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1969-05-15 第61回国会 衆議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年五月十五日(木曜日)    午前十時四十四分開議  出席委員    委員長 中村 寅太君    理事 宇野 宗佑君 理事 臼井 莊一君    理事 小渕 恵三君 理事 本名  武君    理事 川崎 寛治君 理事 吉田 泰造君       大村 襄治君    福田 篤泰君       箕輪  登君    山田 久就君       大出  俊君    中谷 鉄也君       渡部 一郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      床次 徳二君  出席政府委員         総理府特別地域         連絡局長    山野 幸吉君  委員外出席者         外務省アメリカ         局外務参事官  大河原良雄君         労働省労政局労         働法規課長   大塚 達一君     ――――――――――――― 五月十五日  委員岡田春夫君及び伊藤惣助丸君辞任につき、  その補欠として大出俊君及び渡部一郎君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員大出俊辞任につき、その補欠として岡田  春夫君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 五月十三日  沖繩総合労働布令撤回に関する陳情書  (第三七四号)  沖繩居住身体障害者援護に関する陳情書  (第三七五号)  北方領土の日本復帰促進に関する陳情書  (第四六三号)  沖繩即時返還に関する陳情書外四件  (第四六四  号)  沖繩即時返還等に関する陳情書  (第四六五号)  沖繩のB52爆撃機即時撤去に関する陳情書外三  件(第四六  六号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  沖繩及び北方問題に関する件      ――――◇―――――
  2. 中村寅太

    中村委員長 これより会議を開きます。  沖繩及び北方問題に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。大出俊君。
  3. 大出俊

    大出委員 沖繩問題につきましては、実は総務長官に幾つか基本的に大きな問題で御質問申し上げたいことがあるわけなんです。かつまた、何べんか私も沖繩調査に参っておりますし、また私の所属の内閣委員会でも委員会として沖繩調査に行ったこともありまして、沖繩対策特別委員会ができる前までは私ども委員会所管でございましたから、旧来の関係でいろいろあるのですけれども、実はきょうは時間の関係もございまして、当面する非常にこじれた沖繩米軍並びに基地労働者皆さんとの間の問題がございまして、このままほって置くことは、沖繩返還日米交渉が目の前に来ておりますし、いずれの側にとっても考え方が違うにしても相互にあまり感心した問題ではないというような気がいたしますので、     〔委員長退席小渕委員長代理着席〕 そういう意味でひとつできるだけ御検討いただいて、本土政府の側として打てる手は打っていただきたいという気が実はいたしますので、政府責任云々ということではなしに、そういう意味で実は御見解等を承り、また現地からいろいろ資料を送ってきておりますけれども、私自身が調査に行ったわけではございませんので、不十分な点もあり、また誤っている点もあるかもわかりませんが、そういう点については質問の途中でお教えをいただきたいと実は思っているわけであります。正しい認識の上に立ってひとつ私どもの側もできるだけのことはしなければならぬ、こう思っております。  そういう意味でまず承っておきたいのは、布令百十六号の第十三条というのがございますが、この布令百十六号の第十三条の中で、十三条に基づく重要なサービスという問題があるのであります。いま起こっている問題を例にとりますと、「衛生基準維持を保障する立場から必要な措置」云々というところがあるのです。これは病院関係等をさしているわけでありますけれども重要産業指定と通常言っておりますが、それを一体どういうふうにとらえておいたらいいのか、どう解釈したらいいのかという点、御見解がございましたらまず承っておきたいと思います。
  4. 床次徳二

    床次国務大臣 ただいまのお話は、先般来起きております病院におけるところの従事者スト問題——ストの問題というより人の解雇に対して抗議しておる問題、なおこの問題につきましては下請等関係もあり、いろいろ非常に複雑な事情もあるので、これは直接関係者から答弁申し上げます。
  5. 大塚達一

    大塚説明員 ただいま御質問のございました布令百十六号の十三条の件でございますが、御承知のとおり、これは、琉球におきましては米国布令米国統治権が行なわれておりまして、布令解釈につきまして、日本政府として有権的にこれを解釈するということはできないわけでございます。したがいまして、私どもの申し上げるのはあくまで総合労働布令改正、この布令百十六号の改正に関連いたしまして従来米側やりとりした中からわれわれとしてある程度の知り得た情報として、米側ではおそらくこう考えるであろう、あるいはこういう情報があるという程度のことしか申し上げられないわけでございますが、十三条の関係で現在起こっております例の病院業務につきましてどういうふうに解釈されておるかと申しますと、この十三条の中に「医療及び公衆衛生事務」というのがございます。この業務は、これを重要産業といたしまして、その十三条には、何人もそういう「業務の正常な運営を妨げるような罷業に参加し、又はかかる行動を惹起若しくは扇動してはならない。」という規定がございますが、これとの関連におきまして、当該業務は十三条の業務であるということを米側は主張しておるようでございます。     〔小渕委員長代理退席委員長着席
  6. 大出俊

    大出委員 私も、政府有権解釈をという意味ではもちろんないのでございます。したがって冒頭に、これは真実のほどをできるだけ行政府あるいは立法府という立場でなくて、あるいはまた政党関係立場の相違ということでなくて、やはり施政権向こうにいっているという形の中で起こっている各種のトラブルだと思います。その意味で、そこに働いておる方々への規制という問題もありますし、日本一般常識から見ると、あまりにもどうもがまんのならぬほどにちょっとひど過ぎるということを感じますので、そういう意味で知り得ている範囲で政府側で受け取っておるアメリカ側布令百十六号に対するものの考え方解釈、このようないろいろなやりとりの中に、本土法律によってというようなことが方々で出てくるのですね。ところが本土法律と言ってみても、一体何をさしているのかということが交渉の中でも明らかになっていないのですね。ところがフェーラー氏などは、よく本土法律によってということを言うわけです。さっぱり明らかにならない。そこらの点もありますので、私たちよりもその点では情報に通じておられるはずの総理府なり、あるいは労働省なり、外務省なりの皆さん方でおわかりの点はお教えをいただきたい、これを冒頭に実は申し上げたいわけです。そういう立場質問を申し上げたいわけでございまして、その点は御理解を賜わりたいと思うのです。  そこで、いま総務長官のおっしゃっておられる病院の、これは首切りというよりは契約解除という形なんですけれども、例の桑江キャンプ米軍病院建物番号は六〇〇〇でございますが、ここで一九六八年十二月十二日から十三日までの二日間のストライキをやった。二日目になりましてから、いま私が御質問申し上げました布令百十六号の十三条に基づいて、これは重要サービスとなっているのだということで、衛生基準維持を保障する立場から必要だという趣旨でストライキは違法であるということで、つまり請負業者であるビル管理なる会社との清掃業務請負その他の契約米軍側が破棄をした、こういういきさつですね。     〔委員長退席本名委員長代理着席〕 そこでまず、ここでいっている四種という業種の方々の問題について、これは五、六年前から、私がかつて沖繩に視察に行きましたときから問題になっておった問題でございまして、あまりにひどいではないかというので四種を改正しなければならぬという問題が起こっておったのですけれども、ここらあたりの経緯をどういうふうにおとらえになっておるかという点について承りたいと思います。
  7. 大塚達一

    大塚説明員 先生御承知のように、米軍関係雇用者と申しますか、いわゆる布令百十六号の適用対象というのは、一種、二種、三種、四種というふうに従来適用が分かれておりました。そして従来、一種、二種——日本でいうところの駐留軍労務者一種、二種に該当するわけでございますが、これらの労働者待遇は、一般労働者に比較しまして比較的いい待遇を与えられておる。少なくとも労働条件の面につきましては、民間に比較して幾らか上位にあるという状況でございますが、四種につきましては、日本の国内ではいわゆる駐留軍労務者には属しない、いわゆる請負業者米側との契約者雇用される労働者ということでございまして、それらの労働者に関する労働条件は従来から低いということで労働者側が問題にいたし、特に昨年暮れあたりの年末の労働争議等におきましては、全軍労側ではこの四種の労働条件改善ということを非常に大きな柱として要求をしておったようでございます。ただ、四種労働者賃金その他の労働条件実態につきまして、詳しい点について実は私どもはっきり把握しておりませんので、それが民間同種事業と比較してどの程度に位置するかというところまで正確につかんでおりません。一種、二種につきましてはある程度わかっておりますが、四種となりますと非常に把握困難でございます。したがいまして、具体的な私どもの評価といたしまして、四種が民間と比較してほんとうにそのとおり低いかどうかという点まで申し上げることはちょっと困難でございますけれども、従来の労働者側の主張によりますと、そういうことが強くいわれておったということは事実でございます。
  8. 大出俊

    大出委員 私もいささか資料不十分なので、送ってもらった資料を全部読んでみたのですけれども、だいぶこれは調べてみなければいかぬなと思っておりまして、これを契機に私も少し突っ込んで調べてみたいとは思っております。皆さんのほうで、特に総理府でとらえておられる。たとえばいまの五十七名の方々の四種雇用員賃金、これは一年契約だと思いますけれども、大体どのくらいになっておるかという点がおわかりになっておれば、お知らせいただきたいと思います。
  9. 山野幸吉

    山野政府委員 ただいま労働省のほうから御説明がありましたように、実は四種の各重要産業事業別賃金実態のこまかい数字は、私どもまだ持っておりません。
  10. 大出俊

    大出委員 四種といいましてもたくさんありますから、全部聞いたのじゃおわかりにならないと思ったから私はいま特に病院の五十七名に限定して聞いたのですけれども、それもおわかりになりませんか。
  11. 山野幸吉

    山野政府委員 これは御承知のように雇用主によってそれぞれ定めておるわけでありまして、私どもとしては、はっきりした数字を持っていないのでございます。
  12. 大出俊

    大出委員 いま沖繩には、おたくのほうの事務所はなくなりましたか。
  13. 山野幸吉

    山野政府委員 沖繩事務所はございます。
  14. 大出俊

    大出委員 奇妙なことを承るのですけれどもバックサービスであるとか沖繩園芸であるとか国際ヒル管理——国際ビル管理が今回の争点の会社でございますが、あるいは宮平組であるとか沖水建設、今回問題になった業者というのは五つなんですね。その中で、問題になっていてすわり込みまで起こって、たいへんなこじれ方で沖繩軍労あげてのストになるのではないかという話まであるのは——しかも新労働布令との関係がありまして、民政府はそう答えているのですが、だから布令闘争になってしまうというふうに私は思うのですけれども、その焦点になっている国際ビル管理の五十七名の問題ぐらいのところは、連絡は全くないですか。
  15. 山野幸吉

    山野政府委員 御指摘の点は、軍労務者待遇改善等をめぐる紛争、またその基礎になった労働条件、そういうものの実態把握の問題でございますが、私どもは、沖繩労働者の現在の状況については、一般的ないろいろ実情把握にはつとめておりますが、いま問題になっておる軍労務者の問題につきましては、これは申し上げるまでもなく、第一次的には軍なり民政府なり琉球政府雇用者なり労働者関係でございまして、私どもは直接施政権を持っておりませんから、したがいまして、そういう間で円満な解決がはかられることを期待するわけでございますが、この問題がいろんな問題に発展する可能性を持っておる実態にかんがみまして、私ども目下沖繩事務所等から必要な資料を送るように求めておる段階でございます。
  16. 大出俊

