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1969-06-19 第61回国会 衆議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年六月十九日(木曜日)    午後三時十四分開議  出席委員    委員長 中村 寅太君    理事 臼井 莊一君 理事 小渕 恵三君    理事 本名  武君 理事 八木 徹雄君    理事 永末 英一君       大村 襄治君    中川 一郎君       福田 篤泰君    古屋  亨君       山田 久就君    中谷 鉄也君       西風  勲君    依田 圭五君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      床次 徳二君  出席政府委員         総理府特別地域         連絡局長    山野 幸吉君         外務省アメリカ         局長      東郷 文彦君     ————————————— 六月十九日  理事吉田泰造君同日理事辞任につき、その補欠  として永末英一君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  沖繩及び北方問題に関する件      ————◇—————
  2. 中村寅太

    中村委員長 これより会議を開きます。  沖繩及び北方問題に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。中谷鉄也君。
  3. 中谷鉄也

    中谷委員 本日は数点にわたってお尋ねをいたしたいと思います。  最初外務省お尋ねいたしたいと思いますが、沖繩米軍というのは、米太平洋統合軍、いわゆる司令部本部ハワイにある、ここの指揮下にあるわけでございますね。そこで、おそくとも七二年には施政権返還される、その論理的な帰結として、憲法及び安保条約沖繩に適用されるということは、すでに何べんも外務省あるいは外務大臣から対米交渉における主張として承りました。といたしますと、在日米陸軍というのは、私の理解するところでは、第八軍の指揮系統下にある。そういたしますと、現に沖繩米軍というのは、施政権返還されて安保条約が適用されたということになったその段階においては、在日米軍の現にある統合司令部指揮下に入るということになるのかどうか。特に実戦部隊等関係もありますが、この点は一体どういうことなのだろうか。これはかなり問題があるというふうに私思いますので、憲法及び安保条約が全面的に適用されるのだという、そういう立場においてこの関係はどうなるのかをお答えいただきたいと思います。
  4. 東郷文彦

    東郷政府委員 旧安保条約時代には、在日米軍という観念がよりはっきり条約上出ておりましたが、新条約におきましては、在日米軍という観念条約上ははっきり出ておるわけではございませんので、米国陸海空軍日本施設、区域を一定の目的のために使うことを認めるという形になっておりますが、実際問題としては、現在本土にあります米軍は、いま先生お話しのように、これも同じくハワイの下にある府中にあります司令部、これがそれぞれ別の指揮系統のもとにある三軍を調整と申しますか統合する意味の機能を、府中司令部がやっておるわけでございます。いまお話し在日米陸軍というものは、第八軍に属して、指揮系統上はハワイ、それから京城の八軍司令官、その下になると思いますが、府中司令部総合調整を受けておる、こういう関係になっておるわけでございます。  それで、しからば返還になったときに沖繩にあります米国の空軍なり陸軍なりというものがどういう指揮系統になるかということは、これはどちらかと申しますと、米国軍内部指揮系統組織上の問題でございます。したがいまして、いま私から、これが返還になれば軍の指揮系統組織をどうするということまで、おそらく日米間の約束ということできめることにはならないと存じますが、おそらく常識的に考えれば、やはり沖繩本土になるということで、府中司令部のそういう総合調整的な機能沖繩に及ぶのではないか、これは私の想像でございます。そういうふうになるのではないかと思います。しかし、これは米国軍の中の指揮系統組織上の問題でございます。
  5. 中谷鉄也

    中谷委員 御答弁になった中に、米軍内部指揮系統の問題であるからという御答弁があったのです。なるほど、そういうことでもあろうかと思うのです。ただ、そういたしますと、要するに憲法及び安保条約が全面的に適用になる。そういう状況のもとにおいて指揮系統を言っていけば、アメリカ政府があって、国防省があって、その下にハワイ本部のある太平洋統合軍、その司令部がある。そうして、それに直結した形に沖繩米軍があって、さらに、この統合軍に従属した指揮系統のもとに、たとえば陸軍関係においては、米陸軍の第八軍があって在日米陸軍がある、こういうかっこうでございますね、現在のかっこうは。そうすると、沖繩返還された状態のもとにおいてもそのような指揮系統であることが、アメリカ陸軍内部あるいはアメリカ軍内部の問題だ——きょうは陸軍だけの問題を取り上げましたけれども、ということでいいのかどうか、相手の内部の問題だということでいいのかどうか、この点は一体どういうことになるのでしょうか、外務省の御方針といいますかお考えは……。
  6. 東郷文彦

    東郷政府委員 現在の陸軍の作戦的な指揮系統というのは、府中司令部が持っているのでなくて、ハワイそれから国防省統合参謀本部、こういう系統になっておりますが、いま私が申し上げましたのは、おそらく返還のときには、府中司令部というのは、現在も在日米陸軍の作戦的の指揮権を持っておるということではないのでございますが、そういったような総合調整をやる在日米軍司令部府中司令部というようなものが沖繩にもう一つ別にあっていいか悪いか、こういうことでございましょうが、これは条約のたてまえからいえば、そういうことがあっても違反とかそういう問題にはならないと思います。いずれにいたしましても、返還のときに向こうの組織なり指揮系統をどうするかということは、われわれ、今日あまりまだ考えておりません。
  7. 中谷鉄也

    中谷委員 次に私がお尋ねいたしたいのは、昨日の外務委員会等でも論議されたようでありますが、沖繩米施設について、総額で十億ドルあるいは十数億ドル、そういうような施設を買い取るというのでしょうか、返還にあたってそのような十億ドル以上の金を、アメリカのほうが日本に対して、買い取りということばがはたして適当なのかどうか、補償を求めている、こういう趣旨外務大臣の御発言があったようであります。  そこで、これはひとつ長官に私お尋ねいたしたいと思うのですけれども、そのようなものを買い取るというか、沖繩返還にあたって、施設資産を評価したところの金をアメリカ補償あるいは手交しなくてもいいのだという法律論も、私は当然あり得るだろうと思うのです。また同時に、いま一つアメリカのそのような十億ドルのものを買い取ってもらいたいという法律論についても、法律論としてはあり得ると思う。政府としては、ひとつこの機会に、どのような方針で臨まれるかは別として、まず最初にお聞きしたいのは、そのような十億ドル相当——金額は別として、施設についての金は出す必要がないのだという法律論といいますか、理論構成といいますか、理屈づけというか、あるいは論理構成というか、そのようなものも当然私は御検討になっておられると思います。両論あると思うのです。この点について、ひとつ長官の御答弁最初に私はお伺いいたしたいと思います。
  8. 床次徳二

