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1968-08-07 第59回国会 衆議院 大蔵委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和四十三年八月一日)(木曜 日)(午前零時現在)における本委員は、次の通 りである。    委員長 田村  元君    理事 金子 一平君 理事 原田  憲君    理事 毛利 松平君 理事 山中 貞則君    理事 渡辺美智雄君 理事 只松 祐治君    理事 村山 喜一君 理事 竹本 孫一君       大久保武雄君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    鯨岡 兵輔君       河野 洋平君    小山 省二君       笹山茂太郎君    四宮 久吉君       砂田 重民君    地崎宇三郎君       西岡 武夫君    古屋  亨君       坊  秀男君    村上信二郎君       村山 達雄君    山下 元利君       吉田 重延君    阿部 助哉君       井手 以誠君    佐藤觀次郎君       中嶋 英夫君    野口 忠夫君       平岡忠次郎君    平林  剛君       広沢 賢一君    広瀬 秀吉君       武藤 山治君    岡澤 完治君       河村  勝君    田中 昭二君       広沢 直樹君 ───────────────────── 昭和四十三年八月七日(水曜日)    午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 田村  元君    理事 金子 一平君 理事 毛利 松平君    理事 山中 貞則君 理事 渡辺美智雄君    理事 只松 祐治君 理事 村山 喜一君    理事 竹本 孫一君       大久保武雄君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    河野 洋平君       小山 省二君    笹山茂太郎君       砂田 重民君    地崎宇三郎君       西岡 武夫君    古屋  亨君       坊  秀男君    村上信二郎君       山下 元利君    吉田 重延君       阿部 助哉君    井手 以誠君       佐藤觀次郎君    平林  剛君       広沢 賢一君    広瀬 秀吉君       堀  昌雄君    武藤 山治君       岡澤 完治君    河村  勝君       広沢 直樹君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 水田三喜男君  出席政府委員         大蔵政務次官  倉成  正君  委員外出席者         経済企画庁調査         局長      矢野 智雄君         大蔵省主税局長 吉國 二郎君         大蔵省証券局長 広瀬 駿二君         大蔵省銀行局長 澄田  智君         参  考  人         (三井銀行社長小山 五郎君         参  考  人        (第一銀行頭取長谷川重三郎君         参  考  人         (福徳相互銀行          社長)    松本 理作君         専  門  員 抜井 光三君     ───────────── 八月五日  委員岡澤完治辞任につき、その補欠として西  村榮一君が議長指名委員選任された。 同日  委員西村榮一辞任につき、その補欠として岡  澤完治君が議長指名委員選任された。 同月七日  委員野口忠夫辞任につき、その補欠として堀  昌雄君が議長指名委員選任された。 同日  委員堀昌雄辞任につき、その補欠として野口  忠夫君が議長指名委員選任された。     ───────────── 八月六日  医療法人に対する法人税減免に関する請願(神  田博紹介)(第二四号) は本委員会に付託された。     ───────────── 八月六日  高級織物に対する課税新設案反対に関する陳情  書  (第六三号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  小委員会設置に関する件  参考人出頭要求に関する件  国の会計に関する件  税制に関する件  金融に関する件  証券取引に関する件      ────◇─────
  2. 田村元

    田村委員長 これより会議を開きます。  国政調査承認要求に関する件についておはかりいたします。  国の会計に関する事項  税制に関する事項  関税に関する事項  金融に関する事項  証券取引に関する事項  外国為替に関する事項  国有財産に関する事項  専売事業に関する事項  印刷事業に関する事項  造幣事業に関する事項の各事項につきまして、今会期中国政に関する調査を行なうため、議長に対し、国政調査承認要求を行なうこととし、その手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  3. 田村元

    田村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  ちょっと速記をとめて。
  4. 田村元

    田村委員長 速記を始めて。      ────◇─────
  5. 田村元

    田村委員長 小委員会設置の件についておはかりいたします。  税制及び税の執行に関する調査金融及び証券に関する調査並びに財政制度に関する調査の力め、それぞれ小委員会を設置いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
  6. 田村元

    田村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、各小委員の員数はそれぞれ十四名とし、小委員及び小委員長選任並びにその辞任補欠選任等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  7. 田村元

    田村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ────◇─────
  8. 田村元

    田村委員長 次に、参考人出席要求についておはかりいたします。  金融に関する件について、本日、第一銀行頭取長谷川重二郎君、三井銀行社長小山五郎君、福徳相互銀行社長松本理作君に参考人として出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
  9. 田村元

    田村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ────◇─────
  10. 田村元

    田村委員長 金融に関する件について調査を進めます。  なお、各参考人はそれぞれ御出席になっております。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。武藤山治君。
  11. 武藤山治

    武藤(山)委員 本日は、銀行首脳の方に御参集いただいて、すでに御存じだと思いますが、京阪神土地会社に皆さんの銀行融資をした問題について、過般の大蔵委員会でいろいろ質問いたしたわけであります。どうも銀行の姿勢として納得のいかぬ問題点が数々ございまして、特に日本の代表的な都市銀行である三井銀行や、あるいは第一銀行が、こういう融資態度で一体いいのだろうかどうだろうか、たいへん私は疑問を感じましたので、きょうはその最高責任者である頭取並びに社長においでをいただいて、これから限られた時間の中でありますから、できるだけ要点を端的にお答えをいただければ幸いだと存じます。  最初に、三井銀行社長お尋ねをいたしますが、三井銀行京阪神土地会社貸し出し最高貸し出し額のときは、どの程度融資をこの一会社にいたしましたか。
  12. 小山五郎

    小山参考人 お答えいたします。  ただいま御質問がございましたが、その前に、私といたしまして、御指摘がございましたような今回の事件でお騒がせ申し上げたことについて、当事者首脳といたしまして、深く陳謝申し上げます。  また、ただいまの御質問京阪神土地最高貸し金幾らであったかというお尋ねでございますが、二十三億八千万と記憶しておりますが……。
  13. 武藤山治

    武藤(山)委員 一会社に二十三億八千万の融資をすると、その場合にその裏づけが十分あって、あるいは預金が十分正当な預金である、そういう判断に立たれて融資をされたのですか。当時の預金内容というのはどういう状況でございましたか。
  14. 小山五郎

    小山参考人 お答えいたします。  率直に申しまして、いまから振り返りますと、いま御質問預金内容という点につきまして、きわめてわれわれども管理というものが粗漏であったということを深く認識して内省している次第でございますが、その前にちょっと当時の情勢というものにつきまして、いささか弁解がましくはございますが、御説明を申し上げさせていただきたいと思うのであります。  この二十三億の貸し金に対しまして、まず第一に、われわれどもといたしましての融資態度でございますが、担保という点でございます。この担保という点ではすべて充足せられていたという認識に立ったものでございます。それからまた、それに対する預金でございますが、ただいま申し上げましたように、貸し金に対しての担保というものがすべて充足せられている、そしてまた、その上に京阪神土地社長でございます山田なる人の個人預金並び京阪神土地プロパー預金というものも相当ございまして、さらにその上に、あと考えますと、非常に多額の、山田何がしなる者の紹介預金というものが積み重なっておった。しかしながら、これは非常に多額紹介預金が積み重なってはおりましたけれども貸し金に対しますところ裏づけは、担保は十分あり、そしてまた、個人並びに会社預金も十分あったと、当時認定いたしておったわけでございます。
  15. 武藤山治

    武藤(山)委員 いまの社長の答弁は、警察当局調べによる報道とは全く違うんですね。報道によると、ちゃんともう新聞に一々出てますからね。大体、三井銀行融資をしたその中で、購入価格わずか三億円の土地に、評価をはるかに上回る融資をし、前後六回に分けて計十五億円の無担保または評価過重貸し出し、こういうような形のものがあるということが新聞にはっきり報道されているわけですね。担保は十分だと言うけれども、はたしてその担保が十分であるかどうかということについての問題が大きな問題として残っているのじゃありませんか。それじゃいま焦げついている金額というのは間違いなく全部あなたのほうは回収づけられる見通しなんですか。
  16. 小山五郎

    小山参考人 まず、現時点におきますところ情勢についてからお答え申し上げますが、ピーク二十三億の貸し金は、現時点におきまして、遺憾ながらまだ八億の残高ということで、まだ滞っているわけでございます。その八億に対しましての物的担保、これは不動産でございますが、それは大体十二億というふうにわれわれは認定している次第でございますが、その十二億というものの基礎づけにつきましては、三井信託並びに三井不動産不動産鑑定士でもって確認いたさしてございます。  そして、経過中の問題でございますが、おっしゃるとおり、まず支店というものが、いまから思いますと、山田個人京阪神土地というものは非常に小さな会社でございました。いわば中小企業でございましたが、そこに京阪神土地主宰者である山田という者に対して、当時の情勢では、これはたいへんお金持ちであって、そしてまた非常に信頼のおける人である。そしてまた、貸し金が始まりますその前に、大体一年半ぐらいのお取引があったわけでございまして、山田なる人は、いろいろ当時の記録をとって聴取してみますと、当該支店——兵庫支店と申しますが、その兵庫支店が十四年来非常に親密な取引先にしておりますところの人から紹介をされまして、三十七年に取引をしたのだそうでございます。それから一時とぎれまして、三十九年に取引が始まった。自来、この山田という人は非常にまじめな司法書士であって、永年それに携わり、そしてまた、山林を非常に持っていて、これを売買するというようなことの業務をやっていて、非常な金持ちであるというような心証、そしてまた、他行にも非常にたくさんの預金を持っているのだというようなことでございまして、それが取引再開後一年半ぐらいの間に支店一つ固定観念のようにまずこり固まっていたという一つの、いま思えばそういう事実があるわけでございます。  そういったようなことでございまして、当初貸し金を取り上げましてから、御指摘のとおり、非常に短期間に二十三億にまでこれが急膨張したわけでございますが、そのつど、土地業者でございますから、土地担保に、そしてまた、その土地に対するところの第一抵当ということをまず第一主義といたしまして、そしてまた、当時山田氏の信望並びに資力というものは絶大なものであるというような誤信が当時ございましたものでございますので、山田氏に対する信用力はこれでまずその担保もある。そしてまた、貸し金に対するところのもう一つ金融機関としての問題として、この貸し金というものの用途がはたして公共性に合っているかどうかというような点でも、土地造成というようなことで、そこで貸し金も非常に急膨張をしたというような次第でございまして、その間における担保というものについて支店からの申請というもので当初は確かに取り上げたわけでございます。  当時の環境におきましてこれを取り上げたわけでございますが、自後大蔵省検査というものもございまして、その御注意もございました。そういうようなことで、再度ただいま申し上げました法定の鑑定士に鑑定させましたところ、先ほど申し上げましたように、ほぼ申請点の当時の担保価格というものとさまで違っていないということで、まずまずほっとしたというような経過もございましたわけでございます。そして、結果的の現状においては、八億の貸し金に対しましてほぼ十二億の物的担保不動産担保がある、かような状態でございまして、御了察を願いたいと思います。
  17. 武藤山治

    武藤(山)委員 三井銀行では、支店長の裁量と申しますか、支店長が貸せる範囲というのは、大体何億くらいまでは本店の決裁を受けずに支店長独断貸し出しができるのですか。
  18. 小山五郎

    小山参考人 お答えいたします。  支店長貸し出し権限限度と申しますというと、支店の格によりまして私どものほうはA、B、C、Dの四階級に分けておりますが、当該店兵庫支店D店支店長専行貸し出し限度というものは一千万円ということに相なっております。
  19. 武藤山治

    武藤(山)委員 一千万円の貸し出し限度で二十三億も貸し出すからには、相当本店に稟議を立て、本店審査部なり、重役もこの状況承知の上だったのでしょう。この京阪神土地に対する融資、あるいは預金量が、急に導入預金でばっと一挙に四割も六割もふえた、そういう状況を当時重役がみんな承知しておったのですか。
  20. 小山五郎

    小山参考人 御指摘のとおり、非常に膨大な預金がその後入ってきたということについて、冒頭申し上げましたように、管理預金に対する管理がきわめて甘かったということはここで深く内省する次第でございますが、まず御質問の千万円の限度の店が二十三億の貸し金をいたしました。それにつきましては一々申請書は来ているわけでございます。そしてまた、私どものほうの審査あり方につきましてでございますけれども支店長権限はさような千万円というような兵庫支店でございますが、それからまた、部長はどの程度までこれを認可でき得るか、そしてまた、それに対するところの専管の担当常務がどの程度、その以上のものは常務会というように段階別に量的にこれを規制しております。
  21. 武藤山治

    武藤(山)委員 いま社長は、昭和三十七年ごろから取引がある人からの紹介山田はかなり信用があったのだ、こうおっしゃいますが、山田がおたくと取引を始めたのは四十年三月でしょう。会社ができたのは三十九年二月、三井銀行に初めて預金をしたのは六百万円、四十年三月ですよ。それが急に四十一年の三月、一年後には九億三千万円も貸し出しているのですよ。取引を始めて一年後に。預金もそのときに十九億二千八百万と導入預金がふえているのですよ。こういうことを重役あるいは本店が、私は知らないはずはないと思う。知っていてやったとなれば、だれか相当有力な人が口をききさえすれば、かなり妥当でない融資というものが行なわれるシステムにいまの銀行はなっておるのかという疑いを持つのですよ。話によると、山田なる会社の会長が三井銀行本店に行って、しかも佐藤喜一郎さんと会って、おほめのことばまでいただいておるという情報も流れている。したがって、この融資が正当な手続で、通常あるべき姿の取引だとは考えられない。あなたはいまでも通常な、しかも常識の金融ベースに乗る融資だとお考えになっているのですか。
  22. 小山五郎

    小山参考人 ただいまの御指摘のとおり、現在となってみますと、非常に膨大な貸し金、そしてまた、膨大な預金が集積したということに対して、毎度繰り返しますが、管理が甘かったということをはっきりここでおわび申し上げる次第でございます。ただ、現在から見ますとそうなんでございますけれども、当時の状況におきまして、先ほどの先生の御質問——これは小さなことだからどうでもいいのでございますが、先ほど私が申し上げました三十七年から取引を持っている人の紹介というのは、私の表現がまずかったので、三十七年に初め十四年来の優良取引先からの紹介でまず山田という者の取引ができたそうでございます、調べてみましたら。その後一ぺんとぎれまして、三十九年に取引が再開した、かようになっておりまして、これはたいしたことではございませんが、いずれにいたしましても、そういう先なんでございます。  まず、山田個人信用問題でございますが、これがいま思うというと、全くわれわれども甘い誤認に基づいていたということを申さざるを得ないのでございます。ただ、そういうことはございますが、山田という者の信頼が絶大であって、仰せのとおり、当時小さな兵庫支店あたりとしてみたら、飛び切り最有力の優良得意先、しかも純預金先ということでもって強いイメージアップが行なわれていたのが当時の状況だったわけでございます。  しかしながら、御指摘のとおり、非常に大きな金を急激に取り上げたのは一体どういうわけかということでございますが、まず最初貸し金を取り上げましたときも、これは不動産業者でございますので、どういたしましても、比較的金がかさむのでございます。そのかさむ場合に、まず第一にわれわれどもとしては担保ということを、先ほど来るる申し上げましたとおり考えまして、その担保の適切ということについてまず吟味いたし、そしてまた、その相手方が信頼すべき人であるかどうか、そしてさらにまた、その貸し金用途というものの公共性ありやいなや、そしてさらに、これは銀行採算の点でございますが、貸し出しのルートというものはどうあるべきか、そしてまた、その貸し出し資金、あるいはその用途というようなことで、地域の大衆にもしこの資金が浸透、密着ができ得るということになれば、それだけわれわれども得意先もふえるというような、これは銀行採算上の問題というようなことでこれを取り計らいました。したがいまして、預金があるから、そしてまた、預金が非常にどんどん入ってくるから瑕疵あるところ融資をしたというような事実は、いま省みましてもなかったと信ずるものでございます。ただ、先ほど申し上げましたとおり、非常にこれが膨張いたしまして、そしてまた預金も非常に膨張して、そしてまた、貸し金に対してはもう十分な担保はあるのですが、それ以上の預金がいただけるということは、いわば銀行といたしましては、恩恵によるところ預金というような気持ちで優良なありがたい先だという観念が非常にきつかったわけでございます。ただ、考えますことは、ここにだけなぜそんなに恩恵が集中するのか。悪くすると、そういういわば労力を費やさずに一人のところにだけ有利な恩恵が集まるということは、変な惰性を起こしやしないかというような問題をむしろわれわれどもとしては考えて、支店に対してあまりピッチを上げるということはどうかと思うというような態度に出た。  そしてまた、当時の情勢からしますと、山田なる人は親譲りの山林を非常に持っていて、そしてこれを売買して非常に資産を持っているのだ、他行にもたくさん金がある。したがって、これは税務対策上の問題としてよそには預けてあるのだが、その預金を持ってくるのが、こいつは自分の名前にはできないというようなことで、いわば関連預金というものも形成され、その関連預金というものは当初からしばらくの間ずっと山田個人の、まさに彼が言明しているとおりの正体の預金であるというふうにわれわれは誤認していたわけでございます、いま思いますと。さような状態でございますので、決してだれからかの圧力とかいうことによってこれが融資を取り上げたのではなくて、はなはだどうもいま申し上げるのは弁解がましくておかしいのでございますが、当時の状況での山田という者への絶大なる信用を持っているという支店イメージアップ、そしてまた、これは優良な純預金先なんだというようなイメージアップ、そういったものが次第次第に貸し金増加並びに預金増加を来たしたと思います。  くどいようでございますが、ただいま申し上げたような時点でもって不動産鑑定士にもう一ぺん本部から実施調査担保調べ直しをいたさせましたが、先ほど申し上げたような状態で、まずまず貸し金基本態度には間違いがなかったということで安心をしたわけでございますが、いずれにいたしましても、貸し金態度はそうであっても、それに付随したところ預金というものが、当時はどうもうちだけ恩恵が多過ぎるという気がいたしましたが、いまいろいろな問題になるようなこれが預金であったとは、ごく最近山田が逮捕されるというようなことになって、初めてだんだんと彼の手口というものはなるほどこうであったかというようなことに思い当たったわけでございます。
  23. 武藤山治

