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1968-10-04 第59回国会 衆議院 文教委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年十月四日(金曜日)     午前十時五十九分開議  出席委員    委員長代理理事 久保田藤麿君    理事 河野 洋平君 理事 谷川 和穗君    理事 西岡 武夫君 理事 小林 信一君    理事 長谷川正三君       有田 喜一君    北澤 直吉君       高橋 英吉君    中野 四郎君       広川シズエ君    唐橋  東君       川村 継義君    斉藤 正男君       山崎 始男君    有島 重武君  出席国務大臣         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君  委員外出席者         人事院総裁   佐藤 達夫君         人事院事務総局         給与局長    尾崎 朝夷君         総理府人事局長 栗山 廉平君         警察庁刑事局保         安部防犯少年課         長       本庄  務君         警察庁交通局交         通指導課長   竹岡 勝美君         大蔵大臣官房審         議官      細見  卓君         大蔵省主計局次         長       海堀 洋平君         大蔵省主計局給         与課長     相原 三郎君         国税庁直税部法         人税課長    井辻 憲一君         文部大臣官房長 岩間英太郎君         文部省初等中等         教育局長    天城  勲君         文部省大学学術         局長      宮地  茂君         文部省体育局長 安嶋  彌君         文部省管理局長 村山 松雄君         文化庁次長   安達 健二君         運輸省自動車局         保障課長    池辺仁太郎君         運輸省自動車局         業務部長    渋谷 正敏君         労働省労政局長 松永 正男君         自治省行政局公         務員部長    鎌田 要人君         参  考  人        (岡山県教育長) 篠井 孝夫君         参  考  人        (明治大学教授) 杉原 莊介君         参  考  人        (岡山大学教授) 和島 誠一君         専  門  員 田中  彰君     ───────────── 九月十七日  委員藤波孝生辞任につき、その補欠として長  谷川峻君が議長指名委員に選任された。 同日  委員長谷川峻辞任につき、その補欠として藤  波孝生君が議長指名委員に選任された。 同月十八日  委員渡辺肇辞任につき、その補欠として篠田  弘作君が議長指名委員に選任された。 同日  委員篠田弘作辞任につき、その補欠として渡  辺肇君が議長指名委員に選任された。 十月四日  委員藤波孝生君及び渡辺肇辞任につき、その  補欠として北澤直吉君及び中野四郎君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員北澤直吉君及び中野四郎辞任につき、そ  の補欠として藤波孝生君及び渡辺肇君が議長の  指名委員に選任された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  文教行政基本施策に関する件  文化財保護に関する件      ────◇─────
  2. 久保田藤麿

    ○久保田(藤)委員長代理 これより会議開きます。  委員長には所用のため出席できませんので、委員長指名によりまして、私が委員長の職務を行ないます。  文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。斉藤正男君。
  3. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 私は、公務員給与改定にあたって、去る八月十六日、人事院が例によって勧告を行ないました。政府は八月三十日の閣議で、これが八月実施決定したわけでございますけれども、この勧告実施につきましては多くの問題があると考えております。したがって、本日は給与担当の諸大臣出席を求めて、その経緯を明らかにしていただくつもりでありました。残念なことに、大臣はまだ一人も出席をしていないというようなことで、非常に残念でありますけれども、特に大蔵大臣は病気のために倒れておられるということでございますから、これまた非常に残念なことですが、大蔵省関係皆さん所用があるそうでございますので、最初に大蔵省関係皆さんに質問をいたしたいと思うわけであります。  そこで、まず第一に伺いたいと思います点は、人事院勧告をされた五月実施を八月にしたということについては、給与担当大臣の間でいろいろな論議がなされたけれども、最終的に大蔵省が、金の都合で昨年どおり八月にという強い主張をされてそうきまったというように聞いておるわけであります。一体、人事院勧告をされた五月実施を八月にきめたその理論的な根拠、あるいは法的な根拠を、大蔵当局はどのように把握をされているのか、大臣がおられれば責任のある答弁が伺えると思いますけれども、しかし、大臣にかわって出席をされているのですから、明快に、ひとつ理論的な法的な根拠大蔵省側から明らかにしていただきたい。
  4. 海堀洋平

    海堀説明員 法律的には人事院勧告を尊重しなければならないということになっております。理論的と申しましても、これは現実の行政の問題でございますので、理論だけで律せられるべきものではなかろうと存じます。ただ、本年度予算編成方針におきましては、総合予算主義をとるということをうたいまして、そして恒例的な補正の慣行を排除しようという方針のもとに、公務員給与改定に備えまして予備費の充実をはかり、食管の繰り入れについては、年度途中において米価改定が行なわれましても、追加財源を要しないような措置を考えるのだ、こういうふうに編成方針でうたってございます。したがって、その編成方針のもとにおきまして、公務員給与改定には予備費をもって対処せざるを得ないということになっておったわけでございます。現在の四十三年度予算に計上いたしました一般会計予算予備費は千二百億円と相なっております。人事院勧告は、御存じのとおりに、一般職公務員についての給与改定勧告を行なっておるわけでございますけれども、政府といたしましては、一般職職員だけではなく、それに準拠いたしまして、特別職公務員につきましても給与改定を行なわなければいけない。さらに常識的に考えまして、人事院勧告が行なわれますと、地方公務員につきましても、ほぼこれに準拠した給与改定が行なわれるであろうと考えるのが常識的ではなかろうかというふうに考えます。したがいまして、政府といたしまして、人事院勧告に準拠いたしまして、それらの給与改定が行なわれたといたしました場合の一般会計予算負担というものを一応考えざるを得ないわけでございます。人事院勧告どおりに五月実施を考えた場合におきます一般会計給与改定に要する金額は、八百二十億円余りと計算されております。先ほど申し上げましたように、予備費は千二百億円でございまして、これは去年の当初予算に計上いたしました予備費に対しまして五百億円の増加となっております。そういう観点から、人事院勧告を受けましてどこまで給与改定に充て得るかということを、種々試算をいたしたわけでございます。  人事院勧告による給与改定以外で予備費を充てなければならない金額見込みでございますが、これはまず災害がございます。災害につきましては、その時点におきましては一-七月の実績はわかっております。あと八-十二月をどう見るかという問題だと思いますので、一-七月は一応実績をとり、八-十二月に過去三年の平均をとりまして、所要額見込みをつけたわけでございます。その見込みが約四百六十億円、それから予備費をもって対処しなければならないその他のいろいろな事項につきまして、各省内々相談を申し上げまして、今後予想されるものはどういうものかということを当たってとりました集計が約二百五十億円くらいございました。この二百五十億円が妥当かどうかということは、将来の見込みでございますので何とも申し上げかねますが、一応各省を担当しております予算の係を通じまして各省とも連絡をとり、その他の予備費見込みが二百五十億円でございます。そうしますと、それらを両者足しますと七百十億円と相なるわけでございます。そうしますと、千二百億円から七百十億円を引きますと、四百九十億円というものが給与改定に充て得る金額に相なるわけでございます。しかしながら、人事院勧告を尊重しなければならないというたてまえは厳然としてございますので、少なくとも去年実施いたしました八月実施よりもおくらすというふうなことはとうてい妥当ではなかろうというふうな観点から、八月実施という決定を見たわけでございます。八月実施といたしますと、一般会計におきまして約六百億円の負担と相なるわけでございます。そうしますと、先ほどの七百十億円と六百億円を足しますと千三百十億円という金額になりまして、予備費の千二百億円を百十億円超過することに相なるわけでございます。ただ、先ほど申し上げましたように、災害見込みでございますし、その他の予備費使用見込み額もあくまで見込みでございますので、今後の状況によりまして何とかこの金額の千二百億円の範囲内におさめなければならないというのが今後私たちに与えられた課題であるというふうに考えております。
  5. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 ばかに答弁が要領よくて、聞きもしないこともどんどんしゃべってくれておりますけれども、私が聞きたかったのは、その法的な根拠を理論的に説明してくれということを聞いたのですが、尊重しなければならないという法律上の解釈なんだということなんですが、人事院勧告を八月実施閣議決定した原動力は、何といってもきんちゃくをにぎっている大蔵省だということは周知の事実です。その大蔵省説明が手ぎわよくいま行なわれたわけでありますけれども、それはまた後ほど聞きます。  そこで、尊重しなければならないという法制上の規定と、五月実施を八月実施に値切ったことによる事実、これは人事院勧告を尊重したと思っていますか、尊重しないと思っていますか、どちらですか。
  6. 海堀洋平

    海堀説明員 人事院が五月から実施しろという勧告政府並びに国会に出しましたが、政府は諸施策の均衡、ことしの財政運営の基本的な方針から、八月の実施決定したわけでございます。八月実施決定いたしましたのは、あくまで政府責任でございます。人事院勧告との間に、実施時期についての乖離があることは事実でございます。
  7. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 そんなことを聞いているんじゃないのです。五月にさかのぼって実施をされたいという勧告を八月に値切ったことは、法の精神を尊重していることになるのか、尊重していないことになるのかということを聞いているんです。尊重していることになりますなら、なります、無視していることになりますなら、なりますというように、簡単に答えてください。
  8. 海堀洋平

    海堀説明員 一般職公務員給与につきましては、人事院勧告が行なわれまして、給与法定主義に基づきまして政府の意思を法律にしまして国会審議をいただくわけでございます。したがって、人事院勧告政府決定とには乖離がありましても、政府決定がそのまま国家公務員給与になるのではなくて、法律を制定いたしまして国会審議を受けまして、給与法の成立に基づきましてはじめて最終的な決定が得られることに相なっております。
  9. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 私はそういうことは知っているのです。最終的な手続としては、人事院勧告政府並びに国会に出されたものでありますから、給与法法律によって改定をしなければ効力は発生しないというようなことは、百も承知の上で聞いているわけなんですが、何といってもその大もとは閣議決定にあることは、これは事実なんです。したがって、五月実施を八月に値切ったことは、人事院勧告を尊重しなければならないという法のたてまえからいって、尊重したことになるのか、尊重したことになっていないのか、そこを聞いているんですよ。
  10. 海堀洋平

    海堀説明員 人事院勧告制度というものも、一つ法律に定められた制度でございますし、また財政制度というものも、年度間の予算を、すべての財政需要国会の議決を経てきめなければいけないということも、また制度でございます。さらに、それは国民負担に連なりますので、税金が法定されているということも一つの事実でございます。その間の調整といたしまして、現在与えられている条件のもとにおきまして、政府が可能な限り努力をいたしまして八月から実施するというふうに決定したわけでございまして、人事院勧告が、五月実施勧告いたしておりますので、八月実施という決定は、人事院勧告との間に乖離があることは何度も申し上げておることでございます。それをどういうふうに表現するかということにつきましては、私たち最善努力を尽くしましたと申し上げる以外にないと思うのでございます。
  11. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 そうすると、尊重しなければならないという法の精神なり条文を正しく閣議決定したものではない、最小限そこまでは言えますか。
  12. 海堀洋平

    海堀説明員 何度も申し上げますとおり、人事院勧告は五月から実施するように勧告いたしておりますが、政府といたしましては、諸般の情勢を検討いたしまして、最善努力を尽くした結果が八月実施という閣議決定に相なっておりますので、三カ月間の実施時期についての乖離があることは事実でございます。
  13. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 どうも苦しい答弁で、開きがあるというようなことしか答弁してくれませんけれども、あなたも御承知のように、スト権団交権を否認された公務員のために、その代償機関として生まれた人事院制度であることは御承知のとおりなんで、したがって、いまのような答弁だと、人事院が生まれた歴史的な発生過程といったようなものからいきますと、きわめて不十分であり、不満であります。しかし、明らかに人事院勧告とは差がある、これ以上のことは言えませんという答弁でございますので、大臣でもないあなたに深追いはできません。その点についてはこの辺で、了承はできませんけれども一時差しおくといたします。  先ほど、本年度一般会計予算に組み込まれております一千二百億円の内容につき御説明がございました。その中で、特に災害の問題に触れられたわけでありますけれども、一月から七月までの実績についてはおわかりになっておった、八月以降十二月までは、これはあくまでも見込みだ、こういうことでございました。一体一月から七月までの災害対策費実績はどうなっておったのか。したがって、四百六十億をお見込みのようでございましたけれども、その内容として、まず前半期実績を示していただきたい。
  14. 海堀洋平

    海堀説明員 一月から七月までの公共土木災害被害報告額は七百億円にのぼっております。それから公共土木災害以外の災害、主として公共文教施設とかその他になると思いますが、これが国費ベースで三十一億円でございます。したがいまして、先ほどの七百億円というものを国費ベースに直しますと、百六十億円程度になります。これに過年災の分でその後の状況予算編成後の状況を含めましたものの三十八億円を加えまして、一-七月までの公共土木災害所要額は、国費ベースに直しますと約二百億円、それに先ほど申し上げました四十三年度災害公共土木災害以外の一-七月までの実績の三十一億円、それを両者合計いたしました約二百三十億円というものが一-七月までの災害実績に基づきます国費ベース所要額でございます。
  15. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 そうしますと後半期、すなわち八月から十二月までを考えましたときに、予想している四百六十億円から二百三十億円を引いた半額の二百三十億円は残っているというように解釈してよろしいか。
  16. 海堀洋平

    海堀説明員 先ほど申しましたように、八-十二月は過去三年の平均公共土木災害被害想定いたしておりますが、その公共土木被害報告で過去三年の平均が一千十六億円でございます。十六億円の端数は取りまして、一応一千億円の被害報告があるであろうという想定のもとに公共土木災害は算出いたします。この一千億円に対応いたします公共土木災害国費ベース災害復旧費は約二百七億円程度になります。それから、いわゆる公共土木災害以外の災害、これが過去三年平均で、国費ベースで二十三億円でございます。この二十三億円と先ほど申し上げました公共土木災害の二百七億円というものを足しますと、やはり同様に二百三十億円程度所要額であろう、これは全くの推算でございます。
  17. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 八月以降にも若干の災害発生をいたしておりまして、今日以降も災害絶無だということは言い切れないと思います。いついかなる災害発生するかもわかりませんけれども、いずれにいたしましても、しかしことしは、過去三カ年の実績に比べて八月以降の災害は、過去三年の平均よりも多いと思われておりますか、少ないだろうと思われていますか、その辺はいかがでしょうか。
  18. 海堀洋平

    海堀説明員 その後、八月の終わりに閣議決定をいたしまして、被害報告がまただんだん時の経過とともに出てくるわけでございます。したがいまして、現在におきましては八月段階までの被害報告が出ておりますので、それを一-八月を実績でとりまして、九月はまだ報告が全部出ておりませんので、とれないのでございます。したがいまして、一-八月を実績でとりまして、九-十二月をやはり過去三年のベース推算するという作業をいたしております。常に最近現在でとりたいという形で推算をいたしておりますが、その場合におきまして、八月の実績を入れたところでも数字はほとんど変わっておりません。大体一億の開きと考えていただいていいと思います。一カ月の時の経過を見ましたが、推算方法を、実績ベースが一カ月ふえ、推算ベースが一カ月少なくなったという段階で同じような積算をいたしますと、やはり四百六十億をちょっと切るあたりという数字が出ております。
  19. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 それも過去の実績等から推計をしてのことでございまして、あくまでも見込みだと思います。したがって、現在一千二百億の予備費のうちで、すでに災害のために支出決定した、あるいは使ったというものを除きますと、予備費は幾ら残っていることになりますか。
  20. 海堀洋平

    海堀説明員 御存じのように、いまのはあくまでも実績の出たものは災害復旧費事務費でございますので、これは支出していくわけでございますが、予備費支出決定というのは、どうしても工事費査定を行ないまして支出決定いたしますので、九月の三十日現在までに災害復旧のために具体的に予備費使用決定いたしました額は、八十六億円でございます。しかし、これは八十六億円で九月三十日までいいんだというのではございませんで、工事費査定その他の事務的なズレがあるわけでございます。ちなみに、そういうズレがあるために、予算では四月-三月という財政年度を、災害につきましては暦年でとりまして、暦年災を、したがいまして四十三年度予算で申し上げますと、四十三年一月一日から四十三年十二月三十一日までの災害を四十三年度予算で処理することといたしております。これは工事費査定その他計画をつくるのに要する時間的なズレを考えた措置でございます。したがいまして、今日まで八十六億しか出ていないということと、先ほど申し上げました数字との関係は、御推察いただけると思います。
  21. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 よくわかりますよ。それであと九、十、十一、十二と四カ月ですよ、暦年でいきますから。大体工事査定も終わる、事務費もこれに加算をするということでいって、これ以上大災害はないと考えた場合に、あと四カ月に幾ら支出すれぱ足りますか、災害あとないと見て……。ことしはないですよ。
  22. 海堀洋平

    海堀説明員 先ほど九-十二の災害を、過去三年平均で見たと申し上げました。九-十二月の過去三年平均公共土木災害報告予想額といいますか、見込み額は、被害ベースで六百五十四億円というふうに見ております。この六百五十四億円が全然なかったという想定お話だと思うのでございますが、九月におきましても相当な被害が出ておりますので、それは非常に非現実的な話になるわけでございますが、大体被害報告に対しまして当該年度国費率というのは二一、二%くらいだと思いますので、もし九月以降公共土木災害を全然ゼロという仮定をとりますと、百三、四十億という金が要らないといいますか、先ほど申し上げました数字から減じてくるということに相なるのじゃなかろうかと思います。
  23. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 すでに九月段階でも十六号台風による災害などがございますので、支出した八十六億以上に若干のものは上積みされることは当然だと思います。しかし、もしあと災害がなかった、平穏に暦年度を越すということになりますれば、過去三年の実績云々というようなことは別として、いわゆる災害対策費はことしはかなり余裕があるというように見てよろしいか。それともそれは今後ないという場合を仮定してのことですから、仮定した場合にはこうだというようなことが、断定ではありませんけれども、それこそ見込みとして計算をしてよろしいと思うのですけれども、その見解は間違いであるかどうか。
  24. 海堀洋平

    海堀説明員 私たち立場といたしましても、また国の全体の立場から見ましても、災害が少なくて済むことは、予算執行責任を持っている立場でございますので、一番災害のないことを願っているのは主計局の私たちでございます。したがいまして、災害が少ないということは、できるだけそうあってほしいということは非常に強い希望でございます。先ほど申し上げましたように九月から十二月まで全然災害がなかった――もうすでに九月はありましたが、これはいまのところ数字が正確でございませんので、全然ゼロと考えますと、公共土木災害被害報告額におきまして六百五十四億円程度のものがなくなる。したがいまして、それを国費ベースに直しますと、大体二一、二%、これは災害の直轄であるか、あるいは補助事業であるか、その他によりまして多少進捗率国費負担割合というものが違いますので、何とも申し上げかねるのでございますが、大体二一、二%をそれにかけていただいた国費が節減されると考えていただいていいのじゃないか。したがいまして、九月以降十二月まで公共土木災害が全然なかった場合には、六百五十四億円に二一、二%をかけていただいた金額が節減されるというふうに考えていただいてよろしゅうございます。
  25. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 そうしますと、予備費一千二百億円の中の災害対策費だけを考えてみましても、そのまま災害がないという計算をすれば、いまおっしゃられましたようにかなりの余裕が出るというように見て差しつかえない、私はこう思うのであります。  それから先ほど説明の中で、予備費の中から各省が要求される額は、各省要求内容を取りまとめた結果、二百五十億程度だという説明がございました。この内容は一体どういうようになっておりますか。全部でなくてもけっこうですから、代表的なものを説明していただきたい。
  26. 海堀洋平

    海堀説明員 計算の問題でございますので、あらかじめお断わりいたしておきますが、先ほど申し上げました数字の合計は千三百十億円に相なっておりまして、百十億円というものがまずオーバーしているという前提をもっての議論であることを念のためにお断わりいたしておきます。  それから、先ほど二百五十億円程度と申しました内訳は、いろいろなものがあるわけでございますが、例をあげろというお話でございますので申し上げますと、まず小笠原の復帰に伴いまして小笠原施政権の返還を受けまして、これに伴いましてある程度支出が行なわれております。  それから、この十月から消費者米価の引き上げを行ないました。これに伴いまして生活保護者のいわゆる食糧、米の関係が、その部分手当てをせざるを得ないだろうということでございます。  さらに退官退職手当が、現在三年、五%の定員の縮減というために、希望退職によりましてその措置をとっていきたいということで、各省ともできるだけ希望退職を募るという措置をとっておりまして、退官退職手当の不足が相当額見込まれております。  さらに、原爆被爆者に対して医療費を出すという方針をきめましたので、これも手当てを要するであろうと考えられます。  さらに、種子島の周辺でロケットの打ち上げを行なうにつきまして、そこに漁業権を持っている方々に対しまして、所要の措置をとることといたしております。  それ以外に種々こまごまとして各省予備費使用見込みがあるわけでございますが、ちなみにこれを各年に――むしろ二百五十億円がほんとうに必要かどうかという議論をいまここで個別にいたしてもいたし方ございませんので、一応実績で申し上げますと、いわゆる災害公務員給与改定以外に、いままで予備費並びに補正でどの程度の額が必要であったかという実績を申し上げると参考になろうかと思いますが、四十一年度が二百八十九億円、四十二年度が二百五十四億円ということで、ほぼ二百五十億円から二百九十億円程度予備費並びに補正の要因が、実績として過去二年間に措置されております。ことしの各省から出されました二百五十億円というものもそう見当の違った数字ではないんではなかろうかというふうに推測いたしております。ただ、主計局立場といたしましては、これをできるだけ圧縮していきたいという希望を持っております。ただし、それはあくまで希望でございまして、過去の実績は、先ほど申し上げましたように約二百五十億円から二百九十億円程度の追加財政需要がありました。したがいまして、ことしも努力はいたしますが、そんな見当のところではなかろうかということでございます。
  27. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 昨年、一昨年のこれに類する数字説明があったわけでございますけれども、補正並びに予備費ということでございましたが、この中で予備費支出した分は四十二年度において幾ら、四十一年度において幾らですか、おわかりでしょう。
  28. 海堀洋平

    海堀説明員 ことしは総合予算主義をとっておりますので、補正に組まないという前提が編成方針の基本でございますので、それを分けて申し上げる意味はことしについてはないと思います。  それから、補正と予備費に分けることは意味がないと申し上げるのは、もう一つ理由がございまして、補正の時期に予備費がありますと、補正を組む際にはやはり大きな事項は予備費を減額して補正措置をとっておりますので、予備費減額の措置をとって補正でいま申し上げましたようなものをやっておりますので、もしそれを、国会の議を予備費はいただいておるものだから、この際予備費予備費で置いておいて、補正の追加需要は予備費でやれるものを差し引いたあとのものをやるというような方針をとったといたしますと、非常に姿は変わっておりますので、それを具体的に予備費で幾ら出し、補正でどうしたということを申し上げても、実態はあまり意味がないというよりも、予備費を何に充てるかという、むしろ優先順位をどこからとるかということに相なってくるのだろうと思いますので、従来のやり方が予備費を減額しましてある程度補正財源に充てているということから見まして、この去年の二百五十億余り、おととしの二億八十億余りというものを、予備費と補正に分けてもあまり意味がないのだろうと存じます。
  29. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 あまり意味がないか知らぬが、少しは意味があるでしょう。私はあなたと違って非常に意味があると思っておるのですけれどもね。ことしは御承知のように総合予算主義でやっているわけなんだ。初めてこういう主義をとったわけで、昨年までは補正を組んできたわけなんです。その補正を組む場合に、財源として予備費から回した、こういう例が多い。したがって、私の言う質問はあまり意味がない――意味があろうとなかろうと、私は聞いているのですからあなたは答えればいいんですよ。そんなことはおせっかいなことであって、私は、去年までの実績の中で、しからば予備費から補正へ回した額が幾らで純予備費を使ったのは幾らだという説明を聞かなければならなくなってくるでしょう。そういうことからやはり昨年、一昨年の実績と、本年の総合予算主義というのは予算の立て方の根本的な姿勢が違うのですから、ですから、じゃあ昨年は予備費から補正に回したのが幾らで純粋に予備費として使ったのは幾らなんですか。
  30. 海堀洋平

    海堀説明員 それは先ほどのなにを申し上げますと、昨年の金額は二百五十四億円でございます。その中で補正で追加いたしました額が百七十一億円でございます。したがいまして、それの差額が予備費使用によってまかなった額というふうに考えていただいていいと思います。
  31. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 そうすると昨年は二百五十四億のうち補正で使ったものが、補正で立案をしたものが百七十一億だ、二百五十四億から百七十一億を引けばその差は八十三億、これが純粋に予備費から使われたものだ、こういうような計算になるわけですね。──間違いない。そういうことを考えましても、ことし小笠原の問題、あるいは米の値上げによる生活保護の値上げの問題、さらに退官退職手当の問題、原爆被爆者の手当、あるいは種子島周辺の漁業補償といったようなものが出てきておりますけれども、各省の要求が二百五十億ですから、シブチンの大蔵省が二百五十億そのまま認めるわけはないので、しかも二百五十億とかりにいたしましても、昨年の予備費から純粋に支出したものが八十三億しかなかったというような実績からいきましても、私はやはり災害が、今後わかりませんけれども、ないというように仮定をいたす、あっても、もう秋から間もなく冬ですから、それほどの大被害はなかろう。もっとも地震でもくればこれはまた別でありますけれども、そういう考え方からいきますと、やはり一千二百億の予備費内容といったようなものは、ほかに特段必要ではないというように考えましたときに、特に西村農林大臣は、米価値上げの問題、これらに関連をして、新米の買い上げは一部分来年度予算支出も考えているというようなことさえ言っておるわけでございますので、予備費はかなりの余裕がある。すなわち、先ほど説明がございました六百五十四億円の二一ないし二二%、計算をいたしますとこれだけでも百三十七億ございます。したがって、予備費はかなり余裕があって、ベース改定に必要な見込み額として五百億を見込んだこと自体、すでに公務員賃金抑圧の態度が予算編成当時もあった。そしてまた、後ほどいろいろ関係者にも聞きたいと思うのでありますけれども、人事院に対しましてもかなり財源的な問題で大蔵省は圧力をかけたと見られる節が多分にあるわけであります。いずれにいたしましても、予備費給与財源として五百億円を一応見込んだけれども、使う気になりさえすれば、かなり余裕があって、七百億円程度のものは十分使えるというように私は考えておるわけでありますが、その解釈は間違っておりますか。
  32. 海堀洋平

    海堀説明員 先ほど申し上げましたように、いま私たち推算によります予備費の使用見込み額を全部足しますと、千三百十億円になりまして、百十億円程度マイナスになっておるわけでございます。で、先生御指摘のように、ことしは災害のこれから少ないことをこいねがうわけでございますが、すでに九月以降の分の六百幾らという三カ年平均そのものは、九月にももうすでに相当な災害が出ておりまして、これをゼロと置きますことは非常に非現実的でございまして、現在も雨が降っておりまして、十月以降にそう災害はないというふうに見ることもまた非現実的ではなかろうかと存じます。したがいまして、私たちとしましても、災害が多いことを別に望まないのはもちろん当然のことでございまして、できるだけに少ないことを望むわけでありますが、公務員給与の重要性も考えまして、ともかくもその時点におきましては予備費だけでは措置がとれないような数字ではあったけれども、何とか千二百億円の内におさめたい、こういうことで八月実施の決意をいたしたわけでございます。  それから西村農林大臣云々というお話がございましたが、先ほど予備費使用見込み額千三百十億円という中には、食管への繰り入れば一銭も見込んでおりませんので、そのほうがどういうふうになりましょうとも一もし食管のほうに予備費がいくような事態になりますと、これはとうてい先ほど申し上げたような数字では済まないことに相なるのではなかろうか。したがいまして、食管会計の処理はいまの議論から一応除いていただかないと、もとに入っておりませんものですから、ちょっと議論が複雑になるだけだというふうに考えます。
  33. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 そこであなたのほうは、見込み額は水増しをして答弁をしたり発表をし、実際出す場合には厳重な査定をして、ちびって出すという習慣が伝統的にあるわけです。これは主計局としては、当然そういう態度をとるのが能吏の仕事だと思います。しかし、私どもの計算によりますれば、今度の人勧を五月から完全実施をしても八百五億、八月実施で五百八十五億というように計算をしているのですが、あなたは先ほど五月実施だと一般財源で八百二十億要る、八月実施でも六百億だというように言われておりますけれども、少しオーバーに計算し過ぎていませんか。概略ということでその程度だということなんですか。どうなんですか、これは。
  34. 海堀洋平

    海堀説明員 先ほど五月実施一般会計負担としまして八百二十億円程度、それから八月実施で六百億程度と申し上げましたのは、人事院勧告平均率をそれぞれの給与費にかけまして出しました数字でございます。それでこれを現在精密に計算しなければいけないわけでございますが、これは給与表に基づいて計算するわけでございまして、一般職公務員につきましては、人事院から給与表までばらしたものをいただいておりますので、これは確実に計算がつくと存じます。しかしながら、それ以外の特別職公務員、特に防衛庁職員と義務教育費国庫負担法に基づきます義務教育教職員給与費二分の一負担分、これはそれぞれの給与の実態を調べまして、それから特に防衛庁職員等の特別職につきましては、これから給与法そのものをつくっていかなければいかぬわけでございますので、精密なものであるかどうかと言われますと、それはまだ特別職公務員につきましては給与表そのものをきめておりません、平均率ではじいた数字でございますので、その意味におきましては精密なものというふうには申し上げかねると存じます。
  35. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 御答弁にありましたようにそういう作業が行なわれて初めて集計ができるわけでございますから、精密さについては問題があると言われますけれども、私どもの計算によりますれば、五月実施の場合でもトータル八百五億円に対し、あなたのほうは八百二十億円、八月実施で私のほうは五百八十億だというのに、あなたのほうは六百億だという。いずれも十五億ずつ開きがあるわけなんで、これは十五億という差が双方に出ているわけなんです。どれだけ要るかは最終的にはいろいろこまかい計算も要るであろうと思いますけれども、しかし、いずれにしても、こういうところの説明とか答弁では、かなり水増しをしておっしゃっておられる。精密な計算をした結果は、実績はしかじかかようで、少なくて済みましたというようなことが、あなた方の説明答弁や資料には多い。しかも先ほどから伺いますと、実は人事院勧告八月実施でもオーバーであったものを、何とかいろいろ勘案をして八月実施にしてもらった、こういうような言い方であります。しかし、このことは昨年の実績、あるいは今後の災害発生見込みといったようなものを、一応常識的な考え方から推算をいたしましても、私はやはり一千二百億の予備費はかなり余裕があるというようにしか計算ができないわけでございますけれども、水かけ論で終わってしまえばそれまでであります。  もう一ぺん最後に念のために伺いますけれども、一千二百億の予備費のうち、八月実施に必要な一般会計への持ち出し分六百億というように仮定をいたしまして、残り六百億から各省要求のものが二百五十億ある、それを引く、そうすると三百五十億になってくる。三百五十億のうち、災害で八月段階までの査定の額が出てきた。九月災害もあった。しかし十月、十一月、十二月はないものと仮定する、そうすると予備費の残は一体幾らになるのか。むずかしい計算ではございませんので、そこでちょろちょろっとやって、ひとつ解答を出していただきたい。
  36. 海堀洋平

    海堀説明員 いま正確な数字計算するのは無理かと思いますが、先ほど申し上げました前提から、結局九月以降災害がないということを前提といたしますと、先ほど百十億円くらいオーバーしておりましたものが、今後六百五十四億円に二一、二%掛けますと、百四十億円程度になりますか。その百四十億円程度が不要になるわけですから、結局百十億円。パンクしていたものが、三十億円程度ほかに充て得るという姿になると概算していただいていいんじゃなかろうかと思います。
  37. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 ちょっと違うんじゃないですか。千二百億あって、八月実施で六百億、そうするとちょうど半分ですから六百億残る。それは間違いないですね。各省要求が二百五十億だ。これもあなたのほうはけちるでしょうから、おそらく二百億前後になるでしょう。さらに八月までの災害査定も、終わった分もあるし、まだ終わらない分もあるでしょうけれども、それの支出額が決定をしている。さらに九月災もありましたけれども、それらを見込んでやっていくと、六百五十四億の二一%、百三十七億だ。しかし百十億オーバ一があったとかなんとかいいますけれども、ファクターは三つか四つですから、それを足して、千二百億から引けば不用額が出るんです。それは災害がないということを前提としてのことを言っているんですから、災害があればまた別になることは明らかです。二百五十億が妥当であったとするならば、それは二百五十億は二百五十億でまるまる計算してもけっこうですけれども、そこらの計算は頭の中でもできているんでしょう。
  38. 海堀洋平

