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1968-08-05 第59回国会 衆議院 法務委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和四十三年八月一日)(木曜 日)(午前零時現在)にぉける本委員は、次の通 りである。    委員長 永田 亮一君    理事 大竹 太郎君 理事 田中伊三次君    理事 高橋 英吉君 理事 中垣 國男君    理事 濱野 清吾君 理事 猪俣 浩三君    理事 神近 市子君 理事 佐々木良作君       鍛冶 良作君    河本 敏夫君       瀬戸山三男君    田中 角榮君       千葉 三郎君    中馬 辰猪君       中村 梅吉君    福田 赳夫君       村上  勇君    山手 滿男君       岡田 春夫君    河野  密君       佐々木更三君    堂森 芳夫君       成田 知巳君    西村 榮一君       山田 太郎君    林  百郎君       松野 幸泰君 ───────────────────── 昭和四十三年八月五日(月曜日)    午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 永田 亮一君    理事 大竹 太郎君 理事 田中伊三次君    理事 濱野 清吾君 理事 猪俣 浩三君    理事 神近 市子君       鍛冶 良作君    河野  密君       中谷 鉄也君    成田 知巳君       帆足  計君    穗積 七郎君       横山 利秋君    岡澤 完治君       山田 太郎君    松本 善明君  出席国務大臣         法 務 大 臣 赤間 文三君  出席政府委員         法務政務次官  進藤 一馬君  委員外出席者         総理府人事局長 栗山 廉平君         法務大臣官房長 辻 辰三郎君         法務省刑事局長 川井 英良君         法務省人権擁護         局長      上田 明信君         法務省入国管理         局長      中川  進君         専  門  員 福山 忠義君     ───────────── 八月一日  委員林百郎君辞任につき、その補欠として松本  善明君が議長指名委員に選任された。 同月五日  委員岡田春夫君、河野密君、佐々木更三君、堂  森芳夫君及び西村榮一辞任につき、その補欠  として横山利秋君、帆足計君、中谷鉄也君、穗  積七郎君及び岡澤完治君が議長指名委員に  選任された。 同日  委員中谷鉄也君、帆足計君、穗積七郎君、横山  利秋君及び岡澤完治辞任につき、その補欠と  して佐々木更三君、河野密君、堂森芳夫君、岡  田春夫君及び西村榮一君が議長指名委員に  選任された。     ───────────── 八月一日  死刑確定判決を受けた者に対する再審の臨時  特例に関する法律案  (神近市子君外七名提出、第五十八回国会衆法  第三号)  刑事補償法等の一部を改正する法律案横山利  秋君外七名提出、第五十八回国会衆法第三一  号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  法務行政に関する件  検察行政に関する件  人権擁護に関する件      ────◇─────
  2. 永田亮一

    永田委員長 これより会議を開きます。  まず、国政調査承認要求に関する件についておはかりいたします。  すなわち、裁判所司法行政法務行政及び検察行政等の適正を期するため、今会期中において  一、裁判所司法行政に関する事項  二、法務行政及び検察行政に関する事項  三、国内治安及び人権擁護に関する事項の各事項につきまして、小委員会の設置、関係各方面よりの説明聴取及び資料の要求等方法によりまして、国政調査を行なうこととし、規則の定むるところにより、議長承認を求めることにいたしたいと存じます。御異議ございませんか。
  3. 永田亮一

    永田委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。      ────◇─────
  4. 永田亮一

    永田委員長 次に、今国会中、国会法第七十二条第二項の規定による最高裁判所の長官またはその指定する代理者から出席説明要求がありました場合、その承認に関しましては委員長に御一任願いたいと存じます、御異議ありませんか。
  5. 永田亮一

    永田委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。      ────◇─────
  6. 永田亮一

    永田委員長 次に、参考人出頭要求に関する件につきましておはかりいたします。  本委員会において調査中の法務行政に関する件について、参考人出頭を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
  7. 永田亮一

    永田委員長 御異議在しと認め、さように決しました。  なお、参考人出頭日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  8. 永田亮一

    永田委員長 御異議なしと認め、さように決しました。      ────◇─────
  9. 永田亮一

    永田委員長 次に、法務行政に関する件、検察行政に関する件、及び人権擁護に関する件について、調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。猪俣浩三
  10. 猪俣浩三

    猪俣委員 私は、きょうは陳玉璽——台湾人の主星の日本からの送還問題に関連いたしまして、主として入管局長、及び大局につきまして法務大臣の御所見を承りたいと思うのです。  ただ、この問題につきまして「陳玉璽を守る会」というのができておりまして、先般入管局長に面会したいということで私が紹介いたしました多数の人と局長は会っていただきまして、詳細に御説明いただきましたそうで、たいへん感謝して私のところへ手紙がきておりますことを申し上げておきます。ただ、その結果二、三やはり疑問が生じておりますので、念のために局長にお尋ねしたいと思うわけであります。  これは一般委員諸君にも、どうしてわれわれが台湾人の問題について日本委員会等でかようなことをたびたび政府に質問するのであるかということの疑念もあろうかと存じますが、陳玉璽は一九六七年、昨年の八月十七日に二カ月間の観光ビザをもって日本へやってきたのでありまして、この人物台湾生まれでありますが、ハワイ大学へ留学しまして、ハワイ大学東西文化センターというところに奨学金学生として、しかも半分はアメリカ側が持ち、半分は台湾政府が持って留学しておった人物で、成績優秀のために一年間この東西文化センター、同大学経済学部の助手をつとめて、そしてなお大学院で勉強しておったわけであります。それがたまたま観光ビザをもって日本へやってきたのでありますが、このビザ期限が来ましたので、そこで入管申請いたしまして、日本で勉強したいということを陳情したわけであります。法政大学中村哲総長——この人は台湾大学先生をやっておった関係上、台湾人のめんどうをよく見る方でありますが、この方に相談するとともに、なおまた、法政大学松岡盤木教授にも相談をいたしまして、法政大学大学院で特別に経済学を勉強したいということから、日本に滞在したいという熱心な希望があったわけであります。それが十万円の保証金を積んで仮放免になった。仮放免というのは、入管でよく使っていることばでありますが、ビザ期限が切れても収容しないということで、保証金を積まして仮放免しておる。これは一カ月ないし二カ月、しかも、私どもの経験によりましても、仮放免手続は、何回も何回も延期されて繰り返されておるのが実情でありまして、長いのは二年もやっている。これはいろいろな事情から、本人希望をいれてそういう措置をとっていると思うのでありますが、それが通例であります。ところが、この陳玉璽氏につきましては、非常に異例な扱い方をされた。そうしていま陳氏は、台湾軍法会議にかけられて、死刑求刑を受けている。日本での本人の切なる希望にかかわらず、二月一ぱい仮放免期間があったにかかわらず、その仮放免期間中、二月九日には強制的に送還されてしまって、そうして最近死刑求刑を受けて、いま裁判をやっている。こういう事件であります。非常に優秀な人物で、日本において特に勉強したいという願いがあったことは、諸般事情から明らかなのであります。ところが、先般私が当法務委員会で、この陳の強制送還問題について局長にお尋ねいたしましたときに、本人希望によって行なったのだという御答弁がありましたが、どうも局長の御答弁は、私ども納得いたしかねる。本人台湾へ行きたくなくて日本で勉強したいということは、現在、法政大学中村哲総長松岡教授もみな証明しております。そうしてこれには、宮崎竜介というわが国在野法曹の長老が身元引き受け人になっている。ところが、一切のそれらの関係を無視いたしまして、仮放免のことについて聞きたいからということで、本年の二月八日の午後一時に入管出頭したら、そのまま九日には送還された。その後起こりました柳文卿事件と同じような状態であります。  そこで、局長が、いや、本人台湾へ帰りたいからというので帰したのだということにつきまして、どうも納得がいかないのでありますが、それは、実情はどういうことでありますか。もしあなたの御記憶違いであるならば、御訂正願いたいと思います。諸般事情から考えて、そうして日本相当の地位のある学者諸公の証言に照らしまして、彼が台湾へ帰りたいなどということを入管に言ったということにつきましては、私どもははなはだ理解いたしかねる。その点と、仮放免期間がまだあるにかかわらず、しかも、法務大臣に対して異議申し立てをしておるにかかわらず、その期間中にすぐ異議申し立てを却下すると同時に、これを強制送還してしまった。それらのことにつきましては、釈然としないのであります。これは後に申しますが、アメリカ国会議員からも、この陳の問題については、国務省を通じて台湾政府相当抗議がいっておる。日本に滞在し、日本大学に籍を置いてそこで勉強したいという人間を強制送還して、それがために死刑求刑を受けているということにつきましては、これは基本的人権を尊重した日本の憲法の精神からも、あるいは世界人権宣言最高人権基準からも、はなはだはずれた行動だ。しかも、ハワイにおけるアメリカ人関係者及びアメリカ下院議員までが、この陳につきましては抗議並びに救命運動を行なっておる。こういう際におきましては、日本入管のやった措置は、相当国際的な反響になっておると思うのであります。事は、はなはだ重大だと私は思う。その意味におきまして、第一に、陳がほんとうに帰りたいと言ったのかどうか、第二に、仮放免期間中、法務大臣は審議の期間なんかないはずだが、急遽異議申し立てを却下してしまって強制送還した。これに対して法務大臣は一体どれだけの御理解があったのか。かようなことは前例のないことであります。なぜこの前例のないことをやったのであるか。そういうことにつきまして御答弁をいただきたいと思います。
  11. 赤間文三

    赤間国務大臣 お答えを申し上げます。陳玉璽は、昭和四十二年の八月十七日に、お述べになりましたようにハワイから台湾に帰る途中わが国に立ち寄って、観光客として在留期間六十日をもって入国いたしたのであります。それで専門学術——お述べになりました経済学の研究がしたいという理由で、期間更新許可申請をいたしました。法務省といたしましては、これに対しまして期間更新許可して、十二月十五日まで在留を認めたのでございます。そのときに、このように入国をした後に目的変更して長い間在留を認めるということは好ましくないという考えをもちまして、期限である十二月の十六日以後は、重ねて在留期間更新申請されても許可はしないという条件をつけて十二月の十五日まで許可をしたような次第でございます。しかし、本人期間内に出国をせずして、十二月十六日以降不法残留をいたしましたので、当省は、直ちに退去強制手続を進めて退去強制令書を発付したのであります。本人はみずからの自分費用によって出国したいという旨を願い出たので、昭和四十三年の二月八日、これを許可しまして、二月九日のCAL機中華民国航空公司)、こういう飛行機によりまして、台湾向け出国するに至った次第であります。私の了解しておるところでは、そういう了解のもとにこのことを取り計らったように承知をいたしております。本人台湾において拘束をせられ、あるいは軍事裁判にかけられ、死刑のおそれがあるというようなことがあるかどうかというような問題につきましては、私は、その詳細を承知しておらないので、お答えを申し上げることは困難であると考えておる次第でございます。  いま申し上げましたように、なお、本人アメリカからの帰国の途次に日本に立ち寄ったものでありまして、退去強制を受けたとはいえ、進んで自分意思で、また、自分費用で退去したいということを申し出たのであります。私たちは、こういうことが問題になったということについては、非常に意外であるというような感じを持っておるような次第でございます。
  12. 中川進

