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1968-08-08 第59回国会 衆議院 大蔵委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年八月七日(水曜日) 委員長指名で、次の通り小委員及び小委員長を 選任した。  税制及び税の執行に関する小委員       大村 襄治君    鯨岡 兵輔君       小山 省二君    河野 洋平君       笹山茂太郎君    地崎宇三郎君       山下 元利君    渡辺美智雄君       阿部 助哉君    中嶋 英夫君       平林  剛君    村山 喜一君       河村  勝君    田中 昭二君  税制及び税の執行に関する小委員長                 笹山茂太郎君  金融及び証券に関する小委員       奥野 誠亮君    砂田 重民君       西岡 武夫君    古屋  亨君       村上信二郎君    村山 達雄君       毛利 松平君    吉田 重延君       佐藤觀次郎君    只松 祐治君       広沢 賢一君    武藤 山治君       竹本 孫一君    広沢 直樹君  金融及び証券に関する小委員長 村山 達雄君  財政制度に関する小委員       大久保武雄君    奥野 誠亮君       四宮 久吉君    地崎宇三郎君       原田  憲君    坊  秀男君       村上信二郎君    山下 元利君       井手 以誠君    平岡忠次郎君       広瀬 秀吉君    武藤 山治君       岡澤 完治君    広沢 直樹君  財政制度に関する小委員長   大久保武雄君 ───────────────────── 昭和四十三年八月八日(木曜日)    午前十時十七分開議  出席委員    委員長 田村  元君    理事 金子 一平君 理事 毛利 松平君    理事 山中 貞則君 理事 渡辺美智雄君    理事 只松 祐治君 理事 村山 喜一君    理事 竹本 孫一君       大久保武雄君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    河野 洋平君       小山 省二君    笹山茂太郎君       四宮 久吉君    西岡 武夫君       藤尾 正行君    古屋  亨君       坊  秀男君    村山 達雄君       山下 元利君    吉田 重延君       阿部 助哉君    井手 以誠君       佐藤觀次郎君    平林  剛君       広沢 賢一君    広瀬 秀吉君       武藤 山治君    河村  勝君       田中 昭二君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         農 林 大 臣 西村 直己君  出席政府委員         大蔵政務次官  倉成  正君  委員外出席者         経済企画庁長官         官房長     岩尾  一君         経済企画庁調整         局長      赤澤 璋一君         経済企画庁調査         局長      矢野 智雄君         大蔵省主計局次         長       相沢 英之君         大蔵省主税局長 吉國 二郎君         大蔵省銀行局長 澄田  智君         大蔵省国際金融         局長      村井 七郎君         食糧庁長官   桧垣徳太郎君         食糧庁総務部長 小暮 光美君         参  考  人         (日本銀行副総         裁)      佐々木 直君         専  門  員 抜井 光三君     ───────────── 八月八日  委員砂田重民辞任つき、その補欠として藤尾  正行君が議長指名委員に選任された。 同日  委員藤尾正行辞任につき、その補欠として砂  田重民君が議長指名委員に選任された。     ───────────── 八月七日  加算税執行猶予制度創設に関する請願(永井  勝次郎君紹介)(第一八四号) は本委員会に付託された。     ───────────── 八月七日  税制加算税執行猶予制度樹立に関する陳情  書  (第一〇六号)  専売公社茂木工場の存続に関する陳情書  (第一〇七号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  閉会中審査に関する件  国の会計に関する件  税制に関する件  金融に関する件      ────◇─────
  2. 田村元

    田村委員長 これより会議を開きます。  国の会計税制金融及び国有財産に関する件について調査を進めます。  本日は、参考人として日本銀行総裁佐々木直君が御出席になっております。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。村山喜一君。
  3. 村山喜一

    村山(喜)委員 副総裁、わざわざおいでいただきまして御苦労さまです。  公定歩合引き下げの問題に関連をいたしまして、日銀がとってまいりました政策というものをやはり明らかにしておかなければならないと思うのですが、いま兜町ではイザナギ景気だということで、ダウ平均は千六百二十円というような五年半ぶりくらいのたいへんなにぎやかな状況でございます。  そこで、まず第一にお伺いをいたしたいのは、景気動向指標が五〇%を割らない前になぜ公定歩合だけを一厘引き下げを実施したかということでございます。しかも、実施したそのあと記者会見において宇佐美日銀総裁は、国際収支については何が起こるかわからないというそのことばはまだ生きているのだ、こういうことを言われながら引き下げの実施をした。これは当面の緩和であって先行警戒下公定歩合引き下げだと世評は述べている。その景気動向指標が五〇%を割らない前に公定歩合のみを引き下げたという例は今回が初めてだとわれわれは受け取っているわけですが、そういういわゆる引き下げの背景といいますか、そのようなことを満場一致で政策委員会決定をしたその要因というものを明らかにしてもらいたいと思うのであります。  第二点は、国際収支の改善ということを達成した、見通しがついたということで引き締めを若干緩和する、引き締め解除に移ったんだということですが、これはやはり特殊要因が非常に多いのではないか。アメリカ景気下降日本の国の引き締め緩和とまともにぶつかった場合は非常に危険だということを日銀自体警戒をしているようでありますが、それを打ち出すに至りました、アメリカ経済見通し等についてはこういうふうになるのだという一応の日銀試算が、日銀政策委員会においては提出をされたやに聞くのでありますが、その試算の中身を公表願いたいと思うのであります。  それから第三点として、これはわれわれが感じているのは、この公定歩合引き下げ関連をいたしまして、大企業の諸君の言っているのを聞いてみますと、大企業は現在の調整下においても資金調達の面でたいした不自由はなかったということを言っているわけであります。しかも、現在の趨勢から見てまいりますと、鉱工業生産指数は非常に高まり、百貨店の売り上げもまた非常に増加をしている、貿易収支黒字はもちろん目に見えておるわけでありますが、そういうような状況の中で、ことし経済企画庁経済の予測をいたしましたいわゆる七兆九千億くらいの企業設備投資というものも、このままの趨勢でいってもなお八兆三千億くらいになるのではなかろうかと見られております。そういうような状況の中で、不況感なき調整が今度の引き締めの結果生まれているわけでありますが、不況でもないのになぜ引き締めを今日の段階でゆるめたのか。これは大企業にとってはそれだけ銀行貸し出し金利が下がることになりますからなおよくなるわけでありますが、小企業なり零細企業にどのような影響を与えていくのかということをわれわれが見てまいりますと、中小企業庁の発表によりましても、今回の調整措置が小企業なり零細企業に非常に大きく響いたということをいっているわけであります。だから、中小企業なりは、そういうような公定歩合引き下げよりも、やはり窓口規制というものを優先をさしてもらいたいという声が強いわけであります。だから、公定歩合引き下げということが中小企業には間接的な影響しか与えないで、大企業にだけメリットを与えていくような方向になるのではないか。とするならば、この窓口規制解除という問題についてはどういうふうに判断をあなた方はしておいでになるのか。  以上の点について一応お伺いをいたしまして、次の質問に移らせてもらいます。
  4. 佐々木直

    佐々木参考人 最初に、今回実施いたしました日本銀行公定歩合引き下げ理由というものを御説明申し上げたいと思います。  御承知のように、昨年の九月以来、国際収支の悪化に対処するために金融引き締めを始めました。九月には公定歩合の一厘引き上げ、それから窓口指導の開始ということでございました。さらにことしの一月には、依然として国際収支の調子が改まりませんので、さらに公定歩合の一厘引き上げを実行いたした次第でございます。ところが、ことしに入りましてからの状況では、四月ごろから国際収支は逐次好転してまいりまして、五月、六月とその好転の度は非常に強くなってまいりました。これは正直に申し上げまして、私ども予想以上の好転を示したのでございます。これはすでに御承知だと思いますが、具体的な例を申し上げますと、六月の国際収支総合収支で一億八千百万ドルの黒、これは非常に大きなものでございまして、IMF方式国際収支統計をつくり始めましてからこういう大きな黒字ができたのは初めてでございます。総合収支がそういうふうによくなりましたばかりでなく、経常収支長期資本収支基礎的収支どもいずれも大きな黒字を示したのでございます。それから七月の数字につきましては、実はまだ正式にまとまってはおりませんけれども、私どものいま得ております資料から大胆に推測をしてみますと、七月の国際収支につきましても、総合収支で大体六月と同じくらいの黒が出ているのではないか。それから外貨準備も七月中に大体一億ドル近い増加が実現されたのではないかというふうに見ておる次第でございます。さらに、先行指標であります七月の輸出信用状は、昨年の同月に比べますと三五%増という非常に高い増加を示しております。実は、六月の輸出信用状伸びがちょっと鈍ったような感じでございましたが、七月に入りましてからまた上昇傾向を強くしておる、こういう状況でございます。さらにまた、これは統計的につかまえることはなかなかむずかしゅうございますが、商社のほうで輸出成約状況などを聞いてみますと、これもなかなか好調でございます。したがって、こういう先行指標から見ましても、ここしばらくの間は相当大幅な国際収支黒字が続くものという判断になったわけでございます。そういうことで今回の公定歩合引き下げを実行いたしました。  ただ、先ほどお話がございましたように、内外情勢にはいろいろ問題がございます。外国情勢を見ましても、国際金融面における動揺というものも、最近はやや小康状態を呈してはおりますものの、アメリカ国際収支はまだ好転のきざしもございませんし、イギリス、フランスそれぞれにむずかしい問題をかかえておりまして、そういう基本的な問題が根本的に解決された状況ではまだないのでございます。さらにまた、国内を見ましても、いまお話がございましたように相当需要は高い。したがって、生産伸びが高いというような状況でございます。  したがいまして、こういう内外情勢を見ますと、手放しにここで緩和に踏み切るという状態にはまだ立ち至ってはいないと思うのではございますけれども、当面目標としておりました国際収支均衡回復という目的がこのように予想以上に早く大きくあらわれた現状におきましては、とりあえず公定歩合の一厘引き下げを実行するのが適当である、こういうふうに考えて決定をいたした次第でございます。ただ、いま申し上げましたようないろいろな事情についての配慮がございますので、いま窓口指導を七月−九月の三カ月でやっておりますが、ちょうどその三カ月のまん中辺に差しかかっておりますということもございまして、当面この窓口指導はそのままの状況で続けていく。十月以降をどうするかということは、九月に入りましてからの状況で考えていきたい、こういうふうに考えております。公定歩合は今回、一厘ずつ二回にわたって引き上げておりますが、一厘だけの引き下げにとめた、こういうようなことでございます。  第二番目の御質問でございました、いまの国際収支好転しておる原因というものは、輸出急増という非常に特殊な理由、特にその輸出急増アメリカ輸入増加によってささえられておる、そういう特殊な事情についてどういうふうに考えるかというお話でございます。確かに今度の国際収支均衡回復輸出急増原因でございまして、輸入のほうは、先ほども申し上げましたように、国内需要が高いために生産が高く、したがって、原材料の輸入がなかなか落ちない、むしろ少しずつふえるという状態でございまして、輸入水準はやや落ちつきぎみではございますけれども、前年同期に比べましてやはり増加はいたしておるのでございます。こういうような状態でございますから、輸出増加基調が今後どうなるかということの見通しが今後の国際収支を考えてみます上に非常に重要な点であることは間違いのない点でございます。  アメリカ景気が今後どうなりますかということにつきましては、実はアメリカ国内でもいろいろ見方が分かれておるようでございます。ただ、上期に比べまして下期の経済成長が鈍くなるであろうということは、ほとんどだれもが一致した見解でございます。中には二・五の上昇にとどまるであろうというような見解も出ておるようでございます。したがって、アメリカ輸入が上期に比べましてレベルが少し落ちるというようなことはあり得るかと思いますけれども日本輸出が、それでは一体それによってどの程度影響を受けるかということについては、実は正直に申しまして、なかなか見通しが立ちにくいのでございます。  先ほど政策委員会において試算を出したそうであるがということでございましたが、実は私ども、まだ政策委員会に出すほどの自信のある試算ができておりません。したがいまして、政策委員会において具体的な数字の御説明はいたさなかったのでございます。ただ、非常に乱暴な言い方ではございますけれども、いまの国際収支好転、要するに貿易収支相当大幅な黒字がここしばらくの間は続き得るという見込みだけは立てておるわけでございます。確かにアメリカ景気について問題はございます。地平線の向こうのほうに雲があることは事実でございますが、その雲がいつどの程度の雨を降らせるかということの見当がまだつかないままに今度の措置を実行いたしたのが事実でございます。  それから、第三番目の御質問でございます、今度の引き締め解除——解除と申しますか、公定歩合一厘引き下げが、大企業中小企業に対してどういう影響を与えるのかという点でございますが、今度の引き締め後の金融機関貸し出し実情を見ますと、実は窓口規制対象になっております金融機関は、窓口指導に従いまして貸し出し増加額調整いたしましたけれども規制外金融機関は、わりあいに資金の余裕があったということもございまして、貸し出し相当伸ばしてきております。したがいまして、全体の金融機関を総合してみますと、今度の引き締め後の貸し出し増加の模様は、増加率が落ちたということはございますが、いままでの引き締めのときのように、引き締め前に比べまして増加率がマイナスになるというところまではまいっておりません。そういう面で、規制を受けております金融機関貸し出し調整をやることによって一番影響を受けたのは、やはり大企業設備投資意欲ではなかったか、こういうふうに感じております。  ただ、今度の特徴は、大企業外国からインパクトローン相当取り入れることができたという点、これが相当事情の変化を与えておるように思います。実は私どもアメリカ国際収支対策資本の流出をとめておりますので、あまり日本企業外国から金を借り得ないのではないかと思っておりましたけれども欧州市場における資金を回すことによって相当インパクトローンの流入が実行できた。こういう点が、いま御指摘がありました、大企業がこういう貸し出し規制を受けたにかかわらず量的にある程度資金を確保し得た原因であろうかと思っております。  そういうようなことで、中小企業金融機関貸し出し伸びが、引き締め後多少鈍くはなったものの、相当増加を示しておりますという事実から考えまして、中小企業資金につきましては、もちろん十分とは申し上げられませんけれども、ある程度の、最小限度必要なものは充足されておるのではないか。ただ、中小企業にとりましては、労働力の問題とか、あるいは資金の回収の問題とか、あるいは販売の問題とか、そういう点についていろいろ問題があることも事実でございます。  そういうようなことで、今度の公定歩合引き下げが、その結果がある一部の企業に片寄って影響が出るというようなことではなくて、総体の金融緩和と申しますか、資金コスト引き下げと申しますか、そういうものに効果を与え得るもの、こういうふうに考えておる次第でございます。
  5. 村山喜一

    村山(喜)委員 大企業の場合、都市銀行筋から資金を仰いでやるという場合が一番ケースが多いわけですが、結局自己資本の充実によりまして、それだけ企業内における蓄積の分と、それからインパクトローン受け入れの分と、さらに調整手段対象外になりました生保とかあるいは相互銀行信用金庫、そういうようなところの資金ワク受け入れることによって、実際上の設備投資計画は若干のズレはあったにしても、ほとんど資金調達の上においては苦労をしなかった。しかしながら、もしかりにあなたがおっしゃるように、そういうような生保資金とかあるいは相互銀行資金等中小企業に回らないで、日銀のいわゆる統制下にある都市銀行と同じような形でやっていったならば、これはいまの企業倒産というものが、それが調整下に置かれた場合にはさらにふえてきたのではなかろうか。いまでさえもたいへんな企業倒産が出ているわけですね。だから、そういうような面においては、引き締め効果あらわれ方が少なかったという反面において、中小企業なり零細企業倒産を、これらのいわゆる生保なりあるいは相互銀行なり信用金庫というものがカバーをした、こういうようなふうにもとれるわけですね。  ですから、私は、そういうような意味において、このインパクトローン受け入れ、それが最終利回りというのですか、コストの面からいえば九分ぐらいについている非常に高いコスト資金を使いながらも、なおそれでも企業設備投資をやっていこうという意欲、そういうような点から考えていくならば、これからもいわゆるこの公定歩合の一厘引き下げによって、さらに設備投資競争というものが強まっていくのではないか。そういうような場合に、一体日銀としては国際収支調整手段というものをどういうふうにあなた方はお持ちであるのかということ、これをお聞かせ願いたい。  それから、国内の今後の景気調整手段の問題ですが、これは対象ワクを拡大すべきであるというようなことを大蔵大臣は言っているようであります。そういうような方向日銀も考えているのかどうか、この点について明らかにしてもらいたい。  それから、時間がありませんので詰めてまいりますが、日銀総裁も言っておりまするように、一体何が起こるのかわからない。こういうような国際情勢、しかも国際通貨の不安が現実に出ている。そういうような中にあって考えなければならないのは、外貨準備三十億ドルを達成をするという目標であります。それを目ざして外貨準備を着実に積み増しをしていくために、その許容される範囲内において安定成長をはかるべきであるという意見があります。そういうような安定成長政策をとるべきであると私は思うのですが、それよりも外貨獲得の能力というものをふやしていくべきだ、こういう成長政策日銀もとろうとしておいでになるのか、その政策方向というものを明らかに願いたい。  それから、日銀なり大蔵省が公的に保有しております外貨準備というもののほかに、いわゆるインパクトローンユーロダラー等受け入れをはじめとするところの対外短期バランスの問題を国際収支尺度とすべきであるという考え方があるのですが、これは為替銀行の純負債の部分が、外貨準備に対する比率を見てみますと五〇%程度、こういうような高い純負債をしょっているのはちょっと外国にはない。十億くらいの赤になっているようでありますが、そういうような対外短期バランスの問題を国際収支尺度として取り入れていくという考え方は、大蔵当局は持っているようでありますが、日銀はそれに対してどういう考え方を持っておいでになるのか。  この三点について承っておきたいと思います。
  6. 佐々木直

    佐々木参考人 第一の点でございますが、大企業が今度の公定歩合引き下げによって再び設備投資競争に進んでいくかどうかという点でございますが、これは私どもの立場から申し上げるのははなはだいかがかと思いますけれども先ほどお話がございました点もありまして、大企業としては、この引き締め下におきましてもある程度資金調達がついたために、自分の考えておる設備投資は、あるいは多少時間のおくれはございましょうが、大体計画に近く進めてきておるというのが実情のようでございますので、ここで金利が一厘下がったからといって、設備投資がさらに段をつけて大きくなっていくという傾向はないのではないかというふうに考えております。ただ、しかしこの点は、それぞれの業界にそれぞれの事情がございますので、一般的にのんきなことを言っているわけにはまいりませんので、私どもとしては一応窓口指導を残したのも、それに対する調節手段を残したという感じでございますし、金融機関に対しましても節度のある貸し出し態度企業に対しても十分慎重な態度を維持してもらいたいということをお願いしておるのでございます。  こういうような状態のもとで、国際収支調節手段、あるいはさらにあとお話しになりました景気調節手段というものについて、今後はどういう考え方をしておるかという点でございますが、確かに今度の例では、国債が発行されておるということもございますし、企業の手元が相当厚くなっておるということもございます。それからまた、貸し出し規制をいたします金融機関が一部分に限られておったという点もありまして、いろいろ金融調節手段としてあるいは景気調整手段として、こういう状態でいいのかどうかということについての反省をさせられたことは事実でございます。今後のやり方につきましては、次の引き締めが必要となります時期に備えまして、十分検討を進めてまいりたいと思いますけれども、結局総需要の中で、財政需要、それから個人消費需要というもののウエートがだんだん高くなる点を考えますと、そういう面について、景気調整の際にやはり何らかの調整手段政策的にとられ得るような段取りを考えておく必要があろうかと思います。  金融機関資金供給面についての調整手段につきましては、いまの窓口指導やり方というものにつきましても再検討を要しますけれども、私個人感じといたしましては、いまの窓口指導やり方を非常に広範囲な金融機関にまで広げていく、こまかい金融機関にまで広げていくということは、なかなか実際問題としてもできませんし、あまりいい方法ではないのではないか。やはり広く金融機関資金供給態度について協調を求めるならば、やはり別途の方策を考えていくべきではないかというふうに感じております。それではその手段がどうであるかということは、まだ私も実は成案を得ておりませんので、今後の研究にまつことをお許しいただきたいと思います。  それから第二番目の外貨準備の問題でありますが、外貨準備のいまの二十億ドルそこそこというのは、いまの日本国際収支の規模から申しまして、小さ過ぎる感じがいたしますことは、これは全く皆さまと同感でございます。ただ、外貨準備をどの程度ふやしたらいいのかということにつきましては、なかなか合理的な基準がございません。何とか機会をつかまえては、外貨準備の額をふやしていくための努力はすべきだとは思います。ただ、国内における経済の成長を犠牲にしてまで外貨準備を積み増ししていくということは、必ずしも適当ではないのではないかという感じがいたします。たとえば最近、外貨準備相当ふえておりますドイツ、イタリアの例を見ますと、ドイツの場合には貿易収支における黒字が非常に大きい。これが外貨積み増しの非常に大きなささえになっております。なぜこれだけ貿易収支が大きく黒になるかというと、これはやはりドイツの工業生産品というものが強い競争力を持っておるためでありまして、たとえば今度のアメリカ輸入増加につきましても、やはりドイツのほうの輸出伸びが非常に高いわけであります。そういう意味で、日本外貨準備が積み増しのできるような体質になるように今後努力をしていかなければならぬ、こういうふうに考えております。  第三の短期バランスの問題でございますが、いまのIMF方式によります総合収支は、そういう為替銀行の短期バランスを含めた収支になっておるわけでございまして、われわれとしては、総合収支がどうなるかということに着目して対策を立てておれば、いまのような短期バランスの問題も包括して対策が立てられるもの、こういうふうに考えておるのでございます。
  7. 村山喜一

    村山(喜)委員 時間がもうなくなりますからこれで終わりますが、問題は、いま副総裁の意見を聞いておりますると、新しい調整手段の中で、都銀だけの準備預金制度というものを、相銀なり信用金庫のような小さな金融機関にまで広げるという考え方はないんだ、それは別途の方策で考えていけばいいんだというふうに受け取って差しつかえございませんね。  それから対外短期バランスの問題は、国際収支尺度にはしなくてもよろしい、これは総合収支の中にあらわれてくるからということでございます。しかしながら、これは発表するかどうかということは別問題といたしましても、民間のそういうような為替銀行の収支状況が国民の前に公表されておりません。したがって、外貨準備だけはよくなりたけれども、短期の対外バランスというものは、これが国民の前には、資金の借り入れ能力だといえばそれまでのことですけれども、しかし、明らかにされていないということは、全体的にものを見る場合に、総合収支だけで見るということにおいては、非常に不十分な見方、非常に外貨準備が多くなったから、日本国際収支の基礎はきわめて十分だ、こういうような認識の間違いを引き起こすのではないかという点がありますので、この点についてはもう少し日銀としても検討を願いたい。  先ほど言われました今後の景気調整手段というものについては、いままでの調整手段というものが国内需要を十分に引き締めることができなかった、こういうような点において反省をさせられたとおっしゃるのだろうと思うのです。そのときに、資金の全体の六割を持っております生保なりあるいは農協資金とか、相互銀行その他の小さな金融機関のそれについては一体どうするのかという問題も当然出てまいりましょうし、そこには中小企業零細企業がそれを資金源としておりますので、そういうようなところまで引き締められたら、ますます企業の集中合併というような問題に拍車をかけて、零細企業はますます倒産件数が多くなっていくという問題もありますから、十分にそのあたりは今後慎重にやっていただきたい。  それから最後に、これは返事を願いたいのですが、窓口規制の改善の時期ですね。これは九月にならなければはっきりわからないとおっしゃったが、それには何か前提条件がありますか。先ほど消費の動向の状況なり、あるいは財政の需要関係の推移を見てということばもありましたが、窓口規制の改善には、日銀としてはこういう前提条件を考えているのかどうか、その点だけを明らかに願います。
  8. 佐々木直

    佐々木参考人 最初に申し上げておきたいのは、先ほど私が今度の規制対象外金融機関に広げる意思はないと申しましたのは、貸し出し規制のことでありまして、準備預金制度につきましては、すでに二百億円以上の金融機関についてはみんな進んでおりますので、その点は貸し出し規制ということに御理解をいただきたいと思います。  それから第二番目の短期バランスの問題は、いままでこれは三カ月に一ぺんは発表いたしております。しかし、なるべく皆さまにこの事情を知っていただくために、この公表の段取りを進めていく必要はあろうと思っております。  それから最後に、窓口規制につきまして、私が十月以降の問題については九月ごろ考えたいというふうに申し上げましたのは、いまの窓口規制が三カ月ごとの区切りになっておりまして、九月には七−九の分が済むわけでございます。ですから、十月以降どうするかということは、九月の半ば過ぎくらいまでにはぜひきめなければならない。ですから、そういうタイムリミットがありますので、九月ごろまで十分模様を見てきめたい、こういうふうに申し上げたわけでございます。
  9. 村山喜一

    村山(喜)委員 前提条件はないのですね。
  10. 佐々木直

    佐々木参考人 ございません。
  11. 金子一平

    ○金子(一)委員長代理 佐藤觀次郎君。
  12. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 せっかく佐々木さん見えたのですけれども、大体質問する時間が十五分で答弁が十五分。それでこの重要な問題を急ぐのは残念でございますが、御承知のように、金融再編成の問題が非常に重要な問題になっておりますので、ちょっと伺いたい。  佐々木さんは日銀の主といわれておりますが、やはり日銀の問題はいろいろ前からこの大蔵委員会で問題になっておりまして、イギリスあたりでも大銀行が大合同するという問題が起きるし、それから先回の国会でも、相互銀行信用金庫の合併、それから都市銀行あるいは地方銀行の合併の問題がおそらく来年あたりから問題になってくるだろうと思います。そこで、私は日銀に申し上げたいのですが、どうも日本銀行は昔は相当活発な行動をしておったけれども、何か温室に育って唯々諾々としているのではないかという感じがするのです。これはまことに口幅ったいことなんですが、どうも日銀というのは、佐々木直さんの名前は出るけれども、ほかの人の名前は出ぬということで、これは非常に残念だと思っておるのですが、日銀はどういうわけでそうかというと、やはりどうも銀行の中に君臨して、地方へ行けば支店長ががんばっておる、外国へ行っても日銀の支店長ががんばっておるという感じで、何か親方がどすんとすわっておるような感じがしてならないのです。そういう点で私は、いま大企業合併問題が盛んになっておるのですが、銀行だってそういつまでも——いま倒産が非常にたくさんありますが、銀行だけ倒産をしないことはないだろうと思います。そういう非常に重要な時期に、やはり日銀が何か新しい方向を出さなければ、なかなかむずかしい問題があるのではないかというように思うのです。  そこで、あなたに一つお尋ねしたいのは、絶えず日銀法の改正問題がやかましくなっておるのですが、こういう問題について佐々木さんはどういうふうにお考えになっておるのか、まずそれをちょっとお伺いしたいと思います。
  13. 佐々木直

    佐々木参考人 ただいまの御質問は、日本銀行法の改正についてどういうふうに考えておるかということでありますが、実は、日本銀行法の改正につきましては、戦後数回、金融制度調査会で取り上げられておりますし、それから金融制度調査会までいかない段階においても検討が繰り返されておりまして、しかし結局、そのいずれもが実現していない実情でございます。と申しますことは、非常にざっくばらんに申し上げますと、いまの法律でも、その法律のきめておる範囲内においてどうにかこうにかやれておるという実情があるのだと思います。そのために、いろいろその改正案を考えましても、その改正案を法案にするまでの熱と申しますか必要性と申しますか、緊迫性と申しますか、そういうものがどうもない。そのままに流れてきておるように存じます。申し上げるまでもなく、あの法律は昭和十七年、大東亜戦争が始まったあとにでき上がった法律でございますから、国家総動員法などの影響相当あるような文句もずいぶん使ってございます。したがって、戦後の事情に——そういう法文のことばだけではなくて、いろいろの面に現状と合わないものはございますけれども、どうも日々の政策の実行等につきましては、これで何とかやれておるものでございますから、こういうような事態になりましても、なかなか法律の改正が実現しない、こういうことではなかろうかと考えておるのでございます。
  14. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 金利引き下げがだいぶ問題になっていますが、日本金利というのは世界の水準では高過ぎるのじゃないかといわれております。それだから、事業が金利に食われてなかなか思うようにいかぬという点もあるのですが、一体日本金利の水準をどのくらいに置くべきかということは、これはそのときの事情でいろいろ議論があると思うのですが、佐々木さんはどのように日本金利の水準を——いろいろ高低がありますから、これは議論がありますけれども、一体高いのか安いのか、そういう点についてどういうお考えを持っておられますか。
  15. 佐々木直

    佐々木参考人 確かに日本金利が欧米の金利に比べまして高かったことは事実でございます。ところが、最近は御承知のように、国際金融市場におけるいろいろな問題の発生、あるいはアメリカ国内における財政金融の関係の問題、そういうような点から欧州におきましても、アメリカにおきましても金利がだんだん上がってきております。それで、いまの段階では、市場金利アメリカ日本とを比べますと、それほど差はなくなってきておるように思います。場合によりましては、日本のほうが安い場合もございます。今度公定歩合を一厘引き下げまして、年利にいたしますと、日本公定歩合は五分八厘でございますが、いまのアメリカの連銀の公定歩合が五分五厘でございますので、わずかに〇・三しか差がないということは、いまだかつてなかったことでございます。そういうことも示しておりますように、またイギリスの公定歩合が七分五厘という高いレベルにありますることからもわかりますように、少なくとも現状においてはそれほど大きな差はなくなっておるということが申し上げられるかと思います。ただ今後、国際金融情勢が正常化し、アメリカ国内景気がある程度落ちついてくるということになりますと、そのときにどういうことになりますかは、今後の変化次第であろうかと考えております。
  16. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 それから、先ほど村山委員から外貨保有の問題について議論がありました。大体二十一億ドルくらいまでいっておると思うのですが、一般の通説では三十億ドルくらいが当然じゃないか、だからこの問題を私がこの大蔵委員会で水田大蔵大臣に話したら、そいつは触れないでくれ、いろいろ差しつかえがあるからという話も出ておりますが、日本の一般の通説では少なくとも三十億ドルくらいはなければ、日本経済のあり方では不均衡だという話も伺っております。  それから、これに関連して日本の金の三億三千万ドルも、これは少な過ぎはせぬか。そういう不安定なことをやっておれば、何かこういうような変動のある場合に、ポンドの危機とかドルの危機とかがあると、国民が非常に損をするのじゃないかという議論があるのですが、その点はどういうようにお考えになっておりますか、重ねてお伺いしたい。
  17. 佐々木直

    佐々木参考人 最初の外貨準備高の問題でございますが、これにつきましては、先ほども御説明申し上げましたように、確かに二十億ドル前後というレベルは少な過ぎる感じでございます。したがいまして、機会があるごとにそれをふやすように努力はすべきだと思いますけれども、たとえばいまのように国際収支がよくなってきたときに、この機会にさらに積み増しをしなければいかぬということで、国内における引き締めをいつまでも続けていくということにして、もし国内景気を不当に圧迫すると申しますか、成長を犠牲にするということになりましてはまずいと考えますので、さっきも申し上げましたように、国際収支が黒になり得るような体質をつくっていく、はなはだ回りくどい道かもしれませんけれども日本の産業の国際競争力を強くして、その面から国内における不当な犠牲をしいないで外貨準備が積み増せるような、そういう体質にしていくことが大事である、こういうように考えるのでございます。  それから第二番目の金の問題でございますが、確かに金の保有高というのは非常に低うございます。この前からのようなゴールドラッシュがありますと、ほかの国は金の価格の引き上げによって相当の大きな利益にあずかり得るのに、日本がその利益にそう大きくはあずかり得ないという点は問題でございます。したがいまして、われわれとしても機会を得て外貨準備の中における金の割合を上げていきたい、こう考えておるのでございます。
  18. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 それから、先ほど佐々木さんから説明がございましたが、最近の国際収支黒字というのが予想外にいいということは一般にも予想されなかったと思うのです。しかし、そう簡単にこの下半期がこういうようにうまくいくかどうかという問題は、アメリカとの関係もあり、また、世界の情勢等も関係があるのですが、これの見通しが必ずしも楽観はできないように私は考えておるのです。しかし、それと同時に、それに関連して日本のこれからの景気見通しというものは——一般には好景気のようにいわれながら、現実には中小企業倒産、あるいは一般の零細企業者などというものは史上空前の苦しい立場に追い込まれておると思う。特に繊維産業なんかはそうなんですが、そういう点については日銀ではいろいろ調査されておるのですか。どういうようにお考えになっておられますか、これをお伺いいたします。
  19. 佐々木直

    佐々木参考人 今後の景気がどういうふうになっていくかということの見通しは、おっしゃいますように非常に立てにくい状態でございます。ただ、いまの生産、出荷、それから物価の状況その他から考えますと、やはり相当根強い経済活動が予想されるのではないか、こういうふうに考えております。  ただ、中小企業にとりましていろいろの問題がありますことは御指摘のとおりでございまして、倒産の件数も相当多いということが、こういう状況でもまだ続いておるのでございます。ただ、中小企業につきましていろいろなアンケートをいたしますと、中小企業でいま問題にされております点は、一番大きい点が労働の確保の問題、それから労賃の上昇の問題、それからあるいは販売先確保の問題、そういうような点があがっておりまして、金融の点につきましての問題の取り上げ方は以前のときに比べましてわりあいに低くなっておるように思います。ただしかし、中小企業全体が近代化におくれないようにいろんな面からの指導と申しますか、支援が必要であることは言うまでもないところであります。ただ、最近の倒産につきましていろいろ調べておりますと、たとえばノリ業界における書き合い手形による倒産というような非常な特殊なケースが相当数が多いということで、農林水産関係について意外に問題があるということが統計からは出ておるのでございます。
  20. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 いろいろ事実がそれを証明しているのですが、一般の中小企業不況というものは、金利が一厘下がったからといって、それによって必ず上向くというような情勢ではない。一般の表面を見ると、いかにも景気がいいかのように見えておりますけれども、それは大きな企業や一般の国民が知らないような大きなところにそういういい景気があるので、実際は、われわれ選挙区を持っておりますけれども、非常に不景気の声を聞いて、われわれも耳が痛まるほどそういうような情勢にぶち当たっておるのです。日銀が一厘引き下げによって何らかの形でこういうような面を打開しようという気持ちはわかりますけれども景気が上向くというところまでいくかどうかという問題についてはなかなか議論があるわけです。日銀のほうではその点を現時点に立ってどのように考えておられるのか、もう少し佐々木さんから伺いたいと思います。
  21. 佐々木直

