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1968-10-31 第59回国会 衆議院 法務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年十月三十一日(木曜日)    午前十時四十分開議  出席委員    委員長 永田 亮一君    理事 大竹 太郎君 理事 田中伊三次君    理事 中垣 國男君 理事 神近 市子君       鍛冶 良作君    村上  勇君       河野  密君    堂森 芳夫君       中谷 鉄也君    成田 知巳君       畑   和君    岡澤 完治君       山田 太郎君    松本 善明君       松野 幸泰君  出席国務大臣         法 務 大 臣 赤間 文三君  委員外出席者         警察庁警備局長 川島 広守君         法務政務次官  進藤 一馬君         法務省刑事局長 川井 英良君         法務省矯正局長 勝尾 鐐三君         法務省保護局長 鹽野 宜慶君         文部省初等中等         教育局高等学校         教育課長    望月哲太郎君         文部省大学学術         局審議官    清水 成之君         労働省労働基準         局監督課長   細野  正君         最高裁判所事務         総局刑事局長  佐藤 千速君         専  門  員 福山 忠義君     ───────────── 十月十八日  委員鍛冶良作辞任につき、その補欠として武  藤嘉文君が議長指名委員選任された。 同日  委員武藤嘉文辞任につき、その補欠として鍛  冶良作君が議長指名委員選任された。 十月三十一日  委員岡田春夫君、佐々木更三君及び西村榮一君  辞任につき、その補欠として畑和君、中谷鉄也  君及び岡澤完治君が議長指名委員選任さ  れた。 同日  委員中谷鉄也君、畑和君及び岡澤完治辞任に  つき、その補欠として佐々木更三君、岡田春夫  君及び西村榮一君が議長指名委員選任さ  れた。     ───────────── 本日の会議に付した案件  裁判所司法行政に関する件  法務行政に関する件  検察行政に関する件      ────◇─────
  2. 永田亮一

    永田委員長 これより会議を開きます。  法務行政に関する件、検察行政に関する件、及び裁判所司法行政に関する件について調査を進めます。  これより、それぞれの案件について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鍛冶良作君。
  3. 鍛冶良作

    鍛冶委員 私は主として十月二十一日の学生事件に対してお聞きしたいのですが、これは公式の場合ではございませんでしたが、われわれ自民党政調部会法務部会においてもいろいろのことを想定しまして、学生行動に対してはまことに憂慮すべきものがある、ただならぬことが起こると想像できるが、さようなことがあってはたいへんだから、検察庁当局なり警察当局においてさようなことのないよう万全を期してもらいたいということを申し上げておいたはずでありますが、ついにああいう事件に至りました。われわれはまことにどうも遺憾に存じますると同時に、国民は、一体こういうことでこの先どうなるのだろう、こんなことをしておったら国の治安が守れるのであろうか、ここまで心配しておると私は考えます。  そこで、まずお聞きしたいのは、何とかああいうことにならぬように防止する手配がなかったのか、またいろいろのことをお考えになったがどうにもしようがなかったものか。その点をひとつ検察当局の元締めである法務大臣並びに警察庁の責任ある方から承りたいと存じます。
  4. 赤間文三

    赤間国務大臣 お答えを申します。  非常にごもっともな御質問でございまして、検察当局といたしましては警察当局とも密接な連絡をとりまして、ああいう事件が起こらないように、未然に防げるように、常に打ち合わせをしてそれに善処をいたしておる次第でございました。それから、もし起こっても、それが大きなものが起こらぬ、最小限度に――どうせ起こる、やむを得なく起こるときには規模がなるべく小さく起こるようなことを念願しながら万全の措置を今日までとってきたような次第でございますが、お述べになりましたように、ああいう事件が起こりましたことを非常に遺憾に考えております。
  5. 川島広守

    川島説明員 ただいまお尋ねの御趣旨につきましては全く同感でございまして、国民一般といたしましてもかねがねいわゆる三派糸全学連反日共糸全学連の暴挙につきましては非常にきびしく批判をしておる次第でございます。  今回の一〇・二一の場合におきましては、御案内のとおりに全国的な規模でいわゆる国際反戦統一デーという形で戦われたわけでございまして、学生たちもその一環として、東京都内におきましては御承知のとおり彼らは新宿駅においていわゆる米タンク車阻止闘争、これをずっと武装闘争で阻止するのだということをあらかじめ公言をしておったような次第でございます。したがいまして警察といたしましてはもちろんのことでございますが、事態がそのようなことにならないように、特に関係機関国鉄はもちろんのこと、東京都内、たとえば淀橋地区内、関係方面にいろいろ御協力を得まして、たとえば一〇・八の闘争において彼らが武器として使いました敷石等につきましても舗装をしていただくとか、あるいはまた線路上に侵入ができませんように鉄さくをつくっていただくとか、いろいろ関係機関にそれぞれ御協力を得て、事態未然防止についてつとめた次第でございますけれども、結果におきましてはいま御指摘がございましたようなはなはだ遺憾な事態が起こったわけでございます。  御案内のとおり一〇・二一につきましては、警備側といたしましては全体で約一万二千名の警察官を動員いたしましてそれぞれ対処いたしたわけでございますが、国会あるいは米国大使館あるいはまた防衛庁あるいは麹町警察署というような各地に同時多発的な様相で起こりました。そこで新宿駅だけについて申しますならば、これについて十分適切な、双方にけが人を出さないという警備眼目、こういうものを十分に達成できるような措置をいろいろ考えましてやったわけでございますが、結果におきましては、事態の終結につきまして批判を受けるというような事態が起こりまして、あのような結果になったわけでございます。  将来につきましては、申すまでもございませんけれども、今回の教訓だけでなくて過去幾多の同種の事件がございますので、そのような過去のいろいろな警備教訓というものを十分に生かして、できる限り一般国民の不安を防ぐように、そのようなことが起こらないように十分対処してまいる考えでございます。
  6. 鍛冶良作

    鍛冶委員 なるべく要点だけでよろしゅうございますが、あの晩に、私の聞いておるところでは防衛庁国会、それから麹町警察、それから新宿、またそのほかもやったかもしれません。そういうふうに時間的にやっているようですが、これを時間的に、どこへ一番先行って、それからどうしたということを簡潔に御報告願います。
  7. 川島広守

    川島説明員 いわゆるわがほうのことばで申します警備現場の発生の時間帯から申しますと、一番最初に起こりましたのが防衛庁でございます。防衛庁がおおむね五時を若干回りました時点でございまして、これにはわれわれのいっております反日共系のいわゆるトロツキスト系学生のうちの社学同統一派おおむね一千名。これが防衛庁に参りましたのが五時過ぎ。これに対しましては所要警備部隊をもちまして規制及び検挙にあたりまして、合計二百十五名を検挙いたしております。その次に、さらに続きまして、この社学同統一派学生に若干の反戦青年委員会が加わりまして、おおむね十時を若干回った時点で第二回目の攻撃があったわけでございます。したがって防衛庁には午後五時過ぎと十時過ぎの二回の侵入を企図した攻撃事案が起こりまして、これが時間的に最終的に終わりましたのがおおむね午後十時五十分程度の段階でございます。  一方、革マル系のほうはそれぞれ国会に向かうということで東大をたちましてまっすぐ地下鉄で四谷の駅におり立ちまして、これが通りすがりに麹町警察署に対しまして付近の舗道の敷石をはがしましてこれで投石を開始をするという事案が起こりました。これについてはそれぞれ適切に規制をいたしまして、ここでも五十一名の検挙をいたしておりますけれども、これは四谷方面規制をする。これがやがて新宿に合流したわけでございます。  もう一つの事案は、これまた青山通りを通って、社青同解放派の派閥及び反戦青年委員会でございますが、これが国会周辺に平河町から参りました。ここで規制をし、それぞれ五十数名の検挙をいたしておりますけれども、この学生らはさらに今度は国会規制を受けましたあとアメリカ大使館に向かっていったわけでございます。アメリカ大使館に行きました者につきましても、所要の配置しておりました部隊によりまして規制をいたしまして、これは日比谷公園の方向、それから一部は清水公園のほうへ逃走するというような事案が起こりました。したがいまして国会周辺事態が一応鎮静に向かいましたのは時間にしましておおむね十時五十分ごろ、こういうような事態でございます。  これがそれぞれいま申しましたような時間帯で、それぞれの部隊がそれぞれの場所から新宿のほうに合流してまいりました。最高時、新宿に集まりました学生の数は、警察が把握しております数ではおおむね四千五百名でございます。  そこで新宿事態は、時間的におおむね六時少し前という時間でございます。これはいわゆる中核派学生代々木の駅におり立ちまして、社学同ML派とともに線路を伝わって新宿駅に参りました。もう一隊はまっすぐ新宿の三番ホームにおり立つという二つのグループがございましたけれども、新宿駅の事柄はおおむね六時ごろから起こっているわけでございます。そのようにしてまいりますうちに、最初線路上におり立ちました者を排除いたすとともに、五十八名の検挙をいたしておりますけれども、その規制をのがれました者が再び伊勢丹方面に回りまして規制、圧縮されましたあと、これが東口に集まってまいりました。東口へ集まりまして次第に学生の数がふえまして、八時ごろからおおむね二千名前後になり、次第に数が増してまいりました。そして、先ほど申しました国鉄側で造作されました鉄板によるさくが大ガードのところにつくられたわけでありますが、これに向かって、コンクリートの丸太ん棒で突き破りまして、ここから、最初は数百名でございましたが、これが次第にふえまして、最高時二千五百名という学生線路上にはい上がってくる。それから事態が次第に険悪化してまいったわけであります。  その間、警察のほうといたしましては、いま申しましたような国会防衛庁あるいはアメリカ大使館付近に転用しておった関係もございまして、前後三回にわたりましてこれに規制をいたしたわけでございますけれども、結果的には、新聞等で御案内のとおりに、あばれました学生どもが無尽にございます線路上の石を投石をする、あまつさえ信号機を破壊をする、あるいは線路上にございました貨車、電車窓ワクを捨て、ガラス窓を破壊する、中にございますシートやいすやらを表に持ち出してバリケードを築く、あるいはまくら木を焼く、そういうような一連の暴行事案が相次いで起こったわけでございます。そのような経過の中で、零時十五分に騒擾罪適用に路み切った次第でございます。現在まで懸命に捜査を続行しておる次第でございます。  そのような経過がこの事件のあらましでございます。
  8. 鍛冶良作

    鍛冶委員 われわれはこまかく調べぬのですから断言するわけにはいきませんが、どうも学生のほうで防衛庁へまず行って、それであなた方のほうでは、そら防衛庁のほうに行ったというので防衛庁に向かわれる。その向かっておるときに、ほかの者はほかのところへ行く。そらそこへ行った、そうするとまたほかのところへ行く、こういうことで、手薄にさせておいては進撃する、手薄にさせておいては進撃する、こういうやり方をしておるように思われます。また新宿駅にしましても、あなた方は東口を非常に固めておられたようですが、代々木線路から来るということは想像できなかったのかどうか知りませんが、線路伝いで来る。それを防御しておれば東口手薄になる、そこでまた彼らが東口に寄ってくる、こういうふうでどうも学生どものほうが警察の手をちゃんと考え先手先手と打って、あなた方はそのあとを追っかけて歩いて、そら向こうへ行ってやられた、向こうへ行った、あれまたやられた、そればかりやって歩いておるように見えますが、こんなことでは、これで一体警察は国を守ってくれるだろうかという心配をせざるを得ないです。これはあなた方のほうで、こう言えば返事はできぬかもしれませんが、このような憂いをわれわれは持ちますが、これは杞憂にすぎませんか、それともこういう憂いはあるものと思われますか、いかがですか。
  9. 川島広守

    川島説明員 いま御心配の節につきましては、私も一般国民の間にはそういうような御心配をされる方が相当多数おいでになることは新聞などを通じて承知をいたしております。また、いま御指摘部隊の転用が後手後手に回ったのではないか、将来心配はないかという御趣旨に承ったわけでありますが、こちらのほうといたしましては、今回の場合は事前情報も十分取っておりましたので、いま私が申し上げましたそれぞれの個所につきましては、たとえば一例を申しますと防衛庁には二千名、国会周辺には千六百名、アメリカ大使館には七百というふうなそれぞれの固定配置をいたしておったわけでございます。しかしながら、いま申しましたように学生側のほうの行動というものがわれわれの知っておりました事前情報と違った動き方をしたわけではないのでございまして、先ほど申しましたように国会、麹町全体を含めまして約百五名の検挙をいたしておりますし、防衛庁でも二百十五名の検挙をいたしておるわけでございます。ただ将来とも、いまおっしゃいましたようにわれわれの警備陣一人一人につきましても、もちろんいつもいつも全く御心配がないようにするつもりでわれわれは努力をしておるつもりでございますが、今回のようなことが二度、三度起ることになりましたら、国民の不安はいよいよ増大するばかりでございます。したがってわれわれは将来につきましては先ほどもちょっとお答え申しましたように、これまでの経験を十分に生かしまして、そのようなことのないように十分対処してまいる覚悟でございますので、そのように御了解いただきたいと思います。
  10. 鍛冶良作

    鍛冶委員 このような事態になりました以上は、いかなることがあってもかようなことの起こらぬように守ってもらわなくてはならぬと私は心得ます。それについてはわれわれはあなた方に、ここはこうしたらよかろう、ここはこうしたらよかろう、そんなことは言いません。それはあなた方は専門でやっておられるのでありますから何であろうとかようなことの起こらぬこと、起こった以上は必ず今後そういうことが二度とないことにしてもらわなければいかぬと思うから、私はきょう特にこの委員会を開いてもらって質問をするわけでございます。  それから、かようなことが起こりますと、相当の検束者も出されたようでありますが、いろいろな犯罪が犯されておると思うのです。けれども、なかなかどうもあなた方の人数で、また学生人数から考えまして、そこに犯罪が起こるであろうけれども、みんな一人残らず犯罪者としてこれを検束するというわけにもいかぬかもしれません。それらの点がありましても、いやしくも法治国でありまする以上は法律に違反した者は、堂々と大衆の面前でいろいろなことをやっておる以上は、いかなることがあってもこれを検挙してさようなことを絶滅するという考えがなくちゃいかぬと私は考える。その意味において、まず法務当局におかれましても、事実上やれないからということではいかないのですよ。根本は、法を犯す者がおったら必ずやるのだ、犯罪があれば必ず検挙するのだ、そうして国民に不安を与えないのだ、またそういうものを必ず鎮圧するのだ、この覚悟と用意が検察当局に必要だ。それと同時に、警察にも事実上においてそれだけの準備があるかどうか、なかったら準備をしてください。私は、こういう準備をしなさい、ああいう準備をしてくださいなどとは申しません。あらゆるものがあろうが、いかなることがあろうともわが国を守ってもらう、警察において治安を守ってもらう、警察においてさようなことは絶対に起こさぬ、国民に今後はさような不安は絶対与えない、私はこれだけのことをここで言明してもらいたい。そのかわりわれわれとしてやらなければならぬことはどこまでもやらなければなりません、つとめますから、この言明ができるかどうか、検察当局におきましても事実上できないことがあるかもしれませんが、ないのならばそれをやることにしてもらう。あらゆることをして、いやしくも法を犯す者がおったら容赦しない、必ずこれを戒めて二度と起こらぬように、国民に不安を与えないだけの覚悟と現実にこれを行なうという考えがあるか、この点を両方からひとつ承りたいと思います。
  11. 赤間文三

    赤間国務大臣 お答えを申し上げます。  ただいまの問題は非常に重大な問題でありますが、私は全く同感でございます。いやしくも法治国家におきまして法秩序を乱す者については断固としてこれを取り締まるということは当然のことでございます。そのためにはわれわれは全力を尽くして国の治安維持に万全を期していこう、こういう考えを持っております。検察といたしましては、いずれ質問がどなたかからあるかもしれませんが、騒乱罪のようなものも、今年の四月並びに六月の両度にわたりまして検察官会議をいたしまして、そういう条件に当てはまるようなものは遠慮なくこれを適用して、国の治安のために万全を期するということの話し合いが完全にできております。政治的にどういう罪をやれとかいうようなことは絶対に申しませんが、検察当局としてはとにかく現在あるすべての取り締まり法規を活用して、国の治安については万全を期する、こういう固い決意を持っておるのであります。今後におきましては警察と密接な連絡をとりまして、お述べになりましたように、一種の取り締まりのことについても、あらゆる面についても国民が安心のできるような方法で、全力を尽くして国民の期待に沿うようにしていきたい。これが私は国民すべての者の、いまお述べになりましたのは日本国民のほとんどすべての人が、国の治安についてりっぱな取り締まりをやってくれという希望のように私は承知をいたしております。検察としては断固としてこの処置をとっていくということをはっきりとお答えを申し上げます。
  12. 川島広守

    川島説明員 現行刑罰法令事態に応じてそれぞれきびしく適用してまいるということにつきましては、ただいま法務大臣からお答えがございましたので、事柄警察だけに限ってお答えを申し上げたいと思います。  先ほど来繰り返しお答え申し上げておりますように、警察側といたしましては、考えられ得るいろいろな事態についてそれぞれ検討いたしておるわけでございまして、特に今回の新宿等の例に見られますように、何万にも及ぶいわゆる群集というものがたいへんわれわれの警備実施の上ではいろいろな障害になっておる。そういう事実を今回の場合にもまた大きく学んだわけでございまして、そういうようなことをあれこれ考えまして、われわれの側においていろいろと反省すべき点あるいはいろいろな意味において不足しておる点、そういうものがございますので、それらを一切総合的に検討いたしまして、いま御指摘になりましたように、国民に不安を招かないようなりっぱな警察づくりをしてまいりたい、こういう決意でございますので、そのように御了解願いたいと思います。
  13. 鍛冶良作

    鍛冶委員 次に承りたいのは騒擾罪ですが、いま大臣騒乱罪とおっしゃいましたが、私は騒乱罪というものを知りません。そういうものはどこにあるのか。私はおそらく刑法にある騒擾罪といわれるものじゃなかろうかと思うのですが、騒擾罪ならばなぜ騒擾罪と言われないのですか。どうして騒乱罪と言われるのか。まずその点を刑事局長からひとつお答えを願いたい。
  14. 川井英良

    川井説明員 刑法の規定は騒擾罪でございまして、一般騒擾の擾という字がたいへんめんどうな字を書いてございまして、新聞なんかの報道におきましては擾の字をきらいまして騒乱罪、こういうふうにいっておるようでございます。正確には騒擾罪でございます。
  15. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これはあなた、それこそ法律に書いてある罪の名前を言わないで、法律にない罪を言われるからわれわれでさえも迷うのですから、一般国民はこれは何だろうと思っておるだろうと思います。これはだれがこういうものを造語したかは知りませんが、よほど気をつけてくれなくては困る。今後は少なくとも警察なり検察当局においてそういうことばは使われないことを私は希望しておきます。もしそれを使わねばならぬならば、私が間違っておるのなら、使わねばならぬ理由を聞かせてもらいたいと思います。これが第一点です。  それから、そういうふうに刑法上の騒擾罪でないかのように考えられるものですから、何か新しい特別法上の罪のように考えておる人が非常に多いのではなかろうか、こう考えるのです。そこで聞きたいのは、騒擾罪であれば刑法上の犯罪でございます。刑法上の犯罪である以上は、犯罪がここにあったということの認定ができる限りにおいてこれを摘発しなければならぬのは、検察当局にしろ司法警察官にしろ当然の義務である。騒擾罪に当てはまらぬというなら別ですが、騒擾罪に当てはまるというならば断固としてこれを適用し、これが摘発、捜査にかからなければならぬものだと思うのですが、これはいかがです。
  16. 赤間文三

    赤間国務大臣 お説のとおりに考えます。
  17. 鍛冶良作

    鍛冶委員 ところが、この間私はずっとテレビからラジオを見、聞いておりました。おりますると、これは十月二十二日午前一時ごろですが、いよいよ騒乱罪適用することになった。(「騒擾罪だ」と呼ぶ者あり)これには騒乱罪といっているからまあいいでしょう。――騒乱罪適用するということになった。それのみならずですよ、これは新聞にも出ておるのですが、国家公安委員長警視総監並びに警察庁長官は「騒乱罪適用に踏切ったと連絡を受けた。適用しないですむように努力してきたが、学生新宿駅の構内に放火し、信号機を破壊するなどし、二十二日の始発電車がいつになるかわからぬような状態となったため、この状態は一刻も猶予できないので全員逮捕の方針で捜査を」したというのだが、騒乱罪適用した、こう言っている。刑法上の犯罪があるということを認めたら、やるのはいま言うとおり司法警察官なり検察官のこれは義務です。しかるになるべくこれを適用したくなかった、適用しまいと思ってずいぶん努力したのだがやむを得なかった。刑法上の犯罪があるのに、これを捜索するのに行政官がやりたくないと思うからなるべくいままで延ばしておった、やむを得ぬからやるのだ。やむを得たらやらぬのですか。これはどうも私はふしぎでならない。これは何か特殊の犯罪で、行政上やろうとやるまいとそれは行政官裁量によって起こるものと、こういうことから出ておるのじゃないかと思われるから、私はこう言うのです。これはそういうことであるならば、われわれさえたいへん迷うのですから国民全体も迷わせるし、本法のためにも非常に重大なることだ、こう私は思いますが、どうでしょう。私の言うことが間違いでしょうか。それともここに書いてあるとおり、国家公安委員長なり警察庁長官なり警視総監なりが、適用したくなかったがやむを得ずやったのだと、何か行政上の裁量国民にまかすもののように考えておられるのがほんとうでしょうか。これはいかが思われます。これは大臣でもよろしゅうございますが、何なら局長でもよろしゅうございます。警察当局でひとつ責任ある――警察だけじゃありません、公安委員長かわりとして、また警視総監かわりとしてお答えを願いたい。
  18. 赤間文三

    赤間国務大臣 私は、治安の取締まりにおきましては、現行の刑法並びにこれに類するものに相当するものはそれを適用して取り締まるのは当然のことに考えております。ただその条件に適合するかどうかということ、これはその道その道の認定することだと思います。条件に適合するならば、治安維持の責任にあるわれわれとしては当然これを取り締まる、これは問題はない、かように考えております。必ずやるべきである、かように考えております。
  19. 川島広守

    川島説明員 ただいま御指摘の点でございますが、言うまでもございませんけれども、警察といたしましては、いまお話のございましたように、刑法に規定してある騒擾の罪の罰条はもちろんのこと、その他の現行の刑罰法令はすべてこれを適用してきびしく違法行為を取り締まっていくという基本方針は常に持っておるわけでございます。そういう意味でございますので、騒擾罪だけを取り出して、それを適用したくないのだという考えは毛頭ありません。ただ問題は、いま申し上げましたような事態、騒乱状態にならないように事前措置はもちろんのこと、現場におきましてもならないように十分な警備措置というものをとらなければならないことは申すまでもございません。したがって、われわれは、先ほど来しばしば申し上げておりますように、事前にさまざまな、関係方面の御協力はもちろんのこと、また現場に蝟集してくる群衆についても良識ある行動あるいは言動、こういうものにおきましても御助力を求めて、事態がそういうことにならないように極力現場措置をとったつもりでございます。しかしながら、結果は御案内のような事態になってしまったわけでございます。事態が、いま申し上げましたように、騒擾罪の要件を充足する状態になりましたので、騒擾罪適用に踏み切ったわけでございまして、いささかも騒擾罪適用したくないという考えは持っておらないのでございます。
  20. 鍛冶良作

