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1968-10-25 第59回国会 衆議院 物価問題等に関する特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年十月二十五日(金曜日)    午後一時四十一分開議  出席委員   委員長 八百板 正君    理事 小笠 公韶君 理事 砂田 重民君    理事 竹内 黎一君 理事 唐橋  東君    理事 武部  文君       青木 正久君    木野 晴夫君       坂村 吉正君    山下 元利君       木原  実君    戸叶 里子君       有島 重武君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君  委員外出席者         公正取引委員会         事務局取引部長 吉田 文剛君         経済企画庁国民         生活局長    八塚 陽介君         経済企画庁国民         生活局参事官  小島 英敏君         国税庁長官   亀徳 正之君         厚生省環境衛生         局食品衛生課長 野津  聖君         厚生省環境衛生         局食品化学課長 小高 愛親君         農林省農林経済         局長      亀長 友義君         農林省畜産局参         事官      平松甲子雄君         通商産業省企業         局商務第一課長 小山  実君         通商産業省重工         業局電機通信機         課長      久留 義雄君     ───────────── 十月二十五日  委員大野潔君辞任につき、その補欠として有島  重武君が議長の指名で委員に選任された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  物価問題等に関する件  派遣委員からの報告聴取      ────◇─────
  2. 八百板正

    八百板委員長 これより会議を開きます。  この際、去る九月、物価問題等に関する実情調査のため、長崎県及び熊本県に派遣せられました派遣委員報告を聴取することといたします。武部文君。
  3. 武部文

    武部委員 物価問題等実情調査のため、議長の承認を得て先般当委員会より派遣せられました派遣委員といたしまして、長崎県及び熊本県における調査概要を御報告いたします。  派遣委員は、砂田重民君外四名であり、他に地元選出議員の御参加を得まして、長崎県及び熊本県の物価問題等実情について、つぶさに調査をいたしてまいったのであります。  まず長崎県につきましては、九月五日早朝より長崎魚市場及び長崎設卸売市場視察後、県庁にて消費者行政実情について説明を聴取し、引き続き消費者代表との懇談を行ない、次に翌六日、熊本県におきまして、やはり早朝より熊本総合市場視察後、酪農肉用牛及び草地改良事業等に関して、県畜産試験場農林省熊本種畜牧場阿蘇支場及び北山酪農組合牧場視察いたしてまいった次第であります。  以下順を追ってその概要を申し述べたいと存じます。  まず、長崎魚市場について申し上げます。本市場は、代表的な産地市場で、長崎駅構内に道路一つを隔てたところに位置し、開設者長崎県、卸売り人長崎魚市株式会社であります。本市場は、業界強化水揚げ率の急増に対処するため、県が漁港修築事業により、中の島に約二万平方メートルの埋め立て地造成を計画し、新魚市場建設に着手し、昭和三十一年、中の島突堤の完成に引き続き、市場施設建設を進め、昭和三十三年八月、県みずからが開設者となり、昭和二十三年六月に設立された長崎魚市株式会社卸売り人として新発足し、昭和三十九年四月長崎魚市場条例を制定し、本条例に基づいて運営されております。  仲買い人は、現在、発送仲買い人、地元売り仲買い人加工仲買い人を合わせて百四十七人で、そのほか運送業、製氷、製箱労務等業務を円滑にするため、これを付属営業人とし、市場内での営業を許可いたしております。  水揚げ高につきましては、四十二年度、遠洋底びき等で十五万トン、アジ、サバを主とする青物のまき網、小網等で七万二千トン、近海もの一万三千トン、合計二十三万五千トン、百八十九億二千九百万円であり、長崎県の総水揚げ量五十四万トンの約四六%を占めております。  仕向け地別出荷数量については、京阪神を主として、四十二年度、大阪府に二万九千トン、兵庫県に一万八千トン、愛知県に一万五千トン、東京都に一万四千トン等、十五都府県に合計十六万七千五百トンであり、県外水揚げ高の約七〇%を出荷いたしております。  なお、その輸送につきましては、冷凍車を主とする貨車輸送が七〇%、トラック輸送が三〇%を占めております。ちなみに輸送に要する時間を申し上げますと、たとえば、東京には貨車によりますと特急で約二十七時間、急行で五十一時間、トラックによりますと三十六時間で直送いたしておるとのことであります。  本市場視察の当日は、特に入荷量の少ない日とのことでしたが、その鮮度の高いこと、接岸船から直ちに行なわれる選別、計量箱詰め作業及びスラットコンベヤーによる冷凍車への積み込み作業等から、さすが生産地市場であるとの感を深めた次第であります。  なお、長崎県からは、漁船の大型化並びに水揚げ高増加により、接岸水深及び岸壁不足荷さばき所狭隘を来たし、さらに車両の増加による市場内外道路幅員駐車場不足によって、市場業務の停滞を来たしている実情から、第四次漁港整備計画による長崎漁港尾上岸壁及び荷さばき用地建設早期実現について御尽力をお願いするとともに、当該用地建設する荷さばき施設についても国庫補助対象とされるよう願いたいとの要望が述べられました。  次に、長崎設卸売市場について申し上げます。本市場は、蔬菜及び果実卸売り市場で、長崎魚市場に隣接し、海を背にして、魚市場に通ずる道路に沿った幅約三十メートル、長さ約二百メートルの細長い市場であります。敷地面積は、蔬菜売り場二千百六十平方メートル、果実売り場千七百二十八平方メートルと、東西の駐車場を合わせまして、四千六百平方メートルであり、有効売り場面積は、仲買い店舗を除いた二千六百八十平方メートルと、売り場狭隘のため売り場として使用している駐車場並びに道路面積を合わせて約四千三百三十平方メートルであります。  本市場昭和三十四年九月都市計画に基づき、旧魚市を市が買取の上開設し、ここへ移転したものであります。  卸売り人は、蔬菜を主とする長崎青果長崎天満青果長崎丸協青果と、果実を主とする丸富青果文長青果の五株式会社であり、年間総売り上げ高は七万三千三百五十トン、三十九億六千万円でありまして、野菜につきましては県内産が五九%、県外産が四一%であり、果実につきましては県内産が四〇%、県外産が五九%、転送入荷が一%となっております。  視察いたしましたところでは、何としても売り場面積狭隘を感じた次第であります。  卸売り代表からの要望としては、移転当初より逐年の取り扱い量増加に伴う現在の狭隘実情にかんがみ、市民食生活上欠くべからざる青果物価格の安定と、その確保のため、現市場整備拡張について御援助願いたいとのことでありました。  なお、長崎魚市場及び青果市場とも、その拡張につきましては同一場所を希望いたしております現状からいたしまして、本問題の解決には県と市との調整が第一の課題であると思われましたので、この点を申し添えます。  次に、長崎県庁における消費者行政事情聴取並びに消費者代表との懇談について申し述べます。  長崎消費者行政概要につきましては、昭和三十八年四月、消費者行政を含め、広く生活行政必要性を認め、他の都道府県に先がけて、文化と生活を組み合わせた文生課を当時の企画室に設け、消費者保護消費者教育物価対策の三本の柱を立て、当面の消費者行政対話行政であるとの認識のもとに、離島の多いこと、深い入江、海に迫る山と谷に開けた耕地等地域的特性を考慮しつつ、各地で消費者の声を聞く会、消費者問題地域別懇談会買いもの座談会などを進め、五島、壱岐、対馬等五カ所に消費生活相談所の看板を掲げて窓口を開くとともに、移動消費生活相談所を適時開設して住民との対話を行ない、消費者の声を行政に反映させるようつとめ、同年十二月には、文生課と新生活運動推進連盟本部が共同して月刊「消費生活」第一号の発行を見、現在すでに五十号をこえ、発行部数六千部となっております。  次いで四十年、長崎消費生活懇談会を発足させるとともに、新生活運動推進連盟本部は、その名称を長崎県豊かな生活創造運動協議会と改め、この協議会生活学校運動を始めたのであります。  この生活学校は、三十八年以降消費生活行政一環として実施してきた消費者行政業界との意見交換会が移行発展したもので、当初は、長崎に三校、佐世保に二校開校いたしましたが、現在三十一校を数えるほどに発展いたしております。  四十一年四月より企画室企画部と改め、内部機構充実をはかり、新しい業務として特定地域生活向上対策事業を開始いたしたのであります。  四十二年におきましては、県民関心を高めることに重点を置き、長崎生活者大会消費生活展、一日公正取引委員会牛乳問題懇談会などを開催するとともに、消費生活モニター制度を取り入れたのであります。  また今年四月には、技術革新の進展と大量生産方式一般化に伴う販売競争に対処するための消費者の強い要望に応じて、買いもの相談商品テスト、展示などの機能をあわせ持った生活科学室を設けております。  以上が過去五年間の長崎生活行政概略でありますが、県民消費者意識の高揚と生活行政への関心にこたえるためにも、生活行政推進の目標を、一、消費者保護消費者教育中心とする消費生活対策推進、二、低所得地域生活意識向上健康管理中心とする特定地域対策推進、三、生活学校村づくり職場づくり環境づくりの四つの運動を進める豊かな生活創造運動推進の三点に置き、施策を進めているとのことであります。  なお、県当局から、本年五月の消費者保護基本法の制定と相まって、消費者保護については、消費者の安全を確保するため、監視体制の一そうの強化を進めるとともに、消費者教育についても、学校教育の中に商品基礎知識等を大幅に取り入れるとともに、都道府県の行なう消費者教育推進に必要な制度施設充実について、格段の御配慮をお願いしたいとの要望がありました。  次に、消費者代表との懇談概略について申し上げます。  御出席になりました代表方々は、長崎市あるいは佐世保市からお集まりいただいた方々で、いずれも生活学校代表者方々十四名であり、約一時間にわたり十三名の方々から一人一問題づつ、問題によっては具体的に商品を提示するなど、非常にきめのこまかい、しかも活発な意見及び要望が述べられたのであります。  概略を列記して申し上げますと、  一、食管制度の再検討、古米の取り扱い問題等について、一般消費者が納得するような解決をはかるとともに、消費者米価値上がりはこれを抑制すべきである。  二、本県鮮魚生産県でありながら、その小売り価格は、必ずしも安くなく、特に天災の場合には価格の上昇も見られる実情にあるので、安くかつ多量の鮮魚が供給されるようにしていただきたい。  三、食肉安定供給をはかり、価格の安定をはかっていただきたい。  四、離島、辺地の多い本県特殊事情が一原因となり、長崎県のLPガス小売り価格全国水準より高くなっているので、家計負担軽減見地から格別の配慮を願いたい。  五、電力公共的性格にかんがみ、課税方法改善等による全国的な価格調整をはかり、他地区と比較して割り高となっている九州地区電力料金の引き下げに尽力されたい。  六、メートル法の完全実施並びに量目不足勧告公表実施等計量適正化を進められたい。 七、再販価格維持契約制度現状は、末端価格を硬直させ、消費者に不当な経済負担をかけているので、本制度早期撤廃をお願いしたい。  八、生活物資の正しい表示を確保するととも に、不必要な外国文字を排し、たとえば日本文字による商品名を考案するなど、指導にあたって配慮してほしい。  九、技術経験の差を考慮せず、最低料金のみを定めている現在の理美容料金認可制度については、サービスの低下、料金の安易な引き上げなどの弊害が見られるので、消費者保護立場から再検討されたい。  十、一日最低七十種類にも及ぶ食品添加物を摂取している現状にかんがみ、監視体制強化有害食品添加物の排除をお願いしたい。  十一、特に野菜、果物に付着し残留する農薬消費者の不安を招いている実情から、農薬利用制限など、取り締まりの強化をはかられたい。  十二、近年の社会経済事情変化に伴い、国民福祉増進見地から公害の抜本的対策をはかられたい。  十三、消費者保護基本法及び決議における自主的活動促進の趣旨に沿って、関連施策強化とともに生活協同組合の健全な育成について格段の配慮をお願いしたい。  以上でありました。  これら各問題につきましては、各派遣委員よりそれぞれの立場から、国会における関係論議並びにその経過考え方、及び姿勢あるいは感想等が述べられた次第であります。  次に、熊本県について申し述べます。  まず、熊本総合卸売市場について申し上げます。本卸売市場は、消費地市場でありますが、その特色といたしましては、自県のみならず他県にまでわたる流通機構をかかえているにもかかわらず、市場用地、催物並びに隣接して設置されている鮮魚塩干物等問屋団地までの一切が民営で建設、運営され、その取引内容及び取り扱い量を見ますと、ほとんど中央卸売市場に匹敵するものと言っても過言でないものであります。  魚市場開設者株式会社熊本魚市場で、卸売り人熊本魚株式会社大海水産株式会社であり、仲買い人七十七人と、六十三人の売買参加人が置かれております。  敷地面積は約四万五千平方メートルで、そのうち鮮魚卸売り場は四千八十平方メートル、仲買い売り場は二千二百八十平方メートルであります。  昭和四十二年度の取り扱い高は約四万一千五百一トン、五十七億五千八百万円に及んでおり、昭和三十五年の売り上げ高二十一億三千三百万円を一〇〇とした場合、その二七〇%となっております。  なお、運営は県条例に従って行なわれておるとのことであります。  販路は、熊本全県下に及ぶとともに、福岡県大牟田、久留米、大分県竹田市近郊、宮崎県高千穂、鹿児島県出水市近郊に及んでいるとのことでありました。  われわれが魚市場視察いたしましたときは、すでにせりが済んだ後でありましたが、仲買い人売り場におきまして、ちょうど調理作業が行なわれており、仲買い人の持つ役割りというものを実感をもって見ることができた次第であります。  次に、青果市場について申し上げますと、開設者卸売り人ともに、熊本大同青果株式会社株式会社西村青果であり、買い受け人として仲買い人及び買参人を置き、任意取引で規制は行なっておらないとのことでありました。  敷地面積につきましては、大同青果が二万六千平方メートル、西村青果が一万一千八百八十平方メートル、計三万七千八百八十平方メートルであり、そのうち、卸売り人売り場としては、大同青果が六千三百平方メートル、西村青果が六千四百三十五平方メートル、計一万二千七百三十五平方メートルであります。  昭和四十二年度の取り扱い高は、蔬菜が六万二千二百トン、二十二億一千万円、果実が一万六千四百六十トン、十一億一千万円、合計七万八千六百トン、三十三億二千万円で、昭和三十八年の売り上げ高十五億一千万円を一〇〇とした場合、その一八九%となっております。  われわれの視察いたしました感じを申しますと、前日の長崎市設の青果市場が非常に狭隘に感じられたためか、広々として、荷も秩序整然と並べられており、したがってせり状況長崎に比べゆったりとした感を抱いた次第であります。  なお、両市場理事者との懇談におきまして、開設当時は、約二十年以上は十分な面積であると思っていたが、予想以上の伸びであり、この先十年後を考えた場合、交通量の増大ともあわせ、まだ約五万坪程度の拡張が必要であると思われる。また、中央卸売市場法の適用を受けるべきかどうか、現在検討中である等の意見が述べられました。  次いで熊本県畜産試験場におきましては、今日の農業の現状考え畜産経営について、小労働力による経営生産性向上を目ざした試験研究、牛の役使用がなくなり、食肉牛に転じてきた現状に対応するための改良研究平坦地における草のみの肉用牛肥育に関する研究凍結精液実用化に関する研究等について説明を聴取いたした次第であります。なかんずく肉用牛改良について、交配研究の結果を実際の牛について観察いたしましたことは、まことに興味深いものがありました。  なお、県当局より次の要望事項がありました。  一、国の直轄による山地における草地畜産開発調査事務所設置  二、国立草地畜産試験場等設置  三、国立草地畜産研修所設置  四、九州ブロック公共育成牧場建設及び助成措置  五、国営の草地畜産開発基幹道路建設  六、九州ブロック凍結精液供給センター設置及び助成措置  七、草地開発関係制度の改正  次に、農林省熊本種畜牧場阿蘇支場におきましては、山岳地帯における採草地放牧地耕作研究、牧草の月別生産量、特に最盛期最小期との平均化肉用牛一日当たりの増体量及び若齢肥育牛についての両者の関係等について説明を受けた後、採草地、乾草の合理的貯蔵方法放牧及び耐寒研究等実地について視察いたしたのであります。  最後に、われわれは北山酪農組合牧場視察したのであります。  本牧場阿蘇地域規模草地改良事業一環として、四十七人の組合員による協業経営によるものでありますが、その実際を目にいたしまして、なかなか困難な事業であるにもかかわらず、よくここまで実現したものであるとの感を抱くとともに、各組合員のかたい結集の結果があってこそこの実現を見たのであると、あらためて感を深くした次第であります。  なお、組合長より、農協融資の金利が高いことと、木事業の将来の発展のためにも、現代の若者の中から、かくやれば牧畜経営は可能であるとの考えを身につけたほんとうの後継者実地に養成できる研修機関設置をはかられたいとの強い要望が述べられた次第であります。  以上、長崎熊本両県にわたる調査概要を申し上げまして、派遣報告を終わります。(拍手)
  4. 八百板正

    八百板委員長 以上で派遣委員報告は終わりました。      ────◇─────
  5. 八百板正

    八百板委員長 次に、物価問題等に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。武部文君。
  6. 武部文

