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1968-08-09 第59回国会 衆議院 予算委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和四十三年八月一日)(木曜 日)(午前零時現在)における本委員は、次の通 りである。    委員長 井出一太郎君    理事 小川 半次君 理事 北澤 直吉君    理事 正示啓次郎君 理事 二階堂 進君    理事 藤枝 泉介君 理事 加藤 清二君    理事 中澤 茂一君 理事 小平  忠君    理事 広沢 直樹君       相川 勝六君    愛知 揆一君       荒木萬壽夫君    上村千一郎君       植木庚子郎君    小沢 辰男君       上林榮吉君    川崎 秀二君       黒金 泰美君    小坂善太郎君       坂田 英一君    鈴木 善幸君       田中 正巳君    登坂重次郎君       中野 四郎君    野田 卯一君       野原 正勝君    福田  一君       船田  中君    古井 喜實君       松浦周太郎君    松澤 雄藏君       松野 頼三君    大原  亨君       川崎 寛治君    北山 愛郎君       久保 三郎君    阪上安太郎君       田中 武夫君    楢崎弥之助君       畑   和君    森本  靖君       山内  広君    山中 吾郎君       横山 利秋君    麻生 良方君       塚本 三郎君    浅井 美幸君       石田幸四郎君    松本 善明君 ───────────────────── 八月七日  次の委員会開会要求書が提出された。    予算委員会開会要求書  予算委員会を左記により開会するよう衆議院規 則第六十七条の規定により要求する。   一、期  日 遅くとも八月八日を目途と          し、一日間の開会を要求す          る。   一、審議事項    1. 総合予算に就いて    2. 米価について    3. 基地問題について    4. 其の他  昭和四十三年八月七日   衆議院予算委員長      井出一太郎殿          予 算 委 員 加藤 清二          同       中澤 茂一          同       小平  忠          同       広沢 直樹          同       大原  亨          同       川崎 寛治          同       久保 三郎          同       北山 愛郎          同       阪上安太郎          同       田中 武夫          同       楢崎弥之助          同       畑   和          同       森本  靖          同       山内  広          同       山中 吾郎          同       横山 利秋          同       麻生 良方          同       塚本 三郎          同       浅井 美幸          同       石田幸四郎 ───────────────────── 昭和四十三年八月九日(金曜日)     午前十時十五分開議  出席委員    委員長 井出一太郎君    理事 小川 半次君 理事 北澤 直吉君    理事 正示啓次郎君 理事 二階堂 進君    理事 藤枝 泉介君 理事 加藤 清二君    理事 中澤 茂一君 理事 小平  忠君    理事 広沢 直樹君       相川 勝六君    愛知 揆一君       荒木萬壽夫君    上村千一郎君       植木庚子郎君    小沢 辰男君       上林榮吉君    小坂善太郎君       坂田 英一君    塩谷 一夫君       田中 正巳君    登坂重次郎君       中野 四郎君    西岡 武夫君       野原 正勝君    船田  中君       松浦周太郎君    松野 頼三君       大原  亨君    川崎 寛治君       北山 愛郎君    久保 三郎君       阪上安太郎君    田中 武夫君       楢崎弥之助君    畑   和君       森本  靖君    山内  広君       山中 吾郎君    横山 利秋君       麻生 良方君    玉置 一徳君       塚本 三郎君    樋上 新一君       山田 太郎君    松本 善明君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 赤間 文三君         外 務 大 臣 三木 武夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         厚 生 大 臣 園田  直君         農 林 大 臣 西村 直己君         通商産業大臣  椎名悦三郎君         運 輸 大 臣 中曽根康弘君         郵 政 大 臣 小林 武治君         労 働 大 臣 小川 平二君         建 設 大 臣 保利  茂君         自 治 大 臣         (国家公安委員         会委員長)   赤澤 正道君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 木村 俊夫君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      田中 龍夫君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官北海道開発庁         長官)     木村 武雄君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 増田甲子七君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      鍋島 直紹君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         人事院総裁   佐藤 達夫君  委員外出席者         公正取引委員会         委員長     山田 精一君         防衛施設庁長官 山上 信重君         防衛施設庁総務         部長      鐘江 士郎君         法務省刑事局長 川井 英良君         外務省アメリカ         局長      東郷 文彦君         大蔵省主計局長 鳩山威一郎君         特許庁長官   荒玉 義人君     ───────────── 八月五日  委員横山利秋辞任につき、その補欠として岡  田春夫君が議長指名委員に選任された。 同日  委員岡田春夫辞任につき、その補欠として横  山利秋君が議長指名委員に選任された。同月九日  委員川崎秀二君、黒金泰美君、森本靖君、塚本  三郎君、浅井美幸君及び石田幸四郎辞任につ  き、その補欠として塩谷一夫君、西岡武夫君、  石橋政嗣君玉置一徳君、山田太郎君及び樋上  新一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員塩谷一夫君、西岡武夫君及び玉置一徳君辞  任につき、その補欠として川崎秀二君、黒金泰  美君及び塚本三郎君が議長指名委員に選任  された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  閉会審査に関する件  予算実施状況に関する件      ────◇─────
  2. 井出一太郎

    井出委員長 これより会議を開きます。  まず、国政調査承認要求に関する件についておはかりいたします。  先般来の理事会の協議に基づき、予算実施状況について調査を行なうことにいたしたいと存じます。つきましては、この際、議長に対し、国政調査承認を求めることとし、その手続委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  直ちに委員長において所要の手続をとることといたします。      ────◇─────
  4. 井出一太郎

    井出委員長 引き続き、閉会審査に関する件についておはかりいたします。  予算実施状況に関する件、及び予算委員会運営改善に関する件、以上二件につきまして、議長に対し、閉会審査の申し出をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 井出一太郎

    井出委員長 御異なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  なお、閉会審査案件で付託になりました場合、委員を派遣して現地を調査する必要もあるかと存じますが、その際の派遣委員の選定、派遣地決定等につきましては、委員長に御一任願い、議長承認を求めることにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。      ────◇─────
  7. 井出一太郎

    井出委員長 それでは、これより予算実施状況に関する件について調査を進めます。
  8. 松本善明

    松本(善)委員 議事進行について発言を求めます。
  9. 井出一太郎

    井出委員長 松本君から議事進行についての発言を求められましたが、従来の慣例上、理事会で協議いたしまして取りはからいたいと思います。さよう御了承願います。  これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。北山愛郎君。
  10. 北山愛郎

    北山委員 私は、日本社会党を代表して、米価及び食管制度を中心として二、三政府お尋ねをいたしたいと思うのであります。  本年度米価問題は、すでに通常国会以来非常な論議を重ねまして、複雑、深刻な経過を経ておるわけであります。七月を越えて、すでに旧盆を前にして、いまだ本年度生産者米価がきまらない、こういうことはきわめて異例なことであると思うのであります。そこで政府は、佐藤総理は、この国会におきましても、すみやかに米価決定する、また、農民納得できるような米価決定するというような発言をされておるのでございますが、それでは説明にはならないと思うのであります。そこで私は、まずもって農民納得のいく米価決定する総理の基本的な構想というものをここで明らかにしていただきたい、まずこの点をお尋ねをするわけであります。
  11. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 北山君にお答えいたします。  ただいま御指摘のように、もう収穫期を前にしてなお米価がきまらない、これは私まことに残念に思っております。もちろん重大なる問題でありますから、なかなか簡単にもきめかねる、これはもっともだろうと思います。  そこで、ただいま米価決定基本的考え方はどうか、これはもうすでに御承知のような過去の方針を私踏襲しております。もう北山君もその道のベテランですから、政府基本的方針はよく御了承だと思います。私、重ねて詳しいことは申し上げません。これをひとついままでの経過どおり考えいただきたい、かように思います。
  12. 北山愛郎

    北山委員 これは私だけが納得をすればいいという問題ではないのであって、総理としては、やはり国民に対して、特に問題となっておる本年度生産者米価でございますし、また、これに関連をして総合予算主義であるとかあるいは食管制度の問題がからんできておるわけであります。したがって、例年の例とは本年度米価問題というものは違うのではないか。そこで、特に今年度における本年度産米の生産者米価決定についての総理の基本的なお考え国民の前に明らかにしていただきたい。どういうふうな基本構想決定をされるのか、これを明らかにしていただきたいのであります。
  13. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの食管法で定めるその方向で私ども米価決定する。これは国民の大事な食糧確保、そういう意味で再生産に支障を来たさないように、同時にまた、国民消費生活から見ましても、それが負担できる、そういうところに消費者米価のきめ方もありますが、とにかく生産者米価消費者米価との関連においてはそれが正常化であるように、この点を考えるわけであります。ことしは特に古米の持ち越し量が二百六十五万トンにもなっている、こういう関係もありますし、その需給関係をひとつ考慮する。これはことしにおいてひとつ特に考うべき事柄であります。  さらにまた、ことしは、四十三年度予算編成に際しまして総合予算主義を打ち立てて、そして、この方針のもとに私どもはこの予算を編成した。したがって、今回の米価の問題と取り組むにおきましても、この基本的方針は堅持したい等々のことを考えて、そして適正な米価のあり方というものを考えるということでございます。この三点、これに特に今回の米価決定におきましては重点を置いて考えていきたい、かように私考えております。
  14. 北山愛郎

    北山委員 食管法規定に従ってきめるということでございますが、ただ、本年は食管法運営についてのいろいろな意見がそこにはさまってきておるわけであります。したがって、その内容等については、あとでまたいろいろお伺いしたいと思いますが、ただ、総理として、農業あるいは米の問題について基本的な心がまえとして十分お考えを願いたいことは、単に経済的な合理性というものでこれを押し切ってはならないということであります。米は、申すまでもなく、国民経済土台であり、国民生活をささえておる非常に重要な食糧であります。単に金のものさしだけではかることはできないということであります。お札を輪転機にかけてどんどん印刷をすることはできましても、米については、一粒の米も一年かからなければとれないということであります。こういう点を十分考えられまして、日本経済の最も重要な土台としての米の生産、この問題を、その意味を十分考えて対処していただきたいと思うのであります。  そこで、これに関連をして、総理は、今度の参議院選挙の際に、米の統制食管制度改廃論議はまだ早いんだ、食管制度改正論議をするのもまだ尚早であるということをたしか言われました。また、自民党の福田幹事長は、食管制度は堅持すると言われたのであります。ところが、選挙が済むと、直ちに、政府食管制度検討に着手する、そういう時期にきておるというふうなことで、この一月ばかりの間に総理考え政府考えが非常に変わっておるのであります。その心境といいますか、そういうふうに変わりました理由というものをここで明らかにしていただきたい。
  15. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま北山君の言われるように、米の問題は、これは国民経済上から考えましても、これはたいへんな重大問題であります。さような重要性を十分認識してこの問題と取り組まなければ、とんでもない間違いが起こると思います。それが前提であります。その点は、北山君の御指摘になりましたとおり私も考えております。  ところで、現在は食管会計のもとにおいて米の需給をはかっているといいますか、配給しておる、こういう状況でございますから、この問題が簡単に変われる、さような状況ではない。これはもう国民生活にしっかりと根をはやし、同時に国民経済と切り離すことのできないいまの状況でありますから、そのこととは私も考えております。したがって、私ども選挙中におきましても、食管会計根幹はこれを維持する、かように申してきた。だから、その点では、これはもうだれも御異存はないと思う。この点は、根幹は維持するということでございます。  そこで、さようには申しておりますが、しかし、これは抽象的に批判してみると、いままでのような制度そのままを維持するということもよほどむずかしくなっているのじゃないか、したがって、いまこれを改正する、かようには私申しておりませんが、改正と取り組むべき時期にきているのではないだろうか、こういう問題をいま提案しているというのが政府の実際の状況であります。(「ごまかしてもだめだ」と呼ぶ者あり)これはごまかしではありません。そのとおりをちゃんと所信表明でも申しておりますから、これはもうはっきりしております。したがって、私はこういう考え方ですが、皆さん方もひとつその方向考えていただくか、あるいはそんな考えは必要ないと言われるか、それがただいまの問題ではないだろうかと思います。  私は、いまの需給状況や、米の生産や、また生産者米価消費者米価との関係等考えてみると、ただいまは食管制度についてもやはり基本的に検討すべき時期ではないだろうか、かように私は思っております。これが政府の率直な提案でございます。
  16. 北山愛郎

    北山委員 私の聞いているのは、総理自身が、一月前には、食管制度改正論議はまだ早いのだとみずから言われたのです。それが、選挙が済むと、たちどころに改正検討をすべきではないかという提案をされるのはおかしいではないですか。その間に、検討の必要はない、検討にはまだ早いと言っておられた総理が、いまここでそういうことを言うのはおかしいと私は聞いているのです。
  17. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは、特別な具体的な廃止、あるいはこれに改正を加える、こういうような先走った意見が出ておりますから、私は、こういういまのままの状態が続けて行けるとは思えないが、とにかくこれはくふうすべき時期に到来したのじゃ、ないかという提案はいたしますけれども、しかし、その提案自身が直ちに食管会計を廃止するとか、これに特別な改善を加えるとか、そういう具体性はないこと、これだけははっきり知っていただきたい。私は、選挙中において、そういうような具体性のある提案はしておらない。また、具体性のある政策を述べる時期ではない、これが私の言い方であります。したがいまして、私がただいまのような提案をいたしましても、これは政府が具体的にきめる、そういうものではなくて、各界、各方面の意見を十分聞いて、しかる後に具体的な案を提出すべきだ、これが私の考え方であります。したがいまして、私は別に矛盾を感じておりません。
  18. 北山愛郎

    北山委員 総理、何とおっしゃっても、秋田で、秋田農民が米の生産に働いておる姿をわきに見て、そして、食管制度改廃論議はまだ早いのだから検討する必要はないということを言われたんでしょう。そうしておいて、いまはその必要があるとは、これはどうしたっておかしいですよ。どう申そうとも、総理がいまおっしゃったことを農民納得しない。選挙だから、食管制度の問題には手をつけないぞ、そんなことを検討するのはまだ早いぞというようなことを言っておきながら、選挙が済むと、いきなりもう食管制度改正検討に手をつけるというのはおかしいじゃないか。しかも、それだけじゃないのです。政府の、農林省だけじゃなくて、大蔵省、企画庁、みな食管制度根幹に触れるような構想を次々と出している。しかもそれが、単に新聞等に発表するだけじゃなくて、国会委員会においてその考え方を述べておる。  昨日の大蔵委員会において大蔵大臣が、食管法改正案を次の通常国会に出すというような考え方を明らかにしている。一体、大蔵大臣はいつ農政担当者になったのか、この問題について大蔵大臣から説明を求めたいのであります。
  19. 水田三喜男

    水田国務大臣 きのうは、御質問がございまして、この食管法改善についてどう思うかということでございましたから、食管法はこの運用を改善する必要がある。それじゃどういうふうに取り組むかということでございますから、これは総理所信表明にもありますように、検討する時期にきたと私どももそう思いますので、これから検討する、検討するが、いま内容がきまっておったり、政府意見がきまっておるわけじゃない、検討した結果、政令を直して済む程度のものであればそれでいいが、法律事項に触れるというような問題が出てきたら、そのときは国会に提出するということを言ったわけでございまして、きわめてあたりまえのことを私はきのう申したと思っております。
  20. 北山愛郎

    北山委員 しかし、委員会発言することは、個人の意見を言うんじゃないんですよ。これはやはり政府の閣僚として、大蔵大臣としての答弁をやっておるわけでありますから、やはり政府の、大蔵省なら大蔵大臣としての公的な意見だと思う。聞かれたから答えた、聞かれたから答えるのなら、それは私の所管ではございません、農林大臣所管ですという答えでいいじゃないですか。
  21. 水田三喜男

    水田国務大臣 私も国務大臣として質問をされたわけでございまして、政府としては、政府部内でこれから検討する、そうして政府考えがきまったというときにはその措置をとるつもりであると言ったので、私が国務大臣として、政府意見がきまったらそういうふうにするだろうと言ったことは、ちっとも越権でも何でもないと思います。
  22. 北山愛郎

    北山委員 それなら、各省のそれぞれの所管というものはあってなきがごときものであって、どの大臣でも、他の省の、担当でないことをどんどん答弁してもかまわない、見解を述べてもかまわないということになってしまう。これは常識に反するのであります。  そこで私は、あらためて、その自由米構想なるものを大蔵大臣から聞きたいのであります。どういうお考えですか。  これはなぜ質問をしたかといえば、大蔵省が、だれが発表したか知らぬけれども買い入れ制限であるとか自由米構想というものを省の中で論議をして、それが外部に発表されておるから大蔵大臣質問するのです。そうでなかったら、だれも大蔵大臣質問しませんよ。そのお考えをひとつここであらためて述べていただきたい。どういう構想であるのか。
  23. 水田三喜男

    水田国務大臣 大蔵省は発表したことはございませんが、きのうの質問におきまして、どういう改善をするかという、これから検討するその事項のうちには、いろいろなものがたくさん考えられる。たとえば特定の米、品質のいいものをどうしても必要とする業者があったとすれば、それは特別にその米を買えるというような改善ができるかというようなことも考えたが、いろいろ検討すると、これはむずかしい問題がたくさんあるということを申しただけでございまして、自由米構想を述べたということはございません。
  24. 北山愛郎

    北山委員 しかし、大蔵省の中で、いわゆる買い入れ制限考え方あるいは自由米構想なるものが伝えられておるのです。それを質問したのに対して大蔵大臣は答えたのでしょう。大蔵大臣は、一体いまの食管制度、いまの米の統制というものをどうしよう、どうしたほうがいいと考えておられるのですか。そういう考えがなかったら、食管法改正の必要ということも出てこないと思うのです。何か考えがあるからでしょう。あるならここで述べていただきたい。
  25. 水田三喜男

    水田国務大臣 改善の必要があると思いますので、どういう改善をしたらいいかということを、いま検討を始めているということでございまして、その内容はまだ固まっていないということでございます。
  26. 北山愛郎

    北山委員 この問題について、農林大臣からお考えを聞きたいのであります。それから、あわせて、一体買い入れ制限あるいは米の生産の抑制、そういうことの必要性があるのかどうか、これを農林大臣から述べていただきたい。
  27. 西村直己

    西村国務大臣 実は米の問題は、これはもう申すまでもなく、たいへん大事な問題でございます。また、米並びにこれを管理する事柄についての所管責任は、行政としては私の責任であることは、もう申し上げるまでもないのであります。  そこで、実は私の考えといたしましては、単に米だけの問題ではなくして、農政全般の中に占める米作あるいはそれからくるところの管理制度等々が、当然そういう形でもって論議をされなければいけないのでありまして、単に米価であるとか管理であるとか、これだけではありません。そこで私は、かねて総合農政というたてまえにおいてその転回の考え方を省議にかけまして、そうして少しでも全体の姿勢を正す中においての米というものを——もちろん米は王座であります。総合食糧の中の王座であります。これをどういうふうによりよく農民のために、また消費者のために扱ってまいるか、こういう考えであります。
  28. 北山愛郎

    北山委員 私がきょうここで政府に聞くのは、いろいろな構想が出ておるわけですね。企画庁からも出ておる。大蔵省からも出ておる。あるいは農林省からも出ておる。そこで、おそらくいま農民は非常な不安だと思うのであります。一体政府は、来年度予約米の制度をやめるのか、いままでどおりやるのか、あるいは買い入れ制限をするのかしないのか、一部の米を自由米の制度に移していくのかいかないのか、その点をはっきりするのが国会じゃないですか。国会の場じゃないですか。それをやらないならやらない、たとえば買い入れ制限検討するとか、自由米制度検討するとかしないとか、その点をはっきりすべき段階だと私は思うんですよ。それをあいまいにしておるからおかしい。あいまいにしておいて、新聞社とかそういうところにはどんどん流しておる。だから、みんなが迷うんですよ。一体、来年度買い入れ制限をするのかしないのか、自由米制度をとるのかとらないのか、この点をこの国会ではっきりしてもらいたい。
  29. 西村直己

    西村国務大臣 ただいまそういう買い入れ制限というような問題が御質問になっておりますが、はっきり申し上げますが、今年度の米につきましては、もう買い入れ制限なんていう問題は毛頭ないことは、これは明らかでございます。食管制度の中の一つの問題でありますから、これは将来に向かってどうするかというのは、これから検討をすべきではないか。総理の所信としてその判断がある以上、これから検討する。検討も、ただ行政当局だけではなくて、できれば幅広い視野で、しかも時間をかけてやってまいりたい。これが私の考えであります。
  30. 北山愛郎

    北山委員 ただ検討するんじゃいけないんですよ。やはり検討するという以上は、いまの制度のどこかが悪いと思うからでしょう。どういう点が悪くて、どういう方向に直すのか、そういう基本構想を述べてもらいたい。これは総理にお伺いします。
  31. 西村直己

    西村国務大臣 食管制度につきましては、すでに総理大臣所信表明に出ておりますように、食管制度根幹は維持しながら、その改善というために検討を加える時期にきたと思う。すなわち、これから食管制度根幹を維持するという制限のもとに、私どもは、改善はいろいろございましょうが、それを各方面の意見を徴しつつやってまいりたい、こういう考えであります。
  32. 北山愛郎

    北山委員 根幹は守るというけれども、枝葉を切ってしまえば、根幹だってこれは生きてはおれないんですよ。これは、ことばの論議は私はしません。しかしながら、少なくとも、いまの米の統制食管制度というものは、食糧そのものを管理統制するということなんです。全量——一粒の米に至るまで国が買い上げなければならぬということはないでしょう。ないでしょうけれども、とにかくいまの米の統制は、物そのものをいわゆる直接統制をしていくということなんだ。だから、大蔵大臣考えておるような、いわゆる自由米制度をしけばこれは間接統制になるわけです。私は、新聞で見ておるんですが、水田大蔵大臣は、ちょうどいまのイモでん粉と同じような、一部のものを価格安定のために、政府が操作するために、米なら米を買う、あとのものは自由販売にする、こういうような私案か何か知らぬけれども持っておられるようでありますが、そういう考えを持っておるんですか。
  33. 水田三喜男

    水田国務大臣 別にまだそういう考えは持っていません。
  34. 北山愛郎

    北山委員 そうすると、何もかもまだきまっておらぬ、こういうことなんですが、それならば聞きますけれども、一体佐藤内閣は、今年度買い入れ制限もしないと言いますが、来年度いまの予約制度を続けていく考えなのかどうか、あるいは一部のものを自由販売、自由米に移していくという考えがあるのかどうか、あるいは買い入れ制限をするような考えがあるかどうか、こういう点について、大体の、大筋の方向でもいいのです。総理考えを聞きたいのです。
  35. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、所信表明で申したように、いまの制度についてやはり改正を加えるべき、検討をすべき時期にきている、かような考え方を持っております。ただいま事務当局にそういう意味でこれの検討を命じておるわけであります。しかし、これが事務当局だけでもきめ得ないものであること、これは先ほど来農林大臣もお答えしておりますように、米の問題は簡単に事務当局だけできめるというようなものじゃない。各界、各方面の意見も聞いて、しかる上で結論を出すべきものだ、かように実は思っておるのであります。だから、いままだ出ていない。それは一体どうだと言われましても、現実にただいまの段階では結論が出ておらないのですから、これから検討するのだということを実は申し上げておるのであります。(「荒筋でいいのだよ」と呼ぶ者あり)荒筋にしろ何にしろ、何といっても各界の意見を聞かないことには、私ども簡単にはこの問題に取り組めない。それはまた発表いたしますと、たいへんな誤解を招くということだと思います。きょうも実は閣議で私はさような発言をいたしまして、この問題については、何ら結論も出ていないうちに先走った議論をひとつやめてもらいたい、これは誤解を招くし、事柄の性質上、国民経済から見ても、また国民生活から見ても、また生産者から見ても、これはたいへんな問題だ、だから、その点ではもっと慎重にしてもらいたい、こういうことを実は申し上げておる次第であります。ただいまそういうような新聞記事その他が出ておる、そういうところから、慎重さを各閣僚にも要求しておる、これが実際でございます。したがいまして、私は皆さん方からも——現状でいいとおっしゃるのならこれは何をか申しません。しかし、現状においてこれは何とかしなければならないとお考えだろうと私は思います。さように考えると、皆さん方からも御意見を聞きたいと思います。私は、積極的にそういう意味ではいいものをつくる、そうしてみんなが安心のできるような、生産者も消費者もすべてが安心できる、こういうものをつくりたいと思います。そういう意味では、幾らでも御意見があればひとつ聞かしていただきたいと思います。
  36. 北山愛郎

    北山委員 問題は政府が提起しているわけですよ。検討の要がある、検討の要があるという以上は、いまの制度のどこが悪い、都合が悪いから直すというなら、その方向に問題点はあると思うのですよ。何やらわからずに検討の必要があるなんと言ったら、これは子供の議論にもならない。どこか直さなければならぬから検討の要があるという問題点を出しておるのでしょう。そうすれば、こういう点を直さなければならぬ、ああいう点を直さなければならぬという問題点があると思うのです。ただ検討の要があるといって、何の方向もない、みんなの意見を聞いてきめる、それじゃまるっきり検討する必要がないと同じことなんです。どういう点をどういう方向で直そうとしていくのか、しゃべったらいいじゃないですか。何をおそれているのです。
  37. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 しゃべったらいいじゃないかと言われますが、これはしゃべるとなかなか誤解を受けやすいのです。だから私は、ある程度案が固まらないうちにしゃべることはまずいじゃないか、責任ある政治家としてはそういうことは気をつけるべきだと思う。ことに、皆さん方がお考えになりましても、いまの制度は一体どういうわけでできたのか、そのことをお考えになれば、昔の戦時統制、また戦後食糧の不足しておった、そういう際にできた制度そのものを金科玉条にするというのは何か無理があるのじゃないか。実情とそのできたときとは、とにかく非常な開きがあるのじゃないか、これはだれでもわかることなんです。これを一体どうすればいいか。しかし、これを簡単に、いまの食管制度をやめるとか、あるいは自由米にこれを切りかえるとか、かような発想が出たら、それは必ずいろいろな混乱を生ずるだろう。だから私は、いまの基本的なものは、いまの制度ができたその当時と現状と比べてみて、そこに非常に開きがある。一番みんなふしぎに思うのは、とにかく配給はできる、しかし、過去においてはわれわれはうまい米を食えた、しかし配給の結果うまい米が食えない、政府が何もかもみんな買い上げて、政府の配給だ、そういうところから国民はうまい米を食えないのだろうか、あるいは非常に食糧が豊作、豊作なら大体は安くなるというのが普通の考え方だ、どうしてそれが安くならないのか、これは国民が疑問を持つ。私は皆さん方にも考えてもらいたいのは、この食管制度を設けたそのときの状態と、いまは変わっているのだ、そのことを考えて何かくふうしなければならない、かように私は実は申し上げておる。しかし、それをただ政府が独善できめようというわけでもありません。消費者の立場だけできめようというわけでもない、また生産者の立場だけできめようというわけでもありません。だからこういう問題を投げかける、これは私は政府の当然の責務だと思いますから、投げかけることはよろしい。同時に政府責任をもって、この投げかけた問題を解決するものをつくっていく、これが政府責任じゃないか、かように私は考えております。
  38. 北山愛郎

    北山委員 幾ら問答しても、要するに政府は、国会を通じて食管制度検討の要ありと言いながら、政府考え方方向、どこに問題があるのかということを明らかにしない。むしろこのことは、農民その他一般国民に大きな疑惑を巻き起こすだけだと思うのであります。  そこで、ちょっと視点を変えてお尋をしますが、それならば、いまの日本の米の生産というものはやはり多過ぎるから少し押えていこう、そのほうが好ましい、それが必要だというふうにお考えになっていますか、農林大臣
  39. 西村直己

    西村国務大臣 御存じのとおり、昭和三十九年から四十年代にかけては必ずしも供給は十分でありませんでした。しかし四十一年ごろから回復し、四十二年は史上まれに見る豊作でありまして、現在、四十二年度自給率は、正式には計算してありませんが、おそらく一一〇をこえる、こういうような状況に立っておる。これが一時の現象でありますればいいのでありますが、おそらくは、ここしばらくは続くであろうという専門的な回答をいまわれわれのほうとしては持っておるわけであります。言いかえれば、やや恒常的な状態にこれはいく、急激な変化はない。一方、消費の状況、需要の状況でありますが、どちらかというと、個人当たりは減ってきております。人口はふえておりますけれども、個人当たりは減ってきておる。そこで、いわゆる出来秋における持ち越し米が累増してまいる。こういう中において、私どもとしては量より質という方面へやや方向をとっていくべきではないか。もちろん、それは全体の農政の中において大事な米でありますから、あくまでもわれわれは自給度というものは堅持をしつつ、かついろいろその過程においては、他のいわゆるおくれたる畜産その他というものとかみ合わせつつ、おもむろにこれを転回してまいる、こういう考え方であります。
  40. 北山愛郎

    北山委員 そこで、米が少し余る方向にいっている、だから米の生産をやはり押えていって、ほかのほうに転換させる必要がある、あるいは量より質であるというようなお考えのようでありますが、非常に具体的な問題ですけれども、ことしの産米の生産者米価決定にあたって、いわゆる反収基準というものを引き上げて、そうして平均反収に近づけていく、いわゆる平均以下の限界農家といいますか、生産性の低い、反収の低い農家の部分はこの基準からのけていくというような方向でことしの生産者米価決定するというように聞いておりますが、それは今度の、ことしの生産者米価決定にそういう考え方が入るのですか。
  41. 西村直己

    西村国務大臣 この間米価審議会に出しました政府の参考試算についての御質問だと思います。いわゆるシグマ問題といわれておる問題であると思うのであります。言いかえますれば、もちろん今回の生産者米価の、いわゆる政府の参考試算をいたします場合に、再生産確保を旨とする、これについては労賃の評価がえであるとか、その他すべてやってまいるわけでありますが、一方、これだけの大きな供給量を持っておる中において、多少の供給の状況、いわゆる需給の緩和の状況を示す意味において〇・一、シグマというものを下げている。これは事実積算上、下げているわけであります。ただし、これは急激に農家の生産意欲に影響してはならないので、私としてはきわめてわずかな部分を試算の積算の上においてとったわけでありまして、これを直ちにそれじゃ将来平均反収にくっつけるのかどうかという問題は、まだゆっくりこれからのやり方について考えるのでありまして、ことしやったから来年そうだ、そういうふうな意味ではなくて、さしあたりこれだけ、二百六十五万トンというようなものを持っておる段階においては、そういうようなことも、平均反収の中のごく一部、いわゆる限界生産のごく一部というものを下げるということについてはやむを得ないのじゃないかという意味で、いわゆるシグマ問題〇・九に変えた、こういう経過をたどっておるのであります。
  42. 北山愛郎

    北山委員 少なくとも米価決定の中にやはり生産抑制といいますか、平均以下のものをだんだん少なくしていこうという考え方が入ってきておる。  そこで私は、また別の問題をお伺いするのですが、いま実は東北、北海道等におきましては、この数年来米の増産運動が行なわれておるわけであります。全国的にもそういう傾向でありますが、私どもの岩手県でも産米五十万トン目標あるいは新潟県では百万トンというふうに、各県とも反収を引き上げる、あるいは増反、開田の運動が行なわれておるわけでありますが、東北だけでもことしで二万ヘクタールの田がふえている。岩手県でも五千町歩といわれておるのです。こういうことは各府県が主となって増産運動をやっておるのですが、これに対しては一体政府としてはどういう方針をとるのか。また政府としてもすでに昭和四一年に土地改良の長期計画を立てられて、相当な開田計画をもって開田、干拓等を進めていくというふうな計画でもって増産の政策をとり、そのために金を使い、また融資もしておるわけなんであります。そういう方針に従って各府県がそのような増産運動をやっている。この運動については一体どういうふうに措置をされるのか、このまま奨励していくのかどうなのか、この点をはっきりしてもらいたいのであります。
  43. 西村直己

    西村国務大臣 今日の農民の努力、また米がこれだけ増産化されているということは、一面においては国としても非常に力であります。しかし同時に、これだけにそれではそのまま置いていいか、こういう問題も一つあります。それからもう一つは、農政全体を見ました場合に、国民の需要動向が、いわゆる動物性のたん白質とか、その他非常に需要が変わってきております。特に一番問題になっておるのは畜産部門であります。そこで私どもとしてはこれらをにらみ合わせながら、量も必要だが、同時に質ないしは総合農政の中における他の部門も調和をとって推進させる、この構想の中において考えていかなければならぬ。農業というものは、もう申し上げるまでもなく時間をかけなければならない問題でありまして、きょう言ったから一年後にと、直ちにできなことは当然であります。自然条件もあります。土地制約、歴史条件もあります。それは十分心得ながら、しかし、じゃこのままでいいかという場合に、私どもはそういう必要を感じますから、少なくとも三十七年につくりました長期見通しを、現在正確なデーターに基づきましてさらにこの秋には新しい長期見通し計画を立てる。そうしてそれを農政審議会等で成案を得た上で発表してまいる。これを国民にも示してまいりたい。同時に、いろいろ長期の土地改良計画等もございますが、これはいわゆる工場のつぶれ地とかその他等、これは単に水田だけではありませんで、草地のほうがおくれがちでありますから、草地の方面を相当土地改良で取り戻すとかいうような方法、それから各府県におかれましても、私どものこの考え方を知事さんを中心に取り入れていただくならば、生産性の高い開田はあってしかるべきだと私は思いますが、いたずらにただ米だけがいいんだというような思想のもとに生産性の低いところも開田が進むということは、今後なるだけ避けられるべきではないかと思うのであります。
  44. 北山愛郎

    北山委員 ちょうどビートの問題と同じように、政府が北東北にビートを奨励して、そして四千五百ヘクタールのビート畑をつくらして五年間やって、そのあげくには工場は閉鎖、二万戸の農民というものは非常に苦しんだ。ちょうど米が同じような状態になろうとしているのじゃないですか。私は現在、具体的に各府県が目標を掲げて増産運動をやり、その方向で開田、増田をやって米の増産を一生懸命やっているときに、米はもう多過ぎるのだから生産を抑制するんだ、量より質にいくのだ、これじゃ農民は全く不安だと思うのであります。一体、いま政府は具体的にどのような指導を各府県を通じて農民にされるのか、それをはっきりする必要がある。総理大臣、どうですか。
  45. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは先ほど来、農林大臣が申しておりますように、総合農政ということばで表現したり、あるいは総合食糧の確保、こういうような表現がされておると思います。しかしいままで日本農政根幹が米麦中心、麦は除きましても米中心の農政であるということ、これはもういなめない事実だと思います。したがいまして、ただいま言われますように、総合食糧というような点を声を大にいたしましても、なかなか在来からの考え方の切りかえはむずかしい、かように私は考えております。またそれには、ただいま言われますように、米の増産へのいろいろの補助、助成等が特別に考えられておる、かように思います。しかしこれはいままでが不都合だった、かように私は思いません。昨年のたいへんな豊作、同時にまた米価を引き上げた、そのことによって農家収入も非常に改善された、かように考えますけれども、この状態がいつまで続くともなかなか言えないのじゃないだろうか。やはり私ども食糧というか、基本的な米は何といいましても確保することに力を入れなければならぬと思います。私は今日までのことが間違った、かように思っておりません。ことに戦後の苦しい状態のことを考えると、米が余るような状況、これが絶えず続かないと私はたいへん不安だと思います。先ほど、食管会計について選挙中にいろいろ話したじゃないかというお話がございますけれども、私ば同時に、秋田でもその話をいたしました。米のないときのことを考えると、今回のように二百六十五万トン古米を持ち越すという、こんなありがたい時期はないじゃないか、これは農村の方々の努力の結果だ、私はそれは高く評価してしかるべきだ、かように思うという話をいたしました。しかし、それではこれが幾らあっても、どんどんふえてもいい、こういうわけのものでもないだろうと思うのであります。まあ適当なところで総合農政、そして総合食糧の確保、そういう方向へ切りかえていく、その指導は必要だろうと思うのです。しかし一部の地域では、果樹をつくれといっても、果樹はなかなかできるわけのものでもないでしょう。そういうようなところでそんな話はできない。ですからやはり総合農政というものも、何もかもつくれといったってそれはできるものでもありません。とにかく農業はやはり産業としての農業、これが永続的基礎を持つものだろう、かように私は思いますので、産業としての農業をやはり考えていく、かようになければならないと私は思います。農業基本法というものは大体そういう意味でつくられたものだ、かように思っております。また、いままで私どもがいろいろ話を聞いておりましても、これは天候によって左右される、豊作によって米が余ったとか余らないとか、そういうことであわてることはないと思う。問題は、一体どの程度の米を確保することが適当なりやいなや、そういう問題は、長期的には抽象的には言えるかと思います。しかし、これは天候に左右されるいまの状況のもとにおいては、私どもが望ましい姿だ、こういうものはなかなかできないのじゃないだろうか、かように私は思います。したがって、ただいまのようなお話が出ておりますが、いままで私は、これは非常に間違った、かようには思っておりません。戦後のあの食糧不足の状態から今日のような状況になったこと、これはたいへんな改善で、それはすばらしいことだ。お互いが安心してこの生活が続けられる、かように私は思っておりますから、こういう点はもう少し見方が、もっと長期的な、大局的な見方をしないといかぬのじゃないだろうか。こういう事柄は、非常に切り詰めて、しゃくし定木でなかなか計算的にできるものじゃないということを申し上げておきます。
  46. 北山愛郎

    北山委員 全くがっかりなんですね。一体、政府農政について何を考えているのか。米が余りつつある、米が余っているから自由販売にでもしようとか、あるいは抑制しようとか、量から質にいこうとか、そういうことを議論されて、しかも、そういうところから、おそらく政府としても食管制度検討の要があると、こう言うのでしょう。現実の問題として、地方で増産している農民は一体何をしたらいいのか、どういうふうに政府が指導するのかということを聞いているのです。しかも、そういういまの結果というのは、やはり農民がかってにやったのじゃなくて、いままでの農政の結果としてそうなってきたのだ。一体、総合農政総合農政というけれども総合農政って何ですか。ちょうど総合予算主義みたいなもので、何でも総合といえばいいかと思っているようだけれども、一体、総合農政って何ですか。
  47. 西村直己

