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1968-12-18 第60回国会 衆議院 法務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年十二月十八日(水曜日)    午前十時四十分開議  出席委員    委員長 永田 亮一君    理事 大竹 太郎君 理事 田中伊三次君    理事 高橋 英吉君 理事 濱野 清吾君    理事 猪俣 浩三君 理事 神近 市子君    理事 佐々木良作君       鍛冶 良作君    進藤 一馬君       瀬戸山三男君    中谷 鉄也君       畑   和君    岡沢 完治君       山田 太郎君    松本 善明君  出席国務大臣         法 務 大 臣 西郷吉之助君         文 部 大 臣 坂田 道太君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)   荒木萬壽夫君  出席政府委員         警察庁警備局長 川島 広守君         法務政務次官  小澤 太郎君         法務大臣官房長 辻 辰三郎君         法務省刑事局長 川井 英良君         法務省入国管理         局長      中川  進君         文部省大学学術         局長      宮地  茂君  委員外出席者         警察庁警備局警         備課長     丸山  昂君         法務省刑事局総         務課長     藤島  昭君         法務省刑事局公         安課長     豊島英次郎君         外務大臣官房領         事移住部旅券課         長       林  祐一君         最高裁判所事務         総局人事局長  矢崎 憲正君         専  門  員 福山 忠義君     ――――――――――――― 十二月十八日  委員岡田春夫君、成田知巳君及び西村榮一君辞  任につき、その補欠として中谷鉄也君、畑和君及  び岡沢完治君が議長指名委員に選任され  た。 同日  委員中谷鉄也君、畑和君及び岡沢完治君辞任に  つき、その補欠として岡田春夫君、成田知巳君及  び西村榮一君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 十二月十七日  刑法の一部(姦淫罪)改正に関する請願(柳田秀  一君紹介)(第三五二号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十二月十七日  外国人登録事務費等全額国庫負担に関する陳情  書  (第一七九号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  裁判官報酬等に関する法律等の一部を改正す  る法律案内閣提出第五号)  検察官俸給等に関する法律等の一部を改正す  る法律案内閣提出第六号)  裁判所司法行政に関する件  法務行政に関する件  検察行政に関する件  人権擁護に関する件      ――――◇―――――
  2. 永田亮一

    永田委員長 これより会議を開きます。  裁判官報酬等に関する法律等の一部を改正する法律案、及び検察官俸給等に関する法律等の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  前日に引き続き質疑を行ないます。質疑の申し出がありますので、これを許します。中谷鉄也君。
  3. 中谷鉄也

    中谷委員 昨日の質疑に引き続いて、簡単にお尋ねをいたします。  その前に大臣の御答弁をいただきたいと思います。国家公務員諸君人事院勧告の五月実施を強く求めているということは言うまでもありませんが、昨日の四党国対委員長会議、その他与党・政府関係閣僚話し合い等によりまして、八月実施について、この点が修正されるということが報道されておりますが、といたしますると、現在審議いたしておりますところの法案についての修正の問題が出てくるだろうと思います。特に附則の問題等についてはどういうことに相なるのか、この点についての御答弁をいただきたい。
  4. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 ただいまの給与関係の問題につきましての点でございますが、いま御質問のように四党の国会対策委員長会談がありまして、そういう修正の方向に話があるようでございますが、まだ私どもは正式に聞いておりませんので、内閣委員会におきまする出方を見まして、それにつれましてこちらの問題も変わってくると思います。まだそちらの方の打ち合わせをするひまがございませんで委員会へ出てまいりましたが、だんだん明白になってくると思います。
  5. 中谷鉄也

    中谷委員 官房長お尋ねいたしますが、いずれにいたしましても本法案における実施期日についての点が、たとえば五月実施、すなわち当然の五月実施ということに相なるとか、その他別個の実施期日についての変更があるとするならば、これは当然この法案修正の形式を取らなければならぬ、こういうことでございますね。
  6. 辻辰三郎

    辻政府委員 そのとおりでございます。
  7. 中谷鉄也

    中谷委員 昨日、数点にわたりまして最高裁判所及び法務省に対してお尋ねをいたしましたが、資料を準備した上、本日御答弁をいただけるという点が数点ございました。この点について最高裁判所法務省のほうから概略、簡単にひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  8. 辻辰三郎

    辻政府委員 昨日お尋ねがございました三点につきまして、私ども調べました概略の結果を御報告いたします。  まず、第一点は、東京都の生活保護基準の額よりも少ない給与しか受けていない職員がどれくらいおるかというお尋ねでございます。この点につきましては御案内のとおり、この東京都の生活保護基準月額そのものでございますが、国家公務員の場合には、期末勤勉手当その他の給与月額のほかにございます。したがいましてこれを比較いたしますときには、国家公務員の場合には年間給与を十二カ月で割って出していく関係になるわけでございます。そういたしますと、この生活保護基準より下回ります給与といいますのは、行(二)の五等級の一号という号俸がこれに見合うことになるわけでございまして、当省の所管職員のうちでこれに見合い、結局は生活保護基準と同じかあるいはそれを下回ると予想される職員は、おりましてもわずか一人ぐらいになるのではなかろうか、あるいはいないかもしれない、おりましても一人であるというような一応の調査でございます。  それから第二の御照会の点は、勤務につきまして任官初年度平均年齢幾らであるか、十年経過した検事平均年齢幾らであるか、二十年経過した検事平均年齢幾らであるかという点につきまして、現在おります検事について具体的に調べたわけでございますが、初年度すなわち四十三年に採用いたしました検事につきましては、平均年齢が二七・八歳でございます。それから現在十年経過いたしております検事、すなわち昭和三十三年に任官いたしました検事につきましてみてみますと、現在三七・五歳でございます。それから二十年経過いたしました検事、すなわち昭和二十三年に任官いたしました検事についてその平均年齢を見てまいりますと、四九・四歳でございます。  それから第三のお尋ねは、和歌山刑務所丸の内拘置支所における超過勤務手当支給状況がどうであるかという点でございますが、この点は詳細なお取り調べておりまして、一応の結果は大体わかってございますが、なお正確に調べさしていただく点があろうと思いますので、現在引き続き照会中でございますので、しばらく御猶予をたまわりたいと存じます。  以上でございます。
  9. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 裁判所のほうにつきましての中谷委員お尋ねの件についてお答え申し上げます。  判事任官後十年を経過した者、言いかえますと判事補任官後二十年を経過した者で現在いる者の平均年齢はどうかというお尋ねでございまして、さっそく全部にわたって調べましたところ、平均年齢は四九・一三歳、約四十九歳という結論が出たわけでございます。  次に、生活保護基準額以下の者は大体何名いるか、二万二千円以下の者は何名いるかというお尋ねでございましたが、これにつきまして調査いたしましたところ、大体のところ期末手当等は全部除きまして約六百五十人ということに相なっております。しかしこの人たちは比較的年齢の若い方でございまして、奥さんとか子供さん方がおられる場合はこの号俸よりもずっと上のほうにいくということに相なるわけでございまして、年齢構成の非常に若い方たちがこうなる、こういうことでございます。
  10. 中谷鉄也

    中谷委員 法務省お尋ねをいたします。期末手当を入れたら一人おるかおらないぐらいだという御答弁がありましたが、期末手当というものを入れないということになりますと何人になりますか。そしてそれらの諸君年齢勤務年数職種、そういうものについてはどういうことでございましょうか。期末手当を入れてというふうなことでは若干実態と違う。むしろ、たとえば生活保護受給者の場合だって、年末にはもち代というようなことでもらっているわけですから、その点についてお答えいただきたい。  なお、最後の丸の内拘置支所の問題については、閉会中でもひとつ資料をお届けいただきたい。これで私の質問を終わりますが、御答弁いただきます。
  11. 辻辰三郎

    辻政府委員 期末手当勤勉手当を入れないはだかの給与でございますが、すなわちお尋ね行政職俸給表(一)の五の七または四の三以下の職員、これを見てまいりますと百一名おります。これはもとより行(二)職員でございますが、これはわがほうの各組織にわたって、行(二)職員としてかような人が合計百一名という数になっております。
  12. 中谷鉄也

    中谷委員 そうすると、もう一度お願いしておきますが、私が質問いたしました勤務年数職種、現実にどういう仕事をしているのか、年齢等については資料を整備して、これも閉会中でもけっこうですからお届けいただきたい、こういうことをお願いしておきます。  終わります。
  13. 永田亮一

  14. 岡沢完治

    岡沢委員 昨日最高裁関係給与に関する質問をさせていただきましたので、きょうは法務省関係につきまして若干お尋ねいたします。  現在検察庁における検事、副検事検察事務官定員とその充員、現在員ですね。その実情はどうなっているかお尋ねをいたします。
  15. 藤島昭

    藤島説明員 お答えいたします。  四十三年の検察庁定員でございますが、御承知のように定員法がまだ通っておりませんけれども、これが通った暁におきましては、検事以上、すなわち検事総長次長検事検事長検事、合わせまして千九十七人でございます。それから副検事が八百四人、検察事務官その他の職員が八千九百五十四人、合計で一万八百五十五人ということになるわけでございます。現員でございますが、九月三十日現在、検事が千四十六人、副検事が七百五十二人、検察事務官その他の職員が八千九百八人ということになっております。
  16. 岡沢完治

    岡沢委員 大阪東京名古屋等大都市におきましては、特に顕著だと思うのですけれども、非常に検察庁は多忙なような感じを私自身実感として持っております。また特に告訴事件等処理、身柄でない場合は非常におくれておるという実情もございます。また交通事件処理につきましては、反則金制度採用によって幾らか楽になったようでございますけれども、いまでも、一年前の事件の呼び出しを受けたというような相談を受けることもございます。検察庁で扱われる事件数の推移、それから検事、副検事検察事務官につきまして、一人当たり負担量お尋ねいたします。
  17. 藤島昭

    藤島説明員 仰せのとおり事件数も相当ふえておりまして、四十二年の受理件数道路交通法を除いて申し上げますと、約百五十九万件ございます。それでちょうど十年前の三十三年でございますが、これは百一万件ということで、五八%の増ということになっているわけでございます。職員のほうは、検事、副検事事務官を全部入れまして、四十二年が地方検察庁だけで申しますと八千八百二十七人、三十三年はどうなっているかと申しますと、六千七百四十人ということで、職員は約三〇%ふえております。事件伸びは五八%。負担量はどうなるかと申しますと、件数職員で割ってみますと、四十二年の一人当たり負担量が百八十一件ということになります。三十三年が百五十件でございまして、負担量伸びが二一%ということで、事件数伸びておるし、一人当たり負担量もふえておる、こういうことでございます。  それから、これは数だけで申し上げたわけでございまして、内容的に申しますと、御承知のように反日共系の学生を中心とするいろいろな公安事件の頻発、そういうことで非常に証拠の収集等がむずかしい事件でございますから、多数の検事事務官をこれに投入しなければならぬ、こういうような事情もございます。また非常に立証の困難な汚職とか脱税等事件も依然としてあとを断っておりませんし、自動車による業務上の過失事件も非常にふえているわけでございまして、そういうようないろいろ検察をめぐる事件中心とした情勢から見ますと、たいへんきびしいものがあるわけでございまして、検事事務官、いずれも非常に多忙な毎日を送っている。場合によっては深夜まで仕事をするとか、あるいは日曜も返上する——特異な事件が起こった場合でございますけれども、そういうような実情にあるわけでございます。
  18. 岡沢完治

    岡沢委員 いまの御答弁にもございましたけれども事件数増加定員増加とはアンバランスで、おっしゃるとおり私は数だけではなしに、正示代議士事件もその一つの適例でございますけれども、非常に立証困難な事件、きのう最高裁でも業務過失事件で無罪の判決が出ておりますけれども業務過失事件も非常に捜査のむずかしい、困難な事件だと申し上げてもいいと思います。数が多くなって、事件内容も複雑、むずかしいものが多くなっておるというときに、こういう御答弁をいただきますと、はたしてそれで検察事務が、捜査、公判あるいは刑の執行、あらゆる面で支障を来たしておるのではないかという心配をするわけであります。また実際いま御答弁になりましたように、特に私のおりました大阪地検などの場合、日曜返上とか夜の十時ごろまで検察官検察事務官が働いておることは、自分で体験をしてよく知っております。実際に事務支障を来たしていないか、そういう点を心配するわけでございますが、その実際についてお答えをいただきたいと思います。
  19. 川井英良

    川井政府委員 検察庁仕事は、御存じのとおり一年じゅうを通じまして常に毎日おそくまでやらなければいけないというようなことではありませんで、何といいますか、ラッシュのときとそうでないときがやはりあるわけでございますので、年間を通じて観察いたしますと、今日かなり窮屈ではございますけれども事務支障を来たしているというところまでは私はいっていないのではないか、こういうふうに考えています。しかしながら最近の事態は、東京大阪あるいは福岡あたり見ますというと、非常に無理な事務をいたしております。これは一面において検察という仕事訴訟法で時間的に縛られておりますので、あるいはやむを得ない面があろうかと思いますけれども、また特殊な事件がないときには、ある程度また、休養ということではございませんけれども通常事務に戻って仕事ができるというようなことでございます。欲をいえばかなりの検事とそれから相当数検察事務官を、何と申しましても絶対数において足りませんので、ぜひとも供給源を確保するとともに、また予算的措置におきましてもなるべくあたたかい措置をお願いしたい、こういうふうな気分でございます。
  20. 岡沢完治

    岡沢委員 刑事局長は非常に遠慮した御答弁のような感じがしますけれども、実際に大都市、特に公安事件をかかえた大都市検事あるいは副検事事務官とも、実感として実際に不足しているのだ。おっしゃるように繁疎はあると思いますけれども、また特に配置転換——反則金制度採用によりまして、交通関係処理がだいぶ楽になったはずでございますから、そういう庁内での配置転換、それからまた交通機関発達等によりまして、私はある意味では区検等の統廃合については思い切った改革が必要かと思います。しかし、何といっても絶対数、ことに大都市検察事務支障を来たすすれすれまで、私自身実感としてはきているのではないかという感じがいたします。人員の不足ということは、私たちは日本の行政制度全体を見た場合に、公務員が多過ぎる、もっと能率化すべきだという点については、個人として強い要求をしたい立場でございますけれども事検察事務に関する限りは、むしろ不足過ぎるという実感を持っておりますだけに、この人員増加あるいは予算要求について、具体的にどういう努力をしておられるか、お尋ねします。
  21. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 ただいまの御質問をいただきまして、私どもも、現在御承知のとおり検察権行使ということは治安の上からも非常に大事なことでございますが、実情検事欠員が五十一名もある、そういう現状でございまして、今後を考えますと、どうしても増員をいたしたいのでございますが、欠員も一方にあるために、予算措置を頼みますと大蔵省欠員を持ち出されまして、こちらで閉口しておるのでございます。いまお話しのとおり、何といたしましても治安の確保という面からも優秀な人材検事、副検事検察事務官等に迎えられるようなことを考えなければなりませんが、待遇給与の面におきまして民間と比べまして、非常に差がございますので、この辺のところで非常に難渋をきわめております。明年度予算におきましても、八十二名の検事増員予算要求いたしておりますけれども、いま申し上げましたとおり、一方に内側に五十一名の欠員というものをかかえておりまして、その問題がございますので、非常に困難をきわめると思います。しかし、実情から申して非常に大事なことでございますから、大蔵省との折衝には私も強くこれを要求していく。そして、皆さん方の御心配のないようにしなければならぬ、あらゆる面で努力をしなければならぬと思います。今回の予算におきましても、その点を強調しておるわけでございます。
  22. 岡沢完治

    岡沢委員 いまの大臣の御答弁とも関連するわけでございますが、絶対数は不足しておる。にもかかわらず定員から、検事だけに限りましても五十一名の欠員がある。ここに私は問題があると思う。そういう点から、昨日も最高裁のほうに、司法修習生から裁判官志望者実態についてお尋ねをしたわけでございますけれども、ことに私はきのうの御答弁から見ましても、検事志望者が非常に少ないということを痛感し、その理由等をぜひとも究明しなければ、大事な司法権行使にそのままつながる検察権の適正な行使について、国民としても不安を感ぜざるを得ない。そういうことから、司法修習生から検事志望をする方々の実態というのですか、数字をもってその実情を明らかにしていただきたいと思います。
  23. 辻辰三郎

    辻政府委員 最近におきます司法修習生から検事に任用されております数は、本年の四月に採用いたしました者が四十九名でございます。昨年は四十八名、一昨年は四十七名、一昨々年の昭和四十年は五十二名、最近は五十名前後というのが大体の数になっておるわけでございます。  これが数でございますが、検事志望者が少ないという点につきましては、いろいろな事実、原因が考えられるかと思います。それらがお互いに総合してこの結果になっておると思うのでございますが、通常どもが考えておりますのは、給与の問題ももとよりございます。初任給弁護士との関係において悪いという点ももとよりございますけれども、そのほかに、やはり最初の若い諸君のいわばマイホーム主義と申しますか、夜おそくまで、あるいは朝早くから仕事をするというようなことを必ずしも喜ばない、マイホーム主義的な人生のいき方というほうに魅力を感ずるというような心情でございましてか、あるいは検事をいたしますと転勤というものが必ずついて回るわけでございますが、この転勤をいやがるというような点もございます。かようないろいろな要素が組み合いまして、現在かような実情になっておるのではないかと私どもは考えておる次第でございます。
  24. 岡沢完治

    岡沢委員 いまの御答弁にございました四十九名、これは、志望者は何名であって、採用者は何名か。それから、きのう最高裁からお聞きはいたしましたけれども、念のために、ことしの司法修習生を終わった者の全体数、そして判事判事補弁護士の数、あわせてお答えいただきたい。
  25. 辻辰三郎

    辻政府委員 本年の四月に修習を終わりました司法修習生は、昨日も最高裁人事局長から御答弁がございましたとおり、合計で五百十一名でございます。採用の結果は、判事補が七十七名、簡易裁判所判事八名、検事は先ほど申しましたとおり四十九名でございまして、弁護士が三百七十名。その他が七名という形になるわけでございます。  検事四十九名につきましては、検事を志望して採用しなかった者があるかどうかという点になるわけでございます。昨年具体的にそういう例があったかどうか、ちょっと私いま資料を持っておりませんが、例年、検事採用いたします場合には、原則としてもちろん本人が志望すれば採用いたしておりますが、いろいろな関係から検事としてふさわしくないというような事情のある者につきましては、これを採用しないという例もございます。おおむねやはり志望どおり採用しておると思いますけれども、例外的には本人が志望しても採用していないという事例もございますが、これは比較的きわめてわずかな数でございます。
  26. 岡沢完治

    岡沢委員 これは昨日最高裁にも申し上げたのでございますけれども判事補希望検事希望弁護士希望と比べて、もう比較にならないほど少ない。また、修習生待遇については、きのう指摘をいたしまして、十分とは言えませんが、しかし国家の税金で養成を受けている修習生が、なぜ判検事になりたがらないかということについては、待遇の面ももちろんございますし、そのことについてもあと質問を続行したいと思いますけれども、やはり何か、先ほど官房長お答えになりました転勤とかマイホーム主義というもので済まされないものがあるのではないか。ことに検事につきましては、優秀な検察官を多数存じてはおりますけれども、一般の風潮として、公益の代表者でなしにむしろ権力の代弁者というふうな誤った思想が国民の中に浸透しておるという結果が影響しておるのではないかということを心配するわけでございまして、そういう点から私は、司法研修所のあり方あるいは教官の選び方、あるいはその教育内容、また検察庁というのは性質上そうPRをなさるべき場所ではないかもしれませんけれども、やはり国民検察に対する理解を求める、深めるという努力をしてもらう必要があるのではないか。何といいますか、あまりにかたくお考えになり過ぎて、ほんとうの意味での検察官の職責の重要性というものが国民に誤解をされておるというところにも一因があるような感じがいたします。いまの御答弁でも率直にはおっしゃいませんけれども、おそらく四十九名の検事志望者がそのまま  一〇〇%採用されたというのが実態ではないかと思うのです。きのうも申し上げましたが、百名の志望者から四十九名にしぼっていただけるなら、これは優秀な人が選ばれた、数だけで批判はできませんけれども、そういう見方もできますが、希望者全員採用せざるを得ないというところに大きな疑問を持つわけであります。もちろんその中には優秀な人材もおられるということも信じますけれども、しかし全員採用となりますれば、高校の全入と同じように、それにふさわしくない能力の持ち主が採用の対象になるということは常識上考えられるわけでございます。ぜひともこれらの問題について御検討をいただきたい、御再考をわずらわせたいと思うわけでございます。それにつきましても、具体的に、そういうPRとかいう抽象論を抜きにして、やはりどうしたら検事志望者を確保できるかということについては待遇の問題が欠かせないと思うのです。そういう点につきまして、検事給与の問題、待遇がやはり不満の一因になっているかどうかというような問題につきまして、もし検察庁としてこの際明らかにしておきたいということがありましたらお教えをいただきたいと思います。
  27. 辻辰三郎

    辻政府委員 ただいま、検事志望者の少ないいろいろな要因につきましてお説を承りまして、私ども感銘をいたしておる次第でございます。仰せのとおりの事情も確かに多いと思います。私どもなお十分反省いたしまして、お説に沿うようにつとめていきたいと思います。ただ、しかしながら、先生先ほどおっしゃいました、志望者は必ず採用しているじゃないかという点につきましては、多少検事の場合には事情が違う面もございます。と申しますのは、検事の職務の性質にかんがみまして、初任のときからあまりにも高年齢の人は、やはりそれから検事の第一歩を踏み出すという事情がございまして、かりに五十歳あるいは四十歳の司法修習生がいわゆる一から検事をやっていく場合には、やはり検事の官僚組織と申しますか、一つの組織体における検事という面から、あまりにも高年齢の人はふさわしくないのじゃないかという点で、そういう点から、検事を志望しておるけれども、私のほうではこれはかえってよろしくないのじゃないかというような関係採用しないという例は相当あるわけでございます。その点だけ一言つけ加えさせていただきたいと存じます。
  28. 岡沢完治

    岡沢委員 先ほどの大臣答弁にもありましたが、増員要求はしている、しかし現に定員よりも欠員が五十一名もあるということで大蔵省からけられる。私は、まあそれは普通なら当然だと思います。そういうことになりますと、いつまでも充足はできないということになります。やはりこの問題は看過できない大事な問題であると思います。ことに、申し上げるまでもございませんが、いま大学紛争また七十年安保を控えまして治安問題、法秩序の維持ということがきわめて重要視されているときに、検事の数をふやすことだけが決してその対策でないことは十分承知をしておりますが、法治国として検察官の果たす職責ということを考えました場合には、実際に事件処理の能力も含めて、非常な危惧を私は持つものでございまして、ぜひとも増員要求を実現していただくように強く大臣にお願いをするとともに、いかに定員を確保されましても、増員を確保されましても、実際に検事のなり手がないという悲しい実情について、何か具体的な対策を講じていただかないと、先ほど来事件数の推移というものを見ますと、どんどんふえておるのに、検事の希望者はむしろ横ばいあるいは減ったりもしておるわけでありまして、これではほんとうの意味検察の大事な使命が達成されないおそれがあるような感じがいたしますので、ぜひとも具体策をお願いして、多数の検事志望者、しかも優秀な修習生出身の人材が集まるような検察庁になっていただきたい、これをお願いしておきます。  次に副検事の問題に移りたいと思いますけれども、副検事任官数の推移についてお尋ねをいたします。
  29. 藤島昭

    藤島説明員 副検事採用でございますが、副検事の場合は検事と異なりまして、給源の点ではそれほど問題はないわけでございます。と申しますのは、検察庁法によりまして一定の資格のある検察事務官あるいは裁判所書記官、そういうような特定の官職にある者が一定の資格を得ますと、副検事選考試験というものがございまして、それを経て採用するということで、したがって給源の点ではそれほど問題はないわけであります。  実数でございますが、ことしが六十二名、四十二年が六十九名、四十一年が四十三名、こういうことになっております。
  30. 岡沢完治

    岡沢委員 いまの御答弁で数字はわかりますけれども、私はやはりこのあとでお願いいたします検察事務官制度と関連して、副検事の活用といいますか、修習生出身の検事志望者が少ない場合に、事務官から副検事になり、また副検事から検事になる希望を与えるとともに、検事の不足を補っていただくというのには私は一つの活路ではないかという感じがいたしますので、検事採用についていまの数字を見ますと、必ずしも事件の数の推移と比較して採用が順調に行なわれているという感じはいたしません。もちろん検察事務官の中で副検事にふさわしい能力と識見を持った人が少ないということが原因しているかもしれませんけれども、私は人というのはつくるべきものだという感じを持っておるだけに、せめて検事志望者が少ない現実を補う意味で、ぜひとも検察事務官から副検事へ、副検事から優秀な人は検事へという道を開かれる必要があるのではないか。それによって優秀な検察事務官あるいは検察庁自体の質の向上と明るい希望を与えるのではないかという感じがするわけであります。いわゆる副検事から検事に昇任することは認められておりますが、いわゆる昇任検事の問題について、その実態をこの際お尋ねいたします。
  31. 辻辰三郎

    辻政府委員 副検事を三年つとめまして、それから一定の考試を経て検事になる、いわゆる特任検事でございますが、この採用状況は本年が五名でございます。四十二年は七名、それから四十一年は五名、四十年は七名、大体五名ないし七名毎年採用している、これが実情でございます。
  32. 岡沢完治

    岡沢委員 いまの官房長お答えにもございましたが、非常に少ないわけでございます。制度があるだけではないかという感じがいたします。昇任検事あるいは特任検事にふさわしい副検事が少ないのだとおっしゃればそれまででございますけれども、先ほども申し上げましたように、人材はあるものじゃなしにつくるべきものだということを考えますと、私はここにいわゆる通常検事の特権意識が副検事から検事になるのをはばもうとしているという気風もなきにしもあらず、われわれ弁護士が、弁護士の絶対数がふえることについて、弁護士会全体としての空気はあまり歓迎をしないのと同じような感じを持つわけでございます。これはしかし非常に大きな間違いでありまして、やはり私は必要があり、不足している現在の検事を補う意味からも、副検事からの検事昇任ということについて、いわゆるなわ張り根性を離れていただいて、道を開いていただくべきじゃないか、この制度について、いまの五名とか七名ということになりますと、もう制度自体について検察庁は乗り気ではないのじゃないか、法務省は乗り気ではないのじゃないかという印象を持つわけでございますが、将来この制度についてどういうお考えをお持ちであるか、お尋ねをいたします。
  33. 辻辰三郎

    辻政府委員 このいわゆる特別任用の制度でございますが、これは御案内のとおり司法試験に準ずるたいへん程度の高い試験を実施いたしておりまして、司法試験合格者と全く同じぐらいの実力を持った者が採用されておるわけでございます。この試験の結果が先ほど申し上げましたような数となってくるわけでございます。しかしながら、この制度も発足以来相当の年月を経過いたしておりまして、この特別任用になりました検事も、ちょっと正確な合計数を存じませんが、合計いたしますと五十名を突破しておるわけでございます。そういたしますと、検察庁勤務しております検事全体を約千名と見ますと、この千名中五十名はこの特別任用の検事がおるわけでございまして、現実に検察陣営の有力な一つの要素となって検察運営に邁進しておる、こういう実情になっております。
  34. 岡沢完治

    岡沢委員 官房長からいまこの制度の継続その他のことについてはお答えがなかったわけですけれども、当然これは継続されるという前提かと思います。私は、なるほど検事の全体の質を考えた場合に、むやみやたらと副検事検事にさせないというお気持ちはわかりますし、また検事の水準が低下することを求めるものではございませんけれども、しかし、これからお尋ねいたします検察事務官に大きな希望を与え、あるいはまた検察事務官に優秀な人材を確保する大前提として、副検事から昇任検事への道を大きく開いていただくということも、私は先ほど来の検事の絶対数不足の打開策として注目すべき点だと思います。  次に、検察事務官についてお尋ねいたしますが、検事、副検事を除きます検察庁職員の構成はどうなっているか、具体的にお尋ねをしたいと思います。
  35. 藤島昭

    藤島説明員 四十三年の定員法が通った場合を仮定しての定員が、検察事務官以下の職員で八千九百五十四人ございますが、これを内訳で申し上げますと、検察事務官が七千五百九十一人でございます。ちょっとこまかくなりますけれども検察事務官の中にも事務局系統、庶務会計の系統の仕事をしておる職員は、俸給表で申しますと行政職俸給表(一)の適用を受けまして、それ以外の検察事務をやっている検察事務官が公安職俸給表の(二)に当たりますが、公安職(二)の適用を受けておる職員が六千百七人おります。それから検察技官が三十六人、これは証拠の採証の仕事をしておる職員でございます。それから任官する前の事務員という制度がございますが、たとえば初級の試験で入りますと、一年間任官しないで事務員という扱いになるわけでございますが、この職員が五百八十五人、それからいわゆる庁務員、技能員、これらを合わせまして七百四十二人、合計いたしまして八千九百五十四人、こういうことになるわけでございます。
  36. 岡沢完治

    岡沢委員 警察と違って検察庁の場合、特に検察中心であります捜査関係では、検事一人に一人の検察事務官というのが私は通常かと思います。それだけに、検事の能力を発揮さすために検察事務官の質の良否ということは、きわめて大きく検察行政の能率化あるいは適正化に影響すると思うわけであります。そういう点で、検察事務官の職責というのはかなり大きく評価されなければならないと思うわけでありますが、この検察事務官採用状況あるいはその給与面で特に考えるべき点がございましたら、指摘をしていただきたいと思います。
  37. 藤島昭