    中川説明員 ただいま大臣がおっしゃられましたところに若干蛇足をつけさせていただきますが、まず、猪俣先生が初めにおっしゃいました、なぜ本人台湾へ帰りたいというようなことを言い出したかという点でございます。これは先ほど大臣から答弁いたされましたごとく、本人日本入国ビザは、御承知の四−一−四という観光ビザでございます。ところで、この観光ビザというのは、日本にとにかく来てみたい、富士山、それからまた東京、いろいろ見物をしたいというような人が、在外公館申請いたしますというと、よっしゃというわけですぐ許可になる、きわめて容易に発給される入国ビザでございます。きわめて容易に入国を認めるという裏づけといたしましては、そのかわりきわめて簡単に出てもらうということでございまして、入国のためにこの一番簡単な観光ビザを入手して入った上で、日本商売をするとか、あるいは学校先生になるとか、あるいは新聞記者になって働くとかいうような、いわゆる私ども専門語在留資格変更ということを申しておりますが、日本在留する資格を変えるということは、これは断わっております。そうでありませんというと、在外公館で簡単に出すという趣旨にもとるわけでございます。  そこで、この陳玉璽という人も、ただいま大臣から、あるいは猪俣先生からおっしゃいましたごとく、ハワイ大学を出まして、私どもの了解する限り、向こうでたしかPHDかマスターか、とにかく一応学位をとった上で、台湾へ帰るという帰国の途次日本見物したいという、少なくとも表面上の趣旨で、ハワイにおきます日本総領事館から、ただいま申しました日本見物四−一−四という一番簡単な査証をとって入国したものと了解いたします。ところが、本人日本へ着きましたあとで、先ほど御指摘のごとく、法政大学に入って勉強したいという話が出てきたのでございます。ところが、私が先ほど申し上げましたように、観光ビザで入りまして、勉強する、あるいは逆に先生になる、あるいは商売をやるというふうな在留資格変更ということは、私どもとしては認めておりません。そこで、こういうことが起こりました場合には、何も台湾人だからどう、アメリカ人だからどうということじゃございません。どこの方でも、一度外国へ出てもらいまして、その外国も、たとえばアメリカ人であれば、サンフランシスコとかハワイまで帰るとお金がかかるということであれば、釜山でもどこでもいいのでございます。要するに、外国へ一ぺん出てもらいまして、釜山なら釜山日本のわが総領事館に対しまして、今度日本へ入って、たとえば法政大学に入って勉強したい、学生になりたいんだ、あるいは法政大学で教べんをとりたいんだというふうに、日本において働きたい、あるいは日本に滞在したいというほんとう目的を添えて、入国申請してもらうわけでございます。そうしますと、私どものほうでは、いろいろの内規なり基準なりがございまして、この人は学生として勉強するに値するかどうか、この人は学校先生として生徒に教える資格があるかどうかというようなこと、あるいは、いろいろ経済的にやれるかどうかということを全部検討いたしました上で、よろしいというふうにしろ、だめだから入れないというふうにしろ、いずれかの指示を与えまして、そしてその申請を受けた在外公館から直接本人に対してビザを発給するなり、拒否するなり、そういう手続になっておる次第でございます。  そこで、このただいまの陳玉璽でございますが、これも全く同様でございまして、私どもといたしましては、この人に対して特にひどい待遇を与えたとか、逆にまた非常に例外的にいい待遇を与えたということはないのでございまして、全く従来の慣例に従いまして処置をした次第でございます。  そこで、先生の御指摘のポイントである、なぜ台湾へ帰りたいと言ったかという点でございますが、それは、ただいま申し上げましたように、本人法政大学に行って勉強したいのであるならば、このままで、すなわち、観光ビザのままで日本に居すわってあと二年も三年も大学にいることは、これは不可能だ。だから、あんたがもし法政大学に入って勉強したいのであるならば、一ぺん出直して、台湾へ行っても、沖縄へ行っても、釜山でもどこでもいい、とにかく日本から一ぺん外へ出て、そこであらためて法政大学入学手続をして、そこからその学位という、四−一−四というビザじゃございません、ほかの種類のビザをもらって入っていらっしゃいということで、本人も、それじゃそういたしましょう、それじゃ私はこの観光ビザのままで日本にこのままねばっていることはとてもできないんだということを本人は何と申しますか、納得ないし観念いたしまして、そこで、少しでも早く国に帰って、親とも相談し、そうして至急正式に法政大学学生として勉学するための入国ビザ申請したいということでありましたので、それではひとつ早く帰ったほうがよかろう。それで、帰るについては、御承知のように、国の費用——まあいつか無理無体に帰すというおことばもございましたが、要するに、国の費用で強制的に帰すという方法と、それから、どうせ帰らにやならぬのであるならば私は自分の金で帰りますという自費出国というのがございますが、本人は、経済的にも必ずしも困っているわけでもなかったと見えまして、自費出国ということで帰ったのでございます。この人が日本に長くいるつもりはなかったということは、ホノルルから台湾へ帰る途中日本に立ち寄ったので、飛行機もちゃんと台北まで買っておったのでございます。ただ、いつ羽田を飛び立つかということはわからなかったので、オープンにしておったのでございますが、そういうわけで、本人は、まだ飛行機の切符も有効であったということから、それにもう自費出国ということで、翌日に、そういうことなら一ときも早いほうがいいということで、御本人がむしろ希望して早く帰ったのでございまして、これが本人永遠——永遠と申しますか、法政大学を卒業するまであと二年かかるか三年かかるか知りませんが、それまでおれるという見通しがついたら、おそらくそういうことはせずにずっとねばったと思います。しかし、それはだめだということを厳重に申し渡しました関係で、本人としてはあきらめて帰ったということだと思います。  そこで、この点は、先生指摘の第二点でありますところの、なぜ仮放免、こういうことになったかという点に通じるのでございまして、御指摘のとおり、仮放免は通常一カ月やりますから、一月の二十三日に即日仮放免をやって二月の八日というのははなはだ唐突でございますが、しかし、仮放免を与える場合には、この一カ月なら一カ月をやりますこの間に、出頭日というのを設けるわけであります。あなたはいついらっしゃい、また、仮放免中、はなはだことばは悪いのですが、逃げも隠れもせずにおるんだということを入国管理官庁におきまして確認をする必要がございますから、そこで、仮放免期間中の何月何日何時に出てこいということを申し渡すわけでございまして、二月八日はたまたま出頭日になったのでございます。そこで、本人が十三時ごろやってきた、こういうことでございまして、そこで、先ほど申し上げましたような問答の結果、それでは帰るということで翌日立った、こういう経緯でございます。  それから先生最後にお述べになりました、本人はただいま台湾死刑求刑せられたという件でございますが、この点は、実は私はまだつまびらかにしておりません。八月一日に御承知のごとく裁判が開かれましたときに、私ども新聞報道によって得た情報でございまして、在外公館を通して得た情報ではございませんが、新聞報道によります限りは、この陳という人は二つの罪状において、一つ日本におって中共への脱出をはかったということ、第二番目には日本におきまして中国新聞に何か政府を誹謗するような投書をしたという、この二つの罪科によって起訴せられた。有罪といいますか、そういうことで起訴せられた。ところが本人は、弁白していわく、一つに、自分中共脱出を試みたことはないんだ。二つに、その中国紙に載った論文なるものは、自分が書いたものではないんだ。自分はただ校正をしただけだという弁明をしたということが新聞報道によって伝えられておりますが、私ども肝心の刑期はどうなるかと思って、そこをよく注意して読んだのでございますが、求刑自体は書いてなかったように思うのでございます。しかし、あるいは先生のほうが詳しい情報をお持ちでございましたら教えていただきたいのでございますが、ただいまそういうことでございます。  それから、先生お述べになられましたホノルルにおきますアメリカ下院議員、おそらくパッチ・ミンクという人だと思いますが、そういう方が非常左関心を持たれまして、国務省を通して中華民国政府関心を喚起しておるという話も、この間中村法大総長から伺いましたし、それから、ただいま申し上げました八月一日の裁判に関する新聞報道によりましても、AP、UPその他アメリカ報道関係者も、多数その裁判には出ておったというようなことを読みましたので、これがただいまそういう意味で国際問題になっているということは、私も十分承知しておりまして、入管行政の一挙手一投足が一々国際的左波紋を呼ぶ可能性があるということは十分承知しておりまして、慎重の上にも慎重にやらねばいかぬ、さように考えておる次第でございます。
  13. 猪俣浩三

    猪俣委員 いま問題は、陳君が台湾へ帰りたいと言ったということがうそである、これは入管局長はよく御存じなわけだが、仮放免のときには、必ず帰る旅費自分で出すということで保証金を積ませるわけなんだ。保証金を積んだからといって、帰りたいという意思表示にならない。それは形式的なことなのです。仮放免するには必ず帰る旅費をどうするか、それを積まなければ仮放免しない。強制送還してしまう。積むことができないのは、みんな大村収容所へ入れられるということでしょう。だから、仮放免保証金を積んだというが、彼は帰りたいために自費でもって帰りたい意思表示をしたということにならないんだ。だから、大臣はそんな意味のことを言うたのですが、そんなことは実情を知らざる者の言うことだ。  そこで、これはあなたが調べられたかどうか知らぬが、彼が留学しておりましたハワイ大学東西文化センター、この奨学学生として彼は行っておったんですが、それが昨年の七月になって、台湾政府から留学を打ち切って帰国せよという命令がいっておる。そこで、このジョーンズという大学総長が、彼は優秀な人物であるからもう少し勉強させたいということを台湾政府に請願しています。しかし、台湾政府は、どうしても断固帰国せよというて、金も送らず、帰国命令を出している。しかし、彼は台湾へ帰れば何が待ちかまえているか、ほぼ察知した。それはハワイにいるとき、台湾独立運動に対して友人と一緒に何か少し運動したという自覚があったわけだ。それでこういうふうに奨学金を打ち切られて帰国命令が出たのじゃないか、帰ればどういうことになるかということで、彼は観光というビザをとって日本へやってきたわけなんです。そうしてすでに法政大学の総長や教授にいろいろ相談をして、法政大学で勉強をしたい。また中村総長の言にしても、実に珍しい秀才だそうであります。十分日本の経済なども勉強させて帰したいという希望があったわけです。ですから、そういう事情があって来たのだ。彼は台湾へ帰りたいなんと言う道理がない。保証金を積んだというのは、そうしなければ仮放免にならぬということの内規があるからやったわけです。それをみずから台湾へ帰りたいということで帰ったのだというような釈明は、私は釈然としない。そういうふうに、もうすでに台湾政府ハワイにいるときから彼に帰国命令を出しているところを見ると、日本に入っていることを察知したのなら、必ず日本政府なり入管に対して前もって交渉しておったのじゃないかと思われる。その台湾政府要求に応じて、彼を異例な早さで送還してしまった。これは常識ですよ、あなた。何となれば、一月八日に、彼はビザ期限が過ぎたが収容しないでおいてくれろという例の手続をとっている。大体一カ月でしょうが、この仮放免はどのくらいの期間置くのですか。私は一カ月と承知しておるのだ。そうして大体そういう仮放免期間中に強制送還した例は、私は聞いたことがない。しかも仮放免期間中に大臣が強制送還の決定をしてしまうということも、聞いたことがない。なぜこの陳についてさように異例のことをしたか。  それからあなたは、観光の名前や留学の名前で入ってきた場合に、その目的が、たとえば学校なら学校入学、四年間大学教育を受けたらそれは帰らなければいかぬ、その目的で滞在を許したのだから。観光のために入ってきたのなら、観光を二カ月終わったら帰らなければならぬ、それが原則だとおっしゃる。しかし、実例は私自身がたびたび経験しているのですよ。台湾人日本へ留学に来て、これは青山大学ですよ、それを卒業して、その大学関係者が経営している会社へ入って、数年勤務しておる。それがわかりまして、入管の問題になった。ところが、これは事情を聴取して、ではそのまま日本におれということで、いま日本で会社で働いています。これは私が依頼されて、入管局長にお頼みして、そういう事情を了とせられたのだ。同じ台湾人です。しかも大学入学の目的で入ってきた。学校を卒業して会社に就職した。そうして送還問題が起こってきたのであるが、これは御理解いただいた。他にもそういう実例は多々あるわけですよ。どうしてこの陳のときだけ、仮放免までしておきながら、その期限の来ないうちに、しかも身元引き受け人である宮崎竜介氏が裁判手続も何もできない、送還の前の晩だかその日の朝になって、やっと宮崎君に連絡した。宮崎氏は、彼が出頭したのはピザの延長のことで出頭したのじゃないかと思っておったが、そのまま帰ってこないので、どうしたのかと思っているうちに送還されてしまった、こういうやり方はぼくはただごとじゃないと思う。ですから、観光で入ってきたものは必ず帰すんだということをおっしゃったけれども、そうじゃない実例が多多あるのです。どういうわけで陳だけはそれをやられたのか。なお、仮放免期間、一カ月なり二カ月なりお金を積んで仮放免許可をとった、その期間がこないうちに強制送還してしまう。大臣がそういう裁決をするというような実例はほかに多々ありますか。それをお尋ねします。
  14. 中川進