    海堀説明員 先ほども申し上げましたように、災害はすでに実績ベースで一-七月だけで――実は八月の数字はいま公共土木災害だけはっきり出ているわけですが、要するに公共土木災害が九―十二月、過去三年平均でみますと六百五十四億円という数字になります。それがゼロであったならば、先ほど申し上げた数字からその六百五十四億円の二一、二%のものが――先ほど災害につきましては四百六十億円要るというふうに申し上げました。これは支出決定しているとか決定していないとか申しましても、すでに七月、八月までに災害が起こっている分は、現在工事費査定が終わっていようともいまいとも、必ず今年度内で予備費をもって手当てをしなければいけませんので、それは現在支出をしているということには関係ないわけでございます。そうしますと、問題になりますのは九-十二月を過去三年平均被害報告額で六百五十四億円と見ておりますが、これが全然ゼロであった。これは仮定の問題でございますが、すでに九月は相当の被害報告が出てくると思いますが、しかしゼロと考えますと、その六百五十四億円に二一、二%を掛けますと百四十億円程度――百四十億円程度が要りません。したがって、先ほど災害として四百六十億円と申し上げたものから百四十億円を引いていただいた数字災害に要する額ということになります。そういたしますと、先ほどの四百六十億円の場合には、予備費の使用額が全体で千三百十億円だったわけですから、それは百十億円予備費総額をオーバーいたしております。そこから百四十億円減るわけでございますから、予備費総額が三十億円余るという形に相なるというのが算術だろうと思うのでございます。
  39. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 うまい説明をされますので、私にはどうもわからぬのですが、私のほうが計算の間違いか頭が悪いかだと思いますけれども、いずれにいたしましても、あなたの説明でも三十億程度のものは余るということにはっきりなってまいりました。したがって財源はある、予備費の財源は十分だというように理解をいたしたいと思うわけですが、大臣が病気だそうでございますので何でございますけれども、先ほどもちょっと触れましたように、なぜ人事院制度が生まれたかという精神大臣にもぜひ十分言っていただき、そんなことは大臣知っていると思いますけれども、本日の質疑の内容等につきましても伝えていただいて、財源に余裕がある場合には、閣議決定閣議決定でありましょうけれども、大蔵省としても十分な配慮をされますように特に希望して大蔵省関係の私の質問を終わります。  続いて人事院総裁に伺いたいと思うわけでありますが、たいへん努力をされて勧告を出されました。その労は多とするものであります。しかしながら、今度の勧告には多くの問題を持っているというように考えております。特にこの勧告につきましては、通勤手当を増額されたり、あるいは改善したり、教育職の初任給をはじめ、その俸給表の一部分の前進があり、私はある程度努力は認め、その労を多とするものであります。しかしながら、総体的に言うならば、第一として、一般企業に従事をしている労働者、すなわち春の賃上げ相場に比べて、八%引き上げというこの率は、きわめて低い勧告だというように考えております。労働省の調査によりましても、労働経済指標は、春闘相場一三・五%、昨年は一二・一%、公労協仲裁裁定七・九%、昨年は七・六%、全世帯の生計費は一二・七%、昨年はわずかに七%といったような、いわゆる労働経済指標から考えましても、八%という率は妥当なものではない、低かったんじゃないかというように考えますけれども、総裁はどのようにお考えでございますか。
  40. 佐藤達夫

    ○佐藤説明員 勧告の前に出ました新聞の予測記事などにも、相当大幅の勧告が出るだろうというようなことが出ておりました。そういうことから言いますと、八%というのはちょっと低過ぎるんじゃないか、それは一応ごもっともなお気持ちだろうと思います。ただ、もう十分御承知のことではありましょうけれども、私どもはそのものずばり四月中に支払われた民間の給与公務員給与との水準をそのままぶつけて、そこに格差を求めて、その格差を埋めていただくという立場で徹底して従来やってきておるわけでございますからして、民間側の上がりもさることながら、公務員側の上がりもまたそこに作用してまいりまして、差し引きされる場面が当然出てくるわけでございます。たまたまことしの場合は、昨年都市手当なるものをめぐっていろいろ御論議がありましたけれども、その都市手当はまあ調整手当に変わりましたが、それに関連して従来の暫定手当というものを幅広く本俸の中に繰り込んで底上げをした、これがちょうど四月に行なわれておるわけでございます。したがって、その分だけ公務員の側のほうの上がりが相当顕著にそこに織り込まれてきたということもありまして、そのものずばり四月対比が、民間対公務員ということで比べますと、八%という数字が出ることは、あるいは当然ではあるまいか、私どもとしては、あるいはなどと言ってはいけないんで、当然であるとはっきり申し上げなければいけないわけです。
  41. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 権威のある人事院が、あらゆる資料を基礎にしてつくったんだから、私は、低額な勧告ではなかったのか、何となればしかじかかようだということで申し上げたわけですけれども、あなたがそのとおりで低額ですと言えるわけがないと思うので、妥当だ、こうおっしゃるのは気持ちとしてはわかるわけです。しかし、私は今度の勧告を拝見をして、特に八%はしからば論外といたしましても、特徴的な問題として、特別昇給財源の五%拡大が行なわれているわけです。従来一〇%でありましたものを、今度は一五%にせい、こういうことであります。このことは、あなたは勧告の前には政府の干渉には無関係だ、官民格差が最重点だというようなことから、たびたび人事院としての勧告に対する基本的な態度を明らかにされておりました。これは人事院の任務、性格からいって当然だと思うわけですけれども、この特昇財源の五%のアップは、やはり財界並びに政府の労働組合に対する、あるいは権力支配を強化し、労働組合の弱体をねらうというような施策と同じ発想ではなかろうかというように考えざるを得ないのでありますけれども、一体この特昇五%アップの根拠はどこに求められたのか、明らかにしていただきたい。
  42. 佐藤達夫

    ○佐藤説明員 いろいろ御推測をいただきまして、たいへんさびしく存ずるわけでありますが、私どもの根拠といたしますのは、これは申し上げるまでもなく国家公務員法、給与法、これ以外はないわけでありまして、法律を誠実に実施していこうというのがわれわれの責任であると感じておるわけであります。その公務員法なり給与法は、御承知のように成績主義ということを非常に大きくうたっている。普通の、毎年毎年の昇給でさえ、良好な成績で一年過さなければ一号俸といえども上げないぞという実はたてまえになっているわけです。その給与法の中に特別昇給の規定も厳然として存在するわけであります。私どもの目から見ますと、この際、いま財界その他というおことばもありましたけれども、一般納税大衆の方々からの批判、新聞の投書欄その他を見ても、私どもに言わせていただけば、まことに不愉快な批判が相当――公務員はもっとしっかりやっているはずだと私どもは思うのですが、そういう不愉快な批判もあるわけなんです。したがいまして、その辺のところは十分これまでも留意してまいったわけでありますけれども、特別昇給は別にそれとのつながりがあるわけではない。端的に申し上げますと、先ほど給与法上の一つの原則として特別昇給の制度がある。それからいまお話に出ましたように、そのワクが残念ながら一〇%というワクにとどまっている。私として夢を語らせていただくならば一〇〇%にこれをしたいというくらいに思うのであります。それはまたそれで、全体の公務員諸君がりっぱに働いてくだされば、私は一〇〇%、二階級特進ということになるような時代のくることを夢みはいたしますけれども、それはそれとして、一〇%では少な過ぎる、これを五%引き上げるということでありまして、給与法のねらいとする成績主義をこの際堂々と拡充していこうじゃないか、こういう気がまえに立ったものでございます。
  43. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 総裁、大多数の公務員はまじめに努力しているんですよ、国民の公僕として。しかし、新聞にたたかれ、世論にたたかれるような人が絶無ではない。これは信賞必罰のうちの必罰で臨めばいいことであって、大多数の国民は、いまの公務員がまじめに仕事と取り組んできているというように私は理解をしていると思う。ごく一部の人たちのために大多数の公務員が汚名をこうむるというようなことは間違いだ。あなたのおっしゃるとおりだと思う。したがって、あなたがいみじくも言ったように、特昇というのは全員にやってあげたいという気持ちはわかるけれども、全員にやるということは、これはまた別な方法もあるわけなんで、全員にやれば特昇じゃないという解釈も当然出てくるわけだ。私はやはり今度の、わずか五%であっても、一〇%から一五%に上げられたという意図は、少し総裁の考え方と違っているというように自分では思っておるわけですけれども、総裁の言うように一〇〇%にしてあげたいんだという気持ちが本音であるならば、これは了といたしますけれども、その点は見解の相違だというように理解をいたします。  さらに、この八%をきめるにあたって、先ほど大蔵当局といろいろ論議をいたしました。総裁も聞いておられたと思いますけれども、予備費千二百億の中に、いわゆる人事院勧告に基づくアップ分についての財源の見込みはこの程度だ、したがってどういう発表をしようが、どういう勧告をしようが、いわゆる総合予算主義に縛られて、人事院勧告は無視されはしないか、やはりこの程度なら逆算しても可能だというようなお考えは、毛頭なかったのか、多少はあったのか。先ほどの八%の根拠を聞いたときに、十分いろいろな条件を勘案して権威ある勧告をした、こういうように言われました。しかし、総合予算主義というようなこと、それから一千二百億の予備費の中に見込まれているアップ財源といったようなものは、全く無視して考えられたものかどうか。この点についてはどうですか。
  44. 佐藤達夫

    ○佐藤説明員 これは、ことしの総合予算なるものが初めての形であったゆえもありましょうか、当時予算を御審議の過程において、人事院だいじょうぶかというようなことで、両院とも各委員会でお尋ねになったところでありますが、私どもは、総合予算の中に、とにかく公務員給与の引き上げ分が少なくともある程度は盛り込まれておる。それが大体千二百億――これは何もワクはないというお話でありましたから、千二百億まるまるというわけにはいかぬでしょうけれども、ここには大きな鯨が泳いでおる。その鯨で不足であれば、総合予算主義というものは何も補正予算を否定する主義でも何でもないのですから、足りない分は補正予算でやっていただく。とにかく根っこが本予算の中に入っておれば、これほどけっこうなことはあるまいというようなことで、大いばりでたんかを切ってまいったわけでありますが、ちょっといまの段階では事、志と違ったところがありますけれども、しかし私どもとしては、そういう意気込みで正しく官民の比較をとってやってきたわけであります。したがって、まだしかし、これで勝負がついたとはわれわれ全然思っておりません。国会に対する勧告がものをいうのは、おそらく十二月ごろの国会になると思いますから、それを楽しみにしてわれわれは期待をしておるわけであります。
  45. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 千二百億という予備費は、大部分がベアに使われる分だというようにお思いになっていたということでありますけれども、それは総裁少しあなた勉強不足だと思うのですよ。大体予備費は、内容としてはしかじかかようなものを含んでおるということについては理解をされていたと思う。そのうちの、たとえば八〇%が使われるだろうか、六〇%だろうか、五〇%だろうかという程度のことは、これは総裁ともあろう者が、大きな鯨で、ほとんどが人事院勧告に使われる財源だというように考えていたのはおかしい。それは期待はされておったでありましょうけれども、大体その中に含まれておる内容というのはおわかりのはずだったと思うのです。それはそれとして、しからば五月一日にさかのぼってというあの勧告を、通勤費の一部を除いては八月実施という決定をされた。あなたは勧告を出す前にはいろいろなことを言われまして、先ほども触れましたけれども、人事院のあり方につききびしい態度を維持され、しかも誇りを持って仕事をされてきたと思うのです。しかるに、八月実施ということで逃げられたわけです。このときにあなたはたいした談話も発表してないし、動きがなかったように思うのですけれども、まあ動きや談話は別として、この八月実施決定された八月の段階でどのような御心境でした、当時を回想してひとつ率直に心境を吐露していただきたい。
  46. 佐藤達夫

    ○佐藤説明員 当時を回想するまでもないことでございまして、当時からずっと今日まで持ち続けておる心境というものがあるわけです。私どもが何としても残念でしょうがないのは、御承知の公労委の仲裁裁定、これが公社現業の人たちに対する一種の代償的機能だろうと思うのですけれども、公労委のほうはこれが争議権の代償だとすれば、われわれ人事院のほうは団交権プラス争議権の代償機関だという意味で、決して重くこそあれ、向こうに比べて軽いものだとは絶対に思わないけれども、残念ながら、これが向こうは十年以上、年度途中に裁定が出て、しかも四月にさかのぼって完全に実施されてきておる。残念ながらというのは、今度わがほうについて残念なことは、要するにそれが、ことし九回目になりますかしれませんけれども、依然として――少しずつこれは政府の御努力によって前進はしておりますけれども、遺憾ながら完全実施というところまでは行っておらないということで、これは何としてでも人事院の、先ほどお触れになりましたような性格の問題から申しましても、完全に実施していただかぬことには筋が通らないというふうに思っておるわけであります。したがいまして、そういうような気持ちをずっと持ち続けて、これはもう一貫してでありますけれども、とにかく完全実施のできなかったこと――ことしはまだできなかったとは私は言いませんけれども、いままでできなかったこと、これはきわめて遺憾に思っております。
  47. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 文部大臣が時間の都合で退席をされるそうですので、佐藤総裁に対する質問は中止をいたしまして、後ほどまたお聞きをいたしますけれども、大臣にひとつ承りたいことがございます。  今年度人事院勧告実施するにあたって、閣議決定に至るまで、特に灘尾文部大臣、小川労働大臣、田中総理府総務長官等々は、強く勧告どおり実施を要求されたということは新聞その他で承知をいたしております。しかし、これが完全実施を否定的に主張されたのが水田大蔵大臣であり、宮澤企画庁長官であるというようなことも漏れ承っておるわけでありますけれども、結果的にはやはり閣議決定は八月実施ということに相なったわけでございます。大臣が強く完全実施を主張されたとするならば、今日の心境はきわめて複雑であり不満であろうというように思うわけであります。御承知のようにこの十月八日ですか、この閣議決定を不満とする公務員皆さん方は、実力行使をしてもこれが完全実施を迫るというような悲壮な決意をされているように聞いております。十月八日は目前であります。完全実施を強く主張された大臣、一体この閣議決定に対しましてどのようにお考えになっておられるのか、ひとつ心境を包み隠さず吐露していただきたい。
  48. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 今回の人事院勧告につきましては、私どもとしましてはその趣旨を尊重いたしまして、いわゆる完全実施ということが最も望ましいことと考えまして、その方向で微力を尽くしたつもりではございますけれども、関係閣僚いろいろ相談をいたしました結果としまして、遺憾ながら、内容は全部認めるといたしましても、実施の時期について人事院勧告どおりにやることができないという結果になったわけでございます。できることなら何とかくふうして、人事院勧告どおりにやりたいという気持ちでいろいろ話し合いをしたわけでございますけれども、今年度政府予算の編成の方針も御承知のとおりであります。このような支出に対しましては予備費をもってまかなうという考え方のもとに予算が成立しておるわけでございます。どうしてもそういったふうな財政上の事情からいたしまして、私どもの希望そのままに達成するというところまでいかなかった。私の気持ちからいえば、いかにも残念なことでありますけれども、同時に関係閣僚、最終的には閣議でございますけれども、相談いたしました結果このようなことになりましたので、事情やむを得ないというふうに考えておる次第であります。  ただ、政府としましても、毎年こういうふうな事態を繰り返すということはいかがであろうか、また総合予算の主義をとる以上は、このようなちぐはぐのことが起こらないようなことを考えていくべきじゃないかということもあることでございますので、勧告に対する政府の態度を決定した後におきましても、御承知のように、この年末の予算編成期までには、何とかこういう事態の改善をやろうじゃないかということで、人事院にも御参加を願って検討をいたしておるところでございます。  ただいまの私の心境といたしましては、閣議決定がすでになされました以上は、これはやむを得ないものといたしまして、明年度を期してさらに努力を続けてみたい、こういうふうな気持ちでおるわけでございます。
  49. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 大臣、検討をされたことは多としますけれども、しかし、結論的には、やはり無視をされて八月実施ということになったわけなんです。特に先ほど人事院総裁からも答弁がありましたように、人事院制度の歴史的な発生過程といったようなものから考えたとき、また、いわゆる公労協の仲裁裁定が四月にさかのぼってここ数年来完全実施をされているというようなこと、しかも、公務員につきましては、総裁も言われましたように、団交権と争議権、二つの代償として生まれたのが人事院だということ、さらに異常な今日の物価の上昇、さらにそのうらはらでありましょうけれども、経済界の異常な発展といったようなことを考えますと、私は、総合予算主義といったようなものに一つのよりどころはあると思いますけれども、いずれにしてもあまりにもひどいではないか。総裁にもお尋ねいたしましたけれども、八%そのものにも問題がある。あるいはそのほか、前進したものも多少あるけれども、まだまだ不十分だという中で、五月実施を少なくも閣議決定は八月ということにした、このことは非常に大きな問題であろうというように思うわけでございます。しかし、年々こういうことをやって、いたずらに公務員組合が実力行使をするというようなことも、何もいいことではないと思うのです。したがって、いつの日にか、これらは完全実施という方向において打開をしなければならぬ。ただいまのところ閣議決定だけであって、国会の議決を待つという形で、半分国会責任を負わせられておるわけでありますけれども、しかし、私は、やはり従前の例からいきましても、閣議決定というものが国会においても否認をされた例はないわけでございます。非常に重要な問題であろうというように思うわけなんです。したがって、来年のことを含めていま鋭意、総裁にも加わっていただいて、人事院勧告のあり方、あるいは人事院制度のあり方を含め検討中だということでありますけれども、少なくも総合予算主義をとるならば、総合予算の中にあるものは計上する、それで足りなければ予備費からまた支出をするという形で、あくまでも財源は確保されて完全実施をするという気がまえがなければ、毎年この悪循環は繰り返されて、不信感がつのるばかりである。国民もまた、今日、なぜ政府人事院勧告を完全に実施をしないのだろうか。また、新聞その他の論評、論説も、完全実施を望むということを長々と書いているわけである。そういうことから考えまして、私は、異常な決意を持って臨んでいただかなければ、この悪い習慣、この悪い態度といったようなことについてはあまり考えてないと考えるわけでありますけれども、たとえば私がいま触れましたけれども、もし四十四年度においても総合予算主義をとるということならば、その予算の中に一定限度のものを計上をし、そのことが人事院勧告を制約するものでも、制肘するものでも、牽制するものでもない、しかし、人事院勧告が出た場合には、足りればそれでけっこう、足りない場合にはやはり予備費にも及ぶというような柔軟な、しかも前進した態度で考えていかなければならぬというように思うわけでありますけれども、もう一度大臣の所信を伺いたい。
  50. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 先般の閣議決定ですね、その前にはいろいろ相談はしたわけであります。その中に、先ほどちょっと名前をあげられましたけれども、ある者は積極的である、ある者は消極的である、こういうふうなことを御指摘になりましたけれども、政府としましては、もちろん人事院勧告の完全実施という方向を否定する者は一人もいないのであります。ただ問題は、それをやるのにやれるかやれぬかというふうな話の場合に、財政的な立場でものをおっしゃる人もあるし、何とかならぬかということでものを言う者もおるしということでありますから、政府全体がいいかげんにこの人事院勧告を扱うという気持ちでないということは御了承願いたいと思います。ただ、私としましては、従来も数カ年にわたって毎回いわゆる完全実施ということが行なわれておらない。そのことは、それぞれやむを得ない事情があったということではございましょうけれども、こういうふうなことをいつまでも繰り返すということは、いかにも適当でないという気持ちがいたしておりますので、人事院勧告どおり実施する。尊重するということはシビアーに考えて、これは尊重していかなくちゃならぬという気持ちで、何かうまい方法はないかということになってくるわけであります。これがこれからの検討問題ということになっておりますが、専門的に、予算編成の技術であるとか、あるいは測度的な扱いの問題であるとか、いろいろ議論は出てくるのじゃなかろうかと思いますけれども、要は、何らかの方法によって人事院勧告が満たされるようにやってまいりたいというその方向で、私としましてはさらに努力を続けてまいりたい、こういう趣旨であることを御了承いただきたいと思います。
  51. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 先ほど大蔵当局にもお尋ねいたしたわけでありますけれども、本年の千二百億の予備費のワクの中で数十億円は不用が大体出るというような答弁もいただいておるわけなんです。私は、閣議決定いかんにかかわらず、やはり公務員諸君が理解できる措置閣議決定後であろうとも鋭意検討されて、理解を得る、国民の支持も得るというのが政府責任だというように考えております。勧告は尊重しているけれども、理由があってできないんだ。それは一ぺんや二度ならわかりますよ。過去十回とにかくやってこないのですから、勧告なんて出たってへっちゃらだ、あれは人事院勧告だよ、実施はこうなんだということで、ほんとうに勧告を尊重をしているという姿がわれわれには理解できないわけなんです。国民もまた同様だと思うわけなんです。私は、そういう意味で大臣、今後ともひとつ鋭意御奮闘いただくようにお願いをいたすわけであります。
  52. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 ちょっと関連して。大臣御退席の時間でございますが一言だけ、いまの斉藤委員の質問に関連いたしまして御質問申し上げます。  大臣が非常に人事院勧告尊重の線で努力されたことは多といたしますが、きょう特にこの文教委員会を開きましたのは、一つには十月八日という日が、すでに前々から公務員共闘でこの人事院勧告の問題、給与改定の問題をめぐってかまえられておりますので、われわれ文教委員会としても大きい責任を感じまして、これを何とか解決の方向に努力をする責任があるのではないか、そういう意味でわれわれはいま真剣に討議をしておるわけであります。いまのお話でありますと、総合予算主義のたてまえもあるが、とにかく閣議決定もしておりますので、来年度においてこのようなことの再び起こらないようにこれから非常な努力をしたいというふうに、つまるところそういうふうな大臣の御答弁と承れるわけであります。それはもちろんやっていただかなければなりませんけれども、しかし、いま申し上げたとおり、十月八日という日に、再びまた去年、おととしのようなことを繰り返させるのか、このことを私どもは非常に憂えるわけであります。そうして、特に斉藤委員からのいろいろの質問の中でも明らかになっておりますように、予備費内容についても、閣議決定をした時期と台風シーズンである九月がすでに終わっておるいまの時期とでは、多少その見込み、判断において差が出ても当然であるはずでありますし、ことにいま大蔵省がおらないのは残念でありますが、税収のその後の伸びの状態、あるいは自然増収の見込み、こういうもの等を考えますと、ことしは財源がないからできないとは言えない時期にもう来ておると思うのであります。したがいまして、閣議決定尊重ということはわかりますけれども、当面の問題をいかにして、何らかの形で公務員諸君にも納得してもらえる努力について、なお努力の時間もありますし、そういう余裕もあるはずであります。その点についてひとつこれから、時間はわずかでありますけれども、大臣の懸命の御努力をいただきたいと思いますので、その点についての御所見をお願いいたしたい。
  53. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 今回の人事院勧告に対する政府措置に対して、公務員の諸君がいろいろ御不満を持っていらっしゃるということは私も承知いたしております。きわめて熱心な要望が私のところにもたくさん来ております。そういう御不満があることはよくわかるのでありますけれども、閣議ですでに決定せられまして、また、その段階まで政府としましても及ばずながらいろいろ誠意をもって努力してきたところでもありますので、願わくは公務員の諸君も、今年はやむを得ないということで御了承いただきたいものだと実は念願いたしております。  実力行使というふうなお話もありますけれども、実力行使というふうなことは、これはやはり公務員としては考えて、自重していただかなければならないことではないか、そういうふうに考えておるわけです。  いずれにしましても、いまこの席で私が、閣議決定がどうなるこうなるというふうなことを申し上げるわけにはまいりません。閣議決定というものは、やはり一ぺんできますというと、これを変更するということはきわめて困難な問題であるということは御了承いただきたいと思いますが、何か公務員の諸君に幾らかでも御満足のいくような道があれば、それは検討するにやぶさかではございませんけれども、そういうふうなうまい考え方があるかどうか、言いかえれば、閣議決定のこの前の線をはずれたところで何かうまい方法でもあるかないかというふうなことは、なお検討してもらいたいものだと思いますけれども、いまはっきり申し上げるわけにまいりませんが、私どもとしましては、そういうことも頭に置いて努力を継続してまいりたいと思います。
  54. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 大臣、けっこうです。  総理府の栗山人事局長、いらっしゃいますか。――一言だけちょっと、出る前に。給与担当閣僚協議会の事務局を担当されていて、灘尾さんが行けば、もうそこへ出られるそうですから一言だけ伺っておきます。  政府は、やはり総合予算主義を貫いて、補正予算は組まない、したがって臨時国会も開かないというような方針だということを聞いております。そういう中で、今度の人勧実施にあたって、関係閣僚協議会事務局を担当しておられます総理府、特に先ほども個人名まで申し上げましたけれども、総理府総務長官は、これが完全実施を強く主張した一人であることも漏れ承っておるわけであります。しかし、今後のことについて、いまの段階で鋭意検討をされるというその気持ちもわかるわけであります。わかるわけでありますけれども、何か十月八日の実力行使を前にして、これだけやっておるのだという一つの国民世論の宣撫工作に使うのじゃないか、八日が過ぎれば解散してしまって、七人委員会だか何だか知らぬけれども、もうやらない。そうしてまた、来年の人事院勧告の前後、あるいは閣議決定の前後にごちゃごちゃやるというようなことで水を濁すといいますか、お茶を濁すといいますか、そういう一つのゼスチュアにこの関係閣僚協議会が、事務局のもとに開かれておるというふうな、これは邪推かもしれませんけれども、そういう気がしてしようがないわけですよ。今度はぜひ、たとえば総合予算主義を来年とるならば、その総合予算の中に予備費以外に昇給分を一体どう盛るのか、そうしてなお予備費にも幅を持たせるのか、あるいは人事院勧告の時期についてもどうしたらいいのかというようなことを、十分ひとつ事務局は事務局らしくリーダーシップをとっていただきたい、このように思っているわけであります。  大臣出席できませんので、まことに残念でありますけれども、ぜひ――私はそういう考え方を持っておるのですが、いまになって、なぜ国会から引き揚げても関係閣僚協議会をひんぱんに開かなければならないのか。そうしてまた、その成果は期待できるのかどうなのか。成果が出たとすれば、具体的に、来年には一体担当総理府として、どう実行に移されようとしておるのか。局長としてひとつ見解を披瀝していただきたい。
  55. 栗山廉平

    ○栗山説明員 この人事院勧告と財政の関係につきましては、いろいろ困難な問題がございまして、先生すでに御承知のように、過去四年間ぐらいにわたりまして、同じような検討をやってきておるわけでございます。ところが、なかなかその人事院勧告制度といまの予算制度とかみ合わない点等がございまして、結局、従来どおりといったようなかっこうで来たわけでございます。(「かみ合わないのじゃなくて、かみ合わせないからだよ」と呼ぶ者あり)いろいろな議論がございます。それで、ことしの閣議決定におきましては、従来そういういろいろの壁があったわけでございまするけれども、何とかこの壁を打ち破って、完全実施の方向に向けるべく努力をしようということになりましたことは、すでに御承知のとおりでございます。八月三十日に、御承知のように閣議決定がございまして、その一週間あとの九月の六日に第一回の閣僚協議会――人事院総裁も加わられましての協議会が開かれたわけでございます。それから毎週われわれのほうで、いわゆる幹事会と申しますか、各省の事務段階会議でございますが、真剣な討議を続けております。目下、大蔵大臣が御入院中でございますので、正式のと申すと恐縮でございますが、九月六日以後の閣僚協議会は、まだ正式のものは行なわれておりませんですけれども、事務段階におきまして鋭意努力をして検討いたしております。ただし、三、四年間にわたって大きな壁があるという事実もございまして、そう簡単にはなかなか進まない点は多々あるわけでございますが、何とか完全実施の方向に向けて、お互いに譲るべきところは譲って、何かのかっこうでまとめられるだけはまとめていきたい。完全にまとまるかどうか、事務段階ではむずかしい点もございます。しかし、そういう点がありますならば、いまの閣僚会議に持ち上げまして、広い高い見地からなお調整をしていただくということをわれわれは念願しておるわけでございます。
  56. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 展望として、突然ことし、いまの時期に始めたんじゃない。数年来やってきたんだ、確かにそう思います。しかし、それは公務員の実力行使とどうも時期を同じゅうして――これはしょっちゅうやっているわけじゃないのです。影のように出てきては、また影のように消えていくという形で、前進していない。小田原評定をやってきているといっても差しつかえない。ことしはそういうことであってはならぬ。熱意のほどはわかりますが、いみじくも答弁にもありましたように、成案を得るかどうかわからぬけれどもというようなことなんだけれども、私は、やはりこの辺で時期等を含めて勧告のあり方についてもすっきりした形を組む。なお、その実施について、譲るべきところは譲るというけれども、それは大蔵省が全部譲らなければならぬですよ。全部大蔵省責任だから、大蔵省が出すと言えばそれで済むんだから、譲るべきところは譲るというのじゃなしに、大蔵省勧告どおり金を出すということがすべてなんですよ。その辺は十分理解をいただいていると思いますけれども、これが統一行動の宣撫工作だというようなことに終わらないように、ひとつ本気で検討をいただきたいというように希望を特に強く申し上げておきます。  続いて、みんな午後帰ってしまうそうですから、労働省の労政局長に伺います。小川労働大臣が沖繩に何しに行ったか知りませんけれども、帰ってこないようですが、労働省の立場は、この人勧実施にあたって、やはり労働者の立場に立つのが当然だと思うわけであります。そういうことから考えましたときに、やはり労働大臣閣議決定の過程において努力されたことも多とします。しかし、今日の段階になってみて、先ほども私が申し上げましたように、諸般の情勢から実施時期を値切ったということにつきましては、非常に問題だと思うわけであります。そこで主要な関係閣僚協議会のメンバーとして、労働省の立場を簡単にひとつ披瀝をいただきたいと思うわけです。
  57. 松永正男

    ○松永説明員 ただいま御指摘ございましたように、いわゆる七人委員会のメンバーに労働大臣がなっておるわけでございますが、これは労働省といたしましては、労働者の地位の向上、利益の増進、労使関係の安定といったような、労働行政担当という立場から閣僚として御参加いただいておるというように考えるわけでございまして、その立場から申しまするというと、たとえば労働省関係の三公五現関係につきまして、先ほど人事院総裁が触れられましたように、完全実施ということを――数年間不完全実施の時代があったわけでございますが、これを完全実施ということに努力をいたしました同じ趣旨におきまして、やはり人事院勧告につきましても、先ほど来閣僚の皆さまがおっしゃっておられるような立場で御審議を願えると思うのでありますが、われわれとしては労働省としての立場で完全実施ということで努力いたしたいと考えております。
  58. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 了解しました。  人事院総裁も午後用事があるようですが、みな用事があるのですね。自治省の皆さんだって遊びに来ているのではないので、ずるずる帰られたのではしようがない。もう少しじっくり落ちついていてもらいたいのですがね。  総裁にちょっと聞きますけれども、あなたは前任者の退任残任期間二年、全期まるまる一期四年、それから過日新任をされて一年、まるまる六年人事院総裁の仕事をされているというふうに私は把握いたしますが、それでいいですか。
  59. 佐藤達夫

    ○佐藤説明員 昭和三十七年の九月に総裁を拝命いたしまして、それからずっとやっておりますから、大体おっしゃるようなことじゃないかと思います。
  60. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 あなたが総裁に就任されて七年目、まさに一回も完全実施を、特に時期においてされたことはない。昨年ようやく一カ月繰り上げられ、ことしはまた最低一カ月繰り上げられるだろうというようなこともいわれておったわけですけれども、昨年どおりというような結果になっておるのですが、あなたの任務からいっても、またあなたの性格からいっても、これほどばかにされてもう耐えられないのじゃないですか。まだ人事院総裁おやりになるつもりですか。この辺でもういやになって投げるのじゃないですか。どうですか、まだやるのですか。責任は一体どういうふうに感じられているのか。いい気持ちじゃないと思うのですよ。あれだけ一生懸命やって、とにかく科学的な資料を集め、誠意をもって勧告をされて、しかもそれが実施をされない。あなた自身も触れられましたように、公労協については仲裁裁定がここ数年来完全実施をされてきている。しかもあなたは人事院制度が生まれた意義については十分把握をされている。やせ細る思いではなくて、もう死にたい思いだと思うのです。同情する点は多々ありますけれども、にもかかわらず不満だ、けしからぬと言っているだけでは責任をとることにならぬ。私はあなたにやめよと言うわけではないけれども、やめたい気持ちがあるのではないですか。そこら辺どうですか。
  61. 佐藤達夫

    ○佐藤説明員 たいへん思いやりの深いおことばで感銘いたします。とにかく個人的に言わせていただけば、これはほんとうにたいへんな犠牲で、しかも決して愉快なことはない。何をやっても、だれからもほめられることは絶対ない。なまじっか片一方の陣営からほめられたら迷惑なんで、ほめられるならば全部ほめていただく、しからずんば全部けなしていただく。こういう宿命のもとにあるのがわれわれの仕事だと思います。したがいまして、決してこれは喜び勇んでやるべき仕事とは個人的には思いませんけれども、しかし、総裁の仕事、あるいは勧告の仕事もそうですけれども、私いつも考えますのは、私以外のもっと優秀な人だったらどういうふうにやるだろうかということを常に考えながら、おそらくおれ以上にはやる者はおるまいという考え方でやってきた。にもかかわらずこういう結果でございまして、これはたいへん残念なことと思いますけれども、その意気込みは意気込みとして、個人の気持ちは捨てて御奉公せねばなるまいということです。ですからことし再任の際も、何とかごかんべん願いたいという態度を表明したのでありますけれども、また一方、いまのような気がまえも気魄も感ぜられますので、大いにひとつ完全実施を見るまでやろうかというところまでは考えておりませんけれども、努力をしたい、こういう気持ちでおります。
  62. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 そこで、関係閣僚協議会に特に出席をされて、人事院立場を主張されておるとも聞いております。その努力は多とします。しかし、人事院勧告を最も完全に実施できる方策といったようなものは、人事院の技術的な問題ではない。人事院勧告の時期だとか、あるいは内容だとかいうようなことでなくて、やはり政府の全般的な態度であり、姿勢であるというように思っておりますけれども、具体的に、たとえば予算編成上はどうしたら人事院勧告が一番実施をされやすいのか、あるいは大蔵省の考え方がどこが間違っているのかというようなことについて、総裁は総裁なりに、だれがやってもきらわれる仕事だけれども、使命感に生きるんだ、やめないというだけの熱意と決意があるなら、今度はひとつ閣僚協議会で強い主張と要求をされるべきだというふうに思うのでありますが、総裁、具体的にどういうようにお考えになっておりますか。ひとつ前向きの姿勢をお示し願いたい。
  63. 佐藤達夫