    武部委員 前回の当委員会で、ビール値上げ直後に、経済企画庁長官及び国税庁の、酒類販売免許について種々の報道がなされました当時、間税部長の御出席をいただきまして、この酒類販売業免許等取り扱いについて、ビールあるいは酒の値上がり状況その他から見て国税庁見解を求めたわけであります。いろいろお話がございましたが、結論からいうと、最高責任者長官からひとつお伺いをいたしたいと、こう思いまして、きょうは御出席をいただいたわけであります。  これはビール値上げが最終的にきまりました。たぶん翌日だったと思いますが、九月の十二日、宮澤長官記者会見の模様が新聞報道されまして、それを拝見をいたしました。その報道によりますと、これは前回会議録の速記でありますが、国税庁長官もこの酒類業免許については、酒類行政自由化について本気で考えておる、こういうような報道がなされまして、自来、その二、三日後、同じような報道が各新聞報道されました。ところが九月十九日の参議院委員会国税庁長官がお見えになって、この酒類免許についての答弁をされておりました。一週間たったあとで非常に内容が変わってきております。これは非常に不可解でございましたので、宮澤長官にその間の経過をお聞きをいたしました。十二日の日、間違いなく、そこにお二人おられるわけでございますが、国税庁長官も自分の意見に賛成である、こういうことをお述べになりました。酒類免許について、国税庁長官はどういう御見解を持っておられるか、最初にお伺いをしておきたいと思います。
  7. 亀徳正之

    亀徳説明員 若干の誤解がおありではないかと思いますが、私もかねがね、酒類行政のあり方が現在のままでいいとは決して思っておりません。また、酒類行政と申しましても非常に幅広うございまして、対象ビール、清酒、また製造、販売、その中でいま御質問の点は、特に販売面免許という点に限っての御質問でございますが、酒類行政全般を通じまして、大きな流れとしては、やはり自由化といいますか、そういう大きい方向で進んでおるのではないか。それをきめこまかく実情に合うように実現していくという私の基本的な気持ちは変わりはございませんし、また宮澤長官にも、いろいろお話のときにそういう基本的な私の心がまえ、そういったものをもちろんお話し申し上げたことはございます。ただ、酒類免許を、一気に全部免許制度撤廃するとか、非常に急激な変化を与えるような改革をやるということは、私、考えておりませんで、これはやはり実情に合うように処理していかなければいけない。また、参議院物価対策特別委員会でも、基本的な免許制度をここで全面的に撤廃だ、急にどこでも酒を売っていいようにするということは現在とうてい考えられないことであるけれども、さりとて、現在の通達運用がこれでいいかどうかという点は、いろいろ問題がありますし、その運用合理化というか、そういう点は前向きに考えなければいけませんし、また、そのためにいろいろくふうもいたしておるというふうにお答えした次第でございまして、私自身の気持ちの上では、その間に大きな変革があったようには考えておらないのであります。
  8. 武部文

    武部委員 いまのお話を聞きますと、実情に沿うように運用の面で前向きに考えていく、こういうような御答弁であります。九月十九日の参議院物価委員会会議録を見ますと、長官答弁は、五千五百三十三億にのぼる酒税の重要性考えるならば、免許制を自由にして業界に混乱を与えるようなことは好ましくない、免許制をやめる考えはない、こういう答弁であります。  そこでお伺いするわけでありますが、あなたのほうから各国税局を通じて税務署に通達が出ておる。国税庁長官通達、四十年八月四日、これは前回も問題にしたのでありますが、ひとつ長官意見を聞きたいのであります。  免許要件に二つありまして、人的要件、その他の要件と二つある。端的にお伺いいたしますから、簡単にお答えいただけばいいのです。人的要件に、なぜ、酒の販売をするのに五年ものそうした調味料とか酒関係営業をしたという実績がなければならぬのか。非常にこれは単純な商売なんであります。前回申し上げましたように、別にカクテルをつくって売るわけじゃないのですから、これは非常に簡単な商売でありますが、なぜこういう、経験を特に五年というようなことをおつくりになっておるのか。これはあなたの通達なんです。  それから第二は、ここが問題なんです。こういう要件が、たとえば距離とか需給の要件が整っておっても、当分の間、生協とか農協とか、そういうものをさしておるんだと思いますが、免許してはならぬ。しかし国税局長が認めた場合には、酒場や旅館や料理店等酒類を取り扱う接客業者であっても認めてもいい。これが非常に私ども不可解なのであります。なぜこういう通達をことさらにあなたのほうがお出しになるのか、これは非常に疑問でありまして、間税部長からもいろいろ御答弁をいただきましたが、どうも納得できないのであります。したがって、当分の間とは一体いつまでなのか、それからなぜこういうただし書きをつけて、旅館や料理屋や酒場に酒の小売りの免許を与えなければならぬのか、そのことをひとつお伺いしたい。
  9. 亀徳正之

    亀徳説明員 いろいろ、むしろこまか過ぎるように書いて若干の誤解もあるような書き方になっておりますが、基本的な考え方はやはり酒税の保全という見地が頭にかぶっておりまして、こういう免許制度ができております。したがってそういう観点から、やはりどうしても資力というか、経験というか、また酒の需給状況から見まして弊害がないようにという観点からいろいろくふうをしなければならない。先ほどの御質問はその第一点の人的要件でございまして、やはりある程度経験がなければいけないではないか、また同時に資力というものも問題にいたしておるわけでございますが、経験のところで若干、いまおっしゃいましたような、酒、調味料で五年、その上におおむね——たとえばそういう判断というときに、端的に申しますとそういう経験の方は非常になれておられるという意味で、そういう趣旨が書いてあるのでございますが、やはり実情を調べてみますと、いろいろたくさん申請があって、なかなかどちらにもおろせないという感じで断わるときに、どうしてもいまおっしゃいましたような機械的な点をたてにとって拒絶するという実情も率直にいってあるようであります。そこはある程度の一つの感じをつかむ意味で書いたつもりでございますが、若干どうもその辺はやはり誤解を招きやすい。したがいまして、むしろわれわれが下部に注意いたしておりますことは、そういうことで機械的に指導してはいけない。むしろそういうことを機械的にとってそれを却下する、それだけを機械的にたてにして却下するということがあってはならないということを逆に注意いたしておるような次第でございまして、われわれもやはり免許の上にあぐらをかくといいますか、ということであってはならないという見地からいろいろ指導していきたい。そういう点で、むしろ運用上いろいろ御指摘のような問題もございますので、私たちもその点を率直に反省して適正に処理したいと考えております。  御質問の第二点の、おっしゃいますように、原則として与えないもののうちにいまの生協、それから旅館、飲食店というようなものが例示してございまして、旅館、飲食店のほうに逆に、ただし書きに、特別の場合には国税局長が認めた場合はということで、国税局長が認めればすぐそれがおろせるような印象のふうに読めるような規定になって、確かにその点誤解をお与えして申しわけないと思っておりますが、実情は先生が御心配になる方向とは全く逆でございまして、旅館、飲食店で許可している例はまず皆無に近いような状況でございます。昨年一件でございますが、それもちょうどそこに飲食店をやり何をやり、そうしてそこに許可をしたというケースでは全くないので、たまたまその人が非常に離れたところで飲食店ですか、経営しておりまして、駅前の全然別個の場所に支店といいますか、別個に酒屋を開くのを許可したという例で、むしろ許可のときの条件に、それを飲食店で売るようなことがあってはいけないという条件を付しておるような状況でございます。むしろ話は逆でございまして、一度酒の小売りの免許を得て酒屋をしておられた方が、いつの間にか資産も得られ、また料理屋を別個に開く、こういうケースはあるのでございます。逆に、いまある旅館とかそういうものにそういう免許を与えるということは、むしろ皆無に近い状況でございます。  それからなお生活協同組合その他につきましては、やはり販売対象がその会社なり何なり特殊なところに属しておられる方々だけだということによるものでございまして、最近生活協同組合につきましても員外利用の許可が出るケースが非常に多くなっているようでございまして、そういった場合には一般の考え方と同じように処理する。しかしそうはいいましても、すでに相当小売り業者の方がおられるわけで、白地にものを書くようなわけにはいかないと思いますが、生協なるがゆえに特別なあれをするというよりも、やはり需給関係その他を見て判断しておる。ちなみに、生協につきまして現在百九十七件許可がおりているというような状況でございます。
  10. 武部文

    武部委員 大体のことはわかりましたが、この通達はたいへん誤解を生むような通達内容になっておると思います。また現実から少しかけ離れたような内容にもなっておるのではないか。そこでこの長官通達撤廃されたらどうかということを前回も主張いたしましたが、それを急にやると、一気には混乱を招くんだというような答弁もございました。ところが、先ほどの長官説明によりますと、機械的に指導してはいけないというようなことをおっしゃっておるわけですが、全くこれは逆で、機械的もいいところで指導がなされておるのであります。  これを具体的な例で申し上げます。生活協同組合は全国で各税務署長に申請をいたしました。それに対する税務署長の回答がそれぞれ出ております。大別してみますと、免許を与えられないという理由に、酒類の需給の均衡のため、販売業者の数をふやすと過当競争になる、生協だからだめである、国税庁の方針だからだめだ、例がないからだめだ——これはとんでもないことを言っておるようでありますが、前例がないから許可できぬ、こういうことを言っておる。また近くの業者の承諾がとれぬからだめだ、こういうのであります。これが現実に各税務署長の生協の申請に対する答弁であります。全くこれは機械的にそういう答弁がされておるといわざるを得ないのであります。一つ一つ具体的にあります。どこの生協に対してどこの税務署長がどう言ったかということは全部わかっておるわけであります。こういうことでは全く機械的にこの通達運用しておるといわざるを得ないのであります。  長官前回おられませんでしたので、私はぜひお聞きいただきたいのでありますが、それどころか、免許をたてにとって、税務署長が自由価格であるべき酒の値段にまで介入しておる、この事実を私は申し上げました。現実に私は北海道へ行って調査をしてきたわけでありますから、これはうそでも何でもない。当時現地の新聞にも大々的に報道された内容であります。お聞きになっておると思いますが、釧路の税務署長のとった態度であります。洋酒を安売りしたところが、それに対して文句をつけてきた。この洋酒を安売りしたところは太平洋商事、それから十条サービスセンター、これはいずれも太平洋炭礦、十條製紙の関係の、生協とは若干違いますが、すでに免許がおりておるのであります。そこで洋酒の安売りをしたところが、税務署長から、安売りをしてはいかぬ、もし安売りをするならば次の免許の更新の際に考慮せざるを得ないというようなおどかしをかけておる。そのために、免許を取り上げられては困るからというので、安売りをやめた。利用者から投書が行政監察局に来て、行政監察局がこれを調査をし、世論の背景もあって、税務署長はこれを最終的には認めた、こういう例があります。これは私が現実に北海道へ行って調査をしてきた事件であります。  いま私が申し上げましたように、四十年の八月四日の長官通達を全く機械的にやっておる。それよりもむしろ、釧路のように税務署長が安売りにまで介入をして圧力をかけるというようなことは、これは許されないと思うのであります。こういう点について、将来、国税庁長官としては、こうした生協等について——さきに員外利用の話もありましたが、今度消費者保護基本法立場から、われわれは員外利用を生協に認めるべきであるという検討をいまいたしておるのであります。そういう点から、生協の申請の許可については一体どういうお考えで臨まれるのか。具体的にいま私が申し上げたような五つ六つの例がありますが、どういう点についてどうお考えになるか、これをお聞きしたい。
  11. 亀徳正之

    亀徳説明員 お答え申し上げます。  この通達の改定という点につきましては、いろいろ最近出された通達がございます。またこの通達に対する批判はいろんな角度からあるわけでございます。また逆にいえば、たとえばいまある販売数量が相当ふえたという観点をとらえていろいろ見る場合に、だからやはりもっと場数をふやしてもいいじゃないかという議論とともに、一場数当たりの平均販売数量というものをもっと高い水準に上げていいじゃないかという販売側の意見も実は強いのでございまして、これの全面的な改正にいま踏み切るかどうかは、率直にいってなかなか問題が多いかと思います。しかしその運用につきましては、先ほど申し上げましたように、実情に合うように処理したいと思いますし、先ほどの、生協なるがゆえに今度は逆にじゃんじゃんおろせというわけにもまいりません。やはり酒の需給関係その他の状況に合致すれば免許をするということに相なろうかと思います。  ちなみに、先ほどの御質問の中ではないのでありますが、若干補足的に御説明しておいたほうがいいかと思います。先ほどの釧路のお話、やはり署長のいろんな発言の中に、率直にいって行き過ぎた面もあったかと思いますが、実情は、私もちょっと心配しましてさっそく調査いたしてみたのでございますが、その安売りの度合いが実は相当極端な安売りでございまして、そういうことになるなら百貨店もと、こういうぐあいで、全体の需給上に与えるその度合いが非常に激しかったものでございますので、問題があって署長がそういうあれをして、発言のしかたについてはいろいろ問題があったかと思いますが、そして結論的には安い値にしますが、先ほど申したような極端な値下げでなしに、若干の値下げはもちろんやりましたが、極端な値下げを逆に自粛をしていただいたというようなのが実情でございます。ここにも、何といいますか、われわれの立場といいますのは、極端な乱売でお互いが値くずれして、極端な混乱が起きるようなことがあっては困るという他面の要請もあるんだということも御理解願いたい。  しかし、いずれにしろやはりこの価格問題というものはなかなかデリケートでございますし、われわれの行政の分野も、むしろたとえば清酒でいえば特級とか一級、こういうものについては、非常に銘柄のいいものは高く売れるし、そうでないものは低いし、しかしまあ極力大衆的なものについてはあまり極端なことにならないようにというふうに、段階的な指導も考えなければいけませんでしょうし、なかなかこの辺は今後むずかしい問題であろうかと思いますが、われわれも行政が万能だと考えておるわけではありませんし、やはりしょせんは一つの経済原則というものが冷厳に働く中で、同時にわれわれは酒税の保全という立場とどう調和させていくかということが、私たちの基本的な課題であろうかと考えております。
  12. 武部文

    武部委員 たいへん大事なことをおっしゃったわけですが、すでに許可を受けておる業者が、いまあなた方がおっしゃったのは極端なという、極端というのはこれは判定が非常にむずかしいのです。すでに許可を受けておる業者が極端な値引き、安売りをした場合にはその免許を取り消すというようなことのお考えはあるのですか。
  13. 亀徳正之

    亀徳説明員 その点は若干先生のおっしゃった点にも誤解があるように思うのですが、免許の更新というものは実はないのでありまして、極端なことをやれば免許の取り消しがございますが、いま言った状況でほんとうに取り消すと言ったかどうか知りませんが、免許の更新というようなことはございません。先生御発言のこの間の速記録を拝見いたしましたところ、次の免許の更新のときに許可しないというふうにおっしゃっておりましたが、そういうことはございません。ただ、非常な値引きといいますか、極端な値を引いての話でありましたので、その点は税務署長が注意したことは事実のようであります。そのためにいま直ちに免許を取り消すということは考えておりません。
  14. 武部文

    武部委員 私の申し上げましたのは、更新ということを言いましたが、それは確かに間違いであります。しかし、いまおっしゃった極端なということは、一体どの辺で線を引くのか。自由価格である酒を損をせぬ程度で売っておった。それを非常に安売りだからといって税務署長が一々文句をつける、そういうことが許されていいかということについて私は問題があると思うのです。あなたのほうは国税庁という立場から酒税の確保、酒税の確保のために免許制度が必要だという。それなら砂糖消費税の確保のために砂糖について免許制が必要かという逆論も成り立つと思うのです。とにかく物価問題特に値段の問題について、あなたのほうは税金という立場からこういう一つの免許権を持っておる、そういう役所が一々税務署長を通じてやるということについて、たいへん大きな問題だと思うのです。値段について一体どの程度が極端なのかという判定はなかなかつきがたいわけですが、税務署長が一々そういう問題について口をはさむということについては問題があると思うのですが、この点はいかがです。
  15. 亀徳正之

    亀徳説明員 いま全般的にそういう点で税務署長が一々介入しているという事実はございませんし、いまおっしゃったような事例は非常にレアなケースでございましたので、私もそういうことがあるのかと思って逆に詳しく調べましたわけです。むしろそこの具体的のケースを私申し上げるのは避けたほうがいいかと思いますが、非常に前からのいろんな関連ということがございまして、何と申しますか、むしろ現状はほどいいところにおさまっておりますので、私はそこのこまかい実情をああでもない、こうでもないと言うことは差し控えたいと思います。やはりマージン、あらゆるものを切って損してでもともかく乱売して——結局小売り業者のほうも売った金をメーカーに払わなければいけないわけで、     〔委員長退席、砂田委員長代理着席〕 無理な安売りをしていてメーカーにも払えないということが、回り回って結局はメーカーが酒税を納めることもできないというような事態があってはいけないという意味で、いまおっしゃったようなケースはまことにレアなケースで、ほとんど実際問題としてはまず皆無に近い話で、聞いてみれば非常に特殊な事態であったので、むしろ一般論として御議論願うのにふさわしくない問題かと私は考えております。
  16. 武部文