    中川説明員 お答えいたします。まず第一の、台湾へ帰りたいというはずがないとおっしゃる点でございますが、これは私も先ほど申し上げましたように、本人としてはもちろん日本にそのままおりたいのは申し上げるまでもないのでございまして、それはもう前提になっております。しかしながら、くどいようでございますが、このまま日本で勉強することは不可能である。それは先ほど猪俣先生、例外があるとおっしゃいましたが、例外絶無とは申しません。しかし、それはきわめて例外的なケースでございまして、私どもといたしましては、できるだけこの原則に従いたいのでありまして、すなわち、観光客で入った人は、また入っていかぬというようなわけでは決してないのでございまして、勉強したいのであるならば、強強するビザをとって入っていらっしゃいということでございます。したがいまして、台湾へ帰りたくはないのだが、このまま日本におることも不可能である。それならしかたがないから台湾へ帰って出直す、その意味におきまして台湾へ帰りたいといいますか、台湾へ帰って両親と相談した上で、ごく近い将来日本へ帰ってくる予定である、そう申したと私は報告を受けております。だから、台湾へ帰りたいということばの解釈でございますが、何もこのまま日本におれるものが、日本におるよりは台湾へ帰ったほうがいいから台湾へ帰りたいという意味で、台湾へ帰りたいと言ったわけではございません。日本にこのままおれないのだから、どこへでも行って、もしも法政大学へ行きたいのであるならば、それ相応の手続をしてこいと言ったのに対して、本人は、そういうことであるなら、すなわちこのまま日本におって仮放免を受けて学校へ通うということは不可能であるのならば、それならば台湾へ帰っておやじと相談して、そして至急また出直しますと言って出たのでございまして、台湾へ帰りたいという「たい」の意味が私の説明では不十分であったかと思いますが、そういう意味でございます。  それから、仮放免期間は、おっしゃるようにこれは一カ月でございます。ただし、先ほど申しましたように、その中で出頭日がございまして、たまたまこの二月八日が陳さんの出頭日になっておったのでございますが、そのときに、ただいまのような問答が行なわれた。その結果、本人は、それでは早く帰ったほうがいいということで帰国を決意した、こういう報告を受けております。
  15. 猪俣浩三

    猪俣委員 水かけ論になりますが、局長のは全く客観性がない、詭弁であると思うのです。現に軍法会議に付された際に、彼は台湾の弁護士を頼んで、その弁護士に切実に訴えた。日本入管人権擁護関係が少なくて、私はどうしても台湾へ帰ればあぶないということをどのくらい陳情したかわからないが、それを無理に送還された、そう言うて弁護士に訴えた。その弁護士が陳君を守る会というところにその点を訴えてきております。なぜならば、ハワイでもアメリカでも行きたいところへ行っていいというのなら、彼は台湾希望する道理がないですよ。台湾からすでに独立運動に関係したということで帰国命令が出ておるじゃありませんか。みずから進んで危地に飛び込むことはないじゃありませんか。ことに、ハワイ大学東西文化センターの教授、学生二百名から嘆願書が台湾へ送られてきておる。そうして総長はじめ彼の帰ることを待っておる。そういう実情のときに、どこへ行ってもいいというあなた方の方針であるならば、台湾へ行くというようなことは想像できない。これは、あなたそんなことを言ったって、とても証明になりませんよ。そこに台湾政府と何らかのあなた方密約があったんじゃないかと疑わざるを得ない。  そこでこの前、あなた、柳文卿のときに、こういうものを中華民国大使館で出しておるから安心して帰したのだという御答弁があった、その覚え書きですが、大使館から入管あてに——これは法的効力に対して問題がありますが、それが出されたのは一体何年の何月なんですか。
  16. 中川進

    中川説明員 二月でございます。
  17. 猪俣浩三

    猪俣委員 二月七日でしょう。二月七日そういうものをとって、そうして八日はすでに陳を呼び出して、九日には送還しておる。そのあなたがもらった覚え書きなるものは、まことに寛大にして人権擁護にあふれた覚え書きだ。絶対に送還なんか受けても彼の過去についてかれこれ言わぬ、中華民国は絶大なる人権擁護の国であり民主的の国であるというようなことを強調してある。その覚え書きが二月七日じゃありませんか。それをおとりになると、直ちに陳を召喚して、直ちに送還してしまった。すでに台湾政府と何らかのあなた方交渉があって、あとで問題になると困るから、おまえたち一札入れてくれろ、そうすれば君らの要求どおり送還しよう、あなた約束があったんじゃないですか。それでなければ、わざわざ大使館がこんな一札を入管に入れるということは異例なことでしょう。あなた方があとで問題になることをおそれて、大使館に責任を持たせるために一札とったんじゃないですか。その覚え書きは持っておりますよ。これは抽象論で人の名前がありませんが、とにかく過去の行動なんかあっても、彼らの態度が変わるならば、絶対にこれを処罰するようなことはいたさないという一札なんです。それは前の日とっておるのですよ。そこで大使館で約束して、これを一札入れておいてくれろ、そうすれば帰してやる。そうすればこっちは責任はない。台湾政府がああ言うから帰したのだ、あと台湾政府の内政問題だというふうにあなた方逃げようとしたのだ。そこに世界に批判されるところの入管の態度があるのじゃないか。二月七日に覚え書きが出てきた動機は、何のためにそれが入れられたのです。陳はその翌日ですよ。
  18. 中川進

    中川説明員 ただいま中国大使館からの入管あての書簡について、お話がございました。これはこの前、柳文卿に関しまして先生から御質問がありましたときにお答えいたしたと思いますが、台湾独立運動をやっておると称しておる人でオーバースデーになっておる人が数十人おるわけでございます。入管といたしましては、こういう人を置いておくべきか、法令違反の状態を排除して、すみやかに帰国せしめるべきか、すなわち退去強制を行なうべきであるかということに関しては、正直なところ、かなり頭をいためておるわけでございます。そこで退去強制した場合におきまして気がかりになるのは、何と申しましても人権の尊重でございまして、その人が万一本国へ帰って極刑にでも処せられるというようなことでありますと、入管令違反がありましても、むしろそのほうを目をつぶって、彼らが日本にえんえんと不法滞在してもやむを得ぬという状態にがまんせざるを得ないと思ったのでございます。そこで中国政府と、万が一こういう人を強制退去したらおまえのほうはどう扱うのだということを、別に柳文卿とか何のだれべえとか名前をあげたことはございませんが、とにかく、いわゆる台湾独立主義者というものの強制退去を万が一行なった場合における台湾側の取り扱いいかんということを内々いまサウンドしておったのでございます。これは先生方の御記憶に新たかと思いますが、例の金東希を韓国に帰してどうなるかということが、たいへんこの法務委員会で問題になりまして、そこで、その当時の政府委員、私がやっぱりやっておりましたが、御答弁申し上げたと記憶いたします。これは問題があって、金東希は一体どういう動機で日本へ来たかという彼の出国の動機とともに、それに劣らず重要なことは、万が一彼が本国へ帰った場合にどういう処罰を受けるだろうかという彼の強制退去後の取り扱いいかんということが、動機問題を入管がいかに決定するかの大きな基準になるということを御答弁いたしました。そこで、あのときも実は内々韓国政府に万が一——あのときは特定の人物それぴたりでありますが、金を帰したときにはどうなるだろうかということを何となく聞いたのでございますが、これは向こうからは、いやそれは韓国は法治国でありまして法に従って処断するだけのことであって、別に何も御心配になるようなことはないというような答えはございましたが、しかし、それだけのことであったのでありまして、その他いろいろな情勢を見回しまして、結局御承知のごとくソ連へ出国させました。しかし、本人はおそらくソ連から北朝鮮へ帰ったものと思われます。  そこで、同じような問題に直面して、しかも今度は非常に数が多い。たしか四、五十名は最低おると思いますが、独立運動なるものを称しておる人で、しかもオーバーステーになっておる人、これを強制送還した場合にどういう取り扱いを受けるかということで、私どもといたしましては、これはやはり入管令に違反する状態であるから、この状態は排除する必要がある、しかし排除するにしても、排除が人権の侵害ということにおいて行なわれては困るということで、その点について中国側からの確認と申しますか、そういう心配はない、おそれはない、安心して退去さしてもよろしゅうございますという保障を得たかったのでございまして、それはもちろん、この前の国会で申し上げましたように、口頭におきましてそういう話し合いないし了解はあったのでございますが、それ以上にやはり書いたものがあれは、なるほど猪俣先生は法律的には一文の価値もないと申されますが、それはそうかもしれません、しかし単なる口約束よりはやはり書いたものがあったほうがいいということで、ああいう書きものをもらったわけでございまして、それで二月の七日に向こうから書いたものが出てまいったのでございます。そこで、これをもらったときに陳玉璽さんについてどうこうということは全然考えておりませんでしたし、また、たまたまそのもらった日の翌日にこの人の出頭日、その翌日に送還が行なわれたということでございますが、これは全くの符合でございまして、あの手紙云々ということは、この陳玉璽さんのことについて処分をきめるときに何ら考慮はしておりません。
  19. 猪俣浩三

    猪俣委員 ああいう一札をとって、そしてその翌々日陳を強制送還した。その陳は本年の七月一日に台湾の軍事検察官から懲治反乱条令第十条後段、軍事侵犯法百四十五条第一項、それによって死刑求刑をされている。これも秘密裁判で処理されるはずだったのが、アメリカからの要請があったために、八月一日に公開されたそうでありますが、はなはだ奇怪な話だ。それだけ一札あなたがとって安心して送った、その人間が、帰って行くえ不明だ、父親が血眼になってさがしてもわからない。ようようこれがわかりましたのは、アメリカ下院議員のパッチ・ミンクという議員が国務省の次官補のマッコンバーという人に依頼して、そして日本から無理に送還されたが、この人間はどうなっているかとアメリカ側が心配して、そして調査した結果、軍法会議の拘置所に拘置されていることがわかった。日本はわからぬ。送りっぱなしだ。わかっていてもわからぬ顔をしていたのかもしれぬ。かえってアメリカからそういうふうな調査がいっておる。そうして日本は二月七日に一札を取って、のほほんとしている。はなはだ私は人権擁護に欠くるところ大なるものがある、国際的に恥辱だと思うのです。  なお、最近台湾政府は九人をやはり同じような懲治反乱条令違反として検事が求刑しております。まあこちらに関係のない人間はわれわれは問題にいたしませんが、その中に顔尹謨、これは東京大学の在学生ですよ。検事の起訴状にそう書いてある。  それからもう一人劉佳欽、これも東京大学の研究生です。これも検事の起訴状に書いてある。こういう人間が、日本の東京大学に在学した人間がいつの日にか台湾に送られて、しかもこの九人のうち五人が死刑で、四人が無期懲役だが、この二人とも五人の死刑の中に入っておる。これは入管、知っているのか知らないのか。
  20. 中川進

    中川説明員 お答えいたします。ただいま先生指摘の二名、すなわち顔尹謨及び劉佳欽、これはおっしゃるとおり東大の学生で、一人は法学部、一人は農学部の学生でございます。ところがこういった人たちは夏季休暇を本国で過ごしたい、台湾で過ごしたいというので、東京入国理事務所におきまして出国してまた日本へ帰ってくる、私ども専門語で申しますと再入国と申しますが、この再入国許可を得て日本から出たわけでございまして、劉は昭和四十二年六月十三日、顔は昭和四十二年七月一日、ともに日本出国したのでございます。  そこで、こういう人たちが夏休みに帰るということに関しまして、われわれは、また休暇が済んだらいらっしゃい、日本へ帰って勉強を続けなさいということで、いま申しました再入国許可を持たせて帰したわけでございまして、何も本人台湾に帰って裁判を受けるとか、つかまるというようなことを私どもが予知したわけでもございませんし、また本人から、おれは今度台湾に帰ったらつかまって、ひょっとしたら死刑になるかもしれないから置いてくれという話があったのでもございません。ただ学生さんの夏休みのための帰国の願いであり、帰国の上はまた九月、新学期の始まるときに日本に再び入れてくれという願いであって、それに対して入国理事務所は、よろしゅうございます、始まったらまたいらっしゃいということで入国許可を与えて、それを持たして帰したのでございます。
  21. 猪俣浩三