    佐々木参考人 今後の景気の推移につきましては、先ほど申し上げましたように、なかなか見通しがむずかしゅうございます。どうも私どもがいろいろ申し上げますのは、とかく一般論になりがちでございまして、やはりその景気の動向につきましては業種別にいろいろ事情が違っておることも事実であろうかと思います。しかし、総体として見ますと、いまの生産の高さは相当なものでございまして、今度の金利一厘引き下げによりまして、いまの生産増加趨勢をさらに押し上げていくということになりますと、これはむしろ行き過ぎになるのじゃないかということを心配しております。  しかし、これはあくまでも一般論でございまして、個々の産業あるいは業種につきましては、やはりいろいろ手当てを要する業種があるということは事実でございます。したがいまして、現在たとえば繊維産業などで難局に当たっておられる企業につきましては、繊維業種の中でのいろいろ区分別な対策とかあるいは個々の企業対策というようなものがきめこまかく実行されることが必要である。この点は、ただ公定歩合一厘下げれば問題が全部解決するものではないということは十分承知いたしております。
  22. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 それから、私なんかはポンドの再切り下げがあるだろうという予想をしておったのですが、このごろだいぶポンドが落ちついて、ポンド危機ということは一応解消したというような感を受けるのですが、そのおもなる原因はどういうところにあるのか、また、これからもポンドというものは再び危機に襲われないのかということについて伺いたいと思います。
  23. 佐々木直

    佐々木参考人 ポンドの将来につきましては、長い将来を見ますと、なかなか見通しがむずかしいのでございます。  ただ、最近ポンドの位置がだいぶ安定してまいりましたことの一つは、やはり平価切下げの効果がだいぶおくれておりますけれども、だんだん出てまいったという実情が一つございます。それで貿易の収支がやや改善に向かいつつあるという点がございます。  それから第二番目に、御承知のようにイギリスはポンド預金を相当持っております。要するにポンドエリアその他から、イギリスがかつての国際金融の決済中心であったということから、相当の預金を預かり、それがいつ引き出されるかわからぬということがポンドを弱くする一つの原因であったのでありますが、これに対しては、御承知のように各国が集まりまして十年間二十億ドル——まだこれは決定をいたしておりませんが、そういうスケールでのポンド預金に対する対策をいま考えておりまして、この二十日には専門家会議が開かれますし、九月早々にはバーゼルで国際決済銀行の集まりでそれが本ぎまりになるということがいま予想されております。そういうようなことがポンドの足を強くしたもう一つの原因であろうかと思います。  ただ、イギリスという国が世界の経済の中で占めます地位というものがだんだん下がってきておりまして、イギリス人のいまの生活のあり方というような問題もございますので、長い目で見たポンドにつきましては問題がありますが、当面ポンドについての危機は回避されたものと私どもは考えております。
  24. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 もう一つ関連して伺うのですが、イギリス自体で、そういう作為をしないで、貿易の関係でつまりポンドの危機を招くようなそういう危険はないのか、国自体の貿易の黒字でまかない切れるものであるかどうかという本質的な問題について、佐々木さんはどういうようにお考えになりますか。
  25. 佐々木直

    佐々木参考人 イギリス自身の国際収支につきましては、ポンドの平価切り下げ、それに伴いますイギリスの相当きびしい財政金融政策によって、相当経度均衡の回復ができるのじゃないかというふうに思っております。ただ、先ほど申し上げましたように、非常に大きな外国に対する債務を持っておりますから、その債務を引き出されるということになりますと、これはイギリス自身の努力ではなかなかカバーができない面がありまして、そういう点が各国の援助の中心になっておる次第でございます。
  26. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 日本の円と関係の深いドルについて、ポンドが落ちつけばドルの不安もなくなる面もありますが、ベトナム戦争はああいうような状態になっておりますし、また、今度の予算でも相当ベトナムに対する予算を組んでおるようでありますが、ドルの不安というものは解消したものであるかどうか、それから、現在たしかアメリカの外貨保有は九十億ドルを割ったというような意見も聞いておるのですが、その点は一体どうなっておりますか。お答えいただきたい。
  27. 佐々木直

    佐々木参考人 アメリカ国際収支につきましては、実はこの春になりまして非常に輸入増加しておりますので、貿易収支黒字が非常に小さくなってきておりまして、大体いままでアメリカ貿易収支で四十億ドル前後の黒を出しておりまして、そのほかの収支で非常に赤が出るものですから、総合的に赤が出るという状態であったのですが、その大きな黒のかせぎ手である貿易がそういうふうに黒が小さくなってきましたことは、今後のアメリカ国際収支均衡から非常にじゃまになることは確かでございます。ただしかし、最近になりましてフランスが大幅な国際収支の赤字を出して、その赤字の結果がアメリカにプラスになっておる、資本勘定その他でプラスになっておるような点もあるようでございます。そういうような点から、一時のようにアメリカのドルにつきまして危機が論ぜられなくなってきております。これは、最初私が申し上げましたように、実態はそれほどよくないのですけれども、いろいろな国際金融面での対策が功を奏して、小康状態になっておるということがそこにつながると思うのです。アメリカのドルが今後どうなるかということにつきましては、金相場がどうなるかということにつながると思いますが、金の価格のほうは、御承知のようにいま二重価格制をとっておりますが、自由市場ロンドンなどにおける金の価格は、このところ三十ハドルから三十九ドルぐらいで、わりあい安定しておりまして、一時非常に盛んでございました金に対するドルの切り下げということはやや遠のいた、議論としても遠のいた状況でございまして、しばらくこういう状況が続くのではないか。  それから、ただいまちょっとお話がございましたアメリカ外貨準備の問題でございますが、九十億ドルということは、私、聞いておりませんが、アメリカの保有の金の額は一時百億ドルをもうそろそろ割るんじゃないかといわれましたが、最近少し、いろいろフランスの関係その他もあるかと思いますが、ふえまして、いま百五億ドル前後あるのではないか、こういうふうに思っております。
  28. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 時間がありませんから、あまり佐々木さんにお伺いできませんけれども、やはり大蔵委員会はこういう金融なんかの問題についても日銀と非常に関係の深いところでございますから、ひとつ一時間半ということでなくて、総裁でも副総裁でもいいですから、大蔵委員会が招集したときは、やはり二時間でも三時間でも、どんな意見でも聞くというようなつもりで、ぜひ御出席願いたいと思います。きょうは時間がありませんから、あとまた竹本さんがやるそうでありますから、はんぱになって非常に申しわけありませんけれども、とにかく来るときには一日でも二日でもぜひお願いしたいと思います。  私の質問を終わります。
  29. 金子一平

    ○金子(一)委員長代理 竹本孫一君。
  30. 竹本孫一

    竹本委員 私の結論を先に申し上げます。  私は、きのうも大蔵大臣に言ったのでありますけれども、今回の公定歩合の一厘引き下げは時期的に見て一カ月あるいは二カ月早い、それから準備がなさ過ぎるという二点において、賛成しかねるという立場をとっております。そういう立場からいろいろお伺いをするわけでございます。  まず第一に、日銀総裁は、この前、外国に行かれて帰ってこられたときに、国際経済には何が起こるかわからないということを言われた。一国の中央銀行総裁のことばとしては、これは初めての驚くべき表現であるということを何か新聞は書いておりましたけれども、しかし、それが日銀総裁のヨーロッパに行かれたときの実感であったろうと思う。何が起こるかわからない。さらに最近におきましても、公定歩合引き下げの問題がたびたび出たときにも、いま実は判断がむずかしいということも新聞に語っておられる。すなわち、国際経済の問題から見てみても、何が起こるかわからない。いま、今後の経済内外情勢判断するということについては、その判断はきわめてむずかしい。こう言っておられました。私は、政府はどうも高度成長政策にとらわれ過ぎておるので、あるいは早く公定歩合引き下げるということになるのではないかと思っておりましたけれども、そうした日銀総裁の発言だけはやや良心的なもので、ここに一つの希望をつないでおったわけでありますが、それがいつの間にか一変いたしまして、七日の日ですか、公定歩合引き下げるということになった。一体、日銀の良識は蒸発してしまったのか。あるいは宇佐美さんがわざわざ、今度の問題については政治的ではなくて純経済的ベースで考えたいということを言っておられる。そういうことをわざわざ言ったところから見ても、また逆に、これは政治的な何か裏の関係があったのかどうかというような点を心配して、私は、そういう意味で日銀というものは政府の経済政策なんというものに一々引っぱり回されないで、もう少し、通貨価値の安定という基本的な使命もあるわけですから、がっちりした立場でものごとを考え、態度を一貫してもらわなければ因る。特に今回のように、きのうまでは何が起こるかわからないと言っておいて、きょうはもう公定歩合を下げる。しかも、下げたときの宇佐美さんの談話も大蔵大臣の談話も、経済企画庁長官の談話も、全部、一体下げるだけの条件ができたという確信に満ちた談話をだれも言ってない。みな逆に、当面緩和、先行き警戒、そんな警戒ばかりしなければならぬのなら、なぜ下げるか。一体どれが本音であるかということをまず副総裁伺います。
  31. 佐々木直

    佐々木参考人 どうも公定歩合を動かします前の責任者の発言というものは、なかなかデリケートでございまして、いろいろ憶測、推測がございます中での発言でございますので、どうも歯切れがよくないことは、これはやむを得ない。(竹本委員「いや歯切れはよかった、方向が違っただけです」と呼ぶ)  ただ、今度の公定歩合引き下げにあたりまして、たとえば、いま例にあげられました、当面緩和、先行き警戒、そういうさなかでなぜ緩和をするか、引き下げを実行するかということの御疑問があるのはきわめてごもっともだと思います。     〔金子(一)委員長代理退席、委員長着席〕 私どもも、いままでいろいろ国際収支数字を見ておりまして、急速によくなってきてはおりましたものの、先ほども申し上げましたように、この国際収支がよくなりました一番大きな原因アメリカ景気の急上昇というものにありますだけに、よほどこれは慎重に成り行きを見ていかなければならないと考えておったのでございます。ただ、しかし、そういうアメリカ景気がどうなるかということの見通しはなかなか立ちにくい。この状態におきまして、とにかく約一年近くなります金融引き締め政策をそのままにしておきますことは、今後における金融政策の弾力性に非常に障害になる、こう考えたことが今度の引き下げの一つの大きな原因でございます。したがって条件が十分整うまで待つのがあるいは常道かとは思いますけれども、それについての見通しが立たないままにいつまでもいまの状況を続けることが適当でないと考えたからこういうことを実行した、こういうふうに考えます。
  32. 竹本孫一

    竹本委員 いま申しましたけれども、歯切れがよかったというのは、初めはよかったのです。はっきりと、国際経済はどうなるかわからぬと言う。わからぬというのは、何か歯切れが悪いが、わからぬという態度ははっきり述べられた。これはあとでいろいろお尋ねしますけれども、そのとおりなんです。ところが、今度思い切って公定歩合を一厘下げるということになった。そこで歯切れが悪くなった。下げるために言っておるのか、下げないための警戒を言うために述べたのか、この文章はわからないのです。どの談話もみなそうですよ。時間がありませんから簡単に申し上げます。副総裁、わかっておると思いますけれども、私は、どうも今回のやつは何かおかしいという感じで、何を日銀が一体あわててやったのかということがどうもわからない。それをお伺いしておるのだけれども、どうもはっきりしません。  とにかくそういう意味で、先ほどちょっと佐藤委員からも御質問がありましたけれども、私はやはり日銀法なんかも改正をして——政党というものも、われわれ政党に所属しておりますけれども、どうも国民の良識の立場からいえば、あまり信頼のできない存在のときがある。政府もどうもでたらめが多い、思いつきも多い。せめて経済政策に関する限りは、日銀ぐらいはしっかりした態度、かちっとしたたてまえをとってもらいたい。そういう意味で、やはり日銀の中立性という問題については思い切った施策をいまのうちにやらないと、世はあげてインフレムードなんですから、だんだんだんだん経済の施策はルーズになっていく。そういう意味で、先ほど総裁は何だかその緊急の必要もなくなったと思われると言うけれども、私は逆に、いまこそ日銀がしっかりしなければならぬ、その日銀のしっかりした態度を法的に裏づける意味において必要な日銀法の改正もやるべきであると思いますが、その点についてももう一言御答弁願いたいと思います。
  33. 佐々木直

    佐々木参考人 いまの日本銀行法の改正について、中立性を確保するために日本銀行法の改正をやるべきであるというお話、それにつきましては、私は全面的に賛成でございます。ただ、なかなかその日銀法改正が日の目を見ない理由について、先ほどちょっとお話がございましたので、現実的なそういう運びになっておることの背景を御説明申し上げたのでございまして、中立性確保のための日本銀行法改正ということの必要性は、私、非常に強く感じておりますことを申し上げておきます。
  34. 竹本孫一

    竹本委員 経済企画庁も見えておるからついでに一つ伺いたいのだけれども経済企画庁では先般四十三年の経済白書で景気警告指標というものを試験的につくるとかつくったとかいうことが出ました。その警告指標の中から判断をすれば、公定歩合は今月やるのがよかったのか、警告指標はどういうことを教えたのか、それをひとつ伺いたいと思います。
  35. 矢野智雄

    ○矢野説明員 先般の経済白書で景気警告指標を公表いたしました。まだ試案の段階でありますので、今後検討してまいりませんとそれだけで判断するのはむずかしいのでございますが、現在公表しておりますのは四半期単位でありまして、四−六月のところは黄色、つまり注意信号であります。これは月別はそのまま当てはめられませんので、これはさらに——試案のほんの一つの参考程度でありますが、いままで出たところではまだ青信号まではいきませんで、黄色に多少青味がかっているという程度のものであります。(「そんな信号あるか」と呼ぶ者あり)したがいまして、試案の段階でありますが、その信号から考えられますのは、まだ全般的に進めの信号ではないということであります。日本銀行でも全般的に解除しなかったのは、おそらくそうした背景があるからだろうというふうに思います。
  36. 竹本孫一

    竹本委員 いまも発言がありましたけれども、青味がかった黄色なんという信号はさっぱりわからない。あなたの言うのはどっちですか。警告指標というものをはっきりして、国民に経済企画庁の権威において景気警告指標をつくって、その指標に従えば進めというのかまだ早いというのか、どっちなんですか。
  37. 矢野智雄

    ○矢野説明員 現在十二の指標に基づきまして、それぞれに青、黄、赤をつけまして総合判断いたしますが、ちょうどまん中の——最後につきますのは黄色です。黄色ですが、十二のうちのちょうどまん中の黄色よりも少し青のほうに近い、しかし青がつくまでには至らないという、まだ試案の段階でございますのでかちっときめるわけにはいきませんが、そうした状況であります。
  38. 竹本孫一

    竹本委員 それで、経済企画庁せっかくの景気警告指標はさっぱり警告の役をなさないということだけははっきりわかりました。意味をなさないです。そんなあなた、どういうふうに読んでいいか、ムードで読むような、子供の漫画みたいなものじゃ意味をなさない。もっとしっかりした——かりにその指標を全部信頼するか信頼しないかは、また政治家の一つのステーツマンシップできめるとして、その指標というものは進めというのかとまれというのか、ストップかゴーか、信号が間もなく進めということになりそうですとか、半分何かそういう色がついてきましたとか、だいだいみたいなことを言っても話にならぬ。私は、もう少し権威ある警告指標というものを経済企画庁で考えてもらいたいということを特に希望しておきます。  そこで、節度というようなことば、慎重にということばが、先ほど申しました経済企画庁長官大蔵大臣日銀総裁のことばには非常にたびたび出ておるのです。そこに私が先ほど申しました歯切れの悪くなっている理由があるわけでございますが、要するに、私の結論からいえば、政府や日銀態度が今度は一番節度がなかった。なぜもう少しはっきりと筋を通さなかったかということを私は特に強調いたしておきたいと思うのであります。  そこで、先ほど村山委員からも御質問がありましたので、私は重複を避けますが、本来窓口規制緩和のほうから公定歩合に行くべきであると思うのだけれども公定歩合引き下げを先にやった。これは日本の中央銀行としての日銀の立場というものからいえば、先ほど総裁が述べられたように、どこにどうということではなくて、全般的にすべての問題を考えてやっておられるのだろうけれども、結果から見れば、このやり方がだれを一番利益して、だれに一番損を与えておるかということももう少し掘り下げて考えていただかなければならぬ。公定歩合を一厘下げました。具体的に伺いますよ。日銀から銀行貸し出しておる。それらの計算をして、一体銀行は一厘下げるということによってどのくらいの利益を受けるのであるか、それをまず伺いたい。
  39. 佐々木直

    佐々木参考人 今度の公定歩合引き下げに対応いたしまして、市中銀行がどの程度金利を下げるかということは、実はまだはっきりきまっておりません。おそらく実行は九日からだと思いますので、きょうあたり銀行が集まっていろいろ相談をしておると思いますが、実は今度の引き締めの場合、二回一厘ずつ上げました。そのときに、最初の一厘のときには市中銀行貸し出しについては大体五毛上げたわけです。それから二回目の一月に一厘上げましたときには、大体総体として、平均はもっと低うございますが、個々の取引先に対しては、五毛上げでなくて一厘上げを求めております。それで今度の一厘下げを最初の一厘のときの引き下げと解するか、第二回目の一厘上げのときの一厘下げに考えるかということで、今度の利下げの幅が違うようなことになるのですが、私が昨日まで聞いておりますところによると、第二回目の分に対する引き下げであると解釈して一厘下げたい、市中の貸し出し金利も一厘下げたい、そういうような話がきのうの段階ではあったようでございます。したがって、総体としてその貸し出し金利引き下げがどれだけ銀行の収益に影響いたしますかどうか、私もいまそういう具体的な試算を持っておりません。しかしながら、いまのような態度から考えますと、企業金利負担というものは、わりあいに大幅に下がってくるのじゃないか、こういうふうに考えております。
  40. 竹本孫一

    竹本委員 日銀から銀行に金を貸しておる。それの金利が下がる。これによって銀行相当な利益を受ける。もちろん、それをそのまま会社に貸し出す場合に下げればいいのだけれども、時間的なズレや幅の問題がありまして、従来の例から見て銀行にある程度プラスが出る。銀行が下げた場合には、今度は銀行から金を借りておる主として大企業が非常に利益を得る。ところが窓口規制を残しておるので、先ほどお話がありましたように、窓口規制でいじめられておるのは、主として中小あるいは零細企業、小企業でありますから、そちらのほうはもう自由化の波も寄せてくる、金融緩和のあらしも吹いてくるというようなことで、大企業はどんどん設備投資をやるのに、中小企業はいままで見送っていたやつを、中止していたやつを、設備投資をやって近代化をやって何とかひとつ生き残る方法を考えなければならぬと思うけれども貸し出し窓口規制でやはりワクは解けない。こういうことになって、結果的に見れば、中小零細企業には非常に格差のある悪い条件が出てくるということを副総裁はお考えになりますか。想像はされませんか。
  41. 佐々木直

    佐々木参考人 貸し出し規制を適用いたしております金融機関というのは、大体大きな金融機関都市銀行並びにいわゆる上位の地方銀行でございます。したがいまして、それ以外の金融機関というものはこの貸し出し規制を受けていないわけであります。中小企業の取引先というのはそういう規制外金融機関が多いわけでございますから、窓口指導影響というのはそこには及んでいないというふうに考えております。ただ、一般的に金融引き締めに同調してほしいという道義的な協調のお願いはしておりますから、その影響はあるかもしれません。  結局、いまの御指摘の点は、窓口規制を受けておるような大きい金融機関中小企業金融がどうなるかという点であろうかと思います。いま実は、都市銀行あたりでは金融緩和をもう予想いたしまして、相当今後の自分たちの優良取引先の確保というようなことに頭がいっておるのでごいざまして、その場合に、この前から数回の経験から、都市銀行もいい中小企業の取引先はぜひ確保したいというようなことが相当強く方針の中に入っておりまして、最近の私どものほうの支店からの報告では、中小企業設備投資に対して都市銀行の支店が相当積極的に話に乗っておるというような具体的な報告もきておるのでございます。したがいまして、今度の窓口規制を残しましたことが、特に中小企業にさらに強い引き締め感じあるいは金融の面における不便を増す、あるいは不便がいつまでも続くというふうにはならないんじゃないかというふうに考えております。
  42. 竹本孫一

    竹本委員 少なくともならないように指導してもらいたいですね。私ども、ある程度なると思っておりますが……。  特に、いまお話しの中にありましたけれども都市銀行だって中小企業に対するシェアは半分ぐらいあるでしょう。でありますから、——もちろん都市銀行の半分まではないけれども、ほんとうはむしろないほうがおかしいのでしょう。中小企業に特に不利にならないように格別な御配慮を要望いたしておきましょう。  次に、本論に入るわけですけれども、この歯切の悪い理由の第一点は、私は国際通貨の危機並びにアメリカ景気に対する見通し難だと思うのです。先ほど来、国内設備投資も大体落ちついたということが今回の公定歩合引き下げの一つの理由になっておりますけれども、なぜ落ちついておるか、あるいはあまり設備投資伸びなかったかということになれば、私はやはり経営者は経営者の立場でこれからの世界の通貨の危機あるいはアメリカ経済の動き、そういうものに対する非常に大きな不安があっと思うのです。あの不安の中で設備投資を巨大に計画するなんという経営者はばかですね。これは慎重を欠きます。でありますから、やろうと思ってもやれないのだ。そういう意味で、私は、業者は業者の立場でもって、からだでもって国際通貨の危機や経済の危機を感じておった、それだから設備投資はあの程度で済んだと思うのです。今度の公定歩合引き上げが行なわれたこの段階において、しからば、その不安が解消したのかということについて、先ほど佐々木さんもだいぶ詳しくお話がありましたので重複を避けたいと思うのでございますけれども、私は、まだポンドもフランもドルも一つも本質的には悩みを解決していないと思うのです。  時間がありませんので、たとえばポンドならポンドをやったって一時間や二時間かかりますから、十分論議ができませんけれども、しかし考えてみれば、英国は三十億ドル援助してもらった、今度はバーゼル会議でまた二十億ドルやってもらうということになったようでありますし、それで一応ほっとしているわけでしょう。しかし、その二十億ドルの援助についても、各国がどういう条件をつけるか、一種の条件闘争というようなものはこれからあるわけですね。完全に二十億ドル承知をしました、無条件に出しますといっている国はないでしょう。だから、その見通しがほんとうにつくのは九月だと言っておるのですね。九月の国際決済銀行のあれをやってみなければわからない。それまではどういう条件が出てくるか、極端にいえば、わからない。ある程度楽観的に私も見ておりますけれども、しかし、国際経済、それぞれの国益尊重で考えておる国々が多いのですから、イギリスの援助が先に三十億ドル、今度かれこれ二十億ドル、それで危機突破ができるというところまで全面的に協力するかどうかということについては、まず一つの問題がある。しかし、かりに協力してもらってみても、イギリスは、御承知のようにイギリス病というのがある。このイギリス病は、ウイルソン内閣があれだけ苦労してやっておりますけれども、まだ本質的には解決されていない。むしろその解決の過程において賃上げもどんどん出てきておる。ストライキも続発しておる。イギリスの経済が体質が改善されて、新しい国際経済社会の中に乗り出していくというような条件は、残念ながらまだ整っておりません。でありますから、イギリスの貿易収支を見ましても、六月は五月に比べればうんとよくなったようだけれども、しかし、半年の間に約八億ポンドの赤字でしょう。イギリスの国際収支は一つもよくなっていないし、よくなりそうには見えるけれども、よくなったとはまだいえないし、いわんや今後これがますます——七月は少しよくなるというのだけれども、八月以降どの程度よくなるのかというのはわかりません。よくなったとしても、イギリスの少なくとも最初に期待したようなポンドの国際収支における黒字なんというものは、出てきそうもないでしょう。ありますか。国際収支で、イギリスが、五億ポンドですか、予定した黒字をかせげるという見通しがありますか。私はほとんどないと思う。さらにイギリスは、先ほど御指摘のありましたように、百三十六億ドルに及ぶところの債務がある。持っている正貨準備と比較してみて、これはまたあまりにも多いのだ。  そういう点を考えてみると、保有外貨準備の問題から見ても、貿易収支の面から見ても、今後のイギリスの経済の体質の改善の進みぐあいから見ても、私は、——ポンドは一応ここで小康は得ていますよ。しかし、小康というのは小さな安定なんで、日本公定歩合を下げてカーブを切って経済政策を転換する、株はどんどん上がる、先ほどお話しのとおりだ。そういうような情勢に持っていくだけに、日本経済のカーブを切っていいほど、日本とイギリスとの関係は浅いものではないし、また、イギリスのポンドが安定したわけではない。  一体ポンドに対してあなたはどの程度の明るい確信を持ち得るのであるか。持ち得るのであれば、その根拠をひとつ簡単に話してもらいたい。
  43. 佐々木直

    佐々木参考人 ポンドの問題は、先ほどもちょっと申し上げましたが、当面確かに小康を得ておりますものの、イギリスの経済の体質、人間の動き方等々から考えますと、先行きについては相当問題があるということを先ほど申し上げました。したがって、ポンドについても、同様な考え方を持っております。  それから、先ほど御指摘がありましたように、ドルにつきましても、フランにつきましても……(竹本委員あとで聞くから、ポンドだけでいい。ポンドに明るい根拠があるのかということです」と呼ぶ)当面は少しずつ明るくなってきておりますけれども、しかし、これが安定していくかどうかということの見通しは、まだ立っておりません。
  44. 竹本孫一

    竹本委員 私は、佐々木総裁は俊敏な副総裁であるから、ポンドの情勢についてはよくおわかりだと思うのです。とにかくポンドに対してまだ世界のだれもが確信を持ち得ないのです。私なんかは、イギリスの労働党はわれわれと同じ考え方ということで特に好意を持って、何とかよかれと祈っておるけれども、全然確信が持ち得ないのです。われわれがひいき目に見てさえ持ち得ないのに、一体だれが確信を持ち得るか。それに対してとにかく確信を持ったようなことを前提にして、当面緩和だとか、先行き警戒だなんて、わけのわからぬ、さっきの信号と同じようなことを言って経済政策を転換するということは、極端にいえば慎重を欠く。私は大いに遺憾の意を表したいのです。  次には、フラン。フランも、御承知のように、五月危機以来十九億一千万ドル、あすこはドルが出たでしょう。今日四十八億五千万ドルとかあるそうだけれども、きょうの新聞に出ておったけれども、それが十分あるという見方もそれはもちろんあるでしょう。しかし、かってのフランスの持っておったものに比べて激減していることも事実です。さらに、フランスが困ることは、この間の五月危機のときに、終結の際に一五%の賃上げをするということになっておる。だから、それを前提に考えてみると、フランスのフランが安定し得るかどうかということについて心配だから、この間十三億ドル手当てをしたのでしょう。その手当てをして、それでフランが安定するかというと、いま申しました国内経済に矛盾もあるので、大体において六億ドルあるいは十億ドルの赤字がことしフランスには出るであろうかというのが一般の常識じゃないですか。このフランについても、貿易収支の面からも、国内経済の動きからも、あるいはドルが流れた点からも、金が減った点からも、楽観し得る情勢が一体どこにあるのだ。何を根拠にフランは安定したと考えられるのであるか、どうですか。
  45. 佐々木直

    佐々木参考人 フランの問題は、いま国際収支が悪い状態が続いております。したがって、いつ安定したというふうな見方ができるかは現在の状況ではわからない。ただ、一時のような資本逃避がとまっておりますし、赤字も徐々に小さくはなりつつあるようであります。これはポンドもドルも同じでありますが、やはりフランについても小康状態にすぎないのだということは言わざるを得ないと思います。一五%の賃上げの結果がどういうふうにあらわれるか、その点についてはこれからの問題でございます。ただ、いまの十九億ドルにのぼります赤字の中で、資本勘定の赤字が相当多くて、それはさっきお話がございましてフランスの銀行の短期バランスが相当黒になっておりますから、そういう点で十九億ドルの数字は御理解をいただく必要があろうかと思っております。
  46. 竹本孫一

    竹本委員 七月六日ですか、ロンドン・エコノミストは、やはりフランの将来は少しも安定してない、最後になれば金が流出するということよりも、金選好のフランスであるからフランの切り下げに走るかもしれないということを、ごらんなったと思いますが、ロンドン・エコノミストはいっておりますね。この数カ月前からフランがあぶないのだということを一番勇敢に端的に早く指摘したのはロンドン・エコノミストだと思うのです。そのロンドン・エコノミストが七月六日号で再びフランについてはやはり安心ができない、場合によっては金選好のフランスだからフランの切り下げのほうに走って、金が流れることを押えるかもしれないということまで書いておる。そういう点から見れば、ますますもってフランというものも、小康なんというわけのわからぬことばを使えばこれはどんなごまかしでもつきますね。しかし、基本的に政府の政策転換を可能ならしめるほどりっぱな足取りでフランは安定はしていません。これは大体副総裁認められるでしょう。認められませんか。日本政策転換を可能ならしめるほどフランは確実な足取りで安定への道を歩み始めたとはっきり言えますか。
  47. 佐々木直

    佐々木参考人 逆に申しますと、世界のそういう情勢日本公定歩合の一厘引き下げができないような積極的な理由も持っていないというふうに考えております。
  48. 竹本孫一

    竹本委員 裏からのごまかし答弁でございますが、一応それにしても苦しい立場を御理解申し上げてドルに入りましょう。  時間がないので急ぐわけでありますが、アメリカ経済についても、これは御承知のように、今度国際収支が最近のベースでは二億三千五百万ドルくらい貿易だけでも黒字になったということが唯一の理由——唯一の理由か知らぬが、最大の理由でしょう。そういうようなことで、アメリカ景気と、またアメリカのドルの将来ということについては、われわれはこの際ほんとうは十分論議すべき問題だと思うのです。私は、予算委員会においてもこの問題は大いに論議すべき問題だと思っております。しかし、アメリカ景気について先ほど総裁も触れられましたけれども、御承知のように、貿易だって五十億ドル黒字をかせいでおったアメリカ、去年でも四十億ドルかせいだものがことしは大体十億ドルくらいでしょう。たいしたことはないです、問題にならぬでしょう、これじゃ。だから、貿易収支アメリカは昔のような大きな黒字を出すことはできない。さらにベトナムインフレといわれておるように、アメリカの卸売り物価も七%か何か、とにかく相当以上に上がっておるでしょう。こういう情勢から判断して、しかもアメリカの金がいま百五億ドルになったといって、何だか世の中がよくなったようにおっしゃったけれども、これは百四億ドルが百五億ドルになったということで、百二十億ドルあったのが百五億ドルに落ちたという前提が私どもとしてはむしろ大事なのです  そういう点から考えてみると、アメリカ経済がこれから大いに上昇するかどうかという問題、アメリカのドルの基礎である金の問題も大きな問題、これも時間がありませんので非常に簡潔に申して残念ですけれども、非常に不安がある。宮澤企画庁長官ですらも下期には二・五%になるかもしれぬということを言ったことがあるようですが、とにかく二・五%とかあるいはフォーチューンが三・〇%とか、あるいはいま佐々木総裁も下期はどうだというようなことを言われた。こういうふうにしてみると、アメリカ景気というものはこれからますます下向いていく、また、実際問題として下へ向いていかなければ困るのですよ。その点はどうなのですか。増税をやったのも、予算の削減を六十億ドルやったのも、公定歩合を上げておるのも、ベトナムインフレに水をかけて押えるためでしょう。これが下へいかなかったらアメリカ経済はまいっちゃうのですよ。あるいはアメリカのドル不安になっちゃうのです。ここに大きな矛盾があるということを、日本政府当局も日銀当局ももっと深く考えてもらいたいのです。アメリカのこの過熱を、増税だ、予算の削減だ、高金利だということで押えつけてしまわなければ、アメリカはドル危機になるのです。そうでしょう。ところが、押えつけることに成功すれば日本輸出伸びがとまるのですよ。去年に比べて三八%今度ふえたとかいっていま喜んでおるわけですけれども、その三八%の輸出増加はとまるわけです。日本からいえば困るけれども日本輸出がとまるくらいにアメリカの過熱を押えなければアメリカのドル危機が心配になってくる、私はそう思いますが、どうですか。
  49. 佐々木直

    佐々木参考人 その矛盾については、私ども十二分に認識しておりまして、これが今後どういろふうになっていくか、同じアメリカ景気の下がり方でもそのカーブ、その早さ、その程度、いろいろな点について見方がいろいろあると思うのであります。したがって、われわれとしては日本輸出の先行について非常に問題があるという前提でいろいろ検討いたしましたけれども、この矛盾にいつまでもかかずり合っておりましては金融政策に弾力性が得られないという判断のもとに、当面ここしばらくの間は国際収支は均衡以上の状態が続くということを考えて今度の措置に出たわけでございまして、その矛盾につきましては十分私どもも考えておりますし、これについてもちろん今後世界的に非常に大きな問題が残っておることも存じております。
  50. 竹本孫一

    竹本委員 まあ金融政策について弾力性を持たしたいという日銀のお気持ちは、その点だけは私もわかるのです。しかし、これは一カ月おくれたからといってその弾力性がなくなるものじゃないでしょう。私が言うのは、ドルやフランやポンドがほんとうに安定してきたかなという見定めがっくのは九月だと思うのです。その辺までは——一カ月急いで公定歩合を下げてみたからといって、急に弾力性が出たり出なかったりということじゃない。どうせこれは下げぬでもそれができると思うのです。最悪の場合以外は。しかし、政策態度としては、あなた方の総裁も、大蔵大臣経済企画庁長官が言っているように、慎重にということを国民にあれだけ要求しておきながら、なぜ政府はそれだけ慎重でないかと言うのです。もう一カ月待って慎重に世界の経済の動き等を考えてみてからでも決しておそくない。また、そのとき下げたからといって弾力性がなくなるわけじゃない。また、いま下げておかなければ下げるチャンスがなくなるというならば、あぶないときにはなおさら下げちゃいけないでしょう。首尾一貫しないでしょう。だから、私は、慎重の上にも慎重を期する日銀の立場からいえば、特にこの際、そんなにあわてるべきではなかったということを言っているわけです。  時間がないから急ぎますが、先ほどお話が出ました為替銀行のネットポジションの問題を、国際収支がどうとかIMFの方式がどうとかいうお話がありまして、村山さんからも半ば反論が出ましたが、やはりこの問題も、私は、日本の保有外貨を三十億ドルにするということできのうも大臣に質問いたしましたからきょうは触れませんが、しかし、三十億ドルの問題は別にしましても、とにかく日本の全体のポジションをもう少し真剣に考えなければいかぬと思うんですね。ところが、経済企画庁が出した経済白書というのには、こういうことが書いてあるのです。副総裁もお読みになったか聞きたい。「外貨準備とともにわが国の短期対外ポジションを形成する為替銀行の対外短期債権債務残高は本年三月末で十二億ドルの負債超過となっている。したがって今後は公的準備としての外貨準備だけでなく、これに為替銀行のネットポジションを加えた総体的なわが国の対外ポジションの推移に注目しなければならない。」と書いてある。副総裁これをお読みになりましたか、ちょっと伺いたい——お読みになりましたか。
  51. 佐々木直

