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1968-10-30 第59回国会 参議院 決算委員会 閉会後第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年十月三十日(水曜日)    午前十時十八分開会     —————————————    委員の異動  十月二十日   委員岡村文四郎君は逝去された。     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         木村禧八郎君     理 事                 黒木 利克君                 温水 三郎君                 平泉  渉君                 松井  誠君                 黒柳  明君                 高山 恒雄君     委 員                 長田 裕二君                 木内 四郎君                 楠  正俊君                 佐田 一郎君                 佐藤  隆君                 菅野 儀作君                 山本  杉君                 渡辺一太郎君                 大橋 和孝君                 戸田 菊雄君                 矢山 有作君                 和田 静夫君                 上林繁次郎君                 峯山 昭範君                 渡辺  武君    国務大臣                 椎名悦三郎君    事務局側        常任委員会専門        員        佐藤 忠雄君    説明員        防衛施設庁長官  山上 信重君        外務省経済協力        局外務参事官   有田 武夫君        外務省経済協力        局賠償課長    武藤  武君        国税庁法人税課        長        井辻 憲一君        農林省農地局長  中野 和仁君        林野庁長官    片山 正英君        通商産業省貿易        振興局長     原田  明君        労働省職業安定        局失業対策部長  上原誠之輔君        労働省職業安定        局業務指導課長  保科 真一君        建設省河局長  坂野 重信君        会計検査院事務        総局事務総長   宇ノ沢智雄君    参考人        日本道路公団理        事        小野  裕君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国家財政経理及び国有財産管理に関する調  査  (国家財政経理及び国有財産管理に関する  件)     —————————————
  2. 木村禧八郎

    委員長木村禧八郎君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  国家財政経理及び国有財産管理に関する調査を議題といたします。  御質疑のある方は、順次御発言願います。
  3. 矢山有作

    矢山有作君 きょうは、先般十月の二日の決算委員会で、私のほうからお尋ねしました台湾曽文水庫に関する資料提出をしていただくことになっておりまして、一部の資料が出ておりますので、それに基づいて二、三のことをお伺いをしておきたいと思います。ただ、外務大臣がお差しつかえのようですし、さらに、去る二日の決算委員会に出ていただきまして、いろいろ資料のことで提出方約束をしていただいた政務次官もおいでになりませんので、ちょっと質問を運んでいく上には都合が悪いんですけれども、まあそうも言っておられませんのでお尋ねいたしたいと思います。  この曽文水庫の問題につきまして、コンサルタント日本工営決定をされたそのいきさつについて、不明朗な保守有力政治家の動きがあったということで、台湾政府内部でいろいろ問題が起こったわけです。それらの実情につきまして、調査をして国会報告しますということは、すでにこの問題が最初に取り上げられた四十一年の十一月十日、このときは佐藤総理のお約束です。さらに四十二年の十二月十八日、このときには、私と三木外務大臣との間の約束であります。したがって、そのときから考えればもう二年たつ。ところが、なかなかその経緯実態というものが説明をされぬので、二日の決算委員会で取り上げた。依然として真相が解明をされません。そこで、これらの実情報告外務省からやってもらいたいということを申し上げておきました。藏内政務次官がそのお約束をなさった。ところが、私のところへ出てまいりました「曽文水庫計画コンサルタント選定問題に関する報告」という資料があります。これを私は読んでみまして、こういうものの考え方では、賠償海外経済協力等をめぐって不明朗な問題が起こったということは当然だろうと思うのです。口の先でどんなことをあなた方がいかにおっしゃっておっても、この問題を今後効率的に適正な明朗な姿で運んでいくということは、なかなかむずかしいのではないかということを痛感させられました。それはなぜかと言いますというと、こういうことを私のところに文書にしてよこしております。報告の二番のところですが、まあいろいろ書いてありまして、この日本工営電発との間で工営の側が選ばれたそのことについてなんですが、「また現地新聞に掲載された問題はいずれも中華民国内部の問題であるとの判断に立っていたので、これら問題の真偽いかんについては立ち入って調査しなかった次第であり、今後も外務省としてはかかる相手国内部問題についてこれ以上の真相究明を行ない得る立場にないと考えておる。」、こういうふうに外務省ではいっておられます。私はこのことは何としても納得がいかない。中華民国内部の問題であって日本には関係がない、こう断言されるのはなぜそういう断言ができますか。私は、この曽文水庫借款の問題は、中華民国内部の問題だけでなしに日本にも非常に大きな関係があると思っておりますが、その点の理解が違っておるのですか、どうなんでしょうか。
  4. 有田武夫

    説明員有田武夫君) 本件決定に至りました経緯につきまして、実は新聞では、ここに書いてございますように、台湾政府内でいろいろ問題があったかと思いますけれども、それはいろいろの重要問題を決定するにあたりまして、先方政府内で異なった議論があり、いろいろ意見が戦わされたということは当然だと思います。それを新聞が一々取り上げたからといって、日本政府がそれに乗って惑わされるということは必ずしも納得できない次第でありまして、われわれといたしましては、日本側として責任がある態度でもって本件に当たり得るコンサルタントを選ぶということができれば、それで十分じゃないかと考えておる次第でございます。
  5. 矢山有作

    矢山有作君 私は、台湾における論議であなた方が惑わされるとか惑わされぬとか、そういう議論をしているのじゃありませんよ。日本の国民の血税を使った、しかもばく大な借款でしょう。それが適正な効果をあげていくことができるように使われていくかどうかということについては、日本政府は無関心ではおられぬはずである。であるとするならば、台湾政府部内で、しかも一私人の間で問題になっているのじゃないのですよ。立法院なり監察院なりでそれぞれ問題が取り上げられて、そしてそれぞれの責任者答弁をされているのですよ。その質問答弁の関連の中から、きわめて大きな問題が浮かんできておる。そのことは今日まで私が質問の中で一々指摘してきたとおりなんです。であるとするならば、台湾政府部内の論議に動かされる、動かされぬの問題でなしに、はたしてそういうような不明朗なことが行なわれたのかどうか。そういうことが行なわれておって、借款が適正に効率的に効果をあげていくことができるのかどうかということについては、日本政府としては責任をもってその実態を解明する責任があるでしょう。それをしもないと言われるのですか。
  6. 有田武夫

    説明員有田武夫君) われわれといたしましては、そもそも台湾側電発か、また日本工営その他適正なものを推薦してほしいということを言ってまいった次第でございます。それに関しましては、台湾側がどれを選ぶかということは、これはもっぱら台湾側の問題であるので、われわれとしては、電発日本工営の二社が適正であると考えられるので、それのうちどれを選ばれようとも、それは台湾側の問題であるということを回答したわけでございます。そしてその二社なるものが適正なものとしてあるということと、われわれは、この借款を有効適正に使うために最も適したコンサルタントであるという確信があればこそ、この三社を、いわば推薦ということばは強過ぎるのでございますが、紹介をいたしまして、そしてその中から選んでほしいということでございまして、われわれは不適任なコンサルタントを紹介したということではないと思います。
  7. 矢山有作

    矢山有作君 そういう議論に戻されていくと、いままで質疑応答でやったことを、今度また総ざらいしなければなりません。私はかまいませんよ、総ざらいすることは。しかしながら、それでは議論が進まないでしょう。あなたもここに来ておって、いままで議論をしてきて問題の焦点がどこにあったかということは御存じのはずです。それを知らないと言ってとぼけておったら、いつまでも話は進まない。私は、日本工営電発の二社を推薦されたことをどうこう言っておるのではない。あなた方はいろいろ事情があって推薦されたでしょう。ところが、電発工営の二社が推薦されて、あるいは技術的に、技術人の陣容においても、経験においても、あらゆる点において、万目の見るところすぐれておる電発が落とされて工営が選ばれた。その経緯をめぐって立法院監察院で問題が起こって、具体的な問題提起の形で提起をされて、それに対して行政院なり、それぞれのほうから答弁されたでしょう。それぞれ問題を具体的に指摘しながらあなたに質問したのですよ。きめたこと自体をどうこう言うのではなしに、そういう経緯を踏まえて工営決定を見た。そのことに日本の保守党の有力な政治家がからんでおって、政治資金まで動いたということがはっきり指摘されておるのです。だから私は、そういうことが事実としてあるならば、これは日本としても不名誉な話です。しかも、陳慶華やあるいは在日台湾大使館が、この真相究明のために動いたということも、二日の日の答弁でも否定されておりませんよ。陳慶華が来たのも認められておる。そうするならば、そういうふうなことを日本政府調査を受けなければならぬということを考えてもきわめて不名誉な話です。そういう不正が、間違ったことが行なわれて日本工営決定を見たという、そういう経緯をたどっておる。借款が効率的な効果をあげることが期待ができないから、その実情を究明しなさいと言った。あなた方引き受けたんです。総理大臣が引き受け、三木外務大臣が引き受け、藏内政務次官が引き受けた。その当時は日本関係のある重大な問題であって、いま答弁を出す段階になったならば、それは台湾政府内部の問題であって日本には関係がないと言って逃げられるのですか。総理約束したときも、外務大臣約束したときも、藏内政務次官約束したときも、事態は一つも変わっていないのですよ。あの人たち約束されたのは、この借款実施について日本政府も重大な関係があると思われたから調査約束されたのでしょう、そうじゃないのですか。それが報告段階になって、詭弁を弄して逃げようというのは無責任きわまる。しかも、藏内さんはこういう約束までされておるのですよ。問題になった当時、「当時入りました台湾大使館からの報告を、後刻全部そろえまして御報告申し上げたいと思います。」、こう言っておる。その当時、議論になったときの日本台湾にある大使館は、そうした大きな問題が提起されておるのに、われ関せずということで何も調査をしない、そして知らぬ顔してじっとしておったのですか、そんなことはないでしょう。台湾大使館から、いずれこういうことが問題になっておるということ、あるいはどういう点が議論になったのかということ、そのぐらいのことは何らかの報告がきておるはずです。私は報告を出しておる人から聞いておるのだから間違いはない。その報告をなぜ全部資料として出せないのですか、出すと言って約束したのを。
  8. 有田武夫

    説明員有田武夫君) 大使館からこれに関連しまして受けております報告は、聯合報記事でございまして、これはすでに御承知のこの別添につけてあるとおりでございます。
  9. 矢山有作

    矢山有作君 日本外務省というところは、こういう重大な問題をめぐって私にこれだけの報告書しか出せないのですか。この中にあるのは聯合報記事が二、三、「時と潮」という週刊誌、それが一つ。それから「反攻」という、これは何ですか、いずれ週刊誌か何かでしょうが、それに載せられた記事、これだけが日本外務省が二年かかって調査をしたと称する結果の資料です。日本外務省はそれほど無力なんですか、調査能力がないのですか。調査能力があって調査せぬというなら不都合だ。私個人ですら向こうの議事録原文で手に入る、写しですよ、これは。しかも、一番問題を提起した干錫来の質問原文で手に入るのだ。日本外務省はそれができぬのですか。在外大使館は一体何をしておる、外務省は一体何をしておる。たくさんの国の税金を使って、ゲエゲエとのんでるだけでは話になりませんぞ、これは。
  10. 有田武夫

    説明員有田武夫君) いろいろ週刊誌か何かの記事があるかと思いますけれども、これは申し上げますとおりに、台湾内部でどういう議論があったかということは全く別問題でございまして、われわれとしては、適正なるコンサルタントを選びまして、それで本件が支障なく有効適切に建設されていくということに一番問題があるのじゃないかと思います。ここに聯合報にたとえば載っておりますが、岸総理がどういう政治的圧力をかけられたかということは、政府としては存じませんし、たとえば陳慶華が来たという事実はわれわれも知っておりますけれども、政府部内と話し合ったこともございませんし、たとえば、在日大使館のだれかが本件について何か調べるために走り回ったというようなこともあるかどうか、これなんかもわれわれは全然知らないことでございまして、われわれとしては、二つの有力なコンサルタント、しかも、先ほど先生日本工営より電発がすぐれておるとおっしゃいますけれども、これはわれわれ部内でも検討いたしましても、それぞれ一長一短でございまして、それであるからこそ、二つが適切であるということで、これはもっぱら台湾の自主的な判断で選んでもらおうということでございまして、われわれとしては、いわばうしろ暗いところは何にもないということでございます。
  11. 矢山有作

    矢山有作君 参事官としてうしろ暗いことがあるとかないとか、そんなことを言っているのじゃありませんよ。ただ、どちらのコンサルタントを選んだかということ、その当時のいきさつが、その後の借款の適正なる実施に対しても影響を持ってくると思うから聞いている。また、事実影響を持ってきているのです、すでに。それだから聞いているのですよ。あんた首をひねるのはどういう意味でひねるのですか。笑いごとじゃないですよ。ぼくの調査しろということは、全然調査ができない。何かといえば首をひねっておる。それであなた外務省の役人というのがつとまるのかね。これはいずれにしても、大臣に出てきてもらって——直接約束された大臣なり政務次官に出てきてもらって、その筋から話を聞かなければ解決のつかぬことです。そうさしてもらいます。  それから、同じように私のほうからお願いしておった資料というものが出てきておらぬのですがね、これは、この場で出しましょうといって約束をしても、ほおかぶりをして出さぬでもいいことになっておるのですか、これは委員長、そういうことになっておらぬと私は思うのですがね。それというのはね、曽文水庫フィージビリティリポートリストアップされておる機械類ですね、これの中には、日本では調達不可能だと明確にわかっておるものがあるはずだ。私はそれを全部専門家に当たって調べた。ところが、あなたのほうではわからぬとおっしゃるから、このぐらいのことを調べるのは、政府の力をもってすればわけはないから、どれが日本でどうしてもできないものであって、その金額総計はどのくらいになるのか、これを調べてもらいたい、資料として出してもらいたいと言っておいた。出てきていませんね。これはどうしたんですか。
  12. 原田明

    説明員原田明君) 先生から御指摘ございましたフィージビリティリポートにつきまして性質を調べてみたわけでございますが、その結果、このフィージビリティリポートは、中華民国がどのくらいかかるかというフィージビリティ調査をいたしますために、アメリカのほうに委託をして調べた、作成をしてもらったものでございます。その結果、その機械リストには、こういうものを使ってやるということにすれば、その機械はこれぐらいであるから、これぐらいの経費がかかって実行可能であるという調査が書いてあるわけでございます。したがいまして、ここに書いてある機械を使ってやれということがきめられてある性質のものではないと考えるわけでございます。したがいまして、この機械の中に、わりにわかりやすい機械で、アメリカでいえば、通常こういうふうな機械を使うという意味で例示してあるわけでございまして、そこに書いてある機械が必ず円借に使われるということにはならないというふうに考えるわけでございます。先生の御指摘のように、このフィージビリティリポートには、相当多数のアメリカ機械の名前が書いてございます。集計はしておりませんが、相当多数あることは間違いがないわけでございますが、このうち、同じ目的の工事その他を達成いたしますために相当部分、大部分、ほとんど全部がやはり日本機械でできるのではないだろうかというふうに考えておりますが、一つ一つ機械ができるかどうかということと、この工事が遂行できるかどうかということとは、必ずしも関係がないのではないかというふうに考えた次第でございます。
  13. 矢山有作

    矢山有作君 いまの答弁はあんたおかしいじゃないか。私は、この機械一つ一つと、それが工事の遂行にどういう関係を持っているか、そんなことをあんたに聞いたのじゃない。私の聞いたのはきわめて簡単明瞭なんです。フィージビリティリポートリストアップされている機械で、日本でどうしても調達できないものはどれどれですかと、それを調べてもらいたいと言った。それをどう扱おうと、その結果の資料をどう扱おうと、それはあなたのあずかり知らぬことです。あんたのほうから先回りして、それが借款実施関係があるかどうか、そんなことを聞く必要は私はないのです。また、フィージビリティリポートはどういうものかということも、こっちも承知で言っているのです。そう言われるけれども、あなた方はフィージビリティリポート借款決定の際には十分慎重に検討いたしますということは、上田さんが言っているじゃないですか。そういうことを言っているのじゃない。私の聞いているのはすこぶる簡単なんですから、それに対して資料を出してもらえればいいのです。その資料を出してもらえるのか、出せないのか。
  14. 原田明

    説明員原田明君) 私ども、この円借を実行いたしますにあたりましての、こういう機械が要る、それを円借で認めてもらいたいという正式の申請を受けましたならば、個々の品目につきまして、日本製であるかどうかというようなことを十分チェックしたいと考えているわけでございますが、ここに書いてあるこの機械に当たるもの、それ自体をそれぞれ一品一品、たとえばシボレートラックというようなことが書いてございますが、そういうトラックができるかどうかというのは、なかなか見解の分かれるところでございまして、明確にトラックはできるわけでございますが、そのシボレートラックというふうにいくと、またなかなかできるかできないかという問題がございますので、はっきりこれはできる、これはできないというふうに一律に申し上げることは非常に技術上困難があるのではないかと思います。したがいまして、円借の対象になります機械リストが出てまいりましたときに、それについて一々検討させていただくということにさせていただければありがたいと思う次第でございます。
  15. 矢山有作

    矢山有作君 じゃ、この段階では出せぬということなんですか。フィージビリティリポートはあんたの手元にあるのでしょう。だからあるいは千六百万ドルの中で、厳密にこれとこれは日本でできない、これはアメリカでできる、そんなことを厳密にはきめられないだろう、したがって、千六百万ドルのうちには、最低この程度のものは日本でできないのではないか、最高この程度のものはアメリカならアメリカにたよらなければならぬのではないかと、そういう幅はありますぞと、しかしながら、いずれにしても、これは専門家が調べたらわかることだから、その幅はあるにしても、資料として出してもらいたい、こう言ったわけです。だから一々借款として明確に出てきたときとか、ときでないとかいうことでなしに、私は、私の質問を進行させていく都合上言うのだから、あなた方は、われわれの国会審議を妨害しようというなら別ですよ、そうでなしに、国会審議に協力しようというのであれば、私どもが要求した資料は出してもらいたい。それが出せないのですか、この段階で。
  16. 原田明

    説明員原田明君) 先生の御趣旨はわかりましたので、そういう御趣旨から相当技術的な幅があるし、見解も分かれるかと思いますが、少しお時間をいただきまして検討させていただきました上でお答えをさせていただきたいと思います。
  17. 矢山有作

    矢山有作君 局長、時間といっても半年かかるのか、一カ月かかるのか、一年かかるのか、どの程度余裕があったらあなたのほうから資料を出してもらえるのか、これ、やっぱりはっきりさせておかぬとね、しばらくお時間をといって一年も引っぱられたのじゃお話にならぬですからね。  それからもう一つ、私のところできょうあなたのほうから明らかにしてもらわなければならない問題がある。それは、四十三年の六月に立法院で干錫来という委員質問した。それに対して四十三年の九月に行政院側答弁があったのです。それは何かというと、大体百三十万ドルほどの曽文水庫用機械類アメリカからもう入れておる、こういう問題なんです。それは行政院も認めておるわけですよね。ところが私の聞いたのは、その百三十万ドルの、すでにアメリカから入れた曽文水庫用機械というものと円借款との関係はどうなるのでしょうかと。それに対してはっきりさしてもらいたいと、こう言っておったわけです。
  18. 原田明

    説明員原田明君) アメリカ機械が百三十万ドルばかりすでに台湾に輸入されたと、しかも、それが円借款を使用して輸入されたという疑いがあるということで調査いたしましたが、その結果、現在までに円借款を使用してアメリカ機械が輸入されたということは、全然ないということが判明いたしております。
  19. 矢山有作

    矢山有作君 全然なければそれでよろしい。ただ私は、なぜその問題を非常に重要視して質問としてあげたかといいますと、この監察院経済委員会の第二百四十二次会議速記録を読んでみると、これは丁淑蓉という委員質問に対して陶聲洋という秘書長が答えておるのです。その答えの中に、日本でできないものは——これは機械のことです、米国から購入することになりますと、それも日本から購入することになりますと、こうなっておるわけです。そこで私は、日本でできない機械を円借の中で買い入れるのじゃないかと、そういう疑問を持ったわけです。ところがその疑問を持ったのは、ただこれだけで疑問を持っておるのじゃないのです。その後私がいろいろ調べたところによりますと、やはりそういうことを疑わせるような問題が起こっておるわけですね。台湾側から、あの曽文水庫施工者である栄民のほうからね、そういった話が出てきたということを聞いております。機械を円借の中で輸入してくれたらどうかという話を持ちかけられたという話を聞いておりますので、私は特にこの点をあなたのほうに明確にしておいてもらいたいということを申し上げた。今後そういうことが絶対に私は起こらぬと思います、これだけ言っておけば起こらぬと思いますが、仕事がこれからどんどん進んでいくのですから、そうなると、こういうことを陶聲洋秘書長が言うようでは、何らかの話し合いがなかったということを断言は私はできないと思う。やっぱり疑問を私は抱いておる。だから私は、その疑惑を持ってやっぱり今後の曽文水庫の建設過程も見ていきたいと思いますので、そういうような間違ったことの起こらぬように十分通産省としては注意をしていただきたいと思います。なお、この曽文水庫の問題については、この過程に来ますというと、やはり外務大臣なりに出てきてもらって話をしていかないと問題解決しないです。参事官のような、いわゆる何というのか、いままでの質問の経過を知っておりながら、それをことさらに巧妙にはぐらかして答弁をしようというような、いわゆる役人特有の態度でもってやられたんではこの話は進まぬ。いままで外務大臣は、この問題がたびたび問題になってその経緯も知っておるはずです。ですから外務大臣にも出席をしてもらい、さらに私が要求をいたしました資料が提出をされた段階で……。この問題はそれまで質問を保留しておきたいと思います。
  20. 原田明

    説明員原田明君) 御指摘円借款につきましては、日本製の生産物あるいは日本人の役務という原則でございますので、先般も申し上げましたように、日本で十分に使いました中古機械とか部品、付属品といったようなものを除きまして、外国製の機械を円借の対象にするというようなことは全然考えておりませんので、御了承いただきたいと思います。
  21. 木村禧八郎

    委員長木村禧八郎君) もう一つ、時期の問題ですね。日本でどういう機械ができるかですね、その調査の時期です。
  22. 原田明

    説明員原田明君) 一年も二年もかかってお出しするというようなことは全く考えておりませんので、技術家の御意見を聞きました上で、できるだけすみやかに出したいと思います。
  23. 矢山有作

    矢山有作君 それでは先ほど申し上げましたように、この問題は処理をさせていただきたいと思います。きょうはたしか電発のほうからも参考人で来ていただいておったと思うんですが、せっかく来ていただきながら、質問がもっとこまかいところに入れないのが残念ですけれども、私のほうも、一応出すべき資料は出してもらい、そしてさらに最高責任者として外務大臣にも出席いただかぬと、ただいまのような参事官の話では、これは質問を進行させることはできませんので、あらためての機会に譲らしていただきたいと思います。  そこで、私が次にお伺いしたいのは、やはり同じような海外経済協力の問題なんですが、日本の海外経済援助協力の総体で、やはり大きな比重を占めているのは、東南アジアのそれですし、それから東南アジアの中でやはりインドネシアの比重が非常に高い。特に最近はインドネシアに対する海外援助が急激にふえようとする状態にあります。したがいまして、これまでのインドネシアに対する海外経済協力の実態を明らかにしておくということが、これからの膨大な額にのぼろうとするこの海外援助協力を適正に効率的に運んでいく上から必要だろうと思いますので、インドネシアの問題についてお尋ねいたしたいと思います。  まず、最初にお尋ねいたしたいと思いますのは、これまでのインドネシアに対する、これは賠償を含みますからね、経済援助協力の総額、それからその内容、何年に何ぼやった、その内容はこうだ、賠償なら賠償はこういうプロジェクトに使った、こういう品目に使った、その内容というものを明確にしていただきたいと思います。
  24. 有田武夫

    説明員有田武夫君) 本日は詳細な資料を持ってきておりませんので、どういうものに使われたかは、ここで自信を持って申し上げられませんですが、賠償額は約二億五千万ぐらいだったかと記憶しております。それからそのほかの政府援助といたしましては、六六年の七月に三千万ドルの商品援助をやっております。それから六七年からは、これは債権国会議と申しますか、援助国グループの会議決定の線に基づきまして、六七年には六千万ドルの援助をいたしております。この六千万ドルは、いわゆる商品援助でございまして、内容は現存する機械あるいは工場を維持、補修し、動かしていくに必要なる資機材というものに重点が置かれております。それから六八年度、本年度でございますが、本年度の援助といたしましては、六千五百万ドルの商品援助と、それから一千万ドルのプロジェクト援助、それにまだ実際協定ができておりませんが、御承知のケネディラウンドの食糧援助に基づきます食糧援助といたしまして五百万ドル、合計八千万ドルを出す予定にしております。  なお、その六千五百万ドルの商品援助も、いままでやりましたと同じように、これは消費財とか、ぜいたく品をやるというのでございませんで、すべて産業の修復、維持に必要なる資機材を出すことになっております。そしてそれによりましてそれを市場に放出いたしまして、必要なルピア資金を吸収し、もってインドネシアのインフレーションの克服というところに重点を置いております。そういうことで本年は非常に効果があがりまして、昨年の末と今年の一、二月の米の端境期には食糧不足を来たしまして、若干六七年に予想しておりましたインフレの促進度よりも進みましたけれども、三月以降から最近までは、月の物価の値上がりは〇・二%と、非常に驚くべき、インドネシアでは考えられなかったような堅実な歩調で進んでおりまして、われわれのいままでやりましたそういう商品援助の効果というものは、すでに的確に効果があらわれてきておると確信しております。  なお、その賠償につきましての数字は、私もいま正確に覚えておりませんし、どういうプロジェクトをやりましたか、ここに正確な記憶がございませんので、もし御必要でございましたら、あとでお答えしたいと思います。
  25. 矢山有作

