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1968-04-11 第58回国会 参議院 予算委員会第三分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月十一日(木曜日)    午前十時十四分開会     ―――――――――――――    委員異動  四月十一日     辞任         補欠選任      加瀬  完君     戸田 菊雄君      戸田 菊雄君     北村  暢君      森中 守義君     前川  旦君      田代富士男君     小平 芳平君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     主 査         鶴園 哲夫君     副主査         任田 新治君     委 員                 内田 芳郎君                 大森 久司君                 岡本  悟君                 梶原 茂嘉君                 山内 一郎君                 北村  暢君                 戸田 菊雄君                 森中 守義君                 小平 芳平君                 瓜生  清君    国務大臣        農 林 大 臣  西村 直己君    政府委員        行政管理庁行政        管理局長     大国  彰君        農林大臣官房長  桧垣徳太郎君        農林大臣官房予        算課長     大河原太一郎君        農林省農林経済        局長       大和田啓気君        農林省農政局長  森本  修君        農林省畜産局長  岡田 覚夫君        農林省蚕糸局長  池田 俊也君        食糧庁長官    大口 駿一君        林野庁長官    片山 正英君        水産庁長官    久宗  高君    説明員        総理府人事局参        事官       吉岡 孝行君        農林大臣官房企        画室長      小沼  勇君        労働省職業安定        局業務指導課長  保科 真一君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○昭和四十三年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十三年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十三年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 鶴園哲夫

    主査鶴園哲夫君) ただいまから予算委員会第三分科会を開会いたします。  まず、分科担当委員異動について報告いたします。  昨十日、戸田菊雄君及び中沢伊登子君が委員を辞任され、その補欠として、森中守義君及び瓜生清君が選任されました。  また本日、加瀬完君が委員を辞任され、その補欠として、戸田菊雄君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 鶴園哲夫

    主査鶴園哲夫君) 昭和四十三年度総予算中、農林省所管を議題といたします。  まず、政府側から説明を求めます。西村農林大臣
  4. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 昭和四十三年度農林関係予算について、その概要を御説明申し上げます。  最初に、各位の御協力を得まして御審議をいただくにあたりまして、予算の裏づけとなっております農林水産業施策基本方針について申し上げます。  最近の農業動向を見ますと、国民経済高度成長に伴う食糧需要動向に対応した農業生産選択的拡大農業機械化による生産性向上、高度化専門化された農業経営形式等農業近代化が順調に進んでいる面も見られますが、他方、解決を要する幾つかの重要な問題が生じてきておるのでございます。  その第一は、農産物需給の問題であります。農産物に対する需要は、近年、畜産物青果物等を中心にきわめて旺盛であり、この傾向は今後も続くものと予想されます反面、供給面におきましてては、農家労働力流出兼業増加等による農業生産の停滞が農産物価格水準上昇農産物輸入増大をもたらしております。さらには、世界長期的な食糧事情逼迫傾向にあることをも考慮しますと、わが国農業生産性を高め、国際競争力を強化しつつ、食糧自給度をできるだけ高い水準に維持する必要があるのでございます。  第二は、農業生産性の問題であります。近年、農家所得は順調に増加していますが。これは兼業化進展に負う部分が多く、また、農業所得増加についても、生産性向上が寄与するところもかなりあるものの、農産物価格上昇に負うところが少なくないのであります。また、他産業に対する比較生産性格差は、近年やや縮小しておりますが、これも、農業就業人口の減少、農産物価格上昇等事情があずかっているものとみられまして、生産性向上基礎として格差が一貫して縮小していくという傾向にあるとは、なお言いがたい状況にあります。今後におきましても、国民生活の安定という見地から、農産物価格上昇に多くを期待できない以上、農業生産性を着実に向上させ、これにより格差是正課題にこたえていくことがぜひとも必要とされるのであります。  第三は、農業構造の問題であります。経済高度成長に伴う農家労働力の急速な流出契機として、農業構造相当変化がもたらされようとしておりますが、当面、これが兼業化進展農業労働力質的低下等となってあらわれ、また一方には農地流動化をはばむ要因も多く、このため、農地流動化を通じて経営規模を拡大するという構造改善が順調に進んでいるとは言いがたい状況にあります。したがって、生産性が高く経営規模の大きい自立経営及び効率の高い生産組織を育成して、わが国農業体質改善することが強く要請されるのであります。  このような情勢のもとで農政の当面する課題は、わが国農業がその体質改善して生産性の高い農業を実現し得る構造を整えつつ、国民の必要とする食糧その他の農産物を安定的に供給し得るようにすることであり、また同時に、このことを通じて農業従事者所得向上をはかり、生活環境整備とあわせて農業従事者福祉向上を期していくことであります。  このため、昭和四十三年度においては、(一)農業生産基盤整備農業技術開発、普及の促進、(二)農産物生産対策の拡充、(三)農業構造改善推進、(四)生鮮食料品をはじめとする農産物価格の安定及び流通改善対策の強化、(五)優秀な経営担当者確保農村環境整備等農山対策充実、(六)農林金融改善重点を置いて施策推進をはかることとしております。  また、林業及び水産業につきましても、それぞれ最近の需要及び資源動向従事者所得の面から考えますと、問題が多々存在しておりますので、これらにつきましても、生産基盤整備構造改善促進従事者に対する福祉対策充実等、諸施策を強化し、生産性向上従事者所得増大及び生活水準向上をはかることとしております。  これら施策推進を期するため、昭和四十三年度予算編成におきましては、農林水産関係予算充実をはかることに一段と配慮した次第であります。  まず、昭和四十三年度の一般会計における農林関係予算の総体につきましては、農林省所管合計額は六千二十二億円で、これに総理府、文部省、労働省及び建設省所管経費を加えた農林関係予算合計額は六千五百四十二億円となり、これを昭和四十二年度の補正後予算と比較しますと三百六十三億円の増加となります。  以下、この農林関係予算重点事項について御説明をいたすことになっておりますが、時間の都合もございますので、委員各位のお許しをいただきまして朗読は省略し、その内容を記録にとどめることといたしたいと存じます。よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。
  5. 鶴園哲夫

    主査鶴園哲夫君) おはかりいたします。  ただいま農林大臣の御発言中にありました、以下の説明につきましては会議録の末尾に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 鶴園哲夫

    主査鶴園哲夫君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  これより質疑に入ります。質疑のある方は、順次御発言願います。
  7. 森中守義

    森中守義君 大臣及び水産庁長官に伺っておきますが、五八年の国際海洋法会議で採択された領海及び公海条約の批准がこの国会に求められておりますね。かなり時間がたったのに、もちろん外務省所管でしょうが、こういう長期にわたって、すでに確立された条約が放置されておるということは何を意味するのですか。また、水産庁としては、所管外務省であっても、領海それ自体水産の主要な基盤ですからね、そういう角度から外務省に対してこの確立された条約扱い等について、どういうお話をされているか。
  8. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 五八年のその当時の条約案と申しますか、条約に参加しましたその後の状況等経緯は、水産庁長官から申し上げたいと思います。
  9. 久宗高

    政府委員久宗高君) 御質問にございましたように、だいぶ時間がたっておるわけでございます。御承知のとおり、五八年におきます海洋法条約審議は、いろいろな問題がございまして相当もめたわけでございます。したがいまして、領海につきましても、ついに幅員につきましては全体的な合意に達しないという経緯がございました。そのほかに、大陸だなの問題でございますとか、あるいは漁業関係の問題という、いわば一番基本がきまりませんために、その後の推移を、四条約関連を通しまして若干見る必要があったと考えられるわけであります。しかし、その後、最終的な国際会議が再度開かれまして、この四つの条約につきましてのべンディングの問題が解決されるという見通しもちょっと現在の段階ではつかない段階でございます。したがいまして、その中で、国際法上確立された慣行が、ただそのまま条約に引き移されました関係でございます領海に関する部分公海に関する部分につきまして、今回国会のほうにお出しするという段取りになったわけでございます。水産庁といたしましては、この二条約につきましては、ただいま申しましたように、国際的な慣行をそのまま引き移したものでございますので、特に問題の幅員の問題を含んでおりませんので、特別に反対する理由はないということで賛成を申し上げておるわけでございます。
  10. 森中守義

    森中守義君 お答えのように、その五八年のこの条約が採択されたときには確かにそのとおりだったのです。ところが、幅の問題で、六〇年にわざわざその問題を論議するために第二回目の会議が開かれていますね。そこできまらなかったということ、それが一つの問題。なぜそれがきまらないのか。少なくとも、各国間において主なのか六なのか、あるいは九なのか十二なのか、ずいぶん意見が乱れておるようです。むろん、わが国がそれに臨んだ態度もよく知っておりますが、要するにきまらなかったという事実は動かしがたい。しかも、それが問題だと思うんです。ですから、一体何がゆえに幅をきめるためにわざわざ開かれた六〇年の会議がきまらなかったのか、その背景。それからいま一つは、きまらないがゆえに、最近特に日本の漁船がずいぶん方々領海侵犯ということで拿捕されたり、あるいは罰金をとられたり、こういう紛争が非常に顕著ですね。これは、国家的な見地から見ると、やはり国策ないしは水産行政それ自体に、もう一回再検討の時期が来たんではないか、私はこういうように思っております。ですから、六〇年の会議がどうしてきまらなかったのか、少なくとも国際社会における背景は何であるのか。それと、今日主要なわが国遠洋漁業方々でそういう領海侵犯等で拿捕された、罰金をとられたという、そういう件数等がわかれば……。特に顕著なものとしては、モーリタニアで三千万円罰金を課せられた事件がありますね。こういう問題は、国際紛争としては――紛争というほど大げさなものかどうかわかりませんが、ちょっとこういうものは異例なものではないかと、こう思うのです。あるいは、先般帰っていったスハルトのあの国においてすらも、問題が非常に多い。だから、そういう方々で発生している事件というのが、わが国との友好関係を直ちに失うほど重要な問題とは思わないけれども、少なくとも国益を失う、こういうように私は考えるのですが、そういう事実を少しあげてみてください。
  11. 久宗高

    政府委員久宗高君) 御指摘のございましたように、この前の海洋法会議というのは非常に大事な会議でございまして、各国集まりまして海洋秩序を何とかつくろうと、あらゆる努力をいたしたわけでございますが、ついにこの領海幅員につきましては、ぎりぎりのところまでまいりまして、ほんのわずかの差で、例の六・六の方式が通らなかったわけでございます。背景につきましては、いろいろな見方があるようでございますが、領海そのものにつきましてそれぞれの国の事情が違うという問題が一つあろうと思うのでございます。もう一つの問題といたしまして、私どもに非常に関係があり、またその後の推移とも関連して問題のございますものは、領海の外側につくられますいわゆる漁業専管水域につきまして、その中におきます従来そこで行なわれておりました漁業をどう取り扱うべきかということにつきまして、先進国と申しますか、すでに漁業をやっております国と、これから出ていこうとする国との間に相当利害の違いがございまして、私は、主としてそれが非常に大きな問題で、あの問題がきまりかねたと思うのであります。ただ、結果といたしましては、それがきまりませんでしたわけでございますので、領海につきましては、それがきまらないとすれば、その前にすでに伝統的に確立された領海幅員ということになれば三海里と言わざるを得ない状況になりまして、しかも、その後におきましては、さようなことがきまりませんでしたために、非常に各国それぞれ専管水域を一方的にきめてそれを宣言する、その幅も非常に多岐にわたりまして、六海里のものもあれば、あるいは二百海里といったような専管水域を主張するような非常に無政府状態になってしまったわけでございます。さような意味におきまして、あの会議が成功しなかったことが、今日のところでは非常な混乱を巻き起こしておるというふうに思われるわけであります。  そこで、日本立場でございますが、さようなことになりますと、それでは、もうルールがないんだから、それぞれかってに一方的に宣言をしていいかどうかという大義名分があろうかと思います。そこで、私ども立場といたしましては、三海里を墨守するつもりはございませんけれども、少なくとも世界的な意味合意ができないとすれば、領海については三海里というものに立ち帰らざるを得ない。その上に乗せます専管水域につきましては、これは一方的な宣言でかってにそれぞれがやるのであれば、漁業秩序はもちろん乱されてしまいますので、そういうことではなくて、全体的な世界的な話し合いができればもちろんいい。しかし、その前の段階におきましては、二国間でお話し合いがきまるものであれば、これは二国間限り通用するものであろうという考えに基づきまして、たとえば日韓会談におきまして採用いたしました方式はさようなものでございます。また同時に、領海の外におきます専管水域の中で一番いまあやふやでございますのは、その中におきます伝統的な漁業をいかに扱うべきかという問題でございまして、漁業先進国でございます日本といたしましては、それぞれの世界の海におきまして、さような十二海里の範囲内で漁業をいたしておるのが相当あるわけでございます。そこで、そのような場合に、いま世界的なルールはございませんけれども、その中における現実の伝統的な漁業を行なっておる日本側といたしましては、関係国と法律問題は一応たな上げにいたしましてでもお話し合いをつけて、さような場合の漁業実績というものを話し合いで固めていく、これが一つ実績と申しますか、国際慣行一つ事例になって、一つ秩序基礎になるというふうに考えまして、先国会でいろいろ詳しく申し上げましたように、今度アメリカとの間におきましてもお話をつけましたし、ニュージーランドとの間でもっけました。メキシコとの関係でも先般つけたわけでございます。目下、オーストラリアとまず第一回の話をいたしまして、近く、なるべく早い時期に合意に達したいというふうな段取りを進めて、かつインドネシアとの関係におきましても、さような問題は頭に置きまして交渉を継続しておるような次第でございます。
  12. 森中守義

    森中守義君 主要な領海侵犯事例等はおあげになりませんでしたが、これは私も大体知っていますからよろしいでしょう。  そこで、実は、この分科会、私は十一時十分までだそうですから、あまりゆっくりお尋ねできませんが、いま長官、はしなくも言われたように、五八年あるいは六〇年の会議の中で何が問題なのか。むろん、それから十年近くたっていますから、いろいろ国際間のものの見方あるいは考え方も変わってきているとは思うのですよ。言われたことが、ある種の主柱であったことは間違いない。しかし、それとは別なものとして、少なくとも今日の時点では、各国の慣習に従う、あるいは資源確保ということだけでなくても、もっと変わったものとして日本は受け取る必要があるのじゃないですか。ですから、いま長官お話を聞いておりますと、やはり画一的に、主なら三、六なら六、九なら九で世界全体が統一されるべきものである。そういう方式日本は望んでいるという、こういうわけなんですね。ところが、実際問題として、自国宣言によってみんなやっていますよ。たとえば、先般のソビエトの大陸だなの宣言にしても、これは完全に主権宣言をやっているわけですし、それを否定する条約というものはないのですね。いわんや、専管水域においてもそのとおりです。ただ、国際会議等の際に議論にはなりましょうけれども国際法上、自国宣言によって領海ないしは専管水域を設定することを否定をしていないということになりますと、 いまわが国が進めようとする画一的な規制、画一的な決定ということは、私は、かなりこれは再検討の時期に来ているのじゃないか、たまたま先般水産庁でも国際間の漁業交渉に臨んでいく一つ方針を、たとえば技術援助であるとか、あるいは経済援助であるとか、多少ともそういう援助方式に目を向けながら個別的に協定を結んでいこう、こういう方針が一部に採用され始めたようですから、まあかなり大きな転換はしていると思う。しかしながら、いま考えねばならないのは、じゃいつ一体幅をきめる国際会議が開かれるかという見通しは全くありません。おそらく、相当長期にわたって、ないかもわからない。その間に、各国は各様に、三を六にしてみたり、六を九にしてみたり、さらに専管水域を線をつけてみるというようなことで、各国個別に宣言が行なわれているということになれば、いつまでも公海自由の原則を踏まえて国際的に画一的に統制さるべきものであるという日本の見解というものは、人に言わせると、きわめて封建的だと言う人もいますね。それで、はたしてわが国遠洋漁業、ひいては沿岸沖合い漁業というものが確立し得るものかどうか、いま差し迫って日本政府検討すべきものは、それだと思うのですがね。どうですか。
  13. 久宗高

    政府委員久宗高君) 確かに非常に重要な御指摘であろうと思います。私が申し上げておりますのは、ジュネーブ会議がうまくまいりませんでした結果、領海そのものにつきましても、専管水域につきましても、非常に多様な、三海里、六海里、九海里、いろいろあるわけでございます。そういうことが事実上進行してしまったものを、最終的な何らかの画一的な領海の幅にまとめ上げるということは非常に困難であろうということは私どももわかります。ただ、考え方といたしまして、そういうものがばらばらでよろしいのだ、しかも領海以外に特に専管水域といったようなもので、一方的に特に他の実績ある漁業を排除するような形で漁業管轄権を行使できるというようなことが放置されるのは必ずしも適当でないし、また、それをやっておられる国々も、それが決していいこととは考えてないと思うのです。そこで、それを画一的なものにまとめ上げることは、いわば古典的な考え方であり、非現実的だという御指摘は私もよくわかるように思います。それからまた、海洋法ジュネーブ会議のような形で漁業に非常に関連のある部分だけ取り上げて何らかの話し合いがいますぐにでも行なわれるかという気配はないようでございますけれども、ただ、おそらく御質問もそれを予想しておられるかと思いますけれども、あの当時から後の一番大きな変化といたしましては、六六年ごろを契機といたしまして急速に問題が展開してまいりました、海洋全般開発問題があるわけでございます。おそらく、今年の秋の国連総会におきましては、さような問題が相当大きな形で取り上げられるだろうと考えられるわけでございます。それとの関連におきましても、御指摘のように、世界の大勢から見て、この種の問題をどう取り扱うべきかにつきましては、慎重な検討が要るだろうというふうに考え、また、私どもも、内部におきましてあらゆる角度からこの種の問題を実は検討しておるわけでございます。ただ、現実の問題といたしましては、直ちに専管水域その他につきまして現在行なわれておりますような一方的な宣言を認めるわけにいかない。そこで、それぞれの国とお話をつけまして、ほぼ、われわれ実績のある国々には大体においてお話し合いをつけたというのが現状でございます。
  14. 鶴園哲夫

    主査鶴園哲夫君) 速記をとめて。   〔速記中止
  15. 鶴園哲夫

    主査鶴園哲夫君) 速記を始めて。
  16. 森中守義

    森中守義君 長官、いま非常に大事なお話をされたのですがね。やはり各国が何を考えているのか、そのとらえ方というのが日本方針をきめる際の課題じゃないですか。だから、さっき言われたようなことだけで、ものごとをとらえるというのは、ちょっと私は平面的過ぎるような気がする。いつでしたかね。日経に、日水の中井さんという社長が「私の意見」という論文を出しておられますね。私はこれを読んで、非常に示唆に富んでいると思った。この人からいきますと、いま長官の言われるようなとらえ方をしていませんよ。少なくとも、この人は業界における権威者ですがね。お読みになったと思うんですが、この人の所説をちょっと引用しますと、低開発国一つ大きなこの問題の焦点として当てて見る必要があるというように指摘をされているのですね。それは、これから四、五年たてば世界人口は七十四億ぐらいになるだろう、そこで完全に一億人分くらいの食糧が足りぬのじゃないか、こういう言い方なんですね。ただ、まあどういうところで統計をとってこられたのか、その辺については、いま少し私も検討したいと思うんですが、少なくとも、いま、主食をはじめ、その他の生鮮食料品、こういうものが、現在の生産基盤が急激に拡大するということは考えられない。したがって、四、五年先には一億人に相当するような食糧事情というものがかなり逼迫状態になる、そうなれば、動物たん白質をいま確保しておかねばならぬというのが低開発国指導者の大体頭の中に描かれている対策なんです。そういう意味からいいまして、やはり漁業資源というものが、言ってしまえば、今日の、あるいは将来のそういう食糧危機感に対する一つ対策としてとらえられるというような言い方をしているわけですね。これは私は非常に含蓄のある意見だと思う。だから、国際法で規制し得るか規制し得ないかというのは、各国がこういうとらえ方で進んでいくということになると、結論として、私はなかなか幅の問題を規制し得ない、将来の問題としてですね、そう思うんですよ。だから、その辺の、つまり食糧確保という点からこの問題をひとつとらえてみることによって、だいぶ各国領海あるいは専管水域等の問題は次元が変わってくるように思うんです。これはまあ、私はむしろ、理想的なものとしては、水産庁の言われるように、公海自由の原則というのが一番正しいと思う。しかし、それはできない、今日の時点では。であるとするならば、ここでその問題の政策の転換をはかる時期が来ているというような問題にぶつかってくると思うんですね、いやおうなしに。  それが一つの問題と、昨年の夏のころ、アジア太平洋経済構想といういわゆる三木プランなるものが出ましたね。この中で太平洋沿岸一帯の漁業条約をつくりたい、こういうことを言っている。過日私は、ある農林省の首脳部の方とちょっと予算委員室でいろいろ話をしているときに、たまたまその問題になりまして、名前は申し上げませんが、しろうとだと言うのです、そんな話は。私もそのとおりだと思う。それは、各国日本の状態を踏まえて、領海専管水域をつくろうという時点において、国際会議できまらないものが太平洋沿岸諸国でそれをきめようったってできませんよ。その限りにおいては、外務省は私は形式的だと思う、三木構想というものは。ただ、水産庁がどういう反応を示されたかは、それは知りませんよ。それは知りませんが、私の判断からいくならば、外務省構想というのは非常にまずい。むしろ、現実的に問題をその方向にとらうべきじゃないかと、こう思うんです。いまここでにわかに、それじゃ国の方針として水産政策を一挙に政策転換ができるかということになると、無理なんでしょうが、このことは、しかし、かなり重要なファクターとしてとらえておく必要があるんじゃありませんか。いかがですか。
  17. 久宗高