    大出委員 総務長官、これはどうも少し私ふしぎな気がするのですが、山野さんに私がかわってあなたの仕事をやりたいような気がするのです。施政権がないからとはいいながら、日本人に間違いないのですね、復帰問題が起こっているのですから。特にこの種のことについては、沖繩各種紛争が労使間で起こるなどということが次々にあっては困るのだし、ないように、こじらせないように、それなりにやっぱり気をつかっておいていただかぬことには、沖繩問題本土との一体化ということを皆さんお考えで進めてこられたけれども一体化ということをするためには、どうも日本各種軍雇用関係方々等と比べてみてあまりにもひど過ぎるということについては、やっぱり外交ルートを通じても、あるいは政府関係を通じて本国にものを言っても、その線に沿うように御努力をいただかなければならぬ責任があると私は思うのですね。これは日米会談に入ろうというやさきなんですから、しかも一体化政策なるものをずっとおとりになったわけですから、そうするとこれぐらい一体化にほど遠い、ちょっとどうも一世紀前じゃないかということになっているのを——しかも五十七名問題というのは、昨年の十二月十二、十三日のところで起こった、それが本年に入ってからまさに険悪の度を加えつつあって、やあすわり込んで、それを排除するのしないのという騒ぎが軍との間で起こっているのでしょう。だから軍が、請負業者を軍のあるキャンプに泊めて保護するなんという騒ぎがあるのです。そうなっているのを、今月は五月ですか、かれこれ半年になるのにいま資料を求めておりますというのでは、総務長官、どうも少し質問の腰がくだけるのですが、これはまたどういう事情でそんなことになっているのですか。
  17. 床次徳二

    床次国務大臣 労働問題に関しましてはわれわれといたしましても関心は持っておりますが、しかし、これは直接地元の問題でありますので、情報として労働問題の各種のあり方につきましては絶えず報告を受けております。さような大局的な立場に立って将来の一体化等も考えておりまして、たとえば軍雇用に対するところの直接雇用間接雇用等の問題は、私どもといたしましても関心を持っておりますが、現に争議を起こしておるものに対しまして本土政府が直接介入することはいかがであろうかと私ども考えておるのであります。できるだけ軍と軍労との間に円満に結論が出るように解決してもらいたいという気持ちを持って、これを見守っておる次第であります。
  18. 大出俊

    大出委員 円満に解決してもらいたいと思って見守っているとおっしゃるのですが、見守るにしても、中身がどうなのかまるっきりわからぬで見守っていたのでは、円満に解決してくれという願望にもならぬ。中身がどうなっているのかぐらいのことを御存じなくて、あれよあれよと見ていますといったってこれは事済まぬです。何のためにそれじゃ一体総理府所管があるのかということになる、あるいは労働省日本にあるのかということになる。何も私は、この争議に介入せよなんてことは一言も言っていない。なぜもう少し実態をお知りになっていないのか、これだけの問題です。これは大きな政治問題になっているのです。このあとから出てまいりますけれども、この中では、沖繩軍労関係方々が四月二十八日に本土に代表を派遣したことはけしからぬとか、そういうふうな諸君は雇っておけないとか、いろんなことが出てくるのです。まさにそういう意味の政治問題になっている。しかもその新布令を早く公布する以外に解決の道はないなんて問題にまで発展している。そうなると、単なる対岸というにしては、日本の国なんですから、施政権向こうへいっているだけなんですからあまりにも近過ぎるわけですけれども、それにもかかわらず全く何も資料をおとりになっていないとなると、これは私のほうから、こういう実情ですよということを黙って申し上げて、あなたのほうでメモでもとっていただきまして、おわかりになりましたかと聞かなければならぬ。まるっきりわからぬですか、いまの状況は。
  19. 山野幸吉

    山野政府委員 いま長官からお答えございましたように、私ども沖繩の労働問題につきましては深い関心を持っておることは事実でございます。したがいまして、布令百十六号改正問題につきましても日本政府意見を申し述べまして、それからまた、沖繩労働者の離職者問題につきましても十分な対策を講ずる必要があるということで、五千万円の予算を援助して計上いたして、目下琉球政府で法案を検討中でございます。そのようにしまして全体的に沖繩労働条件なりあるいは労働福祉を向上させていく、そういう基本的な問題については積極的な体制で臨んでおりますけれども、何ぶんにも現在施政権日本にない時点におきましては、個々労働紛争その他の事案については、まず第一次的に軍なり民政府なり琉球政府責任をもって解決すべき立場にあるわけでございます。したがいまして、そういうところでいろいろ検討され、そうしてそれらの総合的な趨勢を御報告願ってから、ぜひこういう点についてこうしてもらいたいという現地要望があれば、必要に応じて日本政府としてまたいろいろ対処していくというたてまえにしておりますものですから、したがいまして、個々のいろいろこまかい軍関係労務者賃金実態その他紛争のこまかい点等については、必ずしも十分把握していないというのが実情でございます。
  20. 大出俊

    大出委員 その認識がかちんとくるから、ものを言っているのですがね。そういう姿勢でやっているということでいいのかということなんですよ。あなたは言いわけでものを言ったってしょうがないので、五十七名問題というのは、単なる五十七名問題じゃない。こまかいというけれども、少しもこまかくない、軍との雇用態様というのは四種類しかないのですから。先ほど労働省からお話しになったとおりですよ。それじゃ、四種雇用というものがどういうものかという認識は、解釈上あったわけです。それがどうなっておるかということは、一般的に明らかなことです。知っておかなければならぬことです。しかもこれだけ大きな問題になっている。政治問題にまで発展しかかっている。日米関係でも大きな問題になりかかっておる。布令という問題を中にはさんで、新布令という問題がある。それを別にこれに介入しろというのじゃないけれども労働省が言っているように、たいへんな低い賃金のようですということを言っておる。それはどのくらい、どうなっておるのかというと、五十七名の首を切られて問題になっておる。このくらいのことをあなたのほうで——おまけに私は、質問通告の中でそのことをちゃんと言っているでしょう。それで沖繩問題を何とかしょうという考え方は全くナンセンスだ、問題にならぬ。そんなのならやめたらよろしい。
  21. 山野幸吉

    山野政府委員 いま申し上げましたように、現状がどうなっておるかという点につきましては、遺憾ながら資料を持っておりません。ただ、陸軍病院を除く請負業者と全軍労四種雇用員との年末手当が昨年十二月十九日に妥結いたしましたが、そのときにその妥結が、バックサービスが八 〇%、沖繩園芸が一二〇%、それから宮平組が七〇%、沖水建設が六〇%プラス五ドル、こういうことで一応妥結を見たという報告を実は受けております。
  22. 大出俊

    大出委員 どうですかね、もう少し、沖繩で長年苦労されている諸君のことなんですし、せっかく担当の部局があるのですから、やはりその辺のところは、おまけ事務所を置いているのですから——沖繩に私も寄っていろいろ話を聞いたりするのですが、確かにあの事務所はたよりないですけれどもね。それにしても、やはり調べるものは調べさせるということにすれば、電話一本で済むのです。そうでしょう。私が五十七名問題で申し上げておるのですから、あなたのほうで電話一本入れたっていい。私も必要あるなら沖繩の亀甲君に電話を入れるほうですが、そのくらいのことはせめて御勉強いただいてもいいのじゃないか、沖繩を知るためには必要なことですよ。これは幾ら言ったってしょうがないからやめますけれども。  そこで問題は、いま布令の話が出ましたけれども、この布令については日本側意見を申し述べていろいろやりとりをしたという、これはこの委員会でも問題になっているでしょう。現状、新布令についてはどういうふうに御判断ですか、
  23. 床次徳二

    床次国務大臣 新布令に対しましては、日本本土政府から、すでに第一点につきましては最初に申し入れをいたしました。あと、まとまりましたものにつきましては、やはり外務省を通じまして申し入れをいたしております。この点に対しましては、本土政府日本政府考え方というものをアメリカは十分検討いたしておるものと思いますし、私どもも、これを尊重してくれるものと思っております。具体的につきましては外務省から答弁申し上げます。
  24. 大河原良雄

    大河原説明員 一月二十三日にカーペンター民政官声明書を出しまして、その際に、三月一日までに関係者から、米側がさきに発表いたしました総合労働布令について建設的な意見があれば文書をもって提示してもらいたい、こういう要望を出しまして、この声明を受けまして三月一日までに関係者からいろいろな意見民政府のほうに提出されたというふうに承知いたしておりますが、日本政府といたしましても、ただいま総務長官から御答弁がございましたように、三月二十三日に総合労働布令に対します日本政府考え方というものを米側に提示いたしました。その後、おりあるごとに米側に対しまして、総合労働布令に対する各方面からの意見をどういうふうに取り扱っているのか、その検討状況を問い合わせておりますけれども米側といたしましては、まず現地民政府におきまして、現地から寄せられました意見を真剣に検討し、それを本国政府のほうに送り、目下本国政府において関係の向きと鋭意検討中である、こういうことでございまして、どの程度検討が具体的に進んでおるのか、その検討の結果がいつごろ明らかにされるのか、そこらの点についてはまだ承知いたしておりません。     〔本名委員長代理退席委員長着席
  25. 大出俊

    大出委員 どうも布令は七月ということで出てきそうな状況をひんぴんと私ども耳にする。また、いまの五十七名問題をめぐっての三月以降の民政府諸君とのいろいろなやりとり中身を見ましても、そう思われる節がたくさん出てくる。というのは、いま、国際ビル管理軍側から契約を破棄されて、新しく沖本さんという人が落札をして継続しておりますが、この契約の更改が七月です。七月までになっている。七月以後新たに契約を結ぶことになっている。片方、米民政官のほうからいろいろ言っておりますのは、早く新総合布令を出す以外に解決の方法はないんだということを言っている。そうすると、この沖本さんなる新しく契約をした会社の社長さんの側も、七月以降私が契約をさらに再契約をする、つまりその仕事をとれるということになれば——これは入札ですからとれるかどうかわかりませんが、とれるということになればこうしたいということを言っている。七月というものがずっと基準になっている。現地から入っておる私が持っております資料によりますと、七月ということがどうやら既定の事実になりかかっているという印象を強く受ける。しかも、そのことがあるからこそ、いまの五十七名問題を執拗に軍の側あるいは民政府の側が声明の中で、あるいはレジストを出しておりますけれども、レジストの中でものをいっている。こういう争点が出てくる。ですから、いかなる国の政府でも労働争議に介入しない、それはあたりまえのことです。しかし、やはり沖繩問題が差し迫っている時期だけに、沖繩じゅうあげての大騒ぎを起こすことはよくない。そういう意味で、七月という時点についてはやはり相当こまかく神経を使っていただかなければならぬ。日本政府考え方を出しておられるわけですから、その辺がおわかりになっていないはずはないんじゃないかと思いますが。もう一つは、念のために、七月という目途が方々に出ておりますが、そこらはどういうふうにお考えになっておりますか。
  26. 大河原良雄

    大河原説明員 七月という時期をいま御指摘がございましたけれども契約ということにつきましてはあるいはアメリカの会計年度の切りかえということが関係あるのかとも存じますが、具体的には詳細は承知いたしておりません。いずれにいたしましても、総合労働布令の新しい内容の検討の結果がいつごろ明らかになるかということにつきましては、先ほど申し上げましたように、いろいろな機会に一生懸命先方をたたいておりますけれども、いまのところまだどの程度に作業が進捗しておるかということについての情報に全然触れておりません。
  27. 大出俊