    矢山有作君 私はまた、外務省は何を聞かれても絶対自信をもってちゃんと資料をそろえてここで答弁してもらえるのだろうと思って出てきたのです。私は、インドネシア問題についてこれまでだいぶあなた方にも世話になって調べておりましたから、おそらくあなた方のほうも、私が聞くとすれば、インドネシア問題かというぐらいのちゃんと用意をしてきてもらえたと思うのです。全然資料を用意してないというのは、これはおかしいですね。  それでは私は、あなたのほうで的確な資料をつくっていただきたい。なぜ私はそれを言うかというと、今日あなたのほうからも聞いた、通産省からも聞いた。また、私の手元に集まるいろいろな資料を集めて、私はこの実態を何とか明らかにしてみようと思って自分なりにやってみました。ところが全部違う。一緒にぴしっと合ってくるのが出てこないのです。私はどうにもならぬから、しまいには、いろいろな資料を寄せ集めて、自分なりにずっと整理をしてみました。したがって、これからの質問は、それをもとにしてある程度やっていきますから、私があなた方の資料やその他の資料をもとにしてつくったのですから、あるいは間違いがあるかもしりません。しかし、それは私の責任ではない。私が長い間かかって調べようとしても、あなた方が協力しないで、資料を出さないできた、その結果からです。だから、もし私のほうに間違っておった点があったら、それは指摘してもらいたい。  私は、それではこの際資料として、あなたのほうで、通産省はこう、外務省はこう、そうでないところの資料はこうというような、三者三様のばらばらな資料でなしに、政府として、インドネシアに対するこれまでの援助協力の実態はこれこれという的確なものを責任をもってつくってください。そのつくり方というものを私は言っておきます。たとえば賠償協定の締結されたのが五八年四月で、このときには、賠償は二億二千三百八万ドルですね。そのときに、同時に貿易債権の棒引きが行なわれておりますが、一億七千七百万ドルであります。あわせて、この賠償協定のときに四億ドルというものが出されていることになる。さらにそれから引き続いて、これは落ちがありますよ。私の資料でなく、あなたのほうからもらったのです。たとえば六三年九月に、例の池田借款というのがある。これが千二百万ドルほどあります。六五年になってから、例の川島借款があります。三千七百万ドルでありますが、これが実現したのが六百万ドルだとかいわれておりますが、この辺の詳細については、何としても私にはわかりません。さらに引き続いて六五年には、いわゆる椎名借款と称せられる一千五百万ドルのものがあります。これは私は、海外市場白書というのが六六年に通産省から出されているので読んだのですから、間違いないだろうと思います。それからさらに引き続いて六六年三月には、無償緊急商品援助という形の二百五十万ドルが出ている。同じく六六年には、輸銀を使って三千万ドルが出ている。こういった調子で、それからもずっと出ておりますが、それの内容というものも同時に示してもらいたい。そういう形で資料を提出していただきたいと思います。特に私はこの際一応賠償関係に重点を置いてお尋ねしようと思っておりましたのは、本来なら、賠償及び賠償担保借款の対象プロジェクトであるか、あるいは民間ベースのプロジェクトだとか、あるいはPS方式でやられたプロジェクトだとか、そういったものをあなたのほうから示してもらって質問を進めていくのが順序なんです。しかしながら、ないとおっしゃるんですからしかたありません。ここで質問をやめてしまうというわけにもいきませんのでね、私のほうで一応、先ほど言いましたように、いろいろな資料をまとめてつくったものがありますから、それをお手元に差し上げて、それに基づいて質問していきますのでそれで答えてください。  ここでその具体的な質問に入る前にひとつお伺いしておきたいんですが、二日の決算委員会で例の岸幸一さんのインドネシア援助に関する調査報告がもうできておるはずなんで、それを提出してもらいたいと頼んでおいたんですが、それはどうなっていますか。提出をできないんですか、提出することを政務次官約束されましたがね。
  26. 有田武夫

    説明員有田武夫君) 目下印刷中でございます。
  27. 矢山有作

    矢山有作君 いつごろできますか、提出。
  28. 有田武夫

    説明員有田武夫君) まだいついつできますか、はっきりここで申し上げられません。
  29. 矢山有作

    矢山有作君 提出はしてもらえるんでしょうね。
  30. 有田武夫

    説明員有田武夫君) 提出できるかと思います。ただ、それは公表の点についてはちょっと検討さしていただきませんと、まあどういう内容が書いてありますか、私もまだ目を通しておりません。たとえば相手国側に対して、まあ何といいますか、少し刺激するようなこともあり、儀礼に反するようなこともあるような点があれば、これの公表にあたっては削除をしなければならないというような問題点もあるかと思いますけれども、いずれにしても、国会のほうには提出できるかと思います。
  31. 矢山有作

    矢山有作君 ただね、私は、公表するのははばかるとかなんとか言われて、なかなか資料が出されないんですよ。いままで賠償調査団が七回にわたって行っておる。その賠償調査団の報告書でもこういうようなマル秘無期限というような判こを打ってなかなか出そうとしない。私はやっぱりこういうものについては、少なくとも国会審議を進める上には出してもらわぬと、国会は何も知らずにおれと、政府が出したところで、出しても都合の悪くない、都合のよい資料だけでものを言うておれというのでは、これは国会審議にならぬ。そういう姿勢の中で、たまたまあなた方のほうで処置をできなかったもの、それであなたのミスでぽろっと漏れてきて、こんなばかなことがあるのかというような国会審議のあり方じゃ困るんで、この間も同じようなことを言っておられたが、団報告書には、かなりの問題点を含んでおるように私は聞いております。したがって、これは正直に、できるだけそのまま出してください、いいですか。
  32. 有田武夫

    説明員有田武夫君) 御要望に沿うように努力いたします。
  33. 矢山有作

    矢山有作君 インドネシアに対する賠償というのは、先ほど言いましたように二億二千三百八万ドルですね。今日まで賠償実施状況、これはどうなっておりますか。これくらいのことは当然ここでも御答弁がいただけると思います。御答弁がいただけないとするならば質問が進まぬですが、どうでしょう。
  34. 有田武夫

    説明員有田武夫君) 賠償の総額は現在ほとんど使ってしまっておりまして、残額約二百五十万ドル程度かと思います。これも大体使途はパロポ合板工場なんかに向けられる予定と聞いておりまして、これに向けてしまったあとは全額消費し尽くされると思います。
  35. 矢山有作

    矢山有作君 そうすると、二億二千三百八万ドルの賠償というのは、もう残りは二百五十万ドル程度で、ほとんどないということですね。
  36. 有田武夫

    説明員有田武夫君) はあ。これによって全額賠償は使用済みということになります。
  37. 矢山有作

    矢山有作君 それで使用済みの段階にまでいっておれば、私はその賠償実施の状況というのは十分御説明願えると思うんですがね。たとえば全額の中で資本財の占める比率がどの程度であるとか、あるいはその他の生産物がどの程度であるか、役務賠償がどの程度であるか、あるいは留学生、研修生を受け入れておりますが、これがどの程度であるか、使節団の経費がどの程度であるのか、こういったもの、さらに賠償担保で借款をやっておりました分がありましたね、これなんかの詳細も全部わかると思うんですが、そこで説明してもらえますか。
  38. 有田武夫

    説明員有田武夫君) この点につきましては、非常にこまかくなるので、資料に基づかずに御説明いたしますと、間違いが生じるかと思います。本日は、実は、この問題が御質問があるということを聞いていなかったものでして、資料の持ち合わせがございませんので、これ以上詳細な御説明を申し上げかねるんでございます。
  39. 矢山有作

    矢山有作君 私は、参事官、あげ足をとるんじゃないんですが、私が質問するということはわかっておったはずなんですがね。だから、どういうことを質問するのかについては、たいてい慣例として準備の御都合もあるでしょうし、大体聞き合わせがあるんです。私は質問通告はしておいた。けれども、お聞き合わせがないので、あなたのほうでは、きょうの質問は何であるかということを十分御承知いただいて資料を持ってきていただいておると私は信じておるんです。そういう、人が質問通告をしておるのに、何を質問するのかすら聞かないで、資料を持っていないので答弁できないというような、でたらめなことがあるか。あなたのほうでは質問の内容がわかっておったから聞かなかったのであろう。
  40. 有田武夫

    説明員有田武夫君) 知っておりますれば、申し上げるのにやぶさかでないのですが、われわれは国会班のほうから、私に関する限り、本日、インドネシア問題が取り上げられるという通報がございませんで、曽文問題だけが議題になるということで曽文に関する件だけを用意してまいったのでございます。
  41. 矢山有作

    矢山有作君 そんなことはあなたのほうの一方的な判断であって、独断ですよ。質問を通告しておれば、何をやるかというぐらいはやはり関心を持つのがあたりまえだ。つまらぬ質問だからというのか、聞かれてもどうにもならぬ、わからないから質問されたんでは困るというので、適当に逃げるという頭から覚悟をして、聞き合わせをせずに、資料を持たずに臨んだんじゃないですか。
  42. 有田武夫

    説明員有田武夫君) 質問通告は受けておらなかったということでございます。
  43. 矢山有作

    矢山有作君 質問通告はしておりますよ。きょう決算委員会で外務と通産を呼ぶという質問通告はしてある。  こういうことで時間をとったってしかたがない。あなたのほうでは、まさにその態度は国会審議を軽視しておるというのか、なめておるというのか、あるいは賠償その他海外経済協力についてつつかれては、ぐあいの悪いことばかりだから逃げようという頭からの姿勢で、そういう態度をとっておるのか、その辺は私にははかり知れない。はかり知れないけれども、そういう態度でいつまでも外務省は済むわけにはいきませんよ。今後もあることですから、十分注意をしておいてください。  資料がないのであなたのほうで説明ができないんなら、しかたがありません。したがって私はいま政府資料やあるいはその他の資料の中から調べ上げた六七年の三月ごろの賠償実施の状況をもとにして質問をいたしますから、そのつもりでおってください。ただし、これもあなたが考えておる数字と、こちらの言うのと食い違ってくるということがあるのは当然ですから、それもあらためて含んでおいていただきたいと思います。  次にお伺いいたしますが、資料提出の件はまずいいかどうか。
  44. 木村禧八郎

    委員長木村禧八郎君) 有田外務参事官に申し上げますが、先ほど矢山委員が要求されました資料ですね、外務省のほうで用意してここへ提出されるかどうか、資料要求があったわけですが、それについてお答え願います。
  45. 有田武夫

    説明員有田武夫君) 岸報告のことでございますか。
  46. 木村禧八郎

    委員長木村禧八郎君) 委員長から申し上げますが、先ほど賠償について矢山委員が具体的に指摘されて、外務省からそういう資料提出方を要求したわけです。それに対してのお答えを願いたい。
  47. 有田武夫

    説明員有田武夫君) インドネシアに対します、いままで与えました援助についての詳細な資料は提出いたします。ただ、この点に関連しまして、一つはっきりさしていただきたいと思います点は、賠償とかあるいは政府借款のごとき、直接政府がやりました援助問題だけを取り上げるのか、あるいは池田借款とか川島借款とかという名前で呼ばれておりますけれども、実はこれは民間債権なんでございます。政府援助とは無関係の問題でございますが、これについても全部……。
  48. 矢山有作

    矢山有作君 それらも入れて。
  49. 有田武夫

    説明員有田武夫君) はい、承知をいたしました。
  50. 木村禧八郎

    委員長木村禧八郎君) じゃ、いま確認しておきます。民間ベースのいわゆる借款については、すべて詳細なる資料を提出していただくと、それを確認していただいてよろしゅうございますね。
  51. 有田武夫

    説明員有田武夫君) はい。
  52. 矢山有作

    矢山有作君 政府ベース、民間ベース全部。要するに海外経済協力援助に関するものを出してください。
  53. 有田武夫

    説明員有田武夫君) はい、承知いたしました。
  54. 木村禧八郎

    委員長木村禧八郎君) よろしゅうございますね。
  55. 矢山有作

    矢山有作君 それからもう一つ資料、やっぱりインドネシアの二億二千三百八万ドル、これの実施された賠償実態、これもあわせて資料に出してください。これからの質問は……。
  56. 木村禧八郎

    委員長木村禧八郎君) ちょっと待ってください。それじゃ、ちょっとお答え願います。
  57. 有田武夫

    説明員有田武夫君) 実態に関しましても提出いたします。
  58. 矢山有作

    矢山有作君 したがって、ここにあなたのほうから提出をしてもらった権威ある資料がありませんので、私のほうで、政府資料やその他をいろいろとひねくり回して、合わないところを知恵をしぼって、ここがあそこに合うんじゃないかということでつくり上げたもので、それを基礎にして質問をいたしますから、それはあらかじめひとつ含んでおいていただきたいと思います。  いまそこへ差し上げましたように、賠償及び賠担プロジェクトですね、これの数が大体二十八ばかりあるんです。これがその中で稼働中のものというんですか、これを見てみると、完成の欄に合わせて十七件ほどです。これを金額で直してみますと、その総体は、二十八の全体の金額が大体一億一千五百万ドルぐらいになるんじゃないかと思うんです。その中で、先ほど言いました稼働中のものが十七件、その認証額をここでずっと集計をしてみると六千万ぐらいになります。それに、さらに廃船同様で港につなぎつばなしになっている船があります。それや、それから巡視艇の八百万ドル、これらを加えてみて大体六千八百万ドル、金額にすると。その程度のものがまずまず稼働中と、こういうことになるわけです。そうすると、全体の賠償総額でこれを比べてみたら、というのは、賠償は大体済んでおる段階だということでありますから、賠償総額で比べてみたら二〇%ぐらいですね。二億三千万ドルというばく大な金を使った賠償が、現在生きてどうにか息をしておるというのはわずか十七プロジェクト——プロジェクトの場合です。金額にして六千八百万ドル。二〇%程度。この実態をあなたどう考えられますかね。これでは私は賠償が効率的に行なわれたということは言えないのじゃないか。一体この責任はだれにあるとお思いになりますか。
  59. 有田武夫

    説明員有田武夫君) もちろん、インドネシアの賠償プロジェクトが円滑に運営されなかったという点は、われわれも遺憾ながら認めざるを得ないと思います。しかし単に——まあ申し上げますのは理屈だけの問題でございますけれども、御承知のように、賠償は敗戦国の日本といたしまして非常に負担であって、現金賠償からようやく平和条約で現物賠償ということになってまいりました。その点も経済協力といういま現在のような観点から取り上げられたわけでございませんので、日本責任といいますものは、向こう側が買い付けました品物を、日本の港から出しますれば日本の全責任というものは全部解除されるたてまえになっておる次第で、賠償を受けておる国からいいますと、この金は日本の金じゃなくて自分たちの金なんだ。日本側からいろいろ文句を言われる筋合いはないという立場を貫いてきておりまして、買って持って行ったものがどういうところに使われるかという問題までをフォローせなければならないということにはなっておらないのでございます。その点におきまして、これを経済協力ベースに直して考えてみますれば確かにおかしなことだと思いますが、まあ賠償がうまくいかなかったということの一大原因はその辺にあろうかと思っております。
  60. 矢山有作

    矢山有作君 まあそういう御答弁をなさるだろうと思っておった。賠償というのは、従来の考え方から言うならば、イニシアチブは向こうに完全に握られておるのだから、こちらとしては何ともいたし方がない。端的にいうと、こういう意味だろうと思うのです。それはなるほどいままでそういう面も多分にあったと思います。しかしながら、私は、そういう場合にでもやはり日本政府としては、その賠償を受けるほうの国が賠償を受けて、そうして経済開発に役立て、民生安定に役立てるように使われるように極力配慮する、配意をするということは、やっぱり考えるべきじゃないのか。そういうこともあるから、賠償協定の中にも、それをにおわせるようなちゃんと文章があるのですね。「賠償として供与される生産物及び役務は、インドネシア共和国政府が要請し、かつ、両政府が合意するものでなければならない。」というのは、私は、賠償はイニシアチブは向こうにある。しかしながら、その効果をやっぱり確保していくためには、賠償を出すほうの国も十分配慮すべきだということで私はこういう規定もあったと思うのです。また、私はそれが行なわれぬとだめだと思うのです。あなた方の論法で突き詰めていくと、それを逆手にとれば賠償を食いものにするという形が平気で出てくるわけですね。現にそうでしょう。賠償については、イニシアチブが相手国にあるのだ、こっちはしようがないのだ、それが口実になって、それを逆に悪用して政治家賠償の問題に関連していろいろな問題を起こしておるというのは、これまでの国会で問題になったところで、あなた方御存じなんです。そういうような私は考え方というのはやめてもらわなきゃならぬと思う。賠償効果は十分にあがらなんだ。その点については、深く政府としては責任を感ずるということでないと、これからの海外経済協力等についても、私は適正な効率的な実施をやっていくことがむずかしくなるのじゃないか、こう思うのです。したがって、この点は、私はきびしく反省してもらいたい。私が反省してもらいたいと言うだけじゃない。反省をしてもらいたいということは、あらゆる方面で非常に強く言われておる。一、二のことをお目にかけますと、政府、自民党とは非常に密接な関係におありになる経団連あるいは経済同友会、この発行した文書がここに私の手元にあります。この中で見ると、岩佐という富士銀行の頭取、東電の木川田、これらがどういうことを指摘しておるかと言うと、「従来の経済援助」、インドネシアの賠償のことでしょうが、「賠償は汚れた取引、特殊ルートの取引である。場当たりの無責任な援助であった。」と各所でこれを言っている。それから経団連のインドネシア委員会の「インドネシア必携」という発行物がある。これを見ると、その中にこういうことが書いてあります。「二億二千三百八万ドルがどうして有効に利用されなかったかについては、大いに疑問がある。ただ、賠償供与物の稼動の悪さを一方的にインドネシア側に帰することはできない。なぜなら、こうしたインドネシア側の国内事情を十分承知の上で、日本側が不適格な商品の受注に応じた態度にも大きな責任があるからである。」、こういつております。私は、このことは、政府、自民党と非常に親しい関係にある財界人がいっていることですから、これをけしからぬといってあなた方言い捨ててしまうわけにはいかぬと思う。これからしても、私は、今後の賠償のあり方については十分注意をしていただきたいと思います。さようなあなた方の考え方というものを伺いたい。  さらに、これは賠償の直接の当面の窓口になっておるのは外務省でしょうけれども、きょうは外務大臣を経験された椎名さんも来ておいでになるので、政府の閣僚の一人として、インドネシア賠償に対するこれらの指摘をどう受けとめて今後に対処するのかということで決意のほどを聞かしていただきたいと思います。
  61. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) これからは、経済協力の立場に立って効果のあがるようにやってまいりたいと、こう思っております。
  62. 有田武夫

    説明員有田武夫君) 賠償に関しましては、確かに先ほど申し上げましたとおり、特にインドネシアについて実効があがらないということは、遺憾ながら認めざるを得ないと思います。今後は、経済協力等は、理屈から申しましても賠償とは違いまして、もっとほんとうに日本の利益のみならず相手国の利益を考えながら有効適切に利用されるべきだと考えておりますので、御指摘のように、過去の賠償時代におかしましたことを反省いたしまして今後やっていきたいと思っております。
  63. 矢山有作

    矢山有作君 六五年の十二月に約二十七億ドルの対外債務を背負ってインドネシア経済が破産宣告されましたね。わが国も十二月の二十九日に輸出保険の免責措置をとっております。もちろん、十二月以降に賠償担保借款の返済も停止されたままであります。そこで、六五年十二月末現在の賠償担保借款の残高、これはその当時幾らでありましたか。
  64. 武藤武

    説明員(武藤武君) インドネシアに対します賠償担保借款は、供与総額、ぶち込みで九千四百七十五万七千九百六十ドル二十九セント、これが大体の供与した総額でございます。それに対しまして外貨で返ってまいりましたのが三千七百二十一万九千四百七十七ドル五十七セント、これだけを賠償担保借款のうち外貨で返済しております。それ以後は、全部賠償から差し引かれるということになっていまに至っております。
  65. 矢山有作

    矢山有作君 この問題はあとで触れますが、賠担でやられたプロジェクトというのは、きわめてインドネシアの国情からして即応をしない、民生安定だとか、あるいはインドネシアの経済をよくしていくという上からいったら問題になるような、そういうものが非常に多いのです。その賠担借款によるプロジェクトのために、いま言ったような外貨の返済ができなくなった、賠償に食い込んでいく、生産的なものが圧迫を受ける、こういう問題も起こしたわけですから。このことはあとで伺うとして、いまの数字を承っておきます。  次は、インドネシアの外貨の保有高が一九六〇年には、三億三千八百万であったはずです。それからずっと毎年減少しておるのです。六五年にはゼロになっております。外貨保有高の逐年ごとの減少を示す数字というのを、私はこれは通商白書と経済協力白書、これからまた拾い出したのです。それからまた外務省資料からもいただきました。さらにもう一つ、インドネシアのその当時の経済状況というのを示す資料外務省からもらったのですが、それは「インドネシアの歳入と純国民生産との関係」と題する統計で、これを見ると、歳入と純国民生産との比率が、六〇年には一二・七、六一年に一一・九、六二年に五・二、六三年に五・三、六四年に四・四、六五年に一%、こういうふうになっております。つまりこれで見ると、六二年以降の経済状態というものは目に見えて悪化しておるわけです。その六二年以降の賠償担保でいわゆる俗称三ホテルといわれておるホテル、これが一千四百万ドル、サリナ百貨店、これが一千一百万、軍用乾ドック、これが六百六十万ドル、合計で三千万ドルをこえると思いますが、これだけばく大な不要不急の借款が与えられておるわけです。私は、経済の専門家でなくても、いま言ったようなことだけ見ればこういう非生産的なプロジェクト、これが、それから後の賠償プロジェクトを圧迫することは明らかだったのじゃないか、また返済不能となることも当然推測されておったのだろうと思うのですが、六二年、六三年に、これらの賠償担保の借款を供与したその経緯なり、あるいは現在、そのやった当時のことを考えてみてどう考えておられますか。
  66. 武藤武

    説明員(武藤武君) お答えいたします。  いま矢山先生指摘のとおり、賠償担保借款は、昭和三十四年の第一次以来四次にわたりまして合計八千百七十万ドルの賠償担保借款、最後は、サリナ百貨店に一千百万ドルの供与をしたわけでございます。当時におきましてまだ賠償にかなり財源の余裕があったということ、かつまた、インドネシア政府としましては、賠償担保借款に対する返済は必ず行なうんだということを約しておりまして、特に第四次のサリナ百貨店をやりますときにも、千百万ドルを供与いたしますと、もしも返済が行なえないことになると、賠償のプロジェクトの収拾についても困難になる。そういうことについて、インドネシア政府としては、賠償担保借款を行なうであろうということを確認した上で賠担の供与を行なったということでございますので、当時としましては、インドネシア政府としましては、必ず返すという約束からというふうに私どもは考えます。
  67. 矢山有作

    矢山有作君 それしか答弁の方法はないでしょうね。それで、私はやはり賠担をやるときには、向こうの経済事情というものをやはり客観的に分析してやるということでないと、たとえば向こうの大統領か、だれか政府当局者が、必ず外貨返済はやりますと言うたから賠償を圧迫することはないだろうと、そういうような判断をするというのはきわめて危険だと思うのです。先ほども指摘しましたように、賠償をはじめとして経済協力にはわりあい不当な政治権力が介入しがちなんです。したがって、どういうふうに賠償をやっていくか、経済協力をやっていくかということは、やはり客観的な資料に基づいて分析をしてやっていかぬというと、適正な効果をあげることができないと思います。したがって、これはインドネシアの場合は私はいい例だと思うのです。私は、今後の資にして、参考にしていただきたいと思います。  それから次には、抽象論ばかりやっておってもしかたがありませんので、具体的な問題に入って二、三点お伺いしたいと思います。先ほどあげましたサリナ百貨店、それからウイスマ・ヌサンタラビル、これらの問題でひとつ伺いたいのですが、なぜ私はこういうふうに個々の問題でお伺いするかといいますと、インドネシアの賠償、賠担対象のプロジェクトには非常に問題がたくさんあるのです。これは御存じでしょう。その問題というのをやはりはっきりこの際認識せなきゃいかぬと。それには特徴のあるものを私は二、三の例としてあげて皆さんの御見解を伺ったら一番いいと思います。そういう意味であげてみたいと思うのですが、第五次の賠償調査団の報告が出ております。これは外務省から出たんです。この報告によりますと、「生活必需品の極度の不足を生じ、異常なインフレ傾向に悩み、かついまなお比較的原始的な消費生活を送っておるインドネシア国民一般にとって、十四階建ての百貨店以上に、より緊急を要するプロジェクトが多々存在するのではなかろうか。いわんやインドネシア経済がかような困難に直面せるとき、ウイスマ・ヌサンタラビルの生産的価値のないことについては疑問の余地のないところであろう。」と書かれております。これは外務省賠償調査団の報告書に出ておるのですから、外務省はこういう考え方をしたんだろうと思う。ところが、その外務省が当時は何の抵抗もなしに、こうしたサリナ百貨店やウイスマ・ヌサンタラビルの建設を認めたということばを使うとおかしいですが、認めたんです。私は、賠償調査団を出してこういうふうに反省をされる外務省の反省が、それを実施するときになぜなかったか、そういう点にも、私は賠償実施していく上に投げやりなその当時の政府の態度というものが端的に出ておるのじゃないかと思うのですが、あなたはどう思います。
  68. 武藤武

    説明員(武藤武君) お答えいたします。  矢山先生がいま御指摘になりました第五次賠償調査団は、昭和四十年の暮れにやはりインドネシアその他各国を回りまして、特にインドネシアにつきましては、当時九・三〇事件以来の政変のために、ジャカルタに滞留を余儀なくされて、主として感想文だけを取りまとめざるを得なかったという報告書でございますが、サリナ百貨店につきましては、すでに昭和三十八年に供与を決定しておる。また、ウイスマ・ヌサンタラビルにつきましても、大体賠償調査団の行く前に供与が決定されておるということ、かつまた、先ほど有田参事官からも御指摘申し上げましたように、賠償のたてまえと申しますものは、相手国政府からの要請に基づきまして、これを日本政府が合意するということで、あくまでもこのイニシアチブはインドネシア側にあるということを御了解いただきたいと思います。
  69. 矢山有作

    矢山有作君 いまのことは、賠償のイニシアチブが向こうにあることは参事官もお答えになったが、これはそういう考え方だけでものごとを処理したのはこれはいけなかったのじゃないかということで、それは議論が済んでおる、やはり反省すべき点があるということになったわけです。したがって、あなたも実際にこれから事務を遂行していくんでしょうから、やはりそういう反省というものはやりながら事務を遂行していく、そうせぬと、参事官は反省したが、賠償課長のほうは逆にイニシアチブが相手にあるからという考え方を持ち続けるのでは、これはどうにもならぬ。やはりこれは同じような観点に立つと……。
  70. 武藤武

    説明員(武藤武君) いま矢山先生指摘のように、過去においては確かに相当困難があったのです。また、そのために、インドネシア賠償というものは必ずしも所期の目的を達し得ないということでございますが、インドネシア賠償はもう再来年の四月十五日で終わりになるわけであります。あと残っておりますフィリピン、その他の賠償あるいは韓国その他に対する無償経済協力については、インドネシアの賠償のように間違いを起こさないように、できるだけ気をつけてやっていきたいと思っております。
  71. 矢山有作

