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1968-09-17 第59回国会 衆議院 大蔵委員会税制及び税の執行に関する小委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    本小委員会昭和四十三年八月七日水曜日委員会 において、設置することに決した。 八月七日  本小委員委員長指名で、次の通り選任され  た。       大村 襄治君    鯨岡 兵輔君       小山 省二君    河野 洋平君       笹山茂太郎君    地崎宇三郎君       山下 元利君    渡辺美智雄君       阿部 助哉君    中嶋 英夫君       平林  剛君    村山 喜一君       河村  勝君    田中 昭二君 八月七日  笹山茂太郎君が委員長指名で、小委員長に選  任された。 ───────────────────── 昭和四十三年九月十七日(火曜日)     午前十時三十八分開議  出席小委員    小委員長 笹山茂太郎君       四宮 久吉君    毛利 松平君       佐藤觀次郎君    広沢 賢一君       村山 喜一君    岡沢 完治君       田中 昭二君  小委員外出席者         経済企画庁調査         局長      矢野 智雄君         大蔵政務次官  倉成  正君         大蔵省主税局長 吉國 二郎君         国税庁長官   亀徳 正之君         文部大臣官房総         務課長     吉里 邦夫君         中小企業庁計画         部長      井土 武久君         中小企業庁指導         部商業第一課長 沢井新一郎君         自治省税務局固         定資産税課長  山下  稔君     ───────────── 九月十七日  小委員田中昭二君八月九日委員辞任につき、そ  の補欠として田中昭二君が委員長指名で小委  員に選任された。 同日  小委員小山省二君、河野洋平君、阿部助哉君、  平林剛君及び河村勝君同日小委員辞任につき、  その補欠として四宮久吉君、毛利松平君、佐藤  觀次郎君、広沢賢一君及び岡沢完治君が委員長  の指名で小委員に選任された。 同日  小委員四宮久吉君、毛利松平君、佐藤觀次郎  君、広沢賢一君及び岡沢完治君同日小委員辞任  につき、その補欠として小山省二君、河野洋平  君、阿部助哉君平林剛君及び河村勝君が委員  長の指名で小委員に選任された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  税制及び税の執行に関する件      ────◇─────
  2. 笹山茂太郎

    笹山委員長 これより会議を開きます。  今般、皆さまの御推挙によりまして小委員長に就任いたしました。つきましては、皆さまの御協力を心からお願いいたします。  税制及び税の執行に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。村山喜一君。
  3. 村山喜一

    村山(喜)小委員 この二、三日、新聞に非常に景気のいい話が次から次に出ております。十五日の毎日新聞記事によりますと、来年度減税史上最大の二千八百億円をしかも初年度にやっちゃう、所得税率も一挙に緩和をする、免税点は十万円引き上げをやる、それには大型景気で財源はたっぷりある、こういうような見通しの中で、減税方向が出されておりますし、また、きょうの新聞によりますと、企業税制の確立の問題について、配当控除というものはもうこの際廃止をして、資産づくり税制も整備をしていこうというような、きわめて意欲的な方向が打ち出されておるわけですが、こういうような方向というものは、来年度経済伸びをどういうふうに見るか、あるいは財政との関係において予算編成との問題も含まっていると思いますけれども、しかし、そういうような見方の中から、そのような財政伸びを国民総所得伸びに一応比例をさせながら考えても、なお二千八百億くらいの所得減税ができるような見通しをすでにお持ちになって、これを新聞に発表をしているものなのかどうか、ただ、これは一つ見込み記事であるというふうにとらえるべきなのか。先般来、大蔵大臣大蔵委員会において非常に積極的な発言をしておられるわけですから、まさかそれは単なる観測記事でございますという答弁はなさらないだろうと思うのだけれども、どういうふうに事務当局のほうでは考えておるのか、ちょっとその辺を最初に説明を願いたいと思います。
  4. 吉國二郎

    吉國説明員 ただいま御質問がございまして、また、御質問の中でもお触れになりましたが、来年度税制改正の規模を最終的にきめるのは、やはり自然増収の額というものが確定いたしませんと無理だと私は思います。税制調査会答申の中でも、財政の適正な充実と財政弾力的運用のための国債の漸減とあわせて所得減税をはかっていくべきである、ただその年度ごと実施額というものはあらかじめきめ得るものではないので、それはすべて政府にまかすという態度をとっております。私どもももちろん、来年度税制改正も迫っておりますし、新しい税制調査会も進んでまいりましたので、諸般の準備を進めなければならないわけでございますが、これはまた、御承知のとおり本年度の期中に生ずべき自然増収そのものがまだ十分に把握できない段階でございます。来年度自然増収見積もりの場合には、本年度の期中の自然増収を含めた実績見込みもとにいたさなければならないわけでございますから、実は私ども自身が来年度自然増収というものをはじいていない段階でございます。いまも御説明がございましたように、新聞には実は私どもも全く関知しない数字が盛んに出るわけでございます。きょうの新聞など見ますと、かなりうがったようなことで、昨日省議をやってきめたとかいろいろ書いてございますが、これは全く省議も何もやっておりませんので、新聞の、もちろんいろいろなデータを集めて記者諸君が検討してくれた結果だろうと私は思っておりますが、これらの記事数字というものは、いまの段階では私どもとしてはいかなる根拠で出たかも実ははっきりわからないものでございまして、まだ早い、まだ税収実績は四カ月分しかわかっておりません段階で、しかも一番自然増収に影響の大きい九月決算がまだほとんど見通しがついていないという段階でございますから、先ほど御指摘がございましたが、やはり新聞数字は私どもの関知したものではなく、観測記事にすぎないといわざるを得ないと思いますが、ただ例年と違いまして、ことしは七月に長期答申が出て、その中に非常に具体的な案が書かれておっただけに、新聞界においても非常に所得税減税に強い関心を持っておることがこのような形であらわれたものだと私は思っております。
  5. 村山喜一

    村山(喜)小委員 本年度自然増収見込みというものも、九月の法人決算を見てみなければ正確な数字はわからないだろうと思いますが、経済企画庁見えになっておりますか。——まだ来ておりませんね。最近の経済見通しなんですが、やはり当初経済見通しをつけたものよりもさらに経済拡大基調というものは出てまいっておりますし、最近の国際収支好調等から見ましても、あるいは民間の設備投資伸び率から見ましても、大体名目で一五%、実質で一〇%というラインは動かないだろうというふうに見る見方のほうが大体常識的な見方になってきているのではないかと思うのです。そうなってきた場合には、所得弾性値の問題をとらえてみましても、自然増収がことし少なく見積もっても約二千四百億、普通の見方でいけば三千億近くは自然増収があるのではないかということがいろいろの立場から分析をされているわけです。あなた方としても、九月の法人決算の結果を見なければ数字はもちろん確定はしないでしょうが、一応の見通しというものを、私はやはり何らかの予測数値に基づいてはじき出されることが可能ではないかと思いますが、そういうようなものはお持ちになっていないのですか。
  6. 吉國二郎

    吉國説明員 御指摘のとおり、ラフな計算はいろいろとできると思います。ただ、御指摘経済伸びで、私どもが見ておりましたところとかなり現実に違ってきておるものとしては、たとえば六月、七月の賞与というようなものは、従来見ておったよりもかなり大きく出たということが実績からも出てまいります。給与水準も若干われわれが見ておったよりも多かったように思います。それから法人にいたしましても、鉱工業生産伸びておるという事実は確かにございますが、御承知のとおり、法人税収入年度といたしますと三月と九月が本年度収入でございますが、いままでの数字がほぼことしを決定してしまう、下期のほうは来年の三月に入ってしまいます。そういう点から申しますと、最終的にかなり伸びるとは見られますけれども、それが直ちに税収の上に反映するかどうか、その点はちょっと問題だと思っております。  実は、証券会社等で最近九月決算見通しが出てきておりますが、大体対三月期五%増くらいの数字が平均的に出てきております。私どもも去年、この九月決算を見積もりますときには、大法人調査の結果として、三月に対して五%増くらいを見ておいたわけでございます。  大体世間の見方はもう少し悪かったようでございますが、最近の見方は大体私ども見方に近づいてきておるという状況でございます。当時九千四百七十六億という自然増収を見積もりました場合に、非常に大きいではないかという御指摘があったわけでありますが、その点ではかなり強気に見ておったのがいまはまずその点は強気ではなかったということになった程度ではないかと思いますのと、それからもう一つ、それだけ法人税所得税ではどちらかというと増収要因かなり確定的に出てまいりましたが、今度は逆に、酒の税におきまして非常な減収原因が出てきております。それは、日本酒が去年に比べてあまりはかばかしくないところにもつてまいりまして、税額の半分を占めておりますビールが、この七月、八月、天候の関係で去年よりも非常に下回るというようなことで、実績的に見ましても、最盛期を過ぎた現在までに対前年六%増程度にとどまっておりますが、これは私どもが見ておりました伸びに比べれば半分以下なのでございまして、このあたりが今度は逆に減収要因になってきておるのではないか。それから、これだけ経済活動が盛んになっておりますのに、印紙税関係等が思ったほど伸びないというような事実がございます。  そういうことをいろいろ勘案いたしますと、こまかく取り上げてまいりますとなかなか的確に増収がつかめないというのが率直なところでございます。いろいろ弾性値などでラフにはじきますと、上から下までいろいろな誤差がございますけれどもかなりな幅の数字新聞等で確かに見積もっておりますが、私どもとしては、いまいわば一つ作業を始める前提として取り上げるだけの確実な増収というものをそれほど多く見積もるわけには現在の段階ではまだできないということだと思っております。
  7. 村山喜一

    村山(喜)小委員 それはよくわかるのですが、新聞等に二千八百億も大幅な減税をやるということが伝えられますと、やはり所得税を納めている階層というのは、来年はすばらしいことになるんだ、それはほんとうにありがたいことだということで期待感を持つわけですね。その結果が、案外それが期待はずれに終わるということに対するその失望からくる今度はまた不満というものは、これは私は倍加していくと思うのですよ。だから、やはり所得伸び、それから税収伸びに伴う今度は財政との関係の問題が当然出てくると思いますので、来年度予算編成方針というものは、これは大蔵省としては確立しているわけですか。たとえば財政伸びは国民総生産の伸びの指数に比例をしていくとか、あるいは節度ある態度で臨むとかいう方向のものは、大体基本的なものとして打ち出されているやに聞くのですが、いままでの各省の予算要求というものを集積したものを見てみますと、相当な公共投資等に対する期待というもの、要求というものは強まっているわけですね。そういうようなもの等をどういうふうにコントロールしていくかということになりますと、やはり財政がどういう姿になってくるのかということが非常に大きな今後の税との関係において考えなければならない問題ですから、その基本的な方針をお出しになっているのでしたら、この際、ひとつ明らかにしてもらいたい。
  8. 吉國二郎

    吉國説明員 これは、私がお答えするのは適当でないと思いますけれども、御承知のとおり、予算編成に至りますまでには、いろいろな基本原則というものが積み上げられてまいるのが普通でございます。それをどういう過程でやってまいるかと申しますと、一つは、財政制度審議会におきまして、三つの部会に分けて、それぞれ問題を掘り下げていくわけでございます。新聞にいろいろな基本方針というのが伝えられますのは、抽象的にはいろいろな考え方が出ておりますが、最終的な基本方針としてそれがたとえば省議決定できまっておるという形のものではないわけで、やはり一つ考え方をもっていろいろ審議会に臨むということはございますけれども、それがそのままいまの形で基本方針となっておるというわけではないと思います。ただ一般的に、来年度経済を考えます場合に、国際的な環境その他から見て楽観は許さないという点が相当強くいわれております。抑制型の財政であるべきだということはかなり強くいわれておりますし、それが新聞にもよく出ておりますけれども、いかなる形でこれを実現するかということについては、今後の課題であるというふうに受け取っておるわけであります。
  9. 村山喜一

    村山(喜)小委員 主税局長からそれをお聞きしても無理でしょうから、あとで倉成政務次官がお見えになるでしょうから、そのときにこの問題に触れたいと思います。  そこで、あなたのほうにお尋ねをしておきたい二、三の点がありますから、まあ全般的の問題でありませんが、給与所得控除あり方の問題について、その考え方をこの際明らかにしてもらいたいと思うのです。  ことしの税調の七月の「長期税制あり方についての答申」の中に、「給与所得控除あり方」の問題に触れられているわけですが、アメリカやあるいはヨーロッパの国々がやっているように、経費控除制度というものを採用することは、これは税務執行上問題があるということ、それから、立証技術上手下手によって負担の不均衡が生まれるというような立場から、当面このような制度を採用することは適当でない、こういうような考え方で、画一的な方向をとるのはやむを得ない、しかし、それにしても、年間収入金額が百十万円で頭打ちになるというのは、これはぐあいが悪いので、定率控除適用階層を大幅に引き上げるべきだ、こういうような意味答申が行なわれているわけですね。私は、これを受けまして、アメリカなり、あるいはイギリスなりフランスなりイタリアの、給与所得者に対して認められている経費控除の問題を主税局小松芳明さんが書きました本の中から拾い上げてゆうべ見てみたのです。これを見てみますと、アメリカでも西ドイツでも、経費というものについては、やはりそれが社会通念上認められる経費であるならば、これを控除していくという方式をとっているわけですね。そういうような外国の例から見ましても、あるいは、あれはたしか京都大学先生がそういうような所得控除を認めないで一律にやるというのは憲法違反だということで訴訟もしておられますね。そういうような問題を考えてまいりましても、あるいは他の資産所得に伴う税とか、あるいは事業に伴う税との均衡の上から考えましても、私は、やはりそこには当然必要な経費というものは控除していくという考え方がなければおかしいんじゃないかと思うのですよ。  というのは、いま給与所得控除というのを受けるのは、それは俸給をもらう者、給料をもらう者、賃金をもらう者、歳費をもらう者、年金をもらう者、恩給をもらう者、そういうようなもののほか、これに類する性格を有する給与にかかわる所得給与所得ですわね。そうなってきますと、たとえば学校先生の場合、あるいは大学先生を例にとって考えますと、自分が学生を教育しなければならぬ。もちろん学校の図書館には本がありましょうが、自分でその必要とする図書を職務上当然に必要な経費として買わなければならない。そうなれば、それは原書でも何でも購入し、あるいは他の文献を購入しまして、それから、それをもとにして教えるわけですね。そういうような場合にも最高二十八万しか控除を認めないわけでしょう。今度は、会社に働いて、それでそこで労働をして、その会社に行けば、そこでは作業衣が貸与される、そういうような人の経費も同じように一律主義ですね。私は、そういうようなとらえ方というものはちょっとおかしいんじゃないか。だから、その職務に伴う経費というものがそこには正当に評価されて控除されるという方式でなければ、これはやはり事業等を行なっている人とのつり合いの上から考えましてもおかしいと思うのですよ。これが一つと、それから、法人成りの企業等におきましては、会社という形態をとりますが、そこのおやじさんが社長で、おかみさんが専務で、むすこが常務というような会社があるわけです。  そういうようなところは、会社を運営をしていくために必要な経費として、自動車を購入します。自動車を購入して、それの減価償却は当然損金勘定として認めてあるわけでしょう。これは資産償却の中で当然認めてある。ところが、今度は個人が自動車を購入して、当然その職務上、その自動車を使わなければやっていけないような仕事がありますよ。そういうようなものは、それを損金として見るということはしないわけですね。ですから、今日の自動車がもうすでに一千万台をこえるという時代を迎えてきた実態に、社会のあるいは経済発展過程にそぐわない税制体系所得控除制度というものはなっているんじゃないか。  そういうようなところから、社会通念上必要だと認められる経費については当然控除していくという方式を、一定額基礎控除みたいな、概算控除みたいな上に、そういうようなものを認めるべきではないか、こういうふうに私は考えるのです。これがもう常識的な考え方じゃないかと思うのですが、そういうのはだめだとあなたはお考えですか。
  10. 吉國二郎

