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1968-10-08 第59回国会 参議院 商工委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年十月八日(火曜日)    午前十一時十五分開会     —————————————    委員異動  八月九日     辞任         補欠選任      鈴木 一弘君     矢追 秀彦君  九月五日     辞任         補欠選任      平泉  渉君     柳田桃太郎君  十月七日     辞任         補欠選任      矢追 秀彦君     内田 善利君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         金丸 冨夫君     理 事                 近藤英一郎君                 土屋 義彦君                 小柳  勇君     委 員                 大谷 贇雄君                 川上 為治君                 玉置 猛夫君                 山本敬三郎君                 阿具根 登君                 大矢  正君                 近藤 信一君                 竹田 現照君                 内田 善利君                 塩出 啓典君                 田渕 哲也君                 須藤 五郎君    国務大臣        通商産業大臣   椎名悦三郎君        国 務 大 臣  鍋島 直紹君    事務局側        常任委員会専門        員        小田橋貞寿君    説明員        科学技術庁科学        審議官      高橋 正春君        科学技術庁原子        力局長      藤波 恒雄君        厚生省環境衛生        局公害部長    武藤き一郎君        食糧庁業務部長  馬場 二葉君        通商産業政務次        官        熊谷太三郎君        通商産業省企業        局立地公害部長  矢島 嗣郎君        通商産業省化学        工業局長     後藤 正記君        通商産業省鉱山        石炭局鉱政課長  林 信太郎君        通商産業省鉱山        石炭局石炭部長  長橋  尚君        通商産業省鉱山        保安局長     橋本 徳男君        通商産業省公益        事業局技術長   藤井  孝君        中小企業庁長官  乙竹 虔三君    参考人        中小企業振興事        業団理事長   馬場 靖文君        産炭地域振興事        業団理事     有馬 駿二君     —————————————   本日の会議に付した案件参考人出席要求に関する件 ○委員派遣報告産業貿易及び経済計画等に関する調査  (中小企業振興対策等に関する件)  (地域振興に関する件)  (公害病に関する件)  (原子炉安全管理に関する件)  (電力ダム用水管理に関する件)     —————————————
  2. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  この際、委員異動について御報告申し上げます。  去る八月九日、鈴木一弘君が委員辞任され、その補欠として矢追秀彦君が選任せられました。  また九月五日、平泉渉君が委員辞任され、その補欠として柳田桃太郎君が選任ぜられました。  さらに十月七日、矢追秀彦君が委員辞任され、その補欠として内田善利君が委員選任せられました。     —————————————
  3. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) まず、参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  産業貿易及び経済計画等に関する調査のため、本日の委員会参考人出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 御異議ないと認めます。  なお、その人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  6. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 次に、委員派遣報告に関する件を議題といたします。  先般、当委員会が行ないました産業貿易及び経済計画等に関する実情調査のための委員派遣について、派遣委員から御報告を願います。  まず第一班の御報告を願います。
  7. 土屋義彦

    土屋義彦君 派遣委員の御報告を申し上げます。  第一班は、五名の委員が参加いたしました。金丸委員長大谷近藤信一須藤の三委員と私土屋であります。期間は九月十一日から四日間、黒部富山福井、九頭龍を視察し、目的は、電源開発繊維工業構造改善を見ることとでありました。以下簡単にその経過と結果について申し上げます。  まず電源開発でありますが、関西電力会社黒部第四発電所と、その下流一連黒部水系発電所を視察し、富山北陸電力現状問題点を聴取、九頭龍川で電源開発が最近建設し、実は明九日に竣工式を行なう長野と湯上の発電所と、これに関連いたしまして北陸電力建設いたしました西勝原第三発電所等を視察したのであります。  私どもはこのように現地では水力発電所しか見ませんでしたが、電力エネルギー問題につき北陸電力説明を受けましたところ、現在は火力中心になり、火主水従の形となっております。北陸のように水力電源に恵まれたところでさえ、すでに火力発電所建設し、これと関連いたしまして、日本石油という共同出資石油精製会社を発足させ、現在建設中であります。そして将来のエネルギー源といたしましては原子力期待され、今回は割愛しましたが、同じ福井県の若狭湾には原子力発電会社の敦賀、関西電力の美浜と二つの大規模原子力発電が着々建設中であり、北陸電力でも、能登半島に適地を求めて計画中であります。  それでは水力発電はもはや過去のものになってしまったのかと申しますと、決してそうではなく、今後も、その開発を怠ってはならないと考えるのであります。その理由は大きく分けて三つございます。  第一は、水力電気の持つ特性からいたしまして、火力原子力を補完する意味から、火主水従時代に必要だということであります。水力ピークの時に直ちに発電能力を増し、深夜等の電力不用のときには発電をとりやめることができる。場合によると、深夜等に常時発電火力余剰電気を利用して、水を揚げておいてピーク時にこれを落として発電するという揚水発電さえ可能であり、電発長野発電所がこの揚水発電を行なって、北陸電力ピーク時を補完しようとしているのであります。したがいまして、火力中心になればなるほど、それに応じて水力発電ことにダム式のそれが必要になり、水力火力を合わせてはじめて経済的な電力経営が成り立つことになるのであります。  第二の理由といたしましては、国産エネルギー重要性であります。火力エネルギー石炭から石油に移り、さらに原子力へ移るといたしまして、いずれもが輸入にまたねばならず、外貨を要するのであります。石炭国産エネルギー重要性を認められると同様、水力もまた重要な国産資源であります。日本はもともと地勢が険しく、多雨地帯であるため、水力資源はすこぶる豊富とされたのであります。工業化の進まなかった時代には、あり余るほどの水力電気があり、北陸地方のごときも、それに恵まれて工業化が促進されたところであります。いま日本水力開発が進んだとはいえ、この水力を全部利用しつくしているわけではなく、私どもが見ました黒部にしても九頭龍にしても、その重要資源がつい最近まで眠っていたのであります。  第三の理由として、電力プロパーの問題からはやや離れますが、国土保全という副作用のあることであります。九頭龍の長野発電所ダムの上位、四メートルは洪水調節のために利用することになっており、このため建設予算十七億円が投入されています。これによって九頭龍下流洪水はほとんどなくなったようであります。私どもは、洪水予防のみならず、農業用水工業用水、さらに上水道のため、せっかく降った水をただ海へ流すことなく、水資源をフルに活用することの必要を教えられたのであります。  こうした理由から、ダム建設の必要は痛感するのでありますが、地面種々の困難も伴うことを知らされました。それは簡単に申せば適地がだんだん少くなるということであります。関西電力では黒四の上流に黒五を計画していますが、これはさらに山が険しくなり、いつ実現されるか見当がつきません。黒四の建設が世紀の大事業であったことは御承知のとおりで、あえて申し上げませんが、山奥になればなるほど苦労が多くなるのであります。そうかといって人家の多いところは補償問題がますますやかましく、九頭龍長野にしても、埋没家屋五百戸、道路、田畑等の補償を加えると六十七億円にのぼり総工費の二六%を占めるということであります。また長野のごときはダム地点の地盤が悪く黒部のようにコンクリートのダムをつくることができず、岩石と粘土を積んでロック・ヒル・ダムとしていますが、工法も最近は研究が進んで、安くできるようになり、電発では御母衣、長野に次いで、大津岐を手がけています。  次いで、私どもの問題にした繊維工業につきましては、福井市で、県、市、繊維関係諸団体と懇談したのち、酒伊繊維福井精練日卯合繊協同組合針ケ谷ジェット織物会社を見学しました。  御承知のとおり、資本自由化後進国特恵等中小企業は非常なきびしい環境の中にありますが、繊維工業では特に技術革新労働力不足等影響を受け、構造改善に関し特別の立法措置を行なった次第であります。したがいまして、わが国第一の繊維県である福井は、とりわけこれを重視し、官民あげて真剣にこの問題に取り組んでいるのであります。  構造改善は現在織物業について実施中でありますが、県全体として、現在四十一年度の織機台数七万六千台を、将来(四十六年度)までに六万一千台に縮小し、古い織機にかわって新鋭自動織機を多くしようとしています。またグループ化を促進して、企業数減少もはかり、企業当たり織機台数を多くするようにいたしております。要するに、企業集約化新鋭設備導入、品質の高度化をねらい、労働者が喜んで来るような織物業になることを心がけ、全体の所要経費二百九十六億円、すでに昨年度だけで二十六億円を投入しております。  私どもが視察して感じました点を申し上げますと、  第一に、技術革新の波が伝統的な繊維工業にも強く浸透しつつあるということであります。織機についてはおさの要らないウオーター・ジェットルームという機械導入され、私どもの見た従業員、たった十五名の日卯という組合工場でも針ケ谷という企業合同の小工場でも、これが活発に動いていました。また進歩した整経機連続精練機ども採用され、いずれかといえば高価な機械大量生産に向くとともに、省力的な機械開発されているのであります。  第二に、このような技術に対応するためには、現在の企業はあまりに数が多く、資力不十分で、この革新の波に乗りにくいということであります。業者数二千八百、一企業当たり二七・六台という現状過当競争を起こし、市場能力を欠除し、新鋭機導入に不便であります。私どもの視察した日卯も針ケ谷も、ともに組合として、または企業合同で、構造改善計画資金導入してようやくジェット・ルームを備えつけたのでありまして、かかる構造改善必要性を痛感するとともに、これと競争する地位に立たされる群小の企業の困難さをも想像した次第であります。  第三には、製品種類があまりにも多く、これが新鋭大量機械生産にかける場合に障害となりはしないかということであります。織物種類が多く、さらに同一種類織物でも染色では色彩の種類が多く要求されますと、総じて繊維工業では技術革新に乗りがたく、労働力の節約も実行しがたいということなります。もちろんそういうところに繊維工業、特に婦人物などの特色がありますので一がいにそれを否定できませんが、お互いに少量づつ多品種生産するよりも、協業化、共同化の線を進めていく必要があると思うのであります。そうでないと、後進国の低労賃の追い上げに負けてしまうと心配されるわけであります。そういう意味構造改善は緊急を要するものと感じた次第であります。  以上で報告を終わりますが、この際忙しい日程にもかかわらず、何とか所期の目的を達し得ましたのは、各地の関係者各位のなみなみならぬ御配慮があったためで、ここにあらためて謝意を表しておきたいと思います。
  8. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 次に、第二班の御報告を願います。
  9. 近藤英一郎

    近藤英一郎君 第二班は、小柳理事玉置委員塩出委員と私の四名で、期間は九月十一日から十五日までの五日間でした。なお、柳田委員八幡で現地参加されました。視察先は岡山県水島地区中国電力三菱石油川崎製鉄の各事業所東洋工業本社工場及び八幡製鉄所とその下請ないし協力工場三栄工業曾根工業団地であります。  今回の派遣では、八幡富士製鉄合併問題を調査主眼点としたのでありますが、自動車産業石油コンビナート実態等についても調査してまいりました。以下調査概要について御報告申し上げます。  まず、八幡富士合併八幡地区地元下請産業への影響等について申し上げます。この点について製鉄所側では、「合併国際競争力を強化するため、コストの低下、収益の増大をはかるためのものである。したがって、この製鉄所自体では高能率の新鋭設備への切りかえはあっても、全体的に生産規模を縮小するようなことば絶対にない。また、下請工場への発注の減少もあり得ない。ただ下請協力工場自体も強い体質になって、八幡のみにたよらないで済むよう成長してもらいたい」とかたい決意を披瀝しておりました。  申すまでもなく、この製鉄所設備も老朽化している上に、港湾施設も狭隘であるため、合併の有無にかかわらず、レイアウトや設備合理化生産品種の選別を行なうとともに、なお、銑鋼生産の主力を君津等の新しい製鉄所に移そうとする構想が示されております。この合理化構想合併によって具体的にどのような姿になるかは今後の問題でありますが、現時点で予想されることは、現在、八幡製鉄所銑鋼生産に従事している労働者相当数君津等移動することもあり得るとのことでした。  この点について組合側は、「合併会社側との相互信頼のもとに考えており、組合としては、合併によって労働移動がある場合は、労働条件あるいは労働環境が現在より悪くならないこと、そして、労働者移動希望者だけに限ること、の二点が守られるなら合併に必ずしも反対しない」と主張しておりました。  とにかく、八幡製鉄といたしましては、この地区が発祥の地であり、企業社会的責任からも地元への影響がないように配慮しつつ、若返り計画のマスター・プランの策定を急いでいるようであります。  このような製鉄所側の考え方に対し、下請協力企業はどう見ているかについて、代表七名の方々と懇談いたしました。その結果は、合併に賛成の立場をとるものがほとんどでした。その理由として指摘しておりました点は、「下請協力企業が最も大きな打撃を受けるのは、鉄鋼市況の好、不況の波が大きく、かつ激しいということで、もし合併によって市況が安定するならば、このメリットのほうが大きい。要は下請企業自身企業体質の問題で、個々の企業がそれぞれに独自の高い技術開発を行ない、経営合理化をはかるなど、体質の強化をはかり、受け入れ体制を常に整備しておけば、合併によるデメリットは出てこない」ということでした。中には、富士製鉄からの新しい受注ができるというメリットもあるという積極的な意見もありました。反面、合併によって、下請企業間の競争が激しくなるとか、あるいは設備改善が必要になり、その資金等の手当てをどうするかなどの心配も若干あるとのことでありました。  しかし、この懇談会出席された方々は、下請協力工場でも大手の人たちですので、必ずしも全体の業者の声ではありません。私どもといたしましては、第二次以下の零細な下請業者地元商店街に悪い影響がないかなどについて、今後とも注目していかなければならないと思いました。その一例として、曾根工業団地のごとき、全部が直接八幡製鉄所下請工場ではなく、比較的零細な企業が集まっておるところでは、労働安全性とか設備近代化などに立ちおくれが目立ち、合併問題とは一応切り離して考えても、大きな問題であるのではないかと推測されるのであります。この点、政府でも中小業金融資金ワク増大等助成措置あるいは労働安全管理についての指導等を幅広く講ずることが必要ではないかと痛感した次第であります。  一方、私どもの参りました水島川崎製鉄では、八幡富士製鉄合併への動きに対し、「競争力工場ユニット規模とその能力の問題であって、会社そのもの規模の問題ではない。したがって、両製鉄合併については別に意に介していない」と言っており、それを裏づけるように、水島製鉄所は、年間粗鋼ベースで八百ないし一千万トンの生産体制を目指し、一工場ユニットとしては世界でも有数の近代的な製鉄所の青写真を描いております。もちろん、川崎製鉄自身、他社との合併の意思など全くないとのことで、むしろ八幡富士製鉄合併に対し、強い競争心を燃やしていることが印象づけられました。  次に、自動車産業について申し上げます。私どもは、一時外資との提携が話題にされた東洋工業に参りましたが、ここでは、ロータリー・エンジン開発の成功を契機として、飛躍的に設備近代化拡大をはかり、また、電子計算機を使った販売体制事務合理化を行ない、業界内の激烈な競争に対処しているとのことでした。さらに、労働者の給与や労働条件でも手厚くしていることを誇りにしており、そういう労務対策と高い技術水準によって業界における確固たる地位を確保しようとする意欲が見られました。また、問題の外資との提携とか合併については、全然考えていないとのことでありました。  次に、水島コンビナート概要問題点につきまして簡単に申し上げます。  水島工業地帯は、倉敷市の西方を流れる高梁川河口東部に位置し、豊富な工業用水、良好な港湾等が整備され、その将来性が期待されております。現在のところ水島地区は全計画の三分の一程度の完成にすぎませんが、すでに造成の終わった工業用地約二千三百六十六平方メートルには、五十二企業の六十工場が進出しております。さらに今後は、高梁川以西の王島市にも千六百五十万平方メートルの工業用地造成計画をしており、ここへの企業誘致が進めば、鉄鋼石油機械等の大臨海工業地帯が出現することになります。  私どもの参りました三菱石油水島製油所は、水素を添加しながら分解、脱硫を行なえるアイソマックス装置等新鋭設備をもって、良質の石油製品を生産するとともに、化成水島ほか四工場石油コンビナートを形成し、ナフサの供給もしております。  また、中国電力水島火力発電所は、水島地区動力源として建設され、同地区の発展とともに、その重要性を高めておりますが。ただ、今後この地区に予想される電力需要の増加に、どのような方法で対処するかについての課題が残されているようでした。  この水島地区について、どこの工業地帯にも共通する問題として公害問題があります。同地区公害については大気汚染異臭魚の発生が特筆されます。  大気汚染につきましては、県のきびしい規制方針に対し、企業側では集合高煙突建設などその防除について協力し、成果をあげておりますが、三菱石油での話では、異臭魚問題については、まだ地元漁業組合との間で完全に解決されずにいるとのことであります。  異臭魚問題といいますのは、水島水域でとれた魚が、油くさくて食用に適さないということで、これについては、この地区に立地している各工場が、とれた魚類を市価の七割の価格で買い上げることで一応の話し合いがついているようでありますが、こういう漁業補償問題が円満に片づくのには時間がかかりそうであります。  以上、はなはだ簡単でありますが、派遣報告を終わります。なお、今回の調査にあたり、御協力をいただきました方々に対し、この席をかりて厚く御礼申し上げます。  以上でございます。
  10. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 以上をもちまして派遣委員報告は終了いたすことにいたします。     —————————————
  11. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 次に、産業貿易及び経済計画等に関する調査議題とし、中小企業振興対策地域振興対策公害病原子炉安全管理の諸点について、これより順次調査を行ないます。  質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  12. 小柳勇

    小柳勇君 通産大臣に質問いたします。いまの報告にもございましたように、八幡富士合併で、あの地域下請産業、特に中小企業が非常に動揺している。まあ報告の中には楽観的なことばが多いのでありますけれども八幡の親会社を目の前にしての発言でありまして、私は地元におりまして、いま報告に盛られてないものを感じておるわけであります。したがって、関連して中小企業振興に対する重要な問題を質問いたします。特に予算編成期でありますから、通産大臣のいろいろ予算編成に対する構想もありましょうから、そういうものを中心に質問したいと思います。中小企業振興事業団が昨年発足いたしまして着々とその実績をあげておられますが、その現状についてはあとで質問いたします。大臣が時間がないようでありますし、あと同僚議員の質問がありますから、大臣に関係するものを先に質問いたします。  まず、中小企業構造高度化のために、中小企業振興事業団資金を、もっと大幅に拡大をして、事業共同化工場及び店舗集団化を一そう推進強化することが必要であろうと思うが、中小企業振興事業団に対する出資増額など、資金大幅増額に対する大臣の御見解なり、現在の活動状況をお聞きいたします。
  13. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 事業団に対する期待が意外に高いのでございます。まだ発足早々でありますけれども、非常に期待が大きい、そういう情勢があらわれておりますので、われわれはできるだけこの期待に沿うように、来たるべき通常国会に提案すべく、資金問題については懸命の努力を払いつつあるような状況でございまして、その詳細については、長官から御説明を申し上げます。
  14. 乙竹虔三

    説明員乙竹虔三君) 数字に即しまして、いま大臣の申し上げましたことを補足いたします。事業団予算でございまするが、四十二年度は事業団予算の中で、これは大きく分けまするといわゆる一般案件、これは工業団地、それから商業団地店舗共同化共同施設でございまするが、これが一般案件と申しております。これが一つグループでございまして、それからもう一つグループ繊維構造改革をやっております織布のグループ、これが一つでございます。それから共同工場のものが一つ、こういうふうになっておるわけでございますが、一番問題になっておりますのは、この一般案件でございますので、これを中心にして御説明申し上げますると四十二年度はこの一般案件一般予算で九十八億五千九百万円計上いたしました。これに対しまして四十三年度でございまするが、予算が百十六億三千四百万円であります。これは一八%増という予算でございまするが、この予算に対しまして、府県側、これは御承知のとおり府県に対しまして融資をいたしまして、府県から共同施設団地等に貸し出される、こういうたてまえになっておるのでございまするが、府県事業団に対します融資要請は、いま申し上げました百十六億三千四百万円に対して二・二倍にのぼります金額の要請がございました。したがいまして、結論といたしましては、府県の要請の四割程度を今年に実施できる、残余は来年度送り、こういうことにせざるを得ない、こういう状況でございます。来年度予算がすでに大蔵省に出ておるわけでございまするが、この百十六億三千四百万円の予算に対しまして七五%増の金額をわれわれは大蔵省に対して現在要求をしております。しかし府県の要望は非常に強うございまして、百十六億三千四百万円に対しまして約四倍、正確に申しますと三・九倍でございますが、この要請があるわけでございます。したがいまして、一七五%の事務ベースの要求と府県の三九〇%の要求と、この差額のギャップがいまある、こういうのが現状でございます。閣議決定によりまして来年度の予算は、事務ベースにおきましては前年度の二五%増ということになっておりまして、通産全省の中からかき集めまして、中小企業庁の予算からもまたかき集めましてこの一般案件は七五%増という予算を組んだわけでございますが、府県の要望に対しましては、いま御説明申し上げたようなギャップがある。こういうことでございます。
  15. 小柳勇

    小柳勇君 大臣、いま長官報告されたように、政府としては七五%の要求をやっておるけれども、県のほうでは約四倍の要請がある。また、出資金が発足のとき百四億三千八百五十万円で発足しておりますが、政府の出資金を少なくとも五百億ぐらいにするようなめどがないかどうか、この二点について大臣の見解をお聞きいたします。
  16. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 出資金は、多少御提示の数字はもう少し正確に検討する必要があると思います。いずれにしても、いま長官から申し上げたように、二倍足らず、一七五%に対して四〇〇%の増の要求ということになりますので、全くこれじゃもう話にならぬ。で、できるだけ財務当局と折衝しましてこれを拡大するようにすでに工作を進めつつあるような状況でございますが、とても四倍の増の要請を満たすということはきわめて困難であると思いますけれども、できるだけこの要請にこたえるように努力したいと考えております。
  17. 小柳勇

    小柳勇君 現状長官報告されたとおりであります。県も非常に期待しておりますから、通産大臣の一そうのひとつがんばりを要望いたします。  次に第二問は、近代化促進の問題でありますが、中小企業近代化資金の融資限度額を大幅に引き上げるとともに、融資ワク、対象種目の拡大をはかり、あわせて償還期限を大幅に延長してもらいたい、こういう切なる要望がありますが、これも金の問題でありまして、融資の限度額を大幅に引き上げるなどは、大臣が相当決意され、長官が奮発されませんと、なかなか実現困難でありますが、現状とそれに対する決意をお聞きいたします。
  18. 乙竹虔三

    説明員乙竹虔三君) 事実をまず御報告いたします。  近代化補助金は融資限度が三百万円ということに実はなっておるわけでありまして、だいぶ中小企業近代化設備も金目のものが要るということになるのでございまして、この三百万円については若干低いという問題が実はあるわけであります。この辺を救いますために実は例外措置が可能になるようになっておりまして、通産局長ないし中小企業庁長官に、県のほうから要請といいますか申請がございますと、例外許可をいたすと、こういうふうになっておりまして、現在のところ、県から御要望さえあればごもっともな御要求についてはみな例外的にけっこうであるという御回答を申し上げている、こういう状況でございますから、限度額の問題については、さしあたり問題は事実上ないのではなかろうかとも思います。ただ近代化補助金につきましては、御承知のように、国が二五%それから県が二五%、民間が五〇%負担ということでございまして、県の負担分についてやはり一つ問題があるということと、それから五〇%分の民間負担分について措置をする必要があると思います。で、県のほうにつきましては、これは地域経済振興でございますから、県も近いぜい奮発していただきたいわけでございますが、民間負担分につきましては、来年度、商工中金、中小企業金融公庫等で、裏、補完的な金融と申しますか、つまり五〇%分の金融については政府の金が流れるように処置をいたしたいというふうに考えております。
  19. 小柳勇

    小柳勇君 償還期限の問題など具体的な問題がありますが、これはまたあとでやりましょう。  第三の問題は、中小企業信用保険公庫に対して、少なくとも百八十億円以上を政府出資して信用補完事業の一そう健全な発展を促進してもらいたい、こういう切なる要望がありますが、これに対する長官の見解を大臣御見解あれば大臣の御見解を。
  20. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 信用補完の制度は非常な私は実績を示しておるものと思います。この方面をさらに拡大強化する必要が大いにあると、かように考えますので、保険公庫に対する財政負担と申しますか、資金導入については極力努力をいたしたいと考えます。なお詳細は長官から……。
  21. 乙竹虔三

