊維を扱っている中小企業の人にも非常に影響することでございますし、日本国会でも、商工委員会で、それについて、アメリカに対してはっきり断わる申し入れをしろ、自主規制をしないようにというような決議も出されているわけです。したがって、総理大臣は、この際は、非常な強い決意でもってアメリカにその旨を伝え、自主規制は断わるんだというような態度をとっていただきませんと、今後におきましての日本アメリカとのいろいろな関係においても、うまくいかないんじゃないか、こういうふうに思いますけれども、この点の御決意のほどを伺いまして、たいへん残念でございますけれども、中途はんぱになりましたが、私の質問は終わりたいと思います。
  24. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 過去におきまして、綿製品、またその次に毛製品、この二回とも、実は私も交渉の折衝の衝に当たったものであります。今回の合繊の問題につきまして、ただいまのように国会決議もある。国会決議を無視するような政府ではもちろんございません。それは当然尊重しなければならない。まあ、もともとこの種の問題は、それぞれの業界がそれぞれの政府に対して、十分守ってくれということ、これを言うのは、アメリカばかりじゃない、日本にもそういうことはございますから、その辺のところは、あまり窮屈に考えなくて、自然に話し合えばわかるんじゃないか、私はかように思います。これは過去の例から申しましても、実はジョンソン大統領と二度目に会いました際に、毛製品の話をジョンソン大統領自身から出されました。しかし、私は、お互いに国内問題はずいぶんいろんな問題があるんだ、きょうはそれよりも本来の問題について話し合おうじゃないか、国内問題まで話したらとても解決ができないからと、こういうことで、毛製品の問題に深入りをしなかった例もございます。本来業界にまかされるべき筋のもの、同時にまた、自由貿易という基本的な路線を守るべき筋のものだ、私もかように思いますので、その辺は、大体いままでも外務当局もお答えをしたと思いますが、私も、外務当局の交渉、また業界の折衝等にこれはまかすべきものだ、かように思います。
  25. 秋田大助

    秋田委員長代理 穗積七郎君。
  26. 穗積七郎

    穗積委員 どうもしばらくぶりでございました。  その後、あなたはおかしな方向へ向かって張り切っておられるようですが、私も反対の立場で元気でおりますから、どうぞ御安心ください。  きょうは、不当にも時間が制限されておりますので、はなはだせっかく来ていただいて残念ですけれども、特にベトナム以後、アジアにおいても国際的に見ましても最も重要だと思われる中国問題にしぼってお尋ねをいたしたいと思います。簡潔にお尋ねいたしますから、前向きの姿勢で明瞭にお答えをいただきたいと思います。  そこで、最初にお尋ねいたしたいのは、与党の古井さん、田川さん等をはじめといたしまして、北京において非常な努力で、共同コミュニケ並びに覚書貿易協定が成功いたしました。われわれは、これは両国の利益のために歓迎すべきものであると思って、党派を越えてこれを支持いたしております。  そこで、佐藤総理は、一体これに対してどういう認識と態度をとられようとしておられるか、それを率直にお伺いをいたします。
  27. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 実は、この問題、たいへん長く古井君が北京に滞在しているので、私も心配していました。一体どういうことになるのだろう、とにかく政府の与党である自民党の古井君、かように考えますと、その政府との間に全然つながりがないわけでもない、そういう意味から、やはりパイプは、何としてでも、細くともこれは残しておきたい、こういう気持ちで実はいたのです。幸いにいたしまして、いろんな問題はなお残してはおりますけれども、一応妥結したこと、そのことは、私もたいへんけっこうなことであった、かように思っております。
  28. 穗積七郎

    穗積委員 そういたしますと、政府としてはこれを歓迎し、これを支持協力する立場で、今後この協定の実施に当たられるつもりですね。
  29. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もっとぜいたくというか、忌憚ない意見を言えば、両国間の覚書貿易としてはいかにも金額が少ない、もっと多くてしかるべきじゃないか、かように思う批判を実は持っております。しかし、全体の空気から申せば、この程度でもできたことはたいへんよかったんだ、かように思っております。
  30. 穗積七郎

    穗積委員 関連して、続いてお尋ねいたしましょう。  これは御承知のとおり、申すまでもありませんが、この覚書貿易協定は、四月四日に調印をされました共同コミュニケの基礎の上に立ってこれが認められておるわけですね。その中におきましては、佐藤内閣の対中国政策に対して飛躍的な前進を求めることで認められておる。これは最近の国際情勢特に中国を取り囲みますいろいろな国際的な動きを見まして、私は、行き過ぎではなくて、当然なことであり、おそきに失したことである、このように考えておりますが、この貿易協定、あなたが歓迎し、支持されると言われた、さらにその拡大を希望されておられる貿易協定の基礎になっておる共同コミュニケ、これに対しても理解と支持を示さなければ、道理が通らないと私は思うのですね。それに対してあなたの率直な御感想を伺っておきたいのです。
  31. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 率直に申しまして、私、こういう事柄は日中両国の関係を同じように扱ったらたいへんけっこうであったかと思います。この共同コミュニケを見ますと、日本側の扱い方が非常に薄れて、どうも中国中心に共同コミュニケができたような感じがする。この点はまことに残念なことでございますけれども、私、忌憚ない意見を申せば、そのような感じがいたします。
  32. 穗積七郎

    穗積委員 今度の共同コミュニケの主要な部分は、佐藤内閣が歴代内閣の中で情勢から一番離れて、おくれて、そして中国に対する敵視政策をとっておるのではないか、それが、佐藤総理も口では希望されておられる日中両国の経済、文化の交流の拡大に支障になっておる、これが一点。  それからもう一つは、極東条項を含みます日米安保条約というものは、中国をも含む敵視政策である、これには、日本アメリカの極東政策から独立をして、自主的にこの問題については日中両国の平和と相互独立を認め合わなければならないではないか、これが第二点。  第三点は、国交回復に向かう場合には、どういたしましても台湾政府との問題がある。これは一つの中国の立場に立って、台湾問題というのは、中華人民共和国内における国内問題であるとして処理しなければならないのではないか。これは客観的に見まして、この方針に賛成、反対は別といたしまして、古井さんも正確に指摘しておられるように、これは外交の客観的な裏実認識として、この二つの問題は処理しなければ、日中問題の根本的な解決は不可能である、こういうことを認識しなければならぬと思います。賛否は別といたしまして、この一つの中国の問題と、それから極東条項を含む安保条約の問題を正確に処理することが、日中の根本的な正常化のために必要なことであるという事実認識についてはどうですか。
  33. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 あまり実はでき上がったものを批判したくないのです。これもやはりこの程度といいますか、われわれがやはり適当なところでとどまらないと、話は非常にむずかしくなるのじゃないか、かように思いますので、私は、いまでき上がったこれ自身についての批判をこの席でするということはまあ適当でない、かように思いますので、私は、その点は預からしていただきます。
  34. 穗積七郎

    穗積委員 だから、私は、それに対してあなたの御意見を伺うのではないのです。その前段として、日中の根本的な正常化のためには、この台湾問題と安保問題を処理しなければ解決が不可能であるという事実認識、これは二つの重要な山である、こう認識するわけです。     〔秋田委員長代理退席、委員長着席〕  そこで、古井さんは、これに対してある方針、態度を示しておるわけですね。ですけれども、こ二つは外交上の事実認識として、未解決のままで日中の正常化は困難であるというその事実認識について私は伺っているのです。この問題に対するあなたの政治方針を伺っておるのではない。
  35. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの問題、私が別に前言をくずしたわけではございません。この問題を批判するわけではない。が、いままで私が機会あるごとに申していたのは、それぞれの国がそれぞれの国の立場あり方を尊重しないと、両国の間に話がうまくいかないのじゃないか。だから、それぞれの国にはそれぞれの立場があるのだ、その独立国家の人格、その国をやはり尊重する。そしてお互いに国情、それからまた政治のやり方の相違があって、それはけっこうだ。しかしながら、お互いにその立場を尊重し、内政に干渉しないという、そういうことでないとなかなか話がうまくいかないのじゃないかということをいままで主張しております。今日もその考え方に変わりはございません。したがって、私は、ただいまの状態を批判したり、あるいはとやかくは申しませんが、私自身のほうから言えば、われわれの主張というものをいままでたびたびしているんだから、ぜひその日本の主張というものも十分認めらるべきだ。これは冒頭に一般的に申した、どうもこれは平等な立場でないのじゃないかというのは、そういう意味なんです。そういう点において、私は十分相互の理解をする必要があるのじゃないか。もちろん、出かけないでいて、かってなことを言って、理解しないという、そのくらいよくないことはないんですね。善隣友好を考える以上、それはお互いに出かけていって、そして話し合うべきだ。しかし、相互のそれぞれの立場においてそれぞれの者が主張する、そこにはやはり非常な利己的なものでない限り、必ず理解し合うものがあるだろう、そういうことが必要だ、こういうことを私は申し上げたのです。
  36. 穗積七郎

    穗積委員 実はこの問題、もう少し掘り下げないと票前進しないわけですけれども先ほど申したように時間がありませんので、いまの御答弁に関連をして、あるいはいままでの政府の御答弁をも考慮に入れながら御忠言を申し上げておきたい。中国がややともすると日本の内政に干渉するる、こういうことばがときどき政府・与党の方から聞かれるわけですけれども、中国という国は、私どもじかに再々接触してみまして、国や党の指導者はもとよりでありますが、下部の党員、工作員に至るまで、独立の尊重、相互尊重ということ、内政の不干渉、不侵略ということは、日本人以上に実は神経質に尊重しております。これは諸外国の帝国主義に、この数世紀じゅうりんされて、塗炭の苦しみをなめてきました民族の実感であろうと思うのです。かって抗日戦争中にも、かの国の指導者が言ったように、おのれの欲せざることは人に施さない、このことばを引用いたしまして、そのことを強く言ったことがございました。これは誤解のないようにしていただきたい。ただ、日本の外交政策の中で中国に重大な影響のある問題については、中国の側から意見は述べます。それ以上のことはいたしません。また、東風号その他の船員の諸君が国内へ参りましても、日本国内で実は内政に干渉するようなことは非常に慎重な上に慎重なほど慎んで、発言はいたしません。ただ、中国に重大な関係のある、不当と思われる外交政策については、中国はこう考えると、こういうことを言うだけでございまして、今度の共同コミュニケの中におきましても、内政に干渉するようなことはどこでも言っておりません。その点はいささか、中国が内政干渉にわたる圧力を加え、さらに俗なことばでいえば、言いがかりをつけるかのごときことを日本国民に印象づけてて、中国との間の正しい交流をやらないことの弁解に使おうとしておることは、これは政治的な誤りでありますから、絶対そういうことのないように、この内政干渉問題については正確に、外務大臣もおられますが、ともどもに認識をしていただきたいと思っております。  それだけにとどめまして、先に進みますが、例の文化大革命が起きまして以後、これに対して、昨年の十二月の臨時国会で、佐藤首相は、初めて文化大革命は収拾の段階に入った、そしてその成功の事実を認めざるを得ないという演説をなさいました。それからずっと情勢はごらんのとおりです。これは省略いたしまして、四月初め、たまたまこの共同コミュニケあるいは貿易協定が成立いたしましたときに、一日から世界の注目を集めておりました九全大会が成功裏にいま継続しているわけですね。この経過を見られまして、文革並びに九全大会の評価というものをどういうふうに認識しておられるか、この際、これを伺っておきたいのです。
  37. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私の考え、見方を穗積君も正しいというか、間違いでないと言われた。これは珍しいことで、私も初めてほめられたというか意見が一致した、かように思います。  私は、隣国がただいまのようなことで収拾段階に入ったことはたいへんけっこうなことだ、かように考えます。
  38. 穗積七郎

