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1968-09-16 第59回国会 参議院 災害対策特別委員会 閉会後第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年九月十六日(月曜日)    午前十時十三分開会     —————————————    委員異動  九月十日     辞任         補欠選任      中村 波男君     沢田 政治君  九月十六日     辞任         補欠選任      八田 一朗君     古池 信三君      松本 英一君     羽生 三七君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         足鹿  覺君     理 事                 小林  章君                 佐藤  隆君                 武内 五郎君                 塩出 啓典君     委 員                 上田  稔君                 古池 信三君                 田口長治郎君                 森 八三一君                 沢田 政治君                 成瀬 幡治君                 羽生 三七君    国務大臣        農 林 大 臣  西村 直己君        運 輸 大 臣  中曽根康弘君        建 設 大 臣  保利  茂君        自 治 大 臣  赤澤 正道君        国 務 大 臣  田中 龍夫君    事務局側        常任委任会専門        員        中島  博君    説明員        内閣総理大臣官        房参事官     川上 幸郎君        行政管理政務次        官        田村 賢作君        農林大臣官房参        事官       荒勝  巌君        農林省農林経済        局長       亀長 友義君        農林省農地局長  中野 和仁君        林野庁長官    片山 正英君        建設省河川局長  坂野 重信君        建設省道路局長  蓑輪健二郎君        日本国有鉄道施        設局長      松本 文彦君    参考人        飛彈川バス事故        遺族会会長    秋山 茂則君        岐阜県美濃加茂        市長       岸東 八郎君        京都大学教授   矢野 勝正君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○災害対策樹立に関する調査  (八月中における集中豪雨等による災害対策に  関する件)     —————————————
  2. 足鹿覺

    委員長足鹿覺君) ただいまから災害対策特別委員会を開会いたします。  まず、委員異動について報告いたします。  去る十日中村波男君が委員辞任され、その補欠として沢田政治君が選任されました。また、本日八田一朗君及び松本英一君が委員辞任され、その補欠として古池信三君及び羽生三七君が選任されました。     —————————————
  3. 足鹿覺

    委員長足鹿覺君) それでは災害対策樹立に関する調査議題とし、前回に引き続き八月中における集中豪雨等による災害対策に関する件について調査を行ないます。  本日はお手元に名簿を配付してございます参考人方々の御出席を願っておりますので、これより参考人方々から御意見を承ることにいたします。  この際参考人方々一言ごあいさつを申し上げます。  本日は御多用中にもかかわらず、本委員会のために御出席いただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  特に秋山参考人におかれましては、多数のとうとい人命を失いました未曽有の今次災害犠牲者の御遺族の会を代表して御出席いただいております。ここに御遺族方々に対し心からお悔やみを申し上げます。どうか御遺族方々も今次災害にめげず、がんばっていただきたく、心から念願をいたす次第でございます。  なお、本日の議事の進め方でございますが、最初に秋山参考人に、次に岸参考人、次に矢野参考人順序で御発言いただき、そのあと委員各位からの質疑に入っていただきたいと存じますので、よろしく御願い申し上げます。  それでは秋山参考人からお願いいたします。
  4. 秋山茂則

    参考人秋山茂則君) ただいま御紹介いただきました、私、このたび結成されました遺族会会長をいたしております秋山茂則と申します。  このたびは、この飛騨川バス転落事故におきまして、たいへん政界並びに官界の方々にいろいろと御迷惑をかけたり、あるいはいろいろ御援助いただきまして、まことにありがとうございました。ことに白川並び美濃加茂地方方々遺体捜索に対する御尽力に対しては、心から感謝申し上げる次第であります。  ただいま委員長さんからのお話で、御意見をというお話でございますけれども、私ども先日佐藤総理大臣現地視察にお見えになりましたときに陳情を申し上げましたような内容と変わりはないと思いますけれども遺族気持ちといたしまして、現在まだ十三遺体未発見でございます。その遺体捜索全力を尽くして最後の一体までも捜査をお願いしたいというのが、現在発見されていない方の遺族気持ちでございまして、ぜひともそれを実現していただきたいと思います。  それから、事故発生以来一カ月近くたっているにもかかわらず、現在責任がどこにあるのか、原因はどうなっているのかというようなことにつきまして、新聞なんかで、刑事責任は問えないとかかいま見るのですけれども、私ども遺族といたしまして、どうしてもっとはっきりと早く結論が出ないのか、たいへん疑念を抱いていると同時に、補償の問題につきましても、できるだけ早く何らかの形で自賠償法等を御考慮いただきまして、補償のほうを実現していただきたい、これも遺族会としてぜひお願いしたいことでございます。  それから、遺族方々のうちに両親をなくされた方がおみえになります。その方に対する遺児の援護についてぜひとも超党派的にひとつ御協力いただきまして、何らかの措置をお願いしたいと思います。  事故発生原因等につきまして、私どもいろいろと考えておるのでございますけれども、何かバスの運行にも問題があるようですし、また、あれだけの大量の土砂が一度にあそこへ落ちてきたということにつきましても、どうしてあんなに土砂がたまったのか、上のほうは一体管理のほうでどうなっているのか常にそういった面で、パトロールなども道路面だけではなくて、その山の上のほうまでもやっていただいておったならば、まあこのようなこともなかったのではないかと、いろいろと検討をしておりまして、私ども遺族といたしまして、先日、陳情を申し上げた内容をぜひとも実現していただきたい。それから、こういった事故が起きないように、行政の面におきまして、ひとつ御努力をいただきたい。私どもの願いとしては大体こんなところでございます。
  5. 足鹿覺

    委員長足鹿覺君) ありがとうございました。  では、次に岸参考人お願いいいたします。
  6. 岸東八郎

    参考人岸東八郎君) 私、美濃加茂市長岸東八郎でございます。  先般の集中豪雨災害に際しましては、皆さま方のお忙しいときに、二十六日でございましたが、現地視察をしていただきまして、たいへんどうもありがとうございました。  その後、各方面の御支援、御協力によりまして、一応の復興を一生懸命させておるわけでございます。が、しかしながら、私のほうの市といたしましては、かつてない集中豪雨損害が十二億二、三千万円というような膨大な損害にのぼっておるわけでございまして、これは先般の陳情書にも出ておるのでございますが、まだまだ今後においても出てまいるものと思っております。それはなぜ今後出てくるかと申しますと、市単の分の農地復旧というものが問題になってくるわけでございまして、その点、ひとつよろしくお願いをいたしたいと思います。しかしながら、私のほうの財政力というものは、ごたぶんに漏れず、自治三分の一でございまして、今回の災害の、国にお願いする災害市単災害金額とを入れますと、要約して二億五千万から三億くらいの地元負担ということになるわけでございますが、先ほど申しておりましたように、自主財源も、そうして給料とか総務費というようなものを相殺いたしますと、もうそのような予算が予算化されないわけでございますので、とにもかくにも、今回の災害に対しまして激甚地の指定をお願いし、高率な補助起債等によりまして、この災害復旧につとめなければならないような私のほうの状況でございます。この問題につきましては、いままで足鹿委員長さんにも、あるいは委員方々にも、極力お願いをいたしておりますのでよくおわかりのことと思っております。  そこでもう一つお願いいたしたいということは、個人災害の問題でございます。言うならば、家が全壊してしまったのに対しまして、市からは一万円の見舞いを出しました。また、なくなられた方々に対しても、美濃加茂市だけで七人ございますが、この方々にも一万円の見舞いを出した、あるいは半壊の家、あるいは全壊の家等々においては五千円、三千円というような、重傷者にも五千円、あるいは床上浸水の方に対しては五千円というような順序見舞いがしてあるだけであるわけであります。一人死亡して一万円の見舞いがされておるということは、まさに美濃加茂市の財政力においてはこのような見舞いをし、あるいは国においても災害復旧に対しまして四戸の組み立て式のハウスをいただいておるのでございますが、七戸市において建て、四戸は中央で、そうして三戸は市単でやった次第でございます。で、そういうふうにして、修繕費においても国のほうからは十六万もらったのでありますが、そういうようなものもなかなかそれだけではできるものではございません。  また、田畑においての市単でございますが、これまた自分財政だけでは、この災害復旧はどうにもならないということでございます。  また、今回の集中豪雨というものが、非常に狭いところに三百二十ミリというような集中豪雨のために、山が非常にくずれた個所があるわけであります。緊急砂防で、とにかく今後集中豪雨によってまたまたそういうような家に土砂が流れ込むというようなことのないようにお願いするには、私は緊急砂防お願いいたしたいと思いますが、これが現在の法律によりますると、下に五十戸程度の家がないと緊急砂防の査定が受からないというような状況であるようでございますが、私は今回のような未曽有のかつてない集中豪雨による山くずれに対しては、そのような法律を大いに大幅に広げていただきまして、でき得る限り下にある住家に対しての安定をはかっていただくようにいたしたい、これが特にお願いをいたしたいのでございます。何と申しましても個人災害については、市においては何らの大きな弁償ができませんので、その点お願いいたしたい。  と同時に、いま申されました白川バス転落の問題でございますが、私のほうの市においても、全力をもって消防団あるいは自治会、あるいはこの自治会においての方々において捜索もいたしましたが、私のほうにおいて遺体収容所安置所を設けさしていただいた次第でございます。これは市にとりましては公共の建物を四つお貸ししたわけでございますが、こういうような建物も十二日に引き払われたのが二つと、少し前に引き払われたのが二件あったわけでございまして、四カ所のうちが、もう二日使っていただくと大体一月というようなことでございまして、九十二体の遺体を引き受けたというようなことで、非常にその会場も、現在市民感情といたしましてもいろいろ問題を受けておりますが、先般も市民皆さんから、かようなことで御使用いただいたのだから、もうここらで結婚式場だとかあるいは行政会合場所であるから、建て直したらどうかと言われまして、この問題も県にお願いをしておるわけでございますが、これはそういうものに対しては起債のワクが非常に狭められておるようでございますので、私はやはりこういうような建物に対しましても災害起債をもお認めいただきまして、単独起債だけではなくして、要するに今回の災害起債も同時にお願いをいたしたい、さように考えておるような次第でございます。  七人の犠牲者の中には、おじいさん御夫婦、弟さんと妹さんがなくなられまして、そうして二人の娘さんがここに残された。もう一軒の家は働いている御主人と中学三年のむすこさんがなくなられて、奥さんと子供さん二人が残されたというような悲惨な状況でございまして、いろいろ個人補償に対してもむずかしいこともあろうかと思いますが、よろしくひとつお願いをいたしとうございます。  この写真を一枚見ていただいてもわかりますが、この山が、山くずれのために河川がはんらんいたしまして、そうして完全に耕地、畑がこのようなものになってしまった、荒れはててしまった、このような写真でございますし、あるいはこの写真は、河川が亀裂しましてそうして向こうとこちらに割れてしまって、農地が壊崩してしまった、こういうような現状でございます。またこの写真もそのようにして大災害を受けたわけでございまして、全く田畑が石畳のようになってしまった写真でございまして、これは先般皆さん方現地を見ていただきまして、よく御承知のところと思っておりますが、そういうような非常に私ども災害も大きいものがございます。先般足鹿委員長さんにおいでいただいたときに私が陳情申し上げておるところの写真をちょっと持ってまいったのでございますが、もうこの災害地のことに対しましては、非常に皆さん方の御支持をいただいておると思いますが、何ぶんにも私どもにとりましては、未曽有災害でございますので、特にひとつ激甚地に御指定いただきまして、高率な補助をぜひとも御願いいたします。そうしてもって、復興に最善の努力をいたしたいと考えておりますので、よろしくひとつお願いいたしとうございます。
  7. 足鹿覺

    委員長足鹿覺君) ありがとうございました。  それでは次に、矢野参考人お願いいたします。
  8. 矢野勝正

    参考人矢野勝正君) 私は京都大学防災研究所長をやっております矢野勝正でございます。  本日の議題は、八月中における集中豪雨等による災害対策ということになっておるそうでございますので、まあ主として本年八月に発生した災害問題を中心にいたしまして、若干昨年、一昨年などの災害も加味いたしまして、お話を申し上げたいと思います。  この一、二年非常に特徴的に考えますことは、まあ第一に、わが国中小河川はその治水対策がまだまだおくれておりますので、未改修の中小河川が非常に各地ではんらんして被害を与えているということであります。  第二番目に同じく中小河川と言えますけれども都市河川、特に住宅地が非常に稠密化いたしまして、そのために新しく開発された住宅地を流れる河川被害が顕著に多いのでございます。これは今後も起こる問題でございまして、大阪の寝屋川とか神戸市諸河川など代表的なものですけれども都市が開発されまして道路が舗装される。それから田畑が宅地になって家屋が建てられるということになりますと、同じ雨でも流出してくる量が非常にふえます。三割、四割、場合によっては七割といったような程度流量がふえます。早く出ます。そういった関係で従来たとえば百立方メートル毎秒でやった河川計画も、そういった場合におきましては、これを百五十とかあるいは百八十といったふうに、計画高水雨量を修正しなければならない。そういったような河川都市河川の問題として大きくクローズアップされておる。この問題を解決する必要があると思います。  第三番目には、山地災害でございます。わが国災害は平地に起こる災害山地に起こる災害を見てまいりますと、まあ半々、ところによってはむしろ山地災害のほうが多いといったような現状でございます。山地災害といいますと、まあ山に起こる災害でございますけれども、大別いたしまして、地すべりによる被害、それから山くずれによる被害、山くずれの中にはいわゆるがけくずれも含めまして、山くずれによる災害それから土石流による被害、土と石がまざって流れて、新聞には鉄砲水というようなことばが使われておりましたが、土石流による被害、こういったようなものがございます。それでこの八月に起こりました災害は、まあ四号台風あるいは七号台風あるいは十号、十三号といったような台風が連続して起こりましたが、幸い台風そのものとしては御承知のようにそう大きなものではなかったわけですけれども、その台風が不連続線を刺激いたしまして、各地集中豪雨発生したことも御承知のとおりでございます。ところが、集中豪雨というのは、一体どの個所にどの程度の規模でいつ起こるかということは、今日予知することがほとんど不可能に近い状態でございます。地震の予知が困難であるがごとくに、集中豪雨予知が非常に困難でございますので、なかなかこの対策のめどが立ちにくいのでございます。日本全国集中豪雨というものがあり得るから、日本全国じゅうそ対策を立てるというなら、それは簡単でございますけれども、それは非常に膨大な金になりますので、少なくともこの集中豪雨予知して避難するといったようなことができれば非常に幸いなのですが、そこにも至っていないというようなわけでございます。  それからまあ今回飛騨川バス転落事件などを中心にしまして、若干土石流の問題について御説明いたしたいと思いますが、土石流という現象は何も今日、この一、二年顕著に起こったわけではございません。昔からあった問題でございます。たとえば、昭和十三年の神戸の大災害であるとか、あるいは昭和二十八年のいわゆる門司の風師山の土石流とか実は枚挙にいとまないことでございます。しかしながら、特に最近は、この現象が顕著になっております。なぜ最近に限って顕著になったかという理由は、私にもよくわかりませんが、たとえば足和田村の、あるいは九頭竜川の、西谷村の土石流、それから昨年は神戸、呉、佐世保などに大きな土石流発生しております。新潟でも加治川の問題は別としましても、櫛形山系に非常に大きな土石流発生しております。今回起こりました飛騨川事故も、私まだ十分調査もしておりませんが、一回現場を見た程度でございまして、確定的なことは申し上げかねますが、大体土石流というのが原因であったように思うのであります。  それでは土石流というのは一体どういうものか、どういうときに起こるのか、どういった被害を与えるのかといったような問題がございますけれども土石流研究は非常におくれておりまして、私たち専門分野の学者なども土石流研究をしている人は、非常に少ないんであります。これはもういろいろ原因がございます。たいへん防災上重要な課題でございますので、研究しなければならないのですけれども土石流というものを正直なところ、見たことがある人は非常に少ないのであります。かく言う私も、実はまだ土石流研究しておりながら、土石流というものを見たことがないのです。まあおそらく実際に土石流を見たという人は、日本全国にも数を数えるくらいじゃないかと思うのであります。山地現場におられる人たち建設省とかあるいは府県のあるいは砂防関係であるとかあるいは営林署関係の方、こういった方々が見られておるというくらいでありまして、土石流発生しておる写真あるいはムービーといったようなものはほんの二、三しかない。あるいは隠れた資料があるのかもしれませんが、私もムービーで見得たものは二つしかありません。それから写真なんか見ましても非常に少ない。起こった後の姿は、これは皆行って見られますし、それから写真もとられますが、現実に起こっておる姿を見ておる人はないわけであります。そんなわけでこの研究をするにしましても、実物をまだ見てない。いわんやその流速がどんなになっておるのか、どのくらいの石ころがどんな状態で流れておるのかといったようなことは、なかなかつかみがたいわけであります。  大体土石流というのは、もちろん昼間も起こりますけれども、よく夜中に起こりまして、しかも洪水というものと違いまして、まあ二十分かせいぜい三十分くらいであっという間に怒濤のように土石が流れてしまうといったようなことでありますので、これが見えにくい。私もこれを見ようと思いますけれども、全く命がけでありまして、へたをすると自分も流されてしまいますので、たいへんその現象をつかむことができないわけであります。あれやこれやで土石流というものは実態がなかなかつかめていないわけでございますが、まあしかし現地などを歩きまして、いろいろ考えてみますと、土石流発生原因といいますか、様相な見ますと、二つございます。一つ谷間土石が山腹が崩壊してくずれまして、これは一瞬にしてくずれた場合でございます。長年にわたってくずれた場合でもいいですが、それが谷間を埋めていわゆるダムをつくる。大きいものもありましょうが小さいものもありましょうが、ダムをつくる。そのつくられたダムに水がたまって、それが決壊して怒濤のように一瞬にして下流に流れる。こういったような土石流と、もう一つダムはできなくても長年にわたって谷間土石がたまります。場合によっては二メートル、三メートル、四メートルといったように基盤の上に砂れきが堆積する。そこへ刺激的な豪雨があって水が流れますと、この堆積しておった土砂が一挙に流れ出すというわけでございます。で、いずれの場合にも、この土石流の流れというのは、土石がずるずると勾配を流れるんではなくて、いわゆる段波状をなしまして流れます。その落差は二メートル、三メートル、場合によっては四メートル、五メートルといったような段状をなしまして土石が流れるといったようなわけでございまして、その圧力も、その速度も、普通の砂れきが流れるのとは全然違います。したがって、現場に行ってみますと、まあ今度の場合もそうですけれども、非常に高いところにまで水位の痕跡がございます。そんな高いところまで洪水が流れたことを水理学的に立証することはできないのです。たとえば今度の災害なんかでも、わずかに〇・二平方キロぐらいの面積を持ったところへ、そこへ、かりに百ミリの雨が降ったにしましても、流量にしまして、ほんとに四トン、五トンといったような小さな流量です。そんな流量でそんなに高い洪水痕跡ができるわけはないのでございますが、その理由説明がなかなかつきかねるのでございますが、私どもは、どうも段波状をなしている、普通の川底より三メートル、四メートルも高い砂れきが流れる、そのために洪水痕跡が非常に高いところまで起こるといったように考えておりますが、先ほどから申し上げますように、何しろ現実の事象を見ておりませんので、確言いたしかねます。このように土石流という現象は非常にまあ、現在のところ解明しにくい。いわんや発生原因なり、発生の機構などにつきましても、よくつかみがたい状態であります。しかしながら土石流というのは、先ほど申し上げましたように、各地集中豪雨がございますと起こっておりますので、この研究は万難を排してやらなければならないものと存じております。  それから、一言ちょっと申し上げたいんですけれども、よく道路暗渠が埋設されております。大体谷間から出てくる水を受けるためにコンクリートパイプなどが埋めてあります。このコンクリートパイプは、まあ場所によって一メートル級、二メートル級、いろいろございますけれども、まあ洪水を流すということだけの考え方じゃなくて、必ず立木、二メートル、三メートルというふうな立木が流れてきます。あるいは直径一メートルといったような大きな石が流れてきますので、そういうものが必ずといってもいいくらい暗渠に詰まりまして、そのために水が流れない。流れないどころか土石がそのためにたまって、あのような騒ぎを起こすというようなことが間々ございますので、なかなか土石流の規模がどの程度に起こるかということはわかりかねますけれども、極力小さな暗渠は橋梁に変えていくという方針が必要じゃないかと思いますけれども、まあこういうことを言いましても、実はそういったような国道に直角に流れる土石流発生しそうなところというのは、全国に何万とありまして、そういった数多い個所について、全部そういった対策を講ずることが財政上できるかできないかは、私どもはあまり知りませんけれども、まあたくさんあるにしても、個々に谷間を検討して、特に緊急度の高いものをどうやって判定するかは、まだ学問的には自信ありませんけれども、たとえば岩石の堆積が非常に多いものだとか、周辺の岩石から見て崩壊が考えられるとかいったようなものについて、緊急度の高いものを選んで、そういったような対策を講ずる必要があるように思います。  大体土石流のことにつきましてお話をいたしましたけれども、そのほかにも、もちろん先ほど申し上げましたように、がけくずれ、山くずれといったような、これこそなお予知が困難な現象がございます。それから落石といったような問題もございますし、その次には寒いときにはなだれといったような問題がございまして、道路運営の保安を期するためには、もろもろの好ましからざる現象発生することがありますので、そういった面についても、十分これから検討いたしまして、研究いたしまして、対策を講じる必要があるようなに存じます。  ごく概要を、ちょっと私見を述べまして、また御質問がございましたらばお答えさせていただきたいと思います。
  9. 足鹿覺

    委員長足鹿覺君) ありがとうございました。以上で参考人方々の御意見の開陳を終わります。  それでは参考人に対し質疑のある方は、順次御発言を願います。
  10. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 矢野先生にお尋ねしたいと思うのですが、国立もございますですね。国も防災研究所を持っておりますが、それとの関連は何かございましょうか。
  11. 矢野勝正

    参考人矢野勝正君) わが国には防災研究の機関といたしましては、国立のものとしましては、科学技術庁に国立防災科学技術センターというのが御承知かと思いますが、ございまして、そこで防災関係研究している。大学関係としましては京都大学防災研究所が、そのほかに東京大学に地震研究所、あるいは北海道大学の低温科学研究所といったような二、三災害関係のものがございます。御質問の趣旨は、大学関係防災研究所と、それから科学技術庁の防災センターとの間にどういう関係があるか、こういう御質問の趣旨だろうと存じますが、まあ直接の関係というのはございませんけれども、つまり文部省と科学技術庁との間の直接の関係はございませんけれども、やっていることが大体同じことでございますから、お互いの間の連絡はしょっちゅう行なっております。たとえば国立の防災センターの業務を運営するために運営委員会というものがございますが、その運営委員会委員に私もなっております。毎年の毎年研究する課題をきめる場合に意見を述べるというようなことをやっております。ただし、共同研究、お互いにあるいは金を融通し合ってやっていく、そういったようなことはいまのところやっておりません。大体国立防災センターは国の要請する研究課題をやる、どうも山地災害が必要だから国としてそういう研究をする必要があるのだ、あるいは波の研究が必要だから波の研究をやる、といったような国の要請に基づく研究防災センターのほうでやる。大学はこれは大学の自治の問題がございまして、研究者が自分の好きな研究をやるといったようなことでございまして、業務命令的なものは大学にはございませんので、お互いに連絡はとりますけれども、共同で研究をするといったようなこと、あるいは災害時に一緒に行く、そういうこともあまり行なっておりません。そんなお答えでよろしゅうございますか。
  12. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 たいへん失礼な話ですけれども、どのくらい予算を使っておみえになるか。それから一つは先ほど連絡はあるがといったようなお話が前提にありながら、国が要請したもので緊急的なものをやる。大学は若干自主的に好きなと、こういう表現もございましたけれども、そういうような方針でやっていることになりますと、協調的でない問題がございます。そこで国が私はある程度金等もあなたのほうに御援助しておるかどうかわかりませんが、あるとすれば一番最初におっしゃいましたように、研究目的というものがきめられて、少なくとも国では緊急な地すべりをやる、あるいは治山治水のほうをやる。大学のほうはそれに対してなお学問的な、あるいは基礎的なものを話し合ってやっていく。が研究は一本化されていない。繰り返してはならない災害が繰り返されているということは、完全な人災ということを言って差しつかえないという段階にきておると思う。だからそういうものを克服するには、何かもう一つ学者とかそういうお方たちが結集されてやられるということが、非常に好ましいことではないかと考えておりますから、そういう立場で何とかこう、いい打開的なそういう方法が出ないものでしょうか、という趣旨に立って御意見を伺いたいと思います。
  13. 矢野勝正