    説明員乙竹虔三君) 保険公庫の出資金は、本年度予算におきまして準備基金二十五億、それから融資基金七十億、計九十五億を法律改正によりまして出資増加をお認めいただいたわけでございまするが、来年度は準備基金八十億、それから融資基金百億円増加の要求を、これは形式的には大蔵省予算でございまするので、大蔵省の予算といたしまして予算案に計上してございます。でこの百八十億が通りますれば来年度の保険公庫の運用については支障がないものというふうに考えております。
  22. 小柳勇

    小柳勇君 第四の問題は政府経営の三金融機関に対する財政投融資の金額の増加であります。そして、現在中小企業金融に対する逼迫情勢を打開してもらいたいという要請がございますが、いかがでございますか。
  23. 乙竹虔三

    説明員乙竹虔三君) 先生おっしゃるとおりでございまして、私たち財政投融資の来年度要求といたしましては、三機関合わせまして、四割五分でございますか、本年度に対する増加要求をいたしております。来年度は、ちょうど引き締めを脱しまして、順調に経済が伸びるときでございますので、この引き締め時に、何と言いますか、背中を屈しておった中小企業が、この経済の伸びる時期に近代化体質改善をやる絶好な時期である、それがためには市中金融の中小企業への導入につきましては、もちろん考えなければいけませんけれども、直接政府の持っております手段でございます三金融機関に対しましては、そういう考え方で大幅の増加に努力いたしたいと考えております。
  24. 小柳勇

    小柳勇君 第五の問題は、大臣に見解を聞きますが、中小企業に対する租税負担の軽減についての大臣の決意を聞きたいと思います。
  25. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これらにつきましては、従来の施策の方向に従って、専従者控除の引き上げ、あるいは事業税の軽減、それから同族企業の留保金額の限度引き上げといったようなことを考えております。
  26. 小柳勇

    小柳勇君 長官から具体的に青色申告、白色申告及び専従者控除などの具体的な問題について見解をお聞きいたします。
  27. 乙竹虔三

    説明員乙竹虔三君) 申しわけございません。ちょっと資料を持ってきませんでしたので、後刻至急取りそろえまして、いま大蔵省に提出中の中小企業税制改正に対する御説明をいたしたいと思います。
  28. 小柳勇

    小柳勇君 次は、中小企業の問題の最後ですけれども大臣、現在の中小企業指導法では、一般都市に指導員を配置するようになっておりません。特別市指定がございまして、県及び特別市、他の二、三の市がございますけれども、一般的に、いわゆる市町村、特に福岡県など産炭地では、石炭産業の衰微に伴いまして、中小企業も非常に動揺しておる。したがって、指導員の配置を希望しておりますが、中小企業指導法の改正をして一般都市に指導員を配置するような御見解はないのかどうかお聞きしたいと思うんです。  なお、大臣、見当がつかなければ、長官からの見解をお聞きしたいと思います。
  29. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 御案内のように三年間で五%の人員を削減するという施策が出ております。それで、なかなか増員ということになると、むずかしいのでございますが、私は、やっぱり御指摘のとおり、有能な指導員の配置は必要であると考えます。施行したばかりの地方商工会の指導員の要求をいたしましたが、こういうものの、何と申しますか、運営の指導というものをいたしまして、そして御要望の趣旨に沿いたいと考えますが、しかし、一般都市の指導員そのものの配置をあきらめるという意味ではございません。そういうことも考えまして、なお御指摘の点は努力したいと考えております。
  30. 乙竹虔三

    説明員乙竹虔三君) 指導員につきましては、商工会議所のございます市には商工会議所に配置をいたし、それ以外のところは商工会に配置をいたしているのでございまするが、先生御指摘のように、二、三の点に実は非常に足らない点がございまして、法律と申しますか、われわれが希望しているだけの指導員の数が、絶対数が非常に不足しているわけであります。本年度も実は数十名の増員要求をしたのでございますけれども、五%の減員をせねばならぬということで、差し引きわずか数名の増にとどまったわけであります。来年度は税務記帳の指導員の大幅の増、これは本年も達成したのでございますけれども、税務記帳指導員の増加とともに、一般指導員の増加基準によります配置が可能であるような増加、これの要求を現在予算に組んでいるわけでございます。これとともに、指導員の人の質の向上が大事でございまして、それがためには給与の向上安定が大事でございますので、公務員並みのベースアップ、また公務員並みの期末手当あたりも実は予算に組み込んでいる次第であります。
  31. 小柳勇

    小柳勇君 聞いてみますというと、指導員は特殊な会社などにおもに力をさきまして、一般的指導がなかなかできないという批判はあります。一番問題は、指導員の数が少ないことであります。いまおっしゃったように、わずかに数名しか増加せぬというようなことでは、なかなか中小企業はたいへんでありますから、中小企業指導法をもう一回御検討願いたい。これは要望であります。  次は、私ども産炭地域に住んでおりまして、その産炭地域の、現在石炭政策に対する不安はたいへんなものであります。したがって、産炭地域における中小企業あるいは地方財政の振興などについて若干質問いたします。  まず、これは再三問題になるのでありますが、産炭地域などの中小企業あるいは産炭地域に誘致した企業の発展及び地方財政の発展などは、単に通産省だけではなかなか問題が解決せぬのではないか。やはり政府が一体となりまして、各省協力して力を尽くさなければ、地域発展はなかなか思うようにまいらぬと思うが、今度総合開発計画などにおいて、十分各省連絡をして産炭地域の発展を期してもらいたいと思うが、通産大臣の御見解をお聞きいたします。
  32. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 御指摘のとおり産炭地域の振興は多岐にわたっておりまして、決して通産省の所管だけではない、自治省、大蔵省あるいは労働省、運輸省、いろいろな省に、事柄にもよりますが、みな関連をしてきております。それで、結局これを総合してその産災地域の振興ということになるのでありまして、その点に関しましては、従来からも関係の各省と一体になって、そうしてこれを推進してきておるわけでございます。今後もそういう方針でまいりたいと思います。
  33. 小柳勇

    小柳勇君 新聞の報ずるところによりますと、現在、石災抜本対策の最後の案が出そうでありますが、まあ御存じのように北九州−福岡県などは石炭産業はほとんどもう撤退作戦が終了したような情勢で、残るのはもうボタ山と古い炭鉱のあと、あるいは廃屋となりました炭鉱の宿舎など、そういうものだけが残っているわけです。まあ北九州に近い、工業地帯に近いところは逐次産炭地開発が進んでおりますけれども、奥に入りますと、なかなかもう放置されたままですね。したがいまして、各省がもっと道路なりあるいは工場の誘致などについて積極的に働いてもらいたいと思うのですが、特に産炭地域振興事業団が鋭意実績を上げておりますが、あとでその現状については報告を受けますけれども産炭地域振興事業団の活動について、もっと金を出して仕事の種類をふやしてやって、各省のなかなか境界線がはっきりしないような面がありますから、そういうところには十分産炭地域振興事業団で仕事ができるような方向に考えてもらえないであろうかと、私ども地域におりましてそういうものをひしひしと感ずるのでありますが、産炭地域振興事業団予算の増加及びその事業拡大についての大臣の見解をお聞きいたします。
  34. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 結局まあ資金の不足をどうして強化するかということになりますが、こういう点につきましては、目下大蔵省と産炭地の振興には直接の利害関係を持っておる地方公共団体の財政をどういうふうにしてさらにこれを強化させるかということにつきまして、大蔵当局とも話し合っております。詳細につきましては部長のほうから申し上げます。
  35. 長橋尚

    説明員(長橋尚君) ただいまの産炭地域振興事業団事業量、事業種類等の拡充につきましては、まことにお説のとおりでございまして、今後まあ石炭鉱業をめぐる事態は非常にきびしくなろうかと考えますけれども、そういった裏打ちの対策として十分に資金量を確保いたしますとともに、また融資条件についてもさらに改善すべきは善改していく、かような方向で検討中でございます。
  36. 小柳勇

    小柳勇君 産炭地域振興事業団活動状況についてはあとで質問いたします。  大臣、もう一問は、たとえば自動車産業などを産炭地域に誘致してもらいたいという、あるいは八幡富士合併して君津に行くのではないかと、そういう動揺もございますけれども、中核企業を産炭地域導入してもらいたいという希望は一市町村だけでございません。県ももちろんそうでありますけれども、九州全体としてもそういう願いを持っておるのでありますが、中核企業導入なり、また誘致した企業が二、三年で手を上げてしまう。したがって、誘致した企業をもっと手厚く国でめんどうを見てもらわなければならぬ。この二つのことが推進されてまいりませんと、なかなか産炭地域開発というものはできないのでありますが、中核企業導入に対する政府の態度、導入した誘致企業に対する手当て、この二点について大臣の見解をお聞きいたします。
  37. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 結局、企業誘致ということは、これはただ力や宣伝でいくものではございませんで、やはり企業がそれに魅力を感ずるような基盤の整備ということが必要でありまして、その点につきましては、まず相当これは資金を要する問題ではございますけれども事業団協力いたしまして、そうして基盤の整備にただいま力を入れておる。それから誘致された企業の育成でございますが、これは具体的にはどういうことになっておるのかよく私も——政府のやるべきことを怠って、誘致された企業がどうもうまくいかぬということであれば、これは政府としてなすべきことをなさねばなりません。とにかく一たん決意して企業が進出した以上は、その企業がみずからの努力によって切り開いていくという必要があろうと思います。しかし政府として当然なすべき助成政策は、これは必ず実行するようにいたしたいと思います。なお具体的の話は部長から申し上げます。
  38. 長橋尚

    説明員(長橋尚君) 中核企業の誘致につきましては、事業団の取り扱いといたしまして、融資率は通常の四〇%に対して六〇%、それからアフターケアの問題は、長期運転資金のめんどうを見るというようなたてまえをしいておりますが、ただいま大臣から御答弁申し上げましたように、ただ現実の問題として、やはり産業基盤の整備とか、そういったことと相まちながらこれを進めてまいる必要があろうかと考えられる段階でございます。
  39. 小柳勇

    小柳勇君 第二の運転資金などの誘致企業のアフターケアなどの問題は、きまったことを政府がサボっているとは思いません。できるだけ各方面から援助されておりますが、やはり法の不備の問題もございますし、もう少したとえば地方財政が豊かであれば誘致いたしました地方がめんどうを見るが、地方は地方で一ぱい、ほとんど地方財政は赤字でやっていけない情勢でありますから、誘致するときには手厚く保護しようと思っても、地方だけでは何ともできないという情勢であります。したがって地方公共団体の力を国がもっと補助してやる、こういう体制が必要ではないかと思うわけです。これはほかの問題もありますから、最後に大臣からこの問題をお聞きいたします。  地方公共団体に対する財政援助措置の強化について、産炭地域の地方公共団体の財政は炭鉱閉鎖に伴う人口の大幅な減少などにより税の減収が著しく、反面、産炭地特有の財政需要の増加により、逼迫の度を加えております。この対策として国庫補助率の引き上げを行なうとともに、地元負担額全額についての起債の優先手当て、優先充当を認め、当該起債の元利償還期限につき可能な限り国が補給するように配慮してもらいたい、また地方交付税の改訂など、特別な財政援助措置を講じてもらいたい。これは産炭地域各市町村の切なる願いでございますが、通産大臣並びに関係者の見解を伺います。
  40. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 起債の点、それから、これは利子補給を現に行なっております。それから市町村の事業に対しましては補助率の引き上げ措置をやっておるという状況でございますが、これでは足りない、さらにこれを拡大強化してほしいという御要請があるわけであります。それで、この問題につきましては、すでに特別の市町村に対する補助の例もございますけれども、これは産炭地域の公共団体に対する補助というものは特別の性格を持っておるのでございますので、現行制度をそのまま適用するということでなしに、特別の何か工夫をしなければならぬというような状況でございますので、そういう点について、せっかく関係省の事務当局と折衝をいたしておるような次第でございます。
  41. 小柳勇

    小柳勇君 ちょっといまの、はっきりしなかったのですが、現在の法律なり、施行令だけでは十分でないから、法律以外に、例外的に特別措置を考える、こういうことに理解してよろしゅうございますか。
  42. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) たとえば離島に対する高率補助であるとかいうようなことがございますが、そういうものとはおのずから性質を異にしておるので、それで産炭地の市町村に対する関係は、従来の制度そのままを、何というか、適用するということじゃなしに、現行制度の改善を何か行なって、そしてそれにふさわしい方法を考え出さなければならぬ、こういうような意向がございますので、その方向で、いま関係当局と折衝しておる、こういう状況であります。
  43. 小柳勇

    小柳勇君 その点、石炭部長、もう少し詳しく説明してください。
  44. 長橋尚

    説明員(長橋尚君) 地方財政援助の問題につきましては、まず道県におきましても、非常な閉山の影響が出ておることは事実でございます。それからさらに、そのもとの市町村の中では道県の財政事情に比べてさらにまたもっと落ち込みのひどい状況が出ているわけでございます。そういったような状況に対処いたしまして、今後新しく石炭対策が樹立されようという段階におきまして、まず非常に疲弊した市町村財政について、離島振興方式並みとか、いろいろ御意見が出ております。そういった案を含めまして、何らかここで特別の援助措置を講じなければならぬ。そして道県財政につきましても、そういった市町村財政の援助ということによる効果も期待いたしながら、また道県自体につきましても、従来の一定額をこえます公共事業量を行なった場合の起債の問題、それから利子補給の問題をさらに一歩改善いたしたいというふうなことで、財政当局、その他関係方面と話し合いをいたしている段階でございます。
  45. 小柳勇

    小柳勇君 わかりました。じゃ大臣関係は、私これで終わります。
  46. 阿具根登

    ○阿具根登君 大臣の時間がないようですから、簡単に質問いたしますが、公害問題につきまして、水俣病、奇病といわれましたこの水俣病が、今日やっと公害だということが政府の統一見解として園田厚生大臣から発表になった。十数年間、これは国会でも問題になったものでございますが、なぜ今日まで結論が出るのに時間がかかったか、その点をひとつ大臣にお尋ねいたします。
  47. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これはまあだいぶ長い間の懸案でございますが、なぜこうなったかということについて事務当局から経過を御説明申し上げます。
  48. 矢島嗣郎

    説明員(矢島嗣郎君) 御質問は熊本県の水俣病のことだろと思いますが、御案内のとおりに、熊本県の水俣病は、発生いたしましたのが昭和三十年代の初めでございまして、当時はこの種の公害病というものが出た初めでございまして、これに対する検出、たとえば水銀なら水銀の検出方法につきましても、現在と比べまして技術の水準が非常におくれておりまして、現在でございますと、たとえば有機水銀、有機水銀の中のさらに問題となっているメチル水銀というようなものの検出方法は確立されまして、問題があるとすぐできるわけでございますが、昭和三十年代の初めと申しますと、いまからまだ十年以上も前で、そういうものが確立されていない。かてて加えて、これに対する取り扱いも、関係省によりましていろいろな意見もございまして、なかなか結論が出なかったわけでございます。  それからもう一つは、これは副次的な理由だと思いますけれども、三十四年の暮れに至りまして、熊本県知事のあっせんによりまして、一応窒素会社ですね、それから被害者との間に話し合いみたいなものができまして、一応の補償のような形ができましたものでございますので、当面の解決策となったわけでございます。したがいまして、もちろん将来のためを考えて原因の究明をさらにやるべきでございましたけれども、当面の問題がそれで一応遠のいたというようなこともございましたものですから、いろいろな研究調査も若干おくれた、かような次第でございます。簡単に申し上げます。
  49. 阿具根登

    ○阿具根登君 当時皆さんは責任の衝におられなかったのでそういう御答弁でございますが、それは知っておられてそういう答弁しかできなかったと私は思う。その当時私は社会労働委員長でございました。現場に数回行っております。そうしていま政府の出された結論をそのまま委員会でやってきております。そのときに加害者、いわゆる工場の味方として、結論を出し得なかった、通産省は。ところが、今日見てみなさい、その会社側すら悪うございましたと言って各病院に頭を下げて回っておるのです。さらにそれを信頼して公害にあらずと言った会社側のお医者さんは、私がもう少し強かったならばよかったのだ、会社の圧力であれ以上強く言うことができなくてまことに申しわけなかったと、こう言っておる。通産省側はその会社の意見をとって、公害だという結論を出し得なかったのです。厚生省はその当時からこれは公害だ、科学的に進歩していなかったとおっしゃいますけれども、当時の議事録をごらんになってもけっこうです。ちゃんとそれは出ております。そうして熊大は、これは公害だということを認定しておる。それを会社側の雇った医師は、その立場上公害と認定するにはまだ早いと反論された。それを通産省側はとって、いわゆる工場側の味方として、こういう悲惨な公害を今日十数年間ほうっておった。それは、私は通産省の責任だと思う。内閣の責任だと思うんです。それは同じ省であっても、厚生省では公害ですということを言っておる。熊大のほうが正しい。ところが通産省はそうじゃなくて、工場側の言うのを聞かれて、そして答えの出ぬままに県知事のあっせんでああいうあやふやな結論になったわけなんです。だから私は質問をしておる。いま私が言ったのが正しいのか正しくないのか、はっきりお答え願いたいと思います。
  50. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 今回の政府統一見解として発表いたしましたものはすでに御存じだと思いますが、通産省としてはこれに全く同調しておることはもちろんのことでございます。
  51. 阿具根登

    ○阿具根登君 はっきりのみ込めない御答弁でございましたけれども、被害者から見れば状態は全然変わっておらない。その当時の会社もあやまちを認めた。会社側の医者ですらあやまちを認めた。ネコの実験といわれておりますが、実験するまでもなく、私らが行ったときには普通のネコがその病気になって飛び回っておった。そういうことも全部速記録にも出ておるはずなんです。何ら変わっておらないのです。そうしますと、会社あるいは反対をされておったお医者の方々が、当時の政治勢力によって強く自分の考えを主張することができなかったのは誤りである。しかも医者として、今度は各病人の家庭にあやまりに行く。会社もあやまりに行った。そうしますと、今日まで、公害であるという結論を出し得なかった通産省の責任は一体どうなるか、こうなるわけなんです。何か変わっておるならいい、変わってなくて今日まで公害問題というのが、世論で非常にやかましくなったから公害だということに踏み切られたのじゃなかろうかと思うのです。時間がありませんから急ぎますが、そうしますと、大臣の考え方、いわゆる工場の所管大臣としてあるいは考え方もあるかと思いますが、これが人に及ぼす公害であったならば、当然厚生省が責任を持つべきであろう、農作物等に被害を与えるならば、これは農林省が責任を持つべきである。通産省はその場においては加害者の立場にある。こういう点はどういうふうにお考えになるか、御質問申し上げておきます。
  52. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) すべての場合に、工場公害の場合には通産省といたしましてはその原因をあくまで究明して、そして少なくとも将来再びかようなことのないように、未然に公害を防止するということに重点を置いていかなければならぬ、そう思うのであります。そしてそれが人間に及ぼす被害、あるいは農作物その他に及ぼす被害は、それぞれやはり所管の省の方々公害に対する基本的な政府の統一見解というものに基づいて、そして人に対してはこうすべきだ、農作物等に対してはこうすべきだ。それぞれの所管の大臣意見に従って通産省としてもいく、こういう態度が一番正しいのではないかと考えております。過去においてこれがどういう原因で、主としてだれが責任を負うべきものであるかということについて、はっきりしなかった点は、まことに、これは当時の技術水準の問題もございましたろうが、通産省としては決してほめたことではない、やはり不明のいたすところであると私は考えます。今回の政府統一見解に対しては、これは全面的に通産省はこれに同意いたします。そうしてそれに対する対策につきましても通産省の立場においてできるだけの努力はいたしたいと考えております。
  53. 阿具根登

    ○阿具根登君 それでは最後に時間がございませんから……。阿賀野川の今度の公害に対しまして、科学技術庁がこれの責任官庁になったというのは一体どういう意味なんですか。私は先ほど御質問申し上げましたように、これは人体に与えておる被害ならば厚生省がやはり当然結論は出すべきだと思う。それを今度科学技術庁の長官が出しておられるが、発表されたのが非常にニュアンスが違う。一緒に協議されたと思いますので、鍋島さんお見えになられましたらそのあと質問いたしますが、おいでにならぬようですから、通産大臣から御答弁願います。
  54. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 工場を監督するのは通産省でございますが、さらに科学的に突っ込んで、これはどういう原因で、いかなる状況のもとにこれは発生したものであるかというようなことは、これは通産省でもなかなかそこまではやれない領域がございまして、やはり科学技術庁というものが存在する以上は科学技術庁にそれぞれの持っておるデータを集めて、そうして科学技術庁がさらにこれをもっと突っ込んで調査をして、そうして技術的な見解を出すのが適当である、こういうことで科学技術庁が主となってこの問題に当たりました。つまりどういう原因でこういうことになったか、その点はやはり通産省及び科学技術庁の調査によって明らかにされるところでございまして、通産省だけではやはり及ばない点がある、もっと高度の科学技術の観点から調べて結論を出す必要がある、こういうことで科学技術庁のほうにおまかせして、それをもって政府の統一見解とする、こういうことになったわけでございます。そうしてこれが人命に関係があるということになれば厚生省、農産物に関係があるということになれば農林省、こういうことになりますので、まず原因を究明してそうして今度はそれと人の関係あるいは農作物との関係、そういうようなことはそれぞれの所管において、しからばこの対策はこうすべきである、ああすべきであるということをそこで判断していただく、こういうふうになっておりますので、これをすべて厚生省のほうの所管として持っていくということは、やはりまだ適当じゃないのではないかと私は考えております。今度の運び方は私は適当である、こう思っております。
  55. 阿具根登

    ○阿具根登君 あとで時間をいただきまして私も資料を集めて反論したいと思いますが、ものの考え方を私は先ほど大臣にお伺いして、大臣もお答えになったと思うのです。何のためにこういう病気が起こったかという問題も大切だけれども工場がなかった以前はそういう病人が出ていなかった。ところが痛い痛いで日夜苦しんで死んでいく病気が出てきたというならば、まずそれが先決でなければならぬと思うのです。そして、医者の診断によって、有機水銀ならば有機水銀ということになってくれば、一体有機水銀はどこから出てきたのだ。たとえば新聞等で拝見いたしますと、豪雨の際に農薬が流れた、会社側はそういう反論をされている。一方では、流れておらないというはっきりした資料が出ておる。そうするならば、農薬は流れておらぬということがはっきりすれば、会社の責任ということ以外に出てこないわけなんです。何も科学技術庁が時間をかけてまた数年後に結論を出すようなことでは人命がそこなわれていってしまうわけなんです。だから私言っているでしょう、人命でないならば、あるいはまたそういう考え方もあるでしょう。しかし、被害者の立場はさておいて、加害者ではなかろうかという立場を科学的にきめなければ結論が出せないという問題じゃないと思うんです。ちょうどこういう論争を水俣でもやったんです。ところが、それから私は十年間ここでやってから、何にも変化ないんです、全然それから研究されておるわけでも何でもないんです。それが今日公害だという結論を出さねばならないような事態が出てきた。そうすれば、阿賀野川でもなぜ、科学技術庁がそういうのを出すのか、同じ公害ではないか、こういうことを御質問申し上げたいと思います。
  56. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 御指摘のとおりであります。もうすでに人命がそこなわれつつあるという事実をすぐ前に見ながら、ただ原因を探求する、その結論が出るまでは待てという、こういう考え方はそれは間違っておる。でございますから、原因を探求するということは、将来の対策を立てる上においても絶対に必要である。かたがたまた、この問題に対する責任をどの程度まで負担させるかということについても必要ではございますけれども、そういう問題をまずきめなけりゃ、あとのことには手がつかぬということは、これはどうも政治にはならない。でありますから、私どもは、そういうことはまあしばらくおいて、まず当面悲惨な状況が展開されておるのだから、これに対してどうするかということを考えなきゃならぬ。それについてはひとつ厚生省が中心になって、そして国家は保護、民間はまあ関係者と申しますか、民間のほうでも問題の責任がどうのこうのと言うことは抜きにして、まず救済に当たるべきであるということにして適当な拠金を募って、そして対策を少なくとも急がなけりゃならぬ。そういう点では関係各省も一致しておりまして、厚生大臣もその気でやってきておるだろうと思うわけであります。ただその点が手早くいかなかったことがまことに残念でございますけれども、そういう考え方でいくのが当然だと思うのであります。  それからイタイイタイ病については、ただいま提訴されておる、提訴されておりますから、それを待つということも必要でありますけれども、まあそういうことは原因の究明と同じように、そういうことをのんきに待っているわけにいかぬ。どうしてこの問題を救済するかということをまず先に考えようじゃないか、こういうことになっておったと思います。どうもいろんな足並みがそろわぬで、つい今日までおくれおくれになっていたことはまことに遺憾でございます。申しわけないと思います。
  57. 内田善利

