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1968-11-29 第59回国会 参議院 文教委員会 閉会後第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年十一月二十九日(金曜日)    午前十時二十六分開会     —————————————    委員異動  十月七日     辞任         補欠選任      玉置 和郎君     北畠 教真君      内田 善利君     矢追 秀彦君  十月十一日     辞任         補欠選任      萩原幽香子君     松下 正寿君  十月十二日     辞任         補欠選任      大松 博文君     玉置 和郎君  十月十四日     辞任         補欠選任      北畠 教真君     井野 碩哉君      矢追 秀彦君     内田 善利君  十月十六日     辞任         補欠選任      井野 碩哉君     北畠 教真君      玉置 和郎君     大松 博文君  十月十七日     辞任         補欠選任      北畠 教真君     八田 一朗君  十月二十二日     辞任         補欠選任      八田 一朗君     北畠 教真君  十一月二十八日     辞任         補欠選任      松下 正寿君     萩原幽香子君      小笠原貞子君     春日 正一君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         中村喜四郎君     理 事                 久保 勘一君                 楠  正俊君                 川村 清一君                 小林  武君     委 員                 北畠 教真君                 大松 博文君                 内藤誉三郎君                 永野 鎮雄君                 鈴木  力君                 成瀬 幡治君                 安永 英雄君                 内田 善利君                 柏原 ヤス君                 萩原幽香子君                 春日 正一君    事務局側        常任委員会専門        員        渡辺  猛君    説明員        警察庁警備局参        事官       後藤 信義君        文部省初等中等        教育局長     天城  勲君        文部省管理局長  村山 松雄君        文化庁長官    今 日出海君        文化庁次長    安達 健二君        文化庁文化財保        護部長      内山  正君        文化庁文化保護        部記念物課長   中西 貞夫君        労働省職業安定        局業務指導課長  保科 真一君        建設省道路局長  蓑輪健二郎君        建設省計画局宅        地開発課長    福地  稔君        建設省都市局都        市総務課長    大塩洋一郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事辞任及び補欠互選に関する件 ○教育文化及び学術に関する調査  (文化財保護に関する件)  (学校教育に対する警察の態度に関する件)  (私立大学等教育研究費補助及び中、高校生の  就職問題に関する件)     —————————————
  2. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) ただいまから文教委員会を開会いたします。  委員異動について報告いたします。  昨二十八日、小笠原貞子君が委員辞任され、その補欠として春日正一君が選任されました。
  3. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 鈴木力君から文書をもって、都合により理事辞任いたしたい旨の申し出がございましたが、これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  つきましては、直ちにその補欠互選を行ないたいと存じます。互選は投票の方法によらないで、委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事川村清一君を指名いたします。     —————————————
  6. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) これより教育文化及び学術に関する調査を行ないます。  まず、文化財保護に関する件を議題といたします。  政府側からは、今文化庁長官安達文化庁次長蓑輪建設省道路局長大塩都市局都市総務課長、以上の方々が出席いたしております。  本件について質疑申し出がございますので、これを許します。小林君。
  7. 小林武

    小林武君 最初にきわめて形式的なことをお尋ねいたしますが、安達次長から御答弁いただきたい。なお時間の関係がございますから、もう私の質問はしばらくイエス、ノーみたいな質問ですから、どうぞそういう意味で、長々と御答弁いただかなくていいことは、ひとつ簡単にやっていただきたいと思います。  まず一番先に、この調査団杉原さんの言う正式レポートというのはどういう書類でございますか。これが正式レポートですか、岡山遺跡調査概要……。
  8. 安達健二

    説明員安達健二君) いまお手元にございます岡山津島遺跡調査概要、それに県の調査結果についての全般の書類をつけたものが正式の報告書でございます。
  9. 小林武

    小林武君 私のお尋ねしたのは、この正式レポートというのはこれはこの間の衆議院における質疑の中に、杉原参考人が述べているから申し上げたのであります。正式レポートというのはそうするとこの調査概要でございますね、杉原さんの正式レポートと言ったのは、これだという、これ、間違いありませんね。
  10. 安達健二

    説明員安達健二君) 衆議院文教委員会杉原さんのおっしゃったのはそれだと思いますが、私どものほうで受け取っておりますのは……。
  11. 小林武

    小林武君 いやそんなこと聞いてない。杉原さんのことを聞いている。
  12. 安達健二

    説明員安達健二君) 杉原先生衆議院文教での御報告の点はそのとおりでございます。
  13. 小林武

    小林武君 なおその際、杉原さんのお話ですと、レポートを作成して調査委員会に提出した。これは八幡さんが委員長。そうしてそれが事務局に出て、事務局というのはこの際どこを言ったらいいのかわからぬけれども、文化庁だと思うんですが、これ、どこですか。それから文化庁に行って、それから文化庁から重要指定調査委員会に上程されますと、こう言っているわけです。その書類、間違いないですね。それから、そういう経路をたどっているということ、間違いないですか。
  14. 安達健二

    説明員安達健二君) 岡山県の……。
  15. 小林武

    小林武君 いや、岡山県はいいから、いま杉原さんの言っていることだけ言ってください。
  16. 安達健二

    説明員安達健二君) 事務当局というのは、つまり岡山県の教育委員会事務局のことでございまして、岡山教育委員会から文化庁に、岡山県としての調査報告があるわけでございます。それを重要遺跡緊急指定調査研究委員会に上程をしたと、こういうことでございます。
  17. 小林武

    小林武君 私、また聞きでございますけれども、その際、八幡委員長はじめ杉原調査団長ですか、の御意見として、この概要がいわゆる調査の正式な文書だというふうに、こういうふうに理解されておったというふうに聞いているんですが、そうでございませんか。
  18. 安達健二

    説明員安達健二君) ちょっといまの小林先生お話、よくわかりませんでしたので、もう一度お願いいたします。
  19. 小林武

    小林武君 あなた、速記録持ってきているんだろうと思うんですけれども、速記録を用意しておいてくださいよ。この速記録をぼくは見て言っているんだからね。速記録杉原さんのおっしゃることというのは、正式のレポートですよね、レポートというのをどういうふうに日本語で訳したらいいかわからぬけれども、この文書、このあれから言えば、いわゆる津島遺跡調査概要のことを言うんだと思う。これは正式レポートと言われているんですね、正式レポート。この正式レポートと言われているのは、正式というのは一体何なのだということをそれじゃお尋ねいたします。
  20. 安達健二

    説明員安達健二君) 杉原教授団長とする調査団のまとまった報告書であると、こういうことでございます。
  21. 小林武

    小林武君 それで、あなたのその間における御発言を見て、実は十分検討して、なかなかこれは微妙なところだなと、こう思ったんですけれども、そうすると、ここに出ている調査結果というのは、これは私のほうで資料要求をして取ったものですがね、この調査結果というのは、これは県から出たものですか。
  22. 安達健二

    説明員安達健二君) 県からのものでございます。
  23. 小林武

    小林武君 そうすると、お尋ねいたしますが、一体これ、二つで正式な調査ということになるわけでございますか。
  24. 安達健二

    説明員安達健二君) この調査は県の教育委員会責任において文化庁補助金を得て行なったものでございまして、したがいまして、調査の最終的な責任と申しますか、事務的な責任は、県の教育委員会が負うわけでございます。で、県の教育委員会調査団調査を依頼し、その結果を県に報告し、県がそれに副申を添えて文化庁のほうに提出をしたと、こういうことでございます。
  25. 小林武

    小林武君 そこのところがちょっとぼくには理解ができないんですね。これはあなたのほうのじゃなくて、岡山教育委員会教育長篠井孝夫氏が教育時報第二十巻第十一号に「岡山武道館建設地弥生時代遺跡」ということを書いた中に、八幡委員長とこう書いて、その中に——篠井孝夫というのはこれは副委員長になっているんですね。杉原荘介さん以下、和島鎌木というような方々近藤というような考古学者委員に加わっていらっしゃる。発掘団のほうにも、杉原さんも入っていれば、それから鎌木さんも入っている。和島さんも近藤さんも入っている。それはあれですか、これは二通出すということがちょっとわからないんですね。私は、調査団なり、あるいはこの二つのものになっておりますから、ここできめられたことというのは、少なくとも県が委嘱して県が責任あるならば、この学者の出したレポートと、それとさらに別なものが出るというのは、これ、どういうわけでございましょうか。
  26. 安達健二

    説明員安達健二君) 調査につきましては調査委員会をつくり、そして調査委員会のもとに現実に調査を担当する調査団を設けたわけでございます。したがいましてその調査委員会というものと調査団長とは一応別個な性格を持つわけでございます。したがいまして調査団という実地に調査をした団の報告と、調査委員会責任において、県の責任において出すものと、この二種類があり得ると、こういうことでございます。
  27. 小林武

    小林武君 これはちょっとあなたどういうつもりでおっしゃっているかわかりませんけれども、ちょっとおかしくはありませんか。あなたがおっしゃるのは、県が責任を持ってやるということは、これは私は了解しましたよ。それで、県と、それから文化財のほうと両方が一緒になって、少くとも責任は県にあるにしろ、県が主体であるにしろ、これは文化庁もそれにちゃんと一枚加わって学者もその中に入って、発掘調査団責任者には八幡さんがなった。そうでしょう。そうして、その中には教育長が入っている、副委員長として。そうでしょう。それから発掘に直接当たるところのいわゆる考古学者もみなそこに入っている。その下に調査団があって、そうでしょう、調査団があって、発掘調査団ができて、発掘を担当した。そうして、そこでできた正式レポートというものができ上がったとすれば、これは一体のものでなければならぬじゃないですか。しかもそれを最終的に受け取った方は八幡さんなんです。八幡さんが受け取ったというのは、結局副委員長教育長もまたこれについて同意したということじゃないですか。だから私はこの衆議院の中において、このやりとりの中でちょっと質問が足らなかったなあと思ったのはそこなんです。そして杉原さんは発掘団長としてこれは正式のとにかくレポートでございますと、こう言っている。それになぜ一体別なものをつけなければならぬかということなんです。私は全く同じものが出ているのなら文句は言わぬですよ。その点についてあとでひとつこまかく御質問を申し上げますけれども、なぜ違うものを一体出さなければならぬのかという、そういうことです。どうしてそういうことになったのか。それを文化庁がこの間の衆議院質問の中で何らふしぎに思わないというところに、特にあなたのほうから発言をされて、そして杉原さんの質問に対して、あなたのほうでは、水をさしたと言ったら悪いけれども、実はこうですということを言っているのです。そうでしょう。ここを読んでごらんなさい。あなた、どういうわけです、それは。
  28. 安達健二

    説明員安達健二君) 先ほど申し上げましたように、調査団調査委員会というものがございまして、調査団からの報告書は、先ほどお示しのような遺跡調査概要、これを調査委員会に出され、そして調査委員会からそれが県に出され、県がそれについての意見を添えて、こういう調査をいたしました、こういうものを県のほうから報告があったということでございますから、それを重要遺跡緊急指定調査研究委員会に提出した、こういうことでございます。
  29. 小林武

    小林武君 安達さん、少しぼくの言うことがわからなかったら、質問のときによく問いただしてから答えてください。いいですか。調査団をつくったでしょう。発掘調査団調査委員会ですか、二つつくったでしょう。それはあなたのほうがつくったのか、県のほうがつくったのかと言ったら、あなたの話だと、県があなたのほうのあれも受けて、そしてこの調査に当たるためにつくったものでしょう。その中には県のあれもみんな入っている。それから県の中にいるところの岡山県の考古学者も入っている。それでできたものでしょう。そこに出たレポートというものが、これが正式レポートですと、こういうことは、そこに参加した人全体が私たちの見方はこういうことですと、調査の結果は、こういうことでしょう。それにもし何かつくとすれば、それは調査の内容に関することではないはずなんですよ、そうでしょう。学問的な調査の上においてはあれでしょう、一致したんでしょう。だからそれは学者のことですからこまかい点には何かいろいろあってもみんなが一致してこれでよろしいというものができた。それにほかのものをつくったのはどういうことです。それがわからない。県が何でそれを出さなければならないのですか。県がそういう考古学上の見解一体なぜ別に出さなければならないのか。わかりませんか、私の言うことが。
  30. 安達健二

    説明員安達健二君) 四十三年九月二十六日付に県の教育長から長官あて発掘調査報告書に「昭和四十三年七月十三日付で通知のありました埋蔵文化財発掘について、別記のとおり発掘調査団を構成し昭和四十三年八月十六日から昭和四十三年九月二十三日まで調査を実施し、この調査概要を別紙のとおり報告いたしますから、よろしくお取り計らい願います。」ということで調査結果の概要と、それから団の構成、議事録、それから調査団報告書がついてきておる、こういうのでございます。
  31. 小林武

    小林武君 何ですか、もう一ぺん言ってください。概要はわかりました。あなた先ほど言った県というのがあるからぼくは問題なんだ、この県の一体それは何ですか、これは。
  32. 安達健二

    説明員安達健二君) 最初調査結果の概要……。
  33. 小林武

    小林武君 それはわかっている。それは、この文章ですね。
  34. 安達健二

    説明員安達健二君) はい。それから発掘……。
  35. 小林武

    小林武君 しっかりしなさいよ。
  36. 安達健二

    説明員安達健二君) どうも失礼いたしました。その中のまず一つとして「調査結果の概要」というのがございまして、その次に「津島遺跡発掘調査概要」として、こうくっついて文化庁に出されたわけでございます。
  37. 小林武

    小林武君 いや、それでいいのですか。これはみんながとにかく相談してでき上った正式レポートですよ。杉原荘介さんのおっしゃる、団長である杉原教授正式レポートとおっしゃったのはこれです。だから私はこの正式レポートという中に少なくとも調査に関する一致した見解というのが盛られている、こう確認してよろしいでしょう。ところがあとに出たもの、あとに県から出てきた調査結果というもの、これがどうしてつくかと言うんだ。ぼくはこれも何かいろいろ指定の問題とか手続の問題で事務的な手続でつくなら何も言わない。しかし中身にわたる問題、これが書かれている。たとえば北西部初期微高地上の遺跡、同初期低湿地帯遺跡、こういうのが書かれている。こういうのが何項目か出ているんだが、こういう中身についてなぜ書かなければならないか。ここにちゃんとしたのがあるのになぜ出さなければいけないか。これ二つ出さなければ県の責任上何かぐあい悪いということがありますか。
  38. 安達健二

    説明員安達健二君) それは県の責任において県がそういうものを付することを妨げることはできないと思います。県が出したものはこちらで受け取るべきものであると考えたわけでございます。
  39. 小林武

    小林武君 わからぬことを言うな。それは今長官にちょっとお尋ねいたしますが、これは事務当局じゃわけわからぬ。私は、話開いたらおわかりだと思いますが、調査団つくられた、それは県が主体になったということはこれはいいです。そして県が主体になって文化庁がこれに協力して日本考古学上のいろいろの研究者が協力してレポートができ上がった。これは正式の報告書。その報告書に内容的に違う部面を含んだところの県のあれを出すというのはどういうことかと、私はそれを聞いている。そういうことを一体文化庁としていままでもやってきたのかどうか。これはまあ文化庁は前なかったからあれですが、これやっているとしたら、おかしな話です。みんなの学者が集まって合意したレポートが出ている。そのほかに県ではこういうふうな見解ですというものを出すのはおかしいじゃないか、私はこういう質問をしている。文化庁長官としては、そういう二つのあれを出さなければならぬという根拠があったら御答弁いただきたい。
  40. 今日出海

    説明員今日出海君) 別に根拠はございませんです。
  41. 小林武

    小林武君 根拠はない——まあ長官だから根拠はないというぐらいで……。根拠がないというのは、紙のむだぐらいなら私は何でもない。しかし私がどうしても筋が立たぬと思うのは、県がやって県がまとめたものです。そうして委員長もそれからなにもそれぞれみんな入っている、県の課長も入っている、この中に。そうしてまとめたものですから、そのレポートというものは一つでなければならぬはずです。それに一たんこういうものができたのに、さらに県がその調査結果というものを発表している。これが全く一致していれば私はかれこれ言わないです。このことが一つ。あなた、二つを認めたわけだからこれはしかたがないというんですか、どっちなんですか。あなたとしてはどっちをとるんですか。安達さん、あなた事務局だから、これどっちを見るのですか。食い違いがあったらどうします。
  42. 安達健二

    説明員安達健二君) こういう問題は非常に専門的なことでもございますし、そういういろいろな問題点があることはやはりいろいろ指摘をして、その指摘の上に立って十分判定をすることのほうがより適切なる結果ができると思いますので、その意見を出してはいけないということを言う根拠は何もないのではないかと思うわけでございます。
  43. 小林武

    小林武君 安達さん、あなたいいかげんなことを言っちゃいかぬですよ、いいかげんなことを言ったらだめですよ。いいかげんじゃないですか。一体、幾ら金出してやったんですか。文化庁、幾ら金出したんですか。
  44. 安達健二

    説明員安達健二君) 百五十万でございます。
  45. 小林武

    小林武君 県は幾ら出したか。
  46. 安達健二

    説明員安達健二君) 同額でございます。
  47. 小林武

    小林武君 三百方でこの調査をやられた。あなたのほうではそれについて二つも三つも意見が出ることを望んだんですか。少なくとも調査団という、県が中心になって調査団をつくって、そこから出てくるところの結論というものと、県がまた別にやるというのはどういうわけですか。そういうことのために金出したんですか。あなたのほうは県を主体にして、県の責任において、できたものは一本の正確な調査報告というものを要求したんじゃないんですか。百五十万出したというのはそういうことじゃないんですか。県と一体それを二つに分裂して調査が出るというのはどういうことですか。それはあたりまえだというのはどういうことですか。あたりまえだというのは、何があたりまえですか。私は、あたりまえだというところに問題がある。出してきました、しかし、その出してきたために突っ返すわけにもいかないから交化庁としては十分それについて検討を加え正しいほうをとりますとかなんとかと言うんならわかるけれども、出るのはあたりまえだと。これは異例のことですよ。県がやっているんですよ、県が主体になってやっているんです。文化庁百五十万という金を出した、そこに一体分裂した二つ報告書が出るということは、失敗したということじゃないですか。そういうことがあたりまえだということはどういうことですか。
  48. 安達健二

    説明員安達健二君) 私、あたりまえというふうに申しますとすれば、これは取り消していただきたいと思います。あたりまえとは私は申し上げませんでしたけれども、要するに一般に、調査につきまして一致した見解が出るということはもとより望ましいことで、それはいま小林委員の御指摘のとおりでございます。で、この調査につきましてはこの調査団長されました杉原教授も言っておられましたけれども、非常にいろいろ問題があり、見解が分かれるところがあったと、それについて両様の意見を書くべきであるという意見もあるし、あるいは少数意見も書くべきであるという意見もあったけれども、まあとにかく一応だれでも一満足できる、一番だれでも言えるところの意見で書いたと。したがって、これについてはいろいろ問題もあると、こういうお話があったわけでございます。そこで県としては、こういうことも言いたいということも、それも取り上げられなかったと。そこで県としての見解も出さしてほしいと、こういうようなことでございました。したがいまして私はそういうものがどんどん出たほうがいいと、そういうようなことはもちろん考えておらないわけでございまして、もとより一致した一本で県のほうは何もないほうが望ましいと思いますが、なおそれでも県がそういう意見があり得るということであるならば、それはやはりこれを受け取って検討していただくのが筋であろうと、こういうことを申し上げただけでございまして、その点では小林先生のおっしゃることとちっとも違わないわけでございます。
  49. 小林武

    小林武君 あなた、取り消せというのは何取り消したらいいんです。何を取り消したらいいことになるんですか、ぼくが。ぼくの発言の何を取り消せというのですか、速記録調べたらはっきりする、君の言い方がおかしいじゃないか、これ見なさいよ。ここに杉原荘介さんが、これにはいろいろ問題があって、とにかくいろいろな議論が出るなんていうこと、どこに書いてありますか、一体。どこに書いてあるんです、速記録の中に。杉原さんはこのことについて昭和二十六年から三十  五年まで、自分はこの問題について取り組んだということを書いてある。日本農業がどういうふうに起こって、どういうふうに発展したかということについての、これは重要なあれだということを述べているんじゃないですか。一体どこに、レポートの中にいろいろ問題点があつて、ぐあいが悪いということをどこに書いてあるんですか。これは衆議院委員会の中においてあれですか、いいかげんなことを言ったということになりますか、杉原さんが。杉原さんという考古学者がいいかげんなことを言ったというのですか。そういうふうに受け取ってよろしいのですか。これ信用するよりほかしようがないでしょう。私たちは国会の中で議論する場合には、これはレポートを見ておかなければこのレポートに従って正しいとか正しくないとかいう判断をするんじゃないですか。しかし、その中でもこまかい部面にわたって学者がたくさん集まればやはりいろいろな見解の分かれてくることもあると思う。しかし、みんながこの点ならば了解だというレポートを出したんじゃないですか。その中に県が入っていないんですか、入っているんじゃないですかと、ぼくは言うんですよ、入っているでしょう、この中に。そうすると、この県の見解というのは、そういう統一見解ができたけれども、これに対して異議ありということで出したということになりますか、あなたのおっしゃることは。異議ありということで出したとすれば、これは重大ですよ。だから私は初めにもうイエスかノーで答えてくれといったけれども、あなたはいろんなことを言うからだんだんこじれてきた、どういうことですか。これはもう私はどうしてもこの二つの点についてあなたのほうがどうとるかと言わなければ、次のあれが出ない。どういうことです、もう一ぺん言ってください。
  50. 安達健二

    説明員安達健二君) 私が取り消し云々ということを申し上げたのは、私がもしそういうことが望ましいと、一般的に望ましいというように言ったというように了解していただいたとするならば私の不足なところは取り消していただきたいということを申し上げたに過ぎないということが一つでございます。  それから第二に、県が付しましたところのこの調査結果概要の性格でございますが、これは遺跡調査団報告の補足的な意見であると、かように考えておるわけでございます。
  51. 小林武

