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1968-11-15 第59回国会 衆議院 商工委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年十一月十五日(金曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 小峯 柳多君    理事 海部 俊樹君 理事 中村 重光君    理事 堀  昌雄君 理事 玉置 一徳君       小笠 公韶君    岡本  茂君       木野 晴夫君    坂本三十次君       橋口  隆君    武藤 嘉文君       石野 久男君    岡田 利春君       佐野  進君    田中 武夫君       千葉 佳男君    中谷 鉄也君       永井勝次郎君    古川 喜一君       塚本 三郎君    吉田 泰造君       近江巳記夫君    岡本 富夫君  出席国務大臣         通商産業大臣  椎名悦三郎君         郵 政 大 臣 小林 武治君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君  委員外出席者         総理府特別地域         連絡局参事官  加藤 泰守君         公正取引委員会         委員長     山田 精一君         公正取引委員会         事務局長    柿沼幸一郎君         経済企画庁国民         生活局長    八塚 陽介君         経済企画庁総合         計画局長    鹿野 義夫君         大蔵政務次官  倉成  正君         大蔵大臣官房審         議官      田代 一正君         大蔵省主計局次         長       海堀 洋平君         厚生省環境衛生         局公害部長   武藤琦一郎君         農林省農地局計         画部長     加賀山國雄君         農林省蚕糸園芸         局長      池田 俊也君         通商産業政務次         官       藤井 勝志君         通商産業省通商         局次長     楠岡  豪君         通商産業省企業         局次長     三宅 幸夫君         通商産業省企業         局立地公害部長 矢島 嗣郎君         通商産業省重工         業局長     吉光  久君         通商産業省鉱山         石炭局長    中川理一郎君         通商産業省鉱山         保安局長    橋本 徳男君         中小企業庁長官 乙竹 虔三君         運輸省自動車局         整備部長    堀山  健君         自治大臣官房企         画室長     近藤 隆之君         日本電信電話公         社総裁     米澤  滋君         日本電信電話公         社理事         (経理局長)  中山 公平君         環境衛生金融公         庫総務部長   柳瀬 孝吉君         専  門  員 椎野 幸雄君     ――――――――――――― 十一月十五日  委員久保田鶴松君及び楯兼次郎辞任につき、  その補欠として石野久男君及び田中武夫君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員石野久男君及び田中武夫辞任につき、そ  の補欠として久保田鶴松君及び楯兼次郎君が議  長の指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  経済総合計画に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ――――◇―――――
  2. 小峯柳多

    小峯委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済総合計画に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中村重光君。
  3. 中村重光

    中村(重)委員 公取委員長、問題の再販制度ですが、あなたが洗い直しをやるということを言明なさって相当期間、あれから約四カ月以上になりますが――事務局案はあの当時に実はできておって、それで事務局の案をもとにして委員会最終決定がなされ、スケジュールまできまっておった。しかしおとり販売の問題だとか、私ども専門家の意見を聞くことでいろいろと参考になった点もあった。そのことは公取も同じようなことだと私ども善意に実は判断をしておる。それにしても四カ月、五カ月というようなことで、公取態度決定しないということもまたいろいろと疑惑を招くことになるだろうと思います。必ずしも拙速をたっとぶものではない。あの制度をつくった歴史的な関係から見ましても、慎重であるということはまた当然であろうと思います。ですけれども、現在公取委員長としてこの問題にどう対処しようとお考えになっていらっしゃるか。いろいろ技巧を加えなくてそのものずばりでけっこうですから、お考え方をこの際明らかにしておいていただきたい。
  4. 山田精一

    山田説明員 再販の問題につきましては、御指摘のようにたいへん時間がかかっておるわけでございます。実は一応の案というものはできたわけでございますが、これを実情に即しまして十分に当てはめてまいりますと、いろいろの問題が出てまいります。  現在引き続き作業をいたしておるわけでございますが、第一の点といたしましては、各種の商品、これを新しい日本標準商品分類に当てはめる作業を、現在メーカーの側にこれはどの分類に当てはまるかということを問い合わせまして、整備をし直しておるわけでございます。  それから御指摘のございましたおとり廉売なり何なりとの関係、また販売業者中小企業が多いものでございますから、これらに対する関係等を慎重に検討をいたしております段階でございます。私ども気持ちといたしましては、できるだけすみやかに必要な範囲の洗い直しをいたしたい、かように考えておるわけでございます。  御承知のように再販制度、ただいまなかなか歴史のあるというおことばがございましたが、いままでの沿革もございまして、せんだって西独経済省の次官が私の役所に見えましていろいろ話をいたしたのでございますが、西独再販規制強化の法案を出す予定でございましたのが、閣議を通らないで見送りになったというようなことも話がございまして、決してそれによりどうこうというわけではございませんが、慎重に、またでき得るだけすみやかに処理をいたしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  5. 中村重光

    中村(重)委員 そういうことになってまいりますと、商品分類、それから中小企業に与える影響、そういった点を慎重にやっているのだということであって、これを洗い直していく御方針には変わりはない、こういうことになりますか。
  6. 山田精一

    山田説明員 変わりはございません。ただし毎度申し上げておりますように、洗い直しは今回一回限りというつもりは毛頭ございませんで、十年間ほどたちましたのですが、ほとんど手が加えられておらないのでございまして、今後は始終――日に三たび省みるというのは言い過ぎでございますが、常時洗い直しを続けてまいりたい、かように考えております。
  7. 中村重光

    中村(重)委員 あなたが御就任になる前からこの問題については相当論議がやかましかったものであります。その間事務局も相当慎重な作業をし準備を進めてこられたと思うのです。したがって、あなたのほうでも委員会としての最終結論を出すということは時間の問題だとなっていたわけです。それが商品の洗い直しで、あるいは中小企業影響というようなことで、そのことをもって相当検討された結果が事務局案という形になったのだろうと私は判断をしておるわけです。そうなってまいりますと、御方針に変わりがないとすると、いつごろまでに作業が終了をし、いわゆる委員会最終決定がなされるお見通しですか。
  8. 山田精一

    山田説明員 いつまでというお約束をちょっとまだ申し上げる段階にはございませんのでございますが、できるだけすみやかに成案を得るようにいたしたい、かように考えております。
  9. 中村重光

    中村(重)委員 あなたは当時何日までに洗い直しをいたしますというお答えを明確になさった。いいですか、私どもはそうした委員会において御答弁なさったことを守ろうとするあなたの誠意というか態度というものは、実は高く評価をしておったわけです。むしろ私どものほうから、そういう態度はけっこうなんだけれども、それだけにとらわれなくてもよろしいから、あとに悔いを残さないように慎重におやりになってください――そのとき何日だったか、日にちはもう五日とか十日ということであったわけですね、それがあなたの御答弁であった。それをすら私どもは、むしろもう少し余裕をもっておやりになってもよろしいのですよと、こう積極的に申し上げたくらいです一それから四カ月、五カ月たったいま、いつごろそういう結論が出せるかわからないという答弁は、いささかどうも受け取りかねるのですね。もう少しそこらあたり明確なお答えがあってしかるべしと思うが、どうですか。
  10. 山田精一

    山田説明員 目標といたしましては年末前後ぐらいと考えておりますけれども、まだここでもってお約束申し上げる段階までは至っておりませんことを御了承いただきたいと存じます。
  11. 中村重光

    中村(重)委員 そこで、商品分類の点あるいは中小企業に対する影響というように、いろいろ検討をしておる内容についてお答えがあったが、どうですか、この再販制度というものが、私は歴史的ということばを使ったのですが、沿革として、この制度をつくりました当時は、中小企業過当競争というものの実態があり、そのことが乱売競争みたいなことになっておったわけですね。そこでこの制度は、物価対策とか消費者利益ということよりも、そうした中小企業乱売競争というものを防止していく、そのことがまた品質を非常によくするという形にも効果があるということがこの制度をつくった理由である、提案理由趣旨説明の中にはそう出ておるわけです。してみると、この制度をなくすることにおいて中小企業にどういう影響を及ぼすとお考えになっておられ、それからこの制度をなくしてしまったならば、当時これを制定するときに考えられておったような品質低下というような形においてそのことが消費者不利益をもたらすということが考えられるのかどうか。
  12. 山田精一

    山田説明員 私ども再販制度の形をなくすというようなことは全然考えておりません。御承知のように、私から申し上げるのもいかがかと存じますが、わが国の流通部門、これは歴史的にいろいろむずかしい矛盾を含んでおるように考えます。中小企業をどういうふうに再編成いたすとか、いろいろと関係当局において御苦心になっておることと存じます。その進行状況とにらみ合わせまして再販制度というものは洗い直しと申しますか、整備をいたしてまいりませんというと、ただいま御指摘のありましたような品質低下をするとか、あるいは小さい零細な販売業者が倒産をいたすとか、さような現象が出てくる危険性、したがって間接に消費者不利益となるおそれもあるのでございますので、その辺のかね合い流通部門の再編成進行状況とのかね合いにおいて事を進めてまいりたい、かように私は考えておるのでございます。
  13. 中村重光

    中村(重)委員 この制度そのものを全くなくすることは考えてない、従来からのお考えであった洗い直しということだろうと思うのですね。そうなってまいりますと、その当時事務当局等から、またあなたからも直接御説明をいただいたと思っておるのですが、あまり大衆的でないもの、多く一般国民が使ってないもの、それから価格が非常に高いもの、そういうものをもはずしていく、金額はたしか七百円ともいわれ、千円ともいわれておったのですが、それから商品によっては香水等のごときものははずすということでいいのではないかというような具体的な説明が非公式であってもなされておったわけです。  そこで、こういうことが考えられるんじゃないかと私は思うのですが、再販をはずすことにおいて価格が下がってくるということ、そうなってくると、非常に高価なもの、高級品を使う人は比較的生活にゆとりのある人ですね。そういったような人たちが使うものが下がってきて、そして価格の安いもの、一般大衆生活水準が低いような、所得の少ないような人たちが使うというようなものが、この制度が存続することによって価格が下がらないということになる、むしろ逆の結果が生じてくる。大衆利益というものこそ中心的に考えられなければならないというように思うのですが、そこら矛盾というものはどうしても避けられないように思うのですね。その点はどのようにお考えになりますか。
  14. 山田精一

    山田説明員 その節私ちょっと申し上げたと存じますけれども、ただいま御指摘のような弊害が起こりませんように、一例をあげますれば、高級品値下がり相当程度に達したというような場合には、低価格に据え置かれておる品物というものは高級品に比較して割り高ではないか、一応そういう判断ができるわけであろうと思います。そういう点で中級品ないし低級品価格改善をしてもらう、こういうような道があろうかと存じますが、そういうような価格による差別というようなことはいま別に成案は得ておるわけではございませんで、抽象論として申し上げたわけでございますが、先ほど申し上げたごとく、流通部門における再編成進行状況とにらみ合わせて善処してまいりたい、こういうふうに考えております。
  15. 中村重光

    中村(重)委員 高級品、これははずすことにおいて値下がりする。そうすると中級品もあるいは低級品もその点から考えてみていわゆる値下げができる余裕というものがあるのだという判断をあなたがお持ちになる。したがって高級品値下がりに合わせて中級品低級品値下げをやってもらうようにやりたい。これは行政指導という形になるだろうと思いますが、そういう期待ができましょうか。
  16. 山田精一

    山田説明員 ちょっと私のことばが足りませんでございましたが、私ども役所といたしましては、これこれの商品の値段を幾ら下げろということを行政指導と申しますか、命令はもとよりでございますが、行政指導をいたす立場にはないように思います。私が申し上げましたのは、高級品がたとえば千円いたしておりましたものが八百円になったといたしますると、従来中級品でもって八百五十円いたしておったものがあるといたした場合には、消費者は依然八百円に下がった高級品のほうを使って、八百五十円の中級品を使う人はおそらくなくなるのではないかと思います。したがって、これの市場のマーケット・メカニズムを通じまして公正で自由な競争の結果、中級品八百五十円の商品というものはおそらく八百円ないし七百五十円に値下げをしなければ売れなくなってしまう、こういうルールが働くであろう、こういうふうに考えておるわけであります。
  17. 中村重光

    中村(重)委員 なるほどそういうことは常識的には考えられますね。常識的には考えられるのだけれども、そうなってまいりますと、この再販制度というもののねらいというものは実はどこにあるのかという疑問がまた一つ出てくるような感じがいたします。そうお思いになりませんか。
  18. 山田精一

    山田説明員 再販制度のねらいは、あらためて申し上げるまでもなく、販売業者がいたずらに過度の競争をいたしまして、その結果零細な販売店当該商品を扱わなくなることによって消費者が不便をいたす、遠くまで買いに行かなければなかなか手に入らないというような不便をこうむるとか、あるいは先ほど御指摘になりました品質低下をいたす、さようなことを防ぐところに制度目的があるように存じます。したがいまして、ただいま申し上げました市場原理を通じて価格低下していくことは、おそらく再販制度目的と何ら矛盾するところではないのではないか、かように考えるわけであります。
  19. 中村重光

    中村(重)委員 再販制度をはずしたことによって、いわゆる洗い直したことにおいて高級品低下をする、あなたの御議論から判断をしますと高級品というものは品質低下するということにも通じてまいる。そうすると今度は中級品低級品というものが必然的に値下がりをしてくる。ということは品質低下というものが相伴って起こってくるということが論理的にも出てまいる。そうなってまいりますと、この再版制度というものは品質低下ということが中心として考えられてくるということになってくると私は思う。だから、今度はそうではなくて、一方、価格の問題というようなことが中心であるとするならば、いわゆる高級品というものが下がった、それに伴って中級品低級品も下がってきたということになってくると、必然的に値下がりというようなことが出てくるということになってまいりますから、再販制度そのものを存置しておる意味というものがなくなってくるというようになってくると私は思います。  それともう一つは、当時はいざ知らず、現在においては化粧品メーカーというものは非常に強い力を持っています。専門家にして言わせるならば、もうこの再販制度をはずしても品質低下なんということは考えられません。そのように品質低下をやったならば、もうその品物が売れないのです。だから再販制度品質低下ということを結びつけて考える時代は去ったと私ども考えていますということを専門家が言っているのです。専門家人たちはあなたほどそのことを再販制度に結びつけて深刻に考えていない。むしろ再販制度というものは、現在必要を認めておる人たちはそういうところにねらいを置いておるのではない。再販制度を設けておくことにおいてメーカーと卸、それから小売りとの関係というものの、その強いものの優位性を保持しておくということ、いわゆるメーカーの、あるいは卸商支配力というものを維持、温存していこうとするところに、この再販制度というものを存置していこうとする強い運動が展開されておるということが、今日の常識ではないかと私は思う。小売り商人たちが、再販制度をなくしてしまったならば過当競争の状態になって、私ども全国八万の化粧品業者というものは総倒れに倒れますと言う。そのとき私はこういうことを申し上げた。あなた方はメーカーあるいは卸との契約内容について満足していらっしゃいますか、満足をしていないでしょう、言いたいことも言えないのでしょう、あまり言いたいことを言ったならば、あるいは価格を少しでも引き下げるとか、定められておるところの基準に反するようなサービスをやるということになったならば、直ちにその販売を取消される、いわゆる系列からはずされてくる。それがこわいからほんとうは何も言えないのでしょう。あなた方は再販制度を存置してもらいたい、それ以外にわれわれが生きる道はないということを政府に対し、あるいは国会に対して運動される前に、メーカーに向かって契約内容改定を迫るという態度をおとりになったらどうなのか、こういうことを私は強く申し上げたし、また予算委員会におきましても、あなたにきわめて不当、不平等な契約内容というものを改めていくという、そうした努力をなさる必要があるのではないか、再販制度というものの存置をあなたがしなければならぬとするならば、そこらにメスを入れていく、そういうことがおとりにならなければならない最も重要な点ではなかろうかということを進言をしたことを記憶をしております。あなたも前向きでそういう点に対してはこれを是正をしていくようにつとめてまいりたいとお答えになったのであります。それらの点に対して、あなたはどのような努力をなされたか、四カ月、五カ月経過いたしました今日、この内容にわたって調査をされた点がございましょうか、その調査の結果がどうなのか、またそれをどう改善をしていこうとお考えになっていらっしゃるのか、ひとつお聞かせ願いたい。
  20. 山田精一

    山田説明員 ただいま御指摘のとおり、メーカーの力がだんだん強くなってまいりますと、小売り商との間に力の格差が出てまいる傾向にあるということは御指摘のとおりでございます。これは私ども独禁政策だけでは処理できない問題でございまして、私から申し上げるのもいかがかと思いますが、あるいはボランタリーチェーンを助成いたすとか、いろいろな政策があろうかと存じます。それによって力のバランスをできるだけ回復する方向に持ってまいることが肝要ではないかと考えております。私どもといたしましては、常時その契約の届け出を受けまして、その内容に不当な点がありまして、もしかりにメーカーがその優越した地位を乱用しておるような疑いがございますれば、これは適切に処理をいたしてまいりたい、常時注意をいたしておるわけでございます。
  21. 中村重光

    中村(重)委員 いまのお答えでは私の質問に対する答えになりません。どういう点がメーカーが優越的な地位を利用して、小売り業者に対して無理をしいておるということか、指摘できますか。
  22. 山田精一

    山田説明員 常時調査はいたしておりますが、まだ的確な具体的な傾向というものは出ておらないようでございます。
  23. 中村重光

    中村(重)委員 あまりにも怠慢ではありませんか。四カ月、五カ月前に、洗い直しについてあなたはもうそれを決定をしようという直前に、いろいろとあなたもさらに検討していきたいという気持ちもあるでありましょうし、いろいろな運動というものによってあなたの考え方が変更させられたという点もなきにしもあらずと私は思う。私はそのことであなたを責めようとは思いません。しかし、当時私の質問に対して、いまお答えになりましたように、契約内容に対してメーカーがあるいは卸が、優越的な地位を利用して小売り店に無理をしいておるというような実態もあるだろう、そういう点も十分調査をして、これを改善するようにつとめていきたいというお答えがあった。それがいまに至るまで的確な調査ができていない。そうしてもういまは御承知のとおり十一月でございます。十二月をめどに洗い直しをやりたい、こういうお答えでございます。わずかな期間でございます。最も重要なそうした問題点というものをあなたのほうだけでできない、こう言う。それならば通産省その他関係省とも十分連絡をし、むしろあなたのほうから強く要求をして、そういう内容改善をはかっていくということがより優先していかなければならないんじゃないでしょうか。どうですか。
  24. 山田精一

    山田説明員 そういう点に十分心がけておるつもりでございまして、再販品目についてまだこれという具体的な例があがっておらないと申しましたが、いわゆるやみ再販行為につきましては、優越いたしました地位の乱用に類するような行為は、取り締まりました例があるわけでございます。
  25. 中村重光

    中村(重)委員 あなたはマージンリベートという二つの制度になっているそのことをどうお考えになりますか。いわゆる中央部にある店舗というものはたくさん売れますよ。その売り上げ高が大きいところはマージンのほかにリベートというものがたくさんもらえるのですね。そうしてそのリベートは現金の場合もあるであろう、あるいは物でもって支給される場合もある。メーカーから卸へその売り上げ高によって、マージンのほかにリベートというものがある。今度は卸から小売りへまたマージンリベートというものがある。そうしてそれが物でもって支給されておる、こういう形になってまいります。だから、ある小売り店は、ある卸は、その他の卸商あるいは小売り店と比較をいたしまして、半分以下の価格あるいは三分の一程度価格でもって商品を仕入れる。そして同じ商品を売って、二倍ないし三倍の利益を受けておるというこの実態、そういうことが適当であるとお考えになっていらっしゃるのかどうか。それだけではございません。私もあなたに御注文も申し上げました以上は、私なりにいろいろと調査をいたしております。この席でその実態を赤裸裸に申し上げていいことも、あるいは差し控えなければならぬ点も、私はあろうと思います。事やはり事業に関係するような問題でございますから、私はその実態を差し控えなければならぬと判断する点は差し控えますが、ともかくあまりにもメーカーなりあるいは卸商が自由自在にこの支配権というものを左右し得るような体制になっておる、そういうことは私は改めていくということでなければならないと思うのです。そうしたことをすることは、ある程度メーカー利益というものに対して、そこに制約が加えられてくる、利潤が少なくなってくると思います。しかし、少なくとも契約はある程度平等に――それが価格を引き下げても、小売り店利益というものは守られる、そしてまた消費者利益が守られていくということに通じてくるのではないでしょうか。あなたが再販制度を存続していきたい、これを全然なくしていくというのではなく、洗い直すというようなことでやっていきたい、そのことが小売り店利益であり、消費者利益であるとお考えになるならば、ほんとうにそういう方向にいくようにお進めになる、あなたでできないことは、行政当局に対してそれを強く要請をしていくという態度というものをおとりになることが、少なくとも公取委員長としての、国民大衆の期待にこたえる態度ではなかろうかと私は思います。どうお考えになりますか。
  26. 山田精一

    山田説明員 マージンリベートにつきましては、私どもは大量に販売を促進いたしました場合に、よそよりも少ししか売らなかったものよりも、ある程度リベートを多くするということは、メーカーの立場からいたしますれば、販売促進の目的上、これはやむを得ざるところであろうかと考えます。ただその傾斜があまりにも強い場合、また恣意的なリベートの増減をいたすという場合は、これははなはだ好ましからざる現象である、かように考えております。したがいまして、先般審決を出しましたところの乳児用粉ミルクの販売契約費等につきましては、リベートの算定を、価格を守ったかどうかとか、恣意的な基準でメーカー側がリベートを定めておりますので、これは排除することが適当であるという審決を出したわけでございます。
  27. 中村重光

    中村(重)委員 私も全然同じであっていい、あるべきだとは申しません。しかし、たくさん売るということは、マージンが、たくさん収入があるということですよ。いいですか、このリベートを多く出すという点、そういう点は私は弊害だというのです。ところが、この制度というものが小売り店を守っていくというような点から出発をしたが、十年を経過いたしました今日、物価対策という面につきましても、大きなウエートをいま占めておるのです。あなたが数回にわたってお答えになりました点は、むしろ小売り店の問題よりも、品質低下という問題よりも、物価対策という面から相当この制度に対してあなたは強調なさった。それから通産大臣にいたしましても、大蔵大臣にいたしましても、経済企画庁長官にいたしましても、おとり廉売というようなもの、そのことだけをとらえて、この制度の必要性を強調なさった。私は、説得力がないということで、その答弁に対して不満を表明したことは、あなたも御承知になっていらっしゃるところであります。だから、リベートにあまりにも大きなウエートを持たせるということは、はなはだ不合理であり、不平等であると私は思う。そして、そうすることが、物価を幾らかでも下げる、価格を引き下げていくということの大きな歯どめになっている。やはり内容調査して、メーカーが優越的な地位を乱用している点を是正していく必要があるという点は、私は一つの例だけを申し上げたのでございますが、そういう点も大きな問題点として考えていかなければならない点ではなかろうか、こう思います。ひとつ、政務次官もおいででございますから、この点に対して、あなたはどうお考えになりますか。
  28. 藤井勝志

    ○藤井説明員 再販制度が発足した当時の事情や、その必要性といったものについては、すでに中村委員も御存じのとおりでございますが、そういうことを前提にしながら、なおこれが廃止をしたらどうかという御意見につきましては、要するところ、物価対策という当面重大な経済政策から見て洗い直し再検討ということで、いろいろ御意見を出されておるわけでございましょう。私は、ときどき地元へ帰りますが、総合的に考えまして、やはりこれを全部廃止するということは、結局消費者のためにもかえって不便を来たす、いまもお話が出ておりますように、専門店ですね。化粧品を扱っている専門店は、スーパー的な大きな総合販売店に、いわゆるおとり商品を使われたのでは成り立たなくなってしまう。そうすると、たとえば自分たちが日常使っている化粧品が手近な店で手に入らぬ、こういったことにもなります。それがひいてはまたメーカー自体、廉売されるということになれば品質低下するというようなことになる。私は、メーカーが優位であるという前提に立って御意見を承っておるわけですけれどもメーカーもいろいろたくさんあるわけですから、メーカー間における競争というものもありますので、そこら辺は総合的に判断した場合に、全面的廃止ということについては、いささか踏み切り得ない、こう私はお答えせざるを得ないのです。
  29. 中村重光

    中村(重)委員 時間の関係もありますから、私の質問をお聞きになってお答えをしていただきたい。私はもう百歩譲って、洗い直しをなさるについても、改善する点が多々ある。小売り店利益を確保し、消費者利益を均てんさせるという方法について、内容的に大いに改善する点があるのではないか。そういう点について委員長の見解をただし、なお公取だけでできない点があります。確かに行政当局であるところの通産省を中心とする関係省がおやりにならなければならぬ点も多々あるわけです。そういう点についてあなたにお考えをただしたわけですが、まあ的確なお答えではございません。ともかく化粧品というものはムード商品だ、中身はあまり変わらぬといわれています。確かに香料なんというものは違うでしょうが、そう中身が変わるものではない。あまりびん代に金がかかり過ぎる、広告費にあまりにも金がかかり過ぎる。何というのですか、いわゆるムード商品ですから、形のいいびんですと、中身がいいようにも見えるでしょう。値段が高いといいものに見えるでしょう。広告が徹底をして、そうして有名メーカーになってくると、そこの品物は特にいいものに感じさせられる。だから私は行政指導をなさるならば、やはりそうした点についても十分業者と懇談をし、広告あるいはそうした容器、いろいろな点についてもそうはでなことをやらせないようなこと、そういうことも私はおやりになる必要があると思う。それから契約内容改善さして、ほんとうに小売り商が一方的にメーカーの支配によって左右されておるというそうした契約内容改善をやっていく。中小企業政策という面からいきましても、物価対策の面からいきましても、私は、それらの点は最も重要な問題ではなかろうかと思うのです。公取に強くこのことを求めることよりも、通産省であるとかその他関係省が真剣に物価対策をお考えになるならば、そういう点についてはもっと積極的な態度というものがなければならぬと私は思う。いま政務次官がお答えになりましたようなことを、私は重ねてきょうあなたからお聞きしょうとは思わなかった。しかし、あなたは、私が公取委員長に対して質問しているので、直接あなたにお尋ねしようということでなかったと思うので、耳をそばだてておられなかったのだろうと思いますから、そのことは別に非難いたしません。これだけで時間をとってもしようがありませんから、この際どうです、公取委員長、政務次官、私がいま申し上げましたことについて無理があるとお考えになるならば、率直にお答え願いたい。確かにそういう方向で進めていかなければならぬとお考えになるならば、この後どういう態度でお臨みになるのか、ひとつその姿勢をこの際明らかにしておいてほしいと思います。
  30. 藤井勝志

    ○藤井説明員 御指摘の御趣旨は私も十分尊重して、これが改善に前向きでいかなければならぬ、このように思います。ただ御指摘のように、具体的な例として化粧品はムード商品だといわれておりますが、それだけにこの取り扱いをどう持っていくか、非常にむずかしい問題ではないかと思うのです。御指摘の御趣旨は私もよく理解できます。何とかこれを、消費者も助かりメーカーが横暴をしないように、しかも物価対策に沿うためには、もうちょっとすっきりした形で、人間そのものが合理性があるようでまたそうでない面もありますから、そこらはなかなか取り扱いにくいという感じはいたしますけれども、御指摘の点は正しい方向だと思いますので、前向きで検討さしていただきたい、このように思います。
  31. 山田精一

    山田説明員 ただいま包装なり広告なりに非常に金がかかり過ぎておるのではないかというお話でございます。実は私個人といたしまして全く同じ感じを持っております。私の権限にあることではないのでございますけれども、有力な化粧品メーカーの社長と会いましたときに、どうしてこうびんばかりりっぱになさるのですか、アメリカなんかでは、私の小さな見聞からいたしますと、クリームなどというのは大きな徳用びん、しかもきわめて簡素なびんに詰めて割り安に売っているではないか、どうしてああいう商品をお出しになりませんですかということを再三話をいたしました。その社長は、化粧品はムード商品であるから、そういうものを日本で出してもなかなか売れないのだということを言っておられたのでありますが、私があまり再三申しますものですから、先般、御承知かと思いますが、二、三のメーカーがクリーム及び何でございましたか忘れましたが、二、三種につきまして簡素な徳用ぴんというものを試みに売り出したわけでございます。かなり割り安になっておるように思います。私は、これが成功してくれれば非常にいいのでありますが、もし売れ行きが悪いということになりますと、それ見たことかといわれますので、ぜひあの徳用びんの売れ行きが盛んであることを期待いたしておるのでございますが、どうぞよろしくお力添えをいただきたいと思います。
  32. 中村重光

    中村(重)委員 それから、私が強調いたしましたメーカーと卸あるいは小売りとの契約内容ですね。これはもっと積極的に取り組んで改善されなければならぬ余地が確かにあると私は思う。それを改善をする、あなた方としてもこれを全然廃止しないで洗い直しという程度にとどめたいというお考え方であるならば、そういう点はぜひおやりにならなければならぬ点だと私は思います。したがって、そうしたメーカーの強い地位を利用して一方的に契約内容を押しつけていく、リベートの問題、マージンの問題、それも具体的にあなたが検討なさったら、これは確かに無理だとお気づきになるような点が私はあろうと思います。そういう点積極的に取り組んで、これを改善させるという方向で進めていこうとされる御意思があるかどうか、もう一度その点を明確にお答え願っておきたいと思います。
  33. 山田精一

    山田説明員 メーカー小売り商との間の契約内容につきまして十分検討をいたしまして、不当な点があれば、これを是正いたすように十分努力をいたしてまいりたいと存じます。
  34. 中村重光

    中村(重)委員 もう時間がずいぶんだってまいりましたから、委員長、現在審判中の事件というものは、最近ずいぶん処理されてきたというようにも伺っているのですが、一体どうなっているのかということをお答え願いたいのです。それと関連をして二、三またただしてみたいと思いますが、簡単に……。
  35. 山田精一

    山田説明員 先ごろまでは審判係属中の事件が十一件ございましたが、先ごろ乳児用粉ミルク事件に関する三件が審決を終わりまして、これは当事者が東京高等裁判所に提訴をいたしましたので、今後は裁判所で問題になるわけでございます。ただいま係属中の事件は八件ございますが、そのうち年内に大体において審判を終わりそうに思いますのが六件くらいございまして、年を越すと思われますのは二、三件程度かと考えております。
  36. 中村重光

    中村(重)委員 これを促進してもらいたいと思います。そうしませんと、例の松下の問題であるとか、大きな力に公取が左右されて、もうどうにも動きがとれぬのだという、あなたの意図と反するようなそういう批判というものが起こってまいります。だから、ひとつ精力的にそういう問題に取り組んでもらう、不当なる態度をとるものに対しては、びしびしこれに制裁を加えていく、そういうことをおやりになる必要があると思う。それから最近の公取の動きを見ておりますと、こまかいところに非常に目が届いておって、たとえば高松のとうふ屋さんをおやりになりましたね。それから福島のかけうどん、親子どんぶり、それから三重のパーマ料と、なかなか小さいところにはよく行き届いてびしびしやっていらっしゃるようですが、もっと大きいところにやみ再販であるとか独禁法違反というようなものが非常に多いのじゃないですか。これは弊害があるかもわかりませんが、ミシンがどんなものであろうか、ピアノがどうであろうか、あるいはその他申し上げると私はたくさん感ずるところがありますが、これはあまり弊害があってもいけませんから言いませんが、ともかく大きいところに、もう販売網がきちっと系列化されているところにやみ再販はつきものです。そういうところをびしびしおやりになる必要がある。私は、かつてテレビの問題を取り上げたことがありますが、なかったのかあったのか、それもあいまいもことしている。それから最近、公取はたいへん熱心にやっていらっしゃるようでありますが、例の鶏卵の不足払いの問題、こういうようなこともあまりに一方的だということ、これは非常に真剣にやっていらっしゃるようでありますから、それは私多といたします。早く正しい方向に結論が出ることを期待いたしたいと思います。それからコカコーラこれも私はどうもやみ再販傾向が確かにあると思います。そういったような大きいところに目をつけて、こまかいものをどんなでもほっといてやらせなさいということは決して言いません。これは事消費者関係する問題でございますから決して言いませんが、こまかいものばかりなさって大きいものを見のがすというような批判を受けることは、あなたも本意ではないと思います。だから、そこらあたりどう考えていらっしゃるか。ミシンにいたしましても、かつてプラザーをおやりになったことがある。これはあえて名前はあげませんけれども、ほかのミシンにも多分にあるということは考えられると思います。そこいらをどうやっていらっしゃるか、相当大きいものについて調査を進めていらっしゃいますか。
  37. 山田精一

    山田説明員 こまかいものばかり取り上げるではないかという御指摘でございましたが、私ども大企業と中小企業の間に全く差別はいたしておりませんわけでございます。ただ中小企業のほうが数が多いものでございますから、おそらくお目に触れる件数が多いために小さいものばかりやっているという御印象をお持ちなのかと存じますが、大きいものにつきましても、私どもといたしましてはできるだけやっておるつもりでございます。会社の名前をあげることは差し控えますが、商品名だけを申し上げますと、たとえば高圧ポリエチレン、それからパラジクロールベンゾール、それから石綿スレート、こういうようなものにつきましては超一流の大会社、これを対象にいたしまして、勧告をいたしました。これは先方が争いませんで、すぐそれに服しましたものですから、勧告審決の形になりまして、審判というような形にならなくて済みましたわけでございます。決して小さいものだけを拾い上げておるというわけではございません。  それからローカルの比較的小さいものが目につくようになりましたのは、私どもの地方事務所の機構がおかげさまで、むろん十分とは言えないのでございますが、多少整備せられてまいりましたものですから、それらの活動でそういうものが摘発されておる、こういうことも多少影響いたしておるかと思います。大企業は主として東京または大阪で扱います関係上、しかも会社自体の数が少ないものでございますから、件数としてはどうもそれほど上がらない、こういう形になっておるのかと存じます。決して差別をいたすという考えは毛頭ございませんことを申し上げておきたいと存じます。
  38. 中村重光

    中村(重)委員 コカコーラはやみ再販になりませんか。なるほど地域的には若干の差がある。しかしその一つのブロックは価格は同じである。全国的に同じだとは私は言いません。しかしブロック的な価格は同じである。これは確かに価格協定をやっておる、これは独禁法違反の疑い十分だと私は思うのですが、御調査になったのではないかと思いますが、いかがですか。
  39. 山田精一

    山田説明員 あまり特定の商品につきまして申し上げることはいかがかと存じますが、調査をいたしたことがございます。その段階では十分な資料が得られませんでしたわけでございますが、引き続き監視と申しましてはちょっとことばが適当でないかもしれませんけれども、注意を払っておる次第でございます。
  40. 中村重光

    中村(重)委員 それから先ほどいろいろな商品名をおあげになりましたね。勧告審決をやった。要するに同意審決であるとか審決の方法もいろいろあるのでございます。ところがどうなんですか。審決をおやりになりますと、勧告の場合、あるいは同意審決の場合、協定は確かにこれは取りやめます、こういって価格協定そのものは取りやめるという形式をとりましても、価格がもとに戻っておりますか。
  41. 山田精一

    山田説明員 これは残念ながらもとに戻ったというケースはほとんどございませんように思います。私どもの独禁法のたてまえからいたしますと、価格を引き下げろということを端的に命令いたしますわけにはどうもいきかねるのでございまして、協定をいたした場合に、協定は破棄せよ、そして関係者にそれは破棄したということを十分周知徹底せしめよということが限界でございまして、それによって、破棄したことによって、業界において競争をして勉強して能率をあげて、安く売るものができた場合にそれが何ら妨げなく安い値段で売れる、こういう状態を確保いたしますのが私ども独禁法の限界ではないか、こういうふうに考えます。
  42. 中村重光