    床次国務大臣 ただいまのお話は、さような話が日米間の事務当局において話題になったということは承っておりまするが、しかし、突然のことでもあります。しかも施政権者施政権行使しておる際におけるところのいろいろの財産に対する支出等でございます。私は、たてまえといたしまして、それが返還のときに返さなければならぬもののようには考えておりませんが、これはものによりまして、いろいろまた今後の返還方式等にもよるものと思うので、これは個々によく話を聞いてみなければ、一がいに何とも言えないと思っております。
  9. 東郷文彦

    東郷政府委員 一言ちょっと補足させていただきます。きのうの外務委員会、私も実はうしろにおりまして伺っておったわけでありますが、どうも軍の施設すべてを買い取るというようなお話外務大臣がなさったとは私聞いておらないわけなんであります。ただ、外務大臣のおっしゃいましたのは、いろいろ御質問に答えられまして、返還に伴ってはいろいろな財産上、財政上の問題もある、そういうことは今後の問題だ、こういう御趣旨の御発言はございましたが、軍の施設まで、十何億ドルというものを買い取るというところまでの御返事は、私の記憶ではなかったように思いますので、補足させていただきます。
  10. 中谷鉄也

    中谷委員 新聞の報道ですが、こうなっておりますね。戸叶委員質問は、「米国は、沖繩返還する時、米軍がこれまでに投じた資本、たとえば基地とか道路港湾ガス水道施設などは、資産評価をして日本に買取らせようという話だと聞くが、そうなるのか。」という質問に対して、外務大臣の御答弁は、「こんどの日米交渉では、具体的にそういう話が米側から出るところまではいかなかった。しかし、返す方からすれば、施設その他にカネを使っているのだから、それについて何らかの考慮をしてもらいたいといい出すのは自然の成行きと思う。まだ具体的な提案はない。」とあるわけなんです。そこで、こんな話をすんなり早く煮詰めていただいたら困るので、私はこれでけっこうなんですが、ではアメリカ局長お尋ねいたします。  「たとえば基地とか道路、湾港、ガス水道施設などは、資産評価をして日本に買取らせようという話だと聞くが、そうなるのか。」という質問でありますが、要するに、先ほど長官からお話がありましたように、施政権下にあって施政権の当然の行使としてこのような施設をつくった、それについて買い取りだとか補償だとか、お金を手渡さなければいかぬというようなことについてはおかしいという、長官はそこまではっきりおっしゃられなかったのだけれども、そういう論理といいますか、理論構成は当然あると思うのです。ひとつアメリカ局長のほうから、こういうふうな話が具体的にアメリカ側から出てくる場合の政府のこれに対して考えられる法律的な理論構成というか、論理というか、そういうものをお聞かせいただきたいと思うのです。要するに施政権下におけるそういう施設について、それを返還されたときにそれを買い取らなければならないという論理が成り立つとすれば、どういうふうな論理の道筋でそういうことになるのか、そういうようなものは全然買い取る必要がないんだ、お金を渡す必要がないんだというならばどういうような論理構成になるのか。これは具体的な現実の問題というよりもひとつ法律論として、まず外務省の御見解を承りたい。
  11. 東郷文彦

    東郷政府委員 こういう財政面あるいはお金のほうの問題は、今後の返還の具体的な取りきめの中の大きな部分をなしてくると思いまして、われわれもいろいろ準備だけはしたいと今日から考えておるわけでございますが、何ぶんにも一つは、実際の額がわからないというようなこともございまして、今後の交渉の筋道もまだなかなかつかみがたいわけでございます。いまの法律的にどうかというお尋ねでございますが、その点につきましては、まだわれわれは法律的にこうだというふうな、きっぱり割り切ったような結論を出しておらぬわけでございます。これも実際には、法律的にこうだからということよりは、いろいろの事情をあわせて、政治的にこの辺でということになるのではないかと存じます。いまお話しのように、施政権者としての純粋の経常的な行政費、こういうものを返還にあたって返せというのも、これもおかしいのでございまして、また純軍事的施設の問題も、飛行場とかそういうことを考えますと、これは返還態様によって、すなわち引き続き安保条約地位協定上の地位として残る場合と、全部引き揚げてしまう場合とでは、おのずから扱いも違うかと思います。これもいまから政府がこういう結論だとおとりくだすっては困るのでございますが、施設が残るような場合には、たとえば嘉手納の飛行場が十数億ドルかかっているからこれを払えということは、法律的にはともかく、常識的にもおかしいんじゃないかと思います。そういうことで、いま先先生がおっしゃいましたように、法律論はいろいろできるのではないかと思うのでございますが、その辺、実はお答えにならなくて恐縮でございますが、法律的にこうという結論を出す前に、われわれも、いろいろまず事実問題のほうから入りたいと考えておるわけでございます。
  12. 中谷鉄也

    中谷委員 アメリカ局長のほうから御答弁がありましたが、いわゆる施政権下にあったところの通常の行政経費だとか、それからまず軍事的な施設について、それを基地提供の将来義務があるというようなことで返してくれとか金を出してくれというようなことは、もう大体事実問題としてもこれは問題にならないだろう、こういうお話でございますね。  そうすると、残ってくるのは、一体ガス水道その他の施設道路港湾などというようなものについては、これは軍事施設として理解するわけなんでしょうか。一体こういうものについては、長官ひとつ——私は、ここで御答弁になったことをもって政府のもう最終方針だというふうなかっこうできょうお聞きしているんじゃないので、まずそういうものは返さなくともいいんだという理論構成は十分可能だ、それはこういう理論構成だ。先ほど長官お答えになったと思うのですけれども、もう一度それらの点について御答弁をいただけませんでしょうか。
  13. 床次徳二