    内田善利君 通産大臣に質問しますが時間がありませんので簡潔にしていきたいと思いますが、対馬の東邦亜鉛の対州鉱業所で昭和三十二年に鉱毒事件が起こっておりますが、このことについて説明をお願いしたいと思います。
  58. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 東邦亜鉛の関係につきましては、通産省といたましては福岡鉱山保安監督局に命じまして昭和三十二年以降数回にわたって坑廃水の検査を実施しておりますが、水質分析の結果等に基づきまして、そのつど坑廃水の処理施設等につきまして改善を指示してまいりました。特に最近、昭和四十二年十一月十三日から十六日の四、五日の間に、坑廃水に対しまする特定の検査を実施いたしまして、従来の坑廃水の分散処理を集約処理して、処理方法、処理系統等が改善されておりましたので、水質はかなり改善されているものと考えておるわけでございます。厚生省は八月になお検査をしておりますが、その結果はまだ確定しておりませんので、結果をただいま待っておるような状況であります。
  59. 内田善利

    内田善利君 この事件に関しましては、厚生省関係は厚生省関係に、所管関係に質問したいと思いますが、このときの昭和三十三年——二年、三年にかけてのこの公害事件、鉱毒事件で現在の汚染地区が関係がないかどうかということをひとつお願いしたいと思います。
  60. 橋本徳男

    説明員(橋本徳男君) 三十二年のときにおきましては、農作物に関係いたしましてその被害を住民から訴えられたわけでございます。したがいまして、これにつきましては先般、先ほど大臣御答弁いたしましたように、いろいろ検討いたしまして、鉱山保安監督局といたしましても改善指示をしたわけでございます。したがいまして、当時の問題としましては、そこにこのカドミウムといったような問題があるというところまでの分析が科学的なおくれから十分できていなかったと思うのでございます。したがいまして、そのときの状態から今日までどういうふうになったか、この辺がつまびらかではございませんが漸次改善命令を行ないまして、最近といたしましては、大体監督局のサイドから見ますれば、害がない程度にきておると思うのでございます。しかし監督局の立場だけではこれは適当ではないので、厚生省も現在調べておりまして、大体近く結論が出ると思うのでございます。それが出ましたときに初めてその当時の公害と、今日の公害との関係というふうなものが結びついて結論が出るのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  61. 内田善利

    内田善利君 非常に手の打ち方がおそいと思うわけですが、昭和三十八年、三十九年、岡山大学の小林教授、また富山の萩野博士等がもうすでに現地調査してデータも出ておりますし、また厚生省でも四十年、四十一年と調査をやって、しかも詳しいデータが出ておる。その中には米も大豆もみんなカドミウムが許容量の数倍、また樫根地区あたりにおきましては非常にひどい、神通川流域以上の結果が出ておるにもかかわらず、まだ追跡調査中とか、まだ結果が出ておりませんとか、そういうことでは非常に国民の不安、地域人たちの不安、そういうものは解消できない。いままでが、水俣にいたしましても神通川にいたしましても、そういった非常にお役所的な、そういう姿、姿勢が今日まで水俣の場合にも十五年間もかかった、そういう状態にあるんではないかと、そのように思うのですが、その点についてお伺いしたい。
  62. 橋本徳男

    説明員(橋本徳男君) おっしゃいましたように、科学的ないろいろな方法が必ずしも十分ではなかったとは申せ、そういった分析等についてどこに問題点があるかということについては、必ずしも三十二年当時から今日まで十分であったとは思えないのでございます。ただしかし現段階におきましては、こういったカドミウムの分析方法等の、ほんとうに〇・〇一程度のものが分析できるような形までいきましたのは、つい二、三年前のように聞いておるのでございます。したがいまして、その当時としては改善命令等によりまして農業被害に対する対策としては出たのではないかと思うのでございますが、振り返って今日見まして、十分であったかどうかには一応われわれも反省しなければならぬというふうには考えておる次第でございます。したがいまして、ことしの八月におきましても、昨年の末に改善命令を出し、その工事の進捗に見合いまして、ことしの八月にも監督局といたしましては再調査をしまして、詳細なデータを現在出してきたわけでございます。先ほどのように、並行しまして厚生省サイドからも検討いただいておるというふうな状況でございます。
  63. 内田善利

    内田善利君 九月十日に県議会議員が現地視察をしておりますが、神岡鉱山の廃液の排水管理がまだ不十分である、このような発表がなされておりますが、この点についてはどう対策を講じられたか。
  64. 橋本徳男

    説明員(橋本徳男君) 神岡鉱山につきましては、かねがね問題になっておりますので、監督局のほうでも特にその鉱山につきましては詳細な検討を続けておるわけでございます。神岡鉱山におきましての堆積場というのは現在三つございまして、そのうちの一番最近できましたものは、これは百年降雨量を前提にいたしましての非常にりっぱな施設でございますので、これは問題はないと思うのでございます。ただ、あとの古い二つの堆積場につきまして、いろいろ改善命令を出しまして、現在その二つの堆積場には芝生が張られ、あるいは石を積まれというふうなことで、大雨、台風等によりまして流失ということはないというふうな状態になっております。現に本年の九月二十五日から二十七日の間におきまして監督局で参りまして検査をいたしましたが、別に通常と異常の状態が検出されていないわけでございます。したがいまして、これは神岡に関する限りはそういうことはないというふうに考えております。
  65. 内田善利

    内田善利君 もう一問。対馬の関係と関係がありますので、通産省の姿勢としてお聞きしたいと思うんですが、八月六日付の富山新聞に、通産省は八月五日からイタイイタイ病の補償問題の仲介に乗り出した、このようにあります。どういうつもりで乗り出したのか、被害者の要求をささえてやるつもりで乗り出したのか、それとも神岡鉱山の味方をして補償を値切るつもりではないかと、このように出ておるわけですが、これについてお伺いしたいと思います。
  66. 林信太郎

    説明員(林信太郎君) ただいまの御質問でございますが、鉱業法によりまして和解の仲介員の候補者を毎年年中行事として選定することになっております。たまたまその選定が九月下旬に行なわれた、それがあたかも本件の仲介に通産省が乗り出すというふうな形に地元の新聞に出ておるわけでございまして、通産省が企業側の立場に有利なような形であっせんに乗り出したという事実はございません。
  67. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 ただいまの対州鉱山のイタイイタイ病に関連して御質問したいと思うのですけれども、このイタイイタイ病は、岡山大学の小林教授の発表によりまして、三名、そのほか疑わしい患者数名を発見した、こういう断定をされておるわけですけれども、その後イタイイタイ病の研究班長の重松博士の証言では、イタイイタイ病患者は見当たらなかった。しかし、潜在的症状と疑われる者が二、三いた。こういうふうな発表が産業公害委員会でされております。それから地元の県の衛生部あるいは厳原の保健所長の談話では、そういう事実は発見できない。このように、対州のこのイタイイタイ病については、現在のところはまだ結論は出ていないのでありますか。出ていないとすれば、現在でのように調査が進められておるか、またその最終結論がいつごろ出るのか、これをお聞きしたいと思います。
  68. 橋本徳男

    説明員(橋本徳男君) 対州の問題につきましては、保安は保安、現実に起きた問題は現実に起きた問題というふうな形におきまして、いろいろな説が出ておるので、この件につきましては神岡と同じように、厚生省を中心にして検討を進めていただきまして、その考え方の見解を待っておるような次第でございます。それで、対州の問題につきましては、これは先ほど御説明申し上げましたが、対州自体におきまして必ずしも十分な保安施設というものにはなっておりませんでしたけれども、昨年の十一月以降数項目にわたる改善命令を出しまして、それを現に実行しつつございまして、その完了はおおむねこの十月半ばになろうかと思いますが、そういう形においてかなり強く改善指導をやっておるような次第でございます。
  69. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 大臣は時間がなくなっておるのですが……。
  70. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 対州の場合、もしこれがイタイイタイ病で公害病であると認定された場合、その補償の問題が出てくると思うのですけれども、この原因となっておるのは、現在の東邦亜鉛の会社の事業によるものではなくて、その前身の鉱山発掘の場合の残滓、鉱滓が堆積されたものから原因しておるということになっておりますけれども、もしこれがイタイイタイ病の公害だと判定された場合、この補償はどこがすることになるのか、これをお伺いしたいと思います。
  71. 林信太郎

    説明員(林信太郎君) いまの問題将来の問題で起こり得るかもしれませんですが、現在そういう事態でございますので、私どもも引き続き検討してまいりたいと思っております。
  72. 近藤英一郎

    近藤英一郎君 大臣お帰りになるようですから一言だけ……。  先ほど小柳委員から、中小企業振興対策の中で、いろいろ中小企業の租税の軽減という面で御質問がありましたが、基本的な考え方をひとつ聞いておきたいと思いますが、同族会社に留保金の課税をされておるわけです。法一人の中で大体九〇%ぐらいは同族会社だそうですが、それに課税されるわけです。ということは、やはり中小企業資金の確保ということが非常に大事なことでありますから、そういう面で、結局同族会社の留保金に課税をするということは結局資金の確保を阻害することになる。そういう点から考えると、中小企業の振興対策のほうから考えて、通産大臣としての立場ではどういうふうにお考えになるか。いまいろいろ聞いてみますと、たとえば税率の問題として三千万円未満が一〇%、それから三千万から一億未満が一五%、一億以上は二〇%の課税をされておるそうです。それにはもちろん控除が一、二、三と、ABCとあるそうですが、その控除額が百五十万というのがあるそうですけれども、これをいま税制調査会では検討されて、五百万円まで引き上げようじゃないかということも検討されておるようでありますけれども、これに対して通産大臣としての立場から留保金に対する課税はどう考えておるか、これをひとつ聞いておきたい。
  73. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 留保金の課税に対して、控除額の限度はただいま百五十万でございますが、これを御趣旨に従ってわれわれも考えておりまして、五百万程度に引き上げてまいりたい、こういうことで財務当局と折衝中でございます。
  74. 近藤英一郎

    近藤英一郎君 それはもう引き上げることはけっこうなんですが、大体課税すること自体、中小企業振興対策の面から考えて、大臣はどう考えておるか……
  75. 乙竹虔三

    説明員乙竹虔三君) 確かに、同族会社であるからといって、社内留保をしたものを普通の税額以上に高い税金をかけるというのは、理屈からいっておかしいという考え方は、これは十分できるわけでありますし、われわれは年来それを主張してきたわけであります。しかし大蔵当局のほうには、留保金というものは、やはり同族会社は経営者とふところ勘定が一体であるというふうなところから経営者のほうに利益分配されますと、累進所得税で非常に高い税率を課せられるわけでありますので、この高い累進税率を免れるために、同族会社の勘定を使って留保するというふうなことが可能である、こういうのが大蔵当局の考え方であります。で、そういうところから、百五十万までは基礎的にこれはいいけれども、それ以上に留保をすれば、これはぐあい悪いということであったわけでありますけれども、いま先生御指摘のように、また税制調査会の結論のように、さしあたり百五十万を五百万に引き上げるということで、われわれはその主張を絶対通したい。通産省といたしましては、理屈は、これはもうむしろ完全にこういう特別扱いは廃止してほしいということは考えております。
  76. 近藤英一郎

    近藤英一郎君 もう時間がないからやめますが、それじゃ、大臣としては——通産省としてということで長官言われましたけれども、これは撤廃してくれという声が、業者として非常に強い。そういう点でとりあえずの面から考えて、まあ控除額の限度額の引き上げを五百万にするというような、これで努力するという答弁があったわけですが、これは将来は撤廃するという線で進めていただきたいという点を要望して、これで時間がないから私は終わります。
  77. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 大臣、ありがとうございました。  引き続き通産関係の各関係の方、次官はじめ残っておりますので、できるならば質問を続けたいと思います。  速記をとめて。   〔速記中止〕
  78. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 速記をつけて。  それでは一時半まで休憩いたしまして、一時半より再開いたします。    午後零時五十五分休憩      —————・—————    午後一時四十五分開会
  79. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) ただいまから商工委員会を再開いたします。
  80. 小柳勇

    小柳勇君 午前中に中小企業振興の問題で政府の見解を聞きましたが、参考人として御出席をいただいておりますので、中小企業振興事業団事業活動を中心に、もう少し深く質問していきたいと思います。  まず、昨年発足いたしました中小企業振興事業団の活動について、その概要を御報告していただきたいと思います。
  81. 馬場靖文

    参考人馬場靖文君) 私、事業団の副理事長でございます。  ただいまの御質問に簡略にお答え申し上げたいと思います。御承知のように私ども事業団は昨年の八月に、もとの中小企業高度化資金融通特別会計と日本中小企業指導センター、この二つを発展的に統合いたしまして発足したものでございます。  昨年来の業務の概要でございますが、中小企業の構造高度化に対する融資事業につきましては、昨年度におきまして事業団から百七十九億円、都道府県分を加えました総助成額は二百五十億円でございますが、それだけの貸し付けを行ないました。本年度に入りましてから九月までに貸し付けの内定を行ないましたのが五十六億円、決定を行ないましたのが三十二億円いたしております。なお、下半期におきましては約二百五十億円余りの貸し付けを予定いたしております。  なお、融資事業のほかに御承知のように指導事業調査事業、研修事業、本年度から始まりました情報サービス事業等がございますが、これらのものにつきましては、従来からの事業を継続いたしておりまして、予定どおり、計画どおりほぼ順調に進捗いたしております。特に情報サービス事業につきましては、今年度は緒についたばかりでございますが、今後さらに拡充をしてまいりまして、特に来年度におきましては格段の拡充をいたしまして、中小企業の必要とするいろいろな情報をサービスしてまいりたい、かように考えております。そのほか技術開発業務がございまして、昨年度から引き続いて計画中でおります自動鋳造設備開発につきまして一段と意を用いてまいりたい、かように考えてやっておる最中でございます。  以上簡略でございますが一応御説明申し上げます。
  82. 小柳勇

    小柳勇君 中小企業振興事業団事業拡大なりあるいは資金の幅の大幅な増額などについて、午前中通産大臣に私は要請をしたのでございますが、現在事業活動やる上において、もちろん金が多いにこしたことはございませんけれども、どうあってほしいという、一年間の活動を振り返られて、問題点を二、三お教え願いたいと存じます。
  83. 馬場靖文

    参考人馬場靖文君) 御承知のように私ども事業団目的は、中小企業の置かれております経済的、社会的な存立基盤というものの変化に対処して中小企業構造高度化を進めてまいるという点にあるわけでございまして、その意味でいま一番困っておる問題は、特に今年度の問題といたしまして、やはり融資資金の不足という点でございます。先ほども大臣から御決意のほどを伺ったわけでございますが、これは最近中小企業界が非常に目ざめてまいりまして、中小企業の進むべき道として、最後にとるべき手段としては、やはり協業化以外には道はないというふうなことになってまいっております。その盛り上がりの結果だろうと思いますが、今年度におきまして相当な融資の希望がございましたが、これに対しまして、先ほど長官から御答弁のございましたように、今年度は予算の不足からその半分も充足できないというような非常に苦しい状況でございます。さらに来年度の希望を取りまとめました段階では、先ほど大臣からお話のございましたように、約今年度に対して四倍に近い要望が出ております。これにつきましては、通産省あげて来年度予算の要求に御尽力をいただいたわけでございますが、それでもなおかつ本年度の一・七五倍ということでございます。これでは私どもも十分の実績をあげてまいることができませんので、これをさらに上回る予算を獲得できるように御配慮願っておる次第でございます。そういうことで、何と申しましても、まず第一に私どもは重点として考えておりますのは、予算規模を大幅に拡大していただきたい、こういう点でございます。
  84. 小柳勇

    小柳勇君 予算の問題については政府の特段のがんばりをお願いしなければなりませんが、中小企業長官、午前の議論に引き続きまして、中小企業振興事業団の強化、あるいは仕事、活動がしやすいようにどういうふうにされるか、もう少し具体的に御説明を願いたいと思います。
  85. 乙竹虔三

    説明員乙竹虔三君) まず第一は予算の問題でございまして、一応事務ベースでは一・七五倍、これは一般案件だけでございますけれども、全部ならしますと五割弱という数字になります。事業団の全部の融資規模は五割弱ということになります。これを獲得することが一番大事でございまして、復活要求の場等を活用いたしまして極力大幅な予算の獲得をいたしたい、これが何といっても、いま副理事長が申されましたように、一番大きな問題でございます。  それから第二は、事業団の人員のやはり充足を考えていく必要があると思います。まだ発足して二年目でざいますが、二年目にしては発足当時から相当まあまあ活動されたわけでございますけれども、非常に人不足でございまして、幹部は極力簡素化に、しかし現場のほうは拡充をしていく、こういうことで考えてまいりたい。特に必要な産地の組合あたりには事業団から直接これは指導をするというふうな人を派遣できればいいというふうな含みもございまして、人間の獲得を考えておるわけでございます。  それから第三の点は、事業団は指導業務をやっておるわけでございますが、指導業務につきましては、大幅な拡充をしてまいりたい。特別に中小企業者が転換期と申しますか、脱皮と申しますか、時勢の大きな流れに沿って変わってまいらねばいけないわけでございますので、研修事業、指導事業これを大幅に拡充をしてまいりたい、こういうふうに考えております。  それから次に情報の問題、これはすでにお話が出ておるわけでありますけれども中小企業者が転換といいますか、時代に即応いたしますためにどうしても必要なのは、じみではございますけれども情報だと思います。で、この点はジェトロと密接に連絡をとらせまして、海外情報はジェトロ経由で事業団に入れる。それから国内情報はわれわれ及び各官序と事業団と連絡をとって、現在、情報室というのがございますけれども、これを情報部に昇格をいたしまして、情報部で情報の集積及び判断を行ないまして、この判断いたしました情報を各府県に総合指導所がございますが、指導所にテレックスを置いて送りたい。こういうふうな情報面の拡充を考えております。  それから最後は技術面でございまして、いま副理事長の申されました自動鋳造設備、これは事業団が自分で開発するわけでございますが、それ以外にも雑貨なり工作機械なり、中小企業部門が相当多いところで、省力化のために必要な機械開発、こういう点をやってまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  86. 小柳勇

    小柳勇君 少し具体的な問題に入ってまいりたいと思いますけれども、先般、調査団が参りまして曾根の工業団地を見ました。第一に目につきましたのは引き込み線の道路がほとんどどろんこ道路で、まだ今日まで何ら手を打ってない。ただ道路の横にバラストが相当ありましたものですから、行って理事長に聞きました。あれは一体どこがやっておるのかと言ったら、幾ら頼んでも地方自治体としてもなかなか予算がなさそうですから、私のほうで組合で何とかしなければトラックが通れないものですから、組合のほうで金をつくって——もちろんほかの援助も仰いで始めましたと、そういう話でございます。で、工業団地なり商業団地をたくさんおつくりになっておりますが、第一の問題は、地方公共団体との密接な接触というものがないのではないか。何か事業団というものと地方公共団体というものが、どこかにかきがあるような気がしてならぬのです。道路の問題だけでございません。下水の問題もございましょうし、あるいは企業誘致の問題もございましょうし、協力態勢にしましても、事業団事業団、地方公共団体は地方公共団体、土地を提供するまでは協力するけれども、そこから先はもうあまり力を貸さぬような、貸してないような気がしてならぬのですが、そういう問題に対して何かお感じになっておることございませんでしょうか。
  87. 馬場靖文

    参考人馬場靖文君) 昨年八月に発足いたしました当初は、確かに御指摘になりましたような地方公共団体と事業団との間でいろいろと意思の疎通を欠いたりしたことがございます。これは制度が変わりました直後でありましたために、私のほうの体制が整備されてない、あるいは都道府県におきましても、制度の改変におなれになっていなかったというようなことがございまして、多少意思の疎通を欠いた点があったわけでございますが、最近におきましては、いまおっしゃられましたような意味での意思の疎通を欠くというのはないと考えております。ただ今年度の資金の問題につきましては、先ほど申し上げましたように、非常に需要が多くなりまして、都道府県のほうでは予算化をされましたけれども、それに対応する事業団予算がないというようなことで、貸し付けが十分行なわれないという意味での食い違いが起こっております。この曾根の工業団地の問題につきましてはこれは三十六年度に中小企業庁の指定を受けた団地でございまして、三十九年度までに一応団地としての計画工事が完成をいたしておるものでございまして、ただいま仰せになりました道路の舗装等の事業は第二次計画として持っておられるやに聞いております。ただ私どものほうでは、今年度の要求として県から出てまいりませんで、来年度の計画として出てまいっておりまして、来年度の分といたしまして、私どもはできるだけこれを見ていきたい、かように考えておる次第でございます。
  88. 小柳勇

    小柳勇君 事業の範囲、業務範囲ですが、中小企業振興事業団法の第二十条第一項第二号のロにこう書いてあるのですが、「中小企業者の依頼に応じ、中小企業構造高度化に寄与する事業の用に供する土地、建物その他の施設を取得し、造成し、及び設置してこれらを譲り渡すこと。」こう書いてあります。で、「その他の施設」ですけれども、いま事業やられる上で、私どもはこの事業団法をつくりましたときにいろいろ答弁をいただいておりますけれども時代の趨勢によりまして、事業団ももう少し動いていただかないと、ほんとうの協業化、共同化の実績があがらぬのではないかという気がするのですが、この「その他の施設」のところで、何か将来解釈においてこういうものに拡充したら仕事をやりやすいがと、そういう具体的な話ございませんか。
  89. 馬場靖文

    参考人馬場靖文君) ただいまのところでは、中小企業者の方々からいろんなこまかい点でも施設の貸し付け対象としての範囲を拡大してもらいたいという御要望がございますけれども、現在の段階では、資金が先ほど来申し上げておりますような状況でございますので、やはり重点的に、根幹になるものを十分やり遂げられるようにしてまいりたいという感じでおるものでございますから、ただいまのところでは、施設の貸し付け対象範囲を拡大するという意向は持っておりません。
  90. 小柳勇

    小柳勇君 せっかく団地に二十社なら二十社集まりまして、当初の二、三年のうちにその三割なり五割が組合から脱退して、あとまた補充してやっているというのも間々ある、私も例を知っておりますが、それにはどういう理由があるだろうかと見てみましたら、その環境が適しない、せっかく移ったけれども自分の販路にうんと遠いとか、材料運搬に事欠くとか、あるいはいま言ったように道路が悪いとか、いろいろ事情がございまして、結局はそこにおっても経営が成り立たぬ、経営が成り立たぬというのは、経費の問題と売り上げ高の問題です、バランスですから。団地は近代資金でつくるけれども、そこから先のその団地の二十社なら二十社の経営についてはそこの組合にまかせ切りだと——まあそうでないと思うか、いま指導していると思いますけれども、いま私の見るところでは、指導員も少ないようですが——どうも組合にまかせぱっなしのように思う。たとえば曾根の工業団地に参りましても、入口に守衛室がございまして、そこに守衛さんが二人おられる。たぶんこれは工業団地ですから、機械なんか盗難にあうから、盗難防止の夜警さんと思うけれども、これは一つの例ですが、ああいうものを見まして、鉄条網を張る方法もあるでしょう、さくをつくる方法もあるでしょう、あるいは堀をつくる方法もございましょう、やっぱり人件費、守衛さんなんか何人かおられるということは必要な面もありましょうけれども、ここに守衛室がなくても、事務所へ守衛室があったらどうかなあと、端的にそういうことを感じますね。そういう希望が相当あるようですから、協業化、共同化の希望があるでしょうから、これからどんどん団地できましょうが、具体的にこの面についてはもっと金を貸したいとか、この点についてはもっと指導したいとか、こういうデータは出てきておりませんか、本部のほうには。
  91. 馬場靖文