    藤島説明員 検察事務官採用状況についてはちょっと正確な数字を持ってまいっておりませんが、給与面については先ほど御説明申しましたように、行政職と公安職の俸給表がございます。公安職の俸給表と申しますのは、職務の困難性、複雑性、特殊性、こういうものが加味されて、一般の行政職(一)の俸給表よりも待遇のいい俸給表でございます。したがって、検察事務官につきましてはその職務の重要性、困難性というものが認められまして、公安職俸給表(二)の適用を受けるわけであります。これは同じ水準の者と比較いたしますと、二号差と申しますか、約一二%俸給の内容がよくなるわけでございます。  こういう待遇を受けているほかに、検察事務官の中でも、検察庁法の三十六条によりまして、いわゆる検察官事務取り扱い、検取り事務官と申しておりますが、これにつきましてはさらにその上に四%の俸給調整が認められております。これは公安職口の俸給表の上にさらに四%加わる、こういうことでございまして、関係当局においては検察事務官の職務の内容というものを相当御理解いただいておると思うのでございますけれども、もちろんこれで十分というわけではございませんので、さらに上位の等級別定数の獲得あるいはさらに上位の俸給調整というような点について、今後とも関係当局にも実情をよく話しまして、待遇改善に努力いたしたい、こう考えております。
  38. 岡沢完治

    岡沢委員 それでは、公安関係検察事務官の超過勤務手当は実際に支給されておるかどうか、その点お尋ねいたします。
  39. 藤島昭

    藤島説明員 検察庁関係の超過勤務手当の総額が、たしか一億三千五百万と思います。この超過勤務手当については、財政当局のお考えでございましょうか、各省そうアンバランスがなくて、大体統一的な基準で認められるわけでございます。したがって、検察庁におきまして、いろいろ公安事件等で夜おそくまで勤務するようなことが長く続く場合がございますが、先ほど局長がちょっと申しましたように、一年じゅうそうではございませんので、ならしますと実績より若干下回るというような関係でございます。
  40. 岡沢完治

    岡沢委員 課長さん非常に遠慮深いので、私はいささか不満です。というのは、私が媒酌しました検察事務官がこの間なくなりました。過労であります。非常に過労でありまして、検察事務官というのは報われない。しかも非常に苦労が多い。検事はある意味では花形で表面に出ますけれども、まじめな検察事務官ほど精神的にあるいは肉体的に非常に重労働だと思うわけであります。また私の知っております範囲では、検察事務官採用時期が、率直に言って、ほかの官庁よりも非常におくれるために、あまり優秀な人が来ないというような面もありまして、検察事務官の質の問題、その待遇等にももちろん結びついてまいりますが、非常に憂慮すべき実態にあるんではないか。先ほど来のお答えによりましても、検察庁職員全体の絶対数も不足しておりますが、特に検事の不足で、定員も補えないというような実態からいたしまして、せめてその補佐の検察事務官に人を得、あるいはその採用に十分な給源があるということがきわめて大切ではないかという感じがいたしますだけに、私は、検察事務官制度についてもぜひこの際洗い直していただきたい。先ほど申し上げましたように、検察事務官から副検事へ、副検事から検事へという希望を持たすことによって、庁内全体が明るく活気つき——検察庁が張り切ってもらうのはいいか悪いかという問題がありますけれども、しかし、国民治安維持について、あるいは公益の代弁者としての職責遂行について不安感を持たさないということはきわめて大切だと思いますので、検察事務官制度についても、ぜひともこの際御検討いただくようお願いしておきます。  最後に、先ほど大臣からお答えをいただきましたのではございますけれども、いままで聞いていただきました検察庁実態、特に公安事件等の激増を考えました場合に、優秀な検事、副検事を含めまして検察官を確保するということは、法治国家として現在きわめて重要な問題ではないかというように考えるわけでございますが、その待遇改善ということも人材確保の一つの道でもあるかと思います。ことに検察官に対する国民の誤解が多いこのときに、優秀な人材を集めることの苦労ということが感じられるだけに、せめて待遇面ではほかの諸君よりも優遇されるということによって、人材確保の道を開くというのもやはり具体的な一案かと思います。そういう意味も含めて、また検察庁への国民の理解を深めるというような意味で、大臣として現在お考えいただいていることがありましたら、この際明らかにしていただきたいと思います。
  41. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 先ほど来、私どもにとりましてはたいへん大事な問題を御質疑いただきまして、まことに感謝にたえません。  先ほど検事増員のときに八十二名と申しましたけれども、副検事明年度予算には六十九名増員要求し、また、ただいまのお話の検察事務官につきましても二百三十九名という数を要求しておりますけれども検事につきましても空席の問題等があって、大蔵省を納得させることが非常にむずかしいのでございますが、ただいま法務委員会におきましてお話しの点は、今後検察陣営、運営等から考えまして非常に大事なことでございますので、私も大蔵省とは強く折衝をいたしまして、こういうものにつきまして、今後とも皆さま方のお力も拝借いたしまして、懸命の努力をいたしたいと考えております。
  42. 岡沢完治

    岡沢委員 終わります。     —————————————
  43. 永田亮一

    永田委員長 次に、裁判所司法行政に関する件、法務行政に関する件、検察行政に関する件及び人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。猪俣浩三君。
  44. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 私は、法務大臣に御所見を承りたいと思います。  これは実は巷間の説でありますので、真偽のほどはわかりませんが、例の帝銀事件の被告平沢貞通、これが御存じのように刑が確定してから相当長くたっている。ところがこれに対して、どうも近く死刑が執行されるのではないかといううわさが出てくるわけです。これは大臣の判こ一つで決定される問題であります。  私が御考慮願いたい第一点は、いま、本委員会に再審制度特例法案が継続審議になっております。これは現行の刑事訴訟法の再審に関する門を多少広げまして、真実発見のために、裁判をほんとうに慎重にするということから開かれたものであります。それは、占領中の裁判が刑事訴訟法の改正なんかがありまして、人権擁護のために尽くすことに、弁護士裁判官検察官もお互いにふなれであった、そういう期間に限りまして、再審について門戸を広げてもらうという法案でありまして、その中には平沢貞通も入っておるわけであります。それで、できるならばこの法案が今国会で通過いたしまして法律となりまして、この新しい再審特例に関します法律に基づく再審が済んでからにしていただきたい。これが第一点であります。  第二点といたしましては、平沢を救う会なるものがありまして、この事務局長をやっております森川哲郎君なるものが偽証罪に問われました。いま控訴裁判中でありますが。第二審は、事実審としては終審になるような形でありますが、これに対して、重要な証人として平沢貞通を申請しているわけであります。まだ証人として決定するかどうか、裁判所の意向はわかりませんけれども、いやしくも、死刑囚といえども真実発見のために証人として出廷する必要があるわけでありますから、少なくともこの裁判中、平沢が証人として出廷できるようにしていただきたい、これが第二点であります。  第三点といたしましては、平沢に関しまする第十三回目の再審申請がなされ、いま高等裁判所で審理中であります。これに対しまして、主任弁護人の話によりますと、重大な証拠が提出される、しかもそのことについて裁判所ともいま打ち合わせ中である、こういう事案であります。そういう点から見まして、相当長くなっておりますけれども、平沢処刑につきましては、どうぞ慎重の上にも慎重にしていただきたい。  実は、平沢が東京から宮城の刑務所に移されたとき、これは死刑執行のためだといううわさが出まして、そこで私は、時の中垣法務大臣に対してその意思を問うたところが、中垣大臣は、私はその意思がない、いま死刑を執行するというようなことは考えておらぬという答弁がありまして、以来今日に及んできているのであります。ところが、またそういう説が出てまいっております。私は、新法務大臣が、就任早々さようなことをするとは考えられないと思うのですが、あるジャーナリストから、西郷さんは、何べん再審を繰り返しても同じことだから、今度は断行するという意思のようだという説が伝わりましたので、あなたに、あなたの御意思のほどを承りたい、こう思っての質問であります。
  45. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 猪俣先生からただいま、非常に御心配になりまして平沢貞通について御質問になとましたが、私も釈明しておきたいのは、先般雑誌記者から電話がありまして平沢の問題を聞かれました。いろいろ聞きますので、就任早々雑事に追われておりまして、そういう問題についてまだ説明を全然聞いておらぬので、私は、あれこれの意見は誤解を招くからいまのところは言えないと言って、よくわかりましたということで電話を切ったのでございますが、最近になりまして猪俣先生などが非常に御心配になっているということを私も聞きまして驚いたのであります。事実そういう御心配はございませんので、御了承を賜わりたいと思います。なお、いま先生からいろいろ平沢について質問を承りましたので、これは大事なことでもございますし、非常に厳粛な問題でございますので、私も慎重にそういう点については考えてまいりたいと思います。御心配はないと思います。
  46. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 ありがとうございました。それで了解いたしました。  そこで、大臣は何か決算委員会に出席要求せられているそうでありますので、私は出入国管理令の改正問題についてお尋ねしたいと思いまするけれども、こまかいことは局長さんから御答弁願うことにして、あなたも閣僚の一員としてぜひお願いしたいことは、この新しい管理令の改正について、全般的というか、二つの点に私ども関心があります。第一は中国との関係であります。これはこの管理令によってどうなるか、関係者は非常に心配している。それから第二は政治亡命の問題。これはなかなかむずかしい問題でございますが、ことしは世界人権宣言の二十年に当たる年でありまして、世界的に人権宣言年として取り扱われておりまするが、この政治亡命については、現在日本は難民の救済に関する条約に加盟しておりませんためにいろいろの問題が起こっておる。そこで今度の管理令について、政治亡命についての何か配慮があるように新聞報道されております。  そこで私はこまかいことはさておきまして、中国との問題について、これは、中国とは何とか関係を改善して友好を進めなければならぬということは、私は相当の世論になっておると思うのです。具体的のことを申し上げてあれだが、政党関係を見ましても、社会党その他の野党はもちろんでありますが、自民党の中にも、今度の総裁選挙にあらわれたとおりである。三木さんや藤山さんたちのような、日中問題をかかえて立って、その点で佐藤さんといささか政策は違うような印象を私どもは受けたのであります。ですから、与党の中にも、中国問題は何らかの形で改善しなければならぬという機運が動いているわけであります。それを国会全体といたしますならば、党議で縛られない限り、これは多数になるかと思うのであります。国民の世論はもちろんのことであります。そういう意味におきまして、いやしくも管理令の改正に際しましては、日中関係がよりよく親密に行なわれるように、結局は人間の問題でありまするから、中国人と日本人とがもっと自由に交通ができるようにという考え方が前向きの改正じゃないか。そしてそれが世論でもないか。  そこで、閣僚の一員としてあなたの御意見を承りたいと思うのであります。これは新聞報道によりますれば、十月十日に、新しい管理令を改正して来年の一月の国会に提出をする、こういうような政府の言明でありますが、まだ正式に当委員会にも発表されておりません。私はこのあと局長さんにもつとこまかいことを聞こうと思うのでありますが、通常国会にこれがかかると思うのです。いままでのポツダム政令を改めて管理法として、法律として提案される、これは適当なことだと思うのであります。国会で大いに審議しなければならぬと思うのですが、この原案が国会に出る前に、新しい法務大臣としてあなたの抱負もあることだと存じますので、私はなるべく日中友好関係を厚くする方向にこの管理令の原案をつくっていただきたいというふうに希望し、あなたは内閣においてもそれを主張せられることを希望するのでありますが、あなたの御所見を承りたいと思うのです。新しい管理令と日中間の人間の交流について、どういうふうに改善したいという御意向であるか。もし御意向がありますならば、まだ国会に提出されておりませんから、あなたの意思によって、悪いところは改むるにはばかることなかれなんですから、改めていただきたいと思うわけであります。あなたの大臣としての御抱負を承りたい。
  47. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 ただいま御指摘の入国管理令の問題でございますが、いまお話しのとおり、政治忘命とか、いろいろむずかしい点が多々ございまして、そういう点につきまして目下法務省におきまして慎重に検討を加えておりまするが、御承知のように、検討いたしますと非常にむずかしい問題がたくさんございますので、現在慎重を期しまして鋭意検討を進めておりまするが、まだ次の国会に提案するということはきめておりません。改正するとなれば全般的にいろいろ細心に検討を加えますので、私も就任以来さらにこの問題について全般的に検討をし直しまして、いまやっておりまするが、その状況によりまして私も判断したいと思います。何ぶん改正となりますと、この問題なかなかやっかいな点が多々あるわけであります。今後の検討の結果によりまして判断をしてまいりたい思います。  また、いま中国問題の点をおっしゃいましたが、これもイデオロギーは違いましても、やはり世界平和に貢献するという意味合いからも、中国と貿易をやったり親善関係を強力に推進してまいることは、現下の情勢からも非常に大事なことと思いますので、私もそういう大局的な見地に立ちまして今後問題を考えてまいりたい。大体先生のお話、同感でございます。
  48. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 あなたのおじいさんは征韓論を唱えられたというのですが、それが決して朝鮮と戦争する意味じゃないということが近年来の歴史家によって大いに証明されております。親善を厚くするための議論であったということを私ども承知しているわけであります。あなたはそのお孫さんに当たられるのでありまして、どうか祖父の意思を継いでアジアの親善のためにひとつ立ち上がっていただきたい。  そこでこの問題は、第一は、中国から入国するに際しましてのいままでの取り扱い方が相当やかましかったのであるが、今回はなおさらそれを厳重にするような規定がどうもあるようであります。これもまだ新聞発表だけでありまして、いまあなたの仰せのように確定案ではないというのでありますが、確定案でないならば、なお私希望としていろいろ申し上げたいのですが、何かはかの委員会もお急ぎのようでありますけれども、第一点は、代表団の入国についてもっと緩和すること、それから滞在中の監視などについてももっとゆるくすること、滞在日数の延長なんかについても、もうちょっと緩和する、そういう希望があるわけですが、改正法はどうもその逆のように考えられる。その点をよく御検討願いたい。  第二点は、今度は中国の船に対する問題であります。これも他国と非常に差別待遇をやっておる。船員の上陸許可の時間だとか、あるいはまたいわゆる半舷上陸の制限だとか、それから船の出入り口でしょっちゅう入管の役人が監視の目を光らして、ほとんど、何というか罪人を監視するような態度をとっておる。中国の船だけにやっておる。こういうようなことがあるのが、何かこれをなお厳重にするように、どうも新聞発表から見ると見受けられるのですが、これは私ははなはだ不都合なことだと思うのです。  なおそのほかに、今度日本人が中国へ行くことにつきましてはなはだ制限がある。これは外国と非常に違う。同じ共産圏でも、ソ連なんかへ行くのは渡航趣意書なんか五通でいいのを、中国だけは十五通出させる。そしてその渡航許可もソ連なら一日か二日でできるのに、中国の場合には十日ないし二十日。私の関係したのなんかは三十日、四十日と渡航が許可にならない、こういう実情であります。こういうことを何とか改正令によって改正してもらいたいというような問題がいろいろあるわけなんです。それらの問題について、こまかいことは局長お尋ねしますが、大臣といたしましては、さっき申しましたように、これらの中国人及び中国の船が諸外国と同じように、少なくとも平等に日本にもっと出入できるように、それから日本人が中国に渡るにつきましても、何がゆえに終戦後二十数年たっている今日においても全くめんどうなことをやっているのか、政府の意見がわからない。国民の意見からいいましてもそうだし、国会の多数の意見だ。自民党の中にもあるわけです。自民党と野党とが一緒になれば、国会の頭数は多いわけですよ。そういう情勢になっておるにもかかわらず、この管理令なるものは何か反対の方向を向いているような気がして私はかなわぬのですが、大臣は就任早々のことで具体的なことはおわかりにならぬと思いますが、前向きの姿勢でもう一ぺんこの管理令を検討し直していただく。大臣がかわったのですから、もとの案に拘泥する必要はないと思う。いま言った諸点につきまして、もっとよく事務当局と打ち合わせて、前向きの姿勢で管理令を検討していただきたい。そういう御意思がありますか、ないか、あなたの腹の中を打ち明けていただきたいのです。
  49. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 いま入国の問題についていろいろ御意見がございましたが、なかなかむずかしい問題がたくさん現在もあるわけでございまして、先ほど申し上げましたとおり、これ一つとりましても、いま御議論のようにいろいろむずかしい要素を含んでおります。したがいまして、今後ともそういう問題をあわせまして慎重に検討いたしまして、いま御注意のように、私も方向を誤らぬつもりでございますが、いま御心配の点等、その他たくさんございますので、今後とも時間をかけまして、そうして内容を充実してまいりたいと思います。  いろいろ御質問の具体的な事実につきましては、局長からお答えさせます。
  50. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 もう一点で、あなたどうぞ出ていただいてけっこうです。  それは先ほど申しました政治亡命の件です。これにつきまして、日本は条約には入っておらぬ。なぜ条約に入らぬのかと外務省に聞くと、難民の定義がはっきりしないということを言う。そんなばかなことはないのですよ。これはたくさんの条約なり協定があって、難民の定義というのは実に明確になっておる。今日、日本弁護士連合会から政治亡命に関する法律の案が提示されておりますが、難民の定義というのは、難民に関する条約の定義をそのまま用いておる。りっぱに定義はそれで用いられているのです。それを外務省の役人は、この定義じゃ不明確なんということを言うておる。私はまことにこれは奇怪だと思うのであります。そこで先ほど申しましたように、国際人権年でもありますし、これはたくさんの国際条約、国際協定ができておるわけでありまして、世界的に、この政治亡命というものに対しては国際慣習法としても保護しなければならぬということは、これは国際法学者の定説になっているわけであります。今度の管理令の改正には、何か政治亡命についての緩和の規定が書いてあると新聞に報道されております。その内容は私、詳しくわからぬのでありますが、これも局長から詳しく聞きますが、最高の責任者として、あなたの姿勢ですね、政治亡命なんという国際的な、最も進歩的な、これは一つの人道主義に基づいた大きな問題なんです。こういう問題についても、管理令をひとつ点検していただきまして、どうか世界に恥じないような政治亡命保護の規定を置いてもらいたいと思うわけでありますが、あなたの御見解を承りたい。
  51. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 いま御指摘の政治亡命の問題もこの中にございまするが、これも実際に法文として出すというようなことになりますときにはなかなかめんどうになりまして、現在のところはまだこれを入れるという考えでなく、むしろ省いておるのでございますが、なお非常に重要な要素を含んでおりますので、こういう問題も、今後入れるか入れないかは今後の検討によりますけれども、あわせて慎重に考えまして、御期待に沿いたいと考えております。
  52. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 大臣退席していただいてけっこうです。  新しい出入国管理法の原案が私の手元にないので、ただ新聞で報道されただけでありますが、どういう方向であるか、大体の方向はもうきまっておられると思いますが、あなたから、どういうところをどう改めるか、政府はどういう考えであるのかということについての御説明をいただきたいと思うわけでございます。
  53. 中川進

    ○中川(進)政府委員 お答えいたします。  現在の出入国管理令は、御承知のごとく昭和二十七年から施行せられております。したがいまして、すでに十六年経過しておるわけでございます。この法の実施せられましたときと現在と比べますと、わが国に出入国する人の数はたいへんなふえ方でございます。正確なことはよくわかりませんが、二十数倍から三十倍近いふえ方であろうと思います。したがいまして、いまのままでいつまでもやっておりますと、現在の私どもの有しております定員予算では、出入国を円滑に処理することがだんだん困難になってまいります。この外国との出入国がふえるという傾向は今後ともますますひどくこそなれ、決して少なくはなりませんので、そこで早目にこの出入国の手続を簡易化したいということが、出入国管理令を変える必要の第一点でございます。  第二といたしましては、これは実質的な影響はあまりございませんが、とにかくただいまに至りましていまだにポツダム政令というものをやっておる、ポツ勅をやっておるというのでは、いかにも独立国の権威にかかわるではないか、したがって、この際ひとつこのポツ勅を法律に改めたらどうであろうかということでございます。  それから第三の点は、外国との来往を簡易化する。一面におきましては、ひとつ日本にいる外国人の在留管理をより合理化する必要があるのではなかろうかという点でございます。  それから第四は、ただいま日本におります外国人を管理する重点といたしまして、どちらかと申しますと退去強制の手続ということに非常に重点が置かれておるのでございますが、今度はそういう官憲による退去手続というものよりももう一つ間接的に、退去事由に該当する外国人みずからの責任において出てもらうように、直接強制主義にかえます間接強制主義とでも申しますか、そういうような方法を取り入れたいということでございます。  その次に、第五番目でございますが、これは現在日本におりますところの外国人の大多数を占めるもとの朝鮮人及び台湾人——もとのと申しますか、もと日本国籍を持っておった朝鮮人、台湾人、これは御承知のごとく昭和二十七年法律百二十六号によりまして、在留資格のないまま日本におってもいいということになっております。この人たちのステータスには変更を加えない、こういうことでございます。大体大ざっぱに申しまして、そういうふうな点がねらいになっております。
  54. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それではちょっとこまかくお尋ねいたしますが、現行法令では観光客の在留期間が六十日、ところがアマチュアスポーツとか親族訪問とか視察、見学、業務連絡等の場合には、それぞれ個別に事情を聞いて滞在期間をきめておる。たとえば中国の展覧会に関する団体のあれは百八十日、六カ月にきめられておる。ところが伝えられるところによると、この法案では一括して短期旅行者なる資格を設けて、すべて九十日にする、こうなっておるわけでありますが、そういう規定になっておりますか。
  55. 中川進

    ○中川(進)政府委員 規定は、ただいまも大臣から申し上げましたように、必ずしも終局的に固まったわけではございませんが、私どもの一応の案としてはそういうふうになっております。
  56. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 大臣はまだ終局的ではないと申しておりますから、これはよほど考慮していただきたいと思うのです。おもに中国の貿易関係の人はこれを非常に心痛しておるわけでありますから、こういうことでは実際何も仕事ができないらしいのであります。中国と日本の技術交流とか貿易交流、展覧会とかいうようなことでも、この九十日というようなことではとてもおさまりがつかぬ。どういうわけでこういうふうに短くなされたのか、その理由は何でありますか。いままで六カ月も中国人に許されたのが、今度は三カ月になっちゃうのですが、どういうわけでそうなさるのか。
  57. 中川進

    ○中川(進)政府委員 中国から入ってこられる方の用務の性質によるわけでございますが、私どもが六十日を九十日に延ばしましたのは、むしろ先生のおっしゃることと逆でございまして、日本に三十日よけい長くおっていただくというつもりで延ばしたのでございまして、いままでであれば六十日で帰っていただいたのを九十日おっていただくということでございまして、その意味ではむしろ善政と申しますか、態度を緩和したと考えております。さらにまた、九十日おりまして、用務によりますが、どうしても九十日で用務を達せられないから、また延ばしてもらいたいということがございましたら、例の期間の延長ということがございまして、また九十日差し上げるということもあるわけでございますから、その点はあまり御心配はないかと思います。  また、いま猪俣先生の御質問になっておられます中国からの来訪者の種類でございますが、これが純粋なと申しますか、貿易業務ということでありますと、これはいまの先生の言われる九十日のほうに入れませんで、別のカテゴリーになるわけでございまして、百八十日ということで、変更は加えないつもりでございます。私どもが入れましたこの九十日というのは、何といいますか、会社のちょっとした連絡にくるとかなんとかいう、要するに初めから短期間の滞在で事が足りるという目的のための入国を考えておるのでございます。
  58. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 きょうは法案の審査でありませんので、ただ御説明だけ承っておきたいと思うのです。  なお、この法令の改正には、在留外国人の管理が非常に厳重になるように伝えられておるのでありますが、第一に、入国の際の査証を与える際に条件を付することであります。いままでは入国申請は何といいますか、後援団体といいますか関係団体、たとえば国際貿易振興会というものがありまして、そういう団体が代理申請をやっておった。今度はそれが代理申請が許されないのじゃなかろうか、本人申請でなければいかぬのじゃなかろうかという心配、そうなるといろいろの故障ができるらしいのでありますが、そういう心配をしている向きがあるのですが、これはどうなんですか。やはり本人申請、一切の、これは入国に関するのみならず、滞在期間延長申請もすべて代理を許さぬということになるのですか、どうなんですか。
  59. 中川進

    ○中川(進)政府委員 最後のほうから先にお答えいたしますが、現在でもその入国滞在期間の延長ということは代理ではございませんで、本人の出頭によってこれを行なうということになっております。これは守らない人が悪いと申しますか、守られないことが結果的にたまにございますが、これは本人が病気であるとか、何か特別の事由があって来られない場合に限るわけでございまして、この方針は、かりに新しい入国管理法ができましても、従来どおり変更しないでやっていきたいと思っております。  それから最初の御質問の代理申請による入国拒否の件でございますが、この点に関しましては、私どもは別に変更を加えるつもりはいまのところは持っておりません。
  60. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 入国の際に、いままでの代理申請を認める方針に変わりないのでございますか。
  61. 中川進

    ○中川(進)政府委員 そのつもりでおります。
  62. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それから今度は中国入国に関する問題ですが、その前に、外務省から来ておられますから、ちょっと林旅券課長さんにお尋ねしますが、いま入管局長にもお尋ねしたのですが、中国へ日本人が入国しようとする際に、どういう手続をするわけですか。     〔委員長退席、高橋(英)委員長代理着席〕
  63. 林祐一

    ○林説明員 お答えします。  現在中国と日本との関係におきましては、承認関係がございません。しかし邦人で渡航するという場合におきましては、旅券法の第三条の添付書類といたしまして、無承認共産圏地域への渡航趣意書というものを提出していただきます。これを見ました上で、関係省と相はかって旅券の発給をするという手続でございます。
  64. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 ところがその渡航趣意書なるものが、ソ連等へ行く場合には五通出せばいいのに、中国だけは十五通出さなければならぬ、これはどういうわけですか。
  65. 林祐一

    ○林説明員 これは関係省との協議をするに際しまして、無承認共産圏と承認共産圏との取り扱いが若干違っておりますので、特に関係省との協議という点におきまして部数を多くいただいておるわけでございます。
  66. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうするとソ連等へは一日、二日で審査を終わって旅券が出るのですが、中国の場合には十日ないし二十日、私の関係したのは三十日、四十日も旅券がおりないことがあるが、一体どういうわけですか。
  67. 林祐一

    ○林説明員 正確に申し上げますと、旅券法の第十三条の規定がございます。第十三条の第一項五号に、いわゆる国の利益もしくは公安という条項がございまして、その条項に照らしまして第二項の規定で、特に法務大臣と協議をするということがございます。外務大臣と法務大臣の協議がととのうまでかような時間が要る。ケース・バイ・ケースではありますが、要るものと考えられます。
  68. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 中川さん、お尋ねしますが、中国への渡航の場合には、法務省は、ソ連やその他の外国に渡航する場合と違って、何をそう手間どって審査するのですか。
  69. 中川進

    ○中川(進)政府委員 一がいに何ということは申し上げかねるわけでございますが、やはりわが国のいわゆる国益、公安に害があるかないかというような点につきまして審査するわけでございます。
  70. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 まあ、議論はやめておきましょう。  それから、今度の管理令の改正につきまして、いままでは出入国管理令十四条及び施行規則によりまして、上陸許可の時間は七十二時間、一般はそうなっておるわけです。しかるに中国船に限っては二十四時間、これはどういうわけなんですか。船員の上陸期間、一般は七十二時間、中国船に限っては二十四時間、こういうことが中国人には非常に悪い印象を与えるわけだが、どうしてこういうことをおやりになったのか。
  71. 中川進

    ○中川(進)政府委員 これはやはり国交のある国とない国に対して若干取り扱いが異なっておるわけでございまして、その点からこういう違いが生じておるわけでございます。
  72. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 今度の管理法でもやはりこういうことになるわけですか。
  73. 中川進

    ○中川(進)政府委員 これは別に法律で必ずしも二十四時間に切れということをきめておるわけではございませんので、法律自体は、御承知のように、先生いまお読みになりましたごとく七十二時間ということになっておりますが、私どもは、今度の新法におきましてはこれをもっと延ばしたいと考えております。少なくとも五日、六日あるいは七日くらい——まだ何日まで延ばすかはきめておりませんが、とにかく七十二時間よりは長くしたい、かように考えております。
  74. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると、現行法よりは船員の上陸期間を長くする、こう承ってよろしいですか。
  75. 中川進

    ○中川(進)政府委員 はい。
  76. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それから今度は船員の上陸について、何人船に残して何人上陸を許すかということは、これは船長の権限だと思うのです。しかるに入国管理局では半分だけしか上陸を許さぬ。半分は上陸を許さぬという取り扱いを中国にしておるわけですが、これはまたどういう理由で、どういう法的根拠がありますか。
  77. 中川進

    ○中川(進)政府委員 外国の船員を日本に上げるかどうかということは、やかましく法的根拠を尋ねますと、これは主権国であります日本側の権限でございまして、その法の一般原則及びただいま先生の申されました十四条、しいていえばそういうところに根拠法規がございます。なぜそういうことをするかということは、これはやはり多年の慣行ということもございますし、やはり国交未回復の国でありまして、日本の公安の維持というような点からも考えましてこういう慣行が生まれたものと思います。
  78. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると、これは現行のやり方を今度の法令では別に改正する意思はないのですか。
  79. 中川進

    ○中川(進)政府委員 これは先ほど申し上げましたように、法律の規定自体としましては、半分上げようと三分の二上げようと百分の百上げましょうと、それは日本側の判断によりましてできることになっておりますから、法律の改正によりまして半舷上陸を全面上陸にするとかしないとかいうこととは、必ずしも直接の関係はない問題でございます。
  80. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 これはどこで認定されるのですか。こういうことがさつき言ったような前向きの中国関係を樹立するという意味において大きな問題があるのですが、一体これはほかの国にもやっておるのか。中国だけ半舷上陸というようなことをやっておるのですか。そしてそれを法律に基づかずして時の政府の考えでやるとなれば、ますます時の政府と中国との関係がむずかしくなると私は思うのです。そうすると、ある国は全部上陸させる、ある国は半分しかあれしない、そこに非常に差別ができるわけですが、その差別をつけるのはどこの官庁でやっておるのですか。
  81. 中川進

