運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1968-09-17 第59回国会 参議院 社会労働委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年九月十七日(火曜日)    午前十時十一分開会     —————————————    委員の異動  八月十三日     辞任         補欠選任      成瀬 幡治君     小野  明君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         加瀬  完君     理 事                 鹿島 俊雄君                 丸茂 重貞君                 大橋 和孝君                 上林繁次郎君     委 員                 上原 正吉君                 高田 浩運君                 玉置 和郎君                 徳永 正利君                 山崎 五郎君                 上田  哲君                 小野  明君                 中村 英男君                 渋谷 邦彦君                 中沢伊登子君    国務大臣        厚 生 大 臣  園田  直君        労 働 大 臣  小川 平二君        国 務 大 臣  田中 龍夫君        国 務 大 臣  宮澤 喜一君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        人事院総裁    佐藤 達夫君        人事院給与局長  尾崎 朝夷君        大蔵政務次官   二木 謙吾君        大蔵省主計局次        長        海堀 洋平君        厚生政務次官   谷垣 專一君        厚生省公衆衛生        局長       村中 俊明君        厚生省医務局長  松尾 正雄君        厚生省社会局長  今村  譲君        厚生省児童家庭        局企画課長    鈴木  猛君        厚生省保険局長  梅本 純正君        労働大臣官房国        際労働課長    広政 順一君        労働省労政局長  松永 正男君        労働省労働基準        局長       村上 茂利君    参考人        日本赤十字社衛        生部長      北村  勇君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○労働問題に関する調査  (松山赤十字病院の労働問題に関する件)  (公務員の給与に関する件)  (職場安全無災害競争に関する件) ○社会保障制度に関する調査  (香港かぜ予防対策に関する件)  (老人及び児童福祉対策に関する件)  (むち打ち症対策に関する件)  (出産手当等に関する件)     —————————————
  2. 加瀬完

    委員長加瀬完君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  この際、参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  労働問題に関する調査について、松山赤十字病院の労働問題に関する件の調査を行なうため、本日の委員会日本赤十字社衛生部長北村勇君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 加瀬完

    委員長加瀬完君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 加瀬完

    委員長加瀬完君) ただいま決定しました参考人の方が御出席されましたので、直ちに労働問題に関する調査を議題とし、松山赤十字病院の労働問題に関する件について調査を行ないます。  御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  5. 大橋和孝

    大橋和孝君 私、このあいだ、松山のほうで労働問題に関していろいろ問題があると聞きましたので、実は現地に参りまして調査をいたしてまいったのであります。それにつきまして、第一番目に日赤本社のほうにいろいろ御意見を伺ってみたいと思うわけでございまして、本日はお願いをしたわけであります。  特に私が感じましたのは、ああした労働争議が行なわれておりますが、これに対して日赤本社といたしましては相当指導をし、あるいはまた、直接にある程度責任を持ってこれらのものに対して関与するようなそういうふうな処置をしていただくべきではないか、こう思うのでありますが、私が調査した範囲ではそうした実際現地におもむいてこれを指導するというようなことはないわけでございますが、私帰りまして日赤のいろいろな規定を見せてもらいましても、その中にはそういう条項がうたってあるわけでございます。そういうことから考えますと、もう少し現地に行って、そして患者にはいろいろ大きな影響を及ぼしているわけでありますからして、これに対してもっと積極的な指導をしてもらう必要があるのではないかという点を感じたわけでありますが、それについては一体どうであるか。  特に、また、向こうで調べてみますというと、この病院は、六月に院長が新しく就任しているわけです。そして、六月十四日には第一回目の団交を持っているわけであります。その交渉では、いままでの慣行を認めて、お互い話し合いでいこう、そして、病院側からは、いままでのことより新しくいろんな問題があるから、これについても話し合いでいこうという約束がなされておった。その後、院長が東京の本社のほうに参って帰ってきてから、団交を拒否するし、あるいはまた、いままでの慣行であるところの傍聴者も含めての団交を認めないというふうにいって、非常に態度が急変をした。これは、本社のほうでいろいろな指示を与えたのではないかという状態もあるわけであります。  この点について本社側ではどういう考えを持っておられるか、これについて承りたいし、同時に、また、そうしたことに対して何か本社では指示を与えているのかどうか、急激にその態度が変わっているという点はどうであるかということについても答弁をしてもらいたい。第二点は、きょうはちょっと時間が制約されておりますから、質問二つ三つずつ重ねて申し上げますから、それに対して要領よく返事をしてもらいたいわけでありますが、赤字病院である、これがために今度のいろいろいままでの慣行として行なわれておった労働条件を切り捨てなければならぬという主張があるようでありますが、赤字病院というのは松山一つであるのかどうか。私の調べた範囲では、あちらこちらにまだ赤字病院がある。それらに対して、本社としては、赤字病院はできるだけ労働条件を切り詰めて労働強化をして、そうして赤字を働く者に着せていこうという考えがあるのかどうか、この点についてもひとつお答えを願いたい。  それから第三点は、夜勤状態が、あそこは一人夜勤というものが五病棟において行なわれておる。そしてまた、非常に設備が不十分であるために、二階からあるいは隣の病棟まで一人でかけ回ってやっておる。そこに救急患者重症患者も入っておる。これでは大問題を起こしてくるのではないかと思うのと同時に、これは一つ労働基準法違反にもなるのではないか。労働基準法違反という事柄に対してもまた思わぬ事故が発生するのではないかという心配を私は見て帰ったのでありますが、こういう問題についてはどういうふうに考えておられるのか。こういう問題についていままでどういうふうに指導しておられるのか。特に休憩時間の問題も、この病院では一人夜勤の者に対してないわけであります。同時に、また、三六協定も認められておらない点もたくさんある。女子の時間外の労働問題についても違反とされているものが含まれておると私は思うのでありますが、こういう点について日赤本社のほうはどう把握されておられるか。  この三点についてまずお答えを願いたい。
  6. 北村勇

    参考人北村勇君) ただいまの御質問に対してお答え申し上げます。  先ほど質問のありましたように、ここは院長が六月に交代をいたしましたのでありますが、そのときに、院長施政方針を、まあ職員全体というようなかっこうでございましたが、あそこはだいぶ問題のある組合でございますので、院長施政方針を聞かしてもらいたいということで、院長が、着任早々でございますが、自分の考えているところを若干申し述べたのでございます。そのおりには、労使というものは常に協調していかなくちゃならぬという趣旨のことを申し上げたのであります。その後、本社のほうに着任あいさつに参りまして、それはほんの形式的なあいさつでございましたが、そのおりいろいろ問題があったというふうなお話があったというような具体的なことは何もございません。  それで、実は、経過を申し上げますというと、六月の十日に、組合側——松山病院組合のことでございますが、組合側が、十項目の要求を出して、話し合いをしてくれと交渉を求めてまいったのでございますが、病院といたしましては、もちろん組合要求に応じて、平和的な、しかも正常な労使間の話し合い交渉を進めたいという趣旨のもとに、この病院でかねてやっておったようないわゆる大衆団交的な話し合いではなくして、限られた人員で平和的に労使間の話し合いをしたいということを病院側として組合側に申し出たのでございます。その関係が数回交渉を持たれたのでございますが、どうしても決定しなかったのでございますが、組合側が六月の二十八日に七月九日からスト権を確立するということを経営者側に話してきたのでございます。それやこれやいろいろな経過をたどりまして、結局、七月の十八日には、労使間のお互い人員組合側十三名、経営者側は七名という線で、しかもオブザーバーを入れないようなかっこう話し合いをするということがきまりましたので、自後、その線で、ただいままで、私のところで知っておる範囲内では十二回団体交渉が持たれておるのでございます。したがいまして、その団体交渉によって円満に、かついろいろな問題を話し合いにおいて解決したいという線はあくまでも私どもは持っておりますし、現地もまたそのつもりでやっておるのでございます。ただ、いろいろなことで、私どもは、あの病院については本社規程外の問題がございますので、これをやはり正常に戻すべきであるという考えを持っておりますが、歴史的の経過もございますので、これはあくまでも話し合いによって解決すべきことであり、そういう点で私ども現地にもアドバイス、助言をしておるわけでございます。ただ、赤十字病院は各支部がございまして、その支部長がございます。支部長開設者になりまして、一応第一線の責任院長が負っておるわけでございます。したがいまして、いろいろの話し合いのことは現地において院長を主体にして組合さんと話しておるわけでございますが、ただ、問題によりましては、赤十字病院全体に関係のあるような事柄については、やはり本社のほうに意見を求めてまいります。それについては当方といたしましては一般的な業務と同じような意味でこれにアドバイスしておる、助言をしておるということでございます。したがいまして、私どものほうとして一々現地のことをことこまかに指示したり指導したりというような方針は直接にはとっておりません。あくまでも現地において現地団体交渉経過の中で円満に解決するように努力してもらっておりますし、またそのつもりでおります。  それから第二点でございますが、赤字病院でございます。実は、赤十字では、医療施設関係しては、九十四ございますが、毎年逐次経営内容指導監査、そういうものをやっておるのでございます。たまたま松山赤十字病院は本年の春に監査をいたしたのでございますが、そのおりにいろいろ本社規程に相反するようなことがわかったのでございます。したがいまして、これを何とか軌道に乗せるとかあるいは改めるというようなことをお願いしておるわけでございます。赤字病院であれば全部そうだというわけではございません。赤字病院赤字内容にももちろんよりますし、いろいろな問題があります。私どもとしては、九十四の病院を持っていくためには、ある一定の規程がございますので、なるべくその規程にのって運営してもらうということを常々考えておるわけでございます。  それから夜勤の問題でございますが、確かに御指摘になるように一人夜勤のところが五病棟ございますが、これはいろいろ内容的に見ますというと、たとえば結核患者慢性疾患で夜突発事件があまりないような病棟であるとか、あるいはベッド数が非常に少ないような病棟というようなことで、一応いま一人夜勤現状でございます。これについていろいろ調べますと、いまのような病棟配置で古い建物配置でやりますというと、大体四十数名の増員が必要で、この四十数名の増員は早急にできない事情もございますので、何とかしてこれを二人夜勤の方向、あるいは一人夜勤病棟をなくするように努力はさせてはおりますが、これにはやはり若干の御猶予をいただきたいと思うのでございます。かつまた、この病院は、御承知のように、非常に古い建物でざざいますので、病院再建とあわせて病棟を改築しようという計画を持っておるのでございます。そのことがもしかりに実現すれば、もちろんそういう病棟配置状態というものは改善されますので、そういう病棟はなくなるという予定で目下プランニングを立てております。  それから三六協定の問題でございますが、松山赤十字病院は、ただいま御指摘のあった争議というか、紛争以前には、労使話し合いをしておったのでございますが、不幸にしてこういう事態になりまして、一時中断しております。しかし、これもさっそく話し合いを再開いたしまして、なるべく早い機会協定を結びたいというふうに現地でも思っておりますし、私どももそれをぜひお願いしたいというふうに助言しておる次第でございます。
  7. 大橋和孝

    大橋和孝君 こまかい点は現地にすべてやらせておると。それはよくわかるわけでありますが、しかし、今度の場合はこの問題が非常に重要で、特に日赤のほうでも把握しておられると思うのでありますが、あの松山病院というのは、日赤では教育病院として指定されようとしておるわけでありますし、基幹病院としてあの辺で大きい病院——県立病院もあるようでございますが、周囲の状況から見るならば、ほんとうに高度の治療をするところは松山日赤であるという住民からの期待は大きいと思うのであります。それをこのようにしておられることは、むしろ現地まかせということであって、もう少し本社からこのような重要な時期に現地にもおもむいて、現状を話し合って、これを指導する責任があると私は思うのでありますが、この問題はいまのそのような衛生部長考え方を是正してもらって、ぜひともひとつ現地に行って話をしてもらいたい、これを私は希望する次第でありますが、これについて重ねて一ぺん決意のほどを披瀝しておいていただきたい、こう思うわけであります。  特に指導の問題でありますが、末端的なことではなくして、もっと根本的な問題について指導してもらいたいと私は思うわけです。特に、いま申したような基準法にも違反しておるような問題もたくさんあるわけです。それからまた、病院そのものの基本的な問題もあるわけでありまして、特に労働協約違反とかそういうようなことに対してもう少し積極的な指導をして話し合いをしているような場をつくることがもっと必要ではないか、こういうふうに思うわけでありますから、その辺をあわせてひとつ御答弁を願いたいと思いますので、お考えを聞かしていただきたいと思います。  同時に、また、給与規程なんかも労働協約化されておると思うわけであります。たとえて言うならば、団体交渉ルールも、いま大衆団交と言われましたけれども、それは大衆団交ではなくして、責任者団交に入ってあとオブザーバーとして見ておる、いわゆる公開であるか非公開であるかというような形になると思うわけでありますが、少なくとも団交というものをやるときには必ずしも非公開でする必要はないわけであって、それは大衆団交だというような無責任に大ぜいの人と話をするのではなくて、執行部なら執行部と話をすることによって、あとオブザーバーとして見ておる、公開になっておるというふうな解釈だと私は思うわけであります。そういう点の把握のしかたなんかも、団交ルールとしていままで認められたやつを今度急激に変更するというのも、私は一つの問題があると根本的には思うわけであります。それからまた、住宅の手当問題だとか、十五時間の時間外の手当がいままで認められておる。こういうようなものは、むしろ労使協定であって、もう既得権としていままで出ておるものだと思うのでありますが、こういうものを一方的に破棄しておるということ自身も、私は労働問題としては大きな問題があると思うのであります。こういうことに対してももう少し真摯な気持ちでその話し合いを進めていく、あるいはまた、そういうふうなことでいままで規程的に労働協約として成り立っているようなものに対しては、そういう立場からこれを議論すべきではないか、こういうふうに思うわけであります。  それからまた、何と申しますか、独立採算制であるということが非常に言われておる。いまちょっと赤字の問題についても聞いたわけでありますが、ほかに赤字である病院もたくさんあるわけであります。特にここが監査をされて、本社規程外給与をしておるとか、そういうことでもって、いままで労働協約化されているものを切っていこうということになっておると思うのでありますが、私は、その問題について、このあいだ書類を出してもらって中を調べてみまして、給与外考えられておるのは四千何百万であるという報告を受けましたが、あれを逐次調べてみますと、ああいうようなことは私の調べたところではあちらでもこちらでも一ぱい日赤の中では行なわれておることであって、松山だけが本社規程外給与をされておると解釈すべきものではないと思います。それについて私は詳しく調べてありますから、もしそういうことであれば、私のほうからもそれについての事柄を申してお考えをただしたいと思いますけれども、そうした考え方からして、むやみにいままでの労働協約化されているものをカットしていくという考え方、それを前に打ち出してそしてむやみに労使間の紛争を高めていくやり方というものに対しては私は非常に問題があると思うわけでありますが、そういうものについて日赤のほうではどういうお考えを持っておられるか、ひとつお考えを聞かせていただきたいと思います。
  8. 北村勇

    参考人北村勇君) お答え申し上げます。  私どもとしては、組合からのいろいろな話については、謙虚な気持ちでこれを聞きながら前向きの姿勢で物事を処理していくというのが基本観念でございます。したがいまして、いろいろいま御指摘のあった問題について、原則といたしましては改善すべきは改善すべきでございますが、それについてはいろいろケース・バイ・ケースでやっていかなければならないこともございますので、それは十分話し合いによって解決していきたいというふうに思っておるわけでございます。決してすぐどうのこうのというようなことではないと思います。そういうのが基本観念でございます。  それから、現地に飛び込んで云々という御忠告もありますが、これについては私どもはいつも十分考慮しておるわけであります。何とか早い機会に円満に解決するように私どもは側面から援助すると同時に、また、現地のほうにも出向く機会があることを希望しておるわけでありまして、積極的に何とか早い機会争議——争議というか紛争を解決いたしまして、地方住民社会福祉のために貢献したいと思っておりますので、どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。
  9. 小野明

    小野明君 関連して。北村さんにお尋ねいたしますが、日赤本社では、この種労働問題が起こった場合には、衛生部長であるあなたがいろいろな出先の指導をなさるんですか。衛生部長という名前からいきますと、どうも似つかわしくないんですが、その点はいかがですか。
  10. 北村勇

    参考人北村勇君) お答え申し上げます。  日赤部内のことでございますが、衛生部というのは病院の問題にいろいろタッチしておるわけでございますが、労働問題というかそういうことになりますというと、人事部というのがございまして、人事部主管部になるのでございますが、人事部では部長がちょうど交代いたしまして、しかも、新任の部長さんが三月ほど入院いたしまして、最近やっと出てきたような状態でございます関係もあり、また、病院関係したということで、松山の問題は私が直接いままでタッチしておったわけでございます。そういう事情でございます。
  11. 小野明

    小野明君 そうしますと、松山病院のことにつきましてはあなたが直接指導なさっておるということですから、再度お尋ねをしたいと思うのでありますが、この病院では、三十五年の三月十五日に、前の院長代理の高上さんと従業員組合長の篠崎さんとの間に、時間外手当の問題について、一律に一カ月について十五時間の手当を支給する、こういう協定があるわけですね。この点について、病院の勤務の実態からこういった措置がなされておる。しかも、これは、協約化協定化されているわけなんですが、この協定について、あなたは、これを尊重するのだ、あるいはこれは破棄すべきだ、いろいろな観点があると思うんですが、どういう見解をお持ちなんですか。
  12. 北村勇

    参考人北村勇君) 私どもといたしましては、十五時間ということは、時間外であるというふうにはっきりうたっておりますので、あくまで時間外というふうに解したいと思います。
  13. 小野明

    小野明君 そうしますと、この協定については、従来、これ以上の時間外があるということで協定化されておるので、この点については尊重するという立場と解釈してよろしいわけですね。
  14. 北村勇

    参考人北村勇君) あくまでも時間外でございますので、実際に働いた時間外に対するペイは当然しなければならないと思うのでございます。したがって、一律とかなんとかということではなくて、実働の時間外であるべきだというように私は考えております。しかし、そういう協定もございますので、そういうものを一挙にどうのこうのというわけにはもちろんまいらないと思いますので、何とか話し合いによって私どものいういわゆるほんとう意味の時間外というものに改善したいというふうに思っております。
  15. 大橋和孝

    大橋和孝君 その問題ですけれども、これはもういままでの間に明確にお互い話し合いができておる。いわば先ほどから私が申したような既得権であるわけですね。労働条件並びにいろいろなそうしたことに対しての変更は、必ず事前に組合話し合いしていくんですね。かれからまた、いわゆる年休の問題だとか時間外の問題というものについては、これも十分な取りきめをしておるわけです。これは御存じだろうと思うのでありますが、かういう観点からいっても、今度の場合では十分な話し合いをしていない、そういうところにこの問題が起こっておると思うわけでありますが、私はここで先ほどから申してまだ明確な答弁をいただいておりませんが、いままで、衛生部長が、ほかの日赤病院に対しては、こういう争議が起こった場合に出向いて解決をしておられる場合がありますね。京都の第一赤十字病院争議のときにも、姫路のときなんかにも、私が調べてみましたら、現地へ行っていろいろ指導して、早くおさまるようにしておられるはずなんです。ところが、今度の場合はうっちゃられているということはどうもおかしいと思うのでありますが、今後の松山の問題を解決するために一体どのようにいま考えていられるのか。直接現地へ行って組合病院長あるいはまた事務長との話し合いのあっせんをしてでもこの話を解決すべきだと思うのですが、この点についてもう少し積極的にやる考えはないのかどうか、もっと明確にしておいていただきたいと思うわけであります。  それから、病院長が来られて、先ほど話がありました九十四ありましたのを五十ぐらいまでにしてもかまわないんだ、こういうふうなことで、つぶしてもかまわぬということも言っておられるようであります。あるいはまた、ロックアウトしてもいいんだとか、非常に組合に対して弾圧的なことばというものが盛んに出ておると言っておるのでありますが、これは、私は、いまも言う日赤の使命、あそこの地理的な条件からして、重大な基幹病院としての使命があるのに対して、病院長という責任者がそういうことを軽々にどんどん口にされて言われるということ自身は、無責任でもあるかと思うし、むしろそれは組合に対する弾圧的な行動であるというふうに断ぜざるを得ぬと思って現地を見て来たのでありますが、その点はどう考えておられますか。
  16. 北村勇

    参考人北村勇君) お答え申し上げます。  ただいま御指摘のありましたような十五時間とかあるいは何かというような労働協約は、確かに結んでおります。したがいまして、私のほうとしては、現地においても、この問題について、ただいま打ち切るとか打ち切ったという事実はございません。現在もそのとおり行なわれておるわけでございます。ただ、今後の問題といたしましては、私のほうとしては何とか話し合いによって正常な姿に返したいということでございますので、現在この点について十五時間をどうするんだという実際の団体交渉はまだ行なわれておりません。それから十五時間を切るということも病院側は言っておりませんから、その点は誤解のないようにお願いいたします。  それからただいま私が直接現地におもむくというようなことで京都第一のお話もございましたが、これは私の前任者でございますので何とも言えませんが、もちろん責任ある立場として現地に飛び込んで解決するにやぶさかではありませんが、せっかくいま現地において非常にいいムードで話し合いを開始しつつございますので、もう少し静観しながら、必要であればいつでも現地に参って協力したいと思っておる次第でございます。
  17. 大橋和孝

    大橋和孝君 最近は団交も持たれておるようであります。いま言われたようにいいムードであるかどうか、私が見ておるところではもう少し意見は違いますけれども団交は持たれつつあるようであります。しかし、この中でも問題になっているのは、このあいだうちストライキを決行した、その中で年次休暇をとってくにに行っておった者も今度は賃金カットの中に入っておる。こういうようなことなんかも、現地では、いまおっしゃっているようないいムードではなくて、非常に一方的なやり方が行なわれておるように思います。それからまた、同時に、今度の夏期手当の問題も、あれは一方的に一・四カ月に〇・一ですか何かということでもって支給されておる。特に組合員以外の人が数十人おるようでありますが、そういう者はそれを受け取っておる。それも、組合とは十分な話し合いができていないのに、一方的にそういう支給がされておる。これなんか私は非常に大きな問題ではないかと思うわけです。こういうことから考えますと、なかなか現地ではそういういま日赤考えていられるようにいいムードでないということがそこに出てきておるのであります。非常にこだわりがある。それからまた、その後、十五時間の先ほどの問題も、まだきまっていないというものの、それもカットをしていくんだということも言われておるようでありますし、この交渉の中ではいろいろな問題があると思います。そういうことに対してどういうふうに考えておられるのか。ことに、そういうふうな一方的なやり方でもっていくことは、むしろ話し合いをよけい硬直させるように思うのでありますが、そういうことについて一体どういうふうにされるのか。やはりそういうことについても、いま私が申したように、出向いてでも日赤の中でこれを指導しながら話を進めるということは、そういう問題を含めましていまの事態においてむしろ必要ではないか。  それからまた、二人夜勤、月八日の勤務なんかについても、もう少し日赤としてそういうふうにすべきだという方向で指導していかれるならば話はスムーズにいくと思う。初めから、できない、何人かの人員がふえるからいけないという、いろいろな問題はあるでありましょうが、前提としてはおそらくこれは厚生省においてもそうした方針は出しているわけでありますし、看護上からいっても、そういうことをしなかったら、先ほど私が申し上げたように、どういう事故が起こるかわからない。特に、あそこの中を見てみますと、相当古い病棟でありますから、人数が少ない上に病棟があちこち分かれておる。それを一人で夜中に走り回らなければならない。実態調査をしてみましたならば、一人の夜勤であったならば晩飯も食う時間もない。もちろん休む時間はない。飯も食わないでやっておるというのが実態であるし、少しの休む時間がないという状態では、おそらくいつどういう事故が起こるとも限らないということが言えると思って帰ったのでありますが、そういう観点からいっても、この二人夜勤問題なんかも、もう少し積極的に考えなければ、基幹病院としてその地域でほんとに責任を持つ病院としては非常にお粗末ではないかと考えているわけです。こういう点を含めて、もう少し積極的にこれをやろうという考え方を持っていただきたい、私はこう思うわけであります。  時間がありませんから結論を急ぎますけれども、少なくとも前向きにこの問題に対して取り組んで、そうして早急に話し合いで円満に話を進めてもらいたい。ことに、もういままで言われているように、労使間で協約を結んで労働協約的なものになっているものに対して、一方的にそれをすぐぶっこわしていいんだと、こういう考え方に対しては、もう少しその考え方を変えて、少なくとも労基法違反になるようなことにならないような方式でもってやってもらうということを明確に考えていただきたい。一方的な支給だとか、あるいはまた不当な賃金カットをするとかという問題なんかも、これは撤回をして、こういうことはもう白紙に戻して、そうして前向きにこの事態を収拾していくようにもっと積極的な指導をしてもらう。ときには、ぜひ本社のほうから出向いて、そうして現地でそういうことも指導して、その線に沿って労使間が十分に働いていけるような形にしてもらいたいと思うのでありますが、最終的にそうした決意を聞かしていただきたいと思います。
  18. 北村勇

    参考人北村勇君) 御趣旨のほどは十分わかりますので、私どもといたしましても前向きの姿勢で一日も早くこの問題を解決して、正常な状態に立ち返らしていきたいというふうに思います。御趣旨のほどは十分了解いたしまして、十分その線に沿って努力いたします。
  19. 小野明

    小野明君 関連でありますから、あまり時間をとりませんが、七月二十日と二十三日に二時間時限ストをやられていますね、御存じですね。それと、七月三十一日と八月一日に全日ストがやられていますね、御存じですね。これについて、この十日前にスト予告がやられておるわけですね。しかも、ストに参加した人が年次有給休暇をとってこれに参加をしておる。これに対して、年次有給休暇というのは、この病院では前月末までに報告をするようになっている。ところが、この病院の当事者は、これに三十九条に基づく振りかえというような指示をやっておらぬ。しかも、この時限ストと全日ストに参加した者に対して賃金カットをやられておるわけですね。この賃金カットというのは、これは基準法違反ではないですか。北村さん御存じなければ、基準局長がおみえですが、これは明らかに私は百十九条違反だと思いますが、いかがですか。
  20. 村上茂利

    説明員(村上茂利君) 年次有給休暇の趣旨は、先生御承知のとおりだろうと思いますが、労働省といたしましては、従来、行政解釈といたしまして争議行為と年次有給休暇の問題につきましては、ストライキをやるというようなことについては、「使用者は労働者の請求を拒否できるものと解される。既に年次有給休暇を与えることを使用者が承認した後においても、労働者がその日に行なわれた争議に参加した場合には使用者はその日を年次有給休暇として取扱わなくても違法ではない。」、こういう行政通達を二十七年に出しまして、ずっと今日までこの解釈で参っております。したがって、いま、おっしゃいました賃金カット云々の問題は、一つの現象を裏表で見ますると、年次有給休暇として扱わないということになれば、ノーワーク・ノーペイの原則が働きまして賃金は払わないという形になると、かように思うわけでございます。労働基準法三十九条の解釈といたしましては、いまも申しましたように、年次有給休暇として取り扱わなくても違法ではない、こういう見解に立っておるところでございます。
  21. 小野明

    小野明君 基準局長はこの病院の実態を御存じなんですか。これは、たとえばストに参加するということではなくて、その際のピケに参加をしたということについても、年次有給休暇を取り消すと、こういう措置ができるのですか。
  22. 村上茂利

