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1968-08-08 第59回国会 参議院 法務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年八月八日(木曜日)    午前十時三十五分開会     —————————————    委員異動  八月七日     辞任         補欠選任      迫水 久常君     高橋雄之助君      大倉 精一君     瀬谷 英行君      山田 徹一君     黒柳  明君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         小平 芳平君     理 事                 後藤 義隆君                 宮崎 正雄君                 亀田 得治君     委 員                 上田  稔君                 鬼丸 勝之君                 木島 義夫君                 林田悠紀夫君                 山本敬三郎君                 秋山 長造君                 占部 秀男君                 瀬谷 英行君                 黒柳  明君                 山高しげり君                 安田 隆明君    国務大臣        法 務 大 臣  赤間 文三君    事務局側        常任委員会専門        員        増本 甲吉君    説明員        法務省刑事局長  川井 英良君        法務省人権擁護  上田 明信君        局長     —————————————   本日の会議に付した案件検察及び裁判運営等に関する調査  (人権擁護に関する件)  (日通事件に関する件) ○刑法の一部(姦淫罪)改正に関する請願(第三二  号)(第六六号) ○継続調査要求に関する件 ○委員派遣承認要求に関する件     —————————————
  2. 小平芳平

    委員長小平芳平君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨八月七日、迫水久常君、山田徹一君及び大倉精一君が委員を辞任され、その補欠として高橋雄之助君、黒柳明君及び瀬谷英行君が委員に選任されました。     —————————————
  3. 小平芳平

    委員長小平芳平君) 検察及び裁判運営等に関する調査を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 亀田得治

    亀田得治君 それでは、私、人権擁護に関することで簡単に調査の要請をいたしておきたいと思います。御調査願った上で、必要があれば、また適当な機会に質疑をいたしたいと思います。本日は突然ですから、ひとつそういう順序で、本日のところは簡単に述べることにいたしておきます。  それは、六月十二日のことですが、大阪法務局人権相談室川上卓男という人が持ち込んだ問題です。問題の内容というのは、上野初枝、これは女性、それから中吉克己、これは男性ですが、この二人の間の男女の関係のもつれといいますか、そういうことに関する問題なんです。川上さんは上野初枝立場事件を持ち込んだ。持ち込んだ中身は、長年中吉にもてあそばれて、そうして捨てられたかっこうになっておるが、何とかその慰謝方法を講じてもらえないもんだろうか。中吉本人には財産も何もない。これは素行も非常に悪い。だから、その妹である人にそういう請求ができないもんだろうか、こういう趣旨なんですね。これは川上さんだけじゃなしに、その二人の関係のことを知っておる隣近所の人はみな同情しておるわけですね。代表して川上さんがそういう問題を起こし、奔走しておるわけです。これは法律的に判断しますとね、道義的には何とかしてやりたいということになりましても、法律的には若干無理な点もこれはあろうと思うのです。ところが、その相談を受けた法務局の役人の方が、てんで相手にせぬような扱いをしたというのですね。たとえば、川上さんがいろいろ説明すると、それからどうした、その次はどうだ、それから……、といったような調子で、川上さん自身は、非常に気の毒な境遇にある方々のために、自分では費用も使い、時間もつぶして一生懸命働いておるつもりなんですね。その人に対して、そういうまるで何か自分が悪いことでもしておるような言い方をされる。あるいはまた、その男と女の間で、いや家をつくってやるとか、いや土地がくにのほうにあるから、これいずれは分けてやるとか、そういうふうなでたらめな書類をやはり取りかわしておるようです。女は信じておる。実際調べてみたらそんな土地ありゃせぬ、これはあとからわかっておるわけですが。そういうものを持っていった。ところが、そんなものはもう何の値打ちもないというふうな言われ方をしたというわけなんですね。まあそのほかにいろいろ詳しいこと、ここの書類に書いてあるのですがね。私はこういうことはよほど注意してもらわなければいかぬと思うのです。法務省の方、これは法律が詳しいからね。何といいますか、しろうとが道徳的な立場から何とかしてやれぬものかと思う。そういう立場で苦しんでおる人に対しては、もう少し親切に応対してもらわなきゃいかぬと思うんですね。で、普通ならば、もう役所というところはああいうところだと、これは幾ら言うてもしかたがないわ、引き下がるわけですね、もともとこれは他人のことだと。ところが、この川上さんという方は、そういう点じゃ引き下がらぬわけですね。私はこのほうがりっぱだと思うんですよ、りっぱだと。そしてまあ法務局長あて弾効上申書というのを出したわけですね。そうすると、その担当の課長の方が、電話があって、そうして会ってくださって——田村さんという課長ですね。で、課長が会うと、なるほどだいぶん前の人とは応対のしかたも違うし、親切に説明も受けたと、こう言っているんです。そこまではまあ喜んでるんだが、それじゃ、最初にそういう乱暴なことを言うた人、それはそのままでいいのかどうかということで、気分がおさまらぬわけです。それで、まあ、局長にも直接会って、そして事情を話し、聞いてほしいと言うておるんだが、なかなか課長が取り次いでくれないというようなことで、えらい悩んでおりましてね。まあ役所というところはなかなかかた苦しいところだということは聞いておったけれども、しかし、こんなことじゃもう迷惑する人がたくさんおるんじゃないかというので、わざわざけさ上京してきたんですよ。で、どうしてもこれは、まあ他人のことだから、自分もよく考えてみれば、そこまでやっきにならぬでもいいように思うけれども、もう寝とってもとにかくこのことは思い出すとしゃくにさわってしょうがないというわけです。それで、わざわざ一件書類を持って出てこられたんですよ。で、私は、これは小さいことのようだけれども、役所の姿勢としては非常に大事なことじゃないかと。しろうと専門家の間ではよくありがちなことなんです、こういうことは。で、ぜひこれはだから私はお調べ願いたいと思うんです。局長のほうで、実際にそういうふうな状況であれは、まあ部内の者はどうもかばいたがる癖がありますが、そんな者はかばいますと、それは結局、現在川上さんは一人だけ恨んでるわけです、ところが、あれだけ言われて、それでも何もないというなら、それはあなた、局長も上の人も実際知らぬところじゃ同じようなことをやっておるんじゃないかと、逆に邪推しますよ。私たちはそんなことは考えておりません。本人にも、そんなことはないんだと、それはたくさんの人にはいろいろ間違いがある、あればそれはやっぱり明らかにしてもらうということで、私からも要請するからと、こういうまあいきさつになっているわけです。はなはだ突然なことですが、わざわざそのことのためだけに。まあそういう関係ですから、そんな……。自腹切って来ているんですよ。署名者がたくさんいるんですよ、川上さんだけがそういうことを言うてるんじゃなしに。そういう案件でございますので、ひとつ局長のほうでお調べ願いたいと思います。
  5. 小平芳平