    西村国務大臣 私は米だけの問題でなくて、食糧というものは、御存じのとおり国民が非常に大事に求めているものであります。これを安定的に供給する。もちろん、その中では主食としての王座を占めるものは米であります。しかし、今日米の消費は減って、その他のいわゆるたん白資源を強く求めてきておる。そのために外貨等が年間二十三億ドルくらいの農産物輸入もしておるような状況であります。したがって、国民の需要動向にも合わせていくこともまた長期的には農民のためになるのであります。  そこで今日、技術、農民の努力等によって米は相当な増産が進んで、ある意味からいえば、今日古米処理は相当な苦しい問題をしょってはおります。そういうような段階に立ちますれば、バランスをとってまいる。それでは、米は米なりでどんどんつくって、同時にまた、他のものにもどんどん国の財政をつぎ込んでやっていけるかというと、現実問題としてはおそらく財政にも限界があるであろう。もちろん、農政に対してはもっともっと国家投資さるべきではありますが、その中において、米にだけかけられやすいような農林省予算というものをできるだけ幅を広く使っていく。国民の需要にも合わせてまいる。ただ、誤解があってはいけないのでありますが、米の非常に大事な産地を押えようとか、私どもはそういう意味じゃありません。生産性の高いところにはこれからも開田もやりましょう、あるいは土地改良も十分やらなければなりませんが、ただ米がいいのだという思想のもとに自主開田が行なわれていったり、あるいは限界を越えた生産等が続いて、量のみがいたずらに流れ込んでくるというようなことであっては、農政としては少しゆがんだ、これは農業基本法の求めている姿ではない。したがって私は、総合農政というものは、構造政策としてすでに国会には農地の流動化のために農地法の改正をお願いしております。また農村の振興地域のためにも法律案を出しております。農協法のも出しておる。あるいはその他出しておりますが、同時に、構造改善だけではなくて生産対策、価格対策、流通確保の対策等をかね合わせて土地基盤の整備等をもかみ合わせていく、こういうところに総合農政の意義がある。同時に、これは農業基本法においてもまた求めておるものだ、こう考えておるのであります。
  48. 北山愛郎

    北山委員 どうも質問のしかたが非常にむずかしいのです。問題は、なぜ一体こうなってきたかというと、麦にしても大豆にしても、あるいはリンゴにしても、あるいは酪農、乳業にしても、農家にすればみんな安心してやれるものはなくなったわけなんですよ。たった一つのとりでが米なんです。価格が不安定で、だから麦の生産も減る、大豆は自由化になって、まるっきり外国の大豆だけで国内の需要をまかなっておるというようなかっこうでしょう。自給度がみなまるっきり下がってしまったのだ。麦は半分ですよ。大豆はほとんど一〇%以下の自給度しかないという状態なんです。なたねもそうです。ビートも、ビートの奨励をしておきながら、今度は砂糖の自由化をしたためにビートはつぶれていく。リンゴだってもういまは、果樹果樹といったけれども、リンゴ畑を掘っくり返して水田に切りかえておる。畜産も最近では頭打ちです。乳牛をつぶして肉にしておる。そういう事態で、たった一つ米は直接統制で、ともかくも政府が買ってくれるというのだから、米をつくってきておるわけなんです。政府にいまのようなお談義を話されてもどうにもならないと思うのです。一体、現状をどうするのかという具体的な方向を、総合農政総合農政というならば、米以外のものが、たとえば乳牛なら乳をしぼってやっていけるというような具体的な政策はどうなんだ、こういうふうにするのだ、米からこのように流動して移すのだというふうな具体的な政策を示さなければならぬじゃないですか。それを私は要求しておるのです。総合農政というものはそういうものなんです。
  49. 西村直己

    西村国務大臣 申し上げますけれども、私は、もちろんこれは口がすっぱくなるほど申し上げるように、米は主食の王座であります。しかし同時に、消費者の強く求めておる酪農関係、肉類、こういったものに対しましては、もうすでにどちらかというと自給が落ちる傾向、これは、ただ価格さえささえればいいのだういうだけの問題では私は解決しないと思うのです。それでは価格だけをやればいいというのではなくて、やはりそれに対してはそれにふさわしい草地であるとか、多頭飼育であるとか、そういったような生産性の向上なり生産基盤の整備をやれるような形の中でやっていく、これを総合農政において私どもは推進したいのであります。
  50. 北山愛郎

    北山委員 さっき農林大臣が言ったように、いまの農業基本法ができた当時から、これからの需要は米でなくて果樹だ、畜産だ、いわゆる選択的拡大だというのがあの当時の、七年前の農業基本法だったでしょう。ところがやってみて、現実には畜産も果樹もそうならなかった。それでは農家が立たない。米の統制があったから、米だけがたよりになるから米へいったのですよ。政府総合農政をやっていなかったのだ。基本法をつくりながら総合農政をやっていないで、農家はそれについて畜産もやり、果樹もやってみたけれども、だめだからリンゴ畑を掘っくり返して水田にしておるのですよ。その現実はわかっておるはずなんです。それならばどうするかというのです。基本法に書いてあることの説明を求めておるのではないですよ。いまここにこのようになってきて、米だけがたよりになるという状態の中で米の増産運動をやってどんどん増産をしておる。それが一つの矛盾であるとするならば、具体的にどうするのだというのです。農民は不安じゃないですか。
  51. 西村直己

    西村国務大臣 農民が不安だからとおっしゃいますが、問題は、それでは農民の立場に立ったとしても、ただ、いま米の価格支持だけに求めて、他のものは米に転換していったらいいかといえば、これまた不安の理由だと私は思うのであります。むしろそれよりは、国民が需要として求めておるものと相まったような形になるたけ生産物を持っていくこと、これ自体は生産者と消費者と相合うわけです。それを価格の中だけですべて解決しようということでありますが、価格支持も大事でありますが、同時に、それに対する生産基盤なり近代化なり、その方法の方面に国家投資をやるべきでありましょう。また同時に、それに対する指導もすべきじゃないか、これが農業基本法の求めるものであり、また私どもが今回総合農政として訴えていきたいところなのであります。
  52. 北山愛郎

    北山委員 とにかく現実に矛盾が起きてきたこの米の問題を、単に価格の支持制度をやれと私は言っているのじゃないのですよ。どのようにしたらいまの問題を解決できるかということを聞いているのであって、農民は、いま米だけがたよりだから米の増産をやっている。それを、米ではもうだめだ、これからはほかの畜産その他もやれと言ったって、いままでやってきてみた結果が米に集中してきたんですから、従来の農政というものを大きくまた転換しなければならぬのです。そういう点を私は聞いているのですが、何一つまともなお答えができない。  そこで次に、米は多い多いというけれども、現在日本は、食糧を千七百万トンくらい、数量からいえばそういう膨大なものを外国から輸入しているわけです。もしも日本の周辺で何か問題が起きるとか、あるいは国内で大きな天災が起こるとか、そういう場合に食糧の用意がなかったら非常に困る国なんです。その点は、アメリカやソ連や中国とは違うのです。しかも、食糧の自給度というのはどんどん下がってきておる。そういう中で、私は食糧の備蓄制度というものがこの際考えられていいのじゃないかと思うのです。単に古米が二百六十五万トンも余ったから、もう生産は押えるべきだとか、そういうことじゃなくて、政府国民にかわって、そういう万一の場合の食糧の備蓄制度というものを考え必要性がないかどうか、ひとつ農林大臣からまずお伺いします。
  53. 西村直己

    西村国務大臣 ただいまの需給状況を申し上げますと、四十二年が千四百五十万トン、それに対して最近の消費が大体千二百五十万トンくらいであります。ことしは平年作であっても千三百万トン、あるいはそれをこえて、やはり昨年に次ぐ豊作になるかもしれぬという一応の状況下に立っておる。そうしますと、ことしの出来秋の持ち越しが玄米トンで三百万トン、精米トンで二百六十五万トン、それに四十四年度の出来秋の持ち越しがさらに百万トン前後あるいは加わるかもしれぬ。そして、この平年作が恒常的にここしばらくは続くであろう。それから消費のほうは、いまのところ消費増進を私どもはやりたいと思いますけれども、消費構造が変わってきております。したがって、米の消費というものはそれほど伸びない、停滞する。そうなりますと、大体二百五、六十万トン、いわゆる五、六カ月分からもう少し多く持つということが続くのであります。そうなると、一体持ち越しは普通の状況でどのくらいあったらいいかというと、ランニングストック六十万トンあればもういい。これに対して、さらに四倍以上のものを持っておるならば、これはもう非常事態の備蓄にも十分それを含めていいのでありまして、私どもは非常備蓄を特別に考えなくても、それだけでも十分備え得る、こう考えております。
  54. 北山愛郎

    北山委員 それは現状をただ固定化してものを言っているのであって、いままでの経過からすれば、三十七年、三十八年、三十九年と非常に需給が逼迫をしたでしょう。繰り越しというのは非常に少なかった。昨年から急にふえてきたのであります。しかも、それは反収からいっても、あるいは作付面積からいっても、必ずしも四十一年度まではあまりふえていない。昨年度に急に反収がふえたから余ったようなものであって、これは一時的な現象だと見なきゃならぬと思うのであります。私の言っているのは、恒常的に二百万トンなり三百万トンなり、そういうものをいざという場合の食糧として数カ月分を貯蔵していく、そしてこれを更新していくというような制度をとる。ちょうどイギリスがとっておるような制度。イギリスは過去の二回の経験にかんがみて、十二カ月から十八カ月分、いわゆる戦時体制に国内の生産状態を切りかえるまでの暫定的な期間の食糧の予備というものを、小麦、砂糖でもって用意しておる、こういう貯蔵計画を持っておるわけです。米だけの問題じゃない。そういうふうな貯蔵計画、備蓄計画というものが必要ではないか。あるいはそういうふうな戦争とか戦争状態のような場合でなくても、国内の大震災とかその他の天災事変という災害の場合を考えましても、米のみならず、いろいろな日用品その他こういうものを備蓄しておく必要があるのではないか。そういうものを完全に初めから備蓄米として別に取って、そしてこれを計画的に更新するというような制度を必要とするのではないか、私はそのように考えます。そういう意味での備蓄制度を言っているのであって、いま間に合うか間に合わないかというような現状だけを言っているのではないのです。こういう点について、ひとつ総理からもお答えを願いたいし、そういう計画も必要があるのではないかと私は思いますので、ひとつこれは要求をいたします。
  55. 西村直己

    西村国務大臣 いろいろな災害異変等に対しての備蓄的な食糧のあれは、これは総理府のところですでにそういうものを考えて、またある程度は指示してあるわけでありますが、同時に、米自体をどういうふうにそういう制度を起こして考えるか、これは一つの御意見だとは思います。ただ、そういうような形でいくか、少なくとも出来秋の古米をもみ貯蔵あるいは玄米の低温貯蔵等々の形によって両三年間保存しながら繰り越していく、これもいわゆる一つの事実上の備蓄になり得るのではないか、こう考えております。
  56. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私、先ほど北山君に、米がない、これはたいへんなことだ、そして二百六十五万トンことしは古米を持ち越すといっても、これは一年だけでそういうわけにはいかぬだろう、今後の問題もあるのだということを申しました。それにもやはりただいまのような構想、前提になる備蓄というような制度が要るのではないだろうか。備蓄制度を設けなくても、米を持っていることは、そんなに心配する筋のものではないだろう、かように私は思っております。いまは、もちろん戦時、戦争というようなことを考える必要はございませんし、また国際的にも、やはり日本だけでなくて、アメリカからも、遠くはスペインからも米を買っているような状況ですから、国際的な援助体制ができているので、昔のような備蓄米を持たなければならぬ、かようには私は思いません。しかし、国内で日本米がやはりつなぎになる、これはやはりある程度考える必要があるだろうと思います。ただいまの状況では、二百六十五万トンはとにかく多過ぎるというのがいまの問題で、この考え方は私も必要ではないかと思う。しかしその数量は、国際的にいつでも補給し得るような状況ですから、よほど範囲を縮減してしかるべきではないだろうか、かように思います。
  57. 北山愛郎

    北山委員 私は、この備蓄制度というものを、こういう米がいわゆる余るといいますか、持ち越しの多い時期にそういう制度を設けるのが適当じゃないか、このような考えをもってお尋ねしたわけであります。しかし、外部から侵略が万一ある場合というので自衛隊などもいろいろ用意しているようでありますけれども、私どもはそういう事態はほとんどないと思います。しかし、もしも軍備面でもってそういう用意をするというなら、まずもって国民食糧を確保するということが先ではないか。いわゆる防衛というものが国民の生命財産を守るという趣旨であるならば、私は、まずもって国民食糧その他の必要な資材というものを確保していくということが国の大きな責任じゃないかという意味で申し上げたわけであります。  そこで私は、いまの食管なりあるいは米価問題につきましては、残念ながら政府考えを隠しているというわけでもないでしょうが、はっきりした方向というものを聞くことができない、まことに残念だと思うのであります。私ども考え方を申し上げますと、私どもは、いまの農民の要求というのはやはりこれはやむを得ない。政策的にいえばいろいろ矛盾はあると思います。しかしながら、いま申しあげたように、いろいろやってみた結果——畜産もやり、果樹もやり、リンゴもやり、いろいろやってみた結果、どれをとってみてもそれだけでは農家の暮らしが立たない、こういうことからして、やはり直接統制のいわゆる食管制度のある米というものにたよってくるという経過を経てきているわけであります。したがって、当然農家の要求することは、私は無理がない要求だというふうに考えております。しかしながら、政策の上からするならば、私どもとしては、やはり生産者米価の値上げだけをもって解決をするというわけにはいかぬだろう。われわれとしては、それと同時に、いまの米のみならず、その他の農産物の生産価格というもの、コストというものを下げる方向政府の施策を進めていくべきではないか。土地改良にしても国が大部分を負担する、あるいは全額を負担するというような方向でやるべきてはないか。あるいは資本装備——機械をたくさん購入しますか、これがむしろ資本生産性を低くして、結局経営の上においてはマイナスになり、いわゆる機械貧乏になっている。こういうふうにさせないように、大型の機械は、国が各地にステーションなりサービスセンターを置いて、これを賃貸しをするような形で、機械のために借金をしないでも済むようにする。あるいは農薬にしても肥料にしても、農業生産のコストを下げる方向に農林省の予算を使うべきではないか。六千五百億の農林省の予算の中で、いまの二千四百億の食管の繰り入れ、その金のほうが赤字赤字というけれども機能しているのであって、むしろ、その他の三千五百億の土地基盤整備であるとか、あるいはその他のいろいろな奨励政策、生産政策、構造政策のほうが、いま申した機能効果を発揮していないのではないかというふうに私ども考えるわけであります。したがって、単に米価を支持するということだけではなしに、今後においては強力に生産コストというものを下げる方向に政策の重点を一つ置くべきではないかというふうに私ども考えます。いまのようにただ土地改良をやらせても、結局農民の自己負担によって借金の負担がふえるということではいけないと思うのであります。  それからさらに、米からかりに畜産に移動させるという場合に、米の値段を押えて畜産のほうあるいは果樹のほうに回すというのではなくて、米の直接統制を維持しながら、米と並んで、まずもって牛乳というものを、食管といまの米の統制と同じような措置をとって、そして乳をしぼってもやはり農家経営の柱ができるというふうな方向で、誘導転換をさせるというような方向で政策を進めるべきではないか。米がふえ過ぎたから米を今度は間接統制にするんじゃなくて、米の統制をやりながら、別な柱を立てて、そちらのほうに誘導して日本農業全体の構造を高度化していくということを、この七、八年の間に長期の計画を立てて進めるべきではないかというふうに考えるわけであります。  それから、政府が六年前に農業基本法をつくって——いま総合農政という話かありましたか、まさしく総合農政方向で基本法をつくって、これからは畜産、果樹その他のいわゆる選択的拡大の方向に進めるんだということでありました。また、経営の形としては自立経営——家族経営を自立化させるということで、百万戸の自立経営を十年間につくるといっておったのでありますが、それができない。どこまでも家族経営というものにしがみついておるからこれはできないのであって、われわれ社会党が言っておるように、やはり共同化の方向に経営の形態を思い切って進めるべきである。そして規模の拡大をはからなければ、家族経営のワクの中で規模を拡大するということでは、これはいつまでたっても実際にその政策が進行しない。その他いろいろございますけれども、そういう方向で、私どもとしてはあらためて社会党のそのような考えを盛った言うならば農業基本法のようなものを提示して、そして政府にその実行を迫る、そういう方向で対決をしてまいる考えであります。それが正しい方向であると思うのであります。単にことばの上で総合農政総合農政と言って、どこへ行くのかさっぱりわからないようなことでは私は困ると思うし、また農民もその方向に迷うのではないか、このように考えますので、いままでのいろいろな質問のことを取りまとめて私ども考え方を申し上げて参考にしていただきたい、こういうことを要望しておく次第であります。  次に、消費者米価の問題でありますが、宮澤長官お尋ねをします。  長官は、たしか消費者米価は据え置くべきであるという考えをずっと前に申しておられたようでありますが、その後値上げのほうに考え方を変えられた。これについてのお考えをひとつ述べていただきたいのであります。
  58. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 生産者米価消費者米価との間にはしゃくし定木のような関係があるわけではございませんけれども、やはり政府が買ったものを売るわけでございますから、何らかの関係がなければならないことは確かだと思います。それで、先ほどからお話しのように、農業の物的生産性が非常に低いのでございますから、ある程度価格政策を使わざるを得ない。今回もある程度生産者米価を上げるということになると思うのでございますが、そういたしますと、財政にもまた一定の制約がございます。したがって、家計米価の範囲内である程度その分は消費者が持つということは、私はやむを得ないだろうと思っております。
  59. 北山愛郎

    北山委員 私はやはり、いろいろ無理があろうとも、この際消費者米価は上げるべきでないという考え方をとっておるのであります。これは特にいまお話しのようにいろいろな物価が高くなってきておる。家計米価というワクの中で、いわゆる所得が伸びておりますから、その伸びておる分だけのワクの中で——たしか家計米価のワクが八・八%ですかふえておるから、その範囲内でならば消費者米価を上げてもよろしいというようなお考えのようでありますけれども、私どもとしては上げるべきでないと思うのであります。というのは、この家計米価の所得の内容をいろいろと見ますと、大体四人世帯でもって二万円ぐらいな食費であります。主食以外の全部の食料費を入れて二万円、そうしますと、一人で一日百五十円かそこらなんです。一体今日百五十円ぐらいで一人の食費がまかなえるものかどうか。その他の住居費にしてもあるいは教育費、雑費みな上がる際に、たとえわずかとはいえ、非常にぎりぎりの窮屈な食料費の中で消費者米価を上げるということは、この実態を考えてみた場合にやはり無理だ、この際上げるべきでないという考え方をとっておるのであります。  もう一つは、もしこの際消費者米価を上げますと、米の消費がますます減るのではないかということを私は心配するのであります。というのは、いままでの経過を見ると、昭和三十六年から三十九年ぐらいまでは、御承知のように消費者米価は横ばいであったわけです。そしてその期間は、一人当たりの消費量というものはむしろ逆にふえた。多少ともふえたのです。大体横ばいです。三百二十グラムぐらい。昭和四十年、ちょうど佐藤内閣ができてから米の消費が減ってきておる。ということは、四十年、四十一年、四十二年と連続大幅に消費者米価を上げたからなんです。そうすると、がたんとこの消費量が減ってきておる。そしてその分だけ麦の消費がふえてきておる。そして麦の輸入がふえてきておる。そういうことが数字面においても明らかになっておりますので、もしここで消費者米価を上げるならば、米の消費量は次第にさらに減る傾向を促進して、そして米が余るというふうな現象を激化させるのではないか、そういう点からしても、私は、この際多少の無理をしても消費者米価を上げるべきでない、こういう見解を持っておるのでありますが、重ねて宮澤長官からあるいはまた農林大臣からもお考えを承りたいのであります。
  60. 西村直己

    西村国務大臣 私のほうは、たとえば消費者米価は、先ほど宮澤長官からお話しのように、家計米価の範囲内において上げざるを得ないではないかと今回思うのでありますが、消費米価を上げると消費は減るのじゃないか、確かにそういう点も関係ないとはいえませんけれども、消費米価が長期にわたりまして据え置かれました昭和三十三年から三十七年の期間、この期間も、据え置いておっても、米の消費量は、三十五年をピークにして減少にきておることは見ておりますから、消費量の減少というのは、ただ消費米価が上がったからというだけではなくて、むしろ、所得が伸びまして近代生活に入った場合における需要のいわゆる変化、多様化、高度化、こういうような変化も影響しておる、こういうふうに見ております。
  61. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは消費者米価が上がらないで済むということであれば非常にありがたいわけでございますけれども、片方で生産者米価を上げるという必要があると思いますので、そうしますと、その間をだれが負担するか、結局納税者が負担をされるということになるわけでございますから、それにはやはりおのずから限度というものがあるのじゃないか、こう思うわけでございます。
  62. 北山愛郎

    北山委員 残念ながら、企画庁長官も、消費者米価よりも総合予算主義のほうが大事だ、こういう考えをとっておるようでありますが、私は、やはりいま申し上げたような理由から、しかもいろいろな諸物価が上がるという際に消費者米価を上げる、いままででも大体前年同月に比べて五%以上上がっていると思うのであります。そういうところへさらに米価を中心とする消費者物価が上がりますと、四・八%の目安では済まないようになるのじゃないかと思うのですが、その点はどうですか。
  63. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 本年度の第一・四半期の消費者価格の動きを見ておりますと、確かに北山委員の言われましたように、私どももなかなか容易でない事態だというふうに考えております。四・八%の中には、ことに消費者米価の上昇を見込んでおりませんので、今後よほどしっかり施策を進めていきませんと、なかなか四・八%というものを守ることがむずかしい。それにつきましても、したがって、今回の米価決定については、そういう事情も政府全体として考え、また御協力も仰ぎたい、こう思っておるわけでございます。私としましては、現在四・八%の目標は、やはり努力目標として守っていこう、こういうつもりであります。
  64. 北山愛郎

    北山委員 総合予算主義というものが前提になってものが考えられておるので、いまの消費者米価の問題も上げざるを得ないというふうなことになるのだろうと思うのでありますが、総合予算主義というものについては、この前の国会でもいろいろと論議をいたしました。私からいうならば、いまの財政法がすなわち総合予算主義であって、あらためて総合予算主義なんかをいう必要はないと思うのであります。原則としては、当初予算にできるだけの経費を計上するのがあたりまえであります。しかし、必要があれば補正予算は組むべきなのであって、それがいまの財政法上の総合予算主義のたてまえだと思うのであります。それを無理して、いまの経済変動の激しい中で、しかも諸物価が上がるという中で、財政だけを固定化させようというところに非常に無理があるし、その必然性といいますか、必要性すらも疑われる。そんな必要があるのかということを疑う。むしろ財政の硬直化ということじゃないか、そういう総合予算主義そのものが財政を硬直化さしておるのじゃないか、私はこう思うのであります。  なお、この前の国会でも言いましたように、財政が苦しい苦しいと言い、総合予算主義を言いながら、しかも防衛費と海外経済援助費だけは優先的にまかり通っているというこの事態は、私どもとしては何としても納得がいかない。来年度以降、約二千億の防衛費の予算をもう先食いをしておるのですよ。そういうことはやっておきながら、財政の健全化をはかるの、総合予算主義をとるというのは私はわからぬのです。  さらに、私はこの際申し上げておきたいのは、今度の経準白書の中で、非常に興味あることというか、私どもがこの前の予算指摘した問題と同じことをいっている。財政硬直化の原因の一つは歳入面の硬直化がある、いわゆる租税特別措置とかそういうふうな大幅のいろいろの減税措置があって、その目的が達しておるにかかわらず、その慣行が残されておる、それがあるために歳入面の硬直化がある、これを直さなければいかぬということが経済白書の中に書いてあるのでありますが、この点について大蔵大臣はどのようにお考えですか。
  65. 水田三喜男

    水田国務大臣 そういう問題もあろうと思いますので、十分検討するつもりでございます。
  66. 北山愛郎

    北山委員 たとえば土地税制のごときは、租税特別措置の中で、いわゆる居住用の資産あるいは事業用の資産とか、あるいは収用の場合の減税措置があるわけであります。租税特別措置の中では二百八十億の減収見積もりになっております。ところが、これの実態はそんな少ないものではないので、国税庁の調査によりますと、この収用特例等、いわゆる事業用、居住用の資産の買いかえの場合に減税をされる分だけ、いわゆる個人分だけでも八千億からの譲渡収益があるのです。八千億の譲渡収益を千七百億に切り下げて課税をしておるのです。ですから、そういうところから普通に取れば、二百八十億どころではなくて、千億、二千億のものが取れるわけですよ。土地の値上がりによって不当にもうけている連中に減税をやっている。こういう土地税制の間違った特別措置、これなんかもう直ちに直さなければならぬ。どうですか。しかも今度の税制調査会では、この制度はむしろ弊害があって、利益がない、制度である、減税をやったために、逆に土地の騰貴を刺激しておる、悪い制度だからやめるようにということが今度の税調の答申の中にあるのであります。それをわかっておりながら、いままでやめておらない。こういうものはたちどころに、この春の国会だって、買いかえ制度、買いかえの特例なんかすぐやめれば、千億や二千億の税収が上がってくるでしょう。あるいは法人、会社の交際費の問題にしても、そういうものが数千億あるのです。そういうものを整理しないから、いわゆる歳入面からの財政の硬直化がきているというのがいわゆる経済白書の指摘なんであります。  私は具体的に聞きますけれども、土地税制のいまの税調の答申の事業用資産、居住用資産の買いかえ特例というものは、来年度からやめますか、どうですか。
  67. 水田三喜男

    水田国務大臣 御承知のように、土地税制についての答申が税調から出てまいりました。したがって、土地税制についてはここで全面的な検討をしなければならぬと思っておりますので、来国会までには間に合うように、一連の土地税制についての検討をこれから始めて、次の国会に提出できるように準備するつもりでございます。
  68. 北山愛郎

    北山委員 それでは、いまの土地税制のいわゆる買いかえ特例という制度は来年度からやめるというふうに私は了解をいたします。  さらに、今度の選挙で私ども言って歩いたのですが、いわゆる配当控除の制度ですね。配当所得に対しては、税額控除があるために、株を何千万円も持って、その配当金が二百三十六万三千八百六十六円まで所得があっても、国税、所得税は一文もかからない、こういう非常に不公平な制度、これなんかさっそくやめなければならぬですよ。恥ずかしくて、こんなこと国がやっておる税制だと国民に言えないと思う。どうですか、こんなことはさっそくやめなければならぬじゃないですか。これだけでも数百億の財源が出てくるでしょう。これをやめますかどうですか。来年からやめてください。
  69. 水田三喜男

    水田国務大臣 これも御承知のとおり、税制調査会では、この法人税の仕組みをどうするかということは、国民経済に非常に大きい影響を持っておるので、もう少しこれは検討いたしたいということで、今度結論が出ませんでした。したがって、この問題の解決は来国会ではむずかしいというふうに考えています。
  70. 北山愛郎

    北山委員 こういうことこそが大蔵大臣のやる仕事なんですよ。食管制度なんかのことを心配するのは——よその畑のことを心配している。自分のところのいまの不公平な税制、しかも経済白書の中でまで指摘されて、そういう制度、租税特別措置その他の減税措置というものが、歳入の硬直化の原因になっているということを政府の文書の中で指摘されておる。そういうことを早く処理するのが大蔵省の仕事じゃないですか、食管のことを心配するよりは。  そこで次に、本生は、経済の成長が当初の見積もりよりも上回るようにいろいろと観測が出ております。大体ことしの経済見通しというのはどの程度に上がるのか。当初の名目で、一二・一%ですか、それより——一四%なり一三・五%なりいろいろの説がありますが、企画庁としてはどのようにお考えになり、また大蔵省としては、これに伴って税収というのはどの程度に伸びるのか、この点の見当をお聞かせを願いたいのであります。
  71. 水田三喜男

    水田国務大臣 税収の見通しについては、私どもも非常に関心を持っております。現に昨年におきましては見込みのとおりの税収が得られなかったという事情もございますので、しかも本年は、当初予算の編成のときに税は相当目一ぱいの見積もりをしておる関係で、この税収がどうなるかということは非常に関心を持っておるところでございますが、いままでのところでは、予算に対する税収歩合は去年よりも下回っているというのが実情でございまして、九月の決算が予想よりもよかったというときにどういう変化が出てくるか、いろいろ先の見通しについては不安定要素が多いことでございますので、関心は持っておりますが、いままでのとこでは、今年度の税収はどうなるかという見込みが正確に立たないという状態でございます。
  72. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 おそらく成長率は、ただいま御指摘のように当初考えましたのよりは少し高いであろうと思いますし、国際収支のほうもおそらく赤字を出すことはないだろうと考えておりますけれども、いま見通しを改定しようというつもりはございませんので、具体的な数字を申し上げることができません。  税収につきましては、いま大蔵大臣の言われたとおり私も思っております。
  73. 北山愛郎

    北山委員 時間がございませんので、先を急ぎますが、この総合予算主義についても、先ほど申し上げたとおりで、物価が上がるし、経済成長が変動するというような中で、財政だけを固定して補正予算を組まないというような方針は、むしろ硬直化した財政政策であるということを御反省願いたいと思うのであります。  なお、これに関連もございますが、最後に、人事院勧告の問題であります。公務員給与の問題でありますが、ことしもいろいろな生計費なり民間の給与等の値上がりなり、あるいは物価、いろいろな条件というものが非常に変わってきておりますので、当然相当大幅の公務員給与の引き上げ勧告が出るものだというふうに感じておりますし、またそのように伝え聞いておりますが、生計費にしても一二・七%、昨年の七%よりはずっと上回っておるわけであります。あるいはいわゆる春闘の相場にしても一三・五%、毎月勤労統計にしても一二・八%、物価は全国都市のあれが大体五・二%の値上がりということで、前年の三・一%に比べてずっと高いわけであります。こういう点もいろいろ勘案になっておられると思いますので、しかも三公社五現業の仲裁裁定は七・九%というようなことも勘案しますと、私ども聞いているところでは、八%以上というふうに聞いておるのでありますが、人事院としては、大体いつごろ、とのような——いま申し上げたような内容方向で勧告が出るのかどうか、人事院総裁のお考えを聞きたいのであります。
  74. 佐藤達夫

    佐藤政府委員 御承知のとおりに、人事院の勧告につきましては、人事院自身が六千数百の民間事業所に当たりまして、きわめて大規模、精密な調査をやりました上で、その結果得られました水準と公務員の水準とを突き合わせて、そこに出てまいりました格差を完全に埋めていただくという立場でやっておるわけでございます。したがいまして、ただいまお述べになりましたような一般の周辺の条件というものは、直接には響いてまいりません。私どもの調べました格差そのものが、われわれの絶対の基礎条件となるということで御了承願いたいと思うのでありますが、いずれにいたしましても、ことしはやはり勧告は必至だということは申し上げてよろしいと思います。私ども、鋭意その作業を続けておるわけでございますが、大体八月十五日めどでやっておりましたけれども、ちょっとおくれぎみのところもありますので、あるいは一両日おくれるかもしれませんが、そういうことで進行いたしております。
  75. 北山愛郎

    北山委員 なお、聞くところによりますと、本年の大学卒業生の中で、国家公務員の上級試験の応募者というものが減ったという話を聞いておるのでありますが、要するに、公務員の給与が低い、初任給が低いというようなことから、民間には出ても公務員にはなりたがらないというような傾向が出てきておるのではないか。これではやはり公務員全体の今後のいわゆる素質という点からして、憂慮すべき問題点であろうと思います。こういう点はまた考慮されるのか、そういう事実があるのか、この点も重ねてお伺いしたいのであります。
  76. 佐藤達夫

    佐藤政府委員 人事院は、給与の問題ばかりでなしに、公務員の採用試験のほうも主管しておるわけでありまして、できるだけりっぱな人材に公務員に入ってきていただきたい、そういう立場で、試験をやりますたびごとに、その試験の応募者の数、あるいは合格者がすべて官庁に入ってくれたか、あるいは民間にどのくらい逃げられたかというようなことを実に神経質に見守ってきておるわけであります。  ただいま御指摘のように、ことしは上級職の応募者もいささか減っておる。最近締め切りました高等学校卒業生の、すなわち初級職の試験の応募者も六%ばかり減っておる。これは世に伝えられております、きわめて深刻な求人競争のやはり一つのあらわれではなかろうかということから、これは従来からでございますけれども、私どもは、やはり公務員の初任給というものをよほど重要なものとして考えていかなければならぬという態度を堅持しておるわけであります。ことしもそのような態度で臨んでまいりたいというふうに考えております。
  77. 井出一太郎

    井出委員長 北山君、時間が経過しております。
  78. 北山愛郎

    北山委員 それではなお重ねてお伺いしますが、よく世間では人件費というものをきらって、何か人件費が多いことを悪のごとく考えておるような間違った傾向があるようであります。公務員というと、公務員の数が問題になったり、あるいは公務員の人件費が多い多いということをいわれますが、しかし、私の知っている限りでは、わが国の場合、公務員の数においても、またその給与費においても、いわゆる人件費というものは非常に少ない。しかも戦前では国家公務員のいわゆる一般会計の分について、財政規模の一〇%が戦前の比率だったようであります。それが戦後においては昭和三十二年に最高で一三・五%まで上がりましたけれども、それが最近はどんどん下がってきて、戦前以下、九%まで下がってきているように聞いておるのであります。こういう点について、人件費比率というものはふえてないのだ、むしろ全体の財政規模の中の割合というものは非常に圧縮されているというふうな数字になっていると思うのであります。こういう点をひとつ総裁から明らかにしてもらうと同時に、しかも人事院の勧告というものは、申すまでもなく、いわゆる公務員の争議権を剥奪されておる代償として人事院というものが置かれ、その勧告において処理をするというたてまえになっておるわけでありますが、毎年の勧告が政府によって完全に実施をされておらない。昨年も八月からですか、五月から実施をしてもらいたいというような勧告が毎年問題になっておる。この点は私どもとしても非常に遺憾に思っておりますし、やはりせっかく勧告を出される人事院としても残念だと思っておるのでありますが、こ点についても総裁としての気持ちを明らかにしてもらいたいと思うのであります。
  79. 佐藤達夫

    佐藤政府委員 ただいま最後にお述べになりましたことは、私どもとしては非常に重要な問題だと思うわけであります。おっしゃるとおりに例年——まあ最近二回ばかり前進は見せていただきました。その点は敬意を表せざるを得ないと思いますけれども、私どもの勧告を申し上げた時期からはまだ隔たっておる、相当遠いということで、今後も十分努力をしてまいりたい、お願いをしてまいりたいと思います。
  80. 井出一太郎

    井出委員長 北山君、時間です。
  81. 北山愛郎

    北山委員 最後に政府から……。いわゆる総合予算主義というワクの中で米価の問題も考える、あるいは公務員の給与も考えるというような狭いことでは私はいかぬと思うのであります。しかも先ほども申し上げたとおり、ほんとうの意味の財政硬直化じゃない、税負担の総体の割合からいっても、あるいはいま申し上げたような租税の中で、取るべきところから十分取っておらぬというふうな実態から考えましても、財政が硬直化しているからもう補正予算は組まないというような狭い考え方じゃなくて、やはり予備費には一応計上しておりましても、食管の問題、米価の問題あるいは公務員の給与の問題にしても、必要によってはこれは補正予算を組むというような気持ちで、特にいま申し上げたような公務員についての人事院勧告完全実施にできるだけの最高の誠意を尽くしてもらいたい、こういうことを一言お願いをして、総理からお答えを願って私の質問を終わります。
  82. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 総合予算主義、これは私ども四十三年度予算編成に際してとった基本的方針でございます。そこで、ただいまも言われますように、千二百億の予備費が計上されております。その範囲内でできるだけまかなっていくように、この上ともこの方針は守りたい、かように私考えております。  また、公務員の人事院勧告につきましては、これは在来からの方針どおりこれを尊重する、その実施につきましても政府はあらゆる努力をする、かように御了承いただきたいと思います。
  83. 井出一太郎

    井出委員長 午前の会議はこの程度にとどめ、午後は零時三十分から開会することとし、暫時休憩いたします。     午前十一時五十四分休憩      ────◇─────     午後零時四十五分開議
  84. 井出一太郎

    井出委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、委員長より申し上げます。  先刻、松本善明君から質疑要求の御要望がありましたので、理事会において協議いたしました結果、予算委員会における発言者数、その順位、発言時間等につきましては、理事会においてあらかじめ協議し、その結果により委員長として諸事を進めてまいるのが従来からの慣例であります。今回は開会日数が一日であり。各党からの質問希望者が多数ありましたので、本日の質疑者数を社会党三名、民社党一名、公明党一名と決定いたした次第あります。松本君の要望につきましてはさらに検討することとし、本日の議事は理事会決定のとおり進めたいと思います。御了承願います。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  85. 井出一太郎