    説明員(村上茂利君) 年次有給休暇の制度は、要するに、心身の休養を可能ならしめるために有給で業務から離脱することを認める制度であります。そうして、それは正常な労働関係を樹立するというのが従来の立場でございます。まあ言いますならば、かりに争議行為のために年次有給休暇を使用することを法律制度的に認めるということになりますと、争議行為のために年次有給休暇を請求した場合に使用者は認めなければならないのだ、こういうことになりますと、使用者に争議期間中の賃金を払わせながらこれに打撃を与えるという制度を認めるという形になりまして、いわゆるフェアプレイの精神に反するか否かといったような集団的労働関係の場からの考慮もございましょうし、また、基準法上の制度としてその請求を認めることを罰則づきで強制するという趣旨に解するということは、どうも解釈としては適当でないんじゃないかと、こういう見解に立ちまして、先ほど申しましたように争議行為としての有給休暇制度を利用するということについては消極的な態度をとらざるを得ない、かようになっているわけでございます。一般論を私は申しておるわけでございまして、松山の事例につきまして私はことごとく承知いたしておりません。実は、昨日聞きまして、現地の基準局に照会したような次第でございます。したがいまして、いま先生御指摘松山病院についてピケが行なわれたそのピケをどのように評価するかということにつきましては、私は答弁を差し控えさしていただきたいと思います。さらによく実態を調査いたしまして判断さしていただきたい、かように思っております。
  23. 小野明

    小野明君 じゃ、もう一つだけ。これは年次有給休暇をとった者に振りかえ使用も何もない。病院側としては当然知っておるわけですね。この日に何が行なわれるかということは知っておる。振りかえ指示をしなきゃならぬ。その指示はしない。しかし、年次有給休暇で休んだ者が、パチンコに行こうと、映画に行こうと、何をしようと、これは自由ではないですか。たとえばこのピケに参加をしようと、これは自由であるべきだと思うのです。この点を、あなたの解釈は、年次有給休暇をとって休んだ者に対して、これこれはいけないと非常に制限を加えておる解釈なんですが、この点については私は非常に疑義がある。しかし、時間がないから、この問題は後日に譲りたいと思います。  ただ、私が北村さんに申し上げたいのは、こういった指示もなくて、年次有給休暇の分について賃金カットを行なうということについては、私は非常に疑義がある。だから、この点については早急に賃金支払いをすべきであると考えます。あなたはまだよく調べてないようでございますが、十分にこの事実を調査をしていただいて早急に措置を願いたいということを要望して終わっておきます。
  24. 大橋和孝

    大橋和孝君 非常に時間に制約を受けておるので、私はまだお尋ねをしたいことがたくさんあるわけですが、特に日赤本社のほうに対しては、先ほどお話もありましたけれども、この問題に対しては、ほんとうにいま大事な時期だと私は思いますので、ひとつできるだけ早急に指導し、はっきりと間違ったところを戻して、ことに先ほどの賃金カットの問題もありますし、また、夏期手当話し合いもしないで一方的な支給をしてやることなんかも、労働協約違反であり、これは非常に問題があると思いますからして、こういうものはひとつ撤回して白紙に戻して、そして十分なる話し合いをしてこれを解決していくという方向にすみやかにやっていただきたいことを希望しておきます。  労働省のほうには、先ほど小野さんからも指摘がありましたが、労働の問題に対しては労働協約違反でもってもっと労働省のほうから積極的にこれを指導してもらわなきゃならぬ立場だと思います。先ほど聞きますと、きのう初めて現地のほうに連絡したというお話でありますけれども、これはもう先ほどから何べんも繰り返して申し上げておりますが、この病院は、この地区では基幹病院としてほんとう松山全体の住民の健康を根本にやるところで、重病人があって大きな手術をしなければならないとか、早急にやらなきゃならぬ救急患者、こういうものに対してはここは即応的にやらなきゃならぬはずなんです。ですから、そういう人たちに幾らかの手当をつけておるし、待機用に何人か見ておく、こういうことは当然必要なんです。ところが、こういう者に対してどんどんカットしておるということは、労働問題として大きな問題がある。これは、人間としての生命を犠牲にしても赤字を埋めていくという考え方になると思うのです。そういうところでだれが歯どめをするかといえば、労働者を守るための労働省がこれに対して十分な歯どめをするための働きをしなければ、このしわ寄せが労働者に行き、そして労働者へのしわ寄せによってやっとそれが運営されていくというような病院のあり方は私はけしからぬと思う。特にいまの日赤松山に対する態度というのはそういうところに大きな欠陥がある、こういうふうに私は現地を見て考えてきたわけであります。ですから、労働省に対しては私はもっと実際のいろいろな問題について詰めて見解を聞きたいと思っておりましたが、これは後日に譲ります。ですから、労働省としては、少なくともこれを調査して、どういうふうにこの問題を解決するかということに対して積極的な意欲を持ってこれをやっていただきたい。労働大臣はきょう来られませんから、労働大臣にはっきりした意見を聞いておきたいと思ったのですが、どうかひとつ労働大臣のほうに局長から話されて、労働大臣に積極的に松山日赤のことに対して労働省としてはどういうことにしていくかということについて十分な働きをしてもらいたい、動いてもらいたいと思います。この次の機会には、そのことについて逐一私も質問したいと考えております。きょうは労働省に対してはそういうことを申し上げておきますので、特に大臣に対して進めてもらいたい。  同時に、厚生省にお話ししておきたいが、大臣の来られるのを待っていましたら来られませんから、私は次官にお願いして大臣に申していただきたいと思います。ここで一人夜勤というのは五病棟もあると言っております。私先ほどから申し上げましたから、十分御承知のことだと思いますが、あそこの状態を見ておりますと、あちらこちらに病棟がありまして、そしていまのままでは非常な事故が起こると思います。起こらないうちに、厚生省としては、あそこの中の看護の状態、そういうことについて一度実際に調査をしてもらって、そしてほんとう基幹病院として指定をされる、教育病院にされるという話も聞いておるわけでありますからして、そういうことであれば、これに対して十分な内容を充実しない限りいけないのではないか。ことに、争議が起こって以来、一方的に、先ほど申したように、ロックアウトをするのだとか、あるいはまた、いままでの協約としてきちっとできておることも踏みにじっていくとか、ことに一人夜勤をして、そしてあのような休憩もできない、飯も食えない、うっかりしたら生理的なことに対してもがまんをしなければできないという場合も私は逐次報告を受けて参りました。そのようなことをほうっておいたらたいへんな問題となりますから、厚生省としてもすみやかに調査されて、そして一人夜勤の問題に対しては十分なメスを入れて、もっと正常な方向にしてもらいたい。調べてみますと、ベッド数に対して看護婦の人数は合っていますという話を聞きました。しかし、それだけで実際の看護ができるかどうか。いま申したような形で一人夜勤が行なわれているとすれば、相当重症病棟もあるし、話を聞くと、手術を受けた者、急に入ってきた患者もその病棟にみんな運ばれて、それを一人でやっているのは言語道断ではないか。その実際の状況を厚生省も調べて、ほんとう基幹病院として育成するならば、育成する方向としてこの話を進めてもらいたい。その間で労使間がうまくいって病院というものの責任が全うされるようにやってもらいたい。私の見た範囲では、この病院では、救急のそういう国民の生命を完全に預かれるというふうにはなっていないと思ったので、特にその点の見解を聞かしてもらいたいし、いままでもし調査されておるならば、どうであるかということを私はあわせて聞かしてもらいたいと思います。
  25. 松永正男

    説明員(松永正男君) この問題につきましては、労使給争の問題でございますので、ただいま鶴準局長から基準法違反問題につきましては昨晩問い合わせたということでございますが、労使関係問題といたしましては、県の労働部におきましても地労委におきましても、先生御指摘のように、地方の日赤病院の地元における公益性といいますか、多数の患者を扱っておるという面から、非常に強い関心を持っておりまして、早期円満な解決ということで努力をいたしております。  先生御承知のように、地労委から団交再開の勧告をしたり、そういう努力をしておるのでありますが、ただいままで十項目のうち二項目については解決がございました。残りの項目につきましては、県からの連絡によりますというと、昨晩の団交におきまして相当進展のきざしが見えてきたということの報告を私どもは受けております。先ほど衛生部長さんのお話でも、何とか平和裏に積極的に解決したいという御意向でございますので、私どもといたしましては、県を通じあるいは地労委等を通じまして状況をフォローいたしますとともに、今後におきまして解決につきまして労働省が必要な場合におきましては積極的に協力をするという立場で対処をしてまいりたいと思います。きょうもおそらく団交が行なわれると思いますが、進展のきざしが見えたということでございますので、ただいまはそれに期待を寄せているところでございます。
  26. 谷垣專一

    説明員(谷垣專一君) 先ほど大橋委員からのお話がございましたように、この土地は、国立、県立の病院もございますけれども、何といいましても赤十字病院が一番大きな病院でございます。したがいまして、今度の争議をめぐりまして時限スト等の状況がございましたために、機能が一部そごを来たしておりますことは、たいへん残念に思っております。  先ほど指摘のございました一人夜勤の問題、これは、御指摘のように、当松山だけの問題でない、一般的な問題も含めて問題がございますけれども、確かに重大な問題であろうと思っております。ともかく、公的病院として、また、この地方の一番基幹になるべき病院としての機能が十分に果たされなければならぬと考えておりますので、御指摘のありましたような点は十分考えまして、今度状況がうまく解決し、また、医療機関の基幹病院としての機能が果たせるように努力をしてまいりたいと思います。必要がございますれば、調査等ももちろんいたさなければならぬと思っております。ただいまのところは、現地の状況をこちらのほうで報告を受けておる、こういう程度でございます。必要があれば調査いたします。
  27. 加瀬完

    委員長加瀬完君) 本件に関する質疑は、午前はこの程度にとどめておきます。  参考人には御苦労さまでございました。     —————————————
  28. 加瀬完

    委員長加瀬完君) 次に、社会保障制度に関する調査を議題とし、質疑を行ないます。  御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  29. 大橋和孝

    大橋和孝君 香港かぜについて少しお話を承りたいと思うのであります。これは前回の社会労働委員会でも実はちょっと質問さしていただこうと考えておったのでありますが、時間がなくて延ばしたわけであります。同時に、また、きょうはこれについても少しゆっくりと詰めた話を開かせていただきたいと思っておったのでありますが、時間の制約がありまして、何か十五分くらいしかないというのでありますから、お話を十分伺うことができないかもしれませんが、私はこれはたいへん大事な問題だと思いますので、一、二の点についてお話を承っておきたいと思います。  御存じのように、今度のかぜは、昭和三十二年の五月に起こりましたあのアジアかぜと言われたところのインフルエンザの大流行、それ以来のものではないかと考えられまして、この報告があったころから非常に憂慮して考えておったわけでありますし、新聞紙上においてもかなりこれが大きく取り扱われておるように思います。特に今度の様子を見てみますと、香港の方面では人口の一〇%に当たる四十万とか六十万人の人がこの病気に罹患をして、しかも、いろんな公的なものまで、あるいは工場あたりも非常に大きな障害を来たしておると言われております。前の昭和三十二年の場合を考えてみるならば、日本におきましてもほとんど国民の半数以上がかかっておる。しかも、五千何百人というものが死亡しておる。今度の香港におきましても二十四名だとか二十六名だったか死亡しておるという報告があるわけであります。そこで、この問題が起こったころに、もう時期から言いましてもおそらく大流行を来たすようなことになるのではないかという心配を持って、質問しようと考えておったわけであります。  福見さんが向こうへ行かれて、そして現地調査をされて、向こうのは非常に軽いですよ、たいしたことはない、A2型ですよという報告があったということを私は厚生省の方に来てもらって説明を受けた。しかし、四十万あるいはまた六十万というような流行を来たすときは——A2型であれば、いままで毎年それがありますからして、かなり免疫ができているはずだ。それが四十万も起こるようであれば、変型じゃないですか、変型であればまた大流行を起こしますよ、こう言ったら、たいしたことはないようです、熱も二日三日で消えてしまうようでありますから、非常にミルドなものだ、こういうような報告だといって厚生省ではえらい安心をしておられた。そのとき、厚生省に対して、これは十分注意しなければならぬものではないかと指摘しておいたつもりです。ところが、今度それを調べてみると、A2型の変型であるとか、A3型であると言われておる。そうすると、いままでつくられておるところのワクチンは効力はないわけでありますから、新しいワクチンをつくらなければならぬので、一体そのワクチンはどういうふうにできるのですか。わずか三千三百リッターですか。おそらく、それでは、子供の分量を〇・五CCに計算しても、六百万人分なわけです。そのくらいになるわけでありまして、そうなりますと、結局、子供といっても、配分を聞いてみても、都会あたり二十何%というような形でもって、中学生までの児童に対してでも全員にはできないようなワクチンしかできないような現状だと言っております。こんなことになると一体どうなるのか、私は非常に心配するわけであります。  そこで、私は伺いたいわけでありますが、防疫の方面を考えてみるならば、この病気が日本に入ってこないことを考えなきゃならぬわけです。ところが、とにかく、厚生省も御存じでありましょうが、このインフルエンザというのは、特定の伝染病ではないために、隔離するとか、これを上陸拒否するとか入国拒否するということにはならないと思うわけでありますからして、この菌を日本に持ち込むことに対しては無防備ではないかと思うのです。そうなってくると、菌はもう勝手に入ってくる。空港からいいましても毎日二百人、三百人という人が香港から出入りをしておる。船からいいましても、上陸拒否はできないのです。すすめてなるべく上陸をしてもらわないように、また、病院に収容するように話し合いはできると思いますけれども、法律のたてまえで押えて上陸を拒否することはできないだろうと思うのです。そうなると、これもその方面からも入ってくる危険性は非常にある。ことに、空路なんかであると、熱が出ていないまま入ってくる人があります。船であれば数日間かかるので、熱があって動けないような状態になっている人は拒むことはできると思うのでありますが、そういう観点から言うと、菌が入ってくることに対しては無防備だ。それであと厚生省としては、こういうようなふうに大流行を来たすようなことに対して一体どういうふうにされようとしておるか、私は非常に心配でありますので、その考え方をただしておきたいと思います。これは、こういうこともあり得るということは、もう前の三十二年の大流行で十分経験済みのことであります。しかし、それをそのたびに大きな金額を使って準備しておくこともこれまたたいへんだろうと思う。そこのところはよくわかりますけれども、こういうような毎年々々危険が迫って、特に九月以後が第一次の流行であり、こうしたかぜの流行というものは、第一次と、それからしばらくたって第二次の大流行の状態になってくる。それが来年春だろうといわれておる。こういうような状態のときに、これに対する防備は一体どうされるのか。国民の生命を考えて最終的に責任を持ってもらうのは厚生省でありますが、厚生省としてはどう考えておられますか、まず根本的な話を聞かしていただきたいと思います。
  30. 村中俊明

    説明員(村中俊明君) お尋ねのこの七月以降香港で流行いたしましたインフルエンザについてでございますが、私どもの情報として把握いたしましたのは、七月の二十四、五日ごろでございまして、さっそく現地の新聞を取り寄せまして、検討の結果、直ちに外務省を通じまして香港の大使館のほうに情報の提供を求めました。その結果、折り返し連絡がございましたのは、ただいま大橋委員のお話の中にもございました相当多数の流行が七月の初めから香港で見られておる。これは香港の政府機関の研究所であるウィルス研究所で分析の過程では、A2という判断をしている。なお、その検体はロンドンに送りまして、その後こまかい検査をそちらのほうでやりまして。流行の内容につきましては、一〇ないし二〇%程度の香港の市民の中に罹患者が出ている。現在までの死亡者は、患者数十万に対して二十名前後である。さらに、外電として大使館の報告があった最後の部分には、先ほども御指摘がございましたが、ミルドな、相当やわらかい、そういう形の症状を持った流行であるという香港政府は判断をしている。こういう外電が大使館を通じてありました。  そこで、私ども省内でいろいろ協議をいたしまして、とにかくこういう情報だけでは技術的な把握が困難であるということで、専門家の派遣を検討いたしまして、予研の部長でありますと同時に、WHOの日本のインフルエンザ関係責任者であります福見部長に、香港かぜの実態の把握のために派遣をきめたわけでございます。七月の三十一日から八月の三日まで調査いたしまして、その調査の報告がございました。この報告の内容につきましては、一部報道されたわけでございますが、流行の様相につきましては、外務省に入った外電と同じ内容でございますが、A2型という判断につきましては、香港の政府の研究所の研究の結果ではA2という判断をしておるし、福見部長自身もそういう感じを持っておる。ただし、検体をもってきたので、この検体のこまかい分析をまたなければそれなのかどうかという断定はできないという報告を受けたわけでございます。  その後、約十日間かかりまして、八月の半ばに予研での持ち帰りました香港のウィルスの検体の検査結果が出まして、これでは、従来昨年まで流行しておりましたA2型と抗原構造が相当変わったものであるという結果が出てまいりまして、同時に、これはWHOにも報告をされましたし、もしも形の変わったものであり、しかも、例数は少のうございましたが、日本人が以前にかかったインフルエンザのウィルスによって確保される免疫と違ったものが必要とされるというふうな段階になりますと、それに相応した免疫を確保するための手段を講じなければならないという結論になりまして、さっそく分析されましたウィルスをもとにして専門家の参加をいただいて、これに対応するワクチンの製造に入ったわけでございます。それから以降の問題につきましては、御承知のとおりでございまして、ほぼ来月の上旬、中旬にかけて学童について約六百万人前後の新しい型に対応するワクチンの製造の見通しが大体ついてまいったわけでございます。  そこで、問題になりますのは、前後いたしまして予研のほうからWHOに報告をいたしました結果について、オーストラリア、ニュージーランドその他で同じようなインフルエンザの流行があるけれども、WHOが把握したそれらの流行はA2型の流行という判断をしております。確かに、幅員部長からの報告を受け、さらにデータを見た限りでは、この型の流行については日本人に免疫が非常に少ないというふうなことはきわめて興味があるけれども、われわれWHOの専門家の見解としては、一応これはA2型の抗原構造が変異をしか移行的な型ではないかという判断を持たれておるというふうなことでございますが、とにかくそれはそれといたしまして、ワクチンの製造とあわせまして、この秋さらに冬にかけての流行が新しい香港かぜのウィルスの型を主体にした流行になるということの予想が適中するのか、あるいは昨年まで流行しておりましたA2型を中心にしたBを交えた流行が発生するのか、現在のところではまだ把握のできない段階でございまして、私どもといたしましては、今月の初めに全国の主管課長会議を開きまして、新しい型の流行に対応するワクチンの製造過程の見込みと、さらに今後発生を予想される場合の検体の調査、収集、分析というふうなことにつきまして十分協議をいたしまして、さらにその後に開かれました全国の衛生部長の会合におきましても、私から特に、まだ把握のできない段階であるけれども、もしも予想が適中して香港のA型の流行があるとすればこれはたいへんなことになる、ぜひ流行の様相を早く把握する体制を整えてほしいというふうな指示もいたしました。こういう形で、ここ一週間前後気温がだいぶ下がってまいりまして、九州、関東、あるいは昨日は東京でも学校の児童が休んだという話が新聞に出ておりました。これらの問題については、それぞれ現地に連絡をいたしまして現状の分析をいたしておりますが、現在のところ、九州につきましても、関東地区につきましても、集団で発生している流行は、私ども考えておりますインフルエンザの流行ということには断定できない状態でございまして、あるいはアデノウイルスあるいは食中毒というふうな疑問も相当クエスチョンマークとしては持たれるというような実態であります。  こういう状態でございまして、結論的に申し上げますと、早く流行の様相を把握するという前提の中で、いま生産を急いでおりますワクチンの実施計画を立てて準備を進めておると、こういうことでございます。
  31. 大橋和孝

    大橋和孝君 時間がありませんので、あといろいろお尋ねしたいことがたくさんありますけれども、要約して五つ六つお話を聞きますから、要領よくひとつ答弁をしてもらいたいと思います。  いまおっしゃっているのは、今度のアジアかぜは非常にミルドだといわれている、だからというので予防に対しても非常に簡単に考えておられるようでありますけれども、御存じのように、こうしたかぜの流行というのは、人を介していく、あるいはまた人種を介していくに従って強度になるわけですね。いま、香港では、そういう調子で、四、五日の発熱であり、死亡者は四十万人、六十万人の中で二十四、五人か五、六人ということだから、これはミルドで大した心配はないと、こう言っておるのでありますが、おそらく来年の四月ごろの第二次の流行になってまいりましたならば、これは人種もかわり、人の世代もかわってくるに従って毒性がきつくなってくる。これはもうあたりまえのことでありますからして、そうなってきた場合に、いまあなたのほうで考えておられるように、二十何人の死亡ぐらいだからいいということにはならないと思うわけであります。かなり大きなことになってくるのではないかという心配が私はあると思います。  それからまた、いまあなたの説明では、流行して集団的な欠勤があるかないかを調べることが大事だというが、それを調べて何をいたしますか。厚生省としては、いまできる方法としてはないのじゃないですか。私はそれが問題じゃないかと思うのです。御存じのように、ワクチンをつくろうとすれば、卵一個で〇・二七COしかできないわけでしょう。そうすると、一人分一CCが要るとすれば、これをつくるために卵は何個要るんですか。そういう卵を使って、それもふ化した卵でなければならないが、卵も手に入らないというのが現状だと私は聞いているわけですよ。それを無理していま一生懸命に最大能力でやって、この十月ないし十一月の半ばになって初めていま言う五百十万人分ですか、三千三百リットルぐらいができる。それ以上は日本の能力ではできない。外国からはそれを入れることもできない。こういう状態になっているということを聞いているわけでありますが、そういうことでありますれば、これから流行してくることに対して、何らの予防ができないということになるわけであります。私は、ここらでもって、何かする方法をもっともっと考えて予防のあり方を何とかしなきゃならない、あるいはまた、今後病気になった場合にはどうしてこれを指導していくかということを考えなきゃならないのじゃないかと考えますが、そういう点については一体厚生省としてはどう考えられるのか。もし三十二年のころの大流行みたいになったとしたならば、交通機関は麻痺するかもしれない。基幹産業もとまっちゃうかもしれない。社会的にいってたいへんな大混乱も起こり得るのではないかということも想像されるわけでありますが、そういうことを見通して、これに対してどうするかということをもっと考えてもらわなければならないし、いま予備費の中からでも出して、いまそうした養鶏方面もどういうふうになるか私はしりませんが、三千三百リッターで、これでもうマキシマムでありますということでなしに、もう少しここのところの手を打たなければたいへんではないかと、こういうふうに思います。この点について、どういうふうにお考えになっているか、もう少し具体的なことを伺いたい、予防という意味で。  それからもう一つは、何ぼでしたか、いまありますのが二万六千リッターのA2型のものができているわけですね。おそらくこれで三千三百万人くらいの量ができていると思います。これは、今度のかぜがA3型であり、あるいはA2型であっても変型になっているものであれば、おそらく無効であるはずですね。これは、金に計算するならば、おそらく四十四億くらいだといわれています。ですから、これを使わないものにしてすぐ捨ててしまうということになれば、製薬メーカーは四十四億の損害をこうむることになるわけです。この四十四億というものを——私は皮肉に考えているんですから、これはもうそのように解釈してもらいたいと思いますが、四十四億円をもし製薬会社に損をさせないとすれば、このワクチンを今度使うワクチンの中に加算したら、ずいぶんの金額になりますね。これはたいへんなことになります。一体、そのマイナス分を見てやるのか、あるいはまた、それをどういうふうにして、まさかこれをこの次の予防接種の中にプラスアルファをされるようなことはなかろうと思うのでありますけれども、そういうことも伺っておきたいと思います。  特に、接種料金が、保健所で私ちょっと調べてみましたけれども、一歳未満は二回で九十円、二歳から六歳までは百三十六円、あるいはまた六歳から十五歳までは百八十二円ですか、十五歳以上は二百七十二円だと、こういわれている。また、開業医のところに行ってこのワクチンをしてもらうと、あるいは三百円とか五百円かかるといわれているわけです。こういうようなことで、この大流行を前に予防接種をしなければならない、こういう考えでありますと、非常に問題があると思うのでありますが、この料金なんかについての考え方もどういうふうにされておるのか。それからまた、ワクチンなんかもマイナス二十度で保存しなければならないことになっているはずでありますから、この問題についてもこれからの取り扱い上問題が起こってくると思います。あるいは、低所得者なんかも、人口にしまして一〇%くらいあるはずですね。こういうものに対して無料でやるように国から予算をつけるとすれば、おそらく三億から四億かかると思いますが、こういう問題についても、こういう大流行の前には厚生省としては相当腹をきめて、無料でやるような方法も考えなきゃならぬ。こういうふうな問題もたくさんあると思うのでありますが、こういうふうなことに対して、ワクチン対策というものの一貫した考え方ですね、どういうようにしてやっていかれるかということも伺っておきたいと思うのであります。  それから今後こういう病気が非常にふえてきた場合には、いろいろな公的機関から、あるいはまた私的の医療施設に対しましても相当の準備をして、何といいますか、続発症状というか、ほかの病気を併発して非常に重体にならないように、そうした設備に対してはいろいろな準備をして、これに対する薬剤の確保も必要でありましょうし、あるいはまた、そういうことに対する指令も必要でありましょう。特に低所得者階層、そういうものに対しての手当てをしておかないと、そういう方面にしわ寄せが行って、そういう人が少々のかぜだということでもってがまんしていることによって、いろいろなほかの病気を併発して非常に死亡率を高めるということもありましょう。それからまた、特に私はここで問題にして考えてもらわなきゃならぬことは、いろいろ公的機関というものが麻痺をしたりして社会問題になることもあり得ることを考えていくならば、そういうものに対してはどうするかということも考えなきゃならぬ。最後に考えていくことはどうなるかといえば、やはり予防ということが大事でありますから、予防ということはいま申したようになかなかむずかしいことではないかと思うのでありますが、こういうことに対してどうだろうとか、担当局長と同時にまた最終的には一ぺん大臣の所信も聞いておきたい。時間がありませんので、いろんな質問ができないので、まとめて聞かしていただきたいと思います。
  32. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 香港かぜは、軽いとはいいますものの、香港における罹病率は一割を突破している。それからまた、その病気は短期間であるとはいうものの、その罹病率と、それから血液がかわった場合のことを考えると、予測はなかなか困難でございます。厚生省としては、こういう場合には、若干の問題があっても、やはり悪いほうの場合を考えて準備すべきであると私は考えておりますが、第一に、ワクチンの問題でありますが、委員、専門でございますので御承知のとおりに、A型の変型であるか、あるいはB型にするかの分類の問題はありますものの、いままでのワクチンが役に立たないと考える方が多いようでございます。しかし、流行の状態によっては、それが混合して使われる場合もあるかもわかりませんけれども、一応準備は別個のものとして準備をしなければなりません。そこで、早急に製造のメーカーを集めて緊急の協力態勢をお願いしておりますものの、技術的にいってなかなか困難でございまして、十月中旬にようやく三千三百リットルぐらいのものが、これも非常に急いでできるような状態でございます。  そこで、第一には、苦しい中で何とかして感染を防ぐためには、第一には重点的にやらなきゃならない。近ごろ香港に旅行される日本の方から、直接厚生省に、ワクチンをくれろという電話が相当あっているはずであります。全部断わっております。ですから、こういう旅行される方、それから保育園、幼稚園、小学校、中学校、それが間に合ってきたら逐次それを拾うということ、地域的にも重点を置かなければならぬが、それだけでも次のワクチンを製造する場合には切れ目ができるおそれなしとはいたしません。そこで、注射する場合にも、皮下注射であるか皮内注射であるか、あるいは診断の方法も、この際もっと金をかけて検討する必要があると考えております。  そういうわけで、何とかして対処していきたいと思いますが、第一はこの予防でございますが、流行の場合に、これが法定の伝染病でありませんから、相当困難ではありまするが、できるだけ保健所へ通報し、あるいはこういうものの発見に協力をするように万全の体制をとりたい。厚生省では、御承知のとおりに、所管が、伝染病は公衆衛生局でございますが、ワクチン、治療、診断になりますと、医務局と薬務局の三局にまたがりますから、三局で連合して対策を講じたい。  なお、検疫官から言わせますと、検疫官にもいろいろ問題があるようでございまして、特にこういう不安があったり、特別に流行が蔓延するおそれがある場合には、羽田の空港だけでは困難であるから、何とかして香港に駐在するか、あるいは香港から乗って旅行中に診断をするか、ただ羽田の空港に着かれた場合だけ経験と勘でやることは自信がないという意見も出ておりますから、こういう点についての特に予防については、むだ金を使ってでも私はもう一ぺん検討してみなければならないのではないか、このように考えております。  それから、ワクチンが、前のワクチンがむだになる。年を越したらそう使えるものじゃない。そこで、四十数億のメーカーに損害をかけるわけでありますが、そういう損害がある場合に、これが次のワクチンの値上げということによって大衆に責任を分担させることは、これは私もどうしてもできかねることでございますから、いまのところ値上げという問題が起こっておりませんけれども、政府が見込みによって多量に製造し、あるいはそれが幸いにして流行がはやらなかった場合にむだになる、こういう場合の掛買については早急に検討して、メーカーでも、取り締まるところは取り締まらなければならないが、要求すべきところは要求しなければならない。厚生省の所管の中に、製薬業については企業の育成保護という一項が入っておりますから、これについては御指摘のとおりもう一ぺんこの際検討して、何らかの方法を講じなければならない、このように考えております。
  33. 大橋和孝

