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1968-08-09 第59回国会 衆議院 商工委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年八月九日(金曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 小峯 柳多君    理事 天野 公義君 理事 宇野 宗佑君    理事 海部 俊樹君 理事 鴨田 宗一君    理事 堀  昌雄君 理事 玉置 一徳君       遠藤 三郎君    岡本  茂君      小宮山重四郎君    坂本三十次君       櫻内 義雄君    田中 六助君       丹羽 久章君    橋口  隆君       板川 正吾君    岡田 利春君       佐野  進君    多賀谷真稔君       楯 兼次郎君    中谷 鉄也君       古川 喜一君    塚本 三郎君       近江巳記夫君    岡本 富夫君  出席国務大臣         通商産業大臣  椎名悦三郎君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君  出席政府委員         通商産業政務次         官       藤井 勝志君  委員外出席者         公正取引委員会         委員長     山田 精一君         通商産業省企業         局長      大慈彌嘉久君         通商産業省企業         局次長     下山 佳雄君         通商産業省重工         業局次長    本田 早苗君         通商産業省重工         業局自動車課長 田中 芳秋君         通商産業省鉱山         石炭局長    中川理一郎君         特許庁長官   荒玉 義人君         運輸省自動車局         整備部長    堀山  健君         専  門  員 椎野 幸雄君     ――――――――――――― 八月九日  委員塩谷一夫君、久保田鶴松君及び中谷鉄也君  辞任につき、その補欠として川崎秀二君、板川  正吾君及び佐々木更三君が議長指名委員に  選任された。 同日  委員川崎秀二君、板川正吾君及び佐々木更三君  辞任につき、その補欠として塩谷一夫君、久保  田鶴松君及び中谷鉄也君が議長指名委員に  選任された。     ――――――――――――― 八月六日  韓国しぼり帯揚製品輸入禁止に関する請願  (小川半次君紹介)(第九八号) は本委員会付託された。     ――――――――――――― 八月六日  直江津市火力発電所設置に関する陳情書  (第三九号)  中小企業対策に関する陳情書外一件  (第四〇号)  四国地方総合開発に関する陳情書  (第七六号)  貿易振興に関する陳情書  (第七七号)  豪雪地域対策の強化に関する陳情書  (第八三号) 同月七日  官公需についての中小企業者の受注の確保に関  する法律運用改善に関する陳情書  (第一二〇号)  石油行政改善に関する陳情書  (  第一二一号)  三井アルミニウム工業早期実現に関する陳情  書  (第一二二号)  中小企業設備近代化資金貸付限度額引上げ等  に関する陳情書(  第一四二号)  四国地区を新全国総合開発計画の一ブロックと  して計画に関する陳情書  (第  一四三号)  地方総合開発制度整備に関する陳情書  (第一四四号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  閉会審査に関する件  通商産業基本施策に関する件  経済総合計画に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ――――◇―――――
  2. 小峯柳多

    小峯委員長 これより会議を開きます。  閉会審査に関する件についておはかりいたします。すなわち  通商産業基本施策に関する件  経済総合計画に関する件  公益事業に関する件  鉱工業に関する件  商業に関する件  通商に関する件  中小企業に関する件  特許に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件  鉱業一般公益との調整等に関する件 以上各案件について、議長に対し閉会審査申し出をいたしたいと存じます。これに御異議ありせんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小峯柳多

    小峯委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、今国会に設置いたしました産業構造並びに貿易対策に関する小委員会産業金融に関する小委員会及び鉱業政策に関する小委員会は、閉会中もこれを設置し、調査を続けることに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 小峯柳多

    小峯委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、閉会審査を行なうにあたりまして、参考人より意見聴取する必要が生じました場合の人選、日時、手続等に関しましては、あらかじめすべて委員長に御一任を願っておきたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 小峯柳多

    小峯委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次に、閉会委員派遣に関する件についておはかりいたします。  閉会審査案件付託になり、審査のため委員派遣を行なう必要が生じました場合の委員派遣承認申請に関しましては、すべて委員長に御一任願いたいと思いますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 小峯柳多

    小峯委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  7. 小峯柳多

    小峯委員長 この際、御報告申し上げます。  本委員会付託になりました請願は、韓国しぼり帯揚製品輸入禁止に関する請願の一件であります。  本請願取り扱いについては、先ほどの理事会において協議いたしましたとおり、この際、その採否を保留いたしますので、さよう御了承願います。     ———————————
  8. 小峯柳多

    小峯委員長 なお、本委員会に参考送付されております陳情書は、直江津市火力発電所設置に関する陳情書外十件であります。      ————◇—————
  9. 小峯柳多

    小峯委員長 これより通商産業基本施策に関する件、経済総合計画に関する件及び私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。板川正吾君。
  10. 板川正吾

    板川委員 私は、いま自動車産業の問題が国民の間でいろいろ議論になっておるのでありますが、自動車産業の中の自動車部品行政及び技術導入あり方、この点にしぼりまして、二点ほど質疑をいたしたいと思います。  まず第一に、アイシン精機ボルグワーナー合弁によるアイシン・ワーナー会社申請問題について伺いたいと思うのです。  懸案となっておりますアメリカ最大自動車部品メーカーボルグワーナー社日本進出について、その後通産省はどのような処置をしたかという点をまず伺いたいのであります。  新聞の伝えるところによりますと、ボルグワーナー社トヨタ系アイシン精機との合弁自動車用自動変速機製造及び販売アイシン・ワーナー会社設立いたしまして、その会社資本出資比率ボルグワーナー社が五一%、アイシン精機側が四九%、こういうふうに申請が出されておるということを承知いたしておりますが、従来通産省のこうした技術導入指導方針は、御承知のように機械工業振興臨時措置法運用によって外資との合弁会社出資比率が五〇対五〇、フィフティ・フィフティ対等原則を堅持するということがとられておりました。もしこのアイシン・ワーナー会社のように外資側が五一%の絶対過半数出資比率で占めるということになれば、私は、すでに五〇%、五〇%対等出資比率合弁会社をつくっている外資系が、同様に五一%、絶対過半数を持ちたい、経営主導権を確保したいということになって、これが同種の産業界に及ぼす影響は非常に大きいものがあろうと思うのであります。  この四月三十日の「日経新聞」によりますと、「通産省は、関係業界からの意見聴取を急いでおり、早ければ五月中旬にもこの問題に対する正式な態度を固める予定だが、「当初から対等合弁共存共栄が確認できなければこのまま認可するわけにはいかない」」、こういうような態度をとっておられると伺っておるのでありますが、一体この申請に対して通産省あるいは、外資審議会企業局かと思いますが、どういうような措置をとられておるのか、とられたのか、それをまず承っておきたい。事務当局でいいです。
  11. 本田早苗

    本田説明員 お答えいたします。アイシン・ワーナー合弁会社設立申請につきましては、三月に申請が出されておりまして、現在は通常の取り扱いでは一カ月後までに態度をきめなければ認めたことになるわけですが、その一カ月以内にきめられない事情がある場合にはその事情を付して延ばすことができることになっております。この申請内容が、御指摘のようなボルグワーナー側が五一%の過半数出資するというかっこうの申請になっております。現在これは留保という形にいたしております。  機振法の運用出資は五〇、五〇にすることになっておるという御指摘がありましたが、機振法の運用としてはそういうことをきめておりませんが、従来自動車部品につきましては、御指摘のように、自動車工業をささえる産業として部品工業がきわめて重要だという意味で、外国資本過半数を占めるという形になった場合の影響を考慮いたしまして、従来は五一%以上の出資合弁は認めた例がないという事態になっております。われわれといたしましては、合弁会社日本自動車工業の発展に有効な形で発動できる内容であるべきであるという考えでおりまして、現在はまだ結論を出しておりませんが、そうした考え方で処理すべきであるというふうに考えております。
  12. 板川正吾

    板川委員 五〇%、五〇%でなければ好ましくない、対等原則共存共栄的な条件が満たされること、すなわちフィフティ・フィフティ原則相手側承知しない限りは留保をしておって当分認めることにならない、こういうふうに考えていいのですか。
  13. 本田早苗

    本田説明員 御指摘のように、合弁会社共存共栄の形で運営できる内容になれば認可できるというふうに考えておる次第でございます。
  14. 板川正吾

    板川委員 それから、この新聞によりますと、関係業界からの意見聴取を急いでおるといっておりますが、関係業界からの意見聴取はしておりますか。
  15. 本田早苗

    本田説明員 公式に関係業界意見聴取するという形はとっておりませんが、当然その辺を考慮して判断したいというふうに考えております。
  16. 板川正吾

    板川委員 公式に関係業界意見は聞いてないが、実質的には意見を考慮している、こういうように考えていいわけですね。
  17. 本田早苗

    本田説明員 事実上はそういう影響を考慮して判断したいというように考えております。
  18. 板川正吾

    板川委員 このアイシン精機がすでに開発しておる自動車自動変速機トヨグライド、これは日本技術で開発したんですね。ところが、それがパルグワーナーが持っておる技術に抵触をするのだということで、トヨグライドのついた車がアメリカに輸出できないというようなおそれがあるということで、アイシン・ワーナーという別会社をつくって、日本における自動変速機のいわば独占的な地位を与えよう、こういうことになるわけですね。もしこのアイシン・ワーナー会社認可をされるということになれば、日本人が開発したトヨグライド、これは日本国内でも生産をやめてしまうのですから、使えなくなるということにもなるわけです。この点は、私はせっかく日本人が開発した自動変速機が使えないということはまことに遺憾だと思うのですが、ともかくこの外資との提携合弁会社等については、せめて五〇%、五〇%の対等条件を今後もぜひひとつ確保してもらいたいと思います。要望いたします。  問題は第二番でありますが、第二の問題はブレーキ技術導入あり方についてであります。通産省自動車自由化をめぐって日米の交渉で、財界国民からは、ある意味では不可解と思われるほど自動車メーカー保護政策をとってきたと思います。これは財界の中から唱えておる自動車保護論というのが台頭いたしておりまするように、自動車メーカー保護があまりにも強過ぎておるという感じを財界国民は同様に持っておると思うのです。中小企業の倒産は五年前の六倍、昨年の二倍というふうに非常に多くなっておりますが、これに対して通産省が積極的な対策を持ったという話は聞かない。しかし、半期で一社で百億円も利益を上げておるという自動車メーカーに、単に経営規模米国企業より小さいという理由で、消費者意見もほとんど聞かずに、自由化を排除しているということは、どうも私どもはバランスを失した通産行政あり方ではないか、こういうふうに考えるものであります。  御承知のように、自動車メーカーは一種のアセンブリー業であって、部品を外注し、それを集めて組み立てをして販売をする、こういう状態です。自動車生産コストの中に占める支払い部品代金というのは、五五%から六五%を占めておるのであります。ですから、自動車産業というのは、いわばその三分の二は部品工業に支えられて成り立っておるといっても過言じゃない。ところが部品産業というのは大部分が中企業あるいは小企業で、大企業に類するものはごくわずかであります。七千何百という数字があるそうでありますが、大部分零細企業です。自動車産業というのは、将来日本の輸出の大宗を占める戦略的産業であるから、これをひとつ大いに育成していこうということであるならば、まず部品業界を育成するという考え方を持つ必要もあるだろう、こう思うのであります。  そこで、これは事務当局でいいのですが、農振法の目的というものをひとつ一回振り返ってもらいたいと思うのです。機振法は、独禁法の適用除外規定や税制上の特例措置がありますために、臨時法というふうになっておりますが、これは機械工業のいわば基本法的な性質を持っておると思います。その目的は、わが国の機械工業が小規模で多品種で、少量生産であるためにコスト高を招いておる。そこで、これを専門化して量産化し、さらに適正規模にまで促進するという内容を持った法律であろう、こういう目的を持っておると思うのでありますが、こういうふうに理解していいかどうか、事務当局でいいですが、その点を……。
  19. 本田早苗

    本田説明員 仰せのように、自動車工業については、現在自由化問題でいろいろ問題にいたしておるわけでございますが、御承知のように自動車関係は、シャーシーを組み立てておるメーカーのもとに多数の部品工業車体工業あるいは整備業等がございまして、関係者としては百二十万人、こういわれる広い分野の業態であるということが、御指摘のような自由化問題について慎重に考慮するという態度をとっておるわけでございます。  御指摘のように、この自動車工業の中で部品工業が非常に大きな分野を占めており、事実上、日本自動車工業基礎分野をささえておるものが部品工業であるという点は、御指摘のとおりであろうと存じます。この部品工業中小企業が非常に多いということで、御指摘のように機械工業振興法で、現状が小規模で、多品種、少量生産コスト高になっておるために、国際競争力が十分持てないという状況でございますので、これを専門化量産化等により適正規模生産を行なう基盤をつくって国際競争力を強化していくという趣旨でございまして、すでに第三期の機振法の時期に入っておりますが、そうした線をさらに強化してまいるというふうに考えておる次第であります。
  20. 板川正吾

    板川委員 もう一つ、六月一日から技術導入自由化というのが実施をされましたね。これによりますと、「申請後一カ月以内に主務大臣から別段の指示がない限り、日本銀行において認可等を行なう。」ただし、日本経済に重大な影響を及ぼすおそれある場合に限っては留保するという先ほどの話の点が一つ。それから、自動認可方式による場合は、「対価が定額であって五万ドル相当額以下である契約」という二つの点が特にあると思うのですが、この技術導入自由化という問題と、大臣の別段の指示という問題とからむのですが、機振法の運用にこの自由化が抵触する場合もあり得ると思うのです。この場合には当然機振法の精神が優先する、機振法で指定された業種については機振法が優先するというふうに考えていいのでしょうね。
  21. 本田早苗

    本田説明員 一カ月以内にその所管省のほうの意見で、認可することに支障があるという事情があれば認可しないという手続で、一カ月の期間を置いておるわけでございますので、ただいまの御指摘のように、機振法の基本計画あるいは実施計画との関係で、その技術導入が悪い影響を及ぼすであろうという際には、認可について主務大臣のほうから意見を言って認可をとめるということができるという仕組みにいたしておるわけでございます。
  22. 板川正吾

    板川委員 機振法で技術導入あり方として、従来ワンソースワンライセンシーというたてまえをとってきたと思いますが、これは間違いありませんね。
  23. 本田早苗

    本田説明員 御指摘のように、自動車部品に関する技術導入につきましては、先ほど機振法の目的として御指摘がありましたように、国際競争力を強化することを目途にいたしておるわけでございますが、自動車の場合には、自動車メーカー部品メーカーが専属化する、あるいは隷属化するという形では、なかなか国際競争力が強化できないという点がありますので、方向といたしましては、自動車メーカー部品メーカーの間で水平的な分業体制を確立することが望ましいという考えでおります。その際、部品といたしましては、現在では単体部品生産集中化はかなり進んでおりまして、五十数社のものにつきましては、すでに上位の数社が過半を占めておるという状態になっております。しかしながら部品単体でございますので、単体部品生産メーカーという形では、自動車メーカーの設計に従った生産をやらざるを得ないという形になるわけでございますので、部品メーカーが総合的なユニットとしての部品をつくれるようにいたしたいということで、できるだけ部品総合専門部品メーカーとして集約化していくということが第二点として望ましいということに考えております。  こういう方向でやる際に、御指摘のように部品技術導入する際に、なるべく重複を避けるということと、それから欧米ですでに発展しておる技術でございますので、できるだけ広く世界先進国から技術導入、消化するという意味で広い範囲からとっていこう。こういうことでできるだけ一つソースに集中して導入するということは避けていこうということで、ワンソースワンライセンスという考え方をとっておる次第でございます。
  24. 板川正吾

    板川委員 従来そういう意味ワンソースワンライセンシーという原則をとってきた。  そこで伺いますが、日清紡ブレーキ部門業界進出をして、昨年自動車ブレーキ技術導入西独テーベス社との提携申請したときに、通産省業界意見を聞いて、これは必要ない、なぜ必要がないかというと、西独テーベス社技術と同様なヨーロッパタイプブレーキ技術はすでに入っておる、それはイギリスガーリング社の系統が入っておるし、提携がされておるし、さらにその上西独技術導入する必要はない、あるいはテーベス社日本進出に伴って同社の態度があまり芳しくない、こういうようなことで通産省ではテーベス日清紡との技術導入契約を許可しなかった、こういうふうに新聞では報道されておりますが、この事実は違いありませんか。
  25. 本田早苗

    本田説明員 御指摘技術導入の件につきましては、日清紡は、いま申し上げましたような広く世界技術、変わった技術日本導入して日本に発展さすという趣旨に沿う意味で、すでに米国英国系技術導入されておりますので、西独技術導入してブレーキメーカーとして伸びたい、こういう意図で提携の話が進められて、こちらに認可を求めたいという意向があったようでございますが、原則からいきますと、各国の技術導入するというのは基本の線に沿うておるわけでございますが、たまたまこのテーベスのものにつきましては、英国系特許との間で若干問題があるということがございまして、特許論争のおそれがあるということがございましたので、そうした危険は避けたほうがいいという指導をいたしたわけでございます。
  26. 板川正吾

    板川委員 それは、英国系というのはガーリング特許の問題でしょう。
  27. 本田早苗

    本田説明員 さようでございます。
  28. 板川正吾

    板川委員 テーベスというのは西ドイツにおけるディスクブレーキドラムブレーキの九割以上のシェアを占めているんですね。それが特許の問題でイギリスガーリング社との紛争が何か予想されるというのはおかしいと私は思いますね。すでにガーリングが入っておるからもう一つ要らぬじゃないかというようなことなんかで、二つ必要はないんだというようなことで、通産省では申請を不認可にしたというのです。ガーリングとの技術の問題が何か抵触するところがあるから許可しないというのは事実と反していませんか。ちょっとおかしいと思う。それはどういう事情ですか。
  29. 本田早苗

    本田説明員 許可しないというのではなくて、特許紛争がやはりいまもなお懸念としては続いておるそうでございますが、そうした懸念のある技術導入をやって、あとあと紛争が残るという形になることは望ましくないので、むしろそれを避けたほうがいいという指導をしてまいったわけでございます。
  30. 板川正吾

    板川委員 それから七月二十七日の日刊工業新聞によると、今度は日清紡は逆にテーベスとの提携をやめてイギリスガーリング社技術導入申請がされてきた。これは日刊工業新聞にありますが、この新聞によりますと、日清紡英国ガーリング社技術導入をめぐって通産省も非公式に難色を示しているというのですが、この問題は事実はどうなんですか。難色を示しておるのではなくて、実は賛意を表しておるというのが実態じゃないのですか。
  31. 本田早苗

    本田説明員 本年の四月のころになりますと、それまでに種々の経緯がございまして、日清紡としてはガーリングから直接技術導入契約をしたいという考え方が出てまいっております。それが出てまいるまでの事情を簡単に御説明申し上げますと、通産省といたしましては、テーベスガーリングとの間の特許紛争のおそれがあって、あちこち国内特許紛争を持ち込むという形では問題が残るので、むしろガーリンググループとして生産体制整備することが望ましいということで、ガーリング提携をしております会社と、それからガーリング特許を譲ったのがダンロップでございまして、ダンロップとの関係でもともと契約のある会社と三社の間で合弁会社をつくって、ガーリング技術基礎ブレーキ生産を始めるという形の話が当事者間で始まりましたし、これはわれわれのほうといたしましても部品工業生産体制整備方向として望ましいということで、この合弁会社設立によるブレーキ生産を推進してまいったわけでございます。ところが、途中でガーリングとの技術提携を行なっておる会社が他のブレーキ生産グループとの間の話が生じまして、その話からはずれていくという形になってまいったわけでございまして、したがいまして、合弁会社設立しようとしておった当事者の中からガーリングと直接技術提携をしているものが抜けますと、あとのほうが抜けがらになるというような形になったわけでございます。したがいまして、抜けがらになった合弁会社構想というものをどう片づけるかという問題に立ち至ったわけでございまして、そうした事情を背景にして、いま御指摘日清紡としては直接ガーリング技術提携を行なってブレーキ生産をやりたい、こういう形になったわけでございます。
  32. 板川正吾