    井出委員長 よって、さよう決定いたしました。
  86. 井出一太郎

    井出委員長 質疑を続行いたします。田中武夫君。
  87. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは質問に入ります。  私は主として当面する経済の諸問題についてお伺いをいたすつもりでございますが、その前に総理に、政治の姿勢と申しますか、政治のあり方、あるいは国会議員のあり方、そういうことについて簡単にお伺いをいたします。  今日、テレビのドラマを見ても、落語、漫才に至るまで、政府はうそをつくもの、国会議員は悪いことをする、こういうことをテーマとしたのが国民に受けておるようでございます。まことに残念なことでございます。そういう国民の政治に対する不信、あるいは国会議員に対する疑惑は、政府はもちろん与野党議員がともにそれを除いていく、晴らしていくということに努力をせねばならないと思うのであります。  そこでお伺いいたしますが、七月の二十四日ですか、日通事件の捜査が終わったというその翌日、各紙にここに私二、三の新聞の切り抜きを持っておりますが、たとえば「政界へ一億九千万円」「四十七議員“献金”受取る」、「議員名、公表できぬ」「裏切られた粛正」、「日通事件の“政界とカネ”」、そうして評論家にわざわざ意見を述べさして「政治家の名、公表せよ」まだたくさんございます。「日通事件・霧の中の終幕」等々こういうように出ているわけです。ところが、これを見た国民は何と政界はきたないものだろう、国会議員というものは、こういうことで疑惑を持つのが当然だと思うのです。そこで、こういうものに対してそういう国民の政治不信を除く、あるいはまた国会議員に対する疑惑を晴らしていく、国民の前にはっきりさしていく、そういうためには、総理はどのように努力をしたらいいとお考えになっておりますか。
  88. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま田中君が御指摘のように、およそ民主主のもとにおける政治が行なわれる、そのために最も大事なことは、国民が政治を信用するというか、信頼するというか、この国民の信頼を裏切るようなことはあってはならない、これはもう御指摘のとおりであります。  したがいまして、不幸な日通事件その他のものが伝えられる。私はこういうことを徹底的に究明すること、これはもちろん必要だと思います。私自信が清潔な政治、これをモットーにいたしまして、そうして努力をしておる。これは国民の皆さまも十分理解してくださることだと思います。この意味において今後とも一そうの努力をしなければならない、かように考えております。日通事件等が起きたことについては、私まことに残念に思っております。これの事柄を徹底的に究明すると同時に、いやしくも国民から不信を買う、こういうようなことを政治家はしてはならない、その方向で努力したいと思います。  そこで、ただいまも、日通事件に関係した諸君の名前を公表しろ、こういうような話が出ております。一面からいうと、まことにもっともであるかのような気もいたさないでもありません。しかしながら、取り調べられた諸君が、いわゆる犯罪を構成しておらない、こういうことははっきりいたしたのでありまして、犯罪を構成してない、それらの人たちの名前を公表するまでもないのじゃないかというのが現在の考え方であります。私はこの種の事柄について、そういう取り調べを受けたけれども、犯罪を構成しておらない、それこそ名前を明らかにするほうがその人のために名誉じゃないかというような議論も立とうかと思うが、私はやはりこういう事柄は公表しないのが筋ではないだろうか、かように実は思っておりますので、いまの検察当局の扱い方は、これで一応終結したものだ、かように私考えております。もちろん検察当局がどんな考え方で、どういう処理をしておるか、これは政府——私自身が検察当局の捜査について指導はしておりませんから、そういう意味では検察当局の自由にまかしてある。ただ、いまのような発表しないこと、これもまあ適当な処置ではないか、かように思っておるだけで、私は率直にお話しする次第でございまして、問題は、この種の事件が起こらないように、今後とも一そう気をつけていかなきゃならぬと思います。万一この種の事故が起これば、それは徹底的に究明する。そして事態を明確にする。それを隠すとか、そういうようなことがあってはならない、かように思っております。
  89. 田中武夫

    田中(武)委員 総理、幾ら口でそうおっしゃっても、態度で示さなければ国民納得しないし、政治に対する不信は除かれないと思うのです。そこで、法務大臣にお伺いいたしますが、国民の検察官であるならば、国民の前に疑惑だけを投げかけておいて、それから先は発表しないんだということは私は検察官としても、いささかひきょうといいますか、あるべき姿ではないと思うのです。そこで、四十七名、そのうち二名が明らかになったら、四十五名かどうか知りませんが、それに対して、どういう名目の金がだれに幾ら出たか、しかしこれはこういういう理由によって犯罪を構成しない、こうやるべきではないですか。そうじやなければ、このように政界へ一億九千万円、実際は一億八千七百八十万円から五百万円を引いた一億八千二百八十万円になりますが、この金が依然として疑惑のまま包まれておる。これをして、黒い霧というんじゃないですか。ひとつ率直に、だれにどういう名目で幾ら出たかということを公表してください。
  90. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えを申し上げます。  日通関係者の氏名並びに金額等についてこれを発表することが国民の疑惑を免れる唯一の方法じゃないかという御趣旨の御質問考えております。私はさようには考えておません。検察当局は真相究明のために、今度の日通問題につきましては非常な努力をいたしまして、あらゆる角度から証拠の収集につとめて、その過程におきまして、お述べになりましたように数十名の国会議員を取り調べたということはこれは事実でございます。しかしながら、ここで特に申し上げたいのは被疑者……(発言する者あり)お静かに願います。
  91. 井出一太郎

    井出委員長 静粛に願います。
  92. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 取り調べたことは事実でございますが、それはいずれも参考人として調べたのでございます。したがいまして、その氏名とかあるいはいまお述べになりました関係事実の内容等を明らかにするということは、私はいま総理がおっしゃったように適当でないと考えております。もしこれらの事項を公にするならば、第一に起訴済みの、裁判所に係属中の事件に、直接、間接の影響を及ぼすおそれがあって、この点から見ても私は適当ではないと考えております。  なおまた、犯罪にならない人の名前を申し上げるということは、今日は御承知のように人権の尊重ということが非常にやかましい時代であります。そういう点からいたしまして、私はこの人権の尊重、なおまた、事実上名誉を棄損しないというような点から考えてみましてこれをしないということが適当であると考えております。  第三には、参考として調べました人間の名前を言うということになりますれば、将来検察を完全にやっていくためには、参考人を呼んでいろいろと事件を正確にする必要がある場合に、参考人の名前を言うようなことをしておりますると、捜査のときに検察への協力をするということをやらなくなったら非常に能力を下げる、こういうふうな点からいたしまして、私はこの犯罪の嫌疑のないということがはっきりした人間の名前を申し上げるということは、人権の立場から適当でない、かように考えておる次第でございます。(「柴谷君はどうした」と呼ぶ者あり)ただいまお尋ねはなかったようでございますが、ついででございますので、柴谷君の名前が出たじゃないかというふうなことをおっしゃいまするので、この席におきまして、(田中(武)委員「聞かぬことは言わぬでもいい、また聞く」と呼ぶ)それではそういうことにいたします。  以上のとおりであります。
  93. 田中武夫

    田中(武)委員 人権は尊重せねばならぬことは当然です。少なくともわれわれは法務大臣よりか人権尊重の立場に立っているはずです。しかしながら、このような疑惑だけを投げかけておいてそのままに口をつぐむといいますか、こういうことはますます政治の不信を高めるだけではないかと思うのです。先ほど答弁の中ですでに公判に——いわゆる起訴を受けておる、公判係属中の事件云々ということになります。私はもちろんそういう点に触れようとは思っておりません。これは私が聞いておることはその点とは関係ありません。先ほど来、こちらのほうから話が出ておるし、法務大臣も答えようとなされたが、それでは一体柴谷君はどうなのか、これは切り捨てごめんなのか、ここで柴谷君の人権はどうして守られるのか、こう言いたいのであります。したがって、私は検察官が、ほんとうに国民のための検察官であるということであるならば、私は疑惑を除くような態度をとるべきである、こう要求いたしたいと思います。  さらに、ここで私はこの問題に時間をあまりかけたくはないので、法律論争をやろうとは思いませんが、公職選挙法百九十九条、政治資金規正法二十二条はこれを受けております。日通は、国または専売公社等々と特殊の契約を結んでおります。公職選挙法で言うならば「特別の利益を伴う契約」となっておりますが、これは、はたして独占契約が特別の利益を伴うものなりやいなや、こういうところに議論はあろうと思いますが、私は、日通はそういう立場にある会社であるので、その献金は当然、選挙に関してなら公職選挙法百九十九条、普通の場合には政治資金規正法二十二条によって違法であると申し上げたいと思います。  さらに、自治大臣にお伺いいたしますが、これら献金を受けた団体あるいは個人は、当然政治資金規正法によって届け出がなされていると思います。その届け出の一部が、前に公表になったようにも記憶いたしておりますが、この一億八千二百八十万円のうち、どのように政治献金がなされ、それが自治省へどう届け出をなされているか、この点について明らかにしていただきたいことを要求いたします。
  94. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 簡単にお答えを申し上げます。  日通が特別会社であることは、お述べになりましたとおりでございます。そういう意味からいたしまして、まず第一に、選挙に際して、選挙に関する事項を動機として金の授受が行なわれたかどうか、この二つの要件に当てはまるならば犯罪を構成すると私は考えております。この点は検察当局において非常に厳正なる捜査をいたしまして、この二つの条項に該当しないということがはっきりいたしましたので、私はその点をこの際申し上げておきたいと考えております。  柴谷議員の名前が出たことは、同議員にとってたいへんお気の毒であると私は考えております。しかし、法務検察当局から、柴谷議員に不正な行為があったなどというような発表あるいはこれを漏らしたというような事実は全然ございません。ただ、事案が、御承知のように、あっせん収賄という特殊の性質がありまするので、起訴状に同議員の名前が出たことは、これは犯罪の性質上やむを得ないところでございまして、検察当局の捜査の結果、同議員には証拠上不正行為に関係がないことが明らかになったのでございます。このことはいずれ公判廷において明らかにされると思うのでございまして、同議員の名誉は十分に保たれるものと私は考えております。
  95. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 御指摘のとおりに、公選法百九十九条、政治資金規正法二十二条に規定がありますが、自治省は、届け出られたものを正確に国民の前に官報を通じて公表するという機関でございまして、それ以上、違法で、また、これが犯罪を構成するかどうかといった問題につきましては、赤間法務大臣の回答で御了承をお願いいたします。自治省は、届け出を調べまして逐一皆さんに御報告するという機関でもないわけでございます。官報でちゃんと全部発表しております。
  96. 田中武夫

    田中(武)委員 こういうことで私は時間をとりたくないのですが、なるほど、官報で公表せられて過去にあると思います。しかし、ここで、官報で出したやつをもう一度公表してくれというのを断わる筋合いもないでしょう。  それから、法務大臣、私はここで法律論争はやらないと言いましたけれども、あなたがお答えになったのは、「選挙に関して」ということで、公選法百九十九条のことですよ。政治資金規正法二十二条は、その百九十九条に該当するような金はいかなる時期においても受け取ったら違法になるんですよ。あなたが、日通がそういう特定の会社であると見ているならば、政治資金規正法の違反ということは、具体的な問題として出てくるんじゃありませんか。
  97. 川井英良

    ○川井説明員 ただいまおあげになりました政治資金規正法二十二条にも、公選法百九十九条と同様に、「選挙に関し、」と明確に構成要件がうたわれております。したがいまして、寄付を出すほうも選挙に関して出さなければ犯罪になりませんし、同様受け取るほうも選挙に関してのものであるということで受け取らなければ公選法二十二条の違反にはならないわけでございます。したがいまして、先ほどうちの大臣から申し上げましたような説明は決して誤りではないというふうに考えております。
  98. 田中武夫

    田中(武)委員 二十二条の一項には、なるほど「選挙に関し、」となっておるんですよ。それから二項では、そういうところからの寄付するほうを禁じておるわけですね。しかし、選挙に関して、選挙それ自体、選挙期間の場合、それは公選法ですよ。だから、公選法は問題ではないとしても、私は、政治資金規正法のほうからは問題は出てくると思う。かりにそれが選挙期間でなくても、その前後であっても、「選挙に関して」になると思うのです。私は、言っておるように、こういうことについて時間をとりたくないからもうこれ以上論争はしませんが、総理、お聞きのように、ともかく政治資金規正法というのがいろいろな場合に骨抜きというか、ざるになっておるんですね。したがって、それを強化し、国民の疑惑を受けないようなものにしようということが先般来問題になっておるわけなんです。言うならば、去年の二月の三十一回総選挙は、政界の黒い霧解散といわれた選挙であります。したがって、政治資金規正法をはじめ、そのようなことに関連を持つものをはっきりと制度化していく、法制化していく、そうでなければ第三十一回総選挙の意義はなくなったと私は思う。大骨とか小骨とか、そういうことは私は申しません。政治資金規正法のあり方について総理はどう考えられますか。あなたの手によって解散をせられた三十一回総選挙は、それが主たる論争であり、それが主たる目的であったと私は思うんですね。いかがでしょうか。
  99. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私あるいは田中君の質問の真意を十分つかみかねておるかとも思いますが、とにかくいまの法律、制度は守られなければならない。はっきり申し上げまして法を無視するようなことではいけない。また、その法のねらいも実情に適して犯罪を起こさないような明確な規定はとにかく必要だ、かように実は思うのであります。また、選挙制度調査会が政治資金が問題だというので答申をいたしました、それなども、ただいまのような国民の不信を買わないような適正な政治資金——それはもう国民からの支援というものが金であろうがあるいは力であろうが、そういうものを正しく適正に評価していく、そういう支持は別に不都合ではないのだ、ただ問題は、特殊な犯罪を構成するというような場合にこれをどうすれば取り締まれるか、かように私は答申ができるのだと思います。私は、そういう意味では、これは忠実にその方向で、犯罪のないような方向で疑惑を受けないようにしなければならないと思います。しかし、私がいま申し上げるのも、あるいは田中君のお尋ねとやや食い違っているかと思いますが、私自身は民主政治、それは国民の支持、その形が何ら拘束を受けない、そして清らかな本筋の支持、そういう支援を得ることにおいては、ちっともどこに遠慮することもないものだ、かように私実は考えております。したがって、法律はもちろん守らなければならないし、国民から疑惑を受けるような支出、支援、これはやっぱり厳に戒めていかなければならない、かように私は思っております。ただ、現実というものが非常にきびしく、そういう意味考えられるようないまの実情かどうか、その辺のところをもう少し判断してみたい、かように思っております。
  100. 田中武夫

    田中(武)委員 総理みずからが答弁になるかどうかということで言われたのですが、私が言うておるのは、そういう抽象論でなかったわけです。ともかく政治資金規正法というものをもっと明確に、もっと厳格に、国民から疑惑を受けないようなものにすべきではないか、こういうことだったと思うのです。  それから法務大臣にはこれ以上私は申しませんが、この「選挙に関し、」ということが、政治資金規正法が、百九十九条を受けておるということ、それで、あなたの言うようなことなら、わざわざ同じ規正は要らないわけですよね。ここに私はあると思うのです。私は議論を持っています。しかしそれは時間がかかりますから、あらためて法務委員会かどこかでやることにいたしましょう。  そこで総理もう一つ、これは過去の問題を私申し上げておくのですが、現在大蔵委員会等で問題になっております京阪神土地事件でございますが、これにいたしましても、これは西の吹原事件、こういうようにいわれておりますが、ともかく常識では考えられないのですね。資本金一千万円の会社が一流銀行から、これは十行余りからですが、六十億という金を借りておる。そのことがいわゆる導入預金といわれている。私はここで大蔵大臣と導入預金の問題、法律的にいうならば預金等に係る不当契約の取締に関する法律ですか、それの議論をしようとは思いません。しかし、こういう導入預金が堂々とまかりこしておるのに大蔵省は何をしておったのか。しかもその中には六つの農協から六億円という金をやはり導入しておる。これなんかも私は問題だと思うのです。しかし、これも私は深入りしようとは思っておりません。しかもこのことに関連をして、それを大蔵省が検査をする、あるいは問題にしようとする等々に関連をして、元大蔵省の出身である現役代議士及び数名の代議士がこれに関係しておると新聞その他は堂々とこれを報道しております。この問題は兵庫県警がやっております。したがいまして、私も兵庫県出身者としてある程度のことを知っております。そしてまた兵庫県警におきましても、ある程度の裏づけを最近とったことも聞いております。こういうように、これは出されたといって名前は出ておりませんが、大体見当はつくわけですよ、元大蔵省の幹部で云々ということならね。そういう人だって私ははっきりしてもらわなければ迷惑だと思うのです。これを私がいま聞きましても、警察庁、おそらく捜査中でございますので十分なことは言えません、こうなるだろうと思うのです。そうすると、日通の場合は終わった。終わったときの発表であって、それが国民に疑惑だけを投げかけておいてそしてあとは言わないということなら、ますます政治に対する不信がある。私が冒頭に申し上げましたように、ともかく漫才でも落語でも佐藤さんの悪口を言うたり、国会議員を諷刺してそれが受けるというこの風潮を直してもらわなければいかぬと思うのですよ。そのためには、京阪神土地事件にいたしましても、うやむやで終わるようなことのないように強く要求するとともに、これは警察当局に聞きます。  それから大蔵大臣には導入預金が堂々まかりこしておったようなことに対して一体どうなっているのだ、簡単でいいですから。
  101. 水田三喜男

    水田国務大臣 今回の導入預金の問題は大蔵省も検査いたしましたが、そのときに裏利子を銀行が払っておるというようなことでございましたら、導入預金であるということがはっきりしたはずでございますが、裏利子を払っておったのが別の人であったというようなことから、検査の途中でこの京阪神土地会社と関係のある預金というようなものははっきり出てこなかったというような問題もございまして、この点は遺憾に存じておりますが、今後十分気をつけたいと思います。
  102. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 この事件は御指摘のとおりに目下兵庫県警察で取り調べております。御要求のとおりに厳正な態度であくまでこれを糾明いたしたいと考えております。
  103. 田中武夫

    田中(武)委員 時間の関係もありましてこれ以上言いませんが、たとえばこれは八月六日の新聞の切り抜きなのです。「京阪神土地事件代議士数人浮かぶ 不正もみ消しに動く?」これを見た場合に国民はまたかと思いますよ。  しかも次のものは「政界に強いつながり、幹部に圧力のうわさ」、「大蔵省出身代議士」というように出ておって、しかも私は根拠のないことをあまりここで言いたくもないし、私自体が検察官でありませんので申し上げませんが、うわさとしてはだれそれからだれそれに三千万円、うち一千万円はどうとか、あるいは山田という社長ですが、山田メモに数名の政界人の名前が書いてあった等々がすべて報道せられておるのですよ。国民はこれを読むのですよ。これをうやむやにやればますます佐藤内閣の信用が落ちる。これはけっこうなことではありますけれども……。われわれ政治に関係する者としては残念であります。だから佐藤さんもこの辺で——私はあなたが司法権だとか捜査権に介入することは望みませんし、そうあってはいけない。しかし事警察の段階においてやるならこれは行政の一つです。したがってこういうことをうやむやにしない、政府としてもそういう決意があるということだけははっきりしてください。
  104. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 政府といたしましても、ただいま問題になっていることをうやむやにしない、これははっきり申します。また私自身が捜査、内面的とかあるいはどんな形でもそれを指導するようなことはございません。どこまでも公正に捜査はしていたでく、そしてうやむやにしない、こういうことを申し上げておきます。(「もみ消しをやっているのだよ」と呼ぶ者あり)ただいまもみ消しという話がありますが、そんなことは私知っておりませんし、これはもうはっきり、またこの国会でそういうことはないと思います。  ただいま佐藤内閣が不信を買うことはいいけれどと言われるけれども、私は佐藤なんかの問題ではなくて、政治自身がさような不信をかうことはこれは厳にないようにしなければならない、かように思っております。
  105. 田中武夫

    田中(武)委員 いや、ともかく政治に対する不信は、これは政府とか与党とか野党の問題でありませんよ。はっきりしてもらうということを強く要望いたしまして、これから本論に入るのですが、だいぶん時間をとりましたので、経済問題をお伺いします。  まず引き締め政策を緩和せられるということ、先日公定歩合を一厘引き下げられた。これはまあ輸出も順調に伸びた、あるいは外貨準備も少し多くなった、こういうことであろうと思います。これは新聞等にもいっておりますが、私は、赤信号から直ちに青じゃいけないのだ、やはり警戒をしなくちゃいけない、こういう感じを持っております。そこで、引き締め緩和政策をとられた動機、それが今後どのように経済界に影響を与えるか、さらに、これは一部を緩和したというように理解するわけですが、今後どういうような見通しと方向をおとりになろうとしておるのか、簡単にひとつお願いします。
  106. 水田三喜男

    水田国務大臣 今回日銀が引き締め政策の一部緩和をやったことは、私は大体妥当であるというふうに賛成いたしております。御承知のように、昨年以来の引き締め政策は、国際収支の均衡を回復するという目的のために行なわれたものでございましたが、これが一応所期の効果を得られまして、四月以降の国際収支の基礎収支においても三億数千万ドルという黒字を見るに至ったというようなことで、一応国際収支の問題は著しい改善となっておって、ややこれが定着する傾向を持ってまいりましたので、引き締め緩和の条件はここで一応整ったというふうに私ども考えています。  ただ、そこで、それなら手放しで楽観できる状態かと申しますと、まだそうではございませんで、国際収支がよくなるときには国内の消費、投資、生産というものに相当落ちつきが出てくるときでございますが、現在においてはなかなか内需が堅調であるということと同時に、国際収支の好調ということが重なっておりますので、その点で、ここで引き締め政策をやる時期かどうかということは慎重に検討されねばならなかったのでございますが、しかし公定歩合の一厘引き下げ程度で、ここで設備がまた暴走するというようなことは一応考えられないという判断をいたしましたことと、それからもう一つは、国際情勢を見ましても、今年度中はアメリカの増税とかあるいは経費削減という政策がそうすぐに効果を出さないだろうというようなことを当初考えられていましたが、そうじゃなくて、やはりアメリカ経済が徐々に落ちついてきているということは事実でございますので、そういう点ではまだ先行き警戒しなければならぬ要素であるということを私ども考えております。同時に、いままでの型と違って、国際収支の好調と内需の堅調というものが重なっておるときでございますので、まだここで警戒はする必要があるという、青信号ではございますが、そこに警戒要素を残して今回の一部緩和ということになったわけでございますが、これは一応その条件は熟しているというふうに私考えます。
  107. 田中武夫

    田中(武)委員 私は、今後の世界経済はなお波乱含みである、アメリカの経済必ずしもすぐには好転しないだろう、したがって、国際通貨は現在小康を保っておるがまだ不安である、こう考えてきた場合に、あまり安易に考えるべきでない、こういうときこそ、むしろ私は薄いといわれた外貨準備を底上げをしていく、少なくともこの前に議論をし、総理もお認めになりました、輸入総額の三分の一ないし四分の一、三十億円台ですね、いま二十一億かその程度になっておりますが、三十億円台は必要だ、さらにその中で、三分の一は金保有に持っていくべきではないか、こういう点に立って、最近また少し外貨準備も上がったようです。しかし、あまりうれしがらずに、この際こそ天井の低い外貨準備を上げて、少なくとも三十億円台に持っていく、金保有も十億円台に持っていく、そういうことはいかがでしょうか。
  108. 水田三喜男

    水田国務大臣 景気の大幅な変動ということを避けながら、経済の成長をはかっていこうとするためにに、やはり外貨準備の水準が高いことが望ましいことでございまして、前から申しましたように、もう少し高い水準まで積み増ししたいという考えでございますが、それを実行するためにどうしたらいいかと申しますと、結局外貨の積み増しということはもっと長い長期政策によって実現すべきものでございまして、経済の引き締めというような短期政策によってこれを一挙に実現しようということは非常に困難だというふうに考えますので、今回は短期政策における引き締めの解除ということをしましたが、長期的にはこの際私は外貨の積み増しにこれから努力していかなければならぬと思います。その努力の過程において、外貨がふえるにしたがって金の保有量もふやしていくということは、やはり望ましいことだと思います。     〔「いつからやるか」と呼ぶ者あり〕
  109. 田中武夫

    田中(武)委員 総理大蔵大臣もそのように答えておりますので、そういう方向に持っていくべきである。そういうことについて、いまそちらからも意見があったが、いつからやる、こういうことはどうですか。
  110. 水田三喜男

    水田国務大臣 時期をいつからするというのじゃなくて、いまからそういう政策を考えていくということでございます。
  111. 田中武夫

    田中(武)委員 私は、そういう気持ちでいかなければ、またこの裏が来たときにあわてねばならない、四十年の二の舞いを演じてはならない、こういう警告をしておきます。  そこで、金保有を申し上げたついでに、あなたの顔を見ておると金をひとつやらなくてはならぬような気になりましたので、ちょっとお伺いします。当初予定しておりました十四トンですか、本年度は、金地金の輸入はやはりやる気ですか。そのうち幾ら入りましたか。それだけ先に聞きましょう。
  112. 水田三喜男

    水田国務大臣 ただいままで十四トンの半分以上の買い付けをやって、六トン半ぐらいの払い下げをやっております。
  113. 田中武夫

    田中(武)委員 ところが、依然としてやみ金というか、あるいは金の需要に対して供給が伴わないのです。したがって、やはりわからないけれども、ますます密輸入等もあるんじゃないかと思うのです。宮澤さんは黄色い色の金属と言われたが、まだまだ人類の金に対する執着というものは強いのであります。  そこで、こまかいことになりますが、装身具、これをやる飾り職人といいますか、こういう人たち——これは零細というよりかむしろ生業です。なりわいの道なんです。こういう人たちが金が入らない。大蔵省や通産省に、これは陳情しても少し筋違いかもわからぬが、通産省等へも陳情したが、一向に入らない。そうして困っておるんだ。いままでは、やみ金といいますか密輸金等で何とかやっておった。しかし、いよいよ仕事ができなくなった。こういうことで、たとえば山梨県の例をとりますと、山梨県には業者が二百で技術者が千人おるそうです。この人たちが何回か陳情したけれども、どうにもならぬということで仕事ができぬと言っておるのです。もちろん金管理法等々で末端まで政府管理しないことは承知しております。しかし、政府が産金会社へ払い下げる、産金会社からそれぞれのところへ売るといいますか、この場合に、そういったていさいというか、なりわいの道が閉ざされるというようなことのないような考慮を払ってもらいたい。     〔委員長退席、北澤委員長代理着席〕 このことについては、もっと詳細な資料等がありますが、これはここではやめまして、そういう配慮だけを要望して、あらためてこまかいことは直に会うてあなたと話したいと思っています。どうでしょう。
  114. 水田三喜男

    水田国務大臣 承知いたしました。もし需要が多くて供給が足らぬというようなことでしたら、今年度の予定どおりの輸入を早くしてこれを払い下げるという措置をとりたいと思います。
  115. 田中武夫

    田中(武)委員 この金融引き締め緩和で、一体どういう影響が一般に起こるのかということで、たとえば資金はどうなる、株価はどうなる、いろいろあります。そのうちで一、二の点だけをちょっと見通しをお伺いしたいのです。  まず、中小企業に対してはどういうことになるでしょうか。中小企業は依然として倒産が高水準を続けてまいりました。ようやく七月がちょっと六月より減ったのですね。東京商工興信所の調べで、負債一千万円以上で倒産したのは、七月は八百六十二件、その負債総額は六百十四億八千四百万円、こういわれております。もちろん金融引き締めだけの問題じゃないと思いますが、それの緩和が八月以降の中小企業倒産にいわゆる潤いになるかどうか。  もう一つは、物価に対しては一体どのような影響を与えるだろうか。私は、物価値上げの秋——先ほど来論議になりました米価決定とともに、消費者米価皆さん方、上げるというのでしょう。水道、バス、タクシー等々の公共料金の値上げも予定せられているように伺っております。この値上げの秋に対して、この金融引き締めの緩和がどう影響するか。私は物価値上げに拍車をかけると、こう見るのですが、いかがでしょうか。
  116. 水田三喜男

    水田国務大臣 金利は下がりますが、日銀がいわゆる窓口規制というものを置いておりますので、量的には相当まだ規制される状態は続くというふうに考えますので、今回の措置によって金融界にそう大きい変化はない、金利が下がるということはございますが、そのほかに大きい変化はないというふうに考えております。
  117. 田中武夫

    田中(武)委員 えらい簡単な答弁ですね。この秋に対する物価、あるいはこれ以後の中小企業の問題等々に対してどういう影響があるかということを、もうちょっと答えようがあるんじゃないですか。宮澤さん、どうです、経済学者。
  118. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 このたびの引き締めは、中小企業に対しては、いろいろな事情がありまして、あまりひどい御迷惑はかけなかったというふうに思っておりますけれども、今度金利が下がりまして、私ども期待しておりますのは、大企業は自分のペースで設備投資をやってきましたし、これからもそうであろうと思いますが、中小企業の合理化投資、人手不足に伴います省力投資、そういうものはあるいは手控えられておったかもしれないと思いますので、そういうものがほどほどにならば私はやってくれることが、長期的にわが国全体のためにたいへん好ましいので、そういう影響になってくれることを望んでおるわけでございます。そうしますと、やはり低生産性部門を改めていくということで、物価にはやはり長期的にはいい影響があると思います。  短期のことで申しますと、従来この金融引き締め、金融緩和ということが一年とか一年半とかいう範囲ですと、どうも消費者物価との相関関係が見出しにくいというのが従来の大体の経験でございます。
  119. 田中武夫

    田中(武)委員 長期的とかいってうまく逃げましたが、私は、それなら短期的といいますが、秋の物価に対しては、私は値上げに拍車をかけるだろう、こう思うわけです。  物価を申し上げたついでにお伺いしますが、ケネディラウンドの実施、いわゆる関税一括引き下げの法律が七月一日から全面的に実施せられました。大蔵省の試算では、四十三年度そのための減収といいますか、これが百七十億円だ。四十三年から五年間で五百五十億というような数字も出ておるようです。その関税の引き下げによって製品そのものが安くなるということはもちろん、あるいは原材料が安くなることによって製品が安くなるということになろうと思います。ところが、まだ七月一日ですからあまり期間はたっておりませんが、聞くところによると、関税引き下げは一体だれのためになされたのか、消費者には一向還元せられないではないか、こういう声を聞くわけです。私は関税の引き下げが物価引き下げの作用に一役買ってくれるべきことを期待いたしておりますが、この点、これは経済企画庁、どうですか。実際、物価に対してどう作用しています。大蔵大臣経済企画庁。
  120. 水田三喜男

    水田国務大臣 いま物価構成の中における関税の比率というものはそう多くございませんということが一つと、もう一つは、これがケネディラウンドの実施が年を追ってやられることでございますので、一挙に全部これを実行するわけではないというようなことから、物価への影響というものはそうすぐに目に見えて出るということはないと思いますが、長期的に見て、はっきりと関税が下がることは消費者物価に響くことでございますし、さしあたりは、この値上がりを防ぐという作用は十分にするだろうと思います。政府は、今後指導によって、このケネディラウンドの効果は十分出るように極力努力したいと思っております。
  121. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いま大蔵大臣の言われたとおりでございますけれども、ものによりまして引き下げになってもいいと思われるものが私はあるように思いますので、これはいま少し追跡調査をやろうといたしておるのでございます。概して農林物資については非常に引き下げの幅が小さいと申しますか、というので、あまり多くを期待できないかもしれませんが、工業関係では期待していいものが私はあるのではないかと思っております。農林物資の場合にも、御承知のように、いろいろなものが加工賃や何かでどうも上がりぎみである。そういう意味で、それを押えるクッション程度には私は使っていけるものがあるのではないか。少し具体的に調査をしてみたいと思っております。
  122. 田中武夫

    田中(武)委員 ケネディラウンドの実施に伴う関税引き下げが、やはり消費者に還元せられるような方向の指導を要望いたしておきます。  次に、資本自由化について、時間もないので簡単にお伺いいたしますが、資本自由化と、こうだいぶ浮かれておるようですが、これは通産大臣にお伺いいたします。  この資本自由化によって国際的巨大企業、ワールドビジネスが日本に上陸してくる場合、これはかつてアメリカ企業のヨーロッッパへ上陸したときのことなんかを考えてみますと、まず第一にとられる手段は、赤字上陸作戦がとられるだろう。そのことによってまず市場攪乱が起こる。そうしておいて、シェアを高めたところで今度は価格の引き上げ、いわゆる管理価格の形式にいくだろう、このように考えられますが、どうでしょうか。これから簡単に言ってください。
  123. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 ヨーロッパの例がそのまま日本に行なわれるかどうか、これはやはり見きわめてみないとわからぬと思います。
  124. 田中武夫

    田中(武)委員 簡単といってもそれじゃ答弁にならぬですよ。とにもかくにも、そういうことが過去にもあったし、現にある。したがって、この巨大企業の日本への出血上陸作戦に対してどういう手を打つべきか、こういうことなんですね。  それから総理、いまこそ私は日本経済の自立ということを考えるべき時期だと思うのです。資本の自由化といって浮かれておるうちに、俗にいわれることばですが、ひさしを貸しておもやを取られる、こういうことで、気がついたときにはほとんどの重要産業の指導権は外資によって握られておった、こういうことであってはならないのです。  そこで、輸出も伸びた、調子がいいんだと、こういうときこそ私は、日本経済の自立、よく安保体制といわれますが、言うならば経済の安保体制の脱却、これが必要である、このように考えますが、資本自由化と日本経済の自主独立、このことについて総理は一体どういう腹を持っておられるのか。それから具体的な問題については通産大臣にお伺いいたします。
  125. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 経済の安保体制というのはどういうことを言われるのか、私は初めてのことばです。ただいま言われますように、よく民族資本、民族産業、こういう言い方をしております。私は日本総理として、わが国の資本、わが国の産業、これはとにかく擁護発展さす、これが私どもの立場でございます。したがいまして、ただいまのように、外国資本が市場を攪乱する、あるいは一つのシェアを持ち、将来の禍根を残す、こういうようなことを黙って見ているようでは、私どもの仕事はつとまらないのですから、そこに誤解のないようにお願いしておきます。
  126. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 赤字上陸政策をもしとりまして、みすみす損をして、そしてまずそのシェアを拡大するというような政策を現実にとった場合には、これはいま総理が言われるように、ただ黙って見ている手はないと思うのです。十分にこれは取り締まってまいりたいと思います。
  127. 田中武夫

    田中(武)委員 国際契約等々につきまして、いま言ったような問題は、独禁法の六条でチェックをしていけると思うのですね。そこで公正取引委員会は、独禁法六条の運営に対して自信があるか。一体国際契約等々をチェックするための公取の人員は何人おるのか。それから、独禁法六条以下に定められておるところの国際契約とか、そういうようなものは、ほんとうに全部届け出せられておりますか、お伺いします。
  128. 山田精一

    山田説明員 お答えを申し上げます。  ただいま御指摘のございましたような、外国資本が上陸いたしてまいります場合、私どもの経験からいたしますると、国際契約の形でこの不公正な方法を規定をしてあるというケースはまずないように考えておりますか、そういうものが——決済方法でございますか、決済方法等につきましても、国際契約という形でもって出ております場合は非常に少ない、まずいままでの経験ではないように存じます。  私ども第一段として、その表現は悪いかもしれませんが、網を張っておりまするのは、不公正な取引方法に出はしないか。先ほど御指摘のございましたような、赤字上陸というお話がございましたが、不当な対価でもってこちらの競争相手を切りくずす、大体において第十九条、不公正な取引方法、この点で防ぐことにまず第一線をしきたいと考えております。御指摘のように、第六条の国際契約としましてその内容に不当なものがございますれば、むろん法律を厳正に適用いたしてまいりたい、かように考えております。
  129. 田中武夫

    田中(武)委員 何人でやっているのですか。
  130. 山田精一

    山田説明員 現在のところではきわめて少のうございますが、しかしこれは、弾力的に重点的に人員の配置をいたしてまいりたい、かように考えております。
  131. 田中武夫

    田中(武)委員 総理、国際契約についてチェックするのは、独禁法六条によって公正取引委員会の職務なんです。言えないくらいに少人数なんですよ。それから出血作戦に対して、不公正取引がある場合はもちろんその線でいきます。ところが、それも手一ぱいでしょう。これは先日の代表質問でも堀君も言っていましたが、人員削減とか行政簡素化がいわれているが、必要なところにはどんどんふやさなければいかぬ。いかがでしょう。
  132. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 人員が多いとか少ないとかいうことでなしに、その行政が十分いきめにいくかどうか、それを考えなければならない。それに適正な定員を配置する、これは政府考えるべき事柄でございます。     〔「特許庁もしかり」と呼ぶ者あり〕
  133. 田中武夫

    田中(武)委員 その特許に対してですがね、通産大臣。外資が特許を振り回す、そして横車を押す、そういうような場合には通産省も考えておられるというような報道を聞いておりますが、特許法九十三条によって公共の利益を守るために強制実施権を発動する。そのことは工業所有権同盟条約の第五条A2項の趣旨にも私は反しないと思うのです。したがって、外資が特許、工業所有権等を振り回して横暴をきわめるときには、これによってチェックをしていく、押えていくという決意と方法がありますか、いかがです。
  134. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 特許法の運用が、ほとんど厳正に、ただ法律の趣旨を見詰めてこれを厳正に行なっておりまして、政策的にはその制度を運用しておらない状況でございます。それで問題が、そういう両方に触れるか触れぬかという問題でございまして、特許庁の長官がたしか来ておりますので、長官から申し上げます。
  135. 荒玉義人

    荒玉説明員 ただいま田中先生の御質問は、特許法九十三条をどの程度まで運用可能かという問題でございます。公共の利益というのはいろいろ解釈はあると思いますが、われわれといたしましては、国民経済全体に悪影響があるという場合にはこの規定を発動すべきではないかということで政府全体考えております。ただ、どういった場合かといいますと、これは予測されるいろいろな事態がございますが、少なくとも国民経済上重大な影響があるという場合にはこれを発動していくつもりでございます。
  136. 田中武夫

    田中(武)委員 公正取引委員会とか特許庁というのは人員が足りないのです。給料が安いからいい人が入らないのです。したがって、大学の同期生で民間に行った優秀なやつの考えたものをチェックするのが成績の悪いやつです。こういうことではいかぬので、そういう面には私は十分配慮を願いたいと思う。  それから、大蔵大臣に、私は、外国人がいわゆる株式市場を経て日本の株式を取得した数字なんかもあげて持っております。これは去年に比べて二倍以上外国人が日本の株式を買っておるわけですね。こういうことにつきましても、私が心配するのは、いわゆるおもやを取られやしないかということなんです。そのことだけ申し上げておきますが、何かありますか。
  137. 水田三喜男