    ○佐藤説明員 はでなことばでお答えするつもりはありません。じみちにお答えしますが、閣僚協議会でのこういった種類の検討と申しますのは、先ほど人事局長も言いましたように、もう四年越しくらい毎回やっていらっしゃる。私が直接参加したケースもしばしばあったわけであります。しかし、各方面あらゆる知恵をおしぼりになってはおりながら、どうもこういう欠点があり、ああいう欠点があるということで、従来どおりという形で参ったわけであります。ただ、ことしの形はちょっと変わっておる。これは先ほど触れましたように、当初予算でこれをできるだけ見込もうというかまえなんです。これはひるがえって先ほど申しました公社現業の場合に比べれば、まさにあれは当初予算でちゃんと含みを持たしてありますからこそ四月完全実施ということで行っておるわけであります。ことしの裁定の所要経費を見ますと、ちょうどわれわれの勧告の五月実施のお金よりもちょっと多いくらい、八百何十億なんですから。それが当初予算で出ておるわけであります。ああいう形がないものかということで従来私ずっと主張してまいりましたし、またそれが一部芽をふいたということでことしの総合予算の形になったわけであります。その成果についてはまた別でありますけれども、そういう形が出てきておるということは一つあるわけです。  それ以外に従来いろいろな案が出ました。それが私も加わって、これはだめですよということで、閣僚もみんなだめだということで来ておるわけでありますが、これが蒸し返されるということはないと私は思いますから、それは全部別にして、それが飛躍的な新しい案、これはというような、われわれが飛びつくような案が出るかどうか、これは私の第一の期待であります。それを期待して参加してお知恵を拝借――ただし、第一回はほんとうの顔合わせ的なものが一度あっただけで、これも先ほどお話しのように、まだ大蔵大臣が出てくれませんから、これからどういう行き方をたどりますかわかりませんけれども、私としては従来と同様に、労働基本権の代償機関といわれておる人事院の使命をそこなう形は絶対に受け入れがたいことは当然であります。そういうことをそこなわない名案をひとつ期待する。それがなければ、先ほどちょっと触れましたように、また最初総合予算制度に対して私が期待いたしましたように、ことしはとにかく足りなかったということは事実になるらしいということならば、これは足りるようにたっぷり出していただきたい。これは単純明快な論理であります。衆参両院の内閣委員会がたびたび決議していらっしゃる。これは完全実施ができるように財政上十分の措置をとれということを全会一致で衆参両院の内閣委員会で決議していらっしゃるわけでありますから、その趣旨にも合うことであります。これはという格段の名案がない限りは、手近のところそういう方法で押していくしかあるまい。率直なところそういう気一持ちであります。
  64. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 ぜひひとつそういう線で御検討いただきたい。来年は来年はといって、あなたが就任されてからもう七年になるわけです。いつまでもそういうことが通ることは間違いでございますから、あなたはお知恵拝借なんて言ったけれども、あなたのお知恵を七人委員会が拝借するほうなんだ。ぜひ堂々と主張をされて完全実施、さらに代償機関としての人事院の使命を一〇〇%発揮いただきますように御健闘を期待をいたします。  鎌田公務員部長、おそくなってたいへん恐縮でありましたけれども、一言だけ伺いたいと思うわけであります。  各地方自治体も続々と人事委員会が勧告を出している状態でございまして、国家公務員にならい地方公務員給与改定の時期を迎えておるわけであります。今日地方自治体の財政は、極度に逼迫をしているところもあるわけであります。したがって自治省の、地方公務員に対する地方人事委員会の勧告実施等につきましては、いろいろな指導もありましょうし、見解を持っておられるというように思うわけであります。したがって、一般地方公務員給与改定にあたって、自治省がとるべき基本的な態度について大まかに、まず第一点として伺いたい。  第二点は、鎌田さんの前任職であったと思いますけれども、地方自治体にはいわゆる公営企業がございます。この公営企業に従事する職員の皆さんが、一般地方公務員と違って、公営企業の経営内容がとみに悪いというようなことから、この勧告に漏れるというようなこと、あるいは完全実施どころではない、たいへんな値切り方がされるということが懸念をされるわけでありますけれども、地方公営企業の職員に対するベース改定給与改定といったようなものに関して、どのように見解を持たれておるのか、伺っておきたいと思います。
  65. 鎌田要人

    ○鎌田説明員 まず第一点の、いわゆる公営企業以外の職員の給与改定についてでございますが、これは基本的な方針といたしましては、国家公務員給与改定に準じて給与改定を行なう、こういうことを基本方針といたしておるわけであります。そういった指導方針のもとに、今年の財源措置といたしましては、国の場合とちょっと違いまして地方財政計画というものがあるわけでございますが、この地方財政計画には予備費という観念は親しまない、こういうたてまえをとっておりますので、はっきり給与改善諸費ということで七百五十億円を計上いたしておるわけでございます。大体国の公務員に準じて給与改定を行なうということになりますと、所要額は七百九十九億ほどでございますので、何とかやりくりがつくのではないかというふうに考えておる次第でございます。基本的には国家公務員に準じた給与改定を行なう、こういう指導方針でございます。  第二の、公営企業関係でございますけれども、これにつきましては百も御案内であると思うわけでございますけれども、いわゆる一般の行政職員その他の公務員給与と、給与決定の仕組みなりあるいは考え方を異にいたしておるわけでございまして、一昨年の地方公営企業法の改正によりまして特にその趣旨を明確にいたしたわけでございますけれども、一般会計と企業会計との負担区分を明確にする。負担区分を明確にいたしました上で、企業会計の負担に属するものについては、その会計からあがる収入をもって所要をまかなってまいる、こういういわゆる独立採算のたてまえというものをとっておるわけでございまして、収入との見合い関係給与改定というものを行なってまいる、こういうたてまえになっておるわけでございます。したがいまして、いわゆる一般職の給与改定がございましても、これに対しまして一般職の場合のような所要の財源措置というものは講じない、こういうたてまえをとっておるわけでございます。ただ特に、公営企業全体、御案内のとおり赤字でございます。四十二年度の決算におきましてすでに千四百四十億の累積赤字になっております。四十二年度だけで三百七十億という単年度の赤字を出しております。実はその七割くらいのものが交通事業でございます。そういった関係もございまして、現在かなりの公営企業におきまして財政再建計画を立てまして、これに基づいて再建をはかっておるのでございますが、その中で若干の団体につきまして、現状のままでございますと給与改定の行ないがたいものがございます。これにつきましても、おのずから企業努力の中から給与改定財源を生み出すという基本的な考え方をとっておるわけでございますけれども、それぞれ個々の企業の事情というものも十分に私どものほうで聴取をいたしまして、再建計画の関係もにらみ合わせながらケース・バイ・ケースで措置をしてまいりたい。こういう基本的な考え方でおるわけでございます。
  66. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 各自治体によっては、財政の逼迫しておるところもありますし、特にお話にありましたように、公営企業につきましてはたいへんな財政事情のところがございます。しかし、自治省としては、これを指導、助言する立場にあるのか、監督、規制をする立場にあるのか、自治省の立場をひとつ明確に示されたいと思います。
  67. 鎌田要人

    ○鎌田説明員 自治省の立場といたしましては、やはり両面あるだろうと思うわけでございます。たとえば一般職の場合におきましてもそうでございますけれども、国家公務員給与なり、あるいは当該地域内の企業の給与水準というものに比べましても、かなり高いものもございます。そういったものにつきまして、高くなった原因というものも十分に客観的に把握してまいらなきゃならないわけでございますけれども、そういう特定の団体におきまして、当然やむを得ない事情以外の事情、非常に回りくどい言い方でございますが、そういう形で給与水準が高くなっておるというものにつきましては、やはり他の類似団体に対する影響その他もございますので、そういったところにつきましては、やはり機会あるごとに是正の措置を講じられたい、こういう指導をいたしておるわけでございます。また片方、給与水準が当該地域内の企業に比べても低い、あるいは公務員給与に比べても低い、こういったものにつきましては、御案内のとおり交付税におきまする基準財政需要額の算定を通じて、国家公務員並みの給与改定の財源というものは確保し、その線に沿って指導しておる。そういった意味合いにおきまして、やはりこの規制する面ばかりではございませんで、そういった面での誘導と申しますか、というものも、両面、私どもといたしましては考えておる次第でございます。
  68. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 最後に文部省に、局長いらっしゃいますので伺っておきたいと思うのですけれども、先ほど谷川委員から大臣に対しまして、十月八日の統一行動に対する文部省の考え方等についても関連質問がございましたので、多くをお尋ねいたしませんけれども、再三繰り返しましたように、公労協に対する仲裁裁定の完全実施人事院の生まれた歴史的な発生過程といったようなものからいきまして、ただ単に実力行使は違法だ、やめなさい、断固処分だと言うだけでは政治になっていない。政治ではないと思うのです。これはやはり権力をもって臨んでいる一方的な姿にすぎないというように考えるわけであります。しかも私は――きょうは保留をいたしますけれども、多くの教職員を指導し監督をするという立場の文部省内に、風上にも置けないような高級職員のいることを残念ながら知っているわけなんです。このことは具体的には申し上げませんけれども、内部の規律が乱れていてよそのことをあれこれ言う資格はないと思うのです。それはだれですかって、局長けげんな顔をされておりますけれども、名前を言えといえば言ってもいいのですけれども、後ほどにいたします。  要するに、私はただ単なる十月八日の統一行動に対し、これをやめなさい、やめなさい、違法だ、違法だ、やれば処分だという強圧的な、権力的な態度だけで臨みますと、やがて不信感はますます重なり、文教行政全体に与える悪影響というものははかり知れないものがあるというように思うわけであります。  そこで、大臣答弁は総括的に先ほどありましたので了といたしますけれども、初等中等局長として、この際、この完全実施を要求している先生方の気持ちをどのようにそんたくをされ、そしてまた大臣の行動に対しどのように輔弼されようとしているのか、局長の考え方をお伺いいたします。
  69. 天城勲

    ○天城説明員 給与勧告とその実施に関します文部省としての一般的態度につきましては、すでに大臣が申し上げておりますし、また具体的にいろいろ行動されていることで御承知いただけることと思います。私たちといたしましては、年来、大臣が先刻申し上げましたような基本線でもって給与の完全実施について及ばずながら努力してまいったわけでございまして、その気持ちと考え方において今日も何も変わるところはございません。率直なところ、過去の事例がら申して遺憾なことが繰り返されておりますので、私たちとしては、そういうことをほんとうに断たなくちゃいけないという基本的な考え方を持っておるわけでございます。しかし、現実にいまの給与に対する措置がわれわれの考えておるとおりにいかない点は、実はたいへん私も遺憾に存じておるところでございます。
  70. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 みずからえりを正し、教育行政の推進者として理解と納得のできる態度を文部省がとらなければ、私は全国の教職員にあれこれ言うだけの資格はないというように思っておるわけなんです。したがって、いまの局長の御答弁先ほど大臣の御答弁、ただ口先だけで言われたのでは理解はできませんけれども、しかし、この際あらゆる方途を尽くし、あらゆることを考えて完全実施に踏み切る、あるいは本年の場合は完全実施に見合う代償を考える、さらに先ほど私の大蔵当局に対する質問の中からも御理解いただけると思うのですけれども、こういう財源があるじゃないか、こういう金を出せということも当然文部省としては大蔵省に要求すべきであって、いたずらに大蔵省の言うことをうのみにして、財源がありませんからやむを得ませんというような態度であっては、文部省の責任を果たしたとはいえないと思うのでございます。  どうぞひとつ、そういう気持ちで対処いただきますように要望いたしまして、私の質問を終わります。
  71. 久保田藤麿

    ○久保田(藤)委員長代理 この際、午後二時まで休憩いたします。     午後一時十分休憩      ────◇─────     午後二時十八分開議
  72. 久保田藤麿

    ○久保田(藤)委員長代理 休憩前に引き続き会議開きます。  文化財保護に関する件について調査を進めます。  本日御出席をお願いいたしております参考人は、岡山県教育長篠井孝夫君、明治大学教授杉原荘介君、岡山大学教授和島誠一君、以上三名の方々でございます。  この際、委員会を代表して一言ごあいさつを申し上げます。  参考人の方々には、御多用中のところ御出席をいただきましてまことにありがとうございました。目下当委員会におきしては、岡山市の津島遺跡に関し調査をいたしておりますが、参考人各位より御意見を承り、もって本調査の参考といたしたいと存じますので、何とぞ忌憚のない御意見をお述べくださるようお願いいたします。  なお、参考人の御意見は委員からの質疑に対するお答えでお述べいただくようにいたしたいと存じますので、さよう御了承いただきます。  質疑の通告がありますのでこれを許します。長谷川正三君。
  73. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 ただいま久保田委員長代理からもごあいさつがございましたが、特にたいへんお忙しいところ、文化財保護の問題について私が質問するにあたりまして、参考人として国会を通して御出席をお願いした立場にありますので、心からお礼を申し上げたいと思います。  なお、たいへん委員会の議事が午前中延びまして、御予定の時間よりおくれたこともあわせておわびをいたしたいと思います。できるだけ短い時間に、あとの質問もございますので能率的にやりたいと思いますので、いまお話委員長からありましたように忌憚ない意見を端的にお述べいただければ幸いだと思います。  きょうは文化庁の方々にもあわせて交互に質問をさしていただく場合があるかと思いますが、お時間の関係もありますから、参考人の方に早くお帰りいただけるように、なるべく参考人の方への質問を先にはいたしたいと思いますけれども、場合によっては文化庁の方にも御質問をまぜさしていただきたいと思いますので、この点もあらかじめ御了承いただきたいと思います。  実はすでに御承知のように、わが国が目ざましい発展を遂げる中で国土の開発が進みまして、しかしこれに伴って、今長官も最近新聞に「悲しい文化財の破壊」という感想を述べられておりますけれども、まさに反面そういう事態が各所に発生しておりまして、私も本委員会でしばしばこれらの問題を取り上げてまいりました。また、先般衆議院文教委員会の国政調査にあたりましても、文化財保護関係は大きなテーマの一つにしていただきまして、わずかの日数、限られた地区でありますけれども、文化財問題についても調査をしてまいったところであります。その際に、私非常に問題であるというふうに感じました点を中心にこれからお尋ねしたいと思います。  それは岡山県の岡山市にあります県営グランドの中にいま武道館が建設されようとしておる。ちょうどそこにいわゆる津島遺跡というのが――これはすでに前からわかっておったと思いますが、さらにこの工事の過程で非常に重要な遺跡であるということが発掘、確認をされつつあるように伺い、先般もその実情も見てまいったわけでありますが、これについては、いま日本の当面しておる文化財の危機、ことに埋蔵文化財の危機に対して典型的な一つの問題を提起しているのではないか、こういうふうに思いますので、せっかく文化財保護委員会が文化庁と改まって、機構の改革もなされた際に、少なくとも文化財保護に関してはさらに一歩を進めるものでなければならないはずでありますから、そういう文化庁発足にあたって、当面しております重要課題でもあると考えますので、特に貴重な時間をいただくわけであります。  そこで、まず岡山県の教育長さんにお尋ねをいたしたいのでありますが、この武道館建設をなぜここにするようになったか、その経過を簡単にひとつお願いしたいと思います。
  74. 篠井孝夫

    ○篠井参考人 岡山県といたしましては、あの津島の運動公園というところはあらゆるスポーツの施設を整えるというつもりで計画したのでございます。いまあります体育館は、あれはよその建物を移築したので不十分でありますし、それからあらゆるスポーツ団体が使うので一つでは足らないということがあります。もう一つは、県に公会堂的なものがないので、そういう会場になるものもほしいというのがかねてからの話だったのであります。あわせて青少年の健全育成をするために武道というものも奨励しなくちゃならぬということもございます。たまたま明治百年の記念事業というものに一番ふさわしい建物というようなことがございまして、そういうようなこと等を考えあわせまして、あの津島の運動公園の中に土地を物色したのでございます。しかもいまの予定地といいますのは、都計の専門の人等の考えもいれ、いろんなものを総合的に考えまして、いまの予定地が一番いいというようなことできめた次第でございます。
  75. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 いまのようなお話で、たいへんあそこの体育施設全体がまとまっているところだから建てたい、そういうお話でありますが、これはすでに数年前から文化財保護の問題が取り上げられまして、当時の文化財保護委員会が全国的に御協力を願って史跡台帳というものを整備し、遺跡地図というものをおつくりになったと思うのですね。これはごく最近のことであります。ごく三、四年前、ほぼでき上がったのはもっと最近ではないかと思うのですけれども、岡山県の、直接は教育委員会がそういう調査の仕事を受け持たれたと思うのでありますけれども、その中にすでにあそこは史跡としてちゃんと地図も書かれておるというふうに思いますが、これは文化庁、そのとおりですね。
  76. 安達健二

    ○安達説明員 ただいまお話しのように台帳は昭和三十七年にできました。それから地図はことしまでかかりまして完成いたしました。それから御指摘の津島の遺跡は、その地図に遺跡として区画してございます。
  77. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 そういうように遺跡としてごく最近ちゃんとその地図が完成したという、そういうところをなぜ選んだかというのが疑問なんです。これは文化財保護法によればどういう規定になっておるか、教育長さん、御存じですか。
  78. 篠井孝夫

    ○篠井参考人 工事施行一月前に届け出るようになっております。
  79. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 その届け出を怠ったというふうに伺っておりますし、この委員会でもそういうふうに御答弁いただいておりますが、間違いありませんか。
  80. 篠井孝夫

    ○篠井参考人 はい。
  81. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 そうしますと、私は県の教育委員会は特に県下のこうした遺跡、天然記念物等について保護、監督する第一線の役割りを持っておると思うのであります。その監督官庁が、そうでなくても先ほど申し上げたとおり、ともすれば文化財が破壊されていく、今文化庁長官も「悲しい文化財の破壊」というようなことをお書きになっておる時期に、岡山県は、私が前々から伺ったところでは、文化財保護にはどちらかというと全国でも比較的御熱心によくやられておるというように伺っておる。その県でどうしてこのような不祥の事態が起こったか、これは私全くわからないのでありますが、どうしてそんな間違いが起こったのですか。
  82. 篠井孝夫

    ○篠井参考人 その点まことに遺憾でございますが、私自身考えてみましても、ほんとうに忘れておったといいますか、ほんとうに気がつかなかった。それは故意にそうしたというようなことでなくて、ほんとうに忘れておったということであります。
  83. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 教育長さんは公的な立場にあられるのでなかなか申しにくいかと思いますので、私はずばり申し上げますが、これは県知事が武道館を建てるということを大きな一つの政治的目標といいますか、県民へのアピールをしておったというようないきさつもありまして、明治百年に早く合わせてこれをつくりたいというような、これは現地視察のときにも申し上げましたが、武道館建設の熱意からというふうに善意に解釈してもよろしゅうございますけれども、そういうことでここに早く武道館を建てたいということから――私は体育のこともこれは同じ教育委員会の所管だろうと思いますから、その教育委員会の中でここに武道館をつくるのに知らなかったということはないのじゃないか。知っていたけれどもほおかぶりして、まあこれはひとつやってしまえということ。知事からとにかく有無言わさずやれ、こういうようなことで、教育委員会も任命制でございますし、どうも知事の施策に協力せざるを得ないという立場で、あえてこれを黙認といいますか、ほおかぶりといいますか、そういうことのように思われてなりませんが、真相はそうじゃありませんか。
  84. 篠井孝夫

    ○篠井参考人 知事の圧力に屈したんじゃないかというような御質問でございますけれども、教育委員会としては、どこまでも過去においても現在においても自主性というものを堅持してまいっておるのであります。このたびのことは、知っておってこれをほおかぶりしたとか、その圧力に屈した、そういうことはございません。
  85. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 教育長さんとしてはそういうお答えしかできないだろうと思います。ですからこれ以上のことは申し上げません。また教育長さん御自身はわりあい最近御就任なさったとも伺っておりますから申し上げませんが、私は、県知事が武道館をつくる、あるいは明治百年と結び合わせてやるということ、そのことに少しもけちをつけようということは考えておらないのです。ただ幸か不幸か、ここにある遺跡というものが、学者の皆さんの意見をいろいろ伺いますと、非常に重要であるというふうに考えられますし、そういう際に、どうも武道館をつくるという熱意のあまりか、それがたまたま知事という県の一番権力のある方の方針だったために、まず最初の出発において、明らかに文化財保護法という厳とした国の法律をじゅうりんして事にかかったというこのことの重大さはやはり御銘記を願い、二度とこういうことがあってはならないし、ましてこれを軽視して何でもやってしまえという姿勢がもし初めのうちは多少あって、それは文化財の重要性ということが、ここにあることが全然わからなかったという段階であったとしても、気がついたら即座に改めていただかなければならないのじゃないか、こういうふうに考えますので、以下その立場からもう少しお尋ねしたいと思うのです。  これが着工されたのは、今年の五月十日に着工した、こういうふうに教育委員会で先般おつくりいただいた資料に載っております。そしてちょうど一週間ほど掘りました十八日に「弥生時代遺物破片発見連絡」こうなっております。これはだれが発見したのですか。
  86. 篠井孝夫

    ○篠井参考人 私が聞いたところによりますと、私も岡山県社会教育課から聞いたのでございますけれども、いま思い出しますと、岡山大学の近藤助教授から聞いたように覚えておるのでございます。はっきりしたことはわかりません。
  87. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 そうしますと、ここの「発見連絡」とありますのは、近藤助教授から連絡があったということでありますか。それともこの連絡という意味はもっとほかの部面がありますか、どこかへ連絡したというような、そういう連絡を受けたという……。
  88. 篠井孝夫

    ○篠井参考人 連絡を受けたということでございます。
  89. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 そうしてその次に、翌十九、二十日にかけて、 「一時工事中止、県教委係員調査」となっておりますね。これは工事はそこで中止をさせて、県の教育委員会の係官が調査に行かれたのですか。
  90. 篠井孝夫

    ○篠井参考人 そうでございます。
  91. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 その結果はどうだったのですか。
  92. 篠井孝夫

    ○篠井参考人 その結果、これは遺物を発見いたしましたので、文部省のほうへ五月二十日に電話連絡を申し上げたのでございます。
  93. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 文化庁のほうはいかがですか。いつ連絡を受けましたか。
  94. 安達健二

    ○安達説明員 五月二十日に、県の課長から記念物課の課長補佐に対しまして、埋蔵文化財の緊急調査国庫補助金の交付について要望があった、こういうことでございまして、それが津島遺跡と直接関連があるかどうかについては、よく聞いてみましたけれども、若干どうもその辺のところは、あるいははっきりしていなかったけれども、とにかく二十日の日に電話があったことは事実でございます。
  95. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 そこで、いま二十日の日に緊急調査の補助金の申請という形で連絡があった、こういうお話でありますが、十八日に遺物の破片があるということの連絡を受けたときに、県教委は一体どういう判断をされたのですか。そのとき、まだこれが遺跡であることに気がつかなかったのですか。
  96. 篠井孝夫

    ○篠井参考人 遺跡があるということに気がつきましたので、それから調査を始めたのでございます。たとえばその重要の程度等につきましては、五月二十三日にボーリングをしております。
  97. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 私が伺っておるのは、十八日に連絡を受けて気がついたのですね。そして十九、二十日、工事を中止して調査をして、これは掘ったのですか。県の係員がここを掘ったのですが、この調査というのは。つまり、私がこのことを伺いますのは、調査して遺跡だということがわかったというのですか。
  98. 篠井孝夫

    ○篠井参考人 五月の十九日はちょうど日曜日だったものでございますので、そのときにボーリングして調査して、遺跡であるということがわかったのでございます。
  99. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 そうすると、緊急調査費の請求の前に――緊急調査の請求をしたということは、工事に取りかかってしまったことと、どういう関係に御解釈なさったのですか。つまり国の法律に違反してしまっているということに気がつかれたわけでしょう。それについてはほおかぶりで、緊急調査費がもらえるかという連絡をしたのですか。
  100. 篠井孝夫

    ○篠井参考人 私どものほうとすれば、一応文部省へこういうものが出たということを電話連絡をしたのであります。電話連絡しておいて、正式の書類を持参したのは、五月二十四日でございます。
  101. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 よくわからないのですが、二十日には文部省に連絡したというのは、いま文化庁の次長の話によると、緊急調査費をくれという連絡だったというのです。そうすると、工事にかかってしまった、申しわけないことをしてしまったのだ、こういうことは何にも言わなかったのですか。これはどうなんですか。教育長さんと文化庁のほうと、両方から伺いたい。
  102. 安達健二

    ○安達説明員 先ほど申し上げましたように、五月二十日の連絡におきましては緊急調査国庫補助金がもらえないかどうか、そういう意味の御要望についての連絡を受けたわけでございます。
  103. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 その段階では、文化庁は、そこがすでに工事が始まっているということは御存じなかったのですね。
  104. 安達健二

    ○安達説明員 その点は知りませんでした。
  105. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 そうして、工事の再開はいつしたのですか。二十日に一時中止したと書いてありますが、工事の再開はいつなさいましたか。
  106. 篠井孝夫

    ○篠井参考人 これは文部省より五月二十一日に連絡がございまして、それから知事部局のほうと折衝したのでございますけれども、その間工事をやりながら他の部分のところを調査したのです。
  107. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 これはますます許しがたいことをなすっているのじゃないですか。国法できまっていることを気がついて、なお調査をしてみて、それは遺跡だとわかって、なお工事をしながら調査をするのですか、そういうことをやったのですか。これはあなたがやったのじゃないのでしょうけれども……。
  108. 篠井孝夫

    ○篠井参考人 これは五月二十一日に文部省から連絡がございましたので、われわれのほうとすれば直ちに知事部局とも連絡し、知事部局のほうは工事の当事者としまして、その間に若干連絡の時間がかかりまして中止までに至らなかった。その間にわれわれのほうでできることを調査したということです。
  109. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 どうしても納得できないのは、工事は十九日に一時中止したのでしょう。これは教育委員会のほうから、史跡だからちょっと待ってくれとおっしゃったから、工事が中止になったのでしょう。
  110. 篠井孝夫

    ○篠井参考人 五月二十日だけ中止になっております。
  111. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 しかもすでに違法のことをやってしまったというのだから、重大な過失を犯したわけですね。これは法律上も、絶対これではいけないということですから、いかに県知事が権力をふるおうと何しようと、この工事は進められなかったはずですね。それが一日だけで、また二十一日から工事が始まったというのはどういうわけですか。
  112. 篠井孝夫

    ○篠井参考人 前に申しましたように、二十一日に文部省のほうから連絡を受けましたので、われわれのほうとすれば、関係しておる部局というのは知事部局、もちろん保健体育課も関係しておるのでございますが、直ちにそういう方面と連絡協議いたしまして、工事を中止するようにしたのでございます。その間に若干日時がかかったのでございます。
  113. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 そうして二十三日にはボーリング調査、これも県がなすったのですね。県教委がなすったのですね。
  114. 篠井孝夫

    ○篠井参考人 はい、そのとおりでございます。
  115. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 そうしてこれは工事をしても差しつかえないところと判断したのですか、そのときの判断は。
  116. 篠井孝夫

    ○篠井参考人 いえ、先ほど申しましたように、五月二十一日の日には、文部省から連絡があってからは、工事を取りやめるようにわれわれのほうはその施工関係者にお願いしておるのですから、工事はやめるようにという気持ちでございます。
  117. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 それじゃあなたのほうが工事施工者のほうに、知事部局のほうですか、やめるようにとお願いしたのは二十一日なんですか。二十日にやって、また二十一日にやったのですか。さっき二十日一日やめたとおっしゃいましたね。
  118. 篠井孝夫

    ○篠井参考人 はい、二十日は、日曜日でございましたので、それは社会教育課のほうから一日だけ休憩するようにお願いしておったのです。工事全部の中止ということにつきましては、いま申しましたようにわれわれのほうからその施工関係者にお願いしたのでございます。その話を始めたのが五月二十一日でございます。
  119. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 わかりました。その間は工事は進んでいるのですね。
  120. 篠井孝夫

    ○篠井参考人 はい。
  121. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 そうして二十四日に今度は発掘の届けを、いわゆる文化財保護法に基づく一月前に出すものを文部省にお出しになった、こういうことですね。
  122. 篠井孝夫

    ○篠井参考人 はい。そうです。
  123. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 これに対して文化庁はどういうふうに処置をとられましたか。
  124. 安達健二

    ○安達説明員 先ほど申し上げましたように、二十日の日に、発掘の研究調査の補助金交付のお話がございましたところ、二十一日の日に考古学の学者の方から文化庁の――当時文化財保護委員会でございますが、文化財保護委員会の委員長に連絡がございまして、工事が行なわれているじゃないか、こういうお話がございましたので、電話でもって県のほうに、工事をやめてもらいたい、そして発掘届けをすぐ出してもらいたい、こういうことを御連絡いたしたわけでございます。そして、ただいま県の教育長からお話しのように、二十四日に発掘届けがございまして、文化財保護委員会では重ねて工事の中止と必要な調査をされたい、こういう旨をお願いいたしました。
  125. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 そうすると、文化庁が工事は中止されたいということを言った一番最初の日はいつになりますか。
  126. 安達健二

    ○安達説明員 二十一日でございます。
  127. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 二十一日ですね。ところが、工事が中止になったのは二十五日の五時ですね。五時半と書いてあります。これまたどうしてこういうズレが出たのです。
  128. 篠井孝夫

    ○篠井参考人 前申しましたように、こちらの立場といたしまして、知事部局といいますか建設関係者に連絡をとって、そうして末端まで行くまでにこれだけ時間がかかったのであります。
  129. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 そこが非常に問題なんです。連絡に行くのにどのくらい距離があるのか、そんな二、三日かかるほど遠いはずがないので、同じ県庁の中でしょう。しかも、私いろいろ聞きますと、この間に昼夜兼行、非常に工事が進捗したそうじゃありませんか。ほとんど昼夜を分かたずあの大きなパイルを打ち込んだ。その事実を認めますか。
  130. 篠井孝夫

    ○篠井参考人 これは、そのときになって故意に工事が進んだ、そうは思ってないので、それはずっといままでやってきたぺースで進んだと思っております。
  131. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 いままでも昼夜兼行でやっていたわけですか。証人を出せというなら出しますよ。私はあなたをここで責めているのじゃないのです。こういう仕組みに、いま文化財保護と地方の行政とがかみ合ってきているということをみんなで認識しなければいけないから私はこれを申し上げているので、いまあなたを責め立てているような形になっていますけれども、決して私はあなた個人をどうこう言っているのじゃないのです。おそらく知事部局が、教育委員会から、文部省からも連絡があったから工事をやめてくれと言っても、あるいはそういっても一月前に届け出しなければならないのですから、そんなことはかまうことない、強引にやってしまえという逆に拍車がかかって、私もこの間見ましたけれども、むざんに打ち込んでおりますよ。あんなたくさんのものを一挙に打ち込んでしまう。そうして既成事実をつくれば、どうせもうこわれちゃったのだからということで認められるだろう、こういうような考えがどうも見え透いているような気がしてしかたがないのです。これは教育長さんにこれを問いましても、さようでございますとはお答えができないでしょうから質問の形を省きますけれども、もう発足からこういう形になっておるのです。  そこで、文化庁のほうから再度工事を中止するように言われて、ようやく二十五日にこれをやめておる。このいきさつについて、小さいことのようですけれども、これはぜひ重要視しなければいけない。文化財保護委員会が文化庁になった。この文化庁自身も、こういうやり方についてはひとつきびしい態度でこれを監督してもらう、保護してもらわなければ、今後これはたいへんなことになると思うのです。こういうことは絶対許してはいかぬと思う。次長、いかがですか。
  132. 安達健二

    ○安達説明員 先ほど県の教育長がおっしゃいましたように、今度の遺跡地図に載っているものについて、届け出をすることなく工事を始められたということについてははなはだ遺憾である、今後こういうことがないように十分注意していただきたい、かように思っています。
  133. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 いまのおことばはこの前聞いたのです。私はその先を聞いている。先という意味は、注意があったら逆にああいうものをどんどん打ち込んでいる、そして既成事実をつくろうとしている、こういうやり方にあなたは憤りを覚えませんでしたかということです。
  134. 安達健二

    ○安達説明員 私は、その中止のお願いをしたあとで昼夜兼行でやられたということはちょっと聞いておりませんでした。いま伺ったようなわけでございまして、はなはだ遺憾に思っているわけであります。
  135. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 そういう一つの前奏曲の上にこの問題が始まったわけです。そこでこれから先はまた、私は純粋に文化財保護立場から今後き然としてもらいたいということを要望しまして、そういういきさつについてあえていま工事施行者の責任をここで追及しようとかなんとかいうことは一応申しませんけれども、問題は文化財の保護であります。そこに移すわけでありますが、この実際の発掘調査に当たられました杉原調査団長並びに直接発掘に当たられた和島先生においでいただいておりますから、お二人にそれぞれこれから質問していきたいと思います。  まず最初に杉原先生に、この発掘調査のごく概略の経過とその成果と申しますか、結果並びにこの遺跡の考古学上の価値、こういったものについてひとつお述べいただきたいと思います。
  136. 杉原莊介