    大橋和孝君 もう時間がないから、委員長からとめられているのですが、それで、いまワクチンが、学童を入れましても、四〇%ぐらいしか都会でできない。郡部でもっては二〇%もできないというわけでありますから、一番危険な学童ですらそれぐらいでありますから、先ほど申し上げましたように、いろいろ基幹産業にまで影響することを考えますと、ワクチンの製造というものを、いま相当巨額の金をむだ金とはいいながらメーカーのほうに出して、もっとワクチンの製造というものを国において強力にやっていただきたい。これだけはやっていただかないと、事実上予防はできないわけです。ですから、内容調査すると悪いとかいろいろなことを聞きましても、実際ワクチンがなかったら問題にならぬわけですから、ワクチンをつくるため、むだ金ではありながらも、相当の金を出して最大限つくってもらう。ほかのメーカーであってもなかなかむずかしいことはわかっておりますけれども、何とかそれをするということに最大の努力をしてもらいたい、こういうことを申し上げて、終わります。
  34. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 御指摘のとおりでございまして、いま調査の段階ではなくて、火事が起こってからポンプを準備しておるわけでありますから、相当無理をしてでもいろいろ努力するように、なおまた、施設等についても努力するように考えております。     —————————————
  35. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 先般公明党が八月二十一日に発表したわけでありますけれども、社会保障総合基本法案であります。この要綱については大臣はごらんになったことと思いますけれども、これに対してどのように大臣はお考えであるか、この点をお話し願いたいと思います。
  36. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 社会福祉の基本法であることについて案を出されたことは、よく拝見をいたしております。私のほうでも、審議会にかけまして——社会福祉事業法が制定されてから逐次改善をやっておりますものの、相当大幅に改善をしなければならぬと考えておりますので、出された案等も参考にしながら審議会の結論を待ってやりたいと考えております。
  37. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 では、先へ進みます、時間がございませんので。総理は口を開けば福祉国家ということを言っております。そういう立場から、こういう面が着々と厚生大臣の熱意で進められているわけでありますけれども、かの現状考えてみますと、社会保障制度は、昭和三十七年の社会保障制度審議会の総合調整の勧告、答申、これを忠実にその線に沿って実施されているとは考えられないわけです。したがって、先進国に比べますと、わが国のこういう社会保障制度は十数年の開きがあるだろう、こういうふうに考えられるわけです。こういった問題を、国際水準から下回っておる実情を、今後どのように大臣は改革していくのか、こういった点について大臣の考え方をお聞かせ願いたいと思います。
  38. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) いまの御意見は、審議会なりあるいは開発計画等から指摘されておりまして、その年限をきめて西欧諸国に追いつけという具体的な指示がございます。しかしながら、予算面等で縛られてなかなか現在の必要に応ずることさえ困難で、先進国の水準に追いつくということは残念ながらおしかりを受けるような状態でございますので、私のほうでは、各施策について年次計画をつくり、これのもとに長期計画を中に押し立てて、そして各位の御協力を得て一歩一歩追いつこうと必死に努力しているわけでございます。
  39. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 その点はわかりますが、大臣としては、その年次計画を立てて大体どのくらいでもって先進国に追いつくという考え方なのか、その辺のところを、ちょっと、確信といいますか、これをお聞かせいただきたい。
  40. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) これは、委員が御承知のように、正直に言いますと、現在、たとえば、身障児、あるいは老人の特殊ホームだとか、収容しなければならない数字を何年内に片づけようというよりも、財政上の点から縛られてきて、長いのは十年計画とか、短いのでも三年計画とか、こうなっておりまして、実際は良心的に言わされるとまあ返答のしようがないわけでございますが、私のほうでは、明年度の予算では、その年次計画を逐次縮めていく。それからもう一つは、そういう点もありまするので、これはいけないことではございまするが、重点をきめて、まず老人母子保健、それから身体障害者、そういう非常に困っておられる必要なものから逐次追いついていきたい、こう考えております。
  41. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 今回公表されました昭和四十四年度の厚生省の予算概算要求の重点項目の中に、わが党がいままで主張してまいりました児童手当、これが欠けているというように考えますが、この点は、いままでやるやるとこう言ってきたわけですが、来年度の要求に対してこれが含まれていないということであると、これは来年からの実施はまたむずかしいというふうに考えられるわけであります。この点のところはどうでしょう。
  42. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 御指摘のとおりに、決して楽観はしておらず、非常に困難な問題であります。しかし、これは、総合予算のワクをきめるときに、私は次のように公開の席上で発言をしております。と申しますのは、二五%増という予算で申しますると、私がいただいておる一般会計からいいますと、自然増が一千億以上になるわけでございまして、そうしますと、各位からいろいろ御指導願ったり、私が考えておりまする政策予算というのは、六百億か七百億に切られるわけであります。だとすれば、何もほとんどできないという実情でございまして、そこで、その際、すでに総理並びに私が公的資格において国会に約束手形を発行している問題がある。それは、児童手当の問題であり、あるいは各種の年金の問題であるから、これは二五%のワク外でやってもらわなければできないということを言っておるわけでありまして、これは私どものほうでただいま概算要求をしているもののワク外の予算として、年金、保険その他もからめまして考えているわけであります。しかしながら、決して見通しは御指摘のように楽ではございません。
  43. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 その要求は九千六百億ですか。
  44. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) はい。
  45. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 これが査定でだいぶ削られると思いますけれども、いまおっしゃったように、医療の抜本改正という問題もありますし、また、年金制度の改善、児童手当、こういうものを含めると相当な予算がかかるわけですね、実際問題として。医療のほうが、あるいはまた年金のほうがどのくらいかかるかわかりませんけれども、少なくとも児童手当に対しては、こちらが主張しているとおりに実施されるとするならば、八千億は間違いなくかかる。こういうことです。そうしますと、別ワクというけれどもほんとうにそういったことが実現できるのかどうかということが、疑問になってくるわけです。こういった点の見通しといいますか、大臣の確信といいますか、こういった点をしっかりと承っておきたい、こう思うわけです。実際ちょっと考えても、非常に無理だと、こういうふうに考えられるわけです。その点のところを……。
  46. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) これは例年のことでございますが、私どもで概算要求する場合には、特別なものはいつも空白にしてございます。明年度は、保険の改正と、それから年金の再検討の時期でございますから、児童手当の問題をどういう方法でやるか、これによっていろいろ違ってまいりますから、年金、保険を中心にした問題は空白部分でございますので、これは額を幾らにするかどうするかということは詰めておりませんが、これは財政当局も別個の問題ということは了承しております。
  47. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そうすると、これは全然見通しがつかないということですか、児童手当については。
  48. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 児童手当は、これは数年前からいろいろ言われておるし、それから私ばかりでなく、総理もちゃんと委員会やその他で公約をしている問題でありますから、相当困難ではあるけれども、その方法をどう積んでいくか、あるいは年金制度の改正の中に入れていくか、方法はいろいろあるとは思いますけれども、これが立ち消えになることはあり得ない、こういうことで必死になっているわけでございます。
  49. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 ということは、必死になっていることはわかりますが、来年から実現できるのかどうか。いろいろな方法はあるでしょう。そういういろいろな方法を考えた上で来年からこれを実施するという、そういう見通しが立っているのかどうかということですね、その点を伺っておきたいわけです。
  50. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 単に空白にして希望的観測を持っているわけではなくて、やはり空白の中にどう織り込んでいくかという具体的数字等も検討して、事務当局は実現するという具体的な案をつけているわけでございます。これは何といってもしなければならぬ問題でありますから、そういうことで、困難ではあるけれども、また、あるいはその児童手当ができた場合にその内容についておしかりを受けるような点がありますけれども、児童手当の制度の確立だけは必ずやりたい、また、その見通しをつけてやっております。
  51. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 それはわかりました。  次に、老人問題について伺っておきたいのですが、老人の総合福祉対策についてはこの重点項目の中に入っているようでありますが、御承知のように、急速な人口の老齢化、こういったことから、今後老人問題は非常に大きな問題になってくることは当然であります。また、その老人医療の保険給付を十割にするというようなことをこの前言われておりました。そういったことが大臣から言われておったわけでありますが、現在になってみますと、その大臣の構想が何となく後退をしてきておる、こういうような感じがするわけです。こういった点はどうでしょう。
  52. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 老人対策では、私のほうから言うべきことではないかもしれませんが、日本人の寿命がだんだん伸びてきたという数字が出てきております。しかしながら、数字どおりには解釈できないんで、一つは子供の死亡率が減ったということもありますが、寿命が伸びたということよりも、正直に言うと、息の切れる時間が長引いておるというのが今日の実情でございまして、寿命が伸びたというからには、社会環境、生活環境が整備されて、老人の体力がついて、七十、八十まで生活力がついて健康で寿命が伸びなければならない。それが、寝たきり老人という名前で呼ばれておりますが、まだ五十、六十代の年齢で寝たきりになっておって、そして命の切れるのが長引いておるだけだという実情は、私は非常に心配をしておるところであります。  それからもう一つは、現在六十歳以上は大体九百四十万くらいいますが、あと三年たちますと、これが二千七百万にふえる計算になります。そうしますと、二十一世紀は、子供の数は減ってくる、老人はふえてくる。働く人の比率から言いますと、大体一人の人間が一人の老人と一人の子供を背負って働かなければならぬという危険な人口構造になるわけでありますから、そういう点で、第一はなるべく体力を維持するということで、明年度から、いろいろ無理はありますが、老人の方の医療を公費負担にしたいということで計画を立てて折衝しておるわけでありますが、これはほんとうは保険に入れたいわけでありますが、保険に入れるとなりますと三年後になります。三年待つわけにまいりません。そこで、御指摘のとおり私の言ったことは後退していることは事実でありまして、申しわけございませんが、私の考えは、入院された場合には月二千円、外来は千円、それ以上のものは全部公費が負担するということでそれぞれ折衝いたしておるわけでございます。
  53. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 わかりました。  そのあと、年金の問題でございます。七十歳という考え方、これを、定年とかそういったいろいろな問題があると思いますけれども、そういう情勢を加味した上で——これは七十歳となりますと、実際にはもらう人というのは幾らもないということが言えるわけです。これは思い切って六十歳くらいから年金ということを考えてみたらどうかというふうに主張したいわけでありますが、そういった点についての大臣の考え方をお願いします。
  54. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 御指摘のとおりに私も考えますが、現実問題から言うと、引き下げは明年度ではきわめて困難でございます。そこで、私のほうでは、各種年金の増額、それからいろいろおしかりを受けております所得制限の撤廃——夫婦年金の所得などでございますが、こういう点をぜひ重点にやりたい。そこで、私のほうで、年齢を引き下げるということは、弱いようでありますが、困難であるということで、年金の充実をはかってまいりますが、また、近ごろ各方面の意見を聞きますと、いまの年金では単なる構想の程度であって、生活の保障はできない。したがって、われわれだけに出せというなら困るが、われわれは少しは掛け金がふえてもいいが、国が思い切って国庫支出をしてそうして老後の保障ができるようにもっと年金額を思い切って出せ、こういう御希望もあるようでございますから、その方向に向かってやっていきたいと思います。
  55. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 老人の問題の最後として、施設の問題ですが、現在、養護老人ホームは、必要施設の五〇%程度を満たしておる、こういうような状況であります。それで、また、特別養護老人ホームというのがありますが、これは現在四十万人ぐらいその対象になる人がおるわけでありますけれども、いまできておるのはそのうち八千人くらいですか、いま入所できているのは。こういう施設の問題をどう解決していくかということが一つの大きな問題だと思うのです。もちろん、大臣はそういった点は大いに力を入れていくということを伺っておりますけれども、現実的には地元の市町村の負担というものやらこういう問題が残されておる。そういった点をどういうふうに解決していくか。その解決がなければ、幾ら大臣が多くを建設するといっても、ちょっと地元のほうが苦しむばかりである、こういうことが言えるわけです。その辺の解決をどうしていくかということですね、その考え方について……。
  56. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) おっしゃるとおりでありまして、私のほうでは、都会と農村に、近ごろ残念なことながら老人の自殺が相当ふえておる、そういう点から、特別養護老人ホームのこの施設を年次計画をつくって明年度大幅にふやしたい。  それからもう一つは、ふやす場合に、また地方財政を圧迫することも各地方自治体からよく聞いておりますので、その点を考慮してやる。同時に、そのほか、ここでは申し上げませんが、家庭奉仕員の増員であるとか、看護婦の派遣だとか、いろいろふやすつもりでありますが、細部の点は局長から答弁いたさせます。
  57. 今村譲

    説明員(今村譲君) 施設の数は、いまおっしゃいましたように、寝たきりの人は八千人、七十カ所ほどしかございません。これは老人福祉法が三十八年にできましてから三十九年から始まったものでありますから、いま全力をあげてこれを増強いたしております。  それで、大臣からお話がありました十カ年計画におきましても、現在八千を四万八千にする、プラス四万にする、しかも第一次計画で全体の七割を最初の五カ年でやってしまう、こういうふうな計画をいま持っております。それと同じように一般の養護老人ホームも歩調を合わせて進んでいきたい、こういうことであります。  で、先生のおっしゃいました市町村や都道府県の財政負担というのは、建築費の単価がまだ現実よりも非常に低いので、それをやってくれないと、地元四分の一、四分の三は県や国で持つのだといっても、実際は半分近く地元市町村が持たなければならぬ、こういうふうな問題これは毎年単価を現実に近づけてもらうように折衝いたしておりますが、今後とも大いに努力いたしたいというふうに思っております。
  58. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 それでは、その施設の市町村に関する補助、この問題については、十分考えて、また、考えていくと同時に、現在この一施設に対して百万なら百万とこういうような国の補助に対して、来年度からこれを倍額にしていくとか、あるいは三倍にしていくとかというようなはっきりした考え方を持っていらっしゃるわけですか、設備に対して。
  59. 今村譲

    説明員(今村譲君) ちょっと御趣旨を取り違えたかもしれませんが、十カ年計画に基づいて、来年は初年度でありますので、本年度の倍以上の要求をいたしております。そのほかに、寝たっきりの、特養と言っておりますが、特別養護老人ホームを重点的に施行する、こういうつもりでおります。それと単価のアップと両方ひっかけまして相当大幅な施設整備予算要求というものを現在大蔵省にいたしております。そういう点をひとつ御了承いただきたいと思います。
  60. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 それでは、最後に、保育所の問題についてちょっとお伺いいたします。  この保育所の問題については、いろいろな問題点がございますけれども、やはり何といっても施設ができない限りはこれは収容するわけにいかない。それで、施設をつくる問題についても、これは国の補助率を高めていくという以外にないと思う。で、現在は百万円ですね、一施設。とてもこれでは、私がこまかく言わなくても大臣は重々知っていらっしゃるとおりでございますので、申し上げませんけれども、常識的に言っても、現在の国の補助率でもって保育所ができ上がりっこないわけであります。ですから、大臣が幾らこういう面に力を入れていくと言っても、力を入れれば入れるほど地元の市町村では泣かなければならぬ、こういうことです。こういう問題をどういうふうに解決していくかということが一つの大きな問題点であろうと思いますので、この点をひとつはっきりと、この程度まで国が補助をしていくのだと、したがって、市町村にはそれほどいままでのような負担はかけないと、こういうふうな確信を持った構想があるのかどうかということを伺いたいと思います。
  61. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 保育所では二つの問題で非常にやかましく攻められておりまして、一つは、増設しろということ、一つは、いまのように地方財政を圧迫して、国からの補助が極端に言うとごまかしておるのだ、しかも立てかえ金をやらせておるじゃないか、そうして立てかえ金を清算する場合にはいろいろ難点をつけて金額の上から制限をしてくる、この二つの上で非常におしかりを受けておるわけであります。ただいま、全国において、概算して三千二百カ所は足りないと。しかし、これは事務当局の計算で、実情は、もう農村あたりでは非常に要求がふえておる。そしてまた、保育所が、いまは、この規定が、お母さんが働きに出て子供のめんどうをみれない者だけを収容するとなっておりますが、実際はたとえ働き手がおろうとおるまいと入れてくれという要求が強いわけであります。そこで、たくさんつくろうということでいろいろ苦慮しておるわけでありますが、いまの補助のことについては明年度ではこれをふやすように折衝をしております。それから数もできるだけふやしたい。これでやっておりますが、これも現実においてはなかなかよろしいとおっしゃる程度までいかないかもしれませんが、ただ、地方財政当局の希望に応じて、あなた方だけに責任を転嫁しておるのじゃないという意味で上げたい。  数字については、係から御説明いたします。
  62. 鈴木猛

    説明員(鈴木猛君) 保育所の整備につきましては、数多くつくる問題と、もう一つは市町村に対する補助額の引き上げの問題とあるわけでございますが、前者につきましては、緊急五カ年整備計画というものに基づきまして逐年整備を行なっているところでございます。なお、補助額の引き上げにつきましては、従来におきましては、収容定員九十人以下の保育所につきましては七十万円、これは定額でございます。九十人以上の施設につきましては百万円でございましたけれども、四十三年度本年度から一律に百万円まで引き上げるということでございまして、なお今後におきましても補助額の引き上げについては努力してまいりたいと思います。明年度予算におきましてもこれを二百万円に引き上げるというような予算要求をしておるようなわけでございます。
  63. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 一律に百万円ということでございますね。そういうことですね。そうなりますと、実際に一施設百坪ぐらい必要だとしますね。そうすると、現在の建設費といいますか、これからいきますと、木造でどんなに低く見積もっても坪七万円はかかる。そうすると、それだけで七百万円。国が百万円の補助、県、市町村が五十万ずつ、こういうことであります。そうすると、それですでに五百万円の赤字が出る、最低見積もって。そこへもってきて、土地の取得費、これが入っていないわけです。土地の取得費、これがまた非常に大きいものです。そういうことで、ほんとうに田舎のほうにつくるなら、これは土地も安く買えるかもしれないけれども、これを田舎のほうに持っていったのじゃ——それは当然田園都市も必要になってきたけれども、都市部とはその辺がだいぶ違ってくるわけです。いわゆる土地の取得費ということは全然考えられていない。これが非常に高いものであるというこういう問題を考えると、大臣が考えているようにスムーズにこの保育所ができるとは考えられない、百万円のいわゆる補助ではですね。そういった現在の時点に合わせてもっともっと考えていく問題点がたくさん横たわっておる。そういった点を、百万円でいいと考えているのか、あるいは、いまも、だんだんにふやしていくのだという話でありましたけれども、だんだんでは、どんどん物価は上がっていくばかりです。追いついていかない。そういった問題を解決していかない限りは、絶対にこの問題は解決できない、私はこういうふうに考えております。この点の見通しというか、考え方について答えていただきたい。
  64. 鈴木猛

    説明員(鈴木猛君) お話しのように、建築の単価と坪数等から見ますと、実際の建築費は数百万円かかるわけでございまして、現在の補助額につきましても今後引き上げるということで努力をいたしております。なお、実際の建築費と補助額との差額につきまして市町村が負担する分につきましては、国民年金の還元融資等によりましてその建設が容易になるようにいたしておるところでございます。  なお、この額が非常に低いという問題でありますけれども、これにつきましては、先ほども申し上げましたように、今後その額の引き上げに努力をしてまいりたいと思うわけでございますけれども、問題は、保育所についての非常にニードが高い。特に最近におきましては、御存じのように働く婦人層というものは非常にふえております。そのような意味で、都市における保育所を整備するということが緊急の課題でございます。そのような問題もございまして、私どもといたしましては、数多く保育所の整備をするか、あるいは厚く数少なく補助をするかということが私ども一つの大きな課題でございます。ただいまのところは、いまのような実情も考えまして、数多くともかく整備をするというのが緊急の課題であるというようなことでございまして、そのような方針で市町村に対する補助を行なっておるような実情でございます。
  65. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 時間もまいりましたので終わりますが、それではただ数が多く薄くということになる。それはやっぱり数多く厚くでなければならぬと思います。  それをいま言っておるわけです。それでないと、市町村が泣かなければならない。だから、構想のとおりいかないわけです。構想のとおりにいけば、そこに必ず無理が生じてくる。その辺のところをやはりもっともっと考え、そして補助の点についてもどうしていくのかという問題を出していかなければならぬのじゃないか、こういうことを強く申し上げて、質問を終わらせていただきます。
  66. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 厚生大臣にお伺いしたい点は、すでに厚生省のほうにもたくさんの陳情が行っておると思いますので、大臣としても十分に了解をされ、着々対策を練られておられると思います通称むち打ち症患者の救済問題についてでございます。  昨年十二月の本委員会における討議内容を見ますと、必ずしもむち打ち症患者に対する救済は十分とは言えない、何かしり切れとんぼに終わったような感じがするわけでありますが、昭和四十一年の上半期、昭和四十二年度の上半期における交通事故の件数を見ますと、七〇%以上も激増しておる。おそらく、四十三年には、さらにそれをはるかに上回る。このような傾向が年々著しく見られるわけでございますので、極端な言い方をすれば、近い将来に日本の人口の半分くらいむち打ち症患者になるのではないか、そんな感もするわけでありますが、そこで、このむち打ち症というもの、これは通称いわれておるようでありますけれども、これは医学的に見て完全な定義があるのでございましょうか、まずそこからお願いしたいと思います。
  67. 松尾正雄

    説明員(松尾正雄君) 先生御指摘のように、いわゆるむち打ち症といわれておるものでございまして、これは医学的な病理像や病態というものの実体をなした名前ではございませんで、追突をいたしましたときに首の運動が前後に揺れるというところから、いわゆるむちを打つといったような状態になる、こういうことでいわゆるむち打ち症といわれておるわけでございます。実体といたしましては、ただいままでのところその症状もきわめて多彩でございます。また、学問的にその病原を一元的に単純には説明できない、こういうことにいまの状態はなっております。したがいまして、そういうようなところが、また逆にいろいろ医師の見解を不統一にいたしましたりしているところが、いろいろな不安を与えているかと思います。ただいまのところ、しかしながら、かなりのむち打ち症といわれているものが頸部のいわゆる捻挫である、頸椎——首の脊椎の捻挫というものが大部分であります。しかしながら、それに伴いましてその後に交感神経系統のいろいろな症状が出てまいります。あるいは脊椎型といわれておるような症状が出てくるというふうに、いろいろ付随したものが加わっております。したがいまして、その実体についてこれだというふうに完全に一致した見解がまだまとまっていないというのが実態でございます。
  68. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いまのお話ですと、実体がまだよくつかめてない。しかし、実情としては、大きな社会問題としてマスコミを通じ報道をされているわけであります。現在、当局として、こうした総合的な根本的対策については、いろいろな医療機関の設定だとか、そういう問題が考えられるわけでございますけれども、現在の段階としてどのような経過をたどりながらこれを積極的に推進されておるかどうかという具体的な措置についてお願いをしたいと思います。
  69. 松尾正雄

    説明員(松尾正雄君) まず第一番目には、いま申し上げましたように、いわゆるむち打ち症というものの本体なり、また、それに伴います診断あるいは治療の方法、こういったようなものが必ずしも明確でないというところに根本的な問題がございます。特にこれは大臣の強い御指示によりまして、本年度におきましては、特別研究費約一千万をもってその総合的な研究をいろいろな権威者にお願いをしておるという段階でございます。そのおもな研究の内容といたしましては、脳神経外科的な方面からする研究が第一、それからまた整形外科的な面から接近をしたいという研究がございます。また、特に精神医学的な立場、これが非常に無視できないような実態でございまして、そういう精神医学的な方面からこの問題を検討をしていく、また、治療の方法を考えていく。それからさらに、やや専門的ではございますけれども、ただいまの精神医学的な問題とからみまして、医者自体がある種の不安を与えるのじゃないかという、要するに医原性——医に原因するということばを使っておりますが、そういう医原性的な因子というものがあるかどうかというようなこと、また、疫学的にどういうような実態になっているか、これもなかなかつかみにくい状態にございます。こういったものを中心に研究を進めております。そのほか多少専門的なものも加わっておりますが、大きな柱といたしましては、そういったことを中心に各学者が共同いたしまして、そしてその本体を早く突きとめたいというのが第一の基本的な研究としているわけでございます。  しかしながら、一面におきまして、そういうような研究は研究として進めてまいりますけれども、いずれにいたしましても頸部のそういう一定の外傷的な傷害があるものでございます。これは当然交通事故対策という一般的な外傷患者の救急対策というものに広く含めて解決していく。そういった意味におきまして、救急病院、いわゆる救急施設の増設ということが第一でございます。また、特に早期に総合的な診断、治療というものをはかっていただきたいというようなことで、そういう能力を持つようないわゆる救急センターというものをいま整備を進めておるわけでございます。すみやかにこういう専門的な高度の能力を持った救急センターを整備してまいりたい、こういうことで進めてまいっておるような状況でございます。
  70. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 現在、そうした研究の総合的なやり方というものは、国としては一カ所でございますか、それとも各都道府県に逐次これからも並行してそれを設置し、治療の方法も研究するそのかたわら並行的に行なっていくというような考え方を持っていらっしゃいましょうか。一千万の予算ですと、これはとても不可能に近いんじゃないかという感じもしないでもないんですが、よくそういう研究所あるいは研究機関というものをつくるときには、えてして予算が足りないということがいつも問題になるんですね。それで、いかなる場合でも中途半端に終わってしまう。それで、目下努力中であるとか、検討中であると。これでは国民は納得できないと思いますね。やはりそこにはある一定の日程なら日程を限って大体の目標を立てられて、この期間において徹底的に究明をして国民の安心を得られるような措置を講じていきたいというような、そういう方向というものを国としても明確に打ち出せば、そうした症状で悩んでいる患者にとっても大いなる福音ではなかろうか、こう思いますので、その点は実際にこれからどういうふうに進めていかれるか。いまおっしゃられた話ですと、ようやく本年度から一千万の予算をとって総合的な研究をやっていると。まだほんの緒についた段階ではなかろうか。アメリカにおいては、もうすでに四十年前にこういう問題があったときにむち打ち症というふうに名づけられたと伺っております。したがって、歴史は古いわけですね。日本においては、交通量の増大に伴ってやっとむち打ち症患者に着目をして根本的なメスを加えなければならない、こういう段階になったんだろうと思いますね。どちらかといえばどろなわ式のそういう感を免れないでもないのでありますけれども、それはともかくとして、いま申し上げたような点について、これから根本的な対策の一環として、その総合的な研究のほかに、むしろ問題の起こるのは、大都市はもとよりでございましょうけれども、単に東京に限られた問題じゃございません。これは全国的な問題でございますので、その点はどうなっているかですね。
  71. 松尾正雄