    佐々木参考人 読みました。
  52. 竹本孫一

    竹本委員 副総裁はお読みになったと言う。これは経済企画庁にちょっと聞きたいのですけれども、せっかくこれだけりっぱな——いろいろ議論はありますけれども、一応りっぱなものを書いて出されておる、こうかんなものを出されておる。きのうの大蔵大臣はどう考えてみてもあれは読んでいませんね。読んでいないだけではなくて、話の筋を十分理解していない。一々読むのにはちょっと時間が許しませんでしょうけれども、筋をほんとうに理解しているかどうか、ほんとうにぼくは疑問を持った。だから、これは希望でありますけれども、せっかくこれだけの労作をつくられたならば、もう少し国民にもよく読ませるようにしてもらいたい。特に大臣とかその他責任ある者にはもう少し読ませるようなくふうをしてもらいたいと思うが、どうですか。
  53. 佐々木直

    佐々木参考人 これは経済企画庁からお返事を申し上げたほうがいいように思いますが、しかし、いまの外貨ポジションの問題は、重ねて申し上げますけれども、実はいまのIMF方式総合収支というものをああいう出し方をしておりますのは、外貨準備の増減だけ見ててはいけないのだ、そういう為替銀行のポジションの変化もあわせて見なければいけないという趣旨でああいう国際収支の計算方法をやっておるのでありまして、たとえばこの七月の総合収支はやはり一億七、八千万ドルのあるいは黒になるかもしれませんが、その中で外貨準備のふえたのはわずか一億ドル足らずで、それで残りは為替銀行の外貨ポジションの好転になっておるというふうに思えるわけでありまして、あのIMF方式というものにはそういう意味でのプラスはあるのだということでございます。
  54. 竹本孫一

    竹本委員 経済企画庁、何かありますか。
  55. 矢野智雄

    ○矢野説明員 経済白書はかなり分厚いものでありますが、発表いたしますときには、閣議にごく要約だけを御報告しております。もちろん、その作成の過程におきましては、各省とも十分折衝し意見を調整した上で出しておりますが、全体分厚いものでありますので、おそらくまだ全文はお読みになる間がおありにならないのじゃないかと思います。今後はもう少し簡潔なものにしていきたいというように思います。
  56. 竹本孫一

    竹本委員 時間が参りましたからこれで終わりますが、要するに、私は、国際経済の動きというものは少なくとももう一カ月ぐらいは慎重に見守るべきである。ポンドもドルもフランもそう楽観ばかり許されないような本質的な、体質的な矛盾を持っております。しかも、わが国が持っておる外貨準備が、今度は二十一億ドル台になったところで問題にはならないし、しかも、ネット・ポジションで考えてみればまだマイナスじゃないかということを言っているわけです。これは御理解をいただきたい。  なお、最後にもう一つだけ伺いたいのは、きのうのOECDの年次報告の中にもありましたが、私も大蔵大臣にも聞いたのであるけれども、そういう国際条件に対して、今度は国内的な条件から見ても公定歩合の一厘引き下げは早かったと私は思う。引き下げれば、日本設備投資は、日本の政府のあり方、国民のあり方からいえばみな走り出す。また、過熱へ向かって猪突猛進をしかねまじき体質を日本は持っておるのです。そういう意味で、たまたまOECDのきのう出された報告は、これからは需要管理政策を慎重に続けていかなければ、日本国際収支の問題は危機が——景気変動の幅を小さくするためには、総需要をもう少しコントロールするような需要管理政策を慎重に考えろということをいっておる。それを続けろといっておる。まだ続けなければならぬ最中にこれをやったから、ぼくは早いと言うのですけれども、ともかくおくれたけれども、これからも国内需要を急激にふやさないように、財政の面からもあるいは設備投資の動向からも慎重な配慮が要ると私は思うのです。  だから、OECDがいっている、需要管理政策という変なことばですけれども、それを副総裁はどう見ておられるかということと、あわせてそれに関連して、日銀の立場から政府の公債政策のあり方についてはそういう観点からも一体どういうお考えをお持ちになるかを伺って、終わりにいたしたいと思います。
  57. 佐々木直

    佐々木参考人 最初の需要管理政策でございますが、先ほど私ちょっと申し上げたかと思うのでありますが、やはりいまの状態では総需要というものをできるだけ安定した伸ばし方にしなければいけない。それには財政需要並びに個人消費需要というものについても調整手段を講じていかなければならぬというふうに申し上げましたが、いまのOECDの問題は、われわれの今後の課題として考えていくべき問題だと考えます。  それから、第二番目の国債政策の問題でございますが、四十年の経済不況から、四十一年度予算に非常に大きな国債の発行が始まっております。あの発行額というものは日本の財政の規模に比較いたしまして非常に大きかったと思う。このように経済が成長してまいりました現実におきましては、やはり国債の発行額はできる限り縮小して全体の資金バランスをあまりふえないような方向に持っていっていただきたいものと考えております。
  58. 田村元

    田村委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  佐々木参考人には、御多用中のところ長時間にわたり御出席いただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚くお礼申し上げます。  御退席いただいてけっこうです。     ─────────────
  59. 田村元

    田村委員長 引き続いて質疑を続行いたします。村山喜一君。
  60. 村山喜一

    村山(喜)委員 経済企画庁先ほど、十二の指標に基づいて黄色から青に移っていくんだ。そうすると、黄色と青とまぜたら、これは緑色の信号灯がついたようなかっこうになるわけですが、私は、この経済企画庁経済見通しについてこの際お伺いをしておきたいと思います。  それは経済成長率を、ことしの「経済見通し経済運営の基本的態度」の中で出されましたが、それによりますと、成長率は実質が七・六%、名目は一二・一%だ、こういう見方をしておいでになりました。ところが、最近の指標から見てまいりますと、やはり名目は一四%をこえるのではなかろうか。実質的に一〇%近く、もう実質成長が一〇%もあるのではなかろうかという見方のほうが強いと思いますが、これについてどういうふうにとらえておいでになるのか。  というのは、先ほどもちょっと触れましたけれども企業設備投資が七兆九千億円という算定をしておられるけれども、これは八兆三千億円程度になるのではなかろうかと世上いわれております。なお、個人消費の支出を見ましても、最近の耐久消費財の売れ行き等見ておりますと、まさに三C時代の訪れというようなことで、これまた相当な、二十六兆円をはるかに上回る個人消費支出というものが想定をされるのではなかろうか。こういうようなことを考えておるわけでありますが、それに対しまして、川出次官がおいでになりましたOECDのいわゆる対日年次報告を見てまいりますと、上期においては七%、下期においては二・五%程度に落ちつくのではなかろうかというようなことを報道をした新聞記事を見たのでありますが、そういうような見方をOECDのほうではしている。日本経済企画庁としてはそこら辺をどういうふうに説明をして、そういうような対日年次報告というものが生まれてきたのか、この点についても触れてもらいたいと思うのであります。  月例経済報告の中であなた方が出されたのでは、生産、出荷の増加基調というものは変わりがないんだ、今後設備投資に注目をしなければならないんだというようなことも触れられておいでになる。消費者物価のほうはこれまた、消費者米価等の問題もありますが、予定の四・八%を上回る勢いになっておる。こういうようになってまいりますと、経済のひずみというものがますます拡大再生産をしていくのではないかと思われるのでありますが、これに対応してどういうような政策をこれから立てていこうとしておいでになるのか。この点についてお答え願いたい。
  61. 赤澤璋一

    赤澤説明員 ただいまの御質問、二、三点ございますが、まずことしのGNPがどういうふうになるのかということでございますが、いま伸び率で名目一四%以上、あるいは実質も一〇%をこえるのではないか、こういうお説でございます。近く私どものほうで、この一−三月の昨年度の第四・四半期のGNPの速報が出てまいります。いままだ中途の段階でございますが、ことしの成長率を申し上げます前に、まず四十二年度でございますが、まだ最終的な計算が全部できておりませんので、私の聞いておる範囲の中間的なものでございますが、ことしの一月に私どもがいまお話しになりましたような成長率を見込みます際の四十二年度は、四十二兆六千八百億ということで考えておったわけであります。それが、最近の情勢でいまの国民所得統計を中間的に聞いておりますと、大体四十三兆を少し上回るくらいの成長率に四十二年度はなったのではないか、こう見られております。これをベースにいたしまして四十三年度を見てまいるわけでございます。  いまお話しのように、設備投資等につきましても昨年度七兆二千億、本年度が七兆九千億、こういうことでございましたが、七兆二千億と申します昨年度の民間企業設備は大体七兆四、五千億程度になったものと考えております。一−三月におきましては、あるいは八兆といったレベルにも達しておるのではないか、かように考えております。こういったところからスタートいたしますので、したがって、相当企業設備投資等につきましては、今回の措置等も含めて考えますと、おそらく、いまちょっとお話が出ておりましたが、八兆をこえて八兆あるいは二、三千億とか、そういった感じになってまいるのじゃないかと思っております。ただ、昨年度のベースがそういうことで上がっておりますので、成長率自体から申しますと、はたしていまお話しのありましたような一二%が一四%にまで上がるというところまでまいりますかどうか、この点はやや問題があろうかと思います。特に個人消費の点につきまして、昨年見越しておりましたよりも全体の個人消費は、昨年の数字からいいますと、二十二兆八千億というふうに見込んでおったものが、どうもこれを相当下回っておる感じでございます。そういうことから上積みをいたして考えますと、ことし二十六兆というふうに見込んでおりました個人消費あたりも、若干これより下目になりはしないかということも考えられます。現在まだそういったことにつきまして検討いたしておりますので、確実にどのくらいということは申し上げられませんが、一二%よりは、あるいは名目にいたしましても、若干上回るかと思いますが、いまお示しの数字までいくかどうか、これはもう少し検討してみたいと考えておるところであります。  それからOECDのお話がありましたが、OECDの年次審査におきまして、一部の報道で七とかあるいは下期は二・五とかいうようなことがございました。これは年間でありまして、OECDの統計は全部暦年でとっております。したがいまして、ことしの十二月、七月以降の下期というものをOECDは相当低目に見ておるということでございます。これはOECDの事務局の示しました数字が一部出たものと思いますが、私どもとしてはそれほど急激な下期におけるダウンというものは考えておりません。その点についてはOECDの年次審査の際にも、私どもとしては年間としてはもう少しなだらかな下期のダウンという形ではあるまいか、こういうことで議論をしてまいったのでございます。
  62. 矢野智雄

    ○矢野説明員 先ほど月例経済報告の内容についてお話がございましたが、確かにおっしゃいますように、生産、出荷の動向、現在わかっておりますのは六月まででございますが、六月はやや鈍ってはおりますけれども、一カ月だけの統計で何とも申せませんので、大体四−六月期までの状況ではかなりの根強い増加基調がまだ続いております。ただ、この生産増加をささえておりますおもな要因としましては、基本的な消費事情もございますが、そのほかに輸出の顕著な増勢と並びまして、設備投資が四−六月までのところはかなりまだ強い増加が持続しているということがこの要因の大きなものだと思います。ただ、私どもで調べております法人企業の設備計画調査、あるいは機械受注、設備投資先行指標であります機械受注につきましての七−九月期の調査が最近出てまいったわけでありますが、月例経済報告に書いてございますように、七−九以降ややそうした設備投資関係の諸指標が落ちつく気配も見られてまいったわけであります。もっともこれがこのまま落ちつきますかどうか、だま予断は許しませんが、そうした若干の徴候は出てまいっております。
  63. 村山喜一

    村山(喜)委員 私は、最近の企業金融状態をいろいろ調査をしてみますと、たとえば鉄鋼関係の大手六社の場合でも生保から七百億円の借り入れをしている。あるいは電力関係の九社関係を考えてみますと、これまたやはり生保から一千億の借り入れをしている。石油化学のような装置産業についても、三十万トンのエチレンプラントを三菱がつくるから、今度は大協がつくるんだというようなことで、たいへんな企業意欲というのですか、そういうようなのでわんさわんさ通産省のほうに申請が来ておる。ところがそれの、装置産業ですから相当資金を必要とするわけだけれども、この手当てのめどがまだはっきりついてこない。自動車の場合には、資本の自由化をめぐりまして再編成を進めなければならないというようなことで、そういうようなための資金というものが相当需要として出てきている。こういうような問題から考えてまいりますると、今後における企業設備投資意欲というものは非常に高いと思わなければならない。しかしその反面、この工事資金の支払いの繰り延べという問題ももう出ているようでありますし、これは企業間信用の膨張という姿の中で最近警戒をしなければならない問題が出てきているのじゃないか。  そうなってくると、いま公定歩合を一厘引き下げた。その調整期間中においても計画どおりに進めておったのだから、そう大きな需要というものはない、まさにそういうような説明でありますが、設備投資計画は従来のとおり遂行していこうという意欲は全部あるわけで、これを変更をしてダウンしようという考え方は全然ないわけですね。そうなってまいりますると、いまのような傾向が続いていった場合には、勢いそこには景気の過熱という問題が国内においても出てくるのではなかろうか。さらに最近のようにしり抜け金融調節で、外資を川鉄が一億ドルも導入をして建設資金に充当をしたように、そういうような外貨資金の手当てというものが各企業によってさらに——それだけ国際的に信用力が出てきたといえばそれまでですが、そういうような面からの資金供与というものも出てくる。こういうように考えてまいりますると、経済見通しの問題についてはよほど注意しなければならない段階にあるのではないかと私は思うのですが、この公定歩合引き下げあとにおける国内経済調整を、景気調整手段というものを経済企画庁はどういうふうに今後進めていこうと考えているのか。また、大蔵省はこれに対してどういうような考え方を持っておるのか、明らかにしていただきたいと思います。
  64. 赤澤璋一

    赤澤説明員 ただいまの国内需要の問題あるいは景気の問題と申しますか、特に民間設備投資を中心にした御質問でございますが、私ども二月と五月に御承知のように法人企業の投資予測調査というのをいたしております。二月には一千万円以上の全法人をやっております。五月には一億円以上のいわゆる大企業だけの調査でございますが、いずれをとってみましても、計画期間一期ずっとってみますると、各企業からのアンケート——これは先ほど来、日銀総裁からも御説明がありましたように、それぞれ企業計画投資をしております。そういったアンケート、投資予測調査の結果からいたしますと、いずれの企業も下期におきましては対前期比の伸びが非常に低く出ております。そういったような実情等もございまするし、かつまた、過去の景気引き締め、あるいはその一部の解除、こういったときの、たとえば三十九年、四十年のパターンをとってみますると、解除いたしまして二期目くらいからこれが反騰いたしまして、大体二期ないし三期くらいで設備投資というものが反騰しているというような状態ということでございます。特に、先ほどお話がございましたように、この前とは違って金融情勢もそう詰まってどうにもならぬということでもございませんので、おそらく過去のパターンよりももうちょっとなだらかな反騰といいますか、そういうことではあるまいか、そういったものが予測調査の結果にもあらわれておるのではないか、こういうように私ども考えております。  そういった意味合いから、過去におきますこれのカバレージあるいはこれの達成率、こういったものから逆算をしてマクロ的にとってみますすると、先ほどもちょっと申し上げましたが、年間としては七兆九千億という見通しは、相当程度上回ると思いますけれども、これはもう非常に高い形で今後どんどん伸びていくということではあるまい、こういうように考えておるわけでございます。  そこで、こういったような全体の情勢でございますが、ことしの経済運営の基本態度にもございましたように、ことしはいわゆる調整の年ということで、非常に高かった昨年の経済成長からこれを安定成長に乗せるために、いわばつなぎの年である。また、内外景気というものをうまく調整して、そして来年以降、安定成長に乗せようという年でございまするので、私どもとしては考え得るいろんな手段をこれに駆使してまいる必要があろうかと思います。やはり問題は、財政の面と金融の面と両面でございますし、また、実際の産業面におきましては、通産省を中心にいたしました個別の行政指導ということがこれにプラスして行なわれる必要があろうかと考えておるわけでございます。
  65. 倉成正

    ○倉成政府委員 金融引き締め解除後の大蔵省としての考え方という御質問のようでありますが、先ほどから竹本委員お話のように、国際経済はまだいろいろ不安定な要素がいろいろ残っておる。しかし、国際収支の均衡ということを目的とした引き締め政策でありましたから、一応一つのけじめをつけて引き締め解除公定歩合一厘引き下げということに踏み切ったわけでございます。さらに今後は、国際経済を非常に注目しつつ、弾力的な財政金融政策をやっていきたいというのが、われわれの基本的な考え方でございます。  そこで、村山委員御指摘の、設備投資が非常に強くて景気が過熱しやしないか、これにどう対処していくかというお話でございますが、これはもちろんそういう危険性が非常にあるわけであります。したがって、今回の金融引き締めの際に、引き締め対象となる部門が非常に範囲が限られておるのでしり抜けになっておるという面がございますから、やはりそれらの点についての対策をどう考えていくかということが一つの問題点であろうかと思われます。いま調整局長が申しましたように、企業が非常に力強い、資金繰りが豊かになっておりますから、やはり産業政策として設備投資についてある程度節度を保っていく、こういうことが企業のビヘービアとして要求されてまいります。また、外資の問題のお話がございますが、外資の取り入れについても、国際収支とにらみ合わせながら、やはりある程度の節度を保っていくことが必要であろうかと思います。  それから財政面では、やはりオーソドックスに、できるだけ財政支出については節度を保っていく、でき得れば財政の支出の消滅というようなこともあわせて考えていくことが、これから先の姿勢であろうかと思います。国際収支の動向ということを慎重に見ながら、国内の財政金融政策を機動的に弾力的に、時期を失しないようにやっていくということが、これからのわれわれの考えるべき態度ではなかろうかと思っておる次第でございます。  詳細また国際収支の問題等について、もし補足説明が必要であれば、国際金融局長が参っておりますので、御説明を申し上げたいと思います。
  66. 村山喜一

    村山(喜)委員 せっかく国際金融局長おいでいただきましたけれども、時間がありませんのでなんですが、いま政務次官の答弁を聞いておりますと、たとえば電力九社が社債の発行を削減をされた、そういうようなことから生命保険から一千億の借り入れをやっている、あるいは大手鉄鋼メーカー六社が政府から七百億円の借り入れをやっておる。これはいずれも日銀景気引き締め対象になっていない。だから、こういうような資金についても調整の必要の上から考えて対処していくのだという新しい調整手段をそこら辺に求めていくのだという方向だ、こういうふうに考えてよろしいのですか。
  67. 倉成正

    ○倉成政府委員 そこまでいってしまうのにはちょっと問題があるのではなかろうか。ただ、現在の日銀の窓口対象になっておる規制対象が三割五分から四割近いという状況で、あとの六割が農協資金を含めて規制外になっておる。したがって、なかなか公定歩合の引き上げ、引き下げ、あるいは窓口規制ということでは、金融政策が思うようにいかない。したがって、そのいかない部分をどうコントロールしていくかということをいま研究しているわけでありますので、直接これを規制するということを考えているというふうに申し上げるのは、ちょっと言い過ぎではなかろうかと思っております。
  68. 村山喜一

    村山(喜)委員 そういたしますと、これは今後の検討課題として、調整手段として考えていく、こういうことですね。  それから、インパクトローン受け入れについても、そういうふうに考えてよろしいのでしょうか。
  69. 倉成正

    ○倉成政府委員 前段の点は、そのとおりでございます。  インパクトローン受け入れについては、現在もある程度そういう考え方を持っておりますけれども、今後はさらに国際収支の面とにらみ合わせながら、やはり優良な外資を入れていくということについて慎重に考えてまいりたいと思っております。
  70. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで、これは非常に技術的な問題になってくると思いますが、いまその月ごとのいわゆる総合収支、これは国際収支の動向を判断する尺度として使っている。それから外貨準備高というものは、これは公的部門におけるところの対外資産を表示する尺度となっている。それから対外短期バランスの問題は、これは資金繰り能力を示す尺度なんだ。こういうことなんですが、先ほどIMF方式の中で、総合収支の中に出てくるのは三カ月に一回なんだということですね。対外短期バランス尺度の表は、そうなってきますと、これをやはり全体的にながめる場合には、三カ月に一回ということではなしに、月間の総合収支の中に出てくるような形に改めて、全体的な立場からこの国際収支の問題をながめるような措置をとるという考え方はできませんか。そこまでももう今日やらなければならないのではないかと思いますが、どうですか。
  71. 村井七郎

    ○村井説明員 いまの御指摘の対外バランスの点でございますが、先ほど来、日銀総裁と各委員お話を承っておりますと、IMF方式総合収支というものを出しております。そのときに総合収支というのは外貨準備プラス銀行ポジション、大体そういうことでありますので、外貨準備だけではなくて、為銀ポジションもあわせて見るということになりますと、総合収支というものをもう少し注意して見るということである程度の目的は達せられるんじゃないかというお話があったわけでございますが、いまのお話はそれと非常に関連があることはもちろんでございますが、三カ月に一ぺんというお話は、あれは残高といいますか、為銀ポジションの残高を四半期ごとにまとめまして、二、三カ月おくれると思いますが、発表しております。そのことを言っておりますので、残高と毎月毎月の流れといいますか、それと多少混同され、あるいはそれを合わせまして、国民の方々によく実態をわかっていただくという必要があるという観点から、私たち毎月外貨準備を従来発表しておりますが、それだけではやや親切ではない、不親切かもしれないという御指摘の点は、私たちよく検討いたしまして、なるべくその月その月の国際収支の実態、流れというものをわかっていただくにはどうしたらいいかということをよく考えてみたいというふうに思っております。
  72. 村山喜一

    村山(喜)委員 何か聞きますと、アメリカあるいはイギリス以外には対外的に発表していないんだと聞いております。これは国際的な信用の関係もありましょうが、もう少しオープンな形でやってさしつかえないと私は思います。いませっかく大蔵省検討中だということでございますので、そういうような公的なものから為替銀行の民間のそういう対外ポジションの問題も同時に全体的に把握できるような形で、国民がこの問題を重視するという方向政策方向を示すような意味において私は必要だと思いますので、前向きでそういうようなことが実現されるような方向検討願いたい。この点は、政務次官からも大蔵大臣のほうに、ぜひそういうような方向検討していただきたいということを伝えてくださるよう要望しておきます。  終わります。      ────◇─────
  73. 田村元

    田村委員長 閉会中審査申し出の件についておはかりいたします。  国の会計に関する件  税制に関する件  関税に関する件  金融に関する件  証券取引に関する件  外国為替に関する件  国有財産に関する件  専売事業に関する件  印刷事業に関する件  造幣事業に関する件の各件につきまして、議長に対し閉会中審査の申し出をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
  74. 田村元

    田村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、申し出の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じます。  引き続きおはりいたします。  閉会中審査案件が付託になりました場合、本会期中設置いたしておりました三小委員会につきましては、閉会中もなお引き続き存置し、小委員及び小委員長は従前どおりとし、その辞任及び補欠選任等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  75. 田村元

    田村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、閉会中審査におきまして、委員会及び小委員会において参考人出席を求め、意見を聴取する必要が生じました場合は、参考人出席を求めることとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  76. 田村元

    田村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  委員派遣承認申請に関する件についておはかりいたします。  閉会中審査案件が付託になり、委員派遣を行なう必要が生じました場合、議長に対し委員派遣承認申請を行なうこととし、その手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  77. 田村元

    田村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  午後零時五十五分再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時二十五分休憩      ────◇─────    午後一時十三分開議
  78. 田村元

    田村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国の会計税制及び国有財産に関する件について調査を進めます。  なお、農林大臣西村直己君の回答がいまだありませんので、委員長より、なおもきびしくその出席を要求いたしております。  質疑の通告がありますので、これを許します。渡辺美智雄君。
  79. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 私は、与党でございますが、今回はひとつ米価の問題及び財政の問題等に関連をいたしまして、政府の所見をただしたいと思います。  今回の米価の決定が例年になく非常な混乱をしておるこの原因は、一体何にあると思いますか。私は、三大臣にお聞きしたいところでありますが、きょうは農林大臣、経企庁長官が来られないというので、まず大蔵大臣にお尋ねをしたいと思います。  私の考えでは、総合予算だから米価の決定がむずかしいとか、あるいは米が余ったので非常に米価の決定がむずかしいとか、あるいは大豊作だからむずかしくなったとか、そんなことではないと考えております。今回は、御承知のとおり米価審議会の委員決定するにあたりまして、消費者代表、生産者代表並びに中立の代表というものが参加をしていままで米価審議会がこしらえられておったにかかわらず、突如として国会議員を抜き、そしてまた生産者、消費者代表を除外した。しかもいろいろな経済情勢から、米価は過去五年間のように九%から一〇%という引き上げというのがなかなかむずかしい情勢にある。こういうようなときにあたって、それぞれの代表者の意見を率直に聞いて、そうして、かりにその結論が得られないにせよ、十分自分たちの主張は代表者によって述べられたというような満足感が与えられるならば、これは農民諸君にいたしましても、そう殺気立つことはないと思うのでありますが、最初から口をふさいでかかった。  しかも、それのみならず、自民党は参議院選挙を前にいたしまして、米審から農民代表は除外はいたしましたが、これは、党内に米価調査会というものをこしらえ、佐藤総理の右腕といわれる田中大蔵大臣であり幹事長であり政調会長であり郵政大臣である、党内だれもが実力者と思われる方を調査会長に据えて、しかもそれぞれのりっぱな会員を任命をし、そうしてこの米価調査会において十分に農民代表の意見を聞いてあげましょう、消費者の意見も聞きましょう、決して中立米審の言うなりに政府はなりません、こういうようなことを言っておったのであります。それを、生産者団体もそう期待をしたし、いまとなっては中立委員をたよるといってもしかたがないから、せめてその田中米価調査会長をたよって、そこで与党と政府の間で、しっかりした、自分たちの要求まではいかないまでにも、筋の通った米価の引き上げがされるものと考えておったわけであります。  もう一つ、佐藤内閣総理大臣は、選挙のさなかにおいて、六月二十三日、秋田市において、この秋に米が二百三十万トンも余るとしても、食管制度の改廃を論じるのはまだ時期が早いというような御発言をなさった。また六月二十七日、宇都宮市における記者会見において、食管制度は農政の基本に触れ、かつ、国民経済に重大な影響を持っているので、そう簡単に改廃を議論するわけにはいかない、こういうようなことを言われたのであります。これは自民党の米価調査会に対する期待をさらに非常に強いものとしたのであります。ところが、選挙が終わるやいなや、大蔵省経済企画庁、農林省、それぞれの立場において、あるいは自由米制度をつくるがごとく、あるいは買い入れ制限をやるがごとく、あるいは生産者米価の据え置きをやるがごとく、経済企画庁に至っては値下げをしたほうがなおいいような論説を発表し、諸説ふんぷんとして、一体だれがほんとうのことを言っているのかわからない。農民に非常な不安動揺を与えたことはまぎれもない事実であります。  昔からよく、遠くて近きは男女の仲、近くて遠きは親戚の仲ということばがあります。ところが、近くて遠いは政府、与党の仲であるということを今回しみじみ痛感をしたのでありますが、何と申しましてもかくのごとく与党において公約をしたことが、率直に政府の各機関においてこれを実行する誠意と努力が払われないで、いたずらに対立するような説を打ち上げたことが、米価決定をさらに混乱させた大きな原因であると私は思いますが、大蔵大臣はいかが思いますか、所見を伺いたいと存じます。
  80. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いまの御質問は、主管大臣の申されたことと総理の言ったことについてのことでございましたが、これは私から答弁する限りではないと思いますけれども、この問題についてのいきさつを申し上げます。  問題は、昨年からでございまして、昨年の生産者米価決定のときにもいろいろ議論がございましたが、これは本年度はこのままにして、来年度から米価審議会において、そのまぎわになって米価の問題だけを審議してもらうのじゃなくて、もう少し前広に食管制度のあり方とかあるいは米価の算定のしかたというようなものについてじっくり研究してもらって、来年はいろいろな矛盾の解決をしようという相談になっておりまして、当時は倉石農林大臣でございましたが、その倉石さんが途中でかわられましたために、そのときの考え方が少しぐずついて、とうとう審議会も、米価についてのいろいろな基本的な問題をもう少し長い間時間をかけて論議していただくというひまがなかったということでございまして、その審議会の問題を中心にしていろいろ問題を起こりましたが、しかし、昨年やはり一番問題になったのは、御承知のとおり昭和三十五年から米の消費というものがだんだん減ってくるという傾向でありながら、米の生産というものはだんだんにふえていく、こういう傾向が出てきましたので、やはり米の供給は過多になるという傾向がはっきり最近出ておりました。(発言する者あり)、しかし食糧の問題でございますので、いつ不作というようなものが出ないとも限らないし、まあそれは需給関係を——これは増産政策というものへ少し何かの考えを加えなければならぬというようなことを考えながらも、去年はまだこの断定ができなかったということでございます。しかし、この傾向が続くならば来年度においては従来の考え方も変えなければいかぬということは去年からも問題でございました。  そこで、今年になってみますと、御承知のとおり、非常に供給が多くて需要がそれに伴わない、古米が多く余っておるという状態になっておりますので、したがって、生産者価格をきめるというときには、ここでやはり需給状況の大きい変化というようなものも考慮に入れて、いままでと同じように増産を奨励するというようなためにとられた方式をそのまま何ら考えないでいっていいのか、やはりこの計算方法に弾力的な考え方をしなければならぬじゃないかというのは、去年からの問題でございました。今年ははっきり傾向が出てきました以上は、こういうことを考えていいというのが大体主管官庁の考え方でございまして、私どもは財政当局ですから、こういう農林行政の問題については受け身の官庁でございますが、いま農林大臣の方針に全面的に私どもも賛成している、こういう状態でございます。
  81. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 私はまだそこまで質問はしていないのです。私が質問をいたしましたのは、例年よりも米価決定にあたって混乱をておる。決定する時期が、答申が出てから普通なら二日ぐらいで毎年きまるのです。答申が出なくても、無答申であっても二、三日やればきまるのです。ところがことしは、それが十日以上延びておる、いまだにきまらない。この原因は、いま言ったような諸条件などは、こんなことは去年のうちからわかっている。そんなことじゃない、政府の内部に意見の食い違いがあった。総理大臣の意見と大蔵大臣、農林大臣、経済企画庁長官の意見、閣内が不統一で、そうしてきまらない、こういうようなことではないのかということをぼくは言っておるのです。説明は説明として求めますから、結論は簡潔にお願いします。
  82. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 政府部内に不統一は全然ございません。三相の意見が完全に一致しております。不統一はございません。
  83. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 三相の意見は一致をしているが、総理大臣との意見は一致をしているのですか。
  84. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 総理大臣もおそらく意見は一致だと思います。総理の発言がいろいろ言われております。たとえば米価は党できめると言ったということが問題になっておりますが、いまの制度の上で、米価というものは政府がきめるべきものでございますので、党できめると言ったのは、以後政府がきめるという、このたてまえをくずすということじゃなくて、党の意向を十分に聞いてこれをきめるということを党がきめると言ったのだと私どもは解釈しておりまして、また現に、総理もそのつもりで言ったものであると言っておりますし、そういう点において別に食い違いも何もない、政府部内に意見の対立はございません。
  85. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 総理大臣との意見の食い違いがないと言うけれども、具体的に、たとえば食管の問題等については、これの改善策、改廃等について経済企画庁あたりは非常に極端な説を発表しておる。大蔵省もそれに類したようなことを発表しておる。しかし一方、総理大臣は、食管制度の改廃を論じるのはまだ早いのだ、そう簡単に改廃を議論するわけにはいきません、こういうことを言っておる。私は総理の発言を支持します。作付が終わっていま収穫は寸前にあって、しかも食管制度をいじって、買い入れ制限をするとか、あるいはまたシグマを非常にいじるとか、いろいろな点で改善と称しながら実質的に食管制度の根幹に触れるようなことをやろうという意図を発表しておる。こういうことでは、私はやはり総理の意見に従っておるということは聞けない。  のみならず、四日ほど前の新聞を見ると、別に水田先生の名は出ておりませんが、西村大臣が言ったのか宮澤さんが言ったのか知らぬが、いずれにしても、われわれは五・五%以上米価が上がれば辞職すると言って、総理をおどかしているのか党をおどかしているのか知らぬけれども……(「ベトコンをおどかしているのだろう」と呼ぶ者あり)ベトコンは驚かない、そんなことでは驚くはずがありません。そういうようなことも経済新聞に載ておる、またうわさとしても出ておる。こういうことは明らかに意思が完全に一致をしておるというようには見受けられないと私は思う。もし一致をしていると言うならば、われわれは政党政治として、責任政党として、党の正式機関において米価を審議し決定をし、そして、それは農民団体の要求米価よりも低い米価であるけれども、謙虚にいろんな高度の政治的立場から、その米価をいかにして具現するようにするかというのが政党人たる所管大臣の責務でないかと私は思う。にもかかわらず、ふところに辞表を持って、それをちらつかせておどかす。おどかすのかほんとうにやめる気か私は知りませんが、昔から死ぬ死ぬといって死んだ人はいない。これはそういうものなのであります。女の人はいやだいやだということは好きだということだそうでありますし、中共では解放ということは占領という日本語に通ずるそうであります。ほんとうにおやめになる気なのかどうか知りませんが、私は、西村さんや特に経済企画庁長官、この方がおいでになったならば、あの方は一番意見が強いそうですから、いつおやめになるのか、おやめの時期を明らかにしてもらいたいと思って、私は実は楽しみに出てきた。にもかかわらず、当委員会に御出席にならぬということは、はなはだ遺憾にたえない。これはほんとうに遺憾にたえない。ですから、官房長がきょう来ておるそうですが、宮澤長官はいつおやめになるのか。あなたは意を体して来たそうであるから、率直なところをひとつ御披露をいただきたい。
  86. 岩尾一