    ○中川(進)政府委員 上陸を許可する範囲と申しますか期日と申しますか、そういう許可の内容を決定するのは法務省でございます。
  82. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そこで、大臣大臣になりたてで詳しくわかりませんが、局長は相当長い間やっておられるので——まだ確定案ができていないというのですが、これは法律でどこの国とも同じようにきめるか、あるいは大体平等に政治配慮でやるか、そうしないとますます中国に差別されておるような印象を与えてはまことにまずいと思うのです。これはどうですか、法律で一律にやるわけにいかぬのですか。
  83. 中川進

    ○中川(進)政府委員 もちろん法律の規定によりまして、わが国に入港する船舶の乗り組み員は全部一律に平等に扱うべしということを規定することは不可能ではございません。しかしながら、これはやはりケース・バイ・ケース、事情がございますので、法律といたしましてそこまで詳しくきめる必要は必ずしもないものと存じます。
  84. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それから中国船に対する舷門監視の問題があるのですが、中国船に対してのみ非常に厳重な監視をやっておる。これが彼らに非常に悪感情を抱かせるわけです。前向きに国交をとにかくよくしようと努力するならば、こういうことからやはり変えていかなければならぬと思うのです。ところが今度の改正案は、なおこれを厳重にするような措置が織り込まれておるのじゃないですか。何がゆえに中国船だけにそれをやるのか。今度の改正案がいままでよりもなお強化するような——いままでのやり方は、朝から中に入ってきて五時ごろまで中を調べて、中には泊まって翌朝まで船内を監視しておる。中国船に対してだけそういうことをやっておる。こういうことは非常な悪影響をもたらすとぼくは思うのです。大臣が言うように、ほんとうに中国との親善を厚くするのならば、こんなばかげたこと、船に乗ってきた人をみんな罪人扱いするというような態度、こういうことは改めなければならぬと思うのです。しかるにそれを今度の改正案は強化するように受け取れるような条項があると思われるのですが、それはどうなんですか。
  85. 中川進

    ○中川(進)政府委員 舷門立哨の趣旨は、私が受けております説明によりますと、そういうことではなくて、日本人、あるいは日本人に限りませんが、日本にいるだれか過激な分子が中国船に対して乱暴するというようなことが万が一あってはいけないから、むしろ中国の船員の保護のために当たっておるのだというふうに聞いております。  それから、新しい規定によりましてこの舷門立哨をどうするかこうするかという御質問でございますが、これは別に私どもその法律の規定をまたなくても、またやめることが国策に沿うということで御決定がございましたら、やめることはできるのでございまして、法律にはそのようなことは書いてございません。
  86. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 実際問題としまして、いまあなたがおっしゃるように、日本の右翼関係の乱暴なやつが乱暴をやってはいかぬというような配慮がありまして、この貿易船が入ってきたような際には、国際貿易促進協議会か、そういう団体がありまして、中国人はわかりませんから、日本のそういう団体が、この人は船の中へ入ってもいいという券を発行して、その券を持った人だけが入るようになっているわけなんです。だからその券を持っている人は、中国人に危害を加えるような人は、こっちの招待した側でその人間に船の中へ入っていいという券を渡す道理はない。あなたの言うような心配があるために、そういう取り扱いを民間でやっているわけですよ。中国人に会いに行くには、その日本の団体が証明をして、船へ行ってもよろしいという券を与えて、その券を持って入っているわけなんです。だから管理事務所でわざわざ寝泊まりまでして監視するというようなことはないわけです。彼らは自分らの保護のためなんて思っていませんよ。自分たちに対するスパイをやるか監視をやるか、何らかのために入ってきておる。自分たちに危害を加える者は入っていない。日本の団体がそういう証明をした者だけしか入れていない、その者だけにしか会っていない、しかるに入管では朝から晩まで、中には泊まり込んでやっておる。これが非常に感情を害しておる。こういうことを改めることはできませんか。
  87. 中川進

    ○中川(進)政府委員 もちろん実際にやっておりますのは入国管理局がやっておるわけでございますが、いろいろまた治安当局の御都合もあると思うのでございます。しかしせっかくの先生の御注意でございますので、よく検討させていただきたいと思います。
  88. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 まだこまかくお聞きしたいことがあるけれども、お昼までと約束してしまったので、時間が来ましたので私はこの程度でやめますが、中川さんも非常に苦しい立場であろうけれども、大きな日中国交回復のやはり一環をなしておるわけでありますから、その点を十分注意していただきたい。  それからもう一点最後に、政治亡命に対して何か新しく規定されますかどうですか。
  89. 中川進

    ○中川(進)政府委員 政治亡命ということになりますと、先ほど大臣が申されましたごとく非常に問題が大きくなりますので、これの総括的な意味における規定は、新しい法律案にはいまのところ置いておりません。ただしこまかい条項の中で、たとえば従来いつも問題になります送還先に関しまして従来はその人が出てきた国に送り帰すことが不可能なときは帰さないということになっておりますが、今度はもう少しそれを広げまして、帰すことが適当でないときは本国に帰さなくてもいい。判断のしかたをだいぶゆるめております。そういうような面におきまして若干政治亡命者に対する取り扱いの緩和と申しますか、ゆるくしたという点があるわけでございます。
  90. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それから、なおもう一点だけ要望いたしまして私は終わりますが、日本弁護士連合会が政治亡命者保護法案なるものを出しておるのですが、それに書いてありますが、政治亡命と認められた場合には法務大臣は滞在を許可しなければならない。それを許可しない場合に対しては行政訴訟を起こす。行政訴訟を起こした以上は、その判決が出るまでは滞在をせしめなければならぬ、こういう法案がありますが、どうもいままで柳文郷事件なんというもので、裁判の手続をやったところが、その間に帰してしまったというようなことをおやりになっておったようでありますが、これはやはり裁判所におまかせになったほうが入国管理局でもいいと思う。先般あなたにお願いしました大阪の大山桂子の滞在問題ですが、これは入管ではだめだという引導を渡されてしまって、大阪の地方裁判所に行政訴訟を起こすために執行停止の申請をやりまして、これは許可になりまして、結局強制退去は裁判確定までできない。これは難民ではございません。ほんとうに生活困窮者で、向こうへ行っては生活ができないという事情裁判所が許可した。それは一歩進んだ態度だと思うのですが、そういうわけで、やはり裁判の結果ならみんな承服するのですから、入管局がどんどんと台湾や韓国のごきげんとりのために人道を無視するようなことはあまりなさらぬように、これは特に中川さんにお願い申しておきます。
  91. 中川進

    ○中川(進)政府委員 御忠言ありがたく拝聴いたしておきます。
  92. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員長代理 午後一時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時二十五分休憩     —————————————     午後一時四十一分開議
  93. 永田亮一

    永田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国政調査関係質疑を続行いたします。佐々木良作君。
  94. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 質問に入る前に、議事進行の形で委員長にお願いしておきたいと思います。  国政調査の審議でございますから、理事会でいろいろ御相談を前提として運営されると思いますけれども、従来の慣例は、私は、予算委員会ほど、そんなに時間は厳格なものではなかろうと思います。したがいまして、予定はあるようでありますけれども、もし答弁をされるほうで、言うならば冗長な答弁をされますと、当然時間がなくなってまいりますので、その場合には、私も質問を途中で切りにくい状態でございまするから、委員長においてぜひ十分に御配慮をいただきたいと思います。  それでは質問に入ります。文部大臣国家公安委員長のお二人にお尋ねをいたしたいと思います。法の権威と社会秩序を守ることは、私はおよそ国家権力の最大の責務であると思います。しかるに、例をいまの東大の紛争事件に求めてこれを具体的に見ますと、事実、過激派の一部学生によって安田講堂の占拠ということが行なわれておりまして、このことは、私は法の権威をじゅうりんし、現在の学校社会の秩序を根本から破壊しておる行為であると考えます。しかるに、この端的な事実に対しまして、衆参両院のせんだっての予算委員会における政府側の答弁は、必ずしも一致をしておらないと思うのです。国民がいま最大の関心をもって見詰めておるこの問題に対しまして、政府当局自身がこのような問題に対して見解の統一を欠くことは、まことに私は重大だと思いまするので、むしろこの際に政府の見解の統一をはかる意味において、特に私は御質問を行なって、そしてひとつ対処をお願いをいたしたいと思います。  まず、文部大臣は、この問題に対しまして、予算委員会において、東大に起きておる一部学生による不法行為、要するに一部学生が不法行為を行なっているということは、これは常識だ、こういう意味の見解を述べられたと思いますが、この見解はいまだにお変わりがないか。あわせまして国家公安委員長に対しまして、同様の事件に対して、東大における一部学生の行為は、不当ではあっても必ずしも不法とは言いがたい。少なくとも不法行為というものを確認するためには学校当局の意思の確認が必要であって、そのことが行なわれ得ない現状においては、たとえば安田講堂の占拠のごときも、不法とは端的に認めがたい、こういう意味答弁をされたと思います。私は、明らかにお二人の見解は異なっておると思います。少なくとも国民に与える印象は明確に異なっておりますから、お二人のお考えをこの際明確に御答弁をいただきたいと思います。
  95. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 お答えをいたしたいと思います。先般の参議院予算委員会で、松下委員質問に対して私が申し上げましたのは、速記録を読みますと、安田講堂は不法に占拠されていると見るのが常識だというふうに申し述べたのでございますが、その場合の不法な占拠と申し上げましたのは、一般社会における常識的な意味というふうな気持ちで申し上げたわけでございます。
  96. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お尋ねのように、東大の現状が不法と見られる状態であり、こうした状態で長く放置されていることは許されない問題だと存じます。先日の参議院の予算委員会におきまして、松下委員の御質問に対して私が刑法第百三十条の関係を御説明しましたのは、現在までの状況から判断すれば、大学当局は学生の占拠を必ずしも刑法第百三十条が申しますように、ゆえなき侵入であるとは考えていないように理解されるという意味のことを申し上げたものでございまして、正常な常識から見れば、不法と見られる状態であるといわざるを得ないと考えます。しかし、だからといって、いま直ちに警察が学内に出動してこれを排除することが、根本的な解決になるとは考えられない実情にあろうかと存ずるのであります。現在大学当局をはじめ、関係機関によって必要な措置が講じられつつあるときでもありますし、また近く国会においても調査団を派遣されるなど、事態の解決について懸命の御努力をなされるやにも承っておる次第でもございます。したがって、警察としましては、いましばらく事態の推移を静観し、より高い立場から根本的に解決がなされることを願うものでございます。  なお、申すまでもなく、警察としては事態の重大化に対処し得ますよう、必要の態勢は整備いたしておるつもりでございます。
  97. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 荒木国家公安委員長に重ねてお尋ねをいたします。私が衆参両院の予算委員会におけるあなたの答弁に不満を抱きましたことは、いま御答弁の前段において、少なくとも常識的に見てこれはあくまでも不法な行為であるというところにとどめられることなしに、むしろそのことを否定されるような形で、言うならば法律書生一点ばりのような解釈をされて、そうしてここに不法が行なわれておらない——少なくとも不法が行なわれておるとするならば、すぐに捜査のための警察権が発動されねばならないが、その捜査のための警察権の発動にちゅうちょされるがゆえに、ここに不法が行なわれてはおらないというがごとき解釈を打ち立てられた、少なくともそのような認識を述べられたことにあるわけであります。少なくともそのような答弁姿勢自身に、私はむしろ従来から敬愛の念を禁じ得ない荒木大臣に対して非常な不満を感じたわけであります。裁判所において問題が議せられる際にそのような法解釈が行なわれることは、私は何ら介入する余地のないことだと思います。しかしながら、いま政治家としてこの事件にどう取り組むかというこの段階に、いかにも不法行為が行なわれておらないというごとき印象を与えることは、私は断じてまかりならぬ、こういうふうに思うわけであります。  それから、重ねてお伺いいたしますが、いまのお話によりますと、何だか常識的にはこれは不法というよりは不当に近いような感じであるけれども、法律的に見てはどうも不法とは言いがたいという、どうもそのちゅうちょが残っておるような気がいたします。専門家ではありませんから私は知りませんけれども、刑法百三十条の問題も、ゆえなくして人の建造物に侵入し、または要求を受けてその場所を立ち去らない者、この解釈、たとえば「故ナク」、こういうのは、何にも許可なくしてという意味ではなくて、正当な理由を持たずして、こういう意味に解するのが普通だと思います。それから同時にまた「要求ヲ受ケテ」という後段の不退去の問題も、ことばをもって明示したという態度をとるかとらないかといういかんにかかわるのではなくて、むしろ言うならば管理者の意思に反してと、こういうふうに読むのが私は常識だと思います。したがいまして、このような観点に立つときに、この問題を見れば、大学当局がいかなる確認意思を表明するかしないかにかかわらず、一部過激派学生によって大学は正当な理由なく学校当局の意思に反して占拠が続けられておるという事実は、私はまぎれもない事実だと思います。このことに一点の疑問を差しはさむ余裕があるのかないのか、重ねて公安委員長お尋ねいたします。
  98. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 刑法百三十条まで持ち出しまして、私も法律屋でございませんからもちろんわかりませんけれども、ともかく百三十条に根拠を置いて申します限りは、松下委員お答え申し上げたことに間違いはないと思っております。それは別問題の御質問ですから、それにこだわりません。いまおっしゃるように、もともと東大の安田講堂の不法占拠という状態、あの状態は、教育的立場からも、教育、研究すべき場所を不法占拠されていることが本来の機能を阻害するゆえをもって、前の大河内学長時分に警察当局に要請がありまして、不法占拠を排除しました。ところが、翌日また三倍くらいの三百人くらいが押しかけまして、再び不法占拠をしたという経過を経て今日まできております。そのことだけをとります限り、法律的に見ましても、不法占拠だと断定さるべき有力な根拠があると私は思います。そこで、ただ公安委員長の立場で、警察官が学校内に入りましてその状態を排除するにつきましては、やはり公判維持ができるという条件がないとなかなか出にくいという現実問題、そのことを念頭に置きながらお答え申し上げましたから、あの状態が不法な状態であるかどうかということについてちょっとあいまいさをお感じになったことも、無理からぬこととは思います。そういう意味合いでございまして、あの不法占拠のみならず、傷害ざたもございますし、ゲバ棒をふるってまるで兵隊ごっこのような、こうした大乱闘の不届きな状態もあります。あれもすべて私は不法な事犯であると存じております。
  99. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 そうすると、いずれにいたしましても不法行為が現に行なわれておる、こういうふうに言われたと私は確認をいたします。その前提に立ちました場合に、不法行為が行なわれておるということと、犯罪捜査なりあるいは治安維持のための暴力排除なりという行動に直ちに結びつくかどうかということは、私は一応の問題があると思うのです。ここに不法が行なわれておる。その不法をどうして静めるかというときには、当然に対策が必要でありまして、たとえば犯罪捜査でも、そこに事件が起こったら直ちに出動しなければならないということではない。もっと的確に犯罪捜査をしようと思えば、ここで三日待って犯罪者が行動することをもっと明確にしてやるというやり方もあるでありましょう。そのような意味において、犯罪捜査にいたしましても、秩序維持にいたしましても、不法が現に行なわれているということに直接に結びつけて次の対策、行動がとられる必要はないと私は思います。したがいまして、いまのお話のごとく、不法が現に行なわれておるという認識を明確にされて、しかる後に対策を考えられるべきものだと私は考える。だから逆に、予算委員会において述べられたがごとき態度で、いま行動すべきでないと思うから、ここには不法が行なわれておらないと認定する、このような印象を与えることは、断じてまかりならぬと私は思います。  そこで、重ねて文部大臣にお伺いいたしますが、いまのような不法が行なわれておる、まさにそのとおりでありますが、これに対して先ほどの公安委員長答弁と、ちょっとちゅうちょを感じられた内容を、大学の中あちらこちらを私なりに吟味してみると、こういう感じがあろうかと思います。少なくともそのような不法が行なわれておるならば、学校当局なり文部当局なりは、その不法に対してそれを正常化するための何らかの明瞭なる行動をとり、あるいは意思を表明すべきである。そのことをちゅうちょされておきながら、しかもいかにもそういう不法行為が行なわれておる現状に対する責めが警察当局だけにかぶせられるようなことに対する、言うならば官僚一流の責任回避と批判も含めて、妙な反発があったような気がするわけであります。おそらく御答弁は、いま大学当局が全力を尽くして問題解決に当たっておるのだから、差し出るべきではないし、あるいはしばらく時間をかせいでやらせてみたいということだろうと思います。しかしながら、現に警察当局なり治安当局、その辺にはうつうつとした不満がみなぎっていることを御承知だと思います。少なくとも文部当局は、そのような大学の状態に対しまして、大学に対する指導と助言の責務を持っておられるはずでございまするが、指導と助言の責務に対してこれまでいかなる行動をとられたか、経過はよろしゅうございますが、端的にどのような行動をとられようとするのか、お答えをいただきたいと思います。
  100. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 いま佐々木さんがお述べになりましたような意味合いにおきまして、ただいまのところは大学当局がせっかく努力をいたしております。しかし、その時間ももう二十日前後というぎりぎりの線にきております。いずれ大学当局から協議があるものと思います。その際に、私は指導と助言をフルに使いまして、ひとつ何らかのこういう暴力行為排除のための努力について話し合ってみたいというふうに思っております。
  101. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 お苦しい答弁であることを認めますが、ことさら追及することを手控えておきましょう。  次に問題を移しまして、私は大学自治それ自身にちょっと触れてみたいと思います。  その前にお伺いいたしますが、国家公安委員長は、ちまたの暴力団の出入りはもちろんのこと、たとえば酔っぱらいのけんかに対しましても、警察権は当然介入をいたします。それはあくまでも法の権威と社会秩序維持のための、それらが侵されようとすることに対する措置だと考えます。しかるにかかわらず、大学構内において毎日のごとく報道されておるところのいわゆる学生派閥間の乱闘は、私は普通で見る場合には暴力団の出入りざた、泥酔者のけんかざたよりもはるかに上回ったものがあると感じまするけれども、これに対しまして、右の事態と学校外のそのような事件と何か異なるところがあるのであろうか。もし異なるところがあるとするならば、それは大学構内という、その構内で起きた事件という相違だけだと思います。構内であるがゆえに特殊な法律が適用されるということは断じてないと思うのであって、その場合には治外法権だと思いますけれども、これを全然同様に認めてよろしゅうございますか。
  102. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 佐々木さんが例示されましたような課題について、大学と大学外と、学生であろうと学生でなかろうと、法秩序維持のたてまえから見ます場合には、同じことだと思います。ただ、大学なるがゆえに、刑事政策ということばが言えるかどうか私も自信がございませんけれども、先ほど来のお話の中に、無法状態、不法状態がそこにあっても、直ちに警察行動を起こすか起こさないかは、また別個の判断の課題でもあり得るという趣旨のお話がありましたが、それと同じ意味において、大学なるがゆえに——すなわち大学の自治は、一般的に警察権の行動します場合にも、不法状態そのものの認識は同じでありましても、大学なるがゆえに、街頭で行なわれる同種の事犯と同様の具体的措置を講ずることは一考を要する点がある。東大の場合をとりますれば、東京大学の学長がおり、教授会があり、評議会がある。国民のために、全大学のために、管理運営の責任がある。この管理運営の責任の範囲内において、集団で、派閥争いではありましょうとも、その派閥の代表者と会談をするという現実教育活動が行動が行なわれておる。そのことを無視して、街頭におけると同じように飛び込むべきではない。それだけの慎重な配慮があってしかるべきもの。繰り返し申し上げますが、一義的な責任者がそこにおる。そして角材をふるいそうなかっこうではありましょうとも、その派閥の代表者と相談することによって事態をおさめんとしている努力が、現になされておる。ならば、街頭における似たような現象、直ちにそれが重軽傷者を出すであろうということにいきなり結びつくという判断で、直ちに行動を起こすことは、ちょっと待ったという気持ちがあるべきであろう。いずれこのままでは、大学当局が管理者として、責任者として見てはおるけれども、これは警察力の協力を得なければ、生命身体の傷害を防ぎ得ないということが、その現場におって見ておる責任者がありますから、連絡をしてもらえば、直ちに行動を起こしまして、未然に防止し、あるいは犯罪の捜査に従事するという時間的間隔がちょっとあるべきもの、それは大学自治が尊重さるべしとする一応の見解が、そこに介在するからであります。今日までの行動は、そういう配慮のもとに行動しておるわけでございまして、このことは妥当な考え方でなかろうか、こう思っております。
  103. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 私は、ここに不法行為が行なわれておるということと、直ちに対策が行動しなければならぬということとは、間を置いていいという判断に立っておるものであります。しかしながら、いまのお話を、だんだんとしゃべられておるところを聞いておりますと、たとえば暴力団と暴力団とのけんかの場合だって、その責任者はありますよ。そこにけんかが行なわれて不法が行なわれようとしておるときと、大学構内において数千人の部隊がけんかをしようとするところと、どこが違うのですか。それが大学の構内にあるがゆえに、特別の大学自治という適法があるのか。もう一ぺんお答えをいただきたい。
  104. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 適用さるべき法律は違いはございません。
  105. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 適用さるべき法律に違いがなければ、その不法行為は同様であって、問題はそれに対してどういう手段をとるかという対策だけの話であります。それが当然のごとくに、学校の外の場合には直ちに警察力は発動しなければならないもの、学校の場合には当然にこれは発動しないものという区別が明瞭に存在するとするならば、それは当然にその法の根拠がなければならぬと思います。違いますか。
  106. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 大学の構内における事犯についての適用法規が、刑法以外に、あるいはその他の罰則規定が規定されております法律に違いはございませんことは、申し上げたとおりであります。そのあとの警察行動そのものをいま発動すべきか、しばらく間を置くべきかの判断について、大学自治というものが慣習法的な存在ではございますけれども、厳然としてある。その大学自治を守るための管理運営権と、国民に対する、大学に対する責任の立場にある大学当局がそこにおる。しかも東大の場合は、派閥争いにすぎないことは外部から見ておってもわかりますけれども、その各派閥の代表者を選出して、そして全学集会に持っていこうとする現実の教育活動が行なわれておる。その場合に、そのことをめぐりまして派閥が対峙しておる現象は認められますけれども、目の前に、その管理責任者が、学内で暴力をふるうことは許さないということを当然念頭に置きながら、それを一応警察力でなしに阻む、説得、そういうことがなされることが当然の職責だと思われるものがそこにある。それは制度上の存在として大学の管理権者がおるわけであります。ですから、ただその現象だけを見て、そのおそれありと警察が行動しますことによって、子供じみたことではありましょうけれども、警察アレルギーのもとにエスカレートした思わざる暴力ざたが行なわれるかもしれん配慮も含みながら大学当局が学生相手に話し合いをしておるという場でございますから、たとえば一昨々日になりますが、助教授の先生が一カ月半の重傷を負いました。その事犯は、暴力行為としてすでに捜査は開始しております。大学から求められずとも、刑事訴訟法上当然の犯罪捜査の責任を実行しつつありますが、ただ傷害ざたが起こらないように未然に防止する責任もむろんございますから、へいの外には必要数の者が待機しまして、そんなことが起こらないようにという態勢のもとに、大学側と常時連絡しながら、いきなり行けばエスカレートするおそれありという大学側の気持ちも尊重しながら、出て行く時期を、保護する時期を待機しておりました。ところが、連絡が不十分であったせいか知りませんが、不幸にして助教授が一カ月半の重傷を負うという事件が起きた。起こらないようにタイミングを考えて大学側の連絡を求める立場にありましたけれども、求める立場は、先刻来申し上げるような意味合いにおいて、現実問題として、法律そのものではなしに、行動を起こすためのタイミングを合わせる意味において連絡をしておった結果ではございますが、さりとておっしゃるように、大学側が何と言おうとも、そういうおそれがあるならば、街頭におけると同じように保護することを構内に入りましてなぜやらなかったかとおっしゃることは、法律制度そのままのものと違って、行動を起こすための妥当な判断がそこになければならぬということを申し上げておるわけであります。
  107. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 繰り返して言いますけれども、警察権を発動しろということを私は一ぺんも言ったことはないじゃないですか。あなたの答弁は、いつでもここに不正な事件が行なわれておると認定すれば必ず警察権が直ちに発動しなければならぬということを前提とし、そのことといつも結びついた答弁をされるから話がこんがらかってしょうがないわけだ。法の解釈と警察権の発動という事実行為は、別の問題ですよ。繰り返して言いますけれども、いまのお話を聞いておりますと、私はだんだんとおかしくなってきたわけです。大学構内において刃傷ざたが行なわれ、そのことをとめる第一義的な責任者は管理者であって、そのほかの者ではないと言われるのですか。不法な行為が行なわれ、その不法な行為であるかどうかを認定する者が、大学の管理権者ですか。大学の管理権者に司法当局の権限をだれが与えたか。三権分立の立場に立っておるときに、不法であるかないかを最後的に認定するものは、司法当局以外にないではありませんか。大学当局に不法であるかないかの認定権者だという権限を、だれが与えるか、お答えをいただきたい。
  108. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 端的に申し上げます。大学は治外法権の場ではないと心得ております。
  109. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 治外法権の場でないものが、なぜ大学だけが管理者という名において不法行為であるかないかの認定権者であり得るわけですか。刑法のどこにそれが書いてありますか。特別な法律がここに書いてあるのか。
  110. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 法的には同じ法が適用されるのでありまして、差別はない、かように思っております。
  111. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 法律が同じであるから、同じでなければならぬはずだ。対策に別があるというだけの話じゃないですか。法律が同じであるから、治外法権ではないと言っているわけだ。したがいまして、刑法二百四条傷害の罪の規定において、人の傷害の防止の必要を規定いたしております。そのことは、人間に対する傷害は法の禁ずるところであることを明確にしながら、その危険に対する防止を義務づけておるものだと私は思うわけであります。しかしながら、危険防止の手段、対策をどういうふうにしたらいいかということ、そのことの困難さのためにこの法律自身の目的が曲げられたりゆがめられたりすることはないでしょう。大学の中においてともかくも不法行為が行なわれておるということであるならば、不法行為が行なわれておるということをはっきりと認定されて、さて大学ではあるけれどもどうしたらいいかという対策が別にあるというなら、それでいいですよ。どこが違う。不法行為ということを学校自身が認定しなければならぬみたいな話というのはありますか。
  112. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 学校自身が法律上、刑法上あるいは刑事訴訟法上不法事件であると認定せねばならない権限も、責任も、その意味においてはございません。
  113. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 そうすると、暴力団の親方と同じ意味で、これはたとえは悪いかもしれませんけれども、先ほど派閥の指導者の統制とかなんとかいうことばがありましたからあえて言いますが、派閥の指導者の第一次責任もへったくれもない。それから大学当局の第一次責任もへったくれもない。そこに不法があるかどうかということだけである。そこにその不法が行なわれておるとするならば、さてその不法に対してどういう態度がとり得るか、どういう対策がとり得るかということはありますけれども、ここに不法という事実に対して、何も第一次権者も第二次権者もない、こういうふうに私は思うわけであります。したがいまして、この意味で重ねて今度は文部大臣にお伺いをいたします。  先ほど来大学の自治という観念が問題になりまして、だんだんと、それは治外法権ではないけれども慣習上の何かがあるようなお話が出ております。しかしながら、私の見解に基づきますと、この大学の自治なるものは、憲法二十三条の学問の自由の保障、この目的のために出たるものだと思います。したがいまして、大学の自治というものは少なくともその目的の範囲内においてのみ認められるものだと思いますが、違いますか。
  114. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 私は、大学の自治というのは、仰せのとおり、学問の自由ということを憲法で保障しておる、それに伴って大学の自治というものがあるというふうに考えております。
  115. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 現在、大学におきまして学問の自由を妨害しておる最大のものは、何とお考えになりますか。
  116. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 やはり私は一部政治主張を暴力によってでもなし遂げようとしておる学生たち、それは単に内部だけではございません、外部の学生たちも含めて、そう認識しております。
  117. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 少なくとも現在大学という社会の中において憲法が保障せんとするところの学問の自由を妨害しておるものは、従来の慣例のように頭の中にこびりついておるところの国家権力の介入ではなしに、過激派による一部学生の行動であることは言をまたないところだと思います。その見方は公安委員長も変わりはないだろうと思いますが、いかがですか。
  118. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 そのとおりに理解しております。
  119. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 法務大臣にお伺いいたします。いまのように、大学において起こっておる事件、少なくとも憲法が保障せいといっておる学問の自由が阻害されようとしている。その阻害要因になっておりますものが、一部学生の過激な行動であるということであります。とするならば、学問の自由の保障のためにも、そのような行動は排除されなければならないものだ、それが法秩序の根源だと私は思いますが、その考え方に別のお考え方があるかどうか、お伺いをいたします。
  120. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 法秩序の維持ということは私どもの任務でございますが、法秩序の維持ということはやはり民主主義の基盤をなす重要な点でございますから、これに対しまして、暴力はいかなる目的であろうとも、これはあくまでも民主主義の敵として否定しなければなりません。したがいまして、大学紛争の暴力も、これはもちろん民主主義に反する多数の暴力行為でございまして、まことに遺憾にたえなく思っておるわけであります。
  121. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 時間がございませんので結論を急ぎますが、私は、お三人に端的にお願いをいたしたいと思います。  現に大学においてはわが国の法律はじゅうりんされて、その意味において不法行為が行なわれており、そこに厳然として犯罪が存在することは事実であります。しかも、これを犯罪という認定を少なくとも行政的な行為によってやることは、いまだちゅうちょされております。文部大臣の大学に対する助言も、指導も、端的には行なわれておらず、功を奏しておらない。それがゆえに、現に犯罪が行なわれておる。しかも国家公安委員長は、いかにも犯罪行為が行なわれておると肯定はされながらも、それを行政的な観点に立って肯定をすれば、直ちに犯罪捜査などの警察力による実力行使が必要であろうという観点に基づくのか、あえてこのことはともかくもちゅうちょされようとしておる態度をとられておる。したがいまして、行政的に見た場合に、ここに行なわれておる犯罪行為に対しては、何ら行政的な手段はとられないままにいま放置されているのが現状であります。しかも国民は、断じて不法行為が行なわれておるという事実を否定することはできません。国民はそのことを信じて疑わないのであります。とするならば、私はここにやらなければならないことがある、最大に残されておることを痛感するものであります。にもかかわらず、言を左右にして、公安委員長の責任でないかのごとく、文部大臣の責任でないかのごとく、あるいは法の秩序を守らなければならない法務大臣のわれ関せずえんという態度は、私は、国民に対しましてまことに遺憾きわまるべき態度だと言わざるを得ないと思います。おのおの御所見を承りたいと思います。
  122. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 先ほど来私がお答えをいたしておりますように、ただいま起こっておりまする大学の不法状態というものは、佐々木さんと私は同じように思っております。そうしてこれはやはり排除すべきものであるというふうに思っております。ただ、その排除する方法というものをどうやるかということについて、私は私なりの考えは持っております。しかし、ただいま私が行政的な措置をとるということでなくて、もうしばらく大学当局の努力に期待をしておる。しかし、間もなく御協議があるという場合におきましては、その暴力排除に対する私どもの考え方というものを協議いたしたいというふうに考えております。
  123. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 とりまとめたような気持ちでお答えさせていただきます。先ほども申し上げましたように、不法行為の認定の責任が大学当局にあるというふうなことは、一度も申したことはございませんし、先刻の御質問によってさらにそのことをお答え申し上げたわけであります。ただ、常識的に見ますれば、確かに不法行為が行なわれており、それに対して警察は捜査は行なっているのであります。しかしながら、私が申し上げようとするところは、大学当局は必ずしも常識的に不法行為と認めていないように見受けられる。そのために、捜査活動等につきましての積極的な協力が行なわれないことを、遺憾なことだとひそかに思っておるのであります。その意味で申し上げておったことが、私どもの立場における明確な答弁を佐々木さんの御質問に端的にしていなかったかのごとき経過があったことを認めます。あらためて申し上げればそういうことでございまして、常識的に見まして、違法行為が行なわれていることは明らかである、こう考えております。
  124. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 意見を求められておりますのでお答えいたしますが、私ども法秩序を維持する立場にあるわけでありますから、いろいろいままで御論議があったと思うのでありますけれども、警察は大学の自治ということを非常に尊重いたしまして、何とか大学自体の内部で収拾してもらいたいということを考えるがゆえに慎重な態度をとっておるものと私は解しておりますけれども、しかしながら、先ほどおっしゃるとおりに、大学は治外法権の場ではない。したがいまして、法令に反する犯罪がございました場合は、当然に刑事訴訟法なり警察官職務執行法に基づきまして、いかなるところでも警察官は参りまして捜査活動その他の職務は執行できるものと考えるのでございます。たとえば大学紛争におきましても、この学園の紛争がエスカレートいたしまして、これはもう暴動化してきておる、または人命に非常な危険が迫っておるというような場合には、たとえ大学構内であろうと、大学当局の意見がどうあろうと、当然の職責上の権利を行使してその取り締まりに警察は当たるものと考えております。
  125. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 重ねて言うて恐縮でございますけれども、憲法でいうところの学問の自由の保障は、いわゆる大学自治なる慣習によって私はそこなわれるべきではないと思います。憲法の学問の自由の保障のほうが優先するものでありまして、大学の自治といわれる慣習によってそこなわれるべきではないと私は思います。したがいまして、そこに暴力的な不法行為が行なわれておるとするならば、何らかの方法、手段によって大学における学問の自由を妨害するものを排除されなければならないと思います。そして何らかの方法によってというそこに問題があるのでありまして、警察当局だけに責任を負わせるものでもなく、大学当局だけに責任を負わせるものでもなく、文部当局だけに責任を負わせようとするものでもない。われわれ超党派的に全力をあげて取り組もうとしておるものは、何らかの方法というその一点に集中して、私は国民的な規模においてこの問題を解決すべきだというのであります。しかしながら、政府当局の一部において、行なわれておる行為が不法でないかのごとき印象を与え、さらにまたそれに優先するものとして大学の自治なる観念が存在するがごとき印象を与えるとするならば、私はとんでもないことだと思って、あえて本日の質問に立ったわけであります。私は質問を終わるにあたりまして、三人の大臣の方々に問題を投げかけておきたいと思います。  文部大臣は大学当局、少なくとも加藤代行の全力をあげた解決の苦労を信じて、ともかくやってみてもらいたい、こういう感じに御答弁なさいました。しかしながら、もしそうであるとするならば、加藤代行の学生諸君への提案というこの内容は、十分熟読玩味されておることだと思います。そうすると、私はいまの紛争を解決するためにはこれくらいのことは言わなければならぬと思いまするけれども、方法として言わなければならないかもしれないけれども、この中には、まさに私は従来の、言うならば治外法権的な思想がにじみ出ておることを痛感せざるを得ないわけであります。法務当局、法務大臣並びに国家公安委員長も、重ねてこの点を十分検討されておると私は思いまするけれども、むしろこの点をこそ将来のために検討していただきたいと思います。この中に盛られておりまするところの治外法権、大学の、少なくとも東大の治外法権的な思想こそは、エリート意識を前提として、しかもそれを取り巻くところの中心に教授自身がおる。そこが問題の根源ですよ。しかもわが国が法治国家であるとするならば、法治国家の一番中心が東大の法学部であるがごとき観を呈しておることは事実であります。その法学部長の名において行なわれるその内容こそは、私は早急にものを片づけようということであるにしても、現代の世相とははるかに離れたものを感じるわけであります。これを一つ一ついま論証しているいとまを持ちませんから、私は十分御検討なさっていることと思いますから、問題を投げかけるだけにしておきたいと思いますけれども、重ねて、文部大臣も事の解決だけをあせられるべきではない、むしろそのようなことをすればまさに悔いを千載に残すことがあり得ることを十分に承知をされたいと思います。
  126. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 佐々木さんの御指摘は、私も全く実は同感に考えております。したがいまして、現在の大学が不法状態であるという認識も変わっておりません。ただ、その方策についてどうするか。その方策についても、人間として考えられるあらゆる場合を考えましたけれども、それもおそらく常識のある者ならば、私はそれはおのずと煮詰まってくるものだと考えております。したがいまして、わが文教委員会におきましても、各党の方々で寄り寄りそういうようなお話し合いもあります。また本日は東大当局の教授にも来ていただいて、そうしてこちらの真意も伝えられていると聞いております。このような考え方を踏まえて、大学当局が——現在の東大というものは、昔の国家権力から学問の自由というものを守るだけじゃなく、その学問の自由というものがまさにひざ元から、自分たちの教育している被教育者たる学生の暴力によって、あるいはまた大学自治といいながら、大学外のいわば学生たちの暴力によって、まさに危機に瀕しているという自覚、反省、そしてまた教授陣自身が一致した認識、不法なものは不法である、暴力は民主主義の敵である、そうしてわれわれが学問の自由というものを言うのであれば、あるいは大学自治というものを言うのであれば、一般学生が勉強しよう、研究しよう、多くの大学教授というものがほんとうの意味における学問、研究を続けていこうというのであれば、それがまさにできない状態において、これを排除するというのがわれわれ当局に課せられた社会的責任であるという自覚を持っていただきたいという、切なる私は気持ちを持っている。全く佐々木さんと同感でありまして、ともどもにこの問題の解決に当たってまいりたいと思いますから、どうぞ御協力を賜わりますようにお願いを申し上げる次第でございます。
  127. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 いま最後に佐々木さんが御指摘くださいましたこと、私も同じように感じとっている一人でございます。お触れになりましたように、学問の自由を守るためにこそ大学の自治という慣習法的な存在がある、その範囲内においては正しいと思います。さらにまた憲法には、国民はすべてその能力に応じて教育を受ける権利を有するともあります。いわば青年学徒が教育を受ける基本的人権を保障されている。それが一部の暴力ざたによって権利が侵害されている現象もあろうかと思います。その二つの事柄からいたしましても、当然御指摘のような懸念がありまして、その懸念が未必に終わりますことを念願するものであります。大学自治と申しましても、繰り返しお答え申し上げましたように、また佐々木さん御指摘のとおり、治外法権を含むものではいままでなかった。今後ともあるべからざる、これは憲法の求める御指摘の点についての鉄則である。それがあやまっても、一時的にでもそういう状態になることは断じて許しがたいという考えで、大学当局、東大の加藤総長代行もやっておられると信じております。
  128. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 意を尽くさない点も多々ございますけれども、時間もずいぶんだってしまいまして同僚に迷惑をかけますので、一応質問を終わりたいと思います。
  129. 永田亮一