    委員長小平芳平君) 速記をとめて。   〔速記中止
  6. 小平芳平

    委員長小平芳平君) 速記を起こして。
  7. 上田明信

    説明員上田明信君) ただいまの御質問に対してお答えいたします。  御発言のとおり、われわれといたしましては、できるだけ人権相談その他については国民に親切でなければならぬということをモットーにしておるわけでありますが、いまお話をお聞きいたしますと、まことに私としても遺憾なことだと思うのであります。本件のような問題だと、先ほどお話にありましたように、法律上はちょっと無理だと思われるのでありますが、しかし道義的には妹さんがある程度の兄にかわって責任をとる——とるというときつくなりますが、若干の慰謝をするというようなことは世にありがちなことでありまして、そういう方法も全くないわけでもないし、またそのほかの措置もとれる事件でありますから、懇切丁寧に法律上の問題、事実上の問題を話して、本人に、こうすればいい、ああすればいいと、場合によれば私のほうの職員が出かけるというふうな適切な、しかも親切な措置をとるべきであったと思うのであります。そういたしますと、いまお話によりますと、非常に不親切で木で鼻をくくったような——役所というところは不親切なところだと一般に言われておりますけれども、少なくともわれわれといたしましては、人権局といたしましては、ほかはともかくわれわれだけでも親切にしようというのがわれわれのモットーにしておるわけでありまして、まことに遺憾であります。十分調査いたしましてしかるべき措置をとりたいと思います。     —————————————
  8. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 日通の問題について若干質問したいと思いますが、衆議院の法務委員会でも横山利秋議員から質問があり、また本会議等においても質問があったと記憶しておりますけれども、日通汚職について四十七名の国会議員が金をもらっておると、こういうことが明らかにされた。その四十七名は自由民主党と社会党民社党であると、ただし氏名は公表できない、その公表できない理由については云々といったようなことが報じられておりますが、どうもその点がふに落ちないと思うのです。くさいものにふたをするということでは、やはり政治に対する不信感を招くことだとこう思うのでありますが、なぜでは、金をもらったという事実がはっきりしておりながら、そのもらった人の氏名が、あるいはどういう理由でもらったかということが公表できないのか、その点について大臣からお答え願いたいと思います。
  9. 赤間文三

    国務大臣赤間文三君) この日通事件につきましては、御承知のように、まあ検察当局は真相を究明するためにあらゆる角度から証拠の収集につとめて、その過程においていまお述べになりましたように数十名の国会議員取り調べたことは、これは事実であります。しかしこれは、はっきり申し上げますが、被疑者として取り調べたのではなくて、参考人として調べたように私は報告を受けておりますので、したがいまして、その氏名関係事実の内容等を明らかにすることは、参考人を、調べた者についての、私はそういうことを申し上げることは適当でないのじゃないかと考えております。それで、もしこれらの事実を公にすると、起訴済みの、裁判所に係属中の事件が直接あるいは間接の影響がある部分もあるように私は考えます。また、適正な、真剣な捜査をやりましたその結果犯罪と認むべき証拠がない、そういう人の名前等を言うことは、むしろ事実上においてそれらの人の名誉を害するようなことに私はなりゃしないか。さらに、参考人として協力をした者について、その取り調べの結果等を公にするなら、今後検察犯罪を固めるためにいろいろと参考人のお助けをかり、協力を求めるというような場合の妨げに、被疑者でもなく、ただ協力して仕事をりっぱにやられるためのお助けをするというようなことが行なわれなくなるようなことになれば、私はこれは将来検察がその運営をやっていく上に非常に重要な支障を来たすおそれがあると考えます。そういう意味からいたしまして、一言にして申しまするならば、参考人として調べた結果、犯罪容疑のない者の名前を言うことは私は適当でない、こういうふうな考え方を持っておりますので、御了承を願いたいと思います。
  10. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 起訴済み事件関係ができてくる、これは一体どういう意味なのか、ちょっといまの御説明だけではわかりません。その点をもっと具体的に御説明願いたい。  それから、被疑者としてではなくて参考人として呼んだ、こうおっしゃる。しかし、参考人として呼んだということは、日通からやはり金をもらっているという事実を確かめた上で参考人として呼んだというふうに理解してよろしいものかどうか。だとすれば、被疑者参考人かということの区別は、これはむずかしいところじゃないですか、実際問題において。いままでにおいても被疑者参考人区別というものはなかなかむずかしかった。参考人として呼んだけれども被疑者となった、あるいはまた被告になってしまったという例もないわけじゃないと思うのですが、その点はどういうものなんでしょうか。
  11. 川井英良