    政府委員久宗高君) 先国会におきましても、同種の問題につきまして、だいぶん長くお話しいたしたわけでございますが、いまお話を伺っておりましても、大体先生の御所論と私ども現実にやっておりますこととは、そう食い違いはないという感じがいたします。説明が不十分で御納得いただけないのは残念でございますけれども、最初に御指摘のございました低開発国の中の問題を頭に入れてという点、もちろん、お話がございましたように、私ども始終そういうような問題につきまして業界とも話し合い考え方としてそう食い違いはないと思うのであります。もちろん、これは非常に大きな今後の長い時間にわたって問題となるべき大きな問題でございまして、それとの関連漁業問題をどうすべきかということでございますが、私ども漁業問題で各国と御相談しております場合に、たとえば、アメリカと話し合いをいたします場合に、いまの発展途上国との関係がある。これと話をする、こういう場合には、問題の性質がだいぶん違うように思います。  御承知のとおり、低開発国関係につきましては、確かに食糧問題がございまして、さような意味から、沿岸の漁業を将来のために確保しておきたい。将来できるようになった場合に資源が枯渇しておってはいけないという気持ちで、陣取り戦のような形で相当体制的に低開発国でさような動きが多いわけでございます。私どもは、さような場合は、私ども実績があります場合には、まさに御指摘のように、ただそこの魚を法律論を振りかざして取ってくるような形ではまずいわけでございまして、現実の問題といたしましても、何らかの意味漁業協力なり……。そういう発展途上国が現在資源を十分利用しておられないわけでございますし、また、魚によりまして、それをとらうべき施設がないといったようなこともございますので、また現実には、紛争を起こしている当事者のほうから、何か協力してもらえないかというようなことが現実にあるわけでございます。それは、モーリタニアなんかその典型的なものでございます。そういうところに対しまして、私どもは具体的に対処できるような考え方なり政策をもって臨むべきで、ただ法律論だけ振りかざしてやっているわけではないわけでございます。特に発展途上国との関係におきましては、御指摘のような問題を十分頭に置いて話し合いをつけてまいりたいと、こう思うわけでございます。  なお第二点の御指摘のございましたアジア太平洋の問題でございますが、これは、この前も申し上げましたように、若干誤解がございまして、アジア太平洋経済圏の構想というものは三木大臣の口からたしか出たと思いますが、漁業そのものにつきましては、私どもも、ちょうど欧州漁業条約ができましたので、これは主として外務省の、実際にそういう問題を研究しておられる方から一こういうような条約ができた場合に、これがアジア太平洋地区で適用できるだろうかどうか、その可否いかんといったようなことで始終これは研究しているわけでございます。私どもも参加いたしまして、新しい条約ができました場合に、特に多数国間で話し合いがついた場合に、どんな背景でこんなことができたのだろうか、また、それが単に、適用できるかどうかといったような、こういう吟味をいたしておるものが、たまたま二つ結びつきまして、不用意に新聞に出ましたので、当時国会においても御質問がございまして、政府としてももちろんきめたことでもない、ただこの種の問題は始終研究しておるのだというお話をしたわけでございます。  そこで、私どもさようなものに参加しました者としての感じを申し上げすと、ヨーロッパの場合には、すでに長年にわたる伝統的な漁業があって、相互に入り会い関係がございます。おそらく、それを取りまとめてみれば、あのような形があそこの現実にぴったり合うので、したがって、ああいう話し合いがついたものと思うのであります。アジア太平洋地区におきましては、さような意味の入り会い関係はございませんし、現実の問題といたしましては、たとえば南米地区まで入るといたしますれば、二百海里の専管水域というような国まで入ることになりますので、漁業プロパーで考えますと、個々の地域で多数国間でいきなり話し合いをするということは、ちょっと条件が熟してないのではないか。また、そういう形で話をいたしまして成功しなかった場合の影響もございますので、必ずしも適当ではないんじゃないかという判断をいたしておるわけでございます。したがって、その海域にある現実の国に対しましても、いまのところ、私どもは、個別的に、アメリカとも、メキシコとも、ニュージーランドとも、オーストラリアとも、個別に折衝をいたしまして、ほぼ私どものねらっておりました、実績ある漁業というものが二国間でどう扱われるべきか、そのことは同時に国際間においても当然考慮に入れられていい国際漁業慣行であろうというふうに思うわけでございまして、それを個別的に詰めておるのが現状であります。
  18. 森中守義

    森中守義君 非常に重要な問題ですね。結局、形式的には、先ほど言われたように、法律――しかし、その背景をなす日本の主張というものは、やっぱり実績尊重ということですよ、すべての基調になっているのは。むしろ、私は、今日のわが国遠洋漁業における政策というものは、実績をどうして擁護していくか、それを踏まえてものを言うところにかなり無理がきている。さっき指摘をしたような問題が後退しませんよ。少なくとももっと深刻な状態になっていくでしょうね。そういう深刻化していく国際間の漁業問題の中で、わが国が主張するように、表では公海原則、裏では実績ということは、政策的に私は同一なものではないと思うのですね。その辺に、いまわが国が苦悩状態におちいっているんじゃないですか。たとえば、アメリカの先般の専管水域の問題、あれだって、暫定的には許容されていても、長く将来にわたって許容されるということには私はならぬと思う。その保証はないでしょう。で、そうなると、一定の期限が来れば、実績がこれだけだからというようなことを絶えず繰り返していても、何か物もらいか、こじきのような、これは言い方は悪いけれども、そういったような立場わが国は立たざるを得ない。で、そのことをもうちょっと深く掘り下げていきますと、業界にもいろいろ問題があるでしょう。しかし、全体的な視点としてこれをとらえる場合に、極度にやっぱり保護政策をとり過ぎるのではないか。逆に、そのことが国際的な漁業秩序を守る守ると言いながら、わが国は犯しているということも、一面として、一つの側面として、考えてもいいんじゃないですか。たとえば、いま、私は新聞を見てきてあれしたのですが、日ソ漁業交渉が始まってしばらくたったときに、一応交渉は成立するものだということで船団を送り出したでしょう。大体、交渉の経過の中で船団を送り出すなんということは、これはやっぱり考えられませんよ。少なくとも、二国間あるいは多数国間の外交交渉の中で、話が進行状態の途中で、まあ言ってしまえば、そういう実力行使――実力行使と言ってはあまり適当な表現ではありませんが、少なくとも既定の行動だからこれもいいんだ、やはり得べきもんだということは、必ずしもやり方としては適当じゃない。しかし、それも、言ってしまえば、実績があるから、業界は、何とかひとつ出してくれ、漁期は来ているし、行かなきゃ間に合わない、水産庁は、そうだというようなことで、やはりその許可条件、あるいは許可すべき環境というものが成熟していないのに出すところに、かなり問題があるのじゃないですか。それも、やはり、言ってしまうならば、実績を踏まえてあまりものを見過ぎるからそういうことになるというようにも私は考えるのですがね。いかがですか。
  19. 久宗高

    政府委員久宗高君) 後段のほうはあとでお答えいたしますが、前段で御指摘のございました、実績にあまりこだわり過ぎるのじゃないか、そのことはかえって日本立場を不利にしているのではないか、こういうお話でございますが、さような見方もあるいはあり得るかと思います。ただ、漁業の、海の上のことでございますので、いまの低開発国と私ども関係は一応別にしまして、先進国間で、つまり、両方が相当漁業をやっております場合の関係と申しますものは、これはヨーロッパの例の欧州漁業条約におきましても、やはりその伝統的な漁業でどのくらいやっておったかということは、これを無視しては秩序が保てないわけでございまして、したがいまして、まあ私ども実績一点張りというつもりは必ずしもございませんけれども、何らかの意味で多数国間でお話し合いがきまったものを見ますと、やはり実績というものを基準にいたしませんと、めどがない。それで、どの程度に扱うかという問題がそれぞれの合意によって成り立つと、こういうことだと思いますので、全く実績というものから離れて二国間でお話がつく、あるいは多数国間でお話がつくとは思えないのでございます。したがいまして、少なくとも実績というものを踏まえて、そうして両方が合意が成立するような形の二国間の話し合いなり、できれば多数国間の話し合いができていくことが必要であろう、こういうことで考えておるわけでございます。特に私どもがいま非常に重要だと考えておりますのは、日本はやはり相当漁業関係では先進国でございますために、多数の海に出て多数の国の沿岸といろいろな関係を持っていかなければならない。そこで、そういう場面にありますのは、日本が非常にきわだって多いわけでございます。したがって、そういう場合におきます実績をどう考えるかという先例をやはりつくってまいることが、少なくとも、日本水産のような規模でこのように今日までやってきましたものといたしましては、国際漁業におきます一つの責務でもある、だろう、こう考えるわけです。つまり、実績というものはこういうふうに考えるべきもので、また、実績を踏まえて両者で話し合う場合に、どの程度譲り合って、そうしてそこにある秩序を事実上保つかということで、もう大部分のところは実はまあ固めたかっこうになっておりますので、今日かりに国際会議が開かれました場合にも、これらの私たちのやりました実績というのは――実績と申しますか、協定の内容というものは十分に御参考になり得るものだし、まず合理的なものと考えてよろしいのではないかと思っておるわけでございます。これには多少いろいろな御批判があろうかと思います。  それから、お話が出てしまいましたので、お答えせざるを得ないのでありますが、その問題と関連いたしまして、今回の日ソ交渉過程におきますカニの出港いたしましたことについてのお尋ねでございますが、これはもっと詳しくお話しいたさなければならぬと思いますが、私どもは、ただ実績実績と、こう言っているのではございませんで、また、新聞紙上に出ておりまような強行出漁とか、そういう、肩をいからしたような感じでもございません。きわめて当然なことを規定に従ってやっているというふうに思っているわけでございます。要約して申しますと、私ども大陸だな条約には加入いたしておりません。また、かりに加入いたすといたしましても、カニは大陸だな資源ではないという非常に明確な考え方を持っておるわけでございます。それから、日ソの条約によりまして、従来も大陸だな資源であるといったようなお話合いがたびたび出たわけでございますけれども、それにもかかわりまぜず、カニというものは二国間で相当取り方をよく相談してやるべき性質のものと、こう考えますので、あの条約に従いまして、委員会において正式に取り上げて年々のカニの取り方を今日まできめてまいったわけでございます。それから昨年度は、特にこれをもう少し長期的に安定しようじゃないかということで、長期的の取りきめまでできたわけでございます。したがいまして、本年度におきましては、その長期的な取りきめに従っていっておるというのか本来の筋でございまして、にもかかわりませず、ソ連側におきましては、二月中に大陸だな条約に伴う国内措置をきめたから、これは新しい事態であるということで、委員会におきましても、従来出しておりましたようないろいろなこまかい条件を全部蒸し返して出してまいりまして、現在その話が進行中なんであります。私どもは、その委員会におきますお話が出ました際に、いま申しましたように私ども立場を申し上げまして、これはすでに前々からお話をして、しかも長期取りきめまでできているじゃないか、これが、ただ一片の国内法をつくったというだけで全部御破算だというようなお話では、全く国際条約に基づいて取りきめした意味が全くないではないか、それはおかしいではないかという立場を貫いて、いまお話をしているわけでございます。したがいまして、まだ実際に漁をいたしますまでの時間があるわけでございますので、私どもとしては、本来からいけば、カニについて討議すること自体も、ほんとうは不当なんでございます。つまり、長期取りきめですでにきまっておるわけでございますから。しかし、せっかくお話が出ておりますので、それについての御意見は聞こう、しかし私ども考え方はこうですよということを申し上げて、そうして、港を出ます時期がまいりましたので、協定に従って考えれば私のほうとしては出てまいりますと、しかしお話はさらに続けましょう、もちろん、これは何らかの意味合意が成立するのは一番望ましいわけでございますし、決してけんかをしてやるような性質のものではないと思いますので、鋭意まだ交渉を継続しておりますけれども、さようなたてまえで考えているわけでございまして、いまの実績の論議と直接これに結びつけて、この措置についての御批判は私は当たらないと思います。
  20. 森中守義

    森中守義君 いまの大陸だなの問題、それと、カニがはたして大陸だなに定着するものであるかどうか、これはまたいろいろ国際法上も議論もあるようですから、機会をあらためますが、どちらにしても、実績相当以上にわが国が重視をして、それが交渉一つの基調になっていることは否定できないと思うのですね。したがって、そういうことが、相手側に言わせると、要するに日本は乱獲をやるというようなことで、だんだん規制か強化される、そういううらはらの関係にあると思うのですよ。ですから、さっきも申し上げましたように、いまその交渉中にそういうものを出したのがいいとか悪いとか、それは、いま長官の御説明で私も一応了とはいたしますが、その他全体的にもう少し視点をかえて、国際間の秩序を守るには少なくともどういう方法をとったほうがいいかということが一応検討されてもいいんじゃないか、こういうように思いますしね。また、その中井さんの所見を借りるならば、まだまだ資源開発というものははかり知れないものがある、それはあまり沿岸地帯に片寄り過ぎるから、たとえば国際漁場の開発をやっても、全部がそこに殺到する。とり上げてしまえば次に移って行くというように転換政策をとるところにわが国国際漁業の問題があるんじゃないか、そうじやなくて、もっと二千メートルでも千メートル下に入れば……。下降態勢をいろいろ検討するなり、ずいぶん検討の余地があるという、こういう指摘をされているんですね。これも造詣の深いお話だと思うのですよ。しかしながら、要するに相当規模の金の投資をしなければすべてできないわけですから、ですから私は、そういう一連の経過から考えますと、いまのわが国水産政策というものは、外に出るために国内の業界はできるだけ三海里という原則を踏まえ、裏返して言うならば、沿岸漁業というものはかなりそういうところのために規制を受けている。遠洋漁業実績を踏まえてとることに重心が置かれ過ぎているという気がしてしようがない。たとえば、私が一時農水にごやっかいになりましたころのあのころの水産庁予算、そして四十三年の予算案の内容等を見れば、顕著にそういうものがやっぱりうかがわれますよ。だから、ここで、日本水産政策というものは、外も大事であるし、また他面、内についても相当力点を置く時期に来ているのじゃないかと思う。そういう基本的な政策というものが何かあるようで実際にはなくて、在来の慣習の上に行なわれているという気がしてしようがないのですけれども、どうですか。いっか私は、だから漁業法の中で沿岸も国際も込みにしてやっているところに無理がある、したがって、いま少しそのことを整理する必要があるだろう、こういうことを一ぺん提起したことがありますけれども領海の問題、同時に国際沿岸という、こういうものをいま少し抜本的に検討する必要がありゃしませんか。少なくとも、冒頭に私が申し上げた、いままでわれわれが、日本が主張しておったように、画一的なものというのは、ちょっとこれは考えられない、今日の時点では。そうなると、個別にそれなりの現実的な政策を進めていくということが得策だと思うし、それにはどうするかということになれば、経済援助技術援助ということにやっぱり戻ってくるのじゃないか。それを、何とはなしに、交渉がむずかしいから、コンセンサスに達しないからそういう方法をとろうということではなくして、政策自体として策定をする必要がありゃしませんか。いかがですか。
  21. 久宗高

    政府委員久宗高君) 確かに、御指摘のような問題はあると思います。ただ、何度かやりとりいたしましたが、どうもわかっていただけないと思っておりますのは、私ども遠洋漁業の問題のために沿岸漁業に不利な制度の扱いをしておりやしないかといったような感じが御質問の中にあるように思いますが、かようなことはございません。たとえば、いまの専管水域にいたしましても、外に出ているものの関係と内輪の関係というものを考えました場合におきましても、たとえば日本の沿岸で専管水域を引いて沿岸を守ったらいいじゃないかという御意見もございます。それは、一方的に宣言をいたしますと、日本専管水域を引いた、こういうような形で、はたしてよろしいかどうか、必要があれば二国間で話し合ってもできる問題であるということと、今日まださようなことをしなきゃならぬほど急迫しているかどうかという問題につきましては、これは相当な判断を要する問題だと思います。かりに十二海里の専管水域を引いたといたしましても、むしろ、その外側におきまして何らかのとりきめを必要とするような事態が予想されるわけでございますので、私どもといたしましては、日本沿岸におきます外国漁船の動きを十分注意いたしましてこの問題には対処したいと思いますけれども、決して私どもが現在とっておりますやり方が沿岸漁業に非常に重大な影響を及ぼしてまいるとは考えておりません。ただ、御指摘のような問題は常々頭に置いて考えてまいりたいと思っておるわけでございます。  なお、沿岸の一般的な施策、たとえば予算面から見て十分ではないじゃないかというおしかりにつきましては、これは私ども自身は、どうもこれでは不十分だと思っておりますので、さらに努力をいたしたいとは考えておるわけでございます。  なお、本日の御指摘はたいへん広範な問題でございまして、何か惰性に従って三海里を墨守しながら便々と外国と交渉だけをしているじゃないかという御指摘でございますけれども、現在までの足の運びはおっしゃるとおりかもしれませんが、私どもがいままで、昨年来――一昨年から特に昨年を中心といたしまして努力してまいりましたのは、このような問題がいつか世界的に何らかの会議が開かれて、このような無秩序を何とか打開しようじゃないかという動きが必ず起こると思います。その場合におきまして、十分な指導性を持って、ここはこういうふうにすべきものだという、ものを言うべき者は、また言える者は私どもであろう。現に実績がございますので、このような漁業をやっておりますので、そういう意味で、むしろそれに備えて事実関係をこまかく固めておるわけでございまして、ほぼ所期の目的に近いところまできた、残っておりますのはアフリカ関係が若干残っておりますけれども、これはむしろヨーロッパの秩序に近いところでございますので、アプローチのしかたは相当変えなければならぬというふうに思っておるわけでございます。なお、その交渉の中で、特におわかりいただきたいと思いますのは、それぞれの国等におきまして、たとえば実績についても、ただ実績を一〇〇%のめのめといった交渉ではございませんで、ある場合にはその実績を切りまして、そして公海におきますお約束までして、そのかわり、向こうの中でこういうことをやらしてもらいたいと、実績がなくても話をつけたものもあるわけでございます。それは要するに、十二海里という線がまあ名目的にあって、その付近に両国の漁船が入り会って操業しておれば、何らかの話をつけなければいかぬということに尽きるわけでございますので、その辺はきわめて弾力的にやっておるわけでございます。  それからまた、後進国、開発途上国との関係におきましては、これをただ実績だけを云々しておるのではなくて、それと漁業協力の問題と結びつけたり、あるいは実績のある部分は削っても先方の合意を得るといった努力までしまして、現実的な安全操業の秩序を保っていこうということをしておりますので、そう画一的にやっているわけではないわけでございます。  それから、最後の、いろいろこういう問題について検討いたさなければならぬ事態ではないかとおっしゃる問題につきましては、私どもは常々、ジュネーブ会議以来、各国推移を考え、これもただ漁業だけの推移ではございませんで、その後、先ほどちょっと申し上げましたような、特に最近になりまして急速に起こっております海洋全般開発問題が非常に私ども関連がございますので、それとの関連も考えながら実は対処しておるわけでございますので、さような意味におきましては、すでにもうジュネーブ会議以来、鋭意実際の行政におきましては、さような国際慣行をつくる方向で動いているし、理論的にもさような問題を検討しているというふうに、むしろお考えいただいたほうが実際に近いと思うわけでございます。ただ、時期的に申しますと、おそらく漁業だけで何らかの世界会議が開かれるということは、私はちょっと、これはなかなかむずかしいと思いますけれども、おそらく、そういう問題、漁業問題がさような形でありましても、なおかつ、海洋開発という意味におきましては、少なくともことしの後半におきましては、これは国連のきわめて重要な議題として取り上げざるを得ない段取りにすでに進行しておりますので、その問題の一環におきまして、漁業におきましてかような秩序の乱れが、はたして適当であるかという反省は、必ず各国間に起こると思うわけでございますので、それに対しましてどういう態度で臨むかという問題は、相当突っ込んだ検討が要るだろうと思うのです。ただ、その場合におきましても、海洋一般の問題が出ますと、当然水産関連してまいりますが、海洋問題の一番主体でございます鉱物資源関係と魚の関係というものは、やはり相当実情が違うのではないかというふうに思うわけでございます。どうも、その辺がまぜこぜになった議論が――たとえばFAOあたりのこの前の総会で出ました議論は、若干その辺を混同しているように思いますし、また、御指摘の低開発国漁業の問題、食糧問題の解決というものからは、若干ほど遠い、先進国間の現にやっております資源保護の規制の系統の考え方が主体になっているように思うわけでございます。この点はおかしいのではないかという御指摘は、私どもはFAOの席でもしたわけでございます。さような問題につきましては、私どもも幅広く検討いたしまして対処してまいりたいと考えておるわけでございます。
  22. 森中守義

    森中守義君 いま、私があとでお尋ねしようと思ったことを先にお話がありましたが、せんだってジョンソンが教書を送って、五百万ドルを海底資源開発のために使う、そのために日本の絶大な協力が必要だということで、すでにもう日本政府に意向を伝えてきたようですが、いまのお話を聞いておりますと、そのことがある程度受け入れ態勢として具体化している、こういうふうに理解すべきものですか。
  23. 久宗高

    政府委員久宗高君) 御承知のとおり、海洋開発の問題は、だいぶ前からいろいろな動きがあるわけでございまして、いま御質問のございましたのは、先般、三月でございましたか、海洋開発年ということで大統領の教書が出まして、それに伴って、各国に、こういうことでやろうと思うがどうかといった御連絡が来ておるわけであります。わがほうの受け入れ態勢という問題でございますが、これは、御承知のとおり、幾つかの系統の問題がございまして、これはよく御存じと思いますけれども、例の国連におきます経済社会理事会で最初取り上げられまして、それが国連の決議になりまして、海洋開発の問題は、ことしの秋の総会に報告書が出されるという問題が一つございます。それから、昨年の暮れの総会におきましてマルタ提案というものが出まして、これは主として大陸だな以遠の水域におきます平和利用の問題、そういう形で問題が出ているわけであります。それと前後いたしまして、米国におきましては、七〇年代におきましては世界的なみんなの努力で海洋開発しようじゃないかという動きがございまして、これの呼びかけがあったわけでございます。したがいまして、わがほうにおきましてもこれの御連絡があったわけでございますが、水産関係におきましては、前々からこの動きにずっと注意してまいったわけでございますけれども、先ほども申しましたように、これは水産だけに限られませんで、おそらく発想の経緯から申しますと、鉱物資源の問題が私はむしろ非常に主体ではないだろうかとさえ思えるわけであります。そういうような意味におきまして、どうせそれが参りますれば、政府部内におきましてしかるべき所管官庁が中心になりまして連絡をとることになると思うのでありますが、今日までも一応とってきてはおりますけれども、必ずしも十分な御連絡ではないという心配はいたしております。水産関係といたしましては、これが非常に大きな動きになると思いますし、また、それに伴いまして、さっき申しましたように、水産海洋開発の他の行き方と若干違った面がございます。この辺につきましては、十分政府部内で意見の調整ができますよう、私のほうとしては相当の準備をいたしております。
  24. 森中守義