    中村(重)委員 これは私は議論の分かれるところではないかと思うのです。公取の中でもどうなっているのかわかりませんが、価格協定をやった。これは確かに独禁法違反であるとして勧告をやる。相手が同意しなければ審判という形になるわけですね。同意したら同意審決という形になる、勧告審決という形が出るわけですよ。そうすると契約そのものを破棄させた。ところがその協定をやったことにおいて価格が上がったのですよ。その価格がもとに戻らなければ審決の効果というものは少しも国民にとってはあらわれてこない。だから勧告をなさった、要するに勧告審決という形になったわけですね。同意をしたのだから同意審決ということになるが、それならばその価格というものがもとに戻って、そして自由競争という形になって価格が引き下げられてくる、品質も向上されてくる、こういうことにならなければほんとうの独禁法の精神にも沿わないのではないか、効果というものがないのではないか、単に形式に終わるという形になるのではないか、私はこう思います。したがってあなたのほうではそうした勧告審決をおやりになったならば、ほんとうに契約が破棄されて価格はどういうことになったのだろう、それを追跡調査をする、厳重にこれを監査するというような態度こそおとりにならなければいけないのじゃないか、あなたはそうお思いになりませんか。
  43. 山田精一

    山田説明員 協定によって価格が引き上げられました場合に、それを引き上げ前のもとの価格にまで戻せるかどうか、これは御指摘のようにいろいろと議論のあるところであろうと存じます。私どもがいままで検討いたしました限りにおきましては、私ども役所は物価庁ではございませんので、原価計算をして価格が幾らが適当であるかということを判断する義務もございませんし、また能力もただいまの人員では持ち合わせておりませんわけでございます。ただいまの勧告審決をいたしました場合には、その協定を破棄したということが関係者に全部周知徹底をされたかどうかということは十分に審決の執行として追及いたすわけでございます。それからなお、参考までに価格の変動状況は見ておりますが、もしも思うように下がらなかった場合に、これを引き下げよという命令まではどうもこれは限界があるのじゃないか。言いかえますと、逆に申し上げますと、カルテルを結んで価格を引き上げたということは、そのメンバーの中に不本意ながら、自分は上げたくないのだけれどもカルテルであるからやむを得ず上げたという業者があるはずでございまして、そのカルテルが破棄されれば、能率が上がっておって十分収益がある、しかも自分の商品のシェアを広げたいという業者があれば、おそらく進んで下げて自分のシェアを広げるであろうと存じます。それが競争原理を生かすゆえんではないかと思うのでございますが、現状ではなかなかそういうものが出てまいらないという状況でございます。
  44. 中村重光

    中村(重)委員 率直なお答えもあったわけですが、能力の問題、おっしゃるとおりだと思う。人が足りない、だからやりたいこともできない。いわゆる追跡調査あるいは監査、これはやりたいだろうと思う。しかしあなたのことばの中で、それまでの義務はないとか、行き過ぎではないかというお答えがあったのはきわめて不満ですが、追跡調査の必要がない、あるいは監査の必要がないとおっしゃるならば、私はそれでは納得できないからとことんまであなたと議論をいたしますけれども、能力がない、こういうことでございますから、やりたいけれどもやれないということだろうと思う。しかしこの義務の問題、あるいは行き過ぎということばであったかどうかわかりませんが、そこまでやることはどんなものであろうかというようなことばであったと思います。私はそれであってはいかぬ。なるほど審判まで持ち込まれるというと、自分たちは悪いことをやったのだから、これはどうせ負けるから従いますということで、そこで勧告審決という形がなされるのです。しかし、あとは適当にやっている。だから価格は上がりっぱなし、下がっていないのです。これでは意味ない。ということは、私は公取のそうした審判制度は意味がないとまでは言い切りませんけれども、私どもの期待する、国民の期待するものはそういうものではないと思う。だから要員もふやしていく、そして不備な点はこれを十分是正をして、ほんとうの効果あらしめるような方向へと改めていかなければならぬと私は思う。経済企画庁長官がおりますとひとつ見解も伺ってみたいと思うのですが、どうですか通産政務次官、お聞きになってもの足りないとはお思いになりませんか。あなたは政治家として、将来大臣におなりにならなければならぬお人なんだから、どうですか。勧告審決はやるのです。契約を破棄するという形式はなるほどなされたのですよ。ところが上がれば上がりっぱなし、下がらない。こういうことではちっとも効果が出てこないのです。効果あらしめなければならぬでしょう。ほんとうに自由競争原理の上に立って自由競争が行なわれる、品質もよくなり、サービスもよくなり、価格も下がっていく、そういう効果をあらわさなければならない。そういうことが国民の期待じゃないでしょうか。それがそういうことではない。やりたいけれども人も不足してやれないのだ、こういうことをお聞きになって、あなたはどうお考えになりますか。また、これをどう効果あらしめる方向へと推進していこうとお考えになりますか。委員長に尋ねるわけにもいかぬから……。
  45. 藤井勝志

    ○藤井説明員 しいて私への御指摘質問でございますが、私自身明快なお答えを申し上げるそれこそ能力を持っておりませんが、おっしゃる趣旨は、せっかくこういう指摘をしながら、それが実質が伴わないではないかという慨嘆に対して、私もお聞きしながら全く同感に思うのです。それをどういう方向へ持っていくか、これはやはり経済企画庁あたりが中心になって、いろいろ検討をさしていただきたい。検討すべきことではないだろうかと、お答えにはなりませんけれども、聞きながらそういう感じを持ちましたということでひとつお許しを願いたい。
  46. 堀昌雄

    ○堀委員 関連して。いまのいろいろな問題の中で、審判が出ても何が出ても価格が上がるという場合には、輸入代替品で処理ができるものについては、私はいろいろな経緯があろうともひとつばさっと緊急輸入をやって、そういうオーソライズされたものの権威が全然無視されるというようなことについては、通産省はもう少し真剣に考えるべきじゃないかと思うのです。代替のないものはしかたがないですよ。代替のあるものは緊急輸入によって価格がすらっと下がるまで、何らかの処置をすべきだと思うのですが、政務次官どうですか。
  47. 藤井勝志

    ○藤井説明員 御指摘のことは私もそのとおりだと思います。検討さしてもらいます。
  48. 中村重光

    中村(重)委員 いまの質問に対してあなたもそうお考えになったのだけれども、先ほどの答弁は、政務次官、正直だろうけれども無責任ですよ。あなた政務次官ですよ、個人じゃないですね。だからもう少し権威のある御答弁をひとつやるようにしてください。国民がほんとうに失望します。  それでは公取にまだ王子製紙の問題とか、財閥解体後ほとんどこれはまたもとの姿に戻ったという問題等々、いろいろお尋ねしたいのですが、もう時間がありません。これらの問題はいずれ適当な機会にお尋ねすることにいたしたいと思います。公取委員長にはひとつこの点国民の期待にこたえて、大いにハッスルしてやっていただきたいと強く御要望申し上げます。  次に鉱害問題をお尋ねしますが、これも時間がありませんから簡単にお尋ねをいたします。前回の委員会にお尋ねをいたしました長崎県対馬のイタイイタイ病の問題、新聞をお読みになったと思いますが、私が持っておりますのでも、「対馬もイタイイタイ病」「死亡婦人を認定」「レントゲン写真で石崎金沢大教授も」これを認めた、こういうことで地元も戸惑っておるとか「顔をこわばらす住民」それから「全員残らず精密検査」をやるのだ、こういうことでこれはまた地元にたいへんな不安を与えているわけです。前回、続いて調査をやっているというお答えがございましたが、その後の調査というものは、いわゆる人体調査あるいは農作物あるいは土砂あるいは川の水、そういうことについての調査もされたのでございましょうから、そのことがどうなっておるか。私はどうも保安上問題がある、保安設備の問題についてもっと積極的におやりになる必要があるのではないかということで、いろいろ意見、要望を申し上げておったわけでございますが、その点に対しまして通産、厚生両当局からひとつお答えを願いたいと思います。
  49. 武藤き一郎

    武藤説明員 対馬のカドミウムの問題でございますが、先日お答えをいたしました以後の状況について申し上げます。  第一回の調査は八月二十八日から三十日まで行なったわけでございますが、第二回目は十月十六日から十八日まで、農作物、米、イモ、それから水田、土壌等につきまして、厚生省といたしましては検体を採取いたしまして、これの結果につきましてはなるべく早く、おそらく来年の早春には分析結果がわかるだろうと思います。それから地区住民の健康診断の問題につきましては、十一月十八日から二十一日まで、実施を長崎県が予定しております。対象人員は厳原、樫根、下原地区の四十歳以上の男女三百人でございまして、一応検査の結果さらに精密検査を要する者につきましてはレントゲン等の検査を行なう予定でございます。
  50. 橋本徳男

    ○橋本説明員 保安施設の関係でございますが、これは先般御説明申しましたように分散処理をしておる鉱廢水をすべて集中処理をするということで、昨年改善の指示をいたしまして、これが六月に完成をいたしております。その後保安局といたしましては現地を調査いたしまして、水質等を検査しております。それからさらに十月になりまして薬液装置についての施設に若干問題があるというところを発見いたしまして、こういった薬液処理の施設の改善を指示しておる次第でございます。大体十月の末にこれが完成したというふうに受けております。そういうふうに監督官が参りまして、常時検査をしながら施設の改善を指導しておる、かような状況でございます。
  51. 中村重光

    中村(重)委員 農作物だとか、あるいは川の水だとか土砂だとかいうことの検査の結果――武藤さんそのことをお答えになりましたか。そうじゃなくて、これから先のいろいろ人体検査のことについてだけのお答えだったわけですね。あなたのほうではそれはお答えにならないのだと思うが……。
  52. 小峯柳多

    小峯委員長 それは農林省だな。
  53. 加賀山國雄

    ○加賀山説明員 ただいま厚生省の公害部長のほうからお話がございましたように、厚生省でおやりになっております結果をこちらは待っておるということでございますが、それに先立ちまして、私のほうは鉱山排水あるいは都市汚水その他の排水による河川の汚濁、それのかんがい水による農作物の被害ということで全国的な調査をいたしておりますが、先生御指摘の厳原のこの件につきましては、どういうわけかその調査の網にかかってきてないわけでございます。それで、こういう問題が起きましたので、さっそく長崎県当局とも連絡をとって検討いたしましたら、当時四月ごろでございますが、農作物にはそういう大きな被害はないという報告でございまして、また最近調べたのでございますが、あまり農作物の被害というのはないという報告でございます。しかしいろいろこういう問題もございますので、厚生省のほうの調査等の結果を待ちましてさらに詳細な調査を進めたい、さように考えている次第でございます。
  54. 中村重光

    中村(重)委員 これは武藤さん、あなたも長崎県の御出身なので、地理的にも一番よくおわかりですね。実は東邦亜鉛は対馬の唯一の地場産です。あれに実は全島の住民の生活がかかっておるとまで言っては少しオーバーな言い方ですけれども、あの島の人たちがこの山に働いておる、厳原町の経済というものがあそこに大きく依存している。ところが、いままでは富山のイタイイタイ病とはこれはちょっと違うというので、そう心配してなかった。むしろ、あまりマスコミが取り上げ過ぎるのではないかとか、いろいろそういうことに不満すら漏らす傾向なきにしもあらずだったのです。かつてこの調査に参加をしました石崎教授も、この調査に参加した際に、富山のイタイイタイ病というものとは違うのではないかというような態度をおとりになっておった。ところが現実に、今度は死亡された人のレントゲン写真をとって、これは確かにイタイイタイ病であるということを確認をした。これは先ほど申し上げましたように、地元でもたいへんなセンセーションを巻き起こして、不安にかられた。だから、決してマンマンデーの調査であったとは私は申し上げませんが、いままでのような調査態度ではこれはもうだめなのです。  それから橋本さんに申し上げますが、鉱害のいわゆる保安設備の問題、これももうほんとうに積極的な取り組みをおやりにならなければいけない。なるほど私どもも、前回も申し上げましたように、委員長中心に現地へ参りまして、見せてもらったし、いろいろと説明も聞いた。会社側の熱意も私どもなりにくみ取ったわけではあります。ありますけれども、私が申し上げましたように、そのかすを捨てる場所、そういったいろいろな点でその後私なりにいろいろと調査をしてみたのですが、問題がある。だから、これはいわゆる鉱害が出ないためにも積極的に保安設備を強化していく必要がある。  それから厚生省のほうは、こういう実態がここに出てきたのですから、独自な調査も精力的にお進めにならなければならないでありましょうし、また県に対しても、前回も申し上げたように、機械を買うために三分の一の補助とか、四十万円の県の独自の調査に対する補助をやるというような態度ではいけないと私は思う。そういうことでは、いままでむしろこれを敬遠するような態度をとっておった住民が承知しない。人命上からいってもたいへんな問題だと思う。だからして、いままでのような姿勢で依然としてお進みになる考え方が、この実態の中に今後どういう取り組みをしようとなさるのか。それから金沢大の石崎教授がレントゲンで確認をした結果、これはイタイイタイ病であるということをここで明らかにされたことについて、厚生省はこれに対するどういう見解をお持ちになるのか。時間の関係で一まとめみたいにお尋ねをするわけですけれども、ひとつお答えを願いたい。
  55. 武藤き一郎

    武藤説明員 まず厚生省が対馬の問題につきまして非常に少ししか金額を出していないという御指摘の点でございますが、先生のおっしゃいました四、五十万の問題は、私どもが今回行なうにつきましてサンプリングをとる費用でございまして、今回のサンプリングだけの費用としてばそれで十分足る、かように思います。ただほかに、たとえば分析とかあるいは学者その他の旅費その他につきましては相当額を現在見ておるわけでございまして、厚生省として調査に必要な最小限のものは惜しみなく出すという態度でございます。  それから萩野博士がレントゲンを石崎博士に見せて、これはイタイイタイ病ではないかという御判断を求めたところ、それについてそうだと言われたというようなことが新聞に報道されておりましたので、私のほうの担当官が石崎教授に確かめたところ、レントゲン写真だけを見るとあるいはイタイイタイ病の患者と類似の症状を呈しているという御判断のようでございます。ただこれは、富山におきますイタイイタイ病専門の先生方がそうだというふうに認定したわけではございませんし、個人的に石崎教授が意見を求められたときに、学者個人としてそういうふうにお話しになった、こういうことを石崎教授は言っておられます。ただ先生御承知のように、病名等の診断につきましては、すでに過去に死んだ方のレントゲンだけをもって、特に慢性病であるイタイイタイ病につきまして最終的な判断を下すということにつきましては、厚生省の中の専門家でも一応断定することはちょっと問題ではないかという意見が支配的でございます。やはり患者を診察して、総合的ないろいろの検査をやって、その上で病名を診断するということが普通の状態でございまして、昔死んだ方のレントゲンだけを見て、本人を見ないでそういう断定をすることはちょっと問題ではないか、かようなことを厚生省の専門家考えているわけでございます。したがいまして、精密検査等もなるべく早く実施いたしまして、現在十一月の十八日から二十一日までやります住民の健康診断を早く完了しまして、住民の不案を解消することに厚生省としては全力をあげたい、かように考えております。
  56. 橋本徳男

    ○橋本説明員 先ほど御説明いたしましたように、監督局といたしましては、十月にあらためて施設の改善を指示しまして、十月末までにその施設が完了いたしましたので、十一月の六日から八日にかけまして再度廃液の追跡検査をやりまして、現在分析中でございます。したがいまして、その結果を見まして、なお問題がございますれば、さらに改善をしていきたいというかまえで現在取り組んでおる次第でございます。
  57. 中村重光

    中村(重)委員 それは武藤さんのおっしゃるように萩野博士がレントゲン写真を送った、そうして金沢大学の石崎教授はそのレントゲン写真の結果、これはイタイイタイ病であるということの判断が確認された。富山のイタイイタイ病についてこの石崎教授がどういう役割を果たしたか、どの程度これに取り組んでおったかということは御承知のとおりなんです。それからこれだけではなくて、カドミウムの許容量というものが、これはもういわゆる上回っているわけですね。〇・〇二五PPM、それから若干ではあるけれども尿の検査の結果、許容量を上回っておる、こういう事実もあるわけですね。しかしあなたは精密検査を精力的にやりたいということですから、これは単に萩野博士がレントゲン写真をとって、そして石崎教授に対して判定を求めたということについて、これを断定するということについては厚生省としては異議がある。これはいろいろ意見があろうと思います。そのことだけを私は決して非難するものでありません。ありませんが、尿の検査の結果もそう出ておるのであるし、また石崎教授も相当権威者なんだからその結果はこういう形でこの断定がされておるわけです。住民が非常な不安をもっておることも事実なんだから、いままでのような取り組みではなくて、もっと積極的な取り組みをする必要がある。前回も私は申し上げましたが、四十年からやった。四十一年、四十三年とあるんだけれども、途中は抜かして全然何も検査をしなかった時期もあるわけなんだから、そういうことではだめだ。もっと必要な機械の購入をやる、あるいは予算も計上するというように関係各省もっと精力的な取り組みをやって、そして住民の不安を解消していく、同時にそうした有害になるようなカドミウムの問題等々について、こういうことが許容量を上回るようなことにならないように十分ひとつ保安設備等々についても検査もするしまた設備もやらせる、こういうことが必要であると私は申し上げておるわけです。お答えはあったんですけれども、否定的な形、そういうことがどうも答弁の中から印象づけられるのですよ。もっとこの実態に対していままでやってきたことについて反省がないのかどうか。やはり若干不足しておったということはお考えにならないのか。ないならないでよろしい。やはりもっと積極的にやる必要があるとお考えになるなら、この後のそうした取り組む姿勢をそれぞれの省から明らかにしてもらえばよろしい。
  58. 武藤き一郎

    武藤説明員 いまのイタイイタイ病患者の問題につきましては、先ほども申しましたように、単にレントゲンだけの問題につきまして、血液検査、あるいはイタイイタイ病患者としての考え方のもとにおける尿の検査というものは実施できないようなことでございまして、なお先生御指摘のように、いろいろ断定することについては問題があろうか、かように考えております。  それから過去のいろいろの厚生省でやりました態度でございますが、四十一年度につきまして精密検査をやった結果、イタイイタイ病の類似の所見は発見されなかったということと、それから米等の検査につきましても、富山の平均よりも下回っているというような実態がございましたので、四十二年度は実はやらなかったわけでございますが、さらに富山の問題その他あるいは住民の社会不安、そういったもの等からしまして、なお将来はやはりもっと積極的にやらなければいけない、かように考えております。
  59. 橋本徳男

    ○橋本説明員 保安の面からまいりましても、水質の検査とそれから保安施設、この二つの関係を関連づけて万全を期していきたいということで取り組んでまいります。
  60. 加賀山國雄

    ○加賀山説明員 一般的に鉱山排水の場合に水田の汚濁が多いわけであります。今回の場合はサツマイモの問題が出ております。これは畑地でございますから、畑地のそういった汚染がどのようにして出るか、これはいろいろ問題があると思いますけれども、その点をちょっと追及してみたいと思っております。というのは、あの近辺全体の畑地が汚染されるということになりますとどういうことになるか、つまり鉱山排水でもってかんがい排水が汚染されますけれども、畑地はそう水をかけないわけでありますから、新しい局面でございますので、われわれのほうも県とも連絡して少し詰めてみたいと思います。
  61. 中村重光

    中村(重)委員 三十三年に当時直接あなたが調査に当たられたのではないだろうと思いますので、事情はおわかりでないかもしれませんが、一度そうした農作物に対する被害が出た事実があるのです。最近もやはり農作物に対する被害はあるということをいわれておるのです。だから積極的にやっていただきたい。時間がありませんからこの程度で終わります。  次に、通産省の局長あるいは部長、どなたでもけっこうでありますが、諫早の勝川クローム工場の公害の問題、水源地がついに使用にたえなくなって新しい水源地をつくる。それから農作物に大きな被害が出た。これに対しては若干の見舞いが出ておりますけれども、もちろんこのことに対しましては、当商工委員会で現地調査をして、通産省に対しましても、あるいは福岡通産局にも、県に対しましてもそれぞれ強く対策を講ずるように要請をいたしておる。それなりに取り組みはしておられるようでございますが、補償の問題等についてははかばかしくどうも進んでいない。そういうことがやはり非常な不満という形になっておりまして、当委員会調査をいたしまして、商工委員会調査なんて何もたいしたことはないじゃないか、単に視察にすぎないんじゃないかという批判を私ども委員会が受けるということは迷惑千万、そうした公害が出るという事実、それが設備上にも問題があったということも明らかになって、また水源地が使用にたえなくなって、新しい水源地をつくったということも事実だし、井戸が使えなくなっておるということも事実なんだから、それぞれの設備を十分行なうと同時に、補償というものは当然この企業にやらせなければならないし、また保安設備のことでございますから、企業に対しましても、あとう限り長期の低利融資を行なうことによって、企業の保安設備が完全に行なわれていくということに政策を進めていかれる必要がある。その後の経過はどうなっておるのかお答えを願いたい。  それからもう一つお尋ねをいたしておきますが、同じく諫早の回りの、長崎県の北高来郡の森山村、これは採石法の問題から、強くひとつ法の不備ということでも、この際御検討願いたいということで申し上げておるわけでありますが、河川がある、その河川というのはそう大きい雨が降らなくてもはんらんをする。その河川の上流に三つも四つも採石場がある。これは届出制みたいなかっこうになっておる。ところがその採石場に土砂流出の防止設備がしていない。だから雨がちょっと強く降りますと土砂が川に流れ込む。砂防のダムがありましたから、それまではよかったのですが、砂防ダムが実はもう一ぱいになってしまった。だから河川にそのまま――河川は五分どおりから七分どおり埋まってしまう。雨が降ると河川ははんらんをして、その回り数百戸の家屋が浸水をするというたいへんな問題が起こっておる。これは私も現地に参りましたし、それから通産省としましてはこの点に関心を持たれ、通産局に指示をされて公害部長が現地調査をするというようなことで、誠意はお示しになりました。しかし現状においては必ずしもうまくいってない。これは事情をよく聞きますと、どうも書類上の手続の不備とかということで、実にこれはでたらめな事実が明らかになったということもあるわけです。  それから採石場の認可をいたします際に、これは届け出制にまたいろいろ関連して認可なんかもあるわけですね、ハッパを使うとかなんとか。市町村には全く何も相談をしない、意見を聞かない。そうして公害が起こったときだけ市町村に対していろいろと文句が出る。そうして協力をしろというようなことでやらせる。これも適当でない。この前、陸砂利の問題につきましては、法の不備を是正をするということから、御承知のとおり改正がなされましたが、採石の面についてはそのままになっておる。だから、こうした法の不備を是正をしていくという必要もあるでありましょうし、それからいま私が具体的な事実として申し上げましたようなことに対して、どのようにその後対策を講じようとしておられるか。また経過はその後どうなっておるのか。時間の関係がございますから、簡明にひとつその二点についてお答えを願いたい。
  62. 橋本徳男

    ○橋本説明員 第一点の補償の問題、融資の問題、この点につきましては、御承知のように鉱業法によりまして、その鉱山の操業というものが危害を与えたということの関係が明確になりますれば、当然賠償の責任を負うことになりますし、またそれについて円満な解決をはかるための仲介の労というものは、これも鉱業法によりまして、われわれとしても十分努力していきたいというふうに考えておるわけでございます。  それから次に融資の問題でございます。こういった問題につきましては、公害防止事業団のほうで実は低利融資の道が開かれております。ただ、これもいろいろな条件がございまして、そういう条件にはまりますれば低利融資の道を講ずるというふうなことで、将来とも必要ならばそういった道をより広げていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  63. 矢島嗣郎

    ○矢島説明員 先生御指摘の勝川クロームの諫早工場の問題につきましてお答え申し上げますが、大別いたしまして、保安施設もしくは防除施設を設置いたしまして、今後再びこういうことが起こらないように、これが第一でございます。第二は補償の問題でございますが、第一の問題につきましては、若干予定よりおくれて申しわけない次第ですが、福岡通産局の指導のもとに設備資金五百万円をつけまして、種々の設備を設置いたしたわけでございます。若干予定よりおくれましたが、本年七月二十五日に全く理想的な設備が完成したわけでございます。その施設につきましては、先般福岡通産局が現地調査をいたしまして、完成したことを確認いたしておる次第でございます。これが第一でございます。  次に補償の問題につきまして、同じく福岡通産局が長崎県及び諫早市と連絡をとりまして、その解決に努力してきたわけでございますが、その補償額につきましては、当初なかなか会社のほうも渋っておったわけですが、何回も説得いたしまして、十一月四日に通産局とそれから長崎県、諫早市――諫早市の水道移転に伴う金が一番かかっておるわけです。その補償が一番ポイントでございますが、諫早市と三者で話し合いをいたしまして、ほぼ合意のところまで達したわけであります。  なお補償につきましては、先生御指摘のように農民に対する補償があります。農民に対する補償につきましても準備を進めておりますが、これは通産局がもちろん中心になるわけですけれども、被害の程度その他はやはり長崎県あたりの農業関係専門家の意見も聞かなければならないので、長崎県のそういう県庁の農業関係の人、あるいは諫早市そのものとも協議をいたしまして、市に対する補償の問題と一緒に解決するようにいたしたいと思っております。ちょうど先生がこの問題を初めて御指摘になりましたのは昨年の九月くらいかと思います。それから一年二カ月くらいかかっておるわけでありますが、いろいろの関係すべて、今年十一月から十二月にかけて、補償も含めましてすべて解決する運びになると思っております。
  64. 中川理一郎

    ○中川説明員 採石公害の問題につきましてお答えいたします。  森山村の採石公害につきましては、中村先生から直接私に電話をいただいておりまして、たいへん恐縮でございます。本件に関しましては、河川に流入しました土砂については採石業者に対しまして土砂を除去するように指示をいたしました。この指示に基づいた採石業者の土砂の除去はすべて完了いたしております。またこれら採石業者に対しましては、すでに採石法三十二条の二に基づきまして公害防止の方法を定め、その認可を受けるべき旨を命じまして、土砂の流出を今後の問題として防止するためのコンクリート壁の設置等を行なわしめるということで、現在この認可内容に基づきましてすでに三社が防止壁を完成いたしまして、他の事業場につきましても今月中には防止壁を完成するということになっておりますので、公害の発生は防止できるものと考えております。  ただ、かんがい水その他に障害を生じたり、あるいは田畑に土砂が入ったという、ここに至りますまでの損害の問題がございます。すでに生じました損害の賠償につきましては、いま森山村と協力いたしまして両者のあっせんにつとめておるところでございます。  森山村の件はそのようなところで御報告申し上げるわけでございますけれども、御指摘のように採石法の運用について私ども十分であったかどうかということになりますと、御指摘のとおりはなはだどうも十分でなかったというケースがあるのではなかろうか。なかんずく御指摘の地元町村等との連絡というような点につきましては、今後私どもとして考えなければならない問題がずいぶんあるような気がいたします。本件もございまして、地元町村等に結果としてたいへん御迷惑をかけていることについては、今後通産局を中心とした市町村との緊密な連絡体制というものの確保につとめたいと考えておりまして、去る十月十二日付で採石公害の防止について市町村長との連絡につきましての通達を出しております。また数日前でございますが、通産局の鉱山部長会議を招集いたしました際に、特にこの地元との連絡体制につきまして採石事業場に対する共同指導監督実施要領というのを、名古屋の通産局が問題があると思われる個所の市町村と共同でつくりまして、かなり成績をあげておるという状況が報告されておりますので、この名古屋通産局方式をもう少し徹底させて、今後の採石公害防止につとめてまいりたいと思っております。いろいろ技術的な点はございますけれども、趣旨といたしましては、先生御指摘のとおりの私どもの運用上の至らなさというものは感じておりますので、御指摘の線に沿いまして鋭意努力をさせていただきたいと思います。
  65. 中村重光

    中村(重)委員 まあおっしゃるとおりだと思うのです。それから、法の運営の問題だけじゃないですね。法の不備があります。これは直さなきゃいけないですね。考えても、ずっと強い雨が降ったらはんらんする川の上流に採石場を三つも四つも認可するという、しかも土砂の防止設備というものをやらないという――はっきりしていることです。それからあなたは、土砂を業者が除去したと言うが、何というんですか、機械の名前を私は忘れたんですけれども、ただそれを貸し付けただけです。村と被害を受けた住民がやったんです。実にひどいものです。しかしまあこれはあなたのほうでそうした具体的な問題にぶつかって――これは全国的な問題で、決して私はローカル的な問題という形で申し上げているのじゃないのです。こういうことは全国的な問題として出てまいりますから、ひとつ十分慎重におやりになる必要がある。  それから、勝川の補償はほぼとおっしゃったんですが、これは一年以上になる。要求額は大体四百三十万であったかと思うのですが、大体どの程度で話が妥結する方向ですか。
  66. 矢島嗣郎

    ○矢島説明員 先ほど申し上げましたように、十一月四日、三者でもって集まりましてほぼ合意いたしたわけですが、最終的にはまだ済んでおらない段階でございますので、金額を申し上げることはちょっと控えさせていただきたいと思います。
  67. 中村重光

    中村(重)委員 それでは早急にともかく妥結するようにしてもらいたい。委員会調査に行っているんですから、そしてまた、具体的なこととして、先ほど申し上げたように御指摘を申し上げているんですから、委員会の権威にもかかわるのです。委員会調査をして無理な要求をしておるのなら話は別です。これは当然保安設備という点について通産省としての問題があったことは事実なんです、いわゆる取り締まり、監督指導の面について。しかしその後鋭意努力をされたということは認めている。ですけれども、それだけではいけない。やはり補償の問題等についての解決もおやりにならなきゃいけない。それはもうただ市だけではなくて、農民までも含めた問題の解決というものを早急にひとつやってもらいたい。時間の関係もありますから、その点はあえて通産大臣のお答えはいただきませんが、以上お聞きのとおりですから、ひとつ大臣も督励をして解決を促進していただきたいということを要請をしておきたいと思います。  次に、年末金融の問題について、これはもう対策がはっきりしていることでございましょうから、簡単にお伺いをいたします。  年末金融は、民間金融機関に対して、あるいは政府関係金融機関に対してそれぞれの措置を講じておられるようでございますが、これは昨年よりも若干上回ってはおりますものの、その額が上回ったから年末金融がこれで十分だということにはならないと私は思う。それと、民間の金融機関に対しましては、かつては買いオペであるとかいろいろなことがなされておった。それは金融規制の当時でありましたから当然でありましょう。ところが、民間金融機関に対して買いオペ等をやりました場合に、それが的確に中小企業に対して融資されておるかどうかということの捕捉がなかなかできない、そういうところで一つのワクを設けておった。しかし現状においては、そういうような措置が国のほうにおいてはなされていないから、単にこれを要請をするにとどまっておるということになろうと思うのですが、民間金融機関に対するところの中小企業向け年末融資というものが、このとおりに、いわゆる一兆二千億ということが、全国銀行協会の連合会の委員会でこれに協力をするという態度を打ち出しておるようではございますけれども、このことが事実上確保される見通しなのかどうかという点。  それから、時間の関係から続いてお尋ねをいたしておきますが、どうもこうした協力をいたしますといろいろと注文が出てくる。たとえば協調融資を求めてくる。政府関係金融機関のいわゆる代理貸し、そういうものを求めてくるとか、あるいは保証協会に対するところの保証の要求を強くやってくるとか、いろいろな注文が民間金融機関から出てくるわけでございます。民間金融機関に対して強く行政指導してもらわなければならないことは、融資をする場合に保証協会の保証ということによっていわゆる危険負担というようなものが非常に軽減をされておるという現状の中においては、出捐金というものに対してもっと積極的に協力をお求めになる必要がある。私どもも強く要求をいたしまして、出捐金に対しては課税の対象からはずす、いわゆる損金扱いにするというような制度がいま設けられておるわけでございますから、民間の金融機関は積極的にそうした出捐金に応じて、また、そうした保証は保証としてこれを求めていくというような態度がなければならないと思います。だから、これらの点に対してどのような指導をお進めになるのか、十分確保できるとお考えになっていらっしゃるのか、年末融資の額について、それらの点についてひとつ簡明にお答えを願いたいと思います。
  68. 乙竹虔三

    乙竹説明員 まず中小企業庁のサイドからお答えを申し上げます。  年末金融でございまするが、貸し付け規模におきまして千百六十五億の追加を行ないました。それに所要の財投の措置を先週完了いたしたわけであります。これで十分だとは思っておりませんけれども、しかし財政投融資の要望が年末非常に強いときに、必要最小限度と申しますか、最小限度の金額は確保し得たと思っております。  第二には、年末金融の民間サイドの一兆二千億の実行問題でございまするが、これはわれわれのほうから強く大蔵省に要請をしておる問題であります。  第三の、代理貸しと申しますか、協調融資、民間金融機関が政府金融のほうに強くなだれ込んでくるという感じでございまするが、この点につきましては極力民間の市中金融を活用する。先刻申し上げましたように、何せ政府三機関に対する年末融資もそう十分だとはわれわれ考えませんので、極力市中金融を活用するという態度を、これも大蔵当局にお願いをし、また銀行にもお願いをしておるわけであります。保証の関係でございまするが、確かに先生御指摘のように、保証を受けました民間金融機関はリスクはゼロでございまするし、これは金融業の健全な運営に保証協会ないし保険公庫は非常に役立っておるわけでございますので、極力出捐金を出してもらうというかっこうでわれわれも要請をしておるわけでございます。近時各金融機関におきましても相当な協力をしていただいておるわけでありますけれども、さらに積極的に出捐についてはお願いをしたいというふうに考えております。
  69. 中村重光

    中村(重)委員 四十二年度は八〇%の達成率でしょう。これから見ると、ことしの年末金融部門一〇〇%達成という見通しがあるのかどうかということはこの際はっきりさしておいてもらいたい。そのためにどういう要請のようなものをしておられるか。  それから、政府関係金融機関の場合の千百六十五億の措置にいたしましても、その中で財投は七百六十億でしょう。残りは自己資金、それから商工中金の商工債というものを求める。この商工債というものがどういう形で確保されるのか。中小企業者に対して商工債の引き受けをさせるということになったのではお話になりません。だからして、この七百六十億の財投というのではなくして、この財投はもっと増額していく、そして自己資金あるいは商工債に依存をするというような態度というものは、これはひとつ改めていくということでなければ、ほんとうの意味の年末金融ということにならないのではないか。  それから、昨年度の八〇%達成率、これは相当行政指導をなさったんでしょうが、そういう結果に終わった。ことしは不安なきにあらずや、こういうことでございますが、この点に対しては、大蔵省田代審議官からもひとつお答えを願いたいと思います。
  70. 田代一正

    ○田代説明員 ただいまの御質問中小企業関係で民間金融機関が一兆二千億という目標をかまえましたけれども、それについて実行はいかんという御質問だったと思います。確かにおっしゃられたとおり、四十二年度は、達成率は八一%くらいだったと思います。しかし、さらに時間を繰って先を考えますと、昭和四十一年度には大体九七%くらいという時代もあったわけであります。昨年は、確かに窓口規制その他いろんな要因が重なりまして不振に終わったのでありますが、ことしは、そういった窓口規制あるいは引き締め政策というものは一応は緩和されたかっこうになっておりますので、ことしは、客観的に申しまして、この目標を達成するということはそう困難なことではなかろうという気もしますし、また、そういうつもりで金融機関を指導してまいりたい、こういうように考えております。
  71. 乙竹虔三