    ○岩尾説明員 お答えいたします。  先ほど先生の御質問で、企画庁は食管制度の改廃を論じておるというふうに御発言になりましたけれども、これはおそらく党の米調で私らが申し上げました議論をおっしゃったのではないかと思いますが、あの中には食管制度を変えろということは一言も言っておりません。むしろ食管制度を変えていろいろ間接統制に移っていくことよりも、現在のような高米価によって量的な総花的な米作偏重農政というものが続けられていくことは、全体の農政に対してプラスにはならない、そういう意味で価格に対してしっかりした態度をとるべきではないか、食管制度は維持していくということで書いておりますので、念のために申し上げます。  それから、長官でございますが、私は、実はそれほど長官の意は体しておりませんので、いつおやめになるかどうかということは聞いておりませんが、いま申しましたように、これはたとえば企画庁で出しております国民生活白書でございますとか、あるいは経済白書等をごらんいただければよくおわかりになると思いますが、現在の日本経済の中で大きなひずみがいろんな点に出てきておるわけでございます。非常に高度成長をしておりますけれども、従来の制度、慣行のひずみというものはようやく出てきておる。その中でやはり顕著にあるのは食管制度の中の高米価支持政策ではないだろうかということを長官は強く考えておられますので、ここでこういった高米価政策を継続することに対して、何かもう少し手はないだろうかということを真剣にお考えになっておるという段階でございます。
  87. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 どうも役人というやつはすぐにそういう言いのがれをするのでけしからぬのですよ。経済企画庁が七月の十八日に党に出した「米価決定についての考え方」というようなことの中には、実質的に食管制度はなくしてもいいというようなことと同じことをいっているのです、これは長くなるから私は申し上げませんけれども。たとえばシグマの問題にしても、これは限界反収方式というのはなくしてしまって平均反収方式にしたほうがいいというようなことも書いてありますし、生産者米価は据え置きにして値上げをするなということもいっておるし、それからまた、大蔵省と意見が一つも違わないと言うが、逆ざや解消については、大蔵省は消費者米価を値上げして逆ざやを解消しろといっておるし、経済企画庁は、値上げをしないで逆ざや解消はしないで財政負担でこれを持っていけ、そして五年とか十年とかの長い時間をかけて逆ざや解消しろといっておったのだから、全然意見が違わなかったというようなことはないじゃないですか、違っているじゃないですか。
  88. 岩尾一

    ○岩尾説明員 最初のお話のシグマでございますが、シグマはたしか私の記憶では三十五年から採用した米価の決定やり方だと思います。これは平均反収に対しまして、実際上一番生産性の低い農家までをカバーするような、そういう価格の決定方式でございまして、現在のやり方でやりますと、米の販売量の大体九八%近いものがカバレージされるような価格の決定のしかたでございます。これはこういったものを、もう少しほんとうの意味で増産意欲を高めるためにはむしろ変えたほうがいいのじゃないかということで、決して食管制度自体に触れる問題であるというふうには私ら考えておりません。  それから、米価の据え置きでございますが、これは先生もよく御存じのように、去年九・二%米価が上がりました。しかしながら、収穫量は、去年考えましたよりも一三・三%くらいだったと思いますが、四十二年産はふえておるわけでございます。したがいまして、価格と収穫と両方の面で生産者の所得というものは補償をされておるという感じがあるわけでございます。そういう意味で申しますと、米価というものは単に石当たりの、米価をしっかりきめることだけで生産費補償方式というものが守られるかどうか。これにはやはり収穫というもの、実際の農民の方の所得になるものは何であるかということを検討する必要があるのじゃないか。そういう意味で申しますと、現行の米価を据え置いても決して現在の食管法のたてまえには反しないというふうに私ら考えております。  それから、逆ざやでございますが、これは私らが申しましたように、両米価を据え置いたらどうかというふうにあの当時は主張しておったわけでございます。米価審議会が開かれまして政府案が出されるときにおきまして、大蔵省、農林省と私らは全く意見が一致しておるわけでございますから、あの段階の議論とお聞きいただきたいと思いますが、その際には現在の食管法のたてまえ、いわゆる家計米価と生産費所得補償方式とこの二本立ての二重価格というものを保持しながら、しかし価格をしっかりきめていけば、いまの食管法は守れるのじゃないかというふうに私らは考えておりまして、したがって、そこに逆ざやの要素を入れる必要はないのじゃないかというふうに考えて申し上げたわけでございますけれども、現状では米価審議会に出しました三%上げということで三省庁は全く意見が一致しておるわけでございます。
  89. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 大蔵大臣、ほんとうは農林大臣に聞くところなんですが、先ほど言ったようにいろいろ意見はあったが、農林省が二・九九で諮問をするという段階では三省の意見は完全に一致をした、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  90. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 そのとおりでございます。
  91. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 しからば、諮問の内容その他についても意見が完全に一致をしたんだから、農林大臣がいなくてもその内容についてはよくおわかりだと思いますから、これは後に御質問申し上げることにいたしたいと思います。  そこで、その前に私は申し上げたいのだが、大蔵大臣先ほどいろいろ米の需給関係の問題、在庫の問題あるいは消費減退の問題等にお触れになりました。しかし、この問題は、突如として参議院選挙が終わってからわかったことではありません。こういうようなことについてある程度見通しというものがあるはずでございます。だからこそ、われわれは去年の十二月の予算折衝の際においても、農業構造改善をはじめ畜産問題等についても、要するに大幅な転換をすべきだという意味で予算の要求を相当出した。ところが、ささやかな農林省の予算要求でさえも、これは査定をしたじゃありませんか。こういうように米作中心にならないようにするために構造改善をやり、果樹や酪農を奨励し、そういうことをやろうというために予算要求をした。なぜお切りになったのですか。どれほど大幅に、それじゃお認めになったのですか。それをひとつ御説明いただきたいと思います。
  92. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 農林省の要求する予算は、これは各省要求の予算との均衡をとって優先度をいろいろ考えてきめたことでございまして、各省要求は全部みんな認めたわけでございませんで、均衡をとってこの査定をやったということでございますから、要求された経費は全部通ったというものではございませんで、切られたという結果にはなったと思いますが、その優先性は十分に考えてきめたつもりでございます。
  93. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 大臣、そうおっしゃいますが、これは微々たるものなんですよ。ほんとうにこれはものの一〇%伸びていないのです。ほんとうに二倍にも三倍にもしたというものじゃない。これは去年の三倍にしましたとか四倍にしましたとかいうなら、大臣のおっしゃることも筋が通る。しかし、平均の伸び率よりもわずかに上にいったとかその程度ではそういう申しわけにはなりませんよ。これはやはり農林省、大蔵省経済企画庁、むしろこれらの人がぐるになってサボタージュをやったという結果にほかならぬ。私はそう断言してはばかりません。むしろそういうことなんです。もし、こういうふうに食管の問題が大きな問題になるとするならば、もっとまず前向きの姿勢で、その他に逃げ場をこしらえてあってどんどん逃げられるようにしておいて、そうして食管にもだんだんに改善策を講じていくというのならいいのですけれども、そうじゃないのですから、その点をひとつよく御銘記をいただきたい、こう思います。  それから岩尾君だけれども、あなたはどうも食管制度の根幹には触れないとかどうとか言っておりながら、平均反収農家にシグマを直せば現在よりも下がってしまうのですよ。一ぺんに極端にそういうようなことをやることは、法律上はいずれにせよ、これは食管制度に手を入れたというようにしか認識されない。それは役人の考え方なんです。もっと政治的にものごとを考えなければ農民やなんかは納得するはずはないし、それは不安、動揺を与えるだけです。ですから、少なくともあなた方主計官から官房長になって、ともかく政府の要職につき、政府委員として御出席になるようになれば、多少はそういうこともお考えになって発言されないと、その及ぼす影響は非常に大きいということを御認識いただきたい。私はかように思います。  そこで、その次は総合予算ということについて私はお尋ねをしたいと思うのですが、辞引きを引いてみても、総予算というのはあるが、総合予算主義というのはどこにもないんだね。アメリカかドイツのほうにはあるのか知りませんが、一体どこに総合予算というものがあるのか。明確に何という辞典にそういうものは載っかっているのか。何という学者の学説にあるのか。大臣、水田学説じゃだめですよ。それはほかの何の説明にあるのか、御説明いただきたいと存じます。
  94. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 総合予算というのは私どものっけた名前かもしれませんが、特につける必要もないことであって、これが予算編成方針としたらあたりまえのことで、あたりまえの編成方針というふうに思えばいいと思います。なぜあたりまえであるかと申しますと、いままでがあたりまえじゃなかった。(「なぜ」と呼ぶ者あり)やはり自然増が年度の途中において非常に見られたし、経済の成長期でございましたので、したがって、そういう自然増を当てにして大きい補正が年度の途中でできた。大きい補正要因を残して当初予算を組んだというのがいままでの慣行でございます。これは非常に問題でございまして、全体の経費の均衡をとるのならいいのですが、一、二の大きい補正要因だけを残して、そうしておけば、それを処理できる自然増収が得られたということから、こういうのが一つの慣行になったのでございますが、御承知のように、四十年代になりますと三十年代のような経済成長は望めない。したがって、年度の途中で予算を補正できるような自然増というものはもう望めないということがはっきりしてきましたので、ここでいままでの慣行をやめて、最初に収入を全部推定して、もう当初の予算において必要経費を配分しておく。そうして年度の途中で自然増がなくても予算の補正をしなくても済むという予算を組むべきであるという考えが、この総合予算主義というものでありまして、総合予算主義というものは特別のものではございません。これこそが当然編成方針としてあるべきもので、いままでが変則であった。これを本則に直したいというのが今年度からのわれわれの考え方、こういうふうに御承知願いたいと思います。
  95. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 そうすると、簡単にわかりやすくいえば、総合予算とは追加予算をしない、補正予算を組まない均衡予算である、こういうことですか。
  96. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 特別大きい補正原因が出た、たとえば大きい災害が起こったとかなんとかいうようなことが起こらない限りにおいては、補正予算をしなくて済ませるという予算でございます。
  97. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 ここに大蔵省の発行している財政金融統計月報というのがあります。そこに大蔵省の村上孝太郎、当時の主計局長、いまや時めく事務次官、この事務次官の村上学説によると、こういうことが書いてある。まあ、大体いま大臣が言ったようなことなんだが……。  この総合予算というものを守るために四十三年度においては従来の慣行を排し、公務員の給与改定等に備えて予備費の充実をはかるとともに、食管特別会計への繰り入れについては、年度の中途に米価の改定があっても、それによって補正財源を必要としない方式を確立することとした。これまで年中行事のようになってきた恒例的予算補正の二大要因あとに残さないこととして、財政体質の健全化に向かって前進をはかるものだ。  こういうような、たいへん勇ましいことが書いてあるわけでありますが、総合予算をある人がいみじくもかくのごとく喝破をした。これは相当有名な人で、名前をいえば日本じゅう知らない人はない政党人でありますが、この人が大体こういう意味のことを言った。  総合予算というのは、役人が自分たちの月給はベースアップまで先取りをしてしまう。それ以後は追加をしないんだ。税の自然増収は、これは出ただけため込んでしまって、食管、国鉄、地方財政にはこれ以上びた一文も金を出さない。言うならば、食管、国鉄、地方財政いびり出しの予算をもって総合予算と称する。  こう言った人があるが、大体そういうことになりますね、いまの説明を聞くと。大臣どうですか、その所見は。
  98. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 もし当初予算でこの必要経費を見込んでおかなかったら、これはたいへんなことで、自然増がなかったという場合には、たとえば公務員給与の問題にしても、自然増がなかったらどんな勧告が出ても実施できないという事態になるわけですから、一番最初の予算においてそういうものを準備してかかるということは当然であって、これをしなかったほうがたいへんであると私どもは考えております。  それから、いま地方財政に金をやらないとかなんとか言うのですが、これは御承知のとおり、三税が増収になれば、増収になった一定比率というものは当然交付税として地方へやるべきものでありまして、特にこれをやらないことを仕組んだものが総合予算なんだということではございませんし、いまどんな有名な人が言ったか知りませんが、もしそうだとすれば、それは認識不足もはなはだしい考えだと思います。
  99. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 しかし、現実にそうじゃないですか。現実には認識不足だと言うが、食管には金を出さぬというんでしょう。鉄道も金を出さぬというんでしょう。——ちょっと待って、発言中です。ちょっと待ってください、もう少し話はあとまで聞きなさい。  食管には金は出さぬ、鉄道には金は出さぬ、公務員のベースアップは予備費からあらかじめ予定して取っておくというんでしょう。自分のほうだけは取っておいて、あとはどんなことが起きても金を出さないんだということを原則とする予算だということだから、具体的にわかりやすく、しろうと向きに説明すれば、いま私が言ったようになるじゃないですか。結果はそのとおりになるじゃないですか。
  100. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 鉄道に出さぬというのですが、今年度鉄道に対してはこうするという予算を当初予算に計上しておくということでございまして、食管に金を出さぬというのではなくて、いままで食管に出した最高の金額をことし食管に予定しておくということで、調整勘定にこれを当初予算において二千四百億円以上繰り入れるという、出さないのではなくて、それだけの金を当初予算においてあらかじめ準備したということであって、これが総合予算の総合予算たるゆえんであって、よそへ出さない、公務員のものだけ準備したという性質のものじゃございません。
  101. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 私はそう言っていませんよ。現在既定した以上は出さない。つまり二千四百十五億、それ以上は出さない。こういうことで私は言ったのですよ。一銭も出さないというのではなくて、現在既定した以上はびた一文も出さない。そういうふうに私は言ったのです。だから、別に違ったことを言ったわけじゃない。結局はそういうことなんだ。  そこで、ここで非常におかしなふうに考えられる。なぜならば、昭和四十二年に二千四百十五億円というような予算を食管に繰り入れております。内容的に見ますると、実質の食管の損失額というのは、昭和四十二年度で二千四百六十九億円であった。しかしながら調整資金の勘定から残高六十五億円があるので、そのうち五十四億円流用して二千四百十五億円にした。それでことしの予算を組むときにどういうようなつもりで食糧庁は組んだかというと、こういうふうな見方をしておるのだ。ことしは去年よりも食管の繰り入れを少なくした理由——役人に説明させると、また二十分もしゃべられて私がしゃべる時間がなくなってしまうから、私が説明する。これについては去年、つまり四十二年度は政府買い入れが九百二十八万トンで、これは非常にいままでに例のないことであった、こういうことを言っておるのであります。ところが、ことしはそんなにたくさん米が買い入れられるということは考えられないから、四十一年の七百九十九万トンというものを一応ことしの正常な買い入れ高として見込んだ。大ざっぱに八百万トンを見込んだ。売り渡しは四十一年に七百九十七万トンを売り渡しておるので、そのとおり見込んだ、こういうふうなことになっておる。ところが、現実の問題としてはどうであるかというと、すでにきょう現在でこれは七百九十九万トンどころじゃない。八百万トンを突破し、間もなく九百万トンになろう、政府への予約申し込みはそういうことになっておる。百万トンから最初の予算を組んだときの見込みに見込み違いが出てきておる。この見込み違いというものについてどうする。総合予算で、あなたの言うようなことで二千四百十五億以上組まない。二千四百十五億というものは、去年よりも少なく見ているのだ。去年は二千四百六十九億円、現実には食管に繰り入れておる。だけれども、ことしはそれよりも少なくて済む、二千四百十五億でいい、こういうようなことで予算を組んであるのだから、現実の問題として食管法を守り、そうしていまのような情勢で当然足りるはずがない。総合予算、総合予算といってばかの一つ覚えみたいに言っておるけれども、一体具体的にどうする気か、ひとつ御説明願いたい。
  102. 相沢英之

    ○相沢説明員 四十三年度の食管の予算を組みます場合には、ただいま先生のおっしゃいましたとおりに、米の買い入れ数量といたしましては大体八百万トン、この程度見込めばいいではないかということで見たわけでございます。当時におきましても、平年作を前提とする場合に、これよりもふえやしないか、作付反別、反収、また生産量に対する政府の買い入れ比率というようなものを勘案いたしますと、これよりもふえるかもしらぬということは予想されたわけでございますが、一応四十一年度——四十二年度の生産量、買い入れ量というものは、これは特別なものといたしまして、四十一年度の買い入れ量と同じものを一応見込んだわけでございます。ただ、その際に、この買い入れ量がふえた場合には当然一トンにつきまして約三万円、百万トンなら三百億程度の損失の増加があるわけでございますが、もしそういうようなものが生じた場合にはどうするかということが当然これは議論になったわけであります。  その点につきましては、四十三年度の予算編成方針にもございますが、「食糧管理特別会計繰入れについては、年度途中における米価改定等、事情の変化があっても、これにより補正財源を必要としない方式を確立する。」というふうにうたってございますが、その意味は、生産者米価の改定あるいは食管の買い入れ量の増加、そういうものがありましても、これによって補正財源を必要としない方式を確立するという意味でございます。したがいまして、私どもはそういう政府の買い入れ数量が増加いたしました場合は、それによる損失が当然増加いたしますが、その損失の増加も、生産者米価の引き上げに伴うところの増加も、あわせてこれは消費者米価の引き上げによってカバーをするんだ、そういうような考え方でこの食管会計を考えておる次第でございます。
  103. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 それは食管法違反ですよ、あなた。そういうばかなことができますか。たとえば生産者米価が五%、七%上がった、それに伴って家計米価の範囲内で消費者米価をある程度上げる、こう言うなら話はわかりますよ。ですけれども、仮定の問題だけれども、じゃことし生産者米価も上げない、消費者米価も企画庁の言うように上げない。しかも百万トンよけいに買わなければならぬ、あるいは百五十万トン買わなくてはならぬかもしれぬ。そのときに、ことしは米がよけいとれたから、生産者米価を上げないんだけれども、消費者米価は三%なり四%値上げをする。そんなばかなことが通用すると思っているのですか。あなた正直に、正気でそう思っているのか、たいへんですよ、正気で思っているとなったら。これはほんとうに大蔵省相当枢要な地位を占めておる人が、かりにことし生産者米価も上げない、消費者米価も上げない。しかも百五十万トンよけい米を買うときには、その買う米は現在の食管法のもとで、これは消費者にしょわせるんだ、消費者米価だけその分を上げるのだ、そういうことができると思っているのですか。
  104. 相沢英之

    ○相沢説明員 先ほどの答弁で、はなはだ簡単に申し上げ過ぎたので、あるいは誤解を招いたかとも思いますが、消費者米価の引き上げにつきましては、もちろん私どもは食管法の規定に従ってこれを改定するということを考えておるわけであります。したがいまして、この生産者米価の改定あるいは買い入れ数量の増加に伴うところの損失の増加を、消費者米価の引き上げによってカバーする場合におきましても、それは消費者米価については家計の安定をはかることを旨とするという食管法の規定がございます。  その家計の安定をはかるとは、家計米価の範囲内であるというふうにされておりますので、当然に家計米価の範囲内において消費者米価を引き上げるということは当然守るということにしておりますので、ただいま御意見ございましたように、何でもかんでも消費者米価の引き上げによってそれをカバーするのだということではないのでございます。
  105. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 私の言ったことは、かりに両米価据え置きの場合に百万トンよけい買わなければならぬ。この分を生産者米価が上がらないのにその分までも消費者米価にかぶせるということはむちゃくちゃじゃないかということを私は言ったのです。しかしながら、あなた方は家計米価の範囲ならばそういうこともやったっていいのだというようないまの御答弁であります。そういうような答弁をしている以上は、われわれはやっぱり政府、与党は近くにおっても他人の仲になります。どうしてもそういうことになりますよ。そういうことはわれわれは承服いたしません。やはり当然、思いがけずにたくさんのお米を買わなければならぬということになれば、そのために予備費があるのだから。しかも総合予算というものは現在以上にはびた一文もやらないというような、そんなともかく最高裁判所の判例じゃないのですよこれは。ただ当時総合予算をつくったときの情勢としては、日本国際収支が非常に悪化した、景気が過熱された。そのために金融引き締めよう、金利も二厘引き上げよう、こういうようないろんな経済政策というものの一環として行なわれてきた。その当時の事情から考えれば、いまや国際収支というものについても、現在十五億か十七億ドルぐらいしか外貨がなくて、日本の貿易が非常に困るということに追い込まれるのではなかろうか、こう思っておった。ところが、意外にその回復が早く、株価も上がり、しかも国際収支も改善をされて二十一億ドル近く外貨を保有する。いままでになくたくさん外貨を保有することになってきた。であるからこそ、財界あたりではまず米のほうは押えておいても自分たちの金融はゆるめなさい、金利は下げなさい、こういう圧力をかけているじゃないですか。そしてそのとおり政府は実行したじゃないですか。そして農民だけが置いてきぼりにされるというところに何としても割り切れない庶民感情があるということはいなめない事実であります。いろんな理屈をくっつけて生産者米価を押えにかかっておる、こういうふうに言わざるを得ない。私は少なくともそういうふうに思っておる。  したがって、これらの点については、もし親戚の仲になりたければ、もう少し頭を切りかえて、やはり大所高所からこれらの点については話し合いをしてきめていくということがなければ、とんだことになりますよ。大蔵官僚の次長か局長か知らぬが、そういう人たちの考えをもって大臣がめくら判を押すということになったならば——これは食管制度の問題についても、もっと前向きの方向でいろいろ農民団体とも話し合いをして、日本国全体のためになるような道を見出していこうという努力をわれわれはしかかってきたときだ。それにもかかわらず、自分たちの偏見に固執をして、そして少しも譲らぬということで話し合いができますか。これはまた一印おくれますよ。その結果非常な矛盾が出てくれば、その責任は全部大蔵省の官僚にあるということを私は宣言をしておく。これはそういうことになりますよ。いいですか。重大問題ですよ。笑いごとじゃないですよ、ほんとうに。  それから、私は農林省にも聞きたい。農林省の諸君は去年までは指数化方式、指数化方式で、何が何でも指数化方式でなければだめなようなことを言っておって、とたんにことしになったら指数化方式のシもなくなった。指数化方式で計算すると二万九百九十円になる。それじゃ米価が高くなってこれはどうも困る。大蔵省にはおこられる。だから、主張もろくにしないで、こそこそ負け犬がしっぽを巻いてどこかに隠れるようなかっこうをして、そして大蔵省や企画庁の言いなりになって、農林省は農民の立場を保護すべき立場にありながら——企画庁とはまた全然立場が違う。少しもそういうふうなことについてわれわれに協力さえも求めないで、陰取引をして指数化米価でなくて、積み上げ方式でなくて積み下げ方式によって、今回は試算米価というものをはじき出した。そうじゃないですか、農林省、簡単に言ってください。——大臣、大臣いないですか。これは大臣がいなければまたあしたでもやって、大臣に来てもらわなければならぬ。大臣は、少なくともわれわれお米のことについていろいろ真剣な討議をしていこう、前向きでやっていこうという者に対して、そういう者はベトコンと称して死刑に値するやつであると、名前をあげて新聞記者会見において言っておる。死刑に値する。田村委員長もそのうちの一人である。そういうようなものの考えでほんとうにりっぱな農林行政ができると思っておるのだから、私はほんとうに今度は西村さんという人を見直した。どうですか、大臣が来なくて答弁できるならしてください、簡潔に。
  106. 小暮光美

    ○小暮説明員 指数化方式につきまして、過去において政府がこれを強く主張したことは事実でございます。ただ、指数化方式が提案されましたときにも、説明としてはございましたが、算定要素につきましての紛議を避け、両三年程度これを指数化によって算定することによって、その間に新たな算定方式、新たな価格の決定の仕組みをお互いに検討し合うことが意味があるのじゃないかということで、当時提案されたものでございます。ただ、指数化方式の符性として、算定にまぎれがないという長所がございます。反面に、これは相当の期間がたちますと、関連します生産の仕組みあるいは消費の仕組み、その他構造的な問題が変わってまいる場合には、指数化方式は逆に固定的なものであるという弊害があるという点がございます。  そこで、昨年は積み上げ方式と指数化方式とを両方試算として米価審議会におはかりしたのでございますが、結果的に最終的には積み上げ方式に基づいて決定した。本年は需給事情の非常に急激な変化という事情もございます。これらのものを算定に何らかのかっこうで反映させる方法はないかという問題、非常な問題をかかえておりますので、そういった面から指数化方式はこれをとらず、積み上げ方式による試算を提出した次第でございます。
  107. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 農林省のやつは積み下げ方式というのですよ。積み上げ方式じゃないのです。積み下げ方式なんです。積み上げ方式で去年のようなことからすると、二万一千七百五十七円になる、一一・四%。農林省が去年あれほど金科玉条のごとくりっぱなものを見つけてこれだこれだと言った指数化方式によってやると、二万九百九十円になるわけです。高い、高くなる、何とかして安くするくふうがないか、安くするくふうを重ねたのが現在の農林省の二・九九という積み下げ方式によるそれは案じゃないですか。二万一千七百五十七円というものから何をいじくったかと申しますと、簡単に申しますが、シグマをいじった。これで三百七十七円値下げした。一シグマ引くところを〇・九シグマ引くことにした。ここで石当たり三百七十七円、限界農家を平均農家に近寄せるというようなことを言っておりますけれども、そんなことは作付前ならいざ知らず、収穫時期になって、農民のこれは全然予測できないことなんです。食管というものは他に全然売り渡すことができない、全部政府に売っておる。こういう状況において、作付をする以前ならともかく、作付をしちゃって収穫時期になって、計算方式を農民が予測できない計算方式、賃金や物価の値上がりなどは予測ができますけれども、こういうふうなシグマをいじって値段を下げるということは予測できない、そういうものをいじって三百七十七円石当たり値下げをした。  それから需給事情を考慮するというけれども、すでに現在の計算方式であっても、過去三年の平均反収は上がってくるのだから、そこで需給事情というものは考慮されている。さらにシグマでいじったら、これはダブルプレーになる。あなた方がよく言うダブルプレーになるのだ。こういうことをあなた方はあえてやっておる。  地代の問題にしてもそうです。去年まではコスト主義、コスト主義といって、そうして五%の小作地に対しても、ちゃんとコスト主義で実勢小作料をとったにかかわらず、ことしはコスト主義は忘れてしまって、八千三百円の実勢小作料になるにかかわらず、四千七百五十二円というようなマル公小作料をとった。生産者米価が石当たり千百五十八円の値下げをした。  生産性向上のメリット還元の問題についてもそうです。これこそいま一番必要なときじゃないですか。にもかかわらず、これをあなた方は削って——労働時間は米の価格の六〇%を占める。それで三年間の労働時間数の短縮をした部分の二分の一をいままでは米価の中に織り込んだ。しかし、これは米の過剰、農家経済好転などからとりやめだといって、これから石当たり六十一円削ったのであります。こういうことは生産意欲を向上させるとあなた方は言っておるが、いまこそ一番大事なことは合理化をさせることです。生産性を上げることなんです。ところが、あなた方の言うようにすれば、いままで一反歩当たり十五人手間かかったものが十三人手間になる。二人手間浮くからこの分は全部カットだということになる。一反歩にたくさん時間数がかかればかかるほどいいという農林省の考え方は惰農奨励方式です。われわれはそういうことでは困ると思っている。しかし、農民といえども利益というものを考えるから、惰農のほうがもうかるならみんな惰農になります。しかし、それでは農業基本法やいまの経済事情に合わない。あなた方が働いて時間数を少なくすれば、少なくしたやつを全部取り上げませんよ。その一部分をごほうびとして返します。だから、もっともっと働いて、時間数を少なくしようじゃないかということをやって、(「還元すべきだ」と呼ぶ者あり)これは当然、還元すべきじゃないですか。社会党だってこんなことはわかっているんだ。あなた方のわからぬはずはないじゃないですか。  また、自己資本の利息の計算にしたってそうです。概算金というものもいままでやってきた。ところが、これについても、一石当たり五十六円削っておるじゃないか。  かくのごとく、農林省のやった案というものは、積み上げ方式だと言うけれども、これは積み下げ方式である。あるものからいかにしておろしていくか、そして、これ以上おろせなくなった数字が農林省の二・九九という値上げ案なんだ。そういうことでよくも農家の関係を代表する役所だといえますね。そういうことはいえませんよ。考え直しなさい。財界代表だ、全く。  それから拘束労働時間もそうじゃないですか。大蔵大臣、聞いてください。農業というものは、きょう午前中に農薬防除をしようと思って、みんな用意をしてたんぽに行った。ところが、にわか雨が降ってきた、それでやむを得ず家に引き上げた、三時間ばかり待っておる。ところが、この間は全然計算されていない。働かなかったんだから、家で休んでいるんだから、その間わらじでもつくっただろう、馬のしりでもふいただろう、あるいは何か別の仕事をやっているんだろう——農業というものはそういうものじゃないです。これがだめになったらあれだというようにぱっとほかにかわれるものじゃないです。そういう拘束された時間というものがあるのです。全部で田の草を取りに行って、大雨が降ってくれば引きあげる。引き揚げれば働かない。家に帰ってきたからといって、出かせぎには行けない。そういう時間だってあるのです。こういう時間をただの一時間だって見ていないのですよ。そういうことを知っていますか、大蔵大臣。ただの一時間もこういう時間を見ていないということを大蔵大臣は知っていますか。知らないでしょう。御存じですか。結論だけでいいです。
  108. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 働く時間以外に、そういう時間を労働時間として相当見ています、米価の計算では。
  109. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 それは食言です。取り消してください。間接労働時間というのは別なものです。そういうものは一つも見てないです。間違いです。責任は追及しません。それはやはりその程度ですよ。われわれのほうがよく知っている。役人の言うとおり聞いちゃだめですよ。われわれの言うことをよく聞けばおのずから判断は誤らないんだけれども、われわれの言うことを聞かないで、役人の言うことを聞くからそういう間違った答えをすることになる。速記録に残るんですよ。拘束労働時間は見ていないのです。
  110. 小暮光美

    ○小暮説明員 事務的なことでございますからちょっと補足させていただきますが、拘束労働時間という観念、必ずしも明確でございませんが、ただいま渡辺委員のおっしゃったような手待ち時間、この問題につきましては、たとえば圃場に出まして雨等にあって一時待つ時間がございます。しばらく、数時間待ちまして再び農作業に入る、こういうような状況の場合には、ただいまの生産調査の仕組みでは、労働時間の中に入るようになっております。ただ、本日の天候はこれはだめであるということで、途中で仕事をやめてうちへ帰ってしまって、翌日までも働かなかったというような形の場合には、そういう形で労働をやめました時間は算入しないという形に相なっております。したがって、その間確かに途中で出かせぎに行くわけにはまいらぬでしょうから、そういう時間が空白になるということは事実でございます。それから、そのほかに付帯労働時間ということで、実労働時間ではございませんけれども、運転免許をとる、あるいは農業簿記を記帳するといったような時間をある程度調査に基づいて算定いたしまして、労働時間ではございませんが、積算の基礎に入れるということを別途いたしております。
  111. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 これは要するに拘束労働時間を見てないということなんです。そのことに間違いない、絶対に間違いない。だから、われわれはそういう時間を見ろと言っておるのだけれども、そういうことはいままでも見てないからということで、ごまかしておる。だから、地代等において多少のことを見てやってもいいじゃないか、シグマで見てやってもいいじゃないか、こういう主張をしてきている。だから、政府の計算の基礎というものが、いかに大蔵省ベース、企画庁ベースでやったかということだけははっきりしておる。  だから、ここへ三大臣にもう一ぺん集まっていただいて、そうして五・五%以上は絶対上げないとか、それ以上上げたら三人でやめるとかいうようなことは、不穏当ですから言わないで、そうしてほんとうにもっとやれるような方法、実行のできる方法があるのですから、総合予算という形式だけにこだわらないで——財界のほうがもし総合予算でなくてもいいといったらすぐ直しますでしょう。そんなことではいけません。もっと庶民、大衆のためになるような予算というものを考えて実行してもらいたい、かように思います。  なお、公務員のベースアップの問題についても質問したいのですけれども、時間がありませんから私はやめますけれども、これとても五百億円程度では、おそらく勧告の出方によっては足りないと思う。このほうもやはり総合予算をたてにとってやらないのですか。もしやるとしたら、農民だけを総合予算をたてにとって、少しも予備費も使わず、少しも補正をしない、そういうことをやるのですか。そういうことでは絶対承服しませんよ。それなら他人のおつき合いをしますから、私は宣告をしておきます。  それと同時に、もう一つは、農林大臣に対する質問は保留をします。企画庁長官に対する質問も保留します。もう一ぺんやります。委員長、御了承願います。  本日は一応この辺で他の委員に譲りたいと存じます。
  112. 田村元

    田村委員長 おはかりいたします。  ただいま渡辺君から農林大臣並びに企画庁長官に対する質問の保留がありました。委員長は、なおも両大臣の出席を求めるべく努力をいたしますが、場合によっては、本日深夜、委員会を開会することもあり得ますので、あらかじめ御了承をお願いいたします。  阿部哉君
  113. 阿部助哉

    阿部(助)委員 大蔵大臣にまずお尋ねしますが、大臣、辞表を書いたという話があるのですが、これはほんとうですか。
  114. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 そういうことはお答えする必要もないことだろうと私は思います。
  115. 阿部助哉

    阿部(助)委員 無理してお答えにならなくてもいいんですが、この段階で、先ほど渡辺委員からお話がありましたように、これがこういう形で米価問題に大蔵省が圧力をかけておる、こういう感を強くいたしますので、お伺いしたまでであります。お答えがなければそれでよろしゅうございます。  いま米価の問題が非常におくれておりますが、これはいつおきめになるのですか。
  116. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 国会が済みましたらすぐに政府・与党の意見調整をやってきめたいと思っております。
  117. 阿部助哉

    阿部(助)委員 すぐというのは、十日の日に終わりますから十一日にきめるということですか。
  118. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 何日というわけにはまいりませんが、できるだけ早くきめたい。十一日にきまれば十一日にきめたいと思いますし、十二日まで延びればこれもやむを得ないと思いますが、できるだけ早く意見調整をやってきめたいと思います。
  119. 阿部助哉