    床次国務大臣 ただいま御指摘になりましたものにつきまして、やはりこれは具体的に検討してみないと、どうもはっきり申し上げかねるんじゃないかと思うのであります。この点は、今後の交渉そのものにもよることだと考えておりますので、十分検討して、交渉に万全を期したいと考えております。
  14. 中谷鉄也

    中谷委員 では特連局長さんにお尋ねいたしますが、アメリカ局長は、何か純軍事施設については、こんなものは金を出せとアメリカも言わないだろうし、こんなものについて金を出すつもりは日本にもない、そういうことだろうという趣旨の御答弁があったというふうに私は理解したのですけれども、特連局長さんとしては、純軍事施設というのはどんなものと理解されておるわけなんですか。要するに、アメリカ施政権下における沖繩においての軍用地だとか軍事施設というものについての非常な混乱があると私は思うのですね。たとえば軍用道路というふうなことで、あの大きな道路、平生は民間のトラックが走っている、県民のタクシーが走っている、そういうようなものもとにかく軍事施設だとか軍事道路だとかということになって、デモのときには取り締まりをするというような問題が出てくる。ですから、問題は、純軍事施設なんというものは一体どこまでなのか。これはとにかく、将来の基地態様のある側面についての問題にもからんでくると思うのです。ひとつ特連局長のほうから、この点について御答弁をいただきたいと思います。
  15. 山野幸吉

    山野政府委員 いまお話しございましたように、将来の基地態様をどうするかということと関連して、純軍事施設とはどういうものかということもきめられていく分野が相当あると思います。たとえば電気の問題をとらえてみましても、この電気をいまのまま一本で電力公社でやっていく、そして軍需の電力需要が非常に大きいという場合と、将来電力軍用一般用に分けるのだ、あるいは水道についても軍用と民需と分けるのだという場合とでは相当違ってまいると思うわけでございます。したがいまして、今後そういう問題を含めて日米双方話し合いをしていかなければいかぬ問題じゃないかと思います。  全体としましては、いまアメリカ局長からも御答弁ありましたように、あるいは総務長官からお答えございましたように純行政的——アメリカ施政権者として百万沖繩住民福祉のために当然なすべき行政経費と、それから軍事的な経費と、それからいわゆるパブリックユーティリティーと申しますか公共企業体的な独立採算的な一つの企業というものと、三つのグループが考えられるのじゃないかと思います。まだそのほかにもあるかもしれません。そういう全体を通じましていろいろ政府部内で見解をまとめ、アメリカ側との今後返還協定その他をめぐっての話し合いになるのじゃないか、かように考えます。
  16. 中谷鉄也

    中谷委員 方針の問題でございますから非常に極端なことを申し上げますけれども、要するに、それが個人の接収あるいは賃貸した土地にしろ、あるいはまた、それが国有地にしろ県有地市町村有地にしろ、そこにアメリカ軍施設を設けた。そして、施政権とその基地返還を受けるということになっていった場合には、本来最も素朴に基本的に考えたならば、原状回復という問題が出てくるのだから、ガスにしろ水道にしろ何にしろ、とにかくもう極端なことをいえば、全部それは撤去して返してもらってもいいのだ。撤去するのはたいへんでしょうから、そのままでいいから、ではそれを日本のほうに渡しなさいということになれば、十億ドルなんという話はどこからも出てこないのじゃないかという——こういうふうな理屈が簡単に通るとは思いませんけれども、施政権下における施政権行使としてガス水道電気、そのようなものがあったのであって、これについて外務大臣の御答弁を先ほどアメリカ局長は補足されまして、何も買い取るということを言っているのじゃないのだということの御答弁でありましたが、私はやはり、こんなものについて、返還にあたって日本アメリカに対して金を出さなければならないというふうな方向ではなしに交渉されることが正しいのではないか、適当ではないか、こういうように考えまするけれども、長官のひとつこの点についての、何か最終的な方針というのじゃなしに、いま一度検討するということでなしに、やはりお気持ち程度のものでもきょうはお伺いをしておきたいと思います。
  17. 床次徳二

    床次国務大臣 ただいまの問題はまことに複雑な問題で、これはほんとうに個々のものについても検討しなければならないものだ。したがいまして、その点に対しましては、御意見は御意見として拝聴いたしまして、十分検討いたしたいと思います。
  18. 永末英一

    永末委員 関連。いま中谷君から意見がございましたが、これは沖繩の現在の状態というものは、サンフランシスコ平和条約の三条の問題はございますけれども、結局占領状態が明確に続いておる。施政権者というけれども、われわれが依頼をしてそこに軍事施設やその他の施設をつくってもらったわけではない。これはアメリカが、たとえばフランスとの間で地位協定を結び、いろいろな施設を設置し、そしてアメリカ軍フランスから撤退する場合にいわゆる賠償の問題が起こり、それをフランス政府アメリカ政府との間で処置をしてきたというものとは全然違った形である。そこで、ぼおっと検討するのではなくて——結局きのうの外務委員会での外務大臣発言のしかたが、日本政府がその金を出すのだという態様沖繩返還に臨むというぐあいにアメリカ側に映りますと、私は重要な問題だと思う。やはりこの辺が勝負どころでございますから、財産等の問題については、総務長官、きわめて重大な影響を持たれるポストであるので、事の性質からいうならば、それは金を出して買い取るべき筋合いのものではないのだ、こういう腹がまえでひとつ交渉に臨んでいただきたい。もしアメリカ側が、間違ってその他の国における軍事基地の撤去と同様の感覚で臨まれますと、これは問題の本質を取り違えると思いますので、これはまだまだ交渉にも何にもなっていない状態ですが、新聞記事になった以上は、アメリカ側が間違って認識せられると困る問題だと思いますので、もう一度総務長官の重ねての御答弁をいただきたいと思います。
  19. 床次徳二