    乙竹説明員 先生御指摘の、千百六十五億の内訳、財政投融資で補完いたしました残余は自己調達であります。その中で特に商工中金におきましては、商中債で負担をしなければいけない部分が相当多いわけでありますが、これにつきましては、市中の金融機関で引き受けてもらわなければいけない部分が相当ございます。現在におきましては、商中債の市中金融の引き受けは、都銀以下の市中金融機関の引き受けは三四・五%、個人が五四・九%、残余が農協、生保等でございまするので、私たちといたしましても、市中金融機関が順調にこの商中債を引き受けてくれるということが年末金融を実効あらしめるために非常に大事であるということでお願いをしておるわけでございます。
  72. 中村重光

    中村(重)委員 時間がございませんから、あらためてこの年末金融だけにしぼって、それじゃ、これは達成するということですね。そういうことで極力努力をしてもらうということです。  それから、自己資金ということにあまり依存するということは、これは従来もやってきてはおることだけれども、財投をできるだけふやしていくというような努力はなされなければならぬと私は思うのですよ。中小企業の倒産というようなものは、御承知のとおり、少しも減らないというような現状ですから、そういう点の配慮というものを十分要請をしておきたいと思います。  それから、環衛公庫の融資が、最近、申し込みから執行まで実に八十日から百日くらいかかる。これは私は、当時、自民党の大平政調会長と、わが党の当時の木村政審会長と三者でもって話し合いをした経緯も実はあるわけです。環衛公庫に対しては、店舗改造資金という新たな融資対象というものが加わる。当時三百五十億の措置をして、二十一億の繰り越しがあって、三百七十一億。その当時は貸し付け対象の拡大はなかった。ところが、店舗改造という、いわゆる融資対象の拡大がなされた。ところが、その拡大がなされたものに対する融資申し込みが殺到するという状況の中で、現在は、もうこのままの状態でいきますと、二百五十億から三百億くらいは不足するという状況にある。だからして、この環衛公庫をつくったということに対しては、環衛業者なるために、いわゆる一般のプロパー融資はやらない。環衛公庫ができたために、環衛公庫から借りなさいといって、その環衛公庫の融資は不足をする、一般の融資は受けられないということになってくると、かえってこういうものをつくって迷惑をするという結果が生じてきている。これは中小企業庁長官にお尋ねするのではない。あなたにこれをお尋ねしてもしようがない。――しようがないとは言いませんが、関係はあるわけですけれども、特に大蔵省にこの際、これは申し上げておきたいし、環衛公庫からもお見えであろうと思いますから、こういうことであっていいのかどうか。申し込みから百日も百二、三十日もたたなければ貸し付けが執行されないという状態、しかも申し込み金額が半分や三分の一でずたずた切られるということ、こういう態度であってはならぬと私は思う。だからして、これは水田大蔵大臣にもこのことについて私は申し上げたことがあるのですが、第四・四半期から持ってくる。ところが、もう第四・四半期はなくなってしまった。だからして、当然これは原資の資金の措置をしなければならないということになってくるのだが、これをどうしようと大蔵省はお考えになっておられるのか、この際ひとつはっきりお答えを願いたいと思う。これは環衛公庫の場合におきましては、設備資金という形になってまいりますから、年末融資という形はなかなかとりにくいであろう。であるならば、拡大をしたのだから、当然それだけの措置を当時の約束のとおり持ってこなければならないということになる。これは持ってこないでおることになりますと、大蔵省は、これはどうも厚生省というものは自分の直接の所管ではないからまま子いじめをしたと言われたのでは、これは迷惑であろうから、そういうことを言われないように、また、そういう制度をつくったならば、その制度は生かしていく。これはよくないと思うならば、朝令暮改と言われたって、やめるならやめるというようなことにしていかなければならない。しかし、これはつくった以上は、やはり実効あるものにしていかなければならないのでありますから、その点に対してどのようにお考えになるのか、この際はっきりお答えを願っておきたいと思う。
  73. 田代一正

    ○田代説明員 ただいまの環衛公庫の資金不足という問題でございますが、いまおっしゃったように、ことし財政投融資計画を組んだ際と、それから業務の拡張を認めたという時期にギャップがありまして、そこで、先生おっしゃったような事態になっていることはまさにそのとおりでございます。そこで、この環衛公庫についてはたして年末金融という形でもって取り上げていいかどうかということは問題であったのですが、私どもとしましては、これはあくまで設備資金でございますので、やはり三機関と同じように扱うということは当を得ない。しからば、どういうふうに取り扱うかというと、ことしの財政投融資当初の計画とその後の仕事の拡大というギャップをことし限りの特別措置として何らか考える必要があるのではないか、こういうことであります。  そこで、当面、大蔵省といたしましては、先生は全然ないとおっしゃいましたけれども、第四・四半期のワクがまだ残っておりますので、そういうことで、とりあえず、第三・四半期のほうには第四・四半期のワクを一応繰り上げるという形でもって調整いたしまして、さらにまた、第四・四半期につきましては、これは環衛公庫のことしの仕事自身が非常に見通しのつかない要因もいろいろはらんでおりますので、また第四・四半期になりまして第四・四半期の問題をケリをつけるということで臨みたい、こういう気持ちでおります。
  74. 中村重光

    中村(重)委員 環衛公庫、現在の状況を聞かしてもらいたい。
  75. 柳瀬孝吉

    ○柳瀬説明員 先生御指摘のように、今年度から環衛業に対する設備資金は、設備一般の資金につきましては環衛公庫で一元的に貸し出すというふうなことになったわけでございます。その影響が七月ごろから非常に顕著にあらわれてまいりまして、申し込みが非常に殺到をして現在まで続いてきておりまして、非常に資金に不足をいたす状況になってきておるわけでございます。第丁四半期に七十一億円を貸し出しいたしまして、それから第二・四半期に百二十一億円を貸し出しいたしまして、第二・四半期末の九月末現在におきまして、貸し付けを決定はしたけれども資金を出してないというもの、あるいは現に調査中ということで今後処理を要するものについての資金が、約百億は要するというふうな状況になっておるわけでございます。第三・四半期の資金は、資金計画によりまして百億が予定されておりますが、その百億は大体九月一ぱいまでの申し込みを処理するためで充当されてしまうというような状況になっておりまして、十月以降の申込みについては年内には貸し付けができないというふうな状況になっておるわけでございます。これは先生が先ほどおっしゃいましたような一元化の影響によりまして、三百七十一億円というワクが、実は一元化の決定された時期的な問題等もありまして、その資金の手当が一元化の問題についてはあまりされておらなかったというふうな事情もございますので、環衛公庫といたしましては、大蔵省のほうに、現在至急に資金の手当てをしていただくようにお願いをしている段階でございます。できますれば、三機関の融資の追加ワク決定のときと同時にお願いしたいということであったわけですが、いろいろな事情でむずかしい状況になっておるようでございますので、できるだけ一刻も早く手当をして環衛業者に対する融資に支障を来たさないようにしていただくように、目下大蔵省にお願いしておるところでございます。
  76. 中村重光

    中村(重)委員 参事官、いまお聞きのとおりなんだが、私の調査も大体そういうことです。第四・四半期から二十五億持ってまいりまして、おっしゃるように七十五億は残っておるのだ。ところが九月分だけでもう一ぱいだ、こういうことですね。十月分からない。そうすると、この貸し付け対象設備をふやす前ですよ、三百七十一億、三百五十億と二十一億というのは。これは政調会長と私どもその当時も話し合いをやったんだから、党間のそういう申し合わせというものもなされておったんだ。だから私どもも社会党として、自民党の政調会長と話し合いをして了解をした。当時法律を改正しないで業務方法書を改めて、資金等の問題についても了解をしておる。だから、それだけ拡大をしたのだから、当然それだけの措置はしなければならぬ。それをやっていないのだ。しかもそれが一番申し込みが殺到しているのですね。だからこのままではいけない。第四・四半期のはまだ残っているのだと言ったって、それはワクが残っておるから残っておるとおっしゃるけれども、それは形式論なんで、現実はいま環衛公庫の総務部長の答弁したとおりなんです。だから拡大しなくても不足をする。しかも最も申し込みの多いものが融資対象として拡大をされたんだから、これは持ってこなければいけない。そうしなければ環衛業者は、この公庫をつくってもらって非常に喜んだけれども、肝心の銭がないということになれば、これはかえって迷惑を受ける形になってきておる。それじゃいけない。だからどうするか、単刀直入に伺いたい。
  77. 田代一正

    ○田代説明員 非常に誤解されているのではないかと思います。何もしないということを申し上げたわけではございません。つまり環衛公庫の資金需要の動きが、ことし初めてああいうことをやりましたものですから、資金需要の動き自身が、中小の三機関を見ると同じように考えられない問題がいろいろあると思います。そこでその場その場ということになると思いますが、なるべくそれに的確に射程を合わせたところでやりたいという考え方でございます。ですから、第三・四半期にはとりあえず第四・四半期のワクを繰り上げた形で一部をやる。そうしますと、第四・四半期のワクが相当不足をいたします。それは第四・四半期に入りまして早々その対策は考えたい、こういうやり方でございます。
  78. 小峯柳多

    小峯委員長 中村君、そろそろ結論に入ってください。
  79. 中村重光

    中村(重)委員 繰り上げてきても、大体拡大をしただけの資金措置はしなければいけないのですね。だからそれをやらなければいけないのですよ。何もしないとあなたが言ったと私は言ってはいない。第四・四半期の分はまだ残っておりますとあなたがおっしゃった。確かに残っておるだろう。残っておるだろうけれども、それではどうにもならないのだから、当初あなた方のほうでも考えておったとおり、党との約束もあったとおり、当然三百七十一億にプラスして、三百億というのか五百億というのか、それは内部で詰めなければなりますまいが、それだけ持ってこなければならない。そうしなければ、現状において申し込みから貸し付け執行まで百日もかかっておる、しかも申し込み金額の半分も借りられるか借りられないという状態ではどうにもならないのだ。だからして、このままではいけないのだから、すみやかにそれを措置しなければならないのだが、その点に対してははっきりしたお答えを願いたい、こう言っているわけです。
  80. 田代一正

    ○田代説明員 私が申し上げたことを少し誤解されているのじゃないかと思いますが、結果としましては第四・四半期のワクを第三・四半期に繰り上げますと、第四・四半期のワクがなくなるわけですね。そうすると、第四・四半期にどうしなければいかぬということが当然あるわけです。そうしますと、第四・四半期に初めて三百七十一億に幾ら足すかという計算が出てくるわけでございます。だから、いまではなくて、結局最後の結着は、第四・四半期に入って、それまでのぐあいを見てやるという形になる、こういうことでございます。
  81. 中村重光

    中村(重)委員 あなたのほうは数字でばかりお答えになるから――大体常識的に考えてごらんなさい。申し込みをしてから貸し付け執行まで八十日も百日もかかるということが常識上許されますか。ところが、現実ではそういうことなんだから、それがいけないのですよ。だからして、第四・四半期にこの金が残っているのでございますからということでは答弁にならない。まず申し込み金額はその信用程度において一〇〇%貸せないかもしれない。しかし調査をやって、ぜひこれだけは貸さなければならない。やはり必要資金である。設備資金ですから、これはある程度は義務的な形にもなるのです。だからしてどうしても貸さなければならない。その融資もできるだけ早くしなければならない、こういうことになるんですよ。これが前提でなければならないですね。ところが、金はあなたがおっしゃるとおり第四・四半期の分は残っておるであろうけれでも、第一、第二、第三、第四と、こういう形にしていて、どうしてもそれにとらわれるものだから、いま申し上げるようにどうしてもおくれてくるんですよ。だから、三百七十一億貸し付け対象設備をふやしたのだから、当然もっと早くこれに対して資金措置をしておったならば、いまのような現実は起こってこない。それをしておらなかったところに、いわゆる三百七十一億というのを四で割って、そうしていまのような融資をやっておるところに、どうしても無理が出てきておる。それが、申し込みの金額だけは必要であっても貸せないとか、調査をし決定はしたけれども、実際は金がないために貸せないとか、そういう実態が起こってきておる。その実態というものに対して沿うような措置をおやりなさいと、こう言っておるわけです。あなたの言っておることはわかっておるのだけれども、私は現実を言っておる。あなたは数字の面からくるところの形式論を言っておる。それだけの違いです。だから、もう一度はっきりお答え願いたい。
  82. 田代一正

    ○田代説明員 先生のお気持ちと私の気持ちは、結果的にはそう違わないと思うのですが、私は財政当局自身のやり方の違いを申し上げているだけの話です。技術的なやり方の違いを申し上げておるわけでございます。つまり、いま積滞数が非常にたくさんある、これを何とかしなければならない、これはまさにおっしゃるとおりでございます。そのためには、いまぽかっと年間のワクをふやすという方法も一つあるでしょう。それから同時に、第四・四半期のワクを繰り上げてこの数字をふやす方法もあるでしょう。その方法として私どもはうしろの方法を考えておるということを申し上げておるわけであります。結果としては、気持ちとしては全然先生と違わない、こういうぐあいに考えておるわけであります。
  83. 中村重光

    中村(重)委員 それでは、実はココムの問題と、別にバナナ輸入の問題等々、お尋ねしたい問題がありますが、時間の関係がありますから、これをひとつあとに回していただきまして、質問を留保して一応これで終わりたいと思います。
  84. 小峯柳多

    小峯委員長 午後一時十分から再開することとし、この際休憩いたします。    午後零時三十九分休憩      ――――◇―――――    午後一時二十一分開議
  85. 小峯柳多

    小峯委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済総合計画に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑を続行いたします。中谷鉄也君。
  86. 中谷鉄也

    ○中谷委員 新全国総合開発計画第一次試案が昨月の末に発表されました。その開発計画の関連において沖繩の問題についてお尋ねいたしたい、これが私の本日の質問の第一点であります。与えられました時間が一時間足らずでございますので、時間がありましたら第二点といたしまして東南アジア開発経済協力の問題についてお尋ねをいたしたい、こういうふうに考えております。  まず最初に質問の第一点に入りたいと思いますが、沖繩の主席の選挙が行なわれまして、そうして新しく主席に選ばれました屋良主席が、私が最後の沖繩の主席でありたい、私で沖繩の戦後は終わらせたいというふうに最初の声明を発しておりますが、非常に私はある種の感動を持ちましてそのことばを受け取りました。そういう意味でお尋ねをいたしたいと思いますが、最初に総理府にお尋ねをいたします。  全国総合開発計画第一次試案の中には、御承知のとおり沖繩を含んだところの総合開発計画が策定されていない。この点について総理府としては非常に批判的であるというふうに聞いております。しからばこの委員会におきまして、沖繩を所管する総理府のこの問題についての考え方を、まず最初にお述べいただきたい。あとで長官の御意見を承りたいと思います。
  87. 加藤泰守

    ○加藤説明員 お答えいたします。沖繩の経済の振興につきまして、従来総理府といたしましてもいろいろ手を尽くしてきたわけでございますが、しかし何といいましても沖繩の経済の総合的なあるいは機能的な発展をはかりますためには、長期的な見通しを立てていかなければならないというふうにわれわれ考えておるわけでございます。ただ現在におきまして沖繩がアメリカの施政権下にありますので、その手段もいろいろ制約があるわけでございますが、しかしわれわれといたしましてはそういう方向で沖繩経済の発展をはかりたいというふうに考えているわけでございますが、その場合におきましてその発展の方向といたしましては、やはり日本経済の一環としての沖繩経済ということを当然考えざるを得ないわけで、そういう方向でそれを一つの目安として考えていきたいというふうに考えているわけでございますが、企画庁でお考えになっておられる総合開発計画が、昭和六十年を一応の目標にして立てられる、こういうお話でございます。そういうことでございますと、その時点においては当然沖繩は返還されているだろうというふうに予想されるわけでございますので、われわれといたしましてはできるだけその計画の中において沖繩の経済というものがどういう位置づけになるのかというようなこと、すなわち日本経済における沖繩の位置づけということを十分考えていただきたい、そういう気持ちを持っておるわけでございます。もちろん第一次計画において沖繩の問題が入ってないということは、これはその計画そのものの性格、法律に基づくその性格、制約というようなものもあるかと思いますが、見通しとして沖繩経済の日本経済における位置づけということは、できる限りそういう位置づけがされるならば望ましいというふうに考えておりまして、お願いをいたしているわけでございます。
  88. 中谷鉄也

    ○中谷委員 長官の御答弁をいただきます前に、若干私のほうの見解を申し上げたいと思います。  先ほど総理府のほうから答弁をいただきましたが、参事官の答弁の中に、法律的な観点からはたしてこの計画の中に沖繩を入れることができるかどうかという点についての問題はあろうけれども、という趣旨の答弁があったと思います。この場合いわゆるたくさんの法令があろうと思いますけれども、新聞で拝見をいたします限りにおいては、企画庁としては国土総合開発法がいまの沖繩に適用されておらないという問題が、長官の御説明としてあったように私は新聞で読みました。しかしよく考えてみますと、施政権が現在アメリカの側にあるということになりますと、少なくとも本土法はすべて沖繩には適用されておらないわけなんです。ですからそういうふうな状態の中において国土総合開発法が適用されておらない、及んでおらないという法律的な観点、側面から、この総合開発計画の中に沖繩を入れないということは、私は非常に問題があると思うのです。特に日本経済の中における沖繩の位置づけ、日本経済の一環としての沖繩という観点があろうかと思います。それが第一点。  私のほうから申し上げますが、第二点といたしましては、すでに閣議の中において一体化というものについてはたいへんな論争があります。社会党は真の一体化、政府のおっしゃっている一体化というのは一体化じゃないんだという見解を発表いたしておりますが、しかしすでに閣議で、たしか五日であったかと思いますけれども、二年後には本土との一体化を完成するんだという趣旨の御意見、そういうような閣議の了承になっているということも存じております。いずれにいたしましても、その二つの観点から、新全国総合開発計画の中には沖繩は入れられるべきだ。参事官から入れていただくことが望ましいという答弁がありましたが、私はそうじゃなくて入れるべきだというふうに考えます。この点についてひとつ御答弁をいただきたい。
  89. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この計画の作業が始まりましたころ、もうかれこれ一年余り前であったと記憶いたしますけれども、日本列島の未来図というようなことばなりものの考え方なりが、今日もございますが、当時からあったわけで、私は、日本列島の未来図という考え方はそれでいいけれども、沖繩について少なくともその中へ沖繩のページを残しておけ、どれだけのことが書けるかあるいは書けないか、少なくとも沖繩の座を残しておくようにということを申しました。ですから、心がまえとしては沖繩というものがやがてまたわれわれと一緒になってこの計画の中へその座を占めるということは、当然計画をしております者が実はみんな最初から意識してやっておりますので、その点は先ほど総理府からお答えのありましたこと、私実はそのとおりと考えます。  しかし実は今度の計画では、具体的に各県から県としての開発計画の考え方どもかなりこまかく聴取しているわけでございますが、具体的に問題は二つございまして、一つはこの国土開発計画は国土総合開発法の規定に従ってつくるものでございますので、純粋に法律的にどこまで正確に申し上げられますか、私専門家でございませんので、むしろ中谷委員のほうがお詳しいかと存じますが、この法律の法域に沖繩が入っておるのかおらないのかということがさだかではない。どうも入っていないのではないか。この法律の第二条の3項によりますと、「全国総合開発計画とは、国が全国の区域について作成する総合開発計画をいう。」、この「全国の区域」という中に現在の段階で沖繩が入っておるのかおらないのか、潜在主権との関係が一つございます。  その問題と、もう一つもっと現実的には沖繩の経済の現状について、私どもが内地の各県について知っておるほど沖繩については実はよく存じません。いわんや将来本土との一体化の上でどういうことを沖繩の人々が望んでおられるか、あるいは一緒になるとすれば、私どもとしてもどういうことを望むかということもまたあるわけで、相互関係が生ずると思いますが、そういうことが各県に対するほど現在具体的な問題としては緊密でもないし、十分な知識もわれわれが持っていない。私はおそらく将来一緒になりますときに、きっと要請があって、私どもも沖繩の人々と一緒にこれからの沖繩の経済総合開発をどうしたらいいか御相談にあずかるだろうと思っていますし、そうしたらぜひ全知全能を尽くしてそういうものを一緒につくっていきたいと思っているのでございますが、その段階でございません。それらの理由から、一応沖繩のページをひとつ計画の中にあけておくというような形で処理をしようか、こう思っておるわけでございます。
  90. 中谷鉄也

    ○中谷委員 ページの余白をあけておられるというお考えについては、前々から長官の御見解として承っております。あとで私指摘をいたしたいと思いますが、ページの余白をあけておかれることは非常にけっこうなんですけれども、そのような状態が続くと、書き込むことができないような沖繩の現状というものがすでに固定化してしまう。大急ぎでその余白に書き込んでいただかなければならぬのじゃないか。これは私あとで政府の別の動き方との関連において指摘をいたしますが、参事官にお尋ねをいたします。  私自身が先ほど指摘をいたしましたように、総合開発法が沖繩に適用されておらないというふうなことは、他のあらゆる本土法もそうである、これは形式的にいえばそうなるだろうと思うのです。長官が先ほど特に総合開発法のことばを御引用になりましたけれども、これは残念ながら沖繩の関係においては庶断されているといわざるを得ない。しかしそのことは必ずしも大きな問題じゃない。そうだとすると、われわれが考えている真の一体化とかいわゆる政府がお考えになっている一体化も、本土法が庶断されておるということだけが理由になるなら、あらゆる意味で一体化が進みようがないと思うのです。そういう点で、まず参事官にお答えをいただきたいのは、総合開発法が沖繩に適用できないのだというこの前提については、お互いに法律論としては認めざるを得ないところだ。そういう前提はあるけれども、総理府としては総合開発計画の中に沖繩は繰り入れらるべきだ、その要請のほうが強いのだというその見解を、あらためてひとつ明快に申し述べていただきたい。
  91. 加藤泰守

    ○加藤説明員 お答えいたします。総合開発法が沖繩に適用されないということは、現時点においては認められるところでございます。したがいまして、総合開発法に基づくいろいろなそのための手続といいますか、調査あるいは計画樹立があるいは不可能ではないかと思います。その点は企画庁と違うわけではございません。ただ私が申し上げたかったのは、われわれとして沖繩の経済発展をはかるいろいろな施策をするについて、やはり日本経済における沖繩の位置づけがどうあるのだろうかということを一応頭に置いて沖繩経済発展の施策をしなければいけないというふうに考えるわけで、そういう意味から企画庁の総合的な計画において、これは長官ただいまページをあけておかれる、こういうふうなお話でございましたが、法律そのものの体系からいうと、あるいはそういうことになるのかもしれませんが、われわれが沖繩経済の振興施策をするに必要な、そういう面から言いますと、日本経済において沖繩というのはどういう位置づけにあるだろうかということが何らかの形でやはり企画庁の立場で明確にといいますか、明確にというのはなかなかむずかしいかもしれませんけれども、何かそこを一つの位置づけをしていただければ、われわれとして施策を考えるのに非常にやりやすい、そういうふうに思うのです。
  92. 中谷鉄也

    ○中谷委員 それでは私のほうから問題を提起をいたします。長官がおっしゃっておられるのは、沖繩のために新全国総合開発計画の最後に一ページの余白を残したいということが新聞に報道されておりますが、私は沖繩経済の実情、体質、問題点の多さなどから申しますと、これは飛躍的な表現ですけれども、余白は一ページでは足りない。これはずいぶんたくさん残しておいていただかなければならないということをまず申し上げたい。ただこういう点とは一体どんな関係になるのでしょうか。要するに余白を残されておるページの中に、総合開発計画の中に沖繩が繰り入れられる時期、要するにこの一ページに沖繩が書かれる時期は一体どうなるか、いつ書かるべきかという問題を一つ提起をいたしたい。と申しますのは、これは十一月十四日の新聞の報道でありますけれども、総理は沖繩の基地について政府の態度を来春、要するに次期通常国会の終了までにはきめるという趣旨のことが大きく新聞に報道されております。要するに沖繩の基地の問題というのは、とりもなおさず沖繩経済とのかかわり合いが非常に大きいのですが、基地経済云々という問題ではなくて、基地の存在が沖繩の農業、沖繩の労働力に非常に大きな影響がある。そこで沖繩基地については国会において常にもう白熱的な論争がされ、そして佐藤総理が一貫して言われているのは、白紙だということをずっと言っておられる。ところがどうも従来から問題になるのは、核抜きなのか核つきなのかというふうな点が問題になってくるわけですね。その態度を政府は来春にはきめるのだということを総理は決意されたんだという趣旨の新聞の報道がなされておる。もしこの報道が、閣僚の一人としてそういうことはないのだとおっしゃるならともかく、沖繩問題の軍事的側面においては最大の問題であるところの基地の態様において、すでに現状がそういうふうにきまってしまう、総合開発のほうはなおページに書き込まれないということでは、沖繩問題というのはあくまで安全保障の問題、軍事的な側面だけしか政府は見ていないんじゃないかということにもなりかねないと思うのです。私のほうから申し上げたいのは、少なくとも余白に一ページが書き込まれるとするならば、こういうふうな総合開発計画というものが重要なものであり、意義のあるものであるならば――まさに意義があるものとして私は質問を申し上げておるのですけれども、まさに総合開発計画の中にこの開発計画が策定されたときに、発足するときには、少なくともその余白の一ページには沖繩が書かれるべきである、そういうふうな立場で私はお尋ねいたしますけれども、余白に沖繩が書き込まれるのはいつなのか、どんな条件のときに沖繩が書き込まれるのか、この点についてひとつ長官の御答弁をいただきたい。
  93. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは沖繩に日本政府の施政権が名実ともに完全に及ぶときということではないかと思います。つまり政治あるいは外交の上では沖繩の本土復帰について政府としては最善の努力をしておるわけでございますが、全国総合開発計画そのものは、現実の姿に立ってこれから昭和六十年までの開発を考えるのでございますから、沖繩が祖国復帰をいたしましたときには、いま御指摘になりましたような基地に非常におぶさっているような経済状態というものも変わってこなければならないでございましょうし、それはいまの事態とばかなり違った事態になるであろうというふうに考えられます。現在までは本土は財政的な援助をいろいろしておりますものの、本土と沖繩との経済交流には施政権が及ばないということから、いろいろな障害があるわけでございます。そういう障害がなくなって、現実に祖国に復帰したという段階において初めて、その後の沖繩経済がどういうふうになるであろうかという開発の計画を本土との関係において立て得るのではないだろうか、いま私どもが基地経済を前提にして考えてみましたところで、それは変わらなければならない事態でございますから、それが現実に変わり得るというふうに考えられるときからこの総合開発計画に組み込んでいく、こういうふうになるのではないかと思っております。
  94. 中谷鉄也

    ○中谷委員 基地経済の問題についてはあとでお尋ねをいたします。  そうすると、新総合開発計画というものが総合開発法の適用のある地域を前提としたところのものだということになると、なるほど長官のおっしゃる御答弁は、そういう御答弁はあり得ると私は思うのです。ただ、そうすると、私がいまからお尋ねする問題との関係はどういうことになるのでしょうか。  要するに、本土と沖繩との関係については一体化を推進をするという基本方針を政府は五日の開議で御決定になっておられます。その一体化方針というもののめどを大体三年間で終えるということをめどにしておられたということも長官御承知のとおりです。そうすると、沖繩が返還されることについては昨年の佐藤・ジョンソン会談以来総理が説明しておられるのは、両三年をめどとして沖繩が返還されるのだ。最近では何か沖繩選挙にあたりましては七十三年までにはというようなことをおっしゃっておられるようです。現地ではそういう話がありました。いずれにいたしましても、われわれは言うまでもなしに即時返還ということを要求している、それはきょうはおきます。ただ、そうすると、経済企画庁のお立場では、要するに、経済政策立案の所管庁であるところの経済企画庁のお立場において、沖繩との一体化というものも当然推進していくはずなんです。そうすると、経済政策の立案の所管庁である経済企画庁の関係においても沖繩との一体化が成立するというのは、閣議の決定によっても最大限三年後にはそれは完了するということになります。そうでございますね。総合開発計画の実際の法律の面におけるところの適用というものは、長官おっしゃるように、施政権返還があって潜在主権が顕在主権として浮かび上がってきて、開発法が完全全面適用になる、日本国憲法が全面適用になる時期だということになるけれども、一体化は三年間で完了するんだとおっしゃっているんだから、そうすると、その一体化を三年間で完了するということと経済企画庁でいわれるところの一体化というのは、この新総合開発計画との関連においては一体どういうことになるのか、こういうふうな少しややこしい質問ですけれども質問の意のあるところは理解していただけると思います。私は何べんも申し上げますけれども、沖繩を日本経済の一環として、沖繩のための、あるいは日本経済の一環として本土のためにも、沖繩を含んだところの総合開発計画がすみやかに立てられなければいけないんだという立場においてお尋ねしておるわけでありますが、こういうふうにお尋ねをしないと答弁が進まないと思いますので、本土一体化というものを三年以内に完了するんだと言っておられることとの関係はどうかというふうにお尋ねいたします。
  95. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 政府が一体化政策を進めようと考えておりますのは、私の解釈では、施政権返還という、これは法律的な事実でございますが、それがある時点で発生したときに、そのときまでに何らの準備がなく、それから突然この一体化ということが始まるのでは、非常に時間のロスも多うございますから、いまから事実問題としてそういうことを進めておこう、そして法律的な効力が発生したときには事実はちゃんともうある程度熟していっておる、こういうねらいであると思うのでございます。そういう意味では、経済面におきましても財政面におきましても、私どもやはり常時そういう努力を一体化の一部としてすべきであると言われますことは、私もそのとおりと思います。ただ全国総合開発計画との関係で申しますと、これはきょうあすの問題というよりも、十何年先までも見通した問題でございますので、私どもは沖繩がいわゆる基地経済から脱却する日が遠くないとは思っておりますものの、どういう形でそれが脱却していくのかということは、実は法律的な問題が解決いたしませんと予測がいたしにくいということでございます。そういたしますと、もうこれで基地経済というものはこれから直っていくんだということが確かになってまいりませんと、昭和六十年までのビジョンをかくということがやはりむずかしいのではないだろうか、その時点でひとつ計画に組み入れようではないか、もちろん一体化を目ざしての財政経済上の施策は常時やってまいりますけれども、将来の青写真をかきますためには、法律的な面での解決がはっきりしてくるという時期を待つのがいいのではないか、こう思っておるわけでございます。
  96. 中谷鉄也

    ○中谷委員 次に私は、いまの御答弁について次のようなことをお尋ねいたしたいと思います。  そういたしますと、歩なくとも経済企画庁としてお考えになっておられる一体化、すなわち本日私がお尋ねをしております新全国総合開発計画との関連において沖繩が繰り入れられるための諸準備ということは、当面どのような点に力点を置いて経済企画庁としては一体化努力をされるのか、この点についてはいかがでしょうか。
  97. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 沖繩が祖国に復帰をするという段階では、いまのような過大な基地経済への依存ということは当然改められなければならないと考えられますので、したがって、沖繩自身の一次、二次、三次産業をどのようにしてつくり上げていくのか、また沖繩の財政をどうやっていくのか、それから沖繩の経済と本土との交流をどのようにすべきかというようなことは、決していまから想像してできない種類のことではございませんので、そこで各省がしばしば現地に参りましていろいろ話を聞いたり、またこちら側のアドバイスもしておるようでございます。経済企画庁もやはりその一つとしてそういう現地との話あるいは現地に行った人々の見方などを総合しながら、さあ沖繩が帰ってきたというときにはこの総合開発計画にどのようにそれを組み込むかということは、頭の中ではやはりだんだんに考えていっておる、実際に私はきておると思うのでございますが、そういうことであろう。それを紙に善いてこの計画に組み込みますためには、なお私どもの立場から沖繩の人々にやや長期的にこうしたらいいんではないかとアドバイスをしたい点もおそらくございますので、それをしながら意見の交換をして、その段階で開発計画に組み込んでいきたい、こう思っております。
  98. 中谷鉄也

    ○中谷委員 そこで、二つお尋ねをいたします。  一つは、経済企画庁としては、そのような沖繩の位置づけを準備さ細るというふうな趣旨を含めて、係官を沖繩に派遣される計画があるということを伺っております。下海辺さんが行かれるということを新聞の報道で私は知うましたが、そういうふうな計画があるのかどうか。もしあるとすれば、どの点に力点を置いて御調査になるのか、この点が一点。これは事実問題であろうかと思います。  第二点は、私がお尋ねをしたいと思っていた点ですが、長官のお話の中に、現在の実情、現在の御認識の上においてでも沖繩の経済のあり方についてアドバイスしたい点あるいはできる点があるというふうな趣旨の御答弁があったと思います。したがいまして、冒頭長官のお話は、沖繩についての現状認識については、経済企画庁としてはさらに一歩、二歩前進すべきであるというふうな御答弁もあったのですが、現状において沖繩経済のあり方、特に経済企画庁のお立場から見た沖繩経済の問題点について、ひとつ私はこの機会に御見解を承りたいと思うわけです。  あと、特に長官のほうから何回かにわたって基地経済からの脱却ということを強調と申しますか、御答弁ことばに出てまいりましたが、要するに、現地の選挙戦のエキサイトした状態の中には、両者の主張が非常に極端に分かれまして、ある立場の人は何か基地経済がいいんだというふうなことも言って、もう少し責任のある人は、基地経済にいつまでも依存しないんだということは、私たちが応援した候補者の相手の候補者の方も盛んに言われたと私は記憶しておるのですけれども、基地経済からの脱却というのは、どんな立場をとるにしろ、私は沖繩のために大事であると思うのです。そういう点からも、ひとつそれを含めて御答弁をいただきたいと思います。
  99. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 沖繩へは、すでに私どものほうの審議官が一度行ってまいりまして、ただいまお話しの点は、沖繩側から地域開発の専門家をよこしてくれないかという申し出があるそうでございます。この点、私ども、一番すぐれた人間をひとつ現地に出しまして、そして親切にアドバイスもし、また向こうの話も聞いてこさせたいと考えております。人選につきましてはまだきめておりませんけれども、そういう心がまえでございます。  想像いたしますと、おそらく基地に相当依存している経済というものは不当に三次産業が大きいのではないか。それから、あまり二次産業は発達せずに、一次産業は、昔の沖繩よりさらに基地があるだけ悪い状況でございましょうから、あまり効率的な一次産業ではないというようなふうに思われるので、基地がなくなった場合に、沖繩だけで自立できる経済ができそうには、私、想像いたしません。財政的にも、他の県に対するよりもより多くの財政援助をしなければ当分いけないのではないかというふうに考えております。  なお、今度の主席公選の選挙につきましては、私は不幸にして現地に参りませんでしたが、およそ外国の軍事支出によって暮らしていくことのほうが暮らしやすいんだというようなものの考え方は、私の全くとらないところであります。
  100. 中谷鉄也