    板川委員 それで新聞には「非公式に難色」とありますが、実際はこれには通産省としてはどういう方針ですか。
  33. 本田早苗

    本田説明員 先ほど申し上げましたように、部品工業技術導入原則的な考え方から申しますと、ワンソースワンライセンスという形でいくのが望ましいという考えは依然として変わりませんけれども、合弁会社の体系でやろうという形で進んでおった中から、ライセンスをすでに持っておる人の判断で進んでおる生産体制整備の話がこわれたという事情がございますので、こうした経緯は、正式に申請があった場合には、その原則に対する例外的な判断という形の判断を入れる必要があろうというふうに考えておるわけでありますが、ただいままだ正式の申請は出ておりません。
  34. 板川正吾

    板川委員 この場合に、では関係業界意見を参考に聞きますか。
  35. 本田早苗

    本田説明員 担当課長のほうで関係業界との話はいたしておると思います。
  36. 板川正吾

    板川委員 これは大臣にも聞いてもらいたいのですが、この機振法の運用ワンソースワンライセンスというたてまえできたのですね。ところが、今度そのたてまえを貫こうとしまして、トキコと、それから住友電工と日清紡が、これはともにイギリスガーリング社のライセンスをとってもらったのです。ところがその三社が一貫作業の合弁会社をつくろうと思ったが、途中で話し合いがくずれて、トキコ、これはガーリング社の一番のライセンスを持っておるところですが、トキコが日立と別につくるということになってしまったわけです。そうすると、取り残された住友電工と日清紡に対して、特に日清紡に対して新たにガーリング社とのドラムブレーキに関する技術提携を認めよう、こういう考え方なんです。そうしますと、トキコと、それから住友、日清紡とは二つに——ワンソースワンライセンスじゃないですね、ツーライセンスになるんです。これは従来の原則をはずすことになるんです。それはどうしてこうなるのかということを聞いたところが、いま説明がありましたように、トキコと住友電工と日清紡合弁会社をつくるように通産省指導しておった。ところが合弁会社設立する条件の話し合いがつかなくて、そしてトキコはこの日立グループによる新たな、自分たちでいくという方針をきめたために、今度はライセンスを持たない日清紡に対してトキコが持っておるようなガーリング社との一つのライセンスを認めよう、こういうことになる。ですから、そういう意味じゃ従来の原則がくずれるんです。これは私は今後のあり方として、この点は問題だと思うのです。従来のワンソースワンライセンスというたてまえをくずしていくということは、これはちょうどアイシン・ワーナー会社に五一%を認めるのと同じように、もしこれを認めるということになれば、同じようなケースが各業界に出てくるのじゃないかと私は思うのです。だから、本来なら私は日清紡テーベスとの技術提携というものを認めれば、それはヨーロッパ系スタイルが西独イギリスガーリング社との二つになるかもしれませんが、それは技術競争をさせればいいのであって、テーベスとの技術提携を認めても、ガーリング社とのツーライセンスというたてまえはとらないほうがほんとうは通産行政あり方としてはいいんじゃないか、これが筋が通っているんじゃないか、これを二つ認めるということは、単に日清紡ガーリング関係だけじゃない、同様な件ですが、各産業界に同じように出てくる可能性があると思うのです。その場合に、通産省は、これは例外だから認めて、あとからきたのはだめだ、例外じゃないから、それはだめだ、これだけは特別だという理由がつくだろうかどうか、この点をひとつ考えてもらいたいと思うのですが、いかがですか。
  37. 本田早苗

    本田説明員 詳しくは板川委員から御説明がありましたが、御指摘のように、原則に対して例外的な措置に相なるわけでございますが、原則のほうについてもわれわれとしては、ワンソースワンライセンスとして、ライセンスを受けたメーカーは、やはり部品工業体制整備に協力してその効果をあげるようにやっていただくべきものだと存ずるわけでございます。そしてその方向でせっかく合弁会社で活動を開始しようということで関係三社が具体化のためにいろいろ話し合いを進めた、ところが、途中からライセンスを有する方が他の構想に移ってしまうという形でその話はつぶれてしまうという形になりますのは、やはりそれは問題があるというふうに考えるわけでございまして、あくまでわれわれとしては、これは例外措置であって、今後とも部品技術導入原則といたしましては、ワンソースワンライセンス、しかもライセンスを取った方は一つのライセンスを与えられたという期待に応ずるような態度部品工業生産体制整備に協力していただくべきものである、こういうふうに考える次第でございます。
  38. 板川正吾

    板川委員 岡田君が何か時間の関係で質問があるそうですから……。
  39. 小峯柳多

    小峯委員長 岡田利春君。
  40. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 時間の関係で公取に質問いたしたいと思います。  端的に伺いますけれども、日本歯科用品商業協同組合という組合がございますけれども、この組合については御存じですか。
  41. 山田精一

    ○山田説明員 承知いたしております。
  42. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 去る六月の四日に札幌の公取に対して、服部鴻一、上山昭三という二名が四十五条に基づいて違反事実の報告といいますか、その結果、札幌公取を通じて中央公取委員会のほうにこの問題は審査案件として上がっておる、こう私は承っておるのでありますが、審査の今日の状況について、できる限り内容をひとつお話し願いたいと思うのです。
  43. 山田精一

    ○山田説明員 御指摘のとおり、その方々及び他の方からも申告がございまして、ただいま審査をやっております最中でございます。まだ審査を完了いたしておりませんので、審査内容につきましては差し控えさせていただきたいと思います。十分よく審査をいたしたい、かように考えております。
  44. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 特にこの二名のうち一名は、北海道の釧路市に居住いたしておるわけですが、現在人口二十万になんなんとして毎年発展をしている町であるわけです。しかし、ここで歯科用品の販売を営んでおる事業者は一名よりない。一軒であるという実情にあるわけなんです。私どもの調べによりますと、この組合の組合員にならなければメーカー及び問屋は、この歯科用品についてはおろさない、こういう仕組みになっておりまして、勢い組合員にならなければ資格があっても事業が成り立たない、こういう状況にあるわけです。しかもこの組合は、組合員の資格要件として、当該申請者の所在している事業者の推薦及び同組合の二名の推薦がなければ組合員として認めることができない、いわば利害が相反する者の推薦がなければ組合員になれない、組合員にならなければメーカー及び問屋は、この事業者に対しては物品の卸を拒否する、こういう仕組みになっておりますことは、明らかに二十四条の、いわゆる一定の組合行為の適用の除外命令にはずれる行為であって、公正取引に違反するものと私は判断するわけです。  そうしますと、この組合は単にいま申しました一件のみならず、桐生その他についても同様の問題が起きているということになりますると、いわば組合一本で日本全国の歯科用品の商品を扱っておるわけですから、きわめて重大な問題でもあろうか、こう考えるわけです。私のそういう一応の判断については、大体概括的な問題でありますから、そう間違いはないと思うのですが、この点についてはいかがですか。
  45. 山田精一

    ○山田説明員 そのような事実があるかの疑いがございまして、ただいま審査をいたしておりますわけでございます。審査の結果を得ますまで、いましばらくお待ちをいただきたい、かように存じます。
  46. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 なかなか公取は定員その他が少なくて、私ども一応国会で問題にいたしておるわけでございますけれども、大体この事件の審査が終わる見通しはいつごろでありましょうか。
  47. 山田精一

    ○山田説明員 さほど遠くなく結論が出る、かように考えております。
  48. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 なかなか日本語はむずかしゅうございまして、きのうは大臣から秒読みの段階ということで解釈に苦しんだわけですが、さほど遠くないというのは、大体一月以内であるという理解でよろしゅうございますか。
  49. 山田精一

    ○山田説明員 秒読みというわけにはまいりませんけれども、日読みの段階ということに御了承いただきたいと思います。
  50. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 最後に一件。これも審査中の問題でございますけれども、現在特に大きな問題として王子、十条、本州三社の合併問題が提起をされておるわけです。これもいろいろ報道関係を通じてこの間の問題が報道されておりますけれども、もちろんこれは審査中でありますから、その内容について詳しく述べることは困難であろうかと存じます。ただ、いわばこれはわが国の大企業の合併問題にとって、今後の方向を決するきわめて重要な問題であろうかと私は思うわけです。それだけにまた公取として慎重に配慮をいたしておると思いますけれども、大体この審査の終結はいつごろになる見通しであるか、これも大体でよろしゅうございますけれども、いつごろになる見通しか、ずいぶん久しい時間もたっておりますので、この点だけを承っておきたい。
  51. 山田精一

    ○山田説明員 ただいま御指摘の件は、正式の審査ということではまだございませんので、いわば事前の相談を受けたと申しますか、ネガチブクリアランスの申し入れを受けておりますので、ただいま調査をいたしておる段階でございます。できるだけ早く相談に答えたいとは存じておりますけれども、御指摘のように、きわめて重要な案件でございます。十分慎重に、また厳正な判断をいたしたい、かように考えております。
  52. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 これはいずれ委員会段階に進んでいくんだろうと思うのですが、委員会が一応この問題を取り上げて審査をするという段階はいつごろになるのでしょうか。これはいかがですか。
  53. 山田精一

    ○山田説明員 またそのスケジュールまではきめておりません。できるだけ早くいたしたいと考えております。
  54. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 けっこうです。
  55. 小峯柳多

  56. 板川正吾

    板川委員 日清紡に対する今度の特別の例外の方針、例外を認めていこう、こういうこと、どうも何か不明朗な感じが私どもするわけであります。通産省の説明によりましても、私が調べたというか、これはトキコの社長から電話で聞いたんですが、トキコと住友と日清紡との三社合弁会社というのは、住友がダンロップからのライセンスを持っておる。トキコはガーリング社のライセンスを持っておる。しかし、その住友が持っておったダンロップのライセンスは、その後ガーリング社にその技術が移転しておる。したがって、住友が提携したダンロップは、結局、ガーリング技術ということにその後なったのでありますが、この住友とトキコが合弁をして、そして日清紡にはサプライセンスを与えて、いわば下請の関係を受け持ってもらおう、こういうような話し合いで進んでおったんだそうであります。しかし、その評価をめぐっていろいろ意見がなかなか一致しないで暗礁に乗り上げておった。たまたまトキコは日立化成等と組んでやろうという話がその後持ち上がって、そっちへ行ったということで、通産省があっせんをした三社の合弁による一貫作業の会社、その会社ができなかったから、今度はワンソースワンライセンシーのたてまえをくずしても日清紡に許可するというのは、何か、どうもちょっと、おれの言うことを聞かなければ原則をはずしても片方へ認可をして、トキコに対しておきゅうをすえよう、こういうふうな感情的な措置が入っているように感ずるのでありますが、この点はどう思いますか。
  57. 本田早苗

    本田説明員 いまお話しのように、日清紡は、合弁会社の際には、ガーリングのサブになるということで、テーベスのときは直接技術提携の相手方になる話を詰めておったのでございますが、テーベスの問題が、先ほど申し上げましたような特許紛争の持ち込みという形になるおそれがあるので、テーベスをやめることになったわけでございますが、そこで日清としては、やはりブレーキメーカーとしてやっていきたい、サブでもよろしいということで、住友とトキコのグループに入ってサブでも生産を続けたい、こういうことになったわけでございます。いま御指摘のように、サブになるにつきまして、権利金の要求が出るというような形になって、かなり高額の権利金の要求、これに応じられないというような形がとんざの一つの原因になったわけでございまして、そうしてトキコのほうは、お話しのように、日立のグループに入るということで、日立のグループとしてブレーキ生産するという形に相なるわけでございますが、これまでの、合弁生産を進めるについて、日清としても、相当人も集め、いろいろ準備もしておる、そうしてサブに甘んじてやろうというところまで進んだというような事情がありまして、この辺の事情を考慮いたしますと、今回のケースについては例外的な判断を要するのではないか、こういうように考える次第でございます。
  58. 板川正吾

    板川委員 まあ例外的に認めていこうというような通産省方針、その例外を認めると、同種の技術提携の問題で、ソース側から技術を提供した側から今度は、じゃ、それを二社、三社にやっていこうという議論が出、また、日本企業等も、同じたとえばブレーキ問題でも、アメリカのタイプをやっているベンディックス会社技術提携をしておる曙ブレーキという会社があるでしょう。そのベンディックスというアメリカ会社が、それじゃ今度は別な会社にライセンスを与えてお互いに合弁でやっていこう、たとえばそういうような例が出た場合に、この日清紡一つの前例となり、同様の措置が、これはブレーキ関係ばかりじゃなくて、自動車産業、それからすべての技術提携問題について同様なことが言えるのじゃないか。そうすると、いわば機振法で原則的に、ワンソースワンライセンスのたてまえというものがくずれていく可能性があるんじゃないか。この点を心配しておるのですが、その点は心配ないのですか。
  59. 本田早苗

    本田説明員 御指摘のように、例外的な措置に伴いまして、部品工業あるいはその他の分野で、技術導入にあたりまして、同じソースから複数の申請が出るということにつきましては、われわれとしても、今回の判断にあたりまして、一応検討いたした次第でございますが、今回の場合は、先ほど申し上げましたような、事態としてある程度進んだという経緯がございますので、まことに特殊な経緯ということで、今後こうした経緯のないことでただ単にニューエントリーとして複数の二番目以降の申請が出た場合には、原則を守って適切に措置するという考えでおる次第でございます。したがいまして、今後出る場合には、これをできるだけ整理をいたしまして、一つグループにまとめるなり何なりいたしまして、別個の生産単位として生産するという形は認めないということでまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  60. 板川正吾

    板川委員 じゃ、こういうことですね。今度の場合には全くの例外措置であって、これを前例とする取り扱いは今後はもうしない、原則を堅持していく、こういうふうに理解していいですか。
  61. 本田早苗

    本田説明員 そのとおりでございます。
  62. 板川正吾

    板川委員 確かに自動車産業というのは、わが国の産業のうちでまさに将来性もあるし、戦略的な産業で、すそも広いし、その育成ということも重要だと思うのです。しかし、自動車産業をささえておる部品工業ということを忘れて、ただ単に自動車メーカー保護のみに終始することは、私は当を得ていない、こう思います。そういう機振法の原則を今後もひとつ堅持していってもらいたいということを要望して終わります。
  63. 本田早苗

    本田説明員 御指摘のとおり、自動車工業が今後発展していくためには、自動車部品工業あるいは販売業等の関連の業界とともに栄えるという考え方で進まなければ成果はあがらないと思います。今回自由化の問題を契機に、自動車工業メーカーのほうでもその点を認識いたしまして、部品業界のほうに協力を話しかけるという体制になってまいりましたが、御指摘のように共存共栄でいくように強く指導してまいりたいということを考えております。
  64. 小峯柳多

    小峯委員長 午後二時から再開することとし、この際休憩いたします。    午前十一時三十一分休憩      ————◇—————    午後二時二十五分開議
  65. 小峯柳多

    小峯委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済総合計画に関する件及び私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑を続行いたします。堀昌雄君
  66. 堀昌雄

    ○堀委員 最初に、ちょっと経済情勢について、いまいろいろ予算委員会でも論議があったようでありますが、最近公定歩合の引き下げもありまして、昨年十一月に始まりました引き締めが一応解除の方向に参っておるようであります。たいへんけっこうなことでありますけれども、今日のこの情勢に立ってみますと、当初の政府が考えられました昭和四十三年度の経済見通しのいろいろなファクターについてはかなり動きが変わってきておるのではないのか、こう考えるわけであります。この間ちょっと新聞で見ますと、通産省の何か試算をしたものが新聞にちらちら出ておるわけでありますが、これは通産省が主たる原局ではございませんが、今日の時点に立ったことしの経済の見通しについて、長官からちょっとお答えをいただきたいと思います。
  67. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私も、堀委員の言われますように、引き締め緩和を可能にした環境というものは、やはり昨年末考えておりましたよりことしの経済が、どう申しますか、調子がいいということであろうとは確かに思っております。ですが、実は年度に入りまして統計等がわかっておりますのが、まだきわめて最初のわずかの部分でございますので、いわゆる経済見通しの改定を考えるというような段階ではないと思っております。したがって、成長率などがどのくらいになるか、鉱工業生産の伸びがどの程度であろうかというようなことを、ただいま申し上げる材料を、まだ年度始まりまして時間がたっておりませんので、十分持っておりません。国際収支につきましても、おそらく、赤字であるということではなく、黒字に転ずるかと思いますが、その幅についても数字をあげて申し上げるような段階に至っておりません。
  68. 堀昌雄

    ○堀委員 確かに、まだいま私どもの手元にありますものは四—六の鉱工業生産なり当面のものしかございませんから、いま直ちにこれをもって本年度の経済を見通すことは非常に困難だと思います。ただ、すでに昨年も当委員会でございましたか、大蔵委員会でございましたか、ちょっと記憶がございませんが、経済見通しの改定の問題に触れたわけでありますが、いまの調子で参りますと、ことしは御承知のように皆さんのほうではできるだけ補正予算を組まないのだ、昨年は補正を組む必要上改定見通しをひとつ出したい、こういうような論議もありました。実は改定見通しが出るようになりましたのは御承知のように一昨年からでありますけれども、一昨年私は大蔵委員会で当時の藤山企画庁長官に、かなり経済の動きが当初の見通しより動いておるから、やはり改定見通しを出したほうがよいのではないかと申し上げて、改定見通しが出されたわけでありますが、私はやはりことしの経済の動きも当初に予想せられたものとはかなり形が変わってくるだろう、こう思います。そういたしますと、皆さんのほうが予算の補正その他をどうせなさる関係もありますし、補正予算がなくても、十月なり十一月なり少なくとも七—九のデータがある程度整ったところでは、私はやはり政府は改定見通しをお出しになることのほうが経済運営上望ましいのではないか、こう考えるわけでありますが、長官いかがでございましょうか。
  69. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御趣旨は私は大体賛成でございますが、おそらく来年度の予算を編成する作業が本格化いたしました時期、それもなるべくおそいほうが比較的はっきりしたものがつかめると思いますが、そのころには当初の見通しとかなり動いておりましたら、やはり改定をすることがよいのではないか、こう思っております。
  70. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、これは少し意見にわたることでございますけれども、今度の当初の経済見通しはノミナルで一二・一%、実質で七・六%の成長とこうなっておりまして、その中でも鉱工業生産が前年比九%と非常に率は小さく見積もられているわけであります。これをひとつデータで見ますと、四—六までしか出ておりませんけれども、この四—六の対前年同期比は一八・九%増に現在すでになっておりますね。これは非常に高い水準でありまして、四十二年の四—六は対前年同期比一七・四%であります。四十二年の七—九が一八・六、十—十二が一五・四、一—三が一六・六というのが対前年同期比の伸び率でありますから、このデータで見ますと、少なくとも昨年の四—六よりもことしの四—六のほうが対前年同期比については高い。対前期比も五・四%で高い。いずれにしろこの四—六というものは高い水準できておるわけです。これは引き締め型といわれる中での実は鉱工業生産の伸びでありますが、この鉱工業生産の伸びをささえたのは、やはりかなり輸出が出たということも大きな理由だろうと思いますが、ですからこれは鉱工業生産の伸びが下がってくると予想されるのでありましょうが、私はどうもあまり下がらないのじゃないか。少しは下がりましょうが、私の感触では大体四十三年度締めくくると、やはり一四から一五%くらいの伸び以下になることは、まず現状のスタートの状況から見てむずかしいのではないか、こういうふうに私なりの見通しを持っておるわけでありますが、これがもし下がるんだとするならば、どういうファクターによってこの鉱工業生産が下がってくるのか、そこらをひとつ長官お答えをいただきたいのです。
  71. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 各企業からこれからの投資についての方針をアンケートでとっておりますが、投資予測調査のようなものでありますが、一応ただいまのところは下半期になりますと少し投資が下がる、こういう答えをしておる企業が多いようでございます。しかしこれもアンケートでございますから、どの程度正確かということはわかりませんけれども、一応そういうデータがあるわけでございまして、そこでたとえばアメリカの景気がどのくらいな規模でどのくらい早く落ちるかという、これもはっきりいたしませんけれども、しかしいまの調子でないだろうということはほぼみんながわかっておりますから、そういったようなことでも企業家の態度影響いたしまして、そんな環境の中で下半期に下がっていくということがあるかもしれない、こう思います。
  72. 堀昌雄