    森中守義君 長官、そのいまのことは、財界あたりではかなり注目をして、アメリカのほうに代表を送ろうという意見も出ているわけですね。そこで、いま私どもがかなり用心をして考えなくちゃならないのは、なるほど宇宙開発についても国連が決議をしているし、しかし、現実には、例のインテルサットの問題等がだんだん発展してきまして、宇宙天体というものは元来人類共有の財産だといいながら、分割の方式を取り始めておりますよ。そうなりますと、それと同じような論法を用いて、海中の開発についても結果的にはそういう方向をたどるのではないか。だから私は、なるほどわが国大陸だなには加盟していない、いまにわかにそれをやろうという意思もない、こういうことのようですが、一体大陸だなに所属する限界でとどまるか、それよりもずっと下に降りていくか、その辺の問題もありますが、やはり、さっきから申し上げたように、国際的に、領海専管水域、これがだんだん広がっていくということは、海面の分割ということに通ずると思う。そういう傾向をたどっているわけですね。もっとおそらく広がっていくのじゃないか。  そこで、そういう海面においても分割の方式が採用される、画一的な採用じゃなくても、事実上そういう分割の方式をとっているわけです。そうなりますと、これから先、最も有望であり有力であり、しかも効果的に開発をされていくべき海底、海中の問題を、宇宙と同じように、幾ら国連がきめても、結果的に分割の方式をとるということが心配されるわけですね。私は、どういう方法で技術的な開発をやるのか、アメリカの技術援助を求めるかということの議論の前に、ここでやはり、分割をされるもんじゃない、少なくとも国連憲章を踏まえた一つ基本政策というものがっくられてもいいんじゃないかと、こう思うんです。これはこれから先の大きな課題ですから、私もまあ要望として聞いておいていただいてけっこうですがね。しかし、具体的な事実問題にはここでなりますよ。  それから最後に一つお尋ねしておきたいと思いますことは、しばしば申し上げるように、すでに三海里ということは、もうわが国は一回意思表示をしたことがあるわけですね。だから、先ほど来のお話からいけば、やはり三海里以上広げるという意思はないようですけれども、私はやっぱり、当面の課題として、もちろん領海というものを水産という面からばかりはとらえておりません。今日では、やはり国の防衛という、しかも具体的な防衛問題等にも関係がありますから、そういう観点からもとらえておかないと、なかなか問.題か処理されない。しかも、ひとり古典的なものをいつまでも守っているというのじゃ私はどうかと思うのです。だから、三海里にとどめておくならば、専管水域を六つけるなり、あるいは九つけるということが一度は検討されてもいいんじゃないか。こう思うのですよ。これはまあ、大臣、非常に重要な政策上の問題ですから、大臣にお尋ねしたかったのですが、あとの人、が見えましたから、もう時間がありませんから言えませんけれども、そのことが一つ。  それからいま一つは、その三海里というけれども、これは、わが国国際法を受けているというだけであって、国内的な根拠がないんですね、いっか申し上げたかわかりませんが、明治三年の太政官布告、木の札でやったのですね。そういうものが文献に出ている。しかも、それは普仏戦争の中立宣言であって、領海を規定したものではないという解釈が正しいようです。私もそうだと思う。そうなると、三海里、三海里と、こう言うけれども、根拠になるべき国内法というものはない。ただ国際法がそういうふうに規定しているから、それに踏まえを持っているというだけのことなんですね。ですから、三海里以下、あるいは専管水域をどうするかという検討を、この際やはり一応国内的な法律事項をきちんとするなり、あるいは国際的に宣言をするということをやっておかないと、さきざき困るような事態が予想されるんじゃないですか。要するに、根拠をわが国が持っていないということは非常に困ると思うのです。これはひとつ早急に検討すべきじゃありませんか。いま外務省領海及び公海条約を出している機会でもありますからね。むしろ、水産庁としても、その一端の責任をお持ちなんだから、宣言方式でいくのか、国内法できめるのか、少なくとも三海里に対する国内的な根拠を求めてくださいよ。まあ、それだけ私は最後にお尋ねして質問を終わりたいと思います。
  25. 久宗高

    政府委員久宗高君) 最初に御指摘のございました海洋関係の問題の発展が海面の分割になるおそれはないかというお話でございますが、そのおそれは十分ございますので、私どもとしては、それに対処する一連の問題の考え方をしているわけでございます。特に先ほど申し上げましたように、海洋開発お話が、最初は主として大陸だな以遠の問題、しかも魚族を除きましての問題の提起から始まりまして、現在ではそれを含んでおりますので、それが同じような方式でまいりました場合には、相当問題があるわけでございます。おそらく、漁業以外の問題であれば、何らかの意味で分割の問題になってくるでありましょうし、そういうことが適当でないという判断のもとに、それを国連において取り上げて、何らかそういう形の分割にならないような正しい処理法がないかということを、いろいろな面から探求しているのが現在の段階であろうと思います。その問題と関連いたしましても、漁業といたしましては、いまの専管水域その他の動きから考えますと、そのままそれが非常に広範囲な海面の分割になるおそれがございますので、そういうものが適当でないという立場をむしろ私どもは貫いて今日まできているわけでございます。  それから領海云々の問題でございますが、これは、御承知のとおりな経過でなっておるわけでございまして、私どもといたしましても、これは単に水産の問題と関連いたしまして領海三海里を墨守しているのではなくて、他の条件が整えば必ずしも三海里にこだわる必要はない。また同時に、これは水産だけで考える問題ではもちろんないわけでございます。さような意味におきまして、幅の広い検討をいたしたいと考えておる次第でございます。
  26. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 時間がありませんから、予定をしておりました質問課題をしぼりまして、出かせぎ問題を中心に質問してまいりたいと考えます。  その前に、一つは、世界食糧の需給基調というものが漸次変わってきておると思うのでありますが、これの見通し、この点についてひとつ農林大臣の見解を伺いたい。
  27. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 食糧のうち、特に米麦を中心にした自給体制、要点だけ申し上げます。  米麦の自給の現状につきまして、四十年までは、異常気象の影響もありまして、自給は引き締まり気味、四十一年には、生産の回復によって、米の自給率は九五%になっております。特に昨年は御存じのとおり異例の大豊作でございましたので、自給は緩和の方向にございます。それから麦につきましては、飼料用の麦類、食糧の小麦の需要の伸びが見られます。生産のほうは、労働力の減少、それから麦作労働報酬が総体的に低い、こういうようないろいろな事情によりまして、減退を来たしておりまして、麦の自給率は、昭和四十一年には、小麦二〇%、それから大麦、裸麦六五%であります。  それから今後の見通し、米麦の今後の見通しは、いろいろな前提がありまして、簡単に推測することは困難でありますけれども、一応次のように考えております。米につきまして、需要の面では、一人当たりわずかばかりは減少するという考えでおります。しかし、人口増加と、他面、加工需要増加が見込まれますから、全体としてはおおむね横ばい程度を当分は続けていく。それから生産のほうは、いろいろ土地の改良長期計画に即して、生産基盤整備、土壌の改良、いろいろ総合的に生産対策をやっておりますから、引き続いて生産の伸長が見込まれる。昨年のような異例の豊作がなくても、近い将来において、必要量を国内生産で充足できると、こういう方向に向かうものと考えております。  麦でございます。麦の将来でございますが、飼料用麦、食用小麦を中心に、需要は全体として増加してくるものと考えられますが、生産がこれに対しまして近年減退の傾向が続くものと思われますので、相当の不足が生ずる、結局、まあこれは輸入して補っていくということになるわけでありまして、もちろん、麦の生産体制に対しましては、表作、裏作を通じましていろいろな指導を加えまして、生産性向上、主産地の育成をはかってまいりたい、こういう考えでございます。
  28. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 大体、この穀物の過剰在庫は、一九六一年で一億四千二百万トン、こういうふうに私の調査で見るとなっているわけでありますが、世界穀物生産量の二三%に該当しております。さらに、この穀物貿易量の二倍を上回る、こういう現状だと思いますが、一九六六年、すなわち四十一年、五年後になった今日、七千四百六十万トンまで半減をいたしております。穀物生産量の約一〇%であります。貿易量の七〇%に下落をしている。こういう状態が、かつての食糧不足とはちょっと趣を異にいたしまして、いわゆる人口増大、それから生産拡大可能性、こういう問題との関連の中においてこういう現象が来たしておるんではないかというふうに考えるわけでありまして、そういう意味合いにおきましては、日本の今後の食糧自給体制というものについて、さらには生産拡大、こういう問題についても相当影響してくるんではないか。ことに、東南アジア諸地域におきましては、世界人口三十三億の中の約六割といわれておりまするから、そういうところでは栄養失調事態まで発生をする要因があるわけであります。ことに、インド等におきましては米暴動まで発生をしている。こういう状態になっているわけであります。こういう問題について、今後の日本国内におけるところの農政の需給調整の原則は一体どういうことで対策を講じていったらいいのか、その辺の問題について、一度ひとつ説明を願います。
  29. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 国際的な、あるいは世界的な食糧事情について、ごく簡単に御説明いたしたいと思います。  御指摘のように、相当膨大になった在庫が近年減ってまいりましたことは事実でございます。これは、ソ連あるいは中国、中共の食糧生産力が一時非常に落ちましたことと、インドに相当大規模な凶作がございましたことと、それからアメリカ合衆国における生産制限が相当徹底いたしましたこと等によるものでございまして、私は、ここ十年、二十年、いろいろFAOあるいはOECDその他で食糧長期見通し的なことをやっておりますけれども先進国においては、ともすれば過剰になるような生産力の伸びがあること、後進国におきましては、生産が逆に伸び悩み、人口がふえておりまして、よほどドラスティックな食糧増産政策、人口抑制政策を行なわない限り、食糧不足基調が続くと思うのです。しかし、全体としては、ここ十年の見通しとして、食糧が窮屈になる、あるいは不足するという状態になることはないように思います。後進国にとって、外貨支払いの面で非常にたいへんな問題があるわけでございますから、東南アジアその他の後進国における食糧増産の問題は非常に緊急な事柄であると思いますけれども日本を取り巻く条件としては、食糧の自給率の維持向上は望ましいことでございますけれども食糧の輸入を日本がしようとする場合に、非常にそれが困難になるという事態は、私はここ当分の間ないというふうに判断してよかろうと思います。
  30. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 そこで、今後の日本農業の自給体制というものは、どこに中心を置いて一体進めようとしておられるのか、その点について大臣から。
  31. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 日本農業生産の方向、したがって、日本食糧の自給の考え方をどういうふうに持つかというのは、一つは、御指摘にもありましたように、国際的な、世界的な食糧需給の動向見通しというものに立つ必要があるだろう。それと、国内的には、日本の限られた国土資源の有効利用という観点から、どういうふうに考えるかという問題、また、日本農業の持っております条件といいますか、特色というものの判断の上に立って考える必要があるだろうというふうに思うのでございますが、まず、世界食糧事情見通しの点から申しますと、いま概要を経済局長からお答えをしたわけでございますが、FAO事務局の作成しました、約十年後、昭和五十年前後の食糧需給の見通しによれば、小麦、砂糖等については、これはむしろまだ過剰といいますか、余裕のある状態であろう、特に粗粒穀物、それから牛乳、乳製品、あるいは肉類等については不足の状態が予想されるというふうに見通しているのでございまして、これは私どももやはり頭に入れる必要があるだろう、そういうことから言いまして、いわゆる日本農業の作目の中でも、どういうものを、戦略的な、といいますか、方向としてつかまえていくかということに相なるわけですが、日本農業の特色から言いまして、やはり東南アジア、 モンスーン地帯の農業として、水稲を中心とする生産というものが非常に重要な問題である、そういう意味で、おおむね米については国内生産で、特殊な工業原材料等のものを別にいたしまして、食糧用の米はほぼ完全自給を目標にするという線を貫くべきであろう、それから、もちろん、果樹蔬菜等のような食料品としての輸入等に依存することの困難な性質のものについて、これはできる限り少なくとも現在の自給率というものを維持する、一〇〇%に近い自給率を維持していくという方向をとるべきであろう、残る問題は牛肉、卵の問題でありますが、卵等の問題については、これは粗粒穀物との関係は出ますが、製品としての、最終生産物としての卵については完全自給は可能である、肉、乳については現在やや自給率が低下の傾向にあるわけでございますが、これをやはり重点的な方向として農業政策のほうで自給率を高めていくという方向に持っていくべきであろうというふうに、大まかに言いますと、そういうふうな、国内の事情、対外事情等を勘案いたしまして、重点的な戦略目標を定めていくべき必要があるだろうというふうに考えておるのであります。
  32. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 とにかく、最近、農民の皆さんは、農林省の施策に対してえらい不信を持っていると思いますね。かつて繭がいいからといって養蚕を奨励したら、それが暴落をして、桑を全部抜かなければならなくなった。最近では、また、ビートがいいというので、青森あたりはフジ製糖がやったけれども、それは倒産した。そういうぐあいに、あるいは養鶏がいいといえば、これもまた大暴落、至るところ、農林省が奨励したとたんに不況がやってくる。そういう状態を何回となく繰り返している。ですから、そういうことのないように、やはり農林省といたしましても、国民の前に責任をもって行政措置をやるわけでありますから、そういう問題については真剣に今後見通しを誤らないように私はやっていただきたいと思うのです。  きょうは、この問題に本題でありませんから、次に移りますが、米価審議会問題についてですけれども、現在、いろいろわれわれ話を聞くのでありますが、この問題については、ことに構成等について、従来倉石農林大臣が任命をいたしました構成では、私たちはこれは全面反対であります。与党内にもいろいろ問題があるようであります。そういうことを通じて、今後、これらの問題についても、大臣と衆参の農林水産委員会、こういうところを中心にして話し合いをし、決定をしていく、こういう話を聞いておるのでありますが、その辺の見通し、決定等について、ひとつ大臣の所見を伺いたい。
  33. 西村直己

    国務大臣西村直己君) この問題につきましては、しばしば当委員会あるいは予算委員会、また衆議院等でも出た問題ではございますが、大事な問題でございます。そこで、農林省設置法に基づきまして、米価審議会というものが主要食糧の価格の基本を決定する、こういう一つ審議機関である機能を果たさねばならぬ。そこで、構成が実はたいへん論議の対象になりまして、すでに発令された方々もあるわけであります。ただ、国会審議の過程におきまして、各党間で協議をするという申し合わせができましたものですから、私のほうとしましては、各党間の協議の結果を尊重して、これを見届けて運用してまいりたい、あるいは構成をさらに考えてまいりたい、こういうのが現在の心境でございます。
  34. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 時期的にはいつごろまでにおきめになる考えですか。
  35. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 私のほうといたしましては、できるだけ早い機会に各党間の話し合いが煮詰まることを期待いたしておるわけでございます。
  36. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 大臣として、ことさら腹案というものはお持ちないですか。
  37. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 実は、これは私個人の意見は別にいたしまして、いずれにいたしましても、これ自体が米価そのものではございません。一つの手続上の問題ではございます。しかし、大事な問題であり、それだけに、いわゆる政治問題的に扱われて、各党間のお話し合いということになっておりますものですから、私としては、いまのところ、各党間のお話し合いがどうなるかというところを見届けた上で、農林大臣としての意見の最終決定をしたい、こういう考えであります。
  38. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 確かに、昨年と一昨年は答申不能ということで、直接的には米価決定段階まで至らなかったわけでありますが、しかし、いずれにいたしましても、この米価審議会というものは重要な役割りを持っていると思うのです。しいてこの結果を見れば、結局米価決定の足がかりになってくることは間違いないのでありまして、今後、やはり米価審議会の構成をめぐりまして、その行く先は、一体どこで米価を決定をしていくか、この問題に必ず到達する。そういうことになりますと、いま考えられますのは、一つ国会であります。一つは米価審議会であります。一つは与党、自民党ということになります。一つは政府であります。こういうことでいろいろ考えられるわけでありますが、どういう方向で今後米価というものを、どの機関できめていったら一番いいと大臣は考えておられますか。
  39. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 現在の法律のたてまえから申しまして、私どもとしては、最終的には、価格の決定は、現在の法制の中では、米価に関する決定は政府の責任になっておりまして、政府がこれを決定する、ただ決定の過程におきまして、審議会というものの議を経まして、ただし、審議会そのものが価格を決定するではなくて、主要食糧の価格の基本を調査審議する、こういう権限のもとに手続を経てやっていく、こういうふうな考え方を持っております。
  40. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 そうすると、大臣のおっしゃられたいまの決定方法が最良と思いますか。
  41. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 一部、国会でやれという御議論は、もちろん聞いてはおりますが、私としては、いまの現行法のたてまえでいくのが最も妥当であろうという考え方を持っておるわけであります。
  42. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 直接売り手である生産者であるとか、あるいは直接影響を受ける買い主ですね、消費者、こういうものの意見というものは、どういうことで集約をして聞いていくか、そういう手段なり方法、こういうものはどういうふうに考えておられますか。
  43. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 実は、従来とも、生産者、消費者というものは米審の構成の中に入られまして、米審そのもので、生産者、消費者の代表の方々が価格そのものを最近は決定しておった経緯はございませんで、方式であるとか、そういうものにつきまして決定に御参加願っておったと思います。もちろん、それは政府が価格の最終決定するに対する大きな影響を与えておったことは事実だと思います。今回の経緯は、御存じのとおり、生産者、消費者を抜いた形で発令になりまして、それが国会におきまして各方面の御意見も出まして、いわゆる政治的な取り扱いで各党間の御協議になっております。そこで、私としては、米審委員の構成については、ひとつ各党間の協議が一日も早く出ることを待って処理をしたい。私としては、どういうような形の米審構成ができましても、生産者、消費者というものの意見が、政府のする価格決定に反映をすべきこと、また反映するような努力をわれわれがすべきだということは、これは当然のことだ、こう考えております。
  44. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 じゃ、本題の出かせぎ問題について質問してまいりたいと思うのですが、農村の出かせぎ問題が出てきたその根本原因は一体何だと思いますか、大臣
  45. 西村直己

    国務大臣西村直己君) ちょっと農政局長から……。
  46. 森本修

    政府委員(森本修君) 農村から特に出かせぎが多く出ておりますのは、御案内のように、東北、北陸といったような単作地帯が、ほぼ全体の出かせぎ者に対しまして七〇%くらい、たしか占めておったと思います。そういう関係で、出かせぎが出てまいります一つの要因は、やはり農業の持つ労働の季節性といいますか、そういう点が非常に多いのではなかろうかというふうに思います。それからまた、最近の推移としましては、御案内のように、農業の労働面におきましても、かなり省力化が進んできております。そういった面が農業側の一つの要因ではなかろうかと思います。それから、労働の雇用側の要因としましては、御案内のように、地元に必ずしも工場とかそういった雇用機会がないというふうな地帯が、先ほど申し上げましたような東北なり北陸なりというところに多いことから見ましても、そういった他産業における雇用の条件ということが一つの要因になっておると思います。そういう点が相結び合いまして、出かせぎの現状が出てきておるというふうに思っておるわけであります。
  47. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 機械化の問題であるとか、協業化の問題であるとか、いろいろそういうことは言われるでしょうが、根本的には、農業所得だけでは暮らせない、こういうところにこの出かせぎが出てくる根本要因というものがあるのじゃないですか。どうですか。
  48. 森本修

    政府委員(森本修君) もちろん、出かせぎに出られますところの農家方々は、ある意味では農業所得に対する補充といいますか、家計費も上昇を続けてきておる、そういった関係から、いま言いましたような農閑期なり、あるいは手間のすいた時期に出ていきまして、家計補充的な所得を得るというふうなことが、出かせぎに出られますところの個人の一つの、何といいますか、動機であろうと思います。
  49. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 それじゃ、いまの農村の耕作、面積の平均はどのくらいになっていますか。それから、所得平均はどのくらいか、そういったところの内容について説明を願います。
  50. 森本修

    政府委員(森本修君) 農家所得の平均は、四十一年度では八十六万一千円というのが平均でございまして、それから耕地面積は、平均いたしまして一・〇五ヘクタールということになっております。
  51. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 それじゃ現在、農家の現金化率は、三十六年以降どういうふうになっていますか。そのうち食費部分に、割合としてどのくらい食い込んでいますか、この内容についてひとつ三十六年から。
  52. 小沼勇

    説明員(小沼勇君) 四十一年の可処分所得は八十七万六千円でございますが、その中の家族家計費が七十二万六千円でございまして、家計費勘定の中で現金が五十七万七千三百円というふうになっております。
  53. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 食費部分の割合は……。
  54. 小沼勇

    説明員(小沼勇君) エンゲル係数は三四・八%ということになっております。
  55. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 それは四十一年度だけですね。
  56. 小沼勇

    説明員(小沼勇君) 四十一年度だけでございます。
  57. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 そうしますと、いまの厚生省発表でいって、四・八人家族構成、こういうことになって、八十六万一千円の四十年の所得と、こういうことになりますが、少なくとも現行の免税点は八十四万です、ことしは。すると四十三年度の見通しがどのくらいになるか、これはまだわからぬでしょうけれども、いずれにしても免税点すれすれの収入だということになるんですね。これは一体農家の経営が、政府は所得向上したと、こういうことを言うんですけれども、実際問題としては、これ以下の者が相当数やはり私はいると思うんですよ。総体的に言って低いほうが私は多いんじゃないか、こういうふうに考えるんですが、その辺はどうですか。
  58. 小沼勇

    説明員(小沼勇君) 今回の年次報告でも報告を出しておりますが、勤労者世帯に対する農家の家計費の割合でいきますと、大体、全国の勤労者世帯を一〇〇といたしますと、一人当たりでございますが、八四・四%ということでございまして、人口五万人未満の市町村になりますと大体九六・九%ということで、ほぼ勤労者と均衡する状態に家計費ではなっておるわけでございます。また、それに対応する所得を、農業所得と農外所得によって得ておるという状況でございます。
  59. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 結局、この五十万以上そういう都市との比較ではやはり一五・六ぐらいの格差があるということなんですね。ですから決して私は恵まれた状況ではないと思う。ことに、この都市労働者の平均賃金におきましても現在のこの物価、その他の値上がりによって消費生活というものは相当圧迫をされつつあるわけですが、そういう低率のものとの比較対象においてすらこうなんですから、だから決して私は農村のこの所得がいいとか、生活がいいということはないと思う。ことに最近、特徴的に見られるのは、農村のいわば商業化傾向ですね、やはり何といっても現金を得なければいまの消費水準、生活様式についていけない、こういう状態が一ぱいあるわけですから、そういう意味合いで非常に矛盾をする。結局は、食えないというところから今日の出かせぎ状況というものが私は発生しているのだろうと思う。ですから、そういう問題について、基本的には私は出かせぎをなくしていくという対策は、農業経営一本でやはり生活ができるという、こういうしっかりした農政というものを政府が責任を持ってやっていかない限り、こういう状態は今後ますます増大をしていくのじゃないか、こういう見通しについてはどうですか。
  60. 森本修