    穗積委員 この九全大会を通じて、われわれの判断では、内政はもとよりでありますが、これはわれわれは論じません。外交政策について新たなる国際的な動きが始まることを予想いたしておりますし、期待もいたしております。こういうことについて、先般周総理は、古井、宇都宮氏等々と会談の際に、日本は隣国でありながら、しかも深い因縁がありながら、中国問題に対してはその認識、その分折がアメリカよりおくれておる、こういう日本外務省としては恥ずべき、反省すべきことばが出ております。そこで、いま申しましたような文革の成功、九全大会の成功というものは勧迎をされる、そのことは、当然九全大会後の中国の外交政策の新しい発展というものを期待されての御発言であろうと思うのです。それに対しまして日本政府はどういう分折と判断を持っておられるか。特にきょうは時間がありませんから、日中関係に限って、この際所信を明らかにしていただきたいと思います。
  39. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま申し上げましたのは、とにかく私どもも、日中関係がいまのままでいい、これが長く続いていい、かようには思っておりません。それは何か改善しなければならない、妥結しなければならない。そこで、いましばしば中国は一つだといわれているその立場におきまして、私どもがサンフランシスコ条約で中華民国と講和条約を結んだ、そういう事柄がやっぱり今日一つの支障になっているだろう、かようにも思いますけれども、その状況のもとにおいて一体どうしたらいいか。だからこそ、私どもは、中国は一つだ、こういう立場で、いま中華民国を一つの代表と考えた国際的条約から見て、権利義務がある。こういう意味から、なかなか北京を承認できない。そこで、いま政経分離という形で、経済的には交流をしようじゃないか、政治的な交流はできなくとも、これはそれぞれの立場意見は違いますけれども、経済的な交流の拡大はぜひともしたい、こういうように実は願っておるわけです。しかし、これがどうも政治が優先だ、だから経済のことはあとだ、こういうような基本的な主張の対立がある。ここに一つの問題があります。同時に、私どもいま経済交流ばかりじゃない、政治的にもある程度つき合わざるを得ないものがある。これはもう何度も言われているように、いまわれわれの同胞十三名、安否すらわからない。これは一体どうなっているか。今回の古井君などもこの安否をよく聞いてくださるはずでありましたが、これは実はどうなっているか、全然わからない。いままでもしばしばそういう意味の折衝を持とうということで各地で努力をいたしてまいりましたけれども、なかなかそれがいままで糸口が見つからない。これはたいへん残念なことです。私は、やはり中国もこういう事柄でなしに、お互いに尊重するならば、その立場において、私ども心配しておるこの点にも理解をひとつ持っていただきたいと思うのであります。そうして、やっぱり中国自身がすみやかに国際社会に復帰する、こういう日の早いことが望ましいんじゃないか。このことをやはり考えていかないと、隣同士で仲よくするといいながらも、いまのような状態では、私ども自身にも責任がありますが、これはほんとうに不十分な状態だ、かように言わざるを得ない、かように思います。
  40. 穗積七郎

    穗積委員 時間の催促がまいりまして、はなはだ残念でありますが、たとえばいまの抑留者の問題について、これは外務大臣にもかつて私は確信を持って御忠言申し上げたのですが、抑留者問題だけを解決するために政府間接触をしよう、こういうことは、今度の貿易についても中国のとっておる態度、これは正しいと私は思いますが、これから見ても、考えられないことであるのですね。日中関係全体について話をする、その中の一つとして抑留者問題を話をするということであるならば、中国は必ず応ずると思うのです。主要な敵アメリカ帝国主義と指摘しながら、五六年以後、もう百二十数回にわたってワルシャワで接触をしておる。こういうことでありますから、ここにはいまの抑留者問題とか貿易問題とか、そういうことに限らない米中関係全体を含む自由なる討議という形で、接触が始まっておるわけです。そのことをなぜ佐藤内閣ができないのですか。アメリカですらやっているのですよ。抑留者問題だけで、すなわち、いささかいえば不当抑留をしておるような印象をもって、それだけ早く帰してもらいたいということのために接触をしよう、他は別であって、敵視政策、中国の言うことには耳をかさない、これはもうどう判断いたしましても、われわれ日本人でありますけれども日本の側の主張が誤りである、そんなものが通るはずがない、こう考えておるわけです。そのことを御注意申し上げて、それで御所感があれば、いま言いましたように、少なくともワルシャワ会談のごとく米中関係全体、すなわち日中関係すべてを含む政府接触をしようではありませんか、こういうことであるなら、その中でいまの問題が出ることは、これは相互の自由でございましょう。向こうからもまた個別な問題が出るかもしれない。その基本的な姿勢が違っているのですよ。これを一点お尋ねいたします。  それからもう一つ、いま出た中でありますが、政経不可分ということを盛んに言っている。これは政治とは何ぞや、経済とは何ぞや、文化とは何ぞやということの概念が食い違っておるのですよ。日本の場合においては、ブルジョア民主主義における政治経済、文化、こういうふうに分けておりますけれども、中国の社会主義の政治思想からいきますと、すべてをおおうものが政治である、まつりごとである、こういう考え方ですから、どんな一人の行動、経済行為も政治を切り離したものはあり得ないのだということを言っておるだけです。その点は口実を設けて近寄らないということは、論理的な誤りでもありますから、これを第二に注意いたしておきます。  のみならず、私が指摘したいのは、政経分離と日本でいいながら、たとえば覚書協定に伴う問題、あるいは経済、貿易の当然の一つの方式である延べ払い問題、あるいは食肉の問題、あるいはココムの問題、あるいはその他の主要品目の輸出入問題について、通産なり農林なり、あるいは外務省なりが一々これに干渉し、一々これをコントロールしておるじゃありませんか。何も政経分離じゃありませんよ。純粋な経済なんというものはあり得ないものなんです。その予盾を御自覚になりませんか。この三点について、所感を重ねてお尋ねいたしたいと思います。
  41. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 穗積君とこれで議論をするとは思わなかったのですが、いま米中会談が百数十回行なわれておる。しかし、会って何がきまりましたか、どういうことをやられたか、これはどうしても話がきまらない。そう会談はやらないけれども、私どもと中共との間にはお互いに記者交換はした。またお互いに交流はできておる。政府自身の交流こそいたしておりませんけれども、これはアメリカと中共のようなものじゃないですよ。穗積自身も向こうへたびたび行かれるし、そういう点を私どもとめちゃいないないのです。また現に、最近までこちらからもちゃんと通信、新聞社が駐在しておる。向こうからもこちらへ来ておる。アメリカはそれを実施したいといって、そのことはまだ実現しておらない。だから、会談したからそのほうがよほど親しいという、そんな形式的な問題じゃない。日中間はただいまのような非常に進んだ関係にある。そして私どもがいま抑留されている邦人についても安否を聞きたい、これは私どもの当然の権利でもあるし、またその心情はわかっていただけると思います。こういう事柄は、その抑留だけについて交渉する、だから断わるのだ、こういうことじゃないのです。私ども抑留についてどういうようになっておるか、これをひとつ釈放してくれろ、こうなれば、そこに交渉なしに、つき合いなしに、そんなことができるわけじゃないのですから、ただいま言われることは私ちょっと解せない。どうも穗積君にしてもやや誤解しておられるのではないだろうか、かように私は思うのです。また、こういう事柄は、出かけることによりましてお互いに誤解の解けるゆえんでもあると思います。私は、今日中共自身をこれで責めるつもりはございませんよ。しかし、こういうことは当然許された範囲で交渉しているのだ、だから、その意味において話をすればいい、かように思います。友好商社の諸君がそうでしょう。新聞社の諸君もこっそりないしょで入ったわけじゃない。これは当然許されたものです。そういうものは国交がなくて、政府交渉の余地がない。これは民間で折衝すればよろしいのですけれども、民間と相手方ではなかなか交渉がうまくまとまらない。日本人は日本政府がやはりめんどうを見るのが当然だというような立場から、こういう事柄も折衝しよう、こういうのでありますから、こんな事柄がやはり両国間の問題を解決するゆえんでもあろうと思います。やはりお互いにつき合うことが大事だと思う。  それからもう一つは、いまの政経分離の問題であります。政経分離の問題は、なるほどことばが気に食わなければ、ことばはいかようにでも変えます。ことばの問題ではない。とにかくただいま経済交流が行なわれておることは確かです。さらに経済交流ばかりじゃない、文化交流も行なわれておる。そういう事柄が積み重なって出かけていくということだと思います。だから、その辺では私も誤解はいたしておらないつもりですが、やはり時間をかけてでも積み重ね方式ででもそれらの関係を是正していくことが、これは隣同士のことですから当然なすべきことだ、かように私は思います。
  42. 穗積七郎

    穗積委員 時間が参りましたが、首相がちょっと答弁が長過ぎまして時間がなくなって、私の責任ではないのですが、割愛いたします。  最後に一点だけ、重要な問題ですから、この際、総理並びに外務大臣にお尋ねいたします。  共同コミュニケの中にもありますけれども、その具体的な敵視政策の一つとして、この間の参議院におきます外務大臣並びに総理答弁、すなわち、日台条約は中国大陸に及ぶのだ、これはもう重大な敵視政策でありますし、侵略的な意味すら持っておる。内政干渉の最大のものでございましょう。これは誤ったものでありますから、この際取り消すべきではないかと思う。これは何をたてにしてそういうことを言われるのかといえば、日台平和条約の第二条が領土条項です。ここには台湾及び澎湖島並びにその付属諸島に限られておる。領土条項のない平和条約というものは考えられない。ところが、同日調印をいたしました交換公文の中で、第一号で「中華民国政府の支配下に現にあり、又は今後入るすべての領域」云々、これをたてにとって、いまの侵略的な内政干渉にわたり、この条約は中国本土に及ぶ、すなわち、中華人民共和国が正当に領有いたしております中国本土領土にまでこれが拡大される、こんな侵略的な内政干渉にわたる答弁がありましょうか。  時間がありませんから、先回りをしてちょっと申し上げておきます。私はこの答弁は取り消していただきたいと思う。これは国際条約の常識であります。これはどっちにいたすということではない。領土条項は、本条約におきまして、いま言ったように、台湾並びにその付属の諸島と言明されておる。交換公文がなくても、その国の領土があるいは拡大され、あるいは縮少されたときには、その条約の有効性というものは拡大され、または縮小されたものに自動的に及ぶことは当然だと思うのです。現に日本政府も中華人民共和国政府の権威と存在は認めておるわけですね。そのものの領有いたしております国家構成に欠くことのできない本土領土に及ぶのだ、この発言は、明らかに二つの中国あるいは台湾側に立つ本土反攻を予定し、これを刺戟し、そうしてそれが及ぶことを期待して、現在の中華人民共和国政府の存在というものを否認する、こういう驚くべき敵視政策である、内政干渉です。  愛知外務大臣は、この間の外務委員会で私にお答えになったでしょう。台湾問題は国内問題である、したがって、これには干渉すべきではないと言った。日台条約そのものは、御承知のとおり、すでに中華人民共和国が独立いたしまして三年後に締結されております。その領土に対してこの条約は効力が及んでおるのだということは、一体どういうことですか。これほど悔辱的な、これほど侵略的な、これほど内政に干渉した発言はないと私は思う。きょうは時間がないので、はなはだ残念でありますが、その問題を指摘し、反省を求めまして、この誤解日本の利益のために解いていただきたいと思うのです。首相並びに外務大臣の確固たる御答弁をお願いいたします。
  43. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、条文並びに交換公交に書いてある自身の説明をしただけだと思います。別にそれによって新しいものが生まれておるわけじゃありません。
  44. 穗積七郎