    武部委員 それじゃ最後になりますが、前回間税部長から十年間のビールあるいは酒の数量等について具体的な数字の説明を受けました。それから小売り販売業の軒数についても報告を受けました。これによると、大体蔵出しは四倍になっておる。ところが十年間に小売り業がふえた軒数は約一割程度である、こういう具体的な数字がわかったのであります。いま長官は、メーカーが酒税を納めることが困難になるというようなことをおそれておられるようでありますが、そういうことは私どもから見るとあり得ない、こういうふうに考えるわけであります。四十年八月四日のこの通達、これを撤回される意思がないようでありますが、しかし、おっしゃるように、機械的に指導してはいけないということを言っておられるわけでありますから——先ほど申し上げるように、どうも機械的に各国税局なり税務署長はおやりになっておるようであります。これでいろいろ問題が出ておるわけでありますから、ひとつ機械的にならないように、いまの生産量の推移、需給の推移等を見て適正な指導をおやりいただきたい、そのように思いますが、いかがでしょう。
  17. 亀徳正之

    亀徳説明員 おっしゃるとおりに、逆に通達の中身が非常にこまかく書き過ぎているために誤解を招いている点もございますし、それから機械的に処理している点があることは、率直に言ってございますので、むしろ指導といたしましては、そういう機械的でないように、同時に実情に合うように、円滑に適正に執行していくように努力いたしたいと思います。
  18. 武部文

    武部委員 それでは次に経済企画庁長官にお伺いいたします。  前回消費者物価のこれから先の見通しはどうなるだろうか、また特に原因等についていろいろやりとりいたしました。私も会議録答弁を全部読ましていただいて、長官はこの消費者物価上昇の原因についていろいろお述べになっておりますし、将来の見通しについてもいろいろございました。当時から一カ月ばかり経過するのでありますが、昨年の上期の消費者物価の値上がりは、総理府統計によって三・一%。ことしの上半期の上昇は五・七%。これは企画庁がお述べになったとおりであります。上半期に大体二・六%去年よりも上がっておる。後半については、われわれはいまの動向から見ると、去年の同一視することはできないだろう、こういうように申し上げました。去年の下半期は五・四%であります。その数字は、結果的に平均して四・二という数字に落ちついておるのであります。その中で特に宮澤長官は、去年五・四であった、そのときには消費者米価は一四・四%上がっておった、ことしは約八%であります、そこで、そうことしは去年のように下半期において高い数字が出ると思わないというような趣旨をお述べになりまして、四・八という数字についてはこれを改めるところの考えはない。われわれは何回か、何人か、四・八というような数字はもうこれはだれも信用しないし、率直にこれはお認めになって、もうこれはだめだから、新しい数字を述べて、新しい対策を立てるべきではないかということを述べてきたのでありますが、本年上期の物価上昇は五・七%であります。これは去年に比べてたいへんな高い数字になっております。特に九月は東京都の物価指数が三・八と、十五年ぶりに上がったという数字が発表されております。十月の東京都の物価指数は本日の夕方でないとわからぬそうでありますが、おそらくや九月の七・四%という数字をはるかに上回った数字が出るのじゃないだろうかという予想すらできるのであります。残念ながらきょうの夕方でないとわかりません。わかりませんが、九月が七・四であったということから推測すると、この十月の東京都の消費者物価の数字は相当高いものが出るのじゃないかということが推定できるのでありますが、今後の見通しについて、一カ月前といまと、長官どういうふうにお考えになっておるか、これをお伺いしたいのであります。
  19. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 前回申し上げたことと大筋においては変わらないことを申し上げることになると思うのでありますが、御指摘のように、上半期の消費者物価の上昇は前年度対比で五・七でございます。これには二つの要因がございまして、今年度に入りましてから、年度内毎月の上昇がかなり見られるということと、もう一つ、前年度対比を問題にしておるわけでございますから、前年度が上期に物価が上昇せずに、むしろやや低落をしたというその二つの合成の要因で上期に五・七という上昇が見られたわけでございます。そこで、せんだっても申し上げましたことは、今後残りの期間、十月から年度末まで、今後消費者物価が低落するということはあるいは申し上げられないかもしれませんけれども、しかし比較すべき前年度が十月ごろから物価が急上昇しておるのでございますから、それとの対比において、上半期五・七であったから、したがって下半期はもっと大きくなるであろうと考える理由はない、こういうふうに申し上げたわけであります。それで、それとの関連で消費者米価が云々というととも確かに申し上げたわけでございます。  それでございますから、その考え方の筋をたどってまいりますと、九月の東京都が前年対比で七・四%であった、したがって十月の東京はそれよりももっと上にいくだろう、かりにそうなれば、それは武部委員の言われることが正しいということになりますが、私どもはそうではなくて、九月が前年九月対比でかりに七・四であったとしても、十月は、たとえば前年の上がりが大きく上がったわけでありますから、今年と前年度対比でその七・四がかなり落ちてもいいはずだ、私どもはそういうふうに実は考えておるわけでございます。それでございますから、上期が五・七でございました。そこで、年度を通じて四・八で済ませ得るためには下半期が三・九でよろしいわけでございます。昨年の下半期があれだけ大きく上がっておりますから、そのこと自身はもう不可能だぞ、こういうふうに断定してあきらめてしまうことは、何もそうしなくてもいいんじゃないかということを申し上げておるわけなんでございます。
  20. 武部文

    武部委員 私どもの見通しとその辺がちょっと違うわけですね。あなたのほうは専門家ですけれども、現実の数字が物語っておるのですよ。それで、おっしゃるようにことし四・八にするためには、前年に比べてことしの上半期は五・七ですから、少なくとも三%台でないとあなたのおっしゃっておる四・八にならないのです。ところがいまの推移をずっと見ると、三%台などということはおそらく長官考えておられないと思うのだけれども、四・八をくずすというとどうもぐあいが悪いとお考えになっているからえらく固執されるのでしょうが、数字がすぐ出てくるのですよ。そのときに、いやそれはもうしかたなかったでお済みになりますか。われわれは少なくとも下半期が三%台でいくなどということを考えている者はいないと思う。これからあとで新聞代の値上げの問題が出てくると思うのですが、そうするとこの新聞代の値上げですぐ出てくるのが牛乳でしょう。これは配達賃がそうなっているんだから牛乳配達が新聞のほうにとられてしまう。こういうことでこっちを三円ぐらい上げようとしておるのでしょう。そうすると今度は、三円上がった牛乳代がどこへ影響してくるかといいますと、出前の人間に影響するのです。これは当然外食に影響する。そういうかっこうが去年も出ておるのです。そういうことをちゃんと承知の上で、長官が三%台で下半期がおさまるなどとお考えになっておるのが非常に不可解でございますが、御専門家の宮澤長官がなおいまでもそうお考えになっておるか、もう一ぺんお伺いしておきたい。
  21. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは簡単に申しますとこういうことでございますね。武部委員お話では、九月の東京が前年の九月に比べて七・四の上昇であった。そこで十月はたとえていえばそれがもっと大きくなるんじゃないか。私どもは、そうとは限らない、前年の十月からの急上昇があるのですから、かりに十月の東京都の消費者物価が、前年対比で七・五でなくて五%とか何とかいうところへ落ちましても別にふしぎはないんだ、こういう意味のことを申し上げておるわけでございます。
  22. 武部文

    武部委員 何べん言っても同じことなんで、もうやめますが、私が申し上げたいのは、去年からの、企画庁からもいただきましたが、数字をずっと対比をして見、いま現実に上がりつつある物価の数字を研究しながら実は予測をしておるのであります。長官は来年の予算に触れられて公共料金のことを非常に強く主張されました。私は前回委員会で、物価の値上がりに公共料金ということを使ったら、すかさずあなたが御反論になって、物価が上がるから物価が上がるんだというようなことをおっしゃっておられましたが、私が公共料金に触れたのは、公共料金が波及するところの問題が大きいんだ、それがいまのわが国におけるところの消費者物価の値上がりの非常に大きなウェートを占めておるんじゃないか、これをなぜお触れにならぬのだろうかと思ってあのときに質問をしたわけであります。  それはさておいて、長官は来年の公共料金の問題に触れておられます。来年の予算の編成について、受益者負担の原則というものはある程度、それから公共料金に対する財政投融資その他利子補給とか、そういうことによって公共料金値上げを食いとめなければ、来年はたいへんなことになるだろうということをお述べになっておるわけであります。ということは、おそらく今年よりも来年はどんと物価の値上がりは大きいだろうということを予測されるからそういうことをおっしゃっておると思うのです。去年四・二で、ことし四・八に落ちついてしまったら、そう御心配になることはないのですよ。長官はそういうことをすでにちゃんと考えておられるから、下半期はほんとは上がるんだが、いまそういうことを言えば、四・八はだめだと言えば——八塚さんですか、国民生活局長はどこかで四・八はもうだめだと誓われたそうで、こういうことになればすぐ物価が上がるぞということを述べられたそうですが、この間も宮澤長官は、そういうことを固執すると、かえってそういうことが混乱するだろうということを言って逃げておられるわけですが、もう来年のことをあなたはすでにそういうふうに御想像になっておられるわけですよ。そうすると、だれが見ても下半期の上昇というものはまだまだ想像以上に上がるのではないか。特に消費者米価値上がりというものの効果があらわれるのは二カ月後なんですよ。去年もそうでした。十月ではなくて十二月にどんどん上がっているのです。ことしも当然それが予想されるわけです。私の町では、一斤三十五円のパンが四十五円に上がりました。ちっちゃなこのくらいのパンが、負けず劣らず五円上げておるのです。そういうことが具体的に出てきているのです。それを見ても、十月の消費者米価値上がりというものは、おそらく十二月になって相当な数字になってあらわれてくるのではないかということが予想できるわけであります。いろいろお述べになっておりますが、四・八というような数字に固執しないで、少なくとも後半の物価の安定について具体的な事実をひとつ国民の前に明らかにして、具体的な政策をお述べになる意思はないか、この点をお伺いしておきたい。
  23. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今年度の後午も消費者物価が根強い基調にあるということは、私もそのとおり認めておりますので、その点は武部委員といわば憂いを同じくしておるわけでございます。でありますが、繰り返すようでございますけれども、上半期が五・七であったのだから下半期はさらにそれを上回る、これは必然ではないかと言われますことには、前年度との対比でございますから、私は必ずしもそう思っておりませんということを申し上げておるわけでございます。しかしそれにいたしましても、年度を通じて消費者物価が根強い上昇傾向にありますことは間違いはないところでございますから、もしこのような、賃金平準化ばかりでなく、いわば所得平準化のような傾向が来年に持ち込まれますと、かなり高い消費者物価の上昇というものが経済の中へ組み込まれることになって、その結果は、家計も企業も、おそらくは政府自身もそういうものを前提にしてものを考えるようになる。そうなればはなだ危険なことでございますから、そこで、今年度の残り及び来年度にかけまして何とかそういう——一年だけ起こる現象ならともかくでございますけれども、経済にやや恒久的にビルドインされるような、そういう情勢は食いとめておきたい、こう考えておるわけでございます。     〔砂田委員長代理退席、委員長着席〕
  24. 武部文

    武部委員 それでは時間の関係もございますので、最後になりますが、そうするとこれから後半、来年三月までにかけて——来年の予算のことについては長官も非常に心配をして、いろいろと第二次宮澤構想のようなものをお出しになっておる。これは来年の予算を非常に心配をされておるわけであります。それは物価の上昇を心配されるからああいう意見が出ておるのだと思うのです。われわれは、後半三月までに、いまの推移から見ると相当な上昇がくるだろうという心配をしておるのであります。宮澤長官もいろいろ御心配のようでありますが、具体的に、政府としてはこれから先の物価の値上がりについて、このまま別に新しい政策といいますか、具体的な方針を立てて物価の安定に努力するというような、何か具体的な方針がございましょうか。最後にそれをお聞きしたい。
  25. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 もちろん政府が自分で左右し得るような系統の料金価格については、できるだけ今年度の残った期間、抑制をしてまいるということは申すまでもないことでございます。それとまた同時に、やはり所得の平準化といったような傾向は総需要が根強いというところに関係があるわけでございますので、本来国際収支の関係で申せば、日本銀行の金利をもう少し下げてもいいという情勢であろうかと思いますが、ただいま御指摘のようなことも考えますと、これ以上総需要に増勢の勢いをつけるということもいかがかと考えられますので、そとで金利政策も国際収支ばかりでなく、いま御指摘のようなことも考えて運営をしていくべきだ、私としてはそう思っておりますし、この点については通貨当局も、いろいろ考え方の筋道は同じでないかもしれませんが、結論としては似たような考えを持っておられるのではないかと思っております。また行政自身にいたしましても、かりに何がしかの自然増収でも出るようであれば、やはり国債の減額をするといったようなことが、政府の総需要抑制とまでは申しませんけれども、あまり総需要を元気づけない、適正な水準に保っていくという、そういう政府の態度を示すゆえんになるであろう、こう思っておるわけでございます。
  26. 武部文

    武部委員 数字は今月の終わりに出てくるわけですから、また来月このことについてやりたいと思います。  終わります。
  27. 八百板正

    八百板委員長 木原実君。
  28. 木原実

    ○木原(実)委員 長官にまず御意見を承りたいのですけれども、どうもたいへん憂うつな問題を取り上げたいと思うわけであります。  御案内のように、日本を代表するような新聞が、発表の日は違いますけれども、いずれも十一月一日から同じように値段を上げるんだ、こういう社告を出したわけであります。私ども議会の人間にとりましては、新聞というのはたいへん縁が深い仲でございますから、新聞よおまえもかと言いたいような気持ちでございます。ただ、これについてはいろいろな問題があるような感じがいたします。そこで、最初に、政府側を責めましてもしようがない面もあるわけですけれども、この際にひとつ賢明な長官の、新聞代の値上げというものについてはどうだ、こういう御意見、御感想を承りたいと思うわけです。
  29. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 お尋ねといたしましては、これはやはり鬼門に当たるお尋ねでございますけれども、新聞はしばしば従来、わが国の物価情勢について社説等において非常な関心を示して、政府に善処を求めておられる。これは私どもそれにいろいろな意味で教えを受け、また元気づけられておるわけでございますし、一般に新聞当局というのは良識の代表のように考えられておるわけでございます。そこで、今回、社告によりますと、配達をする人たちの賃金水準であるとか、あるいは人を確保することがむずかしいといったようなことが一つの理由になっておるようです。それはおそらく事実でありましょう。そのこと自身に間違いがあるとは思いません。しかも、従来から物価については非常な関心を持っておるところの機関のすることでございますから、よほどそれなりの理由はあったのだろうとは思っておりますけれども、私の立場とすれば、据え置いてくれるなり、あるいは上昇の幅をできるだけ小さくしてくれるなり、そういうことが本来望ましいことであった、こう考えております。
  30. 木原実

    ○木原(実)委員 新聞につきましては、長官おっしゃいましたように、いわば世論の形成機関であるし、それから特に政治にしましても行政にしましても、その紙面を通じて切っても切れない仲なんですが、ただ、しかしながら、これも私企業でございまして、新聞販売あるいは広告の収入、そういうことで、しかもこれは自由な言論を確保するために、こういう前提をもって特に行政的にはほとんど立ち入る余地のないような形で経営が行なわれておる。私はそれはいいと思うのですが、しかしどうも新聞の紙面を通じて果たしておる公共的なあるいは社会的な役割りと、それから現在の新聞の業態といいますか、経営面における姿というものは、これは何らかの形で、これでいいのかと疑問を持つ面も多いわけなんです。しかし、さらばといいまして、新聞の機関の中にあるいは経営の中に行政が積極的にタッチしていけ、そういうことはもちろんわれわれも考えておるわけではございませんけれども、ただ、こういう議会というような場で、この定価の値上げという問題についていろいろな意味で意見の交換をし、議論をしておきませんと、ほかの物資の問題その他につきましては、われわれは新聞その他の機関を通じて世論に訴えるところがありますけれども、新聞は自分のところの経営でありますから、消費者にとりましても直接行動以外には意思のあらわしようがない、そういう側面もあるから、これからしばらく新聞の業態の問題について私どもの意見を申し上げ、お考えを聞きたい、こういうことで始めたいと思うのです。  第一には、武部委員も先ほど触れましたように、今度八十円の値上げをするその理由は、ほぼ各社とも、特に朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、その他の新聞がありますけれども、こういう三つの新聞というのは発行部数が数百万、全国に及んでおりまして、企業としていえばたいへん独占の度合いの高い企業というわけですね。しかも、読者にとりましては、値上げをしたからほかの新聞に乗りかえようかという選択の余地も、いろいろな特殊事情からなかなかむずかしいような側面もある、そういう性格を持つ側面があると思うのです。そういう性格を持っておるのですが、第一の問題は、定価の値上げをすることによってほかのものへのいわゆる波及効果がすでにあらわれておる、こういう側面が一つあると思います。それはもう牛乳の値上げの問題が具体的に出ておるわけなんですが、これは同じような配達員の確保という側面から新聞値上げに便乗してどうやら牛乳店が値上げをするような傾向が一つ出てきておる。あるいは出前の問題も出ましたが、そのほかにも、いままで過去の例を調べてみますと、新聞代の値上げをしますと大体一年以内くらいで今度は広告料金の改定を新聞社が行なっておるわけです。これは一般にはちょっと知られないことなんですが、しかも今度の場合には、続いて新聞用紙の値上げということになると思うのです。これは新聞用紙の値上げがありそうだから先手を打って定価の改定をしたのかどうかわかりませんけれども、おそらく新聞の定価改定に続いて、むしろ改定を理由にして用紙の値上げというのが口を開いて待っておる。そのために道を開いたような傾向があるわけなんです。そうしますと、続いて考えられますことは、他の出版物、月刊の雑誌その他あるいはまた一般の出版物、そういう方面でも新聞値上げに藉口して値段が引き上げられていく。そうなりますと、印刷文化全般にわたって軽くない影響が当然見通されるわけなんですね。そういう何といいますか、波及効果を考えてみますと、かなり深刻なものがある。そういう事態について、これはわれわれ新聞社の反省を求めたいわけなんです。おそらく政府も行政的にアプローチをしておる側面が薄いと思うので問題だと思うのですけれども、そういう波及効果を、私のようなものが考えてみましても当然考えられるわけなんで、いままでおそらく通産省その他で新聞業界のことについてお触れになっておる側面がやはりあると思うのです。今度の定価値上げが及ぼす一つの波及効果みたいなことについて、何かお調べになるか、あるいは観測をされたかというようなことがありましたら、これはひとつ当局のほうから伺っておきたい、こういうふうに思います。
  31. 小山実