    大出委員 一人あたり大体一ドル五十セントというところがめどですね、これはあとでお調べいただきたいのですけれども。ですから、これは組合のほうでもストライキに突入をさせておるわけですけれどもスト中の賃金保障を最低一ドル五十セントに押えている。もちろんこれは人によって多少違うでしょうから一がいに言えませんけれども、そういう形でいま進めてきておるようであります。七月会計年度というのは、米会計年度でございますから私百も承知でございますが、いま言っている七月というのは、そういう意味ではなくて新布令を七月という。これは会計年度に合わせてものを言っているのかもしれません。知れませんが、そういうことがフェーラー労働局長あたりの口からも出た。それから、契約が七月から新しくなる。それまでに布令というのを何とかしなければ、新布令の中にはこういうことが書いてあるんだから、それしか解決の方法はないぞというふうなことを口に出している。だから七月という新会計年度から新総合布令を実施するということになれば、この問題は、契約もそこで新しくなるんだから片づくんですよという言い方を現にしている。したがって、会計年度もさることながらやはりそこにめどを置いている、こう受け取っていいんじゃないかと私は思う、この文章からいって。そこらのところがどういうふうに皆さんのほうに受け取られているかという点を承りたかったわけなんですが、そこらが、沖繩民政府諸君と屋良主席なりあるいは副主席なり、あるいは労使相互の民政府とのやりとりなり声明が出たり、抗議が出たり、確認書が出たりいろいろしておりますがね、そこらは多少は入手されたりお読みになったりしたことがございますか。
  28. 床次徳二

    床次国務大臣 この軍労関係各種事件の発生しますことにつきましては、常に私ども関心を持ってその動向をいろいろ見ておりますが、しかし、どういう原因でどう動いているかということを、今日申し上げるほど結論を得ておりません。  なお、ただいまのお尋ねの期日等の問題につきましては、政府といたしましても、まだはっきりとした報告を得ておりません。見通しを持っておりません。
  29. 大出俊

    大出委員 時間がありませんので少し具体的な点を承っておきたいわけでありますが、日にちを申し上げますと、これは十二月の九日です。昨年十二月九日の午後一時半から、沖繩軍労の三役がフェーラー氏に会っております。フェーラー氏は労働局長です。ここで組合側から、第四種雇用員待遇改善については、これまで何回となく要請してきた、四、五年にもなる問題だ、ついては文書で具体的に改善案を提案しているんだけれども民政府も当時はこの趣旨に同意を示していたんだ、同意を示していながら改善をされない、 フェーラー氏は労働局長さんという立場ですから、そういった労働局長という立場であなたがお考えになって、この待遇が非常に悪過ぎるという趣旨については同意をされていたんだから、何がしかの手が打たれなければならぬはずだということを述べて、あなたのお考えを承りたい、こういうふうに質問しているんですね。これに対して、労働行政担当者という立場から私のほうでものを言わしてもらえばということで、フェーラー氏が答えているのです。  このフェーラー局長の答えの第一は、第四種の問題については、旧来から申し入れその他をもらっている、提案ももらっている、したがって、私としては非常に同情しておりますということばを使っている。二番目に、しかし、総合布令を公布しない限り、この問題は解決することは困難なことであると言い切っている。総合労働布令を公布しない限り、この問題を解決することはまことに困難であると言い切っている。その次に、三番目に、総合労働布令には、期末手当を年間二五〇%支給するよう規定されている。早目に総合労働布令を公布する以外に解決の方法がない。三番目にそう言っている。それから、この問題が起こったポイントの年末手当については、これは旧来から民政府がものを言っているように、契約事務所業者の問題、つまり請負ですから民政府関係ないとしている。雇用契約形態が請負形態ですから、請け負った業者とその業者に雇われた形になる労働者との間の問題だ。だから民政府は、同情はしているけれども関係はないんだということを言っているわけですね。  これからいきますと、この業者は七月が契約の改定期であって、現在の契約というものはどうなっているかというと、五十七名の方々については陸軍病院への再雇用を認めないという条件が付されて、いまの契約が認められている。先ほどあげました桑江の建物番号六〇〇〇の陸軍病院に再雇用することについては認めないという条件つきの契約なんです。この契約は切れて、七月から契約が新たになる。したがって、その新たなる時点で解決をはかるとすれば、つまり新労働布令総合布令が早く出されなければ解決のはかりようがない、こういう言い方なんです。ということになると、やはり先ほど総務長官がおっしゃったように、三月二十三日というところを目途にしていろいろ方々から考え方をとった。特に三月一日ということでいろいろ方々の団体の考え方総合布令についてとって本国に送った、こうなっております。そこで本国のほうでは検討しているというのですが、ほほ検討は終わっている。それが随所に見られるわけであります。したがってぼつぼつ、このあたりからこの問題等とからんで七月の新会計年度から新布令を実施していこうという、もちろん実施してもこれは条件がありますけれども、そういうあらわれ方が随所に見られるわけなんです。  そこで、総合布令がもし実施されるということになった場合に、契約業者等に対する適用についての条件というのは一体どうなっておりますか、御存じでございますか。
  30. 大塚達一

    大塚説明員 新総合労働布令におきましては、従来のいわゆる四種の労働者一種から四種にわたる四種類の労働者を二種類のグループに分けまして、AとBに分けておるわけでございますが、その中の今回問題になったような四種労働者、従来の四種はBグループというふうに定義づけられておるわけであります。そしてこのような四種のグループの労働者につきまして、新布令においては労働基準面の改善ということ、米側でも特にその点を強く主張するわけでございますが、改善に意を用いたということで、最低賃金の引き上げ、あるいはいま先生のおっしゃいましたようなボーナス、期末手当の二五〇%の支給というようなものを織り込んだ規定が行なわれておるわけでございます。布令が発効いたしまして、いまの四種労働者について適用があるような状態になりますと、いわゆる二五〇%のボーナスが支給されるという事態になるわけでございます。
  31. 大出俊

    大出委員 これは布令が実施されるということになりましても、この業者への適用というのは一年後になるんじゃないですか。
  32. 大塚達一

    大塚説明員 ちょっとすみませんが……。
  33. 大出俊

    大出委員 ということになるはずなんです。それはそれで、あとでいいです、それが焦点じゃありませんから。  ただ、私が言っているのは、かりに七月から新総合布令をという考えがあったとしても、そのことが即解決にはならない。一年後だということになりますと、一年間留保期間があります。しかし、そういう世の中が来るとすれば、それなりに二五〇%というものがあるから、それに向けての努力が各企業ごとに行なわれなければならぬことになるから、そういう意味では確かに前進でしょう。しかし、私どもとしては、どうしてもそれがあの布令のままであっては困るという点、これが問題なんです。というのは、この布令の中にございますように、たとえば先ほどの衛生基準、百十六号の十三条等の問題をとらえた場合に、これは事実上ストライキ権がなくなってしまうことになりかねないという布令条文があるのですが、このあたりのところをどういうふうにお考えかを、あわせてひとつ承っておきたいと思います。
  34. 大塚達一

    大塚説明員 先ほどの御質問のお答えをちょっと残しておりましたが、二五〇%のボーナスの支給に関しまして、実は規則面からいきますと、この施行規定の中の、当初の案で一月二十五日から施行するというその規定が、現在は施行延期になりまして変わっておりますけれども、当初の予定ですと一月二十五日から施行ということになります。ただし、その中の最低賃金と最低離職手当に関する規定は半年間ずれまして、七月一日まで適用しない、こういう規定があったわけでございます。ただ、これは、この規定から見ますると最低賃金と離職手当についての規定のようでございまして、いわゆる期末手当までがこれに含まれてずれるということにはならないのではなかろうかというふうに、総合労働布令の案だけから考えますと考えられるわけでございます。実はそれ以上突っ込んで具体的なことまでは聞いておりませんので、あるいは先生おっしゃるような条項があるのかもしれないと存じますが、そこまでただいま確かめておりません。  それから第二の点でございますが、いまの点、がたがた考えておりましたので、先生の御質問をちょっと聞き漏らしましたので、おそれ入りますが……。
  35. 大出俊

    大出委員 つまり、最低賃金が幾らというものの言い方が基礎になっている。ですから、賃金の何%という言い方は、基礎がそこにあるわけですから、そちらのほうとあわせて行なわれるという解釈のようでございます。したがって、そうなると、この布令が公布されたから即実施できるという筋合いのものではない。これは、民政府も組合側も、両方ともそう受け取っておるようでございまして、私はやむを得ぬことだと思います。  ただ、それよりももっと問題は、めんどうですから私のほうから言いますけれども総合労働布令第九条B項で、重要産業ストが発生した場合、「軍事施設運営と安全維持のために一時的または恒久的に代替される。」かわるというわけですね、こういう条項があります。したがって、これはストライキに入って二日目に重要産業指定という条項を持ち出して、十三条を持ち出して契約を一方的に破棄をした。つまり、契約不履行であるからという理由で破棄をした。ところが、それだけならば民政府当局ないし米軍が労働争議に介入したことにはならない。契約上適法ですから、その条件がついておりますから。  時間がありませんから簡単に申し上げたいのですけれども、ところがさて軍側の言い分は、この契約を破棄した再契約にあたって、五十七名の人間を陸軍病院雇用しない、つまり請け負った業者は、それは雇って陸軍病院に入れることをしない、そのことを条件として再契約をする、こういうわけですから、そうすると契約破棄じゃないです。争議中なんですね、おまけに片方は。紛争解決の条件になっているわけです。その条件について、それはいけない。そのいけないことを契約の条件としてのめば新しい業者に請け負わせる、こういうのでございますから、そうすると五十七名はストライキ解決したとしても、これは陸軍病院に採用はされないということになる。陸軍病院に採用、つまり業者を通じての採用でございますが、されないということです。そうなると、これはある意味では、間接的にというよりもっと直接的にというか、労使間の労働争議に対する介入である。四、五年前から問題になっておって、かつてストライキをやったことがあるわけですが、そのときには、重要産業指定のこの条項を現に持ち出していない。そして、そのとき以来一貫して軍なり民政府側の言っていることは、われわれとは関係がない。フェーラー労働局長もそう言っている。米軍とは関係ない。あくまでも業者が雇って、業者に一括して請け負わせるものだから、業者がだれを雇おうとそれはかってだ。だから賃金の問題あるいは年末手当の問題は、業者業者が雇ったその働く人たちとの間の問題で、民政府とは全く関係ない、こう言ってきたわけですね。だとすると、それはあくまでも直接的労使間の問題だけなんですね。ところがそこで、今度はストライキ中に契約破棄をしておいて、かといって清掃ですから捨ててはおけない。兵隊さんを持ってきてかわりにやらして不満も出ているというわけで、急いで契約しなければならぬ。その入札に応ずる業者は、五十七名はおまえたちは雇うな。つまり陸軍病院に入れないんだ。病院に入るパスポートその他も取り上げているわけです。パスポートを出せ、出さなければ国際ビル管理という業者は入札に参加させないというふうに言われたから、あわてて五十七名から取り上げて憲兵に返しちゃった。そこまでいくと、これはまことにもってどうも労使の紛争に介入したといわれてもしかたがないのです。だから、もう次々に声明その他を出して、民政府の何とかニュースリリースなんというものを出したりいたしまして、沖繩の県民諸君軍労関係の、特に請負業者に雇われている労働者の間の争い、旧来、軍あるいは民政府関係ないと言ってきた、それが今回は介入した、こういうふうに受け取られてしまっていることはまことに困る、そうではないんだということを一生懸命PRしているのですね。ただ、そのPRの中に、軍は、陸軍病院に再採用させることはいけないけれども、ほかのほうにつとめるなら認めているんだということをわざわざ言っているわけです。これはやはり明らかにこの布令を頭に置いての、つまり既成事実をこの際つくっておこうというスタイルだと受け取らざるを得ないですよ。したがって、七月という時点は、これはまんざらうそではない。誤れる情報でない。新会計年度から総合布令を実施したい。中身はどう変わるか、それはわかりませんよ。わかりませんが、そういうふうな手配になっている。現実にこう見ざるを得ないですよ。これはいささか私の偏見かもしれませんが、見ざるを得ない。だとすると、日本政府側の布令に対する政府考え方を、ものを言っておられるわけですから、それがどの程度どういうふうに相手方に理解をされ、日本政府の言い分をアメリカ側は認めようとしているのかという点をやはり総務長官も伺っておいていただかぬと、このまま——先ほど私、少しことはかすべって言い過ぎもあったけれども、あまりどうもノータッチでい過ぎた。ぽかっと出てしまった。そうしたら、日本政府はものを言ったけれども、それは何にも取り入れられなかったとなると、日本政府なるものは、沖繩の県民諸君にさっぱり気をつかってくれなかったじゃないか。なぜならば、何か形式的にものを言ってくれたけれども、出たものは変わったものではないじゃないか。似たような布令が出てきたじゃないか。日本政府はお義理にあんなことをしてくれたけれども、あれはゼスチュアで、しんから何もしてくれる気はなかったのではないかというふうに受け取られたのではたいへんなことになりますよ。いまの争議についても、あまりにも皆さんのほうで気をつかっておられぬようだから、ましてその上にそういうことになると、これはますますもって妙なことになる。したがって、そこらの点はひとつ外務省のルートを通じて、総務長官のところでもう少し気をつけていただけぬものかという気がするのですが、総務長官いかがでございますか。
  36. 床次徳二