    小林武君 あなた、自分の言われたことだから、衆議院文教委員会会議録第五号、昭和四十三年十月四日の一六ページにあなたが、安達説明員発言している。杉原参考人あとに長谷川正三君がこの調査団報告書がまとまって、それを当委員会に提出されて、そして八幡委員長がさらにこれを文化庁のほうに答申される、それを文化庁のほうが最終的に判断されると、こういうふうに理解してよろしゅうございますかと言ったら、次長は、それについて、形式的にはあくまでも県の調査だからと、こういう話の上に立ってこうですと答弁しているのでしょう。このことと、先ほど来のあなたの答弁というものは全く同じ意味のことを言っている、二つのあれを認めていこうということでしょう。だから先ほどあなたの御答弁の中にも、概要というのはこう書かれてはおりますけれども、内部的にはいろいろ異論がございまして、それを県としても入れてもらえないところはこういうふうに出しましたと、こうあなたはおっしゃった、そんな調査に百五十万も出したのでしょうかと言うのです。ぼくはそんなあいまいなことで、なぜそれならば延ばしてもりっぱなあれをやらぬのです。私はそれを言いたい。やるやらぬは別として、そのくらいのことをやるのじゃなかったら文化庁に名前を変えた値がないと私は思う。そういう二つの、一体これは違ったものを出してこられたといってもいいくらいです、その証明、ひとつやりますか、それは、先ほど来から私申し上げている県の教育長の書いた発掘遺跡についての見解です。その見解に何と書いているか、いいですか、いまこの問題を取り上げて言うのじゃないですから、一応例を言う、この中でももうとにかく何ということを書いているかというと、遺構は全然ございませんでしたと書いている。ところが、このレポートのほうには遺構がたくさんございましたと書いてある、あと書き見なさい、あと書きを。A、B、ずっと書いてありますな、そのところにちゃんと遺構ありと書いてある、遺構ありというのとないというのとどういうことです。こういう一体食い違いのあるものができたということは、私はたいへんまあ今度のあれで問題だと思っているのですが、それはひとつ中身でやりましょう。その前にあなたのお話、いままで述べられた質問の中でちょっと理解に苦しむところを教えていただきたいのでありますが、この重要遺跡緊急指定調査委員会というのは第一次の総洗いが目的だというのだが、史跡指定の候補物件について総洗いというのはどういうことをやるのですか、総洗いというのは、洗うのは、総洗いというのは具体的に言ったらどういうことですか。
  52. 安達健二

    説明員安達健二君) 遺跡といわれるものにつきましては、全国でかりに推測いたしますと十四万カ所くらいもあるわけでございまして、その中で特に重要なものを選んで国として保護していく必要があるわけでございます。その場合に、第一次的にはその十四万カ所から県がさらにこれをしぼりまして六千件くらいをしぼってまいっておるわけでございます。そのしぼった約六千件についてさらにこれを各県ごとにその重要度等を鑑定をしていくと、これはおおよその見当でございますが、そういうような検討の仕事をしていただいているわけでございます。現在まで十八県分が終わったわけでございまして、いまのは奈良県の審議中でございまして、まだ岡山県のほうはその審議が終わっていないと、こういう状況であるということでございます。
  53. 小林武

    小林武君 そのことじゃないのです。この委員会は名前が遺跡緊急指定調査委員会というのですね、あなたの説明によるというと、文化財の審議会の中には専門調査会というのがある。そしてその下に史跡部会というのがあって、その史跡部会の特別委員会として、いま申し上げたような委員会がある。とにかくそういう重要遺跡緊急指定調査会といったら、緊急を要する史跡の指定について調査すると、こう見るんだが、あなたは、そうじゃありません、総洗いだと言う。その総洗いという洗い方、どんな洗い方なんですか。丸洗いなのか、電気洗濯機なのかわからぬけれども、総洗いというのは何やるんだ。あなたのおっしゃるのは、緊急指定何とかというのは、これはあれですか、十四万件だか、六万件だかありますわね、いまあるだけ、それを、あれですか、一つずつ重要であるか、重要でないかというようなことを、各県ごとに調べていくことが総洗いと、こういうわけですか。
  54. 安達健二

    説明員安達健二君) そうでございます。
  55. 小林武

    小林武君 どうして緊急なんですか、それは。緊急重要何とかというのはちょっとおかしいじゃないですか。名前がちょっとそぐわない。それに、一体どうしてそういうものにかけるのですか。いまの津島遺跡のような重要緊急な問題をかけるの、おかしいじゃないですか。
  56. 安達健二

    説明員安達健二君) この緊急指定調査研究委員の先生方は埋蔵文化財の専門家でいらっしゃるわけでございます。したがいまして、私どもで埋蔵文化財のいろいろな問題が生じましたときに、まあこの本来の任務とは別に、そういうことの御相談を申し上げておると、こういうことでございます。
  57. 小林武

    小林武君 そうすると、これはこういうことですね。杉原荘介団長は、重要遺跡緊急指定調査委員会正式レポートを提出するんだと、こうこの中で述べている。これは本人が誤りをおかしておったと、こういうわけですね。あなたのほうの言い分だと、総洗いで便宜上ただ相談したと、こう言っている、あなたのほうで。それじゃこれは杉原さんが全くこの組織を理解しておらなかったということになりますな。あなたは別にそういう機関として相談したんじゃないんだと、そばにいたから、ちょっと便宜上聞いたんだというようなことですか。あなたそういうふうに言ってるんですよ。
  58. 安達健二

    説明員安達健二君) 制度のたてまえとしてはそういうふうなものでございますが、実際上はよく相談を申し上げておるということでございますから、杉原先生は実際上のような事態に即して、まあ正式報告とおっしゃったんでございましょうし、制度的な面から見れば、まあ御報告を申し上げて御意見を伺ったと、こういうようになるわけでございます。
  59. 小林武

    小林武君 文化庁長官に、答弁は要らぬですけどね、聞いていただきたい。御本人たちは重要指定の緊急な特別委員会というものに諮問されたと、こう言う。杉原さんはきのうおととい委員になられたんじゃないと私は思う。杉原さんという方は、少なくともこういう問題には常に関係していらっしゃった方だ。杉原さんはその中で重要埋蔵物文化財を守ろうという立場でいままでやってこられたが、その場合には、委員会にいる自分たちは文書を提出して、その中で議論してもらいたいと、こういう考え、八幡先生もそうだという話。ところが文部省の文化庁安達さんの話を聞くというと、いや、それはそうじゃないんだ、総洗いやる場所である、便宜上ただ相談したということ、正式機関としてかかるべき筋合いじゃないという御答弁、こういうところに、私は文化庁の業務というものがきわめてあいまいだと思うのですよ。私に言わせれば、こういうレポートができたら一体どこに持っていって、どこで議論して、最終的に審議会にかける、そうしてそこでもって結論を出すのだというような、一つの機構がなかったら、何のために一体やるかということです。杉原さん何でも顔を出しているから、ちょっと便宜上相談したとはどういうことですか、一体。そういうことではいけないというのです。それについて長官責めてみたところでしょうがないですから、御答弁していただくことはないですけれども、私はそういうやり方は不満です。安達さん何か異議があったら言ってください。あなたの言ったことをゆうべ一生懸命読みながら、これは大へんなことだと思って、速記録をまっ赤になるくらい線を引いて読んだのです。
  60. 安達健二

    説明員安達健二君) 特に加えることはございませんが、こういう問題についてもう少し制度的に整備をして、いまおっしゃいますような点で明らかにする必要があるということは、もちろん私も感じておるところでございます。ただ現行はそういう機構で、実質上の問題として処理をしているということを申し上げたにすぎないわけであります。
  61. 今日出海

    説明員今日出海君) この調査団の専門家として杉原先生をお願いしました。それから、いまの次長の相談というのは、専門調査委員会の中の史跡部会の中の特別委員会の中の委員杉原先生はやっておられる。その調査概要につきまして、これをもって史跡の指定ができるかどうかということは、杉原先生がおやりになって、かつまた委員会での御相談と申しますか、諮問にお答えする立場でもあられるのです。で、概要と、その出されたことでは、杉原先生は十分責任を持っておられると思います。私もそれを信じております。しかし、これをいま次長が説明いたしたように、何万という重要文化財の中から、史跡指定をするものは幾つあるかということになると、まだ十分ではございませんが、数は非常に少ない。その史跡指定にするには十分な調査であるかどうかという問題を、今度委員会として検討しております。その中に杉原先生も入って、もう一度調査をもっと広範囲にやって、この概要に書きましたよりも、もっと正確な、もっと広範な調査をいたしたいという結論が出ているのでございます。したがって、杉原先生お一人で、二つのお立場をとらざるを得ないような形になっております。
  62. 小林武

    小林武君 そこがどうもね、私は少し食い違っているのですけれども。私が言うのは杉原先生のお考えは、重要史跡緊急指定調査会というところが今度の問題の最終的結論を出す、最終的というのは、そのあとには審議会もございますし、文化庁としての態度決定もあるわけですけれども、少なくとも調査に基づいたあれとしては、私たちはこうなりましたということを、指定委員会に出さなければならぬと、こう考えているんですよ。ところが安達さんはそう考えてはおらないわけです。それはそうじゃないと言っている。これは十四万とかあるところのあれの総洗いをやるところだ、その総洗いというのはどういうふうに洗うのか、さっぱりわからないのだけれどもね。私が想像すると、十四万だか、十六万だかあるのですから、これ以上あるんですよ。まだ漏れていますから台帳から、これをあげられたものについて、片っ端から今度は何県のやつをずっと、その中で重要度のあるやつを出していこうということを当たっていくべきではないかということを総洗いと言っているのではないかと、夕べも考えた。そうでなかったらまことにあなたの答弁というものは何を言っているのかわからないということになる。もしあれなら黒板でも持ってきて書いてごらんになったらよくわかると思う。
  63. 安達健二

    説明員安達健二君) まさにいま小林委員からおっしゃいましたような、各県から六千件につきまして、それぞれいろいろの資料を添えて持ってくるわけであります。それをさらにふるいにかけて、いろいろの点を相談をしてみて、この程度はということでございます。さらにこれを指定するとかということになれば、さらに詳細な調査を要するわけでございまして、いわば第一次の書面審査、予備審査というようなことをやっていただいているということでございます。
  64. 小林武

    小林武君 委員会のね、そうでしょう。委員会の使命はそういうことだというのでしょう。
  65. 安達健二

    説明員安達健二君) そうでございます。
  66. 小林武

    小林武君 そういうことから、杉原さんに聞いたのは、杉原さんにただ便宜上という、こういうことばをあなたは使っている。便宜上聞いたということでしょう、今度の場合は。そういうことでしょう。これにかけるべき性格のものではないと、こういう判断でしょう、あなたは。
  67. 安達健二

    説明員安達健二) つまり、遺跡の性格等をこの委員会で議するわけでございます。したがいまして、それが全く関係のないことではございませんけれども、私が申し上げましたのは、調査団の結果をここで判定してきめるというところではない。つまり、本来はそういう下審査をすることが本務でございます。したがいまして、調査の結果をそこで判定していただくというところではない、そういう意味で申し上げたわけでございます。
  68. 小林武

    小林武君 そこが、だから、杉原さんは理解を違えているというのです。どうしてそんな杉原さんのような方が理解を違えるのか。ぼくはそのことを言っているのです。それは、文化財保護委員会から文化庁にかけて、非常にこれは、私は、手続上についてはっきりしたこともわからぬようないいかげんなものになっていると言いたいくらいです。杉原さんは、そんなことを言っていない。冒頭から速記録を読んでみればわかる。杉原さんは、最後の指、定の委員会にかけて、そのときには、私はこんなことも聞いている。八幡委員長は、この概要以外のものを出さないでもらいたいという御意見もあったとかということを聞いている。いろいろな異論はつけ加えないでもらいたいということをおっしゃったとかなんとかということさえもぼくは聞いている。だから、片方のほうでは八幡さんを初め考古学をやっていらっしゃる方は、まず遺跡委員会というのは、これがそういう大事な役目を、少なくとも考古学者としての衆知を集めた一つの結論を出す場所だと思っている。片方は、総洗いだと、こう言っている。私は、いまそれをいいとか悪いとかということは言わぬ。言わぬけれども、第一線に立ってものをやる人たちが、そういう理解が間違っているのに、のうのうとしてきたというのはおかしいと言っている。だれの怠慢だといったら、それは事務局の怠慢だ。文化財保護委員会ができてから何年たったかと言いたい。これはひとつ今長官も、文化庁長官になられて初めての文化庁としての活動をなさるわけですから、審議会の方でもなんでも、やはり自分たちのあれはどういう系統になっているか、どういう職責があるのかということをやっぱり明らかにするようなことをしてもらいたい。それをここで申し上げておきたいと思います。  そこで、あなたにちょっとお伺いしたいのだが、これを見ましたか、篠井孝夫さんの「教育時報」に出したやつ、ごらんになりましたか。
  69. 安達健二

    説明員安達健二君) いまちょっとここで見た程度でございます。
  70. 小林武

    小林武君 これを見てね、それからさっきのレポートを見て、それから、県から出したこれを見て、どういう御感想をお持ちになりますか。
  71. 安達健二

    説明員安達健二君) 「教育応報」に出されましたものについては、私まだ読んでおりません、いまここでちょっと見た程度でございますから。県の調査結果概要につきましては、この調査団概要との間で、もう少し県の意見のほうが進んでおるというと語弊があるかもしれませんが、やや補足的な面が加わっているというように感じております。
  72. 小林武

    小林武君 ちょっといまのところ、はっきり言ってください。進んでいるとか補足というのは、どういうことですか。何を補足したのか説明してください。どこを補足したか、どこが進んでいるのか。
  73. 安達健二

    説明員安達健二君) たとえばこの報告調査団調査概要のほうでございますと、たとえば「日本における水稲栽培の開始期である弥生時代前期前半の、数少ない低地性遺跡である。」と書いてあるわけでございます。遺跡であるということは事実でございますが、遺構があるかどうかということにつきましては、その前期前半については書かれていないわけでございます。それからそれに対して、いやそれはないのだということを県の調査結果概要が改めてもう一度言っているということがあるということでございます。  それから遺構につきましては、弥生時代中期、後期の古墳時代及びそれ以降の各時代については、いわゆる遺構があるということがあるわけでございます。したがいまして、その前期前半について遺構があるということは、この調査概要では何も書いてないわけでございますが、それを県の調査結果概要は、ないのだということを逆に言っているというのが補足であるという意味でございます。
  74. 小林武

    小林武君 遺構というのはどういうことになりますか、遺構についての。
  75. 安達健二

    説明員安達健二君) 遺構としましてはあぜであるとか、それからみぞのようなものでございまして、これは弥生時代の後期になりますが、登呂遺跡とかにはございます。それから後期ではなくて中期でございますと滋賀県の大中ノ湖南遺跡というのがございます。こういうところではいわゆるあぜとか、それから水路の遺構が出ているわけでございます。そういうような遺構と思われるものは、前期前半についてのそういう意味の遺構は、たとえば津島遺跡の場合、現在のところはそれがまだ出ていない、そういう意味でございます。
  76. 小林武

    小林武君 遺構というのは、するとあなたのおっしゃるのは遺構になりますか、あぜだとか、みぞだとか。あの遺構といったら普通、辞典を引けば、建築物をあれして、残ったやつを遺構というのだというようなことを書いておりますね。これは建築物じゃないわね。建築物もあるだろうけれども、そればかりじゃないわけですね。そうするとどうなんですか、北部、北西部初期微高地上の遺物という遺跡ということを書いているが、ここのところで、これはあれですか、結果のほうですか、県の調査結果といういわゆるあなたの進歩したほうですね、進歩したほうをひとつ申し上げます。しかし、これはあなた、進歩したのは責任持たにゃいかんですよ。学者のほうの、やはりあなたのほうの考えは、これは進歩しているというのですから、よく言ったことをはっきりしておかなければ。ここのところは、たとえば遺跡というのは前期初頭の時期に属すると考えねばならないが、とこう書いているから、ここのところはあなたのおっしゃる前期のあれでしょうね、そういうことになりませんか、イのところですよ、そのことを書いているのじゃないですか。
  77. 安達健二

    説明員安達健二君) 住居址につきましては……。
  78. 小林武

    小林武君 住居址聞いているのじゃない、前期と書いているでしょう、前期初頭の時期に属するものと考えねばならないが、と書いているでしょう。
  79. 安達健二

    説明員安達健二君) ちょっとどの辺のところでございますか、ちょっと教えてください。
  80. 小林武

    小林武君 どの辺もどうも、あなたのほうで読まないの、進んでいるというくらい読んだのだから、あなたわかっているのでしょう。イというのがあるでしょう、そこのロのところへくる下から三行目です。矢板状の痕跡……。
  81. 安達健二

    説明員安達健二君) 矢板状の痕跡の先端の深さから見てというところでございますか、この矢板状の痕跡の問題でございますか。
  82. 小林武

    小林武君 いやそこらのあれは初期のものだということになるでしょうということです。
  83. 安達健二

    説明員安達健二君) はい。矢板状の痕跡の先がちょうど前期に属する地層の中に入っている……。
  84. 小林武

    小林武君 だからそこのところは前期のことを言っているのでしょう。
  85. 安達健二

    説明員安達健二君) そうでございます。その場合に矢板の痕跡が一体いずれの時期に属するかについて、なお検討の要があることを指摘していますが、これは県のこれを待つまでもなく、一般的には史跡部会の先生方もひとしく指摘しておられるところでございます。これはさらに調査しなければならないところでございます。
  86. 小林武

    小林武君 あなたは先生方、先生方と、都合のいいときは先生方、先生方だと言うけれども、先生方の出したものを否定をして先生方と言ってもだめです。ぼくらも聞いている。あなたも聞いているかもしれません。そこで矢板というのは、この場合には何の目的でつくられているとそこに書いていますか。
  87. 安達健二

    説明員安達健二君) 両様の説があって、地上面の保護を目的としたものか、水田地区の保護を目的としたものか、その性格がまだ明らかでないというところでございます。
  88. 小林武

    小林武君 この矢板が前期であった場合には、前期の矢板が水田地帯の保護を使用目的とすると考えれば中期になる、こういうわけですか。ところがこれはどうですか、前期に水田があったらそういうあれはないんじゃないですか。矢板というようなものをこれを図形、こうちょっとぼくは想像してみたのですが、この図形だと言ったら、これは上を保護するというのはどういうことですか。むしろ、この水田の保護のために置かれたと見るほうが妥当なるように思う。そういう学者見解もずいぶんたくさんあるんじゃないですか。この調査の中にもそういう見解を持っていらっしゃる方がある。それを一体こう断定的に言ってしまうというようなことはどうお考えになりますか。
  89. 安達健二

    説明員安達健一一君) 私ども調査結果概要が正しいものであるかどうか、これについては私どもも判断する資格ございませんし、これについては学者でも両様の意見があり、さらに一そう調査をしてみたい、こういうところでございますから、断定をくだすことについては、もちろん危険であると思いますし、それは慎重に検討すべき問題であると思います。
  90. 小林武

    小林武君 これは部分的調査をやったのでありますけれども、それを私はこういう断定、たとえば、そこに書いてあるでしょう。みぞ状の遺構三、不整形ピット五、そのほかに小さな柱状のピット二ないし三。これは遺構ないという、みぞ状遺構というのは、これはどういうことになりますか。遺構ないと言った、あなたは一つもないと言った。一つもないと言った説に賛成して進歩であると言った。これは遺構であるのかないのか。矢板は何ですか、矢板はたとえば、見方によって中期になるか、前期になるかという、そういうことを言われたのですか。
  91. 安達健二

    説明員安達健二君) この遺跡の重要性と言われるものは、弥生時代前期前半というところに非常に重点が置いてあるというのは、杉原先生指摘され、みなが認めているところでございます。したがいまして、いろいろな遺構なり、遺跡というものが、弥生時代前期前半のものであるかどうかというところがやはり問題の中心になるわけでございますので、そこでそういうことが問題点になっておるというわけでございます。
  92. 小林武

    小林武君 やはりはっきりしない。遺構ある、ないというのは、どういうことになりますか。遺構ないと言ったのは、進歩だとあなたはさっき言ったでしょう。遺構ないと言ったのは進歩だと言ったでしょう。遺構とは何だと聞いて、あなたの言っていることならば、ここに書かれてある。たとえば、ここでも出したものを、みずから書いている、みぞ状遺構と、こう言っておる。これは入らないのかどうか。不整形ピットというのがあるが、このピットというのは入らないのか。これは貯蔵穴として一体見られないのかどうか。柱状のピットというのは、上部が欠損しているから、住居址であるかどうか明らかでないというのは、柱穴状のピットというのは、確認できないのかどうか。上部が欠落していると言ったところで、一体そんなことでもってこれは全然問題にならぬことなのかどうか。これは最後にはつぶしてもよろしいということがあるから言うのです。学問上の論争ならぼくは別段言うことはない。これはいまぶっつぶしちゃってそのあとにものを建てようという魂胆があるから、ぼくはそう言うのです。
  93. 安達健二

    説明員安達健二君) 私が遺構のことを申し上げましたのは、水田地帯と推定される地域の問題につきまして水田の遺構が十分まだいまのところは出ていないということを申し上げたことに重点があるわけでございます。  そのほかに住居址の遺構とか、あるいは後期、中期等におけるところの遺構はまた別個の問題として考えなければならないと、こういうことを申し上げたわけでございます。
  94. 小林武

    小林武君 あなた、杉原さんのことばを否定するように言っているから言うのですけれども、杉原さんという方はいいかげんなことをおっしゃったんですかね。昭和二十六年から三十五年にかかりまして、日本の農業がどうして発展したか、日本考古学者全体の会合である日本考古学協会の中の特別委員会の私が委員長になりまして、そうして、瀬戸内海から一帯を調査して、北九州の板付にそれがとにかく見られた。それから今度は広島県にもそれが発見された。当然、岡山にもそれに類する遺跡がなければならぬと思った。ところが、高尾遺跡という小さいのがあったけれども、それはそれとして、今度は岡山市のいずみ町の総合グラウンドの工事が始まったのを機会にして、それからこの津島遺跡というものが着目された。「われわれの仲間では、あの津島遺跡に弥生時代の前期の前半、北九州から畿内地方へ農耕技術が伝播する過程を示す重要な遺跡があるということは、われわれ専門家は存じていたのであります。」と、こう言っている。「これも不運にもその池の造成のために緊急調査をやっただけで、もう現在は地下に埋もっております。」と、こう言っておる。今度の武道館の問題はどうですか「岡山地方にもあるだろうと思っておりました、あの地方では最も古い弥生時代の遺跡が出てきたのであります。」と、こう断定している。それについてあなたたちのほうがどうして一体そういうことを、それについてそんなにがんばるのですか、私はわからない。腹に一物あるというようなことしか考えられない。文化庁というのは一体何をやるのだ。文化庁とか文化財保護委員会というものは何なのか。頭にあるのは文化財の保護だけが一番強く出てこなければならぬ。あなたがいうまでもなく、調和だとか何とかということは、これはあり得ることだ。日本の国土開発というようなものの中で、こわすまいと思ったってこわさなければならないものも多少出るだろうし、実際問題としてこわれている。どうしてもこわしてはならぬというものは残さなければならぬということになる。そういうことがあなたたちの役目でしょう。この杉原さんのあれを反駁するだけの材料というものが一この二枚の紙きれの中にあるのは、最も進歩した形で出ているというのは、どこかさっぱり私にはわからない。どこが一体進歩しているのか。たとえば、稲の花粉が検出されたというようなことは、それは一体どういうことなのか。あるいは土壌の変化というものをあなたたらがどういうように見ているのかということをあげているのじゃないですか。そういうことについてこれが一体少なくとも進んでいるということはどういうことなんですか。これがわからない。あなたの意見だというと、あの正式リポートというのはとにかくこういう欠点を持っているということだ。それをこれが指摘しているということだ。どこを指摘しているのですか。それだけの確信持てますか。文部省にだって考古学者の専門家がいるはずだ。そういう文部省の専門家たらがそういうふうにおっしゃるなら、ひとつここで堂々と発言してもらいたいと私は思う。政治上のやりとりだとか、そんな議論はぼくは聞きたくない。考古学者として、そうだ、当然そうあるべきだというならば、ひとつ文部省の専門家ここへ出てきてやってもらいたい。そう言ったら失礼だけれども、考古学者じゃない、私と同じで、ちょぼちょぼみたいなものだと私は思う。どうですか。
  95. 安達健二