  130. 岡沢完治

    岡沢委員 それでは私は、佐々木先輩に引き続きまして質問をさしていただきます。  いま荒木国務大臣のほうでいみじくもお答えになりましたけれども、憲法第二十六条には、教育を受ける国民の権利を規定いたしております。また教育基本法第三条によりましても、「すべて国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならない」云々というのがございます。また同じく教育基本法第六条には、「法律に定める学校の教員は、全体の奉仕者であって、自己の使命を自覚し、その職責の遂行に努めなければならない。」という規定がございます。また第十条には、「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである。教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。」とございます。私は、特にこの最後にあげました教育行政については、おそらく当然に文部大臣が責任を負われると思います。こういう前提に立ちまして、現在大学におきまして、紛争校、それからその紛争校の学生数、またその紛争校において活動家的な学生の数、その学生のために教育を受けられない立場にあるのが、何人ぐらいか。それからまた、当然教育を受ける権利の中には、来年の三月に高校を卒業して大学に進みたいという生徒諸君がおるわけでございますが、こういう生徒諸君で教育を受ける権利を奪われる可能性を帯びておる生徒数等につきまして、御準備がございましたら、お答えいただきたいと思います。
  131. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 大学局長から答弁いたさせます。
  132. 宮地茂

    ○宮地政府委員 現在紛争をいたしております学校、これは大学当局とある問題について話し合いをしておるいろいろ小さいものから、東大のような長期のスト、いろいろございますが、一応長期のストをやっております学校は、御承知のように、国立は東大と教育大学、外語大学、それに静岡の短大がございますが、四校でございます。私立大学は日大、医科歯科大。それでこういった長期のもののほかに、最近ストライキに突入したというような学校が国立にも私立にもございまして、現在の時点で長短合わせまして、ストライキに入っておる学校というのは十一校と考えてよいと思います。そのほか、こういうストライキを含めまして、封鎖とか建物の占拠とかいうのをいたしておる学校、いまのストライキ学校を含めまして、十四校が封鎖とか占拠とかいうような不祥事態が起こっております。それらの学校の学生数は何人かというお尋ね、突然のお尋ねでございますので、ちょっと正確に申し上げられませんが、東京大学は大学生が約一万三千名、日大は学生定員が六万でございますが、相当定員オーバーして入れております。そういうところが国立、私立で一番大きい学生数のところでございます。正確な数字をいま持っていませんので、一応それでお許しいただきたいと思います。  それから、いろいろな御質問がございましたが、これらの中の学生活動家というのは、実は文部省といたしましても、そういうことは当然把握しておくべきことかとも思いますが、恐縮ですが、そこまでのことを従来から十分把握いたしておりません。したがいまして、あと警察庁のほうでわかりますれば、その推定数字は警察庁のほうから御報告いただきたいと思いますが、こういう紛争をしておることによりまして、来年いろいろ学生が迷惑をこうむるということでございますが、国立大学の入学定員総数は、来年六万六千名あまり、六万七千名弱が国立大学の入学定員でございます。
  133. 岡沢完治

    岡沢委員 時間の関係がございますので、私どものほうから数字を示して、もし間違っておれば御指摘をいただきたいと思います。現在の大学の学生数、正確ではございませんが約百五十万と見まして、その中の活動家学生、いわゆる活動家学生も二種類ございますけどれも、民青系の学生諸君が一万五千人、反日共系といわれる学生諸君が七、八千人という数字と見て間違いございませんか。
  134. 川島広守

    ○川島(広)政府委員 私のほうで承知しておりますのは、御承知のように全国で百五十二万名学生がおります。その中で活動家の内訳でございますが、私のほうでは共産党系が一万二千名、反日共系のほうが八千名、合わせましておおむね二万名、こういう数字でございます。
  135. 岡沢完治

    岡沢委員 私の理解しております範囲では、東京大学の場合、いま大学局長お答えになりましたように、一万二、三千名の学生の中で活動家学生といわれるのが二千名くらいがありますが、そういたしますと、こういう全体から見ましたらきわめて少数の学生によって、先ほど読み上げました憲法二十六条の権利が他の学生にとっては奪われておる。また、学生だけでなしに、大学教授の研究の自由、あるいは大学病院を利用する国民の権利、あるいはまた教育を人に授ける教授の義務というものまでが阻害されておるというのが、すなおに見た現状かと思います。  先ほど大学内の暴力事件と関連いたしまして、佐々木委員質問に対して、文部大臣は大学自治、学問の自由を破壊しておるのは、むしろこういう学生であるという趣旨の御答弁がございました。先ほど来論議になりました大学の治外法権的扱い——治外法権ではないという御言明でございましたが、それは正しいと思いますが、実際に治外法権的な扱いがなされておるということについては、その淵源は大学の自治、学問の自由から発しておるということも、おそらく論をまたないところだと思います。そうすると、ナンセンスでありまして、大学の自治を守るために大学を妨害しておる者を適法な手続によって、法的な制裁を加えられないで、むしろこの大学自治の名においてかばう、あるいは捜査権の行使がちゅうちょされておるというのが、現状である。全く皮肉だといわざるを得ない。大学の自治を破壊する者のために治外法権的な扱いが現になされておるということは、国民感情としても、また法秩序を維持することを義務づけられておりますわれわれ国会議員としても、憲法、法律の民主主義の原則からいたしましても、どうしても納得できないわけでございますけれども、この辺についての御見解を聞きたいと思います。
  136. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 先ほど佐々木先生にお答えしておりますように、やはり私も大学の学問の自由というのを一部学生の暴力によって脅かされつつある、これはゆゆしい問題であると考えております。まずもって私は、大学当局自身が、この認識をわれわれと同じように全部の少なくとも教官、あるいは一般学生というものが持っていただきたい。つまり大学生というものは、それくらいの良識があってしかるべきじゃないか。また自分の意思の発表というものを勇気をもってやるべきじゃないだろうか。それが従来いろいろの事柄から、何かあいまいにされてきたところに問題が起こっておるのじゃないか。大学当局としては、少なくともそういう認識に立つならば、現状が侵されつつあるというならば、いつでも、たとえば生命の危険が侵されるような状態があったならば、われわれとしては警察力を導入してでもこれを解決しなければならない課題なんだ。ただ、入れる時期、方法等については慎重にやらなければならぬことは、また大学自治のたてまえから当然だけれども、しかしながら、それを要請しないでもいいという考え方は持つべきじゃないんじゃないかというように私は思います。ただ、その入れる時期、その方法等については慎重にやらなければならぬ、そういうふうに私は思っております。
  137. 岡沢完治

    岡沢委員 時間の関係で、文部大臣に対する質問を先に集中いたしまして、四十五分で中谷委員にバトンタッチをして、三時からあらためて国家公安委員長と法務大臣質問することを許していただきたいと思います。  文部大臣お尋ねいたしますが、いわゆる学生に俗にいうスト権があるのかないのか。団体交渉権とかあるいは団結権とか、労働者に与えられているような権利があるのかないのか。ことに他の学生の授業を受けようとする権利、あるいは教授が教授をしようという権利、あるいは研究者が研究をしようという権利を妨害する権利があるのか、その点についてお尋ねいたします。
  138. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 私は、ないと思います。
  139. 岡沢完治

    岡沢委員 現在大学に行なわれております不法行為の実態につきまして、これは文部大臣でなくて恐縮でございますけれども、文部大臣がおられる間にぜひ聞いておきたいので、警察庁当局でも法務当局でもけっこうでございますが、どういう違法行為構成要件に該当する違法有責の行為が行なわれておるかということをお答えいただきたいと思います。
  140. 川島広守

    ○川島(広)政府委員 現在の東大の中にいろいろな事案が起こっておりますことはお尋ねのとおりでございまして、考えられる犯罪容疑は、暴行傷害はもとよりでございますけれども、それから暴力行為等処罰に関する法律違反もございますし、そのほかまた建造物侵入あるいは不退去、そういうようなものがあるものと思います。
  141. 岡沢完治

    岡沢委員 いま局長お答えになりましたけれども、一番肝心の、殺人罪までに近い状態を起こした傷害致死事件が抜けているじゃございませんか。
  142. 川島広守

    ○川島(広)政府委員 日本大学におきましては、御案内のとおりに、起こっております。
  143. 岡沢完治

    岡沢委員 それではここで大臣もおられる前で、法務大臣国家公安委員長にお尋ねをいたしたいと思います。  いま川島局長からお答えになりましたように、傷害致死罪を含めて、暴行傷害、器物毀棄、住居侵入、公務執行妨害等、考えられる通常の刑事犯が続発しているわけであります。その状態につきましては、先ほど佐々木委員が御指摘になったとおりであります。文部大臣の御答弁によりますと、学生にスト権はないということが前提であります。また、学問の自由、大学の自治と彼らの行為とが無関係である、むしろその反対の、学問の自由あるいは大学の自治に対する挑戦者であるという前提がはっきりしております場合に、なぜ大学構内における学生のあの行動に対して、格別の配慮のもとに他の一般市井人の暴力行為その他刑事犯罪と違う取り扱いをなさるのか。先ほど申し上げました一般学生の教育を受ける権利を阻害しておるという面から、憲法上の権利が阻害されておるという現状からいたしましても、私としては納得できないので、公安委員長、法務大臣の御所見を伺います。
  144. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 いま警備局長から申し上げましたような、刑法違反だけでもたくさんあるわけですが、それらが現実に犯罪行為が行なわれましたら、時を移さず捜査はいたしております。できる限り学内の捜査もいたすことも当然でございますから、いたしております。実際問題といたしますと、被害者の協力なくしては的確な捜査ができないのでございまして、先刻も佐々木さんにお答え申し上げましたように、そのことのための不便さは感じておりますが、法の命ずるところの警察官としての当然の責務は、遅滞なく果たしつつありますことをお答え申し上げます。
  145. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 私からもお答えいたしますが、先ほどの警察庁の説明にもあるとおり、いろいろな犯罪がありますれば——いま一方においては大学の自治、また内部収拾をさせたいという慎重な態度をとっておる警察といえども、学内において法令にまつ正面から違反しているような事実があれば、職務執行法や刑事訴訟法に基づいて当然逮捕なり捜査なりができるわけであります。でありますから、警察の方面においても、学生であるだけに、また大学の自治、そういうものを頭に置いておりますから、非常に慎重な態度をとっておると私も考えますけれども、しかし、先ほども申しましたとおり、警察といえども、学園の紛争が非常にエスカレートして、暴動化したような状態だとか、あるいは人命に非常に危機が迫った、こういうことになれば、当局者の要請があろうがなかろうが、それにとんちゃくなく、当然の責任として警察はそれを鎮圧すべきものと考えております。
  146. 岡沢完治

    岡沢委員 あとで続行することとして、一応これで質問を終わりますけれども国家公安委員長のいまの御答弁で、被害者の協力がないという趣旨の御答弁がございました。国立大学の場合、財産はすべて国有財産であり、また東京大学に例をとりますと、年間予算が二百億をこえております。また、学生一人当たり国民の税負担は、文部大臣常におっしゃいますように、百二十万をこえているわけであります。被害者はだれかといった場合に、暴力行為を起こして傷をつけられた一方の学生ではなしに、私は国民全体ということも言えるかと思いますし、また教育を受ける権利を阻害されておる他の学生、研究の自由を奪われておる教授、あるいはまた次に東大に入ろうとしておる一般学生、一般高校生徒、あるいは何よりも法秩序破壊という、法治国の最大の被害者という立場からは、国民全体が被害者だ、あるいは憲法が侮辱されているという言い方すら私はできると思います。もし被害者の協力がないというのであれば、それについては文部大臣あるいは大学当局の責任についてもお尋ねをせざるを得ない。この辺について、文部大臣いかがお考えでございますか。
  147. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 まさにその点が非常に困っておるところでございまして、認識をある程度われわれの認識と同じように持ってもらわぬことには、捜査活動にも非常に影響があるのではないかというように私は思っております。先ほどもお話のありましたように、スト権は私はないと思います。しかし同時に、正常な意味における学生の自治活動というものは、当然許さるべきことだというふうに私は考えるわけであります。したがいまして、また学生が持っておりまする希望表明の自由と申しますか、あるいは希望表明の権利と申しますか、そういうものはやはりあるというように思います。たとえばフランスの今度の学生参加の問題につきましていろいろ聞いてみますると、いかにも政治活動が自由になされているように一部の新聞には報道もされていたわけでございますが、調べてみますると、情報の自由というものが許されておる。情報の自由というものに限定をされておる。しかもその情報の自由たるや、研究の場あるいは教育の場、それから病院の周辺ではこれは禁止をされておる。さらにまた、秩序を破壊するような行為、あるいは政治的な一つのプロパガンダをする行為、そういうものは許されておらないというようなことで、これは日本の教育基本法においては、教育基本法の八条の中立性というものは、小中高のみならず、私は大学にも守られなければならないものだというふうに考えておるわけでございます。この辺の認識が大学当局にきわめて薄いのではないかという気がしてならないのでございます。確かに、たとえば学問の自由が守られておるわけでございます。憲法で保障されておるわけでございます。したがいまして、たとえばマルキシズムを講義いたしましょうとも、それはその教授にとって学問の真理追求のために当然保障されてしかるべきものだと思うのでございます。しかしながらまた、それを教授すること、また学生がこれを聞く自由というものも、一方において守られておると思うのでございます。しかし、いやしくもその一つの政治的主張あるいは考え方というものを、その大学の校内でプロパガンダするということになりますと、それはもはや学問の自由、憲法が保障しておるものを逸脱しておるんじゃないだろうか。そういう政治活動を学内でやるとするならば、それはむしろその教授は教授をおやめになって、そして政治家におなりになるべき筋合いのものだというふうに、私は論理的に考えるわけでございます。そういうような認識が一般に——いろいろの原因はごさいましょうけれども、従来看過されてきたし、そしてまた大学人自身の中にも、それを逸脱しそうな人たちもずいぶんあったように見受けられるわけでございます。これを契機にいたしまして、その点を明確にすべきではないだろうか。また一般社会もその点をしっかり認識して、大学というものに確かに学問の研究の自由というもの、アカデミック・フリーダムというものがあるということを認めるべきであるし、またそういうものであるけれども、同時に大学当局は国民に対して責任を持つ。特に国立大学においては、いま仰せのとおりに一人当たり東大のごときは百二十六万円もの税金を国民が支払っておるんだということに対する責任を感じて、この際の紛争解決に万全の態度を示していただきたい。国民に対して責任を果たしていただきたい、かように私は考えるわけでございます。
  148. 岡沢完治

    岡沢委員 時間がございませんので、文部大臣以外の大臣に対する質問を留保して、私の質問を終わります。
  149. 永田亮一

  150. 中谷鉄也

    中谷委員 文部大臣お尋ねいたしますが、大学がいわゆる治外法権でないとか、あるいは暴力が許されないとか、これらのことについてはあたりまえのことであって、またそのようなことだけで問題は解決しないと私は思うのですが、まず大臣お尋ねをいたしたいと思います。  東大の中において行なわれている不法行為というのは、法律的に評価すれば、予算委員会において国家公安委員長の御答弁が若干不明確だったといわれているのですけれども、これははっきりしていると思うのです。たとえば不法占拠、不法監禁、暴力行為、傷害、これらの行為が行なわれていることははっきりしている。そこで、その前提に立ってお尋ねをいたしたいと思います。先ほどからの文部大臣の御答弁をひとつ具体的な例でじゃお示しをいただきたい。林教授が七日間にわたって軟禁をされたということです。これは明らかに不法監禁だと私は思います。ただしかし、林健太郎さんは、みずから警察の介入を求めなかっただけではなしに、警察の介入を拒否した。逆に言うと、警察の介入だけは困ると不法監禁されながら言った。これは林さんの身体の自由という法益がとにかく侵害されていることは明らかだと思う。しかし、そのことが、そうすると、先ほどからの大臣の御答弁によりますと、そんな林さんの態度というのはおかしいんだということになるのでしょうか。私はその点について、ひとつ具体的な例として御答弁をいただきたい。逆に言いますと、大学の自治というものは治外法権でないということをいわれますけれども、まず現在の大学あるいは大学人がこれほど警察に対して嫌悪感を示すということの、警察権力のほうにも歴史的に反省をしなければならぬ点がずいぶんあったのではないか。そういうふうな中で大学の自治、学問の自由を守るために、自分は不法監禁をされているけれども、求めたのではなしに、介入を拒否したという林教授の態度というのは、文部大臣のお立場からいうと、これはおかしいのだということになるのかどうか、そういうふうなことについてお答えをいただきたい。もう少し続けます。要するに大臣は、従来から暴力による早急な解決をすべきでないということを言っておられる。そのとおりだと思う。暴力の前に屈して安易な解決をすべきでないということを言っておられる。当然だと思うのです。しかし、もし東大において授業を再開するというのなら、警察権を導入して、いわゆる不法学生を全部逮捕して、東大構内へ全部警察官を立たせる、教室の前に立たせる、こういう権力の介入によれば、授業は再開されることは容易だと思います。権力によって安易に問題を解決すべきでないということは、大学としては当然考えなければならぬことだと思う。そういう点で、まず具体的な例として、大臣は林教授の態度をどう思うか、大学のあり方としてひとつお答えをいただきたい。
  151. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 林教授の態度につきまして、少なくとも暴力を学生たちが行なって不法監禁状態にした。しかし、そのもとにおいて、ある程度自由が制限された状況においても、曲げられないものは曲げられないという態度を示されたことは、非常にりっぱであるというふうに思っております。  それからもう一つは、私もつまびらかにはいたしませんけれども、新聞報道によりますと、一度はとにかく出ようとした。そうしたところが、学生たちがそれをさせなかった。おまえらはおれの自由をあれしたんだなという一言は言っておられる。これを踏まえますならば、いま御指摘のとおりになるのじゃないかというふうに私は思っております。
  152. 中谷鉄也

    中谷委員 そうじゃないのです。私は法律家として、林教授に対する学生の不法監禁罪というものは成立しておる。これはとにかくはっきりしておる。その林教授が警察権の導入を求めないだけではなしに、警察権の導入については拒否をした。心情的にはだから嫌悪感を示されたと私は理解をするが、そんな態度は大学のあり方として、現在の紛争解決のあり方として、一顧にも値しないのだ、むしろ悪い態度なんだとおっしゃるのかどうか、この点なんです。
  153. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 ほかの雑誌でございましたか、新聞でございましたか、それによりますと、自分のためならば警察権の導入はよしてもらいたい、しかしながら、大学全体としてやはりこの場合は警察官を入れたほうがよろしいという御判断があるならば、一向差しつかえはございません、こういうことを申されたとも私は聞いておるわけでございます。したがいまして、林教授としては、私たちの考え方、認識と変わっておらないのじゃないかというふうに思っております。
  154. 中谷鉄也

    中谷委員 第一次被害法益は個人である林教授、第二次的に間接的な、言うてみれば情状としての大学の秩序の混乱というものがある。いずれにしても林教授というその個人が警察権の導入を拒否し、それに対して心情的には嫌悪感を示したということが、何か先ほどからのお二人の御質問を聞いておると、そんなこともいけないという評価を大臣されるのかというふうに私は思った。しかし、そこに大学教授林さんの非常な苦心と困難とそして勇気があったと私は思う。警察権の導入ということが、大学にとっては好ましくないのだという判断があったと思うのです。だから、この態度は正しかったし、りっぱであったし、勇気ある態度だったと私は思う。それを何か先ほどから治外法権でないのだというあたりまえのことが何べんかここで確認された。そんなことから、そんな場合には警察を呼びなさいとでもおっしゃるのかどうか。私は、具体的な例の中においてひとつ評価をしていただきたい。だから、私の質問にひとつお答えいただきたいと思うのです。
  155. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 ちょっと私よくあるいはお答えできないかもしれませんけれども、実は私は林教授の認識や態度というものを最も評価しておるつもりでおるのでございます。ところが、こう言っちゃなんですけれども、大学教授の中には、林教授と同じような気持ちを持っておられない方が非常に多いんじゃないか、むしろそこにウエートを置いて先ほどほかの先生方のときに申し上げたわけでございます。
  156. 中谷鉄也

    中谷委員 この具体的な問題が、私は大臣の御方針なりお考えなりを伺えると思ってお聞きしましたけれども、どうも明確にお答えいただけませんでした。そこで別の聞き方をいたします。昨日、国家公安委員長は次のようなことを答弁をしておられます。要するに、大学の管理者は学内で不法行為があった場合これを調査確認し、警察へ通報するとか、告発するとかいうような厳正な措置をとるべきである、これが大事なんだということをまず言っておられる。そうすると、文部大臣もそのようなことはすべきだというふうにお考えになるのでしょうか。なるとすれば、通報、告発ということは直ちに学内捜査ということに連ならざるを得ません。そうすると、文部大臣としては、通報、告発はすべきだ、しかし、学内捜査というふうなものについては配慮してもらうべきだというふうなことは、これは筋道からして少しおかしくなってくる。通報、告発をすべきだということは、直ちに大学に対する警察権力の導入、介入ということになると思う。そのことは、現在の時点においてやむを得ないのだ。しかし、そのことは、私が冒頭に申し上げましたように、暴力のもとにおいて安易な解決をすべきではないのではないかということ、しかし同時に、大学が権力をかりて安易な解決、授業再開というようなことも、私は大学の自殺だと思う。この点について国家公安委員長の大学当局に対する要望は、文部大臣のほうにおいてどのように理解されるか、これをひとつお答えいただきたい。
  157. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 荒木国務大臣お答えになったのは、大学当局の要請を待って警察力が行使されるということは、そのとおりだと私は実は考えておるわけでございます。それからまた、大学の紛争の問題についていたずらに安易に国家権力を導入すべきでないということも、同様に考えております。それからまた、紛争解決を急ぐのあまり、法の権威を失墜するようなことがあっては断じてならないというふうに思っております。
  158. 中谷鉄也

