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説明員(高辻正已君) ただいまの御質疑の中にもございましたように、
沖繩は御
承知のとおりに平和条約によってアメリカ合衆国が行政、立法、司法の三権を掌握いたしております。これは遺憾なことでありますが、この上に立って
沖繩の問題についてはいろいろ
考えてまいらなければならぬことは申すまでもございません。そういう意味合いから、ただいまのお
ことばの中にもありますように、これを、そこの選出議員については多少違うところがあるのもやむを得ないだろう、しかし、できるだけ近く、同じような
立場に立たせるようにという
お話でございますが、それはまことにごもっともなお
考えであろうと思います。そこで、違うところは一体何か、尽きるところはそこであろうと思いますが、私
ども、前から申しておりますように、この中身について積極的にこうしようという意図を持って申し上げる
立場にございませんので、中身についてどういうことであるかということは申し上げられませんが、ともかくも職掌上、憲法上どうであろうかという問題につきましては
お答えをすべきものでございますので、これを正直にどう思うかと言われれば、やはり憲法の四十三条、これは御
承知のとおりに
国会の両議院の組織員の実は資格を書いております。それは「全
国民を
代表する
選挙された議員でこれを組織する」とあるのは御
承知のとおりでございますが、この「全
国民を
代表する
選挙された議員」でない者が、
国会の両議院のいずれかに入ってその議決に加わるということは、これはもう全く憲法違反になるという問題でございます。この問題を
考えますのは非常に重要な点でございますので、これはひとり
内閣法制局長官がこう思っているというだけではむろん私は足りないと思っております。やはり衆参両院の法制局なり、やはりそういう
方々の御意見もよくお聞きいただきたいと思いますが、私が
考えておりますのは、やはりこの憲法の前文あたりからもう明らかと思うのでありますけれ
ども、憲法の前文には、申し上げるまでもなく、「そもそも国政は、
国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は
国民に由来し、その権力は
国民の
代表者がこれを行使し、その福利は
国民がこれを享受する」という有名な文句がございますが、そこからも明らかなことだと思いますが、
代表者を選任する
国民というのは、すなわち国政の権力のもとに立ちますとともにその福利を享受する地位にある者をさすと見るのがこれは当然であろうと思います。これはそんなことをわざわざ回りくどく申し上げませんでも、民主的な統一組織の基本原理からいいましても、国政との
関係における
代表する者と
代表される者との等質性ということが基本の原理になっているように
考えるわけでございます。したがって、はなはだ遺憾なことでございますけれ
ども、
沖繩におきましては、
日本の統治権は及んでおらない。まさにアメリカ合衆国の施政権がそこに行なわれておる。したがって、施政権が
返還というようなことになればむろん何の文句もないわけでございますが、したがって、そういう意味でも施政権の
返還というのを一刻も早くやるべきだと思いますが、現状において、そこから選出される議員が全
国民を
代表する議員だというふうに断じ切るについては、皆さん相当深くお
考えをいただくべきではないかという
考えを持っておるわけであります。
もう一つは、「
選挙された議員」というのがございまして、一説によりますと、
選挙された議員、
選挙の手続は法律で定めると憲法にあるからそれはそれでいいではないか。国法で、向こうで
選挙された者を
日本の法律で
選挙された者とみなせばいいじゃないかということがいわれております。しかし、もう少し深く
考える必要があるのではないか。その
選挙については憲法のたしか四十四条だったと思いますが、そこには
選挙の資格とか、いろいろな
選挙の中身についていわゆる平等でなければいけない、差別をしてはならぬという規定がございます。これは憲法十四条から当然に来る平等主義の原則でありますが、
選挙については特にそういう規定があるわけであります。したがって、
日本の国法が
沖繩に適用されていて、同じような公職
選挙法のもとに
選挙されるということならこれは安心でございますが、やはりいまの
立場でいくということになりますと、
沖繩における
選挙は
沖繩法令に基づく
選挙でございまして、確かに了解事項には、
日本の公職
選挙法に沿ったものでなければならぬというふうに期待する、向こうも異議がないということは言っておりますけれ
ども、これが同じものであるという保障は何らございません。まあそういう意味で、まさに「
選挙された議員」という、その
選挙に憲法が
要請しているもの、これがそこで十分に要件を満足するものであるかどうか、これは何らの
日本の主権が行っておりませんから保障がございません。そういう意味でも、「全
国民を
代表する
選挙された議員」と的確に言えるかどうか。そこをかなり神経質にわれわれは
考えるわけでございます。まあ、
沖繩の事情を
考えればその辺はもう少し大ざっぱに見ていいではないかというような御意見もあるいはあるかもしれません。できることならそうしたいのでありますけれ
ども、やはり法律を受け持っております私
どもとしては、国権の最高機関の構成員にかかることでございますから、その辺はやはりかなり真剣に、慎重に
考えていただきたいというふうに
考えるわけでございます。さしあたり、私の意見を長々と申し上げて申しわけございませんでした。