    政府委員(森本修君) 最近の出かせぎの農家の数の推移を見てまいりますと、昭和三十九年ぐらいまでは、実はこれは統計がいろいろございまして、必ずしも正確に把握はしにくいのですけれども、私どものやっておりますところの農業就業動向調査という統計によりまして調べた結果でありますが、三十九年ぐらいまでは出かせぎの数は漸次ふえてきております。三十八年、三十九年はほぼ同じです。それ以降は若干ずつ統計の示すところでは下がってきておる。下がって横ばいといいますか、そういった状況になってきておるわけです。まあ将来の見通しはどうかということでございますが、先ほど申し上げましたような二つの要素がかみ合って、出かせぎ者の数の推移といったようなものも出てくると思います。私どもとしてはここ一、二年あるいは二、三年はほぼ四十一年ないし四十年くらいの出かせぎ者の数で推移するのではないかというふうな見通しを持っております。
  61. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 農林省は出かせぎに対する定義を、どういうふうに考えられておりますか、そのことによってだいぶ統計が違うと思う。
  62. 森本修

    政府委員(森本修君) 先ほど御紹介を申し上げました統計では、一ヵ月以上、六ヵ月未満の予定で家を離れて他に就業することを出かせぎというふうに定義をいたしました。それによって調査をいたしました結果の数字でございます。
  63. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 ですから、その数字には非常にまやかしが私はあると思う。少なくとも西日本あたりはほとんど通年出かせぎというのが非常に多いのです。ですから、そういうものは七ヵ月以上になると出かせぎの対象に入らないというのが農林省の態度なんですね。この辺は私は根本的に違ってくるのじゃないか、確かに東北の単作地帯は六ヵ月くらい働いて、あとは田植えあるいは稲作作業で、どうしてもやらなければなりませんから、どうしても帰ることになりますが、結局西日本あたりはほとんどが一年間通じてこの出かせぎをやっておる、そういうケースが一ぱいあるのです。ですから農林省がいっているいまの統計の内郭というものは、私は相当実数より下回っているのではないか、その統計をとった土台は、これはおそらく職安を通じたものだけを基底にしているのではないかと思うのですが、それはどういう調査の内容ですか。
  64. 森本修

    政府委員(森本修君) これは農林省の調査機構、つまり統計調査部の末端を通じまして調べたのでございます。その結果であります、必ずしも職安等から聞いてきたというだけではないのではないかというふうに思います。
  65. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 では、どういう調査方法ですか。
  66. 小沼勇

    説明員(小沼勇君) 就業動向調査と申しますのは、全国の約二千四百の農業集落でございますが、それで全農家数の五十分の一、十二万戸につきまして毎年一月一日に年間の異同を見るというやり方をしておるわけでございます。
  67. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 その問題は、あとで触れますが、具体的に数はどのくらいになっておりますか、三十六年度以降。
  68. 森本修

    政府委員(森本修君) 先ほど申し上げました調査の結果では、年次別に申し上げますと、三十六年が十九万人、三十七年が二十万六千人、三十八年度が二十九万八千人、三十九年が二十八万七千人、四十年が二十三万人、四十一年が二十三万五千人ということになっております。
  69. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 これは、全国農協の婦人部で組織的に戸別調査の結果、当たった数字でありますが、四十一年で二十五万人おるという統計になっておるのです。そのほか通年出かせぎ労働者というものが含まれておりません。それを加えると、おそらく倍くらいの数字には優になっているんじゃないか、こういうこともいわれておる。戸数にいたしますと、百万戸、こういう調査結果が出ておるのですが、これはどうですか。
  70. 森本修

    政府委員(森本修君) 先ほど冒頭にお断わりをいたしましたように、出かせぎというのはいろいろなつかまえ方がございまして、私どもで申し上げましたのは、先ほどのような調査の約束と調査の方法によって調べたものであります。御指摘がございましたように、この定義では一ヵ月から六ヵ月ということになっておりますから、それ以上長い期間出かせぎをするという者は抜けておるたてまえになっております。したがいまして、その抜けておる部分がどれだけあるかということにつきましては、必ずしも的確なものはございません。ただ、先ほどは出かせぎ農家の数の動向といいますか、推移ということで年次別に毎年とっておりますのが、こういう調査しかないものですから、そういうふうに申し上げたのですが、別途農業センサスというのがございます。これは五年おきにしかやっておりませんので、それほど短期的な動向がわからないということで省略をいたしたのでありますが、最近の農業センサスをやりましたのが四十年であります。その四十年の農業センサスによる出かせぎの数というのが五十五万人、四十年でありますが、そういうことになっております。ただし、これは単年度の数字でありますから、こういった性質の数値が例年どういうふうに変化をしておるかというのが、実はちょっとつかまえようがないというのが役所の統計の状況でご、ざいます。
  71. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 結局つかまえようがないというのが、政府に対策がないということに私は通じるんじゃないかと思うのです。それで具体的に聞いてまいりまするけれども、いま、るる数字を述べてもらったのでありますが、どうしても、やはり池田総理の高度成長政策や所得倍増政策、同時に農業基本法がそのときに制定をされた、こういうものを含めて倍増政策というものをうたったのでありますが、結果的には、この農業基本法、農業改良関係法は農民追い出しという政策、それらの人口をすべて都市中心あるいは重工業地帯、そういうところに全部吸収していく。いわば政府の一貫した雇用政策がその中にひそんでおったのだ。いわゆる農業労働人口というものをその方面に回して、言ってみれば、これはわれわれの考えでいいますと、明らかに農民の殺し屋じゃなかったかという気がするのですね。現状はどうだ、現に今年度は二〇%を割っているでしょう、農業人口は。こういう政策は非常に農民のためになっておったかどうかということになると、私は、反対な、逆な方向にいっている、こういうふうに考えるのですが、政策上の問題として大臣はどういうふうにその辺を判断しておられますか。
  72. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 私、高度成長段階におきまして確かにそういったひずみ現象というものが出てきたということは事実だと思います。ただこれを現象として単にとらえるだけでなくて、一つ日本国際経済の中にあって、日本経済がどういう形で近代化していくか、それから国民生活全体をどういうふうに向上させていくか。こういう基本的な中からいわゆる成長政策というものをとらえていく。ただ、この成長政策のスピードが御存じのように想像以上に高度成長で、ある意味では少し早かったと、こういうところで急激にいろいろな現象が――ひずみとか、そういうものが起こったことは事実であります。そこで、できるだけそれを安定成長の形の中で、国民経済全体の、また個々の国民生活向上をはかってまいりたい。この経済施策の中において、日本農政あるいは日本農業、あるいは日本農家経営というものを考えていかなければならぬ。  そこで、今度はもう一つ大事なのは、どうしても、そうなってくるというと、現在、今日までずっと日本農業というものの特殊性――規模が零細であって、そこでたくさんの人口が低い、何と申しますか、所得でかたまっておるということ自体を、やはり打開していかなきゃならぬ面が、農家自体の中にも起こってまいります。それから、政府も全体の成長の中で、多少はそういう方向を打開していかなきゃならぬ。しかし、これをただ切り捨てていくというような考え方でなく、やっていかなきゃならない。おのずから、そこに労働力というものが就業人口というものが減ってまいる。そこで御存じのとおり、経済社会発展計画の中でも、昭和四十六年度でございますが、一五・六%の就業人口を予定しているわけでございます。現在が現実には二〇%をやや割ったところの数字になっておりますが、昭和四十六年度、これには一つのその方向というものを踏まえまして、その中において日本経済日本農業農政というものをこれから展開をしてまいる。そこで、しばしば申し上げますように、一方において中核的な自立経営――自前で農業でめしが食えるというのと同時に、兼業農家というものも十分生産基盤であると同時に、農業あるいは農外所得を合わせて、その所得向上してまいるようにしていく。それには兼業農家自体農業生産性向上等も協業助長等で十分考えていく。こういうふうな理解をしながら政策を進めてまいりたい。だから、一概に、ただ貧弱な農家はつぶして、都会へ追い出す、そうして、都会のほうでそれを労働力として待ってましたとばかり受け取ると、こういうふうな行き方は、われわれは考えてもいない。また、そういうような非人間的な考え方の政策は進めるべきではない、こういう考えでございます。
  73. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 それで具体的な問題について質問いたしたいと思うのですが、出かせぎ労務者の失業保険受給者の数は、どのくらい一体いまありましょうか。三十六年からでいいのですが、これは労働省ですか、農林省ですか。
  74. 森本修

    政府委員(森本修君) 御案内のように労働省所管をしておりますので、私のほうで年次別に調べたものはございません。また労働省のほうにも、失業保険を受けております人の中で農村からの出かせぎ者がどれだけかといったような形の、直接的な調査はございません。したがいまして、いろいろな統計を複合いたしまして推定をするというより方法がないわけであります。それによりますと、四十年でございますが、先ほどのようなことでありますから、短期的な、いわゆる季節的な受給者ということになろうかと思うのですが、それは五十八万が失業保険を受けております。そのうち、農家の世帯員に該当するものと推定されますのが約半分であろうというふうに見られております。したがって、金額にいたしましても、それぞれ直接的に集計したものがございませんので、全体の五十八万人の受給金額が三百億ということに四十年度なっておりますから、その半数といたしまして、農家の世帯員に該当する人に渡ったものは百五十億程度だろうというふうに推定をいたしておるわけであります。
  75. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 これは労働省の基準局長をいまお呼びしているのですが、農林省ではちょっと無理なところもあるかと思いますが、こまかい内容については労働省が来られてから、さらにまた質問してまいりたいと思います。  ただ、この失業保険の受給者への干渉問題ですね、非常に問題が現地としてはあるようであります。いま職安などの職員は、できるだけ受給者というものを減らしていこうと、これは労働省通達などが出されておると思いますが、きつく規制をしよう、こういうかっこうに実はなっておるのです。ですから、そういうところで、たとえば一つの例でありますが、秋田県の庄内あたりにおきまして、結局出かせぎから帰ってきて、やれやれこれから稲作の一つもやろうということになると、職業安定所で「ちょっときてくれ」、行きますと、「あんた、こういうところに就職の仕事があるのだが、働きませんか」と、「いや、いま帰ってきたばかりだから」と、そういうことになると、もうそこで就職の意思なし、こういう判定をされて、保険の受給対象者からはずされてしまう。こういう事例が数多くあるわけなんです。ですから、そういう問題については、やはり農林省は農民の保護、育成に当たるわけですから、十分ひとつそういうことのないように、私は労働省等ともいろいろ折衝をして、そしてこの対策というものを進めていく必要があるんじゃないか。そういう事例等について、何か労働省との間で農林省はいろいろ話し合ったとか、そういうことはありますか、どうですか。
  76. 森本修

    政府委員(森本修君) 具体的な事例は、私実は承知しておりませんが、失業保険で、短期的な失業保険の受給の状態というのは、最近の失業保険会計からいきましても相当急激に増加をしておるというふうな状況は御案内のとおりであります。その受給をいたしております実態は、法律制度の目的なりたてまえに必ずしも実態として合っていないといったようなものも、まざっておるというふうに労働省は見ておるようであります。そういう関係から、労働省としても、失業保険の手続なりあるいはその運用なりについて、適正化をしなければいかぬといったような気持ちが多少存存するであろうということは推定にかたくはないと思います。ただ、そうだからといいまして、正式にいいまして受給の資格があり、また権利のある人の失業保険を抑制するということは、これは申すまでもなく適切ではないわけでありますから、そういう点につきまして、農家から出かせぎをした人の失業保険金の受給について不当に支給が制約されるということのないように、私どもも従来から労働省とも話しておりますし、また、そういうことがございますれば、できるだけ労働省ともよく打ち合わせをしていきたいというふうに思っております。
  77. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 この問題とか、あるいは出かせぎ者の就業条件とか、雇用条件等については労働省が来てから質問したいと思いますので、少し先に急ぎますが、出かせぎ問題に対する具体的施策ですね、これを何か農林省としてはいまお持ちですか。当面、出かせぎに行っているそういう対象者を中心とした具体的施策ですね、何かお持ちですか。
  78. 森本修

    政府委員(森本修君) 所管外のことを申し上げてはなはだ恐縮でありますが、私どもとしましては農村から出かせぎ者が都会に出ている、そういう段階、それからまた、出かせぎ者が出て行きましたあと、御案内のように、主人と家族が離れ離れに生活をするというふうなことになるわけでありますから、農家の家庭なりあるいは営農について不都合が起こらないか、それをできるだけ防止するというふうな観点から、農林省としては出かせぎ問題に対して分担をして対策をする、そういう役割りになっておるわけであります。前者の、出て行きます際の話としましては、御案内のように、出かせぎ者が正常なルートをたどらないで出ていくということになりますと賃金が不払いになるとか、その他就労条件が必ずしもよくないといったようなことがあるわけでありますから、出かせぎの希望者がおります場合には、現地の農業委員会に相談員がおりまして、できるだけ出かせぎ者の希望をよく聞いて正式なルートで出かせぎをしていただくというふうな――農業労働力対策というふうに呼んでおりますが、その一環としてそういう対策をいたしておるわけであります。  それから、第二番目の家庭の問題あるいは出かせぎ期間中の農家の問題につきましては、特に婦人の方に非常に大きなウエートがかかってくるといったようなことでありますので、生活改善普及員等がよくその家庭についての相談に応ずる。また、生活教室といったようなものをやっておりまして、特にその項目の中に出かせぎ対策のための生活教室を全国数百ヵ所でやっておる。そこで出かせぎ期間中における農家の家庭問題、あるいはまた、農業についての諸準備等について遺憾のないように、よく指導しておるところでございます。
  79. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 私は、出かせぎ対策に対しての農林省の態度というものは全然関心がないんじゃないかというふうに考えるのですね。四十二年度の農業動向に関する年次報告、これは今次国会に提出されておるわけでありますが、この内容はいろいろ報告をされておるわけであります。その中に、こういった出かせぎに対して一体農林省は対策があるのかと、ずっと見てみたんですが、わずかに「農業経営動向」の中の農家労働力の移動問題で若干触れている程度ですね。半ページにも満たない。こういう状態で片づけられている。それからまた、農林省が出しました「昭和四十三年度において講じようとする農業施策」、こういう中におきましても、三十五ページにわずか半行です。これで片づけられておる。ですから、いろいろ大臣やあるいは局長が答弁をされまするけれども、農林省自体として、こういう出かせぎを出さないための諸施策というものを根本的に、本格的にやろうとしているのか、非常に私は疑問を持っているんですがね、どうですか、この辺。
  80. 森本修

    政府委員(森本修君) 出かせぎに対する直接的な施策といいますか、措置としましては、先ほど申し上げましたような主として二点であろうと思います。ただ、御指摘になりましたように、出かせぎが出てまいります要因はいろいろな要素から出てまいるわけでありまして、一つは、やはり農業経営近代化して、できるだけ生産性なりあるいは所得を上げていくということがまた一つの出「かせぎに対する根本的なかまえであるということは、いままで先生がおっしゃったことでうかがえるわけでありますが、そういうこととしましては、農林省もあらゆる施策をそういうことを目ざしてやっておるということが一面言えるわけでありまして、そういう意味合いにおいては生産基盤整備でありますとか、あるいは農業の生産あるいは構造に関する諸施策、出かせぎに対する一つの間接的なといいますか、ことばは悪いのですが、そういった対策に資しておるというふうに言えるかと考えます。
  81. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 結局、私は、いまの農村の考え方は、でき得れば年間を通じて農業一本で仕事をやりながら、その中で生活を確立をしていきたい、こういう希望が相当あると、あとで労働省が来ましたら具体的にいまの出かせぎ者の労働条件なんかを伺えばよくわかってくると思うのですが、ところが、東北のように積雪地帯ですと年間を通じてどうしても農業一本でできない、そういう立地条件もございます。しかし、ここに対して、一体農林省としては、具体的にそういう立地条件を克服しての年間を通じての農作というものはやれないものかどうか。最近は畜産拡大方式というものでやられる。そういうことで畜産を考えてみても、たとえば庄内一帯あるいは宮城県もそうでありますが、結局、抜本的な土地改良でもやらないと土地が水位よりも相当低くなっているわけですね。そういうところから牧草地なんというものはなかなかっくりにくい。だから、畜産をやろうとしてもなかなか畜産の経営までいかない、こういうことがあります。あるいは、あたたかい地方ですと温室でもっていろいろとやれるのですけれども、そういうことになると、東北のほうは人一倍金がかかってくるという状況、そういうことから資金不足でとてもできない。ですから、こういうことで、年間を通じて農作で経営ができるような、そういうものをやはり農林省としては抜本的に樹立をしていく必要があるのじゃないか、こういうふうに考えるのですけれども、そういう部面に対する考え方はどうですか。
  82. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 単作地帯の農業経営改善方法の一つとして冬期間の農業の経営対象をどういうふうに生み出していくかということは、出かせぎ問題にも関連し、また一般に純農業地帯における経営のあり方としても問題であろうと思うのでございます。そういう意味で、御指摘のありましたように、私どもとしても東北の裏日本等におきます畜産の振興という問題が、やはり水田単作との組み合わせの上で非常に重要な方向であるというふうに考えて、いろいろ施策もやっておるのでございますが、これにつきましては、お話にもありましたように、土地基盤整備ということで飼料生産の基礎を固めていくということがどうしても必要である。と同時に、今後の稲作の場合における稲わらの利用というような問題も方向が変かってくるかと思いますので、稲わらの飼料化という問題も現在研究を進めておるのでございます。一朝一夕になかなかそういうわけにもまいりかねると思いますが、私どもとしては、この終年農業に従事する形としては、やはり水田プラスアルファ、そのアルファは主として畜産、特に肉牛、乳牛の生産という方向でこの問題の打開につとめてまいりたいというふうに考えておるのでございます。
  83. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 それじゃ、前に戻りまして、労働省の業務指導課長にちょっと出かせぎ問題についてお尋ねをしてまいりたいと思うのですが、出かせぎ労務者の失業保険受給者ですね。これは一体三十六年以降どのくらいありますか。さっき農林省に聞きましたら四十年は総体で五十八万人、三百億の農家の出かせぎ者関係はその半数で百五十億、こういう説明ですが、ちょっとその内容について説明してください。
  84. 保科真一

    説明員(保科真一君) 私、実は業務指導課関係の事項を持っておりまして、出かせぎ労働者の問題につきましては安定所をたどって、就労経路の正常化とかそういう問題をやっております。失業保険は所管が別でございますので、はっきりした数字をただいま持っておりませんが、失業保険臨時調査によりますと、季節的に雇用されて失業保険金を受給するもの、四十一年の調査でございますが、五十八万一千人となっております。
  85. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 それで、いま現地では失業保険受給者をもっと縮めていこう、縮小していこう、こういう考えから、出かせぎに行って六ヵ月で帰ってきた、すぐ職安に呼び、それで「ここに就職先があるからどうだ、働かないか」、こういうことを言うのですね。「いや、いま帰ってきたばかりだから、どうもうまくない」と言うと、これが就職の意思なしということで、失業保険等の受給対象からはずしていく、こういうことが各所でやられているのですが、こういう現状については聞いておりますか、また、対策はどういうふうに……。
  86. 保科真一

    説明員(保科真一君) 失業保険の受給者につきましては、失業保険の趣旨からいいまして、できるだけ就職して働いていただく。なお、安定所で紹介いたしましても就職先がない場合に失業保険金というものを支給する、これが失業保険法の趣旨でございます。かような趣旨に基づきまして、私どものほうといたしましてはできるだけ就職していただくということで、年間を通じて働いていただけるように紹介をしております。その紹介に当たりまして御本人の適性と能力に応じた紹介をするということを基本のたてまえにいたしまして、紹介をしておるわけでございます。
  87. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 どうしても、年間通じて働けないという条件があるわけです、田植えとかそういう場合に抜けるわけですから。その期間はどうしてもほとんど失業保険の対象になる。ところが、いま、あなたがおっしゃられたようなかっこうで、それをできるだけさせないために、いわば善意のように聞こえるのだけれども、実際は非常に当該者としては苦労をする、こういう状況になっておるのです。だから、こういう問題については十分検討していただかないといけないと思うのですがね。  時間がありませんから先に進みますが、出かせぎ労務者の就業条件ですね、それから雇用条件、これはもう全くなきに等しいですね。一体、この基準監督署、職安――業務指導関係ですから、わかりませんか。
  88. 保科真一

    説明員(保科真一君) 関連した事項は……。
  89. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 じゃ、質問してまいりたいと思うのですが、いま大体、出かせぎの人たちが働いている場所というものは、主としてどういうところですか。
  90. 保科真一

    説明員(保科真一君) 出かせぎ労働者の方々の就労先でございますが、男子の場合は一番多いのが建設関係でございます。最近の特色といたしまして、建設業のほかに自動車とか鉄鋼とか、そういうような産業に季節的に働かれるという方が男子の場合はふえております。それから女子の場合でございますが、まあ、女子の場合は建設関係、それから最近目立ってふえておりますのは弱電関係あるいは繊維関係の季節労務者として働く、弱電、繊維関係が最近増加しております。
  91. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 結局、働いているところは臨時工であったり、社外工であったり、下請工、そのまた下請、そのまた下請ですね。結局は土木工事あたりの重労働に吸収される、こういうのがいまの実情だと思うんです。で、そういうことになりますると、あなたのほうは監督官庁として、労働基準法では明確に第一条に労働条件の原則、第二条に労働条件の決定、第三条に均等待遇、それから第五条に強制労働の禁止ということがある。こういう労働基準法に照らし合わして、いまの出かぎ対象者というものは労働基準というものに全部違反しておる。こういう問題について労働省は何か早急に緊急対策をもってこれらの善処方策を立てないといけないと思うんですが、どう考えておりますか。
  92. 保科真一