    吉國説明員 ただいま御指摘がございましたように、給与所得につきましては、これはもう年来の問題でございます。アメリカでも、御承知のとおり経費控除につきましては一応合理的であり必要なものを控除する。そして各種のいわゆるアイテマイズド・デダクションというものをきめておりますが、給与所得の場合には主としてスタンダード・デダクションという概算控除を選択しているものが非常に多いというのが実情でございまして、なかなか実際に即した経費控除というものが実行しにくいという面では各国とも悩んでいるように思います。ことに事業所得者の場合でございますと、経費と申しましても、コストが非常に大きいもので、たとえば仕入れの金額であるとかあるいは製造原価であるというようなものがかなりはっきり概念づけられるわけでございますが、給与所得者の場合の経費というのは、収入を得るため必要な経費ということになりますと、なかなかそれ自体の標準化がむずかしいという問題があると思います。同じ教師にいたしましても、社会通念上一体どの程度の学問をするのかという点は、なかなかむずかしいわけで、むしろ教授をしない間、助手とか助教授の間に大学先生だと非常に勉強されて、老教授になると、もうそのいわば蓄積で講義をしておられるというようなこともございますし、その場合に、一体それじゃ前の投資と考えてそれを控除するのかというような問題が学界でも非常に問題になっているように聞いております。  そういう意味で、これだけ多数の納税者をかかえております場合に、そういう、しかも一つ一つ経費性格標準化が非常に困難であるということも考えますと、最終的にはやはりできるだけ合理的な概算控除をつくって、これで対処していくほうが現実的でもあるし、実行可能な点ではそのほうがいいではないかというのが、いろいろ検討いたしました結果の税制調査会考え方でございます。  そういう意味では、事業所得者についてもあるいは同じ問題があるかと思いますのは、事業主にいたしましても、このごろよく、事業主給与所得控除を認めろということがいわれるわけでございます。今度は、事業経費で見ておったほかに、事業所得者経費があるかということになりますと、その事業経費で見られた場合には、給与所得控除基礎になるような経費がみな入っておるわけでございます。そういう意味では、事業主控除が非常に大きいと申しますけれども、その大きいうちの大部分コスト部分である。事業者として給与所得控除に相当するような経費控除分を受けておるのは非常に少ないのだということもいえるかと思います。  さっき御指摘がございました自動車の例は、これは確かに執行上非常にむずかしい問題ではございますが、理論的に申しますと、日曜日に家族を連れて動いたという場合のガソリン代とか償却費は、ほんとう家事関連費としてこれを除外するというたてまえでございます。そういう意味では給与所得者自動車通勤をするという場合に、自動車通勤費はどうなのかということになりますと、自動車で行けない連中との権衡、それがネセサリーであってリーズナブルかというと、これも一つの問題があるわけであります。アメリカでもよく問題になっておるのでございますが、遠くに家を持っておると通勤費がかかる、仕事場のそばに家があれば通勤費はかからない、そこは非常にアンバランスじゃないか。そうして通勤費必要経費と考えろという議論がございますが、これに対しては、逆に日本では、これはちょっと当たりませんが、遠くにいることによる満足と、つまり環境のいいところに住まう満足とそれに対する通勤費というものは、いわば引き合うものである。したがって、これを単に通勤費という面だけで控除するのはおかしいというようなことでもって控除しないとか、これは非常に問題が多い分野でございます。そういう意味では、もちろんそういう点をもう少し標準化できるような努力は私どもしなければならぬと思います。これはかなり多くの準備も要りましょうし、また、国民的に給与所得者必要経費というものに対する認識がはっきりしてくることが必要ではないか。そういう点から将来の課題ではありますが、近い将来にこれを実現するのはなかなかむずかしい。  先生もよく御承知と思いますけれども、一番給与所得者に近い例としては、いわゆる文筆家所得がございます。これはもう再三文筆家からは概算経費控除にしてくれという要求がございます。実際問題として自分たちもどこまで経費かわからない。また、税務署に聞いてもなかなかわからない。実際自分らがよく考えてみてもわからない。極端なことを言われる方は、静かなところで執筆をしないといいものが書けないから、自分の家の隣のあき地に家を建てられては困るので、それを買った、それが必要経費だと申告された方もあるわけです。これもその方から見れば必要経費でありましょうが、社会的に見れば、明らかにこれは資産の取得になるというわけで、むしろ事業所得者のほうから給与所得に類似したものは概算控除にしてもらうほうがトラブルが少ないという御要望があるようなわけでございます。私どもとしては研究はいたしますが、当分この線でいくよりしかたがないのだという感じを持っております。
  11. 村山喜一

    村山(喜)小委員 給与所得を得るのにそれに相応する必要経費が要るということは、あなたもお認めになっているでしょう。そうなりますと、この給与所得の中における俸給なり給料なりあるいは賃金歳費年金恩給、この問題を考えますと、たとえば恩給を考えてみましょう。俸給をもらうあるいは賃金をもらうために毎日通勤をしておりますね。そして働いて得る収入と、恩給なり年金という、そういうようなところに出かけなくてももらえる収入と、経費が同じだというとらえ方はちょっとおかしいじゃありませんか。
  12. 吉國二郎

    吉國説明員 仰せのとおりだと思いますが、一方において退職年金等は給与のバックペイであるという感じがございます。そういう意味では、現実にその場で必要経費がなくても、一種のバックペイとしてそこの中に性質的に含まれておるということもいえるのじゃないかと思います。ただおっしゃるとおり、給与所得控除という形で経費をとらえておるために、個別性が全然ないということは、これは事実でございます。そこは概算控除の問題点の一つであると思いますが、いまの段階ではむしろできるだけ収入比例した経費というものと最低控除とをかみ合わせることによって、その点で現実に近いものになるようにという配慮で今回は給与所得控除を上まで引き上げていくということで、現実に即したものを考える。もちろん個別的に非常に努力をするのだけれども、安い給料の人もございます。遊んでいて非常に高い給料の人もございますが、平均的に考えますと、やはり収入比例した経費があり得る。大勢的に見れば収入経費というものは比例しておるという点も考えられないではないと思います。給与所得控除をできるだけ細密に考えていくという方向でこれに対処していくのが現実の姿ではなかろうか、かように思っております。
  13. 村山喜一

    村山(喜)小委員 ちょっとその理論はいただきかねるのです。というのは、先ほどあなたは助教授と老練な教授との問題をお話しになった。助教授のほうが収入は少ないのですよ。少ないけれども、その中でいろいろ勉強をしなくちゃならぬ、よけい本を買うかもしれません。老教授はもう蓄積したもので話をするかもしれませんという例を話されたでしょう。教授のほうが俸給は高い。それに比例するということはあり得ないことであって、だからそういうようなとらえ方、感覚的なとらえ方でなしに、いま五百万円以上の収入のある人の場合には、税法の改正で確定申告になっていますね。そうなったら、その確定申告をする人の場合に、給与所得者が幾らおるかわかりませんけれども、一体どれくらいの経費がどういうような部門においてかかっているのかということを見ながら処理をしてみさせたらどうなんですか。一律に二十八万円というものを基礎において、これ以上はだめですよ、そういうようなとらえ方でなしに、確定申告をする段階の中で、それは数はそうたくさんないわけですから、そこでひとつその試みとしてそれをやってみる、やってみる中からいろいろな職種ごとに必要経費というものを算出する合理的な基礎が私は生まれてくると思うのですよ。それを税調の皆さんも大蔵省の皆さんも、この問題は一律主義でいく以外にはちょっと道はありませんというところにとどまっているところに、この給与所得控除の問題が一向に解決しない原因があるのじゃないかと思います。文筆家の場合等は、ある程度経費控除というものを認めているわけでしょう。認めておりながら、それと同じような文化活動に当たるような人はこれを認めないということも、私はおかしいと思うのですよ。学問を研究するような人たちは、それは文筆家ではないのだからということでやるということも、これも私はいわゆる領域から見ましたときにきわめて不可解な存在になっていると思わざるを得ません。そういうような確定申告に伴って必要経費というものを、あなた方はあまりにもしゃく定木でやられ過ぎていると思いますから、もう少し実態に合わせてそういうようなことを考えてみるという方向は打ち出せませんか。
  14. 吉國二郎

    吉國説明員 五百万以上に申告を要求しておりますが、ただ問題は、この五百万以上の方が経費をそれほど正確に、たてまえは申告にはなっておりますけれども給与所得控除もとで申告をしておられますので、経費を正確に——経費あるいは経費にならぬものもあるかと思いますが、完全につけておられるというケースは、ある程度最初にお願いをしておかないと無理じゃないかと思いますが、一つ考え方だと思って、その点一ぺん私も考えてみたいと思いますけれども、実は昔も何べんかやってみたことがございます。なかなか経費になるものが出てこないという面がございます。そうやった場合に、逆にいまの小さな所得者のほうが案外経費が少なくなってしまって、今度逆に不均衡が起きる心配もあるのじゃないか。いろいろなことが考えられますが、いまの仰せの点、何か方法があれば確かに研究してみる価値のあることだと私は思います。どれくらい具体的に方法が考えられるか、その点私たちとしても考えてみたいと思います。
  15. 村山喜一

    村山(喜)小委員 この問題は、私はやはり日本だけがそういうようなことで一律主義で、その本人の、これは収入の多寡にかかわらず、その人にはそれぞれの場において経費というものがあるんだということを徴税技術上の立場からと、それから不均衡になるんじゃなかろうかという、そういうような心配からいう立場から、当分の間はこれでいくよりほかにないというようなとらえ方では、さっぱり進行しないんじゃないか。だからそこに訴訟を起こして、やり方は間違いだ、これは憲法違反だという訴えが出てくる。ですから、社会通念上認められるようなものについては、私はこれは経費控除として認めていいんじゃないかと思うんですよ。それが家を買うとかなんとかいう、その文筆家の先ほどの例などは、これは社会通念にも認められないわけですから、経費として落とすなどということはもってのほかなんですが、やはりそこにはもう少し世の中のいわゆる変化に対応した税制というものを考えてもらう。そういうような意味において、私は、確定申告をするような人については、そういうような点から一つの基準というものを模索をする意味においてやってみたらどうだろうか。その中で、なるほどこういうような必要経費というものは認めるべきだ、あるいはこれは認めるべきでないというようなものが浮かんでくるんじゃないか。それでなければ、いま一般的な概算控除の上に所得比例をして認める、百十万円で頭打ちだからそれを伸ばさなくちゃいかぬ、そういうような現在の体制の中における収入が多い人は経費も多くかかるだろうというとらえ方になっちゃうのですから、私はそれは間違いだと思うんですよ。収入が少なくても経費がかかる人もあるし、収入が多くても経費の少ない人もおるのですから、先ほどの話じゃありませんが、そういうようなとらえ方でやはり正確に申告納税制度というものを採用している以上は、やはり国民が納得する税制というものを考えてもらわぬと、所得税というものは特に四・六と呼ばれておるように、完全に給与所得というのは把握されるわけですから、ほかの事業所得等に比べまして非常に正確に把握され過ぎている。その対価の上から見ましても、もう少しやはりサラリーマンの立場に立って税制というものをお考え願いたい。この点はひとつ吉國さんに、宿題としてあなたにお願いをしておきますから、ただ税調の答申にとらわれることなしに、ひとつ前向きで検討するというようなことで答弁願えませんか。
  16. 吉國二郎

    吉國説明員 ここにもございますように、いまおっしゃいましたように、社会通念としての経費を見るということになると、給与所得控除の選択ということになると思います。選択ということもずいぶん研究いたしたのでございますが、おっしゃったように、申告をする者は少なくとも考えてもいいんじゃないかというようなお考えは一つのお考えだと思いますが、将来の問題として宿題として私もお受けしておきたいと思います。
  17. 村山喜一

    村山(喜)小委員 そこで、倉成政務次官見えになりましたので、先ほどあなたがお見えにならないので、これはやはり政務次官からお答えを願わなければ、特に大蔵大臣が盲腸で入院をされておるから、あなたが最高の責任者ですから……。  新聞所得減税二千八百億というような非常に明るいニュースが出ておるわけですけれども、国民はそれを期待をしておるわけですね。あなた方としても、その期待にこたえるように努力をされておるだろうと思うんだが、これはやはり財政あり方の問題に関連をしてくる問題ですから、来年度予算編成の基本的な方針との関連においてとらえなければ、減税はしろ、仕事はやれという形でできるはずはない。それは国債でも発行するかということになると、これは国債もそこには限度があることは明らかですから、そういうような形の中で一体どういうような方向で一この四十三年度自然増収がある程度ある、四十四年度はもっと大幅に自然増収期待できるというような状態の中で、何をどういうふうにして進めようという考え方なんですか。その方針をお出しになっているのだったら、この際、明らかにしていただきたい。
  18. 倉成正

    倉成説明員 いま村山委員から非常に御理解のある御発言がありまして、非常に力強く思っているところでございます。実は来年度の予算につきましては、ちょうど各省から要求を聞いて編成作業に取りかかっているところでございますが、ようやく各省の要求が出そろった、そのおもな点についていろいろ主計局長の段階で聞いているというところでございます。  そこで、現段階で来年度の予算をどう考えるかということになりますと、やはり来年度経済動向をどう把握するかということにかかっておるわけでありますが、具体的な来年度経済見通しについては、まだ政府としては確たる見通しを持っておりません。これは公式には、御承知のとおり例年度十二月初めから十二月の末にかけて経済見通しを出すことになっております。これに基づいて予算編成方針をきめることになっているわけであります。しかし、達観して申しますと、先般の公定歩合の一厘引き下げのときに大蔵大臣が談話を発表いたしましたように、当面緩和、先行き警戒、こういう一つ態度を考えておるわけでございます。来年度の予算規模については、経済情勢いかんにもよりますけれども、やはり景気をあまり刺激しないような適切な限度にとどめたいという考え方を持っております。  それから国債の依存度につきましては、やはり財政制度審議会答申で、ここ数年以内に五%程度に引き下げる、こういう答申をいただいておりますので、できるだけ国債は控え目にしたい、こういう気持ちでございます。  そういったことから、財政需要としては公共事業その他いろいろな要望が非常に強く出ておりますので、これをどう整理していくか、これと見合って、国民の願望であります減税をどの程度やっていくかということを総合的に考えていきたいと思っております。新聞紙上でいろいろ減税について作文がされておるようでありますけれども大蔵省としてはまだ具体的な中身を、どの程度のことをやるかということは一切きめていないというのが実情でございます。
  19. 村山喜一

    村山(喜)小委員 予算の規模はGNPの伸び比例をしてきめていくのでしょう。それを倍も上回るような予算編成をやるようなことはありませんね。そのときに、これは慣行かどうか知りませんが、来年度予算の要求ワクは二五%以内とか、そういうような慣行制度自体をあなた方が依然としておとりになっていらっしゃる。となると、公共投資伸びは三〇%というような要求が当然な要求として出てくるのですよ。そういうようなシステムをやはりこれからもおとりになるつもりなのですか。
  20. 倉成正

    倉成説明員 今度の各省の概算要求については、各省の要求を二五%以内で要求してほしいという指示をいたしまして、これに基づいて各省の要求も二五%以内で大蔵省に出てきております。これは、いまのお説によりますと、どうも形式的じゃないか、伸ばすべきものはもっと伸ばしていいじゃないかという御意見かと思いますけれども、GNPの上昇にしましても、常識的に考えると二五%も伸びるということはとうてい考えられないことでございますので、まああまり各省から勇ましい要求が出てまいりましても、現実に期待にこたえることはできないということになりますと、各省のいろいろな項目それぞれ勘案いたしまして、重点事項については、あるものについては五〇%あるいは二倍伸ばすのもありましょうし、あるいはもう少しモダレートな要求もございましょうし、そういうものを勘案して総合的に二五%以内で押えていただきたいという、形式的といえば形式的でございますが、一応の目安としては適当ではないかと考えております。  四十四年度の予算についてはこういたしましたけれども、四十五年度以降どうするかということになりますと、これはもっといい方法があればもちろんこれを改めるのにやぶさかでないと存じますけれども、常識的には大体こういうことじゃなかろうかと考えております。
  21. 村山喜一

    村山(喜)小委員 安定成長路線をたどるというので、名目の伸びで一二%くらいを考えて、財政の節度というものを打ち出しているわけでしょう。その中で今度は経済見通しも——これは経済企画庁にあとで答えていただきたいのだが、ことしは名目一五%くらいになる、実質で一〇・五%ですか、それくらいになるのじゃなかろうかとほとんどの皆さんが見ておるわけですね。かりにそれであったとしても、景気が過熱状態になる場合に財政の果たす役割りという問題を考えますと、その刺激政策には強いけれども、抑制政策には財政は力がないわけですよ。ですから、そこにはそういうような立場を踏まえて問題を処理しなければならないのに、依然として大蔵省の予算の編成方針というものは、毎年二五%の増ワクということにとどめて予算要求をしなさい、そういうようなやり方を繰り返しているところに、今日の一つの混乱があるのじゃないですか。そういうような点はもっとあなた方が事務当局をまじえてシビアーな形でこれを打ち出して、ぶんどり合戦を始めさせるようなことを押えていくというような政策を考えられていいのじゃないかと思うのですが、やはりGNPの二倍を上回るような予算要求の原案を出せというようなことをこれからもやられるつもりですか。
  22. 倉成正

    倉成説明員 ちょっと誤解があるようでございますけれども、GNPの上昇の二倍という意味でございますね。
  23. 村山喜一

    村山(喜)小委員 そうです。
  24. 倉成正

    倉成説明員 わかりました。  二、三年前には五割増しの五〇%以内の要求、一五〇%以内の概算要求ということでございました。これが二五%となってきたのは、これはやはり最近でございます。したがって、多少控え目になってきた。村山委員のお説に近づいてきたということは言えると思うのです。そこで、もう少し財政が節度を保つために、ポリシーミックスという点でシビアーな予算編成をしたらどうかという御意見のようでございますけれども、当大蔵委員会で御議論いただくスタンスとしては、さように非常に御理解がございますけれども、とにかく各省の要求その他というのは非常なものでありまして、二五%に切ったことそのものについてもかなり大きな抵抗があったというのが現実でございます。したがって、やはり各省としてはそれぞれの所管の部門についていろいろと理想を掲げ、その他いろいろな施策を考えておられることでございますから、あまりこうきびしく昨年と同額であるとか、あるいは物価上昇部分であるとかいう程度予算要求にしますと、これはかえって予算全体の均衡を害することになるのじゃなかろうかと思いますので、現時点ではこの程度の概算要求を出していただいて、これを全体の予算のワクの中で査定をしていくというのが適当でないかと思っております。  しかし、御指摘の点は非常にわれわれとしてもごもっともな点がございますので、これから大いに勉強してまいりたいと存じます。
  25. 村山喜一