    説明員川井英良君) 起訴済みのものについて影響があるという点は、こういうことでございます。この事件は、日通の経理に関係いたしまして、かなりの多額使途不明金が出ているということが犯罪捜査の動機になりまして、捜査を進めてまいりました結果、会社の役員、幹部の人たちがそれらの多額の金を自己用途に費消しておったという業務横領事件が発覚してまいったわけでございます。これらにつきましては、罪状明白として起訴してあるわけでございます。そこで、その過程におきまして何億何千万も横領したのか、その他の金を横領したのか、横領しないのかということを明確にしなければいけませんので、その使途不明金を出して、その全額の使い道について詳細取り調べを進めてきましたその結果、あるものは政治献金に使われ、あるものは自己用途に費消された、こういうことが明確になってまいりましたので、いずれ業務横領の公判廷においてその間の事情が漸次検事の立証によって明らかになるものと推定しているわけでございますけれども、いま今日、その他の費消の要点につきましても、それをこまかく一々、公判開廷前に、事前にここで明らかにするということは、今日これから始まる裁判に対して裁判所に大きな一つ予断を与えることにも相なるわけでございまして、公訴を提起した事件につきましては、一切裁判官に予断を与えない、そういう措置をとることが法律の命ずるところでございまして、さような意味合いから、ただいま大臣から御説明申し上げましたように、起訴済み事件につきまして、それらの内容について言及することは影響がある、こういうふうに申し上げたわけでございます。  それから、第二点の参考人被疑者との区別でございますが、これは検察庁の取り扱いといたしまして、調べてまいりまして、参考人である場合においては純然たる参考人として取り調べを進めてまいるわけでございますが、ある段階に至りまして証拠見通しからいってこれは被疑者として取り調べるだけの容疑が十分だということになりますというと、参考人被疑者という身分に切りかえまして、これを部内では立件と称しております。事件に立てるわけであります。立件という手続をいたしますというと、その段階から被疑者としての取り扱いになるわけでございまして、御承知のように、被疑者になりますと、供述拒否権のあることを告げたりするような、全く身分が変わってくるわけでございます。そこで、いかように調べましても被疑者としての容疑が十分でないというものは、終始参考人としての取り調べが進められておるわけでございますが、参考人被疑者区別というものは、これは検察捜査段階手続におきましては、まことに明確に一線を画しているわけでございまして、本件参考人ということは純然たる参考人でございまして、何ら刑罰法規に触れるような容疑はなかった、こういう意味での参考人でございます。
  12. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 それでは再度お伺いしたいけれども、いま大臣が言われたのは、これはあくまでも参考人であって被疑者ではない、ただし参考人から、刑事局長説明によると、被疑者になる場合もある、そして証拠等がそろった場合にはそうなるんだ、こういうお話なんです。そうすると、証拠等がそろわなかったので参考人段階にとどまり、被疑者にはならなかった、したがってこの四十七名の氏名は発表しなかったんだというふうにも聞き取れるわけです。しかし、さきに発表された内容は、自民党、社会党民社党の、その内訳はよくわからないけれども、所属議員であって、金をもらったということは確かであるが、これは政治資金規正法による手続上合法的であるから被疑者にはならなかった、したがって、氏名も公表しなかったというふうに聞き取れるわけです。そうすると、大臣のいま言われた、捜査協力をしてもらった、何か四十七名という人は捜査協力者である、人によっては日通事件捜査に対して非常に協力をしてくれた人なので、氏名を発表したのでは申しわけないというふうにも聞き取れるわけです、聞きようによっては。そうすると、やはり国民にしては釈然としないものが残るんじゃないかという気がいたします。罪とならないならば、なぜ罪とならないのかということも明らかにすることのほうが、かえって事態をうやむやにしないで、事を明らかにするという意味でいいのじゃないかと思うのでありますが、その点はどうなんでしょうか。一体、この四十七名というのは捜査協力者である、こういうふうに理解をしておられるのかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。
  13. 赤間文三

    国務大臣赤間文三君) ただいま刑事局長が申し上げましたように、正確に言うならば、立件証拠がないものである、こういうふうな私は解釈なんです。捜査の結果立件証拠のない人間名前を言うということは、これはもうだれが考えても適切なものとは考えられない。調べた結果犯罪容疑がない、立件容疑がない者の名前を言うということは、これは私は実態に合わないんじゃないか、かような考え方でございます。  それから、参考人というものを呼ぶときには、今回も私はやはり協力した人間が相当ある、こういうふうに承知しておりますが、たとえば横領したのか人にやったのかなんというようなものをはっきりするということは、やはり一つ協力関係になる場合が多い、かように私は考えておるのであります。大体われわれの考えとしては、やっぱり被疑者として取り調べを受けるのかあるいは参考人として取り調べというかいろいろ尋問をするということを分けて考えておるのでありまして、参考人の場合は、この捜査が円滑に、しかも正確にいくために多くの場合において検察当局参考人を呼ぶ、かように考えておりますので、その点御了承を願いたいと思います。
  14. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 それならば、氏名を公表しないというのは、証拠がない、参考人の範囲を出なかった、被疑者には至らなかった、したがって犯罪として認むべき証拠がないから、名誉を守るために氏名を発表しないのだ、このように受け取れるわけですね。それならば、本件について起訴されなかったという場合もやはり証拠がなかったということになるのじゃないかと思うのですが、具体的に言うと、柴谷要議員の場合です。当時の柴谷要議員の場合です。これは選挙の直前に家宅捜索をされ、取り調べを受けた。そのことがテレビにも報道されまして、私も見ましたけれども、本人顔写真が大きく出ている。おまけに自宅の写真まで出ている。そしてその家宅捜索を受けたのだということが大々的に報道されました。一般的な印象からいうと、やはり同じような疑いを持たれたのだろうというふうに見られます。大倉議員の場合には起訴されましたので、この件についてもちょっと問題にしたいところはありますけれども、これは起訴されたことですから、法廷でもって黒白を争うことになると思うので、あえて本件については私は触れません。しかし、柴谷氏については、これは起訴されなかったわけです。しかも、私も調べてみましたけれども、柴谷氏の決算委員会における議事録というものを調べてみますと、去年からことしにかけて三回か四回目通問題の追及をやっております。日通独占輸送に対する追及をやっておるわけです、議事録を見ると。そうすると、金をもらった人間日通独占輸送追及するということは、常識的には考えられっこないのです。そういう事実がはっきりしているにもかかわらず、あたかもその容疑が濃厚であるかのようにこれは事実上捜査を受けたのです。ところが、いま大臣が言われた、証拠がなくて、しかもこの事件に、汚職関係のない者は名前を発表しない、それほどの深いおもんばかりがあるならば、柴谷氏の場合についてもやはりもっと慎重な扱いをすべきではなかったのか、あのままぬれぎぬの着せっぱなしにしておいてやむを得ないとお考えになるのかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。
  15. 赤間文三