    説明員安達健二君) 一つだけちょっと御了承願いたいのでございますが、私が進んだと言ったことばは、別に、進歩したあるいはより一そう学問的に深くなったという意味ではなくて、調査団報告書でここまで書いてあったのをもうちょっとここへよけい言ったというだけのことでございまして、それが進歩したとか、そういう意味ではない……。
  96. 小林武

    小林武君 あなた、指でもって、ここへやって、進歩したとか先へ行ったとか、そういうことを言ってもわかりますか。そんなもの速記録に残らぬじゃないですか。具体的に言いなさい。進んだというのは何ですか。進んだということばを使うべきじゃない。意見の違うところはどこであるということを言えばいい。
  97. 安達健二

    説明員安達健二君) 遺跡であるということについては、これは疑いのないところであり、相当に重要な遺跡であるということは皆さま御承知のとおりでございますが、その遺跡の価値の最も重要な点であるところの前期前半であるということに関する遺構はいまのところ見あたらないということが調査報告概要には書いてないけれども、それを調査経過概要は書いたというだけのことを申し上げておることを御了承願いたいと思います。  そこでいま、杉原先生も言っておられることは、前期前半ということに重点を置いてその点からこの遺跡の重要性を言っておられるわけでございますので、国といたしまして、これを保護するとすれば、これを史跡に指定して保護するということは当然の道筋であろうかと思います。史跡として指定し得るかどうかということのきめ手は、その遺跡が前期前半の遺跡であり、それに必要な遺構があるかどうかというところに大きな点がございますので、そういう点のところに今後十分調査をし、やらなければならない。こういうのが文化庁の現在のところの任務であると考えて将来の調査を計画いたしておるところでございます。
  98. 小林武

    小林武君 それから違うところですが、水田のあと、水田址ですね、この確証が見られないということはどういうわけですか。
  99. 今日出海

    説明員今日出海君) いま小林委員の御発言は結論的に申しますと、この遺跡を、県は武道館をつくろう。それからこれは重要なる文化財遺跡であるからこれを保護せよという、二つの考え方がいま激突しているところでございます。そこで、私がこれを裁定をしなければならない。そこで弥生前期前半の遺跡というものは、この調査団調査によりまして、きわめて重要なる遺跡であるという結論が出たのでありますが、これを指定に踏み切るためにいまの特別専門委員会にかけたのでありますが、そうすると、史跡に指定するには弥生前期前半の遺跡遺構というものが整っていなければ、史跡に指定しにくいというので、いま発掘されたものの矢板その他の遺跡をもっと拡大して、そこには何か稲の花粉があったら、しからばそこに水田をつくったに違いない。あるいはそこに住居のあとがあったに違いない。これは推定されるのでありまして、その水田あとが、武道館を建設する、したいと言っている敷地内に、あるべきものと、このように杉原教授以下学者が考えたのであります。それがことしの八月にやりました調査結果では、水田あとが出てこない。また住居あとというものもはっきりしたものが出てこない。それだけのことでありまして、私のほうといたしましては、何とかもう一度調査をしてその水田あとと、それから住居あとというものの遺構をそろえることによってこの提出いたしました調査概要、これが完備するのであります。これを何とかいたしたいというのがいま私どものとっておる現在のでき得ることなんでありまして、いまそれを申し上げているのですが、どうも少し話が食い違ったようでございますが、念願とするところは、私は武道館を建てたいと思う立場にもございませんし、これをどうしても保護しなければならないとすれば、いまのような学会及びこの委員会の決定が必要であろう。それをするにはもう一回調査いたしたいと、こういうことを考えています。
  100. 小林武

    小林武君 まああまり時間も、二の問題だけでとれませんから、残念ながらここらでこの点についてはやめたいと思いますけれども、あなたのほうだって水田址については、水田のあとであるかどうかについては見つからなかったとか、なかったとかいうふうに腹の中ではお考えになっておらぬ。それについての史料もあなたたちもいろいろ検討なさっているのでしょうけれども、部内にもちゃんと専門家いらっしゃるのだから、だから、私はそんないまここでわかりきったことを論争するのはばからしいと思っているところもある。ただ、しかし、私が一番やはり最低四つ、五つの問題でたいへんだと思ったことは、これは県が、このような文化財を守るほうの側ですよ。この県が、文化財を守るような側のものが、文化財を、かまうものかというようなことで、こわしていくというようなことをやったら、国がそんなことをやったら、いまや日本の開発は非常に速度を早めていっているわけですから、これは一般業者というのはもう徹底的な破壊をやるだろう。私はそれを、横浜の宮ノ原遺跡に行ってみて、えげつないやり方だなと思ったのです。一生懸命になって発掘者がせっかく発掘したあとをわざわざ行って、そうしてぶちこわしている。これはまだ両者の間にそういう話し合いがつかないうちにですよ、いやがらせなんですね。朝相当早い、朝のうち、ぼくが行ったのはどしゃ降りの中ですから、そんなことをやるようなひまがないときに、私が行った。雨の土砂降りの中に行ったのに、もう来て、それでわざわざシャベルでもって労働者がかき回してやっている。これは業者になれば、そういう気持ちになる。それを食いとめるものは何かといったら文化財保護行政の中で、県がどうする、市がどうするかというのが大事なんです。だから、法律の中にもちゃんと書いてあるのですよ。国や県というものの責任を書いてある。だから、私もこの問題について岡山の、これは岡山の問題だけじゃないので、日本文化財のうちの埋蔵文化財行政の中において非常にやはり重大な意味を持っている。岡山というところは、必ずしも埋蔵文化財についていままで冷淡だったと私は思わないのです。たくさんあるところだし、いろいろ苦労もしてきていると思うのです。しかし、今度つまらんそういうことで、私は武道館つくるなんていうのを反対しているのじゃない。武道館、よそへいってつくったらいいじゃないですか。わざわざいま、杉原さんの話じゃないけれども、岡山だけが、そこ、わからぬところだ。岡山のところへ発見すれば、非常にそういう一帯がずっと通ってわかるというようなことをおっしゃる。そういう重大なあれをこわさないようにするためにやっていただきたいと私は思いますわ。  今長官、いまそういうふうにおっしゃったから、私は、そういう意図はわかりました。ところで、今長官にお尋ねいたしますが、これ調査やるのですか、再調査
  101. 今日出海

    説明員今日出海君) いたします。
  102. 小林武

    小林武君 それで長官に私、申し上げたい。これ、どこでやるかということは問題だと思います。大体、この岡山のスポーツ団体が、体育協会が出しているビラです。「イデオロギーを排し、公正な新文化財を」ということで、これは建てたいという気持ちはよくわかる。イデオロギー、ここへ持ち出している。そうして、この体育協会の会長だれかというと、これは知事だ、副会長だれかというと、教育長だ。そうして教育長は、とにかく先ほどのようないろいろな文章を発表したり、何とかあそこを建てようという話ばかり言っている。私は、だから今度ほんとうに、文化庁調査をおやりになろうというなら県はだめだと思います。これからはいたずらに問題が起こるだけです。一つのこれが正式のレポートです。そういった場合に県は、いや私のほうでは異議ありということを言っておったらどうですか、いつまでたっても始末つかないんじゃないですか。だから私は文化庁がおやりになることがいいと思いますが、この際いかがですか、それはあたりまえでしょう、片一方がこわすことをやっておったらきりがないですよ。文化庁次長じゃないですよ、文化庁長官です。
  103. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 相談してください、いいですか。
  104. 安達健二

    説明員安達健二君) 一応現在の調査をする計画のアウトラインだけを御報告さしていただきたいと思います。
  105. 小林武

    小林武君 だれがやるかということを聞かしてくれればいい。
  106. 安達健二

    説明員安達健二君) 調査団文化庁の指導監督のもとに岡山教育委員会が実施する、こういうことにいたしたいと思います。
  107. 小林武

    小林武君 前のやつも指導監督じゃないですか、だから経費半分分けだったでしょう。そうやっても責任はあなたのおっしゃるように県でないですか。
  108. 安達健二

    説明員安達健二君) 従来は文化庁は指導監督ということはうたわなかったわけでございますが、今回は特に指導監督のもとにということをうたい、調査団につきましては原則として文化財保護審議会の専門委員文化庁委員、奈良国立文化財研究所、国立博物館の職員、地元の研究者若干人、並びに岡山県の職員をもって構成するということで構成して、内容を実質的には文化庁の直接の調査であるような、そういう構成にしたい。ただし経費その他の点もございますので、補助事業ではございますけれども実質的には文化庁調査であるようにやっていきたいと、こういうことでございます。
  109. 小林武

    小林武君 あなたおやりになることですから……。私は、まだやっぱり問題があると思いますね。これはもう県が自分のほうで異議申し立てるようなやり方をやるのだったらだめです。文化庁にそのレポートがきちんと提出され、文化庁がもう正しい判断をするということでなければ私はうまくいかないだろう、その点の保証はできるかどうかということ、それから、たとえばそういう調査にあたっても、この問題のあとですから前の人をどうしたとかこうしたとか、そんなやり方はやめたほうがいい。そういうことも学問の問題ですから、前に調査したものは調査した経験があるわけですから、そういうものを含めて慎重にやるということは、これは当然です。そういう何というか、片一方のほうの都合のいいような編成というものはやるべきでない。どこまでも学問なんというものは反対があることによって、むしろ反対賛成それぞれやるべきだ。  もう一つは地域の問題です。ここのところ調査してもらいたくないということを今度言っちゃいかぬ、この前はそういう注文が出たそうですね。コンクリートの道路のあるところが何か問題になって、そうしてここはやってもらいたくない。ところがその場面は、非常に遺構遺構と騒ぎ回る人たちは遺構のあらわれそうなところだと、こういうようなことを私は聞いている。これはしろうとが言うことだから当たっているかいないかわかりませんが、ひとつどこを一番調べたらいいかということは専門家わかるんですから、そういう点でかなり広い地域にわたって、とにかく徹底的な調査をひとつ今長官としてはこの際陣頭に立っておやりになる気持ちで今度はやっていただきたいと思います。先ほど来申し上げているように、武道館を建てる建てないでもって、守るほうが一体変なことをやられちゃ困る。何か見たら、消防署が法隆寺に火をつけたようなものだと言われたそうでありますが、まさに今度は法隆寺に消防署が火をつけたということを言われてもしようがない。そういうことで文化財行政の中に持ち込まれたらたいへんだと思う。  それで、あとはだんだん簡単にやっていきますが、建設省おいでになっていますから、第二阪和の問題なんですが、第二阪和の遺跡というのはこのごろ急に見つかった問題ではない。あなたのほうでこれはどうするつもりですか。どんどんこわしていくつもりですか。その点について文化庁とどういう話し合いをしたか。
  110. 蓑輪健二郎

    説明員蓑輪健二郎君) これは御承知のように、第二阪和にはいま池上、四つ池という遺跡がございます。これにつきましては大阪府の教育委員会と緊密な連絡をとってやってまいっております。大阪府の教育委員会が昨年この池上、四つ池の遺跡の範囲の調査をいたしまして、それに基づきまして私のほうが現在大阪府の教育委員会及び関西の考古学会を中心とした発掘調査会というようなものにこの調査を依頼をしたいというふうに考えております。
  111. 小林武

    小林武君 あれですか、大阪の教育委員会とどんな話し合いをしたのですか。そしてそれは、話し合いのあれは、この池上、四つ池はどうするのですか。こわしていくと、こういうことですか。
  112. 蓑輪健二郎

    説明員蓑輪健二郎君) 道路をつくります場合のいろいろ埋蔵文化財の取り扱いにつきましては、実は建設省としてはまだ文化庁との一つの協定はございませんが、日本道路公団で覚え書きをかわしております。私たちそれと同じような趣旨で調査をいたしましたあと、その文化財の価値によりまして事業区域に含めないようにするか、あるいは事業区域に含めるか、その保存をはかるか、発掘調査を行なって記録を残すか、この三つの種類に分けまして善処していくつもりでございます。
  113. 小林武

    小林武君 あなたのほうでこれはいつ完成するつもりかしれませんけれども、この池上と四つ池の遺跡というものを建設省がどのように理解しているかということによってきまるわけです。こわしていいんだと、これはこわしてといっては悪いけれども、破壊を前提として記録にとどめるというような程度のものなのか、そうでない、保存していかなきゃならぬ性格のものなのか。こういうことを文化庁と相談しないであなたどうして大阪の教育委員会だけでやるんですか。あなたがいまおっしゃったように、道路公団と政府との間、文化庁との間でやっておりますけれども、私のほうでやっておりませんというのは、それは違いますよ。政府関係機関みんな約束ができているはずですよ。そういう報告を私は受けている。ほんとうに建設省は何にも関係ないというのですか。そんなはずないでしょう。同じ屋台の中にあってそんなことはないですよ。そんなことを局長さんが考えているのはとんでもない。道路公団のほうはあれだけれども、おれのほうは関係ないというのは、そんなのはおかしい。
  114. 蓑輪健二郎

    説明員蓑輪健二郎君) 私のほうは関係ないということでございませんで、現在文化庁とそういう点についてはよく連絡をとってやっております。私の考えといたしまして、いま道路公団でやっておることと同じようなことで文化財というものは尊重していく立場をとっております。
  115. 小林武

    小林武君 そうすると、あなたのほうのいまの状況では、まだ池上、四つ池の件についてはそれを迂回していくとか、あるいは横断していくとかということについては、まだ決定的なものは出ていないということですか。そういうことですか。そういうふうに理解してよろしいですか。
  116. 蓑輪健二郎

    説明員蓑輪健二郎君) 道路をつくる面からいいますと、いろいろ土地契約決定もされておりますが、やはりただ単にそれだけで強行する意思もございません。やはり事前に調査をいたしましてそういうものによって、建設省の一つ文化財としての価値判断ではなくて、文化庁を入れまして.意見を聞きましてそれで基本的な考えをきめていきたいというふうに考えております。
  117. 小林武

    小林武君 それは逆だよ。あなたのおっしゃるのは文化庁にちょっと話しかけてやっていくなんというものじゃない。文化財をぶちこわしたらとにかくたいへんなことなんですよ。そんなことをかってにやれるわけじゃない。もっとも、法は悪いところがある。これは文化庁長官、研究してもらいたい。発掘している人たちはなかなかちょっときびしいところがあるんですよ。五十七条ですか、土木業者なんというものは、とにかく一カ月前に届けを出してやればぶちこわしてしまってもかまわないという式になっているんですが、これは法的にそういうことになっているからということもありますが、政府みずからそういうことを言っちゃだめですよ。保存が先なんですよ、問題は。私も取り上げた登呂の遺跡の場合には、道路公団はあそこを高架にした。高架にしたことによって、とにかく破壊を免れた、そうでもないですが、みんなひっくり返してやるよりも、私はよかったということになると思う。それほど大事にするものなんですね。だから、政府がやる場合にはもっと慎重にやらなければならない、他の業種と違った慎重さでやらなきゃいかぬ。とにかくいま遺跡の重要性というものは述べておったら時間がありませんから。あなた見ているんでしょうから、まだきまらないでしょう、はっきりそこを通るか通らぬか、通るということならいいかげんなことをやっておいたらあとでいざこざの種になりますから。文化庁ともまだ話してないくらいなんですか、そこをどうするかということを。決定するのに相当時間があるとしたら、避けて通るというわけにはいかぬ、それができますか。そういうことはあなたの図面見ればわかる。事実上それができるのかどうなのか。
  118. 蓑輪健二郎

    説明員蓑輪健二郎君) 最終的にはやはりいまの調査結果を待たなきゃいかぬと思いますが、現在これが変えられるかという問題でございますが、まず、池上の問題につきましては、これはまだ発掘調査の周辺の調査によりますと、非常に西のほうに伸びておるということでございます。迂回させるといいましても、これが東のほうに迂回させざるを得ない。東のほうになりますと、いまの池上町のちょうど中心部を通るということになりまして、非常に困難が予想されます。  また、四ツ池のほうにつきましては、これはすでに堺市の鳳の西町地区、中西町地区、鳳中町地区、これらの区画整理が済みまして、土地もできておる状態でございます。  また、石津川から北の堺市内についても、直接買収もかなり進んでおります。そのちょうどはさまれたところにいまの遺跡地区がございまして、この点につきましては、先ほど先生がおっしゃいましたような、どうしたら遺跡を破壊しないようにするか、そういう構造上の問題もございますので、そういうものを合わせて考えていきたいと思いますが 非常に前後のあれから言いますと、はたしてここで多少の変更ができるかどうか、これはもう少し範囲が、四ツ池地区の範囲がはっきりしませんと、何とも言えないと思います。
  119. 小林武

    小林武君 安達さん、これはあなた全然聞いていないわけだね。文化庁には何も話していない、話していないで……。しかし、あなたそんなことわかっているんでしょう、道路がどうなるかということは、どういうことになっているんですか。
  120. 安達健二

    説明員安達健二君) この第二阪和道路の二つ遺跡との関連につきましては、すでに昭和三十八年に建設省の近畿地方建設局と大阪府の教育委員会との間で、この問題の協議が始められたわけでございまして、大阪府の教育委員会は、昭和四十一年度に国庫補助金を受けまして、池上遺跡の範囲の確認調査をいたしたのでございます。それは、先ほどおっしゃったとおりでございまして、それから、わがほうといたしましては、その池上遺跡の予定路線から除外していただきたいというようなことを大阪府教育委員会から近畿の地建に申し入れをいたしたのでございます。さらに四十二年の六月の二十二日に路線から除外するよう再度の申し入れをいたしたのでございます。これに対しまして、この近畿地建のほうでは、事前に発掘調査の実施をしたい、こういうようなお話がございまして、これにつきましては、両者でほぼ了解がつきましたので、その調査団の編成を進めていると、こういうような状況でございますが、私どもといたしましては、路線の変更を希望するとともに、路線外の遺跡につきましても、これはやはり近所にまだいろいろなものが建ってまいりますので、それについても十全な策を立てるよう関係の府や、市にその要望等についての検討を依頼いたしているところでございます。
  121. 小林武

    小林武君 建設省のほうでもお考えいただきたいと思うんですがね。あなたのほうは、さっぱり何だか連絡なかったようなことだけれども、片方のほうは、市や、県を通してというやり方をある程度やらなければならぬようなことになって、直接的に何かあなたのほうは折衝ないような形になっているんですけれども、それは直接やるべきだと思うんです。たとえ県や、市がやるにしたところで、文化庁というものはそういうものについて十分それこそ指導監督をやるべきだ。その点政府部門のやることですから、一番連絡がつきやすいと思う。そういう点で、とにかくいまこのことについて長く時間をとれませんから、まず連絡をつけて、どうなったのかということについては、一応われわれのほうにも、ここで問題にしたわけでありますから、後刻でけっこうですから報告していただきたい。こわしてしまってから、あとでどうなったかわからぬというようなことのないように、これは両方に要望しておきます。  横浜の宮ノ原その他の遺跡、若雷とか、その遺跡の問題については、この前は安達さんが答弁された中に、目下調査中でございますというような御答弁なさった。この御答弁なさったころとどんな状況になっているか、先ほど申し上げたようにいまや全然あれですわ。東急不動産ですか、東急不動産が、もうとにかくどんなことがあったって承知できない、こういうことで破壊が続けられているのでありますけれども、いまどういうふうにあなたたちはあれを処理するつもりですか。  それともう一つ、その問題にからんで、先ほど来から申し上げましたが、いままでのようなことでいいですか。一体土木の仕事は、届けをやったらこの期間中にやってしまう、ああいうふうな法律でいいのかどうか、こういうことを検討なさったことがあるかどうかということです。
  122. 安達健二

