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1968-08-08 第59回国会 参議院 文教委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年八月八日(木曜日)    午前十時十四分開会     —————————————    委員異動  八月七日     辞任        補欠選任      二木 謙吾君     柳田桃太郎君  八月八日     辞任        補欠選任      成瀬 幡治君     小野  明君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         中村喜四郎君     理 事                 久保 勘一君                 楠  正俊君                 小林  武君                 鈴木  力君     委 員                 伊藤 五郎君                 北畠 教真君                 大松 博文君                 内藤誉三郎君                 永野 鎮雄君                 柳田桃太郎君                 吉江 勝保君                 小野  明君                 川村 清一君                 安永 英雄君                 内田 善利君                 柏原 ヤス君                 萩原幽香子君                 小笠原貞子君    国務大臣        文 部 大 臣  灘尾 弘吉君        国 務 大 臣  田中 龍夫君    政府委員        人事院総裁    佐藤 達夫君    事務局側        常任委員会専門        員        渡辺  猛君    説明員        防衛施設庁長官  山上 信重君        文部大臣官房人        事課長      諸沢 正道君        文部省初等中等        教育局長     天城  勲君        文部省管理局長  村上 松雄君        文化庁長官    今 日出海君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○教育文化及び学術に関する調査  (当面の文教政策に関する件) ○岩手県に国立青年家設置に関する請願(第二  号) ○継続調査要求に関する件 ○委員派遣承認要求に関する件     —————————————
  2. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) ただいまから文教育会を開会いたします。  まず委員異動について御報告いたします。  昨日、二木謙吾君が委員辞任され、その補欠として柳田桃太郎君が委員に選任されました。  また、本日、成瀬幡治君が、委員辞任され、その裁欠として小野明君が委員に選任されました。     —————————————
  3. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) この際、今文化庁長官から発言を求められておりますので、これを許します。文化庁長官
  4. 今日出海

    説明員今日出海君) 文化庁発足にあたりまして、私が非才を顧みずお引き受けいたしました。鋭意、文化庁創設の基盤と申しますか、発足道筋づくりに専念しております。  御承知のごとく、文化庁旧来文化局文化財保護委員会を合わせたものでありまして、その行政の方針といたしましては、部局に関してはそのとおり踏襲していきたい。ことに文化財保護に関しましては、文化庁に入りましていろいろ問題もあり、また批判もございますが、やはり旧来のとおりに文化財保護というもののたてまえをくずさず、どこまでもこれを押し通していきたい。  まあ文化と申しますと、いろいろと定義すら困難でございまして、むずかしい問題が、人によって異なるというようなこともございますが、私は文化面積を広げていくということを三角形の面積というものを広げるということにたとえますと、高さと底辺を広げることによって面積が広がるのでありまして、高さは芸術家それぞれの天分、天才によりまして高めていく、それに対してわれわれが少しでもお手伝いをする、できることならよけいなおっせっかいをせぬようにその天分を伸びるがままに伸ばしていくのがりこうかと思います。問題は底辺の延長でございまして、これはなかなかむずかしいことでありまして、その一つの例といたしまして、地方文化というものがただいま中央の文化の非常に受け身になっていることを、そしてまさに地方文化の非常に味わい深いものを薄めていきつつあるように思うのであります。もしこれを格差と呼ぶならば、この格差をいかにして縮めていくかということにまず思いをいたしまして、これを調査し、現在一、二具体的に地方文化団体と協力し、談合しておる状態にございます。このようにして、地方文化がもっと個性を持った、また伝統を持った文化が再び花を開くように、このように念願いたしまして思索中なのであります。  いろいろ申したいことがたくさんございますが、ただいま、たいへん時間が詰まっているというような話でしたから、この辺で……。(拍手)
  5. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 速記をとめてください。   〔速記中止
  6. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 速記を起こして。     —————————————
  7. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 教育文化及び学術に関する調査として、当面の文化政策に関する件を議題といたします。  政政側から灘尾文部大臣宮地大学学術局長安養寺会計課長が出席いたしております。  本件に関し質疑の申し出がありますので、これを許します。楠君。
  8. 楠正俊

    楠正俊君 文部大臣質問いたしますが、学園学生活動というよりも家生騒動の問題について、簡単に、二十分間でございますが、御質問いたしますが、最近は全くこの騒動はどろ沼化してきておりまして、この間六月に神田の駿台付近で、例のパリのカルチエ・ラタンを再現するんだといって非常な交通の大混乱を巻き起こした。また、東大では、安田講堂が占拠され、警官を導入して排除する。しかし、また現在では占拠されておる。教育大学もまた同様、みんな事務が分散して行なわれておるといったような、非常な混乱を社会に及ぼしておるわけでございますが、全国の大学でこういった大なり小なり紛争が起こっておりますのは、一割、五十四の大学にそういった問題が起こっておるのでありますが、一九七〇年を目ざしていよいよこの紛争は苛烈な様相を呈してきておる。このままの状態でいきますと、方々大学で一九七〇年にはたいへんな事態を引き起こして、全く大学教育機関麻痺状態におちいるのではないかということを非常にわれわれ憂えておるわけでございます。  まあこういったような問題に対して、文部大臣は非常に苦慮しておられると思う。文部省がこれに直接介入すれば、不当の干渉だといって学生はいよいよ火に油をそそいだようにたけり狂うだろうし、それかといって、文部省として何らこれに関与しないというわけにもいかね。大臣は非常にそこで苦労をしておられると思うのでございますが、世間一般ではもう、大学側では管理運営能力がないんじゃないか、大学にまかしておってもだめなんじゃないかというような気持ちが沸々としていまわき起こっているわけでございますね。その際に、もし彼ら大学理事者側がその管理能力がないと判断されるような事態が起こった場合には文部省はどうすればいいのかということは、いまお考えになっておられると思うのでございます。大臣も、国立大学協会のほうや各所で基本的な学生騒動の問題に関するお考えを述べておられると思いますが、もう一回この文教委員会におきまして、この基本的な大臣のお考えをお聞かせ願います。  それから、時間がございませんので、まとめて御質問申し上げますが、この騒動対策としましては、恒久的な教育制度の問題、教育内容の問題、学校自体管理体制問題等、非常に長期にわたって考えなければいかぬ問題があると同時に、対症療法的にいま即刻解決していかなければいけないといったような問題、二つに分かれると思うのでございますが、まず早くこれを解決してもらわにゃ困るといった問題の第一番として、学校の建物が彼らに占拠されておるということですね。この間私ども委員長教育大学にちょっと用事があって行かれたそうでありますが、何か電話が通じないし事務は停滞しておって、入り口も窓口から入るといったようなばかげたことが行なわれておる。これは不当に国有財産を占拠しておるわけでございますから、この国有財産最高責任者管理最高責任者である文部大臣のお考え、これに対してどうするんだということをお聞かせ願いたい。一応まずそれだけお聞きします。
  9. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) お答えを申し上げます前に、お許しを得まして、一言、今回新たに選挙を通じて御当選になりました議員の各位にお喜びを申し上げたいと思います。どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。  楠君の御質問でございますが、現在、大学の内外にわたりまして、学生の行動によっていろいろな問題を起こし、その結果としまして、大学管理運営の上にも困難な事態が生じておると同時に、また学外においていろいろ市民の方々にも御迷惑をかけ、大学の名誉を汚すような行為が相次いで行なわれておるという事態に対しましては、私ども心から遺憾とするところでございます。と同時に、文教行政をお預かり申し上げている立場から申しまして、まことに国民皆さま方にも相すまない、このような心持ちで一ぱいでございます。  ただ、この問題につきましては、よって来たるところもきわめて複雑であり多岐にわたっておりますし、この対策というような観点からいたしましても、お話にもございましたけれども、なかなか一朝一夕には解決しにくいというものもございましょうし、さりとて、当面の問題をどうするか、こういうような問題もございまして、各大学ともに苦慮いたしておりますと同時に、われわれとしましても、長期にわたる対策はいかにあるべきか、こういう問題についていろいろ検討を重ねておるようなわけでございます。なかなか、率直に申し上げまして、りっぱな処方箋をどういうふうにしてつくったらいいか、こういう問題につきましてもきわめて困難を感じますし、また対症療法的に何か妙薬でもあるのか、こうなりますと、なかなかこの妙薬もにわかに得がたい、これが私は実情であろうと思います。  私ども態度といたしましては、さきの通常国会の際にも申し上げたことでございますが、いまも私は実は同じような態度をとっているつもりでございます。と申しますのは、学校制度とかその他いわゆる長期にわたる問題につきましては、今後十分検討いたしたいと考えておりますが、現在の大学に対する私ども態度といたしましては、大学自治尊重してまいりたいと思っておるのであります。大学自治というものを、もし大学ほんとうに失ったということになりますれば、私は、それは一体大学と言えるのであるかどうか、このような重大な問題であろうかと思うのであります。できるだけこの大学というものの自治というものを尊重し、もしその大学自治が脅かされておる、あるいはまた不安であるというようなことでありますならば、また現状はまさしくそうであると申し上げてもよろしいと思うのでありますが、しかし、どこまでもまず大学において最も適切な大学自治原理原則というものあくまでも確立し、これを守っていくということでなければならぬと思います。したがって、そのような意味におきまして、私は大学当局がその大切な自治というものをあくまでも確立し育成していくために懸命の努力を払うべきいまの段階ではないかと思っておるのであります。これを私どもとしましてはあくまでも援助してまいりたいと思っております。そういうふうな基本的な立場に立っているということを、まずひとつ御了解をいただきたいと思うのであります。  問題はなかなか複雑でございますし、筋道としましてもうわかり切っていることでも、なかなかその筋道がそのとおりに直ちに行なえないというところに私は悩みがあると思います。法律の問題、制度の問題あるいはものの道理という関係から見まして、結論は出ている、こういうふうな問題でありましても、これを実際においてどういうふうに消化していくか、こなしていくか、こうなりますというと、いろいろむずかしい問題にぶっつかる、こういう問題でありますだけに、にわかに問題の解決をはかるということは容易でない、かように思いますと同時に、各大学当局におきましても、その責任については十分自覚をいたしておる、またその自覚のもとに何とか現在の状態を改善したいということで悩み続けておるのが現状であろうかと、私は思うのであります。そういうふうなものとしてこの問題に対処していきたいと思うのであります。  国有財産の問題についてお尋ねがございましたが、国有財産管理責任者は、現行法上、大学につきましては文部大臣がその最高責任者。ただ、その文部大臣の権限というものにつきまして、現行法令上は国立大学については学長にゆだねる、こういう形になっておるわけであります。いずれにしましても、大学の施設が一部の学生によって不法な状態のもとに占拠せられておる、これもいなめない事実であります。私は、そのような事態が存在するということは、これは認めるべきことでないと思います。すみやかにその退去を求め、不法な占拠を行なっておるものを排除して、そうして学園の秩序の回復をはかるということは、当然管理責任者としての責務であると思うのであります。これはしかし、筋道であります。問題は、現在占拠しておるものをいかにして排除するか、いかにして退去を求めるか、こういうことの実をあげるのにはどうすればいいのかというところに、私は現実の問題があろうかと思うのであります。したがって、筋道としましては、いま申しましたようにすみやかに退去を求め、そのような不法な状態を正常な状態に回復するということに努力することは当然であります。そのためにいろいろいま悩んでおるというのが現状でございますので、私どもといたしましては、この筋道はあくまで通さなければなりませんけれども、その実現のためにはわれわれも大学とよく——大学に対して適切な、もし注意すべきことがあれば注意していくというような態度で、大学の善処を期待しておるところであります。何ぶん御了承いただきたいと思いますす。
  10. 楠正俊

    楠正俊君 大学自治権大臣尊重されるということはたいへんこれはけっこうなことでありますが、自治権の確立ということは、学問の自由を守るためにそういった自治権が与えられておるので、学問の自由と関係のないところでいま紛争が起こっておるわけでございますね。これに対して、自治尊重する自治尊重するというだけでは、少し手ぬるいというように私は考えるのございますが、この点に対してもう少し強力な対策をお考えおき願いたいと思います。  それから、国有財産を占拠しておるということに対しましても、これは私はつまみ出すのは簡単だと思う。警官導入で、彼らは不当に占拠しておるのですから、つまみ出すのは当然だけれども、その効果という面になりますと、警官導入のよしあしということで、またこれは問題があると思います。しかし、このままでそれじゃいいのかということになると、これまた問題だとして、八月七日の新聞に出ておるのでございますが、そういったつまみ出すことはできない、それかといってこのままの状態ではいけないといって苦慮しております間に、彼らはもう何をしでかしたか。又貸しをしだしたんですね、又貸しを。安田講堂を六日に全都高校生——全都内の高校生反戦集会の会場に無料で又貸ししている。こうなると、いよいよもって真剣に考えにゃいけない事態になってきたと私は思うのでございますが、これに対して私は大臣の答弁は必要ございませんが、大いに考えていただきたい。  それから、七月二十九日の新聞ときょうの新聞に、東大紛争がだんだん収拾方向に向かっておるというようなやや明るい報道がされているのでございますが、実際はそうじゃないようであります。そこで、その収拾策の一案として、現在の総長辞任する。学生のほうは、辞任じゃなくて、彼らが反省しないからおれが罷免するのだというようなことを言っておりますが、この総長辞任して、新総長が八月中に選ばれる。その新総長のもとで、学生大学運営管理参加させるというような動きが大学内にあるという話を聞いておるし、新聞にも報道されておるのでございますが、ある意味におきましては、私は、学生運営管理のある面に、全体ではございません、ある面に参加する——参加するということばにも問題がありますが、参加するということも考えられないことはないが、革命を目ざしておる三派全学連などが参加というようなことで入り込んでくると、いよいよもって彼らは大学の場を人民管理の場というような拠点にするという気持ちを助長するようなものでございますので、これは非常に考えなければいかぬ問題だと思いますが、文部大臣、この参加というようなことが新聞に出ておりますが、どういうようにお考えになっておられるか。
  11. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 新聞にいろいろと東大紛争、あるいは東大の内部のことについて報道をいたしておるようでございます。現に東大としましても、事態の改善のために全学をあげてこの解決をはかるために日夜努力をいたしておるところでございます。いまお話しになりました総長辞任の問題とかというような問題につきましては、少なくともそういうふうなことについて文部省に報告もないし、連絡もないし、われわれもまた具体的には承知いたしておりません。ただ、参加問題等につきましては、私は学生参加という——学生参加という問題の意味も実は明確でないと思います。考えようによれば、現在のままでもある程度参加している、こういうことも言えるかもしれない、意味として明確ではございませんけれども。いずれにしても、大学というものの管理運営について学生学校当局と同じような立場に立って、そうして大学管理運営に当たるということは、日本の大学としては認めることはできないものであると私は考えるのでございまして、また東京大学におきましても、十分その辺のことにつきましてはわきまえておるし、その影響もよく考えておることと思います。その良識に期待をいたしておる次第であります。お話しになりましたようなことが具体的に問題となっているというふうには承知いたしておりません。もし参加という問題を取り上げるにいたしましても、いわゆる検討することはあり得ると思いますが、結論が出ているものとは私は承知をいたしておりません。
  12. 楠正俊

    楠正俊君 少し小さい問題になりますけれども大学に入学いたしますと、入学金一緒自治会費というものを学校に納めるわけですね。その自治会費自治会運営費になって、クラブ活動と、それから学生運動のほうの費用に回っておるわけでございますが、大臣のいわゆる自治権尊重ということから、学生入学金一緒に払った自治会費というものは全くこれは学校側がこれを監査をするとか、どういうように使われているかということは、ノンタッチできているのが実情ですよ。全学連規約を見ますと、その規約は非常に非民主的な規約ででき上がっておるのですが、それを学生が何らふしぎに思わないのは、いまの学生思考能力が何か低下している証拠じゃないかと思います。非民主的な規約です。ばかばかしいほどの規約でございいます。それに喜んで参加する学生知能程度を私は疑うのでございまして、その全学連規約を見ますと、各自治会から負担金というのを取っているようです。そうすると、学生入学金と同時に自治会費を払う。その自治会費の中から全国的な連合体である全学連にその負担金が吸い上げられていく。ところが、全学連活動というのは実にほんの一握りの連中がやっているだけであって、学生は非常にそれに対して批判的である。しかし、批判的あっても、自治会費というものの一部が全学連のほうに吸い上げられておるといった状態からいうと、ノンポリ学生全学連活動にある意味において協力をしているということになるわけです。しかも学校側としては、ああいった暴力的な全学連活動というものは非常に警戒しておるにもかかわらず、その運動資金になっておる。この自治会費に関して学校教育的な立場から全くタッチしない。そういう大学でもって教育ほんとうに行なわれるのかということを私考えるわけでございますが、これは文部省に対してお聞きするというよりも大学当局にお聞きしなければいけないけれども文部大臣国立大学説置権者ですから、そういった問題にも深く関心をお持ちになっておられると存じますが、この自治会費の問題、大学がこれにタッチしない。たとえば負担金として吸い上げられるのじゃなくて、そこで背任、横領が行なわれるような、もしかりにそういうことがあったとしても、学校はこれにタッチしないのかどうか、その点についてお考えを承りたい。
  13. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 今日の自治会状態を見ますというと、率直に申し上げまして、自治会の体をなさぬというようなものが少なからずあるのじゃないだろうかと思います。学生自治にまかせるということで、いわば大学の親心と申しますか、そういうことでまかせでおりましたものが、とんでもない方向に行っておるとか、あるいはとんでもない状態になっておる、こういう事態になっていって、大学自身も実は非常に困っておるのじゃないかと思うし、現状を何とか改喜しなきゃならぬという考え方は、ひとり私どものみならず大学当局においても十分意識しておるところだと思うのでありますけれども、何さまこういう状態のもとでありますから、そこまでなかなか手が及ばないというのが現在の状況ではないかと思うのであります。  いずれにしましても、現在の自治会というものに対しまして、もう少し適正な指導というものが行なわれてこなきゃならぬということは言うまでもないことであります。同時に、一般学生につきましても、自分たち会費を払っている自治会、その自治会というものが妙な状態になっておることについては十分な関心を持って、学生みずからの手によってこれを是正するためた努力しなきゃならぬ性質のものではないかと思います。そういうふうな問題として、現在の自治会状態というものが決して満足すべきものでない、十分是正しなきゃならぬ点があるということはよくわかっておる問題でございますので、私どもとしましても、大学当局を督勧いたしまして、適正な自治会運営という問題について一そう努力するようにしてほしいものと思っております。
  14. 楠正俊

    楠正俊君 私の質問はこれで終わりますが、国立大学国民の税金によって運営されている大学でごごいますから、大臣としては納税者に対する義勝と責任ということもあるわけでございますから、国立大学に対する紛争に関してはいま少し、自治権尊重ということもたいへんけっこうだが、それにも増して国民に対する責任を果たされる意味で強力な対策を打ち出されることを希望いたしまして、質問を終わります。
  15. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 御希望でございましたが、大学、特に国立大学につきましては、いまお話しのように、ほとんどその全部を国費でもってまかなっておる大学であります。したがって、ことばが適切であるかどうか存じませんけれども、やはり私どもとしましても、国費が適正に有効に使われるということが何よりも大事なことであります。その趣旨のことはしばしば大学当局にも申しておるところであります。私としましても、そういう意味におきまして、国民の皆さに方の納得のいく、信頼のできる大学であらねばならぬという見地から、いろいろと大学当局にも話をしているところであります。大学当局も、その自覚は十分持っておるところであります。何さま問題が複雑であり困難な問題でありますので、思うにまかせない。端的にいえば、じりじりする気持ちもあるのでありますけれども、やはり何と申しましても大学みずからが改善をしていくという努力を先決とすると私は思うのでありまして、もしそれがどうしても期待ができない、その能力もないという判定がつけば、それはその段階においてまた考えなければならぬ問題ではないかと思います。いまとにかく一生懸命やっておるところであります。これを督励して事態の改善をすみやかに実現できますようにいたしたいものと念願しておる次第でございます。
  16. 小野明

    小野明君 防衛施設庁長官がまだお見えでございませんので、先に文部大臣にお尋ねをいたしておきたいと思うのであります。  六月二日の午後十時四十五分ごろ、米軍のジェット戦闘機が九州大学構内に墜落をいたしました。この問題をめぐりまして、九州大学におきましては常時、この板付基地というものの軍用機の発進等から静穏な状態にない、学問研究ができない、こういう立場で基地の撤去を求めておることは大臣も御承知のとおりであります。今回の事故によりまして、ますます大学といたしましてもこの軍事基地の撤去の必要性を痛感いたされておるようでありますし、同時にまた、福岡の市議会あるいは県議会におきましても、軍事基地の撤去を全会一致で議決をいたしておるのであります。この点は大臣も御承知であろうと思います。いま米軍機の残骸が建設中の電子計算機センターの上にひっかかっておるのでありますが、この残骸の処理といいますか、この問題につきまして種々取りざたがされておるのであります。大臣が九大の学長を呼ばれまして、あるいは九大の学長が自発的に上京されたのかもわかりませせが、この問題について何か圧力をかけられた、こういう話も承っておるところであります。一体、大臣とされては、この九大のとっておられます残骸機の処理方針、あるいは九大の望んでおりますいわゆる米軍機からの安全保障あるいは基地撤去、こういった問題につきましてどのような折衝をされたのか、いわば圧力をかけられた、こういうふうに新聞では出ておるのですが、どういうことが事実なのか、まずひとつ御説明をいただきたいと思います。
  17. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 九大の電子計算機のセンターに米軍の飛行機がいまだにひっかかっておるという状況についてのお尋ねだと思いますが、私は別に圧力をかけるというようなことをしたつもりはございませんけれども、ただいつまでもあの状態でありますというと、今後電子計算機のセンターを建設していく上において非常に支障を来たしておるわけでありますので、すみやかにそのセンターの建設のために善処をしてほしいということは申しております。また、九大の当局におきましても、その点については十分考えて引きおろしのためにいろいろ現に努力をいたしておるものと私は承知いたしております。
  18. 小野明

    小野明君 さらに突っ込んでお尋ねいたしたいと思いますが、九大がとっておりますいまの残骸機処理の方針ですね、これを取り除け、こういう話なさったものと思いますが、そのとおりと理解をしてよろしいですか。
  19. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) いろいろ九大には九大の事情もあろうかと思います。また、九大がやりにくくなるようなことを私ども別に押しつけようと思っておりません。問題は、なるべく早くこれを取り除いて、そして調査すべきものは調査する、補償の問題を解決するものは解決する、そして建設に向かって進んでいきませんというと、せっかくの九大に設置せられる、各国立大学の共同利用を目的としておる施設が動いていけないということで、もはや相当おくれておる面があると思いますが、とにかくひとつ早くおろすということで大学努力を促しておるところであり、大学もまたそのつもりで努力をいたされておるものと思います。
  20. 小野明

    小野明君 非常に大臣の御答弁がじょうずなので、ちょっとだまされかけるわけですが、結局、大臣のおっしゃっておることは、九大のいまとっておる残骸機処理の方針、たとえば引きおろしをいたしましても引き渡しはしない、こういう方針かのように私は承っておるのでありますが、こういった方針については一体いかなる見解をお持ちなのか、再度お聞かせをいただきたい。
  21. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) おろしたあとどうするかという問題につきましては、私はいろいろ関連して複雑な問題も九州大学の内部にもあるようです。それらの事態を十分考えて九州大学が善処せられることを期待しておるわけであります。その後の処置をどうとかこうとかいま申し上げますよりも、まずもっておろして、そしてせっかくの電子計算機センターの建設を急ぐということの努力を促しているということを申しておるのであります。
  22. 小野明

    小野明君 電子計算機の建設に支障があるからそうしてはどうか、こう言われておるのであって、そうしますと、九大のとっておられるこの残骸の処理あるいは現在とっておる方針というものについては何ら違法ではない、このように理解をしてよろしゅうございますか。
  23. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 違法とか合法とかいうことでなしに、おろしたのをどうするかという問題については、まだ現実問題としていろいろ議論もあるようですが、そこらの点につきましては、九大の良識ある処置を私は信頼いたしております。
  24. 小野明

    小野明君 引きおろすということが前提になった質問で、はなはだ何ですが、たとえばおろさないでそのまま置いておく、これの障害というのは、ただ電子計算機センターの建設に支障がある、これだけである、こう考えてよろしゅうございますか。
  25. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 現段階における問題としましては、とりあえずおろすことということが第一じゃないかと思うんです。その意味におきまして、私どもそれを希望し、また九州大学もすみやかにおろすということについては熱心に努力をいたしておるところであります。
  26. 小野明

    小野明君 どうもはぐらかされておるようで、もう少し明確にひとつ御答弁をいただきたいのですが、引きおろす引きおろさないというのは、これは大学自治の範囲内で処理せられることで、いま九大のとっておられる方針というのは——法律がどうあろうとと、こういう御答弁があったが、これはちょっと私は意外な御答弁だと思うんです。やはりいまとっている九大の方針は何ら法に触れるものではない、この点をどうお考えなのか、くどいようですけれども、お尋ねしたいと思うのです。
  27. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) この問題は、私は違法であるとか合法であるとかというような問題を論ずる前に、まずもってとにかくそこにあのままの状態に置いてはなりませんので、これをおろして、そして事態解決のために前進するということが望ましいことと思っております。いまその問題について、その後どうするかというふうなことについては、私がかれこれ申し上げますよりも、九州大学において良識をもって善処されることを、そのことを私は期待しているのであります。
  28. 小野明