    中谷委員 大臣御退席の時間が迫りましたので、それじゃ一点だけ最後に質問させてください。通報すべきだということ、告発ということになれば、当然捜査義務が生じます。捜査は「迅速適確に行わなければならない。」ということは、犯罪捜査規範の第二条に明定しているところです。そうすると、一番適確かつ迅速な捜査というのは、大学に対するところの警察権の導入、これ以外にはあり得ない。そうすると、大臣としては、今後はたとえば林教授のような場合でも、大学の管理者はとにかく告発をしなさい、あるいは告訴しなさいということは、当然権力の介入を含まないような告発というものはないのです。権力の介入を期待しないような通報というのはないのです。そうすると、大臣は、大学の自主的な努力によって解決をするということからむしろ百八十度転換されて、この国家公安委員長の大学当局に対する要望を認めるということは、直ちに論理的には当然大学に対する権力の介入、警察権力の導入ということを引き起こす、それでいいのだということでございますか。もし国家公安委員長の御要望と若干違う点があるなら、その点にひとつアクセントを置いて御答弁いただきたい。
  159. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 いや、私はそこのところはちっとも違ってないのじゃないかと思っておるのであります。というのは、第一義的にそういう判断、時期、方法、いつやるかという情勢判断を第一義的にやるのは、あくまでも大学当局ではございませんでしょうか。私は、そういうふうな気がしてならないのでございます。それは大学の判断にまつべきものだというふうに思っております。
  160. 中谷鉄也

    中谷委員 そうすると、それは大学の自主性にまかせる——国家公安委員長のほうで告発してくれ、通報してくれと言ったって、それは通報は適当だけれどもあるいは告発をすべきでないということであるならば、それはあくまで大学の自主性にまかせるのだ、こういう趣旨にお伺いをしてよろしいのですか。
  161. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 私は、その点は法律に詳しくないので、文学士だもんでわかりませんが、やはり警官を導入されるときには、大学当局としては通報をされる……。
  162. 中谷鉄也

    中谷委員 文部大臣に対する質問は約束の時間が過ぎましたので終わりますが、この国家公安委員長の要望というのは、事実関係においても、論理的にも、必然的に大学に対する警察の導入ということになりますから、はいそうですというふうにお答えいただいたことは大臣のお気持ちと若干違うと思うので、ひとつ十分に御検討いただきたいと思います。  そこで、国家公安委員長にお尋ねをいたします。大学の自治と警察のあり方についてお尋ねをするのですが、その前提として次のようなことをお尋ねしたいと思うのです。と申しますのは、きょう原潜が寄港という非常に好ましからざる、われわれとしては歓迎しない状態が起こりましたが、新聞の報道によりますと、これは事実関係だけをまずお聞きするのですが、こういうことが報道されておるのです。「警察庁は米原潜プランジャー号の佐世保入港に伴う阻止闘争に十七日朝、事前通告と同時に全九州と大阪、京都、兵庫、岡山、広島、山口の十三府県から警官四千四百人の出動を命じ」、こうありますが、そういう事実は間違いございませんか。それだけです。
  163. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 正確にそのとおりであると私自身が断言できませんが、そういう手配をいたしております。
  164. 中谷鉄也

    中谷委員 私がお聞きしたのは、人数の点じゃないのです。要するに警察庁が命じた、命令されたということですけれども、そういうことで国家公安委員長としてはよろしいのでしょうか、国家公安委員長にお答えいただきたい。
  165. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 これは各関係県から、特に長崎県からの協力要請に応じまして、そういう手配がなされておると承知いたしております。
  166. 中谷鉄也

    中谷委員 だから、私が申し上げたいのはその点だったのです。少し早口で申しましたので、あるいはその点についてお気づきいただけなかったのかもしれませんけれども、私の理解によれば、警察庁に命令権というのはないはずでございますね。警察法第六十条によりまして、援助でございましたかの要請を都道府県公安委員会がなすというふうに私は理解をいたしております。そこで、そういうふうに命じたというふうなこと、警察庁が四千四百人について御手配をなさるというのも、私おかしいと思うのです。これらの問題の中で一つ、やはり都道府県公安委員会、都道府県警察、これは特に警察の基本であることは言うまでもないわけなんです。そういう中でひとつお答えをいただきたいと思いますが、いわゆる原潜寄港に伴うところの、前のエンタープライズ寄港に伴うところの警備については、いろんな問題がありました。現に、福岡法務局において人権侵犯の問題として調査されているというような事実もございます。そこで、エンタープライズ寄港のときに行なわれたところの警備の反省点、これをひとつ国家公安委員長としてどの点を反省されるか、この点についてお答えをいただきたい。
  167. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 何を反省しておるかとおっしゃいましても、ちょっと私がいまレクチャーがそこまでいっておりませんから、お答えする能力がございません。警察庁の担当局長から警察庁としての反省があるいはあるかもしれませんが、それでひとつかえて答弁することを許していただきたい。
  168. 中谷鉄也

    中谷委員 局長の御答弁は要りません。もうずいぶん局長とはこの問題について当時議論をいたしました。問題は、私が一番委員長からお聞きしたかったことは、警察権力というものの持っている一つの側面、要するに警察権力というのは常に行き過ぎがあってはならないということ、もし私が国家公安委員長であれば、そういう問題について第一番にひとつレクチャーを受けたのではないかと思うのですけれども、そういう問題について大臣のお口からその点についての御答弁がなかったことは、非常に残念だというふうに申し上げておきます。  そこで、そういう一つの観念的な質問をいたしまして、その中でひとつお尋ねをいたしますが、もう一度整理をさしていただきます。要するに、東大の中において、思いつくままに罪名を言いますならば、不法占拠、そうして不法監禁、さらにまた暴力行為等処罰に関する法律違反、傷害、暴行、あるいはひょっとすると兇器準備集合などという違法行為が行なわれていることは、最終的な捜査によるところの事実の認定というのはできていないにしても、これ全く常識だ。この点は警察官導入の可否の問題とは全く別に、そういう認識を持っております。大臣のほうからひとつその点についてお答えいただきたい。     〔委員長退席、大竹委員長代理着席〕
  169. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 私も厳密な法理に立って断言できるかどうかはお許しをいただきますけれども、常識的にこれはとんでもない不法行為が続出した状態である、こう認識しております。
  170. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで、さっき私、文部大臣お尋ねをいたしましたが、大学の中におけるところの被害者の態度、不法占拠されているということになれば、建物管理者のほうからその点についての通報がない、不法監禁を受けている者からその点についての通報がないという場合には、罪名で言うならば不法監禁あるいは不法占拠、一つは物に対するところの不法な行為、不法監禁の場合には身体に対する自由の拘束、そういうふうな場合については、通報がない場合には警察権の発動というのはお控えになるという御答弁予算委員会等で伺ったように思いますが、この点はひとつ念のためにお聞きしておきたいと思います。
  171. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 これは少し御質問に脱線しますが、お許しをいただきますが、とかく国民的な常識が、特にいま東大が浮き彫りにされている課題を中心に、炉辺談話でもしょっちゅう朝晩行なわれていると推察される中に、一体警察は何しているのだというふうな声があると思います。私のところにも、はがきや手紙で、見知らぬ人から方々からそんなような激励ともつかないような陳情がございます。脱線したようなことを申し上げておりますけれども、そういうことで警察がむやみに——法に基づいて行動するのは当然でございますけれども、脱線してでも飛び込んだらどうだということすらも期待しているやに見受けられる。そういう雰囲気のもとにおいて、うかつなことを国会において申し上ぐべき態度ではない、法律的にも欠陥のないことを御答弁申し上ぐべきだという気持ちで、にわか仕立ての答弁資料をつくってもらって自分なりに矛盾のないお答えをすべく努力してまいりましたけれども、文部大臣じゃございませんが、私は経済学士でございますから、皆さん方専門家の方々と同様の厳密性においてのお答えをする能力はございません。政府委員の援助を受けて誤りなきを期したいとは思いますが、そこでいまお尋ねの不法監禁あるいは不法占拠というほかに不法行為が行なわれておるということを厳密な意味において断定するためには、捜査が行なわれて、まさにそのことありという根拠に立ってしか言えないことだと思うのであります。ですから、従来の答弁におきましても、そのことが大学なるがゆえに捜査活動が不便であることは事実でございまして、必ずしも明確に不法行為と断定できないやに感じられますから、そういうときは、現実問題と理論とをいささか混同しまして、分界点がはっきりせぬままの答弁を通じて何だかはっきりせぬじゃないかというおしかりも受けておることを自覚いたしております。  そこで、新聞記事をお読み上げになりましたが、林さんの場合を私なりに考えまして思いましたことは、林さんが個人として身体の自由を奪われておる、不法に監禁されておる、まさに不法行為が行なわれておることでございますけれども、それに関して御本人としても通報したり告発したりということができるはずであります。しかし、しないこともあり得る。それはもし警察官の導入に直接つながることをやったりせば、そのことによって、林さんとしては大学の管理者の一人として、そのことを契機としてエスカレートする傾向顕著な角材さばきが誘発されることをおそれる管理者の責任の立場に立って、個人としてはそう思うけれども、管理者の責任においてはそうなすべからずということを、御本人としては判断されたと想像するわけであります。文部大臣の話も、そのことに関しておろうかとも推察をいたします。ですから、捜査が着実に学内なるがゆえに現実問題としてできないことと、さらに管理者としては当然同じような不法監禁事犯が起こらないように、将来のために、そうなることによってその不法状態の真相を早く明らかにして不法状態を解除する立場と、個人的な権利の侵害についての考えがあるはずだ、こう思っておりましたから、お読み上げになりましたような新聞記事のごときことを答弁したように記憶いたします。
  172. 中谷鉄也

    中谷委員 もう少し話を詰めさしていただきます。大学の構内の問題だから捜査ができない、しにくいと、こういうふうにおっしゃいましたですね。ところが、これは現在までの御方針をひとつお答えいただきたいのですけれども、私も捜査官になったことはありませんけれども捜査というのは、捜査ができたからといえばもうそれで捜査は終わりでございますね。捜査というのはできないのじゃなしに、捜査をするわけなんでございましょう。犯罪の端緒があれば捜査をするわけでございましょう。新聞に記事が出た、週刊誌に載っている、ラジオが報道している、捜査の端緒は幾らでもあったと思うのです。そのことについて、不法占拠、不法監禁については捜査ができないのじゃなしに、捜査をされなかったということについては、特段の御配慮があったということだろうと思うのです。捜査ができないのではなしに捜査というものはするものだということ。大臣のお話は、予算委員会のときから私お聞きしておって、少し何かあまりにも論理的なお話をされるけれども捜査というものはするものなんだから、捜査をしなかったわけ。別に大学の構内に入らなくたって捜査はできるだろうし、それで資料が集まれば、大学の構内に入ることだって方法によってできるんでしょうから、それを私はあのような行為についてはすべきでないというような考え方を持っておる。しかし、警察御当局として、国家公安委員長として、そのことについて警察権の導入とか、あるいは捜査の着手とか、あるいは強制捜査とかいうことに従来まで踏み切られなかったその判断の根拠、基準、お考え方は何か、こういうようにお尋ねいたします。
  173. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 だんだん法律的に厳粛さを要求されますので、自信がなくなりますけれども捜査は警察としましてはする責任がある課題であります。捜査しなかったのじゃなしに、捜査しにくくあったことがあるではなかろうかという、過去のちょっと聞きましたことに関連をして、しにくかったことがあるであろうということについて、私なりの、法律的に厳密じゃございませんが、答弁の中にそれらしいことが出てきたことが記事に出たと思います。具体的には、その後聞きましたことですけれども、林さんの不法監禁事件については、むろん捜査いたしつつあります。
  174. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで最後に、同僚委員が待っておりますから、一点だけお尋ねをいたします。そうすると、加藤代行が言うております学内での学生の自治活動に関する警察の調査や捜査、ことに学内における情報収集活動というのは、続けてやつておられるということになるわけでございますか。
  175. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 そうでございます。
  176. 中谷鉄也

    中谷委員 その点については、加藤代行が、学内での学生の自治活動に関する警察の調査や捜査については、警察の要請があった場合にも原則的にはこれをお断わりする、こう言っておる。そうすると、拒否されておる状態の中で警察独自の情報収集活動をおやりになっておるということにならざるを得ないと思いますが、そういうことですか。
  177. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 学生の自治活動が正常であります限り、警察とは無縁のものと思います。いささかもタッチすべきことじゃないと私は理解いたします。ただ、学生自治活動という名目のもとでありましょうとも、不法事犯に関することがあるならば、警察は当然の職責として捜査すべきもの、そういう関係かと心得ます。
  178. 中谷鉄也

    中谷委員 じゃ、最後に一言だけ私のほうから申し上げておきまして、質問を終わります。要するに、警察の職務というのは、警察法第一条あるいは第二条に明確に規定されているとおりであります。そこで先ほど文部大臣にも申し上げましたが、警察のお仕事というのは、一言でいうならば法秩序の維持だろうと思うのです。要するに大学紛争解決のために警察が権力を発動されるというふうなものではなく、あくまでそれは法秩序の維持ということにとどまるものであるというふうに私は考えます。いってみれば、暴力の前に大学紛争が安易に解決さるべきでないと同時に、権力によって大学紛争が解決されるというふうなことも好ましくない、こういうふうに申し上げまして、私の質問を終わります。
  179. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 御質問に対してお答えを御要求になりませんから、立ち上がる必要はございませんが、いま御指摘くだすった警察の心がまえというのは、まさに法に基づき、法の範囲内において不偏不党、公正でなければならぬ、これはもう当然のこととして私は受けとめておりまして、いうところの大学紛争の定義が不明確なままに、大学紛争を警察権力でどうか片づけるということは、これこそおよそナンセンスの言い方である、かように心得ております。大学の学生活動でありますれ、何でありましても、法に違反する事犯がありますれば、これは法の命ずるところに従って当然捜査その他の警察活動が行なわれなければならない立場にわれわれはあるというだけであって、警察が出たから大学紛争がおさまるなんて毛頭考えておりません。
  180. 大竹太郎

    ○大竹委員長代理 岡沢完治君。
  181. 岡沢完治

    岡沢委員 それでは先ほどの質問に続きまして、特に荒木国家公安委員長がお急ぎのようでありますから、国家公安委員長に対する質問を先にいたします。  いま中谷委員から警察の責務についてお話がございましたが、警察法二条によりますと「警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもってその責務とする。」というのがございます。また、警察法全体の精神あるいは警察の任務と申しますと、結局個人の権利と自由を保護し、公共の安全と社会の秩序を維持することと確信いたします。そういう点からいたしまして、先ほど来大学におきまして違法、不当の行為が行なわれていることはお認めになったわけでありますが、その個人の権利、なかんずく他の一般学生が学問を受ける権利、これは憲法上の権利です、あるいは大学教授が研究をする権利、あるいは一般国民が大学病院その他の施設を利用する権利、国民の権利の中でも基本的な権利が阻害されておる事実が、現に存在いたしております。自由につきましても、たとえば私の尊敬する衛藤瀋吉東大教授は、大学院における講義を辞退したいということまでおっしゃっておられますし、先ほど来問題になりました林教授の被害事実、あるいはまた学問を受けようとして大学に入ろうとする受験生の教育を受ける権利の阻害、その他一般の刑法上の被害者が受けるような傷害あるいは器物毀棄、これは学外におきまして一般市民が学生の無法な行動のために物質的な損害を受けていることも、御承知のとおりでございます。ことに私がまたここで大きく取り上げてみたいのは、日大におきまして起こりました、正当な警察官の職務執行行為に関連して殉職者を出しておるというような事実、あるいはまた読売新聞の記者が取材を妨害される、これも民主主義に対する大きな挑戦であります。こういう具体的な重大な権利侵害、自由の侵害が行なわれておる。また先ほど来お答えになりましたように、大学は治外法権ではない。しかも彼らの目的その他からいたしまして、むしろ憲法の秩序に対する挑戦であり、学問の自由あるいは大学の自治とは無縁であるということを考えました場合に、私は、このままで彼らの行動をただ大学当局の処置にまつという静観の態度で過ごすべき事態ではもうないのじゃないかと、個人としては率直に考えます。警察官の職務につきましては先ほど申し上げましたが、職務執行の心がまえとしては適正、公平、迅速ということが、警察官あるいは検察官の大原則であろうと思います。その適正という面につきましては、いま申しましたような権利侵害、自由侵害が行なわれている場合に、現在の状態は、その適正な行使が行なわれてないと断定しても間違いないと思います。あるいはまた公平という点についてはなおさらであります。先ほど先輩の佐々木委員がるる指摘いたしましたように、一般市井の暴力行為に対してはあれだけきびしく取り締まる一方で、最も高い学問を受けており、判断力もある、いわば責任ある大学生に対してはきわめて遠慮深い、きわめて放任した態度をおとりになる。国民感情からいたしましても、公平の原則に反するということは私は否定できないと思うのであります。ことにまた、警察官から見まして、現在おとりになっております最高首脳の態度は、おそらく警察官の士気と職務遂行についての熱意について、大きな阻害原因となっているのではないかという感じが私はするわけでございます。迅速の問題につきましては、先ほど御答弁の中にも、東京大学の助教授が一カ月半の重傷を負う、これは迅速な予防の責任を回避された結果だと申し上げても、私は過言ではないと思います。要するに、警察当局の現在の大学紛争に対する、特にその物理的な、あるいは刑事的な犯罪に対する適応態勢は、どう考えましても、むしろ任務にそむくものではないかという広い意味での感じすらするわけでございます。この辺について、国家公安委員長としての御所見を重ねてお尋ねいたします。
  182. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 佐々木さんにお答えしましたことで尽きておりますし、そのことも指摘しながらの御質問ですから、繰り返し重複することは避けさせていただきます。  最後におっしゃった駒場における一カ月半の重傷を負った助教授の問題ですけれども、私もこれは現実には遺憾だと思います。ですけれども、これは大学自治が治外法権の場でないことは当然といたしまして、実際警察の責任、暴力による傷害事件が起こるであろうという懸念をできれば予防して保護するという責任が当然あると思いますけれども、実際問題は、被害者側に立つであろう大学と無関係に警察官が入りますことを通じまして、さっきもちょっと申し上げたのですけれども、エスカレートした暴力ざたがさらに加わることによってより一そうの混乱が生ずるおそれありと大学が判断し、連絡しましてもちょっと待ってくれという状態におきましては、待ってくれといわれても待てないということで飛び込むということによる結果の被害の増大をおそれる立場から、慎重であるということは、事実問題として御納得いただけることだろうかと思います。そういうことで、いまの駒場の事件を具体的におあげになってのお話につきましては、警察当局の大学と連絡しながらの判断そのものは、理論的には迅速性を欠いたということは言えましょうけれども、現場の実情から申しましては、一つの慎重な配慮が行なわれておったということは、私どもの立場からでも了解すべきことじゃなかろうか。さりとて、常にただ慎重であればよろしい。警察の行動すべき国民に対する責任を迅速に果たさなければならぬことまでもほったらかして傍観しようということでは、毛頭ございません。
  183. 岡沢完治

    岡沢委員 いまの公安委員長お答えにもございましたし、先ほどの中谷委員質問に対しましても、学内なるがゆえに捜査がむずかしいという趣旨の御答弁、あるいは被害者の協力がないのでやりにくいという御答弁が、たびたびこの席でございました。たとえば、不法占拠、傷害、いずれもこれは親告罪じゃございません。被害者が協力しなければ、あるいは告発、告訴しなければ、捜査権が及ばない事案ではないわけです。また、先ほど来繰り返しておりますように、物質的な損害、あるいは法秩序に対する挑戦、いろいろな意味で非常に大きな実害がもうすでに発生しておる。ことにまた、先ほど来繰り返しておりますように、学問を受ける権利が、他の一般学生、あるいは同校を卒業して大学に入ろうとする学生その他の権利が現実に阻害されている事態が起きているわけでありまして、私は、静観をされるべき時期は過ぎておるし、また私自体が、実は昭和二十年でございますけれども、天皇制を信じておりまして、そのために殺人予備罪、銃砲等所持禁止令違反で逮捕拘禁をされた事実がございます。そのときの自分の心情を考えた場合に、大体いまの学生諸君年齢は同じでございますから、正しいという確信は持っておりますけれども、それに対する裏づけとして、あるいはそれに対する批判が少なかったということが、むちゃな行動に至らしたような感じが、私の反省でもいたします。むしろ間違っておることは間違っておるのだということをはっきり学生に示してやることが、学生に対する愛情であるとともに、むしろ他の一般学生の権利を守り、あるいは国民の法秩序に対する民主主義擁護の態度を堅持させる道ではないかというふうに感ずるわけでございまして、私は、静観をしたり、あるいは過去の慣例から、あるいはまた大学という特殊事情から十分な配慮ということもよくわかりはいたしますけれども、しかし、その限界は来ておるのではないか。東大の場合、わずか千二百名の間違った偏見を持った、あるいは独善的な、独断的な学生の思想行動のために、他の一万名をこえる学生の授業が妨害され、また大学教授の研究が阻害され、あるいはまた次の入学者に大きな被害を与えるということは、許されないのではないか。私は、国家公安委員長として、一段とこの辺についての御配慮をお願いしたいと思うものであります。私は、ここで最後に、何よりもおそれますのは、いわゆる力の支配ということが日本の国内に横行する結果考えられる民主主義の崩壊であります。この点につきましては、私は、小さい問題ではないという観点から、秩序維持の責任を持たれる国家公安委員長あるいは法務大臣はぜひとも真剣にお考えいただきたいということをお願い申し上げまして、私の質問を終わります。
  184. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 いまおっしゃいましたことを、私も御趣旨においてことごとく同感であり、同じく憂えるものでございます。まあ教育の場で、教育的立場で、まずもって管理者としての正常な考えを確立したその根底に立って、大学みずからがはっきりしていただきたい。そして不法行為がありまして、やむを得ず警察権を発動して御協力申し上げなければいけない場合には、もちろん全力を尽くして協力し、法秩序を維持するべく責任を果たす、そういう心がまえで、さっき申し上げましたように、大学紛争それ自体が、警察官を導入し、行動することによって解決するとは毛頭思いません。ただ、必要な基本認識というものが大学当局にまず確立されていませんと、迅速な警察の責任をかりに果たすという行動がありましても、それが誤認されて不測の騒動を誘発するということをおそれるという気持ちは、私は謙抑に念頭に置かなければならないということをあわせ考えまして、御指摘のような、いまの大学紛争の課題ということが、容易ならざる法秩序そのものの根底をゆるがすことにつながることをおそれる者の一人であります。
  185. 大竹太郎

    ○大竹委員長代理 山田君。
  186. 山田太郎

    ○山田(太)委員 まず、冒頭にあたりまして、法務大臣にお伺いいたします。昨日の法務大臣の御答弁によりまして、検察官は準司法的な機関として上司のみだりな介入は加えない。そのような、いかに法務省の行政機関に属する検察官とはいえども、準司法的な機関であるという性格あるいは特殊な責務から、みだりな上司の介入は加えない。そしてそのことについて法務大臣から検事総長に指示を与える、あるいは検察陣に通達なりあるいは訓示を与えるという、きのう答弁がありました。それについて法務大臣は、いつ、どこで、どのような形でそれを行なっていくか、それを一応、まず冒頭において明らかにしておいてもらいたいと思います。
  187. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 きのうは、ほかの委員会にも出ましておそくなりまして、役所には戻りませんでした。きょうも引き続いてこっちに出ておりますが、明日あたりは役所に行けると思いますので、そのときに、検事総長を呼びまして、じかによく趣旨を伝えたいと思っております。
  188. 山田太郎

    ○山田(太)委員 では、まだその点をしかとただいま承ったわけでございますが、この際、法務大臣に新たに就任なさった西郷大臣から、近来相次いで起こっております不正あるいは官界の腐敗事件について、西郷大臣としてはどのような所信、あるいは具体的にどのような措置をとろうとなさるか。いまわが国においては、これは国民の政治に対する大きな不信にもつながってきておりますし、また同時に、学生紛争の一つの要因ではないか、大きな要因であるとさえもいわれておりますので、まず西郷大臣の所信並びに具体的な措置について、御意見があったら聞かしていただきたいと思います。
  189. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 そういう問題につきましては、法務省がどうこうというよりも、やはり国民の政治に対する不信を払拭する上からも、政界におる者は厳に身を正しまして、そういう不祥事を起こしたり国民の疑惑を招かぬような心がけであるべきじゃないかと、さように考え、今日までの事態につきまして、私自身も大いに謙虚に反省いたしております。
  190. 山田太郎

    ○山田(太)委員 もう一点押しておきますが、具体的にはどのようなことをやっていこうか、そういう点について、まだそこまでお考えになっていないならば、まだそとまで考えてないと、それの答弁でもけっこうです。具体的にどのような処置をとられんとするかという点です。
  191. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 これはいま申し上げましたとおり、法務省の力でどうこうということでなく、お互い政界におる者が自粛自戒いたしまして、正しい行動をとる以外に防ぎようがないのじゃないかと私は思うのであります。
  192. 山田太郎

    ○山田(太)委員 では、法務大臣としてはいかなる処置も具体的にはとれないということをおっしゃっていることに解していいですか。
  193. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 何もしないというのではございませんが、法務省の役目柄は、御承知のとおり、法秩序を維持したり、個人の人権を擁護するたてまえ、きわめて重要な仕事でございますから、そういう私どもももちろんでございますが、やはり政界における黒い霧なんかをいわれないように、政界におる者が最も自粛自戒していかなきゃいかぬのじゃないか、さように考える趣旨を申し上げたのであります。
  194. 山田太郎

    ○山田(太)委員 しつこいようですが、それは当然なことです。法務大臣として先ほどおっしゃったことは、これは当然なことです。だけれども、このように相次いで起こっている政官界においての腐敗をそのままおいておくわけにはいかないのでありますから、法務大臣としては、具体的にはどのような処置をとるか、あるいは、そういうことに対して法務大臣として意見があるかどうかということを、具体的な面でお伺いしたい。
  195. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 いま重ねて申し上げましたが、また、今回法務大臣に就任いたしておりますので、現内閣も常に申しておりますが、私ども関係の方面に対しましても厳に戒めまして、綱紀の粛正をはかっていきたい、さように考えておるのであります。
  196. 山田太郎

    ○山田(太)委員 どうもピントが合わない答弁のように感じますので、これは同じことの繰り返しになることをおそれて、問題を次に移してまいります。  そこで、前々国会であったかとも思いますが、私の質問に答えて、収賄罪でございましたか、刑法の全面改正をするときにあわせて改正するつもりであるという御答弁がありました。しかし、その時期はどのような予定をなさっておりますか、その点について、これは刑事局長のほうから御答弁を願いたいと思います。
  197. 川井英良

    川井政府委員 刑法の全面改正作業は、かなり最近進捗を見せております。本日も、きのうに引き続き、第十五回の部会をやっておりまして、問題がだんだん煮詰まってきておりますので、将来そう長い期間を必要とするのではなくて、かなり近い機会に全面改正の全貌についてこれを明らかにすることができるのではなかろうか、かように考えております。その中におきまして、ただいま御指摘になりました涜職在につきましても、いろいろな観点から、構成要件の合理化とか、あるいは量刑の公平とかいうようなことについて議論がなされておりますので、国会でいろいろ御指摘や御指導をいただきました数々の点につきまして、そういう協議の際にその考え方を反映いたしまして、なるべく合理的な、また、納得するような刑法全面改正の案を得たいものと、せっかく努力中でございます。
  198. 山田太郎

    ○山田(太)委員 そこで、先ほど大臣から御答弁があるかとも思ったのでございますが、もう御承知のことでございますが、最近においても、共和製糖、あるいはLPG事件、あるいは日通事件等々、また、このたびの、不起訴に一応なっておりますが——あえて一応ということばを使わせていただきますが、京阪神土地事件等々に、非常に汚職に類することがたびたび相次いで起こっております。したがって、刑法の全面改正を待っておって、そうして涜職の罪の改正を待っておったんでは、また——根本は、やはり人間それぞれの人々の自覚が一番根本だとは思います。もちろん刑法を改正したからといって、全部その汚職事件が払拭されるとは、これはよも期待はできないとは存じます。人間の自覚にまつほかはないと思いますが、しかし、その改正がないよりはあったにこしたことはないわけであります。そこで、刑法正を待っておったんでは、いつまでも——先ほどの全面改刑事局長の御答弁では、あえて近き将来ということばを使われましたが、その近き将来も、何年かわからないわけですね、そういう答弁だけでは。したがって、涜職の罪だけでも、涜職の章だけの改正でも考えられるべきが至当ではないかと私は思うわけでございますが、これは法務大臣答弁をいただきたいと思います。
  199. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 この問題は、先ほども同じく決算委員会で御質問がございましたが、やはり現在のあっせん収賄罪の条文は、しさいに検討すれば不備な点もあるやに思いますが、一連の問題として刑法改正をやっているのでありますから、はたしてこれだけをピックアップするということが法の体制上いいか悪いか、いろいろの問題があると思いますけれども、今後ともそういう問題を慎重に検討してまいりたいと考えております。
  200. 山田太郎

    ○山田(太)委員 いまの大臣答弁では、一つも積極的な意思は見られないわけです、先ほどの答弁とは、また非常に変わってきてしまいます。
  201. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 いま申し上げたことでおわかりくださると思ったのでありますが、何もそういうように軽視したりしておるものではありませんで、今日も、先ほどのお尋ねのとおり、いろいろの問題も起きております。したがいまして、そういう際でもありますので、この問題には重要な関心を持っておりますが、ただ御承知のとおり、一連の関係で刑法改正をいま長年かかってやっておりますので、その中からそれをただ一つ抜き取るのがいいか悪いか、そういうふうなことをちょっといま申し上げたのであります。
  202. 山田太郎