    参考人馬場靖文君) 私どものほうでは、資金を融通いたします前に、診断ということをやっております。これは、具体的には都道府県が窓口になりまして、第一線としておやりになるので、そのうち総事業費が一億円以上になるものについては、当事業団からも専門家を派遣をいたしまして一緒になってやっておるわけでございますが、団地の計画ができます段階では、計画診断というのをいたします。で、団地の計画ができ上がって資金の貸し付けがきまりましてからは、建設するための診断ということで建設診断というのを行なっております。それから団地ができ上がりました、完成しました後には、できるだけ各団地すべてにわたって運営診断をやっていくということで現在行なっておりますが、でき上がって何年もたったものについても、実は毎年あるいは隔年ぐらいにはこの運営診断をやってまいりたい希望を持っております。この運営診断をやってみまして、ここにはなるほどこういう施設が必要である、なるほど団地のおっしゃるのも無理がないということであれば、それを第二次計画と申しますか、アフターケアと申しますか、そういうような意味でわれわれの貨し付けの対象にする場合もございます。したがいまして、そういう診断を通じまして、必要なものにつきましてはケース・バイ・ケースに判断をいたしまして貸し付けの対象にする場合があると、こういうことになっております。
  92. 小柳勇

    小柳勇君 先般見て歩きますと、私どもがああこの工場の配置がまずいなとか、あるいはこの作業は危険だなというのがたくさんあるのです。たとえば溶鉱炉でもってそのとけた鉄をクレーンでもって工場の中に持っていくのですね、鋳型に。私が中に入っていきますと、危いから入ってくれるな、その工場の人はその危い所で仕事をしているわけですよ。工場安全の問題ですよ。災害防止の問題、そういうものを診断をしておると思うけれども、とにかく団地を手に入れるのが精一ぱい、そこの組合員になるのが精一ぱいで、あと工場近代化して、そうして事故のない安全な工場をつくるというまでには金が足らぬ、知恵が足らぬ、こういうものが協業化、共同化の過程でございませんか。それは商業団地はよかったのですけれども工業団地は特に私はそれを感じたのですが、皆さんに報告しておられませんか。
  93. 馬場靖文

    参考人馬場靖文君) いまおっしゃいましたものにつきまして、それが共同施設によるものであります場合には、私どものほうでも積極的に取り上げてまいりたいと考えておるわけでございます。個々の企業の施設につきましては、これが団地であります場合に貸し付けの対象になり得るものもございますけれども、いまおっしゃいましたような施設につきましては、むしろ個別企業に対する融資制度でもって解決をしていただく、たとえば中小企業金融公庫の産業安全貸し付け制度というのがございますから、そういうものを利用していただくとか、そういうふうなことを考えておるわけでございます。
  94. 小柳勇

    小柳勇君 これは中小企業庁長官に一般の問題として聞いておくのですが、大きな工場では労働災害防止のための委員会などがございまして、安全設備も相当行き届いております。一般の中小企業は、安全どころじゃない、仕事をするのが精いっぱい、用地を見つけるのが精一ぱい。だから機械をどんどん据えていきますと、秩序も何もない、危険な中で作業をしておられるわけです。だからそういうものについては、特にいま労働災害防止のために資金融資とおっしゃいましたけれども、おそらく係りの方はそこまで知恵が働かぬし、特にことしの事業計画として、ここに計画ができておりますが、中小企業労働災害防止のために特別に何らかの施策をいたしたいというようなお考えはございませんか。
  95. 乙竹虔三

    説明員乙竹虔三君) 共同施設でやります場合と、それから個々の団地の中の構成員であります中小企業者が御自分でやります場合と、政府の助成というものは二つに分かれるわけでありますが、前者につきましては、これは事業団を通じまして積極的に援助をしていくという態度でもちろんまいりたいと思います。問題は、共同施設としての安全施設ではなくて、団地の中の個々の事業者に対する助成でございますが、これはいま馬場理事長が言われました中小企業金融公庫に特別なワクでもって、たいした金じゃございませんけれども、十五億ばかりのものをことし計上しておるわけでございますが、この金額は来年は大幅に拡充をいたしたい。金利の点につきましても、一応六分五厘というこれは特利になっておりまして、ただ、三年以内だけ六分五厘ということになっておりますが、三年をこえるものについても六分五厘というものについて特利をやるということは考えておるわけでございますが、それとともに、こういう金融面の単に助成だけではなくて、どうもさっきから先生御指摘の点を私伺っておって、非常に考えなければならぬというふうに思っておりましたのでありますが、一応事業団は県に金を貸すわけですね。そして、貸した金をその県が団地を形成する協同組合に金を貸す。で、金を貸すという融資業務しかやっておらぬわけです。ところが、それではやはりいけないので、団地のように二十軒なり五十軒の業者がまとまるという場合には、やはり県と中小企業庁がもっと表に出ていって団地の経営なり安全指導なりをやるという体制はどうしてもやはり必要だというふうに強く感じた次第でございまして、そういう方向で指導いたします。
  96. 小柳勇

    小柳勇君 これは専門は労働省かもわかりませんがただし、中小企業労働災害防止という面で、いま私質問しておるわけですから、いま十五億の金がどういう経路をとって、どういう手続で借りられるものか、ことしはどのくらいに貸し出されるものか、それから、労働災害防止のこれは、いつごろから発足しているのか、御説明願いたいと思います。
  97. 乙竹虔三

    説明員乙竹虔三君) ことしは産業安全衛生施設貸し付けという名目、そういう名目で中小公庫と国民公庫合わせまして十五億でございます。十五億の特別ワクになっております。これは三年間金利は六分五厘、以後は七%。限度は、代貸しの場合には一千万円まで、直貸しの場合はさらに一千万上乗せと、こういうことになっております。なお、石炭鉱山の安全施設とか金属鉱山のほうは、これはまた別になっております。以上のような制度を来年われわれ考えておりますのは、中小公庫につきまして、現行の産業安全衛生施設貸し付けは、国民公庫と合わせて十五億円、別ワクになっております。産業公害防止特別貸し付けが十億円、合わせて二十五億円でございますが、来年度は、安全衛生公害を三十億特別ワクを設けたいと思っております。それから国民金融公庫には、産業安全等の施設整備費の資金貸し付けという特別ワクで十億のものを設けたい。いずれも金利は六分五厘を要求しております。
  98. 小柳勇

    小柳勇君 中小企業振興事業団の問題は、もっとたくさんございますけれども、最後に、いま道路の問題が、ただ引き込み線だけでなくて、その団地が仕事をしやすいように、単なる足元道路だけでなくて、県道なら県道、国道なら国道までのそういう道路についてもやってもらいたいと思うが、やりますと事業者負担になるものですから、団地が高くなりますので、やっていけない。したがって、これはさっき大臣に質問しておけばよかったのですけれども中小企業振興事業団で、政府の方針がきまればもちろんおやりにならなければならぬですけれども、いま一番これは団地として困っている問題であります。したがって、中小企業振興事業団意見。それから長官、引き込み道路、少し長くなるかもしれませんが、これは特別に地方公共団体なり国がめんどうを見るべきであろうと。その団地の中だけを組合が自分で金を出して、あとそこから外の、へいから外も国がめんどうを見るべきであろうと思うが、いかがでしょうか。それぞれ御答弁願いたいと思います。
  99. 馬場靖文

    参考人馬場靖文君) ただいまの私どもの取り扱いのしかたといたしましては、一応団地内を通っている道路、これは将来市町村に差し出すものでございましても、団地内の道路につきましては、その舗装事業を貸し付けの対象にいたしております。ただ、現在もう市道になっておりますものの舗装は、私どもの貸し付け対象にはしていないということでございまして、その部分につきましては、できるだけめんどう見ていただいております。都道府県を通じまして、関係市町村と、早くそういった進入道路の舗装をやっていただくように折衝していただいている、こういうことでございます。
  100. 乙竹虔三

    説明員乙竹虔三君) いま副理事長答えられたとおりでございますが、若干つけ加えますと、私のほうで知っております曾根団地でございますが、共同受電とかそれから道路舗装とか、それに湿地の埋め立てとかで宿舎をつくるとか、いろいろ問題が、問題といいますか、団地をうまく運営される上において必要な御計画が出てきております。これがさつき先生のおことばをちょっとこの機会にあれさせていただきますと、どうもむしろ県とそれから団地との間が必ずしもスムーズでなかった面があったようでございます。これはしかしいますっかり改善されておりまして、この第二次計画とわれわれ呼んでおりますが、おっしゃいました第二次計画の診断を、すでに県は実施しておりますし、事業団のほうにもすでに連絡はございまして、事業団も私たちも、ぜひこの曾根団地の運営のためにこれは必要である、こういうふうに考えておるわけでございます。この道路の舗装関係でございますが、これは団地までは県道か市道かではないかと思うのでございますが、団地の中のものは、これはいま副理事長答えられましたように、まず団地側、つまり協同組合事業として舗装をされるということはけっこうであろうと思いますので、当然これは融資対象になる、それからあとは、しかし通例は維持費がたいへんでございますので、県とか市にむしろ寄付されて、県市でその保持をされるというふうになっているようであります。
  101. 小柳勇

    小柳勇君 中小企業振興事業団の今後の御活躍をお願いいたします。  次は産炭地域振興事業団に質問いたしますが、私ども地域石炭産業が撤退作戦で、あと産炭地をどうするかという問題が非常に緊急な問題であります。きょうも山田の市長、市会議員等多数陳情に見えまして、切々として産炭地の実状を訴えておられますが、産炭地域振興事業団の現在の活動状況について概略御説明願いたいと思います。
  102. 有馬駿二

    参考人(有馬駿二君) 産炭地域振興事業団は、今日まで発足以来六年を経過いたしたわけでございます。この間におきまして、当団の事業は、土地を造成いたしまして、これを低利長期でもって企業に分譲し、あるいは設備資金などを、やはり低利長期の融資をいたす、そのほかいろいろな手段によりまして九州、山口、常磐、北海道のいわゆる産炭地域企業を誘致するということを、当団の事業としてまいったわけでございます。で、当初は事業の運営が軌道に乗りますまで、多少時間を要したわけでございますが、特に昨年来当団の事業につきましてようやく各方面に周知されましたことと、いわゆる産炭地域などの道路などの事情が非常によくなってまいりまして、いわゆる輸送費が非常に少なくなってきたというようなこと、また特別に認められますのは、太平洋ベルト地帯というような地帯におきまして、労働需給が著しく窮屈化してきたというようなことから、私ども造成いたしました土地の売れ行きが、急速に上昇いたしますとともに、進出いたします企業の融資の申し込み額もどんどんとふえてまいりまして、本年度はとうとう手持ち金をはるかに上回るというような実情にあるわけでございます。現在通産省にもお願いいたしまして、今後の予算措置について関係方面と折衝をしていただきまして、実情に見合うように資金を確保することにつとめたいと考えておるわけでございます。  現状を簡単に申し上げますと、土地造成につきましては三十七年から四十三年に至る間におきまして、百六十五億円という予算が与えられておりますが、このうち八月末現在におきましてすでに百三十三億円を支出いたしまして、これによりまして五十九団地約七百万平方メートル、坪にいたしますと約二百十万坪、金額にいたしまして約七十億円ぐらいの土地をつくりあげております。このうちすでに売却いたしましたものは百三十二件、約三百万平方メートル、金額にいたしまして三十一億円ほどのものがすでに企業に分譲されておるわけでございます。さらに現時点におきまして七十件約百五十万平方メートルの申し込みを受けておりまして、現在造成済みの土地のうち七、八割ぐらいは売れる状態になっておるわけでございます。  一方、融資のほうの事業につきましては、八月末におきまして六百七十三件の融資をいたしております。融資額が約百七十七億円でございますが、このほかに現在融資の申し出を受けておりますものが約百三十件、四十一億円ほどございます。本年度の予算は昨年度の繰り越しを含めまして融資額が四十八億円でございますが、もうすでに底をつきまして、まだまだ希望に満たせないものが非常にたくさん残っておるというような実情にあるわけでございます。  このほか工業用水道につきまして、筑豊の鞍手の用水を完成いたしまして、すでに給水を開始いたしておりまするし、工場をつくって分譲していくというような制度も本年度から始まりまして、直方の地区において着工をいたしておるわけでございます。これらはいずれも昨年から急速に事業が進行してまいりましたので、この結果当団の収支の面におきましても四十二年度までは若干赤字の決算でございましたけれども、この赤字の解消というものにつきまして、最近ようやく改善のきざしが見えてまいっておる次第でございます。  これらの産炭地域振興事業の結果、現在までの進出企業は合計四百六十二社ございまして、このうち約百二十社はいわゆる産炭地以外からの東京とか大阪とか名古屋というようなところから新たに産炭地へ進出したものでございまして、これら企業による新しい雇用は二万七千人をこえておりまして、このうち炭鉱関係の離職者の関係の方々は一万六千人に達しております。企業の出荷額は本年度の推定が約千三百億円でございまして、石炭の山元価格に換算いたしますと約三千万トンに相当いたします。もちろんこれは付加価値額ではございませんので、三千万トンだけのものの価値があるとまでは申し上げませんが、かなり大きな石炭のマイナスを補うだけの仕事はいささかやってまいっているというふうに考えます。産炭地域の再開発というようなことといたしましては、何らかの成果をあげてまいっておるというふうに申せるかと存じます。
  103. 小柳勇

    小柳勇君 産炭地域振興事業団活動状況につきまして概略御説明いただきましたが、その事業の中で、工業団地なりあるいは住宅団地などの造成が、さっきの中小企業振興事業団と同じように引き込み線の道路の造成なりあるいはその団地との間の道路の造成なり、おたくのほうで手の届かないところがあるのではないかと思います。したがって、現在の法令以外に、その地域で特殊的に何かやらなきやならぬ、事業拡張の必要があるのではないかと思っておるのでありますが、お仕事をやられる上において、もう少しこういう仕事をやりたいが、現在の法ではどうも許していないというような点でもありましたらお教え願いたいと思います。
  104. 有馬駿二

    参考人(有馬駿二君) ただいまの御質問でございますが、工場が進出いたしました場合には、どうしても道路でございますとか用水でございますとか、その他の関連施設が整備いたしませんと、企業が完全に運営できません。逆に申しますと、土地をつくりましても、水がなかったり、そのまわりの道路がよくなければ、そこには企業は出てまいらないわけでございます。その意味におきまして、現在私どもは、いわゆる鉱工業の施設に関連する施設というようなことで、若干の関連施設の工事もいたしておるわけでございますが、なお、高速道路その他が通りますと、非常にその土地が上がってまいりますことを見ましても、そういうような関連公共施設ということが非常に大事なことであると考えております。これはもちろん各省にまたがるいろいろなむずかしい問題でございますので、私ども簡単に申し上げるわけにもまいらないわけでございますけれども、やはり地域の振興と申します場合には、特にそういうような団地の造成にからみまして、そこの地域というものの価値を上げていくための道路、港湾、用水、そういうようなあらゆる施設というものが円滑に行なわれることがどうしても必要でございますので、各省にもいろいろとお願い申し上げておる現状でございます。
  105. 小柳勇

    小柳勇君 石炭部長、いまの問題について、午前中、大臣に申し上げたように、産炭地域振興は、通産省だけではとてもたいへんな仕事であります。各省の協力を得て、たとえば道路は建設省とか、いろいろの密接な連絡が必要でありますが、いま事業団のほうで言われたように、私どももそういうふうに感ずるわけです。その点についての政府の見解を聞いておきたいと思います。
  106. 長橋尚

    説明員(長橋尚君) ただいま小柳委員御指摘の、たとえば事業団工業団地造成しました場合の取りつけ道の完成が団地の完成とちぐはぐになって企業誘致に障害を起こすと、そういうふうな円滑、すみやかな企業誘致上支障を来たすと、そういった事例は、過去におきまして現にあったわけでございますが、この点につきましては、今後具体的な案件に即しまして、関係各省と緊密に連絡をとり、また、その協力を確保しまして、今後そういうふうなことのないように最大の努力をいたしたいと、かように考えております。
  107. 小柳勇

    小柳勇君 産炭地域振興として国並びに県市町村で企業を誘致いたします。誘致されました企業が一年、二年で倒れてまいる、これは工業団地の場合も同じでありますけれども、せっかくそこに希望を持って行ったけれども、販路が拡張しないとか、あるいは地域的ないろいろの事情で倒れてまいります。一番大きなことは安定資金の枯渇であろうと思いますけれども、そういうものについて、誘致企業のアフターケアは、産炭地域振興事業団でやるのか、他の機関でやるのか、こういうところにも少し問題があろうかと思いますが、政府の見解並びに事業団の見解をお聞きいたします。
  108. 長橋尚

    説明員(長橋尚君) ただいま御指摘の進出企業のアフターケアの問題につきましては、特に運転資金の問題が一つの大きな問題であろうかと考えておりますが、もとより産炭地振興事業団としてのアフターケアというふうな問題もございますが、さらにまた広く関係機関協力し合って育てていかなければいけないというふうな面もあろうかと考えております。そういった面につきましては、従来の制度上不備な点がございますれば、これも改善いたしまして万全を期するように努力いたしたいと思います。
  109. 有馬駿二

    参考人(有馬駿二君) ただいまのお話でございますが、一つは当団でもって誘致いたしました企業が幾つかおかしくなっているのがございます。これは実は私どもが発足当時におきまして非常にあわてていろんなことをやって、十分基礎を固めないで誘致しました企業がおかしくなっているというような例が、ごくわずかでございますがありますので、まことに申しわけないと存じます。アフターケアの問題につきましては、そういう意味におきまして、発足のときに十分でき上がるように、いわゆるコンサルタントとしての機能を私どもといたしましてもこれから充実してまいりたいということと同時に、運転資金の問題につきましては現在長期運転資金の制度がございますが、一応増加運転資金いわゆる設備の拡張の増加運転資金と、それから立ち直り資金というふうに一応限定されておりますことと、資金が年間約五億円という非常にわずかなこともございまして、残念ながら十分なめんどうを見るというまでには至っておりません。まあもちろん中小企業公庫でございますとか、そのほかの関連のところといろいろと連絡をとりまして、できるだけ企業がそういうお困りにならないようにつとめたいと存じておりますが、現状ではまだ必ずしも十分とは申せないのが残念でございます。
  110. 小柳勇

    小柳勇君 運転資金の問題もまあ金のワクに関係しますから、予算編成期ですから、そういうものも十分ひとつ政府全体として責任をもって誘致した事業がそこで根を張るような態勢をひとつとっていただきたいと思います。  なお、午前中に中核企業導入対策ということで、大臣の見解も聞きましたが、福岡県を例にとって恐縮ですけれども、福岡県に現在どういう中核企業導入するようにお考えになるかお聞きしておきたいと思うのです。事業団のほうから……。
  111. 有馬駿二

    参考人(有馬駿二君) いわゆる中核企業ということばでございますが、相当大規模な、信用ある一流企業をできるだけ誘致したいということで、目下二、三の会社といろいろと話をいたしております。先ほどお話しございました自動車産業の問題につきましては、まだ具体化するというところまではいっておりませんが、そのほかただいまちょっとまだ具体化まではいっておりませんので、会社の名前まではお許しいただきたいと存じますが、いろいろ鉄鋼関係でございますとか、機械関係などに二、三いま話はいたしております。まだ具体化してどこまでというような、福岡県につきまして、どういう企業がいま出るというようなところまでは至っておりません。現在のところ比較的大きな産業として予定されておりますのは、福岡にいわゆる山崎パンというパン屋さんがかなり大きな工場をつくるというような例もございます。また今後福岡県大牟田にはアルミニウム工業をつくろうというような計画もございますし、まだ厳密にいま決定しているとまでは申せないような状態でございます。
  112. 小柳勇

    小柳勇君 実は通産省の方ですか、自動車産業機械工業など、できましたら、においでもいいから、ひとつかがしておいてもらいたいと思いますが。
  113. 長橋尚

    説明員(長橋尚君) たとえば北九州地区におきます自動車工業の導入、誘致といったような問題につきましては、産炭地振興関係の調査によりまして、その誘致の条件とか、どういうふうな状況になれば、たとえば完成車の組み立て工場が設立可能であるとか、そういった問題について、最近調査をいたしたりいたしておりますが、まあそういった調査ども踏まえながら、今後とも十分に施策の検討を進めたいと考えております。
  114. 小柳勇

    小柳勇君 中核企業導入につきまして積極的に政府も働いてもらいたいと思います。せっかくりっぱな団地ができましても、企業がまいりませんと、これは宝の持ちぐされでございますから、政府一体となって御努力を願いたいと思います。  最後は鉱害復旧の問題でありますが、農地が表土をとって復旧され、それが何年かたたないうちにまた工業団地に生まれ変わっているのです。農地復旧というのはたいへんな金がかかるのだと思うのですけれども、これはまあ農地委員会との問題もございましょうが、一足飛びに工業団地などに復旧できるような御努力がなされるのが予算の効果的な利用ではないかと思うが、通産省としてはどういうお考えになっておられるか、お伺いいたします。
  115. 長橋尚

    説明員(長橋尚君) この鉱害復旧につきましては、法律上の原則といたしまして、原状復旧ということをたてまえといたしております関係もございまして、ただいま御指摘のように、鉱害農地をいきなり工業用地として復旧造成をするというふうなことにつきまして、法原則の面からの障害もあるわけでございます。しかしながら今後そういうことが非常に望ましいようなケースがあることもまた事実でございます。個々の具体的なケースに即しまして、関係方面とも十分連絡協調をとりながら、今後とも必要な場合にそういったことが行なわれますように研究努力をいたしたい、かように考えます。
  116. 小柳勇

    小柳勇君 最後に、大臣帰りましたので次官に産炭地振興計画についての政府の決意を聞いておきたいのですが、石炭の今度の答申がいかように出ましょうとも、福岡の場合は、九州の場合は、ほとんど石炭産業の再建などにはもう地方の人は夢を持っていないですね。今度あとをどうするかということ、しかもそれはもうあのボタ山がいまなお累々とあすこに立っているのですけれども、あの産炭地、いわゆる石炭産業のあと、とにかく何とかしなければならぬ、しかもそれは緊急の課題であろうと思うわけです。そのためにとは言いませんけれども北九州、福岡の近辺というものはどんどんいま地盤沈下を始めているわけです。したがって、その土地の形を変えること、そしてそこには適当な産業を誘致すること、そしてかつての石炭産業が隆盛をきわめたと同じような経済的な発展をしなければならぬ。それには一大決心が必要ではないかと思うのです。全力投球を国がやらなければ、とてもこれは一県一市町村がなせるわざではないと思うのですね。したがって、今後も、今度の答申が出たあと、また産炭地振興についても質問したいと思いますけれども、いま答申が出る前に、私ども石炭産業のそのような再建は、むしろあとの産炭地域をどう開発し、発展せしめるかということに夢を持っておりますから、その点についての政府の決意をお聞きしておきたいと思います。そしてその御答弁によって私の質問を終わりたいと思います。
  117. 熊谷太三郎

    説明員熊谷太三郎君) ただいまの御発言に対しましては、特に北九州等の産炭地の振興につきまして、よく御趣意の存しますところを大臣にも申し上げまして善処してまいりたいと考えておりますから、よろしくお願いします。
  118. 小柳勇