    鍛冶委員 現在起こった状態に、騒擾罪であるというので適用したのですから――これから起こるのならわれわれ文句を言いはしないのですよ。いま起こったことが騒擾罪だと認定した以上は、やむを得ざるのですから、それを、なるべくやりたくなかった、こう言うから、それはやらずに済むものか、こういうふうにいわざるを得ない。これは大いに注意していただかないと、国民全体を惑わしますから。  その次に私が申し上げたいのは、社会党から、こういうことに騒乱罪適用は反対だという声明が出ました。ここにいる社会党の法務委員の諸君、法律家がおられるんだが、これはたいへんな間違いだと思う。騒乱があるといって、刑法上の犯罪があるといって、それを捜査にかかったものを、反対だといってみてもしょうがない。騒擾罪でないんだというなら堂々と法廷で争いなさい。しかるに、いま騒擾罪があるといって現に捜査しておるのに、それは反対だといったって、そんなことはどうも、行政官裁量できるものと心得ておるから、あなた方もおそらくそれに乗っていったんだろうな。はなはだ私は遺憾だと思う。こういうことも国民を惑わせる一方ですから、行政官においても注意されると同時に、いやしくも日本の大政党ともあろうものがかようなことのないように、私はここでひとつ希望しておきたいと思います。  そこで、私が申し上げたいのは、どうもいままで見ておりますと、それは起こってくれば、あなた方これは任務上やらなければならぬから一生懸命やられますよ。やられますが、済んでしまうと、やれやれこれで済んだ、のど元過ぎれば熱さを忘れるで、これで済んだからといって、また新しくどこかに行って追っかけてやる、こういうことになるのじゃないかと私は思う。これは失礼かもしれぬが、そういうふうに見えるから申し上げる。今後はそういうことがないように、そういうことが起こったらたいへんだから、警察庁としての任務はそういうことではいかぬのだから、先ほど申し上げましたように、いかなる手段であろうとも、それはわれわれは申し上げませんから、絶対にかようなことの起こらぬようにする、そうして国民の不安を一掃するということを、ここにあらためてもう一ぺん大臣及び警察の責任者からお答えを願いたいと思います。
  21. 赤間文三

    赤間国務大臣 治安の維持につきましては万全の措置を講じまして、国民の不安が起こらないように十分努力をしていくことをはっきりとお答え申し上げます。
  22. 川島広守

    川島説明員 ただいま法務大臣からお答えがございましたのと全く同じ方針、決意でおりますので、御了解いただきたいと思います。
  23. 鍛冶良作

    鍛冶委員 簡単ですけれども、これで一応……。
  24. 永田亮一

    永田委員長 神近市子君。
  25. 神近市子

    ○神近委員 刑法の百六条ですか、この問題であとにまだたくさん御質問したい人があるし、大臣が時間がないとおっしゃるので、私は、明治百年を記念しての恩赦あるいは大赦というような問題がいま起こっておりますから、ほかの方の御返事は要りませんから、大臣だけに御質問申し上げたいと思います。  明治百年というものを大臣はどういうように受け取っておいでになるか。これが五百年あるいは六百年前のことならば、記憶は薄れて、一世紀というものをその形で受け取ると思うのですけれど、われわれが、まだ生きている人もあるというような時世に、明治というものの理解がたいへん足りないのじゃないかというような考えを持つのでございます。御存じのように、明治の初期は、大体二十二年の帝国憲法ができる少し前までは、日本の明治の指導者は非常に進歩的な民主的な考えの方が多かったのであります。岩倉具視だとかその他の人たちが、英米法をとろうかというようなことを考えてこれを研究している間に、木戸孝允が大体主になって、ドイツのビスマルクの指導で大陸法というものができたのが二十二年の帝国憲法であります。百年を記念するならば、もっと自由な民主的な、いまトインビーによりますと、よき日のアメリカ、よき日のイギリス、こういうような英米法をとろうという考えがあったのですけれど、そうして福澤諭吉だとか森有禮だとか土井ごう牙、こういう人たちは一生懸命日本を自由な民主的な国にしようとして努力していたのですよ。それを、ビスマルクが、ちょうどドイツの統一ができたときで、おれがやったようにしろというようなアドバイスを受けて、そうして帝国憲法というものができたというようなことを考えれば、この間の武道館におけるようなお祝い、祝賀会、そして今度の恩赦をやろうというようなお考え、そういうところに、私は、近い歴史、ちょっとそこらの何かを読めばすぐわかるような歴史を、日本の政治的指導者は忘れていらっしゃるのではないかというような感じがするのですよ。新聞によりますと、この恩赦あるいは大赦が行なわれるというようなことになっているそうですが、どの程度までこれを行ないになるおつもりか、大臣のお考えを伺っておきたいと思います。
  26. 赤間文三

    赤間国務大臣 お答えを申し上げますが、明治百年は、私は記念すべき意義の深いものがあると考えております。とにかく封建時代から近代国家になり、民主主義の国家に変わりました。諸外国では何百年かかからなければならぬような近代国家の発展というものが、わが国においてはわれわれの先輩の並々ならぬ努力で、わずか百年の間に非常な近代国家としての進歩が見られた。これは幾多の意義の深い点があると考えます。今後また民主主義をさらに国民の幸福とともにますます増進していく、今後日本がさらに住みよい明るい民主的な国家に発展していくということを考えていくのには、明治百年を、お話しになりましたように大いによく研究し、その意義をよく理解して将来の資に供していくことが非常に意義が深い、かように私は考えております。  なお、お尋ねになりました恩赦というような問題につきましては、いま研究中でございます。内容とか、あるいはどういうものを選ぶのかというようなことについては、まだ申し上げるところまでまいっておらぬ、研究をいたしておるような状態でございます。
  27. 神近市子

    ○神近委員 これはうわさですけれども、ともかく恩赦を大赦まで持っていくというような非常な党内の要請があなたに対して強いというようなことが伝わっております。さっきあなたは法治国家ということをしきりにおっしゃっておりましたけれども、この恩赦法をごらんになれば、これは民主的な――たとえばいま民主主義のことをおっしゃったのですけれども、弱い者、お金のない者、困窮して犯罪を犯すというような者に対する恩赦または大赦という意味にこの十二条はとれます。ところが、うわさによりますと、選挙違反もこれに含まれるということがいまたいへん――お気の毒に大臣はその気はなさそうですけれども、これが強く党内から要請されておいでになることが伝わっております。いま民主主義を守る――民主主議論になると、またいろいろ私にも言いたいことがありますけれども、まだあとの方々が待っておりますから、私はそのことには触れませんが、この恩赦法の十二条をお読みになれば、さらっと書いてあります、大赦であれ恩赦であれ。そして選挙法を読みますと、非常にこまかく規定がしてあります。これは一つのもの、選挙違反や何かについても恩赦が行なわれるというようには私どもしろうとには読めないのです。これを曲げたり、民主主役を守らなかった人たちをこれで恩赦にかけ、あるいは大赦にして、民主主義の破壊者を全部ここで大赦にするということには絶対に踏み切らないようにやっていただきたいと思うのですけれども、いかがでございますか。新聞では、あなたは特赦だけにしたいというようなことをお考えになっているということが出ておりましたけれども、ともかくも周囲の力で大赦ということが出ておりますけれども、あなたは勇気をもって民主主義の最大の破壊者であるところの選挙違反――ちょっと前の選挙のときでありましたけれども、朝日ジャーナルに書いてあったのを私は記憶しておりますけれども、選挙のときに千円持っていって頼むよと言うと、ああよしきたと言って受け取って、そしてその頼まれた人を選挙するということが書いてありました。いまは二千円くらいになっているかもしれませんが、そういう違反者を、たくさんあるうちのわずかにつかまっている違反者を今度の大赦におかけになるということは、私は大臣には非常にお気の毒だけれども、とても間違いだと思います。あなたのお気持ちはよくわかるような気がしますけれども、勇気をもって、恩赦にしておいて大赦になさらないようにというようなことのお答えができますでしょうか、お考えを承っておきたいと思います。
  28. 赤間文三

    赤間国務大臣 さきに申し上げましたように、いまあらゆる面からこの問題をいろいろと研究中でございますので、私の考えお答えするというわけにはまいりにくいと考えます。いまあらゆる面から研究中なんでございます。恩赦をどうするかということは研究いたしております。その点御了承願います。
  29. 神近市子

    ○神近委員 騒乱罪の問題でたくさんお尋ねしたい人があるのに、恩赦の問題を私が五分間とか十分間と言ってあなたの時間をいただいたということは、もうすでにその話が目の先にきて、あしたにでも事態はきまるというような内報があってお尋ねしているのです。ですから、今夜一晩お考えになったところが、私はそれだけで話が済むものではないと思うのです。だから、ひとつ勇気をふるって、日本の民主主義を、選挙を守らなければならないというお考えで、突き上げに応じないで、そうして法務省内でも恩赦にとどめておくという、私はこれはりっぱだと思うのですが、その意見をお取り入れになって、悪い選挙をして、きたない選挙をして出てきている人たちの要請をぜひお退けになるようにお願いして、私の質問を終わることにいたします。
  30. 永田亮一

  31. 畑和

    ○畑委員 私は、この間の新宿騒乱罪適用問題、さらにそれに関連して騒乱予備罪をつくろうかというような考え方があるようでありますが、そのことについて、さらにまたそのほかの点等についてお聞きいたしたいと思います。  先ほど鍛冶良作議員のほうから、新宿事件についていろいろ御質問がございました。鍛冶議員のほうの立場からは、この間の新宿事件に対する警察活動がまことに手ぬるかった、なぜもっとばっしりやらぬのか、今後のこともあるというような、そういう立場での御質問であったと思う。私のほうの質問の立場はそれとは若干違う。もちろんああした事態というものについてわれわれは非常に心配をいたしております。学生のああした行動それ自体につきましては、われわれはとうてい賛成するわけにはまいらぬ。そういう立場ではございますけれども、騒乱罪適用というものは軽々にやるべきものではないのではないかというような立場からの質問に自然となると思うのであります。  そこでこの問題についてお尋ねいたすのでありますけれども、鍛冶さんの御質問の際には、どうも当局のほうでも騒乱罪をなるべく適用したくなかったけれどもしかたがなくてやったというような御質問であった。御質問はそうであったと思う。(鍛冶委員「そんなことはない」と呼ぶ)いや、そう言ったじゃないですか。だから、なるべくやりたくなかったけれども、しかたがなくてやった、しかし、そうであってはならぬので、騒乱罪があるとすれば、断固としてやらなければいかぬ、こういうのが鍛冶君の主張だったようです。ところで、結局騒乱罪となるかどうかということは最終的には裁判所がきめる。そこでわれわれ思い出さなければならぬのは、いままで戦後にも騒乱罪が何回か適用された場合があると承知しております。例の吹田事件、その前の平事件、それから大須事件、メーデー事件、こうした事件がありまして、メーデー事件以来は適用がなかったと思う。約十六年間にわたって騒乱罪適用された例がない。メーデー事件がすでに十七年時間がかかって、しかもなおかつまだ一審の判決も出ていない。約二百名の被告がその裁判のためにずっと十七年間拘束されて――現在では身体上の拘束ではないけれども、ともかくそれが未決定である。こういうような事実があるものだから内乱罪というものはそういった点でも慎重にやらなければいかぬというような、政府、警察等の配慮も私はあったと思うのです。ところで今回適用になった。私たちの立場からすれば、そういったいろんな事情もあるので、適用するとすれば慎重にやらなければいかぬ、こういう立場でございますけれども、今度の新宿事件について内乱罪が必ず成立すると思ったから警察当局もこれの適用に踏み切ったと思うのです。(鍛冶委員「内乱罪とはどこから出てくるんだ」と呼ぶ)騒乱罪です。もし私が内乱罪と言ったとすれば、それは騒乱罪です。  そこで、騒乱罪と俗にいわれておる、先ほど鍛冶さんから、なぜ騒乱罪といったんだというお話もあるけれども、これは騒擾罪というのは字がむずかしいから騒乱罪というふうにしたんじゃないか、こういうことでありますけれども、しかし私は別の意味もあると思うのです。乱というのは内乱罪にも通ずるような感じを持つ。したがって、そういった意味からしいて内乱罪ということばが使われつつあるのではないかというような点からすると、非常に危険な面があると思うのです。ともかくそうした意味で非常に慎重に処理しなければならないと思うのです。  ところで、この新宿事件の場合について一番問題は、私は共同意思の問題だと思うのです。そこでお尋ねいたすのですけれども、大体事件の状況を私なりにいろいろ新聞記事等によって判断してみますると、初め学生の集団が新宿駅の構内になだれ込んで相当の時間あばれた事実は間違いない。ところで、その他の群象が相当出動したことも間違いなさそうであります。そこで時間的な関係をちょっとお聞きしておきたいのですけれども、騒乱罪に踏み切ったのが十二時ちょっと回った十二一時十五分と聞いておりますけれども、その時分に火災等の、火をつけた、放火の事実などがあった。そこで踏み切ったと言われますけれども、大体時間的にはその辺はいかがでありますか。そこをまず警備のほうから聞きたい。
  32. 川島広守

    川島説明員 いまのお尋ねはおそらく騒擾罪の成立の時期の問題だろうと思いますけれども、目下捜査中でございますので、ここで何時何分からどうだということは申し上げる段階ではないと思うのでありますが、零時十五分よりははるかに早い時期に騒乱状態が起こっておる、こういうふうに考えております。
  33. 畑和

    ○畑委員 そこで、大体火をつけたのは三カ所で火災が起こったといわれておるのですが、その大体の時間と、その火をつけたのが学生の手によってやられたのか、あるいは群衆の手によってやられたのか、その辺大体のことはわかるでしょう。どうでしょうか、写真等もとっておるであろうから、捜査関係もあるでしょうけれども……。
  34. 川島広守

    川島説明員 目下捜査中でございますので、その点はちょっとまだここで申し上げる段階に至っておりません。
  35. 畑和

    ○畑委員 だいぶ逃げられるけれども、しかし、その点が私非常に肝心だと思うのです。先ほど言ったとおり最初学生行動があった。ところで学生適用になったころはいなかったらしいですな。どの新聞を見てもいなかったらしいと書いてある。そういう点で、結局火の手があがったので、警視総監騒擾罪適用決意した。あまりやりたくなかったんだけれども、結局そういうことになったものだから断を下さざるを得なくなったというふうに新聞等にも報道してあるのであります。そうすると、火をつけたのはどの集団なのか。それから時間的にどうなのか。とにかくもっと前から騒乱状態であったといまあなたはおっしゃるけれども、しかし決意したのはそのときでもあるのだし、そういうことになりますと、学生は一体いつごろ引き揚げたのか、そういうことが非常に大きな一つの騒乱罪として――初めの学生の連中とあとの群衆を一緒にまとめて騒乱罪として打つためには、どうしてもそのことが絶対不可欠の要件だと思うのです。その辺が、こまかいことは言えないかもしれないが、あなたのほうではどういうふうに考えておりますか。
  36. 赤間文三

    赤間国務大臣 御承知のように騒擾罪は多衆が共同して一地方の静誰を害するに足る暴行、脅迫をすることによって成立する犯罪、こういうふうにわれわれは解釈をいたしております。その集団の性質や行為の動機、目的のいかんを問わない、私は騒擾罪についてはこういうふうに考えております。したがいまして、このような条件に該当して、その証拠がある以上は騒擾罪適用して処罰するということはしごく当然なことであると法務省としてば解釈をいたしております。したがいまして、十月二十一日の新宿駅の事件では、多数の学生新宿駅を占拠し、角材をふるい、あるいは投石して、新宿周辺を混乱におとしいれた、これは事実のようにわれわれは見ておりますので、こういう事態に対しまして、警察当局騒擾罪適用したのは、しごく当然なことであると考えております。今後におきましても、もしこの種の事態が発生して騒擾罪の要件を満たすという場合には、騒擾罪適用することが適当である、かように私は考えております。
  37. 畑和

    ○畑委員 いま大臣から答弁がございましたけれども、騒擾罪の要件としては暴行、脅迫が行なわれて、それが共同の意思でやられた、少なくともそのことは必要なんだ。明示の意思である必要も必ずしもないけれども、これは黙示の意思でも共同の意思ができ上がっておったということが必要だ。それと、一地方の平穏を害したという二つの構成要件が必要だとされておるわけでありますが、私の言っているのは、一番の問題にしているのは、共同意思の問題それが時間的に非常なズレがある。六、七時ごろから始まって、それから結局騒擾罪適用があったのは十二時十五分。こういうことで、ともかくこのころに、十一時過ぎ、十二時には少なくとも学生たちはおらなかった。引き上げたあとだった。こういうことなんでありまして、そういう点で学生たちとその群集の間、そうした火をつけたりなんかした騒擾罪の拠点をつくり出した群集の行動、それとの間にやはり暗黙といえども意思の合致がなければならぬのじゃないか。その辺が時間的に非常にズレがある。そこに問題がありはせぬか、大臣、こう私は考えております。その辺で、せっかくやったのはいいが、裁判で破れてしまう、長い時間をかけたのにかかわらずそれが成立をせぬというような判決になった場合はどうされるのか。もうあなたのほうはとっくにやめてしまっている。十何年もたてばあなたはどうなっているかわからない。メーデー事件が十七年もかかった。そういうことなどを考えますと、よほどその辺を十分に考えてやらぬとやり過ぎになる。そのほかに、しからば打つ手はないかといったらないではないです。いままでもすでにそれに近いような事件がずいぶんありました。十月六日にもやはり何か交番が焼き討ちされたりなんかしたことがあった。それから王子の事件でもそうです。今度が一番大きいのは大きいでしょう。騒ぎが大きいのは大きいでしょうけれども、それに類似のようなことがあったのでありまして、それに対処していままでの適用の条文でやってきたのですが、今度特に踏み切った理由というのが、いままでより一番ひどいということであろうと思うけれども、その辺が大いに問題があるんじゃないか、ほかのいままでの条文の適用で相済むのではなかったか、かようにも考えて私は質問したのです。いかがですか。
  38. 赤間文三

    赤間国務大臣 お答えしますが、時間のズレということは私にはよくわかりません。事柄の始まりから騒擾罪適用せねばならぬというふうでもなかったと思います。騒擾罪適用するのが何も時間がズレたとかというようなことは別に私は法律的には問題にならぬと思います。ただ騒擾罪の条件を備えておるかどうかということ、これが一番大事なことだと考えております。今回は、われわれの見るところでは、証拠もあり、これがまさしく騒擾罪に適合するという見解のもとに警察当局騒擾罪適用した。将来においても、条件の整うたものはやはり騒擾罪適用することが国の治安維持の上で必要である、こういうふうな考え方であります。
  39. 畑和

    ○畑委員 それじゃ、その点は今後の起訴あるいは裁判、そういったほうを待つほかはないと思うのですが、われわれは、こういうことで最近十六年ぶりで騒乱罪適用されたということになると、今後ほかの運動にまでエスカレートされるおそれを非常に心配をして、そのいう意味もわれわれの反対の一つでありますけれども、その点いつまで議論してもいたし方ございません。  次に、騒乱予備罪というものを新設すべきだというような意見があるようであります。国家公安委員長などもそういう意見のように新聞等で承っておりますけれども、この点については担当の赤間法務大臣はどのようにお考えでございますか。
  40. 赤間文三

    赤間国務大臣 最近の一部学生による集団暴力事件の発生とその悪化という状況にかんがみまして、騒乱予備罪などの立法を考慮すべきであるという意見が相当あるようであります。法務当局といたしましては、その必要性につきまして、各般の事情を考慮しまして目下どうするかということを慎重に検討中でございます。
  41. 畑和

    ○畑委員 そうすると、そういう議論があるについて、まだ法務当局のほうの、あるいは大臣の腹はきまってない、それを慎重に考慮する、こういうことですな。わかりました。  私としては、またわれわれの党といたしましても、騒乱予備罪の新設そのものにわれわれは反対をいたさざるを得ないのですが、これはいろいろこういうことが適用になりますと、事前未然に防ぐというような趣旨でありまするから、したがっていろいろな点で憲法上の自由が束縛されるおそれがある、こういうように思うのです。そういった心配をすべて取り除こう、こういうことでありますと、それだけにまた国民の権利が侵害される面が出てくるということでわれわれは心配をして、あらかじめ反対の意思を表明しておくのでありますけれども、まだ態度がきまってないということであれば、ひとつそういう点も十分に考慮していただきたいと思う。  それから、さらに学生のこうした最近の行動、こうしたものは必ずしも日本だけではないことは御承知のとおりです。世界における共通したいわゆるスチューデントパワーの問題、これは世界の政治家がみな悩み抜いておることだと思う。日本だけではないけれども、そういう点もただ治安一方で治安対策としてだけ見てやったのではだめだ。どうしてもいまの政治状況に対して学生が特に鋭敏で、その学生の鋭敏な感覚でたまたまいろいろな欲求不満があるものだから、そこでこういうものに爆発するというようなことは、社会現象としてこれはあり得るわけだ。それにはやはりそうした欲求不満を誘発するような背景をなくするということが政治家としては非常に必要だと思う。その点は法務大臣、どうお考えになりますか。
  42. 赤間文三

    赤間国務大臣 必要があったからどろぼうをやる、必要があるから人殺しをやったというような場合も、数の多い中にはあるかもしれぬと思いますけれども、私は、たとえそのどろぼうが理由があったかで断固としてこれを取り締まる方針です。事情がこれは気の毒でどろぼうするのには少し理屈があっても、何もそういうところはあまり力説を法務大臣としてはいたしません。治安維持ということについては、断固としてこれを取り締まるというのが私の考えでございます。世界じゅうの各国がどうであろうと、そういうことは参考にはしますが、私は悪い例は日本には入れたくないと考えておりまするし、ことに将来のある学生が多数で、学業を放棄して、勉強せぬで暴力に走るなんというようなことは好ましくないと考えておりまするので、断固としてこれをひとつ取り締まる、こういうことが私の職務であると考えております。ただ、国内政治を民主化して、住みよい明るい犯罪のないいい国にするということについて、みんなと力を合わせてやるということ、これは申し上げるまでもなく当然でございますが、いやしくも法治国であって、暴力、破壊活動行為をやれば容赦なく取り締まることが、私はわれわれに課せられた任務である、かように考えておるのでございます。学生が騒ぐのは理屈があるからとかどうとかいうことは、私はそれは考えないことにして、法秩序の維持ということを主眼に全部取り締まるべきものである、かように考えております。この点は御了承を願います。
  43. 畑和