    床次国務大臣 御指摘のように、今回の沖繩基地返還問題は、従来例がないと私ども考えておるのであります。したがって私ども、県民といたしましても国民といたしましても無用のものに代償を出すというようなことがあってはならない、これは基本的な考え方だと思います。十分この点は検討して対処いたしたいと思います。
  20. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで、実は私、昨日の外務委員会外務大臣が示唆されたという沖繩施設買い取りなどという、そういう趣旨にとれるような答弁に接して非常に驚きました。それから、いま同僚の永末委員のほうからも長官に対して御答弁を求めたわけですけれども、問題は、むしろおそくとも七二年に施政権返還されるという、そういう政府主張の中で沖繩県民補償を求めねばならない問題というのはずいぶんあるのではないか。たとえば軍用地の問題でございますね。軍用地の問題については、琉球要覧の記載によりますと、琉球における軍用地面積は、旧国県有地を除いて六千三百三十九万三百二十四・五二坪、要するに総陸地の九%を占めておる、こういうことでございますね。ところが、さらにこの沖繩県におけるところの六千三百万坪という軍用地について計算をしてみると、関係地主が二万人にのぼるということでありまするけれども、六一年までに開放された軍用地というものがございますね。これが四百六十万坪、これは講和補償に組み込まれた。そうして請求額について——この請求額も適当な額の請求はできなかったのだけれども、その三分の一に当たる二百万ドルがともかく支払われている。しかし、これはあくまでも補償という形をとらずに、見舞い金となっている。そうして六一年後開放された十五万坪というものについては、復元補償請求百万ドルについて、米軍復元義務はないといって全部突っ返しておる。こういう状態です。そうすると、六千三百万坪から四百六十万坪を引き、さらに十五万坪を引いた五千八百二十五万坪というものは、一体現在補償の対象になるのかならないのかというふうな問題がある。しかも、御承知のとおり、軍用地については賃貸借の制度というのが確立をしている。十年払い方法年次払い方法がある。十年払い方法というものについては、ことしの六月末で契約が切れるという状態に相なっておる。そういたしますと、特に特連局等において御努力をいただかなければいけない問題というのは、こういう軍用地についての復元補償について、施政権下における復元補償というものは十分な補償がなされておらない、見舞い金というかっこうだ、あるいはまた復元補償を全然しないという状態がある。こういうふうな問題について、施政権返還された中においてどのように補償をしていくのか。アメリカに対して日本政府が金を出すわけではなくて、施政権返還を受けたときに、さっそく日本政府県民アメリカ県民あるいはアメリカ日本政府との間に、この軍用地補償問題というのが起こってくるだろう。これらについて特連局の御方針はどうなのか、これをひとつお伺いいたしたいと思います。
  21. 山野幸吉

    山野政府委員 ただいま御指摘いただきましたように、軍用地面積の中で私有地が相当部分を占めており、そしてこれらは占領時代からいろいろな経緯を経まして、昭和三十四年でございましたか、賃借権が設定された。その後また開放された土地もございますし、いろいろ問題がございます。一般的に申しまして、講和前のものについては約二千二百万ドルの講和補償の問題で、沖繩側で自主的な講和補償委員会をつくりまして、そして配分を決定して一応補償されたという形になっておるわけでございますが、しかし、なおかつ、いま御指摘いただきましたようなそれに漏れた問題等もあると思います。それからまた、これは議論をすれば切りなくございますが、事実上占領状態のもとにおける賃借権その他の問題は、これは適正なものではないという見方もあるいは出てくるかもしれません。それから原状回復問題等もあろうかと思います。これらは、あげてやはり施政権返還時においていろいろ問題を全体として把握しまして、その時点においてどういう方法で処理するか、アメリカ側とどういう関係に立つか、あるいはアメリカ側請求権と日本請求権との関係はどうなるのか、そういう中で解決をはかるしか現実には解決のしようがないと思います。そのためのいろいろな資料等は私どもこれから十分整備しておかなければいかぬと思いますが、いろいろ経緯がありまして、なお戦時中にさかのぼりますと、沖繩住民が日本政府に要求すべきつぶれ地その他の補償問題もあるように聞いております。そういう問題を、資料を十分整備し、実態を調査しまして、ひとつこれから十分検討していきたい。いまのところ、これを具体的にどうするという方針はまだきめていないわけでございます。
  22. 中谷鉄也

    中谷委員 具体的にどうするという方針はきめておられないということですけれども、外務大臣お話では、とにかく七二年というのは自分とし詰まってきているのだということでございますね。そういうふうに私は一応理解をいたすとしますと、当然この問題、軍用地補償問題、これはアメリカ政府に対して沖繩県民補償要求をせにゃいかぬという問題、この問題も当然返還交渉の中の一つの問題として出てくる問題でございますね。この点については、ひとつ外務省のほうから御答弁いただきたいと思います。
  23. 東郷文彦

    東郷政府委員 さように思っております。
  24. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで、次に長官お尋ねをいたしたいと思うのですが、核抜き本土並みということなんですけれども、現実に沖繩県におけるところの米軍基地というのが、施設の広さにおいて——質は置いておきます、施設の広さ、要するに収用していくというかっこうにおいて拡大をしていくおそれがあるということが報ぜられておる。だから、本土並みとかなんとかいっても、いわゆる全沖繩県の、とにかく本島の九%、中部においては一四%から一五%が軍用地であり、軍事基地であるというふうなことは、もう密度において、全然本土並みなんということとの意味が違ってくると思うのです。そうすると、おそくとも七二年の施政権返還なんというようなことをおっしゃいますけれども、それまでにどんどん基地がふえていくというようなことについての!施政権下にあるんだから歯どめがないんだというふうなことで、はたしていいんだろうかどうだろうか。この点については、長官どういうふうにお考えになりますか。
  25. 床次徳二

    床次国務大臣 今後の沖繩基地がふえるかどうかということに対しましては、私はまだよく熟知しておりません。いままでの傾向からいいまするならば、必ずしもふえるとは私ども考えておらないのでありますが、なお復帰の際におきましては、できるだけ基地を整理するというような問題も私は話題にもなり得るんではないか、あるいはそういう問題としても、やはり検討する余地もあるんじゃないかと思っておりますが、あと大体の階というよりも、十分そういう知識を持っておりませんので、これはその方面の関係者から聞いていただきたいと思います。
  26. 中谷鉄也

    中谷委員 特連局長いかがですか。要するに、沖繩基地というのが施政権下にあるんだから、基地がどんどんふえてくるというような状況では非常に困るのですけれども、これについての見通しですね、これは縮小の方向にあるというふうに言えますか。それとも、ふえてくるかもしれない、これは全く施政権下にあるんで、そこについては関知しないんだ、ふえてきたときにはしかたないんだというようなことでは困りますね。私は、やはり見通しをお持ちになっていただかなければいかぬと思うのです。この点、いかがでしょう。
  27. 山野幸吉