    武藤(山)委員 社長、なるべく簡単に答えてください。  あなたの弁解当事者銀行としてやむを得ぬと思いますが、その支店支店長がこれだけばく大な資金を貸すのを一々本店は了解を与えていたのでありますから、当然本店責任があるんですよ。これが一支店長が逮捕され、一支店長の背任ということで済まされる問題でしょうか。これは当然審査部というのが審査していると思いますね。これだけ膨大な金が動くのを審査部が不審に思わないという審査部自体に問題があると思うんですが、いかがですか。
  24. 小山五郎

    小山参考人 ただいまのあり方につきまして、審査部並びに本部といたしましても、十分責任の念を持っております、社会をお騒がせ申し上げましたことにつきまして。ただし、審査態度というものは、先ほど来申し上げましたように、そのつどその管理というものについての再検討を重ねた結果が現在だということを申し添えておきます。
  25. 武藤山治

    武藤(山)委員 社長、四十一年の九月期に四十億八千三百万円の預金があった。このうち、山田個人預金あるいは正式な京阪神土地会社預金、これは一体幾らあったのですか。
  26. 小山五郎

    小山参考人 当時の状況でございますが、私もそのころのことを調べてみたところ山田個人が大体二億見当、これは正式担保に入っております。それから、山田のものなんだというところ——いわゆる関連預金あとになってその内容は暴露したわけでございますが、これが十億ないし十一億というふうに記憶しております。
  27. 武藤山治

    武藤(山)委員 そうすると、四十億のうち、約十三億程度山田個人並びに京阪神土地会社預金である。あとの二十七億はどこから持ってきた預金で、これは三井銀行としては当然払い戻しをしなければならない、導入というのを承知の上でない、正規の預金ということで受け入れたんでしょうから。これは全部払い戻したのですね。
  28. 小山五郎

    小山参考人 さようでございます。
  29. 武藤山治

    武藤(山)委員 それで、現在残っている預金八百八十万三千円というものも、倒産後全部払い戻したのですか、そのままですか。
  30. 小山五郎

    小山参考人 ただいまゼロになっております。
  31. 武藤山治

    武藤(山)委員 そういたしますと、本店が全く支店長にだまされて、支店長の申し立てを完全に見破ることができずに、そのまま信頼をした。そういう結果、こういうことになったんだということですか。あなたのいまの考えもそういう考えですか。
  32. 小山五郎

    小山参考人 大体において、先生のおっしゃるとおりだと思います。大体においてと申しますのは、貸し金態度につきましては、先ほど来申し上げましたように、まずこれは融資に対する担保をカバーできるということでございますが、預金の性格というものを——実ははなはだお恥ずかしいことでございますが、審査貸し金というような管理形態が、ちょっと預金とは違っておりまして、貸し金は、先ほど来申し上げましたような機構、組織でもって管理しておりますが、預金はこれの種別ということをまず見ているのですが、その種別は預金金種そのもの、たとえば定期預金とか普通預金とか、そういうものの動向がどうであるというようなあり方でございまして、預金そのものの実体的の性格というものがどうであるかということは、一々本部には報告をとっておらないのでございます。そういう機構になっておりまして、したがいまして、支店長から本部には、ただ預金全体の計数が幾らになった、そしてそれのうちの定期預金がどうで云々というような区別が来るというような事態でございましたので、ただいま申し上げるような、見破るというような管理機構に欠けておるということを、これは率直に申し上げねばならぬかと思うわけでございます。
  33. 武藤山治

    武藤(山)委員 いまの答弁の問題については、銀行局で今後の銀行の指導のあり方として、十分検討する必要を感じますから、ここの議論としては一応この程度にいたします。  そこで、この会社が倒産をして、宅地を買った購買者、二百一人ですか、こういう人たちは、せっかくサラリーマンがためた金で小さな家屋敷を持とうと思って、手付金を払った、あるいはまた全額を払った。しかし、銀行に全部抵当に入っておる。抵当権を設定されておるので、自分のものにならないで泣いているわけですね。その人たちの合計金額は一億三千五百万。そういう小さい債権者のことはかまわずに、三井銀行だけは不動産担保としてがっちり押えてあるからわしらのほうは損をしませんよ、こういう態度で終始するのか。それともこういう小口債権者には気の毒だから、抵当権者同士で話し合って、少なくとも宅地購買者ぐらいには登記ができるように配慮をしてやろう、そういう公共的な大きな見地に立ってこの問題の処理をしょうとしているのか、なに、おれのほうだけ取ればいいのだという姿勢でいくのか、その辺三井銀行の姿勢をちょっと伺っておきたい。
  34. 小山五郎

    小山参考人 お答えいたします。  ただいまの御指摘の点につきましては、本件が非常に世間をお騒がせ申し上げたというような事態になりまして、私も実はこまかいことを初め知らなかったんですが、いろいろ調査をとりました結果、先ほど来申し上げたようなことで、担保の点では、いま十分とっているということはございましたが、これは銀行のいわば貸し金技術の問題であろうかと思うわけで、銀行として当然のことである、さように私は観念しております。  そこで、ただいま先生から御指摘がございました営々として働いた自分の金でもってようやく土地を買い、自宅を建てようとした、そういう方々に対して、もしペンディングな問題があるとするならば、そして事実私もそういうようなことがあるということを確かめまして、そういうことにつきましては、これはいまここで言明するのはなんですが、ただ、私の所信としていかんという御質問ですから、そういう意味合いでお聞き届けいただきたいと思うのでございますが、事が落着いたしました結果におきましては、これは銀行局当局とも十分の連絡をとりながら、私一個の考え方といたしますと、金融というものがただ貸し金技術の優秀さだけで充足すべきものではない、その結果についてのほんとうに善意の第三者のお困りの方については、十分な考慮をいたすべきものである、かように私は存じております。
  35. 武藤山治

    武藤(山)委員 ぜひいまの答弁を実行されるように、特にその点は強く期待をいたしておきます。  特に、この会社の総資産は幾らあるかということを、債権者会議で弁護士が立ち会いで官庁に出した書類の中にも、財産の評価が出ているわけです。大体二十億円程度と書かれているわけであります。二十億円程度しかない総資産に対して、現在の債権額は、銀行だけで、金融機関だけで三十八億四千三百万円、工事会社関係が一億七千万円、宅地の購買者が一億三千五百万円、その他の人たちが二億円、合計四十一億四千九百万円の債務が残っているわけです。したがって、全財産を処分しても、時価に計算して半分にしかならない。したがって、半分の人は取れないわけですね。どこの金融機関かがとにかく泣かなければならぬという数字になるわけであります。  第一銀行頭取は、現在全国銀行協会会長で、日本の金融機関を、自主的にお互いが話し合って社会的指弾を受けない、しかも社会的使命を果たすというような大きな立場にいま立たされているわけでございます。したがって、こういう事件が発生したということは、協会長としても、今後の金融機関のあるべき姿勢として十分それぞれの機関に反省をしてもらわねばならぬ問題が今度の事件で起こったと思うのであります。その会長の所属する第一銀行も、本年の三月現在倒産時における貸し出し金が三億九百万円あると報ぜられております。預金は一億五千五百万円という報道でありますが、この数字については違いがございますか。
  36. 長谷川重三郎

    ○長谷川参考人 数字の明細な点を申し上げる前に、まず、私どものほうと、この京阪神土地との取引の生じましたいきさつを一言申し上げます。  これはそう申し上げますと、はなはだ自分の弁解のようにお聞き取りくださる、あるいはされるかもわかりませんが、私この取引がこういうふうに生じてきたということを全然知らなかったのでございます。と申しますのは、これは先ほど来三井銀行小山社長がるる御説明になったように、非常にうまく仕組まれて、そして発生してきた事件のように思われます。私どものほうに来た話はかなりおくれております。四十二年の七月に最初に話がありました。それで、形として、直接に第一銀行にこの京阪神土地から貸し金の申し込みがあったのではございませんで、第一銀行は古来古河関係の会社と非常に懇意な関係にあります。その一つである朝日生命というのがあります。この朝日生命から頼まれてこの問題にスタートした。というのは、朝日生命が京阪神土地会社最初貸し金をする、その保証をしてくれという形でスタートしている。これは小山さんのほうもそうでございましょうし、ほかの銀行の関係の場合でも、非常にうまく仕組まれて、銀行をだまそうとして、そういうかっこうになってきたと思うのであります。だまされたほうが確かにまずいのかもしれませんが、そういう感じが非常にいたすのでございます。  いまの武藤委員お尋ねの、貸し金の私どものほうのあれは、要するに朝日生命の保証として四十二年の十月に二億デリバーいたしました。四十三年三月一億、会社から保証をいたしました。保証が合計三億になったわけでございます。それを、四十三年五月十六日に保証の期限が切れまして、向こうが返せない。その当時は、山田さんという社長がつかまったときでございました。それで、やむを得ず私のほうで代位弁済いたしまして、そのときの残高が三億になったわけでございます。と同時に、後にやりました保証一億、これはそのときに土地の造成費用として朝日生命から借りたものに対して私どもが保証したわけですが、造成の許可を得ていなかったそうでございます。したがいまして、私どものほうといたしましては、許可があるまで保証はするけれども、それによって朝日生命から借りたお金をお預かりしておったわけでございます。したがって、その当時山田さんの預金と預かっておった一億というものを合わせて約一億五千万、これを預金としてお預かりしておったわけであります。したがいまして、四十三年五月十六日、代位弁済を三億いたしましたときに、一億五千万同時に相殺いたしております。したがいまして、現在の残高が一億四千六百万ということになっております。
  37. 武藤山治

    武藤(山)委員 一億四千六百万は、やはり抵当権を何か設定してあって、確保は完全なんですか。
  38. 長谷川重三郎

    ○長谷川参考人 お答え申し上げます。  その担保は、朝日生命に保証をいたしますときに——朝日生命というのは、先ほども御説明申し上げましたように、私どものほうの一つの姉妹関係にある生命保険会社でございます。したがいまして、かなりうちうちのような感じがしている。そこにこういう問題の入り込んだポイントがあったかと存じますが、そのときに、とにかく担保をはっきりしてもらわなくちゃ困るというように話したようでございます。それで、神戸の熊内台という場所だそうでございますが、そこの造成費用という用途でございますが、その担保としては、その近所でございましょう、宅地山林約六千九十一坪、鑑定時価三億三千四百万円、第一順位抵当権極度二億円ということで当初から設定登記をいたしました。と同時に、この鑑定は、オーソライズされた土地鑑定人によって鑑定さした時価がそうなっておりますので、保証債務を引き受けた事務的な手続としては間違っていなかったと存じます。
  39. 武藤山治

    武藤(山)委員 時間が四十五分までという制限がありますので、お三人に一応全部聞かなければなりませんので、中途はんぱになると思いますが、次に、福徳相互の社長さんにお尋ねをいたします。  あなたのところは、京阪神土地会社貸し出し最高時の金額は幾らになりますか。
  40. 松本理作

    松本参考人 昭和四十二年の三月のピーク時に十九億百万円となっております。差し引きいたしますると純債で九億六百万でございます。四十二年の三月、表債で十九億余りでございます。そして、純債で九億六百万となっております。
  41. 武藤山治

    武藤(山)委員 相互銀行貸し出し限度額というものは、あなたの銀行で、一企業に対して大体幾らまでは融資していいということになっていますか。
  42. 松本理作

    松本参考人 相互銀行法十条で資本勘定の一割となっておりまするので、八億前後でございます。
  43. 武藤山治

    武藤(山)委員 八億前後が限度なのに十九億貸すということは、倍以上ですね。これは相互銀行法違反じゃありませんか。いかがですか。
  44. 松本理作

    松本参考人 まことに申しわけのない次第でございまするが、山田と私のほうが長年の関係もありまして、神戸に勤務いたしておりました支店長が転勤をいたしまして、支店数行で科目の違った貸し出しもありましたので、当時は法十条違反をしているとは存じなかったのであります。  なお、合わせて十九億は表債でございまして、実質の残債は九億六百万でございます。法十条は残債に対してきめられておりますので……。
  45. 武藤山治

    武藤(山)委員 銀行局長、そういう違法な行為をとった場合、法令に違反した場合、定款に違反した場合、大臣命令を守らなかった場合、公益を害すべき行為があった場合、こういう場合、金融機関に対してはやは最正な処分をしなければ——幾ら相手が大きい金融機関だからといって、遠慮がちな態度で、いまだかつて一度も処分をしたことがない。だから銀行としては、どうせ見つかったって最後は小言で済むという姿勢があるのではないか。業務の停止、役員の解任、免許の取り消し、こういうきつい法律上の規定があるのですから、やはりこういう際には、法律できめられているように一回けじめをつけないと害を他に及ぼしますね。あるいは一般の善良な市民にまで非常な悪い影響を与えると私は思うので、今回の事件について法律違反のこういう銀行について銀行局としてはどうするのですか。
  46. 澄田智

    ○澄田説明員 法律上は、ただいま御指摘のとおり、法律違反その他についての罰則といたしましては種々の手段が認められておるところであります。ただ、金融機関というものの性格上、現実にこういう罰則を発動するに至らないで、その公共的な使命に即応するように運営をされていくということが最も望ましいことは、これは申すまでもないことで、ただいま松本参考人から話のありましたように、いろんな名義、いろんな形式というようなものの把握が十分でなくて法十条違反をするという、そういう意識はなく、結果的には違反になっておった、こういう事態でもありますので、法律の精神、趣旨というものは十分に尊重いたさなければなりませんが、現実の処置といたしましては、必ずしも法律による罰則というところまでまいりませんでも、たとえば責任者あるいは最高責任の者というようなものが俸給や賞与を一部辞退をするとか、従来からそのケースに応じていろんな処置をしてきておる。そして十分将来を戒め自粛自戒をする、こういうようなことでそのケースに応じての措置をやっておるわけでございます。  まあいまは本件のことを申し上げたのではなく、一般のいままでのことを申し上げたのでございますが、その実情に即応して今後慎重に検討し、また、将来の戒めにいたしたい、かように存じます。
  47. 武藤山治

    武藤(山)委員 大体大蔵官僚は退職をするときのことまで配慮してなかなか思い切った処置がとれないという傾向が従来の慣例のような気がするのですよ。この際、そういう慣例はやめて、やはり姿勢をきちっと正さなければいかぬと思うのです。しかし、きょうはそれを議論する場所じゃありませんから、この次の会にひとつ大蔵省とはその点についてはじっくりやりたいと思います。  福徳さんいかがですか。神戸東支店という支店の規模は、常時、京阪神土地問題がからまない自然の状態というのは、預金総量とか貸し出し総量というのは大体どの程度だったのですか
  48. 松本理作

    松本参考人 大体私のほうの四十一店舗の中の中位でございまして、二十五、六から三十億以内でございます。
  49. 武藤山治

    武藤(山)委員 そういたしますと、この十九億の貸し出しをしたときは、以前の例から比較すると五割くらい一挙にふえたわけでしょう。この年については貸し出しがおそらく五割くらいふえているのでしょう。その支店では預金もおそらく導入預金があったでしょうから、膨大にふえたわけでしょう。それを社長としては全然耳にしなかったのですか。当時は、こういう男にこれだけ融資をしますということの決裁について社長の耳まで入っておったのですか。
  50. 松本理作