    ○畑委員 私がお聞きしたのはそういう趣旨ではないのです。要するに法務大臣としては当然でしょう、取り締まるのがあなたの責任でしょうから。それは責任だから当然でしょう。それはあなたの仕事はそういうことであるけれども、その前に政治家の一人として、内閣に連なっておる一人のあなたとして、やはりそうした背景を相当重点的に考えなくちゃいかぬと私は思うのです。そういう意味で私申したのです。そういうことでは賛成だと思うのですが、どうですか。
  44. 赤間文三

    赤間国務大臣 私は、内閣の一員といたしましても、絶対に、理由のいかんを問わず、破壊活動、暴力行為というものは断然これを排撃すべきものである、かように考えております。
  45. 畑和

    ○畑委員 私は暴力革命について何も……。
  46. 赤間文三

    赤間国務大臣 その問題について容赦をするとかどうとかいうような考えは持っていない。すべての日本の国民が幸福になるためには、この国の民主主義をいまよりももっと明るいりっぱな民主主義にして、暴力とか破壊とか社会秩序を乱すようなものは断固として取り締まるということを日本の国民は希望しておる、私はかように考えておりまするので、その動機がいいんだとか悪いとかいうようなことは、私はあまり論議をいたさないというたてまえをとっておりまするので、その点……。
  47. 畑和

    ○畑委員 私は動機がいい、悪いと言っておるんじゃないんで、あなたは取り違えておりますよ。要するに、断固として取り締まるのだ、それにあまり重点を置き過ぎているんじゃないですか。私はそういう意味で言ったんじゃないです。やはり背景の社会を、あれが生まれないようにしていくことがやはり別の政治家としての使命だ。ただ、たまたまあなたがそういう立場におるのだから、違法状態があったら取り締まるということはもちろんそれでけっこうだと思うのですよ。だけれども、そういった一方、そういうものを生んだ背景というものをそうでないものに直していくということが、政治家一般として、特にいまの内閣としてもその責任があるんじゃないか、こういうことを言っておるんです。何も動機がいいんだということを言っておるんじゃないです。それはいまの学生のああしたはね上がり的な行動についてわれわれは容認するものじゃないんです。しかし、やはりその背景を、政治家の一人として、内閣に連なっている一人として直していこう、それに同時にやはり相当努力をしていくべきだ、そういう考えがあるか、こういう意味で聞いておるんですから、誤解がないようにお願いします。
  48. 永田亮一

  49. 中谷鉄也

    中谷委員 法務大臣は、法秩序維持ということについて非常に熱心かつ誠意のあるような御答弁がありましたが、しからば恩赦の問題についてお尋ねいたしたい。  要するに、昭和四十二年以来の予算分科会あるいは法務委員会等の審議の経過をたどってみますると、法務省の意向は、明治百年の恩赦をかりにするにしても、交通違反と選挙違反は恩赦からはずしたい、こういうふうな答弁を会議録の中にとどめております。先ほど大臣の御答弁は、去る予算委員会分科会においては、恩赦についてはいまのところ全く考えておりません、白紙です、こういうことであった。いつから研究するようになったのか。まことにそのような御答弁というものは、私は率直に申し上げまして、ことに実際の作業というのは選挙違反を対象にするところの恩赦が進んでいる。法秩序、議会民主主義のために、私は大臣自身はそのようなことをおっしゃるけれども、はなはだ遺憾だと思う。そのようなことが、むしろ私は率直に申し上げまして、現在の学生運動その他の体制に対する不信、政治不信を招いておるのだ。大臣自身が法秩序の維持というようなことを言われるならば、恩赦の問題について、さらにそういうようなことについての誠意ある御答弁を私はいただきたいと思う。  そこで、御研究中であるということであるけれども、次のような点については当然お考えになっておられるのでしょうね。  まず第一線検察官が選挙違反は議会民主主義を危うくするものだということで真剣に捜査をした。そういうような選挙違反が恩赦の対象になった場合に、検察官の士気に影響しないかどうかという点が第一点。こういう点も研究の対象にしておられるかどうか。  さらにまた、その他恩赦をすることによって国民の政治不信というようなものを招かないかどうか。このような点もお考えになっているかどうか、この点をお尋ねいたしたい。  次に、時間がないので続けて私はお尋ねをいたします。刑事政策の観点からいって、私は恩赦というものは必ずしも反対しない。恩赦というものは私はあってしかるべきだと思う。ただしかし、選挙違反だけを恩赦の対象にするなどということは、法秩序を乱すことであり、議会民主主義を危うくすることであるというように考える。そこで研究の対象の中に次のようなことが考えられているかどうか。また私は考えらるべきだと思うので申し上げたいが、社会党はすでに社会党の法案といたしまして死刑確定者再審特例法案というものを現在提案をいたしておる。この法案はどういうものかと申しますると、特に占領下の死刑囚に限って、終戦直後の混乱した社会情勢と占領下という特殊な雰囲気の中で捜査、訴追された、そういうふうな死刑囚については再審の道を大きく開くべきだ、こういうものを私たちは提案をいたした。この法案とは別個に、終戦後の刑事訴訟法その他がまだ整備されていないときに、死刑の確定判決を受けた人間がかなりおります。むしろ恩赦の対象にするならば、これらの人間についても減刑等を考えるべきではないか。選挙違反等についてのみ考えるなどというようなことはもってのほかだ。この点についてもやはり研究の対象にされるかどうか、まず大臣の御答弁を承りたい。
  50. 赤間文三

    赤間国務大臣 恩赦の問題は、お述べになりましたように、なかなか重要な意味が多いと私は考えております。あらゆる面からこの問題は研究をしなければならぬと私は考えて研究をいたしております。お述べになりましたように、刑事政策の上から、あるいはまた国民に対するいろいろな何といいますか、感じ、あるいは検察官に及ぼすいろいろな問題とか、その他いろいろな点を十二分に研究をいたしております。なおまた、明治百年という意義につきましても、さらに深くこれを掘り下げて、どういう意義があるか、またどういうふうに将来これを意義づけることが国のためになるかというようなことも研究しておるのでございます。いろいろな面から十二分にひとつこの問題は研究をしていきたい、かようなことで、さっきからお尋ねになりましたように、目下この問題については研究の最中でございますので、具体的にどうというわけにはまだまいらない、かように存じております。
  51. 中谷鉄也

    中谷委員 すでに作業が進行しておる。なお研究中だというふうな御答弁は、率直に申し上げればはなはだそらぞらしい。しかし、この問題について私、社会党の持ち時間がないので、次に騒乱罪の問題についてお尋ねをいたしたい。  質問は一点だけです。要するに、私をして言わしめるならば、学生問題という困難な問題に対して、現在の内閣の考え方というのは、治安対策があって真の学生対策はないというふうに私は断定せざるを得ない。しかし、そういう前提の上に立ってでも、今度の騒乱罪適用については、私は次のような点が反省点として考えられねばならないのではないかと思う。  まず第一点は、いわゆるメーデー事件であるとか、吹田事件であるとか、平事件などと今回の新宿事件の相違は一体どこにあるのだろう。これは私は何といっても群衆の存在であると思う。一般市民の存在だと思う。そこで、大臣にはっきりとひとつ確認をしていただきたいと思うけれども、騒乱罪適用したというときに、その騒乱現場におった人間がだれもかれもが逮捕されていいというものではございますまい。これははっきりいたしておりますね。御承知のとおり、言うまでもなしに、騒乱罪については首謀者、指揮者、率先助勢者、付加随行者というものがおる。今回の反省点の一つは、現場に居合わせた、しかも残存しておったところの一般市民が大部分逮捕者の中に入っておる。そうして即日釈放というものが相当部分、さらに勾留請求が大量却下、こういうようなことは、騒乱罪適用によって、いわゆる現場に居合わせた人間が、見物をしておったということだけで逮捕されるという危険性を非常に含んでおる。こういう点が私はまず反省点の第一点としてあげられねばならない。この点についてどういうふうにお考えになるか。  第二点の問題としては、騒乱罪適用ということは伝家の宝刀であるということをいわれておるけれども、私はそうは思わない。今回の騒乱罪適用は、私は、検挙状況、発動の時期等において成功しなかったと思う。反省点の一つとして、百七条のいわゆる不解散罪の適用をするということを、現在反省点として持たなかったかどうか。これを第二点として私はお尋ねいたしたい。  次に第三点としてお尋ねをいたしたいのは、かりに検察当局において騒乱罪が成立するとして起訴に踏み切った場合に、私は申し上げたい。石ころ一つで十七年ということばがあります。いわゆる吹田事件、メーデー事件。付和随行というのは御承知のとおり刑は罰金刑なんです。石ころ一つポケットに持っておったというだけで十六年ないし十七年職を奪われておるというふうな被告人が出ておる。長期裁判が人権を侵害することはなはだしいという一つの例なんです。かりに捜査が成功して騒乱罪だということで踏み切って起訴することがあっても、これら付和随行というふうな人については、石ころ一つで十七年というふうなことについては、十分な配慮があってしかるべきだと思う。治安対策だけでは決して世の中はおさまりません。治安対策だけで学生はおさまりません。この点についての御答弁をあわせていただきたい。
  52. 赤間文三

    赤間国務大臣 何かこの学生問題について、ただ治安だけを考えておるように見えるがというお話であります。内閣としましては絶対にそういうふうでないのです。学生問題については、さきにもあれがありましたが、やはり学校がうまくいくようにということで十分な、これはいろいろ文部省をはじめ研究が行なわれておる。何も治安だけでこれをいこうという考えは持たない。ただ私は、国の治安を乱す者は断固取り締まるということを言うたのであります。  それから、お尋ねのそばづえを食うた者についてどう考えるかということ。民衆、その近くにおった者が騒乱罪の、何といいますかあれを――まあ、御承知のように証拠主義で全部が処理せられるわけでございますから、証拠がなければあれで、私はいまのいろいろな問題は、あくまで証拠を中心に事件はいろいろと処理せられるものと考えております。その点をはっきりと申し上げれば、証拠があれば必ず私は――証拠がなければなかなかまたそういうことで……。  それから、裁判を早くすることが必要だという――それは違いますか、三番目、石ころ一つで十何年もかかるという……(中谷委員「違う、違う」と呼ぶ)それをもう一ぺん、えらい済みませんが……。
  53. 中谷鉄也

    中谷委員 質問を終わろうと思いましたが、ちょっと質問をお取り違えいただいておるので、こういうことなんです。  騒乱罪については、長期裁判ということは避けられない。これはもうやむを得ない。ただしかし、石ころ一つで十七年などということは、法定刑が罰金刑であるにかかわらず、裁判をそのようなかっこうで受けねばならないということは、非常に人権問題にもなる。したがって、付和随行等の者については、公判請求というふうな措置をとらないでその他の措置をとるというふうなことについて、配慮されてしかるべきだ。いろいろな方法があると思います。そういうことを私は申し上げておるわけなんです。  それから、もう一つ御答弁漏れがあるようでありますのでもう一度確認だけをしておきます。  現場に居合わせたからといって騒乱罪適用した、一網打尽だというふうなことは絶対に許されないことだということ、要するに、群衆というものが今度は入ってきておる。メーデー事件だとか、吹田事件だとか、平事件などとは、都市化現象、大衆社会現象の現在のいわゆるこの種の群衆犯罪は違う条件が入ってきておる。だから、いやしくも見物をしておったというだけで、あるいは心の中で、学生がああいうことをやっているなということについては、まあああいうことをやるのもしかたないだろうと思っている人間を、誤認逮捕したり、付和随行者としてつかまえたりするおそれが十分にこの種事件には出てくる。そういうふうなことについて、騒乱罪で許されるなどという考え方はもってのほかでございますぞということを申し上げておる。
  54. 赤間文三

    赤間国務大臣 いまお尋ねの百七条といまのあれの問題は、刑事局長から詳しくお答えいたします。
  55. 川井英良

    川井説明員 騒擾罪適用にあたりましては、もちろん法律趣旨、それから、群衆に及ぼす影響等考慮いたしまして、検察警察当局におきましても、従来からきわめて慎重な態度をとってまいりました。長い間適用がなかったということは、かなり慎重な考慮が重ねられておったというふうにもおとりくださっていいのじゃなかろうかと思うわけでございます。したがいまして、今度の適用につきましては、警察当局におきまして、その辺のところは十二分に注意をいたしまして、間違いのないように処理いたしたものと確信いたしております。  それから、百七条の適用の点でございますが、これも、現場に出動いたしました警察官が、現場の状況を見まして、百六条を適用すべきものか、あるいは百七条を適用すべきものかということを、具体的な事情につきまして勘案いたしまして決断すべき事柄だ、こう思いますので、一般論といたしましては、いろいろな法条の適用考えられますけれども、本件の場合におきましては、先ほど警備局長からお話のありましたような経過をたどりまして、百六条の適用になったものと、こういうふうに考えております。
  56. 中谷鉄也

    中谷委員 では終わります。
  57. 永田亮一

  58. 岡澤完治

    岡澤委員 最初に、私に与えられました時間がわずか二十分でございます。私のあとに山田委員、松本委員質問もあるわけでございますが、私は、月に一回の法務委員会に所管の大臣がわずか午前中しか出席できないという御態度に対してはなはだ遺憾に思います。特別の理由がありまして、われわれも納得できるような、国会の法務委員会以上の要務がある場合は、われわれももちろん納得いたしますけれども、先ほど理事会におきましても、委員長から、きょうの法務大臣の所用についての具体的な説明は別にございませんでした。そういたしますと、やはり国会の法務委員会に所管大臣としては何をおいても御出席いただくのが当然だと思いますが、そういう御態度自体、私はある意味では国会軽視――そうむやみにこういうことばは使いたくございませんけれども、いささか不満を持つものでございます。しかし、理事会できまったことでございますから、与えられました二十分以内で私の質問を終わりたいと思います。  三点ございますが、最初に恩赦の問題でございます。先ほど来神近委員中谷委員からも御質問がございまして、法務大臣は検討中というお答えでございました。保護局長にお尋ねをいたしたいのでございますけれども、最近ソビエト社会主義共和国連邦におきましても、いわゆる革命五十周年恩赦というのが行なわれたように新聞等で報じられましたが、その事実あるいは具体的な内容等について、もし御調査がございましたらお答えいただきたいと思います。
  59. 鹽野宜慶

    ○鹽野説明員 御説明いたします。  ただいま御指摘のとおり、昨年ソ連の革命五十周年記念に際しまして恩赦が行なわれたということは私どもも聞いております。しかしながら、その内容については詳細をつまびらかにいたしておりませんが、私どもの聞いておりますところでは、六十歳以上というような比較的高齢者につきまして恩赦が行なわれたというふうに聞いております。
  60. 岡澤完治

    岡澤委員 私は、恩赦は憲法上も当然認められた内閣の行為として規定されておりますし、必ずしも反対ではございませんけれども、いやしくも恩赦が行なわれる場合は、公平に、しかも国民の納得をするものであるということが必要かと思うわけであります。そういう点からいたしますと、たとえば確定判決を受けた者には対象になる、ところが係属中の被告人には適用がないというような結果がかりに出たといたしますと、事件の発生時日が大体同じであって、起訴も同じような時期であるのに、一部は確定し、一部は不確定で係属中というケースの場合、当然考えられますのは、確定したほうは、被告人にも争いがない、しかも事実もはっきりしておるという場合が多いかと思います。ところが、係属中の場合は、むしろ起訴に無理があるとか、あるいは事案が複雑であるとか、問題点が多い事案がむしろ係属中であるという場合が考えられるわけであります。そういうふうに考えますと、係属中の者が対象にならないで、確定した者だけが、むしろ簡単なあるいは争いのない事案適用があるということについては、非常にむずかしい問題ではございますけれども、不公平を生ずるおそれがある、そういう点についていかなる配慮をなされておるか、お尋ねをいたします。
  61. 鹽野宜慶

    ○鹽野説明員 ただいま御指摘のとおり、恩赦が行なわれまする場合に、大赦は係属中の者についても適用されるわけでございますが、その他の恩赦は確定した者について行なわれる、かようなことになりますので、ただいま御指摘のような問題が起こるわけでございます。そこで、従来の例を見ますと、政令恩赦が行なわれまする場合には、それとほぼ同じ状況で若干要件を欠くというようなために恩赦から漏れたというような者につきましては、個別恩赦を活用いたしましてこれを救済していくというふうな方法がとられたように承知いたしております。
  62. 岡澤完治

    岡澤委員 新聞の報ずるところによりますと、最近の閣議で、大赦というのは封建時代のなごりだという意味のことを法務大臣が御発言になって、それに対して各閣僚から反対の意見が出たというふうな記事がございました。この点について法務大臣の所信を明らかにしていただきたいと思います。
  63. 赤間文三

    赤間国務大臣 まあ、いろいろなことを縦横無尽に議論をしたように思いますので、よくそのときの話は覚えておりませんが、とにかく私は、いろいろな点で、いまお述べになりましたように、不公平になるとか、そういうことがないことが望ましいのと、やはり国民の気持ちというようなものも十分考える必要があるんじゃないか。ただ、いろいろな点から研究、討議をしたことは事実でありますが、どういう討議をしたかということはここでは申し上げにくい、かように考えます。御了承願います。
  64. 岡澤完治

    岡澤委員 質問を変えまして、警察官の大学構内立ち入り問題についてお尋ねいたします。  法務大臣は、今月二十四日行なわれました検察長官会同におきまして、過激な学生の集団暴力行為を押えて法秩序を確保し、社会不安を一掃することは検察の重大な責任であるということをお述べになっております。私もこれには同感であります。ところで、ちょうどそのころ、国立であります東京大学の大河内学長は、法学部の緑会の学生代表に対する回答というかっこうで、「大学の自主的判断と合致しない学内捜査は拒否し、」「警察当局から協力要請があれば、直ちに学生に冷静に対処するよう呼びかける」というような言明をなさっておられるようであります。また、従来の慣例といたしまして、大学への警察官あるいは捜査機関の立ち入りにつきましては、大学の要請があった場合あるいは大学の同意があった場合に限るというようなことがいわれております。私は、大学の自治は学問の自由を守るためにのみあると考えておりますし、ましていわんや、暴力学生を保護するためのものではございません。治外法権的な特権を大学が与えられておるというようなことは考えないわけでございますが、この際、法秩序維持の最高責任者として、いわゆる治外法権を大学には認められるものではないということをはっきりと私は国民にお示しになる必要があるのではないか。何となれば、日本の大学の代表的な立場、あるいは指導的な立場にある――というとことばに語弊があるかもしれませんが、にあります東京大学の学長が、あたかも大学は治外法権的な特権的な存在であるというような考え方を公に表明をしておられる。私はこれは大きな問題ではないか。これがやはり国民法秩序に対する信頼、あるいは、ある意味ではまた大学に対する信頼をも失わせ、国民の税金によって運営されております国立大学の学長がこういう態度をおとりになるということについては、私はかなり問題点があるような感じがいたしますし、文部大臣の指示とも違うような感じがいたしますので、この点については法務大臣の見解を明らかにしていただく時期ではないかと思いますのでお尋ねいたします。
  65. 赤間文三

    赤間国務大臣 大学は治外法権はありません。大学は治外法権は全然ないということを、ひとつはっきりここで申し上げておきたいと思います。私はただ、日本の憲法で学問の自由ということはこれは保障せられておる。これは十分重んずるが、お述べになりましたように、治外法権というととは絶対に大学はない、かように解釈をいたしております。その方針のもとに取り締まりをやるべきである、かように考えます。
  66. 岡澤完治

    岡澤委員 そうすると、ただいまの大臣の御見解からいたしますと、たとえば、新府の騒擾事件等に関連をして、捜査機関としては、大学の意思に関係なしに、必要性を認めた場合は、当然に学内捜査立ち入りもあり得ると解してよろしゅうございますか。
  67. 赤間文三

    赤間国務大臣 治外法権がないということは、ただいまはっきり申し上げたとおりでございまするが、御承知のように、大学の自治というものがあるのでございます。治外法権ではないが、大学自治との関連でこの運用を慎重にしていきたい、こういう考え方をとってきております。
  68. 岡澤完治

    岡澤委員 そこで、そういうお答えをされますと、また問題がこんがらがってくると思うのですが、大学の自治と学問の自由と、あるいは法秩序の維持者としての国家権力の行使と、その三者の関連については、どういうふうにお考えでございますか。
  69. 赤間文三

    赤間国務大臣 大学の中と大学の外との取り締まりといいまするか、これは全然われわれは別に考えております。大学の外においては学生ということは考えぬで、一般の方々と同じような取り締まりをやるべきであるというふうにわれわれは考えておりますが、大学の中におきましては、いま言いましたように、大学の自治というような点も考えてみまして、たとえば、いろいろ集会をやるにしましても、大学の中でやるものは大学の外でやるのとは異なる取り締まりがある、かように考えております。なお、そこを明確に言いますならば、何と申しますか、緊急重大な事件がある、緊急かつ重大な治安の問題があるというような場合においては、われわれは学校の承諾を得ずとも、治外法権的なものでないから、私は適当な措置が講ぜられることが望ましいと考えております。緊急かつ重大でないものについては、でき得る限り学校と連絡をとってやることが実際問題としては適当ではないか、こういうふうな考え方をしております。
  70. 岡澤完治

