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1968-11-19 第59回国会 参議院 大蔵委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年十一月十九日(火曜日)    午前十時五十四分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     理 事         植木 光教君                 大竹平八郎君                 戸田 菊雄君                 中尾 辰義君                 片山 武夫君     委 員         青木 一男君                 亀井 善彰君                 小林  章君                 中山 太郎君                 矢野  登君                 木村禧八郎君                 佐野 芳雄君                 田中寿美子君                 横川 正市君                 渡辺  武君    国務大臣        大 蔵 大 臣  水田三喜男君    事務局側        常任委員会専門        員        坂入長太郎君    説明員        人事院総裁    佐藤 達夫君        警察庁刑事局保        安部保安課長   小野島嗣男君        経済企画庁国民        生活局長     八塚 陽介君        法務省民事局参        事官       貞塚 克巳君        大蔵政務次官   二木 謙吾君        大蔵省主計局次        長        相沢 英之君        大蔵省主税局長  吉國 二郎君        大蔵省銀行局長  澄田  智君        国税庁長官    亀徳 正之君        労働省労働基準        局賃金部長    小鴨 光男君        建設省道路局長  蓑輪健二郎君    参考人        中小企業信用保        険公庫総裁    長村 貞一君        中小企業信用保        険公庫理事    菅 博太郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○租税及び金融等に関する調査  (当面の租税及び財政政策に関する件)  (年末の金融対策及び中小企業信用保証の確  保に関する件)  (国税の不服審査に関する件)  (物価見通しとその対策に関する件)  (道路整備五ケ年計画揮発油税等の引き上げ  問題に関する件) ○派遣委員の報告に関する件     —————————————   〔理事大竹平八郎委員長席に着く〕
  2. 大竹平八郎

    理事大竹平八郎君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  租税及び金融等に関する調査のため、中小企業信用保険公庫総裁長村貞一君及び同理事菅博太郎君から意見の聴取をいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大竹平八郎

    理事大竹平八郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 大竹平八郎

    理事大竹平八郎君) 租税及び金融等に関する調査を議題といたします。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  5. 横川正市

    横川正市君 予算編成が、おおよそ各省から出そろい、最終決定を年内か年明けかという時期を迎えて、財源の問題で、現行法によっての見通しの問題と、それから、不合理と思われる点の改正等も含めて、将来の見通し等について二、三お聞きをいたしたいわけであります。  まず、過去大体十年間ぐらいの政府見通しとしての成長計画をずっと資料によって見ますと、総合開発構想が二十九年九月に出されて、二十七年から四十年まで大体経済成長目標が三・五%、この計画策定から大体さかのぼって五年間の成長実績というのが一一・八%、実際の一年間の成長率が九・二%と、成長率経済目標よりも大きく上回っているという実績があるわけです。新長期経済計画三十二年の十二月の策定、それから、国民所得倍増計画三十五年の十二月の策定中期経済計画四十年一月の策定経済社会発展計画四十二年三月の策定、これを大体見てみますと、十年間平均して大体実績から比べて四%強いつでも下がっているという状況が出てきているわけであります。これは歳出硬直化という問題を私どもは常に耳にいたしますけれども、一面、低く見積もった政府計画設定からくるいわゆる歳入問題に大きな手違いが生じておるんじゃないだろうか。これは将来の問題にも関係するわけですが、低目に見ておこうということについては健全性があるようですが、実際には、いまいわれているように、この成長経済の中の民間投資公共投資との大きなアンバランスが生じて、そのアンバランスがことにひどいのは都市周辺の、いわば近県における過密化されていく都市などには顕著な見方が出てきておるわけです。このことは、一面、非常に私はおそまきながら、手厚い対策が立てられておれば、ある程度不自由しておっても将来の見通しというものが立つと思うのですけれども、いまのままにしておきますと、これはもう抜き差しならない状態になろうかと思われる現状を私どもやはり非常に重要視するわけなんです。そういう点も一面あるわけですが、大体この成長経済に対する実際の見通し等から見て、ことしの予算編成基準ですね、これは一体どの程度に見ておられるのか、まずお聞きをいたしたいと思います。
  6. 二木謙吾

    説明員二木謙吾君) 御承知のとおりに、昨年度財政硬直化もございまして、皆さん御存じのとおりに、総合予算制度を実施いたした次第でございますが、しかし、日本経済成長はだんだんよくなりまして、貿易も伸長いたし、また、企業も順調な伸びをいたしておりまして、来年度税収については相当私ども伸びがあろうかと考えておる次第でございます。しかし、この経済成長をやはり野放しにするというわけにはまいりませんから、来年度予算編成にあたりましても、私どもは警戒的な、俗なことばで申しますると、中型予算編成をしていこうということと、同時に、また、財政体質改善意味からいたしましても、総合予算を堅持する考えでございます。
  7. 横川正市

    横川正市君 それは、ここでちょっと新聞のあれがあるのですけれども経済企画庁短期パイロットモデルでは一二・九%、日本勧業銀行では一五・二%、三菱一五・六%、通産省が一六%、日本経済研究センターでは一八・四%等と、大体現状のままでいっても相当な経済成長率というものは見込まれるということになっているわけですが、いわゆる歳出硬直化ということを理由にして非常に低く見た結果、歳入面で手当てすればできるものをもしないような、そういうことではなしに、実際上は計画と実質というものは、大きな差が従前の十年の例と同じように出るのじゃないかということを私たちは思うわけですが、そういう計画実績とについてはどんな見通しを持っているのかということをお聞きをいたしているわけでございます。どうぞ事務当局で答えてください。
  8. 吉國二郎

    説明員吉國二郎君) ただいま御指摘がございましたように、従来の長期計画が、過去にさかのぼってみますと非常に実績とずれたということは事実でございます。そのために歳入見積もり等が少なくて、結果として非常に大きく歳出を制約したのではないかという御趣旨だと思うのですが、御承知のとおり、長期計画はございますけれども、毎年の経済見通しは、その前年にそれぞれ長期計画とは別に、実績に基づいて立てられているわけでございます。歳入についても、確かに仰せのように、経済見通しが単年度でも狂いまして、自然増収が期中よりもたくさん出た例は三十五、六年ごろには確かにございます。ただ、翌年度租税収入見込みます場合には、その当年度中にあらわれてまいりました期中の自然増収を含めた当年度実績見込みをもとにいたしますので、実際上は長期計画が非常にずれておりますけれども、単年度としてはその年その年にそれを修正しておりますし、土台を修正いたしまして、翌年度経済成長係数使用する場合には、そのときに策定された翌年度長期計画とは違った経済係数を使っているわけでございますから、御指摘のあったように、長期計画実績とのズレほど大きな歳入見込みズレというものは生じていなかったということは言えると思います。ただ、ことしにつきましても、すでに当初見積もっておりました経済成長数字と、御指摘のように、非常に狂っております。これは全くある意味では予想できなかった事態だと思いますが、そのために本年度中にもまた期中の自然増収が出る可能性は、これはもう確かにございます。しかし、来年度税収見積もります場合には、このことしの期中の自然増収をしっかりつかみまして、ことしの課税実績予算よりも実際上上回ったところで見まして、それに対して来年度経済成長伸びをかけてまいりますから、その点は修正が十分行なわれると思います。ただ、来年度経済見通しとして使用いたしますのは、やはり政府見通しでございます企画庁の数字を使います。これが来年度どう適正に見積もられるかということを待って私ども動くわけでございますので、現在の段階では、実はまだ経済見通しは固まっておりませんので、いまたとえばことし自体の実績も、もう少し時間をかしていただかないと策定できないという状況にあるわけでございます。
  9. 横川正市

    横川正市君 これは私は何も実績から飛躍的に政策を論議しようとは思わないのですけれども、いまの貨幣価値の推移からいってみても、先に金を使うか、あとに金を使うかという問題がまず政策点に出てくるのじゃないかと思うのですよ。いまのままでいけば、一年以上おくれ、三年以上おくれの、いわば修正といいますか、そういうかっこうで金が使われているので、実際には私はもう少し成長の率というものを見越して、その成長率にある程度やや低目という歳出というものが計画の中にあっていいのではないか、そういうことを考えておるわけなので、実績から修正されてきておることは当然でしょうが、その修正ということは、いわば金持ちの金の使い方ではなしに、貧乏人の金の使い方で、実際には効率的な金の使い方にはなっていないのじゃないだろうかと、そういう点がいままでの中にたくさん出てきておるように思うのです。  一つは、近郊の都市対策の問題とこれは関連して考えていただきたいのですが、たとえば近県のいま問題になっておる交通難とか住宅難とか騒音とか、ばい煙、あるいは火災予防、上下水道、教育施設、公園、保健、社会保障、そういった非常に立ちおくれた問題をこの年次計画で先に先にと手を打つのか、それとも、おくれっぱなしにおくれてしまって、やむを得ない時期になってからやむなくこの対策を立てるという、そういう行き方をするのかは、おそらく来年のこの歳出の中では一番大きな問題になるのじゃないかと思うのですね。そういうようなところに一体どの程度の金を振り向けられると実際上来年度予算編成の前に考えておられるのか。こういう問題にぶつかってきますと、必然的に私のほうでは、歳出についての硬直化よりか、歳入についてもっと検討される必要が出てくるのじゃないかということを考えるわけで、そういう面からは一体どういう対策を持って、それから、それに対してどんな歳入についての見通しを立てておられるのか、その両者合わせた点は一体どうでしょう。これはちょっと別なものかわかりませんけれども、まあ金を集めるほうですから、使うほうの人がいないと、ちょっと返事に困るかもわかりませんけれども、お聞きしたいと思います。
  10. 吉國二郎

    説明員吉國二郎君) 実は主計当局からまだ政府委員が参っておりませんので、歳入の面だけで申し上げたいと思いますが、御承知のとおり、毎年の予算編成の際に基礎になります自然増収の計算は、できるだけ当年度実績ベースがつかめる時期——できるだけ実績に近いものをつかみまして、それに対して来年の最も適切と認められる経済成長率を適用して考えていくというのが筋道でございます。そのためにいつもおしかりを受けるのでございますが、ちょうどいまごろ国会で御質問を受けますと、いつもまだきまりませんと申し上げるのは、最適な結果をつかんでからということを考えておるわけでございます。一番見積もりをいたします場合に大きな要素になりますのは、いままでにはすでにもう実績が九月までは出ております。十月もほぼ出かけておりますが、一番大きな問題は法人税の九月期決算実績でございます。法人税は、御承知のとおり、三月、九月の半年決算というものが、いわば歳入上は一番大きなウエートを持ち、一年決算法人は数は多うございますが、いわゆる上場会社というような、法人税の七〇%近くを納める会社はほとんどが半年決算でございます。九月の決算期税収入が、ほぼ年間の法人税収入の二割五分を占めているわけでございます。この内容がはっきりいたしませんと、どうも正確な見積もりはできません。九月の決算は、御承知のとおり、十一月末の申告になっております。決算そのものが十一月の末に総会で決定いたしまして直ちに申告をされるわけでございますが、この実績を待っておりますと十二月半ばになってしまいます。私どもといたしましては、大体主要な法人三百社ぐらい、主税局国税庁の陣容をあげて聞き取りをいたしまして、決算取締役会の前後に固まった数字を把握して、それによってできるだけ早く実績をつかみたい。今後の要素として大きいのは、この九月決算の結果が出てまいります十一月の末の収入実績と、それから十二月のボーナス、それから三月の申告時期における申告実績、これが一番大事でございますが、申告の分はどうしてもこれは予測になります。ボーナスは実際にかなり近い時期でございますので予測がつく。いわば一番確実につかめるのは九月決算でございます。それをつかんだ時期で本年度の期中の自然増収を把握する。それに経済見通しを適用していくわけでございますが、この時期になりますと、ほぼ実績見込みは確実になってくる。たとえば四十二年度で申し上げますと、四十二年度では補正予算で二千九百億の自然増収を見込んだわけでございますが、実績は二千八百八十三億と、ほぼ十六億程度の誤差で済んでいたわけでございます。それだけに、私どもは九月決算を織り込んだ最終見通しはかなり自信を持ってつくれると思うのです。それに対して経済見通し数字をかけていくわけでございますが、これも政府見通しとしていま考えられる最適の見積もりをするわけでございますので、そういう意味では歳入面過小見積もりをする意図とか、あるいは契機というものは全然ないわけでございます。そういう意味ではできるだけ正確に歳入を見積もって、そして歳出要求とぶっつけ合わす。その段階不足歳入をどの程度国債でまかなうか、不足と言ってはいけませんが、公共事業費のどの程度国債でまかなっていくかという国債発行の額の問題、それから、いま論議されております所得税減税、それらをあわせまして全体の計画を立てるという段階が十二月に入って実施されるということだと思っております。
  11. 横川正市

    横川正市君 そこで、個別的な問題になるわけですが、一つは、現行税法上で当然この改正点、新年度これを実施したいと思われている問題を拾ってみますと、たとえば交際費課税強化、それから租税特別措置法の、項目にすると百七十八項目の再検討といいますか、それから、もう一つは、税の中に、都市の自分の土地を売っていなかの土地を買えば耕作面積だけは広くなって課税対象にならないが、実際には働き手を失ったようなところで、それを売らなければ生計が成り立たないから、売って生計に回した場合には課税対象になるというような、いわば税の面は非常に不公平な一面を持っているわけですが、そういうような不公平の一面の修正とか、それから、最近問題になっておりますサラリーマン党結成に伴うサラリーマンに対する減税の要請が強くなっている問題とか、当面、やはり財源をとらえて、それに対して事務的にそれをどうこうするという前に、改正改善を加えなければいけない幾つかの問題があるんじゃないか、こう思います。これは平面的な見方です。それから、もう一つは、歳出硬直化だが、実際には歳入改正点である程度カバーできるんじゃないかという一面をこの面の改善で持っているんじゃないか、こういう二つの面を私思うわけですが、さしあたって、この交際費必要度合いについては、従前のいわば必要説と比べて、最近の経済成長その他から見たいわば基盤強化をされたといわれるようなそういう点から見て、交際費一体現行のとおりでいいかどうかについてどんなお考え方を持っているのか。私は、さきの予算委員会のときに大蔵大臣に、いわばこの不健全支出というものをこれは少なくして、健全財政、あるいは健全予算を組むためのそういう経営その他に当然着目しなければいけないんじゃないかと言ったら、次の予算編成にはぜひそれを実施したいんだという答弁がありました。その答弁の中では、さしあたって交際費課税強化の問題とか、租税特別措置法の再検討とかが中心的なものになるんじゃないかと思うんですが、現状はどのような状態にあるわけですか。
  12. 吉國二郎

    説明員吉國二郎君) 交際費特別措置は来年度期限が到来をいたします。したがいまして、ほうっておきますと従来の損金否認をしていた制度がなくなりますので、交際費が全部損金に算入されてしまうという結果になります。これはまあ特別措置でございましても、一般的に考えてこれは存続すべきものであるという感じのほうが強いと思います。やめっぱなしというわけにはまいりません。少なくとも従来の制度は継続をして、交際費に対する規制というものは存続させなければならぬということは明らかだと思います。  で、御指摘のように、交際費については、これはいわば経済界の中における慣行でございます。交際費使用がどうであるかという問題は、まず経済界が本質的に考えるべき問題だと私は思いますが、最近交際費については商工会議所等でかなりきびしい反省が起こっているように思います。まあこの交際費特別措置と申しまするものは、本来は歳入を目的としたものではないと私は思うのでございまして、交際費の中に、実際上会社経費として認められる以上に、社用的な諸費が混入しているということから、昭和二十九年にそれを是正する意味で一部の否認をいたしました。それが漸次拡大されてまいりまして現在のような姿になったわけでございます。今後これをどの程度に直していくかという点は、現在私どももいろいろ検討中でございまして、昨年の改正で、前年よりも交際費支出が上回った場合には、その上回った分の五%をこえる部分を全額否認するという制度を導入したわけでございます。逆に前年よりも少なくなった場合には、その少なくなった額相当額否認額の中から差し引くと、いわば交際費をむだに使えばそれだけ損、節約すればそれ以上に得という制度を導入したわけでございます。これが実はこの九月決算に最初の結果が出てまいるわけでございます。この結果がどれぐらい交際費の抑制に役立ったかというような実情を見た上で判定をいたしたい。いろいろ制度改正の案はございますけれども、最終的な結論は、その実績をよく判定した上できめていきたい、かように考えております。
  13. 横川正市