    小野明君 法に触れる触れないは問題ではないという御答弁ですが、結局いま九大のとっておられる方針というのは、これはそういった点から申しますときに、これは違法でない、こういう見解を私は持たざるを得ないわけです。  ところで、この九大というのは、いま今後の安全保障、米軍機からの安全保障をどうしてくれるのか、その点が中心であるわけです。この点について大臣はどういうような努力をなさってきたのか。おろせ、おろせという圧力をかけるばかりで、肝心の大学の研究の場を守っていくという御努力のほうは一体どうなされているのか、その点をお尋ねしたいと思います。
  29. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 飛行機の処置の問題と安全保障の問題とは、私ははこれは別問題だと思います。これを関連させるということはおかしいと思いますが、九州大学そのものにつきましての施設的な意味における安全保障の問題については、文部省におきましても、九州大学に信頼いたしているわけでございます。これ以外の部分ということになりますと、私だけでかれこれお答えすべきものではないと思います。一般的に見て、九州大学ないし福岡地区におきます安全保障の問題として、対外的な問題もあるというので、その向きにおいていろいろ検討しておられるものと私は解釈いたしております。
  30. 小野明

    小野明君 何か御自分の責任でないかのように、外野から野球を見ているような御答弁で、私は非常に不満であります。政府の閣僚の一人として、しかも大学関係者が、学問研究の場が守れない、こういう切実な希望を述べておる、また、大臣は飛行機をおろすおろさないと安全保障の問題は関連はない、こう言われますけれども、そう、かみそりで切ったように物事はいかないわけです。安全保障を求めているために、この残骸処理の問題がうまくいかない。現実にはきわめて強い関連を持っている。そういうことを所管の大臣としていかなる努力をなさったのか、この点をお尋ねしているのでありますから、はぐらかさないて、いままでの御努力、今後の御努力というものをひとつ率直にお述べいただきたいと思います。
  31. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 別にはぐらかしているつもりはございません。ただ、安全保障の問題ということと、それからこの機体の処置という問題とを関連させて事態解決をはかっていこうということには、私は筋道の問題があろうかと思います。これとそれとは別の問題として、やはり処理していかなければならないと思います。安全保障の一番大きな問題といえば、先ほど楠君にもお答えいたしましたが、基地撤去の問題というふうなことをおっしゃいました。政府としては、御承知のように、この板付基地の移転という問題について、いろいろ検討をしておるのが現段階でございます。将来は板付基地を、何か適当な土地があれば他にかえたいというつもりで検討をいたしておるわけでございます。それが実現をすればこの問題はまずなくなってくると思いますけれども、まあそれまでの問題ということになりますれば、九州大学の意向、あるい地元の地区の人たち、福岡市の人たち、こういう人たちの熱心な希望というものに対して、基地を使用しておりますところの米軍の当局において十分考えてほしいと、こういう意味でのいろいろ相談を今日までやってきておるわけでございます。私は、そういう意味におきまして、関係当局努力を促しておると、こういうふうに申し上げてよろしいと思うのであります。まだ結論を十分に得ているものとは思いません。
  32. 小野明

    小野明君 ちょっと、質問いたす前に、防衛施設庁長官、どうなっているのですか。
  33. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止
  34. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 速記を起こして。
  35. 小野明

    小野明君 まあ安全保障といいますと、大臣の言われますように、最終的には基地の撤去であります。それで、この問題についても、ひとつ、いま政府のほうで到達しておる現段階——いろいろ日米合同委員会あたりにおきましても検討をされておるようでありますが、その結果が出ておるようでありますけれども、その結論をひとつ正確に、この九大問題と関係がありますから、大臣のほうとしてもキャッチをしておいていただきたい。  で、基地撤去というのがもちろん最終的なこの九大あるいは福岡市民、県民の願望なんでありますけれども、それまでの間どのように九大の安全保障ということで米軍との折衝が行なわれておるか、これは当事者でないから正確な御答弁がいただけないかもしれませんが、事所管の大学でありますだけに、そういった問題はきわめて私ども切実に感じざるを得ないし、大臣としても、その辺は御存じだろうと思う。その辺をひとつ御説明をいただきたいと思います。
  36. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 今日までの経過について私で承知いたしておりますところは、訓練飛行等を行ないます時刻の問題でありますとか、いろいろ九州大学の要望もございます。日米合同委員会で協議いたしました結果としましては、米軍におきましても、この飛行については、住民の不安というふうなことを考え、最も慎重な態度でやっていくというふうな返事も得ております。まだそれにつきまして九州大学が必ずしも満足していない、こういう条件があるということも私ども承知をいたしております。この問題は、われわれとしましては、どこまでも不安のないようにということで、住民側の了承を求めるという態度でもって進んでまいらなければならぬと思い。同時に、米軍の飛行そのものにつきまして、あまり立ち入ったことを明確に打ち出すというふうなことはかなり困難な事情があるようにも聞いておるわけであります。慎重にやるということについては向こう側の返事もいただいておるわけであります。そのようにひとつ御了承願います。
  37. 小野明

    小野明君 非常に御答弁が抽象的なので、私ども非常に不満に思うわけですね。米軍側の意向というものも正確に出されておるやに承っております。大学側の要求もきわめて正確に出されております。こういった点について、もう少しひとつ正確な現状というものを御説明いただきたいと思います。
  38. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 正確なというお話でございますが、いま申し上げた以外のことは格別現段階においてはございせん。
  39. 小野明

    小野明君 九大側が非常な決意をもっていまああいった措置をとられておる。そうして大学の安全保障というものを求められておる。これに対しまして、いま米軍との折衝にあたり、これは大臣が当事者でないかもしれませんが、大学学問研究の場を少なくとも守っていかなければならぬという立場から考えましたときに、さらにまた、いまの御答弁みたいな抽象的なことでなくて、具体的にどこまで折衝がいっておるのだ、基地撤去の問題についてはどうなんだ、この辺ぐらいは大臣としてはやはり御存じなければならぬはずであるし、そういった私は責務があると考えます。再度お尋ねします。
  40. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 基地撤去の問題については、ただいま関係当局の手元で慎重に検討をしておるという以上のことはございません。別にどことか、かしことかいうことをまだきめるような段階に至っていないのであります。また、九大の守全保障の問題につきましては、いま申し上げましたように、米軍といたしましては、今後の飛行訓練等につきまして最も慎重な態度でもってやる、こういう回答を得ておるわけでございます。そのように御了承願います。——撤去と申しましたのは移転でございます。
  41. 小野明

    小野明君 それで、施設庁長官が参りませんと、直接の責任者がおられませんので、非常に私はいまの大臣の答弁では不満であります。そうして御要望を申し上げたいのですけれども、これほど九州大学といたしましても熱望いたしておる問題でありますから、さらにやはり現状というものを大臣としては正確に把握をしておいていただきたい。そうして大臣の御努力というものも、地元福岡県民あげてのこれは要望でありますから、もう少しやはり、ことばは悪いですけれども、まじめに受けとめていただいて、責任者といたしまして御努力をいただきたいと思うのであります。  それで、あと施設庁長官が参りましてから関連してお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、いま一つの問題は、北九州市の小倉区に山田弾薬庫というのがございます。山田の弾薬庫ですね。で、この問題も、そこに引き込み線が入っておる。その横に通学道路がありまして、南小倉小学校というのに通うのに、非常にトラック等が通りますので児童が危険である。だから、あまり使わない弾薬庫であるならば、この引き込み線を撤去していただきたい、こういう現地からの、南小倉小学校からのPTAの要望もあっております、同時にまた、プエブロ号事件以来、板付と同じように山田弾薬庫も米軍の弾薬輸送が行なわれておる。しかも、白昼堂々と数十台のトラックで行なわれておるということから、北九州の市議会におきましても山田弾薬庫を撤去してもらいたいという要望が上がっておるはずであります。この問題について大臣とされてはどのようにお考えであるか、この御所見を承りたいと思います。
  42. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) この問題につましては、ただいま文部省としましては、検討の資料といたしまして現地の教育委員会からの報告ないし意見を求めておりますので、その上で検討していきたいと思います。
  43. 小野明

    小野明君 この問題は、北九州市議会のこれも全会一致の決議がありました。いまの山田弾薬庫がある限りは市民の財産、生命というものは守れない、したがって撤去をしてもらいたいという決議なんであります。同時にまた、この問題には引き込み線というものがありまして、学校に通う子供さんの生命が守れない、安全が守れないという、いわゆる文部省所管の問題も入っておる。ですから、これについてはもう、とうに文部省にはこの趣旨というのは参っておるかと思うのです。これは現地教育委員会と打ち合わせられてという御答弁については、私もどうもあまりテンポがおそいのでふしぎだという感じがするのですが、事実はそのとおりですか、あるいはこれに対する御所信というのは、打ち合わせておるという御答弁では相すまないのではないかと思いますが、いかがですか。
  44. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 打ち合わせておるというわけではございません。現地の教育委員会のこの問題に対する判断、あるいは実情等については、照会をいたしておるところでございます。
  45. 小野明

    小野明君 それでは、文部大臣は現実に板付基地がありますために大学学問というものが守られない、研究の場が守れない、北九州の山田弾薬庫というものがありますために学童の安全、生命というものが守られない、こういう現実に安保条約が市民の財産や生命を守り得ないというこの現象を生んできておるのですから、この山田弾薬庫あるいは板付の軍事基地撤去、これを取り除いてもらいたいという市民の、あるいは学童の親からの切実な要求というものについては、どのようにお考えですか、御所信をいただきたいと思うのです。
  46. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 基地等の周辺の状況というものが、だんだんと変化もしておることでございます。基地のあるところと、それと周辺の地区の住民の方々との間のいろいろ問題がだんだんと発生していく、これはいなめない事実でございます。そういうふうな点の調整をどうするかというところが政府としての一つの題課であります。その意味におきましては、いわゆる安全保障条約に基づく基地という問題のあり方について、政府としましても検討を加える、これは過日の総理大臣の所信表明にもありましたとおりでございますが、そういう立場に立ってものごとを私ども考えていかなければならぬ。できるだけ大学につきましては学問研究の大きな妨げにならぬように、あるいは地域住民の生命、財産に危険のないように、こういうつもりでこの問題に対処をしていくということについては、私もかように考えているものでございます。現実の問題につきましての処理は、またそれぞれのケースによって考えていかなくちゃならぬと思いますが、考え方としましてはそういう方向において、われわれは常に注意してまいらなければならぬことだと思っております。
  47. 小野明

    小野明君 あと防衛施設庁長官が参りましてから若干の質問をいたしたいと思いますので、残りは十分か十五分ぐらいあると思いますが、質問を保留いたします。
  48. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 小野君の防衛施設庁長官に対する質問を保留いたしまして、続いて質問に入ることにいたします。柳田君。
  49. 柳田桃太郎

    柳田桃太郎君 福岡県におきましては、県教育委員会が去る四月一日に発令された高校の新任校長十五名のうち、十一名が高教組の着任拒否を受けて、いまだに正常な登校もできないような状況にあるということは、すでに御承知のことと思います。本件につきましては、本委員会で五月十四日、五月二十一日の二回にわたりまして質疑が行なわれたようでありますが、参議院の選挙後におきまして当委員異動もありましたので、文部当局がこの問題の発端と現在までの経緯をどういうぐあいに把握されておるか、まずその概要を承りたいと存じます。
  50. 天城勲

    説明員(天城勲君) 御質問の福岡県におきます高等学校長の着任拒否の問題につきまして、一応全体の概要を申し上げたいと思います。  福岡県の教育委員会は、本年度の新任校長の選考にあたりまして、教育委員会の判断と責任においてこれを行なうという考え方を明らかにしておりましたが、県の高教組は、従来から候補者を推薦してきたいきさつがあるということで、本年も候補者の名薄を提出しておりました。しかし、この提出してきた事情は、例年に比しまして本年はきわめて少なく、毎年百人前後推薦してきたようでございますが、本年は三分の一ぐらいの数であったと聞いておりますが、しかもその中に、去年の一〇・二六闘争のときの事情がいろいろあるわけでございますけれども、この県におきましては、その関係の者をどう扱うかというようないろいろな議論があったようでございますが、とにかく県の教育委員会に対して推薦をしてきたのでございます。教育委員会は四月一日に新任校長十五人を発令いたしまして、このうちに組合側の推薦名薄に載っていた者が三人あった。これに対しまして県の高教組は、従来の慣例を無視したとして、新任校長の着任を阻止する挙に出たわけでございます。その阻止対象になりました学校は十五校でございますが、先ほど申し上げた組合の推薦名簿に載っていた者三名、それから教育委員会の職員から出た、校長になった者、これは一応ほとんど阻止行動がとられなかったのですが、その他の十一校におきまして強力なピケを張って着任拒否を行なったわけであります。  県の教育委員会は事態打開のために、県の教育委員会の職員数人を校長に随行させて、五月四日に二校、五月八日に三校、五月九日二校合わせて七校へ着任ができたわけでございますが、その他の学校については着任ができないということでございまして、そこで五月十一日に、あとの四校中一校は校長が病気中だったのでございますが、したがって三校で警察官の出動を要請して、妨害を排除して着任を実施したというのが一応の経過でございます。  しかし、これにいたしましても、一応着任はしたものの、その日以降は再び従前のようなピケに会って校長が登校できないという日が続いてまいってきております。この間にも県の副知事や議会の有志の方々による数回のあっせんが行なわれたわけでございまして、これについてはかなり真剣な討議が関係者の間に行なわれたのですけれども、最終的には意見の一致が見られずに不調に終わってしまったわけでございます。したがいまして、この校長の発令から着任拒否のこの一連のことは、最終段階において調停が不調に終わったために解釈しないままにきてしまったわけでございます。  教育委員会は当面の、この場合百日に及んだ次第でございますので、この収拾のための努力と同時に、この違法な行為に対する責任追及と、前の事態とは一応別の問題だ、別に解決しなきゃならぬ、こう判断をされて、以上のような経過によりまして。違法行為についての責任を明らかにしてその反省を求めるために、七月十三日に、この着任阻止闘争を積極的に指導した関係者に対する懲戒処分を行なったわけでございます。五十名の懲戒処分を行なっております。高教組は二十三日に人事委員会に対して不利益処分の審査の請求をいたして、これは二十九日に受理されているというのがいままでの経過でございます。
  51. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) この際、委員長から答弁者側にお願い申し上げます。質問者の時間が二十分、答弁者の時間が二十分というわけでございますので、要領よく具体的に御答弁のほどをお願いいします。
  52. 柳田桃太郎

    柳田桃太郎君 本件の概要はわかりましたが、まず第一にお伺いをいたしたいと思いますのは、高教組は新任校長の選考段階におきまして、従来組合の推薦した候補者の中から全員選考される人事慣行があったと強く主張をいたしております。これに対しまして、県教育委員会はそんな慣行はないと抗弁をいたしておりますが、私どもの知る限りでは、従来組合の推薦しない者からも校長が選ばれておったという事例は数回あったと思いますが、文部省もそういうぐあいに理解されておられますか。
  53. 天城勲

    説明員(天城勲君) お話のように、従来のケースといたしましては、高教組から推薦されない者を校長に発令したケースもあることを私は聞いております。それから、先ほど申したように、非常に多数の、百人以上の候補者を出すという形のことはあったようでございますが、結果的には教育委員会が校長の適格者として考えた者を判断して発表するという形でございまして、非常に大ぜいの推薦者があったために、校長になるのがその中にあったということでございまして、組合の推薦に基づいた者だけから選考するという慣行はないと私は聞いておるわけでございます。
  54. 柳田桃太郎

    柳田桃太郎君 しからば、組合側も新任校長全員が組合の推薦した者からのみ選考されるものではないということがわかっておったと思いますが、今回に限って非常に強い抗抵を示しておられるのはどういうことであろうか。私どもは、良識ある高教組の諸君がどうしてそのような県教育委員会の人事権を制約するような闘争を、どうして自分の身体を張ってまで打つのであろうかということを考えてみまして、非常に疑問に思うのでありますが、文部当局はどういうぐあいにこれを解釈されているのですか。
  55. 天城勲

    説明員(天城勲君) これは御案内のとおり、人事権というのは法律上教育委員会の権限でございます。また、それに必要な選考という仕事は、これは教育長の権限でございます。これに基づいて行なわれることは当然だと思うのでございます。ただ、教育委員会が適正な、公正な人事をし、適格者を得るために、いろいろな資料や情報を得るということは当然のことでございますので、関係者の希望や意見を聞くということは、これは特にどこの県の慣行ということではなしに、一般にそういうことは行なわれておると思います。そのことと任免権の所在ということは、はっきり意識しなければならぬ問題だと、このように考えております。
  56. 柳田桃太郎

    柳田桃太郎君 わかり切った質問でございますけれども、高教組の諸君が主張されるように、そういった人事慣行に類するようなものがあったにいたしましても、法のたてまえ上、また教育の正常化を期する上においても、すみやかにそういった慣行は改めらるべきものと考えておりますが、私の心配するところがもし事実でなければ非常に幸いでございますが、文部当局として御承知かどうかと思いますが、福岡県の高等学校のうち過半数以上に校務運営規程というものがありまして、校長並びに組合員の諸君を含んで職員会というのが結成されまして、これが校務運営上の最高議決機関であるというふうに規定をされておる学校が相当あるようであります。したがいまして、人事はもちろん、校務運営の重要事項は、その職員会によって議決されたものを校長がこれを行なうという状況になっておりまして、したがいまして、よほど数的に多い組合側の職員会のメンバーが自粛自戒をして、将来の教育運営を企図しない限りは、とかく行き過ぎを生じやすい状態がそこにあるのでございますが、今回の校長人事につきましても、その闘争の源泉というものは、憲法と皆さんが言っておったのでありますが、この内規に原因が存するのではないかと私は心配するのでございます。もちろん、民主的な学校運営のためにそういった諮問機関があるということはまことにけっこうでございますけれども、もしこういう内規が校長の人事あるいは教頭の人事、あるいは校務全体に対しまして、校長の持っている職務権限を侵すということになりますと、これは教育の正常化をはばむことになりますので、すみやかに何らか改善措置を要求すべきものではないかと思いますが、いかが考えておられますか。
  57. 天城勲

    説明員(天城勲君) ただいまの福岡県の各学校における内規の実情について、私、現在のところつまびらかにしておりません。ただ、基本的には、いま御質問の中にもございましたように、教職員の協力を得ながら学校運営する、学校を民主的に運営するという考え方と、それから責任を果たすべき者が責任を果たすということとが混乱してはこれはならないことだと思っております。いまの学校の内規、あるいはそれがどういう事項を処理するのか、詳しいことは私は存じませんが、要はいま申し上げたように、学校が民主的に運営されるということと、学校が正当な責任を果たす上で責任者責任ある行動をとれるようにするということとは、やはり一線を画していくべきではないかと、このように考えております。
  58. 柳田桃太郎

    柳田桃太郎君 もし、文部省は知らないとおっしゃいますが、校務運営規程あるいは内規、あるいは憲法といったような、そういったものがないとしたならば、今回の校長新任人事につきましてほんとうに抵抗していく正当な理由というものを求めることが非常に困難に思われます。そうすることは教育委員会の持っておる人事権を拘束し、教育委員会の自主性に基づいて広く人材を求めるという行為を拘束することで、これはもうよくないことは明らかでございますが、長くそういった環境というか伝統というか、そういう内規というものの中につちかわれてきた福岡県だけに通用する一つの常識がここまで深追いをする原因になったのではないかと思いまして、私は非常に心配をしておりますので、重ねてこういう事項は将来調査されまして善処されることを要望し、次の質問に移ります。  次は、なるほど学校の先生方のピケございますから、説得ピケであるということでございましたが、事実におきましては相当激しいもみ合い等もあったということが報道されております。そういうような事態が起きておるかどうか、あるいは校長の着任が発令以来百日以上も行なわれていないということは、校長自体が勇気を持って積極的に自分の職場に着任しようという意欲を持っておったかどうかということも、われわれ憂慮にたえないのでございますが、そういうピケの状態あるいは校長の意欲の問題等につきまして、報告が参っておりましたならば、承りたいと思います。
  59. 天城勲

    説明員(天城勲君) 校長着任を阻止したこの実態につきましては、いろいろ報道もされておりますし、いろんなケースが伝えられておりますが、私たち県の教育委員会から受けております報告では、校門あるいは玄関にピケを張って、数十名の組合員に入校を阻止されたり、あるいは場合によると追い返えされたり連れ戻されたりという激しい事情があったようでございます。また、校長室に何らかの形で入室した場合にも、今度は学校内でいろいろな、これはことばの上では、校長からは強制という印象を受けるような激しい状況にあったと。また、夜おそく校長宅に面会を強要したというふうにも聞いておりますし、一晩じゅう電話をかけていろいろ校長辞令の返上を要請したというような事実のあったことは私も聞いておるわけでございます。
  60. 柳田桃太郎

    柳田桃太郎君 ある学校では警官隊を導入してまでもピケを排除して登校着任をしたと聞いておりますが、そういうことが生徒に与えた影響、あるいは今後の校長と職員間の問題についてどういった影響があるか私は心配をいたしておりますが、これらについての状況がおわかりならば、説明願いたいと思います。
  61. 天城勲

    説明員(天城勲君) いずれにしましても、たいへん異常な事態でございますし、また百日にわたる長い期間のことでございますので、これは教育の現場における事態からは憂慮すべき一番問題の点だと思っております。私たちも、この問題が起きまして以来、いろいろな従来の行きがかりやあるいは交渉のいきさつはございましょうけれども、ともかく子供の教育という観点から見て一番望ましくないことでございますので、その点につきましては、県の教育委員会にも最大の配慮を払うようにということは私は申したこともございます。また、県の教育委員会も当然そういうことはいろいろ最初から配慮しているような事情でございますが、結果的には、最終的に一部の学校ではどうしても警官の協力によって学校に入校しなければならなかったというような事態が起きたことは、これは残念なことでございますし、また、校長がいないということでは学校運営も十全を期しがたいわけでございまして、一日も早くこの事態解決することを望んでおったわけでございますが、現在の時点で、関係者のいろいろな配慮がございまして、学校教育も一応大きな支障なしに一学期は終わった形になっております。しかし、このことが子供や教育関係者に残した印象というものは、あるいは影響というものは、私はかなり大きいのではないかということを心配いたしております。
  62. 柳田桃太郎

    柳田桃太郎君 七月十三日に至りまして、高教組の幹部並びに教頭の数名の者合わせて五十名が地公法の違反として懲戒処分を受けましたことは、これはやむを得ざることであったかもしれませんが、人事管理上はなはだこれは遺憾なことだと思います。したがいまして、どうしてこの懲戒処分に至るまでの間に三宅副知事等のあっせんが行なわれ妥結しなかったか、またどういう点にひっかかってこのきわめて明快な内容を持ったものが妥結できなかったか、そういうことがおわかりならば、お知らせ願いたいと思います。
  63. 天城勲

    説明員(天城勲君) 三宅副知事のあっせんは、とにかく異常な事態が目の前にあるので、ともかくこれを正常な状態に復さなければならぬ、いろいろ話し合いの問題があるにしても、ともかく異常な事態をやめなければならぬということが考えられたようでございまして、長い間の折衝がございまして、その経過はたいへん長くかかりますので省略させていただきますが、最終的には、相互に人事権が教育委員会にあることを認める、それから今度の異常事態についてはピケその他の行動はやめるということと、それからもう一つ、今後の人事の扱いについて、その点がそのあっせんの中身にございまして、それについて結果的にはことばの、あるいは何といいますか、覚え書きの文章の上での食い違いというような形でございますようですが、本質的には、やはり組合の推薦人事ということを強く主張し、教育委員会側は公正な立場から人事権は教育委員会が行使するというその点についてのやはり話が受け入れられないままになったのが、あっせん不調になった一番の原因というふうに聞いておりますし、理解しております。
  64. 柳田桃太郎

    柳田桃太郎君 懲戒処分によって二十一名の者が免職を受け、停職者が二十九名のようでございますが、これの根拠法規をお聞きしたい。なお、この懲戒処分は、いまだに事件が解決しておりませんので憂慮されますことは、さらに今後処分者が追加されるのではないか、あるいはまたいろいろな報道を総合していきますと、刑事処分にまで発展するのではないかという危険をはらんでおる。これは今後ますます高等学校事件を混乱させることで、一日も早く解決をすることが私どもは望ましいと思います。聞くところによれば、三宅副知事がさらにあっせん工作に乗り出しておるということでございますが、できる限りの指導と助言を与えて、本件のすみやかに解決されるように望むものでございます。  さて、この根拠法規と懲戒の内容をお伺いして、さらに文部大臣の所見を最後にお伺いいたしたいと思います。
  65. 天城勲

    説明員(天城勲君) このたびの懲戒処分の根拠でございますが、それは県からの報告によりますと、地方公務員法の三十三条の信用失墜行為の禁止の違反、それから第三十五条の職務専念義務の違反、それから三十七条の争議行為等の禁止の違反、この三つの条文が根拠になっているわけでございまして、個々の人がどの条文に該当しているかは私存じませんが、全体の根拠は以上の三カ条に基づいているというように報告を受けております。
  66. 柳田桃太郎