    説明員(保科真一君) 出かせぎ労働者の就労条件につきましては、御承知のように就労経路の正常化、就労条件の適正化、これが非常に大きな問題でございます。昨年から出かせぎ労働者手帳を作製いたしまして、安定所を通じて就労する方には出かせぎ労働者手帳を交付いたしております。この手帳の中に雇用条件を記入するということをいたしまして、就労先で雇用条件が違った場合には指導するというような方策をとっております。また、できるだけ就労経路の正常化につとめまして、安定所あるいは市町村を通じて就労するというようなことで、出かせぎいたします先の事業所の条件がいいところへ就労するようにということで、職業紹介、職業指導を進めております。それから実際就労いたしまして問題がありました場合には、監督署におきまして問題のある事業所を重点的に監査して、そういう労働条件の適正化につとめるというようなことを、今後もつとめてまいりたいと存じます。さらには東京と大阪に昨年の十一月から出かせぎ労働者相談所を設けまして、就労した場合に労働条件の違い、あるいは転職というような希望のございます場合には相談に応じておるというような態勢をとっておるのでございます。
  93. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 時間がありませんので、詳しく説明を受けておるわけにまいりませんが、いずれにいたしましても、いま課長がおっしゃられたことは非常に私は形式的だと思うんですね、実際は。それは確かに、労働省の指導といたしまして、また農林省もそうだと思うんですが、職業安定所を通じてそういう就労条件とか雇用条件というものを明確に確立する一定の形式的指導はやった。しかし実際問題として、出て行っておる大半は口入れ屋とかあるいは手配師、こういう連中を通じてほとんどが行っているわけです。だから結局こういう問題で、秋田なんか六万人ぐらい四十年当時出かせぎをして、三百名くらい行くえ不明になっているのですよ。だから結局、私はそういうところにあると思う。これは追ってみれば、私は政府の責任だと思う。確かに書面では――口では、そういう形ではいけませんと言っておるけれども、実際それにかわる具体的な市町村の、地方公共団体等を含めての行政指導の親切さなり真剣さがないのです。だから結局、そういう結果になっていくのでありまして、そういう問題についてはぜひひとつ今後、一挙にというわけにいかないでしょうが、でき得るだけ加速度的に早めて、そしてこれらの対策をとっていただきたい。  それから、もう一つは雇用条件ですね。雇用条件が非常に悪い。ことに中でも問題になりますのは、賃金不払い。おそらく東北一帯は田植え時期ですから、もうそろそろ帰る。そういうことになりますと、四月なら四月の働いた月の分は帰ったあと自宅へ送金をいたしますよ、こういうことを言う。そうしますと、実際こっちから送られた金が一万円の賃金額であるという場合に、一千円ぐらいしか払っていない。あと全部、手配師が何といいますか、詐欺行為でもってそれをふところに入れてしまう。そうすると、これを解決するのに当該者同士がいろいろ話し合うのだけれども、片方は送ったという、郵便局へ行ってもそれはだめだ、こういう事例というものはもう枚挙にいとまがない。そういった賃金不払いという問題がある。  それから、労働者災害の発生件数は、総体から申し上げますれば、出かせぎ者が私は一番多いと思う。そういう問題、これらに対する補償関係も全くみじめな状態になっているのです。社会保険はいろいろありますが、そういうものに対する補償方式というようなものも行なわれてない全くみじめな状態で現在やられておる、こういうのが私は出かせぎの実態だと思う。  だから、こういう問題について労働省としては基準監督署を強化することです。これはもうお粗末で、そう言っては申しわけございませんが、上野基準監督署に何名いると思いますか、東京各地の人員構成、組織構成を見てください。とても、あんな要員では、これらの人たちを、幾らあなた方がりっぱな通達を出して、そのとおりやりなさいと言っても、下部のほうの職員はやりません、いまの状況では追いつけない。それは全く無策にひとしい。そういういわば行政指導の実態というものについて、私はほんとうに反省してもらわなければならない。そういう点については、どうお考えですか。
  94. 保科真一

    説明員(保科真一君) 先生御指摘のとおり、出かせぎ労働者の問題につきましては、就労経路の問題、それから就労先の労働条件の問題、賃金不払い、あるいは安全衛生の問題、こういうようなのが大きい問題と思います。私どもといたしましても、先生の御指摘の趣旨に沿いまして今後できるだけ善処してまいりたいと思います。下部の機関に対しまして下部の機関が働きやすいように、働けるようにというような措置を考えまして、御趣旨に沿うようにつとめてまいりたいと思います。
  95. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 もう二点で終わりたいと思いますが、農林大臣、これはまさしく出かせぎ問題はいま社会問題になっているわけでございますが、非常にみじめな状況が一ぱいあるわけです。いわゆる出かせぎ農家の悲劇ということで、これは全国農協の婦人部が調査した実態でありますが、その内容によりますと、現在のいわゆる主婦農業の経営責任関係、これを見てみますと、期間労働従事者の五八%が婦人になっている。非常に変わってきているわけでございますけれども、そういう中で、ことに年齢別で見てまいりますと、三十歳から四十歳までが五〇%をこえている、五十歳以上が六〇%から七〇%、いわば婦人労働者が多くて、かつ年齢が高年齢、こういう状況にいまの農村の人口というものはなっているようでございます。で、出かせぎその他でもって農村の婦人に対する過重労働というものはものすごい。ことに最近、機械労働によりまして、その機械などもほとんど婦人にまかされている。こういう状況です。そういうところから流産であるとか、あるいは子供さんによっては関節の脱臼、こういったものとか、そういう病気が続発する、非常にふえている。こういう農村婦人の健康管理という問題については、いずれ大きく問題にしなければいけないと思うのでありますが、そういう問題が農村の中には数多くあるわけです。こういう問題については、農林大臣は早期に対策を立てていかなくちゃいけないと思いますが、その対策に対する考え方、それからもう一つは、出かせぎ者の家族ですが、これがまたひどい。奥さん方はすべてだんなさんにかわって消防団にしろ、排水事業にしろ、部落の共同作業にしても全部それをやっていかなければならない。常に家を不在にしますから、勢い子供さん方は非行化の方向に流れる。こういうことも出てくる。最近、これはある先生が言ったのですが、子供の頭のこぶが非常にふえてきている。なぜかというと、奥さんと、だんなさんが半年も、ないしは通年一年間別居生活をやっている。結局神経が高ぶるというようないろいろな生理現象から、そういうところから、結局八つ当たりをする、子供さんに。こういうこともある(笑声)これは笑いごとではないと思うのです。全くこういうことは、私は、人間疎外という、文字どおりそういう状況が現出しているのです。ですから、こういう子供さんの非行の問題あるいは婦人の過重労働の問題、そうしてなおかつ、だんなさんがけがをしても、それに対する何らの補償がない。かたがた賃金不払い、こういう状態でいまやられておるというのが出かせぎの実態じゃないか。ですから、こういう問題について、政府は真剣になって早期に対策というものをとる必要があるのじゃないか、ことに当面、私は二つの対策があると思いますね。一つは失業保険というものを増大をしていく。もう一つは雇用条件、就業条件というものを厳密に点検して、これらに対して早期に抜本政策をとっていく。やむを得ないものについては、会社とか手配師とか、あるいは口入れ業に対しては徹底的に処罰対策をとっていく。賃金不払いとか何とかがないように、当面困っている家族の問題、子供の問題、これを根本的にひとつやってもらう必要がある。長期対策としてはやはり私は、農業政策の根本をどう一体やっていくか、こういうことに尽きると思いますから、そういう面について大臣の見解を聞いて、私の質問を終わりたいと思います。
  96. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 戸田委員お話、だんだんお聞きしまして、非常に私も理解するところが多いのであります。ただ問題は、出かせぎに対して、この現象をどう現在の段階で将来に向かってとらまえていくか、この問題だと思うのであります。要するに、日本農業が先ほど申し上げましたように零細であり、かつ所得も低いという段階におきまして、所得をふやしたいという意欲、これは当然こういう現象が出てまいる、そこで基本的には零細農業に対する生産基盤の拡大をしてまいりたい、その間に兼業農家でいこうという方々に対して、どうしても協業を助長するなり、それからもう一つは、私は単に農政の面だけでなくて、地域開発、それからもう一つは地方で就業する機会を与えられるような方法、これはたとえば東北でありましても、弾丸道路、弾丸列車、あるいはいろいろな道路環境が整備してまいりますと、一々それが遠隔地へ出てきて働かなくても就労の機会も十分出てくると、家庭というものがおさまってまいる、こういうような農林関係だけの行政でない面も合せて、私どもはこういう問題の解決に当たってまいるべきだ。いま一つは、それでもなお兼業農家においてやはり出てこられる方は、漁業でもやはり年間出ていく方もあるのでございますから、出かせぎそのものが、何かものか、げにかくれてこそこそ悪いことをしに行くという悪い面の出かせぎじゃなくて、言いかえれば勤労意欲に燃えて、時間があるときにさらに所得をふやしていくというために、私は出るほうも受けるほうも、できるだけ近代的な、合理的な方法でこれを出し、受ける方法をもっとわれわれも考えていかなければならぬ。言いかえれば出かせぎ対策近代化、明朗化というものに相当力を入れていく、こういうような方法を考えていかないと――悪い面だけを考えて、ただそれを押える、所得を押える方向でいったらいけない問題だと思います。  それから、もう一つは、当面の施策として、確かにおいでになる方々の東京における事故、労災、あるいは労基法の問題等、これらは関係省とも十分に連絡をとってまいりますとともに、残された家族の過重労働なり家庭におきましての問題につきましても、きょうの御意見を十分承りまして、今後ともよく努力をしてまいりたい、こういうふうに申し上げたいと思います。
  97. 鶴園哲夫

    主査鶴園哲夫君) 午後一時十五分まで休憩いたします。    午後零時四十五分休憩      ―――――・―――――    午後一時二十五分開会
  98. 鶴園哲夫

    主査鶴園哲夫君) 予算委員会第三分科会を再開いたします。  分科担当委員異動についてお知らせいたします。  ただいま、田代富士男君及び戸田菊雄君が委員を辞任され、その補欠として小平芳平君及び北村暢君が選任されました。
  99. 鶴園哲夫

    主査鶴園哲夫君) 午前に引き続き、農林省所管を議題といたします。  御質疑のある方は、順次御発言ください。
  100. 小平芳平

    小平芳平君 初めに農民年金についてのことについてお尋ねしたいと思います。  この農民年金については新聞で再三報道されておりますが、四十四年から開始されるというふうな見通しも報道されておりますが、いかがでしょうか。
  101. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 農民年金につきましては、すでにこの問題にも予算委員会等でお触れになり、また私からもお答え申し上げておりますが、さらに重ねまして、現在、農林省といたしましては農民年金問題研究会というので検討が行なわれておりますが、できるだけ早くその結果を出すように私どもも急いでおります。それから、かたわら、厚生省におきまして国民年金審議会という場で審議を行なっておりまして、これらの検討を経ますというと、これらの制度の性格、内容について、最終的には国民年金審議会で最終成案が答申になるという形になると思います。そこで、時期の問題でございまして、これは内容、制度等を固めて、もちろんこれは農林省だけではいけません。御存じのとおり、厚生省も国民年金の分野に関連しますし、いま一つは財政当局も当然関連してまいります。そこらは、まとめた成案というものが出ますれば実施をしてまいる。そこで、実施を、いつにめどを置くかというのでございますが、ちょうど厚生省のほうで扱っておられる厚生年金、これが四十四年が再計算の時期に一応なるわけであります。そこでそれに関連して、国民年金もおのずから動く機会がある。そうすると、ちょうどそれらとあわせまして、そこをめどにして、われわれとしてもめどなしにやっておったのではいかぬから、めどということでやって、できればそういうめどを立てて、そこへ向かって努力をしていきたいということでございます。
  102. 小平芳平

    小平芳平君 そこで基本的な考え方としまして、審議会でいま検討中であり、これから答えが出るということでありますが、農林省のお考えとしては、基本的にいまの国民年金とは別の年金を、農民の要するに老齢か、移譲か、離農か、そのいずれかに重点を置いた、国民年金とは別個のものをお考えになっていらっしゃるのか、あるいは国民年金から分離したものをお考えになっていらっしゃるのか、その点はいかがでしょう。
  103. 森本修

    政府委員(森本修君) 最終的には農民年金といわれるものの内容なり、あるいは仕組みなりということに関係をしてまいります。したがいまして、私どもの現在の考えでは、国民年金との関係は分離すべきであるとか、あるいは国民年金の中でやるべきであるとかといったようなことは、いまのところは必ずしも結論を出しておりません。ともかくも農民年金といわれているものについての内容なり、あるいは仕組みなりが、どういうことになるかといったことが出ましてから、そういう制度的な関連をしなければいけないと考えます。
  104. 小平芳平

    小平芳平君 それがきまらなければ、結局、農民の方々の若返りにも、あるいは規模拡大にも、あるいは老後の皆さんの生活の保障にも非常にいい制度ができるのだという、そういうその期待だけを持たしておりながら、しかし、基本的に国民年金なりもうすでに入っているわけですから、その国民年金から分離して、同じようなものが同じくらいの拠出をして同じくらいの額を受けるのだったら、それは国民年金と変わらないわけですね。ですから国民年金であれば、だれしも厚生年金に入っている以外のものは国民年金に入って、そうしてその老後の保障、老後の所得保障というものが約束されるわけですが、しかし、国民年金だとこの程度の老後の保障しか約束されないけれども、農民の方はこの農民年金がプラスされるか、あるいは別個に分離してできるか、いずれにしてもより多くのこの保障ができるのですよ。そういうものがなければ結局何にもならないわけですね。その点いかがですか。
  105. 森本修

    政府委員(森本修君) 御案内のように、社会保障制度の観点からいたしますと、社会保障としてはある程度制度なり、あるいは内容なりについて、一方ではその共通の問題がありまして、できるだけ統一した形でやっていくべきであるという議論もございまするし、また一方、御質問がございましたような、農民年金のあり方といったようなことも目下検討をされておるわけです。そういう意味からいいますると、制度問題としては、一がいに一方の見地からのみ割り切ってものごとを整理をしていくというわけにもなかなかいきにくい、きわめて至要な問題が含まれておる。そういうことから先ほど来申し上げておりまするように、農民年金と一般に言われているものについて、どういう内容なりねらいのことがあり得るかという内容面の検討を進めまして、その結果によって制度問題は最終的な見解をまとめていくということに、検討の手順としてはどうしてもなってくるというふうに思っております。
  106. 小平芳平

    小平芳平君 まあ結局きまってないことをそう聞いても何ですから、そう同じことを繰り返しませんが、結局、大臣、その考え方としては、この国民年金はすでにいま申し上げたように入っているわけです。ですから、それが非農家国民年金の約束する老後の保障しかない。しかし、農家は農民年金ができたことによって、これだけのプラスがあるというものがあってこそ、初めて農民年金の意味があると思うのですね。まあ制度はどういう制度にするか、一本にするか別個にするか、別個にしましてもプラスになる制度が期待されるのでなければ、こうして活発な論議をしても、結果としては何らか農民の方にプラスになる制度になるのだということでなくては、意味がないと思うのですね。それはいかがでしょうか。
  107. 西村直己

    国務大臣西村直己君) おっしゃるとおり、ただ農民年金ということばが正しいか自体も、ひとつ問題があると思いますし、ただ何でもかんでもちょっと農をやっておれば全部恩給をもらえるのだというような、単純な、指導を誤ってすると、また問題が混乱する。もちろん自営業者には、世の中にはたくさんまだ自営業者というのには零細な自営業者もある。しかし、農業の特殊性というものを着眼してまいりますと、あるいは農民年金ということばがいいのか、あるいは農業者年金ということばがいいのか、老後の保障というものは国民年金というもので一応は統一的にやってはおります。年金経済というものはその中で動いています。しかし、同時にこの農を相当専業している人が離れていくような場合には、普通のあれとは事態がかなり日本農業の特殊性から見てあれじゃないか。そこいらをかみ合わせておそらく制度が立っていくべきではないかと、こう思うのでございます。
  108. 小平芳平

    小平芳平君 ですからね、制度をどうするか、それはまあこれからの検討に待つとしまして、先ほど局長が御説明のように、年金制度、社会保障制度は一本であるべきだ。そう多くすべきじゃないというそれは意見もありましょう。意見もありましょうが、農林行政を扱う農林省の考え方としまして、この制度が一本になるか二本になるか、それも含めて、いずれにしても農民のプラスになる制度、たとえば老齢になった場合は、これこれの年金が約束されるという。それがいままでよりプラスになった制度でなくちゃ意味がない。あるいは委譲や離農のときにはこういうものが約束されるという、そういうプラスになる制度が検討される。農林省としてはそれを、その農民福祉向上していくという、そういう観点からこの問題に取り組んでいかなくちゃならない。それは当然なことじゃないでしょうか、いかがでしょうか。
  109. 森本修

    政府委員(森本修君) お説のような観点から、農林省としては検討を進めなければということは同感でございます。つまり農家としての社会保障の充実ということが、従来からも一つの大きな問題になっております。また、農業近代化していきます際に、社会保障がどういうふうにあったほうがよろしいかといったような観点も、従来から問題になっておったわけでありますから、優秀な農業の経営者を確保する、あるいは経営の若返りなり委譲なりといったようなことと社会保障ということは、一体どういう関係があるかというふうな点について、農林省としては農林省なりに検討を進めていくということは当然である。したがいまして、私どものほうも、また農民年金問題研究会におかれても、そういうふうな観点から検討を進めていただくということをお願いをいたしておるわけでございます。
  110. 小平芳平

    小平芳平君 それで次に、結局その農林省のねらいとするところは、経営の若返り、あるいは経営の規模拡大、ここにあるのかという点ですね。まあ普通、老齢年金の場合は、国民年金にしても厚生年金にしても、老齢年金の場合は老後の所得を保障する。安心して老後を生活していかれるということをたてまえとしているわけですが、いまここで農林省のほうで検討を始めているこの年金は、そうした農業者お一人お一人の生活、あるいはその御一家の将来の生活ということが重大なのか、それとも政策的な若返りとか、規模拡大ということを主眼に考えていかれるのか、その点はいかがですか。
  111. 森本修

    政府委員(森本修君) いま言われましたことは、何といいますか、ものごとを見てまいります際の視点といいますか、角度といいますか、そういうことであろうと思います。社会保障の問題でありますから、主として老後の生活の安定なり保障なりの問題であることには変わりはないわけであります。ただ、老後の保障が充実をするかしないかということが、先ほど来申し上げました農業の経営の改善なり、あるいは近代化の観点から言ってどういう関係を持っているかということに尽きるわけでありまして、いま申されました視点が、それぞれ相離れるといいますか、分かれるといいますか、そういうのは必らずしも考えなくてもいい問題ではないか、両者がお互いに関係を深く持っておる事柄であるというようなことで、私ども検討をいたしておるわけであります。
  112. 小平芳平

    小平芳平君 その点、全然別個のものじゃないということでは私もそう考えます。一つのことが二つの意味があるということはわかります。ところで、外国の例を見ても、拠出制か無拠出制か、あるいは強制加入かどうかという点があると思うのですよ。この点はいかがですか。
  113. 森本修

    政府委員(森本修君) 大体公的な社会保障制度は、日本におきましても大体そうであります。また外国におきましても大部分のものはほとんどといっていいかと思いますが、当然加入といいますか、そういう形になっておるようであります。拠出制、無拠出制は、これは制度の性格なり、あるいはたてまえにかかってくることであります。外国におきましても、それぞれ制度の性格によって異なっておるというふうな状況と承知いたしております。
  114. 小平芳平

    小平芳平君 ですから、まあ強制加入というか、全員加入する、それから拠出制、無拠出制は、何ですか、制度によって変わるということは、結局このいまの国民年金にしても拠出制です。ですからそれと同じ方向を考えておられるわけですか。
  115. 森本修

    政府委員(森本修君) それは先ほど申し上げましたように、制度の目的なり、あるいは性格によって違ってくるというふうに思います。したがいまし、制度全体をどういうねらいにするか、それからどういう性格のものにしてまいるかということになろうかと思います。まだ無拠出のものは外国におきましてもきわめて、何といいますか、まあ全体の制度を包含してみまするならば、異例な制度ではないかというふうに私どもは見ております。
  116. 小平芳平

    小平芳平君 ですから、この問題に対する私の考えと申しますか、要望といいますか、申し上げたいことは、いまの国民年金にしても夫婦合わせて一万円年金というふうにいいますけれども、非常に魅力がないんですね。とにかく二百円、三百円、毎月掛け命をしていく、それから四十年たったら年金をもらえるというようなことですね。ですからまあ計算の上からいえば、生命保険などよりも、普通の生命保険などに比べたらずいぶんこの国民年金、厚生年金は有利のはずなんだけれども、一向に魅力がない。しいて飛びついていこうという気がしないということは、拠出して掛け金をしているけれども、一体いっどういう生活がどういうものが保障されるのかということがはっきりしないからですよね。はっきり四十年たったらこうなるんですよ、二十年たったらこうですよというものがわかれば魅力も出てくるのですが、全くもういま三百円払ったからといって、四十年もたったら三百円なんていうものがどんな価値になるかまるっきりわからないわけですよ。ですから、そういう点からいって、農民年金の場合はいろいろなことが全くきまってないということが、いまよくわかりましたですが、これからの検討段階で、わざわざせっかくこの問題を論議し、あるいはもし発足するという段階になるときには、こうした農民の方々がこれだけの保障がされるんです。ほかの人はそういうものはないけれども、農民年金に入られると、こういうものが実現できるんですということをよく理解できるように知らしてもらいたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  117. 森本修

    政府委員(森本修君) まあ一般でやっております年金制度では、制度の仕組みとして、当然、何年掛け金を掛けますれば、どういう状態になれば月額幾ら支給をされるということがきまっておるわけです。制度としてはそういうことになっておりますけれども現実の利用者がどの程度それを理解して入っておられるかということは、これはPRなり、あるいは制度の趣旨の説明のしかたいかんということにかかってくると思います。制度のたてまえとしては、もちろんそういうかっこうになっている、掛け金は幾らでやって、支給は幾らになるということがわかっているわけです。したがいまして、先生が御指摘になりましたようなことは、当然、加入者に対して十分周知徹底をはかるべきだというふうに私どもも考えております。
  118. 小平芳平

    小平芳平君 それは知らせることはあたりまえだと言われますけれども、それはあたりまえだけれども、いまの三百円が四十年後どうなりますか、それをどういうふうに知らせますか。
  119. 森本修

    政府委員(森本修君) 現在の制度のたてまえでは、現在掛け金を幾ら払って幾らもらえるということがはっきりしているわけです。ただ、あるいはこういうことが御質問の趣旨に含まれているのかと思いますが、数十年を経たのちに、現在の五千円が三十年か二十五年のちの五千円でいいのかどうか、貨幣価値、あるいはその他経済事情の変動がありますから、いいかどうかという問題も含まれておるかと思いますが、これは社会保障制度全般を通ずるいわゆるスライド制の問題であります。全体についてスライド制の問題をどういうふうにして取っ組んでいくかということにつきましては、社会保障制度を通ずる問題として、いま政府部内で検討をしておるという段階であります。
  120. 小平芳平