    矢山有作君 もう一つ、これはまたひどい例がある。セメントを含む全機械が送られながら、まだ建設にも着手していない例として米ぬか油の抽出工場とブア桟橋がある。これらの機材は全部野ざらしのまま投げられておって腐っておるわ、盗まれるわということで、たいへんなことなんです。私は、そういうセメントのようなものは、四、五年も野ざらしにしておけば使いものにならなくなるということは、これはわかり切った話なんです。こういうように工場建設の途中で放置されておるというものは枚挙にいとまがないのです。この賠償調査団の報告あるいは経団連の「インドネシア必携」など、これらを読んでみると、たくさん出ております。四十一年、四十二年の賠償調査団の報告の中から拾ってみると、パロポの合板工場、マカッサル及びマルタプラの製紙工場、プラウ・ラウトの合板工場、海軍用の乾ドック、シンプル紡績工場、ラワン紡績工場、デンパサル紡績工場、こういった非常にたくさんのものが建設途上で放置されておる状態ですね。それからまた、こういうようなのがある。ジャカルタの電気試験所、機械修理工場、それから電気修理工場、こういったのができている。ところが利用者が全然ない。開店休業だと、こういう報告が出ております。また中には、道路建設機械修理工場、ブトンのアスファルト工場、これは通産省の書類によると、完成となっているのです。ところが、私はこれをほかで調べてみて調査団で行った人に聞いてみたら、これはないというのですね。まさにキツネにつままれたような話なんです。そんなことは私はないと思うのです。しかし、まあ実際に調査団で行った人に聞いたら、ブトンのアスファルト工場なんというものはありはせぬと、こういう話なんです。こういうふうに、いままでの賠償調査団がやった調査を見ただけでも、いかに賠償行政がでたらめに行なわれておったか、このことで私はわかると思うのです。  そこで私は問題をまた、もう個々のものをあげておってもしかたがありませんから、一挙に移してまいりますが、こういうふうに賠償でやられたプロジェクトの建設途上でほうり投げられておるもの、あるいは稼働率のきわめて悪いもの等々たくさんあるんです。しかも、賠償資金はもうない。一体これをこのまま放置するんですか。それともせっかくたくさんつぎ込んだ国民の税金ですから、これが相手の国民にも喜ばれるような生きた使い方をするために何らかの方法を考えるとか、この点はどうですか。
  72. 有田武夫

    説明員有田武夫君) この点につきましては、インドネシア政府は、世界銀行と密接に協力いたしまして検討をいたしましたし、また今後も検討していくことになっております。そして、すでに着手されたもの、あるいは進行中のもの、また稼働率の悪いものというようなもので、さらに金をつぎ込んで完成さしたならばインドネシアの経済に役立つであろうというものを厳密に取り上げまして、そのために必要な資金を各国からの援助にまっておる次第でございます。たとえば日本の場合でございますと、3Kプロジェクトと申します、三つのダムのプロジェクトがございますが、これは不幸にして中途になっております。これに若干の資金をつぎ込みますれば、その辺の洪水対策になり、かんがい対策になり、米の増産に役立つということで、これはインドネシア政府でも早急に取り上げるべきプロジェクトであるということになっております。日本といたしましても、こういうものは、民生安定上からも至急に取り上げて完成すべきであるということで、本年約束いたしましたプロジェクトの一つとして取り上げておる次第でございます。インドネシア政府も、そういう観点から、特に直接そういう経済発展に役立たないというようなもの、ほんとうに役立つものというものを、もう一度世銀とも共同して再検討しておるということで、われわれも、そういう結果を踏んまえまして、必要なものは経済発展のために援助していきたいということを考えております。
  73. 矢山有作

    矢山有作君 そうすると、簡単に言うと、こういうふうに解釈してよろしいんですか。要するに、対象プロジェクトをもう一ぺん全部洗い直してみて、その上に立ってほんとうに民生安定上、インドネシア経済の発展上必要なものについては、資金援助の方途を講じていきたい、こういうことなんですか。
  74. 有田武夫

    説明員有田武夫君) ただいま矢山委員の御指摘になりましたとおりでございます。
  75. 矢山有作

    矢山有作君 これはせっかくばく大な金をつぎ込んだのですから、徹底的に対象プロジェクトの洗い直しをやって、そうしてほんとうに効果のあがるものならこれを効果をあげるような方向で検討されるのはいいと思います。同時に、この調査団の報告なんかをずっと見てみますと、少し手を加えれば、たとえば幾らか部品が足りないとか、あるいは何らかのちょっとした設備があればその工場は非常に能率をあげるのだというところがあるようです。これらについても、やはり配慮していかなければならないのではないか。そういう点で考えられるのは、賠償をしたら、向こうのイニシアチブでやって、あとはわれ関せずというのではなしに、一度調査団でも出して対象プロジェクトを一つずつ洗ってみて、ちょっと手を加えればどうにかなるのだというものは、積極的にそういう形で取り上げてみる、これは全体的な洗い直しのほかにやはりそういう点をも考えてみるということはどうなんですか。
  76. 有田武夫

    説明員有田武夫君) 矢山委員が御指摘になりましたとおりでございまして、われわれはそのつもりでやっております。先ほどもちょっと触れましたが、そこのプロジェクトのほかに、日本が手がけましたプロジェクトもございます。それにつきましてもう一度調査団を派遣しまして、はたして幾ら金が必要であるかという厳密なる調査をやりましたし、また、すべてのプロジェクトにつきましてやる予定にしております。先方も、スカルノ時代の放漫なるやり方につきましては非常に反省しておりまして、たとえばスカルノ時代にやりました契約ももう一度再検討し、価格は適正であるかどうか、それから手続的にも誤りがなかったかどうかということを、日本側の中立の、たとえばコンサルタントが来てもう一度検討してほしいというようなことを言っておりました。われわれは、3Kプロジェクトにつきましては、もうすでに送りましたし、ほかの残りましたプロジェクトについても近く調査団を送る。それによって価格のチェックなどもいたしまして、それに基づいて援助をやっていくというように確固たる方針をとっております。
  77. 矢山有作

    矢山有作君 まあそういう方針が固まったら、その段階でまたその点については資料もいただいたりお伺いしようと思います。  これまでの質疑の中で個々の問題について、いろいろ問題のあるやつはたくさんあるわけです。しかしながら、全部それをはしょりましたが、いずれにしても、もう私が一、二あげた問題だけでも、インドネシア賠償というものが非常に問題があった。ましていわんや、あなたのほうは調査団を出してよく御承知なんですから、そこでこうした経済協力というものについては、やっぱりこうした間違いが起こりやすい要素も私はあると思う。そこでやっぱりこの経済協力というのを効果的に、あるいは系統的に進めていくために、これはいままでの制度というものの中で幾つか改善をしなければならぬというようなものがあるんではないかと私は思う。その点で私がさしずめこれはやるべきではないかと考えられるものを一、二あげてみたいと思うんで、これは通産大臣にも関係のあることですから、大臣お見えですから大臣のほうの考え方を伺っておきたいんですが、いままで経済協力というのは、これは外務、大蔵、通産、経済企画庁、農林省、そういうところで分担されておりましたしばらばらなんですよ、要するに。したがって、やはり私は今後の経済協力のあり方として、これを一元的にやっていく、そうした機構というものを考えるというのが一つの考え方として出てくるんじゃないか、しかも、この経済協力は、もうすでに年間数億ドルに達しておるわけです。今後も増加されるという見込みなんでしょう、いずれ。ですから特にそれを思うんですが、これはどうでしょう。
  78. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) 関係省の間で絶えず連絡協調をやっておるつもりでございますが、だんだん経済協力に対して重点がかかってくるに従って、あるいは特別の関係省庁の間の有機的な組織をつくって、そしてそこでやるとか、あるいはまた幹事たるべきものをつくっていく、何かいま以上にもっと有機的な組織をつくるという必要もあるいはあるかもしれません。その点は研究してみたいと思います。
  79. 矢山有作

    矢山有作君 これは統一的な行政を遂行していくために考えられる機構の整備の問題ですから、これは私のほうでどうしてもこうなさいということよりも、やはり効果的行政推進という立場から、大臣がおっしゃるように検討していただきたいと思います。  私は、これだけはどうしてもこの際やると言ってもらいたいものがある。それは何かといいますと、海外経済協力関係の予算というのは国家予算の中にはっきり計上されてこないわけです、輸銀、世銀の資金の補てんとして計上されるだけで。私は、経済協力というものの内容というものをやはり国民にも知らせ、十分な理解を受ける、そしてそれを適正に効率的にやっていく、そのためには国会の審議を徹底的にやはりいろいろな問題点を出して論議をする、こういうようなことも必要じゃないかと思うのです。アメリカあたりではそれが行なわれておるんです。私は、この海外援助費というものを予算計上をして、国会の場で論議をするように持っていくということができないのかどうか、その点どうでしょうか。
  80. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) これは私が外務におりましたときに、内部で提唱したことでもございます。しかし、財政の問題にも関係いたしますので、まあそこまでいかぬでも、それにやや近づけるという意味において海外経済協力基金というものをもう少しふくらまして、そしてこれから経済協力で相当国際的に発言力を高めていくと、こういう姿勢をとるべきであるという心組みから、海外経済協力基金というものを増加してもらう、そういうことで多少一歩踏み出したようなかっこうをしておりますけれども、それ以上に、これを予算化するということになりますと、なかなか問題はあると思います。できるならばそういうところまで進めていけばたいへんけっこうだと思いますが、これは主として外務省に考えてもらわなくちゃならぬ問題であると考えます。
  81. 矢山有作

    矢山有作君 これはやはり私は総合的な、統一的な、予算審議の上からも、それからやはり海外援助を適正にやるという上からも、ぜひそうすべきだと思うのです。項をひとつ起こせばいいのです。そうして、やはり予算計上をはっきりやっていく、こういう方向で御検討願いたい。これは経済協力基金を拡充さしたということだけではまだまだ私は不十分だと思います。これを押して聞きますが、そういう方向で検討してもらえますか。外務省の担当だと言われますけれども、あなたのほうもやはり経済協力を扱っているわけですから……。
  82. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) これはどの国にどういう協力をするかというところまで結局きめないと予算化するというわけにはいかないので、その場合に相手国というものをかってにこっちできめるということがはたして適当であるかどうか。まあアメリカあたりの考え方は、ごくばく然とした海外援助というようなことでやっておると思いますが、これもはたして的確に予算化するというところまでいくかどうか。あるいはアメリカの大統領華金みたいな、似たようなもので、総理の、海外援助に関して適時適切なる行動がとれる。しかし、あらかじめ縛るということは、これはむずかしい。そこで、総理大臣基金であるとか、そういったような構想でやるかやらぬかというようなところだと思いますが、まあとにかくこの問題は、私はもう相当踏み込んで覚悟してかからなきゃいかぬ問題だと思いますので、概括的にでも何でも、とにかく対外的に経済援助を積極的にやるのだという次勢をとる意味においても、そういうことを形の上にあらわすことは必要だと思います。ひとつ関係省に呼びかけて研究してみたいと、こう考えております。
  83. 木村禧八郎

    委員長木村禧八郎君) 委員長からも大臣ちょっと申し上げたいのですが、関連しまして。財政法上基金というものの性格がやはり非常にあいまいなんですよね。ですから、いま大臣おっしゃいましたので、私の前の経験からいいますと、大蔵省でもこの基金について、これを国会承認の予算化すべきかどうかについては、相当やはり研究もされ、議論もあったように聞いております。単に基金だけではなく公団、公社等についても、やはり予算を国会承認事項とすべきかどうかも、いろいろ問題があるわけですから、特に、いま矢山君の発言は、今後海外経済協力、相当金額も多くなりますし、いまの御発言もございましたので、通産大臣も御検討されるようなお話でございますので、私からも、大蔵省とも十分に話し合われて、予算化されるような方向で御検討願いたいと思うのですが、それに対して御意見ございましたらお願いいたします。
  84. 椎名悦三郎

    ○国務大臣椎名悦三郎君) いま国際的な活動をする公団というものが最近出てまいりました。これはどこまでも海外の石油資源を開発するとか、あるいはその他の地下鉱物の開発、国内ではもうとてもだめだ、見切りをつけて、いろいろな石油以外の鉱物資源の開発をする公団なんかもできておりますが、しかし、それはどこまでも自分のためのものなんです。そうじゃなしに、自分のためにもなるけれども相手国のためにもなる、いわゆる経済協力、そういうようなものをもうそろそろ考えなきゃならぬというふうにわれわれも考えておりますので、ひとつ御趣旨はよくわかりました。大いに御協力願いたいと思います。
  85. 矢山有作

    矢山有作君 それじゃ、最後に一つだけお伺いしておきますが、対外経済援助協力、これはもちろん賠償を含んでいますが、これで、会計検査院のこれまでとってきた態度といいますか、検査の対象にあげておるとするならば、どの程度の検査をやっているか、そうした点、ちょっと説明してくれませんか。
  86. 宇ノ沢智雄

    説明員(宇ノ沢智雄君) 海外経済協力、賠償を含めまして国の出資している機関から融資の形で、国家資金が外国政府の援助の形で出ているものが、先ほど来お話が出ておりますように相当あるわけでございます。その結果、資金の運用等につきましても、必ずしもうまくいっているものばかりとは限らぬということで、そうした多額の国家資金が経済的に、しかも効率的に使われているかどうかということにつきましては、これは本院としても十分関心を持って調査をしなければならないことと存じますが、現在の会計検査院法の段階では、一つの例をあげて申し上げますと、先ほど来お話が出ました海外経済協力基金等につきましては、海外経済協力基金そのものの経理については、これはもう当然本院が検査しなければならない団体でございますので、これは毎年検査をいたしておりまするが、ここから融資されました資金の先、ことに本件のような場合には、これは相手が外国政府というようなこともございまして、おのずから本院としても権限上限界があるわけでございます。融資の先まで行って検査をするということは、現在の段階においては不可能でございます。ただ、国内の場合ですと、従来、いろんな金庫とか、そういうところから融資されておりまする融資先につきまして、これは権限はございませんけれども、金庫なら金庫とそれから融資を受けた団体なり個人なりの間に、立ち入りして場合によったら検査ができるというような権限を契約上融資機関が付与されておりますので、金庫なり何なりがそこへ、相手方に、融資先へ行って検査なり調査なりをする場合に、それに便乗といっては悪いのですが、乗っかっていってこちらも調査をする、あくまでも形式的には間接調査というようなことになると思うのですが、そういうことはやっております。しかし、外国政府に対する協力であるから、全くこれは無関心でいいというふうには考えておりません。  それから最近経済協力基金などの借款の契約の内容などを見てみますと、融資を受けた相手方から相当詳細な融資事業の報告をとるようになっておりまして、それを私たちが経済協力基金におじゃまして検査をする際に、そういうものを拝見しましても、相当程度借款が与えられたその事業がどの程度進捗しておるかというようなことが詳細にわかるわけでございます。そういうようなことで、今後も十分そうした海外援助の融資等については関心を持って検査をしてまいりたい、かように考えております。
  87. 矢山有作

    矢山有作君 いままでの実態というのは、いまおっしゃったとおりだろうと思うのです。やはり検査の権限上の問題もあって十分やりかねるという問題もあるでしょうし、特に海外援助の場合には、他国との関係が出てきますが、しかしそれはそれにしても、私は基本的には検査院の検査権限の問題をこの時点でひとつ考えてみるということと、それから、何も必ずしも、強制力を使わなければ検査ができないというものばかりでもない。特に海外経済援助等が大きな比重を持ってくる場合には、日常の検査をやられておる中で特にこれだけはどうしてもやはり現地調査をやりたいという問題も起こってくるだろう。そういうものについて、やはりそうした特に重要なもの等々が、私は外国政府との関係で、強制力云々の問題でなしに、現地で調査をするというようなことも、やはり検査院としてはこれから考えるべき問題じゃないかと思う。こういう気がするわけです。さらにその場合には、機能の問題ですね、機構の問題も考えなければならぬと思います。これは私はここで結論をすぐ出すとか出さぬとかいうのじゃなしに、せっかく検査院というものがあるのですから、そうするならば、経済協力の実施の状態がはたして適正か不適正か検査をするその検査は、従来のような、効果がないと言うと気に入らぬかもしれませんが、実際にたいした効果をあげないような状態でなしに、もう一歩突っ込んだ検査の権限、機能を持てるような形、これを私は検討してもらいたいのですが、どうでしょうか。
  88. 宇ノ沢智雄

    説明員(宇ノ沢智雄君) 御趣旨の点はよくわかりましたので、今後そうした点検討してまいりたい、かように考えております。
  89. 矢山有作

    矢山有作君 これで私はきょう質問を予定しておりました問題については、質問を終わります。しかし、資料を提出していただいた上で、やはりあなたのほうから出てきた資料に基づいて質問さしていただきませんと、私がいろいろとあなた方にいただいた資料を使ってつくり上げた資料だったんでは、やはりあなたのほうと議論がかみ合わぬ場合が起きてきますから、したがって、資料を御提出していただいた上で、あらためてこの問題を質問さしていただきたいと思います。
  90. 木村禧八郎

    委員長木村禧八郎君) 午前はこの程度とし、午後は一時から再開いたします。  それでは暫時休憩いたします。    午後零時五分休憩      —————・—————    午後一時十八分開会
  91. 木村禧八郎

    委員長木村禧八郎君) 委員会を再開いたします。  午前に引き続き国家財政経理及び国有財産管理に関する調査を議題とし、質疑を続行いたします。御質疑のある方は順次御発言願います。
  92. 黒木利克

    ○黒木利克君 私の質問は、宮崎県の西都市にある三納川の上流の吹山国有林、それに隣接の田野川上流の籾木国有林、この二つとも西都営林署の管内でございますが、個々の国有林の伐採を中心にした問題についてでございます。この吹山国有林の下流は、昭和四十一年に大きな災害を受けております。今回宮古島台風がございましたが、これでも被害を受けた地域でございます。籾木のほうは、今回初めて大きな被害を受けたのでありますが、この吹山国有林の下流の地域は、昭和四十一年に建設省の政務次官がわざわざ視察をしたくらいに相当被害があったのであります。そうして五、六億円の復旧費をかけて、現在では一応の復旧を見ております。地元もたいへんに感謝をいたしておりますが、この籾木のほうは今回災害を受けたばかりでございまして、まだ復旧には着手していないようでありますが、建設省出身の上田議員あるいは山内議員が視察をしたくらいでございますから、これも相当の被害を受けたのであります。しかし、いずれもその災害復旧という観点からの視察と思うのでありますが、私は別の観点からきょうは取り上げてみたいと思うのであります。実は当決算委員会も、一昨年委員長はじめわれわれ三名の者が南九州の視察をしたのでありますが、その際も国有林野の管理とか運営あるいは災害防止についてのことが問題でございまして、当時熊本営林局長から詳細な説明を受けたことがございます。実は、私は一昨日この宮崎県の災害の現地を視察して来たばかりでありますが、それは地元の人たちが非常に政府を恨んでおる、怨嗟の声が高いのであります。非常なまた不安を持っておる。そこでぜひ見てほしいというので要請がございました。実はこういうような国有林等の関係の災害というものは、何も宮崎県だけではありません。全国至るところで聞いております。最近では青森県の災害でもだいぶ問題になったようでありますが、そこで私はひとつこれは全国的な問題として取り上げたいということから、現地を視察をしたわけでございます。  それともう一つは、われわれが当時この吹山国有林で営林局の当局に考慮を促したやさきでございますが、全く同じような経過で同じような災害をこの籾木のほうが受けておるのであります。全く同じことの繰り返しでございますから、私はさらにひとつこの問題を究明したいという気になったわけでございます。  ところで、その現地に参りますと、地元の当局は、圧力というか、さわらぬ神にたたりなしというか、どうもあまりわれわれに協力的ではありませんでした。そういう質問はしてほしくない、これは天災だというような考え方で、地元の人の怨嗟をそっちのけにして、どうも糊塗してしまおうというような空気がございました。私は、こういうような大問題がなぜ大きな政治問題にならないのか、これは地域の住民福祉に重大な関係があるわけでありますが、ここでその原因がわかったような気がしたのであります。なぜ私がこういうような質問の理由をくどくど申し上げるかというと、地元の営林署の立場を考えておるからであります。私も地元の営林署長をよく知っておりまするし、よく忠実に仕事をやっておられるりっぱな官僚の一人だと尊敬をしておるのでありますが、問題は、その地元の営林署の責任ではなしに、これを指導監督をする、あるいは国有林の管理なり運営の根本方針をきめる林野庁に私は大きな問題があるのではなかろうかと思うから、そういう意味質問をするわけであります。  なお、当委員会で私がこういう質問をするのは、この決算委員会に最もふさわしいと思うからであります。これは国有財産である国有林の管理、運営というような直接の問題になるのでございますから、そういう意味で御質問をいたしますが、先ほど申しましたように、地元の当局の協力が得られなかったために実は手ぶらでございます、資料はない。ただ、一昨日なまな現地を見てまいりましたから、私の質問もそういう資料なしで、ただ一時の観察の結果からの質問でありますが、これは林野当局にも今後協力していただいて、必要なこれから申し上げる資料の御提出をしていただいて、その上で、林野庁の所管の決算を審査するときに、場合によっては詳しく再度質問をしたいと考えておりますから、協力してほしいのであります。  そこで、まず要求資料一つでございますが、これは建設省の関係でありましょうが、吹山国有林の下流の昭和四十一年度の災害でどれくらい一体復旧費がかかったかということが一つであります。それと、林野庁の関係では、吹山国有林の伐採計画というか、その面積なり、あるいは石数なり、あるいは収益といいますか、一体それがどうなっているか、収益がいかほどになっているか、また将来の伐採計画がどんなものがあるのかというような資料をひとつ出していただきたい。なぜこういう資料を要求するかと申しますと、先ほど申しましたように、災害復旧費はダムやあるいは橋梁の永久橋の架橋とかにおそらく五、六億円かかっておるのではないかと思うのでありますが、それに比べて国有林野の伐採の収益はおそらく数千万円にすぎないのではないか。そうなると、わずかに数千万円の国有林を伐採するために、災害ごとに何億円という——何十倍あるいは何百倍という国費を出しておるということが、いかにもこれは矛盾のように私は考えられてならないのであります。もちろん、その年度の国有林野の伐採による収益はわずかでありましょう。おそらくこういう雑木を中心にした国有林ではもっと成長率の高い樹木に植えかえるんだという長期の計画、それはおありになるだろうし、これはよくわかるのでありますけれども、しかし、それにしても、いかにも復旧費の額の高さに比べて、国有林の伐採の収益というものが少なく思えてならないのですが、林野庁はどういうふうに考えるか、この辺からひとつお尋ねをしてみたいと思います。
  93. 片山正英

    説明員(片山正英君) お答えを申し上げます。  国有林の全体の経営の方針と申しましょうか、そういう問題につきましては、御承知のように農林大臣が全国森林計画というものを策定して定めることになっております。それに基づきまして、営林局長がその一部として国有林につきまして経営計画というものを樹立しまして、それを大臣の承認を得て実行いたすという仕組みに相なっておるわけでございます。そこで経営計画の内容というものにつきましては、伐採計画、造林計画、林道計画、治山計画を総合した一つの計画を樹立してその中で実施するというのが一般的の原則でございます。  そこで、ただいま先生おっしゃいました西都営林署のあれはどうか、こういうことでございますが、流域の局部のやつは実はまだあとで検討いたしたいと思いますが、西都営林署といたしましての経営の大体の大まかな実態でございますが、御承知のように、西都営林署は面積が一万三千二百五十ヘクタールございます。蓄積が約百七十九万立方ございます。そこで伐採量でございますが、伐採量は約五万六千九百立方毎年伐採をいたしております。そうしますと、概略蓄積に対して三%程度の伐採をいたしておるわけでございます。三%と申しますと、大体平均の成長率よりは少し多いかもしれませんが、林相を改良いたしますと五、六%の成長率を持つわけでございますので、大体平均と見てよかろうかと思いますが、大体三%程度の伐採をいたしております。なお、造林につきましては二百七十四ヘクタールを毎年大体造林をしておる、こういう施業の進め方をいたしておるわけでございます。ただ、先生のおっしゃいました被害の地帯をもう少し詳しく、現地に行きませんが、連絡の中で調べますと、九十三林班、九十四林班というものが西都営林署の中で非常に被害が多かった、それが原因で多かった、こういうふうに調査いたしたわけでございますが、そこの部分につきましては、四十一年を境といたしまして伐採量も逐次減少さしております。それからまた。林道工事は四十一年度を境といたしましてやっておりません。そのような形で施業を現段階では進めておるわけでございます。
  94. 黒木利克

    ○黒木利克君 これは、私も資料を持っておりませんから、先ほどお願いしたように三納川上流の国有林の伐採の収益が大体どれほどだと——私は、災害復旧費の額と比べて国の財産なり国の費用の運用をもっと合理的にやったらどうかというような意味質問をいたしておるわけでありますから、そういう資料をひとつお願いしたいと思います。  それから、単にこういうような国費の有効な使用、あるいは国有財産の効率的な運用ということだけでなしに、私は地元の住民のやはり生活なり、福祉という問題を重視したいのであります。地元の人たちにある程度納得がいけば、国有林野の伐採もおそらく協力をしてくれるに違いないし、こういう災害があってもあるいは天災とあきらめてくれるかもわかりませんけれども、どうも地元の人たちの意向を聞きますと、こういうような大災害まで出して、われわれ住民を苦しめてまでなぜ国有林野の伐採をしなければならないのか、その切実さがわからないと言うのです。だから、ひとつその切実さがわかるような資料というか、説明というか、そういうものを、これは具体的な問題ですから、ここで長官は資料をお持ちでないと思いますから、いまは答弁の必要ありませんが、ひとつそういう切実さを示すような説明あるいは資料をいただきたいわけであります。一部の住民によりますと、どうも国有林野に雇われて働いておる人たちの突き上げがあるのじゃないか、つまり雇っておる人の仕事がなくなればこれは困りますから、そういう仕事を与える意味からも、こういう無理な伐採計画を立てざるを得ないのじゃないかというような向きもあります。私もこれは誤解であればいいと思いますが、それがやはり誤解であるという説明がほしいと思うのであります。したがって、資料として、一体西都営林署で、たとえば雇っておる人たちの人員なり稼働計画、そういうものがどうなっておるかということも説明の材料になると思いますから、ひとつお願いをしたいのであります。  そこで私は、そういう人が余っておれば、伐採あとの植林に大ぜい向けてしかるべきじゃないか、向けたのじゃないかということを言いましたら、とにかく現地を見てください、伐採あとを見てくださいと言って、伐採あとを見ましたら、どこにも植林のあとがない。これは四十一年の災害でありますから、四十一年以後まだその植林の計画がないと言えばそれまででありますが、そういうような住民の誤解を避ける意味からも、やはり植林をしておるんだということを示す必要もある、また早める必要もあるのではないかというふうに感じたわけでございます。そこで、こういうような伐採計画、経営計画ということをおっしゃいましたが、その経営計画を立てるときに、そういうような災害の防止あるいは住民の福祉というようなことを考慮に入れておるのかどうか、どういうような考えでこういう経営計画を樹立なさるのかその辺のこともひとつ伺ってみたいと思います。
  95. 片山正英