    説明員(松尾正雄君) 研究体制という問題につきましていえば、一千万というのは必ずしも大きな研究費とは言えないということでございます。これはなるほどおっしゃるとおりでございまして、もっとたくさんあればそれだけ有効になるかと私どもも期待をしておるわけでございますが、ただ、従来ございました医学的な意味の研究費としてはわりあいに高い、額としてまとまったものであることは事実でございます。  それから研究の分野でございますが、必ずしもこれは東京だけの病院とか大学が担当しておるわけじゃございません。どの方面も、先ほど申し上げましたような問題につきまして一番適当な先生方というものは全国にわたってこれに参加をしていただく、こういうふうなことでございます。また、国立病院等が担当いたします疫学的研究も、全国の国立病院にわたりましていろいろ調査をするというようなしかけになっております。かなり広範囲に研究体制を進めていきたい、こう思っておるわけでございます。なお、今後におきましても、単に一年度程度でこういう臨床的な問題が解決するわけではございません。来年度以降におきましても続いてそれを増大するような努力は続けたいと考えております。  なお、しかしながら、こういう問題は、いわば実際の臨床的な意味での研究という問題も多数ございますわけでございます。そういう意味におきましては、救急病院のお医者さん方というものの教育訓練、そういった形からもまた臨床上重要な一つのめどがつかめるということがあり得るわけでございます。そういう点につきましては、学会に委託いたしました研修というようなことを続けております。また、新しく脳神経系統の専門家を養成するという面からもこの養成の努力をいたしておるわけでございまして、そういったものと相まちまして、全体として早急に本体がわかり、また、治療の方針等があまり迷うことなく適切に行なわれるような方向に進めたいと念願しておる次第でございます。
  72. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 専門的な医療機関、救急病院も含めて、現状としては確かにおっしゃるとおりに交通事故の激増に伴って必ずしも十分ではない、これはもうそのとおりだと思います。ところで、話として確かにその方向へ持っていかれることはけっこうでありますけれども、さらにより現実的な問題として、今後、そういう救急病院の強化拡充、また、医師の訓練強化という当面する課題があるわけです。そうした問題を含めながら、今後どのくらいそういう病院の施設というものをふやす必要があるのか、現状はどのくらい足りないのか、何年度くらいまでにその目標を完遂するのか、こういう計画がおありになると思いますけれども、それについてお願いしたいと思います。
  73. 松尾正雄

    説明員(松尾正雄君) 現在、第一線といいますか、いわゆる初療——最初の治療を担当していただくという救急告示医療機関というものは約三千九百ございます。しかしながら、これは地域別に見て必ずしもうまく運行していると言いがたい面もございまして、さらにこれの普及をはかるように努力してまいりたいと思います。それにつきまして、先ほど来申し上げましたように、できるだけ総合的に高度の治療のできるようないわゆる救急センターという病院をすみやかに整備していく必要があるわけでございまして、これはおおむね対人口百万に一カ所ということを目標にいたしまして、四十五年までに終わるという計画のもとに年次計画を進めております。ただいままで、四十二、三のところにほぼそういう機械設備等の整備を終わったというところでございます。ただし、いま先生もおっしゃいましたように、設備だけをいたしましてそれでこと足りるものではございません。こういう特に高度の専門家の養成ということは全く不可欠でございまして、したがいまして、脳神経系統の専門家を学会に委託いたしまして新たに養成をするという研修計画を、ただいまたしか年間三十人程度でございますが、これをさらにふやしながら逐次養成してまいりたい。また、さらに同時に、来年からはそのほかに、救急関係に必要な麻酔の専門家というものもあわせてこの救急医療のために普及をはかってまいりたい、こういう体制で年次計画を進めておる次第でございます。
  74. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いまおっしゃられたのは、おそらく公立の病院だろうと思います、主として。民間の病院にも積極的にこうした治療方法、治療対策というものについて熱心な病院あるいは医師もおられると思うのですね。そうした個所についても国として何らかの助成を行なってきたのかどうか。もし行なっていなければ、これから行なう方針があるのか、その点はいかがでしょう。
  75. 松尾正雄

    説明員(松尾正雄君) 先ほど来申し上げましたセンターは、必ずしも公的でなくてもいい、そういう能力があればいいわけですけれども、しかし、大部分がそういうところに片寄っていくということは実態として当然でございます。民間におきます救急医療につきましては、大体二通りの種類のものがあげられます。一つは、最初に申し上げました三千九百の一般の診療所といったものが特に大事な初療について参加をしていただいておるわけでございます。これは、御承知のとおり、待機しておりましたり、ベッドをあけておいたり、患者が来なくてもやりくりをいたしまして常にそういう状態にしておかなければならぬといういろいろな御苦労をおかけしておるわけですけれども、従来からこういうものについては特にめんどうを見ていなかったという問題がございます。来年度におきましては、そういった点でそういう御苦労という形に報いるために、一定のそういう告示をいたしました機関に助成をしたい、こういうことで予算を要求し、折衝中でございます。  それから、なお、そういう民間の救急医療機関としてのいわゆる整備というものにつきましては、これは医療金融公庫のほうを活用いたしまして、そちらでやりたいという体制でございます。
  76. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いままで申し上げたことは、直接の災害と申しますかがあったときの救急でございますが、まああえて分ける必要はないと思いますが、当然後遺症という問題が出てまいります。むしろこういう後遺症で苦しんでいる人のほうが多いのではなかろうか、私の知っている患者の人で、もうすでに六年もかかっていまだになおらないという、こういう実例がございます。しかも、生業にもつけない。こういった関係から、いわゆるリハビリテーションの施設というものについては現状はどのようになっているのか。  並行的にこれも医療機関と同様に強力に設置を進めていかなければならない、このように考えられるのでございますけれども、そういう問題についてはどうなっておりましょうか。
  77. 松尾正雄

    説明員(松尾正雄君) リハビリテーション、特に医学的なリハビリテーションの体制が、わが国では非常におくれております。御指摘のとおりでございます。しかしながら、交通事故に伴いましてのそういう先ほど来申し上げましたような初療的なものあるいはその次の高度の医療にあわせましてリハビリテーションの整備をはかるということは不可欠でございます。厚生省でただいま考えておりますのは、全国で約百カ所のリハビリテーションを担当する病院を整備したい、そういう機能を病院に整備したい、こういう考え方でございまして、これはいまのところ二十三カ所ほどにつきましてはある程度のリハビリテーションの整備が終わっております。その後四十五年までに残りのところを逐次整備してまいりたい。来年度におきましても、したがって、国立病院、あるいは国立療養所、あるいは公的機関、それから厚生年金関係病院、その他そういうふうな、また、民間機関におきましては、先ほど来申し上げましたような医療金融公庫の活用という方法をとりまして、全体といたしましては百カ所程度を機能回復のために役立つ病院の整備をしたい、こういう計画を立てて進んでいる次第でございます。
  78. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 大臣として、むち打ち症救済問題につきましては、その基準といいましょうか、そういうようなものを明確に一つの法律としてきめていかれる心づもりはないのかどうか。
  79. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) むち打ち症は、外国では、文献や雑誌を読みましても、相当早くからやっておりますが、むち打ち症に対するきめ手はまだないようでございます。一番困ることは、普通病気が起こって後遺症ならまだよろしゅうございますが、追突された瞬間は何ともなくて、何カ月か何年かたってから出てくるという症状があるわけです。しかも、これが、治療として一番困難な頸椎または脊椎のズレから来る神経欠陥、それから出てくるわけでございます。第一は並行してやらなければなりませんが、やはり病状の解明、治療に対する検討をどうしても早くやらなければならぬ。それから、もう一つは、国立または私立の施設について局長から申し上げましたが、私立の病院等では、救急病院の指定をいたしておりましても、実際はこれは名誉職みたいなもので、ベッドをあけておかなければならぬ、それに伴う国からの助成はないという実情でございまして、むしろむち打ち症の患者に対して現実にお医者さんが非常に熱心に勉強しておられても、私のほうでは何ら特別のあれをやっておりません。そういう研究についても、各学校の先生方や臨床で熱心な方に対する研究というものと二つに分けてやりたいことと、それからもう一つは、救急病院の指定をした病院に対して、何か国のほうでもそれだけの義務があるわけでありますから、その義務に対して国のほうでも何らかの方法を講じなければ、ただ医療金融公庫から金を貸してやるだけでは全く個人の病院責任においてやっておるものでございますから、そういう点を考えながらやっていきたいと思っておりますが、これに対する法の制定については、残念ながらまだむち打ち症に対する確たるあれができませんので、なかなか困難でございますので、御指摘は十分参考にして検討したいと考えます。
  80. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 確かに困難なことはよくわかるのですけれども、やはり救済というそうした大きな問題から考えますと、国として適当な基準を設けて積極的にこれに取り組む。実情はよくわかります。けれども、困難だからといってこれを拱手傍観して見過ごしを決して大臣はなすっていらっしゃらないと、こう思うのでありますけれども、これは緊急を要する問題ではなかろうか。少なくともいままで相当の実例等もありましょうし、また、臨床的な面からもその正確な判断等もありましょうし、数多くの資料があるわけでございますから、そうしたものを総合的に分析検討されて、すみやかに一歩でも二歩でも前進的なそういう救済の方法を講じられることが望ましいのじゃないか、こう思いますので、その点についてはなお一そう大臣としても努力をしていただきたい。  それからさらに、こうした問題は文明国家に多い現象でございましょうけれども、特にアメリカの医療機関等などとの交流をはかって、意欲的なこの解決のための努力をされたかどうか。また、今後、そういう行き方をさらに継続的にされる意向があるのかどうか。この点についてはどうかという問題ですね、多角的なその治療、救済という面から考えまして。
  81. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 御指摘のことは、非常に拝聴いたしまして、法的な措置はできなくとも、緊急の問題でありますから、省内において暫定的な基本だけでもきめるように努力をして、将来どうしてもそういうふうに確たるものに詰めていきたい。しかも、それは、緊急なことだと考えます。  なお、外国等に対して特別にむち打ち症の研究のためにいままでは派遣してはおりません。ただ海外旅行される方々に付随した研究としてお願いしておる程度でありまして、こういう点についても十分今後外国あるいは先進国の研究の成果と交流していきたい、このように考えております。
  82. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そうした面を通じて考えましても、厚生省としても、この問題ばかりじゃなくて、多岐にわたる問題をかかえていらっしゃるから、総合的にと言われても、なかなか進めない現状があると思いますけれども先ほど申し上げたように社会問題として非常に大きく取り扱われておるという現状から見ましても、これだけは積極的にやっていただきたい問題の一つではなかろうか、こう思います。  もう一つ申し上げたいことは、何といってもこうした災害にあった方が一番苦しんでいることは何かというと、安心して治療を受けられるかどうかという問題が一つと、それから家族の場合等についても同じことが言えると思うんですね。それですぐ思い浮かんでくる問題は、業務上の災害、業務外の災害ということになろうと思いますけれども、非常に少ない資料でありますのであながち断定はできないのでありますが、大体業務上の災害が非常に多いんじゃないかということが言えるわけであります。そうすると、再び社会に復帰するまで相当の期間がある。ここで、そうした人たちの苦情を聞いてみますと、労災が打ち切りになる、あるいは、健康保険なんかについても、本人は十割給付、家族の場合は五割給付、こういうことで、そうした点でもたいへんな苦しみをされておるということを聞くわけであります。こうしたことから、特に生活が働かなければ困るという人に多い例でございますし、また、そういう人が事故にあっている率が非常に多い。こういうことから、特に健康保険については、家族を含めて十割給付という行き方ができないかどうかという点でございますね、この点についてひとつ見解をお示しいただきたいと思います。
  83. 梅本純正

    説明員(梅本純正君) むち打ち症に対する健康保険の問題でございますが、先生の御質問の点につきまして、われわれのほうも前に検討したことがございますが、現在の健康保険その他医療保険につきましての点数表の組み立て方といいますものは、御承知の現物給付、出来高払い方式をとっております。それでおのおののお医者さんの行為につきまして点数がきめてございまして、したがいまして、先生おっしゃいますようにむち打ち症につきまして、まず医療費の点について特別な扱いをするという形は、結局は傷病の原因によって点数表に差をつける、こういうふうになります。これは、同じ足が折れたという場合には、交通事故で足が折れた場合も、あるいは二階から落ちて足が折れた場合も、その原因によって点数に差をつけるということは非常に困難だと思います。  それからいまおっしゃっております給付の割合の点でございますけれども、これは御承知かと思いますが、一昨年ごろから医療保険の抜本的な改正というのでいま検討をいたしておるわけでございますが、御承知のように、去年の国会で成立をみました健康保険の臨時特例法の期限が四十四年の八月末になっておりますので、できるだけその八月末が切れますと同時に抜本的な改正に移っていくという形で鋭意検討いたしておりますので、給付の問題はその抜本対策全体の問題とからんで検討してまいりたいというふうに考えております。
  84. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 これは直接大臣のほうに関係があるかどうかわかりませんけれども、いまの治療にからみまして、いわゆる自動車賠償強制保険からおります保険金、これに対しても非常に矛盾があるのではなかろうか。もし大臣が直接そのほうの担当でないとしても、閣議か何かでもってはかっていただいて、大臣のほうとしても積極的にそれを推し進めていただきたい。現在、申し上げるまでもなく、限度額が三百万円、傷病については五十万がトップリミット、こういうふうになっているわけです。ところが、五十万の支給では、重傷患者は、健康保険を使った場合でも、労災保険を使った場合でも、目に見えない出費がある。精神的なショックもございましょうし、また、家族のことも考えていかなくちゃならない、そういうようないろいろな問題がからんでまいります。こうした点から、やはり自動車強制賠償保険というものの限度額を現状としては相当大幅に上げる必要があるのではないか。アメリカやヨーロッパの例を申すまでもなく、日本が一番低い。せめて現状の倍額——倍額といってもなかなかたいへんかもしれませんけれども、とりあえずの暫定措置として五百万くらいまでレベルアップし、また、傷病でも、その傷病の程度に応じ、必ずしも死亡した場合に限らず、その傷病の度合いによっては全額を支給するというようなそういう特例をつくりながら、こうした災害者に対する心あたたまると申しますか、そういう救済措置というものとあわせてお考えをいただきたいというふうに思うわけでございますけれども、この点はいかがでございましょうか。
  85. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 自賠保険は、運輸大臣の所になっております。しかしながら、いま言われました現実に即応するように、あるいは金額等も改善をせよ、こういう御意見はごもっともだと思いますから、責任をもって運輸大臣に通知をし、閣議においてその提案をいたします。
  86. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 私は、出産のことについて御質問を申し上げたいと思いますけれども、いま渋谷委員質問にちょっと関連をして、救急病院のことについて一、二質問してみたいと思います。  いま、厚生大臣は、救急病院は名誉職みたいな点がございましてと御答弁がございましたけれども、最近関西の方面で起こった一つの問題は、十五歳の子供が交通事故にあって入院をして、十五日くらい入院したあとで死亡をした。そのあとでお医者さんの請求書が回ってきたら、なんと二百万円を請求された、こういうふうな問題がございます。関西ではもう一つ同じようなケースがあったようでございますけれども、こういうようなことが全国的にいろいろなところにも起こっているのではないか、こういうように心配されるわけです。たまたまこのお子さんは保険を適用しなかったので二百万円の請求をされた、このように私ども聞いておりますけれども、こんなことがほうぼうであり得る問題かどうか、この題間が一つ。  それから以前、無給医局員のことについて一度質問をさしていただいたときに、無給医局員が救急病院にアルバイトとして雇われているのではないか、もしそうであるならばこれは医師法違反ではありませんかということを御質問申し上げたときに、そのようなことは絶対ありませんという答弁でございました。しかし、最近の新聞を拝見しますと、無給医局員のほうが、これは医師法違反だからアルバイトはやめようと。お医者さんのほうにもいろいろな牽制がかかって、そういうアルバイトを雇っているならば医師法違反であると、お医者さんのほうからも攻めたので、最近無給医局員というものが自分たちが辞退したというようなことを新聞紙上で拝見したのですけれども、この二つの質問に御答弁いただきたいと思います。
  87. 梅本純正

    説明員(梅本純正君) まず、前半の近畿の例をおあげになりました点でございますが、御承知のように、現在のわが国の医療保険、これは健康保険も国民健康保険もそうでございますけれども、これはいろいろな病気あるいは傷害につきまして一応適用するということになっております。おっしゃいましたケースは、おそらく保険を適用されずに自賠法で治療されたというところに問題があると思いますが、一応現行のたてまえとしましては、もう国民皆保険になっておりますので、健康保険なり国民健康保険で治療をしていただくという形になっております。ただし、その点、われわれのほうでもその辺が十分に徹底をしていないというふうな点がございまして、数年前から各県の県庁を通じましてこの辺の趣旨の徹底をはかっておるところでございます。
  88. 加瀬完

    委員長加瀬完君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  89. 加瀬完

    委員長加瀬完君) 速記を始めて。
  90. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 大臣が、四月の九日の予算委員会の石本茂さんの質問に対する御答弁の中で、「日本の分ぺん制度で、ILOの条項に合っていないのはいまの分べん費の問題だけでございます。したがいまして、この分べん費の問題は現金支給ではなくて、医療給付の対象になることが妥当ではないかという考えのもとに、次の保険の改正の場合には、検討を進めておるわけでございます。」と、このように御答弁をされておられるわけでございます。私どもは、出産を健康保険でやってほしいということには非常に熱意を持っておりまして、何べんも陳情申し上げたり、いろいろしているわけでございますが、八月十九日の新聞紙上で、現物給付でなくて、分べん費の増額をするのには費用で現金給付でやりたい、こういう記事を拝見したわけでございます。しかも、これに対する財政措置としては、保険料を千分の七十から千分の七十一に、千分の一だけ引き上げるようにしたい、このような記事を私どもは拝見して、ちょっとびっくりしているわけでございますけれども、この辺のお考えはいかがでしょうか。
  91. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 老人の医療とお産の問題、これは前々から私は一生懸命やっております。特にお産の問題は、私が言い出したことじゃなくて、委員各位から御披露願ったことであります。諸般の情勢からこれはぜひやりたい。ところが、これを保険に入れようとなりますと、いろいろの問題が出てまいります。第一に、ただいまの制度にそのまま入れますと、お産の費用と、それから盲腸の手術や異常分べんと比べた場合に、お産のほうが高くなって、異常分べんや盲腸の手術のほうが安くなるという、ちょっとつり合いのとれないこともございます。それからもう一つは、こういうところで言っていいかどうかわかりませんけれども、いまなお郡部では産婆さんがお産をしているところが相当ございますので、これはぜひ母子健康センターの充実をして、ここでお産をするなり病院でお産をするように将来指導していきたいと思いますが、これをこのまま保険に入れますると、お産の産婆さんの費用というのが、どうも日本の社会通念では、お医者さんにみてもらっても薬代を払うという考え方患者が行きますし、それからお産にしても、費用なのかお祝いなのかわからぬような金の払い方をしているわけで、うかつに早急にこれを保険に入れますと、私のやることがかえって産婆さんの収入を何か統制をして引き下げるようなかっこうにもなるわけで、こういう点から医師会とか助産婦のほうでもちょっと疑念を持っているわけであります。こういう点を解決しながら保険に入れようとなりますと、少なくともやっぱり三年間はかかるわけであります。近ごろはもう三年先のことを言っても人が相手にしないし、委員各位からもしかられるので——まあ老人のほうは、上林委員からおしかりを受けましたが、退歩と言ってもかっこうがつきますが、お産のほうは、半分以上私が押し戻されたようなかっこうでありますが、将来は保険に持っていきたいと思います。こういうわけで現物給付には踏み切れませんでしたが、そのかわりに現金給付の額を大幅に広げる。予算折衝については将来現物給付に移る第一歩であるという条件をつけていきたいということで、まことに残念なことでございますが、おわび申し上げます。  あとは、事務当局から……。
  92. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 それじゃ、次に、いまのに関連してもう一つ質問さしていただきたい問題は、最近、やっぱり不幸な子供が相当に生まれております。そのために、いまの大臣の答弁に関連して、妊娠をした主婦たちが、子供を生むまでに定期的に検診を強制的にやらしたらどうか。しかも、それを健康保険でやっていただきたい。それでなければ、なかなか妊婦が検診に行かないわけですね。早く検診に行けば不幸な子供が生まれる前に予防ができるかもしれないけれども、それがお金が相当とられるものですから、なかなか行かない。こういう問題を何とか健康保険で定期的にやるように義務づけたらどうか、このように思いますが、この考え方に対していかがでしょうか。
  93. 梅本純正

    説明員(梅本純正君) いまの先生のお話は、医療保険の抜本的改正をやりますときの一つの大きな問題でございまして、社会保険方式を今後もとっていくかどうかというようなのが一つの大きな問題になりますが、社会保険方式をとっていきます場合に、予防的なものを保険給付の中に入れるかどうかという基本線につながるわけでございます。やはり保険でございますから、予期しない偶発的な事故というのが一応伝統的に昔からの考え方でございまして、定期的に診断なり検査をするという形でございますと、保険の形式からは少しはずれてまいります。そういう意味で、今後、たとえば先生おっしゃったようなものも含めまして、予防的なものを保険給付の中に入れるかどうかというのが一つの抜本的な問題として検討されてくるだろうと思いますが、保険局長立場から申しました場合には、予防、あるいはリハビリテーション、まあ保険の現在の制度の前後でございますが、そういうところは、公衆衛生行政、あるいはリハビリテーションですと、児童福祉行政、社会福祉行政、そういう福祉面、そういうものと融合されあるいは総合されて非常に施策が生きてくるんじゃないかというふうに考えますので、私といたしましては、その予防的なものは、特に先生の御質問でございましたら、児童福祉行政の一環として、単に本人が自発的に定期検査を受けてそれで終わりということでなしに、もっと保健婦が訪問するなりあるいは注意するなりという、福祉行政の一環としてそういうものをやってもらったほうがいいんじゃないかというふうにいまは考えております。
  94. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 先ほど質問申し上げました中の、保険料率を千分の七十から七十一に上げなくちゃいけない、こういうような方針のもとに出産の分べん費の増額の問題は考えていらっしゃるのですか。
  95. 梅本純正

    説明員(梅本純正君) 現在の制度におきましては、やはり給付を改善しました場合には、保険料を上げるという原則でまいりたいというふうに考えております。これはしかし被用者保険の問題でございますが、国民健康保険につきましては定率の国庫負担の制度になっておりますので、これは補助率にしまして三分の一、補助金額としまして約十六億の国庫負担を計上いたしております。
  96. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 先ほど答弁がもう一つ残っておりますので……。
  97. 松尾正雄

    説明員(松尾正雄君) 先ほど、無給医務局員が救急病院等で診療しておるというようなお話がございました。いわゆる無給医務局員ということどばでございますと、有資格の、資格を持った無給医務局員もおるわけでございますが、御指摘の問題は、医師の国家試験を受けない、要するに医者の免許を持たない人がそういうことをやっている、こういうような御指摘であると存じますが、この実態がどのようなことをやっているか、実際には私どもは正確にはつかめておりません。しかし、医者の直接の指示のもとに、診療の介助をしているということであれば、これは責任者がちゃんとついておると思いますからいいかと思いますが、独立にそういう方が診療に従事するということになれば、当然に医師法違反でございます。こういった問題は、医師になるべき学生、あるいはまたそれを使う医師が当然そういうことを承知の上でいるはずでございますけれども、私どもが耳にいたしますように、そういう風評がかりに事実であるとすれば、これはやはり重大な問題でございます。たぶん七月の終わりごろであったと思いますけれども、私の名前をもちまして、全国に、無資格の人がそういうことに従事することが違法であるという点、それからまた、それを承知の上で雇っておられるほうのお医者さん方にも、事故の問題によりましては共犯であるという警告の通知を出し、そういうことで厳に戒めまして、そういったようなことがああいう反省の声になった。反省の声になっておるということは、先生御指摘のような事実がある程度あったのだろうと思います。そういうことによる事故ということを私ども幸いにして発見できませんでしたが、少なくともそういう医師になるべき人、またはそういう者を育てるべき人というものが、かりそめにも医師法違反ということがあってはならないと、厳重な態度で警告したような次第でございます。
  98. 加瀬完

    委員長加瀬完君) 午前の調査はこの程度にとどめ、午後は一時四十分より再開いたします。  暫時休憩いたします。    午後零時四十五分休憩      —————・—————    午後一時四十八分開会
  99. 加瀬完

    委員長加瀬完君) 休憩前に引き続き、これより社会労働委員会を再開いたします。  再び労働問題に関する調査を議題とし、質疑を行ないます。御質疑のある方は順次御発言を願います。
  100. 小野明

    小野明君 経済企画庁長官に公務員給与の問題で若干お尋ねをしたいと思います。  時間が制約をされておりますから、要約してお尋ねをいたしたいと思いますが、昨年の十月に、長官が、三つの問題について談話を発表されているわけです。公共料金、米価の据え置きという問題、それから減税も一年間行なわぬ、それから公務員の給与の引き上げについては物価上昇の範囲内において行なう、こういう談話なんでありますが、なるほど、一点の公共料金、米価はおっしゃるとおりにはなりませんでしたけれども、二点、三点はそれなりに生かされておると思うのですね。そういった立場というのはまだ貫いておると思うのですが、総合予算というものが組まれまして、公務員給与については予備費五百億のワク内で措置をすると、こういう方針で予備費は組まれておるわけなんです。結局、こういった総合予算におきましても人事院の勧告が実施できない、こういう結果を生んだわけですね。これについてまず長官の所見を伺いたいと思います。
  101. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 人事院の勧告の制度というのは、少なくとも現在の法制で定められておる制度でございますので、これに従って行政をやってまいらなければならない。ただ、今回、総合予算主義をとり、補正予算を組まないということにいたしましたので、おそらく人事院の勧告があることが予算編成当時から予測されておりましたので、千二百億の予備費の中にその用意をしておいた、こういうことであったわけでございます。そこで、勧告が出されたわけでございますが、予備費の中で、今後の起こり得る災害等々のことも考えながら、財政の許す最大限において勧告を尊重して実施する。実施時期につきまして人事院勧告どおりにならなかったことは御指摘のとおりでございますけれども、引き上げ率等につきましては勧告の趣旨をそのまま尊重するということになったわけでございます。  それで、思いますことは、総合予算主義というのは、私としては今後ともやはり堅持していく価値のある制度だと考えておるのでございますけれども、もしそうだといたしますと、相当多額の給与勧告の準備をいつまでも予備費にしておくということは本来あまり推奨すべきやり方ではないように思いますので、できるならば当初予算編成の段階において引き上げ分を計上しておけば、これは財政としても、また人事院の立場としても、両方がお互いに支障なく行ける。こういう方法はないものであろうかということが、今回の経緯にかんがみてただいま関係閣僚の間で議論されておる、そのようないきさつでございます。
  102. 小野明