    猪俣委員 いまお聞きしましたが、顔はいつ帰国し、劉はいつ帰国したか、もう一ぺんおっしゃってください。
  22. 中川進

    中川説明員 顔の出国昭和四十二年七月一日、それから劉の出国昭和四十二年六月十三日でございます。
  23. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、夏休みに帰った人間が昭和四十年なんて、四年も五年も帰ってこない。そういうあなた方が入国許可した人間が、台湾にそのままいて帰ってこないことに対して、何か不審をお持ちになったことがありますか。
  24. 中川進

    中川説明員 おことばでございますが、四年も五年もではございません。二人とも昭和四十二年でございます。四十二年六月十三日と四十二年七月一日でございます。
  25. 猪俣浩三

    猪俣委員 私がこれを聞くゆえんのものは、これらが帰って日本帰国しない、もう一ぺん入国さしてくれといって、皆さんもいいといってやったのに帰ってこない。そういうことについては何の調査もしてないわけですか。
  26. 中川進

    中川説明員 御承知のように、日本を訪れる人はいまは年に三百万をこえているわけでございまして、もちろん再入国を出している数はずっと減りますが、再入国を与えた人が予定日に帰ってこないので、どうして帰ってこないのだろうという調査まで一々、これは役人的な答弁になるかもしれませんが、しきれないのが現状でございます。
  27. 猪俣浩三

    猪俣委員 私はこれを質問するゆえんのものは、こういう学生、東大の学生が帰っている、それが帰りっぱなしで戻ってこない、その次に、陳なり柳なりを送還するときに、多少あなた方は頭の中にそれがなければならぬじゃないか。もう一ぺん帰ってくるということで再入国許可までとっていったやつが、夏休みも済んだのに帰ってこない。こういうことに対して不審を抱いて、ことに勉強したいという学生を帰す際には、台湾に一体どういう過酷なる刑罰法令があるか御存じであろうと思うのです。日本の領地時代の治安維持法よりももっと過酷な法律があるのですよ。そういうところへ学生を帰す。ことにインテリの学生を帰すということに対しては、何らかの予見が皆さんになければならないんだ。そうして、夏休みで帰って、再入国を約束した者が帰ってこないということに対して、やはりもうちょっと神経を働かすべきじゃないか。そして、陳なり柳なりを帰す際に、それを参考にすべきじゃないか。私はそういうことがあるから、あなた方の良心がとがめたというか、あるいは言いわけ上というか、そこで大使館からあんな一札をとったんだと思うのです。それが実情だと思うのです。まあそうだとおっしゃらないでしょうから、これはこれ以上申しませんが、いずれにしても、この問題は相当国際的な問題になっております。  これは法務大臣にお聞きしますが、アメリカ下院議員から国務省の役人まで動いておる。それで、日本入管が強制送還をしたんだ。しかもそれは異例の送還のしかたをやっておる。しかも陳の送還をする前に、中国大使館から一札とっている。入管局長は、これがあるから心配はない、こうおっしゃっている。法律的に見ると、これは外交文書でも何でもないようなものになりますけれども、いまでも入管局長は、この一札が外交的の効力のいかんにかかわらず、中華民国の大使館から正式に日本政府機関に出したものであるから、これは何の効力もないというものではないというお考えのようであります。そこで、その一札によって陳は送還されたんだが、それが死刑求刑を受けておる裁判をやっている。アメリカハワイ方面から相当抗議文が行っている。日本の「陳君を守る会」の法政大学の総長やその他の知識人からも抗議が行っておるのです。日本政府としては、その一札をたてにとって、何らかの外交交渉をする意思がありますか、ありませんか。法務大臣にお尋ねします。
  28. 赤間文三

    赤間国務大臣 お答え申し上げます。ただいまのところ、日本政府からは正式に交渉する考えは持っておりません。ただ、法務省の方針としては、毎々申し上げまするように、亡命者等につきましては、身体のあぶないようなところには送らないということは、今後も厳守していきたいと考えておる次第でございます。  陳玉璽の問題にいたしましても、たびたび局長から申し上げたように、ハワイから日本に観光に来て、そして日本に長く滞在したいというのでございますから、私は入管局がとった措置は正しいものであると考えております。なおまた、台湾以外のところに行きたいと言っておるのならば、われわれも好んで台湾に送る必要はない、ほかのところにも送る。しかしながらそういう観光ビザをとって、それより長く日本に居すわろうというようなことは、私は、やはりわれわれのとっておる、時期が来ればこれは海外に送っていくというのが正しいやり方に考えておりますし、決してそう無理なことをやったというふうには考えておりません。  なおまた、劉佳欽ですか、顔尹謨のような、学生で休暇で帰りたいということを申し出た者を帰国させるということについては、別に何も、われわれといたしましては普通の事務をやったように考えておるのでございまして、将来におきましても、こういう問題は、特に重要な問題でありますから、一そう慎重に取り扱うことについては努力をいたしていきたいと考えております。いままでとってきた措置は、事務的には、私は何ら不都合な点はない、かように大臣として考えております。
  29. 猪俣浩三

    猪俣委員 まあ不都合な点はないと言うが、それはそれで聞いておきましょうが、私はあなたに要望をしたいことは、ああいう、あなたの御存じのように、入管局長は鬼の首を取ったように、中華民国大使館から入管局長あての覚え書きなるものを持っておる、その趣旨と非常に違うのじゃないか。その趣旨に基づいて陳君を帰したはずなんです。二月七日に出ておる。八日には陳君を呼んで、九日に送還しておるのですよ。柳のときもそうです。ああいう一札があるということを入管局長が言っておる。そうすれば、あの一札に基づいて何らかの——陳のいま死刑求刑なんということに対して国際世論までが持ち上がっておる際に、日本政府として、台湾政府に対して事実の調査なり、あるいは生命の安全に対して考慮を払ってくれというような要望なり、何らかの日本政府として——ことに強制送還をした入管としては、そういう責任があるのじゃないかと思うのです。ですから、何か日本政府台湾政府に対して、事実を調査するなり、陳の処遇について希望意見を出すなり、あるいは送還したときは、あの覚え書きに基づいて送還をしたので、これに死刑求刑をされるというようなことは予想していなかったというような意思表示をしなければ、あんな一札をもらいましたと言ったって意味がないじゃないか。あの一札を大使館からもらって、そうして信用して帰しておる。しかるにその一札の趣旨と全く違った行動を台湾の軍事法廷でやっておる。これに対して、何らかの日本では彼らに対しての意思表示をする必要があるのじゃなかろうか。民間人はやっておりますが、政府としてもやる必要があるのじゃないか。あの覚え書きはどうしたのだ、あの趣旨と違っておるのじゃないかということぐらいは言ってもいいのじゃないか。しかし、前からすでに了解済みで、彼らと通謀してやったというならば、これはできないでしょう。私どもは、あなたにこれを質問するのは、ああいうような一札を、お互いに双方了解の上でとっておいて、そして陳だの柳だのというのをどんどん送り帰したのじゃなかろうかという疑いがあるのだ。いやそうじゃないというならば、あの一札に基づいて正々堂々と台湾政府に対して調査なり要望なりしたならばどうなんだと思いますが、あなたはそれに対してどうお考えですか、法務大臣
  30. 赤間文三

    赤間国務大臣 ただいまお答えしましたように、政府からとやかく申し上げる考えは現在のところ持っておりません。ただ……。(「一札はどうなんだ」と呼ぶ者あり)一札の件は、私は一札をとったことはけっこうなことだと考えております。なおまた、一札をあくまで守るように十分ひとつ今後手配する、これは当然のことで、いたしたい、かように考えております。
  31. 猪俣浩三

    猪俣委員 あなたは、一札はけっこうなことだと言うのだが、けっこうなことでないことがいま起こっておるのです。それでけっこうな一札に対して、彼らに何らかの抗議をなすべきものじゃないですか。入管局長は、柳送還の際に、こういう一札があるということをとにかくこの法務委員会で表明されて、それだから心配ないんだ、こう言っておる。そのときは、ぼくらは陳のことを詳しく知らなかったんですよ。ところが、その陳の送還の前にその一札は出てきている。そうして送還した陳はいま死刑求刑だ。これはあなた、それでも知らぬ顔していたら日本政府はばかにされているじゃないですか。大使館からそんな覚え書きをもらって、ありがたがってそれで何も言えない。だから、通謀したのであるか、侮辱されておるのであるか、どっちかですよ。それでいいですか、法務大臣
  32. 赤間文三

    赤間国務大臣 たびたび申し上げましたように、日本政府としましては、日本におる人間を、あぶない、生命に危険を及ぼすようなところには送り返さないということについては厳守いたす考えでおります。これはもう一つも変わりはなく、将来においても送り返すことが生命に急険を与えるような土地には送らない方針を厳守する考えを持っております。その点、御了承を願いたい。
  33. 猪俣浩三

    猪俣委員 そこを聞いているんじゃないですよ。あの覚え書きの趣旨に反して陳君はいま死刑求刑をされて公判中なんだ。そうしてアメリカ国会国務省まで動いているんですよ。そういうことに対して、日本政府は何もしないでいいかという問題なんだ。あなた方は、そういう危険なところに送らぬという根本方針であればあるほど、今回の事件に対して憤激しなければならぬはずじゃないですか。そういう一札もとっている。それだから返したわけなんだ。しかるに、一札とまるで違った、世界の世論が刺激されるような裁判がいまやられておる。送還した責任者である日本が何らかの手を打つべきものじゃなかろうか。しかも、危険なところに返さぬことは原則だとおっしゃる以上は、その原則に反することを、覚え書きの趣旨に反することを台湾政府がやっている際には、私どもの送還したときの心と非常に違う処置を貴政府はとっているから御考慮を願いたいぐらいの抗議はやるべきじゃないかということをあなたに聞いているのです。それはどうなんです。原則はわかりましたよ。原則からこのままほっておくべきじゃないじゃないかというのだ。
  34. 赤間文三

    赤間国務大臣 陳玉璽は、たびたび申し上げましたように、無理に強制送還をやったという考えはありません。日本に観光のビザを持って入ってきて、相談の上で台湾に行って、相談をしてまた日本に来るなり適当な方策を講ずるということで帰国をいたしたのでありまして、危険なところに無理に送ったという事実はわれわれは違うと考えておるのであります。何も、こっちが一方的に送り返したという事実はない。よく本人と相談をして、ビザを持ってきて目的を変えて日本に長期滞在するには、出直してこられるということが日本の法律のたてまえになっておるから、いかがでございましょうか、さよういたしましょうということで、話し合いの上で台湾本人が帰った、こういうふうに私は承知をいたしておりまするので、別にわれわれが無理な処置をとったとか、危険なところに好んで送ったという考え方とは全然違うのであります。  なおまた、向こうの国内事情につきましては、どういう裁判を受けるのかというようなことも、まだ私は十分承知をいたしておりません。私が危険なところに送り返すということをやらないのは、本人意思に反してあぶないところには、日本の国としては、人権擁護の上から絶対に送らぬようにしようというこの方針はずっと堅持をしておる、こういう意味でございますので、そこもとが、何か本人意思に反して無理やりにあぶないところに送ったのじゃないかというふうに猪俣議員はお考えになっておるのじゃないか、非常にそこに相違があるように私は考えておるのであります。その点御了承を願いたいと思います。
  35. 猪俣浩三