    岡澤委員 時間がございませんので、多くを論じられないのでございますけれども、緊急重大、たとえば、すでにある大学では、大学生の行為と目される事実によって警察官の命が失われておる。あるいは読売新聞の記者が取材に関連して暴行を受けた。ある意味で、私はきわめて緊急重大という解釈も――たとえば言論の自由が侵される、国家権力が侮辱される、あるいは死者まで出す。なくなられた警察官にとっては、私は最大の、これ以上大きな問題はないと思われるくらいの事案だと考えてもいいと思うのでありますが、そういうようなケースが現に続発いたしておりまするし、しかもそれに対する捜査その他は、一般の地域における犯罪とは全く違った取り扱いがなされておる。先ほど、治外法権でないとおっしゃいましたが、現実の取り扱いはまさに治外法権的な様相を呈しております。私が心配いたしますのは、もちろん学問の自由は何よりも尊重いたしたい。これは憲法上の要請ではございますけれども、これを拡大解釈して、単に大学生であるがために、あるいは大学構内で起こった問題であるがために、通常の犯罪――私の聞きましたところでは、現に学校内部で窃盗事件が起こったり、あるいは学生間自体で組織暴力的な行為が行なわれておるという事実があっても、結局それは救済もされないし、また法の制裁もない。こういう状態は、私は法務大臣のおことばとはうらはらに、治外法権的な特権をあたかも認めたかのような態度を検察当局捜査当局が持っておられるというようなことを心配いたすものでございますし、また先ほどの、大臣検察長官会同でおっしゃった、法秩序を確保し、社会不安を一掃する責任を持つということについて私どもはほんとうに疑問を持つのでございます。時間の関係でこの質問はこの程度にいたしますけれども、ぜひ文部大臣あるいは総理大臣等とも――この学生問題につきましては、治安対策からだけではもちろん解決する問題ではございませんけれども、ぜひひとつ法秩序最高責任者としての善処をお願いいたしたいと思います。  最後の質問でございますけれども、御承知のとおり、去る十月二十五日に八海事件の最終判決がございました。十七年九カ月という記録的な裁判経過をたどった事件でございました。私は、この問題につきましては、いろいろ論ずべき点があろうと思いますけれども、この際、時間の関係もありまして、ここですべての答弁を得ようとは思いませんけれども、この問題点の多い事件によって、裁判所は何を反省をし、また法務省あるいは検察当局は何を自戒すべきかというような点をぜひお互いに謙虚に検討していただいて、この裁判が将来に向かって意義があったといわれる方向で解決するしか道がないのではないか。憲法三十七条第一項の「すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。」――ここで問答を繰り返す必要はございませんけれども、どう考えましても、十七年をこえる裁判が迅速な裁判という解釈は成り立たないと思いますし、公平な裁判所という点につきましても、最高裁だけでも三回ですが、前二回はいずれも原判決破棄、差し戻しではございますけれども、破棄、差し戻しの内容は全く違います。第三回目は無罪でございますので、この事件を判断をされる同一裁判所が異なる判断を重ねられる。これもやはり公平な裁判所という国民のイメージをぶちこわすものではないかというように感じますし、あるいは公判中に大事な証拠書類が紛失する、証拠品が紛失するというような事態も起こっております。あるいはまた問題の吉岡上申書が広島の刑務所で握りつぶされようとしたというようなケースもございます。また私は、やはりこの裁判の結果的な議論になるかもしれませんけれども、経過をたどってまいりますと、いわゆる初動捜査の不備あるいは起訴に無理がなかったか。公判上もあるいは捜査上もいろいろな問題点を含んでおると考えるわけでございます。もし現在の時点で、検察の立場から、この事件について御意見があればお聞かせをいただきたいし、もしまだまとまっていないということでございましたら、ぜひ次の法務委員会までに――この事件を含めまして、たとえばこの種の純然たる刑事事件ではございませんけれども、いわゆる長期裁判として問題になりました各種の事件がいずれも無罪に終わっておるというような点を考えていただきましても、やはり長期裁判の弊害といいますか、問題点、これを特に検察当局としては、無罪をたくさん出された原因がどこにあるかというような点も含めて、国民検察の立場をこの際明らかにしていただく。刑事訴訟法に不備があるのか、あるいは捜査機関のあり方に、あるいは捜査機関の持つ捜査能力に限界があるのか、そういう問題も含めまして、ぜひこの際国民に対して納得のいくような御説明が当局からあってしかるべきではないか。そういう点から、最高裁がお見えでございましたら、最高裁の立場から、ぜひこの問題を契機にして起こりました裁判批判の問題も含めまして、長期裁判、公判のあり方等について御見解を、そうしてまた法務省当局からは、先ほど申しました初動捜査あるいは起訴の適否の問題、あるいは長期裁判がいずれも無罪になったという点を含めてお答えをいただきたい。ことに裁判批判につきましては、前々長官の御発言もございましたけれども、結局あれだけ世論を喚起し裁判批判があればこそ、結果として無罪判決がなされたというような国民の感情も私は無視できないと思うのです。大騒ぎをしなければおそらく死刑が確定したであろうというようなことを考えますと、園長としては何か割り切れないものを持つのも当然かというふうな感じもいたしますので、そういう点から、きょうの段階でお答えいただけることがあればお答えいただき、なければ次回の法務委員会でぜひ、いま申しましたような問題点についてまとめた御答弁をいただきたいと思います。
  71. 赤間文三

    赤間国務大臣 お答えしますが、刑事裁判が迅速に行なわれることは、被告人の人権を保障する上からいっても、私は非常に大事なことだと考えておりますが、刑事裁判の現状をこの間調べてみますと、第一審において事件のほぼ九割が起訴後六カ月以内に判決の言い渡しがなされています。また控訴審、上告審においてもその九割強が二年以内に終結をしておるのが実情でございます。したがって、結局ごく一部の事案の審理が非常に遅延をしておるというふうに承知をいたしております。しかしながら、ごく一部の事件とはいえ、審理が著しくおくれておりますことははなはだ遺憾なことでございます。訴訟の当事者が、お述べになりましたように格段の反省と努力をすべきものであると考えております。訴訟を主宰するものは裁判所でありますから、まず裁判所が訴訟指揮に意を用い、そうして裁判の迅速化につとむべきであると常々から私は考えておりますが、それには検察官あるいは弁護人等の協力が必要であり、全法曹が裁判の迅速化にこの上とも努力しなければいかぬのじゃないか、かように私は考えておる次第であります。お述べになりましたとおりでございまして、何とかしてこの非常におくれる裁判はおくれないように、迅速にいけるように、法曹界、関係者が全部で協力し合っていくということが大事である、かように考えておる次第であります。
  72. 岡澤完治

    岡澤委員 裁判遅延の問題について大臣から御答弁がございましたが、先ほど申しました吉岡上申書の扱いあるいは証拠品の紛失、あるいは初動捜査指摘されますような不備の問題等を含めまして、ぜひともまとめた御答弁を次回にいただくということをお願い申し上げまして、私の質問を終わります。
  73. 永田亮一

    永田委員長 山田太郎君。
  74. 山田太郎

    ○山田(太)委員 最初法務大臣にお伺いしたいことは、先ほどの話の中にもたびたび出てまいりました明治恩赦と世間でいわれていることでございますが、法務大臣の御答弁の中に、国民の気持ちも十分考えなければいけないというおことばがあったと思います。これは非常に大切なことではないかと思います。その点について法務大臣はどのような見解で国民の気持ちを考えなければいけないと言われたのか、その見解をまず最初に聞きたいと思います。
  75. 赤間文三

    赤間国務大臣 私は、恩赦もそうでありますが、すべての政治がやはり国民の気持ちを常に十分くみ取る、それで国民がみんな幸福になるようにやるということが政治の要諦と考えております。恩赦だけでなく、すべてのものについて、国民の気持ちを政治家がくみ取ることが望ましい、こういうふうに考えております。御了承願います。
  76. 山田太郎

    ○山田(太)委員 まず、そのような常識的なおことばも当然かと思いますが、またそうでなければならぬと思います。  そこで、世上いわれていることは、この恩赦が選挙違反について適用される、ことに悪質な選挙違反に対しても適用される、このようなことが報道されております。恩赦の制度自体にもちろん反対するものではありませんが、この明治百年が、国民がほんとうにおめでたいという気持ちでおるかおらぬか、これはまた別の問題といたしまして、政治の世界の浄化ということは全国民が待望しておることでございます。ことに衆議院の解散等々も取りざたされておるこのごろの雰囲気でございますが、そのときにあたって、ことに選挙違反者を対象とするがごとき恩赦には、国民の総意として反対じゃないかと思います。法務大臣は、まだそれは検討中だという先ほどの答弁でありましたが、法務大臣としては、そのような答弁をなさざるを得ないのかもしれませんが、その点についての考え方はどうでしょうか。政界浄化と国民の総意、それから選挙違反を――この選挙違反ということ自体は政治の世界に非常に暗い影を投げかけております。これはもちろんでございますが、したがって、その恩赦の中に選挙違反者を含める、あるいは選挙違反者を対象とするがごとき印象をいま世間では受けておりますが、この点についての御答弁を願います。
  77. 赤間文三

    赤間国務大臣 お答え申し上げますが、さっきからたびたび申し上げましたように、いま研究、検討中なんでございます。お述べになりましたようなことも十分ひとつ研究し、さらに明治百年の意義もさらに深く掘り下げて研究する。あらゆる面をできるだけ検討――過去の例もなお参考になる面があればと思って研究もいたします。全部の点をあらゆる面から検討しておるというのが実情であります。まだ、どういうことはどうと申し上げるところまでまいっておりませんので、御了承願います。
  78. 山田太郎

    ○山田(太)委員 先ほどからそのお答えはたびたび聞いております。しかし法務大臣、あなたをしかってもしょうがないのですが、しかし、閣議において論議されたことは、あなたも認められております。そこで法務大臣としての見解はどうか、それを聞いておるわけです。
  79. 赤間文三

    赤間国務大臣 法務大臣の見解を表明すべき適当な時期と考えておりませんので、その辺は容赦願いたい。適当な時期には必ずはっきりと申し上げますが、いまは適当な時期じゃない、かように考えております。
  80. 山田太郎

    ○山田(太)委員 これではオウム返しになりそうですから、一応このたびの世上取りざたされている明治百年の恩赦には反対の態度を表明いたしまして、この辺で次の問題に移らしていただきます。  そこで、新宿事件についての騒乱罪適用でございますが、私ども、あの時点においては、また新宿事件のあの時点においてのみ、やむを得ないという見解は持っておりますが、この騒乱罪適用に際しては、警察当局と法務省当局と話し合いがあったと見られておりますが、その点はどうでしょうか。適用についての相談があったというふうに聞いておりますが、その点はどうでしょうか。
  81. 赤間文三

    赤間国務大臣 常に重要な問題は、警察検察は相談し合って、あやまちのないようにやっております。御了承願います。
  82. 山田太郎

    ○山田(太)委員 では、それに対して賛成の意を表明されたと思いますが、その根拠を、私、しろうとなものですから、一度法務大臣からお聞きしたいと思います。
  83. 赤間文三

    赤間国務大臣 要するに、法務省といたしましては、条件に適応する場合におきましては適用をするという考え方を持っておる。一般的に申しますと、具体的事件についていかなる刑罰法規を適用して検挙を行なうかという問題は、第一次的には、御承知のように第一次治安機関である警察当局が担当しておる。第一線の警察当局が担当しておる。本件についても、騒擾罪適用の決定しましたのは、警視庁において本件の具体的状況が騒擾罪の構成要件に該当するものと判断したためであると考えております。また、警視庁が今回騒擾罪適用を決定するにあたりて、東京地検に事前に協議したことでございます。これは事件捜査処理を担当する検察庁に対して、同罪適用をめぐる法律的助言を求めたものである、かように考えておます。  警察検察とが一体となって十分慎重に、しかも有効的にこの法律適用をやる、こういう方針をとっております。
  84. 山田太郎

    ○山田(太)委員 これは法務大臣の直接の管轄の分野ではないと思いますが、あの機動隊とそれから世間でいう三派全学連の対立は、ある意味において、機動隊が三派全学連の人々を挑発しているというふうな状況も見られることがあるわけですね。これに対して、法務省側としては、どのような適切な手を打たれておるか。あるいは全くの野放しになっておるか、その点をお伺いしたいと思う。
  85. 赤間文三

    赤間国務大臣 法務省の見るところでは、機動隊が三派全学連等に対して挑発したという事実は認めておりません。
  86. 山田太郎

    ○山田(太)委員 もちろんそれがあってはならないわけですが……。  そこで、この騒乱罪適用について一番心配されていることは、表現の自由というものを侵されやしないかということを一番心配されております。また、学問の自由、あるいは大学の自治、これを侵されはしないか。また、昔の治安維持法的なものが世上では心配されております。この点についての明確な答弁をいただきたいと思います。
  87. 赤間文三

    赤間国務大臣 はっきりとお答え申し上げますが、新宿事件のごときは、大学の自治だとか、あるいは憲法で保障する学問の自由とか、そういうものと全然関係がない、かようにわれわれは考えております。
  88. 山田太郎

    ○山田(太)委員 次に聞きたいことがありますので、騒乱罪についてはもう一つだけ……。  将来の騒乱罪適用については、当然慎重でなければならないと思います。その騒乱罪適用については、このたびのような新宿事件のごとき、ああいう事態にならない限りは適用しない、そういうお考えが法務省としてあるかどうか。
  89. 赤間文三

    赤間国務大臣 騒乱罪の条件を満たす事実が起とるならば、慎重に、しかも有効適切に断行していく、こういう考えです。慎重に、しかも有効適切なる方途を講じて騒乱罪適用する。何も新宿のあの型になるとかならぬとかということでなくて、個々の場合に騒乱罪の条件を満たすならば、慎重に、しかも有効適切なるこれが適用措置を講ずる。
  90. 山田太郎

    ○山田(太)委員 それでは私のお伺いした答弁になっていないと思います。新宿事件のごときというのは、一つの程度を言っただけです。というのは、人数や、あるいは放火、あるいは、等々の状況でなく、角棒あるいはヘルメット、それを集団でもって示威行動したり、そういうことが騒乱罪適用に至るまでたびたびありましたね。あのようなことでは適用しないというお考えが法務省としてはあるかどうか。
  91. 赤間文三

    赤間国務大臣 刑事局長からお答えをさせます。要は、騒擾罪の要件が備わるならば、慎重に、有効適切にやるというのが方針であります。刑事局長からお答えいたします。
  92. 川井英良

    川井説明員 騒擾罪の要件が整えばやるのだというふうに抽象的には言うよりほかしかたがないわけでありますが、問題は、騒擾罪の要件がどういうふうなかっこうでいつ整うのかということが実は大問題でございまして、こまかいことになりますけれども、暴行、脅迫がありましても、それが集まった集団の合同力として行なわれた暴行、脅迫だ、こういうふうに認定ができませんと、まず第一の要件が整わないわけでございます。人の目にはかなり乱暴な暴行が行なわれましても、一部の群衆だけがはね上がってやったという行動では、騒擾罪にいうところの多衆共同しての暴行、脅迫にならないわけでございますので、そこが先ほど委員から御指摘がありました共同意思の問題があるわけでございます。     〔委員長退席、大竹委員長代理着席〕 そこで、専門家の立場で見ておりまして、一部の暴行でありましても、それが集まった集団の合同力として行なわれた、こういうふうに認定がなされませんと、騒擾罪適用が困難でございます。  第二の要件といたしましては、暴行、脅迫と申しましても、その暴行、脅迫は、いままでの判例の解釈によりまして、地方の静ひつを害するに足るような内容を持った暴行、脅迫であるということが一応いわれておりますので、散発的に暴行、脅迫がありましても、その暴行、脅迫が地方の静ひつを害するに足るかどうかということの認定が、事実問題としてまた非常に重要な問題になるわけでございますので、客観的に見ておりまして騒擾罪適用してしかるべきような多衆共同暴行が行なわれましても、全体として騒擾罪適用に踏み切るだけの、いま申しましたような要件を満たしておるかどうかということは、具体的なケース、ケースによりまして現場に臨んだ捜査官がその判断を決定するということになりますので、一がいに申しますならば、騒擾の要件を満たした場合におきましては、今後におきましても騒擾罪適用をちゅうちょしない、こういうふうに言わざるを得ないと思います。
  93. 山田太郎

    ○山田(太)委員 騒乱罪の点については最後に、正しい言論の自由、また正しい表現の自由、これはあくまでも当局もまた政治家も国民も、当然これは守り育てていかなければならないのじゃないかということを念頭に置いて、採来の事に処してもらいたいということを要望しておきます。  そこで、このたびの逮捕者の中には群衆とそれから高校生の方、それから中学生の方までが含まれておりました。もちろん巻き添えを食った方々かもしれませんが、中学生さえも中に含まれております。これは逮捕者の中に云々という意味ではありませんが、あの群衆の中に。  そこで法務大臣にもう一点、これがもし起訴になっていった場合、当然未決囚になる人もおると思います。ところで私は、昨日大阪の拘置所へ視察に参りました。あの未決囚の人々やあるいはもうすでに刑のきまって収容されておる人々に対しての人権、あるいは生命の擁護といいますか、衛生管理といいますか、そういう点については法務大臣として当然大切な問題ですから、法務大臣になられてからどのような指示を与え、あるいは通達を出されたことがあるかどうか、これについてお伺いしたいと思います。
  94. 赤間文三

    赤間国務大臣 お述べになりましたようなことは、非常に重大なことに考えております。法務省は何といいましても人権を擁護するというまた一つの大きな任務を持っておりまするので、刑務所その他についても十分ひとつ……。
  95. 山田太郎

    ○山田(太)委員 私の聞いたことに答えてください。  法務大臣になられてから、その点についてことに強調されたことがあるかどうか。
  96. 赤間文三

    赤間国務大臣 あらゆる会同のときに、たびたび私は取り締まりとあわせて人権を擁護せよということを、刑務所それから少年院、すべての場合に話をしたり注意をしたりしております。
  97. 山田太郎

    ○山田(太)委員 大臣への質問はこれで終わります。
  98. 大竹太郎

    ○大竹委員長代理 松本君。
  99. 松本善明

    ○松本(善)委員 新宿事件につきましては、数々の疑問があるわけでありますけれども、これは大臣時間がないようでありますので、具体的な事実については、あとから警察庁警備局長かに伺いたいと思います。しかし、これについてどうしても大臣に伺っておかなければならない幾つかの点がありますので、お聞きしておきます。  この新宿事件関係をして騒擾予備罪の新設が問題になっておりますが、これは法務省ではいまどういう段階にきておるかお話しいただきたい。
  100. 赤間文三

    赤間国務大臣 騒擾予備罪は目下盛んに研究をいたしておる。騒擾予備罪をようやく小委員会で決定をしましたが、法務当局としてはその必要性について、各般の事情を考慮してたびたびいま検討中であります。
  101. 松本善明

    ○松本(善)委員 私たちは破防法については、これは憲法違反の法律だということで反対をしておるわけで、これを認めているものではないわけですけれども、この破防法の四十条には騒擾予備罪が規定をしてあります。それにもかかわらず、さらに騒擾予備罪を新設をするという目的はどういうところにあるのか、御説明をいただきたい。
  102. 川井英良

    川井説明員 騒擾予備罪――正確に申しますと騒動予備罪でございますが、騒動予備罪をつくるということが問題になりましたのは、刑法の全面改正を法務省でやっておりまして、その全面改正の一環といたしまして騒動罪のところに予備罪を設けることが適当だ、こういう意見が出てまいりまして、先般その部会を開いて決をとりました結果、多数でもって騒動罪に予備罪を設けることが適当だ、こういうことが議決されたわけでございます。これはその刑法の全面改正の刑事法特別部会で一応そういう議決があったということでございますので、それとはまた別個の観点から最近の事態に対しまして、いわゆる騒擾予備罪が必要かどうかというようなことにつきまして、その必要性について慎重な検討をしておる最中だ、こういうことでございます。
  103. 松本善明

    ○松本(善)委員 騒動罪ということばが使われているのは改正刑法仮案であると思うのですが、その仮案では騒擾罪と同じような考えで使っておるのではないかと思いますけれども、いま刑事局長が特別に正確には騒動予備罪だというふうに言っておられることは、騒擾罪とは別個の概念で、そうしてまた破防法の騒擾予備罪とも別個の概念で、いま騒乱予備罪とかあるいは騒動予備罪とかいわれている別個の犯罪類型をつくろう、こういうことが法務省の中で進められておるのかどうか、その点もう一度明確に答えられたいと思います。
  104. 赤間文三

    赤間国務大臣 そういう問題は詳しくあとから刑事局長お答えしたほうがいいと思います。私、大臣でなければいかぬというやつだけひとつお尋ねを願うと、非常にありがたいと思います。
  105. 松本善明

    ○松本(善)委員 それじゃ、それはあと刑事局長に答えてもらいたいと思います。話が出たものでそこまでいったわけですけれども、もう一つ法務大臣に聞いておきたいことは、この新宿事件についてもいろいろ疑問があるわけですけれども、トロッキスト学生集団に対する取り締まり全体、共産党対策のためにこれを泳がしているという意見がたくさん自民党の首脳からも言われております。そしてその中で私どもが特に法務大臣に聞きたいのは、このトロッキスト集団に対する破防法の適用先ほど私たち申しましたように、破防法は憲法違反の法律であるからこれは認めておりませんけれども、この問題が法務省の中で問題になっておりました。おりましたけれども、それがその後どうなっておるのか、このことについて御説明をいただきたい。
  106. 赤間文三

    赤間国務大臣 法務省では常に勉強をいたしまして、破防法を適用するような団体が出てくるならば適用する、こういう方針のもとに鋭意勉強をいたしております。
  107. 松本善明

    ○松本(善)委員 それでは具体的にお聞きしますが、吉河前公安調査庁長官と同庁の長谷前次長が、当時この破防法の適用問題については調査結果を大臣に報告をして、トロッキスト集団に対して破防法第七条を適用して解散させるために、公安審査委員会に処分を請求するだけの証拠が固まったということを報告しているということが報道をされております。それから三月十四日の参議院法務委員会でも同様趣旨の答弁をしております。破防法適用条件があるにもかかわらず適用しなかったという理由はどういうところにあるか、明らかにされたいと思います。
  108. 赤間文三

    赤間国務大臣 あれは、適用しなかった理由は、いま私はっきり申し上げにくいと考えます。適用するときはすると明確に申し上げますが、適用しなかったときの理由は、私は申し上げないほうがいいと考えます。この点、御了承を願います。
  109. 松本善明

    ○松本(善)委員 そういうことはおかしいと思うのです。先ほど法務大臣が一貫して強調していたことは、適用する条件があれば厳正に適用するのだということを言っている。そしていま破防法の問題についても、すぐ前の質問ではそのように答えておるのです。そういう答弁をしておきながら、この場合には適用しない。適用しなかった理由についてなぜ言えないのか、そのことを明らかにされたい。これは報道をされ、国民からするならば条件がある。法務大臣は条件があれば適用するのだと言っておるにもかかわらず適用しなかったのです。何かはかに理由があるはずです。その理由を聞くのは当然のことではないかと思います。
  110. 赤間文三

    赤間国務大臣 適用することが当時において適当でないと法務大臣が認定をいたしましたので適用しなかった、さよう御了承願います。
  111. 松本善明

    ○松本(善)委員 それではこうお聞きしましょう。適用する条件があるにもかかわらず、政治的な理由によってその適用を左右するということは正しいと法務大臣考えておられるのかどうか。
  112. 赤間文三

    赤間国務大臣 私は、破防法を適用する条件が完全に備わっておったという点についての検討がまだ十分でなかった、破防法を適用するに十分な条件が整っておるかどうかということについて、私はまだ不十分な点があるという認定をいたしましたので、適用をしなかった。これで非常に明確になったと思いますが、いかがでしょうか。初めはもうそろうておると思って勉強を始めたところが、まだ条件が一部欠除しているというかそろうてないものがあると認めたために適用しなかった、こういう実際の問題でございます。
  113. 松本善明

    ○松本(善)委員 それで私先ほど申したのですけれども、この問題についての事務当局の最高責任者である吉河前公安調査庁長官と長谷次長が、これは適用の条件があるのだ、そしてその証拠もそろっているのだということを、国会でも答弁をしているのですよ。それをいま法務大臣のお話では、適用の条件がないのだということを法務大臣は認定をしたのだという。公安調査庁の前長官と次長の言うことは正しくないということをどのようにして、どういう理由で考えられたか、そのことをお話し願いたいと思います。
  114. 赤間文三

    赤間国務大臣 何も公安調査庁の長官とか次長の話が……。
  115. 松本善明

    ○松本(善)委員 国会で答弁しているのですよ。
  116. 赤間文三

    赤間国務大臣 そういう答弁をしたか知りませんが、私の見るところではなおまだ不十分な点がある、大臣としてそういう認定をいたしました。私は部下の人たちが言ったことは尊重はします。しかしながら、何も部下がそろうたと言ったからといって大臣がそろうたという認定をするわけにはいかない。私は、まだ条件が一部不明確、そういう点がある、こういう認定を持っておりました。その点は、そろうたという方にも、こういう点が足らないじゃないかということはよく指摘をいたしました。
  117. 松本善明