    説明員安達健二君) 最初に、横浜宮ノ原遺跡の問題につきましてのその後の経過を申し上げたいと思います。  いま小林先生からお話ございましたように、この地域につきまして東急不動産が昭和三十九年から土地の買収を行なって、四十三年の五月に至りまして、宅地の造成工事に八月から着手したいということを横浜の教育委員会に申し入れをしてきたわけでございます。横浜市と、それからその連絡を受けました文化庁におきましては、遺跡の現状保存について開発側と協議をしたわけでございますが、遺跡の定地等の関係からいたしまして、現状のまま保存することは困難であるということからいたしまして、事前の発掘調査を行なって十分な記録を保存したい、こういうことで方針をきめたわけでございます。このため、工事の着手時期を四十三年の十一月一日まで延ばすという了解ができまして、発掘調査費として四百万円、それから調査器材と労力は東急不動産側で負担をするということで、七月二十一日から横浜市の埋蔵文化財調査委員会発掘調査を開始したのでありますが、ところが大学等で夏休みが終わりますと、九月中旬以降は調査員が集まらなくなってしまいまして、発掘調査が進行しなくて、十月末までには完全にやるといっていた調査が遂に中途で終わるような結果になってきたわけでございます。そこで東急側としては、十月一ぱいで調査を終わるということであったということで、これ以上工事は延期できないということで、十月一日より工事に着手したのでございます。このため調査が終了した宮ノ原遺跡のほうは別としまして、まだ調査の未完了であった原遺跡というのがもう一つございますが、それもまあ消滅したようなかっこうになった。非常に遺憾な状態になったわけでございます。そこで文化庁といたしましては、調査が完了していない遺跡については、なおやはり発掘調査を行なう必要があるという観点から、さらに発掘調査がもう少しできないかということにつきまして、県並びに市と協議をいたしまして、この十月三十一日にもう少し調査に協力してもらいたいということを東急不動産に申し入れまして、そして十一月十三日には文書をもって東急不動産に再度調査への協力方を依頼したわけでございまして、この結果は工事と並行しながら発掘調査をする。発掘調査を工事によって妨害しない。発掘調査をしたいというときは工事のほうを差し控えるということで、県と市からそれぞれ調査員が出まして、常時そこに、工事の現場におりまして調査をし、その調査に支障のない範囲内で工事を進めざるを得ない、こういう状況でございます。これが宮ノ原遺跡の問題でございます。  それからもう一つ、法改正と申しますか、現在のところは御指摘のとおり、文化財保護法の五十七条の二の規定によりまして、「土木工事その他埋蔵文化財調査以外の目的で、貝づか、古墳その他埋蔵文化財を包蔵する土地として周知されている土地」すなわち周知の遺跡を「発掘しようとする場合には、」一カ月前に届け出をしなさい。そして文化庁長官はその「埋蔵文化財の保護上特に必要がある」ときには、その「発掘に関し必要な事項を指示することができる。」こういう規定がございますが、これにつきましては届け出をしないことについても、あるいはその指示に反することについても何らの罰則の規定なり、過料の規定も設けられていないわけでございます。そこにいろいろの問題が生ずるわけでございまして、したがいまして、この点は、いままで問題になっておりますように、非常に大きな問題を生ずるところでございますので、これはやはりさらにこれを検討して、適正なる方途を見つけなければならない。埋蔵文化財の保護ということとまた道路等の問題との調整は非常に将来重要なことでございますので、その点を検討する必要があるということで、現在も検討しておりますが、さらに予算的には来年度にそういう法改正を検討するためのいろいろな各方面の意見を聞くような、そういうような関係の予算も要求をいたしておるわけでございまして、ぜひともそういう面での検討を慎重にかつすみやかに行ないたい、かように考えておるところでございます。
  123. 小林武

    小林武君 まあ検討すべきところでしょうね、それは。これは特にぼくに言わせれば、土木業者というようなものがこわそうと思えばきわめて便利にこわせるようにできていると思うのです。そんなやり方はやはり改めなければならぬと思うのです。それでそういうことが今度東急の場合にも、私はずいぶんやり方がひどいと思っております。しかし、まあ、約束の期日にできないという問題、これもやはりいろいろの事情がありますよ。たとえば、これほど一体、多く文化財の問題が起こるのに、市においてそういう専門の職員がいないとか、市に行っていろいろ聞いてみるというと、市でもそういう専門の職員を抱えても、将来昇進のことだとかいろいろなことを考えてみると、簡単に人事というものはいかないという問題もあります。ありますけれども、これはやり方一つだと思う。やり方によってはできるということも、具体的に、この間あるところで具体的に意見を述べたのですが、できると思うのです。だから、そういう面についてのあれも文化庁で考えるべきだと思うのです。事実やれといったところで、一体それを監督するものもない。先ほど言ったように、学校の休みのときにやろうかというような仕組みでやっているのですから、いまのところ。だからそういう点について、具体的なことにまでやはりちゃんと考えるというのが文化庁の役目じゃないかと私は思います。  それともう一つ、稲荷山古墳ですか稲荷前一号墳、これは保存することになっていますかどうかちょっとお尋ねしたいのですが、どうですか。
  124. 安達健二

    説明員安達健二君) ちょっと課長に答えさせていただいてよろしゅうございますか。私いまちょっと知りませんので、記念物課長から。
  125. 中西貞夫

    説明員(中西貞夫君) 稲荷前の古墳につきましては、これはこわすというような話がございましたけれども、これを三月までその工事をやるのを待たせまして、それまでに発掘調査を実施すると、こういうふうに開発部のほうと話をしております。
  126. 小林武

    小林武君 課長さんね、そういう話になると、こわすか、それともこわして記録にとどめていくというところに落ち着くかという問題ありますね。それにはやはり史跡の性質によって残すべきものとこわすものと出てくるだろうと思うのです、あなたのほうでも。そういうときに、稲荷前の古墳というものがどういう一体重要さを持っているかというと、それについて文化庁でははっきりした見解を持っていらっしゃるのですか。どうですか、それは。この稲荷前の古墳というのは、実際のところあれでしょう、一度もとにかく手の触れたことのない、たとえば盗掘をやったとか何とかいう種類のものじゃないでしょう。そういうふうに聞いているのですがね。しかも大和政権が関東に進出した一つの大きな大事なあれだということも聞いておるのですから、そういうことになると、一体これをどうするのかということは、文化庁の中でも検討してもらわなければいかぬと思うのですよ。何か事が起きたときに、火事が起きてからポンプを持って走るというのもけっこうですけれども、やはりポンプを持たないで予防的なやり方というものもやっぱりなければならぬと思うのですがね。この点についてはまだ十分検討しておりませんか。しておらなければしておらなくてもいいです。これからしてもらえばいいのですが、いま食いとめておいてその先どうするのかということは、破壊を前提にして記録をとるということですか、どうですか、その点。
  127. 中西貞夫

    説明員(中西貞夫君) この古墳につきましては、私どもとしましては、この古墳のみならず、いろいろな埋蔵文化財をできるだけ残したいということでやっているわけで、その中には指定して残すものと、それ以外でも県のほうで残すものとか、あるいは住宅の中に、公園に取り入れて残してもらうとか、そういうことをやっているわけでありますけれども、この古墳についてもできるだけ残してほしいということで要望して、話も相当詰めたのでございますけれども、この住宅造成の会社のほうでは、丘の上にありますし、どうしても住宅用地を買って建てるためには残せないというようなことでございましたので、やむなく、とにかく三月まで工事を延ばして、その間に調査をして、宅造地になるということをやむなく承知といいますか、そういう状況になったわけでございます。
  128. 小林武

    小林武君 いやわかりました。わかりましたというのは了解しているのじゃない。やれやれと言うのじゃないのですけれども。これは長官に答弁していただかなくてもけっこうですけれども、ぼくはやっぱりそういう積類のものを、研究者がありいろいろな陳情があるから出てくると思うのですよ。出てきたら、文化庁ではこれは残さなければいかぬというものにはやっぱり思い切った措置をとるようなことにしてもらわぬというと、いまのような話じゃ、残したいのはやまやまだが、もう万やむを得ないからこわすというような、こういうことではほんとうの私は文化財行政ではないと思うんですよ。埋蔵文化財なんというのは、これから何ぼでも出てくるという問題じゃないんですから。岡山県あたりでは、こわせるものはこわして、その上に新しいものを乗っけたら文化だと言っているけれども、そう簡単に割り切ってもらっちゃ困ると思うんですよ。特に、いまの政府の考え方からいって、もっと伝統を重んじてもらいたいと思うんですけれども、ぼくはそういう点については、審議会とかいまのいろいろな機関があるんですが、そういうところでもっと事前の対策というようなものについて検討すれば、案外減るんじゃないかと思うんですよ、あとで、こわした、こわさないというような議論が。そういう点でひとつ文化庁の初代長官として、やはりこれからのあとのあれに一つの型を残していくというか、何というか、先例を残していくというような意味でお考えいただきたいと思うんです。それを希望しておくわけです。これでやめますが、もう一つ二つだけ、ひとつあれしてください。  それは、一つは、長岡京を一体どうするつもりですか。これはほかの平城京のような、同じ扱いにできませんかということ、これは長岡京をどうみるかということが一つありますから、それをどう考えていらっしゃるかということをお答えいただきたい。  それから、久津川古墳群の中にある尼塚古墳というやつは保存するということになりませんか。これは労働者の住宅問題で、私もこれ、前回に関係者とも会ったのですけれども、これはどうすることになっていますか。この二つをお伺いして質問を終わりたいと思うわけです。
  129. 安達健二

    説明員安達健二君) 長岡宮跡につきましては、現在補助金を出しまして調査をいたしておりまして、必要であるならばこれを買い取り、保護するというようなことを検討いたしております。  それからもう一つ、尼塚古墳につきましては、これは京都の労働者住宅生活協同組合というところで宅地の造成をやっておりまして、まあその両者との調整でございまして、組合側としては、この古墳の三分の一程度は保存することは了承するけれども、全面的な保存はとてもやれない、こういうようなことで、話し合いは不調に終わっておるわけでございまして、その結果、尼塚古墳の主体分でございますところの三分の一だけは残しまして、他は調査の上破壊せざるを得ないというような結果になっておるわけでございまして、すでにその三分の一以外の部分については削平を終わっておる、こういうような状況でございます。
  130. 小林武

    小林武君 それについて私も、その労働者住宅関係の責任者にここへ来てもらったんです。それでいろいろ話を聞いたんです。その方も、全面的に残せたら残したいという気持ちがある。それはしかし全部を労働者住宅生協がかぶるというような形では困るから、それには国においても考えてもらいたいということですから、私はひとつこの点については検討してもらいたいと思うんですね。これはそこの庁ですか、そこの自治体についても、なかなかこれは金を出すことをしぶっているわけです。ですから、私はそれについて全部が協力して残していくという方向に文化庁としては踏み切ってもらいたいと思うんです。  それから、長岡京の問題、これはどうなんですか。長岡京というのは、これは皆さんは御存じのことでございますから、ここに申し上げることはないのだけれども、平城京や何かのときに準じてやはり国がとにかくこれについてめんどうをみてやるという気持ちは全然ないのですか。平城京は一体今度は幾ら予算は概算要求したわけですか。平城京はどうですか。
  131. 安達健二

    説明員安達健二君) 平城宮につきましては、いろいろな経費がございまして、一つは、平城宮の最近発見されました東院あとの買い上げの費用、それが来年度の要求額といたしましては一億七千九百四十九万円でございますから約一億八千万でございます。それから整備関係といたしまして二千八百万、それから模型製作というようなことで八百万、それから発掘調査の費用といたしまして一億一千二百万円、それから収蔵庫の関係が一億四千八百万円、全体で五億円の要求をいたしておるところでございます。で、現在この土地の買い上げ等をもちまして、保護する方向といたしましては、きわめて重要なものについては平城宮のようなものについては全面的に国の経費で買い上げをするというものと、それから地方公共団体に補助金を出しまして、それで地方のほうと両方で保存していこうとするものと二種類があるわけでございまして、尼塚のような場合をもし取り上げるとすればやはり後者の問題になるわけでございます。したがいますと、地元の市町村の意欲なり、あるいは財政力等にらみ合わせませんと、こちらだけで独走するわけにはいかないという問題が生じてくるわけでございます。  長岡京につきましては部長から申し上げます。
  132. 内山正

    説明員(内山正君) 長岡京の発掘調査は現在非常に小さい規模でやっております。二百万で、府が百円、国が百万出してやっておりますが、これでは実際にあそこの今後の措置を考えました場合に間に合いませんので、府と協議いたしましてさらに発掘調査を促進するように話を進めたいと考えております。国としてはもっと三倍ぐらいの規模ででもこれを進めていきたいというような気持ちを持っております。
  133. 小林武

    小林武君 どうですか。そうすると国営で発掘調査をやるという方向に持っていくという気持ちはあるわけですね。
  134. 内山正

    説明員(内山正君) 現在のところはやはり補助事業で進めたいと考えております。
  135. 小林武

    小林武君 それはどういうわけですか。そういうふうに考えられるのは、長岡京というものの評価の問題ですね。その評価の問題についてはどうなんですか。文部省の関係者の間で議論されたことはないのですか。
  136. 内山正

    説明員(内山正君) 長岡宮は平城宮などとはまた違った形での旧跡として非常に価値が高いといわれております。そういう意味で、従来発掘しました結果によってもその価値がさらに高く評価されておるわけでございまして、そういう意味では大事な遺跡だと考えておりますが、国の発掘調査でこれに当たるためにはまだ体制が整っておりませんし、まあ平城宮跡の発掘事業をさらに強化して、今後やるべき藤原、飛鳥の調査もございますし、当分は補助事業でもってもう少し規模を大きくした発掘調査を進めていきたい、かような考えを持っております。
  137. 小林武

    小林武君 最後に……。ちょっとそれでは心もとないと思ったのですけれども、ぼくは夕べその発掘者の方の著書を読んだわけです。たいへんおもしろかったわけですけれども、その長岡京の見方というものは、どうせあれは十年間ぐらいの都だった。途中におけるところの一時のあれだという見方から、そうじゃないという一つの見方が発掘を通してだんだん明らかになってきた。だから平城京のほうと平安京とのかかわり合いを考えての長岡京という見方をする場合に非常に評価のしかたが違ってくるのだ、こういう発掘者の発掘のあれから出てきておるのです。私はそれを見て特に同じに考えるべきだ。ちょっといまお話は、あれは適当でよろしいんだという意味はなかったろうと思いますが、とにかくいままでそういう見方を専門家の間でもされてきたものですから、そういう評価のしかたが非常に新たに変わってきたということ、もう一つは、あるいは近所に住宅がどんどんできてしまって、そのままにしておけば簡単にやられてしまうというわけです。だから、発掘者がいまのようなことで、細細とやっておったんでは、もうたちまちやられてしまう。地図を見ますと、残ったところの一番大事なところがあるわけですね。これをもう住宅で荒らされてはたまらぬから、その前にやりたいという気持ちがあるんです。だから、ほんとうは地方自治体がどんどん金を出せばいいんですが、地方自治体でも限度がありましょうから、国がここで国営の方向をたどるような気持ちになってもらいたいと思うんですよ。それはもう長岡京については、もう今先生、ちゃんと御存じだろうと思うから、ひとつこの点については再度御検討いただいて、ことしの予算でどうなるかということはともかくとして、方向としては、平城、平安と一緒に長岡京というものの重大性というものを評価していただいた形で取り扱っていただきたいという御希望を申し上げておきたいと思います。
  138. 今日出海

    説明員今日出海君) 小林委員のおっしゃるとおりで、私も長岡京に参りまして、とにかく予算が十分整わないならば、指定の範囲を広げてでもあそこを何とかしないと、いまおっしゃったように、非常に風致としてもいいところなんですが、もう年々侵害されつつあるという現状、私よく認識しておりまして、なお措置につきましては、十分私どものほうも検討してやりたいと思っております。
  139. 春日正一

    春日正一君 初めに、きわめて一般的なことですけれども、最近宅造とか道路、その他開発事業が非常に急激に進んで、貴重な埋蔵文化財が見つかるんだけれども、それが次々にこわされていっている、これが実情だと思うんですよ。こういう状態で、この文化財を保護する責任者である、いわゆる文化庁として特にこういう状態のもとで、この文化財を保存していくという点について、基本的にどういうふうなお考えを持って、どういうふうに対処しておいでになるか。そこから聞かしていただきたいんです。
  140. 安達健二

    説明員安達健二君) まず一つは、基本的には、埋蔵文化財に関する一般の人々の認識、これを保存しなければならないという意識を高めるということが一つございます。それからさらに、その地域が一体どこなのかということを具体的に明らかにしていくという仕事があるわけでございます。  この第二の仕事といたしましては、昭和三十八年度から全国の遺跡地図というのをつくりまして、遺跡と思われるところの場所、地域等を大まかではございますけれども、それを示しまして、関係者、教育委員会とか土木関係者に渡しまして、こういうものについては、文化財保護法によるところの届け出をしてもらいたい、こういうような手段が第二の点でございます。  それから、先ほど小林先生からも御指摘のあったところでございますけれども、全国十三万あるといわれる中から六千件を県に選んでいただきまして、それを委員会でさらにこれをふるいにかけて総ざらいをしまして、重要性の比較的高いものを選んでいく、こういう仕事でございます。   それから第四番目には、緊急な工事等がございました場合に、これを調査をするための経費を増額したいということで、来年度は六千三百万円ほどの経費を計上いたしておるところでございますが、なおそのほかに原因者負担といたしまして、工事者自体が自己の負担において調査をしていただくということも、先ほど建設省からお話ございましたように、住宅公団とか道路公団等との間で協定を結びまして、そういうものについての必要な経費を計上していただくようにお願いをいたしておるのが第四点でございます。  それからその次は、指定をいたしまして原状変更を禁止するわけでございますけれども、現在は原状変更については認可を要するとするわけでございますけれども、それだけでは十分応じ切れない、したがって最終的にその史跡を保存するためには、これを公有化していかなければ保存できないということになってくるわけでございまして、その点からいたしまして、そうしてその公有したものを、一般的には地方公共団体有にいたしまして、それを公園にするとかいうようなふうにいたしまして、これを住民全体の力で、しかも文化的遺産として保護をするようにしたい、こういうような経費としていま三億八千万円ほどの経費でございまして、これは地方公共団体に対する補助金でございます。まあそういうもの、しかも遺跡の中で特に重要なものにつきましては、平城宮のようなものにつきましては、国で直接買い上げをし、これを保存していくというようなこと、それからもう一つは、さらに先ほどの公有化の一環でございまするけれども、遺跡公園というようなものをつくりまして、そこで出てきた遺物等を展覧せしめることによって文化財に対する認識をさらに高めていただく、まあこういうような方法でやっておるところでございますけれども、なお法の不備等の点につきましては、先ほど小林先生から御指摘のあったような点にも関連いたしまして、法改正等につきましてもさらに検討を進めてまいりたい、こういうのがおおよそ遺跡等の土木工事との関連において現在やっておるところの施策でございます。
  141. 春日正一

    春日正一君 まあいろいろ説明あったのですけれども、結局非常に重要なものはいろいろな形で保存する、そうしてどうにも、それほどでないものは調査して記録保存する、こういうことだと思うのですけれども、この史跡として保存するものと、それから記録として保存するものを区分する基準といいますか、そういうようなものは具体的にあるんですか。
  142. 安達健二

    説明員安達健二君) 一応文化財として、史跡として指定する場合の基準は持ちまして、その基準に基づいて専門家が判定をし、さらに文化財保護審議会で審査をし、さらに文化庁長官が最終的に決定し、文部大臣が決定されると、こういう一応の基準は持っているわけでございます。
  143. 春日正一

    春日正一君 それだけの話では基準の中身わからないのですがね。具体的にお聞きしますがね、たとえば前方後円墳の場合百メーター以上でないとむずかしいというようなことを私聞かされてちょっとびっくりしたのですけれども、そういうふうな機械的にただ大きいか小さいか、そのもの自体が大きいか小さいかとか、あるいは数が多いか少ないかというようなことだけできめるというような基準になっておるのですか。もっと総合的に——地方的に、全国的に見て歴史的、文化的に非常に重要な意味を持っておるとか、そういう日本の歴史を解明していく上で総合的に見て非常に重要だとかいうような意味での基準ですね、そういうものは当然考えられるんだけれども、そうじゃなくて、いま言ったように百メーター以下はだめだというような、そういう基準はあるんですか。
  144. 安達健二

    説明員安達健二君) これは指定基準といたしましては、たとえば基準の前文といたしまして「左に掲げるもののうちわが国の歴史の正しい理解のために欠くことができず、且つ、その遺跡の規模、遺構、出土遺物等において、学術上価値あるもの」ということで、たとえば貝塚、住居跡、古墳、その他類似の遺跡というのがございまして、たとえば百メートル以下はだめだというようなそういうものではございません。規模ももちろん一つの要素ではございますけれども、規模が小さくても、その古跡、古墳としての歴史上の価値の高いものは指定をいたしておるわけでございます。
  145. 春日正一

    春日正一君 そうすると、学問的、歴史的に重要な意味を持つものは保存の指定をするということですね。それでいいんですけれども、記録保存の場合、やはりこういう埋蔵文化財というようなものは一度こわされたら、これは永久になくなってしまうわけですからね。当然綿密な調査と正確な記録ということが必要だと思うんですけれども、そういう点についてはどうなんですか。
  146. 安達健二

    説明員安達健二君) 記録保存をいたします場合は、後世に十分記録として価値が認められるようなふうに十分な調査をいたしまして、写真、文書その他でもちまして十分な記録を残すというたてまえでやっておるわけでございます。
  147. 春日正一

    春日正一君 そこで、具体的にお聞きしますけれども、先ほども小林委員のほうからもちょっと話があったんですけれども、現在横浜市の北部で非常に急速な宅造工事が進んでいます。そこでいろいろ貴重な遺跡が十分調査されないまま非常に大量に破壊されてきている。たとえば先ほどの宮ノ原の遺跡群ですね。これはほとんど、宮ノ原だけは七〇%は調査できましたというふうには言っているけれども、原遺跡、それから若雷神社の遺跡、あれなんかはほとんど調査のできないままでこわされてしまっているというようなことになりますと、これは先ほど言った趣旨ともえらく違ってくるわけですわ。先ほどあなたもブルドーザーとめて、出てきたら調査しますというようなことを言っていましたけれども、そういうことでほんとうに綿密な、学問的な調査というものはできるのかということです。こういう点についてもあなた方事情よく御存じの上で何か調査しておりますというようなふうに言っておいでなんですか。
  148. 安達健二

    説明員安達健二君) 宮ノ原遺跡につきまして七〇%でございますか、大半をいたしました。宮ノ原遺跡自体の調査につきましては、いわば記録保存に耐えるような調査もあるわけでございますが、あと工事と並行してする調査につきましては、そういうようにできるだけの努力はいたすといたしましても、やはりその点において欠けるところができるのはある程度はやむを得ないんじゃないかと、かように考えておる次第でございます。
  149. 春日正一

    春日正一君 そういう点で文化庁として宮ノ原遺跡群の保存調査についてどういう努力をされてこられたんですか。
  150. 安達健二

    説明員安達健二君) 先ほども少し申し上げたところでございますが、東急不動産のほうと再三交渉いたしまして、   〔委員長退席、理事楠正俊君着席〕 最初工事の予定でございました四十三年五月という、もう少し早くしておりましたのを八月からということで言ってきたものをさらに十一月一日まで延期させるということで、しかもその調査については東急不動産側も四百万円なり、調査機材と労力は負担をするということで、調査委員会といたしましても、委員長には朝比奈貞一理学博士、調査団長には岡本立教大学助教授というような専門的な方々調査をしていただいたわけでございます。それが途中で、夏休み中はよかったのでございますが、九月中旬以降、いわゆる実際に調査に当たる大学の考古学の大学生というような方々が非常に来られなくなったということから、その発掘調査が十分できないままに十月の末になってしまった。東急不動産側としては一応十月一ぱいということの約束だからこれ以上工事は延ばせないと非常に言われるもんでございますから、そこでいろいろ相談した結果、さらにこの十一月に至りまして、この工事と並行した調査ということで県と市の専門の調査方々がずっとそこに詰めて工事と並行して調査をする、調査することについては工事は妨げない、すなわち調査を優先的に考えて、そして工事を進める、こういうことでございますので、十全とはいかないまでも、何とかできる限りの調査を継続いたしたい。こういうことで努力をいたしておるところでございます。
  151. 春日正一