    小野明君 そういたしますと、私が申し上げたいのは、結局、予備費五百億を組んだ結果ですね、これは初期的な所得政策あるいは財政硬直化対策、そういった役割りを果たすのみであって、結果は、人事院制度のこれを生かし、あるいは人事院勧告を完全に実施をするという方法ではないではないか、こういうことを申し上げたいのですがね。
  103. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) そういう御指摘は当然あるであろうと思いますし、また、総合予算主義をとってまいりますと、そういう問題がおのずから出てくる、現実に出てきたわけでございます。そこで、毎年、繰り返し繰り返し政府が、狭い意味の政府でございますけれども、政府が目の予算用である程度の予備費を用意しておくということでは、人事院勧告がたまたまその金額の範囲に楽におさまればよろしゅうございますけれども、そうでない場合には、補正予算を組まない以上、完全に処置することがむずかしいということになるはずでございますから、そこで、勧告の制度は勧告の制度といたしまして、何とか財政の最初の当初予算の編成のときにその土俵にのぼってきてもらうことはできないものであろうか。それができれば、完全実施ということも財政上当初から組み込んでできることになるわけでございますので、そういうことにつきましての関係閣僚、人事院総裁との相談を実はただいまやりつつあるわけでございます。
  104. 小野明

    小野明君 そうしますと、これは非常に大事な問題だと思いますが、来年度の公務員給与の扱い方といたしましては、いま長官の言われるのは、人事院勧告について、あるいは人事院制度について、法律改正をも必要とするような結果を招くのではないか、そのように私は受け取らざるを得ないわけです。結局、もう少し突っ込んでお尋ねをいたしますと、今回の閣議決定の注1にありますね。いま長官がおっしゃっておられるのは、今後の公務員給与の取り扱いについて、昭和四十四年予算編成時までに結論を得るように云々と、この問題を言われておるように思われるわけです。この点について、どういうお考えをお持ちなのか、どうも明確なお答えでないようだし、再度お答えいただきたいと思います。
  105. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) ただいまそういう協議を始めたところでございますので、各閣僚の考えも別に一致しておるわけではございませんし、人事院総裁のお考えもまだ最終的に承っておるわけじゃございませんので、そういう意味で明確に申し上げることが事実問題としてできない、こういうことでございますけれども、しかし、必ず法律改正を必要とする、それを前提にしなければ改善ができないかどうかということにつきましては、まあ私はその関係の法律に詳しくはございませんけれども、しろうと考えでは、人事院が勧告をする時期、いつ調べていつ勧告をするかということにつきましては、たとえば勧告の時期は八月でなければならないとか、調査の時期は四月、五月といったようなことは別段法律に定めはないように思いますので、したがいまして、かりにその時期を予算と合わせるようにするというようなことを、人事院がお考えになってやってみてもいいと、そうかりに言われますかどうかわかりませんが、言われたとしましても、そのこと自身は現行の法制の中でできるのではないかと、私は関係の法律を詳しくは存じませんが、たしかそうではないかと思いますので、そういう意味では、法律改正が前提でなければ制度の運用を改めることができないということではないのではないかと思っております。
  106. 小野明

    小野明君 そうしますと、もう少し長官の考えをはっきり伺いませんと、私はこの勧告が年に二回行なわれるということになるならば当然これは法律改正を必要とするのではないかと、このように考えておるわけです。長官のお答えからいたしますと、そういったどうもニュアンスが感じられるわけです。これはもちろん審議会その他協議をされる場所があると思いますけれども、この閣議決定の注1について長官は一体どういうお考えをお持ちなのか、もう少し明確にお答えをいただけませんか。
  107. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) ただいま協議を始めたばかりでございますので、私が自分だけの考えを公の場所で申し上げるのには限度があるように思います。ただ、しかしながら、人事院が独立の機関であるということはこれはもう法律で定められておりますが、独立の機関でありましても、なるべくならば予算要求、予算編成というその時期にやはり舞台にのぼってもらうということのほうが、少なくとも財政の都合としては望ましいことでございますし、また、人事院としましても、自分の勧告が完全に実施をされるような、されやすいような方法で考えてくれてもよろしいのじゃないだろうか。ただ、そういたしますと、たとえば予算編成の時期は十二月が普通でございますし、また、概算要求は八月末でございますが、何かそういう時期にただいまの勧告の時期をサイクルを一ぺんずらしてもらえば、毎年同じサイクルで今後動いていって、そうして予算編成にも間に合う、そういうくふうがないものだろうかということを考えておるわけでございます。それが、人事院のほうで、いろいろな法律上の障害ではないだろうと思いますが、技術上のあるいは何かもっと違う関係での障害があると最終的に言われますれば、これはまた考え直さなければならないことでございますけれども、まだそこまでお互いの研究が展開をいたしておらないというのが現状でございます。
  108. 小野明

    小野明君 そういたしますと、昨年も何かそれと同じようなことで予備費の中に五百億が計上されたように記憶をいたしておるのでありますが、長官の言われますのは、あくまでも人事院勧告の完全実施をするというたてまえであるかどうかですね、それを再度お尋ねをいたします。
  109. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 人事院の勧告を完全実施をするというのがたてまえでございます。このやり方を何とか変えてみようということは、御指摘のように過去何回か実は議論になりまして、いずれの場合にも結論を得ないままで終わってきたわけでございます。その理由は、一つは、どっちみち政府が補正予算を組む、そういう慣行でございましたから、したがって、秋になっていずれにしても補正予算を組むのであるから、勧告の時期が現在のようであっても別段究極的には支障がないではないか、こういう現実問題がありましたために、従来何度か言われましたが、結論が出なかった。今度の場合には、明年度も総合予算を続けていくといたしますと、補正予算は組まないという事実が今年引き続いて起こると思いますので、そういたしますと、従来のように補正に持ち込めば問題は片づくということではなくなってまいります。したがいまして、人事院といたしましても、多少の御不便はあるかもしれませんが、その総合予算の体制に即応した知恵を出してもらえるのではないだろうか、こう思っておるわけでございます。
  110. 小野明

    小野明君 その次に長官にお尋ねをいたしておかなければならぬと思っておりますのは、熊谷委員会というのを御存じですね、これが経済審議会に報告書を近く出すようになっているように伺うわけです。この内容については、もうすでに新聞にも発表をされておりますから、長官も御承知であろうと思うのです。私は、この予備費の中に押えてしまうというのは端緒的なやはり所得政策導入であると、このように考えておりますのでお尋ねをするわけですが、この熊谷委員会内容というのは、端的に見まして、所得政策について肯定をしておるものか、あるいは否定をしておるものか、どちらなんですか。
  111. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 熊谷委員会の報告はまだ完成しておりませんで、したがって、これを私どもあるいは関係委員の人たちが新聞に発表したという事実はございません。私自身といたしましても、したがって、まだ完結した内容について話を聞いたり、読んだりいたしておりません。ただ、ここで申し上げられますことは、これは五人の経済学者の人たちが、おのおの違う立場を持ちながら、学問的にどの範囲で合意ができるという、そういう試みでございますので、どのような結果が出るにいたしましても、端的にこれが所得政策を支持したものである、あるいは支持したものでないといったような議論があまり単純化されて行なわれることは、私としては好ましくないと思っておるわけでございます。ことに、この五人の人たちは、学問上の立場もおのおの違った方々でありますので、かりにある程度の合意ができたといたしましても、それは微妙なことばづかいに至るまできわめてデリケートなものであろうと思われますので、それを端的に白か黒かというような見方をいたしますと、せっかく協力をされたこの五人の人たちに結果として迷惑がかかることになってはいけない、私はその点を一番強く考えますので、結果は私も最終的に存じませんし、発表されてもおりませんが、経緯から判断いたしますと、あまり白黒はっきりしたような評価を与えるということはおそらく適当ではない、そういうただいま予測をいたしておるわけでございます。
  112. 小野明

    小野明君 そういう内容になっておるわけですよ、長官が言われるような。まるであなたが指示したかのような、白黒はっきりしない内容になっておるわけです、新聞で見る限りにおきましてはね。それで、私は、結局、長官が言われて、総合予算主義で五百億組まれた、このこと自体がもう所得改策の端緒だと、このように見ておるわけなんですけれども、一体、長官は、この所得政策について、公務員給与に適応すべきであるというふうにお考えなのかどうか、ひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  113. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 所得政策とは何かということにつきましても、今後この研究の成果が発表されますと、そういう専門の学者たちの間での厳密な意味でのことばづかい、意味、定義というものが出てまいると思います。今後は、そういうものについて厳格にこのことばを使っていくことが必要であろうと思うのでございます。一番広い意味では、おそらくは経済成長を維持しながら物価をあまり上げない、安定さしていくためにはどういう政策を考えていけばいいかと、非常に広い意味ではそれが所得政策であると思いますけれども、そういう政策ならば、世界各国みんなそれに関心を持っておりますし、私どもとしてもさようでございます。しかし、いま御指摘になりましたように、所得政策ということば、従来論争になっております狭い特定の意味で申しますと、私はいまわが国でそういうものを導入することは可能でもないし、適当でもないという判断を以前から今日まで一貫していたしておるわけでございます。
  114. 小野明

    小野明君 経済の成長ということと安定ということは相反することですよね。相反する内容を持つわけです。それを、物価の抑制という理由のもとに、結局、賃金を抑制するのに国家は介入をしていくというふうに私は受け取っておるわけなんですよね。  それで、先ほど言われました狭い意味における所得政策云々と。私は、狭い意味においても、広い意味においても、果たす効果は、結局、国家が、労使が対等にきめるべき賃金に対してこれに介入をして押えていく、こういうふうに解釈をしておるんですが、いろんな意味にとられるにせよ、所得政策といわれるものを導入するということについて、一体どうなのかということをお尋ねをしたいわけなんです。
  115. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 経済成長と物価の安定とが相いれないということを初めからきめてしまわれますと、それから先のことはほとんど申し上げることがなくなってしまうわけですが、私どもは、成長しながら比較的物価を安定させていく方途はないかということを求めておるわけでございます。これはわが国ばかりでなく、各国そういうことを念願し、つとめようとしている国は多いわけでございまして、一番広い意味ではそういうものを所得政策と呼んでもいいのであろう。しかし、この点は、今後熊谷報告が出ましたときに学者方がどういう定義づけをされるか、私自身もそれに実は従いたいと思っておりますので、これ以上それについては申し上げません。少なくとも、先ほどのことを繰り返すようでございますけれども、直接に賃金に対して公権力が関与をするというような意味での所得政策、これはわが国の現状において好ましくもないし、可能でもないというのが私の考え方でございます。
  116. 小野明

    小野明君 それでは、次の問題に移りますが、八月一日に長官が羽田で談話を発表されておられますね。これは新聞の切り抜きを、長官も御承知であろうと思って持ってきておりませんが、これによりますと、国際収支が完全に均衡してきた。したがって、この引き締め政策というものを緩和すべきである、こういうふうに言われておるわけであります。その後金利も一厘下がったわけですけれども、こういった国際収支、総合収支じりから見ましても、非常に経済というものが回復をしてきておると思うのですね。こういった点で、長官の経済の見通し、あるいは、そういった経済の見通しから、いわゆる総合予算主義というものをあくまでもことしの予算編成において堅持しなければならないものかどうか、そういったものもあわせてお尋ねをしておきたい。
  117. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 確かに経済の基調は好転してまいりましたので、国際収支において当初総合収支三億五千万ドルの赤字考えておりましたものが、今日では、黒字に転ずるところまでは、もう今年度に関する限りは明らかであろうと思っております。しかしながら、このことと総合予算主義とがどのような関係に立つかということについてでございますが、私自身といたしましては、経済が好況であろうと不況であろうと、年度の途中で補正予算を組むという習慣はいい習慣ではないというふうに考えております。それは、一つには、先に補正があるということになりますと、財政当局は当然それだけの財源をポケットに入れておかなければならない。一ぺん限りであれば全部吐き出す——と申してはことばがやや卑近ですけれども、それができますので、先々の財源をとっておかなければならないというような当初予算の編成をいたしますことは、本来健全なことでございませんので、やはりあり得る歳入は全部、考えられる歳出は全部、そして不時に備えて予備費を置く、一本の一ぺん限りの予算というものが好況不況にかかわらずいいことだと私は考えております。それから、総合予算主義をとりました結果、いままでやや安易にいろいろなことが補正予算を通じて財政負担になってきておるという弊害を除去することができるのではないか、こう思っておりますので、これはまだ閣議で議論があったわけでもなんでもございませんが、私個人としてはこの総合予算主義というのは来年度も引き続いて行なっていくべきいい慣行ではないかと思っております。
  118. 小野明

    小野明君 そうしますと、昨年総合予算というものを編成された理由というのは、財政硬直化ということが一番大きな理由ではなかったのですか。それがもとになって、予算補正をしない、こういう方針が立てられたと私は記憶をするのですが、ことしはそういった経済の好況の資料がいろいろ出てきておる。それにもかかわらず総合予算主義でいくのだと言われる理由というものがどうも私には納得ができないのです。
  119. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 四十三年度に総合予算を組みました理由は、いろいろあったと思います。財政が非常に苦しかったからであるかといえば、そうではない。苦しゅうございましたけれども、それが主たる理由であったのではなくて、一つは、年度の途中で補正予算を組むということは、ともすれば国民に財政主導のインフレのような心理的な影響を与えやすい。この点ははっきり物価安定推進会議で指摘をされたとおりでございますから、そういう習慣はできればやめたほうが、国民生活安定のためにいいということが一つ。それから補正が組めるということになりますと、どうしてもやや安易にいろいろなものがその機会に財政負担に食い込んでいきやすい。これは財政硬直化と関係のあることでございますけれども、そういったようなことを防ぎたいという理由もあったと思いますので、非常に歳入面で苦しいので、それで総合予算でやってしまったというようなことではなかったと思うのです。
  120. 小野明

    小野明君 時間がきたようですから、最後にお尋ねをいたしたいと思いますが、結局、公務員給与を予備費の範囲内に押えてしまうと、五百億の範囲内に押えてしまう、こういった結果がまた人事院勧告を完全実施をしない、こういう結果を生んできた。しかし、ことしの経済の見通しからいきますと、かなりまあ税収の伸びというものが期待をされるわけですね。そうしますと、人事院勧告を五月のやつを八月に実施するというようなことについては理由がなくなってくるのではないか、このように私は考えるわけです。ですから、あくまでも人事院勧告制度というものを生かしていくならば、こういった値切るような態度というような方針をとるのではなくて、やはり税収の伸びも期待される、財源もある、こういうことになりましたら、完全実施という方向で切りかえてもらわなければならなぬと思うのです。先ほどからお聞きをいたしておりますと、どうも五百億に値切って、人事院の勧告を値切ったということはしかたがないというふうにしか受け取れないのですけれども、その点について最後に長官のお考えをお尋ねしておきます。
  121. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 今年度経済が基調が好転しておりますから、かなりの自然増収があるのではないか、こういうことを出発点にしてのお尋ねでございます。その点、私ども何とも計数的には申し上げることがいまの段階ではできません。ただ、常識的に自然増収があるかないかとおっしゃれば、私も、おそらく何がしかはあるだろう、いまではそう申し上げるのがむしろ常識だと思うのです。ただ、その場合に、御承知のように、これだけの国債を発行して財政を運営いたしておりますから、もしそのような自然増収があるとすれば、その大部分というものはやはり国債の減額に使うのが本筋であろうというふうに考えております。人事院勧告もさることでございますけれども、これは借金をしながらの財政でございますから、もし財政に余裕があれば、まずその国債の減額をするということが本来のあり方ではないか。  そこで、後段に御指摘のように、予備費である程度給与財源を考えておくということは、いずれにしても目の子算でございますので、これでぴしっとあとから出された勧告に合えばむしろ不思議なことで、合わないのがどっちかといえば普通でございます。しかも、予備費を組むとすれば、なかなか財政が容易でありませんから、幾らか切り詰めて組むという習癖もこれも認めなければなりません。そうだとなりますと、やはり目の子算とぴしっと合わせるという話が無理であって、むしろ人事院が考えておられるところを何か時期を調節して予算編成の場に間に合わしてもらう、そのことが完全実施をするためにこれができれば非常に道が開けるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  122. 小野明

    小野明君 そうしますと、これで終わろうと思いましたけれども、人事院制度そのものがあなたによって非常に軽視をされておる。人事院の勧告を実施するよりも国債の減額のほうが先だと。私どもは、この勧告を値切るということ自体が重大な意味を持っていると思うのです。で、これ自体を否定をして、国債に充てるのが先だと。これはどうも私はいただけないと思うのです。これは完全実施することが長官もたてまえだと言われておりますように、私ども、人事院が代償機関の機能というものを完全に果たしていないということに非常な不満を持っておる。しかも、それを裏づけするような発言を長官がやるということについては、いかがですか。
  123. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) もし御主張のようであれば、過般決定をいたしました実施にさらに付加をして、年度末に自然増収が出れば実施時期をさらに繰り上げればいいではないか、こういうことを言われるのだと思いますけれども、私どもとしましては、今回きめましたことは、いまの財政で少なくとも現段階で最善と思われることをやったのでございますから、先々かりに自然増収が出るということになって、それをまたあと戻りをして繰り上げということではなくて、まだまだ国債の額が相当発行の予定があるわけでございますから、それはやはり国債減額に主たる部分は向けるべきであろう。むしろ、私どもは、完全実施を希望いたしますからこそ、予備費という不安定な方法でなく、当初予算に人事院の考えを盛り込めるような方法を共同で研究をしておる、こういうのが実情で、これは完全実施をしたいという気持ちから出ていることでございます。
  124. 小野明

    小野明君 宮澤長官は終わります。  総務長官に二、三点お尋ねをしておきます。  閣議決定について、注の1なんですが、御承知のように来年度どうするかという問題、これをあわせましてこの閣議の八月実施といろ決定について長官の御見解を承っておきたいと思います。
  125. 田中龍夫

    ○国務大臣(田中龍夫君) お答えをいたします。  私どもは、人事院の勧告をあくまでも尊重するというたてまえのもとに、完全実施を目標に努力をいたしてまいったのでございますが、御案内のとおり、政府全体から見ました大局的な判断によりまして、どうしても八月以前にさかのぼることができないというような財政上の立場がございます。しかしながら、その中でも何とか五月の線を出したいというようなことから、御案内のとおり、実費弁済的な意味を持っておりまする通勤手当は五月からということにいたしたのでございます。しかしながら、それにいたしましても、何とか人事院の勧告を完全に実施する方法はないものか。ということは、財務当局なり総合計画をいたしておりまする経済企画庁等におかれましては、つまりいわば年度途中におけるかような経費の問題は非常に困るというお話でございますので、それはただいま経済企画庁長官からるる御説明があったと存じますが、それならば、人事院の勧告それ自体が、春闘後のアップ率を詳細に検討せられて、これがどうしても八月中旬以後でないと回答が出てこないというその技術上の問題と、それから予算編成時において何とか円滑に年度当初からこの問題が予算に組み込めたならば、というような実は真剣な気持ちからお話をいたしましたところが、財務当局におかれましても、あるいはまた計画当局におかれましても、これはほんとうにまじめな気持ちで、それはひとつぜひそうしたいと。なお、また、人事院総裁にもお願いに参上いたしまして、御賛同をいただきまして、人事院の総裁も加わっていただいて、いわゆる技術的な面におきまする打開をはかってまいろう。人事院制度の根本等々につきましては、われわれはあくまでもこれを尊重し、何らそれに対して制肘、容喙、変更を求めるような気持ちは絶対にございません。また、しかしながら、技術上の問題でそれができないということはあまりにも情けない話でございますので、それで決定をいたしました直後、それでは続いてこの問題について真剣に取り組んでいこうと。なお、同じようなことが毎年事務当局の間ではやはり考えられておったようでございます。しかしながら、事務当局同士の場合におきましては、やはりそこに越えられない壁がある。限界ができてしまう。それはどうしても大所高所に立って閣僚クラスの政治的な判断でその壁を乗り越えていかなければならぬのじゃないか、こういうことから、もちろん幹事役としましての担当各局の幹事会は持ちましたけれども、閣僚会議をこれから何回か開きまして、壁を一つずつほぐしてまいろう。そうして、目標といたすところは、人事院勧告の完全尊重、完全実施を目標にわれわれはこれから取り組んでまいろうというのが私どもの偽らざる気持ちでございます。
  126. 小野明

    小野明君 事務レベルと申しますか局長段階の検討というのはそういった壁があるということについてはわかります。それで、給与担当の長官ですから、七人委員会におきましても主導的な役割りを果たしておられると思うのですが、この次期の七人委員会はいつ開かれるのですか。それと、この七人委員会についてはどういう態度で臨むつもりであるか、お尋ねをしておきます。
  127. 田中龍夫

    ○国務大臣(田中龍夫君) 実は、引き続きまして七人委員会を毎週でも開くといったような気持ちでございました。ところが、先週は、御案内のとおりに、一日内閣がございまして、私は責任者でございますものですから、いろいろとそちらのほうの準備や何かに忙殺されましてできませんでした。今週は何とかやれるものならやってみたい。事務当局同士の事務レベルの話という問題は、ただいま先生がおっしゃいましたように、私は必ず壁にぶつかるのだと思うのです。その壁が明確にこういうところに壁があるとするならば、かれを大所高所に立った政治的な判断で閣僚レベルで取り除いていかなければならぬ。私が、昨日、本日の時点におきまして、一体事務レベルの話はどこまでついたのだということを質問をいたしたのでありますが、事務レベルの話があまり進捗いたしておらないという報告を受けましたので、それじゃいかぬから、もっと真剣に各局が話を詰めてくれということをせっかく命じましておるような次第でございます。さような次第で、結局、事務当局の事務レベルの話の結果によって次の閣僚会議を持ちたい。その閣僚会議は、ただいま申し上げたように、毎週でもいいから持って、一つ一つすみやかに話を詰めていきたい。予算編成までと申しますが、口でちょっとそう言いますとずいぶん時間があるようでございますが、実際にはございません。よほどピッチを上げていきませんと予算編成までに間に合わないというので、私どもは早くこの問題をどんどんと進めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  128. 小野明

    小野明君 予算編成時までに間に合わないというようなことなんですが、結局、長官の御答弁には内容がないわけですよ。どういうお考えでこの七人委員会に臨まれるのか。今回のいわゆる実施時期がずれた問題、それと、明年度の人事院勧告の取り扱い方、これについてどのような態度で臨まれるのか、そういった内容答弁がないわけです。その点をお尋ねしておるわけです。
  129. 田中龍夫

    ○国務大臣(田中龍夫君) 内容がないと仰せられますが、まず、目標は、人事院勧告を完全に尊重して完全実施をする、こういうことのための会議でございます。それからワクは、関係各省にさらに人事院総裁も加わっていただいて、そうして御一緒に相談をして、時期は予算編成までに結論を得てまいりたい。  結局、じゃどういう内容なのかという御質問は、ただいま私が申し上げたように、事務段階におけるまず話をして、各省の間に必ず壁にぶつかる。そのぶつかった壁をわれわれはおのおの責任ある閣僚として政治的に解決していこう。でございますから、そのいまの内容はどういうことかといえば、やはり事務当局同士の事務段階におきまする話が先行いたしまして、そこに問題を提起してくれないと私どもの場がない、こういうことでございます。ただし、目標ははっきりしておりますし、構成も時期も申し上げたとおり、ワクははっきりいたしております。
  130. 小野明

    小野明君 今回の閣議決定については、これはちょっと所管が違うので尋ねにくいわけなんですけれども、まあ給与担当ですからあえてお尋ねをするのですが、地方公務員の財源措置についても若干の条件がついておる。あるいは、地方公営企業に働く労働者については、全然財源措置がされておらぬわけです。これは昨年の人事院勧告の措置がやっと最近にやられたというような結果もあるわけなんですけれども、ことしの勧告を見てみますというと、全然地方公営企業の問題については財源措置について触れておられぬわけです。これは一体どうなさるおつもりであるか。これは当然政府全体の責任で人事院勧告というのは措置されなければならぬ問題ですから、この問題についての長官の御見解を聞きたいと思います。
  131. 田中龍夫

    ○国務大臣(田中龍夫君) ただいまの御質問でございますが、地方公務員のまたその中の公営企業体のさらにまた経営についてまでも相関関係を持ったこの問題は、私は軽々には申し上げられない立場でございますので、その点はひとつ所管の大臣からお聞き願いたいと存じます。
  132. 小野明

    小野明君 でありますから、私は、あえて政府全体の責任で、しかも給与担当の田中総務長官にお尋ねをしたい。これは一体どうするのだと。また、総務長官のもとで、都市交通問題で何か諮問委員会かなんかをお持ちではありませんか。そういった関係からあえてお尋ねをしたいと思います。
  133. 田中龍夫

    ○国務大臣(田中龍夫君) 確かに、お話しのとおりに、自治大臣から都市交通安全の問題で閣僚会議を開いてくれというお話がございました。私は交通安全対策の推進本部を所管いたしておりますので、その交通安全の担当者に連絡をとりまして、自治省と御連絡を申したのでありますが、まあ事務当局は別といたしまして、大臣のお考えでは、公営企業の経営の問題までこの交通安全対策の会議で議論をしたらといったようなふうのこともございますので、それはちょっと私のほうでは、まあ交通安全対策、しかも御案内のとおりに国会の議決によりまして従来陸上交通だけだったものを、さらに海も空もといったようなことで、いま交通安全対策のほうはそちらのほうの交通安全のほうに忙殺されておりますのに、地方自治体の企業体の経営論まで交通安全対策で取り上げるということは何ぶんにもちょっと幅が広過ぎると申しますか、交通安全対策としては目標がずれるような気もいたしましたので、きょうも自治大臣とその話で、その問題は経営論まで自分のほうは交通安全では入り切れない、しかしよく事務当局同士で話を進めてもらいましょうというところで今日の時点ではお別れをいたしておる次第でございます。確かに、お話しのようなことが話題にあがりました。
  134. 小野明

    小野明君 それで、肝心のところですが、地方公営企業に働く諸君の財源措置というものは、自治大臣でないと答えられないと、こういうことなんですか。給与担当の大臣ですから、総務長官のほうでこれは一体どうする方針であるということぐらいはお持ちにならぬと、しかも、七人委員会で主導権といいますか、責任的な役目をお持ちの長官が、公営企業については給与改定については知らぬのだと、これではちょっと私は困ると思うのですがね。
  135. 田中龍夫

    ○国務大臣(田中龍夫君) 公務員共闘の皆さん方が私のところへ御交渉においでになるときに、やはり公営企業の代表の方もお見えになっております。さような関係から、それに縁がないとは申しません。しかしながら、何ぶんにも給与一つとりましても、いま言ったように、私のところは、幅が広いですけれども、底が浅いうらみがございます。特に、つかさ、つかさ、自治体の経営論までやりますと、これはちょっと給与には関係がないことはないでございましょうが、私自体といたしましては、ちょっとそこまでなかなか踏み込みにくい実態でございますことを赤裸々に申し上げておきます。
  136. 小野明