    国務大臣赤間文三君) 柴谷議員は、証拠関係のないことが明らかになったように私は報告を受けております。捜査上やむを得ないことではありますが、同議員名前が出たことは非常にお気の毒なことである、かように私は考えております。
  16. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 しかし、証拠関係がないということと、それから柴谷議員についてはお気の毒だということが法務大臣から言明されましたが、この刑事訴訟法目的からいうと、公共の福祉の維持と個人の基本的人権保障を全うするというのが刑事訴訟法目的になっている。さらにこの百九十六条によると、検察官の訓示規定として、被疑者その他の者の名誉を害しないようにしなければならないような規定があるわけです。この訓示規定にも全く反しているのじゃないかという気がするわけです。柴谷氏は当時とにかく現職議員であったわけです、この問題が公表されたときには。その現職議員であった者が、あたかも日通事件についての片棒をかついでいたかのように日本中に報道されてしまって、しかもそのあと始末が何となくあいまいで、これは捜査上やむを得なかったのだというふうに片づけられたのでは、これは同氏の人権というものは全く侵害をされたというふうに考えざるを得ない、こう思うわけです。この刑事訴訟法上の問題としては一体どういうことになるのか。被疑者に対してすら、名誉を害しないようにしなければならない、基本的人権保障を全うしなければならないということになってくるわけですが、この点については一体どのようにお考えになるのか、再度お伺いしたいと思います。
  17. 川井英良

    説明員川井英良君) いろいろ弁解になりますが、法務検察当局は、発表とか、談話とか、あるいは過失に基づく漏洩というようなことで、柴谷議員につきまして当局からいろいろのことを言ったことは全くないわけでございます。ただ、捜査をめぐりまして、今日報道機関の熱意によりまして、いろいろな事件見通しをして、それがいろいろ記事になる、また世間に取りざたされたということになって、いろいろ大臣から申されたとおり、事件に関連してお名前が出たことはたいへんお気の毒だったことだと思うということになったことだと思います。一つは、あっせん収賄罪でございますので、これはどうしても相手方の名前起訴状に出ることはまことにやむを得ないことでございまして、この罪の構成要件からいきまして、柴谷議員という名前起訴状に出るということは、これは法律の性格上やむを得ないということでございます。ただ、それはそうといたしまして、法務当局といたしましても、検察当局といたしましても、被疑者たると参考人たるとを問わず、捜査に関連していろいろなことを世上に取りざたされるということが、非常に社会的に大きな迷惑をこうむるということは、私どもよく認識いたしておりますので、部内を厳に戒めまして、そういうことが絶対ないように特に格段の注意はいたしておるわけでございます。
  18. 占部秀男

    ○占部秀男君 いまの御答弁ですが、この問題はまたあとで私どもじっくりやりたいと思うのですけれども、法務関係当局としては発表したことはない、何はしたことはないというならば、新聞にあれだけ全体的に出ている——一つの新聞がスクープしたのではなくて、全体の新聞に出ておる。何らかの形で柴谷君の名前を出したことは明らかである。法務関係名前を出さないことが新聞に出ることはない。しかも、柴谷君は全然関係ない。こういうようなことを繰り返されるということになると、全く人権どころじゃなくて、大問題になってくる。したがって、きょうはこれ以上私は追及しませんけれども、この点についてはわれわれもまた質問をひとつ留保しておきたいと思います。
  19. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 いま占部議員からも御意見が出ましたが、この点については質問を留保するという御意見でございますし、私も一、法務大臣から、柴谷議員については証拠はない、全く潔白であるという点の言明を得ましたので、本日はこの点についてこれ以上質問をすることはやめておきます。ただ、最後にどうしてもふに落ちないと思われることでありますので、大臣にお伺いしておきたいのですが、日通事件については、内容は相当膨大なものである、その膨大なものであるということだけが世間に報道された。しかるに、最終的には、池田正之輔代議士と大倉精一参議院議員の起訴だけでもって、これで全部が終わったと、政治的な面からいうと、国会関係からいうと、これで全部が終わったというふうに報ぜられております。そうすると、何かこれだけの大きな事件法律的には文句はないかもしれないけれども、道義的には多分に問題のある内容をうやむやにしたまま、若干の人間が人身御供にあがるようにやり玉に上がって、全体がぼかされてしまうということが、やはり私は国民に割り切れない印象を与えるのじゃないかと思う。これはやはりあえて私は、自分と同じ党から、同僚議員から問題の人間が出たとか出ないとかいうことでなくて、政治道義の上からも、こういう問題についてもっとメスを入れるべきじゃないか。なるほど検察官は、内容はこれだけですということで済ませれば、一般のしろうとにはそれ以上突っ込みようがない。ないけれども、金が流れたことは事実です。しかも、その金は何億である。いかに合法的な仮面をかぶってみても、内容的には、性格的には汚職と何ら変わりのない金が流れておる。その大部分がうやむやになってしまう。これは私はまことに遺憾だと思う。こういうことがあると、やはり政治資金規正法の問題についても抜本的に考えなければならぬだろうと、こういう気持ちが出てくるのでありますけれども、このような日通事件、あるいは過去におけるLPガスの問題であるとか、あるいは吹原産業とか、共和製糖とか、いろいろな事件がありましたけれども、ああいう問題ことごとくがどうも若干の人身御供で片づけられるという気がするのです。これはまことに私は遺憾だと思うし、中途はんぱな取り扱いで当面を糊塗しているような気がいたします。この点について、私は法務大臣として責任を感じてもらわなければならぬという気がするし、これ以上もっと追及することがはたしてできないものなのかどうか、この点についても法務大臣の見解をお伺いいたしたいと思います。
  20. 赤間文三