    小柳勇君 私の質問を終わります。
  119. 阿具根登

    ○阿具根登君 科学技術庁と厚生省お見えはなっておると思うのですが……。じゃ長官お見えになりましたから、長官に御質問申し上げます。  午前中通産大臣にも御質問申し上げたのですが、水俣病につきまして、参議院でも十数年前にこれは公害である、熊本大学でははっきり公害ということを出しておるではないか、それを会社のおかかえの医者が公害にあらずということをやっておるのは、どちらを信用したらいいのかというような質問をいたしました。結局のところ、政府の統一見解とならずに、通産省関係は結論を出し渋った、厚生省関係は、これは公害である、こういうような態度であったと私記憶いたしております。ところが、今日水俣病は公害であるということを園田厚生大臣が政府の統一見解として発表いたしました。先ほどの通産省の答弁では科学的な面がまだ当時おくれておったので非常に結論がおそくなったというような答弁でございましたが、今日発表されておることば、十年前私どもが論議した域から一歩も出ておらないわけです。そういたしますと、通産省というものはもちろん企業工場に対する責任は十分ございますが、その企業の言うことのみを信頼して、そして公正であるべき大学の医者の言うことも退けてきた。そうすると、今日公害だということがはっきりわかった以上、その損害賠償等も起こっておるわけなんです。そういう場合に、政府の責任は一体どうなのか。こういう点から考えてまいりまして、今度阿賀野川の中毒の問題につきましては、鍋島長官が政府の統一見解として結論を出された。そうすると、同じ公害である、同じ中毒症状を起こして非常な苦しみを被害者は与えられておるのにもってきて、一方は厚生大臣がその結論を出す、一方は科学技術長官が出す、どういうことなのか、その点をひとつお伺いしておきたいと思うのです。
  120. 鍋島直紹

    国務大臣(鍋島直紹君) 初めに申し上げますが、科学技術庁が政府の統一見解を出すということは異例のことだと考えます。当然当該省である厚生省等が出すべきだと思いますが、これには経緯がございまして、前二階堂長官のときに、衆議院及び参議院でもそうでございますが、阿賀野川の水銀中毒事件についていろいろ論議があって、いわば厚生省の見解、それから阿賀野川は水俣病と違いまして、ああいうふうな短期的に発生した事件でございまして、新潟地震との関連において、いわば農薬の問題、あるいは一時農薬の倉庫から流出して逆流したのではないかという問題、あるいは昭電が鹿瀬工場から撤収する際、その管理が悪くて一時に出たのではないかという問題等々がこんがらがりまして、実は各省の意見がまことにまちまちであって、政府は非常に答弁に困り、また統一的なことはできなかったというふうに去年伺っております。したがって、去年の通常国会においてそういうのが論議された結果、それでは農林省及び厚生省に対して特別研究調整費を出しておる科学技術庁が一応統一見解としてこれをまとめないか。こういうことをまあ国会の中で話がありまして、これは衆議院でだったと思います。そうして結局当時の長官である二階堂長官がそれでは統一的な見解を科学技術庁として出そうというふうなことになった。そういう経韓をもって科学技術庁としては、いわば各省を調整しながらといいましょうか、各省の意見を聞いて、その中における科学的なものとしての見解を明らかにする責任を負わされたということであると承知しております。そこで、科学技術庁は各省に対して各省の見解を明らかにして、直ちに科学技術長官あて報告をしてくれるように、いわばそれぞれ依頼をしたわけでございます。そこで、その後経済企画庁のほうは技術庁の見解にまかせるという御返事であったと聞いておりますが、事実そうでございましたが、農林省あるいは通産省及び厚生省等は、それぶれ厚生省、農林省、通産省としての統一見解を出されたわけでございます。厚生省の統一見解は、厚生省の中にある食品衛生調査会の答申といいますか、厚生大臣に対する答申、それをもって厚生省の正式見解とすると、こういう御返事であったと思います。それぞれ農林省、通産省からもきておりまして、したがって、科学技術庁はそれがそろいましたのが実はことし正月でございます。実は三月ないし四月くらいには統一見解を出すということで作業を急ぎ、それぞれ進めてまいったわけでございますけれども、やはりその間、各省の意見を何としてもまとめなければなりませんし、科学的に解明せられたことは各省の意見がどうであろうとも、それを相手に納得せしめなければならぬというような、いろんなことを経まして、統一的見解というものを先般九月にお出ししたのが科学的なぎりぎりの線、いわば科学技術庁は、みずからスタッフをもって現地を調査するとかどうするとかいうわけではございません。各省の見解をもとにして、その中から科学的に解明できるものは解明し、責任があると思われるものは責任ありとし、不明については不明として結論を出しておるわけでございます。これはあくまで厚生省も農林省も及び通産省も十分それに納得の上、政府の統一見解として出したものでございます。そこで厚生省はその見解に基づいて、第一次水俣病と同様に公害病と認定をせられて行政措置をとられる。何らいわば阿賀野川も変わりない措置をとっていくということを厚生省は行政的に——われわれのほのは行政官庁ではございませんから——御決定になったということで、それについては私は科学技術庁としては異存はない。以上のような経過でございます。
  121. 小柳勇

    小柳勇君 経過はわかりましたが、それでは科学技術庁のほうに厚生省はどういう見解を報告されたか。通産省はどういう見解を報告されたか。それぞれから報告をしていただきたい。
  122. 鍋島直紹

    国務大臣(鍋島直紹君) 高橋審議官からお答えを申し上げます。
  123. 高橋正春

    説明員(高橋正春君) 先ほど大臣から初めに申し上げました点と多少重複いたしますが、当庁から厚生省と農林省に対しまして研究費を配賦いたしまして、これに基づきまして両省がそれぞれの研究の結果を出しましたことが第一でございます。各省庁の統一に際しましての見解の基礎になりましたものは、先ほど大臣が申し上げましたように、厚生省では食品衛生調査会の答申を四十二年の八月三十日に受けておられます。この答申の内容をもちまして厚生省の公式な見解とする、こういうことでございます。内容につきまして簡単に御説明申し上げますると、まず最初は、要するに水俣病の発生の過程につきまして、河川の汚染からそれを経まして魚介類が汚染されまして、それらの体内に水銀が蓄積する、これを多量に食しました者が慢性の水銀中毒を発生するという一般的な原則が書いてございます。これは昭和電工が三十年にわたりましてアセトアルデヒドをつくっておりますけれども、その際に副生されるところのメチル水銀の化合物が原因になりましてそういう蓄積が起こった、これが基盤である。この基盤と申しますのは、それによりまして、それがなければ発生しなかったと、簡単に申しますと土台と申しますか、そういうものだと思います。ただ、今回の二十六名の患者の発生しました事実につきましては、これに加えまするに何か非常に短期間に濃厚に魚の中の水銀の蓄積量を増加せしめて、さらにそれを多食するということが加わりまして発生したものである。非常に簡単に申しますると、長期汚染は起こり得る可能性がある。これは将来に向かいましては長期汚染によりまして中毒が発生する可能性がありますけれども、今回の発生は、そういう長期汚染に加えるに、簡単に申し上げますと、短期汚染が加わりまして発生したものであろう、このように推定される。これが食品衛生調査会の答申であり、厚生省の意見でございます。この意見に基づきまして、各省……失礼いたしました、脱落いたしましたが、そして、先ほど申し上げました短期汚染の原因は何かということにつきましては、長官から申し上げましたように、地震その他いろいろな要因と考えられるものが想定されるけれども、資料から、この短期汚染が何によって起こったかということは断定できない、これが答申の大要でございます。このような食品衛生調査会の答申即厚生省の見解に対します各省庁の見解でございますが、まず経済企画庁からは四十二年の十月二十五日に当庁長官あて文書をいただいておりますけれども、食品衛生調査会の答申に対しまして特に異論はない。農林省からは四十二年の十二月十日にお答えをいただいておりますが、厚生省見解に特に付加すべき点はない。かようなことでございます。  それから通産省につきましては、同年の十月二十八日付でいただいておりますが、これは、このような慢性の水銀中毒の発生原因というものを究明いたしますためには、さらに二つの方向から検討を行なう必要があるということでございます。  その第一は、一般的究明という課題で論じておりますが、今回のような具体的な特殊の究明をいたしますほかに、たとえばメチル水銀の物性と申しますか、メチル水銀の水溶性、どのように水に溶けるか、あるいはメチル水銀が土砂等にどのように吸着されるか、そういう問題。それからあるいはいろいろな濃度のメチル水銀溶液の中で魚類の飼育実験をいたしまして、そういうものがどのような過程で、そしてどのような濃度で魚の中に蓄積されていくか、そういうようないろいろ一般的な、今回においてはでございますが、一般的な共通的な検討をなお今後続けなければならぬ。その点が現在の学問的段階におきましてもなお不明な点でございます。  第二番目に検討すべき点は、特殊的究明ということになっております。これは今回の阿賀野川の水銀中毒の問題そのものを指向しておるわけでございます。今回の問題につきましての因果関係を立証するためには、先ほど申しましたところの一般的な究明を今後はしなければならぬが、しかし、当時の、これは公害問題一般につきましての共通的性格でございましょうが、こういうものは事件の当時の現状というものを再現することは非常にむずかしいだろう、しかしながら、なお直接的に今回の資料のみをもちましては、昭和電工が直接に今回の中毒事件の原因とするということを判定するには資料が不十分だ、あるいは先ほど申し述べました調査会の、第三項にございますところの埠頭からの地震の際の農薬の流出の問題がございますけれども、そういうものが流出をしなかったということを証するような資料につきましても同様に十分でなかった。ただ、ここに書いてございますが、鹿瀬の同工場からメチル水銀が阿賀野川に流されたことは認めるんだと、排出自体は認められるけれども、それによっていろいろ集中的に、河口に集中いたしまして病人が起こった原因でございますとか、先ほど申し上げましたような、直接的にはそれと関係を立証する資料は十分でなかった。  以上が関係いたしますところの省庁の意見でございます。
  124. 阿具根登

    ○阿具根登君 まあ私たちは新聞を見ておるから、それぞれ憶測をし、あるいは人に聞いて論議をしておるので、現場に行っておりませんので、当たっておりませんかもしれませんけれども、農林省は格段の意見はなかったと、ところが一方からは多量の農薬が阿賀野川に流れ出た、それによる水銀の中毒である、こういうことを会社側から言われておると思うのです。ところが一方では、たまたまそのときの写真をとってあった。その写真が証拠になってあの場合は農薬はひとつも川に流れておらないと、こういう反論が出されておるわけなんです。だから農林省としては、農薬は流れておらないんだと、こういう見解に立っておられると思うのです。そうしますと、被害者が出た原因は何なのかというようになってきますと、これはどの省も水銀中毒だということを認めておるわけなんです。そうした場合に、それでは水銀が大体どこから流れてくる可能性があるのかということになってまりますと、昭和電工の廃液だというのが常識ではないか、こういう結論になってくると思うのです。しかし、皆さん技術者だから常識では判断できないと言われますけれども、ちょうどこういうものを論争したのが水俣の十年前なんです。そういう論争を通産省は相変わらずやる。今日もそういう見解を通産省は申し述べておうようです。ところが十年たった今日、政府見解としてこれは公害である。公害ならどこが流した廃液なんだと、これは日窒水俣工場だと、こうなった。ところが見てみなさい。当時会社のお医者さんであった方々が——これはチッソの廃液でありませんよと反対をしておった人たちが——当時チッソの廃液でこの中毒が起こっておるということははっきりわかっておる——それをやはり会社の医者として言い得なかったのは私の弱さですと、こう白状しておる。また会社側もまことに悪うございました、チッソの廃液でございましたと、こう言っておるわななんです。そうすると、通産省は一体何のために会社の擁護をやってきたのか。だから、いま話を聞いてみますと、またしばらくこれがたってきて、これは公害である、しかも昭和電工であるというような結論が出てきてから、今度また反対しておられる方々が、いや確かにそのとおりでございまして、あの当時はもうまことに申しわけなかったと、そうなってくると被害者は一体どうなる。私は水俣には四回行っております。そしてそのときに、審議した資料を持ってきたやつが十年間全然さわられずに、やっと公害問題がこういう社会的な問題になってきたので、これを公害だというのを政府がおそまきながら出したわけなんです。おそまきだけれども、出されたのはけっこうだと思うのです。ならば、今度科学技術庁がまたそういう線で、結果は同じではないかということを言っておられたテレビの放送の鍋島長官の声も聞きました。ならば、どうして水俣のようにこれは公害であるということをはっきり言えないのか。また衆議院のほうでどうきまったか私知りませんけれども、事人命の問題、人間の生命の問題に関する限りは、私は厚生省が当然責任官庁になるべきであろうと、私はこう思う。それはその原因を科学的に調査されるのはけっこうなんです。しかし、原因を調査する前に、すでに中毒になって非常に苦しんでおるということは、だれが見てもこれは否定することはできない。しかも原因は水銀の中毒だということは各官庁認めておるはずなんだ。それがあまり科学性に走り過ぎて、そうして結果は水俣と同じ公害だというようなことを出しておりながら、何か昭和電工の水銀が、廃液が基盤となって云々と、こういうような結果になってきたと思うのです。だから、阿賀野川のこういう被害者の諸君は、なぜ水俣と一緒にできないのかと、こういうことを言われておるわけなんです。そこをはっきりさしていただきたいと思うのです。
  125. 高橋正春

    説明員(高橋正春君) お答え申し上げます。  先ほど申し上げましたとおり、私どもの政府統一見解の基本になりましたものは、食品衛生調査会の答申でございます。食品衛生調査会の答申は、長期汚染が基盤となる、基盤によって将来起こる可能性があるが、将来の問題でございます。今回の二十六名の患者はその長期に加うるに、まあ短期ということは非常に意味合いを持つ詳しいことでありますけれども、簡単に短期と申し上げておきますが、それが加わって起こったものと推定される、これが調査会の意見でございます。私どものほうの意見をそれに対比いたしまして申し上げますると、第一項は、これは一般的な中毒のメカニズムを書いたにすぎませんが、二番目で、私どもはイとロと書いてございますが、イのほうは長期汚染のみでございますね、長期汚染だけでも発生する可能性も考えられる。ロのほうは、その長期汚染に加うるに短期汚染の場合が考えられる。厚生省の見解はロでございます。私のほうはその両者がいずれかということはわからないけれども、イによって起こる場合もあると言っているわけなんです。まあその他いろいろございます。それから問題になっておりましたところの農薬は、ここに書いてございますのは埠頭の倉庫の農薬ではございません。一般の流域散布の農薬でございます。当初アルキル系の農薬のみを考慮に入れましたけれども、お知りおきのとおり無害といわれております酢酸フェニル水銀の中には、これを製造いたします過程におきましてメチル水銀が出ます。しかしながら、これは非常に流水に入る可能性は少ないということで、そこでは否定をいたしております。さらにもう一つ日本瓦斯の松浜工場でも同じようにアセトアルデヒドの製造をいたしておりますが、これもいろいろ問題になっております。これも地理的な条件その他で否定をいたしております。その他問題になりました点は、私どものほうは非常に明確に除去しております。しかもこういうようなことで長期だけによって起こったか、長期にさらに短期が加わって起こったかわからないけれども、そのいずれもが長期が必ず関与しているだろうということを申し上げましたので、私どものほうとしては、むしろその点は調査会の答申よりも非常に明確にしたつもりであります。最後の短期の問題につきましては、これは調査会の答申のとおり、これを裏づけをするところの資料がないということにつきましては、先ほど長官から申し上げまして、私どもも新たに調査いたしましたのではなく、従来の資料を全部見たのであります。これは厚生省の御見解どおり、資料はございません。ただここが違っておりますのは、これを積極的に否定する資料もあるという意見がついておりますけれども、これは非常にこまかくなりますが、学術的な科学的な論拠に立ちますと、たとえばメチル水銀の症状しか出ていないということを積極的否定の根拠にされておりますが、これは酢酸フェニル水銀ができますときのメチル水銀でございます。しかも酢酸フェニル水銀の症状が出ないのはあたりまえでございます。その他いろいろでございますが、そういう点で積極的にさらに短期汚染を否定する資料があるということにつきまして、私どもは厚生省の御意見を取り上げませんでしたけれども、その他につきましては全般的に調査会の意見に沿い、かつよほど明確にいたしたものと、かように私は解しております。
  126. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうしますと、厚生省の調査会の意見あるいは通産省の意見、農林省の意見を聞いて、皆さんのところでそれをまとめて出たのが結論であって、自分たちで研究したとか、あるいは現場に行って調査をしたとか、何もそういうことはなくて、ただ各省のまとめ役をしたというだけなんですか。
  127. 高橋正春

    説明員(高橋正春君) この問題につきまして、いわゆる技術的研究の資料と申しますのは、厚生省の特別研究班がお出しになりましたこの青本だけでございます。厚生省の食品衛生調査会も各省庁も、全部この資料の範囲内での御意見でございまして、御承知のように疫学というのは一つの公式に事象を当てはめる、したがいまして、読み方によって多少違います。点と線をつなぐようなものでございまして、線の太さ短さ、いろいろ見解の相違がございまして、そういうことで皆さん各省がお出しになりました意見の、もとの資料はこれ一つでございます。しかしその中で、ある要件に重きを置いたり、ある要件につきましてはさらにほかの要件が必要だ、いろいろ御見解がありますが、そういう各省の見解を客観的にまとめたのが私どもの統一的見解でございます。
  128. 阿具根登

    ○阿具根登君 わかりました。それでは厚生省の調査がいわゆる医学的に見て、科学的に見て一番責任のある調査であり、そうすれば、専門的な技術は持っておられるけれども、それを科学的に研究をされずに、みんなのまとめをやったということになってくるならば、当然その所管は科学技術庁じゃなくて厚生省のその権威ある調査会ですか、そこが私は責任官庁になるべきである。水俣では厚生大臣が責任官庁の責任者として発表される、阿賀野川では科学技術庁の鍋島長官がやられる。そこに国民は非常な疑惑を持っておるわけです。なぜ同じ水銀である、メチル水銀であろうが有機水銀であろうが、それが原因になって被害者が出ておるということはわかっておるならば、なぜ同じ政府であって二つの省が見解を出さねばならぬか、しかもそれは省の独自の見解でなくて、これは統一見解ということなら、政府の責任ということになるわけです。その統一見解を発表するのに、一方では厚生省、一方では科学技術庁あるいはもうしばらくだったら通産省になるかもしれない。そういうことでいいかどうかという問題をひとつ長官にお尋ねしたいと思うのです。
  129. 鍋島直紹

    国務大臣(鍋島直紹君) ごもっともであると思います。したがって、先ほど申し上げましたように、これは科学技術庁が発表したのはまことに過去のいきさつから見ると異例の発表であるということでございます。したがいまして、この科学技術序の統一見解をもとに厚生省は阿賀野川の問題も公害病というふうに認定をせられて、そしてそれに伴う諸般の措置は行政官庁である厚生省がおとりになるということに、これは閣議できまりました。なお、今後においてのかかる事態においては厚生省が責任をもって認定をしていくというふうにきまりましたので、科学技術庁はその意味においては今後特別研究調整費から研究費を出すことはございましても、このような異例なことは私としてはするつもりはございません。
  130. 阿具根登

    ○阿具根登君 長官の御気持ちよくわかりました。  そこで通産省は、大臣にちょっと質問したんですけれども大臣は時間がなかったので、その責任問題というようになってまいりますと、現在新聞で見てみますと、死者四十二名ですか、その方々の弔慰金が一千二百万だったかと思います。それから治療されておる方々が現金六十万、それも十五年昔にさかのぼって支払うべし、こういう要求が出ておると思います。これはもちろん会社側に要求されておると思うのです。思うけれども、十数年間この結論を出さなかった通産省の責任は一体どうなるか、しかもその当時国会でもこれは工場の廃液が原因に間違いないではないかということが非常に強くここで論議されておるわけですから。それを通産省が出ししぶって、そして政府の統一見解とならずに、地方で逆に県知事等が中に入って和解等の手続をとってしまった、こういうことになるわけです。それがその後いろいろ調査し、科学的に研究されてわかったというなら私の議論は通りません。しかし何もその後やった形跡はない。発表されたものを見れば、十数年前国会でも論議されたそのままです。そうすると、通産省がだまされたというならだまされたかもしれません。しかしその当時通産省が、これは水銀中毒であるけれども、極端に工場の廃液だと断定するのは早過ぎるということで、会社側の医者の言質等をとられたと思っている。その方々が、今日になって、あれは誤りであって私らがもう少し強かったならば、あのときに結論を出させて十年間も皆さんに苦労させぬでよかったと、こういうことを言っているわけです。そうすると、通産省は一体この責任をどうするのか、会社が出せないといった場合は政府に対して被害者は何とかせいと言ってくるに違いありません。そうした場合、通産省は一体どういう責任をとるつもりか、それをお尋ねいたしておきます。
  131. 後藤正記

    説明員(後藤正記君) すでに科学技術庁のほうからお答えになりましたように、水俣病につきましても、厚生省の食品衛生調査会で水俣の食中毒部会というのが三十四年の一月に設立されて検討が行なわれました結果、病因物質の究明について、ある種の有機水銀であるという一応の結論が出ましたが、その発生原因、生成過程、分布状況等についてさらに総合的な研究を行なう必要がある。こういう答申が三十四年の十二月に行なわれております。この食品衛生調査会の水俣食中毒部会との関連で各省の連絡会が開かれまして、これが三十六年三月まで続いたわけでございますが、当時通産省といたしましては、原因がはっきり——一応有機水銀であるという結論でありますが、その生成過程、いかなる生成過程によるものかというものが、当時学問的に究明することができませんでしたので、いろいろ調査をいたしまして、その各省連絡会にも出席をいたしましたが、そのままでこの連絡会は先ほども申し上げましたように、三十六年の三月に解散ということになっております。当時通産省といたしましては、原因は、詳しい生成過程等は不明でございますが、三十四年の十一月十日に、当時の軽工業局長といたしまして、あの種の有機水銀であるということでございますので、当時の、チッソの前身でございます新日本窒素肥料株式会社に対しまして、排水処理設備の完備をするようにという軽工業局長名の通達を出しております。それからまた引き続きまして三十四年の十一月十日でございますが、同じく軽工業局長から、当時のアセトアルデヒドとか塩化ビニールあるいは電解ソーダ等、有機水銀を排出するおそれがある工場約三十五に対しまして、その水銀の処理状況について厳重調査するように依頼をいたしました。その三十五工場の中にやはり新日本窒素肥料とかあるいは電気化学工業とか昭和電工等の関係各社が含まっております。それから、さらに先ほどの阿賀野川事件に関しまする通産省としての見解に関しましても、科学技術庁のほうからお答えございましたように、一部新聞等で取り扱っておりますように、決して大企業に偏向と申しまするか、企業に対して通産省が何か謀議するというような雰囲気のものではございませんので、一般的な究明と、それから特に阿賀野川事件の特殊的究明という、阿賀野川事件に問題をしぼりましてその見解を出しておるのでありますが、この当時の四十二年十二月二十八日に科学技術長官に提出いたしました通産省の意見書といたしましても、決していずれかに偏向しておるという性質のものではございませんで、ただその因果関係の立証が長期汚染、それから短期濃厚汚染と二つ出ておりますので、その辺のところが事実時期的にこの阿賀野川の問題につきましても、時期的に集中発生しておるという事実との関連について、直接的な因果関係が確信をもって判断できなかったという事態でございました。  先ほど、最初に申し上げましたように、その調査あるいはまた三十四年当時のいろいろの研究、各省との連絡等におきまして、今日に至りますまでその結果について十分追跡をいたさなかったという点につきましては、この点についてはしごく恐縮いたすところでございますが、通産省の立場といたしましては、一部新聞等に報ぜられておりますような、一方に偏した、企業側に偏したような立場というものはとっておらないのであります。それで、このたび政府の統一見解が出ましたが、同時に、これに先立ちまして、たとえば、昭和四十年の七月二十八日にも軽工業局長との連名におきまして「工場における水銀の取り扱いについて」というのを関係の各社に通達を発しました。それから四十三年六月十二日、同じく企業局長と化学工業局長との連名におきまして、水銀の使用状況調査につきまして、水銀を使用いたしておりますソーダ工業あるいは塩化ビニール製造工業に出しております。それから統一見解の出ました四十三年の九月二十五日付で、化学工業局長名をもちまして、水銀使用工場における排水の取り扱いについて、電解ソーダとか塩化ビニール等をつくっております三十五企業五十工場あてに、これらの取り扱いについて厳重注意をするように通達を発しております。  以上申し上げましたことは、通産省の姿勢につきましてお答えを申し上げた次第でございますが、当時より今日に至ります間、たとえば水俣につきましては当時の県知事さんのごあっせんで、企業側地元被害者との間のお話し合いがついておる。で、今回も、政府統一見解が出まして、そうして過去にさかのぼってその補償の問題等、いろいろ両者御納得のいくような線で両者の交渉が円満に行なわれることが私どもとして希望いたすところでございます。ただ、阿賀野川のほうにつきましては、統一見解が出ましたあとといたしましても、現在これは訴訟事件係争中でございまして、行政府といたしましては、現在裁判の係属中の問題につきまして、特に工場その他に、あるいは昭和電工等について特別の措置をいたしておりませんが、一般的な水銀取り扱い工場に対する通達という意味では、厳重に注意を促しておる次第でございます。  以上でございます。
  132. 阿具根登