    参考人矢野勝正君) さきの御質問は、大体の両研究機関の研究費、陣容などの御質問がございしまたが、防災センターのほうの予算はよく知りませんが、大体のあれは何か四億とか五億とか、何か……
  14. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 九億ですか。
  15. 矢野勝正

    参考人矢野勝正君) ああそうですか。それから私どものほうの研究所の予算は年によって違いますが、人件費を除きまして、大体二億から三億ぐらいでございますので、もっともそのほかに文部省の中に科学研究費というようなものがございまして、その中に災害科学の研究をするために特別に一億円ばかりの予算がございます。これはもっとも私どもがもらうばかりでなくて、全国の大学にばらまくわけでございますので、一大学当たりは非常にささいなものになります。  それから一番大切な質問といたしまして、防災センターと大学とがもっと緊密に、あるいは研究課題を一緒にして、あるいは共同に研究するということはできないかという御意見だと思うんでございますが、この問題なかなかむずかしい問題でございまして、もちろん大学の研究は自主的に自分の最も必要と感ずること、自分の能力から考えてこの問題が一番自分としては興味があり、適切だといったような立場できめるわけでございますが、もちろんあまり必要じゃないこと、緊急じゃないようなこと、小さな問題、そういうものはやはり学者の良識としてあまり取り上げません。やはりいま地震予知というものが必要であれば、地震予知全力を注ぐと、それから集中豪雨研究が必要であれば集中豪雨研究に力を注ぐといったような、国が意図する研究にわれわれも求めて積極的に課題を選ぶというような態度をとっております。とっておりますけれども、これは義務づけられておりませんので、そこに多少ゆとりといいますか、何だそんな大きなことを勉強しているのかというような課題もないわけではございません。それから科学技術庁と文部省といいますか、大学との間で研究を協力してやるということは、これは言うまでもなく必要なことでやっておりますけれども、まあおのおのが研究者というようなことで自分のやり方などに独自な立場がございまして、たまたま科学技術庁でこういう方針でこういうことをしてあげたいという方針と自分たちが興味を日常抱いている問題に一致すれば、当然これは協力してやります。たとえば実例を申し上げますれば、大阪の寝屋川というのは、先ほどちょっと触れましたように、人口が非常に増加しまして、出水量が予想される。現在の五百トンくらいの水を千トン以上にしなければならないというように言われているわけでございますが、そういうように人口の稠密化に伴う水の問題というのは、私どものほうも研究テーマとしてあげておりますので、一緒に現場に行って昨年の秋もそうでしたが、一緒に現場に行っていろいろ意見をかわしたり、働告なども協力してやるといったようなことをやっております。
  16. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 もう一言先生にお聞きしたいと思いますのは、この飛騨川のことは、これは昔は旧道で、申しますとあそこは橋であったわけなんです。で、それを今度舗装と申しますか、四十一号線で改装拡幅ということをきめたときに、伏せ越しにしたわけです。そこで言っておる人たちは、あそこがもし、橋であったなら、橋であれば危険であるから、これはだれが見ても危険な個所ですから、とまらなかったのだ、それを暗渠にされたために、いいことだと思って実はとまったのだ、という意見もあるわけです。先生のお話を聞いておりますと、土石流、これは想像もつかないたくさんのものであり、私も実は現場へ行ったときは、現場というか、もう通れるようになったときは、あそこは舗装がしてありまして、実はどうなったかわかりませんでしたが、被害直後の写真もありますが、たいへんなことでございます。そこでいろいろなことがございましょうが、これは橋をかけるのがいいか悪いかということもございましょうが、暗渠にしたほうがいいということもありましょうが、何かあそこが橋であったらよかったなという意見がある。そういう意見に対して先生は、橋であればそれは流木もあり流岩もあり、きっと橋が落ちてしまう、復旧にはたいへんなことになるというようなこともあると思いますけれども、先生としてはどちらをおとりになるのか、そのことについてこれは、建設のこれからのいろいろなことは技術的なものになるから、もし、やるならどちらをすすめられるかという問題、いわゆる安全な、あそこは一つあったけれども復旧ということを考えるとなかなか容易な問題じゃないと思うけれども、どちらがいいのか。
  17. 矢野勝正

    参考人矢野勝正君) 飛騨川の問題については二つ方法があると思うのです。ああいったような土石流が起こらないような砂防堰堤をやって、そのときは土石流が流れてこないということをやる方法が一つ。それからもう一つは、流れてきても被害が起らなければいいのだから、橋梁のようなものをつくって流してしまう、そういった二つの方法があると思いますが、これは私は、結果論としてあくまでも暗渠にしたからああいう事故が起きたということが頭の中にしみ込んでいるものだから、橋のほうがよかったなという……しかし、これは結果論でございまして、御承知と思いますけれども、あそこの今度起こった谷の下流地点にもう一つ同じような谷がございますが、ここは出ておりません。で、私がかりに、そういった事故のない場合に、あそこの現場に立たされて、お前、どういうようなことをするのだ、と言われましたら、現在、ああいったような事故があったから皆さんそういうことを言いますけれども、ああいった事故のない時点において、これは暗渠にしたらよかったとか、これは早く砂防ダムをつくらなければならぬということは少なくとも言いかねる。それはまだよくわからない。で、全く財源を考えないで安全という立場からいいますれば、堆積している、いまにも崩壊しそうな谷間から砂防しなさい、これは安全のためにはもう暗渠なんかやめて橋梁にしなさいということは言えると思うのですが、何万、何千個所にそういうことをやりますときりがない。緊急度の高いものから選べということになると思うのですが、その判定というか認定というか、なかなかつきかねると思いますので、そういう意味ではなかなか判断がつきかねると思うのです。ああいった事象が起こった結果としては、結果からいって橋梁のほうがいいな、という感じは受けると思います。
  18. 武内五郎

    ○武内五郎君 矢野先生に伺いますが、土石流についてだいぶいままでまだ研究が十分でないというお話を承りましたから、たいへん私も残念に考えておる。私は昨年いわゆる八・二八の新潟災害で、新潟県の北蒲原郡の安田町いわゆる都辺田の土石流災害地を見てまいりました。ものすごい岩石がしかもまるく摩滅した岩石が非常な大量、驚くべき量で流れ落ちた。下の村二十数戸がまるつぶれになって、人間もたくさん死んでおります。それから神戸の、これは土石流と申しますのか、山が流れたと申しますのか、私はわかりませんが、大量の土砂が流れ落ちて、下で家がつぶれ、人間も数名犠牲になりました。特に神戸災害地は、去年ばかりではなくて、もう明治四十二年ですかに、まあその前にも何回かあったという災害の経歴地なんであります。ことに私また新潟県の都辺田の災害で考えますることは、摩滅した石が大量に流れてきておるということは、もうこれも過去において何回かそういうことを繰り返したじゃないかと考えます。そうしますると、まあそこで私は、先生たちのいろいろな御研究災害防止のための施策と結びつくことを実はこいねがうわけでありますが、それが今日まで研究が、先年が御謙遜で申されたのかわかりませんけれども、まだ十分でないとおっしゃるし、同時に先生たちの御研究の成果について、災害防止の施策と結びつきが足らなかったのじゃないかと考える。そういうようなことが、やはり災害を繰り返してきておるのじゃないかとも考えられるのですが、先生のお考えはどうなんでございますか。
  19. 矢野勝正

    参考人矢野勝正君) 災害の施策と学者の研究に結びつきがないと、非協力というような問題は、私もまたむずかしい問題だと思うのでありますが、私どもは、先ほど申し上げましたように、非常に災害に伴う被害の大きな、たとえば地震であるとかいったような、一瞬にして多くの人命が失しなわれる。津波、高潮とか、こういったような現象は、好むと好まざるとにかかわらず、非常に緊急な問題でございますから、これは自分の好ききらいでもって研究するといったような考え方でなくて、当然学者の良心として全力投球でやっておるのであります。やった結果が行政に反映するか、学者の研究が実際の事業にどのように反映して、実現されておるかという問題は、どうも私ども責任じゃないと言っちゃ語弊がありますけれども、採択するほうの行政のほうの面のお仕事じゃないかと思うのであります。私ども研究が済みますと、貧弱なものでありますけれども、毎年この研究は必ず発表する。学会誌とかあるいは研究所の機関誌とかいったようなものに、毎年どころかあるいは四期ごとに発表するというようなことをして、公開資料をとっております。それからまた、公の各種委員会などでいろいろ意見を申し述べまして、研究結果がいいものであればどんどん採択していただけるようにお願いもして、御意見ども申し上げております。そのようなことで御質問にお答えが十分できたかどうか知りませんけれども、足りませんでしたらまた……。
  20. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 矢野先生にお聞きしたいと思いますが、最近非常に集中豪雨等が多いように思うわけでありますが、これははたして集中豪雨——雨の降り方が昔よりも集中豪雨的になってきたのかどうか、あるいは前々から集中豪雨というものはいままでとあまり変わりはないけれども、最近はそういう宅地造成とかあるいは道路工事とか、そういうような人工的なもののために災害が前よりふえてきたために問題になったのか、あるいは雨の降り方がよけい降るようになったのか、そういう点私は疑問に思うわけであります。そういう点をお教えいただきたい。
  21. 矢野勝正

    参考人矢野勝正君) 実は、私は気象のことを研究しておるものじゃありませんので、私は河川工学、砂防工学というものをやっておりまして、正直なところしろうとと言っても差しつかえないかもしれません、よくわかりません。それで確信のあるお答えはできかねるのでございますけれども、まあしかし、こういったものをやっておりますと、関連する現象でございますので、しょっちゅうそういうお話をしておりますので、それらをかみ合わして私なりにお答えいたしますと、集中豪雨というのは何も最近に起こった新しい現象じゃない、昔からあったものであります。しかしながら、昔は観測設備が十分行き届いていなかった。大阪とか東京とか都市にはあるけれども、山の奥にはあまりあったわけではないから見のがしておった。それから被害ももちろんあったのでしょうけれども、それほど人家などはまだできていなかったから、そう大きくなかった。あるいはマスコミの関係でそう伝達されなかったとかいろいろなことがあるでしょうが、最近は人間がたくさん住むようになった、交通の設備、公共事業その他ができた。こわれるものが多くなったというようなことと、それからコミニュケーションの発達で全国的にそれが伝わる。それから雨量観測、水位観測といったような観測の設備ができたために、集中豪雨というものの降った強さ、面積といったような、自然そういったものがつかむことができるようになったということで、非常に目立ってきたというのじゃないかと存じます。
  22. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そこで、先ほど土石流原因について、先生は谷へ土砂が、山腹の崩壊の土砂がたまっておって、それが雨によって一時に流される、そういうお話でございますが、その山腹の崩壊による土砂、山腹の崩壊というのは一体どこに原因があったのか。と申しますのは、私もいろいろ話を聞いてみますと、今日の山というのは何百年、何千年の歴史を経て山腹ができておる。その自然の姿が最もやはり雨に対する抵抗力の強い状態である。ところがそこにいろいろ工事をしたために、そうなると非常に山肌が弱くなってくる。そういうのが、やはりいわゆる山腹の崩壊によるそういう土砂くずれの土砂がそこにたまる原因になるのではないか、そのように私は先生のお話を聞いて考えるわけでありますが、そういう点はどうなんでしょうか。
  23. 矢野勝正

    参考人矢野勝正君) 谷間土砂がたまるたまり方は、大別して二つございます。一つは、長い間かかって微弱ではあるけれどもぼろぼろと山腹がくずれる。たとえば霜柱ができる、あるいは岩石が風化するとかいったようなことで、微少ではあるけれども山腹の土砂が崩壊する。エロージョンといいますが、そういうふうに、これは微少ではあるけれども十年、二十年という長い歳月の間にかなりの量になる、そういうやつが一つ。それからもう一つは、いまお話がございました山くずれ、がけくずれによって急激に崩落するといった現象でございますが、後者のほうの山くずれの原因というのはいまのところよくわかっておりません。山に水が浸透してそしてすべり面ができて、すべり面の摩擦系数が小さくなって、重力に耐えかねて落ちるのだと、こういうふうな説明をしておりますが、それでは一体どういう場合にすべり面ができるか、明治時代にはすべり面ができなくて、昭和の時代になって、すべり面が各地にできるのはどういうわけか、といったようなことは、すべり面の深さとか、どういうことですべり面の摩擦系数が減るのだといったようなことについてはいまのところよくわかっておりません。したがって、山腹崩壊の原因というのはよくわかっておりません。私もお伺いしなくちゃいけません。
  24. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それでいま研究費等お聞きしまして、非常に今回の岐阜県下の災害だけでも何十億である。ところが災害に対する研究費は非常にそれに比べれば少ない。そういう点でそういう災害対策研究する学者として、もっともっとこういう国家百年の大計の上からこういう点を研究しなきゃならぬ、そのためにはもっとこういう土砂研究をやるということ、そういう気概というか、そういうお考えについてどのように考えておられるか、その点をお伺いしたいんですが、
  25. 矢野勝正

    参考人矢野勝正君) この問題につきましては、何しろ毎年平均二千数百名のたっとい人命が失われておりますし、額にいたしまして数千億の被害を毎年繰り返しておる。私ども災害科学を研究する者といたしましては、最も切実な問題でこれを克服していかなきゃならぬというので、わが国には大体災害科学——地震とかあるいは地すべりとか、洪水とか、高潮、津波といった災害の科学を研究する学者が大体千名いる。もっともこれは千名というと、えらい多いというふうにお考えになるかもしれませんけれども、その千名というのは、必ずしも災害に専念しているわけではないですけれども災害科学に専念しているといったような人は、その三分の一ぐらい、三百名ぐらいでございます。こういう人々が災害科学の総合研究班という組織をつくりまして、ただいま仰せのような全体のひとつ姿を描いて、一体何が一番大切なのか、たくさんあるけれども、ほんとうにいまやらなきゃならぬ問題は地震についてはどういうことがある、洪水に対してはどういうことが壁になっておるのか、高潮、津波に対してはどういう点がわからないのか、この壁を破ればうんとわかる分野が開けてくるといったような、非常に重要な問題を各分野ごとに拾い上げまして、緊急を要する課題というものをこまかくあげたものがございます。御必要があれば、また後日御報告してもかまいませんけれども、それに対して五年ないし十年ぐらいで、現在の実人員三百名くらいですが、千名ぐらいの学者が総力をあげて協力して研究していくとすれば、一体どのくらいの金がかかるかというのも、ごく概算やってみますと、まあこれは切りがないんですけれども、少し遠慮をいたしまして三百億円ないし四百億円ぐらいの研究費があれば、五年ないし十年ぐらいの間にわれわれが最も大切なこの壁を破れば非常に問題が明らかになってくる、課題が解明されるといったような、そういうような大まかなことでございますけれども、長期計画を立てましてその実現方を文部省に盛んにお願いしているわけでございまして、昨年も日本学術会議にその案を私どもは提案いたしまして、学術会議もその案の妥当性を認められまして勧告されております、昨年の秋。その勧告に基づいて四十三年度の予算がどのように実現されるか私ども期待している。ぜひその案が実現されることをお願いしたい、この席上をかりてお願いいたす次第でございます。
  26. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 先ほどのまた質問に返るわけでございますが、山くずれとか、そういうようなことの原因は、結局そういう道路工事とか宅地造成工事。最近非常にそういう土木機械が発達いたしまして、いままでの自然の山の形を非常に変える、ほとんど変えている。やはりそういう工事のしかた、そのために山くずれとか、災害が多いのじゃないか、そのために多くなってきたのではないか。元の自然の形であったならば、そういう山くずれなんかほとんど起こらない、そのようにわれわれしろうとは直感的に考えるわけでありますが、そういう点についてもお考えをお聞きしたいと思います。
  27. 矢野勝正

    参考人矢野勝正君) お説のとおりでございます。しかしながら確かに地形を切ったりあるいは神戸なんかそうだったんですけれども、鉄塔を建ったりすると、そういうような工作物を中心にしまして山くずれが起こっているという現実の姿を見ておりますので、人間が地形を変えたり、工作物を設置することによって山くずれが誘発される可能性が強いんじゃないかということは言えるだろうと思うのであります。しかし全国的にこう見まして、そういう面積というのはわりあい少ない。私さっきお答えしましたことは、自然の姿の地形において山くずれが発生する原因はよくわからない、こういうことを申し上げたのでございまして、地形の人為的な変更、つまり森を切るとか、トンネルをつくるとか、鉄塔をつくるとか、住宅をつくるとかいったような、いろいろな工作物をつくることによって周辺の山がゆるんで崩壊するのじゃないかということは、これは私もそうじゃないかと思います。
  28. 古池信三

    ○古池信三君 私は、岸参考人に一、二お尋ねをいたしたいと存じます。  今回の集中豪雨によりまして、美濃加茂市を中心に甚大な災害が起こりまして、その対策に非常に御苦労なさっておりますることを承知をいたして、心からお見舞いを申し上げる次第であります。  さらに、この集中豪雨による被害、またその対策等につきましては、先般私ども現地に出張いたしまして、その際に相当詳しくお聞きをしておりまするから、これは今日の場合お尋ねすることは省略をいたしますが、そのときにお伺いしなかった一、二のことについてお尋ねをしたいと思います。  それは、あの豪雨によって、市内の各所に非常な災害が起こったために、市の職員あるいは消防団方々が、そのほうの手当てに非常に多忙をきわめられたと思っておりますが、たまたま不幸にも同じく飛騨川の大きなバス墜落という事故が起こりまして、未曽有の大惨事を引き起こしたわけでありまするが、このことは、実にお気の毒にたえないわけで、心から私も哀悼の意を表するわけでありまするけれども、この、バスの乗客の方々は日本アルプスに登山をしようとして出かけられた、実は大部分は愛知県のお方のように承知をしております。それがたまたま飛騨川のあの地点において大きな事故にあわれたという次第であります。したがって、美濃加茂市としては市民ではないわけでありまするけれども、しかし、そういうようなことを超越してあの際市の職員並びに消防団の方が、ほんとうに昼夜を分かたず献身的にあるいは遺体捜索、あるいはまた遺体が発見された場合の丁重な取り扱いその他に万全を期せられたということは、非常に私は感動にたえないのであります。これはもとより大きな人道的な立場から丁重に遺体を葬られ、これに対する十全の措置をとられたことと考えまするが、まことに私は市の職員の方、さらに消防団方々に心から敬意を表する次第であります。つきましては、もっぱらそういう問題に当たられた市の職員の方とかあるいは消防団の方が、ことに消防団はおそらくあの状態ではうちばかりでなく近隣からの応援も出られたことではないかと思うのですが、それが相当な長い日数にわたっておりまするが、大体今日までそういう仕事に挺身された方々は何名くらいになっておるか、延べ人員がわかりますれば、ちょっとお聞きをしておきたいと思うのであります。
  29. 岸東八郎

    参考人岸東八郎君) お答えいたします。  当日十八日には白川町にあのような災害のために私のほうといたしましても七名の死者が出た、こういうことでございまして、実際は職員二百人をすぐさまバス転落のほうに半分以上あるいは半分まではいかないけれども、それだけを向こうのほうへ向け、消防団も三百人をすぐ動員いたしまして、そうしてそれを二つに分けて双方の捜索をいたしたような次第でございます。そういうことでございますから、この死体捜索に対しましては、消防団自治会方々に毎日大体三百人ぐらいの方に出ていただいたり、あるいは一日や二日は半分ぐらいの隊員にしてやってまいったんでございますが、なお現在も少しずつで限られてまいりましたが、十六日、きょうも最終の捜索に私どもは出ておるような次第でございます。そういうことでございまして、地元の捜索も十八日に四体、十九日に一体、二十日に一体、二十二日に一体を見つけることができましたので、その総力をまた飛騨川のほうに向けてまいったような次第でございます。ここへちょっと写してきたのがありますので御報告申し上げますと、八月十八日に二十三体、十九日に十八体、二十日に十六体、二十一日に十七体、二十二日に十体、二十三日に二体、二十四日に一体、二十五日に二体、計八十三体。二十六日に三体、二十七日−二十九日までゼロ、三十日に四体、九月一日、二日においてここはゼロ、三日において子供さんの片腕が出てまいりまして、これを一体といたしまして九十一体現在までに発見をされているような次第でございます。そういうことでございますから、私は美濃加茂市の消防団あるいは自警隊あるいは職員ということできょうは考えておりますので、白川町からこれは東白川、川辺、七宗そして八百津、美濃加茂、坂祝といわゆるこの近辺がそのように捜査に当たっております。私のほうにおいても、消防団、自警隊は三千人は切らないと思っております。職員もおそらく飛騨川のほうにおいては五百人ぐらいの計に私はなると思っております。以上のようなふうで、捜索に関与させていただいたような次第でございます。
  30. 古池信三

    ○古池信三君 もう一つお尋ねいたしますが、先ほどお話がありましたように、死者となられた家庭で、その生活の中心になるような両親がなくなって娘さんが二人残されたとか、あるいは御主人がなくなって奥さんが子供を連れて残った、そういうふうな家庭はすぐその日からお困りになると思うんですが、そういう生活的な問題もありましょうけれども、市としては特別に何かあたたかい手を差し伸べられるようなことを考えておられるのか。  それからもう一つは先ほど写真でちょっと拝見いたしましたが、現地にも行って十分拝見したのですが、川のはんらんによって農耕地がすっかり川原になってしまった。特に場所が山間地でありますから、平素すら比較的乏しい農地によって生活をささえている人が多いと思います。それが今回のような災害によって農地がほとんど川原になって、もはやそれをもとの形に返すことはできないというような状態になりますと、そういう農地に今日までたよっておられた人たちの生活問題、これも非常にきめのこまかい手当てが必要だと思いますが、市長さんとして今日何かお考えになっているかどうか、ひとつお伺いしたいと思います。
  31. 岸東八郎

