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萩原幽香子君
人事院勧告をめぐりまして、私のところへもいろいろな先生たちからいろいろな手紙が参っております。そこで、私は
教育、教員というものは一体どういう役割りがあるのかということから、まことにまあ、ほんとうにこれはこんなことを今ごろ申し上げるのは不勉強はなはだしいということになるわけでございますが、私は
教育基本法というものをもう一回勉強し直したわけでございます。ところが、
教育基本法の第六条に、「教員は、全体の奉仕者であって、自己の使命を自覚し、その職責の遂行に努めなければならない。このためには、教員の身分は尊重され、その待遇の適正が、期せられなければならない。」こう明記されておるのでございます。ところが、いま
教育界の一部にはアルバイト、プレゼント、リベートのいわゆる三トがあることは皆さん
御存じのとおりでございます。そうしたものがわかったときには、それぞれの形においての制裁があったことも御承知のとおりでございます。まことに嘆かわしい
状態と申さなければなりません。しかしながら、この現象は、ただその当時者を批判し、責めるだけでは
解決できるものではなく、基本的な原因である教員の低
賃金にメスを入れ、この改善に
努力をしなければならないと存じます。
私は
昭和六年の卒業でございます。当時教員の初任給は四十五円でございました。そのころの日記を繰ってみますというと、米価は一升十八銭でございました。下宿代は六畳二食つきで大体十二円ぐらいであったと思います。ところが、現在はどうでございましょう。短大卒で
勧告どおりになりまして二万四千百円いただくといたしましても、これで下宿をするといたしますと、畳一畳千円、六畳で六千円。さらに、食べることを
考えますと、
一日にあの働き盛りの方で五百円は見なければならない
状態ではございませんでしょうか、外食でございますが。そうすると、一万五千円、よほど倹約したといたしましても一万二、三千円は必要になってくると思うわけでございます。教師といえ
どもかすみを食って生きていくわけにはまいりません。といたしますと、大体二万円前後は部屋代と食事代に取られてしまうということになっておるわけでございます。ところが、私は世界の先生たちはどういう
状態であろうかと思いまして、「世界の教師」という本を繰ってみたわけでございます。その第三章に、教師の社会的地位というのが述べられておるわけでございますが、これはお読みになります方はぜひ一度繰っていただきとうございます。四十二年に第一法規から出されておる書物でございますが、これを詳しく申し上げることはできませんけれ
ども、諸外国は日本の教師に比べましてはよほど優遇されているということがわかるわけでございます。さらに、民間の企業に比べてみましても、教師の立場はまことに低いということが
考えられるわけでございます。こういう
状態の中で、十月にはさらに八%の消費者米価の値上げがあり、それとともに諸
物価はまたまた上昇するということはまことに明白でございます。こうした中で、
教育基本法に示された全体の奉仕者として自己の使命を達成するということは、なかなか至難なことと申さなければならないと思うのでございます。
私は、こうした
理由から、
人事院勧告についてそのアップもまことに不満でございます。次の世代を背負って立つ青少年の育成のためには、何と申しましても
教育界に有為の人材を確保し、教師が希望と誇りを持って
教育に当たれる
状態を確立することこそ、現代の国家にとって急務ではなかろうかと存じます。戦後二十三年、私は最も置き去りにされたものが
教育であったのではなかろうかという感を強くいたします。そうした感はおそらく私一人の持つ
考えではなかろうと存じます。その
人事院勧告に不満を持っておりましたのにもかかわらず、その
勧告の五月
実施を無視されて八月になったということを知ったとき、私はほんとうにやりきれない
気持ちで一ぱいになりました。
私のところに寄せられた現場の先生方の手紙を紹介してみましても、
人事院勧告は何のためにあるのでしょうか、
人事院勧告が無視されるということは、必然的に私たちに
労働三権が与えられるということになると思いますが、いかがでしょうか、耐乏生活はもうこれ以上不可能でございます、もっと現場の教師のその生活実態を知っていただきたい、こうした手紙が数多く寄せられておるわけでございます。社会的に低い、給料も低い、そういう中で、そういう地位で先生の果たす役割りというものは非常に大きく期待されておるのではございませんでしょうか。現に先生たちは、こうしたことに対して、十月八日一時間カット実力行使し
ようと計画をしているということでもございます。信頼と愛情を根幹とする
教育の場で、はたしてこれでよろしいのでございましょうか。私たちは何としても
文部大臣を信頼申し上げ、
人事院総裁のこの
勧告を信頼しながら、一生懸命
努力しているという
教職員の立場をお
考えいただきたいと思うのでございます。
そこで、
教職員の社会的地位、役割りと給与との
関連において、基本的なお
考えを
人事院総裁並びに
文部大臣から承りたいと存じます。お願いいたします。