    ○堀委員 実は、今度の引き締めというのはたいへんおもしろい情勢がありまして、引き締めをしておりてりの大企業では手元流動性が非常に高くなりました。この手元流動性の資金を、これまでですと銀行預金になったものが、金利先行性が高くなっているものですから、期近の金融債や何かで手元流動性を確保する、これは都市銀行を大いに刺激しているという状況があるわけですが、大企業はそういうかっこうです。中小企業はこれまでの引き締めが非常に影響しておったものだと思いますが、ここで徐々に解除をされる、こういうことになってきますと、中小企業側もやや流動性が高くなってくるだろう。そうしますと、前には資本自由化が前にきているわけですから、企業側としては企業防衛上少なくとも人力を減らすための合理化投資というものは、手元流動性に余裕があり、多少金融の緩和の時期でもあるということが重なれば、いままでのそういうアンケートはこれまでの引き締めの条件の中でのアンケートでありますから、引き締めがゆるんできたという中では、私はやはり投資もかなり促進をされてくるだろう。特に大企業の問題は、御承知の産構審である程度のワクをかけられておりますが、これは三分の一ぐらいしかカバレージがないということになっておる。それからあとの三分の二がどうなるか、これはだいぶ先に行かないと、私はこの間もこの問題は商工委員会で取り上げておりますが、どっちへ中小企業の投資が走っているのかわからないで経済運営をしていらっしゃるというのが、いまの政府の非常にやりにくい問題点だろう、こう思っております。アメリカの景気の問題も、なかなか私はそう急速に下がらないんじゃないか、下がることは間違いなく下がるだろうと思いますが、そこにタイムラグが出てくるんじゃないかと思いますと、どうもやはり皆さんも御心配になっておるでしょうけれども、もう一ぺんまた引き締めをしなければならぬ時期が案外来るんじゃないだろうか、こういう感じがするわけですが、その点いまの私の考え方に対して長官はどうでしょうか。
  73. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 中小企業の設備投資の動向につきましては、実は先ほど予算委員会で私もいま堀委員が前段に言われましたこととほとんど似たようなことを申し上げたのであります。つまり中小企業でも、この引き締め時期に実際の運転資金が困るというようなことであれば、相当そういう声を出されたでありましょうけれども、省力投資、合理化投資というようなことを一年延ばしてくれろというようなことでありますと、比較的当面の打撃はないものですから、そういう御遠慮がやはり何がしかあったかもしれない。金融のごめんどうは見ておったつもりですけれども、全体が引き締まりぎみということで、そこでこうなりまして、きわめて中小企業の合理化投資、省力投資が順調に行なわれ始める、それもほどほどでしょうが、ということは長期的に見て私どもはいいことだし必要なことだ、そう思っております。そこで、ですからこれからあと大企業のほうは、前の程度のペースあるいは落ちるところがあるかもしれないとしても、中小企業のほうは落ちないだろう、むしろ政府は多少の投資は期待するのではないかというお話でしたら、私はやはりそうだと申し上げるべきだと思います。
  74. 堀昌雄

    ○堀委員 そうなると、どうもさっき申し上げた鉱工業生産というのは、少しは下がっても、これは九%なんということは、ちょっと予測できないんじゃないかと思いますが、その点どうでしょう。
  75. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私も、大体そういう頭があって先ほどからお答えをしております。
  76. 堀昌雄

    ○堀委員 そういうようなお考えでございましたら、これはひとつぜひやはり適当な機会に、時期まで明示をいたしませんけれども、データもそろい、それが実際に日本経済の運営に役に立つ時期には改定見通しをやるということをひとつ御答弁いただいたら、それでこの経済見通しの問題は終わりたいと思います。
  77. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そういうつもりでございます。
  78. 堀昌雄

    ○堀委員 その次に、今度は通産大臣にお伺いをいたすわけでありますが、きょうも自動車の問題が出たかもわかりませんが、この間から休会、選挙の時期を通じて、自動車自由化問題というのは日本経済における一つの非常に象徴的な問題として出てきておるわけであります。新聞を拝見しておりますと、熊谷通産次官一生懸命になって、ともかく日本の民族資本擁護のために孤軍奮闘というと言い過ぎかもしれませんが、大いにがんばっていらっしゃる姿をわれわれ新聞で拝見をしておりますが、私どもも、確かにできるだけやはり民族資本を守ってもらいたいという点では、通産省考え方基本的には同じでありますけれども、ただ私の考えの中には、日本の民族資本を守る目的というのは、ただその企業が守れればいいのだということにはならないと思っておるわけです。私は、その企業日本国民にとってきわめて望ましい条件の中で民族資本が残っていくならたいへんけっこうだけれども、日本国民と離れて企業だけが残ったところであまり意味もありませんから、そういう意味では私はいまの自動車産業の問題というのは、通産省でも努力しておられるようですが、私商工委員会で何回か問題提起をしてきましたけれども、もう少し国民の立場に立って日本自動車産業というものを考えていくということにならないと、かえって自由化をしたほうが結果として追い込まれて、日本国民のためになるということになる場合もあるんじゃないかという感じがいまいたしておるわけです。ですから、自由化をいろいろとおくらせることの中には、日本自動車の民族資本というものが国民のためになる民族資本となるような方向、位置づけを通産省はもう少しはっきりさせてもいいんじゃないかという気持ちがしておるのでありますが、今度の自動車自由化問題についてひとつ総論的に通産大臣からお考えを伺いたいと思います。
  79. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 お説ごもっともです。ただ二、三の企業が栄えるという意味だけのものであったならば、たいして苦労する値打ちがないと思います。ただ、申し上げるまでもなく、考え方はいろいろあると思いますが、自動車の下請が非常に多岐にわたっておって、そしてそれらの企業に従事する人口を合わせると——これは家族も入っておるのかどうかはそこのところちょっとわかりませんが、百二十万といわれているんですね。おそらく家族を入れない数字ではないかと思います。これはあとで十分調べてみます。したがって、ただ人口の大小のみならず、非常に日本的な組み合わせですね、日本的な組み合わせでもうがつちりとなってきておる。今後ますますその組織というものがもっと緻密になっていくんじゃないか。こういうかたまりを中心にして、そしていろいろ考えるというと、いきなり外来資本が入ってきて、これを相当にいいところはもちろん活用するでしょうけれども、ほとんど大部分はあんまり関係のないあれで、相当に混乱、分散されるというようなことを考えるというと、私はやっぱりこれはただ二、三、数個の企業の問題ではなくて、ほんとうに日本的な大きな問題として取り上げる必要があるんじゃないか、こういうふうに考えるわけであります。
  80. 堀昌雄

    ○堀委員 おっしゃるとおりでして、上のほうに出ているアセンブルするだけのところに問題があるんじゃありませんで、すそ野のほうに広がるからおっしゃるとおりなんですが、ただ私この前も問題を提起いたしましたが、通産省のほうでも表示価格は実勢でということで指導していらっしゃるだろうと思いますけれども、この間丹羽さんがここで論議をしております中にちょうど出てきました。私も前から申しておることですが、価格の調査をすることすら何か通産省の権限がない、こういうことのようですが、少なくとも私は、主たる輸出産業については、その原価計算は法律に基づいて調査をする権限くらいは当然通産省は持つべきだと思います。自動車に限りません。電気製品もそうですし、私がこの前から問題提起しておりますところの主力輸出商品の価格についてはやはり正確な原価計算を立ち入り検査をしても行なって、その価格は監督官庁であるところの通産省が十分承知していなければ、表示価格は実勢価格であると言ってみても、これはお題目を唱えておるにすぎないんじゃないかと私思います。この点を少し法律整備して、少なくとも前段として調査権だけは法律に基づいて行なえるくらいのことがあってしかるべきではないかと思いますが、その点大臣いかがでございましょうか。
  81. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 うっかりしてこういう点は突っ込んでまだ考えてみたことがないのですが、もしも原価計算の取りまとめが非常に現状においては支障を来たすということであるならば、これは非常に大事なことでございますから、もう少し正確にこれを把握するというためには、場合によっては制度的なものを取り上げて考えるのもやむを得ない、こう考えるわけであります。
  82. 堀昌雄

    ○堀委員 実際にこれから具体的に問題を進めていただくわけでありますから、問題を進めていただいていく中で支障がなければたいへんけっこうですが、どうも私はこれまでの企業側の動きを見ておりますと、支障がないといえないのではないか。この間本会議でカラーテレビにも触れましたけれども、私が非常に要望したいのは、輸出向けに送るのと同じものをなぜ国内で売れないのかというところに、私は非常に大きな疑問があるわけです。輸出商品と同じものを国内に出せば、その分生産量がふえて、輸出品のコストがさらに下がるはずなんですから、競争力がさらにつくのであって、そうすればダンピングなどといわれる心配はなくなるのに、輸出向けのものは一切国内に出さないというやり方のところに、さっき私が申し上げた企業国民の側に立っていない、企業の利益だけに狂奔しているということをどうしても言いたくなるわけですね。そこらについても通産大臣、これはこの間本会議のことでありますからああいう表現をとったわけでありますけれども、もう少し指導をして、国民のために、大量生産ができるように——いまカラーテレビの問題ですと大体二百五十万台近く本年度は生産するようでありますが、しかしいまのような情勢で、国民にみすみす高いものを買わせて、超過利潤を企業が得て問題を解決していこうなどということは、いささか私は物価高の今日問題があろう。その点についてはあとで公取委員長にもちょっと伺うわけでありますけれども、もう少しそこいら企業国民のことを十分考えがら企業の発展を考える必要がある。総理もおっしゃっておりましたが、企業の社会的責任ということをもう少しいまの日本経営者は考えていただかなければいけないのじゃないか。そのことを通じて国際競争力を持つことが私はほんとうの力じゃないかと思いますけれども、大臣はいかがでございますか。
  83. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 一々おっしゃることごもっともです。
  84. 堀昌雄

    ○堀委員 それではどうでしょう、一つだけここで約束してもらえませんか。ひとつ各電機メーカーに対して通産大臣から、輸出向けに出しておるものと同じ商品を国内向けに出すことを公式に勧奨していただきたいと思うのです。どうでしょうか。
  85. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 大綱においては私も異議ございませんが、それぞれやはりメーカーとしては、これはどうも国内に向くというようなことを研究の結果やっておるのかもしれません。いきなり輸出製品そのものをそのまま国内に出すというようなことは、やはり販売政策としてはかなりの冒険じゃないかと思われるので、その冒険をおかさないでやれるなら、それはやったほうがいい。結局あなたのおっしゃるのは、値段がもっと下がらぬか、こういうことですね。そういう趣旨なら非常に賛成でございます。
  86. 堀昌雄

    ○堀委員 大臣、実はいま国内で私が非常にひっかかるのは、キャビネットやなんかにずいぶんむだな金をかけておるわけです。アメリカ製のものは鉄製のキャビネットで簡単なものだ。キャビネットに金をかけて、それ以上に超過利潤をそこで取ろうとするその業界あり方に非常に強い不満を持つわけです。私どもテレビを見るのはその画面を見るのであって、キャビネットがいかに豪華であろうと何であろうと関係ないですからね。国民に安いカラーテレビを供給すれば国民は買いやすいのです。いまかなりカラー番組がふえていますからね。国民は値段が高いから買えない。しかしアメリカには六万五千円で輸出しておるというのは、国民感情として全くがまんがならぬことだろうと思っておるのですよ。ですから、カラーテレビの値段のことに触れないで、まず輸出しておるものと同じものを国内で出しなさいよと言えば、同じ商品を出して、輸出は六万五千円、国内は十五万円ということにはならないと私は思うのです。どうしてもやはり十万円を切れるぐらいのところで出さざるを得ないことになってくるのですから、まずそれをひとつやって——そうしてももうかるのですよ。輸出でもうかっているのですから、輸出でももうかるなら同じものを国内でも出せば、物品税や何かありますから、多少値段は違いますけれども、飛ぶように売れますよ。そして飛ぶように売って、生産量をふやすことによって、薄利多売をやりなさい、これは資本主義の原則の中で当然のことだと思うのですが、どうでしょうか。
  87. 本田早苗

    本田説明員 キャビネットによる価格差が御指摘のように六万五千円の輸出価格と十数万円の小売り価格との一つの要因ではございますが、そのほかにむしろ、しばしば先生が御指摘されておりますような、商取引における国内の慣習が表示価格と実勢価格との間に差があるということで輸出価格と小売り価格との間の格差が実勢以上に大きく出るという点もあるわけです。むしろ現在の商慣習につきまして、これの修正をいろいろ努力することが必要だろうと思います。ことに自動車につきましては、やはり同じ点を御指摘を受けましたが、最近自由化時代を控えまして、組み立てメーカーが非常に利潤をあげながら販売業者のほうでは赤字の販売業者の比率が相当高いというような現象がございました。最近若干赤字の会社の比率は下がってきておりますけれども、なおあるわけでございます。この原因も、単に販売業者の過当競争のみならず、組み立てをやっておる自動車メーカーのほうの販売の姿勢というものも影響してくる。この点につきましては、先ほど先生御指摘のように、今後日本自動車産業が一体として発展していくためには、自動車メーカーの発展のみならず、関係販売業者も部品業者も一体として発展し得る基礎を築くことが必要だということで、先般も自動車工業会の理事会では、関係業界共存共栄関係でいくべきだ、したがいまして、関係業界と協力体制について積極的に話し合いを進めようということになったわけでございますが、われわれとしてもこの線を大いに推進してまいりまして、現在の商慣習の、消費者のサイドから見て納得しがたいような点につきましても、是正していけるように指導してまいりたい、こういうように考えております。
  88. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっとあわせてそれじゃ伺っておきますが、いま自動車の輸出価格というのは一体幾らになっておるのですか。日本の一番代表的な商品というのはトヨペットコロナとそれから日産ブルーバードでしょうから、これの輸出価格をちょっと一ぺん言ってください。
  89. 本田早苗

    本田説明員 FOB価格で千ドル前後になっております。
  90. 堀昌雄

    ○堀委員 これは両方とも大体千ドル前後ですか。
  91. 本田早苗

    本田説明員 さようでございます。
  92. 堀昌雄

    ○堀委員 千ドルといいますと三十六万円ですね。トヨペットコロナのいまのはおそらくデラックスでしょうね。輸出のいまの基準の価格はスタンダードですか、デラックスですか。
  93. 本田早苗

    本田説明員 スタンダードでございますが、左ハンドルで、それからエンジンの出力としては少し大きいものをつけております。
  94. 堀昌雄

    ○堀委員 それじゃもうちょっと具体的に聞いておきますが、トヨタの場合は国内のエンジンは千五百CCですね。輸出はいま幾らのを載せているのですか。
  95. 本田早苗

    本田説明員 アメリカ向けで千九百CCでございます。
  96. 堀昌雄

    ○堀委員 ブルーバードは国内でたしか千三百CCですね。輸出は幾らですか。千六百ですか。
  97. 本田早苗

    本田説明員 国内が千三百CCで、輸出が千六百CCです。
  98. 堀昌雄

    ○堀委員 そうしますと、御承知のように千九百CCのエンジンというのは、これはおそらく多少内容は違うかもしれませんが、トヨペットクラウンのエンジンが千九百CCですから、別に輸出用のエンジンをつくるわけじゃないでしょうから、おそらくコロナにクラウンのエンジンを載せていると考えていいのじゃないかと思うのですが、その点どうですか。
  99. 本田早苗

    本田説明員 クラウンのエンジンそのものではないと思います。
  100. 堀昌雄

    ○堀委員 しかし、エンジンはほぼクラウン並みです。どうせ千九百CC、ボデーが小さいからくふうはされておるだろうと思いますが、そうなる。そうしますと、スタンダードにしてもエンジンが千五百CC。千九百CC載せているということは、デラックスよりはコストとしては高くなっているのじゃないか。エンジンが千九百CCというのは、要するに千五百CCのトヨペットコロナ・デラックスと千九百CCを積んでおるスタンダードというのは、原価的に見ると、私は千九百CCのスタンダードのほうが高いのだろうと思いますが、どうでしょうか。
  101. 本田早苗

    本田説明員 エンジンが大きくなったためのコスト高、それとスタンダードとデラックスの価格差と相殺するのではないか、ほぼその辺じゃないかという御指摘のようでございますが、輸出のほうが若干高いのではないかと思います。
  102. 堀昌雄

    ○堀委員 わかりました。そうすると、トヨペットコロナ・デラックスというのはいま幾らですか。
  103. 本田早苗

    本田説明員 小売り価格で六十二万ぐらいであります。
  104. 堀昌雄

    ○堀委員 これは会社で聞けばわかるわけですが、千ドルとして三十六万円ですから、同じ自動車アメリカへ輸出するときには三十六万円、国内のものは六十二万円で大体買っている。実質的には、さっきのように輸出のもののほうがコストが高いはずだから、エンジンが大きいからコストが高いとなると、そういう計算に自動車も実はなっているわけですね。だから、輸出と国内の価格の問題はカラーテレビだけにとどまらず、かなり問題があるような感じがしますね。通産大臣どうですか。国民がこれを聞いたら、やはりかなり違うな、こう感じるだろうと思うのですが……。
  105. 本田早苗

    本田説明員 御指摘のように、小売りは公示の価格でありまして、先般も御指摘がありましたように、実勢の取り引き価格がそれを下回っておるという実勢になっております。したがいまして、実勢価格との関係ということが実際の比較になるわけでございますが、御指摘のように公示の価格と比較しますと、物品税あるいは販売経費あるいは途中の卸マージン等々を入れましても、若干の問題はございますけれども、実態といたしましてメーカーが負担しておる広告費とかあるいはアフターサービス費、こういうものは輸出ではもう負担をしないわけでございますので、こういうものを引いていきますと、それほどの差はないというふうに思います。
  106. 堀昌雄

    ○堀委員 あなたはたいへん自動車のほうを弁解しておられるが、通産省というのはやはり国民の役所なんですよ。皆さんは自動車産業の公僕ではない、国民の公僕なんだから、ものを見る視点は常に国民の側から見てもらわないと困るのですよ、いいですか次長。それはおそらくあなたもそのつもりで答えていらっしゃるだろうと思うけれども、われわれの耳にはどうも企業の側を代表して言っておられるように聞こえるので、やはり国民の側を代表して言っているように答弁してください。事実を曲げてくださいと言っているのではなくて、心持ちの角度はそうしてもらわないと、さっきのあなたの答弁ではちょっと私は納得できない。なぜ納得できないかというと、私が言っているのは、輸出向けのやつは、アメリカで売ってどうこう言っているのじゃないのですが、輸出向けのそれを三十六万円で輸出をして利益があるということは、要するに原価としてのコストはもっと低いわけです、三十六万円よりさらに低いのです。それでメーカーはマージンを取っているわけだから、いうなればメーカーがマージンを取った卸売り価格ですよね。原価というのはおそらく三十万円だとかあるいはもうちょっと低いのかもわかりませんが、原価はそれだけなのだ。では三十万円なら三十万円でアフターサービスは一体幾らなのだ。最近の車はたいへんよくなっておりますから、アフターサービスで無料でやる期間は実はあまり故障しないのですよ。私はコロナに乗っている、むすこもコロナに乗っているというようなことで、コロナにしょっちゅう乗っておりますからわかりますけれども、大体無料で直してくれる時期にはあまり故障しないのです。無料期間が切れたころからちょこちょこ故障をするようになるから、あまりアフターサービスは販売費の中に入らないようになっている。最近品物がよくなって、たいへんいいことですけれどもね。  それから宣伝費の問題、これは宣伝費を全部まるまるぶっかけてくる。ぶっかけるのは当然だと思うのですが、それは宣伝過当ではないかと思っているのです。あんなに宣伝するよりも安く売ったほうがいい。新聞やテレビに出すよりも、その宣伝費だけ安く売ったほうが競争力が出てくるのじゃないかと思うのです。それは宣伝するなとは言いませんけれども、そこらは価格の関係でやはり問題があるだろう。  いま自動車について物品税は一体幾らですか。
  107. 本田早苗

    本田説明員 小型乗用車は一五%でございます。
  108. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの六十二万円のものだと幾らかかっておりますか。
  109. 本田早苗

    本田説明員 六十万円前後のものでございますと五万数千円でございます。
  110. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、私のいうコスト三十万にメーカーの利益を見て三十六万としましょう。それをあなたは一ぺん積んでごらんなさい。物品税を五万円積みましたね、そうすると四十一万円だ。それからアフターサービスはうんと積んで三万円くらいですね、いまの情勢では。五万円にならないでしょう、実際に非常に品物がよくなったから。そうすると四十四万円。あと六十二万の間に何があるのですか、一ぺん言ってみてください。
  111. 本田早苗