    ○小山説明員 お答えいたします。  木原先生もかねがね広告その他でいろいろ御造詣の深いところでございますので、十分おわかりのことだと思いますけれども、新聞値上げの問題につきましては、もともと新聞自体について行政庁のタッチというのが非常に薄うございまして、率直に申し上げて、今回も、やはり新聞もどこか所管をさがせば通産省であろうということで、あわてて勉強している段階で、非常に申しわけないことでございますが、そういう状態でございます。
  32. 木原実

    ○木原(実)委員 これはどうも、議会のこういう慣習上、政府を相手にものを言わなくちゃならないので、ときどき御意見を特におっしゃっていただきたいと思うのです。やはりこれは国民の声を代表して、一つの世論の場としてあれをして、善処の道を一緒にさがしてもらいたいと思うのですが、波及効果、そういうことが私ども考えられるわけです。そればかりではなくて、しからば値上げをしなくちゃならぬ必然性というものがあったかどうかということについても非常に疑問があるわけです。  というのは、広告収入というのがこれは相当あがっているわけですね。特に昨年度は新聞社の広告収入というのは史上空前といわれておる。その傾向はことしもまた続いているわけですね。われわれが知っておる小さな新聞社でも載せ切れない、かなり余しておるというようなことになりますと、新聞社の収入の主柱である広告収入はそれだけ得ているわけですから、現在でも当然販売店その他についての手当てというものはこのワクの中でできるような計算が私どもにはされるわけなんですけれども、その面には触れていない。広告収入が非常にふえている。したがって、普通の形でいけば新聞社の収入はかなりいい、こういうことがいえると思うのです。従来は、三十四年ごろから三年ごとに定価の改定をしておるのですが、いままでの定価の改定の理由というのは、広告収入が伸び悩んだ、あるいは諸物価の値上がりがあった、人件費が高騰したとかいうようなことであったのですが、今度の場合には、販売店の人手を確保するために値上げをするんだ、こういう理由をいろいろあげているわけですね。ところが、広告収入がふえているわけですから、本来ならば新聞社のふところぐあいはいいわけですから、当然販売店に対する手当てもそのワクの中でやれるというふうにわれわれは観測するわけなんです。ところがどうもその面には触れていない。  いろいろ理由をあげておりますが、販売店の人手確保の問題、どこも人手不足なんですが、この販売店の新聞販売方法についても非常に問題があるんじゃないか、こういう気がするわけなんです。そこで、これは政府としてもやってもらいたいことがあると思うのですけれども、われわれは、日本独特の販売方法で、朝寝ているうちに朝刊が配達されて読むことができる、夕方帰れば夕刊が待っておる、こういう形になっていて、これはいいことなんですが、これはいろいろな問題があると思うのです。人手が不足になってきたからそこの手当てが必要だというのですが、あの新聞配達、日本は昔からあるわけなんですけれども、少年の労働が多いわけですね。考えてみますとこれは非常に過酷な労働です。そういう過酷な少年たちの労働の、しかも低賃金の上に配達制度がつくられてきたわけなんですが、しかしもうそれではやっていけないところへきているというのは明らかだと思うのです。少々の待遇改善をしてもやっていけないのじゃないかという観測をわれわれはせざるを得ない。また、政府としても、いつまでも年少者のアルバイト、特に寒い時分なんか早朝の労働というようなものは、労働基準法の関係でどうなっているのかわかりませんけれども、許しておいていいのかどうか、こういう問題も一つ出てきておる。  それから、理由にあげておりますけれども、販売店の合理化について道がないとはわれわれは考えられないわけなんです。現在はいわゆる専門販売というような形で一社が一つの販売店を使っておるが、合販、いわゆる共同販売というような制度を設けたらどうだ、こういうふうなことが考えられるわけなんです。しかし朝日の社告か何かによりますと、それをやってもたいした合理化にはならぬ、こういうようなことをいっているのですけれども、しかし一社が一つの専門の販売店を持っているということは、その背景にはまた非常に激烈な、紙を売るための第一線の部隊として自分の販売店を確保しよう、こういうような競争のためのあれがある。なべかままでつけて新聞拡張をやるというようなことが一時ありましたけれども、それに類似したような競争がある。  そんなようなことで、いろいろな問題があるわけですけれども、そういう制度を守るために、その部分をひとつ読者に負担してくれというのが、今度の値上げの最大の理由なんですね。そうなりますと、これは新聞社に考えてもらわなくてはならぬことなんですけれども、はたしてこの外国に例のないそういう販売制度というものが、もうこういうふうに世の中が変わってきた段階でいつまでも維持できるものなのかどうなのか、こういう問題が実は一つあるわけなんです。そうかといって、これは政府にどうこうしろと申すわけにまいりませんのであれなんですが……。  ただ、これは行政当局にお願いしたいわけなんですが、行政当局は、もし今度のような新聞値上げが、影響するところが非常に大きい——朝日新聞自体もいっておりますけれども、公共料金的な性格を持つ新聞値上げであるからわれわれも慎重を期した、こういうふうな社告をいっておりますけれども、まさにそのとおりだと思うのです。しかしながら、それならば新聞社の定価の値上げあるいはまたそういう販売方法のあり方、こういうような問題について、行政当局として、今度の定価改定の及ぼすいろいろな影響というものが意外に深刻である、こういうふうにもし判断をされるのであるならば、やはり新聞の業態の合理化のために、ひとつ行政当局が、あっせんというとおかしいのですが、あっせんならあっせんをして、何らかの合理化なり改革の方向なりに手をかしてやる、こういうようなことができないのだろうかというのが、ひとつ私のお尋ねをしたいことなんです。  というのは、もう少しプロセスの問題を申し上げますけれども、半ば公共料金に近いような新聞の定価でありますから、もし新聞の定価を改定するあるいは維持する、いろいろな問題について価格を変えるというような場合には、できれば新聞社が自主的に第三者機関のようなものをつくって、価格のあり方について審議を求めるというような努力が私どもとしてはほしいと思うのです。しかし、新聞社も良識の人たちが集まっているところですけれども、いざ経営のことになりますと、激烈な競争の世界ですから、なかなかそうもいかないだろうと思います。ですから、行政的に深くはタッチできないでしょうけれども、何らかの形で、定価の改定なら改定については、第三者機関のようなものにひとつ審議を求めるような方法をやったらどうか、あるいはまた、配達制度がそれほど深刻ならば、配達制度のあり方についても何らかの形で改革の方法というものについて第三者のところに意見を求めるくらいのことをしてはどうかというような、勧告というとおかしいのですが、政府の声というようなものはあがらないものだろうかどうだろうか、このように考えるのですが、いかがなものでしょうか。
  33. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 新聞の定価値上げについて私どもがあまりものを申しておりませんのは、それが言論機関であるからというのではございません。言論機関でありましても、たとえばNHKの聴取料金のように、ある程度政府が責任なり関与なりがあるというものについては遠慮なく申すときには申さなければならないと思いますし、また過去に申しておりますが、これが新聞の場合には全く私企業である。ただいま木原委員御指摘のとおりでございますが、そういう意味から私どもが関与し得る程度というものは実際上非常に少ない、あるいは無に近いというふうに考えますので申しておらないわけでございます。  しかしながら、どういう感想を持っておるかというお尋ねであれば私もいろいろな感想を持っております。その多くのものは、ただいま木原委員が言われましたようなことに確かに関係をいたすのでありまして、いわゆる一つ一つの専門販売店の制度というものが、今後わが国の労働情勢等々を考えますと、いつまで維持できるかということは実際に問題であろうと思います。しかしそのことはおそらくだれもよりも新聞自身が気がついておられることなのではないだろうか。販売競争との関係でいままでが専売店で来ておりますが、将来の労働力考えますと、これにもおのずからいつかは考え直さなければならないときが来るのではないだろうかということは、私もおっしゃったとおりに思いますし、また広告につきましても、幾つかの新聞は相当広告がふえて広告料の収入がふえておるというふうに私も思うのでございます。それからまた、多くの新聞が同じ値段であるということにつきましても、必ずしもそうでなければならぬというふうにも思えない。一人の読者として感じておることはいろいろございます。が、それらのことすべて、たてまえとしてはやはり新聞自身においていろいろ考えられるべきことではないだろうか。できるだけ政府が関与しない、そうして私企業の側でもって考えてもらうということが私どものたてまえであろうと思っております。
  34. 木原実

    ○木原(実)委員 そうだろうと思うのですが、ただ私はこの議会という場を通じて、新聞の今度の定価改定についてははっきりと非難の意思を明らかにしておきたいと思うのです。物価等に関する委員会の一員としてそのことだけははっきりと公の場で言っておきたいと思うのです。  と申しますのは、経営面を考えてみますと、新聞社でいろいろな良識の世論を形成するわけなんですが、業態的には非常におくれたような面があるような感じがするのです。そればかりではございません。中には職業野球の球団を経営しているところもありますし、あるいはまた、さまざまな関連の企業に投資をする、あるいはテレビ、ラジオその他にも資本の参加をする、いろいろな形で多角経営をやっておる、そういう側面もある。最近は御案内のように大阪の朝日新聞が大きなビルをつくった。毎日新聞も御案内のようにりっぱな社屋をつくった。それから読売新聞も近いうちに何か新しいりっぱな社屋をつくる計画がある。これはけっこうなことなんです。ところが新聞社の資本金を見てみますときわめて少ないのです。外部の資本が入ってこないために資本構成は小さくしておるんだ、こういう配慮があることなんで、それはそれでいいのですけれども、そのために今度は逆に銀行その他、いわば金融関係の資本がかなり多額に入ってきておる。そうなりますと、いまの新聞社を資本的に押えているのはやはり金融資本だ、こういう側面もある。新聞社は非常に強いのですけれども、やはり銀行屋さんには頭が上がらぬ、こういうことになりますと、本来の、どこからも制約されない自由な新聞でありたいという立場から出発をしたことが、皮肉なことには銀行屋さんには頭が上がらないという側面が実態としてある。しかも設備投資に次ぐ設備投資、こういうことが相次いで行なわれておる。だから今度の定価改定の中には、直接の動機はおそらく販売店からのいろいろな要求にこたえるということであったと思うのですが、しかしもっと内実に入ってみると、これはおそらくそういう新社屋の建設その他の、言ってみれば、何といいますか、やはり金融を受けたそれに対する負担というようなものもかなりあるのではないか。そうするとたいへんりっぱな壮麗な新聞社の社屋が建つということはいいことなんでしょうけれども、その負担はやはり何といいますか、読者が背負っていくわけなんですから、これは八百屋が店を直したからといってそこの大根が高くなったのではおかしな話なので、そういう側面があると思うのです。これも、そうかといって新聞社がビルを建てたり設備の更新をやったり、あるいはいろいろな関連をする社会的に有用な企業に資本参加その他のことをするということについて、われわれはとめる力はございませんけれども、しかしその辺のことは、やはり新聞社の本来の社事というものが何であるかということをこの辺できちんと踏まえてやってもらわないと、やがて新聞というものについて読者が全体として離れていく状況になっていくのではないか。そうなりますと、われわれはやはり世論の中で政治をやり行政をやっている者といたしまして、何かはなはだ心もとないような感じがするわけです。また、これは政府がどうのこうのというわけじゃないのですけれども、お互いに長官も政治家として、あるいはわれわれも議会人として、新聞の今度の定価改定にあらわれた問題の背景そのものについて非常に憂慮すべき点が多いし、それからまた、今度のような値上げについては、一言でいうとやはり私としてはこの場を通じて非難をしておきたい。だから、いろいろな角度から新聞とつながりの深い政治家として、いろいろな場を通じてその実態というものを明らかにし、社会的に新聞社の責任を追及していく、そのことを通じて新聞社の企業としてのありようというものをもっと健全なものにしていくために間接的な協力をしたい、努力をしたい、実はこういう気持なんです。そういうことについてならば長官もおそらく——何といいますか、政府の一員としてはなかなか御発言の限界があろうと思うのですけれども、政治家としての御感想みたいなものをあわせて伺っておけたらと思うのですけれども……。
  35. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 政府としての意見を申し上げることは差し控えますけれども、国権の最高機関でただいまのような御議論がありますことは、私はきわめて有意義なことだと思います。新聞経営者におかれてもただいまのような御意見、おそらくおのおのの立場においていろいろ考えられ、また将来に向かってくふうをされるであろうというふうに期待をいたします。
  36. 木原実

    ○木原(実)委員 私、あわせて委員長にお願いをいたしたいわけなんです。御案内のようにこの種の問題ですから、できましたらきわめて近い将来に、新聞の関係のしかるべき人を何人か参考人としてこの委員会にお招きをして、今度の新聞値上げの問題を中心にして関係の方々意見をこの場で述べていただく、それに対してそれぞれの委員から必要な質問をする、そういう機会をできればつくっていただきたい、このようにお願いを申し上げるのですが、いかがでしょうか。
  37. 八百板正

    八百板委員長 木原君の意見にお答え申し上げます。  木原君の提案と申しましょうか御意見については、理事会にはかって相談の上処置いたしたいと存じます。
  38. 木原実

    ○木原(実)委員 それからなおあわせて、きょうは大蔵省の関係の方はいらっしゃらないのですが、これはひとつ長官意見を承っておきたいと思うのです。  大蔵省の中でも、広告の問題について、広告税のようなものを新設したいという一部の考え方があるやに聞いておるわけなんです。私はこの委員会で別の機会にも申し上げましたけれども、広告料金等についての、特に過剰と認められる広告料金について、やはり一定の課税を必要とするんじゃないだろうか、こういう意見を何回か申し述べてきた一人なんです。そこで、この新聞値上げの問題と関連をする面もあるわけなんですけれども、今日、広告の問題について通産省当局が、いろいろな業界との懇談その他で、広告業界の近代化のために努力をしているやに聞いているのです。やはり広告というものが、これは新聞広告だけではございません、広告全般について非常に広告の全体の伸びが著しい。その中には、われわれから見ると、企業にとって非常に大き過ぎると思われるくらいの、つまり、たとえばその会社の全体の総売り上げ量に比して非常に大き過ぎると思われるくらいの広告料金を支出して、ともかくはでに広告をやっている企業が見受けられるわけなんです。それやこれや考え合わせますと、やはり一定額以上の広告料金については一定率の課税を行なっていくというような形で、広告という問題についてアプローチしていく時期がきているんじゃないか、こういう感じを持つわけなんです。そこで、広告の問題についてはそれだけではないいろんな問題があるわけですけれども、広告について一定率の税金をかけていくという考え方についてひとつ御意見を承っておきたいと思うのです。これはいろいろ動きがあるものですから、長官のこの段階での御意見をひとつ伺っておきたいと思います。
  39. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御承知のように、かつて広告税というものをいたしたことがあるわけでございますが、いろいろむずかしい問題がこれにはたくさんあるように存じます。たとえば過剰の広告とは何であるかというようなことについて、おそらく企業の立場から申しますと、明らかにやや長期にわたって収支の償わないような広告をするということは、企業の立場からいえばないはずでございますので、私どもが過剰だと思われることが企業にとってはそれだけの利潤を生むという結果に、企業が合理的である限りはなっておるのではないかとも考えられます。問題は非常にいろんな複雑な問題を含んでおるように承知をしておりますので、にわかに意見を申し上げることはできませんが、御指摘の点は私どもでも研究をいたしますし、なおそういう御意見のありましたことは財政当局にも私どもから伝えておきたいと思います。
  40. 木原実

    ○木原(実)委員 まあ直接政府の問題でございませんので、長官にお伺いすることはこれで終わりにいたしたいと思いますけれども、あわせて、通産省の方がせっかくお見えでございますので、今度の定価の値上げにつきまして、いままで行政的にタッチをされた範囲の中で、当局として何かおつかみになった問題はございませんか。たとえば、定価の値上げが妥当であるかどうかという判断は別にいたしまして、新聞界全体の業界としての動きの中で何かおつかみになったことがあれば、この際ひとつお聞きをしておきたいと思うのです。
  41. 小山実

    ○小山説明員 お答え申し上げます。  先ほど申し上げましたように、新聞というのはどこか所管の官庁があるはずだということです。それで、新聞協会というのがございますが、これは何か新聞の倫理基準の向上というようなことで、文部省で御認可になっておるというふうに承知しております。その文化面と、それから産業面ということになりますとやはり通産省であるかなということでございます。実は、きょう先生の御質問があるかもしれないということで、あわてていろいろ勉強をし始めたような段階でございますので、まあ長官ぐらいにおなりになりますといろいろ御答弁もなさられますけれども、私といたしましては、いろいろむずかしい問題がございますので、お答えはごかんべん願いたいと思います。
  42. 木原実