    ○杉原参考人 いま思い出しますと、昭和二十六年から昭和三十五年にかかりまして、日本の農業がどういうように起こって、どういうように発展していったかということを調べようというので、日本の考古学者全体の会合である日本考古学協会の中に特別委員会をつくりまして、私が委員長になりまして、北九州から瀬戸内一帯の調査をしたことがあるのであります。おかげさまで、現在までわからなかった農業起源の問題として、北九州の板付でわれわれが考える限りにおいて最古の弥生時代の遺跡を発見いたしました。北九州に起源を発する弥生時代の文化、すなわち日本最古の米作の農耕文化でありますが、これは間もなく畿内地方に農耕技術が伝播していったわけであります。したがいまして、われわれは理論的に、瀬戸内を通ったこの文化はその両岸に最古の遺跡を残しているだろうということを考えついたわけであります。その結果、われわれは広島県では中山貝塚という遺跡を発見いたしまして、これを調査いたしました。古くは兵庫県には吉田遺跡というのがございました。当然その間の岡山地方にもそれに類する遺跡があるだろうというので、大ぜいの学者がかなり苦心してさがしたのでありますが、そのときに小さい遺跡で高尾遺跡という遺跡を発見いたしました。しかしながら、これは一坪程度の小さい貝塚でありましたので、調査と同時に壊滅してしまったわけでございます。北九州に最古の遺跡が分布し、広島県それから兵庫県の間にそういう最古の遺跡――われわれは弥生時代の前期の前半といっておりますが――があるので、当然岡山付近にもそういう遺跡が今後発見されるであろうと考えていたわけであります。  ところが、あの岡山市のいずみ町の総合グラウンドの工事が始まりましたおりに、あそこに大きい池が現在できておりますが、あの池の工事をしたときに、われわれが嘱望しておりました土器及びその他の遺物が見つかったのであります。われわれの仲間では、あの津島遺跡に弥生時代の前期の前半、北九州から畿内地方へ農耕技術が伝播する過程を示す重要な遺跡があるということは、われわれ専門家は存じていたのであります。ところが、これも不運にもその池の造成のために緊急調査をやっただけで、もう現在は地下に埋もっております。結局、われわれは遺跡があるということを知りながら、まだ現実には重要な遺跡をキャッチしていないわけであります。  ところが、今度偶然と申しますか、武道館の工事が始まりましたときに出てきた遺物がちょうどそれに該当するので、われわれが当然岡山地方にもあるだろうと思っておりました、あの地方では最も古い弥生時代の遺跡が出てきたのであります。  私は岡山県あるいは文化庁推薦でこのたび調査団の団長を委嘱されまして、八月の十六日から九月の二十三日まで調査をいたしました。その結果は、あの場所は単純な一時期の遺跡ではなくて、かなりいろいろの時期の者が住んだということがわかったのであります。とりわけ私が重要視いたしますのは、遺跡の中に小さい谷がございまして、その谷のおもに北方の部分でございますが、その両わきにいま申し上げました弥生式土器、あの地方では最古の土器が見つかりまして、われわれが待望しておりました遺跡があの地点にあるということがわかったわけであります。これは日本の農耕文化の起源を調べる点に関しまして、北九州から畿内へ入ったであろうその伝播の経路を知る上において非常に重要な遺跡であろうと思います。また、その弥生時代の前期、中期、後期を通しまして、あそこに弥生時代の人々が住んだことは明瞭でございますが、さらにそういうような各時期を通じて人の住んだという点においてその重要さをプラスするものだろうと私は考えております。
  137. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 ありがとうございました。われわれしろうとにもわかるように、たいへん的確に考古学上の本遺跡の重要性を御指摘いただきまして感銘をいたしました。  和島先生、直接お掘りになったお立場から、あるいは登呂をお掘りになった御経験もおありですから、それとの関連で何か御意見がありましたらちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  138. 和島誠一

    ○和島参考人 ただいま杉原教授が申されたとおりでございますが、一口に申しますと、遺跡はそれぞれみんな人間が顔つきが違うように個性がございまして、津島遺跡を登呂遺跡と比較いたしますと、登呂遺跡は国の特別史跡になっておりますが、そのゆえんは、あそこでは弥生式の後期の集落と、それからその生産の場である水田がまとまって調査もでき、保存できる。そういう遺跡は日本でただ一つしかいままでございませんでした。その点で特別史跡に指定されているのだと理解しておりますが、津島遺跡は、ただいま杉原教授の言われましたように、同じ弥生時代でも前期前半つまり一番古い段階のものでございます。登呂遺跡は、あれは弥生式の後期の初頭でございまして、いまから千七、八百年前と考えられますが、津島遺跡は杉原先生のいままでの説によりますと二千二、三百年前というふうに推定されておりますし、それがまた学会の定説になっております。そういう点に一つ津島遺跡の性格がございますが、今度建ちます武道館は、この間御視察になっておわかりになったように、集落と水田との結接点がありますね、それがちょうどあの武道館のまん中を通っているという点が一つ指摘できます。  それからもう一つは、登呂遺跡は弥生式の後期の非常に単純な遺跡で、そういう点で一つ時期のありさまを追及するには適当な場所なのでございますが、津島遺跡は、ただいま杉原教授が指摘されたように、前期だけではなくて、その上に中期の時期の遺構もあり、それから後期にはそこが水田であった低湿地が埋まりまして集落ができております。そのことは県の御調査でもわかったわけでございますが、さらにわれわれが今回調査いたしました結果、その後期の集落ができるまでの過程で、新たにできた湿地が埋まった上に乾田が造成されているということが、その土壌構造の変化によって証明されたわけでございます。これは日本の農業史の上で非常に重要な事実でございまして、その後にまた大化の改新のときのあの条里制でございますが、あのときに制定されました条里制の整地面と考えられる面、その弥生時代後期のもう一つ上の土壌構造が大化の改新の水田面に当たるのではないかという問題点も出てまいりました。したがって、この津島遺跡は日本の農業史の発展過程を追及するために非常に重要な遺跡であるというふうに考えております。
  139. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 ありがとうございました。  そして二十三日に調査が終わりまして、これはそのあとどういう手続になるのか。調査団長とされましては、調査団長の立場と、先生はさらに緊急指定の調査委員会というのですか、そのお立場から、どういう経過をいままでたどられ今後たどられるのかということをちょっとお知らせ願いたいのです。
  140. 杉原莊介

    ○杉原参考人 今度の調査団は、私自身は岡山県の教育委員会からの委嘱でできたものだと思っておりますが、この調査団を結成するまでに、篠井教育長を交えまして、まず根本の対策を考えなくちゃならないものですから、県の方々と学者の者で共同で調査委員会というのをつくりまして、その調査委員会が調査団長及び調査員を委嘱するということで、その調査委員会が調査団の母体になっております。  先ほど申し上げましたように、実際の調査は八月の十六日から始まりまして九月の二十三日に終わったのでありますが、その最後の一週間で学者が集まりましてレポートをつくりまして、そして最後の二十三日にそのレポートを仕上げまして、検討して調査団としての正式なレポートにいたしました。そのレポートを調査委員会に提出したわけでございます。調査委員会の委員長は八幡一郎上智大学教授でありますが、おそらくは上智大学の八幡一郎教授から事務局のほうへ渡されまして、事務局のほうから文化庁のほうに伝達されることと思います。この資料について、文化庁としては──われわれもその一員でございますが、重要遺跡緊急指定調査研究委員会というものに上程されることになったわけでございます。  私の足りないところは、また文化庁の事務局のほうから……。
  141. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 現在のところ、この調査団の報告書がまとまって、それが調査委員会に提出されて、そして八幡委員長がさらにこれを文化庁のほうに答申をされる、それを文化庁のほうが最終的に判断をされる、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  142. 杉原莊介

    ○杉原参考人 けっこうでございます。
  143. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 それでは次長にお伺いいたしますが、その進行はどの辺まできており、今後どういうふうな御方針であるかお尋ねいたします。
  144. 安達健二

    ○安達説明員 その前にちょっといまの重要遺跡緊急指定調査研究委員会と今度の調査団との関係をもう少しふえんさせていただきたいと思います。と申しますのは、今度の杉原先生を団長とする調査団は、調査自体は県の教育委員会の仕事としてやられたわけでございます。それに対して、三百万円要しまして、その半額を国が補助する、こういう形でございます。したがいまして、事実上はいま杉原先生のおっしゃいましたようなことでございますが、形式的にはあくまでも県の調査であり、それに対して文化庁から補助金を出しておる調査である、こういうことでございます。  そしてその前に、調査をすることにつきまして、文化庁から七月の十三日に県に対しましてその調査についての指示をいたしておるわけでございます。その際は、遺跡全般の状況を知るために、さらにたとえばいまの武道館の設置予定の個所と同じ遺構群の存在が推定される工事予定地外をも含めた地域について発掘調査を実施していただきたい、こういう注文を出したわけでございます。そういうことで八月十六日から九月二十三日まで調査が行なわれたわけでございます。この調査の内容につきましては、調査団としてのものは県の教育委員会のほうから文化庁のほうへくる、こういうことでございます。これは形式的なルートの問題でございます。  そこで重要遺跡緊急指定調査研究委員会というものの性格でございますが、これは現在の制度上からいたしますと、現在文化財保護審議会がございまして、その下部機関としての専門調査会というのがございますが、その中の史跡部会――史跡に関する事項を審議するところの史跡部会、専門調査会があるわけでございますが、部会として史跡部会というのがございまして、さらに史跡部会の一つの特別委員会というようなことで、いま問題になっております重要遺跡緊急指定調査研究委員会というものが設けられておるわけでございます。  この委員会の任務は、史跡の指定の候補物件について第一次の総洗いをするというような任務でございます。現在全国に十四万個所といわれるような遺跡がいろいろございますが、そのうちで県のほうから、これは考えるに値するというようなものが全国から約六千件集まっておるわけであります。それをこの指定の候補にすべきかどうかというようなことをずっと続けてやっておられまして、現在十八県分が終わったわけでございます。現在は奈良県のものについて御審議中でございます。ただ、岡山県はまだ審議されていないという状況にあるということが一つございます。  そこで、そういうような機能を果たしておられますけれども、いろいろな問題ができますると、専門家の方々でございまするので、便宜この委員会におはかりをして御相談をしながらいろいろな仕事をしておるというようなわけでございます。したがって、今度の調査につきましても、いろいろその委員会の方々に、委員会としてではなくして、委員会の先生方に御相談をしながら進めていったというのが実態であり、同時に、法律上といいますか制度上の問題でございます。そこで、この委員会でいわゆる本来の任務であるところの候補指定物件を選ぶということでなしに、まあそういうようなことをやっていただいておるので、この調査の様子等についてお聞きしていただきたいということで、杉原先生が委員であると同時に調査団長であられるわけでございますので、その委員会を二十七日に開いて、いろいろお話があったわけでございます。そこでは、調査会としてはこの津島遺跡が相当に重要な遺跡であるということについては、おおむね異論がございませんでした。つまり、ここは決定するところではございませんから、相当に重要な遺跡であることには異論がないという御結論といいますか、審議状況ということでございます。方向だけでございますから。そういうことで、この調査会は、ここで措置をきめるわけではございません。そういうような遺跡の意味というようなものを見当をつけていただくということ、その過程において、ただいま杉原先生がおっしゃったように弥生時代前期の遺跡として相当に重要なものであるというようなことについておおむね異論はなかった、こういうことをお話しいただいたわけでございます。  そこで今度文化庁といたしましてこの問題をどう考えるかにつきましては、御案内のとおり文化庁には従来の文化財保護委員会のなりかわりといいますか、新しくそういう形でありますところの文化財保護審議会というところにおはかりをして、この問題の処置についてはひとつ慎重に検討したい。それでまあ研究委員会におきましては、措置については文化庁の判断にまつべきである、こういうような意味のお話があったわけでございます。したがって、現在はその県から出されております報告書、それから重要遺跡調査研究委員会でのお話の様子等、その他いろんな事柄を十分に検討いたしまして、文化財保護審議会にはかって、その上で慎重な結論を出したいというようなことでありまして、先ほどもちょっと申し上げましたように、調査といたしましてはこの工事予定地域外も含む調査ということでお願いしておることとも関連いたしまして、なお慎重に検討いたしたい、かように考えておるものでございます。
  145. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 だいぶ詳細にお答えいただいて、いろいろ得るところがありました。そこで、いま次長からお話のあった予定地以外の調査の依頼も、これは県にしてあるわけですね。その点はどうなっておりますか。
  146. 篠井孝夫

    ○篠井参考人 それにつきまして団長からの依頼もございましたので、県といたしましては西北部を上土を排土して準備いたしておったのでございます。したがって、その西北部には東西にわたりまして長いトレンチを掘られたのです。それからあとの処置につきましては、-かえって団長のほうからお答えいただくのがいいかと思います。
  147. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 ちょっと私しろうとなものですから理解が悪いのかもしれませんが、そうすると、この間の調査で、この予定地以外も調べてほしいというところはもう調べたことになっておるわけでございますか。
  148. 安達健二

    ○安達説明員 予定地外のところも若干ございますけれども、私どもが期待していたほどは予定地外は行なわれていないというふうに私どもは感じております。なお一そうこれは審議会等にはからないとわかりませんけれども、私どものちょっと感じではそういうことでございます。
  149. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 そうしますと、大体基礎資料としての調査団によるかなり詳細な報告書ができました。それから研究委員会にもお話を出して、その大方の相当重要であるという結論――ということばは適当でないかもしれませんが、御意向というところなんでしょうか、そういうものは一応まとまっている。これらを基礎としてというか資料として正式に文化財保護審議会の議にかけて、一つ審議会としての態度決定を待って、その答申と申しますか諮問に答えた形をさらに文化庁が判断をして、指定をするかしないか、そういうことをきめる、こういう道筋になりますか。
  150. 安達健二

    ○安達説明員 文化財保護審議会に対しまして、正式ないわゆる諮問的な事項ではございませんけれども、事実上はもちろんおはかりをいたしまして、十分御意向を聞き、その上でいまおっしゃいましたように慎重な最終的な判断をすべきものだ、こういうように考えております。
  151. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 大体現在までのところの進行がわかりましたから一応これ以上質問は控えたいと思うのですけれども、なおこの点で二つ気にかかることがあります。  一つは、冒頭の出だしが、先ほどお話、私いろいろ申し上げましたように、善意に解釈すれば武道館建設の知事の熱意がほとばしったせいですか、非常に強引に何でも建てようというような意向がどうも濃い。そのままこういうことで一応いま工事は中止になっておる。そして調査は、日本における権威ある学者の皆さんによって一応第一次の調査というのでしょうか終わった。非常に重要だという点については、いま両先生から伺いますとこれは明らかであります。そこでこれが保存をされるのかあるいは破壊をされてしまうのか、この辺は非常に重大な関心を寄せるわけでありますが、この間、知事の方針のためだと思いますけれども、あらゆる工作――ということばは適当でないかどうか知りませんが、まあ調査したらばあとはひとつ建てさせてくれというような動きが相当顕著に出ているやに私は仄聞をするのであります。そういうような力で純粋な文化財保護の問題がもし左右されるような悪例を残せば、これはきわめて重大なことになると私は思う。こういう点について、県としては、たとえばこの審議委員になっている方々の個々に運動をするとかあるいは文化庁の各部門に働きをかけるとか、そういうようなことを相当なさっているというふうなことを聞いているのですが、そんなことありませんか。
  152. 篠井孝夫

    ○篠井参考人 そういうように運動というようなことはしておりません。ただ、いままでいろいろお世話になっておりますから、あいさつはしております。
  153. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 あいさつはしておる、こういうことであります。文化庁はそういう点はどう判断されておりますか。
  154. 安達健二

    ○安達説明員 文化庁といたしましては、その遺跡の意義、それからその他の声との調整につきましては厳正に中正に適正な判断をいたすべきものだと考えております。
  155. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 いまのおことばを信頼して、ぜひそうしていただきたいと思うわけでありますが、なお私、文化庁発足にあたって、こういう問題が当面したときにおそらく起こるであろうと思う疑問は、つまりこういう史跡あるいは遺跡の学問的価値を判断することのできるのはやっぱり最終的にはその専門の学者の方々ではないかと思うのです。それの位置づけと行政ベースにおける判断は、今度文化庁の発足によって、あくまでこれは文化庁がそういう場合に最後の権限を握る、こういうことになりますね。それは、文化財保護委員会のときにはともかく文化財保護委員会が最終責任を負っておった。そうすると、学者の判断よりも常に文化庁事務当局の判断のほうが最終決定には力があり、優先するというようなことになってしまうのではないか。そういうおそれは運用上ないようにするということであるのか。これは非常に根本的な問題になってくると思うのですね、こういう問題にぶつかってきますと。行政ベースの都合、知事の立場もあろうから、一応調査して資料ができたから、こわしてもしかたがないというようなまあまあ主義といいますか、そんなことで文化財の価値が上に上がったり下に下がったりするようなことになってはたいへんなことになる、こういうことを私は非常に心配するのですけれども、この点はどうお考えですか。きょうは文化庁長官がおいでにならないのはたいへん残念ですが、ひとつ次長お願いします。
  156. 安達健二

    ○安達説明員 文化財保護行政につきましては、御案内のとおり従来の文化財保護委員会と同じ五人委員文化財保護審議会というものがございまして、その下に文化財保護の専門調査会があるわけでございます。それで文化財保護行政の問題については、この文化財保護審議会におはかりいたしまして、その尊重した線において処理をするというのが基本的な態度でございます。また、文化財保護審議会の中には考古学の学者もいらっしゃいますし、さらにその下の専門調査会にはまた専門の先生方がいらっしゃるわけでございまして、文化財保護行政というものはそういう専門的な面を十二分に尊重しなければならない。また、他面において文化財保護行政というものが学問だけの問題ではない、そういう要素も含んでおるわけでございまして、そういうことも含めて文化財保護審議会等でも御検討になるでございましょうし、また文化庁においてもそういうことをも勘案して専門的、国家的な立場において公正厳正な判断をすべきものである、かように考えておるところでございます。
  157. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 もうこれで質問は終わりたいと思いますけれども、ただ最後までくどいようですが、私がきょう質問するということになりましたら、新聞記者の方がだいぶ見えまして、いろいろおっしゃっているのですが、その中に先ほどの調査研究委員会のお話し合いの際に、相当重要な遺跡であるということが一致した結論になったというお話がありましたが、これらをめぐりまして、この相当に重要なという表現が非常にいろいろに解釈される。そしてこの表現になるにはいろいろそこに政治的配慮が働いたのではないか、そういう疑問を新聞記者の方が持たれておりまして、そういう点は追及されますかということを私が聞かれたくらいであります。これは非常に重要な遺跡だという御意見が、いつか相当に重要なというふうに表現が変わったのではないかというような意味ではないかと私は推測をするのです。そしてそういうことから、行政ベース文化財保護の純粋な立場との衝突と申しますか、そういうものがそういう形になってあらわれてくるというようなことがありはしないか。これは私自身も率直に心配するところであります。その辺について、もし私の申し上げたようなことが杞憂であれば幸いであります。杉原先生からなりあるいは次長さんからなり、もし何かそういう点でお話がいただければありがたいと思います。
  158. 安達健二

    ○安達説明員 この重要遺跡緊急指定調査研究委員会におきまして、各先生方が相当に重要な遺構であるということについておおむね異論がなかったという結論につきましては、全員の先生が御確認されたところでございまして、そのとおりで間違いございません。
  159. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 文化財保護の問題についてまだ一、二小さい問題、簡単な質問をしたいのですが、この件について関連質問が谷川委員からあるそうですからちょっとそちらのほうに譲ります。
  160. 谷川和穗

    谷川委員 きょうは参考人の皆さま方には御苦労様でございました。ちょっと関連をいたしまして二、三お伺いいたしたいと思います。  その前に、せっかくお見えになりました岡山県教育長にたいへん耳の痛いと申しますか、たいへん残念なことを申し上げて恐縮でございますが、私ども文化財保護行政に非常に関心を持つ身といたしまして、埋蔵文化財発掘届けを提出しないまま基礎工事に入られた岡山県側の、特に教育委員会の行き方に対しましてはまことに大きな不満を持っておるわけでございます。今後、特に埋蔵文化財の問題はそういう形で破壊されることが多うございまして、この方面の行政を直接担当されておりまする教育委員会におきましては、格例の関心をお持ちいただきまして、十分に心して行政をしていただきたい、こういうふうに感ずるわけでございます。  団長をおつとめになりました杉原教授に二、三点お尋ねをいたしたいのでありますが、俗に言われております津島遺跡は相当広範囲なものなのか、それともまとまって一カ所のものなのか、その辺についてごく簡単でけっこうでございますが、あと二、三点続けてお聞きしたいことがございますのでお答えいただけばよろしゅうございます。
  161. 杉原莊介

    ○杉原参考人 先ほど津島遺跡の研究史の中で述べておいたつもりでありますが、あの総合グラウンドの中央に大きい池が現在ございまして、噴水が上がっているわけでございますが、あそこで最初に土器その他の遺物が発見されたのであります。したがって、この付近にはさらに遺跡があるだろうということは推定できるわけであります。しかしながら、私の考えるところ、いままでの経験からすると、あの総合グラウンド全体が一つの遺跡ではなくて、当時の集落構成はまだ規模が小さいですから、そのような遺跡があの付近に群集しておる状態であるのだろう、こういうふうに存じます。
  162. 谷川和穗

    谷川委員 三十七年度に国庫補助金によって発掘調査が行なわれましたけれども、そのときに発見されました遺構と、今日問題になっております遺構とには何か年代的なつながりとか、あるいは全然年代的なつながりがないとか、そういうようなことはいままでの調査の段階であらわれてきておりましょうか、どうですか。
  163. 杉原莊介

    ○杉原参考人 三十七年のときには私タッチしてないのでございますが、その発掘品を見せていただいて、これこそあの埴方では最古の弥生式土器その他の遺物であるということを確認して、私どもは津島遺跡に対する関心を深めたのであります。今度の武道館建設予定地から出てきたもののうちの最も古いものは全くそれと一致した、あの辺、最古の弥生式土器とそれに付随する遺物であると考えてよいと思います。
  164. 谷川和穗

    谷川委員 それでは最後に一つ、七月の十二日に文化庁からの指示というのは先ほど次長のお話もございましたが、敷地外をも含めるということであったようでございますが、今度の調査では敷地外はどの程度調査がお済みになられたか。その点最後にお聞きしたいと思います。
  165. 杉原莊介

    ○杉原参考人 敷地の予定地は、あそこは八角の武道館になるということを聞いておるのでございますけれども、直径といえば適当であるかどうかわかりませんが、約五十五メートルくらいでございます。それに対しまして、東のほうに四十メートル、それから西のほうに六十メートル、合計約百メートル近いトレンチを掘りまして、したがいまして、このトレンチは予定地内からかなり出ているわけであります。私の考えるところによりますと、工事の行なわれている直後にやりました緊急調査では、あの予定地の西北部分に遺物が固まっていたであります。したがって、その遺跡、遺物群あるいは遺跡の地域が予定地外にも広がっている可能性があるということで、私自身からの御希望がいれられたのだとすると、そのことがいれられて敷地以外の場所もなるべくできたら調査するようにということであったのではないかと思います。
  166. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 それでは、参考人の方につきましては以上で質問を打ち切ります。  なお、これに関連しまして、きょう体育局長に来ていただいているのは、武道館の付属施設なのかと思っていたら、武道館にくっつけて、全く接続して建てる体育館が県で計画され、これに対して国庫補助が出される、こういうふうに伺っておるのでありますが、その柔剣道場ですか、武道館に接続してつくられる柔剣道場は県立の建物としてそういう対象になるということでありまして、これに補助金が出されるというふうに伺いまして、最近文部省の事務当局のほうに連絡いたしましたところ、まだ決定しているわけではないというように聞いておりますけれども、おそらくその地帯もこの史跡の地帯に入るのではないかと思いますが、そういう場合に体育局としてはどういう御指導といいますか、対処をなさるつもりですか。
  167. 安嶋彌

    ○安嶋説明員 ただいまお話がございましたように、私ども岡山県の柔剣道場に対しまして三百万円の補助金を出すことを五月の二十四日に内定をいたしております。その後、先ほどお話がございました問題が出てきたわけでございますが、私どもは、県当局におかれましては、文化財の取り扱いが先決問題でございますが、これは非常に重要なものであって、ここに建築をするということが不適当であるという結論が出ましたならば、工事をやめて、内定したものを返上していただく、あるいは別の場所に土地を選んで柔剣道場をお建ていただくか、その辺の処置をきめた上で御報告を願いたいというふうに考えております。
  168. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 それでは津島遺跡問題につきましては以上で打ち切りますので、委員長、参考人の方はどうぞお引き取りを願ってけっこうでございます。
  169. 久保田藤麿

    ○久保田(藤)委員長代理 参考人各位には長時間にわたり御出席をいただきましてまことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。
  170. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 時間がだいぶたちまして、あとの質問者もおりますので、あと文化財に関連する問題を項目的に全部一ぺんに申し上げますので、それについてひとつ御答弁を的確にお願いしたいと思います。  一つは横浜市の港北区にあります宮ノ原遺跡、それからそれに関連して二カ所ほどの遺跡があるそうでありますが、それがいまたいへん、若雷神社の遺跡ですか、それから原遺跡、こういうところが非常に破壊に瀕しているということを伺っておりますが御存じですか。これについてどういうような御指導をなすっておられますか。この点が一点。  それから、これは東京の東村山市にあります正福寺というお寺に国宝の千体地蔵堂というのがございますが、これが先般、たしか朝日新聞に出たと思いますが、保護について経常的な援助がないために寺の力では限度がありまして、その国宝の建物に子供たちが落書きをしているというような事態が起こっているというので、私も直接行って見てまいりました。国宝に指定されるだけのなかなか品格のあるりっぱな建物でありますけれども、これの維持管理について、いまのような状態に放置してよろしいのかどうかということに疑問を持ったのでありますが、これについて文化庁の御見解をお願いをいたしたいと思います。  それから京都の久津川古墳群ですか、ここにも問題があるようでありますが、この点について文化庁で把握している範囲と、その処置に対する御方針等を承りたいと思います。  まだ幾つかありますけれども、とりあえずその三点になりますか、お答えをいただきたいと思います。
  171. 安達健二

    ○安達説明員 最初の宮ノ原の遺跡につきましては、これは縄文時代の遺跡である、その他もう少し広い範囲のお話がございましたが、こちらで聞いておりますのは、宮ノ原の遺跡だけでございますが、これについては県に発掘調査をするように指導をいたしております。  それから第二番目の東村山の正福寺の地蔵堂でございますが、これは昭和二十七年に国宝に指定されておる建物でございます。一般に文化財の管理につきましては、原則といたしましては所有者が管理をする、所有者が管理能力がない場合には、その地方公共団体等に管理団体を指定できる、こういう制度でございます。しかし、現在はまだこの正福寺に管理をしていただいておるわけでございます。そういう落書き等につきましては、もちろん所有者に十分注意をしていただきたいとは思うのでございますけれども、基本はやはり子供たちに対する文化財保護思想の普及といいますか、徹底ということが大事だということで、もしそれがどうしても管理できない場合には、他の地方公共団体等に管理させるとしても、まずは所有者にお願いをし、そうして子供に対する文化財保護思想を徹底していきたいということで、文化財児童愛護班をつくるなどいたしまして、この趣旨の徹底につとめておるところでございます。  最後の京都府の久津川古墳群につきましては、京都の労働者住宅生活協同組合というものができまして、ここへ労働者のための住宅を建てるということで問題が起こっておるわけでございまして、この点につきましては、われわれとしては、そこにございますところの尼塚古墳等についての保護について努力をいたしておるわけでございますが、その労働者のための住宅建設であるということで非常に強い要望等がございまして、その点についての調整は必ずしも満足すべき状態にはいっていないというのが現状でございます。
  172. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 時間がございませんので、きょうはこの程度承っておきますが、一つだけ、正福寺の問題でありますが、国宝ですから、国宝に指定されたものについては現在の制度、やり方はわかりました。そうなっているのでありますけれども、これは文化庁もできたことでありますし、せっかく文化財保護については大臣も非常に御関心をお持ちいただいておるのでありますから、さらに予算的にももっと、こういう少なくとも国宝に指定されているようなものについては、平常の管理はただ本人まかせである、あるいは地方自治体まかせではなく――もちろん正福寺へ行ってみますと、檀家の篤志家が子供の善導のために、ぶらんこ場をつくったら野球をやめるのではないかというので、そこに小さい遊戯場のようなものをつくってやったとか、いろいろ苦心はしておるようです。それから東村山市もわずかながらお金を出すとかいろいろしておるようでありますけれども、国宝に指定するような重要なものについては、国が経常的なものについて配慮するような方向をやはり考えなければいけないのじゃないか。それでこそ地方自治体もふるい立つし、その所有者もますます責任を感ずるということになろうと思いますから、この点は問題の提起として強く御要望申し上げて、私の質問を終わります。
  173. 久保田藤麿

    ○久保田(藤)委員長代理 文教行政基本施策に関し、質疑を続行いたします。小林信一君。
  174. 小林信一

    ○小林委員 大学の問題についてお伺いしたいのですが、その前に、先ほど大臣一つの決意を表明され、また委員会全体がその会議に臨む大臣に期待をしていたわけです。その会議を終えてこられて何か希望があったかどうかお伺いしたいのですが、いかがですか。
  175. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 いろいろ相談をいたしたところでありますが、まだ結論を得るまでには至っておりません。閣議決定の線をくつがえさないで何か好ましい方法があるかないかというようなことを検討いたしました次第でございます。まだこれという御報告申し上げるようなものを発見し得ないでおるというのが現段階でございます。
  176. 小林信一

    ○小林委員 先ほど同僚委員からこの問題についてはかなり心配しておる気持ちでもってお願いをしておるわけなのであります。一そうの御検討をお願いしたいと思います。  大学の問題について二、三お伺いしたいのは、きょう偶然昼めしを食いながら新聞を見ましたら、一つの新聞に三面記事にもあるいは論説の面にもまた経済欄にも、当面しておる大学問題についてかなり緊迫した問題がみんな取り上げられておるわけなんですが、そういう問題で、従来大臣は非常に慎重な態度をおとりになっておいでになりますが、この際、ここら辺で文部省は、この事態ということよりも、大学のあり方というふうなものについてもし見解があるならば、その見解を公開していただきたいし、そういうものはないが、しかしいままでのすべてを検討してこういうものをつくらなければならぬ、考えなければならぬというようなお考えがあったら、私はこの場を通して大臣に直接述べていただくことが非常に大事な時期ではないか、こう思ってこれから申し上げるのです。  まず第一番に、具体的な問題としては留年の問題がございます。これは各大学でも学生諸君に呼びかけて、もし十月の中旬を過ぎるようなことがあれば、これはもう留年はやむを得ないのだ。そうなったら非常に重大であるから、これは教授のほうも学生のほうもいま問題になっておることは一応差しおいても、この問題だけは何とかお互いに理解し合おうじゃないかということで努力しておるようであります。で、皆さんカレンダーを見なさいというような呼びかけまでして学生の考えを要求しておるのですが、しかしその中で、レポートを提出させて簡単に単位をくれるようなことをして、大学みずからの質を低下するというようなことはできませんよ、これはまあそうであってほしいと思うのです。あるいはこれは大学だけで考えていいものか、あるいは文部省の意向を聞かなければならぬかというふうな問題でも迷っております。これに加えて東大の教養学部では、七千人くらいの留年がもしあるとすれば――ありそうですが、そうしたら来年の入学試験はどうするか。東大を目ざして勉強しておる諸君というものはこの問題でも悩んでおると思うのです。学生だけでない、父兄もそうだと思うのです。こういうような動きというものがここ二、三日来急激に出ておるわけなのですが、これに対して文部省はどうお考えになっておられるか、お聞きしたいと思います。
  177. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 大学の紛争は、特に東京大学において問題が深刻であろうと思うのでありますが、なかなか目鼻がついてこない、きわめて長期的な様相を呈しております。ただいま御指摘になりましたような留年の問題でありますとか、あるいはまた来年の入学の問題でありますとか、こういう問題について私は前々から実は心配をいたしておりました。そういうことについて不幸な事態にならないように注意を喚起してまいったつもりでございますが、だんだん、新聞等にも出ておりますように、各大学におきましてもこの問題についてはきわめて深刻に考えてきておられると思います。また、学生の諸君の中にももちろんこの問題を心配しておる向きもあろうかと思います。あるいはまた来年の入学等の問題もございますし、国民の皆さん方もこの結末がどういうふうになるかということについては御心配をいただいているだろうと思うのであります。ただ、大学当局と学生との間にいろいろ話し合いをしなければならぬ問題があるということはそれといたしましても、とにかく卒業期を控えて留年する、せっかく就職が内定しておるにもかかわらず卒業ができない、こういうふうな事態になるということは何としても避けてもらいたいことなのであります。大学当局もその問題について苦労をいたしておると思いますが、学生の諸君も、ただ授業放棄授業放棄ということでなくて、やはりそういう問題はみずからの問題として問題の解決のために積極的な態度がほしいと思うのであります。これ以上進んでまいりますと、従来心配しておりましたものがだんだん現実的な問題となって出てくるおそれもあろうかと思います。願わくは、やはり大学当局の努力、学生諸君の良識によって多量の留年を出すことのないように行動してもらいたいものと、さように考えております。どうしても大量留年するということになりますと、たとえば東大の教養学部のようなことになりますと、一体来年の新規募集をどうするかというふうなことも心配しなければならぬことにもなってまいります。さなきだに学生数が多過ぎるというふうなことが問題となっておるときでありますだけに一そうその心配が多いわけでございますので、私は、ともかくまだこれからでも何とか学生と大学側とが折り合いをつけて、そういう異常な留年問題を引き起こすとか、あるいは来年の募集について何か考えなければならぬとかいうふうな問題にならぬように極力努力してもらいたいというつもりで現在おるわけでございます。そういう点についてもっと、卒業の希望を持ち、卒業したいということを考えておる諸君なんかも、やはり自分のことなんですから、試験その他の問題についても、大学とともに事態を解決する、授業放棄等の問題についても、大学とともに問題を解決するというような心持ちでもってやっていただきませんと、どうにも始末がつかないということになってくるわけであります。私どもが命令してどうするというわけの問題でもありませんし、命令したところでやらなければそれまでということになる。そのような問題でありますだけに、私はひたすら大学当局の学生諸君に対する働きかけもしっかりやってもらいたいと思いますし、学生それ自身の問題として問題解決のために善処してもらいたいということにいまのところは尽きるわけであります。これ以上いってどうにもならぬということになれば、これはその時点においてまた考えなければならぬということになってまいりますが、願わくは、そういうことにならないようにという努力を――もはや時間的余裕もそうたくさんあるとは思いません。それだけに努力してほしいものだということを繰り返して申しておるようなわけであります。
  178. 小林信一