    松本参考人 他の部分につきましては、小山社長の仰せられましたこととよく似ておるのでございまするが、先ほどもちょっと触れさしていただきましたように、山田と私のほうは取引最初に始まりましたのは、先日こういう問題ができて自殺せられました山田のおとうさんの寛之助さんの時分からでございまして、すでに二十年に近くなっておるのであります。本来の山田さんの仕事が司法代書でございまして、非常に信頼せられる人でありましたために、神戸における私のほうの支店の代書を四カ店全部まかして今日までまいったのでございまして、その間に支店長が大体二、三年で交代をいたしますので、その支店長がよそに参りましていろいろと支店支店長にもなっておりますので、神戸東支店長だけではなく、山田取引は、先ほど申しましたように、融資といたしましては四カ店、それから預金をお預かりしていたのは六カ店舗ほどありますので、その当時の名寄せが十分行なわれなかったのでございます。主として神戸東と西にございまするが、神戸東がもちろん一番大口でございまして、その後膨大にふえてまいりましたけれども、その当時の神戸東支店だけの金額は大体五、六億であったと思うのでございます。
  51. 武藤山治

    武藤(山)委員 あなたのほうは重役がこういうことを承知していたのかどうかという、それはどうですか。
  52. 松本理作

    松本参考人 先ほど申しましたように、山田との取引に関しましては非常にありがたい取引をしていただき、技量もりっぱであるしというような形において、こういう結果を生むというようなことはもちろん考えてありませなんだのでございまするが、昨年の夏、近畿財務局からお呼び出しいただきまして、君のところの神戸支店へ農協預金が入っている、それが特利を支払われておらないかという御質問がございまして、さっそく帰りまして内部調査をいたしましたら、私のほうは特利は一つも払ってはございませんし、あわせてその資料を全部つくりまして提出しましたときに初めて、どうも不明朗であると考えましたので、それから積極的にこれを払い出し切り、融資を引き締めるようにいたしてまいりましたけれども、それまでは、山田取引はあるとは聞いておりましたけれども、神戸東、西ともさほど聞いておらなかったのであります。
  53. 武藤山治

    武藤(山)委員 導入預金はすべて払い戻しを完了して、現在は導入預金で預かっている資金というものはもうないわけですか。
  54. 松本理作

    松本参考人 私のほうには導入預金は初めからございません。
  55. 武藤山治

    武藤(山)委員 一億九百万円の四十三年四月十五日現在の預金残というのは、今日これは全部取りくずして債務のほうに充当してしまったのですか。それともまだそのまま預金として残っておるわけですか。
  56. 松本理作

    松本参考人 一億九百万というお話は、数字の上で私少しわかりかねるのでございますが、検査の結果、好ましくない預金であるということには間違いございませんので、特利は出しておりませんし、貸し出し予約もしておりませんので、導入預金というようなものではないのでございまするが、不明朗であるということで昨年の年末までに全部払い出して、いまゼロでございます。
  57. 武藤山治

    武藤(山)委員 この東支店支店長が単独で、従業員の二十人の印鑑を使用してかってに一人八百万円ずつ借りたことにして、そして一億六千万円を山田ところ融資した、こう新聞に報ぜられておりますね。そうすると、あなたの銀行貸し出し方法というものは、支店長と二人くらいで一億からの金を簡単に貸せるようなシステムになっているのですか。そんなルーズなものですか、貸し出しの方法は。
  58. 松本理作

    松本参考人 私のほうといたしましては、融資はそれぞれの担当者が十分に調査の上慎重に取り扱っておるのでございまするが、支店長権限は八百万円という金額になっておるのでございます。しかし、あの神戸東の取り調べになりました二十件の融資に関しましては、支店長は、あくまでも個人個人に対する融資をしたのであると申しておりまして、結果としては、十分に調査が行なわれていなかったと申しておりまするが、神戸地検におきまして、二十人に融資をした件の取り調べがあり、支店長は、そういう問題に対しまして、結果としてはまことに申しわけのないことであったけれども、初めは個人個人融資をしたのであったということを最後まで申し述べまして、今日否認のまま起訴せられておりますので、これが取り調べの結果、あるいは裁判の結果、どういう形に黒白がつくか、いまのところはかりかねますけれども、決して軽率に行なっているわけではありません。  ただしかし、山田に関する限りは、考えてみますと、支店におきましての取り扱いも、あまりにも長い取引、そうして司法書士という立場とかあるいは信頼性とかというものに惑わされて軽率であったことは、まことに申しわけないことであると存じております。
  59. 武藤山治

    武藤(山)委員 あと残っている九億八千万円の債権については、何か三井銀行と訴訟を起こしているというような新聞報道がありましたが、——第一抵当がいつの間にか第三、第四になっていた、また福徳のほうでは第一に戻してくれということで、三井と訴訟を提起したということを新聞報道しておりますが、福徳としては、最終的な債権確保のめどはどうなんですか。
  60. 松本理作

    松本参考人 先ほども申し上げましたように、融資につきましては、それぞれ見合う担保を確保して慎重に融資を行なうように従来から指示してございまするし、他の融資につきましてはほとんどこれが守られておるのでございまするが、山田の関係につきましては、信頼いたしておりましたために——それぞれの融資の場合には、担保を設定し、安全確実を前提として融資をしたのでございまするが、向こうは司法書士という職業の立場として、順位の譲渡等をかってにしたりいたしまして、そういう点もあわせて、公文書偽造等をもって追起訴せられておりまするが、当方といたしましては、いまのところ、まずまず債権に見合う担保を確保していると存じまするが、いろいろな権利の錯綜等によりまして、最終的に多少はロスが出るかもわからないということでございまして、まことに申しわけない次第であると存じております。
  61. 武藤山治

    武藤(山)委員 私の持ち時間が終わりますので、これ以上やりませんが、どうも債権確保が二十億しかない総財産に、三井銀行はたんまり十億以上の抵当権を設定してある。それ以外に十一の銀行が、ちょっとこれをずらっと読み上げますと、近畿相互が四億一千五百万、興紀相銀が一億一千六百万、伊予銀行が二億三千四百万、三菱銀行が七千九百万、阪神相互が七千四百万、第一銀行が一億四千六百万、但馬銀行が三億五千九百万、協和銀行が一億六千二百万、幸福相銀が一億四千三百万、それ以外に神戸商銀と廣島銀行内容がちょっと明らかでないのでありますが、こういうふうに各銀行がぞろっと億の金を最終的に債権として持っている。担保の争奪で銀行同士の争いに発展をしている。こういう事態の中で一番迷惑を受けるのは、宅地購買者の二百人ばかりの、一億三千五百万の債権者の諸君であります。皆さんの場合には金利を取って貸したのですから大体損はないようにいくかもわかりませんが、これらのサラリーマン諸君は、全く泣きどおしです。  そこで、私は、銀行協会会長に、この際これらの銀行同士で、相銀の会長と全国銀行協会会長の間で話し合いをして、零細な債権者だけはこの際何とか損害を受けないように配慮しよう、こういう自主的な銀行同士の相談ぐらいはあってしかるべきだと思うのですが、会長としてのひとつそういう方向で骨を折ってみたいという御見解を伺って終わりにしたいと思いますが、いかがですか。
  62. 長谷川重三郎

    ○長谷川参考人 お答え申し上げます。  先ほど三井銀行小山社長からお答えがございましたように、成り行きはともあれ、善意の、ことに零細なそういうサラリーマンの方々に御迷惑をかけるということは、公共的な銀行としての性格からこれはほんとうに考えなくちゃならぬことだというふうに私も考えております。実は小山社長とはその点につきまして——いろいろ銀行側にも言いわけはございましょうが、しかし、お騒がせしたということは確かにある。それで最終的にはそういう問題に到達する。その場合に、私どももそれぞれの企業の経営担当者でございまして、自分の仕事の完遂はどうしても必要でございますが、それと並んでの公共的な使命というのは忘れてはいけない。御承知でもございましょうが、私どものほうの普通銀行の協会は、先ほど武藤先生お話しのとおり、私、全国銀行協会会長ということになっておりまして、相互銀行とは別の協会になっております。それでそこまでまだ気が回っておらないのでございます。少なくとも全銀協といたしましては、それに加盟している関係の銀行においてはよく相談し合って最終的な——現在司直の手に問題がゆだねられていると存じますが、これがはっきりした暁において銀行は自分の権利を主張するのは当然でございますが、それと相並んで、きわめて常識的な判断において、いま武藤委員の御指摘のような、そういう方々に御迷惑をかけないような相談をお互いにやろうではないかということを実は小山さんと私はいたしまして、その成り行きに従いまして、同業であります三井銀行でありますとか協和銀行さんといろいろ御相談して、これは必ず御賛成を得られることと思います。私は、そういうふうに私の担当いたしております普通銀行の範囲内においてはそのつもりでおります。  ただ、いま御指摘の点で、相互銀行の協会長さんとの連絡という点までまだ気が及んでおりませんが、御指摘の点はまことにごもっともと存じますので、少なくともその間に醜い取り合いみたいなことは避けるような御相談をしていきたいと存じております。
  63. 武藤山治

    武藤(山)委員 銀行局長に、いま全銀協会長の意思表明がありましたように、相銀、地方銀行ともこの問題に関係が深いわけですから、これらの協会長に対しても大蔵省として適切なサゼスチョンをしていただいて、これらの零細なサラリーマンの諸君に被害が及ばないような大蔵省としての最善の行政指導を強く希望します。あなたの見解を聞いて終わりたいと思います。
  64. 澄田智

    ○澄田説明員 前回の当委員会におきましても申し上げましたとおり、零細な債権者がこの場合の真の被害者であるということはおっしゃるとおりでございます。いま御指摘のように、各協会長を通じまして、今後事態の推移を見て、最終的な処理の場合に、十分御趣旨のような点を考えて、そういう点を徹底させるように指導につとめて、遺憾なきを期したいと思います。
  65. 武藤山治

    武藤(山)委員 終わります。
  66. 田村元

    田村委員長 砂田重民君。
  67. 砂田重民

    砂田委員 私がお伺いしたいと思っておりましたことは、ただいま武藤議員から御質問がございました、小口債権者の債権をどういうふうに守ってあげるかという点だけでございます。武藤議員に対する御答弁で大体私も了解もいたしたのですが、たいへんしつこいようですけれども、ちょっと念押しだけをさせていただきたいと思います。  六月の二十八日に、京阪神土地山田会長の代理人として志水さんという弁護士さんから裁判所に、会社更生手続開始の申し立ての書類がもうすでに提出をされておるようです。御承知でございますね。その後、志水さんという弁護士さんを会社更生手続開始申し立てについての保全代理人に裁判所側が指名をしております。こういう経緯を御承知でございましょうか。小山さんから……。
  68. 小山五郎

    小山参考人 お答えいたします。  ただいま御質問の志水さんという名前につきましては、率直のところ、私、記憶にないのでございますが、大阪の事務所長のほうからそういう運びになっているという話は聞いております。
  69. 砂田重民

    砂田委員 それでは、その後の裁判所が指定をいたしました保全管理人の大白さんという弁護士さんと現地において、きょうおいでになりました各行の担当の方々がどういう接触をしておられるか、そういうこともまだ御存じございませんでしょうか。
  70. 小山五郎

    小山参考人 私に関する限り、まだそれについては何ら聞いておりません。
  71. 砂田重民

    砂田委員 実は、その京阪神土地という会社の倒産といいますか、倒れ方がちょっと異常な倒れ方なんですね。公正な取引を続けて、企業努力を続けてそれでつぶれたというのではない。先ほど小山さんからも長谷川さんからも、少なくとも世間を騒がせた点については社会的責任を感じておられるという御発言がありまして、私も了解をいたしたのですが、そういう背景で、先ほど武藤議員の発言がございましたように、何かうまい方法を考えて、小口債権者というものを守っていただきたい。やはり大口債権者としての立場の銀行のことでございますから、ただ異常な倒産の形をしたので、どうも会社の経理帳簿その他もあまりはっきりしたものがつかめない。現に、ただいま武藤議員のおっしゃいました二百三名の小口債権者、一億三千万、そうおっしゃった数字と、私が兵庫県警で調べた数字とすでに食い違いがある。私が県警から聞いておりますのは、百九十三名、一億九千万といっております。おそらくまだ明確につかめないのだろうと思います。そういう事態でありますだけに、この保全管理人となられた大白さんという弁護士さんのところへ相当な協力をしていただかないと、なかなか事態が明確になっていかないし、会社更生法に基づいていくのが是なのか、あるいは破産会社整理のほうでいくのが是なのか、そういう答えもなかなか出にくかろうと思うのです。伺っておりますところでは、きょうお見えいただきました三行の現地それぞれ一人ずつ、その大白弁護士のところに連絡員のような形で銀行員の方を派遣していただいておりまして、御協力をいただいておるやに伺っておりますが、先ほど武藤議員の質問と同じような質問を念押しすることになりますけれども銀行の皆さんのほうで債権確保だけに主眼を置いてやられたのでは、マイホームを夢みた人があまりにもかわいそうだと思うのです。  この席でこういうことを申し上げる必要もないかもしれませんけれども京阪神土地の地元神戸での風評は、京阪神土地という会社へのこういった小口債権者がたくさんいる、そういう人たちのこの会社への信頼感というものの大きな要因の一つに、三井銀行さんが全面的にバックアップをしている会社なんだ、福徳相互銀行さんが、これはもう力一ぱい支援をしている会社なんだ、こういう風評が神戸市にはたくさんあったわけなんです。そういう背景のもとに安心をして、こういう小口債権者は、今日非常な迷惑を受けておる人たちは、そういう風評を信頼感の一つのたてにして、京阪神土地取引をしてきた。  そういう意味合いで、先ほどの小山さん、長谷川さんの社会的責任は感じておるという御発言を私は了承するわけなんでございますが、念押しをするようですけれども、もう一回、それぞれの社長さん、頭取さんから、この解決策について、小口債権者というものの債権の確保のためにできるだけの方策を考え、裁判所の手の及ぶ範囲の中で、できるだけの方策を考えて協力するのだという、そういう御決意のほどをお一人ずつからお答えをしていただきたい。
  72. 松本理作

    松本参考人 お答えいたします。  砂田先生は、神戸地元でございます。私のほうも、大阪に本店を持ちまして、兵庫県に五店舗支店をいただいておりまして、地元でございます。先生の御調査のとおり、多数のマイホームの方々がおられましていろいろと御迷惑をかけている結果となっておりまするが、私といたしましても、銀行の一方的な考え方で善後措置を考えるということは毛頭考えておりません。幸いに先ほど先生がお話し申されましたように、山田氏には志水弁護士が代理人となって会社更生法の申請をしておりまするし、マイホームの方々が債権協議会というものをつくりまして、奥村弁護士を代理人として県庁のほうへ、何とか会社の善後処理をスムーズにするようにという申請をしておられまするし、その債権協議会が中心となって金融団のほうへも折衝もあることでございます。  当方といたしましては——先ほどの志水弁護士が提出せられましたその会社更生法の申請に基づきまして、裁判所のほうでは大白弁護士を財産の保全管理人として任命いたしました。その事務所のほうへ私のほうからと、第一銀行のほうは存じ上げておりませんが、三井銀行のほうと——手が足らないから何とか協力してくれ、大白弁護士のお話でありまして、三井銀行の大阪事務所と連絡をとりまして協力することにいたしております。そういたしまして、これらの問題ができるだけ公正にして、しかも円満に処理できることを、単に利害関係だけでなく、金融機関公共性考えまして、善後処理を正しくいたしたいと念願しておる次第でございます。幸いに小山社長とは年来ごじっこんにもお願いしておりまするので、いろいろとまた御指導を仰ぎまして協力いたしたいと思う次第でございます。
  73. 小山五郎

    小山参考人 先ほど武藤先生に対しまして、私、申し上げた気持ちといささかも変わりはございません。  なお、長谷川第一頭取からの話がございましたように、事実私と長谷川頭取と事前に——と申しますのは、この参考人として招集されるからということでなく、事前に、同患同憂と申しますか、こういう騒がした事件の中に入った両行としまして、私は私の所信を協会長としての長谷川さんに申し上げましたところ、いや、実はおれもそう思っているのだということで、先ほど来の長谷川協会長としてのおことばがあったかと存ずるわけでございます。そのとおりわれわれもやっていきたいと思っております。
  74. 長谷川重三郎

    ○長谷川参考人 いま三井の小山社長からのお話で、私つけ加えるものは何もないと思いますが、銀行協会といたしまして、こういうことはまことに従来とも研究不足だったと思います。ただ、銀行協会の中にも業務刷新小委員会というものをつくって従来ございました。これは常務クラスの集まりでございます。これを機会に——これは私の個人考えでございますが、銀行協会は御承知のように理事会を構成いたしておりますものでございますから、理事諸氏におはかりしなくちゃならないわけでございますが、これを機会に、小山さんからのお話もあるし、とにかくお互いに数の多いお取引、どういう間違いが起こるかわからぬ。それで、向こうと申しますか、善意無過失の第三者に御迷惑をおかけするということもあるし、銀行のお互いのエラーもございます。そういうことを含めまして、お互いに問題の所在をよく言い合って、それでお互いにそれを反省し合って、また、事後処理を相談し合う何かコミッティーみたいなものをつくってはいかがかということを、この問題をきっかけにして、私、私見でございますが、考えておるところでございます。  この問題は、今後司直の手で進められていく問題と思いますが、それにフォローいたしまして、前言を繰り返しまするが、担保はもちろんいただいているのでありますが、もしそれによって御迷惑をかけるようになれば、こちらの担保分をさいてでもそれをカバーしていくのが公共的使命を帯びる銀行としての使命と私はかたく信じております。
  75. 砂田重民