    猪俣委員 これは前から私はたびたび質問を申し上げたから、きょうの各委員なり傍聴人が、どっちの言うことがほんとうか、陳が台湾へ行くことを希望したので帰したなんということがほんとうのことか、行けば危険だから日本に置いてくれということを嘆願したことが事実であるか、そんなことは、陳が日本に来る経過、ハワイにおける台湾政府の陳に対する態度からすべてが明らかになっておる。そんなことは水かけ論みたいになりますが、あなたの言うことは、客観的証拠はありません。しかし、これ以上はあなたは答弁できないだろうからやめます。  そこで、将来私どもは、日本の特殊の地位に基つきまして、相当政治亡命者がふえると思うのです。それは、日本が平和であり、そして日本が中立的な人権尊重の国であるということを信じて亡命者が来るとするならば、われわれは決してこれは日本の不名誉だとは思いません。名誉だと思う。したがって、日本を信用し、日本を慕ってやってきた者に対して、そういう政治亡命者、国際連合のことばでいえば政治的難民、そういう者に対して、特別の法律をつくるべきものじゃないか。社会党では用意いたしております。しかし、なるべくこれは政府の提案であることが穏当じゃないかと思うので……。  それは抽象論になりますから、大臣、ここでいま入国管理令の改正が行なわれていることをこの前法務大臣は説明されたが、その中に一体——本人意思の確認機関というものを、ぼくは入管という政府に握らしておくことに無理があると思う。いま言ったように、だれが見たって、客観的に陳が台湾に帰りたいと希望したなんで、信用できる状態じゃないのだ。それを皆さんそう言い張る。そこで、そういうものに対して政府機関以外の特別の審査委員会みたいなものを設けるような改正案をいま考えていられるかどうか、そいつをお尋ねします。
  36. 赤間文三

    赤間国務大臣 いわゆる政治亡命に関しまする法律を制定するかどうかという御質問でございますが、この問題につきましては、御承知のように、国際慣習法上政治亡命の概念が現在ではまだ熟しておりません。わが国の憲法にもこれまたこれに関する規定がございません。かつまた、わが国は御承知のように難民条約にも加入していないというような幾多の事情からいたしまして、いろいろな困難な問題がございますので、現在法務省において慎重にこれをどうするかということは検討中でございます。  なお、御承知と思いますが、参考までに、しからば政治亡命についてはどういうふうにして処理をしておるかということを申しますと、政治難民に対する庇護に関する国際慣習法というものを十分、現在においては、処理のときにはこれを重んじておる。それから、出入国管理令の手続によりまして、政治的迫害の主張をされる人がなかなか多い、これは十分根拠があるかどうかというようなことも調べて慎重に検討する、そしてあくまでも人権の尊重とわが国の利益、公安の保持ということの調和を考慮した上に、在留適当と認められる事情のある者については在留許可してくる。在留を不適当とする者については、最小限度政治的な迫害の主張が十分根拠ありと認められる場合には、そのような領域にはこれを送還しないということを厳重に守って処置をしていくという、以上の基本的な方針で取り扱っているような次第でございます。
  37. 猪俣浩三

    猪俣委員 私質問しましたように、入国管理令の改正に基づいて公正な審議機関を政府以外に設けるということについては考慮されているのかどうかお尋ねしたのです。その答弁がない。
  38. 中川進

    中川説明員 入国管理令の改正に対しましてはしばしばこの場で御説明申し上げましたように、最後の仕上げに入っておるのでございますが、その中で一番大きな問題の一つがいま先生指摘の政治亡命者の規定をどうするか、そして先生の御提案のごとくこれに関する特別の委員会を設けるかというようなことでございます。それだけではございませんが、入国管理令の最後の追い込みにおいて問題になっている点の一つでございます。  そこで、結論だけ申し上げますと、これはまだ案でございますからどちらともきまっておらないというのが公平なあれでございますが、しかし見通しとしては、どちらかといえばそういう特別な機関は設ける必要がないのじゃないかという意見のほうが強い現状でございます。
  39. 猪俣浩三

    猪俣委員 私これで終わりますが、ただ要望として法務大臣に申し上げておくことは、難民に関する定義がはっきりしないというようなことは外務省の常套手段で、私はこの難民に関する条約になぜ加盟しないかということを七、八年前から質問しているのに、いつも判こで押したようにそういうことを言っている。今日難民に関する国際条約に五十四カ国も加盟し、難民の定義というものも実に詳細に出ている。それでまだ難民の定義が明らかでないなんというのは、これは逃げ口上です。私は人権擁護の中心官庁として法務省から外務省に交渉して——第一この難民問題に関する条約に入らぬというようなことはおかしい、のみならず、それに対応する国内法律をつくるということも法務大臣から内閣の問題として提起をしていただきたい。あなたその意思があるのかないのか。
  40. 赤間文三

    赤間国務大臣 そういう点いまいろいろな方面から研究いたしております。御了承願います。
  41. 猪俣浩三

    猪俣委員 終わります。
  42. 永田亮一

  43. 横山利秋

    横山委員 いま猪俣委員大臣局長との答弁を聞きまして、おそらく私ばかりではないと思うのですけれども、皆さんが共通に感じておる点だけをいま承っておった者として指摘をしておきたいと思う。  百歩譲って入国管理局長がとった態度が善意であるとかりに考えまして、なおかつその善意を利用して、台湾政府は帰ってきた人間をあの一札に違反して措置をしておるという点はどうしても残っておるのであります。そうでしょう。大臣はそれは観光ビザだから私のほうに問題はないと言っているのだが、しかし台湾政府死刑求刑するとか裁判にかけるという理由は、まさに入国管理局長が大使館からとった一札と矛盾しているわけです。そこのところが私どもはどうにも納得ができない。つまりそこのところが猪俣委員のおっしゃるように、何だ、一札を出しておきながら裏でそれを履行していないではないか、ばかにされているではないか、こういうことになっておるのです。言うならばこれが入国管理局長と大使館のほんとうに私的な文書で、世間にも通っていないものならばともかく、国会で話題になって、外交文書ではないけれども日本政府としてあの文書を信頼しておると言い切ったあとだけに、その文書が実は空文になっておるという事実が直後に起きただけに、これはかりに百歩を譲って法務大臣入管局長の善意と仮定したとしても、何だ台湾政府はばかにしておるではないか、文句の一つもよう言わぬのか、これが私ども聞いておる人の頭の中にあることですよ。そこのところを大臣日本政府の閣僚の一人として頭で受けとめ、腹で受けとめて御答弁をされなければ納得ができない。どうですか、御答弁ございますか。
  44. 赤間文三

    赤間国務大臣 その点についてはさきにはっきりと御答弁をしたつもりでおるのでございまして、要するに台湾であろうと北朝鮮であろうとどこであろうと、本人をそこに送り返すことが身体に危険があるというところには送り返しませんということを私は明確に申し上げておる。それから文書の取りきめにつきましては、私はその一部分にすぎぬと考える。われわれの方針は、台湾だけでなくて、危険なところ全部に亡命者を送るということを日本政府はやらないという、これを今後も厳重に守っていこうというふうなことで、全部を含んでおると御了解を願いたい。
  45. 横山利秋

    横山委員 大臣の先ほどの答弁は、陳君のあり方について、手続的なビザの問題、観光旅行であったからという手続的な問題に終始しておる。しかし肝心なことはおっしゃらない。陳君がなぜ日本にとどまりたかったのかという根本の問題をあなたはわざと避けてみえるわけです。陳君は日本にとどまりたかった。けれども観光ビザだからいかぬ。やむを得ぬということになったのですが、根本的には、台湾に行ったならばこれはどうもやられるぞと友人にも言われる、だから日本にとどまりたかった。そこのところが入管局の陳君に対する話し合いの中でなかったはずはないと私どもは思っている。かりにそれがなかったにしても、台湾政府が陳君を処分しようとして、裁判にかけようとしておる原因は、あなた方が先ほどおっしゃったように、日本におけるあちらの新聞に書いた論文だとか、日本国内における行状であるとか——そうすると、それは一札にまた矛盾してくる、こういうわけであります。私はたくさんの話題を控えておりますので、これだけに時間をとるのはいかがかと思うのですが、そこのところがくつを隔てて足をかくようで、実は一札を出しながらその直後に一札に違反したようなことを——かりに日本政府の善意であるとしても、なおかつ台湾政府が一札に対して冒涜し、裏をかいておるではないかという点が何とも払拭し切れない問題が残っている、こういうわけであります。
  46. 中川進

    中川説明員 蛇足になるかもしれませんので恐縮でございますが、お答えいたします。  ただいま横山先生指摘の、これこそまさに先ほどの中国大使館から出たあれの該当の問題ではないかとおっしゃいますが、私どもとしてはこの本人台湾政府のそういう意味でのおたずね者になっているということは全然承知いたしません。あくまでこれは本人法政大学に行きたい、そのために観光ピザで居すわりをはかりたいということでありましたので、それは困る、法政大学へ入れないというわけじゃないんだから、とにかく一ぺん出て、そして成規の入管手続で入ってこいということでございます。  それから、ただいま私が日本における反台湾活動のことを申し上げましたが、これはこの間八月一日の公判に関する記事として私が御披露申し上げたのでございまして、私がそういうことを言いましたのは、まだ二、三日前の、この八月の二日の新聞を読むとそういうことがあったので、ああそういうことがあったのかなと思った次第であります。決して初めから、日本においてそういう反台湾政府的な行動をしたので、帰ったら首が飛ぶであろうというような意味でこの陳の問題を、先ほどの中国政府の保証書に該当するかせぬかというようなこと、それからそれをもらったから安心いたしたというようなことは毛頭ございません。それは先ほど猪俣先生お答えいたしましたが、これはそういうような問題ではなくて、先ほどの、去年の夏休暇で帰った二人の東大生といわば似たようなケースでございまして、学生さんがまた勉強したいということであれば、これは当然出直して成規の手続で入ってきてしかるべしと、それだけのことでございます。
  47. 横山利秋

    横山委員 押し問答する時間がないのですが、私は、大臣、あなたの善意を一ぺん信じようと言っておる。だからいまの段階ではあなたの手落ちだと言っておるわけではない。手落ちではないけれども、結局台湾裁判にかけられている原因というものは、日本でああやったこうやったということではないのか。それだったら一札に違反しているではないか。一札ではそういうことをやったところで別にどうもしないということを言っておるじゃないか。それをあなたは信用しているのでしょう。そうだとしたら、台湾政府はばかにしておるじゃないかということが一つ。  それから陳君の問題、あなたは表面的なことばかりおっしゃるけれども、もしそうだとしたら、調査不十分です。陳君と法務省の係官との話し合いが調査不十分です。どういうことでそうなったか、どういうことで帰りたくないのかという点が調査不十分です。くつを隔てて足をかいた調査だからそういうことになったと言わざるを得ぬのです。  まあその程度にしておきます。  大臣に第二番目にお伺いしますが、帰還協定の問題です。たびたびここで取り上げてほんとうになんでありますが、申請者一万七千八百七十七人、日赤調べでは一万五千九十人がまだ帰国できないということになっておる。これはあなたと私との意見の相違はないように思うのです。政治的な問題ではなく人道的な問題である、だから帰そうじゃないかという点についても、そんなに径庭はないと思うのであります。ただ私どもが心配をいたしますのは、こういう人道的な問題であるにかかわらず、何としても政府は韓国の動向に気がねして勇断をふるわない。私も先般来、あの当時コロンボ会談前後を通じて、朝鮮側も無条件協定延長ということを言いなさんな、日本側も協定打ち切りでなければいやだと言いなさんな、人道的な問題であるならば話し合いの余地は十分あるはずだ、お互いに帰してほしい、帰そうじゃないかということに原則的に異議がないのであるからいいじゃないか、そこのところの歩み寄りはできないはずはないと言っておるのですが、その項にかかわることは、政府が韓国側に対して気がねをしておるということがどうにもこの問題の隘路になっておるように私には思われてならないのであります。参議院選挙の直前でありましたか、新聞で、もうこれは帰すということに踏み切ったように報道されながら、その直後まことにつまらぬ事情でこれが、政府内部で意見の不一致のようでありますが、お切れになった模様であります。こういうことをいつまでほかっておくのか。これはほんとう政府としても勇断をふるうべきときではないかと思うのでありますが、法務大臣いかがでございますか。
  48. 赤間文三