    山野政府委員 私ども、特に最近軍用地が拡張され、あるいは軍事施設が拡張されているとは承知しておりません。もちろん、その内部における施設の移動、整備等が行なわれておることは聞いておりますが、全体としてそう拡張されておるというぐあいには必ずしも言えないんじゃないか。これは、私はそういうぐあいに聞いております。(中谷委員「見通しはどうでしょう」と呼ぶ)ただ、将来の問題は、これはいま長官のおっしゃいましたように、むしろ返還等に関連して合理化していくようなことも話題になり得るというぐあいに考えていまして、拡張するとかそういう方向にはない、こういうぐあいに聞いております。
  28. 中谷鉄也

    中谷委員 長官は四時に御退席のようでございますので、質問をあと全部まとめて一点だけいたしたいと思います。  これはもう私、当委員会で何べんも発言をさしていただいた問題ですけれども、沖繩における人権問題、人権侵害事案というものがあとを断ちません。これについてどうするのか。前回の本委員会におきまして、特連局長は、人権問題というのは外交ルートの問題が適当だろうというような御答弁があったのですけれども、やはりそうではなしに、これはもう、とにかく人権問題というのは、問題だろうと私は思うのです。ことにこれらの人権問題について日米琉諮問委員会で今後議題にしていくということは、日米琉諮問委員会の評価についてはいろいろの問題がありまするけれども、これは私は、そういう方向で活用するということについては、ぜひそうあってほしいと思うのですが、この点についての御答弁を私はいただきたいと思います。それが一点です。  それから、これは私、前にも局長お尋ねをしまして、きょうも同じ質問をするので、少ししつこいような気もするのですけれども、お尋ねをいたします。  社会大衆党の委員長が傷害を受けた事件でございます。これは、私は長官の御方針、お考えを承りたいと思うのです。何かアメリカが、訪米しておられた外務大臣に対して遺憾の意を表したということなんですが、一体遺憾の意なんというのはどういうことか、法律家としてよくわからないのです。要するに、ああいう行為は犯罪だと私は思います。銃剣で一人の人間を傷つけ血を流さすなんということは、私は犯罪だと思う。だから私は、過剰警備だとかいうふうな問題ではないと思うのです。警備だというふうな問題として私は問題を理解すべきではない。ましていわんや銃剣を持って警備なんということは、私は理解ができません。だから私は、過剰警備ということばは使わない、しいて使うなら違法警備だ。過剰というのは、何か量的に過ぎたのだという意味でございますね。私は、こういうふうなのは全く違法な行為だというふうに理解しているのです。銃剣を持ってピケを張ったことが全体として違法であるし、傷をつけたことは私は犯罪であると思う。そこで私は、前回そういうような点についての長官の遺憾なことだというふうな御答弁ではなしに、社会大衆党の委員長の血が流されたこの事件についての長官の御見解を承りたい。これは犯罪なのかどうか、こういうふうな行為がはたして法律的に許されていいのかどうか、またヒューマニズムの立の明確なというか、決然とした御答弁を私はいただきたい。  同時に、前回、特に沖繩新聞を持ってまいりまして、こんなかっこうで社会大衆党の委員長が刺されておりますといって私写真を持ってまいりまして、そして特連局長お尋ねをした。お尋ねをした要旨は、一体だれが、何というアメリカの兵隊がこの社会大衆党の委員長を傷つけたのか、その点についての調査ができておりますかということを私はお尋ねをした。これについて局長の御答弁は、訪米の随員として行かれて帰ってきて間がないので、何かあのときは、詳しくつまびらかにしておりませんというふうな御答弁だった。そこで、私は長官お尋ねいたしたい。この点について、もうすでに相当の時日がたっているが、しかもあの写真——どの新聞にも報道されました。あの写真によれば、この兵隊が社会大衆党の委員長を刺したのだなということが一目りょう然、少なくともわかり得るような写真なんです。はっきりしている顔写真が出ている。要するに、そういう現場がはっきりしているのですね。そういうふうな米兵の名前が長官の耳に入っておるかどうか。入っておるとするならば、一体それについてどのような処置をアメリカはとったということについて御調査になっておるか、報告を受けておられるかどうか。  これらの点について、まとめて質問を申し上げてまことに恐縮でございますが、御答弁をいただきたいと思います。
  29. 床次徳二