    床次国務大臣 総合労働布令改善につきましては、先ほどもお答え申し上げましたように、日本側の意向というものを十分述べてありまして、これを尊重してもらいたいということをよく説明してあります。  なお、新しい布令を実施いたします際におきまして、日本政府のそういうような経過がありますので、無断で出すことはなかろうと考えております。
  37. 大出俊

    大出委員 いまおっしゃった点が重要なんですけれども日本政府布令に対してこうだというものの考え方を述べておられる、説明してある。したがって、いまのお話では、日本政府に黙って出すことはなかろうと思うというお話ですが、そこらは確たるやりとりになっておりますか。
  38. 床次徳二

    床次国務大臣 最終的には施設権者のアメリカの権限でありますが、しかし、従来からの経緯にかんがみまして、日本政府に無断で出すことはないと考えております。
  39. 大出俊

    大出委員 あらかじめ日本政府意見は承った。したがってアメリカ側検討した、あるいは各種意見方々からいただいた、検討した。結果的にこういうことになった。つまり表に出す前に日本政府は相談を間違いなく受ける、その点を明らかにしておいていただきたい。
  40. 大河原良雄

    大河原説明員 ただいま総務長官が申されましたように、この問題について日本政府考え方米側に伝えます際に、去る一月の経験にもかんがみ、日本政府が、直前になってこういうことであるという、いわば単なる通告を受けるというだけでは日本政府としては非常に困る。必ず事前に十分な相談にあずかる時間的な余裕もほしいということを十分伝えてございます。
  41. 大出俊

    大出委員 そうすると、七月と私は申し上げましたが、まだ五月でございますから、時間は二カ月ほどございます。そこで、新会計年度からやりたいという気持ちになることも無理からぬという気がするので、フェーラー労働局長等の発言、その後高等弁務官の言っていることもあります。前任者がきめたのだからいたし方がないのだと言っておりますが、この中にも布令に触れた発言がある。そうすると、やはりこれは新会計年度からというものの考え方があるようにどうしても受け取れる。しかも相当検討は進んでしまっているという印象が強い。つまり出てくるであろう布令を想定してものを言っている個所が幾つもありますから、これは資料をとってお読みになればわかると思います。したがって七月だというふうに判断せざるを得ない。したがって、いまのお話ですね、大河原さんもおっしゃるように相当時間をかけて、時間の余裕を見て日本側にものを言ってくれ、こう申し入れてある。だから、おそらく何か儀礼上そう言ってくるだろうと思いますが、その際直前まで政府の側で、これは言うまでもないことですけれども、放任されておかぬで、やはりアメリカ側がこうだといった場合には、その点を明らかにしていただかなければ困るのです。実は言ってきたんだけれども、寸前になって、どうにもならぬところにきてこう言われたんだと言われても、沖繩の特別委員会があるのですからまことに困るので、少なくとも特別委員会を開いて、総務長官のほうからアメリカ側からかくかくしかじか、外交ルートを通じて結論についての相談なり、話し合いなり、通告なりあったんだということを明らかにしていただかぬと、これは困るのですよ。そこのところはどうお考えでございますか。
  42. 床次徳二

    床次国務大臣 これは先ほども申し上げましたように、この前のときのやりとりで、日本政府の意向はかなりはっきり向こうも了承していると思います。その上において改善の手続をいたしますので、今回改善いたします際におきましては、さような手続を踏んでくるものと私どもは考えております。その節皆さんのほうへ御報告申し上げるかどうかということにつきましては、これは両政府の間の問題でありますのではっきり申し上げかねるのでありますが、そういう形で私どもは、われわれの主張につきましては十分検討して尊重してもらえるものと考えておるのであります。なお、われわれといたしましても、そういう趣旨において努力は今後とも続けたいと思っております。
  43. 大出俊

    大出委員 時間の関係がおありのようですから簡単にしておきますが、まだ二、三分あるようですからもう一、二点だけ承りたいのですが、さっき私が申し上げた趣旨でせっかく御努力をいただいても、沖繩の県民の皆さん本土政府の努力のほどが全くわからぬようなかっこうで、結果的には、日本政府の言い分をほとんど聞いたものが出てくればいいですけれども、そうでない場合に、やはりそこに何だということになったのではまずいという配慮を当然しなければいかぬと思うのです。われわれもその一員ですから、われわれも含めて、そういう意味で私は申し上げているのです。沖繩では政党がないわけじゃありません、また屋良主席らもいるわけでありますから、おそらくやがてもう少し確たるニュースが入ってくるだろうと思う。そういう時点であらためてまたこれは御質問も申し上げたいと思いますけれども、両国間の問題ではあるに違いないけれども、国会という場所ですから、こういうところではできるだけそこらが明らかにできるように、できる限りの御配慮はいただきたいと思うのですが、いかがなものですか。
  44. 床次徳二

    床次国務大臣 御趣旨はよくわかりました。ただ、できるものとできないものとございますので、その点はお含みおきをいただきたいと思います。できるだけさような意味において御趣旨に沿うようにしたいと思います。
  45. 大出俊

    大出委員 それから、こまかい点は少しあとお残りになった事務当局の皆さんに承りますけれども、さっき私が申し上げましたような事情にありまして、さっき数字を申し上げましたが非常に安い賃金でございまして、期末手当、年末手当などというものが織り込まれていない。ところが、これは事が重大になってしまってから業者の側は最終的に十三割という回答を出したのですが、回答を出したときには、回答の直前に契約は破棄された。ゼロ回答がずっと続いたわけですから、十三割出せるものを出さなかったという業者業者なんですけれども、これまた、いずれにしても本土復帰をすれば明確に本土法の適用を受ける日本国民なんですから、したがって、施政権向こうにあるとは言いながらも、やはりこれは外交ルートを通じてどうなっているのだという事情を聞くなり何なりということも、これは単に腕を組んでいるだけではなくて、解決を双方の努力によって促進させる手段であるわけですから、何にもしないで見ているというのはいささか能がない話で、先ほどのように何とかうまく片づくように願っているというお話なんですけれども、単に願っているだけでなしに、本土の新聞にも載っているのですから、どういうことになっているのだという事情説明皆さんから公に求めるということくらいはやっていただかないと、これはせっかく何とか円満に片づくように願いたいものだと思っているという願望が通じないと思うのです。そのくらいのことをおやりいただけるのでしょうか。何にもしないという手はない。
  46. 床次徳二

    床次国務大臣 労働争議に対しましては、どうも本土政府が介入することは適当でないと私は考えております。ただ、事態の推移そのものに対しましては、一般の労働行政の立場におきまして私ども関心を持って見て検討しておる次第であります。その点はお含みおきいただきたいと思います。
  47. 大出俊

    大出委員 関心を持ってとおっしゃるのだが、先ほど幾つか御質問申し上げているのだけれども、あまり関心を持っているように見えない、総務長官もそこから先は御存じないようだから。そうでしょう。そうすると、あまり関心を持っていると言えないわけですよ。あれよあれよと見ているだけじゃ関心じゃないのですから。ですから、問題は事実を知るということ、どうなっているかということを詳しく知るということ、なるほどこうなっているのか、そこまで知らなければ関心を持っていることにならぬですから、そういう意味で、実情はどうなっているのだ、何かどうもすわり込んで大騒ぎになって米軍が出てくるのこないのという騒ぎがある、業者米軍の中にまで逃げ込んだという話まである、本土に政党政治が行なわれているのだから困るじゃないか、どういうことなんだということで、あなたのほうで詳細にとるということぐらいのことはやらなければならないのじゃないですか。そのことが円満解決の促進になるのならば、布令とからんでこれは言うことないわけですから、そういうことくらいはおやりいただきたいと思うのですが、いかがですか。
  48. 床次徳二

    床次国務大臣 御意見はひとつ伺っておきますが、情報といたしましては私どもは地元からある程度までとっておりますので、そういう意味において関心は絶えず持っておることを申し上げたいと思います。
  49. 大出俊

    大出委員 じゃ、長官お忙しいようですから、やり方はとやかくは言いません。  大体時間がまいりましたから、あと一、二点だけで終わりたいと思いますけれども中身はこれはおわかりいただいたと思うのであります。そこで労働省皆さん、先ほど私が申し上げました布令で「代替」するということばをつかっておりますけれども重要産業の問題です。総合布令の第九条B項で、重要産業ストが発生した場合、「軍事施設運営と安全維持のために一時的または恒久的に代替される。」この条文はどういうふうに解釈をされますか。有権解釈では云々だとか、しちめんどうくさいことでなくて、一般的に。
  50. 大塚達一