    本田説明員 これは当然卸売りマージン——大卸のですね。それから小売りマージンが入るわけでございます。
  112. 堀昌雄

    ○堀委員 大体どのくらいですか。これはまだ十八万円差があるのだから。
  113. 本田早苗

    本田説明員 両方合わせて公示価格との関係で三割くらいということになります。
  114. 堀昌雄

    ○堀委員 公示価格の三割、十八万円。一体卸と小売りとのマージン十八万円というのは、大臣、ちと多過ぎるような感じがしますが、どうでしょうか。これはもう少し圧縮されてもいいのじゃないですか、どうなのでしょうか。
  115. 本田早苗

    本田説明員 販売経費として運賃その他全部この中に含んでおるわけでございます。
  116. 堀昌雄

    ○堀委員 運賃はちゃんと地域によって建て値がいまの自動車は違いますよ。遠距離のところ、東京で買うのと名古屋では、トヨタの場合は名古屋で買うのが安いのです。東京はちょっと高いですよ。そういうふうにちゃんと運賃が入っているので、いまあなたのおっしゃった運賃込みというのは、これはたいてい外ワクになっていますね。きょうは大臣がいらっしゃることだから、もう事務当局はそのくらいでいいですが、いまの話をずっと大臣お聞きになって、どうでしょうね、これはやはり少し検討してみる必要があるというふうにお感じになりませんか。
  117. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 検討してみたいと思いますが、アメリカあたりでも小売り価格は相当高いのじゃないでしょうか。これもよく調べてみなければわかりませんけれども、一体どれくらいかかるものか。ずいぶん店舗をりっぱにこしらえて、それから外交員が需要者の私宅を訪問したり相当経費がかかると思いますが、そういうものをどういうふうに見ているのかよくわかりませんが、かなり開きのあるものだなとは思います。
  118. 堀昌雄

    ○堀委員 これは事務当局に要望しておきますが、いま大臣もお触れになったように、アメリカに売っている商品は、一体アメリカの市中で小売りはどうなっているのか、ここらの問題をいまわかっているなら答えてください。アメリカの市中の小売り値、いまのFOBの価格。
  119. 本田早苗

    本田説明員 いまのコロナで千ドル前後のFOB価格でありますが、小売りは千八百ドルでございます。
  120. 堀昌雄

    ○堀委員 千ドルで輸出したものが千八百ドルで小売りされているようでは、これはあなた、競争力が何かそこで阻害されているような感じがします。ずいぶんこれまた中間マージンが大きいですね。これはやはりアメリカのディーラーに売らせるよりは、日本のディーラーが出ていって向こうで直販をしたほうがはるかに、もっと安い価格で競争力が持てるのじゃないでしょうか。そこはどうなんでしょう。
  121. 本田早苗

    本田説明員 やはり販売のルートに乗せて売っていくほうが売りやすいということで、千八百ドルで売りながら、近年はかなりのカーブで増加しておるという現象になっております。アメリカのデイーラースマージンは大体二五%でございます。
  122. 堀昌雄

    ○堀委員 だんだん聞いていると、まことにどうも何かちょっとピントが狂っているのじゃないかという感じがします。まあ事実は事実でありましょうからけっこうですが、これは今後の問題として、自動車産業は皆さ人もお考えになっているように日本の主力輸出産業の大きな柱にしなければならぬものでありますから、そのためには、私がこの前から申し上げておるように、産業体系がきちんとなって、国民がもう少し安心して買える、いまのFOB価格千ドル、われわれは六十万円というようなところがひっかからないでガラス張りになったということになれば、これは国民だれでも納得して買うだろうと思うのです。だからそこらのところは通産省はもう少し本気でやっていただきたいし、それをやることなくしては輸出産業としての成長を期待することができなくなるし、それの中で停滞をしたときには、私は向こう側との競争力というのは大いに弱くなると思うのです。自動車産業が成長しておる限りにおいてはかなり競争力は持てるでしょうけれども、これが停滞してしまえばもうがくんと競争力は下がってくるわけですから、そこらについては価格の問題を含めて十分ひとつ御検討をいただいておきたいと思います。  きょうはずいぶん実態がよくわかりましたから、われわれも国民にもう少しPRをして、こういうことだからできるだけ値引きをして買いなさい、そのうちには値引きなどせぬでも買えるような時代が来るだろう、通産省がやっているけれども、時間がかかりそうだから、この間のテレビではないが、十万円以上のテレビを買うのはやめましょうというのと同じように、私はここで少し消費者が買い控えをやったら一ぺんに値段が下がるという自信があるのですよ。生産のほうはたいへんな規模でいっているのですから、ちょっと自動車は買い控えをするように大いに私どもPRをしたい。皆さん少し買うのを待ちなさい、半年買うのを待ったら二万円ぐらい下がりますよと言ったら、みんな大いに喜んで半年買うのを待つだろうと思うのです。ですから、そういうことを含めてあんまり国民の期待を裏切らないように、テンポを早めて価格体系の整備をしていただきたいということを特に要望しておきます。大臣、よろしゅうございますね。——速記には首を下げたのは載らないから……。
  123. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 消費者本位の行政ということが近ごろはやりになっておりますから、大いにその線に沿うてやりたいと思います。
  124. 堀昌雄

    ○堀委員 まあはやりでも何でも消費者本位でやってください。  そこで、ちょっと企画庁長官に申し上げておかなければならぬ点があるのですが、私は今度自動車の問題を少し調べておりまして、日本自動車道の建設費が諸外国に比べてきわめて高いということをデータで承知したわけです。フランスのアウトバーンをつくるのに比べて十倍近くかかっておりますね。アメリカと比べてもたしか三倍くらいじゃないかと思っております。きょうは正確な資料を持っておりませんが、アウトバーンをつくる費用が日本では非常に高い。その高いのは、やはり土地購入費が高いのかと思って中身を見ると、土地購入費だけではない。造成費もかかっておるし、同時に工事費も高い。その造成費の中には水利権の問題だとかなんだとか、土地の補償だとかなんだとかという関係のものが相当にたくさんある。そうしておまけに工事費が高い。工事費が高いのは、いまの一括引き受け請負をやらして、それを下へ下へおろしていくことによるロスで工事費も著しく高い。地価が高くて造成費が高くて、そういうように工事費が高いということで、諸外国のアウトバーンに比べてたいへんな実は費用にいまなっているわけですね。ところが、自動車産業をドライブしていくためには、やはり道路をちゃんとしないと自動車産業はドライブできませんから、そういう地方開発といいますか、都市開発、地方開発の中での非常に大きな問題点になるだろうと思うんで、やはりこういうところを合理化しないところに私は財政硬直化の非常に大きな原因があるんじゃないか、こう考えるわけなんです。財政硬直化というのは何も人事院勧告や米だけで処理をすればいいなどという安易なことでなしに、もっと基本にある硬直化要因を企画庁ではひとつ洗ってもらって、それに対する緻密な対策を立てていただかないと、これは将来的に戦略産業としての自動車産業の発展の阻害要因として出てくるんじゃないかと思いますので、企画庁長官からそれについてちょっとお答えを願いたいと思います。
  125. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私もそういうことをよく実は聞いております。やはりその辺に日本の経済の生産性が低いという具体的な事情があるのではないかと思うのでございます。つまり、いまのお話で申しますと、建設業開係のあり方が非常に複雑であって、それでいろいろなコストがかかってくるというようなこと、確かに大いに合理化をしなければならない部面があるように思います。建設大臣にもお話しを申し上げまして検討をしていただきたいと思いますが、やはりたくさんの人がわずかな仕事にぶら下がっておるというような形がまだまだ払拭し切れないという一つの列ではないかと思うのであります。
  126. 堀昌雄

    ○堀委員 ですから、ひとつその財政硬直化問題も、そういう一番基盤になるところもひとつ十分に御検討をお願いしたいと思います。  時間がありませんから、公取委員長にお伺いいたします。私どもこの間本会議で申し上げたわけですが、審判がたいへん時間がかかっておくれておるように思うのです。これは特に最近の牛乳あるいは粉乳でございますか、それから例の松下の再販問題、いろいろございますが、ちょっと二、三いま申し上げたようなものは、一体これはいつごろになったらケリがつくのか、ちょっとそのめどを伺いたいのです。
  127. 山田精一

    ○山田説明員 審判事件に非常に時間がかかるというおしかりでございますが、現在係属中の審判事件十一件ほどございます。ただいま御指摘のございました粉乳、これは現在委員会におきまして最終的な審決、これの文案を作成しておる段階でございます。これは遠からず審決になる見込みでございます。  それから牛乳でございますが、これは先般審決案を審判官が作成をいたしまして被審人側に送達をいたしました。つい最近に、数日前だったと記憶いたしますが、正確に申せば八月七日でございます。被審人側から異議の申し立てがございました。これをこれから委員会において審理をいたしまして、最終的な審決をいたす運びになります。  それから松下電器でございますが、現在までに二十回審判をいたしまして参考人の審訊をいたしておりますが、なお今後、七月までの二十回の審判で参考人三十六名の審訊を実行いたしましたが、なお数回を要する見込みでございまして、これは一応参考人の審訊を終わりますのが十一月半ば過ぎになるのではないか、かように考えております。
  128. 堀昌雄

    ○堀委員 私、やはりこういうものは十分念を入れてといいますか、やっていただくことがたいへん大事だと思うのでありますが、国民の側はたいへんこの行くえを期待して見ておるわけですね。ところが、いつまでたってもなかなか審決が行なわれないということになりますと、ものによってはその問題以後にまた問題が実はあるようなかっこうになりかねないのがいまの情勢ではないかと私は思っておるわけです。ですから、特に私が申し上げた人員の増強にしましても、それから予算の増強にしましても、これは単にこういう部分だけにとどまらず、きょう先ほど予算委員会でございました十五条関係の合併問題についても、たくさん実は案件があるわけです。  そこで、ここには大型合併について御賛成の企画庁長官と通産大臣がいらっしゃるので、私の合併問題に対する一つ考え方をちょっと申し上げたいと思いますが、私はいま論議をされておることは、どうも合併が、合併後の経緯というものは比較的短時点の間の評価で何かものを見ていらっしゃるような気がしてしかたがないのです。やはりこれらの大型合併というものが日本経済に及ぼす影響というのは、十年先においては一体どうなるだろうかという視点をはっきりさしておいていただかないと、二、三年や三、四年、四、五年の間の問題で大型合併というものは日本経済にはこのような影響しかないから問題はない、こうおっしゃっても、十年後における状態というものを考えたときには、その時点ではかなり大きな成長鈍化を起こすファクターになるのではないかという点をやはり十分考えておいていただかないと困るのではないのか。鉄を例にとって考えてみますと、なるほどいま後発の会社は競争力を持っております。しかし日本の鉄鋼生産がこれまでのようにずっと伸びるかというと、そう無限にいまのスピードで伸びるわけにいかないだろうと思います。どうしてもやがてこれは四十年代の後半になってきますと、だんだん伸び率は鈍化をしなければならない時期が必ずやってくる。その伸び率がだんだん鈍化してくる過程の中で競争をするということになったときに、一体どういう競争の姿になるのか。自分の感触でありますけれども、おそらく私は、住友が鹿島を全部建て終わる、八幡がとりあえず君津を全部四本を建て終わり、福山、水島を全部四本を建て終わって——神戸製鋼なんというものは、一体四本も建てないうちにどうもうまくないような情勢が来るようなことになるのではないのか、必ずしも私が加古川工場については賛成でないのはそこらに問題があるわけですが、そういう長期展望に立って、その先にそれらがはたしてどれだけの競争力を持つかということになったときには、どうもそこらから非常に問題はむずかしくなってくる。要するに競争力はもう激減をしてきて、いま皆さんの考えておられるような姿にはならないのではないだろうか、こういう実は私は疑問を持っておるわけです。だからこれはかなり先の、いまから見ますと少なくとも十年以上の先における問題をいま申し上げておるわけですが、しかし私もちょうど国会議員に当選して十年になるわけですが、健康の許す限りもう十年くらいおりますから、宮澤さんもお若いから、十年先にまた相まみえて、宮澤さん、あのときに私の言ったようになったじゃないですかということになっては困ると思うのです。ですから特に私は公取委員長にお考えを願いたいのは、いまの時点でものを見る場合には、確かに一つの見方がありましょう。十年先から顧みてみるのはたいへんむずかしいことでありますが、しかし諸般の日本経済の情勢は、ともかく企画庁は昭和六十年モデルというのをいまやっていらっしゃるのですから、昭和六十年に鉄鋼生産はどうなるのかということはまだ出ていないのかもしれません、これはたいへんむずかしいことでしょうけれども、やはりそういう長期的な問題、ビジョンの中でものを見るという一つの視点だけは私は十分配慮に入れて考えていただきたい、こう思うのです。  まず公正取引委員長のお答えをいただいて、あと企画庁長官、通産大臣にも、そういう視点から見た場合における鉄の合併問題は一体どうなんだろうかということを、ちょっと伺っておきたいと思います。
  129. 山田精一

    ○山田説明員 何年ということははっきりいたしませんけれども、合理的に予見し得る期間の展望、これを考慮に入れまして判断をいたしたい、かように考えております。
  130. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 実はそこが私どもにとっては非常に興味のある問題なんでございまして、わが国の経済がどのくらいのテンポで今後成長していくかということでございますが、どうも私のいろいろ話を聞いたりまた調査をしてもらったりしております範囲では、わが国の経済は、まだ十年や二十年相当のテンポで成長をするという考えの人が大多数のように実は思っております。ですから、いまの大型合併の問題につきましても、やはりそこのところの見方があるいは先生のお考えと私どもが分かれておるのかもしれませんが、たとえばいま全国総合開発計画で、昭和六十年というものの経済のフレームのワクを少し試算をしております。これは六十年の試算は申すまでもなく少し無理なんでございますけれども、それでもやっておりますと、たしかGNPが百五十兆というようなものになりまして、粗鋼の生産が一億六、七千万トンというようなことをいっておるのでございます。いままでの私どもの経験では、役所のエコノミストたち、各省の協力も受けておるのですが、大体こういうものを過小評価を従来しておりますし、同じ心理的なものがこのたびの作業にもおそらく共通に入っておるのじゃないかと思いますので、まだまだ昭和五十年、昭和六十年といった段階では経済の伸びは相当大きい。結局労働力をどのようにじょうずに生産性の高い部門へ流していくかということあたりが一番の問題じゃないかと思います。私どもそういう視点から、実は逆に、したがって日本の経済は静態的な経済でないので、十年や二十年、やはり大型合併の結果、それが市場支配的な価格を形成するということにはならないのではないか、やはりほかのメーカーが追い上げてくるというような考え方をどちらかといえばしております。しかしこれは十年、二十年先のことをどれだけ私どもが正確にわかるかということでございますが、私の聞いたり教えを受けたりしておる範囲では、相当まだまだという意見が支配的のように私には思われます。
  131. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 いま企画庁長官が非常に科学的に研究しておりますので、大体それでいいんじゃないかと思いますが、私の経験から見て、鉄鋼三社ということをいわれた時代がずいぶんあったのですね。そうしたら、いつの間にか鉄鋼六社ということになった。私は、これがまた十年たったらもう少し形が変わってくるかもしれない、おしまいには鉄に関しても日本だけの視野で考えないで、日米一体として、そうして一つの大きな一単位の市場として考えなければならぬような時代が来るのじゃないかというような気がいたしますので、あまり先のことを言えと言われても、どうも困るのです。
  132. 堀昌雄

    ○堀委員 宮澤さんのおっしゃる成長力のあることについては、私もあると思っているのです。ただ御承知のように、今度の問題、これからまた委員会を開いてやるわけですが、まあ御承知の成長論者は、一般的に今度の合併については反対しているわけですね。ということは、そういう阻害要因がなければ成長する、だからそういう阻害要因を成長のためにつくるべきではないというのが私はこの諸君の大体の考えではないかと思うのですよ。私もどっちかというと、まあ安定成長ではあっても成長したほうがいいと思っているほうですから、その点については同じなんですが、大型合併が成長させるための阻害要因になる可能性があるという点は、これはやはり学者の意見も聞いてみる必要があるだろうと思うのです。当委員会にもまた来ていただいてやるつもりでおりますが、本日のところは、公取の委員長はそういう長期的な展望を含めてこれらの問題には十分善処していただくし、同時に案件についてはできるだけ促進をしていただいて、国民の期待にこたえるようにしていただきたいということを要望いたしまして質問を終わります。
  133. 小峯柳多

    小峯委員長 塚本三郎君。
  134. 塚本三郎

    ○塚本委員 時間が少ないようですから簡単にお尋ねいたします。  通産大臣にお尋ねいたしますが、実は昨年この委員会で、特にあのヨーロッパにおきますゴールド・ラッシュの問題を中心にいたしまして、金を取り上げて小委員会を設けましていろいろと勉強いたしました。その結果、特に日本資源の開発につきまして、金の問題につきましては政府も助成の第一歩を印せられたかの感を深くしております。これはたいへんいいことだと思いますが、実は大臣承知のようにこの一、二年、金の問題以上に、産業としては小さな一業界ではありましょうけれども、硫黄鉱山がたいへんな問題をかかえておることは御承知のとおりでございます。  これは申し上げるまでもなく、輸入いたしました石油を精製する過程におきまして、これが公害となって世間の非難を浴びておりまするところから、この公害防止のために装置をつくりましたその装置の中から、自動的に実は硫黄がただで出てくる。ただという言い方は変でございますけれども、硫黄を取るためでなくして公害を防ぐために出てきた。だからこの硫黄の価格は、いわゆる生産価格ではございませんから幾らであってもいい。これが実はわが国におきます油の消費量の増大と並行いたしまして大量に生産されるという状態で、戦後二十数年間、鉱山事業の中で硫黄だけは需給のバランスをとって今日まで健全な経営がなされてまいりましたが、ここで突然異変的に価格の面でいわゆる壊滅的な打撃を受けようとしておることは、大臣の足元にも大きな鉱山がありまするから御承知のとおりでございます。一業界ではあるけれども、金の問題以上に重大な問題だという要請に応じて、実は昨日一日、私は群馬県の白根の鉱山に参りまして、三時間ほど中をずっと案内されて実態を勉強してまいりました。そのいわゆる品質等は日本一だと彼らは自負いたしておりましたが、その含有量が六〇%から七〇%という鉱床がたくさんあります。平均いたしまして三十数%というりっぱな資源がそこには埋蔵されておることを見てまいりました。しかしこれも、全然採算を度外視するところの脱硫装置から出てくる製品と太刀打ちすることは不可能でございます。しかしこのことは大臣も御承知のとおり、硫黄そのものが世界的に需要が伸びておりまして、実は品不足的な傾向がありまするから、政府が施策よろしきを得て、輸出に対して政治的な配慮を試みるならば、国内資源を今後ともたくさん掘り出すことができるし、ましてそこに働いております労働者にとりましても大きな希望をつなぐことができると思っております。この点、何らか具体的な施策を講じなければならぬことはすでに大臣の耳にも入っておると思いまするが、最初その御所見を承りたいと思います。
  135. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 まあ、ほとんど脱硫装置から出てくるのはいわば最低、ただであって、最高が幾らでも、これはただいただくほどよろしいというようなものでございまして、いますぐというわけではありませんけれども、脱硫装置から出てくる硫黄だけで日本国内の需要がまかなえるという時代がもう目の先にだんだん近づきつつある、いまこういう状況でございまして、山硫黄は放置しておけばほとんど全滅であります。しかし御指摘のとおり、世界の硫黄に対する需要というものは漸増の傾向にあるということをいわれております。これを国内的に調整をして、そして国際市場に日本から硫黄を売り出す、こういうことにして、そして山硫黄を救済といってはなんだけれども、たっとい資源が存在するのですから、それの開発はできるだけ続けていく、こういうことにしたら一番よろしいのではないかということで、そういう基本的な構想のもとに調整をやってまいりたい、こう考えております。
  136. 塚本三郎