    水田国務大臣 御承知のように、一つの企業について外国人の持ち得る株式数の規制というものがございますので、現在その範囲で行なわれておることで、乗っ取りとかなんとかいう心配はいまのところございません。同時に、株式の売買の取り扱い高から見ましても、外人の扱いというものはまだ〇・何%という比率でございますので、そういう心配はいまのところございません。
  138. 田中武夫

    田中(武)委員 いよいよ得意の大型合併に入りたいと思うのですが、その前に、まず公正取引委員長昭和四十一年十一月二十四日、当時の通産次官の山本さんとあなたのほうの竹中事務局長が交換をいたしました、いわゆる覚え書きであります。「産業の構造改善の推進に関する独占禁止法の運用について」というこの覚え書きというのは、一体どういう役をするのですか。これは法律的にいって一体何なんです。また、なるほどおたくは行政委員会です。しかしながら、独禁法を番をするといいますか、その点からいえば、半分は準司法的な性格を持っております。そういうところが行政庁との間にあらかじめ覚え書きを交換するというようなことは、どうなんでしょう。いかがでしょうか。
  139. 山田精一

    山田説明員 お答え申し上げます前に、一言釈明と申しますか、申し上げさしていただきたいのでございますが、私どもの役所は人員が非常に少ないということは事実でございますが、先ほど、同期の中でもって頭の悪い者がというお話がございましたが、これは私ども数は少のうございますが、優秀な者がおりますので、その点公取の名誉のために申さしていただきたいと思います。
  140. 田中武夫

    田中(武)委員 私は発明について言ったんです。
  141. 山田精一

    山田説明員 ああそうでございますか。それは私の聞き違いでございました。  お尋ねの点でございますが、確かに昭和四十一年十一月二十八日付で覚え書きなるものを交換をいたしております。その辺のいきさつは私自身といたしましてはよく承知はいたしておらないのでございますが、要するにあの覚え書きなるものは、各種の独禁法の適用につきましての一つのガイドラインと申しますか、解釈、これにつきまして通産省から、こういう見解でどうだろうかというお尋ねがありましたのに対しまして、それでよろしかろうということを答えた、かように承知いたしております。現にアメリカの司法省のアンタイ・トラスト・ディビジョンでも、最近合併に関するガイドラインを発表いたしておりますが、まずガイドラインに相当いたすものかと心得ております。ただしアメリカの発表いたしましたガイドラインには、繰り返しこれは何らの予告なくして変更することがあるものであるということをはっきり明記いたしております。したがいまして、私どもが法律を運用いたすにあたりまして、あの覚え書きに抵触するような事態が起こりました場合には、当然法律の運用のほうに従うわけでございます。
  142. 田中武夫

    田中(武)委員 言い回しが変な言い回しだったですが、端的に言って、これは公正取引委員会が私的独占禁止法を解釈するにあたって何ら拘束するものでない、確認できますね。
  143. 山田精一

    山田説明員 ただいまお答え申し上げましたごとく、委員会といたしまして法法律を運用いたすにあたりましては、これに拘束されるものではございません。
  144. 田中武夫

    田中(武)委員 そこで、いま富士・八幡とか王子系三社の合併、俗にこれを大型合併と世論は呼んでおります。そこで基本的な問題に立ち返りまして、独禁法十五条一項一号の解釈です。これに対して、かつてあなたの大先輩であり、現在最高裁長官である横田さんが、去る三十年二十二国会において、いわゆる三〇%は危険であるという、三〇%危険ラインということを言われております。それはイギリスの合併禁止法あるいはその他ドイツ等の法制から見て、でたらめの数字ではなかったと思います。したがって、これは今日まだ生きておる、このように私は解釈いたしますが、公正取引委員長は、十五条一項一号をどのように、シェアについては考えておられますか。
  145. 山田精一

    山田説明員 横田元委員長は、三〇%をもって一応の警戒ライン、かようにお答えをいたしておったかと存ずるのでございます。私も先般申し上げましたごとく、一つの競争を実質的に制限することとなるかいなかの判断の構造的要因といたしまして、シェアというものが重要な要素であるということは考えております。したがいまして、三〇%をもって一応の警戒ラインという考えにつきましては、横田元委員長と何ら変わっておりません。ただし、シェアだけでものごとを判断いたすのではございませんで、そのほかに取引の相手方、あるいは競争者の地位、代替品等、これらを総合的に勘案いたしまして判断をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  146. 田中武夫

    田中(武)委員 いま問題になっておる大型合併につきまして、われわれが実際の動きを見ておりますと、独禁法の立場から少しおかしいような感じを受けるのです。と申しますのは、独禁法で言うならば、まず合併についての届け出をするわけですね。そしてその届け出がせられたところにおいて、十七条の二の一項ですか、そのような事態があるかどうかを、十五条の二項の届け出を三項で三十日以内、あるいはこれは公取の都合で六十日まで延ばしてもいい、こうなっておる。ところが、実際は打診といいますか、あらかじめ意見を聞くという方法によって行なわれておる。これは公取だけでなく、佐藤総理、あらゆる行政に対してもそういうことが行なわれるわけですね。それは事務をスムーズに行なうためにということで必要かもしれませんが、これは法律的にいった場合に、はなはだもっておかしいことである。一般行政庁のことはおきましょう。そこで、あらかじめ聞きに来て打診をするということ、それに対して意見を述べる。ところが、実際届け出が出てきたときには、いままでの例からいえば、一件も拒否したことはないのですね。今日のこの大型合併といわれるものにつきましても、そういうような方法が行なわれておるわけなんです。言うならば、先ほど言ったように、あなたのところは半分は司法的機関である。この事前の打診ということは、治安当局に対して、これこれのことをしてこういう金をごまかそうと思いますが、刑法にかかりますかどうですかと聞くのと同じようなことだと思うのですよ。そこで、そういうようないわば法律外の、土俵の外でものごとが運ぶのではなく、土俵の中で大型合併について処理を進めてもらいたい、そう思うわけなんです。そこで、これは私も専門ではありませんので、あるいは解釈上あなたと意見が違うかもわかりませんが、まず、この大型合併の申請書がまだ出ていないのでしょう。それまではあまりとやかくものを言わないほうがよろしい。そこで、受け取りましたものにつきましては、まず独禁法四十二条によるところの、これは公聴会を開くことができるとなっておりますが、公聴会をぜひ開いて、十分に国民の声を聞く。そして三十日あるいは長期の場合六十日の間に、黙っておればそれでいいのだということでなくて、それが十五条一項一号のいわゆる実質的に取引の競争を排除するようなものであるのかどうかということは、独禁法八章の二節各号によるところの正式な手続によって結論を出す、そういうように、すべて法の陰でやるのでなくて、土俵の中で独禁法に従っての処理をしてもらいたい。いかがでしょうか。
  147. 山田精一

    山田説明員 御指摘のとおり、まだ正式の届け出書は受け取っておらないわけでございます。したがいまして、ただいまいたしております調査、これは、一面から申しまするならば、公正取引委員会は違反の疑いのあるような事実を探知いたしました場合においては、これを積極的に調査をいたす権限が法律第四十五条によりまして与えられております。したがいまして、私ども調査をいたす義務があるわけでございます。また、他面から申しまするならば、当事者が事前に相談に参る、これは先ほど刑法の例をお引きになりましたが、これとは多少違うかと思うのでございまして、これは、なかなか法律の解釈、運用のむずかしい問題でございまして、また、相手方も、合併を希望いたしております当事者も、各種の手続のあることでございますから、事前に相談をしに参る、これに対してその相談にこたえる、これはよいことではないかと存ずるのでございます。たとえばほかの件で申し上げますと、懸賞売り出しなどをいたします場合に、事前の相談というものは始終私どもの役所に参るわけでございます。ただし、懸賞のような軽微な事案と違いまして、これは重要なる事案でございますから、いずれ将来届け出か正式にごさいました場合——届け出がなしに、合併がなしに済んでしまえばこれはまた話は別でございますが、届け出がございました場合におきましては、法律の定めるところによる成規の手続、したがいまして、調査上必要があると認めました場合には、公聴会を招集することも当然あり得ることと思います。成規の手続によって処理をいたしたい。この法律の陰で、ワクのそとで処理をいたすというような気持ちは毛頭ございませんので、御了承置きをいただきたいと存じます。
  148. 田中武夫

    田中(武)委員 たとえば富士、八幡、双方巨大企業です。これが一緒になる。これはまさに独禁法十五条一項一号に該当する。こういうようなものに対して、私は、それは法律の立て方は「開くことができる」ですが、ぜせ公聴会を開いてもらいたい。だから、ここで、公聴会を開くということを確約できるかどうか、そして、四十五条の手続に従って調査をする、そして四十六条の手続に従って正式な判断を、かりにこれが十五条一項一号の実質的な競争排除にならないということであるとするならば、その理由を明らかにする、こういうことをちゃんと法律の中で法律に従っての手続をとります、しかも公聴会を開きますと答弁いただけませんか。
  149. 山田精一

    山田説明員 公聴会を開きますかいなかは、これは委員会において合議の上決定することでございますので、私個人として申し上げるわけにまいりませんけれども、従来の経験に徴しまするならば、この程度の案件におきましては、おそらく公聴会を開くのが妥当ではないかと私は考えておる次第でございます。そのほか、法律の命ずる手続に従いまして処理をいたしたいと考えます。
  150. 田中武夫

    田中(武)委員 公正取引委員会としては、そのような方法によって、少なくとも国民の目から離れた場所で、土俵から離れたところでものごとを処理しない、このことだけを強く要望しておきます。  そこで、総理、大型の合併が進みますと、当然寡占状態になることは言うまでもありません。そういたしまして、この寡占の結果は、いわゆる管理価格になることは当然であります。宮澤企画庁長官、今度の経済白書もその点について反省をしておりますね。必ずしも大型化というか、合併に心から賛成したということでなくて、それに対して反省をしておる。ことに管理価格形成に対して下方硬直性があらわれておる、こういうように経済白書ではいっておられますね。そこで、通産省は合併促進だと考えます。こそに対して水をさす意見といいますか、これはこの経済白書にもはっきりしております。その経済白書の立場から、こういう大型合併について、宮澤企画庁長官、どう考えるのか、あとでまた総理にお伺いしますけれども
  151. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 お時間が限られておりますようですので、経済白書を引用いたしませんが、二カ所にわたってこの問題について述べております。それは合併というものの利害得失を述べ、そうしてもし行なわれる場合にどういう点に注意をすべきかということをかなり慎重に丁寧に述べておりますので、必ずしも田中委員の言われたようなことではございません。  私自身どう考えておるかと言いますと、大型といわれますけれども、それは日本の中だけでは大型かもしれませんが、国際的な規模でいえば、鉄などの場合、生産量はまあまあかもしれませんけれども、内部の蓄積とか給与水準とかいうものになりますと、これはとてもとてもということなんじゃないかと私は思いますし、日本経済は御承知のように非常に成長しておりますから、静態的な経済でありません。現在でも他の各社が追い上げようとしておるので、そこでいわゆる競争制限的な事態が起こるというふうには、私には考えられないのであります。寡占といいますと、何か独占と同質のように、日本語が熟さないためと思いますが、思われますが、これは御承知のように、寡占というのはオリゴポリーでございますから、数個の企業があるということで、その場合独占価格が生まれるというようなことは、経済学でもそういうことは言っていないように私は思います。
  152. 田中武夫

    田中(武)委員 私は、独禁法の立場からものを言っておるのです。この法律は世界的に適用せられるのではないのです。これは適用は日本です。日本国内に適用される。それから、あなたは、こういう場所だから若干ことばを逃げられましたが、確かに合併の問題といまの管理価格の問題については、経済白書は反省をしておる、私はこう受け取っておるのです。したがって、管理価格が下方硬直性を持つという問題は、やはり国民生活につながる。ほっておけば下がるべきものが下がらない、そこに問題があるわけです。  そこで、総理、この大型合併とか何かこうありますが、巨大企業かできる。寡占——独占と寡占はどう違うかという議論もありますが、時間がもうあと十分もないのでやりません。やりませんが、そういう寡占状態ができて、その寡占の弊害が起きてくる場合、これは現在の法律でチェックするところがないのです。経済白書自体がみずから反省しておるように、下方硬直性、下がるべき価格を下げずにおるということ、これに対して何らかこういう下方硬直性をも含む管理価格に対して、あるいは寡占状態、合併によって大きくなった企業が、その経済力を乱用する場合、これをチェックする方法をひとつ考える必要があると思うのですが、いかがでしょうか。
  153. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの寡占あるいは独占、それはどちらでもいいですが、巨大企業ができて、そしてその管理価格で非常な弊害が生じておる、そういう場合に、これを行政指導で是正することができるかできないか。これはもちろん政府のやるべき事柄ではないか、私はかように思います。ただいま別に法律そのものを考えなくても、そういうことが政府責任でもあろう、かように思います。ただ、先ほど来議論しておられるところを聞いておりまして、巨大企業合併等が、国内問題とすればいろいろの弊害がある。そうして、そういうものはいまのような行政指導、これを加えればいいんじゃないか、かように思いますが、国際的にはやはり私どもも国際競争、これに負けないような企業であるべきだ、かように思いますので、なかなかむずかしい問題がある、単なる法律問題じゃない、かように私は思っております。
  154. 田中武夫

    田中(武)委員 寡占の弊害が起こった場合、これをチェックするところの法制が現在ありません。そこで提案をするのです。御記憶があろうと思いますが、池田総理時代だと思います。特定産業振興臨時措置法、すなわち特振法といわれた法律が出ました。これは明らかに国際競争力強化のための寡占状態ができるということを意味するところの法律であります。それに対して、私たちは、市場支配的事業者の経済力濫用の防止に関する法律案、そういうのを出しました。このことは御記憶があるかどうかわかりませんが、そういう巨大企業の横暴というか、経済力乱用に対して法律的にチェックする、こういう法制度が必要だと思いますが、いかがでしょうか。もし政府考えないとするならば、次期国会においてわが党から私が提案者として出します。
  155. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 現状では、私はその法律は必ずしも必要ではないだろう、かように思っております。しかし、先ほどお答えいたしますように、行政指導もきかない、かような状態ではたいへんだろうと思いますから、そういうものが将来考えられるかわからないが、現状においてはその必要はない、かように思っております。
  156. 田中武夫

    田中(武)委員 宮澤さんの独占、寡占の議論をいまから蒸し返す気はありませんが、これは公正取引委員長もついでに聞いていただきたいのですが、この寡占状態と俗にいわれる中でも、同じような実力を持つ会社が数個存在する場合と、寡占状態といわれても、特に大きな富士、八幡が合併すれば、これはもう大きいことはきまっているのです、そういう中における寡占状態とは違うと思うのです。これがいわゆるプライスリーダーシップをとって、そうして価格を上げていく、あるいは硬直していく、管理価格がはっきり出てくる。現在でも建て値制度とか公販制度とかといって、鉄鋼ではどうかとわれわれが思うような方法が行なわれております。それがますますそういう方向に進むだろうと思います。  そこで、私は議論を積み上げていって結論にいきたかったのですが、時間もありませんので飛び越えて申しますが、今日いわれているあの大型合併、これをかりに許すとするならば、独禁法十五条一項一号は空文となる、私はそう思います。そのことについてあなた方はどう考えておるか、公正取引委員会の決意を伺います。このことは独禁法の法律が権力によって破られるということ、同時に、公正取引委員会の死命にも関係すると思います。ひとつ腹をくくって御答弁をいただきます。
  157. 山田精一

    山田説明員 お答え申し上げます。  独禁法第十五条の規定は、厳正に運用いたしてまいる覚悟でございます。
  158. 田中武夫

    田中(武)委員 総理、いま問題となっております大型合併、このことを俗に法が勝つか権力が勝つか、こういうようにいわれており、国民は見ておるわけなんです。すなわち、法律があくまでも法律としての姿勢をくずさずにそれを貫いていけるだろうか。それに対して、もちろん政府なり通産省等々が圧力をかけておると言っても、かけた覚えはありません、こう言うでしょう。しかし、そんなことを言おうとも、これは権力がやはり法に対して挑戦をしておるのだ、こういうような感じを受けておるわけであります。すなわち権力が法を破るのか、法が権力に優越するかという重要な問題を含んでおると私は思います。法か権力か。総理、権力をとられますか、法を守られますか、いかがです。
  159. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 田中君のお話だと、たいへん結論を急いでおられるようですが、法か権力か……(「時間がないからだ」と呼ぶ者あり)これは時間がないからというのでいまお話しですが、私は、大企業、これは社会悪だとか、独占資本はけしからぬ、こういう言い方でこの問題を片づけようといっても、無理じゃないか。最近問題が起きたのは、これは日本の問題じゃない、アメリカの問題ですが、USスチールが値段を上げた。これはたいへんな問題だ。政府は何らの権限はないはずだが、しかしながら、これを行政指導をして、そうしてこれを適正なところへ押えた、こういうことがあるのです。でありますから、ただいま言われるように、権力だとか法だとか、どちらを守るか、こういう言い方をされないで、私は、先ほどお話しいたしましたように、不都合があれば行政指導いたします、現状においてはまださような法律を必要といたしません、かように申したのですから、その辺もひとつ熟読玩味していただきたい、かように私思います。どうも巨大資本、これは独占資本、けしからぬ、そうして何もかも独占資本に奉仕するものだ、政府までそういうように言われることは、非常な論理的飛躍がある、かように私は思います。
  160. 北澤直吉

    北澤委員長代理 田中君に申し上げますが、時間が来ましたから、結論に入っていただきます。
  161. 田中武夫

    田中(武)委員 時間がありませんから、そういうことに私は結論を言ったわけです。しかし、そう見ていますよ、法か権力かということ。それで、公正取引委員長、悲劇の独禁法、悲劇の公取といわれておるのですよ。独占禁止法が成立以来、保守党政府が出してまいりました経済政策の多くは、独禁法緩和政策、除外政策、そして今日では千に余るところのカルテルができておる。そうして、いま一般に業界、財界でいわれているのは、カルテルからトラストヘ、このあらわれが大型合併であります。しかも、八幡の稲山社長は、合併の効果は企業のためである——それは経営者とすればそうかもしれません。しかし私は、ここで、企業の公共性といいますか、たとえそれが私企業でありましょうとも、今日企業は私は社会の公器だと思います。したがって、そのようなかってなふるまいだけを許してはならないと思います。ここで私は、経営者の社会的責任等についても触れたいと思っておったわけなんです。しかし、もう時間が来たようでございますし、私は紳士でございますから、時間を守る意味において結論に入ります。  私は、当面する経済の問題につきまして、時間が足りなかったが、若干お尋ねしました。     〔北澤委員長代理退席、委員長着席〕  まず、引き締め緩和政策につきましては、今後の経済の動き、ことに世界経済あるいは国際通貨の不安がまだ去らないという上に立って十分に考慮してもらうとともに、この際こそ外貨準備を上げていく。さらに、資本の自由化につきましては、先ほど来言っておるように、おもやをとられないように、日本経済の自主独立をあくまでも守るという上について、き然たる態度でやってもらいたい。大型合併は、時間がなくて十分やれなかったのですが、これこそ私は、一歩退くならば、戦後以来経済の民主化としてその役割りを果たしてきたところの独占禁止法の墓場に近づいた、それは同時に公正取引委員会が墓場をみずからの手で掘るということです。したがって、公正取引委員長の奮起を促すとともに、閣僚諸君に対しましては、法か権力かということに対しては、あくまでも法を守るということ、土俵の外でものごとを片づけない、こういうような習慣をとってもらう、このことを強く要望いたしまして、残念ながら時間がきましたので終わりますけれども、最後に総理、私のいま言ったような結論に対して決意のほどを伺って終わります。
  162. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの、御要望でございますからいいかと思ったのですが、最後に御意見に対して私の所感を述べろ、こういうことです。  先ほど来のお話、景気の動向や、あるいは国際収支の問題等についていろいろ御注意をされたことについては、ありがたくこれは拝聴しておきます。これらの点は私どもも実は心配の点でありますから、それぞれ気をつけてまいるつもりであります。しかし、最後の大型合併問題につきましては、まだもう少し意を尽くさない点もあります。とにかく企業者の社会的責任、これは当然考えなければならない。これは企業家の自由にまかすべきものではない、かように私は思います。現在の日本の企業家は社会的責任は十分認識しておる、かように私は思いますが、しかしながら、今後の実際の処理等の問題について、なおその処置を十分考えなければならない、かように思います。先ほど私がお答えしたとおりでございます。ただいまの適切なる御注意、ありがたく拝聴いたします。
  163. 田中武夫

    田中(武)委員 私企業といえども今日では社会的公器である。したがって、その経営者はやはりあまりかってなことをしてもらっては困る、そういうことに対して政治的といいますか、行政的指導も私は要望しておるのです。それはいかがですか。そういう社会の公器であるということ……。
  164. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま私お答えしたのもそういう意味でございます。だから、これは自由にばかりはまかさないような、かような行政処分も当然する、かように思っております。
  165. 井出一太郎

    井出委員長 これにて田中君の質疑は終了いたしました。  次に、川崎寛治君。
  166. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、外交、防衛問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  まず最初にお尋ねいたしたいことは、いま沖繩の県民が国民の当然の権利として、国政への参加をたいへん要望しております。これは皆さん方の下部である沖繩自民党の諸君も含めまして、立法院においては全会一致で直接の国政参加を要望いたしておるのであります。あとでこの法理論的な問題についてはお尋ねをいたしますが、まずお尋ねをしますことは、先月の二十七日からこの八月三日にかけて、一週間、沖繩県の祖国復帰協の代表諸君が総理にお会いして、国政参加についての県民の要望を訴えたい、こういうことで上がってまいりました。ところが総理は、沖繩自民党の代表諸君とは直ちに会ったのでありますけれども、その県民代表である沖繩県の復帰協の諸君とはついに会わなかったのであります。十一月に主席公選が初めて行なわれる。あなたが自由民主党の総裁として沖繩自民党の代表諸君に会われぬならば、それも話が合うでありましょう。しかし、あなたは総理として沖繩自民党の代表諸君に会われたのであります。ところが県民の代表にはついに会わなかったのであります。一週間待ちに待って、要望に要望し続けたけれども、会われなかった。さらには、総理がどうしても会えないならば官房長官が会いましょう、こういうことでありましたが、今度は官房長官も最後は会見を拒否したわけであります。これが本土の総理あるいは官房長官の沖繩県民代表に対する姿勢でありますけれども、なぜ会われなかったのか、まず明らかにしていただきたいと思います。
  167. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 国政参加の問題につきましては、私どもできるだけ沖繩同胞の意向を尊重する、そういう方向で努力するつもりでおります。すでに七月一日の日米協議委員会でもそういうことで発言をしております。私は復帰協その他の方々が私に会いたい、こういうお話のありましたこと、これはちゃんと記憶しております。しかし、私は当時何らかの都合で会うことができなかった、まことに残念に思っております。私はいまの沖繩から来られた方々に対して、できるだけつとめて会うようにすべきだろう、かように努力はいたしております。しかし、なかなか多忙な状態でございますから、そう簡単にもその予定がとれない、こういうような実情でございます。
  168. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 簡単に予定がとれないという、四、五分の予定がなぜ一週間の間とれなかったか。しかも与党の自由民主党の諸君が圧力をかけておる。選挙前だから会うな。沖繩自民党の代表諸君も会ってくれるな。そうですよ。沖繩問題をそういうふうな党利党略で扱ってはならぬ。あなたは、いつも私たちに対してよく言うんですよ。しかし実際にはあなた方のその態度が、十一月の主席公選に向けて党利党略でこの問題は扱っておる。私は、いま総理の言われた時間の都合で会えなかったというならば、一週間、山本書記長が何回も官房長官と連絡をとりました。私もまさに電話番にひとしい状態で、官房長官や官房副長官と連絡をとりました。五分間の時間がとれないのですか。私は、いまの時間の都合でというあなたの、総理の御答弁にはたいへん不満です。それならば、あなたに誠意があるならば、ここで会えなかったことについて、あらためてわびてほしいと思います。
  169. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 会わなかった理由は先ほど来由したとおりでございます。私は、しばしばいろいろな方から面会を申し込まれますが、私が会えないときは、かわりに官房長官が会ったり、副長官が会ったりする。私がぜひ会わなければならない、そうまで限定されるという、それはずいぶん——双方の意見か一致するときはなかなかむずかしい、そういうこともお考えをいただきたい。私は先ほど来申しましたように、沖繩の同胞についてはできるだけくふうして会う、これは私の立場であります。
  170. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 このことでやりとりしておりますと時間がなくなりますから、この点については、先に進めます。  それでは、沖繩県民が国政参加について要望をしておるその中身というものは、どのような参加のしかたを要望しておるか、どう御理解になっておるか伺いたいと思います。——これは憲法にもかかわる問題ですよ。しかも九十六万の県民が要望しておるんですよ。だめです、総理大臣でなければ……。
  171. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 それではお答えいたしますが、田中総務長官からお答えいたさせます。
  172. 田中龍夫

    田中国務大臣 政府担当者といたしまして、私からお答えをいたします。  御案内のとおりに、国政参加の問題の形式につきましては、御要望の面は、日本の憲法並びに公職選挙法が妥当いたしておると同様の状態を望んでおられるわけでございますが、しかし現在施政権の及んでおりません沖繩に対しまするこの国政参加の問題は、できるだけ現地の要望を入れたいということで、政府並びに皆さま方も一生懸命に御努力中でございますが、なかなかその点では法制上にもまた外交上にもむずかしい問題が多々ございますことは御承知のとおりでございます。
  173. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 いま事務的な答弁がございましたが、それじゃ総理お尋ねいたします。これまでの間、アメリカ側とどのように交渉をしてこられたか。そして現在、国政参加の問題についてはどういう見通しであるか、明らかにしていただきたいと思います。
  174. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日米協議委員会で七月一日に話を出しましたから、その経過については外務大臣からお答えいたさせます。
  175. 三木武夫

    ○三木国務大臣 総理がお答えいたしましたように、七月一日、日米協議委員会で私あるいは田中総務長官から、両方から国政参加の問題を取り上げて、施政権をアメリカが持っておるわけでありますから、アメリカに対してこの実現を強く要請をいたしたのでございます。その後も日米間で外交折衝の場合に、この施政権のあるアメリカに対して国政参加の問題は何回も取り上げて、アメリカ側の善処を要望いたしておるのでございます。したがって、国政参加のあり方についてはいろいろ問題があろうと思いますが、この問題は原則的日米間の了解はできるだけ早く取りつけたいという方針のもとに努力をいたしておるわけでございます。
  176. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 日本政府の要求内容を明らかにしていただきたいと思います。
  177. 三木武夫

    ○三木国務大臣 日本政府は、沖繩の住民の意向が日本の国政に、ことに沖繩問題などについては特別委員会もでき、あるいはこの問題が論議をされておるわけであります。したがって、こういう沖繩問題等も重要な政治課題になっておるのでありますから、沖繩の代表が国会の審議に参加して、議決権ということについてはいろいろ検討を要する点があると思いますが、しかし参加をして意見を述べる機会は持つべきであるという考え方のもとに話し合いを進めておるわけでございます。
  178. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 現地の要望を受けて交渉をしておるという形ではございませんですね。現地は本土の国会議員と同様に、審議権も議決権も持つ国会議員としての国政参加を要望しておるわけです。そのとおりですよ。立法院、議院の決議が、与党も含めてそのような決議がなされておるのです。総理はそれを知らないんですね。あたかも、いま外務大臣から答弁をしておりますのは、ただ単に参加をして意見を述べる機会を与えてくれ。そういたしますと、明らかにいたしましょう。日本政府はアメリカ側に対して、七月一日の日米協議委員会において日本側が出した要求内容は、国会に出てきて意見を述べる、そういう機会を与えてほしい、常時そういうことができるようにしてほしい、そういう内容の要求をアメリカ側にした、こういうふうに理解をしてよろしいですね。
  179. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これは現に施政権をアメリカが持っておるというところに制約を受けることは明らかであります。したがって、アメリカ側もこのことに対して原則的に了解をしなければ、どういう形で参加するかという各論には入れないので、アメリカ側に対して国政に参加する一つの道を開くように、アメリカもこの原則をまず了解しなければ各論に入れない、こういう原則的な了解についてアメリカの善処を要望したのがこの七月一日の会議の状態でございます。
  180. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それは原則的了解と、こう言いますけれども、アンガー高等弁務官も、国政参加というのは革命的な要求だ。たいへん気をつかっておるのです。それはあたりまえだと思います。しかし、これは後ほど憲法との関係についてもお尋ねをいたしますけれども、その原則的了解という、それがつかなければならないというけれども、そういたしますと、日本側は最初からアメリカの壁が厚いということで、可能な、アメリカがのむであろうような、そういう内容で交渉した、こういうことですね、外務大臣どうですか。
  181. 三木武夫

    ○三木国務大臣 日本政府の立場は、沖繩の住民が国政に——形はいろいろありましょう、しかし国政に参加したいという要望はもっともな要望である。したがって、アメリカの壁がどんなに厚くても、この沖繩住民の考え方はできるだけ実現のできるようにアメリカ側と折衝しようというのでありまして、向こうの壁が厚いから中途半ぱでこの問題を引っ込めるというものではない。このことはもっともな要望である、したがってこれの実現に向かって努力をしようというのが基本的な態度でございます。
  182. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 私は、アメリカ側とこのことについて交渉する、それは法理論的にいろいろありますけれども、現実的にこの問題を考えますならば、今日においてはそれはやむを得ない、そうしなければならぬと思います。  そこで、そういたしますにしても、全面的に公職選挙法を沖繩に適用する、そのことをアメリカ側と交渉し、アメリカ側が了承するならば、これはできるのです。法理論的にできる。総理はどうですか、このことについて法理論的にどうお考えになりますか。
  183. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほども外務大臣からお答えしたように、施政権はアメリカが持っておるのですね。沖繩の住民はなるほど日本人だ、かように私考えますけれども、ただ施政権が向こうにあるその関係から、おのずからの制約を受ける、いま言われるような日本の憲法がそのままこれに適用されておらない、また公職選挙法もただいま適用されておらないという現状でございます。施政権がアメリカにある、外国にあるその地域に、わが国の憲法やわが国の法律をいかにすればこれが適用あるいはそれを使うことができるか、こういう問題についてはもっと法理的にも考えなければならぬと私思います。必要ならば法制局長官からお答えいたさせますが、私自身は、とにかくただいまの沖繩の住民、この同胞が国政に参加したいという非常な強い熱願を持っておる。施政権が日本に返還されるまでも、それも待てない、いま直ちに参加したいという、その参加の形がどういうことになるか。どういう内容を持つかという、この要望は、私どもはアメリカに率直に、施政権者であるアメリカと積極的に話をするというのがいままでの立場であります。ただいまのような法理論等になりますとなかなかむずかしい問題だ、ただいま言われるように簡単にはいかない、かように思っております。ただいま川崎君も言われますように、現状においてはアメリカと交渉しなければならない、かように言われる。しかし社会党の主張からいえば、もともとこれは、もうアメリカの施政権を認めないのだから、どうして日本自身の施政権、この権利をどうして実施できないのか、かような御議論があるやにも伺いますけれども川崎君の場合はちょっと違うようでありますから、私はこれはまじめに考えて、ただいまのように施政権が他国にある場合に、その地域に私どもの法律をどういうように適用できるだろうか、私はこれは無理なことじゃないかしらんと、かように思っております。
  184. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 まあいいです、法制局長官、あなたにはあとで聞きますけれども、本土の法律がストレートに沖繩にも及んでおるんですよ。それは交渉すればできのです。やらないからできないのです。施政権が相手にあるからといって壁をつくっておる。
  185. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ものによってはできます。
  186. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 ものによってはできるといって、根本的な問題じゃないですか。基本的人権を守る根本は参政権ですよ。その参政権を保障されないというところに沖繩県民の今日の差別されておる哀れな状態があるわけじゃないですか。そのことを日本総理、本土の総理として打開をしようという決意があるならば、やれるのです。沖繩の琉球政府の松岡主席等も法理論的に可能なんだといって、沖繩の琉球政府の諸君は一生懸命法律的な検討もしておるのです。現地で検討しておるのを、本土政府のほうはできないと、こう言う。そこに日本政府の姿勢がある。いいですか、このことがまず根本ですよ。総理自身は法理論的に弱いようですから、総理自身からは聞いてもぼくはむだだと思いますけれども、しかし、説得するだけの力はないが、現地で松岡主席は必死になってできるんだと、こういってがんばっておる。私と考えは違いますけれども日本政府沖繩事務所の岸所長は見解を出しました。あなたとしてはたいへん憤慨にたえないことだろうと思います。この、岸首相ではありませんが、岸所長が、すべての権限を本土並みの、国会議員と同じような権限を持った国政参加の方向について見解を出した。そのことについて私は、ここに現地の新聞の社説がありますから読んでみましょうか。沖繩の現地が何といって受けとめておるか。佐藤首相の政治姿勢、これで何といっているかといいまます、「岸氏が首相で、佐藤氏が沖繩事務所長という感じさえ抱かせるものがある。」いいですか。あなたの政治姿勢というのは、沖繩の現地ではこの国政参加の問題についてはそういう受けとめられ方しかしていないのですよ。沖繩問題が解決しなければ戦後は終わらないという名文句を吐いたけれども、どうも沖繩の基地が重要だという日米首脳会談のジョンソン大統領との間の確認に基づいてやっておりますことは、いかにしてアメリカが持っておる施政権、アメリカが軍事基地を自由に使っていることについて制約を加えないようにしていくかという配慮、これがあなたの沖繩問題に対処していく根本なんです。だから、岸個人の私案が出されたことに対しても、総理が困難だからできないと頭からきめてかかっておるその態度に対して、岸氏が首相で佐藤氏が事務所長だと、こういう感じさえ抱かせると沖繩の現地の新聞は論評しておるのです。このことは残念だろうと思います。あなたは、おれのこういう努力がなぜ理解されないかといつも言うけれども、こういう理解のされ方しかしてないのですよ。ですから、この国政参加の問題については、私は沖繩現地が要望しておるように、そのことを真正面からアメリカ政府と交渉する、アメリカ側と交渉する、そのことについての決意をもう一度具体的にお述べいただきたいと思います。
  187. 井出一太郎