    横川正市君 まあこれはいささか政策論になるわけですけれども、まあいまのような弾力的な取り扱い、ことに歳入を担当している側から非常に自主的な相手側考え方にまかせるようなかっこうのもので、相当大きな金がいわば税源としてからは疎外されているという現状ですね。これはもう明らかに歳入のための税の根源だと私どもは思うわけですけれども、しかし、そのことは日本経済の動向から見て、税として取るより以上に、他に振り向けられた成長の中から得られる税のほうに期待をかけているそういう制度があることについて、私どもは全く否定するわけじゃないが、一体交際費というものがそういう善意の解釈で実際上動いているものだろうかどうか。いろんな面で私は思うのは、最近過密化された都市なんかで、たくさんの給与所得者はもう窒息しそうになって地方に出て行きますね。そうするとレジャーのいわば施設というものが民間で大幅に開発をされているわけです。そこで相当な経費をかけて一日とか二日の行楽をして帰るといういわば形態になっておりますね。それから、一面では、これは一体交際費という、そういう善意に許容されている範囲を逸脱した飲食もあるだろう、遊興もあるだろう、しかし、おしなべて、そういう善意に鶏口して交際費というものが大幅に浪費されている傾向というものを見のがすわけにはいかないんじゃないか。だから、やはりこれは浪費の面のいわば徴税追跡といいますか、そういったことが行なわれるのが当然なんであって、そのことを野放しにされているところに一つ問題があるんじゃないだろうか、いわゆる財源を求める立場に立って問題があるんじゃないだろうか、その点がおそらくいままでずいぶん指摘された点だと思うんですよ。だから、どの程度善意交際費として非常に有効なものなのか、あるいはこれはそれには該当しないものなのかという点を考えるのに、私は社会の情勢というものを見ていれば一番わかると思うんですよ。たとえば銀座のどまん中に大きな建物ができて、その建物生産に全然関係のない、たとえばすわれば一万円という席があって、そこで飲んだり食ったりすることは一体これはどうなんだろうと、これは日本のように生産第二位の国になって、そして世界的な地位を得たから、すわれば一万円の席があることはあたりまえという国際通念というものがあれば、それは別ですけれども、しかし、そこへ行って使われている状態というものは、一体これは今日の経済成長にプラスになっている消費なのか、それとも、これはある一つ限度があるから、その限度までは使ってもいいんだという既成概念で使われている金なのかという判断は、私はこれは相当厳密に査察する必要のある問題じゃないかと思うんですよ。それならば、一体交際費というものについて使われたある程度の査察のできる許容量額といいますか、そういうことを低目に置いておいて、そしてそれに最も有効にまあ許容された側が実際上使っていくというような、そういうことがなければ私はいまの日本のこのさかしまな社会発展度合いというやつは直っていかないんじゃないかと思うんですよ。これはたとえば私どもは、いまのような東京の発展度合いというものは正常な発展だというふうには全然考えないんですが、たとえば住宅を求めている者には全く住宅が当たらない現状なのに、レジャーとか、あるいは社用のための交際施設というのがどんどんできてくるということは、一体これは均衡のとれたことなのかどうかという点では、決して均衡のとれたものだとは思っていないんです。その点を私はいままでの慣行のようなかっこうで存続させるというような安易さでなく、歳出硬直化しているという事実の中には、たとえば物価上昇を二%程度にとどめるならば、ある程度物価上昇もやむを得ないと思っていても、それが五・五%も六%も上昇するという弊害も一つ出てきますし、いろんな面に悪影響というものが出てくるわけですから、そういう点の私はやはり是正が当面必要なんじゃないか、こう思うんですがね。慣行どおりということなのか、それとも、もう少し今日までの野放しの状態交際費課税の問題については対策を、あるいは改善を考えられようとしているのか、まあ考え方だけひとつお聞きしておきたいと思います。
  14. 吉國二郎

    説明員吉國二郎君) 御指摘がございましたように、私自身といたしましても、いまの交際費使用状況というものが過度にわたっている面もあるということは事実だと思いますし、経済界としてこれに対してもっと厳密な態度をとるべきものであるということも考えられますけれども、御承知のように、法人税というものは法人の利益というものを対象として課税するというのが本質でございます。交際費というものも、もし適正に使われるならば、それを通じてより多くその会社に利益がもたらされるものでなければ、交際費支出はいわば一種の背信行為になるわけでございますので、本来的には、従来の法人税法では一種の経費といたしまして損金算入が原則だったわけでございます。しかし、その損金算入されている交際費の中に、そういう意味の販売促進、あるいは利益の増進の裏づけのないものもあるんではないか、いわゆる社用族というものが横行しておるというところから、最初二割程度のものを否認をする、そしてこれに対しては必要経費と認めない、一種の利益をむだ使いしているということは利益処分に相当するものとして課税するという体制をとったわけでございます。その後、その度合いがいろいろ激しくなってくるというのにつれて課税強化いたしまして、現在では五〇%に達したわけでございます。しかし、実際問題としてそれじゃどれぐらいなものが適正なのかということは、会社ごとに違いますし、業種ごとにも違いますし、その適正というのは、あくまでも実は企業のプラス、マイナスの最後のしりを考えた判断でございます。これを税制でどれぐらいは使っていい、どれぐらいはいかぬのだということをやるのは、これは本筋からはちょっと違うと思う。そこで、いまのところ五〇%という線がございますが、かつては業種別に基準を考えてやったこともございますけれども、まさに交際費というものはその会社の販売政策によって非常に違いますので、同じ業種でも、非常に多く使うところと少ないところがあるというようなことで、とても執行できないということで現在のように一律五〇%にしたわけでございます。また、御指摘のように、社用経費といっちゃ適切でないかもしれませんが、おっしゃったような非常に高額な消費というものをもし直接に対象にしようとすれば、現在の料理飲食等消費税のような形で直接これに対して課税していく方法が考えられると思います。よりこれを強化するということも考えられるのではないかと思いますが、法人税としての基本的なたてまえから申しますと、この交際費について現在やっております制度というのは、交際費が本来損金であるものを否認をするという制度であるだけに、私は、これは相当に現在でもきつい制度だと思います。また、それでいいと思うのでありますけれども、それをさらにどの程度修正したらいいかという点は、これはまあいろいろ政策判断もあると思いますので、十分に検討してまいりたい、かように考えております。
  15. 横川正市

    横川正市君 何か時間の制限があるようですが、これはもう一面では交際費強化に最も強く反対をしているのだと報ぜられている、たとえば建設業界などというようなところがあるわけですね。建設業界の交際費というのは、これは言ってみれば犯罪につながるのじゃないでしょうか。ひどいところになると、金をやればあれだから、電気冷蔵庫を二つも持っているというようなお役人さんのあれが出てきたり、それから中元と、それからあれでいきますと、もう甘味品や何か余っちゃって、二割引きか三割引きでまた店に持ってもらうというようなかっこうのものはある程度許容できるにしても、それよりもちょっと許容されたものということになれば、これはやはり相手側の気持ちを動かさせるためのものである場合には、やっぱりそういう性質のものだと思うのですよ。そういうところが一番交際費課税強化に反対をしていて、それがまあ国会の中でまかり通ったというところに、私はこの交際費の体質的なものがあるのじゃないかと思うのですよ。もっとこう善意交際費というのは置いてあるのだから、その善意で使われることが望ましいけれども、実は交際費があるということは、そういう非常に強い一面というものを持っておって要求をされ、国会に対する圧力になって出てきている、そんな点をとらえてみてものを考えるべきなんじゃないかというように思うのですがね。片や自分の労働を売って一家を構成しているサラリーマンというのは、全くもう一文の隠し看板なしに実際上課税対象としてやられているわけですね。だから、この企画の面から見ても、私はこれは当然もっときびしく強化すべきなんじゃないだろうか。もしそれでなければ、全部所得なんですから、所得ならば勤労所得であろうと事業所得であろうと法人所得であろうと、所得についてのものの考え方というものは変わらないと思うんですよ。ただ、それが将来どういうふうに発展する要素というものを持っておるかというところに徴税の一つの弾力性があると思う。それを飲んだり食ったりしたのだからまけてやるのだということにとどめておくということはあまり歓迎すべき制度じゃないんじゃないか、こう思います。これは推移をひとつ見てからにしたいと思うんですが。  次の、貿易のための基盤強化を主として持たれている、あるいは生産意欲をある程度意欲的に高めるためということでおそらくつくられたと思われるこの租税特別措置法の再検討の問題については一体どうなんですか。基盤強化された段階で、ある一部の財界の人たちには、たとえば貿易自由化は賛成であると、日本企業はもうすでに国際自由競争に十分たえられるんだと、こういう一面が出ている時期に、いまなお基盤強化のための租税特別措置法というものを現存どおりに置いておく必要があるのかどうか、こういう一面が出てきていると思うんですが、この取り扱いはどういうふうになさっていますか。
  16. 吉國二郎

    説明員吉國二郎君) 租税特別措置は、御指摘のように、一括して考えられない面がございます。正確に申しますと百三十幾つか、その中には中小企業体質改善をはかるもの、あるいは協同組合の特殊性によるもの等がいろいろございます。で、したがいまして、特別措置についてはそれぞれの持っております意味を明らかにいたしまして、それが目的を達成しているかどうかというのを一つ一つ洗ってみる必要があるわけでございます。従来から特別措置については、とかくこれが慢性化するということで、実態に沿わないものが残るおそれがある、常に洗い直さなければいけないということを私どもも考えておりましたし、税制調査会等もこれを指摘しているわけであります。とかくなかなか洗い直しがむずかしいという面がございますので、現在では特別措置を新たに認める際には、必ず期限を付しております。期限がございますと、その期限に洗い直しをしなければならないことになる。ほうっておけばなくなるわけでございますから、そのときにまだもう少し存続をする必要がある、もう十分であるということを洗い直しておくということで、現在では大体ほとんどの特別措置が二年ないし三年の期限がついております。毎年洗い直しの時期がまいるわけでございます。で、来年度は大体三十八洗い直しの特別措置がございます。これにつきましては関係各省等とも折衝いたしながら、不必要になっているものは整理の方向に持っていくわけですが、かたがた、片方ではまた新たな面から特別措置要求もございます。それらを考えあわせながら、私どもとしては、少なくとも特別措置の総額がふえていくというようなことはしたくないということで、新旧のものを十分に洗って検討してまいりたい、かように考えております。
  17. 横川正市

    横川正市君 あと一、二問で終わりたいと思うのですが、いま言った特別措置の中の中小企業とか農業とかというところでもっての自由化にたえられないような体質を持っておる自由化品目については、緩慢な線で逐次自由化品目をふやしていこうという、そういう形態をとっているわけですね。そういうふうな、逐次自由化品目をふやそうということは、国内的にいえば自由化にたえられないような中小企業とか農業とかいうものにどういう対策を立てて、自由化されたときに十分たえられるだけの体質に変えていくかという政策がなければ、これは当然緩慢なものであってもあとに送られることだろうと思うのでありますが、そういう中小企業や農業に対するいわゆる体質問題を考えての税制の改正については何か手がけているものがあるわけですか。
  18. 吉國二郎

    説明員吉國二郎君) たとえばこの典型的な例といたしましては、昨年の改正中小企業近代化促進法の指定業種についての割り増し償却の制度をさらに一部拡大をいたしまして、構造改善計画に基づいて全体の当該業種の体質改善をはかるという制度をとったところに対しては、より多く割り増し償却を認めるという制度を新たに始めました。そういったような体質強化一つ制度を持ったところに対して、それを支持するための特別措置という政策が考えられたわけでございます。それから、中小企業構造改善準備金というものが、これはいま申し上げたほど、大きな、業界全体にわたるものではございませんが、構造改善をはかるための準備金というものを設けております。したがって、そういう措置が現在かなり充実してきていると考えておりますが、また新しい事態が起こってくれば前の措置が不十分なところを直すことも必要でございましょうし、あるいは前の措置にかえて、新しい措置、より具体的な措置にかえるということも考えられると思いますが、それらをあわせて、今度の三十幾つの措置とあわせて、新規に必要なものともすべて並べた上で検討していきたいと思っております。
  19. 横川正市

    横川正市君 これは事実上全くの零細企業などで設備投資をすれば、これは税の一つ対象としていつでもいじめられるから、ほんとうはもう直したいのだけれども、しゃくにさわるから直さないというような企業なんかもあるわけで、実際には近代化促進法その他がどういう有効な法律として運用されているかということとあわせて、これはどうせ新しい大臣がきまった時点で、あるいは予算編成の時点で論議していきたいと思うのです。その中で、たとえば国税不服審判所とか、それから、これは関連があるのですが、徴税に当たっている職員の一人頭徴税額なんというのが新聞でちょっと報道されておりますが、これは一つノルマが与えられて、いわば強引な徴税を行なっているのじゃないだろうかという、印象でなくて、実際があるのじゃないかと思うのですよ。あるところへ行きますとたいした税務署からの脅威を受けておらない、たとえば税理士だとか公認会計士などによって処理されている、あるいはそうでない零細なところへいくと一年に一回なり二回なり立ち入りをして徴税をやっているということで、なるほど帳簿その他の不備の問題もあるわけでございますけれども、そういうことをやれば、一応第三者の手を経て申告をされたり、あるいは徴税事務が行なわれたりするものと、税務職員が直接行なってやる場合と、私はこれはある企業ではまあそのプラスがどのくらいになるか、ある企業では非常に楽になって、そして直接行くところは過酷な徴税になっている点があるのじゃないかという点も考えられるわけで、具体的な一つ例がありますから、これは後刻また論議をしていきたいと思います。  最後に申し上げましたサラリーマン減税といいますか、所得税減税については、一体、まだ額もきまっておらないようですが、どういう考え方でしょうかね、当面のたてまえからして。要求の中には、たとえばサラリーマンのためのいわば交際費だとか必要経費だとかいうようなものも出ているわけですから、そういう具体的なものまで検討されているのかどうか、この際お聞きして、あとはひとつ後に譲りたいと思います。
  20. 吉國二郎

    説明員吉國二郎君) ただいま御質問のございました所得税の問題でございますが、これはこの七月に御承知の税制調査会の「長期税制のあり方についての答申」というのが出まして、この中で所得税については非常に詳しい具体案を示したわけでございます。その一つは、世界的な水準から見ても貯蓄のあり方等から見ても、課税最低限をできるだけ早い機会に夫婦子三人の給与所得世帯に百万円まで持っていくということが適当であるということと、それから、給与所得控除につきましては、現在控除が百十万円で頭打ちになっておりますが、この頭打ちが八十万円まで上がったのが昭和三十二年で、その当時頭打ちで切られるような給与所得者はわずか二%程度しかなかったわけですが、その後所得水準がずっと上がってまいりましたので、この頭打ちを受けている給与所得者が実にすでに二十数%にのぼってきている。それだけ給与所得控除というものは一種の必要控除的なものを持っている。それを三百十万程度まで引き上げる、これによって頭打ちを受ける人員が三十二年当時の二%程度にまで下がるだろうということが第二点でございます。  第三番目は、従来は課税最低限の引き上げということによって、大体所得水準の上昇に伴う負担過重が除去されてまいりましたが、現在百万円をこえる給与収入を持っている者がすでに納税者のうちで三〇%をこえ、五、六百万人ということになってまいりますと、課税最低限をこえて課税所得のある人については非常に税率がきつくなります。課税最低限はどんどん伸びて、税率の適用の幅のほうはもとのとおりでございますので、課税になったら最後、どんどん税率は上がっていってしまうという状況にあるので、これを課税所得四、五百万円程度のところまで緩和をするということが必要だ、この三点を具体的に税率まで添えて答申したわけなんです。これを答申では、財政事情、あるいは国債の発行額の問題等とあわせて、全体の経済の情勢に応じて実施すべきだ、できるだけ早くとは言っておりますけれども、何年間ということを言っておりません。しかし、実際問題といたしましては、この目標がよろしいと言っているわけでございますから、できるだけ早く実現することが望ましいと私どもも思っておりますが、やはりこれは財源状態支出の緊急性の問題、あるいは国債をどの程度の発行にとどめるかという問題と密接に関連をいたして、ある意味では国民の負担自体が国債に一部振りかえられているのが現状でございますので、それをできるだけ適正な水準に押えるということも必要でございますから、それらをにらみ合わせてきめなければならぬということで、私ども、気持ちとしては、この答申をできるだけ早く実行できるような体制にことしまず手をつけたいという気持ちがございますが、これはやはり十二月に入って全体をながめた上で、政策として基本的にきめてかかる問題である、かように思っております。
  21. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 私は、町の金融業者に対する取り締まりの件についてちょっとお伺いをしたいと思います。  その前に、ちょっとただいまの質問に関連しまして、国税庁長官にちょっとお伺いしたいんですが、いまも質問がありましたように、もちろんこれは脱税行為は摘発しなければならぬ、やらなければなりませんけれども、やはりこの税務職員の調査のあり方ということについては、相当行き過ぎもあるんじゃないか、こういうことを耳にするわけでございますが、それで、まあ技術的な面をあなたにお伺いしたいんですけれども、これは税務職員が行って調査しますね、その調査段階が行き過ぎると、今度は捜査みたいになっておる。私が聞きたいのは、この調査と捜査というのはどの辺が異なるのか、その辺のところをひとつお答え願いたい。
  22. 亀徳正之