    大塚説明員 先生の御質問は九条のB項の最終のパラグラフのところだと思いますが、実は私どもも、九条B項につきましては非常に不明な個所が多い、そして非常に抽象的な文言が多くて具体的にどういうことをこの九条によって米側が期待し、またどういうことをしようとしているのかということがよくわからないということで、実は何を一体やるつもりで米側はこういう規定を設けているのかということをいろいろ聞いてみたわけでございます。その結果、米側がこの九条B項でとろうとしている措置というのは、軍の活動や重要産業を阻害する同盟罷業が、禁止にはなっておるわけでございますけれども法律上禁止したからといって事実上起きないわけではない、そこで起きた場合の具体的措置として、同盟罷業不参加者を基地内に送り込む、一部の者がストライキをしておる場合に不参加者を送り込む、あるいはそれを基地内へ宿泊させる、あるいは軍代用員その他を同盟罷業の行なわれている部署に代替させるというようなこと、あるいは同盟罷業参加者を配置転換、解雇その他処分に付するというようなことを考えているということを米側から聞いたわけでございます。つまり、ここの先生のおっしゃった「一時的または恒久的に代替される。」ということの中には、配置転換等も含まれると同時に、解雇等も考えておるということのようでございます。
  51. 大出俊

    大出委員 となりますと、そう簡単に、総務長官はさっきああいうふうに言っておりましたが、そのあたりが不明なままで、しかも解釈上そういう解雇あるいは配置転換等も含まれるということが明らかになるのだとすればなおのこと、一体化理論からいっても、そういうものがどうも消えないままに——これは一つの例ですけれども、時間がありませんから全部申し上げられないのだけれども、そういうものが消えないままにどうも布令を出させるわけにいかぬ。出さした場合に結果的にどうなるかということを考えれば、考え方がどっち向いているにしろ、いまの沖繩を中心にする日米関係あるいは軍との関係を含めて、いい結果にはならぬという気が私はする。だからこそさっき総務長官に、あらかじめ入手すべきものはやっぱり入手して、ある程度の時間はやっぱりおいてはかるべきところにははかるべきではないか、こう申し上げているのです。総務長官はいたくなりましたけれども、これは政治的発言だから答弁をいただきにくい点ですけれども、そう考えているわけです。そこらはお含みおきいただきたいのですが、いかがですか。
  52. 山野幸吉

    山野政府委員 先ほど労働省からも御説明がありましたように、新労働総合布令の各条章につきましては、日本側としても必ずしも十分に理解できない条文もあったわけでございまして、したがいまして、日本政府意見を申し述べるにあたっては、それらの疑問点をただしつつ日本側意見を申し述べてあるわけでございます。したがいまして、ただいま総務長官も申しましたように、今度出る場合にはあらかじめよく事前に向こうから話があると思いますので、そういう過程を通じまして十分内容を確めて、また日本政府のそれに対する対策を考えたい、かように思います。
  53. 大出俊

    大出委員 これは申し上げるまでもなく、不当労働行為云々だという場合なかなか救済手段を見つけがたい状況にあるわけですから、四軍の合同労働委員会その他ありますけれども、これは形の上からいえば施政権向こうにあるからということになるので、そういう意味では明確な救済手段がない。そこらのこともありますので、そこらは十分気をつかっていただきたいと思うのであります。  そこで、もう一つここで承っておきたいのは、何かベトナム行きの——一週間はかり前の新聞に、タグボートを沖繩から出そうとして軍労皆さんがいやだと言った。そして首を切るとか切らぬとか、軍との間にいろいろもめた。船は結局行かなかったのだろうと思うのでありますが、そこら、外務看もおいでになるのですけれども、どういうふうにその後なっておりますか。
  54. 山野幸吉

    山野政府委員 いまお話しございましたように、実は沖繩住民の船員のベトナム行きの問題につきまして、現に問題が起こっておるわけでございます。ことしの四月十五日でございますが、米陸軍第二兵たん部隊が全軍労加盟の船員に対しまして乗り組み員募集を行なったわけでございます。全軍労のほうとしても乗り組みに反対でございまして、したがいまして、その結果、沖繩人の十八人が乗り組む予定になっていましたタグボート、これはしLT531でございますが、この乗り組み員が全員乗り組みを拒否しましたので、出航を取りやめたわけでございます。かわって、米人とフィリピン人のみでこの乗り組み員を構成していますしLT529というのが出航した、こういうことでございます。米側としましては、これは船員がタグボートに乗船するということを目的に雇用されたのであるから、乗船を拒否すれば解雇もあり得る、こういう考えでございますが、できるだけ配置転換等によりたいということを申していますが、これは保証の限りではないということで全軍労のほうへ文書が渡されましたが、全軍労としてはそういう文書は受け付けられないということで突っ返したとか、そういう経緯があるようでございます。そういう問題でいま全軍労米軍の間にトラブルがあるということを聞いています。
  55. 大出俊

    大出委員 これは横浜あたりからもずいぶんLST問題等のいろいろな問題がありまして、私も所管内閣委員会で何べんも大臣相手にやりとりしたところですけれども沖繩皆さんも、これはまぎれもなく日本人でございまして、したがって、どうもあまりベトナムなどへやりたくはない、私どもも同じ立場でそう考えるわけであります。聞くところによりますと、ベトナム行きを明示しない乗り組み員募集であったということなんで、これはどうもそうじゃない、ベトナム行きじゃないかということになって、問題が起こったという経緯が私のところへ来ておりますけれども、いささかやり方が気に食わぬわけですけれどもそこらのところも含めて、これはやはりこの種のことであまり騒ぎを起こしたくはないのですが、先ほどの関心を強めるという意味関心を強めておいていただきたいと思うわけであります。  以上、私いろいろ申し上げましたが、最近、五月七日の日に全軍労から米国民政府民政官に対する公開質問状というのが出ておりますけれども、御存じでありますか。
  56. 山野幸吉

    山野政府委員 報告は受けています。
  57. 大出俊

    大出委員 まだこの回答がないようでございまして、私が先ほど述べましたような点が幾つかこの中に入って、しかも米側の介入その他はいかぬということだとか、布令等にからむ問題だとか、いろいろ長いですから申し上げませんが、あと沖繩から関係方々も来て、本土の各関係のあるところにもお願いして歩くというようなことも聞いておりますので、私は先ほどから争議に直接的に介入しろと申し上げているのじゃなくて、やはりこれは日本側にも正統政府があるわけですから、それなりにアメリカ本国日本政府との関係、これまたあるわけでありますから、そういう高いところで問題の解決をはかるという必要は、これはあるわけなんですね。たとえば全駐労の諸君との非常にむずかしい金の問題等につきましても、かつて労働大臣の早川さんにだいぶお骨折りをいただいて、アメリカへ合同委員会でおいでになったときに、アメリカで相手の労働長官に会っていただいて、防衛庁長官のやるべき仕事を労働大臣にずいぶんお骨折りいただいて、増田さんが感謝しているという答弁を私にいたされましたが、別にこれだって労働争議に介入したわけでも何でもない。やはり政治的に高いところで関心の度合いが高いという面から、どちらの側をというのでなしに解決をはかったわけでありますから、そういう意味でひとっこれは御努力をいただかなければならぬ筋合いだと思いますが、総務長官にそのあたりをつけ加えてひとつ申し伝えていただきたいと思います。よろしゅうございますか。
  58. 山野幸吉

    山野政府委員 ただいまの御趣旨は十分総務長官にお伝えします。
  59. 大出俊

    大出委員 それでは終わります。
  60. 中村寅太

    中村委員長 中谷鉄也君。
  61. 中谷鉄也

    ○中谷委員 同僚委員のほうから、陸軍病院の解雇問題とベトナム行きを拒否した沖繩船員に対する米軍の態度についての二点にわたって質疑がありましたが、私、一点だけ確かめておきたいと思います。  要するに、事実関係なんですけれども、この船員諸君というのは本来軍労働者として雇用されていて、そうしてその後ベトナム行きの米軍タグボートに乗ってベトナムへ行け、こういうふうな指示を受けたというのが実情じゃないのでしょうか。特連局長、いかがでしょうか。
  62. 山野幸吉

    山野政府委員 私ども報告では、全軍労加盟の船員に対してそういう乗り組み員募集を行なったというぐあいに聞いております。
  63. 中谷鉄也

    ○中谷委員 そうすると、問題は二つございますね。  一つは、ベトナム行きタグボートの問題については、一昨年東京都の板橋区の人がサイゴン川で砲弾にあたって死亡した、これは船員手帳だけで乗船ができるのだということで、たいへん問題になっていた事件があります。なお、この問題の問題点を明らかにするために大事なのは、サイゴン市周辺における日本の建設会社の社員が、現地からサイゴンにはとどまりたくないと言って日本へ引き揚げてまいりまして、そうして懲戒解雇の処分を受けたけれども、東京地方裁判所で解雇取り消しの判決を受けたという、このあたりを手がかりにして私は問題を論議したいと思うのですけれども労働省にお尋ねをいたしたいと思います。  整理してこういうふうにお聞きしたらいいと思いますね。米軍はこういうふうな——これは私は非常にアメリカ人的な考え方だと思うのですけれども、ベトナムであまり人は死んでいませんよと、こう言うのだそうですね。ところが、和平会談が行なわれているといわれるけれども、非常に紛争が起こっている。いつ何どき、どのような生命、身体に対する危険が起こるかもわからない。しかも、そういうようなことが、現実に相当合理的な可能性をもって予想できる。そのようなことについての乗船命令などというふうなものを出すこと、その乗船命令を拒否したからといって、労働者はそのことによって不当な取り扱いを受けない。とにかく自分の命を投げ出さなければ雇用関係を継続することができないなどというようなことは、あり得ないと思うのです。逆にいいますと、おまえは命をよこさなければおれは首を切るぞというふうなことは、労働法の考え方からあり得ません。だから少なくともベトナムという危険な地区へ行かないから、おまえの首を切るなどというふうなことは、労働法的な観点から申しますると、本来不当なことであるということは明らかでありまするけれども労働省の御見解を承りたい。
  64. 大塚達一

    大塚説明員 先生の御質問の生命、身体に危害が及ぶかもしれないというおそれのある就労を命じた場合に、これを労働契約上の義務として従う義務ありやいなや。結局問題は、そういう就労命令というものが、はたして有効に出し得るかどうかということにかかわると思うのでございます。ただ、そのことと解雇をするということとは別問題だと私は考えます。というのは、直ちに命令に違反したことのゆえをもって解雇をするというふうに、直接に結びつけて考えられる場合と、それから命令に従う、従わないに対する懲戒ではなくて、その命令に従わない結果、使用者として雇用の目的が達せられないということのゆえに解雇をする、いわゆる冗員解雇と申しますか、そういう形でやった場合の解雇が、解雇の自由の範囲内でできるのかどうかということは、これは危険な場所に行くということとの直接的な因果関係ではないというふうに考えますので、あとのほうの問題は別問題というふうにまず第一に考えます。  それから前段階の、生命に危険が及ぶかもしらぬということがあり得るような場所に行って就労せよということにつきまして、それはある意味ではもう一般的な状況判断になってくると思いますし、全体としてそれは明らかに行けば死に、あるいはけがをすることが明瞭であるということのゆえをもって断わるというのを、それをたとえば懲戒するというようなことは、これはやはり行き過ぎであろうというふうに考えますけれども、その辺は、ある程度その事態の蓋然性といいますか、危険性の蓋然性というものとの関連で考えられるべきものだというふうに私考えます。
  65. 中谷鉄也