    ○中谷委員 そこで、次に、この機会に総理府にお尋ねをいたしたいと思うわけです。  いま長官のほうからお話がありまして、いわゆる援助の問題についての御答弁がありました。援助ということばは、私、それ自体が非常に残念なことばでありまするけれども、やむを得ないわけなんですが、昭和四十一年にはアメリカ側の提案が九月の二十日、昭和四十二年にはアメリカ側の提案が十月の十八日というふうなことで、その後それを受けて日本側の提案がありまして、それぞれ決定をいたしております。  そこで、昭和四十四年度、今回のいわゆる援助額の決定のあり方についてまず総理府の見解を承りたいのですが、これは、十月の十日以前に松岡主席のほうから三百億円というふうな話があったところまでで話が中断をいたしております。その後主席がかわることになる。そうすると、援助額については新しい主席の新しい構想――県民の教育、福祉、これを重点にするというふうなことをすでに発表しているようでありますけれども、そのような新しい主席の新しい構想に基づいて本土政府とさらに折衝する。また、総理にもお会いしなければいけないでしょう。総理はどなたになるかわかりませんが、きまり次第お会いしなければいかぬ。あるいは長官にもお会いしなければいかぬというふうな中で決定をされるのだというふうにお伺いしてよろしいのかどうか、この点いかがでございましょうか。
  101. 加藤泰守

    ○加藤説明員 お答えいたします。確かに四十年度予算、四十一年度予算には、九月十六日とか二十日ごろにアメリカ側の提案がございました。また四十二年度予算におきましては、十月十八日にアメリカ側の提案があったわけでございます。昨年度においては、非公式ではありますが、十月の四日に提案がございましたが、結局、日米協議委員会は一回で済んだわけでございます。そういうことで、いままでの慣例としては――慣例と言っていいかどうかわかりませんが、大体九月から十月ごろアメリカ側の提案があるのが例だ、こう言えるかもしれません。  ただ、御承知のように今回は主席が公選の第一回目の選挙ということで、いままでの間接選挙の主席とは質的に非常に違う公選の主席ということでございますので、やはり新主席の意向が十分反映されてくるのが当然であろうというふうに考えるわけでありますが、そういうような事情があってではないかと私思うのですが、アメリカ側も正式に提案をする段階に至らないということで、十月の二十五日に開かれました日米協議委員会におきましては、アメリカ側は、大体来年度はこういうことを考えているという抽象的な重点事項についての説明にとどまったわけでございます。そういう事情でございますので、屋良新主席の御意見が今度のアメリカ側の提案に反映する時間的な経過があった後に提案されてくるのではないか、そういうふうに私考えております。
  102. 中谷鉄也

    ○中谷委員 長官にお尋ねをいたします。  要するに基地に依存しない産業の育成というのが、沖繩経済の最大の課題だろうと私は思うのですが、実は十月の十六日に琉球商工会議所内で会合が開かれたようであります。名前は新長期経済計画策定委員会という名前でありますが、その会合の詳細は全くよくわからないのですけれども、経済成長をどう伸ばしていくのかというふうな問題、それから沖繩の産業構造の方向を検討することについての問題などが出た中で、要するに沖繩の特殊性を最大限に生かして復帰後も県並みプラスアルファ、要するにこれは援助、沖繩県については特別な取り扱いをされたいという趣旨だろうと思うのですが、そういうふうな意見が出ております。この点については先ほど長官の御答弁の中に私は若干触れていただいたと思うのですけれども、要するに私がこの新長期経済計画策定委員会というものを、きわめて簡単な新聞の報道でありまするけれども、拝見をした限りにおいての率直な感想を述べさせていただきますならば、なお現在琉球政府、沖繩財界等においては長期経済計画という明確なものを策定するということについての意欲と能力と、それから作業が進んでいないということを、これは沖繩のためにも私率直に申し上げていいのではないかと思うのです。そういう点からひとつぜひとも私はあらためて要望いたしたいのは、経済企画庁が現在持っておられるところの立案、政策策定能力を沖繩のために、本土一体化、いい意味での本土一体化のために、先ほど御答弁がありましたけれども、それらの能力を沖繩のために発揮していただくということをひとつ要望をいたしたいと思います。  同時に、いま一つ基本的な問題について御見解を承りたいと思うのです。  基地経済からの脱却ということが沖繩経済の最大の課題であるということについては、ほとんど見解の相違がないと思うのです。要するに基地に依存しない産業を育成するということが、沖繩経済の発展のために一番大事だということも、おそらく認識の相違がないと思うのです。ただ、そうだとすると、先ほど質問の最初のころに私お尋ねをいたしましたけれども、来春には政府が沖繩の基地のあり方について決意をするんだ、きめるんだというその基地のあり方というのが、たとえば核つき基地だということで基地を固定化する、これはとりもなおさず軍事基地の強化ということに私つながってくると思うのですが、基地経済に依存しないということは、何もイコール長官の御立場では基地がなくなることではないということは私わかりますが、核基地というふうなことの方向に今後沖繩の基地が向かっていくというふうなことは、基地に依存しない沖繩経済という立場からいっては好ましくない。いわゆる経済的な観点からも好ましくない。単に日本の防衛とか安全保障の問題のみならず、非核三原則を守り抜くという立場以外に好ましくないと私考えますが、いかがでありましょうか。
  103. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 核基地であろうと核のない基地であろうと、およそ外国の軍事支出へたよって生きていこうというような経済は、よくない経済であります。
  104. 中谷鉄也

    ○中谷委員 そうすると、じゃ念のためにお尋ねいたします。沖繩のあるべき経済の姿というのは、基地あるいは軍事援助、要するに軍からのおこぼれ、そういうふうなものによってまかなわれるような経済であってはならない。要するに産業構成からいいますと、消費経済といいますか、第三次産業のウエートが非常に大きいような基地のあり方ではいけない、こういうふうに長官おっしゃっていただいておるように私は思うのです。そのことは一歩進めて、じゃ、どういうことになるんでしょうか。たとえば第三次産業にウエートがかかり過ぎてはいけないということは、逆に言いますと、第一次産業というようなものが発展しなければならない、しかし沖繩本島中部地区等においては、中部地区の三〇%以上が軍事基地によって占有されている、これでは農業の発展のさしようがありませんというのが沖繩の農民の偽らざる声なんです。そういたしますと、基地に依存しない経済というのは基地の縮小――撤去とまではいわなくても、縮小ということの中において、基地経済からの脱却というものがはからるべきではないか、こういうふうに私は思いますが、長官はその点はどういうふうにお考えになっているのでしょうか。
  105. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 基地があって、そのおこぼれや余恵でもってめしを食うという食い方もあると思います。それも一つの経済だといえば経済でございますけれども、私ども考えております永続的な経済的な繁栄というのは、自分の力で経済をつくり上げるということであって、それは練兵場や基地の中ではとてもできそうに私は思いません。
  106. 中谷鉄也

    ○中谷委員 この問題については、さらにお尋ねをいたしたい点がございますが、私に与えられた時間があと七分ばかりでございますので、別の質問を一点だけいたしまして終わりたいと思います。  私がお尋ねをいたしたいのは、次のようなことです。これはまとめて申し上げます。東南アジア開発あるいは東南アジアに対する海外協力というふうな点についての具体的な問題については、お尋ねする時間がありませんが、二点だけ私はお尋ねをいたしたいと思うのです。と申しますのは、先月十日ばかり南ベトナムを中心にベトナムの隣接国であるラオスそれからタイ、このあたりを私自身調査してまいりましたが、その調査をいたしました中で、ベトナム、ラオス、タイでジェトロの人たち、公館の人たちあるいは商社の人たちにいろいろな意見を伺いました。非常に使命感に燃えてお仕事をしておられるということをはだで感じてまいりましたが、次のような点はひとつ私は反省として持たなければならないのではなかろうか、今後の日本と東南アジア、特にベトナム周辺国というよりはベトナム隣接国に対処する態度として、私は持たなければならないのではなかろうかということを感じました。と申しますのは、北爆停止の報道がありましてあと、直ちに日本の新聞が財界の意向として反応いたしましたのは、いわゆる北爆停止のショックというのは少ないんだ、ベトナム特需がかりに減少しても復興特需はあるんだということを盛んに言われる。和平ショックというふうなことばも流れたと私は思うんです。そこで私はそういうふうなことばの中から、どうも何か経済的な観点からだけ、いわゆるベトナム問題というものを財界の人が見ているのではないかというふうな一種の感想を持ちました。たまたまそういうふうな感想を持っておりますと、森恭三さんが朝日新聞に「日本の「ベトナム以後」」というところのレポートをお書きになりました。そのレポートの一節を、朝日新聞の論説ですけれども引用いたしたいと思いますけれども、要するに「日本人は経済的動物といわれる。私は経済的動物であることを大いに結構だと思う。」前段を省略いたしておりますので、そういうふうなことを言われて、ただこういうふうに言っておられるのです。しかし一般にということばが、財界の人たちが言っているんだという意味のことが入るんだろうと思いますが、「しかし「ベトナム以後」論のように、過去への反省もなく、ただあたらしい利益をめざし、バスに乗遅れまいとあせる姿を、経済的動物という言葉をもって、さげすんでいるのだとすれば、あまんじてこの非難をうけねばなるまい。」こういうことを指摘をしておられます。森恭三さんのお話は、北爆というものについて日本政府が断固として反対すべきであったであろう、そういうふうな前提がこの論説の前提に私はあったと思うのですけれども、今後のベトナム和平実現後におけるところの日本の東南アジアに対する経済協力その他のかかわりあいというのは、とにかくお金もうけをしたらいいんだというだけでないところの、そういう立場が必要なんだ、そういうふうな森さんが言っているような経済的動物といわれるような立場ではいけないんだということ。非常にまとまらない質問が最後になりましたけれども、この点はひとつ長官の御答弁をいただきたい。  いま一つ。私自身のベトナム隣接国を回ってきて整理しきれない印象の中でお尋ねをして恐縮でありますけれども、いま一つお尋ねをしたいのは、財界の人が打てば響くように、いわゆる北爆停止のあとで発言をしたのは、復興特需は少なくならないだろうということだったと思うのです。いま一つ、一部で非常に強調されておるのは、ベトナム復興について海外経済あるいは海外援助というものを大々的にやろうじゃないかという考え方が一つあります。  そこで私は、そのような考え方についての前提として長官はどのようにお考えになるかをお尋ねいたしたいのです。というのは、少なくとも今後南ベトナムに対する経済援助をする、あるいは開発協力をしていくということを言っておられる。ただしかし、和平後に実現する、つくられるであろうところの南ベトナムの政権というのは、少なくとも現在の大統領が政権を握っているような性格の政権にはならないだろう。それが連合政権であるかどうかは別として、少なくとも解放戦線というのが相当リーダーシップを握ったような政権になるだろう。しかしそれは南ベトナムの人たちがきめることで、そのような政権がどのようなものであるにしろ、日本としては東南アジア経済開発ということ、東南アジアに対するところの協力ということは、前提として、どのような政権であってもそういうことはするんだという前提があるのかどうか、この点についてひとつお尋ねいたしたい。
  107. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 たとえば、葬儀屋は人が死ななければもうからないわけでございますから、そういうのも一つの商売であるということは認めなければなりませんが、国の経済政策というのは、やはりそういうものではなくて、経済政策目的は国民の幸福をいかにして増進するかということであります。外部に対しては、わが国以外の外国の人々の幸福をいかにして増進するかということでございますから、ことにわが国のように戦争放棄をした国の立場として、今後もし世界に戦争の危険があるとすれば、それは経済発展のおそい、いわゆる後進地域をめぐっての先進国の角逐から生ずる危険が多いのでありますから、そういう発展途上国の生活水準を上げていくということはわが国の平和憲法の目的そのものであるというふうに考えるわけであります。東南アジアについての経済援助というものもそういう動機から出るべきものである、そういうふうに考えるべきものであると思うのであります。  それでベトナムの将来がどのようになるかということでございますけれども、かりに住民全部の自由な意思によってある政権ができたというときには、私どもは、それをその国民の政権だと考えなければならないと思います。その政権がわが国に対して内部干渉をするとか、軍事的な脅威を与える、あるいはわが国を、国民を差別待遇をするとか、そういうことがない限りは、どのような政権であっても発展途上国の国民の幸福を増進するために、われわれは最大限の努力をすべきものである、私はそう思っております。
  108. 中谷鉄也

    ○中谷委員 たいへん恐縮ですが、自治省の方に御出席をいただきまして質問が落ちましたので、一点だけお尋ねをして、長官の御答弁を伺いたい。これで終わります。  自治省にお尋ねをいたしますけれども、話がもとへ戻ってたいへん恐縮ですが、総合開発計画については自治省としては、特に各省の意見を求められた中でかなり見解が鮮明であったと思うのですが、新総合開発計画の第一次試案について、自治省の考えておられる問題点をひとつ御指摘いただきたい。  同時に、恐縮ですが、長官のほうから、そういう自治省見解に対する御答弁をいただきたい。これで私の質問を終わりたいと思います。
  109. 近藤隆之

    ○近藤説明員 自治省といたしましては、経済企画庁の第一次試案を検討いたしまして、昨日官房長名をもちまして企画庁に意見を申し上げてございます。  一つは計画というものの性格でございますけれども、御承知のように、今後国の行政をどういうふうに持っていこうかという場合に、昭和六十年に日本がこういう形になるという国土計画、それがりっぱにでき上がるということは、地方団体といたしましても当然それを基礎におきまして、各都道府県がそれぞれ昭和六十年の自分たちのあり方というものをきめて、行財政を行なっていく上の基本になると思いますので、そういう都道府県なり市町村の総合計画の基本となるようなしっかりしたものをつくってほしいという要望が基本でございます。  それから内容につきましては、この計画はいろいろデータを集めまして非常にりっばなものができておるわけでございますが、政策としてとります場合に、われわれといたしましては大都市に対する過密の抑制、それから地方分散、それをもっとはっきり打ち出す。打ち出すことによりましていろいろな政策が出てくると思いますけれども、その政策を具体的に計画の中に盛り込んでほしい。大体そういったところが基本でございます。  あとこまかい点もございますが、そういった点につきましては、今後企画庁のほうとお話し合いをしていきたいと思っております。
  110. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 まず計画が計画であるためには、関係者が十分理解し納得するものでなければならないと思いますから、そのための努力を続けていくべきだと思います。それから次に計画はつくるのが目的ではなくて、実行するのが目的でございますから、その実行手段を確保しておかなければならないと思います。その二つの条件が満たされることが必要であります。そのためには、必要な時間をこれからもかけていかなければならない、こう考えております。
  111. 中谷鉄也

    ○中谷委員 終わります。
  112. 小峯柳多

    小峯委員長 堀昌雄君。
  113. 堀昌雄

    ○堀委員 本日は、先月の委員会で企画庁長官と物価問題から予算の諸問題について論議をいたしました。そこで本年度の経済の見通しの状況と来年度経済の見通しについて最初に――これはまだ政府としてもかたい計算をしていらっしゃるかどうかわかりませんから、あまりきちりとした御答弁をいただこうとは思っておりませんけれども、大体はどのくらいのことだろうという程度のお話を実は承りたいと思っておるわけでございます。   〔委員長退席、中村(重)委員長代理着席〕  そこで本年度でございますけれども、四十三年度、当初はかなり引き締めということで国際収支の改善をはかられたわけでありますけれども、幸いにして非常に収支改善をされてまいりまして、通産省のほうでも最近では設備投資についてもやや弾力的な処置をとるというような形になってまいりまして、前年比で再び二〇%をこえるような民間設備投資も見られるようになるようでございますから、本年度の実質成長というものはおそらく一一%内外のところへくるのではないか、こんなふうに考えておるわけでありますが、これについて長官の御感触をひとつ承りたいと思います。
  114. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ほぼ堀委員の言われましたように私も感じております。
  115. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、本年度が大体一一%内外というところで終わると思うのでありますが、次が四十四年度のところで、これも予算の関係で皆さん作業をしていらっしゃることでございましょうけれども、どうも最近いろいろと、アメリカの今後の景気の見通しその他、実は来年度については経済外的要因が定まらない点が幾つかありますから、非常に来年度経済の見通しというのはまだむずかしい問題があろうかと思いますが、今日のところから判断をするということにいたしますならば、これもどうも大体ことしくらいの状態にいくのではないだろうか、これも一一%内外というようなところにいくのではないだろうかという感じがいたしてはおるわけでございます。そこは内外でございますから、それは一〇%のときもありましょうし、あるいは一二%のときもありましょうと思いますが、大体そんな感じではないかといま私は思っておるのでありますが、いかがでございましょう。
  116. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 今年は秋に補正予算を組む必要がございませんので、例年のような見通し改定をいたしておりません。そこで、政府と申しますよりは、御指摘のように私の腰だめで申し上げるわけでございますが、本年度一一%内外と言われましたのも、私概してそのとおりと申し上げましたのは、私は一〇%内外と申し上げたいのですが、一〇%内外と一一%内外はどこかでつながりますので、あえて申し上げなかった。来年度国際経済で、確かに経済外的要因、たとえばアメリカの保護主義というようなものは相当心配でございますけれども、いま見通し得る範囲でこういう悪い材料が確かにあるというようなことは具体的に指摘しなければならぬというほどのことはないと私は思います。ただ現在対米輸出が四割くらい前年対比で伸びておりますので、これは異常であろうと考えております。いずれこれは正常な点まで落ちるであろう。しかしいま考えまして、来年度の経済、特にもうはっきり指摘できる悪い要因が、物価は別といたしまして、あるとは思ってはおりませんで、やはり相当な成長をするであろうと考えております。
  117. 堀昌雄

    ○堀委員 相当な成長ということになると、あとの議論にちょっとやりにくい点がありますので、そこは私のほうも少し弾力の幅を広げまして、やはり来年度もいま長官がおっしゃったように一〇%内外というところは大体実質でなるのじゃないだろうかというくらいなら、まあそんなところだということでございましょうか。
  118. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 特に反論を申し上げる必要もないように思います。
  119. 堀昌雄

    ○堀委員 実は私いま来年度経済の見通しについて伺ったのは、あとで来年度における電電公社の事業収入に関連があるものでございますから、少しマクロの話でありますけれども、いまの私もそう感じ、宮澤さんもそういうふうに感じておられるということは、まあ大勢としてはそういうことだというふうに考えていいのではないか。日本経済がこういうたいへん調子のいい情勢を続けておることはうれしいことだと思うのであります。  そこでもう一つ、実は経済社会発展計画というのが出されておるわけでありますが、これの実質成長伸び率は大体八・二%ということになっておるわけであります。これは五年間に八・二%ということで、これは四十二、四十三、四十四、いずれもおおむね一〇%をこす。こえるかこえないか、先のほうはわかりませんが、四十二年は実質で一三、二%となっておりますから、これはだいぶ大幅にここでこえておりますし、私の感触では四十三年も一一%は大体いくのではないかということになりますと、ここもかなりこえる。あとも一〇%台が、うまく経済が運用されるならば続いていくのではないだろうかということになりますと、過小見積もりになるということになってまいろうかと思うのでありますが、少しこれはたいへん長期的になりますけれども、私この前国会から派遣をされて欧州を見てまいりまして、いろいろな情勢を勘案した結果、大体どうも向こう三、四年間というものは、政策運営に誤りがなければ、日本の成長が一〇%ぐらいを継続するのは間違いないだろう。少なくとも経済社会発展計画の最終年度である四十六年までくらいは、これは政策運営が誤りますと別でありますが、政策運営があまり瑕疵ない運営がされるならば、どうもその程度いきそうだという感じがしておるわけであります。これはいろいろ問題がありますが、前半がそうなって、後半が八・二%の平均に落ちつくようなわけにまいりませんから、これはそれでどうこうという議論ではございませんが、実は公社が四十七年度までの計画を出しておられますので、それにも多少関連がありますからお伺いをしておるわけです。大体どうも前半の一三%とか一一を込めにしても年率平均一〇%ぐらいというところが、四十六年までとしてはまあまあそういうところではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  120. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 分析することも、積み上げることもできませんが、感じとしては私もそうなるのではないだろうかというふうに感じは傾いております。
  121. 堀昌雄

    ○堀委員 そこでこの問題の中で、電電公社がことし概算要求を出しておられますが、昨年も私実は十月ごろに大蔵委員会でこの問題を取り上げさせていただきました。郵政大臣にもお越しを願って取り上げさせていただいたわけでありますが、この電電公社の予算をずっと見ております中で、私やはり問題が一つあります点は、政府関係の機関の予算という中には給与費ということで人件費が組まれておるわけでありますけれども、これは大蔵委員会でもしばしば論議をしてまいりましたが、予算ベースでなら赤字は出ない、決算ベースでは赤字が出るかもしれないという予算上の問題点があるというふうな感じがしておるわけであります。というのは政府が経済見通しをお出しになるときに、今度は、宮澤さんは、昨日でございますか、参議院の物価委員会で賃金率の上昇率も一つあの経済指標の中に入れてみたらどうだろうかというようなお話をされたようにけさの新聞で拝見をしたわけでありますが、これは私ある意味では非常に興味のある御発言だ、こう思っておりますので、ちょっと先に、そこはそういう御発言だったのだろうということを長官に伺ってから前に進みたいと思います。
  122. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それはちょっと違いまして、長期にわたっての物価上昇をやはり政府は長期計画で考えるべきではないかというお尋ねがございまして、私は、それは必要なことだと思いますけれども、その場合には賃金の上昇というものを長期的にどう見るかという要因をはずしてはなかなかそのことはできにくい、そういうことを実は申し上げたのでございます。したがって、単年度の経済見通しについて申したのではなくて、いわゆる長期計画について申したのでございます。
  123. 堀昌雄

    ○堀委員 私の新聞で拝見した読み方がまずかったのかもわかりませんが、そこで話をもとに戻しまして、政府の見通しで個人消費が大体どのくらい伸びる、物価はどのくらい伸びる、こういうことが出てまいりますれば、当然としてその翌年度におけるおおむねマクロでの全体の賃金の伸び率というものは予測がされるものだと私は考えております。その予測に立って、実は本年は国家公務員につきましては御承知のように、金額はさだかではありませんけれども、それにかなり見合う分として予備費に公務員のベースアップ分は組まれておったというふうに理解をしておるわけでありますが、実は三公社五現業については、これまではその給与費目の中にはベースアップ分が組まれていない。特に、私昨年の大蔵委員会で確かめましたときには、それは一円も組んでないという答弁をいただいておるわけですね。ですから私は、ことしはもし電電公社が要求しておられるところの損益勘定で多少黒字が出たとしても、いまのベースアップ分の引き当てをすると決算上赤字になるかもしれない、こういうような御説明を実はいただいておる。私は予算、決算上の取り扱いとして非常に複雑な仕組みだという感じがしてならないわけでございます。そこで、これはまあ大蔵当局からもあとでお伺いをいたしますが、私は予算だとか決算だとかいろんなものは、民主主義の世の中でありますから、常識的に国民が見たり聞いたりして、ああなるほどそうだなということになっておるのが民主主義の世の中の仕組みではないのか、何か特定の者が特定の意識を持って見たときにしかわからないような予算や決算が行なわれるなどということは、これは経済原則上の考えから見てもどうも筋が通らない。そうして片方に国家公務員のほうでそういうものが予備費というかっこうで年初にある程度計上されておるというときに、片方の同じような公務員である三公社五現業の職員は一円も組まないというようなことは、これは私はいかがなものであろうかという感じがしてならないのでありますが、これはそういう政治的な角度から企画庁長官はどんなふうにお感じになるでしょう。
  124. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 移用であるとか流用であるとか予備費であるとか弾力条項であるとか、いろいろ方法はあるわけでございましょうが、給与改定の、いわゆる三公社五現業の仲裁裁定というようなことが最近のように事実上毎年あるということでございますと、やはりそれに対処すべき何かの措置があるのが本来ならば筋であろう、第三者的な立場からはそう思いますが、これにつきましては、しかしおそらく財政当局にもいろいろ理由なり説明のあることであろうと思いますので、政府としての答弁は財政当局にお尋ねをいただきたいと思います。
  125. 堀昌雄

    ○堀委員 財政当局には最後に伺いますが、次に郵政大臣、いまの問題でございますね、これは郵政省も同じ現業部門でございますから、当初予算の中にはベースアップ原資は組まれていないと思うのです。来年度、これからおやりになるのだろうと思いますが、しかし来年度の物価上昇は大体やはり五%から六%の間にくるんじゃないだろうか、五%を割ることはどうも来年度はむずかしいんじゃないだろうかという現状からしますならば、過去の傾向から見てもやはり一応かなりのベースアップというものが来年の四月、五月段階に行なわれざるを得ない、これは金額は別でございますよ、こう考えておるのでありますが、郵政大臣はどういうふうにお考えでございましょうか。
  126. 小林武治

    ○小林国務大臣 ベースアップ等がないというふうな予見は、これはいたしかねると思います。
  127. 堀昌雄

    ○堀委員 ところが私が前段で申し上げましたように、予算上にはその部分として見合うものは組まれていないというふうに、昨年私は大蔵委員会承知をいたしておるわけでありますが、さようでございましょうか。
  128. 小林武治

    ○小林国務大臣 さようでございます。
  129. 堀昌雄

    ○堀委員 これは当事者である郵政大臣としては、やはり私がいま申し上げましたように、他の国家公務員が予備費に組まれておるということであるならば、どっかのものを削ってきて流用するということよりも――それを削って何百億かを流用するということは、当初の削られる側の予算が不正確であるということの私は裏返しになるのじゃないかと思うのです。もし当初の各項目の予算がきわめて適切な額になっておるならば削れないわけでありますから、削れなければ、それはその他のところにちゃんとそれが置いてあって、それが私は国民の判断を待つ予算でなければならない、こんなふうに思うのですが、郵政大臣いかがなもんでしょうか。
  130. 小林武治

    ○小林国務大臣 要するに、あとで仲裁裁定が出れば、節約をやるか、予備費を使うか、あるいは収入増による弾力条項によるかとか、こういう方法でやっておりますが、いままでのところは節約による部分はわりあい少ない。これはあまり言いわけにはなりませんが、厳密にいえば堀委員のおっしゃるような、どうせ節約を多少でもするだろう、その部分は不正確じゃないか、こういうそしりは免れないと思いまするが、いままでは公社等はいまのような弾力条項みたいなものによって多くはまかなわれている、こういうふうなこともあるし、それからベースアップのもとは、これは人事院勧告でなくて仲裁裁定による、こういうふうなサイドもある、こういうふうなことでございます。しかし私は、できればおっしゃられるようなこともいいと思いますが、そうすると、すぐにまたそれは幾ら入るんだといろいろな余分な議論が出る。必ずこの中に幾ら入るかということで皆さんもお調べになるであろうし、これは全く予見のできない――大体予見のできないものをある程度組む。これは昨年も一般会計で組みましたが、それでは幾ら入っておるかということになると、政府もお答えしませんし、そういうふうな事情がありまするから、またある程度そういうものによって先入視というふうなものもお互いの間に出てきやせぬか、こういうふうなこともあって、私は必ずしも組むことがきわめて適切であるというふうには思いません。ことしの予算にはそれはは入っておりませんが、しかし、これは検討問題であることは事実であろう、こういうふうに思います。
  131. 堀昌雄

    ○堀委員 確かに幾らそこに組むということになると、議論が次に出てくることは大臣おっしゃるとおりです。ただ私は、今度の政府、国の予算の問題のときに、この中に幾ら組まれておるかということを実は予算委員会で聞かなかったわけです。聞くのは実はまずいわけです。聞かない。聞かないということは、要するに組んである。組んであるということで、幾ら使うかはその情勢に応じてというのが予備費の性格でありますから、予備費の中に幾らのものが組んであるというのは、これは答弁したら答弁したほうがいまの財政法からいうとおかしい。当然そういう使途がちゃんと予見されておるものなら、その項目に組めばいいのです。使途が予見されないから予備費に組んであるという議論ですから、私は尋ねないでいるわけです。いまの議論はそれと同じことです。給与費に組むということなら、これはたいへん議論が出てくる問題だと思う。そうすると、その組んだ根拠は何か、こういうふうなことになりますよ。これは予備費に幾らか積んである限りは、それは何も給与費だけに使うと限っておるわけじゃありませんから、予備費ですから、予見せざる経費に充てるために積んであるわけですから、その限りにおいてはいま大臣がおっしゃったように、そこで議論額出てくる、金額の問題で議論が出てくる余地は、予備費に組む限りは私はないのじゃないか、こう思っております。そうすると、予算執行上は予備費がこう大きくなっておれば、その他を正確にきちんと予算査定をして、そして予備費のところにアローアンスがあるから、そういう予見されざるものは予備費からもっていく、ということになるのが予算の筋であって、予算というものは予備費を小さくしておいて――私に言わしたら、予見されざるなんということはなくて、二百億を下回るという、これは電電公社の場合ですが、各公社五現業ともに、来年度のベースアップが大体六%になればどのくらい――大まかな、何百億台とか何十億台といったことは予見されておるのです。実は、されておるけれども議論を詰めると複雑だからということで、私はある程度予備費に組んでおいて、あまり無理のないかっこうでできるだけ、それは私もそれで全部組めというんじゃないですから、どこかで最終的に調整しなければならぬかもしれませんが、その調整の幅が狭くなることが各項目が正確に予算として執行されることになるんじゃないか、それが望ましい予算だろうというのが私の予算に対するものの考え方なんです。予算というものは本来はそういうものだと思うのです。そこに政策的配慮が入るものだからこういうことが起こるのですから、それはある程度やむを得ないと思いますが、そういう点では大臣はあまり御賛成でなかったようですが、私の申し上げている意味ではあまり御反対じゃないでしょう。どうですか。
  132. 小林武治

    ○小林国務大臣 その御趣旨はよくわかります。私も、そういうようなことは従来どうだったからということではなくて、やはりこれから政府部内でも検討すべき問題だ、こういうふうに思います。
  133. 堀昌雄

    ○堀委員 それでは今度は財政当局側の見解を聞きますが、財政当局に先に聞きたいのは、私がいま最後に言った予算各項目の査定という問題については、あなた方が責任があるのでしょうね、どうですか。
  134. 海堀洋平

    海堀説明員 いま御質問のは電電公社の場合でございますけれども、いま三公社五現業というものが同じ労働関係法律で律せられておりますが、予算的には、そのうちの三公社の予算と五現業の予算はやや違う扱いになっておりまして、三公社につきましては主務大臣が大蔵大臣と協議をして、その主務大臣が閣議に予算を提出するということになっております。それから五現業の予算につきましては、大蔵大臣が所管大臣からの概算要求を自分の意見でそれを調整いたしまして閣議に提出するということになっておりまして、五現業と三公社の予算上の取り扱いの上におきます大蔵省の立場というものには多少の差異がございます。
  135. 堀昌雄

    ○堀委員 そうしたら、いまの議論は公社じゃなくて現業でいきましょう。そうすると、五現業に関する限りは各項目についての査定は大蔵大臣がしたわけだから、その最終責任は大蔵大臣にある、こういうことになりますね。
  136. 海堀洋平

    海堀説明員 大蔵原案を閣議に提出するその原案につきましては大蔵省に責任がございますが、あくまで予算は内閣において決定いたしておりますので、これは内閣を構成する総体の責任において予算を決定しておるのだと思います。
  137. 堀昌雄

    ○堀委員 その大蔵原案については大蔵省が責任がある。そこで大蔵省は査定をしてこうきちんとワクを出して――しかしいま郵政の場合だって現業ですから、郵政は一体ベースアップでことし幾らだったんですか。ちょっと、私は郵政は調べてないのですが、言ってください。ベースアップ分。
  138. 海堀洋平

    海堀説明員 今年度の仲裁裁定につきまして、郵政省が仲裁裁定の実施に要しました額というのは、二百十五億五千二百万円でございます。
  139. 堀昌雄

    ○堀委員 いまのように二百十五億という当初予算に計上されていなかったものが、実は郵政の場合には出てきた。しかし郵政も現業でありますから、もちろん国だって歳入歳出自然増収も出てくるわけだから、必ずしもその歳入部分がきっちりきまっているというわけではありませんししますけれども、郵政の場合にこれまでの収入見込みの対決算の差というものは、どのくらいあるのですか。
  140. 海堀洋平

    海堀説明員 堀先生、これは郵政事業で議論しますと非常に複雑になりますのは、御存じのように郵政事業といいますものは、郵政事業特別会計のプロパーの損益でやっておりますのは郵便事業と貯金事業のうちの振替、為林関係の業務、これが自前の要するに損益でやっておりまして、他は――他と申しますのは郵便貯金業務、簡易保険業務、電信電話公社から委託された業務というものは他の会計からの委託された業務でございます。したがいまして、収入という場合におきまして、いわゆるプロパーの収入のほうは収入のほうから出てくるわけですが、委託業務のほうはむしろ経費のほうから出てまいりまして収入が出てくるという形になりますので、郵政事業の会計を取り上げていまの議論をすると非常に複雑になるものでございますから、ほかの例にしていただいたほうが好都合かと存じます。
  141. 堀昌雄

    ○堀委員 まあ担当者がいないところのやつをやってもまずいですから、いいです。確かにいまの例はちょっと適切ではないと思いますが、ただ私はいまの問題、郵政はこまかく調べていませんから議論がしにくいのですけれども考え方としては郵政事業プロパーの問題に見合う二百十五億の内部の内訳があると思うのです。そこで議論をすればいいんだけれども非常に複雑になるからおきますが、要するにものの考え方としては、二百十五億というものの全部を予備費にしろと私は言っているのではないわけです。少なくともその中で予備費にできる部分がふえればふえるほど、その他項目を予算執行の額から動かさなくて済む部分が相対的に小さくなる。そのことが予算上としては、適切な予算執行をやってもらおうということになるのにはマッチするのではないかというのが大体私の理論構成です。大蔵省としても予算を査定した以上、査定をしたものについては一応それは大蔵省原案、閣議というけれども、これはもう大蔵省原案を閣議でねじ曲げるのは政策費の問題であって、こんなところはあまりねじ曲がりっこないわけだ。具体的な問題についてはねじ曲がりっこないわけですから、そういうように大蔵省が査定をしたものを査定どおりにやらせるようにするためには、こういうような部分をある程度予備費に組むことが、私は予算の姿として、財政上の問題としてはクリアーになるのではないか、こういうことなんですが、そこはどうでしょうか。
  142. 海堀洋平