    穗積委員 そうであれば、少なくとも現在の段階におきましては、台湾に限って、中国大陸には現に中華人民共和国と称する政権並びに国家が成立をして、それが正当に領有しておるわけでしょう。その政府並びに国家の存在と権威というものは、日本政府といえども、国交は回復してないが、認めてやっておるわけでしょう。それを否定するような発言というものは、少なくとも誤りである、誤解を招くのが当然であります。愛知外務大臣は専門の所管の責任者発言者でありますから、この際はっきりしてください。
  45. 愛知揆一

    愛知国務大臣 衆議院の外務委員会一つの中国ということについての問答をいたしました点は、先ほどお触れになったとおりで、私の意見はおわかりだと思います。私はそういう意見を持っておるわけです。そして日華基本条約につきましては、国民政府が中国の正当な政府として条約を結んでおるということから申しますと、たとえばそのときに、参議院予算委員会でも応答がありましたように、戦争状態というものについては、国を代表して締結したものでございますから、戦争状態は終結したと見るのが条約論としては正しいものである、そういう趣旨のことを申し上げたわけです。したがいまして、ただいま御指摘のとおり、交換公文どもございますくらいですから、通商問題であるとか、その土地に定着するような趣旨の問題については、この条約は中国本土には適用されない、これは当然でございます。
  46. 北澤直吉

    北澤委員長 時間もきましたから……。
  47. 穗積七郎

    穗積委員 残念ですが、またの機会に……。
  48. 北澤直吉

  49. 松田竹千代

    松田竹千代 私は、わが国の海外経済協力の問題についてお伺いいたしたいのでありますが、わが国の海外経済協力もきわめて広範囲にわたっております。私は時間の制約はきちっと守りたいと思いますので、中南米、中近東、アメリカ等はまたの機会にいたしまして、本日は東南アジアを中心として、わが国の経済活動についてお伺いいたしたいのでございます。と申すのは、何と申しましても、東南アジアはわが国にとってきわめて密接な関係にあり、地理的にもきわめて近いのであり、また生活様式も、ともに米食人種である国が多い。そういう関係から、どうしてもこの対外経済協力は東南アジアに葉中というか、重きを置いてやるべきであるという考えから、東南アジア諸国にしぼってお伺いいたしたいのであります。  わが国の海外経済協力も、すでに始まってから十年余になる。もうこの辺でこれまでわが国のやってきた活動についてのあとを十分に追跡というかトレースして、どのような成績をあげておるか、実績やいかん。わが国の経済協力もきわめて多種多様、多岐にわたっておりますが、賠償によるもの、あるいは政府ベースによるもの、民間ベースによるもの、あるいはまた技術協力によるもの、対外援助基金によるもの、また一般民間の各種の公益法人、利益を追求しない諸国体、これも二十団体くらいになっておるらしいのでありますが、これらの諸活動がこれまでなしたことに対して、受け入れ国の政府なり国民がどういう反応を示しておるのであるか。喜ばれておるのか、感謝されておるのか、満足されておるのか、あるいは批判されておるのであるか、これらのことに対して、この問題は、愛知外務大臣は東南アジア開発にきわめて意欲を燃やしておることを承知いたしておりまするので、どちらからでもけっこうですが、愛知外務大臣より総括的にひとつ御説明願いたい。日本国民がこれはどうなっておるのだろうか、どういうふうな結果を生んでおるのであろうかということを知りたがっているので、この委員会を通じてひとつ報告してもらいたい。
  50. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまもお話がございましたが、従来から、たとえば東南アジアということに一つ限定して申しますと、賠償が一つの中心の課題になっておりまして、賠償を中軸にした経済援助が行なわれておりましたが、そういうやり方はいわば一段落いたしたわけであります。ちょうど国連でも、一九七〇年代の十年間は開発途上国の成長の年であるといわれているようなことでもございますし、この際、転機にきた日本の対外援助につきましては、積極的でもあり、また合理的な考え方をつくって、実行に移すべきときではないだろうかと考えるわけでございます。  たまたま東南アジア開発閣僚会議というものも、四年前に日本が主導してでき上がってまいったものでありますが、幸いに地域協力あるいは自助の精神で、自分たちの力で立ち上がろうという意欲が相当出てきております。これも一例でございますが、そういった気分の中で、アジア開銀というものもわれわれの手でつくり上げたという意識が強い。こういう機運の上に日本がお手伝いをするかっこうが一番いいのではないだろうかと考えるわけでございますが、幸いに一九七〇年代を予想してみれば、多少控え目に見ましても、この十年間には日本の経済の成長が相当な成果をあげることは間違いない。かりにそのGNPの一%を経済協力に充てるということになれば、今日ではまことにびっくりするほどの額も期待することは不可能ではない、かように考えるわけでございます。これが合理的に総合的に、そして効果的に使えるように、しかも必ずしも一対一のいわゆるバイラテラルではなくて、東南アジア全体を通じてみんながそろって向上するようなよい計画ができ、それに対して協力が日本側としてできるならばたいへんけっこうなことではなかろうかと思います。先ほど申しましたように、先般の会議でもそういう期待があらわれ、あるいは共同声明の中にも取り上げられたわけでありますけれども、アジア開銀などにひとつお願いをして、われわれが総合的にいわば適地適業をどういうふうにつくり上げていったらいいかという企画的な役割り、性格もアジ銀に持ってもらおうじゃないか、われわれのコンサルタント的な役割りもになってもらおうじゃないかという機運も出てきておる。アジア開銀は、御承知のように国際的な機関であり、また先進国、たとえばソ連のようなところでさえ、場合によりますれば今後出資が期待できる。こういうふうな機構になってまいりまして、そこを通して東南アジア全般に対する総合的な協力ができるということになりますと、いろいろの政治的な観点からいたしましても、非常に望ましい姿になるのではなかろうか。きわめて大ざっぱでございますが、そういうような考え方で、今後協力の体制を合理的な基礎の上につくり上げるようにして、かりそめにも政治的な意図であるとか、あるいは利権的な意図であるとかいうようなことが言われないように、さようなやり方というものが望ましいのではなかろうか、かように考えておるわけでございます。
  51. 松田竹千代

    ○松田委員 いまお話しのように、賠償関係のものはほとんど済んでおるということでありますが、その他のものでも、たとえば特定のプロジェクト、特定のプラント輸出といったようなものでも、完成しておるものもあろうと思う。たとえばラオスにおける水道の仕事などは、私も見て回りまして、たいへん喜ばれておるようなことを知っておりまするが、しかし、またその反面、いろいろ非難の点もあるやに聞くのであります。特にわが国の技術協力に対しての仕事は、きわめて金額も少ないのみならず、そのやり方に対しても不満があるというようなことを伺います。  海外経済協力基金の対外援助新機構の、いわゆる一%を目標として調査されたその報告書によりますると、通常貿易は賠償及び経済協力の伸び以上に伸びている。すなわち、わが国は一九七〇年度に国民所得の一%を援助した場合は、政府歳入は九兆一千八百七十億円になる。輸出はまた五兆六千八百三十億円になる。輸入は五兆一千百八十億円となるという予想をされておるわけでありまするが、もしわが国が一九七〇年にこの揺助供与をストップしてしまった、やめてしまった場合、どうなるかというと、政府歳入は八兆一千百九十億円、輸出は四兆五百二十億円、輸入は四兆六百億円、すなわち、歳入は、一%援助した場合に比して、ストップした場合約一兆円の減少となる。しこうして、輸出入の面では、援助をストップした場合、八十億円の貿易収支の赤字となる。援助した場合は五千六百五十億円の黒字となる。こういう予想ができておる。近年、アジア諸国中、韓国と台湾への輸出が飛躍的に増大した。その内容も非常によくなっておるというようなことが、この予想を雄弁に裏書きしているようなことになっておる。  ところで、その反面、一九五六年、世界銀行の積算するところによると、発展途上国九十五カ国の公的対外債務は当時百億ドルであった。ところが、約十年後の一九六五年には約四倍の三百九十二億ドルにふえ、債務支払いも年間に八億ドルが三十六億ドルに増加しておる。また、国際貿易開発会議の推定によりますると、その翌年の一九六六年は、債務は四百五十億ドルにふえ、支払いも五十億ドルにそれぞれふえておる。  こういうような状態では、先進国とこれらの低開発国との格差がますます激しくなる。それでは金もうけはできても、開発資金活動の真の目的は達せられないじゃないか。こういう状況が繰り返していくならば、金もうけはできても、ほんとうの目的を達成することはできない。こういうことを考えてみますると、この開発援助の仕事も、これはなかなかむずかしい問題である。したがって、相手国の民情と国内事情、その国民性、そういうようなものを事前に十分に調査して、その上にこれらにマッチするようなやり方をもってしなければ、その実効があがるものではないと思うのでありますが、最近東南アジア開発閣僚会議にも出席されて、愛知外務大臣は、十年後の日本の経済は少なくとも五千億ドル経済になる、したがって、東南アジア開発援助資金として出す金も膨大なものになるという、すこぶる相手国が喜ぶようなお話をしておるようでありまするが、愛知外務大臣、この点についてどういうふうにお考えになり、これからどういう——過去十年の日本の対外援助の仕事の実績を十分に分析し、これを検討し、相手国の国情にマッチした経済援助をやっていくことに対して、どういうお考えをお持ちになっておるか、お伺いしたいと思います。
  52. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その点が先ほどもちょっと申し上げた点でございまして、要するに、最初の計画、それから調査が非常に大事であり、かつ総合的で合理性のあるものでなければならない。一つプロジェクトがこういうものがある、またこういうものもあるそれをひとつやってくれ、よかろう、少し削っておこうとかいうようなやり方では、いま御指摘のような弊害が出るばかりではなかろうかと私は思います。したがいまして、幸いにして、先ほど申しましたように、援助を受ける側の援助の需要額というようなものが、たとえばアジア銀行とかあるいは世界銀行とかいうような、中立的で、しかも相当科学的な調査能力を有するか、あるいはこれから有しそうなところに協力を頼みまして、そうして効果的な援助が行なわれて、そして終局の目標というものは、援助を受けた国の経済力あるいは資源力がフルに回転するようにして、その国あるいはその国民の所得が増加するようにすることであると思います。また同時に、日本自体といたしましても、いま予想され、試算されておるような経済成長率一〇%以上をずっと持続するというような場合には、やはりどうしてもそういった原料資源の供給の場がなければ、こちら自身も繁栄を持続することはできないわけでありますから、そういう点も加味いたしまして、ただいま御指摘になったような積極的な面が出て、消極的な面が出てこないような計画性というものが必要だと思います。  それからもう一つは、これもよく委員会で御指摘をいただきますが、日本が直接関与いたしましたものについては、このごろはできるだけ追跡調査ということも、相手国の協力を得ながら、日本が援助したものについてどういうふうに使われ、どういうふうな成果をあげているか、あるいは逆にあげていないかというようなことについての追跡調査も、またどうしても必要なことだと思いますので、それらをあわせて進めていくようにいたすべきだと考えております。
  53. 松田竹千代