    柳田桃太郎君 最後に、文部大臣にお伺いいたしますが、本件は福岡県教育委員会において解決をすべき問題であると、先般の五月十四日、二十一日のいずれかの日におきまして文部大臣はこういう御答弁をなさったと聞いておりますが、県教委は善後策を検討中であり、大臣としてこの問題に介入する意思は現在も持っておらず、関係者の努力によりすみやかに正常化されることを期待すると、こういう答弁でございますが、現場におきましは、やはり今回の県教育委員会が法律に基づいて適正に措置した行政処分については、教育の正常化を期待するためにもその合法性を支持、強調して、県教育委員に対して筋は筋として通すように積極的に指導と助言を与え、そして解決すべきものは解決するようにさらに積極的にやっていただく。現在報ずるところによりますと、現場におきましては、ことしの一学期中の通知簿が完全に記載できなかったところもあり、あるいは生徒がこの闘争に巻き込まれて街頭において処分を受けた先生の処分撤回署名運動に参加しておる者もあり、あるいはPTAあるいは町のいろいろな団体がこの闘争に参加をしておるようなものがございまして、ますますこの高等学校の闘争が拡大をして解決が困難になりつつある様相も見えますが、少なくとも一学期中十一校に校長不在であったというような事態はすみやかに解決をして、この夏休み中には本事件が円満に解決するように、ぜひ県教育委員会をひとつ督励をして指導していただきたいと思いますが、大臣の所見を最後に承りたいと思います。
  67. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 今回の福岡県の問題は、私はまことに遺憾なことと思います。県教委の行ないました人事に対して県の高教組が反対をし、校長の着任ないしは正当な職務遂行を妨げた、このようなことはきわめて異常な事態であり、その影響するところは非常に大きいと私は思うのであります。ことに、先ほどもお話に出ておりましたが、生徒の教育の上から申しましてもきわめて憂慮すべき事態ではないか、このように存じております。  教育職員の人事につきましては、筋道といたしまして、教育委員会がその判断と責任において行なうべきものであると思います。この教育委員会の人事権の行使につきましては、たとえいかなる勢力でありましても、これに左右されてはならないものと私は存じておる次第でありまして、今回の福岡県の状態というものは、教育委員会の判断と責任のもとに行なうべき教育人事に対しまして他の勢力が介入をしてきておる、こういう事態であります。筋道としてはとうてい容認できる事態ではないと、私はかように考えるのであります。  この問題の解決につきましては、相当の日子を経過しておることでございます。当事者の間におきましても、いろいろ話し合いも行なわれておるようでありますし、また県の当局の間におきましてもあっせん仲介の労をとっておる、こういうようなことが今日まで行なわれておるわけでありまして、地元においてできるだけ私は適正な解決を見るようにということを期待いたしておる次第であります。文部省からかれこれとこの問題について積極的に立ち入るということが、はたして適当な事態であるかどうかという判断もやってまいらなければなりませんが、仰せのとおりに、いつまでもこのような事態が続くということは何とか解決して避けていかなければならないと思うのでありまして、十分事態の推移につきましては関心を持って見ておるところでありますが、せっかくいま地元においていろいろ努力がなされておりますので、その努力の結果、筋道の通った適正な解決策ができるように、またそれによって事態解決されるようにということを念願いたしておる次第であります。
  68. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 柳田君の質問を終わりまして、次に安永英雄君。
  69. 安永英雄

    ○安永英雄君 ただいまの柳田委員質問された内容と趣旨は同じでありますので、当初に、関連した問題について質問をいたしたいと思います。  いま、この着任拒否の今日までの実態について経過をお話しになりましたが、その中で、わざわざ、例年であれば百人程度の候補者名簿を提出して、そしてその中からえっていくということであったけれども、ことしは少数であった。これは事実三十八名、そうしてできた校長が十五名、その中で三名だけは三十八名の中に含まれておったけれども、あとの十二名、これが入っていない。したがって、このために紛争に入ったような報告をされたわけであります。しかし、決してそうではないのであります。  これについては従前の慣行ということで、当初に、ことしの三月の教組と教育委員会との交渉の段階においても、昇任人事については広く人材を求めて選考したい、しかし最終的には組合の了解のいくものでなければならない、したがって選考は従来どおりやりたいという県教委の態度が明示された。そのことによって、交渉をその後一切進めない、やらないというところに紛争の原因があるわけです。高教組が提出した名簿に入っていないからこの紛争、拒否闘争が起こったということではないわけです。従前の慣行、それを守ると言いながら守らなかった、そのことの責任の追及をやっておる、これが実態であります。  文部省はそういった実態はどのようにつかまれておるのか。あくまでも、そほど言われたように、教組のほうから三十八名名簿が出ておる、その中に入っていない者が校長になったから紛争が起こったというふうにとられるのか、把握されておるのか。私が言ったように、あくまでも従前の慣行を守って組合の納得のいくまで話し合いをして了解のつくまでやって人事を円満に片づけたいという態度を表明しておきながら、それを守っていかないから起こった問題と、この二つがあるわけですけれども文部省のほうはどういうふうな把握をされておるか。  さらに、先ほどの答弁で、何かこう、従前の慣行というのは、たとえば三十八名を出して、出しっぱなしで、その中からとってくださいということではない。それを出して、そしてともにそこで交渉、話し合いをしながら納得のいくまで話し合いをしていく、そのことが慣行なんです。福岡県の場合は慣行というふうに私は調査をいたしておるのであります。したがって、柳田委員が言われたように、その名簿以外の方が校長になった例は当然あるわけです。そういう広い意味の、ただ名簿を提出してその中からとってくださいじゃなくて、名簿を提出して話し合いをして、そこで納得のいくまで話し合いをする、これが二十年間の慣行だと私は調査をいたしております。この点については文部省のほうではどのように把握をされておりますか。
  70. 天城勲

    説明員(天城勲君) いまお話のございました発令前のいきさつでございますけれども、これにつきましては、教育委員会側といたしまして、人事の行使にあたっては教育委員会の見識と責任において行なうということを組合側にも申し述べ、その方法として面接の方法をとって選出、きめたいということを申したと聞いております。これに関して、組合側がそれに反対して、いろいろな交渉があったあとに最終段階で、それはやめよう、一人一人の面接という方法はやめようということになったといういきさつは聞いております。ただ、その間に、いま御指摘のように、それを取りやめたことが直ちに従来どおりの方式にいくんだという了解を組合側はされていたのかもしれませんが、教育委員会側は、そういう意味じゃなくて、基本的に教員の人事については教育委員会の見識と責任においてするという前提に立って、その方法について面接をするかしないかというような方法論についての話がまとまらないので、じゃこれはやめようということになった、それとあとの受け取り方が分かれてしまっているということは私も聞いております。
  71. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  72. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 速記を起こして。
  73. 安永英雄

    ○安永英雄君 警察官の導入について、先ほど、文部省のほうも警察官の導入については十分気をつけてやりなさい、こういう指導はした、しかし警察官を導入をしなければ赴任でできないような状態であった、それで福岡県の教育委員会は警察官を導入要請したのだ、こういうふうに取れるような見解があったと思いますが、この点については、警察官の導入をしてまでも赴任をさせていったという県教委のこの処置について、文部省はどうお考えになりますか。
  74. 天城勲

    説明員(天城勲君) 先ほどお答え申し上げました中にいまおっしゃるようなふうに受け取られる点がありましたら、それは私の真意でございませんので、私の申し上げましたのは、警察官導入についてわれわれが指導したとか、どうこう意見を述べたということは毛頭ございませんし、その間の教育委員会の行動につきまして、一々われわれ指導いたしたこととは毛頭ございません。基本的に望ましいことではないのですし、子供の教育上悪い結果を生ずることになりますので、一日も早く解決するようにという前提で、むしろ県と関係者の努力に期待しておったわけでございまして、一々の行動について指導いたしたわけではございません。そのことは、最初のことばが不十分でございましたならば、はっきり申し上げておきたいと思います。
  75. 安永英雄

    ○安永英雄君 福岡県教委が、先ほど当局からも述べられたように、免職を二十一名、停職、これが二十九名、合計五十名、しかもそういう処罰の質においても、刑法における死刑か無期懲役、それに該当するような最高の処分をいたしている。私は日本の全国でこういった例はないと思う。あるいは、警察官を導入して校長が赴任するという、こういった実態というものは全国に例がないと思う。あるいはまた、人事の話し合いを全くしないで一方的に発令していくというこの人事の運び方をやった県の教育委員会は、これはないと思う。こういう前代未聞のこの大量の首切りをやり、あるいは停職をやるという、このことは現在福岡県内における状態としては、これは県民のひんしゅくを買っているのであります。  現在すでに、七月十七日には県内の学者、文化人約百名近くの方々が、教育大学、あるいは学園大学、西南大学、あらゆる大学の学者あるいは文化人が一斉にこの問題を取り上げ、この暴挙について声明書を出しております。あるいは県の文教委員会等におきましても、この問題を現在取り上げて、そうして明らかにこの処分というのは警察官の介入とともに不当と思われる大量処分を起こして最悪の事態を招来している、したがって教育委員会は従来のいきがかりにこだわらずに、双方の話し合いを直ちにやって努力をすべきである、したがって当面この処分の発令を保留して、そうして話し合いをしなさいという決議文を出している。県議会も自民党を除いた各党会派すべてこの処分については話し合いをしろという意見をまとめて知事に出して、知事もこれについては善処するということを言わなければならない状態にこれはなっているのです。あるいはPTA等も、百四校ありますけれども、この半数近いPTAは直ちに決議をやって、この処分についてひど過ぎるじゃないか、自分たちの子供を教えている先生を直ちにこの職場に帰してもらいたいという決議を上げておりますし、現在も夏休み中それぞれPTAが開かれて、そしてそういう決議が続々上がってきている。生徒のほうからも、先生を帰してもらいたい、こういう街頭署名までも出ようとしている。また現に出ているところがある。こういった処分後におけるこの県教委のとった処分については非常に怨嗟の声が高いし、直ちに処分を撤回しろという声が非常に高いのであります。こういった状態について文部省のほうは情勢を把握してあるかどうか、これをお聞きしたいと思います。
  76. 天城勲

    説明員(天城勲君) 今度の事態がたいへん異常なことであるし、過去に他に例を見ないような問題であることも私たちも十分承知いたしておりますし、それだけにこの問題の重大性は認識いたしております。教育委員会で行政処分いたしますということは、これはたいへんな決意を要することでございますし、公務員の処分を軽々にするというようなことは、だれも行政内部の人間として簡単にできるものではないということはよく知っております。この長い間にいろいろな努力も試みられ、また第三者の調停もあって、これを円満に解決したいという努力は続けられてきたことも事実でございます。また、その間に学校のPTAからのいろいろな御意見が出ております。これはいま御指摘のように、処分後の御意見の一部の御発言もございましたけれども、これに至りますまでは各単位のPTAあるいは地域の人たちから、当然こういう事態ですからいろいろの意見があった。それらを勘案いたしまして、最後に教育委員会として、行政の秩序と教育委員会の責任という立場から、処分に踏み切らざるを得なかったというのが実態だろうと思っております。  今後の問題につきましては、当然新しいいろいろなこれに伴う反響や影響が出てまいります。このことは関係者も十分覚悟しておりますし、意識しておる問題でありまして、したがいまして、今後この事態収拾のために、これはちょうど県会の最後のときに知事の発言もあったようでございますけれども、引き続いて三宅副知事があっせんの労をとるということで、すでにその段階に入っておるわけで、ありまして、ごく最近第一回のあっせんの会合も開かれ、九月までに何とか解決しよう、精力的に八月中に努力しようというような動きも出ているように聞いております。私たちその方向に沿って一日も早くこのことが解決されるように強く期待しておるわけでございます。
  77. 安永英雄

    ○安永英雄君 まず、この事態収拾文部省としては、三宅副知事があっせんをしてそうしてそれに大きく期待するというそういう立場を表明されましたけれども、三宅副知事がもしもこれを仲介の労をとって成功させると、こういった場合に、私は二つの案しかないと思う。  まず一番は、こういった教育の人事問題にからんで福岡の教育混乱におとしいれて、その収拾をし切れない無能な教育委員がまず辞任をすべきだ。これを推進し協力していった教育長がまずやめるべきだ。しかも、今度の処分を見てみますと、三十三条、三十五条、三十七条、これを該当させて処分をいたしておるわけですけれども、十一名の校長、この校長は明らかに三十三条に私は該当すると思う。特に名誉失墜というこの項目ですが、警察官を引きつれて学校に来、それが子供も見ている。そうして子供の張り紙を見てみますと、警官に守られてくるような校長さんはうちには要らないと、こういうふうなことを生徒の口は言っている。その校長さんが処分を内申しているのです。一日も学校に来ない校長さんが処分の内申を校外におきましてやって、そこの学校の職員の処分を内申しているんですから、万一九月一日に参りましても、学校の中がうまくいくはずはない、学校運営というものはそんなものじゃない。あるいは朝早く五時ごろ、生徒のだれもおらないときに学校に行きまして、校長室の窓を外からこじあけて、どろうぼうみたいに校長室にすわって、着任したと大声でどなって、またみな来ないうちにこそこそと帰っていく。こんな姿も警備員に見られている。もうすでに十一人のこの新しい校長はこう言っていますけれども、この人は私は名誉を失墜——三十三条の該当の最たるものだと私は思う。あるいはまた、三十五条で一般の先生方を処分しておりますけれども、いまもたびたびお話があるように、あなたも認めているように、校長に任命され、百日も学校に来ないで家でぶらぶらしている、これが職務に専念をしておる姿でありますか。全く職務専念の義務を怠った最たるものです。私はそういった一連の県教委、教育長、あるいはそういった名誉を失墜し職務専念を怠っている人、こういう人たちをまず処分をする、そういうところに私は今後の解決の方法が一つある。  それともう一つは、すみやかに私は処分を撤回し、そうして人事問題を一切三月段階に引き戻して従前の慣行に従う、そうして話し合いで円満にやり直す。この中間における三宅副知事のあっせん案をめぐって、高教組のほうといえども当初から県教委が持っている人事権を侵そうとは考えてはいませんよ。あくまでも人事権は県の教育委員会にあるという前提に立って、ただ、その人事の運び方の過程において十分話をしていただきたい、自分たちの意見をひとつ聞いてもらいたい、尊重してもらいたいというところだけなんです。そういった状態に返せば、文部省が、この前の委員会でおっしゃったように、広く意見を聞き、そして現場の教師の意見を十分にこの人事に反映をさせていくことが一般論としては望ましいと言っておるのである、そういった状態に返さないと、御存じのように知事から任命されたこれは三宅副知事ですよ、文部省から来られた教育長ですよ、この人たちの中で双方が歩み寄るようなあっせんはできそうにないですよ。いままでやったけれども失敗だった。  今度は私は思い切って二つどちらかを選ばなければ正常な状態には返らないと、そう思いますが、文部省の見解を伺いたいと思います。
  78. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 先ほど私の考えを申し上げましたが、私は現在の段階において、文部省がかれこれと案を持ってこの話の中に入るつもりはございません。地元における関係の皆さん方の御協力のもとに何とか解決をしていただきたいと、そのように思っているわけでありますが、ただ、解決と申しましても、それはやはり筋道の通った解決がなければいけないと思うのであります。筋道の通らない解決教育行政の正常な運営に対して障害となるような解決はあってはならないことと存じておりますし、関係の皆さん方の御努力もその線をはずれての解決はおそらくなさらぬであろう、こういうふうに実は期待をいたしておるわけであります。  先ほど安永君のお話の中にもございますように、私は遺憾ながら安永君のお考えとはだいぶ私の考え方は違っておるようでございます。このような事態を招いたことはいかにも残念なことでございすすけれども、このような事態は何によって起こったかということについてもう少し御検討をいただきたいと私は思うのでありまして、教育委員会のやったことのよしあし、適否と、こういう問題についてはもちろん教育委員会自体がその責任は負うべき問題であると私は思うのであります。しかし、それがかりに関係の教職員の皆さんの御満足がいかないといたしましても、そのためにその行政の進行に対して実力的にこれを阻止する、こういうことは私は許されないことと思うのであります。それぞれ、何をなすにつきましても、おのずからその道があろうかと思いますが、教員、校長の任命を教育委員会が適法にやっておる、こういたしまするならば、その校長の着任を妨げるということは、少なくとも実力をもってこれを妨げるというようなことは、私は容認することができない事態であろうかと思うのであります。それがなかったならば、いまのような混乱した状態にはならないだろうというふうに私は思うのであります。その点について安永君と遺憾ながらものの考え方が違っておるのじゃないかというふうにも思うのでありますが、いずれにしましても、この教職員の人事は、その間にいろいろ御相談もしたり意見を聞いたりというようなことはありましょう。また、要望を申し出られるということもありましょう。ありましょうが、終局的には県教育委員会の先ほど申しましたように判断、その責任において行なうことであります。これが行なわれました以上は関係者はその行政の進行に対して、適法の手続によってかれこれ言われることは別といたしましても、少なくとも暴力的にこれを実力的に阻止するというようなことはしかるべからざることと私は思っておるのでありまして、ことにまた教員の人事につきまして、教職員組合の方と談合をしてこれをきめるというふうなことは、これまた容認することのできない問題であります。これはやはり教育委員会がその責任をもってやるべきことであると私は思うのであります。そういう点について、どうも安永君とあるいは私の考えは違っているかもしれませんけれども、私はこの行政筋道だけははっきり立てた解決を望んでいるわけであります。
  79. 安永英雄

    ○安永英雄君 私は先ほどから言うように、行政のこの筋道というものについて、それをおかしていっておるのが福岡高等学校の現在の実態ではない、こんなふうに思っております。あくまでも筋は筋として通して、一本言っておる。したがって、いま談合ということばを使われましたけれども、私は慣行として先ほど、二十年間続けてきた高等学校のこの人事の問題について、名簿を提出して、その名簿をめぐって一緒にこの中で話し合いをする、最終的には県の教育委員会がきめる、これは私は筋道をおかしているとは思いません。あくまでも話がつかなければ、一歩も教組の案というものがいれられなければこれはだめなんだという言い方ではないのですよ。そしてまた談合というのはどういう意味か私はわかりませんけれども、人事の問題については、一切とにかく一言も冗談も言っちゃいかぬ、こういったことをおっしゃったとすれば、これは私はこの筋は間違っていると思うのですよ。人事の定め方については、談合ということばをあえて使われましたけれども、交渉とかあるいは話し合いということばはよく聞きますけれども、談合ということばは初めてですね。談合はいけない、これをやるような県の教育委員会の人事はこれは筋をはずれているというふうにおっしゃっていいのでしょうか、もう一度。
  80. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 談合ということばが誤解を招いたかもしれませんが、話し合いとかなんとかいうことばで言うのがあるいはいいかもしれませんが、いずれにしましても、意見を述べるとか意見を聞くとかいうことをかれこれ申すのではございませんけれども、しかし、これによって県教委の人事権が拘束される、左右されるということになるのではないということを私は申し上げておるわけでございます。
  81. 安永英雄

    ○安永英雄君 私は、なぜ起こったかというのは、高等学校の教職員組合がピケを張って、そうしてこの人事の発動についての阻止をするから事が起こったとは私は考えておりません。大臣はそうおっしゃるけれども、そうじゃなくて、私は先ほど言っているように、人事というのは二十年間慣行によって、そうして話し合いで穏やかに進めてきて、最終的には県の教育委員会でぴちんときめる話をやっておった。これが急にことしになって一切話し合いをしない、そういうことで、あなたのおっしゃるように談合は一切しない、こういうことで百何十日間きたのですから、そこに私はやはり混乱の原因があるわけなんですよ。高等学校が筋を曲げているから混乱が起こったとか、あるいはピケを張ったから起こったという問題ではないのです。また、ピケ、ピケとおっしゃるけれども、警察官を導入していかなければならぬほどのピケではないです。  私は、明らかにあの十一名の校長さんは県教委のほうから殺されたというような気がするのですよ。あくまでも十一人の皆さん方には、皆さんに対して何もこれはいいとか悪いとか何とか言っておるのではありません。県の教育委員会が逃げ隠れをして話し合いをしない。その話し合いが済むまで待ってくださいというのが、あなたの言うピケの内容です。何もあなた方が悪いからあなた方を校長とは認めぬというような形ではないのです。ところが、だんだん百日かかってきました今日は、先ほど申しましたように、窓を越してみたり等々、いろいろとやってまいりますから、校長さんはだめになってしまった。私は、どんなにあとの事後処理がよくても、この十一人の校長さんはもう教職員として福岡県内におれませんよ。県教委が殺したようなものですよ。そういうピケの内容なんですから、また筋を通してやっておるんですから、この点については、私は、先ほど最後に申した私の解決策以外にはないんじゃないかというふうに考えますが、再度その点について大臣の答弁を願います。
  82. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 安永君の解決策をいいとか悪いとか、いま私がこれ申し上げる段階ではないと思います。ただピケという問題については、私は教育委員会の人事というものが有効に発令せられております以上、これはこれとしてやはり進行させてしかるべきものだと思うのでありまして、その教育委員会の人事を、せっかく発令したけれども、これが実際上において校長が着任し、あるいは職務の遂行をすることができないという状態にピケが置いておるといたしますなら、そのようなピケはすみやかにやめてほしいということであります。そして問題は問題として、将来どういうふうにひとつ運営するのがいいかというような御意見なら、静かに冷静に話し合われたらいい問題だと私は思うのであります。それをどうでしょう、いまのように百日間もきわめて不正常な状態に置いておいて、そうしてかれこれやるということはいかがであろう。私はそのような状態は決して望ましい状態とは考えておりません。
  83. 小野明

    小野明君 関連。この問題が、大臣、何によって起こっておるか、この点が問題だと大臣は言われた。それで、同時にまた、この意見を高等学校側の、高教組側の意見を聞くことは、これは妨げない、こういうふうにも御答弁があったと思うが、私は現在大学の学長を選ぶ場合にも、教授会の教授の選挙である。これが高等学校の校長を選ぶ場合には、いままでも県教委に任命権があるという固執した態度というものが今日の事態を招来したと思うわけです。これは何によって起こったかというのは、県教委側がこの高等学校側、高教組側と話し合いを拒否しておる。この百日間というものは高教組と県教委との話を拒否しているのは県教委なんです。この点を十分御承知の上のことである。また、高教組は何ら県教委の人事権というものを否定しておらぬ。認めておる。だから、為政者としては、教育長の権限を持っている人は、各界各方面の意見を聞く、それくらいの度量がなければ、そして判断の要素になるこれくらいの審査を行なうにあたって、慎重さ、あるいはそれだけのやはり何といいますか、幅の広い意見を求めるくらいの識見がなければ、私は教育長というものはやれないと思う。だから、一つは話し合いをあくまでも拒否した県教委、教育長に問題はあると思うし、全然高教組側の意見を聞こうとしない教育長に私は問題があると思う。また、警察官の導入についても、教育長が校長に指示してやっている。警察官を入れるほどの事態ではないのに、教育長が指示してやっている。この点については、これは判断の違いというものがあったかもしれませんが、今日の事態というものは、やはりあくまでも話し合いを拒否している、そして強引な非常な狭い人事をやっている教育長に、あるいは教育委員会に責任があると私は考えておりますが、この点について大臣の御意見を伺いたいと思います。
  84. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 適正な教育人事をやりますために、教育委員会がいろいろ資料をもって判断をするということは、これは当然なことでございましょう。しかし、教育委員会としてどこの意見を聞かなくちゃならぬとか、こういうふうなものでもないと私は思う。個々の意見を聞かなければ教育人事ができないとかなんとかいうものではない。そこは教育委員会の育識をもって、自分の判断でもって適正な資料のもとに人事を行なうことになるというふうに私は考えるのであります。  また、話し合いを拒否しているというお話しでございますけれども、とにかく今度の校長の人事というものは、すでに発令せられておる問題であります。その発令せられた人事が実際問題としてその実をあげることができないというふうな事態は、いかにも異常な事態だと私は申さなければならぬと思う。話し合いもけっこうでありますが、この発令せられた人事に対しては、やはりそれがその実をあげることができますように各方面とも御協力願いたい、こういうふうに私は思うのでありまして、今後の取り扱いをどうするかというふうなことについて意見を述べられたり、また申し出られたりすることは、あえて妨げることではないと思いますけれども、いまのような事態のもとに何の話し合いをなそうとしておるのかということが私はわからないのでありますけれども、あのような異常な事態だけはすみやかに解消して、正常な状態のもとに、今後の教育人事等についていろいろ意見を申し出られ、話し合いをされることは私はけっこうだと思うのであります。
  85. 安永英雄

    ○安永英雄君 いま大臣がおっしゃったように、高等学校教組の、三宅副知事が一時中間的にそのあっせんに入ったことがある。そのあっせんの内容において、三宅副知事もいまみたような趣旨のあっせん案を出したのであります。ところが、県教委のほうがこだわったのは、いわゆる高等学校のいま現在発令をされておるその人については、これはもうやむを得ない、今後の問題にしようということで、県の教育委員会はあくまでも人事権があるのだということは当然だし、しかし言いかえますと、今後の人事という問題については高教組の意見をひとつ尊重してもらいたい、そのかわりいままで紛争で赴任できない校長、これも一応認めて、そうしてこれを解決しようというあっせん案については賛成をしたのですよ、中間的に。ところが、適正な意見でないといけないのだということで、適正な意見は尊重すると。「適正」にひっかかって、ついにあっせん案がこわれたといういきさつから見ましても、いま大臣がおっしゃったように、高教組というのはそういう点でもってこの問題を解決しようというのは中間的にはっきりしているのですよ。人事権は県教委にある、そうしてことしの人事については、これはいままでのいきさつはあるけれども、一応これは認めましょう、しかし今後の問題としてひとつ尊重してください、こう言ったところが、「適正な」ということばをつけなければ、これはもう県教委のほうは認めません。これにこだわるものですから、とうとうこわれたという一幕があったのです。  高教組の現在の立場としては、いつでも変える。いま大臣がおっしゃったような立場を高等学校もとっているから、私ども努力します。努力しますが、文部省のほうも、高教組があまりに人事権を無視している、侵害しようとしている、ことしの人事は絶対に、これももう発令してあるけれども、赴任させるものか、今度も絶対こういう立場をとっていないことは、これは文部省としてもよく理解をして、この事態を見守っていかないと、これは私は事態収拾にはならない。文部省はそういう形で見てやらないとすれば、地元ではなかなかこれは進まない。私はそれを最後に申し上げておきます。
  86. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 本件に対する午前中の質疑はこの程度にいたします。  午後一時二十分まで休憩いたします。    午後零時二十五分休憩      —————・—————    午後一時三十二分開会
  87. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) ただいまから委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、質疑を行ないます。  なお、政府側より灘尾文部大臣、山上防衛施設庁長官、村山文部省管理局長が出席いたしております。
  88. 小野明

    小野明君 施設庁長官にお尋ねをいたしますが、先般ジェット機が落ちた際に、私ども調査団で板付基地の司令官マトリック司令官だと思いますが、会ったんですが、昭和三十八年の十一月にですね、板付が予備基地になる際に、福岡市と米軍との間に協定があったわけです。それがあるにもかかわらず、私どもがマトリック司令官に会ったときには、そういう申し合わせがあったことは知らないというわけです。この内容については長官も御存じだろうと思うんですが、何で米軍が知らないと司令官が言っておるのか。その辺がおわかりでしたら、ひとつ御説明をいただきたいと思います。
  89. 山上信重