    小野明君 それでは、この問題については、確かに独立採算制というような経営の問題があるにいたしましても、地方公務員に間違いはないわけですから、その問題も包含をして七人委員会で御論議が願いたい、そういうふうに私は要望を申し上げておきたいと思うのです。何ら触れておりませんからね。これではあまりにも酷な措置ではなかろうかと思います。  最後に、公務員制度審議会について、昨年の十月ですか、そのままになっておりまして、いまだにまだ人選も終わっておらぬというようなことなんです。再開のめど等についてお聞きいたしたいと思います。
  137. 田中龍夫

    ○国務大臣(田中龍夫君) 前段のほうはよろしゅうございますか。御要望だけでよろしゅうございますか。
  138. 小野明

    小野明君 要望ですが、あればひとつ……。
  139. 田中龍夫

    ○国務大臣(田中龍夫君) その点は、公務員共闘の皆さん方が前回私のほうに御要望をお出しになりました項目の中にも、自治体の企業体の職員の問題も一項目あったと存じます。私のほうは、公務員共闘の各位からの御要望を、次回の閣僚会議には、公務員共闘からこういう強い御要望があったということを御披露するつもりでおりますから、その点はひとつ御了承願いたいと思います。
  140. 小野明

    小野明君 披露だけでなくて、努力をしてもらう……。
  141. 田中龍夫

    ○国務大臣(田中龍夫君) それは自治大臣の御所管で、ことに自治大臣対大蔵省あるいは経済企画庁、こういうふうなところとの関係がございます。私のほうで直になかなかすぐにはできない問題であります。  それから公務員制度審議会の問題は、おかげさまで懸案のNHKの前田氏に御就任いただきましたが、しかし、これはたくさんの委員の中の一人でございます。なおその他の委員の各位に対しましても、ただいま一生懸命に交渉をいたしつつあります。しかし、なかなかそれさえが難航いたしておりまして、九月中にはぜひ第一回を開きたい、かように考えて寄り寄り努力をいたしておるところでございます。これだけは御報告を申し上げておきます。
  142. 小野明

    小野明君 人事院の総裁が先ほどからお待ちでありますから、お尋ねをいたしたいと思います。  今回の閣議の決定によって、結局、昨年と同じ八月ということになったわけなんです。それで、これは今回の勧告書の中にも触れておりますように、最後までこの実現に努力をされるといいますか、そういった態度であってほしいと思いますし、この点について閣議決定に対する見解とあわせまして今後の努力といった面でお尋ねいたしたいと思います。
  143. 佐藤達夫

    説明員(佐藤達夫君) 先回の閣議決定につきましては、まあ去年に比べると若干の前進は見せていただいた形跡はございます。この限りにおきましては政府の御努力に敬意を表しなければならないとは思いますけれども、しかし、いかんせん、われわれの勧告は五月からということになっておるのでありまして、八月と五月はこれは相当隔たりを持ったものである。従来、毎年毎年この席におきましても、残念であるとか遺憾であるとかということを申し上げてきましたけれども、もうことばも尽きたと申しますか、というような気持ちでおるわけであります。  特に、社会労働委員会でありますから、ここで声を大きくして訴えておきたいと思いますのは、たぶん当委員会の御所管であろうと思います公労委の仲裁裁定が、これが十年以上完全に四月にさかのぼって実施を見ておる。しかも、公労委の裁定が出ますのは年度に入ってからの裁定であってなおかつしかり。ことしの場合なども、その経費の総額を見ますというと、公社、現業で大体八億何十万円ということで、私どもの所管する国家公務員の場合の五月実施の経費とそんなに変わらないではないか。中には、相当赤字をかかえていらっしゃる企業体があるにかかわらず、どうしてこれが四月にさかのぼって完全に実施されるのだろうかという点で非常に私どもは深刻な悩みを持っておるわけです。  ただ、今回の政府の御決定につきましては、公労委と違います点は、私どもの勧告は国会に直接勧告申し上げておるわけでございます、また、私どもは、国会に対する勧告と変更もいたしておりませんし、撤回もいたしておりません。  われわれとしては、あくまでも国会の御裁断についてこれが五月実施という完全な形で実現しますように、いまなお念願し、また、その努力はしたいという決意でおるわけであります。何とぞよろしくお願いしたいと思います。
  144. 小野明

    小野明君 先ほどから経済企画庁長官にもお尋ねをしておりましたけれども、例の閣議決定にあります注1の問題ですね。予算編成時までに結論を得るようにと、明年度の問題。これについて総裁はどのようにお考えなのか。同時に、九月六日に、新聞によりますと、関係閣僚との協議会といいますか、例の七人委員会だろうと思いますが、それにあなたが呼ばれて、そして勧告制度のあり方について柔軟な態度を示したと、このように書かれておるわけです。この内容についてひとつ御説明をいただきたいと思います。
  145. 佐藤達夫

    説明員(佐藤達夫君) 今度閣議決定の注1に記載されておりますような事柄は、御承知のように、実は、前からすでに二、三年行なわれてきたところでありまして、私どもも進んでこれに参加してまいっております。ことしの場合も、ねらいは、結局、人事院の勧告の完全実施を考えてどういう方法があるかということを検討していこうというわれわれの意図するところと完全に一致する目標でございますので、私どもとしては、これはむしろ進んで、あるいは喜んでこれに参加して、お互いにお知恵を拝借し、知恵を出し、そして名案を考えていただく。これは、そのことに関する限りは、たいへんけっこうなことでございます。ただいま柔軟な態度と仰せられましたけれども、私はそういう意味ではきわめて謙虚な柔軟な態度でこれに臨んでまいりたいと思います。  ただし、新聞記事に出た場面は第一回の会合でございまして、柔軟もへったくれもまだないんで、私が従来の勧告についての実際及び私どものそれについての考え方を御披露しただけでありまして、ただそのことだけで、別に議論もしていませんから、柔軟というのはちょっと早過ぎましたけれども、人事院としては、いわゆる労働基本権の代償機関という性格をそこなわない限りにおいて完全実施をはかっていただくならば、これはけっこうだとそのための名案があれば、それは喜んでわれわれのほうとして従ってよろしいと、そういう気持ちの点では柔軟であります。ただし、なかなか、従来の私どもの同様な研究会の経験から申しますというと、はたして私どもが喜んで飛びつくような名案というものが出てくるかどうか。幸いに、ことしの場合は、特に総務長官も私自身にもはっきり仰せられましたように、勧告の本質であります人事院制度というものには全然触れずに、いかにすれば勧告が完全に実施できるか、この点に焦点をしぼって検討するつもりだとおっしゃっておられます。また、第一回の会合に出ました私の感じでも、われわれとしてそういうことを善意にとって考えてよろしいという気持ちを抱いておりますので、先ほど申しましたような外柔内剛の気持ちで今後臨んでまいりたいと思っております。
  146. 小野明

    小野明君 宮澤長官が言われたのは、勧告の時期だけをずらせるというような考え方を言われたわけなんですよね。結局、中身については、やはり財政制度というものが優先をする、こういうお考えであって、あまり人事院勧告というものを重視をするというような御態度というのは残念ながらうかがわれなかったわけであります。いわばこういったベテランといいますか、いつも十一回も値切ってきた古ダヌキと言っては失礼ですけれども、外柔内剛で終始あなたがおやりになるというのは、オオカミの中のヒツジみたいな感じがしてならぬのですが、かつて総合予算で五百億計上されたそのときに、あなたは、前進だと、こういうふうに評価されたわけです。ところが、またこういうふうにたたかれた、こういう結果を見ておるのですが、この点について一体どうなんですか。
  147. 佐藤達夫

    説明員(佐藤達夫君) ちょうどいい機会でございますので、いまの総合予算に対する私の評価を率直に申し上げさしていただきます。  最初にちょっと触れましたように、私の最初から念願しておったところは、公社・現業が補正予算なしになぜ完全に当初予算のやりくりだけで四月にさかのぼれるものかというところから出発いたしまして、おそらく当初予算に相当のゆとりある組み方がしてあるからそれができるのだろう。それならば、われわれのお預かりしている公務員関係でも、来年度の賃金上昇傾向というものがおわかりになるなら、どれだけでもあらかじめ当初予算に予算を保留していただいて、そしてそれで足りなければそのときこそ補正ということでやっていただけたらどうでしょうかと。従来のように、初めから何にもなしに素手で予算は出発しておいて、やれ勧告が出てから自然増収がどうのこうのと、ゼロから出発してお金を御心配なさるよりは、そのほうがよほどよろしゅうございましょうということを昔から申し上げておって、その意味では、やっと今回の総合予算の形で、予備費ではございますけれども、そこに一応のくふうがされたということで、私は大っぴらにこれは前進であるということを申し上げてまいったわけであり、また、そうであるに違いないと思います。  ただ、事志と違ったものは、私どもは、まず第一に、これはざっくばらんに申し上げますというと、予備費には五百億のワクがあるかないかというお話の場合には、そんなワクはないのだということなら、千二百億あるということで、予算委員会でも、クジラが泳いでいるか何が泳いでいるか知りませんけれども、大体千二百億あれば何とか完全実施ができるでありましょうということを申し上げた事実もあるわけでございます。事志と違いまして、その点がそうはいかなかった。それから絶対に補正は組まないという鉄則を最初からお振りかざしになった、それが私の考え方と違うところであります。その面はそうとして、私どもの主張した他の芽ばえは今度の総合予算の中に入っておる、これは信じております。したがいまして、先ほど、今後の勧告のあり方、扱い方についていろいろ御検討なさるということで、これはけっこうであり、また、いかなる名案が出ますか、それはそれとして期待をいたしますけれども、もしも飛び切りの名案がないとすれば、いまの総合予算に芽ばえましたところをさらにこんもりと茂らしていただいてたっぷりお金を準備していただくということが一つの手近な着想ではないかという気持ちもあわせて持っておるわけでございます。
  148. 小野明

    小野明君 所得政策の導入云々ということで総裁がかつて反対の態度を表明されたことがあると思います。それで、私は所得政策とは一体何かと、こういうふうに言うと、宮澤長官が言われるように、広い意味、狭い意味、いろいろあるとは考えられますけれども、まあ常識的に考えて、所得政策の導入について反対というふうに言われた総裁の気持ちですね、現在のお考えというものを再度伺っておきたい。
  149. 佐藤達夫

    説明員(佐藤達夫君) 前からこれはガイディング何とかということばで唱えられておった考え方で、そして、その場合、公務員の給与をガイディングの指標にして、そうしておのずから民間にならわせていく、まず公務員給与から先がけて指標になれというような考え方ではないかという懸念がわれわれずっと持たれておったわけであります。そういうことであるならば、われわれとしてはたいへん困る。すなわち、給与問題は公務員の生活権の問題に当然かかってきますし、近年のわれわれの仕事から見まして、公務員の採用試験というようなことが給与勧告と並んでわれわれの重大な職責とされておるわけでありますけれども、われわれの努力にかかわらず、公務員の志望者というのは昨年あたりから激減してまいっておる。上級試験の場合においては、応募者が六%ずつ減ってきておる。それから高校卒の人々については、ことしのごときは去年に比べて一〇何%も減ってきております。これは応募者でありますけれども、なお今度は合格した人が、みんな官庁に来てくれるかというと、決してそうではありません。四〇%、五〇%ぐらいが合格証書を握ったまま民間会社に流れていってしまうというようなきわめて凄惨なる事実にわれわれは直面しているわけであります。こういうことでいったならば、要するに民間のえり残りの方々だけが公務員におなりになる。こういうことで、日本の国の将来がどうなるであろうか。これは大それた言い方でありますけれども、われわれ責任者としてはそれくらいのことまで考えておるわけでございます。したがいまして、公務員給与、ことに近ごろの若い人の感覚からいえば、給与問題が第一の条件としてどこに行こうかという気持ちをおきめになる手がかりになるということから申しまして、われわれ現在やっております給与の官民対比は、御批判はありますけれども、百人以上の規模ということで押えておるわけであります。決して大企業と比べているわけではありません。しかし、このような条件のもとにおいて、しかもやはり優秀な人材を確保しなければならぬというところから申しますというと、さらにそれが所得政策の旗印とされて先頭を切って行かなければならぬということになったらこれはたいへんなことだろう、われわれの立場からはそういう角度からこれを心配しておるわけでございます。
  150. 小野明

    小野明君 多少問題が小さくなりますけれども、勧告の中身の問題ですが、特昇財源ですね、一〇%から一五%とこれは引き上げておるようですが、この財源というのは一体どこから出るわけですか。
  151. 尾崎朝夷

    説明員(尾崎朝夷君) 今回、勧告におきまして、特別昇給のワクの拡大を、従来の一〇%から一五%に拡大をするということでお願いをいたしたわけでございますが、特別昇給によりますると結局これだけ給与の水準が上がるということになるわけでございまして、したがって、格差をそれだけ埋めることになるということでございますので、その格差を埋めるという分だけ、つまり〇・一%ということが八・〇%の中で埋めるということでございます。
  152. 小野明

    小野明君 そうしますと、勧告の八%の中に〇・一%特昇財源が入っておるわけですね。
  153. 尾崎朝夷

    説明員(尾崎朝夷君) そのとおりでございます。
  154. 小野明

    小野明君 そうすると、実質勧告というのは、八%ではなくて、七・九%ということになってくるわけですね。これは生活給的な見方をわれわれはしておりますからね。  すると、引き続いてお尋ねしますが、暫定手当本俸繰り入れが五分の二になっておるんですが、これをたしか〇・八に見られていると思うんですが、これはわれわれ計算しますと、ちょっと〇・八%よりも下回る、こういう数字が出てくるんですが、これは一体根拠はどうなんですか。
  155. 尾崎朝夷

    説明員(尾崎朝夷君) 先ほどの特別昇給の関係でございますけれども、これはたとえば民間におきまして給与改善をいたしました場合に、昇給等で昇給込みということでやられます場合と同じあり方でございます。そういう意味におきまして格差内ということに考えられたわけでございます。  それからただいまの暫定手当関係につきまして、ことしの一月に、一段階の五分の一が無級地に支給されまして、それが四月に俸給表に組み込まれた、そうしてかつ四月に一段階の五分の二が無級地に支給されたという二つのあり方がございます。そのあり方がどの程度の影響になるかという点につきましては、まあ計算がいろいろこまかい問題がございまして、結局は四月における官民格差という中において解消されておるわけでございまして、それ自体を推計することはそれほど意味があるとは思っていないわけでございますけれども一応試算的にはいろいろ検討はしておるわけでございまして、大体御指摘のように〇・八%ぐらい公務員給与を高める影響を持ったのではないかというふうに考えておるのでございます。
  156. 小野明

    小野明君 その根拠がはっきりせぬでは、それ自体の意味があまりないと言われるけれども、官民給与の比較の中に〇・八をプラスして、その上に八・〇を積み上げているわけですから、〇・八に意味がないということになったらとんでもない。八%がもっと下がることになるわけですからね。このことから、この五分の二というものが〇・八%になるという数字の根拠を、これは平均給与から出せばすぐわかることなんですから、その数字を……。
  157. 尾崎朝夷

    説明員(尾崎朝夷君) 官民格差と申しますのは、公務員の一人一人につきまして、たとえば職種、職務の段階、それから学歴、年齢、そういったようないろいろの条件におきまして、民間に行ってその条件の人を調べまして、その人の給与がかりに十一万円である、公務員の場合が十万円であるという場合には、一万円の格差がございますから、それを埋めていただくという意味で四月現在で比較した結果が、先ほど申しました八・〇%ということでございます。したがいまして、その時期における調査の結果ということが勧告のポイントでございまして、それ以前に公務員給与がどう上がったか民間給与がどう上がったかということ自身をいろいろ調査をいたしましても、結局その格差がポイントということになりますので、原因をいろいろ検討いたしましても、それ自体としてそれほど意味があるとは思われないということを申し上げたわけでございます。したがって、そういう性質のものだと思っておりますけれども、そういう暫定手当の引き上げ分、あるいは本俸への繰り込み分というものを計算いたすわけでございますけれども、その計算は、無級地における人員分布と、それからそれぞれの各等級、各号俸における人員の分布というものがございまして、それにそれぞれの号俸における金額というものが対応しておりますので、それを全部こまかく四十七万人について集計をした結果が、全体の三月三十一日にもらっている給与に対しましておそらく〇・八%程度の影響を持ったであろうという形でいま追求をしているのでございます。
  158. 小野明

    小野明君 どうもおかしいじゃないですかね。大体五・四%の開きがあった。それで、それを積み上げた。春闘積み残し分を二十四事業所、三・七%ですか、これを二・六と、こういうふうに推定される。その二つを積み上げて八になる。ところが、公務員給与の分はですね、この五分の一と五分の二を積み上げた上に八%を積み上げないと、五・四と二・六にならぬわけでしょう。そうすれば、〇・八が意味がないというのじゃなくて、非常に大きな意味があるわけです。〇・八になるか〇・七になるかということはたいへんな問題です。特昇財源が八%の中に〇・一あったという全体の生活給的な意味をさらに八%から一%下げるこの暫定手当の繰り入れ分が、〇・八というものが一体どういう数字の基礎になっておるのか。これは、官民比較の前に、平均給与でかければすぐ出るわけだから、この数字を言ってもらえば、〇・八が正しいかあるいは不正確であるかということがわかるわけです。
  159. 佐藤達夫

    説明員(佐藤達夫君) ちょっといまの問題でございますけれども、大体おわかりいただいたかとも思いますけれども、私どもは、四月の現在で各民間事業所を回って、一人一人つかまえて、あなた四月分として幾らもらいましたかということつかんで、それだけをさらってくるわけです。公務員については四月分として幾らもらったかということでさらってくる。そうして、現実に四月分としてもらったものを、例の基準をとりましてこれをそのままべたっと突き合わして、民間のほうがこれだけ上がっているということでいきますから、その上がりが定期昇給が上がったのやら、いまの本俸繰り入れで上がったのやら、そういうことは何も調べる必要はない。四月分で幾らもらいました、それで幾ら違うから、せめて五月にさかのぼってそれを埋めていただきたいということでございますから、結論はきわめて単純明快なことである。なぜ去年から比べて民間はこれだけになり、公務員はこれだけになったかという分析をする必要は実はない。そのものずばりつかまえる。ところが、今回の場合のように、新聞などの報道に、春闘で一〇何%上がった、公務員の給与はさぞかし上がるんだろうという予測はされたわけであります。私どもは、民間がどう上がったということももちろん出てきますけれども、じゃ公務員側は一体どのくらい上がったということもあわせて考えていただきませんと、的確な予測はできないということになる。公務員側につきましては、いま御指摘の〇・八か〇・七か知りませんけれども、たまたまことしは四月にそれだけの給与の底上げをやっていますから、それだけ実は先に民間に追いついておったということにもなるわけです。それだけの話で、まあわれわれとしては、その〇・何%ということは一向計算する必要もないという気持ちでおりますものですから、一向すっきりしたお答えができない、こういうわけでございます。
  160. 小野明

    小野明君 またおかしな話をするね、あなた。八%の勧告自体がもうでたらめだということになるですよ、総裁、そういうことを言われるなら。そうでしょう。
  161. 尾崎朝夷

    説明員(尾崎朝夷君) 具体的に申し上げたいと思いますが、現在、行政職俸給表の八等級と申しますのは、高等学校を卒業しまして入るところでございます。かりに八等級一号俸という金額が、今度の勧告前に一万七千六百円の本俸でございます。これに対しまして、本年の一月一日に暫定手当の一段階の五分の一が無級地の人たちに支給されたわけでございます。それが六十六円でございます。この六十六円は無級地の人たち——全体の公務員の約半分でございますが、無級地の人たちに支給されました。その分だけが全体としてよくなるというわけでございます。ことしの四月に、その六十六円が本俸に繰り入れられました。したがって、一万七千六百円という俸給表はそうでございますが、本俸の額は一万七千六百六十六円という数字に本年の四月から相なったわけでございます。つまり、六十六円が全職員に支給されることになったというわけでございます。そこに、さらに、無級地の職員に対しましては、その二倍でございます五分の二の百三十二円の金額が無級地の人たちに新しくまた支給されることになった。したがいまして、要因が二つございまして、六十六円が全職員に支給されることになったということが一つと、それから百三十二円の金額が無級地——つまり全体の半分くらいいる無級地の職員に支給されることになったというわけでございます。その六十六円と百三十二円の両方上がったという関係がそれでは本俸の一万七千六百円に対して幾ら、何%であるという計算があるわけでございます。かりにこの場合に一%というふうに考えますと、それは八等級一号俸だけの話でございまして、つまりそこには五百三十五人おります。そういう関係が各俸給表の各等級、各号俸に金額が全部規定されておりまして、その金額を全部計算をいたしまして平均をしたものが、それこそ電子計算機によるようなこまかい計算をいたしました結果が大体〇・八%−こまかいことは略しますけれども、〇・八%に相当するということでございます。
  162. 小野明

    小野明君 いますぐにそれを確かかどうかということを私ども確かめるひまがありませんから、お聞きしたことをお伺いして、私どものほうでもこれを検討してみたいと思います。けれども、総裁にお尋ねをしたいのは、実際に八%の勧告をした中で、〇・一%は特昇財源である。これはいわば政府の労務管理政策費というべきものだと思う。私はそう思っているわけです。ここでは生活給的な見方を私どもはしておりますから、この八%の中からあえて特昇財源というような労務政策的な費用を見るのははたして妥当であるかどうか、こういうところは議論のあるところだと思います。そういった意味では、私どもは賛成しがたいわけなんです。しかも、勧告自体を大きく値切っておる中ですからね。それと同時に、期末手当の問題を、四・四と四・四ですから、だからこれは切り捨てだ、こういうことですが、そういうものを合わせますと、やはり非常に生活給軽視といいますか、そういった点がうかがわれるわけなんです。こういう点はあくまでも生活給を基本にした勧告にしてもらいたいということを私は申し上げたいのであります。  それと、調査の方法なんですけれども、対応等級のとり方におきましても問題がありそうだし、あるいは事業所の企業規模、あるいは事業所のとり方など、どうも勧告の基礎調査のやり方が公務員を中小企業の労働者並みに扱っておるのではないか。しいて言えば、調査の基準のとり方、基準をそういうところに押えているような感じがしてならぬわけです。ですから、八%以上でなければならぬ勧告が八%になってしまった、結果的にそういうふうにブレーキがかかっておるといいますか、そういう結果になってしまったという感じがするんです。こういう点は、生活給という問題、あるいは調査の基準のとり方に問題があるように思いますが、最後にこれらの点をお尋ねしておきます。
  163. 佐藤達夫

    説明員(佐藤達夫君) 特昇の問題は、これはいろいろお立場によって御批判があると思いますが、私どもは、いまちょっとおことばの端にもありましたように、政府の意を迎えてとか何とかというそういう根性ではないので、これは、御承知のように、公務員法なり給与法にも成績主義ということが大きくうたわれておって、そうして特昇の制度も給与法にちゃんとあることでございますから、その趣旨を徹底あるいは拡充して、いままで一〇%しがなかったのを一五%にしたというだけでありまして、その辺に何ら他意はないということだけはあらかじめ御了承をいただいておきたいと思います。  それから最後にお述べになりました中小企業並みではないかと。これは私はたいへん重大な問題だと思います。そして、また、かねがねせめて五百人以上だとかあるいは千人以上の企業と比べるべきではないかという御見解も承っておるわけであります。私どもも個人としてはそういうことは望ましいことであり、また、そういう時代が一日も早く来ることを念願いたしますけれども、今日の段階、日本の賃金情勢一般からいって、公務員もやはり労働者であるという立場に徹して考えますというと、小さな工場のふき掃除をしておる人と、役所の廊下のふき掃除をしておる人も、同じ労働者であり、同じ仕事をやっているんじゃないか、何ゆえに公務員だけ給与をよけいやらなければならぬかということは、やはりそこに特権性の問題ともつながる問題が出てきます。したがって、今日のところはがまんをしていただいて、そうして民間の水準に合わせるについても、あまり小さな企業といってはこれはまた弊害がありますから、百人以上くらいの、百人以上というのでありますから、相当の大企業まで入ってはおりますが、最低は百人以上ということで押えていきますと、ちょうど百人以上の日本の企業における従業員の数が全体の労働者の半分をちょっとこえるわけです。そこにめどを求めてやりましたと申し上げれば、これはそれこそ零細企業の御主人も、あるいは組織に入っておらない労働者の方も、あるいはまた納税大衆の方々も、これならやむを得ないだろうというふうに御納得いただける線ではないかということで、当面百人ということにいたしておるわけでございます。
  164. 上原正吉

    ○上原正吉君 関連。御質問と御答弁を伺っておりまして、お話はよくわかるんですが、民間の企業の従業員に、恩給、いまは共済年金ですか、こういう制度がないでしょう。すなわち、公務員の共済年金は、物価が上昇し、生活程度が上がれば、国会でいろいろ論議されてふえてくるという可能性があるわけなんですけれども、民間にはこれは全然ないわけなんですね。これは、民間給与の中に、また、公務員給与を上げる勧告の中に含まれているわけですか。そういう事実が計算されておるかどうかということなんです。
  165. 佐藤達夫

    説明員(佐藤達夫君) これも、ある方面からよく承る御批判であります。そういう点については、私どもも民間のそういう面についての実態を従来から調べておるわけではございません。最近、民間側でもその種の年金というようなものもだいぶ発展してこられたようでありますし、大観してみましてそう大差はない。もちろん、零細企業の方々を考えれば、これはまた別でございます。普通の企業体に比べてそれほど大差はないというふうな気持ちを持っております。ただ、問題は、公務員はいかにも年功序列型で、寝ておってもとんとん上がるじゃないかという批判もあるわけです。私どもはそれにおこたえすべき材料は十分持っておりますけれども、いまお話の特昇問題なんかもそういう一つの批判にこたえる手がかりになるだろう、そういう気持ちも含まれておるわけであります。
  166. 上原正吉

    ○上原正吉君 そう承ると、民間の共済年金も何もない給与も、公務員の給与も、結果において大差ない、共済年金の制度があってもなくても大差ない、こういうお考えなんですか。
  167. 尾崎朝夷

    説明員(尾崎朝夷君) 地方公務員もそうでございますけれども、共済年金制度、退職年金制度がございます。この関係は、民間ではいわば厚生年金に比較せらるべき性質のものでございまして、共済年金は厚生年金の代行もしておるというわけでございます。で、厚生年金に比べまして、掛け金も多く、給付水準も高いというのが実態でございます。掛け金が多いという分によりますところの給付の高さということは、これは程度の内容でございますけれども、掛け金が高いという以外の、国によるところのいわば予算という点を考えてみますと、その厚みというものは、現在のいわば退職手当という形に換算してみますと、五十万円に足らない程度のものでございます。したがいまして、結局、退職手当制度が民間に比べていいかどうかといったようなことに結局なってきまして、そういう意味合いにおきましては、民間におきましても、調整年金制度というのができまして、公務員の共済水準までは民間でもやれるという新しい制度ができておることはもう御承知かと存じますけれども、そういう意味合いにおきまして、退職給付全体といたしまして、それほど——民間においても退職手当制度としていいところもございますし、そうでないところもございますけれども、公務員の退職給付制度として特によけい掛けておるというものを別としますれば、大体風聞に準じたものではなかろうかという感じがしておるわけでございます。
  168. 小野明