    床次国務大臣 まず第一に、人権の問題でございますが、これは日米のあらゆるルートにおいて尊重、確保させなければならないものと思うのでありまして、前回の委員会におきましてもお話がございましたが、私も、その後沖繩に参りまして、ラン。ハート高等弁務官と会談いたしました際におきまして、十分に人権の尊重につとめてもらいたいということを要望いたしました。なお、そのときにおきましては、たとえば裁判権等の問題におきましても公開の原則に徹しまして、十分被害者側の立場を守るようにということでありまして、アメリカ側といたしましても公開の原則はとっておるが、とかくこれが実際において実行されないというか、たとえば門に入ろうと思っても入れずに立ち会えない、あるいは時日が告示されないために間に合わないというような御指摘がありましたので、そういう具体的な事実を指摘いたしまして、そうしてほんとうに裁判の公開の原則、人権の尊重ができますように要望いたしまして、弁務官も一でき得る限りこの趣旨に沿いたいという確約をいたして「おる次第でございます。  なお、今後とも人権の尊重につきましてはあらゆる機会におきまして努力いたしたいと思いますが、ただ、いわゆる諮問委員会におきましては、諮問委員会の当初の与えられた権限というものからはは、ずれておりますので、その分まで触れ得ない分もあると考えております。  なお、安里委員長の傷害事件、傷害の場面そのものを見ますると、いかにもお説のように考えられまするが、背景がなかなか複雑だと思うのであります。とりあえず日本政府としての立場を申し上げますると、六月五日には、牛場外務次官からバージャー代理大使に対しまして、着剣した銃でもって米軍がデモをおどし、負傷者を出したことは遺憾である旨を表明し、バージャー代理大使も負傷者が出たことに対しまして遺憾であるということを述べております。  次に、訪米中の愛知外務大臣に対しましては、レアード国防長官、ジョンソン国務次官は会談の席上におきまして遺憾の意を表明して、また、六月七日におきましては高瀬大使が、日本政府の代表という立場ではございまするが、ラン。ハート高等弁務官と会見して、席上大使が遺憾の意を表明いたしまして、高等弁務官が遺憾の意を表明するとともに、徹底的に調査して対処したいということを述べております。  なお、岸事務所長はカーペンター民政官に会いまして、同じくこの問題につきまして遺憾の意を表明しているのであります。  したがって、私は、今後重ねて米側におきましてはかかることの生じないような努力をいたすものと、誠意を、この態度を了としておる次第であります。  ただ、こうなりました経過につきまして、私どもは背景をよく考えなければ、単にあの場面だけの問題でもって是非を論ずることはなかなかむずかしいと思うのでありまして、すでに大体の経過は御承知かと思うのでありまするが、数点簡単に申し上げてみたいと思うのであります。  このストに至ります経過は、全軍労が、まず空軍百五十名の解雇撤回、大幅な賃上げを要求し、米側の回答がないときにはストに入るということを決定したということから始まったわけであります。  五月二十九日には、屋良主席はカーペンター民政官と会談いたしまして、その際、米側といたしましては、解雇は合衆国の予算の削減によるもので、現地ではどうにもしようがないということ、それから、全軍労がストをかまえて団交を要求しているのでは、軍の立場からは団交に応ぜられないということを明らかにしておりまして、なお、このストそのものは、違法ストと米側は解釈しておるものと思います。  また、同日、上原全軍労委員長がカーペンター民政官と会見した際、とりあえず冷却期間を置くためにストを二週間延期してほしいということを上原委員長に要請したのに対しまして、上原委員長は、明白な回答がない限りストの中止はできないということを答えております。  さらに、六月二日には、中央闘争委員会が時間給十七セントのベースアップ、退職金の本土並みの支給、百五十人の解雇を七月一日まで延期することについての要求を掲げ、この要求がいれられない場合には二十四時間ストを行なうということを決定しておるわけであります。  これに対しまして米側は、六月三日の姿勢は、全軍労に対しまして、(イ)百五十人の解雇者に対しましては七月一日から実施の新賃金表による退職金を支給する、(ロ)回諸手当、退職金の増額については交渉に入る、(ハ)組合側の苦情、争議問題については早急に意見交換をする、(ニ)今後の問題として双方とも一団体交渉を妨げるようなことはしない、というようなあっせん案を示しておるのでありますが、これに対して全軍労は、具体的内容が明らかでない、ベースアップの有額回答をしろ、組合の要求に応じて団交に応ぜよという態度をきめたのでありまして、そうして米側話し合いに入ったのでありますが、話し合いが進展しないままに四日に至り、中央闘争委員会におきましては、ベースアップ並びに退職金についての具体的回答がないというので、ストを回避する絶対的条件はないということでもってスト決行をきめておる、それでストに入ったわけであります。  なお、さような状況でストに入っておるので、なかなか状況は微妙であると私ども考えておるのでありまするが、このストの状況は、警察の調べによりますと、大体六十カ所の米軍キャンプゲートでもって三千名のピケを張ったと認めております。全軍労側におきましては、七十六カ所のピケを張って、スト参加者は二万人全員と非組合員もというようなことであったわけであります。ピケは、予定は二十時までであったのでありますが、豪雨のために午後五時半で打ち切った。  その間において安里委員長の負傷事件が起きておるわけでありますが、安里委員長の負傷の状況は、左手の甲に軽い擦過傷を負っておる、せびろの右そで口二カ所が切れておる、せびろの左ポケットが裂けている、腹のみぞおちにかすり傷を負っているようで、その辺はせびろも裂けておるというのが大体負傷の実情であります。  なお、事件後におきまして、同行されました三人の立法院議員が屋良主席を訪れまして、事件当時の事情を説明しておりますが、五人の議員がピケを張っておった城間ゲートに激励に行ったというわけであります。それで安里委員長はゲート側におりて、そのときピケを張っておる全軍労の組合員十数名が委員長の姿を見て、安里氏のところに集まってきた。それを見たMPが基地の外に出て、さらに一号線のまん中まで出てきた。そしてゴー、ゴーと言いながら銃をかまえたというのがそのときの形でありました。  なお、米側見解といたしましては、同朝の七時ごろ、反戦学生会議所属の学生が二十名ばかり基地に入ったという事件が起きた。そういうことがあったために、安里委員長が着いたときにピケ隊員が安里委員長のところに集まった人の群れを見て、再び基地の中に飛び込んでくるのではないかと勘違いして、銃をかまえて飛び出したのではなかろうかということを言っておるのであります。いずれにしても、事件は一瞬間の間に混乱が起きた事件であるということであります。  なお、屋良主席は抗議をいたしておりまするが、軍側が基地の外に出てきたのは過剰な行為に出たことで、労働争議のあり方ではない、ましてや銃剣によって労働者や安里委員長にけがをさせたことは許せないという発言をしております。  立法院におきましては、各党が抗議すべきであるということをいたしておったのでありますが、結局抗議をするという話し合いまでまいりません。そこまではまいりません。まず事情を調べてやるということになったわけであります。  革新共闘会議におきましては、民政府に抗議におもむくという態度をきめて、なお、五日からスト中の全軍労は、抗議総決起集会といって集会を開きまして、抗議文を採択してデモを行なっております。  なお、カーペンター民政官は、一時間屋良主席を訪問して会談し、席上、安里委員長の負傷事件に関して遺憾の意を表明しておる、かような状態がいわれておるのであります。  なお、関連いたしまして、六月六日、ランパー上局等弁務官は、自民党議員団と会見の際におきまして、安里委員長の負傷事件に関しては遺憾の意を表明し、なお在駐四軍に対して、最大の注意と自制心を持って住民に対するよう指示しております。次に、全軍労その他に廻しましては、円満解決の方向で臨みたい、しかし、ストを前提とした団交では、まじめな話し合いはできないという回答を述べておるわけであります。これは、すでに解決したことは御承知のとおりであります。  なお、その間におきましてあっせん等も行なわれておるのでありまするが、いずれにいたしましても、あとカーペンター民政官と屋良主席の会談、あるいはランパート、高瀬大使との話等もずっと経過を見ておりますると、原則として、警備にあたりましては第一線に民警察、次に雇用警備員、次に隊、その三つをもって基地を守るという形になっておったのでありまするが、しかし、ピケの個所が非常に多かった、したがって十分に民警察の手が入ってなかった、いわんや問題を起こしたところにおきましては民警察が間に合わなかったし、しかもその直前において学生の突入事件等があったという、不幸な因果関係があったというわけであります。なお、銃を持っておったということにつきましては、民警察、警備員が足らないために部隊が直接出た、米側としては直接県民と部隊との接触は避けるつもりであったけれども、時間的にやむを得なかったということ。なお、先ほど申しましたように基地の外は民警察、内は米軍の責任で守る、警備するということになっておったのが、民警察が来なかった、しかも突入事件があったために、警備側は外へ出たというような原因がつながっていったわけです。  そういうことでありますので、先ほど申し上げましたような処置を日本政府としてはいたしまして、そして、この事件というものは、今日は落ちついておるというふうに私どもは考えておる次第でございます。
  30. 中村寅太