    ○松田委員 昨年の二月、三月に、ニューデリーでUNCTADの会議が開かれた際に、日本委員が非常に困った。同じ先進国の仲間からも孤立状態になり、また低開発諸国の委員からはあらゆる非難を浴びせかけられた。全く困った状態があったようでありますが、これは主として日本の経済協力またはその他に対するやり方が、条件が非常にきびし過ぎるということにあったようでありまするが、これからはひとつその点も十分に考えてやっていただきたいと思うのであります。対外経済援助とうたって、その結果として金もうけになることは、これはけっこうでございまするけれども、しかし、その目的を忘れられては困る。真に相手の民度、相手の生活、相手の国民所得がふえていくという情勢に持っていくにはどうすればいいかということに御留意賜わって、ひとつ今後のことを続けてもらいたいと思う。  もはや私の時間も差し迫っておるようでございます。私は時間を守りたいのでありまするから、ひとつ佐藤総理に簡単にお伺いいたしたいのは、佐藤総理は、核兵器の問題について、日本は核兵器はつくらない、持たない、また持ち込むのも許さないと、しばしば言明され、今日ではそれはわが国の国是のようなものになっておると思うのです。ところが、日本の防衛をいつまでも他人の力によってやるべきではない、わが国自体の防衛はわが国の国民の力によってやらなければならぬという議論も、なかなか強くなっておるし、それも当然であろうと思う。また、安保条約によって核のかさのもとに日本は安住しておられる今日、安保条約をどこまでも堅持していきたいという気持ちはわれわれも同感でございますが、その点について、やはり防衛同盟国として、向こうの核搭載の艦船が日本の沿岸を遊泳する際に、いろいろ問題を起こす、そういうことは、アメリカにとって不可解な点があるのであろう、アメリカ国民から、そういう点についてどういうわけなんだということで、日本を守るために必要上、ときには港につけ、水や必要物資を入れなきゃならぬというようなこともあるのに、常にああしたいやがらせにあうというのはわれわれはわからぬところであるというようなことをわれわれは聞くのであります。日本はどこまでも安保を堅持していきたいとわれわれは考えるのでありますけれども、しかし、情勢の変化によって、アメリカがこれをやりたくないというような、安保を続けたくないというようなことは、いまあるようには思えませんけれども、もしそういうことになった場合はどうなるか、お手上げではないかというふうにも考えられるわけでありまするが、この点について、核兵器はつくらない、持たない、持ち込まないという御信条にゆるぎはないかどうかということをひとつお伺いいたしたい。
  54. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この核についての考え方、私は、日本人は特別な民族ではないかと思う。おそらく核兵器を持っているアメリカ、ソ連あるいはフランス、中共、また英国、これらの国々で、日本人が核兵器に対する忌みきらっているこの気持ち、これはなかなか理解できないのじゃないかとすら実は思います。私、この佐藤内閣自身、いま核三原則というようなことを言いますけれども日本が戦争後平和国家として立ち上がったその際に、この国を守るという自衛力を持つこと、これは当然だ、自衛権はあるのだということ、そういうことで一応了承されているが、攻撃的な兵器は持たない、その中でも最も強力な攻撃力を持つ核兵器、これは持たないということ、これは私だけの問題じゃなくて、戦後内閣一致して守ってきておる線だと思います。今日、それを三原則というような呼び方をしたのは、これは社会党の諸君か知らないが、私どももそれの三原則をそのまま受け入れるようになった。そうしてこれをとにかく変えないことを心から願っております。佐藤内閣そのものとしては変えるつもりはございません。ただ日本だけがそれを守るということでなしに、国際的な場におきましても、核兵器絶滅というか、なくなること、これを心から願う。またそういう意味の努力をこれからも続けるだろう、かように私は思います。そしてこれだけは日本国民ぜひとも守っていただきたいし、また、外国にもこの話をよくして、国連あるいはまたジュネーブの軍縮会議等におきましても、核兵器はなくなるようにひとつ協力を願おう、これはわれわれの願いだ、かように思います。
  55. 松田竹千代

    ○松田委員 ただいまのお話を伺って、まことにわれわれも同感でありまして、私は、日本が核兵器の洗礼を受けた唯一の国として、核兵器をこの地上から追放してしまうということの世界の世論を喚起するという運動を起こすことの必要を痛感するものであります。米ソ中の三国、やがて中共が水爆の完成を見、そうしてそれに付随する必要なる部品をみな完成した暁には、米中ソの三巨人国が三つどもえになってしのぎを削る時代を見るのであります。まことに危険である。人間の理性というものも、緊張が続くというとこれを失う。核の存在は現在抑止力になっておるとはいえ、私はきわめて危険であると思います。人間というものは間違いも起こしやすいし、また緊張が続いた場合には気違いにもなる。せんだって、アメリカに講演に行った源田氏が、日本があの戦争中に核兵器を持っておったらあれを使っただろうか、使う気持ちに君はなっただろうか、それに対して、核兵器をあるいは使ったかもしれぬといったような返事をしたところが、向こうのアメリカ人の非常な共感を博したという記事を見たのでありますが、まことに危険が存在する。世界の人類三十億五千万、これが日夜核兵器の重圧下に生存しておる。真剣にこのことを考えるというと、一夜といえどもまくらを高うして寝られない状況にある。私は、これをどうしても国連の場において、少なくとも核をこの地上から追放することの決議案を出すことの運動を起こすべきであると考えるのでありますが、ただいまのお話によって、総理もそういうことに対して自分が大いに希望しておるところであるというようなお話がありましたので、私は満足して、私の時間が来ましたから終わることにいたします。
  56. 北澤直吉

    北澤委員長 曽祢益君。
  57. 曾禰益

    ○曽祢委員 総理にまず沖繩問題で御質問いたしますが、総理沖繩問題に対する最近の発言、特に三月十日、十一日ごろからの発言は、私は大体において額面どおり受け取っていいと思うのです。というのは、核兵器は困る、それからむろん本土にも基地がある状態で返るのでありましょうから、基地は残るであろうけれども、その基地はやはり本土基地と何ら分け隔てをしないのだ、条約的にいえば、安全保障条約の適用を受け、すなわち事前協議制に置かれる、自由使用ではない、以上のような意味で、核抜き本土並みということが、これは国民の大体の強い希望である、加えて同時に、早期返還国民の希望である、総理政府としてはその希望に沿うように努力する、これが当然の行き方だ、こういうふうに言っておられると思うのです。人によっては、沖繩基地の使用状態いかんによっては、沖繩本土並みでなくて、本土全体が返る前のアメリカの施政権下にある沖繩並みになるのではないか、あるいはそういうふうな伏線があって政府が言っているのではないか、こういうような見方もあるようでありますが、私はあえて、国民の希望は核抜き本土並みである、言うなれば、民社党が二年前から言っていた方向に、総理もやはり民論に従うということにきたのだろう、いまからでもおそくないという意味において、額面どおりに受け取っていきたいと思うのですが、大体そういうふうに考えてよろしいか。
  58. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 民社党は、かねてからそういう御主張でございます。私は、とにかくいまの国民の感情、感じ、どういう受け取り方をしておるか、こういうのをいろいろ見ておるつもりです。国際情勢が許す限りやはり本土並み、また核抜き、こういうことをいまみんな希望しているのではないか、かように思います。そのためにも、国際情勢がそういうような状況であることが望ましい。私がこの前にワシントンに参りました際も、ジョンソン大統領と話した共同コミュニケにも、そういうことが書いてある。沖繩を返せるような国際情勢のもと、そういうことをやはりお互い両国政府期待する、そういう事態が実現することを期待する、こういうような言い方をしたと思いますが、やはりそういうのが実際の見方ではないだろうか。また、外交の経験のある方からごらんになって、これをどういうように取り組んで交渉するか、それは別といたしましても、政治をする立場から申せば、いま言うように、国際情勢はそういうようなことが許されるようなものが望ましい、そういうことだけのけて考えると、いま言われるような結論ではないかと思います。  先ほど戸叶さんからいろいろお話がございました。その際もお答えしたのですが、まだ最終的な結論を出しているわけではない。しかし、ただいまの国民世論、動向、これを無視しないという立場から、これから変わらない状況ならば、ただいまのような方向交渉するのが当然だろう、こういうようにも思います。しかし、いままだこれから変化するであろうところのものがいろいろある、かように思いますので、そこらに一つどうしてもわからないものがある。しかし、その外部情勢をいつまで待ちましても、なかなかものごとはきまらなくなりますから、それはエクスキューズになるかもしれませんが、祖国復帰を早く実現してくれという国民の要望にこたえる立場である政府としては、これから国際情勢がどう変化するであろうと、そういうことばかりにとらわれないで、やはり国民の大方が望む方向で努力すべきことだ、かように思います。政府としては心がまえはそうあるべきだ、かように思っております。
  59. 曾禰益

    ○曽祢委員 ですから、平たく言えば、交渉の原案として政府が閣議できめたとかなんとかいう段階ではないでしょうし、そういうふうにまだ形式的には積み上げてないと思うのです。また、自民党の中でも正式に党議としてきめられたわけでもないと承知しております。しかし、総理のいまの御発言等は、言うなれば、早期かつ核抜き本土並み安保条約の適用を受ける。したがって基地の使用、作戦行動等については、事前協議制のもとに日本が自主的にきめるから、断わる場合もあるし、断わらない場合もある。いずれにしても本土並みだ。こういう意味交渉の大体の気持ちというか、原案というものを、もうそろそろ交渉も煮詰まってくるから固めなければ、国際情勢待ちといっても交渉日程は決まっているのですから、大体交渉の原案というか、交渉の基本態度というものをそういうふうにしようとしておられる。ただ、そこに特に国際情勢待ちよりも、交渉者の当然の注意というか、しかし、相手もあるから、そう断言してしまうと、国民に失望を与えることもあるかもしれないということで、ただし特別の取りきめなき限りというところで、一つのゆとりをとっておこうという気持ちだと思うのです。大体そういう意味ですか。
  60. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 たいへんうまい誘導尋問にあったように思います。まだ誘導尋問どおりに答えるわけにいかない。そのものはございます。先ほど戸叶君にもお答えしたとおりでございます。まだ最終的な決定はいたしておりません。これからまだ愛知外務大臣が出かけます前には、一応私が愛知君ともよく相談をいたしまして、相当ゆとりのあるものを持っていく、また私が出かけるときには、皆さん方にも、できれば各党の党首の方たちと一応話し合ってみたいぐらいに実は思っております。これはいまわれわれが政局を担当しておるというだけで国家の大事をきめる、こういうことはどうかと思いますので、よく皆さん方の御意見も聞いて、やはり責任は政府がとりますけれども、そういう場合には、それだけの慎重さをどうしてもとりたい、かように思いますから、きょうのところは、ただいまのところまでどんどん進めないで、適当なところでひとつ御了承いただきたい。
  61. 曾禰益