    赤間国務大臣 この北朝鮮の帰還問題については、前からたびたび横山委員の質疑があったわけであります。私は全く横山委員と同じ考えを持っております。この帰還問題はもう人道上の問題でございますから、あくまでその立場からこれを処理していこうという考えを終始一貫私は持っております。  それから政府の態度としましては、日赤の意向を十分に尊重して解決に持っていこうという考えを政府は持っておる。そうすると、日赤としてはコロンボ会談でいろいろと提案を説明しておりますので、あの線で今後もこの帰還問題を取り進めていきたいというような考えを持っておるように私は承知しております。日赤がこの間、コロンボの長い間かかって話した人道上の立場からやろうというあの問題、日赤の考え方に政府としてもこれを了解しておるというのが現在の実情でございます。将来なるべく早く、お話しのようにこの問題は人道的な問題として解決せられることを心から希望をいたしておるような次第でございます。
  49. 横山利秋

    横山委員 八月末にまた日韓定期閣僚会議がソウルで開かれるそうでありますが、大臣は御出席になりますか。
  50. 赤間文三

    赤間国務大臣 私はあまり出ません。
  51. 横山利秋

    横山委員 私どもの心配いたしますのは、昨年並びに一昨年の例もありますが、このソウルにおける閣僚会議によって、いま大臣がお話しなさった趣旨には毫も変化がないと考えてよろしゅうございますか。
  52. 赤間文三

    赤間国務大臣 お答えを申し上げます。  この問題は、たびたび横山委員が申されましたように、人道上の問題として取り扱うということについては、これはもう幾ら閣僚会議であっても変わりはないと私は考えております。それで、やはりいままでいろいろと交渉をされたのは日赤同士でありますので、日赤の、この前コロンボ会談で長い間かかってやったものが、大体基本線で交渉は進められるものと考えて大したあやまちはない、大体その線で交渉は進められるもの、かように私は考えております。
  53. 横山利秋

    横山委員 そうしますと、まあ非常にデリケートな問題を質問したので、それに対して大臣がそうお答えになったということは、今日までの基本的なお考えが、ソウルにおける日韓閣僚会議によって変更されることはない、こう理解して次の質問を進めたいと思いますが、よろしゅうございますね。
  54. 赤間文三

    赤間国務大臣 先のことでありますのではっきりと確言はできませんが、私の考えとしては、大体さきに申し上げました線からはあまりはずれなくて交渉があるのじゃないか、かように私は信じております。
  55. 横山利秋

    横山委員 これは法務大臣もすべて自分の権限ではございませんので、委員長にお願いいたしまして、次回には日赤の責任者にもお出を願いまして鞭撻督励をいたしたいと思うのでありますが、要するに政府側として日赤におまかせするといいましても、実際は船が来なければ何ともならぬ、船が来たらばその取り扱い者が上陸をある程度しなければ何ともならぬ、それから出国者の手荷物の問題がある、いろいろな問題がある。したがいまして、日赤のオールマイティばかりではないわけであります。実際は政府側が、日赤が取りきめます問題に対して支援体制をつくらなければ問題は解決いたさないのでありますが、その意味におきましても、日赤の指導的な立場に対して政府側が理解と協力をする、こういうふうに判断をしてよろしゅうございますね。
  56. 赤間文三

    赤間国務大臣 私もさように考えます。
  57. 横山利秋

    横山委員 本件につきましては、法務大臣のみならず、厚生大臣並びに外務大臣、官房長官も同意見と考えてよろしゅうございましょうか。
  58. 赤間文三

    赤間国務大臣 その後あまり厚生大臣あるいは外務大臣、官房長官と直接話し合ったことはないのであります。他の方々がどういうお考えを持っておられるかを、ここではっきりと申し上げることはできないと考えております。ただ私は、事柄の性質上、私の申し上げる線がこの問題を解決する上に有効適切で、そういう方法がとられるんじゃないか、かように信じておるわけでございます。他の閣僚も私と同じように考えておるということは、いまここでは申し上げ得るとは考えておりません。
  59. 横山利秋

    横山委員 若干ことばを濁されたのでありますが、濁されたには私は理由があると見ておるわけであります。先般、私の承知する限りにおきましては、日赤が交渉再開に了解をする——交渉というか、話し合いというか、とにかく糸口をつけるという点について一部政府部内において意見の違いがあったために、きわめてあいまいな打電をしたというふうに巷間伝えられておるのであります。もしそれいま法務大臣のおっしゃったようなことであるならば、私はとっくに話し合いが再開されておると思うのであります。私が大臣にお願いしたいのは、この際ひとつ関係の各省と十分に話し合って——一万五千数百という日赤調への数字の人たちが、一年も一年半も待って、借金も済ませ、準備も整え、家財道具も売り放し、そして冬を迎え、夏を迎え、またいつのことかわからないような現状については、どうことばを尽くしてみましても尽くし切れぬほどの人道上の問題だと私は思うのであります。しかも、この件は政府が一方的に協定を打ち切った。ことばは悪いかもしれませんけれども、打ち切った。打ち切って、政府が何月何日までにもし希望するならば帰国をさせようというような、日本政府の一方的責任において行なわれたそのことが、履行できないのでありますから、私は日本人として、別に朝鮮民主主義人民共和国の言い分ばかりを守っているわけではありません、支援しておるばかりではありません、むしろ日本政府のやったことについて日本人として責任を感ずるという意味で申し上げておるわけでありますから、どうぞこの際関係閣僚と話し合って、そして説得をして、法務大臣の重要な所管の一つでもございますから、この問題の推進にぜひ全力をあげてもらいたい、こう思うわけでありますが、いかがですか。
  60. 赤間文三

    赤間国務大臣 私は、ただいま申し上げましたように、コロンボ会談で提案を説明した線がございますので、この線で今後もこの交渉ができるだけ早くお述べになりましたように進んでいくように力を尽くしていきたい、かように考えております。
  61. 横山利秋

    横山委員 大臣に念を押しておきたいと思うのであります。話し合いでございますから、かつてのように無条件延長でなければいやだ、協定は破棄したという前提でなければいやだ、そういうことを言うておったんでは、絶対条件を付しておる限りにおいては、話し合いがまとまらないのであります。しかも、両者共通いたしておりますのは、送り帰してもらいたい、送り帰そう、それが人道的な問題であるのでありますから、双方とも絶対条件を付さないように、とにかく話し合って、一刻も早く帰すということに起点を置かなければ、これは何ぼやっても同じことだという心配がございます。この点はひとつどうぞ大臣にもお含みおきを願いたいと思うのであります。  次は、日通の問題であります。  日通の問題につきましては、この参議院選挙を通じまして、私ども政党並びに政治家、国民、すべてが最大の関心事といっていいほどの問題でありました。私ども社会党に所属いたします者も、まことに憤激おくあたわざるような結果を生じたことも、大臣御存じのとおりであります。私どもの立場はまずさておくといたしまして、少なくとも国民がまだ日通の問題について残しております根は、かなり深いものがあります。それは、大倉精一、池田正之輔両君の起訴をもって日通問題がもう陰に隠れた、そして数億になんなんとする流れた金の行くえはやみからやみへ葬られるのであろう。朝日ジャーナルにいわせれば、自由民主党政府は、福島の銅像を建てたらどうだ、こういうことまでいわれ、そして選挙が終わった今日、あらためて国民の疑惑を解くべき責任を私どもは痛感をいたしておる次第であります。  今日、日通問題についての調査はどういう段階でありますか、まず簡潔に伺いたい。
  62. 赤間文三

    赤間国務大臣 日通事件の処分の結果についての御質問と考えます。これにつきましては、御承知の大倉議員のあっせん収賄関係、六月の二十五日に起訴。大倉議員は、参議院の決算委員会における日通問題の審議に関して、福島日通社長から柴谷要委員の質問追及を取りやめさせるようあっせん方の請託を受けて、その報酬として現金二百万円を収賄した。池田議員の受託収賄関係であります。池田議員は、衆議院予算委員会における日通問題の審議に関して、福島社長らから日通に有利な取り扱いをされたいという請託を受けまして、その報酬として現金三百万円を収受した。  日通役員の業務横領関係は、四月の二十九日、五月の十四日、六月の二十五日、七月の二十三日のこのたびたびの起訴により、福島前社長、西村、池田、入江、小幡各前副社長、田村前管財課長らは、昭和三十七年五月ころから四十二年の三月ころまでの間に、数十回にわたって業務上保管中の一億八千二百万円余りを横領した。福島前社長は、昭和三十九年十月ごろから同四十年二月ごろまでの間に五回にわたって額面合計一億円の小切手五通を横領した。  その次に脱税関係であります。大和造林及び同社の役員長谷川博和、それから金子光吉は、不正な方法によって所得を隠匿して法人税三千二百万円余りを脱税、逋脱、それから田村前管財課長は、他人名義を用いて預金するなど、不正の方法によって所得税四千百余万円を通脱した。  その他は国税局職員の汚職関係。六月二十七日に起訴になりましたのは、東京国税局特別調査官青柳啓次は、日通の税務調査をめぐって約九万円相当の供応、接待を受けた。  次に、名誉棄損、誣告告訴関係。これは六月二十五日に不起訴になりました。大倉議員からの福島、西村、池田の三名に対する告訴事件は、犯罪の証明がないために不起訴となった。  以上申し上げましたのが、いわゆる日通事件の処分の結果の概要でございます。
  63. 横山利秋

    横山委員 いまの御説明の中で、ちょっと確かめておきたいのでありますが、日通の依頼を受けて、大倉議員が参議院決算委員会の質疑を何とかしてくれというわけで柴谷要に頼んだ、そして二百万円をもらったというのは、大倉議員がもらったのであって、柴谷に渡したということではない、こういうことですか。
  64. 川井英良

    ○川井説明員 そういうことでございます。
  65. 横山利秋

    横山委員 わかりました。そうすると、柴谷豊前参議院議員そのものについては、何らの問題はないわけですか。
  66. 川井英良

    ○川井説明員 結局、捜査の結果そこまで——いろいろ材料といいますか、一応の容疑がありましたけれども、捜査の結果におきましては、結局柴谷議員にあっせん方を依頼されて大倉議員が二百万円を収受した、こういう事実を確認したわけでございます。
  67. 横山利秋

    横山委員 一応あなたのほうのお話を前提にして議論をいたしますが、新聞を見た分では、大倉精一議員が二百万円を日通からもらって柴谷さんに渡したということが、新聞報道の第一の報道でございます。それがそうでなかった。大倉精一氏がもらって自分がポケットにおさめた、柴谷には問題がなかったということは、柴谷現議員にとってはきわめて重大な問題でありますね。この新聞、テレビ、ラジオを通じて柴谷議員が受けた社会的信用の失墜といいますか、政治的信用の失墜といいますか、はかり知れがたいものがあると私は思うのですが、このことについては、調べたらそうでなかった、白だった、はいさようならということで一体済ませ得るものでありましょうか。私は必ずしも弁償だとか賠償だとか言っているも  のではないのですが、少なくとも柴谷議員が白であるならば白らしく、この間明白にするべき責任  があるのじゃないでしょうか。どうですか。
  68. 川井英良

    ○川井説明員 あっせん収賄罪で起訴しておりますので、あっせん収賄というのは、御承知のとおり、第三者の公務員に対して、その職務に関する事項について何らかのあっせんをしてくれということを依頼されしまして、その依頼を受けた者、それが金をもらうということが、その金をもらった公務員についてあっせん収賄罪が成立する、こういう性格のものでございます。したがいまして、あっせん収賄罪でこの事件が処理されたということは、その問題になっております柴谷議員について金がいったとかいかないとかいうふうな問題とは、法律的には関係のない問題になっているわけであります。ただ、この事件が問題になったときに、いろいろな報道の関係におきましていろいろな報道がなされたということは私ども承知いたしておりますけれども、検察官の処理いたしましたのは、これはあっせん収賄罪で処理いたしましたということは、大倉議員がそのあっせんを了承して、その報酬としてみずから二百万円を収受したということを証拠によって確定して、これを起訴した、こういうことになるわけであります。
  69. 横山利秋