    説明員(亀徳正之君) ちょっとお尋ねの趣旨がまあわれわれの非常にティピカルな例は、御存じのように、査察事件でありまして、最終的には刑事罰が適用になります。まあこれは先生おっしゃいましたような徹底した捜査的なことまでやりませんといかぬので、きびしくやっております。ただ、一般的に調査段階では、やはり私たちは真実をつかむということに重点を置いておりまして、その真実をつかむ調査のやり方についていろいろ御批判があり、行き過ぎがあるという御批判も受けておりますし、その点は十分私たち注意いたしたいと思いますし、注意いたしておるわけでございますが、ただ、非常にわれわれも税務の全般のむずかしさは、やはり私がいつも言っておることでございますが、まじめに申告しておられる方で、若干の帳簿のつけ間違いとか、それから通達をよく知らないという方々と、それから、やはり意図してはっきりした例は、二重帳簿をつけられるとか、売り上げを隠匿されるとか、あるいは架空仕入れをされるとかいうことで、意図して脱税をしておられる方といかにして見分けるかということが私たちの一番大切なことではないか。いろいろサラリーマンとの比較云々という議論がございますように、私は、やはりそういった意図して脱税されようとしておるところはあくまでも徹底して真実をつかまなければいかぬ。同時に、非常にまじめに申告しようとしておられる方には、私は調査といいましても、指導的な立場に立ちまして処理しなければいけないということを常々注意いたしておるわけでございますが、先生の御質問にお答えになりますかどうか、私はそのように考えております。
  23. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 お答えにならないように思うんですがね。ですから、私がお伺いしたいのは、ただいま長官のおっしゃったこともよくわかるんですけれども、どこまでが調査段階で、それをオーバーするとこれは捜査の段階になる、その辺が聞きたいんです。たとえば税務職員が行って調査をする、それで、そこの家の人からいろいろなことを聞くのは、これは調査であると思いますけれども、黙って上がっていってかってに引き出しをあけて帳面を出してみているとか、あるいはそこの家の人が便所に行くのにも、調査の税務職員がどこに行くんだということでついていくとか、そういうことはどの範疇に入るのか。いつも問題を起こしておるのはそういうところなんですね。非常に行き過ぎがあるので反感を買っておる。私が聞きたいのはその辺のところなんです。ですから、明確にひとつ。
  24. 亀徳正之

    説明員(亀徳正之君) 私もそういう個別の具体的な実例が、そのようなことがあったかどうか承知いたしておりませんが、いま先生がおっしゃったような、いきなり人のうちへ行って何も告げないで上がったり、便所まで追っかけるということが事実だとすれば、やはりそういうことはとるべきではないのでありまして、やはり当然調査官は自分の氏名を述べ、調査にやってきたと、こう言っておだやかに調査を開始すべきものだ、かように考えております。
  25. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それで、調査権は税務職員にありましても、捜査の権限というのは、これはどうなりますか。
  26. 亀徳正之

    説明員(亀徳正之君) やはり捜査の場合には令状をいただかないとできない。
  27. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 けっこうです。  次に、年末を控えまして金融も逼迫してくるわけでありますが、だんだん中小といいますか、ほとんど困った小零細企業の方はどうしても町の金融業者にかけ込む機会が多いのですね。そういうことでまた金融業者で非常に不当な金利をとっているやみの金融、こういうものがだんだんとまたはやってくるのじゃないかと思いますが、取り締まり当局に、最近のそういったような実情、それから、また、それに対する対策はどういうふうになっているのか、その辺のところを聞かしていただきたい。
  28. 小野島嗣男

    説明員小野島嗣男君) 貸し金業者の取り締まりは、主として出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律によりまして警察は取り締まりを行なっているわけでございますが、最近は特に反社会性が強いと思われます中小企業者、サラリーマン、あるいは主婦等の低所得者層に対する高金利事犯、これを中心に、また、悪質な無届けの営業事犯、さらに、取り立てにあたって暴力的な行為を行使いたしまして、特に暴力団等が介入しております事犯につきまして重点的に取り締まりを行なっております。今後年末を控えまして資金需要が活発になりまして、悪質な金融業者が跳梁いたしますおそれもありますので、厳重な取り締まりを行なうよう、全国に指導しておる次第でございます。本年の上半期における出資等取締法違反の検挙状況は百八十六件、百八十六名でございます。これは前年に比較いたしますと六十八件、四十九名の増加になっております。そのうち高金利事犯は九十一件、九十六名、三十六件、二十八名の前年同期に対する増加になっております。無届けの営業事犯は八十五件、七十七名、昨年同期に比べますと三十一件、二十二名の増加になっております。これらの検挙を通じて見ました高金利事犯の実態といたしましては、第一に手数料とか調査料、会員料、あるいは駐車料、交通費、あるいは印紙代など、あらゆる名目で利息を徴収しているものがあるということ。それから、第二に、架空の資金会社を仕立てまして、数人でグループをつくりましてたらい回しにして、媒介手数料の名義で利息と見なされる金額を受け取っているもの。第三に、貸し付けにあたりまして一定の物品を時価の数倍で買い入れることを条件にいたしまして、物品売買の対価を仮装して高金利と見なされる金利を徴収するものなどが見られます。本年上半期中に検挙いたしました高金利事犯のうち、日歩七十銭以上の高金利を取っておったものが全体の一六・四%でございます。警察といたしましては、特に低所得者層を対象とする高金利事犯、暴力的行為に出る事犯、被害者が多数にわたる事犯、こういうものを特に反社会性が強い事犯として、市民保護の立場から積極的に取り締まりを行なっている次第でございます。
  29. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それで、そういった点につきまして地方の警察なんかに聞きますと、保護、取り締まりに盲点もあります関係で、取り締まりようがないという声も聞くわけなんです。それで、ただいまおっしゃいました取り締まりの根拠になる法律は、利息制限法、あるいは出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律、この二つがあるように思うんですが、利息制限法のほうは、元本が十万円未満は年二割である、十万円以上百万円未満が年一割八分、百万円をこえるものが年一割五分、この法律によりますとこれが最高の限度ということになると思うわけなんです。ところが、実際はこれ以上のものを取って零細な業者を困らしておる、その辺のところはこれはどういうふうになっているんですか。
  30. 大竹平八郎

    理事大竹平八郎君) 中尾君にちょっと申し上げます。あなたの御質問ですが、保安課長では答弁のしにくい点もあるので、いま法務省を呼んでおりますから、知っている範囲内でお答え願います。
  31. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 もう一つ。なお、出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律、この第五条には百円につき日歩三十銭、月九分、年十割八分、こうなっておりますね、その辺のところが地方の警察におきましても、どれを一体適用すればいいのかという声もあるので、私は御意見を聞いておるわけです。
  32. 小野島嗣男

    説明員小野島嗣男君) ちょっと御趣旨がはっきりつかめませんのですが、悪質の高利貸し取り締まりにつきましては、昭和二十九年以来、この出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律を十二分に適用し、その他の関係金融法令を十二分に適用して取り締まっております。利息制限法の場合には罰則がございませんで、警察としてはこの罰則の適用ということはないわけでございます。それらの金融関係法令をフルに活用いたしますとともに、その手段が、たとえば暴行、脅迫、あるいは詐欺、横領、背任というような手段によりましてそういった刑罰法令に触れる場合におきましては、刑法その他の関係法令を十二分に活用いたしまして取り締まっております。最近それらの悪質貸し金業者等の中には、非常に手段が巧妙になり、あるいは潜在化いたしまして、新しい脱法手段を講ずるものもございまして、警察といたしましても、これに対処するために捜査の面で一段と努力を要するところでございます。そういう意味で捜査面の充実をはかって取り締まりの徹底を期したいと存じておる次第でございます。
  33. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 これは大蔵当局はどういう見解を持っておりますか。
  34. 澄田智

    説明員(澄田智君) 御質問は利息制限法と出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律の中におきます高金利の処罰の規定、この関係ということと思いますが、法律的な見解は法務省のほうからなお正確に答弁すべき問題であるわけでございますが、私どもとしては、利息制限法の限度というのは、これは本来自由であるべき民法上の契約、消費貸借の契約の内容に高利を制限するという意味で規制を加えておる、こういうようなものであって、最近最高裁の判例等もございましたが、この契約の有効性、あるいは支払った利息の取り扱い等についていろいろ判例が過去にある、こういう問題でございますが、出資のほうの法律の第五条の規定は、これは罰則をもって、この制限をこえる高利を刑事罰の対象とする、こういう趣旨のもので、三年以下の懲役、あるいは三十万円以下の罰金、あるいは両方併科、こういう規定を設けているので、したがって、あくまで取り締まりという点については出資の受入の法律のほうがひとつの大きな根拠になっておる、かように存じております。
  35. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 これは最近の最高裁の判例等が新聞等にも出ておりますがね、この内容は時間がありませんので申し上げませんけれども、御存じでしょう。
  36. 二木謙吾

    説明員二木謙吾君) わかっております。
  37. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 この場合は利息制限法の立法趣旨によって判断を下しているんですね。概略申し上げますというと、小林さんという方が、三十一年五月一日に利息月七分の約束で五十万円を借りた。それから前後二十二回にわたって利息その他遅延損害金として九十五万六千円を支払って、その後、利息制限法の定める制限利率、元金が十万円以上百万円未満の場合、年一割八分で計算した場合、三十二年十二月までにすでにその元金と利息を完済している。債務は消滅していたが、小林さんはこれを知らずに、中村さんの請求に応じて、その後三十四年一月二十六日までに合計二十八万三千七百余円を払った。ところが、中村さんは、三十三年十一月二十六日代物弁済契約によって担保の建物を自分のものとして所有権移転の登記をした、こういうことで訴訟されたわけですけれども、結局これは小林さんのほうの勝ちになった。裁判所の判断は、利息制限法の立法趣旨によって判断した、こういうふうに出ておりますがね。それですから、実際は両方あるわけですけれども、もう一つ私は根拠がはっきりしないわけだけれども、結局、「出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律」、これを適用する、こういうわけですか、この辺のところを。
  38. 小野島嗣男

    説明員小野島嗣男君) 警察の取り締まりといたしましては、ただいまおっしゃった「出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律」の罰則を適用いたしまして取り締まりをやっております。
  39. 大竹平八郎

    理事大竹平八郎君) いま法務省の民事局の貞塚事官その他見えていますから、法務省関係の御質問がありましたらどうぞ。
  40. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 いまあなた私の質問を聞いておられたから答弁してください。
  41. 貞塚克巳

    説明員貞塚克巳君) ただいま御質問の途中で参りましたので、御質問の趣旨を十分に理解してないかと存じますが、一応私からお答え申し上げます。  利息制限法上の制限と出資法上の制限との関係はどうであるかという御趣旨の御質問だと存じますけれども、元来、利息制限法の趣旨、それから、それによります利息の限度というものは、高金利を取り締まり、債務者を保護するという立場から、本来自由であるべき民法上の契約、すなわち、消費貸借契約の内容にある程度の制限を加えたものでございまして、これをこえる場合の民事上の効力が問題になるわけでございまして、それにつきましては、御承知のとおり、最高裁の判例も幾つかございまして、債務者保護の立場で、その内容自体も多少変動はございますが、そういった判例も、民事上の効力として判断しておるわけでございます。一方、これは私ども直接の担当しておる法律ではございませんけれども、出資法上の限度と申しますのは、これを犯罪の立場から考えまして、その限度をこえるものを刑事罰の対象としようという趣旨でございまして、利息制限法上の限度とは目的がやや異なりますので、必ずしも一致はいたしておらない。利息制限法の限度をこえるものが直ちに刑事罰の対象となるというたてまえはとっていないわけでございます。
  42. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 そうしますと、暴力とか横領、そういうものは抜きにいたしまして、普通の貸し借りで借りた場合は、いわば利息制限法というものが適用される、こういうことですか。
  43. 貞塚克巳

    説明員貞塚克巳君) さようでございます。
  44. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 そうしますと、この利息制限法に基づく金利をオーバーしたものは、これは法律違反である、こういうことになるんですね。
  45. 貞塚克巳

    説明員貞塚克巳君) そのとおりでございまして、それを貸し主のほうが請求できるかどうかという問、題になるわけでございます。
  46. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 法律違反ではあるけれども、罰則がない、こういうわけですね。
  47. 貞塚克巳

    説明員貞塚克巳君) さようでございます。
  48. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 まあこういうことでは、これはざる法であって、有名無実である、こういうような感じがするのですが、ただ訓示規定みたいなもので、法としての効力を発揮しないのです。その辺のところがどうもはっきりしていないように思うのです。しかも、私は、新聞を見ますというと、澄田銀行局長は、利息制限法の規定を上回る高利は好ましくないから、この判決は妥当であると思うと、こう出ておるのですが。
  49. 澄田智

    説明員(澄田智君) 新聞の記事は、私のところへ電話がございまして、私、電話があったときには判決の内容をまだ存じておりませんで、夜電話がかかってきまして、それに対して私がこう電話のやりとりで申したことをそういうふうに書いたわけで、そういうもので、私自身も十分理解をしておらなかった段階でございますが、ただいまいろいろ御質問の点につきましては、これは私どものほうの立場というよりは、いまお話のありましたような民事上の問題という点と、それから、貸し金業に対しまして刑事罰をもって高利を罰則を適用して押えるという限度と、両方の考え方があって、罰則をもってあくまでそれを押える限度につきましては日歩三十銭、こういうようになっておる。それ以下につきましては、これは利息制限法というものがありますから、民事契約としては、当然この利息制限法の範囲内で契約を締結すべきものであり、それをこえるような支払い等については、最近の判例等によって元本に充当する、元本に充当してなおそれをこして、すなわち、元本が消滅すると、こういうことになった場合には、それは不当利得で、返還請求できる、こういう民事構成になっている。判例と法律と両方一緒にした次第でございますが、そういうものと理解をいたしております。
  50. 大竹平八郎

    理事大竹平八郎君) 中尾君にちょっと申し上げますが、参考人が見えておりますから、でき得るならば、時間の関係上、参考人に先にひとつ御質問願います。
  51. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 そういうことですから、結局これはこういう法律が二つありますと迷うのですね、実際。片方は、警察のほうは、いろんな金利の問題は別として、横領、詐欺、そういったものがあって、刑事罰は「出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律」を適用するのだ。金利の面だけでいえば、金利だけで取り上げた場合には、結局この利息制限法というものは、さっきも申し上げたように、これは法律としての意義ないのですよ、こういうものは、片方があるから。こういう不明瞭な法律をつくって、国民はこれで迷っておるのですから、その辺のところもよく検討して、これは要望ですからこれで終わりますけれども検討願いたいと思います。この件はこれで終わります。  それから、いまの金融に関係しまして、そういった高利貸しに行く前に、地方零細企業は、やはり地方の信用保証協会をよく利用しておるわけですが、この地方の信用保証協会は中小企業保険公庫からの融資もありますし、また、保険業も営んでおるのですが、その辺の関連はどういうふうになっておるのか、概括的にひとつ説明してください。
  52. 長村貞一

    参考人長村貞一君) お答えいたします。  ただいま御質問のございました保証協会と保険公庫との関係でございます。簡単に申し上げますと、関係がと申しますか、公庫の事業ということになりますが、二つございます。一つは、いま保険の関係、中小企業の方々が市中の一般の金融機関から金融を受けられますときにとかく担保が不足する、それを補う意味で、地方に五十一ございます保証協会がそれぞれその地区に従って保証をいたします。保証をいたしますと、弁済期日に保証人として弁済しなければならぬことが間々ある。その場合に、その五十一の協会と保険公庫との保険契約がございまして、保証協会が債務者たる中小企業者にかわっていわゆる代位弁済をしたものの——これは保険の種類がいろいろございますから、その種類によっては異なりますけれども、おおむね七〇%ないし八〇%のものを保険公庫は保険金として協会にお支払いする、かような意味の保険契約が協会と公庫にございます。これが保険公庫としましての一つの事業ならば保険事業になるわけでございます。  いま一つは融資でございます。五十一の協会が保証をつつがなく伸ばしていくと申しますか、円滑に伸ばしていくために、国の予算からちょうだいしております融資基金、これを五十一の協会に融資をする、この二つの仕事並びに関係があります。
  53. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それで、地方の実情は、非常に申し込みが多い関係で、保険契約ももう少しふやしてほしい、あるいは融資のほうももう少しふやしてもらいたい、こういう要望があるわけでありますが、この保証の額といいますか、それはどういう基準になっておりますか。地方の保証協会には基本財産というものがありますね。それから、あなたのほうから融資をする、そういうものを原資としてそれを銀行に預託をしてその何倍か貸す、こういうことになっておると思いますが、その辺の実情はどうなっておりますか。
  54. 長村貞一

    参考人長村貞一君) これは協会が五十一ございますから、それぞれの協会で事情はもちろん違うわけでございますが、概括して申し上げますと、お尋ねの御趣旨は、基本財産がそれぞれ協会にございます。その基本財産をもとにいたしまして、それの何倍くらいの融資活動ができるかということではなかろうかと思うのでございます。これは五十倍というのが最高でございます。あるいは五十倍になっておるものもあり、その下、三十倍のものもあり、これは五十一の協会の事情に応じて、それぞれ協会が主務大臣の認可を得てその倍率をきめる、かようなことになっております。
  55. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 私が聞きたいのは、保証協会には出損金というものがありますね。これは県、あるいは市、あるいは銀行協会等から保証協会に出資をする。そのほかに信用保険公庫から何がしかの融資をするわけでしょう。だからこういうものをトータルしたものが銀行に預託をしてある。その預託率の何倍くらいに保証額がなるのか。
  56. 長村貞一

    参考人長村貞一君) お話のように、ほうぼうから出損金も参りますし、その他のものも参りますので、それを預託しまして、これも協会ごとに申し上げると当然違うわけでございますが、全国的に申しますると、ほぼ六倍くらいの融資銀行の金が中小企業者に回っておる、かように申し上げてよかろうかと思います。
  57. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それから、ただいまの代位弁済ですね、これは経済活動もだんだんと大きくなってまいりまするし、最近はまだ代位弁済が若干ふえておるというようなことも聞いておりますが、実情はどういうものなのか。公式に代位弁済が保証協会に対する金融の申し込みの件数のどの程度になっておるのか。これは件数と金額に比例してどの程度になっているのか。それから、保証協会が保証する場合、これはまあどの程度を保証しているのか。申し込み数全部というわけにはいくまいでしょうけれども、これもまあ件数、あるいは金額等から見てどの程度になっているか。
  58. 長村貞一