    砂田委員 お三方の御意思、私、まことにけっこうだと思います。了承をいたします。  ただ、第一線の銀行員の方々は、それぞれ御自分の銀行に忠誠を誓っておられるのが第一でございます。だから、社長さん、頭取さんの御意思がそういうところに十分反映されるようにしていただきたいと思うのです。現に、いま松本さんのお話によりましても、保全管理人の手元に行員を出して協力していただいているのですが、おそらく保全管理人の手元でこれから将来の問題についてもいろいろな作業が行なわれると思いますが、保全管理人のものの考え方にもお三方のただいまの御意思が反映されて、そういう意図のもとに保全管理人が好ましい方向を打ち出していただきたい、かように考えるものでございます。どうぞ、第一線の方にお三方の御意思が十分徹底するように御処置をお願いをしておきたいと思います。  銀行局長については、前回の委員会の答弁と武藤委員への答弁で了承いたしました。  終わります。
  76. 田村元

    田村委員長 堀昌雄君。
  77. 堀昌雄

    ○堀委員 済みました問題をいまから取り上げてどうこう言いましても、これはいたし方のない点でありますから、この事件で起きましたいろいろな問題点の中で、二度と繰り返してはならないようないろんな問題がございます。ですから、その問題を少し申し上げて、今後に対する一つの保証といいますか、銀行あり方について少し意見も添えて申し上げておきたいと思います。  最初小山社長にお伺いしますが、私、大体承知をいたしておりますのは、銀行では社長頭取銀行全体を代表して外側に対して主としてお動きになり、副社長や副頭取というのは内部管理最高責任者というふうに承知をいたしておりますが、さようでございましょうか。
  78. 小山五郎

    小山参考人 お答えいたします。  各行によってその組織のあり方は違うと思うのでございますが、私どものほうは、社長が全般を主宰し、社長事故ある場合には副社長これを云々という、いわばきまり文句みたいなまず行規というものがございます。しかし、実際問題といたしますと、いま先生が仰せられたように、社長というものは、ともすればやはり外へ引っぱり出される、あるいは自分からまた積極的に出ていかなければならぬ機会がより多い。したがいまして、補佐するという意味合いの副社長、副頭取というものが内部のほうに専念するという自然の分類のしかたになっているかと、かように思うわけでございます。
  79. 堀昌雄

    ○堀委員 そういたしますと、この事件がございました当時は、小山さんが副社長として御在任であったと思うのでありますが、おかしいな、こう気がおつきになったのは、一体いつでございますか。
  80. 小山五郎

    小山参考人 先ほどの武藤先生のときも大体の感触を申し上げましたが、預金があまり多く来る、そうしてそれが一体どういう性質の預金なのか、先ほどの私どもの組織ではよくわからなかったわけでございます。ただ、非常にふえてくる、これで貸し金はどうかというと、貸し金審査は先ほど来申し上げたような形でやっておる。そうすると、問題はないかもしれないけれども、あまりにそう恩恵三井銀行だけにくるというのは、それは少し思い上がりというものじゃなかろうかという意味でのまず感触でございましたが、そういったものはおぼろげながらそのつど、そのつど——というのは、急に急ピッチになってまいりましたので、いつ何日にという的確な記憶は私にはございませんのですが、大体四十一年の秋ごろ、これはおかしいじゃないかというような気持ちがいたしたわけでございます。
  81. 堀昌雄

    ○堀委員 三井銀行は四十一年の十月に銀行検査が行なわれておりまして、前回の委員会銀行局長から、十二月に口頭で、一月に文書で注意が喚起されておったというふうに実は報告があったわけでございます。そういうものを受けられる少し前に大体気がついておられた、こういうことでございますか。
  82. 小山五郎

    小山参考人 お答え申し上げます。  ただいま申し上げましたように、その感触のしかたが、ことに事件が優良得意先というような雰囲気でもって推移しておりましただけに、いつごろという記憶が非常にこうにじみ合うと申しますか、そういうような形で的確に私、記憶にも事実ございませんのですが、そういったとき、たまたま大蔵省検査が参りまして、格別、担当の方からはその場ではなかったわけですが、われわれのほうの担当行員に対しましては担当官の方からずいぶん詳しい御注意なり、またお調べなりがあったようでございます。そうしてまた、事実、最後におきまして、先生が申されたその時期を私は実は何月何日というのはなんでございますが、口頭または文書でも、安易な預金に流れてはいかぬ、そうしてまた、これを管理せねばいかぬというような意味の厳重な御注意がございまして、そういうことを確かに確認いたしました。
  83. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、当該の支店長でございますが、現在起訴をされております方は、昭和三十八年十一月から四十一年四月までたしか兵庫の支店長をなさっていて、その後、京阪神土地重役、姫田証券の代表取締役等になっておられるわけでありますが、銀行としてはある特定の預金があり、非常に貸し出しがある、そこへ当該貸し出しをした支店長、当該預金を受けた支店長が行くということはノーマルなんでしょうか、アブノーマルなんでしょうか。
  84. 小山五郎

    小山参考人 それは対象によって違うのじゃなかろうかと思うわけでございますが、いま振り返ってみますと、冒頭おわび申し上げたような、そういったいかがわしい先ということがはっきりしておりましたならば、おそらくはただいま御指摘のような措置は、銀行としても、むしろ本人が行くと言ってもこれを阻止させたことだろうと思います。
  85. 堀昌雄

    ○堀委員 もう一つ、実はこの問題で神戸のほうで一般にいわれておりますことは、京阪神土地が御承知のように栄町の三井ビルの中に入っていて、そうして三井銀行と非常な取引がある。これがおそらく私は他の各銀行が安易に信用して京阪神土地貸し出しをした一つの大きな問題点になっておると思うのであります。実は私は、さっき武藤君がちょっと触れましたけれども、廣島銀行はどうも関係がないのであると思いますが、この廣島銀行支店長が、山田からひとつ担保物件を見て金を貸してくれと言われまして、現地を見に参りました。現地を見たところが、図面ではその担保になるべき土地には高圧線が通っていた、現地を見たらその現地には高圧線が通っていなかった、これはおかしいと考え調査した結果、実はこの融資を断わっているという例があるのですが、私は、地方銀行支店長がこれだけ判断をきちんとして断わっていながら、各都市銀行が軒並みにこの融資にひっかかったということは、さっき長谷川さんは巧みに持ちかけた、こうおっしゃっておるのでありますが、やはり私は、銀行の盲点を巧みについたということでは、だまされるほうに盲点があったのではないだろうか、こういう感じがいたします。  そこで、なぜ一体——少し冷静に客観的にごらんになれば、資本金一千万円のこの会社、そうしてまた、関連会社が幾つかございますけれども、いずれも重役関係はほとんど錯綜をしていて、見るべき仕事をしていない関連会社があるにもかかわらず、銀行というところが相当審査をきびしくしていらっしゃるにもかかわらず、このような事態が起き、あまつさえ三井ビルの中にまでその入居を認めたという経緯については、一般市民としては、何か三井銀行と特定の関係があるのではないかといううわさがされておるのが現状であります。そこで、ひとつその点についての小山さんの御見解を承りたいと思います。
  86. 小山五郎

    小山参考人 御指摘、まことに何とも汗顔の至りでございます。実は、私、その京阪神土地が私どものほうの銀行の中に入っていたという事実をごく最近まで、はなはだ不敏のことでございますが、知らなかったわけであります。あるいは報告を受けたのかもしれませんが、それに対して記憶はなかったわけでございます。しかしながら、いずれにせよ、入っていたことは事実でございます。さっそく取り調べさしてみましたところ、四十年の暮れごろでございましたか、山田さんが当時——当時というか、その後引き続きそういうイメージであったわけでありますが、非常な有力な資産家であり、そうしてまた、りっぱな人格という山田さんが兵庫支店に立ちあらわれまして、自分の事務所というものはいかにも狭い、どっかないかということで照会があったそうでございます。そこで、ただいま申し上げたその山田さんが非常に有力なあれだということで、そうして純預金先だから、これは何でもお世話申し上げればさらに——まあそんたくでございますが、そのそんたくは間違いないと思うのでございますが、支店長としましてもさらに三井銀行としての自分の業績も飾れるんじゃなかろうかという気持ちがあったことは想像にかたくないと思うのでございます。たまたま私どものほうの神戸支店というのが、これは実に古い建物でございまして、その三階というものは、大体現在でも二十何社かの方々にお貸ししているのでございます。その中の一社、三星刃物とか、ちょっとその名前は不正確でございますが、その一社がそのしばらく前にあいて、間あきになっていたというようなことがあったのだそうでございまして、これならどうだということで、ごあっせん申し上げた、かように私は事後聞いたわけでございます。
  87. 堀昌雄

    ○堀委員 済んだことでございますから、いまからとやかく申しませんけれども銀行のビルの中に会社を入れるということは、他の一般の者が銀行に持っておりますイメージというものは、これは非常に信用度が高いものですから、銀行のビルの中に入っておる会社ならまず心配あるまい——この前山陽特殊鋼の問題がございましたときに、三菱銀行が役員まで送っておる会社だから心配あるまい、これが山陽特殊鋼が倒産に至るまでその下請業者その他の関連業者が不安を持たなかった一つの理由であります。裏返すならば、それだけ銀行というものは信用がきわめて高いわけであります。その信用の高さに比例して、皆さん方は、その行為なりいろいろな行なわれますことについては、責任が非常にあるのじゃないかと私は思うのであります。この点は特に銀行協会長であります第一銀行の長谷川さんにはよくお考えをいただきたいところでありますが、今後ひとつ、銀行が何かこういう特定の事業に関連を持たれるときには、少なくともその銀行として最終の責任が持てるようなものでなければ、銀行のビルの中に入れたり特定の大きな取引をすることのないようにしていただかなければ、これは単に銀行相互間の問題だけでなくて、不特定の市民に被害を及ぼすおそれがあるということを私は今度の事件は証明をしておると思うのであります。この点について、ひとつ長谷川さんのお考えを承っておきたいと思います。
  88. 長谷川重三郎

    ○長谷川参考人 ただいまの堀委員のお話、まことに適切な御注意であり、私も心底そのように考えております。ただ、従来、御指摘のように、幾つかの銀行におきまして、幾つかの場合に世間を間違わせるような結果に相なったこともあったかと思います。これは何ぶんにも取引先の数も多いし、エラーもあったかと思います。先ほども申し上げましたように、この事件を機会といたしまして、あるいは協会の中に、そういったようなことについて反省し合い、お互いの間違いがあったら言い合う、それでほかがそれによって自分のほうを調べ合うというようなコミッティーでもつくって、ただいまの堀先生の御指摘のような点をますます自戒して、幸いにしてと申しますか、とにかく銀行が関与しているのだからだいじょうぶだという信任がまだあるのでございますから、それを自分なりにもつともっと深く反省して、これを善用していきたいという覚悟でございます。
  89. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、実はさっき小山さんのお話しになっておりましたことを聞きますと、確かに貸し金技術としては瑕疵がなかった、こういうことでございますね。銀行ですから、おそらくどこも貸し金技術というのは瑕疵がなかった。しかし、トータルとしては瑕疵が出ておるわけですね。一行だけでは瑕疵がなかった、銀行全部のトータルで瑕疵があったから、問題になっておるわけですね。  そこで私は、この問題の背景に、たびたび当委員会で取り上げてきておるわけでありますが、銀行の事件あるところ必ず架空名義、無記名預金ありというのが、これまでの実際の経過であります。ごく最近は東京相互銀行で起きました一億円事件、これも架空名義でございました。今回のこの導入預金もおそらく私はいずれも架空や無記名に関係があると思います。正規に名前を出して、そして裏金利がどんどん払われたりするというふうには普通はなかなかいかないものだろうと私は思います。ですからその意味では、これは私、当委員会でいろいろ取り上げて、銀行協会としても自粛をしていただいておるようでありますけれども、長谷川さん、ひとつこの無記名と架空預金の問題は、今後とも銀行事故の最大の問題点になるだろうと思いますので、これについての長谷川さんの全国銀行協会長としての御見解をちょっと承っておきたいと思います。
  90. 長谷川重三郎

    ○長谷川参考人 お答え申し上げます。  ただいま堀委員から、全国銀行協会長としての私の見解を申し述べろと御指示がございましたが、その点は理事会の承認を得ないとあれで、私の個人的なあれを申し述べさせていただきたいと存じます。  架空名義と申しますか無記名預金につきましては、これは十数年前でありますが、私、第一銀行の当時業務部長か何かをやっておりましたそのときにでき上がった制度でございます。それのできるプロセスにおきまして、私、当時の銀行課長、どなたか忘れましたが、御相談を受けて、いろいろお話しし合ったことがございます。それでそのとき、十数年前で、要するにインフレの進行ないし終息期でございました。とにかく貯蓄の増強というのは、どういう形で多少のエラー、間違いがあろうとも、預金の形において国民の現金的蓄積を固めなくちゃいかぬという時期であったと存じます。その意味におきましてこの制度の妥当性もあったのじゃないかと考えております。それが現在におきましてどうかという個人的意見を述べるということでございましたら、確かにその使命は終わったのではないかと私は考えます。架空名義はややこれと同断かと存じます。  したがいまして、今後これをどうするかという問題なのでございますが、これに対しまして再三いろいろな席で先生方の御指摘もあり、また、銀行の中で申し合わせをいたしまして、架空名義などについてお客さんになるだけそういうものはやめてくださいというような意味のポスターを出したりいろんなことをやってはおりますが、正直に申して、ややおざなりの感がございます。それで無記名定期については国税庁の方々からも森脇文庫の事件の際にお申し入れがありました。これはまことにごもっともな御指摘と思います。しかし、当時私は銀行協会長ではございませんでしたが、そのとき銀行協会として反論をいたしております。そのポイントは、資本蓄積の重要性という点が主になっておりますが、実際のポイントは、これは私なりの解釈でございますが、普通私ども銀行で扱っておりますのは、預金の形、記名預金、消費貸借、そのほかに有価証券等その他の形において同じようなものが無記名で行なわれている、それとアンバランスではないかというような主張であったかと思います。したがいまして、そういう点とからみ合わせまして、この際そういう問題も再検討していただく時期に来ているのではないか。これは金融制度調査会その他におきまして英知をしぼってやっていらっしゃることでございますから、それに対しまして期待をしたいというのが私の個人の意見でございます。
  91. 堀昌雄

    ○堀委員 いまお触れになりました債券は無記名、だから無記名の定期があってもいいではないかということですが、債券は無記名になっておりましても、こういうトラブルを起こす要素になるとは私は思わないのであります。預金であるから、無記名であるところに実はトラブルを起こす原因があるわけでありまして、私は、こういう問題がなければ特にこれほど申し上げる気はないのどありますが、過去一連の銀行のトラブルを見ておりまして、無記名か架空の出てこないトラブルは一件もございません。銀行局長、一件でもあったら簡単に言ってください。ありますか。
  92. 澄田智

    ○澄田説明員 トラブルということばの範囲にもよると思いますが、おっしゃるとおり、一件もと言われるとちょっとわかりませんが、大部分の場合には匿名預金あるいは無記名というような形の場合に起こったことであります。
  93. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、いま委員会を商工へ行っておりますけれども、かねて金融制度の問題について、あるべき金融機関金融制度のあり方についてということで、昨年一年間小委員会を開いていろいろ皆さんの御意見を聞いてまいったわけでありますが、その中で、私は今度の事件を見ながら感じますことは、あるべき金融機関という将来の問題の前に、今日金融機関はいかにあるべきかという問題をまず先にやらなければ、いまの問題ががたがたしているのにあるべき金融機関もへったくれもないなという気がいま実はしておるわけであります。     〔委員長退席、渡辺(美)委員長代理着席〕 この中では適正な競争を大いにやるということで、私も自由化論者でありますから、適正競争をやってもらうのはいいのですが、今度の経過は適正競争の結果出てきたものではないと思うのです。やはり皆さんのほうで支店に対して、できるだけ預金量をふやせ預金量をふやせ、こういっていらっしゃる。そのノルマが一定のところにあるというところに、うまい話で預金をあげましょうといってくれば、支店長が飛びつくのは、いまの体制ではあたりまえだと思うのです。ただ問題は、飛びついたときに、本店なりその他の中枢部分がその預金の性質は一体何かということを、多額預金ならば調査すべきではないかという点が、私は今度の最大の盲点だと思うのであります。皆さん方は貸し出しについてはお調べになった、技術上瑕疵がなかったとおっしゃる。私に言わせると、この三井銀行の場合にも、これは技術的な問題で貸し出し態度本来のあるべき姿から見たら私は重大な瑕疵があったと判断をしておりますから、技術的に瑕疵がないということで問題をおさめてはならない。貸し出しそのものが、少なくとも日本経済の、国民の生活を確実にレベルッアプできるかどうかということのめどの立たないものに金を貸せば、それは必ずむだな投資になってはね返ってくる。その被害者はどこかに出てくる。こうなるのが私は理の当然だろうと思うのであります。そうするならば、貸し出しももちろん慎重にやっていただかなければなりませんが、今後はひとつ預金についても——特にいま無記名は制度にしてありますからしばらく無記名は続くと思います。記名でもそれが確かにその人の預金であるかどうかということは実際はわからないわけでありますから、大口の預金についてはこれから貸し出し同様にひとつ本店その他で監督をして、この預金は問題がない預金だということをチェックをしていただくことが、私はこの問題を契機にして今後こういうトラブルを起こさないための一つの問題提起ではないかと考えるわけでございますが、それについて小山さん、それから長谷川さん、松本さん、おのおのちょっと答えていただきたいと思います。
  94. 小山五郎