    井出委員長 高辻法制局長官。     〔川崎(寛)委員「要求しておりません」と呼び、その他発言する者あり〕
  188. 井出一太郎

    井出委員長 発言を許しました。
  189. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 ちょっと法律的な問題がございますので、一応私から申し上げさせていただきます。  ただいま御質疑の中に出ておりましたが、沖繩事務所長の岸見解を御引用になりました。岸見解に限らず、いま仰せのような考え方があることは私もよく存じておりますが、この問題については、かなり重要な問題がある。これはもちろん言うまでもございませんが、国権の最高機関である国会の構成員の問題でございます。これは私が指摘するまでもなく、憲法四十三条一項というのに「全国民を代表する選挙された議員」、これが国会の構成員ということになっております。したがって国会の権限を、皆さん、ただいま議員でいらっしゃるその方々と同じように、国会の権限を行使する以上は、やはり全国民を代表する選挙された議員であるということが絶対に必要でございます。これは言うまでもないと思います。ところで、その中には二つの問題が私どもあると思うのでございますが、一つは沖繩住民の選挙する者が全国民を代表する議員ということが言えるかどうか。これはまあ憲法の前文には代表する者と代表される者との直接には規定がございませんが、詳しく申し上げてよろしければ私は申し上げますけれども、いずれにしても代表する者と代表される者との国政上の等質性ということが基本になっておる、これは民主的な統治組織の根本でございますが、そういうものからいいまして、代表する者と代表される者との等質性、これがあるわけです。したがって、国政の権力のもとに立ち、福利を享受する者が自分らの代表者を選出するというのが少なくも基本であろうと思います。そういう点からいって、基本的な問題が一つある。  それからもう一つは、「選挙された議員」というのがございます。選挙につきましては、これは申すまでもございませんが、憲法の規定には法のもとの平等というのがございますし、四十四条の規定には議員のことについて規定がございまして、その中には社会的身分その他の要件によって差別してはならないという規定がございます。琉球政府の定める手続というようなことが岸見解でいわれておりますが、そういう手続による選挙がはたして憲法の認めておる選挙になるかどうか、こういう点が問題になろうと思います。要するに非常に基本的な根本問題でございますので、やはりそこは慎重に御検討を願いたい、そう思います。  ただいまは問題点の指摘だけにしておきますが、その辺の検討を十分に遂げた上でないと軽々しく国会の議員と全く同じ資格、同じ権能を持つということについて結論を出しがたい。そこにはやはり相当な検討を要するものがあるということだけを申し上げさせていただきたいと思います。
  190. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そこで総理お尋ねしますけれども、平和条約が発効したのは二十七年の四月二十八日ですね。憲法が公布されましたのは昭和二十一年十一月三日です。そのときには沖繩はまだ引き離されていないのです、条約上は。その憲法の中で……(「軍事占領」と呼ぶ者あり)日本も軍事占領。本土側も一軍事占領。そのときに国民は、憲法の前文に、いま長々と法制局長官も言われたけれども、「ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、」と、権力の行使はこう規定をされておる。国民の厳粛な信託によるわけです。日本国民として、平和条約発効以前においては差別はないはずです。日本国民であることについては差別はない。憲法が公布をきれたその時点において、沖繩県民の国民としての権利、それは無視をされたわけです。これはあらためてやりますけれども、この根本について、総理は、このことと国政参加を要求しておる沖繩県民の基本的な姿勢というものの理解、どうお考えになるか、これは法制局長官ではなくて総理自身から明確にしていただきたいと思います。
  191. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの憲法が実施された、そのときは、ただいま言われるとおり沖繩は完全に軍事占領下にある、日本政府はそこにございません。そういう状態でございますから、内地、本土とこれを一体に考えるわけにはまいりません。はっきり申し上げておきます。
  192. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 いずれ憲法論としてはあらためてやります。しかし、この今日の本土政府への国政参加についてのたいへんな不満というものは代弁しておきたい、こう思います。  そこで次に、沖繩の施政権返還と基地の関係について、先般来代表質問等を通じてもいろいろと具体的に議論をされております。私は抽象的な論争はいたしたくないと思います。ベールをはぐ意味において具体的はお尋ねをしてまいりたいと思います。  まず第一に、米軍基地の取り扱いをきめなければ施政権返還はできいかなどうか、米軍基地の取り扱いをきめることがまず第一であるかどうか、このことについてお尋ねをします。
  193. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、施政権の返還というものは米軍基地のあり方、これも含めてやはりきまるべきものだ、かように考えております。
  194. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そういたしますと、基地のあり方と施政権の返還、このことは並列をして、並行して検討し、進めていく、このように理解をしてよろしいですね。
  195. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 施政権の返還、これはもういまアメリカが持っておる全部について私ども考えている、かような状態であります。
  196. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そういたしますと、施政権を返還してそれから基地の取り扱いをきめるといういわゆる分離返還ということはあり得ない、こういうふうに理解をしてよろしいですね。
  197. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのところ、これを分離するような考え方は持っておりません。
  198. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 分離返還は考えていない、こういうことでありまして、これは昨日参議院の外務委員会においても三木外務大臣が御答弁になっております。一致いたしておりますので、この点はいま政府側の態度として理解をしておきたい、こういうふうに思います。  そこで、次には時期の問題についてお尋ねをしたいと思います。つまり、返還のめどをつけていく時期の問題であります。施政権と基地の取り扱いについては、並行というか、一体的なものとして検討し、進めていくのだ、こういうことでありますけれども、中身の検討としてはやはり分けなければならない。当然のことだと思います、政府の立場からすれば。私は、政府の論理で、あなたの論理で少しお尋ねをしたいと思いますから、ひとつひっかからないようにしてください。いいですか。社会党の論理でくると思っていたら間違いで、政府の論理で、自由民主党の論理でひとつお尋ねをしてみたいと思います。  その基地の具体的な取り扱いについては、つまり態様については、いろいろとこれから検討はあると思います。事務的なレベルでの検討は進んでまいると思います。これは防衛庁長官にもあとで尋ねるかもわかりませんよ。まず基地の具体的な態様そのものについて検討を加え、結論を出すには、ベトナム和平成立後でなければそれはできない、こういうふうに理解してよろしいですか。明らかにしていただきたいと思います。
  199. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ひとりベトナム和平の問題それだけではございません。基地の態様というのは、国際情勢の変化もありますし、現在どういう基地があってそれがどういう働きをしているか、これも考えなければなりませんし、また国民の世論の動向も見なければならない。ただいまさように私考えておりますが、いまお尋ねがありましたように、一番具体的にはっきりしているのは、ベトナム戦争がいま行なわれておる。これははっきりしている。そういう状況下において基地はどうあるべきか、日本はそういう基地を考えなくても、アメリカはどんな考え方をしているか、これはやっぱり私どもも尊重せざるを得ない、かように思っております。
  200. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 ですから、国際情勢、科学技術の発達それから国民世論という三つの条件を常に言われるわけでありますけれども、その中で基地の態様についての本土側の要求の方針決定については、いろいろ国際情勢もあるでありましょうが、ベトナム和平成立という——では、逆にもう一つお尋ねしますが、ベトナム戦争中であってもその方針決定はできますか。そのようにお尋ねし直したいと思います。
  201. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 結論のほうから申し上げたほうが誤解がないかと思います。私はいま、基地の態様については白紙でございます。このことははっきり申し上げておきます。これはもう、ただいま白紙だ。その中には、いま言われるような、具体的な問題とすればベトナムなどもあります。そういうことから、結局白紙でございます。かように私は考えております。
  202. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 中身は白紙ですよ。その白紙はだんだんあぶっていきたいと思いますし、そして色づけをどのようにするか、その色づけの方向も聞たいと思いますけれども、その方針決定する時期についていまお尋ねしているのですね。だから、それならば具体的に、ベトナム戦争中であっても方針決定は可能でありますかどうですか、明らかにしていただきたいと思います。
  203. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 基地の態様については白紙だということを前提にしてお考え願って、いま継続的な協議でとにかく返還の時期をきめようじゃないか、これが私どもとジョンソン大統領との話し合いでございますから、継続的な協議は続けていかなければならない。その継続的な協議をする場合に、基地のあり方を、何々でなければならない、こういうことで継続的協議をしないというのが私どもの白紙だ、かような状態であります。したがいまして、この継続的協議でだんだん煮詰まってきて、そして川崎君の言い方ならば、その基地の白紙があぶり出されるとか、こういうようなことにもなろうかと思いますけれども、これはただいま継続的協議がまず第一回があったばかりであります。もうこの第一回の協議では、どうも基地の問題については全然触れてないような状況でありますから、まだまだもう少しこれらの点では協議を続けていくことがまず第一大事なこと、必要なことだ、かように考えております。
  204. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 七月一日の日米協議委員会と、五月二十七日の、いわゆる共同コミニュケに基づいた、沖繩の地位についての合意に基づいた継続的協議、これは別ですね。前の五月二十七日のほうでございますね、それが基地について触れない、それは当然だと思うのです。あの共同コミュニケの中には、沖繩の地位について継続的協議をやろう、こういっておるわけでありますから、これは沖繩の基地は入ってない。じゃ、まずそこから伺っていきたいと思います。
  205. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、沖繩の地位についてという、これはどういう見方をしておられるか、この軍事基地、これは沖繩の地位からはずされるんだ、かような議論はないと思うのですよ。先ほども一言っておるように、私どもは沖繩を全体として考えるということを申しておりますので、その中から、沖繩の地位というから基地だけは別だとか、あるいは地位というから教育問題は別だとか、そんな議論はないと私思っておるのです。したがって、こういう問題も当然継続的協議、その中の態様、当然取り上げられるべき筋のものだ、かように考えております。
  206. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それじゃ後ほどアメリカ国務省の日本部長スナイダー氏の証言についてもお尋ねをしていきますけれども、そこは厳密に分けられておると私は判断をするのです。総理はその辺をぼやっとかぶせた形で、国民を、これまであいまいもこと期待を抱かせるような、突き放すような、そういうことできておるわけでありますけれども、その継続協議の中には、厳密に沖繩の地位について継続協議をする、このようになっておるのです。  じゃ、外務大臣どうですか。この点の、継続協議のこれについてあなたが外交交渉をやるわけだけれども、沖繩の基地の態様についても、ここで話し合うという筋合いのものであるかどうか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  207. 三木武夫

    ○三木国務大臣 共同コミュニケにも、沖繩の施政権返還の方針のもとにと書いてありますから、したがって、これはもうすべてのものが含まれる。あれはやはり書く場合には、沖繩の地位というようなことばを使うのですね。地位というものの中には、もうすべて含まれておる。沖繩の施政権返還のすべての問題は含まれておる、基地の態様もその中には含まれておる、こういう解釈のもとに日米間の外交折衝をしておるし、するつもりでございます。
  208. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それではお尋ねしますが、これは外務大臣お尋ねするのは少し酷だと思いますから、外務省のアメリカ局長お尋ねをしますが、ミスター・スナイダーというのは、大体日本の外務省でいえばどの程度の位なんですか。それをひとつ明らかにしてください。
  209. 東郷文彦

    ○東郷説明員 私と同じか、あるいはもう少し下かというところでございます。
  210. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 笑えないような気持ちがするんですね。佐藤、ジョンソンの日米最高レベルのトップ会談の中身について、アメリカの、いま答弁をされたアメリカ局長と同じくらいかその下だ、こう言われたんですね。その証言が大問題にならざるを得ないところに今日のこの問題の本質というか、つらさがあると思うのです。そのスナイダー氏の証言について木村官房長官は、これが公表されたときに、議会向けだ、アメリカの国内向け、議会向けだ、こういうふうな答弁をしておりますけれども、そういたしますと、本委員会においてあるいは衆参両院において、日本国会において、各省の大臣以外の諸君が答弁をする政府委員の答弁というものも、そうしたいわゆる議会向け、国内向け、そういうふうなものと理解をしてよろしいですか、官房長官
  211. 木村俊夫

    木村(俊)国務大臣 私が申し上げましたのは、スナイダー日本部長が米国の下院の歳出委員会対外援助分科会でやった議会内の発言である、こういう意味であります。
  212. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 これは新聞記者会見当時とはだいぶニュアンスが違いますけれども、本質的な問題でありませんから問いません。つまり私がここで明らかにしたいと思いますのは、このアメリカの議会の中における証言というのは、アメリカ政府における有権的な解釈、公表されたものは有権的な解釈として受けとめてよろしいですね。そのことをひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  213. 木村俊夫

    木村(俊)国務大臣 これは米国の憲法ないし議会の権限内で行なわれていることであります。政府としてとやかく言うべき筋合いではないと思います。
  214. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 とやかくする筋合いでない、こう言いますから、その点はその程度にしておきますけれども、このスナイダー氏は、琉球の行政権を日本へ返すことと基地施設を返すこととを区別しなければならないと考える。前者は現在考慮されていることであって、後者は考慮外の問題である、こう言っております。ですから、アメリカ政府側は行政権を返す、これは考慮に入っておる、しかし沖繩の基地施設については全く考慮外の問題である、こういうふうにアメリカの議会内においては明確にいたしておるわけであります。つまりアメリカ側がそういう態度であるということからいたしますならば、先ほど来、沖繩の地位についての継続協議というものは基地の態様についても話し合っていくのだ、そういうふうに了解をされておる、こういうふうに共同声明の中身についての外務大臣からの御説明がありましたけれども、しかしアメリカの国務省側では、全く別なんだ、こういうふうに言っておるとすると、その共同声明に言っておる沖繩の地位について、この解釈にも食い違いが出てくるわけです。その点をさらに明らかにしていただきたいと思います。
  215. 三木武夫

    ○三木国務大臣 日本政府は基地を分離して返還を求める考えは持ってないことを明らかにしておきます。全体が返還をされて、その中の安保条約による地位協定としての基地ということになるわけでありますから、おそらくその真意はわかりませんが、スナイダー部長の頭の中には、沖繩の基地というものは引き続き必要である、そういう意図が表現されたものであって、分離して基地だけは返さない、基地以外の施政権だけは返すという明白な、そういう整理された考えで議会の証言になったものだとは私は思わないのでございます。
  216. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 これを日米継続協議の中で明らかにされますかどうですか、お尋ねをいたします。
  217. 三木武夫

    ○三木国務大臣 もう明らかにするまでもなく、全体を返すという前提のもとに日米協議は始まっております。分離をするという考え方のもとに日米協議は始まっておりません。全体の返還である、こういうことで日米協議は始まっていると御承知おきを願いたいのであります。
  218. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは確認をいたしたいと思います。基地全体を返すということですね。そうではなくて、その点は用語が不明確であったら、もう少し正確にひとつ回答しておいていただきたいと思います。
  219. 三木武夫

    ○三木国務大臣 基地も全部含めて沖繩全体の施政権、これが日米交渉の前提になっておる。
  220. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは、基地と施政権の分離ということは絶対にあり得ない、つまりアメリカの基地というものは、これは後ほどさらに基地の中身についていろいろとお尋ねをしますけれども、基地と施政権というものは一体のものとして全体が返還されてくる、こういうことで理解をしてよろしいですか。これは総理から明らかにしていただきたいと思います。
  221. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 沖繩の祖国復帰あるいは施政権返還、こういう問題は全体をひっくるめて私どもは交渉の対象にしておる、かような御理解で間違いございません。
  222. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それではくどいようで、またあとに戻りますが、この議会証言を見ますと、スナイダーやあるいはアンガー高等弁務官等の証言については、明らかに施政権というものと基地というものを分離をして考えております。そしてそのことを議会で明らかにしております。これはいずれ時間が問題を明らかにいたしてまいるとは思いますけれども、ただアメリカ側の沖繩の基地を保持していこうという強い姿勢の中で、日本政府がよほど腹をすえてかかっていかなければ、この問題の打開ということはあり得ないと思います。この点については、アメリカ側と日本政府側との姿勢の中に食い違いがあるということについては了解されますが、それとも食い違いはないのでありますか。
  223. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは食い違いがあるとかないとかいう問題とはやや違うのでありますが、あの共同コミュニケをよく読んでいただくと、施政権、祖国復帰、これを実現することが沖繩の住民だけではなく日本国民の願望だ、そうしてこれを早期に実現するという非常な熱意のあること、これもアメリカ側にも十分理解してもらいたいことだ。同時にまた、この軍基地が果たしておる役割り、これに対しても十分理解してほしいという二つの問題が実は出ております。でありますから、その考え方によっては、どうもわれわれの考え方とアメリカ国民考え方では重点の置きどころが違うのじゃないかというような感じすら実はするのであります。しかし私は、先ほど来外務大臣もお答えし、私もお答えしておるように、全体を一丸としてそれを交渉の相手にしている、この態度には変わりはないのであります。でありますから、いまアメリカ側は基地というものを別に切り離して考えている、こういうことを言われるが、先ほど外務大臣からお答えいたしましたように、基地というもののあり方については、アメリカはアメリカとしての一つの主張を持っているのじゃないか、かような判断ができるのであります。しかしその場合でも、基地について、これから話していかなければならないことだが、いわゆるキューバにおけるような基地を考えている、こういうようなことがあるのかどうか、そういう点まで私どもいま考えておりません。しかし、もっと話を詰めていかないことには結論は出ないのでありますから、こういうことをも考えながら、この問題がいかに重大な問題か、むずかしい交渉であるか、こういうことを考えますだけに、これはもう超党派的に御協力願わないと、このことがなかなか実現しないのじゃないだろうかと私は考えるのです。何よりも二十数年間異民族の支配下にあるという沖繩同胞の諸君は、ほんとうにたまらない気持ちだろうと思う。私は、その気持ちを本土におるわれわれも十分理解して、そして沖繩住民のような気持ちになって、この問題を解決するということが望ましいんじゃないだろうか。私はどうもこの問題がとかく国内においてあるいは政争の具に供されたり、あるいはいろいろ党利的な発言というような誤解を持つようなことがあったりすることは、たいへん残念に思っておるのです。私どもは何といっても沖繩百万の同胞のその心境にもっと深い理解を持って、この問題を解決すべきじゃないだろうか、かような意味で、皆さん方も御協力をぜひともお願いしたい、私お願いするような次第であります。
  224. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 返還のめどについてでありますけれども、昨日でありますか、ニクソン氏が共和党の大統領候補にきまりました。といたしますと、あと民主党の大統領候補がきまる。大統領選挙が行なわれて、次の大統領が選ばれる、就任するということになりますと、あなたと会談をされましたジョンソンは引いていくわけであります。そこで返還のめどをつける会談、返還のめどをつけるまずぎりぎりの時期、次の大統領就任までは返還のめどづけはできませんですね。その点はいかがでありますか。
  225. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私どもも早期返還を実現すべく、いま非常な努力はしております。しかしアメリカ自身にも大統領選挙というたいへんな事業というか、いまの仕事があるわけで、ただいま沖繩返還の問題を交渉いたしましても、次の大統領がはっきりきまらない、そういう意味ではなかなか事務当局など落ちついた話ができぬだろう。だからただいま言われるように、選挙が済むまでは現状はなかなか発展しないだろう、こういうことは一応言えるんじゃないかと思います。とにかく早く大統領選挙が終わり、政情が安定したもとで交渉ができる、継続的協議ができる、そういうことが望ましい、かように思っております。
  226. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 両三年というまくらことばをとって、とにかく返還のめどをつける交渉、つまり返還のめどを次につけられるのか、返還のめどをつける交渉に入ろう、そういう合意をとりつけるためには、次の日米首脳会談が必要でありますが、どうでありますか。
  227. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、ジョンソン大統領と私との会談、その結果両三年内に返還のめどがつくという確信を得た、こういうことを申しておりますが、ジョンソン大統領と私との話というのは両国首脳の会談ということで……。
  228. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 聞いておることに答えて……。
  229. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 それにだんだん答えるわけです。それでジョンソン大統領がかわりましても、また私がかわりましても、日米間のこの両責任のある首脳者の会談、これは維持される、この後とも続いていく、かように考えております。したがいまして、私は、ただいまのような人がかわったことによって私の確信がゆらぐ、こういうものではありません。しかし、もちろん人がかわるのでありますし、日米間の基礎的な重要問題でありますから、さらに人がかわった結果、この話をやはりもう一度話しする必要はあるだろう、かように思います。これはただいまの理論的にくる問題じゃない。もちろんこの話をぜひとも実を結ばす、こういう意味ではそれは必要だと思います。これは日本におきましてても、アメリカにおいても、同様なことが言えるだろう、かように思います。
  230. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 新しい大統領あるいは新しい総理、それにいたしましてもあなたの確信はゆるがない。だからあなた個人の確信はゆらいでもかまわないのですけれども、しかし、そのことが合意として具体的に次にめどがつけられるということであればいいのです。ところが、その客観性はないわけです。要するに確信にしかすぎないわけです。これはもう繰り返し代表質問においても答弁をし、あなたの確信以外の何ものも出てきていないわけです。新しい大統領、新しい総理というものであっても、両三年内にめどがつけられる、こういうことでありますけれども、私が先ほど来お尋ねをしておるように、一つは、ベトナム戦争が終わらなければという国際情勢上の大きな要素がある。次に、大統領が新しく就任しなければならないというと、来年のおそくとも一月以降、その間にもう両三年はたってしまう。それから両三年の返還のめどづけをするわけですね。ですから、そもそもあなたに、昨年の臨時国会で成田前書記長や私たちが繰り返し追求いたしましたことも、両三年というまくらことばのつけ方がたいへん不明確であった、不正確であった、それはそのとおりですね。どうですか。
  231. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま両三年のうちに返還のめどをつける、これはことばが非常に不明確だと言われる。私は、両三年というそのことば自身、これも不明確だ、いついつまでにというそういうものではないことは、これはもうことばのとおりであります。だから、そういう意味で不明確だと言われることは、これに対して何をか申しません。しかし、私ども外交交渉といいましょうか、こういう重大な折衝をしますと、やはり最高責任者がお互いに話し合っているその会談を通じて私どもが確信を得ること、そのことを国民に話するのは、総理大臣として私は当然の責任だと思う。私はそれを申し上げておる。私は、ジョンソン大統領と何々の約束がある、かように申したことはございません。しかし、私は、会談を通じ、総理として確信を得た点、それをそのまま国民に披露するのは私の責任だ、かように思っております。だから、さような意味で御理解をいただきたいし、誤解のないようにお願いしたいと思います。
  232. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは次に、当然基地の問題ということをこれから検討してまいりますについては、アメリカの極東戦略というものについて総理がどう考えておるかという点が、判断の基礎になってまいろうかと思います。時間が制約されておりますから、端的にお尋ねをします。  ベトナムの会談が進んでから、また、ことしの一月来朝鮮半島の緊張がいわれて以来、韓国における米軍基地の強化等がいわれております。そこで、いろいろな説がありますけれども総理は、沖繩の基地を済州島に移転するという、この済州島移転説についてはどう判断をしておられますか、明らかにしていただきたいと思います。
  233. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 済州島移転説というものがほんとうにあるのかどうか、私は知りません。一部新聞に報道された程度でございますので、私がこれをとやかく批判するような筋のものでないこと、これまた御了承いただきたいと思います。
  234. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 三月三十一日、ベトナム和平についてのジョンソン声明が出されましたとき、総理木村官房長官は、相次いで、沖繩返還についての環境はよくなる、こういうふうに楽観論を言われました。その楽観論については、今日も依然としてそのとおりお考えになっておりますか。
  235. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、ベトナムで戦争が現実に行なわれる、そういう状態を、日本国民として一日も早く平和が来るようにと心から念願しております。とにかくパリで具体的な話し合いができるようになった、もうそれだけでよほど世の中が明るくなったように思う。まだその結論は出ておりません。しかし、おそらくこういう話が出ればエスカレートすることはないだろう、みなが考えるように、そのうち和平が現実に訪れるだろう、こういうことを考えますと、これは確かにアジアに和平が来、これからあまり心配することはないようになるだろう、私どもはその期待を持つのは当然だ、かように思っております。
  236. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 英国軍は七一年までにスエズ以東の軍隊を撤退する、こういうふうになっておりますね。その方針のもとに進められております。このことについてアメリカがどう対処しようとしておるか、そうしてその中で沖繩の基地の値打ちというものがどう評価されるとあなたはお思いになるか、この点については、先般の私の質問に対してはわからない、こういうふうに答弁をされたのです。これは、私は総理としてたいへん怠慢だと思います。ですから、この際に、この点をひとつ沖繩の基地との関係において、あなたの判断を明らかにしていただきたいと思います。
  237. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御承知のように、スエズ以東から英兵を撤退さす、英国政府がそれを考えた、それはもうすでに発表された。その穴埋めは一体どうなるのか、こういう意見も一部にはございます。しかし、そういう点でアメリカがこの穴埋めをするという話も実は伺っておりません。私は、この状況のもとにおいて軍事的なそういう態様が必要なのかどうか、かようなことになりますと、私はむしろ必要でたいという、そういう方向じゃないだろうか、かように思います。
  238. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 必要でないという、あなたは楽観的な方向でありますけれども、この点については、いずれまた議論をしなければならぬと思います。  千葉における選挙中の発言で、アジア情勢の見通しがついていない、結局日米友好だ。先ほど英国軍の撤退についてもたいへん甘い判断の方向で言われておるわけでありますけれども、しかし、一方では、こうした千葉県における遊説中の発言等を見ますと、本土並みは現状では論外だ、こういうふうに、アジア情勢の見通しというものと基地との関連についての評価というか、その辺については、非常にあいまいなままに触れておられるわけでますね。だから、アジアの情勢というものの見通し、それから、これから日本の国内の基地あるいは沖繩の基地と関連をして、日本政府とアメリカ政府との間で安保条約そのものの運用についての検討もあろう、そういう中で、アジア情勢の見通しというものを総理が的確に持たない、そしてよりどころは日米友好だ、相互信頼だ、こういうことでまいりますならば、要するに、基地の態様についての総理の判断というものは、アメリカ側の一方的な主張に押されていかざるを得ない、こういうふうに心配をするわけです。  では具体的にお尋ねをしますが、こうした中で、沖繩の核基地というものの評価、現在でも必要だ、こういうふうに総理はお考えになりますか、どうですか、明らかにしていただきたいと思います。
  239. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 アジアの情勢の判断、これは先ほど私の見方が甘い、こういうおしかりを受けましたが、川崎君からも教えていただけばたいへんけっこうだと思う。お互いにアジアの見通しはどうなのか、重大関心があります。総理の見方は甘いというおしかりを受けたのですから、もっと危険性あり、かようにお考えなのか、その結論なら、おそらく沖繩の基地というものの重要性、これは高く評価されるべきであろう、かように私は思います。(「三段論法はいかぬよ。」と呼ぶ者あり)お尋ねになるまでもなく、結論は出ているのじゃないか、かように思います。しかし、私は、いま不規則発言で言われているように、三段論法はいかぬ、そのとおりだと思う。私は、まだまだこの問題はそう簡単にただいまの状況で話するわけにいかない、国際情勢というものはきわめて簡単なものじゃない、かように思いますので、そういうところで善処するのが私どもの仕事なのです。私が沖繩の基地を白紙だと言っておるゆえんも、こういうような事柄がきまらないその現状のもとにおいて、基地はかくあるべし、こういうことは言えないということを申し上げておるのでありまして、誤解のないようにお願いします。
  240. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは、分離はないと先ほど言われましたですね。分離はない、こういうふうに言われた。そこで、それならば、スナイダーやあるいはアンガー氏らがアメリカの議会で証言をしておる方向からしますならば、基地については自由使用、こういうことを主張しておる。また、その点については、私の質問あるいは参議院における羽生議員の質問に対しては、返還に際しては基地の自由使用はあり得ない、こういう断言をされております。ここらはぶつかり合っておるところですね。そうしますと、この自由使用ということについてはあり得ないということは、ここでもう一ぺん確認をとりたいと思いますが、それでよろしいですか、明らかにしていただきたいと思います。
  241. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、自由使用はあり得ない、かようには一度も申しておりません。まだアメリカ自身の主張がはっきりしておらないのです。先ほど来申しますように、おそらくアメリカとすれば、スナイダー発言にしても、基地というものに重点を置いた考え方だろうということは申しましたが、自由使用あるいは施政権つきな、特別なキューバ式な基地を考えているとか、そんなことはないだろうということを申しましたが、これは、しかし、これからよく話してみないとまだ意見が明確に出てこないんじゃないか、かように私は思います。まだおそらく、こちらのほうとしてはキューバ式のようなものは考えない、これはもうはっきり言える。また、向こうでも言わない自由使用云々というようなものを、こちらからとやかく言う必要はない。おそらくそれらの点ももっと話を煮詰めないと出てこないんじゃないですか。だから、私は、いま政府考えているのは何だと言われれば、とにかく基地の問題については白紙だ、その一本やりでございます。また、アメリカの主張もまだ明確になっておらない。明確になっておれば、これに対するいろいろな攻撃材料もあるわけですけれども、それがただいまない状況でございます。誤解のないようにお願いしておきます。
  242. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それは十二月の臨時国会においては、明らかに、自由使用はない、こういうふうに言明をされたわけですね。アメリカの施政下にあるアメリカの基地はアメリカが自由使用できる、しかし、日本に返した後の基地はアメリカの自由使用は許さない、それで、基地そのものはどのような方向でいくか、それについてはわからぬ、こういうのですよ。自由使用を許さない、そうしますと、明らかに、先ほどからくどく言っておりますけれども、つまり、基地と施政権の分離はあり得ない、つまり、基地と施政権の分離という形できた場合には返還に応じないということでありますか。自由使用は許さないということでありますか。そこで待ってくださいよ。その前に、あなたは、沖繩の県民は復帰を望んでおるからその願望にこたえなければならないというまくらことばを必ず置いてきますから、それはひとつ抜いてもらいますよ。それを抜かなければ議論はできませんからね。それは抜いておいてください。そしてさらに、あなたのほうの有力な幹部であります前尾さんも、核つきは反対だ、こういうふうに明らかに言っている。それらからいきますと、自由使用はない。いいですか、自由使用はない、それは核も含めて自由使用はない、そういう方向での返還である。最終的にですよ。基地について話し合っていく態様はまだきめていない、白紙である、しかし、返還されたときは自由使用でないんだというのだから、結果はそうなっておる、こういうことですね。結果はそうなっておらなければいかぬわけですよ。そうでしょう。論理じゃないですか。そういたしますと、結果がそういうふうな自由使用を許さないもので返還、こういうふうに当然県民の要望、国民の与望をになって進めていくということでなければ、この返ったときには基地自由使用を許さないんだ、こういう言い方は出てこないわけです。その点を明らかにしていただきたいと思います。
  243. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 基地の自由使用ということはどういう意味なのか、私はいまの理解するところでは、これは日本に全然タッチさせない、アメリカが施政権を持っておると同じような立場でこれを使うのだ、こういうことのように聞きますが、先ほど来申しますように、施政権が返還される場合に基地だけを分離するような考え方はございませんから、そういうような誤解のない方法で話がつくものだ、かように御了承いただきたいと思います。
  244. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 アジアの情勢あるいは他の返還後の基地からくる他国の防衛同盟条約との関係、その他もう少し詰めたいと思いましたけれども、時間がございませんので、それは省きたいと思います。  最後に、一つだけ日中国交回復の問題についてお尋ねをしたいと思いますが、アジアにおける緊張緩和について、日本のやるべきことは何であるか、つまり、日本が主体的にやっていけること、やらなければいけないこと、たくさんあると思います。その中の一つの問題として、中国との関係に緊張をつくらない、むしろ緩和をさしていく、そういうためには、この秋の国連総会において、当然また重要事項指定方式の問題が議論になります。この点については賛成をする、こういうふうに本会議で答弁をされておりますけれども提案国になるおつもりでありますか。提案国にはならないのでありますか。まず、これをお尋ねしておきたいと思います。
  245. 三木武夫

    ○三木国務大臣 中国の問題が国連でどのような形で取り上げられるかということは、まだ固まっていないのでございます。したがって、もし重要事項ということであれば——これは重要事項といえばわかりにくいのですが、三分の二議決を必要とする。国府を追放して中共を国連に入れて代表権を与えるということは、単なる手続問題ではない。重要な内容を含んでおるから、過半数で決定するというものではなくして、国連の他の議決の場合でも、単なる手続問題以外はみな三分の二ですからね。これも三分の二の議決を必要とするということで重要事項指定方式といわれておるものに賛成をしておるわけであります。今日においても、政府は、国府を追放して中共を国連に入れて代表権を与えるということが、単なる手続問題だとは思っていないので、中共を締め出すというような考えではなくして、これはきわめて重要な問題であるから、三分の二の議決を必要とするという考え方は変わってはおりません。共同提案国の問題は、これは外交技術上の問題でありますので、問題が具体化したときに政府はきめてよろしいと考えております。
  246. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 日中の平和共存について、いろいろと客観的な情勢がございます。情勢を述べておられます。昨日、外務大臣は、この平和共存の問題についても触れられたわけでありますけれども、私はこれをもう少し発展をさしてお尋ねをしたいと思いますことは、いろいろと政府としては条件を言われると思います。しかし、その条件等については、時間の関係があるから、ひとつ簡明率直に具体的な御回答を願いたいと思うのでありますが、アメリカの了解なしに、つまり、日本は自主的に——いろんな情勢は別ですよ。自主的に日本は中国との国交回復をすることができますか、どうでありますか。佐藤総理お尋ねをしたいと思います。
  247. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 別に御心配ないように、自主的な外交をいたします。
  248. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 自主的に時期なり条件なりが熟せば国交回復ができる、こういうふうにお答えになられるのでありますか。
  249. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日本の外交は日本独自にその道を選ぶということは、はっきり申し上げられると思います。
  250. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは一九五一年の十二月二十四日、なくなられた吉田茂さんが内閣総理大臣として、ジョン・フォスター・ダレス大使に日華平和条約を結ぶにあたって明らかにしておるわけです。読み上げます。「わたくしは、日本政府が中国の共産政権と二国間条約を締結する意図を有しないことを確言することができます。」こうダレスに吉田さんが言われたわけです。これは一野人としてではなくて——いまは輸銀の問題が吉田書簡として問題になっておりますが、民間人としてではなくて、内閣総理大臣としてダレス大使にこういう書簡を出しております。この書簡に対してダレス氏から、「私は、貴簡に対して感謝し、貴総理がこの困難で論争の種となっている問題に対してとられた勇敢で直截な態度に敬意を表します。」こういうふうになっておりますが、この書簡は関係なしに中国については国交回復ができる、こういうふうに理解をしてよろしいのでありますか、いかがでありますか。
  251. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 サンフランシスコ条約締結の際に、一体どういうことになるのか、そのときに日本がみずから選んだ道、それはいまの書簡だろうと思います。したがって、先ほど来話をされておるように、日本が独自の外交路線を選ぶ、それにちっとも変わりはございません。今後とも日本は独自の立場でそれをきめていきます。
  252. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは、そのように野辺送りがされておる、輸銀の書簡も同様、そしてまたこのダレスあての書簡も野辺送りされておる、こういうふうに理解をいたします。  最後に、基地問題について質問をいたします。  いろいろと基地の問題が続出をいたしております。総理は、所信表明においても、日本の安全を守ってもらうために、安保条約の実行についてはやらなければならぬのだ、そして義務を負わなければならぬのだ、こういうことを言っておられます。その安保条約の強化をやり、さらには基地の強化をやる、こういうことを進めますと、進めれば進めるほど、今日基地問題、国土を破壊をし、国民の生活を破壊をする問題が続出をいたしております。このことについてどうお考えになるか、総理の基本的な見解を明らかにしていただきたいと思います。
  253. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この基地問題にお答えする前に、先ほどの、吉田書簡は野辺送りにされた、こういう言い方をされましたが、どうも野辺送りということばは不適当なように思います。これだけはひとつ取り消していただくというか、あるいはそのまま保留して、あなたがおっしゃることは御自由ですが、私どもはさようには考えていない。書簡は書簡だ。これは、外交交渉でそういう書簡が交換されることはしばしばございます。しかし、それをあとで野辺送りするとか、そういうような筋のものではない。これを緩和するとか、そういうようなものでもないこと、これをひとつ御理解いただきたいと思います。  次に、いまの基地の問題でございますが、基地の問題については、私ども所信表明ではっきり申し上げたように、この日米安全保障条約、これは日本をアメリカが守ってくれる、日本はやはりこれに対して基地を提供する、施設の使用を許す、こういう条約上の責務がある、義務があるわけです。どうも条約上の権利義務、これを明確にしておくことが国際信用の問題からも必要だ、かように私は思います。そこで、基地周辺の地域住民に非常な不安あるいは損害を与える、こういうことのないようにするのが、これまた政府責任でございます。だから、私はそれらの関係を率直に所信では表明いたしまして、この国の安全を確保する、同時にまた、地域住民が非常な迷惑、損害をこうむることのないように、この上とも努力するということを申し上げておるのであります。  ところで、基地の問題についてたいへん私が遺憾に思うのは、どうも安全保障条約に反対の立場から基地問題を大きく取り上げて、そうして基地さえなければというような言い方をされる。だけれども、まだ一部ですね。国民大多数の方は安全保障、これが確保されている、そのために基地もあるのだ、しかし、どうも基地が当然だということで迷惑をかけっぱなし、これは困る、こういうようなまじめな考え方もある。だから、基地公害ということばまでありますが、そのほんとうのねらいは一体何なのか、ここもよく考えていただいて、やはりこの国の安全を確保するために日米安全保障条約は必要だ、かようになると、どうして基地について地域住民の理解、その協力を求め得るか、その損害、不安、これをなくするようにどうしたらわれわれが処置ができるのか、こういうような建設的な考え方を実はしていただきたい、かように思う次第であります。私は、これはよけいなことですが、以上申し上げておきます。
  254. 井出一太郎

    井出委員長 楢崎弥之助君より関連質疑の申し出があります。川崎君の持ち時間の範囲内においてこれを許します。
  255. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ただいま総理から最近の基地問題に対するお考えを聞きました。  私ども思いますに、最近の基地問題の特徴はいろいろあろうと思いますが、そのうちに、あえてあげますならば、まず第一番に、この基地問題が毎日の国民生活に対して具体的に不断の脅威を与えておる、こういう事実の上からこの基地問題は起こっておるということがまず一番であります。  その次に、それらの基地周辺の住民は、地方自治体、それから地方議会を中心に住民が結集して、この基地の反対運動をやっている。しかもそれは、あなたが総裁をしておられる自民党の地方議員も含めて超党派的にこれが起こっておるという事実、これが第二番目であります。例をあげれば、最近の板付問題、九大に落ちましたジェット機の問題で、自民党の亀井県政下で、県議会が一致して移転運動あるいは撤去にあたっておる。福岡市議会もそうです。それから、もしかこちらに移ってくるかもしれないと思われるところの新田原とか築城とか芦屋とか、そういったところの周辺の自治体も、さっそく移転反対の運動を超党派的に起こしておる、こういう事実です。  そして三番目には、この安保条約の中身が具体的な姿をとればとるほど、安保条約の矛盾が出てきておる。それがただいま申し上げたとおりです。一方が基地撤去を言えば、さっそく関連のあるところでは移転反対の運動がすぐ起こる、こういう矛盾ですね、これが出てきておると思うのです。  そこで、私は最後に総理にお伺いをしますが、まず関係大臣に時間がありませんから簡明にお伺いをします。  最近、国民の日常生活に対して基地問題が非常な脅威を与えておるという例は、たとえば王子の野戦病院、あるいは水戸の射爆場、そして最近起こっております、全国十二カ所の通信基地周辺に対する電波障害緩衝地帯の設置の問題、つまり、イーズメントの提供要求であります。この電波障害緩衝地帯のごときは、これまた十二カ所全部超党派的に反対運動が起こっております。私は、この電波障害緩衝地帯、つまり、米軍からのイーズメントの提供要求、それと同じ性質のものが二、三起こっておる。私は、これをここで明らかにいたしたいと思うわけであります。それは、最近米軍基地周辺で航空障害制限地域設定の要求、イーズメントの提供要求があっておる。つまり、地役権の提供要求があっておる。立川はすでに形となってあらわれております。まず、そういう航空障害制限地域に対するイーズメントの提供要求があっておる米軍基地は、板付基地のほかにどことどこがあるか、これをまずはっきりしていただきたいと思います。
  256. 山上信重

    ○山上説明員 米軍の航空基地につきましては、現在日本の航空法の適用がないために、航空障害の及ぼすような、そういった制限の法規の適用を受けることができませんので、これに似たような範囲の制限をしてほしいということは、前々から各空軍基地について、米側から要求が出ておるのでございます。立川、横田はもちろんのこと、板付あるいは海軍基地におきますところの厚木、木更津、岩国等におきましても、こういう要求は前々から出ておる次第でございます。
  257. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 すると確認をいたしますが、立川、厚木、木更津、岩国、板付、それに横田がありますか、このほかにありますか——その六つの基地についてイーズメントの提供要求があった日付を、ひとつ明らかにしてください。
  258. 山上信重

    ○山上説明員 厚木につきましては三十一年一月以来、木更津につきましては三十七年の四月、岩国も同じでございます。立川につきましては四十一年の十月、それから板付につきましては四十二年の六月、横田につきましても同じく四十二年十一月でございます。
  259. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そこで、この航空障害制限の内容、特徴的な点を簡単に言ってください。
  260. 山上信重