    小平芳平君 まあ社会保障の全体のスライド制については、農林省に御答弁願うのも気の毒だと思って、そういう言わなかったのですが、結局、経営規模を拡大する、農家が減っていく、それにも結局限度があるわけですね、地域によって。まあ私の生まれたところなどは非常に山間僻地ですから、もう機械化するといっても、小さいたんぼを大きなたんぼにして機械を入れるということは非常に大工事をしなくちゃできない、ですから、現状としては機械は買った、さあたんぼは小さ過ぎて、それほどの能率が上がらない、かえって機械だおれしてしまって、残ったのは借金というような現象も起きちゃうわけです。そういう点についてはどうでしょうか。
  121. 森本修

    政府委員(森本修君) 機械化の問題でございますが、御案内のように、日本農業で機械が非常に必要になって、現実にそういう要請なり条件が出てまいりましたのは、戦後、特に労働力の流出がきわめて激しくなってまいりました三十年代以降ということであります。そういうことでありますから、きわめて急速に機械化を進めなければいかぬ。また、機械化をしたいという要請が農家のほうから出てまいりました。そういうことでありますから、初期の段階におきましては、当然、立地条件なり、あるいは経営の状態が諸外国とは異なりますから、日本の実情に適した機械が出てまいる、あるいは利用の形態もそれに即したものになるということが必要でありますけれども、残念ながら初期の段階におきましては、必ずしもそういう準備がないところへ急速な機械化の波が押し寄せたということでありますので、機械化をやってまいりますのに、若干の問題か生じてきているということは私ども考えております。あるいは機械の効率が必ずしも十分ではない。また、その利用すべき機械の選択が必ずしも適切でないといったような例もございまして、御指摘になったような事柄が現象としては発生している。ただ、最近におきましては、御案内のように、機械の生産の面でも、いわゆる日本型の機械というものが相当出てきております。また、利用される方も漸次機械についての何といいますか、扱い方もわかってまいりましたし、また、どういう機械を入れればどういつだ状況になるということも、ほぼこの段階においてはわかってきているところであります。そういうことでありますから、私どもとしては機械の開発なり、あるいは利用のしかたにつきまして、できるだけ日本の自然条件、あるいは経営の条件に合ったような形で機械化を無理なく推し進めていくことについて、目下いろいろなことで指導し、努力をいたしておりますので、そういった問題点が逐次解消されていくというふうに存じております。
  122. 小平芳平

    小平芳平君 そういういまの機械化の問題点と規模の拡大ですね。規模の拡大は相当の大工事をしてでも規模の拡大をしますか、またどの程度できるでしょう、それでは。
  123. 森本修

    政府委員(森本修君) 御案内のように、一戸の経営におきましては、現在平均的な姿で、あるいは相当大きな農家でも二、三町歩といったような状況でありますので、現在までやってまいりましたところもそうでありますし、やはり高能率の機械ということになりますと、共同的な形で導入をし、利用をするというふうな姿が一番適当ではないか。そのための個々の農家が、経営は別でありましても、機械の作業が行なわれます土壌は区画整理が十分され、また集団化されるという条件が必要だと思います。そういう関係から機械化基礎になる、あるいは前提になる土壌整備ということに、できるだけ力を入れていきたいと思っているわけであります。なお、個別経営においても、それぞれ利用できるような形の機械も徐々に製作をされてきております。いわゆる中小機械でありますが、そういうものについても、これからは漸次、私どもの研究の重点、あるいは指導の重点をもちまして、できるだけいろいろの機械が適切な形で利用され、導入されるということに努力をいたしてまいりたい。
  124. 小平芳平

    小平芳平君 それでは農民年金の問題についてはこれで終わりますが、要するに、年金制度ができて、非常に政府が政策的に若返りもできれば、経営規模の拡大にもそのことが大いに役立つというような問題じゃなくて、やはりこうした、いま言われたような点、あるいはまたほかにもいろいろあると思いますが、総合的な対策が進められていかない限り、そうしたちょっとした年金制度ができた、それで一切何でもいい方向へどんどん向かっていくというわけのものではないと思うのです。この点は、当局の方ですから十分御承知でやっていらっしゃることと思いますが、それだけ申し上げて、次に、海水汚濁のことについて、去年、法律ができましたけれども、相変わらずこの問題か各地に起きているようですが、この状況について、御説明を願います。
  125. 久宗高

    政府委員久宗高君) 海水の油の問題でございますが、直接には海上保安庁のほうで御調査なさる形になっておりまして、ただいま御質問ございまして御連絡しましたところが、四十三年一月以降の関係で申し上げますと、港則法に違反してあげられました件数が十四件でございまして、関係しておりますのは東京あるいは愛媛県の新居浜の関係、串木野、下津でございますか、とにかく十四件が報告されております。港則法によりまして指定されました港湾と、その外縁の一万メートル以内での廃棄を禁止する、こういう規定がございます。
  126. 小平芳平

    小平芳平君 何かいまの御答弁よくわからなかったのですが、法律ができる前と法律ができたあとに分けまして、それで一々初めにどこどこというふうにあげられなくてけっこうですけれども、要するに、油でよごされちゃうわけですよね。ですから、そういう事件がどのくらい起きたか、それであと始末がどういうふうについたか。検挙されたか、あるいは損害賠償を払ったか、そういうような点について御説明を願いたい。
  127. 久宗高

    政府委員久宗高君) 御質問を取り違えまして失礼いたしました。  御存じのように、この海水の油の関係の問題でございますが、法律を施行いたしますのに若干の準備期間が必要でございまして、そのために港の近所の問題は別といたしまして、沿岸のたしか五十海里以内での投棄の問題につきましては、残念ながら経過期間を設けざるを得ないわけです。その関係で直ちに禁止するという形になっておりませんために、問題か、法律が施行されますと同時にぴしっととまるという形になっておりません。それで、被害の態様でございますが、先般御質問をお伺いいたしました場合に、若干の湾について御指摘がございましたので調べてみたわけでございますが、主として東京湾関係が実は非常に多いのでございまして、その大部分が油をだれが投棄したのかという点が不明なために、結局、決着がついていないものが大部分でございます。いままでで非常にはっきりいたしまして、つまり油を流した者がはっきりしておりまして、同時にそれの解決がついております典型的なものといたしましては、紀伊水道で起こりました例の油船の衝突事故によります被害でございます。この関係は明確に原因がはっきりしておりましたので、補償関係も全部きちんと解決がつきまして、処理がついているわけでございます。あとのものにつきましては、実は原因者が不明でありますために、そのままの形になっておりまして、決着がついてないものが大部分でございます。
  128. 小平芳平

    小平芳平君 ですから、私がいただいた資料によりましても、四十一年は百件で十三億ですか、それから四十二年は八十七件で四億ですか、こういう被害があげられている、四億数千万ですね。まあ陸上だったら交通事故を起こした場合は、現にそこに車がいるからつかまる率が多いわけですが、海上の場合は流して逃げる、逃げるわけではないかもしれませんが、とにかくいなくなっちゃう、もうわからない。そうすると、タンカーが衝突か何かで、そこで転覆とか衝突とか、そこにいれば見つかるわけですが、まるっきりよごして、よごしっぱなしで、どこへ行ったかわからない。それが法施行前もあとも、全く変わってないということになれば、これは実際どうしたらいいかということを検討しなくちゃならないと思うのです。ただ、わからないからしようがない。わからないからしようがないだけじゃ済まされない。やはりそこで今後の対策はどうするかということを立てなくちゃいけないと思うんですが、いかがでしょうか。
  129. 久宗高

    政府委員久宗高君) 法律にやむを得ざる経過期間がございますために、実情そのまま正直に申し上げたわけでございますが、ただ、この海水汚濁防止法が通りました際のいろいろな御論議もございますし、同時に附帯決議におきましても強い御要望がございまして、私どもといたしましては、結局、運輸省とよく御相談いたしまして、私どもの取り締まり船も協力いたしまして、現状においてできるだけのことは実はやっておるわけでございます。また、東京湾の実例で申しますと、これは千葉県の御関係から見ますとまことに死活問題でございますから、飛行機まで飛ばしまして、つまり、油をたれ流していきます船を発見するような努力をいたしておるわけでございます。御指摘のございましたように、非常に多数の船舶になりますのと、従来の惰性がございまして、陸上に十分な施設もないという問題もあり、あるいは砂利船のような場合にはピストン輸送といったような問題もあるようでございまして、実は非常に処理のしにくい問題でございます。しかし、私どもから申しますと、被害はきわめてこれは強烈な被害でございますので、また、関係者が明らかにできないためにうやむやになる等の弊害が非常にございますので、現状におきましては、こう経過期間に早く施設を準備いたしまして、その間も、いわば法的な義務はございませんけれども、道義の問題として、現実経済問題といたしましても、取り締まりをまずはっきりいたしまして、少なくとも相手方をはっきりつかむようにいたしまして、つかみました場合には相当な行政指導をいたしまして事の解決に当たる、それがまず先決じゃないかと考えているわけでございます。ただ、いかにも御指摘のように、全体の態勢が非常に不十分であることはいなめないと思います。
  130. 小平芳平

    小平芳平君 これで大臣、できるだけのことは努力はしておりますという点、確かに努力はしておられると思いますけれども、強烈な被害を受けて、どうしても、またも泣き寝入り、またも泣き寝入りということは――農林省としてはやはりできる限りあらゆる手段をとっても漁民の方を守っていく立場にあるわけですから、まだやむを得ない、まだやむを得ないというんじゃなくて、より一そう強力な手を打っていくという姿勢が必要だと思いますが、いかがでしょう。
  131. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 漁民の保護は当然われわれのほうの、また漁業の育成は当然私どもの仕事でございます。十分に心得てやるつもりでおります。
  132. 小平芳平

    小平芳平君 損害賠償ができたのは、さっきのタンカーの件よりほかにはもうありませんですか。
  133. 久宗高

    政府委員久宗高君) 全国的な調査は、ある時期に各県からまとめてまいりますので、現時点で申し上げましたのは、たまたま御質問を伺いにまいりましたときに、特に問題の多い水域について御質問があるというふうに聞いたものでございますから、そこを調べてみたときに、たまたまいまのようなはっきりしたのが一つ出てまいりました。むろん個々には表に出ませんで、実際問題として処理のついたのもあろうかと思いますが、ただ全体の傾向から申しますと、つまり、だれが流したのかわからないという事情が一般的でございますために、しかるべき措置かついていないというもののほうがむしろ多いといわざるを得ないと思います。
  134. 小平芳平

    小平芳平君 それでは、大臣も漁民を守るのが農林省の任務だと言っておられるわけですから、やはり水産庁においても、質問があるからつてあわてて調べるだけでなくて、ふだんから、どういう問題が起きているか、これにどう対処しているか、あるいはもっとどういう点に配慮していくべきかということは、やっぱりやっておくべきだと思うのです。それはこの取り締まり体制が、飛行機まで飛ばしてと言われますが、これが貧弱なことも事実ですね、これは。ですから、その点はもっと積極的な施策を望んで、次の問題に行きます。  原子力発電所が各地に――各地といってもそう数は多くないですが、できておりますが、この原子力発電の施設から海水の安全性というものが今後とも十分確保していかれるかどうか。これが建設される前には、いろいろ論議も呼びましたですが、現に何カ所かできておりますが、その点については研究はしていらっしゃいますか、いかがですか。
  135. 久宗高

    政府委員久宗高君) これは科学技術庁のほうからお答えいただくのが適当かと考えるわけでございますが、漁業関係でいろいろ原子力問題が出ております。原子力発電の問題、あるいは再処理施設の問題等がございまして、たいへん私ども自身ものみ込むのに非常に苦手でございますので、それをよく判断し、漁民に納得させると申しますか、わかっていただくように実は苦労しておるわけでございます。さような問題もございまして、一般的には原子力発電の必要性のほうが先行いたしまして、現地で非常に問題を起こして、お互いに事柄のわからないままこじれた問題になっている例が非常に多いわけでございます。さような点から、私どもといたしましては、一応すでに動き出しております諸外国の例を、現実に漁民の方々が目で見ていただく必要があるだろうということで、実は科学技術庁と相談いたしまして、特に問題の多い関係の地域につきまして、先般世界のおも立った施設を見ていただいたわけでございます。一応帰りましての報告を聞いてみますと、要するに、相当の施設なり考慮を原子力発電の当局者なり政府が講じました場合には、少なくとも客観的にみて、そう心配はないという心証を関係者としては得たようでございます。ただ、現実問題といたしましては、日本におきましてそこまでの措置を一体政府がやるかどうか、あるいは電力会社がやるかどうかといったことにつきまして、若干の漁民の側には不信がございまして、さようなことで、まだこの問題をすっきり割り切って考えるというところまでには至っておりません。しかし、私どもといたしましては、原子力発電の場合、あるいは原子力に関します再処理施設の問題の場合、このおのおのにつきまして最も権威ある学者の方の御意見を総合いたしまして、それに基づく必要な安全措置というものを伴いながら、この問題の処理にあたってまいりたいと考えているわけでございます。
  136. 小平芳平

    小平芳平君 発電所のほうは、まあ安全だから、あるいは安全を守るからと言って建設しようとするわけです。そうすると、漁民の方は海をよごされちゃたまらないということがあるわけでしょう、現実に。ですから、そこで農林省としては、説明は科学技術庁でやってくれ、あるいは説明は研究したほうでやってくれ、漁民の方はただ納得するようによく聞いてくれというだけでなくて、もう一歩、農林省自体水産庁自体がこの問題をどう把握しておられるか、そういうものがないと、ただ見ているだけじゃ意味がないと思うのですが、いかがですか。
  137. 久宗高

    政府委員久宗高君) 御指摘のとおりの問題で実は困っておるわけでございますが、こういう問題が起こりました場合に、漁民の方々は、最終的には水産庁はどう思っているのかということを必ず聞かれるわけでございます。また、何らかの調査をいたしました場合に、水産庁がやったなら信用するけれども、他の機関がやったのでは信用ならぬと、こういうことがあるわけでございますが、この種の問題の研究なり調査なりに関しましては、私どもだけでは不十分でございますので、政府部内の分担関係から申しましても、科学技術庁を中心にいたしまして、私どもの研究者も同時に加えまして、政府としての確信のある結論を出して関係者にお話しする、そういう立場で対処いたしたいと思うわけでございます。ただ、私ども自身がやはり相当勉強しておりませんと、この問題は十分常識的に漁民の方にわかっていただけるような説明ができませんので、その意味の勉強は一生懸命で私どもの研究機関内でもさせておるわけでございます。  それから、ただいまの御質問に直接ございました原子力発電関係でございますが、御承知のとおり、これは若干の熱が加わるわけでございますので、これを出しました場合に、排水口付近に若干温度の格差が出るわけでございます。それがどのくらい影響があるだろうかということにつきましては、個別な調査をいたしておりまして、それが海水中に拡散してまいりますに従いまして、必ずしも一般が心配するような大きな被害、たとえば被害が生ずるというようなふうには認められないというふうに私どもは見ておるわけでございます。なお廃水中に放射能がどうかという問題でございますが、科学技術庁その他ともよく御相談して検討しておりますが、この問題につきましては、水産業への影響は認められないというのが現在の政府の見解でございます。
  138. 小平芳平

    小平芳平君 それじゃ全然問題ないじゃないですか。
  139. 久宗高

    政府委員久宗高君) それは役所側は問題ないというふうに見ておるわけでございまして、漁民の方がそういうふうに納得するかどうかの問題がございます。さような意味におきまして、私どもとしては、すでに役所側から考えまして、世界水準その他から見て、ほぼ結論の出ました問題については、現場で見ていただくのが一番いいだろうということで、世界のおもだったところを見ていただいたわけです。そういたしますと、その付近の漁民が必ずしも心配しない、ごく普通の形でそれに対処しておりますし、また、それに伴います政府なり、発電の施設内の運用もきわめて、関係者が見ましたときに、これならば問題がないなという信証を得られる程度のものがあったのでございます。したがいまして、私どもは、あとはそれに近い形のものができれば、漁民の方にもわかっていただけるだろう、こう思っておるわけでございます。
  140. 小平芳平

    小平芳平君 いまおっしゃるように温度は問題ない、それから放射能も問題ないということなら、何も問題はないわけですけれども、ですから先ほど前段の御説明では、政府がそれだけの施策をやるかどうか、いろいろ外国のほうも見てきたけれども日本の場合どうかという不安があるような御説明もなさっておられるわけですが、いずれにしても、この問題は私のほうで結論的にどうだということは言えません。ですから、さっきの海水油濁の問題と並んで、やはり漁民のための安心して働けるように、そういう施策目標というものがはっきりしていかなければならない問題ではなかろうか、このように考えます。  次に、養蚕について御質問します。絹、これは私たちが子供のころはもうほとんど繭をつくり、それで輸出をしておったわけですが、最近では輸入しているのですね。ですから、そういう点、輸入するようになったということですが、その辺の概要について御説明いただきたい。
  141. 池田俊也

    政府委員(池田俊也君) ただいま御指摘がありましたようなことでございますが、ここ五、六年非常に生糸の需給の様相が変わったわけでございます。十年くらい前をとって数字を見てまいりますと、大体生糸の生産が三十万俵程度でございます。その中で輸出に回りましたものが大体四割ぐらい、半分より若干多いものが内需に回っていたわけでございます。それがこの四、五年かなり様相が変わった。と申しますのは内需がふえたわけでございますが、毎年二万俵ないし三万俵程度の内需がふえまして、その関係で価格が高くなる。価格が高くなりますと、内需はかなり対応力があるわけでございますけれども、海外の需要はなかなかこれに追随できないということで輸出が減退をする。その輸出の減退分を内需がさらに食っていくということで、現状ではほとんど大部分が内需になっている。輸出は二万俵程度でございます。それで逆に輸入がふえまして、約三万俵ぐらい輸入している、こういう実態でございます。
  142. 小平芳平

    小平芳平君 この養蚕の問題ほど政府の見通しがまるきり逆に逆になった、長い目で見て逆になったものは珍しいくらいに、全く政府の見通しと逆に逆にいったのがこの養蚕だろうと思いますが、いかがですか。
  143. 池田俊也

    政府委員(池田俊也君) 確かに経過を追ってみますと、いまおっしゃられましたようなこともあるわけでございます。ただこれは今後の見通しにも関係いたすわけでございますけれども、三十年から三十三年ころ――三十三年ごろにちようど需要が非常に減退をいたしまして、約二万町の減反をしたわけでございますが、その後それが影響したという見方もございますけれども需要が非常にふえてきた、その一つの問題点といたしましては、実は化合繊との競合の問題があったわけでございます。ちょうどそのころまでに新しいいい繊維が出てまいりまして、従来生糸の需要先でありましたやや下級の衣料、たとえば、めいせんといったような、そういうようなものが化合繊に非常にかわったというようなことで、そういうような当初、そのころ考えておりました事態と違う事態が出てまいったと思うのでございますが、現状におきましては、絹といたしましては、絹固有の需要と申しますか、いわゆる高級な衣料というものの需要、それが非常に安定をして、安定しつつ増加をしている、こういう実態でございますので、まあ今後十年も、いま先生のおっしゃったあれからいたしますと、わからぬじゃないかという御指摘もあるかと思いますけれども、私どもといたしましては、かなり需要は安定をしている。ただ、それには条件がつくわけでございまして、価格が安定をする、あまり高い水準にならない、こういう条件がございますけれども、それさえ確保できるならばそういう従来のような見通しが全く逆になるというようなことはないというふうに確信をいたしております。
  144. 小平芳平

    小平芳平君 これも今後の見通しはむずかしいと思いますが、やはり行政としては、政治としては、ある見通しを立てざるを得ないような気がするのですが、そこで今後の目標として、国内需要を満たすということを中心に考えていくか、あるいは輸出を振興していくということを目標にして考えていくか、その点はいかがですか。
  145. 池田俊也

    政府委員(池田俊也君) 私どもの一応考え方といたしましては、やはり需要というものは国内だけでなしに、海外市場ということを確保することが需要の安定をはかるということに非常に必要なんではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。ただ、やはり内需は従来よりは傾向としてはややなだらかになるとは思いますけれども、今後やはり相当増加をする、こういう事態だと思いますので、まあ私どもとしましては、大体七割かあるいは八割ぐらいが内需、残りの二、三割が輸出、こういうようなかっこうをとれるならば、それが一番需要としては安定した需要ではなかろうかと、こういう感じを持っているわけでございまして、これは相当今後いろいろな面の努力が要るとは思いますけれども、そういうようなことで両方を確保していく、量的には内需のほうがはるかに大きくなると、こういうようなことではなかろうかと考えておるわけでございます。
  146. 小平芳平

    小平芳平君 この農林省の生糸の海外宣伝費が一億二千万円ついたと、大量輸入の実情なのに、海外宣伝費とは何事だと、そうしたら農林省は、既得権だからしようがないんだと、こういうふうに新聞に出てますが、これはどうですか。
  147. 池田俊也

    政府委員(池田俊也君) 確かにそういうような記事が出まして、私も読んだわけでございますが、私どもの海外宣伝に対する考え方は、いま申し上げた需給の見方ともつながりますけれども、やはりそういうような意味で、海外需要というのは極力確保していきたい。これは一たんひもが切れますと、また何年かあとに輸出をしたいと、状況が非常に思わしくなくなってきて、国内需要が緩和したために、輸出をしたいといいましても、なかなかそうはまいらぬわけでございます。そういうようなことで、私どもは実は、非常に国内需要が強くて、需給としてはかなり逼迫をしているときにおきましても、ある程度の数量の輸出は確保したい、あわせて絹に対する需要を増進をするという見地からの海外宣伝も、必要な限度のものは確保してまいりたい、こういう実は気持ちでいるわけでございます。既得権だから云々というようなことが何か記事には出ておったのでございますが、そういうような考えは毛頭持っておらないわけでございます。
  148. 小平芳平