    参考人岸東八郎君) お答えいたします。  先ほどもちょっと御報告いたしましたが、災害にあわれました本田さんのところにおいてはおじいさん、おかあさん、おとうさん、中学生一人、小学生一人というような五人の方がなくなったわけでございまして、娘さん二人が残り、家は全く流れてしまった、田畑も全部つぶれてしまった、こういうような悲惨な状況になったわけでございます。そしてまた朝日さんのほうも家は流れてしまい、御主人と中学三年生がともどもに流されてしまい、おかあさんと六年生の娘さんがそこに助かった。こういうような状況でございますので、いち早く市といたしましては応急の食べ物とか衣類とか、あるいはそういうようなものを贈ったり、厚生省におきましてのプレハブの建物を建てたりいたしまして、そうして一応の救助施策はいたしたのでありますし、あるいは地域からの救助品も渡したりいたしておりますが、市においては全壊は一万円、なくなった方は一万円、重傷者は五千円というようなお見舞いを出しているわけでありますが、とうていそれだけで両家が救われるものではありませんから、何とかしてこの両家に対しましても田畑もつぶれ、そうして家もなくなったというような現状でございますから、現在の状況住家を建て直すというような方策はまだ国、市においてもございませんので、今後この両家に対してはできるだけ抜本的御支援をいただかなければならないと思いますが、そういうような鉄砲水によって家が流れてしまった、そうして御主人がなくなってしまった。あるいは家内ともども全部なくなって二人だけしか助からなかった、その方も岐阜に見えられたから助かったのでありますが、そういった方に対しても国においても御協力を賜わりまして、将来の保障をひとつぜひともお願いしたい、それと匹敵して、市もそれに乗って救助していくようにいたしたい、こういうふうに考えております。それから先ほども一つ田畑の流失でございますが、全くこの問題に対しましては市といたしましても、いま護岸がはっきり寸断されましたところが修繕されましてからでないと、田畑のほうにかかれないわけでございますが、それまでとても農家が安住することはできませんし、山はそういうふうになくなったということで、大体百八十戸の戸数がありますが、十戸ぐらいは災害を受けなかったんでありますが、あとは全部床上あるいは土砂が入る、あるいは半壊あるいは全壊に似た半壊というような状況でございまして、まあそれぞれにも多少のいま申しましたぐらいの御見舞いが出ておるというだけでございます。でありますから、私はそれに対しましても今後、政府におかれましても、何とかそういうような個人災害に対して私は努力していただきたい。われわれもそれと同様に努力していくようにいたしたい。それから緊急砂防を、先ほどちょっとお話ししたのですが百何十カ所というほど山くずれがあったわけです。それに対する、山くずれと水が家に入り、たんぼに入り、そして川、道路を切断し、護岸を切断しているというような状況でございますから、どうしても個人災害に対しては、いままではそういうような例がございませんけれども、特に中央において個人災害の施策を願いたい。私どものほうの市の財政力の続く限り、この災害の救助には当たるつもりでおりますが、何ぶんにも三割自治でございまして、市の財政力が非常に乏しいところがずっと白川にしろ、あるいは八百津町にしろ、川辺町、七宗村、富田村というところも、私どもと同じような財政力でございまして、いろいろ話し合いをしておりますが、相談いたしまして、鋭意私はこの個人災害について市といたしましてもできるだけのことをいたしたいとは考えておりますが、何ぶんそういうような状況でございますから、私は激甚地の指定同様の高率なる被災補助の適用をお願いしたい、こういうようなことを考えておる次第でございます。
  32. 古池信三

    ○古池信三君 いまの気の毒な家庭に対しましては、国あるいは県からも法に基づいての援護の方法があると思いますが、ひとつ地元として特に財政面あるいは精神面においても、身近な市長さんとして十分なぐさめて相談相手になっていただきたいということをお願いを申し上げる次第であります。  ちょうど自治大臣御出席になっておりますから、自治大臣に一言お尋ねをいたしたいのですが、今度の災害によって、地元の自治消防団方々が非常な御活躍をされました。特に、中には自分の家が危険に瀕しておるにもかかわらず、あえて出動をして災害の防止、あるいは救助のために、ほんとうに犠牲的に挺身されたという例を伺っておるのでありまするが、こういう崇高な消防団の精神を発揮されたということに対しまして、自治大臣は——私はこれは推賞すべきことであると考えますが——どんなふうにお考えになっておるか、御感想を伺いたいと思います。なお、今後これらに対してどういうふうな措置をしたいというようなお考えがあれば、これも同時にお伺いをさしていただきたいと思います。
  33. 赤澤正道

    ○国務大臣(赤澤正道君) 消防団は人の生命、財産が危殆に瀕しますときには当然出動いたしまして、その任に当たるわけでございますが、遺体捜索ということになりますと、消防団の守備範囲ではないわけでございます。しかし、そのこと自体が公共に大きな関係があるといたしまして、それぞれの当該市町村長から要請がありました場合には、消防団はそれぞれその任につくわけでございます。  今回、私先週の木曜日に状況を見てまいりましたが、なかなか消防団は力強く働いておるようでございます。もともとそういった際の出動手当は、交付税に織り込んでありますけれども、十分であるとは考えられませんので、こういう特殊な災害の場合、よく実情を調査いたしまして、そしてその労に報いなければならぬ、こういうふうに考えております。
  34. 古池信三

    ○古池信三君 ただいまの御答弁によりまして、経費の面すなわち財政的な面においても考えようというお話がありましたが、それはそれとしまして、やはり労苦をねぎらう、国の主管大臣として消防団のさような精神、さような活動に対しての労苦をねぎらうというような方法をおとりくださると、地元の人も消防団方々も非常に満足し、喜ばれるんじゃないか。また将来のこともありますから、ぜひ士気を鼓舞するようなことをお取り計らい願えるとたいへんけっこうだと思います。
  35. 赤澤正道

    ○国務大臣(赤澤正道君) もともと消防団と申しますのは、全くこれ犠牲的精神のみで日ごろの任務を遂行してもらっておりますので、いろいろな団体があります中で、最も私どもは気の毒なお立場であると考えております。ですから、御指摘のとおり、単に財政措置云々だけでなく、この間も直接消防団の諸君にもお目にかかりまして、いろいろ鼓舞激励をしてまいりましたけれども、やはり今回の行動に対しましては、消防庁部内でも長官表彰その他につきまして十分考えておるところでございます。
  36. 小林章

    ○小林章君 矢野先生に一言お伺いいたします。  先ほどの御説明の中で、土石流に関する研究がおくれておるというお話がございましたが、土石流、鉄砲水の被害の多いわが国において、私実はしろうとながらいささか驚いたわけでございます。おくれておるのは、失礼ですが先生の研究所がおくれておるのか、わが国の学界全体がおくれて一おるのか、または世界的におくれておるのか、その辺を、そういう点をお伺いいたしたいことと、もう一つは、時間がございませんので一緒にお伺いいたしますが、おくれておるとすれば、この研究を推進するのにはどういう方法を用いるのか、推進の方法について先生のお考えをお伺いいたしたいと思います。以上でございます。
  37. 矢野勝正

    参考人矢野勝正君) 土石流研究がおくれておるのは、私の研究がおくれておるのはもちろんでございますが、全体的におくれております。昨年ソ連から——コーカサス地方というのは非常に土石流が多いところらしいのですが、やっぱり困っているらしいのです——七、八人来まして、全く手をやいておる。イタリア、日本などというのは土石流が多いらしいが、どうやっておるかというようなことで、ざっくばらんに話をしたことがありましたけれども、向こうもほとんどやっていない、大体観測の方法もない。日本じゃどういう観測をやっているのかというようなことで話があったくらいでございまして、非常におくれておる。したがって論文なんかも、アメリカでもソ連でもほとんどございません。  それから、どうしたらいいかという問題でございますが、これは研究の常道である理論的な研究も必要でありましょうし、それから実験をやるのも必要だろうと思うのですけれども、いかんせんその実態がわかっていないのです。先ほど申しましたように、見たものはほとんどないというぐらいなことで実態がわかっておりませんので、私は何をおいてもそういう土石流発生する地点、これは大体わかります。その地点の現地観測の設備を増強するということが何よりも大切だと思うのです。それも全国的にたいへんでございますから、立山だとか白山だとか、あるいは神通川の上流だとか、または代表的に九州のどこだとかいったような数十カ所でいいと思うのですけれども、そこに観測所をつくって、そして土石流というものの姿を明確につかむ、これが大切なことだと思います。
  38. 沢田政治

    沢田政治君 いつの災害の場合でも、人災か天災か、こういうことばを聞くわけでありますが、聞いたり言ったりする側でも、どこまで人災であり天災であるかという判断基準、それを明確に把握して言っている人もまた少ないと思うのです。そういう意味で矢野先生にお聞きしたいわけでありますが、天災と人災というものは、どういう判断基準によって学者の間で判断を下すのか、こういう点をお聞きしたいと思うわけであります。この点は学問的にはそう価値判断とか判断基準を設けても価値があるかどうかは私わかりませんが、しかし、行政の面に対する責任度合いというものについては非常に大きな影響を持ってくるものじゃないか。こういうふうに私考えるわけであります。たとえば私考えるには、学問的にも、技術的にも、財政的にも絶対に防御の方法がない、こういうのはやはりこれは天災だと思うんですね。これは予知することもできないし、予知したとしても防ぐことはできない。こういう場合はこれはもうある程度不可抗力だと思うんですけれども、あるいは技術的にもそれを防御できる、財政的にもこれを防御できる、そういう場合に一つ災害が起こった場合には  もちろん雨から災害、地震から災害がくるのですから、動機そのものは天災的であるけれども、結果的にはそれを防ぎ得るものを防がないということになると、これは人災、こういうことにならざるを得ないと思うので、したがってやはりその一つの判断基準、天災か人災かの判断基準を学者の側としてやはり、個人的な見解でもけっこうですけれども、いかようにか考えておるかと思うんです。と同時に、また学問の問題ではない、たとえば道路管理の問題でも、「頭上注意」とか、「落石注意」とか、「路肩注意」というように、明らかに予見できるようなものもあるわけなんですね。そこで災害が起こった場合には、これは明らかに人災ということになるわけでありますが、それは別としても、天災と人災というものの一つの基準、ラインというものを学者としてどのようにお引きになっておるのか。もちろんその他の技術解明とか、そういう予知とかを研究なさることも、これは必要だと思うんですけれども、やっぱり学者としてこれは天災であるか人災であるかというもののある程度の基準を引くということも、行政に対して責任を負わせる、また行政に対しても努力をさせる、予防させる、こういう意味でも大きなぼくは意味を持っておると思うので、この点に対する御見解を一言だけお聞きしたいと思います。
  39. 矢野勝正

    参考人矢野勝正君) この問題は、実は一番頭の痛い問題で、正直に申し上げますと、明確な御答弁ちょっとできかねるのでございますけれども、基本的な考え方としましては、いまおっしゃったとおりに、技術的、財政的に不可能なものは、これはもう不可抗力の天災じゃないかと思います。そのうちで技術的という問題のほうは、これは技術研究の開発によって徐々に狭められていく問題でございますが、財政的という問題につきましては、もう私どもでも判断がつきかねます。たとえば今度のような事件ですね、今度のような事件は、何といいますか、学問的には人災だと思うんです。というのは、そういう危険な谷は全部砂防工事をやればいいじゃないかといったような言い方をすれば、それをしなかったんだから人災だ、こういったような学問的な言い方ができますけれども、しかしそれはそう言ったってなかなかできないだろうと思います。おそらく何十万カ所とあるでしょう。何十兆円というような金が要るので、言うべくしてなかなかこれはできない。そういう意味においてこれはまた不可抗力だと思います。財政上どこでそれを区別するか、どの程度だったらこれは国の範囲だろうか。その判断はわれわれつきかねますけれども、そのために人災か天災かといつも言われますときに困っておる問題でして、御指摘のとおり、これは学問的にも確かに検討しなければならぬ問題だと思います。よく考えてみたいと思いますが、いまの現状としましては、そういった非常にあいまいな解釈しかしておりません。
  40. 足鹿覺

    委員長足鹿覺君) その点に関連しまして、私から一問だけ矢野参考人に御意見をお伺いしますが、いずれにせよ人為災害とはその原因が人間の管理の不適当であったことに起因するものだと、かように考えられるのでありますが、矢野参考人研究所におかせられましては、過般の飛騨川集中豪雨災害、特にバス転落流失に伴い百四名の生命を奪った現場現地調査なさったと伺っておりますが、調査における御所見は新聞等に出ておりますが、あらためてこの機会に御所見を承りたい。それが一つ。  最後に、災害科学と防災科学の面から、わが国現状体制については先ほど来各委員からも御質問があって、御所見を承ったわけでありますが、総合的に見て今後どうあるべきか、こういった点について御所見がございますならば拝聴いたしたいと思います。
  41. 矢野勝正

    参考人矢野勝正君) 今回の災害が突発いたしまして、直ちに私ども研究所では教授二、三名、助教授二、三名、四、五名の者が現地に参りまして、二回にわたりまして現地調査をいたしました。私も参りました。私どもは先ほど申し上げましたように、主としてこの災害原因は何なのか。初め新聞で見たときには山くずれなのか、洪水の単なる災害なのか、土石流なのかよくわかりませんでしたけれども現地に行きまして、六百メートルの山にみんなでどしどし登りまして、谷全体を見て、結論として土石流だという結論を立てました。今後私どもの所見といたしましては、そういった危険地区をどうして予知するかという問題に全力投球をしていきたいと思うのです。こういった危険個所は全国非常にたくさんありますが、そのうち特に緊急なやつはどういうところか。どういう方法で土石流発生する危険性があるのかという地区の選定を、学問的、科学的に究明する研究をやっていきたいというふうに存じております。  それから後段の、日本の災害全体についての所見、これは非常に膨大な問題でございまして、一口に申し上げかねますけれども、二、三私が日ごろ感じております観点を申し上げますと、まあ、こまかなことでございますけれども、非常にまあ災害対策の事業面がおくれておると思うのです。治山問題にしても、あるいは治水問題にしても、あるいは高潮の対策にしましても、何にしましても事業面が非常におくれておる。よく災害対策の妙手はたいかという質問がありますが、妙手はございません。じみちに克明に事業をやっていくということしか私はないと思うのです。なかなか一挙に解決するといったようなうまい方法はないので、じみちに事業をやっていくというしかないと思うのです。第二番目には事業をやれと言いましても、ただやたらに事業をやったのでは、むだな金を使うことになりますので、再度災害をこうむらないように、かつまた全体の事業にむだな金がないように、科学的に合理的な計画を立てるということが必要でありまして、このことは現場の技術者ももちろんでございますし、災害科学、防災科学を研究する者にとっても大きな義務でありまして、研究面の調査も含めました官庁のこの調査も含めまして、その研究面、こういった方向がまだまだおくれております。非常におくれております。したがって、その面の解明が私は十分必要だと思います。私に、それではどういう点がわからないのかという点、幾らでもありますけれども、非常に簡単なことさえわかっていない。たとえば洪水流量、まあ長くなりますから簡単に申しますが、洪水流量をおまえたちどうやってはかっているのかと言われましても、正直なところ言いますと実は方法がないのです。真夜中に洪水が起こる。夜中の二時、三時に起こったときの洪水の量をはかる。確かに建設省なんかではフロートを流しまして流速をはかり、洪水が済んでから断面積をはかり洪水量を出して流量をはかるというような方法、その他の方法がございますが、やっていますけれども一体浮きを流したときに洪水時の平均の流速というものがはかれるのか。それから洪水が済んでからあと断面をはかっても、それが洪水のまっ最中の断面であるかどうか。まあ、あまりこまかくなりますが、そういうような疑問がたくさんございまして、的確なものがはかられておらないわけであります。しかも、非常にそれが大切な問題で、それが計画の基準になるわけでございます。そういったふうに、ダムの埋没の問題だとか、あるいは河床の洗掘の問題だとか、いろいろございますが、よくわかっておらない。これを解明しないことには、いつまでたっても災害を繰り返すのじゃないかというふうに存じます。以上でございます。
  42. 足鹿覺

    委員長足鹿覺君) もう一問矢野参考人に伺いますが、先ほども沢田委員からお尋ねがありまして、重複するような感もありますが、ひとつ御所見を承りたい。災害原因として、自然の力、特に今回のような異常な自然現象の場合、またこれに対する人間の管理が完全にできないためのものと、大体二つ考えられると思います。先ほどもお話がございまして、答弁がむずかしいとおっしゃいましたが、一般的な社会通念としては、自然の力、特に異常な自然現象の場合は天災、人間の管理が完全にできない場合を人災と呼んでおるようでありますが、いまのお話を聞きますと、防災科学もたいへんおくれておる、施策もおくれておる、こういう御所見でございましが、そういうお立場をおとりになっておる参考人は、科学技術者の立場から、このたびの事故をどのように解釈し、分析をされる立場をおとりになるのでありましょうか。具体的に御答弁がむずかしければ抽象的にでもけっこうでありますので、いわゆる人災に属する面が強いか、あるいは天災に属するという感じが強いか。新聞等には相当、研究所員等を含めて、先生の具体的な意見が載っておりますがそれは省略いたしますが、伺えたらひとつお願いをいたします。
  43. 矢野勝正

    参考人矢野勝正君) 私は、技術的、学問的に土石流発生する現象予知できない現在の段階においては、予知できないという意味において不可抗力ではないかと存じます。
  44. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 時間もございませんから、私は遺族代表の秋山さんと、それから岸市長さんにお尋ねしたいと思うのですが、まず秋山さんにお尋ねしたいのは、ほんとうにたいへんなことで、心からお見舞いを申し上げるわけでございます。いま、約三十四、五世帯の遺族があるように承っております。御主人がなくなってしまった、あるいは家族がなくなってしまって、いまのところにおれる事情じゃないんだ。生活の支柱がなくなってしまったんだから、あるいは非常にたいへんな目にあったんだから、他にひとつ引っ越して新しい生活を見つけようというような動きが遺族の方にあるのか、ないのか。  それから二つ目にお尋ねしたいのは、まだ遺体の上がらないお方たちはどういうようなことをしておいでになるのか。生活状態をお聞きしたいと思います。  岸市長さんにお尋ねしたいのは、たいへん、飛騨川バスと申しますか、あのバスでたくさんなくなった。あるいは皆さんのところでも七名ばかりなくなった。市役所の方たち、消防団の方たち、ほんとうに身を賭して働いてくださったことに対して、深甚な敬意を表するとともに、お尋ねしたい点は、激甚指定の問題が出ております。ところが、いまの激甚指定の基準から申しますと、なかなか容易な問題じゃございません。とすると、せっかくいいぐあいにいままで市の財政がいっておったのが、ことによったら再建団体に指定されなければならないことになってはたいへんだと思いますが、何か激甚指定、こういうことだけで事が処せられない問題と思っておりますが、その場合は何か事をお考えになっておるかどうか、ということを一言お尋ねしておきたいと思います。  それに関連してぼくは赤澤自治大臣にお尋ねするわけですが、美濃加茂財政規模は小さい。それに被害は十二億二千万円ほどある。愛知県に豊根村というところがあります。財政規模は大体一億数千万である。被害総額はまだよくわかりません。私が行ったときにはまだ集計されておりませんのでわかりませんでしたが、村長さんが言っておられるのは、大体十五億から三十億ぐらいある、局地でございます。したがって激甚指定というのはなかなか容易じゃないことは、われわれも想像ができるわけでございます。そこで過般、田中総務長官には、どうするかということをお尋ねをしておきましたが、直接担当の自治大臣としてはどうするのだ。こういう局地災害というものが、山梨県にもございました。今後も発生は十分予想されるわけですが、再建団体に転落をするということはたいへんなことでございましょう。転落したからいいとか、転落したから、次はまたはい上がってくるからいいということで事が処せられる問題ではないと思います。何らかの対策を講ぜられなければならないと思っておりますので、それに対して一体どうされるかということを——まだ検討中だと、こう言われればそれまでかもしれませんけれども、こういうことはもう前例があるわけです、山梨県でも。ですから今後どうするかということについて、もう検討の段階を終わっておるのじゃないかと思いますが、どう処置されるかということを承りたいと思います。以上でございます。
  45. 秋山茂則

    参考人秋山茂則君) ただいまの御質問の家庭の支柱を失った方の遺族の方について引っ越してみえるかどうかというふうな御質問でございますが、現在のところ一家全滅の御家庭の方が一世帯だけ、何か御親戚の方が家財道具なんかも片づけられて引き払ったということを聞いております。私ども遺族会といたしましても、個々の家庭につきまして一応こまかい家庭のカルテのようなものをそれぞれつくって、どういうふうにして見えるかということを一応調べようというので、きのう数人の者が集まりまして、そういう話をいたしまして、さっそくそういう調査をすることにいたしております。  それから市営住宅並びに県営住宅でありますから、いろいろ入居に基準がございます。その後の名義人が変わる場合には、同居の親族でも半年以上同居していなければならないという基準があるそうでございます。今回の場合は特例を設けて名義人の変更もできるというふうに、先日愛知県のほうからそういう連絡をいただきましたので、その点は心配がないようです。  それからまだ夫発見の遺体が十三遺体、その七々は、はっきりした件数は知りませんけれども、お葬式をやってみえない方はまだ三、四世帯あるようでございます。私は実は家内はあがったのですけれども、妹のほうがあがっておりませんが、八日の日に一応告別式だけは済ましたのですけわども、まだいろいろな宗派なんかの考え方で発見されるまではやるなということを、親戚から言われているからやらないんだとおっしゃっているような方がありますし、私なんか個人的に申しまして、どうしても告別式なんかして区切りをつけたい、そういうふうに考えまして葬式をやりましたですけれども、まだお葬式のやれない状態の方もお見えになりますから、ぜひ早く発見をお願いしたいと思います。  それから、現在、先ほど美濃加茂市長さんからもお話がありましたように、十二日で産業会館のほうを引き払って名古屋の中経ビルの五階に連絡所ができたわけです。そこへ発見された場合に連絡が入りまして、それから各遺族の未発見の遺族の家庭あるいは勤務先に連絡をしていただいて、連絡所のほうから車を回してもらって現地に行くと、こういうような状態になっております。
  46. 岸東八郎

    参考人岸東八郎君) 私のほうの遺家族でございますが、娘さん二人とお母さんと二軒でございますが、双方ともいまのところ現在のところにハウスでもつくってしばらく住みたい、そのところをしばらく離れたくないという気持ちを披瀝されますので、その崩壊して家がなくなってしまったすぐ脇に小さい六坪の家を建てて、そこへ住んでいただく——という意味じゃなくて、離れたくないと言われますから、まずそこにハウスの建物を建てたわけなんです。だんだん落ちついてまいりますと、あのところにおいてみえるということは考えられませんので、市といたしましても、できる限り本人の希望のところに何とか生計を立てるような、将来も考えてあげなければいけない、こういうようなことを考えていますが、しかしながら、丸裸になられて、田畑がそういうようでございますから、私は、いまのところは地域を離れるということが非常にしたくないということでやっておりますが、結局はそういうふうにしなければならないのじゃないか、かように考えております。  それから、もう一つ美濃加茂市の予算でございますが、実は昨日臨時議会を開きまして三億千四百万ばかりの災害復旧費を組んだわけでございますが、御承知のように手持ち予算がございませんので、全部特交あるいは起債補助ということにお願いをすべく、そのようにまず一応組まさしていただいたわけであります。実行予算がございませんので、とにもかくにも激甚地指定ということはむずかしいということは聞いておりますが、皆さん方、先般の総理大臣閣下以下大臣がおいでいただきましたときにもそれぞれに陳情いたしまして、激甚地に相当する起債補助をいただくような施策にお願いをいたしたい、こういうことをお願いをいたしたわけでございますが、もしもそれが現在のとおりの状況であったならば、これは市といたしましても、もう救済あるいは復興ということが実際はむずかしいことに相なるわけでございますし、知事さんもあるいは先生方も非常に御同情いただいておりますので、そのようなことは私はないということを考えて、前向きの姿勢で復興努力していかなければならないということを考えておるような次第でございます。どうか、そういうようでございますから、特別にひとつこの際いろいろ御配慮いただきたい。先ほども申しましたが、市の建物四つをこの飛騨川バス転落のほうにお貸しして十二日までお使いいただいたのでありますが、先般もそれに対し、先ほど申し上げましたが、いろいろな市民方々が申されるのでありますが、これをちょっと県のほうにお話しましたら、単独起債でやれと、こういうのなら三分の二でひとつと、こういうようなお話がございましたが、事実市のほうへ帰って話をしてみますと、三分の一というと相当額の市負担ということになるわけで、県に頼まれ、あるいは警察の本部長に頼まれまして四会場をその方面へお貸しをして、さてというとそうような、この改築あるいは修繕のほうが三分の一持ってやれというようなこと言われますけれども、それはごもっともだろうと思いますけれども、私はそれもひとつ災害の中の一環のこの事業に、起債の中に、単独起債でなくしてこれに入れていただくようにひとつお願いをいたしたい、こう思ってきょうまいったようなわけでございます。これが単独起債ということになりますと、市民感情と申しますか、それも非常に、自分も窮地におちいるわけでございますから、何とかそのようにしてお願いをして帰りたい、かように考えておる次第でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
  47. 赤澤正道