    ○小林委員 それに加えて御意見を承りたいのですが、経済団体ですね、主として経団連が中心となりまして、この問題について、採用が内定しておる学生をどうするかということがだいぶ問題になっておるようです。もし留年となれば、これは取り消す。ところが学生のほうでは、これは一つの自分たちには権利が与えられておるので、採用しないということは約束違反じゃないかということで、裁判にもするというようなことが行なわれているのですが、これは、就職したいならやはりストライキをやめて、そしてこれからでもおそくはないから勉強したらどうか、こう言えばそれまでなんです。  それから、大臣先ほどお話の中にも、自分のことだ、こう言われますが、やはり学生の心境というようなものは、自分のこともさることながら、自分たちが思い立った大学をよくしようという、そういうものとの比重というものは、おとなが判断してわからぬものがあるわけなんです。こういう点から考えて、私は非常にいま重大な時期だと思うのです。したがって、これを教授の人たちもまた学生の人たちも、この問題から何かここに一つの休戦状態、冷却期間というものを考えて、双方が苦労しておるような姿を実は私は見ておるわけなんです。だから諸所に解決をするような方向が二、三出てきたことは最近の特徴だと思うのですよ。ところが、いま大臣は、非常に親切な気持ちでもって事態というものをお考えになっておいでになるのですが、私は、先般の総理の発言というものは、そういう事態を考えておらない発言だと考えて非常に遺憾に思っておるわけなんです。したがって、総理大臣にお聞きしたいのですが、総理大臣お話をし合い、また閣僚懇談会も持って、そして総理の発言というものを中心にして、これからの大学等をどうしようかということでお話をされた文部大臣から、私は、総理大臣が一体何を考えておるのか、これをきょうはまずお聞きしたいのです。  その問題点は、私が申し上げるまでもなく、こういう警官がなくなられたり、あるいは報道関係の人たちがなぐられたりするような問題、こういうことは私は決して許さるべきものではない、取り締まるということは当然だと思うのです。だからといって、声を大きくして、これが学生に対するところの政府の対策であるというような印象を与えることは、これは総理大臣として非常に軽率な言動だと思うのですよ。もっと大学のあらゆる問題について、深い研究の中でこの問題を取り上げるならとにかく、治安対策というものですりかえていこうということでは、私は、学生というものはせっかくそういう気持ちになっておってもかえって反対の態度をとるのじゃないか。これから私のあとで唐橋さんが日大問題を取り上げて御質問を申し上げる予定でございますので、私はそれには触れませんが、日大が一応何とか妥結の道が開かれそうになったけれども、またきょうの新聞を見ますと、きのうの段階で非常な混乱を起こしておる。私はここら辺に総理大臣の軽率な言動というものがあり、これに呼応して政府要人というようなものがもう問答無用だ、戦うのみだ、こういうことばを発して、これでは私は簡単に問題をおさめる方向には行けないと思うのですが、大臣、その点の総理大臣なり、あるいは閣僚なりの御意向というものを、この際正しいものをお示し願いたいと思うのです。
  179. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私の理解いたしておるところでは、総理大臣のお気持ちは、要するにいかなる場合においてもやはり秩序を守っていく、法律を守っていく、こういうことはわれわれの社会において欠くべからざる要素である、その点は一般社会もそうでありますけれども、大学内においても同様である。したがって、学生がどのような動きをするにいたしましても、この秩序というものを大切にしてほしいというのが総理大臣の心境であろう、私はそういうふうに理解をいたしておるわけでございますが、直ちにいま何とかするとかかんとかするとかいうふうなことではなくて、最近の事態を考えて、そういう点において非常に心配をしておるというところと私は思うのでありまして、その点は各閣僚ともに異存のないところであります。大学で学校当局と学生とがどのような話し合いをするにいたしましても、やはり一つの秩序のもとに話し合いが行なわれるということが、だれが考えても望ましい姿で、そういうふうなことが近ごろの状態から見まして非常に心配である。また、こういうふうなことがだんだんとほかにも波及してくる、こういうことになりますと、これはやはり非常に心配しなければならぬ事態でありますだけに、その意味において総理大臣はものを言われた、こういうふうに理解をいたしておるわけでございます。さように御了承願いたいと思います。
  180. 小林信一

    ○小林委員 大臣は、総理大臣の言動に対して間違っておりましたというようなことは言えないと思うのですが、あの中で、大衆団交はけしからぬ、こういう慣例をつくってはいけないということがあるのですが、これは文部大臣もそういうようなことは好ましくない、こういうふうに言われております。私たちも、そういう形でなく、もっと代表と代表が会うというような形がほしいと思うのですが、しかし時には、日大のような特殊な事情の中ではああすることによって何か問題を解決するという方向がつくられたのではないか。それを総理大臣のああいうことばと、それから文部大臣がやはりこれを否定するような問題の中からぶちこわしていく、やはり各学校とも特殊な事情があると思うのです。日大問題についてはどの新聞もすぐこれを取り上げて、政府の態度、特に総理大臣の態度というふうなものを非難をして、一体日大の事情というのはどうだ、各大学にそういう特殊な問題があるのに何もかも一つにして考えるのは、それこそいまの大学問題を解決する道じゃないのじゃないか、こういう意見がすぐ出された。そういう点から見ましても、総理大臣の言動、とにかくそのことばから端を発して自民党の中に、大ものが、問答無用だ、戦うのみだというような、若い学生にかえって挑戦をするような態度が出たということは、やはり大臣がいかようにこれを弁解しましょうとも、私は総理大臣文教行政に対する無関心とか、あるいはきょうの大学問題に対するところの軽率な判断から出たものだといわなければならないと思います。  そこで、きょうは非常に時間がありませんので、こうした事態の中で、当初申しましたように、もう新聞あるいは世論、そういうものはかなり深く突っ込んで大学の問題というのは検討をし、そして何かその中から煮え詰まったものが、結論が出てきておるような様相まで出ておると思うのです。しかし文部省が、文教行政が依然として静観をするというふうな態度でいいかどうか、これを私はお聞きしたいのです。
  181. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 現在の大学の問題というものに対して、私は、これに対処する態度といいますか、あるいは方策と申しますか、そういう点についてはいろいろあろうかと思うのでありますが、その前に、総理のことを重ねてのお話でございますけれども、大学と学生の諸君とが会っていろいろお話し合いをするということをだれも否定する者はない。むしろ必要に応じてそういう機会を設けられることも適当な場合もありましょう。また、日大を指摘してのお話でございましたが、各大学はそれぞれ特殊の事情を持っておる。したがって、それぞれの大学に対して何もかも一律一体にものごとを考える、対処の方策を考えるということも必ずしも適当じゃないことは申すまでもないことであります。ただ、この間ちょうど日大のいわゆる大衆団交と称するもの、当初大学当局は大衆団交という――これはことばの問題かもしれませんけれども、そういうつもりでもなかったようでありますが、結局いわゆる大衆団交というものが行なわれた。その大衆団交なるものの姿というものを見たときに、これが一体学生と大学側との間の話し合いというものの姿であるかということについて、私はみんなこれは疑問を持ったと思うのです。直接その場におったわけじゃございませんけれども、あの状態というものは何と申しましても少数の大学側の人たちに対して非常に多くの学生がこれを取り巻いておる。そうしてその間にまたいわゆる空気もだんだん激しくなってくるということもございましたろう。しかし、いずれにせよあれでは話し合いでも何でもない。いわば集団の非常に大きな力によって一方的に主張を押しつけていく、こういうことじゃないか。そういうふうな雰囲気のもとにものごとをやるということは適当でない。これはおそらくどなたもこのようにお考えになるのじゃなかろうかと思っております。幾ら大ぜいの学生でありましても、大学の当事者といろいろ問題点について話し合いをする、希望を述べる、意見を述べる、それはけっこうでありますけれども、しかし一方的に学生側の主張を聞かなければ、何でもかんでも無理無理にやってしまうというやり方は、私は是認できないと思う。そういうことはやはりやらないようにしてほしいということであります。総理大臣も、あのような事態を見て特にその感を深うしたものと私は思うのであります。  それからもう一つ、この際何とか考え方を出したらどうかというふうなおことばでございますが、それはこのいま当面する大学のいろいろな紛争の問題につきまして、これも各大学によって事情が違っていると思いますけれども、いろいろ学生と大学側との間で話し合いもし折衝もしお互いにやっておるときに、外部からああしたらどうだこうしたらどうだというようなことを言うことは、必ずしも事態の解決のために適切な態度ではないと思います。かえって問題を混乱させるというふうなことも時にはあり得ることと私は思うのであります。  それからまた文部省と大学との関係は、いまさら申し上げるまでもなく文部省が何か命令をする、それによって大学はしなければならぬ、そしてまたそれを聞かなかったらどうするとかいうふうな関係にはなっておらぬことは御承知のとおりであります。随時大学側の連絡もいただいておりますし、またわれわれも気づきがあればそのときは申しておりますけれども、せっかく大学側も努力をしておる、学生側も何とかしたいということで一生懸命になっておるといたしますならば、文部省がかれこれと当面の問題の解決策等について具体的にこうしたらああしたらというふうなことを言うことはよほど慎まなければならぬ。こういう考え方のもとに、私はあえて大学内部における努力に期待をするという態度をとり続けてきておるわけであります。大学側のほうから御連絡をいただくこともございますし、私どもの気づきの点については申し上げることもございますけれども、事あらたまった形においてかれこれするということはかえってどうか、こういうような考え方で今日まで来ておるわけであります。そういうふうな当面火がついておってお互いにやっさもっさしておるときに、ほかからかれこれ言うことはいかがかと思います。したがって、そういう問題はやはりそれぞれの大学の状況に即して何とかうまい解決方法を考えてほしいということになるわけであります。この考え方は私はいまもって別に変更する必要はないと思っております。  ただ、大学の問題を考えますときに、やはり従来の大学というものについていろいろな批判が出てきております。またどこかに欠点がなければ問題がそれほど深刻にもならぬ、こういうことも一応考えられるわけであります。したがって、いままでの大学のあり方等について検討を要するということは私も認めざるを得ない。その問題点として考えるときに、やはり学校制度全般にわたって十分掘り下げて検討するというふうな問題もあろうかと思います。しかしこの問題は、御承知のように私どもとしましては中央教育審議会へ諮問しておるというような問題でありますので、これはそう簡単に結論が出せる問題でもありませんし、場合によれば六・三・三・四という問題に触れてまで検討をしていかなければならぬというふうな大きな問題であります。そう簡単に結論が得られるものでもないし、また出してはいけない。これこそ慎重にやっていかなければいかぬと思うのであります。  それはそれとしましても、現在の大学の管理運営のしかたあるいは仕組み、そういうところに欠けるところがあるかないか、こういう問題もございます。それからまた、大学の編成なり教育のしかたなり内容なりというようなことについても再検討を要するものがありはしないか、多くの人がそういうことを指摘しておられるわけであります。したがって、私どものほうとしましても、そういう面における改善という問題には決して無関心ではございません。いろいろ事務当局におきましても研究をしてもらっておるところであり、先ほど申しましたような非常に長期にわたる、しかも広範囲にわたる検討はまずそれといたしましても、とりあえず大学の管理運営その他の面において改善を要するものについて結論を得れば、これを実行するということにしなければならぬ、こんな考え方をいたしておるところであります。そういうふうな問題については目下検討中でございますが、そう簡単にあそこをこうする、ここをどうするというような具体的なことを申し上げる段階には至っておらないと申し上げざるを得ないのであります。  いずれにしましても、現在の制度、仕組みその他について改善を要する点は政府としても積極的に取り組むべきである、中央教育審議会等に対しましても、こういう問題についてはひとつ早く御検討を願って結論を出していただきたい、こういうふうな場合もあるものと私は考えておるわけでございます。  しかし、何にしましても、いまのような大学が混乱をしておる際には、こういう問題を進める上におきましても大学との話し合いも十分にできない、大学もうかつにものが言えない、こういうふうなことで問題の処理が非常にむずかしい。願わくは、とにかく一応当面大学の火の手をひとつ消してもらって、そして大学は大学として業務が正常に進められていく、その間において交渉すべきことがあれば交渉もけっこうでありましょう、談判することがあればそれもけっこうでありましょうが、大学は大学として平静な状態のもとにものごとが動いていく、こういう状態が何とか早く実現してもらいたいと思うのであります。そうしませんと、いまたとえば東京大学の問題にしましても、具体的に東京大学のどこをどうしたいとか、こうしたいとかいうふうなことが問題となった場合に、それが現在の状態を解決する足しに一体なるのかならないのか、こういうふうな問題もよほど考えてみなければならぬ点があろうかと思うので、非常にやりづらい状態のもとに置かれておるような気がいたします。  いずれにしましても、私は、一般的に申して、大学が現在のような姿において、大学当局と学生との間が毎日のように紛争を続けておるという事態を、何とかひとつ早く大学としての業務がとにかく進んでいくような状態に立ち返ってもらいたいということを、まず文部省の大学に対する希望としましては第一に言わざるを得ないのであります。そして改善をするものはもちろん積極的な心持ちをもって改善をしていく、その間に、世間でいわれる学生の意向というふうなものを大学の運営の上において反映する適当な方法があれば、もちろんこれを取り上げていくことにやぶさかではない、十分検討をして、そしてもっとよりよい学園をつくるということにいたしたい、そういうふうな心づもりでおりますが、いま私が言い得ることは、先ほど申しましたように、願わくは、いろいろな問題がある、それを解決するためには、やはり大学みずからが通常の状態に早く立ち返るということが何より必要なことじゃないか、こういうふうな考え方をしておるわけであります。それ以外の問題については、ただいまわれわれのほうでも事務当局ではいろいろ調査もさしておりますが、その調査の過程において、ここをどうする、あそこをどうするというふうなことを、一つ一つ未熟なものをそれぞれ発表するということがはたしていいのか悪いのか、こういうふうな点もありますので、これらの取り扱いにつきましては、私どもとしましても決して消極的な態度ではございませんけれども、慎重な態度をもって取り扱っていきたい、こういうふうに考えておる次第であります。
  182. 小林信一

    ○小林委員 たいへんに御丁寧な答弁をいただいたのですが、私の願うところは、確かに、前段に大臣がお答えになったいまこの混乱、紛争をどういうふうにおさめるかという問題については、いままで何回か大臣にお聞きして大臣の御意見を承った中でも、文部省がどうするとか、あるいはだれがどうするとか、警官を導入したってこれはやはり紛争がますます紛糾するだけで、決して解決はできないと思う。  そこで、大臣はよく学校当局にというお話があったのですが、それらは大体みんな論議を尽くしたのじゃないかと思うのです。だから最近のこれを問題にするいろいろな記事というものも、もっと根本の問題に触れて、一体きょうの大学のあり方がこれでいいかというところにもう問題がきておると思うのです。そういう中で、先ほど私が申しましたように、何か一つの結論が出そうになっておる。これを責任ある政府という立場で、われわれは今後の大学に対してはこういう考えを持っているのだ、これが、いまここでは大臣は言えないと言われましたが、大体その方向をお示しになった。いまの段階では、世論もさることながら、やはり責任あるところがそういう問題について何か方向を出して希望を与えるということが、私は一番大きな問題処理の道だと思うのですよ。  それで、大臣は大体お述べになっておられますが、私たちがこの世論、さらに私たちの考えというものを加えて問題をあげてみますと、やはり第一番は大学の本質あるいは理念、こういう問題が一番根本の問題だと思うのです。従来のエリートを集めて教育をした大学が御承知のように大衆大学となった。これに対してある人たちは、経済の成長が国民の財政を豊かにしたから子弟の教育が盛んとなってこうなったんだというふうな楽観論も言うておる人があります。しかし私は、敗戦の中からわれわれが立ち上がったときに、文化国家というものを目ざしていこうじゃないかということでお互いが決意をしたと思うわけです。これはあの六三制に熱意を示した、国民全体が教育に熱意を示したかつてない姿だと思うのですよ。やはりそういうものがきょうの大ぜいの人が大学に行く形をとったと思うのです。ただ、その財政を豊かにしたから大学へ来る人間がふえたんだというような考えを持っていれば、私は間違うと思うのです。自分たちの戦後の歩みの中からこういう姿が生まれたんだという考えを持てば、従来のエリート大学から大衆大学というものに変ってきたものにもつと適切な施策というものがなされたんじゃないかと思うのです。しかし、そうなってきても、依然として大学のあり方というものは変わらない。だからマスプロというような授業が行なわれたり、また学校の先生、教授というものは必ずしも優遇されておらぬ。教師という名前をつけられるよりも研究者とか学者とかいう名前をつけられるほうが将来自分の道を開くのに好都合であるというふうなことから、一体大学は研究をするところであるか、あるいは教育をするところであるかというようなことがいま大きな問題になって、こういう状態を生んではいないかと思うのですが、この私の意見についての大臣の御意見ということでお話しを願いたいと思うのです。私どもも悩んで、大学のあり方というものに一応の考えを持ちましたので、そういう点をこれからお聞きしていきたいと思うのですが、もちろん時間がございませんから、重要な問題二、三について私は御意見を承りたいと思いますので、その一つをまずお聞かせを願いたいと思うのです。
  183. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 現在の大学の実態というものは、いま御指摘になりましたように、昔のようないわば、ことばが適当かどうか知りませんけれども、エリートを養成するというような実態がなくなってきておるということは、これはもうだれしも認めざるを得ないと思うのです。大学の任務といたしましては、研究ということと教育ということと二つの大きな任務があると思うのです。従来どちらかといいますと、研究という面に力こぶが入ってきた。ところが、現在の実態から申しますと、御指摘のとおりに非常に多くの学生が国民の中のいわゆる各界各層から入ってきておる。こういうふうな実情でありますので、いま大学にとって大切なことは、やはり教育の面について考えなければならぬということであろうと私も思うのであります。そういう点が、実態が変わっておるにもかかわらず、大学のあり方というものがこの実態に即応した姿にまだなっていないというふうなところに問題の一つの要因というものがあるであろうということは当然考えられるところであります。今後大学の問題を検討し、何らかの改善を加えるということになりますれば、小林さんが言われる大衆大学というふうなことを念頭に置いて、これをどういうふうにやっていくかということは当然取り上げてしかるべき問題だと思います。
  184. 小林信一

    ○小林委員 もっと深い御意見を承って、文部省は大学の未来像はこういうふうに描いておるんだというように実は私はお聞きしよう、こう考えておったのです。  次に、大学の自治の問題でありますが、かりに、これは世論として、いままでの大学の自治というのは教授の自治じゃないか、もっと学校全体の自治という形にしなかったからこういう問題が起きて、そしてこれが紛糾しているんだ、だから学生の意見をいれた自治の体制というものをつくるべきである。これにはいろいろあります。学長の選挙まで学生の意見をいれろというのもあるし、あるいはカリキュラムですか、こういうものについても学生の意見をいれろ、いろいろあります。しかし、何らかの形で学生の意見というものをいれた大学の自治でなければならぬ。そういうことをすでに実施している学校もあるわけなんです。もちろん、それが大衆団交の中でかちとったとかなんとかいう問題であってはならぬと思うのです。やはり、これが大学の当然のあり方だという常識的なものにする努力を私は文教政策の中でしていかなければならぬと思うのですが、この点についての大臣個人のお考えでよろしゅうございますが、お聞かせ願いたいと思うのです。
  185. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 大学の自治という考え方というものは、今日も、また将来も尊重していかなければならぬ大原則であろうと私は思うのであります。その大学の自治なるものがはたして現在確保せられておるのかどうかということになりますと、非常に問題がある。極端にいえば、もはや大学の自治はないんじゃないか、こういうふうに言いたくなるような事態もあるように思うのであります。したがって、大学の自治というものを確立し、これを確保していくのには、一体いまのままでよろしいのかどうかというふうな点は、今後のやはり取り上げて研究しなければいけない大きな問題であろうと思います。それからまた、大学の自治、大学の自治と申しますけれども、一体具体的には限界があるものなのか、ないものなのか。私は、大学の自治といえども、やはりそう無制限に、何でもかんでも大学というものの中ではかって気ままなことができるんだというふうなものではないともちろん思います。ないと思いますけれども、その自治というものについてもっと掘り下げた検討もしていかなければならない、こういうふうにも考えるわけであります。また、その間において学生の処遇を一体どうするかというようなことも確かに問題点であろうと私は思います。それをどのような形において、あるいはどのような限度において、どのようなことについて学生の参加を認めるかというふうなことは、これはそう簡単に私は結論が出ないものだ。やはり学生というものと、それから大学側というものとの間には同一の水準の上においてものを考えていくというふうなことには私は無理があろうと思う。したがって、その間において学生の考えなり学生の希望なり学生の意見なりというものを、どういうふうにして大学の中においてこれを取り上げていくか、いわゆる吸い上げていくか、こういう問題として十分検討をする必要が私はあろうと思います。ただ、学生というものは何も言っちゃならぬのだ、希望しちゃならぬのだ、そんなものじゃないことは当然のことであります。現在といえどもある程度は学生の発言、学生の自主的な活動というものを大学は認めておるわけであります。いま大学の問題について学生は何ら口を出す余地はないのかといえば、そういうことでもないと思いますけれども、しかし、そういう問題について適正な処置を今後考えていかなければならないということは私もそのように考えておるわけであります。ただ、学校の教官も学生も同じ水準の上に立って、そして大学の問題を何もかも相談できめるんだというふうなことは、にわかに賛成しがたい、こういうのが私の気持ちであります。
  186. 小林信一

    ○小林委員 大臣の御意見わかるようですが、何かやはり大臣のようなお考えというものがおとなの人には私も含めてあるんじゃないかと思うのです。そこが問題のこじれるところで、確かにある程度学生の意向も聞いている、こういうふうには言っておりますが、いざ問題になって議論をし合うときに、君らとは大学の自治という立場でも次元が違うんだというようなことを言う教授もあるわけなんです。必ずしも同等であるということが、対等だということが、権利を主張する対等であるか、学校を思うという気持ちの対等であるかというふうなところに、やはりむずかしい問題があると思うのです。それにつけても、いま大学を中心として、大学の自治の問題でなおお互いの頭に残っているものは、かつて文部省が大学管理法案を出したことがある。これに対して国立大学協会が反対をした態度がある。そして今度は学生がいろいろの意見を出す場合に、いま申しましたように対等とか対等ではないとか、次元が違うんだというふうなことでしりぞけられる。そこに私は何か未来像というものを描く中で、学生というものに希望を与えるもっと力強い判断というものが、この際大臣をはじめとして文部当局に決断的なものが出てくるところに問題を解決する道があると思うのです。大臣がいつになってもむずかしい問題だ、こうだああだといろいろ疑問的なものを持ち続けておられる間は、やはり大学の当局にも割り切れぬものがあるし、そういうものの理解のないところから――実際大臣が大学当局と言われるけれども、私は、いまの大学の教授にあの学生の問題を解決する力がはたしてあるかどうか、非常に疑っているのですよ。私はそれに期待することはなかなか無理だと思う。やはりそういうような世論というものを力強く巻き起こす、そういうところに真の大学の自治というようなものが生まれてきやせんかと思うのです。これもなおもっと私とも検討いたしまして――しかも大臣も、文部省の審議会にはかるとかいろいろ方法論を言っておられますが、明快なものが早く出ることを期待をするものであります。  次に、学生の問題ですが、これはやはり相当文教行政の中で考えていかなければならぬ点がたくさんあると思うのです。これらは一々取り上げてお話し合いをしておれば時間がかかりますから私は申しません。しかし、第一番に文部省は学生運動というものは認めているのか認めないのか。私はきょうの段階では、もちろん無制限な学生運動というものは認めることはできないかもしれぬけれども、自主性のある学生運動というのは当然あることだと思うのですよ。こういうものが世間ではたしていいのか悪いのかという判断に苦しんでいるところにやはり問題が起きる原因があると思うのです。  それから二番目、授業料がますます上がる、入学金などというものを膨大に取られる。いままで学生諸君が親の苦しいことも承知しながらそういうものにがまんして応じてきたわけです。こういうところでも無制限に入学金を取って、特別な学部においては何百万取られるということが公然と行なわれている。だから正規の入学金以外の金を出さなければ入学できないというふうなものもあるのですが、これらは大学で免状をとるのだから、入ることは入りますけれども、決して自分の入る大学に信頼感を持っていないわけです。私は、こういう問題にも厳然とした文教政策の処断というものが必要だと思うのです。  それから学生の環境でありますが、下宿に困っております。見つけた下宿も三畳間ぐらい、しかも高い料金を取られる。彼らの食べているものは全く少しのあじけもない、あったかみもない食事を毎日続ける。こういう精神的な面から、彼らが正しい理性を持ち続けるような環境はつくられていないと思うのです。勢いアルバイトにうき身をやつすような状態からは何が生まれてくるか。決して精神的な成長というものでなくて、ただ物とか金とかというものに拘束されるような学生がつくられてきておる。  それから社会と学校との関係ですが、完全に遊離している状態であります。今度のいろいろな世論の中にありますところの地域社会というものが学校をくるんで、学校を中心として成長していく、そういうふうな学校を中心とした社会づくりというようなものが文教施策の中に必要ではないのか。これをもう少し発展させれば、学園都市とかあるいはこういう都会の学校を適当な地域に移すとかいうような、そういう大きな問題まで考慮をしていかなければならぬと思うのですが、こういう問題について私はもっともっとたくさん文教行政の中で考えていかなければならぬと思うのです。  今度も、きょうの新聞ですが、たまたま見ましたら、こうした事態が生まれた原因を世論調査をしてあげてみたら、第一番にあげられたものが文教行政の貧困ですよ。その次は活動家の扇動である、その次は一般学生の無関心である、こういうふうにあげてありました。教授の人たちの意見では二と三が逆になっておるということをいっておりましたが、こういうふうにあらゆる角度から学生問題、大学問題というのは検討されているわけです。  大臣が誠意を持ち、心魂を打ち込んでこの問題に取り組んでいることは私はわかるのですが、何としても大臣がもっと決断をもってこういうような批判を受ける中で立ち上がっていただかなければならぬ、こう思うわけです。いまの学生に対する思いやりというような問題について私はこう考えておるのですが、大臣もおそらくこれには異存ないと思うのですけれども、いかがですか。
  187. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 学生運動についてどう考えるかというような御質問がございましたが、学生運動を禁止できるものでもございませんし、認めるとか認めないとかいうような問題ではない。ただ願わくは、その学生運動なるものが正常な姿において行なわれるということでありまして、学生運動の名においてとんでもないことをやって世間に迷惑をかけるとか、社会に迷惑をかけるとか、あるいはまた学校の秩序を破壊するとか、こういうことになっては、私はよろしくないと思うのでありますが、あたりまえの学生運動である限りは、これを禁止するとかしないとか、そういうふうな考え方はいたしておりません。願わくは、健全な学生運動として展開してもらいたいということでございます。  それから、学生の負担の問題も仰せのとおりでありまして、確かに問題点がそこにも大きくあるだろうということは当然考えられる問題であり、皆さんとともにこの問題につきましても今日まで苦労してきたわけでございますが、学生の負担についても、その適正化、合理化をはかっていく、こういうことの方向においては、もちろんわれわれも同じように考えているわけでございます。しかしながら、こういうふうな問題について、学生諸君その他国民の皆さんにも考えていただきたいことは、一挙に問題を解決するということはなかなかむずかしいということであります。やはり政府として何かそういうふうな問題についてやるといたしますれば、結局は国力あるいは財政力、こういうふうなものと関連を持ってくることでありますから、そういう現実の中に立ってどういうふうにして問題を前向きに解決していくかということが私どもの任務であろうと思う。そういうむずかしい状態もあるということはやはりわかってもらわないと困るので、あまり性急なことを言われましても、これはなかなか解決にはならぬ、こういうふうに思いますので、解決のために今後積極的に大いに力を尽くすということは、もちろん私としましても異存のないところであります。そういうことに努力するのは当然のことでありますが、さりとて、やすやすとできる問題ではないというふうなことは、学生諸君にしましても国民の皆さんにしましてもやはり考えていただかなければならぬ問題だ、このようにも思うのであります。  それから、学生の生活環境とでも申しますか、こういうふうなものが決して現在満足すべきものであるというふうにはもちろん私も考えません。河とか学生諸君が学生生活をもっといい環境のもとに過ごすことができるようにというのがわれわれの年来の希望であり、また努力目標であったわけであります。しかし、現実はまだまだ満足し得る状態にはない。それを改善すべしという御意見に対しましては、これはもちろん私も賛成であります、こう申さざるを得ないのであります。これまた、いま申しましたように、それなら一挙に片づけられるかというと、なかなかそうもいかない。そういう点をやはり理解を持っていただきたいと思うのでございます。積極的に努力するということはもちろんいなむところではございませんけれども、また、御希望どおり直ちに解決できるかというと、なかなかそうはいかない。こういう点の理解を持ちつつ、ともどもにひとつ問題の解決をはかっていこうということが、私どもといたしましては望ましい姿だと思います。  それから、学校と社会との関係ということについてのお話もございました。やはり私としましても、ことに各大学がその地域における一つの教育、文化等の中心としての役割りというものは果たしていかなければならぬし、現在のいわゆる大学につきましてもそういう使命はあると思いますけれども、その使命が思うように発揮せられておらないというのが現状である。そういう面については、ますます積極的に地域と結びつき、また地域のお役に立つ。大学の任務の一つとして、今後そういうことに一そう働いてもらわなければならぬし、また働けるように私どもも協力していかなければならぬ。お考えにつきましては全く同感であります。
  188. 小林信一

    ○小林委員 賛成していただいてありがたいのですが、ただ一つ、すぐに完全に希望を満足させる、そういうことは一がいにできないことだから――大臣、こんなことは学生はもっとりこうなんですよ。決していまここでもって申し上げましたようなことをすぐつくって見せろなどということは学生は言っていないと思うのですよ。いかにそういう方向を目ざして努力をするかという、それが見えればあの人たちは納得しますよ。これは学生だけじゃない、国民全体にそうだと思うのですよ。問題はそこだと思うのです。  私は、大学局長をつかまえて申しわけないんですが、先ごろ私が質問をしましたね。東大でもつて卒業試験を三月受けたのは何人だと聞いた。そうしたら、私の数字が間違っておるかあなたの数字が間違っておるか知りませんが、的確なお答えがなかった。さらに九月卒業試験が臨時に行なわれる。それについて、何人受験をされますかと聞いたら、これも不明確だったんです。やはり学生の動向というふうなものを常に文部省というものがしさいに見ていく。文部省がじかに大学に働きかけることができないからといって、私は等閑視することはないと思うのです。学生の動向とか、そのよってくる原因とか結果とかというものは、やはり文部当局というものは見てなければいけないと思うのですよ。真剣に検討していかなければいけないと思うのですよ。いま社会全体が検討しているのです。だから毎日の新聞記事になってあらわれてくるのですよ。そういう中で、私は、文部省が、そんなことは簡単にできないからといって終わるのでなくて、その熱意と誠意というものを見せる、そしてそういう努力を続けていくということが立証される、そこに私は教育があると思うのですよ。  いまの大学の問題として、私は研究と教育という問題を言いましたけれども、これは決して分離されるものじゃないと思うのです。学者がほんとうに研究するというその姿の中でもって学生を十分教育していくことができると思うのです。必ずしも学生と教授、教えるという関係でもって仕事をしなくても、その人の真剣な研究、そういうものが私は学生を教育していくと思うのですよ。古いかもしらぬけれども、やはりこの原則は、私は大学の新しい方向にも決してなくならないと思うのです。大臣は、学生を教育する、そのために大臣は、それは苦しい国家財政であるかもしらぬけれども、その中からむしり取ってきて、そうしてそれが十年かかろうが十五年かかろうが、未来像をしっかり描いて、そのために努力するという姿をお持ちになるところに、この問題の――いますぐこの問題はおさまらぬかもしれませんけれども、私はそこに大学の将来というものが出てくるんじゃないかと思うのです。どうか大臣、そういう私の言うことに何も賛成をしなくても、大臣自身がそういう点については十分お考えでございますので、私はそういう熱意を燃やすところが――いま大臣が行って、学生のあの騒動をおさめようといったって、これは無理だと思うのですよ。しかし、だからといって大臣がいままでのような、慎重にとか、いろいろできないところを、むずかしいところだけを羅列しておいでになる間は、残念ながら文教行政の貧困というものがやはり第一位になって、これが下がることはないと思うのです。  まことにかってなことを言いましたけれども、いまの留年と来年の入学、それから採用者がいま非常に困っておるというようなことから、私は、もっとその全貌というものをしっかりつかみ、深く検討してもらいたい。私は、総理大臣のあの言というものは、何といってもきわめてこの事態をしっかり掌握したことばじゃなかったと思うのです。逆に、いまそういう問題でもって一つの休戦状態ができそうになっているのに、かえってそれを破壊するような行動をした、こういう遺憾さをあらわさずにはおられないと思うのです。文部大臣と総理大臣の差があるかもしれませんが、そういう点では大臣は教育をしてやる必要があると思うのです。たいへんに失礼なことを言いましたが、この問題は終わらしていただきます。  次に、時間がまことにおそくなって申しわけないのですが、実はきのうテレビを見ておりましたら、飛騨川の問題で運輸省が一いわゆるあの飛騨川の事故の問題ですが、自動車の運行の上に過失があったというような判定をして、そして自賠法の適用をさしたい、さしたいではなくて、するというようなものが出た。そうしたらそのあとに今度は法務省から、そういうことは問題であるというのが出たのです。確かに飛騨川の問題は、いままで私どもが聞くところでは、自動車の運転には問題はなかったけれども、突如ああした災害が起きて、そのために二台の自動車が川に流されて、たくさんの人がなくなった。この人たちにせめて何とか見舞い金とか補償金とかいうものをやろうとする政府努力には私は敬意を表するのですが、しかし、自賠法の適用をさせるということがただ一つの道であるというところから、何らかの過失があったからこういう形になったのではないかというふうに、非常に御配慮を願っておられたのです。しかし、片一方法務省のほうでは、警察当局の調べた中にそういう過失がなかったというときに、過失があったのではないかというようなことから自賠法の適用はどうか、こういうふうに私は見たわけですが、この飛騨川の問題については非常に世間の人たちの関心も多い中ですから、運輸省のほうでも非常な心配をされております。私の県の山梨県の韮崎市内で修学旅行のバスが衝突をしまして、先生が二人、子供が三人、運転手が一人なくなり、そのほか多数の重軽傷者を出した問題は、その当時は非常に世間から心配をされたのですが、飛騨川の問題が出て、少し影を薄くしたような感がいたしますが、同じ人命の問題では何ら差がないわけです。  この際、私は責任は文部省にもあるのじゃないか、こう思いまして、この問題についてお聞きしたいのですが、まず警察関係のほうから事情をお知りのところを、簡単でけっこうでございますのでお述べ願いたいと思うのです。
  189. 竹岡勝美