    阿部(助)委員 なぜ国会の開会中に、国会を一日、二日延期してもここで十分論議してきめようとされないのですか。議会制民主主義を守るためにはこの国会で論議を十分して、それできめるのがほんとうじゃないですか。しかも、今度の新米審と皆さんがおっしゃるあの新米審の成立の過程から見ましても、これは当然国会で十分論議して開会中にきめるのがほんとうのたてまえじゃないのですか。それを国会期間中はきめないで、国会前にわざわざして、それで国会が終わってからやる、いかにもこれは国会軽視だ、こう言わざるを得ないのですが、どういうわけですか。
  120. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 政府の関係大臣が、今度の短い国会中におきましては、それぞれの委員会を持っておりますし、政府部内においてこの会期中にこの問題と取り組んでいる時間がございませんので、国会が終了次第すぐにこの問題と取り組んで決定しようという申し合わせになっております。
  121. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それは少しおかしいのじゃないですか。いま国内の問題として米価の問題が最も大きな問題として論議をされておる。それを大臣が忙しいから、ほかの用事があるからこの国会中はきめられないというならば、国会を一週間だ、十日だということに自民党は値切って、そうして国会を軽視する、国会を避けていこう、こういう態度をとられることはおかしいのじゃないですか。忙しいと言うけれども、いま関係大臣にとってみれば、この米価の問題以上に重大問題が一体あるのですか。私はないと思うのだが、どうですか。
  122. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 会期は国会がきめたことでございまして、政府がきめたものではございません。政府としましては例年の例もございますので、できるだけ七月中にきめたいと急いでおりましたが、御承知のようなことで七月中にきまりませんでございましたから、国会終了後直ちにきめようということを政府・与党で相談したというわけでございますので、国会が終わり次第至急きめたいと思っております。
  123. 阿部助哉

    阿部(助)委員 これに時間をとりたくないのでやめますけれども、大臣はおっしゃるけれども、わが党は三十日を要求した、あるいはほかの野党も三十日までいかずとも二十日間を要求した、そういう過程の中で政府・自民党でこれを短くしくた。短くしてもいい。だけれども、この一番国民の代表の場で、国会の場でこれを論議してきめるということが私は議会政治のあり方だと思う。それを無視しておるところにこの米価の混乱があるんじゃないか。筋を通さないところに混乱があると思うのです。  それならばお伺いしますが、なぜ米価問題がこのように——先ほど渡辺委員質問にありましたように、普通であれば米審の答申があろうとなかろうと、それが終わってから三、四日うちにはいままできまってまいりました。ところが、今年はこうして長引いておるのはどういうわけなんですか。
  124. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 結局、やはり食管問題が現在においては非常にむずかしい問題になってきているということであろうと思いますが、それを中心にしまして、政府の考えと与党の考えがまだ調整がつかないということでおくれているわけでございます。できるだけ早く調整をつけたいと思っております。
  125. 阿部助哉

    阿部(助)委員 政府・与党の間で調整がつかないと言うが、本来ならば、あり方としては、選挙のときの公約では自民党できめる、こうおっしゃっておる。また、法律のたてまえでは政府がこれをきめるとなっております。いずれにせよ、政党政治ですからお話し合いするのはけっこうです。だけれども、本来これは諮問案を出すときに政府と党と十分話をして、そのときに諮問案として出すのがほんとうじゃないですか。それをやらないで、答申が出てからいまのような段階でもめておるということ自体が間違いじゃないですか。大臣、どうなんです。
  126. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 諮問案も全く政府独自に出したわけではございませんで、与党側と十分相談いたしましたが、この政府のいま考えておる諮問案を出して一応審議会の意見を聞くということはいいということで与党・政府の話し合いがついて出したわけでございまして、全く無関係に出したわけではございません。
  127. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それならばこうやってごたごたするはずがないじゃないですか。農民が一日も早くできるだけ希望する線できめてもらいたい、こういっておる段階でこれだけごたごたするというのは理屈が合わないじゃないですか。
  128. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いまの政府の諮問案の内容を党が承知して出したというのではなくて、いま言いましたように、こういう案を政府は諮問するということについての了解は党とできておりますが、問題は、政府の諮問案に対して審議会がどういう意見を答申してくるかということでございますので、その意見の答申を見て、そして別にあらためて最終的には与党と政府が相談するという了解のもとに出しておる、こういうことでございます。
  129. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私は、もう少し内容的なところへ入りたいのでこの問題で時間はとりたくないのでありますけれども、大臣のお話を聞いておっても全くわれわれ国民にはわからない。ことにわれわれ国会の野党という立場ではなおさらわからない。まず第一には国会にかけるべきだ。大体諮問案の段階で政府・与党は話し合いをしてこれは出すべきなんだ。そういう問題を全部抜いておる。しかも今度の米価の問題を見ておりますと、大蔵省が非常に主導的な役割りを果たしておる。これは否定ができないと思います。大蔵大臣のほうがあるいは大蔵省のほうが、食管の法を変えなければならぬとかあるいは買い付け制限をしなければならぬとかいう意見をいろいろ出しておられるという点で、ますます問題が混乱しておるのじゃないか。大臣、少し越権行為じゃないですか。
  130. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 先般、農林委員会で同じような質問がございましたので申しましたが、この問題は農政と最も関係の深い問題でございますので、私どもは主管官庁の意見について十分協力するという立場の官庁でございますので、現在までそういうふうにやってきました。ですから、大蔵省がこれについての意見というものを先般政府部内の相談があるまでに公式的に述べたこともございませんと申し上げましたが、そういうふうにこの問題は大蔵省が主導権をとってやっている問題じゃございませんので、あくまで主管大臣の意見に私どもが協力してやってきている、こういう立場はきょうまで私どもはくずしておりません。ですから、先ほども渡辺さんの質問に、農林大臣しっかりせい、大蔵省と経企庁に押されてしようがないじゃないかという話がありましたが、これは誤解でございまして、食糧管理制度の問題というものは、全部いま農林当局の意見を中心に、私どもがいろいろ相談に乗っているということでございます。
  131. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そういうことになりますと、大蔵大臣は、農林省がきめる、農林大臣がきめられる、そのきめたものを財政化する、そのためにはいろいろな話し合いがあることはわかります。だけれども、大臣は法律関係の予算を編成するのが任務でしょう。自然増とかあるいは経費の当然増とかおっしゃるけれども、むしろ大蔵大臣の立場では法律関係による当然増は、何をおいてもこれはまず見なければいかぬでしょう。しかし、自民党・政府の計画による増加あと回しにするのが大臣の任務でしょう。法律を守る、こういうことならば、私はそういうことだと思う。その場合に、人事院の勧告によるところの公務員の給与であるとか、あるいはまた、食管法をたてまえにするところのこの米価の問題であるとか、こういうものの増加はまず優先して見るのが、これがたてまえじゃないのですか。私はそう思いますが、どうですか。
  132. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 あるべき妥当な米価をきめるということは、主管官庁である農林大臣でございますが、私もどは、それに関連して、当然財政的な見地から、いろいろ意見を述べますし、経済企画庁も、消費価格その他についてやはり経済政策の上から見た意見を当然述べますので、したがって、関係省が相談してきまったものがまあ政府の考え方ということになろうと思いますが、いままでの過程におきましては、生産者米価をこういうふうにきめたいというきめ方そのほかの意見については、農林省の考え方に私どもがずっと賛成してきている、こういうことでございます。
  133. 阿部助哉

    阿部(助)委員 時間があれば一々あなたがおっしゃった問題——まあ新聞が全部うそを書いておるとは思えませんので、四月二十五日にはあなたのところの主計局からこういう書類が出ておる。「食糧管理制度の現状と問題点」というようなものを財政制度審議会にこれを提出しておるとか、あるいは七月十日におけるところの問題、あるいは、ずっと私、整理してありますけれども、時間がありませんので一々読み上げるわけにいきませんけれども、とにかく大蔵大臣あるいは大蔵省が総合予算主義というたてまえから非常に大きなおもしになっておるということだけは、国民全部がこれを認めておるところじゃないですか。それも否定されますか。
  134. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私どもは、予算の編成方針というものはできるだけ曲げない、こういう考え方を持っておりますので、そういう立場からやはり発言すべき場合は発言する、これは当然だろうと思いますが、それによって、いま米価のあるべき姿がゆがめられているということは現在ございません。現在の事情から見て、生産者米価がどうあるべきかという、これはその問題としていま主管官庁が取り組んでおるということでございまして、これを特に歪曲しているということはございません。
  135. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それならお伺いしますが、財政の立場から生産者米価まで順々にきめておると理解していいですか。われわれがいま見ておりますと、国民はほとんどそういう感じだろうと思うのですが、まず、逆ざや解消分をどうするとか、全体の消費者米価をどうするかというてっぺんをきめて、それから逆ざや解消分三%であるとか、あるいは何であるとかいう形をきめて、それで二・九九の諮問案を出した。それで党との折衝において何がしか色をつけてやろうということで、大体想像されるのが二・五%あるいは三%をこれに見込んでいる。そして、消費者米価へのげたばき分というような形で、上からだんだんきめてきておるような感じを持つわけですが、そういうやり方をしておるのじゃないですか。
  136. 相沢英之

    ○相沢説明員 生産者米価と消費者米価との関連について、ただいま消費者米価の上がる限度をきめ、それから末端逆ざや解消に必要な両米価の差額三%を引き、その結果生産者米価の引き上げ限度を、そういう算式ですべてを打ち出しているのではないかという御意見でございますが、その両米価の決定について、これを関連づけて検討しなくてはならないことは私ども当然だと考えておりますが、ただいま申しましたように、その消費者米価の限度から生産者米価の限度を出すというような算式でこの生産者米価の限度を考えているわけでありません。生産者米価、消費者米価、それぞれこれは食管法のたてまえに基づきましてその価格をきめるべき要素がございます。そういうものの要素を踏まえまして両米価を算定するわけでありますが、その両米価を算定する際に、末端逆ざや解消等の要素を当然考えに入れる、こういうことでございます。
  137. 阿部助哉

    阿部(助)委員 まあ農林大臣おいでになっておりませんが、農林省にお伺いしますが、生産者米価のきめ方が毎年、先ほどの話のように違ってきておるわけですが、ほんとうに生産者米価を第三条によってきめるとすれば、これはどういう価格になるのですか、何%アップになるのですか。
  138. 小暮光美

    ○小暮説明員 御承知のように、第三条で「生産費及物価其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シ米穀ノ再生産ヲ確保スルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」とございまして、どこまでもその生産費として現実に支払われたものはこれを補てんし、それから家族労賃については、都市均衡労賃に置きかえることによって所得を補償する、この考え方は動きませんけれども、「物価其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シ」という事項もございますので、法令の規定から、そのまま動かしがたい計算と申しますか、算式そのものが出てくるというふうにはならないと思います。
  139. 阿部助哉

    阿部(助)委員 その動かし得るものは、物価その他を参酌したわけですか。
  140. 小暮光美

    ○小暮説明員 本年の政府試算で、たとえば昨年の決定米価と特に違えておる点を一、二申し上げますと、たとえば原価性が明らかでないといったような項目を落としたというのが、やはり「物価其ノ他ノ経済事情ヲ参酌」したということであります。この「物価其ノ他ノ経済事情」の中には需給事情も入ると思いますけれども、そういったものを参酌して、原価性のないもの、あるいは原価性についてかなり議論のあるものといったようなものを二、三算式から落としたということでございます。
  141. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それで結論を言わないのですか。それで幾らになりますか。
  142. 小暮光美

    ○小暮説明員 その結果の政府試算が御承知のように二万百五円でございます。
  143. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そうすると、この二万百五円というのは、これは計算上からいくと、もう農林省としては動かし得ない数字だと、こういうことですか。
  144. 小暮光美

    ○小暮説明員 まあ行政的に米の「生産費及物価其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シ」算定いたしました試算としては、十分に検討をいたしたものでございます。ただ、この算定の要素等につきまして、さらに高度の御判断からどのような配慮を加えるかというのはおのずから別の次元の問題であろうと思います。
  145. 阿部助哉

    阿部(助)委員 大蔵大臣、いまお伺いしたとおりなんですが、その「高度の」というのは法律のどの条文によるのですか。
  146. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いまの「高度の」という意味が私には十分わかりません。
  147. 阿部助哉

    阿部(助)委員 農林省どうですか。どういう法律によるのですか。
  148. 小暮光美

    ○小暮説明員 どこまでも「物価其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シ」という判断を要するものでございますので、その判断にいろいろな角度からの御検討があり得ようかと思うわけでございます。
  149. 阿部助哉

    阿部(助)委員 農林省はその事情を参酌してきめたんでしょう。ところが、いま実際には不満があってそれではおさまらないということだけは間違いないと思うのです。そうすると、この米のきめ方が今日までもいろいろあったけれども、やはり生産費所得補償方式という長年一番合理的なものを農林省がお捨てになったというところに、私は一番大きな問題があると思う。そういう点で、農林省自体が一つも方針を持っておらないというところに今度の米価の混乱と、そして農民が非常に困っておるというのはそこからくるんじゃないでしょうか。それがきちんとすれば、大蔵大臣のほうは農林省のほうから出てくれば、これはそれに財政措置をするんだ、こうおっしゃっておるのだから——私たちにはどうもそうではないような気がするけれども大蔵大臣はそうおっしゃっておるのだから、農林省自体がさっぱりだらしがないんじゃないですか。やはりこれは農林大臣に来てもらって、それで一緒にお伺いをしないとこの問題の解決にならないんじゃないか。それとも皆さんが、政府が、もう国会はつんぼさじきに置いて、これは国会を軽視してそれでおきめになるんだ、こういうことになれば、これはまた話は別であります。大臣にやっぱり出てもらうということで委員長にお願いする以外、これはもう問題の詰めようがないと思うのですが……。
  150. 田村元

    田村委員長 そのままでちょっと速記待ってください。
  151. 田村元

    田村委員長 速記を始めて。
  152. 阿部助哉

    阿部(助)委員 大蔵省は米の制限買い付けをしようという案を検討いたされたことはありませんか、大臣。
  153. 相沢英之

    ○相沢説明員 私ども、ことしの米につきまして、この予算に見ておりますところの八百万トンを相当にこえるということが作況等から確実になりました段階におきまして、予算の範囲内においてこの買い入れをまかなうためには、あるいは買い入れ制限ということも必要ではないかというようなことで、事務的に部内的に検討はしたことがございますが、特にそういうふうに大蔵省の意思として決定したことはもちろんございません。
  154. 阿部助哉

    阿部(助)委員 しかし、そういう事務的な検討が外部へ漏れて、こうやって新聞記事で大きく出ているわけですね。これはどういうためなんですか。世論形成をするためにこういう発表をするわけですか。
  155. 相沢英之

    ○相沢説明員 新聞の記事につきまして、よく大臣の写真入りというようなことがありまして、大蔵省の意見、考え方というようなものが出ておりますが、私どもいままで買い入れの制限ももちろんでございますが、いろいろ発表されておりますことにつきまして、大蔵省考え方あるいは意見ということで外部に出したことは一度もございません。
  156. 阿部助哉

    阿部(助)委員 出したことございませんと言うけれども、これだけ大きく——私、スクラップ一ぱい持っておりますが、これだけよけい新聞に出ておって、出したことありませんと言ったって、だれも信用しないのじゃないですか。そういう言いのがれを皆さんがしておる限り、政治というものは国民の信用を受けなくなりますよ。これは重大問題ですよ。そういう態度が今日の混乱を招いておると私は思うのであります。  いまお伺いしておりますと、米は経済事情を参酌して、消費者米価と生産者米価を関連づけてこれをやるとか、あるいはスライド制をとるとか、げたばきスライドであるとか、あるいはまた、いまのような買い付け制限をする、あるいはまた、必要な七百五十万トンまではある程度の価格で、それ以上の米は安くしようなんという案まで検討して、新聞へ発表されておる。検討するのは皆さんの自由でありましょう。検討するのはけっこうであります。しかし、そういう中でいま世論形成がなされている。そういうものをやったら、一体この食管法の根幹というのは、大臣、どこにあるのですか。根幹というのはみなもうそれでなくなってしまったのではないですか。なくなった根幹を堅持するなんといったところで、農民は食管法はこれがなくなったと思うのだが、食管法の根幹というのはどこにあるのですか。これを除いて、大臣、食管の根幹はどこにあるのですか。
  157. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いま次長が申しましたが、この前も農林委員会で言いましたように、これはほんとにこちらから大蔵省が発表したというような事実は、いままでございません。じゃなぜ新聞が出したかということですが、もう御承知のように、この食管制度というものは世間が非常に注目しておる問題でございます。したがって、各新聞社としては各官庁がどう考えているか、どういう試算をやっておるかというようなことを当然興味を持つものでございましょうし、いろいろなところから片言隻句が出たものが報道されるということも、これはもうやむを得ないことだろうと私どもは思っております。しかし、役所の考え方をきめてこういう考え方だといって新聞にこれを発表したというような事実は、きょうまでございませんので、これは御承知願いたいと思います。
  158. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私が大臣にお伺いしておるのは、いまのように第三条、第四条の関係を無視してスライドをするとか、あるいは買い付け制限をするとかというような、食管法の大事なところを取り去ったと私は思うのですが、それでなお政府は食管の根幹を堅持するとおっしゃっておるから、そうすると、取り去った根幹というものは残らないじゃないかと私は思うのですけれども、それでも根幹がどこにあるのだ、どういうのが根幹なんだ、こうお伺いしておるわけです。
  159. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ですから、いま申しましたのは、私どもがそういう発表をしてないのですから、それで根幹を取り去ったとおっしゃられるのですが、まだそういう意味で私どもは取り去ったというふうには決して思っておりません。
  160. 阿部助哉

    阿部(助)委員 大臣は、しかしあれじゃないですか、木更津で四日の日には新聞記者会見をして、食管制度はできるだけ早い機会に改善しなければならないなんということをあなたしゃべっておるのですよ。これもうそだということですか。
  161. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これは閣議においても昨年から総理の指示事項になっておりますので、食管制度の改善ということについては、私どもは、これはもう当然取り組まなければならぬことでございまして、私も、食管制度はいままで食糧不足の時代にできた制度でございますが、現在のように需給状態が変わってきますと、この配給の面においても買い入れの面においても、改善すべき問題がいまたくさん出ていると思いますので、これは私は改善すべきものだというふうに考えております。
  162. 阿部助哉

    阿部(助)委員 大蔵大臣は改善すべき問題だとおっしゃるならば、この改正案はいつお出しになるのですか。今度の通常国会でお出しになる予定ですか。
  163. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 まだ各省間の意見が一致しておりませんが、しかし、根幹を維持する範囲内における改善案は、もし法律を要するものはやはりこの通常国会でも準備したいというのがいまの政府の各関係者の考え方でございます。まだその内容の審議はやっておりませんが、審議ができて意見がきまったら、必要なものは通常国会にも出したいというふうに考えております。
  164. 阿部助哉

    阿部(助)委員 通常国会で改正案を出すための作業を進める、こういう答弁のようでありますが、それではいままで高度成長だとかいろいろいっているけれども、農民の米価というものは毎年物価が上がったあとを追っかけていっておる。現実に農基法以来、農民は出かせぎと貧乏だけが加えられた。こういう中でなおかつ農民だけがこうやっていじめられなければならない。十分な対策をとってやるなら別でありますけれども、こういう形で進められる。あなたのおっしゃっておる大蔵省のいろんな資料や発表を見ますと、これは財界のこういう、十五年後の農業だとか、あすへの農業の展望だとか、財界の意向をそのまま受け継いでおっしゃっておる。全くこれじゃ同じことです。ほんとうに同じようなことを言っておられる。また、財政制度審議会あたりにいろんな意見を言わしておるけれども財政制度審議会の意見そのものは明らかに主計局の案をのまされて、それをちょっとつばつけて吐き出しただけじゃないですか。  大蔵省がいま一番米価問題、食管問題の主導権をとっておるように私は思う。このままいったら日本の農業というものは、農地法の改悪と食管法をなくしていけば、戦後の日本の農政というものは壊滅してしまう。十分な対策をとらずにこれを壊滅させていけば、いまの農民の生活というものはほんとうにどうしようもないところにいってしまう。そういう対策をとらないで、いまの財界に対する高度成長政策だけおとりになっておると、私たちは——私たちだけじゃない。国民は、大蔵省は全く財界だけの政府じゃないかという感じを持つだろうと思うのです。いま大蔵省のいろんな資料を見てみたり、新聞の発表を見てみたり、記事を見てみたりしても、国民はそう思わざるを得ない。自民党政府は、一握りの財界の政策だけを真に受けてやっておる。もう少し農民の生活を考えれば——いまのような形でいくならば、改正するまでは少なくとも食管法を守って、生産費所得補償方式で米価を算定されきめられるのが正しいと思う。その上にどうしてもあれするならば、改正後に、政府は改正した法律に従うべきだ、こう思うのですが、その辺、どうも法律上の違反を犯しておるとしか思えないのですが、その点、法律は十分に守っていただきたいと思う。
  165. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 問題は、農業のためにどういう政策をとったらいいかということが問題でございますので、日本の農業政策を推進するためにいろんな施策をとるということと、食管法の運営の改善をするということとは別問題でございまして、これが農業いじめのためとか農業を不利にするためにやることではございませんで、農業政策を推進する。同時に、食管制度の運営についての改善は、これは別問題で、すべきものはすべきものだ。これを改善することは、日本の農業政策を後退させるものというふうに私は考えておりません。
  166. 田村元

    田村委員長 ちょっと速記をとめて
  167. 田村元

    田村委員長 速記を始めて。  只松君。
  168. 只松祐治

    ○只松委員 基本的な問題については、すでに渡辺君、阿部君等から御質問がありました。関連して具体的な問題を一、二お伺いをいたします。  その一つは、さっき食管法の改正という問題もちょっと口に出たわけでございますが、そういうものの最も具体的なものとして、たとえば酒造米、こういうものに対する自由米を考えられておるかどうか。いやそういうことは全然ない、こういうことであるかどうか。ひとつ自由米の問題についてお聞かせをいただきたいと思います。
  169. 相沢英之

    ○相沢説明員 酒造米をいわゆる自由米として直接生産者から需要者へ売り渡すというようなことをいわば公認するかどうかというような問題でございますが、この点は、現在の食管法のもとにおいていわゆる自由米を認めることができるかどうかというような問題の一環といたしまして、事務的にごく部内的に検討をいたしたことはございますが、まだ何ら結論を得ておりません。
  170. 只松祐治

    ○只松委員 いま、検討したことがある、しているというようなことでございますが、この問題も慎重に扱わないと——私はおけ買いの問題を通じて、中小零細酒造業者の問題を提起したことがあります。酒造米が自由化されますと、いまのマスコミベースに乗った大メーカーとそれから地方の中小零細酒造家というものの間に激しい競争が起こる、競争が激化されます。そうしてまいりますと、当然に大メーカーはそれを買い占めていく。あとで聞きますが、値段もそれによって良質米はつり上がっていくでございましょうし、それだけじゃなくて買えない、逆におけ売りさえもできなくなる酒造家がたくさんできる、一挙に没落してしまう酒造家というのがたくさんできるわけです。したがって、この酒造米の自由化という問題は、よほどそういう問題を考慮して慎重にしないと、これは酒税の問題間接税の問題とも関連してくる。ただ単なる酒をつくる、つくらない、こういう問題だけにとどまらないわけですから、ひとつ慎重に考慮していただきたい、こう思いますけれども、いかがでしょう。
  171. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 食管の改善についてはいろいろの問題を検討しておりますが、まだ結論の出た問題はいまございません。これもその一つの問題でございますが、これは慎重にやりたいと思います。
  172. 只松祐治

    ○只松委員 それと関連して、酒の値段が毎年上がりまして本年も若干上がりました。この主たる原因が、私たちのところにもこうして陳情書が来ておりますように、昨年で五十八億ですか、米の買い入れ価格が上がった。毎年四十億、五十億の買い入れ価格が上がってきている。したがって、二級酒をはじめとして酒の値段を上げなければならない、こういうことになっておる。酒造米の買い入れ価格というのは二万九百円、業務用が一万八千八百円、主食用が一万七千九百円、こういうことで非常に高いわけでございますが、まあ酒造米でございますから、この主食米と同じようにそういうめんどうを見ろ、こう言うのもおかしいかと思いますけれども、しかし、これを生産者米価が上がったからそれにつれてただとんとん引き上げていくということでは、また物価引き上げ要因の一つである酒が上がる、酒が上がるとビールも上がる、こういう悪循環になってくるわけでありますから、これは税率なりあるいはほかのこの酒造米に対する何らかの考慮をして、酒の値段を引き上げる要因にならないように、これは酒税確保という面から見て配慮する必要があるのじゃなかろうか。そういうことになりますと、これはまあ嗜好にもよりますが、ウイスキーやビールというものは伸びていって酒の愛好者というものがだんだん減ってくる。これは嗜好だけではなくて、やはり値段という問題もあるだろうと思います。そういう面から、中小零細酒造家の立場も考慮するだけではなくて、酒税の面から見てもこういうものには特別な配慮をする必要があるのじゃないか。したがって、ほんとうならば本委員会等においても何らかの対策を講じたほうがいいのではないかと思いますけれども、きょうはそういう時間もございませんからただ意見を述べるだけにとどめておきますけれども、十分私は配慮をしていただきたいと思います。当局のお考えを聞いておきたい。
  173. 相沢英之

    ○相沢説明員 酒米の政府売り渡し価格につきましては、過去におきましてはかなりそれがまた主食用でないという理由で特別な加算などもしておりましたが、現在はすべて生産者価格を基礎といたしまして、それに割り掛けられる運賃等の政府経費を加算するというような形、いわばコスト価格で売り払うということになっておりますので、そのたてまえから申しますと、ことしの生産者米価がどの程度上がるということになりますか、今後の問題でありますが、そのコストの上がった分だけは少なくとも酒米の売り払い価格についても負担していただかなければならなくなるのではないかと思っております。まあビール麦につきましては、御案内のとおり現在これは食管を経由いたしておりません。生産者から直接、契約栽培によって需要者が買っておるということになっておりますので、財政負担とは全然関係がないわけでございます。財政負担との関連で申しますと、やはり酒米につきましてもコスト価格だけは酒造業者が負担していただながければならないのじゃないかというふうに考えております。
  174. 只松祐治

    ○只松委員 それをどうこうしろということまで私はとてもこの短い質問で言っているわけじゃないので、そういうこまかいことをいえば、米価の前払い制というのが酒造米の場合にはとられているわけですね。それを分割払いするなりなんなり、考慮する面があると思うのですよ。そういうことを含んで、いわゆる酒の値段を引き上げる口実をつくらないように行政の範囲内でできる面があるのではないか、そういうことをひとつ研究したらどうか、こういうことを言っておるわけですから、ひとつぜひそういう前向きの形で考慮をしていただきたい、こういうことでございます。  それから、これも米価の問題と直接的には関係がありませんけれども、さっきやじや何かで出ておりましたように、給食が全部、小学校ではパンで行なわれておりますね。まあ中学校もパンで行なわれております。子供のときからパン食になじめばこれは必然それがだんだん高校生、大学生、おとなになってパンを主食とする、こういうことになるのはこれは当然だろう。おとなになってから急に米というわけにはなかなかまいらない。水田は開田ブームが起こり片一方では需要のほうはそういうことで順次減少していく。こういうことであっては、根本的に、今日であるか五年先か十年先かいつの日か米の需要供給の問題に一大変異が生じて、一つの国内の社会問題、産業構造問題に大きな問題を引き起こすだろうということは、これはもう理の当然です。したがって、この米価の問題を本質的に考えるならば、きょうは経企庁、農林省しか呼んでおりませんけれども、文部省なりそういうところとも全部打ち合わせて、日本の主食をどうするか、日本の食生活をどうするか、国民体位の問題をどうするか、そういう全般的な問題から米を隔週にするとか隔日にするとか、あるいは何かするか、パン食だけではなくてもっと米を使っていくようにするとか、そういうことも考えていかないと、これは今日、食管制度だけではなくて、将来、根本的な日本農業全体にそういう問題が生じてくるだろう。したがって、今日こういう食管問題が提起された機会にぜひそういう問題もあわせて根本的にお考えをいただくべきだと思います。これも意見として私は申し述べておきたい。ぜひ考慮していただきたいと思います。  以上で私の関連質問を終わります。
  175. 金子一平

    ○金子(一)委員長代理 田中昭二君。
  176. 田中昭二

    田中(昭)委員 大蔵大臣に米価の問題でお尋ねするわけですが、いろいろいままでお話も聞いておりますし、率直にお答え願いたいと思います。  まず、大蔵大臣としましては、米価は大体幾らくらいが妥当な線なのか、そういうことについてお考えを聞いておきたいと思います。
  177. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 政府が諮問案をつくりますときに、関係省は全部これに関係いたしましたが、私は、やはりこの米価の算式の中に需給状況というようなものも反映するのが正しいというふうに考えますので、そういたしますと、これを平均反収に近づけるのに一挙に近づけたらこれはなかなかたいへんで、米価はいまより安くなっていいという計算になりますし、そういうことはできませんので、〇・一シグマですか、十年かかって平均反収に近づけるという、それくらいのごく緩慢な需給の反映のしかたというようなものをとっても、これはそのくらいのところで計算するというのがそうきついことであるかということを考えますと、十年間に平均反収に近づけた計算方法をとるというぐらいは急激な変化ともいえませんし、また、実情から見まして、それくらいのことはやはり計算方式の中に反映させるべきだというふうにも思われますし、そうしますと、政府の諮問案ということが決してめちゃな計算ではないというふうに考えます。  ただ、米審においては、大体政府のいまの値段よりも著しく多い値段をきめないようにというような答申になりましたが、まあ一番最初の年に一挙に——そういう考え方はいいとしましても、そこまでいくのがいいか、もう少しこれはゆるめた考え方をするかという、そこらは筋をはずさない範囲内においてどうやるかということで、いま与党・政府の意見をかわしておるという段階でございますので、大体やはりいま政府から出ております五・五%、このあたりが私は本年度の米価として、生産者米価の上がり高としては妥当じゃないかというふうに私自身は考えております。
  178. 田中昭二

    田中(昭)委員 そうしますと、大蔵大臣としては、大体、新聞にも報道されましたように、一万六百円前後でございますか、そういうもので米作農家はしんぼうしろ、財政の運営上、総合予算も組んだ関係上しかたない。ほんとうにそのように思っていらっしゃるのでしょうか。
  179. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私は、農家出身でございますので、特に農業に不利な考え方をしようというふうには私自身思っておりませんが、いままでの計算の結果を見ますというと、やはり反収の少ないところ、普通ならそこへ米作するのは無理だといわれるようなところに米作したものもペイするような計算方法がとられておるということによって、米の増産が刺激されておることはいま事実でございますし、そうなりますと、平均反収以上の生産をやったところは相当生産費が余裕をもって補償されておるということになりますので、いま各地でどんどん果樹園が水田にかわったりするいろいろな現象が出てきておる。なぜそうかと申しますと、他の農作物に比べて労務費が有利になっておるということは事実でございますし、また、それによって農業所得が都市の勤労所得と比べて、いま農家一戸当たりの所得のほうが平均的に上になっておるというようなこと、都市の労賃に比べて、米の中で計算されておる一日の労務費が二千六百円というふうなことになりますと、都市の平均労働賃金の千何百円よりはるかに有利というようないろいろなことを見ますというと、米の生産費が非常に不利に計算されておる現状だとは私は思いません。したがって、いまのような計算方式をとりながら、しかも需給状況を見て十年間くらいの間にいわゆるシグマの是正——是正といいますか調整ということをやるという程度のことは、農民に不利な計算方法をとっておるというふうなことは実際問題として私はいえないのじゃないかと思います。
  180. 田中昭二

    田中(昭)委員 予算の問題ですが、いわゆる客観情勢並びに政府部内としては財政硬直化というようなことを理由に総合予算というものが組まれたわけでございますが、今後どうしても補正予算というものは組まないのでしょうか。絶対組まないということでいくのかどうか。
  181. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 年度の途中で予算の補正をしないという方針のもとに今度の予算の編成をしましたたてまえ上、私は、予算の補正をしたくないというふうに考えておるわけであります。しかし、この間本会議で総理が言いましたように大きい災害とか特別予見しない大きい問題が起こったというときには、これはいまある予備費とかすでに配分している既定経費ではやっていけないという事態が起こったというときは別でございますが、そうでない限りにおいては、あらかじめ起こり得ることを予想して当初予算の中で配分してございますから、私は年度の途中で補正なしにやっていきたいという方針にはまだ変わりございません。
  182. 田中昭二

    田中(昭)委員 現在時点の客観情勢というものは、予想以上の多量の米も買わなければならないというような状態は予期し得ないものではないかかもしれませんけれども、これでもあくまでも現在の予算のワク内で値上げを見て、今後もそのままでいくのでしょうかどうでしょうか。また、今後予算を組む場合にも総合予算というたてまえをとっていくのかどうか。その二点だけもう一回……。
  183. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 本年度の予算編成のときにおきまして、あるいは政府買い上げが八百万トンこすかもしれぬということは一応は考えておりまして、ただ、昭和四十二年産の九百何十万トンというのは例外であって、過去の統計を見ますと、こんなに多く買った年はございませんので、過去における最高のものを見て八百万トンということでございまして、あるいはそれ以上になるかもしれないということは考えましたが、少しぐらい政府買い上げがふえても食管会計の中で赤字を出さずにやっていく方式は必ず得られるというのが当省関係者の考え方でございまして、したがって、私は合理的な両米価の調整ということによって赤字を出さなくて済む方式はあると思っております。     〔金子(一)委員長代理退席、渡辺(美)委員長   代理着席〕
  184. 田中昭二

    田中(昭)委員 経企庁のほうにお尋ねしたいのですが、総合予算主義を貫いた場合に消費者米価のスライドが考えられるわけですが、消費者物価の上昇率を前年に比較しまして四・八%ですか、そのような物価の政策面から見た場合に、これを四・八%で押えることができるのかどうか、お伺いしたい。
  185. 岩尾一