    ○山田(太)委員 どうも答弁になっていないように思うのです。涜職の罪だけでも取り立てて改正をする意思があるのかどうか。ないならない、あるのならある、あるいは検討するとか、この三つのうちのどれかが出てまいらなければならぬはずですが……。
  203. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 いま、その問題はいろいろの点から条文の内容を再検討して完備させるのがいいと思いますけれども、再三申し上げますとおりに、長年かかりまして学者が刑法改正をいまやっておりまして、すでに草案等も出ておりまするが、その中からピックアップしてそれだけを先にやるのがいいかどうか、いろいろ専門家の意見等も徴しなければなりませんので、いま法務大臣が直接それをすぐやるとかどうとかいう、そのようなものではないと思います。慎重に検討いたしまして、支障のないように善処してまいりたいというのでございまして、決して軽視しておるのではなく、現在の世相にかんがみまして、非常に重要な関心を持っておるのでございますけれども、いまここですぐというととは、ちょっと言いかねます。いろいろの点から、また改正の点につきまして、先生方の御意見等もあると思います。そういう意見を徴しまして、万全を期してまいりたいというので、決して軽視しているのではないということを御了承賜わりたいと思います。
  204. 山田太郎

    ○山田(太)委員 川井刑事局長にお伺いしますが、いまの質問でございます。私が申し上げたのは、近いうちにというのでは、これは何年かかるかわからぬ。したがって、この汚職事件の続発に際しても、この涜職の罪の章だけでも先に取り上げてやるほうが、国民のためにも、あるいは日本の社会のためにも、それのほうが得策ではないか、これは、だれが考えても、そのようなことを考えつくわけですから、この点について刑事局長から……。
  205. 川井英良

    川井政府委員 一般的に、涜職の罪をも含めて全面改正の場でもってせっかく検討中だ、その結論は近い機会にこれを得たいということで努力中だ、こういうふうに申し上げました。  そこで、具体的な問題になりまして、それじゃ全面改正をまたないで、涜職というようなものは非常に世にはんらんをしているから、これに対処するために刑法改正の面でそこだけを抜き出して早くやったらどうだ、こういうふうな御主張だと一一応拝聴いたしました。この点につきましては、ちょっと私、別な意見がございます。たとえば、この交通戦争に対処して、二百十一条を先に抜き出して先般お願いをいたしました。ああいうふうに必要のあるものにつきましては、全面改正をまたないで、一部改正でどんどんやってまいりたいという方針に変わりはございません。問題は涜職罪でございますが、日本の涜職の規定は、少し——外国の涜職の規定を御参照いただきますとよくわかりますけれども、これはかなり広いわけでございます。そうして刑もかなり重うございます。したがいまして、現在涜職事件が多いからといって、刑法の場面どういう修正を加えたらその多いという事態に対処することができるかどうかということにつきましては、かなり研究を必要とすると思います。問題は、先ほど大臣がちょっと触れましたように、百九十七条の四のあっせん収賄罪の規定が、要件がむずかし過ぎるから、もう少しこれを簡易化して、そうしてあっせん収賄を容易に取り締まれるようにしたらどうかということになりますと、これは問題が具体的でございます。こういうふうな御趣旨の御質問でございますれば、それはそれとしてまた実はお答えの用意があるわけでございますが……。
  206. 山田太郎

    ○山田(太)委員 もう一度、よく聞き取れなかっので……。
  207. 川井英良

    川井政府委員 涜職の規定の中でも、日本の収賄の規定の中で一番構成要件がめんどうなのはあっせん収賄の規定でございまして、あっせん収賄の規定が、構成要件が非常にめんどうなために、あっせん収賄行為という好ましくない行為がずいぶん出てきておる。要件がめんどうで、なかなか証拠固めが困難だということであるから、この際はあっせん収賄の規定をもう少しゆるやかにして、そうして証拠固めが楽なようにして取り締まりを強化する、こういうことはどうだ、こういう具体的な御質問ならば、それについては、またそれについてお答えの用意がございます。こういうことでございます。
  208. 山田太郎

    ○山田(太)委員 せっかくの刑事局長の御答弁ではありますし、また追ってその点についてはお伺いする予定ではありましたが、このあっせん収賄罪のいまのをもうちょっとゆるやかにして、その面についての御答弁をお願いいたします。
  209. 川井英良

    川井政府委員 まず第一点は、あっせん収賄罪という規定は一体何を処罰するのか、この法律によって保護しようとする刑法上の法益というものは何だということが、刑法の大問題でございます。普通の収賄罪、贈賄罪でございますと、収賄をするその公務員の職務の公正を害するということが国家的な立場から適当でないということで罪に値するわけでございますけれども、あっせん収賄というのは、その職務の公正を汚すのは金をもらわない公務員でございます。金をもらわない公務員の公正を害して、そうして自分の職務の公正を害しない者が金をもらうという、複雑でございますけれども、たいへん妙なかっこうでございまして、学者の間でもあっせん収賄罪というものはほんとうの意味におけるところの涜職罪ではないということさえもいわれておる現況でございますので、このあっせん収賄罪の規定は事の必要上できた規定ではございますけれども、刑法の中涜職の規定としては非常に理論的に問題がある規定であるということを第一点として申し上げなければならないと思います。  それから二番目には、不正の行為をさせなければあっせん収賄になりません。不正の行為というのは、その公務員が法律でもって定められた職務行為のワクをはずす、そういう行為をしないと不正行為にならないというのが通説でございますので、ただ簡単に請託を受けて何となく便宜をはかるということだけでは、不正の行為にならないのであります。     〔大竹委員長代理退席、委員長着席〕 普通単純な涜職罪でしたら、もちろん便宜をはかるだけで成立しますけれども、あっせん収賄罪はそういうふうにしぼってございます。そこが非常にきびし過ぎる、こういうように指摘をされておるわけであります。そこで、かつてのあっせん収賄罪の立法の経過をごらんをいただきますとわかりますけれども、前に、不正行為というのをとってしまいまして、第三者から請託を受けて、そうして他の公務員の職務に関してあっせんすることについてわいろを収受したというだけで成立するという案も、国会に出たことがございます。こういうふうな案だといたしますと、不正の行為がございませんので、だれかから依頼を受けて、それなら知っておるからあの公務員にいっておれが適当に頼んでやるからということで第三者から金をもらえば、それだけであっせん収賄罪が成立するということでございまして、これは非常に取り締まりがしやすくなる。ところが、この案は国会で非常に問題になりまして、これは取り締まりの便宜のためには非常に適当だけれども、多くは、国会議員なんかの場合、あるいは県会議員なんかの場合を考えてみますると、非常に広い活動をなさる。そしてまたその活動について、別な面からいろいろまた寄付金なんかの金が動くということを考えてみますると、いまの案でいけばたいていのものがみんな結びついてしまう。何だか他の行政機関の職務行為について、ちょっと口を聞いてやったということと別個の面でもって寄付を受けたということが、考えようによればすべて結びついてしまうというので、非常に広くなって、取り締まりが行き過ぎて弊害を生ずるおそれがある。これは検察ファッショに結びつくおそれがあるということまで議論されまして、結局この案は国会を通らなかったというふうないきさつがあるわけでございまして、現行のように、そこのところは不正な行為をさせるということでしぼる。それからもう一つは、本来の職務を曲げる公務員と金を受け取る公務員とが別個なものであるという、涜職罪としてはまことに異様な形の構造になっておるというふうなこと、その二つの点を勘案いたしまして、現行法のような形に相なったわけでございます。  そこで、これからは私の意見でございますが、現行法がそのままで適当だ、こういうふうに申し上げることもできませんし、そうかといって、それじゃもう少しゆるやかにしてしまって取り締りやすくしたほうがいいということは、いま直ちに申し上げるだけの用意はございません。これはいろいろな面から検討いたしまして、そして最も合理的で適当な構成要件が発見できるならば、またこの百九十七条の四の改正というようなことについても考えてみるということになろうかと思いまするけれども、今日の段階におきましては、資料を収集し、またいろいろな観点から考え合わしてみまして、改正の要否についての検討をいたしておるところである、かように申し上げたいと思います。
  210. 山田太郎

    ○山田(太)委員 いま改正の要否について検討しているというところであって、まだ改正の方向にはきまっていないということをおっしゃるわけですか。
  211. 川井英良

    川井政府委員 そのとおりでございます。
  212. 山田太郎

    ○山田(太)委員 では、その点は論旨が進みませんので、次の問題に移ります。  先日の予算委員会においての川井局長の御答弁の中にあったと思いますが、神戸の検察審査会が取り上げる。したがってその決定を待ちたい。また新たな事実が出てくれば、再起訴ということもあり得る、そういう答弁があったと思います。その審査会の決定をまって、ではどうしようとするのか、この点について、はっきりした質問じゃないかもしれません、したがってはっきりした答弁がないかもしれませんが、その点についてあえてお伺いしたいと思います。
  213. 川井英良

    川井政府委員 具体的な証拠の内容についての御質問がございましたので、ある程度抽象的には申し上げられますけれども、具体的な証拠の内容についてはこの際御容赦を賜わりだい、こう申し上げまして、その理由といたしまして、職権で検察審査会が取り上げて、そして検事からあらゆる証拠の提出を求めて、この事件の不起訴処分が適当かどうかということについて目下審査中である、こういう段階でございますので、そういう段階でもって国会というような権威のある場でもって法務省の責任ある立場の者から証拠の内容をこまかく事前に説明するということは適当でないから、お許しをいただきたい、こういう気持ちで実はああいう答弁を申し上げたわけでございます。で、いまでもその趣旨には変わりはございませんで、抽象的には幾らでも御説明申し上げますけれども、具体的ないろいろなこまかい説明ということは、適当でないと思います。  それから検察審査会の結論というのは、いままでの例を見ましても、そう何年もかかっているものはございません。早いものは一月、おそくても三月か半年以内にはどんどん結論が出ております。で、おそらくこの事件につきましても、非常に急いでおりますので、かなり近い機会に起訴が相当であるとか、不起訴処分は妥当でないとか、何らかの検察審査会としての公平な立場からの結論が出ると思います。おそらく結論が出ましても、その結論に対して神戸地検といたしましてはもう一回この事件を再起しまして、一度落とした事件でございますけれども、もう一回寝ているものを起こしまして、そうして新しい生きた事件として、検察審査会の勧告に基づいてあらためて捜査をして、再び何らかの処分をきめる、こういうふうなことになっておりますので、それらのいきさつを考え合わせてみまして、こまかい具体的な証拠の点はごかんべんをいただきたい、これだけのことでございます。
  214. 山田太郎

    ○山田(太)委員 その点は一応了承するといたしまして、この検察審査会の決定には強制力がありますか。あるいは勧告することだけしかできないのか。一応調べてはおりますが、どうでしょうか。
  215. 川井英良

    川井政府委員 拘束力はございません、現行法上。
  216. 山田太郎

    ○山田(太)委員 したがって、勧告だけしかできないわけです。国民は、私自身の知る範囲においても、また新聞論調等々を見ても、このたびの事件が起訴相当と認める、あるいは不起訴は妥当でないという結論が出るのを望んでおるのではないかと、私は思っております。しかし、その検察審査会の結論がそのように出ても検察側が受け入れないときには、それはどのような措置がとれるのですか。その点について、いま拘束力はない、勧告だけしかできないという御答弁にありましたように、もし受け入れないときにはもう処置がないということに判断してよろしいですか。
  217. 川井英良

    川井政府委員 結論においては、そういうことになろうかと思います。ただ、検察審査会という制度が設けられまして、純粋無私の国民の立場において検察官の行なった処分を再検討する、こういう制度が新しい憲法下において出現いたしまして、そうしてかなりな実績が積み重ねられてまいりました。そこでいままでの実績を見ますというと、起訴勧告がございましても、もう一回調べ直して、やはりまた検事としては不起訴を維持することが適当だということで起訴しなかった事件も、かなりございます。それはそれといたしまして、それについてはさらにいろいろな特別な手続というものが、現行法上設けられておりません。しかし、起訴相当であるという勧告を受けて、それに基づいてさらに捜査をした結果、起訴することができるということで起訴いたしました事件も、かなりございます。それについて、また有罪の判決を受けたというふうなものもございますので、運営の実績を考えてみますと、この検察審査会の制度というものは、かなり実績を残しておる。また、法務大臣の訓示におきまして、検察官検察審査会の趣旨をよくのみ込んで、そうして虚心たんかいにその勧告を受け継いで、そうして捜査を尽くして公平無私に処分をすべきだということを、再三にわたって訓示の形において大臣が全検察官に対してその趣旨の徹底をはかっております。
  218. 山田太郎

    ○山田(太)委員 そこで、事実の上において検察審査会から起訴妥当である、起訴相当である、そのような勧告が出て、そしてそれを取り上げて再び起訴に持っていった、その対比件数、それがおわかりになっておったら、教えてもらいたいと思います。
  219. 川井英良

    川井政府委員 本日用意してまいりませんでしたけれども、この前、ほかの事件がありました際に調べたことがございます。もし記憶が間違っておればあとで訂正をさせていただきますけれども、起訴相当という勧告を受けて検事が調べ直して起訴いたしましたのは、大体三〇%程度であったと思います。その三〇%程度の中で、検事が起訴して有罪になったものは、大体一二%程度ではなかったかと思います。残り一八%は、裁判の結果、やはり無罪のあれをみた、大体こんなところが見当であったと記憶いたしております。
  220. 山田太郎

    ○山田(太)委員 その中で、国会議員に関する事件があったことがあるでしょうか。
  221. 川井英良

    川井政府委員 記憶がさだかでございませんけれども、なかったのだろうと思います。
  222. 山田太郎

    ○山田(太)委員 記憶はさだかではないが、なかったのだろうと思うという御答弁ですが、私の調査した範囲では、一人もありません。したがって、この検察審査会そのものが取り上げた件数、国会議員のみでなく、他の議員においても——あるいは国会議員についてはその件数はいままではない、その調査が出ております。したがって、この検察審査会は、いままでにおいては、国会議員に関する限りは効力が一つもなかったということになる。これはまずひとつおいておきます。  そこで次にお伺いしたいことは、大倉議員——よその委員会でも御答弁になったかもしれませんが、しかし私が聞いておりませんので……。大倉議員は起訴した、正示議員は不起訴だ、その間の理由は、この前の国会答弁ではまだ国民は納得していないと思います。また新聞の論調等々においても、検察首脳陣への不信はいっぱいである。あるいはそういう投書もたくさん出ております。また市民感情からすると、どうもすっきりしない。起訴した上で、裁判で黒白を争うべきだと思う。検察のメンツを大事にしたのではなかろうか、というふうな批評も出ております。そこで、この委員会の会場においてその理由を、検察に対する不信の念を晴らす意味においても、この場所でもう一度明確に説明してもらいたいと思います。
  223. 川井英良

    川井政府委員 あれだけマスコミで騒がれた案件でございますので、率直に申し上げて、ただいまのような御質問が出るのも、しごくごもっともかと私は思います。ただ問題は、この事件と申しますのは、申すまでもなくそれぞれ個々の個性と申しますか、特徴を持っておりますので、同じあっせん収賄罪でございましても、一つ一つが非常に実態が変わっております。関与した人の人数であるとか、あるいはあっせんを受けた事柄の内容であるとかというようなこと、万般にわたりまして変わっておりますので、すべて事は具体的な、収集された証拠に基づいて、一つは起訴できなかった、一つは起訴できた、こういうことでございまして、その問題になっておる方がどういう政党に所属しておられるか、あるいはどういう団体に所属しておられるかというようなことでもって決して検察官は事を左右したものではない、こう申し上げざるを得ません。
  224. 山田太郎

    ○山田(太)委員 そういう抽象的な御答弁しかいまのところはできないかもしれません。また、これは検察庁当局のほうに聞くべき問題かもしれません。しかし、あえて局長にお伺いしますが、なぜ正示議員の場合は拘置をしなかったのだろうかという点について、やはり疑惑を得ておるわけです。その間に話し合いもできるじゃないか、その間に証拠隠滅もできるじゃないか、これが大きな国民の疑惑の的になっている一つでもありますが、この点について御答弁願いたいと思います。
  225. 川井英良

    川井政府委員 抽象的な答弁にならざるを得ませんが、方針としましては、証拠の隠滅のおそれが非常に濃い、こういう場合にはあえて身柄の拘束に踏み切るということになりますし、見通しとして証拠の隠滅ということが絶無ではないけれども、この事件は不拘束でいっても十分証拠の固まる事件である。また言いかえて言うならば、証拠隠滅の方法がない事件だというふうに考えますれば、拘束をしないでやっているというのが一般的な方針でございます。  そこで、いまおあげになりました具体的な案件におきましては、金銭の授受につきましては物的証拠もございますし、関係者全員が口をそろえてこれを認めているところでございまして、そのこと自体につきましては疑いがございません。問題はその金銭の趣旨がどういう趣旨であったかという点に問題がしぼられておりますので、涜職罪におきまして、その金がわいろであったかないかというようなことをみずから進んで供述をするということは、これは常識で考えてもほとんどございません。多くはいろいろの物的証拠なりあるいは状況証拠、間接証拠というものを集めて総合判断をするということが、もう捜査の常道でございます。したがいまして、関係者を留置いたしまして、留置の期間においてそれを追及に追及を重ねて、そうして言いにくいことを言わせるというようなことは、いまの手続では全く許されておりません。したがいまして、趣旨だけを明らかにする、こういう意味でございますれば、これについて身柄を拘束して調べるというふうなことは、他に格別の証拠隠滅その他の事情がなければ、これはしないことがいま一般の大体の常道に相なっております。金の授受も全然明らかでない。しかし、客観証拠に基づいて金が動いて、そのわいろ性等ということは他の証拠によって十分確認ができる、こういうふうな場合におきましては、これはほっておけばいろいろと隠滅工作というものが十分に考えられますので、さようなものについては身柄を拘束して調べている。私どもの目から検察庁のやり方を見ておりまして、大体そういう方針にのっとってやっているようでございますので、ある事件は拘束し、ある事件は拘束しないのだ、こういうふうな異なる結果には相なっておりますけれども、しさいに各ケースの内容を御検討いただきますと、おのずから両者の間にかなりなニュアンスがあるのだということを御了解いただけると思います。
  226. 山田太郎

    ○山田(太)委員 そうすると、いまの御答弁ではまだ国民は納得できないと思いますね、抽象的ですから。したがって、大倉議員の場合はこうであった、正示議員の場合はこうであった、それに対しての御答弁がなければ、国民は納得できないと思うのですが、その点はどうでしょうか。
  227. 川井英良

    川井政府委員 私はこの場でもし許されるならば、その辺のところはかなり詳細に説明ができる用意がございます。用意がございますけれども、片方の大倉議員の場合は公判請求されて、やがて公判が開かれる段階になっております。そうしますと、裁判官が無色の立場において、この事件を、はたしてあっせん収賄が成立するかどうかということで、これからの事件の裁判を通じて審理が行なわれるやさきでございます。そういう際に、こういう国権の最高機関である国会の場におきまして、私ども原告である検察官を統括しておる法務当局の立場から、これについてはこういう証拠があり、こういう関係になっておるから、これは有罪確信をして起訴しておるのだというふうなことを申し上げることは、あまり適当でない。もうしばらく見ておりまして、裁判所の審理の結果でもって一般国民からは御判断をいただくというのが、現行制度のもとにおいてはやむを得ないことではないか、こう思います。  それからもう一つのほうの事件は、これは不起訴でもってそのまま固まってしまえば、適当な段階において、また適当と認められる時期に、全貌をお話しすることもあるいは許されるかと思いますけれども、これも検察審査会がいま取り上げて、そうしてこれを議論中だ、こういうことでございますので、その検察審査会をも含めて一般国民の方々に、この事件は法務当局の立場からこれこれしかじかで、こういう証拠がある、こういう証拠がある、弁解にはこういう合理性がある、だからこの事件はだめなんだということをかりに申し上げたくても、それは申し上げないのが法務当局の立場としては適当ではないか、こういうふうに思いますので、話が大きくございますけれども、一般国民の方々はこの件についていろいろ御不審の点もあろうかと思いますけれども、両者につきましてはそれぞれ別な国家機関においてそれぞれ独自の判断がなされる、こういういきさつに相なっておりますので、それぞれの判断をまって国民が御判断をいただきたい、お願いをしたいと思います。
  228. 山田太郎

    ○山田(太)委員 私の一番心配しておりますのは、準司法的な機関と目されておる検察に対して、国民が信頼感を持つことができないようになることが一番心配であります。そこで、いまの御答弁では、そのために審査会があるじゃないかというふうな答弁に受け取れたわけですけれども、しかし、それでは検察官に対して、検察陣に対しての国民の不信というものは、そそがれないわけです。それを私は一番心配するわけです。したがって、将来国の秩序を守る意味においても、また民主主義国家を守る意味においても、検察官が信頼を失うということは、あるいは検察が信頼を失うということは、これは非常にゆゆしい問題です。したがって、いまは時期でないという御答弁もわかります。しかし、時を得てこのたびのことは明示をする、何かの方法をとって国民に明示する必要がありはしないかと思っております。その点については、どうでしょうか。
  229. 川井英良

    川井政府委員 検察国民から不信の念を抱かれるということは、われわれとしては耐えられないことでございます。国家的な立場からいきましても、全幅の信頼を得て職務を遂行していくということがほんとうに大切なことだと思いますので、その点については全く同意見でございます。そのためには、このような事件処理につきましても、その処理の過程において、あるいは処理のしかたにおいて、あるいは処理の日時の点におきまして、ほんとうに検察官が不信を招かないという観点から身を持して、そして公正妥当な判断と処置をしていくということがやはり大切だと思いますので、この点の御指摘におきましても全く同感でございまして、私どもそういうふうな御指摘とまた激励をいただくということにつきましては、ほんとうに頭の下がる思いでございます。したがいまして、一般論といたしまして、今後大臣をお助けいたしまして、検察全体がこういうむずかしい際に不信の念を招かないように、特にこの種のむずかしい事件につきましては、万全の方策をもって捜査を進め、そして公正妥当な判断にいくように、法務当局の責任者としては大いに努力をしなければならない、かように考えております。ただ、本件の具体的な案件がこういうふうな処理の結果になったから、それが直ちに検察の不信に結びつくかどうか、こういうことにつきましては、もしこれが検察の不信に大きく結びついているということであれば、それは私ども法務当局において検察を指導する立場にあるものの努力と配慮が足らなかった、あるいはまた検察官それ自身の行動に適当なものがなかったんだということになろうかと思いますけれども、私どもは、この事件処理につきましては、具体的にすみからすみまで申し上げられないことははなはだ残念でございますけれども、でき得る限り努力して申し上げているつもりでございますけれども、この処理につきましては、ことばは足りませんが、公正妥当な処理をしているつもりなんだということを申し上げたいと思います。その辺のところでひとつこの事件処理関係につきましては、御了解をいただきたいと思います。
  230. 山田太郎

    ○山田(太)委員 では、あえてこの上は追及いたしませんが、次に少々具体的な問題に移らせてもらいます。  同じく先日の予算委員会での川井局長の御答弁で、時期が時期だけにあえて岡検事正に会うことに気を使っていらっしゃる御答弁があります。そして時期が時期だけにあえて会わなかったという答弁があります。これは当然上司として前線あるいは一線の検察に指示を与える、あるいは政治的配慮をしたのではなかろうかということを、その面でいえば誤解されるといいますか、そのように思われるのを配慮して会わなかったのだという意味に解してよろしいですか。
  231. 川井英良

    川井政府委員 あの際私が六甲へ行ったというその事実につきまして、この事件の何らかの本省の立場からの指示を現地の検察庁に与えにいったのじゃないか、こういう疑いが持たれるのはどうか、こういうふうな御質問の趣旨に私拝聴いたしましたので、よけいなことでございましたけれども、率直にありのままの事実をかなり具体的に申し上げたわけでございます。その際に、神戸の地検は岡検事正でございますけれども大阪の地検時代に一緒に勤務した仲でございまして、しかも隣組の仲で非常に懇意な人であった。それが心筋梗塞で倒れた、こういうことですので、本人にはもちろんお目にかかれないにしても、奥さんにはお目にかかってお見舞いをしたかったのでありますけれども、その事件の成り行きについて非常に大きな注目をなされておるおりからでもございましたので、私はあとからお見舞いを申し上げることにいたしまして、その際はほかの用件もございましたので、会同の席上あいさつを述べて、そのまま午前中の汽車に乗ってその日のうちに東京に帰ったというのが実際の関係でございまして、あまり深い意味で申し上げたわけではございません。
  232. 山田太郎

    ○山田(太)委員 もう一度聞きますが、上司として、不起訴にしろとかあるいはああしろこうしろとか、そういう指示はしてない、そういう意味でしょうか。
  233. 川井英良

    川井政府委員 全くそういう意味でございます。  なお、おことばを返しておそれ入りますが、刑事局長は、現場の検事正、検事長というようなものに対して、上司と下僚の関係にはございません。私はただ法務大臣を補佐するという立場であり、法務大臣は全検察官を監督するという立場にあるだけでございまして、事件の指揮は、法務大臣といえども神戸の検事正を指揮することは、法律上できません。ただ検事総長のみを指揮することができる、こういうことになっておりますので、私が神戸に参りましても、私は岡検事正を指揮するとかなんとかということは、法制上のたてまえからいきましても、実際問題からいきましても、できませんし、なおかつ岡検事正は私より数年の先輩でもございますので、指揮するために参ったのだ、また指揮したというような事実は全くないと、御了解賜わりたいと思います。
  234. 山田太郎

    ○山田(太)委員 そのような答弁が出ることは予測しておりました。検察庁法十四条も知っております。したがって、そのような答弁が出ることも予測しておったのでございますが、ほんとうは指示してないということを聞きたかったわけです。そこで、検事総長としては指示できる立場にあるわけです。法務大臣は、具体的な事件については検事総長に指示できる立場にあります。しかし、根本は、問題が起こるのはここじゃないかと思う。そこで法務大臣にお伺いします。法務大臣は、この事件について検事総長に指示したことがあるかどうか。どのような指示を与えたのか。これは抽象的なことばでなしに、具体的に教えてもらいたいと思います。
  235. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 両院の予算委員会でもお答えいたしましたとおり、そういう事件に関しましては、検察におきまして厳正公平に検討、捜査をいたしておりますので、私はこの検察に満幅の信頼を置いておるのであります。したがいまして、制度上はそういうことがありましても、私が口を出すようなことは全然いたしておらぬのであります。
  236. 山田太郎

    ○山田(太)委員 そこで局長にお伺いします。大臣を補佐する立場から当然御承知と思いますが、検事総長は神戸地検あるいは大阪高検に対して指示を与えたかどうか。これは検察一体の原則でしょうから、事実のとおり、指示を与えたと言っても差しつかえないわけです、そのありのままを教えてもらいたいと思います。
  237. 川井英良

    川井政府委員 検事総長は、全検察官について指揮監督権を法律上与えられております。したがいまして、場合によれば高検の検事長をのけて直接検事正に指揮を与えることも可能でございます。したがいまして、あらゆる事件につきまして検事総長事件の指揮ができる。これはもう当然のことでございます。  本件の場合におきまして、事件処理について検事総長がどういう指揮をしたかということは、これはまた別な具体的な問題として御説明申し上げなければならないと思います。神戸の地検で兵庫の県警から事件の送致を受けまして、二カ月にわたっていろいろ捜査をいたしました。その過程において、大阪の高検を通じて最高検察庁にしばしば事件の報告が来ております。その報告に基づいて、指揮を要するものについては適切な指揮をされたことと思います。指揮を要しないで了承しておくというようなものも、多々あったと思います。そういうようなことで捜査が進んでまいりまして、たしか十二月の初め、西郷大臣御就任になった直後だったと思いますけれども、最高検察庁におきまして、この事件処理が、現場の地検の責任者、高検の責任者集まりまして、そうしていろんな方面から、あらゆる角度から議論がなされまして、そしてそこでもって起訴するだけの証拠が不十分だ、で不起訴処分が適当だということで、最後の評議の結果きまった、こういうことでございます。
  238. 山田太郎

    ○山田(太)委員 そこでまた問題が起きてくるわけですが、先ほど冒頭に法務大臣から答弁していただいております。またそれを明日法務大臣から指示でありますか、あるいは訓示か、あるいはどういう形で指示されるかわかりませんが、ここにもし第一線の検事の方が首脳の決定に不服の場合──なぜそういうことを言いますかといいますと、ここにこういう記事があるわけです。「「検察は一体。首脳会議で最終結論がでた以上、それに従うのがルールだし、当然だ」──不起訴処分の発表に臨んだ岡神戸地検検事正は、低く、よくとおる声で静かにいい切った。」ところが、この場所で、検事正をはさんでの記者会見のときに、その主任検事として担当しておった田村部長はソファーに深々と背を埋め、検事正が、主任として何か話せよと声をかけても黙ったままであった、こうあるわけですね。この状況を見ても、やはり上司の指示に従って決断を下す以外になかったというニュアンスが見えるわけです。そこでやはり検事総長が内閣の任命である以上、当然総理大臣の大きな力が働いていくわけですが、この政治の影響力から、検事総長は、一般的な常識から考えると、離れることができないということが考えられるわけです。これは一般的常識から判断しても、それが言えるわけです。ここに準司法機関的な立場としての検察陣が、一本くぎが抜けておるところがあるという結論を出さざるを得ないのですが、法務大臣どうでしょうか。
  239. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 いろいろそういう新聞の記事等もあるかもしれませんが、私といたしましては、再三申し上げますとおりに、検察陣に全幅の信頼をおいてやらしておるのでありまして、世評はいろいろあるかもしれませんが、そういうことはわれわれの関知するところではないと思います。あくまでも厳正公平にやっておるとかたく私は信じております。
  240. 山田太郎