    村山(喜)小委員 やはり私は減税幅という問題を考える場合には、そういうような新規のものは必要最小限度において押えていく、それから不要不急になったものは削り取っていく、そして減税方向に金を回していくという方式でなければならないわけでしょう。だから、二千八百億を片一方において打ち出しながら片一方においては財政伸び予算要求のワクは二五%でございますと、まるで実行不可能な中身をさらに皆さん方が推進をしておられる中で、いわゆる陳情政治というのですか、そういうような国民の利害をわき立てて、それでやっていくのが自民党の統治形態なんだとおっしゃればそれまでなんですけれども、非常に非合理的な中身を含んでいると私は思うのですよ。だから、物価の上昇分だけの予算要求をしなさいなんということは私は一言も言ってないので、好むと好まざるとにかかわらず、やはり国民経済の成長のそのワクと比例をしていくわけですから、だからGNPの伸びが大体こういうようなところに行くだろう、だからそれを一つの基準として予算要求というものもさせるようなふうに大蔵省は指導をしていくべきじゃありませんか。それが財政を預かる大蔵省のやはり指導原理でなければならないと私は思っておるのだけれども、まあ慣例でございます、慣習でございます、前よりはよくなりましたということだけでは私は納得できません。
  26. 倉成正

    倉成説明員 村山委員のような御理解のある御発言ばかしであればそういうこともあるいは可能かと思いますが、現実問題として私は非常にむずかしいと思います。公共事業にしましても、あるいは義務的な経費にいたしましても、あるいは地方交付税にいたしましても、財政に対する需要というのは非常に大きいわけでありまして、他の委員会等私どもしばしば参りまして、やはり現在でも少ないというようないろいろな御要望を自民党のみならず各党の皆さま方から承っておるわけでありまして、さようにきびしい線を最初から打ち出すということは、なかなかこれは実際予算の編成の技術としてもむずかしいのじゃなかろうかと思います。しかし、さような形で最初からもう予算編成方針をきめて、そして各省にそういった予算の伸びという基準を示してそのワク内でもうとにかくセットしてこいというようなことがもしできるとすれば、これはひとつ非常にけっこうなことであろうかと思いますが、私の感じとしてはそれは非常にむずかしいことである。しかし、理想としてはそういうふうにありたいという点については、村山委員の御意見に同感でございます。
  27. 村山喜一

    村山(喜)小委員 まあ、倉成さんは近代的な政治家ですから、だから私はあなたに特に言うわけなんだが、日本のいわゆる政党政治というのが非常に非近代的な非合理性を持っているわけです。われわれ野党の場合はある程度の気軽さがありますが、与党がまず先駆者となってそういうようなやつをやっていくという姿は少なくともとるべきじゃない。やはりそこには、財政において節度ということを打ち出している以上は、そういうような立場で問題の処理を願わなければ——まあ結論として予算案をまとめるときにはそういうふうになるのだから、そんなにGNPの伸びの二倍も予算案を出したらそれはたいへんなことになるわけですから、インフレになることは間違いないのですから、そういう見通しがつきながらもなおやらなければならないということはこれは現実でしょうが、それは現実を克服していくための努力をあなた方のような方が中心になっておやりをいただきたい。これはひとつ強く希望を申し上げておきます。
  28. 倉成正

    倉成説明員 ただいまの御意見でありますが、われわれいまの予算編成のやり方が万全であると思っておりません。したがって、アメリカでやっておりますPPBSの制度を取り入れたり、もう少しコンピューターを活用いたしまして、もっと予算の効率あるいは予算の組み方ということについて、コンピューターで計算をしますとその効果がしっかり出てくる、そういうことになればもう少し現在の予算の編成のあり方というのが科学的に合理的になってくるのじゃなかろうかと思いますので、主計局においてもこの問題については精力的にいま取り組んでいる段階であります。
  29. 村山喜一

    村山(喜)小委員 時間がありませんのであと一つだけ私お尋ねをしておきますが、中小企業庁見えていますね。  高度成長過程の中で依然としてやはり中小企業分野の倒産が相次いでおるわけです。けさのニュースでも稲村さんの中堅建設会社がつぶれたというようなのがニュースで出されておりました。特に建設部門は最近そういうような状態が強いわけでありますが、中小企業の問題を考えますときに、「今後の中小企業政策のあり方」についてという七月十九日の中間報告を私も拝見をさせてもらいました。その中で、人手不足のそういう状態に入ってくる。それから国際的の環境の変化、特に発展途上国の産業に対する援助体制等の問題がありますので、中小企業をかかえた日本の産業構造というものをこれからどういうふうに転換をしていくのかということを考えてまいりますと、これは企業の育成政策と金融政策、税制政策、いろいろな関連をしながらその位置づけというものを明確にしていかなくちゃならぬわけですが、私はここでぜひ税制の問題に関連をしてお尋ねをしておきたいと思います点は、下請企業関係の将来のあり方を、系列化の方向で進めていくのか、それとも下請企業関係の諸君が望んでいるような方向、いわゆる独立した一つの専門メーカーとして大企業に対して対等にものが言える、しかも多角的に発注を受けて引き受けるような体制をつくっていくのか、その方向、構造政策の位置づけの問題をどういうふうにとらえておいでになるか。それの方向いかんによっては、税制における育成という問題もあるいは金融における育成の方向も私は出てくると思います。だから、その方向性をどういうふうに持っておられるか。  それから、どうしても日本の産業構造の中で衰退をしていく部門が出てまいります。それは職種転換をしなければならない事態がやはり予想される。そういうようなものに対しては、構造政策の中で職種転換をせざるを得ないというものが必ず出てくる場合には、一体それに対する措置をどういうふうに考えて税法の中でやろうとしておられるのか。アメリカの場合等は分離所得課税の方式で、他の職種に転換をしようとする場合には二五%ぐらいの税率で済むようになっておる。ところが、日本の場合には、職種転換をしようと思っても何やらかにやらやはり税金を取られますから、七〇%ぐらいの税率になるということがよくいわれているわけですが、そういうふうないわゆる転廃業をしやすいような税制というものをあなた方としてはお出しになる、要求をされる意思があるのかないのか。  それから、最近の流通近代化政策の中でいろいろ問題が出てまいります。たとえば野菜屋さんで売られている大根が一本八十円だ、ところが、生産地においてはそれがその半分以下で取引をされている。そこで団地あたりでは、もういまのような高い消費者物価では生活ができないから、ひとつ共同で買い出しに行こうじゃないかというので、トラックでもって買い出しに行くわけです、あるいはグループをつくりまして奥さん方がいろいろな品物をまとめて買いに行く、こういうような形態がすでに生まれている。あるいは淡路島の、これは酪農を中心にする農協がこちらのほうの生協と契約をしまして、そして牛乳を、灘生協ですかあそこと契約して、団地卸は一本十五円の契約でやっていく。それでスーパーあたりで売っている場合は一本売り十九円でけっこう採算がとれる。しかも生産者には一本当たり十円は還元ができるというシステム、そういうような流通形態が生まれているわけです。その中で中小企業の問題を考えなければならない。特に零細企業者、特にそういうような生鮮食料品等を扱っている企業者の問題を考えないわけにはまいりません。ですから、物価安定という問題とそういうような零細企業者の生活の安定という問題と結び合わせて考えていくとした場合に、どういうような流通近代化政策というものを進めようとしておられるのか、これはわれわれが税法の上で見るところでは、ボランタリーチェーンの倉庫の償却を特別措置として認めているという程度にすぎないのじゃないか。だから、いまのような形で放置しておきますと、これは当然そういうような自分たちの生活を守るための必要やむを得ざる措置として、私は何らかの措置を経済企画庁の国民生活局あたりで、考えてもらって、それに対する融資をやって、安い食料品が手に入るような体制をつくってもらわなければならないようになるのじゃないかと思うのです。それでは零細企業者も困るわけですから、それの協業化なり何らかの方法をもうこの際打ち出して、——野菜屋さんに環衛公庫の低利資金を貸してやるという程度のものではこれは焼け石に水でどうにもならぬと思いますが、何らかのそういうような税の面においてあなた方が今度、来年度予算の編成過程の中で打ち出しておられるものがあるとするならば、それを御説明を願いたい。
  30. 井土武久

    ○井土説明員 まず下請の問題でございますが、中小企業の下請形態は業種、業態によりまして非常に複雑で、かつ変化に富んでおります。したがいまして、一律に系列化が望ましいか、あるいは独立専門化が望ましいかということはなかなかむずかしい問題でございますが、最終的に理想的な形態としては、独立して親企業と対等に取引ができる形態になることが望ましいと考えております。ただし、現実問題としては、すぐにそういう状態に到達できる企業は数が少のうございます。過程的には系列化に入って、そこで企業の体質を改善していくということも望ましい形態として考えられるわけでございます。したがいまして、この問題についてはさらに先ほど御指摘がございました中小企業政策審議会の企画小委員会で中間報告のあとで深く検討をしてもらうことにいたしております。  第二番目の業種転換の問題でございますが、御指摘のように、中小企業をめぐる内外の経済環境は非常に大きな変動をいたしておりまして、個々の中小企業の力だけではこれに対応することが困難なような状態も出てまいっております。したがいまして、業種全体あるいは産地全体で構造改善を促進いたしておる業種なり産地がかなり出てまいっておりまして、これにつきましては構造改善を促進いたしますための税制上の助成措置を本年度からとったわけでございますが、来年度以降これを引き続き促進をいたしてまいりたいと考えております。なお、その際に、従来の業種にとどまることがその業種全体の構造改善の促進にとって必ずしも望ましくなく、むしろ他の業種に何割かは転換をしていくほうが望ましいという場合もございます。この場合には、この構造改善計画でこういう転換が望ましい場合には、計画を定めておきまして、その計画に沿って転換をしていく場合には税制上の助成措置を講ずるようにいたしたいというふうに考えておりまして、現在その案を作成中でございます。  次の流通の問題につきましては、商業第一課長からお答えをさせていただきます。
  31. 沢井新一郎

    ○沢井説明員 中小企業庁の商業第一課長の沢井でございます。流通関係のことにつきましてお答え申し上げます。  御指摘のとおり、わが国の流通部門のおくれが物価上昇の一つの原因となっておることはまことに事実でございまして、その原因といたしましていろいろ考えられておりますが、第一点は、やはり何と申しましても労働需給の逼迫ということでございます。それからもう一点いわれておりますことは、やはり都市化の進展に伴います流通機能の低下でございます。もう一つは、生産、消費の大型化に対応いたしまして、その中の流通部門がそれぞれの機能を高度化する、ないしは規模のメリットを持つために協業化、高度化ということで大型化していくことが必要なのでございます。その辺がおくれていることがやはり物価上昇につながっていると考えます。  それに対する対策といたしまして、先ほど先生おっしゃいました中間報告にもございますように、まず労働需給の逼迫につきましては、労働集約的商業経営への移行ということで、省力設備の導入だとか、あるいはいろいろな研修によりまして労働者の量の不足を質へ転換するという方向を考えております。それから都市の過密化に伴います流通機能の低下、これに対しましては、いわゆる卸の場合におきましては卸団地の形成あるいは卸総合センターの建設、さらには小売りのほうにつきましてはショッピングセンターの建設だとかあるいは商店街の近代化というような方向でこれに対処したいという考えでございます。  それから、最後の流通機能の高度化の問題でございますが、これは二つに分けまして、一つは協、業化、高度化によります大型化によりまして規模のメリットを享受させて流通コストを下げていく。それからもう一つは、流通機能の大型化の過程におきましても、なおかつ中小商業者に適した流通機能というものがかなり広範に残されると考えられますので、その辺の分野に適合するように中小商業者がみずからの機能を高度化していく、あるいは専門化していく、あるいは特化していくというような方向でこれに対処したいと考えております。これに対する政策といたしましては、やはり中小企業振興事業団の高度化資金の融資とか、それからもう一つは四十三年度から新設されました流通近代化ワクと申しますか、中小公庫と国民公庫に合計三十億のワクをもちまして流通近代化のための資金を融資することになっておるわけでございまが、その辺の活用によって対処していきたいと思っております。  なお、先生最後に言われました税制関係でございますが、中小商業に対しましては一般の中小企業税制税制が適用になるわけでございますが、御指摘のとおり、中小商業プロパーの税制といたしましては、厳密に申し上げまして、先生がおっしゃいましたいわゆるボランタリーチェーンの割り増し償却、それから協業店舗と申しますか寄り合い百貨店、寄り合いスーパーの特別償却と、この二つしかございません。そのほかワン・オグ・ゼムという感じで申し上げますと、不動産取得税に関するものなどあるわけでございますが、あまり大きなものはないわけでございます。  来年度要求といたしまして、われわれのほうといたしましていろいろ事務的に考えてみたわけでございますが、あまりいい知恵も出てまいりません。いまのところ考えておりますのは、商店街振興組合に対する留保所得の特別控除制、それからボランタリーチェーンの割り増し償却、これは四十四年三月末に満了になるものでございますから、その期間を少し延長をしていただきたいということ、それから不動産取得税の特例に共同計算センターを入れていただきたい、そんなようなことを考えておるわけでございます。
  32. 村山喜一

    村山(喜)小委員 私は今日、大企業、中小企業、それまた再下請企業という系列的な問題を考えていきますと、大企業から中小企業には手形で支払いがされ、その手形は台風手形みたいなものがある、今度は再下請の企業には現金払いをしなければ雇っていけない、そこにいわゆる中小企業の悩みがある。その中で中小企業金融公庫あたりから金を一千万円くらい借りたとしても、銀行のほうで手形割引をやる場合には三割くらいは銀行にとめ置かれておる。だから七百万円くらいしか手に入らない。結局、中小企業金融公庫などのように、中小企業を育成するために設けられた資金が、大企業のほうにそれが奉仕されているというような形態がある。その中で、今日の下請代金支払遅延等防止法ですか、これはざる法として実際的に機能を果たしていないというような問題が確かにあると思うのですよ。そういうような中における、いわゆる下請関係の今後の問題をどういうふうに処理していくのかということは、それはたくさんあるわけですから、一律にこれはこういうふうにするというわけにはまいらないでしょうが、対等の力を持たしめるためには、独立メーカー、専門メーカーとしての力を持たせるようにして、系列化をさせないような方向が従来とられてきた方向でもあるし、今後それを推進をしていく中で、やはり対等にものが言えるように、六十日の手形を振り出してもそれが割引もできないような状態の中で、もろに大企業からのしわ寄せがかぶさってくるものは、徹底的にそういうような悪い大企業は指摘をして、中小企業を泣かせる企業だというので、それらの人たちから弾効ができるような、そういう体制をとらなければ日本の中小企業はよくならないと思うのですよ。ですから、そういうような問題を取り上げてみましても、中小企業庁としてはこうするんだという、中小企業者の利益を守るためにやっていくんだという方針をもっとしっかり打ち出していただきたいと思うのです。  それから、これはちょっとお尋ねしますが、構造政策の中で二分の一割り増し償却制度をつくりました。これが来年の三月で期限切れになるわけですね、ボランタリーチェーン等のもので。あなた方としては、何か話を聞きますと、これは八年くらい延ばしていきたいというようなことのようです。ところが、一体どういうような業種がどのように適用されておるという問題は、これは政令措置でしょう。政令措置の中では、まだきまっていないんだというふうに聞くのですが、私はやはり税制改正の中で、そういうような構造政策に伴う税制のメリットを与えるということでつくられた以上、それが実行しないうちにまた延ばしてくれというのは筋論からいってもおかしなことになるので、いつごろを目安にどういうような業種を対象としてやろうとしておられるのか、その見通しをちょっと説明を願っておきたいと思います。
  33. 井土武久