    参考人長村貞一君) お話のように、その代位弁済が実は四十一年から急にふえてまいっております。四十三年度に入りましても依然として代位弁済はふえておるというような状況でございます。その辺きわ立った一つの現象があるように思うのでございます。  中小企業の方が保証協会に保証を申し込まれます場合に、これまた五十一の協会で差別がございますけれども、全国的に見ますると、私の記憶するところでは九〇%以上のものは保証が受けられる。逆に申しまするならば、申し込んで保証を断わられるというものはきわめて少ないパーセンテージである、かように承知をいたしております。  それから、保証しました金額の中でどのぐらい代弁ができるかということだろうと思いますが、これまた協会別でいろいろ違いますけれども、今日のところ、大体三%ぐらいのものがいわゆる代弁になっておる、全国的に見まして。そういうことでございます。
  59. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それで、あなたの答弁だけでちょっと具体的にわかりにくいので、東京とか大阪とか京都、兵庫、この辺のところですね、中小企業者の多いところですが、それはひとつ具体的に出ませんか、大体。
  60. 長村貞一

    参考人長村貞一君) 担当の菅理事から具体的に御説明申し上げます。
  61. 菅博太郎

    参考人(菅博太郎君) ただいまの保証の申し込みに対する承諾は、これはどちらの協会さんも、九〇%以上は承諾を受けておられます。特にまあ高いところは九五%ぐらいの承諾率もございます。ただ、代位弁済率は協会によって相当違っております。ただいま先生のお話の個々の計数でございますが、最近の傾向といたしましては、都市部に非常に代弁が多発しておる。むしろ地方の協会においては少ないということが言えるかと思います。例をあげてみますと、本年度に入りましては、京都は保証債務額に対しまして三・八%、全国平均が三%でございますので、やはりちょっと高いかと思います。それから、大阪府、市もやはり三・二%、あるいは三%というふうに、地方に比べて少し都市部は最近は多いという傾向でございます。
  62. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それで、あなたのほうの来年度、四十四年度予算要求、これで見てみますというと、「現在、保険公庫および保証協会は、適正保証、適正代位弁済を目標とした自主的改善措置により、当面する保険財政の建直しに鋭意努力して」云々と出ておりますが、適正保証、適正代位弁済というのをどの辺に置いていらっしゃるのか、これはどうなんですか。
  63. 長村貞一

    参考人長村貞一君) お話のように、代位弁済が急増しております。これは私ども保険公庫から申しましても保険金の払い出しが多くなる、また、各協会から見ましても、協会それ自身が負担する代位弁済金額というものがございますから、これまた負担の増加ということでございます。私は、保証と申しますものの——まあ保険というものは保証の何といいますか、はね返りみたいのことになるわけでありますけれども、保証というものの本旨から申しますると、現在中小企業の方々が市中の一般の金融機関から金融を受けられます場合の担保力を補完するものであると同時に、また、これは代位弁済をいたしましても、究極的には代位弁済しましたものは保証協会がそれぞれの業者からお返しを願うということが制度のもとになっていまの制度ができております。あくまでもそれぞれの中小企業者の方々の、何といいますか、対人信用と申しますか、それをもとにいたしまして、企業伸びる力、それに信用を置きまして保証をする。不幸にして代位弁済が起きました場合には、また企業の立ち直りを待ちつつそれを返していただく、これが制度の本旨だと思うのであります。かような点から申しますると、その本旨を現実にどうやって生かしていくかということになろうかと思うのでございます。もちろん従来も各保証協会の方々は、その趣旨でその地方その地方の実情に即した保証活動をしておられますのでございますけれども、最近の情勢から、特にお互いにこの点をもう一度よく考えて、ほんとうに必要な保証をほんとうに必要なところに円滑にいくというためにひとつ検討もし、また、努力もしようというのがただいま先生の御指摘になりました一つの動きでございます。数字でこれを具体的にどの数字が適正であるかということになりますると、これは私なかなかいまこの場でぴたりこの数字であるということを申し上げかねるわけでございます。その辺のことも十分に、一方においては主務官庁の御指導も得つつ、また、一方には協会の諸君とも十分に話し合いをいたしまして、本来の趣旨を実現するようなことでやってまいりたい、かように公庫としては考えるのであります。
  64. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それで、結局、先ほど町の金融の問題も少し質問をいたしましたけれども、また、政府としては年末金融対策として必要ないろんな措置を講じておられます。また、融資額も、政府三機関等もかなりふえておりますけれども、あの問題だって、あれを全額貸すというわけではないでしょう。おそらくこのくらいをひとつ貸してやれ、まあ努力目標であると私は受け取るわけですが、そこで、結局、中小零細企業、ほとんどこれは小零細企業のほうはあまり銀行との直貸しの恩恵にあずからずにこういうところに来るわけです。信用力もなく、担保力もない、そういう人の救済のために出ておるわけですから、その辺のところをひとつもう少しあたたかい気持ちで中小企業庁のほうも大蔵省のほうもひとつお考えいただいて、私は、保険契約の額をもう少しふやしてもらう、それから、保証協会に対する融資、これは信用保険公庫を通じていくわけでありますけれども、それをひとつもう少し大幅に出してもらいたいと、このように要望いたしまして終わります。
  65. 大竹平八郎

    理事大竹平八郎君) 渡辺君に一言申し上げますが、きょうは大臣は大体四十分ぐらいに入りまして、一時間の予定で、それから発言の順位がございますので、あるいは途中であなたに大臣に関連質問をしていただいて、残余の質問が大蔵当局にありましたら、大臣退出後にひとつお願いします。どうぞそのお含みでお願いします。
  66. 渡辺武

    ○渡辺武君 国税庁の方にお伺いしますが、政府は国税不服審判所創設のための立法上の準備をしていると伺っておりますけれども、その準備状況はどうなっておるのか、知らせていただきたいと思います。また、法案は国税通則法改定の形をとるか、国税不服審判所法案などの独立立法の形をとるか、この点についても伺いたいと思います。さらに法案のおもな内容は税制調査会の第三次答申と同じものかどうか、この点についてもお聞かせいただきたいのです。
  67. 亀徳正之

    説明員(亀徳正之君) 主税局がいろいろ立法の準備をしておりますので、主税局長に答弁していただいたほうがいいと思います。
  68. 吉國二郎

    説明員吉國二郎君) 国税不服審判所の創設につきましては、来年度から間に合うように、そのために来たるべき通常国会に提出するように準備を進めております。御承知のように、国税通則法は、国税各税法のいわば一般法になっておりまして、不服審査制度も各税法に通じた問題でございます。一応国税通則法の改正という形で準備をいたしております。  それから、内容は、第三次答申の内容をそのままできるだけ法制化したいということで準備を進めております。
  69. 渡辺武

    ○渡辺武君 もう事務局の案はできて、内閣法制局かどこかにかかっているわけですか。
  70. 吉國二郎

    説明員吉國二郎君) 内容的に新しいものでございますので、非公式に素案を法制局と相談はいたしておりますが、正式の相談までではないというところでございます。主として法制的なポイントの問題につきまして相談をいたしておるというところでございます。
  71. 渡辺武

    ○渡辺武君 内容的に税制調査会の第三次答申とほとんど同じだということでございますので、この税制調査会の答申に基づいていろいろ伺いたいと思いますけれども、この答申によりますと、国税不服審判所は国税庁の付属機関で、みずから裁決権を持つとはいえ、「国税庁長官の行なった既応の法令の一般的な解釈と異なる裁決をする場合」または「既応の通達で予想していない新たな事例で、将来の税務行政の先例となるような裁決をする場合」、これらの場合には、「あらかじめ国税庁長官の指示を求めるものとする。」となっているけれども、いまつくられている案はこの点同じ内容でしょうか。また、答申は、審判所長と審査官の任免権はだれにあるか、それから、また、これらの人の身分保全はどうするかの規定はありませんけれども、あなた方がつくられている案ではどうなっておりましょうか。
  72. 吉國二郎

    説明員吉國二郎君) 答申でいっております、既応の通達と違う裁決ができる、しかし、その場合には国税庁長官に指示を求めるという体制はそのまま採用いたしております。個別的ないまの任免その他については、いま検討中でございます。あらためてまたきまりましてから。
  73. 渡辺武

    ○渡辺武君 付属機関はどうですか。
  74. 吉國二郎

    説明員吉國二郎君) 付属機関の形で進めてまいりたいと思っております。
  75. 渡辺武

    ○渡辺武君 そうしますと、国税庁の付属機関で、しかも、通達案件については長官の指示を必要とするということになりますと、従来、協議団制度について、一つ穴のムジナだという批判がいろいろありますけれども、結局この国税不服審判所も同じ批判を受けることになるんじゃないかと思いますけれども、どうですか。
  76. 吉國二郎

    説明員吉國二郎君) この点が答申をいただく際に非常に討論になった一番のポイントであったと思います。従来同じ穴のムジナであるといわれておりました点は、地方の第一線の課税機関の長である国税局長のもとに協議団が置かれ、しかも、独自の裁決権がないということから、もちろん独立的な運営をやってはおりましたけれども、外から見ますと、最終的には局長が決める、しかも、局長に対しては各課税当局が補佐をするということで、どうも結果は同じじゃないかということが問題であった。一つ考え方といたしましては、国税庁と全く離してしまうという考え方もあり得るわけでありまして、この場合、いろいろ検討いたしました結果、国税庁から離して第三者機関をつくるということは、ある意味では裁判機関に近いものになる。行政の中に裁判機関的なものを持ち込むというのはどらも無理があるのではないか。   〔理事大竹平八郎君退席、理事植木光教君着席〕 ことに、国税庁長官の判断と両方とが違った場合には機関同士の訴訟が起こるという不適切な点がある。そこで、国税庁長官のいわば課税機能と審査機能を完全に分離してしまい、系統の違う組織に編成をして、そして審査機能を果たす部分は課税機能と全く別個の存在にすれば審査についての独自の判断ができるのではないか。ただ、行政として解決が二つあるということは、非常に納税者にも迷惑を与えますので、審査機能のほうが正しいと判断すれば、国税庁長官がみずから課税機関に対する通達を改めるということも考えなければならない。その判断を国税庁長官にゆだねるというのは一つの方法ではないか。ただし、その場合に国税庁長官が独断でそれを考えるよりも、具体的に非常に詰められた問題でございますので、学識経験者をもって組織する審査機関に付議して、その意見に従って国税庁長官が決断をするということにすれば、同じ穴のムジナということはまず防げるのではないか、かような判断からこの結論が出たように了承いたしております。
  77. 渡辺武

    ○渡辺武君 いまおっしゃった点は、この第三次答申の中でもいわれておりまして、私はそれも考慮に入れながらいろいろ検討してみたのですけれども、しかし、国税局長の指揮を受けないとか、あるいは独自の裁決権を持つとか、それから、いまおっしゃいませんでしたけれども、答申の中には民間人を登用するというようなこともありますですね。それから、いまおっしゃったように、主管部と一応別機能の形をとっているというような点は確かにあると思うのです。しかし、これは私はやはり一応の民主的な装いにすぎないんじゃないか。結局のところ、先ほども申しましたように、国税庁の付属機関であり、そして、また、通達案件についてはやはり国税庁長官の指示を得なければならぬということ、その国税庁長官が、いまおっしゃったように、一定の諮問機関に諮問をして、その意見を聞いて指示をするということになるでしょうけれども、しかし、それも機能という点からいいますと、結局のところ、かなり民主的な装いをとり、そして、また、複雑な機構になり、大がかりなものにはなっておりますけれども、しかし、従来の協議団制度と根本的には機構的には変わりがない。そういう意味でやはり一つ穴のムジナだというそしりは避けることができないだろうというふうに思います。   〔理事植木光教君退席、理事大竹平八郎君着席〕
  78. 吉國二郎

    説明員吉國二郎君) そういう見方も成り立つと思いますが、ただ、この不服審査考え方が基本的には行政救済という線に乗っておるわけであります。司法救済というものが別にあるわけであります。行政救済としては、私は、日本で初めてぐらいの民主行政的な制度ではなかろうかと考えるわけです。行政の最終判断を二つにするということは行政部内では無理でございます。ぎりぎり詰めてまいるとここぐらいが限界ではなかろうか。むしろ同じ穴のムジナでないという方向で御指導をいただきたい、かように考えております。
  79. 渡辺武

    ○渡辺武君 きょうは時間がないので、この点についてはもう少し論議したいんだけれども、次に一言だけ伺いたいと思うのですが、答申は、納税者が審査請求を行なう場合に、審査請求書に請求の理由を具体的に記載すること、また、審査請求書には、申し立ての根拠を明らかにするため、収支計算書その他の計数資料を添付すべきこと、それから、推計課税事案については、審査請求人が推計の基礎となった根拠が不適当であると主張するときは、その特殊事情その他の個別性を具体的に示すこと、それから、さらに、納税者のほうから、申し立ての趣旨、理由及び根拠を明らかにした審査請求が行なわれた場合は、処分庁の側においても、処分の理由、調査経過等を記載した理由等記述書を国税不服審判所に提出することと述べておりますけれども、この点についてもあなた方の案はやはり同じでしょうか。
  80. 吉國二郎

    説明員吉國二郎君) ほぼこの線を技術的に具体化しているということでございます。
  81. 渡辺武

    ○渡辺武君 そうしますと、この国税不服審判所は納税者に立証義務を負わせるということになるんじゃないですか。
  82. 吉國二郎

    説明員吉國二郎君) 実は私どものいま実施している案でございますと、審査請求の前段階異議申し立てがございました場合に、決定に役所側はその決定の理由を付することにしております。つまりそれによって役所側のたてまえをはっきり、それに対する異議の審査の請求については、それに対する意見を述べるようにする。いわばこの不服審判所が同じ穴のムジナでないためには、納税者の主張部分、税務官庁の課税当局の主張部分を突き合わせなくちゃならぬ。従来の協議団は第三者機関とはなっておりますけれども、やはり自分から調べて真実発見の方向をとるという傾向が強かったわけです。できるだけ客観的に真実を発見するためには、納税者、課税官庁ともにできるだけ事実を明らかにする必要があるという前提でございますので、立証責任という問題ではない。いわば事実のできるだけ具体的な開示によって最終的な適正な判断ができるようにという趣旨でございます。
  83. 渡辺武

    ○渡辺武君 そういたしますと、行政庁のほうが先に立証したから、したがって、納税者のほうも審査請求の段階では立証する必要がある、こういうことでございますね。
  84. 吉國二郎

    説明員吉國二郎君) 正確に立証ということばが適切かどうか知りませんが、不服の要点が相手方の、いわば課税官庁の決定通知で明らかになった、それに対する意見、事実を述べるということで、お互いにそこで明らかにし合うという前提でございます。
  85. 渡辺武

    ○渡辺武君 そうしますと、これは納税者にとっては非常な不利益をもたらすものというふうに私は考えざるを得ません。これは納税者の権利救済ということをうたっておりますけれども、むしろこれでは納税者の権利を救済するのではなくして、かえって踏みにじるということになりかねないと思います。  その理由の第一ですが、この方式でやりますと、帳簿をつける余裕もない零細な中小企業、これが実は多数の納税者になっているわけですけれども、こういう人たちは、やろうと思っても立証をやることのできないような事態に現実に置かれているわけです。その人たちが、とにかく行政庁のほうが先に理由を明らかにしたからということで、実は自分のほうから立証をしなきゃならぬという事実上の義務を負うということになるわけですね。そうして、それができなければ審査請求もできないということになりましょう。審査請求の要件として納税者の立証ということが必要になってくるわけですから、もし立証ができなければ審査請求もできないということになってくると思います。これでは審査請求の道さえもこの非常に厳格な規定によってふさいでしまうということになるかと思います。これでは重税の前にこれらの零細の中小企業者を泣き寝入りさせるということになるのではないか、これが私は第一に申し上げたい点です。  それから、第二に、国税通則法を制定する際に、主税局のほうか、あるいは、また、大蔵省のほうか政府当局のほらは、納税者に立証の義務を負はせようということでいろいろやられたいきさつがあって、それが失敗したという経験があるわけですけれども、しかし、いま伺ったところによると、これから国税不服審判所をつくるということを一つの機会にして、記帳の余裕のない小規模な事業者に記帳の義務を強要するということになるのではないかというふうに思います。  それから、第三に、もう御存じかと思いますけれども、現在ではほとんどすべての裁判所は、国税案件については、民事訴訟法における債務不存在確認訴訟における取り扱いをしております。つまり別のことばでいえば、債務の存在をしている者に立証の責任があるという立場から、国税庁に立証の義務を負わせるという正当な、当然な措置をとっていると思います。ところが、政府は、このように自分に不利な立場をとる裁判所にかわって国税不服審判所をつくって、これによって納税者に事実上立証の義務をなすりつける、こうして納税者を締め上げようということではないだろうか、これが私の考えの第三点です。繰り返して申しますけれども、納税者には立証の義務はない、これは現在すべての裁判所がひとしくとっている見解だと思います。それを事実上国税不服審判所を設立することによって、事実上裁判所を拒否して、そうして責任を納税者になすりつけようとする、こういう国税不服審判所が納税者の権利を救済するものとはとうてい考えられないというふうに私は考えます。
  86. 吉國二郎