    小野明君 民間との問題が出ましたから、私も最後に一つだけお尋ねして終わりたいと思いますが、法定外福利の問題で、日経連の報告によりましても、公務員の場合は十分の一である。これは臨行でも指摘されておるわけです。住宅手当制度が今回は勧告の中に入らなかった。この問題等々含めて、民間との差が一番あるのが法定外福利かと思うんです、十分の一というんですから。ですから、この問題の調査は一体おやりになっておるのかどうか、そうして住宅手当の問題を含めてこの次の勧告には入れられるスケジュールになっておるかどうか、この点をお尋ねしておきたい。
  169. 佐藤達夫

    説明員(佐藤達夫君) 住宅手当のおことばが出ましたから、そこまでちょっと触れさせていただきたいと思いますが、これ自体従来非常に要望の強いところでございますが、住宅手当となりますと、実は給与の面の問題でございます。われわれは、事の重要性は認識しながら、毎年毎年しつこいくらいに民間の実情を調べておりますけれども、まだ公務員側として踏み切るべきところに至っていないということで今日に至っておるわけでございますが、そこで、うらはらの問題として、住宅手当の問題とか、一面においては公務員宿舎に入っておる人と入っていない人との間のアンバランスを一体どうしてくれるという問題が非常に深刻なことになってここに伏在しておるということであります。住宅手当についてはかようなことでありますけれども、せめて実質の住宅施設のほうだけは、これはぜひ全部の公務員といいますか、住宅を必要とする公務員がはいれるようにひとつ増設拡充をしていただきたい。これも、数年前から総理、大蔵大臣に毎年お願いをしておる。一時は文書によって要請したこともあります。ことしも、総理にお会いし、あるいは大蔵大臣にお会いした節に、そのことを強く要望しておりまして、去年は閣議決定の中にそのことが入りました。ことしは官房長官談話の中にやはりその努力の表明が入りましたので、これはよろしいと思いますが、実績のほうも着々そのほうの施設は幸いにして進んでおります。したがいまして、私どもはその両面に気を配りながら努力していかねばなるまいと思っているわけでございます。  それからそれ以外の法定外福利費の問題は、これもここ二、三年来相当強い要望的なお話もほうぼうで出てまいります。たしか臨時行政調査会もそれに触れて報告されたというようなことであって、私どもはこれも重大な認識を持って臨んでおるわけであります。予算がないものですから、ありあわせの金と人員の限りにおいて十分留意をしておりますが、これはなお今後さらに一段と予算をいただいて大いに力を入れなければならない。ただ、公務員の場合は、千三百円とか何とか言われておりますが、あるいはこれは健康診断とか限られた部面だけのお金でございますが、それ以外にも相当国費が使われてはおる、そのことだけは御了承いただいていいのではないかと思っております。
  170. 小野明

    小野明君 その国費の使われ方が非常にあいまいである、不明朗な支出があるということは、臨行から指摘をされておるわけです。ですから、十倍程度の公正明朗な支出にすべきである、こうなっておるわけです。私が知る限りにおいても、大蔵省における職員のいろいろな福利厚生問題、文部省における、労働省における、あるいは人事院における職員の福利厚生の問題は、かなり開きがある事実も知っております。ですから、そういう臨行から指摘があるような不明朗なものでそのまま放置するんではなくて、その辺の指摘もあるんですから、早急にこの問題の調査を始めて、十倍程度に引き上げるべきである、こういう勧告に沿った趣旨を実現していただきたいと思うわけです。そういうことを申し上げておるわけです。
  171. 佐藤達夫

    説明員(佐藤達夫君) よく御趣旨はわかりましたし、その点に関しては全く根本的には同感でございます。ただ、私、先ほど少し張り切り過ぎまして、人事院が一人でしょっておるようなことを申し上げてしまったんですが、実は、総務長官はおられませんけれども、人事局の主管部分がだいぶ大きいので、人事局と相まって大いに努力いたしたい、こういうことで御了承願います。
  172. 小野明

    小野明君 大蔵政務次官がお見えですから、簡単に、時間もありませんから、一つだけお尋ねをいたします。  四十二年度の税収の見込みで七・六%ばかり見込み違いが出た、こういうことが、十二日ですかいつかの新聞に報道をされているわけです。結局、かなり増収があったということですね。ですから、総合予算編成の前の見込みと経済好況のためにかなり見込み違いを生じてきたという問題と、あわせて、四十三年度においては、宮澤長官も言われるように、かなり好況である、こういうふうに言われておる。先ほど住友銀行の四十三年度の経済の見通しというのも発表されて、やはりいろいろな指標が好転しておるということを発表されておるわけなんです。そういうものとあわせて、四十三年度の税収の伸びというか、それを見込みをお知らせいただきたいのと、八月の総合収支ですね、国際収支についてまとめたものがあればお知らせをいただきたいと思います。
  173. 二木謙吾

    説明員(二木謙吾君) お答え申し上げます。  四十二年度は大体とんとんでいっておりますが……。
  174. 小野明

    小野明君 七・六%の見込み違いがあったということが出ております。これは大蔵省が発表しておる。
  175. 二木謙吾

    説明員(二木謙吾君) それは何かの間違いじゃないかと思います。いま次長も見えておりますが、大体なにはないと言っております。
  176. 海堀洋平

    説明員海堀洋平君) 四十二年度は、御存じのとおりに、補正予算を組んでおります。したがって、補正後の税収と決算とは、私のいま正確な記憶はありませんが、初め多少欠減が出るかといわれておりましたが、最終的には税収においては過不足なく予算とほとんど等しい額が決算的には収納されております。正確にはあるいは数十億の出入りはあるかと思いますが、ほとんど予算との間に数字の違いはなかったと存じております。  ただ、四十三年度でございますが、これは、年度の途中で、まだ何とも申し上げかねるわけでございますが、七月ごろまでをとってみますと、四十二年度の決算に対する四十二年度の七月における収納割合よりも四十三年度予算に対する四十三年七月までの収納割合は多少高くなっていると承知いたしております。したがって、税収の各期別というか、各月別の分布状況が四十二年度と同じ型で推移すると考えれば、四十三年度は多少予算に対して増収を期待し得るかもしれないということは申し上げられると思います。
  177. 上原正吉

    ○上原正吉君 関連して。お話を伺っておりますと、四十二年度は、補正を含めて、予算と税収とがほとんどとんとんである、こう伺ったのですが、そうすると、当初予算に対しては税収の伸びがあった、補正予算だけ伸びがあったわけですね。そうなんですか。そうすると、ことしの予算も、当初予算と補正が出た場合の補正を含めてとんとんにいくだろう、そうなる可能性があるかどうか。
  178. 海堀洋平

    説明員海堀洋平君) 四十三年度は、御存じのように、総合予算主義という、要するに、予算編成時におきます経済見通しにおきます税収見込みというものは目一ぱい計上しますとともに、そのかわりに、年度の途中において補正を要しないように歳出におきましても十分に諸経費を計上するとともに、公務員給与の改善等に備えまして予備費の充実をはかったわけでございます。したがって、もし経済見通しどおり経済が推移したなれば、まず増収というものは期待できない状況ではなかったかと思います。ただ、その後の経済の動きは、政府の予算編成時における見通しよりも成長は順調であるといいますか、現在までのところ政府の予算編成時における見通しよりも経済の成長度は大きいのではないか。それは、七月までの税収におきましても多少その効果があらわれているということを申し上げられると思います。ただ、まだ半年しか経過しておりませんので、今後どういうふうに推移するかということは、ちょっといまの段階では申し上げかねるのではないかと思います。
  179. 上原正吉

    ○上原正吉君 そうしますと、四十二年度は、どうせ補正があるだろうからというのであまり税収を大きく見なかったけれども、四十三年度は、総合予算でやるんだから目一ぱいに見た、こういうことになるわけですか、簡単にお答え願いたい、長々とじゃなくて。
  180. 海堀洋平

    説明員海堀洋平君) 必ずしもそうではないのでございますけれども、御承知のとおり、税収というのは非常に大きいわけでございまして、たとえば現在五兆円ぐらいの税収というものですから、一%というものは五百億でございます。見方というものの差というものは、目一ぱいに見るか、それとも普通に出てきたものを見るかという点につきましては、いま御質問のような点も、実際問題として、ないと言えばうそになろうかと思います。これは主税局の問題でございまして、私は詳細には承知したしません。
  181. 二木謙吾

    説明員(二木謙吾君) いまの問題でございますが、四十三年度の税収は四兆六千九百七十億円を見込んでおるわけなんですが、昨年の当初予算に比して八千九百億だけよけいに見ておるわけです。その上を何ぽかまた越すかもしれませんが、まだ三分の一しかいっておりませんので、現在七月までに納まった税収が一兆四千九百六十三億であります。これを予算に比較する進捗率は三一・九%、この進捗率は昨年同月の三〇・八%に比べますとわずかに一・一%を上回っておる、こういうことでございますから、まだ三分の一でありますから、今後どれだけこれが伸びるかということは、この際はっきり申し上げにくいのでございます。
  182. 小野明

    小野明君 そうすると、次長のお話だと、四十三年度の経済見通しによりますと、税収の伸びというのはいまのところ期待できない、とんとんである、こう言われるわけですか。
  183. 海堀洋平

    説明員海堀洋平君) 私はそう申し上げたのではございませんので、先ほど申し上げましたように、七月までの税収の収納割合は、去年の決算の全体の税収に対する去年の七月までの収納割合よりは、ことしの予算に対する七月までの収納割合のほうが多少上回っておりますので、もし去年と同じように各月別の比率で収納されるなれば、多少の増収は期待し得ると思いますけれども、今後の経済の見通しははっきりとは言えませんので仮定の問題になりますが、もし去年と同じ各月収納割合で推移するなれば、今後ある程度の増収は期待し得るであろうと申し上げたわけであります。
  184. 小野明

    小野明君 昨年のいまごろの状況よりもいろんな諸指標もかなり好況、上向きを伝えられておるわけですね、予想が。あなたのほうはしごくかたく押えられておるのですが、いまのところ、四十三年度を見通して、どれくらいの伸びが予想されるのか。これは予想でありますから、あげ足をとられてどうだこうだという問題でもないわけです。大蔵省としても、その辺の見通しはあるはずです。どのぐらいの伸びになるのか、率直にひとつ出してみていただけませんか。
  185. 海堀洋平

    説明員海堀洋平君) これは、現在、一番基本になります経済見通しにつきまして、経済企画庁でございますが、今後どうなるというはっきりした見通しもまだ出しておりません。したがいまして、それに基づいて主税局なりが税収の見通しを試算いたしますので、現在ただいまのところ、今後の税収がどうなるかといろ試算をいたしてはいないと承知しております。
  186. 加瀬完

    委員長加瀬完君) 委員長から発言して悪いのですが、骨格予算がずんずん進んでいる段階で、本年度の税収の伸びというものをつかめないで、来年の税収のアウトラインというのはつかめますか。これは当然もう固まっているわけじゃないですか。何もそれで大蔵省に何かくれと要求しているわけじゃないから、率直に数字だけ言ってください。
  187. 海堀洋平

    説明員海堀洋平君) 御存じのとおり、予算の編成は、国会の審議がありますので、十二月に編成するのでございますが、本年最終的に来年度の税収を見込みますのは、やはり十二月の半ばに本年度の税収を見込みますので、まだ前年度の半ばを過ぎない段階で、来年度の税収は、ある仮定の数字は置くにしても、経済見通しに基づいた数字というふうなものはもちろん考えてもおりませんし、また、ことしのことにつきましても、経済見通し自体が経済企画庁でどういうふうになるという見通しをはっきりさしていない段階で、ことしの税収はどの程度出るというふうな試算はいたしていないというふうに承知しております。
  188. 小野明

    小野明君 政務次官、いまのような答弁でよろしいわけですか、どうですか。
  189. 二木謙吾

    説明員(二木謙吾君) それは、いま私が申し上げたように、本年度の予算において税の増収を八千九百億だけ見込んでおりますから、その上の増収ということはあまり伸びないということを言われたわけです。もっと詳細に言うならば、七月までの各税目の伸びが昨年度は七月までで何ぼであった、これは表がみなあります。これはみな言えば長くなりますから、いま主計局次長が言われたとおりでございまして、あまり大きな伸びは期待できない、こういうことでございます。
  190. 小野明

    小野明君 あなたの答弁も結局わけわからぬのですがね。一々その要素をずっと、酒税が何ぼ、所得税が何ぼと、こういうことでなくて、総括的にどのくらい伸びがあるのか、これは大臣でないと答れられぬですか。政務次官でもよかろうと思いますが、どうですか。
  191. 二木謙吾

    説明員(二木謙吾君) それは、本年度の四十三年度の予算に税収を見込んだものを入れておりますから、その上の税収の伸びはあまりない、こういうことでございます。
  192. 小野明

    小野明君 伸びはないと、こう言われるのですが、十二月段階でもし伸びがかなりのものが出ておったということになりますと、政務次官、あなたはきわめて見通しの暗い大蔵省政務次官、こういうことになるわけです。
  193. 二木謙吾

    説明員(二木謙吾君) 申し上げます。四十三年度の税の見通しは、税収四兆六千九百七十八億を見込んでおるわけです。それは、昨年の税収に比べまして、当初予算において八千九百億ほど増加するように当初予算で組んでありますから、その上のこれからそれじゃ九千億、まだこれから八千億というふうな伸びはむずかしかろう、こういうことでございます。当初予算に本年度の税というものが八千九百億だけは伸びるだろう、こういうことを入れて本年度の税収を見込んでおるわけですから、その上の税収がいま次長が言われたようにあまり大きく伸びるということの期待はできまい、こういうことでございます。
  194. 小野明

    小野明君 それはもうわかっておるわけです。大体九千億程度の伸びがあるだろうというのはもう予算編成時にわかっておって、この九千億程度は、義務的な経費、これは食管の赤字に何ぼ、これは何に何ぼというふうにほぼ使うことがきまっておる。だから財政硬直ということが出たのであって、私が聞いておるのは、その上の予算に対しての伸びというものはどういうものか、こういうお尋ねをしておる。また、その辺の見通しがたい限り大蔵省としては問題じゃないですかね。それで、きょうはもう時間もありませんから、この次には大臣も盲腸もよくなるでしょうから、その点をひとつ次官としても十分やはり試算をして驚いていただけませんか。
  195. 二木謙吾

    説明員(二木謙吾君) わかりました。私なり局長が申し上げたこと、本年七月末における税収の進捗割合が税全体に対して三一・九%、これは昨年の七月におけるところの税収の伸び三〇・八%に比べまして一・一%上回っておるだけでありますから、今後の伸びもあまり多く期待できるか、あるいはできないかということは、まだ七月でございますから、その辺のことをはっきり申し上げることはできませんが、予算編成時期になるというと、また月も進んで、その間に税収がどのくらいあるかということはわかりますから、いまあなたがおっしゃられたとおりに、もっとよく精査して、またお答えをすることにいたします。
  196. 小野明

    小野明君 これはもう要らぬことですが、民間の銀行でも、国際収支の総合収支も年度間で二億五千万ドルの黒字を想定しておる。あるいは実質経済成長率が幾らと、九%と、こういった見通しも立てられておるんですよ。ですから、大蔵省のような膨大な人間と予算を持っておるところでそういった予想が立てられないはずはないわけですよ。ですから、あなた方の答弁は、主計局次長、どうもきわめて不親切だと思うのです。こうだという見通しは立てられておるのじゃないかと思う。率直にひとつ披瀝をいただきたいと思うのですが、きょうはもう時間がないから、この次に再度おいでをいただいてその点をお尋ねしたいと思います。  それで、労働大臣にお尋ねをいたしますが、今年の人事院勧告も、御承知のように、閣議決定でまた値切られたわけなんです。それで、一体、人事院が、スト権を剥奪した公務員の代償機能を果たしておるのかどうかということがこの際大きくやはり問題にされなければならぬと私は考えておるわけなんです。そこで全逓の最高裁における判決を見ましてもその点が強調されておりますし、しかも、公労協については仲裁裁定というものは完全実施をされておる、四月にさかのぼりまして。この仲裁裁定と人事院の勧告というのは同じ権威をもって扱わるべきであると思うのですが、それにもかかわらず、人事院の分については、力が弱いか、あなた方が政府が軽視をしておるのか、必ず値切られて出てくる。これは、結局、人事院制度の否定につながると思うのです。今回の閣議決定についてどのような見解をお持ちであるか、お尋ねしておきます。
  197. 小川平二

    ○国務大臣(小川平二君) 人事院による勧告の制度は、基本的な権利に制約を受けておりまする公務員のために適切な給与を実現したい、こういう趣旨で設けられておるのでございますから、勧告がありました際にはこれを尊重して完全に実施するのが当然だと存じます。今日までこれが完全に実施されておらないことは、非常に不本意でございます。遺憾でございます。三公五現の関係と公務員と、給与に関する制度の仕組みは異なっておりますけれども、ひとしく適正な給与を実現したい、こういう趣旨である点においては変わりがないのでございまして、扱いを異にすべき理由はないと存じます。  しかるに、人事院の勧告が従来完全に実施されずに今日に至りましたのは、もっぱら年度の途中でまとまった補正財源を獲得することが困難であったのによると存じております。本年は、先ほどから御論議の出ております総合予算主義のたてまえを政府がとっておりまするために、予備費の範囲内で対処せざるを得ないという事情がございました。私といたしましては非常に残念な結果になったわけでございます。毎年、勧告が完全に実施されないで、これに伴って紛争が起きるという事態を繰り返すということは、賢明なことではない。まことに好ましからざることでございますから、今後はこれが完全に実施できるように制度の上でもし検討の余地があるならば、真剣にこれを検討しなければならない。このため関係閣僚会議も今後引き続いて開きますことは、先ほど総務長官から答弁を申し上げたとおりでございます。  ただいまやっておりまする予備費の制度は、年度の途中で財源を求めなければならないという困難を避けるという意味においては、ある意味では一歩の前進であるということが言えるかと存じます。人事院総裁からも先ほどそういう趣旨答弁があったかと存じまするけれども、現行制度のもとにおきましても、勧告が相当高目に出ても十分これに対処できるだけのたっぷりした予備費を組んでおけば、これは問題はないわけでござますが、実際の問題になりますと、おしかりを受けるかもしれませんが、さっき経企庁の長官も申しましたように、予算編成の際にはいろいろな財政需要が競合いたしますから、うんとふくらました予備費を確保するということについては、これはいろいろの困難が伴うに違いないと存じます。したがいまして、これにかわる、よりよい方法がないものかと私もただいまいろいろ苦慮いたしておるような次第でございますが、何とかさらによい仕組みを考えまして、勧告を完全に実施できるようにしたいと考えている次第でございます。
  198. 小野明

    小野明君 まあこの勧告の制度をよりよい仕組みにいたしまして、そして完全実施ができるようにしたいというお考えについてはわかるわけなんですけれども、勧告のたとえば時期をずらしたことによって完全実施という方向が出るのか、あるいは、人事院の勧告自体を、人事院制度そのものを重視する考え方から完全実施という方向が出るのか、この辺はきわめて私は問題のところだと思うのです。それで、この勧告の時期云々という問題もありますれども、私は、より基本的に、これは人事院制度、代償機能という点に重点を置いていただいてものごとを処理していただく、勧告の時期はどうあろうとですね。それに従って完全実施をはかっていただく、この趣旨が貫かれなければならぬと思うのですが、この点について再度お考えを伺います。
  199. 小川平二

    ○国務大臣(小川平二君) 私どもがただいままだ本格的な検討を始めておるわけではございませんけれども、たとえば、人事院が八月に調査をして、予算編成に先立つ十一月に勧告をしたらどうかというような構想もあることは御承知かと存じます。一つのあるいは方法であるかもしれませんけれども、この点については、ただいま御指摘がございましたように、これから制度をいかように改めていこうとも、人事院による勧告の制度そのものを否定するというようなことは、これはあり得ないことでございます。その際、これを完全に実施するということが前提でなければならない。そうでなければ、いかように制度をいじってみましても、制度そのものからいわば自動的に制度をこうすれば必ず勧告が完全に実施できるという保証はないわけでございます。要は、勧告をどこまでも尊重して完全に実施するという心がまえであると私も信じております。
  200. 小野明

    小野明君 それで、今回の閣議決定に、公務員共闘あたりは非常に不満の意を表明しておるわけですね。そうすると、まああなたや総務長官のほうで、やれば処分をやるぞというような談話を発表されるわけです。そういうことになりますと、正当な要求をして行動を起こす労働者の公務員共闘のほうが処分を受けて、そうでない実施を守らなかった、法律を守らなかったほうが何ら処分を受けない、指弾を受けないというような結果にもなるわけです。この問題は、国際的にもいろいろ指摘があるわけですね。今度アジアの地域会議で来られておりますモース事務局長も、労働四団体を呼んで、結社の自由委員会がスト制限について示しておられる三つの原則、これを再度強調されたというのですが、それは一体どういう内容であったのか、ひとつ御説明をいただきたいと思います。
  201. 小川平二

    ○国務大臣(小川平二君) 組合からただいま御指摘のあった点をも含みまして種々の要望を受けかということについては、モース事務局長から承っております。ただ、その際、モース事務局長が結社の自由委員会におけるいわゆる三原則を強調したというようなことは聞いておりません。
  202. 小野明

    小野明君 労働大臣、聞いておられぬですか。
  203. 小川平二

    ○国務大臣(小川平二君) 重ねてお答えいたしますが、結社の自由委員会におけるいわゆる三原則をモース事務局長組合の代表の方々に対して強調したということは、モースさんの口からは承っておりません。
  204. 小野明

    小野明君 ああ、そうですか。それで私が申し上げたいのは、そのことがまあ強調したか説明なされたか、私のほうは強調をしたという表現をしておるわけですが、とにかく、ILOの結社の自由委員会が、スト制限を受けた部門については代償機能を完全に果たすべきである、こういう原則をあげられておることは事実である。これは大臣も御承知のとおりだろうと思います。さらに、今回のアジア地域会議におきましても、結社の自由に関する決議があげられておる。これは、大臣も、議長をされておるのですから、御承知だろうと思うのです。その点をひとつ御説明をいただきたいと思います。
  205. 小川平二

    ○国務大臣(小川平二君) 公務員の基本権を制約するについての代償措置ということについては、いわゆるドライヤー報告は直接触れてはおらないと理解しております。この点につきましては、ILOの見解というのが一貫して繰り返して述べられておると思うのでございますが、結社の自由委員会の第十二次報告というのがございます。それからまた、同じ委員会の第五十四次報告というのもございますが、「委員会は、雇用条件が法令によって定められる公務員については、多数の国において、その雇用を規制する法制中においてストライキ権は正規の条件としては否定されており、この問題のこの部分に対しこれ以上の考慮を加える理由はないと考える。」と、こうたいへん回りくどい表現でございますが、公務員の基本的権利を制約する代償としては労働条件を法令をもって定めれば十分である、それが必要にして十分な条件であるというのが公務員についてのILOの正式見解だというふうに理解をいたしておるわけでございます。  ただ、だからと申しまして、現に日本で行なわれております人事院による勧告の制度を尊重する必要がないというふうに、私はさように考えておるわけでは毛頭ないのでございます。日本においては、労働条件が法令をもって定められており、同時に、人事院による勧告の制度がございまして、公務員がスト権を制約されておることによって生ずることあるべき不利益を補い補正するという制度が確立されておるわけでございます。この制度の趣旨はあくまで尊重をすべきものと考えております。
  206. 小野明

    小野明君 私どものほうから見れば必要でないところを強調されているが、迅速かつ妥当に処理されなければならない代償機能の確立という点を私は強調しておるわけです。ILOの結社の自由委員会なりドライヤー委員会としては、やはりこの代償機能という面について強調されておると思うのです。その点はどうですか。
  207. 小川平二

    ○国務大臣(小川平二君) 労政局長からそのお尋ねの分について……。
  208. 松永正男

    説明員(松永正男君) ただいま小町先生が御指摘になりましたように、ドライヤー勧告の中におきまして、いわゆる三原則というものを掲げております。それは、結社の自由委員会におきまして、従来、何百という各国のケースを取り扱ってきたわけでございますが、それの報告がいろいろ出ておるわけでございます。その中から「同問題に関し一般に受け容れられている一連の原則を作成した。」——これはドライヤー委員会が作成したということで、結社の自由委員会のいままでの考え方を整理をして三本にまとめたという報告でございます。  それは三つございまして、その一つは、公有企業が、ストライキ権の制限につきまして、そのストライキによる業務の中断が引き起こすところの公共の困難の度合いをいろいろ考えなければならないというのが第一点でございます。文章はお持ちのようでございますので、要旨だけ申し上げます。それから第二点といたしましては、このようなストライキを制限、禁止する場合には、労働者の利益を十分に保護するような適当な保障が必要であるということでございます。第三点におきましては、この目的のために公平な機構を設置し、その決定は、一たん下されたときは、完全かつ迅速に実施さるべきである。先生がいま御引用になりました、その三つの点でございます。  そして、そのあとの注にいきまして、前段の一つの根拠といたしまして結社の自由委員会第十二次報告というものを引いております。この第十二次報告は、日本におきます関係の問題を審議をしたものが入っておりまして、その問題といたしましては、国家公務員についてのストライキ禁止の問題と、それから公共企業体におけるストライキ禁止の問題、両方あるわけでございます。先ほど大臣が読み上げました十二次報告の部分は公務員についての部分でございまして、法令で労働条件が保障されておるものについては多くの国においてストライキ権が正規の問題として制限されており、そしてこの問題はこれでもういいんだということを言いまして、それから公共企業体の関係につきましてこの三つの原則の考え方を引いて十二次報告を出しておるのでございます。   〔委員長退席、理事大橋和孝君着席〕  したがいまして、ものの考え方といたしましては、おっしゃるように、公務員たると公共企業体たるとを問わず、ストライキ権を制限をいたした場合には代償措置が必要であるという考え方でございますが、その代償措置につきましては、公務員については法令保障でよろしい、国会という国家の最高機関において、国民の代表によって定められる法律で給料がきまるということでよろしいというのが原則的な、伝統的なILOの考え方でございます。それから公共企業体につきましては、公労委といったようなそういう第三者の公平な機関が必要である、その実効が確保されなければならぬ、こういう論旨を展開いたしておるわけでございます。
  209. 小野明

    小野明君 最後に、大臣にお尋ねしますが、大臣はILOの五十二回総会に出席をされましたね。その中で、要点だけ申し上げますが、「労働運動の故に逮捕または宣告をうけたすべての労働組合運動家に、大赦・恩赦または同等に有効なものを宣言し、」云々と。まあ「宣告」ということばがありますから、これはおそらく判決だろうと思いますけれども、これを国際人権年であることしじゅうに事務総長までに報告せよと、こういうふうな決議があがっておることは御存じだろうと思います、出席をされたわけですから。これについて手順といいますか、労働省としてはどのようにこの処理をなさるおつもりであるか、最後に伺っておきたい。   〔理事大橋和孝君退席、委員長着席〕
  210. 小川平二