    ○井土説明員 まず下請の問題でございますが、確かに下請代金の支払いが金融の引き締めがあるたびにかなり延びるという事情がございまして、これはきわめて残念な事実でございます。これにつきましては、下請代金支払遅延等防止法によりまして、公正取引委員会と協力をいたしまして、下請代金が非常に遅延をすることによって、中小企業の利益を侵害するということがないように、運用を強化をしてまいっておるつもりでございますが、何ぶんにも数が非常に多うございますので、全部を捕捉をしておるかというと、これはできておりません。今後も十分に努力をしてまいりたいと思います。最終的には大企業と対等の力を持つ独立した企業に成長することが体質の改善の要諦でございますので、下請企業につきましても、このような方向で独立した強力な体質のものに育成をしていく、大企業と対等に取引ができるというところに持ってまいりたいというふうに考えております。  次の構造改善の二分の一割り増し償却の問題でございますが、これは商工組合等が構造改善計画を作成いたしまして、主務大臣の承認を受けました場合に、二分の一の割り増し償却ができるわけでございまして、現在数商工組合におきまして、構造改善計画を作成中でございます。業種につきましては、近代化促進法の指定業種であればいいわけでございまして、特に新しく業種を政令で指定するわけではございません。現在作成中の構造改善計画ができ上がりまして、申請が出てくれば、これを審査しまして、本年度中に承認をする運びにいたしたいと考えております。
  34. 村山喜一

    村山(喜)小委員 もう時間がないようですからやめますが、大企業と中小企業との力関係という問題を考えますと、あなた方が下請代金支払遅延等防止法の強化をやっていくんだとおっしゃっておるのですが、たとえば六十日を過ぎた場合に、日歩四銭の割合で遅延利息支払いの義務があるんだという解釈をかりに下されたとしましても、それを今日の力関係の中で、大企業に要求しますね、要求したら、もうあなたのところとは取引をしませんといって縁切りになるわけですよ。縁切りになるものだから、それがこわいからなかなか言えない。だから、まあしかたがなかんべえというようなことであきらめてしまう。そういうような体質があるわけです。ですから、下請の系列化をさらに大企業の周辺に進めていくというような方向をとれば、ますますそういうようなことになる。それでは中小企業の独立というものはあり得ないし、あなた方もそういうような方向で努力していただくわけですが、もっとそこら辺はきびしく大企業の横暴を押えていくという立場において法律を実行性のあるものにしてもらいたいと思うのですよ。その原案を出されたら、私は今日、中小企業の危機の上から見まして、反対をする政党はなかろうと思うのです。要は、あなた方の決意いかんにかかっているのではないか。それをのんべんだらりとしてやられるところに問題があるのですから、この次はぜひそういうようなことにしてもらいたいと思うのです。  それから、きょうの記事を見ますと、自民党商工部会も了承をして、総計で千七百七億円の通産省関係減税要望額も出されたというように出ております。中身を見てみますと、これはどうだろうかと思われるようなものもありますよ。いまその税制の中で、構造政策の中で二分の一割り増し償却のものを法制化した。ところが、それもなお依然として政令が出てこない。実行措置の段階にないようなものさえもあるわけですから、それはやはり中小企業庁としては意欲的に取り組んでおっても、実際それを受けて立つ業界がまだそこまで体制が整っていなかったということが事情としていえるわけですね。ですから、あなた方が指導しながら、そういうようなものをつくり上げていくという善意はよくわかります。その積極性も高く評価しますけれども、もっと中小企業者自体に、みずからの問題はみずからでやるのだということを決意をさしてもらわなければ、いまのような寄りかかった姿勢でありますと、もうほとんど国民は実行性がないものとして、流通構造過程の中においても、金融措置はしたけれども、あまり期待ができない。もうそれよりも、そういうような中間的な流通過程はできるだけ省略をして、生産者と消費者が直結をしていく中で物価安定をやっていく。そのためにはひとつ資金を、そういうようなのに金をくれということの運動がこれから出てきますから、そういうような点を十分お考えの上、やはり国民の要望に従うような、期待にこたえる中小企業として、金融税制の問題もそうですが、産業政策のほうでももう少し本腰を入れていただくように要望しておきたいと思います。  この最後の点ですが、どうなんですか吉國さん、構造政策の延長問題これはあなた方のほうとしては、そういうようなことでよしやろうというかまえであるのか、それとも実行性のあるものが生まれてきて、それを見てから検討するという段階ですか。
  35. 吉國二郎

    吉國説明員 御承知のように、昭和四十四年度中に期限の倒来いたします特別措置は非常に数多くございます。構造改善の部分もその一つでございます。いまお読みになりましたように、通産からそれらを含めた要望がいずれ出てまいると思いますが、私どももこの実績等を考えながら、それぞれについて結論を出すよりしかたがないと思っております。いまあらかじめどうしようというっもりでは臨んでありませんので、内容を承った上で考えたいと思います。
  36. 村山喜一

    村山(喜)小委員 非常に意欲的なものだというので、塩崎さんが主税局長のときに出されたものがありましたね。いわゆる過熱のときに押え、そして景気が刺激をしなければならないときにはそれをやっていくのだということの、そういうような税制の改正を出された。ところが、実際それを用してみると、なかなかそれが発動できないようなものがあるわけですね。ですから、意図は非常に善意として受け取るとしても、実際それは実行できないようなものを法律改正をしてまでやるというのは、私はやはり時期尚早だといわなければならない。そういうような意味において、特別措置の問題等につきましても、もう少し実行性があるかどうかという点からメスを入れて、もう実行性がないようなものは将来にそれを期待をすることにして整理をしていかなくてはならない。あまりにも多過ぎますよ。その点は要望として申し上げておきます。  以上で終わります。
  37. 笹山茂太郎

    笹山委員長 ちょっと速記をやめて。     〔速記中止〕
  38. 笹山茂太郎

    笹山委員長 速記を始めて。  広沢賢一君。
  39. 広沢賢一

    広沢(賢)小委員 まず経済企画庁にお聞きしたいのですが、経済白書でこの前聞きそびれちゃったのですが、租税特別措置については、これは既得権化したらいかぬ。これは税調と同じですが、経済白書でもって、特にその改変の問題について触れております。これの根拠について承りたいと思います。
  40. 矢野智雄

    ○矢野説明員 今度の経済白書では、一つの問題としまして財政の硬直化の問題を取り上げております。当然歳出の面にも硬直性を持っているものがあると思いますが、それと同時に歳入の面でも同様な問題があるのじゃないか。その一例としまして租税特別措置の問題を指摘したわけであります。御承知のように、租税特別措置はそれぞれの特定の政策目的に基づいて実施されていると思いますが、時間がたつにつれまして、あるいは当初の政策目的がすでに達成されているとか、あるいは客観条件が変化してきているものもあるかと思います。しかし、そういう場合も往々にして、一度でき上がりますと、そうした変化にかかわらず、なかなか廃止しがたいような事情——事情といいますか、そういう情勢も一方にあるのではなかろうか。したがいまして、こうしたものも当初設定したときにはそれぞれ理由があると思いますが、その後の状況を絶えず見ながら検討し、硬直化をしないようにしていく必要があるのではないかと、一般的にそういう問題の提起をしたわけであります。
  41. 広沢賢一

    広沢(賢)小委員 私が聞いているのは、一般的と言うけれども、それを言うためには具体的な根拠がなければならないと思うのです。具体的にたとえばこういう、どうにもしょうがないのだ、これはおかしいのだというもの——私のほうからお聞きしますが、交際費は来年で期限が切れてしまいますね。これについては大騒ぎになっておりますね。大騒ぎというか、新聞でもでかく取り上げられているし、もうこれは道徳的にも経済的にもすべてにおいてだめだ、これは課税強化しなければならぬということを書いておりますが、この交際費の問題と利子配当の優遇措置について、これがどういうふうに日本経済その他に響くかという問題について御検討なさいましたか。
  42. 矢野智雄

    ○矢野説明員 経済白書で指摘いたしましたのは、概して一般的に問題を取り上げておりまして、特に個々の租税特別措置につきましての幾つか項目があるわけでありますが、それぞれにつきまして十分検討をし、それに対してどういう問題があるかというところまでは指摘しておりません。その点はわれわれのほうは一般的にそういう問題を提起いたしまして、そのあと具体的な問題につきましては、担当官庁あるいはそれに関連する専門の機関がいろいろございますから、そこで検討してほしいというところでとどめております。
  43. 広沢賢一

    広沢(賢)小委員 それでは主税局長にお尋ねしますが、いまの交際費の問題ですが、これは新聞に出ておる範囲で確かめると、たしかそうだと思いますが、昼はゴルフ、夜は料亭、バー、キャバレーへの接待、日本式営業活動が第三次産業をささえている。これは労働省でもけしからぬと言っていますね。年ごとにはでになる企業の金の使い方に八十万人ものホステスが群がり、八万人のゴルフキャディが恩恵にあずかっているということで、人手不足のおりだから、これはどんどん変えなければならぬ。当然のことだと思うのですね。そこで、この交際費の総額が社会保障費を中心とした厚生省予算とほぼ同額ですから、この問題についてメスを入れるというのは、これは当然だと思うのです。  そこで、いま新聞でいわれている交際費の課税の強化の問題ですが、期限切れになる前に大蔵省としてはどういうような課税の強化、抜本的な強化について考えておられますか。
  44. 吉國二郎

    吉國説明員 交際費に関する特別措置は来年の三月が期限が終了いたします。これはもう御承知のとおりでございますが、交際費のいわゆる損金不算入の特別措置でございますから、これを期限の終了とともにそのままにしておきますと、交際費が全額損金算入になるということで、これが適当でないということは、これは明らかだと思います。そういう意味では、現行制度をそのまま継続することは少なくとも最低限必要であろう、私どもはこう考えております。  交際費のいろいろな弊害については、もう御指摘のとおりだと思いますが、私は基本的にはやはり企業が、税制のこういうきびしい大勢に即応して、交際費自体を宿減することを考えてもらうことがまず先決ではなかろうかと思いますが、幸いにして最近、御承知のとおり商工会議所等ではいずれも交際費について否定的な見解を、八割くらいの社長が縮減していかなければならぬということを言っているようでございます。こういう機運でもございますので、できるだけそういう機運を助成するような考え方をとりたいと思いますが、まだ具体的には私ども十分検討いたしておりません。少なくとも、この制度をゆるめるとか、やめてしまうということはしないということは申し上げられると思います。
  45. 広沢賢一

    広沢(賢)小委員 商工会議所でもそういうふうにに言っていますし、大蔵省の前のことしまでの案は、やはり前年よりふえた分については押えていく。ところが、ことしの見込みでは、新聞にも出ているのですが、交際費はかえってふえているのです。そうすると、これは押えるという効果がなかった。もっときつくしなければならぬということですね。ということで、もうすでに新聞には案が出ているのですが、上回る分は五〇%を対象とするのが控除額四〇%、それから前年よりふえた分の五%以上がふえた全額を課税、全部課税すると出ているのですよ。そうすると、大体この案でいきますと、(村山(喜)小委員新聞にばかり出している」と呼ぶ)そうなんですよ。おかしいですよ。いつも毎度のことです。そうすると、これはどのくらいになりますか。
  46. 吉國二郎

    吉國説明員 このごろは新聞の方も非常に税制を勉強されまして、独自の判断でいろいろお書きになるので、私どもたいへん参考にもなりますが、しかし、それがそのまま実現するということになりますと、非常にこれはまた困ったことだと思います。先ほど二千八百億というのも、これは全く新聞の創作であるといわざるを得ないのでございまして、いま御指摘になりました交際費の強化方式を考えたら、まあいまの制度を知っている方ならそれくらいのことはお書きになるのじゃないかという感じもいたしますけれども、実際に今度の総体の交際費がふえておるという点は確かにございます。取引が伸びておるということもその原因だと思いますし、それから中小企業等の場合は、まだ交際費限度額一ぱいまで使っていないもの、そういうところ、その辺が伸びているものがあるかと思います。そういうことで、実績は十分国税庁のほうの資料に基づいて検討した上で結論を出したい、かように考えております。
  47. 広沢賢一

    広沢(賢)小委員 いま言われましたけれども、中小企業のほうで十分使っていない。一番問題になるのは、八幡ばかり例にあげるのは変だけれども、そういうところでの交際費で、その周辺で言っている人たちの言い方とか何か聞きますと、これはたいへんな昭和元禄というか、国が滅びるもとみたいな使い方だ、それがいろいろあると思うのですね。そこで新聞は大きく取り上げておると思います。したがって、中小企業の足切りといいますか、中小企業のやむを得ない部分——この前、国会で議論をしましたね。そのときに、やはりいま新聞辞令の案よりかもきついことを私たちも申し上げましたし、やはり真剣になってその答弁がありました。そうすると、こんな程度のものではとてもじゃないけれども、いま盛り上がった世論にこたえることはできないと思うのです。だから、こんな程度以上だということを大体の決意のほどをお聞きしたいと思います。
  48. 吉國二郎

    吉國説明員 この問題、実は私どもまだ結論を出しておりませんので、どの程度ということをいま申し上げるわけにはまいらないわけでございます。また一方において、交際費については逆にこれが必要経費だと非常に主張しておる業界もございます。それら実際のところをよく見きわめた上で、しかし、全体としての交際費に対する批判というものを十分に考えながらやっていきたい、かように思います。
  49. 広沢賢一

    広沢(賢)小委員 それが必要だという業界ですね。それがどういう理由で必要なのかと、それから中小企業ではどのくらいまだそれを使っていないんだとか、そういう資料があったならば——これはわかるわけでしょう、いまおっしゃっいましたね。そういうものを全部見きわめて今度は決定するんだと言うから、だから、いまそういうなまの資料があれば委員会へ出していただいて、それでやはりお互いに討議するということが必要だと思うのですがね。そういう資料を出す御用意がありますか。
  50. 吉國二郎

    吉國説明員 必要経費的な色彩が強いとといっている業界というのは、よく御承知だと思いますが、建設業とかそういうところでございます。  それから中小企業のほうは、総体としての額は国税庁でつかんでおりますが、個別のどれくらいがどう、どの業種がどの程度というところまでは、こまかいところはとっておりません。私どもとしては、できるだけその中からいろいろくみ取っていきたいと考えておりますので、ここでお渡しするほどの正確な資料はちょっと国税庁としてつかんでいないと思うのです。
  51. 広沢賢一

    広沢(賢)小委員 どうして私がそういう資料が必要かというその理由ですね。正直にいいますと、建設業界の人はおこるかもしれないけれども、やはり建設業界というのは、わりあいに前近代的な要素があると思うのです。いろいろ落札や何かのときにそういうものが必要だということになれば、これは供応だと思うのです。だからそういう点については、やはり建設業界で必要だというのは、これこれこういう理由なんだということについての全面的な検討をして、きびしい吟味をしたものを国会へあげてもらわなければだめだと思うのです。この問題はやはり国を建設する基ですからね。ただ単なる経済上の必要ではない。経済上もあまり必要はない。イギリスの場合がそうでしょう。一ぱい出ているのですよ、国民もみんな知っているのです。イギリスはこういうふうにしているんだとか、アメリカはこうだとか、きびしいことはみんな知っているんですよ。そうすると、これが国民の何か疎外感、政治に対する疎外感の一つの大きな原因になっているのですから、徹底的にそういう資料を出していただいて世論を喚起することが必要だと思うのです。そのくらいの熱意がなければこれはできないと思うのです。  もう一つお聞きしますが、政治献金についてどう考えますか。交際費と並んで来年どうしますか。
  52. 吉國二郎

    吉國説明員 政治献金につきましては、御承知のとおり支出をした場合には、一切損金には認めておりません。したがいまして、会社は全額いわば利益処分としてやったと同然の結果になりますので、それ以上、税制で締めるということは、これは不可能だと思います。
  53. 広沢賢一

    広沢(賢)小委員 政治資金規正法でもうすでにいろいろ議論があるのです。国会で相当議論されているのです。それから新聞でもこれは当然だといっているんですよね。したがって、税制の面から不合理を正す。いま予算を近代化するとおっしゃいましたけれども、コンピューターを使ったり何かするというのですが、そのコンピューターや何かを使って予算を近代化する前に、制度としていま言った交際費とか政治献金とか、国民から見ても何にしてもあいまいもことして怪物みたいなもので、前近代的な要素ですか、こういうものについてはやはりメスをふるう態度を示さなければ、これはコンピューターを使ってもほんとう意味がないというふうに思うのです。それで、政治献金の問題についてはやはり何らかの検討をし、こういうふうにするというような当局の案が必要じゃないかと思いますね。どうですか。
  54. 吉國二郎

    吉國説明員 政治資金規正法の関係は、まだ御承知のとおりで法律化されていませんから、現在は法人が政治献金をいたしました場合には、寄付限度額にも算入をしないということで損金不算入をしておりますから、利益をどう処分するかになると、これはそれ以上は追及しようがないわけであります。いまとしては一番きびしい線をとっている。そのためにいろいろ限度額を設けろという要求があるのかもしれないと思います。しかし、現在は政治資金に関しては、政治献金というものを必要経費というか、損金には見ていないという体制になっております。交際費の場合は半分でございますが、そういう点で交際費にも入れてないということを申し上げておきます。
  55. 広沢賢一

    広沢(賢)小委員 そうすると、私の質問があれだったのですが、交際費の名目で政治献金が相当出ているのですけれども、それについての見分け方は検討されましたか。国税庁でもけっこうですよ。
  56. 亀徳正之