    ○阿具根登君 通産省の説明を聞いておりますと、他の省よりも通産省が一番水銀の中毒だということを知っておられたようですね。そういう事後処理はしておきながら、ならば、四十二人も死んで、そして子供がばかになり親がばかになっておる原因をなぜ発表しなかったのか。だから会社と何かあったんじゃないかと言われるわけなんです。会社はすぐそのとときに、ネコも試験しました。そして、やったところが、これはばかになって飛んで回ったと言っているけれども、そんな試験しなくても、私らが行ったときに、実際ネコをしりをたたけばぱっと走っていくけれども、壁がわからないんです。壁にばぁんと行き当たってひっくり返るんです。ぼくらそれを現実に見てきておるんです。だから、こうじゃないかと言って私たちは責めたわけですよ。そのときも通産省はそれを肯定しないんです、科学的にまだ究明しなければ断定できませんと。ところが、あなたの話を聞いておると、水銀中毒だからさあ注意せい注意せいと何回も流したと、こうおっしゃる。ならば、なぜこれは水銀中毒でこうなったということで十年前に発言できなかったか。ということは、やはり会社に対する思惑とか圧力とか、そういう点で私はごまかされておったのではなかろうか。その当時のことを会社も会社側の医者も言っているのだから……。そうすると、通産省の責任も問われてまいりますぞと、こういうことを申し上げているわけです。時間もございませんから、これ以上の答弁は、この次に議事録でも見て、時間をいただいてやりたいと思いますが、そういう点で私どもは通産省は企業優先で人命を軽視している。こういうふうに考えております。  以上で終わります。
  133. 内田善利

    内田善利君 厚生省にお伺いしたいのですが、十五年ぶりに水俣病も公害病として認められまして、厚生省の前向きの姿勢にはわれわれひとしく感謝しているわけでございますが、まだほかにも、いまもお話がありましたように、たくさんそういった関連産業、企業において、いろいろ公害が出ているわけでございますが、私は特に対馬の公害関係についてお聞きしたいと思います。  昨年の五月、矢追委員が対馬のことにも触れて質問しておるわけでございますが、そのときに館林環境衛生局長のほうから調査すると言っておられるわけですが、その後どれだけ対州鉱山の問題について調査したか。それを説明していただきたいと思います。
  134. 武藤き一郎

    説明員(武藤き一郎君) 対馬の問題につきましては、厚生省といたしましては昭和四十年度に公衆衛生協会に委託をいたしまして調査をいたしました。その結果に基づきますと、いわゆる樫根部落の住民につきまして尿糖あるいは尿たん白の陽性率が他の地域よりもやや高いという結果がわかりましたので、さらに精密な調査をする必要がありましたので、昭和四十一年度におきまして引き続いて調査をいたしました。それは四十歳以上の住民を対象といたしまして調べたわけでございますが、まず胸部のエックス線の撮影をいたしました結果、精密検査を要するもの十六人を発見いたしまして、その十六名につきましてさらに骨盤部のエックス線の直接撮影を実施いたしましたが、結果につきましては、老人性の骨変化がおもなものでございまして、富山にありますイタイイタイ病と見られるような所見は発見されなかったわけでございます。しかしながら鉱山から亜鉛とともにカドミウムが検出されておりますので、四十三年度につきましてはさらに同研究班に委託をいたしまして、ことしの夏からことしの秋にかけまして川の水あるいは泥、農作物、水田土壌、そういうものを採取いたしまして、できますれば三月の終わりまでには結論を得て、明春にはその結果を知りたい、かように考えておるわけでございます。
  135. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  136. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 速記をつけて。
  137. 内田善利

    内田善利君 それじゃ一問だけ質問します。  科学技術庁は水俣病に対していまの質問にもありますように、私の見るところでは非常にあいまいな態度であったと、そのように思うわけです。科学的には私たち一般の考え方からすれば、明らかに水俣と同じように昭電という企業が犯人ではないかと、そのように思われるわけですが、いろんなデータがあがってきて、それが集約されておりながら、あくまでも結論においてはあいまいな基盤とするというようなことばを使ってごまかしておると、このように思うわけでございますが、ほんとうに科学技術庁としては、もう少しそういったデータに対して忠実に科学的に発表すべきじゃないかと、そのように思うわけですが、この点について質問したいと思います。
  138. 鍋島直紹

    国務大臣(鍋島直紹君) ただいま阿具根委員に申し上げましたような経韓及び各省からいただきましたその見解に基づいて、いわば政府としての統一見解を出したわけでございまして、みずから調査したわけではございませんので、そこに非常にあいまいな点があったことは、といいましょうか、そういう御見解を言われることも無理ないと思いますが、科学技術庁としては、あくまでそれを科学的に解明をして問題点問題点として明確にしたつもりでございます。  先ほど申し上げましたように、この中毒事件は、阿賀野川がメチール水銀化合物で汚染されて、これが川魚の体内に蓄積し、これを多食した人の体内に移行した結果起きたものである、これははっきりしております。そのような状態、汚染が中毒をどうして招いたかということにつきましては、先ほど高橋審議官が言いましたように、長期継続汚染によって、それのみによって発生したという意見一つ、及び長期継続汚染に対して、比較的短期間の濃厚汚染が加わって発生したかどうか、この二つの点が考えられるが、このいずれかにこれを断定することは今日の資料ではできない。しかし、いずれにせよ長期汚染は、本中毒発生に対してやはり基盤ということばを使っておりますが、その前に関与しておるということばも使っておりますように、明らかにそれが原因となって関与しておる。この長期汚染源として考えられるものは、昭電鹿瀬工場の排水である。しかし、短期の汚染源として考えられる四つのものがございますが、これらについては、二つは農薬とそれから他の工場等の分は考えられないが、鹿瀬工場の操業停止時の汚染急増及び新潟地震というものが考えられるが、この点については立証することができなかった、こういうことでございまして、厚生省の見解もございますけれども、それより少なくともある程度明確にしたでき得る限りの見解を科学技術庁としてはしたというふうに考えております。
  139. 塩出啓典

    塩出啓典君 科学技術長官にお尋ねしたいと思いますが、最近原子力発電所あるいはまた燃料の再処理工場、そういうものの建設に対して非常に各地で地元民が反対をしておる。これはやはり私は今後の日本原子力発展のためにまことに残念な現状であると思う次第であります。そういう点で、まず第一に茨城県の東海村のあの原子燃料再処理工場建設に対して地元が非常に反対をしておるわけでございますが、この問題に対して、科学技術長官として今後どのような方針でこの解決に進むか、その点をまずお聞きしたいと思います。
  140. 鍋島直紹

    国務大臣(鍋島直紹君) 再処理工場はどうしても急いで来年度中から進めてまいりたいというふうに考えておりますが、東海村の再処理工場について地元がそれぞれ反対をしておられる。その原因は、一つは、水戸射爆場の返還問題でございます。第二は、あまりに施設が過密化しておるのではないか。したがって、別のもっとぼうばくたるところに持っていったほうが安全ではないか、まあこれは多少射爆場の問題と関連はいたしておりますが、そういうことでございます。したがって、現在この二点につきまして十分研究をし、あるいは科学技術庁として決断を下して、そうしていかなければなりませんけれども現状におきましては、まだこれは解決に至っておりません。やはり射爆場の問題は、少なくともある程度のめどをつけなくちゃならぬと私は思います。  それから過密化の問題につきましては、やはり安全審査を十分にやっていく、これがだいじょうぶであるかどうかという点もはっきりして、地元方々、いわば県御当局、当該市町村当局と十分話し合った上で、でき得れば設置したいということは当然でございますけれども、少なくともその話し合いをこれから進めなくちゃならぬという段階になっておるわけでございます。
  141. 塩出啓典

    塩出啓典君 射爆場の近くには再処理工場を置くべきではないと、そういうやはり長官のお考えですか、そのようにいま答弁を私とったわけでありますが……。
  142. 鍋島直紹

    国務大臣(鍋島直紹君) 射爆場がもう前から問題になっておりまして、私たちもできるだけ射爆場をひとつほかへ移転していただきたいということで、政府部内で防衛庁長官そのほかにすすめておるわけでございます。なおまた、実態として、まあいわば茨城県知事さんの御当局等は、射爆場の返還がないとなかなか説得することも、あるいは危険性ということも考えられるので、むずかしい、こういうふうに言っておられます。われわれもやはり同様に考えるわけでございます。
  143. 塩出啓典

    塩出啓典君 では九大におきましても非常にああいう事故がありまして、そういう非常に飛行機の通るような地帯にそういう放射能関係の物質を置くべきではないと思うわけで、そういう点について、ともかく射爆場がのかなければ再処理工場をそういう危険なところに置くわけではないということを、はっきりやはり長官として明言をしていただきたいことと、もう一つは、非常に住民もいま心配をしているわけであります。住民のそういう反対を押し切ってそれば設置されるのではないか、そういう点が非常に心配をされているわけでありますが、そういう点で、いずれにしても地元住民のそういう反対を押し切ってまで、納得させないで、置くということはよくないと思うわけであります。そういう点で、いずれにしても自治体の意向も、また住民の意向も尊重してきめていくと、そういう科学技術庁としてのひとつはっきりとした約束を表明して、住民の方たちを安心させるべきである、そのように思うわけでありますが、長官のお考えを聞いておきたいと思います。
  144. 鍋島直紹

    国務大臣(鍋島直紹君) 技術的には射爆場の問題というものがさらにまだ今後解明されにゃならぬと思いますけれども、すでに県御当局、市町村等は射爆場の問題を大きく反対の一つの目標として掲げられております。まあないほうがけっこうでございます。したがって、私たちも少なくともそういったことを除去するためには、射爆場の問題を少なくともめどをつけていくと、たとえば建設に相当かかりますが、はっきり一年後に移転するということがわかれば、これはまた別でございますが、そういっためどをつけて地元の県、市町村の方々と十分お話し合いを進めることはやりたいと考えます。
  145. 塩出啓典

    塩出啓典君 それでは、川崎市の原子力事業会社の火災事故が最近起こっておるわけでありますが、いろいろ調査してみますと、過去にもその近辺において非常に事故が多い。ところが、そういう事故に対して非常に住民は不安を感じているわけでありますが、ところが地元の警察とか消防署等は、そういう問題に対しても、ただ助言する程度で、実情というものを何ら知らされていない。まあそういうような点が、これはもう川崎だけではない、福井県の発電所でも問題になっておるようでありますし、これは群馬県のアイソトープの運搬等についてもそういう問題がいわれているようでありますが、そういう問題についての今後の科学技術庁としての考え方を聞きたいと思います。
  146. 藤波恒雄

    説明員(藤波恒雄君) 先生ただいま御指摘の川崎の研究所におきます事故と申しますのは、研究所の中のナトリウム研究施設のナトリウムが一部漏れ出しまして、それが発火したということでございまして、われわれもあの近くに研究用の原子炉施設がございますので、注意してさっそく調べたのでございますが、原子炉施設とは関係ない建物でございました。火災も小規模でございまして、すぐおさまったようでございまして幸いだったと思うわけでございます。なお引用されました敦賀等についての事故というのは、私よく存じませんが、しかし一方原子力研究所等におきましては、先般先生が八月のこの場におきまして、いろいろとCP5の配電盤の焼損事故でありますとか、あるいはJMTRの水漏れの故障でありますとかという点につきまして、いろいろ御指摘を受けまして、その状況も御説明したとおりでございますが、こういった事故が、まあ事故と申しますか、ものによりましては故障程度のものでございますが、そういうものが起きていることは起きているわけでございますので、できるだけこういうことがないようにわれわれつとめてまいりたいと思います。しかし、まあ幸いにいたしまして放射能災害というものにつながる事故というものは、いままで起こっておりません。
  147. 鍋島直紹

    国務大臣(鍋島直紹君) いまの御質問でございますが、そこで基本的になる安全審査の問題は、大体概括して二つに分けられて、原子力委員会の下にある日本の斯界の権威を網羅した安全審査委員会で徹底的にやっていく。そこでまず第一にその原子炉なら原子炉、あるいは放射能を出す機械なら機械そのものについては責任を持ってその安全審査を十分していく、しかしその周辺の立地条件、環境整備と申しますか、それらのことについては、万一の際における消防車の導入の方法であるとか、あるいはこういう施設があるから、万一の際にはこうやって住民としては注意していただきたい。こういった面におけるやはり安全審査は、もちろん環境とそれからそのほうの実体についていたしますけれども、やはり消防署なり、地方自治体なりには十分御理解を願い、あるいは委員会等をつくって、そういった事故の際の万全の対策というものをしなければならなかったのではないか、あるいはそこに問題があるのではないかというふうに考えるわけでございます。したがって、ことしは二、三たいした事故とまでいかない故障程度のものが起きております、そういうわけでございますので、今後はそういう点、ひとつ十分気をつけていくように指導してまいりたいと思います。
  148. 塩出啓典

    塩出啓典君 その点に関しまして、地方自治体に対して、その操業が始まって運転状況、安全状況はどうであるか、そういう点がやはり長官の言われたように、地方自治体というのを対象にしていくと、それは確かに必要であると思うのでありますが、ただ現在においては、法律にそういうことを報告する必要もないわけです。やはりある程度法律でちゃんと定めて、地方自治体にもちゃんと状況報告して、そこに地方自治体の意見も尊重していくように、ちゃんとやはり法律で定めなきゃならぬと思うわけでございます。現在の姿は、安全は国が保障するから地方自治体は安心しておれ、そう言うけれども、実際に現実には、それはいまの事故だって原子炉には関係ないかもしれませんけれども、われわれ大衆が見るならば、やはりそういう原子力関係の工場で事故が起こった場合には心配なわけであります。国が責任を持つと言いながら、実際にそういう事故がひんぱんにあったのでは安心できない。地方自治体としてもその状況等もやはり知って、それに対する態勢もとらなければならない。そういうのが私は当然の気持ちじゃないかと思うわけであります。そういう点で、地方自治体に対しても状況報告し、そこにやはり協議していくように、法律的にもちゃんときめていかなければならない、そのように考えるわけでありますが、その点についての御見解をお聞きしたいと思います。
  149. 鍋島直紹

    国務大臣(鍋島直紹君) いま塩出委員の言われましたことはごもっともであると思います。もし事故が起きました際におきましては、現在の規制法で——それはそういうことが起こっちゃならぬわけでございますが——地方自治体、警察というふうに通報する義務はあるわけでございますが、その前に、やはり住民の御安心を願う。万一起きた場合には迅速に行動できる、そのためには十分理解をしておいていただかなければならぬというような意味合いにおきまして、いわばその実体そのものじゃなくして、やはり環境の整備、モニタリング・ポストを設けるとか消防車をどう導入するとか、水がどこにあるか、どういう環境に置かれているかという点に対しては、私は、やはり多少今日まで欠けておった面もあるいはあるのではないかと反省するわけでございます。したがいまして、そういう施設があるところにおきましては、やはり安全審査をして、その一つの実体の審査をする以外に、行政としては、やはりいま言われましたような地方自治体、あるいは自治体の中に消防そのほか警察等も入るかもわかりませんけれども、十分住民の方々あるいは自治体との連絡を密接にするようなやはり委員会のようなものがあってもいいんじゃないか、そういうようなことを考えるわけでございまして、この点は今後研究をさしていただきたいと思います。
  150. 須藤五郎

    須藤五郎君 いま長官からいろいろ話があって、大体わかってまいったわけでありますが、この間私は東海村の研究炉の火災のときに参りまして、そしてあそこで労働組合の諸君にも話を聞きましたし、また当局の話も伺って帰ったわけなんでありますが、私の感じで申しますならば、東海村一つ見ても、保安体制が十分できていない、まだ不十分な面がたくさんあるというふうに考えて帰ったわけなんでありますが、日本原子力に対する保安体制が、今日の状態で長官は十分にいっているというふうにお考えになっていらっしゃるのかどうか。先ほどから話を伺っておりますと、そうではないように聞きとれるわけなんですが、そうでないとおっしゃるならば、それではどういう点が不備な点であって、どういうふうに今後具体的に持っていこうというふうに考えていらっしゃるのか、これが一つですね。  それから、今日はまだ東海村はじめ大洗だけしか原子炉ができていませんけれども、今後方々に電力用の原子炉ができると思うのです。そのときの保安体制をどういうふうに長官は考えていらっしゃるのか。これを企業まかせにしてしまうのか、それとも国が全責任をもってこの保安問題と取り組んで、国民が不安を持たないように、国民に災害の及ばないような方法を立てていこうと、そういう方向に考えていらっしゃるのか、その点の長官の考えをまず聞いておきたいと思います。
  151. 鍋島直紹

    国務大臣(鍋島直紹君) 東海村の保安体制の問題でございますが、先般事故といいますか、故障程度でございましたですが、少なくとも研究炉のJRR2でございますか、配電盤が焼けたことがございます。おそらくこのことを言われておるのじゃないかと思います。その際も、やはり私からも注意いたしておきましたが、その報道があってから、いわゆる危険信号が出てから直ちにこれの消火態勢に入るのがどうもおくれたようでございますので、この点は厳重に注意をいたし、その後、工事中でございます大洗の原子炉の中で水漏れができたというような問題があるわけでございます。したがって、どうしても保安体制はあとで詳しく原子力局長から申し上げますが、局長名で、少なとも安全と思われる保安体制のもう一ぺん再検討をするようにということで注意を与えております。ただ問題は、やはりそれを行なうにしても、人間、施設、そういうものを常に完備しておきまして、そうして緊急のときに直ちに応急措置に移り得るいわば体制が整っていなきゃならぬ。ここが非常にむずかしい問題であると思いますけれども、これは人間があるいは要るかもしれません。さらに今日の人員では少ないかもしれませんが、少なくともそういうものを充実して、十分の保安体制ができ、それに伴う施設ができ得るように今後考えてまいりたいというふうに思うわけでございます。  それから第二点の、今後発電所方々にできることは事実でございます。大体十年間に十三基、大体七百万キロワットくらいの発電ができるであろうという計画を立てて現在着工しておりますので、すでに四つ、五つございます。したがってこれの基本的な機械設計、それの安全に関する安全審査及びその環境整備に関する安全審査は、原子力委員会が安全審査委員会において責任を持ってこれをやることになっておりますが、いよいよ運転に入りましても、少なくとも原子力規制法に基づいてやはり国の安全審査の基準に従うべく、しかもそれを逸脱した場合、国が注意していきますから、やはり国の責任はあるわけでございます。今日これが大体完備をしておるかと思いますけれども、今後相当原子力施設がふえますので、やはり人員の面であるとか、あるいはそれを運用していく際において欠陥のある点とかということは、随時やはりこれを検討をして修正を加えていくというふうに、十分気をつけてまいらなければならないというふうに考えております。
  152. 須藤五郎

    須藤五郎君 私もいろいろ原子力発電所に関する文書も多少読みました。いろいろな規制はあるようです。しかし何といいましても日本というところは土地が非常に狭いところでありまして、ソビエトやアメリカのように十分の土地を、広域な土地を取るということはなかなかむずかしい条件にあると思うのですね。それだけに、私はこの保安体制というものはやはり厳重に、いささかの危険もないようによく考えていかなきゃならないと思うのです。この間東海村で火災が起こったときに、そこにかけつけて火災を消すまでに約二時間ぐらいの時間がかかっておるということなんですね。単なる火災に対しましてもあれほどの時間がかかるということは、これは日本の保安体制は非常に不十分だということは言えると思うのですね。もし、これ鍋島さんが十分だとおっしゃるならば、これは議論になると思うのですが、鍋島長官も十分だとはおっしゃっていないと思うのですね。まだまだ改善しなきゃならぬ面がたくさんあると、こう言っていますから、私はこの問題についてあなたと議論しようとは思いませんけれども、あれ一つ見ても、日本の保安体制が非常にまだまだ幼稚なものだということがわかるわけなんですね。そうすると、そういうことを土台にして今後十年間に十三基できるというふうなお話ですと、よほど根本的に国が責任を持って、力を入れてこの問題を解決していかない限り、これは国民はとても不安で、暮らすことができない。どうしても私はそういう状態で今後どんどんと原子炉ができていくことに対しましては、賛成することができないような状態だと思うのです。そこで、これは一つの提案でありますが、この間東海村に行って聞いてみますと、あすこの保安体制というものは、あすこに働いておる研究員、従業員の力によってそれがなされるということになっているわけですね。さあ、そういうことでほんとうに問題が起こったときに、東海村の従業員が自分の命をかけて、捨てて、そうしてその消火防衛に当たるかどうかということですね。これも私はそう簡単にだいじょうぶだといって安心することもできないと思うのですよ。人間だれしも命が重要ですからね。そのときにああいう従業員に全部責任を持たして、まかしておいて、実際の保安というものがはかれるかどうかということですね。私はもっともっと、これらについては労働者諸君からも労働者意見も聞いていますよ、私偽らざる意見を聞いているのです。しかしそれは私はここでは発表することは差し控えましょう。しかしそういう話を聞いて帰って、私は、こんなことでいいのか、東海村一つだってこれじゃとても守れないんじゃないか。そうするとどんどん地方に十年間に十三カ所炉ができた場合に、その保安の責任を、あすこへできる電発なり関電の従業員にそれをまかしておいて、はたしてそれがいけるか、こういう疑念が起こるわけなんですね。これはやっぱり私はもっと国が力を入れて、責任を持って、そうしてできるならばぜひとも国の費用で国が管理する国営といいますか、そういう特殊な消防隊というのですか、そういうものをつくって、従業員に責任を転嫁さすのじゃなしに、国が全責任を負うたそういものをつくることが必要じゃないかと、こういうふうに思うのです。こういうことに対して長官がどこまで積極的な御意見を持っていらっしゃるか。先ほど公明党の諸君が、そのためには国民の納得するような立法措置も必要じゃないかということをおっしゃいましたが、やはりこれも私はある意味において必要かと思います。ほんとうに国民が安心のできるようなりっぱな立法をすると言うならば、そういうことも考えてみる必要があるように私も考えますが、とにかくどこまで責任を持ってこの大きな問題に対して科学技術長官として取り組まれようとしておられるか、その点を一つ伺いまして、時間の関係がありますから、あとあとの方が質問することにいたします。
  153. 鍋島直紹

    国務大臣(鍋島直紹君) いま須藤君のお話でございますが、保安体制につきましては、御承知のとおり原子炉の保安というものは特殊なものでございます。したがいまして、まず安全審査の場合において、その設計のときから第一回、第二回、第三回というふうに、非常にできるだけの安全性をもって、この一つがこわれても次の壁があるというふうな設計をいたしますとともに、日本は地震の多い国でございますから、地震に対する安全性ということもまた考えた、万全を期した原子炉の設計、設置を今日われわれの——私はしろうとでわかりませんけれども——少なくとも専門家による安全審査をやっております。ただそれのみではたいへんでございまして、不測の事故ということも考えられますので、ただいま言われましたような独自の消防隊というものも一応組織はしております。ただ問題は、やはり先般のときのように、いよいよ出動するに至るまで、あるいは応急措置をとるに至るまで時間がかかったことは事実でございます。したがって、これには厳重に原研に対して注意もいたし、また、それに対する対策もとってまいったわけでございます。とともに、やはりこれには相当高度の技術を持った人が処理しないと、しろうとのいわば消防隊では、これはとてもいかぬ。したがって、どうしても職員、研究員、ふだんその原子炉を十分知っている人を入れてないと、やはりある面ではこれが万全でないという点もあるわけでございまして、今日できるだけの独自の消防隊をやはり原研なり、あるいは発電所の中に設置するようにいたして万全を期しておるわけでございます。ただいま須藤委員が言われましたように、これをいわゆる国の消防隊としてというふうなことも一つの案であろうと思います。しかし、現在においてそれがまだできておりません。これらの点は、やはり今日までの故障事故等の体験から見て、今後どうあるべきかということを、やはり十三基も相当大きな原子炉を設置することになりますので、安全態勢の中から、やはりわれわれとしては原子力局において研究し、しかも、もし必要であるならば立法化するという形もあるいはあるかもしれませんが、ひとつこの点は研究をさせていただきたいと思います。
  154. 須藤五郎