    ○曽祢委員 全く善意から出ているのですから、別に問い詰めるわけじゃないのです。また、総理が出る前に各党の党首等とも懇談をして、なるべくならばその祝福と国民的のバックのもとに交渉に臨みたい、そういう気持ちは私も了としたいと思うのです。  それから、相手があることであるから、あまりきちんとこれだけで一歩も退かないという態度では、これは必ずしも交渉でないという気持ちはわかりますが、二つの点を申し上げますと、一つは、但し特別の協定の場合を除くというと、あまりにも交渉の原案ということと——結局いつでも特別協定に譲ってしまうということは、実は結果するところは、沖繩は返ってきたけれども、それが相当の期間になるかどうか知りませんけれども、少なくとも特定の期間の間は、事実上基地の機能に関しては施政権がアメリカにあったときと同じ形、非常に不完全な返還になる。これは完全な返還じゃないという見方もありましょう。そういう解決だとすれば、これは決して日本アメリカとの間にそれこそ沖繩問題が解決したことにならない。過渡的というのじゃなくて、むしろそこに、アメリカの意向と日本国民の希望とがまさに衝突した形で、非常に無理ができることになりはしないかと思う。つまり、特別取りきめで、安保条約の適用排除という、実際上の自由使用というのは、そういう意味なんですね。その場合も、核兵器はいいのか、そうじゃなくて、作戦行動だけ飛び出すのか、自由使用がいろいろありましょうけれども、とにかく本土並みでない、場合によって特別解決があり得るということ、それをあまり強くいえば、それじゃ何のための交渉に行くかわからないということになる。そのことがまた、日米間にせっかく交渉して沖繩問題で解決、少なくとも数歩前進というのが、前進にならないという、将来トラブルの種をまくことになる。だから、そういうことは望ましくないですね。やはり交渉の原案としては、核抜き本土並みでやります、だから、ひとつ国民もバックしてくれというような態度でいいのじゃないかということが一つですね。  もう一つは、交渉に関してはやはり時期がもうだんだん切迫して、そう日にちはたくさんないような感じがする。というのは、この間岸元総理が向こうに行かれたときに、ロジャーズ国務長官に会った話、あるいはニクソン大統領に会った話が新聞に出ておりましたが、まあ向こうさんとしてはまだきめてないようだ、実際、かけ引きなしにそうだと思うのですね。非常にデリケートな問題。それから下田大使がレアード国防長官に会った話も、まだ向こうはきめてないようだ、聞き役に回った。ところが、一カ月半ばかりすれば、外務大臣が、瀬踏み以上の決定的な、重要な国務長官との、総理の渡米を前にしての相当突っ込んだ話に行かれる。その前には、むろんこれは内政干渉みたいで悪いけれども自民党の党議もきめられるというようなことでしょう。そうなると、もう日程は相当詰まっている。それから外務大臣が行かれて帰ってこられるというと、あと総理大臣が乗り込まれるまでに五カ月しかない。戦後もう四半世紀たっている問題ですね。平和条約がてきて十七年たっている。その大きな既成事実の上に立った問題を、ことに日本国民の意思に沿うた——日本人は主権の問題とまず考えますからね。本土並みの安全保障の協力はいいけれども、それ以上の協力はできないという、それをそのくらいのたった半年程度の交渉の日程で日本の意向に沿うた解決をやろうというのは、これはなかなかむずかしいので、いかに総理大臣の外交交渉の手腕を全幅的に信頼するにしても、一回限りのワシントンの乗り込みで、これだけの難問題を数日間の滞在できめられるということは非常に困難なような気がする。したがって、もうそろそろ日本側の原案をきめて、それに基づいて——まあやっておられるとは思うのです。それぞれ大使を使っていろいろサウンドさせるなり、ありとあらゆる外交機能をやっておられると思うのですけれども、しかし、やはり日本の基本的な姿勢が、核抜き本土並みでいきたいのだけれども、特別協定もあり得るというのじゃ、これは実際は腹がきまっていない形だと思うのですね。やはり困難はあるけれども、これでやってみようという、核抜き本土並みを基本方針とするということをきめて、それに対して全力を払うという時期がせもう来ているのじゃないかという気が私はするのですが、どんなものでしょう。
  62. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まあ曽祢君は外交のエキスパートだから、これわかっていただけるんじゃないかと思う。一つは、日米安全保障条約、これが押しつけられたものではない、またこちらから願ったものでもないというか、とにかく両国の利害が一致する、こういう状況のもとにおいて実は安全保障条約ができたものなのだ、私はかように信じております、いまもなお。したがって、今日の状況を見て、いや国際情勢が最初結んだときと事情が非常に変わっているから——これは実は変わっておらない。その意味から、私自身安保条約はこれを堅持する、こういうことを言っておる。その体制はやはり続けていこうと言っている。この考え方アメリカもわかってくれると思います。そうすると、沖繩の問題も、その観点に立って、やはり高い政治的視野から決定すべきものだ。なるほどアメリカが占領していて自由に使える、アメリカ自由使用できるということは、かってに基地も構築できる、そういう状態はいかにもよさそうだけれども、このことは日米間に誤解や疑惑や、たいへんな問題になる。そういう点は必ず気がついてくれると思う。それよりももっと大事な問題、これは日米共通の利害関係のある問題だ、それと真剣に取り組まなければならない、そういう際に、こういう問題が両国間の誤解を招くもとになる、そういう点がよく説明をされれば、私ば、比較的一方で心配しながらも、問題はそのもとの安保条約自身について、これはやはり続けていくということになると、沖繩問題はその基本から見ると次の問題だ、こういうように実は思います。いままで野党の諸君から、対決姿勢でやらなければ沖繩は返ってこない、こういうような話をしばしばされるのですけれども、私は対決姿勢ではない、これはお互いに話し合って、そして理解のいく話だと実は考えておるのであります。現に、この前ジョンソン大統領にも話をしたのですが、幾ら強力な基地沖繩に持ったからといって、沖繩県民の支持を得ないとそれは意味をなさないだろう、まして、日米間に基本的に相互の理解がないと、いまの関係は無意味になるだろう、こういうことを実は申したのです。私どもアメリカを信頼すればこそ、いまアメリカのかさの下でこの国の存立を守ってもらう、こういう態度をいまとっております。また、アメリカ日本が信頼に足るパートナーだと思えばこそ、国際的な役割りを日本に果たさしてもおる、かように思います。まあ、そういうことを考えますと、基本的な問題ではやはり相互信頼関係、そのもとでものごとがきまっていくんじゃないだろうか。なるほど沖繩にはいま本土にある全基地より以上の兵力を持っている。しかし、沖繩基地は、本土基地が補給その他の関係であるからこそ、この程度のものを維持される。全然関係なしに沖繩基地というものがその目的を達するものだとは思いません。また、そういう意味から、私どもは核こそ持たないけれども、またそれを持つことはいま考えませんが、いまの沖繩から核がなくなったからといって、沖繩基地がいままで果たしてきた役割り、それをそこなわなくても済むのじゃないだろうか。私は、そこらが、こちらのほうで主張し、また同時に説得力を持つ必要のある問題だろうと実は思っておるのです。それには、出かける前にやはり国民皆さんから、とにかく政府が苦労をしている、そういう点でひとつ鞭撻をしてやろう、こういうことで叱咤鞭撻もお願いしたいのですが、しかし、最終的にはやはり出かけて交渉する者が全責任を持って樽俎折衝というか、そういうものもやらなければならない、かように実は思います。しかし、各国間の条約、その条約の基礎には、お互いに利害を共通にしておるから、そういうものができておるんだ、そのことをよく考えてみて、いままで言われておるように、日米安保条約、これは日本アメリカに従属しておる条約だとか、またその意味においてのみアメリカはこの条約を使っておるとか、かような考え方では、私は、この問題は解決しないのだ、いま申し上げるように、相互にこの関係があり、そうして相互に理解があって初めてできるのじゃないか、かように思います。そういう意味で、一つご鞭撻も願いたいし、この機会は、先ほど申したばかりでございますから、戸叶君に答えて曽祢君に別なことを答えるというわけにもまいりません。その辺は御了承いただきたいと思います。
  63. 曾禰益