    ○亀徳説明員 非常にむずかしい問題でございますが、寄付金、交際費控除は、御存じのように一応の機械的な制限を法律できめておりますので、その範囲でございますと、まあある程度話は聞きますけれども、大体機械的な範囲は認めるというたてまえで、しいてこれは政治寄金かどうか、そういう角度から聞くということも、なかなか向こうがそういう説明をしないことも多うございますし、おっしゃるお気持ちはわかるのでございますが、われわれの実行上のあれとしては、限度額の中でございますと、大体向こうの説明は筋が通っておると思えば、機械的ということばはちょっと悪うございますけれども、まあ認めざるを得ぬし、大体認めておるという状況でございます。
  57. 広沢賢一

    広沢(賢)小委員 その問題については、たとえば政治資金規正法がこんなにやかましくなっているんだから、ほんとにしり抜けにならぬためには、大蔵当局としてやはりそういう問題について、しり抜けになっている、こういうものがある、こういうものがあるということは非常になっているんだから、そういうことについて政治資金規正法をつくるに際していろいろ質問があって、当局はそれを全部整理しているというぐらいの材料がなければ、本気になって政治資金規正法を近く成立させるということにならぬと思いますからね。やはりこれからの研究課題だと思うのです。  時間がないから次に利子配当の問題についてお聞きしますが、きょうの新聞でもって——とれも新聞辞令ですか。日本経済新聞に、新しい税調では配当控除を廃止するというのですね。企業税制について根本的に考え直すという問題について書いてあります。これはだれがしゃべったのかわかりませんが、新聞記者の創作としてはなかなかうがっているし、大蔵省としてはこれはなかなか珍しい、勇断を示したものではないかと思って感心して読んだのですがね。  それで、これに関連して、たとえば総合政策研究会というそうそうたる学者とかいろいろな専門家がいます。税調に関係している方もいますがね。その人たちの言ってきた要旨は、簡単に言いますが、つまり間接金融方式はだめだ、直接金融方式に切りかえなければいかぬ、そのためにはあらゆぬ努力をしなければいかぬ。これはだれでもお認めになると思うのです。そうすると、それについて、その配当と利子の取り扱いについては不公平がある。配当のほうが損だ、だからどんどん銀行から金を借りて、それで銀行はオーバーローン、設備拡張競争、これを切りなくやっている、それで自己資本が悪くなってくるのだ、したがって、支払い配当を損金に算入せよというのですけれども、これはおかしい。一番公平なやり方として考えてみると、利子についてもあれする、配当についても優遇措置を認めないという形が一番公平だし、そういう方向にいくべきではないかと思うのです。それでこれの中でも、総合課税主義を一貫することが一番いいと言っておるんですが、そこで、これは再来年ですね。だけれども新聞面に新税調がこういうふうに出してきているというからには、やはり相当の議論が出ているはずなんです。たとえばこの前、塩崎さんのとき利潤税仮案を出して、吉國さんの時代になってからそれはだめになってしまったのではないかとよくいわれるのですが、しかし、これはどうしても法人実在説にいかなければいけない。そうすると、前の利潤税仮案で示した法人実在説に伴った何らかの案が必要だ。それにはいろいろと大企業と中小企業の間とか、同族会社とのバランスの扱い方なども加味してやっていくというのですが、これだけだと国民はわからないんですよ。そこで、いま交際費と並んで悪名高い、これも全然理屈にならぬ、一つも理屈が立たぬ利子配当の問題について優遇措置を改める、これで五百五十億ですね。それからまた、さっきの交際費だと六千億の中で半分取っても、いま村山委員がおっしゃったサラリーマン減税がばしっとできるんですね。そこで、それは大胆過ぎる言い方ですが、主税局長のお考えを聞きたい。
  58. 吉國二郎

    吉國説明員 きょうの新聞記事は、私も、実は急いで来たものでございますから中身まで読まないで表側だけ、標題だけ読みまして、えらいことが書いてあるなと思ったわけでございますが、これもやはり主税局から出たものではないというふうに思います。ただ、問題意識といたしまして、今度の税制調査会は三年の期間のうちに、利子配当の特別措置の問題と法人あり方の問題を解決しなければならぬ体制にあるということは事実でございます。それからいろいろ問題を勉強して書かれたものと考えております。  いま仰せになりました点には二つ角度があると思います。一つは、個人所得税の課税の上において利子と配当の扱いが違えば投資者としては有利なほうを選ぶであろう、そういう意味では、いま配当は一部分離課税、一部源泉選択課税、残りは総合して配当控除という制度になっておりますが、利子は一五%一律の分離課税になっているという点から、そこに差異があってはおかしいのではないかという問題がある。そもそも分離課税そのものがいけないのではないかという問題がある。第二番目は、法人の課税に関連して、利子については法人段階では法人税が課されない、それに対して、配当に対しては法人税が課せられる、そういう意味では、配当として支払う金額については法人税所得税が二重に課税になる。それに対して、利子は一回で済む。受け取り者の段階では課税になるが、支払い者の段階では課税にならない。それがコストの差として法人の自己資本の充実を妨げ、また間接金融に片寄る原因になるのではないかというのが総合政策研究会の説だと思います。そういう意味では、税制調査会が前に検討いたしました利潤税とは、総合政策研究会の考え方はまるで逆だというふうに思います。つまり、配当については一回だけの課税にすべきである。その方法としては、配当損金算入かあるいは配当控除かどちらかしかない。そういう点がまさに総合政策研究会の考え方税制調査会考え方とは基本的に違うわけでございますから、これをどこに持っていくべきかというのが、今度の税制調査会の最後の結論でございます。  おっしゃったように、実を申しますと、同じ法人でも法人の組織のあり方によってずいぶん要求と申しますか、その経済の実態が違っているものがあると思います。たとえば中小企業の場合は、市場から一般的に資本の供給を受けるという形の資金形成はなかなかむずかしい。そういう法人から見ますと、配当損金算入してもらって、そのかわり、留保に高い税金を課せられるのは非常な痛手であります。今度はその企業にとってみれば、市場から資金を仰いで安定した資本を構成することが必要だ、間接金融をできるだけ排除するということが必要だとすれば、損金算入が一番いい、こういうことになる。また、同族会社などからいえば、資本と株主、資本と経営が一致しておりますから、そういう意味では全く二重課税はひどい。むしろ配当したら配当控除してもらいたいという動きがある。そういう実態をいろいろ考えますと、はたして一律の法人税でいいのかどうかというようなことが、この間の最後の結論を出した際に問題になりました。  そもそもいま商法が、七人株主が寄れば、非常な過小資本で株式会社ができてしまうというような点も問題があるのではないか。法人というものを公開されている、つまり、一般の証券市場なりもっと広い意味の市場から資金供給を受けた形の法人とそうでない法人と分けるということが、場合によっては必要であるのではないか。また、必要だとすれば、どういう分け方がいいのかというようなところまで一ぺん考えて結論を出すべきだということを、最後の税制調査会答申でいっているわけでございます。そういう問題がございますので、これはなかなかむずかしくて、これから税制調査会の大きな課題として取り組んでいくと思いますが、そういう意味において、いろいろ詰めてきょうの記事は出ておるのではないかと思います。
  59. 広沢賢一

    広沢(賢)小委員 きょうの記事はそのとおりだと思います。そういうものを詰めていっておるのだと思いますが、しかし、全体としてはこれはそういう趨勢にある。早晩、再来年までにやらなければいかぬわけですね。たとえば、いまおっしゃった中でもいろいろ議論があると思いますが、租税特別措置のほうでもって、自己資本の充実のためには減税をしているわけですね。一方で、いまの制度ではどんどん金を借りやすくするようにできているじゃないか、おかしいじゃないかということになりますが、おかしいと思いませんか。
  60. 吉國二郎

    吉國説明員 この税制がどれくらいそういうものを引き出しているのかという問題は、必ずしも一義的にはいえないと思うのでございます。たとえばアメリカなどでは、いわば日本昭和二十五年以前の税制、独立課税主体説で課税をしておりますから、日本式の言い方をすれば、配当控除がないだけに日本よりも自己資本には損なかっこうになっておりますけれどもアメリカでは自己資本がやはり六〇%占めている。ですから、税制だけのことではなくて、おそらくこれだけ大きな投資をいたします場合に、日本の実情から申して、過去において市場からそれだけの資金を増資で獲得できたかというと、なかなかむずかしかったのではないかと思います。また、しかも一方において、日本の貯蓄の特殊性として金融機関に対する預貯金が多い。したがって、そこには資金供給の余裕があった。そういうことが、いわば資本構成を悪くした一つ経済的な姿ではないか。そういう意味では今後の資金供給のあり方をどういうふうに変えていくかという問題ともあわせて法人税の問題を考えませんと——どうしても実際は経済全体の資金の流れ、それによって法人の資本構成というものは変わっていくのである。先生おっしゃいますように、利子を租税特別措置でまけておったってまけていなくたって、金融機関に対する預貯金は同じだとおっしゃいますけれども、そういう点からいたしますと、特別措置をやってみても、間接金融の姿を変えるというのがはたしてどれくらいか。そうなりますと、日本経済運営全体、金融機構その他とあわせてやはり法人税を考えなければなるまいかという点では、問題はかなり深いと思います。それだけにいまの税制の矛盾がある。御指摘になる点、私も矛盾がある点はあると思います。しかし、これをどう変えていくかということについては、全体の日本国民経済あり方というものとマッチした姿に持っていくのが一番いいのではないか。その辺を模索する必要がある、かように考えます。
  61. 広沢賢一

    広沢(賢)小委員 あまり模索ばかりしておるとあれですが、この問題はずいぶん長いこといわれて、これはケリをつけなければならぬのは、再来年にケリをつけなければならぬと思うのですよ。いまのおっしゃった中で、非常にいいことはもうお認めになっておるのですね。貯蓄がどんどんふえている。いまでもふえておりますね。前年度と比較をするとひどいふえ方、これは利子の優遇の措置でもってそんなに左右されておるのではない。大体いまの御答弁の中から出てくるのはそういう御意見だと思いますね。そうすると、利子の問題なんというのは、先ほど言いましたとおり、前からずいぶん水かけ論になっておるのだけれども、利子の優遇措置なんという、こんなものは何にも役に立たないのだ、統計数字からいっても。それはお認めになりますか、大勢として。
  62. 吉國二郎

    吉國説明員 いま私が申し上げたのは、先生はそういう意味で廃止しろということであろうということを申し上げたわけです。もちろん、この利子の特別措置がどの程度効果があるかということについてはいろいろな議論がございます。否定する意見が税制調査会でもかなり出ておりますから、そういう意味ではかなり問題があるということは確かでございます。いま私が申し上げたのは、利子所得に対する特別措置を廃止せよという先生のお説はそういうことによっておると思うので、そういう意味から申しますと、変えても、間接金融の姿というものを変え得るだけの措置はなかなかできないのではなかろうかということを申し上げたわけであります。
  63. 広沢賢一

    広沢(賢)小委員 二つの論拠があると思いますが、私が言っておるのは、この総合政策研究会は、流れとして非常ににいい問題をついておるけれども、しかし、てまえがってなことをずいぶん言っておりますよ。大きな資本に有利になることをずいぶん言っております。そういう意味で私は申し上げたのですよ。  もう一つの点は、大きな流れとしまして、たとえばいまも、岩戸景気ではなくイザナギ景気ですか、株がどんどん上がってしまった。今度これから増資をうんとやるのだという。これは非常にいい、けっこうだと思います。しかし、そうすると、私もいま考えたのですが、利子と配当とで、税制上は配当のほうが不利だというけれども、しかし、こういうふうにずっと景気がよくなって、もうダウ平均がずっと上がってくると、そんな税制措置とかなんとか、へったくれもなくて、どんどん株は上がるし、増資に向かっていくということなんですね。それがいま吉國さんがおっしゃった経済の流れということだと思うのです。そうしますと、いままでおっしゃっていた、塩崎さんが一生懸命言っておりましたね、りゅうちょうに言っておりましたけれども、あれはうそじゃないかというような感じがするのです。それで私たちはそういうへ理屈はこね回さないで、大きな流れとしては、やはりいまの大勢として、利子配当の問題について抜本的に再来年までやる。それまで十分討議しなければなりませんから、そういうことについての率直な私どもからのいろいろ意見とか、それから質問の具体的な数字その他については、二年がかりで大がかりにやりたいと思うのですけれども、そういうことについては同意されますか。資料の交換とかその他ですね。
  64. 吉國二郎

    吉國説明員 この問題を解決するためには、非常な調査も要りますし、資料も収集しなければいけないので、もちろん私どもも十分自信のある資料はお示しいたします。また、御意見もすべてお聞かせを願いたいと思います。
  65. 広沢賢一

    広沢(賢)小委員 もう一つだけ、国税庁長官にお伺いしますが、国税審判上の問題で、うちの横山委員がいろいろ案を出しております。それから、今度答申が出てきましたが、この答申の中で——簡単に申し上げますが、一番問題になる点は、構成の問題が一つあると思うのです。これはエコノミストにも載っておりますが、この国税審判官については民間からも入れる、「も」というのですよ。「も」入れるというのですね。そうすると、たとえば十人の中で、国税庁出身の人がほとんど全部がんばっちゃって、一人だけひよこっと入れるようなこういう構成では、協議団制度から審判所制度にした理由は薄いと思うのですよ。それじゃ不公平じゃないかという気持ちがひとつあるのですよ。  それからもう一つは、これは国税庁長官の次にいるようなりっぱな人にそういう資格を与えるというのだけれども、結局最後に御指示をお願いするのは国税庁長官なんですよ。そうすると、協議団制度でもって同じ穴のムジナ論というのが有名になっているのですよ。これはおこってもしようがないんです、新聞なんかでも同じ穴のムジナというのですから。いろいろ申し上げて、更正決定がおかしいからといって申し上げても、ずっといろいろな例が出ておりますけれども、長いこと調べて、もっともだと協議団が言いながら、最後には、いや、いかんともしがたいということであきらめさしてしまうので、こんなばかげたことはないというのですよ。  そうすると、うちの案では総理府が直轄する。同じ穴のムジナとか同じ穴のタヌキじゃ、これは正直にいいますと、国民は信用しないのです。そこで、別に分けたらどうかという、もしくは国税庁長官と対等の力を持たなければだめじゃないか、大蔵大臣というのがもっと上にいるのですから、そういう形にしなければいけないんじゃないかという意見があるのですが、どうでしょう。
  66. 亀徳正之

    ○亀徳説明員 これは制度の問題でございますので、あるいは主税局長ほんとうは答弁したほうがいいと思うのですが、私もいろいろ相談を受けながら、私の意見も申しておりますので、そういう角度からお答えさしていただきたいと思います。  同じ穴のムジナ論があることは、よく承知いたしております。ただ、いろいろ議論がある過程において、やはりぜひ誤解がないようにお願いしたい点は、今度できる審判所が、一体司法裁判所的なものと考慮するのか、行政機関の中での一つの不服を処理する機構と考えるのか。確かに、いろいろ横山委員がおっしゃっておられる考え方を突き詰めますと、ほんとうは租税裁判所といいますか、むしろわれわれの行政を全然別個の立場から見ていくということを主張しておられるのじゃないか。現在は租税裁判所のようなものを設けておりません。したがって、そういう考え方をやるためには憲法の改正とか、どえらいことになります。  それからもう一つは、ただ非常に裁判は時間がかかる。こういう租税関係の問題としては非常に困るということも他方現実。そうしますと、逆に一つ考え方としては、もっと数多くの専門的な裁判官、税務についての専門的な知識を持った裁判がどんどん処理していくというような意味での租税裁判所というようなものを設けたらどうかという考え方は、確かに考え方としては成り立ち得ると思います。ただ、そういう立場をとるかとらないか、もしもそれをとらないということになって、これは一種の行政官庁としての不服審査の体制、こう考えますと、やはり行政官庁としての責任においてやらなければならぬということにどうしてもなるわけです。  それで、大蔵大臣についてはどうかとか、いろいろ議論もございます。たとえば関税とかその他はやはり関税不服審査会といいまして、これは大蔵大臣に付属しております。そのことは、関税行政が関税局といって、結局大臣、次官、関税局長、こういうルートになっておりますから、審査会が大蔵大臣もとにつかざるを得ないということになっておるわけであります。税の執行に関しては、やはり国税庁長官に人事権、課税権を——ともかくこまごましたことを大臣が一々見たのではとてもたいへんだというので、長官に一括、税の執行は実はまかされておる体制でございます。そういう体制でございますと、どうしてもやはりちょうど関税についての審査会を大蔵大臣の下に設置しておるのと同じ意味で、国税庁長官に付属せざるを得ない、こういう考え方でございます。  ただ、従来いろいろありましたのは、御存じのように、われわれの体制は、少し縦割りといいますか、縦の系統の指導が、率直にいって強過ぎるということで、現在は、国税局に付属して、それからいろいろ審査請求の段階で、国税局長が協議団の協議を経て決定する。やはり決定権は、国税局長が持っておるというために、実質は直税部なり、間税部なり、あるいは徴収部なり、原局の力がどうしても強くて、それに左右されがちだ。だから、ともかく行政官庁の中でどうしたらいいかということの措置としては、やはりまず国税局からははずしたらどうか。それから一応地方にも——これから主税局長のところで案を書いてもらうわけですから、それの結果、結論がきまるわけですが、税制調査会の案によれば、いろいろな通達そのものもやはり批判できる仕組みにする。そして、そのために付議機関も設けて、長官がそれにいろいろ諮問をするという体制をとっておるわけです。  それから先ほどの構成でございますが、これは確かにおっしゃるようにあれであるとともに、じゃ税法を全く知らないしろうとといっては恐縮ですが、民間の方が出ればそれでいいというのには実はあまりにも専門化し過ぎておる。また、処理が非常に恣意的になるということは、かえって国民全体の課税不公平になるということもございまして、どうしてもやはり民間と申しても、税法の知識その他に明るい方になっていただかなければならない。それからまた、ああいう案を書くときは、簡単といっては相すまぬのですが、実際はどういう人を選んで、どういうふうに人事上処遇し、どういうふうに今後の人事をやっていくかという実行が実はたいへん重要だと思っております。たとえば、いろいろ給与その他もうんとよくせいという、私も極力そうしないといい人も集まらぬと思います。  それからもう一つポイントは、この審判官になられる方が、やはりほかの仕事を持ちながらやられるということではこれはいかぬと思う。どうしても専担していただかなければならぬ。専担していただく、こうなりますと、進んでなりたいという人がどれだけいるのかいないのか、その点、率直にいって未知数でございます。ただ、少なくとも内部から、あるいはすでにやめて、非常に知識のあった、民間の経験もある人がなるかもしれない。しかし、これは審判官と副審判官とございますが、これのあとの措置は、まだ決定したわけではございませんが、全然署と遮断してしまうということは、逆に全く対立的なことになってうまくいかないということにもなるんではないか。しかし、審判官は相当の高給を与えて、また帰って署長になりたいとかいう希望じゃなくして、むしろ署長とか、場合によれば局長あるいはそれ以上の月給をやるようにして、そのかわりもうそれが残る終生の仕事という感じにしていただかなければいかぬのではないか。ただ副審判官、それを補佐する、いろんな材料を集めたりなんかする人たちは、ある程度人事の交流も考えないと、この組織が円滑に動かないということになるのではなかろうか。  大ざっぱに、いまそういうふうに考えておりますが、これは最終的には月給を幾らにするということをきめてまた募集すると、実は実施にあたってはたいへんな問題がいろいろあると思いますが、やはり私どもといたしましては、税制調査会答申の趣旨を十分生かすべく一いろんな御非難ございましょうが、やはりああいう答申が出た真意というものも十分とらえましてそういうものの実現につとめたい、私はかように考えております。
  67. 広沢賢一