    説明員(片山正英君) 三つほどお尋ねだと思いますが、まず第一点は、従業員いわゆる国有林が雇っております従業員の仕事のために伐採というものが行なわれるのじゃないかという御質問と承りましたが、先ほどちょっと御説明申し上げましたように、私のほうで伐採するその計画というのは、国土保安も十分考え、木材需給も考えた中で伐採量というものを決定いたすわけでございまして、その決定した伐採量をいわゆる国有林の直営でするか、あるいは請負でするか、民間の人にやってもらうか、こういう点はその後の問題でございまして、直営の人が多いから伐採というのはふやすのだということはございません。別な形で、別な観点から伐採量というものを決定いたしております。  それからもう一つ、造林と伐採との関係で、造林がさっぱりしていないじゃないかというふうな御指摘のように伺ったわけですが、これは私のほうで、三十八年から四十二年までの五カ年間のものを調査いたしますと、伐採につきましては、百六十九ヘクタール、造林につきましては百五十九ヘクタール、十ヘクタールばかりの差はございますが、一応伐採に対して造林は実行しておる。大体伐採いたしまして造林するのには約二カ年かかります。伐採をして地ならしをして、それで造林をすると二カ年のズレはありますが、そういう形で見まして、大体伐採対造林というのはほぼいいのじゃないか。ただ十ヘクタール程度の違いにつきましては、おそらくあの所属がえをしたり、あるいは部分林予定地にしたり、そういうものがいろいろ混在いたしますので、造林と伐採の面積に若干の相違はございます。しかし、この数字から見ますと、大局的にはこれは大体やっておるのじゃないかというふうに思います。ただ現地で御調査になってお気づきかと思いますが、一カ所部分林を予定いたしておる個所を国みずから実行していないという個所があるそうでございます。詳細はまた報告のときにいたしたいと思います。  それから最後の住民福祉ということをどう考えるか、こういうお話であります。  これは国有林野の制度としまして、森林そのものの制度としまして、国土保安の問題、これを第一種林地とわれわれは呼んでおります。第二種林地は、これは従来は経済林を考えておる林でございます。第三種林地というのがございまして、これが放牧共用林野とか薪炭共用林野とか、地元の実態に即した形で地元住民のための山の経営というのを第三種林地と称して実はやっておるわけであります。  それから経営案を編成する際にも、地元の御意向を聞きながらそして編成をしておるというのが実態でございます。また手続上そうなっておる次第であります。  そのような意味で、住民とはいろいろお話の上で進めておるわけでございますが、たまたまこういう災害等がございますと、確かにわれわれも異常な災害とは言いながらも、法的に縛られたような形で、手の届くような形で住民に接し得ないというきらいはあろうかとは思いますが、十分注意しながらやっていきたいと、こう思います。
  96. 黒木利克

    ○黒木利克君 国有林は特別会計でございますから、やはり経営上どうしても無理なことをしなければならぬことも推測できるわけでありますが、先ほど申しましたが、経営計画は地元の人たちの意向も十分聞くのだということで安心はいたしましたが、私が質問をしておる現地における地元の人たちの意見では、どうも十分に説明を聞いていないということを言っておりますが、十分にひとつ説明をし、地元の意見を聞いてほしいのでございます。特に私は決算委員会の視察のときに、営林署長からよく事情を聞いておりますから、知識がありますから、納得のいく面もあったのでありますが、能率のあがらない雑用林を伐採をして能率のよい成長率の高い樹木に植えかえるのだ。これは近代化として当然なことなんですね。ところが、そういうことについての理解なり説明なりというものがどうもやはり徹底していないようなきらいがあると思いますから、ひとつそういうような説明もし、やはり地元の協力を得られるようにお願いをしたいと思います。あとの造林は、私が見たところは四十一年の災害でありますから、確かにそれから二年しかたっておりませんから、まだ着手していないとおっしゃればそれでわからぬでもありませんが、しかし、これも具体的に三納川の上流あるいは田野川の上流の国有林の造林の計画はどうなっておるか資料の提出をお願いしたいのであります。伐採の計画のことは一応わかりました。地元の人たちの意見も十分聞いて、地元の人たちの福祉のことを忘れていないのだということはよくわかりましたから、そんな運用をしてもらいたいのであります。  次は、伐採の方法についての疑問でございます。まず、林道を見ましたが、山腹に延々とりっぱな林道ができておりました。ところが、その林道をつくったときの排土というか、残土を谷底に向かって無計画に落としておるところを至るところで見てまいりました。それは一応申しわけ的な土どめが一カ所あるいはこれも申しわけ的な緑化というか何か草を植えた形跡のあるところが三つかありましたけれども、林道の残土というものを全部谷底に向かって投げ捨てておるという現場を私見てまいりました。これは林道の残土を一々ふもとに輸送すれば、費用が膨大にかかってそういうことは不可能だとは思いますけれども、しかし、いかにも山腹に林道をつくったけれども、あとは野となれ山となれというようなことで、谷底に向かって残土を投げ込んでしまうというようなことがあたりまえのことのように私は感じてきたのでありますが、これはやはり大災害の大きな原因だと思うのでありますけれども、一体長官はどういうふうにお考えになりますか、あるいはこれに対してどういうふうな対策を考えておられるのでありますか。
  97. 片山正英

    説明員(片山正英君) 先生指摘の山の開発のための林道の開設に対しまして、一般論として、出た土につきましては盛り土にする、それからもう一つはやはり要らない土に対しては一定の個所に捨てていくという形でございますけれども、今回の先生のごらんになったところにつきましても、そういうような意味で、捨てられる土に対しましては、一応土どめのコンクリートをつくるとか若干の編さくをつくるとかそういう施設は実はやっておるのでございます。それから堰堤につきましても、四十年一基、四十二年にも一基、それから四十三年、ことしも実行中でございます。そのような形で普通の雨につきましての災害については、一応対処してまいったというふうに思っておるわけでございますけれども、ただ今回の集中豪雨と申しますか、三百何ミリということに対して万全の措置ということはなかなかでき得なかったというのが実態でございます。  そこでわれわれとしましても、今後やはり林道開設の場合の土捨て場をどうするかというような問題、そういうものを十分検討しながらやってまいらなければならぬ。それから伐採につきましても、従来尾根筋に主として保護地帯を設けましてくずれてくるのを防止するということをやっておったのでございますが、それでは不十分であるというようなことで、これも四十一年に宮崎大学にお願いいたしまして調査をしてもらいました結果、谷底にも一つそういう保護地帯を設けるべきじゃないかということの御指示もございました。そのような形を併用しながら今後十分検討してまいりたい、かように考えております。
  98. 黒木利克

    ○黒木利克君 まあ、一応説明はわかりますが、これは一ぺん長官に現地を見てもらいたいのです。あなたが考えておるような土どめがあまりないのですよ。大体山の中腹からもうはげた土壌が谷底まで続いておるところが至るところにあるのです。おそらくこれは経費の関係もあると思いますから、この辺は林野庁がお考えになっているのと現状はうんと隔たりがあるということを御指摘申し上げますから、もう一ぺん見ていただきたいと思います。  それから堰堤の問題も出ましたが、実は私はどうも計画的でないように思うのでありますが、それは林道をつくる、そうしますと土が谷底に落ちる、そうすると、河床が高くなって災害の原因になるということで、林道をつくってから、あるいはおそらくこの現地の場合は、災害があってから堰堤をつくるとか砂防ダムをつくるとかいうようなことをなさっているのではなかろうかという気がいたしました。これも私も資料の協力を得られなかったから確かなことはわかりませんでしたが、どうも最近できた堰堤らしいのであります。だからこれはつくったにこしたことはありませんが、しかしもっと有効に林道をつくったときに同時にやる、そういう災害を予防する意味で、同時に堰堤をつくるほうがもっとやはり効果的なのではないかという感じを持ったわけであります。しかも、その堰堤なるものも今回の雨でもうすっかり満ぱいになっているんです。堰堤の目的は達しておるが、次の雨があった場合には意味をなさなくなる。それを取り除く計画がおありなのかどうか、先ほど申しましたように、林道をつくると同時に予防的な意味で堰堤をおつくりなるような指導をなさっておるのかどうか、その辺をついでに伺ってみたいと思います。
  99. 片山正英

    説明員(片山正英君) 一般に林道開設につきましては、それに備える堰堤、あるいは土どめというのも考えているのが実態でございますが、ただこの場所についてどういう計画でどうなったということで、実はまだ詳細調査をいたしておりません。おそらく先ほど申しました土どめなりあるいは編さくなりやっているわけでございます。ただ、先ほど申しましたように三百何ミリというものに対してはいささか不十分である、これは認めざるを得ないと思います。
  100. 黒木利克

    ○黒木利克君 現地でも、こういうものは例のない集中豪雨だからというので、天災だからというので逃げられるが、私ははたして当時の雨が一時間に何ミリか資料がないためにその辺のことの質問ができませんが、しかし集中豪雨というのは最近の台風の共通の現象ですから、これはたまにしかないのだということでは住民が非常に不安に思うわけですから、その辺のことも気象庁の方面の専門家の意見も聞いて、最近の集中豪雨というか、台風の特色にかんがみて、従来の考えを改めてもらいたいと思うのです。それと先ほどちょっと長官がお触れになりました保安林の問題ですが、私はこういう感じを持ったのですが、岸辺から少なくとも高さ五十メートルくらいの間は伐採しないことというような禁止の命令でも出さないと、私の見た感じでは岸辺から高さ五十メートルくらいは至るところ切ってある、赤土になっております。どこかに保安林が残っているかわかりませんが、私は少なくとも三納川、田野川の上流で見た限りにおいては、そういう考慮は私は払われていないように見受けました。これはその付近がちょうど岸辺から高さ五十メートルくらいのところが、特に北側は杉が一番成長がいいでしょうから、特別会計なんだからその辺切って高く売って収益を上げざるを得ないという事情もわからぬことはないのでありますが、こういうことでは、しかし災害は必至でございますから、何かそういう保安林の計画というか、少なくとも岸辺から高さ五十メートルくらいは切っちゃいかぬという指導は一体できないものかどうか、その辺をお聞きしたい。
  101. 片山正英

    説明員(片山正英君) 一律に岸辺からどうというような実は指導はいたしておりませんけれども、ただ考え方といたしましては、国土保安というのが、ますます集中豪雨等のために重要になってきておりますので、先生御存じだと思いますが、たしか昭和四十年に保安林整備臨時措置法というのが、期限が切れるのを十カ年延長いたしました。そして保安林の整備をはかっておる最中でございます。御参考までに申し上げますと、当初約四百七万ヘクタールでございました保安林を、今後法律の切れるまでの目標といたしまして、六百六十六万ヘクタールまで増加しようという計画でございます。そこで四百七万ヘクタールの内訳としまして、国有林が大体百九十五万ヘクタールでございます。国有林の面積に対して保安林が約二四%でございますが、それを拡大いたしまして三百四十四万ヘクタールまで国有林の保安林をふやすべきではないか、そうしますと、国有林の大体四二%程度が保安林であるという形で、実は推進しておる次第でございます。そのような形で、御承知のように、保安林の種類といたしましては十一種類実はあるわけでございます。その中で一番重要なのが、水源の涵養、土砂の流出防備、そういうものが中心でございますが、それらについては土質あるいは土性、そういうものを調べまして、主として急傾斜地は当然土砂流出地に指定されることになりますが、しかしながら土性、土質、そういうのを調べまして実は指定をしておるという形でございます。今後もそういう形で保安林については万全を期してまいりたい、こういうふうに思っております。
  102. 黒木利克

    ○黒木利克君 そういう計画が確実に行なわれていれば、こういう災害は防止できたはずなんでありますが、災害が現実に起きておるのでありますから、どこかに欠陥があるに違いない。先ほどそういう岸辺から五十メートルの高さまで一律には困るというような長官の御意向でしたが、そういう伐採計画あるいは伐採方法をむしろ林野庁が一律、画一的に考えておるんではないかという私は懸念を持ったのであります。というのは、御承知のように、この地方は火山灰地であります——シラス地帯。しかも宮崎県、この地方は日本一の降雨量なんですね。そういうような土壌なり気象状況ということが一体考慮されておるのかどうか、私は林野庁の全国的なこれは計画でありますから、ある程度画一的、一律的にはならざるを得ないとは思いますが、しかし、そういうような画一的、一律的な考え方、計画がこういう災害を生んでおるんでありますから、ことばを逆用するようですけれども、こういうやはり地帯の特殊性を十分考えて、この計画の承認をするなり、指導をするなり、そのためにこそ林野庁があるんではないかと思うのでありますが、こういう点について、今後どういうふうにお考えなさいますか、お伺いしてみたいと思います。
  103. 片山正英

    説明員(片山正英君) 具体的に申し上げますと、結局保安林の指定のあり方になろうかと思いますが、大づかみに申しますと、全国的には先ほど申しました四百七万、それが現在四十三年三月末では四百七万というのが四百八十七万まで指定が増加しておりますが、それを先ほど申しました六百六十六万までふやそう、これは全国的であります。ところでそういう特殊の土地、特殊の土性等につきましては、さらにその指定が増加することになっております。したがいまして宮崎県を対象にいたしますと、現在五万一千六百ヘクタールが大体保安林でございますが、それを十万一千ヘクタールに、約倍近くに伸ばそう、それから西都におきましては現在二千八百九十一ヘクタール保安林がございますが、それを七千七百四十一ヘクタールに、三倍近く伸ばしていこうというのが現況における計画でございます。これは国有林でございます。そういう形でございます。そのような形で土性、その他を見ながら対処していかなければならない。ただ、一番われわれ苦慮するのは、集中豪雨がきまったところに降ると一番いいんですけれども、地勢あるいは気象上で、そういうところから推察できると非常にありがたいわけですけれども、そういうところがなかなかいまの段階ではつかみにくいというところに実は非常に苦慮いたしておりますが、大づかみに地勢、土性を考慮しまして、ただいま申しました保安林の整備の姿を変えているわけでございます。
  104. 黒木利克

    ○黒木利克君 その苦慮には大いに敬意を表するのでありますが、しかしこういうような集中豪雨がどこに降るかわからぬということで、安易にお考えになっては困るわけであります。そのためにこそ林野庁があるのですから、ひとつ今後とも大いに苦慮していただきたいのであります。  時間がありませんから、せっかく河川局長お見えになっておりますから、河川局長にお伺いしますが、先ほど来御質問いたしましたようにこの治山計画というか、あるいは国有林の伐採計画、伐採方法、これはまあ下流の河川治水と重大な関係があることはこれは百も御承知のことと思いますが、実は私が現地でいろいろ聞いた限りでは、これも先ほど申しましたように協力があまり得られませんでしたから的確なことがつかめませんでしたが、一体こういう国有林の伐採なり計画なりあるいは伐採方法を、河川局、これは現地ではおそらく林務部、土木部等の関係になりますか、あるいは営林署も中に入るでありましょうが、そういうような関係が一体制度的にどうなっているのか、あるいはほんとうに深い具体的な関係が保たれているのか、具体的にはこういう国有林の伐採計画なり伐採方法なりあるいは治山計画について建設省河川局の系統で発言が一体できるのか、発言しているのか、その辺のことをひとつ伺ってみたい。
  105. 坂野重信

    説明員(坂野重信君) 林野庁と私のほうの河川局との関係は、昭和三十八年に実は林野庁長官と河川局長の共同通達を出しておりまして、それ以来砂防治山連絡調整会議というのを設けておりまして、中央のほうでは中央連絡会議、それから地方では県ごとに地方連絡会議というのを実はつくっておりまして、それを通しまして、いろんな事業の計画あるいは調査工事管理、そういうような問題について調整をやっているわけでございまして、実態的には先ほど長官あるいは先生からいろいろ御討論がありましたように、まず第一次的にはもちろん林野庁の中で、そういった伐採あるいは造林等等実際の災害の防止という問題を討議になるわけでございまして、直接的には私どもは私どものやっている砂防事業と、いわゆる災害防止のための治山とが直接的なつながりがあるわけでございます。しかし、その関連において、もちろんいろんな伐採の問題、植林等も中に出てくるわけでございまして、そういう段階で私どもも担当者の間ではかなりそういった植林、伐採等についても資料はいただいておりますし、担当者の間では十分連絡がいっておるつもりでございます。先ほど長官がいろいろお話しございましたように、今度相当な災害を受けまして、私も実は災害の直後すぐに防災課長と一緒に現地へ飛んだわけでありまして、たまたまちょっとこの地点までは行けなかったわけでありますが、宮崎県を災害直後に視察をいたしました。確かに集中豪雨で時間雨量が実は百ミリに近い雨量が出ております。河川改修のほうからいいますと、先生承知と思いますが、主として三財川というのを実は重点にやっておりまして、この中小河川の計画はちょうど三百七十八ミリの日雨量を見ておったわけでございます。それがたまたまちょうど今度の、三財川の上流の立花ダムという地点で、三百七十八ミリという雨量が——これはちょっと二日にわたっておりますけれども、大体それに近い、日雨量に近い雨があったわけであります。特に時間的な関係が、先ほど申しましたように百ミリに近いということで、ちょっと私どもの従来の常識からいうと、かなり異常豪雨であったというようなことで、今度のような災害を見たわけでございますが、先生の御指摘の三納川のほうにつきましては、実は四十一年の災害の直後に、災害関連事業ということで河川改修をやっておりまして、そちらのほうはかなり事業が促進されておりましたために被害が少なかったわけでございます。これは私どもが非常に何といいますか、こういった四十一年災があったために改修ができた。このために今回また再度災害を最小限度に食いとどめ得たというぐあいに考えております。三財川につきましては、中小河川でかなり先ほども申し上げましたように、計画的に河川改修を進めて、日雨量が三百七十八ミリぐらいの雨が降ってもだいじょうぶのように実は改修を進めており、改修のでき上がった区間につきましては災害が幸いになかったわけでございまして、実はこの三財川のほうの災害のあった個所はまだ未改修の上流のほうがひどかったわけでございます。そういう観点からいいまして、私どもはできるだけひとつそういった河川改修、あるいは今度の災害を契機としてそういった災害関連事業というものを進めてまいりたいというふうに考えております。
  106. 黒木利克

    ○黒木利克君 時間がないので深く掘り下げることができないのは残念でありますが、国有林のこういう伐採計画なり伐採方法、災害の関係は国有林野の特別会計の問題まで掘り下げて検討しなくちゃ解明ができぬような感じも実は持ったのであります。触れられないのが残念であります。  ただ、河川局長にお伺いしたいのですが、いま中小河川の問題が出ましたが、おそらくあの十大河川では一般会計からこういう治水、あるいは保安林の関係について補助金が出ておるのではないかと思うのでありますが、ひとつ林野庁もこういう中小河川で特に土壌なりあるいはいろんな気象条件から災害が予想されるような地域一これについては特別会計のワク内で事をおきめようとすると、なかなか容易でないような感じがするのですが、そういうせっかく先例があるとすれば、一般会計からも、こういう治山なり治水あるいは保安林の造成のために積極的におやりになったらどうかというような感じもするのでありますが、この辺どうでございましょうか、あるいは河川局長そういう十大河川については何か特別な一般会計からの支出があるように私は聞いておるのでありますが、どうでございますか。
  107. 片山正英

    説明員(片山正英君) 特別会計の治山との関係でございますが、昭和四十年と記憶しておりますが、国有林が非常に赤字が出た年がございますが、その際に治山事業が不円滑になるということはまずいということから、治山事業を分けまして、十大河川流域に相当するものは治山勘定というものを設け、その他の治山事業については事業勘定として処理いたしました次第でございます。治山勘定は、一般会計から金をいただくという制度にかわったわけでございます。それでそのような形で進んでまいりますが、最近木材の値上がり等もございまして、国有林も収支がプラスになっております。そのような形でございますので、国有林の利益の半分、これは特別積み立て引き当て資金という制度を設けておりますが、利益の半分を一般会計に出す制度がございます。したがいまして、現在は利益の半分を特別積み立て引き当て資金から一般会計に繰り入れまして、それからまた逆に治山勘定に戻ってくるという形で実は現在運用されております。四十年の非常に特別会計が困った時代におきましては、治山勘定に対して三分の一は国有林が負担いたしましたが、ただいま申しましたような経路で負担いたしましたが、三分の二は一般会計からそのものを払っております。そのような形で安定した姿の治山を実行してまいりたいということで制度的にはなっている次第でございます。
  108. 黒木利克

    ○黒木利克君 いろいろ林野庁当局の努力のあとはわかります。私も敬意を表しますが、時間がないため、また先ほど申しましたような事情で資料がないため、掘り下げた検討ができないのは残念でありますが、しかし、私は私の郷里だから取り上げたわけではないので、どうもこれはやはり全国的な問題だと思います。幸い建設省からも林野庁からも非常に関心を持たれた地域にいまなりつつあるわけでありますから、もう一度専門家を派遣するなりして、徹底的にやはり原因を究明して、どうしたらいいか、モデルケースとしてもっと勉強してほしいのであります。私も郷里へまた帰りましていろいろ私の立場からも検討して、先ほど申しましたような次の農林省の所管の決算の審査のときに御質問を場合によっては申し上げますが、ひとつもう一ぺん調査し、勉強をしていただけるわけにいかぬかどうか、両省の責任者にお伺いして私の質問を終わります。
  109. 坂野重信

    説明員(坂野重信君) ちょうど建設省といたしましては、災害の査定に十一月十五日から宮崎県に参る予定にしております。十五日から十二月の二日まで約二週間以上になっておりますので、こういった段階でひとつ全般的な問題を私どもも一つのモデルとして十分勉強させていただきたい、かように考えております。
  110. 片山正英

    説明員(片山正英君) 先生が先ほど御要求のございました資料は整備次第お届けしたいと思います。なお、またただいまの御質問調査、建設省ともどもいたすことにつきましては、従来もわれわれは先ほど申しました大学等に頼んでいろいろ研究いたしておったこともございますので、幸い建設省と一緒にこの問題を解決してまいりたい、かように考えております。
  111. 木村禧八郎

    委員長木村禧八郎君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  112. 木村禧八郎

    委員長木村禧八郎君) 速記をつけて。
  113. 黒柳明

    ○黒柳明君 私は、東富士演習場のことについて質問したいと思います。  私も在日米軍基地がすみやかに撤去されることを望むものの一人です。こういう観点から、過去から現在にかけて東富士地域にあります農民再建連盟の幹部の方、スタッフの方が地域住民を結集して、そうして補償関係の窓口になって、そうして国内法の手の届く自衛隊の演習場に一応米軍の演習場をかえた、あるいは広大な地域を民間の手に戻したと、こういう努力に対しては私は敬意を払うし、その努力を多とするものです。しかしながら、一応米軍の演習場から自衛隊の手に戻った、ここらあたりが一つのある意味における転換期じゃないか、一つの山がきているのじゃないか、こういうことも考えますし、また十年も同じ組織が続けば、十年水濁る、このたとえのとおりに、何か再建連盟あるいは組織自体にも濁りがきているのじゃないか、このような観点、さらには、この東富士演習場地域に対して国費、県費合わせて二百億程度の金が注ぎ込まれているわけです。このような公金がはたして正当なる筋道を通ってもらうべき人がもらっているか、このようなことについて若干の疑問があったものですから、私もこの問題を調べてみたわけです。このような観点から質問したいと思うのです。まず道路公団にお伺いしたいのですけれども、現在警察の手も入っていると、こういうふうに私は伺うわけなんですけれども、この東富士演習場の一角に東名高速道路をおつくりになった、ここに入り会い権の慣行消滅などの補償金として二千三百八十万余ですか、若干オーバーしたと思いますが、二千三百八十万余の補償金を出している。この補償金の経過ですね、いままでの。あるいは現在どのようになっているか、このようなことについてまずお尋ねしたいと思います。
  114. 小野裕

    参考人(小野裕君) ただいまお尋ねの東富士演習場の一角に東名高速が通りまして、用地の買収、それから各般の権利その他の補償という処置を講じたわけでありますが、用地、土地自体については、私有地については直接その地主の方と御交渉を、いろいろ過程はございますが、最終契約は御本人と契約をして支払い済みでございます。それから国有地の分につきましては、保管転換を受けまして使わしていただいておる。それから各種の補償でございますが、私どもといたしましてはいろいろ折衝を、困難な折衝もございましたが、昨年の九月、十月ごろに解決いたしましたところはただいまお示しの総額二千三百八十万余でございますが、それは一つは入会組合に対する消滅補償という形で支払っております。それから一つは東富士東部土地改良区という土地改良事業の団体に対しまして与えた損失、これを補てんするということでその二口で二千三百八十万を、昨年の十月だと思いますが、お支払いをしたわけであります。その二つの団体に対する契約並びに支払いについては、その両団体が、先ほどお話の農民再建連盟の委員長を代理人として委任状を持ってこられましたのでそちらのほうへお支払いしたということでございまして、その後どのようにその支払われた補償金が処理されておるかということについては私どもは承知しない次第でございます。
  115. 黒柳明

    ○黒柳明君 二千三百八十万の補償金が払われたのは昨年、四十二年十月二十六日、それから、十月三十日ですからちょうど一年と四日たっているわけですか、今日に至るまでその補償を待ちかねている農民に対してこの補償金が支払われていない、こういう事実、御存じでしょうか、公団側は。
  116. 小野裕

    参考人(小野裕君) そのようなうわさと申しますか、お話は伺いましたけれども、私ども正確にそのような状態であるかどうかということは直接確認はいたしておりません。
  117. 黒柳明