    説明員(山上信重君) 板付飛行場におきまする飛行制限の問題について福岡の防衛施設局長と福岡市との間で文書の交換がなされましたが、実はこの際米側と当時の施設局との間では口頭で話し合いがなされた結果を、こういうふうになるはずだということで通報いたしたものでございまするので、いわばその内容、まあ夜間における飛行制限等を含むわけでございますが、これらについては当時そういう話をいたしたということで、文書等による明確な交換がございませんでした。そのために現在の司令官においてはそういうことを承知しておらなかったということで答えたのだろうと、こういうふうに存じます。
  90. 小野明

    小野明君 それはたとえば横田、厚木の場合には明確に文書で協定がなされておる、まあこういうふうに伺っておるんですが、基地司令官についてこの協定を守るようにさせるというのは、施設庁の仕事ではないんですか、いかがです。
  91. 山上信重

    説明員(山上信重君) 米軍基地の航空機の問題で周辺住民の安全確保並びに騒音対策というような立場からの日米間の話し合いにつきましては、御承知のように横田、厚木につきましては文書化されておるわけでございまするが、同時に各飛行場につきましても、横田、厚木と当然同じではございませんが、たとえば安全の見地から、人口棚密区域の上空を避けて通ってやる、あるいはアクロバット飛行を制限するとか、超音速の飛行については十分気をつけてもらうとかいうようなことにつきましては、これは日米の委員会においても合意されておりまして、この点につきましては明らかに順守されており、またされるように米側においても、各地方の司令官に指示をしておる、こういうふうな状況でございます。
  92. 小野明

    小野明君 そうすると、これは米軍側の誤りであるとわれわは承知をしてよろしいというわけですね。この知らないということについては、知っておられないということについては、米軍側の契約不履行、こういうふうに受け取ってよろしいですか。
  93. 山上信重

    説明員(山上信重君) ただいま私が申し上げた範囲のことは日米間で正式な合意ができておりまするけれども、先ほど申し上げた板付の現地の局長と司令官との間で行なった内容につきましては、これは口頭に、話し合いをしたという程度でございまするので、必ずしも——米側が知らなかったのはあとのほうのことでございます。前のほうの日米間の合意については知っておるわけでございまして、たまたまこの夜間飛行という問題につきましては日米間の合意の点については入っておりませんので、その辺が現地での話し合いと違っておると、こういうことだと思います。
  94. 小野明

    小野明君 どうも答弁、わけがわからぬのですがね。時間がありませんので、次の問題に移りますが、六月十一日に基地関係閣僚会議で板付移転の決議をされておる。この板付基地の撤去については現在どういった状態になっておるか、御説明をいただきたいと思います。
  95. 山上信重

    説明員(山上信重君) 六月十一日の関係閣僚協議会におきまして、板付基地を移転せしめるという方針のもとに代替施設を検討するということが決められた次第でございまして、私どもはその趣旨によりまして板付基地の代替施設を目下技術的——どういうような大きさのどういうふうな場所であれば適当であろうかというふうな、各種の技術的な内容あるいは地元の状況等もいろいろ含めまして、総合的に検討をいたしておる段階でございます。
  96. 小野明

    小野明君 代替地が見つかるまでは板付の移転はできないと、こういうことになるかと思うのですが、それでは、この板付を移転をする、撤去するというこの方針と最終的には食い違ってくることになりやしませんか。
  97. 山上信重

    説明員(山上信重君) 代替地を提供するということで移転を可能にしようというのが政府の方針であると私ども承知をいたしております。  なお、この点につきましては、日米合同委員会におきましても、さような政府が方針であるということを私からも申し入れ、それについて米側も了解しておるというのが現状でございまして、したがって、代替施設を提供するというのが移転の前提である、これが政府の方針であると私は信じております。
  98. 小野明

    小野明君 現実的には築城説は否定をされた。各基地を持っていかれたところは全部反対の決議が上がっておる。そうすると、政府はそれに籍口して、結局この代替地が見つからない、だから板付にそのまま置くんだと、永久にこの状態が、千日手のような状態が続いて、最終的には板付を移転しないと、こういう結果になってしまうんじゃないですか。
  99. 山上信重

    説明員(山上信重君) 私は、防衛庁長官からも、移転先の検討については早急に結論が出るように検討をしっかりやるようにということの指示も受けておりまするので、できるだけ可能な限りすみやかにそういった検討をいたし、結論を得たいというふうに考えておる次第でございます。
  100. 小野明

    小野明君 いまあがっておる候補地はどこですか。
  101. 山上信重

    説明員(山上信重君) この問題につきましては、きわめてこれはデリケートな問題でございまするので、どこそこが候補地だということはこの席で申し上げることははばからしていただきたいと思います。
  102. 小野明

    小野明君 それでは、何にも検討しておらぬ、結局板付移転をさせるという風船だけ上げて、アドバルーンだけ上げて、あとはそのまますわり込むという方針としか受け取れない。  次にお尋ねをしたいと思いますが、結局、九大にいま飛行機がひっかかっておる、この損害賠償というのはどういう形になるわけですか。
  103. 山上信重

    説明員(山上信重君) 九大の構内の目下銭高組その他が建造中の校舎に飛行機が落ちたわけでございまして、損害を受けておるわけでございますが、現在この校舎は九大に引き渡す前ということで銭高組が損害を受けたという結果になりまするので、これに対しまして銭高組から要請があれば、これを調査の上、その損害につきましては日本政府がこれを支払い、そしてまたその四分の三は米側から償還を受けるというのがたてまえになっております。
  104. 小野明

    小野明君 そういうことはわかっておる。いまひっかかってなかなかおろさない、おろせないという状態にある、これを言っておるわけです。これを聞いておるわけです。午前中、文部大臣は、これは何ら違法、合法というワク内の問題として論ずべき問題ではないと言われた。別に違法という根拠はないんだと、こういうふうに私は理解をしておるんですが、はっきり文部大臣が違法だと言わぬから、そこでこういった休業補償といいますか、賠償問題ですね、こういった関係はどのように考えておられるかということを尋ねておるわけです。ですから、これは長官と文部大臣と両方にお尋ねいたします。
  105. 山上信重

    説明員(山上信重君) ちょっと、私、先の質問におりませんでしたので、答弁があるいは見当が違ったかもしれませんが、休業の補償の問題につきましては、この事故機が落ちたことによってこれが損害を受ける額の中で、当然これを再建するまでに休業せにゃいかぬ、普通再建までに休業を要する費用等につきましては、損害賠償の中で考えなきゃならぬかと思っております。しかしながら今日米軍機の引き渡しということが九大側の事情によっておくれておりまするために、休業がそれ以上に長引くという問題につきましては必ずしも、この処理の中で考えることは困難ではないかというふうに考えておる次第です。
  106. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 先ほどのお尋ねにつきまして、違法とか違法でないというふうなことにつきましては、私ははっきりものを申し上げなかったのです。そんなことはともかくとして、とにかく早くおろさなければものごとは動いてこない、こういう意味で引きおろしを私どもは希望しておるし、九大側も引きおろしを極力しょうとしておるわけです、そのためにすみやかにまずその問題を解決するということを申し上げたわけです。休業補償等の問題になってきますと、どこからどこまでをどこでどうするかというふうな問題が残る。これは十分に事態を検討した上で考えればいい問題でありまして、業者にその損害をかけるわけにはまいらぬと思っております。
  107. 小野明

    小野明君 最後に、施設庁長官、どうもあなたの言われることはおかしいと思う。九大がいまかってに落ちてきた残骸をどう処理しようと、これは大学自治の範囲内で考えられることである。あなたのほうは、当然それに伴って出てくる賠償をあなたのほうの責任で処理されるべきで、それを九大に難くせつけて、文部省にクレームをつけていくかのような御方針かのように聞かれるわけですが、この点はいかがですか。
  108. 山上信重

    説明員(山上信重君) いまの問題につきましては、地位協定に基づく損害賠償の範囲といたしましては、私が先ほど申し上げたように、この事故が起き、そうしてこれが復旧されるまでに、当然通常考えられるような期間の休業補償、これにつきましては、賠償の補償の対象とすることが当然考えられますけれども、いまの引き渡しの問題は、通常考えられる以上に九大のいろいろな事情もあって引き渡しがおくれておるというようなことでございまするので、これらにつきましてはただいま申し上げたとおり、直ちにこういうことで考えられるかどうかは疑問があるということを申し上げたわけであります。
  109. 小野明

    小野明君 最後に、この九大側の事情によって引き渡しがおくれておる、これに疑問があるということですけれども、だから、その間のものは払わないとかなんとかということになるのではないかと思われるのですが、九大がいまとっておる方針というのは、これが何か間違いであるというような、法的に問題があるというような言い方をなさるわけですが、あなたのそういった言われ方、説明のしかたというのは、一体どこに根拠があるわけですか、それを伺っておきます。地位協定、覚え書きその他すべてに照らして、どこに根拠があるのか。
  110. 山上信重

    説明員(山上信重君) 九大が行なっておることがいいとか悪いとかということを私は申し上げておるのではございませんので、補償の範囲というものはそういう範囲でないと米側からの求償も困難ではないか、その点について疑問があるということを申し上げたわけであります。
  111. 小野明

    小野明君 再度、そういう範囲とは何ですか。
  112. 山上信重

    説明員(山上信重君) 先ほどから何べんも申し上げましたとおり、事故が航空機の墜落によって起きたわけでございまして、これが原因となって、そうしてそれが復旧するまでの期間、通常考えられる範囲、通常起き得る範囲と、こういうふうに考えております。
  113. 小野明

    小野明君 どうも通常ということばであなたはごまかしをされるのだがね。九大がいまやっておることは何らおかしいことじゃないというふうに私は考えているわけですよ。そうすれば、いまとられておる九大の方針というのはあなたの言う通常の中に私は当然入るべきだと思うのです。入らぬというなら、その根拠を伺いたい、こう言っておるわけなんです。
  114. 山上信重

    説明員(山上信重君) 引き渡しを要請をいたしておる米側に対して直ちに引き渡しが行なわれた場合、その後に相当の期間再建をするまで手間がかかる、準備に必要であるといったような期間、こういったものが通常考えられる期間であろうかと、こういうふうに考えております。
  115. 小野明

    小野明君 最後に、なおこの問題は、時間がないために、さらに質問を突っ込んでお尋ねをしたいと思うのです。機会をあらためて施設庁長官、それから文部大臣に再度ただしたいと思いますので、本日のところはこれで質問を留保したいと思います。
  116. 小林武

    ○小林武君 初中局長にお尋ねいたしますが、神話の取り扱いについての内簡、これは内簡という取り扱いはどういう取扱いですか。
  117. 天城勲

    説明員(天城勲君) 名前は、役所の意思表示につきまして、普通通牒とか通達とかいろいろいわれておりますけれども、私たち一般の扱いといたしまして、あることに対してのわれわれの意見を述べる——特にこうしてほしいとかいう指導通達というような意味じゃなくて、われわれの意思を伝えるという軽い扱いの場合にこの内簡というものを使っております。
  118. 小林武

    ○小林武君 それでは、この問題は軽い扱いだと考えてよろしいわけですか。
  119. 天城勲

    説明員(天城勲君) どうも、ことばがさっそくひっかかってしまって恐縮でございます。軽いという意味を取り消したいと思います。中身が軽い重いという意味で軽いと申し上げたのではございません。
  120. 小林武

    ○小林武君 意味がわからぬ。通達、それから内簡、それからどんな種類があるのか知らぬけれども、その種類を言って、それはどういうぐあいにどうだというその役所の方式を教えてもらいたい。
  121. 天城勲

    説明員(天城勲君) いま制度上の問題をはっきり申し上げますためには、ちょっと整理いたしませんと、私もまた不用意な発言をいたしましてあとで扱い上違ったということになるといけませんから、通達とか内簡とかその他の種類につきましては、たいへん恐縮でございますけれども、ちょっととっさにお答えするのに私自信がございませんので、考えさしてからにしていただきたいと思います。
  122. 小林武

    ○小林武君 それでは、その件については、またさっきの小野君の話ではないけれども、一回ではおさまりそうもないですから、この次やることにして、さっきあなた取り消したけれども、やはり軽い扱いになっているとわれわれは見ているのです。われわれもやはり文書を多少受け取ったりなんかしていますから、軽く扱っている、こう判断するのだが、この中で、内簡で言っていっていることは何ですか。不適切ということはどういうことですか。
  123. 天城勲

    説明員(天城勲君) 不適切ということは、結局その発言の前段があるわけでございますけれども、このたびの学習指導要領におきまして、小学校の歴史における神話の扱いが規定されております。この学習指導要領の講習会におきましてこれに関する質疑がございました。学習指導要領の扱いにつきましての説明のあとで、そういう方針で扱って指導をした場合に子供のほうが神話と——まあこれは当時の発言のことばをとらえますと、神話と史実というものを混同するというケースがあるんじゃないか、したがって指導の上でどういうふうにこの問題を考えるか、こういう質問があったわけでございます。それに対しまして担当の講師、これは文部省の教科書調査官でございますけれども、趣旨は、大ぜいの子供の中には神話をほんとうのことだと思う者がいるかもしれないが、それは大きくなれば歴史を認識し史観的判断力がつけば、自然に神話と史実との区別がつくようになるからという趣旨の発言をいたしたのでございます。これが史実と神話というものは混同してもかまわないんだというふうにとられて新聞報道されたわけでございますけれども報道した各紙がほとんどそういうとり方をいたしておりますので、その調査官の発言が史実と——これはことばがあとで申し上げますが必ずしも適当じゃないと思うのでありますが、神話と史実は混同しても差しつかえないというふうに受け取られたということにつきましては、私たちの真意でございませんし、指導要領はそういうことを言ったわけではございませんので、これは適切を欠くと、こう判断いたしたわけでございます。
  124. 小林武

    ○小林武君 あなたの説明は、そのことを話した人がどういうことを正確に言ったかということを言わなければだめですよ。新聞だとかなんとかということじゃない。あなたのほうで少なくとも内簡を出すということ、それについては文部大臣も何か新聞にその意見を述べられたとかなんとかということを聞いている。私は見ていないんです、それを。見ていないけれども、あなたのほうで少なくともそういうことについて検討した。検討した場合においては、本人が何を言ったかということを明らかにしないでやるということはいかないわけです。そうでしょう。どういうふうに言ったんですか、正確に。
  125. 天城勲

    説明員(天城勲君) これは話でございますので、正確な速記があるわけじゃございませんし、録音があるわけじゃございませんので、そのままはここで再現することはできません。しかし、新聞にも各紙がそういう取り上げたところは同じような形で取り上げておりますので、そうとられたのではないか、こう判断いたしましたので、そう本人にもその話した趣旨は聞いたわけでございます。それがいま申し上げましたように、正確なそのときの発言をそのまま両現することはできませんが、趣旨はいま申し上げたような内容である、こういうふうに申し上げたわけです。
  126. 小林武

    ○小林武君 質問があって、それに答えたということですが、質問は、史実と神話を混同しはしないかと。これは質問した人は少なくとも教育実践の経験を持っている人です。指導主事をやっている人だと私は聞いている。そういう経験者が、子供の発達の程度、児童の心理、いろんな点の考慮の上からそういう問題を提起した。それに対して混同してもかまわぬと言ったというふうに新聞はとらえた。その新聞の記者というのは、これはりっぱなおとなで、相当の勉強をした人です。だれかがうわのそらに聞いた話じゃない。そうしますというと、問題点はあれでしょう、史実と神話の混同という問題ですね。その史実と神話の混同という問題が不適切というようなことばで言いあらわされていいかどうかということに疑問があるわけです。そういう前提でちょっとひとつ聞きますけれども、何という調査官ですか。
  127. 天城勲

    説明員(天城勲君) 私のほうの初等教育課におります山口教科調査官でございます。
  128. 小林武

    ○小林武君 こにおいでになりますか。
  129. 天城勲

    説明員(天城勲君) 現在おりません。
  130. 小林武

    ○小林武君 それでは、御本人に聞けないからあなたにお尋ねいたしますが、何年間調査官をつとめていらっしゃいますか。
  131. 天城勲

    説明員(天城勲君) 正確にわかりませんが、十年ぐらい勤続しているものと思います。
  132. 小林武

    ○小林武君 十年選手。専門は何ですか、専攻されたのは。
  133. 天城勲

    説明員(天城勲君) 歴史でございます。
  134. 小林武

    ○小林武君 歴史といっても、もう少し詳しく言ってください。いろいろあるでしょう。
  135. 天城勲

    説明員(天城勲君) 専攻は日本史でございます。
  136. 小林武

    ○小林武君 論文あるいは著書等につきまして、ありましたら教えてください。
  137. 天城勲

    説明員(天城勲君) ちょっと私、いま彼の個人的な著作その他について存じておりません。
  138. 小林武

    ○小林武君 しかし、それはおかしいですよ。教科調査官というのは何やる仕事ですか。あなたのほうで採用する——あなた採用したとは思わぬけれども、それは私もあなたとのつき合いが長いからようわかっておりますけれども、しかし少なくとも調査官として、しかも最近の日本の教育行政というものをながめた場合、そう簡単に御採用になったとは考えられない。約十年もこういう——一体個人的個人的とおっしゃいますけれども、個人的といっても、その人の学問に対する見解というものを明らかにされないで調査官に採用するというのはおかしいじゃないですか。何か一つや二つ覚えているでしょう。何かないですか。文部省中ずっと聞いて、ひとつ答弁してください。
  139. 天城勲

    説明員(天城勲君) これはおっしゃることはよくわかります。私、いまこの場で、山口調査官がいつどういう事情で文部省に採用になって、彼の論文があったかということを、ちょっと私この場でわからないものですから、率直に申し上げたわけでございます。
  140. 小林武

    ○小林武君 そんなこと聞いていないよ。
  141. 天城勲

    説明員(天城勲君) 御質問を取り違えたかもしれませんが、いま著書は何かというから、私ちょっと覚えていないということを申し上げたわけです。
  142. 小林武

    ○小林武君 それはどうなんですか。あなたのほうでまさか、ぼくが教科調査官になると言ったって、させるわけでないでしょう。小林という人間が一体それに値するかどうかということを調査もしないで採用になりますか、あなた。どういう一体学校を出て、どういう一体学問を専攻して、どういう著書があってというようなこと、これはあたりまえじゃないですか。
  143. 天城勲

    説明員(天城勲君) 私はそのことを否定申し上げたわけじゃないんです。いまここでいきなりおまえ知っているかというから、私知りませんと、たいへん不敏でございますけれども、大ぜいの調査官の経歴をお答えをする資料を持っておりませんから、この場で申し上げているだけで、採用する場合にいろいろな角度から検討することは当然だと思っております。
  144. 小林武

    ○小林武君 私はそういうことについて言っているんです。大体聞かれそうだということはわかりませんか。ぼくなら聞きますよ。そうじゃないですか。間違いをやって——とんでもない間違いをやったとぼくは理解していないんですよ。少なくとも十年間の間のその面での教科の調査をやってきた人でしょう。だから、申し上げているのです。まあしかし、あなたが知らないというなら、それ資料として出してください。私もひとつこれからとっくり読めるものであったら読みたいと思いますから。  それでは、この教科調査官というのは、これは何人置かれていますか。
  145. 天城勲

    説明員(天城勲君) 初等教育課にいま十三人おると思います。
  146. 小林武

    ○小林武君 十三人、全部で。
  147. 天城勲

    説明員(天城勲君) 初等に十三人でございまして、中等はたいへん申しわけございませんが、私、資料が手元にございませんので、初等と中等と、それから特殊教育を通じまして、正確な数字を私、たいへん国会の答弁として申しわけないのですが、四十名前後だと思っております。
  148. 小林武

    ○小林武君 そこで、この調査官というのは教科書調査官とは兼務するということはないのですか。
  149. 天城勲

    説明員(天城勲君) これは制度上教科調査官と教科書調査官は別でございまして、兼務しておる者はございません。
  150. 小林武

    ○小林武君 この調査官の日ごろの——日ごろというか、法できめられた仕事、具体的に一体どういうことを平生やっているわけですか。これは法律の条文みたいに書いているやつは見ています。それならぼくは要らないのです、それならぼくは見ていますから。具体的にどういうことをやるのですか。
  151. 天城勲

    説明員(天城勲君) まずこのたびの教育課程の改善を例にとりますと、教育課程審議会の審議にあたりましては資料をいろいろ提供いたします。こういう専門的なことをいたします。また、答申を受けて、学習指導要領の改定の仕事になりますと、これは協力者がいろいろおりますけれども、この調査官が中心になりまして指導要領を書き上げていくという仕事をいたします。それから、教育課程の問題につきまして、講習会その他の講師として専門的な指導に当たります。また、そのほかいろいろな研究集会、あるいは必要な指導書、研究集会における指導発言、それから必要な指導書の作成等に当たるのが調査官のおもな仕事でございます。
  152. 小林武

    ○小林武君 そうすると、この学習指導要領というのは本人が書いたことになりますか。社会科のうちの歴史のところです。特にこの神話の取り扱いのところがありますね。五〇ページです。五〇ページのところにあるこれは本人が書いたことになりますか。
  153. 天城勲

    説明員(天城勲君) この学習指導要領は、それぞれ担当の部門について担当の調査官が責任を負って書くわけでございますが、それには協力者がそれぞれの分野についておりますが、みんなの意見をまあディスカッションをして最終的にこういう形にしたわけでございまして、書いたということになりますと、一応担当の調査官が書いたということになると思います。
  154. 小林武

    ○小林武君 これはまあそういうことについての理解はぼくもある程度できますからわかりますが、少なくともこの問題を新しく取り入れるということはたいへんなことなんですわね。そうでしょう、初中局長。神話を取り入れるということについてはたいへんなことでしょう。ぼくはあなたたちにきらわれるほど新教育指針なるものを何べんかここでやった。その中で、神話なんか取り扱ったのは誤りであるということをあなたのほうで書いた。だれが書いたか知らぬが、文部省がそういうことについてわれわれに対しても一つの指導をやった。それを今度新しく入れるというのですから、たいへんなこれは御検討をなさったものだと私は思う。その検討に検討を重ねてやられた、少なくともその講習に出られて、十年の経験を持つ山口さんですから、その中でも責任のある立場にあったと私は考える。  そういう人が一体何をあやまちをやったか。どんな不適切なことをやったのか。御本人が間違いというのは理解できない。それが不適切なんということばで一体表現されていいかどうか。内簡なんというようなものが軽々しいかどうかは、あなたは説明されないからわからないけれども、私は大体課長名で出すなんというのはおかしいと思っているんですがね。これは私、役所の人間になったことがないからよくわからぬ。しかし、私はその不適切という表現がどうも少しものごとを軽く見ているという考え方をするものですから、お尋ねするんですが、一体そんな簡単なことですか、これは。あなたのほうでは、なに簡単なことだ、ちょっとそのものの言い方がまずかったという程度のことに不適切ということばを使われるのか。事がこういう重大なことであるならば、私は史実とそれから神話との混同ということはたいへんなことだと思うから、あなたに一体こういう内簡で済まされるのかどうかということをお尋ねしたい。
  155. 天城勲

    説明員(天城勲君) いま小林先生からるるいろいろお述べになりましたことについて、この学習教育課程の改善につきましてどういう方向でいくかということについては、御案内のように教育課程審議会で長い間各方面の方が集って慎重に検討いたされているということでございまして、決して軽々にこの問題を取り扱ったことはございません。教育課程の審議会の長い審議の結果出てきたものでございます。  この山口調査官の発言の問題でございますけれども、学習指導要領に記述されておりますこの神話の問題、これはこの学習指導要領にも記述されているところでございますが、これにも説明がありまして、これについて山口調査官が教育課程審議会やこれに書いてあることと異なったことを申し上げたわけではございませんで、この点につきましては講習に来られた方々にも御了解いただいておるわけでございます。ただ、こういう前提で指導をした場合にも、子供の中には、先ほどちょっと申し上げましたように、神話の中に物語られていることが、まあことばがいろいろでございますが、要するに神話をほんとうだと思う子供がいるかもしれないが、それをどうするんだ、こういう指導上の質問になったわけでございます。そこで、学習指導要領の解釈について、山口調査官がこの学習指導要領自身が史実と一応こんがらがってもいいんだ、混同してもいいんだという意味のことを言ったんじゃなくて、子供がそういう理解をした場合にどうするかということから出た問題でございまして、学習指導要領自身が史実と神話というものを混同してかまわないという前提で書いたのではないということははっきりいたしておるわけでございます。たいへんここのところ発言が、何というんですか、デリケートでございまして、そもそもこの史実ということば自身についても議論があるわけでございます。ですから、少なくとも歴史の専門の人間が神話と史実という非常に通俗的なことばでこのことを話をすることも私としては非常に不注意だったと思います。したがいまして、あとで教育委員会に申し上げたように、その辺はもう少しはっきりくだいて、神話に物語られている事柄、それから歴史上のできごとというふうにこれははっきりしないと、混同とかいった意味もますますあいまいになるということで、こういう見解を出したわけでございます。学習指導要領の解釈を二様にいたしておるという意味ではないのでございまして、指導上、子供のとり方においてそういうことが起きた場合にどうするかという点から始まった話でございます。
  156. 小林武