    ○岩尾説明員 四十三年度の政府経済見通しにおきます物価の上昇率は、いま御質問のございましたように四・八%でございます。そこで、この四・八%という消費者物価の上昇率の中には実は米価による上げ分というのは見込んでおらなかったわけでございます。算定の基礎といたしましては、これもよく御承知と思いますが、消費者物価というものはあるカーブでずっと伸びておりますので、一種の通俗語で申しますと、げたと申しておりますが、年度の初めから出てまいりますげたが三・二%くらいございます。これに対しまして例の公共料金、国鉄とかその他の公共料金による値上げ分が〇・四%と見込まれております。したがいまして、三・六は四・八の中で当然最初始まったときからもう上がっているということになるわけでございます。したがって、あと一・二の中でどういうふうに全体の物価を押えていくかということになるかと思います。ただ、昨年の上半期と下半期の物価の上昇を見ますると、いま申しましたように、上半期におきましてはわりと低くて下半期に高くなってきたわけです。その場合の主食の物価上昇に対する寄与率は一〇〇の中で上半期は一でございます。下半期は一九でございます。そこでやはり米価その他の主食の上げ率というものが全体の物価には非常に響いてくるわけでございます。したがって、大体現在の物価の情勢は、これも御承知のように四月が五・二でございます、五月が五・九、それから六月が五・六というふうになっておりますが、去年米価のまだ上がっていない段階と比べて前年対比で見ておりますから、いまの上げ方は非常に高いわけでございます。もし幸いに私らの主張しておりますように、この秋、消費者米価の上げを非常に小さくすることができましたならば、そのときには、去年の非常に上がった米価と比較をしていくことになりますので、物価全体の寄与率というのは主食の分は減ってまいるわけでございます。そこで、従来のこういうカーブから逆に反対のカーブになっていくのではないかということを実は私らは期待をしているわけでございます。  そういう意味で、ぜひ消費者米価は低くしていただきたいと思いますし、その基礎となります生産者米価についてもできるだけ低いほうがいいのではないかというふうに考えております。大体見込みといたしましては、その辺がうまくいけば四・八の中でいけるのではないかというふうに考えております。
  186. 田中昭二

    田中(昭)委員 大体報道するところによりますと、大蔵省では米の自由販売ですか、そういうことを主張しておられるようですが、これは毎年米につきましては政府も苦しい立場に追い込まれるわけで、いわゆる政府の生産者米価に対する積極的な政策ではないと思うのですが、そういう主張はどういうことでございましょうか。
  187. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いわゆる逆ざや解消ということがいわれておりますが、先ほど答弁がありましたように、いまの形では政府が十トン買い入れをしたら三十万円直ちに損が出るというふうに、もうそこに逆ざやが出ておりますが、そのコストの逆ざやではなくて、いわゆる末端逆ざやというのは、もう生産者が一たん政府に全部売っておいて、あらためて配給を受けるというほうが有利だ。こういう現象を呈しているということは、これは両米価の正常化がはかられているということはいえませんので、こういう傾向をいつまで置くということでございましたら、ますます政府への売りというものが多くなってくる。こういうことはもう必至であろうと思われますので、そうしますと、それらについていろいろ考える必要があるということで、この食管を持っておる農林省当局とも、私どもはいろいろ研究をしておるのでございますが、買い入れを制限するというようなことはこの制度の運営としてなかなかむずかしいということになりますと、そこで一部この特定のものを自由にするというような方法は考えられぬかというようなことも当然検討対象になることでございまして、それらもやっておりますが、先ほど言いましたように、まだ結論というものは出ていない。したがって、改善案の具体的な問題がまだ結論がついていないという段階でございますが、何らかの形でこれを改善する方法は講じなければ、食管制度そのものが崩壊するおそれがあるのではないかというふうに私は考えております。
  188. 田中昭二

    田中(昭)委員 この自由販売が具体的にどのような方法で行なわれるか聞いておきたいわけですが、どのような方法を具体的に考えておりますか。
  189. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 まだ全然、具体的なものを持っておりません。
  190. 田中昭二

    田中(昭)委員 そうしますと、大蔵省としてはこの自由販売でいわゆる農民生活の安定をはかるというようなこともお考えになったことはないのでしょうか。
  191. 相沢英之

    ○相沢説明員 自由米のいわゆる公認という考え方につきましては、ただいま大臣から答弁がございましたとおり、事務的にいろいろと検討いたしたことはございますが、まだ結論を得ておりません。  私どもの考えとしましては、現在食管法上は政府以外の者に生産者は米を売り渡すことはできないことになっております。したがいまして、非常にいい米をつくって、それに対する需要があるということで、食管を通さず直接需要者に売りたいと思っても、これは食管法上からいいますと禁止されており、また、それをすれば処罰されることになっております。ですから、そういうようにとにかく政府に売るよりも高い価格でいい米を買いたいという需要者があり、また、それをつくり得る生産者があるならば、それは生産者、需要者双方にとっても非常に都合のいいことである。両方の利益になることであるのだから、そういうものを認めるということを考えたらどうだろうということなのでありまして、したがいまして、自由米を認めるということは生産者にとっても有利になるだろうという考え方に立つものであります。  いずれにしましても、では具体的にどうやるかというような点につきましては、まだ十分な検討はいたしておりません。
  192. 田中昭二

    田中(昭)委員 生産者が有利になるということですが、自由化ということを考えてみた場合に、経済の原則からいいましても、自由化した場合には、いわゆる消費者米価はさらに上がるんではないでしょうか。その反面、生産者米価というのは押えられていくというような傾向になると思うのですが、その場合、あくまでも農民の生活というのは圧迫を受ける、こう思うのですが、いかがでしょう。
  193. 相沢英之

    ○相沢説明員 その場合に、もし食管への買い入れ数量を一定量に制限いたしまして、それ以上買わないというようなことになりますと、結局需給の関係でいきまして、食管で買う価格以下に、いわば投げ売りをしなければならないといったような事態が起こるかもしれませんが、そういう自由米というものを、食管の無制限買い入れというものを前提にかりに考えるといたしますと、少なくとも食管の、政府のきめる価格では幾らでも売れるという保証は残るわけでございますから、その点について生産者に特に不利になるということはないのではないかと思います。
  194. 田中昭二

    田中(昭)委員 総理は所信表明の中で、いわゆる総合農政を推進する、このようなお話がありました。これを背景に、政府は米価の決定の際には、いわゆる食管改正費ともいうべき農政推進費でございますか、百二十億をつける、そのような考え方がある。この百二十億の使い道なんです。これを話していただきたいと思います。
  195. 相沢英之

    ○相沢説明員 これは生産者米価というよりも、基本米価の決定関連いたしまして、いわゆるおそ出し奨励金をどうするかというような問題とあわせまして、なお政府・与党の間において議論されていることでありまして、したがいまして、この金額もまたその内容もまだ決定いたしておりません。
  196. 田中昭二

    田中(昭)委員 大蔵大臣、責任の一端のある大臣としてどうですか。
  197. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 農業政策を価格政策だけで遂行することは誤りであって、総合農政というものを推進すべきだということは当然だろうと思います。もしそうだとするならば、今度の米価をきめるときに、そういうはっきりした考え方をこの際農林大臣が打ち出した以上は、それについての予算における前進を見たらどうかというような議論が出ましたが、本年度はすでに予算がきまってしまっておるときでございますし、いま予備費があるといっても、ここでそれを使って、今年度の予算追加ということはこれは困難である。したがって、財政投融資の面においてそういう姿勢を示すことはよかろうということで、私どもも党との折衝のときに、この財政投融資の百二十億の準備は承知するということをしたわけでございますが、一歩この総合農政前進の姿勢を、来年度の予算措置を待たなくて、今年度から示そうという姿勢の問題であるというふうに考えております。具体的な内容は、そうきまれば、これからいろいろ検討する問題でございます。
  198. 田中昭二

    田中(昭)委員 いまのお答えの中で、予算における前進とかいうようなことをお聞きしたのですが、これはよくわかりませんから、済みませんがもう一回。
  199. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今年度の予算において、総合農政を推進するための予算追加ということでございましたが、これはすでに予算がきまっておりますし、予備費から支出をすることは明らかに不当でございますので、本年度予算をもって対処することは無理である、財政投融資なら百億前後の問題なら考えようということでございます。
  200. 田中昭二

    田中(昭)委員 では、予算の別な面から百億ぐらいは持ってくる、このように了解してよろしいでしょうか。
  201. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 まだこれはきまっている問題ではございませんで、そういう考え方が出たというだけの問題でございます。
  202. 田中昭二

    田中(昭)委員 農政推進費のかりに百二十億ということがきまりますれば、こういうことを政府が現在の食管制のもとに米価の安定をはかるためにやってきたとすれば、そういう形で行なわれるということは当然だと思うのです。ただ、米価の問題と別にこれはきまるべきである。その米価が一番問題になっておりまして、きまるものがきまらない、そこには国民のささやかな願いも踏みにじられたような政府と与党のかけ引きに終わっておるというような印象を深く受ける。このような決定の際に、こういうものを持ち出すということ自体が私はどうだろうかと思うのですが、その点はどうでございますか。
  203. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 総合農政の推進ということは、やはりもう少し早く取り上げらるべき問題であったと思うのですが、今度の米価算定を中心にしてこの問題が大写しになった以上は、今後の施策としてそういう方向への推進が行なわれるべきでございますが、問題が提起された以上、すでに本年度においても、もしそれが推進に役立つということであったら、財政投融資を準備してもいいではないかといま考えておるということでございまして、今年度はそうしましても、来年度からはやはり農業生産の基盤を強化するとか、生産性の低い部門の近代化というような点、構造改善の問題に相当今後力を入れていって、農産物の価格を引き上げるという価格政策で農業政策を推進しようという方向は、やはり徐々に是正していくべきだというふうに考えます。
  204. 田中昭二

    田中(昭)委員 農政推進費というものがいわゆる食管改正を取りつけるというふうなことなんですが、いまの大臣のお話を聞きましても、大蔵省としてもそのことについては前向きで積極的であるような感じを受けるのです。いまの食管制度を改正することは、稲作農家の心のささえというものを失うのではないか、そのように心配しておるのですが、このようなことをやるべきではない、こうも思うのですが、どうでございましょうか。
  205. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 先般私は自分の郷里へ行って、大多数の農実の人に集まってもらって、いまの食管制度というものと今後の農業の関係というようなことについて、われわれも研究するが、農村自身もこの問題を研究してもらいたいという問題の提起をしてきましたが、それらのいろいろな話し合いの中において、農村自身も私どもが想像する以上のことをやはり考えておって、新しい農政についての熱望というものは非常に強いという状況でございますので、いまある現行の食管制度の改善をするとかいうようなことが日本の農政を悪くするなんということは、おそらくいま日本の農村自身考えていないのじゃないか。私は、向こうの考えのほうがもっと進んでいることにびっくりして帰ってきたのですが、食管制度をちょっとでも改善することが農業に対してどうこうという考え方は、私は間違いだと思います。
  206. 田中昭二

    田中(昭)委員 郷里に行かれたことは確かによかったのじゃないかと思いますが、農民生活の安定をはかるということを中心に大蔵省は考えているか、それとも赤字を解消するということを主体に考えているのかどうか。いまのやり方ではどうも農民不在のような感じを受けるのですが、どうでしょうか。
  207. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 農政を推進させるためには、もちろん相当の国費を充てることが必要でございますが、その国費の充て方が、一つの制度の運営の合理化をはからないで、赤字というものを埋めるという形で農政費を支出するというようなことが効率的であるのか、そうでないので、同じ金を使うのならもっと農政にとって非常にいい金の使い方がありはしないかということも当然これから考えなければならぬ問題でございます。私どもは、ただ赤字があそこで出てはいかぬということではなくて、ああいう形で赤字を出すことが農政にどれだけ有効な金の使い方であるかというようなことも当然考えるべきだと思っています。
  208. 田中昭二

    田中(昭)委員 いまの食管制度を変えるというようなことは農民を追い出すような、農村の崩壊に拍車をかけるようなものだと思われるのですが、あくまでも政治は国民のためであり、大蔵省の赤字を埋めるためではないと思うのですが、どうでしょうか。
  209. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いま最後のお話ははっきりしませんでしたので、もう一ぺん……。
  210. 田中昭二

    田中(昭)委員 食管制度を変えるというようなことは農民を苦しめることになると思うのですが、あくまでも大蔵省は赤字を埋めるためだけそういう制度を考慮していくのかということなんです。
  211. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 当然農業のためにどうしたらいいかということを中心に考えるべきであって、政府の赤字を埋めるために考えておるわけではございません。  これは政府の意見でないからはっきり申しません。私個人の意見でございますが、たとえば政府が支持価格を置いて、これ以下に米価が下がったというときには政府が補償いたします、これ以上高かった場合には自由に売っていいという制度がもしかりにそこにできたとしたら、これは農民にとって損であるか得であるかということになりますと、なかなかやはり問題は簡単でない。食管制度だけが農民のための制度であるかということについても、私個人はこれから考えたいと思っておるのでございまして、食管制度即農民にとってはこれはもう動かすべからざるものであると考えることは、私はどうかと思います。
  212. 田中昭二

    田中(昭)委員 最後になりますが、ここでこうやって論議いたしますことは論議いたしますこととして、いわゆる行政の問題でございますが、私、行政の問題につきまして国会に参りましていろいろなことを経験もし、また、言ってもまいりました。本年の予算の審議の場合も、私から大臣に申し上げたのですが、ちょうどあのえびの地震のときに、災害地では困っておる、ですから税制の面でも優遇措置があるのだからすぐそれをしてはどうかというようなことも申し上げて、大臣並びに国税庁長官も、やりました、やりましたと言うのですけれども、事実はやらないのです。私は、こういう例を通しまして、ひとつ皆さんに聞いていただきたいと思うのです。また、現在の税制の中でも九・六・四とかなんとか批判されまして、公平であるべきものがなお不公平になっておる。税制の長期答申を見ましても、ただ論議のもてあそびみたいなものです。その中の一つをとってみましても、租税審判所というものを設定するような話も出ておりますけれども、なるほど中立的なそういうものも必要でしょう。しかし、そういうものを変えただけではひとつも大衆の求めるところとならない。私はあえて言いたい。その前に、いわゆる官僚といわれます、地方へ行けば部長以上、局長さんたちが、自分たちのやってきたことを振り返ってみればわかる、それじゃ、かりに転勤の場合に身分不相応のせんべつを返したことがあるか。そういうことと思い合わせて、いわゆる米の値段について政治加算とかいわれておりますが、そういうものが出るわけでございますけれども先ほど言いましたように、税金の問題ではいわゆる九・六・四といわれておりまして、給料生活者はたいへんな不服があるのです。  私は、ここでひとつ提案をしたい。予算の面から見ましても、源泉所得税は昭和四十二年度でも予算額よりも百六十一億ですか——これも当初、予算を組むときに私が収納歩合を一%上げなさいと言ったから上げた。それでもなお決算額は予算額よりも百六十一億の増加をしている。これを九八%のままにしておったら、一%ですからおそらく二百五十億ぐらい源泉徴収税額は歳入額を超過した額になっておる。ですから、税金を取るときも三年間ぐらい追徴するのですから、そういういわゆる余分に取った源泉徴収税額を、年収二百万円以下ぐらいの人に一ぺん返してやったらどうですか、政治加算のような意味で。まあいろいろ技術的な問題も考えなければいけないと思いますけれども、そうすることが主税局の予算見積もりにおいても正確を期する一端になるのじゃないかと思うのです。どうですか、全国の給与所得者が、二百万円以下だとすれば千八百万人ぐらいおりましょうか、それに二百五十億の金を一回くらい返したらどうですか。そういうふうに私はいま考えてみたのです。政府は国会でいろいろなことを論議しても、実際末端にいくときにはまるでうそみたいになっている。堂々とうそを言う。やると言ったのにやらないのですから。  まあ、それはそれとしまして、いま私が提案いたしました、千八百万人ぐらいの給与所得者に、百八十億あれば一人当たり千円平均ですから、一ぺん返してみたらどうですか。取り過ぎた税金ですから、どうでしょう。
  213. 吉國二郎

    吉國説明員 予算見積もり額以上に給与所得の源泉徴収税額があがったということは事実でございます。ただこれは、税法に違反してあがったわけではないのでございまして、当初の見積もり当時よりは賃金水準が上がったということから、あるいはボーナスがよけい出たということから当然出たものでありましょう。そういう意味ではほかの税目でも見積吃り以上に出ているということはございます。見積もりはあくまでも当初の予算でございます。これは先生一番よく御承知で、税法どおり税収というものはあがってまいるわけでございますから、そういう意味でたいへんおもしろい提案だと思いますが、実際的ではないのではないかと思います。
  214. 田中昭二

    田中(昭)委員 いいでしょう。主税官長、そういうことを言うならば、政府の機関が税法どおり取っておるか、税法どおり取ってないのですよ。例をあげましょうか。そういうことはわかっております。それは税法どおり取ったらまだあがりますよ。ですから、それはそれとしまして、そういう考えに対する——いわゆる政治加算ですから、特別報償金ですから、政治的にひとつ大蔵大臣の考えを最後に聞きたいと思います。これで終わりますから。
  215. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 できるだけ税法上の正しい徴税ということをするよりほかしかたがないだろうと思います。
  216. 田中昭二

    田中(昭)委員 そういうふうに主税局の役人さんが見積もってよけい取ったり少なく取ったりするのです。ですから、大体よけい源泉徴収なんか入ってきている。いろいろ不公平も云々されているのですから、よけい取ったときには一ぺんぐらい返したらどうですか。政治加算金としてどうですか。お米に政治加算をつけるのですから。税金というのはただ取って何も反対給付がないのですから、取られる者はほんとうにきついのですよ、私がここが言うまでもなく。ですから、二百億ぐらいの金があるのですから、よけいに取れたのですから、それを一ぺんぐらい返してみようというようなことを考えてみませんか、こう言っている。
  217. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 技術的にむずかしい問題でございますので、そうでしたら翌年度においてやはり所得税の合理的な減税ということをやっていくことのほうが実際的であるというように思います。
  218. 田中昭二

    田中(昭)委員 じゃ終わります。
  219. 田村元

  220. 村山喜一

    村山(喜)委員 時間がありませんので、大蔵大臣も何か外にトルコの大使とお会いされる時間があるそうですから私は、公務員の賃金の問題についてこの際お尋ねして、その基本的な考え方だけ大臣から明らかにしていただきたい。  それは、公共企業体の職員の人たちが賃金を決定をする場合に、当事者能力というものを持たせるべきであるということで、私、大蔵大臣と各公共企業体の労働組合の委員長と隣の部屋であっせんをいたしましてお会いさせたことがあります。そのときに大臣は、当事者能力というものを尊重をしていくということを明言をされまして、公共企業体の場合にはスムーズな解決ができた。しかしながら、国鉄の場合等においてはそういうような財源がありませんから、事業経費を一部食うような形の中でやらざるを得ない、こういうようなところまで踏み切ってもらいました。このことは、私は、公務員であるといえども、今日団体交渉権並びに罷業権というものが公務員法によって奪われております。しかし、基本的な労働者の権利というものは同じであります。そういうような立場から、今回人事院が八月十六日ごろに人事院勧告というものを出そうという情勢になってまいりました。  そこで、いま予備費が千二百億ある。その中で五百億が給与改善費だ。七百億は米価あるいはその他災害のために使うのだというようなことでいろいろ論議されております。総理大臣は参議院の委員会において、予備費の中に米価の問題については十分とってある、こういうようなことを言われて、いまそれは十分というのは行き過ぎだったというので議運を通じて取り消してもらいたい、いやそれはだめだというようなことでもめているようであります。そういうようなことからまいりますと、米価の問題がある、災害の問題がある、公務員の給与改定の問題がある。千二百億の予備費の中ではこれは消化ができそうにない。そこに総合予算主義云々という問題が出てきているわけであります。五百億の財源計算をしてみますと、八月実施からやっていくならば七・三%分しかありません。  そこで、私は大臣にお尋ねいたしますが、この段階の中において宮澤企画庁長官は、昨日の物価特別委員会において和田君に対して、所得政策の導入のような問題を公共料金の問題に関連をして話をした。それが新聞に大きく報道をされております。私がこの際、大蔵大臣にお伺いをいたしたいのは、人事院に対して政府がそういうような総合予算主義の立場をとっているからという立場の上から圧力をかけるというようなことはなさらないであろうと思いますが、その点はいかがでございますかということでございます。というのは、佐藤人事院総裁は、政府がそういうような政策をとろうが、われわれは公務員法に基づいて、民間の給与ベースが一二・四%もことしは上がっている、そういうような状態の中において公務員の給与はいかにあるべきかというような立場から、人事院勧告を出そうとしているのである、こういうことを言っておられる。だから、そういう総合予算主義という立場においてワクをはめていこうという考え方は、私は、大蔵大臣がこれを押しつけるべきものではないと思う。その立場は堅持してもらえるかどうかということが一つ。  もう一つは、先ほどお話をいたしました公労法の適用される労働者に対しましては、これは当事者能力その他を考えて適正な措置がなされたと私は思います。このことについては同じように、同じ公務に働く労働者でありますから、その公労法適用労働者並みにそれらの労働者の立場を尊重していくのだ、こういう基本的な原則というものは大蔵大臣としてはお認めになってしかるべきだと思いますが、その二点について大臣の所信を承っておきたい。
  221. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 団体交渉権を持たない一般公務員につきましては、人事院の勧告を尊重するということで対処するよりしかたがないことだと思います。人事院の勧告は尊重いたします。まだ勧告が出てまいりませんが、勧告が出てまいりましたら、その実現方について十分努力をするつもりでございます。  それからもう一つは、人事院の勧告を圧迫するつもりはないかということでございますが、これは圧迫するつもりはございません。総合予算主義というものについて圧迫を感ずるかという質問が前にあったときに、人事院総裁がこの席上で、圧迫を私は感じませんと本人自身が言ったぐらいでございまして、私どもが圧迫するとかいう考えは全然ございません。  それからもう一つ、佐藤総理の参議院の発言が問題になっていることをいま初めて知りましたが、十分ということを取り消すとかなんとかいう問題があるとすれば、それはそうかとも思いますが、あのとき総理が言った予備費というのは、いまの一般会計の予備費のことを言っている意味ではないと、私は聞いておって解釈いたしました。と申しますのは、当初予算において、まだ金額は予見できないが、あらかじめ二千四百億円を食管のために準備する。それから一方、公務員の給与のために千二百億円の予備費を準備しておくというふうに、当初においてこの資金配分をしてあると私が答弁したあとを総理が受けまして、いま大蔵大臣の言ったとおり食管にも予備費を用意してある、こう言ったので、この予備費というのは食管会計当初予算に繰り入れたことをさしたものだと私は思っておりましたが、おそらくそうだろうと思いますので、一般会計の予備費といまおっしゃられましたが、これは間違いではないかと思います。
  222. 村山喜一

    村山(喜)委員 一般会計の予備費の中から繰り出していくのだ、それには十分米の分はとってあるのだというふうに受け取れるような発言をなさっていらっしゃいます。そこに問題が出てきておるのだ、私たちはそう受け取っています。  そこで、いま人事院に対しては圧迫をかけるようなことはしない、人事院勧告が出たら実現ができるように尊重して努力をする。しかし、一つ抜けておりますね。公共企業体の労働者と同じように、公労法適用の労働者と同じような立場において尊重をしていただけるかどうか、このことを私は念を押して尋ねているのですが、その点ひとつお答えをいただきたい。
  223. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 そういう点を考慮して人事院が勧告すると思いますので、問題は人事院から出た勧告を尊重して実現に骨折ることをもって足りるんじゃないか、そういうふうに思います。
  224. 村山喜一

    村山(喜)委員 人事院は公共企業体の労働者の場合も考慮するでしょうし、民間の給与の上昇の場合ももちろん給与の原則として考慮するわけですから、私が言うのは、政府がその勧告を受け取ったあと尊重をするという中身について、公共企業体の労働法の適用を受ける労働者と同じような立場において考えていくという原則は、団体交渉権がなくても、あるいは罷業権がなくても、同じような立場において公務に携わっている労働者なのですから、考えていくというのが大蔵大臣としての当然の道ではないかと思うのですが、その点明らかにしてください。
  225. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それは、公共企業体と同じように一般公務員も考えるというのが当然人事院の職責でございますので、そこらを考慮した人事院の勧告が出るんじゃないかと私は思います。
  226. 村山喜一

    村山(喜)委員 私は、人事院のことを尋ねておるんじゃないのです。政府、特にさいふを預かる大蔵大臣として、公労法の適用を受ける労働者と同じような立場において処理をするという方針を、あなたはお持ちでなければおかしいんじゃありませんかということを私は言っているので、人事院が勧告の中にそれを取り入れるであろうということを期待しているのではありません。大臣、答弁を願います。
  227. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 しかし、公労法の労働者と同じようにやはり均衡をとった一般公務員の利益を人事院ははかるべき機関でございますから、そこらを勘案した人事院の勧告は政府は尊重するということによって、この問題は解決されるんじゃないかと思っております。
  228. 村山喜一

    村山(喜)委員 私が尋ねておる意味は、大臣おわかりの上でなおそういうようなお答えをされておると思いますが、私は、人事院勧告が公労法の適用を受ける労働者の賃金あるいは民間労働者の賃金の適用の反映をして、そして適正な勧告がなされる。それを受け取った政府としては、その勧告を尊重して実施されるわけです。しかし、その尊重して実施される場合には、公労法の適用を受けても、国家公務員法の適用を受けても、同じように公務に働く労働者なんだからという立場において、同じような立場で考えて処理を願いたい、そのことを、大臣のほうからそういうふうにしたいというふうなお答えを期待をしておるわけです。大臣答弁願います。
  229. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ですから、私も、おそらく人事院は一般公務員については公労法等の関係もあってこういう勧告をするという、均衡をとった勧告をしてくると思いますので、財政の許す限りその実現方に政府は骨を折るのが政府の仕事であって、これは政府からどうこうという案をつくるのではございませんから、人事院の勧告によってその実現方に骨を折れば私はいいのじゃないかと思っております。
  230. 村山喜一

    村山(喜)委員 政府から案をつくるのではないと言われるが、政府が案をつくって国会に提案をするのですよ。人事院勧告を受け取ったらそれを財源的にどうできるかできないかということを検討されるでしょう。しかし、その検討をされる際に——そうして国会に公務員の給与改正法案が出てくるわけです。これは内閣委員会で審議をします。その場合に政府原案としてお出しになる、その出し方の上において、私は公労法の適用労働者であろうが国家公務員法の適用者であろうが、同じような立場において考えていくという基本的な原則だけは明らかにしてもらいたい、こういうことを大臣に質問をしておるわけです。大臣、もう少し明快にその点できませんか。
  231. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いずれにしましても、近く人事院が勧告してくると思いますので、勧告してさましたらこれを尊重して極力実現方に努力いたします。
  232. 村山喜一

    村山(喜)委員 同じようなことを何回も聞くのはやめたいと思うのだけれども、その極力尊重してお出しになるそれは、やはり公共企業体の労働者と同じように、法律の適用は公労法の適用、国家公務員法の適用ということで違いますが、しかし働く公務の内容性というものからいえば、私は同じであるべきだ、こう考えるがゆえに、やはり公共企業体の労働者と同じような立場において善処したい、こういうことをどうして言えませんか。
  233. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いや、もうそれは当然でございますが、政府も同じような立場にというのではなくて、まず一般公務員のこういう問題の擁護者が人事院でございますので、そういう関係は当然そういう立場に立って人事院が政府にこうせよという勧告をしてくるものと私どもは期待をしておりますので、その勧告を尊重して実現に努力するということで、それでいいのじゃないかと思うわけでございます。
  234. 村山喜一

    村山(喜)委員 当然だとおっしゃた、また、その当然だという気持を受けて人事院が勧告をしてくるであろうということですが、私はそこに、極力尊重するとか財源の許す範囲内とかそういうことばが出てくるところに、同じような処理を今日までなさっていない、そこに問題があるのだということを言っているわけです。人事院勧告が今日まで完全に実施されたことがないわけです。ところが、公労協の場合は、昭和三十二年以降ですか、これが完全に仲裁裁定のとおりに実施をされているわけですね。それはよって立つ法律の根拠は違いましょう。しかし、少なくとも大蔵大臣としては、この公共企業体に働く労働者といえども、あるいは国家公務員法の適用を受ける労働者といえども、その本質は、働く立場というものはいわゆる公務性というものによって縛られている人たちであり、同じような公務に携わっている労働者なのだ、こういう認識をお持ちいただきたい。それによってその人事院勧告というものを完全に実現をしてもらいたい、こういうことで、このような角度から大臣にお尋ねをしているわけです。  もう時間が来ましたが、大臣、その公労法の適用労働者と同じような気持ちで対処されることは間違いございませんね。
  235. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 何かこだわるようでございますが、政府は、いままで公務員のそういう立場を勘案し擁護して人事院から勧告があっているということでございますから、人事院の勧告の中にはいまおっしゃられたような原則がみな入っておると私ども思いますので、人事院から勧告が出ましたらこれを忠実に実現することに骨を折りたいということでございます。
  236. 村山喜一

    村山(喜)委員 もう押し問答をしておっても時間は幾らでも過ぎてしまいますから、これでやめます。しかし、私はやはりそういうふうな原則性というものは明らかにしておかなければならぬと思うのです。そうでなければ、同じ公務に働く労働者の中に差別があるということは、これは間違いだと思います。そういう立場で大臣が善処されることを要求して、またそのときになりましたらこの問題についてやりたいと思います。一応原則だけ——残念ながらあまり明らかになりませんでした。政府の見解をお尋ねしたのでございますが、大蔵大臣がもっと前進した答弁をこれからされることを期待をしております。
  237. 田村元

    田村委員長 平林剛君。
  238. 平林剛

    平林委員 時間の関係もありますから、なるべく私、意見を言わないで、ずばりずばりお尋ねしますから、大臣のほうでも、なるべく私の意のあるところを察して、実のある答弁をしてもらいたいと思うのであります。  最初に、税収の見通しについてお尋ねをしてまいりたいと思うのです。今後の経済成長のいかんによりますけれども、最近の経済情勢あるいは今後の見通しの上に立ちまして、大臣としてはどの程度の税収の伸びを期待をしておるかということをまずお尋ねいたしたいと思います。
  239. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今年度の税収の見積もりをいたしますときに、相当どもは目一ぱいの収入の見積もりをあの当時はしたつもりでございますので、あの見積もりの税収だけはぜひあれしたいということをいま期待しているところでございます。
  240. 平林剛

    平林委員 大蔵大臣は、私は、政治家としても、また大臣の今日までの業績からいたしましても、尊敬をいたしております。したがって、きょう言ったこととあした言うことと違うことはないと私は考えるのでありますけれども、そういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  241. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 御承知のように、昨年度は税収で予想どおりではなくて、十七億か少なかったという例がございます。去年の見積もりよりもことしの見積もりは相当きつく、いわゆる総合予算主義というものをやりました以上は、予備費も充実しておきたいとか、食管にも事前にできるだけの繰り入れをしておきたいというようないろんな要請がございましたために、相当税の見積もりはぎりぎり多目に見ているというような事情がございましたので、私はやはり税収はそう楽観できないのではないかと思っております。ただ、経済状態から見ますと、九月の決算があるいは当初思ったよりいいのじゃないかというようなことも考えられますが、しかし、四月からきょうまでの歩合を見ますと、昨年の同期の収入歩合より予算に対する収入歩合が下回っているという状態でございますので、いまの程度のことをもって自然増は相当多いだろうというような結論をすることは、まだとてもできませんし、私はそうことしの税収をいまのところ楽観しているわけではございません。
  242. 平林剛

    平林委員 税収の見通しについては、まだ時期は私は早いと思いますけれども、去年の場合でも当初七千億円か八千億円くらいの自然増収を見込んで、結果的に見れば一兆円ですから、見込みよりも一兆数千億円多かったわけですね。ことしは確かにいまのところ法人税だとか酒税だとか、あるいは石油ガス税、物品税において昨年の同期と比べるとかなり低まっていることは事実ですけれども、今後の経済情勢その他を見ればどの程度期待できるかという率直な見方を聞きたかったわけです。もちろん昭和四十三年度に四兆八千六百億円からの税収を見ていますが、この程度がぎりぎりだということがあなたの率直な見解だとは私はちょっと受け取りがたいのです。最初から申し上げたように、私はずばりずばりお尋ねするから、実際に腹にあることを言ってもらいたい。そうすれば、時間の節約にもなるから、そういう意味で言っておるのですけれども、いまのお答え程度ですか。
  243. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 予算編成のときにそうで、もう少し税収が見込めないかといって、税収はほんとうにぎりぎりに見積もられたというのが実情でございまして、当時の主税局長おりますから、それからお聞きくだすってもけっこうでございますが、私は、この税収のことし余裕のある見方を当初予算においてしたというふうにいま思ってはおりません。
  244. 平林剛

    平林委員 いや、まあこれはとことんまで追い詰めても、結局は見通しの問題ですから、議論が分かれると思います。しかし、先ほど私ちょっとお尋ねしましたけれども、かりにことしの税収の伸びが今後特に九月の決算期の見通しがついてまいりまして、かなり上目に見たけれども、それ以上にまた予期せざるところの収入増加ということがあり得ないとはいえないと思うのです。しかし、かりにその伸びが昨年と同じ程度に一兆円くらいあったと仮定をいたしまして——こんなにないかもしれない。とてもそんなのはいまでは無理だというのが、あるいは現実的な数字を見る人の常識かもしれません。しかし、私はかりに一兆円程度の税収の伸びがあったとしても、これらのいわゆる当然増というのがどのくらいあるかといえば七、八千億円はあるだろう。当然増が七、八千億くらいあるだろう、こういうふうに見れば、新しい新規政策をやる上におきましても、あるいは今後いろいろな各方面からの要求を取り入れるためにも、私はいまの程度のあなたのお考えでは来年度の予算編成のときはかなり苦しい。政府が考えられております財政の総合予算主義をとると一か、あるいは公債発行の縮減をはかるとかということと、今日までいろいろ考えられていることと考え合わせて見ると、かなり苦しい、こういうふうに思われるのですけれども、念のために伺います。
  245. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私もかなり苦しいと思っております。現に国債もできるだけ減額してくれといういろいろな要望も現在出てまいりましたが、税収の見込みがはっきりしないときでございますし、そういう問題とからんで、昨年はいまごろ国債の削減ということをやりましたが、本年はそれもやれずにいま様子を見ているという段階でございまして、これも税収について十分の見通しがあるのなら、やはり少し国債を減らすという政策をとりたいと思うのですが、この見込みがつきませんので、これもまだいまいろいろ考慮中というようなことから見ましても、私は非常に楽じゃない、苦しいと思っております。
  246. 平林剛