    中村委員長 参議院との約束がありますので……。
  31. 中谷鉄也

    中谷委員 長官、御退席なさってください。特連局長は残ってくださいね。  長官が退席されるときにこういう言い方をするのは悪いですけれども、いまの長官の御答弁は、私の質問とは全然関係ないですよ。経過を詳細きわまりなしに御説明いただいたけれども、そういういわゆる闘争といいますか、軍労働の諸君の運動の経過が、何で銃剣を持った警備に連なっていくのか。そんなことについて、私はなぜそういうことになったのですかということを聞いたんでしょう。答えてください。要するにピケというのは、しかも軍労働の諸君のピケは、平和的説得の範囲を出てないのですよ。平和的説得のピケに対して銃剣をもってするとは何事か。私は何も特連局長に大きな声を出したくないけれども、そういうことを言いたくなってくる。だから、こんなものを過剰警備だということばで言いたくない、私は犯罪だと言っている。それを遺憾の意を表しに来たということで、それでよかろうというふうな考え方は私は非常に遺憾であるし、残念だと思う。  そこで、外交ルートをもってあらゆる人権問題について調査されるということが政府方針だとおっしゃいましたね。しからば、私はひとつぜひとも調査をしていただきたい。一九六九年、昭和四十四年六月五日付の「沖繩タイムス」の夕刊、これをひとつ私は資料として提出をいたします。外務省特連局か、どちらかお受け取りになってください。その写真をひとつ見てください。  まさにそれは社会大衆党の委員長が刺されておって、銃剣が上に突き刺さっておる写真でしょう。だから、あなた方が調査をするとおっしゃっておるその調査については、その米兵の名前を調べてください。その米兵の名前をお調べいただきたい。それからあと、あとうべくはその新聞の下段にある銃剣をさげておる米兵の氏名を明らかにしていただきたい。——新聞をまくってください。そこに出ておるその米兵の氏名を明らかにしていただきたい。少なくともそんなはっきりした写真なんてありませんよ。社会大衆党の委員長に銃剣を刺しておる、こんなにうまく写真がとれたと思うくらいよくとれている。その米兵の名前は明らかにしていただけますね。こんな者の名前がいまなおわかっていないということは、私は恥ずかしいと思う。遺憾の意を表明された、だれがだれに何を言いに来た、そんなことが問題じゃないと思う。アメリカ軍はその米兵を逮捕すればいいじゃないですか。そういうことが行なわれてないということは非常に遺憾だというのです。アメリカに対して、その米兵の氏名を明らかにするように外交ルートをもって要求をしていただきたい。これについての御答弁をいただいて、私のきょうの質問を終わりたいと思います。
  32. 山野幸吉

    山野政府委員 ただいま御指摘になりましたように、事のいかんを問わず銃剣をもってこういう事態が生じたことは、政府としては残念に存ずるのでありますが、したがいまして、いま総務長官から御答弁になりましたような一応の手続をとっておるのであります。それからまた、カーペンター民政官もこれは全面的に調査をするということを言っておられますので、私どもは、その調査の推移を十分見まして対処いたしたいと考えます。
  33. 中谷鉄也

    中谷委員 お尋ねしますが、すでに六月四日のことですね。その米兵ということは、はっきりしておるのですよ。その氏名について報告を求められますかどうか。カーペンターさんが調査すると言っておるけれども、この米兵についての調査で、氏名を明らかにしてもらいたいということを野党の委員から発言があった、したがってこれについての調査を求めたいということは、民政府に対して言えないのですか。これは言ってもらわなければらちがあきませんよ。犯罪者が写真に出ておるじゃないですか。それでも過剰警備だ、遺憾だ、行き過ぎがあったのだ、間違いがあったのだといって、人を銃剣で刺した、しかも政党の委員長を刺したということが、すみませんで済むことでしょうか。私は、こういう問題については明確にしていただかなければいかぬと思う。カーペンターさんがどういうことをやっておるか知りませんが、そんなことは警察官になって三日目の人間でもすぐわかることです、調べようと思えば。その氏名を積極的に明らかにしてもらいたいということを、外交ルートを通じて政府のほうで要求されますか、されませんか。この点だけなんです。カーペンターさんが調査をしておるとかなんとかいうことを聞いておるのじゃないのです。
  34. 東郷文彦

    東郷政府委員 私の留守中に本事件が起こりまして、外務省事務当局よりも全般的の調査の申し入れをしたということを聞いておりまして、いま特連局長の申されたように、その結果を待っておるところでございます。今日まで総務長官あるいは外務大臣もおっしゃっておりますことは、過剰防衛……(中谷委員「過剰警備でしょう、過剰防衛じゃないでしょう」と呼ぶ)過剰警備ということは遺憾であるということでございまして、これが犯罪であるかどうかということをわれわれのほうで判定するには、まだ全体の調査の結果が来てないわけでありまして、特定の個人が犯罪に該当することであったかどうかというのは、やはりそういう資料、調査の結果を待たなければ現在何とも言えないのじゃないかと思います。繰り返しますが、今日全体の調査の結果を待っておる段階でございます。
  35. 中谷鉄也