    須藤五郎君 あのね長官、私は、東海村の例をあげますが、東海村の研究員、従業員に今日のような保安の責任を負わしておるということは、私は酷だと思うんですよ。それはあの人たちは、原子力に対しては知識を持っているかもしらぬけれども、第一、消火というものに対する何もないですよ。だからそういう人たちに責任を持たすことが酷であるし、責任を持たしておっても、いざというときに間に合うかどうかということなんです。これは私はおそらく間に合うまいと思うんですよ。だからいざというとき、不測というか、最悪の条件が起こった場合に間に合う消防隊というものをいまから用意しておかぬといけないんじゃないか、こういうふうに私は考えるんですよ。これはぜひともやっていただきたいと思うんです。これがきょうの大臣に対する最後の質問ですが、そう簡単に労働者に、働いておる人たちに消防もやる、炉が破れたときにそれをかけつけて命をかけてやれなんて、そんなことはあまりに人間離れのした私は酷なことだと思うんです。労働者はこう私に言いましたよ。この間の火災は、あれは単なる電気機具の火災であって、何も放射能が出ているわけじゃないんですから、いいじゃないですかと言った人もありますよ。しかし、それは非常な考え違いだ。放射能が出たら、もうこれは最後ですよ。これは最後のことなんです。放射能が出なきゃいいじゃないかというような、こんなばかげた考えは私は許すことができない。だから、そういう立場で最悪の状態を考えて、それで最善の方法をとるということが、やはり政府として責任ある立場じゃないか。そのためには、私はまた言いますが、国が責任を持った、原子力に対する十分知識を持った消火隊というものを、そういうものを国の責任でつくることが私は必要じゃないか、こういうことを申し上げておるわけです。
  155. 鍋島直紹

    国務大臣(鍋島直紹君) ただいまのお話、よくわかります。最悪の事態に処す最善の態勢を整えるということは、もう当然大事でございます。ただ、私が申しますのは、原子炉という非常に高度のものでございますから、普通の消防隊ではとてもこれは問題になりません。
  156. 須藤五郎

    須藤五郎君 ましてや従業員に。
  157. 鍋島直紹

    国務大臣(鍋島直紹君) ましてや従業員といいましても、それを使いなれた人が——やはりその内容をよく知り、使いなれた人もいないと、どこのドアを締めるのかといったようなことも、具体的になかなかむずかしい問題でございますので、この点はひとついまの須藤議員の御意見等もごもっともなことも多いと私は拝聴いたしました。したがって、今後のそういった措置につきまして、ひとつ研究をさせていただきたい。ただ簡単に消防隊だけをつくってだいじょうぶだというわけにはいかぬと私は思うのです。そういう点もございますので、どうぞひとつよろしく……。
  158. 須藤五郎

    須藤五郎君 特殊消防隊をつくるということですね。
  159. 内田善利

    内田善利君 先ほどの質問を続けたいと思いますが、昭和三十三年に対州鉱業所の流域で鉱毒事件が起こっているわけですが、先ほども質問しましたけれども、厚生省としてはどの程度これをつかんでおられるか、聞きたい。
  160. 武藤き一郎

    説明員(武藤き一郎君) 三十三年の問題につきましては、私自身といたしましては、詳細な問題について実は承知いたしておりません。
  161. 内田善利

    内田善利君 この問題については、先ほど通産省のほうからは御答弁がありましたが、これは対州鉱業所のほうにいろいろな鉱石、いろいろな堆土、堆石、そういうものを置いてあったダムが決壊しまして、そうして佐須川に流れ込んで、当時川口付近の魚、あるいはのり、あるいは貝類、そういったものが非常に汚染されて、それから農作物もある程度汚染されて、その結果、町会当局あるいは住民から委員会を持たれて、会社側と交渉の結果、二百万円の補償金が支給されております。こういった補償金が支給されている、見舞い金が支給されているということですが、こういったことでもうすでに会社側は、こういった被害を認めている。私はそう思うのですが、この点について、厚生大臣の御見解をお聞きしたかったわけですが、どのように考えられますか、お聞きしたいと思います。
  162. 武藤き一郎

    説明員(武藤き一郎君) ただいまの先生のお話しになりました、一般的ないわゆる鉱山の排水、排土等によります汚染が生じまして、それを会社側が認めて補償した、こういうようなお話でございますが、そういう点につきましては、やはりその後そういうような事態が起こらぬように、会社側自体としては十分な措置をすべきであろうと思いますし、監督すべき役所のほうでも十分なそれを監視する必要があるかと思います。私どもが、厚生省が対馬の問題について関与いたしましたのは、経緯を申し上げますと、富山のイタイイタイ病の問題がカドミウムにようものであるという説がなされまして、三十八年頃から問題になりましたときに、通産省のほうに御依頼申し上げて、カドミウムをある程度多量に排出すると考えられる鉱山について調査をいたしたいので御連絡願いたいということで、その中の一つが対馬の問題でございまして、四十年から調査を開始した、こういう実情でございます。
  163. 内田善利

    内田善利君 昭和三十八年、九年にかけて岡山大学の小林教授、また三十九年には萩野博士と一緒に現地調査をしております。その結果によりますと、三名の重患者がおりまして、二名は死亡、一名は現存しているということでございますが、この患者になった方の出た井戸を調査した結果は、非常に多量のカドミウムが出ている。一人の方は〇・〇三五PPMですが、長瀬さんのほうは、長い間飲用した水が〇・二二五PPM、もう一軒は〇・一五〇PPM、このように多く井戸水が汚染されておる、こういう事実があるわけです。その他たくさんありますけれども、詳しいことを申しませんが、その後、厚生省としては四十年、四十一年に調査した。これも特に米とか大豆、そういった農作物が非常に大きな被害を受けておるわけですが、それから病人に対しても、百八十名程度ですか、診察をした結果、一日の尿の中にカドミウムが相当数、神通川以上に農作物、井戸あるいは土壌、そういったものが汚染をしておる、そういう事実が出ているわけです。具体的に厚生省のほうではつかんでいらっしゃると思いますが、つかんでおられますか。
  164. 武藤き一郎

    説明員(武藤き一郎君) 四十一年度の調査の際に、一例をあげますと、米についてでございますが、〇・三から〇・六程度のカドミウムが出ております。富山のものに比べますと低いのでございますが、なお、四十三年度の調査におきましてもさらに調査を継続したい、かように考えております。
  165. 内田善利

    内田善利君 大豆についても、これは〇・六二〇あるいは一・四あるいは一・六というような大きなカドミウムが検出されておりますし、また、土壌についても、カドミウムが一グラム中に四六・五というような非常に大きな数字が出ております。こういったことを思い合わせてみましても、直ちに適切な処置がとらるべきであった、このように思うわけですが、現地のたちに対して、あるいは現地の県衛生部に対し、あるいは保健所に対し、あるいは現地の流域の人たちに対して、どれだけの行政指導をしたか、また、どれだけ知らしたかということをお聞きしたいと思います。
  166. 武藤き一郎

    説明員(武藤き一郎君) 先ほどの最初の御質問のときにお答えいたしましたように、四十一年度の調査では、四十歳以上の百八十人の者に対しまして、エックス線の胸部の調査をいたしまして、その中からさらに十六名の精密検査を要する者を選び出しまして、骨盤部のエックス線の直接撮影を行ないましたのでございますが、老人性の骨変化が主要なもので、イタイイタイ病と類似の所見は発見されなかったわけでございます。しかしながら、先生御指摘のように、鉱山から亜鉛とともにカドミウムが検出され、それからそこの土壌、水、食物等にもほかの地域よりも多く入っておりますので、県のほうには十分注意するように指導をいたしております。
  167. 内田善利

    内田善利君 現地の人たちはそれを知らされていない状況にあります。また工場会社側としても、そういうことはないというようなことを言っておられますし、また組合としても、そういうことはないということをマスコミに訴えておられますし、あるいは町長さん、保健所長等も、私の見たところでは、カドミウムの鉱害ということについて、あるいは鉱毒ということについて何も知っていらっしゃらないんじゃないか、そのこわさを知らないんじゃないか、かように感ずるわけです。私は、こういった鉱毒問題については、率直にこういうデータが出ておるということを教えてあげて、今後の対策を講ずべきでないか、かように思うわけです。小林教授もこの問題については、まだあの対馬の流域の人たちはあの大豆を食べていらっしゃるのでしょうか、たいへんなことです、このように言っておられる、このように聞いております。こういった農作物を食べている方々に対して、一体厚生省はどう指導していらっしゃるのか、お聞きしたいと思います。
  168. 武藤き一郎

    説明員(武藤き一郎君) 先ほど御質問の中に、三人のいわゆるイタイイタイ病と同種の患者があるというふうなことを調査に行かれました萩野博士が日本衛生学会で発表されましたわけですが、これにつきましては、専門家の間で論争がございまして、イタイイタイ病患者と同じではないというふうに診断されているわけでございます。しかしながら、その点は専門家の判定におまかせいたすといたしまして、先生の御指摘のように、カドミウムが他の地域よりも多量にあるわけでございますので、この点は再三御説明いたしますように、四十三年度でさらに精密な調査をいたしたい。しかしながら、その間、健康診断等につきましては、十分やるように県には指示をいたしております。
  169. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  170. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 速記を始めて。
  171. 内田善利

    内田善利君 厚生大臣日本窒素と昭電に対しは患者に対する補償を勧告されたわけですが、同じイタイイタイ病の富山の神岡鉱山に対しては、この補償勧告がされていないわけですが、その点についてはどうですか、おわかりにならないかもしれませんが。
  172. 武藤き一郎

    説明員(武藤き一郎君) 富山のイタイイタイ病につきましては、厚生省としては、御承知のように、神岡鉱山の事業活動によるものであるということを発表いたしまして、それについてのいろいろな行政上の対策をやっておるわけでございますが、この問題につきましては、現在訴訟が係属中でございますし、聞くところによりますと、一部まあ和解等をやったらどうかというような情報もありますけれども、現在のところ、裁判の推移を見守っておる次第でございます。
  173. 内田善利

    内田善利君 先ほどの質問に返りますが、これだけのデータが出ておりながら、島の現地の人たちは鉱害のおそろしさを知らされていないわけですが、この点について、どう厚生省としてはなされるか、それをお聞きしたいと思います。
  174. 武藤き一郎

    説明員(武藤き一郎君) 答弁が先ほどの御質問に漏れておりましたが先ほどから四十年度、四十一年度の問題につきましては、学会等で発表されておりまして、県のほうでもそれは十分承知しているわけでございます。したがいまして、鉱害問題につきましてはガラス張りでやるということにつきましては、先生のおっしゃるとおりでございますが、現在のところ、精密検査等については、特に富山のような症状は見られないというのが状況でございますが、なお、要注意の場所でございますので、県を督励しまして健康診断なり、あるいはいろいろのデータがわかりましたときには、明らかにするように指導いたしたい、かように考えております。
  175. 内田善利

    内田善利君 対州鉱業所は、千三百年くらい前からですか、非常に日本でも古い銀山として出発しておるようですが、そういったようなことから、いろいろな鉱石の堆石、堆土、そういったものの流出ということも考えられると思いますが、現在の津州鉱業所は、昭和十二年ですか、そのころの発足のように記憶しておりますが、そういったこと等でこの鉱害が古い堆石による鉱害だというふうに会社が言った場合に、その補償の責任はどうなるかということをお伺いしたいわけです。
  176. 武藤き一郎

    説明員(武藤き一郎君) いまの段階で具体的に鉱業所の事業活動によって起こったものであるとか、あるいはカドミウムによって病気が起きているという状況がはっきりわからない状況でございますので、いま御指摘の点につきましては、ちょっとただいま直ちに御回答申し上げるわけにはいかないと、率直のところそういうことでございます。
  177. 内田善利

    内田善利君 先ほども御質問があったように思いますが、通商産業六法によりますと、第六章の第一節、百九条に、「鉱物の掘採のための土地の掘さく、坑水若しくは廃水の放流、捨石若しくは鉱さいのたい積又は鉱煙の排出によって他人に損害を与えたときは、損害の発生の時における当該鉱区の鉱業権者が」責任を負うと、このように、「その損害を賠償する責に任する。」と、このようになっております。この点についてお聞きしたいと思います。
  178. 林信太郎

    説明員(林信太郎君) いま御指摘になりましたとおりでございまして、鉱業権が設定せられております地区におきまして原因となる作業が明らかになりまして、それから起きた鉱害については、鉱業法上の賠償の義務ということが一つあります。鉱業権が設定されてない場合に起きてくる問題、それにつきましては一般公害——鉱業法外の問題になるわけでございます。当然厚生省の武藤部長からお話しになったような形になろうかと思います。
  179. 内田善利

    内田善利君 最後に、対馬の問題は、いまも申し上げましたように、非常にカドミウムの汚染がはっきりしたにもかかわらず、現地の会社側、また住民の方々も知らされておりませんので、この点をひとつよく教えていただくような行政措置をお願いしたい思います。  なお、追跡調査をいまやっておられるわけですが、この追跡調査については、富山県のイタイイタイ病の権威である萩野博士、あるいは小林教をもう一度対馬に派遣して正確な調査をされることをお願いしたいと思いますが、この点ついてはいかがでございますか。
  180. 武藤き一郎

    説明員(武藤き一郎君) 四十三年度の追跡調査につきましては、いま名前をあげられました岡山大学の小林教授は、調査班の班員でございますし、クロス・チェックにつきましては、地元衛生試験所と東京工大、それから岡山大学、この三カ所でクロス・チェックして正確を期したい、かよに考えておりますので、御報告申し上げます。
  181. 内田善利

    内田善利君 最後に一つ、農林省のほうにお願いしたいと思うのですが、対馬のいまの大豆あるいは米等がこのように汚染されておりますし、また富山県の神通川の流域の農作物につきましても、非常にこれが売れ行きが悪いようなことを聞いておりますが、こういったカドミウムに汚染された米、農作物の処置方法、これをどう考えていらっしゃるかお聞きしたいのですが。私といたしましては、この農作物はできるならば政府で買い上げていただくとか、あるいは、できたら廃棄していただきたいわけですけれども、そういうわけにいかないと思いますが、アルコールにするとかいろいろ方策はあると思いますが、こういった農民の不安をなくする意味におきましても、カドミウム米についての善処方をお願いしたいと思いますが、いかがでございましょう。
  182. 馬場二葉

    説明員馬場二葉君) 私は食糧庁でございますので、米についてだけお答えをいたしますと、問題になりますのは、やはり富山県の神通川流域のカドミウム汚染地帯で出てきた米の取り扱いでございます。これは五月に厚生省の正式見解として、配給米として食べても人体に支障がない、こういう正式の意向の表明が出ております。それによって、ただいま特別の違った処理はいたしていないわけです。ただ富山県産米を配給いたしております関西——大阪、京都などの近畿地区において、消費者なりお米屋さんに非常に不安なり疑惑がございましたから、その不安なり疑惑を解きながら、現在普通の米と同じように配給をいたしておるわけであります。  なお、長崎県の対馬の米につきましては、ただいま厚生省で現地調査を急いでおられますので、その検査結果を待ちまして、はたして人体に影響があるかどうか、それによって処置をいたしてまいりたい、かように考えております現状でございます。
  183. 塩出啓典

    塩出啓典君 先ほど大臣時間がないために……。  原子力関係のことをお伺いしたいと思いますが、この東海村の原子燃料再処理工場の件につきましては、廃棄物のいわゆる海洋投棄、それの危険性が問題になっていると思うのでありますが、これはいま現状はどうなっているのですか。
  184. 藤波恒雄

    説明員(藤波恒雄君) 動燃事業団計画いたしております再処理工場安全性につきましては、事業団のほうから政府に対しまして、安全審査の申請が出てまいっておりまして、現在原子力委員会の下部機構でございます専門部会におきまして、いま先生御指摘の低レベル放射性物質の海洋投棄の問題を含めまして、安全であるかいなかの検討を開始しております。
  185. 塩出啓典

    塩出啓典君 検討中ですね。
  186. 藤波恒雄

    説明員(藤波恒雄君) 検討中でございます。
  187. 塩出啓典

    塩出啓典君 茨城県知事が、去年の八月九日に二階堂長官に対して、安全性について質問状を送った、そういうようなことを聞いておるわけでありますが、それは、実際に質問状に対して回答はちゃんと出してあるのですか、御存じないですか。
  188. 藤波恒雄

    説明員(藤波恒雄君) 昨年の秋に、日にちはちょっと記憶しておりませんが、知事から大臣あてに文書がまいっております。その中には、安全性のみならず射爆場の移転問題に関連いたしましても要望事項が載っておりますが、それにつきましては、長官名で知事あてに返答をいたしております。
  189. 塩出啓典

    塩出啓典君 回答は出しているのですね。
  190. 藤波恒雄

    説明員(藤波恒雄君) はい。
  191. 塩出啓典

    塩出啓典君 次に、大宮市の三菱原子力工業の、これは臨界実験装置の原子炉でありますが、その建設に対して非常に住民が反対をしておる、この問題はいまどうなっているのか。
  192. 藤波恒雄

    説明員(藤波恒雄君) 三菱原子力工業が大宮の研究所の中に設置いたします臨界実験装置の件に関しましては、すでに原子力委員会の下部機構である原子炉安全審査会の審査を経まして、許可されておるものでございます。ただ、これに対しまして、地元の一部から行政不服審査法に基づきます異議の申し立てが現在出てまいっておりまして、検討中でございます。
  193. 塩出啓典

    塩出啓典君 この問題は、結局住民が反対をしているというのは、どういうわけで反対しているのですか。
  194. 藤波恒雄

    説明員(藤波恒雄君) 全般的な安全性に関する不安の問題が一点と、それからもう一つは、私、当時のその事情を詳しく知らないのですが、そこへ原子力研究施設を会社が置きますときに、地元との話し合いで、原子炉は将来設置をしない、こういう話し合いがあったようでございまして、本件は、臨界実験装置でありまして、当時その話し合いが行なわれたときにおきましては、原子炉扱いではなかったわけでございますけれども、その話し合いに違反するのではないか、こういうことが一つあるようでございます。そういうことをめぐりましても、会社と地元との間に、いろいろと不安の関係があるように聞いております。
  195. 塩出啓典

    塩出啓典君 どうか、その点も住民の方たちの意見も聞いて、すみやかに住民の人たちが安心できるように解決に努力していただきたいと思います。  それから、先ほどの川崎市の原子力事業会社の事故でございますが、この方面の事故は、三十九年八月にも、やはり日本原子力事業所のアイソトープの実験中に放射能をあびた事件とか、四十年七月に、東芝研究所でウランが漏れた、四十年八月には、武蔵工大の研究実験室でボヤがあった、そういうような事故があったと聞いておりますが、それはそちらのほうでは全部つかんでおりますか。
  196. 藤波恒雄

    説明員(藤波恒雄君) いま御指摘の件を一々当たってチェックをしてみたわけではございませんけれども、その種の事故、故障等は、詳細われわれのほうに報告がくることになっておりますので、われわれの手元でわかることでございます。
  197. 塩出啓典

    塩出啓典君 そういう事故の問題に関しまして、現在地元の消防署や警察署とかに何ら状況報告もされていないし、また、そういう安全体制に対しても、単なる助言程度で非常に心配だ、そういうような地元意見が出ているわけですが、いわゆるそういう原子炉関係の設備の安全に対して、地元のそういう自治体との話し合いというものは現在どういうように行なわれているのでしょうか、その点ちょっとお聞きしたいと思います。
  198. 藤波恒雄

    説明員(藤波恒雄君) 先ほど例にあげられましたようなアイソトープの取り扱い中に起こった小さい事故、故障等は、たいていの場合、その実験室内で処理し得る程度のものが圧倒的に多うございます。それが外部に放射能障害を及ぼすといったようなことは、ほとんどない場合が多いのでございます。ただ外へ放射能災害を及ぼすおそれがあると考えられます場合には、現在の規制法におきましても、国家公安委員会であるとか、ということは現実には警察署でございますが、それから海上に関係するところであれば、海上保安庁系統のそれぞれのところへ連絡通報をすることに規則上もなっておるわけであります。  なお、前半の原子力施設の周辺の地方自治体等との連絡関係でございますが、平常の施設の許認可あるいは運転等に関連いたします管理ということにつきましては、法制上は必ずしも地方自治体が表面に出る場はないわけでございますけれども、設置から運営に至るいろいろな段階で、実質的には知事でありますとか、市町村長でありますとか、というところとは常に連絡をとって意見を求め、それを尊重しながらやっているというのが実態でございます。  なお、法律的に申しますと、原子炉災害というような形になった場合に備えての面では、災害対策基本法というものがございまして、それに基づきまして、各地方自治体がつくります防災業務計画という体制があるわけでございます。
  199. 塩出啓典

    塩出啓典君 東京から、国道十七号線でございますが、この国道十七号線を放射性物質をトラックに積んで非常に交通の繁雑な中を走っておる。最近は非常に交通事故も多いわけでありますが、現地としては非常に心配だ。それに対する安全の責任というものは、一体どこが持っておるのか。またもし衝突でもして、そういう事故の場合の安全性というものはどういうものか、それをひとつお聞きしたいと思います。
  200. 藤波恒雄

    説明員(藤波恒雄君) 放射性物質の運搬に関する基準につきましては、全般的には原子炉規制法の網をかぶっておるわけでございますが、具体的には、運輸省の規則によって行なわれておるのが現状でございます。
  201. 塩出啓典

    塩出啓典君 安全に対する責任はどこが持っているわけですか。
  202. 藤波恒雄

    説明員(藤波恒雄君) 直接的にはその物質の運搬を委託した者、すなわち燃料あるいはアイソトープ等を使用する者、そういう者はすべて法律によって許可された者でございますが、そういう者であり、それを委託を受けて運搬をする運送業者である、こういうことになります。
  203. 塩出啓典

    塩出啓典君 管理は。
  204. 藤波恒雄

    説明員(藤波恒雄君) それらが守るべき技術的基準、具体的に申しますと、どういう種類のものはどういう梱包でなければいかぬとか、積み方はどうしなければいかぬとか、こういうようなことは先ほど申し上げました運輸省令できまっておりますので、それの関係の監督は運輸省、こういうことになるわけでございます。
  205. 塩出啓典

    塩出啓典君 いままで、その運搬について、放射性物質がトラックからころがり落ちて行くえ不明になった、そういうような事件もあったと聞いておりますが、これはどうなんですか、いままでそういう事故はなかったのかどうか。
  206. 藤波恒雄

    説明員(藤波恒雄君) ときどきアイソトープ等が紛失した事件がございます。特に医療用のものは非常に小型な梱包に入っているような関係もございまして、しかも、ほかのものと混載されているといったような場合が多くて、従来の紛失事件はそういうものに多く出ております。これらにつきましては、秋のほうへも直ちにその通報をされるようになっておりますので、通報を受け次第、実は新聞、テレビ等にも発表いたしまして、そちらのほうの報道もしてもらいまして、その結果、比較的短期に発見されているという例が多いのでございます。紛失によりまして、放射能災害、要するに人体に影響を与えたという事例は、現実にはございません。
  207. 塩出啓典