    平林委員 そこで、昨日もわが党の只松委員から、明年度の税制改正あるいは税制調査会の答申について、政府のこれに対処する考え方をお尋ねいたしまして、大臣がお答えになりました。私は、先ほど言いましたように、大臣のお答えというのは、きのう答えたことときょう答えることとは違わないということを前提にして、これからお尋ねしたいわけです。大蔵省のほうも、大臣が言ったことはそれをひっくり返すような考えではない、やはり行政の立場にある者は、大臣が言われたことはそういうふうに努力をするというふうに、私、理解して聞きます。いや、おれは違うんだという人があったら手をあげて発言してもらいたい。——いないようであります。私、それがあたりまえだと思うのです。  そこで聞きます。現在の税収の伸びに対する見通し、それから今後予想されるところの当然増、いろいろなことを考えると、かなり予算編成そのものも苦しい。それならば、たとえば税制調査会の答申に基づくところの最低限度額の引き上げ、税率の緩和、こういうことをかりにここ二年間の間に行なうとすれば、まず少なくとも二千億円あるいは二千五百億円くらいの財源が必要になってくると思うのであります。この場合に、大蔵大臣は昨日の御言明のとおりと私は思いますけれども、実際上は財源のやりくりがかなり苦しいことになる。そこで、あなたは自分の言ったことを実現させるためにはどうするかという問題になってくるわけですね。たとえば減税に要する経費を考えられます場合に、去年と同じように酒とかたばことか物品税とかそういうものの増収をはかって、われわれが非難をいたしました実質減税ゼロというような形をとるのではないかと私思うのであります。そういうことを考えますと、政府の方針というのを少し聞いておきたいと思うのでありまして、結果として増減収の差を生じないような減税のやり方、つまり昨年と同じようなやり方でいくのか、あるいは、いやそうでなく、ことしはいろいろな批判があったから、実質的な減税をやるつもりだというお考えでしゃべっておられるのかどうか、その点をはっきりさしてもらいたいと思います。
  247. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 まだ来年度の税制をどうしようかということは、これから政府で作業する問題でございまして、いまのところ来年度の問題は全然方針もきまっておりません。
  248. 平林剛

    平林委員 きのうあなたがお話しになったことを前提にして私はものを言っておるのです。
  249. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それは、きのうは考え方の問題として御質問がございましたので私の考え方を言ったわけでございますが、税制調査会においても、経済及び財政事情によって各年度別の減税案というものがつくらるべきであるという考え方から、年次を指定したり、どうこうした答申ではございません。当然だと思いますが、私の考え方は、従来ここでいつも申し上げておりましたのは、あと二年間で少なくとも百万もしくは百万以上に課税最低限を引き上げる、その仕事をしてからそのあとで税率を調整するとかという問題に、三年目がそういう仕事に入るかというのが私ども考え方でございましたが、これをそういうふうに年度別に内容別に分けるというと、減税案としてはあまりいい姿にならぬということを考えまして、できるだけ最初は課税最低限の引き上げだ、その次はどうだというふうな分け方ではなくて、何とかこれを一緒に考えた案をつくりたいということを申したわけでございます。きのうの私のそのときの考え方、二年かかるか三年かかるかということでございましたが、皆さんに二年と受け取られてしまったようでございますが、いずれにしろこれを一緒にやる場合には相当財源を要する問題ですから、はたしてこれが二年でやれるかどうかという問題も残りますが、いろいろなくふうをしてなるたけ早く税調の答申、あの姿までは持っていきたいというのが私の考え方です。しかし、まだ来年度の財政の見通しというようなものもいま全くついておりませんので、これをやるにしましても、いろいろなやり方があると思いますから、これから研究するつもりでございます。
  250. 平林剛

    平林委員 昨日言われたことは、あなたの政治家としてあるいは大蔵大臣考え方として、私はこれを尊重して実施をしてもらいたいと思っておるわけだし、それを取り消すべきではない、役人がそれに反対してひっくり返すようなことは起こすべきではないということを申し上げておるわけです。しかし、いろいろなくふうという中に、昨年と同じように他の間接税の増徴とか、その他の増徴を考えて、そうして減税をやるつもりなのかどうかということを聞いているのです。いまいろいろなくふをしてやるということには、私が国民とともに心配しておるそれが含まれていませんかと聞いておるわけです。
  251. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いまのところ、さっき申しましたように、まだこれからの問題でございますので、何とも言えませんが、やはり大きい減税をやろうということになりますと、また、来年度の公債の発行額というような問題とも関連してくるでしょうし、それは結局、来年の経済及び財政状態を見てからの問題ということになりますので、ここらのからみ合いで減税案というものも具体的にきまると思いますので、いまのところまだそこまでは何とも申し上げられません。
  252. 平林剛

    平林委員 まあきょうは時間もありませんから次に移りますが、この場合、財政の硬直化を打開するというのが現在の政府の基本的な考え方になっておるということを私どもしばしば聞いておるのですが、昨年の本会議におきまして私が社会党の代表演説をやったときにも、しかし財政の硬直化、硬直化というけれども、税収の面において取れるべき税金を取らないところにも問題があるということを私申し上げたことがあるわけであります。今後、私は国民全般に負担をかけるような税の増徴というよりは、むしろいままで安易に考えておって、そうしてまた、一つの既得権化された中において温存さしていたところから税収を確保するという考えをいよいよことしはとっていかなければならぬと思うのであります。  そこで、取れるべきところから税金を取るというたてまえからいきますると、第一に浮かびますのは、租税特別措置につきまして、その効果を不断に検討せよと税制調査会も言うておるのでありますから、何らかの具体的な計画をもってこの答申にこたえるという政府の積極的態度がなければならぬと思うのであります。大蔵大臣としては取れるべきところから税金を取るというたてまえから、その一環として租税特別措置について具体的な検討に取り組む意思があるかどうか伺いたい。
  253. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 特別措置につきましては、来年度期限が来る特別措置が三十七件あると思います。当然それをどうするかというようなものの検討を中心にこの特別措置検討もいたさなければならぬと思っております。来年とにかく期限を延長するかどうかという問題、国会に政府の考えを出さなければならぬという問題が三十七件もあるわけでございますから、全般的に来年度の減税案とからんで検討したいと思っています。
  254. 平林剛

    平林委員 期限の来るものだけでなくて、租税特別措置全般について積極的にその効果を確かめながら縮小していくという積極的な態度を政府がとることを私は望んでおるわけであります。  それからもう一つ、この機会に聞いておきたいのですが、私は、最近の社会生活全般から見て、あるいは国民感情から見て、広告費、それから交際費、こうした問題についてはかなり真剣に取り組む必要があると考えておるわけであります。交際費につきましては、しばしば当委員会において議論があって、政府においてもある程度取り組んで、その改正を提案をしておりますが、しかし、なお引き続いて、この問題については再検討する必要があると私は考えております。  それから同時に、広告費であります。これもことしあたり年間四千五、六百億円からの広告費が各企業——これは営業上、企業利潤をあげるために必要な手段の部分もあるでしょうけれども、しかし、国民感情から見ますと、ややはんらんし過ぎておる、むだな面が多いという批判が一向に消えておりません。私は、広告費と交際費、この性格が一体どういうものであるかということを考えてみましても、この際、広告費に対する規制というものは必要でないだろうか。この間も私、申し上げたのでありますが、たとえば、いまわが国の広告費を多く使う代表的な企業を調べてみまして、大正製薬が総売り上げ高の一六・一%を使っておる。それから資生堂も一二・一%を使っておる。藤沢薬品で一二%、田辺製薬が九・七%、武田薬品が八・四%、塩野義が五・七%、三共製薬が五・五%というぐあいに、比較的製薬会社、化粧品の部面におきまして、広告費の割合が売り上げ高に比較いたしまして高い。一番高いのはコカコーラでありまして、これは私、この間も言ったんだが、二四%を占めておるわけであります。このことは、ビール会社でも広告費はかなり使っておりますが、それでも総売り上げ高に比べれば、朝日の場合で二・〇%、サッポロで一・四%、麒麟で〇・六%というぐあいに、売り上げ高から見ますと割合が低いのであります。しかし、広告費をどういう形で規制していくかという場合に、ある一定の売り上げ高に対する割合というものを見て、この程度はどうであろうか。たとえば五%なら五%に切る、それ以上については課税の対象にしますよというやり方で広告費のはんらんを防ぐというやり方もある。広告は、何もテレビでもって子供が見て、それでいつの間にか子供までそれを覚えてしまうというほど必要はないと思う。選挙の連呼じゃあるまいし、同じことばかり繰り返すという、そればかりが広告ではないと私は思う。やはりある程度の広告費の制限があれば、いいアイデアを使って、これはいい広告だなあと相手を振り向かせたり、意識させたりするというやり方も、そういう規制の中から生まれてくるのではないだろうか。こういうことを考えますと、私は税収の確保という点から考えても、広告費についてはある程度規制検討する必要があると考えておるわけであります。大臣のお考えをお聞きしたい。なお、政務次官は、私のこの質問につきまして検討する価値がある問題だとお答えしていただいておりますので、念のため。
  255. 吉國二郎

    吉國説明員 かなりこまかい問題でありますので、私からお答えいたします。  広告費の問題は、前々から御質問も受けておりました。ことに交際費との関連で一つの問題があることは事実だと思います。元来、法人税のたてまえから申しますと、交際費にいたしましても、広告費にいたしましても、本質は事業の総損金に算入されるべきものでございますが、御承知のとおり、交際費につきましては、そこの中に社用的な消費が含まれておるということが強く指摘されまして、そして、いわば国民的なコンセンサスになったというところから、会社自体も、新生活運動というようなことでこれの規制に乗り出すということがございました。反面、昭和二十九年から、税制上もその一部を否認する。この場合に、最初のやり方といたしましては、御承知のとおり、業種別にパーセンテージをきめまして、そして是否認をきめたわけでございます。ところが、実際上社用的な消費が入っているとは申しながら、業種別には非常な差がございまして、そのために現在のような形に変わりまして、つまり、一般的に交際費の一定割合を損金に算入しないことにする。そして、それをだんだん上げてまいりまして、現在は五〇%、しかも一昨年の改正におきまして、前年よりも五%以上交際費を使用した場合には、その増加分は全額損金不算入であるという制度をきめたわけであります。  一方、広告費も、やはり企業の総損金、つまり企業の純益を最大ならしめる一つの努力の形態でございます。法人税本来のたてまえから申しますと、やはり損金だと思います。もちろん、広告の中に行き過ぎたものがあるというようなことはしばしば指摘されるわけでございますが、本質的には利益を最大にすればそれだけ税もよけいになるわけでございまして、それにさらに広告費を否認する根拠は、一般法としては出てこないのでありますが、特別措置としては、交際費と同様に考える面があるのではないかということも、御指摘の点も確かに認められると思います。ただ違いますのは、交際費の場合と違いまして、広告費は実際に社用消費的なものは——行き過ぎの点あるいは不当広告という面は非難されましても、それが社用消費に回っているという面は非常に少ないと思います。そういう面では交際費と扱いがかなり違ってきてもやむを得なかったのではないかというふうに思います。  また、広告費の規制を一律にいたしますと、さっき御指摘がございましたように、業界としてその製品のPRが不可避的なものと、ビールのようにだれでもわかっておるというようなものとはだいぶ違いますので、一律な規制をすることによって、各種業界に対するアンバランスの税負担を課するという結果にもなりかねない。さらに広告費は、新しく発足する産業であるとか、あるいは新製品の開拓という面に非常に大きな働きをいたします。これを一律に規制をいたしますと、既成の産業のほうがより有利になるという問題もございます。  そういうような面をいろいろ考え合わせて、この問題は検討しなければならぬということでございますので、私ども十分検討に値する問題だとは思っておりますが、交際費と全くパラレルに考えることは無理ではなかろうかという感じがいたしておるわけでございます。
  256. 平林剛

    平林委員 私も、いまお話しになったようないい面、悪い面はいろいろ選択してものを言っているのです。これはもう十分勘定に入れて言っているのです。しかし、今日の状態からいいますと、企業の占める広告費の割合というものは、結論として、一定限度制限をしていくという考え方をとるべきだというのが私の結論なんです。大臣はこれについてどうお考えになるか、それをお聞きしたいと思います。
  257. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これは毎年の税制改革のときに問題になって、交際費と一緒に始終この問題は検討されておりましたが、いま局長が言ったような問題で非常にむずかしく、一律にやることは不公平でございますし、これを規制することはいろいろな問題がありまして、とうとういままで広告費の問題だけは結論がつかないで、技術的にむずかしいということでそのままになっておりましたが、実際問題として、私は、広告費の規制ということはむずかしいんじゃないか、同一業種については広告費の割合が経費のどのくらいまではどうしてとか、何かよほどこまかい実施案でもできない限りは、これを各企業にアンバランスを起こさせないような形でやることはむずかしいと思いますので、今後研究はいたしますが、とにかく、いままでずいぶんやって結論が出なかったことは事実でございます。
  258. 平林剛

    平林委員 私は、これは技術的なことよりもやはり政治的な判断が必要だと思っておるんです。そういう意味では、これはいままでできなかったからということではなく、引き続きやる必要があるというお考えに立ちまして、政府において検討してもらいたいと考えております。  きょうはまだ二、三用意してきた質問があるんですけれども、時間がないからまたゆっくり適当な機会を見つけてやることにいたしまして、これで質問を終わります。
  259. 田村元

    田村委員長 午後六時三十分再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後五時十二分休憩      ────◇─────    午後六時三十七分開議
  260. 田村元

    田村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。渡辺美智雄君。
  261. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 農林大臣、たいへんお疲れのところを御苦労さんでございます。  先ほど大蔵大臣とのやりとりの中で、私はこういうことを申し上げたわけです。要約いたしますと、今回は総合予算、総合予算ということで、非常に大蔵省経済企画庁ベースによって農林省が押えつけられた、だから、結局あなた方が米価の問題をこういうように混乱をさせるというか、いろいろ農政問題についてもやりづらくしたというような責任の一端があるのじゃないか、こういうような意味であります。ところが、大蔵省のほうは、三閣僚間で意見の食い違いはありません、そうして総理・総裁とも意見の食い違いがないと思いますと、こういうことを言ったわけであります。つまり、農林省が言ってきたように私のほうは認めております、こういうことでありますが、それにしても今回の二・九九というような諮問案というものは、われわれからすれば非常に生産者というものを押えつけた米価だ、こう思っておるのだけれども、少なくとも農林大臣は、これは農民の代表みたいなものであります。立場によって、何といっても、大蔵省とけんかをしてでも、経済企画庁とけんかをしてでも、農民の利益というものを守ってやらなければならない立場だ。その農林大臣が、大蔵省と意見の違いがなく、しかも反対もされないで、あなたの言うとおり最初から二・九九、こういうことだったのですか。その点をひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  262. 西村直己

    ○西村国務大臣 政府試算の問題だと思うのでございます。  御存じのとおり、政府の試算は、つくります前に米価審議会に対して——この構成についても国会で御議論があったわけです。この問題はさておきまして、諮問をするという場合に、三閣僚集まりまして、いろいろ、本年度の生産者米価のあり方につきまして、数回寄りまして、基本的な意思統一をしばしばはかったことは事実でございます。そしてその中において、従来とりました方式というものは、生産費・所得補償方式、これはとってまいる。それから積み上げ方式もとってまいろう。ただ、その中で、二、三の修正の方式につきましてはいろいろな意見の交換があって、経企庁には経企庁なりの御存じのような渋い案も、意見もあった。それから折衝の経過においては、大蔵省大蔵省なりの立場もあったでしょうが、最終的には、私どもは私どもなりの意見というものが出るわけです。そして、それらの抽象的な方法をもとにしまして、作業は一応農林省のほうでやるわけですが、最終的にはああいう案が、政府内部としては参考の試算として出た。しかし、あくまでもこれは一つの参考試算でありますから、その後において、もちろん党においても生産者の意向を十分持っておられることですから、高度の政治判断のもとで私どもは最終決定をしたい、こういう意味で私は処してきたわけであります。
  263. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 そうしますと、結局二・九九というものは参考の試算にすぎない、こういうことで、必ずしもそれには拘泥をしない、高度の政治判断によってきめられる場合はそれに従う、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  264. 西村直己

    ○西村国務大臣 これは、非常に高度の政治判断まで入れるにはまだゆとりは多少持たなければ、党と政府が一体になって最終決定をするという責任を持っておりますから、その意味で、私どもとしては一つの合理性を持った案だとしては出しております。しかし、最終的には党と十分意見を交換の上で、もちろん法律面では政府の責任で決定をする、こういうふうな手続をとりたい、こう思っています。
  265. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 ときどき農林大臣ぶっそうなことをおっしゃるので、私びっくりするのですが、この前、朝日新聞によると、われわれ米価の問題で一生懸命やる議員は、ベトコン議員で極刑に値する、名前をあげて死刑に値するやつだというようなことをおっしゃったそうであります。それはそれで、そんなことは言わない、そういうことは全然言った覚えはないというようなことなので、農林大臣を信用しておるのですが、いまだに新聞の取り消し記事も出ておらぬというようなことを見ると、実際言ったのか言わないのか、そこらのところは水かけ論になるわけでありますが、朝日新聞はたいてい間違ったことを書くと取り消してくれるのですがね。私は間違ったことを聞いたようには思っていないのですが、取り消されないところを見ると、やはりおっしゃったのがほんとうじゃないか、なかなかぶっそうなことをおっしゃるというふうな気持ちがする。  ところが、今回この二・九九が倍以上になる場合は、農林大臣辞職をなさるというようなことが巷間伝えられております。その真相はよくわかりませんけれども、農林大臣は、いまのお話を聞いておるというと、必ずしもそういうふうな御意見でないようにもとれますが、二・九九の倍以上には絶対にしない、倍というと五・九八ということになるのでございましょうが、それ以上は絶対に死守するのだというようなことも言われておるわけであります。三閣僚、何か辞表をふところにして云々というような、そういう話し合いはあったのですか、なかったのですか。
  266. 西村直己

    ○西村国務大臣 私の言動について御注意がありました。これは私、釈明を申し上げれば時間をいただいて釈明していいのでありますが、それは別として、私自体が、いまの二・九九は一つの合理性を持った政府としての統一意思で参考として試算して出した。しかし同時に、党との十分な話し合いをして、そこに最終的には政治的な、しかも正しい判断で適正米価を求める。それ以上どうするということについて、私は何ら別に意見を持っておるわけじゃありません。
  267. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 これで農林大臣がやめないことがわかって私も安心をしたわけなんですが、また一説によると、米審の中立委員とかいう、われわれからいうならば、中立委員よりも御用米審じゃないかというような気がするのでありますが、それらの方がやめられるのではなかろうか、非常にそういうことを気にされて、中立委員が辞職をされると困るというふうな点から、ばかにまた、皆さんの米価の試算を直すということについて、ちゅうちょをなさっているというふうな話がありますが、私はおやめになるのならおやめになってもらってけっこうだと思うのでありますが、農林大臣、御意見いかがですか。
  268. 西村直己

    ○西村国務大臣 私の出処進退は私自体が考えることでありまして、何らいろいろなことば申し上げる必要はないと思います。問題はただ、二・九九が合理性があるが、しかし、それに対して強い他の要望もあります。そこいらも十分政治の立場から勘案をして最終的には決定をしたい、これだけはいまの段階で申し上げられるわけであります。  米審につきましては、御存じのとおり答申において、あの案自体については現状においてはやむを得ない、ただし、これを変更する場合には、いたずらにただこれを直すのではなくて、理由をはきりっして直していくという、理由を明らかにしてもらいたい、これが答申の中に入っております。
  269. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 理由を明らかにすれば、もちろんいいということもわかりました。党のほうでいろいろな要求を出しておるわけですが、それは理由が明らかでないというのですか、それとも理由はあるのだけれども、のめないというのですか、その点はどういうわけでしょう。
  270. 西村直己

    ○西村国務大臣 党とはまだこれから、国会が済んでからさらに十分意見を折衝しよう、こういうふうになっております。これは御存じのとおりであります。
  271. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 いままでもずいぶん交渉して、別に私がここで発言しなくても、新聞に全部出ていることですから、出てなければないしょにしておきたかったのですが、どうせ新聞に出ちゃっていることですから、いまからそうひた隠しに隠してみたところでしかたがない。小委員会は御承知のとおり七・一の値上げ案というものを出しておるわけです。それで最高機関の総務会においては二万一千円台というような米価というものが決定をされた。これの内容については、時間がありませんからくどく申しませんが、理由がないというのですか、それとも認めるべきものは相当あるというのですか、その点はどうでしょうか。
  272. 西村直己

    ○西村国務大臣 党との関係は、御存じのとおり内部の関係であります。したがって、お互いにまだ十分最終的には意見が詰まってないのでありますから、私は、それに対して、いまこの席を通してはかれこれ申し上げる段階でないと思います。
  273. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 そうすれば白紙——白紙ということもないだろうが、一応新聞に出ておる程度のことまでは認められる、それから先についてはまだ白紙である、かように解釈してよろしゅうございますか。
  274. 西村直己

    ○西村国務大臣 一応合理性を持ったものとして、政府側では試算を参考として出しておる。しかし、それに対して党側と意見を交換して、これを最終的に政治判断をしたい。その間にいろいろな意見がお互いに出たことは、すでに御存じのとおりであります。あくまでもこれは内部の問題でありますから、まだこれを最終決定しない段階においては、これがいいとか悪いとかいうことは、私、公式にはまだ発言できない段階でございます。
  275. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 ともかく時間がないものですから、このことであまり押し問答しておったのでは困りますので、この程度にいたします。  次に、食管の問題でありますけれども先ほど大蔵大臣ともやりとりをしたのですが、農林省はばかに総合予算主義というのにこだわっておる。しかしながら、一方において公務員のベースアップというものは予備費の中で組んでおる。しかも、勧告いかんによってははたして五百億円でおさまるものやらおさまらぬものやら、これだってわからない、こういうふうな状態であります。おさまらぬということになれば、そこで、前に言った予備費の中から支出というようなことにも変わってくるのではないか。なおかつ、食管問題にいたしましても、ことしは二千四百十五億というような食管の繰り入れ額というものを組んでありますけれども、この「食糧管理特別会計予算について」ということしの七月に農林省の食糧庁がつくったパンフレット、説明書ですか、これは米審に出したものだと思いますが、そこで、「総合予算主義の採用と食管予算」というようなことが書いてあります。一応総合予算のことに触れてありますが、その中でこういうことが書いてある。「年度途中の変動要因をどのように見込むかということは、食糧管理のような農産物の売買を行なう事業にあっては、きわめて難かしい問題を含んでいる。」ということは、これは、そうは組んではみたものの、現実問題として、そう尺度ではかったようなわけにはなかなかいかないという意味ではなかろうかと私は考えております。  それと同時に、こういうこともまた書いてある。「検討の結果、四十三年度は、一般会計から食糧管理特別会計調整資金への繰入れは、前年度の補正後の繰入れ額と同額の二千四百十五億円とし、両米価は据置きで織り込むこととしたのである。」ところが、現実の問題として、両米価は据え置きということは、これはすでに破れております。たとえ何%上がるにせよ、農林、大蔵、経済企画庁が相談して二・九九という試算をしたということは、両米価据え置きという思想じゃない。そうなってくると一体どうなるのか。  そこで、この中には、「そして、これをもって追加繰入れの予算補正は行なわず、年度途中において損失増加をもたらすような変動、例えば、生産者米価の引上げというような事態が生じても、それは、食糧管理特別会計のなかで処理するということとしている。」生産者米価の引き上げ「など」とは書いてない。「生産者米価の引上げというような」ということは、この言外にあるものは、つまり八百万トンに見積もった政府買い入れというものが、それ以上にふえるという場合は、これは想定をしてないというようにとらざるを得ないのであります。  しかもまた、別なページにはこういうことが書いてある。「四十三年度は二千四百十五億円の損失、」これは食糧管理特別会計のことであります。「四十二年度は二千四百六十九億円の損失ということになる。繰入れ額は同額の二千四百十五億円であるが損失は四十二年度の方が五十四億円多い。四十二年度は、この損失額と繰入額の差額については、前年度から持越した調整資金の残六十五億円のうちから取り崩して処理している。この点、四十三年度は、前年度からの持越残は十一億円しか予定できないので、一層余裕がないわけである。」こういうことが書いてある。これは事実そのとおりかもしれない。しかしながら、少なくとも予算を組むときに、八百万トン以上予定してなかったということはまぎれもない事実であります。  別なページ、三〇ページをめくりますと、「買入および売渡の数量については、四十二年産米は、史上未曾有の豊作に支えられ、九百八十二万トンという想像もできなかったほどの大量の買入れが行なわれたが、」いいですか、その次に、「四十三年産米は、これを、八百万トンと見込んでいる。これは、過去の推移を検討し、異常ともいうべき四十二年を除いた従来の買入最高数量すなわち四十一年の七百九十九万トンとほぼ同水準を見込んだものである。売渡数量については、実績の傾向をのばし、前年度より若干増の七百九十七万トンを見込んでいる。」こういうことが書いてあるわけであります。  したがって、少なくとも食管会計予算を組むにあたっては、陰でどういう議論をされたか知らないが、国会に提出された資料や米価審議会に出された資料、われわれの持っておるこういう資料を見ると、ことしは八百万トン以上は買うという予定をしてなかった。しかし、現在の食管制度のもとで、現実の問題として、これは九百万トン近いか、あるいはそれを突破するということになることは明らかである。こういうようなときにあたって、これは予想外のことでありますから、これとても食管の中でやりくりをしておけといわれたのでは、できっこないはずであります。大蔵大臣は、何かそのときはその買い入れ増加分だけは、消費者の値上げをしてもそれに充てるのだというようなことを言っておりますが、そんなことは食管の精神ではない。新しく買うという問題については、全然別なできごとであります。国家公務員の勧告が何%と出るかわからぬ、だから予備費にとっておいた。それと同じように、こういうように現実の問題として、八百万トン見込んだところが九百万トン、九百五十万トン出るということになった場合には、当然これは予備費から支出をしても何ら支障はないことであって、総合予算だから補正は組まない、予備費からもそういうものは出さない、食管の中だけでやれ、そうでなかったらその分だけ消費者米価をよけい上げろ——生産者米価の上がった分だけ消費者米価を上げろというならば、まだ多少話はわかる。しかしながら、それ以外に余分に買う分まで予算にとってないのだから、それも消費者米価の中で上げておけということは、どこからしたって筋が通るはずがない。こういう筋の通らない話について、農林大臣は御無理ごもっともと言っておったのですか。それともこの点は何とか論争なさったのですか。
  276. 西村直己

    ○西村国務大臣 生産者米価はできるだけ生産者の要望なりに近づけたい。これは当然のことで、再生産のできるようにしていくということが一つの本旨であります。同時に、食管会計というものを破綻に瀕せしめないということも、やはり私の責任でございます。そこで、八百五万トンに対してそういうような形になっておりますが、同時に食管会計の中で、大きな会計でありますから、たとえば金利の問題もありましょう。それから、ある程度逆ざや解消からするところのものによって買い付けられる分もあると思います。そこいらをにらみ合わせて、多少の増量のものは解決をはかっていくということは、一面において価格の正常化をはかりつつ、また、食管会計の健全な運用もでき、再生産意欲も達成できる、こういう中で私どもは考えているわけであります。
  277. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 どうもわかりませんな、余分に買う分は予算に組んでないのですよ。さっきの話もそうなんだが、むし返しになって他の方には申しわけないけれども、かりに消費者米価も上げない、生産者米価も上げないと仮定しましょう。そのときに百万トンよけいに買う。この分の処理を、これは食管会計の中で、消費者米価を上げろという大蔵省の話に、それは全くりっぱなことだとあなたは賛成するのですか。農林大臣の立場というものはそういう立場ですか。
  278. 西村直己

    ○西村国務大臣 再生産確保というのは、当然私の職責であります。しかし、同時に食管の会計というものは大きな会計であります。したがって、その中で健全運営をはかってまいります場合において、多少の余裕が見られれば、もちろんそれはまた増量というものが出てきた場合に考えられるということもあり得ると思うのであります。
  279. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 大体、百万トン多く買えば三百億くらいでしょう。三百億のものをどういうふうにして食管の中でやりくりするのですか。そういう心がまえでは、大蔵省はだめですよ。さいふのひもをゆるめるはずがありませんよ。こういう筋が通らぬ話については、体当たりしなさい、体当たりを。大蔵省は筋が通りませんよ。これはだれが考えたってあなたの味方になりますよ。みんなあなたの味方になりますよ。しかし、その衝に当たる農林大臣が大蔵省の主計局長みたいなことを言っていたのでは、これは話になりませんよ。いつ主計局長の辞令をもらったのですか。これでは話にならぬ。やはりあなたは何といっても農林省で農民の代表なんだ。農民は西村さんのことを尊敬もしておったし、非常に期待もしているのですよ、いいですか、いままで西村さんがこの問題に携わる前に、党の政調会の副会長ということでその衝に当たってこられた。政調会長もなすった。そして米価要求にも参画をし、政府交渉もやってきた。ところを変えるというと大蔵省の主計局のようなことになってしまったのでは、私らは失望しますよ。そういうことじゃいけませんね。これはやはり私が言うように、少なくとも増量の問題については、それを消費者米価に乗っけたりあるいは予備費から出すことについて要求しなかったり、そういうふうなことではいけませんね。これはほんとうに要求しないのですか。これはたいへんなことですよ。要求しないのですか。
  280. 西村直己

    ○西村国務大臣 もちろん予算編成の当時、私が関係しておったわけではありませんが、政府としては一体性がありますから御説明いたしますが、当時、御存じのとおり、総合予算主義のもとにおいて今日の食管というものを考えていく場合に、八百五万トン、そして従来の補正後の穴埋めを二千四百十五億円ですかやっている。しかし、その間に多少の増量がある場合において、一面におきまして価格の正常化、末端逆ざやを解消することによってまた相当な増額が起こる、そういうようなことによってその増量をカバーし得る、こういうような考え方のもとにおいて、今日までも総合予算主義というものが成り立っておる。こういうふうに政府の中でも一体性をもって考えられているわけで、私も今日においてそう考えておるわけです。
  281. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 これはとんでもない話ですよ。これは、末端逆ざやの解消ということを大蔵省は言っておったのです。そのために生産者米価が上がったならば、その上がった分プラス三%を乗せて、末端逆ざやを一年で解消する。それは向こうのかってな理屈ですよ。ところが、近ごろの議論は、その末端逆ざやの三%というものが、何か別に増量の百万トンなり百二十万トンあるいは百五十万トンになるかもしれない。予算で大きく見るべきものを予算で見なかったために、超過をした数量を買い付けて、その超過部分に充てようとしているじゃんないですか。事をすりかえているんでしょう。それで、かりに末端逆ざやを解消して、そのほかに今度は増量の分を消費者米価に乗っけるならば、その末端逆ざやと増量の分だけでも六%からになってしまうじゃないですか。そういうことを正気で考えているのですか。
  282. 西村直己

    ○西村国務大臣 末端逆ざやの解消そのものは、私、農林大臣としてもぜひやりたいところなんでございます。なぜなれば、少なくとも末端逆ざやでコストを割っているということは、いわゆる生産費を割っているということは、食管の会計のあり方として、これは需給調整の機能に対してもいい影響を与えてない。これはもう御存じのとおりであります。それを解消してまいりたい、こういうことはいえると思うのであります。
  283. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 どうも質問に対して答弁をしてくれませんね。末端逆ざや解消に三%かかるというのですよ。いいですか。ところが、もうすでに百万トン以上予算よりも超過をすることは大体既定の事実になるでしょう。八百万トンしか予算がないのですから、百万トン以上超過しますよ。かりに百万トンとしても、これは三%くらい乗っけなければ百万トンを買えないという騒ぎをしているわけですよ、いいですか。そうすると、最初の大蔵省の未端逆ざやの三%というのと、増量部分とは別になってくるんですよ、増量の増加部分は。三%の中で増加部分を買うことができ、末端逆ざやの解消ができるんですか。九百五十万トン政府に売り渡しになっても、三%の中で末端逆ざやも解消できるし、増量の分も買い付けすることが、他に資金がなくて買い付けすることができるのですか。
  284. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 数字のことでございますので御説明申し上げますが、末端逆ざやを私どもは解消いたしたいということを申しております。数字は、現在の乙地における末端消費者価格と生産者米価と均衡をするようにいたしたいという考え方から出るものでございまして、それによって財源の増になりますものが約三百億から見込まれるわけでございますが、その三百億で幾ら数量がふえても全部まかなえるというものではないことは、これは当然のことでございます。かりにそういう財源で末端逆ざやの解消をして、円滑な食管運営上の要請というものを措置いたしました場合の財源でまかない得る出荷量の増は、約百万トン程度であるということでございます。
  285. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 だから、それをどうするかということなんですよ。かりに末端逆ざやを解消するのに、出荷が予算以上に超過しなくても三百億かかるというのでしょう。それは間違いないですね。違いありますか。末端逆ざやを解消するのに、かりに八百万トンしか納入されなかったならば、金は一円も要らないということですか。逆ざや解消の金は一円も要らないということですか。かりに八百万トンしか出荷されない、末端逆ざやを解消するためには三百億かかるというんでしょう。まずその点間違いはありませんか。
  286. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 私の説明が不十分であったようでいござまして、重ねて御説明申し上げますと、末端の逆ざや解消ということは、要するに三%分は消費者米価の引き上げによって均衡をとるということでございますから、財源として三百億の財源の増が期待できるということでございます。末端逆ざやを解消をするために、食管会計の負担の増になるということではございません。
  287. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 どうもあなた方逃げているんですよ、そこのところを。最初は三百億を末端逆ざや解消に使うと言っておきながら、今度は増量の分にそいつを充てるというような逃げを言ってもだめですよ。あなた方がそういうような非常に不自然な、だれにも通用しない、自分たちだけがわかるようなことをやっているから、だから米価問題というのはもめるんですよ。こんなことをやっていて食管を前向きに直すなんということができるんですか。国会の協力を得てもっといろいろ前向きに直していきたい、農林大臣も大蔵大臣も新聞で見ると言っている。先ほど大蔵大臣も言った。こういうふうにてまえがってな、自分がってなことばかり言ってみんなの協力が得られると思うのですか。もう少し虚心たんかいに正直にものを言いなさい。協力すべきものも協力できなくなってしまうでしょう。現状の食管の問題については、どこの改善も何もしなくていままでどおりでこのままでいい、こう思っている議員なんかだれもいませんよ。あなた方の問題の出し方が非常にまずいから、だから事は混乱をしてきてしまうんだ。これが現状じゃないですか。もしあなた方が期持するように、食管の根幹を守りながら、しかも部分的には農民の協力も得て、国会議員の協力も得て直していくということは、現在のようなあなた方の姿勢ではできませんよ。できると思うんですか。農林大臣、できると思いますか。
  288. 西村直己