    春日正一君 それであなたそう言っているけれども、最近現場へ行ってごらんになったんですか。私最近行ってみまして、あそこの広いところ、宮ノ原の遺跡あとと、それから若雷神社のほうですね、あの広いところをブルドーザーが行ってたくさんかき回しているんですけれども、あそこに行っているのは県庁と横浜市で交代で係員が一人ずつ行っているだけですよ。これで発掘調査なんということになりますか。全然、ただ名目的に張り番に行っているといったような意味しか持っていないのです。私見てきたけれども、がばっとひっかいてしまって、宮ノ原なんかほとんど遺跡あともこわしてしまって、若雷神社のほうもいま土を取っているんですけれども、行ってみて、ここに黒い土のあるところ、ここに住居あとかなんかあるでしょう。ここは削ってしまって、いま住居あとの一番固めたところがここですよというような形で、その程度の記録しか残らない。そういうことで、ほんとうにさっき言ったように、あれをこわしてしまえば永久にもうなくなってしまうんですわ。そうしたら、やっぱり日本の古代の歴史を明らかにしていく重大な手がかりというものが一つなくなるわけですね。そんなことでいいのか。第一この経過を見ても、四十三年の五月に東急不動産が宅造についての発掘調査を依頼をしてきた。しかもこの調査する面積としても約三万平米でしょう。これだけあるところを短い期間で調査しようと、八月から始めて十月一ばいでやれというようなことになれば、それもただ掘るだけじゃなくて、相当その回りは慎重に掘らなければならぬでしょう。そういうことを考えれば、初めからこの期間でできないということはわかっておったんですね。だからこのいきさつを聞いてみますと、やはりこの調査団を早稲田、立教が引き受けるというまでには、いろいろいきさつがあったわけですよ。美大のほうは美大のほうで美術的な立場から参加したいというふうな形も出てきて、いろいろいきさつがあって、それでこのままほうっておいたらこわされちゃうからということで、調査団のほうも、とにかくこわされるなら調査しなきゃならぬという追い詰められた形で調査に着手したけれども、しかし、学校が始まってしまえば学生は出てこなくなるというようなことで調査がおくれてしまったというようなことは、初めからこの期間でできぬということはわかっているんです。それをこういう期間で、十月三十日まででというようなことで——もっと期限を指定することできるわけでしょう。大事なんだからもっと来年三月まで待ってくれというようなことできるはずでしょう、法律的に言っても。どうしてそういうことをやってくれないのか、そこらの辺ですね。
  152. 安達健二

    説明員安達健二君) ちょっとその間の経過を記念物課長から説明いたします。
  153. 中西貞夫

    説明員(中西貞夫君) 当初、先ほど申し上げましたように、できるだけいろいろな遺跡を残すということで東急不動産側にも話をいたしましたのですけれども、どうしても土地を買収しまして、宅造しなければいけないというようなことでございまして、遺跡の価値からいたしましても、国で指定して残すというほどの遺跡でもないというふうな専門家の御意見もございましたので、しかしそういうことならば十分に調査をする必要があるということで、調査団のほう、横浜市のほうですけれども、話をいたしまして、大体七月の二十二日から始まったわけでございますけれども、十月一ばいまでなら十分調査ができるんじゃないかということで、調査団との了解のもとで当初は始めたわけでございます。  ところが、いろいろなこの中にいきさつがございまして、一番大きな原因は九月から学生がいなくなって、結局一カ月と申しましても日曜日だけしか掘れないということで、一週間に一日しか稼働しないというふうな状況になりましたのと、それからいろいろな大学の方が参加しておりますので、その大学の間でいろいろいきさつもございまして、ある大学が調査に参加しないということで調査人員が減ったりということ等もございまして、ただいま申し上げましたような結果になったわけでございます。ですから、最初の予定といたしましては、調査される岡本先生とも十分連絡をとっておりまして、この程度なら相当の程度の調査はできるということでやっていたことが、いま申し上げましたようないろいろな事情がありまして、そごを来たしたということでございます。
  154. 春日正一

    春日正一君 だからそういう程度のことで、初めからもうできないことはわかっている。九月になれば学生は学校へ行かなければならぬからフルに動けないことはわかっていることであった。それを実際着手したのは八月の末ごろからでしょう。この横浜市の説明書を見ても、八月調査団会議随時開催、発掘の進行計画について協議なんて、八月にこういうことをやっているんですからね。九月になれば学生はいなくなる、そういうふうな状態ですね。それはわかっているはずですわ、初めから。それを十月一ばいでというようなことにしてしまっている。  それからもう一つの問題ですね、これは重要なことだと思うんですけれども、いまの説明では宮ノ原遺跡群は保存するに値しないものだと判断して記録調査というような形にしたというような説明だったんですけれども、この保存するに値しないという判断はどこでおやりになったんですか。どういう調査に基づいて、どこでおやりになったんですか。
  155. 中西貞夫

    説明員(中西貞夫君) この調査の時期でございますけれども、いま先生のお話でございますが、私どものほうで現地へ行きまして見たところでは、七月の二十日、まあ正確には二十二日だと思いますが、二十日から岡本先生、甘粕先生の指導のもとにやっておるというふうに私どもは承知しているわけでございます。  それから先ほど申し上げました価値でございますけれども、これは国の史跡に指定できるかどうかということについての価値でございまして、史跡に指定できないものはすべて大事でないということは、先ほどもちょっと申し上げましたように、私ども考えておりません。史跡に指定できなくても、県の指定とか、あるいは市町村の指定とか、あるいはそうでなくてもできるだけ残すというふうなことでやっているわけでございます。そういうことでございますが、それが史跡に指定できるかできないかということにつきましては、まあ従来の専門委員の先生方の判断の基準というようなものがございますので、それはかなりの埋蔵文化財の専門家の会議を開きまして、どうだろうかということで検討いたしましたが、ちょっとこれは国の史跡にはいかないだろうという判断をしたわけでございます。
  156. 春日正一

    春日正一君 その専門家の会議を開いたのは、いつ開いて、いっそういう決定とか判断がされたのか、その点一点ですね。  それからもう一つは、国の史跡には指定できないと。まあかりにそうしてそれでは県の指定なり何なりにしてでも、先ほどの説明では保存できるものは保存する方針だと言われたんだけれども、いまあなたのこの経過なりあなたの説明から見れば、初めからこわしていいという判断でしょう。だから東急不動産は十月三十日までということで、三十日過ぎたらこわしてしまうというような事態が起こっているんじゃないですか。そうするとあなたが独断でそうやられたのか、その専門家の委員会でこわしていいという判断をされたのか、そこの辺ですね。
  157. 中西貞夫

    説明員(中西貞夫君) その判断と申しますか、いろいろいたしましたのは、五月にそういう話がございましてから、私どものほうとしましてはできるだけ残してくれということで、東急不動産と折衝したわけでございます。どうしても折衝できないし、その間にそれは国の史跡指定で残し得ないかどうかということについても、いろいろ検討したわけでございます。ですから判断の時期といたしましては五月から七月までの、七月のおそらくもう少し早くなっていると思いますが、それまでの間で検討いたしたわけでございます。それから国の史跡になりがたいから、記録保存だということは考えておりませんでして、地元のほうにもできるだけこれはなんとか残せないか、あるいは公園——団地ですからその中に取り入れて残す方法はないだろうか、あるいは緑地にして残せないだろうか、そういうふうなことでいろいろ教育委会のほうにも申しまして、できるだけ残せるようにという折衝は十分にしたつもりでございます。
  158. 春日正一

    春日正一君 そこでいまのお話ですと、国の史跡として残せる価値があるかどうかという判断は、五月から七月までと言われたでしょう。五月から七月までに発掘をやっていないのですね。何も手をつけていない。何が出てくるかわからぬ。そういう状態のもとでどうしてそういう判断ができるのか。何に基づいておやりになったのか。そこのところを説明していただきたいのです。
  159. 中西貞夫

    説明員(中西貞夫君) これはおっしゃるとおり発掘をやっておりませんけれども、その表面にいろいろ土器とかそういうものが出ておりますので、そういう表面に出ました遺物でありますとか、あるいは地域の状況とかいうものによりまして、専門家によって判断いたしたわけでございます。
  160. 春日正一

    春日正一君 そうすると、もし掘ってみて意外なものが出てくるということもあるわけですから、当然掘ってみた上で最終的な判断をするということが保存のほうでいけば一番大事なことで、こわしてしまって、しまったということでは、あとになっては取り返しのつかぬことですからね。だからそれやらなければならぬ。ところがそういう手続をやらぬで、それで掘る前に大体目見当で、あの辺の貝塚というものは昔からあるわ。大森にも貝塚があるからいいじゃないかというような大ざっぱな見当でおやりになったとすれば、これは学問的な態度から言えば非常に軽率で、科学者としてとるべき態度ではない。同時に、掘ってみて、これは重要なものが出てくるというようなことになったら、当然またその態度というものは変えて、その時点で検討して保存するということもあり得るわけでしょう。そうだとすれば、やはり一応掘ってみて七分どうりでも八分どうりでも掘ってみて、まあこの程度のものだ、これなら記録にしたらあとはなくしても差しつかえないものかとか、あるいはこの部分だけ保存すればいいというめどのつくまではこわさせない努力というものは最大限しなければならぬ道理でしょう。だからそれをおやりになったかどうか。
  161. 中西貞夫

    説明員(中西貞夫君) お話しのように、掘ってみないとわからないというのが埋蔵文化財の特殊性でございますけれども、したがいまして、私どものほうでも発掘調査をして宅造を認めるというような場合でも、実際に出てきたものに対して残したというような例もございます。しかし、この場合につきましては、発掘の途中でも、いろいろそういう場合がございまして、私どものほうではまたその途中におきまして何とか残す方法はないかということで、市のほうともいろいろと相談して、何とか残せないかというふうなことはいろいろやってまいりました。しかし、事実上東急のほうでは十一月一日になりまして宮ノ原の一部の遺跡というものを破壊したというような現状でございます。
  162. 春日正一

    春日正一君 その点では宮ノ原の遺跡群というものは非常に大事なものであるということは、あれの発掘に関係した人たちは一言っているのですね。あそこはもうあなた方は御存じだと思うのだけれども、縄文時代の前期——早期の中ごろから早期の終わり、さらに中期の初め、中ごろ、後半、それから弥生時代の中期それから後期、古墳時代の前期というような形で、日本のとにかく原始社会がずっと発展して、それが崩壊して古代社会に移っていく、そこの全部の経過の資料が非常に集中的に保存されている。掘った人に聞いてみましたら、こういうところはあまりそうざらにあるものじゃないと言うのですね。そういうところですね。だから、こういうものを解明することによって関東地方におけるわれわれの先祖の生活なり、それがどういうふうに社会的に歴史的に発展してきたかというようなあとづけができるし、それが大和朝廷による全国統一の関係というようなものもはっきりされてくるというような意味では非常に大頭であるというふうに言って、ここで発掘に参加した立教大学考古学研究会が、これはこういう抗議文は出していますよ。「文化庁は本来、文化の破壊を防ぎ、地方公共団体に対しては、文化遺産を守るため正しい行政指導を行なう機関であるはずである。しかるに宮ノ原黄跡群では、会社に形式的な勧告を言い渡しただけで自らの責任を回避し、行政指導、遺跡破壊に何ら手を尽くすことなく傍観した。これは、開発の名のもとに遺跡の公共性、学問的価値を全く無視し、不当な追跡破壊を助長することである。遺跡の破壊を許すことは学問の否定、国民的学問発展を阻止することに他ならない。」、こういうような何といいますか、強い調子で今度の問題に対する文化庁の態度というものを批判している。そうして、「我々は、政府のそのような方針に純粋な学問的立場から抗議するとともに、国民的視野に立ち、遺跡保護、自然保護を含めた、総合的な開発計画にただちに着手することを訴える。」、そうしてここを史跡に指定して、破壊を免れた若雷神社あとですね、あそこを保存するようにということの抗議文を出しているのですね、声明を。  だからこれは発掘に参加した研究班でしょう、立教大学というのは。そういう人たちが掘ってみて、非常に大事だと、だから何とかして保存してほしいという希望を持ってるんですね。そうだとしたらやはり単に、一般的に、掘らぬ前にあの辺はたいしたことはないというような判断で、国の史跡の指定にはならぬというようなことでほうるんではなくて、やはり少なくとも完全な調査ができるまで仕事をストップさせると、そうして調査を完了する。その上で全体総合してみて、これはこれだけ記録しておけばとってもいいということならば、それに参加した人たちも納得するだろうし、国民も納得するでしょう。しかし、掘る前からもうこれは見込みないものだときめて掘らしてしまったということは、やはり重大な手落ちだし、しかもこういうことをこの調子で今後続けていかれたら、全部が全部とはいえないけれども、やはり重要なものがそういうケースで破壊されていくということが出てくるのじゃないか。そこらの点の反省ですね。  この横浜市の経過を見ても、宮ノ原のあれじゃ、これはこうなっていますよ。文化庁との関係でいえば、十月三十一日、「文化庁より口頭で東急へ協力方依頼」と、こういうことですね。それから十一月十四日、もうこのときはこわされちゃったあとですね。「文化庁より正式文書で東急へ調査中の工事延期を依頼」というような形で、手おくれになっているのですよ。  だから、もっと、初めからあの辺に遺跡群があるということは学問的にはわかってることなんだし、手を打って十分の調査ができるようにほんとうはやる必要がある。それはできるんでしょう、法律の何条かで、文化庁が直接発掘するということもできるとか、文化財保護法では、五十八条に「委員会による発掘」、それから六十九条、史跡名勝の指定、こういったような形でですね。それで、全然手のつけようがないか。ほんとうに腹をきめて、待ったかければ、半年やそこらはとまる可能性十分あるのじゃないですか。
  163. 中西貞夫

    説明員(中西貞夫君) いまのお話でございますけれども、私どものほうとしましては、できるだけのことはやったつもりでございます。ここに要望書ですか何か書かれている方は、非常な熱意を持ってそれを書かれていらっしゃると思いますけれども、私どもとしましては、そこに書かれているように何にもしなかったということは全然ございませんでして、いろいろなことをやっております。  それから法律の関係でございますけれども、これは土木工事等に伴う場合には、先ほどお話ありましたように、三十日前に文化庁のほうへ届け出なければならない、その場合にはいろいろな発掘の指示ができるというような規定になっているわけでございます。しかし、発掘を中止さしたり、工事を中止さしたり、禁止さしたりするということは、いまの法律の上ではできないことになっている一わけでございます。しかし、それをいろいろな世論の力とかそういうことでもってとめまして、延ばして、発掘調査をするまで工事を待たせるという、こういうようなことになっているわけでございます。  それから国営の発掘があるのではないかというお話でございますけれども、これはきわめて金額が少ない約二百万くらいでありますし、国営と申しましても、人員はそう文化庁のほうにもたくさんおりませんので、全国至るところにこういう問題が起こっておりますので、そこで県なり、あるいは市なりに依頼しまして、地方の学者方々の協力を得て調査するということになっているわけであります。  それから、史跡の問題でございますけれども、これは大事なことは大事なんでございますけれども、発掘の中途の段階で私どもの技官も見に参っておりますけれども、やはり国の史跡に指定できるほどのものが出ていないということでございます。そういうことでもございまして、いろいろな状況から現在のようなことになっている。ただし先ほど申しましたように、東急のほうに話をしまして、工事は進めるけれども、なお残りの発掘調査ができるように工事を強引にやらないというような話は取りつけて、現在若雷遺跡等の調査等を実施いたしているわけであります。
  164. 春日正一

    春日正一君 努力はしたと言っても、そういうことなんですけれども、いまの話で、宅造関係で出たのは一カ月前に届け出てそれで発掘についての指示ができるということになっているのですけれども、その指示というのは、あれですか、向こうが十月三十日までにこわしてしまいたいとかなんとかいう計画に対して、それを変更させるということはできないのですか。たとえばこれはこれだけの地域だから、このうち三万平米の地域を発掘してみる必要があるのだから、だからそれを終わるまでは別のほうをやっておって、それを終わる期間、来年三月なら三月というまではそこへ手をつけてくれるなというような指示はできないのですか。
  165. 中西貞夫

    説明員(中西貞夫君) それはやはりその発掘の方法についてどういうふうにして掘るとか、掘れとかいうような指示でございまして、実際いま法律をこえてやっておりますような、少し待てとか、横のここは除外しろというふうなことはできないわけでございます。
  166. 春日正一

    春日正一君 建設省のほう来ていますか、都市局のほう。これは建設省も重大な関係があると思うんですよ。この前、古都保存法が審議されたとき、私は、こわすほうの建設省に古都保存の責任をまかせることはネコにかつおぶしを預けるよりあぶないことだと、これは文部省が当然この古都保存の権限は持つべきだということを主張したんですが、あのとき大臣や局長の答弁でも、建設省としても文化財の保護は非常に重視しているんですから十分やりますというようなことを言っておいでになった。だから、そういう方針だと思うんですがね。そうだとしたら、当然、先ほどの小林委員質問にもあったように、ああいう古墳のあるような地帯が開発されるというような場合に、これを保存するかどうかということを文化庁のほうとよく相談をして、そうして許可するというようなことはおやりになっておいでなんですか。
  167. 大塩洋一郎

    説明員大塩洋一郎君) 古都保存法によりますと、古代の文化的、政治的な中心地であった京都、奈良、鎌倉及び政令で定める都市についてその枢要なところを押えるんだ、こういう趣旨になっておりますので、その限りにおきましては、その中の中核となるような遺跡であるとか、あるいはそういう大事な文化財的なものは、協議いたしましてそれに支障のないように配慮しております。
  168. 春日正一

    春日正一君 それ以外は。
  169. 大塩洋一郎

    説明員大塩洋一郎君) ただ、その区域に入っておりませんところ、それにつきましては、古都保存という立場からはできません。そこで、御質問の趣旨に合うかどうかわかりませんが、われわれとしましては、建設行政といいますか、都市計画の立場から、こういった大事な文化的施設が市街化の波にさらされている、特に宅造によって荒らされるというような点につきまして、これは関係庁、特に文部省、文化庁などとはよく協議いたしまして、それぞれの立場から保存をはかるようにやってきております。たとえて申しますれば、たとえば遺跡である登呂遺跡であるとか、あるいは千葉の貝塚だとか、あるいは宮崎県の西都原の古墳群とか、その他たくさんございますけれども、そういうような施設につきましては、都市計画のほうからむしろ積極的に緑地または公園としてこれを指定いたしまして、それをむしろ積極的に都市施設として取り入れることによりましてこれを保存するというようなことを考えてまいっておるわけでございます。
  170. 春日正一

    春日正一君 そうすると、登呂とかなんとか、あれも世間がだいぶ騒いでから話になったんだけれども、それはまあ別の話をして、いまの宮ノ原の遺跡群のあの辺の東急不動産の宅造事業の許可ですね、その場合、文化庁と相談して、いいということでやったんですか。
  171. 福地稔

    説明員(福地稔君) 先生の御指摘の点、まことに一々ごもっともでございますが、いま問題になっております宮ノ原の遺跡群につきまして、これは東急が、住宅地造成事業法によりまして、工事の許可はたしか横浜市の許可を得ていると思います。いままでいろいろ御指摘ございましたけれども、御指摘の点、いわゆる文化財とそれから宅地開発との調整の問題は、たいへん私ども苦慮いたしております。宅地開発の主体といたしましては日本住宅公団、あるいは公社、民間もございますけれども、その際問題になりますのは、自然の景観あるいは文化財遺跡というものとの調整でございます。特に文化財指定を受けております場合は、これはそのほうの規制に従いますが、それを受けてないような遺跡その他、これにつきましてはできればこれの保存をはかるということで、たとえば団地内の緑地にするとか、または公園にするとかというようなことで指導しております。それから、そういうような保存ができないというような場合は発掘調査、それについてできれば自治体もひとつ応援をしろというような指導はいたしております。
  172. 春日正一

    春日正一君 そういう一般的なことはそうなんですが、いまの宮ノ原の場合ですね。相談されたのかどうか。相談して、文化庁は大したことはないから許可していいと言ったのか。横浜市がやったというのですからあなた方は直接知らぬかもしれぬが、しかし、こういう問題があるでしょう。いま大体埋蔵文化財が出てくるのは建設関係の裏として出てくるわけでしょう。だからあなた方の仕事と一番密接な関係を持っているわけですよ。だから当然国の、政府の全体の一部として、国民に対する責任として文化財の保存ということは建設省としても考えなきゃならぬ。そうしますと、こういう問題を許可する場合、直接許可するのは自治体がやることになっておりますから、建設省として通達か何か出して、そういう文化財がありそうなところは文化財保護委員会なり、あるいはそこの教育委員会なり、その間で相談して許可するなり、その条件をきめるなりやって、文化財が十分保存されるように配慮せいというような通達か何か出しておかなければ、あなた方の親の心は下に通じないのだから、どんどんこわされてしまう。そういうことをおやりになったことはありますか。
  173. 福地稔

    説明員(福地稔君) まことにごもっともな御指摘でございます。新住宅市街地開発法というのがございますが、その省令では、そういう文化財については保存につとめなければならぬというような規定がございます。それ以外にいろいろ機会があるごとにそういうような指導はいたしております。
  174. 春日正一

    春日正一君 それでまああとにこれを回しまして、端的に言って、あの宮ノ原の遺跡群はもう宮ノ原もこわされてしまっている。原遺跡のほうもこわされてしまっている。若雷神社のところは、あすこは非常に土が厚くて、一メートルぐらいの厚い黒土の下に遺跡があって、さらにまた一メートルぐらい厚い土の下に原遺跡があるというような形になっておって、そしてこの両山の谷間にたくさんあるだろうと推定されて、いま調査しようということになっているわけですね。ところが行ってみると、がんがんとくずしているのですわ。ああいうことではほんとうの遺跡調査とか記録をとるとかということにはならないので、少くともいま残されているものだけでもブルドーザーをストップさせて、そして十分な調査をするというような処置をとれないものかどうか。それから特に建設省のほうで、建設の認可その他については大きな権限を持っているのですから、文化庁よりはそういう宅造会社に対しては発言権があると思うのですよ。協力して、少くともいま残っている若雷神社のあとのところなんか、かなり上のほう削られましたけれども、   〔理事楠正俊君退席、委員長着席〕 まだあすこは深いからもっと調べるものがあるというふうに言っている。そういうところはブルをとめて、とにかくブルに追っ立てられて発掘調査と言ったって、できるものではない。だからブルをとめて学問的に調査させてほしいというのが現地の要望でもあるし、調査を担当している人たちの要望でもあるわけですわ。これ、なんとかやってもらえませんかね。
  175. 中西貞夫