    ○曽祢委員 沖繩返還にあたっては、アメリカとの闘争的態度で臨むということは適当でないと思います。また、安全保障上の協力は、日米間に七〇年六月二十三日以後も、私どもは限定された意味においては必要だと思っています。そういう意味で、いま総理が言われたように、沖繩は返ってくるのに、あそこだけは特別に自由に発進する基地を持っておこうと思ったって、それは日米間のトラブルの種である。私どもは、その意味で、むしろ安全保障の協力は必要だけれども安保条約中の極東条項といいますか、極東のための発進基地ということは、実際上日米の意図が完全に合ったとき以外は使えないのですから、補給基地ならいざ知らず、そういう意味で、常時駐留や基地の大部分のないような条約で安全保障ができるのではないかということを主張しているわけです。いずれにしても、やはり日米間の協力をめどとして、純粋に国防省な考えだけでなくて、やはり日米の大局に立ってこの沖繩返還問題を考えるならば、基地あり方について現状に非常に近い線で絶対にワシントンががんばり通すと考えるのは、何といいますか、少し卑屈過ぎるのではないか。そういう意味で大いにがんばってもらいたいと思う。  そこで、先に進んだ話で、しかし、同時に、やはりこういう問題にしても、外交交渉の場合には、友好国といえども、やはりそれはしのぎを削る一つのバーゲン、取引なりあれはあるわけです。言うまでもないことです。したがって、どうもお互い日本人というのは人がよ過ぎて、先ほど出ておった古井さんの話じゃないけれども、どうも中国人は外交のベテランだという感じがしてならないのです。ですから、そういう意味で、あまり気負って出かけていって、それで必ず一回限りで、ワシントンラウンド三日か一週間くらいで全部きめてくる、きまらなかったときは譲ってくるというのがいいのか、これは私は相当問題があるのじゃないか。それは望みますけれども日本の基本的な方針のラインでアメリカが説得され、総理が行かれる前に地ならしができておるのがベストなんですけれども、それにもかかわらず、総理みずからのいわゆる巨頭会談によって政治的裁決を下す場合が非常にある。そういう場合でも、どうも相互信頼ばかりにあまり甘えていられないシビアーなものがあると思うのです。そういう場合に、どうも日本人は人がいいから譲って帰ってくるという前に、私は、やはりときとしてはこれは継続審議、冷却期間もいいと思うのです。特に沖繩の問題について、さっき戸叶さんが非常に重要な意見を言われたと思うのは、やはり沖繩の声、これをアメリカ側に知らす方法ですね。そういう場合に、場合によったら会談を東京会談に継続する。その東京ばかりでなくて、ついでにニクソンさんを呼んで沖繩に行ってもらう。日本本土で軍事基地というのは、一体どのくらい、アメリカ人がびっくりするくらい都市公害になっているかということを見てもらう。やはりそういうようなことも考えないと、せっかく祝福されて行ったけれども、結局特別協定でサインして帰ってくるということになりかねないので、そこに一つのゆとりを置いて帰ってくる。それで国民にも実情を訴える。アメリカ側にも実情を認識させる。私は、日本アメリカとが友好国なのに、アメリカの大統領が一九六〇年のあの事件があったからとはいいながら、いまだかつて日本に来ていないというのは、これは異例な状態だと思うのです。むしろ沖繩問題、次の安保問題を考えた場合に、ワシントンだけの会談ではなくて、継続審議して東京会談、沖繩にも両首脳が行ってみるというような、そういう一こまを考えてもいいと思う。そういうようなことも考えながら、ひとつぜひ詰めていただきたいと思うのです。ちょっとその点だけ御意見がありましたら……。あと一問だけにいたします。
  64. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのお話、私もいろいろ考えなければならないことだ、そういう際に、いま御指摘になった諸点、たいへんおくれて済まないことですが、戸叶君の先ほどの御指摘と、いまの曽祢君のいろいろの御指摘、これなどは私にいろいろ教えていただけるものがあったと思いますので、ありがとうございました。
  65. 曾禰益

    ○曽祢委員 二分間で時間がないのですけれども、私は、今度は中国問題をちょっとだけ伺いたいのですが、総理は、この間、三月二十日に、エドワード・ケネディ上院議員が、ニューヨークで米中関係に関する全国評議会みたいなところでやりました中国問題に関する非常に重要な演説を、ほとんどフルテクストでお読みになったかどうか、まず伺いたいと思います。
  66. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 全部読んだわけではありませんけれども、ちょっとは……。
  67. 曾禰益

    ○曽祢委員 はなはだ失礼な言い方かもしれませんが、ぜひひとつこの全文をお読み願いたいと思うのです。私も実はきょう全文を外務省から取り寄せてみて、非常に新聞報道と、ぼくが間違えておったのでしょうけれども、違う点があったのです。たとえば台湾海峡から第七艦隊を撤退させるなんということは、一つも言っていないのです。台湾の中におけるアメリカ軍のトークン・フォース、名目的といいますか、台湾の中にあるほんの名目的な、お飾りみたいなアメリカの軍事力ですね、これは引き揚げる。そうして侵略の意図がないことを示してやる。やはりフルテクストを読まないと、真意はわからないのです。いずれにしても、一々内容を申し上げませんが、アメリカ人ではあるけれども、非常に重要な、次の有力なる大統領候補の一人だと私は思うのです。非常にサゼスチョンがあると思うのです。たとえば先ほど穗積委員との応酬にもありましたが、政府一つの中国と言っているそれは台湾の国民政府ですね。従来のいろいろな関係は別として、まさにいつまでも台湾が中国なりと言っているのは、キューバが北米大陸なりというのと同じです。フィクションなんですね。そういう事実は変わっているのですよ。そうかといって、何でもかんでも中国、中共の言いなりで、安保条約もこれをやめる、台湾も否認する、そういうわけにはまいらないし、そうであってはならないと思うのですが、そういう意味で、ケネディの、平和のためにこっちのほうからむしろ打開をしていこうという提案ですね。いろいろな点で私は非常に示唆があると思うのです。非常に思い切ったようだけれども、非常に漸進主義的で、現実から一歩一歩進んでいるのです。たとえば国連において、これはもう中国、中共に総会並びに安全保障理事会で議席を与えるべきだ、ただし台湾は別だ、国民政府に当分総会のいすを与えるか、あるいは一千万の台湾住民が独立するならば、それにあらためて代表権を与えるか、あるいは台湾と中国本土との話が妥協ができて、それで白ロシアなりあるいはウクライナのような一つの連邦の中には入るけれども、単なる自治体以上の立場において国連の議席を得るか、非常に大胆なようで非常に示唆に富むものだと思うのです。私は、そういう意味で、古井さんの労作には違いないけれども、単にあればかりではなくて、やはり世の中は動いているので、ただ政経分離何が悪いのだというのではなくて、やはり台湾との関係を承知しつつも、もっと前向きに、少なくとも国連の場あるいは国際会議の場に中共をいざなってくるというような前向きの姿勢、こういうものがもっともっとなされていいのではないか。この意味で、一つのアイデアではありますけれども、これは私は非常な参考で、アメリカのほうが先に中国との関係を是正するから、日本がバスに乗りおくれたというような、そういうような卑屈な考えではなくて、アメリカでもこのくらいの提案がなされるように、世の中は変わりつつある、こういう意味で、日本としてはいままでどおりというのでなく、さりとて中共ペースでない、日本独自のモーダスバインディ、つまり暫定的な前向きの中国問題に対するかまえ方というものをもっと真剣に考えて、少なくとも近く行なわれる国連総会の場において、たとえば国連の手続論で、いわゆる重要事項指定方式で、中国の代表権問題の実質審議すらやらないというような逃げの姿勢ではいかないというようなことになるのではないかと思うのですが、その点だけを伺って、私の時間がありませんので、これでやめます。
  68. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの状態で、中国大陸と日本との関係がこのままでいいとは私は思わないということを何度も申しました。ところで、いまの一番支障になっておるのは、北京も台北も一つの中国を言っておる。ここに問題があるのですね。外の国から、いろいろ一つの中国を言っているけれども、君のところはそうじゃないよと、こういう内政干渉みたいなことは実際言えない立場にある。これは北京でもちゃんとした一つの中国だと言うし、同時に、中華民国も一つの中国だと言っているのですね。しかも外蒙も、これはもうモンゴルとして別なもののように思うけれども、これすら一つの中国の一部だ、こういう見方をしている。その主張は非常に強いですね。そういう状態がいまあるときに、われわれが先走った状態はどうもできない。だから、われわれがしいて言い得ることは、いまの状態は内政問題じゃないか、お国の内政問題じゃないか、これまでは言えますが、それより以上にはどうも言えない。まして、日本の選択が間違ったか間違わないか、これは別といたしましても、とにかく中華民国と国際上の権利義務がある、条約がある。そういう立場において、ただいまの主張、そのことを考えると、われわれはいま突き進んでいくわけにいかない。ここに、先ほどから同じような答弁を申して、まことに恐縮です。そういう事態がとにかく変わるように、お互いにもっと国際的な方向に活動がいくならば、また変わった局面も開けようかと思います。しかし、ただいまの問題は、主たる問題が一つの中国というところにあるんじゃないか。これは双方で非常に強い主張、この主張がなければ中国の存在なしと、こういうところですから、これを否定して、そんなに言ったからといって、第七艦隊、ここで区別しているじゃないか、そういうようなものではないと私は思います。
  69. 曾禰益

    ○曽祢委員 最後に一言。  お話しですけれども一つの中国というのは、実際上は主張であって、その主張は両政府がいつまでも譲りっこないと思うのです、片っ方が消えるかなんかしない限り。しかし、それでは進歩がない。そこで、やはり一つの中国に二つの政権が争っているが、しかし、台湾からやはり重点は大陸側に移さるべきであるし、その場合に、オール・オア・ナッシングというのはいけない、こう思うのですね。そこで、直ちに両方が妥協案なりに食いついてくるか、同意するか、これはきわめて問題があるが、しかし、日本側から中共に対して、台湾からいろいろな批判があろうが、一つの前向きの姿勢を提案しておく。そのことによって中国だっていろいろな変化があるのだから、やはり将来に対する布石として、前向きの姿勢を示すということは必要なんじゃないか。一つの中国というフィクションでやっている限りは、これは実際上の進歩がないか、片方がなくなるというような極端な事態しか考えられない。それは日本にとって必ずしもできることではない。そういう意味で、前向きの姿勢をお考え願いたいということを言っているわけです。
  70. 北澤直吉

  71. 渡部一郎

    渡部委員 さっそくお伺いしたいと存じます。  現在、中国問題につきまして、佐藤総理が非常に意欲的な姿勢をお示しになりましたようで、本国会の冒頭におきましても、所信表明演説におきましては、わざわざ中国問題をお入れになりまして、いままで類例のないことで、政経分離という中国側を刺激するようなことばはわざわざ削除されたとかで、非常に慎重な御発言があった。また、中国に対する門戸はこれを開放しておく、そして接触を保っていきたいというようなお話もございました。また、愛知外務大臣も同趣旨のお話がございました。私たちは、中国問題に対して非常に意欲的な政府の姿勢があらわれるかと思っておったわけでございます。  ところが、どうもこの間から拝見しておりますと、それほど意欲的でもないやに感ずるわけであります。一体、中国の問題についてどう考えておられるのか。中国の問題はもういままでと基本方針が全く変化がないのか、その辺のところについて、まず総括的にお願いしたい。
  72. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 総括的に申しますと、いつまでもこのような状態を続けてはいけない。しかし、これはやはり時期がこないとなかなか解決しないだろうと思います。お互いに言いたいことも言わないように慎しむ。私自身ももちろんですが、やはり言いたいことを言っていて、問題はなかなか進まない。そこらにやはり注意をしていかなければならぬと思います。十分注意するつもりですから、渡部君もあまり刺激しないで、佐藤にかってなことを言わさないようにひとつお願いいたします。
  73. 渡部一郎

    渡部委員 ただいまの発言は少しおかしいんじゃないかと思うのです。佐藤総理が刺激的なことをこの間から非常におっしゃっておりますので、私は、この際それを一つずつ念を押して確かめたいと存じます。  まず、先ほど穗積委員が御質問になりました件ですけれども、日華条約の範囲は中国大陸全部に及ぶというような意味合いのことを愛知外務大臣がおっしゃった。それから、外務大臣はまだおなれになっていらっしゃらないから、そういう言い回しをされたのかもしれない。先ほどそれを、穗積委員が一生懸命聞いておられた。そうしたら、佐藤総理大臣は何とお答えになったかというと、それは条文を解釈したもので、いままでのことを繰り返したにすぎない、こういうような印象に私は受け取れたのですけれども、これは私が聞いておるだけでなくて、外国の方も聞いておるのですから、御慎重に、刺激しないように御答弁願いたい。お願いします。
  74. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは慎重に、刺激しないようにといっても、先ほどお答えしたばかりで、それをすぐ変えるわけにはいきません。条約というものは、やはり書いたとおり。そのとおりにやはり考えなければならない。しかし、いま実際に、それではそういうことが、中国大陸に行政が及んでいるかというと、及んでいないのですから、それで及んでいる範囲においての問題だけのことがこの条約ではさまっているというわけですね。だから、全然及んでないものをとやかく私どもは申しません。そういうことが条約の正しい解釈だと思います。
  75. 渡部一郎