    小山参考人 ただいま堀先生のお話、非常にごもっともと思いまして深く打たれたわけでございます。  私、先ほど、貸し出し技術については欠けるところがなかったかとあえて申しましたのは、貸し出しそのものはいささかも間違いがなかったということは言えないと私自身深く内省しておりましたので、そういうことばを使うのもおかしいと思ったのですが、つい技術というようなことばがあそこに出てしまったわけでございまして、この点につきましては内省の一つの証左というふうにひとつお聞き取り願いたいと思うわけでございます。  さようなわけでございまして、確かに管理機構の点で、先ほども卒直に申しましたところ預金者に対する管理、そしてまた、与信行為については、銀行経営の基本問題だということで、きわめてきびしい、がんじがらめの制度を各行ともとっていることと思います。私どものほうもそうでございました。そういう意味で先ほど貸し出し技術と申したわけです。ところが、受信、受けるほうの問題については、預金にかかわらず為替その他につきましても、これは受けるほうだから銀行の基本的の問題には関係の度が薄いというような観念が、従来非常に深くわれわれ銀行の機能に対するところ管理形態に無意識的にあったのではなかろうか。それが、先生の御指摘のように、社会現象というものがここまで複雑になってまいりますと、受けるほうだから問題はないんだというわけにはこれは相ならぬことになってきた。本件を参考にいたしまして、単なるイメージアップでこうまで複雑なところに巻き込まれてしまったのかということで深く残念に思うと同時に、先生のおっしゃる意味をよくかみしめて、私どものほう一行の管理体制の上にもこれを持ち込みたいと考えております。
  95. 長谷川重三郎

    ○長谷川参考人 小山社長からのお話もございましたので、ダブる点を省略して別の観点から一言申し述べさせていただきます。  確かに、こういう事件の背後には行き過ぎた預金獲得競争があることは間違いない、疑いをいれないところでございます。しかし、最近におきまして、これはやや弁解がましくなりますが、統一経理基準というものが去年来提起され、銀行としては量の競争よりも質の競争をやろうということにだんだん転換しつつあることは事実でございます。現にこの三月末の各都市銀行、私は都市銀行しかちょっと頭にございませんが、預金計数——大体御承知のように期末の預金獲得に血道を上げておったのがいままでの状態でございます。この三月末の預金計数におきましては、かなり都市銀行のおもなものについてはビヘーブされた形が出てきつつあるように思いますので、この点をもっともっと改良いたしまして、支店に対する預金の割当とかそういう点につきましてはお互いに注意し合うということはぜひ必要なことと私は存じております。
  96. 松本理作

    松本参考人 堀先生の御質問いただきましたおことばのような事態が、従来なかったとは言い切れないと存ずる次第でございます。私のほうにおきましては、この京阪神の問題を契機といたしまして、量より質の確立のために厳重なる指示をいたしまして、その後量を考えずに質の充実に最重点を志向いたしておる次第でございます。先ほど小山社長のお話にもありましたように、従来貸し付け、融資に対しましてはかなりシビアーにいたしておったのでございますが、預金に対しましては野放図な点もございました次第でございますので、昨年の九月にさっそく従来全然考えてなかったシステムの一つに、一口五百万円以上の預金に対しましては、全店からそのつど一口一口報告を出させまして、本店で検討して、今後再び間違いのないようにもつとめておる次第でございます。その意味におきまして、昨年来資金量の伸長も鈍化いたしておりまするが、御指摘のようなあやまちをもう再びおかすことのないように誠心努力していることを申し上げる次第であります。
  97. 堀昌雄

    ○堀委員 銀行局長、いま申し上げてきた中で、これは協会側あるいは銀行側でお考えいただくと思いますけれども、少なくとも私がきょう提起をした——その統一経理基準が行なわれましても、私は預金競争というものはそう簡単になくならないと思います。また、本店の要するに幹部の皆さんがお考えになっている以上に、実は支店段階の諸君はやはり自分たちの将来の道に関係をいたしますから、そう簡単ではないと思います。だから、預金の競争を避けるわけにはいきませんけれども、少なくともいま私が問題提起をいたしましたように、異常な大口な預金が出てきたときには、必ずそれは調査をするということを今後はやっていただくことが、少なくとも導入預金等の問題を避けることの道になると思います。同時にまた、いまの事故を避けることにもなると思うのでございますから、その点はひとつ銀行局としても十分検討をして、全金融機関に対して今後預金受け入れのあり方について十分ひとつ精査をしてもらいたい。あわせて、その際、できるだけ無記名や匿名の問題についても、そういうことが起こす社会的な弊害というものを考慮に入れて、これは私も何回も申してきたことでございますけれども、重ねてこの事件の反省として、銀行局は金融界に対してひとつ強い態度で臨んでもらいたいと思うのであります。  最後に、今後の金融制度をいろいろ考えていく場合に、やはり現状は一体どうなっておるかということを、先のことも非常に大事ですが、現在の金融機関というのは一体どうなんだろうかということを、この際、ひとつあわせて金融制度調査会で、現在の金融機関における問題点というものを——特に先ほどお話のあったように、盲点があれば、現在は非常に知能的な犯罪が多くなっておりますから、その盲点を巧みにつかれて、十三もの銀行がひっかかるなどということは、やはり私は金融の制度的といいますか、金融機関の中の盲点というものを巧みに利用されておる。その盲点の一つは、いまの預金競争である。預金さえすれば貸し出しは自由にできるんだとか、そういう安易な金融機関態度ところに私は問題があると思いますので、十分この反省を生かして、再びこのようなことの繰り返されることのないように、あわせて今後の金融制度の検討を進めるについても、この問題の教訓を生かしていただくということを強く要望いたします。
  98. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員長代理 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  各参考人には、御多用中のところ長時間にわたって御出席をいただき、ありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  御退席をいただいてけっこうでございます。      ────◇─────
  99. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員長代理 次に、参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  金融に関する件について参考人出席を求め、意見を聴取することとし、その日時、人選、手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  100. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決します。      ────◇─────
  101. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員長代理 次に、国の会計税制金融及び証券取引に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。只松祐治君。
  102. 只松祐治

    ○只松委員 前回お尋ねをした中で、大臣答弁を必要としたものだけ残しておったのですが、そういう点について二、三お尋ねをいたしますから、ひとつ簡明にお答えをいただきたいと思います。  その一つは、先ごろ税調が答申をいたしました。その中で、五人家族百二万幾らまで昭和四十五年度を目途として課税最低限を引き上げるように、こういうものが一つあります。それといま一つ、私たちの見方からするならば、インフレーションが進んでいっていわゆる名目賃金というものが上昇をいたしております。それにつれて税率というものが上昇をしてまいります。したがって、税率の緩和、税率を改正するように、多少の逃げ道はありますが、同時に並行して行なうように、これは当日出席されました松隈会長代理もそのことは述べられたわけでございます。ここに議事録もありますが、そういう趣旨だ、こういうことでございます。したがって、勤労所得税を払っておる国民、税関係では一番多いわけですけれども、二千万になんなんとしておりますこの人たちが要望しておる、税調も答申をしたこのことを大蔵当局は実施すべきだと思います。米価問題その他でたいへんお忙しくてまだ十分な勉強をなさっておらないということでございますけれども、それはそれといたしまして、基本的な方針として、それを同時に並行して考慮する、これぐらいは答申を受けた担当大臣として——これは総理大臣にも手交されておるわけですから、担当大臣としてお答えいただけるのは当然だ。ひとつ明確なお答えをいただきたいと思います。
  103. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 この委員会でしばしばお答えしたと思いますが、私ども最初考えでは、何としても課税最低限を少なくとも百万円まで引き上げることが急務であるというふうに考えまして、これはおそくとも今後二年間でやりたい、それが済んでから今度は課税最低限の引き上げじゃなくて税率の問題というようなものを、その次にはそういうものへ入っていきたいというふうにしばしばここで申しておったのでございますが、今度の答申を見ますと、期限を切ってはございませんが、率の問題も、課税最低限の引き上げの問題も、給与控除の問題も、三つをこれからの所得税のあり方として答申されましたので、それをどうするかはこれから考えたいと思いますが、ただ、最低限の引き上げだけやって次に税率というふうに区別してやろうとしますと、御承知のように二百万、三百万という中堅所得者の税の負担は軽減されますが、それ以下の人に恩恵というものが及ばないというようなことで、切り離して単年度の税制改革としてやろうとすると、そこにどうもあまり好ましくない姿の減税案になりますので、やはりある程度これは一緒に考えてやるほうが合理的じゃないか、妥当じゃないかというふうに考えております。問題は財源との問題でございますが、私はできたらこれを切り離さないで何とか一緒に考えたいという方向でこれから研究してみようと思っております。
  104. 只松祐治

    ○只松委員 さすがは大臣でございまして、この前事務当局はなかなかそこまでのあれが出なかったのです。これ以上申しませんが、課税最低限の引き上げだけでは、給料を取っておる人々に、言うならば中産階級といいますか、そういう人々に課税の負担をかけたりいろいろな問題を引き起こすわけですから、ぜひひとつ考慮の上実現ができるように御努力をお願いしたいと思います。  次に、証券の問題についてお尋ねをいたします。  いまなお保有組合に四百五十億、共同証券に八十二億、日銀貸し出しのものが残っております。これも前提になるいろいろな論議をいたしまして、いま、かつてない五年ぶりの株価高、こういう事態を招いて、証券界の一部には過熱現象というような現象さえ見られております。あとお尋ねしますが、大和ハウスなんか五倍にはね上がる、こういう事態も招いております。ところが、依然としてこの共同証券、保有組合に、しかも日銀借り入れのものが残っておるというのは、これは国民の側から見ればきわめて不可解なことだと思うのです。  そこで、共同証券、保有組合も、私たちが年来主張しておりますように、これは田中さんのときに、一年間大体塩づけ、たな上げすれば済む、どんなにしても二年間見ておいてください、こういうことをたびたび田中大臣のとき言われたわけなのです。それからすでに三、四年たっておるわけでございますが、私たちはこういう異常なものは取り除いたほうがいいのじゃないか、特に日銀貸し出しのものはすみやかに処理したがいい、微妙な株の問題でございますから、ここで何月とか本年度内とか、そこまでのことは明言されなくてもけっこうでございますが、ひとつこの日銀貸し出しの分についてはやはりすみやかに善処する、こういうお答えをいただきたいと思います。
  105. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 この保有組合にしましても共同証券にしましても、保有株の放出ということは、いろいろ証券界に影響を与えますので、いままで慎重にやってまいりましたが、ようやくこういうものの放出が可能な環境になってきましたので、最近急速にこの措置は進んでおります。いまの情勢で見ますと、保有組合はいずれにしても存立の期限が来年の一月でございますが、それまでには処理できるのじゃないかというふうに私ども考えて、極力これはそういうふうに急ぎたいと思っておりますし、いずれにしましても、日銀への返済の問題はできるだけ早く片づけたいと考えております。
  106. 只松祐治

    ○只松委員 これは共同証券の分ですか、保有組合ですか、一月までというのは。
  107. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 保有組合です。
  108. 只松祐治

    ○只松委員 日銀のやつは保有組合のほうが多いわけですね。しかし、全体としてはまだ共同証券も相当あるわけでございますから、ひとつあわせてお考えをいただきたい。  それから、これに伴って解散をする、こういうことになりますれば、当然に利益が出てまいります。相当膨大なものです。その利益をどう処理していくか、これはいろいろ皆さん方の考えがほかのところにも出ておるようでございます。「基金構想を検討」というような形で出ておりますけれども、株式市場というのは好況のときだけではないわけでございまして、不況のときもあります。したがってこういう、しかも日銀の金を大量に使って利益を得た、こういうものに対しては、やはり公的にその利益を使っていく、私たちから見れば国民大衆のためにということでございますが、それを一歩下がりましても、少なくともこの証券金融機関というものをつくるなり、証券界全体のものに使っていく、このことくらいはなさっていいんではないか。保有組合に参加しておるものだけがこの利益をかってに処分するということは、本来の趣旨に反するのではないか。そういう点について——それまでに、保有組合が一月くらいまでに解散するとかいうことになりますれば、国会も委員会が何回か開かれる程度でございまして、こういう問題が論議される機会がきわめて少ない。したがって、そういうものに対するおおよその構想くらいは明らかにされておく必要があるだろうと思う。お聞かせをいただきたい。
  109. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 証券界においてもただいまその問題については検討中でございまして、いまおっしゃられたような方向でこれを解決したいというような意向が強いようでございますが、まだその案が現在出ておりません。いずれ、これからのあり方とか利益処分の方法というようなものは当然解決しなければならぬ問題でございます。もう少したったら証券界からもきまった一つの案が出てくるだろうと思いますので、それによって私どものほうもどう処置させるかを考えたいと思っております。
  110. 只松祐治

    ○只松委員 証券界からも出てくるかしれませんが、日銀から引き出したりなんかするときには、これは大蔵省が指導的な役目を果たしておられるわけですね。この塩づけ、たな上げをされるときの事態をお考えいただけば、大蔵省が非常に重要な役目を果たしておるわけです。当然にその利益の処分についても、大蔵省はきわめて大きな発言権があるわけです。少なくともそういうものに対する指導といいますかサゼスチョンといいますか、とにかく大蔵省の意向というものもあってしかるべきだと思うのです。そこまで煮詰まっておらないなら別ですが、ただ向こうの答申なり意見具申を待ってするということだけでは、私は問題があろうかと思う。証券局長のほう等で具体的に何かそういうものがあるんだったら、証券局長のほうからでもお答えをいただきたい。
  111. 広瀬駿二

    広瀬説明員 ただいま大臣が御答弁なさいましたとおりでございまして、まだ具体案は私どものほうにあるわけではございません。今後証券業界から具体案を提出させまして、それにつきまして十分慎重に検討したい、そういうふうに考えております。
  112. 只松祐治

    ○只松委員 案がないならないでいいのですよ、まだ時間がありますからね。ただ、業界のほうからの答申だけで大蔵省がこれを拱手傍観しているのはけしからぬではないか、こういうことを言っているのです。だから、いまないならいいのですよ。しかし、それに対して大蔵省側も何らかの意向を示す。どの程度の意見か、強いか弱いか、それは皆さん方の力量によるわけだから、そういうことを言っているわけです。だから、待って検討するということでなくて、それは初めの保有組合、共同証券ができたときのいきさつを見ればわかるでしょう。だから、それを言っているのですよ。もうけたらもうけっぱなしで、自分だけでかってに使うのはけしからぬじゃないか。きょうは時間がありませんから詳しくは論議してまいりませんけれども、別の金融委員会等で論議してもいいけれども、少なくともある程度の構想は大蔵省側が示すべきじゃないか、そういうことを言っているわけです。そういうことくらい大蔵省側である程度示してもいいんじゃないですか。大臣、どうです。
  113. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これは設立の趣旨から見ましても、公共的立場から慎重に検討すべきものでございますので、大蔵省からもそういう方向の検討をやはりいま業界に願っておるということでございますから、案が出てさましたら、われわれがそれによって最後の片をつけたいと思っておりますが、いまそういう方向で業界も検討してくれておると思っております。
  114. 只松祐治