    ○松本(善)委員 吉河公安調査庁長官が更迭になった理由は、トロッキスト集団に破防法を適用することで法務大臣と意見が違ったためだというふうに報道されております。当時の公安調査庁長官の意見と法務大臣の意見とがどこで違っていたのか、いまのお話では、適用の条件についての技術的な点だということですけれども、ほかに公安調査庁長官と法務大臣が当時意見が違ったのはどの点であったか、お話し願いたいと思います。
  118. 赤間文三

    赤間国務大臣 意見の違った点は何にもない。
  119. 松本善明

    ○松本(善)委員 国会での答弁が違うのですよ。
  120. 赤間文三

    赤間国務大臣 国会の答弁は、私は長官の言うたことについては別によく覚えておりませんが、私は、大臣といたしましては、あれは御承知のようになかなかむずかしいものですから、形は整っても、整い方もありますし、まだ足らない点があるということです。意見が違ったわけでも何でもない。そのためにかわったのでもない。彼は非常に働いたから栄転をしたと考えております。別にそのためにどうということはない。時期がきて非常に栄転されたものと考えております。
  121. 松本善明

    ○松本(善)委員 客観的な事実を法務大臣が否定をされましても、ちゃんと委員会の議事録に公式の発言として残っておるのです。明らかに意見が違っておるのです。私は、この点でさらに申しましても法務大臣の答弁は変わらないと思いますので、この点では申しませんけれども、この日本共産党に対する対策上、こういうトロッキスト集団に対して手心を加える、あるいはこれを泳がしている、こういう意見が方々でなされております。これについて法務大臣どう考えられるか。実際にそう行なわれておるというふうに疑われる事実が、幾つもあります。法務大臣がずっとおられるならば、新宿事件についても数々の疑問を提起するわけですけれども、できないのがたいへん残念です。この破防法の問題についても、いま法務大臣のいろいろ話を聞いていると、私たちの考えていること、あるいはそういうようなことを自民党の首脳の人たちが言っておることが、正しいのではないかというふうに十分疑われる。この考え方について、法務大臣はどう考えているか、お答えを願いたいと思います。
  122. 赤間文三

    赤間国務大臣 ただいまのお尋ねの件につきましては、まだ大臣として報告を受けておりませんから、承知をいたしておりません。
  123. 松本善明

    ○松本(善)委員 報告の問題ではないのですよ。共産党に対する対策上これは泳がしておるのだ、手心を加えるんだ、こういうふうな意見が方々で発表されております。そのような意見について、法務大臣はどう考えるのか。自民党の首脳から出ております。印刷物になったものがたくさんあります。それについて法務大臣はどう考えるかということを聞いているのです。報告の問題ではないと思います。
  124. 赤間文三

    赤間国務大臣 印刷物とかそういうことについてのお話は、私はまだ聞いておりません。
  125. 松本善明

    ○松本(善)委員 それではお教えしましょう。先日のNHKのテレビ討論会でも、福田幹事長は――このときにはわが党の宮本書記長も出ておりました。「そういう説をなす人はかなりある。」「大学教授の中にも、当面は三派だが、しかしさらに重要なのは民青だと考える人があり、自民党の中にもいろいろな意見がある」ということを言っております。それから朝日新聞の四十二年十一月十六日、これは「とくに政府自民党内部には、三派全学連は規制するよりはむしろ適当に泳がせておいた方がよい、との意見もある。」ということを報道しております。それから十一月十七日の自民党総務会の席上廣瀬代議士が、これは十一月二十日の産経新聞でありますが、「「三派全学連を団体規制によって壊滅させてしまうと、最もこわい日共系全学連が勢力を伸ばすので危険ではないか」と述べ、トロッキスト団体への破防法適用に慎重な態度で臨めと主張した」という報道もされております。あるいは木村官房長官の羽田事件直後の十月八日の記者会見で、オフレコだということでありますけれども、「羽田事件の対策には強硬な処置をとらないことにした。日共対策上そうしたほうがいいからだ。破防法は、反日共糸にはきき目がない。これを適用できるのは、むしろ日共だ。」同様趣旨の発言は亀岡副長官もしているのです。それから保利茂氏も、「三派全学連は泳がせておいたほうがよい、そうしないと全学連は日共系一本にまとまる。そのほうが危険だ」、こういうようなことの報道がたくさん出ておるわけです。これについて法務大臣、御存じないということはないと思います。重ねて御意見を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  126. 赤間文三

    赤間国務大臣 意見は人によって、顔が違うようにいろいろな意見があると思いますが、法務大臣としては、私はそういう意見を正式にまだ承っておりません。いろいろなお話は当然知っておりますが、私は、正式にそういう話を、党の幹部からもだれからも承っておるわけではないのであります。ただ、法務省としましては、治安維持の面から、破防法の適用等につきましては大いにひとつ勉強せいということは、私がよく公安調査庁に言っております。どこの団体とかという指名は、私はしはいたしません。とにかく大いに勉強をしておいてもらいたいということは、絶えず言っております。あなたのお話しのようなことについても、正式にまだ党の幹部からも聞いたこともなければ、だれからも聞いたことがない。ただ、いまあなたから聞いて、いろいろな意見があるということだけははっきりわかりました。それについて感想を申し述べろと言っても、別に感想を申し述べる研究をまだいたしておりませんので、何ならよくひとつ今後そういうことについて調べてみたいと考えております。御了承願います。
  127. 大竹太郎

    ○大竹委員長代理 午後二時より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後一時十二分休憩      ────◇─────     午後二時四分開議
  128. 永田亮一

    永田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。松本善明君。
  129. 松本善明

    ○松本(善)委員 先ほど時間の関係刑事局長の答弁をあと回しにしたのですけれども、いま法務省で用意をされている騒動予備罪、正確には、このことば刑法では騒擾罪、それから警察法では騒乱罪というふうになっているし、それから改正刑法準備草案では騒動ということになっていまして、いま法務省で準備しているのは騒動予備罪ですか、その点ちょっとはっきり……。
  130. 川井英良

    川井説明員 刑事法特別部会で全面改正の一環としてやっておりますのは、一応の命名として騒動ということばを使っておりますが、この間の部会以後、騒動ということばは何となく適しないじゃないか。ですから、「擾」という字が当用漢字にないならば、かなでもって「騒じょう」、こう書いたらどうだ、こういう意見と、それから騒乱ということばは熟してきたから、あえて騒動としないで、騒乱と、こういうふうにしてもいいじゃないかというようなことが出ておりまして、内容についてはいろいろ議論をしてある程度まとまりましたけれども、どういう名前にするかということは、依然としてまだ流動的でありまして、持ち越されているようなかっこうになっております。その名前のことは騒動、騒乱、騒擾と申しましても、実態には変わりがない、こういうたてまえで実は立案をしております。
  131. 松本善明

    ○松本(善)委員 先ほどお聞きしました破防法では騒擾予備罪が規定をされておるわけですけれども、破防法は、先ほども言いましたように、私たちは憲法違反の法律であると考えてはおりますけれども、破防法にこういう騒擾予備罪が規定をされておるにもかかわらず、騒擾予備罪の新設が考えられておるという理由は、どこにあるわけですか。
  132. 川井英良

    川井説明員 この刑法の全面改正の作業というのは、いま直ちにそこで議決をされましても、それが直ちに法律となって制定されるという性質のものでは必ずしもありませんで、全面改正が必要かどうか、必要ならば参考案を示されたいという法務大臣の諮問に答えて、目下その第二読会として立案作業が進められておる。その過程において、騒擾罪についても予備罪が必要ではないかということで規定するという案と、規定しないほうがいいという案とが出まして、そうして一応採決をしましたところ、規定したほうがよろしいという意見が多かったというのが、この間新聞に大きく報道されました経過でございます。  そこで、今日、破防法の四十条に騒擾の予備罪があるのに、またその上にあらためて同じようなものをつくるのはどういう理由があるのだということでございますが、これは御承知のとおり、破防法のほうは、政治的な主義主張云々という目的がありまして、その上にさらに騒擾の罪を犯す目的をもって予備をした者はと、こういうことになりますので、現にあります破防法の騒擾予備罪は、目的の関係では二重になっておるわけでございます。そこで、今度議案にのぼりました刑法のほうの騒擾予備罪のほうは、政治的な目的とかなんとかいうことは問いませんで、ただ騒擾の目的でもって予備をすればということになっておりますので、現行の破防法の騒擾予備罪に比べまして、今度考えられております予備罪のほうは、構成要件等の関係においてはやや適用が広いのではないかということが言えると思います。そういう意味におきまして、新しく刑法騒擾の予備罪を設けるというのは、その関係においては幾らかの意味を持つものではないか、こういうふうに思います。
  133. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、破防法にいっておる政治的目的というものをはずして、それ以外の場合でも広く騒擾予備罪の適用はできるようにする、こういう趣旨でございますね。――そうすると、騒擾罪は、その適用ということになれば、そこにいた群衆全体に適用していくということで、大衆運動に対する弾圧として非常に使われてきた。いままでも、農民運動でありますとか、あるいは労働運動、あるいは在日朝鮮人の運動その他にずっと適用されてきた例があるわけですけれども、いま考えられておる騒擾予備罪というものが新設をされた場合には、さらに広範囲にこういうような大衆運動に適用されるという危険性が出てくるのではないかと思いますが、いかがですか。
  134. 川井英良

    川井説明員 もう少し詳しく申し上げますと、この間採決をされた予備罪のほうは、いまの目的のほかに、「二人以上通謀して、多衆を集合させ、又は凶器を準備した」場合というふうに、ある程度犯罪主体になるものを限定しております。それから破防法のほうは、こまかいことでございますが、御承知のように、その辺の限定が必ずしもしてありません。ですから、二つを比べてみました場合に、目的の点におきましては法制審議会のほうの案のほうが広くなっておりますけれども、その他の要件の点においては今度考えられております案のほうが破防法の現行の規定よりもはるかに狭くなっておるということが、二つを比較すればいえると思いますが、これは法制審議会の部会で一応そういうような案が出たということでございますので、さらにまた第三読会においてどういうふうに直りますか、将来のことにつきましてはまだ流動的でありますので、あまり詳しく論ずる必要はないかと思いますけれども、そういう相違点がございます。  それからそういうふうな騒擾という罪について予備罪を新しく設けるということが、大衆運動について抑圧とか、ことさらな弾圧にならないかという点でございますが、これは法規の運用のしかたによりましてはいろいろな意味を持つもの、こう思うわけでございますが、要するに運用の当局において法律の精神なりあるいはその構成要件なりというふうなものを厳格に解釈いたしまして、適用にあたりましても十分入念に注意して適用していくということでもって、その辺の御心配の点は避けることができるのじゃないか、また避けなければならない点ではないかというふうに思います。
  135. 松本善明

    ○松本(善)委員 もう一つお聞きしておきたいのは、いまのお話で狭くなるということでありますが、二人以上の者が騒擾の目的でやるという場合を規制するということであれば、目的という点では破防法よりももっと広くなるし、別に限定したことにならないように思いますけれども、その点はどういうことでしょう。
  136. 川井英良

    川井説明員 破防法のほうは、破防法という特殊な目的のゆえ、政治目的による、騒擾目的による騒擾の予備、こういう観点で二重に目的がかぶっておりますけれども、刑法のほうは必ずしも政治目的とか経済目的とかというふうに限ることは適当でありませんので、その直接の目的のいかんにかかわらず、行為それ自体が騒擾の目的を持って集合したとか、凶器を準備したとかというふうな場合におきましては、騒擾の予備になる、こういうような規定のしかたになるのは、刑法という規定の中にそういうふうな規定を設ける以上当然のことじゃないかというふうに考えております。
  137. 松本善明

    ○松本(善)委員 やはり御説明にもかかわらず、破防法の場合よりもかなり広くなるのじゃないかということなんですが……。
  138. 川井英良

    川井説明員 目的の点におきましては、二重の目的が一つの目的だけで足るということになりますので、目的の点に関する限りは広くなる。目的を広げるということは語弊がありますけれども、政治目的に限定しないというところに、刑法に予備罪を設けるむしろ立法理由があるのじゃないかというふうにも思います。
  139. 松本善明

    ○松本(善)委員 終わります。
  140. 永田亮一

  141. 中谷鉄也

    中谷委員 警備局長にお尋ねをいたします。午前中、大臣質問を申し上げました際に、今回の騒乱罪適用についてはいわゆる成果をあげていない、逆に言うと、学生運動をかえって激化させるような効果をさえ持ったのではないか、こういうような点を私は指摘いたしました。ただ局長の午前中の答弁の中に、反省すべき多くの問題点があったというふうな御答弁もあったと思うのです。そこで、今回の警備警察警察権行使の面から、どういう点を反省、あるいは今後の問題点としてお考えになっておられるか、この点についてひとつお答えをいただきたいと思います。  その前提として、「アサヒグラフ」の十一月八日号を私見てみましたが、次のような記載があるわけなんです。同グラフの二三ページですが、こういうふうに書いております。「騒乱罪適用されるとその地域にいる人間を全員逮捕できる 負傷した若者もレールの脇を引きずられて逮捕されていった」という説明になっているのです。こういうふうな記載は、私は明らかに間違いだと思う。その地域におる者が、付和随行者であるなしにかかわらず全員逮捕されるとすれば、私はこれはたいへんなことだと思う。ところがさらにこの「アサヒグラフ」の記載によりますと、次のようになっております。二〇ページ「数人の機動隊員が彼の腕をとらえ、エリをつかんだ。「だれでも逮捕できるんだ、騒乱罪だ」といきまく隊員に、連れの女性がソーランザイの意味がのみこめぬままに「許して、許して」と泣いてすがりつく。こんな悪夢のような光景が、西口でも南口でも見られた。」要するに、大衆を捕獲する「“大衆捕獲”的な検挙のしかた。一定地域内の集団全部が検挙の対象になるので、まったく関係のない通行人までが逮捕されてしまう可能性がある。」こういうふうになっている。そこで私は、午前中、非常に短い時間でしたが発言をしたのは、やはり都市化現象、大衆社会状況というふうなことばによって象徴される新宿駅、都市におけるこういういわゆる騒動と、すでに十何年前の平事件、あるいは一定の意思を持ったデモとしての吹田事件、あるいはまた一つの広場で見物人がまざることの可能性の非常に少ないメーデー事件などとは、ずいぶん違うと思う。そういうような点で、反省点の一つとしては、いわゆる見物人、やじ馬、特にそのやじ馬の中でも、いわゆる学生しっかりやれと一言言ったようなやじ馬までも付和随行だということでやられる。ましてそれ以上に、何か学生のやっていることについて手をたたいたというふうな者も、付和随行で検挙される可能性がある。こういうようなことは警察権行使の面からいっても好ましくないと思うのですが、これは私は反省点の一つとしてあげられてしかるべきだと思う。  まず、これらの点について確認的にお答えをいただきたいのは、その地域にいる者は全員検挙されるというふうなこの記載は、記載自体が間違いであるが、そういうふうな検挙のしかたがあったのではないか。「アサヒグラフ」の記載によれば私はそのようなことを想像するがどうかというような点について、ひとつお答えいただきたい。
  142. 川島広守

    川島説明員 御指摘のとおりに、その記載は私は間違っていると思います。それからまた、現場にいた者、ただいたというだけ、それだけで検挙されるということはない。それは、もう騒擾罪の規定を考えれば当然のことだと思います。
  143. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで、では若干数字的な問題をお聞きいたします。新宿事件と称するものによって、当夜検挙された者の数は一体何人でしょうか。そうしていわゆる即日と申しますか、釈放された者は、一体何人だったでしょうか。そうしてその後勾留請求をされて、きわめて大量の勾留請求の却下があったことは事実であります。といたしますと、即日釈放されたという人の中には、いわゆる大量捕獲というふうな、きわめて非人権的なことばによって象徴されるような、とにかく引っぱっていかれたという人がかなりおったのではないかと思う。この内訳などから警備上の反省点というものを出してこなければ、今後の都市化現象あるいは大衆社会状況、あるいはまたマスコミ、テレビ等の影響によって、とにかく珍しいことがあったらそこへ行く。ある週刊誌の記載によれば、警察が来るな来るなというから行ったのだ。警察が来るなというからおもしろいことがあるだろうというふうな、いわゆる群衆というものについての対策というものは、私は必ずしも立っていないと思う。これらの点について、ひとつお答えいただきたい。
  144. 川島広守

    川島説明員 全く私も御指摘のとおりだと思います。午前中に申しましたとおりに、現在の過密都市といいますか、都市化現象の中で、どこの場所を選びましても、警備現場というものは、いわゆる群衆というものがきわめて集まりやすい場所しかないのでございます。とにかく今回の新宿の場合は、御案内のとおりに、日本一といわれるくらいの大きなターミナルでございますので、ここに人を集めないという方策、それから私ども警察といたしましても、最も頭を痛めるのはその点でございまして、一般の、いわゆる心理学的な用語で申しますれば、いわゆる集団暴力を働く第二次群衆と申しますか、二次群衆といういわば別働隊的な、いわゆる反社会的な群衆もおります。それからいま御指摘のとおりに、第三次群衆と申しましょうか、全く無関係の、物見高いといいますか、そういう意味での群衆。いろいろな分け方があろうかと思います。したがいまして、今回の新宿事件の場合もそうであったわけでございますが、午前中にもお答えいたしましたように、群衆と一般集団暴力の主体たるべきものとの区分と申しますか、分離といいますか、それについては、御案内のとおりに、警視総監の談話をもって事前に都民の方々に警告をし、御協力を呼びかけた経緯もございまするし、さらにまた一般新聞等によりましても、同様な御協力を実は呼びかけたわけでございます。しかし、いまお話にもございましたように、来るな来るなというから来るんだというような、確かに私はそういう群衆もあることは知っておりまするし、したがって、今後群衆を分離するためにわれわれ警察だけでやり得る限界というものは、私ははっきりあると思います。したがって、今後は、きわめて抽象的になりますけれども、一般の都民の方々、一般の市民の方々のいわば良識に大きく期待をする、抽象的になりますけれども、そういうような方法が、最も多面的にとられるべきだろう、こういうふうに考えている次第でございます。  それから、いま御指摘の数字の問題でございますが、新宿で通常逮捕――実はきのうもいたしておりますので、含んで申し上げたいと思いますけれども、新宿検挙しました数が、全体で四百五十七名でございます。そのうち、騒擾罪で逮捕した者が、三百九十五になっております。送致しましたものが三百九十。この中に書類送致いたした者十七名も含んでおりますけれども、検事のところで釈放されました者が百四十五、御指摘のような数字に相なっておるわけでございます。勾留請求いたしましたのが、二百二十八、認められましたのが七十四、準抗告申し立てで取り上げられましたのが五、こういう数字になっております。騒擾罪の以前の段階で、これも新宿でございますけれども、六十二名検挙されまして、書類送致を含めまして六十二。これについて、書類送致一、検事釈放が二でございます。家裁送致が五、勾留請求が五十四のうち、認められましたのは四十八という数字に相なっております。
  145. 中谷鉄也

    中谷委員 世間では、騒乱罪適用というのはいわゆる伝家の宝刀なんだ、しかし、はたして伝家の宝刀たり得るかどうかという疑義が提出されておる。そこで、これは非常に憂慮すべき事態として私は、問題を提起するわけですけれども、いまの検挙数――要するに、かりに騒乱罪が成立するとして、騒乱罪の対象になるはずであったところの人たち、要するに、時期的に言うと、三派系のいわゆる主たる学生諸君というのは、もうすでに相当部分現場から離れてしまった後に騒乱罪適用があったということになると、逮捕された人は付和随行、せいぜい現場における率先助勢程度だということになってくると、これは見通しとしては、警察騒乱罪適用というのは、伝家の宝刀を抜いたけれどもたいして検挙できなかったじゃないかというふうな状態の中に、私はそういうふうな適用のしかたのいわゆるまずさというふうなものが、今後さらに学生運動というものを激化させるのではないか。騒乱罪適用というものは、威嚇作用よりも、むしろ反作用の面のほうが今度は多かったのじゃないか、こういうふうに私は非常に憂慮する。こういうような点については、ひとつ治安対策だけでは絶対だめなんだという観点からも御答弁をいただきたいと同時に、そういうようなことで私がお答えをいただきたいのは、首謀者だとか、指揮者とか、率先助勢者などが、一体どの程度検挙されているのか。これは事後検挙等で鋭意捜査中だとおっしゃるけれども、検挙不可能のような状態ではないかというようなことをあれこれ考えてみますると、伝家の宝刀は抜いたけれども、どうもそれは抜くべからざるものを抜いたといわざるを得ない。そこに騒乱の状態があったから騒乱罪適用したと言うけれども、全体として長い目で見た場合に、学生運動をかえって非常に激化させることになるのではないかと憂慮するのですけれども、どうでしょうか。
  146. 川島広守

    川島説明員 午前中の法務大臣お答えの中にもあったように記憶いたしますけれども、われわれといたしましては、騒乱罪が御案内のとおりに刑法の中に規定されておるわけでございますから、決して伝家の宝刀というふうには考えておらないわけでございます。  そこで問題は、確かに御指摘のとおりに、理想的に申しますならば、学生が一人も逃げない時点において騒乱罪適用があれば効果的にいくと思います。しかしながら、これも御専門で御案内のとおりに、立証上のいろいろな問題もございまするので、なかなかその点は理想的にばかりは、将来のことを考えましても、うまくいかないのではなかろうかということは、一般的に言い得るかと思います。ただ、今回の場合につきましては、現在、お尋ねの逮捕しました中で、指揮及び助勢で検挙しておりますのが八十九名でございます。付和随行が三百六名、計三百九十五という数字になっておるわけでございます。現在、多数の証拠写真等もいま盛んに検討中でございますので、特に指揮及び率先助勢というふうな区分に従いまして、今後捜査を精力的に進めてまいりたい、また現にいまやっておる最中でございますが、それからまた、数の面でおそらく指揮、率先助勢、付和随行等の比率の関係は、これは犯罪の性質上数字的に逆転することはないと思いますけれども、少なくとも現場において指揮をとり、あるいはまた率先助勢を加えた者につきましては、徹底して捜査してまいりたい、こういうことで現在やっておる次第でございますので、御了解を得たいと思います。
  147. 中谷鉄也