    説明員吉國二郎君) この審査請求をいたします場合に、帳簿がなければ帳簿がないで、ここに書いてございますように、推計課税を受けておれば、それに対する推計課税の根拠を示しているわけですから、それに対してその事実があるかないかということを主張するというのは当然かと思います。そういった意味で、この審査請求が帳簿がそろっていなければできないというものでもないし、その帳簿がないからといって審査請求を却下するというものでもございません。したがって、帳簿のない事業者が審査請求ができないということはあり得ないわけです。そういう場合にその実態を監査して、できる限りの事実、主張を述べてもらうということで足りるかと考えております。  それから、第二番目の問題の裁判所の問題は、私は専門家ではないわけでありますが、いわゆる挙証責任論と立証の義務の問題は私は違うと思います。やはり裁判所として判決をつける場合に立証をしないということは、これは納税者として主張する場合に立証しないというわけにはいかないわけです。  最後に、だれに挙証責任があるかという判断としては、いわゆる挙証責任論としては、いまのところ裁判所は税務官庁に挙証責任があるという立場をとっておりますが、これは挙証責任の問題じゃない、あくまでも事実を主張し、その証拠を出して、適正な事実に対する判断を得たいという趣旨でございますので、裁判所が言っているような厳密な意味の挙証責任論は、この段階では適用にならない、かように考えます。
  87. 渡辺武

    ○渡辺武君 時間がないので、もう少し申し上げたいのですが、最後に一言これは私は申し上げておきますが、結局いまいろいろおっしゃいましたけれども、私はやはり同じことだと思うのです。というのは、答申は、審査請求人が証拠を提出しなければ、裁判所はその請求人のいろいろな書類について補正を命ずることができるようになっております。それでも提出しなければ審判官の調査権を発動して、そうして納税者に質問、検査をする、あるいは文書その他の提出を命令し、さらにはこれを留置する権利を持つ、さらに立ち入り検査もするということになっております。それでもなお実態を明確にすることが著しく困難になった場合には、その点に関して請求人の主張を採用しないということになっているわけです。したがって、このことからすれば、事実上納税者が立証しなければ、これは著しく事実を明確にすることは困難だということで、これは請求人の主張を採用しないということになって、結局のところ敗訴せざるを得ないということになるわけです。これはあなたの答弁は必要ありません。あとでまた必要なら聞きますけれども、そういうことで、これは権利救済どころか、もう納税者の権利に対する私はたいへんなじゅうりんだというふうに考えております。これで終わっておきます。
  88. 大竹平八郎

    理事大竹平八郎君) なお、大蔵大臣は手術後でございますので、どうぞそのままで御答弁を願います。
  89. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣財政、金融政策物価との関連について質問したいのですが、特にいま編成過程ですが、四十四年度予算編成と、それから金融政策物価との関係について質問したいのです。それに先立って、いま人事院総裁が見えましたから、いま当面四十四年度予算編成と重大な関係にある公務員給与に関する人事院勧告制度改正の問題がいま煮詰まりつつあるといわれておる。そこで、きょうおそらくはもうこの煮詰めについて御相談があったと思うのです。そこで、最初にこの人事院勧告については予備勧告の制度というものが問題になっているようですが、まず人事院総裁、予備勧告というのはどういうことなのか。それと、新聞でこれは拝見したのですが、もしこの予備勧告制度をこれは自民党の政調会のほうから人事院は要求されているといわれておるのですが、人事院総裁は、もしこれを受け入れる場合には条件を付さなければならない。特にこれは所得政策になるような危険があってはならぬというような立場から要求を出されているようであります。この二つの点について伺いたい。
  90. 佐藤達夫

    説明員(佐藤達夫君) 御承知のとおり、私どもは、従来かような席におきまして、現在の勧告の方式のもとにおいても完全実施は可能であると思いますということをいつも言明してまいっております。たとえばことしの場合にいたしましても、あと二百二十億あればこれは完全に実施できる、それだけの問題だと思っております。思っておりますけれども、えてして従来勧告が年度半ばに出される、それは困る、予算編成の際にアクションをとってもらわないと財政上非常に困るという声がありまして、その意味では私どもは悪者扱いをされてきたという事実もあるわけです。そこで、ぜひ完全実施をはかるためにどういう方法があるかということで、閣僚懇談会が非常に熱心に御協議をくだすったわけでありますけれども、私どもも完全実施を絶対に期するためにこうすればいいということがあれば、われわれとしてはやはり硬直化した態度はとっていくべきではないということから、予備勧告の制度は、従来これも各委員会で申し上げてきたと思いますけれども、われわれとしては非常に消極的な態度を示してまいりましたけれども、しかし、これが非常に完全実施の確保になるというならば、いまはわれわれのほうでは忍ぶべきところは忍んででもそれは応ずるにやぶさかではないという意思の表明を、正式と申しますか、そういう意向を表明したことは事実であります。条件ということばも、これは新聞記事にちょいちょい出ております。条件と申し上げるのははなはだはずかしい話なんで、あたりまえのことをただ念を押して申し上げたというだけのことでして、要するに完全実施のためというかけ声のこれは御相談であります。こうすれば完全実施は保証していただけますね、これはあたりまえのことを申しただけのことであります。
  91. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 人事院総裁にもう一度伺います。予備勧告ということですから、本勧告ということがあるわけです。その点あとで大蔵省にも伺いたいのですが、一応予備勧告しまして、そして予算に公務員給与を計上する、その後民間賃金の上昇ぐあいとか、あるいは物価騰貴の情勢とか、いろいろ最初予備勧告したときにくらべて大きな変化があった場合、その場合、政府は、これはあとで大蔵省に聞きますが、総合予算主義のたてまえをとっております。補正を組まない、こういうたてまえをとっていますと、そこで補正予算を組まぬとすれば予備費でまかなうとか、あるいはほかの予算を削って、これはもう補正を組まなければそれはできないと思うのですが、その点が非常にはっきりしないのです。完全実施といったって、完全実施は、やはり予備勧告したあとの情勢もまた反映して、そしてこれは人事院がまた勧告しなければならぬ義務がありますから、人事院としては、それまでを含めての完全実施であるという意味であるのかどうか、そういう点を伺いたい。
  92. 佐藤達夫

    説明員(佐藤達夫君) もちろん予備勧告と本勧告と二段階あるわけでありますけれども、それはもちろん両方とも完全実施していただくのはあたりまえのことでございます。
  93. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そこで、それじゃ大蔵大臣に伺いますが、それはきょう御相談されたと思うのですが、それはどういうような結論になっているのか。それから、先ほど人事院総裁が言われました、これまでだって財源がなかったわけじゃなかった、完全実施をすれば、この当時から見て政府が結果的に過小見積もりをした、過小見積もりというよりも、なったというのが好意的な見方かもしれませんが、経済成長率を非常に低めに見、実際は高い。本年度だって八月実施じゃなくて、五月にさかのぼってやろうと思えばできないことではない。財源がないわけじゃない、その成長率見通しを三%ぐらい低くしているわけです。一二・一%に比べて一五・一%ぐらいですから、先ほども主税局長は慎重な答弁をしておりますが、いままでわれわれが見積もったのはみんな当たっている、結果から見てそうなんです。四十二年度だって、さっき話した三千億の自然増収があったのですよ。ですから、財源がないわけじゃない。その点、大蔵大臣、きょうどういう煮詰めになったか、伺いたい。もう四十四年度予算編成も迫っているわけですから、そうしていま人事院総裁が言われた予備勧告、本勧告をも含めた完全実施、そういう前提で公務員給与に関する本勧告、これは改善というのですか、改正ですか、それを考えていただきたい、それはどういう状態にいまなっているのか、伺いたいわけです。
  94. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) きょうこれから協議会があるので討議する問題になっておりますが、いままでのところ、まだ全然結論がついて成案を得るというところに至っておりません。いま人事院総裁はいろいろ言われましたが、総裁からの勧告を完全実施をする必要があるというので、それを可能にする方途をひとつ研究しようという立場でいままでいろいろの案を出ておりましたが、最終的に四つ五つの案にしぼられて、そうしてその中のどれが一番いい案だろうかということをいろいろ掘り下げてまいったのですが、まだ結論が出ておりません。むずかしいという問題は、しょせん勧告とやはり財政の調和ということだろうと思います。国の財政というものは、やはり均衡のとれた配分をする必要がありますので、各施策間のやはり均衡がとれなけりゃいかぬ。で、ほかの経費はいろいろ財政全体によって調整されるが、ただ人件費一つは一切無調整でいいということもできませんので、人事院の勧告というものは、もう尊重してこれを実現しようという反面、もう一つ、そうだとすれば財政との調和をどうするかという観点からこの案をつくらなければほんとうに実施できる案にはならないということでございます。外国あたり、たとえばアメリカでいいましたら、人事院勧告が出た、勧告は、その内容は必ず政府が実施するということになって、翌年度からその内容を全部取り入れて予算化するというようなことをやって人事院勧告は完全実施されたというんですが、御承知のように、日本の人事院の勧告は、内容を示すだけでなくて、いつからやれというような勧告がついておるんですが、このために非常に問題を複雑にしておりまして、これをこのとおりにやるためにはどういう考えでやったらいいかと、これを中心にいろいろいままで論議していることは事実でございますが、ほんとうなら、やっぱり財政と調和するような勧告のあり方というものもここで考えられたら私は実施はきわめて簡単にいくんじゃないかというふうにも思っております。たとえば民間の事業でも何でも、事業予算の中に人件費予算というものがどのくらいと、一つ基準がございますし、国家経費においても、公共事業、社会保障、いろんなもののやはり均衡があって、そういう均衡のとれた政策実行のために人件費予算というものがどのくらいでいいかというようなものも今後研究されなけりゃならぬと思います。そうすれば、もし財政と衝突するようなときには、その範囲内において人事院の勧告は実施するが、実施する範囲、行政機構の改革とか、あるいは合理化というようなものもあわせてやらなけりゃいかぬ。そういうものが一緒に加わっておるのでしたら各施策の均衡を害した予算配分ということにはならぬと思うのですが、ほかは全部そういう調整が加えられておるのに、どういう勧告が出ても、これは優先であれしなけりゃいかぬという勧告のあり方というものとこの財政の調和というもの、これをどうするかも、これは全く考えないで済まない問題でございますので、ほんとうに人事院の勧告を完全実施しようというからには、こういう形の勧告があったら財政的にも調和をとって実施することができるだろうという案を考えたい、こういう立場でいますので、なかなか幾案出てもむずかしいところへいまぶつかっておりますので、もう少し結論を出すのはひまがかかるんじゃないか、私はそう思っています。
  95. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ひまがかかるといっても、もう四十四年度予算編成過程ですから、結論を出さなけりゃならぬと思うのですがね。しかし、いま大蔵大臣の御答弁聞いていますと、事非常に重大な内容を含んでますよ。まず第一に、何か人事院が全体の財政状況を考えずに不当な勧告をしてきたようにいま言われてるんですよ、ほかとのバランスを失した勧告をしたように。ところが、先ほど人事院総裁は、財源はあるのだ、あるのに政府がやらなかったと、こういうことを言われておるのですよ。われわれも、財源があるのですよ、財源というのは政治的、政策的なものですから。人事院勧告というものは、いままでの経過から見て、これはそう簡単なものじゃないですよ。これは公務員にストライキ権を与えたらどうですか、それとの交換条件でしょう。非常に重大問題なんです。これはこれまでの経過から見まして、非常にこれは私どもが考えなきゃならないと思うのです、人事院というものを特に設けた趣旨、経過を考えましてね。そうして、民間の賃金、あるいは、また、物価上昇、そういうことも勘案して人事院がいままで勧告してきて、それは過去の経過をたどって見ても、財源的に実施できなかったことはございませんよ。ただ、問題は、その財源政府が公務員の給与のほうに使いたくないということなんですよ。そこが選択の問題、政治の問題、政策の問題ですよ。あとから検証してみれば財源がずっとあるのです。また、公債政策をとるようになったでしょう、そうして自然増収が出ても公債償環のほうに充てるというのでしょう。銀行は公債を持っていると利回りは低いから、そうして資金需要が多くなってくれば、公債を引き受けるよりは、あるいは貸し出したほうが有利である。そこで、銀行の意向に沿って、自然増収があるのにこれを償環に充てる、これは政策の問題で、財源がないということじゃありませんよ。いま大蔵大臣が全体の財政との均衡を考えてといわれるが、均衡とは何ですか。その均衡というのは、いまの自民党のいわゆる大資本中心の、財界中心のそういう政策のもとにおける均衡なんですよ。その点で私は今度の人事院勧告の問題を考えるにあたって、大蔵大臣がいま述べられたような考えでまいりますと、結局は所得政策ですよ、はっきりと。全体のバランスを考えながら公務員給与をきめていくでしょう。人事院は、とにかく全体の財政を頭に入れて勧告したら、これは非常な政治的になるんですよ。人事院は、やっぱり客観的にストライキ権を公務員に認めないかわりに、公務員の生活を保障しなければならんという立場から、民間の給与、それから物価、それから公務員の生活、そういうものを基礎にして客観的にいろいろ調べて勧告するんですよ。それはほかに十分努力をして、それを実現するために財政的な調整をすべきなんです。それは優先しなければならぬわけなんですよ。そういうたてまえになっているのですから、ですから、今度の勧告制度の改革は非常に重大問題を含んでいる。それについて人事院総裁も問題意識を十分お持ちだと思うのですけれども、先ほど大蔵大臣が言われたようなああいうことでいいのですか。全体の財政のバランスを考えながら公務員給与をきめていかなければならぬ。いままではどうも人事院が何か全体の財政のバランスを考えないで勧告をしてきたように受け取れるような発言をされて、四十四年度予算編成にあたって、人事院総裁が一番おそれる所得政策の構想がはっきり大蔵大臣、出ているんですよ。その点、人事院総裁、それでよろしいですか。
  96. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) 私は、人事院は人事院の機能を持っているのですから、国の財政がどうであって、こういう勧告をしたら調和がとれないであろうとか何とかというのを人事院自身が考える必要はない。人事院は、やっぱり民間給与の均衡を見て公務員の給与についての勧告をすることが人事院の機能ですから、人事院にそれを求めているわけではございません。だから、国の財政がこうだから低く勧告しろとか何とかという束縛をするわけではございませんが、勧告を受けた政府がこれを実施するためには、いろいろ財政制度との問題から、政府としては相当ないろいろなくふうが必要である。で、そのくふういかんによっては、人事院にいまのような勧告ではなくて、こういう時期に、たとえば二度の勧告というようなことを求めるわけにはいかんかとか何とかというような、やはり人事院の勧告を政府財政との調和をもって実現するような方途の研究ということは、当然これは必要なことであって、それを中心にいまいろいろ検討しているということでございますので、所得政策とか何とか、そういう問題ではありません。
  97. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣はそういう問題ではないといっていますけれども、われわれが客観的に判断した場合に、大蔵大臣がさっき言われたこと、そういうことが所得政策なんですよ。そういうことが所得政策でありまして、ですから、それも政府財政金融政策の運用を誤って物価の値上がり等を生じさせておりますし、それもまたやはり人事院勧告に反映をしているのですよ。政府の責任でもあるのですよ。したがって、この際は、私は非常に重大な転換期に直面していると思うのです。人事院勧告というものが、政府財政の行き詰まり、いわゆる財政硬直化ですね、そういうものと、公務員給与の問題、それから、もう一つは米価の問題もあるのですけれども、重大な局面に直面しているのです。特に人事院勧告は公務員の今後の生活安定の問題につながるのですし、このきめ方いかんによっては、これは重大な問題になりますよ、今後。それは私はそういう場合、今後公務員がストライキを要求し、あるいはストライキをやったような場合どうなりますか。それは政府に責任がありますよ、そういうような所得政策を実行するなんて。それはもう今後公務員の間に大きな不安動揺が生じてくる、このきめ方いかんによっては。そういう意味では、これは重大な問題ですよ。したがって、人事院総裁も、もちろんもう非常に鋭い感覚をお持ちですから、問題意識を十分にお持ちと思うのですが、先ほどの大蔵大臣の御答弁は非常に私は危険性があると思うのですが、いかがですか。
  98. 佐藤達夫

    説明員(佐藤達夫君) これはそれぞれ立場の違いでありまして、大体大蔵大臣のとっておられる意識、態度というようなものはその辺に関係があるのじゃないかと思います。いま最後に水田大蔵大臣がおっしゃいましたように、勧告そのものに対して何ら拘束する考えはないということをはっきりおっしゃいました。これはまことに当然のことでありますけれども、また、心強く思うことであります。私どもはその立場に立って勧告を尊重していただいて、そうしてこれが完全実施していただけるように、これは、これから先はわれわれが政府に対しても従来どおり今後も努力してまいりますし、これはまた国会にも直接御勧告を申し上げておることでありますから、国会のお力も大いに借りてこれを完全実施の方向に持ってまいりたい、それに尽きるだろうと思います。
  99. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それじゃこの問題について、最後に人事院総裁にもう一つ伺いたいのですが、先ほど勧告については完全実施を結論として要求されておる、それは当然のことであります。それから、予備勧告、本勧告も含めて完全実施を要求された。これから煮詰めの段階に入るわけです。四十四年度予算編成にあたって、どうしてもこの問題は決着をつけねばならぬわけですね。そこで、いままでどおりにいくのか、あるいは予備勧告、本勧告、そういうふうにこれを改正していくという場合に、完全実施を形式だけでなく、おそらく人事院総裁は実質的に考えられておると思うのです、これまでのような状態ではこれは完全実施じゃありません。そこで、そういう場合には、人事院総裁要求される完全実施がどうも満たされない、そういう場合には、これは今度の人事院勧告の改正については承認できないというお立場をおとりになるのかどうか、その点どうですか。
  100. 佐藤達夫