    ○木原(実)委員 たいへんどうも……。ただ、私はこう思うのです。確かに言論の府ですから、これはもうちょっとどこも当たるところがないわけですよね。だから、長官はほかの物価の値上げについては抵抗しろというたいへん勇ましい、われわれの党が言うような御発言があったのですが、新聞値上げについても、つまるところは読者が、今度の新聞値上げについてはけしからぬと思ったら、これはもう新聞を読まないか、直接値引きの交渉をやるか、何かそういう消費者としての読者の直接行動しかないわけですね。世論に訴えるといいましても、やはりこれは御自分のところですから——きょうは記者諸君も来ておりますけれども、けしからぬという筆致はちょっと書きにくいと思うのですね。そうなると、世論のあれがないのですよね。読者もこれは、こんちくしょうと思ってもなかなか——しかも社告を見ましても、年少の子供たちが、中学生たちが寒い朝も配っているのだからこれにせめて八十円やりたいのだ、こう子役を使って訴えられると、おかみさんは、これはしようがないと言うのですよね。その弱みにつけ込んでいるわけですよ。しかもわれわれだって、もう三十年も四十年も朝日新聞を読んだり読売新聞を読んだり毎日新聞を読んだりしておると、やっぱりこれは空気みたいなものですから、こんちくしょうと思ってもそれを読むわけですよね。そういう一つの弱みがあるわけなんです。それに対して、しかもわれわれは、読者であるそういう大衆を代表してきておる者とすれば、どうも政府相手にものを言うわけにいかぬけれども、何かここにきっちりしたことを言っておかないと立場はないと思うのですね。  そうなりますと、まあこれはあわせてお願いだと思うのですけれども、おそらく行政的にはタブーの一言だと思うのです。ただ産業としての新聞、企業としての新聞の問題については、行政的にもっと積極的にやはりタッチをする側面があると私は思うのです。これは広告についてもそうなんですね。私は昨年、広告の問題を若干取り上げまして、通産当局も、いろいろな業界関係その他で、いわゆる広告業界の近代化のための援助といいますか、手助けみたいな仕事を始められたと聞いておるのですが、同じようなケースで、新聞も企業としての、産業としての新聞の分野については、公共性が高いだけにやはり行政的な面でのそれ相応のタッチがありませんと、しかもいろいろこれから新聞関係というのは激動期に入っていくわけですね。それだけにいままでとは違った、それからかりにも新聞社の一番きらういわゆる官僚統制的な面ではなくて、新聞が健全に発展をしていくという目標でアプローチをしていく道をぜひつくってもらいたい、こういうふうに思うのですが、ちょっと現状はほとんどノータッチだろうと思うのですね。いかがなものでしょうか。
  43. 小山実

    ○小山説明員 非常にむずかしい御質問でございますが、実は私、昔郵政省関係でございますけれども法律関係の仕事をやっておりましたときに、電波法とか放送法の問題にちょっとタッチしたことがございます。そのとき、新聞は特に昔のように用紙のあれとかそういうものもございませんし、企業形態としては私企業でございます。その辺に行政のタッチの程度が違います。まあ放送の場合には、電波というものが経済的に、割り当てに限度がありますことから、やはりある一つの権利が出てきて、それにいろいろ政府が規制をするという面があるわけでございます。その場合にも、報道機関に対します政府の側の干渉のしかたというのは、その産業という面と報道の面と非常にデリケートな限界がございまして、ある産業面でも強く干渉をばしますと、いろいろ中身に響いてくるという問題もございます。特に新聞の場合は、いろいろ放送のように有限の電波を使っておるという問題もございませんし、その辺どういうふうに行政庁がおつき合いをしていけばいいのかということは、私どもこれから大いに勉強しなければならぬことではございます。ただ、せっかくの木原先生のお話もございますので、一生懸命勉強さしていただくということで御了承願いたいと思います。
  44. 木原実

    ○木原(実)委員 ただそれだけではすまないのですがね。今度は八十円の値上げ、こういう具体的な問題が出ているわけです。この値上げを必要とするいろいろの理由がすでに紙面を通じて一般に明らかにされておりますから、これはやはり値上げに至る背景というものについて、多少のお調べをぜひいただきたいと思うのであります。それはひとつお願いをしておきたいと思うのです。  それから、きょう公取の方いらしていると思うのですが、これは言うもおろかなことなんですが、前回値上げのときにも、独禁法に触れるのじゃないか、こういういわゆるさたがございまして、問題がございまして、どうも結果は非常にあいまいに終わったような印象を私は持っているのですが、今度の場合はどうですか。
  45. 吉田文剛

    ○吉田説明員 私、実は取引部長なものですから直接審査——これは審査の問題になると思いますが、一応お答え申し上げておきます。  今回の一斉値上げでございますが、十一月一日を期して朝、毎、読、それから日経が値上げをするという点については、協定の事実があれば、共同して値上げをしたという事実があれば、これは独禁法に違反しているということになりますので、現在全力をあげまして情報を集めている段階でございます。地方新聞値上げもございますので、本局とそれから地方事務所、これが一体になりまして値上げに関する情報収集をしているということでございます。もちろん、これで協定の事実がつかめれば、共同して対価を引き上げたということで独禁法違反ということになると私は思っております。
  46. 木原実

    ○木原(実)委員 これは、まあいまの法のたてまえがずいぶん抜けたところがある面もあるのですが、関係筋ではもう何カ月も前からこの値上げについての動きその他ございまして、情報を集められるとおっしゃるのですが、情報の本拠でそれを上回る情報を集めるということは、役所の機構としてはたいへんなことだと思うのです。これは一般のわれわれの側から見ますと、発表した日取りは違いますけれども、いずれにしましても十一月一日から、いろんな新聞がずいぶんたくさんあるわけですけれども、それが一斉ということでないことは明らかなんですが、しかし、影響力は別にしまして、少なくとも発行部数でかなりシェアの高い、たとえばいま名前をあげました三社なら三社が一斉値上げですよ。しかも、どういうわけか定価もきちんとしている。十円の違いもないわけです。その理由もまたみんな似たようなことですね。確かに話し合いをして、談合をして、文書で協定したなんという、そんなへまなことをやるところじゃないですからね。それだけにこれは割り切れませんね。ある意味じゃ、これは公取がなめられているわけですよ。それで、これから情報を集めて——これは情報を集めたって集まりっこないと思うのですよ。しかし、お話としてはずいぶんあるわけです。ある新聞社は千円の定価にすべしという非常に強硬論があったというようなお話もあるし、各社の中の話し合いはいろいろだったと思うのです。しかしながら、プロセスはともあれ、事実問題として十一月一日からそろって八十円の値上げをする。理由もみんな似たようなものですね。これだけきちんとしていてなおかつ、いわゆる法で問えないというのは、いわば読者というか、国民としては割り切れない面があるのです。その辺はどうなんですか。法の抜け道というとおかしいですが、弱みですかね。
  47. 吉田文剛

    ○吉田説明員 確かにある一定の時期から一斉に関係数社が値を上げたというのは、新聞社だけではございませんで、他にも例はございます。ただその場合に、すぐそれだけの事実で、ある期間から一斉に値が上がってそろってきたというその事実だけで、はたしてこれは独禁法上共同行為があった、協定があったと断定できるかどうかは、ちょっと疑問じゃないかという気がいたします。やっぱり独禁法のたてまえ、公正取引委員会のたてまえとしましては、そこに協定があったという事実、証拠をつかんでこないと、それだけで独禁法違反によって処理するということはむずかしいのじゃないかというふうに考えております。  ただ、そこは情況証拠という問題もございまして、ある程度はその状況によってできるのではないかと私個人は考えておりますけれども、いままでの例としては、やはり協定があったという事実がつかめないと、違反として処理していないと思います。
  48. 木原実

    ○木原(実)委員 それはそのとおりだと思います。この春でしたか、ウイスキー三社が同じようなケースで値上げしておりますね。しかしこれがつかまえられない。情況証拠ということばもおっしゃいましたけれども、これは結果は同じですからね。話し合いをし、協定をし、あるいは文書等の証拠があったかなかったかという、それはプロセスの問題でして、結果は一様なわけなんです。情況証拠というのがどのくらいのウエートを持つのか私はわかりませんけれども、何らかの形で公取としてこの問題については、多少むだでも、努力をしてもらいたいと思うのです。そうしませんと、特に新聞のように社会的に影響を持つものだと、公取の存在自体が疑われるわけですから。新聞社の値上げを押えられなかった、ほかの何か小さな末端のいろいろな排除をやったりしましても、国民の受け取る印象としましては、やっぱり新聞にはかなわないのだなという印象じゃ、これは公取の存在もおかしくなるのじゃないか、そう思いますので、ひとつ努力をしていただきたいと思います。  それではこの辺で終わりたいと思います。
  49. 八百板正

    八百板委員長 戸叶里子君。
  50. 戸叶里子

    戸叶委員 企画庁長官がお帰りにならないうちに、一点だけ伺いたいと思います。  最近企業の大型合併の問題があっちこっちに出ているようでございまして、そのうわさされた企業に働く人たちも何となく不安な、どうなるのだろうというような気持ちでいるようでございますが、その問題につきまして、何か国民生活審議会の中の消費者保護部会で意見が出されて、そして、消費者立場から見れば大型合併を支持することができないという、大型合併についての批判的意見が出ていたように私は聞いておりますけれども、これに対して、消費者を保護する宮澤長官のお立場として、どういう態度をもってお臨みになるか、どういうふうな指導をされていこうとするのか、この点をまず伺いたいと思います。今後のこの問題自体についてのいろいろな問題についてはまた別に取り上げるといたしまして、きょうは長官のそのお考えだけを伺っておきたい、こういうふうに考えます。
  51. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 国民生活審議会の消費者保護部会で、「企業の大型合例についての意見」というものをおまとめになったことは、御指摘のとおりでございます。  この意見がまとまりますまでのいろいろな過程を承っておりますと、委員方々はかなり幅の広いいろいろな意見をお持ちであったようであります。部会長はじめ委員方々、必ずしも同じ御意見ではない。そこで、最後にまとまりました、いわゆる紙に書かれました意見というものも、当面問題になっております大型合併について述べておられるという形ではなく、一般論として、「大型合併が市場支配力の形成に連なるような場合には、消費者の利益を害する公算が大きいから、これを支持することは困難である。」こういう立論になっておるわけであります。  これは私そのとおりだと思いますので、市場支配力の形成に連なる、もっと申しますと、一定の分野における取引を制限することとなるというような場合でございましたら、これはそもそも独禁法上認められない種類のものでありますし、それに至りませんでも、あるいは市場支配力の形成に連なる場合があるかもしれない、その場合には消費者の利益を害される公算が大きい、これはそのとおりであろうと思います。この意見につきましては、したがって、私は別段の異見があるわけではございませんで、そのとおりであろうというふうに承っております。しかし、これが当面問題になっております合併について、消費者保護部会が意見を表明されたというふうには私は受け取っておりません。
  52. 戸叶里子

    戸叶委員 この問題については、ゆっくり時間をとっていろいろ議論をしたいと思いますけれども、そうしますと、さしあたり、出されております意見については、意見として出されたなということだけで、企画庁長官はそれをそのまま受けとめておくだけでございますか。これに対してはどういうふうにもなさいませんか。たとえば八幡と富士の合併の問題等も出ているようでございますけれども、そういうふうな問題についてはどういうふうな態度を持っていらっしゃるか、もう一度お伺いしたいと思います。
  53. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 八幡と富士との合併につきまして私がどう考えておるかということは、すでに以前にも申し上げました。このたびの意見消費者保護部会から出されたことについて、それによって私は自分の前々から申し上げております考えを変更する必要があるとは思っておりません。ただ、現在の段階は、公正取引委員会においてこの問題をいよいよ本格的に審議をされる段階になりましたので、私としては、ここまで間近にまいりますと、いわば雑音に類するようなことはもう重ねて申し上げないほうがいい。影響を与えるとは思いませんけれども、しかしそういうふうにとられやすいことでございますので、したがって、最近は他の委員会でも、おまえどう思っておるかというお尋ねがございましても、いまの段階としてはもう何も申し上げないほうが私としてはいいのではないか、こうお答えいたしておりますので、戸叶委員にもそのとおり申し上げる次第でございます。
  54. 戸叶里子

    戸叶委員 ではもう一つだけ。消費者保護部会の出された意見は尊重されますか。これだけ伺っておきます。
  55. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 尊重いたすべきものと思います。
  56. 八百板正

  57. 砂田重民

    砂田委員 私は、きょうは北九州のカネミ製油のつくりました例の米ぬか油の問題について、厚生省、農林省のほうから承るわけですが、今度のこの事件に関連して、実は従来こういう事態が起こるかもしれない非常に不備な食品衛生法であったというふうなことが——消費者保護基本法を私ども政府と御一緒にいろいろ勉強いたしました段階で、われわれ委員の側にいたしましても政府の側にいたしましても、いままでの食品衛生法では、これだけ変わってきてしまった食生活の規制ができないという見解をお互いに持ったわけなんです。そうして食品衛生法の改正なり農林物資規格法の改正なり、それぞれの所管省が改善の方向で努力をしていただいている途中でこういう不幸な事件が出てまいりました。全く残念なことなんです。これから政府も予算編成にかかられるわけでございまして、こういった消費者行政消費者という角度から見ての消費者行政を拡充していくことを、経済企画庁、通産省等は来年度の重要政策の柱に立てておられるのですが、消費者行政の所管大臣として、政府の来年度の予算の立て方に消費者行政の拡充、いろいろ法改正の裏づけになる予算、そういったことに重点を置いてお考えになっていただきたいと思っているのでありまして、長官の御見解を承りたい。
  58. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ぬか油の問題につきましては何かかなり複雑な事情があるようでありまして、現在関係者が一緒になりまして調査を進めております。  なお、そのことに関連いたしまして、ただいま砂田委員の御指摘の点はそのとおりでありまして、実は当委員会に対しまして、私ども消費者保護基本法に基づいて在来の法制を全部見直すというお約束をいたしまして、各省でその作業はただいま通常国会を目ざしまして進行いたしておりますが、今度のぬか油の事件にも特に関連いたしまして、農林大臣及び厚生大臣としては、食品衛生法及びJAS規格の問題についてあらためて検討する必要があるという御意見であると私は承知をいたしております。政府としては、そのように進めてまいりたいと思います。
  59. 砂田重民

    砂田委員 長官、もう一つ私伺いましたのは、そういった法改正の最終的な答えが出る前に予算編成のほうが先にきてしまうわけですね。ですから、たとえて申し上げますならば、食品衛生法を改正して監視体制をもっと強化する、そうすれば食品衛生監視員の頭数の問題、予算の問題のほうがおそらく年末に先にきてしまうと思うのです。こういった法改正の裏づけになる予算をこれから政府が編成なさるわけでございますので、この食品衛生の監視員の問題だけではなくて、各省が出してまいります消費者行政拡充のための予算というものを、企画庁の長官としては政府としての重要予算事項の一つとお考えになって取り組んでいただきたいと考えるものですから、そういう御決意がおありになるかどうか、実は念押しをいたしておきたいと思ったわけであります。
  60. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 すでに私から大蔵省事務当局に対しまして、明年度の予算編成に際して、いわゆる公共料金的なものを受益者負担との関係で調整するということのほかに、直接物価安定の行政に資するような費目について特に配慮をしてもらいたい、経済企画庁所管の予算とは限らないのでございまして、むしろそうでないものが多うございますが、特に配慮をしてもらいたいということで、これは財政当局も了承してくれておりますので、基本的にはそう了解ができております。具体的な予算編成の段階になりまして、私としては他省にわたるそういう予算要求につきましても、経済企画庁の立場からできるだけ応援態勢をとりたいと思っております。
  61. 砂田重民

    砂田委員 それでは、カネミ製油の米ぬか油の問題を伺うのですが、私どもは実は新聞報道を通じてしか事を知っておりません。そこでまず厚生省の食品衝生課長から、いままでの経緯を相当こまかく御説明願いたい。
  62. 野津聖