    ○小林武君 天城さん、あなた初中局長ですからね、初中局長が子供を忘れたような発言をしたらだめですよ。学習指導要領というものは、対象としての子供に一体どう受け取られるかということを考えないでやるなんということはとんでもない話ですよ。子供がそれを受け取るときに混同するおそれが十分あると、こういう発言をしたのに対して、あなたのほうは、何か子供がたまに間違うのは心配ないというふうにあなたがおっしゃっているように私は受け取れますよ。そうではないのですよ。受け取るというのは、子供が間違えたらたいへんだということを頭に置いて言わなければならない。しかし、そのことはやめましょう。  そこで、文部大臣にお尋ねしたいのですが、私は混同は当然起こるという立場で、混同させるべくやらせていると私が悪くとっている、あなた方からいえば。しかし、私の言っていることは当たっていると私は思う。佐藤内閣になってからまさか考え方が変わっているわけでもないでしょうから、ひとつ、あなたの発言ではないけれども、お尋ねしたい。  前回の国民の祝祭日の法律を改正案として出したときに、臼井総務長官は、戦後日本の歴史教育というものはなかった、日本には歴史教育がなかったと、こう言っている。何だったといったら、どういう教育をやれば歴史教育かといったら、それは日本書紀あるいは古事記、いわゆる記紀を中心に、それをそのまま教えることが日本の歴史教育なんだ、こういう話だった。これはひとつ速記録を見れば明らかなんですから、これは佐藤内閣の総理府総務長官という立場で提案なさったことなんですから、その点は文部大臣として私の立場でいえば全く同じ立場だろうと思うのだが、立場であるかないか聞かなければわかりませんが、文部大臣にその点はお伺いいたします。
  157. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 当時の総務長官の臼井長官がどういう発言をせられたか、私承知いたしておりません。ただ、記紀がすなわち日本の歴史である、もしそのように言われたとすれば、これは私はそのような見解はとっておりません。記紀というものが存在しているということは、これは事実であります。それは私それとして受け取ってよろしいと思いますけれども、それはすなわち歴史である、こういうふうには私は考えておりません。
  158. 小林武

    ○小林武君 私は、政党であっても政府であっても、そういう無責任なことでは困るのです。少なくとも一国の教育というものを大事にするというようなことであるならば、そのことについて非常に論争されておるような問題について、少なくともこれはどっかへ行ってお茶飲み話に言ったというなら別ですけれども、国会という場所において発言したことについて、前に何を言ったか知りませんと。内閣でもかわったならば別ですよ。佐藤内閣の時代に言ったことですよ。私はそういう手でどうも日本の教育というものがいいかげんに取り扱われてきておると、こう思っているのです。私は、だから、灘尾さんがそういう考えを持っているとか持っていないとかいうことば別として、佐藤内閣の中で言われたことについては責任を持ってもらいたいと思います。  それからまた、何回も発言することだけれども、自民党の議員さんの発言に対しての前々の文部大臣が答弁されている中にも、内容的にも否定されたような発言をされております。私は決してこれはいいかげんなことを言っているわけではないのです。毎日速記録を見て悲憤慷慨しているわけではないけれども、たまに引っぱり出して見ているので、いいかげんなことを言っているのじゃないのです。だから、あなたたちのそういう考え方が党の中に、政府の中に出ている。そういうことをやっぱりわれわれは考えないわけにはいかないでしょう、それは。考えるほうが無理なのか、考えないでくれというほうが一体理屈なのか、そこらあたりは問題が問題だけにはっきりしてもらいたいと思うのですが、そのことの論争は後ほどに延ばしましょう。  そこで、私はお伺いしたいのです。きょうはもう皆さんのおっしゃったことの一つのことばの内容がなかなかわからぬのですが、これはひとつお尋ねしたいのは、文化遺産というのはどういうふうに御理解なさっているんですか。とにかく文化遺産のことばの解釈もさることながら、この指導要領なりあるいはいままでのいろんな発言の中で、文化遺産だから教えるのだとは、どういうことなんですか。文化遺産は私は一つだとは思わぬがね。
  159. 天城勲

    説明員(天城勲君) 私も学問的なことを申し上げる能力もございませんし、そういうことをここで議論する場所でもないと思いますので……。学習指導要領でこういう表現があるんでございます。ちょっと長くなりますが、申し上げますと、歴史の扱いで、「大和朝廷の成立、大陸文化の摂取、大化の改新による政治の改革と国家組織の確立、飛鳥、奈良、平安などの文化の発展などに尽くした人物の業績について理解し、すぐれた文化遺産や人物のはたらきを中心として」というところに「文化遺産」ということばが入っております。これが小学校六年の歴史の内容の中の一項目の一部分でございますが、それであとのほうで内容の取り扱いという事項があるんでございますが、ここで、「内容の(2)のイについて、すぐれた文化遺産や人物のはたらきを中心として指導を行なうに当たっては、日本の神話や伝承も取り上げ」、こう言っているわけでございますので、神話や伝承が文化遺産の一つである、このように考えているわけでございます。
  160. 小林武

    ○小林武君 あなたのおっしゃることでは、神話が文化遺産だから、少々の混同を起こしても——われわれの解釈ですよ、混同は。混同を起こしても、歴史の中で史実と並べてやらなきゃならぬという理由にはならない。文化遺産というもののとらえ方、文化とは何かということの説明が、あなたのほうから堂々となされ、特に神話というものが文化遺産として大事だということを説明してもらわなきゃ、ほんとうはわからぬのですけれども、まあ次またやりますから……。  それで、私どうしてもわからないのは、これは山口調査官の新聞記事だけれどもね、現代人にも新鮮な創造力を呼び起こしてくれるという、神話が。これはどういうことを言っているのですか。それから、歴史の魂というのはどういう魂ですか。歴史の魂とか、歴史の心とかというけれども、それは文部省の統一見解ではどういうことを言っているんですか。
  161. 天城勲

    説明員(天城勲君) 歴史におきます神話の扱いでございますけれども、特にこの神話の扱いにつきましては、いろいろな場面で取り上げますけれども、歴史におきます神話の扱いにつきましては、この学習指導要領に書いてあるとおりでございますが、この基本的な考え方には、これは私たちの考え方だけというよりも、今度新しい教育課程の改善にあたって、委員会で議論の末、皆さんが考えられた考え方にもなるわけでございますが、歴史においては直接的な史料、たとえば文献ですとか記録とか、直接的な史料のほかに、間接的なものがいろいろあるわけでございます。その学問的にこの背景になっているものが神話学だとか、言語学だとか、民俗学だとか、あるいは考古学とか、いろいろあろうと思うのでございますが、間接的な史料も非常に大事である、ただ文献と記録にあるものだけ、あるいは考古学の遺物、遺跡だけが歴史の史料であるということにはならない。いま問題になっております神話にいたしましても、神話、伝承にいたしましても、遺跡物、考古学上の果てにいたしましも、これはお互いに排斥し合うものではなくて、ともに協力して理解に資すべきものである、こういう前提があるわけでございまして、神話あるいは伝承というものをことさらのように歴史学習から排除することはない、こういう考え方が審議会でも出た意見でございます。  したがいまして、私たちこの神話の扱いについては、先ほど申したように、神話中心の歴史をやれとかいう意味で毛頭言っているわけではございませんで、歴史学習要領の、いまの議論で申しますとしますれば、間接史料と申しますか、ここでは文化遺産その他人物云々と言っておりますけれども、そういう中で歴史の取り扱い上神話を取り扱ったらいいではないか、これが基本的な考え方でございます。
  162. 小林武

    ○小林武君 どんな講演をやったか知らぬけれども、私は少なくとも新聞の記事から見たら、その指導要領の講習を受けるくらいの人たちの立場からいえば、これは全く何言っているのかわからぬようなことになったのではないかと思う。あなたのおっしゃるようにあれですか、そうすると、いまの歴史というものは、考古学だけで歴史の解釈やっている、こう思っているのですか。そんなこと思っているばかな人ないでしょう。いろいろそれは、史料というものはどういうものかということはあたりまえじゃないですか。史料はいろんなのがあるでしょう。あなたの取り上げる伝承といったって、伝承の中にもいろいろあるでしょう。伝承、伝承と、何か伝承を出したらみな納得してくれるようなこと思っているのかもしれないけれども、しかし、伝承ということはどういうことか、伝承の中にどういうことがあるのかということを説明をしなければならぬでしょう。伝承一つ出したらみなが納得するようなことを考えたら、ぼくは間違いだと思いますよ。歴史と史実というものを一つ組み立てるのに、どれだけの一体苦労をしているのか。それは考古学も一つの役に立つかもわからぬ。文化でそれが立証されるかもわからぬ。いろんなことがあるでしょう。もっと歴史学というものは、われわれしろうとが考えても、なかなかきびしいものじゃないですか。科学としてものの結論を出すということは容易でないということは、これは必ずしもほかの自然科学ばかりじゃないでしょう。そういう中で一体、私はこの中で子供に対して一つのそういうものの背景をなすだけのやはり間接的な史料というようなものに神話をここへ持ってくるというなら、おかしいのですよ。そんなことやる必要あるのですか、子供の中に。小学校六年生にそんなことやる必要ないと思います。そんなこと言ったら、もっともっと持ってこなければならぬものがたくさんありますよ。そういうことの材料に使うのじゃないのでしょう、これは。  まず、文部省の人に聞きたいのは、授業をやることを考えてください。あなたのほうの書いた指導要領でもって一体どういう、四十五分なら四十五分の授業をどういうふうにやるのか、考えてないでしょう。大体あなたたちの話を聞いているというと、何だかこま切れみたいにいろんなことばを引っぱり出してきて、その間の連絡、その間のことばの持っている内容というものがさっぱり明らかでないでしょう。神話というものが文化遺産だから大事だということだったら、ほかの文化遺産というものはどういうことになるのですか。伝承ということを言ったら、伝承の中の一体何と何を持ってくるのですか。神話だけが伝承かということにもなるのではないかと私は判断するのです。だから、私はそういう意味であなたたちの……。  だんだん時間がなくなりましたから、そのうちにとっくりひとつお尋ねいたしたと思いますけれども、ちょっと説明が十分できない、不足なように私は考えるのですが、やはりあなた方来て、今後山口さん本人が出て来て、学者としての立場から、学者でしょうから、ひとつはっきりした御意見を伺ったほうがよろしろかうと思いますけれども、一体歴史の心とか魂とかいうものは、前もこの内藤質問の中に出ているのですね。民族の魂、これは文部大臣にお尋ねしなければならぬ。民族の魂とかなんとかいうことはどういうことなんです。一体歴史の中でいま日本の国民をどういうふうに養成しようというのですか。科学としての歴史を教えるということが間違いなんですか。  私たちは大正の末期から昭和の初めに師範学校に入学して、科学的な歴史というのはやはりだめだ、これを学校でやっちゃいかぬと、歴史的事実というようなものよりかも、天皇の国民をつくるためには事実よりかもつと大切なものがあると、こう言われてきた。そうして高天原から天皇の先祖がおりてきて、そうして世々代々万世不易の日本の皇室というものをつくったということに合わして歴史は教えるべきだと、こう教えられてきたんです。先ほど来のお話でございますというと、生徒に大体混同するようなことを教えても大きくなればわかるわというようなお話があったけれども、なかなかそうじゃないですね。私は少なくともいまの戦前の教育を受けてきた人たちの頭の中には、それは抜き去ることのできない一つのやはり国に対する考え方、民族に対する考え方というのはできている。そのことをかつて文部省も指摘をして、そういう教育の中から合理的精神、科学的な心というものを日本民族が喪失したと指摘された。心ならずも書いたかどうか、それは知らぬ。しかし、文教の府にある者が国の重大な時期にあって圧力に抵抗するというような精神なしに、おそろしいから書いたというなら、腰抜けもはなはだしいと私は思う。私はそうは思わない。少なくともこれからの新しい日本を形づくるために一生懸命になって書かれたと思う。私どももそういう過去の誤ったあれがあるから、これから考え直さないかぬと、勉強もせにゃいかぬということをみな思っている。そういうことが今度はまた昔に戻るような形で出てきた。何を一体この神話の中から子供たちに教えるのか。民族の魂というようなことばが使われている。しかし、これは民族の魂とか歴史の心だとかということを言ったか言わぬかわからないわけです、ぼくに言わせれば。しかし、あなたたちのほうでは山口調査官を中心にしてやられたことだと思う。  それから、事実こういう問題が出てきたら、当然このことは歴史的事実とこの神話の問題との関係でどういうことになるかということは、これは承知してやられたことだと思う。だから、そういう意味で、文部大臣として一体この歴史で何をやりたいのか。いまの国民にどういうことが不足だからこういうことをやろうという意図があるならば、ここでさらりと言ってもらいたい。ごまかしみたいな話をしたってだめだ。民族の前途に関することは、お互いさまとにかく政治をやっている者として、良心的にやはりいかにゃいかぬです。そういうことで私は文部大臣にひとつお尋ねしておきたい。
  163. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 神話と歴史上の事実というものは混同すべきでないという考え方は、先ほど来申し上げておるとおりでありまして、われわれとしましても、そのような混同を招くようなことは学校で指導する上において十分注意して教えてほしいと、このように考えたわけであります。先般の山口君の発言が新聞報道せられたところによりますと、私はそのとおりであるとするならば、これは問題を起こす、こう考えましたので、調査を命じ、またそれに対して文部省の見解をさらに明らかにする必要がある、こういうことでそのような措置をとったわけであります。この点をわれわれとしてはどこまでも両者混同するようなことはあくまでも避けて教育をしてもらいたいと、こう思っているわけであります。  なお歴史教育という問題についての考えがございますが、私は小・中学校等の少年に対する歴史教育という場合には、やはりよき日本人を形成するという上において適切な配慮のもとに教育が行なわれることを希望いたしておるものであります。その意味におきまして、日本のわれわれの先祖、われわれの祖先が、昔どんなことをし、またどんなことを考えたか、こういうふうなことについても、現在の青少年にも教えてく必要があろう。ただ、問題は今後にあるわけでございます。今後の日本人のお互いのあとを引き継いでまいります少年に対する教育のよき成果として、りっぱな日本人が出てくるように、そして日本の後の発展をになうその一環として十分な働きをしてもらえるように、こういうことに中心を置いて歴史教育等のことも考えていかなければならぬのではないかと、かように考えておるわけでございます。ただ単にほんとう学問的な説、と申しますと語弊があるかもしれませんけれども、もちろん真実を曲げて伝えるというふうなことはなすべきことでないことは当然のことであります。当然のことでございますけれども国民の、よき日本人形成の上にお役に立つようなやはり教育は、少年時代においてなすべきではないか、こういう考えを持っているわけでございます。
  164. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 締めくくってください。
  165. 小林武

    ○小林武君 そう簡単に締めくくるわけにはいかない。  大臣ね、私、そこなんですよ。そこが、大臣の話していること、よき日本人を形成するのに役立つことという場合ね、私は学問としての——それはもちろん学問としての歴史的事実といってもおのずから教材としての選択がある。その子供のやはり年齢、能力に応じてやらなければならぬ。そのあれはおのずからあるけれども学問的な一体歴史というようなものを教えるということに何が不足か、一体何の問題点があるのかということが私は聞きたい。どうして一体そこに神話を持ち込んでいかなければならぬかということ。神話といっても、これは神話全部入るわけじゃない。教材として入るのは、私がちょっと拾ってみただけでは、これは日本の皇室とのかかわり合いのもの。これが日本人の、その当時の古代人のすべての思想を代表しているということはなかなか言えない。そうでしょう。万葉集を見れば、その中には庶民の歌というのはずいぶん入っているが、庶民の歌の中にはいろんな歌があり、そういう一体古代人のものの考え方というようなものを総合的にして、こんな考え方があるというならば、話はわかる。そういうものも取り入れなければならぬということは、多少わからぬこともない。しかしながらですね、どうして一体これとこれとこれをしなけりゃならぬか。高天原からおりてきたとかなんとか、幾つかあがっておりますけれども、いずれそれは私は——これはかつてわれわれが戦前においてやった国定の国史教科書の冒頭に出てくる内容ばかりですよ、どうしてそれをいま必要だとするのか。八岐大蛇の尾から剣が出たというようなことが誤りだと指摘した文部省が、そこまで変わったのは一体どういう意味なのか。神風が吹いていくさに勝ったということは誤りであるということをなぜ教えなかったという文部省が、どうしてそこへ踏み切ったのかと、そのことの意味をぼくは聞きたいと言っている。  古代人といっても、その当時の古事記はどうしてつくられ、日本書紀はどうしてつくられたかということは、これはお互いに言うほどのこともないと思う。だれが書いたかということだっで、だれが一体その編さんの仕事に当たったかということもわかり、どの一体立場の人が書いたか、どういう人たちによってつくられたか、よくわかっていると思います。  それだけなぜ強調しなければならぬかということがわからない。私はそれをあなたたちに聞きたい。どうしてそういうことがよい日本人をつくるということに必要なのかどうか、その納得が私にはできない。それをあなたにお尋ねしたいと、こう言っているわけです。ただし、いまここで隣で、早く早く、やめてくれと言っているから、なかなかそうやれないけれども、一言だけ聞いておきたい。そしてこの次まで、どうせこの問題は皆さんとやらなければならぬことですから、ひとつ……。
  166. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 日本人の過去というものについてお互いにできるだけ正確な知識がほしい、これはまあ当然のことでございます。同時に、いわゆる学問的な分野においてはなかなか証明のできないというふうな時代もあったと思うんであります。そういう古い時代においてわれわれの先祖はどんなものの考え方をしておったかというふうなことについて、神話とか伝承というふうなものを通じて子供に伝えていくということも、私は決して無意味じゃないと思います。  ただ、これが先ほど申しましたように動かすべからざる歴史の事実なんだということの性格はもちろんないことは、繰り返して申しますが、申すまでもない。そういうふうな古い時代の祖先の業績というふうなものをしのぶことも、私は日本人の形成の上から申しまして必要なことではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。よき歴史と伝統ということを始終言うのでありますが、りっぱな古い伝統をつくる歴史、こういうふうなものをやはり国民の子供が頭に置いて、そして今後の日本の発展ということに対して英知を出してやってもらうということは、特に幼い時代の教育としては必要ではないか、こういう考え方をいたしておるわけでございます。
  167. 小林武

    ○小林武君 まあ非常にお古い考え方だと私は思うんですね、正直にいって。日本の歴史には、日本人というものはずいぶん歴史に対して新しいものを勇敢に取り入れて消化するということをやってきたわけです。私は、伝統、伝統といって、いま神話を持ってこなきゃならぬというようなことよりかも、もっとやはり必要なことがある。日本人には必要なことがあるんです。あんたたち——あんたたちといっては悪いけれども灘尾文部大臣も重要な自民党の方ですから、日本の将来考えたら、日本の当面している問題を考えたら、科学技術の問題はどうするかとか、あるいは国際競争の中に日本が立ってどうするかということを考えると、何が必要かということも十分おわかりだと思う。われわれはわれわれなりに、立場は違っているけれども、そのことについて非常に敏感なんだ、当然のこととして。そういうことのために一体必要なのは何か。私も伝統とかなんとかいうことを重んじないとは一言も言わないでしょう。よりよき日本人をつくるとあなたおっしゃったけれどもほんとうにこれから生き抜いていく日本人をつくるにはどんな伝統がわれわれによってたっとばれなければならないかということになると、それにはとてもあなたたちが考えているような、歴史的な事実とそれを混同する形で、わざと混同を承知の上で私はやったと見ているが、混同させるためにこの神話を教科書の中に入れてきたと、あなたたちのやり口を見れば。事実をあげれば、事実についての人物、いろいろな点に付随するいろいろなものを引っぱり出してきて、いろいろ人物を飾るかもしれない。私はそんなこれからの人物論なんというのは何の役にも立たないと思う。私はそう思う。これはまあ見解の相違だからあれだけれども、そういうあなたたちの考え方ではこれはもう初めから混同を承知でやっているという断定を下さざるを得ない。そういう立場でこれからやるつもりです。  ただ、しかし、あなたの方では、表現はともかく、これは山口康助調査官が悪いということになっている。あなたたちのほうで、おことばどおりならば、これ一体どうするかという問題が起こってくるわけです。専門家ともあろうものがこんなようなああやまちをやる。これについて、新聞の話だけれども、処分なんということになって、それについての責任を問うというようなことは文部省部内の問題だなんということを、だれが言ったとかということが出ている。一体そんなことを文部省が言うですか。そんな話も出たんですか。責任問題なんて、これは文部省部内の問題で、他からかれこれ言われる筋合いのものではないという意味の談話が出たというのだけれども、そういうことはほんとうですか。そういうことだと、私ははなはだもってこれは潜越な問題だと思う。不心得しごくだ。そういうことを言われたくなかったらこの次は山口さん出してきて、堂々とひとつやりましょう。山口さんも学者だから、ここへ出て自分の説をひるがえすというようなことはないだろうと私は思う。やはり言うべきことを言ってもらう。  なお、それからひとつ文部省に資料として出してもらいたいのは、審議会、審議会といいますが、審議会で一体どんなことをされたのか。結論なんてだめです、文章でそれは記録に残っていないのですから。審議の過程についてこれはどうですか、発言その他について。
  168. 天城勲

    説明員(天城勲君) 速記をとった記録はございません。
  169. 小林武

    ○小林武君 記録は全然ないのですか。要点のあれもないのですか。そんな一体だらしのないこといいんですか。だれが何を言ったかわからぬようなことをやって、それじゃでっち上げだと言われてもしかたがないですか。
  170. 天城勲

    説明員(天城勲君) 記録は、もちろん速記意味の記録はございませんけれども、回ごとに、次の回の発展のために前の回の記録は事務的にはとっております。
  171. 小林武

    ○小林武君 記録はあるのですか。
  172. 天城勲

    説明員(天城勲君) ただいま申し上げたような意味の記録はございます。
  173. 小林武

    ○小林武君 そういう程度ですか。その記録というのはどんなことの記録ですか。
  174. 天城勲

    説明員(天城勲君) 一回……この回数が非常にたくさん重なった会でございますから、こういう会は非常にたくさんやるものですから、毎回毎回次の回の積み上げをしていくために、前の回の議論というものの要点はまとめていく、こういうやり方になっております。
  175. 小林武

    ○小林武君 文部大臣に私は要望いたしますが、そういうものの記録というものは、日本の教育のやはりこれからの移り変わりの上に大事なことです。そういうものを軽く扱って、何をやったのかわけのわからぬようなことにしてしまうというのは、たいへんなことだと思います。これは少なくとも、何か秘密結社でない限り、労働組合であろうが何であろうが、自分のほうでどんな討論をされたかということくらいは、みな残っているのですよ。文部省も一体、これから百年、二百年、三百年、千年たって、文部省にその当時どういう審議会を開いて、審議会の中でどういう議論をされたかなんという記録はないというだらしのないことで、私は一体、日本の教育の発展なんかわかるかということなんですよ、文字のない時代ならともかく。ぜひ私はそういう記録をとってもらって、そうして見せるべきだと思う。  私はこの前に、灘尾文部大臣じゃなかったですかね、文部大臣に、中教審の記録を見せろということを承諾してもらった。これはとにかく、文部省でははっきりした事実ですからね。私は、あまり膨大で容易じゃないという話だったから、それは膨大で容易じゃないだろうと思った。思っているけれども、この点については変わっていないですね。中教審の記録をとにかく国会議員に見せるということは、これはどうですか。
  176. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 審議会の記録をとっているということは決して無意味なことと思いません。当然とるべきだと思います。ただ、いろいろ大ぜいの人の議論が起こってくることもあると思います。従来から速記録はとって残しておるということはいたしておらないようでございますが、先ほど局長の申しましたように、それぞれの審議のあとにおいては取りまとめて、次の審議の材料にする、こういうことはいたしておると思います。また、御承知のように、中間的にこれまでの議論を取りまとめて、いわば中間報告というような形において発表するということはいたしております。これは小林さん御承知のとおりと思います。個々の審議会の内容というものをどの程度に取り扱うかという問題については、それはいろいろ考えなければならぬ点もあろうと思います。と申しますのは、各委員関係者の方々の自由な討論ということが一番大切なことだ、そういう意味におきましては、取り扱いについて十分注意すべきこととじゃなかろうかと思います。  中教審の問題については、私はそのような答えをしたかどうか、実は私も記憶いたしておりません。中教審の問題にいたしましても、やはり委員方々の自由な立場に立つこの活発なディスカッションというものは非常に大切なことであります。その論議の内容が一々、だれがどう言うたこう言うたというようなことを発表することが適切であるかどうかということについては、問題があろうかと思うのでありますが、したがって、どの程度の記録がいま残されておるか、私は的確に承知いたしておりませんけれども、それを世間に出すか出さないか、こういう問題につきましては、やはり中教審の問題でありまするならば中教審の方々とも相談の上でこの取り扱いをいたすべきものではなかろうか、そのように考えております。
  177. 小林武

    ○小林武君 最後に一つだけ——間違えました。灘尾文部大臣の時代じゃありません。中村梅吉文部大臣のときです。いまのようなお話で議論になったのですよ。そのとき公明党が私の意見にたいへん賛成したのは、一体国会の中でも国政に関することは相当秘密にわたるようなことがあるとかなんとかいって、なかなかこれは公開されなかった。このごろはなま放送で、とにかく全部国民全体が見るというような状態になってきたのです。ことに教育関係する問題で、こんなことをだれが何と言ったか知れたら困るなんという情けないことを、一体中教審のあれにするのはおかしいですよ。日本の教育はかくあるべしなんということを議論するのは、堂々とやるべきですよ。見せられないことをするというのではたいへんだと思うのです。そういうことに当時の野党側の委員は一致した。そこで、中村文部大臣はたいへんな決断をされて、それではひとつお見せいたしますが、ちょっと時間をかしていただきたい、というのは、このことの了解をとっておきたい、こういうことでした。私はそういう了解をとっておくということは必要なことだと思います。新しい中教審の方が出た場合、このことはお見せするということもありますから、ということでお断りをしてもらいたい。われわれは、しかし、それを寄ってたかってみんなが見るところまでいくかどうかは、いろいろ問題はあると思いますが、国会の中で必要なものを見せなということはないですよ。その点についてはここであなたとやりとりをやってもしようがないから、後刻検討して結論を出してもらいたい。とにかく見せてくださいよ。見せないなんというのはおかしいですよ。
  178. 内田善利