    海堀説明員 いまの電電公社の場合に例をとらしていただきたいと存じます。いずれにしましても大蔵大臣が意見で調整いたすものでございますから、例を電電公社にとらしていただきますと、電電公社の仲裁裁定の去年の所要額というものは、一応自体のほうで、要するに公社自身で要しました金額が百八十五億八千二百万、それからほかに郵政事業特別会計に委託している業務に従事する職員のために郵政事業のほうに繰り入れ増となりました金額が三十三億九千百万円ということになっております。したがいまして、約二百二十億円程度の額が全体として要ったわけでございます。先生のおっしゃいますように予備費をある程度増額をして、そういう事態が考えられるのだから、対処するようにつとめることは決してそれ自身好ましくないということではないのでございますが、四十二年度の予備費額というのは、実は電電公社六十五億円でございます。それをある程度、いま言いましたような二百二十億円というふうな所要額をめどに急激に予備費をふやすというふうなことになりますと、国会では一体どういうふうなベースアップを想定して、どういう措置をとったのだという論議に必ずなってくるんじゃなかろうか。したがって、そういうふうなつもりは私たちも持ちながら徐々に、去年でいいますと、わずかでございますが、各大きな現業につきましては予備費の増額を少しずつはばかっておる。ただ、たとえば一般会計予算が七百億円の予備費を千二百億円にした場合に非常に国会で論議をまきましたように、もしほんとうにそれに対処するような増額のしかたをした場合には、必ず一体幾らを予定しているんだ、これで押えつけるつもりか、あるいはそれによって一つの指標を与えるつもりかとかいう賃金論争に入るおそれがありますので、現在の三公社を律している労働法規のたてまえからしますと、当事者間の交渉によって賃金がきまる。きまっておれば、それは当然予算に反映しておるはずでございますが、ちょうど予算の編成期というのは、大体各労組が使用者側に対しまして賃金要求を出して一回の説明をしたくらいの段階で予算編成が行なわれるという形になりますので、それを組み込むということが事実上できかねているということでございます。それから、にもかかわらず、最近仲裁裁定は完全実施をされている、非常に経費はずさんではないかというお話でございますが、これを電電公社の例にとらしていただきますと、大体収入の規模が、ことしの予算で申しますと七千七百二十億程度というものでございます。そうしますと、大体いままでの例で見ますと、収入見積もりにつきましてもできるだけ正確を期したいということでございますけれども、経済の成長率その他も見通しによるものでございますから、必ず多少の狂いは出ております。大体経済見通しが予想よりも高かったくらいの率で収入に狂いといいますか増収が出る。他方、損益の経費につきましても、減価償却費とかいわゆる資本費用でございますね。これは決して狂うものではございませんが、いわゆる運用保守に要する経費につきましては、これは過去の実績、決算上の実績を参考にしながらある程度の効率のアップといいますか、能率のアップといいますか、そういうものを計算して算定いたしております。ただベースアップ、いわゆる仲裁裁定の実施ともなりますと、それはやはり給与も上げるかわりに、現業である限りは生産性も上げていただくという意味で運用保守についてある程度努力を期待することは決して――その給与改定自身が単に能率の向上なくして行なわれることはむしろ望ましくないのであって、そういう経費面での節減にもまたつとめていただくということは、初めのがずさんであったということでなくて、そういう期待をさし、そういう指導をしていくという意味でも多少の――非常に大きな経費なものですから、比率から見ますと、そう初めの査定がずさんで、そこから安易に金が出てくるという制度のものではなくて、収入はある程度経済成長の見込みとの関連でふえることがあり得ますけれども、経費につきましても、ベースの改定に関連しまして生産性の向上を同時に強く求めるというふうな点から、経費の移流用ということが行なわれているのであろうというふうに考えております。
  143. 堀昌雄

    ○堀委員 収入の増の問題は確かにあなたのおっしゃるとおりで、これはきょうあとからやるわけです。経費のほうも、確かにいま言われるように、生産性の向上なりで流用ができることはたいへんけっこうだと思うのです。思うのですけれども、それにしても、いまの二百二十億も要るものに対して六十億とか七十億というのは少し少な過ぎるというのです、私は。だから、それを一ぺんに二百億組みなさいとは言わないのですけれども、来年度については漸進的に、いまのあなたの口ぶりから見ると、どうも一ぺんに上げると論争を巻き起こしそうだとおっしゃるので、私は別に論争を気にすることはないと思うのです。初めからあなた方のほうはこれは予見せざる費用に充てるために積んであるのでございますと言えば、財政法どおりの答弁をしておれば間違いがないので、つまらぬことを言えばひっかかってしまうけれども、つまらぬことを言わない限りは幾ら何といって国会で議論になったって、これは財政法どおりでございますと言えば、財政法どおりに組んではいかぬという議論にはならないのだから、予見せざる費用があると思ったから組みました、幾ら入っておるか、それは私はいま何とも申し上げられません、それでことしとうとう通したじゃないですか、総合予算を。私はもうちゃんとわかっておるからそんなことを聞かないで、財政法どおりだな、こう言っておる。力関係でとろうと思えば、とれるときにはとれる。それは別だと思っておったけれども、こっちに力が足りないものだからまた八月実施になってしまったわけですけれどもそこらはぜひひとつ――郵政大臣も検討課題だとおっしゃっておるし、これは私の長年の主張なんですよ。もう少し、だれが見ても合理的な予算にするというくらいは当然やらなければならぬことだと思っておるのです。私は言い出したらきかないから、私まだ当分落選せずにがんばってやるつもりだから、私が国会にいる限りは毎年やっていくのだから……。それでも私はだいぶ前進したと思うんですよ。この前武藤次長が、私は百円だなんて答弁はなっておらぬぞ、とにかくもう少し常識的にと言ったら、前年どおりというところまでこぎつけたなんということは、私は武藤次長は見上げた男だ、こう思っておるわけです、全く。それはやはりその情勢に応じて前向きに問題が処理できなかったら財政当局としての責任は果たされないのじゃないか、私はこういうふうに思っております。  そこで、倉成政務次官に伺いたいのですが、いまの私と海堀次長の論議はお聞きになったと思いますが、これは政治的な問題ですから、三公社五現業の来年度の予算編成については、大蔵省としてはいま私の申し上げたことを配慮していただいて、私も幾らとしなさいとかどうとか言っておるわけではありませんから、問題の性質のあり方から望ましい姿にだんだん近づけるくらいのことは私は当然だと思います。その点についてはあなた、きょう大蔵大臣どうしても手術のあとぐあいが悪いから出られぬなんて言いますからがまんしているわけですが、大臣にかわって、財政当局としての来年度の三公社五現業に対する予算のいまの問題について、ひとつ前向きに前進するということで御答弁いただきたいのですが、いかがでしょう。
  144. 倉成正

    ○倉成説明員 ただいままで海堀次長との応答を伺っておりまして、三公社五現業の給与のきめ方が当事者間での交渉によってきまる、結局現在までは仲裁裁定によってきまっておったわけでございますので、ほかの公務員の給与のきめ方と若干違うと思います。  それからもう一つは、先ほども次長から申し上げましたように、やはり三公社五現業につきましては現業でございますから、できるだけ生産能率をあげていかなければならぬ。それとの見合いであるということでございますので、御期待に沿うようなことをすぐやるということはなかなかむずかしいと思うのです。ただ御指摘のように、いままでは予備費、それから経費の節約、それから弾力条項ということでやってきておるわけですけれども、その中の予備費をどのくらい組むかという程度の問題、非常にむずかしいのじゃないかという感じがするのです。ということは、これを多く組みますと、またこれは当事者間の交渉を抜きにして一体給与をどうするかという問題が出てくるわけであります。あまりまた少なく組んでも一体何を基準にして組んだのかということになるので、そのかね合いが非常にむずかしいと思います。しかし、堀委員の御指摘の意味と申しますか、お考えというか、弾力条項を適用してただ増収を仲裁裁定に充てていけばいいということで少し予算の組み方がずさんになるのじゃないか、それならもう少し予備費の中に弾力を持たしておいたらいいという御指摘は、非常に傾聴に値する議論だと思います。十分その議論を参考にしながら検討いたしたいと思います。
  145. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと倉成さん、私これまで大蔵委員会でずっとやってきますと、事務当局はたいへん渋い答弁をするのですが、少なくとも政務次官なり大臣というのはもう少し弾力的な答弁というのが普通なんですよ。いまの海堀次長とあなたの答弁を聞いていますと、どっちが主計局次長でどっちが政務次官だかわからないような感じがするのです。私はあなたとだいぶつき合いがあるのだけれども、きょうの答弁は私率直に言ってちょっと失望しましたね。政治的な判断をあなたに求めたという私の真意、私はやはりあなたもその真意に答えてほしかったと思うのですよ。  要するに、次長は絶対増額しないということを言っていないのですよ。ただ、いろいろ問題があります、特にたくさん一ぺんにふやせば非常に問題になるから、そうもいきません、こう言っているわけですから、それは次長の立場としては私は当然だと思うのです。しかし、政治的な判断からしますと、いまおっしゃるようなことは当然のことです。しかし、私が申しておるのは、その仲裁裁定で出てくるものの金額が予備費との関係で見て小さければ、予備費が百億組まれていてそして片一方が百五十億の仲裁裁定というのなら、それはもう問題ないわけですよ。しかし、片方が二百二十億も金が要るときに、片一方が六十や七十だということでは、これはもう少し考えていいんじゃないか。私はいきなり六十億を百五十億にしなさいとか二百億にしなさいとか、金額でものを言っているわけじゃないのですから、それだけこちらが政治的配慮をしておるときに、いまの倉成さんの答弁じゃ、私ちょっと引き下がれないですよ。私のこれまでの過去十年間の実績からいっても、引き下がれない。どうですか、もう少しいい答弁をしてくださいよ、倉成さん。
  146. 倉成正

    ○倉成説明員 実は私は過去堀委員がこの問題でいろいろ御熱心に討議されたということは報告を聞いております。  ただ、私の考えでは、やはり予備費の性格ということから考えて、予備費でできるだけ仲裁裁定をカバーできるようにしたほうがいいんじゃないかというお気持ちはよくわかるのですけれども、中途はんぱな予備費の組み方ということに若干私自身疑問を持っておるわけでございます。そういう意味で、ここでそういたしますとか、そういう方向でいきますということをまだお答えできないのは非常に残念に思うわけであります。むしろ、公務員制度審議会等で当事者能力その他の問題を含めていろいろ御検討いただいて、その方向も踏まえつつ考えていくのが適当じゃなかろうかと私は考えております。  しかし、堀委員のおっしゃる意味はよくわかりますから、十分検討を内部でいたしていきたいと思います。   〔中村(重)委員長代理退席、委員長着席〕
  147. 堀昌雄

    ○堀委員 私いまここで実は当事者能力とかそういう問題に触れて言ってないわけです。予算上の形の問題で申しているわけです。あなたのいまおっしゃるように、それはきちんといこうということになりますと、そういうものを予備費に組むのはおかしいということになってくるかもしれません。要するに、いま、国家公務員の場合に、例の、ことし五百億内外を一般会計の予備費に積んだわけですね。しかしそれはやはり給与に積むべきであるという議論があると思うのです。ありますが、そこへ持っていけば、いまの情勢の中ではその金額が多いか少ないかというのは、これは明らかに議論を呼ぶことになるわけですから、政治的に非常にむずかしい問題があります。しかし、いずれも予見せざるということにおいてはだれも正確には予見できないのですよ。大体は予見しているわけですから、わかりますよ。しかし正確に予見されてないから、いまの財政法のたてまえからいけば、予見せられざる経費として予備費に組むことは、財政法から見てそのこと自身は妨げになってないのです。なってないから私どもは、ことし国があすこへ組んだけれども、財政法上は問題があるという言い方はしてないのですよ。だから、それは、財政法は財政法として、それを政治的に理解しての問題でありまして、倉成さんは非常にきちょうめんな人ですから、あなたがそういうふうにリジッドに考えたら疑義が残るというふうにおっしゃる点はわかりますが、しかし予算上の問題の形で見ると、当事者能力の問題をはずしているわけですね。きょうは私は予算上の問題だけで議論しているから、予算上の問題だけから見るならば、私はやはりあの部分はもう少し考えるべきだということは間違いないのです。これは、時間がありませんから、日をあらためて大蔵委員会なり予算委員会なり、どこかでまたやります。私は思い立ったら最後まで、何とか自分の意思が通るまでは何回でもやるというのが私の主義ですからやりますが、どうかひとつ来年度に主計局も一歩前進をしたなという感触がわれわれに感じられるように善処をしてもらいたい。よろしいですか、倉成さん。
  148. 倉成正

    ○倉成説明員 ただいまの御議論を十分踏まえて検討いたしてみたいと思います。
  149. 堀昌雄

    ○堀委員 もう少し答弁が出ると思ったが、残念ですが次に進みましょう。  次には、いよいよ、問題の中心であります昭和四十三年度の電電公社の問題に移りたいのでありますが、実は私はきょうこういう問題をやるについて非常に残念な感じがいたしますのは、イソップ物語にオオカミが来るという話があります。子供が、オオカミが来たといって騒いで、人が非常に騒ぐから喜んだ。しかし実はオオカミは出なかったのだ。何回かやっているうち、要するに人は、あの子が騒いだってオオカミが出てこないと思っているから、ほんとうに来たときにはだれも助けなかったという有名なイソップ物語があるのですが、電電公社が損益で赤字になるといわれだして黒字になったのは何年目でしょうか。ちょっと公社、どなたでもいいから、答えてください。
  150. 中山公平

    ○中山説明員 予算の面からながめますと、概計で赤字が出るだろうということで出しましたのが四十二年でございました。
  151. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、四十二年と四十三年がいずれも赤字になりますということで出されたということで、その前はなかったですか。どうも私は、例の最初の佐藤調査会のときも何か赤字になるような話が出ていたから、あったのじゃなかったかと思ったのですが、どうでしょうか。
  152. 中山公平

    ○中山説明員 そのことはございません。
  153. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、実は四十三年度でありますけれども、皆さんのお手元に、私なりに試算をしたメモをお配りをしておりますから、このメモをちょっとごらんをいただいて、申し上げたいのです。  四十三年度の「事業収入実収見込み」で、私がかってに推計をしたのですから、当たるかどうかわかりませんが、四十三年度の上半期の実収入は三千八百二十二億円というのは、これは公社から伺いましたからこのとおりだと思います。  その次に、「三十八年度より四十二年度までの上期下期の実収入の比率」というのがあります。ちょっとこれをごらんになりますと、電電公社の収入というのは上期と下期で非常に収入に差があるということがこれでわかるのでありますが、上期、下期という比率を見ますと、三十八年は右はしに書いておりますように下期が上期に対して六・四一%ふえております。三十九年は三・八九%、四十年は五・七七%、四十一年は七・〇八%、四十二年は六・四一%、こういうふうに実は電電公社の収入というのは下期にふえる傾向があります。そこで私は、単純に、ここにあります分だけを算術平均をしてみますと、これは五・九一%と、大体三十九年の三・八九というのが五%を割っただけであって、あとはいずれも五%以上だというのが過去における大数観察でございます。そこで、私は、過去の経緯から見て、単純に、三千八百二十二億円の五%くらいは下期に伸びるだろう。そうしますと、四千十三億円というのが下期の実収入の予想になるわけであります。上期と下期を合わせますと、本年の実収見込みは七千八百三十五億円というのが私の試算に基づくところの昭和四十三年度の電電公社の実収入であります。これはさっき海堀次長がおっしゃった七千七百二十億円に対して、四番のところに書いてありますが、百十五億円の増収になる、こういうことでございます。  それから、それを過去における決算ベースで一ぺん試算をしてみました。四十二年度決算に対する私の実収見込み額というものの比率は幾らになるだろうかというと、これは一五・三五%の伸び率ということになるわけでございます。  そこで次のページへまいりまして、左の端が事業収入の決算ベースの対前年比であります。まん中がGNPのノミナルであります。右の端が加入数の増加率であります。  昭和三十三年から四十二年までの実績をとってみますと、非常におもしろい傾向がここに見られます。というのは、電電公社の事業収入の中で事業収入の対前年比が一五%を割りましたのは、過去においてこの中では三回しかありません。三十三年の一〇・二%、それから三十七年の一〇・九%、四十年の一四・三%、これだけで、あとは全部一六%をこえる増収率になっておるわけであります。  そこで、GNPのほうを見ますと、これはまさしく昭和三十三年はノミナルで二・八%、三十七年はノミナル九・七%、四十年がノミナル九・七%、一〇%をノミナルで割った年だけに実はこういうような減収で伸び率の非常に低い年が出てくる。まさにGNPと非常に関連を示しておるわけであります。  加入数の伸び率がその次に書いてございますが、加入数の伸び率よりも実はGNPのほうに非常にウエートがかかっておるということがこれをごらんになればわかると思います。  そこで、私の計算しました四十三年の実収入一一五・三というのは、私が少なくとも実質で本年度は二%内外、長官は一〇%内外、ノミナルでは大体一五%くらいのところになりますから、ノミナルで一五%になっておるときに事業収入が一五%台を割ることは過去においてはない。一五・三%くらいの増収というのは、まず間違いないだろう。そうすると、今年度の実収入というのは、私の試算をいたしましたこの七千八百三十五億円というのは、やや内輪に見積もった数だ、こういうことに私はなろうかと思うのでございます。  三枚目をごらんをいただきまして、さっきの四十三年度の名目GNPの対前年比は一五%を下回ることはないだろう、四十四年度の名目GNPの対前年比も一五%を下回ることはないと予想される。そうなりますと、過去の例から、一五%台というのなら実は一六%以上の対決算伸び率を示しておりますが、この加入数の増加率がちょっと下がっておりますから、それを配慮に入れて一五%伸びるという推計をいたしますと、実は四十四年度の事業収入というのは九千十億円、これが私の試算によるところの四十四年度の電電公社の事業収入ということになるわけであります。  そこで、九千十億円と、現在概算要求で出しておられます八千七百六十八億円との間には、実は二百四十二億円という差がここに出てまいります。私は、来年度に異常な政治的、経済外的要因が起こらない限り、少なくとも収入面では二百四十二億円というのが増収になるだろう。それから四十四年度の損益勘定の赤字が三百十九億円となっておりますが、これを差し引きしますと、七十七億円が損益の赤になるわけであります。ところが、四十四年度の概算支出と四十三年度予算支出額との差が実は一千四百二十八億円という差になるわけであります。これを四十三年度の概算要求のときに振り返ってみますと、四十三年度の概算支出額と四十二年度の予算支出額で概算を出されたときには、その差が千六百五十二億円でございましたが、大蔵省の査定の結果千二百十億円ということで、ここは支出のほうは四百四十二億円実は削減をされたという先例があるわけなんです。そうしますと、現在の九千八十七億円という支出額に対して七十七億円の圧縮なんというのは、私が言わなくても大蔵省はもっとばっさりと査定をすることはまず間違いがないから、今日から来年度予算の編成を見通すならば、電電公社の四十四年度予算の損益には赤字は出ないというのが大体私の確信でございます。  しかし、これについて電電公社側も言い分もありましょうから、私のこれについての意見をひとつ公社側から述べていただきたい。
  154. 米澤滋

    ○米澤説明員 お答えいたします。ただいま四十四年度の概算要求を出しておるその数字がどのくらいなことに最終的になるのかという御意見がございました。  私は、この場合に、まずこの収入の見込みでございますけれども、この中で問題になっておりますのは、大体GNPが主体にあげられておりますが、確かにGNPは相当大きなウエートにはなりますけれども、それ以外に、収入の場合には稼働加入数の増加の量が問題になってくると思います。それからもう一つは、自即の進展のぐあい、過去において確かに非常に自動即時が進みまして、現在県庁所在地相互の間はもちろんのこと、その他大都市、中小都市の間の自動即時化が非常に進みまして、この自動即時化が非常にサービスの改善を伴うと同時に、収入増を起こしたということでございます。  一方、また加入者の増加の中で、たとえば一つの例をあげますと、東京あたりは、このところ毎年十七、八万電話をつけておりますけれども、そのうちの半分以上はいわゆる住宅電話でありましてその住宅電話の収入は、大体事業用電話の収入の四分の一しか入らない。したがって、加入はふえるけれども、その影響というものは、増加の中で住宅電話の比率がふえてくるというそういう要素を構造的に見なければならないと思っております。  それからもう一つ、支出のほうにつきましては、詳しくは主管局長から申し上げますけれども、私のほうはその数字につきまして、実はこれほど査定されては非常に困るわけでありまして、内容につきましては主管局長から説明いたします。  それからもう一つは、先ほど来話がございましたベースアップというものは考えておらないわけでございまして、来年ベースアップがどのくらい出るか、これは将来の問題でありますけれども、四十四年度の概算要求の中にはベースアップは入ってないというわけであります。
  155. 中山公平

    ○中山説明員 支出のほうについてお答え申し上げます。大体支出の各項目をごらん願いますと、前年度に対する伸びは物件費をのけまして、ほぼ設備の稼働の伸びというものの以内におさまっておるつもりでございます。もちろん利子、減価償却費等の資本費用については別でございますけれども、それ以外のものについてはそれ以内にとどまっております。  ところで、物件費につきましては、四十四年度の概計要求では総額千四百四十八億円ということに相なっておりまして、四十三年度予算の一千七十八億円に比較いたしますと、三百七十億円の増加をいたしておりますので、これだけをごらんになって伸び率を算定されますと、かなりの伸びだという御印象を与えるかと思いますけれども、この中には非常災害時において通信を確保するための特別対策の工事費、これは建設勘定にもあるわけでございますけれども、損益で実施するものもございます。そのほか電子交換機あるいは大型コンピューターを使ってのデータ処理方式の研究、こういった研究開発のための経費等が含まれておりまして、これらで大体二百十億円余り含まれておりますので、これを除きました伸びというものは百六十一億円ということでございまして、これは四十三年度と対比いたしまして一六%の伸びでございますので、設備の伸びから比較いたしますと、かなり効率的に運営をするようにつとめたつもりでございます。
  156. 堀昌雄

    ○堀委員 支出のほうは私もどこがどうというふうにいま言わないで、ただ、九千億からあるから七十七億くらいは――過去の例は去年四百億も圧縮しているから、まあまあそのくらいは減るだろうと言ったのですけれども、そういう答弁があると私もちょっと一言言わなければいかぬので、少し申しておきますと、ことしの逓信委員会で実は私は設備料の問題というのを企画庁長官も小林郵政大臣も御出席をいただいてやりました。そこで、実はあの問題はいままだペンディングになって残っておると思うのです。しかし、あの問題、お聞きになっている方がわからないといけませんから、ちょっと簡単に説明をいたしますと、公社は、設備料というのは何かといいますと、要するに家の中にある電話機と引き込み線に見合う設備料であります、こういうことです。ですから、その設備に見合う費用がそこで加入者から取られておるということにいまなっておるわけです。電力会社がこういう一部負担金をする場合には、その一部負担金というのは横へどけておいて、それを除いた額だけが固定資産として計上をされて、その部分だけが償却をされる。ですから、要するに電力会社の場合には、民間事業でありながら初年度の工事については実は減価償却の二重取りというのはないのでありますけれども、私が観念をするところでは、電電公社の場合には、最初に引き込み線とその中の電話機に対する費用として三万円取ってあるのですから、その部分をもし根っこから償却するならば二回償却をしたことになるのではないかという議論を実はこの春の逓信委員会で設備料値上げでやっておるわけです。それを、もし私の論理どおりにいきますと、ことし電電公社は設備料収入として五百二十六億円ここへ計上しておるわけですから、いまの引き込み線と電話機の耐用年数は幾らかわかりませんが、もしそれを十年とするならば、その十分の一の五十二億は減価償却を圧縮してもいいのではないかという議論が当然あっていいのではないかと私は思っております。これはひとつ企画庁と郵政省と電電公社でよく話し合って結論を出していただきたいとあのときに私申しておきましたが、結論は出ておらぬだろうと思います。この電電公社の減価償却というものは非常にばく大な減価償却が行なわれておるという例をちょっと申し上げますと、売り上げ高に対する減価償却費の割合が一九六五年についていえば、ベル・システムは一四・七%しか償却しておりません。ゼネラル・エレクトリックは四・九%、電電公社は二九・八%償却しておる。償却前利益で、日本の会社の中でこれほどもうかっておる会社はおそらくないのじゃないかと私は思うのです。これは実はたいへんな収益を上げておると私は思うのです。ですから、それだけもうかっておるところが、一体設備料の分についてまで二重に償却しなければならぬかどうかについてはなはだ疑問なんです。そして、そういうものを前に出して、赤字になるから電話料を値上げをしようという立論構成については、私はどうしても国民の立場から納得できない。それで五十二億ぽんと出ますと、あとは二十五億しかないのですから、九千億で二十五億なんというのは、これはさっきの話じゃないけれども、どうにでもなるという問題ではないのかということになりますと、私はどうもいまから言うのはあれですけれども、四十四年度においては、結果としては電電公社の損益計算では赤字は出ない。ただ赤字が出てくるとするならば、それはさっき私が前段で論議をいたしました予算に計上されていないところの、要するにベースアップ分というものをここで取り入れてみる場合には、決算としては赤字が出る場合はあり得るだろうと思いますけれども、少なくとも予算上の論議の中では、赤字が出る論議にはならないというのが私の現在の判断であります。ですから私が前段で言ったのは、そういう点はもう少しきちんと合理化をして、予備費を積んだ上で私は実は議論したいわけです。そうしないと、ちょっと片手落ちな点があるから、前段でいまのベースアップ分を予備費の中に少し入れて、バランスのとれたかっこうで、赤字が出たとしても、それはこのくらいだということになったほうがいいと思ったけれども、そこはいろいろの過去の沿革からして急にはいきませんが、少なくとも皆さんのほうで出される予算上の形の中においては、赤字が出るということにはならないのではないか。だから、電電公社もいろいろ事情はありましょうし、私はわかる点もあるのでありますけれども、今度の値上げというものは、これまでの論理構成からするならば、もう一年引き延ばしてもらったほうが――来年の物価上昇というものは、これは企画庁長官もしばしばおっしゃっておりますように、ちょっとまだ高度成長は続きますから、これの余波は必ず来年にまたしわ寄せのかっこうで出てくるだろう、こういうふうな感じもしますので、この際政府の関係する公共料金については値上げを避けてもらうのが適当ではないのか、これが本日の委員会で私がこの問題を取り上げた主要な論点でございます。これについて、まず物価を担当しておられる企画庁長官から、いまの電話料値上げについての客観的な私なりの分析でありますが、御参考までに出したものをもとにしていただいてひとつ御判断いただきたいと思いますが、いかがでありますか。
  157. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほどから御推論を承っておりまして、非常に私どもといたしましても勉強になりました。明年度のことにつきましては、まだ正式に電電公社からあるいは郵政大臣からお話を承っておりませんけれども、事業収入等を私どもなりの立場でよく検討させていただいて、御指摘のような物価情勢でもございますから、値上げせずにいけるものであれば、それはまことに利用者としてもしあわせなことでございましょうし、私どもなりに電電公社からもいろいろ資料なりももらいまして検討してまいりたいと思います。今日御指摘になりましたことは、その際にもたいへん参考になることであるというふうに考えております。
  158. 堀昌雄

    ○堀委員 郵政大臣、御感想をちょっとおっしゃっていただけませんか。
  159. 小林武治

    ○小林国務大臣 これはもう堀委員もよく御存じと思いますが、四十二年度また四十三年度と強い値上げの要望のあったことは御承知のとおりと思います。私も大体堀委員のような見通しに立って、この二カ年間はあくまでも値上げはいたしません、こういうことを私は事前にあなたにお答えしたこともございます。ただ、だんだん仕事が進んできまして、また設備の増強もしなければならぬ、こういうことからいたしまして、どうもやはりある程度これが修正をしなければなるまい、こういう気持ちがあって、ことしは私どもも一応同意して政府にこれを出しておる、こういうことでございます。  償却の問題は、もう前からもお話があってやっておりますが、これはアメリカの私立の会社と違って、償却を多くするということは実質的に公社の会計、事業経営には弊害がない、すなわち利益の内部保留とかあるいは脱税とか、そういうふうなことが起こらない、そのままこれは建設費に振り向けられる、こういうことであるから、多少償却をよくしても実質的には弊害がないということで、これも四十二年に私は引き上げを認めた、こういうことでございます。ただ、何といたしましても、御案内のように公社の料金体系というのは不合理であります。これは電話の普及のきわめて乏しかった、低かった時代にやったのがそのままきておるから、非常にこれは不合理であって、私は電話の料金体系だけはぜひ変えたい、こういうことを昨年から申しておるのでありまして、今度の案についても、料金体系の是正というのを眼目にして出ておる。ただその結果として幾ぶん値上げになるということはやむを得ないというふうなつもりでこれを出しておるのであります。これは電電公社と私どもが出して、これから大蔵省と経済企画庁と相談してどうするかということをきめるのでありますが、財源の問題もあり、物価の上昇に対する影響もあり、各般の事情というものを十分に検討していかなければならぬ。したがって私は、参議院の委員会においても、国会方面においても何でもひとつ言うていただきたい、基本料率がどうとか、住宅と事務用をなくしたのがいけないとかいうようないろいろな議論があるから、これらの議論はそのまま十分われわれは参考になるので、これは実際これから政府がきめるのだ、こういうことに相なりますから、私どもはそういう御意見を十分にひとつしんしゃくして結論を出したい、こういうふうに思っておるのでありまして、御承知のように、ことしも昨年も上げなかったということについては、私は相当な努力をいたしたつもりでありまして、これはあまり率直なことを申してなんでありますが、やはり三年も四年もこれをやって、そして今日まできておる、こういうことでありまして、実は結果的に申せば四十三年度は値上げしなくてよかったなと、私もあとから思うほどの、四十二年度においてもそういう結論が出ておりますが、しかし公社の御主張も、私はあまりいわれがないとも思わぬが、料金体系をほんとうに近代化するということにあわせて、若干の結果的の値上がりはある程度必要ではないか、こういうふうなつもりでいま出しております。しかし、いずれにいたしましてもこれは公社と郵政省がそういう素案をきめた、こういうことでありまして、これから政府の案がきまるのでありますから、その際に十分ひとつ皆さんの御意見も参考にして考えたい、こういうふうに思っておるところでございます。
  160. 堀昌雄

    ○堀委員 郵政大臣から非常に率直にお答えをいただいて、特に昨年はああいうことで事前にお話もありまして、私も賛成をしたわけでありますが、私は、まず第一点に減価償却の問題でありますけれども、国のものでありますからその償却をすることは悪くはないのです。悪くはないのですけれども、償却をたくさんしたから赤字になるという論理は、私はあまり納得できないのです。なぜかというと、これはたびたび米澤総裁にも伺ったわけですが、電電公社というのは国のための施設でありますが、これは国民のためにあるのですから、電電公社がたいへん健全経営で、たいへん償却がきちんと済んでどうだからというのじゃなくて、いわば国民がそれによっていかに潤うかということのほうに比重があってしかるべきじゃないかというのが私のものの考え方でございます。ですから、おそらく――これは一ぺん電電公社へ資料をいただきたいと思うのですが、計算上償却をして残った施設、償却済みのものがずいぶん働いているのじゃないかと思うのです。一ぺんこれを調査してお出しを願いたいのですが、もうそろそろ、二十八年に電電公社ができて、償却済みで簿価はゼロだけれどもけっこう間に合っているというものがずいぶん出てくるのじゃないか。さっきちょっと申し上げましたように、昭和四十二年からは、建物、工作物、諸施設、船舶などについても、これは定額法から定率法に変えられているわけですね。何しろ、償却をいかにして厚くするかということにあらゆる手段が講じられているのがいまの電電公社の経理の実態でありますから、そこらについて一ぺん資料をちょうだいしたいと思います。  それから私も、郵政大臣おっしゃったように、いまの料金体系の合理化には反対ではないのです。料金体系を合理化することは全く必要だと思いますが、ひとつ郵政大臣、これは私は合理化は合理化だけ一ぺんやったらどうかと思うのですよ。要するに、いま合理化と度数料の値上げが常にくっついているわけですね。だから私は、この情勢なら、もう皆さんのほうは合理化だけやらしてくださいとおっしゃるなら、中身はいろいろありましょうが、それは大いに議論をして、ひとつ合理化だけ一ぺんやろうじゃありませんか。私は合理化をしたらずいぶん増収が出てくるものがたくさんあるのじゃないかと思うのです。特に今度の電電公社の値上げ内容を見ておりますと、遠距離は下がる、それはいいのですよ。しかし中距離が非常に高くなりますけれども、ここはいまは近畿圏とか首都圏とか非常に経済圏が大きくなりまして、最も実は通話数を必要とする部分が値上げになるようになっていますね。私はこれは総合開発計画等から見ても、そういう経済圏の拡大をしておるところは上げる必要ないのじゃないかと思うのですよ。それを上げることによって無理なことをするよりも据え置いたほうが、そのところは非常に頻度も高くなるところだから、それは経済的にも必要であるし、そこら考える余地があるのじゃないだろうか。確かにいまは距離の概念はないと思います。この間出たのは確かに距離の体系からきておりますけれども、今日ではそういう距離の問題はありませんから、合理化をされてしかるべきですが、どうも私はそこらをひとつ度数料の値上げというものをはずして――ですから、私はいま電電公社で考えられておる料金体系の区切りを五つにするということについてはいいと思っているわけです。それはなぜかといいますと、実はこの間もちょっと宮澤さんに申し上げたのですが、税金のほうで累進税率となっておりますと、刻みが小さいと名目の賃金が上がるとすぐ次の刻みがあって増税になる。いまの電電公社のほうも刻みがたくさんあると、加入数がふえてくると、どんどんふえるたびに金がどんどん上がるということになりますから、ある程度くくられるほうがいいんじゃないかというふうな感じもいたしますから、そこらの点については私は合理性があると思うのです。だから、合理性がだれが見てもあると思うものについては、それは私はおやりになって差しつかえない。それは合理化という形ならば、値上げじゃないのです。しかし、いまの度数料というやつは合理化じゃない、値上げですよ。大臣、そうでしょう。だから、一ぺん、こういう経理状態なら、まず合理化だけをやって、そして合理的な体系になったら必ず増収になるのですよ。合理的にしたら減るなんということは、経済の成長がこれだけあるのですから減りっこないはずですから…。そこは特に長官のほうも十分ひとつあとの問題を処理されるについてはお考えを願って――私は昨年設備料の三万円を取ることについては反対しなかったわけです。郵政大臣がことしはひとつ設備料だけにしたいとおっしゃった、私はそれはこの情勢ではやむを得ないだろう、要するに度数料の値上げをしないのなら設備料はいいでしょうと言ったわけです。今度だって合理化だけの範囲に限られておるならば、私は検討の余地があってしかるべきだと思っておりますが、いまの度数料の値上げというような値上げは、この際私が分析したような角度から見ても十分考えてもらわなければならぬ問題だ、こう思っておりますが、企画庁長官いかがでございましょうか。
  161. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 なお郵政大臣の御意見もよく承りまして、私どもといたしましても検討をしてまいりたいと思います。
  162. 米澤滋

    ○米澤説明員 お答えいたします。減価償却のお話ございましたけれども、減価償却につきましては、パーセンテージというよりもむしろ実用寿命といいますか、そちらの耐用命数のほうを相当比較しなければいけないのではないかと思うのです。これにつきましては、公社といたしましても総務理事中心として、ここ二、三年間財産除却の状態とか、あるいは具体的にたとえばマンホールは何年だとか、電柱は何年、ケーブルは何年、一品一品全部調べまして数字を出しております。これは他の、たとえば国際電電とかあるいは放送会社という似たようなものと耐用命数を比較いたしますと、電電公社のほうがむしろ長いというような状態であります。決して先ほど言われましたように赤字にするために減価償却を高めているというようなことはないわけでございまして、実態に即するようにやっておる、こういうわけでございます。
  163. 堀昌雄