    横山委員 法務大臣、常識的にいまのお話で私は納得できないのです。少なくとも日通から大倉、柴谷というふうに二百万円が渡っていったというのが、新聞報道、ラジオ、テレビが一斉に持ち出した問題であります。それは新聞記者がかってにそう書いたということにはならない問題を含んでおるわけであります。検察陣がそういうように説明をし、そういうふうに理解をしたのです。そこで、柴谷議員は、これで社会的にも政治的にもたいへんな汚名を受けました。しかし、いまの局長答弁をもってして、お金はもらってなかったんだ、頼まれたかもしれぬけれどもお金をもらってなかったのだということだとするならば、金をもらったといって騒がれた人が、金をもらわなかった。それで、もらわなかったという事実については、何にもどこにも宣伝するわけでもなく、広告するわけでもない。ここで初めて国会で柴谷議員は二百万円もらわなかったということに御答弁がなったわけでありますが、この間柴谷議員の受けた不名誉については、もう少し検察当局も、法務省としても、考えられるべき折り目があったではないか。こういうようなことが今後とも行なわれて、だれそれが二百万円もらった、ざっと検察陣から新聞記者に話があり、一斉にテレビ、ラジオに報道されて、そしてあとの取り消しだけは全然しないというようなことは、人権上きわめて重大なことではありませんか。どうお考えですか。
  70. 赤間文三

    赤間国務大臣 私は、こういう刑事の問題については、あまり多くを申し上げぬようにしておる、ただ必要なことだけをそのつど申し上げるという方針をとってきておりまして、私が受けてまいりましたところによると、ただいま大倉議員については、要するに柴谷要議員の質問の追及を取りやめさせるようあっせん方の請託を受けて、その報酬として大倉議員が現金二百万円を収賄したという報告を法務大臣として受けておるのであります。その他のことにつきましては、一切の報告を受けておらないのでございます。新聞にはいろいろなことがあったと考えておりますが、私が正式に受けたのは、この報告だけでございます。そのほかのことについては、あまり私は知識がないのと、自分がまた取り扱っていないから、申し上げることを遠慮したい、かように考えておりますので、御了承を願いたい。  それで、これがどうして名前が出たかというと、これは私の全然想像ですが、あっせん収賄罪という、こういうものでは出さぬわけにはいかなかったのだろうというふうに私は想像いたします。単なるあれと違って、あっせん収賄罪ということで起訴が行なわれておりますので、名前がやむなく出たのではないか、かように私は私なりに考えております。さよう御了承願いたいと思います。
  71. 横山利秋

    横山委員 名前が出たことについて私は言っているのではないのですよ。名前が出たときに、二百万円あの人はもらったという宣伝がされて、そして二百万円もらっていなかったのだということがわかっても知らぬ顔をしているということでは、人権じゅうりんになるんではないか、こう言っているのですよ。しかも、国民の負託を受けている国会議員である。その政治的、社会的立場というものは、きわめて重大なものである。政治に対する信頼感を喪失するもはなはだしいものである。したがって、柴谷さんの名前が出たのは、それはやむを得なかろう。けれども、もらったといって宣伝された人が、調べたところ実はもらってなかったのだとなれば、その疑惑を折り目をつけて晴らすことが、人権上必要ではないかと私は言っておる。
  72. 赤間文三

    赤間国務大臣 その点については、これからいよいよ公判に入りますので、非常にはっきりしてくると私は考えております。
  73. 横山利秋

    横山委員 はっきりしている。いま、もらわなかったと言っているじゃないか。検察当局がもらわなかったと言っているじゃないか。
  74. 赤間文三

    赤間国務大臣 裁判がありますから、裁判のときにはいろいろな問題がございますので……。さように私は考えております。
  75. 横山利秋

    横山委員 それはおかしい。大臣局長答弁が違います。局長は柴谷議員は二百万円もらわなかった、こう言っておる。大臣は、その点について問題をぼかして、裁判の結果をまたなければわからない、こう言っている。
  76. 赤間文三

    赤間国務大臣 それは違う。
  77. 横山利秋

    横山委員 どうなんです、ではあなたは。
  78. 赤間文三

    赤間国務大臣 もらったとももらわないとも言わない。
  79. 横山利秋

    横山委員 こちらはもらわなかったと言っておる。あなたと局長答弁が違います。意見を調整して返事してください。
  80. 赤間文三

    赤間国務大臣 局長の意見が、こういう問題については私より正確だと考えております。ただ、法務大臣としては、ここに申し上げました私の全部をあなたに申し上げたので、そのほかのことについては適当な機関ではっきりしてくるであろうという、私の私見を申し上げたのでございます。その点は、何も二人の間の食い違いだとかなんとか、私がそれを否定したとか肯定したという問題でないのを御了承願いたいという意味のことを申し上げたのであります。
  81. 横山利秋

    横山委員 大臣、あなた少し答弁ですっきりするところはすっきりしてほしいと思うのです。私の質問したのは、あなたが先ほど御説明になったことは間違いないか、あなたの御説明は、あっせん収賄である、しかし、大倉さんが二百万円もらって柴谷に渡さなかったという趣旨であなたは説明をされたので、間違いないですかと言ったら、局長は間違いないですと答えた。だから、自分で説明していたものを、あなたはもらったとももらわなかったとも言っていないと言っても、あなたは説明しているじゃないですか。そういう点、大事なところになると、大臣は、人権問題であるから、はっきりすべきものはぜひひとつはっきりしてもらわなければ困る。これはひとつはっきり申し上げておきたい。もらったと宣伝されたものが、もらわなかった。起訴をする側でもらわなかったときめたら、裁判でもらったということになるはずがないですからね。ですから、その間の人権問題について、法務省、検察陣として配慮しなければ、あまりにも気の毒じゃないだろうか、こう言っているわけであります。私の言うことはわかりましたか。
  82. 赤間文三

    赤間国務大臣 わかりました。
  83. 横山利秋

    横山委員 善処してくれますか。——国会を通じてこういうふうに質疑応答することが、折り目をつけたことではある、私はそう思うのですけれども、これは今日になるまででも、法務省としては少しその辺は考えなければならないことではないだろうかと思うのです。  それから第二番目の質問に移ります。ちまたの疑惑の問題として、とにかく日通から政党及び政治家に選挙に関し、あるいは選挙に関しなくとも、政治資金として流れた金は五億だといわれておる。それを受け取った政治家は四十八名ですか、であるといわれておる。これが全く根拠のないことではないようであります。したがって、この間日通から政党並びに政治家に流れた政治資金並びに選挙に関しての陣中見舞い等は、どのくらいであったか、何人にそれが配付されたということになっておるのか、御報告を願いたいと思います。
  84. 川井英良

    ○川井説明員 最初にお断わりをしておきたいのは、この事件は、日通が不正な経理をした結果、多額のいわゆる使途不明金なるものを浮かして、それをもっぱら政治的な方面に何らかの意図でこれを活用、悪用したというふうなことで、その間の事情を明らかにするということを目的としてこの捜査が始まったものではないということでございます。これはあくまで法人税の脱税事件が端緒になりまして、それを取り調べました結果、役員に多額の業務上横領の疑いがあるということで、業務上横領の経理計算をする過程におきまして、ただいま御指摘のように、かなりの額が政治家に流れておるということが明らかになってまいりまして、その間政治家に流れておるものが、汚職、あるいは公職選挙法違反、あるいは政治資金規正法違反というふうな疑いがないかどうかというふうなところに手が伸びてまいりまして、捜査が進んでまいった、こういうふうな事情に相なっておりますので、この事件の捜査の経緯について最初に弁明をしておきたいと思います。  それから、そういうふうなかっこうにおきまして、まず最初に東京地検がこの帳簿に基づいて確定いたしましたいわゆる使途不明金なるものは、四億九千三百十万でございます。これをさらに詳細に個別に検討してまいりました結果、そのうちの一億八千七百四十万というものが一応会社の経理に入ったごとくでございますけれども、十分にその間の事情を調べてまいりますと、この一億八千七百四十万は実は会社に入らないで、途中でその間に介在しておった者が適当に消費したということがわかりましたので、それを差し引きまして、三億五百七十万というものが、一応証拠に基づいて東京地検が確定したいわゆる日通事件の使途不明金の認定額でございます。この三億五百七十万の使途を解明いたしました結果、そのうちの一億一千七百九十万が、結局先ほど申しましたように、会社の幹部ないしはそれにからまる人たちがそれを業務上横領した、着服したということで一応証拠がそろいまして、この分につきましては、それぞれ、先ほど大臣が御説明申し上げましたとおり、公判請求をいたしておるわけでございます。  そこで、残りの一億八千七百八十万というものが最後に残りまして、これをどういうふうに使用したのかということで、いろいろ帳簿並びに多数の参考人を取り調べました結果、それが結局政治献金というふうな形をもって政治家のほうに流れておる額であるということが一応確認できたわけでございまして、その一億八千七百八十万は、先ほどおあげになりましたような四十数名の政治家に対して献金をされておったということが、一応証拠に基づきまして確認された額でございます。
  85. 横山利秋

    横山委員 その一億八千七百八十万円が四十数名の政治家並びに政党に流れたということで、もう少しそれを詰めてみたいと思うのですが、四十何名でありますか、正確には。
  86. 川井英良

    ○川井説明員 正確には四十七名でございます。
  87. 横山利秋

    横山委員 この金額が、いまおっしゃったような政治資金規正法、あるいは公職選挙法、あるいは汚職というふうに分かれるとして、どういうふうに分類ができますか。
  88. 赤間文三

    赤間国務大臣 大倉、池田以外の国会議員の問題でありますが、要するに起訴の手続をとった大倉、池田の両氏以外に、国会議員で立件するに足る容疑のあると認むる者はなかった、立件するに足る容疑のある者はなかった。したがいまして、国会議員であって被疑者として立件した者は、大倉、池田両氏以外にはない。こういう報告を法務大臣は受けておるのであります。  地検は、真相究明のためにあらゆる角度から証拠の収集につとめて、その過程において数十名の国会議員を取り調べたことは事実であります。それらはいずれも参考人としてであって、したがいまして、その氏名とか関係事実の内容等は、当局から明らかにすることは差し控えたいというのが考え方であります。もしこれらの事項を公にするならば、起訴済みの、裁判所に係属中の事件に影響を及ぼす、また適正な捜査の結果犯罪と認むべき証拠がないという以上、それらの人の名誉を害することとなります。さらに、参考人として協力した者につき、取り調べ結果を公にすれば、今後検察の捜査に対して協力をするというようなことも自然困難になる、将来の検察運営に重大な影響を及ぼす、こういうことから考えまして、これを公表するということは、適当でないと私は考えております。  なお、検察当局は、汚職のほかに、日通からの政治献金の内容や書証についてあらゆる角度から検討を加え、公選法違反、政治資金違反等の刑事責任の有無等を取り調べました。結局、証拠上違法な献金は認められなかったというのが事実でございます。  以上、申し上げられる程度を私ははっきりとここに申し上げておきたいと考えております。御了承願います。
  89. 横山利秋

    横山委員 そうしますと、一億八千七百八十万円のうち、池田正之輔三百万円、大倉精一二百万円、五百万円だけが法に触れるものであって、自余政治に流れた一億八千二百八十万円は違法性ないと認められる、こういうわけでございますか。
  90. 赤間文三

    赤間国務大臣 そのとおりでございます。
  91. 横山利秋

    横山委員 私は、国民諸君がいまの法務大臣の御説明を納得すまいと思う。この池田正之輔並びに大倉精一両君に対しましても、私は十分にまだ意向をただしたいところがあるわけでございますけれども、きょうは時間がございませんから多く申しません。しかしながら、この一億八千二百八十万円のばく大な金が政治献金で流れ、その中に公職選挙法、あるいは政治資金規正法、あるいは汚職等の一切の違反の献金が認められないという点は、冒頭大臣がおっしゃったことばと矛盾しはしませんか。立件するに足る容疑のある者はないということでしたね。少なくとも調べたけれども、白か黒かわからぬけれども、黒だという証拠がなかったということではありますまいか。結論としては、違反の献金は認められないというのは、飛躍がありはしませんか。どうです。
  92. 赤間文三