    ○只松委員 大蔵省側からの一つの諮問だということでございますから、ぜひ——ここで構想を示されなければ、また他日でもけっこうでございますが、そういう意味で公共のために使われるように御努力をお願いしたいと思う。  それから、これも非常にこまかいことですが、局長でけっこうですが、この前私は大和ハウスのことを質問いたしました。そうすると、やはり同じくまた日経とか何かに報ぜられまして、電話や、こうやって投書なんかいろいろまいりました。広瀬局長が言っているのは、あれはうそではないか、会社社長やあるいは重役連中が相当株の操作をしている、そういうことを善良な一市民とかなんとかいうことで投書や電話もかかってきている。九月期決算だそうですから、これが終わりますと、会社でどういう操作をしたか、他人名義でしていればなかなかわかりませんが、明らかになると思います。そのあとでまた問題にしてもいいわけでございますけれども、そういう反響があっただけに、全然そういうことはなかったのか、少なくとも疑わしいものなり何なりあるなら——私はこの株の上昇ぐあい、あるいはあなたのほうからいただいた他の会社等の株の上昇ぐあい、こういうものを見ましても、一月の百四十四円から一番上がったのは五百三十円くらい、とにかく約五倍近く、わずかの間に株が上昇している。よほどの異常な事態がないことには、こういうことは起こり得ないわけなんです。これにはやはり何らか相当の裏の操作というものがあったと見なければならない。そういうこまかい問題は、きょう大臣が出られた時間で詰める時間もございませんけれども、簡単に、なかったというようなことをおっしゃっていましたけれども、私は必ずしもそうではないと思う。こういう問題についてももう少し真剣に取り組んで——こうやって株が上がってくるならば、一般の大衆投資家がぼつぼつ食いついていくと思いますけれども、私のところにきているのは、大衆投資家が、とにかくおれはこうやって損をした、こうやって非常に被害をこうむったという人が、いろいろ投書したり電話したりしてくるわけです。その裏はこういうことだといってくるわけです。一般大衆投資家がやっと寄りつき始めたというのに、幾つかのこういう特定の銘柄が操作されて、そして被害をこうむる、こういうことのないように証券局というものは努力する、証券行政はあるべきだと思います。そういう観点から、私は、大和ハウスだけを憎くて言っているのではなくて、そういうものの一つの顕著な例として、そういうことをしては、また大衆投資家が逃げていくのではないか、被害をこうむるのではないか、こういう角度から言っているわけです。そういう立場から今後善処していただきたい。
  115. 広瀬駿二

    広瀬説明員 御指摘の大和ハウスの問題につきましては、先般お答えを申し上げましたとおりでございますが、確かに御指摘のような非常に大幅な値動き等がございまして、私のほうも非常に疑いをもって慎重な調査をいたしたわけであります。調査をした現在までのところでは、そのような株価操作等の事実がつかめていないということでございますが、今後につきましても、いまおっしゃった趣旨に沿いまして、十分慎重に検討をしていきたいというふうに考えております。
  116. 只松祐治

    ○只松委員 だから詰めて、九月期決算のときにどういうふうに出てくるか、そのときにあなたは責任をとりますか、こういう論議を私はきょうしようとしているわけではない。大衆投資家がこうやって寄りついてきているときに、こういうことを悪材料にして被害が出てきて困らないように、ひとつ証券局は指導しなさい、すべきではないか、こういうことを言っているわけです。あなたが、調べたけれども、ないというような言いのがれをする。それならば、できたときに責任をとりますか、こういう論議になってくる、このことの問題だけで詰めていくと。こういう問題の論議の立て方、詰め方を私はしているのではなくて、もう少し大衆投資家の個々の立場を、ようやく証券界がこうやって立ち直っているなら、そういう方向で指導したらどうですか、その一例として大和ハウスの問題を言っている、けしからぬ問題があるではないか、こういうことを言っている。そういう角度からひとつ努力していただきたい。  次に、公定歩合が引き下げになりまして、水田さんの談話や日銀総裁の談話がいろいろ出ております。なかなかいろいろ微妙な発言をしておられて、あっちにもこっちにもとれるようなことが出ておりますけれども、一口に言えば、とにかく景気が立ち直ってきたからこういうことになった。その基本的な要因と申しますか、どういうことを要因として公定歩合引き下げに踏み切られたか、ここで明らかにしていただきたいと思います。
  117. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 御承知のように、国際収支の均衡を回復するという目的で昨年の九月から金融、財政両面からの調整策をとりましたが、一応効果が出てまいりまして、国際収支が改善されたという事態になりましたので、引き締めの緩和の条件は一応ここで整っておるという判断から、この緩和に踏み出したわけでございますが、しかし、国際収支が好調というようなときには、国内経済の内需は調整されて軟調というのが普通でございますが、今回の場合は内需が非常に堅調である、しかも国際収支は好況といういままでにない一つの型をとっております。これは結局、去年から立ち直った世界景気、特にアメリカ景気の急上昇という外部的なそういう環境によって得られた国際収支の改善であるというふうに考えますので、先行きを見ますと、まだまだ安心できない点が多うございます。長期的には警戒をする必要がございますが、短期的には、しばらく現状はある程度安心できる状態というふうに考えましたので、とりあえず公定歩合を一厘下げるという措置は適切であろうと考えてこれを行なったわけでございます。
  118. 只松祐治

    ○只松委員 いままで比較的楽観的な立場をとっておった経企庁が今度はわりあい慎重論をとっている。ほんとうならここへ宮澤さんもおいでいただいて両者のそういう食い違いなり何なりをお尋ねしたいのですが、そういう時間もございませんけれども、この経済企画庁の見方、あるいはアメリカの経済というものはまだ鎮静期という段階で、必ずしも楽観を許さないというようなこと、あるいはヨーロッパ諸国の経済状態にしてもしかり、いろいろこの公定歩合の引き下げにからんで問題点指摘されている。そういうこととともに、一番影響が出る、このことは物価の上昇だ、こういうふうに見られておるわけでございます。そういう慎重論あるいは悲観論までいきませんが、いろいろな論がある中で、こうやって楽観論なり公定歩合を引き下げる。こういうことになりますと、何となく景気がよくなるのではないかというようなことで、窓口規制等はまだやられるようでございますけれども、一般的にとにかくそういう空気が出てくる。私は、きょうは時間がありませんから質問しませんが、公務員賃金の引き上げやあるいは米価の問題だけから上がり出す、こういうことは思いませんけれども、秋にはそういう要因もからんでくる。新聞なんかそういう論説をとっておるようです。こういうことと相まって、四・八%の物価の上昇というのはとてもそういうことではとどまらないということがこのごろ明々白々に指摘をされるようになってまいりました。いわゆる公定歩合の関係と物価の問題というのは非常に大きな問題だと思います。  ただ、経済の動向ということだけをお考えになってこういうことをされたのか、あるいは物価なりそういう問題全部を含んで、この段階でいたし方ないといいますか、このほうがいい、こういうことでお考えになったのか、物価の問題、そのあたりは別に考えなかったということでございますか、そういう点はどうでございますか。
  119. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 内需が相当鎮静しているというときが、やはり国際収支のいいときでございますので、この引き締めの緩和をやっても、内需の鎮静ということで、物価との関係は比較的円滑にいくのが普通でございますが、今度の場合はそうじゃなくて、内需が非常に堅調である。設備投資、生産、消費、まだ依然としてその底が非常にかたいものでございますので、そういう点ではこの引き締め政策というものは、物価との関係でよほど慎重にやらなければならぬというふうに私ども考えてはいましたが、しかし、現実に国際収支がこういう状態を呈しているときに、一応引き締めの区切りというものがつかない形で経済運営をするということは、また、そのことからもむずかしいいろいろな今後の経済問題を生じますので、やはりそういう物価の問題や、まだ安心できない点が多分にあるとしましても、この際、情勢の一応の緩和の一歩を踏み出すということは、やはり経済政策から見ても必要であるという判断でやったわけでございます。  おっしゃられるように、内需が堅調のときでございますから、物価問題について十分私どもは気をつけなければならぬというふうに考えております。
  120. 只松祐治

    ○只松委員 この調子でいきますと、経済成長率も当然に違ってきます。おそらく実質一〇%をこすだろう、こういうことをいわれております。物価も六%をこすだろう、こういうことになってくる。これはわが国の経済全般なり、したがって、総合予算の問題なり、そういうものにも全部波及してくる。持ち時間がありませんからこの質問はこれまでにとどめますけれども、また別な機会にゆっくりと論議したいと思いますが、そういう中で、何といいましてもとにかく物価が上がって実質的なインフレーションが進んでいく、これが国民の生活にとって非常な苦痛になっている。そのインフレを慢性化した——これは皆さん方のある意味での成功ですね、資本主義経済の成功です。やがてはこれは失敗に帰すると思いますが、とにかく国民をインフレ経済の中に麻痺さしてしまった。それで、四・八%が六%になろうとそれほどのことはないとお考えでしょうが、これは国民生活にとってたいへんなことだと思う。ひとつぜひこの物価の問題については真剣に取り組んでいただきたい。  それから最後に、そういう意味の景気調整の手段に新たな手段を考えたい、こういうことを大臣はおっしゃっていますけれども、その中に保険あるいは相互銀行信用金庫、農協等、いわゆる金融の約六割ぐらいを動かしておるこういう部面の金融機関についての新たな対策ということをおっしゃっていますが、これのいい悪いもきょうは論議はしませんが、こういう関係機関と御相談なさって、あるいは懇談されてこういうことをお考えになったのか、そうではなくて、単なる思いつきといいますか、こういうこともいいのじゃないかという程度で新たな調整手段ということをお考えになっていますか、相当具体策を持ってお考えになっているのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  121. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これはただ私どもの思いつきではございません。今回の引き締め政策をやってみまして私どもの経験したところによりますと、いままでと違って、今後の景気調整策というものはもう少し総合的な対策でなければならぬということを、これは経験から私どもは得ました。したがって、それについては金融界においてもいろいろ研究されておりますし、私どものほうでも研究をしておりますが、この次にこういうような事態が起こったというときにはいままでのやり方ではいかぬというふうに私は考えております。と申しますのは、御承知のように公経済の中における国の財政と地方財政のシェアを見ますと、国のほうが三であって地方のほうが七ということにいまなっております。ですから、国が一定の財政政策をとっても、地方財政がやはり歩調を合わせてくれないということになりますと、財政政策の効果というものは非常に少ないというのが実際でございますし、日銀がこういう金融引き締め政策をやりましても、この調整力の及ぶ範囲というものが非常に狭い、いま狭まっているというのが実際でございますので、この二つの政策をあわせてやっても、これは従来よりは効果が非常におそくあらわれるということになっております。今回もそういうきらいがございましたが、幸いに外部環境によって国際収支の均衡が促進されたということで、非常に幸いでございましたが、そういうものがないとすると、まだ引き締め政策はもう少し効果がおくれているんじゃないかというふうに考えますので、今後に備えて、今度の経験を生かしていろいろ総合的な研究をする必要があるというのが、政府も一般民間における考えもいま大体一致しておりますので、この問題にはこれから取りかかりたいと思っておる次第でございます。
  122. 只松祐治

    ○只松委員 時間がありませんから論議をしようとは思いませんが、財政硬直化という問題を大蔵省が提起したときに、すでに、たとえば西ドイツの財政硬直化の原因というのは、連邦制をとっておる西ドイツとしては、結局中央政府で引き締めたりいろいろなことをやっても各州がそれに従わない、こういう結果西ドイツの財政硬直化が起こっておる、それで失敗したんだ、こういうことが明らかに指摘されておるわけです。別に今日始まったことではないわけですね。大蔵省が初め日本の財政硬直化を訴えるときにもそういうことを一つの原因にあげ、他山の石としている。それは今日始まったことではないわけです。そういうことや何かでぼくは思いつきですかということを言っておるのです。それは御研究はなさったということですが、まだ各業界なり何なりそういう関係者と打ち合わせをして具体策を持ったという段階じゃなくて、一つのそういう経験や何かを通してそういうことを思いついた、こういう経度ですか。それともある程度信用金庫、相互銀行、保険協会、農協等とそういう点について打ち合わせをしてある程度の具体案がある、こういうことですか。
  123. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 先般の全国の銀行大会においてもすでにこの問題が出てまいりまして、普通銀行にだけ金融政策のしわ寄せが来る、そうして引き締め政策に金融面でやはり大きい穴があいておる、こういうような問題については今後の問題として研究すべきだという意見はすでに銀行大会でも出ておるようなことでございまして、これは各界がこういう問題についていま関心を持って研究し出してきているときだと考えております。
  124. 只松祐治

    ○只松委員 時間がなくなりましたから、もう少しお聞きしたいのですが、これでやめますけれども、最後に、これは全然こまかい問題ですが、国鉄の黄害のいわゆるふん尿譚のあれで、大蔵省が金を出すならばすみやかに努力するというような、中曽根さんの大蔵省の責任にした答弁が参議院の運輸委員会か何かでなされている。これは衆議院の運輸委員会等でも論議があるかと思いますけれども、けさからもそういうことで国鉄のほうから私のところに電話があって、大蔵省はそれに対してどう対処するんだろうということだったのですが、明年度そういうものを具体的に運輸省当局から要求があればそういうものに対して取り組む、こういう御意思があるかないかだけをお聞きしておきたい。
  125. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 まだ概算要求も参っておりませんのでわかりませんが、そういう問題が出てきたら当然大蔵省も予算編成の過程において相談はいたしますが、しかし、鉄道の衛生問題、これが全部大蔵省次第でどうにでもなるという性質のものでもないと思いますので、これは運輸省から正式な要望がございましたら、こちらで十分相談してきめたいと思っております。
  126. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員長代理 広沢賢一君。
  127. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 一ぱい質問したいことがあるのですが、時間が限られていますから、まず第一番目に租税特別措置に関して御質問します。  その前に、大体経済白書というのは、国務大臣である大蔵大臣も十分これに目を通して、これについて了承しているんだと思いますが、どうでしょう。
  128. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 一応は、大ざっぱな説明は聞いておりますが、忙しいために、まだこれは全部読んでおりませんので、これから勉強するつもりです。
  129. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 これはたいへんな話です。政府の発表している経済白書をまだ読んでいない。そうすると、その内容がわからぬわけですし、経済白書でいっているなかなかいいことと、いまの大蔵省のやっていること、考えていることとずいぶん食い違いが出てくると思うのです。税制調査会の案は、もちろん大蔵大臣は目を通していろいろ考えておられると思うのですが、その中で懸案事項である利子配当の問題です。  利子配当の課税軽減について、今度の税調の答申では三五ページに出てまいりますが、「基本的には廃止する方向で対処すべきものと考えられる。」と書いてあります。そうすると、ここにも租税の公平を阻害するとかいろいろ書いてございますが、大体これは大蔵省としては腹を固めて、これから、来年か再来年かこれをなくしていくんだという点についてはどうお考えになりますか。
  130. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 まだ大蔵省としては腹を固めている問題ではございません。これは前からいわれましたように、長期的にはこうしたいというようなことを考えておりましたが、なかなかむずかしい問題で、短期的にすぐにこれをどうこうできない問題であるというふうに思っておりますので、答申はそういうふうに将来の方向を示されたといいましても、いつからどうするかという実際の案をきめるということには、いままだ相当困難な問題があると思いますので、大蔵省はまだ腹を固めているという段階ではございません。
  131. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 それはおかしいと思うのです。もう前々から、租税特別措置についてはいつも答申案で繰り返されておる。しかも、今度具体的に「利子所得の源泉分離課税、配当所得についてのいわゆる源泉選択制度等各種の特例措置」について、これはずっと欠点をあげて、「基本的には廃止する方向で対処すべきものと考えられる。」これは答申がこういうふうに出ていてまだ腹を固めていない。腹を固めているか固めていないかはこれはさまっている問題であると思うのです。何年にやるかということについてはこれはあとの事後措置ですが、答申が出てまだ腹は固まっていないというのはおかしいと思いますが、何で腹を固めていないのか、腹を固めていない理由をはっきりさせていただきたいと思います。それは不都合だと思います。答申はいつもけ飛ばしているのは平気だとということだと思うのですが、どうですか。
  132. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 長期的にそうすべきであるという問題と、これを早急に解決できるかという問題は別でございまして、先般この特別措置をきめるときの事情から見ましても、順を追ってこれは解決しなければ実際的にはむずかしいのじゃないかという問題が出ておりまして、とりあえず期限を切りましたが、この期限の切れるまでにおいてもう一ぺんこれはあらためて考えるということになっておりまして、これからこの期限が切れるまでに処置を考えたいと私どもは思っておりますが、これが直ちに全廃できるという方向にはなかなか踏み切れないのじゃないかと、いまそう考えておりますので、まだこれをやめるのだという腹はきめてないと申したのでございまして、まだきめておりません。
  133. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 何かいろいろな周囲の情事を考慮してそういう御答弁をなすっているものと好意的には解釈しますが、しかし実際は、長期的といったって、これは長期税制あり方として断固としてこれはやめるべきだと書いてあるんだから、それを無視するか無視しないかといったら、これは答申は尊重するのでしょう。大体大まかとしては答申を尊重するのでしょう。その点をはっきりお伺いしたいと思います。答申というのは大体において尊重するものなんでしょう、大蔵省は。
  134. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いままでにおいてはほとんど全部税制調査会の答申は尊重してきました。ですから、今後といえども税調の答申の線は私どもは尊重していきたいと思っております。
  135. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 線は尊重したいと言うのですから、大体好意的に解釈して——この利子配当の分離課税はその目的に合致しないし、統計でとっても全部、貯蓄の奨励とかなんとかとは無関係だし、さんざっぱら悪評があるものですし、税調の答申に書いてある。そう強くは書いてないけれども、書いてある。したがって、これは大体そういう腹でいくというように私は解釈します。  その次に、土地税制の問題です。土地税制の問題について、これは全体を見ますと——税調の委員の顔ぶれが大きな不動産会社社長さんや何かがみんないるので、たいへんな内容になっていると思うのですが、全体として見て、個人については非常にきつい、いろいろ個人についての規制は行なうし、課税の問題はあるけれども、法人については技術上非常にむずかしいとかなんとかいういろいろな理由をつけちゃ問題を逃げているのです。  それで具体的に聞きますが、この前、只松委員も私も御質問しましたが、大きな会社銀行、保険会社からいろいろお金を借ります。銀行、保険会社も子会社を通じていろいろ土地を買ったり何かする。その土地の含み資産、これは資産再評価に十分出てこない。で、これを担保にしてお金を借りて、それでいろいろ含みで大きな金をもうけて、この前ありましたが、それがたとえばオーバーローンの促進とか、それからもう一つの理由は、国鉄やその他地下鉄とか水道事業とか、こういうところでも、地価が非常に高くなったので、その地価がコストの中に含まれるという問題がある。つまり、両方ともオーバーローン、通貨膨張で物価高を促進する、もう一つはコスト高になって国際競争力を弱める、この二つの問題について大蔵大臣はどう思われますか。——経済白書に書いてあるんですよ。読んでなきやしようがないけれども、それはちょっと弱るんですね。この問題について、簡単でしょう。
  136. 澄田智