    小平芳平君 そうだろうと思いますね。そういうふうに説明しなくちゃいけないと思うんですね。やっぱり既得権だからしようがないじゃなくて、やっぱり輸出の場合は、糸が切れちゃえば、ああ今度また新規開拓となるとたいへんだという、あるいはまた、この養蚕業そのものの安定のためには、やっぱ必要なことだと思うんですね。  そこで、総括的に養蚕業の見通しといいますか、共同化も進め、養蚕を現にやっている農家の将来について、どういうようなお考えを持っておられるかですね。要するに、現に養蚕をやっていると、いまは高く売れると、それが、先ほどちょっと言われましたけれども、農林省としては内需、外需ともに確保し、安定した方向へ持っていくということだと思いますけれども、やはり機械化、共同化――あれは非常に原始的な手数のかかる仕事なんですよね、大体が。ですから、それについてやはり養蚕経営家にとって見通しの明るいもの、かあったら、最後にお述べを願いたい。
  149. 池田俊也

    政府委員(池田俊也君) 今後蚕糸業発展をはかるという見地からいいまして、私どもは、特に養蚕の面では、一番大事なことは、生産性向上をはかることではないだろうか。まあ現在労賃水準がかなり毎年上がっているという不利な条件もございますけれども、しかしながら、省力の技術を特に従来してまいりまして、効果は相当あがっているように実は考えているのでございます。一例を申し上げますと、繭一キロ当たりに必要な労働時間でございまするけれども、これはちょうど十年ぐらい前には大体七時間から八時間ぐらいかかったわけでございます。それがごく最近におきましては、ちょうど半分ぐらい、四時間弱に実はなってきております。これはおそらく他の作物と比較いたしましても、かなり生産性向上は顕著なのではないかというふうに実は考えておるわけでございますが、こういうような傾向をさらに助長をするということによりまして、私どもは国内の生産をさらに増強してまいりたい、こういう考え方でございます。     ―――――――――――――
  150. 鶴園哲夫

    主査鶴園哲夫君) この際、分科担当委員異動について報告いたします。  ただいま、森中守義君が委員を辞任され、その補欠として前川旦君が選任されました。     ―――――――――――――
  151. 北村暢

    北村暢君 私は、この前の一般質問において若干残りました国有林野の作業員の労働条件の問題、それから生鮮食料品の流通関係の問題、二点についてこれからお尋ねいたします。  まず、第一にお伺いしたいのは、林野関係の作業員の雇用区分というものを就業規則できめておるわけでありますが、この就業規則できめている作業員の雇用区分というものは、どういう根拠に基づいて規定をしているのか。まず、就業規則そのものは、労働基準法のたてまえから就業規則をきめることになっていますから、それはいいんですが、そういう観点からして、雇用区分をきめたよりどころといいますか、これをまずお伺いしたいと思うのです。
  152. 片山正英

    政府委員(片山正英君) 作業員の身分につきましては、先生も御承知のように、国家公務員法上は人事院規則の八――十四ということで、「非常勤職員等の任用に関する特例」ということで、競争試験なり選考によらずに採用すると、しかしこれは非常勤職員ということでございますので、国家行政組織法十九条によりまする恒常職というものではないということでございますので、そういう形で非常勤職員として任用しておるわけでございます。  ただ、その際に、われわれとしては、やはりなるべく安定した形に持っていきたいということを念願しておるわけでございますが、季節の関係、いろいろな関係から必ずしもそれができないということで、常用作業員、定期作業員、それから月雇い、日雇いというような形に就業規則で定めまして、なるべく安定した方向に持っていくと、こういう方向を持ちながら、一応形としてはそういう分類をしてやっておるわけでございます。
  153. 北村暢

    北村暢君 非常勤職員については昭和三十六年の閣議決定で、非常勤職員の常勤化防止の閣議決定があるわけです。そうしますと、この閣議決定からいくというと、一体、現在の就業規則というものがその趣旨に合っているのか合ってないのか。林野庁が、いま長官のおっしゃるように、なるべく雇用を安定するようになんてかってな解釈をしてもらっちゃ困るので、そういうことだけで非常勤職員を常勤化することが可能なのかどうなのか。これは大事な点ですから、ひとつお伺いしておきたいと思うんですが、それと同時に、常用作業員の三十六年以降における、いわゆる定期作業員から常用化した人員というのは大体どのくらいあるのか。まあこまかい数字はいいですけれども、概略どのくらい常用化しているのか、この点ひとつお伺いしたい。
  154. 片山正英

    政府委員(片山正英君) 第一点の閣議決定の問題でございますが、御承知のように、三十六年二月二十八日に、常勤化防止の閣議の決定があったわけでございます。これにつきましては、われわれといたしましては、定員化すべきそういう性格のもの、あるいはそういう類似のもの、そういうものを常勤として雇うことはまずいということの決定でございまして、非常勤というものに対する制約ではないというふうに一応理解しております。  それから第二点の三十六年以降、定期から、あるいは月雇いから常用になった人数は幾らかということでございますが、私たちいま調べてまいりましたのは、四十一年から四十二年にかけまして約千名、いわゆる通年化の増加になったというふうに承知しております。
  155. 北村暢

    北村暢君 そうしますと、やはり私は法律論争で恒常の職であるかどうかということは非常に問題になるわけなんですが、あなたはいま恒常の職でないと、こうおっしゃる。ところが断定しにくい、私は非常に疑問の余地がある。それは国有林野事業というのは、歴史的には七、八十年の歴史を持っているのですね。そして直営生産事業ということをやっておりますね。その直営生産事業をやる上においては、根幹要員としていわゆる常用作業員というのは必要である。それからまた定期作業員と称するこれも、私はやはり根幹要員だと思うんですが、きょうはこれは触れませんけれども、根幹要員として必要な人ですね。それは国有林野事業の造林、伐採の直営事業をやっておるわけです。その中で常用作業員というのは、造林においても苗畑には一人とか二人とかその根幹になる人がいますね、常用という。それから伐木事業等においても、四国、九州、まあ東北でもおります。青森営林局管内にもおりますが、年間を通じて伐木事業をやっておるというところには、根幹要員としてやはり常用作業員、定期作業員というのがおるわけです。そのほかにやはり臨時的な作業員もおる。そういうことで七、八十年ずっと続いている事業でしょう。しかも、それには絶対欠くことのできない要員としておるものが、これがあなた、恒常の職でないと言い切れますか。それからまた、こういう人を非常勤職員として処遇していいかどうかということに非常に大きな問題があるでしょう。非常勤じゃないでしょう。非常勤職ということであなた方が処遇してきたこと自体が間違いじゃないですか。で、農林大臣は、十五年勤続だの二十年勤続だのと言って表彰しているでしょうが、その表彰状を返されておるでしょう。二十年勤続するような事業に携っているのに、親子三代でやってきている人がいるのに、これが恒常の職でないとか、非常勤などとかいうことで処遇していいのですか、これ。これは根本的に解釈が間違いじゃないですか、どうなんですか。
  156. 片山正英

    政府委員(片山正英君) ただいまの恒常職であるかどうかということでございますが、私は、国家行政組織法第十九条によりまして恒常に置く必要があるという職ということでございますが、その解釈といたしまして、昭和三十六年二月二十八日の行政管理庁の解釈の案が出ております。これは先生御承知だと思いますが、あらためて申し上げますと、原則として一年以上継続して置かれるもの、これはそのとおり、二番目として、あらかじめ定数を定め得るもの、この二つの条件が恒常職の内容でございます。したがいまして、ひるがえって山林の生産の実態を見ますと、やはり季節的に非常に違いがある、天候によっても非常に左右される、それから場所も転々としてやっぱり変わらざるを得ない。あるいはまた一年でやる仕事を、場合によると半年でもやろうとすればやれる性格のものというふうに、その恒常というものに当てはまる解釈はなかなかしがたいものであるというふうに、関係方面とも打ち合わせしまして、われわれは理解しているわけでございます。
  157. 北村暢

    北村暢君 それはそういう解釈を無理にせざるを得なくてやっている。それは事実です。それはあなた、そういう解釈がなければ非常勤ということにできないから。一年以上継続することは、これは間違いないですね、いま言ったとおり。ところが、その事業そのものは、とりあえず事業所一つの単位で見れば、季節的であったり、移ったり、改廃したりするでしょう。しかし一つ営林署単位、営林局単位で連綿として八十年間、直営生産事業を三〇%くらいのものはやっておるじゃないか。これだけ恒常の職にいるということは、なぜ解釈できない。無理にあなた方は日給制に置いている。それから、これは出来高制というもので、賃金体系がこれは違うというようなことで――恒常の職であったら定員の中へ入れなければならないから、定員の中にすれば、いまの通年でいけば月給制にしなければならない。日給制であり、出来高制であるから、賃金体系がそういうことであるから。恒常の職ということでいったならば、定員の中に入れなければならなくなるから、あなた方は無理してそういう理屈をつけている。そして行政管理庁にそういう解釈をさせて、そういうことになっているだけの話である。これは解釈の問題です。明らかに事業としては継続しているのです。これはあなた、一般の公務員の中にも、恒常的な職ですと断定できないものが定員の中に入っているものが幾らもあります。ただそういう意味からいって私は納得いたしません。  そこで、先ほど長官は、三十六年の閣議決定というものは、いわゆる常勤労務者に通用になるものであって、非常勤に適用されるものでないとおっしゃったのですが、それはどういう根拠でそういうことを言われますか。これは行管局長来ておりますか。
  158. 鶴園哲夫

    主査鶴園哲夫君) 来ております。
  159. 北村暢

    北村暢君 行管局長管理局長に、三十六年の閣議決定というものは三項、四項によって、三項、四項というのは大体あれでしょう。林野庁の常用作業員というものを対象にしてこれはできているのでしょう。いま長官の言ったのは、一項、二項はまさしくそのとおりだ。三項、四項は林野庁の常勤作業員を対象にしているのじゃないですか、これはどうです。
  160. 大国彰

    政府委員(大国彰君) この閣議決定の一項、二項は、特に二項は、これは常勤労働者の関係でございますが、三項、四項は、これはそのほかの非常勤職員に対する常勤防止化のための措置でございます。
  161. 北村暢

    北村暢君 そのとおりで、明らかにこれは林野庁長官の答弁は間違いだ、これ、あなたの解釈は。そういうことであなた解釈しているから、就業規則だなんというでたらめなことをきめて、そうして平気で五年も六年もほうってある。就業規則は、この閣議決定に違反しているのですよ。あなたのきめている就業規則というのは、大臣、これをちょっと責任を持って答弁してください。
  162. 片山正英

    政府委員(片山正英君) 定員外職員の常勤化防止という問題も前文にございますが、今後定員規制の対象職員と同種または類似の職員が定員規制の外に発生することを防止するというのが趣旨でございます。したがいまして、その定員内に当然なるべきような性格のもの、そういうものを防止する、定員外に発生することを防止する。したがって、そういう定員内になるべきものでないもの、いわゆる非常勤職員、これはその範疇外とわれわれは解釈するのであります。
  163. 北村暢

    北村暢君 あなたそんなこと言うけれども、それじゃあなたの常用作業員の中に、去年と一昨年、常用作業員の定員の中に入れているでしょう。機械関係作業要員とか何とかいうものは入れているのじゃないですか、これ。だからこれは定員の中に当然入ってしかるべきものが常用作業員の中におるのですよ。おることを認めるでしょう。しかし、ただ定員化といえば定員をふやさなければならない、しかし定員の中に入ることができる人でしょう。これは欠員があったら定員の中に入れるということはできるわけです。そういうことでしょう。そしてこの規定からいくと非常勤の外に、だからしたがって非常勤の職員というのは第三項によって将来はいなくなることになっているのですよ、これは。そして常用作業員の中に、四項によって現状に置いておるのです、定員外職員というものが、実際に常用のものはおるわけなんですね、これは。ならなかったのですから、定員の中に入らなかったのですから、三十六年までにまだ一万名くらいのものがおったわけですよ。おったのは四項でもって自動的に更新することが認められているのです。ところが三十六年以降は常用作業員はつくっていけないという規定になっているのですよ、閣議決定でなっているのです。ところが、さっきあなたの説明によると、定期から常用に千名以上、三十一年と二年で千名以上常用化しているのですね。常用化しているでしょう。それはやっちゃいけないことになっているのですよ、これは。この規定はいけないことをあなたたちはやっている。私はやって悪いことは言わない。実態はそうだからやむを得なかった。悪いとは言いませんが、この規定の厳密な解釈からいうとぐあい悪いですよ。行管長官どうでしょうか。それは、あなたのほうに協議があってあなたは了承したのですか、行管長官は。――だめだ、答弁しないというと、時間がないのだ。一時間しかないのに答弁しなければ時間が過ぎてしまう。だめだ、そんなこと。この就業規則、この点からいっても合わない。常用従業員というのは将来はあなた行管としては、これは非常勤職員であって好ましくないと考えているのですね。好ましくないと考えている。ところが、したがってこれは三項によりますというと、任用予定期間が終了した場合には、そのものに対しては引き続き勤務させないように、措置はさしてはいけないのです。しちやいけない。自動更新は会計年度の中で、二ヵ月過ぎて会計年度の中しか自動更新はできないのです。一年会計年度がこえた場合には同じ人間を使っちゃいけないことになっている、そういうことになっているでしょう。なっている規定なんです。したがって、三十六年以降は常用作業員というものはふやしちゃいけないことになっておる。ところがあなたふやしている。どういう権限に基づいてやったか知らぬけれども、ふやしている、事実。ふやして悪いとは言わないですよ。置かないと仕事できないですから、当然いいです。いいと思うのですが、ところが、この閣議決定からいえば、やはりまずいのです。これはそういう特徴のあるものなんです。したがって、就業規則には、常用作業員については、就業規則を読んでいただけばわかるのですけれども、就業規則では、常用作業員については二ヵ月更新はするということだけにしてあって、最終雇用期限の辞令書に記載明示することということですね。最終の期限というものについては常用作業員についてはあなた方、辞令書に書いてない。ずっと永久に使おうと思っているから。使っちやいけないのですよ。ところが、この規定からいくと、したがって、就業規則はこの閣議決定に合わせようとすると、就業規則を改正しなければならない。ところが、この就業規則をこのままにしておかないというと、林野庁は実は仕事ができないわけですね。したがって、この閣議決定の線には従うことができないわけなんですよ。できないわけです。ここに問題があるのです。定員の中には入れたくないわけですね。それかといって非常勤で置くというと、非常勤はなくなることになっている。常用作業員というものはなくなる。それじゃ仕事ができない。できるかというとできない。したがって、これは公務員制度上、常用作業員というものはいかなる地位を持っているのか、何も規定がないですよ。これはいいかげんなことでもってこれは処理しているのですね。非常勤職員じゃないです。実際は常用作業員というのです。常用ですから非常勤じゃないですよ、これは。十八年間も二十年間も続いて雇用しているじゃないですか。それでなぜ非常勤ですか。実態に合わないでしょう、これ。国有林にしかいないのです、こういう人は。したがって、特別な規定をしなければならない。この問題について、これは私は、行政管理庁とも、それから総理府の人事局とも、意見を聞いております。で、これは何とか結論を出さなければならない問題だと、こういうことになっている。したがって、この問題は、農林大臣、あなたの所管の、あなたの部下の職員なんだから、いいかげんなことでは困るので、大臣、あなたはこの問題についてどうされるのか。今後十分私は検討していただきたいと思いますが、その検討される御意思があるかどうか、これは大臣に答えていただきたい。
  164. 片山正英

    政府委員(片山正英君) ちょっとその前に、大臣の前に御説明いたしましてから。  先生御承知のとおり、われわれは、いまの常勤化防止というのは、先ほど申しましたように、定員内になるべきそういう性格のものが定員外に発生することを防止するということが趣旨であったと存じております。したがいまして、林野庁におきましては、それらの類似の職種は何かということになりましたときに、先生御承知のように、十二の職種はそれに類似するものである。したがって、そういう十二の職種については、今後そういうことはしませんということで守ってきておるわけであります。それで、その十二職種以外のものにつきましては、非常勤職員として、これは定員内という形じゃなしに、いわゆるそういう性格じゃなしに、雇用の安定という意味から、常用化を進めてまいっておるということでございます。いままでの経過は、そういうふうな解釈のもとにやっておったのでございます。
  165. 北村暢

    北村暢君 それはもう林野庁のかってな解釈で、そんなことは成り立たない。それはもう林野庁のかってな解釈ですよ。それは、常勤労務者というのは林野庁にもおったのですよ。常勤労務者、常勤作業員、それから常用作業員もおったでしょう。その常勤作業員というのは、いわゆる一般公務員の常勤労務者に該当するものなんだ。これは定員の中に将来入っていくべきものだとあなたはいま言っている。ところが、あなた方は俸給表も変えておるのだけれども、俸給表も一般の国家公務員は行政職(二)の俸給表でやっておる。(二)というのは、監視、用務職、それから技能職、これは一般でもって行政職(二)の俸給表の適用を受ける。ところが、あなた方の給与表によるというと、監視、労務職、技能職というのがありますね。これは定員内ですよ。それじゃ、技能職も、常用作業員も、同じ技能職じゃないですか。それで、どれだけ定員内に入れる入れないので差別がありますか。これはないですよ。あなた方はことさらに理屈をつけて、常用作業員の中でも班長的な伐採を掲示する者とか何とかいって区別をしておりますけれども、それはかってな区別であって、何にもそれは区別にならないのですよ、ならない。それは監督する者だけが定員内に入って、技能職そのものは、あなた方は、定員内にもあるし、定員外にもあるでしょう。だから、技能職というものは入れて悪いということは言っていないですよ。総理府の解釈でも、日給制だから、出来高制だから定員の中に入れないという理屈はないと、こう言っている。ないと言っている。給与体系の問題は、日給制を入れてはいけないなんということをどこにも書いてない。法律的に何もないんです。そういうことなんです。あなた方は給与体系の問題から入れないというだけの話であって、私は、そういう面からいけば、これは当然全部定員の中に入ってしかるべきもの。いまないのですから――その定員内か定員外しかないでしょう。非常勤では、これは実態に合わない。常勤なんです。常用なんです。そうでしょう。非常勤扱いするということは間違いなんです、これは。理屈つけて非常勤ということにしていますけれども、非常勤にすることが間違いなんです、これは。だから、定員内には入れたくないが、常用で、常勤で置かなければならないというのは、特異な一つの問題として、予算を出さなければならない問題なんです、これは。それを出していない。十把一からげに非常勤職員で片づけているところに問題がある。実態に合わないのです、これは。したがって、これは私は、時間がございませんから、大臣にひとつ、これは公務員制度上の問題ですから、こういう実態に応じた職員がおるということを前提に検討をしていただくということをやっていただきたい。どうですか、大臣検討されるか、されないか。
  166. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 私も、事柄が少し専門的でございますので、十分認識は持っておりませんが、非常勤職員に対する見解のちょっと相違があるような感じがいたすのでございます。そこで、私どもとしては、いずれにしましても、この常用の作業員の諸君御苦労されておって、それから実際上まあ年間を通じて相当の期間働くとか、長い期間働くとか、そういうことはわかっておるわけでありますが、これをどういうふうな待遇でいくかという改善につきましては、私どものほうも十分くふうはしてまいりたいと考えます。
  167. 北村暢

    北村暢君 処遇改善の問題は改善の問題で、非常に差があるのですから、いま常用作業員の中でも、機械関係要員は入ることに決意しましたね、林野庁は。同じ一気にできないのですから、五年なり三年なり何なりいまたった者が、片一方は定員の中に入る、片一方は入らない。同じ入るべき性格の者が常勤作業員の中に現実におる。入ったと入らないとで、あんた、給与上においても、休暇の問題にしても、何にしても、たいへんな差があるでしょう、これは。差があるでしょう。差があることは認めるでしょうね、これは。当然入るべきものを、あなた、林野庁のいままでとってきた措置がまずいために被害をこうむるわけですよ。したがって、私は、もう当然これは常用なんですから、非常勤と断定されるところに大きな差が出てくる。ところが、非常勤じゃないのです。あなた方は、その処遇上においては非常勤にしておる。仕事をやらせるほうの命令するほうからいえば、常勤的な扱いをしているのです。処遇上は非常勤、こんなむちゃな話あるんですか、あんた。使うときは常勤だ常勤だと言っていて、金を払う段になったら、あんた非常勤だから安くしていいんだと、こんなばかげたことをやっているから、あなた、納得しないのですよ。むちゃくちゃですよ、これは。仕事をさせるときは常勤でしょう、あんた。常用でしょう。そういう観点に立っている。金払うときは身分は非常勤だと、そんなむちゃくちゃな処遇のしかたというものはないのです、これは。これは七、八十年の林野の悪い伝統なんです。作業員というのは人間扱いしていないのです。人間扱いしていないところに、こういうことができている。人夫か何かだと思っているのですね。そういうことなんですよ。根本的に頭を切りかえない限り、この処遇の改善――いま大臣は処遇の改善をすれば問題が解決するようなことを言っておりますけれども、それじゃ解決しないのです。処遇の改善、もちろんやってもらわなければいけませんよ。それは定員内であるべき人がたまたま賃金体系その他で入れられないというだけであって、定員内と定員外のこの常用作業員というものは同じ待遇にすべきなんです、論理的にいって。そういうものなんですよ。だから、行政管理庁から言わせれば、これは定員内とか定員外とかいうことじゃなくて、そういう人がかりにおったとすれば、それは処遇上の問題で、行政管理庁の問題じゃございません、林野庁自身の問題ですと、こう言っている。だから、林野庁は処遇改善をやらなければいけない。いま大臣は、改善をやって差がなくなるように努力すると、こうおっしゃられた。それと同時に、私はやはり、非常勤職員で置くということはまずいです。これは常用作業員――常用となぜ言うか。それじゃ非常勤作業員と言ったらいいじゃないですか。なぜ常用作業員と言うんですか。非常勤だなんて、内容は非常勤で処遇しているんでしょう。それはいけないですよ。それは実態と合っていない。常用なんです。常用というのは常勤ということなんです。だから、そういう点で、この非常勤職員と断定するところに、恒常の職でないという理屈つけて非常勤と言うところに問題がある、間違いがあるんです。したがって、これは実態に応じた処遇をするように検討する必要がある。それは、その処遇改善なり何なりして、定員内と同じになれば、作業員は文句言わないんですから、それでもいいんですよ。しかし、いまのような形でいくというと、行政管理庁はこれを整理しようとしているのですから、そうじやなくて、林野庁どうしても必要なんだから、こういう人は。これはそういう意味で必要な人なんですから、二十年も三十年も親子三代続いて使うというのに、これは非常勤扱いでもって親子三代使うなんというのはふらちですよ。どうですか、大臣検討するということは言えませんか。あなた何としても検討するということを言わないが、やってもらいたい、これは。
  168. 西村直己