    ○国務大臣(赤澤正道君) 激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律、御案内のとおりに俗に災害基本法といっておりますが、つくられております。その所管である総務長官もお見えになりましたので、あとで御説明もあるかと思いますが、これは自治省がどうするということではありませんので、国が一定の複雑な基準に従ってその地域を激甚災の地域として指定するわけでございます。いつでも災害のときに感ずることですが、この間十勝沖地震の被害調査をいたしました。ここに写真もありますけれども、こういう災害はえてして家がつぶれて流されてしまっているという、その隣の家は安全だ、こういうようなことになりまして、もうほんとうに気の毒な状態にあるけれども、全体としてはそれほどでもないということがあるわけなんですね。そうするとこの財政の特別援助措置をとりにくくなる。それで十勝沖の災害のあとでも政府として話し合って、こういう特別な災害をどう扱うかということに対しまして真剣に検討をいたしております。特に地震などの場合は、地盤の強弱と申しますか、ひどかったところは家が倒壊してしまった、その近所では何ともなかった、こういうことでございます。今回のような場合でも、鉄砲水があったところは完全に流失しているけれども、その他のところは何ともなかった。こういうことになりますと、なかなかただいまの激甚地の指定というものが、基準から申しますと非常にむずかしくなるわけでございます。しかしながら総体から申しました場合には、私のほうではそれぞれの都道府県の実情また災害状態に応じまして、従来は特別交付税でそれぞれの補償措置を、事後処置をすることになっておりまするので、今回も——なかなか該当の市長さん、単に美濃加茂だけでなくして、よほどお困りのことはよくわかりますし、実態に沿うような措置はいたすつもりでおります。ただちょっとおくれてまいりまして私気がつきませんでしたが、私に陳情があるようですが、遺体を安置した公民館はもう汚れておるという意味ですが、あとで結婚式もできなくなるから、こういうものはやめて新しく全額国庫負担で公民館建てろ、こういう御要求は、まだ県のほうでどういう受け取り方をしているかわかりませんけれども、これは自治省と美濃加茂市との間だけの話ではございませんので、どうせ県からこの処置については上げてくると思います。しかし、これはものの考えようでございまして、県がどういう形で上げてくるかわかりませんが、私もどうも行って見なければわからないけれども、あそこへ死体を安置したから別に新しいものをつくれとおっしゃっても、そうなるかならぬか、いまのところはわかりませんけれども、しかしやはり地域で相当な損害を受けられたことは、私どももまのあたりにしておりますし、ですから、この特別交付税あたりをお渡しする際には、十分その実情を調査して、そして市町村のそういった面での御苦労がないようにいたしたい、かように考えております。
  48. 足鹿覺

    委員長足鹿覺君) 赤澤自治大臣にお急ぎのようでありますので一、二お尋ねいたします。  先日、岐阜市でいわゆる一日内閣が開催をされ、総理みずから飛騨川事故現場及び美濃加茂市の死者を出した現場をおたずねになって、いろいろと御同情のことばを述べておられます。赤澤自治大臣も御同行になったと思われます。各新聞紙の報道がまちまちでありまして、遺族方々もきょうは参考人として御足労願っておりますし、この機会に事故の真相の究明、捜査の見通し等について、ある新聞紙は長期にわたるから捜査結果を待たずに自賠法の適用を考慮しておるのではないかという報道をしておるのもありますし、また別に、今週中には先般大臣が述べられましたように捜査の結論が出る、したがって来週中には所管省の運輸省へ回るであろう、こういうふうに伝えておるところもあるようでございます。きょうは遺族会を代表してはるばるお越しをいただいております。また現地で非常な御苦労になった美濃加茂市の市長さんもお越しになっておりまして、直接間接に非常に御心痛になっておると思いますので、大臣から現況と見通しをこの際承ることができればと思います。
  49. 赤澤正道

    ○国務大臣(赤澤正道君) それぞれ関係参考人がお見えになっておりまするので、現状について私一応明らかにしておきたいと思います。  天災か人災かという議論が先ほどからございました。しかし、警察といたしましてはやはり責任の所在というものを明らかにして、しかる上でこの事件を検察当局に送らなければなりませんし、また警察段階でのいろいろ漏れなく調査いたしましたものは当然自賠法の関係もありますし、早期に運輸省に送らなければならぬわけでございます。そこで鋭意結論を出すように進めてまいりましたけれども、前回も申し上げましたとおりに、こういう問題は拙速というわけにはまいりませんので、しかし取り調べれば取り調べるほどいろいろ広範な問題が新しく提起されてくるような状態でございます。しかし、いろいろやりました結果、大体御指摘のとおり、今週末か来週の初めには警察当局としての取り調べは一段落するという見通しを持っております。取り調べた係官も百名、また取り調べられた方々も五百名を越えるような状態でございますので、十分の取り調べは大体やり尽くしたような感じを持っておりますので、もうしばらく待っていただきたい。大体この種の取り調べは、例としては三月、半年かかっておるようでございますけれども、とにかく極力急いで結論を出す、それからまた遺族方々もその結果いかんとしてかたずをのんで見守っておられるわけですから、そういう御期待にこたえたい、かように思っております。  それから、ちょうど防災関係の先生もまた市長さんもここにいらっしゃるわけですが、私この間現地を視察をいたしましていろいろな感想があったのです。何を天災と言い、人災と言うかということについていろいろ議論がございましたが、私はこれには触れたくないと思います。あんなところに道路をつくらず、山の中腹にトンネルをつくったらあんなことは起こらなかったじゃないかとお考えになっても、やはり道路も早くやってくれ、石が多少落ちてもしかたがないということも含んでおるのではないかということまで私は疑いたかった。ああいうところにりっぱな道路をつけたって、川か山かで事故が起こりそうな気がしたわけです。しかし、こういう道路は全国至るところにあることを考えますと、全く寒心にたえないわけです。そこで、私は、警察、消防、また地方団体、市町村を所管をしておりますが、防災計画を各市町村につくるように義務づけておるわけなんです。ですから、所管の地域内で、完全に天災の場合はこれは不可抗力であり、人力をもってしてはいかんともしがたいけれども、少なくとも人災のにおいのするようなものであれば、人知の限りを尽せば、災害はかなり未然に防止できるものであるという私は考え方を持っておりまするので、そういった観点からよく事情を調べたわけでございます。で、防災計画と申しますと、たとえば市町村長の皆さんの所管区域といったらそう広くはないわけですから、そこで予想せざる大雨が降った場合にどこがどういうふうになるかくらいのことは、少なくとも市町村長あるいは市町村政に携わっておられる方々にはいろいろな御判断もあるでしょうし、また主として古老ですね、あの山に雲がかかったら大雨になるぞというようなことがよく至るところに言い伝えられておる、こういった方々も加わって、とにかく、普通予見せられざる天災だけれども、しかし、こういうことだってないこともあるまいというぎりぎりまでいろいろその地区の状況をもとにして御判断を願って、そうしてそれに対応する非常措置というものを平素からつくられてあったら、ある程度ああいうみじめなお気の毒きわまる事故は防げたのじゃないかという気もするわけです。こういう各市町村の防災計画というものは、おそらく県の防災課その他のほうでも十分研究もしているでありましょうし、また国にも防災本部があるわけですけれども、全国三千有余の市町村の計画を綿密に検討しろといったって、これは限界はあるのです。やはり将来にわたってその担当地域内にどういうことが起ころうと、あるいはたいへんな地震なんか起こればお手上げということはあるかもわからぬが、普通こういう災害は日本ではしじゅう起こるわけだから、それに対処する措置等についてはもっと真剣に積極的にあらかじめ検討しておくべきではなかったか。それからこの前も当委員会で題間になった例の道路のいろいろな、落石注意とか、路肩弱しとか、いろいろ標記がしてあります。私は警察担当でございますので、これは交通規制面でいろいろな措置をしておりますが、しかしながらああいう種類の災害から起こってきます事態に対しましては、警察では技術的にそういうことはできませんので、やはりこれは道路管理者、あるいは山でありました場合には、農林省関係砂防、林務砂防と申しますか、などでいろいろなことをお考え願わなければならぬ。そういう技術的なものを克服した上で、注意のためのいろいろな標識ができました場合には、これはやはり守っていくという運転者のしつけ、また道路管理者の教育などにつきましては、これは公安委員会のほうで所管をいたしておりますので、こういったものをあわせてやれば、全国綿密にやれば、担当程度の人災というものは防ぎ切れるのではないかという気もいたすわけでございます。今度は道路の標識も、あれは政令できめられてあるわけでございますけれども、これもいま程度のことでなくして、もう少し一歩進めて綿密な標識をつくって、それに対して運転者、道路管理者等に十分注意させるということをすれどば、人命までも失われるこういう事故というものは相当減ってくるのじゃないかという気もいたしながらあそこを視察して回ったわけでございます。  しかし、一番お困りになっている遺族の方はもちろんでございましょうけれども、当面第一線責任者である市長財政の点で非常に窮地に立ちはせぬかという御心配のようですけれども、これは私どものほうとしまして何とか困られないように、例もあることでございまするので、十分な措置をとっていきたい、かように考えております。
  50. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 時間がありませんので、自治大臣に一言だけお聞きしたいと思いますが、先ほども地元市長さん、また遺族の代表の方々のいろいろ陳情をお聞きしましても、一番問題になっているのは、やはり一つ個人災害であります。私は、農家の方々農地土砂が流れ込んで、そうして使えない、そういう問題も、結局は、大きく考えるならば、今日まで黙々として勤務に働いてきた農家の皆さんには責任はない。大きく考えるならば、それは国家の治山治水に対するそういう責任があると思うわけであります。また、バス転落の問題にいたしましても、大きく考えれば、国道を通っておったわけですから、これはやはりそういう点からも国の責任であるということも言えるわけであります。いまの自治大臣のお話では、道をつくったのは要求があったからつくったのであって、責任は国にない、そういうような言い方にもとれるような、そういう感じだったわけでありますが、そういう点から考えれば、今日までお話では、遺族方々にわずか市のほうから一万円しか補助をしていない。そういうような状態で、そういう方々に対する救済が今日まで何回も問題になっているわけであります。国家賠償法の第二条の点から考えましても、そういう点何らかのやはり人間性のある手を打っていかなければならない。それが私は政府として当然のあり方ではないかと思うわけであります。政治というのはあくまでもひとしからざるを憂えなければならない、そういうこともあるわけでありますが、そういう点に対して、本日遺族の方も、また地元の市長もお見えになっておるわけでありますが、今後の自治大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  51. 赤澤正道

    ○国務大臣(赤澤正道君) 国家賠償法などについては私言及する立場ではございませんので、この席では申し上げませんが、当面先ほど申しましたとおりに、この事故一体責任の所在はどこか。あるのかないのか。あるとするならば、刑事責任か民事なのかといったような取り調べをいまやっておるわけであります。これは私の所管でございますので、鋭意進めておりますが、遺族補償をやるということになりますと、御案内のとおりまずこれは運輸省で自賠法というものを扱っておりますので、そこでひとつ御判断があるかと思います。  それから道路のこういった事故に対して、国が責任があるようなないようなことを言ったとおっしゃいますが、決してそういうことではございませんで、やはりまことにお気の毒なことはお気の毒なことに違いありませんけれども、何でもかんでも国の責任があるのだといったことを申しましても、なかなかそこにけじめをつけることはむずかしい。そういうことのためにまず慎重に取り調べをして、その上での御判断をお願いしたいと思います。  財政措置のほうでは、私の所管する限りは、できるだけのことはいたしますということは、いす市長さんにもはっきり申し上げましたとおりでございますので、そう御心配は要らないと思います。
  52. 足鹿覺

    委員長足鹿覺君) ほかに御発言もなければ、参考人に対する質疑はこの程度にとどめます。  参考人各位に申し上げます。本日は長時間にわたり、貴重な御意見を賜わりまして、まことにありがとうございました。  本委員会といたしましては、皆さま方の御意見を参考にいたしまして、今次の集中豪雨等による災害対策について、適切な措置を講ずるよう今後も努力いたす所存でございます。  本日はお忙しいところをどうもありがとうございました。あつく御礼を申し上げます。
  53. 足鹿覺

    委員長足鹿覺君) 次に、八月中における集中豪雨等による災害対策に関する件について、政府当局に対し、質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。
  54. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私はまず第一に行政管理庁にお尋ねしたいのですが、   〔委員長退席、理事武内五郎君着席〕 過般この委員会でも指摘をされておりましたですが、中部管区と岐阜監察局と、両方がこの飛騨川事故について調査をされたようでございます。そのことは新聞の八月二十五日の各紙が報道をしておりますが、そのことについて行政管理庁のほうにどういうような点が指摘されているか、承りたいと思います。
  55. 田村賢作

    説明員(田村賢作君) お答えを申し上げます。  お話のように、私ども行政管理庁では、中部管区の監察局と岐阜の監察局から出されました報告に基づきまして、これに関係をいたしまする各省庁間の事柄の事実を確認いたしまして、意見書をできるだけ早くまとめたいと、こういう考えでおるわけであります。
  56. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私、実は総務長官の時間を知りませんでして、ですから総務長官、何か一時までだそうですから、この行管に対する質疑はあとに回しまして、総務長官のほうにお伺いいたします。  そこで一言だけ申し上げておきますがね、いま田村政務次官から、提出するつもりだとかなんとかいうお話があったのですが、そうじゃなくて、どういう点が指摘されたかという意見書が出ているわけです、あなたの手元へ。その中身を私は質問をしているわけですから、これからどうこうするということじゃない。事実を私は答えてもらいたいということだけ申し上げまして、これはあとで逐一伺っていきたい。  そこで、総務長官にお伺いしますが、先ほども赤澤自治大臣にお尋ねしたわけですが、とにかく局地災害で、激甚地指定をやってほしいということは、地方自治体から当然の要望として出てまいります。また実際法律適用を行なわないと、地方自治体というものはやっていけないわけです。そこでどうするかという点ですが、検討検討で済まされない問題でございます。いまどうももう結論が出てしまって、こうするのだとおっしゃるなら、そのことを言ってもらいたい。検討するというなら、いつごろまでにそれじゃその答を出してやるかということについて、お尋ねをまず第一に申し上げます。
  57. 田中龍夫

    ○国務大臣(田中龍夫君) 前回以来たびたび本件につきましては、たいへんいろいろと御審議をいただいておるわけであります。私のほうも、このいままでのお話の中で、局地的な激甚災に対してどうしてもこれを何とかして改めなければならぬという強い意思を持って交渉を進めてまいっております。それで先般委員長でございますか、先生でございましたか、いままでの災害をずっと累計してみたらどうだろうか、こういうお話もございました。ところが、それでも調子が出ません。というのは、現在の県報告のなまの分の報告だけを累計いたしましてとんとんぐらいでございまして、これがいまの査定ということになりますと、たまたま本年の場合におきましては、累計いたしましてもB基準の額を下回るような結果と相なります。もう一つは、B基準を適用する場合には、各県の中に一つでも標準税収入を超過する分がなければならぬ、こういうふうな基準もございます。そういうことで累計をいたしましても、どうも調子が出ないのでございます。それからもう一つ、累計をしてそれに達する、そうして激甚災を適用する、その中には地震もありますれば、集中豪雨もありまするし、あるいはその他いろいろな性質の違った、また地域の違ったものを総体ひっくるめて激甚災の指定をする。こういうような考え方は、そもそもそれでいくならば、激甚災もその他の災害もみななくて、激甚災という立法をいたしたこと自体がかえっておかしくなってしまう。すべて正月から暮れまでの間の災害を累計するならば全部該当し、全部入ってしまう。これじゃ何が激甚災か実際にわからない。こういうことで激甚災にいう立法の本旨にもかかわるのでございます。  そこで結論を申し上げますと、ぜひとも私どもは第三の基準を新たに設けるか、つまり新たに局地激甚の基準を設けるか、しからざれば単独法を出して局地激甚の分を救っていく。どうしてもこれはやらなければならぬという、いま非常に固い決意をもって各省間の話を進めてまいっておりまして、私はぜひともそういうかっこうにおきまして処理をしてまいりたい。それで新しく立法をお願いするような場合、これはやっぱり国会の御承認の問題になりますが、第三の局地災の激甚基準というものをつくってまいることが、一番いまのところは必要にしてかついいのじゃないか。こういう考え方のもとに、だいぶ難色のあるところもございますけれども、いま関係各省を督励中でございますことを、ここに御報告を申し上げます。
  58. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そうしますと、あなたがおっしゃる第三項の——二項しかないから三項を起こすのだ、その方向でやるのだ、そうして次の臨時国会が召集されれば、それに出てくるのだ、大体こういう御期待を申し上げて差しつかえございませんか。
  59. 田中龍夫

    ○国務大臣(田中龍夫君) ちょっといま打ち合わせしていたものですから御質問のポイントをちょっと聞き漏らしましたが。
  60. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 二項ですから、新しく一項目を設けて、そうしてそれは臨時国会に大体提出する予定で作業を進めておるものと了解してよろしゅうございますかと、こういうことです。
  61. 田中龍夫

    ○国務大臣(田中龍夫君) いまのところ、まだ法制局その他の打ち合わせも要ると存じますが、基準を一つ設ける場合におきましては、これは防災会議の決定でやれるのじゃないかということで、第三の基準の場合は強引に進めておるのでございます。それで、これをどうしても第三基準ができない、単独の単行法を出さなければならぬというような場合になりますと、これはもう当然国会の御承認を得なければなりません。そういうふうな方向で私のほうの災害対策本部、総理府のほうで目下各省会議や何かをいたしまして強引に進めておるところでございます。
  62. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 この激甚災害に対処する何か昭和四十二年においては施行令の改正が行なわれております。ですから、いまあなたのおっしゃることを伺っておりますと、防災会議でその基準をきめさえすれば、そのことは運用で大体やっていけそうなんだ。だから、まず第一弾としては防災会議の決定でやっていくのだ。もしそのことができないとするならば、次の策として法律改正をするのだ。だからあくまでも、局地災害というものが最近多くなってきてたいへんなことになってきているのだから、とにかく政府としてはそれに対処する、そういうことは間違いないのだ、やるのだ、こういうふうに了解してよろしゅうございますか。
  63. 田中龍夫

    ○国務大臣(田中龍夫君) 私のほうは、どうしてもやるという意気込みでただいま交渉中でございます。それからいまの法制局のほうにも連絡をとっていますのは、防災会議の決定だけではたして第三基準というものができるかできないか、これはまだもっと話を詰めなければなりません。それからまたいかなる基準にするか、これが言うべくして実際はいろいろ検討してみますと非常にむずかしいのでございます。それを何とかしてやってのける決意でいま作業をいたしております。
  64. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 ぼくは、防災会議というものは総理大臣が、何と申しますか招集されると言うのですか主宰をされるということになっておるが、一体昭和四十三年に入ってから防災会議というものは持たれておりますか、いままで。
  65. 田中龍夫

    ○国務大臣(田中龍夫君) 私の記憶では、三回いたしております。
  66. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 三回昭和四十三年に入ってからやってお見えになれば、すでにそうしたようなことは何らかの形で議題にあがっておらなければならぬと思っておりますが、そういうようなものはいままであがっておらなかったのですか。
  67. 田中龍夫

    ○国務大臣(田中龍夫君) この件は、総理も激甚災に準ずるというような答弁を何べんも何べんもされました。私も申しましたし、いまのえびの吉松のときには問題になりません。十勝の地震のときに、これもたいへん無理がありましたのですが、いたしましたが、結局いまの第三基準をつくろうというような、現行法では局地的なものは非常に気の毒ではあるけれども、どうしても適用できない。そんならば何とかしなければならぬというので、準ずる、準ずるという姿においていたしてまいったのでございますが、第三基準をじゃあどうつくろうというようなかっこうにおいては三回ともにいたしておりません。
  68. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そうすると、すでに準ずるという形で、激甚地の指定はされておらないけれども、準ずるという形で高率補助の適用はやってきたのだと、こういうふうに了解していいのですか。
  69. 田中龍夫

    ○国務大臣(田中龍夫君) 御案内のとおりに、この激甚災というのは、項目がたくさんございます。その中でとうとう公共土木災の分はどうしてもできなかったのでありますが、あるいは中小企業とか、あるいは農林関係とかいうふうな個々の単独な分をばらばら適用いたしてまいりました。それでも十勝の際におきましては、公共土木災のほうの二章はとうとう適用ができないままでございます。
  70. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そうすると、あなたのおっしゃるのは、私も中小企業に対する融資の問題、あるいは農林関係のことについての話はわかりますが、問題はやっぱり公共土木の問題になってくるわけです。そこでとうとうできなかった。だけれども、今度はそうしたものまでやらなくちゃならないのだから、そこを検討しておるのだと、こういうふうに了解してよろしいのですか。
  71. 田中龍夫

    ○国務大臣(田中龍夫君) そういう点では、今度はだいぶ考え方が違うのでございます。それで、えびの吉松並びに十勝、たび重なる今日までのところで、局地的には非常に激甚でありながら、それがもう全然激甚災の対象にならないというままで放任されるということはこれはよくない。そこで、局地災害であっても、激甚なものはこれを何とかやっぱり自治体の財政の援助なり何なり救済措置をとっていかなければならぬ。そういうことで従来惰性的にきました、そういう無理をして何とか適用しようというのではなく、今度は。いま先生に申し上げておりますのは、第三に新たに小さい地域であっても、非常に激甚な被害をこうむっておるものはそれだけをどういった新しい基準でどう救済していくか、まるで違った一つの考え方に立って救済の処置を考えていこう、そういうふうな新しい考えでいま一生懸命やっております。
  72. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 御努力に対しては了といたします。ですけれども、いまいったように、努力はしてみたが、やっぱしだめだったということのないように、あなたがおっしゃるように、局地な激甚地に指定されるようにぜひひとつ御努力の上でやっていただきたいと思います。  それからまああと質問があると思いますから、私は一点だけ。いま遺族の方に対して見舞い金を地元の町長さんがお出しになっておる。それはなくなられたお方に対して一万円、そして重傷、あるいは家屋が浸水したと申しますか、流失したというような方に対しては、これはちょっと話が間違っておるかもしれませんけれども、大体五千円程度、こうおっしゃっております。何かこうしたものに対して見舞い金が一万円というのは非常にまあ何と申しますか、少ないということにだれもが感ずる点でございます。しかし、そうすると、日常起こっておる交通災害なり、あるいは何かのアクシデントでなくなった方に対しても何もやらない、それとの均衡等の問題もあってなかなか容易な問題じゃないと思います。しかし、一万円というのは、あまりにも金額が少な過ぎると思うわけです。そこで何かこうしたようなことに対して、遺族の方に対する見舞い金として自治体が出す場合に、もう少したくさんなお金が出るようなことについてお考えと申しましょうか、あなたのほうで行政指導としてこうやったらどうだろう、しかし、それは特別交付税等ではなかなか見れないから、市の自主財源でやるんだから、それはこうだよというようなこと、あるいはそういう見舞い金を出したような場合は、特別交付税の中においてそれは認めると、しかし、それには最高限度額はこのぐらいなんだよというようなことをお考えになっておるのかどうか。これはなぜこんなことを申し上げるかと申しますと、前に森総務長官のときに、三十万円ぐらい見舞い金として出したらどうだということを総務長官がこの災害対策委員会個人意見として実は言われたことがあるわけです。それがこう立ち消えになってしまっておっては、何か政府側のかりに個人意見とされても、こういうところで述べられたものが立ち消えになったというのは非常に残念に思いますから、そういうものがその後どうなってきたのか、それに関連をするからあえてお尋ねするわけでございます。
  73. 田中龍夫