    説明員(佐藤達夫君) われわれは、できる限り、勧告の本質を害しない限りにおいて、技術的な御協力は政府に対しても申し上げたいということで、予備勧告制等についても若干のゆとりある態度を見せたわけでありますけれども、しかし、結論は、最初に申し上げましたとおりに、私どもとしては、いまのやり方で完全実施ができないはずはないということを基礎に持っているわけです。したがいまして、たとえばことしの場合、先ほどもちょっと触れましたように、たしかことしの予算委員会だったと思いますが、予備費はセクションがない、千二百億あります。その中には大きな鯨が泳いでいると見てもいいというようなたんかを切った覚えがあります。ところが、最近ふたをあけてみますと、どうもこれがドジョウだったんじゃないかということで、われわれとしてはどうも意外な感じを持っています。これはぜひ鯨にしていただきたい、あるいはそれで足りなければ補正を組んでいただきたいという方向はちゃんと残っておりますから、そういう点で、われわれは、お金のほうはそういう面でひとつ大いに力を入れていただきたい、こういうことになるわけであります。
  101. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いずれ結論を出さなければならぬと思うのですが、いつごろまでにこれは結論を出されますか。
  102. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) 来年度予算編成までにはいずれ結論を出さなければならないと考えます。
  103. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 来年度予算編成というのは、それは時期的にいつごろですか。
  104. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) やはりおそくとも十二月までにはこの結論を出さなければいかぬと思います。予算を年内に編成するとしますれば、やはり十二月中に結論を出さなければいかぬと思います。
  105. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その場合に、補正予算はやはり四十四年度も組まぬ、こういうたてまえでいかれるわけですか。
  106. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) 私は、やはり来年度も今年度総合予算主義を堅持するのがいいと思っております。
  107. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そこで、大臣、この人事院勧告の問題も、やはりいわゆる総合予算主義ですか単一予算主義ですか。これに政府が非常にこだわるというところに一つ問題があるのです。それは財政硬直化打開の一環として総合予算主義を出してきた。これは大蔵大臣、再検討をやはり加える必要があるのじゃないですか。むしろ私は補正を組まないことが財政硬直化させる、正しい意味で。こんなに激動している情勢のもとで補正予算を組まないというのはおかしいですよ。財政法でちゃんと補正予算を組めることになっているのですよ。そうでしょう。しかし、単一予算主義とか総合予算主義というのは、これはもう大臣もよく御存じのように、非常に昔のいわゆる財政法のたてまえであって、こんな近代国家において、そうしてこんなに激動する状況のもとで、一たん予算を組んだら修正、補正までもやらないのでしょう。こんなことは財政法違反ですよ。公務員の賃金をきめて、賃金のための補正、修正予算までも出さないのでしょう。ですから、これは再検討をすべきじゃないかと思うのですが、この補正を組まないという総合予算主義、単一予算主義というものは、やはり四十四年度予算からこれは私は変更すべきじゃないか。そのために、むやみに放漫財政とか何かそういうものにおちいっちゃいけませんけれども、それなら公債発行なんかやらなければいいでしょう。公債発行をやっておいて総合予算主義というのはおかしいですよ。その点いかがですか。やはり再検討しないと、かえってそのこと自体が正しい意味での財政硬直化、あるいは経済硬直化をもたらす、そう思うのですが、いかがですか。
  108. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) 実は、まだ来年度予算編成のほんとうの作業に入っておりませんので、これからきめる方針でございますが、私としては、やはり四十三年度予算編成の方針に従うのがいいと思っておりますが、どうせ新しい内閣もできることでしょうし、そこでどういう予算編成方針をとるか、これはわかりませんが、私としては、やはり来年度総合予算主義は貫いたほうがいいというふうに思っております。
  109. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 人事院総裁、もうけっこうです。  あまり時間がございませんが、実は、先ほど冒頭申し上げましたように、それは物価問題中心、特に財政金融政策との関連において質問したいわけなんです。四十四年度予算編成にあたりまして、いま編成中ですが、物価の問題をどういうふうに取り扱い、どういうふうにしてこれを処理していこうとしているのか。その前に、四十三年度予算においては物価問題をどういうふうに取り扱い、そして物価対策としてどういう具体的な予算編成なり、あるいは金融政策を行なったか、それが結果においてどういうふうになったか、まずこの点から聞いていきたいのです。
  110. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) まあ物価対策としましては、何としても、やはり総需要を適切な水準に押えるということが必要でございますので、そういう意味から四十三年度予算は非常にいわゆる財政抑制的な予算を組んだつもりでございますが、これはまず物価対策という点から見ても基本的な財政政策だというふうに思っております。それと同時に、財政投融資計画のほうからは、物価上昇の要因になっている農業とか中小企業等、低生産性部門の近代化とか、あるいは流通機構の改善、競争条件の整備というような方面に財政投融資を相当に回して施策を講じておるということをやってまいりましたが、それではどれだけのそれによって効果があったかという問題でございますが、これはちょうどいま決算委員会でもいろいろ御論議になっておられますように、予算支出の結果を評価するということはいまなかなかむずかしい制度になっております。というのは、予算編成のときにこれだけのものをこうすればこういう効果が出るだろうということを十分に検討して予算が組まれているのでしたら、この予算編成のときの見込みと需要の動きを対比して比較、分析することはできるということでございましょうが、そういう当初予算編成のときの分析というものも十分にしておりませんで、したがって、その予算が使われたときの結果というものについて効果をはっきり示すことはできない。で、これは将来やはり予算編成のしかたにおいても改善すべきことだということは御論議にのっておりまして、今度そういう方面に格段と私ども改善を進めるつもりでおりますが、いまのような形ですぐにどれだけの効果があったということは、なかなかこれは評価できないことと思っていますが、しかし、一時的にいろんな効果が出てこなくても、やはり農業基盤の整備とかいうような金は、将来の物価対策として当然生きてくるものでございますし、いま政府のやっているような物価対策になるべきいろんな金の使い方というものは相当のやはり私は効果をあげている、ああいうことをやっていなかったら、いまやはり中小企業の製品の価格というようなものがどうなっているかということを考えますと、いまより上がっているということも言えるでしょうし、私は相当の効果をおさめているものというふうに考えております。
  111. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 結局それじゃ四十三年度の消費者物価の値上がりはどのくらいに押えているのですか。政府は四・八%を前提にして予算を組まれたわけですが、相当の効果をおさめておるといわれるが、ところが、また六%以上値上がりの可能性が出てきて、決してこれは相当の効果どころじゃないですよ。それだから四十四年度予算で、また物価問題が予算編成の重大問題になる。もう少しあとで具体的に聞いてまいりますが、それでは四十三年度消費者物価実績見通しはどのくらいに押えるか、聞きたいのです。
  112. 八塚陽介

    説明員(八塚陽介君) 御承知のとおり、四十三年度見通しにおきましては四・八ということであるわけでございます。実績といたしましては、上半期におきまして五・七ということで推移をいたしました。東京都の区部が一カ月先に出るわけでございますが、東京都の区部は、九月の場合に対前年七・二%、かなり高くなりまして、私ども憂慮をいたしたわけでありますが、まあ全国は必ずしも七%台ではなくて、約一%落ちた。なお、東京都の区部の十月は四・八%ということに相なったわけであります。これはまあいろいろ原因があると思いますが、一つは、御承知のように、四十二年と対比いたしておりますから、四十二年の上半期が三%程度であるということで、四十三年度の上期はやや高く出たということも考えられます。それから、逆に四十二年度の下半期が、御承知のように、相当高い水準で推移いたしました。そういうことも技術的に影響いたしましたと考えられますが、なお、季節的ないろいろな物資が値下がりをしたということで十月が四・八になったというふうに考えておるのでございます。下期どういうふうに見通すとかいうことでございますが、いまちょっと申し上げましたように、対前年ということで考えますと、昨年の水準が下半期相当高かったわけでございますから、ある点では上半期のような高い水準ではいかないだろうということも期待できるわけでありますが、一面、十月以降米価等も上がっておりまして、いまの段階ではその他の物資も相当程度に強含みでございますから、単に昨年の下半期は高くて、ことしの下半期はそれに対比すればそれほど上がらないだろうというほどの期待ではなかなかむずかしいだろう。しかし、いずれにいたしましても、ただいまの段階で四・八を根本的にすぐ見直してどうこういうのにはデータが不足しておりますので、もう少し先になお検討いたしたいと思います。
  113. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 皆責任のがれのようなことを言って。民間のほうの経済見通し、大体まあ本年度六%程度、来年もまたこのままでは五・二ないし六%くらいになるという大体の見通しですよ、経済調査機関、あるいは銀行の調査部等。しかも、経済社会発展計画物価政策というのを打ち出した。これから見ると、全くこれまでの推移は、この経済社会発展計画に基づく物価政策と相反しているわけです。もう四十五年、再来年ですが、三%程度まで物価上昇を押えるというが、こんな調子じゃとうてい押えられない。そこで、どう見たって、四十三年度のこの予算編成にあたって大蔵大臣財政抑制型の予算を組む、これは物価対策として相当な効果をおさめたといわれるけれども、しかし、実績においては少なくとも四・八%、これを上回ることは事実であります。しかも、これは昭和四十一年に消費者物価指数を、これは五年ごとに変えるのでありまして、特に一番値上がりの大きい生鮮食料品とか主食とか、そういうもののウエートを減らしているのですよ。それで耐久消費財なんかのウエートをふやしているのですよ。そういう操作があるのでして、低く出るようになっているのですよ、旧指数よりは。そういうことを加味しますと、かなりの物価値上がりになっているんですよ。それから、国民に対する影響も、低所得者層のほうに非常に大きく響くような影響のしかたになっているんです、この内容を見ますと。ですから、この物価値上がりの影響というのは非常に重大なんです。そこで、それじゃ四十四年度はどういう方針で——物価との関連ですよ、物価安定に重点を置いた予算編成するといわれているんですが、どういうような編成方針、物価との関係、物価をどういうふうに押えていこうとしているのか。
  114. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) やはり個々の物価対策になる予算と、それから、低生産性部門の合理化、近代化をはかるための投資、この両方の予算をやはり強化していくということは私は必要だろうと思っております。
  115. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もう少し具体的に……。大体これは経済企画庁経済見通し作業をやっているわけですね、並行をして。大体四十四年度はどの程度の消費者物価に押えたいという、それを前提として、それでこれは金融政策にも非常に重要だと思うのですけれども、どの程度に押える目安で財政金融政策をやっていくか、四十四年度予算をとるとすればどういうふうに編成していこうとしているか、その目安というものがなきゃならぬですよ。いまやみくもに何も予算編成をしているわけじゃないんですから。特に物価対策に重点を置いて編成するといわれているんですが。
  116. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) いま私どものやっている予算編成に関する作業は、予算編成のためにはどうしても解決しておかなければいけないいろいろ問題となっている幾つかのものをここで予算編成前に解決しておこうということでこの仕事と取り組んでおります。たとえば国鉄の再建策をどうするか、あるいは石炭対策をどうするかとか、いま言った、たとえば人事院の勧告についての対処のしかたとか、あるいは医療保険の抜本的な対策というようなものも本年度はどうしてもしなきゃならん課題になっておりますので、こういう課題を解決するためのいろんな作業を全面的にやっておるということでございまして、これらができましてから、その次に初めて来年度経済見通しを立てて、そしてそれによってこの予算の規模をきめたり、あるいは物価をどの程度にするという目標の施策をやるかとかいうようなこともこれからの問題でございます。また、来年度経済見通しも全然できていないときでございますので、したがって、来年度物価をどのくらいに政府は押えるかというような問題は、まだそういう作業には全然入っておりません。
  117. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 政府は、この予算編成にあたって、物価問題という問題意識が欠けていると思うのですよ。昭和三十六年度から六%以上ずっと物価は上がってきましたね。三十九年度に公共料金一年ストップで四・八%で、六%より下回りましたが、今度四十年度が七・六%と急に上がって、その後四十一年、四十二年が四%台にとどまったというので政府は少し安心しておった。ところが、四十三年度にまた急に六%以上になる可能性が出てきて、そこで物価問題は新しい段階に入っているんですよ。そこで、四十四年度予算は、特に物価対策に重点を置いた予算を組まなきゃならぬという、そういうことになっていて、したがって、いままで御答弁を聞いてみますと、物価問題は新しい段階に入っているという問題意識がないんです。しかも、四十三年度はこの物価対策についてある程度効果をもたらしたというような問題意識ですね、これは冗談じゃないと言うんです。四十三年度に六%以上上がるようになったからいま問題になっているんじゃないですか。そこで、四十三年度物価対策財政金融政策とを、これをいま顧みてどこに欠陥があったかということをよく再検討して、そうして四十四年度予算編成に反映させなければならぬわけですよ。だから質問しているわけです。私は時間がございませんが、四十三年度財政金融政策物価との関係は二つの点に大きな欠陥があったと思うのです。これをひとつ是正するような四十四年度予算編成のしかたをしなければならぬと思うのです、物価問題との関連で。その一つは受益者負担の原則ですよ。これは政府はみずから物価を上げているのじゃないですか。よく財政硬直化対策としていろいろな手を打ちました。その中で総合予算主義というのを打ち出して、そして補正予算を組まない。もう一つは受益者負担の原則ですよ。これは二律背反ですよ。受益者負担の原則、これは一般会計から特別会計に財政硬直化打開のために繰り入れるのを減らす、そのかわりに今度料金も上げざるを得ないでしょう。そういう消費者物価だったでしょう。そうじゃないですか。それが物価値上がりをまた刺激するわけですよ。だからそこに矛盾があるのですよ。したがって、受益者負担の原則を乱用しないこと。前に決算委員会で問題にしましたが、受益者負担の原則というものははっきりしているのでしょう。いま法律上、行政上、受益者負担の原則というものは、いまいわれているような消費者米価とか鉄道運賃、そんなものに適用すべきものじゃないのですよ。いままでの受益者負担なんというものはそうでしょう。だからこれはむやみに乱用すべきじゃないということ、受益者負担の原則について再検討を加える。第二は金融政策ですよ。いままでの物価値上げの原因をずっと検討してみれば、結局昭和三十六年から急に六%以上値上がりしているでしょう。三十年から三十五年までは高度成長段階で、ほとんど消費者物価は上がってないのですよ。なぜ三十六年からそういう六%以上急に上がったか。これはやはり民間設備投資が急激にふえて、そうして日銀金融ですね、成長金融として非常な積極的な信用インフレをやったでしょう。だから設備投資をある程度調整しなければだめですよ。設備投資、これを野放しにして、いかに財政面だけで物価の値上がりを押えようとしてもできないですよ。これはしり抜けですよ。ですから、この二つの点ですね、受益者負担の原則というものに再検討加える。むやみに公共料金引き上げによって引き上げて、そうして一般会計の負担を国民の負担に転嫁するという方法をとるべきじゃないと思う。それは物価にはね返ってくるのです。もちろんそれがまた今度は財政膨張になるのですよ、これが結局矛盾なんですよ。ほんとうはそれを四十三年の単年度だけではどうやら矛盾を食いとめたかもしれませんけれども、しかし、もうすでに四十三年度その弊害が出てきていますよ、長期的にみてごらんなさい。受益者負担の原則というものは、これは財政硬直化の大きな原因になります。この二つの点ですね、特に金融政策として民間の設備投資をどうして調整できないか。これを調整しなきゃならぬと思うんですよ。この二つの点、これが四十四年度予算編成するにあたって、物価対策との関連でこれは一番重要なことだと思うんですが、その点いかがですか。
  118. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) 私もそのとおりだと思います。財政政策と金融政策物価に大きい影響あることは当然でございますので、この点は十分来年度予算で私ども善処したいと思っています。  いまの受益者負担の問題ですが、先ほど物価に対する問題意識が非常に希薄だと言われましたが、そうではなくて、非常に問題意識がいま濃厚でございますので、したがって、物価といわゆる受益者負担というものの原則をどう調整するかということがいま実際に政府の一番むずかしい問題となっており、その問題といま取り組んでおる最中でございますが、これはみだりに乱用するなと言うんですが、これはこの原則を乱用はしませんが、この原則を全くなくした場合の財政負担とまた物価との関係と、いろんなものが別個に出てまいりますので、その辺をどう調整するかということは、やはり来年度予算編成方針のむずかしい一つの問題であろうと私は思っておりますが、これはいま取り組んでおる最中でございます。
  119. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣、これは事務当局でもいいんですが、この受益者負担の原則というものを盛んに言い出しましたが、これは大蔵省はもっと受益者負担の原則というのは、これまでの法制上、行政上どういうものであったかということをよく検討されたんですか。これは私は問題だと思うんですよ。いままで受益者負担の原則というのは、これはもう歴史的な経過があるわけでしょう、ちゃんと。本来の意味財政学上一般に認められておる解釈としては、「公共の利益のために設置される公共財の財源、またはすでに設置された公共財の買い入れのために必要な財源の一部に充てるためそれによって特に利益を受ける人々からその受ける利益の程度を配慮して強制的に課徴されるものを受益者負担という」と、こうなっているんです。これが通説ですよ。それをむやみに非常に広範に適用して、今後は社会保険料までもこの受益者負担の原則を適用して被保険者に転嫁しよう、これは問題じゃないですか、行政上でもこれははっきりしているんでしょう。これは区別すべきじゃないですかね。もっと厳密にこれを取り扱わなきゃいかぬと私は思うんですよ。ですから、財政当局としては、なおさらこれまでも財政制度上受益者負担の原則というのはどういうものであるか、また、行政上受益者負担の原則はどういうものであるか、はっきりしているんですからね、歴史的経過から見ましても。いま四十四年度予算編成にあたって受益者負担の原則ということをいろいろ言っていますけれども、これは通俗的な俗の意味で言っているんでしょう、俗の意味で。これは政府当局としては、ことに財政当局はきちんとしなきゃいけませんよ。そうして何か公共料金引き上げの口実にこういうものを持ち出すということは、私はこれはだから乱用と言うんですよ。これは大蔵大臣事務当局に命じましてはっきりとされる必要があると思うんです。いままで財政法上どういうふうに、あるいは財政制度上受益者負担の原則というものはどういうものであったか、それから、行政上どういうものであったか、はっきりしているんでしょう。ですから、そういうものとはずれるような、何でも財政硬直化を打開するために、一般会計の財源をいろいろな特別会計に回したくないから、それで料金引き上げによってカバーするというような安易な考え方、そういうことはとるべきじゃないということを大蔵大臣はっきりさせなければいかぬと思うのですが、いかがですか。非常に重要だと思うんですけれどもね。
  120. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) 受益者負担の原則というものの定義について木村さんが非常にいろいろ書かれておることもわれわれは承知しておりますので、この厳密な意味の受益者負担というものはどういうものかということは通説があるかもしれませんが、しかし、国民経済の上から見て、その影響とか効果という点から見ましたら、これはいわゆる俗な意味に解釈していいので、そういう意味では公共料金というようなものをどうするかというときにも、受益者負担の考えという、さっき俗の意味と言われましたが、俗の意味でやはり考えなければいけないと私は思いますので、国民経済上の効果から見れば、これは政策としては同じような考え方をしていかなきゃなりませんので、そういう意味で、やはり社会保険の料金負担というようなものも、これはどうあるべきかというようなものまでやはり一連の問題として私どもはいま検討しておる最中でございます。
  121. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣一つだけ。さっきの設備投資の問題についての御答弁がないんですが、これは物価対策のこれからの一番基本になる金融政策の問題になるので、この点最後に大蔵大臣にお答え願って、それで大蔵大臣に対する質問はけっこうです。あとはほかの政府委員に質問いたします。その点です、設備投資ですね、民間の。
  122. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) 設備投資については、各企業のその年における一応の予想をとって、そうしてそれを集計する調査は行なわれております。それによって非常に設備投資が膨大になりそうだというようなときには、これをいま行政で押えるという方法はございませんので、実際には金融機関からそのほかの調整というものがはかられて、法律や行政的によらない指導というものが実際は従来から行なわれているのが例でございます。しかし、なかなかそのとおりにはいきませんので、やはりこれを押える方法は日銀を通ずる金融政策、あるいは政府財政政策というようなものから押えていかなけりゃならない問題であろうと思っておりますが、いままでこの設備投資——必要な設備投資はいいんですが、そうでない単なる増産競争の設備投資というものをやったところは相当いろいろ問題を起こしておりますので、自分自身で不当な設備投資の損というものはもう体験しておりますから、最近の設備投資はそう心配するような不健全要素はない、わりあいないというところへきております。したがって、たとえば公定歩合を下げるというときにもいろいろ問題がございましたが、公定歩合を下げたら設備投資をすぐ刺激する状態かどうかということは、金融当局としてはこれは真剣に考える問題でございましたが、いまの実情から見て、そういうことによって財界がそんなに設備投資をするという情勢にはないという判断でこの前は公定歩合の引き下げもやったわけでございますが、私は、大体過去のいろいろな苦い経験から、今後の設備投資においてそう心配する状態にはならないというふうに考えております。
  123. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣、けっこうです。主税局長、いまの設備投資の問題、税制面からいままでせっかくああいう改正をやりまして、そして一つも発動していないのですが、税制面からの調整についてどう考えていますか。物価問題についていままで大臣と質疑しましたから、私の考え方は大体おわかりと思うのですよ。ですから、やはり税制面からも相当考慮されなければならぬ面が相当あると思うのです、金融政策はもちろんですけれども
  124. 吉國二郎