    広沢(賢)小委員 もうちょっと。民間の人というのは、たとえば税理士、公認会計士もいますね。税理に明るい人はうんといるのですよ。それからやはり学者でも相当識見を持っている人がいます。税執行ですから、ただ議論だけじゃいかぬと思いますが、やはり税理士の中からも相当起用してもいいのじゃないか、大衆と直接接触していますから。年がら年じゅう悩みを持っていますから。そういう意味で、「も」と書いてあるけれども、その「も」というのはどういう意味だろうということで、私はいま御質問したのです。国税庁長官新聞によりますと、産経新聞ですが、「これで、納税者の不平不満は、相当にやわらぐでしょう。もっとも、当初の意気込みからはやや後退した感がないでもないが、納税民主化の過程では、大きな前進に変わりはない」と言っているのですね。いいことを言っていますね。やや後退したというのはどういうところが後退したのですか。
  68. 亀徳正之

    ○亀徳説明員 先ほどの主税局長税制の話もございますが、私、やや後退したと言った記憶は別にないのですが、ただ、先ほど申し上げましたように、非常にこの問題について、率直に申して、誤解といいますか、何か、一応行政機関でありながら、期待することは租税裁判所に期待するような感じで受けとめておられる向きがある。そういう立場考え方をとっておられる人から見れば、これはまだ不十分だとおっしゃる気持ちを持たれるかもしれないという気持ちを私は言ったかもしれませんが、決してそういう意味の後退とかということじゃなく、これはやはり租税裁判所をつくるかどうかという基本問題で、それはとらないということであれば、これはいろいろ御要望を満たす——世の中にベストということばはあまり使わぬほうがいいと思いますが、われわれとしてできる最上のことを主税局長はいろいろ考える、われわれ執行面として、ほんとうはなかなかつらい一面もいろいろございますけれども、しかし、やはり全体のそういう声に応じて税調が答申されたことは、極力その線に沿って実現するということが私の職務一つではないか、かように考える次第でございます。
  69. 広沢賢一

    広沢(賢)小委員 主税局長にちょっとお伺いします。時間を超過しましてどうもすみません。  いま非常にりっぱなことを言われたと思うのです。自分立場としては、国税庁長官としてはつらいかもわからないけれども、しかし全体を見て、納税制度をよくするためにはこういうことを考えなければいかぬと言われたのですが、そういう気持ちがみんなにあれば、行政もずいぶん違うと思うのです。問題は、総理府のもとに置くことをうちの案はいっている。これは私は司法機関ではないと思います。総理府のもとだから行政府のもとですね。百歩譲って、今度大蔵大臣もとに、関税のように設けるとしても、私は準司法機関とはいえないと思うのです。純然たる行政機関であります。しかし、いろんな各種制度と同じように、やはり一種の司法的な裁定の任務を持つということだと思うのです。だから、行政学的な解釈では、私はもう疑問の余地はないと思うのです。あとは大衆ですね、国民が、これができたらずいぶん違うと思うのですよ。これが公平だということになれば、そうすると、自分がよるべき、訴えればちゃんと裁定してくれるのだ、一回やった人がもう一回やるのではないのだということになれば、ずいぶん違ってくると思います。そうすると、納税意欲も変わるし、これは政治的に非常に重要な意味を持っていると思うのです。そういう意味からも、国税庁長官のところに直属するのではなくて、大蔵大臣に直属して、国税庁長官と緊密な協力をするという関係にあったほうが、国民としては非常に納得がいくのではないかと思うのですが、どう思いますか。
  70. 吉國二郎

    吉國説明員 これはまさにいま国税庁長官が申しました点に触れると思いますけれども、行政府の不服解決の手段といたしまして、もしほかに行政部を設けますと、いわば執行の解釈と審査の解釈が差ができてくる。ちょうどいま司法裁判所は、実は法律の最後の判断は司法裁判所にある。行政の段階は一応行政のものだけれども、最後は司法裁判所にあるという立場をとっておりますから、司法裁判的な法律判断を行政府に対してやるというものを設けるということは、司法裁判所をつくるということになりますので、これははなはだ適当でないということになりますので、先ほど国税庁長官が申しましたように、大蔵大臣執行の責任を持っている場合は、その是正の責任も大蔵大臣が持つ。国税庁長官執行の責任を持っている場合には、そのほかの人が出てまいりますと、ほかの人がまた別の解釈をするということになりまして、行政の統一というものがなくなってしまうわけであります。たとえば、そういう例になりますと、今度国税庁長官は、裁決する機関に対して不服があれば機関訴訟を起こさないと貫徹できないということになりまして、これは日本の行政組織法としては全然考えられない。そういう意味で、やはり国税庁長官は、執行の統一性をはかるという意味では、もちろん裁決する過程執行が間違っておれば自分で正していくということにいたしまして、やはり国税庁の税の解釈というものは、賦課段階でも裁決段階でも本来の解釈は同じでなければ、行政としては、国民は何をついていいかわからなくなる。それを最後に司法判断としてやるのが裁判所でございます。さっき申したように、タックスコートをつくれば、まさに国税庁の外につくっていいというふうに思いますけれども、行政の段階の不服審査で問題を解決するといたしますと、これはどうしても国税庁長官のいわば裁決を担当する部門として、賦課するものとは別の立場で、しかし国税庁という統一体の中でやるということが、いまの日本の行政組織に一番適している、そういう判断で税制調査会は判断をいたしたわけであります。  ですから、先ほど申したように、思い切って準司法機関的なものができる、そのためには、司法裁判所に出た場合には、いきなり控訴審にいけるのだというようなことができれば、準司法機関的なものを別につくっても、これはいわば司法段階になってしまうからいいわけでありますが、いま司法段階、三段階置いたままで、また準司法機関をもう一つつくるということは非常に重複になって、納税者のためにかえって好ましくない。したがって、行政段階の不服審査をできるだけ合理化することの方向でやろうとすると、いま申し上げたような、国税庁のもとで統一的な行政のあらわれとして事前事後で解決をしていくということがいいだろうというのが税制調査会の判断であります。
  71. 広沢賢一

    広沢(賢)小委員 最後に申し上げますが、いまおっしゃっているのは吉國さんらしからぬ御意見だと思うのです。大蔵大臣がいるでしょう。同じ大蔵省の建物の中だとか国税庁の建物の中で、いままでだって銀行局といろいろなことで意見が違ってくることがずいぶんあるのですよ。それは税執行に関する問題だけれども、一番大切なのは、その部局の——国税庁長がいまいいことを言ったというのは、おのれをむなしくして大衆のため、それから税の民主化、民主主義のために奉仕するのがわれわれの任務ですからね。そうすると、やはりこれはもう司法機関じゃないことは事実なんだから、これは大蔵省の中に入っているのだから、連絡もとりやすいでしょう。そこでもって協議団制度が悪いというのは、全然信用がない、ムジナ論が出てくるというのは、ムジナだということでしょう。ムジナがタヌキになってもこれはタヌキだということになっちゃうから、だからやはり大蔵大臣もとに関税の制度でもってやっているようなそういうやり方が一番いいんじゃないか、百歩譲ってそういうことがあるんじゃないかということを申し上げたのです。これはまたいずれ議論したいと思います。  終わります。
  72. 笹山茂太郎

    笹山委員長 次は田中昭二君。
  73. 田中昭二

    田中(昭)小委員 主税局長に一、二お尋ねしますが、税の見通しが大体現段階では立たないというようなことですが、現在までの税の収入歩合を見てみまして、大体予算額をオーバーするものが幾つかあると思うのです。それはどういうものですか。
  74. 吉國二郎

    吉國説明員 現在のところ、七月末で申し上げますと、御質問の趣旨は予算を超過するという御質問でございますが、前年度収入歩合を上回っているものというふうに解釈していいかと思いますが、前年度よりも予算に対する収入歩合がよくなっているものは、所得税、揮発油税、取引所税、有価証券取引税、通行税、入場税、関税、それからとん税、それだけでございまして、前年度収入歩合を下回っているものは、法人税、相続税、酒税、砂糖消費税、石油ガス税、物品税、トランプ類税、印紙収入全体、これだけが前年よりも同月の収入歩合で下回っているものでございます。
  75. 田中昭二

    田中(昭)小委員 そうしますと、四十三年度税収というのは大体予算額を上回るという見通しはできませんでしょうか。
  76. 吉國二郎

    吉國説明員 いま申し上げました税目別でございますとそうでございますが、全体の一般会計の計で申し上げますと、七月末現在で去年よりも一・一%ほど上回ってまいりました。そういう意味でこの分がもしその後の情勢で減らなければその分はふえるかともいえますけれども、今後印紙収入その他につきましては、減税の平年度化、去年の減税が平年度化した分がございますので、いままでよりはむしろ前年度に対するふえ方は減るものもございます。そういうものが出てまいりますので、この一・一というのはどのくらいふえるか、あるいは減されるかという点は、まだ確定的には申し上げかねますが、この予算額以下になることはまずないと申し上げていいと思うのです。
  77. 田中昭二

    田中(昭)小委員 そうしますと、大体ふえるだろうと思われるものが来年度減税という——村山委員からもいろいろ話が出ましたが、それに対してまだ見通しがつかないというようなことでしたから細目的にお聞きするわけですが、所得税の中で源泉と申告とありますが、これは大体いまの収入歩合であとボーナスを見ましても予想がつくと思うのですけれども、どのくらいの税収を見たらいいのしょうか。
  78. 吉國二郎

    吉國説明員 源泉所得税は去年に対しまして四・四%ほど収入歩合が上回っております。かなり好調であると思いますが、これは主として六—七月に出ました賞与が非常に多かったことによるものと、それから税制改正が一部響いているものと思います。税制改正は、去年実は御指摘がございましたように、賞与に対する税率をかなり引き下げましたために、年末調整で取り返された例がずいぶん出てまいりました。今度は税制を、その点を少し考えまして改めておりますから、賞与分がやや前と違って賞与のときに少し多く入るようになっております。そういう関係もございますが、総体としてはやはり賞与の額がふえたと思います。したがって、これが伸びてきます場合に、基本給与の上がり方ももちろん影響がございますが、十二月にどれくらい賞与が、また同じような程度でふえれば、これはかなりふえるということは言えると思います。そうすれば、この四・四というのはかなり上回るという感じでございます。
  79. 田中昭二

    田中(昭)小委員 十二月の賞与が同じだとしてどのくらいふえるのですか。
  80. 吉國二郎

    吉國説明員 その点まだ私どもはじいておりませんが、なおこの源泉分の中には、ふえた分の中に利子配当を一五%に引き上げ、五%だけ源泉徴収率を上げました分の平年度化が三百億ほど含まれております。その分は下期にはなくなりますから、私もちょっといまどれくらいになるというところまでは申し上げかねるわけでございます。いま四カ月で四・四%というのがこのまま伸びればかなりの額になりますけれども、その平年度化分を差し引いて考えますと、四・四というのがどれくらいになりますか、ちょっとまだ私も推算しかねております。
  81. 田中昭二

    田中(昭)小委員 同じだとして大体推算ができるわけですから、いますぐはできなくても、あとでその額を知らせてもらいたいと思いますが、いいでしょうか。
  82. 吉國二郎

    吉國説明員 まだ何しろ四カ月でございますから、最終幾らになるだろうということは、ちょっとまだごかんべん願いたいと思います。
  83. 田中昭二

    田中(昭)小委員 いまの段階で上がって、十二月を同じだと見て、それが予算額もあるわけですからね、それが計算できないというようなことになりますと、私は、ただこの場だけで言っておけぱいいのだというようなことに受け取らざるを得ないような感じがするのです。なぜこういうことを言うかといいますと、昨年もちょっと問題にしました予算額に対する税収収入歩合ですか、そういうことについて一%増減することについても、こちらから言えば、それをなんだかんだといろいろ理屈を言われる。四十二年度の源泉所得税の収納決算額にしましても、その収納歩合を上げた段階でもまだ数百億の増収がある。そういうことを一連ずっと考えてみまして、私は源泉所得税が、源泉所得税にかかわるその中のいわゆる給与所得ですが、先ほどから村山委員の話を聞いておっても、当然これは何とか考えなければならない。それは税金の公平論を言うならば、一番先に手をつけなければならぬ問題だ。概算控除がどうのこうのと言いますけれども概算控除が公平であるということによってほかのほうがきまっておるものもあるわけですから、そうするならば、給与所得に対しては全部いわゆる収入が課税の対象になっておるというようなことから考えれば、当然ただ課税最低限とか控除額の増減だけでは解決できない。いまの段階ではその概算控除ということを考えることもおかしい、できないということですね。そういう主税局側の考え方は、私はこういう税の入ってくる割合から見ても、根本的に考えなければいけないのじゃないか。おそらく四十三年度の源泉所得税の収納歩合も、それは給与所得以外もわずかありますけれども、いわゆる高卒者が直ちに初任給から税金がかかるというような国民の切実な悩みの解決策にはならない、こう思うのですね。それと同時に、いまの二百万から五百万くらいまでのサラリーマンを救済するということも、私は早急にやらなければならない問題じゃないかと思うのです。  でありますから、そういう問題からこの租税収入を聞いたわけですけれども、それが現段階では教えられないということになればしかたありませんが、今後この収納による増加部分ということについては、私はこの前臨時国会で大蔵大臣にも言ったんですが、その分は減税に回す、そういうお答えがあったのですが、そのことについては主税局長はどのようにお考えになるでしょうか。
  84. 吉國二郎

    吉國説明員 ただいまお話がございましたが、ことしの予算額自体の中に、すでに所得税が去年より非常に多くふえるように見積もられております。それに対してさらにふえるということは、ことしの見積もり以上に給与伸びるとか、そういうことがあったという、またあるであろうという前提だろうと思います。  いま仰せになりましたような、所得税が、ことに給与所得税が、毎年給与伸びるたびに税の負担が重くなるということは、税制調査会が最も強く主張しているところでございまして、そういう意味でいま仰せになったような課税最低限の引き上げだけでなく、給与所得控除の拡大、税率の緩和ということをやるべきだという提案をしているわけでございます。したがいまして、大蔵大臣も申したと思いますが、何といっても自然増収もとになっているのは所得税である、所得税が非常に大きくふえることによって国民総生産の伸びよりもはるかに大きな税収伸びがあらわれるので、そういう意味では所得税減税は、自分としては大いにやりたいのだということを申しておりましたが、先ほども質問がございましたように、財政の全体の姿、国債の発行の削減、それらと見合いながら、この自然増収の出方に応じて、ここで自然増収が相当出れば、それをもとにした来年度自然増収もまた大きくなると思われますので、それの範囲内で、できるだけふえる部分としての所得税減税をやりたいというのは、大蔵大臣も再三申しておる次第でございます。ただ、どれくらいふえるかはちょっといまのところでは申し上げかねるということでございますが、理論としては先生のおっしゃるとおり、減税の対象になるべきものはやはり所得税が第一であるということは間違いないと思うのです。
  85. 田中昭二