    ○野津説明員 新聞紙上等に見られております米ぬか油によります中毒事件の経過につきまして御説明申し上げます。  事件の端緒でございますが、これは十月の四日に、大牟田市にございます大牟田保健所から福岡県の衝生部に対しまして、油によると思われます中毒患者が発生したということの通報があったわけでございます。現行の食品衛生法の場合でございますと、大牟田市は政令市でございますので、特別に通報する義務はないわけでございますが、油によります中毒事故ということでございまして、非常に珍しい例だからということで、県のほうに通報があったわけでございます。  これに基づきまして、九日に、同大牟田保健所の調査によりまして、患者が九大病院の治療を受けているということがわかりましたので、さっそく県のほうでは九大に参りまして主治医の方とお会いしまして、いろいろ状況などをお伺いしたということでございます。そうしましたら、ほかに同様な患者が四名現在九大で受診しているという報告を受けたわけでございます。また一方、大牟田保健所のほうとしましても、八日に患者の宅に残っておりました油約五百ミリリットルをいただきまして、これを衛生部のほうに送ってまいったわけでございます。  それで、同日福岡県の衛生部は、県下の各保健所、それから各市に対しまして、患者の発生の状況調査しろということを指示たしいますと同時に、工場に対しまして、北九州市にございますので、北九州市と打ち合わせた上で、自主的に販売中止をしてはいかがというふうな勧告をいたしたわけでございます。  以上の状況につきまして、十一日に厚生省に報告があったわけでございまして、厚生省といたしましては、この報告に基づきまして、福岡県に対しまして、関係機関等と十分な連絡をとりながら、原因の究明あるいは何か物質が入っておればその汚染経路等を解明するために、努力をしてもらいたいということを指示したわけでございます。その後、福岡県といたしましてもいろいろ患者の資料等をまとめていた段階でございます。  それから十月十五日に、全国の都道府県の衛生部長に対しましても、これに類した患者の発生が届け出がございましたら至急報告してもらいたいということを通知いたしたわけでございます。  なお、当時の状況によりますと、かん入りの油から患者が出ているというふうなことがありましたものですから、一応食品衛生法の四条四号違反ということで、一斗かんに入っております油の販売停止を十五日の時点で各市、各保健所に通知いたしたわけでございます。また同日付で北九州市の衛生局も、食品衛生法四条四号違反ということで、カネミ倉庫株式会社に対しまして一カ月間の営業停止を命じたわけでございます。  十月十六日に、厚生省は現地に食品衛生課長及び係官を派遣いたしまして、現地の状況調査、今後の方針等について、いろいろ現地と打ち合わせをいたしたわけでございます。同日付で、先ほどはかんだけでございましたが、びんに入っております油につきましても販売、移動禁止をいたしたわけでございます。  また、福岡県におきましては十六日付で、副知事を本部長といたします福岡県油症対策本部を設置いたしまして、この対策に全力をあげて当たる体制を持ったわけでございます。  また、同日厚生省は全国各県の衛生部長に対しまして、同社製の米ぬか油に対しまして食品衛生法四条四号違反があるから、この販売の停止及び移動の禁止の措置をとるようにということを指示いたしました。なお、それにあわせまして、この油の検査及びそれ以外の油の製造工程につきましても点検あるいは製品の検査を行なうようにということを通知いたしたわけでございます。  十月十七日に現地福岡県におきまして、当時一番患者が発生しておりました一府七県三市の関係者を集めまして、さらに九州大学、久留米大学の専門の教授、講師に集まっていただきまして、厚生省主宰によります油症対策関係打ち合わせ会議を実施いたしまして、各府県におきます現状を聴取すると同時に、今後の方針につきまして指示を与えたわけでございます。その今後の方針の内容といたしましては、患者の発見と同時に、その患者が使用いたしました油の原因物質、さらにはその油を収去いたしまして分析するということを中心といたしまして、さらには患者の発生につきましては逐次厚生省に報告をしてもらいたいということを指示したわけでございます。  なお、当時新聞紙上等で砒素の含有があったということが報道されましたので、まず検査の対象といたしましては砒素を重点としてもらいたい、そのほかに、有毒性がございます重金属、それから有機塩素系化合物、農薬でございますが、その他の農薬、それから油の脂肪酸の状態あるいは酸化いたします状態というものについて重点的に調査しろということを指示したわけでございます。  さらに厚生省といたしまして、厚生省の医務局長名をもちまして全国の地方医務局長国立病院長に対しまして、同一疾患と思われるような患者についての資料を整備するということ、さらには各関係の都道府県と十分連絡をとってもらう、さらには治療法で非常に効果のあるものがあれば至急連絡をしていただくということなどを、各国立病院に対しまして指示いたしたわけでございます。  さらに、実はこの症状そのものが非常にむずかしい疾病でございまして、発見いたしましたのが九大の医学部の付属病院の皮膚科で発見いたしたわけでございまして、診断に非常に困難な問題がいろいろございまして、各県といたしましても、この届け出があるという状態がございましても、一体これがどういう疾病であるかということにつきまして非常に判断に困っている状態がございましたので、十月十七日にお願いいたしまして、十月十八日に九大を中心といたしまして関係の専門家が寄りまして、その疾病の症状はこういうものであるという典型的なものをおまとめいただきまして、二十二日に各県にその症状概要につきまして送付をいたしました。  さらに、この問題は油の製造工程あるいは原料になりますぬかの問題等、非常に大きな広い問題がございますので、十月二十三日に農林省と第一回の打ち合わせ会をいたしたわけでございます。  さらには、非常に多府県にわたっておりますので、疫学的な調査を行ないます場合でも、各県まちまちにやっておりますのでは十分な原因究明ができないというふうな状況がございますので、患者の疫学調査の方法あるいは試験項目はこのようにというふうな中身で、厚生省から各府県に対しまして通知をいたしたわけでございます。  現在、患者の数は、昨日の十六時現在で一万一千十二名の方々が届け出をしておられます、この届け出の内訳といたしましては、医師によります届け出、それから患者が自分でその油を使用しておりましてそういうふうな症状がありましたということで、積極的に本部に申し出ていただいた数というふうな、いろいろな状態があるわけでございますが、まぜまして一万一千十二名が届け出られた数になっておるわけです。内容は二十三府県にわたっております。  以上、簡単でございますが、概要を申し上げました。
  63. 砂田重民

    砂田委員 それでは農林省に伺っておきたいと思うのですが、患者発見が十月の三日か四日だったと思うのです。ところが二月に、同じ会社カネミ製油が米ぬか油をつくる製造工程の途中で副産物的に出てくるというダーク油を、二社ばかりの飼料メーカーが鶏のえさの添加物に使って、そのえさを使った養鶏家のところで、西日本一帯で七十万羽のひなが死んだ、こういうことが報道されているのですが、この実態の経緯をひとつ御説明願いたい。
  64. 平松甲子雄

    ○平松説明員 本年の二月から三月の上旬にかけまして、中国及び九州の各県で、特定の飼料会社が販売した配合飼料を投与したひなと成鶏が、ひなが斃死あるいは成鶏が病気におかされた状態があるということで調べてみましたところ、いま申し上げましたように特定の配合飼料を投与しておるというので、その配合飼料工場を調べてみましたところが、先ほどお話が出ましたカネミ製油のダーク油を使っておるということがわかったわけでございます。こういうことで、鶏の被害といたしましては、ブロイラーが約百万羽、それから成鶏が、これは死んだわけではございませんけれども、百十万羽の被害ということで、そのうちブロイラーの死亡が四十万羽というふうな被害が出たという内容がはっきりいたしたわけでございます。  そういう状態でございましたので、さっそく飼料の販売店から飼料を回収させますと同時に、飼料の製造工場についてはその当該ダークオイルの使用禁止いたしますとともに、問題になりました配合飼料二工場の責任者を呼びまして、今後のダークオイルの使用についての厳重な注意を喚起するということと同時に、都道府県知事なり関係飼料団体に対して、飼料の品質管理について厳重な注意を喚起するという措置をとったわけでございます。  それからまた、問題の地域にございます福岡肥飼料検査所の所長は、問題の配合飼料の工場長を呼びまして注意をいたしますと同時に、カネミ製油の工場長に対しても注意をいたしたという実情でございます。
  65. 砂田重民

    砂田委員 いまの農林省のお話で、追跡調査をされてカネミ製油から出てきたダーク油だということははっきりしたように承ったのですが、カネミ製油に注意をしたとおっしゃったけれども、それはどういう注意なんですか。
  66. 平松甲子雄

    ○平松説明員 本年の六月二十六日に肥飼料検査所長はカネミ製油の工場長に出頭を命じまして、事故に対する厳重な注意と、それから今後ダーク油を飼料用として販売する場合には、動物試験によって安全を確かめた上で使用するようにという注意を与えました。
  67. 砂田重民

    砂田委員 私はえさのことはよくわからないんですが、工場長を呼び出して注意をなさったので、工場そのものの立ち入り検査その他は、そのときには農林省はおやりにならなかったのですか。
  68. 平松甲子雄

    ○平松説明員 私どものほうは、まずえさの所管でございますので、えさの工場のほうに追跡調査をいたしまして、特定のロットのえさについて事故が起こっておるということがはっきりわかったわけです。その特定のロットについて原因を調べてみますと、カネミ製油の油を使っておるということがわかったということでございますから、そのダーク油について原因があるというふうに考えましたので、ダーク油の使用について動物試験をするということで今後の使用について注意をいたしますならば、家畜の被害は今後起こらないであろう。わりあいに簡単に結果が出てくるものでございますから、そういうふうな動物試験をすることによって安全が確保できるという観点で注意を与えたということでございます。
  69. 砂田重民

    砂田委員 簡単に答えが出たんですか。カネミ製油のダーク油だったことはわかったわけですね。それでカネミ製油のダーク油すべてがそうであったのではなくて、限られた、何月につくられたどれだけの分量というのか、そういうロットがはっきりして、そのロットについてだけこういう事故が起こったということがはっきりしたのですね。それで動物試験その他を命ぜられたのだけれども、それじゃ動物試験その他の結果の報告を聞いておられるのかどうなのか。一体どういうダーク油の中に何が含まれていたからそういう事故が起こったのか、そういうことが判明をしたのですか。
  70. 平松甲子雄

    ○平松説明員 二工場について調べました結果、二月七日と二月十四日にカネミ製油から出荷されたダーク油に基因するものであるということがはっきりわかったということでございますので、当該ダーク油を一〇%添加した飼料を家畜衛生試験場でつくりまして、ひなに給与して再現実験をしてみた結果、当該ダーク油にひなに対する致死毒性があるということがはっきりわかったということでございます。
  71. 砂田重民

    砂田委員 ほかのダーク油は何でもなかったのですね。ダーク油がそういう事故を起こしたのではなくて、ダーク油の中に含まれている何かがそういった事故原因なんですね。その事故原因というものははっきり判明をしたのですか。
  72. 平松甲子雄

    ○平松説明員 その点については十分調査をいたしたわけでございますけれども、どういう物質が毒であるのか、つまり死を招くというような要素であったのかということについても研究してみましたけれども判明しない。ただそのダーク油に原因があるであろうということだけははっきりしたわけでございます。
  73. 砂田重民

    砂田委員 二月の七日、十四日に、二つのえさ工場に対してカネミ製油が出荷したダーク油のそのロットのものについてはそういう事故が起こったということがはっきりした。それからその工場長を呼んで注意をして、動物実験をしてから出しなさいという注意をあなたのほうはなさった。その結果、その二つのロットのダーク油のどういうことからそういう事故が起こったか。その二つのロットのダーク油については、通常ならばダーク油に含まれていない何か毒性のあるものがあったが、それが何であるかということはわからずじまいでずっときたわけですね。
  74. 平松甲子雄

    ○平松説明員 その点については鋭意調査もいたしましたけれども、当該物質というものについての検出はついにできなかったわけであります。農林省の中でも、畜産局なり農林水産技術会議なり、食糧研究所なり東海区水産研究所なりというもので、飼料用脂油研究会というものをつくりまして八月以来研究をいたしておるのでございますけれども、まだどういう物質がその有毒物質であるのかという物質の析出には至っておりません。
  75. 砂田重民

    砂田委員 カネミ製油の工場長を呼んで注意をなさったのは、どこのどなたが注意をなさったのですか。
  76. 平松甲子雄

    ○平松説明員 畜産局の下部機関で福岡に福岡肥飼料検査所というのがございまして、その所長が工場長を呼んで注意をいたしたわけでございます。
  77. 砂田重民

    砂田委員 その福岡県の所長さんは、カネミ製油という会社が人間が食べる油もつくっている工場だということを承知しておられたのでしょうか、どうでしょうか。
  78. 平松甲子雄

    ○平松説明員 もちろんダーク油が米ぬか油精製の過程でできるものでございますから、所長は承知しておったと思います。
  79. 砂田重民

    砂田委員 食用油は食糧庁の所管ですか。その食用油をつくるメーカーに対する行政的な管轄権というか何というか、そういうものをやっておられるのは食糧庁ですか。
  80. 亀長友義

    亀長説明員 機構改革によりまして、本年の六月から経済局のほうで一括扱っております。
  81. 砂田重民

    砂田委員 それから、農林省のえさのほうの関係ではなくて、食べるほうの油は、農林物資規格法のJASマークにも米ぬか油の規格基準はきめられておりますか。
  82. 亀長友義

    亀長説明員 現在すでにJAS規格の中に設けられております。しかしながら、これは御承知のように強制検査ではございませんので、食用油でJAS規格の検査を受けて現実に市場に流通しておるというケースは非常に少ないのでございます。そういうような事情でございまして、私どももこの規格の改正なりJASの普及方についていろいろ研究中のところ、今回の事件が起きたような次第でございます。
  83. 砂田重民

    砂田委員 消費者の側にしますと、特に今度そういう被害を受けた方たちは、農林省のえさのことを扱っておる部門と食用油を扱っておる部門が違うというような感じは、国民としては持たないのですね。おそらく被害を受けられた方も、またそういう方を友だちや親戚に持っておられる大ぜいの人たちも、あの二月の鶏の事故が起こったときに、それがえさの係だとか食べるほうの油を管理しておられる部門だとか、そういう区別は消費者の側ではしませんから、しかも同じメーカーが食べるほうの油もつくっているのだから、農林省としてはあの鶏事件が起こったときになぜ検査をするなり調査をするなり、注意を喚起するなりしてくれなかったのだろうかという気持ちが多分にあると思うのです。私もそういう気持ちがするのですけれども、おそらく今度の事件に関係しておられる役所の皆さんも、これは一つの反省点だろうと思うのですが、率直にひとつえさのほうの方に伺うのですが、ひなが少々死んだくらいのことでこんな事故を起こしてくるとは思いも寄らなかったので軽く考えて、農林省の食べる油のほうの係に、このメーカーのところの食べる油ではないけれども、飼料の添加物についてこういう事故が起こったなんということを別に御連絡なさらなかったのか。そこらのところをひとつすなおにお答えをいただいておきたいと思うのです。
  84. 平松甲子雄

    ○平松説明員 ただいま砂田先生からお話しの食用油のほうへの注意という点につきましては、現在時点で考えますと注意しておくべきであったということを私どもも痛感いたしておるわけでございますけれども、ただ、当時といたしましては、ダーク油と米ぬか油とは中間で精製過程が分かれるということでございますので、精製過程がある段階では別になっておるということがございますのと、それからダーク油で被害を受けましたのはひなでございまして、成鶏が死亡するというような状況ではない。被害程度が非常に軽い。ひなみたいに小さなものはそのくらいの被害があるかもしれないけれども、成鶏では被害が出ていない。卵を産む分量が減るという程度のものでございましたために、人間にそんなに大きな影響があるものとは考えなかった。その点がうかつであったといえばうかつでございましたけれども、そういうような被害の程度であったと認識をいたしておったということ、それから有毒物質の析出に成功いたしておりますと、それが油に可溶性のものであるかどうかはっきりしたと思うのですけれども、有害物質が何であったかわからないということでございましたために、家畜に被害が起こらないようにということだけ、自分の守備範囲だけにとどまったという事情にあったということであります。
  85. 砂田重民

    砂田委員 したがって、農林省の食べる油のほうの係の人も知らなかったくらいだから、厚生省の食品衛生課ではこの鶏の事故のことについては何にも御承知なかったわけですね。
  86. 野津聖

    ○野津説明員 本件につきましては連絡はいただいておりませんでした。
  87. 砂田重民

    砂田委員 消費者保護基本法をわれわれが検討した段階でも、こういった、どういいますか、消費者の危険を守るという行政、そういう意識がいままでの行政の中に、低かったということを、政府側の皆さんもわれわれもお互いに肝に銘じさせられた。御記憶に新ただろうと思うのです。しかし、そういう意識がなかった、欠除していたということが、今度の事件を幅広くしてしまった非常に大きな原因になっているという感じがするのです。  それから、やはり福岡県のそれぞれの係の方がそれぞれ担当なさって取り組んでこられたのだけれども、消費者行政の国と府県、市町村との事務の責任分担というふうなことも、いままでそんなことすら、どういうふうにそれぞれ責任を持ってやっていったらいいかなんということを考えてもみなかった貧弱な、消費者行政の欠除がここにあらわれているという感じがするのですね。福岡県のことが中央まで聞こえてきてこの連絡をとったということよりは、福岡県の県庁の中で比較的身近な人たちが、片方では鶏の事件を知りながら、片一方で福岡県の消費者行政の係の人たちは知らなかった。非常に不幸なことであったと思うのです。  さっき野津課長から患者数のお話がありましたけれども、一万一千十二人の方がきのう現在で届け出があったようです。ほんとうにお気の毒なことなんですが、この届け出というのは、このカネミの油を食べた結果こういう皮膚疾患をわずらったという届け出なんですか。どこかの大学なら大学で、治療を受けに見えられた患者さんを診断をしてみて、確かにカネミの油が原因でこうなったんだろうというふうな、そういうお医者さんとしての診断がついているような数字がおわかりだったらひとつ……。
  88. 野津聖