    ○内田善利君 三点だけお尋ねしたいと思いますが、まず第一番は、いまの小学校学習指導要領についてですが、この問題については、神話をどう取り扱っていいかどうか、現場の教員は非常に困惑しているような実情でありありますし、これは日本の教育の悲劇であると思うのです。こういったことに対して、文部省としては根本的な明確な態度が必要ではないかと、このように思いますので、二、三質問したいと思いますが、まず、大臣は、この神話というものをどのように定義づけて考えておられるのか、明確にお答えをいただきたいと思います。
  179. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 神話をどのように考えておるかというお尋ねでございますが、だいぶ学問的、専門的問題にも触れてくるように思いますので、事務当局からお答え申し上げます。
  180. 天城勲

    説明員(天城勲君) 神話そのものの定義と申しますか、議論につきましては、学説上いろいろあるようでございまして、私もここであらためてそういうことを申し上げる資格もございませんが、この学習指導要領で神話を文化遺産の一つとして取り上げるといった意味は、学習指導要領に実は書いてあるわけでございますけれども、わが国の神話はおよそ八世紀の初めごろまでの記紀を中心として集大成されて記録されて今日に伝えられたものでございますけれども、神話には古代の日本人のものの見方、自然やあるいは生活や、いろいろなものについての日本人のものの考え方、あるいは日本の国がどういうふうに形成されてきたんだろうかというような考え方などが、物語として出ておるわけでございますので、それは先ほど申し上げましたように、歴史学習において文献、記録、ないしは考古学上の遺物、遺跡等とともに、間接的な指導の資料として取り上げるに値するのじゃないか、これをことさらに避けていく必要はない、こういう考え方がこのたび小学校の歴史教育で神話を取り扱うということにきめた態度でございます。
  181. 内田善利

    ○内田善利君 神話を歴史で教える場合に、教師の技能、生徒との対話、そういったしかたによって、神話と史実と混同して解釈されるおそれがあると思うのですが、このように誤解を生じやすい神話を、小学校六年生の課程に取り入れたということは妥当ではないと、このように思うわけですが、この点については大臣はいかがお考えですか。
  182. 天城勲

    説明員(天城勲君) ちょっといきさつございますので、申し上げたいと思います。  神話そのものをどう取り扱うか、あるいは神話そのものがどういう意味を持っているかということにつきましては、いろいろ学説もあるし意味もあろうと思います。現在学習指導要領の上での神話の扱いでございますけれども、これは神話の持っている物語性とかあるいは文学性というような観点からは国語の教材としてすでに扱ってきております。と同時に、先ほど来申しておりますように、日本の歴史の中で、古い古代人のものの見方とか自然への観察とか、あるいは国の形成に関する考え方などが神話にあらわれておりますので、これを反映する、取り上げることも歴史の上で必要じゃないか、こういう考え方でございます。御存じのように、神話の社会というのは、時間と空間を超越した話が多いわけでございまして、現実の歴史上のできごとというものと違うことは、神話、古事記にいたしましても日本書紀にいたしましても、それは明瞭なわけでございます。特に神代の末期という書紀の問題などはごらんになればどなたも理解いただける点でございますので、やはり指導上においてはそういうところを十分注意して、神話に物語られておる事柄ということは歴史の上で起きこととは違うのだということを明らかに区別して指導しなければならぬ、このように考えておりますし、学習指導要領もそういう前提で神話を文化遺産の一つとして取り上げておる、こういう考え方でございます。
  183. 内田善利

    ○内田善利君 私が学習指導要領案を読んだんですが、私も混同して読んでもよろしいと、そのように判断、解釈されるようなところだと思うのです。だから、現場の先生方も非常にこれに混乱を生じた結果、講習会でそういう質問が出たのだと思いますが、この指導要領は、いまも言われましたが、国語教育にはずっと神話を取り入れておるということですが、ことさら六年生の歴史にこの神話を、混乱を招くような神話を入れないで、伝承文学として国語に取り入れるべきじゃないか、小学校の歴史に取り入れるべきじゃないんじゃないかと、このように思うのですが、いかがお考えですか。
  184. 天城勲

    説明員(天城勲君) 申し上げましたように、神話の持っている意味がいろいろあろうかと思います。実はすでに国語におきましては、神話の持っている物語性とかあるいは文学性に着目いたしまして、有力な教材として取り入れているということはすでに小学校のときからやっておるわけでございます。ただ、歴史に対するいろいろな資料といたしまして、古代人のものの見方、考え方というものがここにあるということでは、やはり歴史学習において神話を取り上げることは決して無意味なことではないし、またこれをことさらに排除していくということも私はないと、こう思っておりますし、審議会でもそういう意見できたわけでございます。  ただ、繰り返して申し上げますが、神話に盛られておる物語というものと歴史上のできごととは確かに違います。ですから、これは混同してはならないという点はきっちりしていかなければならぬと思っております。現在でも中学校には歴史学習において神話は入っておるわけでありまして、その子供の発達段階に応じて理解される限度で教えていく、こういう考え方でございます。何か神話を中心とした歴史で小学校の歴史を今度書きかえてしまうのじゃないかというような極端な御意見をこれに対してされる方もあるのでございますけれども、学習指導要領の歴史の扱いの事項をお読みくださるならわかりますように、全部を神話で取り扱えというようなことを言っているのではございませんで、先ほど申した時代のときにおいて日本の文化遺産の一つとして歴史というものも取り上げる。その後時代を経るにしたがっていろいろな歴史上の事実もございますし、また日本の国民の積極的ないろいろな態度、外国文化に対する態度等につきましても学習指導要領では取り上げておるわけでございますので、この点も十分御理解いただきたいと思っております。
  185. 内田善利

    ○内田善利君 次に、第二点でございますけれども、政府は昭和四十四年一月から公立の小・中・高校の教員に対して超勤手当にかわる教職特別手当を一人平均月二千円を支給するという予算措置をしておるわけですが、本年度予算に十五億円計上しております。ところが、五十八国会では、この教育公務員特例法改正案は国民の反対にあって廃案になっておりますが、文部大臣国民の血税である十五億円を今後どのように使用していくつもりなのか、国民の前にはっきりと具体的にお答え願いたいと思います。
  186. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 教員の時間外勤務につきまして、教員の勤務の態様の特殊性、こういうことにかんがみまして、いわゆる超勤手当を支給しない、特別の手当を支給することが適当ではないか、こう考えまして、前の通常国会教育公務員特例法の一部を改正する法律案として、いわゆる教職特別手当を支給しようという案を御提案いたしたわけでございます。その御審議の過程においていろいろな議論がございまして、結果的には、まことに残念でございますけれども、国会の議決を得るに至らなかったのであります。いわば法律案として不成立に終わったわけであります。  今後これをどうするかという点につきましては、ただいま申し上げましたように、この案をめぐっていろいろ議論が多かったところでございますので、私のほうといたしましても十分検討をいたしたいと思っております。現段階におきましては、まだその処理方針につきまして決定をいたしておりません。目下慎重に検討中である、こういうふうに御了解願いたいと思います。
  187. 内田善利

    ○内田善利君 前五十八国会におきまして政府与党が強力に推進してきたこの教育三法案は廃案になったのでございますが、いまも申しましたように種々問題があるわけですが、今後この法案についてはどのように処置していくつもりなのか、大臣責任のある明快な回答をお願いしたいと思います。
  188. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 教職特別手当支給という案につきましては、いま申し上げましたように、ただいま今後どうするかということについていろいろ検討いたしておるところである、こういうふうに御了承いただきたいと思います。他の二法案についても、次の通常国会に出すか出さないかという問題については、まだ決定はいたしておりません。おりませんが、私は各種学校の問題でありますとか、あるいは外国人学校問題等は、何とか成立をさせたいものという考え方のもとに、いろいろ検討をいたしておるところでございます。いま確たるお答えを申し上げることはできませんけれども、そういうふうに御了解をいただきたいと思います。
  189. 内田善利

    ○内田善利君 その程度にいたしておきたいと思います。  次に、福岡県の学校長拒否問題でございますが、先ほど来いろいろ論議がかわされておりますが、私は問題点が三つあるのじゃないかと、このように思うわけでございますが、まず学校長推薦のあり方、次が校長の着任を拒否したということ、それから処分を撤回する点について、この三つの問題があると思いますが、先ほどは二つの問題解決の方法も出ておるようでございますが、私は問題解決の方法としては、処分があまりにも過酷ではないか、免職二十一名、停職二十九名という、公務員が免職になったということはどうも過酷ではないか、再考すべきではないか、あるいは処分撤回をして校長着任を認めれば、この問題は解決するのではないか、こういったことについてどうしても一致点を出して話し合いをしなければ、いよいよ二学期を迎えるというふうに考えるわけでございますが、この問題については大臣は先ほどから現地にかれこれ言わないと、じっと見ているということでありましたが、やはり文部大臣としてはすみやかに適切な指導、助言、解決方策を示す必要があるのじゃないか、このように思うわけでございますが、この点についてお伺いしたいと思います。
  190. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 午前中の質疑応答を通じまして申し上げましたように、現在この問題の解決のために地元においていろいろ努力をしていただいておるわけでございますので、この段階において文部省が何か意見らしいことを申すということは適当でないと思うのであります。なお事態の推移につきましては、われわれもよくこれを見守っていかなければならぬと思います。われわれが何かものを申すことが適切である、適当であるという状態でありますれば、そのときにはもちろん何かの意思表示をするということもあり得ると思いますけれども、いまこの段階においてこうしたらああしたらというようなことを申し上げることは必ずしも適当でない、こう存じておりますので、午前中にお答え申し上げましたところで御了承をいただきたいと思うのでございます。  ただ、私がくれぐれも念願いたしておりますことは、解決はもちろんけっこうでありますが、その解決がまた将来に問題を残さないように、筋の通ったもので解決をぜひいたしていただきたいもの、こういうふうに念願いたしております。
  191. 内田善利

    ○内田善利君 お伺いしたいと思いますが、こういう問題は福岡県だけの問題でございますか、それともよその県にこういった事例はないかどうか、お伺いしておきたいと思います。
  192. 天城勲

    説明員(天城勲君) けさも、この御質問の中でも出たように、これはちょっと異例のことではないかと思っておりますし、私の知っている限りでこういう事実はなかったと思っております。
  193. 内田善利

    ○内田善利君 ほかの県にはこういった問題が起こるおそれといいますか、可能性といいますか、そういうものはないかどうか、お伺いしたいと思います。
  194. 天城勲

    説明員(天城勲君) 私、おそれかおそれでないよりも、こういったことがあっては困るという大前提でございますので、関係者の間で起こらないということを心から念願いたしております。
  195. 内田善利

    ○内田善利君 困るとすれば、これは文部省として非常に関心を持ち、適切な指導をしていくべきじゃないか、責任ある明確な態度が、姿勢が必要じゃないかと、このように思うわけでございます。私は案ずるわけですけれども、いまは夏休み中でありますし、まだ未解決のまま新学期を迎えるとすれば、たいへんな問題じゃないか。四十九人の先生方は学校不在、校長も着任するかどうかわからない。教室には担任の先生がいない、そういった新学期を迎える子供にとっては非常に不安である。また父兄としても不安な気持ちで新学期を迎える態勢にありますし、こういった問題に対して、現地の問題であるとか、そういったことでまかせるわけにはいかないのじゃないかと、このように思いますし、またさらに深く考えますと、次の問題が起こってくる可能性もなきにしもあらず、そのように私は思うわけですが、そういったことについては、やはり文部大臣として適切な指示をすべきじゃないかと、このように思うわけです。この点についてもう一度明確なお答えをいただきたいと思います。
  196. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) このような事態は、願わくはこれだけにしていただきたいものと、将来こういうことが起こらないように関係者の間で十分努力してもらいたいと私は念願をいたしております。  今回の問題につきまして、教育委員会のとりました措置の適否、こういう問題についても、責任教育委員会にあるわけでございます。したがって、教育委員会のやり方が適切でないということであれば、これは将来是正していかなければならぬ問題であろうと思うのであります。私は必ずしもそのようには考えておりません。また、問題はどこまでも教育界の問題としまして世間からとかくの目をもって見られないように、また教育界に対する信頼の念を失うことのないよう、またお互いに良識を持って行動してもらいたいものと、そういうふうに考えております。また、行政を執行する責任のある立場としからざる方といがみ合うというようなことは、何といたしましても好ましくない事態でございます。行政運営の適正という点につきましては、教育委員会も十分に配慮すべきことであろうと存じますが、一面において、そのような問題に対して何が何でも実力で阻止する、こういうようなやり方はひとつやめていただきたいものと、かように思います。
  197. 内田善利

    ○内田善利君 最後に要望したいと思いますが、私はもうこの問題は教育問題から政治問題化しているのじゃないかと、そのように思うわけでございますが、新学期を迎えるにあたって、先ほど申しましたように、生徒が、また父兄が、不安な気持ちで新学期を迎えることのないように、適切な指導、すみやかな明確な助言をお願いしたいと思います。  以上でございます。
  198. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 福岡高教組にかけられました不当な解雇の問題について、午前中の中でだいぶ明らかになったと思います。ここでもう少し聞きたいと思います。  まず、この原因となりましたのが、従来行なわれていた慣行が一方的に無視された、そこに原因があったと思うのです。この慣行というのが五年や十年の問題じゃなくて、すでに十六年から続けられておるこの慣行に対して、文部大臣または文部省の見解はどういうふうにいままで見ていらっしゃったのでしょう。そのことについて、まずお伺いしたいと思います。
  199. 天城勲

    説明員(天城勲君) これはいま御指摘のように、慣行といわれておるのでございますが、組合と教育委員会とが人事にあたっていろいろ話し合いをしたというふうに一般的にとればそれまででございますけれども、やはり教育委員会の判断においていままでの人事にあたっていろいろな適切な情報を得る、資料を得るという意味で、各方面と接触することは、これは当然だと思うのでございますが、その過程におきまして、慣行といわれている中に、教育委員会としては正当な教育の人事権を行使するのについて適当でないという判断が今度加わったのではないか。それで、当然組合側の推薦の範囲内だけで人事をやるということが慣行であるとするならば、そういう慣行は望ましいことではないという判断があったのではないかと思うのでございます。  慣行があったかなかったかと、いろいろ御疑念があるようでございますけれども教育委員会側としては、今度とりましたことについて従来の慣行——組合側の議した人事のみをもって教育行政をやるというような意味での慣行はなかった、こういうような言い方もいたしておりますので、その辺のところが慣行といわれている中で両者のとり方が違っておったのじゃないか、このように思っております。と申しますのは、必要な資料なりその他は十分広くとるという前提と、人事の責めにある権限は教育委員会にあるという形でこれが解決されていくことが一番望ましいことじゃないか、このように考えております。
  200. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 午前中安永委員も言われたわけですけれども、人事権についての介入はしていない、人事権は教育委員会にあるということは認めているわけです。そこで、教育委員会としても、やはり教育の現場にあって実情もわかり、ほんとう教育の実をあげるための人事ということになれば、当然具体的ないろいろな意見も持っている。それについて話し合うということがどうして悪いのか。いままでそれについて、いま教育委員会の立場についての御答弁をいただきましたけれども文部省としてはいままで何事もなくスムーズに教育行政が行なわれていたということに対して、文部省としてはいままでどういうふうに見ていらっしゃったのでしょうか。
  201. 天城勲

    説明員(天城勲君) 教育行政がスムーズに行なわれているか行なわれておらないか、 これはスムーズという意味でございますし、それから形の上にあらわれた問題がなければそれでいいというわけでもないのじゃないかと思うのでございます。いま一般論として、あるいは原則論として、教育委員会に法的に人事権があるということは、組合側でも決して否定していないし、これは当然だと思うのであります。ただ、実質的に話し合い、あるいは慣行といわれている中で、教育委員会の人事の判断においてどこまで事実問題として法律上の責任ある権限が行使できるかできないか、あるいは行なえているか行なえていなかったかという、その辺についての考え方が組合側と教育委員会側と食い違っておった、このように思うのでございます。
  202. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 私は、そういう慣行がいままで十六年続いていたというその事実について文部省としてはどう思っていらっしゃるのかということを先ほどから伺っているわけなんです。教育委員会としての考えじゃなくて、文部省当局としてはこういう慣行がいままで続いていたそのことについてどう思っていらっしゃったのか。
  203. 天城勲

    説明員(天城勲君) ちょっと私、何と申しますか、慣行といっているものに対して見方が、教育委員会側として、何と申しますか、スムーズに教育行政が行なわれておったという前提としての慣行ということに対しての考え方が違うのではないか、こう思うのでございます。私、個々の県の人事のやり方がいろいろあろうかと思っております。これは地方によりましていろいろな手続があろうかと思っていますけれども、この一々についてとやかく申したり、またすべてを熟知するわけではございませんから、何とも申し上げかねるのでございますけれども、要は、慣行といい、スムーズとおっしゃる点についての考え方が、やはり教育委員会と組合側とが一致していなかったのだ、このように理解しております。
  204. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 どうも、何ぼ聞いても、私が聞きたいことをお答えいただけないわけですけれども、慣行ということばとか、スムーズであったとかないとか、そういう事実は抜きにいたしましても、教育委員会と高教組のほうと話し合いをして、そうして校長というものが任命されてきた、それが事実としていままで十六年間あったわけですよね。そうでございましょう。その事実について文部省当局としては、こういう事実が十六年経過してきたことについて、これは妥当であるとお考えになるのか、それともこれはけしからぬとお考えになるのか、文部省としてはその事実をどう見ていらっしゃったかということを私は伺いたいわけなんです。
  205. 天城勲

    説明員(天城勲君) ですから、組合と話しをして人事が行なわれて、スムーズに十何年間か続いた慣行が妥当か妥当でないかと、こうおっしゃいますけれども、いまそうおっしゃっていた慣行そのものについて、それが慣行であったのか、それから円滑にそういう形で進んでいったのかどうか、そういう点については、私は、必ずしもいま先生のおっしゃるような形でたんたんと十何年間続いていたともとれないのでございます。いろいろとそのいきさつがこの中には織り込まれておるようでございますので、包括的にこのことを一つのことばで妥当か妥当でないかということを申し上げかねるのでございます。
  206. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 どうしてもその辺のところがおっしゃりたくないように私は判断いたします。  それで、そういう問題が一方的に今度突如として出されたわけですね。いままでのそういう慣行——ことばでいえば慣行ですけれども、こういうしきたりが一方的に破られたということについては、それなりの理由がなければならないと思うわけなんです。それは一体どういう理由があったと御判断なさるでしょうか。
  207. 天城勲

    説明員(天城勲君) ですから、これはけさも御質疑の中でも出ておりますように、組合の推薦した者の中からだけとるということじゃなくして、教育委員会としては広く人材を求めて独自の判断で人事をするという見解で人事をいたしたわけでございますから、過去の人事行政の中でそれが十分とれなかったということもあったのではないか。結果から申しますればそういうことになるかもしれませんけれども、そのことについて、これはある意味では当然のことでございますので、おそらくそれが手続上、先ほどもお話もございましたように、今度の発令以前においてその点についても問題があったとすれば、私は、いま申したような意味での考え方というものが従来の慣行と違うというならば、従来の慣行というのはそれこそ教育委員会の人事権を侵したことになりますし、人事の候補者の範囲というものが非常に限られてしまったということになるわけでございまして、それは必ずしも過去の事実から見てもそうでもないし、したがって、そういう意味の慣行慣行といっているものがほんとうにあったのかどうか、これは教育委員会の意見を聞きますと、必ずしもそういうものはないということまで言っていますから、いま先生の御質問でございますけれども、私はそれがいま直ちにいいか悪いかということを申し上げかねると申しているのはその点でございます。今度の一番最初のときに、教育委員会がそういう考え方をもって校長人事をやるといったこと自身は、これはまあ客観的に見て当然のことだと思うのでございまして、それがいかぬ、慣行に反するということになってまいりますと、これはそうでないことが慣行だっということになってしまいますし、そうすると、その問題は別になって、しかし、教育委員会はそういう慣行はなかったのだ、こう言っておりますので、その辺は私は別に逃げているわけでもございませんので、事実がいま言ったような形であらわれたという形でございますか、未解決でいるポイントもそこでございますので、先ほど来申したようなことを申しておるわけでございます。
  208. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 非常にすらっと避けていらっしゃるわけですけれども、こういう問題は非常にいま大きな問題に発展してきているわけですね。しかも、いままでずっと行なわれてきたことをここで変えなければならない。しかも、こんな大きな問題が出てくるということが当然予測されるはずだと思うのです。あえて、この大きな問題になるだろうということもわからないわけではないのに、ここでこれを強行するということについては、先ほどから言いましたように、何らかの理由、根拠がなければ、思いつきで、じゃこの辺でひとっこれをやめちゃおうか、そういうことでお出しになったのでしょうか。それとも、いままでのやり方でいくとどうも校長人事が広い範囲から人材が得られない、たいへん困るとか、また教育人事が、組合では教育委員会にあるといいながらも、その話し合いの中で非常に介入するというようなそういう問題があったのか、そういう事実が全くわからない。具体的に問題はない、それなのに、こういう大混乱を起こすようなものが出されたということは、一体どう考えたらいいのでしょうか。そういうことが全く予測されないで、この辺でひとつきちっとこっちの権力の側に人事権を取り戻そうということで思いつきでなさったんですか、それでは。
  209. 天城勲

    説明員(天城勲君) これは教育委員会が正当な法律上の責任を負っている、それを正しく行使しようということで、そのことは客観的にいって当然のことじゃないか。それに対していろんなこまかいことがあるようでございますけれども、面接をして報告をしてやろうという話も出て、それは反対だということで、結論的にはそういうこともやらないといういきさつはいろいろあったんでございますが、教育委員会の考えていることが法律に基づいた人事権の行使でございますから、それに反対するということでしたならばそうでないことを主張していることになってきますし、それが慣行だったのかということを、教育委員会はそういう慣行はなかった、こう言っているのですから、その辺のところは私たちも過去の事実について一々知りませんので、的確にお答えしかねるわけでございます。
  210. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 いまの問題、もう少し突っ込んでいきたいのですけれども、あと伺いたい問題もあるので、またの機会に譲りたいと思います。しかし、ただ一言はっきりさせていただきたいのは、たとえば教育行政のあり方にしても、憲法に保障され、そして教育基本法に保障された教育を、教師と教育委員会側が話し合ってその実を進めていくという点については、私は当然のことだろうと思うのです。  私、見ておりましたら、これは一九四九年の二月に発行されているのですが、文部省の「小学校経営の手引」というのが出ております。これを見ますと、民主的な経営をする校長とは一体どういう校長か、それは他人の経験を十分聞かなければならない、多数の意見を尊重して、そして民主的に運営しなければいけないというような、実に具体的な例が十四項目にわたって書かれているわけでございます。この項目と、それから福岡県教組で実際にやってきた具体的な問題を見ますと、職員会議というものが毎週定期に開かれる。そして校長がワンマンで教育運営するのではなくて、学校運営が、最高機関として職員会議で民主的に先生たちの意見によって運営される。これもこの手引きに書かれているとおりだと思う。また、教頭制度というものはつくっていない。各先生方が選挙で総務部長というような任務をつくって、これも運営していく。また、校長の人事についても、やはり教育委員会に人事権があるといっても、よりよい教育をするためにはいろんな広範な角度から見ていかなければならないと思うのです。そのためには、最もよくその実情がわかり、また現場で一緒にやってきた仲間としての教組というものが相当な資料も持っているはずだと思うのです。そこで相談をするといういままでのやってきたことも、この「小学校経営の手引」に書かれている中身と同じだと思う。また、教職員が週一回の研修日というのを持って、そして教育が十方にできるようにという先生自身が研修日を持っているというのも、これは残念なことにはいま残されているのは東京と福岡の場合ですけれども、こういうような事実、福岡県高教組がやってきている内容というのは、文部省がさきに指導されたようなそういう非常に民主的な立場に立ってやっているわけです。  こういうことに対して、その状態をくずしていこう、こういうやり方が突如としてやられた、いままでの御答弁でははっきりした明確な理由づけというものは私には考えられません。そうすると、これはまさに地方公共団体における教育委員会の責任というものが、中央の権力によって官僚統制をしいていこうという、神話の復活と同じような、軌を一にして出されたものだというふうに考えられてもしかたがないじゃないか、そういうふうに私は考えるわけです。これについては、そちらの立場はまた違うと御反論になるかもしれません。  それでは、この解決を一体どうしたらいいのかということなんです。先ほど、発令されたのだからもうしかたがないのだ、こういうふうな大臣の御答弁だったのですが、発令されたんだからしかたがないのだという強硬な態度で一方的に割り切っていかれるのか、それとも、ここでほんとうに教員と組合とも話し合いをして、まず被害を受けるのは子供でございます、そういう被害者の立場に立ってみたら、一日も早く解決していかなければならないと思うのです。そういう文部省としては教育委員会に対して話し合いをするようにというような点についてどうお考えになっているのか、その辺を伺わせていただきたいと思います。
  211. 天城勲