    ○国務大臣(田中龍夫君) まあ町の町長さんのほうで出されましたお見舞い金の問題でございますが、私、その問題はどちらかといいますと、お花料とか、御香典に近い考え方であったと存じます。また、今日までも国はそれに対しましての特に補償でございますとかなんとかいうふうなことはいたしておりませんし、またいたさないたてまえでございますので、結局、その問題はやはりお見舞い金ということに相なると思うのでありますが、森長官のときの三十万円というお話も聞いておりますが、結局、それができないままで終わってしまったようでございます。それから過ぐる災害委員会におきまして、やはりそういう御質問がございまして、まあ自治大臣が御答弁になられたのでございますが、結局、町村が出しましたそういうようなお見舞いに対して国はどう補償するかというお話の際に、それが交付税の対象となるかならないかというようなたいへん突っ込んだ議論になりまして、まあ結局国はそういうふうな個人災害に対する補償とかなんとかというふうなことはできないと、じゃ町村のお見舞い金をそれは裏付ける交付税を考えるのかと、こうなった際に、いやそれはそういう考え方ではないが、しかしまあ一つ一つせんさくもしていないから、まあその中にはそういうのもあるかもしれないが、というお話がございましたが、これは私のほうと申しますよりは、自治省の関係で御答弁がございました。私のほうは先生の御質問に対して見舞い金の性格、見舞い金の額、こうなりますと、依然として個人災害に対しまする補償はできないというたてまえをくずさないことになっています。それからまた見舞い金の額の問題もこれは多い、少ないというよりも、お香典といったようなことに相なるんであろうと、かように考えます。
  74. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 総務長官にお伺いしたいと思いますが、先ほど京大防災研究所長参考人としていろいろ御意見を聞いたわけでございますが、そういう防災研究の学者の間で、いろいろ検討した結果、非常に災害がなぜ起こるか、そういう問題についてもほとんどわからないことが多い。そしてそういう災害を防ぐために緊急にどうしてもこれだけはやりたい、そういうような事柄を全部やりますと、大体三百から四百六十億ぐらいあれば五年から十年の間で、そういう問題についての結論を出すことができる、まあそういうようなお話であったわけであります。  毎年、毎年道路工事にもたくさんの予算が使われておる、また一年間に災害を受ける被害も非常に何千億という、そういう金額であります。そういう点から考えるならば、その対策として三百から四百六十億という研究費は、まず第一に予算の中から出して、そういう研究を進めていくべきである、まあそのように考える次第であります。そういう点で長官の今後のそれに対するお考えとともに、現在そういう研究所が科学技術庁または京大、東大等にあるということでございますが、現在出されている予算というのは年間でどの程度の予算が出されているのか、その点をお聞きしたいと思います。
  75. 田中龍夫

    ○国務大臣(田中龍夫君) まことにけっこうな御意見でございまして、この防災という問題に対して真剣に研究をしなければならぬということでございますが、現に防災会議の関係各省におきましては、あるいは気象庁は特に気象庁として、あるいはまた建設省建設省として、農林省は農林省としておのおのこの防災の問題についての研究をしておられると存ずるのでございますが、それが予算上どのように仕組まれてまいっておりますか、私まことに御無礼でございますが、担当官から答えさせていただきたいと思います。
  76. 川上幸郎

    説明員(川上幸郎君) 御説明いたします。  各省の防災関係研究予算等につきましては、各省と総理府におきまして打ち合わせの上いろいろお願いいたしておりますが、その集計等につきましては、災害基本法の第九条によりまして、防災に関する計画といたしまして国会に報告するというふうになっております。
  77. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それで、いまどのくらいに予算が出されているかということと、それからいま言いましたように、三百から四百六十億くらいあれば五年から十年の間に一段と災害対策に対して役立つ研究ができると、そのように学者が言っておるわけでありますが、そういう点でいままでの予算にプラスして、そのくらいの予算を断じてもうつぎ込むべきである、このように私思うわけでありますが、そういう点の長官の御決意をお聞きしたいと思うわけであります。
  78. 川上幸郎

    説明員(川上幸郎君) 事務的な御説明をいたします。  科学技術の研究につきましては、四十二年予算額におきまして十九億、四十三年度におきまして二十三億とわりあいに先生が申されるほど、こういう数字になっておりますが、それといたしましても、なおこの増額につとめるつもりでございます。
  79. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 今後もっと、三百から四百六十億くらいですね、そういうような予算があればそういうような研究をしたいと言っておるわけであります、私はやはりそういう研究が必要であると、だからそういう点でもっと国の力で援助すべきじゃないか、そういうことを言ったわけでございますが、それに対して今後そういう方針に従って努力してくれるのか、それともいままでの方針どおり、いままでももちろん全然、それに対して努力をやっておるわけでございますから、それも続けていくのか、一段とそういう点に力を入れていくのか、その点をお聞きしたいわけであります。
  80. 田中龍夫

    ○国務大臣(田中龍夫君) 本件につきましては、担当の各省におきましてもなお一そう努力をいたす決意と申しますか、覚悟といいますか、強い要望がございます。それで、たとえて言いますと運輸省関係の気象庁のごときは大臣もたびたび閣議等でもこれらの研究予防費というものを増額するようにということを申されておりまするし、また、その他各省におきましても、こういうふうな研究費の増額は非常に強く望んでおるところでございます。ただ、いまお話のような三百億とか四百何十億というふうなそういう形において概算要求の提出やら予算折衝は行なわれてないようでございます。
  81. 武内五郎

    ○理事(武内五郎君) じゃ、ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  82. 武内五郎

    ○理事(武内五郎君) それじゃ速記起こして。  暫時休憩いたします。    午後一時休憩      —————・—————    午後一時四十五分開会
  83. 足鹿覺

    委員長足鹿覺君) これより委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、八月中における集中豪雨等による災害対策に関する件について調査を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。
  84. 羽生三七

    羽生三七君 本年の夏の打ち続く災害についての当局側の御苦労にまず敬意を表するわけでありますが、それについて午前中、成瀬委員から総理府に対して質問があって、現段階では激甚地指定は非常に困難であるので、それに準ずる処置をとってきた、しかし、それには限界があるので、新たなる項目を設けてその許される範囲内の現実的な処置を講じたいと、こういう意味の御答弁があったようであります。それが実際には総理府が中心になって各省庁との連絡も必要であろうし、最終的には閣議決定等も必要であろうかと思いますが、とにかく総理府総務長官としては、いま私が申し上げたように、とにかく激甚地指定に準ずる処置をとってきたけれども、一応の限界があるので、新項目を設けてこれをカバーしたいと、こういうことであったようでありますが、災害のこまかい内容については私ここに資料をいろいろ持っておりますけれども、私は長野県でありまするが、長野県のみならず全国的な規模においていま申し上げたような問題を大局的に建設大臣としてもそうお考えになっていただけるのかどうか、あるいはそういう処置をとっていただけるのかどうか、この辺をひとつ伺わせていただければと思います。
  85. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 公共土木施設の災害復旧につきましては、御案内のような国庫負担法ができておりますので、通常災害に対しましても、かなり地元負担と申しますか、建設省で受け持っております公共土木施設の災害復旧については、かなり私ども個人的に見ましても、行き届いた立法処置を講じていただいております。ただ、この激甚地指定がないと災害復旧についてそういう高率補助がないんじゃないかというような一般の誤解があるようでございます。実際はかなり高率の九〇%以上にわたる、実質的にはそうなるような仕組みが組まれておる。ただこれは、私ども常にそう感じますけれども被害が広域になって、そして二百六十億とか三百億とかいう国民経済上に与える大きな被害が出たときには激甚災害の指定をする。それでなしに、小さい場合にはしないといいますけれども、これはいかがであろうかと、私どもの感じから言いますというと、結局、被害地にしましても被害住民にしましても、災害を受ける打撃というもののその深刻さ、深さというものは、狭いから少ないというわけのものじゃないわけでございます。そういう意味において、ただいま先生御指摘のようなことを総理府で検討をしていただいておると思いますから、そういう趣意で、あまり矛盾を感じないような災害復旧措置がとれるような立法措置が必要ではないかと考えております。そういう趣旨であることを御了解いただきたいと思います。
  86. 羽生三七

    羽生三七君 大体了解いたしましたが、そういう趣旨で御検討いただくことになると思うのだけれども、実際にはこれが現実に長い時間を要するのか、早急にそういう措置がとっていただけるのか、その辺は建設大臣のみならず各省にわたる問題でありますが、特にいま御指摘のありましたとおり、公共土木事業に限定されてのお話と思いますけれども、それを中心にして考えてみましても早急にそういう処置がとっていただけるかどうか、見通しも含めて建設大臣としての御所見を重ねてひとつ伺わしていただきたいと思います。
  87. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) これは羽生さん御案内のように、総理府のほうで統括いたしておりますから、先ほど総務長官もお答えしておると思いまするし、その趣意で私ども全力をあげてできるだけ国会の御協力をいただきたいというように思っております。
  88. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私は建設大臣に質問申し上げる前に、行政管理庁のほうで午前中の質問が途中になっておりますから、その点で御答弁をわずらわしたいと思うのですが、先の休憩中にこういうふうに承りました。中部あるいは岐阜の行政管察局が報告書を出してきた。これは内部報告で出してきた。しかし、それは各省庁にわたっておることであるけれども、そういうふうな意見等は聞いておらない。したがって、行政管理庁として、出てきた報告書に基づいて関係各省庁の意見を聞いて、そして行政管理庁の意見として当委員会に報告をしますと、そういう意見書と申しますか、まとめたものを出しますと、こういうふうに承ったのですが、それでようしゅうございましょうか。
  89. 田村賢作

    説明員(田村賢作君) おくれてまいりましてまことに申しわけございません。お答え申し上げます。現地からのレポートに基づきまして、関係各省庁とよく協議を重ねまして、少なくとも来週中ぐらいまでにはその意見をまとめるように努力をいたしたいということで御了承賜わりたいと思います。
  90. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 まとまったものは当委員会に御報告になりますでしょうか。
  91. 田村賢作

    説明員(田村賢作君) もちろん委員会に提出をいたします。
  92. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私は行政監察のほうの意見等もあって、そしてその意見等を参酌しながら建設大臣等の御意見も承るのも一つ順序かと思いますけれども、しかし今次災害に対して、特にこの飛騨川バス転落事故に関して、奈辺に原因があるのかどうかというふうなことについて、建設省として、ここは十分、もう一カ月以上たっておると思っておりますから検討をされてただいま答えを持っておいでになると思いますがいかがです。
  93. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) たまたまあすこに滞留しておりましたバス、その地点に大きな土石流の、鉄砲水と申しますか、流れてきたためにああいう土砂の流出が起きた。それを排除することができたかできないか、どうしてそういう遭難場所に避難をしておられたか等について明らかでなければこれはわかならいと申し上げるほかはないと思うのです。大きな原因は、とにかく高い山地の崩壊があって、瞬間的にどかっと流れてきて、そこにバスがおって押し流してしまったということ、それは先ほど申しましたような事情等についてはそれぞれ調査を進められておるわけでございまして、その上でなければ何とも申し上げられません。
  94. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 何か農林大臣時間がないそうですから武内君に譲らなくちゃならないと思いますが、大臣に私が質問申し上げておるのはそういうことではなくて、飛騨川バス転落事故が起きて、そこで建設省としては、この問題について何か道路上なり、あるいは砂防上なりいろいろな問題について原因を究明をされておったと思うのですよ。だから、そのことを建設省としては、このことについて何ら責任がないのかあるのか、どこにそういう原因があるのかということについて私は当然検討をしておみえになるだろう、しかももう一カ月以上たっておるのだから。そのことをお聞きしようとして実は質問したわけなんです。しかし、いま農林大臣が時間がないからというお話ですから、私はあとでこのことについて御質問申し上げますが、ひとつ考えておいて答弁をしてもらいたい、そういうことなんです。  そこで、農林大臣にお尋ねをしますが、農林省としても私はやはり農林砂防のほうで適否の問題等は当然検討をされておると思っておりますが、農林省としては何にもやっておみえにならないのかどうか、一つだけお尋ねします。
  95. 西村直己

    ○国務大臣(西村直己君) 事故が起きますと同時に、事柄が林野山林を控えました現地におきます公共上の事故でございます。したがいまして、私のほうも営林局を通しまして事故原因関係等につきましては調査をいたしたのでございます。  そこで、私も岐阜県にも御存じのように参ったのでありますが、あの地帯は民有林でございますが、帯状に保安林に長い間指定をいたしております。これはいわゆるそういった災害防除のための保安林です。ただ、それから上部のほうにかけましては保安林でない場合が、普通の状態でいえば災害が起こり得るような地質でない石英斑岩と申しますか、そういうような特殊な比較的硬質の地域ではございます。それに対しまして予想外な集中豪雨がきてくずれた。したがって、そこらを将来ばく大な投資をやって、そういうものをやっていくべきがどうかという問題が一つ残されたと思います。そういうような部分まで全国的に、大きな下に国道でもあった場合にはばく大な投資をもってやるべきか、普通の状態ならばくずれないような地質でございます。それから下は保安林として帯状にずっと長い間これは保安をさしておるわけであります。そういう状態の中でくずれてきた、こういうような状況でございます。また同時に、私どもとしましては、全国的に国道の非常に危険の起こりやすいような個所につきましては、さらに、人家の比較的連帯している地域にややもすると山の保安というもののウエートがいくのじゃないかと思いますが、そうでなくて、たとえば交通というようなもの、交通量の多いというようなものなんかを中心にさらに将来の保安林の指定の増とか、そういうものも全国的には考えていく必要があるのじゃないか、こんなふうな考えを持っております。
  96. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 簡単に言うと、農林省としては何らこの問題については責任はないんだ、そういうことなんですか。
  97. 西村直己

    ○国務大臣(西村直己君) 通常の、いわゆる予想され得る降雨量でありますればそういうような状態は起こらないようでございます。特殊な、いわゆる異常な状況の降雨の結果出たと、こういうことは言えると思います。
  98. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 普通のとあなたはおっしゃいますが、どのくらいのことを予想しておられますか。
  99. 西村直己

    ○国務大臣(西村直己君) これは技術的な問題になりますが、通常長い間私どものほうはこれを保安林として下のほうは帯状にずっとやっておりまして、今日に至るまでくずれた例はない地帯であります。それが、あれだけの降雨量を持ってくると——こういうことであります。したがって、それを受けとめるのに耐え得られる土質であるかどうかという、大きな、一種の岩盤的な状況のところがくずれたわけであります。
  100. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私は、実は一言だけでもうやめるつもりでおるのですが、大臣、あなたがおっしゃる、普通ならくずれないだろう、普通ならくずれないだろう、普通の降雨量ならと、こうおっしゃるのだが、あなたのほうが一つのめどを置いておられるその基準というものを承りたいと思います。
  101. 西村直己

    ○国務大臣(西村直己君) これは私が技術者でありませんからですけれども、通常、集中豪雨としていわれておりますようなものでありますればでございますが、短時間に百何ミリ降るような非常な集中を瞬間的にやった状態であります。それだけにあれがくずれたのではないか、こう見ております。
  102. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 いや私の質問とあなたの答弁……、集中豪雨だとかたくさんのものが降ったということはよく承知しております。しかしそうじゃなくて、あなたのほうはどのくらいまで降っておればそれに耐え得るのだ、その自信があるのだ、普通ならいいんだ、ところがそうじゃなかったのだ、どうもこまかい数字、わからぬとおっしゃるならば、あなたでないほかの方に答弁していただきます。
  103. 西村直己

    ○国務大臣(西村直己君) 技術の問題になりますと、専門の林野庁のほうからお答えさせたいと思いますが、私の政治判断としては、ただいま申しましたような長い間、保安林とし、またあの山を見つめてきた行政下において、起こり得ないようなことがあった、その結果くずれた、こういうふうに判定はいたしておりますが、なお技術的には林野庁のほうからお答えたしいます。
  104. 片山正英

    説明員(片山正英君) 林野庁の現在の山林の崩壊地というのは非常にたくさんまだあるわけでございまして、先生御指摘のこの地帯は崩壊地ではございません。現に崩壊はしておらなかったわけであります。そこでどのくらいの雨量を一応想定しておるのかということでございますが、われわれといたしましては、大体工事を進めます場合の、危い場合の三十年確率、五十年確率ということを一応想定いたしておりますが、時雨量に見ますと、これは場所によって非常に実は違うわけでございますが、おおむね五十ミリ程度のものと判断しております。それ以上のものにつきましては、とうてい不可能であるというように考えております。
  105. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 ここの場所はどれだけ想定しておるのですか。
  106. 片山正英

    説明員(片山正英君) この場所はおおむね五十ミリ程度、こういうように想定しております。
  107. 武内五郎

    ○武内五郎君 いま成瀬委員からの質問に出ておりますが、私もそこから話を申し上げたいと思います。  いまいろいろ山林の荒廃等についての問題について話がありました。これが国の所管に入るべきものであるか、どこから民有地であって、国の行政監督の範囲であるのかというような問題が起こるわけでありますが、大体におきまして私は非常に大きな疑問を持つことは、いま日本の林野関係で、これは林野庁の調査でありますので、それによりますると、非常に危険な個所が一万九千カ所もある。その直ちに災害予防措置を講じなければならないところが三千五百カ所もある。全くおそるべき数字が出ておるわけでございます。しかもそこから出てまいります土砂が、一ヘクタール当たり百ないし四百立米の土砂が雨とともに流れ落ちるというのであります。私どもはこれだけを考えてみても、とにかく爆弾を背負って道を通り、川を渡っており、田畑を耕しておるということに相なることと考えます。そうなってまいりますと、これは私はそのめどがどこにあるかなんという問題ではなくて、国が責任を持って山林の荒廃、禿赭地の復旧等について万全の施策を講ずることが、まず何よりも大事じゃないかと思うのでありますが、たいへんな問題だと思う。農林大臣の御所見をひとつお伺いしたい。
  108. 西村直己

    ○国務大臣(西村直己君) 武内先生のおっしゃるように、山を治めなければ政治の基本は立たぬというぐらいにいわれておる。まさに治山ということ非常に大事なことであります。治山の方法には一つ災害防除のための各般の予防なり緊急砂防なりがございます。一方に造林という二つの問題がございますが、いま一つは、私どものほうの所管ではございませんが、砂利の採取であるとか、あるいは里山等の扱い等におきましては宅地造成におきましても治山をこわしていくような面もなきにしもあらずでございます。それらを組み合わせまして、私のほうといたしましては、治山五カ年計画というのを立てております。すでに今年度から実は新五カ年計画の第一歩を踏み出しておるのであります。これは大体従来の事業量から申しますと約倍とお考えいただていいのであります。もちろん、それだけでもいま御指摘のような国の全力をあげての危険な個所を全部一挙に治め得るかというと、十分ではないと私は考えておりますが、少くとも今年度から新五カ年計画として従来の計画を倍以上にふやして第一年度に入っております。したがって、今後そういう方面でも相当私どもは治山の面は進んではまいります。こういうふうに考えておる次第でございます。
  109. 武内五郎

    ○武内五郎君 今回の飛騨川災害について、私も現地に入って美濃加茂市から白川へ入る途中で実に驚くべき個所が数え切れないほどある。中には防災の網が、金網がわずか張られておったところがありますが、これも一メーター四、五十程度の高さの防災網である。もしあんなことであれば激しい土砂の流下、鉄砲水を含んだ土砂の流下というものがあれば、もうひとたまりもないことだと思います。そういうような個所が数知れぬほどある。私はいま林野庁長官が、あすこは山林の崩壊はなかったと言っておりまするけれども、現に土砂が落ちてきておる。流れてきておる。私はそういう御答弁はまったく納得いかぬと思う。現実を見て私はそう考える。いま農林大臣もいみじくも仰せられましたが、私は一切の災害の根源というのは森林の荒廃にあり、それをなおすことが治山に力を入れることが災害の最大の防止策であると考える。しかも、先ほど私が申し上げましたように一万九千カ所も全国で山林の荒廃、禿赭地、侵食地等がある。これを放棄しておってどこに災害防止の対策が立つのか。恐るべき河川のはんらん、田畑の荒廃、こういうことをどうして防ぐことができるが、しかもあの現実において百四名の尊い人間の生命を奪ったのは実にこの土砂の流出である。私はそういうことを考えますときに、私はいまの林野庁長官の御答弁は納得がゆかぬ。私はもう少し真剣にこの問題を取り扱っていただかなければならない。午前中、私どもは、京都大学災害防止科学研究所の矢野教授の参考陳述を聞いたんであります。まず、災害の根本は山を治めることであるという結論に私は達しておると考えます。そういうことでありますので、私は、特に今回の飛騨川事件から考えますと、軽々にやるべき問題ではない、真剣に考え、真剣に対処してやっていただかなければならない。そこで、私は、あそこの自動車の事故の起きた現場から見ますと、私は、あれは渓流だと思う。常に水が落ちておった。そこへ集中豪雨で急激な土砂、岩石を含んだ鉄砲水が流れ落ちた。もしあすこに土砂を押える堤防、砂防施設があったなら、あんな惨事が起こらずに済んだのではないかと考える。私はあそこの地点に立って、あの川の流れておる音を聞いておりますと、岩にせかれる水の流れを聞くとしょうしようとして身が締まる思いがします。全くおそるべき、わずかなことであるがおそるべきことになったと考えます。しかも、私はここで、いま林野庁は計画雨量が五十二ミリだと、こう言っておりますが、現におそこには百十四ミリ以上三百ミリに達する雨量があった。これは林野庁ばかりでなく、道路河川等についても私は考えなければならぬことだ、計画雨量についても修正がここに必要になってきておるのではないか。五十ミリの計画雨量であの道路を設計し、山林保持の計画を立て、河川管理の計画を立てておるとするならば、私はそれは大間違いだ。まず、そういうような基本的な問題から考え直していかなければならないものではないかと考えます。その点について、農林大臣、林野庁長官並びに建設大臣の御所見をお伺いします。
  110. 西村直己