    ○竹岡説明員 御質問ございました山梨県下韮崎バイパスの交通事故につきまして、警察側のとりました処置について申し上げたいと思います。  御承知のとおり、この事故を起こしました愛知県下の三郷運送合資会社、これの当時無免許でトラックを運転しておりました十九歳の少年につきましては、事故発生直後、所轄しております山梨県警韮崎警察署におきまして刑法の業務上過失致死罪並びに道路交通法の無免許運転の容疑で現行逮捕をいたしまして、翌日、五月十六日甲府の地方検察庁へ身柄を送致しております。これは六月二十二日に起訴されまして、現在甲府地方裁判所において審理中でございます。と同時に、この無免許運転をやりました助手と、最初に運転しておりました十九歳の運転者、この者につきましては、私のほうで調べました結果、この助手の無免許の運転は無免許運転の幇助にあたるということで、道路交通法の無免許運転の幇助罪という容疑で通常逮捕をいたしまして、五月十六日、同じく甲府地方検察庁に送致、起訴されておりまして、現在甲府地方裁判所において審理中でございます。  次に、運行管理者関係のほうでございますけれども、これはトラックのほうの一方的な過失でございますので、この三郷運送合資会社の当日のトラックの運行につきまして、直接管理する地位にありました運行管理者一名並びにその車の配車係一名、その両名につきまして道路交通法違反、すなわち過労運転を下命したという容疑のもとにこれまた地検に送っておるわけでございます。  と同時に、道路交通法では、こういう運行の用に供します業者が、直接管理します者が過労運転を下命したという容疑があります場合には、会社、法人自体もあわせて両罰規定がございますので、この三郷運送合資会社自体をも道路交通法違反といたしまして甲府の検察庁に送っております。これは現在名古屋地検に移送されまして、名古屋地検におきまして、これを起訴するかどうかということで審理中でございます。  以上、警察のとりました措置について御報告申し上げます。
  190. 小林信一

    ○小林委員 ありがとうございました。  私ども承っておるところも大体そうですが、ただ、児童生徒を乗せた山梨交通という自動車ですね、その運転のほうにも多少問題があるという、そういう見解ですか。そういう容疑があるということですか。
  191. 竹岡勝美

    ○竹岡説明員 警察のほうで調べました結果、この修学旅行の生徒を乗せました山梨交通につきましては、何の容疑も持っておりません。
  192. 小林信一

    ○小林委員 これに対する補償の問題を運輸省のほうから、どんな状況にあるかお聞かせ願いたいと思います。
  193. 渋谷正敏

    ○渋谷説明員 関係の保険会社を調査した結果に基づきまして御報告申し上げます。  被害者側から、死亡者につきましては七月八日に、負傷者につきましては八月八日に、それぞれ加害者の三郷運送の付保保険会社である安田火災海上甲府支店に対しまして、自動車損害賠償保障法による損害賠償額の支払いの請求が出されましたので、保険会社におきましては、これらの請求につきまして九月の末までに所要の調査並びに損害額の査定を済ませまして、現在これらの支払い予定額につきまして被害者側の承諾を求めている段階でございます。したがいまして、被害者側から支払い額についての承諾書等が提出され次第損害賠償額が支払われることとなりますが、実際の時期につきましては、大体十一月の上旬ごろになるのではないかと察せられます。  以上でございます。
  194. 小林信一

    ○小林委員 その請求があった請求の額と、それからこの承諾書というのはどういう性格のものであるか。実は地元の人たちもこの問題に何か不審を抱いているわけなんですが、もう少し詳細お聞かせ願いたいと思います。
  195. 池辺仁太郎

    ○池辺説明員 自賠責の死亡の場合の保険金の最高限度額は三百万でございます。傷害の場合は最高が五十万を限度といたしまして支払われることになっております。現在請求されておりますものは、本法に基づきます直接請求と申しまして、被害者が保険会社に対しまして直接請求するという方法によっております。本件の場合は、死亡の五名の方々につきましては三百万、傷害の方につきましては、それぞれの傷害の度に応じまして五十万を限度として査定が行なわれております。  次の支払い承諾書でございます。これは現在各保険会社が全部保険金を支払う直前に、その査定した金額につきましてあらかじめ各請求者に通知を出しまして、これにつきまして請求者のほうに異存がある場合にはその旨を保険会社に連絡いたしまして、さらに場合によりましては保険会社が査定を再調査するということになっております。しかし、請求者の都合で、あるいはめんどうその他で承諾書がない場合には、三週間の期限をもちまして、三週間たちましても承諾書が出ない場合は、保険会社は次に支払い通知書を出します。それによりまして請求者が保険会社に参りまして支払いを受けるわけでございますが、その際に窓口で先ほどの承諾書に印鑑を押すというふうな手続をとっておるのが現状でございます。
  196. 小林信一

    ○小林委員 ところがその当事者は、自分の一切のいわゆる補償料ですね、その請求したものが三百万でもって打ち切られてしまうのじゃないかということで、承諾書にはんこを押すことをこばんでおるわけです。いまのようなお話は実際当事者にわかっていないのです。だからきょうもその問題で私のところに連絡がありまして、はんこを押すなと言っているのだということを言いましたが、要するに最高額の三百万だから、これは異存がないわけですね。異存がないものは承諾をして承諾書を書いていいと私は思うのですが、何かそういうような心配をしておりました。ありがとうございました。  そこで文部省のほうに私は申し上げたいのですが、とにかく修学旅行は教育行政の中でやらされているわけなんですよ。しかし、最近の交通事情からすれば、こういうことは万一あるということを予想しなければならないような状態なんです。したがって、そういうことがないような厳重な計画を立て、注意していかなければならぬわけなんですが、そういうことは通達をおそらくしていると思うのですよ。しかし、こういう万一の問題が出たときに、いままで地方の教育委員会なりあるいは文部省なりがどういう措置をしてくれたか。何かこの問題について御心配願ったことがありましたら、私は聞かしていただきたいのです。何か、私が質問をするといったら、山梨県の教育委員会に文部省のほうから問い合わせがあったということは聞きました。実際、いま各学校でみんな修学旅行というのはおそらくバスをおもに利用してやっているわけなんです。そのバスの起こす事故というものはこれは想像以上ですよ。しかし、そういう場合に心配してくれる機関がないというふうなことで、いま承諾書にはんこを押すことがいいか悪いかさえも当事者がわかってない。困っている。どうですか、こういうような問題。  片一方、飛騨川については、ちょっとお伺いいたしますが、きょうの閣議でもってこの問題を何か決定するやに私は聞いておったのですが、決定されたのですか。
  197. 池辺仁太郎

    ○池辺説明員 本日の閣議で、この問題につきましていろいろお話が出たということは漏れ聞いておりますが、本日はこの問題、自賠法の適用その他につきましての決定はおそらくないものと思います。
  198. 小林信一

    ○小林委員 文部省のこういう場合のお考えをひとつ聞きたいと思うのです。
  199. 天城勲

    ○天城説明員 大和中学校の修学旅行におきます事故でありますが、事故が起きましてからのこの学校に対するあと措置の問題でありますが、これは大和村で対策本部を村長を中心にして設けてあと始末に当たっておられるし、教育委員会のほうで、事務局でいろいろ指導をされておるということを中間で教育委員会側から伺っておりまして、私たちも、いろいろこの間における補償上の問題や、とるべき手続がありまして時間が経過していることは気にはいたしておりましたけれども、特に大きな問題があるというふうに聞いておりませんでしたものですから、あらためて具体的な措置とかあるいは山梨県の教育委員会を通じて具体的に指導するとかいうことをいたしませんでした。
  200. 小林信一

    ○小林委員 飛騨川の問題は、いま運輸省のほうからお話があったように、閣議の中ででも何とか有利な方法をとってやろうという御配慮があるわけなんですが、この大和中学校の問題にもあるのですよ。というのは、三郷というぶっつけたほうの運送会社はいま非常に内容が悪いのです。最初この三郷運送からはおそらくそういう賠償金というようなものは取れぬのじゃないかというように考えておったわけで、しかし山梨交通のほうがその財産を差し押えたから何とか取る道ができるのですが、しかし、差し押えた山梨交通は自動車をやられております。だからその補償というふうなものを取ってしまえば、生徒やあるいは先生のほうに請求しても回ってくるかどうかわからぬわけなんですよ。そこできのうも私はいろいろな人たちにお願いをしてみたら、これは非合法的なものですが、山梨交通との話し合いの中でそのほうからももらえばもらえるのだというふうな話も聞いたのですが、これはその会社が了解するかしないかわからぬし、多少違法的なものであるからこれはできるかできぬかわかりませんが、とにかくいまのところ請求額は先生たちが八百万しております。これは非常に安いものだと思うのですよ。しかし、とても八百万の金は手に入らない状態、生徒のほうは四百万要求しているそうですが、これもその三百万が取れればですが、補償料としてはきわめて安い額ですが、これさえも取れるかどうかわからぬというような状態であります。ことに運転した人が無免許で運転したということで、任意保険に入っておってもそれが適用にならないということから、ますます不利な状況にあるわけなんです。こういう事情は、私が説明するのでなくて、文部当局でこういう問題をしっかり掌握されるところに、今後の修学旅行の事故というものを未然に防ぐ道があると思うのですよ。そういう問題があっても、地方の教育委員会が何かやっているのだろうというような形で置けば、そういう無責任な修学旅行が今後もあとを断たないと私は言わざるを得ないのです。  そこで、私が特に申し上げたいのは、学校安全会というものがあります。あるけれども、それは決してこういう問題に対して適用できる性質のものじゃないと私は思います。見舞い金が出ましても、今度は三百万がおりれば返すのでしょう。十万だかくれますね、すぐ。ところが、あとで返すというような形でもって、学校安全会というものはこういう問題については無意味だと思うのです。したがって、きょうのような状況の中では、学校安全会も考えなければならぬことだと思うのですが、もっと災害保険のような制度をつくって、修学旅行等で犠牲になるような不幸な人を少しでも慰められるような措置をつくる必要があるじゃないかと私は今度の問題で思ったのです。こっちの選択した自動車もりっぱだし、運転手もいい、そして道路も決して問題ないといったって、ぶつかってくる自動車があるのですから、そういう点を考えれば何か災害補償の災害保険というようなものを生徒あるいは先生を対象にしたものでつくっていかなければ、こういう不幸というものは除かれないと思うのですが、その点を一言局長と安全会のほうからお話を承って終わらしていただきます。
  201. 安嶋彌

    ○安嶋説明員 学校安全会法に基づきます給付は三種類あるわけであります。第一が医療費給付、第二が廃疾見舞い金、第三番目が死亡見舞い金でございます。今回の事件について申し上げますならば、ただいま運輸省からもお話がありましたように、自動車損害賠償保障法に基づく補償は、傷害の場合は五十万円が限度でございまして、これをこえる部分につきましては学校安全会による給付の対象とすることが可能でございます。それから自動車損害賠償保障法に基づく死亡の補償金でございますが、これはただいま運輸省から御答弁がございましたように三百万円が限度でございますが、仮定の話でございますが、もし当事者の間におきまして四百万円ということで合意がございますならば、三百万円に上積みをいたしまして安全会のほうから十万円の死亡見舞い金を出すことは可能でございます。廃疾見舞い金につきましては、これはもうちょっと状況が固定しないとおそらく判断しにくいのかと思いますが、さしあたり医療費と死亡見舞い金について申し上げますればそういうことでございます。ただ御承知のとおり学校安全会法は、第三者加害の場合は加害をいたしました第三者が賠償責任を負うということになっておりますので、安全会はただいま申し上げましたような範囲のお金を一応は支払いますけれども、これは加害者に対して求償権を持つことになります。そういうような状況になっております。  それからなお、現行の制度におきましては死亡見舞い金は十万円ということでございまして非常に少額でございますが、来年度からはこれを三倍の三十万円に引き上げたいということで、そういった引き上げを前提にいたしまして大蔵省に補助金等の予算要求を行なっております。そういう状況でございまして、現在のところ、ただいまお話がございましたような学童の災害につきまして、現在学校安全会が行なっておりまする災害補償以上の特別な制度を新たに考えるという考えはございません。
  202. 天城勲

    ○天城説明員 さっき私もちょっとことばが足りなかったですが、山梨県の問題は先ほど申し上げたようなことでございますけれども、御指摘のとおり修学旅行がもとでございますので、修学旅行そのものについてのいろいろ問題が出ております。ちょうどこの山梨県の不幸な事件の前後から都道府県の教育長会議におきましても修学旅行のあり方について検討会を持っておられましたし、私たちもその前後から、実は昨年若干の実態調査を行ないまして、以後引き続いて総合的に修学旅行の問題を検討いたしておったところでございますが、ごく最近でございますけれども、修学旅行全般につきましての考え方をまとめまして、これは実はたいへん偶然でございますけれども、十月二日付、一昨日でございますけれども、各府県にあてて新しい小中高等学校の遠足、修学旅行についての全般的な考え方、注意事項、新しい事態を織り込んだものをちょうどきめたところでございます。私たちといたしましては、事故の場合の措置は当然でございますけれども、事故そのものを起こさないように、修学旅行そのものが十分円滑に行なわれるような措置を基本的に考えなければいけない。このような前提でいままで処置をしてまいったわけでございます。
  203. 小林信一

    ○小林委員 通達は幾ら出しても、これはもちろんそれを尊重しないということはないと思うのです、やっていますよ。しかし、今度の問題あたりにも相当きびしい世論もありまして、学校側に手落ちがあったのじゃないかといいますが、もし手落ちがあるとするならば、貧困な家庭の子供を連れてより多く見させよう、勉強させようというふうなものがありますと、また無理をしなければならぬようなこともあるわけなんです。だから、もちろん通達は順守する、そういうことでいいと思うのですが、それだけで私は安心しておられる時代じゃないと思うのです。おそらく全国的にこういう問題をあげたら相当問題があると思うのです。そしてその問題が決してスムーズに解決できない。業者はいろいろな手でもってこばむわけなんですね。それではほんとうに安心して修学旅行の指導ができないというようなことで、私は教育的な配慮から心配ないような措置はつくれぬものかどうか、こういうことをお願いしておるわけです。これをすぐ御回答願うということは無理かもしれぬが、しかし、実態から見てそういう要望が強く出ておるということを申し上げて、いろいろお忙しいところを来ていただきましてありがとうございました。
  204. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員 関連して。いまの飛騨川の問題ですが、運輸省の見解、立場が正しいと私は思います。法務省で運輸省の見解、立場に反対しているような意見があるようですが、これは間違っていると思うのです。大体刑事上の責任関係における過失の範囲、それから民事上の関係のものは範囲が違うと思うのです。だからたとえ刑事上の過失責任がない場合でも、民事上における過失責任は十分ある場合があると思うのです。そういう点について閣議でも問題になったと思いますが、文部大臣、単なる刑事問題の過失に該当しないという観点から、民事上の過失責任もないというふうな結論は出し得ない、民事と刑事の場合では過失の範囲は相当違うと思いますので、そういう点をぜひお含みの上、運輸省の見解どおりずばり自賠法の適用をさせてやりたいと思います。どうぞこれをひとつ……。
  205. 久保田藤麿

    ○久保田(藤)委員長代理 唐橋東君。
  206. 唐橋東

    ○唐橋委員 非常に時間がおくれておりますので端的にお伺いいたしますので、お答えのほうも端的にお願いしたいと思います。  質問に入る前に、私は非常に不満を感じました。といいますのは、もう議論するまでもなしに、いまこれほど大学問題が盛んに大きく問題視されている中で、その最高責任立場にある文部省が、国の最高機関である国会に、一カ月かけて正式に出す資料がこのくらいだということ、どうなんですか、これは大臣。私はこの前委員会で、ほんとうに検討すべき資料、それをこそ文部省としてはつかんでおくべきではないのか、そしてそういう立場に立ってつかんだ資料、まとめた資料をひとつ国会に出していただいて、あわせて広く検討していくべきことが問題解決の第一着手である、こんなような考え方で資料提出を要求いたしました。  もちろん、私のそのときの気持ちは、いままでの中においてはもうほとんど集まっておるのだろう、したがってそれを国会に出す。単にどれだけの形式になるか、どれだけの分量になるかというくらいで、これはもうできるだろう。だから一カ月あればできるでしょう、こういう念を押して出したのですが、少なくとも文部省が国会へ出す資料がたった西洋紙四枚という、こういうことはおかしいじゃないですか。むしろ私の手元にある週刊誌のほうが詳しいですよ。この週刊誌の見出しを見てごらんなさい。これは週刊誌ですが、この記者は大学問題に対して文部省に行っていない。行けばなるほどこれだけの資料しか文部省は持たないのだから。むしろどこへ行ったかというと、見出しをごらんになればわかる。「全国に学園紛争という妖怪がハイカイしている。警察庁の調べでは、」「警察庁の調べでは、」となるのですよ。「警察庁の調べでは、紛争大学、ただいま五十一校。」なるほどこの数は問題ではありません。数はここに書いてある線で切りました。ここに私は文部省の姿勢があるのじゃないかと思いますが、記者が文部省に行けば全国の紛争大学がわかります、こういうことでなくて、警察庁に行けば紛争大学がわかる、これはおかしいじゃないですか。どうなんです、大臣。  これは繰り返すようですが、これほど重大な大学問題というときに、最高の機関である国会に一カ月かかって出す資料が西洋紙四枚、こんなことでほんとうに真剣に取り組んでいる状態なんですか。むしろ、資料の要求なんかなくとも、文部省としては常にその都度その都度中間報告という形で、ほんとうに国会あたりに報告をし、そうして各政党にもそのような報告書を出しながら、一つの政治の場でどうすればいいのだということをやっていくことこそが、文教の最高の府の責任ではないですか。警察庁に行かなければ、行ったほうが紛争大学の状態がわかる、そんな文部省でどうするのです。私はこれをいただいたときに実はがっかりした。と同時に、文部省の、大臣がいかに気をもんでいても、大学の担当のほうはどうなのです。国会というものをどう思っているのか、大学紛争をどう思っているのですか。私はこのたった二つの事例で、何かしらいまの文部省の実体というものが浮き彫りにされてくるような気がしてしかたがありませんよ。大臣、ここで大学問題を慎重にやろうと言われたって、慎重さというものはこんな簡単な資料では慎重さなんてないですよ。私の意見が間違っているのでしょうか。私は文部省のいまの姿というものが全く不満でなりません。大学にほんとうに真剣に取り組んでいるのかどうか、これをもっても、私は全く判断に苦しみました。大臣どうなんでしょう。
  207. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 文部省の提出いたしました資料について非常に御不満であられるわけでございまして、その点につきましては私ども恐縮いたしております。ただ、どのような程度のものをお出しするかというふうなことについてのお気持ちと私どもとの考えの間にあるいは相違があったのじゃなかろうかと思います。文部省としましても、できるだけの連絡はとり、また報告も受けておるわけであります。その事柄を全部書いて出すかどうかというふうなことになりますと、文部省の判断としましては、これはたしか十月一日現在ということで要約して御報告をいたしておる、こういうことでございます。時々状態も変わってきますし、いろいろ問題も起こってくるわけでございます。どの時点でどういうふうに申し上げたらよろしいか、こういうことでありますが、その結果として、唐橋さんのおしかりを受けるような書類になったかと思いますけれども、事態につきましては、文部省も十分な調査能力もございませんけれども、できるだけ大学側との連絡はとりまして、随時報告を徴することにはいたしておるわけでございますので、よろしく御了承願いたいと思います。
  208. 唐橋東

    ○唐橋委員 そしてその内容をずっと一とおり見てみますと、ほんとうに何かあらわれた現象だけ、暴力事件というものだけが非常に浮き彫りにされた中にあるということを、私は実は一つ一つ指摘もしてみたいと思ったのですが、時間がありませんから省略いたしますが、このような報告が、さっきも総理のお話が出ましたけれども、総理にもし提出されるとするならば、どうもこれは取り締まらなければいかぬというようなことはやはり出てきますよ。そういうものでないのでしょう、大学問題というのは。したがって、私の質問したいところは、第一番に、先ほど小林委員からも申されましたが、あの日本大学を中心とした大衆団交についてお伺いするのです。私も、深夜放送できのう官房長官が、日本大学のような大衆団交は認められないという趣旨の放送を偶然に聞きました。新聞記事の点については省略いたします。いわゆるさっきの質疑応答の中で大臣が言う大衆団交のようなもの、これはやはり一般的にいって許されないと思うのです。しかし、少なくとも日本大学のような大衆団交ということになるならば、あの十一時間の中で二万人の生徒が行なった、そういう時点で、そしてその前にあるいろいろな経過の中で、なるほどテレビに出るのはその一こまのいかにも混雑したようなところなんですが、少なくとも全体から見て、よくぞあの二万人が整然とする中に行なわれたということは、これは列席している人のやはり全体の感じでした。そういう中において、日本大学のようなこの一つの事例をあげていくということについては、私は非常に疑問を感じました。ですから、もう新聞を出すまでもないのでしょうが、 「日大紛争急ピッチ解決へ」と出た、そこに今度、いまのように政府の何か見解が報ぜられた。それでここで約束した三日の団交が今度パーになりました。だからこれになったでしょう。この責任は、先ほど小林委員も言いましたが、全くおそろしい結果を見ました。したがって、日本大学の場合は、いままで警察官やあるいは直接は学校に対するいろいろなものが出たけれども、政府に対する反対意見というものはデモの中でも出ていませんでした。それが、このデモで初めて政府に対する意見というものが出たということを報道しているじゃありませんか。これが解決策なんです。私はそういう前提に立ちながらひとつお伺いしたいわけなんです。  それで、そういう考え方を政府がとられているとすれば、日本大学の学報という正式な機関紙がございます。この中には、いわゆる学生側でいう考え方でなしに、これは正式に大学で出しているのにこの経過がずっと書かれているのですよ。そうしてあるいは大学が全学集会ということで招集をされた、そういう形に出発は見ていられたのですか、どうなんですか。まずその出発から、日本大学のいわゆる大衆団交と言い切るのであるならば、あの集会というものの出発はどうなんだ、そこからひとつお聞きしたいのですよ。
  209. 村山松雄

    ○村山説明員 三十日に日本大学の理事者と学生が会うことになりました。理事者側の了解は、多くの学生を集めて理事者としての大学の態度を説明する全学集会ということで臨んだというふうに聞いております。
  210. 唐橋東

    ○唐橋委員 このことはこの学報の中でこういう趣旨によって出ているということは御承知でしょう。読んでみますからね。前に御承知のような経過の中で団交した――学生側からいえば一方的なんですが、一方的に招集したということについて、要求の回答書の中に――古田会頭が学生側の秋田議長に正式に出された回答書ですよ。その回答書の中にこういうことがある。「今かえりみて、約束を守ることこそ千金とするローマ法の原則に忠実に断固として諸君の要求に応え、要求する場所に赴き、数千、数万の諸君と声をかわし、意思を通じあうことこそ先決であったことを思い、諸君に深くわびたいと考える。」こういうところから――その前にこの回答書の中にはほとんど全部、いわばあの団交といわれた項目が全部回答が出て解決しているのですよ。それがなぜあの全員集会になったかということ、まあこれが一つ。それともう一つ、「全ての諸君が、文言の背後にあることがらの本質を深く洞察し、要求項目に対する大学の認容の姿勢を全面的に、すなおに受け入れてほしいと考える。諸君が、この答を容れ、満足した時点で」こういうように書かれていますが、そういうことでこの中で、全部読みませんが、そのときにはこの文だけでは非常に意が尽くせないだろうということが書いてあるわけですよ。ですから皆さんに会います。そうしてこの文言の背後にある事柄の本質を洞察してくれ、こういうことなんですよ。だから洞察もちょっとできない。全員に会うというのだから全学集会を持ってくれ、ここから出発しているのですよ。それで全学集会になろう。全学集会をやるときには、こちらのほうは大衆団交でございますよ、いや全学集会にしてくれ、こういうことでいろいろ交渉の経過はあったが、危害やその他については十分保証いたしますといういわゆる代表者間の話し合いによって、要は、この回答書を全生徒の前で明らかにしましょう、そしてその足りないところを聞いていこうというのがこの集会であった。それが冒頭において全員集会を大衆団交に切りかえろ、こういうやりとりがあって、それならば大衆団交の場と認めます、そういうところからいったんですが、大臣は、いわゆる大衆団交をどのようにとらえ、いわゆる全学集会をどのようにとらえるかという一つの観念的な問題であろうかと思うけれども、要はこの回答書の中でやりますということから出てきたんです。だから、十一時間の中でいろいろ議論が出たのです。ですから、この回答書からはずれたものは何かというと、あとで私も申し上げますが、要は、こういうような、先ほど小林委員も言われたように、大学問題は大学側も学生側も相当煮詰まってきていますよ。だから、ぼうっと集まったいわゆる無秩序、無計画的な大衆団交なんていうものじゃございませんよ。それをどれだけの人員、どれだけの代表にするか、どういう形にするか、要求項目についてはどうするかという事前の打ち合わせが必ずあってはじめていまは開かれますよ。そういう事前の準備過程の上に積み上げられてきたんです。せっかくこういう積み上げられた経過をどのようにとっているのか。その積み上げられた経過がわからないから、形を見て大衆団交だ、こういうふうに見ているんです。全くこれは認識の浅さといいますか、観念的に事をとらえ、そして報告書を見れば非難だの弾圧のことはかり、こういうかまえが――私はほんとうにいまにして一番大切な、いわば山でいえば最後の詰めの場にきた大切な時期に、文部省の姿勢というものと政府全体の姿勢というものを直していただかなければならないと思うのです。あの全学集会の経過をどれだけつかんでおりますか。これは大臣よりも局長から。
  211. 村山松雄

    ○村山説明員 古い経過は別といたしまして、いわゆる全学集会というようなものの計画は前後二回あったわけでございます。第一回は八月四日にやろうということで、七月の下旬にいま仰せのようなその準備のための理事者といわゆる全学共闘の代表との間で会合が持たれました。ところが、それが終わっての帰りに理事者側の帰り道を擁してかなり物理的に混乱があったというようなことで、理事者側は、こういう状態では全学集会における理事者側の安全が保ちがたいし、平穏な話し合いが行なわれる見通しが立たないので、八月四日の集会は行なわないということを全学共闘側に連絡いたしまして、一時中断しておりました。その後、仰せのようなやりとりがありまして、九月の三十日にやろうということになって当日を迎えた。それ以下の経過は、ただいま御質問がありましたようなことで以後その善後策のために大学側また法人の役員を中心にして対策を練っておられるというふうに承知しております。
  212. 唐橋東

    ○唐橋委員 三十日の全学集会を開く前のいわゆる生徒代表と学校側との話し合いの内容を知っておりますか。
  213. 村山松雄

    ○村山説明員 詳細は存じません。
  214. 唐橋東

    ○唐橋委員 一番中心になりますことは、ここにも出ておりますが、片一方は一方的に話をしなかったことが悪い、反省する、これは文書に出ております。生徒側では全員が一つの統制をとっていこう、こういう約束の積み上げがあったことは御存じですか。
  215. 村山松雄

    ○村山説明員 話し合いの対象となっておりました問題は、伝えられるように数項目ありまして、いわゆる学園の民主化といいますか、そういう方向で法人並びに大学の組織、諸規程の検討、改正を行なう、それから春以来の紛争の責任を負うといいますか、それに対するけじめをつける意味合いにおきまして理事者のメンバーの更新を行なうというようなことが内容でありまして、それらの問題をどういう方向で話し合って、その時点でどういうぐあいにまとめるかというようなことについて大体の腹を持って会合に臨んだというぐあいに聞いております。会合の議事運行の打ち合わせにつきましては、私どもとしてはあまり承知しておりません。
  216. 唐橋東

    ○唐橋委員 一番あとのほうにある議事運行の打ち合わせが大切なんです。あとで調べてみてください。そしていま前段で言われた回答書の中で回答してあること、これは文書回答です。しかし、それではいわゆる生徒全体がやはり目で見なければならない、こういうことで全学集会なり、あるいは冒頭における大衆団交、こういう形になったのです。そこで、あの正式に回答された回答書の事項と大衆団交といわれる十一時間の中で出た結果との違いはどこどこですか。
  217. 村山松雄

    ○村山説明員 詳細については把握しておりません。
  218. 唐橋東

    ○唐橋委員 いまのようにあなた方がわからなければ大臣はなおわからない。大臣、これだけなんですよ。回答書の中で出ているのは、全理事の辞職の時期、これを回答書では「寄附行為が改正され、新寄附行為が発足した時点においてやめる。」こう言っているのです。それならばいつだという問題になって、やりとりがあって、いまここで全員決意いたしました、これだけなんですよ、一つは。もう一つは仮処分の排除、仮処分の排除はこうなっておるのです。この「要求項目に対する大学の認容の姿勢を全面的に、すなおに受け入れてほしいと考える。諸君が、この答を容れ、満足した時点で大学は仮処分をとりさげる。」回答書はこうなっているのです。それをやりとりの中で、今度は仮処分は何日にやりましょう、こういうふうに変わっただけなんです。あとは全部同じなんです。一つずつ、回答書にこう出ているからどうなんですか、こういうことでやりとりしただけであって、一切があの大衆団交の中できまったものではないのです。いままで大臣はそうお考えになっていて、そしてあのような意見を出されたのですか。
  219. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私のほうが問題にしておりますのは、いまのようなことではございません。どういうことがどのように話し合われたかということを問題にしているわけではないのであります。内容についてとやかく言おうとは思っておらないのです。ただ問題にし、心配をしましたのは、普通の状態のもとに話し合いが行なわれて、そして何らかの結論に到達したというのならかれこれ言うことも私はないと思う。ただ、あのときの状態というものは、いかにも異常な状態じゃないか、こういうふうに私どもには受け取れるのであります。はたして理事者というものが、ほんとうに普通の心理状態のもとに快く妥結に到達したという状態であるのかどうなのか、これは事実はよくは知りませんけれども、そこにおったわけじゃございませんから知りませんけれども、かなり手荒い方法で、個々の理事者について回答を求めたというふうにも聞いておるのであります。そういうふうなことで話し合いが行なわれるということは、われわれとしては賛成することはできない、こういうことであります。内容についてかれこれ私どもがいいとか悪いとかというふうなことを申しているわけじゃございません。ああいう話し合いの方式というものが一体正常な姿なのか、きわめて異常な姿であり、同時に、学生側も相当興奮もしておったろうと思うのでありますが、理事者の側におきましては、非常に多くの人たちの中で取り囲まれ、一人一人詰め寄られて、しかも長い時間かけてふらふらになって、そしてやむを得ず承諾したんじゃないか、こういうふうにも思われるので、話し合いもけっこうでありますけれども、そういうふうな話し合いの姿というものは決して望ましい姿ではない。私どもとしましてはそういう方式には賛成しがたいということを申しておるにすぎないのであります。
  220. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員 ちょっと関連。いまの大臣の御答弁の中で、内容はともかくだが、方法が異常で問題だというふうなお話で、私も同感だと思いますが、内容についてもいま唐橋君がいろいろ言われた事前の協定といいますか、それもあったには間違いない。間違いないのですが、大体協定に基づく穏やかな学生との話し合いというものが、大衆団交というふうなおきまりのつるし上げといいますか、人民裁判みたいなことになったというふうな経過になったわけですが、それがどこでそうなったかということは私もここで詳しくは説明いたしません。たとえば私が五時、六時になって、二時間で済むというものですから、電話をかけて、きょうの集会はどうなったかと言ったところが、学生だというのが出てきて、集会ではない、大衆団交だ、だれか、というふうなことを言うから、だれでもいいだろうと言ったら、ぴしゃっと切るからまたかけて、衆議院の、本部顧問の高橋英吉だ、集会は済んだかと言ったら、集会じゃない大衆団交だというふうなことを言うわけで、要するに全学生の集会、最初の話し合いにおける集会と、それから大衆団交とにはたいへんな性質の違いがあるということは間違いないのであります。  内容においても、一番大事なことは、個人個人が自己批判と称するものをさせられた、そしていまの協定にないところの即時退陣を迫られた。これは紅衛兵の三角帽をかぶせられないだけの違いであって、紅衛兵のつるし上げ、人民裁判と同じことだと私は思うのでありますが、一番大事な点、いやしくも自己批判を強制的にするがごときことをやられるということは、基本的人権に関することは言うまでもないことでございまするし、ことに殺人事件みたいなものを生じておりますような統制のとれない日大の学生運動、それがばりざんぼう、いろいろの形において身体、生命に脅威を感ずる中においてそういう意思表示をすることが異常でないとどうしていえるのかというふうな問題になりまするが、要するに一番大事な理事の総退陣という問題、自分みずからが責任を感じて、そうしてその責任のもとにおいてあと始末をして、いさぎよく後継者に学校の運営を渡さなければいかぬというふうな気持ちでおって、いまの寄附行為の改正といいますか、学校の基本的な規則の定款、これの改正案が成立した場合においていさぎよく引いて、そうして新たな規則のもとで選ばれた後継者に任務を譲るというふうなのが一番大事なわけなんです。その大事な、一番自分が責任を感じて使命を達成しようとするための理事の退陣の時期、これが一番大事なわけですが、その時期、それから自己批判なんという、ほんとうに人間の一生にとってこれほど屈辱的なものはないと思うので、われわれから見ますると、ほんとうに基本的人権を侵害したことになると思うのですが、その基本的人権を侵害されながら、しかもなお意思に反する意思表示をしなければならぬというのは、要するに身体、生命に対する脅威が感じられたからやむを得ずやったというようなこと、これは例はあるので、社会党の諸君も、共産党の諸君も、われわれも同一ですが、勾留中になされた陳述というものは、これは物心両面における精神的な拷問、肉体的な拷問、そういうものを含んでおるので、その陳述というものは措信性がない、信頼性がないというふうなことをいつも言っておるのですが、要するにそういうふうな雰囲気のもとで意思表示をさされたというような事態、これはほんとうにこういうことが今後例になりまするというと、学校ばかりではない、銀行だろうが、工場だろうが、すべてのものが多衆の力で人民裁判的なものをやり、集団の威力でつるし上げをすればその目的を達成するというふうなことになっては、法秩序を無視することになる、破壊することになるから、ああいうやり方は悪い、正しくないという御意見は私はもっともだと思いまするが、内容についても、いま言いました自己批判とか、それから一番大事な理事の退陣の時期、退職の時期、こういうことを申し合わせにないような、そういうふうな形で解決するような結論を出さされたというようなこと、これはもう異常な方法のもとに行なわれて初めてそういうふうに一番大事なことについて意思表示をしたというふうにとれますが、大臣はいかがお思いですか。
  221. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私は、とにかく大学には大学の、日大の場合でいえば理事者とでも申しますか、そういうふうな諸君には理事者としての意見なり考えがある、こう思うのです。学生のほうからいえば、また希望するところ、主張したいところもあると思います。その両者が会っていろいろ話し合いをする場合に、お互いにやはり自由な環境のもとに行なわれなければならないと思うのであります。自由が拘束せられるような状態のもとにいろいろな話し合いが行なわれるということは、これはもう私は話し合いとしては賛成することができない方式であろうと思うのであります。  この間の日大の問題でありますが、理事者の諸君が一体どういうつもりで自己批判をし、また、判をついたかということについては、一人一人の方は私は承知をいたしませんけれども、ほんとうに理事者の諸君がそう思ってやったというならこれはまた別であります。別でありますけれども、私どもは、やはりあの状態というものは少なくとも普通の人間からいいますと、決して自由な立場のもとに自由にものを考えて自由に行動したとは受け取れないようなものがあるような気がするのであります。そういうふうな話し合いというものは、相手が少数であれ多数であれ、認めるわけにはいかない性質のものじゃないか。そういうことが、今後いわゆる大衆団交とかなんとかということで、いま高橋さんがお話しになりましたようにどんどん行なわれるということになれば、これはもう自由なる社会とはいえないというふうな気がするのであります。これは一般世間においても同様であるし、学内においてもその例外ではない、こういうふうに私どもは考えますので、どうもこの間のああいう方式のもとの話し合いとか交渉というようなものは、今後はぜひひとつやらないでほしいと思うのであります。また、大学の諸君にしましても、心にもないことをあれだけの人たちがやるというようなことはいかがであろうかと実は私は思うのでございます。そういう点については大学の当局者も自己の所信、意見というものをみだりに曲げて、そうして何とかその場をつくろうというようなことは、私はほんとうに考えてほしいと思うのであります。
  222. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員 ちょっと一つだけ局長に。  いまの大衆団交になったいきさつについては、これは何か理事者のほうがだまされたようだという、わなにかかったというようなこともうわさされていますが、そういうふうな情報はありませんか。うまいことを言われて、そして引っぱり出されてああいうことになった。だまされたとか、わなに引っかかったとか、そういう情報はないですか。
  223. 宮地茂