    ○黒柳明君 この経過を話しますと長くなりますので経過は省きますが、ともかくいま現在は二千三百八十万というものは一まとめになって、一年たっても農民——正当受領者に払われていないわけです。ただいま、現状はわからない、うわさは聞いている、と、私はそのうわさはどの程度が、公団としてもはたして真実知っているのだけれども、うわさとしてごまかしているのか、あるいは真実知らないのか、知っているけれども、うまくないとは思っているけれども、うわさでカバーしていかれるつもりなのか、その点は私はわかりません。いずれにせよ、うわさとして聞いていらっしゃる。真実です、間違いございません。その一年間にわたって、一年余もたち、またこれいつ解決するかわかりません。この公金が、補償金が払われていない、こういうことに対して公団は何らかの責任をお感じになられるかどうか、いかがでしょう。
  118. 小野裕

    参考人(小野裕君) 先ほども申し上げましたように、入会組合に対する補償と、土地改良区に対する補償と二つございますが、いまお尋ねの問題は入会組合の関係かと思いますが、入会組合に対する補償金の支払いは私ども道路公団といたしましては、その入り会い関係のありました地域のうち、道路敷としてこちらが使わしていただくことになりましたために、その部分についての今後の入り会い収益というものがなくなるということから、その消滅補償的なものを考えたわけでございますが、この補償金は、私どもとしては各人にお渡しなさるものであるか、あるいは入会組合が組合全体として別な、有益な目的にお使いになることであるか、そのお使い道については、私どもは初めから御相談もありませんし、また御相談するべきことでもございません。一応この地域全体、その道路敷になった五万平米ほどの土地が利用されればどのくらいの利益があったか、それが得られなくなったから全面的に補償をする、したがってその入り会い地区に従事している方々、入り会いしている方々が何人であるか、あるいはどういう関係、あるいはどういう資格で出入りしておられるか、こうしたことも私どもは今度考慮に入れずに、その地域全体で、こちらが道路敷にしたその区域全体でどれだけの損失を与えたか、それを一括して組合にお払いする、こういうことで話し合いがついたわけでして、ですから、その組合がどういうふうに補償金を処理なさるか、これは組合の問題であると私どもは考えております。
  119. 黒柳明

    ○黒柳明君 公団は政府の機関でもありますし、補償金は公金です。国民の血税です。当然数多い農民一人々々を対象にして補償金を渡すわけにいかない、何らかの代表者あるいはそういう機関を通じて流す、こういうようなことはあったにせよ、現在いま私申しましたように、その補償金は手元に届いていない、もらう人の。どころかこれをめぐって警察問題にもなって警察の手が入っている、逮捕者も出るや出ないやでがたがた騒いでいる。ですから、そういう事態が発生したということ自体を考えた現在においては、私たちはあくまでも委任状のある人に渡した、委任状があるから。あとはどうなっているかわからない、知らない。そういう姿勢ではなくて、要するに補償金が正確に受領者まで届くところまで見届けることが私は国民の公金、補償金を支払う側の当然な態度である、そのくらいの積極的な姿勢をとらなければならないのじゃないか、まして届いていないといううわさも聞いておるということなんですから、ですから、あるいはいま現在の問題に対して不備があった、何か考える点があったならば将来こういう点もまた考えて、補償問題、補償金の支払いというものについて対処しなければならない、こういう点も当然ここで考えなければならないのが、やっぱり国民の公金を渡す政府側の姿勢じゃないか。渡したんだから組合のほうでどうなったって知らない、委任状があるのだから知らない。法的にはそれでいいのかもわからないが、現実は渡したあとが非常にうまくない、こういう事実なんですけれども、現在責任がない、こういう姿勢、あとはもうしようがない、こういう発言、これでよろしいかどうか、念を入れてお伺いしたい。
  120. 小野裕

    参考人(小野裕君) 入会組合にお渡ししました補償金でございますから、この補償金が組合員の福利のために、利益のために使われるということは当然でございまして、有効にお使いになるものと確信しておるわけでありますが、そのお金をどういうふうに有効にお使いになるか、これは配分することもございましょうし、また別な共通共同の事業にお使いになることもございましょうし、そういうような点については、それぞれの組合の内部決定に従って御処理なさることであろうと思うのでございまして、私どもとして、その関係組合員の方々が納得され、満足され、喜ばれるような措置をとっていただくということは希望念願いたしますけれども、私どものほうでとやかく申すことはできない筋ではないかと、このように考えます。
  121. 黒柳明

    ○黒柳明君 当然ですね。組合員の福利のために使われるものであり、また組合員各位が納得し、満足すべきものでなきゃならない、いまの御発言どおり。ところがそうなってない。だから私はどう考えるのかと、こう言ったわけです。これをやっていても押し問答になると思うんですけれども。  じゃ、この補償金は四十二年十月二十六日、いま日にちはわかりました。どこでだれに渡したか。
  122. 小野裕

    参考人(小野裕君) 私正確なことをあるいは申し上げかねるかもしれません、間違っておりましたらまたお許しいただきたいんでありますが、私の記憶では受領の日、御殿場の市役所へ小切手を持っていって市長に渡したと、こういうふうに私は報告を受けたように記憶しております。日はその受領の日でございますから、昨年四十二年十月二十六日でございます。
  123. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうです。日にちは十月二十六日、それから御殿場の市役所。渡した人が違う。市長に渡したんじゃないんです、市の金じゃないですから。まあ市長とこの農民再建連盟の委員長とが同一人物ですから、市長ということばをお使いになった、それに対しては云々する筋合いはないと思いますけれども、渡した人物は助役です。これは静岡県建設局用地第一部ですか、第二課長の種田さんに、ここにいらっしゃいますから、お聞きになってもらえばわかります。助役に渡したんです。昭和四十二年十月二十六日、御殿場市役所で、市長が不在、要するに委員長ですね、再建連盟に渡す金ですから。その委員長は市長兼任ですから、不在のため助役に渡した。ところが、その委任状をお持ちですか、そこに。その委任状、委任者と受任者、どう書いてあるか、ちょっと読んでいただきたいと思うんですけれども、お持ちじゃなかったら私持っておりますから……。ありますか。
  124. 小野裕

    参考人(小野裕君) ございます。委任状は二通に分かれておるわけでありますが……。
  125. 黒柳明

    ○黒柳明君 両方同じですからね。委任者と受任者。
  126. 小野裕

    参考人(小野裕君) 委任者は静岡県御殿場市、これは住所でございますが、御殿場市……ちょっと字がわかりません、千九百三十番地の一東富士入会組合組合長小林茂理、それから受任者は東富士演習場地域農民再建連盟委員長勝又藤男と、こういうことでございます。
  127. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、先ほど小野さんがお答えになったのは委任状を持ってきた人に渡したと、こうおっしゃったでしょう。ここに書いてある委任者は小林さん、受任者は勝又さんですね。そうするとこの勝又さんに渡さなきゃならないんでしょう、御殿場市東富士演習場地域農民再建連盟の委員長、この委員長に渡さなきゃならない。渡していますか、委員長に。
  128. 小野裕

    参考人(小野裕君) 私その正確な事情を承知いたしませんで、まことに恐縮でございますが、私どもの実情判断といたしましては、まあ再建連盟の委員長である市長でございますが、その勝又市長——勝又委員長が不在の場合に、助役さんを代理人としてお渡しするということは、必ずしも正確であり絶対間違いがないものであるというわけじゃございませんけれども、認められてもいいことではないかと考えます。
  129. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうじゃなくてね、私が言うのは、要するにいま起こっている問題に対して責任はとれないと、こうおっしゃった、少なくもですね。私たちが郵便局に行く場合、わずかの金でも当人じゃないと裏書きさせられますね、判こ押させられます。そうして代理人であるということを確認されて金を受領してくるんです。まして二千三百八十万という大金ですよ。私はそのあとに起こった問題に対して責任とれなければとれないでそれはしょうがない。とる姿勢がない。私はそういう姿勢はうまくないと思うんですけれども、それはそれとして。ところがいま起こった問題というのは、この委任状を中心にして公団側が金を払った。委任状に払う。持っている人に払う。私たちはそれよりほかないと。ところがそれじゃその人に払ったか。払ってないじゃないですか。私はここのところを言う。そうすると先ほどおっしゃったことはうそじゃないですか、こう言うんです。どうですか。うそじゃないですか。先ほど言ったのは、委任状持ってきた人、委任状に対して私たちは払ったと。どうですか、これ。
  130. 小野裕

    参考人(小野裕君) いまお話のように市長が、委員長が不在でございましたけれども、その委員長、市長の名儀の領収証をいただきました。助役はその代理人というふうに考えて処理したことと思われます。
  131. 黒柳明

    ○黒柳明君 私はその前の話をしておる。その前の話。その話はまたいま続けますけれども、その前の話ですよ。  くどいようですけれども、二千三百八十万がいま宙に浮いちゃって農民困って泣き寝入りなんです。道路公団も世話してくれないんです。再建組合ももうお手上げなんです。そうしてその受領者はそれもらわないで、のどから手が出るほどほしいけれどもどうしようもないでいる。そこに警察が入っている。しかるべき人を調べている、もしかしたらこれは逮捕者が出る、そういう問題ですね。そうすると公団が、政府の機関が、国家の公金を渡した側がもうちょっと私は誠意を持ってもいいんじゃないかと、こう言った。そのことに対して私どもは委任状をたよりにして金を出しております、委任状に対して私たちは忠実——忠実とは言いませんですが、持ってきた人に渡したのですと。それに対してそれはうそじゃないかと、こう言っているけれども、委任状に対して、持ってきた人に渡してないじゃないですかと、こう言っているんですよ、いまの議論は。またそのあとはやりますけれども、うそでございますね、おっしゃったこと。委任状、委任状なんて言ったって、完全に委任状に対して、受任者に渡してないじゃないですか、私の記憶が不備だとか何とか。私はこの問題に対していままで何回となく道路公団と接触しています。それに対して、何回となくここに総裁の代理として出てきて、このことに対してすべて認識していなければならない人がだれに渡したのかわからない。しかも、言っていることは何ですか、委任状、委任状、委任状……いいでしょう、私も委任状、それに対して話しますよ。受任者に対して渡してない。だれに渡したのですか。委任状に対しての人に渡してないじゃないですか。さっき言ったのはうそですねと、この一点に対して私は質問している。うそですね、さっきおっしゃったのは。
  132. 小野裕

    参考人(小野裕君) 委任状にしるされました受任者に直接お渡ししたように申し上げとすれば、これは私の言い間違いでございましたが、その委任状を出されている方の受領書を持ってこられた、しかもそれが市長と一体である助役さんであったということによって、その助役さんにお渡しして、その受任者である委員長の受け取りをちょうだいしたと、これでやむを得なかったんではないかと私は思います。
  133. 黒柳明

    ○黒柳明君 うそですよ、それははっきり。そういうようなニュアンスじゃない。ちゃんとおっしゃったです。速記録見ればわかる。それでその次には助役がそこにいたから渡したというんですね。これは市役所の金庫に入る金じゃないでしょう。市役所とは関係ないですよ、このお金は。そうじゃないですか。市役所に入る金ですか、金じゃないですか、それだけまず一点。
  134. 小野裕

    参考人(小野裕君) 市の収入になる、市の金庫に入る金ではございませんが、保管場所としてお使いになったと思います。
  135. 黒柳明

    ○黒柳明君 保管はどこであれ、市の会計に入る金じゃない。いいですね。そうすると、そこに私はさっき言ったように、市長がまあ委員長を兼ねている。だけど助役とは関係ないんです。そうでしょう。助役はこの再連連盟の何ら役員でもなければタッチすべき人じゃない。そこがなぜ助役に——立ち会い人もいました。その過程は何かあれしますと長くなります。なぜ助役に渡したか。非常にこの辺が道路公団のルーズさなんです。道路公団のラフさなんです。ここにそもそもきょうのような事態が持ち上がる原因があるんです。こちらからは何もできない。であるならば、せめて皆さん方ができるところまでは正確に、忠実に最大ミスがないようにしなきゃならないんじゃないですか。委員長がいなかった。だから助役に渡しといて、それでよければいいです、現状が。それで現状はよくなくなっている。その裏にはまだ悪いやつがいるんです、そういうようにさせたですね。よくなくなったことについて、だから私はせめて現状に対して公団が誠意を持たなきゃならないと一番初めに言ったんですよ。誠意を持たない。委任状だ、委任状だ。正確な受任者にも渡していない。再建連盟と全然関係のない助役にぽんと渡した。市長だから助役でいいだろう。とんでもない。助役に渡す金じゃない。市の財政に入る金じゃない。再建連盟の委員長としての資格の市長。そこらあたりそんな固いことを言うな。そこからいま一年間にわたって補償が宙ぶらりんになる原因が始まってんです。そのところをよく頭に置いといてくださいよ。  それじゃ、この委任状、これはだれがつくったんですか、いつ。
  136. 小野裕

    参考人(小野裕君) 私これも申しわけございませんが、正確なことは存じませんが、記憶等から推察いたしますと、昨年の九月二十八日に事実上の交渉が妥結いたしまして、それから本契約をするというそのときにおきまして、その交渉の相手であった両団体、土地改良区と入会組合の理事長、組合長という責任者の方から、正式の契約は再建連盟委員長にお願いしようという委任状ができたと、このように考えております。
  137. 黒柳明

    ○黒柳明君 これはだれがつくったかというのです。
  138. 小野裕

    参考人(小野裕君) その点は存じません。
  139. 黒柳明

    ○黒柳明君 それはだめですよ。何にも知らないでここに出てきたってしょうがないじゃないですか。午前中の矢山さんもそういうことがあったというのですけれどもね。こちらがこれを調べるのに何カ月かかったと思うんですか。二カ月かかってますよ。これはここに発言すればささいなようなことに、何であんなくだらないことだと思いますけれども、地元の農民は何千人困ってんですよ。道路公団はおれは知らない、出すべきものは出した、あとあとどうなったってかまわない。それじゃあまりかわいそうじゃないですか。それに対してこちらも真剣に取り組んだんです。  見てごらんなさい、委任状。初めから終わりまで全部同じ字でしょう、署名から、住所から。同じですね。これはどう見たって、筆跡鑑定する必要ないですね。同じですね、初めから終わりまで。文章、委任者署名、住所、受任者署名、住所、一貫して同じですね、よろしいですか。これは道路公団がつくったんです。静岡の建設局でつくったんです。これはいいでしょう。全部署名までみんなつくった。そして、捺印だれがしたか知ってますか。この捺印。わかんない。私はこういうものを持っているのですよ、何もわからない。こういうことを書いてある。よく読んでごらんなさい。「日本道路公団と東名高速道路用地買収に関する諸補償契約締結の時に提出された九月二十八日(四十二年)」このことです。「付の委任状については私は印鑑を捺した覚えはありません。また委任状の事実も知りません。(以上)昭和四十三年十月二十九日。小林茂理」この小林茂里という人は、本来は補償金をまあ窓口として受け取る人なんです。その人が今度は委任者として受任者に——勝又藤男さん。まあ委員長、御殿場市長に頼んだわけでしょう。ところが、この小林茂理さんは、この文書のとおりです。これ告訴すると言うのです。文書偽造だ。印鑑盗用だ。私は告訴すると、しますよ。きょうあしたあたり退院していらっしゃる、七十幾つのおじいさんで、御老体ですけれども、ほんとうにいきまいている。だれがこの文書をつくった。これはいまの第二課長さんに聞いていただけばわかる。静岡の道路公団でつくりました。署名全部同じです。全部一貫して同じです。それで捺印したのは、委任者の小林さんでも受任者の勝又さんでもない。要するにこれはインチキだということです。知ってますか、この事実は。一応答弁、あまり期待できませんけれども、答弁聞きましょう。
  140. 小野裕

    参考人(小野裕君) この委任状がそのような疑いがあるやのお尋ねでございますが、私も初めて伺いました。これはあるいはこの文書等は公団側でかわって書いてあげたかもしれませんが、御本人が全く知らないものであるというふうなことは初めて伺ったことでありまして、これは戻りましてから確めたいと思います。
  141. 黒柳明

    ○黒柳明君 だから私は一番初めに言ったでしょう。こういうことを前提にして私は発言しているのです。きのうからいままでの態度はなってないじゃないですか。責任はない。そんなことは私は知らない。少なくともきのう私が部屋に呼んで言ったでしょう。何らかの前向きの発言をしなさい。そうすれば、私は何もこんなものを出さないですよ。そんなこと責任はないないと言うからこんなものを出すようになったのですよ。こんなミスをおかして——小林茂理さん、何だったら証人に呼んでごらんなさい。勝又さん呼んでごらんなさい。道路公団総裁おかぜ引いたかわからない、理事の方出られて、私全責任を持って公団を代表して来た。当然です。その方に質問しているのです。その方が、少なくともだれに渡したか知らないとか、あるいはこの文書はだれがつくったか知らないとか、当然こういう問題でいままで話をしたので、こういうことを知ってなければならない。うそばかり言って知らない知らない。それじゃ、いまこの事件が警察問題になって警察当局は調べているんですよ。このことがそれと関係なしとは言えないじゃないですか、大いに関係があるのです。そうでしょう。そういうミスをしながら、そして何かいうと、私は補償金を委任状を持った人に渡したんだからあとは知らない。農民が嘆いている事態をそっぽ向いて知らない知らないの一点ばりでは、これじゃあまりにも当局として情けない態度であり、しかもそこらあたりのミスがこういうところに出ているのです、大きく。こういうことに関して私はもう勝又藤男さん——御殿場市長、あるいは小林茂理さんは怒っている、告訴する。道路公団何だと、こんなものをつくって。これに対して補償を渡して、そして農民が嘆いて、それに対して何も手を打てない。私が農民を代表して言ったのです。前向きの発言をすれば農民は納得するし、その誠意を感ずるからしなさい。それを強硬に拒んだ。私はいいです拒んだって、そんなものは御自由勝手。しかしながらこんな大きなミスをおかして、それでしかも、前向きの姿勢を示さないなんてそういう無責任というか、そういうでたらめというか、そういう道路公団であるから、いまその補償に対して宙に浮いてしまって、前に戻りますけれども、一年間金がどこに行ったかわからない、もらうべき人がもらっていない、こうなのです。ですから、調べますとかなんとかということは問題じゃない、ちゃんとありますよ。これはインチキじゃない。これは道路公団みたいなインチキやっておりません、私は。私がここでインチキやったらそれこそ国会議員としての権威にかかわる。そんなこと私はやった覚えはありません。きちっとこれは昨日行って、小林さんが書いた判こをとっているのです、証人として私は喚問してもらいたい、こう言っているのです。  まあ委員長、私の一人の発言長かったですけれども、ぜひこの問題について私は参考人として今後理事会の席ででもはかっていただいて、要するに公団側は知らない、こういうことは全然わからない、そういう発言、またでたらめだと言うのですから、証人としての発言に切りかえてほしいくらいな気持ちですけれども、この場でそういうこともできませんし、今後証人を喚問してこの問題についてはっきりしていただきたい、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  142. 木村禧八郎

    委員長木村禧八郎君) ただいまの黒柳君からの御要望に対しましては、理事会で御要望に沿うように議題に供しておはかりいたしたいと思います。
  143. 黒柳明

    ○黒柳明君 ありがとうございました。  それでいま言った事実ですが、お知りでなかったと思う。またいま現在の時点においてはしようがないと思います。ひとつ緊急に調べてしかるべき手を打ってもらいたい、これを最後に希望します。いかがですか。
  144. 小野裕

    参考人(小野裕君) 私はそのようなことがあったと考えたくないのでございますが、そういうお疑いといいますか、御質問でございましたので、十分調査をいたしたいと思います。
  145. 黒柳明

    ○黒柳明君 道路公団、これでおしまいです。どうも御苦労さまでした。  その次にですが、まだまだ演習場に関して問題あるのですけれども、もう一点だけ、今度は国税庁のほうに問題をお伺いしたいと思いますが、またこの農民再建連盟に関してなんですけれども、御殿場市に千代田産業株式会社ですかというのがありますでしょうか。
  146. 井辻憲一

    説明員井辻憲一君) 御殿場市に千代田産業株式会社というのはございます。
  147. 黒柳明

    ○黒柳明君 それで、私なぜこれを質問するかというと、東富士農業振興協議会ですか、これは再建連盟の中にあるとかないとか、ちょっとえたいの知れない協議会ですが、そこにこの千代田産業から、この協議会に請け負い工事費の一定割合が出されているという事実を課税上調査されたと、こういうふうなことを私は伺ったのですけれども、もしできればその金額、年度をお教えいただきたいと思います。
  148. 井辻憲一

    説明員井辻憲一君) 私のほうの現地の所轄の沼津税務署におきまして、ことしの四月に千代田産業株式会社を調査いたしました際、その会社から東富士農業振興協議会へ一定金額の支出金があるということで協議会のほうへ確認調査にまいりました。で、その結果、四十一年分、つまり四十二年三月期でございますが、四十万円、それから四十二年分、つまり四十三年三月期でございますが約九十万円の支出金があるという確認をいたしております。
  149. 黒柳明

    ○黒柳明君 もう一点ですけれども、この協議会というのは法人格になっているか、それから所在地はどこか。それから傘下業者の名前あるいは職員など、わかっている範囲でけっこうですが、お教えを願いたいと思います。
  150. 井辻憲一

    説明員井辻憲一君) 東富士農業振興協議会の所在地は御殿場市茱黄沢というところでございまして、現地の報告によりますと、東富士開発農業協同組合と同じところにあるという報告を受けております。それから会員といたしましては、東富士開発農業協同組合とそれの工事を請け負います千代田産業株式会社外六社土木建築の会社がございますが、これがメンバーになっておるということでございまして、法人格はとっておりませんというふうに聞いております。
  151. 黒柳明

    ○黒柳明君 それでその千代田産業の傘下業者はどうでしょう、あるいは職員……。
  152. 井辻憲一

    説明員井辻憲一君) 千代田産業株式会社外栗林建設とか小方組、その他矢後土建というふうな、合計六社がございます。その協議会の実際の事務は、会長は千代田産業の社長の勝間田千代吉さんという方がなさっておると聞いておりますが、実際の事務は、東富士開発農業協同組合の方がやっておられるというふうに報告を受けております。
  153. 黒柳明

    ○黒柳明君 そのいまの千代田産業以外の六社も、同様に工事金の一部をこの協議会に出している事実があると、こういうようなことを国税庁が現地から聞いたというようなことを伺っているのですが、それはいかがでしょうか。
  154. 井辻憲一

    説明員井辻憲一君) 千代田産業以下合計七社でございますが、これについて全部確認調査をいたしたわけではございませんが、その大部分につきましては、金額は違いますが、請負金額の一定の割合が出ているというふうな報告を受けております。
  155. 黒柳明

    ○黒柳明君 最後に国税庁に……。一言ですけれども、そのいま言った工事費の一定割合というのは、私のほうは二分とも三分とも、あるいは二%とも三%とも、こういうように確認しているのですけれども、国税庁のほうも二%あるいは三%ということがお耳に入っているかどうか、どうでしょう。
  156. 井辻憲一

    説明員井辻憲一君) これも全部につきまして細密の計算をやったわけではございませんけれども、二、三当たってみますと、二%や三%の率の金額が出ているということを私のほうの現地報告で確認しております。
  157. 黒柳明

    ○黒柳明君 それで、施設庁長官、いまの関係お聞きになったと思うのですね。要するに施設庁からあるいは農林省——農地局長さんいらっしゃいますか、施設庁から、それから農林省から出ていますね、補償金が。それでいろいろな事業をやっているわけです。こういうことなんです、いまのことを整理しますと。農民再建連盟がある、その下に五組合あるわけですけれども、その組合のほかに——そのことも質問したいと思うのですけれども、東富士農業振興協議会というのがあるわけですね。それについていま国税庁にお尋ねしたのです。これは国税庁のほうでは全貌はつかんでいらっしゃらない、こういうふうに私は思います。ですけれども相当のこともいまお教えいただいたわけなんです。そこに農民再建連盟の工事費、まあ工事に対して千代田産業や何かが請け負っているわけです、その工事費の一定割合が出ているわけです。その一定割合が二%、三%、こういうわけです。それで私どもは、これを非常にリベートくさい、リベートの性格が非常に強い、こう私は断定したいのです。なぜかならば、いまの協議会のメンバー構成、これは千代田産業の社長が会長になっているわけでしょう。それで千代田産業以下再建連盟の事業を請け負っている会社が七社もここに加盟しているわけですね。それでその協議会の所在地は再建連盟の中にあるのです。同一住所、建物は同じだということです。それで再建連盟の職員がこの協議会の職員をやっているわけです。それからいまの工事費がこの協議会にきているわけです。それでこの協議会というのは非常にあいまいな性格なんです。もういつできたか、どういう内容のものなのか、要するに法人格はないわけです。全くの幽霊みたいな存在なんですね。そういうところに再建連盟の工事費、その一部が業者から流れている。まあこれは二分金とも三分金とも言われているのですね。要するにまず施設庁の長官のほうに、この協議会の存在、幽霊みたいに私は思うんですけれども、これについて御存じあったでしょうか。
  158. 山上信重

    説明員(山上信重君) 東富士農業振興協議会と称する団体のことでございますが、私どもが東富士関係の周辺対策なり、あるいは周辺整備の助成なりをいたしまする場合には、県あるいは東富士、まあ、主として県を通じて畜産事業、あるいは老朽田の改修、あるいは水産、畜産事業等をいたしておるのでございまして、ものによりましては、東富士開発農業協同組合を通じて行なうものでございます。しかしながら、このいまの農業振興協議会は、私ども直接の対象といたしてはおりませんので、詳しい事情は承知いたしておりませんが、聞くところによりますれば、この農業開発等の計画であるとか、建設の研究であるとかといったような問題等について、相互に研究したりなんかするような団体としてこういうものがあるということを間接に承知いたしております。
  159. 黒柳明

    ○黒柳明君 この協議会は、いまも言ったように、国税庁向けの急増品なんですね。それでわずかの再建連盟の人、あるいは業者——業者も知っているかどうかわからないのです、金の行方までは。この会計を切り盛りしている非常におかしな存在なんです。農林省のほうはどうですか。この協議会について知っておりましたか。
  160. 中野和仁

    説明員(中野和仁君) 農林省のほうは、東富士演習場周辺におきます基盤整備事業で基幹県営事業、それから地元の土地改良区で開田事業をやっております。農林省から出ました補助金が県を通じていっております。いまお話を伺っていますと、開発農協のほうでそういう協議会があるということでございますので、私どものほうでは直接調査はいたしておりませんけれども一あるいはあるかとも思いますけれども、私自身はまだ承知しておりません。
  161. 黒柳明