    ○野津説明員 現在の段階では、先ほど申し上げましたように、自分もその油を使った、それでやはり多少異常感がありました、あるいは現在もそういう症状がありますということで、御自分のほうから保健所に申し出られた方、それから医師にかかっておりまして、やはり非常にがんこな発しんがあるということで届け出られた方、あるいは中には、先ほど申し上げましたように、九大で専門に診断を受けまして、そして間違いなくそうであるという方というふうに、三とおりに現在分かれております。  ちなみに、九大では特殊の外来をつくりまして、油症外来という形で、皮膚科を中心といたしまして、内科、神経内科、眼科というふうな総合診療科をつくっておるわけでございますが、この二十三日現在で、総数で三百二十九名の患者さんがその外来を、自分もそうではないかということで訪れたわけでございます。そこで確定の診断を受けられた方が六十五名、そうして一応疑いを持たれた方が二十七名ございます。残りの方は別に異常がない、こういうふうな診断を受けたわけでございます。
  89. 砂田重民

    砂田委員 それから、しろうとのわれわれ消費者考えますと、どうも砒素説が消えたんだというお話のようですが、一体どういう毒性のどういうものが含まれていて、それが原因でこういう皮膚疾患を生じたのだという原因究明をやっておられると思うのですけれども、これだけ科学技術が発達したら、ぬかの油の分析くらいわけはないような気がしろうとのわれわれにはするわけなんです。したがって、行政がたいへんサボっているのじゃないかという印象を世間に与えていますね。これは、小高君も見えているので、あなたからでも、そんなに時間がかかるものなのか、一体どれくらいの時間をかければ答えが出てくるのか、そこら辺のところをひとつ技術屋さんから、われわれしろうとにわかりやすい説明をしてくださいませんか。
  90. 小高愛親

    ○小高説明員 お答え申し上げます。  こういった中毒事件の原因物質を検査いたしますには、たいていは、たとえば中毒症状を第一手がかりとしまして、ここからまず疑わしい物質を推定いたしまして、それに見当をつけて分析を行なうというのがまず第一でございます。  それから、あるいは現場の立ち入り検査等によりまして、いろいろな資料を得まして、そこの現場の状況から疑わしい物質というものを取り上げまして、そういったものについて分析をいたす、こういったことになります。その場合でも現在分析器具が非常に発達しておりまして、かなり高度な実験ができるのでございますが、これはいわば遠めがねでもっとより遠くのものが見えるようになったという技術の発達というのがおもでございまして、その場合でも、たとえば遠めがねで、運動場のまん中に人が一人おる、これがだれかということを当てるのはきわめて容易でございますが、非常に大ぜいの人が一緒におるときに、その中から特定の人を見つけ出すということ、これは非常にむずかしい。そういった特定の物質を検出する場合でも、そういった困難さがございまして、そのために日時がかかるということがございます。  それから、そういった一応目当てにしたものが見つからなかった場合に、それでは全く白紙の状態で特定の原因物質を見つけようということになりますと、これは非常にむずかしい問題になりまして、いわばある一つの植物から特定の成分を研究して見つけ出すのと同じくらいの手間を要することになるわけでございます。したがいまして、現在も各機関で、地元の大学あるいは国立衛生試験所あたりで原因を追及しておりますけれども、そういった特に目標となる物質が全部否定されてきたといたしますと、新しくそれ以外のものを見つけ出すということはかなり手間もかかりますし、努力も要しますし、時間も非常にかかるのじゃないかと考えます。
  91. 砂田重民

    砂田委員 そんなものかなと思って聞いているのですよ。できるだけ努力をしていただいて原因究明をしていただかないと治療方法もまたむずかしいのだろうと思うのです。  そこで、食品衛生課長にひとつ伺っておきたいと思うのですが、治療の問題ですけれども、お医者さんのことは私もよくわからないけれども、原因がわからない皮膚疾患である。したがってその治療法にしてみても、必ずしも保険でカバーできないのじゃないかと思う。お医者さんもいろんな治療方法をあるいは試験的にでもとってみなければならないかもしれない。その保険でカバーできないという点をあとでどういうふうにあなたのほうの行政としてカバーしますか。何か厚生省の中で御相談になって結論が出ておれば、これこれこういう使える金がありますからこういう金で見ますとか、そこまで明確な御答弁をいただいておきたい。
  92. 野津聖

    ○野津説明員 原因がわかりませんものですから、現在非常に治療がむずかしい状態にあるわけでございます。なお、皮膚疾患と申しますのは概して非常に治療が困難であるということがございます。いずれにしましても、診断いたします診断基準のようなものもいままではっきりできていなかったという非常に珍しい病気でございます。ですから非常に手探り的な治療、あるいは専門医師の立場でこれでというふうな場合に、現在の保険の医療基準というものに合わないような治療もしていかなければいけないというような問題も出てまいりますので、その部分につきましては一応研究費でカバーしていきたいということで、現在省内に残っております研究費をいただくように折衝を重ねている段階でございます。  また、原因究明の問題は非常に広範囲に及びます。したがいまして、この問題につきましては科学技術庁で持っております研究費をいただくようにということで、現在折衝を始めたところでございます。
  93. 砂田重民

    砂田委員 大体事情はわかりましたが、皆さんも行政としての反省がいろいろ今度の事件にもあったのだろうと思うのです。農林省のほうでこれはひとつ——農林省としての御反省だけではなくて、JASに米ぬか油の規格基準がきまっているけれども、ほとんどこのJASを使っておられる業界、企業はない。おそらく業界の側でも相当な反省をなさっただろうと思う。ただ一社の失敗が同業者全体にたいへんなマイナスをもたらしている。純正ないい商品を世の中に出していただかなければ、一社が失敗しただけでも同業の全企業がだめになってしまうということを身をもって感じておられると思うのです。いままでJASなんというものに見向きもしなかったということについては、業界でも反省をしておると思うのですが、そういうお話業界と農林省との間でございますか。その問題を含めて農林物資規格法を、今度の事件に照らしてみても、やはり相当な改正をしておいでにならなければならないはずなんですが、こういうものも含めて農林省のこの事件についての御反省を伺っておきたい。
  94. 亀長友義

    亀長説明員 今回の事件は非常に残念なことでございまして、今回の事件そのものの対策といたしましては、先ほどから厚生省のお話もございましたが、われわれも厚生省と十分に協力をいたしまして、適切な措置を講じてまいりたいと思っております。  事件発生後も私のほうから現地へ係官を出しておりますし、さらに食糧庁にも御協力を願いまして、食糧事務所にも協力をしてもらっております。さらに私どもの経済局からも、業界に対して品質管理の自主検査をもう一回やってもらいたい、それから衛生関係の出先機関あるいは県等の調査には業界としても全面的に協力をしてもらいたいという通達も各製油業者に出してございます。  今後の問題といたしまして、もちろん原因の究明の結果いかんによって、それに見合った措置を考えていきたいと思っております。  同時に、御指摘のJAS規格の問題につきましては、先ほど私がお答え申しましたとおり、規格はあるけれども実効があがっていないという実情でございます。そこで、どうしてもこれはやはり業界の協力も得まして、規格そのものあるいは内容、特に添加物等につきまして、いろいろ食品衛生面の規制等もございますが、そういうものも含めて表示基準というものを設けたい、かようなことで実はいろいろ研究をしておった矢先にこの問題が出たような事情でございます。消費者保護基本法も成立したことでございますし、私ども、農林物資全般につきまして、できれば次の国会に改正をしたい、JAS規格法の全面改正をやりたい、かような意気込みで目下鋭意検討いたしております。  ただ、食用油につきましては、こういう事態が発生をいたしましたので、まだ最終的にきめてはおりませんが、法律改正を待たずに、食用油についてはJAS規格をもう一回すみやかに検討する、あるいは表示基準についても検討して、改正を待たずして現行法でやれる部分はとりあえず新たな方法で着手してみようじゃないか、かようなことも考えておりますが、基本的には法律改正ということで、消費者保護基本法の線で新しく体制を立てていきたい、かように考えております。
  95. 砂田重民

    砂田委員 法改正を待たずとも私は措置ができることがあると思うのです。ぜひひとつ早急にやっていただきたい。  それから農林物資規格法も根本的に大幅改正を、できれば次の国会でと言われたけれども、できればではなくて、次の国会には必ずお出しにならなければいけない。この委員会で、消費者保護基本法の精神に基づいて、政府は全面的に消費者行政の現行法を洗い直して云々というふうな御答弁もあったわけですから、次の国会にはお出しなさい。  それから厚生省にも伺っておきたいと思うのですが、現行食品衛生法では、法律そのものではなくて、監視体制、検査体制が非常に弱いということはわれわれ議論し尽くしていると思うのですね。あなたのところも食品衛生法を改正するように取り組んでいただいているようにも承っております。なお法改正の改正点というのは、あるいは年が明けなければわれわれのところには話が入ってこないかもしれないけれども、監視体制、検査体制を強めるための予算というものは、この年末には編成しなければなりませんね。食品衛生監視員の数の問題もある。こういったことを、どうもさっきの木原さんの質問ではないけれども、こういう形で質疑応答するとたいへんあなたもお答えしにくいと思うのだけれども、食品衛生監視体制を強めるということは大事なことですよ。第二の米ぬか油が出てきかねない。同じような危険な輸入食品が、輸入されている食品の中でわずか四%かそこらが検査を受けているだけで、あとの九〇数%は手放しのまま日本の市場を、店頭をにぎわしていて、非常に危険な状態にわれわれはあるわけなんで、食品衛生の検査体制、監視体制というものはぜひ強めてもらわなければならないのだが、もうすでに八月末にはあなたのほうから概算要求が大蔵省に出ている。率直にいって、野津衛生課長御自身で要求しておられる、あなたが要求しておられる人員で強化したということが言えるのかどうか、どう思いますか。
  96. 野津聖

    ○野津説明員 いま御指摘ございましたように、監視体制なりあるいは試験体制というものを整備しなければいけないというのは自明の理でございます。特に、監視員の人員増加、あるいは新しい食品が次々と出てまいりますために、先ほども食品化学課長のほうから御説明ございましたように、非常に検査の内容が複雑化してまいっております。それに対応できるような形をとらなければ、業界の進歩にわれわれ監視する側、取り締まる側が追いついていけないという非常に情けない状態が起こるのではないかということを思っておりますが、私の立場といたしましては、全力をあげまして来年度予算要求に対しましての人員要求なり、あるいは試験施設整備なりというものをいたしたわけでございます。努力が足りなかったということもあるかと思いますけれども、やはりステップ・バイ・ステップで強化していかなければいけないというふうにも考えておるわけでございます。  さらに一番大事なことは、実際に食品を扱っておられる業界の方に、食品というものが大事なものであるということを自覚していただくということが大事じゃないかと思っております。食品衛生法改正の段階でも一応その業界の自覚に合わせまして、業界のほうがみずから安全で衛生的な食品を製造するというふうな形での措置基準、あるいはみずからが管理をしていくというための食品衛生管理者制度の拡充というふうなものを現在検討いたしておりますので、できるだけ早く国民に安全で衛生的な食品が入ってくるような形に持っていきたいということで、現在最善の努力は尽くしているということでございます。
  97. 砂田重民

    砂田委員 米ぬか油の問題は、私自身のいただいた時間を超過してまことに申しわけないので、以上で終わらしていただきますが、畜産局見えていますか。——実は私どもの物価の委員会が九月に九州へ視察に参りました。そのときに熊本県で阿蘇の草地改良の実情を見せていただいて、幾つかの農協による団地が出きている、その団地を見せてもらい、まことに雄大な牧畜をやっておられる実情を見せていただいたのですが、ああいうところはそうどこにもあるここにもあるというものじゃなくて、おそらく九州なり北海道なり、わずかの地点だろうと思うのです。やはり日本の畜産行政の大事な拠点だと思うのです。そのときにあのやり方をいろいろ伺ってみましたら、草地改良をやっていくいろいろな施設費といいますか、牛を入れてスタートするまでのいろいろな問題については制度的な融資の道が講ぜられたり非常にうまくできている。ところが熱心な農家の方々農協をつくって、あなたのところのそういう助成的な融資を受けてあの団地をスタートすると、今度運転資金に困ってしまう。さっそくその改良している草地に与えなければならない肥料、その肥料を買っていくのに、農協の九分の利息ではとてもいまの畜産では合わない、採算がとれない、こういう問題にぶつかって、せっかくあそこまでいっている各団地はみんな頭をかかえているという状態を実は見てきたのであります。この運転資金は何とかなりませんか、何か検討しておられないかどうか。
  98. 平松甲子雄

    ○平松説明員 確かに、造成いたしました草地が畜産経営とうまいぐあいにマッチいたしまして、畜産経営の改善が実現するということは最も望ましいことだろうというふうに私どもは考えておりますが、ただ運転資金につきましては自まかないで、そこまで見るということはなかなかむずかしい。自まかないでやるべきだという考え方でやっておるわけでございますが、ただ造成された草地の中で育成に使用されるものにつきましては、その育成牧場におる牛が食べるえさ、これを運転資金——育成牧場の運営からいたしますと、まあ運転資金の一部になろうかと思いますけれども、近代化資金であるとか、あるいは畜産振興事業団のほうで酪農特別助成事業という事業をやっておりますが、そこで利子補給をするということで、近代化資金でございますと六分、酪農振興特別助成事業でございますと三分五厘というふうなことで助成するということでやっておりますし、それから、毎日育成牧場で子牛が育成されるわけでございますけれども、その育成牧場の子牛の育成費につきまして、一日一頭当たり三十円という経費を、特殊法人でございます地方競馬全国協会から助成をしておるというようなことでございますので、ささやかながらそういう形で、造成された草地が乳牛なり肉牛の育成に使われるという場合には、それに対して助成していくということは考えております。
  99. 砂田重民

    砂田委員 私ども消費者にしてみますと、だんだん牛肉をたくさん食べるようになって、ともかく牛の絶対数が足りない、これは日本だけではなくて世界的に牛が足りないのだということをあなたのほうからも御説明をいただいているのですが、そういうときにあるだけに、あの阿蘇の、あそこで赤牛を飼っているやつは私は大事な拠点だと思うのです。そうすると、たとえば経済局では畜産の増産に励んで消費者に迷惑をかけないようにしていくのだという御答弁なんだけれども、あなたのほうがあまりいまの御答弁のような形でかた苦しく、せっかくあそこまであれだけの規模のものをスタートさせておいて——消費者の側から見ますとありがたいですよ。ありがたく見えるのです。ところが設備その他はできてスタートはできているけれども、それじゃそれがほんとうにあの農協が成功してどんどん牛をふやしていけるかということになってくると、運転資金は自払いでやるべきだというふうなことを初めからきめてしまっておられるようないまのお話しでは、それではあそこまで制度的な融資その他を講じておやりになったことが生きてこない。仏をつくって魂入れずというか、また消費者はだまされるのじゃないかという感じが現地ではしてきたわけです。ですから何かそういうことを新しくお考えになる気はないかどうかということを伺ったので、いまあなたのおっしゃったことはわれわれも聞いてきたのです。それではだめなんです。それではだめなんですということだから、肥料代として運転資金をもう少し何か考えてやれないものだろうか。経済局で牛をふやしていって消費者に迷惑をかけないのだというふうなお答えであるならば、あなたのほうでやはりそれの裏づけを現実の問題としてやってもらわなければならない。畜産振興事業団をつくって、豚のことについては消費者に迷惑をかけませんといっても、いま豚肉は五百何十円かはしておる。こういうことにならないように、牛の肉についてももう少し何か運転資金を見てやればどうですか。わずかなことでしょう、もうちょっとのところでしょう。ただ設備資金はいいけれども、運転資金はいかぬのだということを始めからきめてかかっておられるから、いまのあなたのような議論が出てくるので、あれをものにしようじゃありませんか。私は、農林省の畜産行政にしてみても、草地改良が大事だというだけではなくて、ここは畜産行政全体の中で大事な拠点だと思うのです。少し考えてもらいたい。何か検討される御意向ございませんか。
  100. 平松甲子雄

    ○平松説明員 運転資金の融資という点につきましては、畜産で先べんをつけるということになりますと全般的に波及するということもあろうと思いまして、融資制度全般の問題としてなかなか簡単に踏み切れないという問題もあろうと思いますけれども、先生ただいま御指摘のように、まあ造成された草地における肉牛経営なりあるいは酪農経営というものがうまいぐあいにいくようにという点について、現地でそういうふうな声があるということでございますならば、私どもは今後の問題として検討してまいりたいと思います。
  101. 砂田重民

    砂田委員 検討していただけますね。——終わります。
  102. 八百板正

    八百板委員長 有島重武君。
  103. 有島重武

    有島委員 前々回の八月七日の当委員会におきまして、コーラ飲料の酸度につきましていろいろと質問いたしました。消費者保護という立場でもってずっといろいろな質疑をしているわけでございますが、コーラ飲料のあるものは胃酸よりもさらに強い酸性を持っているというような話を私は聞いた。そのことについて金光環衛局長さんに伺ったのだと思いましたけれども、これについて資料を出していただけるとかあるいは調査してくださるというふうなお話しがあったと思うのですが、その後の御報告伺いたい。
  104. 野津聖

    ○野津説明員 御指摘がございましたように、私のほうでは酸度の試験を国立衛生試験所におきまして実施いたしましたところ、酸度につきましてはほかの炭酸飲料とあまり差がないというふうな結果が出ております。ちなみに数値を申し上げたいと思いますが、PHといたしまして、コカコーラが二・四二、ペプシコーラが二・五一、ファンタ、オレンジでございますが、二・四二、それからファンタ、グレープでございますが、二・五〇、それからサイダー、三ツ矢でございますが、これが二・八九、コアップガラナが二・五〇と、ほとんど大差がない酸度でございます。
  105. 有島重武