    ○宮地説明員 私のほうも詳細はわかりませんが、全学的にいわゆる学部集会をやろうという積み上げがなされたかどうか、若干問題があるのでございますが、それにしましても一応理事長が出て、学内集会、全学集会をやろうという気持ちはあったというふうに聞いております。ただ、その集会に臨んで、学生側から大衆団交であるということで意思を曲げさせられたというふうに聞いております。
  224. 唐橋東

    ○唐橋委員 それでは一つお伺いしますが、大衆団交と全学集会の違いを説明してください。
  225. 宮地茂

    ○宮地説明員 私も、大衆団交とは何ぞやということは、どうも私自身がよくわかりませんが、別に大衆団交というものが私どもが使います法令等にあるわけでもございませんし、いろいろいつの間にか大衆団交ということばが使われておるようでございます。ただ、そのことばを分析してみますと、団交というのは団体交渉の省略であろう、こういうふうに考えますので、対等の――労働組合等で組合と会社なら会社側とでいろいろお互いに労働条件について交渉するといったようなもので、およそそういうことは、大学で団体交渉をするというような性格のものではなかろう。したがいまして、大衆団交というのは、それほど科学的に分析したことばじゃなくて、大ぜいのものが学校側と何か折衝しようというような意味であろうと考えます。ただ、これは何も定義がございませんので、私なりにそのように感じております。  ところで、大学側といたしましては、一応大学と学生との間では、学生の意向、希望はできる限り正しいことは聞くべきであるという気持ちはあるようでございます。私どもも学生の希望なり意見なりが大学運営に適切に反映されるということは非常によいことだと思います。しかしながら、いま言いましたような感じのいわゆる大衆団交というものではそういうことは達成できないので、大学といたしますれば、学部で全部の教官なりあるいは全部の学生が出てもよろしゅうございますが、正しい手続なりあるいは秩序のある平静な雰囲気で学部の教官と学生が話し合う、あるいは全部の学生と教官が話し合うということになるんじゃないかと思いますが、ただ、幾ら日大の両国の講堂が大きいといいましても、日大の学生は、これは私も詳細わかりませんが、七、八万前後の学生がいるといわれております。こういう人が全員集まってやる必要がはたしてあるであろうか。適当な代表者でやることも適当ではなかろうか。いろいろそういうような考えで大学側が申します学部集会とか全学集会というのは、必ずしも全部の学生一人残らずとか全部の教官という意味ではなくて、五人とか十人とか、あまり制限をしないである程度の学部の学生あるいは全学的なある程度の学生と学校とがお互いに静かに話し合うということを全学集会といっておるように感じます。
  226. 唐橋東

    ○唐橋委員 こういうことなんですよ。学校側に学生の一つの団体が要求書を出す、回答書を出す、形として見れば一つの団体意思と団体意思なんです。それがいい悪いは別として、そういう状態の中に行なわれようとしているのですよ。そうでしょう。それは代表者と文書のやりとりですね。それが今度一つの大衆団交、いわば全学集会というので、しかもそれは学生なんですよ。学生だから、一人の学長なり何なりが全員にいつでも顔を合わせるというのは原則ですよ。どこの学校だって学校の生徒全員が共学しているということ、学長の御尊顔を拝するということは大切なんですよ。それがいまのマスプロの中でできないところにいまの学校の問題の根源があるんですよ。一人の学長が全校生徒を集めて訓示するのは必要なんですよ。代表を集めてやればいつでも事足りるというものじゃないのですよ。そういう共同体の学校という組織の中で、いまのように一種の団体と団体のような形の中にあらわれたときには、いわゆる対等の立場になってお互いに話しませんか、交渉しませんか。こういうことだから、いわゆる団体の交渉という形になって、それで文書のやりとりがそこで行なわれる。そうして意思の確かめ合い、そうして集会の持ち方、こういうことになってきているわけです。  そういう点は省略して、要は、私は今度の発言で非常に遺憾だったのは、大臣、やはりなにが積み上げられて、そうしてそれは互いに大きな紛争の中においていろいろな困難なこと、犠牲的なことが是正せられてようやく解決せられようとしておるときに、それを今度はぶちこわしていくような軽率な点がなかったかということ、この点についてはやはり私は政府当局として十分今後もあり得ることなので検討していただかなければならない。もちろん、団体交渉そのもののあり方というものについては、今後もいろいろな、これはもうお互い同士の研さんの中で改善し、前進させていかなければならないのだが、その第三者的な者が、あれがいかぬのだ、これがいかぬぞ、前例になるから、こういうような一つの観念的な、そうしていま見てみると、実際わからないがそういうふうな感じで受けているのです。こういう状態が現実でしょう。そういう中においてこの種の非常に大切な問題を取り扱うことについて、いわゆる責任者としての姿勢というものは軽率であったということを私は言いたいんですよ。それに対して御意見があればお聞きしたいのです。
  227. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私は、決して軽率なことを言うたつもりはございません。ああいうふうな事態というものはやはり今後引き続いて起こるようなことがあってはならぬ、こういう気持ちでもって率直にそのことを申したわけであります。交渉の内容その他についてかれこれ言っているわけじゃございません。ああいうふうな形のもとに学生と大学側との間にいろいろ集会が行なわれるというふうなことは、これは決して望ましいことじゃない、こういうふうな考え方をいたしておりますので、軽率なことを申したつもりはございません。
  228. 唐橋東

    ○唐橋委員 平行線になるから、この種の議論は時間の関係でやめます。  次に、日本大学紛争の中でまだまだ父兄が解決されないで疑問に思っている、もちろん回答書の中にもいろいろ出ておりますが、一応これは税関係のものとして国税庁が結末をつけました。私がこの前取り上げたときには、まだ調査途中である、こういうことなので質問を打ち切っておりますが、この結末がついた段階ですから、国会でこの種の取り扱いはどうであったかという議論をしてもいいと思いますので、私の疑問とするところを二、三お伺いしたいわけです。  その一つはこういうことなんですよ。この「日本大学学報」を見てみますと、従来所轄税務署の監査を受け、経費として承認されておりました。それが今度認められなくなったんです、こういうことなんですね。「従来所轄税務署の監査を受け、経費として承認されてきたものでありますが、今回の調査では、これが認められず、一切個人所得とみなされ、課税の対象と認定されました。」これが大学側が父兄に出した内容です。これは御承知ですね。  それからもう一つ、「東京国税局長談話」といって、これもやはり大学が国税局長の談話をとって父兄に配った文書ですが、その中でこういうことがあるのです。「賞与各種手当、慰労金等の項目により定期または不定期に支給していた金額については、すべて給与と判断し、課税の対象とした。」こうなっておるわけですね。この内容もすでに御承知でしょう。そうしますと、国税局長談話のいま申し上げたような点などは課税のイロハのイでしょう、こんなものは。だから会計事務当局も、会計をやっている事務官もこんなもの知っていなければならないのです。知っていなければできないのです。常識です、こんなもの。  それから、そういう点をいま監査を受けて――ちゃんと監査となっているのですよ。監査を受けていて、そういうものはいままで課税対象でなかった。何かこれについてどんな監査をしていたのです。イロハのイを見て事務官もわからなければならない。どんな新しい税務署員でも、就職したばかりの税務署員だって、こういう点を監査に行った職員が指示しないというようなことはあり得ないと思うのですが、どういうことなんです。監査をやったのですか。まずそこから……。
  229. 井辻憲一

    井辻説明員 ただいまの御指摘の点につきましてお答え申し上げます。  過去におきましての監査の状況でございますけれども、御承知のように公益法人でございます日本大学につきましては、法人税の調査がございませんので、通例行ないます源泉所得税の監査だけが税法上の問題になるわけでございます。一般の会社の関係でございますと、経費、支出関係、収入関係、こういうものを法人の所得計算上全部一応調査するのがたてまえになっておりますけれども、源泉所得税の監査におきましては、通例は給与関係台帳というものにつきまして調査をいたすわけでございますが、学校法人のような公益性のあるもの、特に最高学府であるような大学等につきましては、それほど回数とかあるいは日数を投じた徹底的な調査を実は従来あまりいたしておりません。そういう公共的な大学その他のところでは、おおむね給与関係の源泉事務等は適正になされているであろうというふうな考えのもとにやっておりました。全然やらなかったわけではございませんで、数年に一回程度は所轄税務署員がせいぜい一名か二名、わずかの日数をかけまして行なっておったのだと思います。  そこで、いま御指摘の日本大学当局が父兄の方に配りました文書の中に、過去において税務署の監査を受けて承認されておったというふうな文言がございます。私どものほうが、学部によって多少異なりますけれども、たとえば研究費等の費目で、これが渡しきりになって個人の所得になっておる場合は困りますよと言いまして、指摘をいたしまして直していただいた例なんかもございます。したがいまして、従来の監査におきましては認めたものが今回同じもので否認されたというふうなものはございません。したがいまして、この点につきましては今回新たに調査の結果出てきたものが非常にたくさんございますので、そういう意味におきまして従来の監査が不徹底じゃないかというふうにおしかりを受けるかもわかりませんが、そういう点は私どものほうといたしましては実はあとになって反省しておるわけでございますけれども、何ぶん最高学府の大学のようなところでございますので、一応信用をいたしまして、詳しい徹底的な費目全部を見るというような監査をいたさなかったためにこういうふうになった次第でございます。したがいまして、日本大学当局が配られました文書につきましては、これをそういう意味で過去に承認をもらったものをいまさら課税されるのはおかしいじゃないかという意味の文章が配られることにつきましては困りますという点を当時申し入れてございます。
  230. 唐橋東

    ○唐橋委員 だいぶ経過はわかりました。そうしますと、やはり監査は不十分であって、前に行ってみたことはございます、しかしこの種の項目について当たって、そしてこれはよろしいと言った覚えはございません、こういうことなんですね。
  231. 井辻憲一

    井辻説明員 そういうことでございます。
  232. 唐橋東

    ○唐橋委員 それでわかりました。  もう一つ、これは補足談話なんですが、「使途不明と認められるものは発見されなかった」こうあるわけですね。これは国税局長の補足談話ですね。そうしていまのお話で、あなたたち監査するのは源泉所得税関係だけなんでしょう。ちょっとそこから……
  233. 井辻憲一

    井辻説明員 監査の対象になりますのは、源泉所得税を課するべき所得であるかどうか、そういうものがあるかどうかという監査でございまして、通例は主として給与関係、並びに多少現物給与等の関係のございます厚生費等が主眼でございます。
  234. 唐橋東

    ○唐橋委員 そうしますと、いわゆる入学金なり何なりの全収入については監査してないんでしょう。
  235. 井辻憲一

    井辻説明員 全収入につきましては従来監査しておりません。
  236. 唐橋東

    ○唐橋委員 そうしますと、収入は監査してない、しかし、その支出の中でいわゆる給与としての部面は監査しました、こういうことだと、ここの使途不明金という意味は私はこういうふうに解釈するのです。収入と支出の中で合わないもの、合わなくてどこに使ったかわからないもの、これを使途不明金というと思うのですが、そうであるとするならば、給与に出たものはわかりますよ、あなたたち見たのだから。使途不明金というものはありませんということを、私は言い得ないと思うのですが、何でそういうことを言うのですか。そこまで見たのですか。
  237. 井辻憲一

    井辻説明員 最初にちょっとお断わり申し上げておきたいと思いますが、この補足談話なるものはもちろん文書で発表したものではございませんで、口頭で、東京国税局と日大当局の理事者との間のやりとりの中でこのことが問題になったやに聞いております。私のほうの使途不明金に対する考え方といたしましては、先ほど申し上げましたように、法人税の場合でございますと、収入支出全般にわたって究明をして、使途不明がもしございましたならば、これをやはりはっきりさせるということは、調査の必要上当然でございますけれども、源泉所得税調査の場合におきましては、源泉所得税として徴収する金額が漏れていないかどうか、適正に課税がなされておるかどうかという点を主眼にいたしますので、法人税調査の場合とその着眼点が異なるわけでございます。  そこで、本件の場合につきまして、使途不明金がある云々という話でございますが、これは私のほうで使途不明金があるとかないとかというふうな言い方をしたことはございません。ところが、一般の新聞、雑誌等には、使途不明金幾らというふうな話がそういう形で載っておりますけれども、源泉徴収を行ないます支出面につきまして、源泉徴収をすべきものがあるかないかというふうな点につきましては、調査着手当初は、課税すべきかいなかを検討しなければ十分実態がわからないというものが幾らかございましたことは事実でございます。現在の段階におきましては、それらを解明いたしまして、たとえば個人で使われたと認められるものは給与とし、それ以外の、たとえば図書費で領収書があり、研究所に置いてあるということがはっきりいたしました分については、これを除外する等の作業を数カ月間行ないまして、少なくとも源泉徴収の課税の可否に関する費目につきましての使途不明というのは、つまり解明されていない費目というのは現在ございません。したがいまして、使途不明のまま給与として課税するということは論理的にはあり得ないことでございます。ただ、今回の調査におきましても、収入全部をとらえておりませんので、一切の支出について全部解明したかということになりますと、これは源泉徴収監査の範囲を非常に越えて膨大なものになりますので、そこまではいたしておりませんが、使途不明が現在において解明されたと申しましたのは、支出面における給与所得としての課税の必要なものについてあいまいなまま残してあるものはないか、こういう意味なら、私どものほうといたしましてはこの談話の意味は納得できる、こういうふうに考えます。
  238. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員 ちょっと関連して。いまの問題、使途不明というのは、一般には行くえ不明の金のように思っておるわけであります。どこへ使ったか、だれが受け取ったかわからないようなことが使途不明とか、それから行くえ不明とかいうふうなことになっておるわけだが、日大の場合においては、受け取った人はわかっておるのでしょう。受け取った人と金額はわかっておるわけで、ただそれに対して見解の相違で源泉課税をしなかったというだけで、源泉課税をせずに本人へそのまま渡しておるというので、受け取った人も受け取った金額もみんなわかっておるわけですね。したがって、裏給与とかやみ給与というんではなくて、堂々と帳簿の上で旬月何日だれに幾ら渡したというふうなことははっきりしているわけですね、氏名も金額も。ただ、それをどこへどういうふうに使ったかということまでは調べる必要は、源泉課税の関係ではないわけですね。ただ、それを日大当局のほうで――会計事務局のほうでしょうが、会計事務局のほうでは源泉課税をする必要はないと信じて、そういう見解をとって、そのまま全部まるまる渡してしまった、全額を渡してしまったというのだが、それはやはり源泉課税すべきものであったんだということで、その渡した額と渡した人間がわからなければ、源泉課税をするなんといったって、できないわけでしょう。だから、その点は行くえ不明じゃない、とにかく人の名前も渡した金額もはっきりしているんだということになるんでしょう。したがって、裏給与とかやみ給与とかいうものではないのであって、源泉課税をしなかっただけだということの事案じゃないですか。
  239. 井辻憲一

    井辻説明員 巷間いわれておりますいわゆる使途不明二十億円というふうな数字が出ておりますが、この二十億円、正確に申しますと十九億三千九百万円が使途不明給与所得分でございますが、これにつきましては全部使途を解明した分でございます。しかもその中で給与所得と認定した額が約二十億、こういうことでございまして、それ以外に、調べました結果給与でないということが立証できましたのは、これは対象からはずしてございます。ただ、そういうふうにいたしまして、全体の中で、給与関係で課税すべきかいなか問題になる要調査対象と申しますか、その金額につきましては、現在までに解明が終わりまして、使途が全然わからないというものはもうございません。そういう意味でございます。
  240. 唐橋東

    ○唐橋委員 私、聞いておるのは、いわゆる給与としてあがったものについては、それは渡したのですから、給与だから使途でしょう。それがいわゆる手当で課税対象になるかならないか、こういうものは使途不明とは言わないのです。少なくとも二百五十億の年収入があるわけで、通常から見ても、そのうち給与が幾ら、何は幾らという予算が出ておる、給与費以外の中にその使途不明という意味のものが――だから、ちょっと見てみると、使途不明というのは、個人の給与の、いわゆる名目は課税対象であろうがなかろうが、渡したものは使途不明でないと思うのです。その部面だけはあなたたち見たわけだ、そうでしょう。いわゆる個人の所得になったものだけを見たわけだ。だから、使途不明金がないということは、全体会計の中であなたたちは検査できなかったのだから、使途不明金がありませんなんということは言い得ないのじゃないかということを聞いておるのですよ。どうなんです。むずかしく言わないで、私の趣旨に答えてください。
  241. 井辻憲一

    井辻説明員 お答え申し上げます。  私のほうで使途が解明されました二十億円のほかにも、給与関係の所得として源泉所得税を課すべきであるかどうか検討を要する金額は、ほかにだいぶございました。それらにつきましても全部解明をいたしまして、給与として認定したその以外にも、その限度におきましては使途を解明いたしまして、学校側の申し出、あるいは教職員個々の方の申し出等を聞きまして、必要な授業の経費等に使われたということが判明いたしまして、その限度におきましては使途が解明されたわけでございます。したがいまして、給与になったと認定した分とそれ以外の分と、両方につきまして解明されたと申し上げておるわけでございます。しかし一方、収入二百数十億円全部につきまして洗ったわけでございませんし、支出も営繕関係その他の経費が膨大にございますので、そういうことで一応課税の対象となると思われないようなものまで含めて、全部一切やったというわけではございません。そういう意味におきましては、すべての使途を解明したとは申し上げかねるわけでございます。
  242. 唐橋東

    ○唐橋委員 そういう意味なんでしょう。だから、使途不明はありませんなんということ自体が言い得ないと思うのですよ。いわゆる課税対象の問題も、時間がないから省略しますが、その次の「いわゆる脱税というべき事実は認められなかった」――税の場合もいろいろあるでしょう。いわゆる源泉徴収によるあれでも、あるいは法人税の関係も出てくるでしょう。そうでしょう。いわゆる固定資産税やその他も出てきますね。あらゆる税が出てきますね。それをまだ全部当たっていないでしょう。当たったのは、これは源泉徴収の給与に対する税として当たっておるわけですね。だから、ここで言うのは、「いわゆる脱税というべき事実は認められなかった」こういう発表は、これは私からいうと、こういう発表をしていいのかどうか、税務官としての良識を疑いたいのです。そうでしょう。全体収入は二百五十億あるうち、いわゆる全体に当たっていないで、使途不明金ございません。それから今度、全体の税に当たらないで、脱税という事実はございません。こういうことは発表したのですか。
  243. 井辻憲一

    井辻説明員 外部に発表したものではございません。向こうの理事者との間に使途不明があるかないか、ないしは、いわゆる脱税というものがあるかないかについてのやりとりをいたしたことは事実でございます。そこで、前段の使途不明云々につきましては、先ほど私が申し上げた趣旨を、東京国税局におきまして向こうにも話したと思います。  それから、ただいまのいわゆる脱税というべきものはなかったというふうなことがまた載っておりますけれども、私どものほうといたしましては、脱税の解釈というものを、通例部内で使います場合には、積極的な擬装工作をやりまして、故意に税を通脱するというものを脱税というふうにいっているわけでございまして、そういう意味におきましては、大体において経理上のミスとか、あるいは解釈の相違とか、あるいは不注意というふうなことが大部分であって、本文のほうにも書いてございますが、故意に通脱しようとする意図が非常に強かったというふうには認められない、こういう趣旨でございます。
  244. 唐橋東

    ○唐橋委員 時間がないからそこまで質問しようとは思わなかったのですが、そう言われてくると、また問題になってくるんですよ。たとえば旅費という名目で出張しない、出張しないというのは復命書がないのだ。復命書やその他全蹄合わせて出張になるべきものを、旅費という名目で実際は行かなかった。研究費ならば、研究したならば、これだけ研究しましたという復命があって初めて研究費になる、そういうものが研究費です。こういう名目で、研究費ならば課税対象にならないのだ、旅費ならば課税対象にならないのだということは、これは常識ですよ。そういうものをつかんで、実質調べて課税したわけでしょう。そういう場合に、これは善意であるか悪意であるか、こういうことであなたたちが見ていって、ああしてどうなんだということをいえば、これはまた議論になってきて、いわゆる旅費として行かなかったならば、やはり脱税行為ですよ、そうでしょう。税のかからない項目として落としているならば、これは常識的に脱税行為ですよ。そういう議論は私はしたくないけれども、要は、こういう脱税行為がありませんでしたなんという談話を発表することは、いまの経過でわかりましたけれども、もし発表したとしたならば、いわゆる税務担当者として非常識ではないかということを意味しています。したがって、大体解明しましたので……。
  245. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員 発表の問題ですが、脱税、脱税というように言われてくると――新聞で盛んにああいうふうな使途不明とか書いていますね。これは一体どこから出たか。先ほどのあなたの話を聞くというと、正式に発表されていないと思うのだが、これまた調査の当初からずっとそういうふうな問題、大体の額とか脱税とかなんとかいうことばが新聞に非常に出た。新聞で脱税とか裏給与だというようなことが出たものだから、日大紛争がだいぶ進んでから、あれは裏給与でなかった、局長談話をそのまま広告に出してくれというのでやったら、新聞社の面目に関すると、広告さえ受け付けなかったというふうな事態が起こってきているので、常識上脱税とかなんとかいうことになっているわけだが、これはどこからそういうふうなことが言われ出したのであるか。あるいは国税局の吏員の人の間からそういうふうな意味のことが漏れたのではないか、そういうことをしゃべった人があるのではないか。もしそうだとすると、これは公務員の秘密保持の刑事罰に反するのではないか。公務員は自分の職務に関して得た知識、得たものについて、それを発表してはいけない、秘密を漏らしてはいけない。そういうふうなことがだれかにあったのではないか。たとえば日大の騒動が、根源は乗っ取り運動に基因しているといわれている。乗っ取り運動にいろいろな問題がここに錯綜してきたのだが、その乗っ取り運動の一つの手段として、この源泉課税申告漏れのものを材料を提供した乗っ取り運動の首謀者のほうの人たちがあるわけだ。その人たちとあなたの部下の人とが飲食をともにしている、会食している、そういう事実が、これは警視庁調べではっきりわかっておるわけだ。贈収賄になるかならぬか別問題だけれども、相当の供応を受けて、そういう材料を収集したようなことで、とにかく現日大当局の打倒ということに協力した、そういう陰謀に加担したというふうなおそれのあるような事実もあるわけなんです。そういう人たちからこういう誇大な事実に反するようなことが漏れて、そして新聞種になったのではないかというふうに思うのですが、もしあなたの下僚のほうでこういうことを漏らした者があるとすれば、それはいまの公務員法違反になるのではないか、刑事罰を受ける資格があるのではないかどうかということと、そういう会食したような事実、情報とか、材料をとるためにそういうふうな供応を受けてもいいかどうか、そういうことは認められるかどうか、こういう点についてお伺いしたい。
  246. 井辻憲一

    井辻説明員 ただいまのお尋ねでございますが、もちろん私どもといたしましては、公務員法並びに各税法によって、一般公務員よりもさらにきびしい守秘義務がありまして、調査の途中において部下職員がそういうふうなことをやることは、一般的にも常に禁じておりますし、今回の事件につきましても、そういうことは絶対ないと信じております。そういう事例は聞いておりません。この二十億円の使途不明云々が新聞あるいは雑誌等に出ましたのは、大体四月ごろからでございますけれども、あまりあちこちにいろいろな推測記事等が出ますので、六月の調査完了を待って、この際やはり守秘義務の違反にならない限度において、大網を新聞記者の皆さんお話しするほうがいいというふうに、七月上旬に判断いたしまして発表といいますか、説明をいたしたわけでございます。それは先ほど来申し上げておったような程度でございまして、こまかい各人別その他は申し上げておりません。  そこで、いまのお話でございますが、やはりニュースのソースといたしましては、いろいろ記者の方が回られて、私どものほうにも来られましたが、大学当局のほうにもいろいろ行かれたようでございます。いろいろなところからやはりニュースソースがあるようでございまして、つまびらかにはもちろんいたしませんけれども、私どものほうではなくて、それ以外のところから相当取材された結果であろうというふうに、私は推測をいたしておるものでございます。
  247. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員 治安当局のほうでは、もう一年も二年も前から、日大の中に非常に過激な破壊的な思想を持った学生がおって、結局これが大活動をして日大を混乱におとしいれるおそれがあるが、もし日大のごときマンモス学園がそういうふうなことになったならば、ほかの大学なんかの騒動と違って、及ぼすところの影響が非常に大きいのだということを非常に心配しておったようです。それに対して、私は日大出身ですが、そんなばかげたことはないんで、日大は組合もないし――組合も最近できてはおりますけれども、ほんとうの組合ということができるかどうかいろいろ問題がありましょう。乗っ取り運動のためにこしらえた組合であるかどうか、そういうことはいろいろ議論がありましょうけれども、とにかく日大に限ってはそういうことはないというふうにわれわれも豪語しておったのでございまするけれども、日大に騒動が始まったらほんとうにたいへんな影響を国の各層に対して起こす、各方面に対して起こすというようなことは明らかな事実なんでございますが、同じ政府のもとで国税局が卒然としてこの学校騒動のまっただ中、こういうものに軽率に手をつけられるというのはたいへんな問題が起こるかもしれないというふうなことになっている客観情勢について認識があったのかなかったのか。政府部内においてもしそれがなかったとするならば、これはたいへんな政府の不統一だと思うのです。何も悪いことをしている者をかばったり、そして手をつけてはいけないというわけではありませんけれども、こういうことをする上においては慎重の上にも慎重を加えてやってもらわなければならなかったにもかかわらず、ほんとうに学校騒動のまっただ中に火をつけたようなかっこうになったのですが、そういうことに対して責任を感じておられるかどうかというようなことは言うこともできますまい。正当な行為ですが、慎重を欠いたという点がありはしないか。先ほど申し上げたように、新聞、雑誌あたりで盛んに脱税とかなんとかたいへんな報道がされておるようなことですね。これがもし国税局のほうから出たものとするなら、ほんとうに慎重を欠いておったと思うのですが、あなたどう思いますか。
  248. 井辻憲一

    井辻説明員 ただいまのお尋ねでございますけれども、私どものほうといたしましては、一応日大の源泉監査は従来行なっております。定例の源泉監査では非常に大学の規模が大きくてなかなか調査しがたいということで、毎回やるというわけではございませんけれども、今回は国税局のほうで一応もう少し日数をかけて統一的に見てみようということでやったわけでございます。当時におきましては、ほかの大学におきましていろいろ紛争があったりしましたが、日大におきましては別にございませんでした。あまり内部の事情につきましてはそう詳細には存じておりませんが、しかし、時あたかも卒業試験ないしは卒業期でございましたし、あるいはまた、同じ日大の某教授の事件が、個人の所得税でございますが新聞に載りました時期でもございます。あるいはまた四月は入学期でもございますし、学校という特殊な性格からいたしまして、教授はもとより学生あるいは父兄に与える影響がきわめて大きい。一株式会社以上に影響するところが社会的に大きいということを十分考慮に入れまして、そうしてやり方につきましてはきわめて慎重にやりまして、局のほうでも全部詳細にわたって慎重なやり方をやるように指図いたしますと同時に、調査経過の外部への発表-発表と申しますか漏洩等の問題につきましては、そういう観点から普通の事例以上に非常に慎重に事を運んだつもりでございます。結果といたしましては、非常に多額の徴収漏れが出たわけでございますけれども、われわれといたしましては、いま顧みまして非常に慎重に事を運んだということで、その点についてはそう落ち度はなかったのではないかと思っておりますけれども、結果といたしまして、いろいろなところから調査中に、四月以降ニュースが出たことにつきまして非常に困ったことだなというふうな判断はいたしたわけでございます。
  249. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員 いずれ法務委員会でもう少しお尋ねしたいと思います。与党のことですからあまりたいした質問はしませんけれども、きょうは関連質問でございますし、この程度にいたします。
  250. 唐橋東

    ○唐橋委員 時間がありませんから急いで二点くらい……。  どのような給与でも給与規程があって初めて給与になるのでしょう。
  251. 井辻憲一

    井辻説明員 会社によりましては給与規程のないものもございますが、実質的に税法上給与と認められるものは、私のほうでは給与と扱うことにいたしております。給与規程のあるところでございましても、給与規程にのっとってものっとらなくとも、実態によって判断する、こういうのが税法の執行のたてまえでございます。
  252. 唐橋東

    ○唐橋委員 日大で一番問題になっておりますのは二十一人、十億五千万という給与ですね。その給与がいろいろな名目であるということは、これはこの大学学報の中にも出ておりますけれども、これは給与規程はございましたか。
  253. 井辻憲一

    井辻説明員 旅費につきましては支給規程がごさいましたが、いろいろな名目の手当につきましては支給基準はなかったというふうに存じております。
  254. 唐橋東

    ○唐橋委員 いわゆる給与規程ですね。これだけの大きな法人が給与規程なしに支給しておる。しかもこの大学学報を見てもそのつどちゃんと理事の承認を得て支給してある。 「理事会の承認の上、幹部の責任において、諸種の振興・対策に支出されたものであります。」こういうように「国税調査、学内紛争経過を発表」に詳しく出ておりますけれども、やはり給与規程がないで支給されておるとするならば、そのつどそのつど理事会の承認を得て支給した、こういう状態の中で行なわれているとすれば、やはりあなたたち立場において正しく給与規程をつくった中で支給すべきであるという指導はしたかどうか。
  255. 井辻憲一