    ○黒柳明君 まあ、当然ですね。いま言ったように、警察問題に地元でいろいろな問題が発生してきて国税庁のほうでいろいろお調べになった。それで急につくったものなんです。ですから、先ほど言った小林茂理という人ですね、この人は停職処分にあっているわけです。この人すらも知らなかった、こういうわけなんです。非常にこの協議会自体がやっぱり問題が多い。私はなぜ問題かというと、いま言ったように、私はリベートと断定したい。そういうものがこの協議会に流れているわけです。なぜかならば、その性格から見て、この協議会の構成人員、また所在地、また再建連盟の工事費が地元では二分金、三分金とこう言われているのですけれども、それがてんつけとられている、こういうようなこと。さらにこれはいろいろ調査してみなければならぬことはもちろんですけれども、そういう事実から見て、非常にこれはリベートとしてとられている。こういうにおいが強いし、私はそう断定したい。それで、御両者ともこのことをあまり知らない。地元のその最高責任者もいままで知らなかった。こんな存在ですから、一部の人たちがこれを牛耳って、要するに工事費というものを歩戻ししていたといいますか、こういう事実がある。それで農地局の土地改良の事業ですね、その請負業者から要するに何分てんつけとられたか、あるいは防衛施設庁のほうの、基地周辺の対策事業に対しての工事に何分とられていたか、当然そんなことは御存じないとは思うんですけれども、どうですか。
  162. 中野和仁

    説明員(中野和仁君) いまの件につきまして、先生のほうから開田関係資料等の御要請がございまして、その使途の関係はいろいろ調べてみたのでありますが、農林省といたしましては、補助金適化法なり、補助金交付要綱で実施いたしておるわけでございます。そこで最近進行しましたもの等について当たってみたわけでありますが、工事自体におきましては、県が、ここの東富士だけでなくて、県内全部に表示しております標準工事単価というものを使っておりますが、それによって実施いたしました結果、もし設計書どおりできていないものは手直し工事をさせているということで、その書類なり補助金の面からは、いまのような事実は、われわれのほうではわかりませんでした。
  163. 黒柳明

    ○黒柳明君 施設庁いかがですか。
  164. 山上信重

    説明員(山上信重君) 私のほうも先ほど御回答申し上げましたように、県もしくはこういった農業協同組合等を対象にいたしておりまして、この種の団体の詳細については、詳しいことは存じておりませんので、ただ事業の適正なる執行につきましては、必要な監督を加え、あるいは県等を通じて適正を期してまいりたい、かように考えております。
  165. 黒柳明

    ○黒柳明君 土地改良事業のほうで三%、それから基地周辺対策事業で二%、これはとられているわけです。これはいわゆる地元で二分金、三分金と、こう言いまして、工事費のうちからそれをてんつけ協議会のほうに持っていかれる、払う。こういうようになっているわけです。このシステムは間違いございません。はっきりしております。それで三十六年以降四十二年ですね、それじゃ土地改良事業費、あるいは基地周辺対策事業費はどれくらい出しているか、その金額。
  166. 中野和仁

    説明員(中野和仁君) 先ほど申し上げましたように、農林省関係の農業整備事業につきましては、基本工事と開田工事とございます。基本工事につきましては、防衛庁が半分、農林省が半分出しまして、開田工事は全部農林省が出しております。そこで三十四年からこの事業が始まっておりまして、四十三年いまだに実施中でございますが、これを合計いたしまして、土地改良事業費といたしましては、十八億四千百九十一万三千円でございますが、それに対します補助金額は十二億八千五百六十一万四千円でございます。そこでその中で、基本工事につきましての補助金額が十億六千万、それから開田事業につきましては二億二千五百四十二万一千円。
  167. 黒柳明

    ○黒柳明君 農地局の分だけですよ。
  168. 中野和仁

    説明員(中野和仁君) 農地局の分だけ……。農地局の単独で申しますと、いまの開田工事費ではないかと思います。開田工事費におきましては、補助金額は二億二千五百四十二万二千円、これの総額は五億九千四百五十八万四千円。
  169. 黒柳明

    ○黒柳明君 防衛庁。
  170. 山上信重

    説明員(山上信重君) 基地周辺の整備補助事業のうち、この地区に関連ありますものは、当庁といたしましては、静岡県を直接補助事業者として補助いたしておるのでございまして、これらのうち東富士の開発農業協同組合、あるいは富士すそ野の東部土地改良区等を間接補助事業者として行なっております。総額を申しますと、畜産振興事業並びに水産事業、老朽田改修事業、これらを畜産につきましては、三十六年以来、その他のものにつきましては三十七年、もしくは四十一年以来行なっておりますが、総額は畜産が九億八千四百万円、水産事業が一億五千百万円、老朽田改修が二億九千七百万円、合計十四億三千三百万円の事業費でございまして、これに対しまして、補助額は畜産が六億二千六百万円、水産が一億一千八百万円、老朽田改修が一億六千八百万円で、合計で九億一千三百万円の実績になっております。
  171. 黒柳明

    ○黒柳明君 農地局が、そうすると、大体八億くらいで、施設庁のほうが二十三億八千万ですか、要するに農地局のほうが三分金、施設庁のほうは二分金をかけるとどれくらいになりますか。そうすると、農林省のほうは千七百八十五万円、施設庁のほうが二千九百五十六万円、合計して四千七百四十一万、これが天引きされている。こういうことなんです。いわゆる二分金、三分金ということで、それでこういうことが国庫補助金のその事業、国庫補助事業としてほかにもこういうことがあるかどうか、これはいいことか悪いことか、私はこれはまずいことだと思いますが、その点いかがでしょう、施設庁と農林省と。
  172. 中野和仁

    説明員(中野和仁君) いまのお話のとおり、工事費の中から直接天引きをして出すということは決していいことであると私は考えておりません。ただ、まだ私先ほど申し上げましたように、どういうふうにしてそうなっておるのかというのをわれわれのほうとしても調査してみたいと思っておりますけれども、われわれのほうが書類その他県を呼びまして聞きました範囲では、工事そのものに手ぬかりがあったとは思いませんので、あるいは、業界のほうが利潤と申しましょうか、そういうものの中から、そのいうものを集めてその地元の、よくこういうことがある場合があるかと思うんですけれども、地元との折衝の円滑化をはかるというような意味でやるということはあるかと思いますけれども、工事費から直接出したというふうにはいまのところ考えておりません。
  173. 山上信重

    説明員(山上信重君) われわれの事業といたしましては、周辺の整備の適正を期したいということが念願でございまして、したがってこの工事が十分適正に行なわれるということをわれわれも予期いたしておるのでございまして、したがいまして、従来、いままでわれわれの調べた範囲では、工事そのものがぐあいが悪いということはないように考えておりまするが、したがって、それから直接出されたのか、どういうふうになっておるか詳しく存じませんが、多額の金がほかにまいるということは必ずしも好ましいことではないと、私どもも考えております。ただいままでのところでは、工事そのものはそういう点について、特に不都合があったということは聞いておらないのでございます。  なおちょっと先生に、先ほどの説明の一部訂正をさしていただきたいのでございますが、ちょっと申し上げました老朽田改修事業の補助金に対しまして一億六千八百万円、これは富士すそ野の東部土地改良関係のものでございまして、ただいまの先生の御質問のものには関係ない金額でございますので、総額からその分だけ差し引きをして計算さしていただきたい、かように考えます。
  174. 黒柳明

    ○黒柳明君 すみません、時間が長くなって。これでおしまいにしますけれども、とにかく全貌というものはまだ当然皆さん方おつかみになっていない。ですからそういうものはまずい。直接工事費から払われたとしたら、これはまずい。また、こういうことは国庫の補助事業としてほかにはないんじゃないかと思うんですよ、こういうやり方というものは。そうですね、念のために。
  175. 中野和仁

    説明員(中野和仁君) そういうことはまずないかと私たちは思っております。
  176. 黒柳明

    ○黒柳明君 そこもですね、ここは疑問にしなければならないところだし、私どもは調査の結果、これはもうはっきりしたリベートであると、こう断定せざるを得ない。なぜかならば、くどいようですけれども、再建連盟が工事を請け負って、その工事の請負業者である千代田産業以下がその再建連盟の職員や業者と一緒になって協議会をつくっているわけです。そこにですね、一定の工事費というものはてんつけ二分、三分いっちゃっているわけでしょう。こんなことは当然、連盟と業者と協議会と、要するに農民と話し合わなければできないものなんですね、こんなことは。そこらに要するに百万でできるものが九十七万、あとの三万は天引きでリベートとなって流れているという疑いが、大きく出てくるわけです。またこういう形というものは、国庫補助事業で決してないはずです。施設庁もそうですね。途中ですけれども。決してありません、こういう事業のやり方というものは。それが、ここだけがこういうやり方でまかり通っているということは非常に内容がおかしい。さらに、先ほど私が道路公団の問題で指摘しましたように、この問題の一角は、すでに金銭の授受から始まって、要するに再建連盟のこの幹部あるいは役員あたりの不正というものはすでにあがって、その一部の結果が入会組合の組合長の小林茂理さんが停職、こういうふうになって、さらには静岡県警の話によりますと、相当のところまでこの事件は発展する。あるいは大ものまでも逮捕する可能性もあるやに私は風聞で承っておりますけれども、そういう非常に乱れた組織、乱れた内部の金銭授受に関してのやり方、それにまつわって当然これは補助金というものが、冒頭に言ったように国費、県費合わせて二百億の、これは農民に対する直接の補助金も含めて、補償金も含めてですけれども流れている。こういうところに従来、十数年間もやもやしたものの一角がここにいま出てきているわけです。ですから、私がこう指摘した事実、皆さん方が知らないことが多いと思うんです。この事実に対して、いま御説明になったことも当然であると思いますし、ひとつこういう疑惑に満ちた事実というものをどんどん究明していただきたい。調べていただきたい。それでどこにこの四千七百万という金が使われたのか、ここもはっきりと突きとめていただきたい。ここまでやらなければこの補助金が適正に流されたかどうか、この工事が適正であったかどうか断言できない。いま現在適正であったといったって、使途不明金があるならばこれは非常にうまくない。この金がどこに使われたか、それがはっきりしてから適正であったということも初めてここで断言できるんじゃないかと、こういうふうに私は思うわけですけれども、ひとつ今後これに対して改善の措置を講ずるとともに、徹底的にその事態を明らかにしていただきたい。私もさらにさらにもっとこれ研究します。そしてまた、この次の委員会の場において発言したいと思いますけれども、農林省、防衛施設庁、まだまだほかにあるんですけれども、時間が限られていますから、広範囲に各省庁呼んでも御迷惑かと思ったので、防衛施設庁と農林省のお二人、両者だけに問題を指摘したわけですけれども、ひとつ今後の努力の決意を語っていただきたいと思います。
  177. 中野和仁

    説明員(中野和仁君) いま黒柳先生からいろいろ御指摘ありました。私たちとしましても、先ほどから申し上げておりますように、先生から御指摘がありましたつど、いろいろの調べをいまやっているわけでございますが、先生の御指摘のところまでいっておりませんのははなはだ残念だと思います。今後もいろいろの調査はしてみたいと考えております。ただ、われわれのほうとしましては、最初に申し上げましたように、適正化なりあるいは土地改良の検査なりという手段でやるわけでございますから、外部の団体がそういう金を別に集めておるということになりますと、なかなか役所だけでは限界があろうかと思います。その限界の範囲内でできるだけのことはやってみたいと思っております。
  178. 山上信重

    説明員(山上信重君) 補助事業の適正を期することは、政府として当然のことだと思いますので、今後これらの問題については十分調査をしてみたいと、かように考えております。
  179. 木村禧八郎

    委員長木村禧八郎君) 速記をとめてください。   〔速記中止〕
  180. 木村禧八郎

    委員長木村禧八郎君) 速記をつけてください。
  181. 渡辺武

    渡辺武君 私はきょう労働大臣その他の御出席もお願いしておりましたけれども、御病気などで出席できないということなので、失業対策部長さんだけが御出席ということでありますので、問題を少ししぼって質問しなければならなくなりました。私は、なおそのほかの、きょう御質問する以外の点についても質問したいと思いますので、これはいずれの機会かに労働大臣その他の御出席をお願いした上でやりたいと思います。  最初に伺いたいんですけれども、政府は、職業安定法のいわゆる中高年齢者等就職促進措置に基いて、最近特に職場適応訓練なんかを盛んに実施しておられるわけですけれども、まず第一にこの職場適応訓練の目的は一体何か。それからまたこの訓練は職場への適応を主とするものか。それともまた技能などを習得させることを主とするものなのか。それからまた、この訓練を委託する事業所はどんな条件を備えていることが必要か。訓練する指導員はどんな資格が必要か。それからまた訓練を委託する際には雇用予約は必要かどうか、以上の点についてお答えいただきたいと思います。
  182. 上原誠之輔

    説明員上原誠之輔君) ただいま職場適応訓練につきましてのお尋ねがございましたが、私ども現在失業対策事業というものを運営いたしておるわけでございますが、失業対策事業はあくまでも、いまさらあらためて申し上げるまでもございませんが、一般の常用就職というものがない場合に、一時の就労の場所として事業を行なって、失業者の生活の安定をはかろうという趣旨でございます。失業者が発生いたしました場合に、これを救います一番第一の道は、民間の常用雇用に就職させていく、こういうことでございまして、いまお話がございましたように、その常用雇用の促進のための措置といたしまして、中高年齢失業者等就職促進措置というものがあるわけでございます。その中の一環といたしまして職場適応訓練という一つの措置があるわけでございますが、これは失業者につきまして職場になれさせて、また職場の配置につけながら訓練をやって就職を容易にしようという措置でございます。もちろんこの適応訓練の期間中におきましては、訓練を受けます失業者につきましては訓練手当が支給されますし、訓練を職場でいたします事業主に対しましては手当が支給されるのでございます。ただ、私どもといたしましては、この職場適応訓練というものが適正に実施されますように、この委託される相手方の事業主につきましては一定の基準を設けておるのでございます。その一つは、職場適応訓練を行ないますための設備的な余裕があるということが一つでございます。それから第二点は、指導員としての適当な従業員がおること、こういうことでございます。それからもう一つは、労働者災害補償保険だとか、あるいは失業保険だとか、あるいは厚生年金保険と、こういった社会保険に加入しておるということ、これも一つの要件でございます。それからまた労働基準法の規定する安全、衛生その他の作業条件が整備されておるということも一つの条件でございます。それからもう一つは、職場適応訓練が終わりますまでにその失業者、当該事業所におきまして訓練を受けます中高年齢失業者等が雇用される見込みがあるということを一つの要件にいたしまして事業所を選定いたしまして委託訓練をする、こういうことに相なっておる次第でございます。
  183. 渡辺武

    渡辺武君 訓練の指導員の資格ですね。それから雇用予約などが必要かという点はどうですか。
  184. 上原誠之輔

    説明員上原誠之輔君) 指導員につきまして特別の資格が要るかどうかという点でございますが、制度的には格別の資格を設けているわけではございません。要するに職場に配置させた失業者に対しまして職場適応の訓練ができる実際の力を持っている職員であればよろしいと、こういう考え方でございます。それからもう一つは、雇用予約という点でございますが、これは雇用予約という考え方で配置をするということにはいたしておりません。
  185. 渡辺武

    渡辺武君 雇用予約については、職業安定所のほうから通達が出ているんじゃないですか。
  186. 上原誠之輔

    説明員上原誠之輔君) できれば雇用予約制度を採用するということは、これは将来の雇用見込みをはっきりつけるわけですから、それにこしたことはないわけでございますが、必ずしもそれを前提にしておるわけではございません。雇用の見込みがあるということをもって足りるという指導をいたしております。
  187. 渡辺武

    渡辺武君 さらにもう少し伺いたいのですけれども、職場適応訓練を受けさせる場合、どのような職種の訓練を受けるかという点については、失業者本人の希望や意思、それからまたその本人の能力に適合しておるかどうか、ということを尊重することが必要だと思うのですけれども、どうでしょうか。
  188. 上原誠之輔

    説明員上原誠之輔君) いまのお尋ねの点でございますが、もちろん私どもの職業紹介の業務は、その求職者の何と申しますか、能力なりあるいは資質というものに合った職場をきめていくということが理想でございますから、もちろん求職者が希望する職種、あるいは希望者が持っております体力なり技能というものを十分参考としながら、訓練を頼みます委託事業主を選定していく、こういう方針であるわけでございます。
  189. 渡辺武

    渡辺武君 いま参考としながらとおっしゃいましたけれども、やはり全然適合しない職種を強制される、無理やりに訓練を受けさせる、あるいは本人が希望しないにもかかわらず、一定の職場適応訓練を受けるように強要されるという場合があるとすれば、それはどうですか、好ましくないことだと思いますか。
  190. 上原誠之輔

    説明員上原誠之輔君) 非常にいまのお尋ねの点はむずかしい御質問で、私どもといたしましては、本人の希望あるいはまた本人の体力なり年齢なりを度外視して不適合な場所に訓練を委託するということは、基本的には考えておりません。
  191. 渡辺武

    渡辺武君 もう一つ予備的な質問をしたいのですけれども、訓練が終わったあと、その訓練終了者が雇われる場合の賃金のことですけれども、この賃金は少なくとも失対労働者の賃金、あるいはさらに少なくとも訓練期間中にその訓練生の受け取っていた諸手当の合計以下になることが望ましいか、それともまたそれ以上に賃金がなることが望ましいか、どちらでしょう。
  192. 上原誠之輔

    説明員上原誠之輔君) 失業者を就職させます場合の賃金でございますが、これは私どもの考え方といたしまして、できるだけ高い賃金を支払える事業所に紹介をしていくということが、私どものとっておる態度でございます。ただその場合に、私のほうで事業主に対して、これこれの賃金まで引き上げろと、こういう指導をするわけにもまいらないわけでございます。勢い、その地域において同種の労働者に支払われている通常の賃金はどのくらいのものであるか、ということを見ながら判断をしていくということにいたしておるのでございます。したがいまして、教育訓練を受けております間のいわゆる訓練手当その他の給与の額と、それからいざ直接に雇用された場合の賃金、これを直接に比較するということは、そういう意味で問題があるわけでございまして、私のほうとしては、それを直接比較して訓練手当よりも低いからということで、何と申しますか、失業者に対しまして、失業者がそれを拒否した場合に、それは正当であるというふうには言っていないのでございます。差があるのはやむを得ない、こういうふうに見ておるわけでございます。  それからもう一つは、失業対策事業の賃金との関係でございますが、失業対策事業は、先ほど申し上げますように、これは民間の賃金とは異なりまして、役所がきめておる賃金でございますから、これと民間の賃金を直接比較していく、民間の給与の賃金を直接比較していくということも、いささか問題ではないかというように考えておる次第でございます。
  193. 渡辺武

    渡辺武君 それぞれの地場賃金を一定の基準にして考えておられるということについては、私も承知しておるわけです。私の質問の範囲からだいぶ離れて返事をしておられるので、もう一回重ねて伺いますけれども、私の質問しましたのは、訓練終了後の雇用に際しての賃金が、失対労働者の賃金あるいは少なくとも訓練期間中の諸手当の合計よりも下回るほうが望ましいと思われるのか、それともそれよりも上になることが望ましいと思われるのか、そのことだけをお聞きしているのです。
  194. 上原誠之輔

    説明員上原誠之輔君) いまのような御質問に対しましては、私どもといたしましては、それは賃金の額というものはできるだけ高いほうがいいということで、職業紹介をいたします場合にも、相手先の求人事業所に対しましては、できるだけ賃金を上げなさいという指導はいたしております。
  195. 渡辺武

    渡辺武君 いま幾つかの予備的な問題について御質問したわけですけれども、私福岡県下の職業安定所のやっておられることをいろいろ調査してみましたけれども、この職安行政の実態として、いまおっしゃっていたいろんな基準からして非常にこれは離れておる、まことに遺憾な事態がいま福岡県下であらわれているというふうに見ざるを得ません。あなたのほうでは、福岡県下の職安行政の実態について把握しておられると思いますけれども、どうですか。
  196. 上原誠之輔

    説明員上原誠之輔君) 福岡県下におきまする職場適応訓練の実施の状況でございますが、しさいにわたって調査したわけではございませんので、いまここでその詳細を申し上げるところまでまいりませんけれども、実はこの福岡県につきましては、失業の多発地帯、いわゆる石炭産業の崩壊に伴いまして、あの地域につきましては非常に失業者が多いということで、中高年措置の適用をしてくれ、こういう申請が非常に多いのでございます。そういう面からいたしまして、中高年措置の実施の状況がピンからキリまで完全にいっておるとは、私自身も思っていないのでございまして、この措置の実施の面につきまして、いろいろ問題があるといたしますならば、その是正につきましては、私どものほうの基本的な方針に従いまして改善をしていくというふうに考えておるような次第でございます。
  197. 渡辺武

    渡辺武君 それでは伺いますけれども、福岡県の田川市にある塩田産業というのを御存じでしょうか。この塩田産業という工場は、これは田川の職業安定所と福岡県の労働部の指導で、身体障害者の職場適応訓練所として、第一工場のほうが、——第一工場と申しますのはガラス玉の製造をやってる工場でございますけれども、昭和四十一年の六月ごろ、それから第二工場、これは車を洗う洗車ブラシをつくっている工場ですけれども、これが昭和四十二年の六月ごろから作業を始めております。つまり職場適応訓練ということが始まって以後に初めてつくられた事業所でありますけれども、その事業主自身が身体障害者で、職場適応訓練を終了した人物で地元では、この人は最初から月一人約六千円の訓練生の委託料と、それから訓練生のただ働きを目当てにして事業所をつくったのじゃないかというふうなうわささえもしているような事業所であります。この事業所について私調べましたところが、先ほどおっしゃいました訓練生を訓練するための設備の余裕というようなものなどは、もちろんこれは全然ありません。たとえば洗車ブラシをつくっている第二工場の例を申しますと、この工場は、三井・田川炭鉱の——すでに閉山された炭鉱ですけれども、これの物置き小屋をそのまま使って、安全衛生などの作業条件はもとよりのこと、機械らしいものといえば、木の枝にブラシの毛を植える穴を掘るための小さなボーリングぐらいなもので、あとはほとんど訓練生が小刀や、やすりや、のりなどで仕事をしておったというような状態であります。指導員もいないで普通の労働者並みに訓練生に仕事をさしておる。ですからして、訓練基準などは一切これは守られていなかったというような状態であります。しかも訓練を終わったあとの雇用についての問題でありますけれども、第一工場のほうでは、十八名の訓練生が一年の訓練を終わって、その場合の賃金がガラス玉一個つくって三十銭の出来高払い、一日中、最高働いて四百五十円という全くの極端な低賃金の状態であります。しかも訓練が終わったのが昭和四十年の十月ですけれども、その訓練が終わって、いよいよ常雇いになったというそのとたんの、翌月の十一月から賃金が未払い状態になった、そうして翌年の二月まで賃金は払われなかった。で、労働者のほうが苦しいものですから、再々にわたって要求して、やっと二月に払わした。ところがその後、五月に第一工場が倒産するまで、ついに賃金は不払いの状態であったという状況であります。で、福岡の労働基準監督署がこの問題を持ち込まれて、そうして第二工場におる訓練生の委託料として事業主に渡される委託料から第一工場の労働者の未払い賃金を払っておるという状況で、しかもいまだに三万二千円の不払いとなっているという状況であります。また第二工場のほうを申しますと、五十二名の人員のうち、常雇いの労働者は一人もおらぬ。訓練生だけです。そのうち八名が五月に訓練を終わった。ところがこれも常雇いになったとたんに賃金不払いで、しかも将来にわたって賃金を支払う見通しがないということで、八名は職業安定所が引き取って再度申請を受けるという措置がとられるということであります。ほかの訓練生は全員引き上げられ、そうして三カ月間の職業紹介を受けるということになったという状況で、このために五月に訓練終了した八名と、訓練生以外の労働者のいない第一工場も事実上の倒産という状況になっているわけであります。その後の事態を私よく聞いてみますというと、その後、第二工場の訓練終了者八名中七名は、不認定の処置を受け、一名だけが認定を受けた。それから第一工場の訓練終了者十八名中の一名だけがこれが常雇いとなって、また事業主に雇われて、あとは全部失業というような状況であります。この塩田産業という事業所のこういう事実について御存じでしょうか。
  198. 上原誠之輔

    説明員上原誠之輔君) ただいまの福岡の田川地区の塩田産業につきましての委託訓練の状況についてのお話がございました。実は私どものほう、しさいな点につきましては、その辺の報告を受けていないのでございます。いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたように、この筑豊地域におきまする中高年措置の実施につきましては、何ぶんにも措置対象者が非常に多いというようなこともございまして、先生いま御指摘のような非常に問題のある点もあろうかと思いますが、そういう場合につきましては、私どもといたしまして、失業者に対しまして迷惑のかからないように、ひとつ万全の措置を講じて、再申請させるなり何なり、万全の措置をとってまいりたい、このように思います。
  199. 渡辺武

    渡辺武君 失業者に対して迷惑のかからないような措置をとると言われましたけれども、それでは第一工場、第二工場の訓練生、訓練終了者ですね、これがその後どうなったか、これわかりますか。
  200. 上原誠之輔

    説明員上原誠之輔君) その後の措置、その後の状態につきましても、まだ報告は受けておりませんが、いずれにいたしましても、この措置中につきまして、たとえば認定の取り消しをするというような場合も実はあるわけでございます。この認定の取り消しを受ける場合には、もちろん、これは労働者自身の責めに基づく場合もあるわけでございますが、そうでございませんで、労働者自身の責めによらないで工場が倒れるというようなことで、労働者に害が及ぶということになりますれば、その点につきましては、私どもといたしましては、一応中高年措置の再申請というようなことで、生活確保の面につきましては措置をしたいと、こういうふうに考えております。
  201. 渡辺武

    渡辺武君 この塩田産業の倒産したのは五月です。もうすでにそのときから五カ月もたっておるのです。この問題については、全日自労もビラその他でもって福岡県下でその事実を知らせておりますし、あなた方の耳に入らなかったというふうにはちょっと考えられないけれども、どうですか。しかもですよ、総数で七十名以上もの訓練生が置かれておって、そうして訓練終了後の常雇いとしてその事業所に雇われたのはこれはもうたった一人、しかもお手伝いさんとして雇われただけですよ。そこで受けた訓練で何か技術を身につけて、そうして事業所の常雇い労働者として就労したというのじゃないのですよ。こんな状態をあなた方は把握していないのですか。
  202. 上原誠之輔