    ○国務大臣(西村直己君) 林野を守り、また同時に守るのに、積極的には一つは造林という基本的な問題をやはり私は進めてまいりたいと思います。これは災害防除だけではなくて、日本の大事な水資源を守るという意味でこれにも力を入れたい。それから次には、災害防除、この二つのためには、一つは保安林、これも民間の協力をいただいてさらにまた拡大し、適正なる配置をしていきたい。保安林自体をつくることによって民間にそう御迷惑をかけるわけではないが、やはり私どもは、乱伐と申しますか、そういうようなことを防ぐことによって山全体で水をある程度保有してもらうということが水資源の涵養であると同時に災害防除になる。それから第二には、もちろん、今度は災害防除としてのために予防——災害の起こる前に私どもは考えていかなければならない。それから同時に、災害が起こりそうであり、あるいは起こった場合に対するための緊急砂防というようなものを考えてまいらなければならぬと思うのであります。そこで、一つは、五十ミリという雨を基準にしてというわけではないが、大体五十ミリならという限度ぐらいで考えられている行政水準を高めるか、こういう問題でございました。私は、やはりこれは国をあげまして、関係省もございますから、全部を行政水準を改めてやるというわけにはいかないと思いますけれども、やはり大事な人の交通であるとか、あるいは人家が連檐してあるとかいう人命尊重、それからもう一つは、経済的にも非常に大事なような所に対しましては、将来とも行政水準というものを上げながらこういうものに対して対処をしてまいるのが本来の治山に対する姿勢ではないかと、こう考えておる次第であります。
  111. 片山正英

    説明員(片山正英君) ただいま大臣が御説明申し上げたとおりでございますが、先ほどの私の御説明が若干舌足らずのきらいがございましたので、若干補足さしていただきたいと思います。  先ほど私申しました山地崩壊はなかったというのは、バスの転落をいたしましたその地点、その周辺を実は申し上げたわけでございまして、日本全国にいたしますと、これは二十八万三千ヘクタール、約森林面積の一%弱が崩壊いたしておるわけでございます。したがいまして、これらの回復につきましては、御審議をいただいておりますが、新治山治水計画に基づきまして、先ほどから大臣の御答弁のように約二倍弱の予算をもってこれに対処してまいる。その考え方といたしましては、従来三十年確率、五十年確率というような程度災害を想定いたしておりましたが、人家その他非常に問題が公共的に重要なところ、そういうようなところに対しましては百年確率というような点も考慮いたしまして万全を期してまいりたい、かように考えております。
  112. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 私もこの飛騨川バス転落事故以来、第一は、四十一号線の構築、造築がどういうふうに行なわれておるかという現場を一ぺんよく見る必要があると思いまして、先日四十一号線を見てまいりました。まだ一部未完成のところがありまして、旧道の使用されておる、きわめて短い区間も残っております。これはもう武内さんもおそらく現場ないし四十一号線の沿線をよくごらんいただいておると思いますが、あの旧道の状態と新たな四十一号線の道路をごらんいただきますというと、いかに私は今日の土木工学と申しますか、技術と申しますか、進歩しているものか、非常な心強さを感じてきたわけですが、そういう中に皮肉にもああいった不祥事が起こりましたということは、何たるこれは皮肉なことだろうか、御同様、全く胸を痛めておる次第でございます。  そこで、全国の道路関係を見ましても、道路が約三分の一は山地部を通っておる。そのところをどうして道路交通上不安のないようにやっていくかということは、これはまあこういう国土の宿命を負っておるみんなの非常なこれからの大事だと思っておるわけであります。農林大臣が申されておるように、何と申しましても治山治水というものの事業の最大のねらいは防災でございますから、防災的見地から今日四十三年度の予算編成の段階におきましてもあの条件の中において、治山治水だけは別扱いにして、おおむねどちらも倍増計画をもって四十三年度からしかけようというようなことに、防災に対する政府の心がまえというものもあらわしておるわけでございます。ただ遺憾なことに、集中豪雨がどこにくるかという、またくる直前においてそれを的確に捕捉することができないというような今日の状況なものでございますから、時間雨量百ミリはおろか、二百ミリきてもどこを通っても大丈夫というようなぐあいにはなかなか私は短時日にできるものではない。したがって、やはりこれは公共の保安の上からいたしまして、道路管理運営の面とあわせて真剣に考えていかなければいかぬのじゃないか。できるだけ危険個所を緊急に、あぶないというようなところにつきましては緊急に事業を実施するようにいたしてまいらなければならない。そうして建設省でやっております砂防事業につきましてもそういう考えで、ひとつ最善を尽くしていかなければならんじゃないかと考えておる次第でございます。
  113. 武内五郎

    ○武内五郎君 私は、御承知のとおり土木技術屋じゃありませんし、しろうとでありますから、場合によれば用語等においても適切さを欠く場合があるかもしれませんが、確かにいま大臣がおっしゃられるように、あの道路は、道路自体は私はかなりりっぱな道路だと思います。ただ道路というものはでこぼこのない平たんな道である、路肩であるだけでは道路ではない。堅牢な基盤、路床というか何か知りませんが盤、土台です。それと道路に接する擁壁というものを考えなければいけない、これがじょうぶな堅牢な災害の起こる心配のないこの三つの形がそろって私ははじめて道路だと。そこで道の形だけがあそこは舗装されておりまして平たんです。それだけでこれはりっぱな道路であるということは私はできないと思います。この三つが三者一体になってはじめてりっぱな道路であるということが言える。そうなってまいりますると、私はまずこの道路法の法文の本旨に入って、お互いに考えてみなければならないのではないか。道路法ではいま私が申し上げたような道路法の第二条でございますが、これは道路の定義が書いてあります。交通しかもそれは一般交通の用に供する道である。安全円滑なる交通を確保しなければならぬ使命を持っているのが、これが道路です。これは道路法の二条の規定の意味だと私は考えております。そうなってまいりますると、しかもこの二条には、法で、道路についての付属物、道路についての付属工作物・いろいろな規定が出てくるわけなんであります。それが確実にそろってあやまちのない、災害の起こる心配のない状態になって初めて私は「道路」という二条の意味が生きてくる。そうなってまいりますると、今度は私は、道路構造令の三十一条の、これは災害等の起きないように規定されている防護施設という条項です。それらを勘案してみますると、国道四十一号線の至るところに土砂の流出の個所を発見すると、私は考えざるを得なくなってまいります。そこで、これは建設省ばかりでなく、農林省の、特に林野庁においてもこれはお互いに真剣に考えてもらわなければならぬことが起きてくる。なるほど、あの自動車の事故の起きた個所だけでは山の土砂の崩壊そのものはなかったかもしれない、けれども現実土砂が落ちてきている、土砂を含んだ鉄砲水が落ちてきている現実を考えてみますると、どこかで侵食されていることはこれは事実です。私はだからこそ山林のそういう土砂の流出をどこかで防がなければならない、その施設がとにかく必要であると考えます。私は、これは道路を管理する建設省、山林を管理する林野庁、農林省との密接な連絡のもとにその計画が立たなければならないものじゃないかと考えるものでありまして、どうかそれについてもう一ぺんはっきり農林大臣、建設大臣から御所見を伺っておきたいと思います。
  114. 西村直己

    ○国務大臣(西村直己君) 砂防関係につきましては、もちろん私のほうは山林砂防でございますし、建設省には建設省の砂防の担当の分もあります。しかし、道路と申しましても、山に差しかかる分は、おっしゃるとおり、全体が一つの構造としての組み合わせの中における道路、こういうふうな考え方というものをひとつ考えなければならぬのではないか、いわゆる地勢というものをどう考えるかという中においての道路であると同時に、山林であるという、そういう意味から建設省なり、あるいは農林省というものは密接な連携を持って、特に山林砂防等については建設省とも十分な密接な連携をとりたい、そういう意味で、人的にも実は農林省ともあるいは建設省とも人事の交流までいたしまして相互にそごのないようにはやっておりますが、なお、今後ともできるだけ緊密な連携を砂防関係においてとってまいりたい、かように考えております。
  115. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) ただいま農林大臣からお話のとおりでございまして、両省当局が緊密な連絡をとりまして、なかなか思うようにはいかないかもしれませんけれども、とにかく林野庁でも、道路当局においても、それぞれ危険個所を点検して、緊急を要するものについては緊急に措置をとってまいろうということで、密に連絡をとってただいま検討をいたしておるところでございます。
  116. 羽生三七

    羽生三七君 途中ですが、一言だけ農林大臣にお伺いしておきたいと思いますが、特にこの夏の災害中心にして、農林省所管としては天災融資法を発動される考えがあるかどうか、これはもちろん一定の基準があることでありますから、全国一律にというわけにはまいりませんが、激甚地指定が問題になっている際、なかなかこれは各省中にまたがって具体的に何をどうするかということは、非常に問題があることですが、特に農林省所管については、この問題が一つの問題点になると思いますので、天災融資法を発動されてはいかがだろうかと考えますが、これについての御所感を伺いたい。
  117. 西村直己

    ○国務大臣(西村直己君) 天災融資法を発動する場合にも、一応の基準と申しますか、まず少なくとも十号台風につきましては、天災融資法の適用というものが可能であるように私どもは極力検討を急いでおります。他の部分につきましては、たとえば岐阜の災害等につきましては、天災融資法そのものの発動は無理ではないのではなかろうかといういまの大体の見通しでございます。十号台風については、天災融資法が可能ではないか、こういうふうな考えでおります。
  118. 足鹿覺

    委員長足鹿覺君) 農林大臣、十号台風だけですか。私の資料に基づきますと、天災融資法関係で県報告のトータルは百五億八千三百万円余ばかりに達しておると思うのです。本委員会の意思は、激甚地の運用基準に非常に適合が困難とするならば、天災融資法関係については、八月台風被害としてこれは適用すべきであると、また適用可能であると、そういう見地に立って従来の審議を進めてきておるつもりでありますが、農林省当局に集まった激甚法関係被害額は幾らであり、これを何%に見て処置されようとしておるのか。また今後も被害額は変化すると思いますが、いまの御答弁でよろしいでしょうか。もう少しよく御検討願う必要があるように思いますが。
  119. 荒勝巌

    説明員荒勝巌君) 一応私から数字の点だけ御報告申し上げます。  農林省に入っております災害につきましては、全部で現在の段階では、設備並びに農作物の被害も含めまして二百六十五億というふうなおおむね、県からの報告でございます。それのうちで、いわゆる岐阜県の災害関係の、いわゆる台風七号系統ということで起こっております八月十六ないし十八日の被害が、大体三十一億七千万円くらいでございまして、そのうち農作物の被害は六億一千五百万円。これも県報告でございます。このうち、約八割から九割くらいが岐阜県の被害であると思っております。  さらに、東北地方を襲いました台風系統が全部で三十三億円で、そのうち農作物の被害が十三億八千万円ほどでございます。さらに、台風十号系統の被害、いわゆる八月二十五日から三十一日までの分が、おおむね二百億くらいございまして、そのうち農作物の被害が、主として水稲でございますが、八十五億くらいございます。したがいまして、その三つ合わせましたのが先ほど申し上げました二百六十五億前後というふうになるわけでございますが、ただいま大臣から御答弁申し上げましたように、台風十号系統の被害が一番規模がでかくて、単独で農作物だけで八十五億ございますので、これははっきりといわゆる天災融資法の対象になるのではなかろうか、台風七号系統と東北地方のいわゆる大雨の系統は、それぞれ災害原因を異にしておりますので、一連の取り扱いはいまの段階ではむずかしいということで苦慮している次第であります。
  120. 足鹿覺

    委員長足鹿覺君) ちょっと私から念のために申し上げますが、激甚地関係の運用基準には相当困難なものがあるということは、従来までの質疑応答で明らかになっておりますが、これは高額補助の問題でありますから、九州のえびの地震等にはこれに準ずる措置というものが講ぜられておる。しかし被害の実態というものは、えびの地震とは趣を異にしておる、したがって午前中も参考人意見を聴取いたしましたが、少なくともやはり現地の人々の声は、激甚地指定をということであります。したがって、その条件に満たなくても、えびの地震にとられたものをこのたびの農林被害等に置きかえてやった場合にはどういうことになるかということを御検討になっておりますか、それが一つ。  それからえびの地震と異なったこのたびの被害は、農作物被害がきわめて甚大である、といたしますと、つまりこれはもらい金ではありません。低利融資を主眼とした年三分のものでありますから、少なくともこれらに対する弾力的な配慮というものがなけらねば、このたびの被害に対してはゼロ回答にひとしいことになるのではないでしょうか。そういう点をとくと御検討になって、十分配慮された御答弁を期待いたしておるわけでありまして、あまり事務的に簡単に割り切らないで、当委員会の意のあるところをごしんしゃくを願い、御答弁をわずらわしたいと思います。
  121. 西村直己

    ○国務大臣(西村直己君) 私どももできればこの三つの台風といいますか、被害を一緒にして、天災融資法の発動というものをずいぶん検討もしてみたのでありますが、自然現象でありますので、いまの段階では三つの関係をただ自然現象として一緒にして、いわゆる扱っていくというようなことにはなかなか苦慮しており、政治的にただ自然現象というものを抜いて、そうして一本で二百五十億の被害があった、天災融資法——えびの地震の場合も御存じのとおり天災融資法の発動というもので、いわゆる激甚の指定がないから、あと始末をしたというようなことはないのであります。ただし、そのかわり私どものほうは苦慮いたしておりますから、方向がつけば一括して天災融資法の扱いにしてみたいのでありますが、少なくとも現状の段階では台風十号というものに対しては、これはもう大きな被害でありますから、はっきり天災融資法の対象になる。それからそれ以外の分野におきまして融資の問題としては、自作農創設資金でございます。これにつきましてはワクの増大をはかって復旧の融資に充てていきたい、これはやはり私のほうはできる限り弾力的な運用ができる、こういうふうに考えております。
  122. 足鹿覺

    委員長足鹿覺君) お急ぎのようですから……。
  123. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 建設大臣も何かお急ぎだそうですが、それでは審議できない形になりましたが、私のほうでは、資料としてお願いしたいのです。当然建設省としてもですね、今時災害に、飛騨川バス転落のあの個所について、どうしてこういうものが起きたかということについての原因はですね、追求されておると思います。たとえば土砂くずれがあったんだと、現にそれについてですね、私は原因を当然究明をされてあったと思うのです。そういうことについてですね、私はこの前資料としてですよ、あすこは全然手が加えてないわけです。ですから手を加えておらないとするなら、なぜ手を加えなかったかということについての意見を付しての資料を出してもらいたいと、こういっておった。出てこない。そこで、この次でけっこうでございますから、いま申しましたような、あなたのほうとしては原因は何なのだということについて、いまの道路の完備が十分してあったんだというんでなくして、こういうことが原因になって土砂くずれが起きたんだ。それはたとえば雨が降ったのだ、雨だけで片づけられるものか、そういうようなことについて、何も建設省としてやってお見えにならないはずはないと思うのです。ですからそういうことについて、原因を究明された報告書をお出し願いたいと思うのです。
  124. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) ただいまの報告でございますか原因究明、その土木研究所の技術調査等も行なわれておるようでございますが、まとまりましたらひとつお出しいたします。これは成瀬さんももうたびたび現地に行かれましたし、私も行ってまいりまして、私どもも幾たびかまあ近いところに災害を受け、見ております。私は感じましたのは、おそらくそうだろうと思うのですけれども、ちょっとあの上のほうで山地がくずれておるということは、下のほうではわからなかったと思う。そこへ大きなまあそれは雨の結果ですよ、くずれてきた。そうするとちょうどあの中間でございますか、沢の五メートルから十メートルぐらい上のところに一つの段があるのです。あそこヘどさっとたまっておったと私は想定します。そして表面張力みたいで危険な状態で張りつめておった。それでそれがもっている間は何ごともなかったのだ。それでそれがおそらくさらに上のほうから圧力がかかってきてですね、そしてその表面張力みたいなところが破れたときに、瞬間的にどっとあそこにきたと、私は現場を見ましてそう感じてまいりました。そういうことはかねて予想されておらぬことかと、これはどうもあの状態になってみればですね、そう言えるかもしれませんけれども、先ほど来武内さんもお話でございますが、私も四十一号線については今度は気をつけてあの両側の四十一号線全線にわたって、まあウの目タカの目、実は危険がありやせぬかということで見てまいりましたけれども、やはり一番主体として感じられるのは、あの不幸な事件が起きたあの地帯が一番狭くなっておる。ここらがやっぱりあぶないところであったんだなという感じは正直いたしておりました。そのほかにつきましては、まあいろいろお話でございますけれども、もちろん道路の路面だけがちっとしておけばいい道路だと決して申しておりませんので、四十一号線のときは、私は日本の道路皆さんもそうでございましょうけれども、その壁面等の工事につきましても、かなり入念な工事が行なわれておるということは、正直にこれはそれでもそれでどうだということは決して申しませんでございますが、一部まだ利用しております旧国道と比べてみましてもですね、これは問題にならないほど入念な手を入れておるということだけは私も十分認識をいたしてまいった。しかし、いまの原因のところは、私しろうとでございますから、しろうとなりに感じました点は、そういうことを感じてきました。
  125. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 大臣、答弁がじょうずで、私の言うこと、あなたこれからのこと、なかなかうまいことをおっしゃるが、そうではないですよ。私の聞きたいのはあそこの土砂崩壊があった。原因建設省としては究明してお見えになりやしないかというんで、やっておらんというんならそれでいいんです。ですから私はそれを資料としてお出し願いたいというのが一つと、この前あそこは何ら手を加えてないとおっしゃる。だから手を加えなければ手を加えなかった、強度等計算されて何もやる必要はなかったと、こういう結論があったと思うのです。五十ミリの雨が降るならだいじょうぶだということでやられなかったというんなら、そういうものをお出し願いたいと言っておる。それを資料として出すとおっしゃるならそれでけっこうなんです。出すといったら出してもらわなければいかん。この前のときは出すといって出してない。
  126. 蓑輪健二郎

    説明員蓑輪健二郎君) 先週御要求になりました資料、実はいまつくっておりますので、もう大体できておりますので、実は私先週いろいろいなかったもんですから、きょうさっそくこれを見まして、資料をさっそくあすにでも取りたいとこういう考えであります。  ただ、いまの土石流原因の究明ということになりますと、これは非常にむずかしい問題でございまして、土木研究所の砂防の関係の人がいろいろ見てまいっております。これについては私どもいままだどうして土石流が起こったか、その原因についてはもうしばらくお待ち願いたいと思います。
  127. 武内五郎

    ○武内五郎君 大臣お急ぎのようで、一点だけひとつ答弁してもらいたいと思います。  それは道路行政がちょっと偏在している形を私は感ずるんです。というのは、たとえばあの道路について考えますと、あの国道四十一号というのが三十四年に二級国道から一級国道へ昇格した。同じ一級国道であるが、その近所に名神高速道路が、世界でも優秀な道路が走っておるわけであります。これは四十四年ですか、完成されるそうでありますが、それと今度は阪神国道と高速道路と結ぶと、これこそ世界でも優秀な道路になると私も考えております。かつて阪神道路の開通式に私も列席させていただいて、この道路を見ましたが、全く驚嘆であります。かつて欧州でヒトラー道路を見たことがありまするが、まずあれに匹敵する道路だと考えます。そういう道路が近くにある。ところが同じ国の管理の道路で、山村地帯を縫って走っている道路について、ああいうふうな災害がひんぱんに起きるということはどうも道路行政がどこかに偏在しているんじゃないか。偏向の形をとられているんじゃないかと考えます。もしそうだったら、これは大臣ひとつ是正を、大臣から是正していただきたい。その行政のあり方を是正していただかなければならんと考えます。  たとえば地方になんか行ってまいりますと、そういう点を特に強く感ずる。これは私は新潟県の例をとってみます。新潟県で県、国道が四百二十七路線あります。で、その延長キロ数が四千五百キロ、そのうち危険なと言われている路線が百三十路線ある。危険個所が五百四十カ所もあって、おそろしいものだと考えます。これが特に県道になってまいりますると、ほとんどの県道が危険になってくる。国道においても四十九号線、二百五十三号線、百四十八号線というようなところで、二十五カ所、二十三カ所、十カ所というような、直ちに手入れしなければ危険だという個所があります。こういうように、地方に参りまするに従って危険個所がたくさん出てくる。それに手が回らないという状態じゃないか。私は、これはあえて大臣にお願い申し上げたいことは、そういう、もしそこに手が回らないとか、目が届かなかったというようなことのないような、行政の手が偏在されないような状態道路行政を持っていっていただけることをお願いしたい。これはお願いです。そういうようなことで、私は、あの道を見て、同じ近くでありながら、岐阜県、愛知県を走っている一つ道路は、世界的に優秀な道路があるにかかわらず、ああいう災害道路があるというのは、何かそこに偏在されているのではないか。どうかひとつそういう点がないようにお願い申し上げたいと思います。それは、大臣がすぐお出かけになるので、それだけ一つ……。
  128. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 武内さんの御意見は私も全く同感でございます。道路政策、まあ非常にそういったような国土の変貌過程といいますか、日本の状態がすさまじい変わり方をしておるときでございまするし、したがって交通量を追っかけて、あとを追っかけの道路整備をやらなきゃならぬという地点があまりにも多いということに、実は非常なあせりを感ずるわけでございますけれども、私はやはり、あなたがおっしゃいますように、この道路というものは、やっぱり特にこういう国土の変わり方をしておるときに特に感じますことは、地域開発の基盤というのはやっぱり道路整備にあるということから考えますと、国道の整備がある程度進んでまいりますというと、県道以下の地方道の立ちおくれが非常に目についてきておる。それがまた地域開発の一つの何と申しましょうか、ネックになってまいっておるわけでございますから、そういう上で、もちろんまあ交通量に見合いまして、幹線国道の整備も、バイパス等、当然急いでやらなきゃなりませんけれども、あわせて、この地域開発の基盤である道路を整備する、しかも、その道路整備ということは、安全にしてかつ円滑な交通を確保するという目的でございますから、そういった上で県道以下の地方道につきましても、特段のひとつ力を入れていきたいと考えておるわけでございます。その沿道において危険個所等につきましては、先ほど来林野庁も非常に積極的に道路の背景をなす山林地帯、そういうところの危険なところについては、かなりの処置を講じようという意気込みでかかっていただいておりますし、われわれの砂防事業と合わせまして、そういうことのないようにつとめていかなければならぬというように考えて、何とかひとつ全力をあげていきたいと考えておる次第でございます。
  129. 足鹿覺

    委員長足鹿覺君) 先ほどの羽生委員の質問に関連をしまして、農林大臣から先ほどお答えがありましたが、その問題はそれとしまして、自創資金について考慮するというおことばがありました。経済局長に、大臣がそういう点ではっきりとした御答弁になっているので、従来の自創資金を見ていると、農地の取得にウエートがかかり過ぎて、維持関係について、七、三の割合で、きわめて少ない。ワクもまたこういう不時の災害等について備えてないと思いますが、ワクなり、あるいは農業経営維持のためにどの程度配慮されるお考えでありますか。ただいまの大臣の答弁を受けて、少し具体的に答えてもらいたい。  いまひとつわれわれが現地調査して要望の強かったのは、近代化資金のワクをふやして、被災地に重く配分をしてもらいたい、この要望が強かったわけでありまして、いまのところ天災融資法についても難色がある、激甚地指定についてもむずかしい、今後の課題だということになりますと、これはゆゆしい問題でありまして、現地はおそらく納得しますまい。また、この災害復旧は、局地的でありますが、致命的な山腹崩壊による人命をも奪っております激しいものでありますから、その復旧は期待できますまい。ほとんどこのような状態で、農林省は今後被災地の農林漁業の復活をいかように対処される御所在でありますか、いま大臣だけではなしに、あなた方その衝に当たっておられる人の少し専門的な具体的な御答弁を関係局長からお願いいたします。
  130. 亀長友義