    ○山田(太)委員 大臣にもう一度言っておきますが、上司はみだりに介入しないという指示を与えることは忘れないでもらいたい。  そこで今度は局長にお伺いしますが、もし出先の検事が首脳部の指示に不服で、それに従わなかった、そういう場合は、どのようになりますか。
  241. 川井英良

    川井政府委員 検察官というのは、行政官でありますけれども、一般の行政官とはたいへん性質が違います。法律上の性質が違っております。これは俗に一人一人が独任の官庁といわれております。それはそういうものをさすものだと理解いたしております。そこで、一人一人の検察官の独立性というのは、一般官庁の役人に比べまして非常に強いわけでございます。そのことは、事件処理を公平にし、御指摘のように準司法的機関だ、こういうふうな断定に非常に沿うことだ、こういうふうに理解いたしております。したがいまして、一人一人の創意と努力と性格と信念を生かしまして犯罪捜査に邁進をさせているということでございます。しかしながら、顔が違うように、一人一人の検事の力量とそれからものの考え方というものは千差万別でございます。その一人一人の独任官庁としてこれをまかしておきますというと、非常に不公平な結果を生じます。ある者は起訴を相当とし、ある者は不起訴を相当とする。これは私どもが大ぜいの司法修習生その他を預かっていろんな事件を与えて検討してもらったときに、千差万別の結論が出てまいります。それでは全国的な観点から公平を期しがたいので、検察官一体の原則と俗にいわれておりますけれども、それを統括するために次長検事とか次席検事とか検事正とかいうものを置きまして、そうして牛を殺さない程度で角をためる、ということばは悪いのですけれども事件のでこぼこをならしていくというふうなために、決裁制度というものをとっているわけでございます。検事になります者につきましては、もちろんその辺のところの要領なりあり方なりというふうなものを十分研究し、また納得の上で検察官になっておりますので、自分がいかにこの事件は起訴すべきだという信念に燃えてやりましても、いま申しました組織の中で検討を加えた結果、それは起訴はむずかしい、不起訴が妥当だ、こういうふうな結論が出ますれば、これに従って事を処理する、こういうのが検察官のたてまえでありますし、組織の実態でありますし、また法律の命ずる結論であります。ただ、具体的な問題といたしまして、ものによりましては、命をかけてやっているという事件も数多くございます。この事件じゃございませんよ。そういう事件が数多くございます。そういうふうな場合に、直接具体的事件にタッチしてない次席検事なりあるいは検事正というふうないわゆる上司から、これはおまえの考えていることは間違いだ、こういうふうに一蹴されるならば、命を的にやっておるという現場の第一線の検察官としては、かなり不満はございます。私もかつて第一線の検事をやっておったときに、辞表をたたきつけようかと思ったこともたびたびございました。しかし、一歩退いて十分に上司の話を聞き、事件を検討してみた結果、なるほどこれは彼の言うとおりだと、こういうふうに考えれば、やはりその命令に従って事件処理していくというのがたてまえだろうと思います。どうしてもそれに納得できないというのならば、私はその検事はいさぎよく辞表を出すべきではないかというふうに考えるわけでございまして、この辺のところが普通の行政官とはかなり違った仕組みに相なっておる。そういうふうなきびしい対決の場面を毎日毎日見せつけられるというようなところに、けさほどもずいぶん問題がございましたけれども司法修習生の中からあえて検察官を志望してくるというふうな方は、必ずしも司法修習生伸びにもかかわらず思うように伸びておらない。それだけじゃございませんけれども、私、これは一つの原因になっていやしないかというふうにも考えられるわけであります。しかしながら、一方においてそういう制度と信念を是として、これはおれの性格に合っているのだということで、優秀な司法修習生の方がかなりまた敢然として検察官を志望されてきておるということも、私ども部内においてこれをよく承知しておるところでございます。  よけいなことを申し上げたか存じませんけれども検察の仕組みは、普通一般の行政機関と、事は行政事務でございますけれども、かなり変わった仕組みになっておるということを、ひとつぜひ御了解賜わりたいと思います。
  242. 山田太郎

    ○山田(太)委員 私が申し上げたことがよくわからなかったかとも思いますが、お聞きしたがったことは、第一線の検事がもし首脳会議の——地検なら地検、あるいは高検なら高検、あるいは最高検までいってでも、この首脳会議の決定に服さないで、ほかにはもう辞表を出す以外に方法はないということの答弁ですか。
  243. 川井英良

    川井政府委員 そうではございません。法律によって起訴することが可能であります。上司が不起訴にしろと言いましても、独任官庁の検事でありますから、主任検事裁判所に向かって起訴状を提出することが、法律上認められております。しかし、監督権に基づきまして上司はその起訴を取り消すことも可能でございます。
  244. 山田太郎

    ○山田(太)委員 そこで、検察ファッショということがまた心配になってくるわけです。この検察ファッショに毛、消極的な検察ファッショと積極的な検察ファッショと、両方の検察ファッショが心配になるわけです。どういう意味かと申し上げますと、ことばが舌足らずの面がありますが、起訴すべきが妥当であるものを何かと理由をつけて起訴しなかった。そしてもしそれが検察審査会にかけられても、検察審査会は拘束力がない。勧告しかない。そうしますと、権限を不行使することによって、消極的な検察ファッショを懸念される。積極的な検察ファッショ、これはわかりますね。消極的な意味において権限を不行使する、起訴すべきを不起訴にすることもできるわけです。そういう意味においての検察ファッショということも心配されるわけですが、その点についての御意見はどうですか。答弁は予想はできますが……。
  245. 川井英良

    川井政府委員 たいへんむずかしい御質問ですので、あるいはまた意味をとり違えているかもしれませんけれども検察官の仕組みというものは、心配すればそれは限りのないものだと私は思います。やはり検察官というものを一応信じて、これに事件処理をまかせておく、こういうふうな体制からでき上がっているものじゃないかと思います。裁判所がそうだと思います。裁判所というものは一切の行政的な介入を許さないという立場で、全くこれこそ独自の立場でもってかってな裁判、判断ができる、こういうふうに考えられておりますので、私ども裁判を疑ってかかったのでは、裁判制度というものは成り立たない。裁判所を信用していくということが、基本だと思います。  そこで、準司法的機関といわれております検察官につきましても、検察事務について、これは行政機関でございますけれども裁判官に準じましてまずこれを信じてかかっていくということでもって仕組みができておるのじゃないかと思います。しかし、これではたいへんあぶないということで、これはまた少しよけいなことをしゃべり過ぎるかもしれませんけれども検事は起訴したものについては、公開の裁判廷で縦横にその捜査が批判されます。不起訴にされたものについては、検察審査会でその当否が審査されます。そしてしかも自分の身分については、検察官適格審査会というものがございまして、随時に、また定期的に、検事総長以下一人残らずの検察官の適格が毎年一回審査されております。これはたいへんなことだと思います。日本に存在するところのほかの一般の機関について、これほどがんじがらめの国民の監視の体制というものがあるでしょうか。検察官だけだと思います。こういうふうながんじがらめの監視の体制を国家がとっておりますのは、先ほど申し上げましたとおり、まず検察官を信頼してかかるのだ。しかしながら、事は非常に重大で、場合によったら御指摘のように、ことばの当否は別問題といたしましても、検察ファッショにつながるということも十分考えられますので、いろいろの面から国民の監視の目が届くようにしておこうということで、こういうふうながんじがらめの監視体制がとられておるものではないか、こういうふうに思います。
  246. 山田太郎

    ○山田(太)委員 私のお伺いしたがったのは、消極的な検察ファッショに対する見解でございました。がんじがらめということを聞きたかったわけじゃないのですが、しかし、がんじがらめとはおっしゃっても、検察審査会に拘束力がない以上は、がんじがらめとはいえないわけです。そこに大きな危惧の念を感じさせます。しかし、これはやっておるとまだ何ぼでも時間がかかりますので、この程度にきょうはさせていただいて、最後の論点に移っていきたいと思います。  そこで、あっせん収賄罪のことでございます。先ほど申し上げましたが、後ほど申し上げる予定だったこのあっせん収賄罪の成立要因、これを見てみますと、当時の法務省特別顧問をやっていらっしゃり、いま現在は法制審議会の刑事法の特別部会長をやっていらっしゃる小野清一郎さんの論説にありますが、こういうようなことをおっしゃっております。「賄賂の授受による汚職(涜職)が繁く行われるときは、国家の作用を害するのみならず、国家の権威そのもの、又は国家の制度或いは組織そのものをさえも危くするであろう。だが、直接に侵害される法益は国家の立法、司法又は行政の作用である。斡旋収賄および増賄の罪についても、本質的には同様のことがいえるであろう。」そして当然このことからも類推されるのは、民主主義国家の崩壊に通ずるということをもにおわせておるわけです。いまの大きな大学紛争等々も、政治への不信というものが大きな要因になっておることは間違いがありません。したがって、このたびの事件は大きな影響力を与えておることは間違いないです。そしてその次の項に、国務大臣があっせん収賄罪で処罰されるべきことをやった。ところが、そのときにはあっせん収賄罪がなかったために、二審までは有罪であった。ところが、最高裁で破棄されておる。その理由は、刑法の構成要件に入らないということで……。これはいまだから言うてもいいと思うのですが、これは事実のことですから。当時の農林大臣の永江一夫さんと記憶しております。そしてこれが最高裁において破棄された理由は、構成要件を満たさないということで破棄されておる。したがって、そのためにこのあっせん収賄罪が、具体的には小野さんは述べていらっしゃいません。しかし、ちょうどこれと軌を一にしておる事柄ですから、したがってあっせん収賄罪ができた大きな成立要因です。その前にも、芦田元首相の問題も述べていらっしゃいます。  そこで、もう間もなく終わりますが、今度は別の立場からお伺いいたしたいのですが、このあっせん収賄罪が適用されて処罰された政治家がおられますか。その適用実例を教えてもらいたいと思います。
  247. 川井英良

    川井政府委員 国会議員では、いままで有罪の判決を受けたものはございませんが、起訴中の者は、先ほど申し上げました大倉議員でございます。それから国会議員ではございませんが、県会議員で二名、あっせん収賄罪で起訴されて有罪の判決を受けておられる方がございます。
  248. 山田太郎

    ○山田(太)委員 そのほかにも、一般公務員については非常に数が多いことは私が申し上げるまでもないと思う。だから、このあっせん収賄罪にひっかかって——ひっかかるということばは語弊があるでしょうけれども、このあっせん収賄罪の適用を受けたのは、いわゆる世上のことばで言えば、ざこばかりという批判が出ておるわけです。ざこばかりだ。あっせん収賄罪の成立の動機というものはいつのまにか忘れ去られて、そうして適用を受けているのはほとんどざこばかりである。そういうふうな批判があります。これは局長も当然お聞き及びのことと思います。これについての見解を聞いてももう答弁はわかっておりますので……。しかし、これは事実です。国民の声があることは事事です。  そこで先ほどの御答弁にあったかとも思うのですが、やはり検察の公正を期するために合議制をとっているということもあります。しかし、検察人といえどもやはり人間です。間違いを犯さないとは言えないわけです。それをチェックするのは一応検察審査会しかないわけです、適格審査会は別として。その事案に対しては検察審査会。ところが、この検察審査会は、拘束力を持っていないで、勧告しかできない。したがって、検察一体の原則からいっても、一たび検察が不起訴とした者をまた起訴とするというのは、普通の考え方でいきますとなかなかむずかしいことです。いま三〇%云々の話がありましたが、しかし、これもほんとうにわずかな事例です。そこで、チェックする場所は検察審査会しかない。しかもそれが拘束力がなくて、勧告しかできない。そこに大きな問題が伏在している一つの要素があると思うわけです。国民は、裁判にかけて黒白を決定したらいいじゃないか、それが至当じゃないか。検察のメンツを重んじて不起訴にした。しかし、それでは国民の疑惑というものは晴れないままであります。だから、裁判にかけて黒白をはっきりしたらいいじゃないか。その声もこれまた妥当性のあることであります。詳しい法規を知らないからだと言い抜けばできない問題であります。何のために法規があるのかと言いたい。やはり国民のためにあるわけです。そこで、またもう一つチェックする場所を設けたほうがいいのじゃないかと思うわけですね。  そこで、これは私の提案でございますが、国民の批判にこたえる一つの方法としても、刑事訴訟法の二百六十二条でしたか、準起訴手続がございますね。この準起訴手続は、現在では職権乱用ですか、あるいは公安調査官の職権乱用、その準起訴だけになっております。これはもう御承知のとおりです。しかし、もう一つチェックする段階を置くならば——またこのたびのような事件の起こるたびに、新聞紙上においても、あるいは世間一般においても、大山鳴動ネズミ一匹とか、そのような検察に対する不信というものが、これはなかなか払拭し切るわけにいかない過去の事例があります。そこで刑事訴訟法第二百六十二条、これを刑法の第二編の二十五章、すなわち涜職、汚職ですね。第二百六十二条を改正して、刑法第二編第二十五章をこれに改正して入れたならば、ある意味においては起訴を相当とすべきものを不起訴としたときに、これは検察審査会よりももう一つ、これは裁判に持っていく、裁判官の裁定でこの黒白をきめる、その一つのよすがになっていくわけです。したがって、この条文の中にある告発と告訴という文字は、当然取らなければいけません。贈賄、収賄の当事者が告発、告訴をするはずはありませんから、この告発、告訴の文字は取って、そうしてこの涜職、汚職を入れるならば、ここにもう一段階チェックする方法ができる、こういう提案をしたいのでございますが、その点に対する御見解はどうでしょうか。
  249. 川井英良

    川井政府委員 検察官の不起訴がはなはだしく妥当でない、こういう事実を前提といたしまして、ただいまのような御提案がなされるということであるならば、十分理由があることだと思います。  ただ私は、前提においてやや意見を異にいたしておりまするし、それからいまの準起訴手続というものを涜職罪のみに準用するということの合理性を、いま直ちに理解することはできません。したがいまして、その他にもいろいろ問題点はございますけれども、いろいろな資料を集めて、また高い観点からの御提案でございますので、私どもそういうことを一つの教訓といたしまして、また部内におきましてほかのこととあわせて検討の対象にいたしていきたい、こう思っております。
  250. 山田太郎

    ○山田(太)委員 最後です。いまの御答弁では、やはりありきたりの答弁になってしまうわけです。そうしていつ、どこで、どのように行くえが行くかわからなくなってしまいますので、これは検察側として、ただ純粋に検察側だけで考えるのではなしに、もっと大きな見地から、こういう事案を、こういう国民の不信を防ぐ意味からも——涜職の罪だけだとおっしゃっていますけれども、現在は職権乱用だけです。あと一条ふえればいいわけです。これはもう御承知のとおりです。したがって、これは検討する価値もあり、またほんとうに大きな立場で考えられるならば、将来のためにも検討もし、どのようにやっていくかという態度を相談してもらいたいと思いますので、時間が時間ですから質問はこれで打ち切りますが、結論は後に譲って、どのようにやっていくかについての答えを明日でも、あるいは明日できなければ、また日を改めてお伺いしたいと思います。したがって、きょうはここで質問を打ち切ります。
  251. 永田亮一

  252. 畑和

    ○畑委員 最近、新聞紙上にも報ぜられたりあるいは週刊誌等でも議論になっております国学院大学の映画研究会が、たまたま過般の十月二十一日新宿事件の際に撮影をしたフィルム、あるいはその前の十月八日の、やはり新宿での事件を撮影したフィルムを東京地検で押収をした。それに対して準抗告がなされまして、それが一たん取り消された。そして、それに対してさらに、それを所有者に返還する手続を一応したのでありますけれども、その間にまた別の被疑者あるいは被告人の被疑事実についての令状をとって、それをまた差し押えた。さらにまた、これに対して第二の準抗告がなされました。その結果、準抗告申し立て人の請求が認められて、結局所有者のほうへそのフィルムが戻った。この事件でございますけれども、この問題は非常にいろいろな問題を含んでおると思います。しかもそのやり方等について、私は東京地検のとった姿勢というものに相当問題があるのじゃないかと思う。捜査の必要性の度合いと、憲法に明記されておりまする表現の自由、報道の自由、こうした基本的人権との調和、この接点をどうするかといった問題でございまして、基本的な人権の問題がその中に介在するということで非常に注目を引いた事件であろうと私は思います。  この事件は、御承知でもございましょうけれども、その後第一の押収に対する準抗告、その結果に対してさらに特別抗告が最高裁判所に対してなされまして、目下審理中であります。最後の結論はついておりません。そういう点でこれから質問いたしましても、法務省の立場として、先ほどの公明党の質問に対してと同様な立場から、答弁の回避ということがあるかもわかりませんけれども、しかしできるだけ率直にひとつ答えていただきたいと思います。  議論をいたします前に、その事件の概貌について——もう法務省当局は大体承知していると思うけれども概略最初に申し上げます。これは十一月七日、すなわち新宿事件あとに全学連の学生たちが、その新宿事件に抗議をするという意味もありましょう。国会周辺というか、総理官邸の周辺というか、その辺で二隊に分かれて中心部に対してデモをやった。その際に相当多数のものが逮捕されたのでございます。このこと自体についてはまたあとでこれに関連して申し上げますけれども、その際に、当時十八歳の青年でありまするA君がそのデモに参加しまして、現行犯逮捕にあった。ところで、このA君が十九日に釈放をされましたけれども、同日また別件で逮捕をされました。それというのは令状逮捕でありまして、十月二十一日事件の騒乱罪についての容疑でございました。A君がそうして第二に騒乱事件の付和随行容疑で逮捕をされると同時に、その翌日の早朝に国学院大学の若木会館というところにある、先ほど申し上げました映画研究会の部屋が令状によって捜索をされ、また、そのメンバーの人たちが下宿をしておるところが捜索を受けて、合計で二十五点のフィルム類が押収をされたのでありますが、それに対して所有者側のほうから、代理人を立てて準抗告をいたしました。すなわち、二十五点のうち二十二点までは十月二十一日の事件とは無関係である。さらにまた、この押えられたフィルムにはA君は写ってはおらない。新宿事件の当日には、単に二つのカメラの間の連絡係をしておったにすぎない。またこのフィルムは、将来学園祭等で、あるいはまた全日本の学生の映画祭などに上映する目的で、いわゆるドキュメンタリーな映画として仕立てるために撮影したものである。憲法二十一条に保障する表現の自由を著しく侵害するものだ、こういうのが準抗告側の申し立てであったわけです。それに対して目黒決定という、目黒裁判長の裁判があったのでありまするが、これは差し押え処分そのものは終了しておるから、したがって、令状そのものについては違法云々を論じても利益がない。したがって執行処分そのものについての問題だ。二十五点のうち二十点までは新宿事件関係がない。だから、これは差し押え処分が許されないのだ。その他の五点については、十月二十一日の事件と関連が認められる。第三者の所有するものについても、捜査の必要性が十分に認められる場合には押収ができないことはない、できる。けれども、押収される第三者の利益との比較衡量、これが必要である。本件の場合には、フィルムの中に被疑者の具体的な犯行の状況が撮影されておらないということ、その罪責に対する影響、それから被疑者の役割りの軽重の判定、その他被疑者の罪を立証すると思われる作用は、きわめて低いと思われる。したがって、本件ではフィルムを押収する必要性はさほど強いものとはいえず、フィルムを押収されることによって映画研究会が受ける不利益と比較衡量をしてみた場合、強制的な差し押えまでして検察庁の手元に取り上げるということは許されないものだ、こういうことで、五点の問題についても差し押え処分を取り消した。取り消されたのですから、したがって品物は返すべきであります。ところが、それをなかなか検察庁のほうで何だかんだといって時間をかせいで返さなかった。その詳しいことは省略をいたします。そして係がいないからとか、あした来てくれとか、あるいはいまここになくて警視庁のほうにあるのだ、こういうことを言ってみたりなどいたしまして、一日半も時間をかせいだ。まあだいぶしびれをきらしたらしい。それで、ようやくにして今度は受け取り場所である警視庁へ、翌々日か十時ごろ行ったそうです。そうしたら、確かにちゃんと並べられてあった。そうして一応点検してくださいと言うので点検をした。それではこれで受け取りましたという請書も用意してあって、それに判こを押してくださいということで、判こを押させられた。ところが、そのとたんに第二の令状を突きつけられた。そしてその全部のうち、そのまた一部を押収された。七点の物件を押収されたのであります。これはまたほかの裁判官が発付をしたものなんです。前の裁判官とは違う。東京地検あるいは東京裁判所等は非常に人数が多いから、小さい裁判所なら同じ裁判官がやるからわかっておる。ところが、違う裁判官が発付をすることが多いので、おそらくこういうことになったのだと思いますけれども、第二の令状はA君に関するものでなくて、同じく新宿事件関係をしたI君に関するものが何点かある。それから一〇・八の、その前の事件関係したT君外十何名というすでに起訴になっておる被告人についての事件だそうであります。しかも内容は完全に同じでありまして、結局I君の場合は騒乱罪となっておるわけで、まあそういう形で差し押えをまた食ったという形。おさまらないのは確かにその所有者のほうだったと私は思います。そしてしかもこの令状については、前の係検事の窪田検事は知っておるのかと尋ねたところが、検事の山崎公安副部長は、もちろん前の事件の窪田検事承知している、こういうことだったそうであります。ところで、所有者側のほうでは第二の準抗告を申し立てた。その結果、次に竜岡決定というものが出された。その竜岡決定に従いますと、「目黒決定が差し押え処分を取り消した物件について、再び差し押え許可状の発行を申請することは許されない。現実の差し押え処分が取り消されただけであるからといって、なんら特別の事情の変更もないのに、ただ捜査の必要ということだけから、同一被疑事件について再度同一内容の差し押え許可状の発行を受けることなどを許すなら、捜査官の押収に関して法が下した処分について、裁判所に取り消し変更の申し立てができることになり、それは法が基本的人権を全うしようとしている趣旨や制度を完全に没却することになる。」こういうふうに判示をいたしておるわけです。それで、I君についての被疑事件の罪名は、Aに対するものと、先ほど言ったとおり、全く同じであります。「被疑事実の内容も被疑者ら個々の具体的役割を別とすれば完全に同一である。各被疑事実は明示されていないが、両名が共犯関係にあるとされていることも明らかである。したがって検察官がIに対する被疑事件を基礎として再度前記物件の差し押え許可状の発行を申請した主な理由——捜査の必要——は、準抗告申し立てに対する検察官作成の意見書と同追加書からも明らかなように、右物件をIという特定の被疑者の事情を立証する資料とすることではない。」こういっている。「それは一〇・二一新宿事件全般にわたる当日の騒乱に至る経過、共同意思成立の経緯や多数暴行などを立証する資料としようとすることにある。その他目黒決定の後に特別の事情の変更があったとも認められない、したがって検察官の第二の令状の申請は、Aに対するのと同じ内容の差し押え許可状の発行を申請したことになる。そうである以上、Iに対する第二の令状の申請は目黒決定を実質的に無効にするいわば脱法行為に類するもので、ただ違法というほかない。したがって第二の令状はもともと違法無効な申請に基づくという意味で違法であり、取消しを免れない。」こういうふうに判示をいたしておるのであります。しかも、第二の令状につきましては、非常にあわてたために大きなミスをしている。新宿事件とその前の一〇・八事件との被疑事実に対する対応した物件目録があるわけですが、それがとんちんかんで決定が出ちゃった。普通ならば、裁判所が間違ったとしても、それを見て、一見してこれは間違っているということならいいのですけれども、そうでなしにそのまま急いで、とにかく一日半も待たしているのだから、それで持っていったところに目録の物件違いがあった。そういう点でも、実は退けられている点があるのです。そういう点で、最後に「本件物件のように第三者が自己の意思に基づいて撮影した映画フィルムなどが犯罪の立証に何らかの形で利用できるからといってただちに差し押えは許されない。その判断にあたっては、証拠資料としての信憑性、代替性の有無、事案の重大性、その他の捜査の必要性の度合いなどについてはもちろん、所持者がこれを作品として社会に発表するについての利益などについても十分検討したうえ、慎重に決定すべきである」こういって、目黒決定と同様に検察官の姿勢を戒めておる。二つ目の黒星を、実は東京地検はこの件について喫したわけであります。  そこで、もうそれで終わりかと思ったら、今度は東京地検は二つ目の準抗告に対する決定に対しては、さすがに異議の申し立てはしない。第一のほうの、いわゆる目黒決定に対して、ちょうど一週間の期限ぎりぎりに特別抗告を出した。本来ならば、第一の決定があったら、それに対して特別抗告の手段をとるのが本来である。ところが、ペテンにかけるようなかっこうで、同じ内容で、しかもほかの人の関係で第二の決定をもらう。こういうことは、私は行き過ぎた、フェアじゃない、こう思うのです。私がその関係に立ったら、私自身も非常に憤慨しただろうと思う。どこへ怒りをぶつけていいかわからぬというようなことだったと思うのでありますが、しかし、まずいことをやればうまくいかないもので、結局第二のほうも敗れた。こういうことで第一の決定に対して特別抗告がなされまして、現在争っておるわけであります。検察庁の申し立ての趣旨は、「捜査の必要性の判断は捜査官の専権事項であり、裁判所の介入すべきことではなく、これは憲法第十二条、同三十五条に違反する」というような趣旨であるわけであります。ところで弁護士側の意見の骨子は、「検察官は目黒決定に対する適法な救済手段である特別抗告を捨て、脱法行為として第二の令状を申請したのであるから、公正であるべき捜査官としては自ら手を汚して目黒決定を無意味なものにしたとい、える。したがって同決定に対する救済を求めること自体がゆるされなくなっている。」これが一点。第二点としては、「この五点の物件は目黒決定によって返還されたのではなく、再押収後の竜岡決定によって返還されたものだから、特別抗告が認められても、映研は物件を検察官に返還する義務は生じない。」第三点、「裁判所が憲法第八一条にいう司法権の優位の規定により、行政処分たる捜査につき、その必要性を基本的人権の保障の立場から判断できるのは当然である。そうでなければ刑事訴訟法が押収に対する準抗告を認めている理由がなくなってしまう。」第四点、「被疑者Aと全く無関係に第三者が撮影した物件の押収を許すことは、憲法第二十一条が保障する表現の自由を著しく侵害するものである、」こういうふうに双方申し立てて、また近いうちに決定が出ると思いますが、そういう段階にある事件であります。  概略を口早に申し上げましたが、そこで問題点についてこれから二、三質問いたしたいのであります。     〔委員長退席、田中(伊)委員長代理着席〕  結局この問題は、先ほど私が申し上げましたように、本来ならばもう第一の決定で準抗告が認められたということになれば、それに対して私は特別抗告で争うべきであると思うのです。ところがそれをしないで、ペテン師のようなやり方で第二の令状をとった。そういうやり方が一体許されていいのだろうか。それは形の上では形式的には許されることになっておるでしょう。しかしながら私は、もしこれが同一の裁判官でもあり、あるいは違う裁判官ではあっても、小さい裁判所でそれが打ち合わせできたり何かいたしますれば、おそらく第二の決定はそのまま出なかったに違いない、かように思うのでありまして、そういう点で第二の決定が出てしまった。そして第二の決定でも検察庁側が敗れておる。こういうことなんでありますけれども、大体こういったやり方は、形の上では許されないともいえないかもしれぬ。けれども、好ましいものではないと私は思うのでありますが、その点についていかが考えるか。これはしろうといっちゃ悪いけれども、新任された西郷法務大臣にお伺いしたい。しろうと的に見ても、こういうことか好ましいのか、まずい、今後こういうことをしないほうがよろしいと思う、どちらであるか、ひとつお答え願いたい。
  253. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 いまお話を拝聴しておりましたが、そういう方法をとりましたのも、やはり検察官のいろいろな考え方からそういう形になったのでないかと想像いたしますが、どうこうというよりも、その担当する検察官のやり方いかんだと思います。検察官の都合でこういうふうな形になったのではないかと思います。
  254. 畑和

    ○畑委員 これははなはだどうも、しろうとだからもう少し率直な返事をしてくれると思ったのだけれども、だいぶ警戒して言われております。しかし、こういうことは、私は本来やるべきじゃないと思う。したがって、こういうことがそれでよろしいのだというふうに上司のほうで考えておるならば、これはどんどんエスカレートしますよ。新宿事件捜査、なるほどたいへんでしょう。実際のところ、事件事件だとすれば、それはやらなければならぬ。私は基本的人権の擁護の立場から申しているのですけれども、やはりその点はまずもっとフェアにやるべきだ。そして当然許されるのは、特別抗告をそのときにすべきだ。第二の令状など申請しないで、特別抗告で堂々と争うべきだ、かようにいま私は言っておる。それに対してあなたはどういう考えを持っておるか、もう一度言ってください。それでよろしいと思うのだが、どうですか、大臣
  255. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 いろいろ裁判の手続等にわたりますので、刑事局長から答弁さしていただきたいと思います。
  256. 川井英良

    川井政府委員 おことばの中にもありましたように、第二回目の令状請求に基づく押収行為が違法であるのか、あるいは妥当性がないということなのかどうかということは、これは御指摘のとおりいろいろ考え方があると思います。そこで私の考え方は、本件の場合に、第一回目の準抗告に基づく決定が、一つの理由として捜査官の請求したことが事件との関連性が必ずしも明白でないということの指摘がございますが、ただ甲が乙を殺したというような簡単な事件ではありませんで、何千人という人があそこで騒擾を起こしたのだというような、大きな複雑な事件の証拠関係でございまするので、それならば、この事件はこのような関係で密接に関係があるのだ、しかも騒擾というものの立証には必要不可欠なきわめて高度の証拠価値があるものだ、だからこれは押収することが適当なんだ、こういうことを検事が信じ、捜査当局が信じ、またそういう確信のもとに第二回の請求をし、また第二回の押収をしたわけだ、こういうふうに報告を受けておりますので、もしそのとおりだといたしますならば、これは第二回目の竜岡決定がいっているように脱法行為のなにだというのは、いささか判断がきびし過ぎるのじゃないだろうか。これは捜査当局が、関連性がないというので、しからばこういう関係においては関連性があるじゃないかということで再度の請求をし、令状をもらって合法的に押収した。私は、この手続においても、結果においても、そのこと自体は決して違法ではない、また著しく不当でもない、こういうふうに考えております。  いずれにいたしましても、第一回の押収、それについての最初の決定というものが第二回の決定のまた原因になっておりますので、第一回の決定を不服として検察官から特別抗告の申し立てを御指摘のとおりいたしておりますので、この点について最高裁判所の判断がまた新しく示されるのではないかと思って、期待をしておるわけであります。
  257. 畑和