    ○中谷委員 では問題をこういうふうに整理をいたします。船員として雇用されて、だから那覇軍港で働くという仕事もしておる。それがたまたま船員としての雇用の中で、ある時期にベトナムへ行きなさいと言ったことを拒否したゆえをもって、それではおまえ間に合わないからなんという解雇は——そういう事実関係だと私、理解しているのです。ということは、もう解雇は無効、解雇なんということを持ち出すなんということはあり得ないことだ。そういうことを言うのは大体野蛮なことだと私は思うのです。それはもうあなたとここで押し合いしなくたって、当然そういうお答えが出ると思います。だから米軍がそういうふうに解雇するなんということは野蛮なことだ、無法なことだと思います。その点についてお答えをいただきたいと思います。  それから、蓋然性というおことばをお出しになりましたけれども、われわれはベトナムのことはわからないのですよ。私は最近ベトナムへ行ってまいりましたけれども、たまが飛んでいる、おそろしい戦争があるという事実は、そのような蓋然性を推定させるだけに十分でございましょう。客観的な蓋然性といいましても、ではおまえベトナムに行ったことがあるかということをいって米軍が開き直られる筋合いのものではないでしょう。戦争が行なわれている、そういう戦争が行なわれている地帯に行きたくない。戦争イコール危険の蓋然性を推定させますね。あなたのおっしゃっている蓋然性は、米軍が言ったような、ベトナムにおけるところの非戦闘員の死者は一年に何人しかありませんよというふうなことを持ち出して、蓋然性があるとかないとか言うのではなくて、戦争が行なわれている地域はイコール危険だというふうに理解している、また、そういうふうに理解することが、少なくともわれわれ平和を愛する人間の、こういう場合の蓋然性ということばの解釈の内容だと私は思いますが、いかがでしょうか。
  66. 大塚達一

    大塚説明員 先生のおっしゃったまず第一の点でございますが、たまの飛びかう戦場に行って働けという命令、これは非常に野蛮なものではないか。そういう危険をおかせ、おかさない者について冗員だから首を切るぞということは野蛮ではないか。その辺の評価になりますと、全体の雇用状況なり何なり私どもはっきり把握しておりませんので、たとえば米側としてそんなことはせぬでもいい合理的理由が全くないではないかという状況なのか、あるいは事実上、それではかわりに人を雇わなければならぬという状態に立ち至っている状態なのか、その辺の状況もよくわかりませんし、ちょっとそれだけでは判断いたしかねる点がございます。  ただ、第二の点でございますね。そういう蓋然性というものが、一般的にもう戦争ということだけで十分ではないかという点につきましては、おっしゃるとおり、戦地に行ってたまがどの程度飛んでくるものかどうか全然わからない人間にとっては、行けばもう即座に撃ち殺されるかもしれない危険を感ずるという、何といいますか一方におけるこれに対する恐怖感というものは、普通の射撃場の横で労働するというようなこととはあるいは違うかもしれないと思います。そういう意味では、おっしゃるような危険性、恐怖感を当然と認めてやらなければならぬというふうに考える場合が非常に多かろうと、私もその点は考えますけれども、その辺の判断になりますと、やはりその命令をどう判断するかということを争った場合の、裁判所の判断というようなことに結局はなります。一般的に私どもの考えとしていえば、確かにそういう状況における危険感、恐怖感というものはあるであろうし、そういうものを考えてやる余地は、先生おっしゃるようにもちろん多々あると思いますけれども、その反面、片っ方は現実にいま戦争をやっておる人間であって、そして戦地帰りの連中があすこはもう非常に安心だというような感じを持つことも、これまたあり得ることなのかどうか、私は経験ございませんのでわかりませんけれども、その辺の両者の意見の食い違いというものは、常常に大きな幅があるのではないかという感じを受けます。そういう争いをどういうふうに考えていくかということになりますと、にわかに私どもとしてはいまどっちが正しいとはっきりは申し上げかねますけれども、恐怖感に同感は持てるという点は、先生おっしゃるとおりだと思います。
  67. 中谷鉄也

    ○中谷委員 いずれにいたしましても、米軍がベトナムに行かなければ首を切ってしまうぞ。本土においては東京地方裁判所が、ベトナムにおいて働いておった人間が全く無断で東京の本社に帰ってきたのを、懲戒解雇を無効にしたという、この二つのものは、とにかく労働法的な考え方からいけば、まさに天と地の大きな開きがありますね。あの人はベトナムにいたのが無断で東京の本社に帰ってきたのでしょう。そういう人が救済されているのですよ。とにかくおれはベトナムに行くつもりはなかったのだ、それをおまえ船員だからベトナムに行け、行かないのだったら首を切るぞということ、もしそういう解雇が通るならば、本土沖繩との取り扱いというものは、労働者に対する待遇においても非常に違う。裁判所ということばが出ましたけれども米軍が首を切るというのは一方的ななで切りなんですからね。裁判所も何もないのですよ。そういうふうな労働法の筋というものを、本土一体化の中で通していかなければならぬという点からいいますと、少なくとも本土の労働感覚から見ると、沖繩の今度の問題というものは異常だといえるのでないでしょうか、いかがでしょうか。
  68. 大塚達一

    大塚説明員 先生が例にお引きになりました東京地裁の、サイゴンから帰ってきたという話でございますが、あれは結果的に申せば、先生のおっしゃるような結論があるいはあるかと思いますけれども、同時に、その中にかなり、また帰ってきたほうの事情は非常に深刻な、ただ、たまが飛びかうところから帰ってきたというだけではなくて、それと同時に、日本に残した家族がいわゆる精神分裂的な状況にあるとかいうような、その人自身の身辺にまつわる非常に重要な事件も同時にございます。と同時に、地裁の判決ではそれを就業規則、職務命令違反ととがめるのはやむを得ないかもしれないけれども、解雇とはひどいではなかろうかという、直ちに、それをやったことが恐怖感に同感できるから、しょうがないのではないかということでは必ずしもない。やったことはある程度やむを得ないとは言いながら、規則違反も違反である。しかし、違反だからといってそんな重罪を科するのは酷である、酷に過ぎるという判断が非常にあるわけです。米軍の場合にはその判断が、ちょうど先生おっしゃるように、酷に過ぎるとか言って判断してくれる人がいないという問題が確かにあると思いますけれども、同時に、いまのような点も、東京地裁の判例のほうでは、かなり重要な要素も別途ございますので、それらもあわせ考えなければならないのではなかろうか。先生おっしゃった趣旨には異議を申すわけではございませんけれども、多少つけ足すべき条件もございますので、その点は多少つけ加えさせていただきたいと思いますが、沖繩状況においてタグボートに乗船すべく雇い入れたのだから、その雇い入れたタグボートに乗らないというならば解雇するんだという場合に、私、事情をはっきり——先ほど先生もおっしゃいましたように、それに乗せる目的で雇い入れたのか、そうではなくて、雇い入れられた人を一般的な職場配置という意味でタグボートに乗せるというのか、その辺のところは、実は一番問題の点かと思いますけれども、必ずしも明らかにいたしておりませんので、どちらとも申し上げかねますけれども、そういう問題は、解雇をもって臨むかどうか、あるいはそういうことが当然だと言い切れるかといえば、確かにおっしゃるような問題はあると思いますけれども、その辺の事情をつまびらかにいたしませんので、確定的なことはちょっと差し控えさせていただきたいと思います。
  69. 中谷鉄也

    ○中谷委員 東京地裁の判決は、私、検討しましたけれども、判決文にあらわれるまでの心証形成過程というのはかなり問題があるわけで、その場合は確かに松岡さんが言っていたように、どちらもどちらだという感じもするわけです。だから沖繩の場合と全然違う。それすらも救済されているということを私は強調したいのです。そこで、軍労諸君もこういうことを言っていませんし、私自身これは法律的に吟味をしたわけじゃないのですけれども布令の百十六号というのは現在生きているわけですね。この布令百十六号は、結局琉球列島駐留米国軍隊が雇用する労働者との関係布令百十六号でございますね。そうすると、沖繩の船員諸君がかりにベトナムへ行かされたといった場合は、一体これは布令百十六号の適用を受けるのかどうか。要するに、とにかくタグボートは行ってしまえば、もう米国琉球列島駐留米国軍隊ではなしに結局ベトナム駐留軍隊の指揮下にでも入るということになった場合に、これは布令百十六号の適用はないのです。とにかくボートが行って、そうしてベトナム海域の仕事なんだからベトナム駐留米軍の指揮下に入りなさいということなれば、布令百十六号は適用がないはずだと思うのです。布令百十六号というのは、その関係においても吟味しなければいかぬ。軍労諸君もこの点気がついていないと思うけれども、解雇するの、首切るの、出ていけのというのは、アメリカの人が何かすぐ布令百十六号がどうの、布令六十三号がどうのと言うのはおかしいと思うのですけれども、特連局長、その点についてはお考えになったことがありますか。
  70. 山野幸吉

    山野政府委員 御説のように、第二兵たん司令部に属しているタグボートであれば第二兵たん司令部の関係の規則やその他で律せられると思いますし、また、ベトナムへ行った場合のタグボートがベトナム軍の編成の中へ入ってしまえば、いま御指摘のような法規との関係においては、御指摘のように適用がないような場合もあり得ると思いますが、なおこの問題は、私ども実はほんとうにそこまで詰めて検討したことはございませんので、はっきりとこういうことでございますという意見は申し上げかねるわけでございます。
  71. 中谷鉄也

    ○中谷委員 私が言いたいのはこうなんです。布令百十六号は、実質的に悪法だとわれわれは言っておりますね。そうして、それよりもまだ悪法の布令六十三号が出てきたのを、ストップをかけておるわけですね。しかし、この布令百十六号は、何か条文を見ると労働者の福祉をはかるんだということは、ことばとしては出てくるのですよ。しかし、そういうふうな布令百十六号の適用下にある人間を、要するにベトナム海域へ連れていくというようなことが、そもそも布令百十六号に基づく雇用関係ではないのではないか。逆にいうと、私、別にストライキを扇動するわけじゃないけれども、ベトナム海域へ行ってしまえば一種雇用者も二種雇用者もないのだ、ストライキをやったって布令百十六号の処分の対象にはならない、手錠をかけられることはないという場合だって、特連局長あり得るわけですね。
  72. 山野幸吉

    山野政府委員 この布令百十六号は、やはり沖繩における軍労働者を規律する一つの法規というぐあいに、これは原則だと思います。ですから、それ以外のただいま御指摘になったベトナム行き船員の問題等について、全面的に最初から最後までこの布令適用になるかどうかという点については問題があろうかと思います。
  73. 中谷鉄也

    ○中谷委員 要するに、だから私が言いたいのは、ベトナム海域へ沖繩県民をほうり込むなんていうことは、本来、沖繩駐留米軍の軍労働者に対して考えていないことだという前提が立てられなければならないわけです。それを首を切るの、解雇するの、出ていけのというようなことを言うのは越権じゃないか、おかしいじゃないかというのが私の主張なんです。そこで、こういう法律問題、これは軍労諸君にもこういうふうな問題がありますよということを連絡してあげようと思っておる。それは、だからその点一ぺん研究してください。ただ何といっても日本国民がベトナム海域へ行くというようなことは、好ましくないということはもうはっきりしていますね。そこで、日米琉諮問委員会においてこの問題について——任意で自主的にいきたくてしかたがないという人はしかたありませんけれども、しかし、少なくとも行きたくないといっておる者を、とにかく部屋へ閉じ込めて、行かなければ首を切るぞというようなことをいって強要したとか、非常な説得以上の、それに対してことばによるところの威圧を加えたというようなことはないようにすべきだ。要するに、沖繩におけるところの、沖繩県民であるところの船員諸君のタグボート乗り組み問題については、諮問委員会の議題に一ぺんすべきだというふうに思います、諮問委員会というものが開店休業でないなら。あるいは少なくとも本土政府の問題として、これは高等弁務官あるいは外交ルートの問題としてでも論議すべきだと思う。特連局長、いかがでしょうか。
  74. 山野幸吉