    説明員亀長友義君) 私最初に近代化資金をお答えいたしますが、近代化資金につきましては、御承知のように、本年度千億のワクを用意しております。それでこの配分につきましては、年度当初に従来の融資実績、あるいは資金需要等を考慮いたしまして、各県と協議の上、すでに配分をいたしております。そこでこの融資のワク内で、それぞれの県において、また農政局とも調整をとりながら、現在までその運用につとめてきております。近代化資金そのものといたしましては、法律のたてまえとして、直接の災害対策という考え方では必ずしもございませんけれども、農業経営全体の問題といたしまして、当然これは災害の場合に問題になる資金でございまして、私ども従来配分をいたしました県のワクをさらにこの際一般と実情に合うように調整を深めるように、農政局にも要望をしてございます。それから、きわめてわずかでございますけれども、近代化資金にも余裕がございますので、この点さらに災害個所現地の実情に応じまして、今後の調整をいたしたい、かように考えております。近代化資金のたてまえといたしましては、最初に申し上げましたように、農業経営の資金ということでございますので、あくまでそのたてまえの範囲内で災害地の実情に応じた、要望に応ずるように調整をいたしたいと考えております。自作農資金につきましては、農地局長から詳しくお答えがあると思います。
  131. 中野和仁

    説明員(中野和仁君) 自作農維持資金の具体的な運用について申し上げたいと思います。自作農維持資金の本年度のワクは百二十三億円でありますが、その中から、従来からもこういう方向をとっておるわけでございますが、一般の相続資金が要るとか、あるいは火事で焼けたような小災害のために、または負債で困ったような農家というものがかなりあるわけでございます。こういうことで、年度当初に四十億各県に配分しております。ただし多少の災害等もございますので、四十億のうち五億を現在保留しているわけでございます。それからそれ以外の八十億は大災害がいつ起こるかわかりませんので、その分は年度当初に保留をしておくわけでございます。したがいまして、たとえば昨年度の状況を申し上げますと、昨年度は非常に西日本で干害がございました。そのために去年は災害は七十億融資しておったわけでございますが、その中から四十八億出す、あるいは新潟の集中豪雨の大災害のときに十五億出すというふうな運営をしてまいってきておるわけでございます。そこで先ほどから申しておりますように大きな災害で天災融資法が発動されない、しかも各県の資金ワクの、当初の配分ワクでは足りないというものにつきましては、先ほど申し上げました五億の保留がございますので、たとえば今度の岐阜の集中豪雨のような場合には、県の要望が非公式ではございますが、三千万という要望がございますので、それにはこの中から早急に解決するように手を打ちたいというふうに考えております。
  132. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 大臣何かたいへんお忙しいところを繰り合わせて御出席いただきまして感謝しております。  お伺いしたい点は、運輸省として飛騨川バス転落についてその事故の自賠法の適用の問題ももちろんございますが、そのことは少し横にのけておきまして、どうしてこうしたような災害が起きたのかということについて、運輸省は運輸省なりに私は検討してお見えになると思います。これは当然自賠法と関連してまいりますが、それも検討してお見えになるはずだと思いますから、その結果について、検討されたその結論についてお伺いしたいと思います。
  133. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 端的に申し上げれば、集中豪雨のようなああいう異常気象自体に対する自動車関係あるいは道路関係あるいは砂防関係、そういう関係各方面の注意と申しますかあるいは監督的行政水準と申しますか、これが低かったように思います。もちろんあのような百ミリも降る集中豪雨というのは百年に一ぺんぐらいしかないそうでありますが、それにしてもいまのような相当大量のお客さんが移動しているというような時代に相応するように行政水準を上げるということが各方面にわたって必要であります。その点については、法規なりあるいは行政なりあらゆる方面において検討を加え、直すべきもので直ちに直せるものは直すようにしたいと考えております。
  134. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 大づかみな話といたしましては、了承いたしますが、運輸省として何かこういうところに直接的な原因があったのだというその原因を、あなたはいま抽象的にいろいろとおっしゃいましたが、そうでなくて、もっと個々にあげていただくわけにはまいりませんか。
  135. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 責任の所在はどこにあるか、これはまた容易に断定はできませんけれども、いわゆる観光業者が大量のお客を輸送するという場合に、いままでのような安易な考えでお客を輸送したり観光させるというやり方について検討すべき問題が非常にここに出ていると思います。国民がすべてリクリエーションをやるというこういう時代になりまして、相当大量の観光旅行というものは現在でも毎日行なわれております、これがバス旅行あるいは列車旅行その他の輸送媒体を通じて。大体、しかしみんな観光案内業をパイロットに、水先案内にしてやっているわけでございますが、そういう新しく伸びてきた大量のお客さんを輸送する観光関係という問題について新しい観点からいろいろ検討したり、規制する必要があるだろう、そう考えております。
  136. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 運輸省として、いまおっしゃるのは、実は旅行あっせん業法の改正と、あるいは現行法の中で欠陥というものがあったら、今後それをひとつ直していこうじゃないかというような御意見に承る。これは過般の当委員会におきましても、運輸大臣は、そういうことについて法律改正等がもし必要であるならば改正したいというような御意向に承ったわけでございますが、私はそのおっしゃる観光行政と申しますか、これに関連しての旅行あっせん業法の改正というものは、それは改正を今後していきたいという点については了といたしますが、運輸省としてまだほかにこういう原因があってこうした問題が起きたのだということはございませんか。
  137. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 飛騨川の事件自体を直接の問題として点検してみますと、やはり出発のときの問題、それから気象の問い合わせの問題、それから向こうの飛騨モーテルへ行きまして、そこを引き返すときの判断の問題、それから引き返しまして駐車する場合の場所の選定の問題、そういうような問題が問題点としてあげられるのではないかと思います。
  138. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私は刑事責任の問題については検察庁のほうでやっておる。運輸省としては、自賠法の適用もさることながら、そういうこととは無関係で、今度のバスの転落についていろいろ検討されてきて、これがきめ手になる原因でこういうことが起きたのだと、いまお聞きしておりますというと、全身衰弱のような、いろいろなことに問題点があるということは、おっしゃっていることはわかるのですが、これが致命的な欠陥であるというふうに、ここが原因なんだという点はまだ指摘される段階ではございませんか。
  139. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 私の考えるところでは、一つ状況のもとに起こった事故でございまして、その状況全般を構成しているいろいろな要件、要素を解明しないと……。これが一つの急所だというようなことで指摘するような問題ではないように私の考えでは感ぜられます。
  140. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 あなたの考えられていることは、いままでずいぶん検討してきたが、その結論はそうなんだというように承っていいのですか。
  141. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) そうです。
  142. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そうしますと、自賠法のほうに入りますが、自賠法は一つは運輸大臣の所管事項ですね。ですから、これを適用するかどうかということは、運輸大臣の判断できまることであるわけですから、そこでいま自賠法を適用すべきかどうかということについては、たとえば会社側からまだ出てこないんじゃないか、あるいは検察庁のほうから、まだどうするかということは結論が出てきていない。そういうものをにらみ合わせるのなら、もしそうしたこと等が——何べんも議論しておりますけれども、起訴するには足りないと判断される場合があると思います。そうした場合については、運輸省としては、自賠法を適用する、このことで、するか、しないかは別にして、適用する場合があると、こういうふうにお考えになっているのですか。
  143. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 刑事責任よりも民事責任のほうが範囲が広いという判例がございまして、そういう判例も一つの重要な資料としてわれわれは考えなければならぬと思っております。
  144. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そうしますと、過般大臣は政治的にたいへん温情のある措置でこの問題に対して対処していきたい、こういう御答弁をいただいております。したがって、かりに刑事責任はないんだけれども、世界で一番大きな事故であったというような、そうしたような問題等を背景としながら、大臣としては先ほど裁判等の判決等の話がございまして、民法上は広いんだから、それを適用していくことができるんだ、だからひとつそういうことでやっていくんだという、そういう御意思に承ってよろしゅうございましょうか。
  145. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) この問題を政治的に取り扱おうとは思いませんし、そういう発言はしたことはございません。法は曲げられることはできませんけれども、しかし法の許す範囲内においてできるだけ温情ある措置をとりたいと考えておりますと、そうお答えしておるのです。この心境については現在も変わりございません。  私は先般、総理の供をしまして現場を見て、それから折り返し地点のモテル飛騨まで行って来まして、またあそこのおかみさんにも当時の状況や何か、雨降りの状態等も聞いてみましたけれども現場に立ってみた印象は、何か一夜明けたら悪夢のようなものであったというくらい、道路もいいし、快適な旅行ができる場所になっているように思いました。こんなところでこんな大きい災害が起こるとは夢にも思わぬような場所のように、明けてあと掃除ができてみるとそういう感じがしたのが実感であります。しかし、いろいろ砂防関係とか、あるいは国家責任のほうの問題とか、あるいは自動車の運行によってこういうものが起こったということのどこに該当するのであろうか、そういういろんな問題点、問題点につきましては、やはり法律に照らして正しい判断をしなければならぬと思っております。しかし、それらの問題については一番よりどころになるのはやはり警察の調べでありまして、陸運局長から当時の関係者等に関する調査がきておりますけれども、強制捜査権を持ちませんから、警察がおやりになっておる膨大な調査に比べればまだ貧弱なものであります。そういう意味で警察の調査を相当重要視しながら判断しようと考えておる最中であります。
  146. 足鹿覺

    委員長足鹿覺君) 私からも大臣に一、二補足的に伺いますが、きょうは午前中から遺族代表、被災地の美濃加茂市長京都大学防災研究所所長、三名をお招きいたしまして、午前中一ぱい御所見を承ったわけです。いま最大の関心事は、先日も申し上げましたように大臣があたたかい気持ちでこの問題を、遺族補償の問題等については対処したいと、こういうお気持ちであることを聞きまして、それを前提にして御所見を承りたいのでありますが、午前中の国家公安委員長の御答弁は、おそくとも来週には警察として捜査結果がまとまるであろう、また先般、現地から行監速報をもって新聞等に発表されておりました地元の監察局、行政監理局等の速報をさらに集約して各省と交渉し、来週早々には当委員会にその資料等も報告になるということでございます。そういたしますと、いよいよこの問題も——この問題とは飛騨川事故に伴う遺族の救済措置についての問題でありますが、大詰めにきた感を私ども持っておるのでありまして、その際に刑事責任の有無にあまりとらわれないで、法は曲げないがあたたかく処理するということは、広義の解釈をできる限りとって対処していかれる、なお警察の捜査結果、行監の事件についての報告等も十分尊重されまして、遺憾なきを期していただきたい。きょうも遺族代表から、遺児の援護措置等についても遠慮がちに御意見の開陳がありました。全く私は、昼食を一緒にいたしまして、ここでは述べられなかったこの遺族の実情をつぶさに聞きまして、心痛むものがありました。口数少なく述べてはおられますが、実情を目下、いろいろ調査しておられたようです、遺族としても。そういう心境をよくお考えになりまして、終局的には運輸大臣の御裁定が、この問題を最終的に決定づけるものだと考えますので、御対処願いたいと思います。  先般も御心境を承っておりますので、これ以上は申し上げませんが、来週中には、警察の捜査結果及び行監の報告等出そろうものが出そろえば、来週中に結論を出されるでありましょう、この辺の見通しを承りたい。かついろいろ報道機関が、長期にわたるというものもあるし、あるいは来週中というものもあるし、いろいろまちまちでありまして、現地の人々は非常に焦燥感にかられているようでありますので、当委員会を通じてその辺を伺っておきたいと思います。
  147. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 私は先般、現地にまいりましたところ、遭難地点に御遺族皆さんがたすきをかけて立っていらっしゃって、黙々として、われわれが現場を視察しているのをごらんになっておりましたが、別にそう騒ぎ立て強い陳情をされるのでもなく、静かに悲しみを込めて立っておられるのを見まして、非常に胸を打たれました。それから弧児になられた成田君という少年とも私、いろいろ話してみまして、成田君がりっぱにしっかりした人生を歩むように、ほんとうに心の底から念じたのであります。そういう御遺族方々気持ちもよくわかりますし、また委員長も、重ね重ねこの点をわれわれに対して御開陳にもなっている委員長のお気持ちもよくわかりますので、法の許す範囲内において最善の措置をとりたいと思っております。それで検察及び警察から書類がまいりましたら、できるだけ早期に処理を行ないたいと思います。少なくとも一週間以内くらいに運輸省としての態度をきめるようにいたしたいと思っております。
  148. 足鹿覺

    委員長足鹿覺君) なお八月二十一日並びに二十二日付で貸し切りバス旅行の安全確保のための措置について、という通牒が発せられておりますが、それにはいろいろと今回の事件にかんがみて、出先機関に注意を喚起し、御指示になっておるようでありますが、その旅行あっせん業者に対する措置、八月二十二日通達済みの第三項によりますと「多数の者のバス旅行(バス三台以上)を実施する場合は、危険防止のため適切な判断、避難誘導等を行ない得る者をバスに添乗させること。」とありますが、この通達の権限、添乗者の権限、資格またこの通達はどの程度業者等を拘束すものであるか。ただ官庁の気休め的に出たものとは私ども解しがたいのでありまして、運用よろしきを得れば、この種の災害の未然防止には効果があると考えられまするし、大臣の御構想がどの点にあるかを明らかにしていただくことができますならばと思いますが、いかがでしょう。
  149. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) この部分は、今回の事件にかんがみまして、特に痛感をして挿入した部分でございますが、少なくともバス三台以上で行くという場合には、二百人近くの人が移動するわけでありまして、非常に貴重な人命を預かるわけです。それをいままでのような一片の観光業者や、バス会社の事務員だけで判断するというのではいかにも責任がなさすぎる。そういう意味で、そういう緊急事態に判断力を持っておるしっかりした人間をつけて判断をさせよう、そういうので、たとえば警察署長を退職した人であるとか、自衛隊で相当な経歴を経ている人とか、そういう緊急時に判断のできる人を乗せよ、人がいない場合には嘱託に採用してもそういう方法をとれ、そういう意味でこれは行政指導として書かれておるのであります。各日本全国の陸運局長、陸運事務所長から、観光業者、バス会社に対してこの種の指令を出しておりまして、これを励行するように督励しておるのであります。  私はこの間飛騨川を見て帰りましてから、適当な期間を経て、もう一回陸運局長に命じて、これがどの程度励行されておるか確認しようと思っております。  それからこの添乗者がどういう権限を持つかということは、これはバス会社なり、観光あっせん業者のほうの責任の範囲内に属することでありまして、バス会社なり、観光あっせん業者がしかるべきと認める権限を与えてやったらいいじゃないか。責任はもしそちらの側の過失で起きた場合には、バス会社や観光あっせん業者にくるわけでありますから、責任を全うするように、それらの人々が万全の措置をとるということをわれわれは期待しておるわけでございます。
  150. 足鹿覺

    委員長足鹿覺君) 第三点は、それに関連をするわけでありますが、先日の当委員会で、同僚委員から、赤澤国家公安委員長に対して、道路標識等の再検討について適切な御意見の御開陳がありましたが、結論を得ないままに今日に至っております。その要旨は、たとえば「落石注意」というような標識は、これは意味をなさないのではないか。むしろそういう標識を出すとするならば、「駐車禁止」とか、何か危険を、そこに駐車あるいはその他自動車が通行中に特に留意するようなあるいはそれをいざというときには禁止をする、そういう面を考えるべきではないかという適切な御意見だったように拝聴いたしました。たとえばこのたびの事件を見ましても、当夜写したという現地からもらってきましたこの写真を見ましても、これはなかなか容易ならぬ事態であったと思います。なまなましいものでありますが、これをだれが発見してみても、現在の交通法規からいっては警察官以外にはこれを禁止する権能を持たない。数時間前には陸運局の道路パトロールカーが歩いた。消防団も注意した。しかし聞かなければ聞かないままに経過をしておる、それらのものがいろいろ累積し、返そうと思ったときにはこの山くずれで返すこともできぬ。前にも大きな山くずれがあって進むこともできない。したがって、沢のような危険なところに、いわゆる落石注意個所に停車せざるを得なくなった。こういうことを私どもは考えざるを得ません。したがいまして、道路標識の再検討、交通規制について、市町村長、消防団長あるいはパトロールカーの指揮者、警察官はもちろん、だれでも危険と判断をしたときには直ちに交通規制の措置を講じ、主管者である警察方面に連絡をとる、そういうような臨機の措置を講じなければ、この種の災害を未然に防止するということはなかなかむずかしいのではないか。かりにいま三台以上のバスに添乗者をつけるとおっしゃいますが、その者に対してもある程度の規制力を、注意をしていく。しかしそれに対する、その添乗者に対しても、消防団が注意してもそれは指示権はない、警察官だけだというような場合は必ず出てくると思うのであります。そういう点から、この対策としては、運輸、建設、警察等、三省間の打ち合わせ検討の協議機関を設けられ、すみやかに道路交通の規制措置等について緊急の場合の措置を講ぜられる必要が、私はこの添乗者の通達に先立つ問題ではないか、かように思うわけでありますが、三省間で十分それらの点も含めて、今後山岳道路等の交通量の増大等に伴う措置を御検討になる御用意がないでしょうか、御所見を承りたい。
  151. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 委員長の御指摘のとおり処置いたしたいと思います。
  152. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 委員長のほうに関連をいたしますが、あなたのほうのお出しになりました官観業第二一四号の問題に関連してですが、このことについては法的にどうだ、こういうことに対して陸運局長等によって調査をさせる、それがどのくらい実施されておるかということについて調査させるということをおっしゃいましたが、このあて先を見ますと、社団法人の国際旅行業者協会会長あてとそれから全国旅行業協会会長あてになっております。私はあまり協会がどういう人を網羅しておるかということはわかりませんが、これが大体業者を、全国の旅行業者あるいは国外まで含めて全部網羅しておるとはどうも思えないというようなことを一部聞いたことがございますが、私はほんとうのことはよくわかりません。その辺はどうでございましょう。
  153. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) いまのような貸し切りバス旅行の交通事故防止の通達は、四十三年八月二十二日に各都道府県知事と各陸運局長あてに出しておるのです。それが自分の府県内あるいは局の管内のそういう関係者にさらに指令することになっております。
  154. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私はよくわかりませんが、そういう権限で申しますと、知事があるいは陸運局長が、これは登録制なんですね。で、これを受けて、大体全国の業者に全部行き届く。もしこのことが行なわれない、たとえば、指摘されました一番力を入れたとおっしゃる。たとえば三項の問題になってまいりますと、部外の者を委嘱すると、なかなか容易な問題じゃないと思うんです。ということは、過当競争をやっておりまして、採算制等の問題もございましょう。せっかくのあなたのお考えになっておることが、そうした面から採算が取れないからというようなことで、実施されない。実施されなかった場合は、それに対してどういう処罰と申しましょうか、が考えられておるか、また行なうことができるのか。
  155. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 貸し切りバスやその他のバスのほうは、免許の問題がございますけれども、旅行あっせんのほうは免許になっておらないのです。したがって、貸し切りパスの場合を除いてはあっせん業者に対してはなかなかむずかしいところがあると思います。しかし、そういう指示をして、それを励行しないで、もし万一事故が起きた場合には、これは明らかに監督法規違反ということになりまして、そちらのほうに責任がかかってくることになります。したがって、民事責任、自賠法の責任を含めまして、さらに損害額が大きい場合には、自分で負担しなければならない、そういうものもひっかぶってくるわけでございます。そういう意味において、やはり励行せざるを得ぬという形にしてあるわけであります。しかし、事実上、これはいろいろ行政指導しまして、そういう罰則、その他の権限はなくても、事実上の行政指導によってそれを励行さしていくようにしていきたいと思っております。
  156. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そうすると罰則規定はない、そこで行政指導で大体このことをやっていく、そういう趣旨は私も非常に賛成なんです。それができるなら非常にいいんだが、実際問題としては、不可能なことじゃございませんでしょうかと言いたいわけです。なかなか容易な問題じゃない、こう思っておりますが、大臣としては、とことんまでこれはやり通す、こういうことでしょうか。
  157. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 旅行あっせん業者に関する法律を改正する意図で検討したいと思っておるんです。と申しますのは、いまのような形で届出だけでいいか、電話と机が一つあって、あとは顔がきけば何でもできるというような形のものがなきにしもあらずでありまして、そのほかいまホテルや、旅館に対して一七%から二〇%の手数料を強要しておる向きもあったりして、弊害もかなり出てきております。そういう面からこの問題は再検討したいと思っておりますが、改正されない限りは、やはり行政指導で強く指導していくよりしようがないだろうと思っております。
  158. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 最後に私は、気象情報というものが、ほんとうに的確につかめて、それが的確にそうした業者に広く連絡をされれば、災害を防ぐ有力な方途だと確信をいたしております。それには、運輸大臣、あなたの所管である気象庁の予算と申しましょうか、そういうものがあまりに貧弱過ぎると思います。そういうことについて大臣はどんなふうにお考えになっておりますか。
  159. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 気象情報を末端に伝達させるという点について、もっと突っ込んだ政策をやるべきであると思います。そういう点について、いま予算を伴わずにやれるところはやらしておりますけれども、予算を要する部面は来年度予算で、相当の額を確保して実行いたしたいと考えております。
  160. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 伝達もさることながら、伝達も非常に大事ですが、的確に局地的なものはなかなかっかみにくいですね。しかし、これをつかまなければ災害防止にはならぬと思うんです。したがって、伝達も大事でございますが、的確に気象庁が情報をつかむような予算措置と申しますか、これは何年計画というようなことに大綱はなるかと思いますが、いまの形じゃ実際問題として局地的なものが、なかなかつかみにくいんじゃないか、これはしろうと判断です。私はつかめないのじゃないかと思っているんです。だからもっと気象庁のそうしたようなことについての予算措置を講じていく必要がありはしないかということを申し上げているわけです。
  161. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) その点は全く同感でございます。
  162. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そうすると、大臣、もう来年度の予算編成期に入っているわけですが、たとえば何パーセントでひとつ押えなくちゃならぬというようなことでなかなか大蔵省が今度はあなたたちに圧力をかけてくると思うんです。重点的なものというと、あれもやらなくちゃならぬ、これもやらなくちゃならぬ、いろいろ財源の問題もあると思いますが、大臣、そのときに気象庁予算については、どういうふうにお考えになりますか。
  163. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 気象庁の気象観測を強化するというのは、われわれの重要政策の一つでありますから、重点的にこれを取り上げていきたいと考えております。
  164. 武内五郎

    ○武内五郎君 今度の飛騨川災害で最も災害を大きくさしたのは、先ほど来論議されておりましたとおり、土砂の流出、そういうところから起きたと考えられますが、ことに津保川水系流域の関市、美濃加茂市、冨加村、武儀村、上之保村、これらは津保川の流域になっている。それから飛騨川の流域関係では美濃加茂市、川辺町、七宗村、白川町等がその災害のやはり中心であることは御承知のとおりでありますが、これらの流域市町村でほとんどが土砂の流出によって河川田畑が埋没され、河川に入った土砂で溢水して洪水となった、あるいは土砂が家屋を押し出し、押しつぶす、ひどいところは美濃加茂市その他で人命さえも失っている。こういう痛ましい事態でありまするが、先ほど来論議がありましたように、その大きな原因というのは、やはり土砂流出を防止する施設が十分でなかったということである。なお、それをさらに追究してまいりますると、土砂を流出させる条件があった。すなわち山の崩壊、浸蝕崩壊があったということを私どもは考えなければならぬのじゃないか。ことに私は白川町等で見ますると、再々やはり災害を受けている。白川町は、白川、赤川、黒川という飛騨川水系の枝川がありまするが、さらにもう一つ佐見川という川があって、これが繰り返し災害を受けているわけなんです。それでほとんどそれは土砂の流出によって川が溢水しておるということが出ておる。こういうようなことで毎年毎年繰り返し繰り返し災害が起きたりあるいは何年かおきに災害が繰り返されたりというようなことであっては全くさいの川原の石積みで、少々の手入れをやっても全くこれはもうどぶに金を捨てると同じで、末端の現象だけをおさめようとしてその根本を忘れている状態である。そういうことのないように今回の災害を契機にして考え直さなければいけない。どうしても山を治め、砂防の施設をやって赤はげの個所に植林をし、あるいは山を養っていく対策を立てなければ、いつまでたっても同じことだ。ことに白川町をはじめ川辺町それから武儀、上之保等では、ここにさえ防災施設があれば私どもはこういうような災害を受けずに済んだかもしれません。防災施設のある個所は、こういう土砂の流出等がなかったことを考えてみても、どうしても砂防施設を早急にやってもらわなければ、年々かくのごとき惨事を繰り返さなければならぬことになるといって現地の人々は嘆いている、こういうことを考えてみますると、私はいろんな災害の基本はやはりそこにある。ことに山林、田畑がほとんど壊滅したところがあります。そういうことを考えると、まず治山をやる、砂防をやっていかなければならない。こういうことで、これはひとつどうしてもその点を力を入れていただかなければならぬ。その点でひとつその対策がもうすでにあの飛騨川災害発生以来一カ月になんなんとしておりますが、対策は立っているだろうと思うんですが、それを明らかにしていただきたいです。林野庁、河川局長の考え方をひとつ説明してください。
  165. 片山正英