    ○国務大臣(小川平二君) この決議におきましては、加盟いたしました国、ILOの事務局長、ILOの理事会に対していろいろな要請が行なわれておりますが、そのうち四項のgというのに、国際人権年たる一九六八年末までに、労働組合活動を理由として逮捕されまたは刑の執行を受けているすべての労働組合員に対して、大赦、刑の執行の免除またはこれらと同様の効力を有する措置を宣言し、かつ、実施するよう加盟国にアピールするというくだりがございます。わが国といたしましては、この点については実は留保をして賛成いたしたようなわけでございます。この問題につきましては、当時、法務省の見解等も聞いたわけでございますが、これは恩赦というのが国内問題でありまする上に労働運動以外の事由で逮捕された人たちもあるわけで、そういう人たちとの均衡も当然考慮しなければならない。したがって、この部分に無条件で賛成するわけにはまいらないという結論でございましたので、この点については留保をいたしておるわけでございます。  ただいま手続についてお尋ねがございましたが、担当課長からお答えをさせたいと思います。
  211. 広政順一

    説明員(広政順一君) いま先生御指摘の決議に関しましては、直接ILOが加盟国に言っております。それから理事会——ILOは御承知のように理事会がございます。この理事会を通じて事務局長に、各国政府に対してこういうことについて報告を求めるという二段がまえになっておりまして、いま先生御指摘の、また、いま問題になっておりますこの条項につきましては、ILO理事会に対して次のようなことを要請する、その理事会の決定を経まして各国政府に対して要請が来る、こういうことかと思います。
  212. 小野明

    小野明君 大臣にお尋ねしますが、理事国ですね、日本は。そうでしょう。いま大臣が言われたのは、労働組合運動以外のものもあるからと、こういうようなことを言われるのですけれども、何も労働組合運動以外のものをどうせいということではないんですね。労働組合運動によっていろいろな刑事処分を受けているもの、これについてどうせいというのですから、これについて留保するとされたこと自身が私はおかしいと思うのですがね。いかがですか。
  213. 小川平二

    ○国務大臣(小川平二君) 私が申し上げた意味は、労働組合運動以外の理由で逮捕され、あるいは刑に服している人々もあるわけで、それらの人たちもあるいはいろいろ酌量すべき情状があるかもしれません。そういう人たちとの均衡の問題、つり合いの問題をも考慮しなければならないことであって、簡単に賛成するわけにはいかない。これは法務省の見解等も同様でありましたので、そういう意味で留保をしたわけでございます。
  214. 小野明

    小野明君 きわめて不満であります。それは法務大臣がそういうことを考慮すればいいのであって、ILOの特殊な舞台における、しかも日本は理事国であるということで労働大臣が出席されておるところで、他とのバランス云々ということは、私は、少しおかしい、筋が違うのじゃないか、このように考えます。したがって、早急にこの問題は、ILOのこの決議の趣旨に沿って、六八年というのは国際人権年ですから、このILOの趣旨に沿うように努力されるべきではないかと思います。再度御見解を伺って終わりたいと思います。
  215. 小川平二

    ○国務大臣(小川平二君) ただいま申し上げましたような考え方から、いやしくも労働組合運動に関連をして逮捕された、あるいは刑に服している人々に対して無条件に恩赦をする、あるいは減刑をするということについては、慎重にあらざるを得ないわけでございます。この点は、さらに法務省当局の見解をもただしまして研究をいたしてみたいと思います。
  216. 小野明

    小野明君 最後に、公務員共闘が人事院勧告がこのように無視をされたというので非常におこっているわけですね。それで、いろいろ統一行動あたりも計画されているのですが、こういう事態が起こらないように——新聞等で伺いますと、労働大臣はかなり前向きに七人委員会でも努力されておるというように伺っておるのですが、公務員全体がこういう行動を起こさないように人事院勧告を完全に実施をさせるという方向で再度御努力をお願いをしたいと思います。
  217. 小川平二

    ○国務大臣(小川平二君) 勧告を完全に実施いたしますことは、もちろん労働者の福祉のためでございますけれども、同時に、また、労使関係の健全化という観点から考えてみましても、いまのようなことをいつまでも繰り返しておるということは、まことにこれはばかげたやり方だと考えております。かような事態を改善するために、問題が少しでも前進いたしますように、私といたしましては、力はありませんけれどもあとう限り努力をしたいと、このように考えております。     —————————————
  218. 小野明

    小野明君 公務員給与の問題はこれで終わりまして、先ほど午前中に残りました松山の問題で一問だけお聞きしたい。  基準局長、あのときはちょっと時間がなくて申し上げられなかったのですけれども、この病院は三六協定がないんですよね。三六協定がないままに超勤をやらしておる。こういった指導は、現地の基準局は何らやっておられない。それから先ほど申し上げたかったのは、有給休暇でピケに参加をしたという点については、昭和二十七年ですか、朝鮮戦争当時の行政通達でもって局長が言われたわけですが、その点はそれでおくといたしまして、有給休暇をとりながら自宅に帰っておる、あるいは何らそういう行動をしなかった人まで賃金カットを受けておるわけであります。こういう事実を基準局長は一体どういうふうにお考えであるか。これはあまりにもはっきりしておりますから、尋ねなくてもいいかと思いますが、現地ではこういう事態であるということを御認識を願いたいと思うし、あわせて御見解を伺っておきたいと思います。
  219. 村上茂利

    説明員(村上茂利君) 松山日赤病院で、時間延長のための労働基準法三十六条による協定が、協定期間が本年の三月三十一日までであって、その後無協定状態にあるということは、承知いたしております。したがって、協定がないのに時間外勤務をさせれば、労働基準法違反ということになるわけでございます。それは御指摘のとおりであるわけであります。   〔委員長退席、理事大橋和孝君着席〕  なお、午前中にも私お答えしたのですが、労働基準監督のあり方としましては、厳正中立でなければならないという観点から、労働紛争議が起こりましたときには、いわば中立的な立場で臨むということで、これは、日本のみならず、ILOの、労働基準監督官に対するあり方の問題としても示されております。そういう立場をとっておりまするがゆえに、争議中に労使いずれの側においてもこまかく監督調査をいたしまして事を処理するということについては、控え目な態度をとっておるのが従来一貫しております。したがいまして、こまかいことを知らないじゃないかという御不満があろうかと思いますが、御指摘のようなことは私どもも承知いたしております。ですから、時間外勤務をすれば、これは基準法違反を惹起するというようなことも承知いたしておりまして、十分その点は気をつけておるわけであります。  年次有給休暇行使の問題につきましては、一人一人の労働者がどういうような状態であったかという点は、これはことごとくは承知いたしておりません。で、午前に申し上げましたのは一般論を私は申し上げたわけでありまして、個々の労働者につきましてどういう状態にあったかということは、今後調査をいたしまして慎重に判断しなければならぬということで、きわめて具体的な個別的な判断でございますので、何某何がしについてどうこうというような見解を述べることは差し控えさしていただきたい。現地の監督機関を通じまして慎重に調査し、処置をいたしたい、かように存じておるわけであります。
  220. 小野明

    小野明君 有給休暇の問題については、全逓の問題、あるいは国鉄労組と、いろいろそれぞれ法廷で争われておりまして、これは局長が言われておりますような通達のみによってこれを解決することができるかどうかといいますと、私はきわめて問題になっているところだと、こう思うわけです。そこで、この問題は議論をするのはやめますけれども、問題は松山のこの日赤が早く解決を見なければならぬ。しかも、労使慣行を尊重していきながら解決を見るということが一番いいわけです。個々の問題をあげると、有給休暇をとって、しかも何ら振りかえの指示も何もしておらぬのに、たとえば家に帰っておった、ピケに参加した、一律に区別なく賃金カットをやるというような事例が起こっているわけです。これは病院の当事者が知らなかったということもあるかもしれませんけれども、いまから調べていただけばそういう事実が一応だんだん出てくるわけです。そういう事実は事実としてつかまえていただきながら、この病院の問題が団交に入っているようですが、一日も早く前向きに解決するようにやはり指導をしていただくべきではないか、こう考えております。この点について再度見解をお聞きします。
  221. 村上茂利

    説明員(村上茂利君) 私のお答えを申し上げます立場が、労働基準法違反かどうかという点の見解を申し上げるということになりますので、違法ではないというような言い方になるわけでございます。しかし、それは最低の基準でございますから、それを上回るような措置を労使話し合いをしておきめになるということは、これは何ら差しつかえないことでもあり、たいへん願わしいことでもあるわけでございます。したがって、本件の解決について、どういうようなことで処理されたほうが適当かということにつきましては、おのずから判断は別になるわけでございます。そういう点からいたしまして、午前中からの御質問趣旨もございますから、私どもも十分その点を留意いたしまして調査し、処理をいたしたいと思います。     —————————————
  222. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 時間がありませんので、簡単に質問させていただきたいと思います。  現在、労働省の提唱で、職場災害防止のために、職場安全無災害競争というものをやっているわけであります。このことについて、これは全国的に行なわれているわけでありますけれども、その効果について、どの程度の効果があるのか、こういった点から聞かしていただきたいと思います。
  223. 村上茂利

    説明員(村上茂利君) 無災害記録表彰制度は、昭和二十七年から実施をいたしております。終戦後、労働基準法が施行されましたが、災害防止という点につきましては遺憾な点が少なくなかったのでございまして、そこで、無災害記録という、何と申しますか、災害を起こさなかった記録を樹立しました事業所を表彰するということは、もうそれ自体たいへんな価値があることでございますから、それを表彰するということはこれは適切なことじゃなかろうかという観点から、この制度を設けたわけであります。その後、これは、各業種につきまして表彰すべき基準を定めておりますが、年々実績が上がってまいりましたので、数回この基準を引き上げまして、もっと高度な無災害記録について表彰するということになっているようなわけでございます。   〔理事大橋和孝君退席、委員長着席〕  そこで、どのような効果があったかという御指摘でございますが、この制度発足当時の基準と今日とを比較いたしますると、相当な隔たりがございます。基準が非常に引き上げられたということからいたしましても、制度発足当時の記録などはたいていの事業所で守れるようになってきた、ですからそのようなものはもう表彰しない、はるかに高度なものを表彰する、こういうことになってきましたことを見ましても、全般的な無災害という状態の改善があったというふうに私ども考えているわけであります。何%の効果ということはちょっと申し上げづらいのでございますが、いま申し上げました基準がどんどん引き上げられてきているということによっても、無災害状態が一般的になってきた、こういうことが言えるかと思います。
  224. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 非常にけっこうだと思います。それで、それを推進していくために労働者が不利な立場に置かれるというようなそういう傾向はないのかということをお聞きしたいんですがね。
  225. 村上茂利

    説明員(村上茂利君) 御指摘意味があまり広いものですから、私の理解のしかたが不十分かとも存じますが、この制度を実施してまいります過程におきましてもこの無災害記録というのを確立したいために、多少のけががあってももうないしょで済ましておいて無災害記録を打ち立てようとする無理が加わって、そこにいろいろな問題が生じやしないか。たとえば、療養しますについても、労災保険で業務上の療養補償を行ないますといわばわかってしまうというので、健康保険でやって業務上でない扱いにしようという魂胆があるんじゃないかとか、いろいろ指摘されておりまして、私どもも、その点は、何と申しますか、せっかくの制度がそのような無理な作為のためにゆがめられるということがありましては非常に問題でございますから、今日までも十分その点は留意してきたところであります。しかし、何ぶんにも一年間約千件ほどの表彰をいたしております。そういう関係で、絶無かということになりましたら、これはいろいろ実態がございますので、気をつけておりますけれども、その点はさらに念を入れて十分気をつけなくちゃいけないんじゃないかというに私ども留意をいたしておる次第でございます。
  226. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 その点はわかりました。やはり局長が言われるようにそういう傾向がある、こう考えられるわけです、全国的にですね。やっぱり会社が成績を上げるためには、いま言ったように当然労災を受けられるにもかかわらず、これを健康保険で行なうというようなことで、労働者の立場が無視される、こういうような問題が全国的にいって——まあ私の知った限り一例の具体例をきょうはあげてお話し申し上げたいと思うんですけれども、そういった例から見て、全国的にそういう問題があるんじゃないか、こういうふうに思うわけです。  たとえば、千葉の川鉄の問題でございます。今度こういう問題がありました。ポータブルコンベヤーを六人でかついでおった、もちろん仕事中ですね。その事故を起こした人はまん中におってかついでいた。急にそれが重みが加わってきて、そのときに腰に痛みを感じたと、こういうわけです。ところが、安全週間というか、そういう期間中であったため、その痛みをがまんをして、そうして仕事を続けておったわけです。ところが、その間非常にその痛みがひどくなった。椅子にもすわれない、こういうような状態になってきたわけです。そこで、六月に医師の診断を受けた。そうして、七月に手術を行なった。その結果、病名は第四腰椎椎間板ヘルニアというんですね。医師の言うのには、重いものを持ったために、重いものでぐっと押しつけられたようなそういう症状である、こういう診断が下されたわけです。この問題について、会社のほうは、手術の結果を見てそうしてその判定を下したい、いわゆる公傷であるか私傷であるか。それは手術の結果を見て判断をしたい、こういうことであったわけであります。その後、安全管理課あるいは医務課のほうで検討の結果、これは公傷ではない、病気である、こういう判定が下されたわけです。現在その人は入院中ですけれども、結局、労災を受けられないわけです。  こういう問題があって、私はここで問題になってくるのは、一つは、そういう競争をやるためにそういう無理が生じてきているという面も考えられるし、一つは、公傷か私傷かというその判断の基準ですね、それはどういうところに置いて公傷、私傷のいわゆる判断を下すのか、これが問題だろうと思う。どうにでも理屈はつければつけようがあるわけです。その辺は非常にむずかしいところだ。あまりにも無災害ということを強く打ち出されることによって、その推進をはかるために、そういった問題が起きないとは言えない。現在起きている、こう感じられるわけです。公傷と私傷のその境目、判断の基準、これはどういうところを基準にして判定されるのか、この点はどうでしょうか。
  227. 村上茂利

    説明員(村上茂利君) お話の点を伺っておりますと、二点ほど問題があるように思います。一つは、無災害記録を樹立したいために無理をしたかどうかという点については、災害とは何かという基準がございまして、一日休むという休業傷害があったらそれはだめだぞと、こうなっております。休まなかった場合にどうなるかと申しますと、多少異常がありましてもそれは無災害扱いになってしまうというので、無災害記録とは何かという記録を計算する基準がありますので、それに合致するかどうかという問題でございます。しかも、御指摘の点は、だいぶあとになりまして入院されたというようなことでございますから、これを直ちにもって無災害記録の制度に結びつけるということはいかがかと。ケースとしては、むしろ限界が不明確なケースでございます。  私が言ったのは、むしろはっきりしているのに、事故がありまして、労災で補償給付を受くべきものを健康保険でやったというような例をあげたのでございますが、御指摘の件は、腰痛そのものについては業務上の判断が非常にむずかしいという基本問題があるわけでございます。したがいまして、これが第二の問題でございまして、無災害記録の問題とは別に、そのこと自体が非常に認定が困難な問題でございますから、これはむしろそれ自体で今後私ども考えていかなきゃならぬというふうに存じております。  それにつきましては、これは先生も御承知のことかと存じますが、いわゆるギックリ腰というような状態になりますについては、年齢の関係とか、職歴の関係とか、いろいろ調査をいたしまして、その腰痛症を生じました原因が、直接原因は何か、あるいは共働原因があったかどうかというような点を医学的な立場から判断をいたしまして処理することにいたしております。この点につきましては、腰痛症の専門家会議を持ちまして相当慎重に検討いたしました結果、新しい腰痛症の認定基準を数カ月前にきめたようないきさつもございまして、それによって医学的判断によって私ども処理したいと思っております。  なお、会社の厚生係かがどう言ったとか、こう言ったというのは、これは適当でないのでありまして、そういうケースにつきましては労働基準監督署においで願いまして申請手続をしていただきたい。その判断は監督署において行なうわけでありますから、そういう点は私ども十分注意をいたしまして指導いたしますから、よろしく御協力を賜わりたいと思います。
  228. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 この問題については、常識的な判断としますと、いま言ったように、ポータブルコンベヤーをかついでおった、それで重みが加わってきた、そのときから痛みを感じ出した、こういうことなんです、事情としてはですね。いろいろなそれを判定していく基準はあるでしょうけれども、常識的に考えた場合には、そういったことで明らかに業務上の災害である、こういうふうに考えるわけです。これは常識的な考え方ですね。
  229. 村上茂利

    説明員(村上茂利君) ちょっと申し上げますが、その事実は私はよく知りませんが、三人でかついでおって、まん中の一人がその重さで腰痛症を起こしたというようなケースですから、ほかの二人がどんな重みを感じたか、そこら辺の問題があろうかと思います、これは想像の話ですから恐縮ですが。そういう問題がありますから、これは事実を十分調査いたしまして処理せざるを得ない。むしろ御指摘ケースは反証があげられるようなケースでございまして、ほかの二人の者はどうだったか。三人でかついでおって、一人だけなって、ほかの二人が何でもなかったか、よく調査すべき事柄であろうと思います。  要するに、これは事実認定の問題でございまして、御当人だけで処理せずに、これは監督署にお申し出いただきまして、私どもはこういうケースをよく扱っておりますので、十分注意をいたしまして処理をいたしたいと思います。
  230. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 いまのあなたの考え方は、私はおかしいと思う。三人でかついで、まるでほかの者は何もないのに、その人一人がそういうふうになったと、だから公傷とは認められないようなものの言い方というのはおかしいと思うんですよ。いまあなたのお話を聞いていると、そういう感じです。そんなことでなくて、私はごく常識的に考えた場合にはそういうことが言えるのだということです、業務中にそういうものをかついで。腰の丈夫な人もおれば、弱い人もおると思う。そういうことを言い出すと、あなたの腰はこういう状態だから、これくらいの感じが出てこなければ公傷と言えない、そういう基準まで設けなきゃならぬということになる。その人の体の状態であれです。問題は、業務中に起こした傷である、こういった判断が成り立つか成り立たないかという問題を言っているわけです。  そこで、いま、あなたが、最終的なそういった公傷であるか私傷であるかということの決定権は監督署が持っておるのだから、それに申し出てもらいたい、こういう話であります。この問題を問い合わせた。そうしたら、どういう返事があったかといいますと、それは会社のほうでは口頭で報告したと、こういうわけです、監督署のほうに。ところが、監督署のほうでは、口頭で聞くことはたくさんある、だからその問題がどうであるかこうであるかということは覚えてない、こういう言い方なんですよ、あなたの信頼する監督署が。そういうことでは、さっきも厳正中立であると言うけれども、これは厳正中立ではない。そういう問題が現実に起きておる。また、監督署の態度自体が、また、調査の段階が、そういう無責任状態の中でそれが私傷であるというふうに判定されて、そして入院して苦しんでおる、こういう労働者がおるわけです。そういうケースは、私は、全国的に見て相当あると思う。ですから、この問題それ自体は局部的な問題かもしれませんけれども、全国的に言えばまだまだ相当あるのじゃないか、そういうことを憂えていま話を進めているわけです。そういう基準監督署の態度であったわけでありますけれども、そういった点についてあなたはどうお考えになるか。いま、厳正中立である、最も間違いないような話しぶりをなさっておったわけです。そのあなたが信頼している監督署のほうの態度はそういう態度である、こういうことなんです。
  231. 村上茂利

    説明員(村上茂利君) これは制度の問題と個別のケースについていろいろギャップがございまして、いろいろな面で御指摘をいただくわけでございますが、ただ、考え方といたしましては、まあ労働者個人に対しましてはいろいろ使用者の圧迫があるだろう。しかし、みずから監督署に申告ができる。そういう申告をした場合に、それを理由にして解雇その他の不利益な扱いを使用者はしてはならぬという規定が百四条の規定に設けられているというような仕組みになっているわけでございます。口頭だからはっきりしなかったかどうか、そういった点、せっかくこの機会に御指摘をいただきましたので直ちに調査をいたしますが、そういう点、間違いのないように処理をいたしたいと思うのであります。  なお、全国的にどうこうという点につきましては、いろいろな問題が考えられますけれども、私ども平素からそういうことのないように願っているような次第でございまして、今後とも十分留意をいたしまして処理をしたいと考えております。
  232. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 まあ調査をしてもらえばそれでおしまいということになりますけれども、こういったことが、この問題だけでなくて、いままでもあったと思うのです。そういう中でいまだにこういう問題が起きているということなんですけれども、これは労災保険制度それ自体がやはり労働者のためのものである、そうじゃないですか、と私は思うわけです。災害のときにそれを守ってあげる。こういう問題について、何となくそういう機関の人たちは、やかましいことを言って何とかその対象にならないようにしていくような、そういうような姿があるように感じられるのです、これは私が感ずるのです。そういうものではない。あくまでも労働者が災害を受けたときにそれを守ってあげるためにつくられた制度である。ですから、もっともっと労働者側に立って、そうしてそれがもっと常識的に判断されて、あまりやかましいことを言ってそれに適用しないような方向に理屈を積み重ねていく、そういうようなことでなくて、もっと常識的に、もっともっと労働者の立場に立ってこれが判断されていくという、そういう方向に進めていくべきではないか、また、そういう考え方でいくべきではないかと思うのですが、その点についてはどうですか。
  233. 村上茂利

    説明員(村上茂利君) 趣旨においては私もさように思います。ただ、労働者保護の制度でございますが、使用者の無過失責任という立場から全額使用者の負担において補償する制度でございます。そこで、日本のみならず、先進諸国におきましても、業務上であるか否かという点についてはいろいろ問題があって、一つの理論構成ができているわけでございます。ですから、そういう理論も無視して、あいまいのものも全部保護するのだということになりますと、いろいろ問題がありますので、そういった制度の存立の基礎というものを考えつつ公正な運用を期していきたい。しかし、現在は、保険経済も安定しておりますので、金の面から認定をきびしくするとか、そんな要因はないわけでございます。したがいまして、冒頭に申し上げましたように、先生の趣旨は十分私わかりますので、今後とも十分注意をいたしまして処理してまいりたいと思います。
  234. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 もう一点。金の面からする問題はないと。そうなると、この運動自体が問題だということになるわけですよ。それをあまりにも強く打ち出せばそういう弊害も起きてくる、こういうことになるわけです。ですから、その辺のところをもっともっと労働省のほうとしては監督指導ということをしなければならぬ、こういうように私は言えると思いますがね。  いずれにしましても、こういう問題が全国的にあると考えられるわけでありますので、十分にこういった点には注意を払っていただきまして、そういった競争をやるのはけっこうだけれども、それによってかえって労働者が泣き寝入りをしなければならぬ状態になったのでは、事目的と相反するいわゆる現象が起きてくる、こういうことが言えるわけです。なぜ私がこんなことを言っておるかというと、川鉄あたりではいろいろなものがあるわけですよ。たとえば鋼津の中に足を突っ込んで大やけどをした。翌日病院に入院したにもかかわらず、五人も六人もの人が来て、さあ職場へ出ろといって引っぱり出すというような、そういう無理がある。それはなぜそんなことをしなければならぬか。底に流れるものがあるわけです。そういう問題、あるいはまた、いま私が言っておる問題にしても、将来の君の立場もあるのだから、あまり会社に対してがたがた言わないほうがいいだろうというような宣撫工作みたいな、そういう姿を私は見ておる。そういう中でそれがそのままの状態で置かれてしまったのでは、ほんとうに気の毒という以外にない。そういった点を、厳正公正な立場から労働基準監督署はこれを監督指導していく、そうなければならぬと思う。そういう実例を私は見てきた中でいま話を進めておるわけです。ただいろいろな法律的にあるいはまた基準がどうであるか、そういった文章の積み重ねみたいなものをもっての判断でなくて、現実の問題としてこういう事実があるのだ、だからいまこうやって話を進めておるわけです。ですから、十分そういった点を局長においては指導監督をしてもらって、あなたの言うように、ほんとうに監督署は厳正中立な立場で、もっともっと被害者の立場というものをその話ももっともっとよく聞いてあげる、そして事情ほんとうにわかっていく、こういう態度が大事だと思う。今回の場合には、そういう姿がどこにも見られない。そういうものがあったかどうか、それもわからない。これでは何のためのいわゆる基準監督署であるかわからない、存在意義をなさない、こう言いたいわけです。そういったことを強く申し上げて、終わりたいと思います。     —————————————
  235. 中村英男

    ○中村英男君 私はむち打ち病のことを質問しようと思ったのですが、午前中に厚生省のほうで大体お伺いしたし、労働大臣が見えたからいろいろなことを質問しようと思ったが時間もないし、きょうは質問してもはんぱな質問になるから、私は質問をおいておきます。  それで、私はお願いしたいのは、ここで要望しておきますが、いずれこの問題は取り上げなければいかぬと思っているのですが、これは四十二年度に三百万人くらいむち打ち病はあると思われる、そういう事故が推定されるそうです。そのうちに、十六人くらい去年自殺しておるそうですね。これは、そういう自殺された原因にはたくさんあると思うのですよ。専門のいい医者がいないとか、あるいは施設が少ないとか、あるいはなおったときに職場をどうするとか、あるいは病気の療養をどうするとか、いろいろ問題があると思いますが、これは近代病ですから、ここ四、五年の傾向ですから、労働省所管で検討はして取り組んでおいでになるでしょうが、取り組み方が不十分であるということが私は大まかにいって言えると思います。ですから、労働省所管の中で急速に速度を早めて、たとえば労災法であるとか、失業保険法であるとか、その中に適応しないものを改正していかなければならぬという問題がたくさんあると思います。そういう問題を一々取り上げたいのですが、時間の関係できょうはちょっと無理ですから、労働省の所管としてこのむち打ち病に対処しなければならぬ問題点を御存じでしょうから、取り組んでいただきたいと思います、十分早く。それで、私も時期をみてその点をお伺いしたいと思いますから、きょうははんぱな質問になるから、要望だけしておきます。
  236. 村上茂利

    ○政府委員(村上茂利君) むち打ち症の問題は非常に重要な問題でございますので、労働省としても、その治療対策、それから治療したあとの労務管理面における罹患者の措置の問題その他を含めまして、この問題についての対策を検討しておるわけでございます。しかし、後日また御質問があるそうでございますから、その一々につきましてはその際にまた答弁さしていただきます。
  237. 大橋和孝

    大橋和孝君 関連で労働省のほうにちょっとお伺いしますが、資料の要求をしておきたいと思います。  いま、交通労働者なんかでは、そうした問題が非常に大きな問題を起こしているわけでありますから、それに対して労働省のほうではいままでどういうふうな処理をされたり、あるいはまたどういうふうな考えを持っておられるか。いまおっしゃっているようなリハビリテーションの問題だとか、あるいはまた、いまおっしゃっているような自殺をしなければならぬような状態にまで追い込まれているという労働者もたくさんおるわけでございますから、これは、老人である場合、あるいは打ち切られてしまったというような場合、いろいろあるそうでございますが、労働省のほうで集められておられる資料を一ぺん出していただきまして、それについて私どものほうで検討さしてもらいたいと思います。
  238. 村上茂利

    説明員(村上茂利君) 私どもが承知いたしておりますのは、労災補償を受けたむち打ち症患者という点につきまして把握いたしておりますが、その後の状態がどうなっておるかという点につきましては、本年度予算でその後の実態調査をしたいと、かように存じておりますが、まだ集計はいたしておりません。しかし、現在提出し得るものにつきましては、早急に調製いたしまして提出いたしたいと思います。
  239. 加瀬完

    委員長加瀬完君) 本日の調査はこの程度にとどめておきます。  次回の委員会は公報をもってお知らせをいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十三分散会