    山野政府委員 このベトナム行き船員の問題でございますが、これはみずから進んで行くという例外的な、あるいはまたそういう人もおられる場合もあることは事実でございますが、今度のような場合に、いろいろ御指摘のような問題はあろうかと思います。しかし、この問題をいまの時点で諮問委員会の議題にするというようなことは、まだ日本政府としては考えておりません。絶えず起こってくる個々の事象、事案をとらえて、諮問委員会の議題にするという考え方に立っておりませんので、やはり経済、社会その他の関連事項について、本土復帰に対する原則的、一般的な制度を中心としての議題を取り扱うことにいたしておりますので、ただいまのところ、まだ諮問委員会の議題にするという考えは持っていません。
  75. 中谷鉄也

    ○中谷委員 タグボート五三一号問題という具体的な問題として諮問委員会にかけろと言っているんじゃないのです。アメリカ軍に雇用された軍労働者が、ベトナム戦域という危険なところへ行くことは、少なくとも本人が積極的に申し出ない限りは、そのようなことは米軍において行なうべきではないということは、まさに社会的、経済的な議題ではないですか。しかも米軍はこういっていますよ。今後このタグボートに乗らない人がおったら解雇する可能性もあり得るんだといっている。今後さらに起こってくる問題ですね。そういうふうな問題です。だから、いろいろないわゆる危険な作業という中で、しかも戦争に関係した危険な作業についで、その一例としてベトナム戦域におけるところのタグボート問題というものは、十分に議題になり得る。むしろ、こんなことを議題にしなかったら、何を議題にするんですか。五三一号問題ということになれば個々の問題でしょうが、米軍雇用されている軍労働者が戦争の地域に行かされるというふうなことはやめようではないか、好ましくないんだということを、何で議題にできないのですか。議題にすべきではないでしょうか。
  76. 山野幸吉

    山野政府委員 御意見としてはそういう御意見もあり得ると思いますが、私のほうとしましては、この問題は軍労なり軍なりあるいは琉球政府の間で解決をはからるべき問題であるし、また従来これに似た例もあったわけでございますが、そのつど解決を見てきておる。それに引きかえ、また諮問委員会自体が、現在経済問題その他一体化の問題に関連しまして相当な仕事検討中でございまして、こういう個々の事案について諮問委員会の議題にするということは、いま考えていないわけでございます。
  77. 中谷鉄也

    ○中谷委員 免許の資格だとか何かという問題よりも、人の命にかかわる問題ですからね。労働者の命をどれだけ大事にするかという問題ですからね。私は、きわめて大事な問題だと思う。しかもこんなことは、諮問委員会にかけて一言で済むことじゃないですか。何か詳しい取りきめが要りますか。本人が積極的に申し出ない限りはベトナム戦域に行かさない、一言でいいんじゃないでしょうか。それを拒否したからといって解雇しない、それ一言でいいんじゃないですか。そういう人の命に関することが、社会的な経済的な問題として、以上のそのことにまさに触れるし、そういう問題が議題にならないというのは、私はおかしいと思う。五三一号問題をどうするかという問題であればまた別ですよ。今後起こる可能性が十分ある。そのつど解決してきたとおっしゃいますけれども、そのつどそのつど解決の保障がないから、将来に対する保障がないから、そのつどそのつどこういう問題が出てくるのでしょう。そういうことをきちんと取りきめておけば、こういう問題はそこでピリオドが打たれるのでしょう。そのつど解決をしてきたということは、逆に言うと、こういう残念な、非人間的な問題がそのつど起こってきたということでしょうが。そんなことを黙視している態度というものはおかしいじゃないですか。
  78. 山野幸吉

    山野政府委員 この諮問委員会は、御案内のように、本土一体化本土復帰に備えての一体化の基本的な諸問題を各三政府代表が協議をして高等弁務官に勧告し、高等弁務官はそれぞれの政府にそういう勧告の趣旨の実現をはかるように要請するという機関でございまして、一つの生起した事案に対して、あるいはまたある事案に対してそこで決定権をもってこうするとか、そういうような行政機関的なもの、あるいは国際機関そのものではないわけでございます。高等弁務官に対する三政府一体化に関する勧告機関でございます。したがいまして、そういう問題があると同時に、また現在諮問委員会自体として相当量の作業をかかえておりますから、個々のこういう問題をいま議題にして取り上げることは、日本政府としては考えていないわけであります。
  79. 中谷鉄也

    ○中谷委員 じゃ、一体今後こういう問題について日本政府は無関心なのか——関心だとはいえないでしょうね。しかし、関心があるということは、とにかく行政府としてどういう関心を持つかということになれば、この問題について今後どういう取り組み方をするのかという問題については、日本政府としてはこの問題について琉球政府にまかし切りなんだ、軍労がとにかく解決するでしょうなんていうことをおっしゃるのは、私はいけないと思いますよ。じゃ、日本政府としてはどうされますか。
  80. 山野幸吉

    山野政府委員 沖繩の祖国復帰問題が具体的な問題にだんだんなりつつありますから、沖繩本土復帰がかりにめどが立つというような時点になりますれば、沖繩の軍の労務者を含めた全体の労働体制をどう整備し、本土復帰に備えるかという問題が当然出てまいります。そういう過程で全体の問題として準備作業を進めていかなければならぬ、かように考えております。
  81. 中谷鉄也

    ○中谷委員 問題を私が提起すれぱ、具体的な問題だから諮問委員会の議題にならないと言う。私が、じゃこの具体的な問題についてどうするのかと言ったら、全体の中ではかりたい。冗談じゃないですよ、おっしゃっていることは。このベトナム海域への船員がとにかくほうり出される、行かなければ首を切られる、これは全く具体的な現実の当面の問題ですよ。これに対して政府は無関心だ、手を打たないのだ、何ら意思表示をしないのだ、軍労にまかしておいてください——これは逆に言うと、日本政府軍労に手をかさない、こういうような問題についてどうしてもわれわれでやらなければならないとなったら、ストライキでも打たなければしょうがないじゃないですか。逆に言うと、日本政府軍労に対してストライキ資金でも出すのかということだっていえますね。軍労にまかしておきますとか琉球政府にまかしておきますということは、日本政府立場からいきまして、私は、日本国民である沖繩県民に対して何ら意思表示をしないということはおかしいと思うのですよ。全体の中での労働法の整備というような問題に、この問題を私は転嫁してもらいたくないと思うのです。要するに、いやおうなしにベトナムに連れていかれる問題に対して具体的にどう対処するのかということについて、ひとつお答えいただきたい。
  82. 山野幸吉

    山野政府委員 現時点におきましては、琉球政府が、あるいはまた労使の間で解決をはかられるべき問題でございまして、日本政府としてこの問題に対して具体的な関与をすべき問題ではない、かように考えます。
  83. 中谷鉄也

    ○中谷委員 すぐ終わろうと思っていましたけれども日本政府は関与してはいけないのですか。関与ができないのですか。あるいはまた、その関与することが何らかの不利益を及ぼすのですか。関与すべきでないというのは、それは一体どういう根拠とどういう判断なんですか。琉球政府がやるから日本政府はやる必要がない——琉球政府がやることだって、日本政府がやって悪いとは限りませんね。なぜ軍労にだけまかせ切りにしなければならないのですか。単なる労使問題ではございませんよ。とにかく労使問題以上の問題だと私は思いますよ。おまかせしておきますというのは、一体どういう根拠があるのですか。
  84. 山野幸吉

    山野政府委員 御心配になるお気持ちは私どもわかりますし、日本政府としてこの問題に全く無関心だというわけではございません。そのつど情報ももらい、その実情報告も受けておりますが、しかし、いまの時点におきましては施政権アメリカにあるし、したがってこういう軍と雇用者、被用者との関係日本政府がいま積極的に関与するのは妥当ではない、適当ではないというぐあいに考えます。
  85. 中谷鉄也

    ○中谷委員 雇用関係の問題として問題をとらえるのは、私、次元が低いと思うのですよ。やはり人の命の問題ですからね。ということになれば、先ほど同僚委員のほうからもお話がありましたけれども、これは外交保護権の問題にも関係してくるわけでございましょう。外交保護権としても問題はとらえられるわけですよね。そういう問題について、では何もかも施政権があるからというところへ逃げ込んでしまうという態度は、私は非常に遺憾だと思うのです。また、そういうふうなことが、はたして沖繩県民の期待にこたえる道なのかどうか。きょうのあなたと私とのやりとり軍労諸君なんかに見せたら、私、非常に失望すると思います。そういうふうなことは、逆に言いますと軍労諸君の闘争をとにかく非常に激化させる。日本政府関心があるというけれども、結局それは逆に言いますと、情報収集的な関心じゃないかというふうに思うと私は思います。私は、いまの問題については、私自身もきわめて御答弁は不満だということだけを申し上げておきます。理事会で質問の通告をせずにの質問ですから、この程度にしておきますけれどもあとでひとつ局長も会議録を読み返していただきたい。おっしゃっていることは、私は、軍労諸君に対しては非常に不誠意だと思いますよ。沖繩県民に対しても、何といいますか情がないというふうな、非常に情緒的な言い方をしますけれども、情がない御答弁だと私は思いますよ。  最後に一つ。私はこの前から人権問題についてずっと取り上げてまいりました。この問題については、施政権関係において情報は収集されておりませんか。「婦女暴行に無罪」、「米軍会議に非難の声」という記事が五月十日付の新聞に出ておりますね。どういうことかといいますと、沖繩の女の人を、この種の事件ですから名前はもちろん出ておりませんけれども、暴行した上首をナイフで刺してけがをさせた米兵の裁判が五月六日と七日にあった。在琉球米陸軍の最高軍法会議では、犯人の米兵は無罪を言い渡された。こんなことなら全くどんな事件だって無罪じゃないか。「婦人をはずかしめたうえで、ケガを負わせたことに対して無罪のいい渡しとは、沖繩人の人権無視だ」と司法関係者が言っているという記事が出ておりますね。一体何でこんなものが無罪なのか。一体この米軍の兵隊さんは気違いだったというのか、それとも女の人が自分で刃物を持って自分の首を刺したというのか、この報道に関する限りは考えられもしないようなことが行なわれていますね。私が前回から何べんも指摘をいたしましたのは、軍事法廷はとにかく傍聴できるようにしてもらわなければ困りますよ、軍事法廷というものは信用できないけれども、しかし、少なくとも県民が監視できる機会がなければいけませんよと言っていた。こう一いう無罪事件なんというものは、全く沖繩県民の人権に対する重大な権力による侮辱だと私は思うのです。一体この事件についての調査はされましたか。
  86. 山野幸吉