    中谷委員 騒乱罪の問題については、論点がすでに吹田事件以来非常に掘り下げられておりますし、ここで議論するのもあまり適当でないと思いますので、この程度にいたしますが、次のような点について警備局長の見解をひとつ承っておきたいと思います。  実は学生問題あるいは学生運動に対する政府の対策というものが、治安対策が先行しているというか、治安対策以外にないじゃないかということは、繰り返し繰り返し指摘をしている点でありまするけれども、今度十月二十七日の新聞に次のような記事が出ました。川崎重工業の社長の発表なんですけれども、とにかく川崎重工業ではこういうふうな反戦デーなどのいわゆる騒乱罪などで検挙された学生などについては、その採用を取り消すのだ、こういうふうに語ったらしい。そこで、その中に次のようなことが書いてあります。要するに警察からひとつ連絡を受けて、検挙された学生がいるかどうか警察などに問い合わせをして、そうして採用の取り消しをしたいのだということなんです。私は、万が一にも警察がこういう私企業に、だれを検挙しました、あなたのところのだれですというようなことを占えば、それこそ警察に対する学生の不信感というものは増大をする。そういうようなことは万が一にもあり得ないと思いまするけれども、私が問題にしたいのは、こういう私企業の経営者が安易に、人権侵害になりそうに思われる、警察に頼めばだれを検挙しましたが、あなたの採用予定者の中にはこんな人を検挙しておりますというようなことを連絡してもらえると思われるような、そういう経営者の感覚、これは私は非常に危険だと思うのです。だから私は、これは警察のためにも、そういうふうなことについて、人権侵害のおそれになるようなだれを検挙し評したというようなことを、問い合わせがあったからといって知らせるべきではない。これはあたりまえのことだけれども、これはひとつ警備局長のほうから御答弁いただきたい。
  148. 川島広守

    川島説明員 現在までのところ、いま御指摘のような問い合わせを全然受けておらないわけでございます。私は、いまのお話の中で、警察側の現在の決定しました方策についてお答え申し上げたら御了解いただけると思いますから、それを申し上げますが、従来、未成年はもちろんのこと、学生等につきましても、学校当局においてそれぞれ指導上また学内補導上いろいろな問題があろうということは従来からいわれておるわけでございまして、そういう意味合いで関係の父兄にも、御両親なりあるいは関係の大栄にも、それぞれ連絡しておる経緯はございます。しかし、いま御指摘のような経営者個々から警察にこういうことがあったかということについて全然照会を受けたこともありませんが、将来の問題としては、私はいま申しましたようなことでこれが暴力学生であったかどうかというような問題について、個々には相談はないだろうと思いますけれども、いま御指摘趣旨は、そういうようなことをすることがどういうことであるか、お尋ねの趣旨を取り違えましたけれども、お層ねの趣旨の最後のほうをもう一ぺん……。
  149. 中谷鉄也

    中谷委員 簡単なことをお尋ねしたのです。経営者は、警察というところへ頼めば、われわれの感覚からいえば当然人権侵害になると思われるようなものを、自分のところの採用内定者が新宿事件検挙の対象者ですよということを警察が教えてくれるというようなことが、警察へ問い合わせをするというようなことのことばの中にあらわれている。警察というのは、警察権の行使はするけれども、私企業の手先ではないはずなんです。そんなことを教えるなんということは、それこそ全く警察と資本とがなれ合っているというようなことで、学生の不信を一そう招きますよ。聞かなくてもいいことだけれども、警察のためにも、とにかくそんなことを連絡するということはありませんということを、経営者のこういう古い感覚を正す意味でも、ひとつお答え願いたい、こう質問したのです。
  150. 川島広守

    川島説明員 たいへん失礼しました。御案内のとおり、未成年の場合は、新聞の場合も氏名をだれも発表いたしません。しかしながら、成年でありますれば、新聞にも名前が出るわけです。お尋ねのように組織的に私のほうから連絡してあげるということはいたしません。
  151. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで、こういうことなんです。採用内定者が何十人かいるのですよ。その何十人のリストを警察へ持ってくるのです。そしてその中に検挙された人がいますか、それは第二次群衆であるか、第三次群衆であるか、わかりはしないのですよ。そんなものを御丁寧にも問いにくる者も問いにくる者だけれども、問いにいこうと言っている者もどうかしているけれども、まさか警察はこういうものについて、そういうときに、あなたの名簿の中に実は検挙者がいます、それは即日釈放しましたとか、現場にいましたというようなことを言うほど感覚は鈍っていないでしょうね、こう聞いているのです。
  152. 川島広守

    川島説明員 先ほどお答えしたとおりでございます。
  153. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで、文部省にお尋ねをいたします。ところが、十月の二十七日に川崎重工業の社長が、検挙者は採用を取り消すという新聞の談話発表をしたことが載っておる。そうすると、昨日、何か日経連関係の法曹会議というのがあったらしい。そうしていわゆる学生騒動に関して、その採用内定者の取り消しは原則として自由なんだ、日経連の法曹団会議なるものがそういうことを研究課題として結論を出したということが、新聞に出ておる。そこで私は思うのです。日大事件が非常に激化したのは一体何か。これは私らの同業者であるけれども、いわゆる日大弁護団と称する人たちが、いわゆる法律にたよって仮処分の申請をやって立ち入り禁止の仮処分なるものをやったというふうなことが、激化の原因だと私は思う。だから、騒動に関係したら採用内定者の取り消しをしますよ、こういうふうな企業のあり方というものは、学生に対する威嚇になるどころか、今後とも一そう学生運動を先鋭化させる、そういうひとつの効果を持つ以外の何ものでもない。要するに、メリットよりもデメリットのほうが非常に多いものだというふうに私は考えます。要するに、体制に対する不信というものを、私は一そう惹起することになると思う。なお、少なくとも文部省などにおいても、学生の就職については非常に関心をお持ちだと思うけれども、こういうふうに内定した人間が、第二次群衆、第三次群衆であっても、騒動に関係したら簡単に取り消されるのだというふうなことが大っぴらに行なわれるとするならば、逆に学生のほうからいうならば、いわゆる一つの会社、たとえば川崎重工業で造船の技術者として採用された学生は、三井造船にも、日立造船にも、石川島播磨重工業にも、三菱重工業のほうにも、とにかく全部採用内定を求めようというふうなことで、雇用秩序というものが私は完全にくずれてしまうと思う。要するに逆に学生の立場から言ったら、組織の中に入ってひとつ仕事をしようというような意欲がなくなってしまう。逆に言いますと、現在の学生が売り手市場であって、そうして企業のほうは人材が非常に不足しておるというふうな事態を認識すれば、こんなばかげたことは言えないと思う。文部省としても、ここで企業だからそういうことはどうこう言えないのだということは別として、こういうふうな採用内定者を簡単に取り消しできるんだというふうな企業のあり方というものは、今後の学生運動に対する鎮圧作用あるいは鎮静作用よりも、先鋭化させる効果を持つだけではないか。さらにまた、学生の各大学において努力しておる就職についてのいろんな現在までの積み重ねというものを、くずしてしまうということになるのではないか、こういうふうに私は考えますけれども、文部省の御見解を承りたい。
  154. 清水成之

    清水説明員 ただいま先生からお話がございましたけれども、暴力行為をあのようにやりました学生行動につきましては、非常に遺憾に存じております。先生のお話にもございましたように、経営者が、自分の会社にはどういう職員を採用するかという点につきまして、できるだけ自分の私企業の発展のために役立つ人を採用したい、こういう気持ちは十分わかるところでございまして、私企業自体が個々にそういう方針でやられることにつきまして、私どもからどうこうということは、ちょっと言いかねるわけでございます。  なお、先生がおっしゃいました学生運動を激化させるかどうか、こういう問題でございますが、私ども見ますところ、一部活動家の間では、何かネタがあればそれをきっかけにいろんな運動をやっていくということでございますので、そういうような発言なり方針等がまた一つのネタになるであろうということは推測をいたすわけでございますが、だからといって、私企業のほうでそういうことをとめてくれというのが筋であるか、あるいはまた一般学生の盛り上がりからいたしまして、理性のある大学の学生として暴力行為をやらないという方向で事態をおさめていくというのが筋ではなかろうか、かように考えておる次第でございます。
  155. 中谷鉄也

    中谷委員 要するに群衆犯罪というのは、いつ何どきだれがどのような状態において被疑者になるかもわからないという一つの危険性を持っておると思うのです。だから、逆に言いますと、学生集会があるときに、学生集会なんかに出ないで、下宿屋でマージャンをやっている、バーへ遊びに行っている、ドライブをしているという、そういうきわめて大学生らしくない大学生、勉強していない大学生、そういう人以外は、だれだっていわゆる第二次群衆あるいは第三次群衆の容疑者として検挙される可能性というものは、私は十分に含んでいると思う。そういうふうな場合に、要するに企業のほうから採用内定者であってもいつ取り消すかもわかりませんよというようなことになれば、今後大学の学生のほうからは、就職内定を二つないし三つの会社としたいというふうな要求が出てくることは、私は当然だと思う。先ほど審議官はネタとおっしゃったけれども、お互いに予約なんですから、内定というのは予約だとすれば、向こうが取り消す権利があるんだったら、こちらも数カ所と内定する権利があるのだというふうなことで、従来、各大学の就職推薦については、一人の学生について二つに限るとかというふうなことの秩序も全部くずれてしまうというふうなことがあっては、私はこういうふうなきわめて法律家的な形式的な発言というのは、大学紛争に火に油を注ぐものだ、こういうふうなことだと思う。現に現在の労働事情からいって、こういうふうな取りきめとか見解というものは、何らの威嚇作用も持たないと私は思うのですけれども、文部省としては、当面学園紛争というものをどうしても何らかの形において正常化したいという熱意に燃えておられるはずなんだから、この点についてのもう少し前向きの御答弁――私企業雇用自由の原則だというふうなかっこうの話ではないですね。そういうふうなことになれば、就職自由の原則だって出てきますから、こういうふうな日経連の考え方というのは、確かに両刃のやいばの危険性を持っている。ひとつもう一度文部省の見解を承りたい。
  156. 清水成之

    清水説明員 ただいま申し上げたところでございますが、正常な学生運動でございますればつかまるということもないと思いますし、それからかりにいまお話しのようなあぶなげな場合におきまして私企業の方針に従ってそういう内定取り消しをやられる場合におきましては、慎重であっていただきたい、かように考える次第でございます。
  157. 中谷鉄也

    中谷委員 労働省にお尋ねをいたします。実は、この問題については一カ月ほど前の新聞に森下仁丹さんという資本金二億円くらいの会社が、京都大学の学生、卒業生は、何か学生運動が盛んだから採用しないのだというようなことをそこの社長が言った。そうすると、京都大学のほうでは、私の記憶では、昭和二十三年以来私のところは森下仁丹のほうに学生をお世話したことはないというふうなことで笑い話になってしまったということを、私は記憶をします。ですから、川崎重工業のほうで、このことが何か学生運動の鎮静化に非常に役立つのだというふうな、あるいは企業防衛だというふうな気持ちで採用内定を取り消しできるのだというふうなことをおっしゃっても、優秀な造船学科の卒業生であるなら、三井造船でも、日立造船でも、三菱重工でも、さらに資本の大きい会社へ就職するでしょうし、さらに後発メーカーの浦賀へでも、佐世保へでも、どこへでも就職できる。だから、こういうことを言うこと自体が実は意味のないことだと思うのですが、ひとつ労働省にお尋ねをしたいのは、こういうふうにいわゆる採用の内定というふうなものが軽々に取り消されるというふうなことは、労働者保護という観点から見ても非常におもしろくないのではないかというふうに私は思います。同時に、雇われるほう、大学の卒業生のほうからいっても、先ほど言ったように、そういうふうに軽たに取り消されるものならば、ひとつ就職についてもあちらこちらととにかく内定をしておこう、そうしていよいよそこの会社の株が下がったならばその会社へは行くまいというような、企業に対する忠誠心だとか、いわゆる組織の中においてがんばっていこうというふうな気持ちを、こういう日経連法曹団の発言というものは基本的に失わせるものである。そうして反面学生運動に関しては非常な嫌悪感を持たせる。そしてかえって学生運動を先鋭化するものだというふうに私は考えますけれども、労働省として、雇用問題の観点からどういうふうにお考えになるかをひとつお答えいただきたい。
  158. 細野正

    ○細野説明員 雇用問題からというお尋ねでございましたが、質問を取り違えまして、私は基準局でございますが、安定所関係の課長が参りませんので、私からお答えさしていただきたいと思います。  ただいま先生のお話がございましたように、制度の運用いかんによりましては、確かにおっしゃいますようないろいろな影響を持つ問題がございますので、私どもといたしまして運用の実態について関心を持って見守ってまいりたいというふうに考えております。
  159. 中谷鉄也

    中谷委員 時間が過ぎたのでえらい恐縮ですが、一点だけ最高裁にお尋ねします。  お尋ねいたしたいのは次の点でございます。八海事件の問題については午前中岡澤委員のほうから問題の提起がありまして、私もあらためて別の日の委員会において裁判遅延あるいは裁判批判の問題等を論議させていただきたいと思いますが、いわゆる刑事補償の問題、ことにある段階においては死刑の判決を受けた阿藤君に対する補償の問題、これはもう言うまでもなしに原審の広島高等裁判所の補償に関する裁判によるものだと私は理解をいたしますけれども、最高裁判所といたしまして、いわゆるただ単に窃盗等で勾留されておって、そうして無罪になって刑事補償を受けるという場合と、死刑というふうなそういう精神的なたいへんな苦痛、そうしてそれが無罪になって刑事補償を受ける場合とは、おのずから刑事補償の日額、いわゆる認定等も、私は違ってきてしかるべきだと思うのです。こういうような点について、私はむしろこの種の事件について刑事補償法の許す最高額の刑事補償をするのが方針ではなかろうか、これはもちろん裁判官の決定に関することだろうと思いますけれども、最高裁の御方針を承りたい。以上で私の質問を終わりたいと思います。
  160. 佐藤千速

    ○佐藤最高裁判所長官代理者 まさに仰せのごとく裁判においてきめる事柄でございますので、私の立場で申し上げますことはおのずから限界がございますので、御了承いただきたいと思います。この事件におきましては、無罪の言い渡しをした裁判所が補償を決定いたすわけでございますので、最高裁判所と相なります。そうして補償の額を定めるにあたりましては、刑事補償法の四条に基づくものでございますので、先ほど仰せのごとく、単に日数ということだけではございませんで、やはり拘束の種類、それから期間の長短ももちろんでございますが、本人が受けた精神上の苦痛その他もろもろの事情を勘案して考慮すべきである、かようなことに相なっておるわけでございますので、もちろん将来刑事補償の請求がございますれば、最高裁判所といたしましてこの四条にのっとり適正なる補償額をきめられるものだというふうに考えておるわけでございます。
  161. 永田亮一

  162. 岡澤完治

    岡澤委員 いま中谷委員のほうから八海事件に関連した質問がございました。私もその質問から入らせていただくことにいたします。午前中も法務大臣をはじめとして法務省の関係者のほうに八海事件に関連した質問をさせてもらったわけでございますけれども、午後は主として最高裁のほうに御答弁をいただきたいと思います。  御承知のとおり、十月二十五日に八海事件の無罪判決がございました。昭和二十六年一月の事件でございまして、まさに十七年九カ月、しかも判決は七回にわたって二転、三転いたしたわけでございます。いま中谷委員のほうから刑事補償の関連の質問がございました。かりに、計算のしかたにもよりますけれども、一説では四人の被告人らに対して一千万以上の補償額が認められるのではないかというふうに報ぜられております。国民からいたしますと、結局その補償も国民の税金でまかなわれるということになるわけであります。また、裁判を御担当になりました裁判所の経費その他につきましても、この十七年間に使われた額は相当なものだろうと思います。あるいはまた、検察官、弁護人を通じまして、当事者間でこの事件のために、金銭的に見積もってもばく大な費用がかかっておるわけであります。もちろん金銭だけの問題ではございませんで、阿藤被告の場合は、死刑になる可能性も含めましてたいへんな人権問題が起こっておりますし、また家族の人権問題というものも、当然無視できないものがあろうかと思います。またかりに、判決とは反しまして、被告人らがもし犯行しておったというような場合に、なくなられました早川夫婦の霊がどうして報われようかという問題、あるいは遺族の方の問題等を考えますと、非常に大きな問題点を残した事件ではないかと思います。午前中も憲法三十七条の迅速公平な裁判と結びつけて質問をしたわけでございますけれども、国民からいたしますと、この憲法の公平な裁判所あるいは迅速な裁判ということに対する信頼を裏切られたという、法秩序あるいは憲法に対する不信というような面でも、金銭で償えない大きな課題を残したのではないかという見方もできるかと思います。その間、例の裁判批判の問題――元最高裁長官が、いわゆる雑音に耳をかすなという訓示をなさったという問題も含めまして、担当弁護人はもとより、かつてのこの事件の裁判官が著書をあらわされるというような事件もございました。これにつきましては、午前中も指摘をしたのでございますけれども、見方によりますと、もしこういう裁判批判あるいは世論の喚起がなかったならば、いわば最高裁長官の言われる雑音が生じておらなかったならば、あるいは被告人らの有罪が確定しておったかもしれないという心配も、国民としては持つのであります。そういう点を考えますと、この事件はもろもろの課題を残しておると申し上げてもいいかと思います。もちろん裁判官といえども人間でございますし、担当された検察官、起訴検察官も含めまして、私は必ずしも非難をする気持ちはございませんけれども、しかし、ここで先ほど申しました税金の負担その他を考えましても、国民としては何だか救われない気持ちを持っておるのは私は当然だろうと思います。そういたしますと、もしこの判決を生かし、あるいは被告人らの人権問題も含めました苦痛をいやし、あるいはまた、ある意味でなくなられました被害者の霊に報いる道として一つ考えられるのは、災いを転じて幸いとするという考え方ではないか。この裁判を通じて、なぜこの裁判がこういうふうに長引いたか、判決が転々としたか、どこに原因があったか。それは単に捜査官のミスなのか、あるいは公判上のミスなのか、あるいは刑事訴訟法に問題があるのか、そういう点をこの際最高裁判所としてもお考えいただきまして、この種の事件を再び起こさないように、起こす公算を少なくするように努力していただくということは、有意義なことだと私は思うわけでございます。この点について、最高裁判所の御見解を承りたいと思います。
  163. 佐藤千速

    ○佐藤最高裁判所長官代理者 まことに仰せのとおりでございます。私どもも大きな犠牲を払いまして生じましたこの前例、これは前例として否定することはできないわけでございまするが、それを今後のために生かしていかなければならないということは、重々考えておるわけでございます。
  164. 岡澤完治

    岡澤委員 きわめて抽象的なお答えでございます。もちろん判決があってまだ一週間もたっていないわけでありますから無理もないかと思いますけれども、具体的にお聞きしたいと思います。  先ほど指摘いたしました裁判批判につきまして、かつての最高裁長官の御見解を、いまも最高裁としては御堅持なさるのか。あるいは、もちろん批判のあり方にもよるかと思いますけれども、建設的な批判――私は、この場合も、担当裁判官の心証の上にも、あるいは手続の上でも、この裁判批判国民をあげての声が大きく判決に影響したということは否定できないのではないかと考えるわけでございまして、本件の場合は事実誤認についての批判でございますし、ことに結果的に見ましても建設的な批判であったと思うわけでございますが、こういう建設的な批判も間違いであるという御見解をお持ちなのかどうか、その辺についてもお答えいただきたいと思います。
  165. 佐藤千速

    ○佐藤最高裁判所長官代理者 お答えが抽象的に過ぎたということでございます。まさに言い渡し後間もなくでございますので、今後の問題として、私どもはこの事件を分析し、なぜこのようなことになったのかということを明らかにしたいと思っておりまするが、判決が出ました後新聞その他でいろいろな方が御指摘になっている事柄をあげてみましても、初動捜査に粗漏があるという問題にとどまらず、差し戻しのしかたの問題、いろいろな問題点というものが指摘されておるわけでございます。その中に、先ほどお話のございました裁判批判ということを取り上げておられる学者の方もおられたと思うのです。これも確かに御質問で仰せになりましたように、批判のしかたという問題と無関係ではとうていあり得ない問題だと思うのでありますが、要はその裁判の、法廷において審理しているその場が、今度は法廷はそっちのけになってしまうというか、社会においてそれが審理されると申しますか、問題にされてくるというような姿であるということになりますと、やはりそこにおのずから裁判批判というものの限界があるのではないかと考えざるを得ないのでございます。ことにそれが訴訟記録等を詳細に見ておりません場合、訴訟の関与者でございません場合には、判断の資料となるべき事柄について十分にそれが把握されておらぬということもございまするので、ここにやはりおのずから限界があるものであろうと、かように思うのでございます。
  166. 岡澤完治

    岡澤委員 どうも質問時間を二十分ということで制約を受けておりますので、これ以上問答を繰り返すことは避けたいと思いますが、午前中法務省の方にもお願いしたのでございますが、先ほど言いました災いを転じて幸いとするという意味からも、ぜひいま刑事局長お答えになりましたように、この公判を通じて最高裁として御検討あるべき問題を具体的に御研究いただいて、適当な機会にこの委員会を通じてでも国民にも知らせていただければありがたいと思います。ただ、いまの裁判批判についての御答弁を聞かしていただきますと、限界があるということはもちろん仰せになりましたが、適当な方法であれば裁判批判は許されるというふうな解釈もできる御答弁であったような気がいたしました。刑事局長のお立場といたしまして、これをそのままお聞きしていいのかどうかという問題もあります。これはわりと大きな影響力のある問題かと思いますので、この問題を含めて、ぜひ適当な機会に見解を明らかにしていただきたい。あわせまして、午前中も指摘したのでございますけれども、公判中に証拠品が紛失したというようなケースもあったかに聞いております。そういう問題も含め、あるいはいわゆる上告審の事実審理の限界についても、いまの刑訴法のたてまえでいいのかという問題についても、一般論としてぜひ最高裁の御見解を明らかにしていただきたい。きょうはこの程度で八海事件に関連しては質問を終わらせていただきます。  次に、警察官の大学立ち入りの問題につきまして、これも午前中法務大臣には質問をしたわけでございますが、警察庁川島警備局長もお見えでございますので……。この問題について、けさの御答弁で法務大臣は、大学には治外法権はないのだということを言明されながらも、一方で大学自治との関連におきましてやはり非常に消極的な態度が表明されたわけであります。私は、法秩序を維持し、あるいは集団的な無力行動を押え、あるいは犯罪を有効適切に摘発し、あるいは適当な手続をとるということは、検察官あるいは捜査官としての責務だと思うわけであります。これを怠ることは国民に対するいわば幅広い意味での背任ではないかとさえ考えるわけでありますけれども、現在の実際の警察当局のおとりになる態度は、一般の建築物構内にお入りになる場合と大学の場合とは全く違うような印象を国民の一人として持ちますし、これではたして社会的な秩序が維持されるのか、大学の構成員も含めまして、基本的人権、人体、生命が守られるのかどうかという心配を持つわけであります。また、現に局長の奉職になっております警察庁警察官が一命を失っておられるという事実もあるわけでございますし、午前中も指摘いたしましたように、国民に対する報道というのは民主国家においてはきわめて大切な要素でございますけれども、その報道担当者が暴行を受けるという事実も発生いたしておりますし、私自身具体的にも存じておりますが、ある大学におきまして窃盗事件が続発をしておる。ところが、実際問題として警察官の御介入、捜査は及ばない、遠慮しておられるというようなケースもあるようであります。また、同じ全学連の学生組織の中で傷害事件に該当するような紛争も学内で起こっておる、これも無視されておる。また、大学の職員の身体とかあるいは言論が抑圧されるような雰囲気が実際に大学では起こっておるのに、無視されておる。厳密な意味で私は、基本的な人権が確保されており、平穏な秩序が維持されておるとは認めがたい状態があるにかかわらず、いわゆる大学自治とか学問の自由という美名のもとに、実際は大学の自治とは何の関係もなく基本的な人権が無視されて、ある意味からいいますと捜査機関の責任を十分に全うしておられないというようなきらいがあるように私は信じますので、この辺についての警備局長としての御見解を聞きたいと思います。
  167. 川島広守