    ○畑委員 第二のほうについてもやるというわけですか。
  258. 川井英良

    川井政府委員 第二回目はいたしておりませんけれども、第二回目はしないのが当然だと思います。第一回を受けて第二回目ができておりますので、第一回の特別抗告によりましてもし検察官の主張が認められるならば、第二回目の決定は当然根拠がくずれてまいりますので、第二回の決定に対して特別抗告をする必要性に乏しいと思います。
  259. 畑和

    ○畑委員 ただ一点、それはあなた方の主張としてはそう言わざるを得ないでしょう。いま争っている最中でもあるし、それは主張としてはわかりますが、しかし時間的な関係で、さっき言ったようにいろいろな時間をずるずる延ばして、うそ言って一日半ほどかせいでいるんだ。これは私はフェアじゃないと思うんだね。もしそれでやるのだったら、法曹として許せないよ。そういうやり方自体は、どうお考えになりますか。そのくらいは言ってください。
  260. 川井英良

    川井政府委員 そのこともちょっと耳にいたしましたので、ここにおります私のところの公安課長にその間の事情を調査させましたので、公安課長から報告をしてもらうことにいたしたいと思います。
  261. 豊島英次郎

    ○豊島説明員 それでは私から御説明申し上げます。検察官の第一回の差し押え令状に対しまして、弁護人が準抗告を申し立てて、それによって取り消しの決定があった。御質問の趣旨は、証拠品を長い間返さずにほったらかしておいて、そして第二回目の差し押えをやったではないか、それは不当ではないかというふうに理解いたすわけでございますが、実は第一回の押収処分に対します取り消しの決定の謄本が東京地方検察庁に送達されましたのは、この二十二日の午後十時過ぎであったわけでございます。証拠品の関係を申し上げますと、地検におきましてはいわゆる検務の証拠品の関係の者が取り扱っております関係上、すでに担当の証拠品係も帰宅しておりますために、同日中の返還手続ということが不可能であった。そういう事情から、お尋ねを受けました検事は、翌日にしてもらえないかということを申し出たわけであります。弁護人はそれを了解されまして、翌日おいでになるということになったわけでありまして、この十一月二十二日の日に返還をいたさなかったのは、故意に返還を引き延ばしたということではないというふうに報告を受けております。問題は二十三日のことでございますが、実はこの日の昼ごろに差し押えを受けた方がおいでになりまして、実は警視庁において還付をし、還付をすると同時に検察官が第二回目の令状で差し押えをやったという経緯になっておるわけであります。それではその日の昼までどうしてほったらかしておいたのかという御下問が次に問題になるわけでありますけれども、実はこの第一回の差し押えと申しますのは、警視庁の係官の請求に基づきまして行なわれたものでございます。そうしまして事件としましては検察庁に送致がなされておったわけでありますけれども、実は証拠品の送致はいまだ警視庁から正式に手続を踏んでなされておらなかったわけでございます。そのために、この証拠品というのは一たん警視庁に返されたという経緯がございまして、したがって、警視庁での手続が必要だというような状況になったわけでございます。そこで警視庁において還付する。それと同時に第二回の差し押え令状が発付されておりましたので、それで差し押えたという経緯でございまして、返還手続が特におくれたという事情はないというふうに、われわれ報告を受けておるわけでございます。  なお報告によりますと、先ほど申し上げましたように、この差し押えは警視庁が行なったものでございますから、第一回目の目黒決定の決定書の謄本は、当然警視庁に対して送達すべきものであったわけでございます。先生御承知のとおり、この種の決定の効力発生というのは、相手方に送達されなければ効力を発しないわけでございます。ところが、この決定書の謄本は、実は東京地検に送達されたという関係がございまして、しかもこの二十三日の翌日は休日であったために、検察庁、警視庁においてはこの送達問題を一体どういうふうに考えるのだという法律問題もございまして、連絡協議を行ないまして、結局それは、還付するのが筋だろうということで見解を定めまして取り扱いをやったという経緯に実はなっておるわけでございます。そういう経緯がありますために、あるいは若干の時間のズレがあったかというような点も考えられるわけでございます。実情はそういうことであるというふうに報告を受けております。
  262. 畑和

    ○畑委員 まあいろいろ言うておりますけれども、何か話によると、初めから検察庁のほうに送達になっておるのだという話もあるそうです。あと話でそういう話も聞いたそうでありますけれども、まあいずれにしろこれは還付でないはずです。還付でなくて返還です。還付という手続ではないはずです。あなた方がよくやっている還付という場合とは違う。命令が出たらすぐ返さなければならぬ。還付の処分の手続などする必要はない。したがって、すぐ返還すべきものである。内部でどうのこうのというのは、たいして言いわけにはならない。二十三日が日曜だろうが休みだろうが何だろうが、そういうことで左右さるべきでない。非常に重要な問題だと私は思う。まあその点を議論していてもしょうがないから、法務大臣がどこかに行かれるそうですからさらに次の一点だけを質問いたします。  この問題について、もう一つの問題点がございます。それというのは、基本的人権の表現の自由の問題でありまして、まあ捜査の必要がありますれば第三者のものといえども差し押えができることは、刑事訴訟法にも書いてある。それは私にもわかります。しかしながら、その際基本的人権の問題との調整が必要だと思います。どちらが重いかという点を考えるべきである。憲法にも明らかに表現の自由の条章が設けられてありまして、民主主義というのは、そうした表現の自由あるいは報道の自由にささえられながら発展をするものだ。いろいろな意見を持った人がいていい。またいろいろな報道をする者がいていいのであります。それであって初めて私は民主主義が成長するものだと思う。ところで、この検察官のいろいろ最高裁への申し立て書等の写しも私は見ましたけれども、その内容を一貫するものは、これは全学連系統に属する映研が撮影したものである。したがって、それに対する報道の自由というか、表現の自由というものは、ほかの場合と違うのである。いわゆる反乱者の、暴徒の側に立った撮影である。したがって、これは基本的人権をおよそ考える必要はないのだ。こういったような趣旨の意見が盛られておりました。しかもこれはあくまでアマチュアだ、プロフェッショナルではない、こういう立場であります。なるほど大きな新聞社あるいはテレビ会社等のものが多いでありましょう。しかしながら、そのほかにも独立プロ等の、ほんとうに独立した中小の映画製作社も実はある。またさらに、本件のようなアマチュアが集まって映研をやっている連中もあるのでありまして、そういう点では、基本的人権の表現の自由については差別があるべきはずはなかろう、かように私は思うのであります。そういう点を差別して考えることが、基本的人権を非常に曲げることになるのではないか。そういうことで、捜査の必要と基本的人権との接着点についての問題は別といたしまして、基本的人権の擁護についての基本的な考え方、そうしたプロフェッショナルかあるいはプロフェッショナル以上にいわゆる公認されたというか、腕に腕章をちゃんと警察関係からもらってつけて報道し撮影する人たちと、そうでない人たちと、基本的に区別するいわれは私はないと思う。そういう点の問題を含んでおると思う。その点について、法務大臣はどう考えておられるか、率直なお考えを承りたい。
  263. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 いまお述べになりました基本的人権、表現の自由は、相ともに非常に重要な事柄でございますが、御承知のとおり、ただいま最高検で審理中でございますので、この際その判決を待ちたいと考えております。
  264. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員長代理 畑君、大臣はよろしゅうございますね。
  265. 畑和

    ○畑委員 まことにどうも不十分な答弁で、それで逃げられたのではかなわないのだけれども、これ以上議論していてもしようがないから、このぐらいにします。大臣、それでは帰ってもよろしゅうございます。  それでは、この点またさらに重ねて詳しく刑事局長から意見を聞きたい。いまの点、あなたが大臣に何か入れ知恵をしておったようだから……。
  266. 川井英良

    川井政府委員 内容を言う必要はありませんが、最高検と最高裁と間違えておりましたので、最高裁の判決を待ちたい。大臣は最高検と申されましたので、そこをちょっとあれしただけで、特別なことを持ち込んだわけではございませんので……。  私は、御指摘のとおり、表現の自由という憲法上の権利と、犯罪捜査という、やはりこれも憲法上の権利だと思いますけれども、その二つの権限のバランスの問題だろうと思います。そのバランスの問題について、本件具体的の場合において、この相手となった側のほうの主張は、表現の自由のほうが勝つのだということを主張し、検察官のほうは本件の場合において内容からいって捜査の必要性のほうが優先するのだ、こういうことを主張しているものだと思います。そして先ほどの二つの裁判所の決定というのは、この場合の捜査の必要性と表現の自由と基本的人権というものを比べてみまして、捜査の必要性のほうが本件具体的の場合においては引っ込むほうが妥当ではないか、こういう判断をしたのではないかと思います。そのことにつきまして、検察官は、具体的な案件で、その判断に納得することができないということで、最高裁判所の判断を求めておる、こういう事態だろうと思うのです。
  267. 畑和

    ○畑委員 それでは、その点はそれだけにいたします。  さらにこれに関連して、これはおもに警察関係ですけれども、こうした独立プロかなんかの制作、そういうものに対していろいろな問題があるようです。お聞きでもありましょうけれども、三里塚の事件を撮影しておった小川プロの人たちが、警官から暴行されて、逮捕された。投石したということなんだけれども、撮影しているうちに投石することができるかどうかちょっと疑問だけれども、そういう名目で逮捕されて、翌日帰されたそうです。それで、フィルムを押収されそうになったけれども、これは頑強に断わり続けた。しかも覆面の警官がおどり込んでくる三秒前までですか、撮影したそうですから警察官もフィルムに写っているそうです、私は見てないけれども。そういう事件もあった。それからさらにまた山谷の例の暴力手配師を排除しようということで、山谷の人たちが何か東京都庁に交渉にいって、何かのいきさつでガラス戸を破って入ったとかなんとかいう事件です。それを撮影していた人たちが、これまたやはり警察官から暴行を受けたり、あるいはそのフィルムを押収されようとしたり、しかもそれを現像することを承諾しろといって判こを押させられたり、一体何のためにそれが必要なのか。結局その資料が必要だったのか。どうもそういう点を、両方の場合を見ましても、今度の場合をあわせ考えて、いま法律論をしておったけれども、これは警察が一番もとなんだから、警察の姿勢が正しくなければ、私はいかぬと思います。初めからどちら側とかなんとかいうことで、先ほど言ったとおり、基本的人権をおかすようなことがあってはならぬ。先ほども大体見解は一致したんだが、プロフェッショナルであろうと何であろうと、あるいは弱小のものであろうと大きな新聞社あるいはテレビ局、こういったものであろうと、私は理屈は同じだと思う。そういう点で、抵抗が弱いと見たらそういったことをやるということは、私は捨てておけないと思うのです。結局先ほどの押収の件でも、理論的には検察庁の立場からすると、あるいは警察の立場からすると、第三者が持っておるものでも、捜査の必要とあらば差し押えすることは可能だ、こういう基本的な立場のようであります。まあ、しかし基本的人権というものがそこにあるわけでありまして、それがまたそれをはばむという関係になっておるわけであります。その点をよほど注意せぬと、こうした問題が次々と起こると思う。そうしたら、大新聞あるいはテレビ局、こうした人たちの撮影したもの、そういったものまでも差し押えをされるわけだ。ところが実際にはしておらぬ。慣例だということでしておらぬそうだけれども、ほんとうはできるんだ、こういう主張を警察庁のある人もちゃんと言っておるそうです。ただ、慣例としてやってないんだ。公認の表現の自由というか、そういったものであってはならぬので、どういうものであっても、やはり表現の自由としては、どちら側の撮影であろうと、これは拒むことはできないと思う。拒みたいだろう、気持ちはわかりますよ。けれども、場合によっては警官がほんとうに暴力をふるっていることもあるんです。全学連だけではないんだ。逆に警察官がやり過ぎる場合も相当ある。そういった場合写されては困るからというので、撮影隊をやっつけるということがあってはならぬと私は思う。事実あるわけです。それで、映画創造の自由のための連合というのが、今度のこの事件を契機として結成されて、しかも相当の数の文化人が急速に集まっている。最高裁判所等にも意見書を出したりしております。こういった不断の努力がわれわれは必要だと思う。そういう点、あなた方のほうは逆の立場だけれども、十分に警戒をしてもらわなければならぬと思うが、この二つの、小川プロの事件、山谷の事件の竹中という人がやられたそうでありますけれども、この二つの事件と今度の問題と関連して、警察庁の立場からひとつどう考えているか、承りたい。
  268. 丸山昂

    ○丸山説明員 私ども、基本的な考えといたしましては、もちろん基本的な人権を尊重するということで、その制限は必要最小限度にとどむべきであるというふうに考えておるわけでございます。いずれの場合におきましても——ただいま先生から御指摘がございました三つのケースがあるわけでございますが、これは正確に申しますと、それぞれいろいろ事情が違っておるわけでございますけれども、いずれの場合にいたしましても、私どもは一般の報道機関と、これらのいわばプライベートな報道機関といいますか、こういうものを差別をして取り扱っていくというような考え方は持っておりません。このいずれの場合も、それぞれ関係者が違法行為を行なったということで、大体みな現行犯逮捕でございますが、現行犯逮捕をいたしましたことに付随して、たまたまその被疑者が写真を写すことを仕事にしておるというようなことで問題が発生しておるわけでございます。基本的には、最初申し上げましたようなことで考えているわけでございます。
  269. 畑和

    ○畑委員 基本的には、そうした職業的な報道人、それからアマチュア的なもの、それの表現の自由については区別はない。ただ、この際は現行犯逮捕に値する事実があったのでありますから逮捕をし、そしてそれが写しておったということで関係があったんだ、フィルム関係を必要としたんだということだそうだけれども、やりとり等も私聞いておりますけれども、あなたの言うことはだいぶ違うと思う。まあそれを議論しておってもしようがない。しかし、基本的にそういう態度でおるということだけは、はっきりしてもらいたい。管区のほうにその辺を——だいぶ末端ではいまエキサイトするから間違いが起こりやすいのでありまして、こういうことは大いに戒心をしてもらわなければならぬ。法務大臣がおれば聞かしてやるのだけれども大臣がおらぬからしかたがない。課長さんでもいいから重々申してください。こういうことがあってはならぬ。やはりあなた方が検察庁あるいは警察庁の立場でいろいろあせるのは無理ないだろうけれども、しょうがありませんよ。そこで逮捕者その他について起訴になったのが何件あったか、その点もあわせてあなたに聞きたいのですが、この間の新宿事件の際、逮捕された人数はよろしいが、起訴者が何名おるのか。しかも罪名が何なのか。おそらく首魁は一人もつかまっておらぬと思う。そこで、おそらくは率先助成、それから付和随行、これだと思うけれども、その点関連してちょっとお聞きします。
  270. 川井英良

    川井政府委員 起訴の問題、私からお答えさせていただきます。起訴は指揮と率先助成で、昨日現在までで十七名を騒擾罪で起訴いたしております。
  271. 畑和

    ○畑委員 そうすると、首魁というのは……。
  272. 川井英良

    川井政府委員 首魁と付和随行は、まだ起訴しておりません。
  273. 畑和

    ○畑委員 付和随行は起訴するつもりはありますか。
  274. 川井英良

    川井政府委員 まだ騒乱罪のあれがどんどん続いておりまして、数回にわたりまして十七名の起訴を見ております。付和随行については、まだ未処理になっております。もし起訴するとすれば、略式命令で起訴するということも考えられますので、最後の段階でどういうことになるかきまりますが、まだどういう処理をするかということについて報告は受けておりません。
  275. 畑和

    ○畑委員 それから、それに関連して警察庁に聞きたいのですが、十一月七日の事件、さっきのA君というのが逮捕されたという事件、あの事件については、どうも相当逮捕がむちゃだったらしいが、この辺はどうですか。とにかく十把一からげにつかまえておいて、しかもつかまえたからには警察までもっていけばよいのに、あそこの参議院の自動車置場へずっとみな追い込んで、それで一々首実験をして、これはよろしいとかこれはどうだとかいうのではねたりなんかして釈放したりしたそうだ。そういう数が相当にのぼっておるそうだが、なぜ必要でない者を逮捕するのか。こういうことは、やはり私は乱用だ、行き過ぎだと思います。幾ら全学連であろうが何であろうが——しかもあの場合は、棒を持った連中はほんとうに少なかったそうだ。それを一網打尽にしてそういうやり方をやったということは、新宿事件で放火や何かした連中はすでに逃げてしまった、そこで全学連の学生たちをとっつかまえようということで、わなにかけたような形で一一・七の事件を起こして、しかもこれは首実験して、これはいいとか悪いとかでその場で釈放したりする。そういう不見識なことがあったそうだけれども、新聞で見ますと、それに対して何か弁護団も抗議をやったそうだ。やはりこれも例の飯田橋事件と同じように、一網打尽のやり方ですが、これは、やはり犯罪事実によってやるべきで、一網打尽にやるのは、騒乱罪の場合と違ってやれない。これは兇器準備集合罪を適用すればまた別ですが、こういう点が新宿事件のための布石のように私自身も勘ぐられてならない。すなわち警察庁もフェアではない。もっともフェアでやっていたら切りがないと思いますが、やはり法規があるから、警察官職務執行法というものがあるから、しかも刑法も刑事訴訟法もあるから、その法規に従ってやってもらわないとどんどんエスカレートする。全学連もエスカレートすれば、警察庁もエスカレートする。それではならぬと思うので質問をするのだが、その点どうですか。簡単に答えてください。
  276. 丸山昂

    ○丸山説明員 一一・七の国会周辺の警備でございますが、これは実は正確に申しますと、グループが三つございまして、それぞれについて適用条例は多少違っておりますけれども、いずれも個々にははっきりした法的根拠、違反の事実というものをつかまえまして逮捕しているわけでございます。  それからいま先生のお話に、現場は国会の車庫でございますが、あそこで首実験をして、それぞれえり分けておった、こういう御指摘でございますが、これは実はそれぞれの引致警察署まで逮捕者を持ってまいりますと、私どもの中の体制が非常に混乱いたしますので、引致警察署との引き継ぎをできるだけ現場に近いところでやろうということで、一〇・二一以後新しい試みでやっているわけでございます。これは被疑者を特別大量取ってきて、その中からえり分けてやるというようなことはやっておりません。むしろその場所で私服員が引き継ぎを受けまして、その際、逮捕時の事情を逮捕者から聞きまして、私服員が罰条に該当するかどうかを検討して、その場合に該当しなければそこで釈放する、こういう措置で、むしろ人権的には一歩前進している方法ではないかというふうに考えております。
  277. 畑和

    ○畑委員 それなら聞くが、罰条に違反しているかどうかということで、適合しているかどうかということで釈放する者は釈放する、それでいいかもしれませんが、一歩前進だ、そういう立場で言うのかもしれないが、それならば、なぜ現行犯逮捕をしたのですか。現行犯逮捕をする以上は、罰条に適合しなければできないはずです。それはいけないですよ。逮捕するなら、それで維持したらいいじゃないですか。それを、そうじゃなくて釈放する。釈放するくらいなら、これは初めからつかまえないで、最初から選んだらいいじゃないか。それじゃ通らぬですよ。
  278. 丸山昂

    ○丸山説明員 これは、また別の言い方を申しますと、もちろん逮捕する者は、どの罪に該当するという判断をいたしまして現行犯逮捕をするわけでございますけれども、それを誤りなからしめるために、そこで私服員がもう一回聞きまして、その内容を検討して、留置する必要のない者については釈放する、こういう考え方でございます。
  279. 畑和

    ○畑委員 それでは、あともう言ったってしょうがないけれども、それはどうもおかしい。初めからえり分けてやらずに、みな何でもかんでもつかまえる。それに違いない。そうしてあとで選んで罰条云々なんて、そんな余裕のあるはずはありませんよ。むしろ新宿事件や何かで押収したフィルムを見て、どうもあいつはねらっていたやつらしいからつかまえろ、こういうことでしょう。現にそういう例を私は知っておりますよ。私が現に一人騒乱事件の被疑者で起訴された者の弁護をかかえておりますが、これは別に全学連の弁護をしているのではなくて、個人的に知っている父兄の子供だから私がやっているわけですが、これがあのときにつかまって、しかも新宿事件で別件逮捕をされて、二重に起訴されたという事件を知っております。大体別件逮捕でやることを最近盛んに乱用するようだが、これはフェアではない、これは検察庁のほうだけれども、本来起訴しておいて、あとは追起訴でやるべきだ。ところが、別件逮捕でやれば接見禁止でもとれるということでやっておる。私は、そういう意図もあるんじゃないかと思う。これは議論しても、もう一つあるからあとにします。  それからもう一つ簡単に申し上げます。最後の問題は警察庁の関係です。実はこの間国鉄の労働組合のストがございました。九月でしたかにストがございましたが、その際に佐賀駅での佐賀県警の警官の動員数が非常に多い、異常警備というようなことで、非常に現地の労働組合が憤慨をして、よほど痛切に感じたとみえて、それでわれわれ社会党のほうに申し入れてきました。実は私、その後調査団長として参りまして、現地の八木君あるいは小柳君、それからさらに横山君あるいは枝村君、こういったような人々と一緒に調査をしてまいりました。それで双方から、警察関係からも聞きましたし、また国鉄当局から聞き、労働組合からも事情を聞きました。それによって、私たち自身も、ほかの県警と違って異常警備だったということを残念ながら認定せざるを得なかったのです。それというのは、私服が非常にホームに入り込んで挑発をいたしておった事実が、これは争うべくもないようです。もちろん制服が後のほうに隠れておっていたことも事実です。これはよくどこでもあることです。ところが、私服が非常に数多くホームの中に初めから入り込んでおって挑発をして、中には手錠をがちゃがちゃやらしたりなんかしておるのもあったようです。それから当局の現認要員あるいは公安官、それの前に向こうの刑事がたくさん逆ピケを張っておるというような事実があったことは、どうも争えない。しかもその間において、警察のほうではもし万一のことがあった場合には出動をお願いしますという、事前に一般的抽象的出動のお願いはしておった、こう国鉄当局はいっておりました。ただ、具体的な出動要請はしたことはない。しかもできるだけ私らのほうで紛争は解決しますからということをいっておったようだけれども、非常に積極的に警察のほうが乗り出してきて、違法ストであるから取り締まるんだ、こういうような姿勢でやっておったようであります。それでこの横断幕を取りはずせとか、組合旗を取りはずせとか、こう言ってみたり、取りはずさせろ、こう国鉄当局のほうに言ったり、あるいはビラを早くはがさせてきた。したがって、証拠品として撮影したり何かする人がなかったと言って文句を言ったとか、いろいろそういったような高姿勢な取り締まりであったというふうに、われわれも見てまいりました。現地の警察官にも会いましていろいろ話をしましたけれども、この点が非常に労働運動に対する不当介入だと思うのです。御承知のように、最近の国鉄労働組合は戦術を変えまして、例の線路の上にすわり込んで列車をとめたり、あるいは運転士をかかえ込んできてかん詰めにしたり、こういうやり方はやらないことにしている。労働組合員である運転士あるいは車掌が、自主的に闘争に参加してサボる、こういう形になったのでありますから、たいしてそうした現地のもめごとは見られなくなってきておる。いろいろな刑事事件がなくなってきておる。そういうことであるのに、おそらくそういった闘争形式は承知しておるのに、相当深入りをしておる形跡が、私の以上述べましたように、相当あるのであります。時間がございませんのでいろいろこまかくは申し上げませんけれども、そうした事実があることを確認してまいったのであります。これは佐賀県というような、県の中でも一番小さいから、県警部長にしても何でも、一番最初の登竜門だということで、おそらくハッスルするのかもしれぬけれども、特に佐賀県はほかに比べて、確かに国鉄の問題に限らず、ほかにもそういうことがあるようでありますが、ひとつ警察庁としてもそういう点を十分に今後監督してもらわなければならぬ。一々これがあったかないかということを聞いても、あんたのほうでそのままずっと答えるかどうかわからぬから、時間もかかりますからこまかくは申しません。その点あなた方どう考えておられるか、承りたい。
  280. 丸山昂

    ○丸山説明員 畑先生御自身現地を見てきておられますので、私どもまたいろいろ申し上げると弁解めいたことになるかと思いますけども、当日の私服の出動は、私ども受けております報告では四十六名ということで、佐賀駅の構内の広さ、それからそのときに集まりました人数という点から考えまして、きわめて大きな数で、また関係者に威圧を与えるという程度のものであったというふうには考えていないわけでございますが、ただいま先生御指摘のように、労働運動に対します私どもの基本的な考え方としては、あくまでも局外者で、問題は違法行為が出てまいりましたときに取り締まりをするという基本線を従前からも保っておるつもりでございますし、今後におきましてもその方針を貫くことに変わりはないのでございます。
  281. 畑和

    ○畑委員 そのときの私服四十六名とか言ったが、労働組合のほうでだいぶ調べたらしいのだが、それによると、出入り等があるかもしれぬけれども、百名、こう言うんだね。それはいろいろ水かけ論だが、四十六名にしても多いと思うんだ。佐賀駅とれだけ広いかわからぬが——私も行ったが、そんなに広くありません。それに四十六名私服がうろちょろしたら、やはり刺激しますよ。ちらほら見えるくらいでいいんだ。いざとなったらすぐその近くに隠れている機動隊が行けばいいんだから、そういうことが、私は佐賀県警の少しハッスルし過ぎたところが大いにあると思う。労働争議に対する不当介入という点、異常警備だ、こういうことをずばりと言う。その点、あんたのほうでは違法があれば取り締まる、これは基本線である。それはそうでしょう。だけれども、違法があったって、やはり大学の構内は自治が一応認められておる。それとちょっと似たようなところが国鉄にもあるわけだ。国鉄のほうで要請をしなければなるべく控える、こういうことでなければ、不当介入になるおそれがある。あの高姿勢な今度の国家公安委員長も、大学内をおそらくやりたくてしょうがないんだろうが、やらないでいるようでありますが、そういう点もやはり国鉄の関係でも配慮をして、不当に労働運動に介入しないように今後も気をつけてもらいたい。それを要望します。  それから特に国鉄のこの事件だけではなくて、私の調べてきたところによりますと、この前の日教組の事件、全国で何カ所か家宅捜査され、あるいは何人かつかまった。その中で、逮捕者の半分は佐賀です。そしてまた捜索されたのでも、全国の半分が佐賀です。こういう事実も、やはりその辺を物語っておるのじゃないか。佐賀だけが教組が飛びはねている、そういうふうには私は見られないと思う。それからビラ張りの問題で、全日自労が職安の事務所にビラを張ったということで、建造物侵入、暴力行為等処罰に関する法律違反、建造物損壊、こういうようなことで、建造物を損壊した、こういうようなことで捜索して逮捕したりなど、六十人も呼んだりなんかしてやっておる事実もあります。また、佐賀大学では、一カ月間で十三回も警察官を動員した。これは佐賀大のほうで要請したかもしれぬけれども、要請したとしても、一カ月で十三回も学園に入るというのも、どうもあんまり好ましいことではないと思うのです。そういう点からしても、佐賀県がそういう点で配慮が足りない、思い上がっている、こういうような感じが私はするわけです。まあその点は私が見てきたところですから、あなたがどうこう言っても、それに対して適切な答弁が、私の期待しているような答弁ができるとは思いませんけれども、その辺どうお考えになるか、今後の、将来の姿勢、こういった点について、最終的にひとつあなたの意見を聞かせてもらいたい。
  282. 丸山昂

    ○丸山説明員 ただいまのお話でございますと、佐賀県が特別にはね上がっておるのではないかという御指摘でございますが、私ども全国的に他府県と比較をいたしました場合に、あるいはたとえば日教組の場合のように、結果的に検挙の数あるいは捜索個所の数が多いという形になって出ておるかと思いますけれども、特別他府県よりも違った方針で臨んでおるというふうには考えておらないわけでございます。繰り返すようでございますが、労働運動に対しましては、先ほど申し上げましたような方針で、他府県と同様、佐賀県におきましても同じ基本方針でいくように、私どものほうでも期待をいたしております。県もそのように実施することと思うわけでございます。
  283. 畑和

    ○畑委員 そうすると、結局あれですか、佐賀県が特にはね上がったというふうには思わない。ただ基本的には、私が言ったように労働運動や何かにできるだけ介入しないように基本線を守っていく、こういうことにさせたい、こういうことですか。まだ認識が足りないようで、もっとよく佐賀へ行って調べてください。あなたは行ったかどうかわからぬけれども、確かに私が見ても、佐賀県警は行き過ぎておる。  それから諸富駅の問題がありました。これは時間がないから申しません。起訴になるかならぬかということですが、証拠不十分と私は専門的な立場で見てきました。おそらく起訴されないと思う。しかし、そのかわりこういう誓約書を書けとかなんとか言われているそうだけれども、これは検察庁関係だからあなたには申しません。ともかく将来ともに労働運動に対して不当介入のないように、ひとつ警察庁の本来のあり方、警察官のあり方をちゃんと守ってやってもらいたい。こういうことを最後に注意を促しまして、私、長くなりました、一時間十五分になりましたから、終わります。
  284. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員長 代理御苦労さまでした。  この際、暫時休憩いたします。     午後六時十四分休憩      ————◇—————     〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