    中谷委員 たいへん同僚委員に申しわけございませんが、一点だけ質問いたします。では、いつまでに調査の結果は来るのですか。  それから、もう一度お尋ねしますけれども、そんなものを見て——私は、政府のお立場というのは非常に冷静でなければいけないと思いますけれども、沖繩県民百万のみならず、すべての日本人はやはり憤激したと思うのですよ。とにかく、いずれにいたしましてもストをしている人間に対して銃剣を向ける、着剣をしたいわゆる鉄砲を向けるなんということが許されていいことなのかどうか。ここは日本国なんでしょう。そんなものが犯罪でないといって通る世の中じゃありませんよ、と私は思います。  それでは、いつまでに報告を求められますか。そうしてその報告の中に——アメリカ局長お尋ねいたしたいのですけれども、その米兵の氏名が明らかになってくることが期待できる報告なんでしょうか。その点がポイントでしょう。だれがやったのか。過剰警備という集団、過剰警備という状態が社大党の委員長を傷つけたのじゃないでしょう。そういうふうな状態の中で、特定のAならA、BならBという米兵が社会大衆党の委員長を傷つけたのでしょう。だから、まさにA、Bという氏名が明らかになることが基本であろうと私は思います。報告は、そのようなことを求められるように、民政府に対して要求をしておられるのですね。
  36. 東郷文彦

    東郷政府委員 向こうの調査の結果がいつ来るかということは、これは私、いまここで申し上げられませんので、督促に努力いたします。  それから次の点でございますが、これはおことばを返すようになるかもしれませんが、政府といたしましてまず一番問題なのは、その場で個人がやったかどうかということよりは、ストライキのあったときに、ピケを排除するために銃剣が使われたという事実のほうが、むしろ第一義的にはこの場合、問題ではないかと思います。そういう意味におきまして、まず事態の調査をはっきり取り寄せるということが先ではないかと考える次第でございます。
  37. 中谷鉄也

    中谷委員 終わりたいけれど終われないのだけれども、もう一問だけやりますよ。銃剣を突きつけてそういうことをやった雰囲気、あるいは指揮命令、そういう集団がとにかく違法な警備をやった、過剰警備と言うには当たらないほどの違法なことをやったんだと私は言っているのです。しかし、犯罪が行なわれるとすれば、共同正犯かどうかはともかくとして、そのAという、あるいはBというアメリカ兵の名前を明らかにすることが一番基本でしょう。しかし、その氏名を明らかにしなくてもいいのだとおっしゃるのですか。もうどういうお答えでも私はこれ以上質問をしませんけれども、私は人権感覚という点からいって非常に遺憾ですよ。AとB、AなのかBなのか、ことにあの写真に出ている兵隊の名前を明らかにしてもらいたいということについて、なぜ政府は明らかにしようとはされないのでしょうか。もうどんな答えが出ても、皆さんに迷惑をかけますから質問をしませんけれども、お答えをいただきたい。
  38. 東郷文彦

    東郷政府委員 中谷先生の御満足を得られないかもしれませんが、いま申し上げましたように、やはり問題の一番大事な点は、過剰警備が行なわれたという事実でございますので、そこで特定の個人の名前を調べて、個人を追求する必要があるかどうかという点は、いまの段階では私としては何とも申し上げられません。
  39. 永末英一

    永末委員 関連。いま東郷局長答弁されましたが、一体沖繩におるアメリカ軍は、先ほど総務長官の説明によりますと、いわゆる墓地を出て基地の外におる安里社大党委員長に対して銃剣を突きつけた、こういう説明ですね。そうしますと、沖繩における米軍は、いまのようなピケなんかを沖繩の全軍労がやった場合に、言うならば基地内を警備するのが彼らの任務でしょう。その基地を出て、そうして集団としてああいう銃剣を突きつけた、その中のある個人が安里社大党委員長を傷つけた、こういうことだ。したがって、これはアメリカ陸軍の刑法の中でこういうことが一体許されておるのかどうか。あなたは個人の名前を出すことはできないというのだけれども、アメリカ陸軍にだって刑法はあるのであって、あの部隊は、アメリカ陸軍指揮系統を通じて任務を与えられたと思う。しかし、沖繩状態は戦時が続いておるはずはないのだ。ところが、彼らの頭の中には多分にそれを戦時感覚で見ておる懸念があると私は思う。その続きが出てきている。したがって、鉄柵を出て外の平和におる人々に対しても銃剣を突きつけていいんだ、こういう感覚があるとすれば、まさにそのことが重大問題である。ぜひひとつアメリカ陸軍刑法をもお調べになって、アメリカ側としては、一体あの部隊がどういう命令を受けたのか、平和におる人々に対して外に出ていって銃剣を突きつけるという、そういう命令を受けたのか。突きつけた場合に傷つけてもよろしい、つまり戦闘行為として見ていることは重大だと思う。名前を調べないでもいいなんて言われないで、ぴしっと調べてもらいたい。われわれ民社党からも要求します。
  40. 東郷文彦

    東郷政府委員 私申し上げましたのは、名前を出せないということではなくて、まだその名前を持っておりませんが、ともかくまず、そういう兵隊の行動は、やはり軍隊あるいはその指揮官の命令に従って——少なくともあの写真から見ますとそう見えますが、まずそちらのほうが基本問題であるということを申し上げたわけでございまして、そういうことを含めまして、向こうの調査の結果を待っておる段階でございます。
  41. 中谷鉄也

    中谷委員 では、すみませんが、こういうふうに私のほうから要求します。この問題のゲートの部隊名、この部隊が分隊なのか小隊なのか、そこの指揮官名、これはすぐわかりますね。そうしてこの問題の兵隊の名前、これだけをお調べいただきたい。  質問を終わります。      ————◇—————
  42. 中村寅太

    中村委員長 この際、おはかりいたします。  理事吉田泰造君から理事辞任の申し出がありました。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  43. 中村寅太

    中村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  ただいまの理事辞任に伴う補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  44. 中村寅太

    中村委員長 御異議なしと認めます。よって、委員長理事永末英一君を指名いたします。  本日はこの程度にとどめ、次回は公報をもってお知らせすることとし、これにて散会いたします。     午後四時二十八分散会