    説明員(中西貞夫君) いまのお話でございますけれども、私どももあと調査を十分にやるようにということで、十一月一日以降東急のほうとも折衝いたしておりますので、そういう方向でさらに折衝いたしたいと思います。
  176. 春日正一

    春日正一君 じゃその問題はあれにしまして、もう一つ、例の稲荷前古墳群ですね。あすこはずっとたくさんあって一号とか六号とか五号とか、たくさん古墳が出てきて、それの一号墳の周辺だけ残して、あとは全部潰して宅造にしちゃっているのですね。つぶしてしまっている。しかし、あすこは非常に大事なところだというので、これは文化庁のほうにも出ておると思うんですけれども、この「横浜市稲荷前一号墳の保存に関する要望書」ということで、「この種の前方後円墳は大和政権の関東進出を示すほとんど唯一の具体的な証拠として、日本の古代国家形成史の重要な資料となるものでありますが、とくに本古墳は横浜市域に残された唯一の前方後円墳である点において、郷土の歴史にとって欠けがえのない記念物といえます。」云々とずっと書いて、ぜひ本遺跡の保全策が講ぜられるようにということで、これは、私、名前読んでもいいんですが、関東のほとんどの考古学者ですね、各大学の教授とかそういった人たちが連名でこれ要望しているわけですわ。だからこれは政党、野人の言ではない、専門家の言なんですから、相当文化庁としても尊重されて、この保存ということについて配慮していただかなければならぬものだと思うんですが、この点については、何かこういうもの検討されて結論か何か出てるんですか。
  177. 中西貞夫

    説明員(中西貞夫君) いまその資料を持ち合わしておりませんし、十分にお答えできませんので、申しわけありませんが……。
  178. 春日正一

    春日正一君 これはずいぶん古い話ですよ。去年の七月ですから、もうこの問題の発端ごろにそう言って出している。それが無視されて実際こわされていって、いま残っているのは一号墳周辺の丘陵ですね、あれだけなんですわ。あれだけでもいいと言うんですわ。こわされちゃったらしようがない。とにかく尾根の上にきちょうめんにきちんとできた、しかも、先ほど小林君も言ったように、全然荒らされてない、ほとんど完全に残っているという周辺です。そういう一号墳があって、そうしてその周辺に円墳もたくさんあるし、しかもさらにその下に行けば横穴墳の相当りっぱなものもあるということで、あの時代の古墳が全部一そろいそろっているようなところなんです。こういうところはおそらく関東にはあまりないだろうと、さっき言ったように、「唯一の」と言われているわけです。そういう大事なものなんですわ。だからどうしても保存してほしいということでやってきて、まわりはこわされてしまったが、あすこは調査の結果、来年の三月一ばいということで残っているわけですわ。それで私、実際行ってみて会社のほうの担当者に聞いてみたんですが、あすこの敷地はどういうふうになっているかというと、あすこの敷地のところは平らにして団地の運動場にする、平らにして公園にすると言っているわけですわ。だから平らにして公園にするなら、もう少し公園の地域を広げて、あの山の周辺を残しておけば、団地の人たちだって将来えらいいい目を見ると思うんですよ。だから、そういうふうな形でも保存する、そのために横浜市なり神奈川県なりが指定する、あるいは国が指定して、必要なら買い上げるという処置をとれぬものかどうか、その点どうですか。
  179. 中西貞夫

    説明員(中西貞夫君) ただいまの稲荷前の一号墳でございますけれども、まわりに宅造の計画がいまおっしゃいましたようにございまして、当初はその半分の分を宅造して残りの半分を残すという話できていたわけですが、ところが、最近になりまして、それもいまおっしゃいましたようなことでこわされるということでございますが、私どもといたしましては、できるだけその保存ができるように努力をいたしたいと思います。
  180. 春日正一

    春日正一君 それから建設省のほうですが、こういう工事をやる場合、これひとつ見てくれませんか。この高いところですね、ここが鎌倉市と横浜市の境なんですよ。で、ここからこっちの高いほうはさっきの古都保存法の四条の指定区域になっているわけですね。ところがこっちは横浜市で、そこはゴルフ場になっている。しかもこの境から垂直にずばっと切っているわけですね、こういうふうに、こういうことですよ。だから私あのとき言ったんだ。指定されたら指定された外はおかまいなしということでやられちゃう、こわされると言ったがそのとおりになっている。鎌倉市でもみんなこれ式ですわ。稜線を表から見ると山に見えるが、裏へ回って見るとまるっきりくずされているんですね。全部そうなっている。それでこういうふうなやり方ですね、これは建設省として好ましいこととして認めているんですか。これ危険ですよ。私ここへ上がって見たら、ここはもう雨で流れて、横浜と戸塚の境界線のさくが中ぶらりんになって、こうなっている。だんだん横浜に鎌倉の古都が削られていくということですね。こういう工事のしかたというものが許されるのか、これひとつ……。なぜ私がこれを言うかというと、いま言った稲荷前古墳の一号墳の所ですね。あすこも行ってみると、ずばっと削られているのですね。一号墳がこうあって、ちょっと来た所で垂直に削っている。だからこれから保存すべしと言っても、非常に保存しにくい状況、そういうものをつくっているのですけれども、そういうふうな工事のしかたというものは、一般でも許されないでしょう、危険だから。ましてそういう古墳の周辺とか、古都の周辺の指定地域というものは、こういう工事が許されていいのか。みんなこれやられている、その点建設省の見解どうですか。
  181. 福地稔

    説明員(福地稔君) いまの御指摘の点は、私は初めてでまことに申しわけございませんが、一般的には宅地造成をいたします際に、がけ地造成をする場合は規制がございます。その点から検討をさせていただきたいと思います。
  182. 春日正一

    春日正一君 そこで、私まあさっき言ったように、考古学者もこの稲荷前一号墳については、非常に重要なもの、唯一のものだと関東の考古学者はほとんど名前を並べて言っているのですから、そうでたらめなものじゃないと思うのですよ。大事なものだ、だから残してほしいと言っているわけです。だからこれを残すべく努力していただきたいし、特に来年三月までということで調査が進んでおりますけれども、その調査の結果、その重要性が明らかになれば、やはり残すために文化庁としても努力をするし、横浜市なり、それから神奈川県にいろいろ指導もしてほしいと思うのです。あすこは大体初めはあの古墳群全体をひっくるめて公園にしようということになっておったのが、市の宅地課か住宅局か、そっちのほうから横やりが出て、中止になって、そうしてこわされてしまった。一号墳だけ残してくれと言っているところへ、さらにまたあのきわに道路をつくってしまった。そういう形で建設関係というのは、非常に無神経に大事なものをこわしてしまう。だからさっき言った指導というものが必要ですし、当然私どもも現地の市役所なりに私なりにこういうことは伝えて、善処してもらう努力はするけれども、やはりあなた方がその一番の責任を持っているのですから、そういう点でそういう重要なものなんですから、十分慎重に検討して、残せる方向で検討していただきたいと思うのですけれども、この点でひとつ伺っておきたいと思います。
  183. 福地稔

    説明員(福地稔君) 先生御指摘の点まことにごもっともでございまして、今後も一そうそういう点につきまして指導いたしたいと思います。
  184. 春日正一

    春日正一君 最後にもう一つ、これは長官のほうに御意見をお聞きしておきたいのですが、いまずっとお聞きになっておわかりのように、建設省と文化庁との関係とか下の教育委員会と市や県の建設関係の部局との関係というものは、非常に円滑でなくて、むしろいつでも文化関係のほうは、掘られてあと追っかけるという状態になっております。だからこれをやはり大体さっきの話でも、全国の史跡地図みたいなものをつくって、横浜でも三十カ所ぐらいつくっております。だから大体その辺にどんなものがあるということは見当がつくのですから、その点については相談してほしいというシステムにして、事前に調査をして、その上で手をつけていいとか悪いとかという判断ができる程度のことはしておきませんと、追っかけ回されることが出てくる。  もう一つは、そういう必要な調査をやろうとするのに、ストップもかけられないようではどうにもならぬと思うのです。そういう点では、埋まっておるものを掘るのですから、掘ってみて重要なものだというものが出た場合にストップというものがかけられるようなやはりそういう法的な措置をとっておく必要があるのじゃないか。そうでないと、こういうことが非常に起こってくる。  もう一つ経費と人員の問題ですけれども、市に二人います。文化財の関係の人が。それでそれだけ広いところをやっているのですから手が足らないわけです。おそらく文化庁のほうでも幾らもそういう専門家はおらぬと思うのです。人数が足らないという点がある。特に発掘の費用、さっき原因者負担ということを言われましたけれども、これは一面都合のいい話ではあるかもしれぬけれども、一面は結局こわすほうに調べることの費用をおんぶしているのですから、どうしてもこっちが弱い立場に、金出してもらうのだから弱い立場に立って強いことを言えなくなってしまう。金も出しています、ブルドーザーも出しています、人夫も出します、協力はいたしております、だから三月末までといったようなことになると口きけなくなる。強いことを言えないことになってしまう。それではほんとうに守っていくべき文化庁としての役割りを果たせないのです。横浜の場合でも本年度発掘調査費を百五十万、市で組んでおる。そうして原因者負担で出しておる予算が八百万ですね。ですからこわす会社にほとんど金を出してもらって調査をしているというような状況になっているわけです。これではやはりいけないので、やはり文化財を保存するための機構、いま昔と状況が違って非常に広範囲に破壊されて、そこに文化財の問題が出ているわけですから、それに対応するようなやはり文化庁の陣容なり予算の裏づけなりつけてもらいませんと、あなた方の善意にもかかわらず結局貴重な歴史的遺物がこの式に破壊されてしまうことになってくる。そこらの辺で、そういう必要な法改正なり、あるいは予算的な措置について長官としてのひとつ所存といいますか、所信というものをお聞きしておきたいと思うのですけれども。
  185. 今日出海

    説明員今日出海君) まことに御指摘のとおり私はもう全く賛成なんでございます。実に私驚いておることは、たとえば区域を侵して、あるいは法を犯してつくったものに対して破壊してくるとか、そういうものに対して私どもは法的に何らの措置がまだとられておりません、残念ながら。この文化財保護法というものをもっと強化していきたい。少なくとも不備な点を、全く手が出ないという、待ってくれというのは、何となく何かすがってお許しくださいというような形でやらなければならない、人情に頼るというようなわけであります。ほとんどいまのように古都保存法による区域ですね、そういうものをすぱっと切ったというだけでも驚くべきことでありますけれども、それ以上に保存法の区域外の地価が非常に上がる、きまれば周辺がうんと上がるというような状況が、鎌倉にいたしましても京都にいたしましても非常にいま顕著な事実があります。それでもまだいいほうでございます。この保護法を犯してきたものに対してなかなかわれわれの力で文化財保護法というものが十分なストップをかける権限がないのでございます。そういう点でも私非常に学術的な発掘とか、そういう問題に対してはあやまってこわしたというような場合、そういうものには十分言える法律もございますが、もっと意識的に悪意とすら思えるようなことに対して、われわれが何らの力がないということはまことに残念で、いま私の役所のものに保護法のそういうアンバランスとか不備とかを十分になんとか整えるようにさしておりますが、人員、予算につきまして、人員がなかなかむずかしい、定員がございますけれども、予算のほうもできるだけそういう面を多くするように来年度は盛っておりますけれども、なかなかこれも事実のほうが多いのでございますね。それでいつも追いつけないような状態でありますけれども、年々に、来年はふやしております。どうかよろしくお願いいたしますが、そういうわけで、私もこの保護が単なる法律的な不備以外に、われわれのもっと努力が必要だということをかねがね申しておりますが、なお督励をいたして御趣旨に沿うようにいたしたいと思います。
  186. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 本件に関する本日の質疑は、この程度にいたします。  速記をとめて。   〔速記中止〕
  187. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 速記をおこして。  次に、学校教育に対する警察の態度に関する件を議題といたします。  政府側からは後藤警察庁刑事局参事官、天城初等中等教育局長、以上の方々が出席いたしております。  本件について質疑申し出がございます。これを許します。鈴木
  188. 鈴木力

    鈴木力君 時間がありませんから簡単にお伺いいたしますが、九月十六日に青森県の、たぶん上北郡だと思います。百石町の百石中学校の生徒が仮装行列をやった。このことが一つ警察の問題になった。それからもう一つは同じ青森県の上北町、町立の上北中学校、これは六月のことなんですけれども、この六月にある教諭が偏向教育をおかしているということで、やはり警察の問題になった、その二つのことがあったのでありますが、この二事件といいますか、二つの事柄について警察庁の知っておる経緯をまず説明をお願いしたいと思います。
  189. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) 先生いま二つのことをお尋ねでございますが、第一点の九月十六日、青森県百石町におきまして祭礼の際中学生が仮装行列に加わったということがございます。その状況から初めに申し上げます。これは九月十六日に青森県の百石町において祭礼があったわけでございますが、その祭礼の際に百石中学の学校の生徒が参加をいたしているようでございますが、そのうちの一部分の大体三十名ぐらいだそうでございますが、三十名ぐらいの生徒がヘルメットをかぶって手ぬぐいで顔をかくし、角材を持ちまして、いまやかましく新聞に出ております大学の学生がよくやるようなあのスタイルで、そうしてスローガンをそれぞれ掲げまして、そして仮装行列に加わったというのだそうでございます。これはお祭りでございますから、当然大勢の人が出ますので、警察といたしましては、その雑踏の整理のために、あるいは交通の整理のために出ているわけでございますが、この警察官の目にとまったわけでございます。これは普通の何と申しますか、地方新聞で写真入りで出るわけでございますから、この生徒たちの自発的な意思でおそらくふざけてやったといいましょうか、もっと端的に申しますと、自分たちよりも年配の大学生がずいぶん妙なかっこうでやるものだというので、そのまねをしたという程度のものかもわかりません。しかし、また反面、それにしてはどうもプラカードに書いてある内容が、ちょっとあまり子供が書いたにしてはいささかどうもうがち過ぎているような点があるのでございます。そういうことで、私どものほうで、これはちょっと妙だなということで私のほうにも報告があったわけでございます。その内容と申しますのは安保反対、三沢の米空軍基地撤去、それからベトナム戦争反対、それから静かな団交では解決できない、ついに角材を持たざるを得ない、百石町民よ立ち上がれ、こういうことが書いてあって、そしてそういう文章をプラカードに盛ったわけでありますが、その上さらに道路で渦巻き行進をやったり、蛇行進と申しますか、あっちへ行ったりこっちへ行ったりヘビの動きのような歩き方でありますが、蛇行進を繰り返して、さらに突撃突撃というようなことを連呼して、そして気勢を上げるというようなことをやったようでございます。これは冒頭にも私申し上げましたように、単なる中学生のいたずら心からやったのかとも思いますし、あるいはまたそうではなくてだれか指導している人があるかもしれぬというふうにも思えるのでございます。そういうわけで参考までに町の教育委員会のほうには通知をいたしておるようでございます。つまり参考までにこの事実を通報いたしております。同時に私のほうにも報告をしてまいりました。それでこれは文部省のほうにも私のほうから何らかの参考になるかということで連絡をしているわけでございます。  それからその次は、上北町の問題でございますが、これは上北町の上北中学校のたしか三年生の授業であったと思いますが、その授業の中で先生が、特定の政党が戦争をやればもうかるものだから、何とかして戦争をやりたいというふうに考えている。そこでそのためには憲法を改正しなければいかぬ、そこで憲法改正にはこれは参議院、衆議院両院の三分の二以上の議員の発案にまず端を発するわけでございますから、そこでこういう企てに対してはどうしても阻止しなければならぬのだ、こういうようなことを社会科の時間ですか、生徒に言ったそうでございます。このことがやはり、当該管轄をしております警察署のほうの警察官の耳に入りまして、これが順を追って報告されてまいりました。私ども、これも同様に文部省のほうに対しましては、青森県の中学校でこういうことがあったそうだということを参考までにお知らせをしている、こういう状況でございます。
  190. 鈴木力

    鈴木力君 きょうは時間がありませんから、中身の解釈とか判断については、あまりきょうは聞きませんが、ついでに文部省に伺いますが、文部省が警察からいまのような報告を受けて、この二つの事件の処理はどういうことになったのですか。
  191. 天城勲

    説明員(天城勲君) 二つの事件につきましては、いまお話がございましたように、警察から情報をいただきました。私どものほうといたしまして、学校に関するいろいろな問題について、社会各方面で関心が深いためにいろいろな面から情報をいただくことがあるのでございますけれども、その中でどうするかということをわれわれのほうで判断しなければならぬ問題でございます。青森県の問題につきましては、二件とも青森県の教育委員会にどういう事情かということと、それから県には学校の処置等につきまして照会をいたしました。その結果、県からそれぞれのこの両件に対する考え方というものを報告を受けておりますので、現在のところそれを了承して、それ以上どうという指導も別にいたしておりません。
  192. 鈴木力

    鈴木力君 いま文部省からお伺いしましたように、現地ではもうこれは何にもなかったということで解決をしていることですから、いまから現地をどうこうしろという意味で私が聞いているのじゃありませんから、その辺はあらかじめはっきりしておいていただきたい。  私が伺いたいのは、こういう事実に対して、警察がいまのような情報でそれぞれのところに連絡をした事実はそのとおりでありますから、それで私はどうこうは言わないのです。それでこの種の問題に対して警察がタッチをすべきものの範囲は一体どの程度のものなのか、それを伺いたいのです。警察庁としてどの範囲のものが教育中身であり、教育をやっている教室の中まで入り込んで情報を集めとるべきことにされておるのか、それを伺いたいのです。
  193. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) いろいろお尋ねでございますが、私どものほうで、学校の中に立ち入ってだれ先生がどういう授業をやっておるのかというような、内容に立ち入った調査は命じてもおりませんし、また行なわしてもおりません。で、上北中学校の問題の場合は、これは先生がそういうことを教えたようでございますから、当然教わった生徒のほうから流れ流れて警察の耳に入る、こういう状況でございまして、学校の中に入っていく、あるいは学校の外であっても同様でございましょうが、だれ先生がどんな授業のやり方をやっているというようなことまで私どものほうでは調査をするというような考えは毛頭持っておらぬわけでございます。
  194. 鈴木力

    鈴木力君 そういたしますと、警察としますと、こういう問題については特に情報を聞いたら連絡すべきであるとか、そういうような方針は出していないと、こうおっしゃるわけですか。
  195. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) それは、私どものほうでは、警察に何らかの、まあ警察の仕事はたくさんございますが、何らかの形で現在ないしは将来において役に立ちそうであると思われるものは、単にその情報を見たり聞いたりしたものも知識にとどめておかないで、それを何らかの形において蓄積をしていきたいと、こう考えております。した、がいまして、青森県のほうではこれはやはり中央のほうにあげたほうがよろしかろう、こう判断をいたしたものだろうと思います。私はまたその判断が正しいと思いますし、こういうことがあるいは青森県以外において行なわれるかもわかりません。そこで行なわれておらぬかもわかりませんが、いずれもそうしたことは警察の仕事をやっていく上においても、十分に将来あるいは現在でも参考になっていると、こういうふうに考えておるわけでございます。
  196. 鈴木力

    鈴木力君 それでね、私の伺いたいのはそこなんですよ。将来何らかの役に立つものは蓄積して資料を集めたい、いまの、この百石中学校の子供たちが、お祭りに出て、しかも、私が聞いたところでは、そのお祭りをやるほうの主催者側から、学校に要請があって、お祭りに参加をしてくれ、仮装行列等も出してくれ、これは、例年、それを年中行事でやっているということですね。その中にたまたま全学連という全学連ごっこがあれば、これが将来の蓄積になるから警察情報でそれぞれのルートを通じて情報をあげる、それが警察官の任務だという意味で、いま、あなたがおっしゃったと聞いた。そういたしますと、将来役に立つというそのものが、一体どこまでを言っているのかということを聞いている。
  197. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) 私どもも、まあいま百石中学校のほうの仮装行列の問題で申しますと、先ほど申しましたように、私どもも、これはあるいは全学連ごっこであるかもしれない。しかしながら、書いてある内容を見ると、どうもはなはだ中学校の三年生が書いた内容にしては、いかにもおとなっぽい。そこで、これはどうもそういうふうに仮装行列で何でもないんだというふうに見過ごしていいのかどうかということになりますと、やはり、これは一つの特異な状況でございますから、例年、お祭りに仮装行列をやったにいたしましても、そういう形で出たという例は私どもは聞いておりませんので、やはり特異な事例として報告をする、こういうことになったわけでございます。
  198. 鈴木力

    鈴木力君 いまのそれはこの警察官職務執行法のどこによって、それをやっているのですか。
  199. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) 私どもは、本件に関しましては、これは警察官職務執行法の範囲の外であって、そうしてこれは警察法に根拠があるというふうに考えております。警察法の第二条に、「(警察の責務)」という規定がございまして、これは人の生命、身体、財産の保護及び公共の安全と秩序を守るという、大ざっぱに申しますとそういう規定でございますが、そういうことに関連をいたしまして、所要の事柄について、場合によっては積極的に情報を集めることもありますし、あるいは消極的に耳に入ってくるものを、それをただいま申しましたように整理をして保管しておくと、こういうようなたてまえで進めておるわけであります。
  200. 鈴木力