    ○堀委員 いや、私赤字にするためにと言ったのじゃないのですが、その結果赤字が出る、減価償却がふえるために赤字が出るというのは望ましくないということです。そこはある程度の配慮があってしかるべきではないかと言うので、何も私は赤字にするために減価償却をしているとは言っておりません。  それでは大体時間が参りましたから終わりたいと思うのでありますけれども、いろいろな問題がありますが、今後の問題としては、私はやはり経済成長というものが、さっき私は前段で議論をしましたように、幸い日本では成長を続けておりますから、その中では生産性の伸びなりいろんな点で非常に吸収がしやすい企業の一つだと私は思うのです。電電公社が今日まで料金値上げをしないでこれたというのは、まさに私は一つには日本の経済成長の力であるし、一つには皆さんの努力による生産性の上昇だったと思うわけです。ですから、せっかくそういう恵まれた客観情勢にあるのですから、私はひとつ、前段でさっき申したように、値上げというものは一番最後の最後にしていただいて、料金の体系を合理化することによって、実はまだ今後の成長の中では十分電電公社としてまかない得るというのが私なりの確信でありますので、これは財政当局もその点十分踏んまえてもらって、度数料の値上げというのは最後の最後の手段として、合理化の部分については少し弾力的に考えてよいというのが私の考えであります。経済というものはそういうものですから、本来的にはやはりコストに見合うような形で問題を処理しなければ国鉄みたいなことになりますから、私も経済原則を踏みにじってまで値上げするななどということは一言も言ってないわけですから、必要があるならばやむを得ないと思うのですが、まだ私の分析ではその段階に至っていないということでありますから、その点ひとつ十分財政当局も勘案をして、企画庁等とも相談をされて、国民に無用な負担を与えないで済むように、ひとつよく考えていただきたいと思います。  終わります。
  164. 小峯柳多

  165. 近江巳記夫

    ○近江委員 最近国民の強い声として聞く問題は物価の問題であります。最近の日本の経済成長というものは非常に急速な伸びを示しておる。特に総生産においては世界の第三位を占めておる。しかしながら国民所得においては世界で二十三位である。まことに大きな格差に驚くわけであります。素朴な質問として至るところで聞かれるのは、それだけの日本の驚異的な発展の中で、なぜわれわれの所得は上がらないのですか、またなぜこのように物価が上がるのですか、何とかしてもらえませんか、毎月毎月赤字で、やっとボーナスで何とか埋め合わせをやっております、そういう声が至るところで聞かれるわけです。  そこで私は経済成長と物価の問題についてまず初めにお聞きしたいと思いますが、佐藤総理が、経済の成長率が一三%という驚異的な実績を示しておるのに物価が四・数%ぐらいしか上がらないというのは政府の物価対策がうまくいっている証拠である、ほめてもらってもよいことである、このように前に言ったことがたしかあると思いますが、この総理の発言について国民生活局長と通産政務次官はどのように考えていらっしゃいますか、まずお聞きしたいと思います。
  166. 八塚陽介

    ○八塚説明員 経済成長と物価の関係でございますが、これはいろいろ学者によりまして御意見があるようでございますが、少なくとも先進国と申しますかそういう経済のタイプにおきましては、経済成長と消費者物価というものは関係があるようでございます。逆に消費者物価と失業率というものも関係があるわけでございます。したがいまして、結局問題は、成長をどの程度までに考える、そして消費者物価の上昇をどの程度までに考えるという、最近のことばで言いますといわゆるトレードオフの問題があるわけであります。しかし、いずれにいたしましても現在の物価上昇の水準は、私どもとしましては、やはり国民生活の上に相当大きな悪い影響を与えておりますので、単にトレードオフではなくて、いわば構造的な物価上昇の原因を直していくということで物価上昇率をできるだけなだらかにしていくという努力をすべきであるというふうに考えております。
  167. 藤井勝志

    ○藤井説明員 確かにことしの物価推移を見ますと、消費者物価においては政府が予定した線よりも上昇いたしておりますけれども、大体大部分がその上昇は中小企業あるいは農産物ないしはサービス業というこういった線でございまして、他の大企業のつくっておる鉄鋼、化学品、こういったものはずっと下がってきておる。こういった面で、総理は、御指摘のように、経済成長はしながらも一部の消費者物価、これは上がっておるけれども、全体的に見れば健全な推移をたどっておるというふうに答えられたのではないか。私も、全体的に見ればそのような考え方が正しい、このように思うわけでございます。
  168. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうすると、経済成長には物価の上昇ということは必然である、このように私はいま受け取るわけであります。  まずお聞きしますが、経済成長において物価上昇がつきものであるという主張の根拠は、どこからそれをおっしゃっておられるか、それをもう少し答弁願いたいと思うのです。
  169. 八塚陽介

    ○八塚説明員 特に経済成長と物価上昇とのいわば原因結果につきましては、これはいろいろな考え方があろうと思いますが、少なくとも各国においてそういう相関関係があるようでございます。ただその水準を、従来の経済のタイプであればこうであるということで容認しておいていいことではなくて、経済成長を遂げるのに対応した多少の物価上昇の上がり率というものをさらに下方でシフトさすという努力をいたしまして、それが成功いたしますならば、いまのような関係というのは非常にゆるやかな関係になってくるということを申し上げたのでございます。
  170. 近江巳記夫

    ○近江委員 理論的にそうなるのか、過去の実績がそうだからそうだ、どちらにウエートをかけていらっしゃるのですか。
  171. 八塚陽介

    ○八塚説明員 過去の実績なり各国の例がそういうふうになっておりますので、それは少なくとも過去においては事実であるということはいえるわけであります。ただ私がいま申し上げましたのは、そういう過去の経済の運営なりあるいはむしろ経済の構造なりにおいてあるそういう関係というものを、さらに下のほうにシフトさせるということをやることが物価対策の第一段階であるというふうに申し上げておるわけであります。
  172. 近江巳記夫

    ○近江委員 過去の実績がそうであるから今後もそういうことになるだろうというのは、これはもう政策的な放棄だと思うのですよ。あなたも国民生活局長として、国民の声には一番耳を傾けて、そうしてそれをどうしていくかということに真剣に取り組まなければいけない。その点が過去がそうだからこうだ、肯定するようなそういう考えが政府の立場として私ははなはだけしからぬと思うのです。過去の実績がそうだとあなたおっしゃいますが、私、一、二ずっと調べてみたのですが、産業革命以来、先進諸外国の経済成長というのは非常に目ざましいものがあったわけです。しかし、それに比例して物価が上がりっぱなしであったか、決してそうじゃないわけです。  一例を申し上げますと、十九世紀の第四・四半期のイギリスにおいて、卸売り物価が下がっただけでなく消費者物価がかなり下がっております。これは事実を調べればわかります。第二番目に、一九二〇年代の繁栄期のアメリカにおいて経済が非常に目ざましい成長を遂げた。その時期にも卸売り物価が非常に低下傾向を示しているわけです。そういうまぎれもない歴史上の実証があるわけです。過去の実績でそうである。その辺のところをもう少し詰めてもらいたいと思うのですけれども……。
  173. 八塚陽介

    ○八塚説明員 たとえば日本の経済におきましても、昭和三十年代の初めから三十五年くらいまでは、消費者物価は御承知のようにあまり上がっておりません。当時の状況を考えてまいりますと、やはり現在消費者物価上昇の一つの大きな原因であります生鮮食料品、すなわち農業生産の状況を考えてまいりますと、端的に申しますと、当時の農業生産のセクターでは、いわば次三男対策をどうするかという、つまり労働力過剰の状況であったわけであります。現在は御承知のように、すでに後継者をどうするかというような段階になっておる。したがいまして、非常に長い過去のそれぞれの経済の段階においていつでもそうであったということを私決して申し上げておるわけではございません。ただ、現在の先進国の経済運営あるいは先進国の経済の構造は、いわば労働力というものはもう過去のようないわゆる過剰という状況でないという前提の上で経済運営を行なってまいります場合に、過去におきます、たとえばいまお話しになりましたような、日本でいえば昭和十年以前のような不景気というものを起こさないような経済運営をやっていくことが、つまり成長を絶えずやっていくということが必要であるという経済理論を前提にいたしますと、そういう関係がある程度出てくるということを申し上げておるわけでございます。
  174. 近江巳記夫

    ○近江委員 確かに状況が変われば若干の違いが出てくることは私はわかっております。だけれども、イギリス等の例に見ても、日本のようなこんなでたらめな物価上昇をしておるところはないわけですよ。それを経済成長のもとにはしかたがないというような、そういう頭に固まっておるようでは、これはもう物価が下がるわけはないです。皆さんの頭の切りかえがなければ、国民が全部犠牲になって泣いておるわけです。われわれとしては、経済成長下における物価安定ということをいつも言っておるわけでありますが、いつだったか福田幹事長も、そういう野党の言うことは幻想にすぎないというような発言をしたように私も思っておりますが、こういうような現在の政府・自民党の考え方というものをあなた自身どう思われますか。
  175. 八塚陽介

    ○八塚説明員 お尋ねが経済成長と物価という一般的な問題でありましたので、やや一般的な答弁を私いたしたわけでございますが、確かに御指摘のように、日本の消費者物価の他の国に比べての特徴は何かということであれば、まさに先ほど来通産政務次官がお話しになりましたように、一つは農林水産物、食料品の値上がりが非常に大きい。これはやはり日本の農業構造自体が現在の他の産業部門におきます成長と見合わない形になっております。そういうあたりが反映をいたしまして、結局食料品の価格高騰ということになっておるわけでございますから、一般的な経済成長と物価云々とはさらに別の観点から、いわば農業生産の合理化あるいは構造改善というようなことをやっていくことは、これはもう当然現在の物価対策として必要なことであるというふうに考えておるのであります。
  176. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、これは何回も非常に国民の怒りを買ったわけでありますが、賃金が上がるから物価が上がるんだ、これは賃金が上がるから物価が上がるのではないのであります。あくまでも物価が上がるから生活をどうしてもやっていけない、血の叫びのもとに、賃金が追いつくというところまでいきませんが、何とか上昇しておる。そういう物価の上昇にすら追いつけない低い賃金でみんな苦しんでおるわけです。そういう実態にもかかわらず、賃金が上がるから物価が上がるんだ、一体これは為政者として国民のことをほんとうに真剣に考えておるか、私はそのことを言いたいのです。その辺のところを、真実賃金の上昇が物価上昇の原因だということを本気に思っておるのかどうか、その点を生活局長と政務次官に聞きたいと思います。
  177. 八塚陽介

    ○八塚説明員 賃金の過去における上昇率は、最近大体年率一〇%程度というふうにいわれております。同時に物価も、いろいろ差はございますが、五%、四%台でずっと上がっております。したがいまして、いろいろなその因果関係をどう考えていくかということは別にいたしまして、両方上がっておる、さらに賃金の上昇率のほうが一般的には、平均的には高いということは事実であろうかと思います。ただ物価上昇に対して所得のほうは――物価上昇はこれは物価でございますから、すべて同じように貨幣の価値として上がるわけでありますが、所得のほうは人によっていろいろな態様がございますし、それから物価を構成いたします各物資の値上がりの差がございますから、各家庭におけるいろいろな影響の受け方の相違というものはこれは違います。したがいまして、やはり物価の上昇というのは生活に関して相当な被害を与えておるということはこれまた事実であって、決して否定をいたしておるわけではございません。  そこで、所得ないし賃金と物価の関係をどう考えるかということにつきましては、議論がいろいろあるわけでありますが、私ども、熊谷委員会の報告が最近出されたわけでありますが、いまそれをどういうふうに考えて読んでいくかということをやっておる段階でございまして、一義的に賃金と物価をどういうふうに考えておるかということについては、いましばらく時間をかしていただきたいというふうに思う次第であります。
  178. 藤井勝志

    ○藤井説明員 賃金の値上がりと物価との関係、これがそのまますぐ結びつくという、こういったことについては御意見があろうかと思うのでありますが、賃金の値上がりが、よくいわれるように、生産性向上によって吸収できない場合は、これが物価値上がりとしてはね返る、これはだれしも否定することのできない因果関係だと思うのでありまして、そういう意味においてやはり関係がある、こう私は思います。同時に、これは鶏と卵の関係のように、どっちが先だということは、実際の経済はどこかで区切りができませんから、やはり循環しておる。だから見方によっては、賃金が上がったから物価が上がったということにもなろうし、物価が上がったから賃金が上がった、こういうふうな因果関係ではないかというふうに思うわけでありまして、重ねて申し上げますが、やはり賃金が上がったのが生産性向上によってカバーできる大企業の製品は現に下がっておる、こういう事実からもこの点はうなずけるのではないか、このように思う次第であります。
  179. 近江巳記夫

    ○近江委員 先ほどちょっと私聞こえなかったのですが、宮澤さんのところで所得政策についての学者クループを集めて所得政策報告書ですか、それをいまやっておりますね。これはどういう意図のもとにやられたのですか。賃金と所得政策というところに、そこにこれはあなた方がはっきりと意識をしておる その裏づけをいまやっておると私は思うのですが、なぜそういうことをやったか、その点を聞かしてください。
  180. 鹿野義夫

    ○鹿野説明員 熊谷委員会が賃金、所得、生産性の関係について研究をいたしましたのは、経済社会発展計画におきまして、やはり経済の成長と賃金、生産性あるいは所得、さらに物価というものの関係について十分意を尽くしてない点があるので、大いにこれはさらに検討をすべきであるということで宿題になっておったのでございます。それを熊谷委員会が受けまして、学者の立場から五人の先生方が約一年にわたって検討になられたわけでありまして、それはまさに生産性と広い意味での所得、賃金を含めた意味での所得と物価、それと成長との関係はどういうふうになっているかということを検討されたわけでございますけれども、その中で、やはりいまや各先進国で問題になっている所得政策という問題、つまり諸外国では賃金と物価の関係をもっぱら政策的には所得政策という関係でとらえている面が多いのでございますが、現在所得政策につきましては各方面でいろいろ各様に議論されているけれども、それについての一定の概念規定が十分にできてない、いわば共通の土俵でもって議論がされてないという点がございますので、その点について基礎的なかつ理論的な検討をなされたわけであります。  簡単に申し上げますと、所得政策というものは必ずしも賃金だけを対象にすべき問題でなくて、その他の所得についても同様に検討した結果考えていくべきものであるという点が一つ。それから成長と物価との両立をはかっていくためには、従来のような需給調整の関係のみをもってしては、これからの経済ではなかなか両立することが困難になってくるだろうということから、できるだけ高い成長のもとに物価の安定ということをねらう、そういう政策が所得政策であるというふうに考えるべきであるということ。それから、所得政策というものは政府がそれを強制的に指導するとかいうことではなくて、民間の自主的な活動に待ち、それを政府が誘導していくというふうな形でやっていくべきものであるというふうなことが、本質的に議論されておられる内容でございます。
  181. 近江巳記夫

    ○近江委員 もう一度お聞きしておきますが、物価安定と通貨価値の安定と、これはわれわれが一番大事と思っているわけです。しかしこの辺のところを、経済成長のためにはやむを得ないというその辺のところを、ほんとうにそう思っておられるのかどうか。われわれはあくまでも、経済成長を維持しつつ物価の安定あるいはまた通貨価値の安定はできる、このように主張しているわけです。皆さん方はできないという考えに支配されている。その点をもう一度明確にひとつ政務次官と局長に聞いておきたいと思うのです。
  182. 鹿野義夫

    ○鹿野説明員 一般の経済学者も、経済成長と物価の関係には一つの関係がある――経済成長が非常に盛んでありますと失業率というものがだんだん少なくなりますね。失業率と物価との関係には、いわゆる有名なフィリップス・カーブというカーブがあって、一応相関的な関係があるということを論じております。そういう意味では、かなり多くの学者が成長と物価とにはある程度関係があるということを認めているわけでございますが、理屈からいいますと、完全に需給調節がうまくいった場合に、そして世の中が完全な自由競争で動いているということを仮定した場合には、理論的にはかなり高い成長であっても物価が非常に安定するということが考えられるというように思いますけれども、実際問題としては必ずしも十分な需給の調節が部分的には行なわれない場合があり得るし、また競争によって完全に自由市場の経済が各分野全部にわたって行き渡るということも実際問題としてはなかなか困難であるというふうなことがございますので、両面から考えていくと、かなり高い成長をした場合には同時に物価が上がってくるというのが、多くの国においてごく最近においては特にそうでございますけれども、わが国においても実績的に認められているということをわれわれも考え、またかなり多くの、ほとんどすべての学者がそういうふうに論じているかと思います。
  183. 藤井勝志

    ○藤井説明員 ただいま局長から答弁があったように、私もそうつけ加えることはございませんが、経済が安定成長しながら物価はなだらかに推移するという、これが理想だと思うのです。ただ、過去の実績を見ると、われわれが一円出せば十分一日楽しめたというときの生活状態と現在と、どちらが生活が向上しているかという過去を振り返ると、そこに経済の成長のねらいは結局生活の向上ですから、その生活をより向上さしておるかどうかという差し引きの相対的な観点から考えると、現状のこの推移は、安定した経済の発展を遂げつつあるというふうに思うわけでございます。理想はやはり経済が成長しながら物価は安定しているということがいいわけですけれども、現実の状況は、あながちそれに固執して経済の成長をとめてはいけないという面もある。だからただいま局長から答弁のごとく、実際問題としては、ある程度物価も上がるが、それ以上に経済が成長するという方向を経済の現実は動いておる、また動かざるを得ない、このようになるのではないかと思います。
  184. 近江巳記夫

    ○近江委員 いま国民が一番望んでおることは物価安定ですよ。結局それをしかたないというような考えは、私は政策の放棄論以外に何ものもないと思います。どこに国民の豊かな生活がありますか。いま富国貧民とまでいわれているのですよ。一般のサラリーマンの生活などは全部赤字です。ボーナスでやっと埋め足しておるというような状態ですよ。それじゃどうして、あなたの理想であるとおっしゃったところにポイントを置かないのですか。少なくとも政治のかじをとる者は、そこに心を置かなければいけない。私はそう思うのです。物価高で国民が泣いて、そして片一方では物価高で逆にもうけておる。しかもそのような状態で天下太平のような、それでいいのだというような考え方で、どうやって国民が浮かび上がれますか。あなた方が頭を切りかえなさい。国民の犠牲をそのままで置いておいていいのですか。  次に聞きますが、経済成長を維持しつつ物価を安定させる道はいろいろとあろうかと思いますが、一つは高生産性部門、大企業分野における生産性向上の成果を価格に反映させて値下げをどんどんやらせる。たとえば電力料金あるいは自動車、鉄鋼、そうした大型企業の製品でありますが、先ほども下がっておると政務次官もおっしゃっておりましたが、下がるというよりも私は横ばいということばを使ったほうがいいのではないかと思うのです。ここにおいてそれをやらせるためのそうした条件を整備する。一方において低生産性部門の価格がある程度上がっても、いま申し上げたように大企業のそうしたものをどんどん値下げしていければ、低生産性部門の上昇があっても相殺される。そして全体としては物価が安定できる。それがなぜ幻想であるか。その辺のところをもう少し説明願いたいと思うのです。お二人からお願いします。
  185. 三宅幸夫

    ○三宅説明員 通産省所管の、御指摘のありましたいわゆる大企業につきましては、相当の大量生産のメリットがあがっております。コストの下落に伴いまして、それにつれて価額が下っております。  先般、産業構造審議会の基本問題小委員会で、比較的大企業につきまして昭和三十五年を一〇〇といたしました四十一年の価格を調べましたが、大部分の品目につきましては、価格ダウンがずいぶん行なわれております。ただし海外原料資源が上がっておる、あるいは若干国内で農産物を中心にいたしまして原料コストが上がっておるというものに立却いたしました製品につきましては価格が上がっておりますが、大企業につきましては価格は下がっております。ただし日銀の卸売り物価指数その他におきましては、低生産性部門の分野も価格指数の形成上合成されておりますので、卸売り物価指数は、先ほど政務次官が説明いたしましたように、昭和四十一年度一〇一・四、昭和四十二年度は一〇〇・八というぐあいで、大企業製品は下がっております。
  186. 八塚陽介

    ○八塚説明員 私ども物価担当局であるからということではございませんで、政府一般としまして、先生のお話しになりますような、物価は幾ら上がってもいいのだ、成長さえすればいいのだというような態度では決してございません。物価と成長とをどういうふうなかね合いでやっていくかということで、しかも物価が低位であるということは最も望ましいというふうに考えておるわけでございます。  いまお話しになりましたような物価上昇が、しからば、大企業製品が横ばいないし下がっておってもどうして上がるのだということにつきましては、まず卸売り物価というものは大体生産財であるとか、機械であるとか、そういうもののウエートがかなり多いわけでありますから、卸売り物価のほうがやや工業、高生産性部門の状況をよくあらわすわけであります。それに対しまして、われわれ日常生活にとっての物価問題を考えます場合には、もちろん消費者物価指数でありますが、その中には御承知のようにまず食料品等の低生産性部門からの産物、あるいは根っこは大工業の供給するものでありましても、具体的な消費物資までに加工するには中小企業製品であるという必要がある物資、そのほかいわゆるサービス料金というようなもののウエートとがきわめて高いわけであります。したがいまして、現在の段階では、残念ながらそういう比較的生産性の上がりにくい部門のものあるいはサービスが、消費者物価指数の中で相当のウエートを占めておるということによりまして、現在の段階では消費者物価指数が上がっているということでございます。
  187. 近江巳記夫

    ○近江委員 物価安定推進会議の中山会長も私が言ったそういう議論をやっておられるわけですよ。政府が一番信頼して会長にされておる中山さんがそういうような説を持っておるわけです。またいままで物価問題懇談会あるいは物価安定推進会議、いろいろなそういう数多くの勧告がなされておりますが、ほとんどそれが実行されておらない。そういうような懇談会とか、そうしたものを設けて国民にいかにも物価安定に政府は努力しておりますと、ゼスチュアだけで、全く隠れみのにそういうような善良な学者などを使っておる。私はそういうふうに思えてならないのです。一体どこが責任をもって本気になって物価を安定させるのですか。政府がいままでやったことを、物価安定のためやった特におも立ったことを、一ぺんここで言ってください。
  188. 八塚陽介

    ○八塚説明員 中山先生がどの時期にどういうふうにおっしゃいましたか、ちょっと具体的に私どのときの発言がそうであったか覚えておりませんが、しかし一般的に私どもも決して否定をいたしておりませんことは、やはり低生産性部門というのはなかなか早急に生産性が上がらないだろう。それから一方、生産性がどんどん高くなる部門の供給する物資については、これはやはり長期的に見て価格は漸次低下するであろう。現にそういう例がいろいろあるわけであります。ただ、そういうものの組み合わせからいたしまして、どうも低生産性部門のものなりサービスがウエートとして大きいために、平均いたしましてもなかなか一般水準が下がらないということを申し上げておるのでありまして、生産性の高い部門の産品の価格が上がっておっていいとか、あるいはそのままでいいということを考えておるわけではございませんし、実績もそういうふうになっておるというふうに考えております。  なお、政府の物価対策というものは一体効果があるかないか、物価政策というものは効果があるかないかというお話でございますが、御承知のように、物価政策物価対策というものは、もう先ほど来申し上げておりますように、たとえば食料品の価格を下げるという場合には、当然農業構造から、あるいは農産物を扱う流通段階から、すべてにまたがっての対策が必要であるわけであります。きょうこれだけの金を出したからあしたこうというようなものではなくて、やや長期的に継続的に公共投資をやる、あるいはそういう姿勢で施策を進めていくというようなことで、次第に生産性を上げていくという必要があるわけでございまして、そういういろいろな政策について、まだ、これをやっているやっていると言いながら十分効果が出ていないじゃないかというおしかりにつきましては、むしろ結果論としてまだ十分効果が出ておりませんけれども、そういう点についてはいろいろな施策をやっておるのであります。
  189. 近江巳記夫

    ○近江委員 低生産性部門がなかなかそれだけの生産性をあげてこないという話でありましたが、それなら低生産性部門にどれだけの力を入れてきたか。あるいはこの委員会中小企業のそうした問題についてもどれほど口をすっぱくして言っておるか。いつも予算要求をしても、政府はばっさり削るし、中小企業に対して全く力を入れていない。ほんとうに大企業偏重政策、もう一言の言いわけもできない現在の政府のやり方じゃないかと思うのです。やりもしないでそれだけの能率があがるわけば絶対にありませんよ。あなた方がそう思うなら本気になってそれを実行していくべきだ、このように思います。そういう政府のやり方が、いいかげんな口ばかりのことをやっているから、推進会議でも有名な都留教授という人もおりますが、最近巷間においては辞表をたたきつけたというようなうわさも流れておる。その辺のいきさつは、それはうわさですから、私も別になにもそれをどうこう言うわけじゃありませんが、そういうようなうわさが流れること自体もそういうような学者の善意を踏みにじっておる。ですから、本気になって政府は国民の物価の安定に取っ組んでいくかどうか、この点を皆さんに真剣に私は考えてもらいたいと思うのです。今後この物価の安定についてあなた方として、こまかい部分はいろいろあるでしょうが、具体的に今後このようにやっていく、そうして物価を安定させる、その所信の一端をここで述べてもらいたいと思うのです。次官と局長から。
  190. 藤井勝志

    ○藤井説明員 今後の物価安定対策に対する方針と申しますか、かまえ、これをお答えする前に、いままで政府は口先ではやるやると言っているが、何もやっておらぬではないかというおしかりに対して、決して弁解を申し上げるわけではございませんけれども、これはなかなか一ぺんに飛躍的な予算措置ができないことはまことに遺憾に思っておりますけれども、たとえば先ほど話がございました中小企業関係はなかなか生産性向上がしにくい業種でございます。これに対して政府は、積極的に中小企業三機関に対してここ数年来相当財政投融資をふやしてきておりますし、具体的に申しますと、昭和三十三年には貸し付け規模が千三百億であったものが、昭和四十三年の当初予算においては七千六百億円の貸し付け規模にふえておる。あるいはまた中小企業近代化資金が昭和三十年、最初の制度ができたとき二億でありましたが、これがいわゆる中小企業振興事業団に吸収されて、昭和四十三年の予算措置は、繊維関係の構造改善を入れますと二百四十七億、こういった線に一応ふえておるという事実はひとつ御了解いただきたい、御認識をいただきたい、このように思います。  ところで物価対策に対する基本的なかまえ、安定するための努力目標は、やはり先ほどもお話を申し上げたような、いわゆる低生産性部門の近代化、構造改善、こういうことに尽きると思うのでありまして、やはり中小企業の構造改革を急がなければならぬ。農林水産関係の部門の生産性向上、これは生産の現場の近代化と同時に流通関係の合理化、こういったこともございましょう。それにサービス関係の仕事にあたっても、環境衛生金融公庫をつくり、いろいろ努力をしている、こういったことで、これは全体的に、国民とともに、国ぐるみで問題の解決に当たらなければなかなか解決できない。決して政府側の責任を転嫁する意味ではございません。先ほど申しましたように、賃金と物価との関係も関連をしておるわけでありますから、そこら辺を全体的に調和のある総合的対策ということによって、時間をかけ、まじめに一つ一つ積み上げていくということ以外に妙案はない、こういうふうに思うのでございまして、この政府の立場において最善を尽くす、この点はひとつ御理解を賜わり、今後も一そうの御鞭撻をいただきたいと思う次第でございます。
  191. 八塚陽介

    ○八塚説明員 いま政務次官のお話しになりましたことに何らつけ加えるところはございません。私どもも物価政策に携わっておる者といたしまして、物価政策そのものが裏返しの経済政策であるということで、短期的にもあるいは長期的にも、あるいは構造的にもいろいろな手を打って、あるいはさまざまな手法でやっていく必要があるという意味におきまして、あらゆる政策に物価という観点を入れて運営されることをあらゆる機会に努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  192. 近江巳記夫

    ○近江委員 非常に抽象的な、あらゆるところに物価の安定を考えてやっていきます、なるほどそうかもしれませんけれども、そういうことばかりをこの委員会でいつもいつも言っておって、何ら実行された効果は出ていない。中小企業に力を入れている入れているというけれども、総予算の〇・四%、そんな予算で何が中小企業に力を入れておるか、全部私は反論していかなければならないと思いますけれども、水かけ論になりますし……。そういう点において物価問題については全く無気力の惰性というか、どうしようもないのだという皆さんに退廃的な私は何か空気が漂っておるように思うのです。そういう点について、もちろんこれは根本的な経済全般にわたる大きな問題であります。それだけに確かになかなかたいへんなことはよくわかりますが、もっと熱意のある真剣な取り組みをして、そうしてこうすればこうなるというその力強い施策をもって国民の声にこたえるべきである、このように私は思います。その点を要望して次に移りたいと思います。  自動車の問題について聞きたいと思いますが、これは物特で私のほうの有島委員からも若干触れておりますし、多少ダブる点はあろうかと思いますが、まずその問題から入っていきたいと思います。  最近自動車の値下げが発表されました、ところがこの値下げを発表された車種というのは、会社側の発表によると、生産を減らしていく、そうして今後は新車種を主力として生産をしていく、こういうような方向にあると聞いておりますが、これでは実態として値下げにはならぬと私は思うのです。単なるモデルチェンジで、消費者にどれだけのプラスがあるか、結局値下げというキャッチフレーズで自社製品に飛びつかせる一種のトリックではないかと私は思うのです。こういうような消費者を欺瞞するような販売政策というものは、公正な取引という観点からこれでいいのかどうかという問題なんです。この点について通産と公取の見解を聞きたいと思います。
  193. 吉光久

    ○吉光説明員 御指摘いただきましたように最近一、二のある車種につきまして、その車種の生産規模が大量生産規模に達しました関係上、その利益の一部を消費者に還元するというふうな趣旨から、車種によって値下げ幅は違いますけれども、二万円から四万円程度値下げが行なわれたわけでございます。ただその際、同時にいままたお話ございましたように新しい機種の、上級の車種の発売が発表されたわけでございます。したがいまして、そのために新しい車種をつくります関係上、全体の生産計画の一部を修正いたしまして、従来の値下げ車種につきましては一部生産計画内容を変更することとなったわけでございますけれども、このため今後その値下げ機種につきましてその生産を打ち切るのではないかというふうな憶測があるように伺っております。ただ今回値下げを行ないました車種は、いずれかといいますと輸出の本命車種でございまして、そのために必要なサービス部品をこれら仕向け先に大量に送付されておる現状でございますので、その生産を近く打ち切るというようなことは実は全然考えられないのではないだろうかというふうに考えられますし、またメーカー側といたしましても、上級車種への需要の移行も考えました上で、先ほど申し上げましたように生産計画を一部修正はいたしておりますけれども、その車種についての需要があれば、これについていつでもこれに応ずる体制というふうなものを整えておるわけでございまして、御指摘のような懸念は現状においてはないというふうに私ども考えております。
  194. 柿沼幸一郎

    ○柿沼説明員 自動車の価格の広告が不当に顧客を誘因する手段として使われたといたしますと、それは好ましくない現象であることは言うまでもございません。それが現在の不当景品類及び不当表示防止法違反になるかどうかという点になりますと、現在御指摘の事実をもって直ちに法律違反になるというようなことには簡単になりにくいのではないかというふうに考える次第でございますけれども、最近特に自動車関係におきましては広告宣伝の分量もふえておりますので、業界においてできるだけその内容を適正なものといたすために、相互に自粛の手段といたしまして公正競争規約を結成するというような機運が出ております。公正取引委員会といたしましても、そういった機運を助長させて、できるだけ公正な広告活動をやっていきますように指導してまいりたいというふうに考えております。
  195. 近江巳記夫

    ○近江委員 あなた方の答弁実態とは案外食い違いが多いように思うのですが、それは率直にそのまま受け取りましょう。それで、そのような生産を、現在人気車種となっている生産を一方的にそのようにやめていく、そうしてニュータイプに切りかえていく、実際はこういう方向になっておるのですよ。ありませんとか、生産が足らないとか、現在そこのところの理由は幾らでもそれはメーカーでつけるでしょうが、実態はそういうような方向に来ておる。そうなってくれば、かってにニュータイプにばんばん切りかえていく、そうすると私は消費者の選択権を奪っているのではないか、あくまで巨大企業の横暴きわまる行為としか言いようがないと私は思うのです。こうした消費者無視の寡占企業の態度、これについて実態はあなた方がおっしゃったそれとは食い違いがある。その辺のところをそれを事実とした立場においてどのように考えていらっしゃるか、この辺を通産省と公取に聞きたいと思うのです。
  196. 吉光久

    ○吉光説明員 すでに先生御承知のとおり、自動車の車種につきましてはいろいろの車種がございまして、いずれかといいますと現状は自動車会社自身の販売過当競争ぎみと申しますか、それが現実の姿ではないだろうかというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、ただ単に消費者の選択権を奪って、かってに一方的に新しい車種を発表しておるというふうなそういう事態ではなくて、むしろお互いの会社が競争規制をやって販売量の確保、拡大につとめておるというのが現状ではないかと思うわけでございます。なお先ほど公正取引委員会のほうからもお話がございましたように、現在の自動車業界の中でも公正な取引をするための公正競争規約、これは特に広告宣伝費等の自粛にもつながる問題でございますけれども、そういう公正競争規約結成への動きがございまして、そういう意味でできるだけ御心配をかけないようにという意味の措置を現にとりつつあるわけでございます。
  197. 柿沼幸一郎

    ○柿沼説明員 独占禁止法の立場からこれらの御指摘の問題に対処する範囲は限られておると存じますけれども、私どもといたしましては、一般消費者という角度に立ちまして、そういった寡占企業の行動について、与えられた手段の範囲内でできるだけ監視を強化してまいりたいというふうに考えております。
  198. 近江巳記夫

    ○近江委員 これは独禁法の問題でありますが、自動車の末端価格というのは完全に定価販売というのが守られておるわけでありますが、なぜこのような現象が起きておるか、この辺のところを通産と公取にお聞きしたいと思うのです。
  199. 吉光久

    ○吉光説明員 先ほどもお答え申し上げましたように、いま自動車業界、特に自動車の販売業界におきましては、非常に猛烈な競争が行なわれておりまして、実は私ども逆の意味の心配をいたしておりますのは、要するに販売店で実際の収益が赤字のままで経営を継続している。と申しますのは定価販売をやらないという意味でございます。自分の顧客を求めるために相当の値引きをしてこれを顧客に売っておるというふうな販売店も相当多数あるわけでございまして、むしろそこら販売店対策というふうなものについて、さらに秩序ある競争と申しますか、そこらができるようなそういう手段というものはどういうふうな形であればいいかということを別の意味で実は心配しておるのが現状でございます。
  200. 柿沼幸一郎

    ○柿沼説明員 自動車の末端価格につきまして、一応メーカーといたしましてこういう価格で売ってほしいという意味での推薦価格と申しますか、そういった価格はきめてあろうかと思われる次第でございますけれども、実はそれ以外にいろいろな種類のサービスの提供でございますとか、部品の提供でございますとか、それから販売促進費の支出でございますとか、現実の取引価格というものは決して表面に推薦されておるような固定された価格には私どもなっておらないというふうに見ております。ただ、非常に国民経済の中にも大きなウエートを占めておる商品でございますので、その辺の価格決定のしかたの推移につきましては、私どもといたしましても十分関心は持っていきたいというふうに考えております。
  201. 近江巳記夫

    ○近江委員 各県ごとに系列下の販売会社があるのは当然でございますが、これは別人格の会社ですね。それが全国一本価格に一応統一をしておる。実態はそれより下回っておるというお話がいまあったわけでありますが、法的な立場から見ていったときに、販売会社の相互間にそうした価格協定があるのではないか、あるいはまたメーカーあるいはその卸会社が再販価格を表示をしておる、いわゆるやみ再販が行なわれておるのではないか、この辺に対して公取はどのように考えておられますか。
  202. 柿沼幸一郎

    ○柿沼説明員 私どもといたしまして、自動車の販売価格につきましては重大な関心を持っておりますけれども、現在までのところ、その価格について協定が行なわれておるあるいは再販価格維持行為が行なわれておるというような事実はつかんでおりません。
  203. 近江巳記夫