    ○山上説明員 日本の飛行場におきまするところの航空制限とほぼ同様な内容でございます。簡単に申しますとさようでございますが、板付等につきましては、それよりもさらに簡単な、進入方向だけというような内容のところもございます。
  261. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、立川を例にとるならば、立川の場合は約五万坪の航空障害制限地域設定の要求があっておりますね。その五万坪は、水平表面の投影面積を大体五万坪と考えましておったらいいですか。
  262. 山上信重

    ○山上説明員 日本の飛行場におきますものとほぼ同じ感じにお考えくださればけっこうでございます。たとえば、角度等につきましては五十分の一というようなことで、日本の民間の、羽田とか、あるいはその他の飛行場とほぼ同じとお考えいただきたいと存じます。
  263. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは、立川の場合五万坪という数字が出ておりますが、おそらくこれは水平表面の投影下の面積、ほぼそうではなかろうかと思います。そうすると、大体五万坪くらいの実質的な基地の拡張が、この六つの米軍基地に対して要求が行なわれておる。このように理解せざるを得ないわけです。そこで、ただいまも長官からお話のありましたとおり、これは国内法がない。したがって民事による契約か、あるいは特別措置法による強制収用か、どちらかによらないとできないと思います。これは電波障害緩衝地帯設定の場合と同じであります。したがって、この航空障害制限地域設定の、あなた方の考えておられる方針あるいは方法は、どう考えておられますか。
  264. 山上信重

    ○山上説明員 航空機の離発着いたします場所は、これは国内の飛行場も同様でございまするから、かような障害にもし万一故障が起きますれば国民にも非常な迷惑をかけるわけでございますから、航空法というものの趣旨を適用すべきが本来ではないかと思います。しかしながら米軍基地につきましてはただいま、まだそこまで考えておりませんので、これは個々の問題が生じたつど、行政措置によって考えてまいりたい、こういうふうに考えております。
  265. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 念のためにお伺いをしておきますが、福岡国際空港は航空法の適用がありますか、運輸大臣
  266. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 民間飛行として使用されているのですから、適用はあると私は考えますが、詳細は当局に調べさせて御報告をいたします。
  267. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 防衛施設庁長官、ただいまの運輸大臣の答弁は正確であると思いますか。
  268. 山上信重

    ○山上説明員 板付の場合は米軍の飛行場でございまするから、日本の航空法の適用は現在まだ至っていない、かように考えております。
  269. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 お聞きのとおり、運輸大臣は運輸行政について最高の責任を持ちながら、こういう大事な問題を御存じない、たいへん残念であります。  そこで時間ありませんから、これと同じような問題をもう一つお伺いをしておきます。  それは最近秋月の弾薬庫から小倉の山田弾薬庫へ弾薬の輸送がありまして、問題が起こったのは御承知のとおりであります。そこで最近非常に都市化が進みまして、この種の危険な弾薬等の貯蔵施設の周辺に、たくさん家屋なり市街地もでき、工場もできてきつつあると思います。非常に危険な状態になっておると私は思います。そこでこれまた米軍から、米軍の弾薬庫の周辺に一定区域を限って保安地帯を設けるという、建築物制限のイーズメントのやはり提供要求がなされておると思いますが、それの場所と提供要求のあった日付。それからその保安地帯の内容等をさっと言ってください。
  270. 鐘江士郎

    鐘江説明員 お答えいたします。横田につきましては四十一年の八月、それから池子弾薬庫につきましては三十九年七月、三沢につきましては四十二年の一月、厚木につきましては四十二年の二月、それから秋月弾薬庫につきましては三十八年の八月ということになっております。内容はちょっと資料がございませんので……。
  271. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 資料がないとおっしゃいますが、自衛隊の弾薬庫等については火薬類取締法及び施行規則が準用されるのではありませんか。そうすると大体保安地帯の内容というものは出てくるではありませんか。どう考えておるのですか。
  272. 鐘江士郎

    鐘江説明員 弾薬庫につきましての保安距離というものは、火薬類取締法によりまして、国内法としましてはそれぞれの何トンにつき何メートルの保安距離をとるということの定めがございますが、アメリカの場合におきましても保安距離の定めというものが、安全規定というものにございまして、たとえて申しますと、住宅地区に対しましては、国内法による火薬類取締法におきましては、一トンにつきまして住宅に対しましては百四十メートルないし百六十メートルという第一種、第二種の保安物件に対しまして保安距離をとるということになっておると思いますが、一方アメリカの場合におきましては約四百メートルをとるということになっております。ただし、バリケード等の掩蓋がある場合にはその半分の距離でよろしいという取りきめがございます。
  273. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 時間がありませんから私は一つだけ例をあげます。これは、この保安地帯の設置は非常にきびしいものになろうと思います。そこで、これだけの五つの米軍の弾薬庫について保安地帯のイーズメント提供要求があっておるということは、それだけ危険な状態にあるからです。一例をあげますと、たとえば二十トンの場合は、周辺から四百四十メートルまでは市街地の家屋、学校、病院等はいけないということになっておる。ところが米軍の弾薬庫の場合は、この前も秋月から山田まで送ってきたときには六百万トンですか、これは相当の弾薬が貯蔵されておるということになる。そうすると、相当の距離まで家は建てちゃいかぬ、道路もつくっちゃいかぬという規則があるのですよ。これは電波障害地帯、緩衝地帯の場合と一緒です。したがって、これほどの問題を、私は例を二つあげましたが、これほどの問題がいま現実に、米軍基地の周辺の日本の住民の生活を制限する要求が米軍から起こっております。これは、私はこの傾向はますますひどくなろうと思います。これが安保条約なんです。国民から見ますとこれが安保条約なんです。だから、安保条約とはこういうものだということが、具体的に問題が起これば起こるほどわかってくるのです。  そこで建設大臣にお伺いしますが、都市計画を、これは改正が言われております。今後この種の米軍基地なりあるいは自衛隊の基地等々、それとの競合において国民生活の発展を第一義に考えるのか、あるいはその防衛施設をあくまでも大事に維持していくほうに主眼を置いてやられるのか、都市計画策定の場合に。聞くところによると、都市計画の計画書ができたらそれをまず防衛庁なり防衛施設庁に見せるような相談があっておるそうですが、建設大臣はどのような方針で臨まれますか。
  274. 井出一太郎

    井出委員長 なお、この機会に申し上げます。時間がもうだいぶ経過しておりますから、結論をお急ぎください。
  275. 保利茂

    ○保利国務大臣 だんだんお話しのように、今日の国土状況からしまして、基地が持たれたときと今日とはずいぶん変わってきております。したがって、都市計画法を進めてまいります上におきまして、それぞれ地元でも非常に苦労されておる。そこで総理大臣の所信でも申し述べられておりますように、そういう住民の方々にできるだけ不安や危惧を起こさせないように最善の努力をしていこうということで、いま防衛施設庁に一生懸命で心配をしていただいておるわけです。しかしながら、やはり国民の生活と言われますけれども、平和が維持されなければ生活の安定というものはでき得ないわけでございますから、したがってその間はそう一がいに割り切った考え方はできない。可能な限り最善を尽くして住民の方々に不安を与えないように、しかも国が安泰にやっていけるようにやっていかなければならぬ。都市計画の実施につきましては地元の方々と協議いたしまして万全を尽くしていくつもりでおります。
  276. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは厚生大臣にお伺いしますが、公害対策基本法が制定されまして、だんだん内容の整備に入っていくと思いますが、一般的な公害の場合とこの基地の危害というものは違うと思いますが、厚生大臣はこの公害対策基本法との関係で何かお考えがあればこの際述べておいていただきたいと思います。
  277. 園田直

    ○園田国務大臣 ただいまの御質問に対しては、公害以上の重大な問題でございますから、いろいろ検討いたしておりますが、まだ具体的には計画をいたしておりません。
  278. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは、最後にします。  最後に総理大臣の御見解をお聞きしてやめたいと思いますが、質疑の中で明らかになりましたとおり、安保条約堅持堅持といわれますが、しかし安保条約が具体的な形をとって出てくれば出てくるほど実は国民生活との競合の問題が起こってきておることは事実であります。しかもあなたが総裁をされております下部の自民党の議員も一緒になって困る困るという決議に加わっておられるんてすね。れで私は、総理は安保条約かあるから——いま保利建設大臣もそのようなことをおっしゃったようでございますけれども、安保条約があるから国民もひとつ不便なりあるいは危険に耐えなさいという態度ではなしに、安保条約があるにもかかわらず、しかし運用の面では、やはり国民生活の平穏ということを第一義に考えていく必要があろう、総理の立場としては。私ども安保破棄を言っておりますけれども、安保が破棄されない間においては、安保かあるにもかかわらず——安保があるからではなしにあるにもかかわらず、運用の面で国民生活を第一義に考えていくという運用のしかたを、私はこの際総理に要求をしたいわけでありますが、御見解を承って私の関連質問を終わりたいと思います。
  279. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私が安全保障体制、これが必要だ、かように申しますのも、国民の生命、財産を守らんがためであります。国民の生命財産を守ること、これを第一義に考えればこそ安全体制が必要だ、かように申しておるのです。この点を誤解のないようにお願いしたい。  もう一ついまのお話についても、先ほど楢崎君も一言触れられましたが、安全保障体制のもとにおいてすばらしい繁栄をしておる。最近の都市化がめざましく、急激に都市化傾向が進んでおる。その結果、ただいまのような基地の問題が前にはあまり問題にならなかったのが最近は非常にやかましい問題になっておる、こういうことも考えてみなければならない。おそらく最近の都市化のようなすばらしい発展がなければ、最近のような基地の問題も、基地公害などの言はなかなかないだろうと思う。やはりこの安全保障体制のもとにおいて今日すばらしい繁栄をしている、そうして都市化がどんどん進んでいる、こういう状況であります。でありますが、この状況のもとにおいて今度はどう考えればいいのか。先ほど私が冒頭に申しましたように、基地は必要だ、しかしながら、基地住民に対して特別な不安や不都合をかもし出さないように政府はあらゆる努力をしなければならない、これも先ほど申したとおりであります。そういう意味で、地域住民の利益を確保していく、こういうことで最善を尽くしてまいりたい、かように思います。
  280. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 一言だけ。私は、基地公害ということは是認しておりませんから、基地の危害で公害とあなた方が考える点については、また次の機会にはっきりさせたいと思います。終わります。(拍手)
  281. 井出一太郎

    井出委員長 次に、玉置一徳君。
  282. 玉置一徳

    玉置委員 私は、民主社会党を代表いたしまして、当面する外交問題、ことにわが国の防衛と日米安保体制について一応総理と一緒に考えてみたい、かように思うのであります。  そこで、まず冒頭にお伺いしておきたいのですが、総理が最近しばしばおっしゃいますように、自分の国は自分で守るという気概を国民各自が持たなければ一国の安全保障はあり得ない、いわゆる国の防衛に対する国民の合意が一番国の安全に必要なことだ、こういうお話がございますが、総理は、そのとおりお考えになっておりますか、どうか。
  283. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 しばしば申し上げておるとおり、私のこれが信念でございます。
  284. 玉置一徳

    玉置委員 三木外務大臣にお伺いしたいのですが、日米安保体制がいかなる作用をいたしますにすれ、外務大臣としては、どの各国ともなるべく摩擦を最小限になくするように努力を積み重ねる必要がある、それが国の防衛を維持する外務大臣の仕事だと思うのですが、どういうようにお考えになりますか。
  285. 三木武夫

    ○三木国務大臣 世界各国の防衛体制というものが、共産圏も自由世界も集団安全保障方式をとっておることは御承知のとおりであります。したがって、そういう形で安全保障というものを考えておるけれども、その中にあっても外交は、常に世界各国との間に友好な関係を増進するために努力することが外交の使命だと考えております。
  286. 玉置一徳

    玉置委員 そこで戦後二十三年たちまして、敗戦の中から立ち上がりましたわがの産業は、国民の優秀な頭脳と勤勉な労働と申しますか、そのおかげをもちましていまや世界三番目の産業国にまで成長したわけであります。この間、安保体制というレールに乗りました関係もありまして、わが国の経済が多かれ少なかれ、わが国の外交、政治が多かれ少なかれ日米安保体制の影響を私は受けておると思います。こういう意味では、外国の人々が批判しますように、日本の今日の繁栄は、国防にほとんど精力を使うことなく、産業の復興に全エネルギーを集中したおかげじゃないかというように批判されるのも私は一つの事実だと思います。しかしながら、そのほかに朝鮮動乱とかベトナム紛争とか、あるいはアメリカの好景気とかいろいろな外的な好条件もラッキーに作用したのじゃないか、こう思います。その意味では、私は佐藤さんのほうに、自民党のきょうまでの功績をたたえるわけでも何でもありませんけれども、日米完保体制の若干の消極的な意義をまず前提としてこれから御相談をしていきたい、こう思うのです。  しかしながら、きょうまではそれでよかったでございましょうけれども、国力と申しますか、あるいは工業力と申しますか、産業の成長を来たした今日になれば、いままでのように佐藤さんのおっしゃいますように、いずれの国とも仲よくする、平和に徹するというだけでは——もうちょっと日本の国際的地位は高まっているのじゃないだろうか。もっと積極的に日本の平和憲法のもとに国際社会の平和と安全にどうやって寄与するか、もしくはまた世界の人類、ことにたくさんございますアジアの低開発諸国の民生の安定と向上にどのようにして寄与していくかということを積極的にいまや宣明しなければならないときにきたのではないか、こう思うのですが、佐藤総理のことに対する所信をお伺いしたいのです。
  287. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま玉置君の言はれるように、今日の国力をもってすれば、もっと世界の平和に積極的に寄与すべきじゃないか、かように言われること、私もさように考えます。その方向、その道は、もう外務大臣が特に努力しているいわゆる国連中心、そのもとにおいて各国の平和に寄与すること、さらにまた低開発、発展途上の諸国に対して経済的な援助を差し伸べる、それも一国または他国と協力として積極的な協力援助をする、かような方向で各国の繁栄、平和に寄与する、これがわが国のとるべき道だ、かように思っております。
  288. 玉置一徳

    玉置委員 ここで軍縮の問題について世界の各国のイニシアチブをとるべきじゃないか。なお国連強化のためにいままでと違った、もう少し具体的に国連安全保障体制の整備というようなものにも関心を払うべきじゃないかということを申し上げたいのですが、時間がないから割愛いたしまして、そういうような御注文だけをひとつ申し上げておきます。  そこで、先ほど佐藤総理に、国防というものは、国の安全というものは、その国民の自国を守るという国防意識の合意でなければいかぬ、そこに一番基本を置かなければいかぬということをお尋ねしたわけでありますが、佐藤さんがこのごろおっしゃいますのは、参議院選挙に勝利を得た、私たちの主唱する日米安保体制に国民の支援を得たということをしばしばお話になるのですが、そこで次のことをひとつ御披露申し上げたいのです。  四月五日号の週刊朝日の世論調査の発表によりますと、日米安保条約の存続論は三四・八%、それに対して日米安保条約をなくするというのと、ある程度薄めるほうがいいのではないかというのが合計で五二・二%。それからもう一つ、四月二十二日の読売新聞ですが、この世論調査では安保存続論が八%に対し、安保をなくする、薄めるというものが六九%あったのであります。七月一日の毎日新聞の世論調査によると、現在の自衛隊と安保でいいというものが二一%、中立その他これ以外のものを合わせまして六八%。六月三十日の東京新聞の都民の世論調査、安保堅持論が一六・六%、なくする、薄めるというものが五五・八%。もう一つついでに言うておきます。四月五日号の週刊朝日、日本の安全を守るためにアメリカにたよるか、中立その他の方法によるか、という問いに対しまして、自民党支持者のうちで五一・二%が中立その他を支持しております。ついでに、社会党にしかられるかもしれませんが、逆に社会党の支持者のうちでも、さきの毎日新聞の調査によりますと、七〇年の態度としまして、安保の長期固定化もしくは自動延長に賛成するものがかなり多数で、さらに四月二十二日の読売新聞の調査では、安保が役立っているか、いないか、という問いに対して、社会党支持者の中で、役立っていないと答えたもの三一%に対し、役立っていると答えたものが実に四〇%あるわけです。  このたびの参議院選挙の自民党の得票数は過半数を割っておることも事実であります。その上、いま説明いたしましたとおり、自民党の支持者の中でも、半分以上の大多数の人々が、日米安保がこのままでよいとは言っていないのであります。この世論調査の動向を見ますと、一九七〇年を前にして国民の大多数の方々がお考えになっておるのは、日米安保条約の即時破棄を要求しておるのでもなければ、それが自動延長であれ、固定化であれ、このままの姿でよいと言うておるものも非常に少ないのであります。一番多数の国民諸君は、安保体制を消極的に支持しながら、その弊害を何とかして除去してほしいという態度でありまして、わが党が立党以来今日まで主張し続けてまいりました日米安保体制の段階的解消というのが、これは公明党の皆さんもこのごろ一緒におっしゃっておるわけでありますが、ここにこそ国防に関する国民合意の道が私は開けるということを立証していると思います。必要なことは、日米安保体制の改定——改定というのはおかしいのですが、一応の期限到来を目前にいたしまして、いまごろになって佐藤さんが、先ほど申しました国防意識の高揚というようなことをお叫びになるのは、ちょっとおそいんじゃないだろうか、意味が違うんじゃないだろうか。そこで、国防に関する合意の必要をお説きになりますけれども、一番大事なことは、国民は案外、国会で国防問題をとらまえて論議をしていないうちに、いろんなところからとっくに日米安保体制の利点と欠点をはだで知っておるというその事実を、やはり私は、為政者である総理はお知りにならなければいかぬのじゃないか、こう思うのです。  そこで、佐藤さんからお答えをいただきたいのですが、一九七〇年の安保の改定に際しまして、あなたは国民の世論の動向を尊重されますかどうか。存続なり廃棄なり、あるいは必要な改定を行なうのか。世論の動向を見てこうこうしようと思うということをよくおっしゃいますが、いまこそこれが一番大事なときじゃないか。よく、いま白紙だとおっしゃいます。白紙でいいと思うのです。しかしながら、じっとこの国民の動向をながめておいでになるだろうと私は信じております。そういう満を持して放たずというのがいまの佐藤さんのお姿じゃないか。もうぼつぼつ国民に向かうところをお示しにならぬと、私の心配しておりますのは、あとで申しますが、イデオロギーによる反米闘争とこれらの善意の諸君の行動が一緒になるおそれが非常にあります。そのことが日米安保体制にほんとうの意味の私はひびを入れるんじゃないか。そこまで行ってしまうと、日米安保体制は、日本の国防や安全に何のためにもならず、みずからそれを解消してしまうところへ行きやすいということを非常に心配いたします。この意味におきまして、私は、総理に、安保の期限の一応の到来の時期を目前にして、佐藤総理は、国民のこのような動向というものをどういうようにお考えになっているか、その所信をお伺いを申し上げたいし、あわせまして所管大臣である三木さんから——まあこれはやめておきましょう。  その次に、先ほど増田防衛庁長官がおいでになりませんでしたので、お伺いしておきますが、国民の国防意識と離れて、あるいはこれを曲視しまして、日本の安全を守る自衛隊の存在の意義があるかどうか、あるいは、自衛隊が国民の意思を離れて、国民の合意を離れて十分な国防活動ができるかどうか。途中おいでになりませんでしたので、お隣の三木さんから、ちょっといままで質問しました要点だけをお示しいただきたいのですが…。     〔「一つずつやれ」と呼ぶ者あり〕
  289. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 一つずつやれということですが、一つずつやるわけでもございませんが、政治家というものは、国民の向かうところを把握しないで政治ができるものではございません。ひとり安保体制ばかりじゃありません。すべてにおきまして、国民の世論の動向、それを察知して初めて政治ができる、これは私の信念でもありますから、この問題についてもさように私は考えている。御了承いただきたいと思います。
  290. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 玉置さんにお答えいたします。  国民の同意なくして国防というものはあり得ないと私は考えるのでございまして、昭和二十六年十一月の安保関係の条約の批准国会におきまして条約が通過いたしましたし、昭和三十五年の六月にも安保関係のものは通過いたしております。また、昭和二十九年の自衛隊法、防衛庁設置法等は、国民の代表者である国会においてコンサスを得たわけでございまして、しかし、その後あらゆる機会において、今回の参議院の通常選挙を含めまして、安保あるいは自衛隊あるいは防衛庁関係のことにつきましては、国民のコンセンサスを得ておる、また、得るために一生懸命にわれわれは努力をいたしておる次第でございます。
  291. 玉置一徳

    玉置委員 佐藤総理の御答弁は、私には意味がわかりますが、少し国民の皆さんへの御説明としては不満だと思いますが、あとにあわせてお伺いすることがありますので、そのときにお伺いいたしたいと思います。  そこで、ただいま述べました意味は、国民の大多数の方々は、一九七〇年を目前にいたしまして、安保廃棄かあるいは堅持かという争いではなくて、いいところは全部もらって、悪いところだけは捨ててくれというのが国民の意思なんですね。国民も、ぼくは総理と同じようによく考えておるのじゃないか、こう思うのです。そこで、一番大切なことは、日米安保条約の第六条、日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカの陸海空軍が基地の使用を許される、この事実だと思います。この基地の存続のためにわが国土が、あるいは朝鮮動乱に際し、あるいはベトナムの問題、あるいは中共とアメリカの万一の場合に報復爆撃を受けるのじゃないかということを、しかもベトナム戦争のエスカレートその他に伴いまして、ほんとうに心配になってきたというのが偽らないところだと思うのです。  この際、三木さんにお伺いをしたいと思うのですが、かつて藤山外相当時、極東の範囲として、フィリッピン以北、日本及びその周辺の地域で韓国及び中華民国の支配下にある地域を含む、また、金門、馬祖両島及び竹島と歯舞、色丹、国後の北方領土もこれに含まれる、北千島は含まれない、という極東の範囲の統一見解が国会でなされたのであります。しかしながら、ベトナム戦争の進展に伴いまして、一九六五年の四月でしたか、当時の椎名外相は、極東の範囲に関連して、ベトナムは極東の範囲には含まれないけれども、極東の地域に脅威を与える事態がその周辺に起こる場合には安保条約の適用は必ずしも極東の範囲に限定されない、こう答弁されております。このような拡張解釈がどんどんされるようなことになりますと、すでにイギリスが極東地域から撤兵をするということを決議をしております今日、マラッカ海峡にいささかの問題が起こったような場合、わが国の大事な鉄鉱石と石油はほとんどここを通ってきておることは、御存じのとおりであります。こういうような拡張解釈をし出していきますと、アメリカの第七艦隊が遊よくする地域は全部この範疇に入ると思われます。この際、政府の統一見解を外務大臣からお示しをいただきたいと思います。
  292. 三木武夫

    ○三木国務大臣 極東の範囲というものを無制限に拡大すべきものではない。それは日本の安全とやはり極東の範囲というものとは非常に深い関係を持っておるので、日本の安全に関係のない極東の地域までも極東の範囲と考えごとは拡大解釈に過ぎる。常に安保条約の根底にあるものは、日本の安全の保持である。極東の情勢が日本の安全に影響を与えることは当然でありますから、日本の安全は何らの影響のない地域まで安保条約の適用範囲内として拡大していくという考え方はよくないと考えております。
  293. 玉置一徳

    玉置委員 非常にわかりやすいことばでごいざますが、(「私にはわからぬ」と呼ぶ者あり)私はわかっておるのだけれども……。そうしますと、あなたのおっしゃったことは、椎名さんがおっしゃいました、極東の範囲というのは前に言われたとおりであるけれども、極東の地域に脅威を与える事態がその周辺に起こる場合には、安保条約の適用は必ずしも極東の範囲に限定されない、これはあまりにも拡張解釈で、現在のところ、前の藤山外務大臣時代の解釈を是とする、こういうことですか。
  294. 三木武夫

    ○三木国務大臣 ベトナムの状態というものは、非常に戦争がエスカレートした場合には、やはりそういう極東情勢というものは日本の安全に非常に影響があると思います。したがって、椎名君の言う、極東の範囲には入らぬけれども、その周辺である、こういうことは、これは無理な拡張解釈であるとは考えません。しかし、原則的には藤山外相のときに言ったことが原則である。なるべくこれを拡大しないほうがいい。しかし、日本の安全に関係をする地域については、これは当然に安保条約の範囲に考えざるを得ない。
  295. 玉置一徳

    玉置委員 三木外務大臣の答弁は、見解は、字句の解釈、並びに問題が起こらないときは、なるべく厳密に解釈いたします。拡張解釈はよくない。しかし、米軍その他ベトナム等の問題が起こってきた場合、マラッカにも問題が起こったときに、インド洋に問題が起こったとき、それが非常に日本の安全に影響があるときには、椎名外相の言うとおりでありますと、こういうことになるのです。そこに国民の、先ほど申しました大多数の皆さんが、どこまでこの解釈がエスカレートしていくかわからない、そこに非常に不安をお感じになっておるというのが私は実態だと思います。こういう意味におきまして、先ほど世論調査も申し上げましたが、佐藤さん、新聞の世論調査の仕組みは、あれは間違った答えが出やすいか、かなり正確で、あれは尊重せなければいかぬか、どうお思いになりますか。
  296. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 あとのように、出てきたところは私どもは尊重するというのが私の考え方でございます。
  297. 玉置一徳

    玉置委員 小さい声でおっしゃいましたけれども、新聞のあれは尊重するというように常に考えております、こういうことでありますので、今後それはどういうようにされるか見ていきたいと思うのです。  そこで、もう一つ論議をのぼってまいりまして、この戦争に巻き込まれるという不安、先ほど外務大臣からの御答弁がありましたとおり、問題が起こったときに、解釈が拡張されるという点を非常に心配しておると思います。そこで、せめて極東条項の削除、あるいは私のほうの言います段階的解消としての極致として一応基地をなくするというようなところまでいけば満点でありますが、今度の安保改定のときに、改定じゃなしに期限到来のときに、これを提案する意思があるかどうか、あるいは検討されないか。それから、このような広い駐留権を認めた条約は、諸外国の軍事条約にもございません。こういうような意味で……(発言する者あり)あなたは知らぬ。条約局長がそれを認めておる。私のほうの曾祢代議士の……(「ポーランドを見ろ」と呼ぶ者あり)ポーーランドなんか別だ。曾祢氏の質問に対しまして、外務省の条約局長もこれを認めておるわけであります。これでは占領の継続といわれても私はいたし方がないと思う。  佐藤総理は、国民のこの不安を除去するために、平時における米軍の駐留を認めないようにするか。私のほうのいわゆる駐留なき安保であります。あるいは、少なくともこの極東条項の削除を国民の願望を入れてこれを削除するような検討をされるかどうか。もしくはせめてこの問題に対しまして、一方的な義務づけとして条約に載るんじゃなしに、極東条項の問題は有事の場合にお互いに協議するというような覚え書き事項にでもする気はないかどうか。というような問題につききまして、佐藤総理並びに所管の三木外務大臣からお答えをいただきたいと思います。
  298. 三木武夫

    ○三木国務大臣 安保条約から極東の条項をはずすべきだという、そういう論をなす人もございますが、やはり日本の安全に極東情勢は無関係ではない。それから、私が申しておるように、日本の安全のために、安保条約の主たるねらいは、日本の安全の確保でありますから、これに関連をする極東情勢というものはあり得るのですから、安保条約から極東情勢を削除することは適当だとは思わないことでございます。  また、戦争に巻き込まれるという点については、やはりそういうことで日本を基地として出動をする場合には、事前協議の条項もあり、事前協議の条項は、これは厳密に行なわれなければなりませんので、日本がいたずらに日本の安全に関係をしない戦争に巻き込まれるという懸念は私はないと考えております。
  299. 玉置一徳

    玉置委員 三木さんにお尋ねします。  先ほども申し上げましたとおり、極東の範囲はどんどん拡張される。大事な事前協議はほとんどいままでやられた実績がない。おまけに北ベトナムを爆撃しました飛行機が帰投して板付に寄ることもやむを得ぬ。B52がグアム島から暴風によります緊急避難と称して板付に来るのも、これは事前協議の対象じゃない。事前協議の対象じゃないことだけ一ぱい拡張して、極東の範囲も、先ほど言うような意味で極東の範囲じゃないけれども、条約の効果の及ぶところもどんどん拡張すると、これでは国民はたまったものじゃないのです。私は、三木さんも御存じのとおり、一国の安全というものは、絶対という、満点というものはございません。そういう意味では七十点のプラスがあり、三十点のマイナスがあるけれども、七十点はやっていこうというのが現実の政治の問題だと私は思う、そううい意味では安保のこの極東条項が非常に国民の不安と心配をかり立てるようなことになってまいりまして、基地の問題を含めまして、かえってイデオロギーによる反米闘争と一緒になるような形になったときに、はたしてそれが日本の安全になるのかどうかということを私は聞きたい。
  300. 三木武夫

    ○三木国務大臣 今日の安全確保というものは、単に日本の領土だけという感じではやはり安全は確保できない。その周辺の動向というものが一国の安全に対して非常な影響を持つ。今日のいろいろな武器の発達などは一そうその感を深くするのであります。したがって、日本の領土だけというのでなくして、日本の安全のために極東の情勢が影響をするのでありますから、安保条約の中に極東条項というものを除くということは、私は日本の安全確保のために、それはやはり筋道が通らないのではないか。ただしかし、戦争に巻き込まれるのではないか、戦争に巻き込まれるということの国民の懸念はないように日本政府がしっかりしなければならぬ、これについてはしっかりしなければならぬと思っております。
  301. 玉置一徳

    玉置委員 非常に丁寧なことばで、たまに非常にいいこともおっしゃいますが、そのかわり、またいんぎん無礼みたいにすれ違いのお話もなさいますわけで、私は日米安保条約で、日本の安全を非常に守ってもらったという功績は、初めから消極的に認めておるわけです。その上に立って話をしておるわけですから、そういう意味では、私は、やはりアメリカの極東戦略の一端をどうしても荷負わされるのはやむを得ないこれは必然だと思うのです。したがって、アジアの平和で、隣国でございますソビエトとか、あるいはことにこのごろアメリカの中共封じ込め政策の対象になっておる中国、これらにとってみれば日本とのみぞは深まるばかりであることは、だれが見ても、客観的に当然なことだと私は思います。  こういう意味では、この間隙はますます広まるわ、しかも、あとで聞きますけれども、吉田書簡にしろ、輸銀の問題にしろ、なすべきことを、一番初めに聞きました外務大臣所管事項である摩擦障害をなるべく少なくしようという、安保体制の上にありながらもやらなければならないのが外務大臣の私は職責だと思うのです。そういう職責をほうっておいてやってまいりますと、近接した諸国との緊張は高まる、国内の国民の合意が取りつけられぬ、非常に不満が多いという状態では、わが国を守るゆえんじゃないと私は思う。  それで、先ほど申しましたように、七、三のかね合いだ、四分六だというのがすべて安全保障の問題点です。そこに国民の評価をどうするか、わが国の国力も十年前のことを思えば、はるかに国力がついたことも事実であります。いつまでも国民の独立心と申しますか、愛国心と申しますか、国民の名誉という問題も考えなければ私は政治の要諦じゃないと思う。その点を述べておるのでありまして、事務的にすれ違いをしてもらったって答えにならないと思います。  そこで、先ほど申しましたように、日米安保体制のあることによりまして、中共、ソビエト、北鮮、北ベトナム、その他共産圏諸国にとっては、特に緊張の度合いが増すこともこれはやむを得ぬでしょう。しかしながら、先ほど申しますように、極東条項の廃止、この点が私は一番友好親善を深めるゆえんだと思いますけれども、現状においてもその努力を続けなければいかぬ。それについて先ほどお話がございましたけれども、日中関係におきます貿易の増進、あるいは人事交流、文化のなにとというようなことは、常日ごろ心がけなければいかぬのに、外務大臣、そこまでやっておいでになるか。  その点に関しまして、私ひとつお伺いしたいのは一輸銀の使用という問題でありますけれども、輸銀の使用に関しまして、私はこの間のアジア経済協力基金を、商工委員会で、前の国会で通過いたしましたときにも、経済協力基金と純経済ベースである輸銀の使用とは今後別にすべきじゃないか。いままで各大臣から——ここに持っておりますが、いろいろな発言がございます。吉田書簡の問題、あるいは輸銀の使用につきましても、ケース・バイ・ケースだ、こういうお話ですが、ケース・バイ・ケースということは、そのときにならないとわからぬということです。それはおそらく、とめておるほうの、禁止のほうのケース・バイケースです。政府が真に佐藤総理やその他の閣僚が常日ごろおっしゃっておるように、日中貿易の増進が望ましいのだということになれば、なぜケース・バイ・ケースの基準というものをお示しにならぬか。それから、ただいま申しますように、基準の中では、鉄鋼とかビニロン、そういう化学繊維、あるいは石油化学工業、あるいは電力の開発というようなプラント輸出をこれから願い出てきたときに許されるのかどうか。船舶の輸出は、輸銀の使用を許されるか。こういうことを基準を示しておいてやることによって、両方の商談というものは活発になることは、あたりまえなことなんです。  そこで、先ほど私は申しました。輸銀と経済協力基金の区別をして、純経済ベースは輸銀にまかすのだということによりまして、皆さんの御懸念なさっておる片一方のほうにも私は言いわけが立つ、こう思うのですが、責任ある御答弁を関係の閣僚からお願いしたいと思います。
  302. 三木武夫

    ○三木国務大臣 玉置君の御質問は、きわめて建設的な面が多いので敬意を表しますが、ことに私も将来海外の協力基金と輸銀というものをできるだけ整備される形にすることが、問題として、諸外国との貿易増進あるいは援助を供与する場合に好ましいと思うのであります。いまはごっちゃになっておる面があるので、直ちにはそうはいきますまいけれども、将来は、援助は基金、貿易は輸銀、こういうふうに整理されることが好ましいという玉置君の説には賛成であります。しかし、これはある期間を経ないと、今日ではそうはなかなかまいらない面がございます。     〔委員長退席、小川(半)委員長代理着席〕  また、中共貿易に対して基準を示せということでございますが、一体その輸銀を使う場合の対象は何であるのか、条件はどうか、あるいは国際的な競争条件というものはどうかという、これはきわめて個々のケースで検討をしなければならぬ場合が多いので、一律にどのプロジェクトにも適用するような基準をあらかじめ設けるということは実際的でないのではないかということで、具体的の問題ごとに検討することが実際的である、こう考えておるものでございます。
  303. 玉置一徳

    玉置委員 私は、先ほど申しましたとおり、国民の非常に不安の種は極東条項だ。ことに中共その他近隣の共産圏諸国にしてみれば、こちらがいわばことばは悪うございますが、それを目標にした何かの団結を持っておるような形に見えるのもやむを得ぬのじゃないか、相手方からすれば。そういうところでありますので、納経済ベースでやることすら、そこだけをのけものにするというようなやり方では、摩擦障害を除去しようというような努力の片りんすら見えない、こういう意味で言うておるのです。インドネシアには経済協力基金をやる、中華民国には経済協力基金はいたしましても、政治的な配慮の少ない純経済ベースである輸銀の問題に関しては、中共には大いにやってもらうというぐらいな腹でないと、先ほど申しますような障害除去につとめるという外務大臣の仕事はできない、私はこういう意味で申し上げておるわけですが、非常に不満足な答弁でありますけれども、時間の関係もございますので、もう一つ、北方領土に移りたいのです。総理を飛ばして外務大臣ばかりで、お互いに総裁をお争いになるのか知りませんが、どうも悪い気がしまして、申しわけないのですが、お許しをいただきたいと思います。  そこで、三木さん、ひとつ思い切っていいところをお見せいただきたいのですが、先ほど申しましたとおり、外国との、ことに共産圏諸国との障害除去につとめなければならないという観点からいたしますと、やはり極東条項の存在、日米安保体制のレール、利点はあるけれども、欠点はあると申しましたのは、さきに鳩山総理がみずから病躯を押してソビエトにお入りになって、ようやく国交の暫定的な回復を——暫定的と申しますと変ですが、国交の回復を見てこられた。そのときから今日まで、長い年月がかかっておるにかかわらず、いまだ北方領土の問題も解決せず、日ソの平和条約も片づいておらない。ましていわんや、先ほど言いました中共に至ってはなおさらであります。沖繩の領土すらまだ祖国復帰ができてない。こういうことで努力の片りんをその後見せていない日本政府のやり方は、私は三木外務大臣だけを責めるんじゃございませんけれども、きょうまで努力が足りなかったのじゃないか。これで、結局北方領土問題は、日米安保条約のせめて極東条項の削除というような一つの転機を迎えなければ、解決はし得ないのかどうか。その次に、領土問題が解決しない限り、平和条約は締結しないのかどうか。三つ目、返還を要求するのは、歯舞、色丹、国後、択捉を含めて北千島にも及ぶのか、これをひとつ御答弁いただきたいのです。
  304. 三木武夫

    ○三木国務大臣 政府が北方領土としてソ連との間に返還を要求しておるのは、択捉、国後——歯舞、色丹は平和条約を結べば返るというんですから、交渉も要らないぐらいですけれども、四つの島の返還を求めておる。  また、安保条約における極東条項が削除されなければ北方の領土は返ってこない、そういうふうには考えていないのでございます。  また、領土問題が解決をされなければ、平和条約というものの締結は、実際問題として平和条約には領土条項というのが一番重要でありますから、これはできない。われわれとしては、昨年コスイギン首相との間に、何か中間的な処置を考えてみたらどうかということで、これを手がかりにしてモスクワで中川大使との間に日ソ交渉が始まっております。ところが、領土問題は解決済みだというソ連の態度で、領土問題についてはなかなか進展がないことは事実であります。しかし、日本がそういう島々は固有の領土である、固有の領土まで日本がこれをこの戦争によって奪われるということは、連合諸国のいままで戦争中を通じて言っておる原則からしても、そういうことは日本国民考えていない。時間をかけても、この北方の領土返還に対する要求は貫いていくという態度でございます。
  305. 玉置一徳