    ○澄田説明員 前半の金融機関から土地担保にして融資が行なわれ、あるいは子会社を通じて土地の投機その他が行なわれ、それがインフレの要因になって…(広沢(賢)委員「オーバーローンになって」と呼ぶ)というような点でございますが、この点につきましては、たびたび当委員会でも前にも御指摘を受けまして、そのおりにも申し上げましたが、金融機関が子会社という形で不動産の投資をするという場合には、これは全然普通の不動産会社と同じような、全く純粋のコマーシャルベースで融資が行なわれるようにというような指導をいたしております。逐次そういう形に切りかえております。  不動産の投資自体についての金融というものがオーバーローンの原因になるというようないまの御指摘でございますが、これは宅地造成その他土地の開発というようなものは国民経済上やはり必要なわけでございまして、それに対する融資というものが、これが乱に流れ、非常に行き過ぎになるということがなければ、やはり金融機関の機能として必要なわけでございまして、そういう意味で金融機関の全体の貸し出し態度というものを十分慎重にやらせるように事に即して指導をしていくというようなことでやっておるわけでございます。弊害、いろいろ御指摘の点はありますが、これはできる限りそういう具体的な事例がある場合には、これを指摘をしまして是正させる、そして健全な土地開発、宅地造成というような目的に合うような、そういった融資が行なわれ、投資が行なわれるように、そういうことでやっておる次第でございます。  後半のほうはちょっと私の範囲外でございます。
  137. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 ここで論争すると時間が惜しいのですが、しかし、きょう午前中の三井銀行社長さんその他の話を聞いても、担保がなくても貸すのですね。導入預金担保があれば、みんな飛びつくんですよ。だから、態度とかいろいろ言われますが、それは一つ一つ指導してそういうふうになるんだと思うのですけれども、そういうことでは及びもつかぬです。経済法則としては担保がある一流会社だったら、じゃんじゃん金を貸しますよ。金融がゆるめばゆるむほど、どんどん貸すというのはあたりまえでしょう。新聞に書いてあるとおり。それで、ただその態度でもっていろいろ取り締まるというのは、つまり外交辞令だと思うのです。これは相当なもので、学者の人はいろいろ計算してどのくらいの要因になっているかということをいろいろ議論しています。だから、大蔵省としてもまじめに物価安定を考えるならば、この問題についていろいろ計数があるのですから、経済白書では電子計算機でもって何でも解決できるようにいっているんだから、相当いろいろな問題が出ると思うのです。  それからもう一つ、これはコスト高の原因になっている、国際競争力に響くということは経済企画庁の経済白書に出ているのですが、この問題について大蔵大臣が全然答えないというのはちょっと困るですな。これはあとでお聞きします。  そこで、こういう問題が相当議論されておるのです。その議論されておる中で、今度土地税制についてみんなが税調はどんなことをやるだろうかということで期待したら、何とまあ羊頭狗肉であることおびただしい。それで一つ例をあげますと、一八ページに「法人の保有土地の売却益について特別な課税を行なって、土地値上り益の吸収を図り、法人による投機的な土地取得の抑制手段とする考え方が提示された。」云々と書いてあって、これは「個人のたな卸資産である土地について現行のまま総合課税することとの権衡や、特別の課税を行なうことについての実務上及び法律技術的な困難さを考慮し、税制によつて法人による土地取得の規制を行なうことは不適当であるとの結論を得た。」と書いてあるのですが、これが一つですね。それから答弁の余裕を考えるためにもう一つの問題も提起しておきます。  もう一つの問題は具体的な問題で、いろいろな問題がありますが、買いかえ制度の問題について、法人については「特定の政策目的に沿う買換えについてのみ存続する」これはおわかりになると思いますが、二八ページにありますね。「個人については昭和四十五年一月一日以後、法人については同年四月一日以後、」そういうふうになっている。それから「個人の居住用財産取得のための買換えの特別措置は、」云々とずっと出ていまして、あまり特典を与えないことになっている。「一千万円程度の特別控除を設けることとする。」こう書いてあるのです。というと、個人を相手にして居住用の土地を買ったり何かする不動産屋さんが非常にこういう問題にいろいろとぶつかりますね。ところが、答申によると、法人のほうは、特定の政策目的についてはいろいろ問題を並べてはゆるやかになるという形になりはせぬかという非常な懸念が全体から見てあります。  それで、いまの土地の投機とかその他の問題については、いろいろな文書で明らかなとおり、やはり金を持っている大きな会社が一番原動力なんですね。昭和三十五年ですか、それ以来いろいろな数字がずっと出ていますけれども、大体そうだと思います。そうすると、この答申で来年から土地税制についての法律化をやるとすれば、てんで国民大衆はおこってしまう、そういうことがあると思うのですが、それについて大蔵大臣は、これをどういうふうにして来年から土地税制に生かすのか、それをお聞きしたいと思います。
  138. 吉國二郎

    吉國説明員 ただいま土地税制についての答申につきまして御批判がございました。  土地税制につきましては、税制調査会に特別部会を設けまして、一年半にわたって審議いたしたわけでございます。その中でいろいろな仮案が出たことも御承知だと思います。結果において、いろいろな難点その他を切り捨てましてこういう答申に煮詰まったわけでございますが、この答申でも強くいっておりますように、土地税制というものは本来は土地制度の補完的なもので、土地制度自体が確立されていない場合には、税制だけでは独自の効果は生み得ないという前提で考えているわけでございます。そういう趣旨から、いま土地制度の進行に阻害的な要素となっているものをできるだけ排除するということからこの答申ができているとお考えを願いたいと思うわけでございます。そういう意味では、私どもとしてはできるだけこの答申を実現さして、まず第一段階の土地制度に対する貢献をすべきではなかろうか、かように考えております。  先ほど御指摘がございました買いかえの問題を申し上げますと、買いかえにつきましては、事業用資産の買いかえには適用期限がございますが、法人と個人では事業年度との関係で三カ月ずれておりますが、いずれにしても、昭和四十五年までには期限が参ります。この際、法人、個人とも「特定の政策目的」と申しておりますのは、たとえば工業整備地域に対して都心から事業を移転するといったような場合、そういう場合に限って実際に政策目的に沿った事業用資産の買いかえは認めていくのが適当であろうけれども、一般的に、たとえば東京都内で都内から都内へ移る、過密地域から過密地域へ事業を移動する。実際は土地を売って機械を取得するだけが目的だというような買いかえは今後は認めないという方針でありまして、これは法人、個人とも同じでございます。  居住用資産は、これは法人にはございませんので、個人だけの問題でございますけれども、この個人の居住用資産の買いかえも、本来は同じものにかわるということから認められてきたものでございます。ところが、最近の実列を見てみますと、買いかえをすることによって課税を免れるというので、不用な土地を大きく買うという傾向が見られますので、そういう意味ではかえって土地制度には逆の効果を及ぼしているのではないか。住宅建設の促進という面から申しましても、本来、居住用住宅を持っている人のための措置でございますから、それによって居住用住宅がふえるわけではないという意味から申しましても、あまり意味がなくなってきているのではないか。  それから一番の欠点は、居住用資産を売り払いまして、そのあと老後居食いをしようという場合にはフルに税金がかかります。ところが、余裕のある人が居住用資産を売り払って、それに追加して大きな家を建てると課税にならないという不公平がございます。むしろいま、居住用資産を売った場合に、平均的な居住用資産を取得する程度の控除は認めて、全般的な買いかえ、一億円の家を売って一億円の土地を買うというようなやり方は今後やれないようにしたほうがいいのではないかということで打ち切りをしたいという趣旨でございますので、この辺はひとつ実現さしていただくのがいいのではないか、かように思います。
  139. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 時間がないから、土地制度についてはこれだけお聞きします。  新聞によると、建設省のほうは、すべて土地利用計画ができたならば、それから公示制度についていろいろできたならと、逃げを打っているのです。土地利用計画を急ぐ、それから公示制度を急く——建設省の役人の中では、いまの状態でもある程度できるはずだ、やっていけばどんどんできる。建設省の都市局長の竹内さん、それから経済企画庁の総合開発局長の宮崎さんもそういう意見を言っているんですね、読売新聞で。そうすると、公示制度とか土地利用計画が整備されればと、建設省で逃げているにもかかわらず、大蔵省としては断固として、答申案を飛び越えてもっといいほうにどんどん土地税制を進める決意があるかどうか、大蔵大臣にお聞きしたいと思います。
  140. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 諸条件が整えば、空閑地税というものはいいというふうに私ども考えております。また、答申もこれを否定しておるわけではございませんで、今後引き続いてこれを検討するといっておりますので、条件が整えば私どもはこれはやはり土地税制として妥当なものであるというふうに思っていますが、何ぶんにも、いまのままでどこが空閑地かということを税務署にみんな一々きめさせなければならぬということは実際問題としてはたいへんで、とても円滑に行政がいくとは思いません。私は、いまのままでどこが空閑地かの決定権をみんな税務署がしょい込むということは、これはとてもできないというふうに思いますので、やはり条件が整わなければこの税制は実施できないというふうに考えております。
  141. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そうすると、大きな会社、大法人がいろいろやっていることについては、そうこまかく技術上、たとえばここのところ、掘っ立て小屋を建てたからこれはああだこうだということが若干書いてありますが、そういう問題ではないということ、いまのお話で、相当建設省とか何か努力していろいろの問題を出したならば、大蔵省としてはこれにとらわれずどんどん進めていくということに解釈します。  それでもう一つ、これは私一ぱい聞くことがあるんだけれども、ただ一点だけしぼってお聞きします。八幡、富士製鉄の大型合併が進められていますが、その八幡、富士製鉄の大型合併について、経済白書では否定的です。白書に書いてあります。むしろ管理価格が上がれば物価が上がることで、国際競争力——もう国際競争力といったら神さまみたいですが、これは主税局も銀行局もみんなそうですが、これにマイナスになると書いてあるのです。それでいろいろ調べると、八幡は大体八十五ドル、普通鋼鋼材八十五ドル、それからアメリカのUSスチール百三十六ドル、これは最近はみんな知ってきたのです。国際競争力が十分にあると思うのです。あると思うのですが、そうすれば八幡、富士製鉄が合併する理由は、このどろ沼に落ち込んだような市況の悪化、鉄をつくり過ぎた。大蔵大臣が一生懸命設備拡張をするなするなと言ったって、やはりガリガリやっている。いまなおずっと君津か何かで一ぱいやっている。そういう状況で、価格調整、管理価格を形成する、いまは形成しなくても形成する疑いが十分にあるというと、大型合併というのは全然違う方向へいく。こういうふうに思うのですが、大蔵大臣としては、大型合併について、これは大蔵省の仕事にも響きますから、物価問題に響きますから、八幡、富士製鉄についてはどう思われるか、ひとつ……。
  142. 矢野智雄

    ○矢野説明員 ただいまお話がありましたが、経済白書では、八幡、富士の合併がいいか悪いかということは一切触れておりません。また、合併一般につきましても、それ自体のよしあしについては触れておりません。
  143. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 いま経済企画庁について聞いたんじゃないのですよ。全く勇気のないことおびただしいので、あとでこれはやります、大蔵大臣に対する時間がもったいないから。全くそれはひきょうなんで、ここに書いてあるのをそのままとれば、大型合併反対、新聞にも出ている。それはぼくはこっちのほうは当然だと思います。りっぱだと思うんだけれども、大蔵大臣としては、国務大臣ですから、日本の経済担当の一番中心人物ですから、大型合併についてはどう思うかということをお聞かせ願いたいと思います。
  144. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 まあ開放体制下にあって、企業の大型合併化という方向は私はいいと思います。ただ、いま言った特定の問題は、いいか悪いかというと、いま公取委員会審査の問題にもなっておりますので、政府としての見解として、いいとか悪いとかということは私からは申しませんが、私個人としては、あれは賛成です。
  145. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 この問題は、あとでまたずいぶん議論されますが、その賛成の理由、国際競争力の点では違うということですね。これは全然違う。十分ある、五割安。そうすると、ほかにどういう理由があるかということを並べ立てていただきたいと思うのです。
  146. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 日本の製鉄界を見ますと、非常に設備投資の競争が行なわれておる。それでまた、これを外国の製鉄会社から日本の現状を見ますと、私は、日本の製鉄会社が数たくさんあって、いまのような形でやっているよりも、幾つかこれが合併するというほうが投資の効率化といいますか、今後のそういう問題においてはいいほうの影響が非常に多いだろうというふうに私は考えます。
  147. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 時間が来たそうですからあれですが、この合併の問題についてはお互いに気をつけてやらないと、ただ大型合併がいいんだ、いいんだ、合併促進だということでは、ここの経済白書をお読みになっていただきたいと思うのですが、この経済白書では合併必ずしもよくないと書いてあるんですよ。例をずっとあげて、いままでの例から見ると、合併がそれほど能率的になってないということが書いてあるし、それから管理価格の形成のおそれということは、近代経済学者九十人が非常に言っているのですから、やはり経済学者の言うことも十分尊重して、財界の言うことばかり聞かないで、いろいろと謙虚にやらないと、今後合併したあとで今度は政府がいろいろやっても、マンモス化してしまって、自民党の大平さんかだれかが言ったとおり、非常に大きな政治力を持って、魔もののように経済の中でもって政府の言うことを聞かなくなるかもしれない。だから設備調整というのは、設備投資計画について調整したり計画的にやるのは、これは政治の責任なんです。政府の責任だし、必ずしも競争ばかりがいいのではないけれども、たとえば不公平な競争、それからもう一つは国民のためになっているかどうかということは十分考えなければいけませんが、しかしアメリカの場合は、明らかに政府がてこずっているんです。いつも鉄の値段が上がるか下がらないかでもって大騒ぎになる。ああいうような状態になってはいけない。これは大蔵大臣もそう思うでしょう。それをもう一回聞きたいと思います。アメリカの場合のUSスチールのようなああいう状態になってはいけない。アメリカの場合はどうですか。わかり切っているじゃないですか。アメリカのUSスチールのあれを御存じでしょう。大統領の命令を聞かない。ああなってはいけない。そうでしょう。いけないならいけないと言ったらいいじゃないですか。それだけで済むのです。
  148. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 アメリカとは事情が違いますので、日本の場合はこの二つが合併してもああいうことには私はならないというふうに思っています。
  149. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 それじゃ、この問題はまたあとでいろいろとじっくりやりたいと思います。  ただ、一つだけ利子配当の分離課税については、これは答申案でいっているとおり、腹を固めてこの次の機会までにやるように要望して、私の質問を終わります。
  150. 田村元