    ○近江委員 自動車の目ざましいこうした生産、私は大量生産をしていけば価格が下がってくるのは当然だと思う。しかしながら実態としては自動車価格というのはほとんどくぎづけになっておる。なぜ下げないかという点については、担当の人が、そんなに無理しなくてもどんどん売れているのですから、こういうような答弁をしておる。それは私は全部であるとは言いませんがね。全く典型的なそういう管理価格制といいますか、そういう存在を認めておる。ですからその辺のところをもっと――これは何も自動車だけではありませんけれども、先ほど申し上げた大企業製品ですね、その辺のところの指導というものをどのようにやっておられるか。その辺のところを通産、あるいはまたそれに対する見解を公取から聞きたいと思うのです。
  204. 吉光久

    ○吉光説明員 御指摘ございましたように、まさに大量生産に入っておる車種も相当あるわけでございまして、現在同じ車種について一番大きくつくっております車について申し上げますと、昭和三十八年の時代に比べまして、約二割の価格の引き下げになっております。中間的に、あるものにつきまして約一割前後の引き下げになっておりまして、五年間で二割の価格引き下げが現実に行なわれておりますので、自動車会社としてもそういう点には相当配慮いたしておるのではないであろうか、このように考えております。
  205. 柿沼幸一郎

    ○柿沼説明員 わが国の自動車の価格につきましては、ただいま重工業局長から答弁申したような傾向にあると私どもも見ておるわけでございます。  ただ一方、国際競争等の観点から見まして、わが国の自動車業界は寡占の方向を向いて動いておるわけでございます。末端商品につきまして、メーカーといたしましては、その場合にやはり重大な関心を持ってある種の管理が行なわれていくわけでございますけれども、そういった管理が国民経済的な観点から見て適正な、限度を越えるものになるかどうかというような点、私どもといたしましても重大な関心を持たざるを得ないわけでございます。そういった値ぎめの仕組みその他につきましては、今後とも十分関心を持っていきたいというふうに考えております。
  206. 近江巳記夫

    ○近江委員 通産省の局長はいま二割ぐらい下がったという。しかし輸出用の車を見てみますと、いろいろな車で多少の値幅は違うと思いますが、FOBで大体一千ドル、ところが国内価格を見れば、それから何十万高い価格で売っているわけです。幾ら輸出といっても、まさか出血をしてまで輸出をするわけがない。そうすれば、まだまだ値が下げられるはずですよ。その辺のところをどうとらえて、どのように行政指導なさっているか。いまの答弁では成り行きまかせというような感じですよ。その辺を答えてください。
  207. 吉光久

    ○吉光説明員 先ほど国内価格についてお答え申し上げたわけでございますけれども、各車種脚、能力別にながめてみました場合に、現在国内で売られている値段というのが、それぞれの外国車がその国で売られている値段というものにおおむねひとしいくらいの水準までに現在達したわけでございます。ただいまのお尋ねの輸出価格の問題でございますけれども、FOB千ドル程度でありまして、外国の輸出先で売られます場合、これはもちろん船賃もかかりますけれども、同時に先方におけるいろいろな諸掛かり等かかりまして、大体千九百五十ドル程度というふうに約倍の販売価格になっておるわけでございます。  もちろん、輸出用につきましてFOB価格が国内ものに対して低いという点につきましては、これは輸出用につきましてはいろいろの金融上の優遇措置がございますとか、あるいは大量にある一手の販売店のほうにおろされるための諸掛かりの負担が軽減されるという問題でございますとか、あるいはまた輸出用の車につきましてはいわゆる自動車等にかかっております物品税が免税になっておりますとか、いろいろな要素がございまして、したがいまして、FOB価格と国内販売価格をそのまま横に並べますと、何かいかにも安く出ておるように見受けられるわけでございますけれども、それらの諸要素を勘案いたしますと、まあまあ妥当なところではないであろうか、このように考えております。
  208. 近江巳記夫

    ○近江委員 それでは、物価の値下げ、安定についてあらゆる努力を払いますという先ほどの皆さんの答弁、そうした製品の値下げについて努力をしていきますという答弁とえらい食い違いがあるように私は思うのですよ。全然通産省としては自動車の価格はもうこれでいいのだ――大量生産をやって確かに原価はどんどん下がっているのですよ。これは担当者が言っているのですから。ですからその辺のところをもっと行政的に、値下げ等のそうした勧告なり何なりに力を入れる気はあるのかないのか。そのところが私は非常に弱々しい、そういうぼやけたような感じがするわけです。そこのところをもう少し説明してもらいたいと思うのです。
  209. 吉光久

    ○吉光説明員 お話のとおりでございまして、大量生産方式によりましてコストダウンされたような車種につきましては、やはりそこで得られました利益というものは消費者に還元されてしかるべきものである、このように考えておるわけでございます。
  210. 近江巳記夫

    ○近江委員 そのように大量生産によって利益が上がってくるということは、通産省としても認めていらっしゃるわけです。  ところで、話はちょっと飛びますが、最近の交通事故の問題であります。年間実に八十万人、一億として百二十五人ですかに一名は一年間に死亡またはけがをする。これは戦争以上の大きな犠牲者を出しているわけです。その原因は、確かに歩行者の不注意もあろうし、あるいはまた運転者のミスもあろうし、自動車の構造上の欠陥もあるでしょうし、いろいろとあると思うのです。しかしいずれにしても車の構造的なそういう欠陥による事故、負傷者というものも相当数に上っているわけです。そこで安全基準の問題が非常にやかましく言われて、おいおいと改善されつつある、私は非常にけっこうだと思いますが、しかし法律的に安全基準というものをそのように求められるのなら値上げもやむを得ない、そういうようにメーカーは言っているわけです。それじゃ、消費者に還元をどんどんしていくべきだといまおっしゃったことと実態とは違うわけですよ。メーカーのそういう態度に対して――安全装置というものは当然人命にかかわる問題です。やっていくのがあたりまえなんです。それを言われたからといって値上げせざるを得ない、そういう態度をそのままに通産省として見ていっていいのですか。その辺のところを局長と次官に聞きたいと思うのです。
  211. 吉光久

    ○吉光説明員 来年の四月一日から一部の車につきまして安全基準が強化され、さらに十月安全基準につきましての義務的な規定がだんだんとふえてまいっていくわけでございますけれども、それらに伴いましていろいろの諸経費の負担がかかることもまた事実ではなかろうかと思うわけでございます。ただ先ほど来お話し申し上げましたように、あるいは御指摘いただきましたように、大量生産方式によりましてコストダウンの進んでおる車種もあるわけでございますので、できるだけこれらの安全基準強化に伴う諸負担というものは生産の合理化の中でできるだけ吸収して、これが価格値上げに反映されないということが一番望ましいことでございまして、私どももまさにそれを期待いたしておるわけでございます。
  212. 藤井勝志

    ○藤井説明員 ただいま局長お答えしたとおりでありまして、担当局は常時熱心にメーカーに対して以上申しましたような指導をやっておるわけでございまして、今後もこの保安基準を社会生活に沿うて整備するとともに、同時に価格は大量生産のメリットを生かしてだんだん下げていく、こういう方向に努力したい、このように考えております。
  213. 近江巳記夫

    ○近江委員 そのようにできれば期待をしておりますと、それも非常に希望的な観測というか、一方的に向こうの、そうしたメーカーの出方をただ待っておるという非常に弱々しい感じなんですよ。それじゃ、あなたはそう思うなら、そのようにすべきであるということを今後言っていくのですか。何も言わないで、ただそのようにやってもらいたい、やってくれたらいいなあと、ただそう言うだけでやっているのですか。どうなんですか、その点は。
  214. 吉光久

    ○吉光説明員 自動車の車種によりまして現在も価格はいろいろと異なっておりますし、同時にまた、大量生産と申しましてもまだ少量生産の段階にしかないというような車種もございますし、一律的に申し上げることは非常にむずかしいと思うわけでございますけれども、先ほど申し上げましたようなそういう基本的な理念は当然に貫かれるべきであるというふうに考えておりますので、機会に触れていまお答え申し上げましたような形で徹底さしてまいりたい、このように考えます。
  215. 近江巳記夫

    ○近江委員 この前の委員会で私は自動車のそうした排気音あるいは排気ガス等の問題、さらに安全装置等の問題について質問したわけでありますが、御承知のように最近の騒音公害というものは非常にふえておるわけです。私は大阪でありますし、大阪のデータを手に入れたわけでありますが、陳情から大阪市の公害の状態を見ますと、騒音、有害ガス、悪臭のうち、騒音については三〇・七%、有害ガスについては七・四%、悪臭については一五・九%、合計五四%の大きなそういう内容になっておるわけです。この中で自動車によるものがどれだけあるのかということは、それはこれではわかりません。しかし、その担当官に聞いてみると、自動車のそういうような騒音やガスについては、これは要するにつかまえようとしたってつかまえようがない。どの車が出しているのかわからない。これは全部の車が出しているわけです。したがって、こういうものは公害として被害届けなんか全然ないわけです。要するにこれは全般的な騒音、有害ガスあるいは悪臭のそういう陳情の比率でありますけれども、とらえようのないそういう公害でどれだけ多くの人が泣かされているかわからない。  そこで、私はこの騒音と排気ガス等の問題について若干お聞きしたいと思うわけでありますが、私は過日、この自動車の排気音の規制基準について質問しておりますが、そのとき運輸省の方が、自動車が平たんな舗装路面を速度三十五キロメートルで走行する場合に、走行方向に直角に左側七メートル離れた位置における騒音が八十五ホン、そういう運輸省令の規定というものはどこに基づいてできたのか、自分は制定当時担当してないから知らないと、まことに無責任な答弁をいただいたわけでありますが、根拠がなくて八十五ホンなんときめるわけはないわけですよ。その根拠をきょうの委員会でもう一度お聞きしたいと思う。
  216. 堀山健

    ○堀山説明員 基準をきめましたときは二十六年でございまして、その当時は騒音とかそういう問題はあまりなかったと思います。そこできめましたのは、当時の車のいろいろな条件を勘案いたしまして、可能な限り低い音はどういう音かということで八十五ホンにきめたということであります。しかしながら、結果といたしまして、現在世界各国でこの自動車の音について規制しておる国もございますし、ない国も多うございます。それを比べてみますと、現在の時点におきましては日本は決して音を高く規制しておるということにはなっていないようでございます。
  217. 近江巳記夫

    ○近江委員 この騒音規制法の施行令がこの十二月から変わるということがいわれておりますが、それを見てみますと、騒音基準というものは住宅地で昼間西十五ホンから五十ホン、朝夕それから夜間が四十ホンから四十五ホン。この基準自体どこから出たかという問題が一つありますが、この自動車の騒音規制の基準はたったの一台で八十五ホンです。これは昼夜、場所を問わずそういうように規定しておるわけでありますが、それは結局エンジンに負担がかからない走行時の音が八十五ホンということでありますから、発進時のそういうものすごい音というものは百ホンあるいは百二十五ホンでもいい、幾らでもいい、ざる法的な基準じゃないかと私は思うのです。一体この騒音規制法というものができて、どうしてこのようなちぐはぐな行政をやっておるのか。この辺われわれ理解できないわけであります。そこで、厚生、運輸、通産の三省からひとつ意見を聞きたいと思うのです。
  218. 武藤き一郎

    武藤説明員 ただいま先生の御指摘になりました騒音規制法の基準でございますが、騒音規制法は工場、建設騒音とを規制するわけでございますが、先生いま例をあげられました基準の問題は、工場のへいのちょうど外ではかる音を、それぞれの住宅地域あるいは工業地域等の区域に分けまして、私どもが現在各省と折衝いたしまして、大体いま内定をして、近く政令で認めようというふうに考えていることでございまして、いま先生がおっしゃいました自動車の音そのものは自動車が走行する場合に一定の距離において基準をきめておられるわけでございまして、その点はそういう点で違うわけでございます。
  219. 堀山健

    ○堀山説明員 騒音規制法では工場騒音と作業騒音といいますが、そういう音を規制されておりまして、それぞれある一定の距離からいって何ホンという言い方でございます。自動車も、先ほど御指摘ありましたように、ある一定の条件で走っている場合にその車から何メートル離れたところではかった音がこうだということで、発生源からある距離を覆いてはかった音が幾らということについてはおおむね同じような考え方ではないかと思います。ただ自動車の場合には動きます。片方の工場とか作業場は動きませんので、その辺が違うと思います。
  220. 吉光久

    ○吉光説明員 御指摘ありましたとおり、自動車の走行騒音というものは、工場の騒音でございますとか、あるいは建設の騒音でございますとかと並んで、やはり非常に大きな問題をかかえておるというふうに理解いたしておりますので、したがいまして私どもといたしましても、いま運輸省からお答えございませんでしたけれども、運輸省と常に共同いたしまして、新規の開発車種につきましては、騒音を具体的な法令できめておる以下の基準にできるだけするように、これは運輸省のほうでも御指導いただいておりますけれども、私どものほうもメーカーに対しましてそういう指導を現にやってまいっておるわけでございます。やはり何と申しましても、いろいろの騒音につきましてその騒音の防止技術の開発ということもそれぞれの騒音の発生源に応じまして違ってまいると思うわけでございますけれども、事自動車の関係につきましては、自動車安全公害センターにおきます騒音防止技術に関する研究を現在やっておるわけでございますけれども、さらに一段とそれを強化拡充してまいりまして、その成果が自動車の中に取り入れられるようにできるだけ積極的に努力してまいりたい、このように考えます。
  221. 近江巳記夫

    ○近江委員 それじゃお聞きしますけれども、実際市販されている自動車ですね。いろいろな車種がありますが、大まかにいろいろ皆さんのほうでおあげになればいいのですが、大体どのくらいの辺でそれが実際に走っているのか、実態がありましたら教えてください。
  222. 堀山健

    ○堀山説明員 先ほどお話ししましたように、自動車の走行騒音はある一定の条件のもとで八十五ホンというふうにきめております。それは道路運送車両法の保安基準という基準できめておるわけでございますが、この基準はすべての車、どんな特殊な車であっても、どんな古い車であってもこれに合わなければならないという考え方でございます。そこで一方におきましては、技術開発のされました新しい車、また車によって非常に音が下げやすい車と下げにくい車とあります。たとえばいまから申し上げますけれども、中、小型の乗用車ですとわりあい下げやすい。しかし大型のトラック、バスになりますとなかなか下げにくいという面がございます。そこで民間なり役所のいろいろな研究指導の結果、現在のところ平均的に申し上げますと、乗用車については、新しく出荷される車、要するに新車につきましては六十四ホンから七十三ホン、それから小型のトラックは六十八ホンから七十四ホン、普通型のトラックでありますと七十三ホンから七十九ホンの間、バスにつきましては七十五ホンから八十一ホンの間、小型の二輪車ですと七十二ホンから八十ホン、私ども指導した結果、大体その範囲内に入っておるのが現状でございます。   〔委員長退席、中村(重)委員長代理着席〕
  223. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうしますと、バスが八十一ホンですか、これがトップになっておるわけですが、今後技術の改善で幾らでも――幾らでもというのはなんですが、私はもっと下げられると思うんですね。それをなぜ八十五ホンの状態に置いておくのか。法的に頭を押えられるとみんな一斉に努力をするわけですよ。それで将来もっとこの数値を下げる意思があるかどうか、その辺をまずお聞きしたいのです。
  224. 堀山健

    ○堀山説明員 それは車の種類によって、技術的に非常にむずかしいものとむずかしくないものがございますので、その辺は一律に同じ数値でしたほうがいいのかあるいは分けてやった方がいいのか、これは議論の余地があろうかと思います。  それからもう一つ、先ほど申し上げましたように、新車の場合はある程度下げられるわけでありますけれども、使っている車についてはやはり新車よりも若干ふえる。もちろん定期整備をするとか車両検査ということで使っている車につきましても途中でチェックする機会はございますけれども、最悪の場合でも八十五だというふうに私ども理解しております。やはり特殊な車となりますと非常にむずかしい面がございますので、基準的には八十五というものを将来はできるだけ下げたいと思いますけれども、実際の新車を型式試験をいたしますときにできるだけ数値を減らすということで行政指導をいたしていきたいと思います。
  225. 近江巳記夫

    ○近江委員 時間もなくなってきましたので、あとはずっと結論的に聞いていきますが、この前の委員会で騒音のことについて、特にそうしたマフラーの問題等についてもお聞きしたわけでありますが、そのときに必ず善処をします、このように答弁されたわけであります。その後関係各省において俗にいわれる雷族といいますか、大きな音を出すそういうマフラーについてどのような手を打たれたか、その経過を聞きたいと思います。
  226. 堀山健

    ○堀山説明員 九月二日に私どもの自動車局長から、地方の陸運局長、二輪生産者団体、販売の団体、それから自動車の整備をしておるものの団体あるいはユーザーの団体、こういう各団体に対しまして、問題になっておりましたマフラーをはずすとか、あるいは特に新車の場合には私ども全部ある一定の水準の中に入れておりますが、いわゆる規格外で特に音を出すようなマフラーを販売したり製造したり、こういうことについては現状の交通公害の関係からぜひ慎むようにという通達を出し、それぞれ各団体がどのように措置したかという報告も確かめております。   〔中村(重)委員長代理退席、委員長着席〕
  227. 吉光久

    ○吉光説明員 本年の八月の本委員会で御指摘をされたわけでございますけれども、通産省といたしましても、さっそく御趣旨の徹底をはかれという主張がございますので、マフラーの製造、販売に携わっております関係メーカーあるいはまた卸売り組合の方々を招集いたしまして、騒音の発生しやすいマフラーについての製造、販売を自粛するよう協力を要請いたしたわけであります。業界側は、先ほどの運輸省からの御要請、同時に私どもからの要請のせいかと思いますけれども、次のような措置を講ずるようにいたしております。  第一は、マフラーの正しい装着方法を詳しく説明いたしました説明書を作成いたしまして、マフラーの本体にこれを添付するということが第一でございます。それから第二は、取りかえ基準を設定いたしまして、これもまたマフラーの本体に添付するということでございます。そしてまた第三は、雑誌等に誇大広告等の記事が出ていたようでございますけれども、こういう雑誌等の誇大広告は自粛を申し合わせるということが第三点でございます。それから第四点といたしまして、マフラー等の販売を取り扱います自動車の部品の卸商組合、それから自動車用品のほうの卸売り組合におきましては、正しい使用のしかた、取りかえ基準の明示のないマフラーにつきましては販売をしないということを申し合わせることを決議いたしまして、この十月中旬の全国総会におきましてその点をはっきりと確認いたしております。  なお、先ほど運輸省のほうからお話しございましたように、ユーザーにもこの趣旨を徹底する必要があるということから、日本自動車連盟等のユーザーの団体の協力を求めますとともに、さきのモーターショーにおきましても、入場者にはそれぞれ啓蒙用のポスターを配布いたしまして、不良マフラーの使用防止の呼びかけを行なっておるわけでございます。
  228. 近江巳記夫

    ○近江委員 処置されたことについては私は非常にけっこうと思います。しかし、なかなか実施面においてそれがうまくいっていないことがたくさんあると思うのです。これは私は別に名前を申し上げませんが、一流のデパートでマイカー用の種種の部品、用品類の特売が行なわれておったわけでありますが、その現場に堂々と雷マフラーが並べられておるわけです。ですからそのことを言っても、それがどこまで実施できるか、この点が私は問題じゃないかと思うのです。この点は通産省なり運輸省なり耳に入っておると思いますが、その辺の事情を知っておられたら説明してください。示しがつかないでしょう、一流デパートでやっておるのですから。
  229. 堀山健

    ○堀山説明員 御指摘のとおり、某デパートにおきまして、十月の四日だったと思いますが、新聞に広告が出ました。私どもその前に、ちょうど二日でございますか、したばかりでございまして、これは徹底が足りないなということで直ちにその会社の仕入れ部の担当者を呼びまして、さきに通達いたしました内容をよく説明いたしまして協力を求め、さっそく取りやめるという措置をしてもらいました。同時に、日本百貨店協会というのがございますが、そこを通じまして、百貨店協会で扱う自動車用品の中で保安基準に合わない商品は売らないという指導を要請いたしました。百貨店協会といたしましては、十月八日にとりあえず東京都だけ協会の雑貨部会というものを構成いたしまして、その旨を徹底した。同時に日本百貨店協会といたしましては、地方の百貨店に対しても文書によってそれぞれ当局の趣旨のあるところを伝えたいということを考えております。
  230. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、この前私は安全装置なりそうした自動車公害のことについていろいろお聞きしたわけでありますが、実際調べてみると、船舶技術研究所の片すみで、これだけ多くの車が出回っておるのに、これだけ多くの公害を及ぼすのに、安全装置、重大な人命にかかわるそういう研究を片すみでやっておる。全くこれは行政の怠慢というしか私は言いようがないと思うのです。この点について、今後安全装置なりあるいは自動車公害の問題について、いままでと同じようなそういう態度でいかれるわけですか。この点を一つ聞きたいと思います。
  231. 堀山健

    ○堀山説明員 御指摘のとおり、運輸省におきましては、自動車の安全公害につきまして、船舶技術研究所の中に交通安全部、交通公害部と二つの部を設けておりまして、そこでやってまいっておったわけでございますが、御指摘のとおりでございまして、私ども行政の姿勢といたしましても、これは独立した研究機関として内部も充実強化すべきであるということで、ことしも予算を提出して大蔵省の審議を願っておるところでございます。
  232. 近江巳記夫

    ○近江委員 それは別個にどういう体制でやるのですか。
  233. 堀山健

    ○堀山説明員 私ども運輸省の研究所の中には、従来船舶技術研究所と港湾技術研究所と電子航法研究所、この三つがございます。自動車は実はこの数年非常にふえましたし、安全公害の問題のウエートが大きくなってきたわけでございます。そこで、船舶技術研究所の中で、交通安全公害と一つのセクションでやっておったわけでございますが、昨年の予算で二つの部に分けた、ことしはこれを三つに分けよう、こういうことでございます。従来は、自動車の研究部門といたしましては二つの部と三つの研究室をもってやっておったわけでございます。これを三つの部と九つの部屋に分けまして、これでやろう、こういうことでございます。
  234. 近江巳記夫

    ○近江委員 これに対して通産省はどうやっているのですか。
  235. 吉光久

    ○吉光説明員 昨年度、四十二年度からでございますけれども、自動車安全公害センターというものを組織いたしまして、実際の試験研究は機械試験所の中に安全公害部というものを一部新設してもらいました。そこが中核となりますと同時に、資源技術試験所、産業工芸試験所、大阪工業技術試験所等すべての関係のございます試験研究機関の研究テーマをこの公害センターの統一的な意思のもとにそれぞれ分担してやるというふうな体制が昨年度整ったわけでございますけれども、さらに本年度におきましては、実際の試験研究に従事する職員あるいはまた研究費等につきまして、総額で申し上げまして、安全公害全体といたしまして、四十二年度で二億一千万円ばかりの金を使っておるわけでございますが、それを四十三年度におきましては約一億六千万円ふやしまして三億七千万円、これは大体三カ年計画で、国のほうの研究施設の充実の関係が、安全公害関係だけでございますけれども、約十億くらいの総予算、それから民間側がこれと相呼応いたしまして、民間のほうでもこれと即応した意味での研究開発を行なうわけでございますけれども、また約三カ年間で二十億の研究センター、両方の応援体制でございますけれども、そういうことでこの安全及び公害問題に積極的に取っ組んでまいりたいということで、四十二年度からいま申し上げましたような体制で進めておるわけでございます。
  236. 近江巳記夫

    ○近江委員 安全装置のことについて、タイヤの問題とかガラスとかいろいろ申し上げましたが、そうした種々の問題についてその後どうされましたか。それだけお聞きして終わりたいと思います。
  237. 堀山健

    ○堀山説明員 タイヤの問題でございますが、これは一番問題になりますのは高速道路を走るときに非常に問題になります。私ども名神高速道路における従来開通以来いろいろなデータを持っております。そこで、高速道路を走るときには特にこういう点について点検したほうがよろしいという項目の中にタイヤを入れまして、タイヤとして点検すべき項目をきめました。これを私どもの下部機構の地方陸運局長を通じて普及すること。もう一つは警察庁と道路公団、こういう方々にこういう基準でやらせるから協力願いたいということ。それからもう一つは自動車のメーカー団体、自動車のユーザー団体、自動車の整備屋さんの団体、それぞれの団体を通じても、高速道路で自動車を走らせるときにはこういう基準でやるべきであるということから、それぞれの項目を指定いたして、その普及をはかるように努力をいたしております。それからもう一つブレーキのことでございますが、ブレーキは、この前のお話ではディスクブレーキの話も出たかと思います。私ども、高速走行で走る場合には、いわゆるブレーキを踏むということはなるべく差しひかえたほうがいいというふうな考え方を持っております。と申しますのは、非常に高速で走っている場合にブレーキをかけますと、左右の調整がよほどよくても、高速になればなるほど旋回をするということが起こるわけでございます。そこで、できることならば、エンジンブレーキなり、大きな自動車でございますと排気ブレーキを使う、そういうことによって、エンジンの制動をかけることによって車全体を止めるということが一番安全な制動法ではないかと思います。しかしながら、やはり車の制動ということは当然必要なことでもありますし、したがって、なるべく制動関係の性能のいいものを開発するという努力を続けたいと思います。  以上でございます。
  238. 小峯柳多

  239. 中村重光

    中村(重)委員 北京、上海における日工展の問題について質問をしたいと思います。大臣が少少おくれておるようでございますから、最近のバナナ輸入の状況について若干お尋ねしたいと思います。  御承知のとおりに、台湾バナナの輸入というのが過当競争という状態で非常に混乱をするということから、七百五十社を整理して二百五十社にした。そこで、その後の輸入組合の運営というものが、当初の期待のとおりに円滑に行なわれておるのかどうか。仄聞するところによりますと、いろいろ関係方面からの働きかけがある。そこで、新たな輸入商社をまた追加をするとか、あるいは実績があるのに輸入の均等割りという形にまた若干変更されるとか、いろいろとその後の変更がなされておるようにも伺っておるわけです。また、輸入量の増大というものに伴って、国内の果実に対するところの影響というものもいろいろ出てきておるのではないかというように考えられるわけでありますから、最近の輸入組合の運営の状況、それから価格、また輸入量、それらの関係について、一応時間の関係がありますからひとつ簡明にお答えを願いたい。
  240. 楠岡豪

    ○楠岡説明員 台湾バナナにつきましては、ただいま先生おっしゃいましたように、AIQのもとにおきまして割り当て制度をやっているわけであります。本年度の割り当て総数量九百万かごでございます。割り当ての方法といたしましては、その九百万かごのうち三十六万かごにつきまして均等割りを行なっております。従来割り当て実績に応じて割り当てておりましたのに加えまして、均等割りの方法をとりましたのは、輸入組合の内部におきまして、特に中小規模の業者からの要望が非常に強うございまして、組合の内部におきましてもやはり均等割りを導入すべきだということに話がまとまりましたので、通産省といたしましても、やはり輸入秩序を維持いたしますためには、組合のまとまったところというのはできるだけ尊重すべきであるという考え方から均等割りをとったものでございます。  それから、輸入の数量につきましては、最近までの実績を申しますと、本年の一月から九月までの輸入の数量でございますが、台湾は六百七十一万八千かご、それから台湾以外の輸入は四百三十四万五千かご、総計いたしますと、一千百六万三千かごということになる次第でございます。  それからバナナの相場でございますが、バナナの相場を、輸入業者と、それから国内の流通業者との間で成立いたします標準価格の浜相場で申し上げますと、平均いたしまして、本年の一月四千三百九十二円でございましたのが、三月には五千三百二十三円まで上昇いたしましたが、その後反落いたしまして、七月には三千六百五十八円、九月にはまた上がりまして四千六百七十七円、十月末におきまして四千四百八十一円でございます。
  241. 中村重光

    中村(重)委員 通産省は、いま、中小業者等の関係を配慮して若干均等割りをやった、こういうことですが、私はそのことが公正に行なわれているということであるならば、別に問題にいたしません。ただ、七百数社あった、それを二百五十社に整理をして、きわめて民主的な運営を行なっていく、こういうことであったわけですね。ところが、その後、私はあえて関係方面ということを申し上げたのですが、いろいろな働きかけがある。そうした特定人の働きかけによってこれが左右されて、通産省の方式が採用されてくるということであってはならぬ。と同時に、組合がほんとうに民主的な運営がなされておるならばけっこうである。ところが、その組合の運営が、特定なボス的な者、特に力のある者によって左右されていくというようなことであっては好ましくない。そういうような点からして、何というのか、そうした割り当ての変更といったようなものが公正になされておるのであるかどうかという点が一点であります。  いま一つは、組合の意向というものが通産省の決定にどの程度影響をもたらしているのかというような点、まあ輸入組合というようなものが、通産省としてはどの程度までこれを尊重しなければならないのか、そういう点についてひとつ運営上の問題ですからお聞かせ願いたい。
  242. 楠岡豪

    ○楠岡説明員 まずあとのほうでございますが、通産省は輸入組合をどの程度まで尊重するのか、あるいはしなければならないのかという点でございますが、輸入組合は、ただいま特に台湾からのバナナ輸入の秩序を維持するために必要な事業を行なうわけでございまして、その限りにおきまして、輸入組合の意思が公正に決定されておる限り尊重してしかるべきものと存じております。  ただ、そこで先生のさきの御質問に返るわけでございますが、輸入組合の決定が一部のボスのいわば恣意的な動きに左右されるとかというようなことでは、公正な決定と言えないわけでございまして、この点は私どもとしてはやはり正すべきところは正すように指導していきたい、かように考えておる次第でございます。
  243. 中村重光

    中村(重)委員 あとのあなたのお答え、それはそのとおりでなければいけない。同時に、特定の組合のボスという場合と、そうじゃなくて部外のボス、これはいろいろ政治家もあるかもしれない、あるいは実業人もあるかもしれない、特定の者が割り当てに参加させろという形でこれを通過させる、特にそれに割り当てをしていくということになるならば、二百五十社に整理した、そして民主的な運営をやっていこうとした方針が乱されることになる。そこらをきちっとした、少なくとも権威のある運営をやっていただきたいということを私は申し上げておるわけです。その点についてのお答えは必要ありません。  いま一つ、当時整理をするときに、いわゆるペーパー業者であるとか、あるいはダミー業者とかを整理する。私が聞くところによると、依然としていわゆる利権屋というものがはびこっておるということがいわれておるのであります。事実はどうなのか。
  244. 楠岡豪

    ○楠岡説明員 ペーパー業者が依然としてあるかどうかということでございますが、七百社前後の業者を二百五十まで整理されましたのは、ペーパー業者をできるだけなくそうという趣旨でございまして、私どももその後ペーパー業者というものはなるべくないように、実態も調べておるのでございますが、私どもチェックいたしました限りにおきましては、やはりその会社の名前で通関もし、LCも開いておるところでございまして、形式的にはペーパー業者と認められないわけでございます。遺憾ながらそれ以上の実態――中には幾つかピックアップいたしまして、現実に事務所も調べたわけでございまして、まあそういうところはささやかではございますが、事務所もあるということでございます。その程度調査はいたしております。さらにその背景はどうなのかと言われますと、実はわかりかねる点でございます。とにかく私ども調べました限りでは、みな一応自己の名前でやっておられるようでございます。
  245. 中村重光

    中村(重)委員 これは浜相場の建て方の問題とも関係をしてくるのですが、ともかくただ割り当てを受けたという、これはペーパー業者ということになろう。全然バナナを扱わない、ただ権利だけを得る、そういったような業者というものがあとを断たないというのが実態だろうと思う。だからそういうものは整理するところはびしびし整理をしていく必要があると思う。それだけで食っている連中がある。これでは正常な取引を乱してくることになろうと思います。この点は調査をして後日また資料として提出してもらいたい。  いま一つ、先ほどの輸入の数字として台湾ものが六百七十一万八千、その他が四百三十四万五千ということでございましたが、台湾ものは、これは依然として割り当てであろうと思う。ところがその他四百三十四万五千というのは、これは割り当て以外であろうと思うのです。この比率というものは、ずっと割り当て以外のいわゆる中南米もの、あるいはフィリピンから入ってくる、そういうものがあると思うのです。割り当てのものと割り当てでないものとの比重が大体変わらないような状態になりつつあるのではないか。それならば台湾ものの割り当て制度というものの意味がどこにあるであろうか。これは私は政策的にいっても矛盾があると思う。いわゆる行政措置としておかしいと思う。だから割り当てをやるなら全部割り当てをおやりになったほうがよろしい。あるいはもう割り当て制度をやめて、自由化をすることが必要ならば、それをおやりになったほうがよろしい。ただ問題は、国内の果実にどういう影響を与えるかということが問題になってこようと思います。したがってその点に対する考え方をひとつこの際明らかにしていただきたい。
  246. 楠岡豪

    ○楠岡説明員 台湾ものにつきまして割り当て制度をとっておりますのは、台湾市場の特殊な理由によるわけでございまして、いわば供給独占といったような形のもとにおきまして、わが国の輸入業者が過当な競争を行ないまして、取引条件を悪化させるというような状況がございましたので、割り当て制度をとっておるわけでございます。このような著しい状況は、ただいままでのところ、中南米市場には見られなかったように考えております。それで、御指摘のように台湾以外の市場からの輸入がふえてまいりますと、台湾自体の独占的な地位というのは比較的弱くなってまいるかと思います。したがいまして、未来永劫いかなることがあっても台湾のは割り当てというわけにはまいらないかもしれませんが、ただいままでのところ、台湾の供給量は非常に弾力性があるというよりも、むしろ先方のバナナ耕作地への転換の制限というような事情もございますように、供給量が制限されております。それから台湾に対するわがほうのいわば需要者の嗜好とか、それから輸入業者の需要とかいいますのが、比較的供給より強いということで、まだ過当競争の素地と申しますか、そういうものが依然として存在すると考えられますので、台湾につきましては、やはり状況を見る必要はございますけれども、さしあたり現状を継続するということになるのではないかと思います。
  247. 中村重光

    中村(重)委員 通産大臣の時間がないようでございますから、いまのバナナの問題をしばらくストップして、ココムの問題をひとつお尋ねします。  大臣、この共産圏に対する輸出統制委員会、いわゆるココムですが、このリストを改定するための協定が、たしか十月の十四日、いま始まっておると思うのですが、パリの本部で開かれておると伝えられておりますが、日本はこれに対してどういう態度で臨んでおるのでしょうか。――通産大臣、あなたがかつて外務大臣の臨時代理として御答弁になったことをあわせて申し上げて、見解をただしたほうが適当であろうと思います。十月の四日の記者会見で椎名臨時外相代理は、「対共産圏貿易を伸ばすために大きな障害となっている禁輸リストの大幅緩和を要求する」、こう言明をしておられるわけです。ですから、その態度が現在も変わっていないとするならば、このパリ本部におけるところのココムの会議というものに対しては、そういう方向で当然お臨みになっておるものであると理解できるわけですが、そのとおりであるのかどうか。
  248. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 ココムリストはこれは一ぺんきめたら固定したものではない。工業が日々伸展しておるのでございますから、ココムリストにもう載せておく価値のないものというものは、これはそのつどココムの会議において、これを削るというようにやっておるのでございまして、きめたらもう絶対に固定したものであって変えることはできないというようなものではない、そういうふうにこの問題を取り扱ってまいりたい、そういう考え方でございます。
  249. 中村重光