    ○塚本委員 大臣、実は実情をきのうも私は白根だけでございますけれども見てまいりましたが、政府から具体的な助成らしきものは全く行なわれておらないという実情でございました。もちろん石炭とは比べものになりませんし、社会的な影響力も少のうございます。しかし私は、もはや今日の段階では、石炭に打たれておると類似的なものについて、たとえば運搬の手段とかあるいは探鉱の手段とか、こういうものに対してはもっと具体的な助成の策を設けてやってもいいのではないか。すばらしい資源として、しかも相当の含有量を持っておる、こういう状態のところですから、石炭と比べて作業も全く同じような内容で、ですから同じ山の中で同じそういう会社が、石炭だけは社会的にクローズアップせられてきたから、あるいはじりじりと世界産業体制の中できたから政治としては取り上げられておる、私はそのことはいいことだと思いまするが、硫黄の場合は全く突然異変的にこういう状態になってしまったわけです。だから、この際石炭に打たれておると同じような助成の策というものをお打ちになることが必要だと思いますが、この点どうでしょうか。
  137. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 いまお話ししたように、山硫黄を抱きかかえて、そして世界の需要に向かってひとつ手を伸ばしていく、大体こういう構想のもとに進めてまいりたいと思います。
  138. 塚本三郎

    ○塚本委員 その場合、いま大臣明確にそのことをおっしゃったから、たいへん私は心強くいたしますが、ともいたしますと、通産省の役所のほうから指示を受けております現地の者の受け取る印象といたしましては、しかし国際競争力と太刀打ちして勝たなければならぬ、だから今日トン当たり約二万二千ほどですか、それを通産省では一万八千円まで下げよと言われた。そして必死になって、労使協力をして、そしてコストを下げて、一万八千円でも何とか世界市場に太刀打ちできるし、一万八千円でやってくれるならば、わが山だけは太刀打ちできる、こういうところまで白根の諸君はいっておりました。会社も労働組合もそんな決意でもって、それはやはり経済は価格がすべてであるから、そのことに太刀打ちするための合理化を進めていこうということですが、やっとわが山は一万八千円で太刀打ちできるという希望をつないだところ、また一万四千円でなければいけないぞというような声を聞かされて、一体どこまでしたらいいのだ、そんな無計画なことがあるかといって——それはおそらく権威ある、確実なという、そういうことではないしに、それほどまでにやがては下がるであろうという見通しのもとにおたくのほうでは心配なさって言われたことでしょうけれども、しかし現地の声としては、一万八千円と言われたから、なるほど世界の価格に太刀打ちをするために、こういうつもりでおったところ、それがやっと見通しができたらまた一万四千円と言われると、いかにただなものであるとはいえ、人件費、電力等がかかる鉱山のことであります。その点どういう経過でそういうことになったのか。大臣のおっしゃるように国際競争に太刀打ちできるようにかかえていくとおっしゃることは私はたいへんすばらしいことであり、彼らにとっても前途に光明を見出すものであろうと思いますが、その点どういう経過でそういうことになったのか、もう少し説明していただきたいと思います。
  139. 中川理一郎

    ○中川説明員 ただいま御指摘がございましたように、石油精製業からの脱硫という事柄がきわめて急速に公害防止上の要請から出ておりましたために、山硫黄の状態が急に大きなショックを受けておることは、私どももまことに心配しておるところでございます。  長期的に見ますと、最終的には石油精製から出ます硫黄だけでも国内需要を上回ってしまう、つまり短油精製から出てきます硫黄も過剰供給として何らかの手を打たなければならぬ、こういう状況でございます。したがって、この道を切り抜けるためには輸出可能な体制を急速に整備いたさなければならないという状況でございます。ただ短期的に申しますと、回収硫黄そのものも直ちに国内の需要を全部まかない得るという状況ではございませんので、途中のことを考えますと、かりに回収硫黄の価格との競争で山硫黄が成り立たなくなるという状況が出てまいりますと直ちに需給が狂ってまいりまして、貴重な外貨を使って輸入をしなければならぬというまことに妙な現象が短期的には出てくるわけでございます。そういうこともございまして、私どもは当面しておりますこの状況から見まして急速に輸出体制というものを整備いたしたい。先ほど大臣が御答弁なさいましたように、幸いに国際的には食糧問題から端を発した肥料その他の需要というようなことで、東南アジア等からいたしましても硫黄に対する需要というものは国際的にはある。ただし、先ほど御指摘がございましたように、輸出可能な価格というものは山硫黄の業界にとってみては非常に苦しい価格でございます。現実に韓国あたりからのオファーもきておるということでございまして、私どもは当面早急にこの輸出体制整備いたしたいと考えておりますが、それには先ほど大臣の答弁にもございましたように、山硫黄の現在のコストと回収硫黄の価格というものとに大きなギャップがございますので、これらの調整をはからなければいけない。当分のところはやはり需要業界、石油業界にも協力をお願いいたしまして、一丸として総量としての供給過剰分を輸出する体制をつくっていく、同時に、国内価格につきましては、ただいま申しましたような協力体制のもとに、ある程度山硫黄業界が輸出可能価格で生産できる時点までのつなぎというものについて協力をしてもらわなければいけない、こういう状況でございます。  来年度以降の問題といたしまして、私どもは輸出のための共同輸出基地の建設でございますとか、あるいは輸出のための在庫金融というようなことについて、目下鋭意検討いたしておる状況でございまして、鉱業審議会の硫黄・硫化鉱分科会からこれらの問題について答申をもらっておりますので、この線に即してできるだけのことをやってみたいと思っております。はなはだ過酷なようでございますけれども、長期的なことを考えますと、山硫黄側におきましても、輸出可能価格というものについて、その実現ができるような合理化努力というものをやはりやってもらわなければいかぬ。ただ先生御指摘ございましたように、かつてのわれわれの想定よりもなお国際環境はきびしいような状況にございますので、なかなか困難であろうかと思います。最終的には輸出可能価格というものを実現してもらわなければいけない。しかし、経過的にはそこまでの努力の過程で追っつかない状態につきましてどのような助成をしていくか、これもなかなかむずかしいところではございますけれども、私どももいましばらくくふうと検討をさしていただいて、必要があれば何らかの予算要求というようなことも考えなければいかぬのじゃないか、かように考えております。
  140. 塚本三郎

    ○塚本委員 この問題、時間がございませんから打ち切らさしていただきますが、要望だけ申し上げておきます。必要ならばということの御意見局長から出ましたが、もう必要に迫られて、ある山のごときはすでに相当な赤字を出しておる、こういう状態でございますので、企業としての努力は当然要求しなければなりません。しかし一方におきまして、そういう生産費ゼロというようなものと太刀打ちせよなんということは、これは言うほうが無理でございますから、これに対する具体的な予算措置その他について鋭意御検討いただきまして、これが実施方を強く要望申し上げる次第でございます。この問題、せっかく前向きで御検討いただいておるようでございますから、要望だけにとどめさしていただきます。  私は次に通産大臣にお尋ねいたしますが、中小企業問題で、近年設備の近代化、生産の合理化、こういうことがもう再々叫ばれてきております。ところが、私はきょうここで結論を得ようとは思いませんが、ぜひ通産大臣にも経済企画庁長官にもお願い申し上げておきたいと思いますが、私自身も中小企業の一部門を担当して事業を行なっていて経験いたしたところでありますが、せっかく近代化あるいは大量生産によるコストダウン等をなし遂げたら、そのときはすでに中小企業の手からいわゆるその産業は取られてしまって、大企業がそれを行なってしまうというような状態に今日までの産業界はなっております。だから中小企業が生き延びる道は、非合理な、そうして何らかの形で利潤を得る者だけが安泰であって、合理的に近代化された生産体制を整えると、待ってましたとばかりに大企業が豊富な資金をもって、中小企業の行なっておりまする産業等を取り上げてしまう。そして資金と販売量にものを言わせて、とうてい太刀打ちできないような形にさせられてしまっております。だから私は、中小企業の問題解決のためには、どうしても最終的には中小企業産業分野に対して何らかの規定づけを行なっていくことが必要で、金があるならば何でもできるんだ、銀行さえつなぎとめておくならばどんなことにでも手を出せるんだというようなことでいきまするならば、中小企業の努力というものは全く水泡に帰してしまうというふうに思うのでございます。それはたとえば、私は自分で家具屋をいたしております。前の菅野さんのときにも申し上げたのでございまするが、家具でも大量生産のできるものはほとんど大企業に取られてしまいました。スチール家具がその典型的なものでございまして、金属でございますると大量生産ができます。だからせっかく開発したものが、できると大メーカーががさがさっと設備を整えてやってしまう、こういう形で取り上げられてしまう。一つの家具業界を見ても、和家具で全然大量生産のできない、職人でやっておりますようなところは、実は生き延びております。これがいわゆる洋家具になりますると、相当に大量生産ができる、そういう傾向が出てきますると、これが大企業の手を伸ばすところとなってきて、実はたいへんな資金に追われておるという状態。これがスチール家具になりますると、もうその度を通り越してしまって、その産業分野はもはや中小企業ではなくて、大企業に取られてしまっておる、こういうような状態になってきております。結局大企業が、大量生産ができると中小企業分野をほとんど取り上げてしまうというような状態でございます。電気ごたつなんか極端でございますね。こつこつとやっておりまするうちはよかったのでございまするが、それができ上がって大衆に普及されてきますると、一生懸命宣伝費をかけて、何年か実験の過程を経て中小企業がこれを確保した、その暁においては大電気メーカーがごっそりと取り上げてしまう。こういう形になってしまうから、中小企業者の立場になると、そんなに合理化しなければよかった、それならば自分たちも細々と先祖伝来の仕事、あるいは腕に覚えた職をそのままやっていくごとができたのに、こういうことが実は一つ私が携わっておる家具業界だけでも顕著にあらわれております。おそらくこのことは、あらゆる分野においていわれてくるのではなかろうか。だから最終的に合理化することはやむを得ない。私はこれは開放経済体制下における産業人の当然の宿命ではあろうと思いますが、そうすると中小企業とは何だということになりますると、逆に合理化のできないもの、人件費のかかるものだけが中小企業のもとにと押しつけられてきておるという状態。その顕著な例が、実は建設業なんかだと思いますね。実は五大建設会社が落札はいたしておりまするが、実際そのあたりで働いておる人に落札をした建設会社の従業員が一人でもおるかということを申し上げてみますならば、遺憾ながら監督で図面を持って飛び回っておる人が、これもあるいはですが、その落札をした会社の従業員であるかもしれない程度でありまして、おそらく最低五段階ぐらいピンはねをされて、そして小さないわゆる下請の業者がそれを行なっておる。だからこそそういうところが多く事故を起こす。事故の犠牲者は何だ。その建設現場は実は大きな建設会社でありまするが、犠牲になっておる人は全く名も知らないような会社の従業員であることがほとんどであるという状態でございます。これはひとり建設会社だけではない。製鉄会社の中で働いておりまして、労働災害の事故にあいまするときも、その会社の中であった事故だから、その人はほとんどそこの会社の従業員であるかと思って見ますると、その場合、いわゆる半分以上が、その中で働いておりながら、実際はそこの従業員ではない、こういう形になっている。もうからないもの、手数のかかるもの、近代化のできないものだけが中小企業にと分野を押しつけられてしまって、みずからが製品として開発しておるものでさえも、それができ上がったとたんに、販売力にものをいわせ、資金力にものをいわせたものが取り上げてしまう。もはやその時点では中小企業の手から遠く届かないところにそれは行ってしまう、こういう形になっております。だから私は、このことをいま直ちに回答をいただくことは無理だとは思いまするが、最終的には現実に中小企業のほうが日本産業においていわゆる能率が上がり、そしていいところにいっている分野がたくさんあります。現実に製造そのものは中小企業が負っております。にもかかわらず設計と販売だけ、あるいは資金面だけでひもをつないで、大企業製品として、これをテレビのコマーシャリズムに乗せて販売しておるという形にさせられておるわけでございます。だから最終的に中小企業の問題を解決するところのきめ手は、産業分野というものをある程度、むずかしい問題であるとは思いますが、何らかの形でこれにメスを入れて、そうして中小企業分野の確保、産業分野を確保するということに対する検討がなされてしかるべきではないか、かように思っておるわけです。将来の見通しとしてそう思うわけでございますが、この点の見解はいかがでございましょうか。
  141. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 この議論はずっと前から繰り返されておる議論でございます。少し秩序が立って収益があがってくると横っちょからいきなりとりにくる、こういうことで、何とか分野を画定せよという議論はずっとあるのであります。あるのでありますが、どうも極端な統制経済でもやろうという場合にはあるいは対象になるかもしれませんが、現在の自由経済のもとではどうもむずかしいのではないか。それで結局中小企業でなければ、中小規模の企業でなければやっていけないという分野があると思うのです。せんだってもたしかこの席であったかと思いますが、毛織物の例を私は申し上げたのです。紺とか黒とかあるいはごく単純なしまもの、そういったようなものを大量生産することはできるけれども、しかし模様ものなんかはなかなか大量生産できない。大量生産ということがかりに可能であっても、同じようなものがたくさんできるということになると値段が下がってコストを割るというようなことになりますので、どうしてもこれは大規模生産に適するものと適しないものとがあって、適しないものはじゃ要らないかといったら、非常に需要があるというので、たとえば愛知県の一宮付近の毛織物業というものはずっとみな中小の規模に分かれておるが、みな非常に繁盛しております。相当裕福にやっておる。でありますから、それは一つの例ですけれども、どうしても中小でなければだめだというものがあるのですね。それからまた機械工業なんかにしても、何かジョイントのものだとかあるいはメーターものだとか、いろいろ肝心なものであってそれは大工業には適しない、大工業なんかではとてもこめんどうで、絶えず技術改良をしていくそういう熱意も姿勢もない。大企業というものは案外抜けておるのですね。そういうようなもので中小企業なら中小企業の形において他の追随を許さないというようなものがたくさんあるのですね。それかというと、またいわゆる下請企業、そういったようなもので、どうしてもそれが一番少なくとも日本の社会においては最も適切な形態であるというようなものがたくさんあると思いますが、そういう本来の性質がそうさせるものであるならばそれはいいけれども、人為的にここから越えてはいけないというようなことを法律で定めるということは非常にむずかしいと思うのです。しかし私は研究を根本的にはあきらめてしまえという議論ではございませんけれども、非常にむずかしい。何かいい知恵があればそういう画定をするということもあるいは有効な場合があるかもしらぬけれども、どうしてもとられるものはとられてしまうのだから、これはどうもやむを得ないと私は思います。はっきり申し上げますけれども……。
  142. 小峯柳多

    小峯委員長 近江君。たいへん皆さんの時間が詰まっておるようだから……。
  143. 近江巳記夫

    ○近江委員 予算委員会に行かれますそうで、少々時間をいただきまして一問一答したがったのですができませんので、申し上げたいことを全部申し上げますから、それに対して感想をひとつ述べていただきたいと思います。  一つは、さきに発表されました四十三年度の経済白書の作成過程において、原案作成者と各省との間でかなり激しいいろいろなやり取りがあった、このように聞いております。そこで第一点は、生産の集中度と卸売り物価との下方硬直性との関係についてでありますが、現在問題になっております大型合併が管理価格の発生を招くというこの議論というものを統計的に実証したものでありますが、これに対して通産省が最後までいろいろとかみついた、そうして削除させようとしたというような話があるわけであります。実証のデータの前に結局歯が立たずに、通産省は、通産省より経企庁に出向している事務次官あるいは局長あるいは課長等の幹部職員にいろいろな力を加えて原案を一応つぶそうとした。これに対してあくまで抵抗した企画庁のプロパーの職員の良心というものは、私は非常に称賛されていいと思うのですが、逆に大きな顔をして経企庁を通産省の出店のように考える、そういう気風といいますか、そうした通産官僚のあり方、これは公務員としての職責を果たしていないことになる、このように思うのです。これに対してどのように思われるか。これが一点。  第二は、企業合併の経済効果について、欧米諸国の例から考えましてもかえって経営が悪くなっているというケースがあるわけです。これに対して、経企庁の原案に対して通産省は徹底的に反対をした。実証のデータを持たずに科学的データに基づく結論をつぶそうとする非常によくない行為と思います。いうならば通産官僚のファッショではないか、この点について意見を聞きたい。  第三は、消費者は孤立無援である、こういう表現をめぐって通産、農林、労働の各省が消費者に迎合してけしからぬと削除を要求した点。これは事実を述べたにすぎないのになぜに削ろうとしたのか、あまりにも業界べったりではないか。これに対する感想。  以上のように見てくると、経企庁というものはいかにも無力きわまる存在であるということがわかるわけです。なぜこのように各省は経企庁を見下すような態度に出るか。これは通産大臣、経企庁に自主性がないのは各省よりの出向者が多過ぎるのではないか。この点について。  それからこれを見ていきますと、経企庁の幹部職員の大半はやはり出向者で占められているわけです。事務次官は通産、官房長が大蔵、調整局長が通産、国民生活局長が農林、官房企画課長が通産、その他参事官、課長等多数ありますが、このような点に対して経企庁長官はどのように思われるか。  経企庁が戦後できた官庁であるために過渡的にそのような体制をとらざるを得なかった。それはわかるわけでありますが、戦後二十三年になっていまだに同じような人事を繰り返している。これは公平を欠くことにならないか。経済運営の姿勢において全く業界一辺倒である。公務員たるの資格を完全に喪失したそういうようなあり方、そうした通産官僚というのが経企庁のような重要官庁の中枢を独占するという点に問題があると思います。このような害悪というものを行政に流すような悪習を私は変えなければならない。これに対してどう思うか。  また、通産大臣は今後このような出向の人事を自制する意思があるかどうか。経企庁は関係各省のいうならば行政のそうした情報をとる出先機関というような状態になっておるのではないか。真の意味での総合企画官庁としての体制をなさずに、経企庁プロパーの職員はまじめに仕事に取り組む意欲も失っておる。このようなことで今後の経済運営の指針を自信をもってやっていくことができるのか。経企庁は単なる行政のアクセサリーであってはならない。じっくりとその仕事にささげる人材を集中すべきである。このように思います。しかし、この一つ一つを答えていただきますと、時間もないと思いますので、そうした点、私も非常にいろいろとまずい点があるのではないかと思うわけです。これについて感想をひとつ両大臣からお聞きして終わりたいと思います。あとまた引き続いて質問さしていただきたいと思います。
  144. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 最初のほうの生産集中の問題と卸売り物価の関係企業合併効果、それからもう一つ消費者は孤立無援でございますか、御指摘になりましたこと、私も何かどこかで読んだ記憶がございますから、そういうやりとりがあったのかもしれませんが、まあしかし議論をするのはいいことで、結果としてはその辺のところも経済白書にかなり出ておりますので、関係者がみんな結局意見が一致した点が白書になっておる、こう思います。いろいろおのおの役所の立場によって主張もありましょうし、いろいろ議論をするのはけっこうではないか。私のところまでその騒ぎをさばいてくれということには別にならなかったわけでございます。  それから、寄り合い世帯であるということについて、確かにそういうところがあるわけでございますけれども、私も二度ばかりこの仕事をやってみて思っておりますのは、やはり調整官庁というのは相手方の役所の立場なり情報、といってはまああまりいい表現ではございませんけれども、かなりよくわかっておりませんと調整ができません。それで、お役人が各省なかなか自分のところの内情というのは人にはそうそう話さないと思うのです。自分のところから出ていった人にはある程度話す。ですから各省のことが大体私どものところでそういう形でわかります。様子もわかりますし、問題点もわかるので、そこで初めて調整ができるということではないだろうか。私どものほうへ各省から非常に優秀な人がみんな出てきてくれておりますが、やはり経済企画庁の人間になったつもりで二年間なら二年間、ほんとうによくやってくれておりますので、ここで経済企画庁が全部独自のスタッフでもってやって、それで調整がうまくいくものかどうかということになりますと、私はやはり全部そうである必要はありませんが、ある部分は各省から来てもらうということが有効なのじゃないだろうか。なお、現在私どもの役所で、いわゆる純粋の、調整の部分でない経済の部分でございますけれども、エコノミストは大体今度は経済企画庁育ちの者が育ちつつございまして、その点はあまり調整とかいうようなことはございませんから、その点はそれでいいのだろう。やはり調整の部分は各省から優秀な人に一定の期間来てもらって、あまり早く帰ってもらったりいたしますと、なかなか仕事がやりにくうございます。まあ二年ぐらいはいてもらってというふうに運営しております。私は大体これでいいのじゃなかろうか。いろいろおしかりがあるところを見ますと、まだ不十分なところもあるかと思いますが、それは私の努力の足りない点でございまして、大体私もいまのこの人の仕組みというのはまあまあこれで目的を達しておるのではないかという判断をしております。
  145. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 経済企画庁の長官が言われることに全部私は賛成でございますから、何もつけ加えることはございません。
  146. 塚本三郎