    説明員(片山正英君) 山林の保安問題につきまして先生から御指摘がございましたが、そのとおりでございます。残念ながら現在、先ほどもちょっと御説明申し上げましたが、二十三万八千ヘクタールという崩壊地が現在ございます。国土の森林面積の約一%弱でございますが、したがいまして、それらが台風あるいは豪雨その他によって土砂が流出してまいるという実態はいなめないわけでございます。したがいまして、それらの早期復旧にわれわれは努力しておりまして、特に人家あるいは公共施設等に及ぼすであろうものを重点といたしまして復旧に励んでおるわけでございます。  それからもう一つは山の保安でございますが、これは御承知のように豪雨がございまして雨が降りましても、林地が保水をいたします、あるいは森林の樹木がその雨を保水をいたします。そういうようなことで、雨に対する流量の調節を山というものを通してやっておるわけでございますが、雨量が一定限度を越しますと、保水する能力がありますから、どうしてもそれは放水、流水となって流れるわけでございますが、それが強ければ強いほど土砂を含んで流れてくるという姿でございます。そのような形で毎年、五カ年平均でございますが、約一万四千ヘクタールぐらいずつが毎年そういうことで新たに崩壊しているという実態がございます。したがいまして、そういうものを含めましてわれわれは予防治山というものを積極的に進めてまいりたいということで、これまた関係各省と連絡をとりながら実施してまいっておるのが現状でございます。全体としましては、以上のようなことで対処してまいりますが、今回は先生の岐阜の御指摘につきましては、緊急治山ということで、人家あるいは公共施設に影響を及ぼすものは査定が済みまして、すでに内示を発したわけでございます。したがいまして、これによって緊急に復旧する体制ができたので、今後もそれを注意しながらすみやかに実施するように対処してまいりたいと考えております。
  166. 坂野重信

    説明員(坂野重信君) 建設省の砂防につきましては、先生御指摘のように確かに最近土砂流あるいは土石流を伴なった災害が非常に多うございます。こられに対処するために私どもはできるだけ砂防事業の推進をはかりたいということで、先ほど林野庁からもお話がございましたように、新治水第三次の五カ年計画におきましても土石流対策というものを重点的に取り上げまして、今後そういう面におきまして、どんどんそういう点の推進をはかっていきたいと考えております。今回の岐阜県の災害につきましても、ほとんど全部が土砂流を伴なった災害でございまして、砂防の施設が若干あるところはできるだけ早急に砂防の復旧、あるいは今後緊急に砂防を必要とするところは砂防指定地外であっても緊急砂防というものを実施してまいりたい、あるいは急傾斜地の対策に必敵するものがございましたならば、これは急傾斜地対策事業としてやっていきたいということで、全般的にひとつ砂防事業を推進していきたいと思うわけであります。道路沿いの問題につきましては、今回のバスの転落につきましてはいろいろな関係がございますが、私どもの方針としては、砂防事業というものは実施しておらないわけでございますが、道路の保護とあわせて治水上の砂防効果の多いものにつきましては、できるだけ今後前向きに計画の中に取り入れていきたいと考えております。今後道路沿いの渓流等で相当治水効果のあるものについてもできるだけ今後具体的な調査を実施して、その上で具体的な推進をはかっていきたいと考えております。
  167. 武内五郎

    ○武内五郎君 その緊急治山は直ちに入っているのですか。
  168. 片山正英

    説明員(片山正英君) すでに大蔵省との打ち合わせが済みましたので現地にもすでに内示をいたしておりまして、それによって工事にかかっている段階になっております。
  169. 武内五郎

    ○武内五郎君 わかりました。それでは農地復旧についてひとつ農地局からお伺いしたい。  いま私が指摘いたしました水系の関係で、これは特に冨加、武儀、上之保、川辺、七宗等ではほとんど田畑が壊滅した状態なのであります。埋没しております。それらの復旧についてはこれはたいへんなのです。ことに川辺、七宗、武儀等では、地方財政からいっても、これは自前ではとうていやっていけない。中には税収がたった一千万よりないという貧弱町村が一、二あるのです。そういうようなところでは、もう災害復旧は自前でとうていやっていけない。当然国の助成による復旧が必要になっています。先ほど来いろいろ天災融資あるいは自創資金等の活用が説明されておりまするが、もうすでに、そろそろその仕事にかかってくるころは、あの辺も雪がくるだろうと思うし、工事もそう簡単にいかぬと思うんだが、一体いつごろから、それらの手配ができるのか。どういう形の助成がとられるのか、それをお伺いしておきたい。
  170. 中野和仁

    説明員(中野和仁君) ただいま御指摘になりました岐阜の災害地帯におきます県からの報告の被害は、農地につきましては約百七ヘクタール、八百七十三カ所にわたっております。被害額が一億四千六百万円。それから水路等の農業用施設におきましても千七百五十カ所、被害額五億七千四百万というようなことになっております。そこで、農林省といたしましては、すでに緊急査定をやるために、九月九日から十七日の九日間に二班を現地に派遣をいたしまして、さらに十月の初旬からは設計の終了を待ちまして、すみやかに査定を終わりたいと考えております。ただ、その場合でも緊急を要するものにつきましては査定前の着工を認めております。それからかんがい用水の確保なり、あるいは被災施設がよけいひどくなるというようなことを防止するための緊急の復旧個所につきましては、県と現地の農政局と協議をいたしまして、応急工事をすでに実施をいたしております。それからこういう災害についての補助率のことでございます。この委員会でもたびたび御議論のあります激甚地の指定ということは、いろいろ議論の結果ということにいたしましても、現在農林省におきます災害復旧補助につきましては、普通の場合は農地は五割、それから農業用施設は六割五分ということになっておりますが、このような大きな災害の場合には二戸当たりの被害額が非常に大きいものですから、二戸当たり八万円をこえる場合は、農地は八割、農業用施設は九割。二戸当たりの被害が十五万円をこえます場合は農地は九割、農業用施設は十割を補助するということで対応いたしたいというふうに考えております。
  171. 武内五郎

    ○武内五郎君 わかりました。  それから農地復旧に関してお伺いしたいことは、飛騨川災害のあとに、いわゆる十号台風に伴う災害が東北地方やその他に出ております。ことに青森県で、前にも十勝沖地震で被害を受けた町村でまた十号災害を受けておるところがある。これは全く二重びんたみたいなもので、たとえば三沢、十和田、下田、百石、むつ市、倉石、五戸というような地域は今度はまた災害を受けております。そしてやはり最も強く受けておるのが、農地、農業用施設がまたやられておる。この地域は十勝地震ではこれは激甚災の発動が見られた地域だったのでしょうか。その点と、それから激甚災の前に適用があったとすれば、今回はどういうふうに対策がとられておるのか、また、それが適用されていないとすれば、どういう対策で、これらの農地等の復旧がはかられるのか。ことに、十和田市、三沢市、下田、六カ所、こういう地域はかつて農林省が非常な力こぶを入れて奨励したてん菜、ビートの栽培地であります。御承知のとおりビートは昨年あのようにしてせっかく栽培技術の習熟を得ながら、自信を持ってビートの栽培ができるという状態になったのが中止になった。そこが地震で災害を受け、さらに今回十号台風でまた災害を受けておる。三重の私は災害であると思う。第一は政治災害、第二は地震災害、第三は台風災害を受けた。私はこういうようなところでの災害復旧についてはどういうふうな対策をとられるかお聞きしたい。
  172. 中野和仁

    説明員(中野和仁君) ただいまの青森県あるいは北海道南部におきます集中豪雨関係につきまして申し上げたいと思いますが、特にいま御指摘のように、青森県におきましては、十勝沖地震の災害を受けたところでまた受けた地帯が一部あるわけであります。この中で緊急に必要なもの、それから地震と関係のありました個所につきましては、すでに九月三日から十勝沖の地震の査定をずっと進めております中におきまして、あわせて含めてやっておりますと同時に、先ほど申し上げましたように、応急工事を必要とする個所につきましては、現地の農政局と協議をいたしまして、査定前においても工事をすでに実施をしております。  それからお尋ねの二番目の十勝沖地震につきましては、激甚災の適用をいたしまして、すでに査定を終わりましたものから予備費を出しまして復旧工事を急いでおるわけであります。それからなお、いまビート地帯ではないかというお話がございました。この点につきましては、もう基本的にはこの地帯のビートから転換いたしましたところをどうするかということで、現在地区名といたしましては、南部地方という名前で呼んでおりますが、数千町歩にわたりまた開田計画なり、畑からの転換というものが進められておるわけでございます。
  173. 武内五郎

    ○武内五郎君 この激甚災を受けた十勝沖地震の被害地とは今度の十号災害は別な構想で対策を立てるということなんですか。
  174. 中野和仁

    説明員(中野和仁君) 十勝沖地震と今度の災害とは、災害の種類が違いますけれども、いま申し上げましたように、今回の台風の場合はまど激甚地の指定がございませんので、過去にありました十勝沖の激甚地がもう一度災害を受けた場合には、先ほど私が申し上げましたように、一年間を通じましてその被害額が非常に、先ほど申し上げました八万円をこえた、あるいは十五万円をこえます場合には、高率の補助をその上に足してやるということになるかと思います。
  175. 武内五郎

    ○武内五郎君 わかりました。  それから国鉄。国鉄については、飛騨高山線の復旧状況を報告していただきたい。まずそれをやっていただきたい。
  176. 松本文彦

    説明員松本文彦君) お答えいたします。  高山線につきましては、第七号台風によりまして、御案内のように、先月の十八日に不通になったわけでございますが、これ以来鋭意復旧努力いたしまして、今月の十二日に全線開通したわけでございます。
  177. 武内五郎

    ○武内五郎君 国鉄は、私は先ほど道路の問題の際に指摘したように、線路だけの復旧では私は意味がない、また災害を繰り返すことになるんじゃないかと思う。そのおそれがある。たとえば、まあ最近きわめて少なくなったですが、新潟県の飯山線、もうしばしば道路壁が、鉄道の路線の壁がくずれる。また糸魚川、能生方面のように、ああいうような大きな災害も起きている。そういうようなことのないように今回やっぱり考えておいてもらわなければならぬと思うのです。それが一つの問題。  それから、私はいま時間の関係もありますので特に急いで申し上げたいことは、いま十号台風で再災害を受けた青森県地方の復旧の問題があったんですが、ここで、十勝沖地震で御承知のとおり大湊線がもうずたずたになった。その復旧がどういうふうになっているのか、今日まだはっきりしない。特に大湊からその北になっている大畑線、これが今日まだ全然放置されているという報告を受けております。一体どういうふうなつもりでいるのかお伺いしたいのです。あそこは、特に大間なんていう小さい北方のへき地でありながら、今日いま十億円の水揚げが年々繰り返されているイカの漁地です。このイカをいままでは全部鉄道輸送でやった。木材の輸送も鉄道でやった。これが今日輸送が全然できない状態になっている。だからあとはもう人間の体で、わずかなバスで輸送されている。そうなってまいりますと、出てくるものは、特別な貨物自動車等でやっても、出るものは輸送コストが三〇%も高くつく。収入がきわめて少ない地域でありながら、物価は青森県や野辺地等に比べると何%も何十%も高い物価の中で生活しなければならぬという状態なんです。私は今日まだ大畑綿が放置されているという報告を聞いておりまするが、これは全く国鉄の無責任状態、やり方だと思う。どういうふうなつもりであそこを投げておるのか御説明を願いたい。
  178. 松本文彦

    説明員松本文彦君) まず第一点の国鉄の災害復旧態勢といいますか、復旧のやり方というものが、何かおざなりではないかというふうな御指摘がございましたが、これはまあ場所場所によりましていろいろな配慮をいたします。あるいは予算の都合もございますので、必ずしも、必ず万全の対策をしっかりやるばかりではございませんが、少なくとも現在高山線につきましては相当——二百ミリ程度の連続降雨量には耐え得るというふうな施設の基準を立てまして復旧いたしておりますので、まあ普通の災害に対しては万全の備えであろうというふうに申してよろしいかと存じます。  それから第二点の大畑線の復旧に関してでございますが、これは私どもの御報告が非常におそくなっておりまして申しわけございませんが、かねてから、関係方面からいろいろ強い御指導も受けまして、鋭意調査設計を進めておりましたところ、ようやく最近まとまりましたので、今月の十日から復旧工事を着工いたしております。で、まあ大体予算額は、ほぼ二億円で、目標は降雪期であります十一月中旬ごろを目標に開通を急ぐという対策を現在進めております。
  179. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 建設省道路局長にお伺いしたいと思います。  道路法の四十六条には、道路管理者は道路を管理しなければならない、そういうことが書いてありますが、飛騨川事故以来、道路管理というのが問題になっておりますが、実際上道路の管理をしているのはいわゆるパトロールではないかと思います。このパトロールが現在どのように行なわれているか。これはたとえば平常時は一日何回で、たとえば台風の近づいたときは何回するとか、またパトロールのときにはどういう点を特に注意しながらパトロールしている、そういうような点についてお聞きしたいと思います。
  180. 蓑輪健二郎

    説明員蓑輪健二郎君) 道路のパトロールにつきましては、これは昭和三十七年にいろいろ道路の維持修繕管理要領という建設省道路局長名の通達を出してございます。また道路の技術基準にもパトロールを書いております。その内容につきましては、直轄の指定区間については大体一日一回以上ということでやっております。さらに台風がある場合及びそのあと、こういうところについては随時パトロールの回数をふやすようにしております。また県につきましては、これは交通量が三百台以上の道路につきまして担当区域を定めて、定期的にパトロールを行なうようにしております。このパトロールで何を注意してパトロールするのかということにつきましては、これはやはり平時のパトロールと災害時のパトロールとではまた様子が違うかと思います。平時のパトロールにつきましては、路面、路側——道路の両側の部分、及び構造物、そういうものの損傷とか、損傷を受けやすい要因となる地点の発見ということを主体としております。また災害時につきましては、やはりそういうこともございますが、落石の多いようなところについては、土砂くずれがあるかどうか。また、沢について、異常な出水で危険かどうか、こういうことを主眼としてパトロールさしておる次第でございます。
  181. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それは三十七年の建設省発行の管理要領というのに全部書いてあるわけなんですね、いまおっしゃったような点は。それに従って実際パトロールをやっておる、そうなっておるわけですね。
  182. 蓑輪健二郎

    説明員蓑輪健二郎君) 三十七年の八月の、道路の維持修繕等の管理要領、これについてやられておるということでございます。
  183. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それで、トンネル内の照明の明るさの度合いでございますが、そういう点のいわゆる管理というのはどのようになっておりますか。
  184. 蓑輪健二郎

    説明員蓑輪健二郎君) 実は、トンネルの中の明るさの問題につきましては、いままでいろいろ名神高速、東名高速その他では、おのおのそのつどそのつど、いろいろ技術的な検討の末、やっておったのでございますが、その問題につきまして道路局といたしましては、道路協会に委託をいたしまして、どういう基準がいいかというような諮問をいたし、それに基づきまして四十二年の四月二十七日に道路協会から回答がありました。トンネル等の照明の基準、これを、一応、案ではございますが、これによるように通達を出しておる次第でございます。
  185. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それで、結局照明の、一つは通達の明るさの基準が、これはまあトンネルの長さにおいていろいろきまっておると思いますが、代表的なのをひとつ教えていただきたいことと、実際にだんだんトンネルが古くなると、照明の度合いが下がってくるのじゃないかと思うのでありますが、そういう点の定期的な測定、そしてここを取りかえなければならないのじゃないか、そういうような点がどのように行なわれているか、その点をお聞きしたいと思います。
  186. 蓑輪健二郎

    説明員蓑輪健二郎君) トンネルの一般的な明るさにつきましては、大体いままで県の、交通量の多いトンネル及び直轄でやっておりますのが、大体二十ルックスか、まあその前後ではないかと思います。またこれはトンネルの照明といいますと、水銀灯からナトリュウム灯及び螢光灯がございます。ことに螢光灯については、最初の照度がだんだん一年たちますと非常に暗くなってまいります。そういうことで、あまり暗くなった場合は螢光灯を取りかえるということだと思います。また、それ以外にトンネルの中には、やはり排気ガスのために、いろいろトンネルの周辺が、何といいますか、ごみがたまってまいります。そういうものも、よほどこれは照度に影響いたしますので、そういうものの清掃も適宜やるようにいたしております。
  187. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それで、実は先日、山口県下の国道二六二号線の勝坂トンネルというトンネルがございますが、その中央部でオート三輪が小型トラックに追突して、そのトラックが前の県警のパトロール・カーに玉つき衝突した、そういう事件があったわけでありますが、そのほか、同じ日にそのトンネル内でほかに二重衝突があった。また、その二日前には国道二号線の茶臼山のトンネルでオート三輪の追突事故がございました。最初の事件につきましては警察は不注意だ、そのように言っておるわけですが、一般の運転者の意見では、非常にトンネルが暗いのじゃないか。結局、大体トンネル内の明るさは二十ルックス前後。ところが太陽が照っているときには、もう明るさは二、三万ルックスです。そういうところから急に二十ルックスのところに入るときには目がくらんで無謀運転をする、そういうことを専門家の医者なども言っておるわけです。そういう点で、私は一つは現在非常に交通の量が多いし、スピードアップもされている。そういう点から、はたして二十ルックスで妥当であるかどうか。また、やはり明るいところから入ってくる場合と、そのあかりが、非常に暗いところから入ってくる場合と違うわけだと思うのです。そういう点で明るさの基準というものを総合的に検討する必要があるのじゃないか。それともう一点は、山口県下にも建設省の管理しておるトンネルと県の管理しておるトンネルがあるわけでありますが、特に県の管理しておるトンネル等においては明るさが基準以下になっておるけれども、全然そういう点においてそれがそのままになっておる、そういうことを新聞等でも報じておるわけです。そういう点で、国も定期的な検査というものをやっていかなければいけないのじゃないか。その点をどのようにやっておるかということをお聞きしたわけですけれども局長の答弁にはこれが入っていないわけでありますが、そういう点についての、これは私の意見でございますが、局長の考えをお聞きしたいと思います。
  188. 蓑輪健二郎

    説明員蓑輪健二郎君) 先ほどの山口県のトンネルの事故、これは私も承知しておりますが、この道路につきましては、やはり前後の道路が、これは十一メートルに改良されておりまして、トンネルだけがいまのところ六メートル五十の二車線と、狭くなっております。このために非常に前後から、かなりいい道路でスピードを出していたのが、すぐそういう二車線のトンネルに入るということで事故も多いということで、ことしからさらにもう一本の二車線のトンネルを抜く計画しております。  もう一つは、やはりトンネルの照明といいますのは、やはりいま先生のおっしゃいましたように、明るいところから暗いところに入る。このために人間であれば、やはり明るいところから暗いところにいきますとちょっと目が見にくくなるということもございまして、それをならすためにやはり理想的にはトンネルの入り口はまん中より明るくする、かつ、トンネルの入り口が太陽の方向に対してどうなっておるか、この辺によってやはりトンネルを入るときの遮光——太陽の光線をさえぎるようなものも理想的に言えばやはりあったほうがいいと思います。なかなかいまの現状でこれについてすぐ全部をそうもできないために現状のようなことになっておると思いますが、先ほど言いました螢光灯を取りかえる時期及びトンネルの中の壁の清掃ということになりましても、やはり県が管理しておりますと、非常に県道以下数多くのトンネルもあり、道路の維持費もかかるということで、こちらが理想的なことを言いましても、なかなかそのとおりできないということもございます。ただやはりこういう交通事故が多いところということについては、できるだけそういうことを実施させるように指導してまいりたいと考えております。
  189. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 検査は定期的にいまやっていないわけですか。明るさの検査をパトロールが実際いって、どのトンネルの検査をして明るさが非常に標準以下だから取りかえなければいけないという検査はやっていないわけですか。
  190. 蓑輪健二郎

    説明員蓑輪健二郎君) いまのところ、やはり定期的に何年たてば検査しろというようなことはしておりません。ただやはり直轄の場合はほとんど一日一回はパトロールしておりますし、やはりもう暗くなったというような感じのとき、及び非常に問題になりますのは、交通量がかなり多くなりまして排気ガスがたまると実際の照度が非常に落ちてくる場合もございます。こういうことになれば、まあ単に照明だけを取りかえるのじゃなしに、換気の装置も考えなければいけませんので、そういうようにそのつどそのつど実態に即してやるようにいたしておりますが、何年に一回照度を検査しろという基準は現在のところつくっておりません。
  191. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これは私はお願いでございますが、全国の状況はわかりませんが、非常に私の住んでいる中国地方の山口県下ではそういうトンネルの追突事故が多いわけであります。そういう点で、全国的に毎日毎日通っている人間の目というものはわからないと思うのですね、きのうからきょうと暗くなるのは。順に暗くなっていくわけですから。そういう点でやはり光度計というのはそんな金のかかるものじゃないと思いますし、その光度計によって、全国の建設局に通達をして国道のトンネル、県道のトンネル全部について少なくとも年に何回かの測定をやってそういうトンネル内の事故を防いでいかなければいけない。私も数字的に調べたことありませんが、追突事故を全国の国道の長さとトンネルの長さの比率で見たならばトンネルの中のほうの追突事故が多いのじゃないかと思うわけであります。そういう点で、そういう照明についての定期的な検査というか、それをやはりやるべきじゃないか。それはたいした予算はかからないと思うのでありますが、その点をお願いしたいと思いますが、その点はどうでしょうか。
  192. 蓑輪健二郎

    説明員蓑輪健二郎君) トンネルの中の追突事故が多いというお話でございますが、私も非常に車が多くなってくると、そういう現象も多くなろうと思います。いま先生がおっしゃいましたように光度計ではかるということは金のかかることでもございませんので、これは県のほうによく機会をとらえましてよく話してみたいと思います。  もう一つは、やはりこれは蛇足になるかと思いますが、どうもトンネルの照明というのは、私たち考えますと中途はんぱな照明が一番困るのじゃないか、まつ暗ならまつ暗で早いときから用心して入るのじゃないか、なまじっか明るくて急に暗くなったような場合に何か非常に追突事故が起こるように思います。そこら辺を注意して指導していきたいと思います。
  193. 足鹿覺

    委員長足鹿覺君) ほかに御発言もなければ本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十三分散会