    川島説明員 午前中法務大臣からもお答えがありましたように、警察側の大学側に対します立ち入りの基本的な態度といたしましては、いままでもしばしばお答えをした経緯もございますけれども、あくまでも大学が治外法権の場ではないという基本的な態度は、従来から変わっておらないわけでございます。ただ、いまお尋ねの中に御指摘がございましたように、それでは現実問題として幾つかのそういう事案があるではないかというお尋ねでございますが、これはもう残念ながら御指摘のとおりでございます。たとえて申しますれば、現在でも、いま数字を正確に覚えておりませんけれども、三十有幾つかの大学で、いろいろな派閥関係の対立からなぐり合いが行なわれて、相当なけが人が出ておる、そういうようなことも実は承知いたしております。この問題につきましては、現在でも依然捜査を続けておるわけでございますけれども、被害申告についても、全然被害申告がない、あるいは学校側の協力を極力得るように努力してはまいっておるわけでございますけれども、これまたわれわれの期待に及ばないという経緯もございまして、なかなか捜査が難航しているのが残念ながら現実であります。  それからまた、御指摘のように、立ち入りにつきましては、従来から一応の慣行といたしまして、大学の側に同意を求めるとかいうことではなくて、連絡をする。緊急の場合にはもちろん入って逮捕した事件もたくさんあるわけでございますし、その場合にも、大学自治のたてまえは重んじて、事後に連絡するということはもちろんでございます。こういうようなある意味でのよい慣行についてはそのまま従来の方針どおりで私はよろしいかと思いますけれども、ただ御指摘のとおりのような事案が今後どんどんふえてまいり、しかも警察官がいかにも大学に入れないというような印象を国民全般に受け取られることは、確かに好ましくないことでございますから、これはあくまでも学校当局の立場でいろんないわば管理能力を十分に発揮していただいて、事態が円満に運ぶことが何よりも理想的ではございますけれども、すべての事柄がさように運ばないことは、経験に徴しても明らかでございます。したがって、今後警察側の基本的な方針としては、従来の方針を変えるつもりは毛頭ございませんけれども、今後とも警察側といたしましてはあくまでも治外法権の場ではないという基本的な立場を堅持しながら、いまお尋ねのような点については、できる限り御要望に沿えるようなことでいろいろ関係当局とも協力してまいりたい、こういう考えでございます。
  168. 岡澤完治

    岡澤委員 いまの警備局長お答えは、抽象的にはすなおに聞けるのですけれども、具体的な問題になると、治外法権はない、法務大臣お答えを踏襲されておりながら、警察官の大学捜索立ち入りについてはいい慣行だということを前提にされて、おそらく同意がなければ、あるいは要請がなければ立ち入らないということを守っていきたいというお答えだと思うのです。それではやっぱり矛盾するのではないか。もっとはっきりと学閥の自由とか、あるいは教授の研究の自由とか、これに関連する場合は、それこそ憲法の立場からいたしましても、学問の本質からいたしましても、警察官が介入するということは絶対に避けていただきたいと思いますけれども、そうではない現在の各大学に起こっております紛争、刑事事件、これの捜索に、同意がなければ、あるいは要請がなければという態度は、あまりにもひきょうではないか。ある意味では勇気がないのではないか。また先ほど午前中も指摘いたしましたように、東大の総長が表明しております見解というのは間違っておるということを、はっきりと反省を求めていただくということのほうが必要ではないか。私は決して警察官の不当な介入をお願いするわけではございませんけれども、不当ではない、正当な責任を果たすという意味からき然たる態度をお願いいたしたいと思うわけであります。  文部省お見えでございますか。――実はきょう文部大臣に来ていただきたかったわけであります。と申しますのは、この大学紛争の問題につきましては、刑事問題あるいは治安問題として解決するよりも、大学制度の本質からお尋ねをいたしたいし、また本質に触れた解決こそ必要だと思ったわけでありますが、局長大臣もお見えでないようでございますので残念でございますけれども、それでは清水審議官にお尋ねいたします。  国立大学の大学生一人当たりに対して一年間使われる国民の税金、一人当たりの国庫の負担額というものがわかりましたら、お答えいただきたいと思います。
  169. 清水成之

    清水説明員 ただいまの点でございますが、国立大学学生一人当たり、これは四十一年度の決算からはじいたものでありますが、四十六万三千六百八十一円、平均いたしますと、こういうようになっております。
  170. 岡澤完治

    岡澤委員 いま審議官のお答えによりますと、四十一年度で国立大学の学生一人当たりに対して四十六万の税金が使われておるという事実が明らかにされました。おそらく四十二年度、四十三年度は、それを上回ることはあっても下回らないと思います。それだけ国民の貴重な血税を使っております大学生が、御承知のような行動を起こしまして、善良な国民、市民にもたいへんな迷惑をかけていることは、ここで指摘するまでもないかと思います。この問題の解決は、もちろん文部省だけの責任という気持ちはさらさらございませんけれども、やはりその背景、その原因というものをお互いにこの際検討をして、何とかこういう間違った学生、あるいは税金が不当に、あるいはむだに、あるいは有害に使われるということについては、きびしく反省をし、検討をしてみる必要があろうかと思います。そういう点から、なぜああいう学生が生まれたかということについては、もちろんいろいろ制度上その他の問題が考えられると思いますけれども、一つは中学校あるいは高等学校における社会科教育の誤りと申しますか、偏向と申しますか、これが原因しているように私個人としては考えるわけでございますけれども、この点については文部省としてはいかがお考えになっておられるかという点が一点と、もちろん社会科教育を担当するのは社会科の中学、高等学校の教師でございますが、その教師の思想傾向あるいは教員養成の問題、教員の資格の問題等とも結びつけて考えざるを得ないと思います。これらにつきまして、文部省の御見解、御意見がありましたら、この際明らかにしていただきたいと思います。
  171. 清水成之

    清水説明員 いま先生から御指摘ございましたけれども、学生運動の原因なり背景につきましては、非常に多岐なものがあろうと思います。それからまた教育という面から着目しましても、またいろんな要素があると私どもも感じております。  その一つといたしまして、これは大学人も申しておることでございますし、私どもも反省をいたしておる点でございますが、高等学校以下の段階におきます教育の影響、こういうことも十分反省をしなければならぬ、かように考えております。指摘をされておりますし、私どもも感じておるのでございますが、一人一人の学生の自主的な判断力に欠ける点がある、こういう点は、単に大学教育だけではなしに、高校以下の段階の積み重ねもあるんじゃないか、こういう点がございます。  なお、いまお話がございました教員養成あるいは教員免許の点におきまして、教員としての使命感、あるいは教育方法、技術、こういうような点につきましても必ずしも十分でないものがあるということで、教員養成につきましては教育職員養成審議会に、教員養成のあり方につきまして目下御検討をいただいておる最中でございます。  なお、社会科、政治科等の問題につきまして、初中局から高校教育課長が参っておりますので、必要があれば、そういう中身あるいは今後の改善方法につきまして、お答えをいたしたい、かように思います。
  172. 岡澤完治

    岡澤委員 それではせっかく望月課長がお見えでございますから、課長のほうから先ほど質問に対するお答えがございましたら、お聞きをして私の質問を終わります。
  173. 望月哲太郎

    ○望月説明員 中学校、高等学校におきます社会科の教育におきまして、御承知のように教育基本法第八条の、良識ある公民たるに必要な政治的教養をつちかうという観点から、いろいろな配慮を行なってまいっております。そして現行の学習指導要領におきましても、中学校では第三学年の政治・経済・社会的分野、高等学校では同じく第三学年の政治・経済の中において、生徒の発達段階に応じた指導を行なっておるわけでございますが、実際の教育の現場にどういうふうにそれが行なわれているかということを見てみますと、知的な内容を取り扱うことに重点が置かれまして、実際にいわゆる民主社会における公民たるにふさわしい態度なり考え方というものを養うという面がややもすると軽く考えられるということもございますので、今後ともこういう点につきましては、十分適当な指導が行なわれるように文部省といたしましても配慮をしてまいりたいと思っておるわけでございます。  なお、先般教育課程審議会から中学校の教育課程の改善につきまして御答申があったわけでございますけれども、その答申の内容におきましても、「国民主権のもとにおける公民のあり方、特に自由と責任、権利と義務についての正しい認識を養う」ということを強調されておりますので、今回の改定におきましては、十分その点を配慮してまいりたいと思っております。  高等学校の改定につきましては、中学校の改定に続きまして現在教育課程審議会で御審議をいただいておるわけでございますけれども、中学校と高等学校との教育の関連というものを十分勘案しながら適当な結論を出すということで、鋭意御審議を続けていただいておるところでございます。
  174. 岡澤完治

    岡澤委員 終わります。
  175. 永田亮一

    永田委員長 山田太郎君。
  176. 山田太郎

    ○山田(太)委員 私は、警察庁川島警備局長に二、三点、あとは主として法務省の勝尾矯正局長にお伺いしたいと思います。  そこで、最初にお断わり申し上げたいことは、けさ列車事故で遅刻してきたものですから、前にもう御答弁があったやもしれませんが、その点は重複のある点がもしあったときには、それはかんべんしていただくといたしまして、まず新聞報道等によりますと、このたびの騒乱罪適用が、前もって計画されたのじゃないか、そのような記事も多々あることは御存じのことと思います。そこで、まずその記事が問題点というよりも、その実際がどうであったかということが一番心配なわけです。この前の佐世保事件のときには、凶器準備集合罪を適用して、飯田橋で前もって規制した場合もあります。このたびはそれが適用できなかったという点もあるのかと思いますが、前もってなぜ規制できなかったのだろうかという点が、まず一番残念な点でございます。それからもう一つは、群衆を分離する作戦といいますか、行動といいますか、それに対して非常に不手ぎわだったのではないか。     〔委員長退席、大竹委員長代理着席〕 あの新宿駅の構内に三派全学連の人々を入れてしまった、そして多くの汽車や電車をとめてしまった、あれはどうあっても一番大きな失点ではないかと思う。その点について、なぜそれができなかったのか、あるいはどのような規制の手を打ったのだけれどもそれができなかったのか、これからについてはどのような規制をしていくか、言えない点もあるかもしれませんが、言える範囲内でその点をお伺いしたいと思います。
  177. 川島広守

    川島説明員 ただいまお尋ねの第一点は、事前に騒乱状態を意図したではないかというお尋ねでありますが、この問題につきましては、今回の騒擾罪捜査の眼目でございまして、現在捜査を鋭意進めておりますので、ただいまこの段階では申し上げる段階ではなかろうと思います。御了承いただきたいと思います。  第二の問題は、新宿に集まる前に事前に適当な場所でなぜ規制できなかったのかというお尋ねかと存じます。この問題につきましては午前中もお答えをいたした次第でございますけれども、今回の場合は、御承知のとおりに、全国的な規模でいわゆる一〇・二一国際反戦デーという形で闘争が行なわれたわけでございます。東京都内について申しますと、おおむね三十五、六カ所に及ぶ場所でそれぞれ集会なりあるいはデモなり、そういう大衆行動が行なわれたわけでございます。その中で、特にいわゆる三派系全学連及び一部の反戦青年委員会というようなものの集団行動が、当初の申請でも四カ所ぐらいに分かれて行なわれる予定であったわけでございますが、実際起こりましたのは、それぞれ国会なり、あるいは防衛庁なり、あるいは麹町警察なり、あるいはアメリカ大使館なり、あるいは最終的には新宿でございますけれども、以上のように数カ所において同時多発的な問題が起こった。  そこで、お尋ねの事前規制ができなかったかということでございますが、これはそれぞれわれわれといたしましても、現場の警備戦術といたしましていろいろ事前にも実は検討を加えた次第でございますけれども、たとえて申しますと、お茶の水というふうな駅でございますれば、一般多数の学生も巻き込むおそれもございまするし、また一般付近の住民の方々にも何がしかの迷惑をかけるような結果にもなる。そういうようなことで、場所の選定等についてもいろいろ検討いたした経緯もございます。さらにまた、これも繰り返しになりますが、場所が幾つもの場所になりましたので、一応部隊固定配置をそれぞれとったのでございます。最終的に場所の選定といたしましては、一応新宿に至ります間、防衛庁では二百十五名、それから麹町警察が五十一名、国会周辺で五十四名、それぞれ大量の現行犯検挙をいたしておるわけでございますけれども、新宿に至ります間に、それぞれこちら側として警備の現場としてかっこうな場所を選んで、実はそういうことをやっていたのでございますが、結果においては、ただいまお尋ねのような結果になってしまったわけでございます。そこで、新宿の現場におきましては、おおむね八時四、五十分ころであったと思いますけれども、東口に集まりました学生を中心とした一団の集団暴力をもって、国鉄がつくりました鉄さくが突き破られ、その結果線路に上がられるというようなことでございます。上がりましてからも、いわゆる騒擾罪適用に踏み切りますまでに、威力業務妨害罪なりあるいは建造物侵入なり、そういうことで九十一名の検挙を実は新宿においても行なっておるわけでございます。結果的には、申しましたように、規制といたしましても前後数回にわたって線路上でも規制を行なったのでございますが、何せ御案内のとおりのような、非常に足場の悪い、いわば環境がたいへんよろしくない場所でございますので、集団暴力をふるわれてしまったという結果が起こったわけでございます。  問題は将来の問題でございますけれども、いま御指摘にございましたように、今後の問題といたしましては、東京都内いずれの場所にいたしましても、いわゆるお尋ねの群衆というものが必ず随伴してまいる。これをいま申しましたいわゆる集団暴力というものとどのようにして分離するかということが、これからのわれわれの大きな課題であると同時に、いま最も頭を悩ましておる問題でございます。したがって、これからの問題も、抽象的ではございますけれども、各関係方面の御協力ももちろん得まして、この群衆というものが警備現場に近づかないように御協力を賜わっていきたい、これが抽象的ではございますが、今後の対策でございます。いずれにいたしましても、お尋ねのとおりに、一般にたいへん不安をお与えしたことはまことに申しわけないと存ずるわけでございます。あくまでも一般市民の方々のいわば健全な批判、彼ら集団暴力をほしいままにしておる集団の行動に対しまして、きびしい批判をするような世論を喚起していただいて、これと相まって、われわれ警備の現場においていろいろな問題を今後さらに検討して、国民一般の不安を取り除くように努力してまいりたい、こういうように考える次第でございます。
  178. 山田太郎

    ○山田(太)委員 局長の御答弁の、抽象的なことしか甘えませんが、あるいは抽象的な答弁ですがとおっしゃったかもしれませんが、それは次の警備体制のために言えないとおっしゃったのか、その辺をもう一度明確にしていただきたいと思います。もう計画はあるのだけれども……。
  179. 川島広守

    川島説明員 警備現場におきますこちらのとるべき戦術につきましては、実はわれわれのいわば手のうちでございますので、そういう点を加味して申し上げた次第でございます。
  180. 山田太郎

    ○山田(太)委員 したがって、次に、もし万一このようなことがあるときには、このような二の舞いは踏まないという御確信があるやに承っていいでしょうか。
  181. 川島広守

    川島説明員 そのように御了解していただきたいと思います。
  182. 山田太郎

    ○山田(太)委員 そこで、その点はでは安心させていただくといたしまして、もう二点ありますが、この騒擾罪適用せざるを得なかったということは、警備体制としては失敗であった、あるいは成功であったとはこれは言えないと思うのですが、その点の見解はどうでしょう。
  183. 川島広守

    川島説明員 午前中もお答えした次第でございますが、警察側といたしましては、結果的に騒乱罪適用ということで一般国民の間にも多大な不安を与える結果になりましたことは、お尋ねのとおりでございます。したがいまして、いままでもお答えいたしましたが、事前措置により予防的な効果を期待する、ないしはまた現場における戦術というものを十二分に駆使をして、そのような結果が生まれないことが何より理想的であり、望ましいことでございます。したがいまして、いま申しましたように、将来につきましては、そういう意味合いで、今回の新宿におけるわれわれの警備現場戦術を含めまして、さまざまな点で反省する点もございまするので、それを十分に検討して今後に生かしてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  184. 山田太郎

    ○山田(太)委員 では再び騒擾罪適用しなくても済むようにこれを心から願って、そうしてそれから派生した問題を一点お伺いしたいと思います。  これは私の知り合いでございますが、あのとき電車がとまっちゃった。したがって、帰ろうに帰れない。新宿でおりざるを得なかった。そうすると、やはり多くの人が集まるところに寄っていきたくなるのは人間の心理です。ところが、たまたま機動隊のあのたてによって巻き添えを食ったといいますか、あれは防ぐのでなしに、たてを縦になぐることができるらしい。そうして頭に傷をしておる、こういう知人がおります。そして、いままで警察なりあるいは機動隊に対して持っておった感情ががらりと変わってしまっておる。これは治安の上からいっても、あるいはほんとうに国民を守る立場からいっても――これは一人だけじゃないはずなんです。おそらくあの多くの人数の中には数多くの人があったと思うのです。したがって、群衆分離のことと関連はいたしますが、これは当然予測もされ、局長としてもそういう方々が多数あるのじゃないかなという危惧の念は持っていらっしゃると思う。そこで、そういう方に対して警察としてはどのような処置をしているかという点を最後にお伺いしておきたいと思います。
  185. 川島広守

    川島説明員 ただいま初めてお話を承ったわけでございますけれども、もしそのような事実が現場であったとしますならば、まことに遺憾に存ずる次第でございます。その方々の氏名その他を私に教えていただけるものならば、あるいはまた事実関係をさらに綿密に現場について調査しました上で適当な措置考えたい、こういうように思います。
  186. 山田太郎

    ○山田(太)委員 以上で警備局長への質問は終わります。  次に、法務省の勝尾矯正局長にお伺いします。  実は法務大臣の御答弁の中に、拘置所あるいは刑務所に収容されている人々の人権あるいは健康管理といいますか、衛生管理というものについては、ことに会議において十分注意を与えておる、そういう答弁があったわけです。また当然そうなければならぬ問題ですね。したがって、法務大臣の答弁をそのまま受け取っておくといたしまして、どのような具体的な措置が講ぜられたか、あるいはどのような熱意をもってその措置が講ぜられたかは、いまここでは論じません。そのまま受け取っておきます。  そこで、実はきのうたまたま用件がありまして、そのついでに大阪の拘置所の視察をさせていただきました。ところが、これでいまの法務大臣の言われたことばが事実の上で実践されておるのだろうか。人道の上からもあるいは人権の上からも非常に危惧の念を抱かざるを得なかった、そういうことを如実にこの目で見、また確かめてきたわけであります。それはお役人さんはなんとかかんとか言いのがれしていらっしゃいます。しかし、私は、事実中へ収容されている人々とも話しました。したがって、ただ大阪拘置所からの報告をうのみにした答弁をなさらないでもらいたい、あるいはこのように報告がきておりますとそのままの答弁をしてもらったのでは、これは誠意のない答弁と言わざるを得ないし、またそのようなことがあってはならぬと思います。  そこで、参考のために、これは大阪の朝日新聞ですが、このように出ております。「「大阪拘置所にはいっている未決囚が、淀川の水を簡易浄化しただけの雑用水を飲料水として飲まされている」と、十九日午後の大阪市議会決算委員会で公明党が追及した。」簡略に読みますが、「公明党では、人権問題として、府議会、国会でも追及する構えである。」これは新聞の記事ですが、「同党の質問によると、拘置所内の炊事、飲料水は上水道を使っているが、所内の水洗便所掃除用などの雑用水は、近くを流れる淀川の水を簡易浄化して使っている。ところが、未決囚が収監されている部屋に入っている水道せんは、この雑用水だけ。」ほかにはないというのです。「したがって、ノドが乾いたときは雑用水を飲むより方法はない、という。同拘置所は、さる三十八年十二月に完成と同時に所内専用水道として、この簡易水道をつくった。拘置所用度課の話によると、工事がむずかしかったため、未決囚房には専用水道だけしか入れなかった。この水は、淀川の水を塩素滅菌し、毎月、水質検査もして衛生的には飲めるようにはしているが、未決囚には「飲んではいけない」と注意していた。しかし、洗面用にこの水を使わせているため、「飲んでいる場合もある」といっている。同党は「淀川の水の不潔さは、だれもがよく「知っており、簡単な浄化だけで飲料水として使わせるのは、人権を無視した差別だ」といっている。」これは朝日の大阪の記事ですが、この点について、先ほど申し上げたように、現場の役人さんははっきりしないところがあるですね。当然前もって法務省のほうにも拘置所へ行かしてもらいますと連絡もし、また法務省のほうにも報告してある、そういうことでございましたので、局長からもこれについての答弁、まずどう思われるか、言いのがれでなしに御答弁いただきたいと思います。
  187. 勝尾鐐三

    ○勝尾説明員 大阪拘置所の水の問題でございますが、大阪拘置所が現在の都島に移転をいたしまして、運用を開始しましたのは昭和三十八年の初めだろうと思います。したがいまして、この給水の設備はその前年の昭和三十七年度に完成をいたしております。それで、大阪拘置所に限らず、矯正施設全般について水の問題をどのように解決していくかということは、私のほうにとっては施設の最も重要な問題点でございます。従来全国的に施設の水の問題を見てまいりますと、上水道のあるところと、それからやはり地理的な関係で上水道を得られないところがございます。それで、上水道を得られないところにつきましては、さく井で飲料的の水が獲得できるということが敷地を選ぶ際の最も重要なポイントにいたしております。したがいまして、そういう水の点の適地を得て建てられているところ、これについては問題が一応なしに、またやむを得ない処置だと思っております。問題は、上水道があるところについてどう問題を解決していくかということでございますが、従来のやり方は、やはり上水道と、それからさく井、あるいはさく井が思わしくないときには近くの川の水、この両方の併用がほとんどでございます。その理由については、いろいろ私のほうで検討をいたしておりますが、一つは、上水道だけでほかの設備を持たないという場合に、万一その上水道が故障その他で停止した場合に、集団管理をやっている関係で、水の問題は直接衆情に影響をするということで、上水道のほかに、やはりさく井ないし川の水を取っているというのが一つの理由であろうかと思います。それともう一つは、これは金の問題で片づくことでございますが、さく井あるいは専用水道、それから上水道を使う場合の国費の節約という観点から、両者が併用されているのではなかろうかと思っております。  ただ、私といたしましては、今後上水道を得られるところにつきましては、原則として上水道を完全に使えるようにする。ただし、施設の性格上、予備的にやはり何らかのさく井その他の装置をあわせて持っているというのが理想的ではなかろうか、このように考えております。  大阪拘置所の水の問題につきましては、当時いろいろ検討がなされたようでございますが、さく井が思わしくない。それと、やはりおそらく国費の節約という問題があったのではないかと思いますが、淀川の水を取ることについて、大阪府の公衆衛生研究所その他の意見を聞いて、一部上水道、一部淀川の原水ということで設備をつくって今日まで至っている、このように理解いたしております。現在までのところ、病人が出たとかあるいはそのために保健衛生上問題があったとかいうことは聞いておりませんが、最近の各地の川の水の汚染状況でございますが、これは東京ももちろんでございますが、地方の川でも、これまではきれいであったのが次第に汚染されているというところが多いようでございます。したがいまして、大阪拘置所につきましても、淀川の状況というものが、保健衛生上危惧の念が深まってくるという状況になるのではないかと思っておりますので、そのような事態が起きる前に適当な処置をとらなければならぬ。と申しますのは、上水道に切りかえるタイミングを誤らないようにしなければいけないということで、私どもでは検討をいたしております。
  188. 山田太郎