    説明員吉國二郎君) ただいま御指摘の点は、昨年創設をいたしました公定歩合引き上げの際の延納利子についてであります。それと特別償却の停止、この二つだと思います。前者は、御承知のとおり、自動的に発動いたします。後者は一定の期間を限って政令で指定をしなければならない問題がございます。いつ発動するかというのは非常にむずかしい問題でございますが、今回は発動いたしませんでした。一つの問題としては、あの制度が的確に設備投資を押え得るかどうかというような点でいろいろ問題もございまして、さらに検討を要する点もあるんじゃないか。というのは、あの制度は、すでに行なった設備投資の償却を押える、設備投資そのものをやることを押えていないものでございますから、そこで過去の設備投資の結果を押える、非常にその点で問題があるんじゃないか。私どもも、最近金融が十分に設備投資の抑制に働かない、税制でやるべきだという御意見もよく承っておりますが、何しろ税制でやりました場合にはタイムラグがございます。たとえば法人税であれば、措置をして一年後に出てくるというようなこともございまして、木村先生のおっしゃるように、恒常的に設備投資自体が多過ぎるという問題であれば、そこに一つの問題があると思うのですが、臨時的な措置としてはかなりむずかしい問題で、今後とも十分検討していきたい、さように考えております。
  125. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 なるほど税制面だけで効果をあげるというのは、それは無理でしょう。しかし、金融政策等と相まってやるべきです。諸外国でもいろいろなそういう税制面からの設備投資の調整の成果があるわけですから、せっかくああいうふうなものをつくりながら発動していないということについては、相当問題があろうと思うのです、よそからの外圧があるわけじゃないでしょうけれども。その点はまた他日にいたします。  それでは、次に、労働省の方がおられますか。労働基準法についてちょっと伺いたいんです。いま労働基準法では、賃金というのはどういうふうに規定してあるんですか。
  126. 小鴨光男

    説明員(小鴨光男君) 基準法の第十一条でございますけれども、「この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。」ということになっております。
  127. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その中に金銭も入っているわけですね。
  128. 小鴨光男

    説明員(小鴨光男君) 入っております。
  129. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 労働省は労働者のサービス省といわれているのですが、やはり労働条件とか生活をとにかく守る立場にあると思うのです。この物価値上がりの問題について、これまで労働省はどういうように労働者の立場を守るために努力してきたのか。特に賃金においてはそうでしょう、物価値上がりが相当著しいわけですよ。それで、これは貨幣価値が減価するわけですから、実質的な賃金がそれだけ切り下げられる。それだけでなく、退職金だってそうでしょう。老後の安定のためにいろいろ生命保険に入っている。社会保険にも入っている。そういう場合に貨幣価値がどんどん減価する。それによる労働者の打撃、被害というものは相当大きいものだと思うのです。ですから、この物価問題に労働省がもっと真剣に取り組まなければならないし、したがって、これまでどういうようにこの問題に取り組んできたか。労働者のいわゆる毎月受け取る賃金が減価するだけでなく、その他老後の生活安定のためにいろいろ貯蓄をするそれまで切り下げられる、そういう問題に対してどういうようにこれまで対処してきたのですか、その点伺いたい。また、今後どうするつもりか。
  130. 小鴨光男

    説明員(小鴨光男君) おことばでございますが、私、労働基準局の者ですが、いわゆる先ほど申し上げました賃金自体の問題の点については、これは御承知のように、基準法でもっていろいろ保護されているわけでございます。そのほか消費者物価等の上昇によりまして、いわゆる実質賃金というものが低くなっているということにつきましては、これは好ましくないということでございます。ただ、賃金自体についての決定というものについては、先生御承知のように、労使の自主的な決定にまかされておるという原則がございます。したがいまして、ただいま申し上げました消費者物価というものの上昇というものを私どものほうの観点からいろいろ政府部内において検討していただくという点について、物価担当官会議その他においていろいろ発言をしておるわけでございます。また、そういう形の中で今後いろいろ実質賃金が低下しないような措置というものを労働省全体としては持っていかなければならない問題であるというように考えております。
  131. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 労働大臣でないとなかなか答えにくいと思うのですが、事務当局としても、何かこれまで物価と賃金との関係について、もっと突っ込んだ研究をしていなければならないと思うのですよ。物価が安定していればいいんですよ。ところが、異常なこの物価値上がりでは、異常ということばは政府でも言っているのですが、定期預金の利子が五分五厘なのに、六%貨幣価値が減価するということは異常ですよ、正常ではない。その場合に賃金及び貯蓄に及ぼす影響というものは重大な問題ですよ。これはあえて労働省がもっと積極的にこれに対して発言するなり、あるいは政策を立てるなりなぜしないか、不思議に思っているのです。そこで、私は、時間がありませんから、端的に今後労働省が研究課題として——研究課題だけではいけないのですが、もっと実施に移す努力をしていただきたいのですが、二つの点について質問したい。  一つは、労働基準法を改正する、そうして賃金の規定については、この金銭のところですね、この金銭は、少なくとも総理府統計局の物価指数、これにも問題がありますけれども、一応それにスライドすべきものである。スライド制ですよ。そういうふうにしておかないと、これはさっき労使の関係できまると言われましたが、それはその実質賃金のことを言うべきであって、労使でやっても、あと物価が上がってしまえば賃金切り下げと同じですよ。しかし、それは労働者にも資本家にも責任があることではないですね。そのこと自体、政府政策によって貨幣価値が下がるわけですから、労働基準法を改正すべきだ。これは労働基準法だけでなく、全体に、これは保険についても生命保険についても、そういうまあ金約款みたいなものを入れれば一番いいんですが、これは問題ですよ。何かそうしなければこれは非常な不道徳ですし、不正です。その点が一つ。  それから、もう一つは、諸外国でやはり団体交渉によって労働協約でいわゆるスライドをとっていますね。これは完全スライドじゃないようでありますけれども、五%物価が上がった場合には三%スライドするとかいうようなことがあるようです。これは日本の場合、労働基準法を改正すれば一番いいんでしょうが、とにかく現実の問題としては、この労働行政としてそういう指導をされないか。物価値上がりが著しくなるから、労働協約をするときにはスライド制を採用するように、これは経営者にも私はそういうふうに指導すべきじゃないか。現在スライドをやっている労働組合を御存じですか。
  132. 小鴨光男

    説明員(小鴨光男君) 最初の問題でございますが、この問題につきましてはスライドというものを具体的にどうするかという点についてにわかに私に判断できないわけでございますが、基準法全体というものの中で、現在いろいろ実態に合わないという点もいろいろ指摘されておるようでありますので、この点については、来年度から、先生御指摘のような点も含めまして、賃金についての実質的な労働者の保護という観点から改正検討する態勢になりつつあるわけでございます。その際におきましても、いま先生申されましたような点について十分検討していきたいというふうに思っておるわけでございます。  それから、二番目の点でございますが、これは先生御承知のように、団体協約締結、これ自体は全く労使の自主性によって締結せられるべき問題でございまして、従来労政行政としてもそういう指導をしているわけでございます。ただ、団体協約の中にスライド制がいままであるかどうかという点については、先生御指摘されましたように、いわゆるインフレの時期、昭和二十五、六年ごろのことですが、そのころにおきましては若干ございました。しかし、現状におきましては、ごく少数の例を除きまして、一般には統計上把握した限りでは行なわれていないという現状でございます。ただ、先生御指摘の、この消費者物価上昇によって賃金をスライドすべきじゃないかという点を協約上具体的にやったらどうかという点についての指導は、先ほど申し上げましたような自主的決定という原則の課題もございますので、なお今後十分検討していきたいと存じます。
  133. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私が承知している限りでは、岩波書店がそういうスライドを前からやっている。それから、前に昭和電工がやっていたのですが、これは廃止されちゃったのですね。そういう関係から、そういう実態がわかったら資料として、なるべく早いほうがいいんですけれども、いつまでと言いませんけれども、そういうスライドをやっているところをできたら資料としてひとつ出してもらいたい。それから、過去にやったところでも、こういうようなスライドをやっていたその事例がありましたらお願いしたいのです。よろしゅうございますか。
  134. 小鴨光男

    説明員(小鴨光男君) できるだけ調査して御報告いたします。
  135. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もう時間がなくなりましたが、せっかく各省の局長さんにきていただきましたので、共通的に伺いますが、厚生省の関係、それはやはり物価値上がりとの問題ですね。物価値上がりというのは、ぼくは貨幣価値の減価、これが値下がりする、そういうように私は考えているのですが、それは価格の値上がりじゃなくて、物価、いわゆる総物価ですから、そういうふうに把握して、その場合、厚生省関係で年金の問題があるでしょう。それから社会保険の問題、生活保護費の問題がございますね。いままで、とにかく昭和三十五年から現在まで、大体五二、三%ぐらい消費者物価が値上がりしているのですよ。たいへんな貨幣価値の減価なんですよ。で、また今後六%ずつ異常な物価値上がり、貨幣価値の減価が続こうとしているが、こういう際に、厚生省は、物価の問題とそういう厚生行政との関係についてこれまでどれだけ真剣に取り組んできたのか、年金の問題もそうでしょう、それから共済の問題、公務員の退職金、そういう問題がありますね。それから生活保護費の問題、受益者負担の原則で、今後みな社会保険料を引き上げるような作業をしているように聞いておりますけれども、私は非常にその点問題があると思うのです。物価値上がりとの関係、貨幣価値の減価との関係において、こういう問題を総合的に私は考えなければいかぬと思うのですよ。一体、厚生省はこういう問題についてどうしてきたのか、今後どうしようとしているのか、この点を伺いたい。  それから、自治省について伺いたい。自治省は、これは地方財政は相当関係あるわけですよ、物価値上がりと。これは補助負担金の問題ですね、これは受益者超過負担との関連も出てくるわけでありますけれども、自治省は物価問題にどういうふうにこれまで取り組んできているのか、異常な物価値上がりが今後まだ続こうとしているのですが、これに対してどういう作業をしているのか。  それから、建設省も非常に重大な関係があると思うのですよ。これは単価の問題ですね。ですから、こんなどんどん物価が上がるときにわれわれ予算を見たって、名目的な金銭で計上された予算でしょう。これだけでは実績評価はなかなかできないですよ。また、実際の予算実績とは非常にズレがきてしまうのですね。それが今後また非常な財政硬直化で、次年度において予算をたくさん組まなければならぬ、こういう問題が起きてくるわけですから、そういう点についてどういうふうに考えているか。  それから、最後に、これは経済企画庁、あるいは主計局、どちらでもいいんですが、物価安定対策関連経費としてこれまで予算を組んでいるのです。これは私は決算で見たのですが、大体出された資料によりますと、四十二年度予算で一兆七百五十七億五千万円という物価安定対策費を計上しているのですよ。ところが、決算では五百七十三億、これより少ないのです。物価安定対策費を予算に組みながら、五百七十一二億使ってないのです。そうして実際こんな一兆七百五十七億も物価安定対策に組んでいるわけです。大体八項目に分けない、こういうことを言われておりますが、この輸入地域の分散問題であるとか、最近において相当業界が積極的に乗り出しております海外の原油の自己開発というような大きい問題がこの業界の前に立ちふさがっておるというように考えておりますが、さらに最近の公害問題、これは御承知のように、大きい問題でございまして、過去において無計画に工場を建ててしまった、しかも、大気は汚染されて、この対策は実は道路問題よりももっと大事なんじゃないか。実は私もここの参議院の公害対策特別委員の一人として、現在八方から聞いておりますが、この問題も業界のすばらしい資本が必要とされておる。こういう時期に一体まだ六一%のガソリン税では足りなくて、五〇%の軽油引取税では足りなくて、まだ税金を上げようというのである、こういうようなことを業界が非常に問題視しております。したがいまして、大蔵、建設当局も十分この点を検討していただきまして、少なくもこの国民一人一人の現在のガソリンの増税が業界のみの増税であるというような考えは大きい間違いである。ということは、一人一人の国民が石油と離れて生活は成り立たない、これは私が申し上げるまでもない問題だと思うのでございますが、そういう時期にこの揮発油税、軽油引取税の増税というのは国民全体に対する増税である、こういうふうに私考えております。  道路一般財源の内容もいろいろ見ておるわけでございますが、四十二年度、四十三年度で大体五カ年計画の三〇・七%というような数字でございます。これは非常に……。
  136. 大竹平八郎

    理事大竹平八郎君) 矢野君、質問中恐縮ですが、質問の趣旨をひとつ。御意見は別にして……。
  137. 矢野登

    ○矢野登君 現在のが質問の内容なんですが、三〇・七%であるということ。ところが四十二年度には八百二十億の政府財政投資があるんですが、四十二年度には四百七十億、こういうふうに非常に減っておるんですが、この減った原因がどこにあるのか、ひとつお答え願いたい。
  138. 二木謙吾