    国務大臣赤間文三君) お答え申し上げますが、私は、立件するに足る証拠がある、疑惑があるというものについては、どの党とか、どのものとか、あらゆるものを排除して立件をすべきものじゃないか、いわゆる犯罪の嫌疑が十分あるようなものをうやむやにするというようなことは、あなたと同じように好ましくないと思っております。日通事件につきましても、犯罪の疑いのあるものは厳にこれを立件していくという考え方を終始とってまいっておるのであります。公明に、しかも厳粛に、私は、司法権としては、検察当局としては、処置すべきものは処置をした、かように考えております。ただ、この事件が大きかったからたくさんの被疑者が出なければならないとかいうようなこと——私は別に、そういうことと犯罪になるかならぬかというようなことは、神聖な検察当局考えにまかせるということが当然である。今度の日通事件につきましても、もうあらゆる面から、犯罪になるかならぬかということは、非常な日子と証拠を集めまして、徹底的な起訴をやりまして、中途はんぱなやり方はやっておりません。徹底的な捜査を完遂をして、そうして犯罪捜査の結果、犯罪容疑が十分あるものは処置をして、そうでないものはないように処置をしたものでございます。何らの疑惑は私はない、かように考えておる次第でございます。その点は御了承を願いたいと、かように考えております。中途はんぱな捜査をやる、中途はんぱにものを処置する、中途はんぱな不徹底なことをやるということは、私は一番事がおもしろくないと考えております。この問題も、徹底的に検察当局がやってくれました。将来におきましても、私は、徹底的に公平、適正、厳粛な気持ちで捜査というものはやるべきものであるという、そういう考え方をとっていきたいと考えておる次第でございます。
  21. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 これで質問を終わりますけれども、どうも大臣のいまの答弁は型どおりの感じがするのですよ。犯罪として見た場合にということなんだけれども、先ほどもちょっと私も申しましたけれども、参考人被疑者との間にそれではどれだけの違いがあるかということだって、なかなか問題だったわけですね。金は確かにもらっている。そのもらった金がわいろであるか政治献金であるか、こういう点はむずかしいわけですよ、実際問題として。政治献金であるからわいろではないのだという言い方をすれば、合法的になってしまうかもしれない。しかし、政治献金とわいろの区別というものは、実質的にはたいへん私はむずかしいと思うのですね。まあ頭のはげた人をつかまえて、そのどこから頭でどこから額かということを論ずるぐらいむずかしいのですよ。これは大臣の頭を見たから思い出して言うわけではないけれども。そのくらい私は政治献金とわいろというものは実質的にはむずかしいと思うのですよ。この問題は、政治献金なるがゆえに罪を免れた、しかし政治献金でない、あっせん収賄といったようなところにひっかかったためにこの被疑者としてひっかかったと、こういうふうな違いが出てきているような気がしてしようがない。これはおそらくだれも考える疑惑じゃないかと思うのです。ともかく何億という金が動いたことは事実だ。動いたことは事実なんだけれども、その点がどうも内容的に一番肝心なところがぼかされてしまっている、こういう印象を受ける。だから最後に、政治資金規正法という法が、このわいろを政治献金というふうにすりかえて身をかわす一つのとりでになっているのじゃないのかどうか、こういう点を私は大臣にお聞きをしたかったわけなんであります。だとすると、この政治資金規正法自体から改めていかなければならないし、流れた金がどういう性格のものであったかということを考えてみても、これはやはり国民の疑惑を晴らすため、型どおりに片づけられてはならないという気がいたしますから、その点についての大臣の見解を再度お伺いをいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  22. 赤間文三

    国務大臣赤間文三君) 政治資金規正法を改正をして、政治の粛正、綱紀の粛正に役立てるような法律をつくるということの大事なことは、これはお述べになりましたとおりで、私はそういう必要を考えておる次第でございます。おそらくそういう政治資金規正法ができるであろうと思います。ただ一つ、露骨に申しますと、政治献金そのものがもうすでに悪いのだという頭でものを見ると、だいぶこの考え方が違ってきます。私は、さきに述べられましたような、わいろなりや政治献金なりやとかいうような点が、やはりいろいろな点において重要なポイントをなすと思うのであります。そういう意味からして、今度の事件などには、これは非常なばく大な日子とたくさんな人を呼んでそういう点をすみからすみまであらゆる角度から検討をいたしたので、私は検察が非常な苦心をしたことについて敬意を表しております。要するに政治献金は、私はそう何も政治献金が多いから犯罪が多いというふうにすぐに結びつける考えは持っておりませんが、お述べになりましたように、政治資金規正法がやはり改正をせられて、政治の浄化に役立つようにせにゃならぬということは、同じように私は強く必要であると、かように考えておる次第であります。
  23. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 終わります。
  24. 黒柳明

    黒柳明君 前国会の予算委員会で、いまの日通事件の一例として、私は、政治資金規正法、それから公職選挙法の、要するに規制——寄付に対する規制の条項ですね、選挙に関して、こういうことについて法務大臣にお伺いした。そのときに、ただいま捜査中だから答えられないというふうな御答弁があったわけですけれども、捜査を終えて、どのような捜査がなされたのか、具体的にひとつ答弁していただきたいと思うんです。この選挙に関してという、このことも含めて捜査をしますと、このことも含めていま調査しております、だから答えられないと、こういう御答弁だったわけです。じゃあ、この選挙に関してということに関してどのように調査したのか、これをお答え願いたいんですが。
  25. 川井英良