    ○西村国務大臣 いま食糧庁長官からも説明がありましたように、末端逆ざやというものは、われわれとしては、食管運営の健全なたてまえからいって、食管機能を生かす意味からいってこれを解消したい、これはもう長い間の念願でございます。そこでそれをやれば、消費者価格に三%乗せれば三百億の財源が得られ、それは当然また、百万トンでありますか、ある程度の増量に充てられる、これは当初から言われておる議論なんで、決してわれわれがあとからつけた理由ではないのであります。
  289. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 この問題は、幾らやったって平行線だからもうやめますよ。時間がないから、あとの人に迷惑をかけるからやめますが、ともかくそういうへ理屈、ごたくを並べているようでは円満な農林行政はできません。あなた方はそういう思想だから、事を紛糾さしているのです。たとえば、農民代表を米価審議会へあれほど入れなさいというのにかかわらず、御用米審をこしらえて、御無理ごもっとも、農林省のまま全くけっこうなものだ、一つも非難を受けていないじゃないですか。答申を見てごらんなさい、あなた方そんなりっぱなことをやってきたのですか。だれも思っていませんよ、そんなことは。そういうことをやって、農民団体を必要以上に刺激をしてきた。まず政治の姿勢としては、これは落第点じゃなかろうかと私は思うな。私はそう思いますよ。現実問題として、ことしのようにむずかしければむずかしいほど、農民団体ともよく積極的に話し合いの広場を持つ、米審の中にも入ってもらって、言いたい主張は全部言ってもらって、世間さまに聞いてもらって、そうして、そこを出発点として話し合いをすべきですよ。そういうことをやらずに、あなた方がやってきたことが正しい、今後もそういうことをやるのだ、それで円満なことができるのなら、お手並み拝見しましょう。やってください。できると思うのですか。そういうふうに非常に自分よがりなことだけにあなた方は固執するから事は紛糾するので、そんなにうまくいくなら、農林省と大蔵省だけでおやりなさいよ。どうですか、農林大臣、大蔵大臣、御感想をひとつ……。
  290. 西村直己

    ○西村国務大臣 米審の構成につきましては、御議論があることは私も十分心得ております。御存じのとおり、米審は、私が着任しましたときにはすでに発令になっておりました。そこで、私は各方面の意見も聞きました。また、国会では各党間で意見調整もなさっておられる。意見調整ができれば、それに従ってやりたいという希望も私は持っておりました。しかし、残念ながら意見調整ができない。大臣としては行政の長であります、責任者であります。設置法に従って、米審が構成されればそれに諮問をするということは、これは当然やってまいらなければならない。そういう意味で、今日の米審というものに仕事をしてもらっておる、こういう状況であります。将来に向かいましては、したがってこれをどうするかの問題は、私は十分慎重に検討をしてまいりたい、こう思っております。
  291. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私の考え方は、先ほど申し上げたとおりであります。
  292. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 いずれにしても、あなた方の姿勢いかんによっては、なるべく早く米価をきめることにわれわれは協力するにやぶさかでありません。しかし、いままでのような自分かってな、人に通用しないひとりよがりな大蔵省式のそういう解釈をして押しつけようということでは、幾ら混乱しても、その責任はあなた方御両所及び宮澤経済企画庁長官並びに総理大臣にある、こういうふうにひとつ御銘記ください。  私はこの程度でやめますが、藤尾君が関連質問があるそうですから、それをひとつ許してください。
  293. 藤尾正行

    藤尾委員 私は、関連質問でございますから、そう長い時間をとるわけにまいりませんので、一、二点だけお伺いしたいと思います。  いまの食糧管理法といいますものは、これは消費者の保護のためにある法律である、私はかように解釈をしておりますが、そのような解釈でよろしゅうございますか。
  294. 西村直己

    ○西村国務大臣 いまの食管法は、御存じのとおり三条等でございますか、それぞれの条件に従って、生産者に対しては再生産の確保、それから消費者に対しては消費者家計の安定、これが一つの柱になっております。
  295. 藤尾正行

    藤尾委員 そういたしますと、生産者のほうにも再生産の補償を十分に与える、また、消費者にもということになりますと、重点が二様にかかってくることになります。そうしますと、どういう事態が起こっても、この法律といいますものは両様の利益をとにかくカバーしているのだということになりますと、これは改正する必要がない、こういうことになりますが、いかがですか。
  296. 西村直己

    ○西村国務大臣 御存じのとおり、ここで食管法の説明を申し上げることもどうかと思いますが、食管法の目的は、国民の主要食糧を確保する、そうしてこれに必要なものを国家が管理をしていくということが一つ。それからいま一つは、その間にあって消費者、生産者の価格の決定を、それぞれいまのような家計安定あるいはは再生産を旨としてやる。ただ、それではこれが完全にばらばらであるかというと、国民経済の運行の中でやるということが一つ、もう一つは国民経済の安定に資するという目的のためにやることが一つ、いま一つは、両米価は経済、物価その他の事情を相互に勘案しながらきめていく、こういう関連を持たしておることも、また食管法に規定されておるところでございます。
  297. 藤尾正行

    藤尾委員 これは私の無学のせいであるかもしれませんが、歴史的にこれを考えてみますと、終戦後の食糧の混乱があった。何としてでも日本の消費者の皆さま方に十二分に米を食わしたい、そのためにはとにかく農家で生産される米を、飯米を残して、これを全部政府に買わしてもらいたい、そのために全量買います、もしほかに売ったら、これは食糧管理法違反ということで罰しますという法律であったと私は思うのです。その法律は、自来これは変わっておりません。今日もなおこれは生きておるわけです。たとえば、今日かりに生産者のほうで非常にいい米をおつくりになってこれをすし屋に売る、その間に政府は介在していないということになりますと、これは食糧管理法違反だ、私はさように解釈しているのですが、この点いかがですか。
  298. 西村直己

    ○西村国務大臣 食管法の三条等の解釈の問題が一つありますから、それは食糧庁長官からまず説明させたいと思います。
  299. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 食糧管理法が、米の需給の窮屈なときに、農家保有米を除くものについて、命令の定むるところによって、命令をもって定むるものを政府に売り渡すべしということを、生産者に義務づけることの権能を政府に与えておるということでありますが、この目的を確保するために、保障規定として施行令の五条の五に、「米穀の生産者は、その生産した米穀を政府以外の者に売り渡してはならない。」という規定が、食管法九条の委任命令として規定されておるわけであります。でございますので、現行の食管法並びに政令の規定のもとでは、政府以外の者に売り渡しました場合には、これは法令違反ということで処罰されるという法的根拠があることは、御指摘のとおりでございます。
  300. 藤尾正行

    藤尾委員 そういうことで、一方において処罰規定があり、全量を政府に売り渡さなければならぬ、こういうことは、片一方に処罰規定があるのですから、私は、生産者にとってはたいへんな義務をこれは課しておるものだと思うのです。たまたまこれは、農林省の歴代の農林大臣あるいは歴代の農林官僚の諸公が非常に勉強もされ、また技術の開発もされて、幸いなことに日本の主要食糧であります米の場合は、この生産が非常に確保され伸びていった。そうして今日では、昨年の豊作といい、また、本年度の作付あるいは天候というようなものから見ましても、これが余っていく傾向にあるといわれておるわけですね。そういう際に、米の生産者が政府に売らずに、もしかりにすし屋であろうが何屋であろうが、ほかにこれを売りますと、やはり食糧管理法によって処罰されることになる。法的にはそうなります。そういう関連のもとにあって、今度の米価決定といいますものがいろいろな諸条件のもとになされておる、私どもはかように考えておるわけですが、それで間違いございませんか。
  301. 西村直己

    ○西村国務大臣 はっきり申し上げておきますが、私どもは四十三年産米は、すでに予約も御存じのとおり受け付けておりますし、また、四十三年産米について制限買い上げをするという考えは毛頭ないのであります。ただ、食管の将来の問題として、こういう問題については、三条の考え方、一条の考え方等においては全量買い上げという解釈は成り立たない。しかし、政令等において売り先を限定されておるというような点もあり、法律解釈とは別に、これは政策としてどうすべきかを検討はしなければならぬ。こういう立場をとって、すでに総理の所信においても、需給に見合って総合農政をやると同時に、その中において十分に広い視野に立ち、国民経済全体の立場から食管はひとつ検討してみよう、こういうことでございます。
  302. 藤尾正行

    藤尾委員 私は、ただいまの農林大臣の御意見もっともだと思うのであります。しかしながら、少なくとも食糧管理法といいますものを、いままでの消費者保護のための法律から、今度は生産者の保護のための法律にこれを衣がえをさせてその上で考えるべきである。あなたも将来のことを考えているとおっしゃいましたが、四十三年産の米について、そのあなたのお考えといいますものを適用されますと、これは非常な法律違反にもなってくるし、もし政策としておやりになっても、それが限界以上に度が過ぎますと、私どもはこれをやはり正さなければならぬ立場に立たなければならぬ、こういうことだと思うのでございますが、その点はいかがでございますか。
  303. 西村直己

    ○西村国務大臣 はっきり申し上げておきますが、四十三年産米について制限買い付けとか、そういうような考え方は毛頭ないのであります。ただ一部の、何と申しますか、民間の人たちにはそういう意見が流れておったことは事実でありましょうが、私どもはそういう考えではございません。ただ、総理の所信にもあらわれましたように、根幹を維持しながら将来に向かって食管の改善は検討する、これはしなければならぬというふうに考えております。
  304. 藤尾正行

    藤尾委員 あまり時間をとるわけにいきませんので、私、はしょった御質問をしなければなりませんが、それでは問題を変えまして、四十二年産米の持ち越しが二百六十五万トンに達するといわれておる。本年も、さっき渡辺君が指摘されましたように、八百万トンの予算ということで予算を組んでおられますけれども、事実上、予約といいまするものの動向から考えまして九百万トンをこえるであろう、こういわれておる。四十二年産米の持ち越し二百六十五万トンと、そうして新米がとれてきます。この新米の量、その買い付け量が九百五十万トンになるのか九百六十万トンになるのか知りませんが、そういうものを合わせて、これを収容するだけの施設とそれの能力というものを、いま政府はお持ちでございますか。
  305. 西村直己

    ○西村国務大臣 この問題は、二つの問題があると思います。一つは、ただいま古米、古米といっておりますが、現在はまだ新米でございまして、これは出来秋が来て初めて古米になるわけでございますが、現在ある米を来年に向かってどうさばいていくかという問題と、これから出てくるであろういわゆる新米、これらを収容していくいわゆる倉庫の問題があります。  もう一つは、倉庫だけではありません。質の保存の問題、それから今度は消費者に対する配給等の問題。これは、量が歴史始まって以来の大量のものでありますだけに、私どものほうも消費を十分に促進するような手も打たなければならぬでしょう。また、海外にも輸出するとか、援助とか、いろいろなくふうも政府としてあるいは考えなければならぬ日もあるでしょう。同時に倉庫自体も、これは食糧庁あげていろいろくふうをこらしていく。同時にそれをある程度は、民間その他の面でも保有をしてもらえないかというようなくふうはこらしていく必要があると思うのであります。
  306. 藤尾正行

    藤尾委員 そこで、一言だけ私は確かめておきたい。一体米が非常に手持ちになって、いろいろ政府が御措置をされなければならぬという事情は、一体その責任は生産者にあるのか、あるいは要するに農林省の農政の欠陥にあるのか、あるいはその予算をつけるときの大蔵省の農林予算というものに責任があるのか、一体どこにあるのでしょう。どう思われますか。
  307. 西村直己

    ○西村国務大臣 米がここまできたことについては、一面においては非常にけっこうなことだと私は思います。また、農民の努力にも感謝しなければならぬ。また、国の力でもあります。しかし、こうしたことになってまいりましたについては、技術の向上もありましょう。農薬の発達もありましょう。またしかし、一面におきまして、農業基本法ができましてから二、三年の間の、多少足りないというようなところから米の増産をやったということもありましょう。農業というものはどうしても時間がかかります。それだけに、少しおくれてその結果があらわれてきたということもありましょう。いま一つは、農業が他の作物から見ると採算が非常にいいという点からいくことと、もう一つは全量買い上げでまいりますれば、どうしても量を求めてまいる、どうしても質よりも量という形がどんどん発生してきておる。そこに多収穫という形がまた行なわれてきた、その結果として今日のような状況になってきておると思うのであります。
  308. 田村元

    田村委員長 藤尾君、農林大臣の時間の都合もありますし、あと質問者の関係もありますから、簡潔に結論を出してください。
  309. 藤尾正行

    藤尾委員 私は、いまの一間だけでけっこうでございますから、その責任はどこにあるのかという点だけをお答え願いたい。
  310. 西村直己

    ○西村国務大臣 私は、責任というものがだれにあるということは必ずしも簡単に言えないと思います。農業基本法をつくりますときにも、この問題については心配をされたわけでありましょう。どうして農政全体を展開していくか、その中で米というものは大事なものでございます。大事なものでございますから、できるだけ自給率を上げたい。しかし、すでに昨年におきまして一一〇%をこえる自給率になっておる。こういうようなことでございまして、これが統制とか計画経済の中でやっておる問題ではないのであります。したがって、私は、だれの責任であるからというだけでは解決をしない問題だと思うのであります。
  311. 藤尾正行

    藤尾委員 その点、はっきり責任はどこにあるということは問題じゃないと言われるわけですけれども、それではひとつ最後に、時間がございませんから御要望だけ申し上げておきます。その責任を、四十三年産の米をつくっておられる生産者のほうに持っていかないということだけはお約束できますか。
  312. 西村直己

    ○西村国務大臣 別に、米ができ過ぎたから責任を農民に持っていく、そういう考えではございません。ただ、御存じのとおり、先ほど申し上げたような政府の試算の上に需給の状況を反映さぜるということ、また、国民経済全体の立場から食管法があるという精神、また、たくさんな一億の消費者がある。国民感情も考えた場合に、やはりそういう政治の姿勢もある程度なければならない。しかし、同時に再生産はできるんだという合理性は持っていかなければならぬ。そういう中で一つの試算ができ上がる。しかも、それをさらに生産者、党その他の熱心な要望等も加えたもので、最終的な政治判断で最終価格をきめたいというのが私の立場であります。
  313. 藤尾正行

    藤尾委員 一言だけ。まことに申しわけないのでありますけれども、どうもよくわからないので、その点を申し上げておきますが、今度の米価の算定にあたって、米の需給ということをお考えになりますと、これはその責任の一半を、四十三年産の米を一生懸命つくっておられる生産者のほうにある程度持っていくことになる、私はかように思うのです。ですから、それをやってもらいたくないということを申し上げておるのですが、その点いかがですか。
  314. 西村直己

    ○西村国務大臣 もちろん、再生産確保は旨としますが、同時に、食管法の条文の中にも、物価その他経済事情を勘案しという中にも、当然こういう問題も入ってまいると思うのであります。
  315. 藤尾正行

    藤尾委員 そうすると……。
  316. 田村元

    田村委員長 藤尾君、簡潔に願います。
  317. 藤尾正行

    藤尾委員 そうすると、やはり農林大臣のお考えでは、米価算定の中に需給ということを、他の経済情勢も勘案しという条項があるから、どうしてもこれは入れていくのだ、その際に、四十三年産の米をつくっておられる出産者がそのあおりを食おうと、それはしようがない、こういうようにおっしゃるわけですな。
  318. 西村直己

    ○西村国務大臣 私どもは、出産者の立場も十分考えなければならぬ立場でありますから、これはどうしたって影響を少なからしめるという努力はいたしております。しかし、同時に物価その他経済事情を勘案しということもまた、価格決定の際の一つの条件であります。したがって、それをある程度、最小限のものは今回の試算のときには反映はされておる。しかし、これもまたさらに高度の立場でもって論議するという場は、まだ私どもは党との間に十分調整はしてみたいと思っております。
  319. 藤尾正行

    藤尾委員 その考え方を、四十三年産米価以降に持ち越してくれませんか。四十三年産米価には適用しないで、これは除外例として。
  320. 西村直己

    ○西村国務大臣 それは、私としてはいずれ最終決定の際に、十分党側と意見を調整してみたいと思うのであります。
  321. 藤尾正行

    藤尾委員 それじゃけっこうでございます。
  322. 田村元

  323. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いまお二人の質問を聞いておりますと、農林大臣の御答弁は非常にわかりにくい。大蔵委員会ではあまりこういうわかりにくい答弁をいただいたことがないのでありまして、もう少しわかりやすく端的にお答えを願いたいと思います。  農林大臣は、米価審議会に諮問されたのは、あれは非常にいいかげんだというか低い形で、初めからあとで直すということを予測してあの諮問をなすったのかどうか、それをお伺いしたい。
  324. 西村直己

    ○西村国務大臣 決していいかげんにつくったものではありません。あの方式その他につきましては、三閣僚の間でいろんな意見を交換しました。それから、積み上げについての計算は関係当局においてやって、最終的にさらに三省と申しますか、三閣僚の間で責任をもって参考試算として出したものであります。  ただ、答申の中にもありますように、これを変える場合には、いたずらにただ変えるのじゃなくて、そこに理由があるならば、これはやむを得ないだろうという答申ももらっております。その範囲内において、私どもはさらに高度の政治的な立場で、これは党にも党なりの、十分民意を反映した意見を持っておられるのでありますから、調整は努力してみたい。最終決定は、政府が責任をもっていたさねばならぬと思っております。
  325. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そうしますと、米価審議会に諮問されたのは、初めから、高度の政治的な立場で直すということを前提にして諮問をなすった、こういうことですか。
  326. 西村直己

    ○西村国務大臣 前提というわけでありません。ただ、一つの合理性を持って相当詰めてはおります。しかし、党と政府は一体であります。しかも責任は、党の意向をいれながら政府が最終的には法律に従って責任をもってきめなければならぬ。そのためには、米価審議会というのは一つの諮問機関でありますから、その意見も十分徴した上で最終決定に持っていきたい、こういう考えであります。
  327. 阿部助哉

    阿部(助)委員 党と政府が一体である、こうおっしゃるけれども、それならば、この諮問をする段階で、党と十分に相談をしてそれで諮問する、確信を持って審議会に諮問をするというのがほんとうじゃないですか。いままで今日のような例をとってきましたけれども、米価審議会を尊重する、また、その答申を尊重するということをたびたびおっしゃっておるので、そういうことになるならば、初めから党と十分な相談の上で、これを諮問するのが当然じゃないですか。それをしないで、答申は尊重しますなどと言って、いまお話を聞けば、初めから、次には高度の政治的な立場を加えるんだ、こういうお話でありますが、それでは初めから、御用米審といわれるように、あの審議委員自体の任命のしかたから見ても、御用米審だということをたあなたはお認めになりますか。
  328. 西村直己

    ○西村国務大臣 決して御用米審のようなものではございません。委員には委員なりのいろんな強い意見もあります。それから、党との間で最終的な数字まで詰め合わせるのも一つの行き方でしょう。しかし、こういった数字については各方面のいろんな意見というものがあります。こういうものは従来の例を見ましても、最終的には党と政府がやはりきめなければならぬという従来の歴史のあれもあります。そこで、私どもとしては政府の側において調整をしていく。しかし、方式等については、ある程度党側の考え方もいれてやったわけでございます。
  329. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私は、党と相談してはいかぬとは言っていないのですよ。政党政治なんだから、党と相談をされるのはけっこうです。だけれども、そのしかたは、党とするということは諮問案の段階でしなさいと言っておる。党とするという法律はあるのですか。審議会に諮問をして政府がこれを決定するのでしょう。ひとつ法律を守ってもらわぬと困るのですね。大臣、これで党と相談をするというのは、どういう法的根拠で相談をするのですか。
  330. 西村直己

    ○西村国務大臣 これは、与党の委員の諸君からお話がありましたから出たのでありまして、党と政府との間は、あくまでもこれは対国会では内輪の問題であります。したがって、私がしばしば申し上げるように、最終的には政府が責任をもってこれを決定する、こう申し上げておるのであります。
  331. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それは、最終的には大臣のところできめるのはしかたがないでしょう。だけれども、不明朗でしょう。大臣、不明朗だと思いませんか。諮問案は出すわ、尊重しますと言う。それで出てきたものは、当然高度の政治的云々ということで加算をするというようなことは、審議会自体を無視しておるということじゃないですか。無視するということを初めから前提にして、ああいう生産者代表も入れない、政党代表も議会代表も入れない、そういう審議会を初めから意図して任命したというように解釈せざるを得ないのですが、それでいいですか。
  332. 西村直己

    ○西村国務大臣 私どもは、審議会を無視する考えはございません。審議会は審議会なりの諮問に対する答申をもらっております。そして審議会の答申にも、いたずらにこの答申についてかってに直されちゃ困るが、理由があれば明らかにしてもらいたい、こういうことをいっておるのであります。その線に沿うて、私どもは十分に諸般の状況を考えて最終判断をいたすわけであります。
  333. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いろいろとあれしましても、私たちの不審は解けないのでありますが、党と相談されるのもけっこうです。だけれども、なぜこの国会中にこれをきめようとされないのですか。国会の無視じゃないですか、大臣。なぜこの国会中に、国会で十分審議をしてきめるという方針をとらないのですか。国会中にきめるのがほんとうじゃないですか。
  334. 西村直己

    ○西村国務大臣 これは、国会中にきめるとか国会中にきめないとかいうことを、別にここで論議することでもないと私は思うのであります。できるだけすみやかに私どもはこれを決出したいと思います。
  335. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いま幸いに国会が開かれておるのですから、国会が終わってからきめるというようなことではなしに、ここで十分論議をしてきめるのが、この重大な米価問題でありますだけに当然なことだと私は思う。それを、国会の前にはいろいろやり、国会の間は休戦状態にしておくみたいなことでおやりになることは、これは国会無視というふうに私は断定せざるを得ないのであります。  それと、次にお伺いしたいのは、何か見ておりますと、総合予算というのがあって、その次に末端逆ざやの解消ということを考えて、そして高度の政治性を考え、その次に幾らにしたらいいかというようなことを、どうも逆算しておるような感じを強く受けるのですが、農林省の態度が、やり方が非常にいいかげんなものだから、国民はみんなそう思っているのですが、その点はどうです。
  336. 西村直己

    ○西村国務大臣 私はそう思いません。むしろ三%というのも一つの合理性があると思います。これも決して、ただつかみでやったものじゃありません。いろいろな試算をきっちりとやっておる。しかし、それ自体についてさらに生産者の意向あるいはその他の諸般の状況をいれていくのでありまして、決してこれがいいかげんに出したものだというふうには私は考えておりません。
  337. 阿部助哉

    阿部(助)委員 大臣、答弁は当然そういうことになるのでしょうが、国民はそうは思っていないんですね。あなたがいまどう言いわけをしょうと、総合予算から逆算したんじゃないか。もっと確信のある案を審議会に諮問する、そしてこれを実行するということならば、これは理解ができますけれども、いまの党と皆さんとのやりとりの話を新聞で拝見しておりましても、そうとしか思えない。大臣、そうすることはこの食管法のほんとうの法律の精神にもとるのではないですか。ほんとうにいまの物価事情をしんしゃくして、再出産を償う米価ということになるならば、当然いろいろな物価の要因、ことに出産費が二五%も上がっておるというのはあなたのところの統計なんですね。そういうものを勘案していくならば、二・九九なんという数字は出るはずがないと私は思う。その点はどうなんです。
  338. 西村直己

    ○西村国務大臣 一応政府試算の内容の問題でありますから、それはひとつ食糧庁の関係者のほうから説明させますが、再生産を確保するという旨のもとに、一つの合理的な試算として出しておることは事実であります。
  339. 阿部助哉

    阿部(助)委員 先ほど質問がありましたが、ことしは買い付け制限はしない、こうおっしゃっておるのですが、それは来年はどうなんです。
  340. 西村直己

    ○西村国務大臣 私どもは、将来の問題につきましては、総理大臣の所信に基づきまして十分検討を加えてまいりたい、こういうふうに今日考えております。
  341. 阿部助哉

    阿部(助)委員 加えてまいりたいということは、いまその検討はしておるのですか。
  342. 西村直己

    ○西村国務大臣 これはまだ所信が示されただけでありますから、したがって、私どもは、これは政府においても検討しなければなりません。また、いずれはこれは生産者その他の意向も徴していくことをしたいと思います。
  343. 阿部助哉

    阿部(助)委員 まだ検討しておられない、こういうことでありますが、大臣は何か総合予算ということを——私、農林省にその概要を知らせてくれ、こう言ったら、七月の十三日にあなたが農林省においてお話をした指示事項というものをくれたわけです。これを見ますと、まあこれは随筆ですね。政策、何も中身はない。総合農政というものは一体何なのかわからない。ただ、たった一つ、この食管の問題では、その取り扱いは慎重を要する、したがって広い視野に立ち、かつ十分の時間をかけて検討すべきものであるが、事態に即して所要の改善を行なうよう検討に着手すべき時期に至ったと思う、こういう食管の制度の改正というものを意図しておられる。これがたった一つの政策らしいものだ、私はこう思うわけでありますが、食管の改正はおやりになるのですか。
  344. 西村直己

    ○西村国務大臣 ここは大蔵委員会でありますから、あえて時間をかけて説明申し上げませんが、総合農政の展開は、単にその部分だけではございません。お読みいただきましても、単にこれは随筆ではございません。省議を開きまして、これは正式に農林省の最高首脳者に指示をし、知事会議におきましても、これはすでに私の説示として各県の知事に渡っておるものであります。  そこで、構想としては、構造政策なり生産政策なり、あるいは流通加工の政策なり、あるいは農村のいわゆる環境づくりと申しますか、そういったものの中において、今日需要状況相当変わってきておる食糧——米もその大事な一つであります。中心でありますが、同時に畜産その他についてどういう農政の展開をしていくか、こういう指示を私はいたして、目下省内においても検討をする。それで、これらが成案を得てまいりますれば、農政審議会等にはかって必要な措置をとってまいりたい、こういう考えであります。
  345. 阿部助哉

    阿部(助)委員 先ほど、あなたがおいでになる前にもいろいろと質問があったわけでありますが、どうも私たちは、新聞等で知る以外なかなか手でないわけであります。そこでいろいろと出てまいりますのは、農民は売る義務があるけれども、政府は全量を買い取る義務はないのだとか、農民がそれを全部政府に売る権利はないのだとかいうようないろいろな話が出ますが、米価の決定のしかたにしましても、何か食管法違反を政府みずからやっておるのではないか、こういう見方が強いわけです。私は、その政策が正しいといって行なうならば、やはり法律を改正して正々堂々とやるべきだと思う。それをやらないで、非常にこそくな手段で、えてかってな理屈をつけて法律を曲げていこうという姿勢は、私は民主的なあり方ではないと思う。もしそれをやるならば、これは男らしく法改正をしてからかかるべきだ、こう思うのですが、食管法を変える御意思はあるのですか、ないのですか。
  346. 西村直己

    ○西村国務大臣 先ほど来申し上げておるように、私は、今日の米の需給状況その他も考えまして、総合農政を展開するかたわら、食管法の検討にはもうすでに着手をしたいと思っております。そして、これはもちろん政府だけでありません。行政面だけでなくて、その他の面の意見も十分徴した上で結論を出す。その中には、ある場合には法改正が必要なものがあるかもしれない、あるいは法律以外の政令もあるかもしれない。いろいろな意見が出てくるのでありますが、それらを見きわめた上で私は最終的な意見はとりまとめたい。ただ、法解釈として、食管法の解釈としては、今日、食糧庁長官から申し上げたような意見は現在出るわけであります。あくまでもこれは法解釈の問題。政策としては、私はそういういま申し上げたような食管の検討を始めて、その上で結論を得たい、こういうふうに考えております。
  347. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それでありますから、端的にお伺いしますが、この次の通常国会には改正案を出す御意思はあるのですか。
  348. 西村直己

    ○西村国務大臣 この次の国会に出すとか出さぬとかの結論を得るために、検討をこれから開始をしていきたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  349. 阿部助哉

    阿部(助)委員 先ほども他の委員からも質問がありまして、政府部内は決して意見が分かれていない、一致しておるんだ、こういう水田さんからのお話がありました。しかし、水田さんは先ほど、食管法の改正案を通常国会には出す、こうおっしゃっておる。農林大臣はまだ海のものとも山のものともわからない、こういうことなんです。またその前には、農林大臣、大蔵省の事務当局では買い付け制限について検討をしておるんです。農林省はまだその検討をしておらない。一つ一つこう見てくると、私があなたが来る前に質問したように、今年の米価問題は、大蔵省の主導的な形で行なわれておるところに混乱があるんではないか。先ほど渡辺委員から、農林省は大蔵省の一部局ではないか、あなたはその辞令をもらったんじゃないかというようなお話がありましたけれども、われわれもいまいろいろな新聞その他動きを見ておりますと、農林大臣はさっぱり意見がなくて、全く企画庁長官と大蔵省のほうに引きずり回されておるという見方しかできないわけなんです。その辺どうなんです。
  350. 西村直己

    ○西村国務大臣 私といたしましては、食管法は私の所管の事項でございます。また、私としては食管法だけの問題ではないのでありまして、総合農政を展開するという自分の所信もはっきり申し上げておるのであります。そうして、総理の所信の中にもそういうふうな所信がはっきり出ておる。そのもとにおいて、私どもはこれから食管法について、どういうふうな点をどういうふうに改善していったらいいか、こういうことを始めようという段階であります。大蔵省のどこの部局でどういうふうな意見を持っても、それは御自由でありましょう。農林省は農林省として責任のある立場においてやっていく、これが私ども、政府の中における責任の所在でございます。
  351. 阿部助哉

    阿部(助)委員 農林大臣はここでそういうふうに気ばっておるけれども、事実はもう示しておるとおりじゃないですか。大蔵省では先行して、もう買い付け制限の検討もしておる。そういうキャンペーンを張っておる。食管法も、今度の通常国会では改正案を出すといっておる。農林大臣のほうでは、そういうあれはまだこれから検討するんだ、こうおっしゃっておる。どういうことなんです。あなたの所管ならあなたの所管らしく、とにかくきちんとその辺のことを国会である程度はっきりすべきだ。一個人の私、阿部に答弁をされるんではない。国会での場は、やはり国民に対して責任をもって答弁なさるのが私は当然だと思う。それがさっぱり農林大臣のほうではない。それが今日、米価問題の混乱しておる一番大きな原因だと私は思う。農民は農林大臣を期待しておるけれども、これでは農林大臣を期待するわけにはいかないじゃないですか。どうなんですか。
  352. 西村直己

    ○西村国務大臣 私はこう思っております。民間その他で食管制度その他米のあり方について、非常にいろいろな議論が横行したことがございます。ほかの委員会におきましても、参考になることもあるし、ある意味では私のほうは迷惑なこともある。そこで私としては、自分として御存じのとおり所信を出して、これを全国の知事会議にも正式に提示をしております。そうしてその中において、食管の改善の検討を総理が所信を持ちましたので始める、こういうわけであります。その上で、はたしてどういうものを得られるか、必要があればそれは必要に応じて国会にも御審議を願う日もくるであろう、こういうふうに考えております。
  353. 阿部助哉

    阿部(助)委員 もう時間のようでありますから終わりますけれども、私は、やはりそれは農林大臣が所管であるというならば、口先で総合農政、総合農政なんということを幾ら言ったってこれはしかたがないことでありまして、具体的な政策を国民に示さなければ、それはナンセンスだと思う。ことばで総合農政だと言ったところで、これを見たところで、何が総合農政だ。それならばお伺いするけれども、いままでは部分農政だったのですか。
  354. 西村直己

    ○西村国務大臣 農業基本法というものが、まず農政の基本にはあるのでございます。その農政の中にも、施策を総合的に推進するという、すでに明文はあるのであります。ただ、御存じのとおり、農業基本法ができまして今日に至るまでの間にいろいろな施策が行なわれました。しかし、どちらかというと、率直に申しますと、最近は米だけをたよるような形のような面もあります。そして畜産その他の需要は強いものがあります。これはおくれております。それから同時に構造政策は、もちろんわれわれは農地法の改正を出し、あるいは農業振興地域の整備の法律であるとか農協法の改正であるとか、この間御審議を願い成立したような資金関係の法律とか出しておりますが、同時に生産対策、それには、秋には私どもは長期の需給計画見通しも立てるつもりであります。それから、同時に環境整備の問題もございます。それからもう一つは、農林省自体は、単と生産あるいは構造、価格だけでなくて、流通加工、消費の面も、いわゆる国民生活のためにはあるのであります。これらの分野を含めて総合的に推進をしてまいりたい、こういうことであります。
  355. 阿部助哉

    阿部(助)委員 今度党側と折衝する中で、米価の問題にからんで百二十億ですか、よくわかりませんが、農政推進費とかいうのをつけて、何とか米価は五・五%で押えたいみたいなことがありますが、大蔵大臣、この推進費というのはお出しになる予定でございますか。
  356. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 さっき申し上げましたように、まだきまった問題ではございません。
  357. 阿部助哉

    阿部(助)委員 これはかりに出したとしても、米価とは違うのですね。米価は、農民が米を売って買い取る代金です。推進費というのは、これは政策費であって全然別個でありますから、米価の決定のときに、これで米価がいいんだというような形でごまかされるようなやり方は困るのでありまして、総合農政ということならば、それなりの具体的な政策を持って初めて国民の税金が使わるべきであって、何か米価決定において、米価を安くしたときの償いみたいな形でおやりになるということは、これはごまかしでありますから、米価は米価としてはっきりとこれは第三条によっておきめになる、消費者米価は第四条によってはっきりおきめになるということが、いま大臣がとらるべき姿勢であって、法律はある限りやはり忠実に守っていくという姿勢で私は対処すべきであると思う、どうも今年の米価の問題に関しては、私たちは理解できない問題が数多いわけでありまして、早く、農民も待っていることでありますし、再生産ができるような——平均出産費なんということでは、半分以上の農家が採算割れをするわけでありますから、その点、はっきりとした姿勢でこの問題に処していただきたいという希望を述べて、私の質問を終わります。
  358. 田村元

    田村委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後七時五十九分散会