    説明員二木謙吾君) いま御指摘のとおりに、四十一年度は八百十四億円、四十二年度は八百二十一億円、それから四十三年度は四百七十億円と、こういうふうに一般財源からの投入はなっておるのでありますが、四十三年度は、御承知のとおりに、ある程度公共事業を抑制をする。同時に、また、いまの揮発油税、軽油引取税がたくさん納まった、まあそういうような関係でいまの一般財源から投入する財源が減った、こういうことでございます。
  139. 矢野登

    ○矢野登君 ある文献で私が見たのでございますが、四十四年度の道路財源として一千億の資金があればやや建設省は十分というようなことを見たのでございますが、これが間違っておるかどうか。本年度の税の自然増が一兆四千億、これは先刻の話で、まだ九月の決算を見ないとわからぬというようなお話でございましたが、一兆四千億の自然増があるとすれば、道路財源の一千億というようなものは増税によらなくても十分にまかなえるのじゃないかというように考えておるわけです。まだこれははっきりしないからということになりますと別問題でございますが、そういう問題に対しての御見解を承りたいと思います。
  140. 二木謙吾

    説明員二木謙吾君) 御承知のとおり、経済成長がすばらしく進み、また、日本の産業なり企業発展が順調にいっておる、こういうようなことで、来年度の税の増収は相当多額のものが見込まれるであろう、こういうことは言うことができるのでございますが、まだ私のところには九月末の資料しかございません。八月末では二%順調に税の進捗を示しておりますが、九月に入りまするというと少し進捗率が落ちておるような状況もございます。しかし、いま申し上げましたように、産業経済発展が順調に伸びておりますから、相当額の税収はあるということは申し上げることができるのでございますが、十二月になってみませんとはっきりしたことを申し上げるわけにまいりません。それで、税の税収が相当伸びたが、その伸びをどういう方面に使うか、こういうことになりまするというと、これは総合的に考えなければならぬ問題でありましょうし、いまサラリーマンの税金が高いから中堅所得者の減税を行なえ、あるいは国家の財政の体質を改善する意味から、言うならば国債を減額せいといういろいろな問題があるわけでございますが、それを何をやるということはいままだ的確にきめてはおりません。十二月に入りまして増収の額がわかりまして、そうしてそういう面がはっきりすると、いまあなたがおっしゃられたように、公共事業費道路整備についてはもっと一般財源を投入せい、こういうような御希望はひとつ私も十分考慮したい、かように考えておる次第でございます。
  141. 矢野登

    ○矢野登君 ただいまのお話は了解いたしました。現在の業界がすでに六一%の税負担をしておるということ、これを中心に今後の財源、融投資については御検討を願いたい。  それから、次に、道路局長にお尋ねしたいのですが、新しい道路の建設費というのは、土地の買収が八〇%で、道路建設は二〇%、多少そこには違いがあるかと思うのですが、そういうことを私聞いておりますが、事実かどうか。もしそれが事実とすれば、その土地を取得するのは国である。国道は国である。国が道路を取得するのに、しかも、用地費が八〇%ということになりますと、それを取得する財源を石油税でまかなう、これは非常に矛盾しているんじゃないかと思うのですが、そういう問題についての御見解を承りたい。
  142. 蓑輪健二郎

    説明員蓑輪健二郎君) ただいまの、道路をつくります場合の全体の建設費の中で用地費が何%入っておるかの問題でございます。これは一般の道路では非常に高いところ、安いところございますが、大体二〇%くらいではないか。都市の中の街路事業になりますと、これも九割を占めておるようなところもございますが、大体平均いたしますと四〇%ぐらいが用地費ではないかと思います。で、これに対してガソリン税を入れるということでございますが、やはりこれは一つの国の財産ということで、税金からこれを買うということでございまして、それがガソリン税になっておるか、また、そのほかに入っております一般の税収で買っておるか、これは非常にむずかしい問題だと思いますが、いまのところは、やはりガソリン税を主体とし、さらに不足を一般財源で補って、それで道路建設をしていくこともやむを得ないのではないかというふうに考えております。
  143. 二木謙吾

    説明員二木謙吾君) いまの問題で補足説明をいたしたいと思うのですが、用地の買収費が、大阪とかあるいは東京とか、そういう大都市には、いまおっしゃられるように、あるいは六割も八割も用地買収費が要るのでありますが、大体いま建設省からも答弁がございましたように、三十九年度では事業費に対して用地買収費が二五・八%、四十年が二五・七%、それから四十一年が二九・一%、四十二年が二八・五%、そういうふうに、大体二割、あるいは三割までいかないような状況になっておる次第でございます。
  144. 矢野登

    ○矢野登君 ただいまの問題は了解いたしました。  次に、増税が中小企業に転嫁されるのではなかろうかというようなことを心配しております。ある文献によりますと、現在ガソリンの使用量は、中小企業が七七%、軽油の使用は七三%、平均しましても七五%が中小企業並びに農林漁業がこれを使っておる、こういうことに見ておりますが、現在の政府の根本対策一つに、中小企業をいかに育成するかということがあると思うのでございますが、ややもすると。この税の負担が中小企業に非常に多く賦課されるような傾向がないかどうか。しかも、この道路財源の七七%、ガソリン税の七七%は中小企業がしょうんだということにおいては、ほんとうにこれは検討をし直さなければいけない問題じゃないか、こういうようなことを考えておりますが、これに対して中小企業の揮発油税の負担というものに対して道路局長さんの御見解をお願いしたい。
  145. 蓑輪健二郎

    説明員蓑輪健二郎君) これも仮定の問題でございますが、ガソリンとか軽油とかいうものを引き上げた場合に、はたしてそれが全部小売り価格にかかってくるのかどうか、これが一つ問題があろうかと思います。また、それが全部小売り価格にかかった場合には、どのくらいの引き上げ率によってどういう種類にどういうような影響があるかという問題になるのでございますが、まあ一番私たちの調べておりますところでは、やはり輸送の運賃に非常に響いてくる。さらにそのほかに輸送費も入りますし、消費者物価、卸売り物価というのは輸送費の占める率によって多少上がるのでございますが、そのほうの上がり方は非常に少ないのじゃないか。やはり一番影響されるのは運賃に出てくる。その中で、やはり軽油をもし上げれば、軽油を使うバスとかトラックというものに影響は出てくると思います。これがどのくらい上げるかによってどのくらいの影響になるか、これは非常にむずかしい問題がありますので、この辺も現在私たちいろいろ調査しておるところでございます。
  146. 矢野登

    ○矢野登君 あと一つだけお尋ねいたしたいと思います。関連しておりますが、先刻の中小企業と申し上げましたのは、全体のバスは入っておらない数字と、こういうふうに発表されております。バスはかなり大企業が経営しておりますので、これは一般の中小企業のうちから抽出したものである。バス、トラック、タクシーの業界が税の値上げによって運賃を値上げしていくということは当然なことと思います。先刻木村先生も、この問題については、深く公共料金を押えるということでお話がございましたので、こまかいことは省略いたします。とにかく私の考えることは、税は公平でなければいけない。少なくも、この揮発油税が六一・二%を現在上げておって、さらに値上げをしなければならない。ほかに財源がなければ、道路の多少建設がおくれても、五カ年計画があるいは五カ年半になり、六カ年になるとしても、この中小企業、それから諸物価の値上がり、公共料金の値上がりというようなものを考えれば、道路計画は、泣いて馬謖を斬るということばもございますが、多少見送っても、こうした税金は十分に考慮すべきではなかろうかということを申し上げまして、私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
  147. 大竹平八郎

    理事大竹平八郎君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  148. 大竹平八郎

    理事大竹平八郎君) それでは速記をつけて。
  149. 渡辺武

    ○渡辺武君 先ほど中途で質問を打ち切ったわけでありますが、私は、先ほど、今度の国税不服審判所の設立に伴って納税者が立証の義務を負わされるようなことに事実上なるのじゃなかろうかと、このことは記帳の余裕もないような小さな業者に対して、記帳の義務、それから立証の義務というようなものを事実上強要することになってしまうので、大きな苦痛を与えることにもなるし、同時に、また、これは現在まだ一般の民事裁判でとっている裁判所の共通の見解とも反した不当なものじゃなかろうかということを申し上げたのですけれども、その先ほど私が読みました、納税者のほうが「申立ての趣旨、理由及び根拠を明らかにした審査請求が行なわれた場合には、処分庁の側においても、一定の期間内に、処分の理由、調査経過等を記載した理由等記述書を国税不服審判所に提出するものとする。」という点がございますね。この点は証拠責任の分配の問題について述べているのか、それとも証拠申し立ての順序について述べているのか、その点お答えいただきたいと思います。
  150. 吉國二郎

    説明員吉國二郎君) この点は、まず答申の考え方では、審査請求をする以上は、それについての異議申し立ての理由と、それを裏づける資料、事実というものを出すべきものである、それが出て、したがって、ここで初めて審査請求というものがあらわれますと、これに対して担当課税官庁からその決定の理由について述べるということでございまして、これは先、あとというよりは、双方が主張を出し合うという意味で、時間的には審査請求が先でございますから、先になるようでございますけれども、証拠申し立ての順序というような問題でないと思います。ただ、今度の新しい考え方といたしましては、この点は若干変えたい、つまり異議申し立てをして、異議決定をいたします際に、この理由等記述書に近い理由説明を先に決定書に書きたい、それに対して審査請求に理由なり反駁を書くという体制にしたいと思っております、実際の制度は。
  151. 渡辺武

    ○渡辺武君 そうすると、国税通則法の第八十八条ですね、ちょっと読んでみますと、「裁判所が相手方当事者となった国税庁長官、国税局長、税務署長、税関長その他の行政機関の長の主張を合理的と認めたときは、その訴えを提起した者がまず証拠の申出をし、その後に相手方当事者が証拠の申出をするものとする。」という条項がございますが、つまり処分庁の処分が合理的だったというふうに裁判所が認めた場合、その納税者のほうに証拠を申し出るあれがあるということなんですが、これとの関係はどうなりますか。
  152. 吉國二郎

    説明員吉國二郎君) これは裁判手続における証拠申し出の順序を書いたものでございまして、それとは関係ないわけでございます。
  153. 渡辺武

    ○渡辺武君 それでは、次に、もう一つだけちょっとお尋ねしたいのですが、この答申によりますと、納税者は、まず税務署などの処分庁に異議の申し立てをやって、そして異議の決定があった後に、さらに国税局長または国税庁長官に審査請求を行なう、こういうことですね。その場合に、国税不服審判所がこれを処理するということになるわけですね。その場合、裁判所に納税者が訴訟を起こすことのできるのは、一体この不服申し立てのどの段階で訴訟を起こすことができるのですか。
  154. 吉國二郎

    説明員吉國二郎君) これは従来から訴願前置主義をとっておりますから、審査請求が終わった段階で、あるいは審査請求をして三カ月答えがないというとき、あるいは審査決定があって不服がある、この際に訴訟を起こせるという構成になっております。
  155. 渡辺武

    ○渡辺武君 そうすると、訴訟前置主義は、この国税不服審判所の問題について依然として採用しておるということは、私は非常に重要な問題だと思います。この訴願前置主義が納税者の権利を著しく阻害している、侵害しているということは従来から盛んに論じられた問題です。今度納税者の権利を救済するのだということであなた方は国税不服審判所をつくろうというふうにしておられると、私はこれを読んでそういうふうに読めたのですけれども、それなのにもかかわらず、いままでの協議団制度よりももっと大がかりな国税不服審判所というものをつくって、そしてこの審判をとにかく原則的には経なければ裁判所に訴訟を起こすことができないということになりますと、これは権利の救済どころじゃないです。権利のたいへんな侵害です。御承知のように、憲法の第三十二条、私が申し上げるまでもなく、国民は裁判所で裁判を受ける権利を侵されないということがちゃんとうたわれているじゃないですか。ところが、この国税不服審判所のあれによりますと、とにかく異議申請をし、そしてそれで決定が下って、それに不服で、それで今度国税不服審判所の審査を経て、そのあとでなければ裁判所に訴訟を起こせない、これは憲法の条項を全く踏みにじるものだと考えざるを得ない。  それで、もう一つ私は言いたいのです。いいですか。先ほど申しましたように、いまの裁判所は、この国税の問題については、これは国税庁のほうに立証の義務があるという一貫した立場をとっておられる、そうでしょう。ところが、いまの国税不服審判所によりますと、先ほど私が明らかにしたように、なるほど処分庁のほうも立証をするけれども、同時に、また、納税者も立証すると、こういうことになっておる、そういうことでしょう。そうしますと、いま裁判所が民事訴訟で一般的にとっておる態度と全く反した、原則を踏みにじるようなことを、これを裁判の前にやっちゃう、こういうことになると思いますが、このことは権利の救済どころか、これはひどい侵害だと言わなければならないじゃないですか。
  156. 吉國二郎

    説明員吉國二郎君) 訴願前置主義は行政不服審査法一般の原則でもございます。憲法違反ということはないと思います。憲法は「裁判を受ける権利を奪はれない。」、これは裁判を受ける権利ははっきりあるわけです。これが憲法違反ということはあり得ないと思います。  それから、挙証責任の問題は、先ほども申し上げましたように、立証をさせるさせないの問題とは違いまして、両方が立証できない場合にいずれの主張を退けるかという問題、ここに言っております問題はそうではございません。主張をする以上は、立証がなければ判定のしようがないわけでございます。税務官庁側が主張して立証した場合に、納税者が立証をしないから、したがって、税務官庁の主張は退けなければならない、そういう問題ではございません。したがって、挙証責任の分配の問題とここに書いてある問題とは全然違う問題だというふうにお考え願いたいと思います。事実、裁判所で挙証責任の分配がいま納税者側にあるというふうな見解が明確には出ておりませんが、おっしゃるように、大体そういう傾向はあるように思います。しかし、その問題とこれとは全然違う問題でございますので、その点は御理解願いたいと思うわけでございます。
  157. 渡辺武

    ○渡辺武君 時間がないので、あまりその問題について立ち入って論議することができないので残念なんですが、とにかく、いま裁判所が、これがいわばこの処分をして、それについて納税者が不服なときにすぐに裁判所に訴訟ができれば、いま言ったように、納税者は権利を、少なくとも立証という点については、これは権利を保護されて、そうして処分庁が立証しなければならないという義務を持って、それでいままで訴訟は納税者側に有利に解決している場合が非常に多いのです。ところが、国税不服審判所でそういう裁判所を事実上拒否しているようなものですよ。その前に国税不服審判所で審査を受けなければならない、これではいまの不当な税務署の処置をなお今後ますますひどくする、そのための防波堤として国税不服審判所をつくったというふうにしか私はこれは考えられないわけです。  時間がないから、一番最後にもう一つだけ伺いたいと思うのですけれども、この答申によりますと、国税審判官は質問検査権、それから文書の提出及び領置権、立ち入り検査権、こういう調査権を持っているということになっておりますけれども、この点あなた方の案ではどうですか。
  158. 吉國二郎

    説明員吉國二郎君) この点は大体同じに考えております。
  159. 大竹平八郎

    理事大竹平八郎君) まだありますか。一点だけにしてください。
  160. 渡辺武

    ○渡辺武君 一点だけ。  そうしますと、これはいままでの租税法の質問検査権に比べても、比べものにならないほどのきびしく広範なものだと思うのですよ。先ほども申しましたように、一方で納税者に立証の義務を事実上負わせ、他方でもっていままでの各税法の質問検査権に比べても、比べものにならないほどの広範できびしい調査権を持っているというようなことで、これで一体どうして権利の擁護だとか権利の救済だとか言えますか。時間がないからここで打ち切りますけれども……。
  161. 吉國二郎

    説明員吉國二郎君) この調査権は、本人に対しての場合は罰則はございません。従来の協議団は、いまの解釈では、当該官吏として一般の質問検査権があることになっておりますから、それを拒否すれば罰則はあることになっておりますが、今度のは罰則はございません。いま先生のおっしゃいましたように、ほんとうに審判所が国民の権利を守るためには真実を発見することが必要だと私は思います。その場合に、納税者も立証もしない、調査もしないということではほんとうには国民の権利を守れない、国民の権利を守るためには、やはり主張もし、調査もするのが当然だと思うのです。ここに書いてあるのは、従来より調査権ははるかに狭いし、また、罰則もございませんので、そういう意味では真実を発見するためのやむを得ない最低限であろうと私は思っておりますので、その点御了察を願いたいと思います。
  162. 渡辺武

    ○渡辺武君 論議は、時間がないので、後日やりたいと思います、この問題は重大ですから。  いままであなた方のほうで検討されておるもの、試案といわれておりますけれども、あれを一日も早くこの委員会に提出していただきたいと思いますが、どうでしょう。委員長、どうでしょうか。
  163. 吉國二郎

    説明員吉國二郎君) これはやはり政府部内の閣議決定を経ませんと、ちょっとなにするわけにはいかないと思います。
  164. 大竹平八郎

    理事大竹平八郎君) 他に御発言もなければ、本件の質疑は、本日はこの程度にとどめます。     —————————————
  165. 大竹平八郎

    理事大竹平八郎君) この際、おはかりいたします。先般、本委員会は、租税及び金融等に関する実情調査のため、東海、近畿地方及び中国、四国地方へ委員派遣を行ないましたが、派遣されました委員の方々からそれぞれ報告書が委員長の手元に提出されておりますので、これを本日の会議録の末尾に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  166. 大竹平八郎

    理事大竹平八郎君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時五十二分散会      —————・—————