    説明員川井英良君) 公職選挙法の百九十九条に、選挙に関して特定の会社から寄付を受けてはいけない、また寄付をしたほうもいけないというのが、この公職選挙法並びにまた政治資金規正法の両方に規定があるわけでございますが、本件関係しまして数十名の議員に対して日通並びに日通の系列会社の名前でもってかなりな金額が政治献金されておるということが明らかとなりました。その中で、ただいまあげました法条について、選挙に関して特定の会社から寄付を受けたということになりますというと、罰条に触れることになりますので、選挙に関して寄付を受けた者があるかないかということにつきましても、数十名の者につきまして厳重な捜査が行なわれました。結論におきましては、その結果、選挙に関して寄付を受けたと、こういうふうに認めるに足るだけの証拠あるいはそういうふうな人は、該当者はなかったと、これが地検の結論でございます。  そこで、やや、具体的にという御要求でございますので、それにもう少し触れたいと思いますが、選挙に関してというのは、いままで判例が確定したところによりますというと、予算委員会でも私御答弁申し上げたことですが、選挙に際して選挙に関する事項を動機としたものであれば足りると、これが「選挙に関し」の意味に相なっておるわけでございます。  そこで、要件が二つございまして、選挙に際してなきゃいけないという要件と、それから選挙に際しておるものでも選挙に関する事項を動機とされてやりとりがされた金銭でなければいけないと、こういうことに相なっておるわけでございます。そこで、選挙の期間中はもとよりでございますが、その直前、直後になされた場合におきましては、私どもの解釈によりましても、選挙に際しということが言えると思います。そこで、昨年の総選挙は一月にございましたので、たとえば一昨年の暮れあたりに金銭が動いておるということであれば、一応この選挙に際して金銭が動いたものではなかろうかという容疑が生ずると思います。それに該当するものといたしましては、数名の人が一応対象になったようでございます。そこで、あとは、残る問題は、選挙に関する事項を動機として金銭が動いたかどうかと、こういうことでございますが、これは解釈と言えばそれだけ簡単でございますが、実際の問題といたしましては、あてはめといたしましては、当該具体的な寄付の趣旨とか、その金銭の性格でありますとか、それからその寄付者の真意、それからまたそれを受領した者の、その人の真意、またその金の取り扱いというような、各般の具体的な事情を十分に総合勘案した上で、選挙に関する事項を動機としてやりとりされたものであるかどうかということが判断されるわけでございまして、問題になりました数名の方につきまして、ただいま申し上げましたような観点から、いろいろ証拠に基づいて判定をいたしました結果、それは選挙に関する事項を動機としてやりとりされた金銭と認めることは困難である、不可能であるという結論に達しましたので、これは選挙に関する寄付ではないと、こういうふうに地方検察庁が認定をした、こういう報告を受けております。
  26. 黒柳明

    黒柳明君 いま、選挙に関してということに関しての取り調べを受けた者は数人である、こういうことですけれども、担当検事は何名くらいで、何日くらいかかってこのことに関しての調査をやったわけですか。
  27. 川井英良

    説明員川井英良君) その人数は、具体的には五名であります。それから、何人の検事が何日従事したかということは、これは検察の実務をごらんいただくとわかりますけれども、きょうから一週間は数名の者についてこの百九十九条の関係だけで甲検事、乙検事二人で事務官三人を使ってやれ、こういうことにはなっておりませんで、あらゆる万端、この事件関係しての一切のいろいろな容疑をもって取り調べをいたしております。具体的には、一人の検事が一人ないし数名の被疑者ないし参考人を割り当てられまして、そうして事務官を使ってこの関係一切を調べ上げるというのが通常の形でございますので、ただいまの御質問につきまして、正確に何人の検事が何日かかってその関係を調べたということは、実はお答えが困難でございます。
  28. 黒柳明

    黒柳明君 その五人の人の、具体的にどのようなことをもって、これが選挙に関して、また際してという日にち、またその選挙に関しての動機、それに抵触しなかったのか、どういう具体的事実があってこのときはこの公職選挙法あるいは政治資金規正法に触れなかったのか、この調査内容を具体的にお教え願えませんか。
  29. 川井英良

    説明員川井英良君) これも、先ほど大臣から冒頭に申し上げましたように、これが犯罪になるものでありますれば、公訴を提起するとか、あるいは何らかの表向きの措置がとれますので、これに対しましては、国会の御要求があれば、それはここで明らかにするとともに、また刑事法廷においてその事実が明らかになると思います。これは、るる御説明申し上げましたとおり、結局何らの犯罪にもならないのだということになりますというと、このまた関係につきまして、この事実の内容について具体的にこれは明らかにするということは、また検察の本筋に戻りまして、それは適当ではないということになりますので、ただいまの御質問内容につきましては、具体的な詳細をここでお答えすることを差し控えさしていただきたいということでございます。
  30. 黒柳明

    黒柳明君 そうすると、この選挙に関してという条項で犯罪容疑が成立するためには、どういう寄付のしかたなり、あるいはどういう動機ならば、これは犯罪が成立するのか、これはどうですか。
  31. 川井英良

    説明員川井英良君) たとえば、選挙期間中にかりに金が若干動きましても、それが純然たる儀礼的なものが動いたのだということでありますれば、私は選挙に関する事項を動機としたものであるというような認定は困難であろうと思います。
  32. 黒柳明

    黒柳明君 儀礼的といいますと……。
  33. 川井英良

    説明員川井英良君) 儀礼的というのは、公職選挙法のところどころに、そういうふうな解釈の内容を持ったことばが出てきておりますけれども、健全な社会通念に照らしまして、金額の多寡だとか、あるいはやりとりするする者の従来の間柄とか、あるいはその金銭が動くに至った直接の動機、原因とかというふうなものを勘案いたしまして、それは何らかの特別な意味を持ったものではなくて、日本の社会生活において日常行なわれておる、いわゆる社会通念上儀礼的なものでありますれば、これはこの法律の解釈といたしましても、儀礼的なものとして処理することが妥当である、かように考えております。
  34. 黒柳明

    黒柳明君 まあ、結論が出たことですから、ここで蒸し返してもしようがないと思うのですけれども、四十数名のうちの五人が選挙に関してという条項に一応は触れる余地があったというようなことで取り調べの対象になった、ところが儀礼的にこの五人の方がどういう関係があったか。関係の相手は日通ですよ、政府と独占契約の体制をとっている日通である。社会的にどういういままで儀礼的な関係があったか。いわゆる社会的に儀礼的に関係があったとしたら、これ自体がうまくなかったわけです、本来。いわゆる日通議員と、こういうような名前をつけられるような関係を持ったこと自体がうまくなかったことじゃないですかね。あるいは、その額の多少なんていうのは、これは問題にならないわけなんですよね。たとえ額が一万であろうが、二万であろうが、これが選挙期間に授受されたということ、またそういう政府と独占態勢をとっている日通との関係というものを見て、明らかにこれはしてはならないと、こういうふうにしてある段階なんですから、それは額の大小はここでは言っていないわけです。ですから、いま言われた儀礼的なものだ云云、額云々、それからいままでの関係云々、そうするとこの選挙に関してということをもって犯罪が成り立つという動機なんていうのは全然ゼロの可能性が強いんじゃないですか。ゼロの可能性が、一般論として。それじゃどういうことが具体的にこの犯罪が成立する要素になり得るのか。この日通事件犯罪が成り立つ要素にならないとしたら、もうこういう政治資金規正法、公職選挙法なんていうものは文字どおりざる法である、あってなきにひとしいものだ、こういう結論が前提に立って、幾らこの法に照らして罪になるかならないかなんて論議したって始まらないんじゃないか。まあだから改正しろという声が出ているんですけれどもね、どうでしょうその点。
  35. 川井英良