    赤間国務大臣 立件するに足るだけの証拠が見つからなかった、一口に言うとお述べになりましたとおりであります。立件するだけの証拠がなかった、かように私は申し上げたわけであります。
  93. 横山利秋

    横山委員 だから、そういう前提に立って、結論として違反の献金は一切認められなかった。一億八千二百八十万円については、違反の献金は一切ないと断定をしていいものかどうか、そこに飛躍がありゃせぬかと私は言っているのです。
  94. 赤間文三

    赤間国務大臣 御承知のように、刑事事件は全部証拠でもってこれをやる、近代の刑事政策御承知のとおりでございます。証拠のないもの、また不確かなものは、私は立件の基礎にならないと考える。そういうものは、いまの刑事訴訟から言えば、不正なものであるということは間違っておる、かように考えておる次第でございます。
  95. 横山利秋

    横山委員 私は、少なくとも法務大臣、こういうことをなさる決意はないか。四十七名の人がだれであるか、私は知りません。けれども、巷間伝うるところによれば、あの人ではないか、この人ではないかと陰でささやかれておる。新聞記者はかなりの数を知っておる。雑誌や何かにちらちら載っておる人もある。そういう人について、国民の疑惑は晴れぬのです。あなたは池田正之輔、大倉精一両君のみを裁判をする、あとはもう何もしないというあいまいのままに推移するならば、国民の疑惑は晴れないと思う。この際日通事件の全貌というものをもっと明らかにすることが必要であり、そうして四十七名の氏名も、あなた方が調査をされた現実に照らして氏名を発表される、そういうことが高度の政治的判断、国民の政治に対する信頼感を増すためにも必要ではないか。この際ひとつ四十七名の氏名を公表する、日通事件の概要をあらためて天下に発表するというお気持ちはありませんか。
  96. 赤間文三

    赤間国務大臣 そのことは、さきに申し上げましたとおりであります。(横山委員「しましたけれども、あらためて言うのです。」と呼ぶ)あらためての御質問でございますので、お答えしますが、そういうことをやることは私は好ましくない。とにかく証拠のないもの、証拠の不足しているもの、犯罪にならないものの名前を公表することは、名誉棄損にむしろなるのじゃないかという私は気がするのです。なおまた、調べ方が犯罪人として調べたというなら、一応あなたのような御議論も私はできるけれども参考人として調べて、刑事事件につきましては、参考人というものによっていろいろな立件の基礎が得られる場合が多いのです。そういうものを発表をいたしますと、将来検察に協力するというような人が、あそこにもう参考人として行くといろいろ言われる、ということになると、刑事政策の成績をあげる上からも非常に困難になる、こういう点からいたしまして、明確にわれわれはこれを取り扱う必要がある。立件するだけの基礎のないものについては、それを申し上げることは適当でない、かように私は考えておりますので、その点は御了承を賜わりたいと思います。
  97. 横山利秋

    横山委員 時間がございませんので、もう一つだけ、次回に御答弁をいただく意味において、意見を伺っておきたいと思うのであります。  全国人権擁護委員会連合会は、昨年の十月四日、満場一致決議をいたしまして、列車等より排出される汚物の適切なる処置の早期実現方について運輸大臣等各方面に要望をいたしました。最近列車から排出される汚物については、各方面の話題となっておりまして、国民としては、そんなことだったのかと、いまさら気がついておるような状況であります。  ここに「国鉄糞尿譚」という非常に最近話題の中心になっております本があるのですが、時間の節約上、この白須という人が出した嘆願書の一部を朗読いたしますと、「私は、都内の高架線下の近くに住んでいる者ですが、過日、父の葬儀のため、親族一同が多数列席致しました際まったく予想だにしない一大事が発生致しました。それは、耳をつんざく列車の轟音とともに、異臭を放つシブキが、居並ぶ数人の礼服に降りかかってきたのです。日本の先端をゆく首都・東京で、いまなおこのような非文化的なことが、白昼堂々と繰り返えされていていいものでしょうか?」また赤羽付近へ電車が参りますと、車掌が車内放送をいたしまして、赤羽から上野までは便所を利用しないでくださいという放送をするのであります。夜行列車や何かですと、寝ておった人が飛び起きて、するならいまのうちだというのであわてて便所内に飛び込む。そうすると、赤羽までに至る区域は、まず赤羽——上野間の被害を全力集中でうんちや小便をばっとばらまいて走る、こういう状況になっておるわけであります。きょう国鉄当局の御出席を願いたかったわけでありますが、御出席がございません。法務委員会で取り上げますゆえんのものは、この全国人権擁護委員会連合会が取り上げましたことは、まさに単に国鉄に働く労働者ばかりでなくて、実に全国民的な問題だと思うのであります。  どのくらいのうんちが全国で出ておるかといいますと、ここにおもしろい統計があるわけですが、「国鉄が、四十二年に発表したところの統計年報によると、年間の旅客の輸送人員は、約八十億人となっている。これを一日に換算すると約二千二百万人となる。したがって、毎日二千二百万人が、列車に乗車するものと仮定する。そのうちで、列車便所を利用する者の数を、全乗客に対する率として、大便係数を〇・〇三とし、小便係数を〇・二と推計する。そうして平均的な排便量を三〇〇グラム、排尿量を三五〇COとして、一日の排泄量を求めてみると、大便においては約二千トン、小便に赴いては約一四五万リットルと推定されるのである。」この二千トンのうんこと百四十五万リットルのしょんべんが全国の鉄道沿線下にまき散らされておるわけであります。そのしょんべんの中には、法務大臣も汽車に乗ってなさいましたしょんべんやうんこも入っておるわけであります。あなたも公害の加害者である。こういうようなことはいままで聞けば、知らぬ人は、そんなことはなかろう、そんなしょんべんやくそを汽車がたれ流しで走っておるようなことはないだろうというふうに思う人が多かったと思うのでありますが、実際は新幹線以外は——新幹線は内部貯留式でありますからいいのでありますが、新幹線以外は全部、汽車が走れば走るほど、スピードを増せば増すほどしょんべんとうんこは広範に沿線に広がるわけであります。これは汽車のそばにおりますと、ときどき水がばっとかかることがある。あれは顔を洗う水かと思っておると、あにはからんや大間違いでありまして、しょんべんやうんこがぱっとかかるわけであります。それを毎日かぶっておるのが鉄道の保線関係の労働者、そうして高架下なんかになりますと、いま嘆願書にございましたように、葬式をやっておったら礼服の上にうんこやしょんべんがばっとかかってきた、こういうようなことになるわけであります。これはほんとうにあほうみたいなことでありますが、いまや放置を許されざる問題だと考えておるわけであります。次回、国鉄にもおいでを願いまして、逐一その機械設備その他をよく検討するつもりでございますが、法務大臣としてこの人権擁護委員の連合会の決議をどういうふうにお考えになり、またどういうふうに人権問題の総責任者としてなさるおつもりであるか、御意見を伺いたいと思うのであります。
  98. 赤間文三

    赤間国務大臣 この点は横山議員と全く私同感でございまして、私も実は初め、東北のほうから帰ってくるときに、赤羽近くで、これから先は遠慮されたいというのを聞きまして、いまのこの文化の時代に非常にふしぎに考えたわけであります。好ましいことではないと思いました。昨年の十月四日に、全国人権擁護委員会連合会の総会においてもこれが取り上げられて、汚物の処置方法の改善方について対策を講ずるように関係機関に要望する旨の決議がなされ、全国人権擁護委の連合会会長が運輸大臣あるいは日本国有鉄道総裁等にも改善方を要望したように承知をいたしております。法務省といたしましても、国民の人権擁護の立場から関係諸機関がこの問題についてすみやかに事情調査して、適切な処置を講ずるように期待をしておるような次第でございます。今日のような文明、科学の時代に、私は全く横山議員と感を同じにしておりますので、一日も早く汚物というようなものが散らばらぬように、ひとつ処置を強く要望していきたい、かように考えます。
  99. 横山利秋

    横山委員 所管としては運輸省であり、予算としては推計五百億だといわれておるわけであります。しかも運輸省は、事情もっともであるけれども、とてもこの国鉄の財政上困難なときに、それだけの多額の金を、別途それによって収入がふえるわけでもない今日においては、運輸省としては気持ちは同感であるがなかなか困難だというようにいわれておると聞いておるわけであります。したがいまして、これは別な角度から取り上げなければ、とうてい政府側としても、特に大蔵省としてはうんと言うはずはありません。したがいまして、法務大臣がこれは人権問題である、また厚生大臣がこれは清掃法違反である等々、各省からこの問題についてなるほどこれはもっともであるから改善してやらなければだめだというバックアップがなければ、これはとうてい運輸省限りでは実現しないと私は思うのであります。この際、ひとつ法務大臣と厚生大臣、そのほか関係大臣が率先この問題の解決に当たられるよう要望いたしたいと思うのです。  時間がございませんので申し上げるだけにとどめておきたいと思いますが、前国会の終わりに、前国会を通じてお約束を願いました点、その後の検討状況を念査をいたしましたところ、必ずしも私の希望するようになっておらないのが実情でございました。そこで法務大臣に、とにかくこの委員会でお約束を願ったことについては、政治責任の問題として十分努力をしてもらいたいと注文をいたし、次の臨時国会ないしは通常国会には、ぜひ政府側として、むしろ議員の提案をまつまでもなく、政府側として提案をしてもらいたい。  第一は、継続審議になっております刑事補償法の一部改正。  第二番目には、法務大臣が、自分が責任をもって検討するとお約束になりました休職者の問題、起訴されて休職になって無罪になった者の補償の問題、統治権者として国はどうするかという問題。  第三番目は、先ほど猪俣委員がおっしゃったのでありますが、亡命者の問題。  それから第四番目は、私が先般提起をいたしましたが、被疑者補償規程が、先般国政調査をもっていたしましても、現地の地検の責任者の話を聞きますと、実際問題としては運用していない、こういう率直な意見の開陳がございました。だから、今日の被疑者補償規程の運用ないしは抜本的な改善が、どうしても喫緊の問題だと痛感をいたしておるわけであります。  それから国政調査に参りましたときに、現地で裁判所、法務局、それから地検側から痛切に要望されたものが一つございまして、先ほどの理事会においても委員長に要望いたしたわけでございますが、離島問題であります。長崎県下において特に問題となりましたが、離島間の人事が、旅費並びに住宅の問題で運用できない。それが法務行政に対して県下においては相当支障になっておるという痛切な御意見がございまして、委員長はじめ私どももさこそと痛感をいたしたわけであります。  これらの問題につきまして、本日はもう時間がございませんので、ぜひひとつ審議並びに検討を進められまして、次期国会においては必ず私どもの満足するべき内容の政府答弁なり、私あるいは私どもの提案に御同調くださるなり何なりしてもらいたいのであります。私どももこの種の問題には超党派で一生懸命になっておるのでありますが、これが十分にお聞き入れにならぬという場合においては、私ども考えがある。そんなに私どもが一生懸命になっておるのに、政府がここで約束したことも、私どもの要望も、ちっとも聞いてもらえぬということであるならば、法務委員会法務大臣にこれほど協力している態度を、ちょっと変えなければならぬとすら私も思っておるわけであります。その辺は議事録に残ることでございますから、十分お含みの上、いま申しました諸懸案に誠心誠意十分な答えが出るように御検討願いたい。いかがでございますか。
  100. 赤間文三

    赤間国務大臣 お申し述べの件は、誠心誠意十二分にひとつ検討をして、でき得る限りあなたの趣旨に沿うように全力を尽くしていきたい、かように考えておりますので、ひとつ御協力を賜わるようにお願いを申し上げておきます。
  101. 永田亮一

    永田委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後一時散会