    説明員上原誠之輔君) ただいまの御質問の点につきましては、さらに実情調査いたしまして御報告いたしたいと思います。
  203. 渡辺武

    渡辺武君 私は、まことに残念だけれども、あなた方は非常に監督不行き届きだというふうに考えざるを得ません。たいへんなことですこれは、失業者にとっては。またあなた方にとっても、この職場適応訓練が正しく行なわれているかどうかということを判断する上でも、非常に重大な問題だと思います。とにかく以上のような事実があったということは、これは田川の職安、それからまた福岡県の職場適応訓練がきわめてずさんなものだと、全くこれは法で定められた基準さえも守られない、法の趣旨を根本的に踏みにじっているというふうに考えざるを得ないじゃないですか。どうですか。
  204. 上原誠之輔

    説明員上原誠之輔君) 先ほどから申し上げますように、筑豊地域におきましての失業の状況というものはきわめて問題でございまして、中高年措置の申請者が非常に多かったのでございます。資料で申し上げますと、職場適応訓練の実施につきましては、昭和四十二年度で六千六百二十七人でございまして、このうちの九百九十七人が福岡でございまして、これも筑豊地域に集中した数でございます。私ども、先ほどから申し上げますように、この職場適応訓練の実施につきましては、常用就職をいかしてうまくやっていくかということで実はやっておるのでございます。先ほど申し上げましたような、私どもの基本的な運営の方針からはずれたやり方がかりにあるといたしますれば、これは非常に遺憾なことでございます。今後につきましては、いま御指摘のような点を十分反省をいたしまして、職場適応訓練がその実際の効果をあげますように、十分配慮をして実施をしてまいりたいと、こいうふうに考えております。
  205. 渡辺武

    渡辺武君 時間がないからこの問題についてはこれ以上追及しませんが、一体この塩田産業という事業所に職場適応訓練を委託して、国の費用と県の費用、どのくらい使われておりますか。
  206. 上原誠之輔

    説明員上原誠之輔君) 適応訓練を実施いたします場合に、一人当たりの、いわゆる労働者側に対して支払われます訓練手当でございますが これはおおむね一月平均いたしまして一万九千六百八十円程度でございます。それから事業主に対しましては一人出たり月六千円ということでございますから、したがいまして、塩田産業に対して支払われております金額は、その適応訓練の対象となりました労働者の数と、いま申し上げました一人当たりの単価を積算したものになるわけでございます。
  207. 渡辺武

    渡辺武君 たった一つの事業所だけでいまおっしゃった数字で、大まかに考えてみましても二千万円近い金だと思いますよ。それだけのばく大な金を全く効果のないところへつぎ込んでいる。これは国費の乱費以外の何ものでもないじゃないですか。  次に移りますけれども、同じようなことは、これはこの塩田産業にだけあるわけじゃないのです、ほかにもたくさんあるのです。一、二の例だけ申し上げますけれども、たとえば嘉穂郡の穂波町の太郎丸身体障害者訓練所というところがあります。これまた身体障害者の訓練事業所として認可されたわけですけれども、認可後二年四カ月たった状態で調べてみまして、五十人近い人が訓練を受けて、そうしてそのうちで、訓練終了者の中でたった一人が常雇いとして就職できたにすぎない。そういう状況です。ほかの人たちは全部これは失業した。この事実、御存じですか。
  208. 上原誠之輔

    説明員上原誠之輔君) いま御指摘の太郎丸の訓練所の状況につきまして、当方まだ報告を受けておりません。
  209. 渡辺武

    渡辺武君 全くこれは驚くべき私は怠慢だと思います。一々聞いていても、これは全部まだ報告を受けていない実情では——私二、三の点だけ申し上げておきますけれども、大牟田の町に橋本組という、やはりこれも職場適応訓練所として五月に認可されたところがあります。ここには訓練生八名、ところがこの橋本組というのは人入れ稼業なんです。御承知の、大牟田に三井の東洋高圧という会社がありますけれども、その会社の子会社に株式会社オリエントという会社があって、その下請けに青木興業という下請け会社があって、その青木興業のまた下請けがこれが橋本組なんです。この橋本組というのは、ですから、設備の余裕なんというものはあるもんじゃない。事業所そのものがないのですよ、労働者の仕事をするところが、橋本組には。もちろん、安全衛生その他の作業条件はじめ五条件は全然そろっていないし、専門の訓練員もないというような状態であるわけです。ただこの青木興業に人夫を世話するという人入れ稼業やっているにすぎない。ですから、オリエントで雇う労働者の賃金が、男が日給八百三十円、女が六百十六円、それが青木興業ではオリエントに労働者を世話して払う賃金が、男が七百五十円、女が五百五十円、これだけもう労働者の賃金をピンはねしている。ところがその青木興業に橋本組が人を入れるときにも、男はわかりませんでしたけれども、女は四百二十円、百数十円のピンはねをやっている。そういうところに訓練を委託して、しかもその訓練生を普通の労働者並みに使わして、特別に技能その他の訓練をやるものもないわけですから、全然やらないで、労働者は働かして、その賃金も自分のふところに入れているという疑いも非常に強いわけです。  それからもう一つ例をあげます。これは福智建設という鞍手郡の宮田町にある事業所ですが、これは貝島炭鉱のボタ山から石炭を拾い出すのが仕事です。いつボタ山がくずれてくるかわからないようなところでたいへんな重労働をやっている。しかも日給がわずか五百円、近所の人を集めて働かそうと思ったけれども、あまり危険な仕事で、重労働で賃金が安いからだれも来手がなかった。それを職場適応訓練所に指定して、そうして十名の訓練生を送り込んだ、このうちの二人はあまり仕事が危険な作業だし、賃金が安いんで、仕事をかえてくれないかといって職業安定所に申し出たところが、誠実かつ熱心な求職者とは認めがたいということで、ついに中高年の措置の不認定措置を受けているという状況です。私はこれらの事実を御存じかと言っても、おそらく存じませんとあなた方答えられるでしょうから、その点については伺いませんけれども、なおこのほかに調べた事実はたくさんあります。たった一部のことを言っているにすぎない。あなた方はいま知らないと言っておりますけれども、もう県ではこれらの事業所については条件もそろっていなかったし、問題にされたらぐあいが悪いということで、ぼつぼつ部分的に手直しをし和めている。いま御承知のように福岡県では行政監査をやろうと、あまりひどいことをやっているから行政監査の要求をやって、行政監査によってこういう不当なやり方を何とか食いとめる以外にないということで、署名運動が起こっていますよ。その署名運動が起こり始めてから、職業安定所も県のほうでも、ここで事実が明るみに出ては困るから、そこでいろいろ手直しをせざるを得ないということで、いま私が申しました福智建設の場合はボタ山拾いの、あさりの作業はもうこれは取りやめて訓練生はほかの仕事に回わしたという話であります。それからいま申しました大牟田の橋本組、これも従来は橋本組に訓練を委託していたけれども、この問題が起こってから橋本組ではぐあいが悪いというので、青木興業のほうに訓練生を移したということであります。そのほか、いろいろな手直しをしようとした。手直しはけっこうだ。けっこうだけどれも、幾ら手直しをしても、いままでやっていた全く法を無視して、失業者の利益を全くじゅうりんしたようなこの職安行政が事実として行なわれたということは、打ち消すことはできないのじゃないですか。そうして先ほどの塩田産業の例でもわかるけれども、ばく大な国費、県費を全く乱費しているという事実は、これは隠すことはできません。いまそういう事実があればできるだけ調べて、そうして是正させるようにするとおっしゃいましたけれども、私は、くどいようだけれども、いままで私のあげた例は、これはもうすでに県もしくはそれぞれの職業安定所で手直しを始めた、こういうことを取り上げて言ってみたわけです、そういう問題についてだけ。  しかし、いま福岡県の職業安定所や県知事が盛んに力こぶを入れてやっている職場適応訓練の実態でも、結局変わりはない。私は、この目で実際行って調べてきました。ですからその点についてあなた方がどの点まで把握しているか、その点も伺いながら、二、三の事実を指摘してみたいと思います。  いま福岡県の田川の職業安定所で毛糸編みものの事業を職場適応訓練所に指定してたくさん訓練生を委託しております、私資料要求としてお願いしてありますが、一体田川の職安の関係で、いま何の事業に何人ぐらい訓練生が委託されているか、そのうち編みもの関係は何事業であって、訓練生が何人行っているか、また、その編みもの関係の中で編みものを業としている事業所ではなくて、編みものの教習所は何軒あるのか、この点についてお調べいただきましたか。
  210. 上原誠之輔

    説明員上原誠之輔君) ただいま先生指摘になりました資料でございますが、一昨日承りました資料項目の中に入っていなかったかと思いますが…、失礼いたしました、資料の項目の中に入っておりますので、これは後刻調製をいたしまして御連絡いたしたいと思います。
  211. 渡辺武

    渡辺武君 いまわかりませんか。
  212. 上原誠之輔

    説明員上原誠之輔君) いまちょっと集計をいたしております。
  213. 渡辺武

    渡辺武君 それでは私の調べたものを参考までに申し上げておきますけれども、いま田川の職業安定所関係では約二百六十人の失業者が職場適応訓練生として各事業所に委託されておりますけれども、この二百六十人のうちの約半分百二十人が編みもの関係の訓練生だというような状態であります。しかも、この百二十人の中の百十名、これが編みものの教習所に訓練生として委託されているという状況であります。  それで伺いたいのですけれども、この編みものの委託訓練を受けている事業所ですが、これは訓練を委託される事業所としての条件を備えているものですか、どうでしょう。
  214. 上原誠之輔

    説明員上原誠之輔君) いま御指摘の毛編み業につきまして、その実態を把握しておりませんから、的確なことは申し上げられませんけれども、かりに女子の失業者がおりまして、これにつきまして編みもの業に従事させることが職場定着上適当であるというふうに見込まれますならば、この事業所につきましては、職場適応訓練の委託先事業所としては適当であるというふうに考えております。
  215. 渡辺武

    渡辺武君 私はそんな抽象的なことを伺っているわけじゃないのですよ。何のためにあなた方にきょうここへおいでいただいたのですか。私が福岡県の職安行政について質問する、特に職場適応訓練についてあなた方にいろいろ伺いたいということは、いまここでもって申し上げたのじゃないですよ。何を伺っても報告を受けてないということじゃ、何のこともないじゃないですか。先ほどあなたはおっしゃいましたでしょう。福岡県は失業多発地域だと、職場適応訓練生も全国の中でも非常に多いところなんだと、そうだとすれば、特別に慎重にこの問題についてあなた方は追及することが必要じゃないですか、どうですか。それがいま私が伺ったことを、何一つ満足にお答え願えないというような事態はどういうことですか、一体。
  216. 上原誠之輔

    説明員上原誠之輔君) 先生から御依頼のございました資料の項目につきまして、非常に微細にわたっておりますので、実は現在いろいろ業務統計を調査いたしまして、取りまとめ中でございまして、一つ一つの具体的な委託先事業所の詳細につきましては、まだ調査をしておりませんので、その点御了承いただきたいと思います。
  217. 渡辺武

    渡辺武君 統計だけを言っているんじゃないですよ。塩田産業をはじめとして、いままで私具体的な問題であなた方に伺って、具体的な御返事いただけたことは、一つもないじゃないですか。まあしょうがないからなお質問続けますけれども、私が調査した結果では、この田川でいま盛んにやっております毛糸編みもののこの事業所への訓練生の委託、これは全く先ほど一番最初あなたがおっしゃった職場適応訓練の目的、あるいはまたそれをやるためのいろいろな諸条件に合致しておりませんよ。これまた塩田産業と同じように法を無視し、失業者の利益を無視して全くひどいやり方をやっていますよ。  まず申し上げたいことは、設備の条件がない。事業所でも教習所でも設備の余裕なんてのはないんですよ。訓練生に毛糸編みものの機械を買わせてです、一台三万円もするんです。失業している真最中の人間にですよ。私会って聞いてみました。毎月二千円から三千円の月賦を払わなきゃならない。これだけでもたいへんですと言っておりますよ。それが訓練生の負担になっているんです。訓練生に編みものの機械を買わせて、それで訓練している。これが一体設備の余裕と言えますか。私は言えないと思います、どうでしょう。しかも先ほど申しましたように、この毛糸編みものをやっている教習所ですけれども、これは教習所は事業体じゃないんですね。毛糸の編みものを教えるところです。最近ばたばたできているんです。そうして、これらの中には全部がそうとは言えませんけれども、公民館を使ったり、それからまた炭鉱の社宅、これはもう老朽した社宅ですよ、なくなった炭鉱の残っている社宅ですから、それを使って教室にして訓練生に編みものを教えているというような状態で、安全衛生もくそもないんです。これはしかもです。訓練するとは名ばかりで、訓練しちゃいないんですよ。いないところが多いんです。たとえばいま田川の職業安定所が盛んに宣伝しております。つるやさんという編みものの事業所があります。私そこへじかに行っていろいろ聞いてみました。ところが、ここでも訓練生は訓練を受けているんじゃないんです、普通の労働者として働かされている。二週間から三週間でもって仕事が変るというんです。それはそうでしょう。注文がくるたびに、つまり編みものをつくる種類が変わってくるわけですから、仕事がみんな変わってくる。したがって仕事を覚えるひまがないと言うんですよ。そういう状態に訓練生は置かれている。私はこのつるやという事業所の事業主がそういうことを目当てにやっているんじゃないと思いますけれども、しかし一部の教習所の中には、訓練生を委託を受けて月六千円の委託手数料をもらっているということを目当てにして、そうして職業安定所からたくさんの委託を受けるということをやっている人があるんです。その上に労働者をただ働きさして、その労働者が働いた分は、これは事業主の収入にしてしまうというような状態、これはあなた方の言われている職場適応訓練とは全くほど遠い実情だと言わなければなりません。しかも本人の希望や条件、あるいは本人にそういう仕事が適応しているかどうかということを全然無視してやられている。先ほど申しましたように、近ごろは行政監査の請求の戦いが発展し始めておりますので、さすがに近ごろは気をつけ始めたそうであります。田川の職業安定所にも適性訓練の施設なんかも最近やっと入ったという状態。私一、二の事業所へ行って聞いてみましたけれども、いままでは数学のできない、数を数えられない人が編みもの訓練に回されてきているというんです。編みものは編み目の数や何か多少は数えなければなりませんですよ。あるいは目の悪い人が来ている。そうして編みもの機械の前にすわったまま訓練員がどういうふうに話しても一向に手を出さないというんです。そういう人も訓練生として押しつけられているんです。私も直接聞いてみましたけれども、私はこの仕事をやりたくて来ているんじゃない、しかしこれを断わったら、職業安定所が中高年の措置の認定を取り消すから、やむを得ずここへ来ているんだというんです。これはほとんどすべての人がそう言っている、そういう状態です。あなたはさっきできるだけ本人の意思や能力その他に適合したような事業所につけるのが望ましいんだ、ということをおっしゃいましたけれども、全くそのおっしゃった点とはほど遠い状態が現に行なわれているということを、よく考えていただきたいと思います。  それから一番大きな問題は、訓練終了後の常雇いの可能性がほとんどない。大体この毛糸編みもの業というのは、これは田川の職業安定所の責任のある人が、田川の全日自労の団交の席上で言っていることばですけれども、編みものは企業化を促進するようにすすめているけれども、業者間競争が激しくて、買いたたかれることをこぼしているということを言っている。まことに不安定な業種。しかもあなた御存じのように、生活保護の更生資金をもらいたい、編みものをやるから更生資金をほしいと言ったときに、厚生省は編みもの業は不安定な業種だからと言って更生資金を渡さないようにしているんでしょう、どうですか。そういう業種がいま職場適応訓練の委託事業所として田川ではどんどん数がふえている。一体これで失業者の生活安定をさせることを、あるいは将来常雇いとなることを旨としてこの職場適応訓練をやっているんだと言えますか。こういう不安定な業種であるというだけじゃなくて、賃金が非常に安い。私一、二の事業所へ行って聞いてみましたけれども、常雇いの一応の線は月一万三千円から一万五千円だというんです。しかも大体編みもの二百枚以上編んで一万二千円ぐらいが相場で、しかもその中から保険料を月に八百円払わなければならぬし、交通費も千二百六十円です。これは私ある婦人から聞いたんですが、これを引いたら手取り八千円ぐらいにしかなりませんと言っている。もう一つの事業所では、常雇いになっても、量産ものをやっても最高目に四百円ぐらいかせげればいいほうでしょう、と言っている。家庭にいて内職をやっておれば、一日に百五十円ぐらいかせげればいいほうでしょうと言っている。全く極端な低賃金なんです。こういう状態ですから、したがって適応訓練を終わった人が常雇いとなって仕事をしようと思っても、これはもう仕事ができないような状態です。しかも賃金が安いから、どっか別な仕事がありませんかと言って職業安定所に聞けば、賃金を固執する、そういう状態では誠実かつ熱心な求職者とは認めがたいんだということで、中高年の措置からはずしてしまうという、全くこれは無慈悲なことをやっている。ですから、一応訓練を終えて常雇いになった人でも、もうその翌日にやめるなんという人がある。せいぜいもって二カ月か三カ月じゃないですか、そういう状態だと思います。私、行って聞いてみましたら、職業安定所では大体職業訓練を終わった人たちが常雇いとなった歩どまりは、約八割五分から九割だということを言っているそうでありますけれども、なるほど訓練を終わった直後には、そこにいると言わなきゃ中高年の措置からはずされる。ですからやむを得ずそこにいるでしょうけれども、しかし結局のところ、こういう低賃金の状態でやめざるを得ないということです。これではあなた方のやっておられる職場適応訓練というのは何の効果も出ていない。何の効果と言っては失礼だけれども、ほとんど効果が出ていない、というふうに言わざるを得ないと思うんです。私、伺いたいんですけれども、月に一万三千円から一万五千円という賃金で人間一人働いて食っていくことができますか、どうでしょう。
  218. 上原誠之輔

    説明員上原誠之輔君) 職場適応訓練のあり方につきまして、ただいま詳細にわたりまして御指摘があったのでございます。まず第一に、この職場適応訓練の問題につきまして、御指摘のような点が多々あると思います。これは否定はし得ないと思います。何ぶんにも中高年措置の適用を申請いたします人たちの数が非常に多いという面がある。したがいまして、この事務処理にあたりまして粗漏ができてきておるという点、私、率直に認めなければならないと思うのでございます。この点につきましては、現に福岡県におきましても改善の措置を検討しておりまするし、私のほうも、今後とも県を督励いたしまして、この中高年措置の全般的な運用、あるいはまた職場適応訓練の実施の適正化という点につきましては、十分配意をしてまいりたいと思っております。  なお、いま御指摘のございました賃金の問題でございますが、お話しの筑豊地区、特に田川地区につきましては、再々申し上げますように炭鉱の閉山に伴いまして非常に疲弊をした地域でございます。したがいまして、失業者も非常に多いし、また企業のあり方としても非常に困難をしておるわけでございます。したがいまして、統計的に見ましても、賃金の額につきましては非常に低いのでございます。もちろんこの賃金の問題につきまして、これをできるだけ高いものに引き上げていくということは望ましいわけでございますが、いずれにいたしましても、企業の力をつけていかなければならないということが問題でございます。要点でございます。そういう点からこの筑豊地域につきましては、全体としての産業振興をはかっていくという大きな手が打たれなければならない。それによりましてあの地域の経済力をつけ、また労働条件も向上していく、こういうことにならなければならないと思うのでございます。ただ、その間におきまして、現実に低い賃金が支配をするということは、これは否定できないのでございまして、しからばそういう低い賃金しか支払われない事業所に対しまして紹介するのはおかしいじゃないか、というようなことになるわけでございますけれども、先ほども申し上げましたように、私どもとしては、やはり職業紹介の基本として、その地域における賃金の事情、一般的に行なわれている賃金の事情ということを基本に置きながら、行政を進めていかなきゃならぬというふうに考えておるわけでございます。これはやむを得ないことではなかろうかというふうに私は思うのでございます。
  219. 渡辺武

    渡辺武君 賃金につきましてはあとで、あらためてもう少し伺いたいと思いますが、その点についてはあとで述べるとしまして、なおもう少し田川の職適訓練の実情についてあなた方御存じないならば、こういうようなひどいことが行なわれているということを、私はこの席上で明らかにする意味でも、もう一、二のものを申し上げてみたいと思うんです。いま田川で行なわれているこの毛糸編みものの職場適応訓練の実情が全く法を無視してやられていると、これでは失業者の利益にも何にもならぬということを申しましたけれども、これはもう聞いてみると全く驚くべきようなことがやられているのです。特に、先ほど私は教習所が盛んに最近ふえていると言いましたこの教習所というのはですよ、これは編みものの技術を習う生徒を集めて先生がこれを教えるところですよね。これは別に編みものの商品をつくって売り出すところじゃないのです。そういうところにいま訓練生がどしどし送り込まれている。しかもこの教習所をやっている人たちの中には、ほんの少数ですけれども田川の職業安定所の協力員をやっている人がいる。この人が月に二万円でもって編みものの先生を雇っている。そうして十人ばかり訓練生を引き受けてやれば月に六万円の委託料が手に入るのです。差し引きして四万円はふところに入ってくるのだ、もうけとして。そういう実情が町の人たちによって公然と話されている状態ですよ。しかもこの訓練をそれじゃ受けた人たちがです、終わったあとでもってその職場に常雇いとして雇われる可能性があるかというと、全然ないのです。ないことを承知で集めている。なぜかといえば、常雇いを雇わないほうがもうけが出るから。常雇いの労働者を自分のところに置けば、自分が賃金を払わなきゃならぬ。ところが、訓練生の委託を受ければ、訓練生を働かしてものをつくってそれで収入もあげることができるのですけれども、つまり、ただ働きをやらしてもうけることもできる、同時にまた委託手数料でもうけることがで奉る。そういう事態がいまあらわれている。これは正しい職場適応訓練じゃないと思う。町の人たちはこう言っていますよ。田川の職安のだれかと、そうしてこの教習所をやっているうちのだれかとが手を結び合ってそういうようなことをやっているのじゃなかろうか、こういうことまで言っている。しかも、この教習所とこの田川の職安との関係では、もっと奇怪な問題があるのです。それは、いま田川の職業安定所は約百三十名にのぼる編みものの適職をほしいという人たちがいるそうであります。ところが、職業安定所はですよ、これらの人たちを編みものを事業として営んでいる人たちに回してやらないのです。一方で事業で編みものをやっている人たちはどんな状態か。これはもう訓練生でなくてもいいと、委託手数料をもらわなくてもいい。常雇いでもいいからして回してもらいたいということを言っている。ところが、そこには一向に職業安定所は訓練生を回してやらない。あるいは失業者を回してやらないのです。したがって、この百三十名の人たちは職を求めていながら職につくことができないというような状態になっている。その原因はどこにあるかと言えば、いま言った、教習所をやっている人たち、その中の、全部じゃないですよ。若干の人が、これが職業安定所に圧力をかけて、事業所のほうに訓練生を回したらけしからぬということで圧力をかけているから回すことができないのだそうであります。しかもです、それじゃ教習所のほうに回すかというと、この教習所が全く法を無視してやられているという実情にあるために、いま福岡県は行政監査闘争がずっと発展している。そういう民主勢力の戦いの前には、この教習所にこれ以上訓練生をつけることができない、こういうジレンマに立って、田川の職業安定所は編みものの訓練を受けたいという人がいるのにもかかわらず、これを訓練生としてどこにもつけることができないという、こういう状態になっている。一体こんな状態が許されていいものですか。まあこの点について実情がつかめていないならば、せめて次の点についてだけお答えいただきたいと思う。もし、最初あなたがおっしゃったようなこの職場適応訓練についてのいろいろな条件ですね、これに合致していないような事業所に訓練を委託をされる、特に常雇いで雇用できる条件のないような事業所に訓練を委託するというようなことは取りやめるべきだと思うけれどもどうでしょうか。
  220. 上原誠之輔

    説明員上原誠之輔君) 先ほど申し上げましたように、職場適応訓練を委託すべき事業所の要件といたしまして、一番最後に申し上げましたように、雇用の見込みのあるものということが一つの要件になっておるのでございます。したがいまして、そもそも最初から雇用の見込みがないというようなところに配置をするというのは、これは御指摘のように問題でございます。ただ、当初におきまして見込みをつけましても、その過程におきましていろいろ事情の変動で事態も変わってくる場合もあるわけでございます。もしかりに、そういうふうなことで全然雇用の見込みがないというようなことがはっきりいたしますならば、この委託訓練というようなものにつきましては中止をしなければいかぬ、というふうに私は考えております。
  221. 渡辺武