  151. 竹本孫一

    竹本委員 本日から公定歩合が一厘引き下げになりました。これによりまして公定歩合は基準となる商業手形の割引歩合が一銭六厘になるということでございまして、本年一月五日以前の水準に返る。大蔵大臣もこれを認め、あるいは推進されたかもしれませんが、とにかく公定歩合一厘の引き下げで、日本の景気調整が新たなる段階に入ったのでありますが、これにつきまして、私は時間がありませんので結論から簡単に申し上げますと、二つの点で反対であります。  第一に、情勢判断が甘過ぎるという点であります。それから第二には、準備不足という点であります。これにつきましては、明日また日銀の総裁を呼んで御質問もいたしたいと思っておりまするし、時間がないようでございますから簡単にお伺いをしたいのでございますけれども、まずきょうの新聞並びにきのうの夕刊を読んで非常に驚いたことを、感じを申し上げますと、この新聞に出ておる大蔵大臣や経済企画庁長官や日銀総裁の談話というものは、公定歩合を一厘引き下げて金融緩和をやるのだという理論的な説明になっておるかというと、そうでないのであります。ほとんど三人の方の御説明あるいは談話というものは、そろいもそろって全部、当面は金融を緩和するけれども、先行きは大いに警戒であるということが一つの見出しに出ておりますけれども、全部そのとおりでありまして、内容を読んで見ると、緩和をするのだけれども油断をしてはいけないということばかり書いてある。このお三人の談話というものは、正直に読めば、むしろいま金融和をしてはならないという説明に私はなっていると思うのです。最後のところでぽかっと、しかし一応ゆるめるんだ、一応のけじめをつけるんだ、こういうことになっておりまして、私の感想、あるいは私以上の心配がそこにうたわれておるにもかかわらず、しかも公定歩合はきょうから一厘引き下げるのだということになった。これは要するに、状況判断が甘かったのか、あるいは甘くないのだけれども、その他の事情によってやむを得ずやったのか、どちらであるかと思うのでありますが、大蔵大臣の卒直な感想を承りたいと思います。
  152. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私は、緩和すべき条件が整っておるというために、ここで緩和措置をとることはいい。しかし、経済情勢が手放しに楽観できる情勢であるかという判断につきましては、なかなかそう簡単ではない。内需は非常に強いのですが、いまの公定歩合を一厘引き下げをやることによって、すぐにまた設備投資がここで急速に起こってくるというような情勢は、当分見られないと思います。そこらについての検討は十分いたしましたが、過去の経験から見ましても、事業家がもう非常に慎重になっておりますので、今度の措置によってすぐにまた投資が急速にどうこうということはないという判断でございますので、その点は心配ないと思います。  問題は、やはり今後の経済の見通しということになりますというと、いまの輸出は非常に好調であっても、アメリカの今度の増税、それから経費の削減というこの措置がどういうふうにアメリカ経済に響いてくるかと申しますと、すぐには大きい影響がないにしましても、先行きアメリカ経済が落ちついてくることは確かでございますので、それによって日本の輸出がいまのような状態を保たないだろうということは見通されます。したがって、そう安心を与えて解除する時期ではないというふうに思いますので、先行きはやはり相当警戒ということを私ども考え、民間にもそういう点を承知してもらって、節度のあるやり方をしてもらいたいということから、公定歩合は一厘下げましても、日銀のいわゆる窓口規制というものはまだそのままにしておいて、七−九月はそのままにしておいて、十月−十二月はまた情勢に応じて考えるというような措置をとることが妥当であろうと思いますと同時に、一方、先ほど只松さんから物価の問題が出ましたが、これはもうそのとおりでございまして、公定歩合を一厘下げるというようなときに、特に財政政策が問題になると思います。安心できる状態なら両方緩和するという方法がございますが、そうでございませんので、金融政策としては金融を緩和しても、財政政策はまだそう簡単にこれを変更できる時期ではないと私ども考えています。特に財政を放漫化したりするようなことは、これは物価に対する影響が一番大きい問題でございますので、そういう意味でいままで両方一緒にやった措置でございますが、一方の金融措置だけこの程度のゆるめ方をするというのが、いまの段階では妥当ではないかということでやった措置でございますので、決して情勢を甘く見ておるというようなことは私どもはないといま思っています。
  153. 竹本孫一

    竹本委員 二つの問題があります。  安心するかしないかという問題でございますけれども、まず国内の問題についての、一応金融緩和をしてもたいした心配はないという意見の御表明がございましたけれども、もしそれならば窓口規制もそれこそ一緒にやればいい。にもかかわらず、窓口規制を残して、公定歩合だけを下げるというやり方は、従来の常識その他から見てむしろ逆になっておる。今回特にそういうふうに窓口規制のほうはむしろ心配だから残しておく、それにもかかわらず、公定歩合だけは特に一厘下げていこうというのは、何の理由があってそのほうを先に、しかも急いでやられたのであるか、この点をひとつ伺いたい。
  154. 澄田智

    ○澄田説明員 従来の金融引き締めの緩和の際に、窓口規制を徐々に緩和をしつつ、まずそれから手をつけまして、そして公定歩合は引き下げられた、こういう例は確かにございます。今回の場合は、ただ窓口規制自体のやり方も従来と変わっておりまして、銀行のそれぞれのポジションを見て貸し出し増加額を押えていく、こういうような形をとってきておるわけでございまして、現在、金融引き締めの目的でありました国際収支の改善という点については、非常に顕著な国際収支の改善が行なわれてまいっておりますので、ここで引き締め政策のあり方というものについて、一応の区切りをつけまして、そしてこれからの経済情勢に応じて、また、それに即応する手を打っていく、こういうような見地から、日本銀行は公定歩合の一厘、二厘のうちの一厘を引き下げる。窓口規制のほうは、七月から九月の間のワクというものはそのままにして、そして今後の内需の動向、あるいは国際収支の動向等を見て、さらに十月以降の貸し出し増加額の規制をどうするかという点については、それまでの情勢によってさらに判断をしていこう、こういう慎重な態度をとっておるわけでございます。  従来からのやり方、これは必ずしも軌を一にしておるわけじゃございませんで、そのときの情勢で公定歩合のほうの引き下げのやり方、窓口規制の緩和のやり方をそのときに応じてやってきておるわけであります。今回は現在の国際収支の動向、それから内需の堅調な姿というものを見まして、公定歩合の一厘だけの引き下げということをいたしたわけであります。
  155. 竹本孫一

    竹本委員 いまの御答弁は、ほとんど何を答えたか私にはよくわかりません。私が聞いたのは、なぜ公定歩合のほうだけ急いで下げて、窓口規制はそのままにしておくのか。もちろん、従来のやり方と変わるのだけれども、なぜ変わったのか、なぜ公定歩合をやったのかということを聞いたのでありますけれども、少なくともその答弁にはなっていないように思います。しかし、大臣、非常に時間をお急ぎのようでございますので、あと簡単にポイントだけ大臣に伺いたい。  私は結論からいえば、これは大体二カ月あるいは一カ月早過ぎたと思うのです。それは国際通貨の状態等を考えてみて、ドルやポンドやフラン、それぞれの今後の動きというものの一応の見定めがっくのは九月だと思うのです。その前にBISの動きや、あるいはイギリスに対する二十億ドルの援助の問題や、その他の問題についてほとんど見通しがまだつかない。一方的に期待をしておるだけでしょう。それは時間がありませんからきょうはやめますが、いずれにしても国際的な情勢というものが、日銀の総裁も大蔵大臣も、みんな口をそろえて心配だと言っておる。しかもその心配だということについて、何らの具体的な見通しがまだ固まっていない。いないから心配なんです。それがやや固まるかと思われるのは、おそらく九月だと私は思うのだけれども、その前に日本の公定歩合を下げる。もちろん、説明の中には一応区切りをつけるんだ、一応とか短期的なとか弁解がたくさんありますが、とにかく区切りをつけたと言いながら、あとは心配でたまらないというようなことを言っておる。一体何をやっているのか私にはよくわからないし、国際情勢というものが、ことに経済情勢がそう簡単に楽観していいものでないという結論だけ申し上げます。  そこで、大臣に伺いたいことは、一つポイントだけこれから伺いますが、輸入はこれからむしろふえる。これは先ほど広沢さんが経済白書のことに触れられたときに、大臣読んでおられないようでございましたが、経済白書にもやはり輸入はこれからふえると書いてある。日本のいまの鉄鋼その他の原材料の在庫の動きを見ておりましても、これから大いに在庫の積み増しをしなければいかぬ。補てんをしなければならぬ。経済が成長発展をすればなおさら在庫の補充が必要になってくる。輸入はこれからふえるんだというふうに私は思うけれども、大臣は輸入は減るという観測で今回の措置に賛成をしておられるのかどうか、これが一つ。  それからもう一つ、日本の外貨準備というものは大体二十億ドル、今度は二十一億ドルに八月にはなるという話だけれども、二十一億ドル台になるかならないか、なるとしても、この前予算委員会において総理大臣も私の質問に対して答えられました。大体今日百二十億、三十億ドルの輸出をするというようなことから考えても、日本の保有すべき正常な金や外貨準備というものは、三十億ドルでなければならぬというお考えをお答えになりました。私はまあ少ないけれども、少なくともそのくらいは必要だと思う。いま二十億ドルにやっとなろうとしておる。何とかこれが二十五億ドルになって三十億ドル台にこぎつけることができるという見通しがつくという段階で考えられるなら話はわかるけれども、やっと二十億ドルを回復したという段階で、もうすぐ次の手を打つということになりますと、これは予算委員会において総理みずから答弁された方針とは違う。一体あの三十億ドル台ぐらいは金、外貨準備を持たなければならぬというのはお念仏であるのか、政府の具体的な政策の基準になっておるのか、その辺はどうであるか。また、三十億ドル台が必要だというならば、その方針を変えたのであるか、その二つを伺いたい。
  156. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私は、今後輸入はふえると思います。輸入がふえることも私どもは計算し、また、今後の日本の輸出の見通しというものをもって過般輸出会議を開いて、この問題の検討をいたしましたが、輸入はふえるということははっきりしておりますので、これに対応する輸出の増進策が今後の一番大きい主要な問題であるということが一つ。  その次に、外貨の保有量の問題でございましたが、それは日本の経済規模、輸出入規模が大きくなっておるのですから、外貨の保有高が、水準が高いほどこれは好ましいので、まあ三十億ドルぐらいほしいということは申しましたが、しかし、これは長期政策によって達成さるべきことでございまして、外貨をこれだけほしいからといって、短期の引き締め政策によってこれを達成しようということは、政策的に無理でございますので、それとは別に長期的に為銀のポジションを改善したり、外貸の保有量をふやしていくということは、長期政策としてこれからやっていくべきものでございますが、そこまで来なければ、いまの短期的な引き締め政策を解除してはならぬというような性質のものではないというふうに考えております。
  157. 竹本孫一

    竹本委員 輸入が輸出以上に伸びる心配はないかということを言うわけでございますし、また、輸出の将来につきましても、大臣も指摘しておられるように、アメリカの景気、欧米の景気が問題であります。しかし、これは先ほど申しましたように、時間がありませんから私はこの際深い論議をいたしません。  あとわずかの点を伺いたいのでありますが、私が反対する理由は、要するに、国際経済情勢に対する判断が甘過ぎるという点が一つ。第二番目は、公定歩合を引き下げて、これから考えられる設備投資の増進その他に対して準備がなさ過ぎるという点でありますが、その準備の点で二つか三つ結論だけお伺いをいたしたいと思います。  その一つは、何と申しましても国内の総需要が大き過ぎるということが一つの問題でありますし、水田さんは高度成長論者で、総需要をどんどんふやそうというお立場のようでございますけれども、今回の発表にあたりましても、財政が日本の国内の景気あるいはインフレを刺激しないようにということでございます。私は刺激しないようにということだけではまだ足りない、もう少し強い財政のコントロールがなければ、日本の経済というのは常に走り過ぎるくせがある、行き過ぎるくせがありますから、もう少しコントロールを強くしなければならぬという考え方の上に立っておりますので、刺激せず、以上の立場で財政当局はしっかりと経済をコントロールしてもらいたいと思うのです。  その点で、来年度の予算につきましても、やはり毎年毎年膨張に次ぐに膨張という体制でなくて、もう少し財政で刺激しない、あるいはもっとコントロールするために思い切った手を打たれる準備ができておるのかどうかということが一つ。それから次には、公共事業の支出の面でございます。まだ七〇%ぐらい残っておるはずだというのでございますけれども、この支出についてある程度のコントロールを加えて、国内の景気を金融緩和によって刺激し過ぎるということのないようにするお考えであるか。それからもう一つ、自然増収の取り扱いでございますけれども、自然増収はどのくらいに見て、また、その使い方についてはどのくらいのことを考えようとしておられるのであるか。財政のあり方あるいは自然増収に対する考え方、公共事業の支出のあり方、こういう問題から大臣が心配しておられるような点の心配がないように、どういう努力を具体的にやられようとしておるのか、承りたい。
  158. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 財政を刺激しないという程度じゃなくて、もっとコントロールするというような強い政策をもって臨んでもらいたいということについては、私もこれは全く同感でございまして、きのうも参議院でお話が出ましたが、既定予算に赤字が出ても自然増でぬぐえばいいじゃないか、総合予算主義だなんていうのは何だというような批判がございましたが、これは非常に間違いで、国の財政が赤字を出していいんだというようなことが一番問題でございまして、物価問題にしても、財政の健全化ということが物価対策の基礎であるのに、それでない方向の意見が非常に最近いろいろ出てくるということは、私も遺憾であると思っておるときでございますので、あなたの御提言に対しては、これはもう一〇〇%賛成でございます。そういう意味では財政は今後私もしっかりとやりたいと思っております。  公共事業につきましては、昨年の繰り延べがございまして、それを十分計算に入れた本年度の予算編成をやっておりますので、したがって、予算できめたこの公共事業費をそのとおり執行しても、私は差しつかえがないというふうに当初から考えた予算でございます。いま少しこれがおくれているようでございますが、これは逐次軌道に乗せて、特にこれを抑制するというようなことなしに臨んでも、私はこの点心配ないんじゃないかというふうに思っております。  それから、自然増収は、まだ三カ月しかたちませんので、実績も六月末まででございますが、六月末までの収入実績を見ますと、予算に対して二一・五%、一兆七十九億円ということでございます。昨年の同期の収入歩合に比べて見ますと、昨年よりもまだ下回っている、〇・四も下回っているということでございますので、いまの程度では、自然増収が非常に昨年よりもいいというようなことはございませんので、これは将来何とも言えませんが、九月決算が当初思ったよりもいいというようなことでしたら、今後にどういうふうなことが出てくるかわかりませんが、まあ今年度の予算編成のときはもうぎりぎり一ぱい税収を予想しておりますので、そう大きい自然増はないというふうに思います。もしこれが出たらどうするかというお話でございましたが、私は、やはり自然増が多かったら、いままで申しましたとおり、国債を削減するということを優先的にやりたいというふうにいまでも考えております。
  159. 竹本孫一

    竹本委員 これで最後にいたしますが、二つばかりあわせて聞きます。  一つは、設備投資が金融緩和とともにまた走り始める。行き過ぎるということの心配がある。これで私どもは前から、法人付加税とかあるいは投資平衡準備金制度とか、まあ税制の面から設備投資の行き過ぎというものを押えるくふうをしなければならぬ。アメリカは御承知のように、投資をむしろ奨励するような意味で税制あり方考えておるという面がありますけれども、日本では逆に行き過ぎる心配のほうが多いのですから、この投資の行き過ぎを押えるために、税制の面から制度的なくふうをされる用意があったのか、あるのか、それが一つ。  それから第二は、先ほども議論が出ていましたけれども、これでまた貸し出し競争が始まります。その金融の計画化とか効率化ということについてはほとんど体制ができておりません。それに対して公定歩合を一厘下げて、金融緩和、貸し出し競争の激化という情勢を前にして、大蔵省あるいは大蔵大臣としては融資ルールをもっと厳重にするとかなんとか、金融貸し出し競争その他行き過ぎがないように、設備投資をもう少し計画的にするためのくふうがあるのか。  特にその二つの点だけお伺いをいたしたいと思います。
  160. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 設備投資を含めて景気調整については、先ほどお答えしましたように、単にいままでのような金融政策、財政政策だけでは効果が十分でないと思われますので、総合政策を考えたいと言った。その総合政策の一つの中には、やはり税制ということも含まれていいというふうに私ども考えております。  それから、銀行融資ルールというものは今後十分活用していきたい、こう思っております。
  161. 竹本孫一

    竹本委員 これで終わりますが、要するに、ストップ・アンド・ゴーということがよくいわれますけれども、日本の特に自民党さんの最近の経済政策全体はどうもそういう傾向が強過ぎる。今回も早目にやり過ぎたためにまたその心配が大きくなったと思います。どうかひとつ、これからの経済運営についてはそういうストップ・アンド・ゴーがないように、もう少し全体的な計画を立て、また、制度的ないろいろの準備を十分にされて、経済全体の運営をもう少し、あなた方の言われる安定成長に、われわれの言う計画性のある経済体制に切りかえる努力をしてもらいたい。  特にそのことを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  162. 田村元

    田村委員長 次回は、明八日木曜日、午前十時理事会、十時十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後二時十五分散会