    田中(昭)小委員 税調の答申による税率の改正ですが、大蔵大臣のあれによりますと、中間の税率を下げるというようなことも出ておるようです。これは具体的にはどういうふうになっているんですか。
  86. 吉國二郎

    吉國説明員 大臣が申しておりましたのも、税調の答申自体が中間層の税率を下げるということを提案しているので、大臣としてはこれを特に注意してやりたいのだということを言っておるわけでございます。そこにございますのが税調の答申でございますが、課税所得で二百万から五百万あたりまでが、大体税率にいたしまして三割くらい引き下げられるという感じになるかと思います。
  87. 田中昭二

    田中(昭)小委員 給与所得の中で、北海道あたりで寒冷地手当を支給しているそうですが、この寒冷地手当は現在のところ課税の対象になっているわけですね。そうしますと、どういうふうな手当のやり方を実際されているのですか。——この寒冷地手当は課税の対象からはずしてくれというような意見があるわけですけれども、これはどうでしょうか。実際いる者にしか手当をくれない。ですから、これを課税するというのは酷ではないか、こういうふうな意見があるのですが……。
  88. 吉國二郎

    吉國説明員 寒冷地手当については、前からこれを非課税手当にしてくれという要望がございます。それと関連をいたしまして、寒冷地においては特別の控除を与えるということをいわれるわけであります。もし寒冷地手当を非課税にすれば、寒冷地手当を受けてない所得者はそれだけよけいな負担がかかっているから特別控除をしろ、こういうことになるかと思います。この問題は前々から申し上げておりますが、地方、地方によってそれぞれ生活費も違うし、そういう意味では課税最低限も違うではないかという主張も、これはあり得るわけでございます。これは世界の税制でも、かつてスウェーデンがちょっとやりましたがやめておりますように、やはりそういう地域事情を考慮に取り入れた税制というものは、全国的な規模としてはなかなかむずかしいと思います。そういう意味で、寒冷地手当につきましても、従来からこれは課税所得の一部であるという解釈をしてまいったわけであります。その解釈を変更する余地は、現在のところはないといわざるを得ないかと思います。
  89. 田中昭二

    田中(昭)小委員 文部省のほう、来ておりますか。——今度教育費の就学控除ですか、これを出しておるようでございますが、これの出ましたところの理由と、金額の積算の説明をお願いいたします。
  90. 吉里邦夫

    ○吉里説明員 総務課長でございます。  ただいま御指摘のように、私のほうの事務次官名で大蔵当局へ要望した中に、教育の就学控除を入れてございます。この要望いたしました理由は、従来特に私立の学校において非常に授業料、あるいは授業料以外の就学費がかさみまして、税の問題としてもひとつ考えてくれぬか、こういう要望が前からございました。そこで、文部当局として考えました際に、しからば私学だけ何か税制上の特典を与えるかという問題につきまして研究しましたが、われわれとしましては、広く教育を振興するという立場で、国公私立を含めまして、一応要望しているわけでございます。  なお、その積算につきましては、いろいろな考え方がございますけれども、一応要望いたしております積算を申し上げますと、まず就学費を授業料と授業料以外のものに分けてございます。そこで、授業料以外のものにつきましては、区々に分かれておりますのでなかなかとりにくいということで、考え方といたしまして、まず就学費等につきましては、全日制の高等学校で幾らかかるかということを調査いたしましたが、これが約四万円、こういうことになっておりますので、たとえば公立の高等学校について申し上げますと、四万円に授業料の平均が一万円でございます。そこで五万円。それに従来考え方として、義務教育の学校に行きます際にも多少の就学費が要ります。これを積算いたしますと、約二万一千円、こういうことになりますので、いまの五万円から約二万一千円を引きまして、たとえば公立の高等学校でありますと二万九千円になりますから三万円、こういうような計算で要望をいたしておりますほか、大学その他も就学費につきましては、授業料だけを全国平均をとりまして、ほかは大体同じような方式で要望いたしておるところでございます。  以上でございます。
  91. 田中昭二

    田中(昭)小委員 この教育費の控除については、主税局としてはどういう考えでございますか。
  92. 吉國二郎

    吉國説明員 教育費が必要経費でないことは、これはもう明らかでございます。しかし担税力を減殺する、しかも子供があれば学校へ行くのだから、担税力減殺要素として特別な控除を考えるべきだというお考えだと思いますが、これにつきましては、税制調査会でいろいろ何回も審議いたしましたが、その結論といたしましては、現在の所得税の課税最低限を考えますと、義務教育を終了して直ちに就職をした人間でも、一年目、二年目、二年目になりますと大体所得税がかかるという体制にあるわけでございますから、その期間中に就学している者を就学費の控除をするということはいかにも実際にそぐわないのではないかということ、それから、もちろんそういうふうな意味の扶養親族の数による担税力削減要素があるならば、いまの基礎控除と扶養控除との関係がやや扶養控除が少なくなっておるという点もあり、これを充足して一般に均てんすべきではないか。就学した者としない者で差がつくということはおかしいということでございますので、今度の長期答申では、当面の目標として基礎控除、配偶者控除は二万円引き上げることにいたしておりますのを、扶養控除については四万円引き上げるという案にいたしておりまして、それを通じて教育費控除の問題を実質的にほぼ吸収できるのではないかという考え方を示しております。特別な控除をつくるのは適当ではない。しかし、そういう扶養親族による負担増がかなり形が変わってきていることに着眼をして、扶養控除の額を他の控除よりも相対的に引き上げるという措置で解決すべきであろうということをいっております。  したがいまして、これが一両年中には実現すると思います。ほぼ問題の解決になるのではなかろうか、かように考えております。
  93. 田中昭二

    田中(昭)小委員 何が一、二年のうちに解決するのですか。
  94. 吉國二郎

    吉國説明員 いま申し上げました扶養控除の四万円の引き上げは、いわゆる百万円控除の一環になっているわけでございます。ですから、これは少なくとも四十五年度までには実現すると大蔵大臣も言っておりますものですから、そこで何とか解決するのではなかろうか、かように考えております。
  95. 田中昭二

    田中(昭)小委員 ことばじりをとらえるわけではないのですけれども、いま局長が言われました教育費は必要経費ではないという考え方、これはどういうことですか。
  96. 吉國二郎

    吉國説明員 御承知のとおり、所得税必要経費収入を得るために必要な経費でございますから、親が子供の学校に行くのを払っているものは直接の必要経費ではあり得ない。ただ、必要経費でないものはみんな引かないというわけではない、担税力を非常に減殺すると認められる要素があれば控除するという考え方もございます。そういう意味の担税力を配慮した控除というものはほかにもございます。そういうものとして教育経費は考えるべきであろうということを申し上げた、いわゆる収入を得るための必要経費ではない、そういうことでございます。
  97. 田中昭二

    田中(昭)小委員 そうでしょう。担税力を考えてほかの控除ができておるものがあるからそういう意味で教育の控除をやってはどうか、こういう意見であって、これは教育費が必要経費ではないということを言われるということが私はどういう意味で言われたのかと思って聞いたのですが……。
  98. 吉國二郎

    吉國説明員 所得税収入を得るための経費ではないという意味でございます。
  99. 田中昭二

    田中(昭)小委員 実際、いよいよ定年も近くなって、公務員は定年がないということですけれども、いまから金が要るというときになってやめなければならないという状態で、そのあとにまた高給取りで職がある人はいいのですけれども、そういう実情を聞くわけですね。いよいよやめるころになって大学に行って金が要る、そういう嘆きはほんとうに切実なものであると思うのです。そういうことからこういう問題を考えてみるならば、当然教育費の控除ということも、そういういま主税局長が考えているような考え方だけではなくて、別な点からも考えなければいけないのではないかと思うのですが、これはまたもう一回よく検討して取り上げてみたいと思います。  それから売り上げ税の問題ですが、これがまたときどき大蔵省も売り上げ税を考えろというような話をちょいちょい聞くのです。いままでの質問の中で売り上げ税は考えてない、こういう御答弁だったと思いますが、もう一回確認しておきたい。
  100. 吉國二郎

    吉國説明員 今度の税制調査会答申におきましても、売り上げ税については当面その創設を予定しないが、将来の問題として検討を要する問題であろうということをいっております。これは御承知のとおり、売り上げ税というものはその性質から申しますと、各国の例で見ると、非常の際に特別な収入を得るために起こしておる税であるという傾向がかなり多いわけでございます。というのは、所得税に比べれば何と申しましても担税力に照合しないという点では所得税のほうがすぐれているけれども、非常に急激に多額の収入を得るためには、臨時の税としてはかなり効力のあるものであるということはいわれております。  そういう面とか、あるいは最近EECの国境税調整が非常に脚光を浴びておりまして、一説によると、これは輸出補助金になるのではないかというのでアメリカが盛んに攻撃をしておるのです。そういう面ではこの税を起こして輸出補助をやったほうがいいという要求どもあります。これは本質的な問題ではございませんけれども、国際的にこういう税が起こっており、それが相互に国境税調整というような形で調整されてくるということになるとどういう問題が起こるであろうかということは一応検討しておく必要があるだろう。  それらの問題がございますので、今度の答申では、当面これを起こすなどということは考えないけれども、研究はしておく必要があるという答申をしておるわけでありますので、私どももそういうことだと考えております。
  101. 田中昭二

    田中(昭)小委員 そうしますと、当面は考えられないけれども将来はそういうことも考えられるし、大蔵省も研究しているということですか。
  102. 吉國二郎

    吉國説明員 将来起こす必要があるからということではございませんが、売り上げ税というものが世界各国で、おそらく五十数カ国で行なわれていると思いますので、その制度の内容を十分検討しておくことは租税体系として必要であろうということは私も考えております。
  103. 田中昭二

    田中(昭)小委員 では、これは主税局長に聞くのはどうかと思いますが、ビールの値上げ、これはどうですか。
  104. 亀徳正之

    ○亀徳説明員 そのビールの業者の指導といいますか、ビールの価格は基本的にはやはり自由価格でございますので、価格面での指導ということには限界がございまして、先生御存じのように、今度の税制改正で増税がございまして、当初七円増税分だけの値上げにとどめて今日に至ったわけでございますが、実は三年越しで、ビール会社そのものはいろいろその窮状を昨年の暮れあるいはもう少し前くらいから訴えていたことは事実でございます。私も長官になりましてから、ともかく値上げを極力延ばしてもらいたい、これにはおのずから限界があると思うのですが、夏の最盛期をせめて乗り切ってもらいたい、また、その先もともかく押えてもらいたいということを極力希望いたし、また、いろいろ要請いたしたわけでございますが、御存じのように、私どもの行政能力に限界がございまして、三円値上げということに相なったわけでございます。  ただ、ではビール会社が全然合理化その他を怠っているか、その面はますます合理化につとめ、また、特に流通段階でのいろいろな整備という点に配慮をしてもらいたいということはかねがね言っておりまして、酒税が一ぺん下がってまた上がるという経緯をたどっておりますが、たしか昭和二十九年ごろが百二十五円、現状が百二十七円、十四年間ほとんど上げないでこれたということは、ある意味ではビール会社の設備の合理化指導、経費を削減するように努力してもらったりいたしました合理化の結果ではないか。また、今後ともそういう努力をやはり続けて重ねてもらいたいということは引き続き強く要望いたしておるわけでございます。
  105. 田中昭二

    田中(昭)小委員 このビール値上げについては、総理も経企長官のほうも、ああいうふうな発言が新聞紙上に報道されたわけですけれども、まあいまの長官の説明でわかったようなわからぬような気持ちもするのですが、聞くところによれば、増税の案があったときからもうあと三円は上げるんだというような内々の話もあったんじゃないか、こういう声も聞くんですが、その点はどうですか。
  106. 亀徳正之

    ○亀徳説明員 先ほど私、答弁の中で申し上げましたように、値上げをしたいという要望はむしろ昨年からございました。むしろそういう事情、まあ特にこれはビール会社関係もございますが、特に卸、小売りの流通段階での、やはり相当運賃がかさむ、人件費が高くなるということで、非常・に流通段階、特に卸、小売りの分け前をもう少し多くしてくれという面からの強い要請、これが引き続きあったわけでございます。増税のときにあと三円は約束するというようなことはございません。むしろそのときやりましたのは、ともかく増税分の値上げだけにとどめてもらいたいということを強く指導して今日までまいったわけでございます。
  107. 田中昭二

    田中(昭)小委員 ビールの値段がそういうふうに上がるという、いわゆる物価上昇に拍車をかけるという、いつもの公共料金を上げるという政府の態度に対して、長官個人としてどういうふうにお考えになりますか。
  108. 亀徳正之

    ○亀徳説明員 私どもやはり消費者の立場から考えますと、こういった値上げということがないにこしたことはございませんし、やはり企業の企業合理化努力ということによって極力吸収してもらいたいという強い気持ちでおります。ただ、やはり経済には経済のおのずからの一つの限界というものがあるので、何でもかんでも命令すれば言うことを聞かせ得るということにもおのずから限界があるのではないか。しかし、その限界の範囲内においては最善の努力を尽くさなければいけないということで、私自身、今日まで極力値上げしないようにという方向で、そういう価格を押えるという意味の権限はございませんが、やはりこういう際であるから極力押えるようにということを内面指導はいたしてまいりました。まあ私の力至らず、かような結果になりまして、非常にその点私の力なさは感じておりますけれども、まあ一つの私の限界と御了承願いたいと思います。
  109. 田中昭二

    田中(昭)小委員 そう言われますとあとは言えないのですが、長官に就任されて、臨時国会のときにいろいろ長官としての今後税務行政をどういうふうにやっていくかということの御発言があったようでございますが、特に最近また税務職員の不正事件も頻発しておるようでございますが、これに対してもう一回そのときのお気持ちをお聞きしたと思います。
  110. 亀徳正之

    ○亀徳説明員 私、長官に就任しましたときの気持ちは、前回の大蔵委員会で申し上げましたが、基本はやはり国民に信頼される税務行政をいかに確立するかという一点に尽きるかと思います。ただ、それの具体化につきましては、いろいろな角度、調査の面でも、やはりまじめな者は信頼するとともに、ごまかそうという納税者に対してはあくまでも追及の手をゆるめないということが、またまじめな納税者の信頼を得るゆえんではないかということで、あくまでも私、適正な所得の把握ということにつとめたいと考えております。その間にありまして、実は私、長官になりましたときに、当日就任のその日に東京局の局員がつかまる、その後いろいろ事件が頻発いたしておりまして、まことに申しわけないことだと考えております。  実は、そのときにも、前回の大蔵委員会でも申し上げましたが、七月の二十五日、国税局長の異動が終わりました直後、一日ではございますが、主として綱紀の粛正の問題を中心に議論、審議いたしたわけでございますが、結局、私はそのときにも申したのでございますが、やはり職員の使命感といいますか、われわれがあずかっている仕事の重要性を認識して、使命感に燃えて仕事をやるということが基本ではないか。もちろん、まわりのいろいろな給与、旅費、そういった点の改善もとより私としては今回の予算要求でも強くそういう面を要求したいと思っておりますが、しかし、しょせん基本はやはり働く意欲を失わない、お互いが研究心に燃えて、どうしてもこの仕事をやっていくのだという、仕事熱心な雰囲気のところには汚職はない。ビールを飲んだらいかぬとかというようなこまかい、そういうことではなしに、やはり調査する者とされる者との立場というもののけじめをはっきりとつけて、そうして使命感を持って仕事をしていく、そういう雰囲気のところには汚職はない。残念ながらいろんな事件が起きておりますが、そういうときの一つの典型は、何となしにイージーな気持ちでお互いが何人かグループになって、まあいいだろうということでやっている事例が多いわけであります。私は、そういうところはさまって働く意欲というものはないし、また指導者といいますか、係長あるいは上席調査官、そういう幹部がよく部下を日ごろ統率しているかどうかということがやはり基本ではないか。そういうことは口をすっぱくして今後も言い続けたい、こう考えております。  しかし同時に、私は、まじめに働いている職員がいるということ、そのまじめな職員が、こういう不心得な者が一部いるために、あらぬ疑いの目をもってまじめな職員までが見られがちだということは、私ほんとうに心が痛むのでございまして、こういった汚職が一掃されるよう今後とも私は鋭意努力していきたいと考えております。
  111. 田中昭二