    鈴木力君 そういたしますと、たとえばいまのこの上北中学校の生徒の授業が「個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の……」第二条ですね、「個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、」——このうちのどれに入るのですか、この授業は。
  201. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) これは、第二条に、いま先生がお読みになりましたように、第一項に書いてございます。  そこで、その問題のとらえ方でございますけれども、これは単なるごっこであるというふうにとれば、まさしく、それは警察のタッチすべき事柄ではないと思います。しかし、先ほどから申し上げますように、どうもなかなか子供だけで考えたというふうにも見られぬ節がありますので、やはりこれはそれなりの特異性がある。そこで、これは第二条のどこに当たるかとおっしゃれば、かりに、その子供たちの中に、現実にそういうごっこではなくて、ほんとうに全学連のまねをして、何かやろうというような気持ちが若干でもございましたとするならば、それは、ずばり、この第二条の中のいずれかの項目に入ることは間違いがない、こういうふうに考えるわけでございますし、それから、もしか指導者でもおったと仮定いたしますと、その指導者は一体いるのかいないのか、もしおったとすれば、がんぜない子供に対してそういうことまでやらせるという、そのこと自体がやはり一つの、私どものほうで申しますと、犯罪の予防というような見地から、そういう状況は知っておく必要がある、こういうふうに考えたわけでございます。
  202. 鈴木力

    鈴木力君 まあこの中身の議論はしないと言いましたけれども、私はいまの参事官のお答えで非常に危険なものを感ずるのですね。たとえばいまの百石の事件でも、文部省の局長の答弁がありましたように、文部省筋から教育委員会を通じて調べておる。これは何にも問題がない、中学校の生徒のちゃめっけだという結論が出ておる。しかも、どこからの情報かわかりませんけれども、NHKやその他の報道関係も行って調べておる。調べたらば、ばからしいやと、こんなこと記事にならぬということで帰ってきておる。そういうものを、そこにおったおまわりさんの判断で、教育的にどうこうということを言うというところに、私は非常に身の危険を感ずるのです。  それからもう一つは、上北中学の場合は、いまそこのおまわりさんがだれからか聞いた、その聞いた情報だと、こう言う。そんな不確実な情報を、個人の生命、財産を害するという判定で警察庁を通じて公にそういうような情報を流し歩くということになってくると、一体いまの警察というのはどういうことなんですか。まあいまの参事官の御答弁はどうも私は事実と反しているような気がするのですがね。上北の場合には、そのおまわりさんは生徒の父兄であった、そうしてその授業を見ておったという説もあるし、見ていないがノートを調べてみて、これはと言ったという説もある、これは私はどっちかわかりません。しかし、そういうことだから、現地では以後駐在所の方が教室に来たりPTAの総会に来たりした場合には危くてものが言えないということになるでしょう。これは教育行政系統が責任を持って調査した結果、警察の情報がうそだという結論が出ている。しかも、いまの参事官から申された、子供の書いたものがおとなっぼいからということになってくると、いまの中学校の生徒の表現力がどこまでかというのは、あなた方何で判断している。まずそれを伺いたいのです。おとなっぽいと判断をした根拠
  203. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) まあ私どもは、つまり警察に職を奉ずるものでございますから、警察法に定められた職責を十分に達成するために努力をする、これは当然でございます。そこで私も子供がございますけれども、一般的にどうも——それは先生のお話だと、あるいはそれは警察の常識であって一般の常識ではないとおっしゃるかもしれませんが、警察のもとに私ども職を奉じているわけでございますけれども、私どもの常識からいたしますと、どうも、その表現力といま先生おっしゃいましたが、何かこう、ちょっとそれだけでもないというふうに感じたわけです。したがいまして、これは私どもは何が非常に重要なものを含んでおるというふうにも必ずしも断定したわけではございません。これは参考までにということでお知らせをしたわけでございます。
  204. 鈴木力

    鈴木力君 あなた参事官ですから、きょう私のほうもまた時間のないときに警察庁の長官にということを言ったので、これは私のほうが無理な注文をしたのですから、あなたが来たのには私は文句は言いません。したがって、正式な警察庁の見解とか、あるいは国家公安委員会見解というのは、あなたを相手に議論しても私は議論にならないと思いますから、まあ事実関係と警察側のこの段階での考え方を伺えばいいのですけれども、ただ私はいまの御答弁でも非常に心配なんです。警察がやるときには何をやってもいいのだ、たとえばこの百石の場合でもそうなんですよ。このことによって、だれか教員に、変なことをやっているということで、一ぺん調査をされているわけです。教育を受けている中学生もその対象になっているわけですよ。それから上北中学でもそうだ。ことに、きょうは私があげたのは二件ですけれども、二件だけじゃないのです、こういうことになってくると。学校の回りには警察というスパイがいるということなんです、こうなってくるとね。開けてみれば事実無根、しかも百石町の場合にはお祭りに参加した人たちも、こんなことをだれも問題にも何にもしていないわけだ。学校のまわりにスパイをおいておるようなことが、一体いまの憲法下においての教育に許されるのかどうか、私はこういう面から非常に危険を感じてきているのです。警察は疑わしいと思えば何をやってもいいんだ、こういうことになってきたら、たとえば私なら私がどこかの店のウインドウを横目で見て歩くと、そうするとあいつは万引きするのじゃないかということで、物ほしそうな顔で見て歩いたから万引きするのじゃないか、そういうことも情報で出せるということなんでしょう、しかも教育のことまでそういう簡単に考えてやれるという立場を警察がとっているというところに非常に大きな問題があるということで私はきょう問題にしたのです。だが、あなたからの御答弁で警察の考え方というものはわかりました。この考え方について私は了解したとかという意味ではわかったとは言わないですよ。たいへんなことなんです、これは。出た事柄は青森県のことで、しかも教育委員会が行って調べたら、これはもうそんなものじゃありません。こういうことになっているから先生たちも初めて安心をしておるわけですけれども、しかしこういうスパイ網が全国の学校の回りに回らされておる、こういう環境で教師は教育をし、子供たちは教育を受けなければならぬといういまの日本の状態が、これはたいへんなことだと思うのですよ。あなた、子供らしいこととかおとならしいという判断をすると言うけれども、見てごらんなさい。小学校の一年生が安保反対と、こうやってごっこをやっているのです。新聞やテレビの作用というのがものは別としてそういう遊びだってあるわけです。それは安保反対というからこの親が左とかという情報をまた出されたら一体どういうことになりますか。そういう立場から私はこれは非常に大きな問題だと思う。しかも警察法の二条なり、あるいは警察官の職務執行法なりを読んでみても、こういうことを警察がやるのだということは、どう見ても書いていない。個人の生命財産を、全学連ごっこをやれば大きくなったら全学連に入るかもしれないから、そうすると角棒でだれかをなぐれば個人の傷ぐらいつくかもしれない、こんな論法でこういうところまで手を出すということになれば、これは容易なことじゃないと、こう思っておるのです。だけれども、これはあなたといま議論してもしょうがない、のこの事件に対する、この種のものに対する、いまの組織と考え方と態度について私はわかったという……。  それからもう一つだけ伺いますが、これも御質問だけいたしますが、警備情報というのがありますね、警備情報というものは、一体どういうものが対象となって情報が出されるものであり、どの範囲にこの情報というのが歩いているのか、組織的に警察は。それは私はどうしても疑問な点があるから、それをきっちり聞きたい。
  205. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) いま先生のお尋ねは、警備情報に関するお尋ねでございますが、警察の必要といたしますものは、警備に限りませんで、あるいはまた同じ情報ないしは同じ資料というものも警察の手に入れば、それは警備に利用されるといいましょうか、活用されるのみならず、あるいは犯罪予防に、あるいは刑事事件の捜査に、いろいろ役立てられるわけでございますから、必ずしも警備情報が警備にだけ役に立つ、こういうものではなかろうと思います。しかし、いずれにしましても警察の中には警備部門というのがございます。その警備の部門が担当しておりますものは、端的に申しまして集団犯罪になる、大ぜいの人々による犯罪が行なわれる場合に、事前においてその情報を知るというそういうことが警備情報の一つのねらいでございます。しかしながらいま申し上げましたように、警備情報が警備だけに役立つのではなくて、それはほかのほうの警察の分野にもそれぞれ役立っていくと、こういうことでございます。
  206. 鈴木力

    鈴木力君 たとえば、これは公安で扱うことなんだけれども、警備情報というのは、次のことと書いてあるでしょう。刑法、破壊活動防止法、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法第六条及び第七条に規定する犯罪、それから、日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法に規定する犯罪、それから公安の二課の扱うことには、極端な国家主義的主張に基づく暴力主義的活動に関する警備情報の収集、その他と、こうあって、やれることの中身というのはほぼきまっておる。  そうすると、たとえば社会科の授業で、事実私が聞いたところによると、いまあなたが答弁したような授業はしていない。こういう政党のこういう考え方もあるということでいろいろな考え方を並べて指導をしておる。たまたまいまの与党の違う考え方があるということをその中に並べただけで、国家、生命何々ということでもう情報が流れておる。これも私はどうも納得ができない、いまの答弁では。しかしまあ、何でもやれるという意味のあなたの御答弁ですから、それ以上は追及いたしません。  それからもう一つは、この情報がどういうルートでどこを歩いているかということを聞きたい。
  207. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) いま先生のお尋ねの件は、私のほうでいわゆる警備情報といいますものは、警察庁の警備局があり、都道府県にそれぞれの警備部があり、その下に警備課あるいは公安課がある。それからさらに警察署にそういう課ないしは係があるということで、その系統で情報が収集されるわけでございますけれども、それに属し労い、たとえばまあ交番に勤務している者、あるいはほかのほうの分野に勤務している者の中でも、見たり聞いたりしてわかって、これが警備のほうに役立つというものについては、これはそちらのほうからもそういう連絡を受けると、こういうかっこうになっておるわけでございます。
  208. 鈴木力

    鈴木力君 具体的に言いますけれども、文書の写しかどうかわからぬけれども、それらしきものが保守党の県会議員のポケットに入っておって、そうして問題になったという事例があるから私は聞いている。
  209. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) 先生のお尋ねが、あるいは特定の政党の方々にそれが流れるのかというお尋ねでございますならば、そういうことはございません。
  210. 鈴木力

    鈴木力君 私の聞く意味はそうじゃなくて、非常に重要な問題でしょう。重要な問題が軽率にその地域で問題になって、個人を傷つけたり、子供の名誉を傷つけたりするようなそういう情報が軽易に流れておる。この扱いは一体正しいのかどうかということを聞いておる。
  211. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) 私ども実は先生のおっしゃる仮装行列が全くのごっこであったとか、あるいは上北中学校における授業の内容が事実無根であったということを、実はいま先生から初めて承って私は承知したわけでございます。それ以前の段階は、現にここで私が参ります間、私どものほうに報告のあったものがそういうそのままの形でそれが真偽いずれであるか私はむろんわかりませんけれども、そういううわさがある、あるいはそういう話があるということで出てきたものでございます。  それから仮装行列のほうは、これはまあ全くだれでも見えるところでやったわけでございますから、ちょっとこれは普通はあまりやられないことでございますから、それについて報告をしてきたと、こういうことでございます。
  212. 小林武

    小林武君 関連。一つだけ確かめておきますが、またいずれ機会があったら……。あなたのほうで仮装行列のやり方を見て、これは直ちに、先ほど来言っているあなたのほうのその生命何とかの法に引っかかるというようなぐあいに判断して現在やっておる、こういうふうに確認してよろしいですか、仮装行列の。
  213. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) 仮装行列一般について私どもがどうこうという関心はもちろん持ちません。また持つべきでないと思います。ただ、しかし、鈴木先生が、これは内容についてはということをおっしゃっておられますけれども、内容において、あるいはそのやり方においてこれはどうかなと、そういう警察官の常識と申しますか、そういう観点からこれはどうも一般的でないと、そういう考えである事実を見た場合には、これはやはり当然しかるべきルートを通じてまあ私どものほうにもその報告がくる、これは当然のことだろうと考えております。
  214. 小林武

    小林武君 もう一ついま確めますが、それじゃいままであまりやっていなかったわけですか。特段にその仮装行列の中で全学連のまねをしたのが問題になったと、こういうことですか。それは従来もずっと仮装行列というようなものをあなたたちはやっぱり注目しておった。このように仮装行列でもいかがわしいものもあるだろうし、いろいろなものがあるから仮装行列に対してもちゃんと目をみはっておるというようなこと従来あったんですか。
  215. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) 私どもは、その仮装行列に話を限定しておっしゃいましたが、仮装行列であろうがなかろうが、警察の責務を達成する上においてこれは必要であると思うようなものにつきましては、それは相当なむろん強制力にわたるような場合においては、特定の法律の根拠が要りますけれども、そうでない見たり聞いたりしたことは、やはりできるだけそういうものを集めておくほうが、これは警察の仕事をやっていく上において非常に便利でありますし、また当然そうでなければならぬのでございます。いま実は私そこまで申し上げるのはいかがかと言いましたが、鈴木先生御出身の岩手県の釜石市に、たしかことしの初めと思いますが、マンションに住んでいる一人の老人が殺された事件がございました。この方は実は金を貸しておるといううわさがありまして、それは警察のほうで知っておったのでございます。それが端緒になりましてきわめて短時間の間に現場の状況から見てこれは物取りではない。何らかの別のものであろうということで、そちらのほうが端緒になって犯人検挙に至ったというものもございますから、これからここまでは絶対に入っちゃいかんと、こういう線はこれはもうもちろんあろうと思いますけれども、およそ世の中の事象についてはできるだけ耳目を鋭敏に働かして知られるだけのことは知っておくということ。それから知った以上は、それが何らかの参考と思われるところにはそれぞれお知らせする。これはやはり警察のつとめだろうと思います。それが警察法二条にいいますところの公共の秩序の維持にかかわるものだろう、こういうふうに考えておるものでございます。
  216. 鈴木力

    鈴木力君 これでもうお伺いいたしませんが、あとはその警察庁を代表するどうこうということになると、これはあなたに気の毒させてもいけないから、それで私はこのことはやめますが、ただ、これでわかって理解したということじゃないわけです。聞けば聞くほどたいへんなことです。金を貸したという情報が、ある刑事事件と教室での先生がどういうことを言ったということを同じ次元でとらえているということについて、私は背筋が寒くなる。  もう一つは、そういうことまでがいまの警察の任務だと、たとえば私が何ぼ借金があるか調べておかなければ、だれが私のところに殺しに来るのか、あるいは何しにくるのかわからぬわけですから、そういうことまでが警察の任務だ、こう答えられたことにも非常に私はこわい気持ちになる。たとえば人殺しの事件、それを予防するということと、教室の中で先生がこう言ったということが同じ次元でとらえられておる。子供がごっこをやったことと、教育的判断を無視して、そのおまわりさんの判断で危険だときめてしまうというこの警察の態度に非常に危険なものを感じておる。したがって、これはあとあなたとは論争をいたしませんので、伺っただけです。このあと責任者にこれはやはりほんとうのことを言ってもらわなければいけませんし、ある程度これはもう調査もしなければいけないと思いますから、きょうはこれで質問は私はおしまいにいたします。
  217. 後藤信義

    説明員(後藤信義君) 答弁は要らないというお話ですが、実は一言申し上げさせていただきたいと思います。  というのは、つまり上北中学校の場合でございますが、この場合、私どものほうは情報源というようなものはあまり申し上げたい気持ちはないのでありますが、先生せっかく何か授業参観であるとか、あるいは子供が言っておってそれから聞いたとかいろいろお話がありましたが、私どもの報告を受けているのは、子供からおやじさんが聞いてそれを知らせたということであります。そこで、そういうことがかりに事実であるかどうか、これはしかるべき方法で今度は教育系統のほうでお調べになればよろしいと思います。しかしながら、そういうことがほんとうかうそか知らぬけれども、そういううわさがあるということくらいはこれはやはり警察として知っておいて——知ること自体がいかぬというようにおっしゃっていただくとどうも私どもも非常に仕事がやりにくいと申しますか、つまり人の生命、身体、財産ないしは公共の安寧と秩序を守るという責務が十分果たされないということがある、こういう実態でございます。殺人事件と教室の中と違うとおっしゃいましたが、私ども大勢の先生がそういうことをおやりになっており、それが常識であるということになればこれまた別問題だろうと思いますが、たまたまある特定の先生が子供に対して、いわば政治的な意味の授業をおやりになったということは、これは非常に特殊な例だろうと思います。そうなりますと、私どもはその教わったほうの子供に対する影響、その子供がどういうような行動に将来出るかという問題もございましょうし、また、ある特定の学校においてそういう授業をやったといううわさと申しますか、その段階でうわさがあったといたしますと、それを知っておくことは、これは私ども普通の先生とは違う先生がおられる、こういうふうに考える——考えるというか、そういうことを知っておくことは、これは警察として責務を達成する上において必要である、こういうふうに考えます。
  218. 鈴木力

    鈴木力君 私は自分の意見を申し上げて質問をやめると言っておったのですが、またよけいなことを答弁されるからここで終わるわけにはいきませんよ。
  219. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  220. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 速記を始めて。
  221. 鈴木力

    鈴木力君 私はもう一言言いたいというのは、何かこっちの質問の意図というものをすりかえていろいろ言っておられるからはっきりしておかなくちゃいけないということなんですよ。たとえば教育が偏向かどうかということなんですよ。あるいはいま政治的どうこうと言われたけれども、これはちゃんと政治的中立を守らなければならない法律があるわけです。これを担当しているのは教育行政だ。その行政を乗り越えて、そうして入り込んで、しかもその教育をわからないしろうとの警官が判断をしておとなっぽいとか、これが偏向だとか、そういうことに軽率に情報に流されることが——私の言っているのは警察が知っているか知らないかは、そんなことは別だ——そういうことが教育に対していろいろな恐怖をいま与えている。そういう点で私は非常に危険だと、こういうことを言っている。だから私は警察の介入すべき範囲というのは、少し範囲を越えているんじゃないか。あるいは教育行政のところに入り過ぎているんじゃないか。そういう意味でものを言っているわけなんです。大体それを同じ次元でどうこうと一どうこう言い方はありますけれども、犯罪の予防という立場から、いつでも教室に何かあるんではないかという形で、一部を見てそうだというふうな形でこれを警察の任務だとしているところが問題だ。したがって、これはあと責任者とこの問題については、さらにこれは議論をいたしたいという気持ちがある、こういうことを言っているわけなんです。これは答弁は要りません。私の質問した立場だけをはっきりしておいて、終わります。
  222. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 本件に関する本日の質疑は、この程度にいたします。     —————————————
  223. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 次に、私立大学等教育研究費補助及び中高校生の就職問題に関する件を議題といたします。  政府側からは、天城初等中等教育局長、村山管理局長、保科労働省業務指導課長、以上の方々が出席いたしております。  本件について質疑申し出がございますので、これを許します。柏原ヤス君。
  224. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 大学紛争がいま問題になっておりますが、私学の紛争の多くを見ますと、経営、経理等の経済的な要因が多いように思います。私も、そのような紛争は早く解決したいものと思う立場から、私学の補助についてお聞きいたします。  現在、私立大学の学生の数は国立大学の学生の数に比べて三・五倍も多い。しかし、その私立大学に対する補助は、国立学校費の約二十五分の一というわずかな補助が予算の上に盛られております。したがって、私学の学生は国立に比べて十倍以上の納付金を納め、国立大学に比べて非常に恵まれない環境に置かれておりますが、このような私学の現状に対して文部省はどのように考えて対策を立てておられるのでしょうか、お聞きいたします。
  225. 村山松雄

    説明員(村山松雄君) 私学の実態につきまして柏原先生の御指摘のように、国立大学より多数の学生を収容し、反面、国庫助成は僅少であって、主として学生ないし、その父兄の負担に依存して経営が行なわれておるということは事実でございます。そこで、私学の助成につきまして、文部省としても学校教育法上のたてまえもさることながら、客観情勢の変化もございますので、従来以上に助成すべきであるという観点から、私立学校振興方策調査会に諮問をし、その答申を得まして、その線に沿って助成の拡大につとめております。昭和四十二年度におきましては、新しく実現をみましたものといたしまして、私立大学の教育研究費のうちの物件費の部分の助成につきまして約三十億円を計上したものもその一つであります。御要望に対してまだまだ不十分でありますが、今後ともにこれを拡大していきたい、こう考えておるのが実情でございます。
  226. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 いまお話がございました私立大学教育研究補助金についてお聞きいたしますが、交付要項の中に、「学園紛争により学校運営が正常を欠くに至ったもの」は補助対象から除くとありますが、具体的にどのような場合を示すのでしょうか。
  227. 村山松雄

    説明員(村山松雄君) この教育研究費の目的が、私立大学における教育研究条件の改善をはかり、あわせて経営の一助にも、ということでございます。そこで、補助金を受けるものは、それを教育研究用の設備備品の購入に当て、かつ予算当該年度にこれを使用しなければならぬということに相なるわけでありまして、いろいろな事情——紛争もその一つでありますが、そういうことで教育研究活動が停止状態にあるようなものにつきましては、補助金を受けても、これによって物件を購入し使用する、つまり補助目的を達成する見通しがたたないと考えられますので、こういうものは除外するほかはないということでありまして、それが具体的にどの程度の紛争があればというような明確なものはございませんが、常識的に申しますと、年度中に正常な教育研究を行なえる見通しがたたぬというものは結果的には補助できないということに相なろうかと思います。
  228. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 そこで八月二十八日の衆議院文教委員会で長谷川議員がこの問題について質問しております。それに対して管理局長が答えていらっしゃいますが、そこのところを見ますと、どうしても説明をしていただきたいところがございます。その一つをお聞きしますが、二つの場合をあげておりますが、そのあと一つのほうに、「紛争といっても非常に深刻であって、きわめて長期にわたり授業も行なわれないというふうなことになりますと、この教育研究費の補助は私学の教育研究内容の充実向上をはかるのが目的でありますので、教育研究が事実上行なわれていないとすれば、この補助金は全額補助でなくて、」云々とございますが、その一つの、「紛争といっても非常に深刻であって、」とこう言っておりますが、「非常に深刻であって、」というのは何を示しているのでしょうか。また、どの程度を深刻というのか、その基準を示していただきたいと思います。
  229. 村山松雄

    説明員(村山松雄君) 深刻でないというのは、いろいろ争いごとがあるけれども授業がまがりなりにも行なわれているというようなものはさほど深刻とは考えませんけれども、授業、言いかえますと、教育研究が全く停止状態にあるというものは深刻と考えざるを得ないわけであります。
  230. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 その次に「長期にわたり授業も行なわれないというふうなことになりますと、」と言っておりますが、その長期とは何日以上を示しているのですか。
  231. 村山松雄

    説明員(村山松雄君) 別に何日という基準はございません。常識的にいって、予算であり、これは学校でありますから、年度をもって仕事が区切りがつくわけでありますが、その年度の大部分というようなことに相なろうかと思います。
  232. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 先ほども研究をしなくなった場合、研究ができなくなった場合云々とおっしゃっておりますが、この要項にはそういうことは書いてございませんですね。ただ学園紛争が行なわれているところはというふうに言っておりますが、学園紛争が行なわれていても研究をしている場合もあるわけです。こういう場合は補助金を出すのですね、そうしますと。
  233. 村山松雄