    玉置委員 先ほど外務大臣に御質問しましたように、中共との問題はほんとうに真剣に努力をしていただかなければ、口先だけでは……。佐藤総理以下、実際そのとおりだと思うのです、事情もいろいろあるだろうと思いますけれども。そこで問題は、先ほど川崎君からも御質問ございました、共同提案国だけにはどんなことがあっても、せめてこれだけはならないでほしいというのが、私は日本の心ある人々の、ほんとうは佐藤さん、三木さんに対するほんとうの願い、と言ったらおかしいのですが、要望だと思うのです。重要事項指定方式というのだったら、重要事項だったら重要事項らしい中共にあれを与えなければいかぬ。これはもういま世界の世論になっております。そうして早く国際社会の一員としての責任を持たさなければいかぬというのが、世界平和の一番最大のいま課題だと思うのですが、そこに中華民国政府をどうするかとかいろんな問題がありますから、なるほど重要な事項でありますから、これを私のほうの曾祢さんもおっしゃったように、わざわざ委員会をつくらぬでも、重要事項指定方式の諸君が集まってでも何でもいいですから、一番いいのは委員会をつくってどうしようかということを継続して、まじめに、前向きの形で審議をするような形の重要事項指定方式ならいいのですけれども、いままでのように過半数ではもうあぶないというようになってからあわてて持ち出してこの重要事項指定方式は、どんなに強弁しても、だれが見ても、加盟を阻止するための手段としか映りません。その意味では、これだけはやめてもらいたいというのが、親の子供の非行に対するときのなにかと同じだと思うのですが、佐藤総理、どうお思いになりますか。
  306. 三木武夫

    ○三木国務大臣 重要事項指定方式と、こう言ったら、国民にもわかりにくいと思います。この決議案は、中共を国連に入れるという決議案ではないので、そういう単純な決議案ではないので、アルバニアの決議案に含まれておるものを受けてこういう決議案が出ておるので、それは国府を国連から追放する、そのかわりに中共を入れて代表権を与えるという性質のものであります。これが単純に中共を国連に入れるという決議でありますならば、やはり国連における決議は形が変わってくる。しかし、一方は追放して一方を入れるというのでありますから、これは重要な内容を含んでおるので、過半数すれすれというようなことでこれをきめることは、やはり将来に禍根が残るのではないか。したがって、国連では重要な問題は全部三分の二ですから、過半数というのは、単なる手続問題以外はほとんどないのです。だから、この問題も三分の二の決議できめるべき性質を持った、重要な内容を持った案件である、こういうことに賛成をしておるのですから、これは中共の国連加盟を阻止するためのものではなくして、重要だから重要だ、こういう決定をしておるのでございます。したがって、ことしはどういうふうな形でこの中共問題が国連に出てくるかは、まだ固まっておりません。したがって、その問題が固まったときに、政府としてどうするかという態度をきめたらいいと考えております。
  307. 玉置一徳

    玉置委員 三百代言みたいな形についなりますが、これはだれも納得ができぬと思います。それならそれらしい前向きの形の検討をしなければ、アジアの一員で隣に隣接しておる日本が、向こうが一番いやがっておることの一番先頭に立たなければならぬ理由を国民納得できない、こういうことなんでして、それならそれらしく前向きの提案をするなり、イタリアやカナダと一緒に相談をするなり、私は方法は幾らでもあると思います。あらゆる手段を尽くして、中共のきげんをとるのではなしに、媚態を尽くすのではなしに、するべきことをやはりしなければいかぬ。それだけの責務は日本には課せられておるし、またそのくらいのおおようさもなければ、佐藤さん、私は現在の日本総理になれぬのではないか、こう思います。どうぞひとつ、その点はよろしくお願いいたします。  そこで次に、これも川崎さんから質問がございましたが、基地問題です。私は先ほど冒頭に申し上げましたとおり、基地の問題が、各種の原因で起こっておるにしろ、一つは、やはり先ほど申しました極東条項による安保体制の一番痛いところである、不安であるということ、そういう国民の潜在意識も基底にはやはりあるのではないか。それが各種の運動の基底をなしておるような感じもいたします。このような基地の状況をしておれは——現在義務履行ということはわかります。しかし、あまりにも激しいこの様相、しかもそれは、あと二年、一九七〇年に近づけば近づくほど、大きな雪だるま式のエネルギーとなって騒ぎが起こってくると私は思うのです。こういう意味では、せっかくの安保体制が、義務であるということばはわかりますけれども、義務だけであって、基地の存在そのものが日米安保条約の効用をそのままみずから破壊していくようなところへいくことをおそれるわけであります。こういう意味で、願わくは極東条項の削除の検討をしてもらいたいけれども、なかなかそこまではよういき切らぬとすれば——どうしてもその検討にはいま直ちに手をつけていかなければ、ほんとうはいかぬと思います。それだけの緊急事態でもあります。なかなか整理もしにくいだろうし、代替地も見つけにくい問題ですから、そういう意味では、どのくらい思い切ってこの処理をやっておいきになるような御意思があるか、これは佐藤総理から基本方針をお示しいただきたいと思います。
  308. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど川崎君にも、基地のあり方を私はお話しをいたしました。日本の安全を確保する、そういう意味でやはり日米安全保障条約が結ばれている。アメリカが日本の安全を確保する、そのために日本はこれに基地を提供する、この条約はおわかりだと思う。最近非常にこれが問題になりますのは、急速に日の都市化が行なわれた。基地の所在地が大都会の周辺にある。そこにいま問題が集中されているわけです。そこでいままであまり考えられなかったような基地の使用が、周辺が都市化したその結果、いろいろの制約その他を受ける。それにたまらないというか、そこで問題が起きておるわけですが、そこで政府責任は一体何なのか。私は、安全保障条約自身は、どうしても必要だと思う。もちろんその形においては駐留なき安保だとか、あるいは段階的解消だとか、いろいろの御意見はございますけれども、その安保そのもの、これはどうも必要だ、こういうことで世論はできているんじゃないかと思うのですが、ただ、いま言うように都市化ができて、そうして国民生活を圧迫している、そこに不安を与えておる。それを一体どうしたら除き得るか。これがために、最近の問題でも、基地の数はもっと減らせないか、あるいはまた基地を他の場所に移すことはできないか等々の構想がいろいろ練られておる。基地の数などは、安保ができたその当時と比べれば、いまは件数から見てももう二十分の一、地域の広さ等から見ましても大体六分の一になっておる。なおまた、それらのものももっと縮小し得るんじゃないか、また他の適当な場所にかえ得るんじゃないか、こういうことはもちろんくふうしなければならない。そういうことも基本的に考えますが、同時にこの基地周辺の住民に対してこれを積極的に保護するような立法措置もとられておりますから、そういう法律的な措置その他をひとつうまくやりまして、そしてできるだけ地域住民の負担を軽くする。これをするのが私ども政治家のつとめだ、政府のつとめだ、かように実は考えております。最終的に全然それをなくするというわけには、いまのところまだできない。そこでいましばらくごしんぼう願いたい、かように申しておるような次第であります。
  309. 玉置一徳

    玉置委員 基地の問題に関連いたしまして外務大臣にお伺いしたいのですが、日本の国内に核は持ち込まない。そこで、沖繩の基地に核は持ち込んでないかどうかというような議論が、ずいぶんあるわけです。あるいはサブロックを積んで入港いたします。あれはどっちでもなにできるやつですから、核弾頭ははずしてある、向こうから言うてこないんだからそう思うというようなことで、これはだれも調べに行けませんし、押し問答を繰り返しているわけでありますが、私は事実問題としてその中へ立ち入り捜査というようなことはどんなことがあってもできにくいと思いますけれども、せめて覚え書き、公文でもって一切なにはいたしませんぐらいなことはさしていいんじゃないか、こう思います。  第二点は、原子力潜水艦が入ってまいりましたときに、一次冷却水、あれも絶対出さないように覚え書きかなんかで交換公文としてはっきりしておくべき問題じゃないか。基地の問題がむずかしくなれば、そのぐらいの——なるべくそうしてもらいたいということをこちらから要望しておるんだとか、要請しておるんだなんというもんじゃなしに、きちんとした公の約束に取りかわしておかなければいかぬのじゃないか。そのぐらい基地問題は慎重にやらなければならないと思うのですが、どういうふうにお考えになりますか。
  310. 三木武夫

    ○三木国務大臣 日本の核の持ち込みを認めないということは、これはアメリカに対して非常に徹底しております。だから、原子力潜水艦なんかが入港するときには、事前協議の条項に抵触するようなことはしないということを常に言ってくるわけです。事前協議の条項に抵触するというのは、核兵器の問題であります、その他にもありますけれども。こういうことで、これはあらためて何か交換公文というものの必要もないぐらい、この点の日本に対する徹底のきびしさということは、諸外国がこれはよく知っておる点でございます。  それから原子力潜水艦が冷却水を出さないようにということで、アメメカといま折衝をしておるのであります。アメリカとしても、これはほかにも影響いたしますから、いろいろ検討をしておる最中と思います。まだ回答は来ておりませんけれども日本政府の要求は、第一次冷却水を原子力潜水艦は出さないようにしてもらいたいというのが政府の要請で、これに対してアメリカが回答をよこす番になっておるわけでございます。
  311. 玉置一徳

    玉置委員 沖繩の問題は川崎君が主としておやりになりましたので、私、ただ一言だけ総理にお伺いしておきます。  スナイダー証言、これは新聞に載っておったとおりでありまして、佐藤総理がおっしゃった、これは私はそのとおりだと思うのです。共同声明にも書いておったとおり、それ以上のなにでもなければ、それ以下のなにでもない。しかしながら、佐藤総理がお帰りになりまして、二、三年のうちには何とかして祖国復帰の合意を取りつけるというお話がありますが、これは私は、ちょうど総理のお会いなすった口約束でも何でもなしに、お話の間の、数日間の折衝の間の自信のある心証だと私は思うのです。どういうところがあなたの、大体おれはこういう自信を取りつけたとお考えになっておいでになるのかどうか。ある人が言うておりましたが、娘さんが長らく交際をしておって、早く結婚してほしいという、親も家族も、これはそのままでは変になるからということで、なるべく早くしてほしい。二、三年のうちにめどをつけてくれるかということになると、わかったというだけで、さあそのときになって、わかったの、はお話がわかった、家族のそういうことを言うのももっともだということがわかった。あなたがそう迫るのももっともだということがわかっただけでは、これはどえらいことになるわけですが、佐藤さん、どういうところで自分が御自信を持たれたのか。その確証を、これは一ぺん国民のみんなが聞きたいと思っておるのですが、ひとつお話しいただけませんか。
  312. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御承知のように、共同声明に詳しく当時の会談の骨子はしるされております。この骨子を通じてどういうように皆さん方がお聞きになるか。これはスナイダーが言っているように、別に約束じゃない。だから、約束じゃないんだから、佐藤の確信というのは、これは佐藤個人の確信で、そんなものはたよりにならない、こう言われるかわかりません。しかし、私はとにかく一国の総理、相手は一国の大統領、その人が共同コミニュケを相互に忌憚のない立場で話し合ってつくり上げた。そうすると、その取引といいますか、折衝のうちに、私がただいまのように両三年のうちに沖繩返還についてのめどをつける、そういう確信を得た、かように申すこともおわかりがいただけるんではないだろうかと思います。これはスナイダー自身が、これは佐藤とジョンソン大統領との間にそんな約束はないという、これもそのとおりであましょう。しかし、ただいま申し上げるように、外交交渉にいたしましても、たいへん卑近な例を出されました。いま結婚の話を出されましたけれども、そういうのもやっぱりそれぞれものがひとつこれなら一緒になれるという確証を得て、さらにその次の段階に進むのだろうと思う。私どもいま継続的な協議に入っている。しかも施政権を返還するというそのもとにおいて協議をしておるので、第一回の協議はもうすでになされました。今後引き続いてやられる。そうすると、私のこの確信も、別にあれは佐藤だけのかってななんだ、かような非難も当たらない、かように御理解いただけるんじゃないかと思います。ことに、この話し合いで小笠原の返還が実際に実現した。今日になって御理解をいただければ、小笠原が返ってきた、そうしてその次は、沖繩については施政権を返還するというもとで協議をしようといっている、さような状況下にあると、やはり私がただいまのような、両三年のうちにめどをつけ得る、かような確信を持った、これも御理解いただけるんじゃないか、かように思います。別に私は押しつけるつもりはございません。これはしかし私の確信でございますから、これを押しつけるという気持ちはございません。そういう意味でひつ御理解をいただきたい。
  313. 玉置一徳

    玉置委員 佐藤のおやじだけの感じで家族には押しつけぬというのですから、これは非常に国民としてはある意味では迷惑な話で、不安な話なんですが、これはこれでおいておきたいと思います。  そこで、先ほど来質疑をしてまいりましたゆえんは、どの国といえども一国の守全保障というのに満点なかまえというものはあり得ない。プラスもあればマイナスもある。日米守保体制というものも、きょうまで非常にそれはそれなりの功績もあったと思いますが、しかしながら、近年ますますそのマイナス面が、ベトナム戦争その他によりまして国民の不安をかり立ててきておる。ましていわんや基地問題その他を見まして、このままただ強引に政府の為政者が自分の好むところを国民に押しつけようというようなことになりますと、先ほど申しましたような観点から、良識のある国民の多数がその他の目的を持った反米闘争その他とごっちゃくたになってしまいまして、私は、そのこと自体が、安保体制にならなければ、日本の安全にも、日本の防衛にも意味がなくなってしまうということを非常に心配してお話をしておったわけです。  そこで問題のプラスとマイナスですが、これは、やはり外交といえば一つの商売だと思います。プラスが多いかマイナスが多いかで、それは国民のために総理がお考えいただく問題だと思うのですが、プラス面としましては、日本の工業、ことに資源をほとんど遠い外国から輸入せざるを得ない工業をささえておりますわが国におきましては、海外交通というのを非常に大きな、遠いところまで持っております。とても自分の国だけでそれのいざという場合の確保はでき得ないわけであります。こういうような意味におきましては、国連の安全保障の機能が充実していない現状におきましては、やむを得ない集団安全保障の形態の一つかとも思われますし、戦後長らくの間、またこれによりまして相当な防衛費が経済の復興に注ぎ込まれたという外国の批判も、ある意味ではそのとおり受け取ってもいいんじゃないかと思いますけれども、反面、マイナス面ですが、ここまで成長しました日本の産業、その国民の独立心、自尊心、これがどうしてもみずから自分の国を守るというような気慨に欠け、あるいは目的を持たないような遊惰な青少年ができるというようなことになるおそれはあるわけであります。それから基地の問題その他をめぐりまして国論が二分されて、紛争がますます激化していく、これも安保の大きなマイナス点だと思います。さらに、先ほど申しました極東条項が入っておりますために、近隣諸国との摩擦、緊張が非常に多くなってきておる。国民の恐怖心もそれに伴ってある。こういうようなプラスマイナスを考えますと、一番初めに申しましたように、一国の防衛というものがどれだけ——絶対にこれだというものはないと思いますし、先ほどの世論調査によりましても、安保継続か安保破棄じゃなしに、安保のいいところは認めながら安保の悪いところを検討してくれというのが、国民の大多数の意見だということを申し上げておるわけです。  こういう点を考えまして、最後に、外交問題の締めくくりをしたいと思いますが、佐藤総理は、安保の期限到来を目前にいたしまして、国民大多数の意思を尊重し、国民の不安を取り除き、国の防衛に対する真の国民の合意を取りつけるようにおつとめになる気概があるかどうか。いままでのことをそのままやってくることは、非常に楽です。安易です。しかしながら、ちょうど明治百年になります。佐藤さん、いまの——十年前じゃなしに、いまの日本の国際的地位と責任において、アジアの一員としても、アジアの緊張緩和、平和と安全をはかることが、私は、日本に課せられた責任の大きな一つじゃないか、こう思います。この安保の一応の到来期、条約の期限の到来を前にして、どういうようにこの民意をお考えになっておるかどうか。これに取り組む佐藤総理の所信、これをお伺いいたしまして、外交質問は一応打ち切りたいと思います。
  314. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来いろいろお話をしたので、国を守る気概を持てという、またそれを持っておるという、そういう事柄が一体どういうことなのか、この辺になお十分理解をいただいておらない点があるんじゃないだろうか。別に、国を守る気慨ということは、みずから武装しろとか、また徴兵制度をしけとか、かような意味で私申しておるのではありません。     〔小川(半)委員長代理退席、委員長着席〕 私どもが、わが国の安全確保、そのために必要だとして、この国を守る気慨からいま選んだ道が日米安全保障体制、かように御理解いただければ、これでおわかりだと思います。この日米安保体制というものが、プラスの面もあり、マイナスの面もある、御指摘のとおりであります。しかし、私はいままでしばしば、自衛隊をつくるその基本に何と言っているか。いまの国力、国情に応じた自衛隊を持つと言っている。そして平和憲法のもと、他国に対して脅威を与えない、これが本来の行き方だ、かように申しております。しかし、一国の安全を確保するというのに、国力、国情に応ずるというようなことが、そういう条件が考えられるだろうか。私は、いま外国の中立国を見ましても、国力以上の武装をしておる。しかし、それはりっぱな中立国なんですね。そういうことを考えると、国力、国情に応ずるというこの言い方は、国を守るの気概から申して、ずいぶん不十分なことじゃないだろうか。しかし私は、いまの考え方、いわゆる集団保障体制あるいはいまの安全保障体制、そのもとにおいて一国の安全を確保する、これは私ども政府並びに国民とともに選んだ道だ、かように考えておりますから、国力、国情に応じた自衛隊を持つことも、これで説明ができるように思う。私は、別に欧州における中立国のように完全重武装する必要はない。また、そういう意味で、これがわが国の経済発展に役立つ。別に肩身を狭くする必要もない。問題は、やはりこの国をみずから守るその気概、それをもって対処していく、その姿勢が一番大事なのではないだろうかと思います。そしここの姿勢ができると、将来はどんなに変わるか、これは私の今日予想するところではありません。しかし、これから一面に世界は平和を望んでいく、また国連を中心にしての外交を伸べるという、この日本の態度から申しましても——いまは国連自身が機能としてはまことに不十分です。しかし、おそらく今後の国連の発達等から見れば、国際警察としての力も備えるようになるんじゃないだろうか。私どもはそういう方向で、自由、平和憲法のもとにおいてわれわれが協力する。われわれは行く道は自然にきまるのではないだろうか、かように私は思っております。現状自身を、いま積極的にいまの安保体制を変えろ、こういう御意見もあろうかと思いますけれども、私は、いまのところこの日米安全保障体制、これを続けていく。そうして先ほど来基地等の問題についていろいろ御意見を交換いたしましたが、地域住民の不都合、不便がないようにできるだけの処置をとっていく、そして国民とともどもにこの国の安全を確保していく、かような方向でありたい、かように思っております。
  315. 玉置一徳

    玉置委員 佐藤総理の答弁に対して私も一言ものを言っておきたいと思うのですが、一九七〇年を目前にいたしまして、国民のほんとうの願いを聞き入れぬようなことで、強引に、民意を尊重せずに、無視されておいきになるようなことになれば、基地問題をはじめとし、国民の先ほどの願望、不安というものは必ずや私はものすごい勢になってくるのじゃないかということをおそれます。したがって、そういう場合は消極的支持を与え、現実の安全、防衛というものはこの程度のものだと、欠点も知りながら消極的支持を与えておる多くの国民は、政府の態度のいかんによりましては反対に立たざるを得ないのじゃないか。われわれの党といえども、野党を含めまして、佐藤さんのあれに敢然として反対をせざるを得ないようになるのじゃないかということを、ここではっきり申し上げておかなければならないと思うのです。真に国民のための政治を行なうという意味で、よく民意のあるところを洞察されまして、国民の合意のおもむくところをひとつ善導され、それと溶け込んで合意をくみ取るようにひとつおつとめをいただきたいと思うのです。  それではかわりまして、米価の問題につきまして総理並びに関係閣僚にお伺いをしたいのですが、北山先生から先ほど詳しく御質問がございましたので、私は二、三に限りまして御質問をしておきたいと思います。  予約販売制度になりまして、制度のたてまえからいえば植えつけ前に買い入れ価格を決定してあげることのほうが、これはあたりまえなんであります。ことしまでは、大体早ければ六月、おそくても七月中旬ぐらいまでにはこの十年間ほど買い入れ価格は決定いたしております。こんなにおくれたことはほんとうに珍しいことで、これは政府の醜態ということはどうかと思いますけれども責任は重大だと思います。  それからもう一つは、今年度米価決定にあたりまして、すでに植えつけが先ほど申しますように終了しておるにかかわらず、米価決定の際になりましてから、総合予算主義堅持のたてまえから政府買い入れ価格は一定のワク内に据え置くのだとか、あるいはまた物価抑制の見地から消費者、生産者米価を現状のまま据え置くのがいいのだとか、買い入れ制限をすることは食管法違反ではない、あるいは自由米の指導とか、古米在庫が五カ月分ぐらいになりますから、非常にまずい米をたくさん消費者は食わなければいかぬのじゃとかいうような、あるいはまた高米価政策だけが全く日本農政を行き詰まらしておるような感じを与えるようなことを、かねや太鼓で騒ぎ立てたというのが現状でありまして、米価の陳情に来られました農家の代表が、政府の集中砲火を浴びて私たちはということをおっしゃっておりましたが、私たちも、戦争に行った人間としてはその境地がよくわかりました。私は農民代表一万五千名の大集会の前で、自民党はだれよりも農民を愛するのだというようなことを、しゃれたことばを言われた自民党の、政府の仕打ちであるとはほんとうは考えにくい。全国の米作農家にかわって、ひとつこの際、政府責任者である佐藤さんの弁明を承りたいのですが、あわせまして総理にもう一つお伺いしておきます。  自民党が責任を持って米価決定するとおっしゃたのは選挙中の佐藤さんでありまして、総理でありまして、この米価決定は、米審の設置を見ましても、生産者、農民を締め出した今年の米審ではございますけれども、一応政府の設定されました米審であります。政府は米審の意見を聞き、米価決定するということになっております。なるほど政党責任内閣でありますので、その間、与党である自民党と意見を調整されることは自由でありますけれども、当然でありますけれども、それは今度の生産者米価を米審に諮問し、その諮問を受けて、大体その時分までに並行してやられておるのがほんとうでありまして、今度のようなものは、いかに自民党の責任できめるといいながら、自民党でつくっておる政府に対して自民党がこね上げるというような姿は、あまり政府の権威を高からしめるゆえんではない、こう思うのです。来年からどういうようにおやりになるか、ひとつあわせて総理のお考えをお伺いしたいと思います。
  316. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 生産者米価決定、これはもう玉置君のお話しのように本来もっと早くきまるべき筋のものであります。ことしは特に、党と調整の問題もございいましたが、御承知のように何といっても参議院の選挙が行なわれた、そのためにとかく時期がおくれた、かように御了承いただきたいと思います。もう植えつけではない、収穫期が追っておる、早いところ、高知などは収穫をしておる。なお生産者米価はきまらない、これは確かに醜態と言われても、私たいへんその責任を感じておるような次第であります。したがいまして、おそまきではありますが、できるだけ早くこれを決定する、かようなことで政府はいま意見をきめておりますし、また、ただいまは政党政治であるという御理解をいただいておりますからもう多くを申しません。これは与党と政府が一体になりまして早くきめなければならない、さような問題であります。ことしは、ただいま申し上げるような参議院選挙その他があったために非常におくれている、このことを国民に対しましてもおわびを申し上げ、おそまきながらこれから決定をいたしまして国民の期待に沿うようにいたしたいと思います。  そこで米価のあり方といいますか、ことしになりましていままでの考え方を急に変更するわけにもまいりません。いままでの総合予算主義をとりましても、これはもう千二百億というものは計上いたしておりますから、普通の予備費の計上ではない、非常に思い切ったものを計上しておる。これは総合予算主義を貫きたいためにやったのであります。したがって私は、米価なりあるいは公務員給与など相当のものが出ましても、おそらくこれはまかない得るのだ、かように実は思っております。しかし、しばしば説明しておりますように、総合予算主義だと申しましても、われわれが予測しないような大災害が起こればそういうわけにはいかない、またその他でもどういう事態が起こるかもわかりませんが、そういう場合にも絶対につくらないというものじゃありません。それは政治のほうが大事なのですから、その点は、そこらにある程度の融通はつくと思います。しかし、本来きめた基本方針をそう簡単に変え得る筋のものじゃないから、政府がたびたび総合予算主義を貫きます、かように申し上げておるのは、この点で御理解がいただけるのじゃないかと思います。  また、いまお話しになりましたように、米価審議会、これに諮問をいたしまして、そうして農林省がきめるわけであります。まあ、政府がきめるわけであります。過去におきましても、米価審議会が答申をしなかった。答申がないからそれじゃきめないのかというと、そうではない。やっぱり政府はきめざるを得ないのだ。ことしもやっぱり米価審議会の意見も聞いて、そして最終的には政府決定するということであります。しかし、その基本、きめ方は、在来の考え方にわずかな相違はありましても、大体毎年と同じような方向米価は算定され、それがきまりつつある、かように御理解をいただいていいんじゃないか。もちろんある程度の変更は加えてございます。それは適正なる処置、価格、こういう意味で所要の改正は加えますけれども、本来の在来のきめ方、これに大きく変更を与えるものではない、この点を御了承いただきたいと思います。  そこで、来年は一体どうなるのか。これは所信表明でも申しましたように、食管、米穀管理のあり方につきまして、今日はこれにくふうをすべき時期が到来したのではないか、こういうことを申してあります。これを、いまどういうような改正を加えるかという、これは軽率にやるべきことではない重要な問題だ、かように考えすまので、各方面の意見を徴して、そうして決定すべきものだと思います。これはぜひとも来年度米価決定する前にはそのあり方をきめたいものだ、かように思っております。しかしこれも、ただいまのところでそれじゃどうするかという、自由米にするかというようなそんな考え方が先走っておりますけれども、さようなものではない。これからきめるのでございますから、私どもが希望するように、はたして来年の米価決定し得るまでに具体的な案をきめ得るかどうか、そこに一つの問題があると思います。たいへん長くなりまして恐縮でございますが、それらの点を勘案をされまして、そして生産者、消費者、さらにまた全国民経済的な見地に立って、この米価のあり方を適正にしたい、かように考えております。
  317. 玉置一徳

    玉置委員 佐藤総理も率直にお認めになっておりますように、ことしはどっちにいたしましても参議院選挙があることは前からわかっておったわけでありますので、不手ぎわであるということはいなめない事実だと思います。収穫が間近になっておる今日に、あまり過酷なことを言わないで、ことしに関する限り、佐藤総理の裁断によりまして、農民の要求しておる米価になるべく近く決定されることをひとつ期待いたしたいと思います。  そこで、食管の改善の問題につきましては、根幹の問題がいろいろ取りざたされておるわけでありますが、これをやっておりますと長くなりますので……。せっかくこの二十年間、制度としてすでにすっかり溶け込んでおります食管法でありますので、いまや農民はこれをそがれますと、農家所得の減退を来たさないような方途に基づいてものをお考えいただかなければならないのじゃないか。総合農政西村農相もおっしゃいますけれども、これはもう当然のことでありまして、何も食管の、米価決定のための総合農政でも何でもないと思うのです。そういう意味では、酪農その他に転作をすると申しましても、いまの農家の労働力から申しますと、専業農家、専門農家として酪農の多頭飼育にたえられるようなものは、ほんとうは数は少のうございます。こういうような意味では私は、このいまの思っておいでになる総合農政のあれで米価の問題が片づくという問題ではあり得ない、こういうように思います。農家所得を減らさないような形で、ふやす形でこの問題の総合処理をせなければならないところに——しかも、基盤整備その他をやろうとしましても、農業の問題はすべて即効薬はございません、数年かかってようやく農業所得、農業収入に影響してくるというわけでありますので、私は、それまでの施策をした後でなければほんとうはだめだけれども、少なくともそれと並行しながらやらないと、農家に非常な不安を起こすんじゃないか。それから、食管法の堅持か、食管法と違って政令だけを改正するのか。食管法をいらわなかったら根幹に触れないんだと思ったらばくは大間違いだと思う。食管法の精神に基づいたものでなければだめだと思うのですが、農林大臣ひとつ……。
  318. 西村直己

    西村国務大臣 まず私から申し上げておきますが、玉置委員からおっしゃるように、単に食管法だけをいじくり回すとか、そういう意味じゃございませんで、私が総合農政を説いておりますのも、おっしゃるように相並行している中において米の王座としての位置づけ、またそれの管理、こういったことを考えてまいりたい、こういうように言っておるのであります。したがって、食管制度そのものも非常に国民経済の中に根をおろしておりますから慎重に扱ってまいりたい。ただ、現状でいいかと申しますと、そこに何か改善、くふうを要する時期ではないかということは、総理の所信にも申しております。そのとおりであります。  それから、もちろん総合農政等におきましては農業、農村の近代化、それから、農民の所得の向上、これはもう当然のことでございます。そこで、食管の根幹を堅持するということにつきまして、食管の堅持といささか違う点は、食管堅持と申しますと現状をただそのまま置いておく、これとはちょっと食い違っている。根幹だけはやはり守りつつ、改善、くふうを加える、しかもそれは広い視野に立って各方面の意見も徴した上でやっていきたい、しかも総合農政の裏づけと一緒にやるような努力をしてまいりたい、こういうことでございます。
  319. 玉置一徳

    玉置委員 農林大臣の御答弁は、食管法だけじゃなしに、食管法を含めましたたてまえ、これも含めて堅持する、そしていまのお話では、食管法改正より根幹のほうがもう少し少ないのだというような意味に聞こえるのですが、そうじゃなしに、食管法の精神はいらいません、そしてほんとに農家の収入、所得に影響のないようなことで全般の方々にもいいようなくふうを一生懸命やりたい、こう解釈してよろしいかどうか。
  320. 西村直己

    西村国務大臣 先般来法律論としていろいろ出ておることがあります。食管法を法律上解釈した場合にどうだ、全量義務制ではない、これは三条によって一応そういう解釈は認めております。しかし現行法においては、他に売っちゃならぬ、こういう現行法の食管法と政令を組み合わせますと、これは全量買い付けの形になる。いわんや今年度はもうそういうことは考えておりません。全量買い付けであります。そこで将来改善、くふうをする場合に、あるいはいろんな御意見が出て結論を得たような場合に、法律改正があるか政令改正があるか、それからもすべてまとめた上で、各方面の意見の結論を得た上で、そういうことを政府としては最終的に考え方をきめて、必要な場合にはいろいろな国会の御審議も願わなければならぬ、こういう姿勢でございます。
  321. 玉置一徳

    玉置委員 労働大臣と文部大臣にお伺いしたいのですが、日本の産業の異常な高度成長は、昨年あたりからいよいよ労働力の不足を来たしてまいりますような感じがいたします。特に新規の学卒の方面からこの点が顕著にあらわれてきておるわけであります。私は、ますます伸びるエネルギーがあるにかかわらず、日本の産業の成長が将来この面からある程度成長を抑制される憂いもかなり農厚じゃないかという感じを持ちますわけでありますが、これに対処いたしまして、近い将来の大体の労働力の需給の見通しは一体どうなのか、それに対して政府当局としてはどういう対策を打とうとしておるか、労働大臣からお伺いをしたいと同時に、これと関連いたしまして学卒者の、中学校卒業生がだんだん進学率の関係で少なくなってまいります。高等学校も大学への進学率の関係でますます少なくなってくると思いますが、新規学卒者の工場生産方面に行きやすいような何らかのくふう、対策というものが学制上あり得るかどうかということをあわせてお伺いをしておきたいと思います。
  322. 井出一太郎

    井出委員長 玉置君に申し上げますが、持ち時間が迫っております。
  323. 小川平二

    小川国務大臣 最近におきまする労働力の需給逼迫が、いまおことばにありまするようにもっぱら中卒、高卒の若年労働力を中心にして生じておるわけでございます。目下の状況は中学卒、高卒とも求人倍率が四・四、求職者一人に対して求人が四・四あるという状況でございますが、これから先、進学率も高まってまいりますことをも織り込んで推計をいたしてみますると、本年中学の卒業者が四十五万人でございますが、昭和五十年にはこれが十八万人になっていく、それから高校の卒業生八十四万人ございますのが六十九万人になっていく、供給が今後も減少していく、それに伴って逼迫の度合いが強まっていくということが非常に明瞭に見通されるわけでございます。  こういう状況に対処いたしまするためには、根本的には経済全体の効率化をはかっていく、生産性を高めていくということに尽きるわけでございますけれども、当面のこの若い労働力の逼迫ということから、いろいろの問題が出てきております。第一は、技能労働者あるいは生産工程従事者が不足しているということが一つ。もう一つは、いままで主として中卒の労働力にたよってまいりました中小企業が当面大きな困難に直面しているということでございます。  技能労働力の問題につきましては、労働力が足りないのでございますから、問題は個々の労働者が持っておりまする能力を開発、向上させる、要するに質を高めるということでなければなりませんので、いままでやっておりまする職業訓練の制度も、最近審議会の答申も出ましたので、来年から大幅にこれを刷新してまいりたい。ことに中小企業に対しましては、中小企業が共同で実行しております職業訓練にことしから助成をいたしております。来年からはこれも大幅に強めていきたいと考えております。同時にまた、技能を尊重する気風をつちかっていくことが非常に大事でありますから、優秀な技能を持った人たちを表彰する、あるいは若いブルーカラーの国際交流ということも始めておりまするし、昭和四十五年には技能オリンピックを日本で開催する、こういう計画もいたしておるわけでございます。同時にまた、能力、適性という点から見てふさわしくない職場に就職するということは、持っている力をフルに発揮させるゆえんでございませんから、職業紹介に際しては学校とも密接に連絡をいたしまして、能力、適性という見地からふさわしい職場に就職させる努力を実は懸命にやっておるわけでございます。  中小企業に対しましては、根本的には中小企業の基盤を安定させ、生産性を高めるための中小企業者の努力に対する財政の面あるいは金融の面、その他いろいろな面での国の総合的な施策を強めていくということがこれまた根本問題でありますけれども、中小企業の職場を魅力のある働きよい職場にいたしまするために、要するに労働の環境、労働条件を含めまして全体として魅力あらしめまするために、たとえば労働基準の面の指導監督を強める、あるいは最低賃金制の普及につとめる、各種社会保険の加入をすすめる、あるいはまた適正な労務管理のあり方というようなことにつきまして、各種の中小企業の集団に対して指導もやっておりまするし、中小企業において特に立ちおくれております住宅あるいは各種の福利施設、これに対しまして雇用促進事業団が雇用促進融資というのをやっております。八割方中小企業向けの制度でございますが、かような制度、あるいはまた雇用促進住宅、こういった施策にもこれからますます力を入れまして、質のよい若い労働力を引きつけて定着させる努力をやっていきたい、こういう方向で実はいろいろこまかいことをやっておりますが、今後もかような方向に沿って施策を強めてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  324. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 産業、経済の発展の状況に伴いまして、これに必要な優秀な人材を育成することはきわめて大切なことでありますので、今日までもこの問題につきましては努力をしてまいったつもりでありますが、六・三・三・四の教育制度につきましても、御承知のように今日まで若干の手直しもしてきておるわけであります。しかし将来のことを考えますと、高等学校段階等におきましてより資質の高い人材をつくる必要もあるのではないか、こういう要請もあるわけでございますが、六・三・三・四の問題につきましては、これは重要問題でございますけれども、すでに二十年を経過しております。今日までのこの制度につきまして、いろいろ検討してみる時期にもきておると思いますし、またこの段階において社会的要請等についても十分検討を加えて、必要があらばこの制度につきましても改善のことを考える段階ではないか、そのように存じておりますので、現に中央教育審議会でいまのようなことを含めまして制度改善について検討をいたしておるところであります。
  325. 玉置一徳

    玉置委員 最後に一言だけ。中小企業の政策につきまして先般中小企業政策審議会の企画小委員会、いわゆる篠原委員会から中間報告がなされましたが、この中で、中小企業政策を考えるにあたりましては、単に中小企業だけに着目するのじゃなしに、日本経済全体の関連の中で考えていかなければならない、いたずらに現状維持的な政策では問題の真の解決にはならないということを述べられております。いかにして中小企業者のバイタリティー、能力を十分に発揮させまして次に移す施策を行なおうとされておるのか。この点、たとえば繊維の構造改善におきましても、政府はこの提言を取り入れてどういうようにしようと思っておいでになるか。それから、関連いたしまして、構造改善事業におきまして、最近特にモデル企業グループ、これを重点育成しようじゃないかという考え方が出ております。私は、この点に関しましては、その趣旨は了とするところがあると思うのですけれども、わからないわけでもございませんが、その他の一般企業との間の企業格差がますます増大する、これをどうして埋めていくかということもまた必要な政治の要諦じゃないかと思うのです。一方では転換企業対策というものが重要でありますと同時に、いま申しますような格差が非常にできていく弱小のものをどういうように扱っていくか、これについて政府当局の考え方をこの際明らかにしていただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  326. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 いわゆる篠原委員会の答申にもありますとおり、中小企業はただ足弱のものであって、これを育成しなければいかぬ、これを助成しなければならぬというような時代はすでに過ぎておる。また、そういうような足弱の中小企業はございますけれども、今日の中小企業に課せられた任務というのはもっと大きなものであって、そしてそれにふさわしい発展を遂げておるのではないか、こういうことを前提にして答申がなされております。まあ、そういう見方は、私は適切であり、またそれにふさわしい施策というものは、やはり構造改善であるとか、近代化であるとか、いままでやっておりますことをその目標に合わせるようにして施策を進めてまいるというところにあろうかと思います。特に目新しい型の政策というものを考える必要はないのであって、従来のやり方を、いま申し上げるように、新しい中小企業の使命なりそういうものに合わせて力強く遂行することにある、これがまあ中小企業のいわゆる近代版ではないか、こう考えております。
  327. 井出一太郎