    渡部委員 総理の御答弁は、その辺非常にうまくお答えになりました。ところが、愛知外務大臣のお答えはそうではなかったようであります。愛知外務大臣のお答えは、中国大陸にこの日華条約が及ぶ、そういう御答弁であったようなんです。そういたしますと、この日華条約にあることは、交換公文の中の文章を見ましても、「この条約の条項が、中華民国に関しては、中華民国政府の支配下に現にあり、又は今後入るすべての領域に適用がある」こうなっておるわけであります。そうすると、まるで外務大臣は、現在の台湾政府のほうが、これから中国本土全部を手に入れることをもう予期され、かつそれを奨励されるかのごとき印象というものが濃厚である。ここに中国側を無用に刺激するゆえんがある、私はこう考えるわけであります。ですから、最高責任者である総理に対して私は重ねて伺いたい。
  76. 愛知揆一

    愛知国務大臣 どうもそういう点が、私の申しておりますことが正確に御理解いただけなくて、非常に残念なのでありますけれども、これはまず第一にお断わりいたしておきますが、日華平和条約の解釈について、条約論として、何も私は新しい、あるいは特異な解釈を、あるいはまた特別に敵視政策といわれるようなことを言っているわけではございません。先ほどもちょっと触れましたように、この日華平和条約につきましては、交換公文もあるわけでございます。この平和条約の条項の適用地域の問題についての交換公文は、いまさらここで読みませんでもよく御承知のとおりでございますが、交換公文の規定、つまり、地域観念を当てはめる意味のある事項と、そうでない事項がある。私は、これはもう条約一般を通じての条約論であると思います。たとえば国と国との関係についての規定で、適用地域という観念のないものがある。たとえば戦争の終結についての規定の第一条というようなものはその部類に入る。ところが、通商関係とか航空関係とか漁業関係とか、その他幾つもございましょうが、地域的な適用関係が現実に問題になるところがたくさんあるわけでございますね。そういう種類の問題について、この日華条約が適用地域として中国本土に及んだというようなことはないことは、この交換公文におきましても明瞭にしてある点である、こういうことを申し上げておるわけでございます。どうかひとつ——これは従来からの日華平和条約それ自体の条約論あるいは一般の条約論の原則論だと私は思うのでございます。日華平和条約そのものがいい悪いという問題はまた別にあると思いますが、この条約についての解釈はそうである。これは参議院でも申し上げたところでございます。
  77. 渡部一郎

    渡部委員 私申し上げておきたいのですけれども、そんなことを私は伺っておるんじゃないのです。現に、現在中共との間に覚書貿易等がかわされているまっ最中に、佐藤さんはいろいろなことをおっしゃった、いままでの中国方針は変わりがないとか。そこへもってきて、三月十三日の参議院予算委員会では、外務大臣が口をすべらされた。それでそのときには、いまのような御丁寧な御説明が追加だというなら私はまた考えようがあるけれども、その場合には、「中華民国の主権者として唯一の政府として、その条約が結ばれておるわけでございますから、さような観点から申しますれば、中華民国全部にかかりまして、地理的に言えば中国本土にかかりまして」と、そういうようにおっしゃっているわけです。中国本土全部にかかりましてなんて、ここでおっしゃっているじゃないですか、予算委員会の議事録で。こんなことを言うから、中国がおこるのはあたりまえじゃないですか。だから総理に私は伺いたいのです。私は、この問外務大臣をおこらせましたので、外務大臣をこれ以上とっちめるのはかわいそうですから、佐藤総理大臣に、こんなおかしなことを言う大臣はよく御指導なさったらいかがでしょうかと私は伺っているわけなんです。どうでしょう。
  78. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御意見は御意見として、よく伺っておきます。
  79. 渡部一郎

    渡部委員 それじゃ、後ほど十分御指導があることと私は理解いたしまして、次に進めたい。というのは、こういうことが、外交交渉で向こうは一々神経質になってこっちを見ておる。私は、佐藤総理が幾ら何でも中国大陸に対して国府軍の侵略を期待しておる、そうして中国本土全部を征服するように示唆しているとは考えたくないし、そんな不用意なことを言われるようなお方でもないと信じております。ですけれども、こういうことがあると、実際的には、今度の対中国貿易の問題が非常に困難をきわめておって、そうして中国敵視政策というのががんがん言われておる。そうすると、実際にはものすごいマイナスになっておる。私はそれを非常に心配しておるわけなんです。  それから、総理にもう一つ私は伺っておきたいのですけれども、日工展というのが、この間実際的には日工展側が中止をしたわけでありますが、日工展側の関係者から聞きますと、非常にきびしい通産側の制約がたくさんあった。中には包装材料まで一々仕様書を出せというお話があった。また打ってある釘の本数から釘の材質まで出せというお話があった。それから縛っているなわの本数とその材質について、これの仕様書を出せというお話まであった。塗ってあるペンキの材質についても出せというお話まであった。それで、日工展側ではついにそれが間に合わなくなってしまった。そうしてせっかくの約束がこれでは不可能であるというので、相当数がおりてしまった。こういうやり方について佐藤総理はもちろん御存じでいらっしゃるとは思うのですけれども、こういうふうなやり方というものが、従来にも考えられないほどのきびしさをもって行なわれ、かつ、ソビエトに対する展覧会なんかとは全く違ったきびしさで行なわれた。こういう事実について認めておられるのか。また、こういうことが日本政府の方針であり、かつ中国政府をおこらせるためにとられた特殊な方針なのであるか。そういうのは佐藤総理のつゆ知らぬ方針であって、それは末端下僚が悪くて、官僚がたるんでおって、綱紀粛正が必要なのか、その辺をお聞きしたい。
  80. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの日工展の問題に、佐藤総理は慎重な人だから、よもや口をすべらさぬだろう、こういう発言で、いかにも考え表現が別であるかのようにとれる……(渡部委員「いやそんなことは言わない」と呼ぶ、いやさっき言われたから、速記にちゃんと出ている。ですから、いまの……(渡部委員「よく聞いてくださいよ」と呼ぶ、私、よく聞いていますが、よもやそんな軽率なことは言われぬだろうということを言われたので、まずその辺から直してかからないと、真意が伝わらない。それはひとつ御注意願うとして、次のいまの日工展の問題です。  実は、日工展の問題は、私自身もずいぶん心配をいたしました。いろいろ問題が起きておる。そのために日工展も取りやめになるのじゃないかという、そういうようなはめにまでなりそうだ。だから、通産省にも命じまして、また外務省ともよく話をして、そうしてできるだけ日工展が開かれるようにひとつ考えてくれよ、こういう話をしたのです。その際に、いわゆる禁止品目といいますか、あるいは向こうへは一応は持っていくが、持ち帰りを命じたものだとか、そういうようなものについても、十分連絡をとって、いわゆる問題は一応解消したと私は思っておりました。ところが、後になってさらに話を聞いてみると、訴訟が提起されている。ずいぶん意外な結果が起きている、かように思っておるのです。しかし、この事務当局がやったことは、いままでの条約関係等から見て、やむを得ない処置であった、かように私は考えております。
  81. 渡部一郎

    渡部委員 これがまた、いまの総理のお答えがまた問題になると私は思います。それはなぜかというと、事務当局のやったことがやむなしというのは、従来とはものすごく違ったきびしい規制であった。これはもう日工展側は言うまでもなく、私たちしろうとが見ておってもよくわかるようなめちゃくちゃな規制であった。こういう問題が、実際的には事務当局の失敗だけでなくて、総理がよく了解しておられだとすると、これは問題である。問題がさらに広がるのじゃないかと私は思うのです。先ほど刺激しないようにとおっしゃったけれども、中国側をことさらにおこらせるやり方ばかりとられているんじゃないかという私の心配はそこにある。こういうことが一つずつまずいのじゃないかと私は思うわけです。  それからまた、時間がないので、私は次に話を進めたいのです。政経分離ということについてもう一つ申し上げておきたい。総理は政経分離という言い方を変えてもいいということを先ほどおっしゃいました。実際には、中国との間の貿易は政経分離じゃなくて、政治が経済に干渉する方式であるから、政経干渉方式とでも言ったほうがいいんじゃないかという方式です。たとえば食肉輸入問題一つにしても、肉の輸入については農林省がよくよく関与されておった。したがって、そのような方式では、とてもじゃないけれども、政経分離とは言いがたい方式である。そして政経一体、何ともいえないような変なやり方でやられておるわけです。それが中国側から見れば、実際にはもう向こうの悪い意味の政経不可分という形になっておって、そして今日の日本態度というのがやられておると見えるんだろうと私は思います。私は、このようなやり方が、実際的には小さな肉の——小さなと言うとまずいかもしれませんけれども、日中両国の関係において肉を何万トン輸入するかでもって、両国の感情をわざわざ傷つける必要がどこにあるのか、その辺が非常に疑わしい。総理はそういった問題をどう考えられるか、お願いしたいと思います。
  82. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 渡部君が東京におられて、私どもと同じ国会で働いておられる。それで、いまのようなお話をなさるから、これは北京で私どもに対していろいろに誤解したり、またいろいろな思惑で行動される、そのくらいのことはあるでしょうね。とにかく国会で、同じように東京のまん中でやっていること、事実何にも隠しはないのですから、たとえば通産省でやった事柄、それなども、あなたがお調べになれば、幾らでも自由に調べられる、そういう状態にある。その方がいまのような発言をなさる。私はほんとうに意外に思うのですよ。  それから、いまの肉の問題ですが、肉の問題、これはもう私が申し上げるまでもなく、口蹄疫という流行病ですね、その病気が実は非常に心配なのです。そういう病気はないといわれますけれども、これはやはりそのために国際条約まであって、口蹄疫をお互いに防ごうということをしておるわけです。だけれども、もうすでに汚染された地域、英国などはこの口蹄疫で汚染されて、百万頭近い牛を屠殺したとか、こういうような事柄がございます。私ども日本にもし万一、これは万一そういうような病気が入ってくれば、日本の家畜に、日本の牛にこれは重大なる影響を与える。だから、これはひとつ厳重に取り扱おう。そこで、日本に入らなくても済むような船上加工という方式を実は考えたわけです。なま肉で入ってくると問題だ。しかしながら、船上で加工するならそういう心配はないからと、実はそこまで考えたのであります。しかし、そういう事柄についてもただいまのように誤解されておられるとすると、私たいへんだと思う。いま私どもが何か特別にでも指図した、かように思われますけれども、そうじゃない。私は、どちらかというと、いまのようにこの日工展が開かれなくなる、これを非常に心配したもので、そういう意味で、出かけることはひとつできるものだけやったらどうだ、こういう注意はしたのです。しかし、ものによってははっきり該当する、そういうものもありますから、それでやむを得ずあの程度のことになった、これはひとつ御了承いただきたいと思います。私も、東京にいらっしゃる渡部君からただいまのようなお話をされると、これはもう北京で誤解するというか、北京で別に考えること、これは当然だろうと思うのですね。そこいらに両国の予期しない事態が起こる。誤りが起こります。
  83. 渡部一郎