    田中(昭)小委員 長官、おすわりになってけっこうですから……。  いまお聞きしましたのですが、その点は了解いたしました。  この前、何かお話しになったときに、綱紀粛正については長官から局長、局長からまた部長といいますか、会うたびにそういうふうに自分からも一人一人話していきたい、こういうふうに私は聞いておりましたのですが、そのことも含めまして、そういうことはいいことだと思います。いま長官がおっしゃった、いわゆる税務職員がそういう考え方だけでいるかどうか、また、現実の仕事をしている中に、どういう不正が発生する要素があるかということを、大体まあわかると思うのですね。どういうように把握してあるのか。ただ調査に行きまして、それに関連して業者と親しくなって、そこで贈収賄が行なわれる、こういう不正だけを考えてあるとするならば、大きな失敗を残すじゃないか、それはそれだけではない、こういうふうに私は思うのですが、そのことはどうでしょうか。
  112. 亀徳正之

    ○亀徳説明員 先生のおっしゃる意味が、やはり調査に関連して常に贈収賄が起こる——どういうことを……。
  113. 田中昭二

    田中(昭)小委員 私がいま申し上げたのは、職員が税務調査に関連して贈収賄を受けるとか、接待を受けるとか、こういうことだけが実際問題としては不正の上に出てきます。しかし、上に立つ指導者が、それだけ不正の根源だ、こういうふうに把握しておるならば、不正はいろんな形がありますが、それが根絶できないのじゃないか。また、その原因をしっかりつかまないで治療はできません。原因は、その不正よりもまだ大きな原因があるのです。  それじゃ私がここで申し上げてもけっこうですけれども、どこの税務署でも大体公然の秘密といいますか、まあ自分が退職する時期が大体わかれば、その署長さんとか、課長さんでも同じですが、——これはまた全体的に官僚の天下りというようなことをまねしたのじゃないかと思うのですが、自分が退職後行くところがない。そうしますと、自然調査関係であれば税理士の資格もある、こういうような関係で、自分が退職後のいわゆる関与先、これを在職中にちゃんと部下に命じて確保させる。はなはだしいのは、明らかに関与をしているのですね、現職の署長、課長が。そういうことはないと言われるかもしれませんが、それはないと言われれば申し上げてもけっこうです。そういうこと。それから、それはいわゆる職権乱用になるかと思いますが、脱税を指示したというような事実もある。税法を守なければならぬ者が脱税を指示して、そうしてただ転勤させられたくらいで事が済むというものの考え方、そこに、いわゆる不正の原因をはっきりつかんでないところに問題がある、こう思うのですね。ただ調査に行って、それは若い職員が目先のことに迷って手心を加えたとか、こういうことはいままでもしょっちゅうあっておりますし、私はそれは本人が反省するならば一そういうことがあってはいけないのですけれども、そういうこともその根源はどこにあるかということを、よく原因を知った上での指導でないと無意味でないか、こう私は言っているわけです。
  114. 亀徳正之

    ○亀徳説明員 私は、いま言ったようなことも十分踏まえて、いまおっしゃった点を含めて、やはりわれわれの調査、そういうものは厳正でなければならない。そういう意味で、同時に役員に就職のときにはやはり人事院の承認が必要でございますし、また、それを受けております。ただ御案内のように、やはり長い間税務の経験をし、それから税理士の資格をとって、やめて自由業として税理士に立つ職員も多いわけでございます。私は、そういうやめていく職員に、実はこの間東京局の職員が長い間つとめてやめられた方の送別を第一公邸で行なったわけでありますが、私の気持ちをいみじくも前東京の志場局長がやめられる諸君に言ったわけであります。とにかく君らが税理士の仕事をし、あるいは民間に行っても、どうか外からこの税務の執行を正しくする方向で応援してもらいたいということを志場君がいみじくも申したわけでありますが、私も全く同感でございまして、やはり税理士という自由職業は納税者が正しい税法を知らないために損するということがあっても非常に困るわけでありますが、脱税幇助の職業では断じてないわけでありまして、やはり納税者が正しく申告するためにお手伝いをする職業でなければなりませんし、また、税理士業界がほんとうにそういう面でわれわれにいい意味で協力していただきませんと、これだけの税務の執行はまたむずかしい。断固としてそういうところの弊害、また、問題を滌除するように私としても今後とも十分注意をしてまいりたいと考えております。
  115. 田中昭二

    田中(昭)小委員 いま長官おっしゃったこと、それはりっぱです。いま私が、その原因をなぜつかまないのですか、こう端的に言うたわけですよ。税理士が脱税を指示するというようなことは、そういうことは立場上いろいろ言う人はないと思うのです。現職におる人が兼業ですか、役所が終わって飛行機でもって飛んでいって大きな事業をやっておるのです。実際あるんですよ。それからいま脱税を指示したというのは現職の課長ですよ。ですから、そういう原因を知って、そうして指導しなければいけないのじゃないですか。高級官僚はやめてちゃんといいところにつくのだからかまいはしない。下のほうは行くところもないのだから、自分がやめたときにはちゃんとする、そういうことはもう東京の都内ではたくさんあるでしょう。職員でおるときに自分のあとで行くところの会社も全部ちゃんとしてやっておるというのは、調べれば幾らでもありますよ。私が知っておるのは一部分です。そういうことの原因をよくつかまえてそれを指導しなければ、ただ口先だけで出てきたものをどうするかというようなことでは問題にならない、私はこう言っておるわけです。このことについてまだわからなければ別な機会でもけっこうです。  私は、きょうはもう一つ大事な、私が前から取り上げておりましたいわゆる政治家の源泉還付の問題について国税庁に手落ちがあった。この手落ちについての結論が出ておりません。このことについては長官も渋っておられるようでありますが、これは私、今度の国会が始まってからお話をしてみたいと思いますけれども、時間がありませんからこれで終わります。  綱紀粛正の問題はひとつよく原因をつかまえて、長官がもう一つ実情を知って指導しなければそういう問題の解決はできない。結局役所では適当につとめて、りこうに立ち回って、頭のいいやつがそういうことをして、そういうことがいろいろな不正にも関係して、ばからしいといいますか、そういうことで不正が行なわれるということもあると思うのです。どうか十分考えて、綱紀粛正を叫ばれて実があがらないというようなことがないように、長官のなお一そうの御努力をお願いしておきます。  以上です。
  116. 笹山茂太郎

    笹山委員長 次は岡沢完治君。
  117. 岡沢完治

    岡沢委員 昼めし抜きの審議でありますので、これ以上長く質問すると人権侵害のおそれがありますので、十分で二時には終わりたいと思います。三問ございますので、その意味で要点だけ簡単にお答えしていただければけっこうです。  最初に、七月の税調の答申、特に「長期税制あり方についての答申」は多方面にわたっておりますけれども、さしあたって来年度にぜひこれだけは実現したと大蔵省で考えておられることがありましたら、具体的にお答えいただきたい。
  118. 吉國二郎

    吉國説明員 先ほど来申し上げておりますように、現在来年度税制改正の規模をはっきりきめる段階に至っておりませんので、はなはだ正確を欠くと思いますけれども大蔵省として考えておりますのは、先ほど申し上げましたように、現在の日本税収が国民所得伸びを非常に上回ってふえる原因になっておりますのは所得税所得のふえることによって所得税の負担が非常に不合理になるという点を是正することは緊急の問題だと思っておりますので、来年度所得税減税所得税の是正ということを最も中心に考えていきたい、かように考えておりますので、税調の答申の中でもその部分は一番の重点を置くべきだと考えております。
  119. 岡沢完治

    岡沢委員 この七月の「税制簡素化についての第三次答申」先ほどすでに質問ございましたが、中身は別としてこの答申自体に、答申の実現にあたっては事務的に相当の準備期間を要するという趣旨の指示もございますし、確かにいろいろ大きな問題であるだけにすぐにはむずかしいかと思いますが、この実現の時期ですね、次の通常国会にでも提案をなさって実現をはかろうとされておられるのか、その辺の見通しについてだけお答え願いたいと思います。
  120. 吉國二郎

    吉國説明員 これは法律改正はかなりスムーズにできるかと思いますけれども、それの基礎になります組織上のいろいろな手当て、給与の確定でございますとか予算の組みかえとか、いろいろの問題がいま国税庁の中に起こっておりまして、今回の予算の中にそれがどの程度織り込めるか、その点とにらみ合わせなければちょっと問題はむずかしいと思いますが、私どもとしてはこの法案だけは何とかして通常国会に提出をさしていただきたいという気持ちで進めてはおります。
  121. 亀徳正之

    ○亀徳説明員 答申が、われわれの予算要求との関連におきましては非常にぎりぎりに出ましたので、やはりこういう制度をわずかな時間にやっつけ仕事でやってはかえって困るじゃないかということで、実は予算要求としては現在の協議団——時間的にも余裕がありませんから従来どおりの要求をして、あとであらためてこの分だけは協議団の予算が落ちて、この分が振りかわるという事前の了解を得まして、いま寄り寄り作業中でございます。先ほど申し上げましたように、やはり給与を幾らにするとか、現実に人事院主計局の給与課、方々と具体的に折衝していかなければいかぬものですから、若干いろいろ手間どってはおりますが、ともかく今年度予算要求から要求して極力早目に実現できるように努力をしたい。ちょっと、いつということは率直に申していま言いかねる、鋭意努力しておりますということだけ申し上げます。
  122. 岡沢完治

    岡沢委員 それじゃいまのお二人の御答弁は、お聞きすると、法改正は少なくとも次の通常国会に出したい、実施については幾らか余裕を持たせたいというふうに解してよろしゅうございますか。
  123. 亀徳正之

    ○亀徳説明員 そのとおりでございます。
  124. 岡沢完治

    岡沢委員 それじゃ次の質問に移りますけれども、租税特別措置法の整理、改廃につきまして、各委員からも御質問がございました。来年度具体案があれば、特に種類をあげてお答えをいただけたら——先ほど来の御答弁でも交際費課税、輸出振興税制あるいは海運の関係税制等につきましては期限が参りますし、その他よくいわれますような早場米の問題等もございます。特に私が具体的にお聞きしたいのは、保険医の収入の七二%の課税免除の問題につきましては、ぜひこの際、御検討いただいて、来年度あたりに具体的な是正の方法を考えらるべきだと思うのでございますが、その問題も含めてお答えいただきます。
  125. 吉國二郎

    吉國説明員 来年期限の到来いたします特別措置が約三十余ございます。それにつきましては目下事務的にいろいろ問題を洗っておりますので、まだ一律の答えが出ないでおります。  いま仰せになりました保険診療の報酬の問題につきましては、これが実は期限のない特別措置でございますので、これをいかにするかというのはなかなかむずかしい問題でございますが、実態に沿わなくなっていること、ことにいわゆる科別に利益率が非常に違っておるということは、これは明らかでございますので、実は税務当局の中で実態調査をいま進めております。これはやはり相当広範な実態調査の上で結論を出したいと思います。この実態調査をまとめた上で具体的な改革の方向をきめたいと思います。これはおそらく来年には間に合わないと思います。できれば再来年にはと思っていま作業を寄り寄り進めておるのでございます。来年度はちょっと間に合わないかと思っております。
  126. 岡沢完治

    岡沢委員 それでは、いまの保険医問題は私は一番大きな問題だと思うのですが、これは来年度は改正がないというふうに解さざるを得ないわけですか。
  127. 吉國二郎

    吉國説明員 来年度はむずかしいと思っております。
  128. 岡沢完治

    岡沢委員 これは保険制度の診療報酬単価は改定されたわけでございますので、やはり私は国民の税負担の公平ということを考えると、思い切って勇断をもって対処していただきたい。一年間の余裕というのは長いようで短いかもしれませんけれども、やはり私は町の建物を見ましても、増改築の一番多いのはもう金融機関とお医者さん関係なので、それだけとこれと結びつけることは間違いと思いますけれども、国民感情からいたしましても、先ほど長官のおっしゃった税務職員が国民から信頼されあるいは使命感を持つというような意味からいきましても、税の公平ということが私は大きな前提だろうと思うのです。そういう点からも、ぜひ勇気をもって対処していただきたいと思います。  最後の質問でありますけれども、固定資産税の評価と現実の時価とのあまりに大きなギャップ、これは長期税制答申でも触れておられますけれども、基準年度が三年ごとだと現在の地価の上昇その他とはちょっと合わないような感じがいたします。特に具体的には、新しく道路ができたり鉄道が敷かれたり、あるいは都市近郊の地価なんかはあまりにも大きなギャップがあり過ぎる。評価が低いということが逆に地価の騰貴を招来しておるという要素があると思います。空閑地税とかあるいは地価公示制という新しい制度を取り入れるまでもなしに、時価に合わない評価を変えることだけで私は相当大きな効果が上がると思うのでございますが、これについて大蔵省と、所管の自治省の両方の御見解を聞きたいと思います。
  129. 山下稔

    山下説明員 固定資産税の評価額が時価に比して低いということにつきましては、所によって多少の差はあると思いますが、ある程度事実であろうと思います。ただ、固定資産税は収益税としての本来の性格がございますし、固定資産税の課税標準とされております適正な時価につきましても、売買というものがそのときどきの諸条件によって非常に幅がございますので、どれをもって適正な売買価格と見るかという点につきましても、いろいろ見方の差があろうかと思います。かつまた、固定資産の評価額であります以上は、売買価格をそのまま使うわけにまいりませんで、いわゆる不正常な要素を除いていかなければならないというような事情もございます。また、御指摘のように、たてまえ上三年ごとに評価することになっておりますので、評価をした時期と実際の時価との間に時期的なズレが起こることもございます。  このような事情から、固定資産税の評価額と時価との問に多少の乖離があることは事実であるわけでございますが、しかし、固定資産税の評価自身の問題として考えましても、御指摘のように、できるだけ適正な時価で評価するようにつとめなければならないと考えております。
  130. 岡沢完治

    岡沢委員 約束の時間が参りましたのですが、大蔵省の御答弁のある前に、いまの山下課長の御答弁は私、納得できないのです。多少の差がある、ある程度ということは全く常識に反するわけで、もちろん場所にもよるわけでありますけれども、ことに一番問題になります地価騰貴の激しい大都市近郊の評価額というのは、時価とは多少とかある程度では全くなしに、非常に大きな差がある。いわゆる地価騰貴のために不動産を取得し、あるいは住宅化をおくらす、反対するというか、住宅建設の妨げになっておる。固定資産税は安い、土地は上がっていくということが、物価の面からも地価対策の面からも、非常に大きなガンになっておると思うわけでありまして、その点は大きな差がある。一割や二割の差だけじゃないわけなんで、おそらく何倍という違いがあるわけですから、現実の時価と評価額についてはこれを率直にお認めになって、これも勇気をもってこのギャップを埋める努力をしていただく。当然これは地価に相当するように評価されて、それに対する税率はある程度の差があってもいいと思いますけれども、現在の評価額が低過ぎることがどれだけ各種の政策の上でガンになっておるか。また、先ほど申しました税の公平という面からも、一般的に割り切れない面を持っておるということも指摘せざるを得ないのじゃないか。自治省としてはそれはもう少し事実をすなおに見ていただいて、こういう場所でももっとはっきりした、良心に反しないお答えをなさるほうが私はいいんじゃないかと思います。大蔵省はこれについてお考えがありましたら伺いたいと思います。
  131. 吉國二郎

    吉國説明員 ただいま自治省から答弁がありましたように、この地価評価は三年ごとにやることになっておりますが、実は四十二年は省略をいたしました。こういう地価変動の非常に激しいときに六年間据え置くということになりますと、仰せのとおり、絶対的な水準はもちろんでございますが、相対的な水準に非常に大きな差が出てくると思います。御指摘の都市近郊地帯の評価というのは、その時点で非常に問題があるということで、税制調査会もこれを適正時価に直すように、これをほうっておきますと、通常の収益をした場合に必要な管理費用の一部をなすべき固定資産税が非常にアンバランスになる、そのために御指摘のように漫然と土地を保有する傾向が起きる、これが土地問題にも影響を及ぼしているということはあると思うのです。税制調査会はそういう意味で適正評価をする、しかし同時に、非常に適正評価をした場合の負担というものを考えて、その負担調整は考えるべきだということを言っておりますが、私どもも自治省も同じ考えだと思いますので、私もこの税制調査会考え方を早く実現するように、少なくとも四十五年にはその姿を実現すべきだと考えております。
  132. 岡沢完治

    岡沢委員 最後に一つだけ。いまの税制調査会答申方向で努力するということは、自治省としてもお約束していただけますか。
  133. 山下稔

    山下説明員 固定資産の評価額と時価とのズレにつきましては、地域によって非常な差があると思います。一がいには申せませんが、確かに岡澤委員の御指摘のように、かなりの差異があることは事実であると考えております。したがいまして、また評価を適正化すべきことも私どもは当然必要なことと思いますので、税制調査会の趣旨を尊重いたしまして措置してまいりたいと考えております。
  134. 岡沢完治

    岡沢委員 終わります。
  135. 笹山茂太郎

    笹山委員長 本日は、お昼抜きで御審議をいただきまして御苦労さまでした。  これにて散会いたします。     午後二時五分散会