    説明員(天城勲君) これは先ほど私も申し上げましたし、大臣からも申し上げた点でございますが、事態というものは一日も早く正常にすること、これはもうどなたも同じ意見だと思います。私たちもその考え方でございます。しかし、これには福岡県の教育委員会とそれから教員組合、また第三者のあっせんという形で、一度はある程度まで話は進んできたこともございます。再び新しい形でのこの問題を解決する努力がすでに行なわれておりますので、やはり関係者の中で十分話し合いをして進めていくことが一番望ましいことだという前提で、一日も早く正常な状態になることを期待いたしております。
  212. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 それでは、次に、私立大学の問題について具体的に文部省なり大臣なりの見解をお伺いしたいと思うのです。  いま大学進学率というのは、昔のことばでいえば、昔中学へ進むのが当然だったといわれたくらいに、現在、大学に進むというのが当然のことになっているわけです。しかし、その中での国立大学の割合は御承知のとおり非常に少なくて、私立大学に負担させられている分というのが約七二・四%でございます。その七二・四%もの大学生をかかえておる私立大学に財政補助もなされていない。十四年間に六倍以上も学費は値上げされている。私たち主婦の立場で話し合ってみると、このごろは内職とかパートとか、非常に経済的に苦しみながらかせぐ婦人が出てきちゃうわけですけれども、その人たちが一番何にお金が要るかといえば、みんな子供の教育費でございますね。こういう私立大学にかけられている経費が父母の負担の形で非常に大きくなっているということと、それから、たとえ私立大学であろうとも、これは日本の次の時代をになう民族としての教育ですから、当然これは国の責任というものがある、こう考えるわけですけれども、この私立大学に対しての文部省としての見解ですね、基本的な方策というようなことをお考えになっているのだったら、それを伺わせていただきたいと思います。
  213. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 今日の高等教育の部面で私立大学が大きな役割りを果たしておるということは、だれしも認めるところであろうと思います。私どももそのことは十分認めておるつもりでございます。  ただ、私立大学の財政的な問題、また他の立場で申せば学生なり父兄の負担の問題、こういう問題がやはり現在大きく取り上げられていることは事実でございます。政府としましても、さきに私立大学の財政問題について審議をいたすために臨時私立学校振興方策調査会というものを設けまして、いろいろ熱心な御審議を願い、その答申をいただいておるわけであります。われわれとしましては、可能な限りこの答申の線に沿って物事を進めてまいりたい、こういう気持ちは十分に持っておるわけでございますが、一面におきましては、現実的にどう解決していくかという、問題としてなかなか困離な問題も少なくございません。御承知のように、いままでいろいろなことをやってまいったんですが、いろいろな補助金でありますとか、融資でありますとか、そういうふうな方策についてもさらに強化する必要があろうと考えます。  一番問題となりますのは、経常費の助成という問題でございます。経常費の助成という問題につきましては、振興方策調査会においても的確な結論を出さないままに終わっておるわけでございまして、今後の検討にゆだねられているような状況でございます。この取り扱いには、財政の面から申しましても、またその助成金なるものが私学の運営にいかなる関係を持つか、こういうような角度からいたしましても、かなり議論のある問題でございますが、ともかくこの経常費の問題、特にまた私学が御苦心しておられますのは人件費の問題、こういうような問題もございます。そういう問題を取り上げまして直ちに解決するということには、なお検討を要する問題があろかと存じております。  その中で本年度、初めてでございますが、従来どちらかといえば臨時的な問題のみ取り扱ってきておりますけれども、経常費的な助成といたしまして、私立大学教育研究補助金というものを計上いたしまして、補助金を出すということになりました。その金額は本年度三十億円でございます。三十億円という額は決して十分だとは思っておりません。思っておりませんが、ともかく新しく経常費的な助成の一つとしてこの補助金が出たわけでございます。  今後の問題といたしましては、経常費的な助成という問題についてどう取り組んでいくかということについて検討をさらに進めてまいらなければならぬと思いますが、これはなかなか一朝一夕には解決しにくく、しかも問題はなかなか切実な問題だというところに私どもも悩みがあるわけでございます。
  214. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 いまのお話で伺いますと、私学に対しての助成は必要である、切実な問題である、こう言われておるわけですけれども、それに対して、非常に困離だということで、具体的には何ら御答弁いただけなかったわけですけれども、もうそろそろ八月末になりますと、文部省としての来年度の予算というようなものも御検討にならなければならない時期だと思うんですが、困離だという問題が具体的にどういう点で困難なのか。来年度に対しての方針と考え方というものもいまのところ全くなくて白紙だ、こうおっしゃるんでしょうか。その辺のところをどうぞ。
  215. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 私学の皆さんが直ちに満足せられるような結論を出すということは、なかなか容易でないと思います。ただ、私どもとしましては、可能な限り私学の助成については努力してまいりたいと思っております。明年度の問題としましては、現に明年度予算の問題としましていろいろ検討はいたしておりまして、まだその結論は出ておりませんが、何とか従来にも増して助成を強化していくという線でやっております。
  216. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 今年度新しく三十億円という研究補助金というものがやられたわけですけれども、これについての新聞報道せられているところでは、いろいろと条件がつけられている。特に紛争が起こっているそういうような学校に対してはこれは出せない、こういうふうに一つの問題点が出されているわけですけれども、その紛争という問題と私学に対する助成という問題とは、次元の違う問題だと思うのです。また、責任者の方は、この補助金を出すについては私学関係の方と相談をして出すんだと、こういうふうに非常に丁寧に発言されているわけですけれども、こういう相談して出すのだということ自体が、私学の非常にお金に困っている現状にお金を出すということで、これは非常にひもつきになる危険があると私たちは不安に感じているわけなんですけれども、その辺のところをはっきりさせていただきたいと思います。
  217. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 新聞でいろいろ取りざたせられておりますが、学園紛争がある場合にはすべてこの教育研究費の補助金を出さないというようなつもりではございません。学園紛争によりまして学校運営が正常を欠くに至ったかどうか、こういうような判断は、やはり現実に即してよく考えていかなければならぬ問題であろうと思うのであります。ただ紛争があるからというので、直ちに補助金を出さないというふうな簡単な考え方はわれわれいたしておりません。ただ、同時に、国費をもって助成をすることでございますので、その助成がやはり有意義に効果的に使われるという状態でなければならぬと思うので、その学園状態いかんによって問題は考えていきたいと思うわけであります。取り扱いは十分慎重にやっていくつもりでございます。
  218. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 私たち共産党といたしましても、いま私学の占めるたくさんの学生の数や、またその教育の内容についても、これは非常に日本の将来に関しても重視しなければならない問題だと、そう考えているわけです。そこで、まず政府としても、この私学の問題を具体的にどう振興させていくかということについては、やはり具体的に考えていただきたいと思うのです。私たち共産党としては、いま私学に対する財政の補助というものは全く少ないという点から、国立並みにはならないけれども、一人の学生について少なくとも五万円ぐらいの補助金というものが当然出せないわけはないと。この総額でいえばせいぜい五百億ぐらいの額になると思う。この五百億の額というものが。今年度の予算でいえば五兆八千百八十六億という大きな予算をかかえている中で、口ではいままで教育というものは非常に重要な問題であるとたびたび重ねて言われているわけです。そういう中から、この私学の問題が切実で重要な問題だとお考えになるなら、これに対する助成金の五百億というのは、決して無理な金額じゃないと思います。また、この出し場所にいたしましても、いろいろな財政措置の予算を見ましても、必要でないところに補助金がたくさん出されているとか、また私たちがいつも言うことですけれども、戦争への準備のためのあの総額から見れば、全くわずかの額でしかないわけです。私たちは当然日本の次の時代をしょう青年たちのための私学への助成金だとすれば、一人五万円というのは出せるし、出さなければならない、こういうふうに考えているわけです。  また、大学設置基準に到達するための国庫補助というのも当然だすべきだと思うし、また、具体的には、私学の中でも勤労学生が非常に生活をしょいながら学校に通っているという、その努力もたいへんだと思うのです。こういう学生たちに対しては税金を免除するというような措置も当然考えられてしかるべきだと、私たち共産党としてはそういうような具体的な政策を立てているわけですけれども、いろいろと困難な事情がある、具体的に立てられていないということをおっしゃいましたけれども、共産党の私学に対する政策というのをお読みいただいたかどうか、もしお読みいただいたとすれば、これが大臣の参考になったのか、てんでこれは話にならない、こういうふうにお思いになるのか、その辺ちょっと伺わせていただきたい。
  219. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) たいへん失礼でございますけれども、私はまだ共産党の私学対策というものをつぶさに拝見したことはございませんので、何とも申し上げようないのでございますが、ただ、いまおっしゃいましたことはお考えとしてはわかりますけれども、なかなか現実問題としてはそう簡単にものごとは解決しないというのが実情ではないかと。さように思っております。
  220. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 たいへん残念なお答えだったのです。共産党としましては、非常に私学の問題を重視しております。また、たいへん具体的に——できにくいとおっしゃる中では、具体的な政策として出しておりますので、どうぞ時間を見て読んでいたきだたいと思います。  それから、大学だけではなくて高等学校なんか、いま非常に問題が各地で起こっているわけです。たとえば東京でも大東学園、青葉学園なんかにいたしましても、ベビーブームのときに、私たちは、高校全入、公立高校をたくさんつくってくれと、切実な運動として全面的に展開したのです。そのときに、文部当局としての文教政策では、その問題の要求はほとんどといっていいほど聞かれていない。そこで、出てきたたくさんの子供たちに結局与えられた場というのが、とにかく私学へでもいこうと、こういうことで、私学へうんとベビーブームの子供たちが入っているわけです。それが現在になって私学に入る子供、入学する子供が少なくなったとか、また私学に対する財政援助が足りないために、経営難に陥って、ひどいところでは、学校の校庭がくいを打たれて取り上げられるとか、教室が封鎖されるとか、そういうような問題がたくさん起こっているわけなのです。そういうような問題というのも、これはベビーブームというのも、結局これはもうわかっていることですから、生まれたら幾つになったら学校に入るということは当然わかることですから、それに対して文部省が全然対策を立てられていなかったとするならば、こういう問題について一体とういうふうに解決していこうと——このままでいけば私学というものもほんとうにつぶされてしまう。そして犠牲になるのは、最も学問をしなければならない子供たちが、その時期を失して、非常にショックを受けた中で押しつぶされていくと、こういう結果になるわけです。こういう問題について、いま具体的にたくさん出ています、そういうのをどう見ていらっしゃるのか、最後の質問としてお伺いしたいと思います。
  221. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) いわゆるベビーブームの影響を受けまし七、学校施設の拡充について私学が大きな役割りを果たしたということは、先ほど申しましたことと通ずるわけでございます。ただ、その後の入学者がだんだん減ってくる、こういうことからいたしまして、私学の経営の上に支障を生じてきておるということも認めざるを得ない点であろうかと思うのであります。そういうふうな問題につきまして、私どもももちろん関心は持っておりますけれども、私学それ自体においても、経営の合理的なやり方等につきまして検討してもらう必要もございますし、また第一義的には都道府県において十分心配をしていただきたい、こういうふうなつもりでおるわけでございます。いずれにしても、なかなかそれぞれのケースに対して的確に処置をするということは、実際問題としてなかなかむずかしい点もあろうかと思いますし、また現状をそのままに維持していくということは、また事実時代が変わってきておりますので、そのとおりにやっていくわけにもまいらない。どう対処していくかという角度において、関係者が十分検討を加えまして、できるだけおっしゃるとおりに子供に迷惑をかけないような姿で解決していくべきものと、そういうふうに私も考えております。
  222. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 最後に、要望なんですけれども、いまの、私たちでもいろいろとたくさんの実例というのはつかめるわけですけれども文部省として全国的にこの私学の、特に高校の場合、非常に大ききな問題が出ているわけですけれども、それについての調査ですね、文部省として調査されたような資料があるのかどうか。それから、もしなかったとすれば、それを調査していただきたいと思うのです。
  223. 村上松雄

    説明員(村山松雄君) 文部省といたしましては、高等教育機関大学、短期大学、高等専門学校は直接所掌しておりますが、高等学校以下の私立学校は都道府県の知事の所管になっております。したがいまして、経営不振の状況、それから問題の状況等が、個々のケースにおきまして都道府県から報告のあったものについては聴取しておりますが、文部省で全体的に積極的に調査集計したものは現在までございません。
  224. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 以上で小笠原貞子君の質問は終わりまして、引き続きまして鈴木力の質問に移ります。  政府側からは田中総理府総務長官、佐藤人事院総裁、栗山総理府人事局長、尾崎人事院給与局長が出席いたしております。  鈴木力君。
  225. 鈴木力

    ○鈴木力君 最初に文部大臣に伺いますが、公務員の給与の改定を前にいたしまして、文部大臣から人事院に所管の教育職、研究職の給与についての要望ですか、申し入れですか、そういうことがあったということが新聞記事に出ておるのでありますけれども、事実あったのかどうか、そうしてもしそういう申し入れをしたとすれば、これは全部読んでもらう必要はないけれども、要点はどういうことを申し入れになったのか、まず先にそれを伺いたいと思います。
  226. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 給与改善につきまして、文部省としましては、人事院に申し入れをしたと申しますか、希望を述べたということはございます。その内容等につきましては、関係官から御説明いたさせます。
  227. 諸沢正道

    説明員(諸沢正道君) お答え申し上げます。  文部大臣名をもちまして、人事院総裁に対して要望いたしました内容をかいつまんで申しますと、一点は、大学の助手、高専の講師、小・中・高等学校の教諭のいわゆる初任給の大幅な引き上げという点でございます。それから次に、大学の講師、助教授、あるいは高専の助教授、小・中・高等学校の教諭のうちでも特に中堅クラスの給与の大幅な改善でございまます。それから、研究職の俸給表の適用があります職員が文部省の所轄機関等におりますが、これらの研究職の職員の給与のうちでも中堅幹部の給与を、教育職適用者に比べましてもう少し改善をはかっていただきたいという点がございまます。  そのほか、現在商船大学、あるいは高専等の学寮の舎監をしております先生の手当について、現在宿直手当が支払われておりますが、これは勤務の実態に比べまして、さらにそこに指導というものが業務内容として付加されるわけでありますから、新たに学寮手当のようなものの創設を考えていいんじゃないか。同じようなことが、盲ろう学校の寮母についても寮母手当というようなものを考えてほしいというような手当関係の要望等でございます。
  228. 鈴木力

    ○鈴木力君 人事院総裁にお伺いいたしますが、いまのような、文部省からは文部省の所管事項としてのそういう要望ですが、申し出があった。その他どういうところから人事院に向けてそういう要請、申し入れがあったか、全部どこどこどこと言わぬでもよろしいのですけれども、ある程度教えていただきたい。
  229. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) それはそれこそ、どこどこどこと申し上げたら、とても時間が足りないくらいにたいへんなことでありますけれども、たとえば教職員の方々の場合につきましても、文部大臣からも御要望がありますし、職員団体のほうからももちろん御要望がございます。あるいは国立大学協会だとか云々というようなそういう関係の団体から要望が参るわけであります。その他、各省の所管事項については、それぞれまたそれらのうちから、こうしてくれ、ああしてくれという真摯なる御要望が私たちのところに集まってきておる、こういうことであります。
  230. 鈴木力

    ○鈴木力君 総務長官からは、いまのような、文部大臣のいま答えられたような、そういう趣旨の申し出はあったのですか、ありませんか。これは総務長官に聞いたほうがいいかもしれない。申し入れしたのか、してないのか。
  231. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 私は申し入れをいただいた覚えはありません。
  232. 鈴木力

    ○鈴木力君 総務長官にお伺いしますが、総務長官は給与担当大臣として、公務員の団体から、はっきりいいますと、公務員共闘会議というものがある、この公務員の団体から、公務員の給与についての要望があり、あるいはいろいろ要求があったと思うのです。そういう公務員の職員の側からの要求を給与担当大臣として、今日までそれを受けてどういう処理をしておったのか、お伺いしたい。
  233. 田中龍夫

    国務大臣(田中龍夫君) 給与担当者といたしましての総理府の職能は非常にむずかしいところがございます。私どもはあくまでも、人事院の勧告を待って、同時にまたこれをあくまでも尊重するように閣内に努力をしなければならぬ、こういうような立場でございます。いわゆる各省の御要望なりあるいはまた人事院に対してのいろいろな要請その他というものは、特に私どもといたしましては差し控えなければならない非常にデリケートな立場にあることを、どうぞ御了承賜わりたいと思います。
  234. 鈴木力

    ○鈴木力君 これは非常にむずかしい問題でありますから、私もどちらが是でどちらが否だというような言い方は、いまのところは断定的には申し上げたくはない。ただしかし、各省ともそれぞれの立場で職員のことを心配してものを言っておるというようなことになると、私はやはり給与担当大臣として総括したものを、職員の希望というものを聞いておるわけですから、この希望を聞いて、これがなるほどということが御理解がいただけますと、これは担当大臣としては、やはり何らかの実現のための努力ということが必要ではないかという感じを持ったから、一応聞いてみた。しかし、いまあくまでも勧告を待ってという態度であった、こういうことでありますから、是非は保留して、これ以上はお伺いいたしません。  ただ人事院の総裁にお伺いいたしますけれども、こういう状態で、総裁といたしまして、人事院といたしましては、こういう申し入れについてはどういう形でこれを処理なさっているのかですね、その点ひとつ伺いたいし、ついでですから、きょうはきわめて時間が少ないのでありますから、ついでにもう一つ伺いたいのは、いまのように各省から、自分のところの職員のこういう点をこういうふうにしてくれという要望が要望としてある、別の面で、たとえば大蔵省から、あるいは地方財政を受け持っている自治省から、そういう財政的な面で人事院に対する何らかの申し入れなりあるいは何らかの意思表示なり、そういう点があったのかなかったのか。これもついでに承っておきたいと思います。
  235. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) これをかなえてくれればうんとお金をとってやるというふうなお話もございませんし、それの逆の意味のお話もございません。財政関係ではいままでは全然ございませんですね。
  236. 鈴木力

    ○鈴木力君 それでは、いまの文部省が人事院に申し入れした事項について、若干の問題について見解を私は承りたいと思いますが、まず文部省に、これは大臣でなくてもけっこうでございますが、いろいろといま人事院に御要望なさっていらっしゃるその立場はよくわかるのでありますけれども文部省として一番教育職員の待遇の改善を妨害しておったのは何だと解釈しておるのか、それをまずひとつ伺いたいと思います。
  237. 諸沢正道

    説明員(諸沢正道君) 文部省といたしましては、対人事院との関係では、国立学校の教官の給与の向上というものを主たる内容とし、その国立学校の教官の給与を基準として、一般公立学校の教官の給与がきめられてきておるわけでありますが……
  238. 鈴木力

    ○鈴木力君 質問の意図がはっきりしなかったと思いますから、はっきり申し上げます。  私がいま聞きたいのは、はっきりいえばこういうことですよ。待遇改善のためにいろいろなところから検討して、あそこの点を初任給を上げてくれとか、いま伺った限りでは号俸間差を何とかしろということがある。しかし、現実に教育職員がそういうようなこと以前に、いままでに改善をさるべきものでされていなかったのは、これは人事院が勧告をされたことが政府によって完全に実施されなかったことだと思います。給与体系のどこか、初任給を幾らいじったって、完全に実施をされなかった数カ月分のところが支給されておれば、それ以上の給与の改善になるわけです、基本的に。そういう点の考え方をどっちをとっているのかということを聞きたい。
  239. 諸沢正道

    説明員(諸沢正道君) 昨年の給与勧告を例にとりましても、勧告で取り上げられました内容についてはそのまま実現されたわけでありまして、ただ実施の時期が要望どおりにはいかなかったのでありますが、これは教員に限らず全公務員について同じような結果であったわけでございまして、私ども事務当局といたしましても、実施についてはぜひ勧告どおりやってほしいということを念願しながらおったわけであります。ことしの勧告の結果につきましても、その結果どおり実施されることを私ども事務当局といたしましては願っておるわけでございます。
  240. 鈴木力

    ○鈴木力君 はっきりと私がいま申し上げたように、まず給与の改定といいますか、改善には当然示されてあって支給されるべきものが、政府の都合で実施時期を値切られた、こういうことで、教員に支給さるべき金額が尊重したとかしないとかいうへ理屈はともかくとして、現ナマが入るべきものが入らなかった。したがって、これを入れるということがこの給与改善のいまの制度上では第一だ。その上に立っての教育職員といういわゆる特殊な職務の内容について改善をする。この本末を転倒しないようにぜひお願いしたい。  私もそういう立場に立っていまから若干問題を聞くのですが、時間がありませんから、たくさんの問題を聞きませんが、そのうちの申し入れしているほうの中に、新聞ですからそのとおりの文章かどうかわかりませんけれども、高等学校以下の学校関係というところに、初等中等教育はいろいろ大事だから初任給を上げてほしいし、昇給間差を大幅に引き上げるとともにということで、特に取り上げているのは高等学校教員の俸給表ですよ。いわゆる前から言ってきた三本立てを強化せよということが第一だ。   〔委員長退席、理事楠正俊君着席〕 それから、第二は教頭について、第三は実習助手について、この三つを特に抜き出してある。実習助手の人は低い立場に置かれておるから、その立場はわかる。しかし、何か一般の教員のことを言っているように見えながら、取り出してきたのはいまのような三本立てを強化せよということと、教頭を何とかせよということ、特におくれている実習助手を取り上げた気持ちはよくわかるけれども、前の二つの点については私はよく理解できない。人事院に特に強調したその理由を説明してもらいたい。   〔理事楠正俊君退席、委員長着席〕
  241. 諸沢正道

    説明員(諸沢正道君) 御指摘の二点につましては、第一点の三本立て給与の問題でございますが、これはおことばを返すようでございますが、強化せよというような表現ではなくて、そもそも三本立てが発足いたしました当時の趣旨にかんがみて、現在もほぼその趣旨どおりに給与表が定められておるわけでありますが、文部省の要望しました内容というのは、三本立て実施当時の高等学校と小・中学校との給与の格差といいますか、それを同じ程度に保持して今後もやってもらうようにしてほしいというような意味のことでございます。特にその差をいままであった以上に広くというような趣旨ではございません。  それから、第二点の高等学校の教頭の問題でございますが、これはいわゆる教頭が複数になりました場合に、当然それを前提として管理者手当を複数の教頭に支給するということでございますので、ある意味では、これはしたがいまして、勧告そのものの問題ではないかとも思うのでありますが、まあそういうことが行なわれた場合のことを前提としての要望でございます。
  242. 鈴木力

    ○鈴木力君 まじめな答弁をしてもらいたいですよ。いままでどおりにしてくださいというのを特に要望するというのはあたりまえな考え方じゃないですよ。いままでどおりにしてくださいというのが申し入れなりとほんとうに答えているとするならば、いままでどおりのことを全部書いてなければならぬはずだ。改善のために特に左記のことを留意せられたいと書いておって、この理由がなぜだといったら、いままでどおりにしてくださいという意味だ。ばかにしてもらっちゃ困る。
  243. 諸沢正道

    説明員(諸沢正道君) ことばが足りませんで、たいへん恐縮でございましたけれども、私の申し上げた趣旨は、いま申し上げましたように、現行の三本立てという給与制度ができた趣旨に沿い改善してほしいという意味でありまして、その意味は先ほど申し上げましたとおり、私ども当時小・中と高等学校の給与の格差があった程度の格差考えてほしいという意味でございます。
  244. 鈴木力

    ○鈴木力君 時間がないからやりとりはしませんけれども、ばかにした話ですよ。いまある制度、その俸給表、それならば俸給表は現状の俸給表でいてほしいという全部のことを言えばいいわけです。特に高等学校だけ抜き出して、そんなごまかし言ってもらっては困る。ここではっきりすることは、格差を広げるという考え方は文部省は持っていないと、これだけははっきりしておいてよろしいですね。ただ、私はこれは聞いておきたい。時間がないから討議は要らない。いま高等学校までの考え方で、なぜ高等学校だけを別に格差をつけなければならないのかというこの考え方は、きょうは時間がないから私は別の機会に議論をしたいと思うのです。  大体昔の給与の三本立てができたころは、中等学校の先生と小学校の先生という格差があった。それがやや同じに近づいたので、それだけの格差をほしいということが大きな理由だったわけです。しかし、いまの免許法の制度からいっても、昔の小学校の教員と中等学校教員の学歴差というものはないわけです。同じ条件でいま免許状をとっている、大学卒で。そうして学校の行き先によって格差をつけなければならないという考え方を本気になって文部省が持っているとすれば、いまのように小学校の教員が一番足りない、その次は中学校の教員が足りない、そうして高等学校のほうはまだそれほどでもないという現象がますます大きくなってくる。こんな点を落ちついて検討してもらいたいと思うのです。  もう一つだけ伺いたい。これはむしろ大臣に伺いたいのです。いまの三本立てについての考え方も一言伺っておいたほうが将来のためにいいと思いますから。その点と、もう一つは、この超過勤務についてですね、先ほどの質問にもありましたように、将来教特法がどうなったら検討いたしますというようなことを答えておりました。私が聞きたいのは、将来どうこうするという議論じゃなしに、現行法でいまの法律制度の中で時間外勤務があった事実に対して払うべきか払うべきでないか、どちらの態度文部省がとっているか、はっきり伺いたい、こういうことです。
  245. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 超過勤務の実態があります場合に、これは無視できないことであろうと思う。それに対しまして、文部省としましては御承知のとおりの措置を考えたのであります。その措置が遺憾ながら前国会において不成立に終わったわけでありますから、これをどう措置しようかというのが現在の私どもの一つの課題でございます。超過勤務というものに対しまして何らかの措置をしなければならぬという考え方のもとに立っていろいろ検討しておることでありますので、そういうふうにひとつこの際は御了承を願いたいと思うのです。
  246. 鈴木力

    ○鈴木力君 私が聞いているのは、そうむずかしいことを聞いてるのじゃないですよ。将来どういうことをどうするという議論じゃなしに、いまの法律制度で時間外勤務という事実があった場合に、払うべきであるという態度をとっているのか、いまの法律制度上では払うべきでないという態度をとっておるのか、どちらかということを聞いておるわけです。これは人事院の総裁にもお伺いしたい。
  247. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) いまの制度のもとにおきましては、超過勤務を命じておるということでありますれば、これは払うべきであるという結論が出ようかと思うのであります。しかし、それに相応するだけの措置がとられておらないわけであります。この問題についてはなおひとつ検討さしていただきたい、こういうことであります。
  248. 鈴木力

    ○鈴木力君 人事院総裁に人事院の見解を伺っておきます。
  249. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) これは十分鈴木委員承知のとおり、私のほうでは昭和三十九年に国会及び内閣に出しました報告書の中でそのことをうたっておるわけであります。現行制度のもとに立つ限り、正規の時間外勤務に対してはこれに応ずる超過勤務手当を支給する措置が講ぜらるべきは当然であると、この点ははっきりしております。
  250. 鈴木力