    渡部委員 佐藤総理のおっしゃっていらっしゃることは、私にも通じないくらいわかりにくいということが、よくおわかりになったと存じます。  私も、もう時間がなくなってしまいましたので、やむを得ずあと質問を個条書きで申し上げます。落とさないで、がっちりお答えを願いたいと存じます。  まず、食肉の問題は、私は、いまの食肉のそのことはよく知っております。ただ、食肉のことについて問題なのは、そういうことについてやり方、形式、万一の場合という考慮は十分衛生当局で行なわれておったにもかかわらず、そうしたことにこだわられた方針というものが、今日のあのような問題を招いたということが問題だったと私は言いたかったのです。  いまから、私は三つばかり御質問いたします。  一つは、佐藤総理は、前に総裁選挙の際に、本土並み返還を訴えられた前三木外相の発言に対して、それがどれくらい困難かは、外務大臣をやっていられた三木君はよく知っているはずだ、そう相当語気も荒くおっしゃっておったようであります。ところが、最近になって、総理は急に変化をなさいまして、核抜き本土並み返還こそは日本国民世論をあらわすものであって、そしてそれに向かって努力するとはおっしゃらないけれども、十分考えるというようなお話しぶりになってこられておる。そうすると、前と佐藤総理意見は変わったと了解すべきなのか、それとも前と腹の中身は同じであって、いま実際的に言われている本土並みというのは本土並みでないものであるのか、私はその辺が大いに疑わしい、こう考える次第です。その辺は一ぺん御説明になったほうが国民のためにも親切じゃないかと私は考えるので、御質問いたします。  それから、先ほどおにいさんとの関係までるる御説明になったところで、失礼なんですけれども、岸さんは私の信念だとおっしゃって、沖繩基地に制約を加えて本土並みとし、沖繩基地を核まで抜いて無力にするということについては、日本とアジアの安全のためにとるべきでない、これは私の信念であると強く強くおっしゃっておられる。われわれは、どうしてもその辺が、佐藤総理と岸前総理との関係でもありますから、十分連係があった上で、一つ国民世論操作としてそういうことが言われたのじゃないかと私たちには受け取られるわけです。総理の信念は——私は岸さんのことを伺っているのじゃなくて、総理の信念は、こういう沖繩に制約を加え核抜きにする、そこまで沖繩基地を無力にすることは、日本とアジアの安全のためにとるべき態度でないというふうにお考えになっておられるかどうか。岸さんの言ったことを同じように言うわけでありますけれども、そこのところを、岸さんと違って、佐藤総理はどう考えられるか。ここのところは御自分の信念と政策の方針の問題ですから、それを私は伺いたい。  それから今度は、これは四月十日の朝日新聞の記事なのでありますが、これまた少し皮肉な言い方をしなければならないのですけれども、下田大使がレアード長官とお話しになっていらっしゃる。その下田・レアード会談においてどういうことを言われているかというと「日米安保条約については、七〇年以降もこれを継続させたいというのが日本政府のかたたい決意であり、国民多数もこれを望んでいる」、「そして安保廃棄運動はいわば、“作り出された”ものであるのに対して、沖繩返還は領土問題というナショナリズムの観点から起こっていることを指摘し」とあるわけなんです。まだございますけれども、「安保廃棄運動はいわば“作り出された”ものである」、そして安保条約日本国民多数がこれを望んでいる、こういうふうに下田大使が言われて、安保廃棄運動ことごとくをさしてつくり出されたもの、こういうようにきめつけられたという点については、この新聞のほうの記事がいいかげんなのか、それとも下田大使がまた例によって口をすべらせたものか、それは真意が伝わっていないものか、いろんな考え方ができると存じます。総理は、こういうような希望の言動に対してどう考えられるか。それは新聞に責任を負わせられるのか、それとも御自分としてもこれはほんとうだと思われるのか、その辺のところを私は伺いたい。  以上三つでございます。
  84. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お答えいたしますが、第一は総裁選挙の際の私の発言、これは、大体外交の問題など政争の具というか、党内で争うことは、そういう問題にすることは私は適当でない、かように思って、実はその発言をいたしました。今日もさように思っております。  それから、その後私の考え方が変わったか変わらないか。政治家ですから、変わったとか変わらないとか、こういうことが問題よりも、いま考えていることは一体賛成できるかできないか、このほうに主要な点を置いてください。私はいままで、まだ結論は出しておりません、こういうことを申しておりますよ。しかし、これからだんだん結論を出してくるかもわからない。またそうして、言っていることがあるいはそのうち変わるかもわからない。こういうものがいつまでも固定した状況で外交交渉が行なわれるものでもないだろう、かように私は実は思っておるのですよ。変わったとか変わらぬとかいうことがずいぶん問題のようですが、変わったってよくなったことなら、その変わることのほうがいいんじゃないか。変わっても、反対のことがある。しかし、変わって、よく変えた、こういってほめられることもあるだろうと実は思うのです。その中身は一体どうなのか、そのほうを主体に、着ている着物が薄いとか厚いとかいわないで、いまとにかくその時期に適当な着物を着ているといったほうが、これは望ましい形なんだ。これはいま私、テレビ対談その他をよく聞いていて、変わったとか変わらぬとか盛んに責められている。しかし、ものによっちゃ変わっていい。(渡部委員「じゃ変わったんですか、変わらないんですか」と呼ぶ)私まだ沖繩問題については結論を出しておらない。これはもうはっきりしている。(渡部委員「だから、何もおっしゃらない、変わったか変わらないかが問題なんです」と呼ぶ)私は、どうもいま言っていることが変わった、たとえばいまのように、三木君をあれだけ攻撃した者がいま三木君と同じ主張をしているじゃないか、変わったんじゃないか〉と言われるのですけれども、一体どうなのか、公明党はどういう主張が好ましいのか、このことをやっぱり教えていただきたい。このことが私は望ましいのです。私はもういままであらゆる機会にその話をしております。また、私自身が変わっても、悪く変われば、もちろんけしからぬといって攻撃されてしかるべきだ、かように思います。いま言っていることが、あれならまあ応援ができる、あんな変わり方じゃ応援ができぬとか、こういうものがやっぱり大事なことなんじゃないかと思います。まあそれはどちらでもいいんですが、そういうように思います。  それからその次の問題は、いまの岸との関係の問題であります。これはもう信念云々ということじゃございません。これは先ほど、岸と私とはきょうだいではあるが、この問題に関する限り、これは別だ、公私の別を明らかにする、こういうことで主張をはっきりさしておりますから、これまた御理解をいただきたいと思います。私がきょうだいだからといって、岸と連携をとって、自分が言いにくいことを兄に言わした、こういうようなものでは絶対にございません。連携はない。はっきり申し上げる。また、兄も弟の代弁をするほど不見識な兄ではない、かように思いますので、そこらはひとつ御理解をいただきたいということ。  それから第三の問題。第三の問題は、下田君のただいまの向こうへ行っての交渉であります。ただいま政府が安保体制を堅持するということ、これはもうしばしば申し上げております。国民大多数もやはり安保体制の堅持に賛成だ、これは過去の選挙がさような結果を出しております。また最近の世論調査でも、これはやっぱり安保体制は支持している。だからまあ、反安保、それをつくり出したものだからどうとかいうことよりも、国民大多数はどちらを支持しているか、これをやっぱり正確につかむ、そこに政治があるんだ、かように御理解をいただきたい。これは私は、つくり出したものだとかなんとかいうそういう批判よりも安保体制は堅持するという政府国民大多数は支持している、かように考えております。  また、沖繩の問題につきましては、沖繩早期返還を願っておる。これまた下田君の発言したとおりであります。その返還のしかたその他につきましては、私もまだ指図はしておりませんが、ただいま申し上げる基本的な路線だけで下田君もいろいろ交渉している、かように思います。
  85. 渡部一郎

    渡部委員 ただいまの御答弁は、ほとんどお答えになってないように私は思うのです。下田さんの発言については、私たちが何回かいままで注意をいたしました。それは、下田さんという方が、非常に日本全体の世論を曲がったふうに受け取って、そしてそれをアメリカに伝えることが日本の外交上プラスであるかのごとく考えておられます。今後、つくり出されたということば一つを云々しているんじゃなくて、そういう姿勢のあることが問題であるし、この下田大使に対する指示に対してはよほど厳格なる指導を賜わりたい。それを私は申し上げている。  岸さんの問題では、私は岸さんがどうこうという指摘をしたのではない。岸さんが言われた、沖繩を無力にすることは日本とアジアの安全のためにとるべきものでないという意見、そういう意見を持っておられるかどうかを私は聞いておる。岸さんとの話がどうこうということに重点を置いて私は質問したんじゃない。それは前の方の御質問で私は了解しておるのですから、そっちのほうにひがんで受け取られないで、私の言っておることをよく聞いておいていただきたい。さっきから総理はほかのことばかり返事しておられるんじゃないでしょうか。いささか私は通じない電話で話しているみたいなんです。それで私はほんとうに困ってしまう。
  86. 北澤直吉

    北澤委員長 渡部君、だいぶお約束の時間を過ぎておりますからひとつ……。
  87. 渡部一郎

    渡部委員 いまのお答えはお答えになっておりませんから、私は伺っておる。
  88. 北澤直吉

    北澤委員長 この辺でひとつ……。質問はだいぶ時間をオーバーしておりますから……。
  89. 渡部一郎

    渡部委員 わかりました。これはあまりにも……。
  90. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ちょっといまの一つ二つだけ……。いまの下田君に注意しろ、こういうお話なら、これは十分伺っておきます。  もう一つの問題で、岸がどう言おうと、私自身考え方はどうだ、こう言われるのなら、私は、かねてから申し上げましたように、まだ結論を出しておりませんが、同時に、日本独自の立場に立って、そして日本の安全を確保する見地に立ってものごと考える、これが私の考え方でございます。
  91. 渡部一郎

    渡部委員 最後に、私は、一言だけ総理に要請申し上げておきたい。これは質問じゃないので、お答えは要りません。というのは、さっきから私が心配してもっと丁寧に申し上げたかったことは、中国問題に関して、総理はほんとうに向こうを刺激するようなことだけをおやりになっておるように見えるし、現に中国政府の反応はそうなんだから、これは十分気をつけていただきたい。そしてまた、それをぶちこわすことが、日本の将来の長い百年の大計から見たら、大きなマイナスになるんじゃないかと私は考えるわけです。そこを御注意をいただきたい。それを私は将来の日本国民を代表して申し上げておきたい。それだけです。
  92. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これまた御忠言ありがとうございます。厚くお礼を申し上げます。
  93. 北澤直吉

    北澤委員長 本日はこの程度にとどめ、次回はは、来たる十六日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。     午後六時七分散会