    ○塚本委員 通産大臣が言いっぱなしで出ていかれてしまって、議論の途中でたいへん残念でございますが、同僚に対する友情として時間をさいてくれという要請でございましたから、引き続き政務次官にお尋ねいたしますが、たとえば特色のある一宮の製品等はもうかっておるというお話がありましたが、同僚議員の海部さんは、一宮出身でありますが、もうかっておらぬとこちらでみずから大臣の発言中に声を出しておりました。事実私もそのすぐ足元でありますから、そのことは承知しております。もうかっておれば、ややこしいものであっても、実は大企業が手を出しております。もうからないからやらないという形になっておるのですね。それは体制として統制経済でないからやむを得ないということは私も認めております。しかし、にもかかわらず私どもがこのことを主張いたしますゆえんは、何か実は政策的にそういう形の中に追い込まれておる分野もたくさんあるということが申し上げたかったわけです。たとえば建設会社などの、極端な例でございまするが、一つの建設をする場合、道路工事にいたしましても、あるいは大きな大建設をいたします場合、特に私は民間の問題はさておきまして、官公の需要に対してであるならば私はそういうことができると思いまするが、たとえばこの場合砂利一つを取り上げてみても、砂利の納入だけは中小企業者独自にやらしたらどうでございましょうか。それを一括して工事費としてずばっといってしまいますから、大企業に実はピンはねをされてしまっておりまするし、なおかつ支払い代金の問題でたいへんいじめられておる、こういう形に追い詰められております。以前はそうではなかったのですね。それは理屈はあるでしょう。建設省に言わせますると、そんなことまで一々やっておったら人件費が足りないといわれるかもしれません。しかし業界の立場になってみたら、たいへん大きい問題でございますね。建設省へそれを納める、あるいは各官公庁へ直接納めるのと、あるいは大きな建設会社に何度もどれだけかピンをはねられて、しかも手形をおくらされて支払われるということは、中小企業者としての立場から考えれば耐えられない問題でございます。だから、徐々にそういう形でもって実は政治の力で中小企業分野というものが、合理化の名のもとに、逆に大企業の下請たらざるを得ないという形に持っていかれてしまっておる。あるいはもっと大きな問題でございまするが、たとえばお役所に対する事務の机一切等はいわゆるスチール製にすべしということが出てきておりまするが、中小企業のいわゆる木材加工業者にしてみたらたいへんなショックでございます。自分たちで使えるものまでみんな外へ出してしまって、そうして木材よりももっと高いところの、清潔であるという言い方はできるかもしれませんけれども、耐久性の問題その他から考えてみたら、スチール製よりも木材のほうがいいと木材の加工業者は言っております。にもかかわらず、鉄鋼不況ということからその端を発したやにその経過を聞いておりまするが、通産省の責任ではないと思いますが、いずれにいたしましても、そういう形でもって大企業にとられてしまうという形に持っていかれている。政治的な施策でもって、あるいは役所の行政的な施策でもって大企業分野に持っていかれてしまう。だから私はこの際、中小企業として確かに一律にどうすべきだとか、あるいは大企業はこの分野はやってはならないということを規制するには相当の問題があると思っております。私ども中小企業対策の立場から中小企業産業分野の確保に関する法律案を何度もこしらえてはおります。私たちのその案も完成されたものだとは思っておりません。しかし、やがては中小企業の努力というものが報われるような施策を、ただ単に助成するとか、あるいは減税をするとか、あるいは合理化をするとかという、これからは幾つかのそういう過程はあるでございましょう、その点は通産省も相当の意欲的な努力をなさっておられることは認めまするが、一番大事なその行く手に立ちはだかって、大量に生産ができるとき、コストを下げることができるとき、合理化がある程度見通しができたとき、そのときはもうすでに中小企業の手の届かないところにその産業は持っていかれてしまう、こういう形は、役所や政治の力で手の届く範囲からでも改善に手をつけるという方向に持っていってしかるべきではないか。先ほど大臣から中小企業にとっての利点の話がありました。私どもはその点を力説しようとしましたら、先回りして大臣がお話しなさった。だからこそ、それほどまでに痛めつけられても、なおまだ中小企業は不死身のごとく生きております。生きておりますが、実はよくなるとすぐ取られてしまって、悪い分野、悪い分野と押しつけられてきている。こういう状態ですから、何らか産業分野の確保に関する問題に具体策を設けていく必要のときがやってきた、こういうことを申し上げたかったわけですが、どうでしょうか。
  147. 藤井勝志

    ○藤井政府委員 御指摘趣旨は私もわからないことはありません。ただ、人為的にいかにして産業分野の交通整理をしていくかということはなかなか技術的にむずかしい問題がある、それは委員も御理解の上での御発言でございますが、大臣が言われたことに関連いたしますが、私は実は先染め産地の出身なんです。織物の先染めですね。これは各種類、品数、いろいろ多種多様です。だからマスプロでは不適当である。こういう種類の織物は中小規模がふさわしい、こういう点で中小規模で現在もやっておる。白生地ものはマスプロでやる、こういう点に触れて大臣は答弁されたと思うのです。ただいま御指摘のような、国の政治のあり方、政策の持って行き方によって、伸びるべきものが、それが途中で大企業にさらわれておるという事実がはっきりしておるような分野があるとするならば、これは研究するに値する問題であるというふうに思うわけでございますが、ただ、いまお話を聞いた前提においては、技術的にどう持っていくか、なかなか自信が持てないという感じはいたします。感じはいたしますが、十分検討さしていただきたい、このように思います。
  148. 塚本三郎

    ○塚本委員 技術的な問題があるということは事実です。それは私ども協力さしていただきまして、中小企業の問題は超党派的に、やはりそれが産業を確保するためにも私は大切なことだと思いますから、オープンにひとついつの日か後相談申し上げてみたいと思っておりますが、単純な問題で分野もあるわけであります。先ほど申し上げたような、一建設の例をとってみてもそうですね。輸送の問題だとか、あるいはまた建築でいいまするならば砂利の問題だとか、鉄鋼は大企業直接のほうがいいかもしれませんが、特に砂利業界なんかやかましく言っておるのですね。なぜ直接のお役所の仕事が、ついこの間までは実は直接納入できておったにかかわらず、それが、工事のとき一切大企業に取られてしまったのか。それは、そんなことをしておると役所の人件費がかかるというのが建設省の御答弁のようでございました。しかし、私は、そんな問題はたいしたことではないと思うのです。先ほどの、新しく役所が建設される場合、あるいはまた年度がかわる場合における予算確保のときでも、なぜ事務機を大企業製品であるスチール製品にわざわざ規制しなければならぬのであろうか。現在新しい建物の中に古いものを入れておくことはいけないかもしれない。しかしながら、現在あるものの中でも年度を更新する場合、充足する場合には、そういう形で、あるものまで除却されてしまうことがなされている。こういうこと等はただ単に大企業中小企業の問題だけでなくして、業界にとっても相当大きな問題になってきていると私は思うのです。中小企業政策はきめのこまかい政策でございますから、そういう点を一つ一つわれわれもたんねんに拾い上げてみたいと思っております。そして、技術的な問題で可能なものはそういうことにもひとつ具体策を立てるように進めていただきたいし、あるいはまた技術的な問題じゃない予算的な問題なんで、いま申し上げたような、担当役人の人員が少ないからということであるならば、それはまたそれで別途の考え方があるではないかということも中小企業業界からは言われるわけでございます。それらの問題と、私はきょうはこの業界がこうだということを申し上げるつもりで申し上げたわけではございません。時間がございませんから、この点ひとつ具体的に、私どもも協力申し上げますから、中小企業がせっかく努力をして開いた産業分野というものは、できるだけ中小企業分野として希望が持ち得られるように、苦しい時代だけ中小企業がささえておって、そして日常国民生活の中になれさせて、ようやくよくなると、大企業がそれを全部待っていましたとばかりに取り上げてしまうというようなことのないように。これができませんと、合理化するだけ実は器用貧乏といいますか、そういう形になる中小企業分野が相当数なんです。もちろんこれは特殊な問題だけではないと私どもは考えておりまするから、この点をお願い申し上げて、政務次官の御見解だけ承って質問を終わりたいと思います。
  149. 藤井勝志

    ○藤井政府委員 ただいま砂利の問題、あるいはまた家具の問題等、具体的な御指摘のもとに貴重な御意見を承りました。われわれも十分御趣旨を体して検討さしていただきたい、こういうふうに思います。
  150. 小峯柳多

  151. 近江巳記夫

    ○近江委員 時間の関係もありますので、私も簡潔にお聞きしたいと思いますから、ひとつ要点を簡潔に御答弁願いたい、このように考えます。  まず一点は、いま、自動車に関して自由化という問題がきているわけでありますが、まず最初にエンジンの輸入自由化の問題でありまするが、自動車業界は、アメリカからエンジンと主要部品の輸入の自由化というものを迫られているわけでありますけれども、通産省としては、この自由化の時期をいつごろが適当であると見ておられるか、その辺の見解を聞いておきたいと思います。
  152. 本田早苗

    本田説明員 御承知のように、エンジンにつきましては、エンジンと、エンジンの主要部品の四品目を輸入の割り当て制のもとに残しておるわけであります。このエンジンと四部品自由化をいつにするかという問題になっておるわけでありますが、エンジンの自由化をいたしますと、その他の部品がすでに自由化をいたしておりますので、自由化に伴って、外国車の組み立て生産国内で行なうことが可能になる。これが大量に行なわれるようになりますと、コスト等の点から見て、国産車との間で競争の関係が生じまして、国内産業に悪い影響が予想されるということでございます。また、既存のメーカー提携してこれを行なう場合を考えますと、現在資本自由化に対する準備体制のために自動車メーカー体制整備をいたしておるわけでございますが、これに悪い影響を与えて、体制整備を阻害するという事態も予想されるということでございまして、したがいまして、エンジンの自由化については慎重にこれを考える必要があるという事態でございます。しかしながら自由化につきましては、基本方針でございますので、国内産業との調和をはかりながらできる限り緩和していくという方針で、自動車産業国際競争力業界の再編成の進捗状況を見ながらできるだけ数量ワクを逐次拡大することをいたしまして、漸進的に進めていきたいというふうに考えているわけでございまして、時期につきましては、その状況とにらみ合わせながら進めていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  153. 近江巳記夫

    ○近江委員 資本の自由化ですね。外資の上陸とともに、国際的な巨大産業が結局国内市場の攪乱行為に出ると思うのです。これは結局、赤字覚悟のそうした価格、あるいは割賦条件、あるいはその広告等に出ることが考えられるわけでありますが、その対抗策としてどのようなことを考えていらっしゃいますか。
  154. 本田早苗

    本田説明員 御承知のように、外国の自動車資本はきわめて巨大でありまして、特にアメリカのビッグスリーは全世界産業資本の中で一位と二位と五位というほどの大きな企業でございます。これとの間の競争力を確保していくということが必要だという事態になっておりますので、まず、国内企業が現在十二社に分かれて生産いたしておるわけでございますが、これの体制を集約化するという形で、まず企業の競争力の強化をはかってまいり、これによりまして企業の体質を強化し、技術の開発力も強化して、海外の自動車資本との対抗条件を強化する進捗状況を見ながら考えていきたい、こういうふうに考えております。
  155. 近江巳記夫

    ○近江委員 資本自由化への大まかなところを聞いたわけであります。いろいろこまかい点を聞きたいのですが、また次の機会にします。  で、規模の拡大によって、コストの引き下げのほかに、走行の性能あるいは公害防止設備あるいはその他のそうした技術的な要素というものが国際競争力に非常に関係してくる、このように思うのですが、その対策はどうですか。
  156. 本田早苗

    本田説明員 御指摘のように、量産体制に入ることによりまして、生産コストが低下するだけではなくて、いまの自動車産業といたしましては、歴史の浅い関係もございまして技術の蓄積が浅く、現在の自動車生産基本的な技術がかなり多く導入技術によっておる、しかも、自動車に対する安全公害の関係から新しい技術を要請されるという時代になっておりますので、技術の研究開発能力を集約化して強化し、その効果を実際の生産に移し得るというような効果を期待しておるわけです。
  157. 近江巳記夫

    ○近江委員 走行性能あるいは公害防止の設備等、技術的な要素をいまお聞きしたわけでありますが、私、いま自動車業界というものを見たときに、通産省と運輸省、これとの間にポケットともいうべき問題があると思うのです。しかも、それが国民に重大な影響を与えておる。この点を一点私は指摘をしたいと思うのです。そこのところの問題について、きょうは運輸省も来ておられますから、いまからお聞きします。  道路運送車両法の第四十条から四十六条に規定する道路運送車両の保安基準について、同法の四十六条に、「道路運送車両の構造及び装置が運行に十分堪え、操縦その他の使用のための作業に安全であるとともに、通行人その他に危害を与えないことを確保するものでなければならず、且つ、これにより製作者又は使用者に対し、自動車の製作又は使用について不当な制限を課することとなるものであってはならない。」このようにあるわけです。この条文の規定するところは、一つは操縦の安全、二つは通行人その他に対する安全、三番目は製作者、使用者に対する不当な制限排除、こういう三つの要請が満たされなければならない、このようにしておるわけでありますが、この三者のうち、どれが一番優先順位となっておるか、この点をひとつ聞きたいと思うのです。
  158. 堀山健

    ○堀山説明員 これは三つとも同じ条件でございます。
  159. 近江巳記夫

    ○近江委員 この三にいう製作者に対する不当な制限というのは、結局具体的にはどういうことをいっておるわけですか。
  160. 堀山健

    ○堀山説明員 いままでのところ、製作者に不当であるというふうな処置をとった記憶はございません。
  161. 近江巳記夫

    ○近江委員 保安基準の本来指向するところは、操縦者の安全、それから通行人その他の安全のこの二つが最重点であると思うのですが、その点どうですか。
  162. 堀山健

    ○堀山説明員 交通の安全という面から言えば、いまおっしゃったその二つの点が重点になると思います。
  163. 近江巳記夫

    ○近江委員 第一に操縦の安全性という点について、運輸省令で定めている保安基準については、具体的に何ら規定されていない。私は、この点については、厳密に言うならば、法違反ではないかと思うのです。なぜ具体的な規定というものを明文化できないのか、この点についてお聞きしたいと思います。
  164. 堀山健

    ○堀山説明員 この保安基準と申しますのは、車両法に基づきます車の安全のための構造、装置の基準をきめております。それで数値的にはっきりしないものが相当ございます。これは技術の開発が逐次発展しておりますので、その発展を阻害しないように、最低の基準としてこういうものでなければならぬという意味でうたっておるのでございまして、それ以上のものであってはならないとか、そういう表現は一般的にしてないわけでございます。
  165. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで自動車メーカーの広告に高速性能を売りものにしたものが多いわけです。スタートから何百メートル進むのに何秒とか、あるいはスタート時のエンジンの迫力をうたって、それから出足の快適さを誇っておるわけです。結局これは消費者の立場からいえば、これは無責任な販売第一主義のあらわれ以外の何ものでもないではないか。逆に制御装置の確実性、安全性について非常に問題が多い。これは通産省田中自動車課長が言明しておるわけです。これは四十三年四月二十七日の朝日に出ております。具体的にどのような点に問題が多くて、なぜそれが改善されないのか、その辺のところを聞きたいと思うのです。
  166. 田中芳秋

    田中説明員 私の発言が朝日に載っておったというお話でございますが、私ちょっと記憶がないわけでございます。ただ、その発言とは離れまして、一般論といたしまして、私どもが感じておりますのは、いまの部品工業が力が弱い。しかも現在は単品生産の姿で伸びてきておるわけでございます。ブレーキのように、車につけまして各種のブレーキ部品を集めましてブレーキとしての性能をあげますためには、やはり部品企業といたしまして、単品生産企業から総合の生産企業ブレーキとしての総合機能を果たし得るそうした生産企業に成長させなければならない、こういう趣旨で、この辺から、こうした部品の機能面におきましてなお弱いというようなことを、新聞とは別に私はしばしば申しておるのでございます。そうしたささえと申しますか、生産形態それ自体もかなり問題がございまして、できるだけそうした企業に力をつけていくということを考えておる次第でございます。
  167. 近江巳記夫

    ○近江委員 高速道路が発達しておる欧米諸国においてはディスクブレーキが多く使われておるわけでありますけれども、先ほどブレーキの話が出ましたが、わが国ではごく一部しか使われていない。結局これはコスト高を理由にメーカーが渋るというようなことが非常に問題ではないかと思うのです。この点が一点です。  それから欧米では高速道路用の安全性の高いタイヤ、たとえばラジアルタイヤとかあるいはチューブレスタイヤ等を使うことは常識となっているわけです。ところが、わが国では一部新型車には使っておりますが、ほとんどは使われておらない。いろんな事故のデータを調べてみましたが、たとえば東名高速道路等で非常に大きな事故が起きておりますが、結局パンクが原因である、そういうような問題が起きております。これが二点です。  三点として、自動車のフロントガラスは欧米においては絶対に安全な合わせガラス、これは二枚の板ガラスをプラスチックで接着したものでありますが、これを使っておるわけです。ところが、わが国では強化ガラスのために種々の問題点があるわけです。たとえば、割れますとかけらが非常に飛ぶ、あるいはまた小さなショックの場合、全体に白波が立つようになってしまって、視野がゼロになってしまう。こういう点をなぜ改善させないか。  次の問題は、自動車のドアの取っ手がすれ違った通行者の体に突きささったような事故があるわけです。また最近では自動式の窓ガラス開閉装置つきの自動車、これで幼児がガラスにはさまれて死亡したというような事故が出ております。このような自動車の構造上の欠陥のために多くのそうした事故が発生じておるわけです。この道路運送車両法ではこれらの諸点について何一つそういう具体的な基準や規制をしていないわけです。業者の自由に放任されておる。これは行政の怠慢ではないかと思うのです。私はこの際、安全という観点から、車体の構造上のこうした問題点を総点検する委員会等をつくって、徹底的にこうした問題は解明されなければならない、このように思うのです。この点についてどうですか。
  168. 堀山健

    ○堀山説明員 自動車の構造、装置につきましては、道路運送車両法によります保安基準というものがございまして、そこで規制しております。ただいま御指摘がございましたが、御承知のように、車は技術的な開発に従いまして、また事故のいろんな原因の解析によりまして逐次改善をされておるわけでございます。従来、どちらかと申しますと、日本の場合には自動車対人間の事故のウェートが高かったということで、そのほうの手当てのウェートが高かったわけでございます。ところが名神高速道路等ができ、今度また東名が部分開通でございますが逐次全通してまいる、こういう時期になりましたので、車対車の事故に対する手当て、これについても逐次追加をしてまいっておるのが現状でございます。それで、ただいまのブレーキ、チューブレスタイヤ、そういった問題もございますが、これらの基準といたしましては、どういう性能があるかという言い方をしております。したがいまして、その性能も逐次向上させなければならぬと思います。その基準化にあたりまして、使うブレーキは、現在のブレーキからだんだんそういうふうに変わってくるのではないかというふうに見ております。それからガラスの問題でございますが、これは、先般十二項目の基準を改正いたしましたが、その際に、従来の基準は強化ガラスでもよろしいという定め方をしておりました。ところが、強化ガラスだけでは衝突した場合に前方が見えないということもございますので、合わせガラスとか、または強化ガラスであっても衝突した際に運転席から前が見えるという部分強化のガラスにかえるように基準をきめる用意をしておったのでございますが、この基準がきまるのがおくれましたために、先般の十二項目の改正にはついに入らなかったわけでございますが、引き続いてこれを予定どおり基準化したいと思っております。それからドアの取っ手。この問題につきましては、かつてある種の車にそういうものがございましたけれども、逐次、突きささらないようにボタン式かあるいは引き出し式に切りかえております。それから窓の巻き上げ装置によって子供が事故を起こしたという事件が確かに先般ございました。これは電動式のボタンのつけ方が適当でなかったということでございましたので、その点についての改良を考えておる次第でございます。  以上のように、御指摘の点はそれぞれ現に改良済みのものもございますし、今後改良する予定になっておるものもございます。御承知のように、技術的な改善は逐次されておりますし、同時にまた事故のいろいろな原因解析によりまして、そういう面はそれぞれの時点におきまして改正していく考えでございます。
  169. 近江巳記夫