    ○山田(太)委員 局長さんの御答弁は、国費の節約のためになることならばどんな水を飲ましてもいい、当然そういうおつもりじゃなかったと思うのですが、一応念のために。
  189. 勝尾鐐三

    ○勝尾説明員 そういうつもりではございません。
  190. 山田太郎

    ○山田(太)委員 もちろん当然だと思うのですが、最近、阿賀野川事件だとか、あるいは水俣の事件だとかあるいは神通川の事件だとか、非常に問題になっております。ことにこれは新淀川と違いまして、当然局長さん御承知だと思うのですが、淀川です。しかもこの取り水口は、この拘置所を設置したときの取り水口じゃないのです。これが大阪拘置所です。この赤線は事実見てきたところです。ちゃんと各独房に飲まざるを得ないような配置になっている。しかも上水道がないんじゃない。いま併用とおっしゃいましたが、ちゃんと上水道も入っております。そこで問題は、淀川の水系に水銀が出ておるわけです。これはすぐ腹をくだすとかあるいはすぐ変化が出るとか、そういうものじゃないのです。蓄積されてくるのです。したがって、官舎に入っている方々にも聞きましたが、ふろに使うだけだ、子供にも厳重に注意しています、ただふろに使うだけ、そのようにしております。それを、中へ入っている収容者に聞きますと、飲んでいます。飲んではいけないと言われております。しかし、これしかないのです。あとにはきたないポリエチレンのお茶入れがあるのですが、これは普通じゃ飲めないようなきたないやつです。これは各部屋にあります。入れものを見ただけでもきたないやつ。それで一応お茶を飲むように言っております。ということは、表面上は通ります。だけれども、実際においてはこの水を飲んでおります。したがって、やはり蓄積される大きな危険性があるわけです。これが一点。  それからもう一つは、府の水道局と打ち合わせをしてというお話もありましたが、一番最初は知りませんが、それから後はただの一度も検査してもらっておりません。市の水道局に対しても、ここのお役人さんは検査してもらっていると言うのですが、事実は検査してもらっておりません。ただ表面をつくろって、事実は雑用水に近い。表面上専用水道というだけであって、雑用水に近いものを飲ましておる。これに対しての処置をタイミングを誤らないようにということですが、それだけでは済まされない問題ですね。これは浄化装置も非常にちゃちなものです。見にいって驚きます。これだけですし、とてもじゃない、どろどろです。それで塩素を落として滅菌はしています。それで飲用にします。だけれども、自由を拘束されている人々ですから何も言わないとは思いますが、しかし、ことに拘置所であろうとあるいは刑がきまって刑を受けている刑務所であろうと、これは当然われわれの立場として、人道の立場からも、生命の尊重の立場からも、これに対しての処置を局長から明確に聞きたいと思うのです。
  191. 勝尾鐐三

    ○勝尾説明員 私のほうで承知いたしておりますのは、水質につきましては、毎月一回大阪府立公衆衛生研究所の検査を受けている、それから色の濁りだとかあるいは殺菌の残留効果等につきましては、大阪拘置所の水道技術管理者の法務技官が毎日それを見ている、このように承知いたしております。
  192. 山田太郎

    ○山田(太)委員 私もそう聞いたのです。そこで、事実行って確めたのです。水質試験所ともあろうものが、よくこれを飲料水として――専用水道というのは大体飲料に適さなければいけないのですが、よくこれを飲料に適するとして毎月の水質検査で通しているな、あまりにも不可解であり、あまりにもふしぎであると思うのですが、一応はそのことばだけは納得し、信用したのですが、しかし、事実はあまりにもすごいですから、もう一ぺん確めてください。まだおいでになっておりません。だれが言うたとかそういうことは言わないでいただきたい。個人的な責任でぼくは言っているわけじゃないのですから。この点は必ずお願いします。それが二点。そういう事実があります。  また同時に、大阪市の水道局、あそこは設備が完備しておりますが、あの淀川のこの拘置所の取り水口、あの場所をいま専用水道として許可できますかと聞きましたら、この拘置所は、はるか十何年か前、ずっと非常にきれいなときのことです、とてもじゃないが、いま専用水道の許可なんかできるものじゃありません、そのような答えがありました。別に局長の怠慢を追及するために言うているのではないのです。この点はわかってくださいよ。それが眼目じゃないのです。ここを直してあげてほしいのです。それに対する答えをいただきます。
  193. 勝尾鐐三

    ○勝尾説明員 私のほうは、実は毎月検査を受けているというように承知をしていたのが一つでございます。  それから、検査につきましては、厚生省の基準だとかいろいろ基準があるようでございますが、一応その基準にのっとって飲料的の検査も受けているということで、科学的には一応私は納得をいたしておるのでございますが、約一月くらい前に私向こうへ行く機会がございまして、その浄化装置というのをちゃんと見てまいっております。それで、昭和三十七年当時の金で約千七、八百万円かけた装置でございまして、相当な装置だろう、こう思っていたのでございますが、おっしゃられますように、浄化装置に非常に汚物がついていると申しますか、沈でん槽の石等が非常にまっ黒になっているということで、現在は何とかこれでまかなっておりますが、このような状況が続きますと、この浄化装置で完全に行なうためには、何か掃除でございますとか、これをかなりひんぱんにやらなければならないようになるというような話も聞いております。したがいまして、私この席でいま直ちにすぐこれを直しますということは言明いたしかねますが、事は水の問題でございますので、関係の係と直ちに十分意見の調整をとりまして、ひとつ処置をするという程度のことをこの席で申し上げたいと思います。
  194. 山田太郎

    ○山田(太)委員 時間の関係もありますが、あの便器、それから受け皿、ごらんになりましたか、まっかですぞ。きょうはいまのその答弁で私が引き下がるというつもりはないのです。かえてもらわなければいけない、またかえなければこれは人道上ゆゆしき問題だし、人権の上からも、また私どもの立場からしても、これをただ関係者と打ち合わせをして、そうして何らかの処置をとりますという答弁で、これから後ずっと済ますわけにはまいりません。ですから、適切な処置を早くとっていただきたい。これを要望し、もう一ぺんそれに対しての答弁をしてください。
  195. 勝尾鐐三

    ○勝尾説明員 十分急いで協議をいたしまして、結論を出して善処するようにいたします。
  196. 山田太郎

    ○山田(太)委員 終わります。
  197. 大竹太郎

    ○大竹委員長代理 松本君。
  198. 松本善明

    ○松本(善)委員 警察庁にお聞きしたいわけですけれども、本日の委員会の中でいろいろ新宿事件についての答弁がされておる。この事件については、もうあらかじめ新宿でこういうことをやるということをトロッキスト集団は広言していたということも答弁をされましたし、それから警察のほうでは事前情報を十分とっていたし、その情報と違った行動が行なわれたというわけでもないということであるとするならば、これは警備方針としては、こういうような事態未然に防止するということのための準備としては十分にできたはずであるにもかかわらず、こういう事件が起こったということについては、方々から批判があるし、これはなれ合いである、あるいは手心を加えておる、普通の報道機関でもいろいろな形の疑問が提起をされておると思います。  これについて具体的に何点かお聞きしたいわけですけれども、まず第一に、新宿駅の東口でトロッキスト集団が構内の線路上に入る直前九時ごろ、線路上にいた機動隊が一斉に引き上げた。これはテレビを見ていた人もふしぎに思った。あそこで防げばいいはずであるとだれでも言っておったのですが、なぜこういうことになったのか、御説明をいただきたい。
  199. 川島広守

    川島説明員 ごもっともな質問かと思いますけれども、現場の実際を申し上げますと、九時過ぎに第一回、あわせますと二回目でございますけれども、規制をしたのでございますが、あそこの規制は、もう雨あられのように飛んでくる石によりまして、警察官の側の負傷者も非常に多発いたしまして、けさほども御報告いたしましたように、当時現場があちこちに散っておりましたので、本来新宿にあるべき部隊の数というのは大きく減っておったわけであります。しかし、あの場合には、あれ以上規制を続けることに相なりますと、こちら側のけが人が続出するというような現場の判断で、一たん部隊をうしろに下げた次第でございます。
  200. 松本善明

    ○松本(善)委員 この時期に新宿にいた警察官は何人ですか、機動隊と機動隊でない警察官も含めて。
  201. 川島広守

    川島説明員 機動隊でない警察官全部を含めて、いま正確に数字を覚えておりませんが、三千を若干上回っておったかと思います。
  202. 松本善明

    ○松本(善)委員 機動隊はどのくらいですか。
  203. 川島広守

    川島説明員 そのうち機動隊は二個機動でございますから、半分を若干欠けておったかと思います。
  204. 松本善明

    ○松本(善)委員 東京で動員できる機動隊の数は全部で幾らですか。
  205. 川島広守

    川島説明員 機動隊は、現状においては機動隊そのものは二千五百でございますけれども、方機その他を含めて三千を動員できたわけでございます。いまお尋ねの機動隊だけとすればそれだけの数でございます。
  206. 松本善明

    ○松本(善)委員 この時期に千五百いたということですが、一番激しく行なわれた、いろいろな事件が起こった新宿駅の四番線から七番線のホームには、機動隊は四百人しかいない、そして大部分は地下にいたということが報道をされております。これは一体どういう事態なのでしょうか。
  207. 川島広守

    川島説明員 機動隊の地下におった時は、時間的には絶えず流動いたしておりますから、いまの新聞の報道はどの時点かはっきりいたしませんけれども、地下を通りまして線路上に出られるという道も御案内のとおりございまするから、デモ隊の流動に従って部隊も動いております。いずれにいたしましても、先ほどお話ししたように、新宿におりました三千何がしかの当時の部隊は、一たん態勢を整えまして、そして第三回目の規制に入ろうというふうにして、入りましたのが十時過ぎてからでございましたから、したがって、第三回目は時間的には、そういうような地下道を通って上に上がるという事態もあったかもしれませんし、あるいはまた地下道から上がってくる群衆を阻止するという役目、機能を果たすために、その時間そこにおった部隊もあったかもしれません。
  208. 松本善明

    ○松本(善)委員 零時十五分に至るまで大部分の機動隊は地下にいて動かなかった、こういうことが言われております。これは一体どういうことなのですか。そのために読売新聞の報道では、「駅長室付近で、金網越しに警戒する鉄道公安職員たちは、繰り返される暴挙になすすべもなく「学生の数に比べ、警官が少な過ぎる」とくちびるをかみ、くやしさをかみしめていた。」というような報道をしておるわけであります。事前にわかっていて、しかも相当数の警官が千五百おったにもかかわらずそういう事態が起こってくるというのは、とうてい普通の常識では考えられないのです。その点はどういう説明をされますか。
  209. 川島広守

    川島説明員 普通の常識とおっしゃいますけれども、現場の数だけでの問題でございませんで、けさほども申しましたけれども、あの場合には、防衛庁が終わりましたのがおおむね午後十時五十分程度の時間で、国会周辺もおおむね同時刻に事態が一応沈静に向かっており、そこで、急遽防衛庁に派遣されました機動隊と国会周辺警備に当たっておりました機動隊を急ぎ新宿に集めたわけでございます。転用したわけです。これが新宿に着きましたのがおおむね十一時を回っておりました時点でございまして、したがって、こちら側としては、あのままの状態において石が無尽蔵に飛んでくる、線路上に学生最高二千五百という数字になったわけでありますが、そういうような事態において、あの劣勢の部隊で、こちらは御案内のとおりに石を防ぐ方便としてはいわゆるガスとたてしかないわけであります。あの日は非常に残念なことでございましたが、風向きが全く反対でございまして、ガスの効果に全然期待できなかったわけでございます。そういうようなことで、いわゆる機動隊の到着を待って、そこであらためて態勢を整えて一斉検挙をはかろう、こういうふうな現場の警備規制をとった次第でございます。したがって、その間、おおむね二時間有余の到着待ちという時間がございましたので、おそらくその新聞の描写はその間の事情を描写したものだろうと私は考えます。
  210. 松本善明

    ○松本(善)委員 零時十五分になるまでは小型のスピーカーが使われていた。ところが、零時十五分になったら、今度は一斉にとどろきわたるような拡声機に変えられた。初めからそういうふうにやればよかったと思うのですけれども、なぜこういう事態が起こったのですか。
  211. 川島広守

    川島説明員 拡声機の問題は、それぞれ携帯で車につけて動いておる拡声機だろうと思いますけれども、いま申しましたように、精鋭の部隊五機、二機がこちらに到着をしたので、おそらくその拡声機が使われたのだろうと私は思います。いずれにいたしましても、こちら側は態勢を整えて学生の一斉規制に入りましたのが、時間帯にいたしまして零時十分のはずであったと思います。
  212. 松本善明

    ○松本(善)委員 さらにもうひとつ聞きましょう。  警察官が本格的に行動を始めた零時十五分、あるいはいま言われた、零時十分というころには、革マル派、中核派社青同解放派などのトロッキスト集団はみな引き揚げている。そしてその前に、朝日ジャーナルなんかが書いているのは、私服の刑事なんかが騒擾罪もうすぐだというようなことを言っている。騒擾罪適用というのは、すでに警察官の中では話されている。ところが、実際に行なわれた零時十五分には、このトロッキスト集団はみな引き揚げているという事態が起こっている。これについてはどういう説明をされますか。
  213. 川島広守

    川島説明員 零時十五分現在におきます線路上の、中核派が主体だったと思いますけれども、その数は若干の減少は認めましたが、相当線路上におったことは事実でございます。したがって、これを規制してかなり検挙いたしたわけでございます。  さらにまた、お尋ねのとおりに、東口におりました学生あるいは群集というものは、最高時二万をこえた学生たちを含んだ群集でございましたけれども、これはおおむね零時過ぎの段階では一万、半減しておる状態でございます。したがって、まだ投石その他が続いておった事態でございます。
  214. 松本善明

    ○松本(善)委員 それでは聞きますが、最盛時のトロッキスト集団の数はどのくらいですか。
  215. 川島広守

    川島説明員 警察が把握しておりますのは四千五百名でございます。
  216. 松本善明

    ○松本(善)委員 新宿で逮捕した数については四百五十七名ですか、先ほどお答えがありましたが、その中でトロッキスト集団に所属するのはどれくらいですか。
  217. 川島広守

    川島説明員 学生の数は、大学生で約二百名でございます。それから高校生あるいは予備校生、こういうものが三十六名入っております。これは概数でございますけれども、大体そのくらいでございます。
  218. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、逮捕者は学生が約半分ちょっとという程度ですね。  それから、現在身柄を拘束されておるのは何名で、その中でトロッキスト集団に所属するのはどれくらいですか。
  219. 川島広守

    川島説明員 本日現在の数字、正確にまだつかんでおりませんが、先ほど申しましたように、勾留がついておりますのが百二十八名おります。そのうち学生が、正確な数字はまだ手元に出ておりませんけれども、おそらくこれは過半数をはるかにこえると思います。
  220. 松本善明

    ○松本(善)委員 それから、先ほど同僚委員が聞いたのですが、どうしても理解ができないのは、佐世保事件のときには事前規制をした。それはなぜやられなかったかということについて、先ほどは、やろうと思ったけれどもやれなかったという趣旨のことが結論的には述べられたようです。私聞いておりましたけれども、いろいろほかのことを言われたけれども、なぜできなかったのかということについて、納得できるような説明ではなかったと思う。だれが考えても、新宿は人の一番集まるところ、その前に規制をするならばできるはずです。それをなぜやらなかったか。先ほどの答弁では理解ができなかったので、もう一度、これは国民全体が持っている疑問なはずです。それに答えるつもりではっきりと、どうしてやらなかったか答えていただきたい。
  221. 川島広守

    川島説明員 先ほどお答えしたわけでございますが、この種の具体的な警備、阻止と申しますのは、その場その場の地理環境ももちろんございまするし、あるいはまたそのような暴力行為を行ないますところのいわゆる闘争の主体というもの、主体の性格にもよりましょうし、それからもちろん地形にもよるわけでございます。先ほど一例で申し上げたわけでございますが、たとえば御茶ノ水というふうな場所、環境というものが、御案内のような環境でございまするし、さらにまた出ました時間帯が、ちょうど学校が終わって夜学生が入っていく時間帯に彼らは出てきたわけでございます。したがって、あそこでやります場合には、上下構造になっております御茶ノ水の駅付近というものは、客観的に見ましても、あるいは経験的に見ましても、一般への予想外の被害ということに相なりますので、その点を顧慮してあの場所を避けたということでございます。  それから、革マル派は東大を出たわけでございますが、これは全然角材も持たないで出てまいった。途中で彼らがそれを手に持つというふうなことでございまして、途中でそういうような警察官の配置がなかったものでございまして……。これが四ツ谷からおり立って、敷石を割って四ツ谷駅構内に、あるいはまた国会のほうに散らばっていくというような事態でございまして、これはいろいろ御指摘がございましたように批判がある点だろうと思いますけれども、こちら側といたしましては、常にその日その日の情勢、相手方の闘争のいろいろな形態ということを考えて、一般への被害、一般への迷惑というものを最小限度に食いとめるというふうな観点から現場の警備計画を作定するわけでございますが、今回の場合は、そういうあれこれの場合を考えてああいうふうな結果に相なった次第でございます。
  222. 松本善明

    ○松本(善)委員 一般への迷惑を考えるといいますけれども、御茶ノ水より新宿でやるほうがよほど迷惑になることは、これはだれが見ても考えられることではないかと思うのです。それから、最初手ぶらで出たといっても、警察のほうは情報は全部正確にとっていたという話なんですから、その途中で、手ぶらでなくなった時期に規制することは幾らでもできるはずだと思うのです。それはどういうわけでできなかったのでしょうか。
  223. 川島広守

    川島説明員 先ほども答弁した繰り返しになりますけれども、当初申しましたように、数千名の部隊アメリカ大使館なり国会周辺なりそれぞれ固定配置した。こういうものを転用いたします場合には相当時間も必要とするわけでございます。それから、いまお尋ねがございましたように、考えれば途中でやるべきではないかというお話でございますが、われわれのその日その日の警備、現場における警備戦術と申しますのは、数多い経験の中から実は学んできたわけでございまして、当日もし警備その他において取りこぼしがあるということになれば、あっちこっちにより以上の紛争といいますか、事案が発生するというふうなことは、当然これは警備計画を作定いたします場合には考慮に入れなければならないわけでございます。そういうことをあれこれ考えて強力な固定配置をとった。したがって、結果的には、今後将来の問題といたしましても、われわれも部隊運用上十分考えなければならぬことはあるだろうと思います。それはけさほどお答えしたとおりでございます。したがいまして、将来におきましては、先ほど来もお答え申しましたが、一般国民の不安を来たさないような、しっかりした警備処置をとってまいりたい、こういうふうな考え方でおる次第でございます。
  224. 松本善明

    ○松本(善)委員 私たちから考えれば、それは国会だとかあるいはアメリカ大使館、いろいろあるかもしれないけれども、実際に事が起こりそうになっていたのは新宿だということははっきりわかっていた。それにもかかわらず、新宿へ来るまではやむを得ない、そうして新宿規制しようというふうに考えていた、こういうことですか、結局においては。
  225. 川島広守

    川島説明員 詰めて申せばそういうことでございます。そこで、たとえば、具体的になりますけれども、国鉄の側であそこにいろいろさくを張ってもらったわけですね。ところが、ああいうものはいとも簡単に打ち破られるとは、結果論から申しますと、もちろん見込み違いということになったわけです。したがって、これは先ほど来からの繰り返しになりますけれども、将来の問題といたしましては、いま申しましたように、あの周辺はそれぞれ都なり区にお願いして、敷石を全部アスファルトに舗装し直していただいたわけでございます。したがって、その結果で東口におきますところの一般民家への被害あるいはまた一般の群集に対する被害というものは発生しなかった。これは確かに、さっきも申しましたような事前の環境整備を十分に行なった結果だろうと私は思います。したがって、将来にわたりましては、繰り返しになりますけれども、いま申しましたように、十全にそういうことをあれこれ考えてやってまいる、こういうつもりでおります。
  226. 松本善明

    ○松本(善)委員 それではもう一つ聞いておきますが、この問題については国家公安委員に相談をされましたか。
  227. 川島広守

    川島説明員 国家公安委員会につきましては、毎週木曜日に公安委員会がございますので、時間的に十分間に合います場合には、事前にいろいろ御報告をいたしております。あるいはまた時間的にいとまのない場合は、書面もしくは電話等でそれぞれ……。
  228. 松本善明

    ○松本(善)委員 この件については……。
  229. 川島広守

    川島説明員 もちろん御報告いたしてございます。
  230. 松本善明

    ○松本(善)委員 事前にしなかったのですか。
  231. 川島広守

    川島説明員 事前にも、一〇・二一の国際反戦デーというものに対してそれぞれの各種団体がおおむね動員計画を持っておる、したがって、これに対してわがほうとしてはこういうふうな陣営を準備して、おおむねこういう警備計画でございますという対応策はもちろん報告してございます。
  232. 松本善明

    ○松本(善)委員 先ほど法務大臣にもお聞きしたのですけれども、これについては、トロッキスト集団の制規については、共産党対策上泳がしておくのだという意見が方々で出されております。そして警察のこの取り締まりの状況については、少なくとも手ぬるい、おかしいというような批判は、いろいろな普通の新聞紙上にもたくさん出ております。これについて、私たちは、そういうような意図でやられておるのではないかというきわめて濃厚な疑いを持っておりますけれども、そういうような共産党対策上泳がせているという意見が方々で出されていることについて、警察庁としてはどう考えますか。
  233. 川島広守

    川島説明員 そのようなことにつきましては、全くわれわれは意外なことだと思っております。具体的に申しますならば、昨年の羽田事件以来これら学年の逮捕者は四千七、八百人になっておるはずでございます。それに対して、わが警察官のけが人は八千五百人にのぼっておる次第でございます。現在三百人が入院をしておるわけでございます。われわれがこういうような被害を受けておるわけでございますから、いまおっしゃったことは全くあり得ないことでございますので、はっきり申し上げておきたいと思います。
  234. 松本善明

    ○松本(善)委員 事実の分析等は多少違うと思いますけれども、また機会を改めてその点について聞きたいと思いますが、きょうはこの程度で終わります。
  235. 大竹太郎

    ○大竹委員長代理 本日はこれにて散会いたします。     午後四時十五分散会