    説明員川井英良君) いろいろな観点からかなり疑いがあるじゃないかと、こういう御指摘については、私も同感でございます。だから地方検察庁も、選挙に際してと認められる時期の金銭のやりとりについては、公職選挙法百九十九条違反の疑いがあるのではないかというふうな観点から、数名の方についてさらに取り調べを進めた、こういうことでございますので、その結果は、いろいろな観点からそれを認定するために十分な資料を得るに至らなかった、こういうことでございます。  そこで、たとえばどういう場合がこの選挙中にやりとりされてならないのだという事柄の御質問でございましたので、わかりやすい例をあげれば、たとえば儀礼的なものですと、こういうことを申し上げたわけでございまして、この五名の方がすべて儀礼的だと、こういうふうに認定したわけではございませんで、それぞれいろいろな広範かつ複雑な理由証拠によって固められておりますので、儀礼的ということで簡単にはねたわけではございませんけれども、内容はもっといろいろのものがあるということをひとつ御認識賜わりたいと存じます。  それから、公職選挙法の問題でございますが、私自身もたいへん奇異な感じを抱くのでございますが、公職選挙法は選挙運動に関する規定でございます。ところが、御承認のとおり、選挙運動とは何ぞやという規定が公職選挙法にはどこを開いてみてもないのでございます。そこで、一番問題になりますのは、選挙運動とは何ぞやということがいつも大問題になるのは、事前運動なんかにおきましても、それが事前運動かどうかということの認定に、選挙運動かどうかということが認定のもとになるわけでございまして、法律といたしましては非常にむずかしい法律だ。私これをざる法という表現がいいかどうかは検討さしていただきたいと存じますけれども、非常にめんどうだ。そこで、しからばどういうふうな技術的なきめ方をすればそこが明確になるかということになりますと、およそ議員政治活動なり、議員活動なり、選挙運動なりというものは、非常に広範、複雑なものでございますので、その実態を法律の実現をもって正確にとらえるということは、私どういう人がどういうふうに考えましても非常に困難だと思います。そういうふうなことが、この法の解釈、運用についてただいま御指摘のような不満ないしは不可解さを生んでいる原因ではないかと、かように考えるわけでございまして、法律そのもの、また法律が規制しようという実態そのものが、非常に法律をもってとらえるには困難なものであるということも一つ私指摘ができるのではないかと、こう思うわけでございまして、そういうふうな法律解釈の非常な困難さ、めんどうさも加わりまして、この種の事件につきましてはいろいろいままであらゆる角度から努力をいたしておるわけでございまするけれども、ただいま申し上げましたような結果が本件関係しては出てきたと、こういうことでございます。
  36. 黒柳明

    黒柳明君 まあ法の取り締まり役で法の番人の方が、この法の適用が非常に困難であると、非常に私たちが従来言っていたこと、その裏書きをするこういうような御答弁をなされたわけですけれども、非常にこれは私大きな問題だと思うんですよ。じゃあ、こういう事件が幾ら起こっても、この法に照らしてそれを取り締まることが困難な法を持っていて、そうしてみずから法務大臣として、刑事局長として、その任をやっていること自体、私はそれは常識的に非常に疑われると思うのですよ。だから、こう新聞に、断片的ですけれども、最終的の、このいつですか、検事総長が今回の事件に対しての締めくくりの新聞記者とのインタビューをしたときに、非常に苦しい答弁をしている。それに対しての国民の声は、もうこれは検察不信だ、こういう声がマスコミを代表してあがっているわけですよ。その根拠はどこにあるのかというと、取り締まる法に非常に問題がある。これはくしくもその法の番人である当局者の口からそういう声が出たということは、これはもう大問題だと思う。それじゃ幾らこういう事件が起きたとしたって、それは法に照らして罪にならない、やり得である、こういう考えも成り立つのではありませんか。ですから、国民が、あるいはマスコミのほうが、大山鳴動してネズミ二匹だと、毎回と同じことが今回も繰り返されただけだ、せめてそれじゃ四十七名の名前ぐらい出してその不信感をぬぐったらどうか、こういう意見に発展するのは、これはあたりまえだと思う。ともかくこの五人に対して、これはもう終わった事件ですけれども、ですから具体的に名前を出さなくても、どういうふうにしてこの選挙に関してということには触れなかったのか、こういう例を一人、二人具体的にあげていただく、この人はこの人はと出さなくてもいいですが、Aさんの例はこうこうこういうわけで触れなかったのだ、調査したのだけれども、調べたのだけれども、公職選挙法百九十九条、政治資金規正法二十二条には触れなかったのだ、犯罪容疑は成立しなかったのだ、こういうようなことを、具体的にせめてこの点だけでも教えていただけませんかね。
  37. 赤間文三

    国務大臣赤間文三君) お答えを申し上げます。  私は日本の検察当局には非常な信頼を持っておるのであります。国民の多くの人が検察陣に対して私は信頼をしておると確信をいたしております。その検察当局が、罪にならないと、調べてみた結果罪にならぬ人間名前を言うとかいうようなことは、かえって私は適当でないのじゃないかと考えております。私は、検察が調べて、犯罪に相当し、起訴せられる者は、国の機関によって、またわれわれも適切なる説明を申し上げますが、調査の結果犯罪の嫌疑なしとした者に、私はそれについていろいろなことを言うことは適当でない。そもそも政治献金などが額が多いからといって、すぐそこに不正があるやのごときというようなものでは——さきにも申し上げましたように、私は必ずしも直結するものでない。政治が行なわれるからには、政治献金というものが相当行なわれているというのは、これは事実で、いかなる党といえども、政治献金は、形はどうか知りませんが、政治のための金を使っていることはやむを得ないことだと考えておるのであります。そういう点からいたしましても、このたびの日通事件につきまして、数ヵ月の日子を費やして、徹底的に参考人その他を呼んで、縦横無尽にこれをやって、そうして犯罪容疑のある者については処置をする、容疑のない者については処置をしないというのでありまして、私は何ら検察に対する不信の念というようなものを考えておりません。私は公正に、また身分のいかんを問わず、また地位のいかんを問わず、犯罪にかかる者については処罰をする、かからぬ者については、人権擁護その他の上から、そういうものをあばく、あるいはそういうものを不必要に名前を言うようなことは、私の考えでは適切でない、かように考えておる次第でございます。私は、あくまでも検察の信用と、また非常な努力をしてくれたことについて感謝をいたしておる次第でございますので、個々のどうしてそれが罪にならなかったかというようなことを一々——罪になった者は、これはわれわれのみならず、裁判その他において厳正なる批判が下されるのでありますが、何にも罪にならない人間について、どうしてならなかったかとか、どういうことかとかというようなことを言うことは、あまり好ましいことではない、かように私は考えるものでありますので、お答えを申し上げます。
  38. 黒柳明