    中村(重)委員 あなたの記者会見における発言の中から、そういうような消極的な考え方というものは受け取られない。これは西独あるいはイギリス、フランスその他西欧諸国もわが国と大体方向は同じである、いわゆる中国貿易が伸びないということはこのココムの制度というものがあるから、だからこれを緩和していく、それでなければ中国貿易というものは伸びていかないのだ、こういうこと。だからこのココムに載せておく必要のないものはこれは載せなくたっていいのだ、これは永久にそのままでなければならないものだ、そういうことをあなたの答弁の中から引き出そうと私は思っていない。中国貿易を促進していくという立場からこのココムに対してあなたはどういう態度でお臨みになるのか。中国貿易を促進していこうとするそういう考え方の上に立つならば、西ドイツその他西欧諸国と一緒になって積極的に、アメリカがあくまでこのココムというものをむしろ強くしていこうというような動きもあるように伝えられておるのでございますから、アメリカにむしろその反省を求めていくという態度が望ましい。またそれでなければならぬと私は考える。だからそういう積極的な考え方があるのかどうか、そういう態度で臨んでいらっしゃるのかということを聞いておるのです。
  250. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 ココムというものは何でもかんでもこれを減らさなければならぬという態度もまたこれは少し妥当を欠くのであって、ココムリストの妥当性というものはおのずからあるわけです。それで、これはもうすでに陳腐になっておる、ココムリストに載せる必要がないというような場合には、その委員会において自由に発言をして、そして一致点を見出されたならばこれをはずしていく、こういう考え方でありますから、日本もその態度をもって臨んでおる、こういうことは言える。
  251. 中村重光

    中村(重)委員 いわゆるその禁輸品というものはできるだけはずして、中国貿易をなめらかに進めていくように積極的に貿易の伸展をはかっていくという態度で臨むと、そういうように確認をしてよろしうございますか。
  252. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 ココムというものは、なぜこういうものが生じてきたかというそのよってきたるところの性格というものを持っておるので、その性格に照らしてもはやその必要はないというのは刻々どんどんこれは削っていかなければならぬ、こういう考えでございます。
  253. 中村重光

    中村(重)委員 これでやりとりをしていると時間がたってしまいます。  そこで具体的にお尋ねいたしますが、来春北京と上海で日本工業展覧会が開かれるということになるわけです。これに対しては多数のココムに抵触するいわゆる禁輸品というものの出品申込みというのがなされておるわけです。この前一九六五年の場合におきましても、十七品目というものが実はその直前にこれはだめだというので出品が認められなかったという経緯がある。今回はそうした禁輸品目というものが相当出品されるというこれの申請が出ているから、明らかでございましょうから、今回はどういう態度でお臨みになるかという点が一点であります。  いま一つは、一九六五年のときのように間近になってからだめだということであってはならない。やはり事前に十分時間の余裕をもってこれを審議する、そしてその可否を決定していくということでなければ、これはやはり積み込みとか倉庫搬入であるとか、いろいろと手続が要るわけでございますから、私が調査したところによりますと、十二月の初旬くらいにはその最終決定というものがなされなければならないということを聞いておるわけです。だから今回はどういう態度でお臨みになるのか。まずその品目を大幅に認めていくという考え方を持っておるかどうかということと、そうした手続という点について一九六五年のときのような扱いをしない。そのときのような扱いをいたしますと、精神的、物質的に業者に与える影響というものが非常に大きいわけでありますし、また相手国に対するところの印象というものも非常に悪くしていくという結果になり、ひいては日本の国際信用というものを非常に失墜することにも通じていく。日中の友好ではなくて、それが阻害されるという結果にもなるわけでありますから、ひとつこの際あなたの前向きの姿勢というものが望ましいと思いますから、明快にひとつお聞かせ願いたいと思う。
  254. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 最終決定を急ぐなら、これはやはり審議の余裕だけは十分に見て、そうしてできるだけ早く品目の提出をしなくちゃならぬと思います。いやしくもココムというものの存在を前提とする以上は、それに必要な審議の期間というものはやはり見込んで提出してもらわなければならぬ。きょう出してさあ早く早くと言ったってそれは無理だ。でありますから、最終決定はいつ何日までにやらなければならぬというのならば、それに必要な余裕を持ってその品目の提出をしてもらわなければならぬ、こういうことになると思います。
  255. 小峯柳多

    小峯委員長 石野君に関連質問を許します。石野君。
  256. 石野久男

    石野委員 私は時間があまりございませんから、二、三の点をお尋ねしますから、明確に答弁して下さい。  いま大臣はなるべく早く出してくれと言っているのですけれども、もうすでに十三日に受け付けているはずです申請品目は。ですからそれに対してなるべく、いま中村君からも来月初めまでにということなので、それは荷積みの関係があるから、そういう時期をはっきりこの際さしてほしいということですから、その点が第一点。  それからいま一つは、大臣はココムがあるという前提に基づいて、こう言うのですけれども、これもきょう時間がありませんからあまり論議しませんが、これは去年の五月でございますが、この委員会で菅野大臣から、ココムというものは対共産圏については法的制約は全然ないのだということの明確な答弁をとっているので、大臣のいまの答弁と菅野大臣の答弁とは全然食い違っているわけです。政府はそういうような態度で今度の対共産圏の問題についての処置をするということになると、これはたいへんなことになります。これはひとつ明確にしておいてもらいたい。これが第二点。  第三点は、いま申請されているものについて、今度の申請品目については、申請者は御承知のように国際貿促というものがこれをやっているわけですね。なるべくやはり事務を簡素化し、なるべく迅速にこれの認可許可を出してもらいたいという希望ですから、こういう問題については、なるべく申請者に対して当局側も窓口をしぼって交渉していただくようにしてもらいたいということが申請書の中にちゃんと書かれているわけですから、そういうようなことでひとつ対処してくださるのかどうか。これはきわめて事務的な問題ですけれども、この点はひとつはっきりと態度を知らしておいてほしいのです。ということは、申請者を除いて、あるいはメーカーとかその他のところへどんどんいろいろな調査が入っていくということになると、かえって事務の混乱を来たすというようなこともあるわけですから、こういう点をむしろ簡素化するような方法をしてほしい、こういう点はひとつ明確に大臣からその御所信のほどを聞かしてもらいたい。  それから第四点は、これは先ほど中村委員からも御質問がありましたけれども、ココム問題について特にアメリカ側から別ワク指定というようなものの要請が来ておるということを言っておるわけです。こういうものを受けて立つという態勢がもし通産省の中にあるとすると、かえって逆になっちゃうのですから、そういうチンコムへ逆戻りするようなものがもしあったとする場合、政府はそれとどういうふうに対処するか。いまココム委員会が開かれておるときですから、この点についてはひとつ政府の態度を明確にしておいてもらいたい。  以上四点をひとつ御答弁をいただきたい。
  257. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 なるほど申請は出ておるようでありますけれども、ココムに該当するものについて、ただ抽象的な表示しかしていないものについてはさらにこれを具体的に表示し直してもらう、そうしないと審議ができないということを言っておりますから、その点はひとつ、出したからといってすぐ審議が可能だというわけじゃないらしい。でありますから、そこはひとつ折衝の余地があると思います。  それから菅野大臣はどういうことを言ったのか知らぬけれでも、制約されぬということはない。ココムリストで申し合わせがあれば、国際協定じゃないけれでも、その趣旨を管理令の中に書き加えて、そしてそういうものについては制約をするということにちゃんとなっているのですから、制約されていないということは言えません。  それから窓口をしぼって申請者によけいな手続をしいるようなことはしないでくれ、これはもうおっしゃるとおりですから、その方針でやります。  それからチンコムは廃止したのですから、これを復活するということはありません。
  258. 石野久男

    石野委員 いまの大臣からの答弁ですけれでも、菅野大臣は何と言ったか知らないけれどもということで御答弁があった、これは非常に食い違いがあるわけです。もう時間がないからきょうは私はそのことの論議はしませんけれども、ココム規定とかなんとかというようなものがあることは聞いているけれども、これは日本の輸出商人を制約するための国際的条約でもありませんし、結局個人としての人権を制約するだけの権利、権限を持っておるものじゃないことを明確にして、したがって対共産圏貿易についてはココム規定に基づくような制約はしない、これはすべて貿易管理令でやるのだということ、この点政府の態度は非常に不明確だ。大臣がかわれば朝令暮改でとにかく考え方が全然変わってくるようなことでは、われわれは全く政府をたよりにすることができなくなるのです。こういうような矛盾した答弁をそのままほっておくことはできない。大臣、もう一ぺん……。
  259. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 いまの点……。
  260. 中村重光

    中村(重)委員 ちょっと待ってくれ、あなたはすぐ帰るのだから。  いまあなたの答弁を聞いていると、チンコムは廃止されたのだからこれは復活しない、それはあたりまえの話であって、私どもが言っているのは、廃止されたチンコムをまた復活するような動きがアメリカにある、それにあなたのほうが追随していってはだめなのだ、少なくともあなたが記者会見で発言したような積極的な考え方で進まなければなりませんぞ、こう言っているのです。  それから、いま申請をしておるものには禁輸品も相当入っておる、そういうものを除いた形でなければならない、そうしなければ促進されないのだというような、それは私の聞き間違いであったか知らないけれども、それだから手続だけの問題なのだということですが、要は手続だけの問題じゃない。梱包であるとか船積みであるとか倉庫への蔵入れであるとか、そういうことに相当時間がかかるから早くしなければならぬという手続上の問題もあるけれども、相当今回の申請の中にはそういう禁輸品と称せられるものも入っているのだから、あなたが記者会見で述べられたようないわゆる前向きの方向、それは西欧諸国も同じような方向なのであるから、やはり今回は大幅にその申請に入っているような品物を認めていく、そういう方向で取り組んでもらいたい。そこに話し合いというものがあるわけなのだから。だからそんなものははずして申請をしなさいというようなことでは、何のためにあなたとここで議論をしているのかわからない。だからもっと前向きの答弁をしてもらいたい。
  261. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 菅野大臣が言われたことは速記録に載っておりますが、「一応ココムはやはり国際約束ですからして、わが国としても守るべきものは守らなければならない」こう言っておる。それで条約ではないけれども、一つの申し合わせによって、委員会の申し合わせは守るようにしようということで、日本としてはそれを守る方法としては貿易管理令にその旨を――管理令を施行する際にその約策の趣旨に沿うて制約を加えるということになっておりますので、どうぞ御了承を願います。でありますから、全然制約をされぬということはない。やはり日本の貿易管理令というもののたてまえによってそれの輸出は制約を受けておる。たとえそれが売り気に売ったものでなくとも、一応税関を経て外国へ行く物は、一応の展示品であろうとなかろうと輸出は輸出でありますから、それで制約はされることになっております。
  262. 石野久男

    石野委員 いま大臣がそういう答弁をされると問題がある。それはそういう申し合わせをしておっても、日本人の人権を制約するような国際条約でも何でもない。国際条約であるならばこれはしかたがないけれども、そういうものでないから、ココム規定というものは輸出商人の営業権なりあるいはその人権というものを制約する力は全然ないのであるから、日本の貿易管理令で規定するということをここでちゃんと答弁しているわけです。ココム規定というものはいわゆる輸出については何の制約力もないということをこの委員会で明確にしているわけです。大臣、そんな食い違ったようなことを言われて、引き下がるわけにはいきませんよ。
  263. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 ココム規定に縛られるということは申していない。これは委員会にすぎないものでありますから、そこの申し合わせを確保するために管理令によって制約を加えておるということを申し上げておるわけです。ですからそういう意味の制約は免れないということ、これは御承知のはずなのです。その上で申請が出ているのですから。
  264. 石野久男

    石野委員 大臣の考え方はココム規定というものが前提になっているのですよ。しかしココム規定というものは日本人を制約するような国際条約にはなっていないでしょう。わずかに十五カ国の間で取りきめたものであって、それは申し合わせか何か知らぬけれども、日本のいわゆる公正な形で商売をしようとする人たちを押えるだけの何の法的根拠があるのか、何にもないということを明確にしてあるわけです。大臣がそういうことをここでまた持ち出すと、これはたいへんなことになる。だからそこのところは貿易管理令というものが基準であって、その貿易管理令というものを、われわれはやはりそれは法律だからこれは制約を受けなければならぬかもしれない。そこのところをはっきりしてもらいたいのです。
  265. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 ですから、実質上はココムの申し合わせを管理令の上にあらわしておるのだから、だからココムの規定に従わなければならぬという理屈は言いません。管理令に従わなければならぬ、こういうことなのです。
  266. 小峯柳多

    小峯委員長 石野君、結論を急いでください。
  267. 石野久男

    石野委員 もう一問だけで終わりますが、先ほどココム規定云々とかで、何か許可申請に対する許可のことについて、なるべく十二月初旬のころまでになにをはっきりしてほしいということを中村委員からもたびたび言っておるわけです。これは実務上、三月にやるとすれば、船積みとかなんとかの関係があるので、これは実務の問題でありますから、なるべく十二月初旬までにその裁決をしてもらうようにしてほしいのです。その点大臣から明確なお答えをいただいておきたいと思います。
  268. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 ですから、審議ができるようにやはり協力していただかなければいかぬ。ただばく然とした抽象的な表示では何がどうなっているのか、マルやら三角やらわけがわからないようなそんな表示ではだめだ。ですから、具体的にどういう品物だということをはっきりして、そしてそれによって審議ができるようにしてもらわないとなかなか審議ができない。ですから、審議ができるように御協力を願う、そうすれば御期待に沿うてすみやかにやるようにいたします。
  269. 中村重光

    中村(重)委員 それでは大臣はどうぞ。  それではバナナに戻ります。六時までにやめる予定であったが、いまの関連質問等でたいへん時間を食いましたから、できるだけ早くやめるように協力します。
  270. 小峯柳多

    小峯委員長 御協力をいただきたいと思います。
  271. 中村重光

    中村(重)委員 先ほど台湾バナナは未来永却現状のままにしておこうとは考えていない、だがしかし、輸入に対してはまだ相当なウエートを占めているのだから、いまこの割り当てをはずしていわゆる自由化にしようとは考えていない、こういうことであります。しかし私が言ったのは、いま直ちにこれを自由化しなさいと言っているわけではない、いわゆる国内果実に対するところの影響というものを私どもは慎重に配慮しなければならない。しかし、もう台湾バナナとそう比重が変わらないようなところまで中南米バナナというものはなってきた。それから東南アジア方面に対して相当大規模ないわゆる農場経営というものがなされてきた、そういうものも割り当てでなくてストレートで入ってくるわけだ。そうすると、同じバナナが、それば何というか嗜好品で、うまいものもあるのですけれども、うまくないものもあるかもしれない。かもしれないが、バナナという形で入ってきておることについては変わりはないんだから、一方が割り当てであり、一方が割り当てでないということは、行政のあり方としてはおかしいじゃないか、こう言っている。だからそのいずれか一本にしなさい。割り当てをはずすのか、全部割り当てにするのか、そういう方向が望ましいのではないか。あなたの前の次長は私とはいろいろ非公式に話をしたこともあるのですが、耳を傾けておられた。だからしてそういう方向で園芸局との間に話し合いもなされておるように私は伺っておるわけですけれども、どういうお考え方なのか、園芸局長もおいでですから、農林省の考え方もお聞かせ願いたいと思います。
  272. 楠岡豪

    ○楠岡説明員 確かに数量的に申しますと、台湾の比重が相対的に下がってまいりましたことは事実でございますが、台湾の市場は依然として、バナナ輸入全体から見ますると相当あるいは非常に大きな市場でございますし、先方の、いわば売るほうとしては窓口が一本化しておるということもございまして、現状におきましてはやはり台湾市場の特殊性ということで割り当て制度を続けるほうがいいのではないかと考える次第でございます。
  273. 池田俊也

    ○池田説明員 最近中南米バナナが御承知のように非常にふえまして、台湾バナナと合わせますと非常な数量になるということで、実はわれわれも率直なところを申し上げますと、やや戸惑っておる状況でございます。ただいま先生からのお話で、大体こういった状態になるのではないか、こういうお話がございましたのですが、私どもは実はそこのところがそういう断定を下していいのかどうか、若干実は迷っているわけでございます。と申しますのは、これは御承知だと存じますが、ことしの中南米バナナがこういうように非常にふえました一つの原因といたしまして、台湾における台風被害の見込みをやや誤った、台湾の輸入がかなり減少するのではないかということで商社が争って中南米バナナを買い付けた、こういう事情があるように私ども聞いておるわけでございます。そういうことがございまして、結果としまして、ところが台湾のほうがそうでもなかったということで非常な数量になった、こういう事情があるように聞いておりますので、はたして今後、たとえば来年におきましても台湾の数量はそうは変わらないと思いますけれども、中南米バナナがことしのような状況であるのかどうか、これはいま結論を下すのはやや早過ぎるのではなかろうか。あるいはそうなるかもしれませんし、あるいは日本人の嗜好からいたしますと台湾バナナのほうがうまいという感じを持っておりますので、あるいは中南米バナナがことしほどは入らないということもあるかもしれないわけでございます。そういうことがございますので、私どもはこれについては非常な関心を持っておりますけれども結論を出すのにはやや早過ぎるのではなかろうか。  それから、国内産の果実に対する影響でございますけれども、これも実は非常に判定がむずかしい問題でございます。一般的にことしはくだものの価格が安いわけでございますが、これはあるいはバナナの数量が非常にふえたということも若干は影響しているかもしれませんが、同時に、国産果実が非常な豊作であった。ミカンのごときは、前年比四割増でございます。一般に非常によろしゅうございましたので、そういうようなこともあるいは影響しているかもしれない。それから、非常にこまかい話で恐縮でございますが、気象条件が影響いたしまして、全般に果実の味がよくないわけでございます。そういうようなことで、必ずしも需要が追随しなかったというような事情もございますので、そういうようなことと、バナナが多量に入ったことの影響と、どう分けるかというのが非常にむずかしいわけでございます。そういうようなことなんで、私どもといたしましては、いまの状況に対して一つの判断を下して、輸入制度等についてこうすべきであるということを、結論を出すにはやや早過ぎるのじゃないか。もうちょっとこれは慎重に状態をよく見守りまして、依然としてそういうような状態であるかどうかということにつきましてよく見守りまして、それに対してはやはり国産果実に非常に悪影響があるということでございますならば、これはやはり通産省といろいろ御相談して今後のあり方も検討したい、こういう考えでございます。
  274. 中村重光

    中村(重)委員 私は積極的に自由化をしろと言っておるのじゃないんですよ。一方は自由化であり一方は自由化でない、行政のあり方としてもおかしい。なるほど台湾バナナがおいしい。買ってくれなければ物は売れない、売れないから入ってこない、こういうことになるのだけれども、私どもは店頭に行ってみて、どのバナナが台湾バナナであり中南米やらさっぱりわからない。中南米バナナというのは非常に見ばえがよくてうまそうに見える。だからどうも自由化だとこれは商魂たくましく中南米から自由に入れるという形に私はならないということは言えないと思う。現在すでに四、六でしょう。それから今度はフィリピンに伊藤忠とスタンダードが合弁で農場をつくって、もうすでにこれは入ってき出しましたね。  それからもう一つはチキタというバナナですね。これは三菱商事に東食、兼松、丸紅飯田、三井、こういう大手五社が今度アメリカのユナイテッド・フルーツ・カンパニーと提携をするんでしょう。そうして農場をつくるわけでしょう。それでどんどんこれが自由化という形で入ってくるとすると、あなた方が考えておるように、割り当てをしておる台湾バナナというものはいつまでも優位である、そしてその割り当てでいわゆる自由化しておるところの中南米もの、フィリピン方面から入ってくるようなものがいつまでも台湾バナナよりも下位にあって、これはたいして入ってこないというような楽観的な考え方をお持ちになることは間違いだと思う。だからどちらかに――割り当てをするのならば割り当てしなさい。そしてどの程度国内の果実に影響があるかまだわからない、こうおっしゃるけれども、私はそういう考え方は怠慢であると思う。リンゴの産地に対してバナナがどの程度売れておるのか、あるいはミカンの産地に対してどの程度売れておるのか、そういったようなところを重点的にでも調査をしてみるとか、いろいろな方法で影響というものを調査をしていくという態度が必要じゃありませんか。いまになってもその程度はどういう程度かわからない。それもきちつとしたものはわからないだろうけれども、ある程度私はつかむことができるだろうと思う。そうしてみると、私がいま申し上げたように変則的ないまのあり方というものを直していくというような態度がなければいけないのじゃありませんか。申し上げましたように、大手がだんだん資本力にものをいわせて、商魂たくましゅうしてやってくるということになると、私は相当量というものが野放しで入ってくることになると思いますよ。  もう一つ、台湾バナナの輸入業者というのは比較的古くからやっておる中小のバナナ業者ですね。ところが中南米とか、いまのフィリピン方面から、大手五社がアメリカのそうした大きい企業と合弁あるいは提携してやるという、そういう資本力にものをいわせる業者がまかり通ってくるというようなことが許されていいのかどうかということです。中小企業対策という立場からも、この点、私は一考も二考も要するのではないかというように考えますが、どうですか。園芸局長並びに通産省もお答えいただきたい。
  275. 楠岡豪

    ○楠岡説明員 先生の御質問の後段でございますが、中南米からの輸入をしております業者は、御指摘のとおり非常に大きなところがリーダーになっておりますけれども、幾つかグループをつくりまして、中小業者も参加している次第でございます。それからまた台湾につきましては、御指摘のとおり中小業者が非常に多いわけでございます。いまの制度の中で逆に、先ほど実は中小企業からの要望が強くて均等割りもとったと申しましたけれども、また考えようによっては、現在の制度中小企業が自分のシェアを守っているという面もあるのではないかと思います。いずれにしても、私どもの意図といたしましては、決して大企業擁護というようなことでやっているのではないということを御了承いただければ幸いだと思います。  それから、御質問の前段でございますが、国内果実との競合の問題につきましては、私どもも農林省のほうとよく御連絡をとりまして、今後とも勉強さしていただきたいと思います。
  276. 池田俊也

    ○池田説明員 インポーターの件につきましては、通産省でおやりいただいているので、私どものほうで意見を申し上げるのはどうかと思うのでございますが、やはりたてまえといたしまして、たとえば大手であるとか中小であるとかいうことで特定のところに重点を置いてやるというのは、なかなかむずかしいのじゃなかろうかという感じを持っておるわけでございます。ただ、私どもといたしましては、関心を持っておりますのは、たとえば中南米にいたしましても台湾にいたしましても、特定の輸入の形がありましたために国内に非常に混乱が起こった。通産省のお立場からすれば輸入秩序を維持するという一つの問題があるかと思います。私どものほうからいたしますと、それとの関連、国内の流通体制がどういう影響を受けるかという問題があります。そこらが混乱をしてまいりますと、非常に問題でございますので、そういうときにはやはりそれに対する対策を考えなければならないのではなかろうかという気持ちを持っておるわけでございますが、インポーターにつきましては、通産省の所管でございますので、遠慮さしていただきます。
  277. 中村重光

    中村(重)委員 私があなたにお尋ねしたのは後段なんです。国内果実に対する影響というようなものが、まだきちっとしたデータは出ないかもしれないけれども、この前堀委員が大蔵委員のときに、関税の問題なんかでもてんやわんやで、この問題は議論百出という状態があったのですね。これは国内果実に対する影響というような問題が中心だったのです。これほど、中南米ものも入ってくる、バナナの輸入がふえてきた、国内の果実に対してどの程度影響というものがあるのだろうか、そういう調査はある程度つかんでおられなければならないのではなかろうか、そういうところから全部自由化するのか、あるいは割り当てをするのかという答えが出てこなければいけないのじゃないでしょうか。そこを申し上げたのです。だから、私は特に非難しようとは思いませんけれども、率直に言って熱意不足の感じがいたします。だからそういう点にもっと取り組んでもらいたい、こう思います。  それから、これは杞憂になるかもしれませんが、問題のユニ・フルは日本に支店をつくったのですね。これは認可された。この支店を認可される条件としては、輸入組合に入ることということを条件にされたのだそうでございますが、そのとおりであるのかどうか。そのとおりであるといたしましても、一たん入って出てしまったらどうなのか、だめだという規制ができるのであろうか、これが問題の一つなんです。それからそのユニ・フルは、申し上げたように、三菱商事、東食、兼松、丸紅飯田、三井、こういう大手五社との提携というものがなされたわけでございますから、これは資本力にものを言わす、それから販売ルートというものに乗っていくことになりますね。ですから、その及ぼす影響は大きい、しかも、これは正確にはわかりませんけれども、アメリカにおけるところの市場占拠率は七五%、ノルウェー、スウェデンが一〇〇%、イギリス八〇%、ドイツ、フランスが六〇%、日本に対しては八〇%のシェアを目標にしているということがいわれておるのであります。だから私は、この点は全く軽視できないと思っているんです。その点に対してはどうお考えになっていらっしゃるのかという点。  それから、日本に対して支店をお認めになったその条件は、私が申し上げたとおりなのかどうか。であるとするならば、これが入らなかった場合、入って出た場合はどうなるのか。まだ入っていないらしいのですから、そういう規制措置について、方針を明らかにしてもらいたい。
  278. 楠岡豪

    ○楠岡説明員 ユニ・フルの支店の設置につきましての許可条件といたしまして、輸入組合に加入して輸入秩序を守るという条件をつけたことは事実でございます。現在のところまだ入っておりませんが、私どもとしては、日本におきまして事業活動を行なう以上、やはり日本の秩序というものは守っていただきたいと存じております。ただ、先生御指摘の、一ぺん入って、あと出ちゃったらどうするかということでございますが、法律的に申しますと、輸入組合は加入、脱退が自由でございますので、その点無理に置いておくということは、法律的にはむずかしいわけでございますけれども、まあ私のほうとしては、とにかくただいま申しましたように、国内で仕事をやるからには、やはり皆さんと同様に一緒に、共同して、秩序を守るべきときは協力するように、ユニ・フルの協力を促す所存でございます。
  279. 小峯柳多

    小峯委員長 中村君、結論を急いでください。
  280. 中村重光

    中村(重)委員 お考えになって、無理があるようにお思いになりませんか。まだ入っていない。認可をする条件としては入りなさいという条件をつけた。ところが、入ってまた出るということになってくる。これは加入脱退が自由である。そうすると、大きい力なんだから、そこに市場混乱というものが起こってこないという保障はありませんよ。そうでしょう。それといま一つは、七百数社あったのを二百五十社に整理なさった。これは相当強い行政指導をおやりになったのですね。しかもそれは台湾バナナだけであるという形である。そして中南米ものが自由化でどんどん入ってくる。そうしたバナナがいま申し上げたように市場混乱の原因の一つにもなってくるということになっていきます。ひいてはそのことがいわゆる台湾バナナの輸入組合をつくっているそのことにまで大きな影響が起こってきて、通産省の行政指導というものが全く混乱をしていくという結果になりますよ。だから、条件をつけたその条件がいまにしてもまだ守られていない。また具体的にはいま浜相場の中にこれだけは入っていないのでしょう。自由かってにやっているんでしょう。もうすでに秩序は乱されているんですよ。軽々に支店の設置を認めた、こう言うのは言い過ぎかもしれませんけれども、配慮が足りなかったということも言えるんじゃないでしょうか。政務次官、お聞きになってどうお考えになりますか。
  281. 藤井勝志

    ○藤井説明員 もともと台湾バナナの輸入規制の問題は、御指摘のとおり日本の国内果実の保護という観点と、輸入秩序の維持という面でございますが、最近中南米バナナの輸入をめぐって、新しい業界の変化が起こっておる、そして大きな資本力を持った外資と結びついた大手企業が、自由に輸入できる地域からバナナをどんどん入れておる、こういったことからせっかくの台湾バナナに対する輸入規制のこの窓口が、全く意味をなさない結果になる、だからどっちかに統一をしていけという御指摘は、私も十分検討しなければならない問題だと思います。ただ、その検討をするためには、このバナナの輸入が国内果実にどのような影響を与えるかという、この実態把握の上に立って、輸入の量的規制を全体に及ぼすか、あるいはまたむしろ国際化の線に沿うてもう全部自由化するか、この判断はそういった実態調査の上に立って初めて行ない得ることではなかろうか、このように思いますので、これからひとつわれわれも御指摘の点を中心に十分検討させていただきたい、このように思います。
  282. 中村重光

    中村(重)委員 公取事務局長に見解をただしますが、いわゆる輸入の日本支店市場占拠率が三〇%、これは絶対的なものじゃありませんが、高いシェアを持つということになってまいりますと支配力を持ちますから、当然これは独禁法に触れる、こういうことになることは間違いないだろうと思う。そのとおりであるかどうかということをお答え願いたい。  それから、この輸入業者が輸入組合をつくって価格の統制という形がなされてくる。価格協定ですね。そういう場合に、それが独禁法上どういうことになるのか、その点をひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  283. 柿沼幸一郎

    ○柿沼説明員 初めの私的独占に該当するかどうかという問題は、業者として一応そういう目標で努力するということは、必ずしもそれが目標どおりに動くかどうかわかりませんで、その段階では違反の問題は起こらないと思うのでございますけれども、もしかりにそういった事態になりました場合に、そういった業者が他の事業者の事業活動を排除し、または支配することによって、そういう取引分野における競争を制限するというようなことを行ないますれば、これは独禁法違反でございます。  それから第二番目の、末端価格について再販価格維持のようなことをするのじゃないかという問題でございますけれども、生鮮食料品というものは、保存の問題や何かがありまして、一定の価格を一たんきめましても、それだけでもってなかなか維持ができないような種類のものかと思います。おそらく機械的に再販価格維持行為に違反するようなことは私はできないのじゃないかというふうに考えております。
  284. 中村重光

    中村(重)委員 浜相場の立て方は園芸局の所管になりますか。通産省ですかね。――それじゃ申し上げましょう。私はこの前も申し上げたのですが、この浜相場は全く前近代的な相場の立て方で、これはもっと合理化し近代化する必要があるのです。非常に非近代的な浜相場の立て方なんですよ。おまけに一かご二百円から三百円という手数料を出さなければいけないのですよ。それで物価対策委員会の諸君は現地の視察にも行ったらしいので、私どもも行こうと思っているのですが、ものすごい数の人たちが浜にいるそうですね。それは何によってまかなわれているのかといったら、この手数料の二百円、三百円というような金によってまかなわれている。その相場というものが順調にきめられればよろしいのだけれども、浜相場をきめるそういった特定の人たちによって一つの支配力を持たれるようなことになってくると、早く値段をきめない。倉庫にそのまま入れておくと鮮度が落ちる、ものが悪くなる。それから今度は船から揚げない。そうすると、滞船料がつくというように、いまのような非近代的な相場の立て方ということになってまいりますと、鮮度が落ちる、むだな費用がかかる、それが消費者にはね返ってくるという結果になります。ですから私は端的にいえば、輸入業者と加工業者との間に値段をきめればそれが一番早いのだと思っておる。何かこの浜相場のあり方というものはもっと近代的なやり方をお考えになる必要があるのじゃないか。前も指摘をいたしまして、研究をするということでございましたから、きょうはひとつお答えを願わなければならない。  それから積み取りますところの船の九五%は外国船といわれておる。日本の船はわずかに五%。こういうことではどうにもなりません。それはいろいろ事情があるのだろうとは思いますけれども、これらの点に改善の余地があるのではなかろうか。それらの点について、ひとつお答えを願いたいと思います。
  285. 楠岡豪

    ○楠岡説明員 先ほど私、手をあげましたのは、実は浜相場は国内流通の問題で、主として農林省の問題であるということを申し上げようと思ったわけでございますが、私どもも現状につきましては今後とも農林省と相談しまして、改善すべき点は十分留意してまいりたいと思います。
  286. 池田俊也

    ○池田説明員 浜相場というものは、御存じのようにインポーターと国内の加工業者との間の取引でございますので、これは私どもというか通産省というか、両方が関係しているということだと思いますが、確かに現在浜相場を立てております形というものは必ずしも根拠がはっきりしないといいますか、要するにインポーターの代表者と加工業者の代表者が大体同数ぐらい集まりまして、いろいろ需給事情でございますとか、品物品質でございますとか、そういうものを考えながら相場をきめるというシステムでございまして、非常に根拠がはっきりしないという意味では御指摘の点はあろうかと思います。ただ、やはり商売でございまして、自然発生的なものでございますので、いまにわかにこれについてこういうような方式に切りかえるというのは非常にむずかしいのではなかろうかという気がいたすわけでございます。確かにいまの浜相場に対する批判といたしまして、どうもそこいらがはっきりしないということはございますけれども、またそれならばほかにこれにかわる何か適当な方法があるかと申しますと、これもなかなかむずかしい。御存じのように大量の品物が港に着きまして、あまりのんびりやっているわけにもまいりませんので、非常に短時間の間にこれをさばくということからいたしますと、たとえば中央卸売市場に運んでというわけには実はいかないわけでございます。そういうようなことで、なかなか他に適当なかわるべきものがないということだと思いますが、ただ、やはりこれは現実の需給の一つのあらわれでございますので、私どもは需給が非常に安定的な形であるならばあまり妙な形で運営されることはなかろうという感じを持っているわけでございます。もちろんこれに対しましてはそういう線で指導しなければならぬということでございますし、従来もできる範囲ではやっていると思うのでございますが、しかしながら性格としてはそういうようなことであろうと思います。  それから手数料につきましては、これは直接浜相場とは関係がないといいますとちょっと現実的でないかと思いますが、形式的にいうと直接関係はございませんで、これは要するに個々のインポーターと加工業者との間の個別相対取引の際に手数料を取られる、こういうことで、やはりインポーターのいまの地位とかあるいは加工業者の地位とかいうことが影響しているのだろうと思います。まあそういうような性格のものであろうと思いますが、やはりバナナの需給が安定的なかっこうになれば、そういうものはおのずから改善される余地ができるわけでございます。同時に、われわれとしてもやはり努力はしなければならぬ。まあ正直のところを申しますと、なかなか手がかりがっかめないということで、ちょっとよけいな話でございますが、従来流通改善ということでいろいろおしかりを受けているわけでございます。しかし、なかなか手がかりがないということで、最近、ことしに入りましてからでございますが、加工業者が非常に数が多い、千以上ございます、これについて指導するにも手がかりがなくてはどうにもならないということで、実は加工組合をつくるということで指導いたしまして、私どもことしに入りましてからでございますが、加工組合の連合会もできたということで、現在それを通じていろいろな指導をやっているわけでございます。これは今後もやりたい、さらに具体的な改善の点についてこれを推進していきたい、こういう気持ちでございます。
  287. 中村重光

    中村(重)委員 私もこうして質問申し上げるについては、相当私なりの研究調査というものはしております。あなたは全くお手上げだということをおっしゃらぬ。改善しなきゃならぬ。物価対策の面からいって、流通の問題というものは非常に重要でございますから。むずかしいでしょう。ああした社会、ということばは変なことばでございますけれども、非常にむずかしいということはよくわかる。しかしやらなければなりません。いまの二百あるいは三百円の問題も、浜相場そのものとは直接関係ないだろうけれども、これはいまの流通上の一つの弊害という形のものであることは間違いないのです。それが直ちに消費者影響を及ぼしているのです。前近代的な姿のあらわれなんですよ。だから改めていかなければならない。ひとつ、あなたが責任者でございますから、通産省その他の関係とも十分話し合いをおやりになって、すみやかに改善していく、それを勇断を持っておやりなさい。私はこういう激励のことばを申し上げて質問を終わりたいと思います。
  288. 小峯柳多

    小峯委員長 次回は、明十六日土曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時三十一分散会