    ○近江委員 一番大事な問題を言ってないですよ。総点検する委員会等をつくって、これは結局、ポケットなんだから、この点を運輸省、通産省はどのように考えておるか、両省から答えてください。
  170. 堀山健

    ○堀山説明員 総点検につきましては、これは私ども今般行政機構の改正案をつくりまして、その中で運輸技術会議というものをつくることになっております。この場を利用して、私どもこれは自動車だけでなくて、乗りもの全部の技術に対して再検討を加える、かように考えております。
  171. 本田早苗

    本田説明員 当省としても、安全基準の点検につきましては、運輸省と連絡をとって実施してまいりたいと思います。
  172. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから次に二項目目の通行人その他に対する安全性という点でありますが、この運輸省令の保安基準を見ますと、三十条に騒音防止装置、三十一条にばい煙、悪臭有害ガスについての規定があるわけです。これらの規定は非常に抽象的であって、単なる訓示規定となっておるわけです。いうならばさしみのつま的な条文にすぎない、私はこう思うのですが、それについてどう思いますか。
  173. 堀山健

    ○堀山説明員 騒音防止につきましては、これは数値的に、平常走行してまいりますときと、それから原動機の排気音については規定しておるはずでございます。それから排気ガスにつきましては、これは先般の大気汚染防止法によりまして、その関連におきまして、この省令を具体的に変えるということになっております。それは法律制定後六カ月以内に変えることになっておりますので、ただいま作業中でございます。
  174. 近江巳記夫

    ○近江委員 第一の騒音については、「自動車が平たんなほ装路面を速度三十五キロメートル毎時で走行する場合に、走行方向に直角に車両中心線から左側へ七メートル離れた位置における騒音が八十五ホン」と規定されておるわけです。これは自動車のエンジンが負担のかからない条件のもとでエンジンの音が八十五ホンということであって、八十五ホンというのは東京の数寄屋橋の交差点における平均的な騒音度になるわけです。多数の車がスタート直後の加速時期におけるエンジンの騒音の総和で八十から九十五ホンである、こういう事実、これを考えていきますと、運輸省令の基準というものは騒音規制という点では全くの間の抜けた存在ではないか。どのような根拠に基づいてこの基準を算定したか、それをお聞きしたいと思うのです。
  175. 堀山健

    ○堀山説明員 実はきめた根拠については前のことをよく知りませんので、お答えはできません。ただ現在、実行の面におきましては、走行騒音については八十五ホンということになっておりますけれども、実際にメーカーから出荷するときには、それを行政指導の面で下げるように協力を願いまして、現実には六十五ホンから八十ホンの間にはめるようにしております。ただ、御指摘の加速騒音につきましては、実は規定がございません。これについては今後ある意味の規制を加えるべきであるということで検討を加えておる現状でございます。
  176. 近江巳記夫

    ○近江委員 あなたもそれについては疑問点を持って、ある程度前向きに進まれておるということで、私はこの点は了承しますが、結局、騒音という問題について、人間の心身に与える諸種のマイナス効果を医学的に検討した上での基準であるべきかどうか、これは考えなければならない。結局、そのような裏づけのあるデータがあってきめられたものであるかどうか。さらには、基準によりますと、一台について八十五ホンということになっておるわけでありますが、これは、現実には何台もの騒音というものが相乗されるわけです。ということになりますと、生理的に許容される限度を越えた騒音も法的には容認されるということになる。それでよいという判断はどのような客観的なデータによってはじき出したか、こういう問題なんです。  また、現在いわゆる雷族と称せられるものは、わざわざ消音器、マフラーを、大きな騒音を発するのに取りかえてさらに騒音を大きくしているわけです。構造上、このマフラーの取りかえはしろうとでも簡単にできますけれども、大きな騒音を出すこういうマフラーは部品屋等で売っているわけです。なぜ、このまうにこれだけ公害公害といわれながらそれをほっておくか。これほど国民にとっては迷惑しごくなことはないわけです。いま数点について申し上げましたが、この点についてどう思いますか。
  177. 堀山健

    ○堀山説明員 先ほど御回答しましたように、実は、医学的云々ということについては、初めきめたときの条件を私は承知しておりませんので、明快なお答えができないのが残念でございますが、マフラーをはずすという問題につきましては、これはよくいわれることでございますが、私ども検査の際に、メーカー出荷の段階にはもちろんですが、定期検査の場合に、マフラーがどういう状態であるか、ついておるけれども効果がないものもございますし、あるいははずれているものもある、そういう場合には検査を通さないということで実施しております。ただ、私どもの経験では、車の検査の場合にはきちんとしたものをつける、路上でははずす、こういう例がございますので、これは警察の取り締まりと同様に、私どもも機会あるごとに街頭に出て、できるだけそういうものをなくすように取り締まる努力はしているつもりでございますが、何ぶんにも人手がございませんので十分なことができないというのが現状でございます。それからなお、いろんな用品としてことさらに音を高くするというものを売っておるというのも事実でございます。これはいろいろ主務官庁の立場もございますが、私どもの立場でも、それが広く販売されないように何らかの指導をしたいと思います。
  178. 近江巳記夫

    ○近江委員 いま運輸省の人にぽんぽん聞いておりますけれども、全部これは通産省にも責任があるのですよ。いまの問題についてはどう思いますか、通産省は。
  179. 本田早苗

    本田説明員 消音効果の少ないマフラーの生産につきましては、部品メーカーの団体を通じまして、生産について自粛するように指導してまいりたいというふうに存じます。
  180. 近江巳記夫

    ○近江委員 販売等の問題もあるわけですから、これはいま、今後そういうふうに考えるとおっしゃったのですから、この点運輸省とよく連携をとって、すみやかにその点を規制できる方向に持っていってもらいたい。この点要望しておきます。  それから交通の騒音というものについては、公害の中でも主軸をなす一つである。これはもう異論はないと思います。学校公害等も、トップは交通騒音になっておるわけです。なぜ騒音公害の根源であるこのマフラーについて規制を厳重にしないのか。先ほど今後規制をするとおっしゃったのですからこれはよろしゅうございますが、結局、騒音はゼロに近づけば近づくほどよいという観点から、構造基準について徹底的な検討を加えて、公害防止の趣旨に即した規制基準を設定すべきである、このように思うわけです。これについてはどうですか。
  181. 堀山健

    ○堀山説明員 自動車はタイヤと道路との摩擦で動くわけでございますから、摩擦騒音というものを全然ゼロにいたしますと車が動かないということでございますので、ゼロというわけにはまいらぬかと思います。ただ、できるだけ音を低くするという努力、これは役所におきましても、民間の研究も同じだと思いますが、できるだけ低いように、今後開発なり研究なり規制なりをお互いに努力していきたいと思います。
  182. 近江巳記夫

    ○近江委員 次に、排気ガスの問題ですけれども、保安基準の第三十一条によりますと、「自動車は、走行中ばい煙、悪臭のあるガス又は有害なガスを多量に発散しないものでなければならない。」このように規定されておるわけでありますが、多量にという表現は、これは実質的には規制しないこと、このように解釈できるわけです。この点どうですか。  それからもう一つ、多量というのは、数字的に表現すれば、どこまでが多量であるという範囲に入るのか、その点を聞かしてください。
  183. 堀山健

    ○堀山説明員 これは排気ガスの中に色のあるものとないものがございます。で、いわゆる有毒ガスという面につきましては、先ほど申し上げましたように、大気汚染防止法に関連して従来指導の面で規制しておったことを、ここに規定をするつもりでございますが、いわゆるディーゼル車のように黒い煙を出すもの、こういうものについての規制でございますが、実はこの保安基準に基づきまして、現場で実際に一種の現場基準と申しますか、現場の検査官が実際に検査する検査基準を、実は持ってまいりませんでしたので、具体的な数字は申し上げられませんけれども、この色の判定のしかた、量の判定のしかたというものがございます。
  184. 近江巳記夫

    ○近江委員 アメリカ合衆国等の状態を見ていきますと、自動車の排気ガスのもたらす公害が、公害の中で最も重要視されているわけです。教育厚生省、HEWという略称でありますが、これが一九六〇年、当時長官であったガードナー、この人の名前で、いまや米国民の健康と内燃機関は両立し得ないところにきた、このように発言して、連邦政府の排気ガス制限基準というものがきびしい形で制定されたわけです。また、わが国でも、自動車によるぜんそく、ガスによるぜんそくという形で、顕著な公害現象が起きていることは、御承知のとおりです。政府は、こういった問題についてなぜいいかげんにほっておくか。重大な問題だと思うのです。これは通産省もですね。この自動車の発する排気ガスの成分等を調べてみますと、一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物、鉛化合物、こういう有害排気ガスの許容限度をどうして具体的にきめないのかという問題なんです。また、自動車の排気ガスの与える公害は想像以上に激しいものであると、これは学者もみな言っているわけですが、アメリカにおいて、特に官庁を中心として強力なキャンペーンを行なっているわけです。こういう点、わが国においてこれについて組織的な研究なりそういうものをやっているかと私も調べてみたのですが、運輸省の船舶技術研究所でやっておる、このようにも聞いておるわけですが、ほんとうに具体的に規制する方向にまで研究をやっているわけですか。その辺はどうですか。
  185. 堀山健

    ○堀山説明員 自動車から出ます有毒ガスにはいろいろな種類がございます。先ほどお話がありましたように、一酸化炭素、炭化水素、窒素化合物、その他いろいろございます。アメリカで非常に問題になっておりましたのは、炭化水素がスモッグの原因になるということで、それが目にしむとかいうことが非常に問題になり、それから規制が逐次強化されたと私ども聞いております。日本の場合は、どちらかといいますと、一酸化炭素による被害のほうが大きいというのが現状であります。将来は炭化水素による被害も出てくるかと思いますが、当面考えなければいかぬのは一酸化炭素である、こういうことでありますので、これに対しては、一昨年の十月から新しく製造されます新型式の自動車につきましては、一酸化炭素の排出量を三%に押える。去年の十月からはすべての新造車について規制をしております。  それからもう一つ、そういう新造車で出た車は、使っておりますうちにエンジンの状態が悪化してまいりますので、したがって燃焼条件も悪くなるということから、ガスの排出量が生産された当時は三%以下であっても、半年なり一年たつとだんだんその許容量をこえてくるということになりますので、使用過程の車をどうしたらその排気ガスの有毒分がふえないかということについて中間的にいろんな実験をし、また実際の車を使って追跡調査をしたわけでございます。その結果、ある特殊の一定の部分十項目についてよく整備をすれば、新車の当時から比べてその劣化する割合が非常に少ない、何もしなかった場合と比べまして性能が非常に変わってくるというふうな中間的なデータを持ちましたので、私ども行政指導でございますけれども、車の点検、調整をするときには、こういう部分について特に注意して整備をなさいという指導を現在実施しております。なおこの面につきましてもさらに研究実験を進めまして、さらによりいい方法を見つけまして、それの実施につとめたいと思っております。
  186. 近江巳記夫

    ○近江委員 日本の都市の自動車の道路占有面積は、データを調べますと、東京で一〇%、ニューヨークでは三四%あるわけです。あれだけ過密したニューヨークで三四%、したがって外国に比してきわだって過密化した条件のもとで、外国よりもずっと排気ガスの環境基準をきびしくしていかなければならない、この点を思うわけです。この公害防止という観点から思い切ってそういうきびしい基準を今後設けるべきである、このように考えます。これに対して運輸省ではどう思われるか。また最後に通産政務次官から、今後通産省としてもどのように考えていくか、その方向をお聞きしたいと思います。
  187. 堀山健

    ○堀山説明員 先ほどお話ししましたように、当面問題になっておりますのは、自動車の排気ガスにつきましては一酸化炭素が問題である。その環境基準は、昨年の国会で成立いたしました公害基本法の中で環境基準としてきめることになっております。そこできまりました結果につきまして、それを自動車にどのように反映させるかということをあらためてその時期において検討をして、さらに規制を強化すべき部分についてはしたい、かように考えております。
  188. 本田早苗

    本田説明員 通産省におきましても、自動車安全公害研究センターにおきまして排気ガスの濃度の低下につきまして研究を進めております。先般新聞にも出ましたが、日産、三菱、東洋工業の三社とアメリカのフォード、モービル・オイルの五社の間でこの排気ガスの減少につきまして共同研究を実施する段階になっております。両者の研究の成果を反映して生産に移したいと存ずる次第でございます。
  189. 近江巳記夫

    ○近江委員 自動車の問題はこれで終わります。  次に特許の問題でありますけれども、ここで荒玉長官に私は一つのケースをもって、その点から種々の点を聞いてりきたいと思うのです。  ここに委員長のお許しを得て私サンプルを持ってきたわけでありますが、これは一つのメーターであります。ダイヤルゲージといいますけれども、これをつくった人をいま甲という形にしておきます。ところがほとんど変わらない製品を乙という会社生産と同時に特許庁に特許申請したわけです。ところが特許庁では、丙というところから先願特許として出ておるということで拒否された。ここに一点問題があるわけです。すでに昭和二十五年にこれの特許がおりている。それを昭和三十二年に乙というところが出願して、丙というところから先願が出ている。この二十五年にとった甲という特許があるということを何ら言っておらない。この製品を乙という者がどんどんつくったものだから、結局乙という人が山形地裁に仮処分申請をやって、勝ったわけです。それについて今度は乙が東京地裁のほうに鑑定の請求をまたしたわけです。今度は裁判所から特許庁に対して鑑定依頼をした。ところが最初の裁判を長野でやったときにこれに対する判決というのは、判定人、要するに審査官といいますか、審判官が三人おって判定を下す、それをもとにして裁判が行なわれて、これは特許侵害である……。ところがこの鑑定人というのは一人の人がやっているわけですが、全く逆な鑑定を下した。それをもとに地方裁判所は今度は逆な判決をやったわけです。東京地裁へ結局損害賠償の訴えをやったわけなんです。同じ特許庁でありながら、最高のスタッフの審判官が三人も寄って下した判定を無視して一人の審判官が全く逆なことを言っている。これによってこの人は自殺しかけたわけですよ。会社はつぶれてしまうし、何億という借金を負って、一家は離散寸前までいって、自殺しかけた。それをある人に助けられた。私はこういう事例は何ぼでもあると思う。こういう問題については、ある程度特許庁のほうにも話がしてありますから、その辺のところはよくわかっていただけると思いますが、ここで私がお聞きしたいのは、特許権の侵害に関する審判、判定の問題なんです。技術の同一範囲について特許庁の審判によって認められた権利が裁判所で否定されている事実、しかも鑑定書に基づいているわけです。この特許権に関する特許庁の審判、判定制度というのは、現行の裁判制度の中でそれがどのように評価されておるのか、その辺のところをひとつお聞きをしたいと思うのです。
  190. 荒玉義人

    荒玉説明員 特許法七十一条で、先生御承知のように特許発明の技術的範囲について、判定を特許庁に請求する。その判定結果の効力でございますが、現行法のたてまえは、法律上の効果はないというふうに考えております。といいますのは、かりに特許庁のほうで、特許権の範囲に属する、こうやった場合にも、裁判所はそれに拘束されないというたてまえになっております。どんな効果があるかといいますと、特許庁は御承知のように権利を付与する官庁でございまして、それと侵害かどうかという点については技術的な専門官庁としての意見を出す。したがって法理的に申しますと、裁判所はその意見に拘束されないというのが現行判定制度のたてまえでございます。なぜそんなものをやったかということですが、大部分、かりに裁判所へいかなくともそういった専門機関の意見によって、半分以上事件にならず、つまり、裁判所に行かなくて解決する、そういう実際効果があるということであります。したがいまして、結果として裁判所が特許庁の判定と異なった判断をするというのは制度上やむを得ない、また間々あるように聞いております。ただ問題は、実際特許庁に、こういうものが特許権の範囲に属するかと言ってきたものと、具体的に裁判所で争ったもの、裁判所の場合には具体的にこういうものをつくっておるという現物がございます。うちの場合は一応こういうものと特許権はどうかということで来るわけですから、実際特許庁に判断を求めてきた対象物と裁判所で問題の対象物が往々にして違う場合があります。いま先生がおっしゃった点においては、ちょっと私係官に聞いてみたわけですが、必ずしも同一ではないようでございます。もちろん私専門的にこの事件を御説明するあれもございませんですが、必ずしも同一でない。ただどの程度差があるかというところに問題があったようでございます。ただそれに関連して、特許庁といたしましては、同じもの、つまり、すでに特許庁が判定の行為を終わった後に特許庁の審査官なり審判官を鑑定に出すということは私は適当でないと思います。本件の場合は、先ほど言いましたように、やや対象が必ずしも同一でないようでございます。そういった意味で、一応特許庁が正式に判定という意見を出した以上は、さらに鑑定に応ずるということは、私はたてまえとしては妥当でないというふうに考えております。
  191. 近江巳記夫

    ○近江委員 まずいという点をあなたの特許庁のほうでやったわけですよ。この人は最高裁なり何なりに持っていくだけの資力がなかった。それでがっくりきてしまって自殺寸前までいった。金もないし、負けたということによって裁判費用を持たなければならないというようなことで、実際は上告できないわけですよ。判定書も一回や二回と違います。四回も出ておるのですよ。東大の一流の教授も——全部むちゃくちゃですよ。これは侵害されている。あなたのほうも判定書を出しているわけです。それをただ法的に拘束されない。特許庁の判定書というのはそんな無力ですか。そういうことを聞きたい。もし審判の判定が法的に拘束されないならば、この技術判定まで否定することになる、このように私思うわけです。この点どのように解明するか。さらに特許庁が長い時間をかけて下した判定を裁判所が再び技術を云々する。この点は先ほど矛盾とおっしゃったから私了解しますが、もしも現実をそのように肯定するとするならば、特許庁のそういう審判制度ないし判定が意味のないものになるのじゃないか、判定ということについてどれだけの価値を認めていらっしゃるのか、私はこの点をお聞きしたいと思うのです。
  192. 荒玉義人

    荒玉説明員 先ほどの事件は、私必ずしも対象物が同じだというふうに聞いておりません。つまり判定で——判定というのは御承知のように図面を書きまして、特許庁では通常、術語でイ号といっておりますが、そういったイ号図面に書いてきたものが与えられた具体的な特許権の技術的範囲に属する、あるいは属しないということで判定が出てくるわけであります。裁判所で具体的に争ったのが特許庁のほうの判定の対象になったイ号とは必ずしも同じでないというふうに私聞いております。その程度の差がはたして侵害になるかならぬかというほど大事かどうかという点については、私詳細に存じませんですが、必ずしも同一ではない。ただ、いずれにいたしましても、いま先生のおっしゃったように、一たび特許庁という専門官庁がやった結果が必ずしも専門機関でないところから無視されるというのは制度的にどうかということでございます。要するに、特許権の侵害かどうかという問題は、これは裁判所が専決的に判断すべき事項かと思います。  それじゃなぜ判定制度をやるかといいますと、先ほど言いましたように、やはり訴訟にいかなくても解決する事件——事件として裁判所にいくわけですが、そういう案件がかなりあります。アンケートの結果によりましても、五割から六割程度は裁判を起こさなくても問題が解決するというところに特許庁の判定制度の意味があると思います。さらに一歩進めて、特許庁が属すると言えば、裁判所は特許権侵害だというふうにすべきである。これは立法的にはいろいろ御意見がございます。もちろんそういう制度運用を立てること自身は、私は不可能ではないと思います。少なくとも現行制度はそういった意味で裁判所は拘束をしない。しかし実際的効果が百点ではございません。六十点、七十点の効果があるというところに判定制度の実際的な意味があるというふうに考えております。
  193. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、先ほど全体を説明しましたけれども、特許権の所有者である甲は、昭和二十五年に特許をとっておるわけですが、それに対して乙が特許庁に申請をした。そのときに丙が先願をしているからといって、甲の特許をとっているという事実を特許庁は知らぬ、特許庁としてそんなずさんなことありますか。いかに行政がずさんであるか。そういういいかげんなことをやるから、このような犠牲者が出るんですよ。いま長官もちょっと違っているとおっしゃったけれども、私もしろうとだから、どの技術がどうかわかりませんよ。だけれども、やはり特許の根本というのは、着想というかアイデアというか、その辺が大事なんですよ。一ミリや二ミリの違い、そんなもので特許権の侵害になるといわれたら、発明者はどうなるんですか。それこそ血と涙を流して発明をやっているんじゃないですか。それをわずか一ミリや二ミリ違うということで、これはちょっと違うからという、そんなばかなことありますか。その点どう思いますか。特に、特許がある、先願があるというようなことを知らなかった、その事実に対して特許庁としてどう思いますか。
  194. 荒玉義人