    渡辺武君 問題はあなたのおっしゃるようなところに中心問題があるのじゃないです。私最後に申し上げたいことは、これは、何で一体福岡県知事や田川その他の福岡県の職業安定所がこういう法を無視したことを、失業者の利益にさっぱりならないような職場適応訓練を一生懸命でやっているのかという問題です。私はこの根本にあるのは、職場適応訓練を失業者に対する攻め道具として使っているというところにあるのじゃないかと思う。私は現地へ行って調べてそういう結論を下さざるを得ないような実情なんです。このために、私は不法に違法に福岡県の職場適応訓練が行なわれているという事実を、いままであなたに申し上げた。つまり職業安定所は、生活苦にあえぐ失業者を極端な低賃金の職場に無理やり押し込もう、そのために職場適応訓練を使って、訓練期間中は手当を受けるけれども、訓練が終了したら、どんな安い賃金の職場でも有無を言わさず、行かなければこれはもう誠実かつ熱心な求職者とは認めないということで、中高年の措置その他の認定を取り消してしまうということをやっている。このために委託手当をやるということで、いわば利益でつって、先ほど申しました編みものの訓練の教習所の若干の人たちのように、この委託訓練を金もうけの道具に使っている、ということを十分に承知の上でどしどしこれをやらしている。これは失業者がどうなろうとかまわない、いずれにしても、何とかこの中高年の措置から追っぱらってしまわなければならぬ、そして失対事業に入らないように道をふさいでしまわなければならぬ、その意図をもってやられているとしか思われない。これが一体だれの利益になるんです。日本の低賃金制度を維持しようという大企業の利益になること、これは明らかだと思う。同時にまた、失対事業を打ち切ろうという政府の意図にも合致している。だからこそ、こういう違法不法な職場適応訓練の状態が、福岡県で強行されるというふうに言わざるを得ない。私はいいかげんなことを言っているのじゃないです、幾つか事実もありますから。時間もだんだんなくなりかけましたのでほんの一つ二つだけ申し上げますけれども、さっきの塩田産業の場合でとってみますと、いまから思えば塩田産業というのが全く条件をそろえていない違法な職適訓練事業所であったということは明らかです。ところが、この違法な職適訓練事業所に、おまえ、この訓練施設に行けと言われて、いや、ああいう事業所は困りますと言って断わった人を、断わったということを理由にして中高年の措置からはずしてしまって不認許にしているという実例があります。これまだほかにたくさんあるのです。あるのだけれども、この一件だけ私申し上げて次に移りたいと思うのですけれども、たとえば重信盛隆という人がいる。その奥さんと二人です。昭和四十二年の九月ないし十月ごろに職業安定所から塩田産業へ職場適応訓練に行くことをすすめられた。しかしこの二人の人は塩田産業というものがどういうものか、実態というものをよく知っていた。塩田産業というものは、私がいま、先ほどからここでるる申し上げましたように、塩田産業というのが全くこれは法を無視し、法を踏みにじった職場適応訓練所だということです。その実態をよく知って、また事業主がどういう人間かということをよく知っていたので、ほかの事業所への紹介をたのんだ。職安も一応それを認めた。そうしてその後他の事業所について職場適応訓練所の紹介があったので応じる旨を伝えて待機していたところ、職安が紹介したところは適当な事業所ではないのでもう一回塩田産業にいくようにというふうにすすめた、それで前回と同じような理由で断わった。ところが、誠実かつ熱心な求職者とは認められないということで不認許の扱いを受けているのです。これはたくさんあります。全くこれは言語道断というか、気違いざたというか、とんでもないやり方だと私は思わざるを得ない。そこで伺いたいのですけれども、条件のない事業所での職場適応訓練を、条件が不備であることを理由にして断わった者は誠実かつ熱心な求職者ではないと判断することはできないと思いますが、どうですか。
  222. 上原誠之輔

    説明員上原誠之輔君) 先ほど申し上げますように、職場適応訓練を委託いたします場合の事業主の一般的な基準につきまして、申し上げたとおりの基準があるわけでございます。したがいまして、一般的に申し上げますとそういう基準に合致しないような事業所に対しまして職場適応訓練の委託をするという場合におきまして、当該失業者がそれを断わるということになります場合に、これはどういうふうなことになるかということでございますけれども、そういう基準がはっきり実現されていないというような事業所につきましては、先ほどから申し上げますように委託先の事業所としては適当でございませんから、したがいまして、そこに訓練を受けにいくことにつきまして拒否をしても、それは正当な理由になる、一般的に申し上げればそういうふうに申し上げられると思います。
  223. 渡辺武

    渡辺武君 そうしますと、いま私一人の例——重信という人の例を申し上げましたけれども、こういうような例たくさんあるのですが、こういう条件のない事業所での職場適応訓練を断わったために誠実かつ熱心な求職者ではないとして不認定または認定取り消しの処置を受けた者に対しては、この処置を取り消すべきだと思いますけれども、どうでしょう。
  224. 上原誠之輔

    説明員上原誠之輔君) いまの具体的な例につきましては、さらにしさいに検討をしてみなければ、いまここで返事を申し上げるわけにまいりません。一般的には先ほど申し上げましたように、委託先の事業所として不適当な事業所に対しまして行くことをがえんじなかった者につきましては、これを不認定にするということは適当でないというふうに考えます。
  225. 渡辺武

    渡辺武君 そうすると、すでにそれで処置された人については取り消しますか。
  226. 上原誠之輔

    説明員上原誠之輔君) 不認定にした者につきまして、かりにその認定そのものが問題であるということになりますれば、当然その認定の措置につきまして再審査を請求できるわけであります。その再審査の請求に際しましてしさいに検討して、かりにそれが不適当であるということであれば、認定、不認定の取り消しということになるわけでございます。
  227. 渡辺武

    渡辺武君 その再審査の請求ですけれども、私福岡県でたくさん再審査の請求が出ているのを知っています。しかし、その措置が非常におくれている。ひどいのになると、二年も三年も引き延ばされている。失業者というのはきょうあすのめしが問題なんですよ。それが非常におくらされているというような実情です。再審査の請求については、これはもうできるだけ早くやることが必要だと思うんです。そう思いませんか。
  228. 上原誠之輔

    説明員上原誠之輔君) 福岡地区におきまして中高年措置をめぐる失業の認定、不認定の問題をめぐりまして、再審査が案件として非常に数多く出ていることは御指摘のとおりであります。何ぶんにもこの認定、不認定につきましては、非常に複雑な事務手続が必要でございます。判断基準につきましても非常に微細にわたりますから、一件一件の取り扱いにつきまして非常に時日を要するわけであります。非常におくれておりますことはまことに申しわけございませんが、県のほうを督励いたしまして、できるだけ早くこの裁定ができますように善処してまいりたいと思います。
  229. 渡辺武

    渡辺武君 個々の例については再審査で慎重にやるということですけれども、慎重もほどほどでしてね、これはできるだけ早くやることが必要なんですよ。それは金でもたっぷりあって政府がゆっくりゆっくりやっているのを釣りでもして待っているということができる人ならとにかくですがね、そういう人じゃないんです、失業者というのは。繰り返して言いますけれども、きょうあすのめしの問題が必要な人たち、これが不当な扱いを受けて、たった一つの解決の方向として残された行政不服審査にいろいろ要求している。ところが、その解決さえも引き延ばしている。こういうような行政をやっておられて、どうして失業者の利益をはかるなんて言えますか。一日も早くこれはもう片づけてもらいたい。個々の例についてはそういうことですけれども、原則としてどうですか、私先ほど伺ったとおり、条件を備えてない職場に訓練に行けと言われて、条件を備えてないからいやだと言って不認定もしくは認定取り消しの処置を受けた者、これは原則としてそういう処置は取り消すべきだと思うけれども、どうですか。
  230. 上原誠之輔

    説明員上原誠之輔君) 先ほどからもお話し申し上げておりますように、一般的な原則といたしまして委託先事業所がその条件を満たしてない事業所であるということがはっきりいたしますならば、それに対しまして訓練生が行くことをがえんじないという場合に、それをとやかく言うということは適当でないというふうに考えております。ただ、基準に適合するかしないかという点になりますと、これはいろいろ具体的な例について申し上げなければいけないのでございまして、一般的にはいま申し上げましたようなことでございます。
  231. 渡辺武

    渡辺武君 どうも私の質問したことに直截明確に答えていただけないので困るのですが、もう時間もあまりないのですがね、取り消しますかどうですか。
  232. 上原誠之輔

    説明員上原誠之輔君) 一般的にはやはり一つの行政庁の認定に対しまして問題がございますれば、再審査の請求をしてもらう。それを待って処理をしていくということでいきたいと思います。したがって、再審査をする場合には、いま申し上げましたような基準で判断をしていくわけでございますから、事柄はケースバイケースできまっていく、こういうふうに考えております。
  233. 渡辺武

    渡辺武君 まあ、いろいろ確言は避けておられるようですけれども、しかしすでに条件がそろってない職場だと、事業所だということが明らかであって、しかもその条件がそろっていないということを理由にして、これ行かないと言って、それが理由で不認定もしくは認定取り消しの扱いをすでに受けた人がいるんですよね。それはそういう処置は当然取り消してしかるべきじゃないですか。
  234. 上原誠之輔

    説明員上原誠之輔君) 行政庁といたしまして、当然これは適当でないというふうに判断をいたしますならば、そういうことになろうかと思いますけれども、行政庁といたしましては、あくまでも適当であるというふうに判断をして認定、不認定をやっておるわけでございますから、したがいまして具体的な点につきましては、やはり再審査の請求をしてもらって、そこで上級庁の裁定を抑ぐというのが、手続上適当ではなかろうかとこういうふうに考えております。
  235. 渡辺武

    渡辺武君 それでは質問次に進めましょう。  いま政府のほうは職場適応訓練の終了者に対して、先ほども申し上げましたけれども何回も申し上げますが、極端な低賃金の職場または求職者の能力に適さない職場を強制して、これを断われば誠実かつ熱心な求職者ではないとして不認定もしくは認定取り消しの措置をしております。このために訓練終了者は極端に低賃金の職場にやむなく就職しても結局食えないためにやめていっている。政府がばく大な国費、県費を浪費して職場適応訓練をやっても効果がほとんどあらわれず、失業者は貧困に苦しみ、さらに先ほど申し上げましたけれども、全日自労その他民主勢力が激しい戦いに直面しなければならなくなっているという根本の原因の非常に大きな点が、この極端な低賃金の職場に就職を強制しておるというところにあると私は思います。したがって伺いたいことは、職場適応訓練終了者の雇用の際の賃金が、少なくとも失対賃金以下あるいは訓練中の諸手当の合計以下というひどい低賃金である場合には、これを理由に就職を断わっても、誠実かつ熱心な求職者ではないと判断すべきではないと思うけれどもどうでしょうか。
  236. 上原誠之輔

    説明員上原誠之輔君) 先ほど申し上げましたように、その職業紹介にあたって紹介先の事業所の賃金が低いか高いかという点を検討いたします場合に、訓練期間中の手当の額というものとか、あるいはまた失対賃金の額とかいうものを比較をして、低いとか高いとかいうことを議論することは適当でないというふうに申し上げたのでございまして、あくまでもその地域における同種同業種の一般的に支払われている賃金の額がどういう状態であるかということを見て、それとの比較において高いか低いかということを判断していくというのがたてまえであろうと思っております。
  237. 渡辺武

    渡辺武君 先ほどあなたは福岡県は失業多発地帯だと、特に筑豊地帯というのは失業者がたくさんおるのだ、したがって賃金も低いということを認めていらっしゃるでしょう。あなたおっしゃったのだから認めていらっしゃったでしょう。そういう現実を踏まえて私は言っているので、一般論をあなたに聞いているのじゃないのです。いいですか、いま福岡県の賃金ですね、これはあなたも言うように非常に低い。全産業の、これは昭和四十二年で計算してみまして、三十人以上の常用労働者の平均賃金ですけれども、昭和四十二年平均、全国では四万八千七百十四円、福岡県では三万八千七百五十一円、約七七%という低さです。しかも福岡県の賃金水準に比べて田川のような筑豊地帯の賃金水準はどのくらいかといいますと、これは県の労働部の調べですけれども、県の平均に比べて工場労働者は六三%、サービス業は六一%、全くの低賃金、非常にひどいです。ところがそのひどい地場賃金の八〇%以下の賃金のところに行けと言われる。それなら断われるけれども、八〇%以上のところでは、断わったらこれは誠実かつ熱心な求職者とは認めないという全くの言語道断なことをあなた方はやっていらっしゃる、実態から出発して考えてもらいたいと思う。一体日給四百円か五百円で一人前の人間が働いて食っていけるかどうかということですよ。だからいま特に筑豊地帯、福岡県一般もそうだと思いますけれども、地場賃金の八〇%という水準、もしくは八〇%でない地場賃金の水準でもいい、これが失対労働者の賃金以下あるいは職場適応訓練を受けておる期間中の諸手当の合計以下という事態が出ておる。これがもし逆の関係になっておれば、あなたの一般論もあるいは無理ないというふうに考えてもいいかもしれません。私はそうは思いませんけれども、いいかもしれませんよ。しかしいま全く逆の関係が出ておる。普通失対労働者の賃金というのは、これは普通の職場で働いた労働者の賃金より低い。比べてはいかぬというが、一人の人間が生活を維持することができるかどうかという点については、これは比べるのが当然のことだ。その失対労働者の賃金以下、はるかに低い、そういう状態が現にある。だから職場適応訓練を受けた人でも、あまり賃金が安いからそういう職場は困るという、これは理の当然じゃないですか、どうですか。それをそう言ったからといって誠実かつ熱心な求職者でないと言えますか、お答えいただきたいと思う。
  238. 上原誠之輔

    説明員上原誠之輔君) いまお話がございましたように、確かに筑豊地域の賃金は低いわけでございます。失対賃金に比べましてもあるいは低いという点があろうかと思います。これは申し上げますように私ども職業を紹介いたします場合の目安といたしましては、やはりその地域における賃金がどういう状態であるかということを基準にせざるを得ないのでございまして、食えるか食えないかという観点で考えていきます場合にはいろいろ問題が出てくるのでございまして、地域の賃金が低いのではないかということをおっしゃいますけれども、現実には先ほど申しますように、経済力が非常に疲弊しておるということで現実にその地域で支払われておる賃金が低いわけで、その低い賃金でその地域住民が暮らしをしておるということも、これは事実としてあるわけでございまして、私どもとしてはその地域における暮らしのささえとなっておる賃金を目安に置かざるを得ない、低いけれどもそれを目安に置かざるを得ないという考えでございます。
  239. 渡辺武

    渡辺武君 そうすると地場賃金が失対労働者の賃金以下の場合でもそれはやむを得ないと、こういうわけですか。
  240. 上原誠之輔

    説明君(上原誠之輔君) 先ほど申し上げますように、失対賃金とそれから民間の賃金、地場賃金を直接比較をするということは、実は問題があるわけでございます。かりに同一地域同種労働者に支払われております賃金が失対賃金より低いという場合がかりにあるとすれば、それをもってして低い賃金が適当でない、失対賃金に比べて低いということは適当でないというふうには言えない、というふうに私考えております。
  241. 渡辺武

    渡辺武君 賃金が低いかどうか、失対賃金以下であるかどうかということで、いま私が言っているのは一つの目安にすぎない、賃金が低いかどうかということは、ほかの原則でいろいろきめることはできる。しかし一つの目安として、現に失対労働者が働いて、そうして一定の賃金を受け取っている。筑豊地帯でいえば大体男は七百三十円、女は七百円、これが二十二日の平均稼働とすれば、男は一万六千六十円、女は一万五千四百円、こういう賃金を受け取っている。これよりもはるかに低い賃金で、職場適応訓練を終わった人が就職を強要されてそれを断わることができない。断わったらこれは誠実かつ熱心な求職者とは認めない。何事ですか、これは。人情でしょう。あなたもさっきおっしゃったでしょうが、できるだけ高い賃金のところへ行くのは望ましいと言った。それを高い賃金のところへ行きたいといったら、それがなぜ誠実かつ熱心な求職者と認められないんですか。当然高いところの賃金をほしいと、もう少し賃金の高いところの職場へ行きたいというのは人情ですよ。誠実かつ熱心な求職者であればあるほど、そうなるのが当然のことである。それを誠実かつ熱心な求職者と認められないとは何事でしょう、どうですか。
  242. 上原誠之輔

    説明員上原誠之輔君) お気持ちは十分わかるのでございますけれども、一般的にその地域で支払われております、いわゆる地場の賃金より以上のものがほしいということは、それはそういう要望はあると思います。しかしそれかといってそれに固執をして、たとえば中高年措置を受けたい、あるいは失対に入りたいということが適当でないということを申し上げておるわけでございます。私どもの職業紹介の基本といたしましては、それはできるだけ高い賃金を支払う事業所の紹介をするということは、これはやらなければいかぬと思います。ただ高い賃金がもらえないからといって中高年措置を受けたいとか、あるいは失対に入りたいというのは適当じゃなかろうというのが私どもの判断、あくまでもやはりその一地域における一般的に支払われている賃金というものを目安にして考えてもらいたいということでございます。
  243. 渡辺武

    渡辺武君 もう一つそれでは聞きますけれども、もし地場賃金の八割の賃金水準が、訓練期間中に受け取っていた訓練手当よりも低いという場合はどうですか。
  244. 上原誠之輔

    説明員上原誠之輔君) 先ほども申し上げますように、訓練期間中の手当、これは訓練手当と一般に言っておりますが、その訓練手当の額よりも、かりに地場の賃金が低い——地場の賃金の八割が低いということになりました場合に、それがいやだということでそれよりも高い条件を固執されるということになりますれば、これはやはり中高年措置を受けさせ、あるいはまた失対に紹介するというようなことは適当でないというふうに考えます。
  245. 渡辺武

    渡辺武君 あなた方が出されたこの通達、職発七七五号というのがあります。それの別添資料を見ますと、誠実かつ熱心な求職者と認めるかどうかということの条件として、地場賃金の八割以下の賃金の場合、それを断わった場合には誠実かつ熱心と認めるが、それ以上の場合はだめだという基準と、それからもう一つは、訓練期間中の手当、これの百分の百よりも低い場合はどうか。低い場合ならば断わっていいけれども高い場合ではだめだということが言われている。あなたの言われたのと違うじゃないですか。
  246. 上原誠之輔

    説明員上原誠之輔君) 間違いございません。私いま申し上げたとおりでございます。
  247. 渡辺武

    渡辺武君 間違いございませんて、それでは説明にならぬじゃないですか、両方出ているでしょう。
  248. 上原誠之輔

    説明員上原誠之輔君) 訓練手当の百分の百ということでございますので、指導手当の百分の百ということでございます。
  249. 渡辺武

    渡辺武君 訓練手当ですか、指導手当ですか。訓練手当と書いてあるでしょう。
  250. 保科真一

    説明員(保科真一君) 紹介先の事業所を断わった場合の正当な理由のある場合の基準でございますが、いま失対部長から申し上げましたように、地場賃金の八割以下の賃金の事業所へ紹介した場合、その場合断わっても正当な理由があるということになります。それからもう一つは、就職指導措置を受けております場合に就職指導手当が出ます。この就職指導手当の百分の百、就職指導手当より低い賃金をもらっている事業所へ紹介した場合、この場合は正当な理由があるということになっておりまして、訓練手当のことではございません。
  251. 渡辺武

    渡辺武君 就職指導手当の百分の百というのは了解しましたけれども、とにかく失対賃金の低いということについては、これはもう全国の賃金水準と比べてみればすぐわかる。それから、いま私が申し上げた、訓練期間中に受け取っていた諸手当の合計以下という賃金は、これは異常に低い賃金だといわなければならぬ。あなた方は全国一般的に考えて地場賃金云々という、一応の基準だというふうに言っておられるけれども、しかし、さっきも何回も申しますように、福岡県のような失業多発地帯、したがってまた、地場賃金が非常に低い。そういう事態ではこれは一般論じゃ律せられない問題がある。あなた方がそこのところを十分に考えないで、地場賃金の八割以下でなきゃ断わることはできぬのだというような全くばかばかしいことを言っておられるから、だからせっかくたくさんの国費を使って職場適応訓練をやって半年なり、一カ月なり一生懸命でもって技術を習得したその失業者が、これが適職につくことができない。結局のところ失業者として何の技術も生かせない、そういうことになる。働きたいという気持ちを持ち、働く能力もまだ持っているのに、無理やり生活保護者にさせされてしまっているというのが実情じゃないですか。結局そういうことだから、福岡県の労働事情あなた方も必死になって何とかして押えようと思っておったって、失業者は生きていくための権利がある。職業選択の自由という権利もある。人間らしい生活をする権利もある。その権利に基づいて戦わざるを得ない。したがって、失業多発地帯など地場賃金が著しく低い場合には、いまあなたがおっしゃったような事態ではなくして、これについては当然特例を考えるべきだと思いますけれども、どうですか。
  252. 上原誠之輔

    説明員上原誠之輔君) 先ほどからのお話で、何か中高年措置の実施によって失業者にしごきを加えて失対に行けないようにしようという意図があるんではないか、というような御発言もあったのでございます。この点から申し上げますと、私どもといたしまして、先ほどから申し上げますように、失業対策事業の運営につきまして、これはあくまでも第二義的な就労の場でございまして、第一義はあくまでも常用雇用の促進ということでございます。まあしかし、常用雇用の促進という面につきましても限られた地域、あるいは失業情勢の非常に企業の力の弱いところでは、雇用の面も非常に窮迫いたしておりますので、したがって、常用雇用もなかなか進まないという面も出てくる。したがいまして、私どものほうといたしましては、何も失対に入ってくることを閉ざしているわけではございません。福岡県につきましても、過去におきまして相当数が失対事業に就労せざるを得ないという事態にあるわけでございます。ただしかし、やはり何と申しましても常用雇用の促進、常用雇用にしていくということが基本でございます。したがいまして、そういうふうな方向でいろいろと安定所のほうでも苦労をいたしておるわけでございます。この面につきまして非常に行き届かない面があることも十分承知をいたしておるのでございます。そういう点につきましては、今後とも十分改善の措置を講じていかなければならないというふうに考えておるのでございます。以上でございます。
  253. 渡辺武

    渡辺武君 特例を考えることが必要だと思うがどうかという質問ですけれども、その点はどうですか。
  254. 上原誠之輔

    説明員上原誠之輔君) いまの点につきましてでございますが、地域によりまして特例をつくるという点につきましては、先ほど申し上げますように、地域地域につきまして賃金事情というものが差があるわけでございまして、一つの地域について特例を設けていくということは、技術的に見ても非常に問題があろうかと思っております。要は、やはりそういう低賃金の事情が招来してまいります基本的な部分というものをなくしていく。すなわち筑豊地域につきましては、あの地域の根本的な産業の伸展ということを考えていかなければ、基本的な問題の解決にはならないというふうに考えるのでございます。かりに、地場賃金よりも高いということで基準を置きますと、これは常用雇用というものができないわけでございます。その結果中高年措置あるいは失対に安易に依存をしていくという結果を招来いたしますので、そういう点は適当じゃなかろう、こういうふうに考えるのでございます。
  255. 渡辺武

    渡辺武君 筑豊地帯の産業を振興するのをあなた方はどのくらい一生懸命で努力しているか知らぬけれども、それが振興するまで失業者なんてとっても待っちゃいられないですよ。先ほど申しましたけれども、きょうあすのめしはどうするかというのが失業者の切実な問題です。それを産業振興するまでこれはもう低賃金でもかまわないからがまんして就職しろと。ところが、あなた方はそんなこと言っても低賃金であればこそ食っていけないから、だから定職につくことができなくなってしまっているのです。それが実情ですよ。あなたはさっきからもう何べん私が質問しても、実情をつかんでいないからということでもって、いまおっしゃったような抽象論、全く福岡県の失業者の血の出るような思いを、何の考えもなしにそういうことを言っていらっしゃる。私は実情を調べてきてここで言っている。福岡県の現実に根ざしてここで言っている。そういう抽象論を言っているから、さっき私が申し上げましたように、ばく大な国の金を使っておきながら効果のないことをやっているじゃないですか。職場適応訓練、そうして失業者をますます塗炭の苦しみに追い込んで、結局のところ、これは日本の低賃金制度を維持するために労働省職業安定局が働いているとしか考えられない、そういう実情ですよ。しかも失対労働者に入れたら、就労させたら安易にそれに依存するとは何事ですか。みんな食えないから必死になってどこか適職に就労したいと努力して、努力してもどうにもならないから、せめて生きていかんがために、当然憲法で保障された生存の権利を、これを守っていくためにも、ほかになければ——これはもう法律にきめられているのです、失業対策事業に就労するということは。適職がなければそうなる。それをあなた方は法をじゅうりんしてやろうとしない。これは政治として正しい姿じゃない。私は福岡県の実情に根ざして、あなた方がこれを解決するために、特にこの低賃金を強要し、労働者を無理やり全く法に合致しない低賃金、無権利の職場に強要するというこのやり方はやめるべきだと思う。そうして先ほど申しましたように、特に賃金については特例を設けるべきだということを強く要求します。  最後に、もう時間が——すぐ終わります、済みません。最後にもう一つだけ伺いますけれども、政府は職場適応訓練を、ひとたび誠実かつ熱心な求職者であるという認定をして、そうして職場適応訓練生として訓練している。ところが、その訓練が終わったあとで、いざ常雇い就職しようかという段階になってきて、またいろいろ文句をつけて、ああでもないこうでもないという小理屈をつけて、その上でまた誠実かつ熱心な求職者かどうかということでこれをまたこそげ落としてしまい——ということで認定取り消しにしてしまう、こういうことをやっておる。これはもう全く実情にも合わないし、失業者の希望にも反している。一度誠実かつ熱心な求職者であるという認定を受けて半年なり一年なり職業安定所の指導のもとで熱心に職業訓練を受けた人は、これは当然その人の権利としてやはりもし適職がなければ、これは失対事業に就労できるような道を開いてやる必要があると思うのです。法律の形式だけはそうなっている。しかし、事実上はそうなっていないというところに私は問題があると思う。ですから、職適就労者に対する認定は特に慎重にして、その合法的な権利を守ることを根本として、特にいま述べた賃金は失対賃金以下の場合、あるいは職場適応訓練中の諸手当の合計以下の場合には就職を断わることができるというような条件も含めて、もし本人の要求があれば、無条件に失対事業に就労できるようにすべきだと思うけれども、どうですか。
  256. 上原誠之輔

    説明員上原誠之輔君) これは毎回繰り返して申し上げるようでございますが、失業対策事業は、一般の正常雇用という場がない場合のかりの就労の場でございます。したがいまして、私どもといたしましては、まず第一に失業者に対しましては、常用就職の道を見つけていく。これに万全の措置を講じていって、失対事業よりも安定した民間の雇用の場につけていくということを基本にしておるわけでございます。したがいまして、どうしても民間におきましての安定雇用がないということになりますれば、そうして、しかもなおかつ熱心かつ誠実に求職活動をするという事態が認められますならば、生活の確保のために失対就労の場を提供する、そういう基本的な考え方で運営をいたしております。
  257. 渡辺武

    渡辺武君 全くコンニャク問答を聞いておるような気がしますよ。そういう抽象論を聞きたいために私はわざわざ福岡県まで行って実情を調べて、そうしてきょうあなたにおいで願ったのじゃない。法律でもってきめられておるたてまえを全く現地でもって踏みにじって、不法不当なことがやられておるこの現実をどうするか、ということをあなたに聞いておる。それを、法律はこうなっております、こういうたてまえでございますというような答弁じゃ、何の答弁にもならぬのです。よく実情を調べて、福岡県の失業者の利益になるように、初めあなたがこの公式の席上ではっきりと申しましたけれども、失業者の生活の安定をはかることが目的の一つだということを言っておられる。そのほかとにかく憲法その他の国民の基本的人権を守るという見地に立って、いま起こっておる問題について、失業者の要望にこたえる方向で解決の道を講じていただきたいと思う。もっと言いたいこともあるけれども、きょうはもう時間が過ぎましたので、これでやめておきますけれども、なお最初に申しましたように、残されたいろいろな問題があります。ありますから、またこれは次の機会に譲りたいと思います。
  258. 木村禧八郎

    委員長木村禧八郎君) 本日は、これにて散会いたします。    午後四時五十四分散会