    説明員(村山松雄君) 紛争ということの実態の判断のいかんでありますが、非常に神経質にとらえれば、大なり小なりもめごとのある大学というのは多いわけでありますが、補助金は、前にも申しましたように大学の教育研究条件の改善と経営の一助ということでありますので、きわめて深刻であって教育研究が全く停止状態、しかもそれが長く続くというような場合にこれはやむを得ずとめざるを得ないということで実際は運用いたしたいと思っておりますので、多少の紛争、教育研究が長期にわたって全く停止状態でないようなものについてまで補助金をとめるというようなことは考えておりませんし、またそういう線で仕事を進めておる実情でございます。
  234. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 くどいようですけれども、もう一度お伺いいたしますが、学園紛争が行なわれていても研究をしている場合は補助金を出すということが確認されてよろしゅうございますね。
  235. 村山松雄

    説明員(村山松雄君) 大体そのように御了解願ってよろしいかと思いますが、一言申し添えますと、紛争の中で理事者間の経営に関する紛争がございます。はなはだしきはその理事長の正当性を争って訴訟をやっているというようなものもございます。そのような場合は、かりに授業のほうはやっておっても学校法人の主体性の点で非常な問題がありますので、そういう場合にはこれまた補助金を出すにしても相手方が法的に疑問があるというような事態の場合には出さない場合もございます。そういうぐあいに御了解願いたいと思います。
  236. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 この一要項の中に「学園紛争により学校運営が正常を欠くに至ったもの」を補助の対象から除外すると示した以上は、この学園紛争という問題について具体的な、そして客観的な基準をつくるべきであると私は思います。そうでなければ、文部省の思いどおりにこの補助交付がなされるという、きわめて不明朗なことが起こるのではないか、こういうことを心配するわけです。
  237. 村山松雄

    説明員(村山松雄君) 文部省と申しますよりは、管理局で私学助成のことを扱っております場合に、慣例といたしまして、重要な事柄をきめる場合には私学側と話し合いをして、その了解線に沿ってものごとをやる、こういう慣例がございます。この新しい教育研究費の配分につきましても、客観的な基準を数学的にきめられればたいへんけっこうでありますが、紛争と申しましてもいろいろな実態がありまして、一がいに文字や数字で基準をきめがたい点もございますので、具体的な適用にあたってはきわめて慎重を期すると同時に、私学側の意見を従来やっておりましたようなルートを通じて十分承って、納得ずくで実施したい、かように考え、またそのとおり実行しておるわけでありまして、決して文部省がかってにとめたり、あるいはこのぐらいならよかろうというぐあいに判断してやるわけではございません。私学側と十分話し合って納得のいく線でものごとを処理するつもりでございますので、さような御懸念はないのではなかろうか、かように思っております。
  238. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 もう一つお伺いしたいことは、この交付要項を見ますと、紛争が行なわれている私学に補助金を出さないなんという考え方になると思うんです。そうしますと、国立大学で紛争をしているものは国庫からの支給はしないということになりますが、これはどうでしょう。私立大学に限って学園紛争云々ということでは片手落ちになった考え方になるのではないかと思いますが、いかがでしょう。
  239. 村山松雄

    説明員(村山松雄君) そういう感覚は常識的にいってあり得ると思いますけれども、やはり現在の法律制度からいきますと、これは学校に限って申し上げましても、学校の設置者はその設置する学校の経費を負担するということになっておりまして、国立学校はとにかく経費の負担というのは国の義務になっているわけであります。それから私学につきましては、私立学校法によりまして、必要に応じて、振興のために必要ある場合はこれを補助するということになっておりまして、たてまえが違うということからやはり扱いも異なってくるのが実情だろうと思います。
  240. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 もう一点お伺いしますが、この紛争を解決すれば補助金をやるという、こういうふうに交付要項考えますが、そうなりますと、教育研究補助金の性格から逸脱したやり方ではないかと思いますが、いかがですか。
  241. 村山松雄

    説明員(村山松雄君) 繰り返しになりますが、この補助金の目的が私学を助けてやるというのではなくて、やはり教育研究条件の改善のために教育研究上必要な機械器具、備品等を購入するための経費の一部を補助するということでありますので、紛争のあるなしにかかわらず、とにかくそのような教育研究用のものを買って年度内に使用するという条件が満たされそうもないと判断する場合には、やはり文部省としては出せない。かりに出した場合、おそらく会計検査院から補助金の目的達成困難なところに補助した不当の措置であるというふうな指摘を受けるというようなことも予想されますので、文部省としては、そういう場合には補助を出せない。これはまあ出さないというよりはむしろ出せないというぐあいに御了解願ったほうがよろしいかと思います。
  242. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 補助対象から除外するものの中に、「教育研究条件が低く補助効果が期待できない」大学と、こうあげておりますね。教育研究条件が低いということはどういうことを言っているんでしょう。また、そのような大学はどういう大学が該当するか、おっしゃっていただきたいと思います。
  243. 村山松雄

    説明員(村山松雄君) 大学は、大学設置基準によって、これを基準として設立の認可をなされ、以後はこれを維持することはもとより、これを向上させるように運営すべきものでありまして、教育研究条件が低いというのは、設立当初の設置基準、これはまあ設立当初には年次計画どおり充足が認められておりますが、そのような充足を一向にやっておらない。それから、設立後年度の経過した大学においては、現在の時点で基準に照らしてみるとまるで合わないというようなところが、教育研究条件がきわめて低いというものに該当するかと思いますが、今年度の補助申請を具体的に見ますと、申請があった限りにおいては、そういう大学は幸いにして見当たらないといってよろしいかと思います。
  244. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 補助金の性格からして、私は教育研究条件が低い、補助効果が期待できないような大学、そういう大学にこそ補助金を与えるべきであると思いますが、その点はいかがですか。
  245. 村山松雄

    説明員(村山松雄君) その点も、そういう御意見ももちろんあり得ると思いますが、この教育研究費の補助金の基礎となった考え方といたしまして、先ほど申し上げました私立学校振興方策調査会の答申があるわけでありますが、その答申では、私学の補助といっても、画一的にやっていけないものを助けるというような考えよりは、むしろ重点的に国家社会的に見て必要な分野であるとか、あるいは教育研究の世界的水準の維持向上に役立つようなところに重点的に配分するとか、むしろ重点補助の考え方が出されておりまして、文部省としては、現在のところその答申の線に沿った計画運営をやっていきたい、かように考えておるわけであります。救済的な問題をどうするかというのはまた別の角度で検討すべき課題ではなかろうか、かように存じております。
  246. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 補助対象となるものについて五千円以上そして十万円以下の設備・備品と、こう言っておりますが、十万円以下のものではたいしたものは買えないと思います。現在各大学から申請してきているのはどのようなものがございましょうか。
  247. 村山松雄

    説明員(村山松雄君) 補助対象の金額の問題でありますが、五千円以下を切っておるのは、あまり零細のものは除くという考え方でありますし、十万円という上の限度をきめておるのは、現在の他の種類の補助金との均衡を考えたわけでありまして、現在大学局所管で私立大学の研究設備の補助金というものがございますが、これは大きな研究プロジェクトに伴う機械器具、備品ということで、これまた下の限度が十万円以上になっておりますので、これらと重複を避ける補助金の各分野の分担を明確にするというような意味できめておるのにすぎないのでありますが、これが合理的であるかどうかについてはいろいろ意見があります。率直に申しまして、私学側でもこういう制限は窮屈であるから再検討してほしいという御要望がありまして、現在私どもも検討いたしたいと思いますが、今年度の補助金はとにかくきめたことでありますので、現在の補助要項でやらしていただきたいと思っております。そういう関係でありまするから、補助の対象になっておる大学の事業計画で購入計画を持っておりますものも、あまりこまかいものではないが、さりとて大ものでもない、御説明になりませんけれども、そういうものを購入する計画を立てておられるようであります。ただ実態から申しますと、そういうものももちろん私立大学が教育研究をやっていく上において必要なものでありますし、現に補助金がなくても購入されておるわけでありますので、そこに三十億円の金が投入されるということになれば教育研究条件の改善になることはこれは間違いない、かように思っております。
  248. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 現在この補助金を決定するに際しては、どのような人たちで、どのような方法でこれをきめているのか、その経緯を明らかにしていただきたいと思います。
  249. 村山松雄

    説明員(村山松雄君) この補助金は、積算基礎が大体先生の数を基礎にいたしまして、これを大学院があるなし、それから理科系か文科系かというようなことからいたしまして一人当たりの金額を仮定いたしまして、人数かける一人当たり金額の合計ということで積算しております。配分は、簡単に申せば、その積算を裏返して私学の具体的な購入計画と照らし合わせて金額をきめていくわけでありまして、きわめて事務的に処理できる性格のものでありますので、管理局の事務負担だけで配分案を考えております。ただ、その配分案を実行するにあたりましては私学側と相談いたしまして、その御意見を取り入れたり了解を得たりして執行する、こういう体制をとっております。
  250. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 この補助金行政については、いままでの例から見ましても絶えず政府の思いどおりに動かされている傾向が見られます。特に教育研究は、行政からの中立が大切であります。そういう立場から、英国のように大学補助金委員会というような独立した配分機関を置くべきであると、このように思いますが、いかがでしょうか。
  251. 村山松雄

    説明員(村山松雄君) 将来私学助成がもっと大規模化する場合においては、そういう考え方も確かに検討に値すると思いますが、現在までのところ物件費を中心に、かなり客観的な積算の基礎でやっておる段階におきましては、審議会をつくりましても、実際問題として事務的に計算したものをいじる余地というものはほとんどないわけでありますので、現段階では必要なかろう、かように考えております。
  252. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 次に、中高卒の就職状況についてお尋ねいたします。  ことしも中高の新卒予定者に対する産業界からの需要は非常に高く、特に中卒予定者に対しては六倍をこす未曽有の求人難であると伝えられておりますが、この中高卒予定者に対して本年の求人の現況はどうなっているか、労働省にお伺いいたします。
  253. 保科真一

    説明員(保科真一君) 来年三月卒の中卒者、高卒者につきまして、どういうふうな就職希望状況があるか、現在のところどの程度求人があるか、十月一日現在で職業安定機関を通じまして学校の協力を得まして調査したわけであります。それが就職希望者につきましては、中卒の場合は昨年と比べまして一六・七%減、高卒につきましては八・七%減。就職希望者は減少しておりますが、求人のほうは非常に増加をしております。中卒で昨年同期に比べまして一五%の増、それから高卒につきましては二三%の増というようなことでございまして、したがいまして、求人倍率は中卒が六.一倍、高卒が三・一倍というような状況になっております。
  254. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 文部省にお伺いいたしますが、このような現況に対して次官通達を出していると聞いておりますが、どのような内容でございましょう。
  255. 天城勲

    説明員(天城勲君) これは高等学校、中学校の新規卒業者の推薦開始時期等についての通達でございます。三十五年に文部、労働次官名で出しております。御案内のように中学校、高等学校の卒業生の就職につきましては、職業安定法による職業紹介の方法がきまっております。中学校では大体九〇%以上がこの職業安定法による職業安定所の紹介による就職でございますし、高等学校の場合には職業安定所の委託を受けてやる、あるいは職業安定所にかわってやるというやり方が逆に九〇%以上でございます。したがいまして、特に中卒の問題につきましては、この職業安定所の職業紹介という方法が中心でございます。  そこで、この三十五年に出しました通達の趣旨は、就職の推薦とそれから普通にいいます就職試験の時期、これがまちまちですと、学校教育の上に非常に影響がございますので、これについて関係の教育委員会、学校に対しまして、時期の問題について特に申しているのが、この通達の趣旨でございます。中身は、高等学校については十月二十七日以降推薦開始と、それから十一月の一日以降の選考開始、中学校については一月以降の推薦開始ということで、地域によって若干雪の地帯とかなんとか例外がございますが、こういう取りきめをいたしまして、学校側や関係者に指導いたしているわけでございます。この両次官名による通達の趣旨を、毎年のそのときの状況に応じまして、新しい事態を考慮して、この趣旨を指導の基本方針にいたしておりまして、四十二年におきましても、年度当初にこれは初中局長と労働省の安定局長の両者の名前で、やはりこの趣旨をふえんした通達を出しております。
  256. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 その通達は現在守られておりますんですか。
  257. 天城勲

    説明員(天城勲君) 率直に申して高等学校の採用についてはなかなかこれは守られない事情がございます。中学校は御案内のように、先ほど申したような方法をとっておりますのと、それからこれはまだ一般教育でございますので、専門が分かれておりません。そのようなこともありまして、中学校のほうには問題ないのでございますが、高等学校につきましては、求人側の需要が多くなるに従いまして、よく世間でいう青田刈りの傾向が率直に言ってございますので、その点につきましては、単に文部省と労働省だけの問題ではございませんで、企業側にもいろいろ考えていただかなきゃならぬ点が多いものですから、中央におきましても、また特に都道府県単位にこの協議会をつくっていただきまして、関係者の間の調整と御理解をいただくような努力を続けておるのでございます。
  258. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 いま通達は守られていないというようなお話で、私もちょっと調べてみましたら、これはある商業高校の先生の話ですけれども、ほんとにひどいんですね。来年三月卒業する生徒がことしの四月にもうきまってしまっている。それから、もう続々と引き続き就職がきまっている。そればかりではなくて、現在の二年生にももうすでに求人がきている、こういうような現状ですが、こういう点から見ますと、単に通達ぐらいの程度ではならない。教育上の大きな問題になっているというふうに思いますが、それに対してもう少し積極的な指導、対策というものが必要ではないか、こう思いますがいかがでしょう。
  259. 天城勲

    説明員(天城勲君) まあ就職の申し込みは、いろいろこういうような求人難の時代になりますと、先手、先手として出てくる傾向は否定できないんでございますが、学校側としましても、先ほど来申しておるように、学校教育がこのことによって乱されては本旨にもとるわけでございますので、できるだけ求人側にも、学校教育の実情をよく理解してもらうように連絡につとめております。先ほどもちょっと申しましたけれども、就職問題連絡協議会というのを各府県別に設置いたしまして、職業安定機関の方も業界の方も学校の方もみんな一緒になって、ここでよくお話し合いを進めておるわけでございますけれども、最近も、いま御指摘のような極端なケースも出てきておるように聞いております。そこで、ごく最近もこういう機会を持ったんでございますけれども、連絡協議会のような形の話し合いの機会をひんぱんに、またかなりきめこまかく行ないながら、求人の問題が学校教育を撹乱しないようにという基本的な態度で私たちも一そう努力するつもりでございますが、何ぶんにも、法律規制でこれはなかなかやりにくい点でございますので、一般の御理解を得ながら進めたいと思っておるのであります。なお、二年生に手が伸びてきたというようなお話もございますけれども、話は、そういうことはよくありますけれども、私たちが言っておりますのは、学校が推薦する時期というものを守る、推薦の選考を開始する時期というものをきっちり守ってもらう。これを中心に関係者に呼びかけておるところでございます。
  260. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 このような求人難の中からもう一つ問題としては、学校側と企業側の間でスキャンダルがいろいろ過去に起きております。こうした嘆かわしい事実というものを文部省は未然に防止すべく、その点についての指導をなさっていらっしゃるかどうかということです。
  261. 天城勲

    説明員(天城勲君) 御指摘の点はわれわれも一番関心を持たなきゃならぬ点でございます。たいへん残念なことでございますが、今年度中学校の卒業生の就職をめぐりまして、不幸なケースがございました。これなども十分そのときの事情やその周辺の事情もよく調べまして、これはその県だけの事務措置という形じゃなくて、全国的にやはり、生徒の就職をめぐる学校側の指導体制の問題、それから職業安定所との関係、連絡の方向、あるいは企業側との関係、もっと広い面を申しますと、就職指導、進路指導の的確なる方向について、各県なりの事情がございますので、十分再検討していただいて、新しい体制の立て直しということをいま全国の教育委員会を通じて進めているところでございます。同時に、もちろん、関係者自身の自覚と綱紀の粛正ということも当然、伴うわけでございますので、制度的な面からも、できるだけ、不幸な事件の起きないように、特にことしは残念なことが起きたものですから、一段と注意をいたしておるものでございます。
  262. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 これは労働省にお伺いしたいのですが、就職して数カ月から一年以内に、かなりの人が就職先をやめていると言われておりますが、その傾向を過去五年ぐらいの間にわたって教えていただきたい。またそれはどのようなところに原因があるか、労働省としてのお考えを聞かしていただきたいと思います。
  263. 保科真一

    説明員(保科真一君) 中卒、高卒で就職された方々の離職率につきましては、毎年、雇用動向調査を実施いたして調べております。ここ三年間の状況でございますが、これはもう一年間でございませんで、四月に入りました方が十二月末までの九カ月間にどのくらい事業所をやめられておるかという率でございます。  昭和四十年は、中卒の方々の場合でございますが、一二%の離職率で、四十一年が一五・九%、四十二年が一二・八%、それから高校の場合は、四十年が一〇・一%、四十一年が一二・四%、四十二年が一三・三%というような率でございます。男女別に見ますと、男子のほうが女子よりも離職率が高くなっております。  それからやめられた理由ですが、これにつきましては、中卒でやめられました離職者一万六千八百名、それから高卒のやめられた方七千八百名を対象にいたしまして、どういう理由でやめたかということの調査をいたしたことがございます。中卒につきましては、家事など個人的な事情によるもの、という者が最も多うございまして、四八・一%、それから事業所に対する不満があったから、というのが三一%、ほかによい事業所があったから転職した、というのが一〇%というような割合になっております。高卒の場合も大体同様な傾向でございまして、家事など個人的な事情によるもの、というのは五一%、事業所に対する不満といのが三二%、ほかにいい事業所があったから、というのが八%というような離職事情になっております。
  264. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 この激しい技術革新の波の中で企業の変貌もあり、そうして仕事の内容もどんどん変わってまいりますが、そのような中で生徒に適切な指導をするということが非常に必要であって、現在の中学、高校にこうしたコンサルタントが不足しておると、こう思います。学校側の職業指導はだれか携わっているのでしょうか、文部省にお伺いいたします。
  265. 天城勲

    説明員(天城勲君) 中学校と高等学校とやや事情が異なっておりますが、基本的には学校教育あるいは学校の教育課程全体を通じまして、新しい社会、あるいは産業社会の動向なり、いまおっしゃられたような技術革新による激しい変貌の状況というのは、そういう中でこなしていくのが基本でございますが、具体的に進路指導、その中にはいわゆる就職指導の問題も含めておるわけでございますが、この進路指導につきましては、ホームルームにおきまして個別指導の方法によって指導するというたてまえになっております。同時に学校には職業指導のための体制を整えるたてまえになっておりまして、中心になっておりますのがいわゆる職業指導主事でございます。職業指導主事という名称はとってない県もございますが、これは職業指導担当の教員でございますが、その状況はいま職業指導主事という名称をもってそういう主事が設置されている学校は中学校では六〇%、高等学校では五七・六%、それから職業指導主事という名称ではございませんが、職業指導の担当の教員制をしいていますのが中学校でそれ以外に一三・四%、高等学校で一九・二%という数字になっております。したがいまして、特に職業指導主事がいないからいけないということよりも、やはり外部の職業情報というものが十分に得られないといけないわけでございますのと、それからまあ職業に向かっての子供たちのものの考え方というものをやはり卒業までにできるだけ高めていかなければならない。特に中学校におきましては職業教育をしているわけじゃございませんものですから、よけいその辺はすぐどの職業がいいとか悪いとかということを学校教育の中で指導するわけじゃございませんので、職業紹介の段階において十分堅実な道を指導しなきゃならぬと思います。高等学校におきましては特にいまお話の技術革新あるいは産業界の変貌ということに備えましてはこれは二年ほど前になりますか、中央教育審議会からもそういう情勢に応じたように職業教育のあり方を考えろという御答申をいただいております。また産業教育審議会からもいわゆる学科の多様化ということで、新しい事態に応じた新学科の設置についても答申をいただいておるわけでございまして、できるだけ新しい事態に即応するように考えております。もちろん学校教育でございますので、職業訓練機関と違って直ちに外部の需要にぴったり合う、あるいは新しい事態が起きたからすぐそれに飛びつくということは考えるべきじゃなくて、やはり基本的な教育の上でやるべきものですから、その点の態度というものを学校教育の上では慎重に考えなければなりませんけれども、やはり動いている社会、動いている科学技術の方向というものは十分取り入れていきたい、また取り入れなければならないと思っておるのでございます。
  266. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 最後に一言申し上げたいのですが、職業指導主事というのは非常に今後大事な仕事を引き受けることになると思うので、また仕事が非常に煩繁しております、ぜひこれは専任制にして一学校に一名の職業指導主事を配置する必要があると思います。このことに対して文部省は早急に対策を立てるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  267. 天城勲

    説明員(天城勲君) 私たちいまことばとして実は職業指導ということばをあんまり使っておりませんで、広い意味で進路指導ということばを言っております。と申しますのは、御案内のように中学校では現在進学が結果としても七五%ございます。志望者を入れますと八〇%になっておりまして、ただ就職、就職ということだけでこの問題考えられないことでございます。将来にわたっての進路ということを考えないと言えませんものですから、最近はこの就職指導の概念を含めまして広い意味での生徒進路指導ということばも使っております。その中には、たとえば高等学校に行く子供については高等学校に行く課程の選び方も出てまいりましょうし、いろいろな広い意味の中でこれをこなしていく必要がある。その意味での進路指導というのは単に進路指導のための主事が一人いるということではなくして、学校教育全体でそのことを考えなければならぬ、そのもとにはやはり児童生徒の能力適性に応じた教育と指導が必要である。戻ってまいりますとそういうふうに基本的な問題に入ってまいりますので、教育課程の改善の中におきましても、また現場の指導におきましても基本的にはそういう考え方で問題を進めていきたいと、つまり学校全体で子供の進路というものを十分に指導できるような考え方と体制を持っていく必要があるんじゃないかと思っております。同時に、先ほども申し上げましたように、高等学校になりますとこれは直接社会に出る生徒が非常に多いものですから、これにつきましては職業情報というようなものも十分得なきやならぬわけでございまして、その点では専門にそういうことを担当する先生も確かに必要だと思っております。両面から問題を整理していきたいと考えておるところでございます。
  268. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 本件に関する本日の質疑は、この程度にいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時五十六分散会