    山野政府委員 ごく簡単な内容の報告が当初ありまして、現在さらに詳細につきまして、経緯そ  の他を調査して報告するように沖繩事務所に言ってあります。
  87. 中谷鉄也

    ○中谷委員 無罪理由は。
  88. 山野幸吉

    山野政府委員 その経緯等について、全体を報告するように言ってあります。
  89. 中谷鉄也

    ○中谷委員 無罪だということの報告は、無罪理由は何かということがポイントでしょうが。犯人じゃなかったとか、証拠が不十分だとか、本人が気違いだったとか、それからとにかく被害者が首へナイフを刺してくれということを承諾をしたのだ、そんなばかなことは世の中にありませんよ。その四つか五つのうちの一つなんですよ。こんな人権無視の声があがっているときに、一体軍の法廷というのは無罪理由を言わないところなんですか。一体日本政府関係の人は、だれが傍聴に行ったんですか。どういうふうな情報収集のやり方をしているのですか。簡単な報告であった、どんな簡単な報告があったのですか。
  90. 山野幸吉

    山野政府委員 報告は簡単に事実だけを当初報告してまいりましたので……。
  91. 中谷鉄也

    ○中谷委員 ちょっと委員長。事実というのは、こんなことについてこんな理由で無罪になりましたというのが判決の事実でしょうが。一体どんな理由なんですか。
  92. 山野幸吉

    山野政府委員 軍事裁判の判決の内容その他については当時全く報告はなかったわけでございまして、結果だけについて報告があったわけでございます。したがいまして、そういう内容等についてどういう経緯であるか、理由等を含めて詳しく報告してもらいたい、こういうぐあいに言ってあるわけでございます。
  93. 中谷鉄也

    ○中谷委員 これは一体いつの言い渡しなんですか。とにかく五月の七日ですかの言い渡しなんですよ。きょうは一体何日ですか、五月の十五日でしょうが。無罪理由は一体どうかということを、あなたのほうではまず吟味されなければならないでしょう。大体軍事法廷というのは無罪理由を言わないところなんですか。出先は一体何をしているんですか。
  94. 山野幸吉

    山野政府委員 詳しいことはいま調査を求めておりますけれども、要はこの被害者がまず暴行を受けて、そして一緒に被害者の宅へ行ったわけでございます。そして何かそこでもう一度暴行を受けそうになって、それに抵抗したとかなんとかそういうことがございますが、そういうことで被害者が加害者と一緒に被害者の家へ行ったというところで、何かそこにお互いの同意と申しますか合意と申しますか、そういうことがあったんじゃないかというような点が問題になっておるようでございます。
  95. 中谷鉄也

    ○中谷委員 もう私は質問するのが情けなくなる。暴行されて被害者の家へ一緒に行って……。だから私さっきから言っているでしょう。そういう事実関係は私も調べてあるのですよ。何が悲しくて人間が相手のナイフで自分の首を刺さなければいかぬのですか。刺してくれとかいって刺さない限りは無罪だというのでしょうが。被害者の家へ相手と行けば、日本の裁判では無罪にしてくれるのか。そんなことなら人殺しが一ぱい出てきますよ。何かメモみたいなものが渡ってきましたけれども、人権感覚というものの一かけらでもあれば、けしからぬということが出てこなければおかしいのじゃないですか。そうしたら、そういう簡単な報告があったのが何日か知りませんけれども、きょうの十五日まで出先から日本政府に対しては何の音さたもないのですね。
  96. 山野幸吉

    山野政府委員 まあこういう重要な事案でございますから、十分慎重に調査をしておるものと考えます。
  97. 中谷鉄也

    ○中谷委員 何をおっしゃっているのですか。言い渡しというのがあるのでしょう。言い渡しは事実と理由を説明するのでしょう。こんな理由だったということは、傍聴していればすぐわかるでしょうが。そんなものは十分あれば報告は受けられるでしょう。そのことを何を一体慎重に調査しなければいかぬのですか。そういう事実と理由との結びつきが、はたして合理性を持っておるかどうかということについていま調査をしています、米軍に行って証拠関係も調べています、証人の証言調書も取り寄せていますとか、そういうことでもなければ、一体あなたのほうで調査していられるというのは、それでは米軍から裁判記録でも借り出してくれるというのですか。私が資料を要求した場合に、その裁判記録は当委員会に出すことができますか。判決文というのはあるのでしょうが。判決文をとるのに、あるいは裁判長の判決言い渡しはこうだったというふうなことを資料として、とにかく本土政府報告するのに一週間もかかるのですか。こんなことが放置されておいていいんでしょうか。一体何を詳細に調査しているんですか。理由はとにかく調べなければいかぬということはわかるでしょうが。犯人じゃなかったか、それともあるいは証拠不十分で犯人かどうかわからぬとか、あるいはとにかく突いたか突かないかわからぬとか、ナイフがひとりでに飛び出して刺さったとか、そんなことは法廷で言うことでしょうが。そのことについて何らお調べになっていないというのは、人の命よりももっともっと大事なことが特連局のお仕事として一体あるのですか。
  98. 山野幸吉

    山野政府委員 いま申しましたように、調査をさしておりますので、いましばらく御猶予を……。
  99. 中谷鉄也

    ○中谷委員 だから私は、そういうふうな人権感覚の、鈍麻ということばをあえて使います。タグボートの問題、それからこの婦女暴行の無罪事件、沖繩の問題に対してとにかく本土政府は、施政権というものがある沖繩に対しては人権感覚を鈍麻さした姿勢で臨んでいるとしか私は思えないのです。私は非常に遺憾です。そういうことについて、むしろ特連局の人がおこるのがあたりまえでしょう。そういうことについておこるというみずみずしい権利感覚がないところに、何で本土との一体化があるんですか。私は、きょうの御答弁は非常に遺憾だと思うのです。  それでは、それほど慎重に調査されるなら、裁判記録は取り寄せていただけますか。
  100. 山野幸吉

    山野政府委員 軍事裁判でございますから、その内容を一方的に資料として提出できるかどうかはお約束できません。できませんが、わかる限りの、あるいはまた、集め得る限りの実情調査してみたい、かように考えております。  なお、いまいろいろと御指摘ございましたが、人権問題について日本政府が全く無関心で何にもやってないという趣旨の御指摘でございますが、日本政府としてはそのような態度ではないつもりでございます。
  101. 中谷鉄也

    ○中谷委員 では外務省に一点だけお願いしておきますが、お願いといいますか質問をいたしますが、特連局長は頭から、軍事裁判だから裁判記録は取り寄せできるかどうかわからぬ、こうおっしゃっています。裁判が終われば、裁判記録というものは全部公開されるのが判裁法の原則です。近代的な裁判の原則です。何も裁判記録の原簿をここへ持ってこいと私、言っているのじゃないのですよ。少なくとも裁判記録の証言その他の要旨、そういうふうなものの記録を——私はこの問題をそこまでしつこくやるつもりはなかった。理由はこういうことですが、どうも私もおかしいと思います、非常に遺憾ですという答弁が特連局長から出ると思っておった。だからこそ人権問題を推進していこうじゃないかということで、特連局を激励しようというつもりで私は質問したけれども、全く一週間もたって何にも調べてないということなら、私どものほうもきょうはとにかく資料要求も相当しなければならぬ。裁判記録というものについて、軍事法廷からそういう記録を資料要求したいと私は思うけれども、その点について外務省としては相手方と交渉をしていただけるかどうか、交渉していただきたいと思うが、これはいかがでしょうか。
  102. 大河原良雄

    大河原説明員 先ほど来の御質問並びに特連局長の御答弁を拝聴いたしておりましたが、軍の裁判でございますので、御要求のような記録がとれるかどうかについて、私自信ございません。しかしながら、先ほど来の御発言は十分伺っておりますので、どういうことができるか考えてみたいと思います。
  103. 中谷鉄也

    ○中谷委員 では特連局長、私もあなたとお話しして、少し根が尽きてきましたから最後にお尋ねします。  軍だから軍だからと外務省もおっしゃる、あなたもおっしゃる。軍の記録が取り寄せできないという、軍の記録が閲覧できないというふうに頭から思い込んでおるようですが、その根拠は一体何ですか。軍だから軍だから、あなたのほうは軍だからと言ってあきらめ切ってしまっているのですね。軍の裁判記録は——裁判は公開なんだ、裁判が終わったら裁判記録は全部に見せるという公開の原則なんです。それがなぜ——裁判記録は九九%までは取り寄せできるでしょう、しかし、特別にこういうことがあった場合にはという答弁なら、私納得しますけれども。ではあなたに聞きたいが、軍であって見れないという理由は一体何ですか、軍の何がどういうことで見れないのですか。裁判が軍事機密というようなことをおっしゃるのではないでしょう。軍だから取り寄せできないとおっしゃることは、軍だからということを私はもう少し詰めて聞きたい。
  104. 山野幸吉

    山野政府委員 別に軍だからということを特に意識して申し上げたわけではございません。事実軍事裁判であるということで軍に関係する、こう言ったまででございますが、いずれにしましても御趣旨は十分わかりましたし、私のほうも十分調査したいと思っていますから、できるだけの資料が整えば、そのできるだけの範囲内でお示ししたいと思います。
  105. 中谷鉄也

    ○中谷委員 軍事裁判だったら、何で資料がとれないという危険、危倶があるのですか。軍事裁判というものは、資料がとれないのだというふうに頭のどこかで思い込んでおられるその理由は一体何ですか。軍事裁判は、法廷規則のどこに書いてありますか。それと、資料は一体いつごろまでにそろえていただけますか。
  106. 山野幸吉

    山野政府委員 軍に限らず米国民政府裁判所でもそうですが、その関係資料を国会に御提出したような事例はいままでないわけであります。したがいまして、私どもも、いまの段階でそれに対してお約束するということはできないわけでございますので、慎重に私どもも対処したいと考えておるわけでございます。
  107. 中谷鉄也

    ○中谷委員 では、委員長にひとつお願いをしておきます。  ずいぶん時間をとりましたが、沖繩県民の人が何かナイフで首を突かれたというのが無罪になったというふうなことは、われわれの基本的な、初歩的な常識にちょっと反すると思うのです。この点については納得のいく資料をひとつ特連局のほうで提出していただくように、そうしてやはり納得のいく資料というものは、軍裁判におけるいわゆる証人等の証言あるいは判決書、こういうものも含まれると私は思う。もしそういうものが出せないなら出せない理由というものをひとつ明確にしていただく。これも資料として明確にしていただきたい。  要するに、私はこういうふうに言いたい。そういうものが資料として出せないなら、沖繩においては暗黒の裁判が行なわれておる。そういうことについておこらないところの日本政府というものは、率直に言ってそういうことについておこらない特連局長というものは、人権感覚というものをあらためて見直さなければならない。非常に失礼ですけれども、私はそういう言い方をしたい。  これで私の質問を終わります。
  108. 中村寅太

    中村委員長 ただいま中谷君から申し出のありました資料要求の点でございますが、ただいまの質問、答弁を聞いておりまして、委員長としてもやはりこの問題は国民感情としても重大な問題だと思いますので、特連局のほうでできるだけ努力をして、来週の火曜の委員会の際までに、できるだけの調査を進めて御報告願いたいと思います。  本日はこの程度にとどめ、次回は来たる二十日委員会を開くこととし、これにて散会いたします。     午後零時四十九分散会