    塩出啓典君 最後にお聞きしますが、これは九大の場合におきましても、実際にああいう事故があって、ああいう場所にコバルト六〇があった。そういうことはあとになってわかる。また、いまの国道のそういう放射性物質の運搬にいたしましても、もしも事故があった場合には運輸省が責任をとるといっても、結局は、やはりまず第一に出動するのは地方の自治体であり、消防署、警察署が出てくるのじゃないかと思うわけです。そういう点でやはりそういう放射性物質の運搬、また、そういう設備、そういうものについては、やはり地方自治体との連携を密にして万全を期していくべきではないか。現在のような科学技術庁のもとに秘密主義的な、そういうのはむしろ住民の不安を増大している、そういうふうに思うわけであります。そういう点で先ほど長官にもお願いしましたように、この住民と自治体との連絡を密にするように、何らかのひとつ手を打っていただきたい。このことをお願いいたします。  それともう一つは、川崎市の場合におけるような、石油コンビナートの中にそういう原子力事業会社の工場がある、こういう点で非常に住民も、コンビナート等には油も多いし、心配をしているわけでありますが、これは九大の場合でもありますし、また、今回の東海村の原子燃料再処理工場でも、また、あらゆる場所、そういうあらゆる事故を想定して、そういう設置場所というものをもう少しやはり考えなきゃいかぬ、こういうふうに思うわけでありますが、これはどうなんでしょうか、川崎の場合は。
  208. 藤波恒雄

    説明員(藤波恒雄君) 川崎市は御指摘のとおり、いろいろ付近に石油精製工場あるいはそれの貯蔵タンク等もございますし、それから目の前には羽田の空港も実はあるわけでございまして、われわれあそこで原子炉を設置するにつきましては、その点を十分考慮いたしたわけでございまして、ちょうど私が当時原子炉規制課長をやっておりまして、その安全審査をやる担当課長であったわけでございまして、いまでも記憶しておるわけでございますが、安全審査上最も手間をかけ慎重に検討いたしましたのは、まわりが火災になった場合に、類焼の危険性がないかどうかということの解析であったわけでございます。その解析をいたしました結果、この設計ならだいじょうぶである、そういう結論のもとに、委員会としても設置許可をするということに踏み切ったいきさつがございます。御承知のように、原子炉施設は、放射線の遮蔽をしなければならないという要請から、自然コンクリートの何重もの防護壁が設けられるというようなこともございまして、比較的外部からの類焼その他の障害に対しては強くできておる、こういうことが言えるかと思います。
  209. 塩出啓典

    塩出啓典君 最後に一つ、そういう点われわれしろうとでわかりませんが、やはり一般大衆に対しては、しろうとにはわからないのだという考えではなくして、実はそういう放射性物質は、こういうような何メーターのコンクリートの壁の中に入って、少々こういうことがあってもこうなんだと、そういうことをやはり事こまかに——ただ一般は専門家じゃないからわからないのだという考えじゃいけないと思いわけです。そういう点でもっともっとそういう一般大衆に対し、また、地方自治体の方に対する安全性についてPRも非常に足りないと思います。そういう点を今後の原子力の発展のためにも大いにひとつ念を入れてやっていただきたいと、そのことをお願いいたしま本して、日の質問を終わりたいと思います。
  210. 須藤五郎

    須藤五郎君 もう時間もそうないことと思いますので、私も質問を簡潔にしていきたいと思うのですが、原研の従業員、研究員が放射能におかされたときの補償はどういうふうになっておりますか。
  211. 藤波恒雄

    説明員(藤波恒雄君) 職員が不幸にして放射線障害を受けた場合の措置といたしましては、労災法に基づいて処理すると、こういうことになっております。
  212. 須藤五郎

    須藤五郎君 その内容を言わなければ、そんなことじゃ何ら具体的な答えにならないじゃないですか。私がこの間原研へ行って、それで事実、原研の現場で聞いてきたのです、当局員に。こういうことになっているのじゃないですか。組合と原研との協定によりまして、一レム当たり一万円を見舞い金として出す、最高は二十五レムだ。二十五レム過ぎた場合は、また別に協議すると、こういうふうな労組との間に協定が成り立っているのじゃないですか。
  213. 藤波恒雄

    説明員(藤波恒雄君) 御指摘のとおり、それは労災法の運用とは別でございますが、十三週間に三レム以上二十五レム以下被曝した場合には、各被曝線量の程度によりますが、たとえば三レムで一万円、二十五レムで三十万円、こういうような協定がございます。
  214. 須藤五郎

    須藤五郎君 科学技術庁では、被曝許容量として全身に放射線が当たった場合は、十三週間に合計三レムまではよいと、こういうふうに法律はきめておるように聞いておるのですが、間違いないでしょうか。
  215. 藤波恒雄

    説明員(藤波恒雄君) 日本の法律では、一応十三週間という表現でございませんで、三カ月に三レムと、こういう表現をいたしておりますが、まあ三カ月は十三週間とほぼ同様でございます。
  216. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうすると、三カ月間に合計三レムまでは、これはたいしたことがないからかまわないと、こういう法律が片っ方にあると同時に、組合と原研との協定では、一レム当たり一万円だと、そうして、最高が二十五レムだ。二十五レムをこえると、そのときは、別に協議をしてきめると、こういうふうになっておるんですが、この最高二十五レムという数字をきめた、その何というのですか、それはどういうところから二十五レムというものをきめたのでしょうか。——そんな大事なことを知らないのかな。
  217. 藤波恒雄

    説明員(藤波恒雄君) 先生御承知のように、放射線の人体に与える影響は、その人が一生の間に受ける累積線量が問題になるわけでございます。それで、その基本的な許容線量といたしましては、規制法の関係の規則におきまして、第四条で許容集積線量というのを定めておるわけでございまして、これは年齢にリンクいたしておるわけでございますが、「5(N−18)」という数字をとっておるわけでございます。Nは年齢でございますが、要するにその人の生殖年齢の間の累積被曝線量というものを対象にいたしておるわけでございます。ただ行政的に見ますと、その一生済んでしまってから幾らになったかということを、そこではじいてみたのでは問題にならないわけでございますので、途中の段階でいろいろなくくり方をいたしておるわけでございます。しかも、そのくくり方は、一般の住民の場合、それから従業員である場合、さらにはその従業員でも、平常作業中のときと、それから緊急作業のためにやむを得ず多少放射能があるところへ入って作業をしなければならぬ場合の基準等をそれぞれに応じましてきめておるわけでございます。たとえば緊急作業にかかる被曝線量は、通常十二レムとするといったようなことだとか、放射線による事故によって二十五レム未満の被曝を受けまたは緊急作業に従事することによって被曝した結果、その集積線量が先ほど申し上げました基本的な「5(N−18)」といった数字をこえた場合には、その被曝した日からその超過した被曝線量を二レムで割って得た数の年数を経過するまでの期間に限り、前項の式によって算出される数値にその超過した被曝量を加えた数値をもって許容集積線量とする、といったようないろいろ運用上の基準を規則できめておるわけでございます。したがいまして、一がいに短期間の間の線量がのどくらいであったかということだけで影響を云々するわけにいかないわけでございますが、この二十五レムというのは、通常考えられる作業員のいろいろな緊急作業等のことを考えましてきめられた一応の運用上の基準である、こういうぐあいに記憶しております。
  218. 須藤五郎

    須藤五郎君 この最高二十五レムというのは、二十五レム受けると相当からだに危険が生じるというところで最高二十五レムという数を置いたのか、その二十五レムという数の根拠が私は知りたい。何を根拠にして二十五レムというものを置き、一レム一万円という根拠はどこからはじいたものかということなんですね。あなたが答弁しなければ、私が私の質問の意のあるところを私から言いますれば、二十五レムというものは相当からだに影響の多い数字であるから、二十五レムというものをまず線を引いた、ここまでは一レム一万円の見舞い金でいきましょう、二十五レムこえれば相当危険が生ずるから、そのあとは一レム一万円の見舞い金では済ませないから、そのときはあらためて協議をしましようと、こういうことに労働組合との間の話し合いがなっておるのか、そこの点を私ははっきり聞いておきたいと思うのです。何で二十五レム、一レム一万円というそういう数をはじいたのか、そこなんですよ、私が知りたいところは。どうなんですか、そこは。
  219. 藤波恒雄

    説明員(藤波恒雄君) 二十五レム当たればすぐ人体に悪影響が出るからということになりますと、そういうわけではございませんけれども、そういうレートで、頻度で連続当たりますと問題が起こりますので、二十五レムを当たりますとしばらく放射線の業務にはその当該従業員は当たらせないので、ほかの職種につかせると、こういうようなことを考慮しなければならない程度の数字になると思うわけでございます。
  220. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうすると、いまあなたがおっしゃったところによると、とにかく放射能関係の業務につけないような状態が起こる、それ以上受けると非常に危険な状態が起こってくるという数字が二十五レムだということになりますと、一レム一万円で、二十五レムというと二十五万円ですか、三十万円とおっしゃいましたか、そうすると、原研で働く人は、三十万円ぽっきりの見舞い金で自分の生命の危険にさらされておるという、こういう結論が出てくると思うのですよ。そこが私は問題だと、こういうふうに思うのです。それからさきの科学技術庁の被曝許容量としては、全身に放射線が当たった場合には、十三週間、いわゆる三カ月に、合計三レムまではよいとされておるというこの根拠ですね、こちらでは三レムまではよい、三カ月間ですね、ところが、こちらは二十五レムというふうになっている。かりにこちらをもとにしますと、三カ月間に三レム受けることはかまわぬけれども、それ以上受けることはいかぬということなんですね、これは。そうすると、こちらでは二十五レムが極限だといっても、三レムと二十五レムと比較しますと、これはとんでもない数字になってくると思うのですよ。だからこれはとても危険な状態じゃないですか。三カ月間に三レム受けることはかまわぬけれども、それ以上受けることはいかぬという規定があると同時に、こちらでは二十五レムというような数字が出てくる、そこに私は不審を抱くわけです。そうすると原研の人たちは常に危険にさらされて、二十五レム二十五万ですか、三十万円か知りませんですが、それをわずかな金で常に生命の危険にさらされておるということになる、これはたいへんなことじゃないか、こういう感じがするわけですね。
  221. 藤波恒雄

    説明員(藤波恒雄君) 二十五レムという数字は、少し具体的に先ほど申し上げました式に当てはめて申し上げますと、かりに二十三歳の人が二十五レム受けますと、大体そこで一ぱいになるという数字でございます。したがいまして、その人はその後しばらく放射線に当たらない作業をしておる。むろん原研からのくわけじゃございませんけれども、放射線に当たらないという作業は幾らでもあるわけでございますから、そういうところでしばらく仕事をしていれば、先ほどの式でいう許容線量の余裕はまた出てくる、こういうわけでございます。要するにその人が一生の間に受けても影響が出ない線量ということに着目をして、その年齢にじて何歳までならどのくらいまで累積した線量があってもよろしい、こういうきめ方をしておるわけです。それからもう一つ、一方にきめられております三カ月に三レム、こういうきめ方をいたしておりますのは、通常の場合、やはり途中で定期的な一定の期間ごとにチェックをしていきたいという、こういう行政的な要請からきめておる数字でございまして、通常ならばそういう三カ月ごとの区切りにおいて常に三レムム以下になるようにしておく、こういうことでございます。そういうことによって長期的なコントロール管理ができやすいようにしておく一つの目安線量でございます。最終的には、その個人が一生の間にどのくらい以上受けてはならぬ、こういうことからきめられておる。したがいまして、たとえば故障を起こしましてどうしてもそこに短期間入って作業しなければならないというときには、そこへ入りまして、一時的には、先ほど申しましたような二十五レム近いものを受けるかもしれない。しかしその人は、また計画的に今度は年齢的に余裕ができるまでは放射線を浴びない状態に置くというような個人管理をいたす、そういう趣旨からいろいろなきめ方がしてあるわけでございます。
  222. 須藤五郎

    須藤五郎君 済みませんが私にはまだちょと時間をください、はっきりしていただきたいと思いますから。  片一方では三カ月に三レムがよいということは、三レム以上はよくないということなんですよね。片方では三カ月に三レムまではいいけれども、それ以上はいかぬという法律がありながら、片方には二十五レムが極限だ、こういう法律がある。そうすると、三カ月に三レム受けたらその人はどういう状態になるのですか。それは職場から除くのですかどうですか。除かなければ、よいということば意味が生きてこないですよ。よいということばをひるがえせば三レム以上受ければ悪いということです。悪ければ悪いような方法をとらなければならない。片方にはそういうことがあって、片方では二十五レム、これは期間が切ってないのです。一度に二十五レム受けるかもわからないのです。一年とか何年とかいう期限はないわけです。そうすると、こちらは三カ月で三レムというのが極限になっており、こちらは一日——期限は無制限で、一瞬にして二十五レム受けてもそれが極限になる。これでは私は、何だか法律の上から見ましてもどうも不審でしょうがないのですよ。こんな法律ではたしてやっていけるのかどうか。そして私は原研だけを問題にしておるのじゃないのです。これを明らかにしておかないと、今後これから方々にできる——十年間十三カ所にできるという民間の原子力発電所においても、やはり同じ状態が起こることを考えなければならない。そのときにこういう算出方法でずっといかれたら、とても従業員はたまったものではないですよ。だから一瞬にして二十五レム受けたらそれであしたから休ますというのか、こちらは三カ月に三レム受けたら休ますというのか、そこの関係がどうも私は二つ並べるとわからないのですよ。あなたの説明は何回聞いてもわからないのですが、どうなんですか。
  223. 藤波恒雄

    説明員(藤波恒雄君) 確かに、この放射線の基準のきめ方は複雑でございますので難解ではございますが、これは国際的にもこういう線できめられておるわけでございまして、日本におきましても、放射線審議会という権威ある審議会できめられた線に沿っておるものでございます。先ほど来繰り返し申しておりますように、やはり基本は最終的にはその個人の一生の間に受ける累積線量というものを問題にしておるわけでございますので、先ほど申しました年齢に応じて許容される最高量というものがきめられております。したがいまして、二十数レムといったような特殊な場合に受けるものでも、その範囲内にとどまるように運営されるのはもちろんでございます。  それからもう一つ、今度は平常の多数の従業員を管理する上におきましては、そういう特殊に一度に相当多量の放射線を受けまして、その後の作業を非常に注意深くやらなければならぬ、配置まで注意深くやらなければならぬというようなことを一々考えなくてもいいような程度を、従業員が通常働く場合に対応しやすいような、やはり目安線量というものをきめておくことが、運営管理上便利なわけでございます。したがいまして、国際的な十三週間ごとに一つの目安というものをきめておるわけです。で、そういう管理のしかたをする、通常従業員は十三週間に三レム——一レムも、実はそんなに受けているケースは少ないわけでございますけれども、もちろんずっと下回る数量で無視し得る程度のものが通常でございますが、それにいたしましても、管理上は一応十三週、日本の場合は三カ月、こういう表現になっておりますが、その最高限度も一応押えておく、こういうやり方でございます。
  224. 須藤五郎

    須藤五郎君 そういう説明をされても、こっちは三カ月三レムまでよいというのでしょう。よいということばの裏には、三レム以上はよくないということになるわけでしょう。それじゃ三カ月に三レム受けた人に対してはどういう対処をなさるのか。片一方は二十五レム受ければ休ます、こういうことなんですね。それじゃ三カ月で三レム受ける人と、一日二十五レム受ける場合だって起こってくるわけですよ。そういう関係が、これではどうあなた説明されてもわれわれは納得できないですね。一体一人の人が何レム受けたら生命の危険があるのですか。
  225. 藤波恒雄

    説明員(藤波恒雄君) 三レム以上を浴びた場合にすぐ障害を受けるということではございません。先ほど申し上げましたように、たとえば非常に若い人で二十三、四の年齢の人でも、二十五レムとか三十レムといったところまでの累積線量は、一応その人の個人に悪影響を及ぼさない、こういう線で出ておるわけでございます。ただ先ほど来申し上げておりますように、放射線はできるだけ受けることは少ないほうがいいわけでございます。それから三カ月三レムという運用上の目安線量もあるわけでございますので、それ近く受けた人とか、あるいはそれ以上受けた人とかは、当然それ以後はより注意深く作業をする、こういうことは当然でございます。しかし、それがために原研の作業に従事できなくなるというようなことではございません。
  226. 須藤五郎

    須藤五郎君 もう一つ、私が最後に質問しました何レム受ければ生命の危険を生ずるかということ。
  227. 藤波恒雄

    説明員(藤波恒雄君) 生命の危険ということになりますと、デリケートな点でありますが、もちろんこういう数十レムという程度でございませんので、もっとけたの高いレム数であるとわれわれは理解しております。
  228. 須藤五郎

    須藤五郎君 私はその数を知りたいのですよ。あんたのほうじゃ数わかっているはずですよ、何レムか。
  229. 藤波恒雄

    説明員(藤波恒雄君) 大体四、五百レムぐらいであると聞いております。
  230. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうすると原研で働く人は四、五百レムで生命の危険になる。そうすると一レム一万円という数から計算すると、原研の人たちは四、五百万円で生命を売り渡すという結果になるんですか。計算上、そうなってきますね。
  231. 藤波恒雄

    説明員(藤波恒雄君) おっしゃるようなつながり方はわれわれ考えておらないわけでございまして、当然そういう生命の危険のあるような放射能は絶対に浴びないように管理をいたさなきやならぬ、こういうぐあいに考えておるわけでございます。
  232. 須藤五郎

    須藤五郎君 もうこれでこの問題に対しては質問はやめまして、また後日に納得のいくように質問しますが、ただここに電力関係の方がいらっしゃるんで、ちょっと私一、二問、簡単な質問ですから答えていただきたいと思うのですが、この前、私は電源開発の視察に参加したわけなんです。あの中で私が知りたいと思ったことは、ダムの問題と農業用水工業用水、それから漁業権の問題、こういうことを知りたいと思ったんですが、残念ながらそれを知ることができなかった。知る機会がありませんでしたので、ちょっとここで質問しますが、ダム建設に対しましては、あらゆる面から非常に反対が多いのですね。それは皆さんも御存じのとおり、いま京都では中山ダムというダム建設のために、これはそのダム建設地は京大の研究用地だということでこれに反対をしているということを聞きました。大学が反対するのみならず、住民も非常に危険が多いということで反対しているわけです。というのは、京都はこの前大野川ですか、何かダムの決壊でひどい目にあっているんですね。非常に危険だという気持ちが多いのです。それでこのダム建設に反対を今日いたしております。それにダム建設に関しましては、埋没——水面に埋まってしまうところの住民の反対が多いとか、ダム建設によって漁業権がなくなってしまうという面からも反対が多いわけですが、それはきょうは私は問題にしません。ただ農民からも一つの反対があるわけなんですね。というのは、ダムに貯水するとその水が流れてきて、それをたんぼに引くと、温度が五度ほど低くなるんですよ、ダムにためられた水の温度というのは。そうすると稲をつくる上に非常に発育上問題があるということが一つなんですね。それからもう一つは、ダムというのは昼間使いますけれどもね、夜になるというと、ピークを過ぎるために水を流さなくなっちゃうんですね。そうすると川に水が流れてこないわけですね。そうするとお百姓さんは水の管理というものが、いわゆる電源会社に牛耳られてしまって、握られてしまって農民の自由にならぬという点があるわけなんですね。水温の点、それから水量が自由に得られないという点で農民は反対するわけですね。これに対して、一体どういう手を打って農民の不満にこたえようとしておるのか、これをひとつ具体的に聞いておきたいと思うのですよ。
  233. 藤井孝

    説明員(藤井孝君) ただいまのお話につきましてお答え申し上げますが、ダムができますと、あのダムの表面水はあたたかいわけでございますが、ずっと下のほうになりますと、かなり冷却してまいるわけであります。それが全部下流のほうに流れるということになりますと、これが温度が下がるために下流の農業用水影響を与えるということでございまして、従来からこれは問題にはなっているわけでございまして、これに対しましては、ダムの表面水、これを取水いたしまして、これを発電して下流へ流す、表面のあたたかい水を発電の用に供しまして流すという方法をとりますと、温度が下がるという問題が相当程度防ぐことができるわけでございます。そういうことで大きなダムにつきましては、表面取水の取水口を設けましてやっているというのが実情でございます。  なお、下流におきましていろいろ冷害の問題があるということでございますので、これは農業のほうにおける水の使い方ということにもまたいろいろ工面すべき点があるのではないかということを、また電気サイドでも中央電力破究所、ここで農事研究所を持っております。そこで水の使い方の研究とかいうようなこともやりまして、そうして実際に影響がなくなるようにさらに啓蒙するような研究、そういうこともやっております。  以上が水温が下がるという問題でございますが、それからもう一つダムをつくりまして、それから発電所へ持っていく間の水がストップされるわけでございます。かんがい用水等の使い方が自由がきかなくなるというお話でございますが、確かにこの問題は水力発電所にはつきものでございます。いずれにしましても、上流で取水しましてそれを水路でずっと持っていって、下流で発電するということでございますので、この問題がつきものでございますが、そのために関係する農村関係とは非常にこまかくお互いに協議し合う、十分そういう機会を持ちまして、その対策なり、補償なりをやりまして、今日まできているというのが実情でございます。
  234. 須藤五郎

    須藤五郎君 ダムを見ましたら、取り水口というものはそんな上つらにあいてるだけじゃないのですね。相当深いところまで取り水の口はあいているわけです。だからそこから水が流れればうわ水だけが流れるというふうには私は理解できないと思うのです。やはり冷たい、深いところの水も取り水口からずっと入ると思うのですよ。それは少し安易な考え方ではないかと思うのですがね。私が聞いてきました方法としまして、たんぼへダムから流れていった水を、ことさらつくった川——別に川をつくって、その川をぐるぐる流して、その流す過程において水の温度を上げて、そしてたんぼへ引くという手もある、こういうことを私は聞いたわけですね。  それからもう一つは、ダムの下に、たんぼに引く水の水量の問題と温度の問題を解決するために大きなかんがい用の貯水池をつくって、かんがい用の水を常にそこへ確保するという手もあるということを聞いてきたのですが、政府としましても、また発電所としましても、そういうことを考えていらっしゃいますかどうですか。
  235. 藤井孝

    説明員(藤井孝君) ただいまのうわ水取水につきましては、これは取水口というのは、たとえば三十メートルの水を使うということになりますと、うわ水取水はその上の一、二メートルぐらいのところを取るわけですから、取水口としてはずっと下までいっておりますけれども、上から取って水位が下がるにつれてだんだんと下までとれていくような、そういう設計でやっておりますので、一応うわ水の取水はできるということになっております。しかし、それだけでなく、先生がおっしゃられましたようなことは、かんがいといたしまして、地形的に可能ならば、そういうことも考えられるかと思います。しかし、下のほうの水跡を蛇行してやるというようなことは事実上なかなか——そういうふうな自然の河川を利用するよりほかしようがございませんし、わざわざそういう蛇行した水路をつくるのはたいへんなことでございますので、なかなかむずかしいかと思います。また、下のほうに貯水池をつくる、つまり遊水池をつくりまして、そこでうわ水をあたためるというやり方もございます。こういうような例が昔あったように記憶しておりますけれども、最近は例としはあまり出てまいっておりません。
  236. 須藤五郎

    須藤五郎君 最後に、農民たちはやはり温度を上げる方法として、水確保の一つの方法として、そういうことを希望する向きがあるわけなんですね。やはり農民の立場から考えればそういうことも政府は考えなくちゃいけないのじゃないか。その金はどこが出すかということは、これはまた次の問題になりますが、電源開発会社にそういう費用を負担させて、そうして農民に与えている被害をなくするように考えていくということも一つの考え方だし、また政府がその費用を負担して、日本の農業政策の一環としてそういうことを考えていくということもまた一つの手だ。こういう点、政府としましてもよく検討してほしいと思うのです。私はこの間行きまして、ずっと私が聞き歩いたところでも、そういう問題が出てくるわけなんですね。そういう点、ひとつ大いに研究していただきたいと思います。  きょうはこれで終わります。
  237. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 他に御発言もないようでございますから、本調査はこの程度にいたします。  本日はこれをもって散会いたします。    午後五時二十三分散会