    井出委員長 これにて玉置君の質疑は終了いたしました。  次に、山田太郎君。
  328. 山田太郎

    山田(太)委員 私は、公明党を代表して、佐藤総理並びに閣係各大臣に若干の質問を行ないたいと思います。何ぶん一時間に限られた時間でございますので、十分には意を尽くしかねると思います。しかし、どうか御答弁はわかりやすく、しかも明快にお願いしたいと思います。  最初に、政治姿勢の問題についてお伺いしたいと思います。共和製糖の事件を発端といたしまして、黒い解散、これはもう世間周知のことでございますが、それ以来、LPG事件、あるいは日通事件、あるいは最近には京阪土地事件、相次いで国民の政治不信はほうはいとして起こってきております。清潔な民主政治を願う国民を裏切っておるともいえるのではないかと思います。そのためにも、現在もうすでに捜査が終了しております日通事件について、先ほども質問がありましたが、納得いたしかねる点もありますので数点お伺いしたいと思います。  そこで、このたびの日通事件の一つの大きな問題は、リベートという悪の金を裏献金したことでございます。この献金については、新聞の報道するところによりますと、東京地検の捜査からするならば、議員の収賄額は百万円程度が最底限だというめどがされている、そのようにいわれております。この事件関係の額は十万円、二十万円が多く、この程度では儀礼的なものと考えざるを得ないということで、小口の献金は捜査対象からはずされたということでありますが、収賄の額のめどについては左右されるべきものであるかどうか、その点についてお伺いしたいとともに、また、国会議員の場合百万円程度を最低限とする、そのような収賄捜査のめどがあるのは事実であるかどうか、まず、川井刑事局長にお伺いしたいと思います。
  329. 川井英良

    ○川井説明員 ただいま献金の額についてのお尋ねでございますが、額は、三十九年から四十二年までの四年間にわたっての額が地方検察庁から発表になったわけでございます。それから、十万円とか二十万円の小口でもわいろ性があるんじゃないかというふうなお尋ねでございますが、額の大小を問わず、今回の政治家に対する献金においては、二名の者を除いてその他の者については一切わいろ性を認める証拠はなかった、こういう報告でございます。
  330. 山田太郎

    山田(太)委員 私がお伺いしたのは、儀礼的な問題、十万円、二十万円は儀礼的な金額である、そういうことについても、あわせて答弁を願いたいと思います。
  331. 川井英良

    ○川井説明員 儀礼的というのは、新聞などに報道されておりますけれども、おそらく公選法違反の問題につきまして、選挙に関して寄付をしてはいけない、または受け取ってはいけない、こういう法条がございますので、選挙の期間中ないしはその前後に寄付があったというものにつきまして、それらの法条に違反する疑いがあるのではないかということで捜査が進められたのでございますが、その際に、非常に額が少ないというふうな場合におきましては、公職選挙法の解釈といたしましても、儀礼的なものにつきましては、社会通念上その法条に問うことが適当でない、必ずしも違法性がない、こういうふうな解釈が行なわれておりますので、たぶん報道の関係は、その公職選挙法の関係においての部分についての報道ではないか、かように思っております。
  332. 山田太郎

    山田(太)委員 では、金額の多寡によらないで収賄はきまるものである、儀礼的な問題とは関知しないものである、そう断定はできないわけですね、
  333. 川井英良

    ○川井説明員 収賄の涜職の関係は、たびたびここで御説明を申し上げていることでございますけれども、金額の多寡というものがわいろ性の認定にいささかも関係がないのか、こういうことになりますと、これはケース、ケースによりまして、金額の多寡によってわいろ性が認められないというふうな場合も絶無ではございません。わいろというのは、結局その職務に関する不正の報酬、こういうふうに定義をされておりますので、その授受された金額がはたして不正の報酬と認められるかどうかという段になりますと、きわめて金額がわずかであるというふうな場合におきましては、それは不正の報酬と社会通念上認めることは適当でないというふうな場合には、わいろ性がなくなる、こういうふうな場合もあろうかと思います。
  334. 山田太郎

    山田(太)委員 くどいようですが、贈賄側のほうといたしますと、たとえば十万円が僅少な金額である、そうなりますと、これは一例ではございますが、国会議員百名に十万円ずつ贈る、あるいは二百名に十万円ずつ贈る、こうなると、贈賄側のほうの金額は多額な金額にのぼります。このような場合は、贈賄側のほうは、同じ内容がある場合、贈賄側はどのような判定が下されますか、もう一つお伺いしておきたいと思います。
  335. 川井英良

    ○川井説明員 必ずしも明確に質問の御趣旨をつかんでいないかもしれませんけれども、ある会社ないしは個人が非常に大ぜいの者に少額ずつ寄付をしたというふうな場合に、受け取ったほうはごく少額でございましょうけれども、出したほうは非常に多額になる、こういうふうな場合に、受け取ったほうがわいろ性がなくて、出したほうはわいろ性があるのか、こういうふうな御趣旨かと推察いたしますけれども、そういう御趣旨を前提といたしましてお答えを申し上げますと、このわいろ罪というのは、刑法的にはいわゆる必要的共犯と申しまして、必ず相手がなければ成立しない犯罪ではございますけれども、出したほうは請託をしてわいろのつもりで出しましても、もらったほうはいろいろな職務を持っておりまして、その関係で、その他のいろいろな関係において提供されるものであるということでもって受け取っておったというふうな場合には、いままで裁判例がたくさんございますけれども、提供したほうはわいろ罪が適用されて有罪でありますけれども、受け取ったほうはその趣旨で受け取ったのではないということで、無罪の判決を受けた例は非常にたくさんあるわけでございます。で、これは常識的にはたいへんおかしいのですけれども、法律的には決してあり得ないことではありませんで、そういうふうなことが間々あるわけでございます。ただいまの例をそれに当てはめて考えるならば、場合によりましたら提供したほうはわいろ性が認められる、それから受け取ったほうはわいろ性が必ずしも認められないというふうな場合もあろうかと思います。
  336. 山田太郎

    山田(太)委員 時間がないので、常識的には非常におかしいが、法律的にはそのような場合もあり得るのだというところで、常識的には納得いたしかねますが、一応次に移ります。  そこで、もう一度川井刑事局長にお伺いしたいのですが、先日の五日でございましたか、衆議院の法務委員会でこのような答弁がなされております、このたびの日通事件に際して、政界に流れた金額は一億八千七百八十万円で、それが国会議員四十七人に寄金された、こう述べられておるように見受けますが、もう一度確認しておきたいと思います。
  337. 川井英良

    ○川井説明員 そのとおりでございます。
  338. 山田太郎

    山田(太)委員 そういたしますと、この金は、前の日通の社長である福島社長が、末端のトンネル会社と通称いわれておりますが、そのトンネル会社から吸い上げた金であるかどうかという点と、もう一つは、この金額は届けられてない、届け出のない裏金であるか、裏献金であるか、その二点についてお伺いしたいと思います。
  339. 川井英良

    ○川井説明員 地検が確定いたしましたこのいわゆる使途不明金の中から、ただいまおあげになりましたような金額が四十数名の国会議員に政治献金として献金されておった、こういうことと、それから、それらの金は俗にいうところの裏金であるということはそのとおりでございます。
  340. 山田太郎

    山田(太)委員 もう一つお伺いしておきたいと思いますが、この裏献金は合法であるか非合法であるか。簡単な質問ですが、合法であるか非合法であるか、その点の御答弁を願います。
  341. 川井英良

    ○川井説明員 合法であるか非合法であるかという御質問について、正確なお答えはできませんが、裏金というものをつくって、その裏金をつくる過程においていろいろ刑法上の問題が起き、その裏金の中からかなりのものを自己の用途に費消しておったということで、業務上横領等の刑法上の犯罪が発生いたしております。したがいまして、その意味におきましては、その部分は非合法の金である、こういうこととなろうかと思います。(「裏献金は」と呼ぶ者あり)献金の部分につきましては、献金を受けた人が政治資金規正法に基づいて届け出をしたか——届け出は、たとえば個人がもらえば届け出の必要がございません。団体でもらいましても、会費として受け取ったということでございますれば、寄付金のように詳細な届け出が必要でないということになりますので、それらの点におきましても詳細に検討いたした結果、それらの法条に該当するような事実を認めることができなかった、こういうことでございますから、さような意味におきましては合法な金であるというふうになると思います。合法、非合法はいろいろの面から検討が必要かと思います。
  342. 山田太郎

    山田(太)委員 法務大臣にお伺いしたいと思います。いまの問題ですが、もう一歩突っ込んでお伺いしたいのですが、この献金は裏献金といわれておるが、どのような内容なのか、届けてあるかどうか、届けてないのが幾らぐらいあるのか、法務大臣にお伺いします。
  343. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えを申し上げますが、どれだけが正式に届けられて、どれだけが届けてないかということは、報告を受けておりません。しかしながら、検察局としては、この点につきましては、たくさんな人を呼び、縦横から犯罪性があるかないかということを研究して、いずれも犯罪の事実がない、こういうことに決定をしたという報告を受けております。
  344. 山田太郎

    山田(太)委員 では自治大臣にあわせてお伺いしたいと思います。
  345. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 自治省といたしましては、毎回お答えいたしますとおりに、届け出られることを……(居田(太)委員「この裏献金」と呼ぶ)ですから、それは正確にもらった団体が届けておるというふうに考えまして、その部分につきまして官報で国民の前に公示をしておる、こういうことでございまして、特に裏表などということを自治省としては立ち入り調査をする権限もありませんし、そういう役所でもございません。
  346. 山田太郎

    山田(太)委員 自治大臣の見解をお話しになったことと思いますが、まずこの問題はこの程度にしておきましょう。  では、次に移りますが、きょうの同僚議員の質問の中に、この四十七名の議員の氏名の発表の質疑があったと思います。そのときに発表されなかった。これは新聞等にも報道されておりますように、政治に不信を抱いた国民は一人残らずといってもいいほど、どうか氏名を発表してもらいたい、そうして政治に対して信頼をしたい、できるならばその氏名を発表してもらって、その方々から説明してもらったら一番すっきりするのだ、そこに初めていまの日本の民主政治に信頼を呼び戻すことができるのだ、これは国民の悲願ともいえるような大切なことでございます。したがって、あえて私はもう一度申し上げます。この四十七名の氏名を発表していただきたいと思いますが、法務大臣、どうですか。
  347. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 先ほどもお答えを申し上げたのでございますが、日通事件につきましては、これは東京地検からの正確な報告によりますと、起訴の手続をとった大倉、池田の両氏以外に、国会議員で立件するに足る容疑のある者はなかったという報告を受けております、地検は真相探求につきましては、もうあらゆる角度からでき得る限りの証拠を収集して、この努力をいたしてきたのでございます。しかしながら、私はその氏名とか関係自体を明らかにすることは差し控えたいと考えております。  理由といたしましては、まず第一に、これらの事項をもし公にしますならば、さきにも申し上げましたように、起訴済みの、裁判所に係属中の事件に多かれ庁なかれ相当の影響を及ぼすという考え方を持っております。また、こういう方は、犯罪の嫌疑がないのに名前を発表することは、ひいてはそれらの人々の名誉を私は害するおそれがある、かように考えております。われわれは、一方におきましては、犯罪は適正にこれを処断していく。一方においては、不必要に人権を阻害するようなことはかたく慎まなければならぬと考えておるのでございます。そういう点からいたしまして、犯罪のない者の名前を言うことは、その者の名誉を阻害するおそれがある、かように考えております。  なおまた、この四十数名の人間は、被疑者として呼ばれたのではないのでございまして、参考人として今回は呼ばれたのであります。参考人として呼ばれた者を公表するようなことにつきましては、今後参考人を呼んでいろいろと調べる必要があるような場合に、もしこれを発表するような癖をつけますると、将来参考人というものはあまり協力をしてくれないようなことになる。参考人の協力を欠きますと、捜査をやる上において能率をあぐることができなくなる。こういうふうな点を考えまして、今回のこの事件を公表することは適切でないと考えておる。  なおまた、過去の例を調べてみましても、こういう事件につきまして、犯罪の事実のなかったものを発表した例は、私の調べたところでは一つもありませんから、どうぞ御了承を願います。
  348. 山田太郎

    山田(太)委員 赤間法務大臣は世上にオウム大臣と呼ばれるそうでございますが、どうかオウム大臣でないように御答弁を願いたいと思います。  そこで総理大臣にお伺いしたいと思います。  先ほど申し上げましたように、これは国民の悲願でございます。いまの政治を信頼したい、これは国民の悲願でございます。そうして、そのためには、政治責任、道義的責任、これをとるためにも、そのような方法をとってもらいたい。この国民の声に対して、一国の総理大臣として真心を込めた答弁をいただきたいと思います。この国民の疑感を、政治に対する不信をそのままにしておくのか、どうするのか。そのままにしておるとなれば、これは一国の総理として責任を果たせないと思います。そこで、総理の誠意ある答弁を願いたいと思います。
  349. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、もう平素から清潔な政治、これを念願しております。しかしながら、次々にこの種の問題が起こること、まことに残念に思っております。政治家たるものは、この種の事件が起これば、もちろんこれが捜査その他について指揮するわけじゃありませんが、厳正に検察当局あるいは警察等がこの事態、事件を明確にしていただいて、どこまでもこれを追及していただく。そうして再びこの種のものが起こらないような最善の道をとりたい、かように思っております。私ども、過去におきましていわゆる黒い霧解散といわれたもの、たいへん不名誉なことであったと思います。しかしながら、国民の審判が下った。その審判が下った後におきましても、この種のものが次々に起こる、私まことに残念に思う次第であります。この辺は、政治の最高責任者として、私は国民にこの種の事件の起きたことを心から遺憾に思うと、これを率直に披露したい。そうして、今後はあらゆる機会に清潔なる政治を誓い、また政治家たるもの、必ず国民の期待に沿うように今後とも一そう慎むべきだ、かように思います。
  350. 山田太郎

    山田(太)委員 名前……。     〔「みんな疑われる」と呼ぶ者あり)
  351. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、みんなも疑われるというお話がございますが、先ほど来名前を出すか出さないかということでございまして、これについては、私先ほどすでにお答えもいたし、私の総理としての考え方、さらにまた、ただいまは法務大臣からも懇切にお答えをいたしましたので、これは御了承いただきたいと思います。適当でない、かように私考えておりますので、発表いたしません。
  352. 山田太郎

    山田(太)委員 いまの総理の御答弁では、十分に国民の疑惑を晴らすことができないのは当然でございます。言うならば、一〇〇%晴らせないのじゃないかとさえも言いたいと思います。しかし、法的に人権を阻害するとか名誉を傷つけるとかいうことにおいて、法務大臣の言われたことも法的な根拠において言われることと思いますので、その点は了承しておきます。名前を言えないということに対して、あくまでも発表してもらうことを国民の名において主張することは、これは引き下げません。  しかし、ここで言えないというならば、ここの場所においてはやむを得ないとしても、では、この四十七名の政党の名前、それからその所属の人数と金額とは、これは答弁できるはずでございますが、法務大臣どうでございましょうか。
  353. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 政党別に何人おるかというようなことも、申し上ぐることを適当と考えませんので、御了承願いたいと思います。
  354. 山田太郎

    山田(太)委員 その理由、法的な理由をはっきりと言うてもらう以外は納得できませんぞ。納得できません。法的な根拠。刑事局長と相談してください、法的根拠。
  355. 川井英良

    ○川井説明員 政党別の人数あるいは金額というようなことも、先ほど大臣から申し上げましたような趣旨におきまして、申し上げないことが適当かと思います。
  356. 山田太郎

    山田(太)委員 いまの刑事局長の答弁は、答弁になっていない。では、この法的な根拠を言うてもらいたい。実は、これは国会議員全員のことであるから、名前を言うてもらいたい。国会議員の立場も考えなければいけない。また各党も、公明党もその中の一つです。もちろん、わが党においてはその心配はありませんが、しかし、この予算委員会の中においてなぜそれが言えないのか。その法的根拠もないのにそれを拒絶することは、これは許すことができないと私は思います。
  357. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 重ねての御質問でございますからはっきりとお答えしますが、犯罪の嫌疑のない人がどこに幾らおるというようなことは法務省としては適当でない。われわれは犯罪に関係のあるものにつきましては徹底的に厳正に調べて処置をしますが、犯罪に関係のないものがどこの党に幾らおるとかというようなことは、私は差し控えたいと考えておりますので御了承願います。
  358. 山田太郎

    山田(太)委員 法務大臣は答弁になってない。  では刑事局長に、その法的根拠があるならば第何条の第何項か、それを言うてもらいましょう。
  359. 川井英良

    ○川井説明員 法的根拠とおっしゃいますと、何の法律の何条ということでございますけれども、検察官は犯罪になるものについて取り調べをして、そして起訴不起訴をきめるということが検察官に課せられた任務でございます。したがいまして、調べた結果何らの法上にも適用をしないのだというようなものにつきましては、検察官は外部に対してこれをとやかく言うことが法律上許されておりません。したがいまして検察官が強権を用いて調べた結果について、何らかの意図を持ちあるいは何らかの必要に基づいてこれを公にするということは、全法律の精神に照らして適当でないと思います。
  360. 山田太郎

    山田(太)委員 よく聞いてください。全法律なんということは、これは川井刑事局長の名言かもわからぬ。これを訂正する意思はありませんか。全法律に照らして。     〔発言する者多し〕
  361. 井出一太郎

    井出委員長 静粛に願います。
  362. 山田太郎

    山田(太)委員 もう一つ、金額は——それから人数も発表しておる。これをなぜ政党別に人数、金額が発表できないか。全法律などというそういう根拠は、私寡聞にして聞いたことがありません。
  363. 川井英良

    ○川井説明員 さらに詳しく御説明申し上げますと、検察官は何党に所属しているかということによって一切区別をいたしておりません。法律の前におきましては何人も平等でございます。したがいまして、検察官は、何党に属しておるからどうである、あるいは何党に何名、何党に何名おるかというようなことにつきましては、一切関知いたしておりません。このことは人の名誉と申しますけれども、人の中には個人だけではございません。法人も含まれましょう。人格なき社団も含まれましょう。したがいまして、名誉という点からいきまするならば、私は個人たると政党たると、法律的には同じ立場において観念しなければならないものだろう、こういうふうに考えるわけでございますので、政党別に対しても何人というようなことを言うことは適当でないと思います。
  364. 山田太郎

    山田(太)委員 私は一歩譲ったのです。国民の名において四十七名の氏名を発表してもらいたい、そしてその人の説明を聞こうじゃないかと国民はほとんどひとしく要望しております。しかし、これが個人的な人権やあるいは公判の維持において差しつかえると、現在の答弁を一応——一応了承した。しかし、国会議員の名においてこれは明確に国民の前に政党あるいは人数、金額、これくらいは発表して、そして現在のこの蒙を開いていただきたいと思う。法務大臣
  365. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 たびたびの御質問でございますが、さきに申し上げましたように、検察当局といたしましては党派別に何人おったというようなことは、私のところにも報告はあっておりません。私のところには、名前は承知しておりまするが、何党に何人、何党に何人というような報告は受けておりません。私はまた聞こうともいたしません。私は犯罪取り締まりの元締めで、犯罪の取り締まりについては徹底的にやりますが、犯罪の嫌疑のないものについてそれをとやかくすることは適当でない、かように考えております。ただいまも刑事局長が申しましたように、個人並びに団体等の名誉にも関する部面も幾ぶんあると考えて発表しないことが適当であると考えまするので、御了承願います。
  366. 山田太郎

    山田(太)委員 法の元締めであると自認する法務大臣の答弁としては残念な答弁であり、同時に国民を愚弄しかねない答弁であるとさえも言いたい。しかしこれ以上は行き違いの質問と答弁になっていきますので、時間の関係上次に移ります。しかし、その点において納得したのではないということを一言申し上げさせていただきます。  そこで、検察当局のことばは刑事責任と道義的責任は区別しなければならないという見解を示していらっしゃいます。そこでこの献金を受けた、政治上では裏献金といっておりますが、私も法律的責任は免れたといたしましても、国民の政治に対する不信を招いたこの道義的責任は、これは免れることはできないと思います。この道義的責任について、しかもこの金は、先ほど申し上げたように日通の前社長がトンネル会社から吸い上げたリベートだ、その中の一億八千七百八十万円、このような国民の疑惑をそのままにしておったのでは、日本の民主政治は将来危ぶまれるということは当然であります。  そこで総理大臣に、この道義的責任をどうするのか。先ほどの答弁はこの道義的責任についての御答弁ではなかった。この道義的責任については将来とも、現在においてもどのような方法を講じていくのか、この点について総理のお答えをいただきたいと思います。
  367. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの山田君の御意見お尋ね、私ちょっとわからないのですが、道義的責任のある者がお答えすればいいのでしょうね。道義的責任のない者にその道義的責任をどうするかとお聞きになってもちょっと私わからないのですが、それとも政治の最高責任者としてこの種の事柄が起こって国民に対して済まないと思うかということについてのお尋ねなら先ほどお答えしたとおりでございます。これはただいまもいろいろ議論が出ておりますが、先ほどから私伺っておりまして、みずからがどこへ出ていっても恥ずるところのないもの、それが他から証明してもらわなければならないという、そんなことはずいぶん情けないことじゃないだろうか、自分自身関係なくて何らの疑惑も持たれない、みずからかく主張し得る、そういう場合に、何かどこかで公明党にはそういう人は一人もいない、かように言われれば、公明党は、検察当局からそういう者はいませんと言うまでもなくもうけっこうなことではないですか。それでなお国民に対して肩幅が狭いの、何か狭い思いをするという、何か国民から疑われるようなことでもあるのですか、私は何だかおかしい気がいたします。私はいまの道義的責任ということについて、私自身もそれはもちろん感じますよ。政治的にどうすればいいか、これが、政治資金規正法を制定しろとかこういうような話も出ておるのだと思います。しかし私はそういう事柄についてもこれはもうすでにかつて案も出しておりますから、それはひとつ御審議をいただきたい。ただ、道義的責任のある者その者が答弁をしなければならないので、私何だかいまお尋ねになりましても、どう答えるのかなと実は思っているような次第であります。
  368. 山田太郎

    山田(太)委員 では時間の関係で、総理大臣にもう一点お伺いしますが、政治資金規正法の改正です。  これは先日、選挙中でございましたか、甲府においての総理の言明の中に、いまの政治資金規正法は一そのとおりではありませんよ。ことばのとおりではありませんが、この前の五十八国会に提出した政治資金規正法の改正案に十分手を加えて、そうして次の通常国会に提出したい、そのような談話があったと思いますが、その手を加えてというのは、どのように手を加えて次の通常国会に出したいと思っていらっしゃるのか、その答弁をいただきたいと思います。
  369. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 政界の浄化、そういう意味から、皆さん方から適正なる政治資金規正法をつくれというので、もう二回皆さん方提案をして御審議をいただきました。第五次選挙制度調査会の答申があった、それを骨子にいたしまして私が一度政治資金規正法をつくった。これに対してはどうも選挙制度の実際あるいはまた現実の問題等から見まして、やや理想に走っているのじゃないか、こういうふうなことで審議が難航してついに成立を見ることができなかった。今度第二回目は、私は一歩でも政界浄化に役立つならそれが適当ではないか、かように思って一案をつくって提案をいたしました。これはもちろん理想から見ればほど遠いものだ。しかしながら政界の浄化ということと取り組むためには、一歩でも前進することだ、かように思いまして私はその案を出したのでありまます。しかしその審議を十分尽くすことができないで、これまた成立を見ることができなかった。私に課せられたものは、やはり政治資金規正法、政界の浄化のためにその基準になるものをつくるべきじゃないか、かように思っております。私は過去二回の苦い経験等にかんがみまして、こういうものをさらに提案するという場合には十分検討したい、こういうことを申したと思います。私は一歩でも二歩でも政界浄化に役立つもの、そういうものと取り組んで、そうして現実の問題として前進することが望ましいことではないか、かように思っております。そういう意味でさらに検討してみるつもりであります。
  370. 山田太郎

    山田(太)委員 この政治資金規正法の改正は、政界の浄化のためには非常に大切な問題です。それは総理の言われるとおりです。しかし理想と——この前の第五次答申があまりに理想過ぎた。そうして五十八国会に出したのは一歩前進の現実なんだ。この理想と現実との間の問題は何がそういう問題になるのか。理想と現実の間には——やはり問題がなければ理想に法案を改正すれば一番いい。だけれどもなぜそこへいけないのか、その問題点はどういう点か答弁願いたいと思います。
  371. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私はしばしば申し上げますが、政治活動には金も要ります。あらゆるものをくふうしなければならない。ところで許される政治活動、こういうものが多くの場合に、普通の場合においてはこれはほとんど許される政治活動だと思う。だからそういう意味の平素の政治活動、それがうんと活発にやられそして金がかかってもあまり問題が起こらない、かように思いますが、ただ、選挙に関すると、政治活動と申しましても金が一つの問題になる。これは非常に窮屈なものになります。これは私が申し上げるまでもなく、現行においても選挙制度のあり方というものも、この政治資金に多分にからんでおる。関係を持っておる。同時にまた、今日の国民の政治意識というもの、これもいま政治活動を活発にしなければならないと申しましたが、やはり金の問題にも関連がある。これらが現実の問題として私どもが考慮しなければならないことであります。こういう点にいろいろ金がかかってくる。だから金だけを押えてみたって、これは目的を達することができないのではないか。やはり選挙制度のあり方なり、さらにまたいま申しますように、国民の政治意識の問題等々ともからんでこの政治資金の問題はむずかしい問題なんだということを申し上げておる。
  372. 山田太郎

    山田(太)委員 私の質問申し上げたことの答弁をはぐらかされたような気がいたしますが、もう一歩お伺いしたいことは、五十八国会に提出した政治資金規正法を手を加える。その点はまだ検討中で、考えてない、その解してよろしいでしょうか。
  373. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおりでございます。  それからいま私が答えたことであるいは一つの誤解を持たれるかもわからない。その点は、政治資金規正は必ず選挙制度関係がある、かように考えられるとこれは思い過ぎ、行き過ぎだ、かように言いたいのでありまして、その点は誤解のないように願いたい。しかし、金のかかるということは選挙制度のあり方いかんにもよるということを申しているのですよ。これはいままでたびたび——過去二回の提案におきましても、選挙区制の問題とこれはからんでおらないということをしばしば申し上げております。その点をからましてないことだけは御了承いただきたいと思います。
  374. 山田太郎

    山田(太)委員 では、政治資金規正法の問題は必ず第五次審議会の答申により一そう近づいた、あるいはそのままの、一番理想は政治献金は個人に限る、これが政界浄化の一番の要諦だと思います。それは当然御承知のことととは思いますが、あえてこのことを、国民の要望ですから、りっぱな政治資金規正法の改正を行なっていただきたいと思う。その法案を提出していただきたいと思う。これは要望しておきます。  時間の関係で次に移ります。いま現在において大切な基地の問題についてお伺いをいたします。日米安保条約に基づく在日米軍基地は日本の防衛というよりも、むしろアメリカのアジア極東戦略の重要拠点として米軍の利用に供されているのが実態であります。ベトナム戦争がそれを実証しているではないかといわれております。また日米安保の行動は日本全土を基地化することも可能な条約になっております。また他に類例を見ない、先ほどから問題になっております極東条項に基づき米軍のアジアにおける自由な行動権をまるのみにしている条約でございます。わが国が日本防衛義務と引きかえに安保の公害、戦争の危険負担等あまりに主局価な代償を払っているのは、これはおおいがたい事実であります。日米安保体制のもとにおける日米双方の権利義務のこのバランスを見てみますと、日本が重大な危険を負担している、そういう意味においては日本のほうがマイナスではないかといわれております。また基地撤去、少なくとも当面においてはその縮小は、これは国民の総意であるということは当然であります。総理はいつかの代表質問に答えられまして、基地は当初に比べ数で二十分の一、面積にして六分の一になった、さらに整理するよう話し合いを始めると述べられましたが、いつどこでその話し合いを始めるのか、具体案を示していただきたいと思います。
  375. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの基地の問題についてどこでということですが、もうすでに防衛庁で話し合いをしております、事務的には。これはもう防衛庁長官から詳しくお答えさしてけっこうですが、ただ、私先ほど来お話を伺っておりまして、山田君も日米安保体制というものをやや誤解をされておるのじゃないだろうか。これは別に議論を吹っかけるつもりで申しわけではありませんが、ただ、アメリカのアジア戦略体制に日本が追随しているのじゃないかというこの点について、私どうも首肯しかねるのです。この日米安保体制、これは日米の安全を確保する防衛体制、もしもアメリカ自身が出ていくというような場合があれば、いわゆる事前協議の問題になってくる、日本は十分意見を述べ得る機会があるわけであります。これは平和憲法、そのもとにおいて戦略基地として日本がアメリカを、アメリカが日本を使うこと、これに私どもは了承を与えないことはよく御承知のことだと思いますので、いわゆるアメリカのアジア戦略体制に手助けをするんだということはやや言い過ぎでないだろうか、オーバーな表現ではないだろうかと私思いますので、別にこれは議論するつもりで申すわけではありませんが、ただいまの事前協議という問題がそういう意味のブレーキになっているのだ、かように御理解をいただきたいと思います。  ただいま基地の問題で交渉しておる実態は防衛庁長官からお答えすることにいたします。
  376. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 山田さんにお答えいたします。  防衛関係につきまして、区域並びに施設を含む基地が日本の平和に貢献しておるということは総理のおっしゃったとおりでございます。ただ、しかしながら、周辺の住民に迷惑を及ぼしておるということも事実でございまして、基地全体について総点検をせよということが基地関係閣僚会議における御意向でもございまするし、また総理大臣の御指示でもございます。いま総点検をいたしております。  具体的に板付をどうするか、あるいは王子病院をどうするか、あるいは水戸の射爆場をどうするかというようなことは御質問があれば一々お答えいたしますが、いま時間の関係もございましょうし、省略さしていただきます。御質問があればお答えいたします。
  377. 山田太郎

    山田(太)委員 総点検を始めているという答弁。前の質問についての、アメリカとの協議はどこでやっているか、いつ始めたか、これについての答弁はなかったように思います。
  378. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 地位協定に基づく日米合同委員会なるものがございまして、こちら側の代表はアメリカ局長であります。それから政府代表代理は私のところの施設庁長官でございます。米側におきましては、駐留軍の参謀長ウイルキンソンがアメリカ代表でございまして、合同委員会においては具体的に基地問題を毎回検討いたしております。
  379. 山田太郎

    山田(太)委員 では、その総点検に対する検討の現在の状況、そうしていつそれを終わるか、それについてあわせて答弁をいただきたいと思います。
  380. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 国会承認を得ました地位協定に基づきまして米側は基地の必要性についていつも検討しなければならない。わがほうにおいてはそういう義務はないわけでありまするが、米側にはそういう義務が協定上設定されております。そこで、結局わがほうにはありませんけれども、わがほうでもただいま検討中でございまするが、いつまでに終わるかと申されてもちょっと期限までは、具体問題でございまするから言いかねますけれども、まず板付は代替地を得られるならば移転いたしますということを、合同委員会においてはウイルキンソン参謀長が日本側に表明をいたしております。これは板付の基地の態様から見ると、米側としては相当の進展ではないか、こう考えておるわけでございまして、いま代替地を方々さがしておる状態でございます。  それから、王子病院はいま候補地をさがしておるのでございまして、適当な候補地があれば、私が申し入れをすると向こうも王子病院の移転を承諾する、こういう手配に相なっております。  水戸の関係は、これを受け入れる新島がまだ受け入れという点にコンセンサスを得ておりませんから停とんいたしております。  東富士は、二千七百万坪という膨大な、東京湾以上の基地が日本側に管理が転換されたのが七月三十日でございます。
  381. 山田太郎

    山田(太)委員 あわせて質問申し上げますが、佐世保港の放射能汚染事件の結論が出ておるのかどうか、これが一点。  ずうっとあわせて聞きますから落とさないようにしてください。それから電波障害緩衝地帯の設置要求に対してはどうするのか。次には横田の基地公害についてはどうするのか、これについてあわせて答弁を願いたいと思います。
  382. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 電波障害関係と横田の関係をお答えいたします。  十三カ所の電波障害関係についての米側の要望がございます。これは別段法規はないわけでございまして、民法上の関係でございます。そこで民法上の契約を結びまして、地役権というようなものが障害を受けるわけでございますが、その地役権が障害を受けた場合には、基地周辺整備に関する法律によって適切なる補償をいたしたい、こういうことでございます。これは上瀬谷を含む十三カ所でございます。  それから横田は、先ほど楢崎君からも御質問がございましたが、高い建物は結局彼我双方のためにならないのでございまして、着陸するとか離陸する場合に高い建物をなるべくつくってくれるなという要望は、日本の空港についてすべてそういうような周辺の方々は一種の制約を受けておる。これはやはり公共の利益に合致するゆえんでございまして、空港と同様なる制約が飛行場についてもある、こういうわけでございます。
  383. 山田太郎

    山田(太)委員 一つ答弁が落ちておりますが、放射能の問題。
  384. 三木武夫

    ○三木国務大臣 放射能の問題については、日本が異常放射能の危険に関連をして第一次冷却水を出さないでもらいたいという要望をアメリカにいたしたのでございます。まだアメリカからのこれについての回答に接してない状態でございます。
  385. 山田太郎

    山田(太)委員 先ほど防衛庁長官の御答弁の中にありましたが、地位協定の第二条第二項、これは米国側のほうが返還を目的として検討する義務はあるが、日本のほうにはそれはない、そのような答弁であったと思います。しかしこの基地の問題は非常に大切な問題です。同時に一方、言うならば、この前の本会議においての佐藤総理の答弁の中に、安保に賛成ではあるが基地に反対しておる、それから安保に反対であると同時に基地に反対しておる、その答弁があったと思います。この安保に賛成であって基地に反対、それはどういうことをおっしゃっているのか、これを具体的にお伺いしたいと思います。
  386. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 きょうも午前中にいろいろ基地の問題についてお話をいたしました。国内におきまして都市化が非常に急速に進められた。大体基地の付近に人家連檐、都市が建設される、そういうようなところからいろいろ問題が起きている。それで地域住民からも基地のためにいろいろ迷惑をこうむっておる。それを何とかひとつ救済しろ、こういう話がある。ただ単に音響や震動だけではありません。次々にその話が起きておる。先ほど来山田君が御指摘になりました電波障害もそうだろう。ただいまのような高い建物は困るという、これなどもそのうちであります。そういう意味で何か政府自身でやってくれることはないか。目に見えるような音響について政府が特別の施設をする、それについて予算を負担する等の救済はされております。しかし、もうそれだけではなかなか済まないようなものが場所によってはあるわけであります。こういう点をひとつ、安保は認める、そういう意味で基地のあることはやむを得ない。しかし何とかもっと迷惑、損害を政府がめんどうを見てくれないか、こういうような話があるということであります。これらの点について、公明党がいち早く基地総点検をやると言われる。これは私はたいへん地域住民に対しても便することだと思いますし、政府もまた、そういう意味では、私どもただいま検討している最中でありますので、こういう点については、公明党の諸君からも実情についてさらに政府を鞭撻していただくようなお話を聞かしていただきたい、かように思っております。
  387. 山田太郎

    山田(太)委員 安保に賛成しての総点検ではないということは、これは一言つけ加えておきます。  そこで、いまの総理の答弁の総点検、これはいま防衛庁長官からも答弁がありましたが、もっと一歩進んで、この総点検をいつごろまでに終わるのか、この目標を立てて総点検するのでなくてはならぬと思う。それでは真の意味においての総点検という意味にならない、また国民の要望にもこたえたことにもならないと思います。その点について最後の質問をしておきたいと思います。
  388. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 政府のやっているのは時期を画して総点検と、こういうものではありません。これはもう各基地について、地域住民からのそれぞれの要望が出ております。もちろん、要望が出てくるそのときにやらなければならない。また、その要望が出てこなくとも、私どもが主体性を持って調べる場合、これもあるのでございますから、それらの点をあわせてこの基地の問題について政府は多大の関心を示し、善処しつつある、かように御理解をいただきたいと思います。
  389. 山田太郎

    山田(太)委員 一国の総理として、しかも国民の一番心配している問題にめどを持たないでやるということは、これは国民を愚弄することになりはしないかと思う。ある意味においては、国民のその期待を裏切るということにおいても、そのめども立てないでやるということは、これは承服いたしかねる。やはりめどを立ててやっていく、それが一番大切なことではないかと思います。これに対してもう一言答弁願います。
  390. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまめどをつけてやれと言われますが、たとえば水戸の射爆場のごとき問題、これはもう数年前に不適当だ、どこか他の場所にこれをきめよう、もう代替地さえあれば自分たちも賛成だ、こういうことでその方針はきまっておる。しかし、なかなかこれが解決を見ていない。これが政府がたいへん努力しておる一つの問題であります。  こういう事柄が、今回のまた板付飛行場についても同じことが言われておる。これは適当なる場所があればひとつ考えよう、王子の病院についても同じことが言われておる。これは、ただいま言われるように、時期を画して総点検を終われ、こういうことでなしに、実態に即した処置をとるということ、これが必要なことだ。いま山田君の言われるような総点検を終えと言われるのも、おそらく点検だけが目的ではない、解決しろということが目的である、私はそのほうに重点を置かれるのだと思います。  そういう点については、政府自身が、これは政府責任においてすべてこういう問題等を平素からやっておる。したがって、私どもがもし見落としがあるならば、そういう点について公明党からもひとつ御指示をいただきたい、かように実は申しておるのです。私は、なるほど一定の時期を画して総洗いをするということは、たいへんわかりいいような話ですけれども、いまもうすでに基地の問題はそれぞれが批判の的になっておる。そうして、その地域住民からしばしばそういうことを受けておりますからあらためての総点検をするまでもなく、問題は一応含んでおる、知っておる、かようなことでいまこれに対する対策を立てるべきだ、かように申しておる次第であります。御了承をいただきます。
  391. 井出一太郎

    井出委員長 これにて質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。     午後六時五十四分散会