    黒柳明君 私も検察不信で言っているわけではないのです。当然検察にそんなやましい点は一かけらもないと思います。一点もかげりはないと思います。また、結論が出たものについて、私、政治家がこんな司法のものにタッチする権限がないことは十分に知っております。ただ、私も先ほど言いましたように、やはりマスコミというのは国民の声を代表している機関じゃないかと思うのです。また、大臣とて、世間のうわさ、あるいはテレビ、ラジオ、週刊誌で見たり聞いたり読んだりしてないこともないと思うのですね。そういうあれに関するどういう例が書いてあるか、どういうことを報道されているか。私が言ったことを報道されているわけですよ。伝えているわけですよ。それに対しても、私は国民から選ばれた議員です。代表です。だから、そういう声をやはり消すのも一つのわれわれの役目じゃないのか。また大臣も、私は、火のないところに煙もないのことわざどおり、そういう不信に対しては、厳然としてやはりそうじゃないのだと具体例を出さなければ、やはり納得しません。それで、またまた私の質問がすりかえられてしまったわけですから、せめて私は、この五人に限ってでもいい、公判前だとか、あるいは名誉に関するとか、いろいろなことがあるでしょうけれども、この五人に関しては調査を終わったわけですね。それで、先ほどのはげ論じゃないですけれども、政治資金であるか、あるいはわいろであるか、これはわからない。これは確かにわかりませんよ。ところが、政治資金・として出されているものでも、これは選挙に関してだめなんだと、こういうふうに限定されたことに関していま質問を発しているわけです。それに関してと、そこに限っていま質問を発している。それで、限られた者が五人、しかもこの五人は調べが終わった、それならばそれに関してどういうぐあいに調べが行なわれたのか、そうしてこの人たちは罪にならなかったのか、せめてこのくらいなことでも国民の皆さんに教えないと、やはりいまみたいな声が起こってくることがあたりまえじゃないのだろうかと、私はこういうふうに判断せざるを得ないわけなんです。どうですか。
  39. 赤間文三

    国務大臣赤間文三君) 私はたびたび申し上げましたように、犯罪の嫌疑があって起訴せられるとか、そういうものについては、私ははっきりと申し上げることが適切と考えておりまするが、捜査した結果罪にならぬということが明確になったものについて、それを私は申し上げることは適当でない、かように考えております。  特に、今日におきましては、人権問題は、御承知のように、非常に私のところにやかましく言われることが多いのでございます。犯罪の疑いがある、おかしいところがあるというなら、それはいろいろと論議のあれになりますが、厳正な捜査機関が徹底的にこれを調べてみて犯罪のあれがないということになったものを、爼上にのぼせてとやかく言うということは、私は広い意味から言うと人権を尊重するというような点からも非常な非難を受けて、私はそれについて言いわけをすることがちょっと困難じゃないかというような気がする。何でもない普通の人間をおまえはつかまえてきてとやかく言うが、どういう根拠でどういうことを言うかと言われると、なかなか私は、それは言えと言われたからやむを得ず言ったというだけじゃ、ちょっと問題はそうはいかない。少なくともおまえはこういう嫌疑があって起訴せられるのだからとかなんとかいうならこれは何ですが、いま言ったような理由で、私はそういうことについて申し上げるということは差し控えることが法務大臣としては適切だと、かように考えておりますので、あしからず御了承をひとつお願いしたい。
  40. 黒柳明

    黒柳明君 そういう法をかかえて、大臣自体も非常にまたお困りだと思う。その心中も私はわからないわけじゃないですけれども、これ以上は水かけ論になりますから、この問題は後日また発展さしていただきたい。  以上です。
  41. 小平芳平

    委員長小平芳平君) 本件調査は本日はこの程度にいたします。     —————————————
  42. 小平芳平

    委員長小平芳平君) 次に、請願の審査を行ないます。  本日、当委員会に付託されました第三二号刑法の一部(姦淫罪)改正に関する請願外一件の請願を一括して議題といたします。  便宜、速記を中止しまして審査を行ないます。速記をとめて。   〔速記中止
  43. 小平芳平

    委員長小平芳平君) 速記をつけて。  ただいま速記を中止して協議いたしましたとおり、刑法の一部(姦淫罪)改正に関する請願二件、議院の会議に付し内閣に送付するを要するものと決定することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  44. 小平芳平

    委員長小平芳平君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  45. 小平芳平

    委員長小平芳平君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  46. 小平芳平

    委員長小平芳平君) 次に、継続調査要求についておはかりいたします。  検察及び裁判運営等に関する調査につきましては、閉会中もなお調査を継続することとし、本件継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  47. 小平芳平

    委員長小平芳平君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  48. 小平芳平

    委員長小平芳平君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  49. 小平芳平

    委員長小平芳平君) 次に、委員派遣承認要求に関する件についておはかりいたします。  検察及び裁判運営等に関する調査のため、閉会中委員派遣を行ないたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  50. 小平芳平

    委員長小平芳平君) 御異議ないと認めます。  なお、派遣委員の人選その他派遣の細目及び議長に提出する委員派遣承認要求書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  51. 小平芳平

    委員長小平芳平君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午前十一時五十三分散会      —————・—————