    有島委員 胃液との比較はどういうことになりますか。
  106. 野津聖

    ○野津説明員 現在胃液の酸度をちょっと覚えておりませんけれども、コーラ飲料特有の酸度が高いというふうな状態はないと思います。
  107. 有島重武

    有島委員 一つの物質として、これはいまのPHが二・四程度の高さもあるということがわかったわけでございますが、胃に与える影響についてさらに突っ込んでお調べになるべきじゃないかと思います。これは多少故障があったというような話があったので私も申し上げたわけなんです。その限度を、これは個人差もあると思いますけれども、大体どの辺に置くべきであるかということは、やはり一つの基準を考えていかなければならないのじゃないか、そう思いますので、それではまた今度さらに伺うことにいたします。  次に、ただいま砂田さんのほうから質問がずっとございまして、私も米ぬか油についていろいろ伺いたいことがありますけれども、なるべく重ならないように伺っていきたいと思います。  非常に素朴な話なのでございますけれども、この二月に製造された商品でもって、その中毒症状が十月に報告されたわけでございます。これはいまの御説明では、そういった報告義務が別にないにもかかわらず、北九州でもって報告があったわけです。それを端緒としてこのようなことがわかってきた。これはその限りにおいてはたいへんけっこうであると思いますが、そうしたものが春あったことが、秋の十月になってから初めてわかってきたということはずいぶんおくれた話ではないか、そういうふうに思います。そういたしますと、従来の病院におけるそういった判断、それが環境衛生のほうに連携づけられるということと、従来は非常に連携がとれてなかったのじゃないか、そういうふうに思うのですけれども、その点はどうなんでしょうか。
  108. 野津聖

    ○野津説明員 現在把握されております患者は、必ずしも二月の油を使ったとかあるいは二月に購入した油を使ったということではございませんで、最近届け出られました例では八月に使ったというふうな例もあるわけでございます。この初発患者も、買いましたのは二月でございますけれども、まだ現在その油が残っているような形で、結局この疾病の一つの特徴といたしまして、継続的に微量ずつ摂取しているということによって発病するという問題もあるかとも思いますが、これは必ずしも二月に製造されたものだけから起こっているという現象ではないわけでございます。したがいまして、これは一般の皮膚病と似ている、あるいはにきびによく似ているというふうな症状もございますものですから、そのために、従来までの急性の食中毒でございますと、診療しました医療機関も、これは食中毒ではないかということで非常に早期に届け出られるわけでございますが、このように慢性の経過をたどりますものにつきましては、届け出そのものがおくれてくるということもやむを得ないのではないかというふうに考えております。事実九大で診断を始めましたのが八月以降でございまして、それまでには九大では見ていないという状態があるわけでございます。
  109. 有島重武

    有島委員 九大では見ていなかったという話でありますけれども、振り返って調べてみればそうした症状が実は出ておった、そういうことは事例としてあるはずですね。いま一万人以上のこういった被害者を出したわけでございますけれども、そういうことが潜在的にはまだまだあるかもしれない。それをさかのぼっていまの時点でもう少し考えれば、もっと早く発見もでき、また処置もとれたのじゃないか。これは一米ぬか油の問題だけでなしに、今後のこともあるわけでございますから、こういった医療関係と環境衛生のほうとの連携というものは今後もますます密接にとっていただきたい。そのことをまず要望します。  次に発見以後の処置なのでございますけれども、いま伺っている範囲では非常にてきぱきと手が打たれていたような印象を受けますけれども、実際にはその毒性を発見していくということについていまどのくらい総力をあげておるのか。その総力のあげ方がまだ手ぬるいのじゃないかということを私どもとしては非常に感じます。それで、科学技術庁のほうの予算をとっていただいて云々ということもございますけれども、そういった人命にかかわること、人の健康にかかわることに関して、その辺の連携といいますか、一つの事件が起こった、それではというのでいまの科学技術の総力をすぐそこに集中できるようにしなければいけないのじゃないかということを痛感いたしますね。それで、実際的にはどことどこがいまそういった研究に当たっておられるのか、そのことをもう一ぺん伺います。
  110. 野津聖

    ○野津説明員 この問題が起こりましたときに、いち早く九州大学、それから久留米大学を中心といたしまして、これに福岡県及び関係三市が連携いたしまして油症研究班というのを設置いたしたわけでございます。そこで、九大及び久留米大が中心になりましてこの問題を追及していくということで、臨床方面からは皮膚科、内科、神経内科、眼科の先生方が参加されまして、基礎方面では公衆衛生、病理、薬理、それから薬学部の先生方が参加されまして、まず第一回の会議から開かれていたわけでございます。それが一つございましたが、十九日の日にあらためてこの油症研究班を再編成していただきまして、九大といたしましても、九大をあげてやりたいということで、医学部、薬学部だけでなく、法学部、農学部、理学部の専門の先生もその中に入られまして、久留米大学からも参加をいたしまして、それに県、市の衛生当局が入りまして、この研究体制を十分詰めていこう、こういう形になったわけでございます。さらに国といたしまして、十九日の日にこの米ぬか油による中毒事件の対策本部を設置いたしまして、国立衛生試験所、国立予防衛生研究所、国立公衆衛生院、国立栄養研究所等の専門の先生方を中心といたしまして、それに厚生省の行政担当者が参加して油症対策本部をつくりまして、福岡県に設置されております現在の油症研究班を中心といたしまして、国の油症対策本部はこれに協力し、あるいは援助する、こういう形をとって現在行なわれているわけでございます。
  111. 有島重武

    有島委員 私心配いたしますことは、そういった組織的に総動員したような形はとれておるけれども、実際には打ち合わせ程度に終わっておったり、その実務がどれほど進んでいくかということにどうも——これはお金も時間もそこに集中していかなければならないことでございますから、そういった点が実質的にほんとうに進んでいくように、そのことを十分見ていただきたいと思います。  それから、これは農林省に伺いたいのですけれども、さっきのダークオイルなんですけれども、ダークオイルというのは何か琉酸で油に戻すとかなんとか、そういった操作があるのですか。
  112. 平松甲子雄

    ○平松説明員 米ぬか油の精製の過程で苛性ソーダを入れまして、一回ダーク油のもとになるものを抽出いたしまして、それはアルカリ性になっておるものでございますから、また硫酸を加えて中和するという工程をたどるということでございます。
  113. 有島重武

    有島委員 さっきは、まだ毒物性を検出するということで厚生省だけにまかしておるという形ですが、農林省としてはその調査研究はどのように突っ込んでおられるのか、その点を……。
  114. 平松甲子雄

    ○平松説明員 飼料の関係につきましては、先ほどお話し申し上げましたように、畜産局家畜衛生試験場、食糧研究所、それから東海区水産研究所等のメンバーで飼料用油脂研究会をつくっておるということがあるわけでございますが、そのほかに厚生省のほうでやっておられます調査のほうにも私のほうからも協力をいたしておるという状況でございます。
  115. 有島重武

    有島委員 そのことについて、いつごろからどなたが中心になってそれをやられておるのか。
  116. 平松甲子雄

    ○平松説明員 私どものほうの関係だけを申しますと、八月から三回にわたって開会いたしておるわけでございます。主管者は家畜衛生試験場の米村さんでございます。
  117. 有島重武

    有島委員 倉庫の中に何か脱色用の白土と農薬等を一緒に積んであったというようなお話がございましたけれども、それで農薬が混入したのじゃないかというような話が一時新聞に出たことがございましたが、その点についてはどうなんでしょうか。
  118. 野津聖

    ○野津説明員 この会社は倉庫業と製油と両方やっておる会社でございまして、その辺の問題もあったのではないかということで、北九州市をいたしましてこれを調べてもらったわけでございますが、倉庫部と製油部というのははっきり分かれておりまして、しかも倉庫の中の物品はすべて預かり物品であるために、伝票あるいは帳簿と現品というのが常に一致してなければならないというふうな現状もございまして、伝票及び帳簿を調べましたところ、そういうふうなものが混在しておるという事実はございませんでした。
  119. 有島重武

    有島委員 それからひとつJASのことについて伺いたいのですけれども、JASのほうを改定するなり何なりすると、こういったような事件は未然に防げるのかどうか。この問題について農林省のほうでもすぐにJAS規定のことを言われたようですけれども、直接に関係があるのかどうか、その関係性についてちょっと言っていただきたいと思います。
  120. 亀長友義

    亀長説明員 先ほど砂田先生の御質問がございましたので、私どもJAS改正等の措置により食品、特に食用油の適正な流通をはかりたいということをお答えいたしましたが、もちろんJAS規格と申しますのは、食品衛生上の考慮も十分加えたものでございます。しかし基本的には食品衛生法及びこれに基づく保健所の取り締りというふうな、食品衛生警察的な面での取り締まりが、中毒というふうなことに対してはきめてになるわけでございまして、JAS規格としてはあくまでも消費者に喜ばれる良好な製品をつくるという考えでございます。したがいまして、JAS規格が合理的につくられて、これが普及されるという面は、当然食品衛生面の改善という点で非常な効果があるとわれわれも信じておりますが、食品衛生警察という面では、これはやはり食品衛生法の取り締まり法によらなければならない、かように考えています。
  121. 有島重武

    有島委員 ですから、今度の事件には直接のつながりというわけではございませんね。それで、今度の事件については、あくまでも毒性の検出ということにどうしても集中していかなければならない問題じゃないかと思いますけれども、どうですか。
  122. 亀長友義

    亀長説明員 御質問の趣旨のとおりでございます。もちろんよい食用油を流通させるという意味ではJAS規格は有効でございますけれども、毒性があるかないかというような点は、もちろんそういうものがあるものはJAS規格には認められないという規格をとっておりますけれども、JAS規格というのは本来必ずしも強制的なものでございませんし、またこれは一つの推奨商品的な意味があるものでございますから、現にJAS規格が採用されて流通しておるものにつきましても、その大部分は強制検査でなくて自主検査というような面もございますし、当然その検査をやったとしても、それはサンプルでございますので、食品衛生あるいは毒性というような問題に対しては、やはりこれは食品衛生の面で取り締まっていただくというのが本来の筋だと思います。
  123. 有島重武

    有島委員 それでいいわけでありますけれども、こういった事件が起こったときに、この前ダークオイルのときにもう少し突っ込んでおけばよかったということが反省されるのを、何かJAS規格のことをばっと前面に押し出して雲隠れしているように感じられましたので、そう申し上げたわけです。やはり厚生省だけにそれをおっかぶせるのではなくして、農林省の立場でもって毒性の検出ということに全力をあげてやっていただきたい、そう思います。  それで、あと時間がありませんので次の問題に移りますけれども、有名な大メーカーの消費物資について、ちょっとうたい文句と実際とが違うような場合が目につきましたので……。  東芝のゴキトールという、何か虫を退治する器具のことなんです。これは、一匹とると、それのにおいでもってずうっと寄ってくるという話ですけれども、これはちっとも役に立たないのだという苦情が消費者のほうから出て、それで調べてみようと思ったら、もういまは売り出すのをやめちゃったというような答えがあったわけです。それでこの実情は一体どうなっているのか、ちょっと伺いたい。
  124. 久留義雄

    ○久留説明員 仰せのとおりでございまして、実はこれは発売されましたときは、きくという説の人ときかないという人の説と両方ございまして、結局東芝のほうで、そのきかないという説もあながち根拠のないものではないというような反省から、実は生産を中止しておるような状態でございます。
  125. 有島重武

    有島委員 生産を中止したという。それじゃ、いままでの品物は回収するのでしょうか、したのでしょうか。
  126. 久留義雄

    ○久留説明員 この点につきましては、購入した購入者が使ってみたけれども効果がないといってクレームを持ち込んだ場合においては、メーカーといたしましては、具体的には小売り店でございますけれども、小売り店のほうでおとりかえをするというような措置をとっておるようでございます。
  127. 有島重武

    有島委員 こういった実情を積極的に調べて処置をとるということはなさらないのですか。
  128. 久留義雄

    ○久留説明員 メーカーをして生産を中止に至らしめました動機になりましたのは、いま申し上げましたような消費者側からの苦情もさることながら、通産省といたしましてもこういう苦情がときたま耳に入ってくるというようなことで、メーカーはよほど自信のない限りはひとつ考え直したらどうかというような慫慂をいたしまして、そういう結果に基づいてメーカーは中止をしたというような経緯でございます。
  129. 有島重武

    有島委員 ところが、知らない人はやっぱり残った品物を買って損害を受ける人もあるわけですね。そういったこともあったらば、積極的にそれを通達するというようなことはなさいましたか。メーカーのほうに注意をして、それでもってそれはやめたのでしょう。これはこういった理由でもって今度やめたのだから、消費者のほうもそれはお買いにならぬほうがいいというようなことが一番親切な行き方ですね。そういった事情を知らぬ人が残った品物をやはり買って、あとから見て、もう前からきかないということは評判だったのだというようなことで、重ねてまた損害をこうむる人が出てくるのですね。そういったことについてさらにもっと積極的に、これはだめなんだと、そういうことを通達すべきじゃないかと思うのですけれども……。
  130. 久留義雄

    ○久留説明員 これは、メーカーから流通段階に流れました製品は大体回収をいたしておりまして、現在は店頭で消費者が間違って買うということはないわけでございます。私、先ほど申し上げましたように、このゴキトールの問題につきましては、効果があるとする方々もおいでになるわけでございまして、実はこの辺のところは学問的と申しましょうか、技術的と申しましょうか、はたして効果があるかどうかはっきりしていないのが実情でございまして、ただ実情がはっきりしていないがゆえに、メーカーは大事をとって製造を中止したということでございます。ですから、使い方のいかんによっては効果の出ておるような使用者と申しましょうか、ございました場合にはその方々は現在使っているんだというような状況じゃないかと思っております。
  131. 有島重武

    有島委員 それから次に、別な商品ですけれども、何かジェット気流だとか、コインでも吸収できるのだといっている掃除機があるわけです。家庭用に掃除機を使うのに、それだけのパワーが必要なものだろうか、どうだろうか。ほとんど必要ないのではないだろうか。ただ、そういう力が強いことを、あたかも掃除する能率がいいようなふうに使う、あれはやはりおかしいのじゃないかと思うのですけれども、そのことについてはどうでしょうか。
  132. 久留義雄

    ○久留説明員 従来の掃除機の吸引力が弱かったというような反省から、ああいう吸引力の強いような方向に技術改良をしていったという実情だと思うのでございます。それから最近は居住様式も非常に西洋化してまいりまして、じゅうたんを敷いたりするような場合におきましては相当な吸引力が必要じゃなかろうかというようなことで、メーカーといたしましては技術改良を加えた結果、ああいうような形になったのだろうと思っております。
  133. 有島重武

    有島委員 実際には、こういったじゅうたんならじゅうたんの場合に、どの限度まで一番有効なのか、家庭用にはどの限度まで一番有効なのかという目安がまだないのですか。あればそんなことが問題にならないと思うのですけれども。
  134. 久留義雄

    ○久留説明員 現在、品質表示法というのがございまして、これによりまして電気掃除機につきましては性能を表示しなければならないということで、吸引力等につきましても表示義務が課せられておるわけでございますが、幾ら以上でなければならないとか、また幾ら以下でなければならないかということは、実は基準はございません。
  135. 有島重武

    有島委員 これだけ一般に普及されておりますので、これは自動車のメーカーなんかでも、二百キロも飛ばすのはおかしいじゃないかというような論も出ておりますけれども、過度に高性能なものを製造してそれを押しつけるというようなことは、やはり消費者保護という立場から見ますと非常なむだになるのではないかと思います。これは適当なところという一つの目安をつくってももういい時期じゃないか、そのように考えますが、いかがでしょうか。
  136. 久留義雄

    ○久留説明員 あるいはこの問題は、将来JIS規格で適当なところを規制する必要が出てくるかもわかりませんけれども、いまの段階は先ほど申し上げたとおりでございます。
  137. 有島重武

    有島委員 私としては、それは早く大体の目安をつけたほうがメーカーの側もむだな競争をしなくてもいいし、それから消費者側としてもはっきりするのではないか。  それから自動車の値下げがございましたけれども、あの値下げした千五百と千三百の車種がございますね。あれはコロナの千五百と、それからもう一つはブルーバードだったと思うのですけれども、最近値下げしたのは今後は製造をだんだん減少させる方向にして、それでもってそうでないものの製造台数をふやしているというようなことを聞きましたけれども、その辺の事情はどうなっていましょうか。
  138. 小山実

    ○小山説明員 まことに申しわけございませんけれども、先生の御質問がこちらのほうに連絡がよくとれなかったものですから、きょう担当の課長が参っておりませんので、次回にあらためてお伺いをいただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  139. 有島重武

    有島委員 では、その点は調べておいていただきたいと思います。  それで、いま自動車も消費物資みたいになってまいりましたけれども、買うほうも非常に喜んで買おうとしているものについて、それをたくさんつくらないで、それでまたほかのものを売りつけようとするのだとすると、その値下げというのはちょっとした会社の宣伝みたいなふうに使われているようなふうでまずいと思うわけです。そういうところについてはやはり指導なさったほうがいいんじゃないか、そう思うわけです。  それでは、詳しいことは次回に譲りまして、私はこれで終わります。
  140. 八百板正

    八百板委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後五時十一分散会