    井辻説明員 支給規程がないと申し上げましたのは、教職員の通例の給与についてはもちろん規程はございます。それ以外のいろいろな費目につきまして、たとえば車代とか視察費とか研究費、図書費、その他たくさんございますが、こういうものにつきましてのはっきりした基準と申しますのは、大体においてございませんでした。というのは、過去において指導をいたしました学部もございまして、学部ごとに費目も違いますし、権限も違いまして、一定の、たとえば図書費でございますと、どういう領収証をとってどういう備えつけをされればけっこうでございますというふうに、過去においてわかった結果指導をいたしまして、そういうふうな内規を学部においてつくっておられるところもございます。したがいまして、そういうところはすでに正常な課税が、今回の調査においても、同じ費目につきましても行なわれておりました。今回の調査の結果、大学側も非常に経理の処理につきましては誤りが多かった点を認めて、私のほうで各費目につきまして、こういう場合にはこういう領収証、こういう場合にはこういう使い方をされれば課税になります、こうやればならないというような点を詳細に説明いたしますと同時に、今後の経理処理について適正なしかも確実な処理をしてもらうように強く申し入れまして、学校側もそれを約束いたしております。
  256. 唐橋東

    ○唐橋委員 給与規程なしに、しかも課税対象から除かれて支給されたものを、普通やみ給与、こう概念的に報道されているのですが、いわゆるこういう概念的なやみ給与というようなものは、やはりあれだけ大きな学校でこれだけ監査がされてないとなれば正しく税理指導をすべきであると思うのです。  これで質問は終わりますが、そういう中心になるという会計の担当者がいなくなりまして現在まで行くえ不明だ、こういうことを聞いておるのですが、それに対して警察庁として、これは法人であるとともに失踪された方は私人でありますから、非常に私的な部面の問題にもなりますので、この国会の中で議題に出すということは、非常に気の毒な問題ではございますけれども、しかし、少なくとも失踪されてから何日ですか、これがいまだにわからないというならば、ほんとうにいろいろ本人も気の毒だし、家族もたいへんだと思うのですよ。もちろん、学校自体だってその行くえをほんとうに尋ねていなければならないと思うのですが、当局としてはこれに対してどのような経過であったか。私もいろいろ経過は聞いておりますが、断片的でございますので、簡単でけっこうですから、ひとっこれに対する経過をお聞きしたい。
  257. 本庄務

    ○本庄説明員 日大の会計課長の失踪の件につきましては、会計課長富沢広さんでございますが、四月の五日に警視庁のほうへ家族から家出人の捜索願いが出ております。家族その他関係者の話によりますと、三月の二十五日の夜九時半ごろ赤坂の某料亭を出ましてから、行くえが杳としてわからないという話でございます。警察といたしましては、家族から公開しないでもらいたいという強い要望がございましたので、家族と相談をいたしまして、友人、親戚その他関係方面全部へ十七カ所に手配をいたしました。いわゆる一般公開手配はいたしておりません。十七カ所に手配をいたしましたが、その関係では、いまのところ何にも連絡ございません。また、身元不明の死体との照合もいたしましたが、現在までのところ該当はございません。したがいまして、本日の時点におきまして、当人の消息等一切不明でございます。
  258. 唐橋東

    ○唐橋委員 家族の気持ちはわかります。だから家族については触れませんが、責任はやはり学校だと私は思うのです。いわゆる会計担当者が行くえ不明になったといえば、その一番中心は学校がそれこそ全力をあげて生命の安全を願いながら捜索しなければならないと思うのですが、学校からはどのような連絡がございましたか。
  259. 本庄務

    ○本庄説明員 学校からは、四月の五日に家族が捜索願いをしてきましたときに、日大の庶務課長の伊藤清一という人が介添えで一緒に見えたように聞いております。以上です。
  260. 唐橋東

    ○唐橋委員 それで私は、学校はいわゆる会計担当者が失踪をしたならば、ほんとうに全力をあげて――あなたたちのほうもいま言ったように、それこそ公開でなくとも全力をふるって捜査に当たるということなんですが、学校が、いま私が申しましたような捜査をされているとするならば、必ずあなたのほうへも連絡をしながら捜査するということが、これは常道だと思います。やはりあなたたち一つの組織網というものにたよって捜査しなければならないと思います。その後学校からそういうふうな情報の交換なり、あるいは捜査上のいろいろな資料等の提出なり、これは当然やるべきだと思うのですが、そういう連絡がございましたか。
  261. 本庄務

    ○本庄説明員 学校からは、先ほど申しました庶務課長が、家出した当人の友人関係を当たっておるが、心当たりがないという連絡が一回警視庁のほうにあったようでございます。
  262. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員 関連。前提が全然違っておる。日大の会計課長とか庶務課長といわれておるが、それはたいへんな間違いですよ。経済学部の会計課長であり、経済学部の庶務課長、しかも経済学部というものは、いわゆる権力闘争、乗っ取り運動の反主流派の根拠地で、従来反主流派が権力闘争をするために要するところのばく大な金が、経済学部から流れているというふうにいわれておるのですが、そういうことについて情報はお聞きになりませんか。そして十一学部ある中の一経済学部の会計課長であり、庶務課長であって、しかもこれは現在の古田会頭といいますか、執行部とは反対の立場の人のよりどころになっているところであるということを御存じですか。
  263. 本庄務

    ○本庄説明員 金が流れておるかどうか、あるいは古田氏との関係はどうかという御質問につきましては、実は私、所管外でございますので、答弁は差し控えさせていただきたいと思います。私の知っている範囲では、いまのところそういうことははっきり聞いておりません。
  264. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員 経済学部ということを言いましたか。
  265. 本庄務

    ○本庄説明員 正確に申し上げますと、経済学部の会計課長でございます。
  266. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員 庶務課長もそうですね。
  267. 本庄務

    ○本庄説明員 そうです。
  268. 唐橋東

    ○唐橋委員 おそくなったから終わります。
  269. 久保田藤麿

    ○久保田(藤)委員長代理 有島君。
  270. 有島重武

    ○有島委員 たいへん時間がおそくなりましたので、私は荒筋だけ伺いまして、あとこまかいお話はまたの機会に譲ろうと思います。  きょうは、初めに論議されました人事院勧告実施について一つだけ聞いておきたいと思うのですが、八月三十日の閣議決定については、世論のいろんな批判がございましたね。特に八月一日からの適用のくだりについては、これをさらにさかのぼって適用し得る、そういうことはわれわれも考えるのですけれども、この閣議決定をそのまま固執していることが賢明なことなのかどうなのか、閣議決定を再考することが不可能であるというような根拠なり理由なりがあるのかどうか、そういったことについて大臣から伺いたいと思います。
  271. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 閣議決定を再考することが可能か不可能かということでございますが、私は、再考することは不可能というふうな問題ではないと思います。ただ閣議決定というものは、これを変更するということは、よほどのあれがなければやらぬことでありまして、従来から閣議決定というものはみだりにひっくり返すことはない、こういう取り扱いでずっときておると思います。先ほども申したかと思いますが、現段階において、この閣議決定を変更するということはきわめて困難である、そういうふうに申し上げたわけでございますが、これまでの取り扱い上そういうことになっておるわけでございますので、そのように御了承願いたいと思います。
  272. 有島重武

    ○有島委員 そういたしますと、その閣議決定を再考することは不可能であるという特別な理由はない、いままでの慣行上そうである、そういうふうに理解してよろしいわけですね。
  273. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 閣議決定というものは、やはりそれによっていわば政府の意思が決定するわけでございますから、したがって、閣議決定というものは政府としましてはきわめて重いものと考えておるわけでございます。そういうことでありますので、一ぺんきめましたものをまた改めるというふうなことは、まず原則として従来やったことはない、このように私は承知いたしております。
  274. 有島重武

    ○有島委員 その問題はそれまでにいたします。特別な理由はない、いままでの慣行上そうである、そういうふうに理解しておきます。あとまたこまかい話は……。  それから、いまの大学の問題です。これもゆっくりまた機会をあらためてやりたいと思いますけれども、先ほどからお話も出ておりますが、この大学紛争について、文教行政の貧困であるというふうに大半見られているわけであります。これについて、いやそうでないと大臣はおそらくおっしゃるのじゃないかと思いますけれども、それでは一体何と何と何はやっているのだ、そういったことがあるならばそれを聞かしていただきたい。そうでなければ、やはりこれは文教行政の貧困であるとお認めにならなければならないのじゃないかと思います。
  275. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 貧困であるという御批判に対しましては、私どもいかにも残念に思っておりますが、しかし、いま文教行政が万全であるということを申し上げるだけの自信は私もございません。やはり文教行政も時の進行している過程において、従来足らざるものをさらに補っていくとか、まずいところは直していく、そういういわゆる改善の過程をたどりつつ進行しているのがいまの姿だ、こういうふうに私は理解しておるわけであります。すべてが完全だとかいうふうなことは毛頭考えておりません。改善の余地は多々あるということでございますが、これをただ貧困であるというふうに片づけられたのでは、いままでの努力に対していかがであろうかというふうにも思いますけれども、まだまだ私どもとして改善、充実につとめなければならぬ点は多々あるということは、率直に申し上げておきます。
  276. 有島重武

    ○有島委員 そこで伺いたいのは、それでは今度の大学紛争、これはもう全国的なたいへんな問題でありますけれども、これについては、いま何と何とどういう処置をとっておる、取り出しておる、そういうことを具体的に教えていただきたい。
  277. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 大学紛争ということでございますが、この問題はそう簡単な問題とは思わないのです。いろいろよって来たるところもありましょうし、ただ単に目前のある問題をとらえての紛争というだけのものでも必ずしもない、こういうふうに思いますので、この問題に対して検討すべき問題はきわめて広範であり、またきわめて深いものがあろうと思います。そういうことでございますので、これが対策はどうだ、こうなりますと、一口には言えないということにもなってしまう、かようにも思うのでありますが、いずれにいたしましても大学の問題であります。また広くいえば教育の問題であります。大学の問題として考えましたときに、従来の欠点というものがいろいろ指摘せられておるわけであります。したがって、その指摘せられておる欠点といわれるもの、改善を要するといわれておるものについて、私どもとしては、先ほどお答え申し上げましたが、積極的な態度をもってこれと取り組んでいきたいということを申しておるわけであります。  問題はいろいろあろうかと思いますけれども、たとえば教養学部のあり方があれでいいのかというふうな問題もありましょうし、あるいはまた学園内における学生の生活という問題を考えたときに、いまの生活環境でいいのか、こういう御批判も至るところに出ておるわけでございます。そういうふうな問題について、私どもは誠実に問題と取り組んでいって解決したい、こういう気持ちを持っておるわけでございます。一々申し上げるということになるとなかなかむずかしいのでありますけれども、問題として指摘せられておること、そのうちでもっともである、今後のためにどうしてもこれは考えなければならぬという問題は、ぜひ取り上げて解決に取り組んでいきたい、こんな考え方をしておるわけであります。
  278. 有島重武

    ○有島委員 いまおっしゃった教養学部の問題、生活環境の問題、この問題は何か具体的にやり出した、そういうふうに受け取ってよろしいのですか。何と何と何をやり出しておるか。
  279. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 これは、一つ一つ何と何と何というふうにお答えすることも困難であります。また教養学部の問題にしましても、いままでのあり方じゃぐあいが悪いじゃないかという御指摘があるわけであります。それをどういうふうにするという問題は、そう簡単には私は結論は出ない。したがって、先ほども申し上げておしかりを受けたのでありますけれども、やはりそういう方向においてやるとすれば、十分考えて結論を出さなければならぬ、そういう性質の問題であろうかと思うのであります。
  280. 有島重武

    ○有島委員 先ほどの唐橋委員からのお話、私もきわめて同感なのでございますけれども、それを繰り返したってしようがないので一歩進めなければならぬと思うのですが、それで私、伺いたいのは、いろいろな要素がございます。いままでの日本の大学のあり方ということが一つあるでしょう。それから時代の大きな流れの上にそれが適応し得るかどうか、そういった問題もあるでしょう。教授の問題もあるでしょう。いろいろな問題があります。そうした問題、いまいろいろあると言われましたけれども、それを分類するといいますか、これだけの要素は少なくとも取りかかっていかなければならないのだというその要素の解析といいますか、そういうことはなさったかどうか。
  281. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 問題はきわめて大事なことでありますと同時に、あまりゆっくりもできない、こういう問題であろうと思うのであります。文部省としましては、いままでのところは各方面のいろいろな方の御意見も伺っており、その他世論等も伺っておる、こういうふうなことでいろいろな方面の意見を十分参考にしまして、そして解決案というものを立てていかなければならない、こういう考え方のもとにいろいろ調査をいたしておるところであります。
  282. 有島重武

    ○有島委員 どういう項目にわたって、その調査をどこでもってやっているのか、それを私は知りたいわけなんです。各方面からいろいろな意見を聞いて、それを参考にしていきたいと思っているというような非常にあいまいなことなんですが、私がいま伺っておるのは、大学問題についてはいろいろな意見を総合したところ、こうした問題、こうした問題は少なくとも今後取り組んでいかなければならないというそれだけの柱といいますか、その御用意はあるのだろうかということです。
  283. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 現段階におきましては、いま申し上げましたように調査の進行中であると申し上げざるを得ないのでありますが、いろいろ問題点として指摘されておるものは多々あるわけでございます。大ざっぱに申せば、いわゆる大学の自治というものをあくまでも堅持してまいります上において、現在の大学の管理体制というものがはたしてそれに適応しておるかどうか、こういうふうな問題もございましょう。いわば管理面からのいろいろな問題というものも指摘せられておるわけであります。あるいはまた大学の運営の面におきましても、いろいろ問題が指摘せられておる。あるいはいまの教育面を重視すべきである、その教育面を重視するという見地からいたしまして、現在の教育に関する組織、仕組み等がはたしてあれでいいのか、こういう問題もございます。あるいは大学の編成の問題もございましょう。  このようにいろいろ大学としましては管理運営あるいは教育というふうな点におきまして多くの問題が指摘せられておるわけでございます。これらの点につきましては、やはり私どもももちろん直接研究もいたしますけれども、各方面のいろいろな御意見等も伺った上で、これとこれとこれをひとつやろうじゃないかという結論が出るものだと私は思っております。同時にまた、事柄が事柄でありますために、ものによりましては直ちに何とか処置のできるものもあろうかと思いますけれども、そういうものはあまりないのであります。結局、制度面その他でそれぞれの、文部省で申せば中央教育審議会とか、こういうふうないろいろな機関にはかって、そこらでもよく検討してもらわなければならぬ。大事なことであると同時に急ぐことでもございますから、われわれもいいかげんにしておるわけにはもちろんまいりません。まいりませんが、現在はそういう点についての準備をしておる、こういうふうにお考えをいただいたらよろしいかと思います。一つ一つここで、これとこれとこれをやるのだというふうに申し上げるのは、まだ私どもとしても早いような気がいたします。
  284. 有島重武

    ○有島委員 そういたしますと、先ほど来議論がございましたけれども、これだけ長い間大ぜいの人たちが論争しているわけでございますけれども、それを系統づけていこう、そういった試みがまだなされていないらしいと私はいまのお話からは受け取るわけであります。これは速急に系統づけて――系統づけないまでも羅列していかなければならない。要素をあげられるだけあげていかなければならないのじゃないか、それが第一点であります。  それから第二番目に、先ほど大衆団交の話が出ておりましたけれども、意思交換の方法について自由な環境の中で話し合いが行なわれなければならない、これはしごく当然なことでございます。それで現段階においてはどういう意思交換の方法というものがあるのか、これについての方法論について、もっと検討してもいいんじゃないかと思うのですが、その点はどうでしょうか。
  285. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 お話しのとおりだと思います。大いに関係者の間におきまして、そういう問題については検討していただきたいものだと思っております。
  286. 有島重武

    ○有島委員 関係者の間では検討していただきたいということでございますけれども、さっき大衆団交は意味がない、異常な状態であるから認められないというようなことがあったわけです。じゃどういうものなら認めるのか。どういうものがはたして自由な環境に置かれて話していることになるのか。たとえば代表を立てるといいましても、じゃ代表がほんとうに多数の代表になっておるかどうかということは、現在では非常にむずかしい問題ではないか。たとえば、これはこの前中途はんぱな議論で終わっておりますけれども、教員なら教員の代表として日教組の代表を認めるかどうか。そうすると、これはすでに疑義があるわけでございましょう。それでもってその一部の扇動的な人たちが、全学生の代表だと称して事件を推進していくということは避けなければならない。そうかといって大衆団交でもさらによくない。じゃどうしたらいいのだ、その方法があるのかないのか。あれもだめだ、これもだめだと言っているだけではだめだ。それではどうしたらいいのかということは、それはまずいと言った人たちが、すぐに何かはかに方法があるのではないかということをさがし出していく責任があるのじゃないか、そう思うわけです。
  287. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私は、そういうふうな問題につきましては、少なくも大学あるいは大学生というふうなものは、常識をもって判断すればおのずから結論が出る問題だと思います。外部からとやかくこういうふうなやり方でやれとか、そういうものじゃなかろう。ケースによっていろいろまたやり方が違うであろうと思いますけれども、一がいには言えぬと思いますが、そういうことくらいは判断できる程度の大学生じゃないかと私は思うのであります。
  288. 有島重武

    ○有島委員 それができていないから騒ぎになっているのじゃないでしょうか。きわめて突き放した言い方ですね。
  289. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 いや、そうじゃない。決して突き放した一言い方じゃございません。そういうことに一々文部省が外部からかれこれ言うことはどうであろうかというふうにも思うのです。それからまた、文部省が外におってこれがいいあれがいいと言いましても、それがはたして実情に合っているのかいないのか、こういう問題もございます。私どもは、そういう問題についてはやはり大学の内部でよく相談して、代表を選ぶにしてもどういうふうにして選ぶか、こういうふうな問題についてしっかりと検討してやってほしいと思うのであります。一々のやり方等について文部省がとやかく差し出がましいことを言いますと、かえって問題を起こすことになりかねないと思うのであります。
  290. 有島重武

    ○有島委員 それはちょっとずるい言い方だと思うのですよ、さんざんやらしておいて、これではだめだと言えばいいのですから。  それで、これは前から教育基本法の問題でもって申し上げましたけれども、いま非常に複雑なニュアンスを持った多数の人たちがおる。その人たちの意見を処理する方法というのは、いまだんだん確立しつつあるわけですよ。きょうも大学教授の中のアンケートというものが新聞に発表になっておりました。この前は学生のアンケートが発表になっておりました。そのアンケートシステムというものは、これからの民主主義の一つの大きな武器になっていくんじゃないか、そういうように私は木文部大臣に対しても申し上げ、灘尾文部大臣にも申し上げてまいりました。ところが、こうしたことの検討、開発ということはお金がかかるのですよ。これはあなた方で考えたらいいだろうが、考えても、これは実際にやるのには非常にお金がかかる。そういうことについては、開発するという方向でもって予算なり何なりちゃんと措置をされていくべきじゃないだろうか。何もアンケートだけできめろというわけではありません。やはり代表の話し合いも加味されなければならぬ。代表として話し合うときに、われわれもこうやって、いま代表と代表で話し合っておるようでありますけれども、やはりデータというものが必要なわけですよ。そういったことについては、これはどうしても文部省として開発しなければ、あるいは文部省がどこかに委託して開発していくことがなければならないのじゃないか、そう私は思うのですけれども、どうでしょう。
  291. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 アンケートシステムについては、有島さん前々からおっしゃっておるところでありまして、私どももアンケートというものは、適切に行なわれれば有効な資料として用い得るものだ、さように存じます。このようなシステムについては、従来あまりやったことがないのでふなれな点がありますけれども、御指摘の趣旨につきましては、私は格別意見は何もございません。十分検討してまいりたいと思います。
  292. 有島重武

    ○有島委員 ぜひ検討して――この前も検討してくださるというお話ですね。今度の概算要求なんか見ましても、高等教育の中にはそういった面の開発というのはほとんどない。いまだれがどういうことを考えているんだということを正しく把握するということは非常に大切だと思うのですが、それに向かっての努力はしなければならない。ぜひそれは来年度予算の上にひとつ金額でもってあらわしていただきたい、そう思いますが、いかがでしょうか。
  293. 宮地茂

    ○宮地説明員 いま先生が具体的に例をお出しになられました、アンケートをとれといった指導もいかがかと思いますが、そういうようなことを含めまして、大学には学生部長とか次長とか課長とかいうのがおりますが、そういう者を年に大体二回くらいは文部省でも招集いたしまして、いろいろそういった問題について大学側のお互いの研究会みたいなものをやっております。それで、たとえば先生のおっしゃるアンケートをとる予算ということも、ちょっと費目としてもいかがか。それからまたアンケートを各大学でとれといったような予算を計上するのもどうか。  ただ、日ごろ大学側が学生との接触が薄いわけですが、それを密にするために、あるいは大学の意向を学生に徹底させるために、いわゆる学内広報と申しますか、これは大体紙代、庁費みたいなものになるわけですが、そういったような予算も要求いたしておりますので、大学によりまして、アンケートをとるのをよしと認める大学はそういう予算を活用してできるのじゃないか。ただ、来年度予算要求は広報ということで要求いたしておりますので、そういう中でもできるし、そういう点で努力したい、こういうふうに存じております。
  294. 有島重武

    ○有島委員 そういったみみっちい話を言っているんじゃないんですよ。もっと大きなスケールでこの問題についてどう思うかということは、これは全国民に問うてもいいわけですけれども、それはなかなかたいへんでしょう。けれども、少なくとも大学生というものはものをまじめに書くんですよ、自分のところで書けば。ほんとうはそう思っていなかったのだけれどもこう動いたとか、実はこれではいいと思っていないのだけれどもそういった運動には参加していないのだ、別にノンポリというわけではないのだけれども。参加もしていないのだけれども、いいと思っていない。いろいろな種類の人がいるわけですよ。そういう人たちの意思をほんとうに反映させる道というのが昔はなかった。昔は、あっても人数が少ないから話し合いでできたでしょう。あるいは雑誌でできたでしょう。現在は違う。そういった現在の認識のしかたが古いから、だからいま幾ら学生部長を集めて研修会を開いたところでうまくいかないというふうになっているのだから、これはどうかしなければならない。現在はコンピューターのシステムというものが、使いようによってはずいぶん有効に使えるわけです。そういったものを開発していかなければならない。どっかが開発しなければならない。そういうわけでこれはお金がかかるから、だから高等教育の問題の中では一つの大きな要素になるのじゃないか、そう思うわけでございますけれども、ぜひともこれは予算措置をしてもらいたい。
  295. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 いろいろな問題について世論を聞くとか、皆さんどう思っていらっしゃるかというふうなことを聞く方法として、アンケートという方式でやるということも、確かに一つの方法だと思うのです。ただ、どういう問題についてどういう方法でアンケートをとるのがいいのか、こういう問題については大いに検討を要するだろうと私は思うのでありまして、何でもかんでもアンケート、方式だけはアンケートだけれども、それが一体うまいあれになるのかというふうなこともございましょう。そういう点について十分検討しなければならぬと私はいま思うのでありますが、ひとり文部省だけの問題でもないと思います。国政の上において、やはりそういうものの考え方を積極的に取り入れていく、こういうことも大いに考えていかなくちゃならぬ問題ではないか、そのように私は思っております。十分検討させてもらいたいというのは、そういうふうな点について、文部省としても文部省の立場においてどのような問題をどういうふうに考えるか、こういうふうな問題についてなおよく十分検討させていただきたい、こういうふうに私は申し上げておるわけでありまして、来年度予算に盛るか盛らぬかというふうなところまで、いまお答えするということは困難だと私は思っております。
  296. 有島重武

    ○有島委員 検討を開始なさいませ、そう言いたいのですよ。いま言われたように、それは新聞社のとったアンケートですね。ほかの、新聞社のとったアンケートなんかと違うわけです。それで文部省としてとったアンケートは、やはり反感を買う面もあるかもしれない。にもかかわらず、これはやはりどうせ将来は開拓していかなければならない分野です。いまこれだけの問題をかかえてぜひやらなければならないことになっているのに、また、とにかく答えを書く人にしては大学生は一番理想的な状態です。そういった状況にありながら、これは内閣の青少年対策のほうにまかせてしまったらいいとか、国全体だとかいって逃げないで、がっちりと受けていくということ。これはほんとうは大げさにいえば文部大臣が学生一人一人に会って、それで全部の意見を聞いてやりたいというぐらいなお気持ちじゃないかと私は思うのですよ。あるいは教授一人一人に会って意見を聞いてやりたい。不完全ではありましょうけれども、ある程度それを具体的にあらわすことが機械的にできる世の中になっているのだから、それはぜひ実行なさらなければ怠慢であるというように私は思います。  それで、時間がありませんから過密過疎の問題を少々やりますけれども、これは今後決議案の形でもって各党と話し合ってまたやっていきたいと思うのでございますが、過密過疎の問題について、来年度予算の最重点事項には据えたというふうに私、聞いたのでございまして、省内の連絡協議会というのが夏のころでしたか設けられた、それがその後一体どうなっておるのか、そのことについて伺いたいと思います。
  297. 村山松雄

    ○村山説明員 過密過疎という現象につきましては、実は私ども一応気やすくそういうことばを用いておりますが、これが何をさすのであるか、その実態はどういうところであるのかということ自体が相当検討を要する課題でございます。したがいまして、その対策ということも複雑多岐にわたるわけでございますが、一つはっきりいたしておりますのは、特に過密のほう、人口の社会的移動が激しくて、人口が移動するところには子供がふえる、そのために既設の学校校舎では収容しきれないというところでは、根本的な議論は別といたしまして、さしあたりふえる生徒児童に対して、教室を確保するということは並行してやってまいらなければなりません。そこで、根本的な議論のほうは関係の省内局課の連絡協議会で、これはまた文部省だけでも処理しきれない問題の広がりを持っておりますので、場合によっては関係省庁とも連絡を持ちながら検討してまいるつもりでございます。  ただ、四十四年度予算につきましては、もうすでに概算要求を出しておりますが、そういう根本的な検討とは別に、少なくとも過密対策としての学校校舎の確保という問題を中心としてすでに要求いたしております。考え方といたしましては、例年学校校舎の建設につきましては、五月一日現在で実態調査をいたしまして、それで過去の実情並びに近い将来のあり方、推移を把握いたしまして、それに基づいて計画を立て概算要求をしておるわけであります。過去におきましても、昭和三十九年度からの公立文教施設整備五カ年計画もそういう考え方でやっておりまして、これが四十三年度で一応終了いたします。そこで、ことしの実態調査は特に力を入れてやりまして、その結果、詳細は省略いたしますが、少なくとも将来三カ年の間に約一千万平方メートルの公立学校校舎の整備が必要だ。その中で、一般地域の不足校舎あるいは危険校舎の増改築等々の仕事は、従来やってまいったのとほぼ同程度のペースで今後も相当期間やる必要がある。それに加えて過密に対する校舎の確保としては、現段階ではまず小学校校舎に集中的にあらわれます。これをこなすためには小学校校舎において少なくとも前年の五割増し程度の面積を確保する必要がある、こういう考え方を基礎といたしまして四十四年度予算の要求をいたしておるわけでございます。これは、もちろん根本的な検討によって修正を要する点があればまた修正してまいりながら、地方の実情も把握しながら、絶えず必要な補正を加えながら実態に合わせてまいるつもりでありますが、さしあたりの問題といたしましては、そういう態度で事に対処している次第でございます。
  298. 有島重武

    ○有島委員 三十九年から四十三年にかけての計画でもっていままでやってきたわけでございますね。現在は、地方の場合ますます混乱状態におちいっております。これを近い将来とおっしゃいましたけれども、大体何年先を今度は目途にして仕事を始められるわけですか。
  299. 村山松雄

    ○村山説明員 年次計画というものの性格、とらえ方、いろいろあろうかと思いますが、現在の制度では、予算は御承知のように単年度主義であります。そこで、年次計画として相当年次の将来計画を立てましても、それをあらかじめ予算を拘束するような形で確立するということはなかなかむずかしゅうございまして、予算としては単年度ごとに処理しなければならぬわけでございますが、さればといいまして、単年度だけの計算では将来を見通して予算査定するということも困難であり、したがって、予算獲得にも迫力が出てまいりませんので、来年度の概算要求といたしましては、将来三カ年間についてはかなり具体的な数字を入れた見通しを立て、それが先ほど申し上げました実態調査によって出てまいった、将来三年間の所要量一千万平米というものがその全体目標でございますが、それを三カ年で割りまして、しり上がり年次計画というものを前提として、四十四年度は小学校校舎面積五割増しといった形を中心とした具体的な予算要求をしたわけであります。
  300. 有島重武

    ○有島委員 三年間でもってどのくらいの金額が要請されますか。
  301. 村山松雄

    ○村山説明員 事業量一千万平米で、現在それに対して国庫補助が行なわれるわけであります。一千万平米は小学校から高等学校、特殊学校まで含んでおりますし、国庫補助は事業の種別によって補助率、負担率を異にしております。補助率、負担率にいたしましても、必ずしも固定的でなくて、実情に応じて修正をしながらやってまいりたいと思っておるわけでありますので、一千万平米に対する国庫補助所要額金額を的確に申し上げることはかなりむずかしいわけでありますが、大ざっぱに申し上げまして、大体千三百億程度と考えております。
  302. 有島重武

    ○有島委員 いまの過密に対して土地を確保していく、それから校舎を確保し設備を確保していく、その三年でもって大体一千三百億ですね。
  303. 村山松雄

    ○村山説明員 ただいま申し上げましたのは土地を含んでおりません。それから校舎につきましても、全体事業量に対して国庫補助が二分の一あるいは三分の一と事業の種別によって異なっておりますが、現行の負担率で計算いたしまして、大体そういう金額になるわけであります。
  304. 有島重武

    ○有島委員 土地も校舎も含まないでやるわけですね、いまの計算は。現実に大体どれくらいかかるのだという見通しなんですか。こまかい積算のことはまた時間のあるときにやりましょう。大体このくらいのものはどうしてもかかるのだ、それを教えてもらいたい。
  305. 村山松雄

    ○村山説明員 建物につきましては、現在国庫負担制度がありますし、また、所要金額計算にいたしましても、所要の面積が出れば、構造比率によっておのずから単価が常識的に出てまいります。そこで金額が出るわけでありますが、土地につきましては、一体この建物をつくるために土地がどれだけ要るかということ自体が、建物の建て方によりまして非常に異なります。場合によっては既設学校の敷地内の増築で済む場合もございますし、増築で済まなくて、新しく校地を求めて建てなければならぬという場合も生じます。その場合、いかなるところにいかなる校地を求めるかにつきましては、地域によりまして非常に事情を異にしておりますので、単価の計算が中央でなしがたいという事情がございます。また、現在国庫負担制度がありませんので、土地につきましては設置者が確保する。その確保のための財源は、現在の制度ですと、大体地方の起債並びに自己財源ということになっております。そこで、土地についての所要財源の計算ということは、いま申しましたように非常に幅がございまして、目下のところできかねておる状況でございます。
  306. 有島重武

    ○有島委員 結論はわからないという話ですね。三年間にどのくらいかかるかわからない、そういう話ですか。こまかい話はまたゆっくりやりましょう。
  307. 村山松雄

    ○村山説明員 数字をもって申し上げることができないという意味では、はっきり申せばわからないということです。
  308. 有島重武

    ○有島委員 これははっきり見通しをつけてやってもらいたいと思うのです。三百六十五億という要求をされたようでございますけれども、この問題と本気で取り組んでいくというつもりでもってやっているのか。よくわからないというのでは非常にたよりないと思うのです。これは早急に目当てをつけてもらいたい。中央でもって計算できないというのだが、それは地方地方によって事情は違っていて、それぞれに要求はございますから、それを足し算していけばいいわけでしょう。これは早急に三年なら三年、五年なら五年の目途を立ててもらいたい。そういったこともわれわれは参考にして、こちらも全然できないことをいきなり要求して決議してもしようがないわけでありますから、現実的なことを主張して皆さん方のお仕事を応援していきたい、そういうふうに思っているわけです。そういった計算はいつごろできますか。
  309. 村山松雄

    ○村山説明員 用地の所要額計算は、これは前にも申し上げましたように、建物と違いまして、非常に極端な言い方をすると不可能じゃないか。と申しますのは、建物はどこへつくろうとも面積と単価が出れば計算できるわけでありますが、土地は、どこにつくるかによりまして、平米当たりの単価が非常に安いところもありましょうし、平米当たり何万円というところもありましょうし、これは積み上げ計算しなければ出てまいりません。したがって、設置者であるところの市町村においても、現在どこへ建てるという目途までは立っておらぬわけでありますので、計算することはできない次第でありますが、過去の実績を申し上げますと、最近の社会増地域につきましては、校舎の建設が既設校舎の増築だけではなかなか済まなくなっておりますので、校地をふやして増設あるいは新設するという事例がふえております。四十二年度あたりの校地取得の実績から申し上げますと、大体二百億から三百億程度、校地取得のために地方公共団体が経費を必要としておるようであります。これは将来ふえることはあっても減ることはないわけであります。おそらくしり上がりにふえるということが想像されますので、下の限度は一年当たり三百億ぐらい、そういうことはいえようかと思いますが、そもそも単なる当て推量以外の、多少とも根拠を持った数字説明することは現段階ではできませんし、実は早急にそういうことを申し上げることも、地方に照会いたしましてもなかなかむずかしい問題だと思います。
  310. 有島重武

    ○有島委員 わからないとできない、そういうお話でございますけれども、最後に大臣から、この過密過疎の問題に取り組むお心がまえをひとつ聞かしていただきたい。
  311. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 この問題につきましては、これまでもたびたび申し上げたような気がいたしております。われわれとしましても、学校教育上のきわめて切実な問題だというふうに思っております。文部省の明年度予算等のことを考えます場合にも、最も重要な問題の一つとしてこの問題は推進してまいりたい、そういうふうな考え方をいたしております。
  312. 有島重武

    ○有島委員 ぜひしっかりやっていただきたいと思います。たよりないのでは困ります。
  313. 久保田藤麿

    ○久保田(藤)委員長代理 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後七時三十二分散会