    ○鈴木力君 そこで、あとは大体わかったのですが、これははっきりしておきたいと思うのですが、あとで議論になる。ただ、いま大臣が、命じておるという事実があれば、ということなんですけれども、これは労働基準法の解釈の問題で、命じた場合と命じない場合というのがどういう効果があるかということは、これは解釈があるはずですから……。これは時間がありませんからここではやりませんけれども、少なくとも現行の法律制度の上では、超過勤務、文部大臣は命じておるという事実があればということなんですけれども、私は事実があるということなんですけれども、そういう場合には支払うのがたてまえである、そういうことだけは明らかになったわけですが、今後の措置というのは私は別問題だ。現行法上のところを措置をして、その上に改善すべきものはどうするかという議論でないと、違った次元のものを一緒にして議論をされるということは、これはどうも世間を迷わせるものですからはっきりしていきたい、こう思います。  どうも時間がなくて、もう少し親切な御答弁をいただきたい点もありますけれども、それはあとに回しますが、総裁にもう少し伺いたいのは、いろいろさっき文部省からも申し入れがあって、きょうは文教ですから、主として教育関係の職員について伺いたいのですけれども、いろいろによく配慮をされていらっしゃると思う。ただし、私は、これを人事院に対して申し入れがあったから配慮しているというふうな言い方でなしに、人事院という主体的な立場でのいろいろ教育職員という職種の給与に対する配慮をされていると、こう思います。いまそういう点で配慮されているのはどういうことがありますか。これは幾らで、どう勧告するとかしないとかいうふうなことを聞いているのではありません。ただ人事院としてこの点は配慮しなければならないということで、検討なら検討している点があれば、それを承りたいと思います。
  251. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 大体の心がまえの程度で申し上げることができると思います。要するに、先ほど申しましたように、いろいろ御要望が錯綜しておりまして、それをとても全部かなえようとしても絶対不可能なことでありまして、われわれ基本的にどういう立場で臨んできておるかということで包括しなければならないと思います。これは従来の勧告でも、大体われわれのこの方面に対する心がまえは御察知いただけると思うわけであります。たとえば教育職の場合でいえば、普通ならば官民の格差をとらえて、民間のほうがたいてい高い。それに公務員側を追っかけて合わせるということであるわけでありますけれども、これは御承知のとおり、教育職の関係では実は逆になっていて、民間のほうが低くて、国立の学校のほうが高くなっている。それにもかかわらず、これらの方々を、職務の重要性ということからできるだけの手当てをしてまいったわけであります。今後もそういう気持ちを持ち続けて、問題に臨んでまいりたい、こういう気持ちでございます。
  252. 鈴木力

    ○鈴木力君 どうもその精神論をお伺いすると、そのとおりだと思うのですが、具体的に、たとえば初任給なら初任給、現在の教育職員の初任給は、公労協の職員、その初任給と比べても私どもが見るならば非常に低い。そうすると、そういうような状態に、これは一般の行政職の初任給も同じようなことが言えると思うけれども、そういう点について、人事院はいま配慮しているのかしていないのか、少なくとも私はやはり人事院としては、せめて公労協より下回るというような初任給は勧告をしないのじゃないかと思いますけれども一、そういう点の見解をお聞きしたい。  それからあと、いろいろ教育職員の給与体系上からいいますと、私どもから見るならば、ずいぶんいろいろな矛盾がたくさんあるのじゃないか。たとえていえば、先ほども文部省側のほうでも申し入れをした、要望したという話でありましたけれども、住宅手当と通勤手当との矛盾、下宿している者には手当が出ないで、遠くから通勤している者について手当がある、下宿している人は非常に不満だというようなそういう矛盾、これも教育職だけの問題ではありません。一般の行政職の関係にもある。  それから、給与表を見ますと、特に一等級から三等級までしかない。そうして一等級は管理職だ。二等級は普通の教員。ところが、小・中の人事問題については、福岡県は蒸し返しませんけれども、そう単純にこの給与体系と、校長なり教頭なり教諭なりというのが、給与体系と合うような人事行政というのが事実上行なわれていないわけです。そういう点を合わせるためには、やっぱり教育職員の人事行政とマッチしたような給与表というのが必要だ。  だから、抜本的に直していくまでには非常に作業がむずかしいとすれば、とりあえず渡りの制度考えて、そうして何年かたったら教育職員だけが、たとえば十年なら十年勤務してみると、教育職員だけが取り残されておるというような状態はさしあたりでも救済すべきではないか。そういうような点について、人事院はどういうふうに検討をされているか。あるいは制度上に欠陥があるとすれば、どういう欠陥があるのか。それらの点もひとつ明らかにしてもらいたい、こう思う。
  253. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 私どもの作業はこれからいよいよ胸つき八丁にさしかかろうというところでございまして、別にまだ具体的な腹案ができておるわけではありません。これから大いに勉強しようという段階であるということを申し上げざるを得ないのであります。ただ、つまみ食いのようなことになってたいへん恐縮でございますけれども、最初にお触れになりましたこの初任給の問題、これは教員の方々もそうでありますけれども、一般行政職その他すべての一般職の職員に通じてのやはり大きな問題点としての意味を持っておると思います。現にことしあたりも、公務員試験の応募者が昨年に比べ六%も減ってきている。せっかく合格した人が、合格はしながら役所のほうにはお入りにならないで、みすみす民間の会社のほうに流れていらっしゃるというふうに、われわれ人事院としてそういう面の責任も持っておるものでありますから、これはなかなかそういう点からゆるがせにできない問題だという気持ちを持って臨んでおるわけであります。したがいまして、これは毎年のことではありますけれども、ことしは特に民間の初任給が非常に大幅に上がったという、これは一般の報道にも出ておりますが、よほど腰をすえて取りかからにゃなるまいという気持ちを持っております。それに関連して、やはり教育職の方々も同じような心がまえで臨まなきゃならない、そういう気持ちを持っておるわけであります。
  254. 鈴木力

    ○鈴木力君 もう一つだけ。いまの点で、私が申し上げた意味は、たとえばさっきの給与体系の問題なんかについても、どうもやっぱり地方公務員が大部分である教育職と、それから人事院が担当しておるいまのたてまえからいうと、何かやっぱり地方公務員である教育職の実情にはなかなかいまの制度上では合っていかないんじゃないかという感じがする。こういう点については、しかし、私はやっぱりさっきの超過勤務にしても、人事院としては、特に教育職の場合には地方公務員も基準とするということになっておるわけですから、相当な腹をすえて、地方公務員であっても配慮しながら給与のあり方を検討していくべきではないか、こういう考え方を持っておるので、そういう考えがないかということを実は伺いたかった。
  255. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) おっしゃるとおりなんでございまして、特に義務教育学校の先生方はもうほとんど全部が地方公務員の先生方である。国立の付属中小学校の先生といったら、ほんとうに小指のつめの先ぐらいしかいらっしゃらないわけで、私どもが実はお預かりしているのはそういう方々をお預かりしているので、そういう各地方にいらっしゃる膨大な地方公務員である先生方のことは実は管轄外になっておるというところに問題のネックがあると思うんです。われわれとして、そういう地方の面にまでもしゃしゃり出て調査をするというようなことも、これもまたいかがかと思います。したがって、そういう矛盾を常に感じながらやっておることは事実であります。  しかし、現実は、いまおっしゃったように、やはり地方公務員の先生方は準じて扱われるということになりますから、それをもちろん無視して全然無関心で作業をやっているというわけでもない。まあ非常に割り切れない立場にはありますけれども、その現実はわきまえながらわれわれは作業に臨んでおるということに尽きると思います。
  256. 鈴木力

    ○鈴木力君 まあ法律制度を直してどうこうというわけにも急にはまいらない問題ですけれども、そっちの問題もやっぱり私どもはこれは基本的にさらに検討しなきゃいけない問題もあろうと思うんですけれども、しかし、それを抜きにして、現実に、いま総裁がおっしゃったように、現実にはもう人事院が決定権を持っているみたいな給与体系については、そういう事実については、これは形式的に管轄にあるないというような議論で、働いている教育職員を泣かしてしまうようなことがないような配慮というのは絶対に必要だと、そういうことをさらにこれは要望を申し上げておきたい。たぶんまた時間だということになると思いますから、いろいろいままでお伺いしましたことでも……。しかし、何といってもこの公務員の給与問題については、私はさっき文部省にも申し上げましたように、いい悪いは別としても、人事院が勧告をしたものそれ自体、われわれはいままでになるほど満足すべきような勧告を受けたという記憶はあまりないのですけれども、それさえもが尊重したという名目で、事実上は尊重されていない。数カ月分というのが、もう支払われるべきものが支払われていないのですから。ですから、私はいつか申し上げたことがあるように、給与は矩形の縦と横だ、実施期日とそれから値上げの幅というのは縦と横なんだ、縦と横を掛けたのが面積であって、それが給与なんですから。それを縦を減らしておいて、横は尊重しましたからなんという言い方を、もう何年も何年も続けられておるわけなんです。これではどうにもならないと思うのでして、それが基本的ないまの問題じゃなかろうか。そういう立場で、これは人事院の総裁と文部大臣と総務長官にお伺いいたしたいのです。  これはしかし、実際は私がいま申し上げたような状態であるというのは、人事院の存在の意味というところまでほんとうは議論すべき問題ではなかろうかと思っておるのです。その勧告というのが、政府は義務があるとかないとかというような議論がいつの間にか発展をしてきて、そうして値切っても差しつかえないのだという習慣ができてしまった。これは人事院というものの制度上からいえば、まことに権威が失墜しているとさえ言いたいわけです。したがって、ことしも同じようなことをやっておって、また同じことになるというなら、これはもう人事院の存在価値という議論がほんとうに表に出てくると思う。そういう点について、同じことを繰り返さないという立場で、人事院の総裁が、人事院としてどういうことをいま検討されており、どういう決意を持っていらっしゃるかということを、まず伺いたい。  それから、文部大臣には、さっきも大臣からはお伺いしませんでしたけれども、課長さんからもお伺いをしてはっきりしたことは、やっぱり何といっても、まず勧告をされたその月から実施してその金をやるということのほうが、実隊の待遇改善の上からいうと、非常に教育職員におきましても実入りが大きくなるわけですから、数字の上からいっても。だから、それに対しては、やっぱり文部大臣だって人事院に何か文書でものを言ったからそれでいいという態度では、これはほんとう教育職員のことを考えているとは思えない。そこで、文部大臣としては、閣内において、この点については具体的に今後どう努力をしていかれるつもりか。勧告が出てしまってからではおそいので、出る前にひとつ文部大臣の決意のほどを承っておきたい。  それから、総務長官には、やっぱり担当大臣として、さっきあくまで勧告を待って、その勧告を実施する努力をするというのが長官の立場であるということを伺ったんですが、これもやっぱり担当大臣としていままでと同じことを繰り返しておったのでは、同じ結果になる。それをやはり担当大臣である総務長官が、ことしは——ことしはというよりも先に聞きたいのは、礼儀として聞かなくちゃいけないのは、担当大臣としていままで一ぺんも完全に実施したことがないことに対する心境を伺うのが、これは礼儀だと思いますから、第一にその心境を伺って、ことしはどうするのだという、具体的にどういう手だてでやっていくのだということの手だてのほどを具体的にお伺いをしたいと、こう思います。お三人に。
  257. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 手だてというと、これはなかなか——あるいは法律でも改正していただいて、人事院に勧告の強制力をつけていただきたいというようなことまでいきますけれども、そこまでの手だてをおそらくおっしゃっておられぬのだろうと思います。われわれの現在働いておる権限の中で、どういう手だてを考えておるかということにならざるを得ないと思います。  これは御承知のとおりに、われわれとしては命令権も何もありません。政府に対する強制権もありませんから、ただひたすらお願いするほか——お願いを熱心にやらざるを得ないということに、これは手だての面からいけば尽きると思います。それがわれわれの熱情の問題、熱意の問題ということになると思います。そういうつもりで、いままだ勧告の前でありますから、あまり迫力のあるお答えはできませんけれども、勧告のあとになりましたら、もっと迫力のあるようなお答えができると思います。
  258. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 教員の給与の改善につきましては、私どもとしましても重大な関心を持っておるわけであります。先ほど人事院のほうにお願いをした点につきましても、ぜひ御採用願いたいと、このように思っております。  お話のこの人事院の勧告をどう扱うか、これに対してどうするかというお尋ねでございますが、この問題につきましては、文部省立場からいえば、人事院の勧告を完全に実施してほしいということは当然のことであります。しかし、まだ勧告もいただいておらぬことであります。勧告をいただきました上で、政府全体としてこの問題をどうするかということを考えなければならぬ性質の問題だろうと思いますので、さようにひとつ御了承願いたいと思います。希望といたしましては、できるだけ人事院の勧告が実施に移されるようにいたしたいものと、かように念願をいたしております。
  259. 田中龍夫

    国務大臣(田中龍夫君) ただいままだ勧告以前でございますので、非常にデリケートの段階でございます。しかし、人事院が公務員の、なかんずく国家公務員の公平を担当しておられる、その保護公平の機能というものに相対しまして、総理政の人事局は、あるいはは能率の増進なり、あるいはまた綱紀の振粛なり、人事管理の面を扱っておるわけでございますので、かような意味から申しましても、公務員がほんとう国民全体の奉仕者としての専心義務を果たしまするためには、やはりその基本でありまする生活権の擁護、りっぱな家庭を持ち、りっぱな公人としての立場があって初めて、そこにほんとう意味のりっぱな公務員たらしめることができるわけであります。そのために私どもはあくまでもその給与の万全を期して、今後人事院の勧告をあくまでも尊重いたしまして、十全を期してまいりたい、かように覚悟いたしております。
  260. 鈴木力

    ○鈴木力君 くどいようですけれども、どうも私の申し上げている気持ちというものをわかっていただいていないようで、残念なんです。それはね、勧告がまだ出ていませんからなんて、それこそ涼しい顔で返事をしてもらっては困る。私は初めてのことなら、その御返事で、しごくごもっともと聞くんです。もう同じことを繰り返しておるんです。同じことを繰り返しておって、同じ制度の上でいま仕事を進めている段階ですからね、だから私は特に聞いておるんです。  特にこの人事院の総裁に対しては、お願いするばかりだと言うけれども、私はやっぱり人事院というのが、さっきも申し上げたように、これは権威にかかわる問題だと思う。本来からいえば、勧告というのは、これはそのとおり政府が立案をして、国会がそのとおり決定をするというのが、これはルールだと思うんです、へ理屈はともかくとして。もしそれがルールでない、こういうなら、こは法を曲げた抜け道だけを考えている解釈で、それが実施されないで今日まで何年も繰り返してきておるというのは、私は権威にかかわると、こういうことを言っておるんです。公務員にとっては存在の価値というのが疑われれる、ここまでもう来ておるわけです。これはもう二年目や三年目の状態とことしとでは、もう事情が違うと思うんです。だから、いままでのとおり、お願いをすればどうこうというようなだけでは、これはやっぱりまだまだなまぬるいんじゃないか。もっとも形式的にいえば、国会がきめることだからと、そういえばそれまでということになります。しかし、それも、国会もわれわれのほうはそのとおりいいことをやっておるんですけれども、与党のほうがなかなか言うことを聞かないので、人事院総裁に苦労をかけておるんです。そういう場合には、やっぱり総裁がもっと強い決意を持って、いままでと人事院の態度は変わったぞという印象を与えないとこれはならない。そういう意味で何か考えていないかということを伺ったのです。  それから文部大臣と総務長官には、特に総務長官に、私はいままでの実施し得なかった——尊重したなんというのは、にせものなんであって、尊重していなかったのですから、それを繰り返してきたことに対する担当大臣としての心境はどうかという問いに対するお答えは、ついになかった。そこから出発をして、適当になんとかしようと思っておると言いますけれども、私はお二人に同時に申し上げておきたいのは、これは閣議で決定をすることですから、その政府案というのは。その閣僚の一人として、何かよそごとみたいに政府全体としてきめるでしょうというような御返事では、これはほんとうに配下といいますか、所管の職員の身になってものを言っているというふうには、どうしても私は聞き取れない。閣僚の一人として閣議で決定する場合には、職を賭してとかそんなよけいなことを申し上げませんけれども、私ならそう言いたいのでありますが、それらについての閣議に対してどう出るかというような意思表示というのは、こういうところではっきりしておいていただきたい、こう思ってお伺いしておるわけです。さっきの答弁が不満だから、もう一ぺんお答えしていただきたい。
  261. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 先ほど申し上げたとおりでございます。勧告を受けて政府としてこれに対する態度を決定するわけでございます。また、公務員の気持ちから申しますれば、先ほど申し上げましたように、できるだけ勧告の趣旨を実現するように念願をいたしておるということを申したわけでございます。決定するのはどういうことになりますか、いまからかれこれ申し上げることではありませんけれども、政府としてはもちろん勧告の趣旨を尊重するという線だけは、これは守っていかなければならぬことでございます。どのようにきまるかという問題は、やはり文部省だけできめられる問題でもございません。政府全体としてこれに対処していかなければならぬということを申し上げたわけでございます。したがって、そのようにひとつ御了承願いたいと思います。
  262. 田中龍夫

    国務大臣(田中龍夫君) もうあとじきに勧告が出ると思うのでございますので、かりそめにも給与を担当いたしておりまする私の立場で人事院を制肘したり拘束したりというようなことは、あくまでも差し控えなければならぬというようなことから、私は先ほど申し上げたようなことばを使ったわけであります。今後勧告が出ました上におきまして、給与の担当大臣としましては、また公務員の生活権を守るという意味から申しましても、全力を傾注いたしたい、かように考えております。
  263. 小林武

    ○小林武君 一つ一つもう簡単に聞きます。あとから聞きませんから、率直に答えてください。  人事院総裁ね、ぼくは立てば大体同じことを言うのだが、あなた先ほど、お願いするだけだ、こう言うのです。私はお願いするあなたの立場はわからぬことはないのですよ。それから、一生懸命おやりになっていることも認めます。しかし、この人事院の勧告、これは国家公務員のことですよ、実施についていまだかつて一度も完全実施しておらぬ。たとえば、ささやかな要求だと思うのですがね、実施の時期を勧告どおりやれなんということは。このことが実施されないとなったら、私はお願いの問題ではないと思うのです。人事院というものが存在する一体意義があるのかどうかという問題、私は人事院総裁として考え及ばないということはどうしてもわからない。賃金の問題についてはとにかくお願いだけなんだということなら、私はむしろ人事院はその権能をやはり辞退して、労使の団体交渉によってものをきめるというようなことに譲るべきだと思うのですよ。それやらないという条件であなたたちゃっているのだからね。私はそういう点では、お願いだけを毎度繰り返しているという点は、これは納得いかない、どう考えても。  文部大臣も、去年の一〇・二六でもって相当大量にあなた処分者出していることは御存じでしょう。去年一〇・二六を何のためにやったかといったら、実施期間どおりやってくれということじゃないですか。そのことがもう地方公務員の大多数の、今度教職員という場合だけいっても、あなたの所管のものだけのことをいっても、一度もやられたことばない。そうしてしかも、人事院の総裁に言わせれば、これは所管外だ。まあ、ちょっと付録みたいに言ってやるということなんだ。それは、しかし給与の問題等からいえば、当然そんなことは言われないはずだと思うけれども、それは人事院総裁の法どおりの解釈からいえばそういうことになる。いわば人事院の無力にして——無力にしてというとおこるかもしらぬけれども、とにかくあまり力のない人事院のあれさえ保護を受けられないという状況に置かれている教職員、それが賃金に対して文句言ったら、処分のほうだけはまんべんなくやってやるというやり方、こういうことを一体されて、あなたはこれはいいと思っているかどうかということですわ。私は前の剱木文部大臣に一〇・二六直前に質問したときに、いま三号俸ぐらい上げてやらなければ、将来教員になり手がなくなるだろう、これは教育上の重大な問題ですという御答弁だった。ことし皆さん、あなた承知しているだろうと思うのですが、初任給四万一千という大学卒があるわけです。そういう中で、一体教員やっている者の初任給、あなた御存じのとおり、ささやかな人事院勧告も実施されないで、それに対して要求通らぬからといって抗議申し込めば、これに対して処分する。不合理じゃないですか。不合理であるという面と、もう一つは、教育がこれでいいかという問題になるのではないかと思うのです。だから、私は、人事院勧告が出たらそのときひとつということは、もう先ほど来の鈴木委員から言っているように、初めてやるのなら、ぼくらもそうだな、大臣一生懸命だなと思って聞いているかもしれないけれども。カエルの顔でも何とか三度とかいうのだけれども、三度や四度じゃないわけだ。だから、私はそういうものの言い方を聞きたくない。しかも、処分が出ておる。だから、私はそういう意味では、ことし、あなたたち三人の方が——勧告出たらやりますと、二人の方がそうおっしゃる、なら話は少し前進したということになるけれども、そうでなければ、そんないいかげんなことを言ってもらいたくないという気持ちがあるのですよ、いいかげんな話なら。  それから、総理府の総務長官に申し上げたいのだが、私は去年の一〇・二六のこれも直前ですが、そのときは総理府の総務長官はおいでにならなかった、事情で。副長官がおいでになった。このときには、とにかく勧告になったら、私としては全力をあげて勧告どおり実施するように努力したいということを言っておられた。そこで私は、ことしももしできなかったら、これはもういよいよ人事院によるところの人事院の勧告というようなやり方の方式は、労働者にとってはたまらぬ方式だ、実施もされないのに勧告されているようなことになっているのだから。そうならば、あなたはひとつ総理が——ちょうどたしかあのときはアメリカにおいでになっているときだと私は思うのですが、お帰りになったら、とにかくあなたは総理府の責任者としてこの方法をおやめになったらどうですかということを進言してもらえますかどうですかと質問して、答弁してくださいと言ったら、そのように申し上げますと言った。言ったものやら言わぬものやら、こちらはあれですからわからぬわけですけれども、おそらく言っていないと思う。そういうあいまいなことをやってごまかすということは、私はことしはやってもらいたくないと思う。だから、あなたたちお二人の方は——人事院総裁はもうお願いするというよりしかたがない。出たら、勧告したあとは、馬力がかかるという話だ。こういうようなことになると、ことしはどうなるかということになる。  いろいろ話を聞いてみると、学校の校長や教頭なんかも言っているのです。国会でとにかく少しはまともに努力して、討論してもらいたい、また去年のようなことをやられたら困るということは、校長とかなんとかの考え方です。それから教育委員会も、なんとかならぬものかと、こう言う。それから学校の先生だって、何も処分されることを喜んでいる一わけじゃない、これは影響をばく大に受けるわけですから、  そういうことを考えたら、文部大臣は、われわれはけさも一生懸命やっているが、福岡の首切りなんかのときは、きわめてもうそのことについて、よくやったと言ったかどうか知らぬけれども、とにかくやったものはやらしておけと。ところが、そのほかのことについては、どうも私は力が入らないのじゃないかと思うのだが、ことしあたりは、文部大臣は絶対人事院勧告を譲らないくらいのことがあって、それでとにかくまあまあだということになる。私は、しかし、勧告はどんな勧告が出るか知らないのですから、それは満足のいくような勧告かどうかわかりませんけれども、いままでの実例からいえば、少なくともそのくらいの良心的な行動があっていいと私は思う。良心的な行動ということを言いますよ、労働三権取られているのですから。  それで、まず私はお三方にはなはだ、特に私は人事院総裁には非常に酷な言い方をして、立てばろくなことを言わないから、気分悪いかもしれないけれども、私は人事院というもののたてまえからいったら、あなたはそういうことをいま考えるべきだと思う。お考えにならぬかどうか。馬力は少しかかりますよという話じゃないと思う。それから、お二人の方は、その人事院のあり方ということを考えて、ここらで一度ひとつ、勧告どおりに実施できないというならばあらためてものを考えると、これくらいの決断がなくて、私は労働者の賃金なんという問題を考えることが間違いだと思う。それによって労働三権取っておくという考え方が間違いだと思うが、これはどうです。
  264. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 非常に強い御鞭撻を受けたわけであります。私どもとしましても、この人事院勧告をめぐりまして、政府としてその処置については最も慎重にやらなければならぬ。と同時に、この勧告の、これは一般論でございますけれども、完全実施について、関係の教職員、あるいは教職員組合、あるいは教育委員会、それらの方々が重大関心を持っておられることはよく承知いたしております。したがって、先ほども申しましたように、文部省として、いかなる勧告が出てくるか存じませんけれども、その勧告の完全実施ということには極力努力したいと思うのであります。結論といたしましては、私はいいかげんなことを申し上げたくないから申し上げるのであります。政府全体としてこの問題は処理しなければならぬ問題だということを申し上げているわけであります。
  265. 田中龍夫

    国務大臣(田中龍夫君) 真剣な御意見、御意見といたしまして承っておきます。
  266. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) ただいま御激励を——これはいつも御激励を受けているのでありますけれども、力及ばずして、われわれの念願をまだ達せられない。だから、今回はさらに一そうの努力をいたしたいと思います。
  267. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 本件に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。  速記をとめて。   〔速記中止
  268. 中村喜四郎

  269. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 次に、請願の審議を行ないます。第二号岩手県に国立青年家設置に関する請願を議題といたします。  便宜、速記を中止して審査を行ないます。  速記をとめて。   〔速記中止
  270. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 速記を起こして。  ただいま速記を中止して御審査いただきました第二号岩手県に国立青年家設置に関する請願は、保留とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり)
  271. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 御異議ないと認めます。よって、さよう決定いたします。     —————————————
  272. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 次に、継続調査要求についておはかりいたします。  教育文化及び学術に関する調査につきましては、閉会中もなお調査を継続することとし、本件の継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  273. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書の作成及び提出の時期等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  274. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  275. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 次に、委員派遣承認要求に関する件についておはかりいたします。  教育文化及び学術に関する調査のため、今期国会閉会後委員派遣を行ないたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  276. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 御異議ないと認めます。  つきましては、派遣委員の人選、派遣地、派遣期間等は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  277. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、議長に提出する委員派遣要求書の作成につきましても、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  278. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十一分散会      —————・—————