    荒玉説明員 ただいまの、甲の特許権者がすでにあるということを知らなかったせいで引例にいかなかったという点につきましては、これはちょっと先生おっしゃいましたけれども、甲の出願と乙の出願、丙の出願、それぞれどういった内容か、私ちょっと——もし全く同一ということでそういうことをしなかったということならば、特許庁の誤りだと思います。というのは、あくまで甲特許権者が先願でございます。したがって、乙、丙ともにそれは後願者でございます。特許を受ける権利はないわけであります。したがって、全く同じもの、同一発明の場合であればわれわれのあやまちでございます。ただし、いま先生おっしゃった発明自身が同一かどうか、これは私ちょっと判断つきかねますが、もしそういうことでありましたら、あくまでわれわれのミスでございます。
  195. 近江巳記夫

    ○近江委員 特許の際における特許庁の審判、判定と、裁判所より特許庁へ鑑定を依頼される、そうした場合に、一審査官の鑑定が相反した結果をもたらした、この事実は、これは先ほど好ましくないと長官は言われたわけでありますが、なぜそういうことが起きるのか。特許庁の一審査官の鑑定を、単に個人の資格でなされたものである、そういうようなことを上の人に聞くと言うわけですね。それは非常におかしいと思うのです。特許庁の役人でありながら、こういう結果が出たのは、それは一鑑定人の審査だ。そういう責任を転嫁するというか、逃げるというのは、私はきわめてひきょうではないか、このように思うのです。特許権を保護し、また監視する監督官庁が、同一の特許権に関して全く相反した見解を出す、これは全く考えられないことです。この点をもう一回ひとつ明確に答弁願いたいと思うのです。このことは所有権者の利益を否定し、そうしてまた擁護を怠るのみならず、審判、判定の権威をも否定するのではないか、このように思うわけです、全く別のことをやっているのですから。特許庁はこの所有権者に対してどのような責任をとるか。先ほどの特許権を持っておるのを知らなかったというそうした事実、これは私は一つの事例だけのことを言っているわけではないのです。ほかにもそういう問題があるのではないか、今後の問題として特許庁はそういう点をどういうふうに責任をとってやるか、人道的な立場で、ただ単なる役所ベースでなくて、その点の誠意ある回答をいただきたいと思うのです。
  196. 荒玉義人

    荒玉説明員 事実をはっきり申し上げますと、同じ特許権が問題でありましても、要するに相手方の実施されたもの、それがもちろん異なれば、あるAというものは特許権の範囲に属する、つまり侵害になる、Bは侵害にならない、これはあたりまえでございます。ただ、いま問題は、特許庁が判定したときの対象と、裁判所の場合には、具体的にあるものを押えて、それが特許権侵害かどうか、こういう争いになる。したがって、特許庁で争った当時の図面にあらわされたものと実際のものがもし違うならば、これはかりに裁判所から鑑定依頼がありましても、これは全然全くの別でございますから、われわれとしては裁判所の要求に応じて判定を出す。したがって、それは判定とは何らの関係のないことでございます。かりに判定のときと同じ対象物が訴訟になったという場合になれば、われわれは鑑定の要求には応じないつもりでおります。したがって、個人としてというのは、先生のおっしゃったように、私は特許庁の審査官、審判官である以上は個人という立場はあり得ないと思っておりますので、そういった同一、つまりすでに特許庁が出した意見と全く同じ内容のものにつきましては鑑定依頼には応じないという立場でおりますし、現にそうさしておるつもりであります。したがって、問題は、いま先生がおっしゃったとおり、何センチがどうか、これはものによれば何センチが非常に本質的な違いもあるでしょう。これはやはりそのときの判断によると思いますが、私たちとしましてはそういったやり方でやっておるつもりでございます。ただ、さっき先生のおっしゃったように、今度の場合はそんなに違わぬじゃないか、これはいろいろあるかと思いますが、ただし、私たちといたしましては、そういった同じような内容につきましては重複した判断というものを特許庁が出すということは一切ないつもりであります。
  197. 近江巳記夫

    ○近江委員 ところが、同じケースの鑑定に対して逆のあれが出ておるわけです。だからこそいま長官が言明なさったように、その裏が出たんだから大問題だ、こう私は申し上げておるのです。ですから、この事実については特許庁のほうに本人を差し向けます。これは委員会では本来そんな個々的なことを取り扱うべきではありませんけれども、しかし一つの大きな示唆を含んでおると思いますし、その問題を、委員長のお許しを得て、特許庁で調査をしていただきたい、そのように委員長にお願いしたいと思います。  それから、現在技術革新の時代に突入しているときに、こうした高度の技術的な専門的知識を要する特許裁判にあって、その裁判官には同じく専門的な知識が要求されなければならない。いうならばしろうとが——しろうととは私は言いません、裁判所の人を。しかし、特許庁の審判官、そういうような人以上にそういうような科学的な、専門的な知識があるかどうか。この問題はいまおっしゃったように一ミリでも専門的にいけば重大な影響を及ぼすという場合もあるわけです。しかし、そこまでの理解が裁判官にあるかということです。そのために現在特許庁の技術的な見解を求め、あるいは特許庁に研修を受けに裁判官が来ているわけです。これは長官も御承知のとおりです。勉強しながらさばいているという事実、これで特許のそうした裁判の制度というものがいいのか。また特許庁はこれに対して、非常な苦労をしてやっと発明した発明家が苦しんでいるという事実、その点をどのようにお考えになっておるのか。裁判官が特許庁の技術研修を受けている、こういう問題は私はほんとうに問題だと思うのです。その実態を私は一回お伺いしたいと思うのです。全く専門外の分野である科学技術の研修によってどの程度——もちろん裁判官をやっている人は法学部を出てそのコースを来ているわけです。基礎的なものは全然ないわけです。はたしてそれでどれほどの効果があるか、はたして完ぺきなのか、この辺の点について特許庁の正直な見解をお聞きしたいと思います。
  198. 荒玉義人

    荒玉説明員 ただいまおっしゃった点は、実は裁判制度全体の基本問題である、私はかように思います。特許事件は確かに数は多うございます。その点では非常に大量であるという点はあると思いますが、そういった個々の権利に抵触するかどうか。いかにそれが専門技術でございましても、日本の裁判制度全体は裁判所がやるというたてまえであります。もちろん特許事件につきましては大々的に調査官制度をしいております。われわれの職員も出向させております。そういった技術的な補佐官によって裁判官に欠けた知識を補うというのがいまのたてまえであります。したがって、それはむしろ特許事件だけではなくて、裁判制度全体でございますので、私が現在の裁判制度がどうかというのにはあまりにも問題は広範でございますが、われわれといたしましては、調査官をたくさん派遣いたしまして、そういった裁判官に必要な知識を補充する協力体制をとってまいりたい、かように思っております。
  199. 近江巳記夫

    ○近江委員 あと電話の問題等もありますが、時間の関係で、個々的にこれは郵政省の方にあとで会って申し上げたいと思います。これは委員長了承してください。  それから長官、先ほど委員長にもお願いしましたが、この問題についてもよくひとつ調査していただいて、私にその結果を持ってきていただきたいと思います。
  200. 荒玉義人

    荒玉説明員 承知いたしました。
  201. 近江巳記夫

    ○近江委員 ひとつ善処していただきたい、この点を要望いたします。  それからあと特許庁の問題として、いま一般の声として審査あるいは審判の停滞、滞貨の増大というものが非常に多いわけです。処理が非常に遅延しておる、こういう問題です。あるいはまた、時間がありませんからまとめて言いますが、審査官あるいは審判官の定員ですが、出願件数の増大あるいはまた出願内容の高度化、複雑化に見合う人員増が非常に不十分であった、すなわち数が常に不足しておる。そういう点において、長期の見通し、計画性というものが欠けておらなかったか。さらには審査、審判のノルマの強制、これによって質が低下しておる。人員の不足のカバーをノルマの強化に求めたために、審査、審判の質の低下を招いて、出願側の不満あるいはトラブルというものが非常にふえておる。さらにまた特許庁の管理体制について、長官をはじめ総務部系統の就任期間が非常に短い。私もここにデータを持っておりますが、一貫した強力な管理方針がないのではないか。これは政務次官もよく聞いていただきたいと思いますが、このためにノルマの強化程度の手段しかいままでとれなかった。さらに審査官あるいは審判官の待遇について、審査官、審判官の職務の独立性あるいは特殊性から見て、執務環境あるいは俸給関係、その他待遇面はまだまだ現在でも十分とはいえない。特に昔はむちゃくちゃだったわけです。そういう点から汚職が出てきた。私は何も汚職を肯定するわけではない。それはけしからぬ。しかし体制としてそういうような考慮をしなかったという点もあったのではないか。そのために滞貨は山ほどあるけれども、空気は沈滞して、仕事に対する熱意、使命感が失われている。そして民間に転出する者がふえてきておる。汚職事件の増大にしても、世間をあれだけ騒がした特許庁でしょう。その後どうなったか聞くはずでしたが、時間がないからやめますが、汚職事件の主因は本人の私利私欲でございまして、これはけしからぬと思いますが、以上のような環境の悪さ、そういうことも一つあったのではないか。また事務処理の体系として、特許庁の事務処理機構の改善あるいは事務職員の増員は、審査、審判機能の充実と並んでさらに大事だと思います。この点が従来非常に不十分で、書類の紛失あるいは誤送、その他の手違いがときどき起こって、出願人たちの権利あるいはまた利便に非常に不安感を与えておった、こういう点を非常に聞くわけです。さらに特許庁の歳入歳出予算を見てみると、常に歳入が上回っておる。要するに特許の出願のときの手数料でもうけているわけです。大蔵省は特許庁でもうけておる、このようにいわれているわけです。最近はだいぶん改善はされてきておりますが、審査、審制処理の現状から見ればここにさらに大英断が必要である、私はこのように思うのです。いろいろ私はデータをみな持っておりますけれども、時間の関係で以上で終わりますけれども、以上の点に関して、今後特許庁長官として、私がいまいろいろな点を申し上げたことに関して、いかに考え、さらにそれを実施するために今後努力していくか、その点をひとつ明確にお聞きして質問を終わりたいと思うのです。
  202. 荒玉義人

    荒玉説明員 細部は省略いたしますが、私自身、長期的な展望に立って、責任ある体制をつくるように努力いたしたいと思います。
  203. 近江巳記夫

    ○近江委員 それじゃどうも長いことありがとうございました。
  204. 小峯柳多

    小峯委員長 堀昌雄君。
  205. 堀昌雄

    ○堀委員 工業立地の問題について、ちょっと十分ばかりお伺いをいたします。  兵庫県の姫路市の南方にある妻鹿地区というところに出光興産が実は製油所をつくるという問題が先般から起きておったわけでありますが、これは先般漁民の皆さんや地元住民の皆さんの反対で一たんは取りやめるということになっていた問題でございます。ところが再び何か兵庫県側がここに出光興産の石油精製を誘致をしたいということで話がまた再燃をしておるやに聞いておるわけであります。そこで簡単にお伺いをしておきますけれども、工業立地は企業局ですね。企業局のほうにちょっと伺っておきますが、大体非常に公害が多いところにさらに公害の多い工場をつくるということは、工業立地の上から見てどうですか、適当ですか。
  206. 下山佳雄

    ○下山説明員 一般的に申しますれば、適当ではないと思います。
  207. 堀昌雄

    ○堀委員 一般的にということはどういう意味ですか。
  208. 下山佳雄

    ○下山説明員 個々のケース、ケースによっていろいろまた事情が異なると思います。そのケースによって判断すべきものだと考えております。
  209. 堀昌雄

    ○堀委員 実は厚生省の調査によりますと、大分県の鶴崎、それから姫路、水島、福島の小名浜、それから愛知県の名古屋の南部でありますか、それから徳島の今切ですか、これらのところを調査したデータでは、ともかく亜硫酸ガスの濃度の状態では、姫路市は著しく高い。これはどうして高いかというと、あそこに関西電力の火力発電所がたくさん集中しているということに原因があると思うのですが、そういうふうな状態で、この地域はすでにもうきわめて汚染をされた状態である。そしてそこへまた石油精製を持ってくるという問題が一つある。  それからもう一つ、御承知のように最近タンカーの事故が非常に多くなってきたわけですね。これは政務次官ひとつ聞いていただきたいと思うのですが、あなたも岡山県だからそうですが、私たち日本人に生まれて非常にうれしいことは何かというと、うまい日本料理が食べられるということは非常にうれしいことだ。何もそれは料理屋に行って食う必要はないのですね。そのうまい日本料理の土台をなしておるのは何かというと、これは魚ですね。瀬戸内海の魚というのは、手前みそではないけれども、日本の魚のうちでは一番うまい魚が実は瀬戸内海にある。これはしかし水がきれいでなければ魚はいなくなってしまう。私が住んでおります阪神間では、私が学生のころにはまだ非常に水がきれいで海水浴ができる状態でしたけれども、今日海水は汚染されて海水浴なんかできなくなってしまっている。夏のいまごろともなれば、イワシの振り売りが、夕方に地びき網でイワシを揚げてずいぶん売りにきて、新鮮なイワシをこの阪神間の者は食べることが多くあったわけです。谷崎潤一郎の小説をお読みになればしばしば出てくる情景でありますけれども、しかしこの阪神間は公害のためにそういう魚を食うことができなくなった。いま唯一の残されておる地域は、淡路島から以西、そうして大体岡山以東の海面が日本に残された唯一の非常にいい漁場になっておるということは政務次官も御存じでしょう。いかがですか。
  210. 藤井勝志

    ○藤井政府委員 御指摘の点、私も瀬戸内海に面した地に生をうけ、現在もその地域を地盤として国会に出ておりますので、御指摘のように海水の汚濁、汚染がだんだん広まってきている、この問題は重要視されなければならない、こういう考えであります。
  211. 堀昌雄

    ○堀委員 ですからこの妻鹿地区というのは、これはたいへん個別的な話で恐縮でございますけれども、現在東京にも出ておりますが、関西料理でナンバーワンといわれておる吉兆という料理屋があります。この東京の吉兆は、この妻鹿地区の魚問屋から空輸をした魚を提供しておるというので、ともかくまことに新鮮で美味な魚類が日々提供されておるわけです。その日本で有名な料理屋がわざわざ飛行機で運んで提供しておるほどのいい魚の産地にいまやそういう石油精製工場ができて、そこへタンカーが来る、あるいは事故でも起きた日には、この一帯はもはや漁業が不可能になるという可能性は目に見えておるわけです。そこで、この地域を含め、この内海沿岸の漁業組合の諸君はあげて実はこの出光石油のここへ出てくるのを反対をしておるというのが実情なんです。私は確かにこの前通産大臣にもお目にかかってこのことをちょっと申し上げたわけですけれども、工業立地の問題というのは、そういう単なる公害問題というのでなくて、やはり日本古来のそういういいいろいろなものをできるだけそこなうことなく工業の立地というものを考えるのが私は適当なのではないのか、こういうふうに考えておるわけです。だんだんと瀬戸内海がよごれるということで、いま政務次官もお答えになったとおりなんですから、何とかこの石油精製のようなものを外側の海に面した、外海に面したところにつくるというようなことを当然工業立地の問題として考えるべき時期が来ているのではないか、こう思うのですが、政務次官、ものの考え方としていかがでしょうか。
  212. 藤井勝志

    ○藤井政府委員 御指摘のように、私は考え方としては、いまの海水汚濁という問題のみならず、超大型タンカー時代で瀬戸内海はすでに狭くなってきておる、こういった立場から、考え方からいたしますと、長期的展望に立てば、できるだけ外海に面したところが適当ではないだろうか、このように思います。
  213. 堀昌雄

    ○堀委員 鉱山石炭局長に伺っておきたいわけですが、実は個別問題でありますが、この問題について何か住民の反対がもうあまりないんだとか、あるいは漁民の反対がもうないんだとかというような宣伝がかなり行き届いておるようです。しかし事実はそうではなくて、この間通産大臣のところに漁民の皆さんと一緒に署名を持ってまいりましたけれども、この地域に住んでおられる方ほとんど全員の署名が実はお届けしてあるわけです。地域を含めその周辺の人たちはたいへん反対をしておる。ただ県が、やはりいろいろな財政収入というような見地からのみこの問題を非常に熱心にやっておる。私はこの前四日市に調査に行きました。四日市の市長や知事が、こういう状態ですからひとつ国の費用で何とかこの疎開の問題をやってくれと、こういう話がありましたから、そのときに私は、知事や市長に申し上げたのは、あなた方はいまの段階になって何を言うか、ともかく市や県の財政収入にしようと思って埋め立てては工場を一つでも誘致したのは一体だれだ、みんな県や市が率先して埋め立てをしたりしては工業誘致をして、今日公害が一ぱい出てきたら国の費用で何とかしてくれとは何事だと言って、私は実は開き直ったことがあるわけですが、私は、やはりこれらの公害問題を、目先のそういう財政収入だけを中心にしてそれの誘致に狂奔しておる地方自治体にはきわめて問題があると思っております。長期的に見て、必ず、またもや、国で何とかしてくれという、しりを国に持ってくる可能性がきわめて明白です。  ちょうどいまは、ここは、申し上げたように関西電力の火力発電所がたくさんある、近接しては富士製鉄の大きな広畑の製鉄所がある。この辺一体はきわめて汚染度の高い工業地帯になっておるところへ、いまさら石油精製の工場を持ってくるということは穏当でないというふうにわれわれは判断をしているわけです。おまけに、前段で触れましたように、魚類の保護という面で残された瀬戸内海の最後の宝庫を、いまやそういうタンカーの事故その他が急増しておる今日、汚す可能性が目前にあるということになるならば、この取り扱いについてはどうしても慎重にやらなければならない問題だ、こう考えるのですが、鉱山石炭局長、所管局長でありますから、それについての考え方をちょっと述べていただきたいと思います。
  214. 中川理一郎

    ○中川説明員 当該地区の石油精製所の問題につきましては、かつて昭和四十年度の設備許可の段階におきまして、出光興産が当該地区に申請をしてまいったわけでございますが、当時は、いまお話のありましたいろいろな反対がございまして、出光としては、地元側の十分な協力を得られないで立地をしてもいかがかということで、これを断念いたしまして、四十年度の設備許可といたしましては千葉にこれを切りかえたわけでございます。昨年、実はまたこれとは全く別の案件として、出光全体のキャパシティーを大きくする意味合いにおきまして、姫路地区の製油所の申請が出てまいったわけでございますが、これは全体の需給問題その他の関係及び出光が四十年度に許可を受けておるということからいたしまして、他の石油精製会社との比較の問題もございまして、前年度は見送りになったわけでございます。今年度は、先生御高承のように、まだ申請を受け付ける段階に来ておりません。これは遠からずそういうことにはなると思いますが、その状態でこれがどうなるかということを私ども予想するわけにはまいりませんけれども、出光としては重ねて申請をしたいという気持ちを持っているのではないかと推察をしております。  それから地元には、ただいま堀先生おっしゃいましたように、相当熱心な誘致運動がございます。また反対運動があることも私承知しております。先ほどお話のございました署名その他につきましては、双方から署名が通産省に参っております。そういう状況でございまして、申請受付の段階に至りました時点で、担当の立地公害部の意見等をも十分聞きまして、立地についての技術的判断、それから私ども全体として事業法適用上持っておりますいろいろな評量事項がございますので、これらをあわせ考えて処理をいたす考えであります。
  215. 堀昌雄

    ○堀委員 まだ出ていないようでございますが、当然予想されることであります。ですから、私は単なる目先の技術論でなくて、私がちょっと触れたような、せめてあの瀬戸内海に魚族が住めて、そして日本の全域にそういう新鮮な、おいしい、日本特有の魚類の供給ができるという資源確保の意味からも、これは政務次官にもひとつ十分御配慮をいただいて、そして瑕疵のない処置を進めていただくように特に要望いたしまして質問を終わります。ありがとうございました。
  216. 小峯柳多

    小峯委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十五分散会