    国務大臣西村直己君) お話聞いておる間に、実態上雇用が継続しておる、これは御指摘のとおりだと思うのであります。ただ、事柄がいろいろな経緯からずっと起こっておるということにつきましては、私この時点においてまだ事態を明確にはつかんでおりません、これは正直に申し上げます。しかし、事柄が人事のことでございます。それによって生活されている方だということは、十分私は考えていかなければならぬ。そういう面から、私としても、待遇改善、待遇改善だけじゃいかぬ。非常勤というものじゃないんだ、常用ということは同時に常勤なんだ、こういう御趣旨のようです。しかし、こちらの長い、また行管その他の関係で特異な立場をとってまいった林野庁長官としては、非常勤の立場で待遇改善をつとめてまいりたいという。説が分かれております。その間におきまして、大臣として、十分事態を明らかにして、善処をするように努力をしてまいりたいというふうに思います。
  169. 北村暢

    北村暢君 この問題は、もうこの一問でやめますけれども、とにかく行政管理庁の考え方は、閣議決定の三項によって、非常勤職員は日々雇用されるとはっきりしていますね。これが林野庁の常用作業員に該当するということは、これは間違いないと思うのです。それは、この規定に基づいて、やはり二年間続けて、会計年度をこえて雇用を継続するということはやっちゃいけないというふうにしているんですよ。したがって、いままでに三十六年以前の人は残っておるけれども、三十六年以後の人は、そういう人を雇用してはいけないんだというのが趣旨なんですね。したがって、ずっと将来にわたっては、この常用作業員というのはだんだんやめたり死んだりしていなくなっちゃうんですから、三十六年以前の人は。そうすると、常用作業員というのはついにはいなくなるということになっているんですよ、そういう仕組みになっている。ところが、林野庁としてはそれでは困るわけですね、先ほど言ったように。この通達に違反をして、三十六年以降といえども常用化しているわけです。常用作業員を採用しているわけですね。採用しないとまた仕事ができない、そういう実態にある。そういう非常勤の職員は、行管からすれば、そういう人は、何もそういう人を置かなくたって、定員の中に入れていけばいいんじゃないか、欠員の補充で入れていけばいい。恒常の職でないと言っているのは林野庁であって、行政管理庁は恒常の職でないとは、そういうことはあまり言いません。定員の中に入れていって処理するならそれでもよろしいとこう言っているんだから――そういうふうに言っているんですよ。私はある事務官から聞いたのですけれども、そう言っているんです。ですから、この問題はやはり非常に林野庁だけにある特異な問題ですから、行管は定員管理やっているのですけれども、問題は公務員制度の問題でありますから。人事局来ておりますか。
  170. 鶴園哲夫

    主査鶴園哲夫君) 来ております。
  171. 北村暢

    北村暢君 人事局と参事官見えておりますから、ひとつこれは三者で協議をしていただきたい、協議をして検討をしていただきたいということを要望として申し上げておきます。  それからもう一つ大臣にお尋ねしておきますが、先ほど処遇上の差のあることは認められまして、そして改善をする、この地位の問題を検討する問題については、これは私はやはり正直に言ってちょっとかかると思うのですよ、非常に根本的な問題でありますから。したがって、その結論が出るまで私はやはり処遇改善はやってもらわなければいけない、こういうふうに思うのです。したがって、今後は、この常用作業員というのは非常勤職員だなんという観点でなしに、定員の中に同種のものがすでに入っているし、またそういう定員内の者と比較して当然均衡のとれた処遇をすべきである、こういうふうに思うのです。ただ、それは予算的に直ちに何もかにもみんな整理してしまうというわけにはいかないでしょう。その点は十分わかりますが、ひとつこの点は、大蔵省も見えていることですから、十分協議をして、処遇改善の方途を万全の処置をひとつとっていただきたい、この点について大臣からもう一度答弁をお願いいたしたいと思います。
  172. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 事態は、私も実は十分存じておらないのですが、漸次明らかになってまいりました。そこで、おそらく、退職の勧奨の割り増しとか、この間予算委員会お話しになりました祝祭日の給与の問題とか、そういうような問題を含めた意味で、待遇改善等もやれるものからやっていけと、それから地位の問題については基本的な問題があるじゃないか、この御指摘、それは時間もかかるであろうがと、その点につきましては、したがってもう少し時間をかしていただきたいわけです。公社の待遇改善については、林野が何といってもこういう仕事にたくさんの方をお願いし、また長い親子二代なり三代にわたってやっていただいておる方もあると思いますし、林野行政を進める上からいっても大事な仕事をやっておられる方々相当おられる、そういう意味で、われわれも、林野庁というもの、あるいは森林行政を進める上から、それを全体的に見まして、何とかして林野庁の、あるいは林野行政の特色というものをなるだけ入れるようにして折衝したい、おそらくこのことは、正直に申しますというと、単に林野だけでなく、他の五現業と申しますか、三公社にも共通する面があるのではないか、しかしまた林野庁の特色というものも十分関係省にも理解してもらうように努力してまいりたい、こう思っております。
  173. 北村暢

    北村暢君 まあ大臣から、十分その点考慮をされてやられるということですから、、いいですけれども、他の五現業にはこういう常用というのはないのですよ。どこの官庁見てもいないのですよ。林野庁だけにあるのですから、これはひとつ十分――もう他の五現業にあるのは全くの臨時的な職員なんです。それ以外ないんです。ですから、ひとつこれは、ほかのほうを見てなんと言ったって、ほかのほうに例がないんですから、林野庁独自でこれは判断しなければならないわけですからね。これはひとつその点十分やっていただきたい。  それから、三十六年の閣議決定したときの情勢と今日、国有林の労働者――国有林の労働者ばかりでなしに、林業労働者を確保すること自体が今日非常に困難になっているのですね。それで、三十六年当時と情勢が変わっているわけなんです。その点は、行政管理庁としても、この閣議決定をするときと情勢が違うということは十分理解しているようですから、そういう面で、この処遇を改善し、そして雇用を安定しなければ、将来に希望を持たせなければ、やめていってしまって作業員が確保できないという実態にありますから、この点をひとつ十分考慮していただきたいと思います。それじゃ、この問題はこれで終わります。  次に、生鮮食料品の流通の問題についてお伺いいたしますが、物価問題との関連で、生鮮食料品の流通問題流通の合理化の問題が非常に政治問題化してまいりまして、農林省としても最近の重点的な施策一つとして検討されているということについて、敬意を表するわけなんですが、その中で、これも三十六、七年かと思いますが、中央卸売市場法の改正があった際に、抜本改正をするということになっておりましたが、抜本改正までに至らず、中央卸売市場審議会というものを設けて、まあ法律改正でそれを設けて、そしてその審議会で今後抜本改正についても検討する、こういうことでやられてきて今日まできているわけです。すでに審議会等においても各小委員会等を設けて慎重に検討されてきているわけなんですが、その見通しですね、大体四十三年度には中央卸売市場法の抜本改正案が出るのではないかと、こりいうふうに言われておりましたし、またそのつもりで農林省も努力してきたようでございますが、どういう見通しに立っておられるか、この点をお伺いします。
  174. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 私ども、中央卸売市場の審議会等においても、いろいろ市場の問題について詰めてもらっておりますし、私どもまた事務的にも改正法の内容のそれぞれの重要な部分について検討をいたしておりますけれども、何せ市場と申しましても、卸し売り、仲買い、小売り、それぞれ業務上の分野の問題もございますし、最近の時代の変化に応じて、行政圏と流通圏というものが相当ずれてきておる問題でございますし、したがいまして、開設者だけが財政的な負担をすべきか、あるいはまわりの市町村も含めて財政の負担をすべきか等々、行政的あるいは財政的、また業務内容につきましても、基本的に大事な、またむずかしい問題がございますので、四十三年度中に結論を得るというふうには私ども考えておりません。むしろ、多少時間が延びましても、関係業者を十分納得さして法律を改正したほうがはるかにおさまりがよろしいでしょうし、またそれだけの検討に値する重大問題でございますから、私のいまの目算では、大体四十五年ぐらい、あと二年間ぐらい詰めてやれば何ほどかの結論が出る、こういうふうに考えております。
  175. 北村暢

    北村暢君 改正の内容等についても若干質問したかったのですが、時間がございませんから省略をいたしまして、転送問題買い付けの問題にしぼって御質問いたしますが、この転送の問題が非常にやかましく言われておるわけなんですが、したがってまあ農林省としてその転送について対策を講じられておるようでありますが、どうも市場が集散地化してきているということ、それから総合市場化が進んできておるというような点、そういうような点を理由にして、この転送はやむを得ないというような解釈をとっているようでございますけれども、私はやはり、転送というのは、あくまでもこれは例外であって、これが乱脈になりますというと、中央市場の公正な価格決定というものができなくなる。それからまた、迅速確実を要する代金決済というものが不確実、不安定になる、こういう問題が必ず出てくる。したがって、この集散地化あるいは総合化したために、転送というものもある程度やむを得ないというこの考え方、これは決していい結果にならない。あくまでもやはり私は、例外規定であるということで、厳重な監督がなされなければならない。そのために、転送については、開設者の承認かなければできないことになっておりますね。ところが、この承認が非常に乱脈である。かってに転送やっておいて、事後処理というようなことでやっている。農林省も転送というのはほぼ認めそうだからというので、大っぴらに転送をやる、こういう事態があるようですがね。どう対処されるのか、この点。
  176. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 転送の問題は、主として水産物に多いわけでございます。これは詳しく御説明するまてもございませんが、私ども転送はもう絶対的に全部悪いというふうにも思いませんが、無秩序あるいはルールなしにこれが行なわれるということは、確かに中央卸し売市場の公正な運営に支障がございますから、ここ一両年私ども、卸売市場の開設者、あるいは業者等に対して、やむを得ない転送について一定のルールをつくるようにという指導をいたしております。その結果、たとえば名古屋等におきましては、関係業者を含めて協議会をつくって、そこで認める数量について開設者が公的に介入する形でこれを認めるというふうにも動いているわけであります。東京についても、そういうルール化を行なうように、現在検討中でございます。私は、転送の問題は、結局経済的な必要に応じて生じたものであるけれども、根本的には、仲買人が強くなることと、それから地方市場が強くなることと、この二つによって私は相当程度解消される。また、私どもの市場行政としても、仲買人を強くすることと、地方市場を強くすることによって、とにかく荷物が大都市の中央卸売市場に一ぺんに集まって、そこから分化されるということがないようにしたいというふうに考えております。しかも、そういうことを基本的に行ないながら、過渡的にはある程度まで転送が起こるでありましょうから、それは一定のルールのもとに、まあ押え込めというと語弊がありますけれども、オープンの形で公正化をはかりたい、それが私ども考え方でございます。
  177. 北村暢

    北村暢君 この問題はですね、局長のおっしゃるとおりてす。私も全く同感です。それは集散地市場化すればですね、これは区域外に分化するということでですね、当然起こってくるわけです、集散地化すれば。したがって、これは、たとえばこの福岡の中央市場のごとく――あそこはまあ産地市場的な要素もあるわけです。したがって、その場合は、この地方送りの荷物は、福岡市内の流通するものとは、時間を分けて、大口でもって少数の仲買人でもってせりが始まっている。そして早い時間に、まあ三町半か四町ごろやって、東京、大阪へ出てくるわけです。しかし、これはあくまでも仲買いを通じてやっておりますね。荷受けが直ちに転送するということはやっていない。したがって、集散地が、仲買いが非常に力があるわけです。それで力がある。だからこれは間違いなし。ところが、東京はそう今日なっておらないわけですね。仲買いがいま大型化を進めているようですけれども、仲買いが大型化されてきて力が出てくるならば、これは荷受けが転送しないで、仲買いで事足りるような形になるのじゃないか。しかも、東京のあそこのところへ一度荷物を入れて、それからまた出すなんという、わざわざ混雑、それでなくても混雑しているわけですから。しかし、実際問題として、周辺の市場では転送をやらなければまた困るのも実情としてあることは、よく知っております。したがって、いま局長のおっしゃられたように、相手の転送先の市場が強化されれば、東京へわざわざ来たものを持っていかなくても、直接取ればいいわけですね。そっちが強化されることと、またかりに東京に入ったものでも、仲買いが力があれば、仲買いを通じてのこの地方へ出ていく分化というものは、これは当然仲買いの本来の業務なんですから、荷受けの伝送というのは荷受けの本来の業務じゃないのですから、そこをひとつ、私は、やはり観点をそこに置いて、今後ルールを設ける際においても、あくまでも暫定的な考え方で、いま局長のおっしゃられたような形で処理をしていただくということでいっていただきたいと思うのですね。そうでないというと、現実にあなた方が経理検査をやっておわかりだろうと思うのですけれども、転送先の代金が焦げつきになって、非常に荷受けの経営に大きな支障が出てきているという実情もすでに出ているわけでしょう。これは仲買いを通じてやればそういうことは起こらないわけですね。したがって、代金決済の不安定性というものが出てきて、市場の信用というものに大きく影響する、こういうことなんですよ。これは荷受けにとっても必要なことなんですね。それかといって、まあ荷受けがやらなければ、転送をやらなければ実際に因るから、いまやっておる。これに便乗する可能性がありますから、そういう意味でひとつ十分御考慮をしていただきたい。  それから次に買い付けの問題について、買い付けもこれはいろいろ審議会でも検討されているようです。で、私はやはり原則は、生産者、出荷者の委託が原則である。そして、せり入札ということを法律で規定しているわけです。で、買い付けば、私はやはりこれは例外があろう。ただ、品物によって、輸入品等について買い付けということが行なわれておりますけれども、この買い付けがまた、前渡金という形で非常にこれが乱脈になっておる。前渡金を渡す場合においては、一定の規制がなければならないですね。しかも、これが、長期にわたって二年も三年も輸入するものについて、商社に前渡金で渡しておる。かなり担保を取ったり何かしてやっているようですけれども、非常に荷受けの経営そのものに大きな影響を及ぼしてきておる。これは事実、そういう問題あるわけですね。したがって、この前渡金を渡す場合においても、開設者の承認を得なけれ、はならないことになっておりまするが、したがって、これについて一体どのような対策を講じておられるか。現実にいまたいへんな問題が起きておることは、事実皆さん御承知のとおりです。営業の問題でありますから、私はきょうは具体的な問題には触れませんけれども、よく承知されておると思うのですけれども、そういう点についてひとつ今後の方針をお聞きしたい。
  178. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 私は、卸売り市場の取引で、まあせりが原則、あるいは出荷者からいえば委託が原則であることは、当然でございますけれども、確かに輸入も、あるいは規格のはっきりしているものについて、あるいはまた特殊な商品について、買い付けてないと、荷物が集まらないという事態もこれはあるわけでございます。しかし、それがいわばほしいままな形でなくて、前渡金が出されて買い付けが行なわているということは、いま具体的には御指摘になりませんでしたけれども、最近でも輸入ものの水産物についてそういう事件がございましたことも、そのとおりでございますので、まあ荷主ごとに、あるいは卸売りごとに前渡金の限度をきめてやるように指導はしておりますけれども、前渡金は買い付けを行なう場合にだけ必ずしも限っておりませんから、買い付けと前渡金との関係を明確にすることもなかなかむずかしいわけでございますが、先ほど転送のところで申し上げましたと同じように、私は、それぞれ商売をやる上で取引があって生じたことでございますけれども、それを一定のルールに乗せて行なうことが必要だということの一つとして、この買い付けあるいはそれに伴う前渡金の問題も処理いたすようにいたしたいと思います。
  179. 北村暢

    北村暢君 前渡金の問題ですね、前渡金もいいんですけれども、その輸入業者の輸入業務に対して、二年も三年にもわたっての前渡金、事実あるようですね。しかもそれが、予定の集荷するものの前渡金が何割くらい出している、出すのを限度に見ているのか、大部分のものを自分の輸入するのを輸入の代理みたいにやるんですから、輸入業者と同じことになるんですね。それが人をかえてでありますから、非常に不確実であるということが、今日のいまの問題を起こしておる原因だと思うのです。したがって、これは前渡金というものについても、開設者はどういう程度のものにどういうふうな前渡金を渡すかというようなことは、承認になっていますよ。では承認する際に、それじゃ開設者の東京都なら東京都がどれだけ相手の信用度なり事業能力なんというものを調べて前渡金を出すことを承認しているのかどうなのか。これは全く形式的に調査も何もしないで前渡金を出すことを承認している、形式的なめくら判を押してるというのが実態ですよ。それはまた当然荷受けとしては、相手の商社の信用度なりなんなり、または商売ですから、自分が見るのは当然のことなんです。しかしながら、開設者がそれだけ承認制をとっている限りにおいて、それだけやはり監督しなけりゃならない立場にあるわけですね。それが乱脈になっているということ、全くの形式的な承認制度になっている、ここに問題があるわけです。したがって、局長のおっしゃられたように、何らかのルールを考えるということは、これは確かにまあ転送についてはルールということを指示しておりますけれども、買い付けについてはルールということをまだ指示はおそらくしてないんじゃないかと思うのですけれどもね、そういう問題が現実に起こりましたからね。したがって、これは慎重にひとつ対処していただきたい。それからもう一つは、これはもう具体的に何回も委員会でもやったことがありますから、具体的に申し上げますけれども、江東の現在の分場の問題についてですね、荷受けが分場の、当時配給所でありましたか知りませんが、それの配給所の出先ですね、その営業権を――営業権と言っていいか、確実に言えば営業権かどうかわかりませんけれども、まあ私ども営業権と、営業というもの、だと思っているのですが、それを売り渡して譲渡したわけです。そしてみずから配給所に入ることを放棄したわけですね。そうしたところが、しばらくして――しばらくっといったってだいぶ年がたってますが、今度再度その分場に入場することの申請を出してる。この問題が出ておりまして、前後のいきさつということを言えば、かつて委員会でもやったことがあるのですが、これは慎重にやるということで、ところが、最近聞くところによるというと、東京都ではこれを、申請を認可するというような空気が非常に強いようです。前後のそういういきさつというのは、まあ自然消滅のようなもんだということでやろうとしているようですが、   〔主査退席、副主査着席〕 商法二十五条によりますというと、営業権を譲渡した場合には、その譲渡した者が二十年間同一市内でもって同種の営業ができない。それは譲り受けた者の権利というものを保護してるわけですね。そういう規定があるにかかわらず、まだ二十年もちろんたっておりません。そういうことが起こりつつあるのでありますが、この点についてどのように対処せられるのか、指導せられるのか、東京都を指導されるのか、この点ひとつお伺いしておきたいと思います。
  180. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) この問題も長いことの懸案でございまして、商法二十五条の関係につきましての御意見も、私はそういう問題が確かにあると思います。これはどうも営業権の譲渡をしたかしないかということについても多少の争いがある様子でありますけれども、この商法二十五条の解釈から言っても、この契約の内容をつまびらかにいたしませんと、二十五条の解釈としてすぐどうこうということは言えない問題でございますから、これは法律の問題としては十分検討いたすつもりでございます。これは農林省、あるいは農林大臣の卸売人許可の問題ではございませんで、むしろ江東市場の卸売人に対して葛飾分場の施設を利用させるかいなかという、いわば知事権限のことでございますから、私ども、市場の問題として関係業者の納得を得られるように、東京都で十分慎重に配慮するようにということでいままで指導してきたわけであります。私の基本的な考え方といたしましては、東京都としてはそういう形で問題を処理すると同時に、分場自体どうも狭い所で、施設も不十分でございますし、商いも少なくて、そこではたして公正な価格が決定され得るかどうか、多少疑問があるわけでございますから、分場の問題の処理としてこだわらないで、むしろ東京都の新しい江東方面の人口増加等々から、新しい市場を開設することによってこの問題の基本的な解決をはかるほうがむしろ本式ではないかという気もいたします。
  181. 北村暢

    北村暢君 その点は商法二十五条の精神は、これは十分御理解いただけると思う。その営業権を確実に譲渡をしたかどうかということはあれでしょうけれども、この精神は十分御理解いただけると思うのです。そういう意味でひとつ今後検討されるということですから、まあ、あやまった方向に行かないように、農林省として、まあこれは直接の農林の権限ではございませんけれども、行政指導の意味においてやっていただきたい、このように思うわけです。それからもう一つ最後にお伺いしたいのは、現在法案で出ております流通の近代化資金の問題でございますが、この近代化資金について、そのうちの卸売市場近代化資金の点について、特に仲買の近代化の事業、これについて、いわゆる仲買の近代化のための施設に融資をする、こういうことのようでありますが、私は仲買の近代化という事業は、仲買は、御承知のように、施設といっても、これは施設はほとんど東京都ですから、ここに言われている冷蔵庫だの、あるいは計算センターだの、配達センターだの、こういうものは当然でしょうけれども近代化事業そのものについては、やはり大型化をするということが近代化の政策としての主要な使命である。これは農林省も従来そのように仲買の大型化ということを指導してきたわけですね。その際私どもは、指導指導と言っても、金も出さないで、ただ大型化せい、大型化せいと言ったって、それはなりません、現実に。もう二年も三年も指導してきたけれども、大型化はさっぱり進まないわけですね。そこで私は、その大型化のために何らかの制度金融なりなんなりすべきであるということを主張してきたのですが、ようやく流通近代化資金というのができたのです。今年初めてできたのですね。そういう点から言って、仲買の大型化のための資金、これは設備に関連しましょうけれども、多くはこれは経営を合併したりなにかしたりする場合、あるいは買収したりする場合、相手の債務を整理するとか、あるいは転業資金を貸さなければならん。いろいろの点で大型化そのもののために、設備だけでなしに、大型化のために資金が必要になってくるという面について、これも近代化資金ですから、流通近代化資金で設備をするとは言っていないが、設備資金でなければなかなか名目的に出せないからそういうふうになっているでしょうけれども、私は、そういう意味における近代化資金ということが、大型化ということを含んで融資の対象になる。したがって、農林漁業金融公庫の業務方法書にも運用問題としてそういうものをある程度含められるものなのかどうか。法律の解釈なり業務方法書についての方針なり、これをひとつお伺いしておきたい。
  182. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 仲買人の営業権の譲渡に対する融資をこの卸売市場近代化資金の中へ含めるかどうかという問題につきましては、現在関係省と相談をしている最中でございますから、まだ結論的に申し上げる段階ではございませんが、方向といたしましては、私は当然中央卸売市場の取引の公正あるいは運営の適正化をはかるためには、仲買人強化ということが必要でございますから、仲買人の大型化をはかるための営業権の譲渡をこの資金として見ていきたい。もちろん、ただ営業権を譲渡するような形で仲買人がまだ仲買人として残っているような事態はまずいわけでございますから、完全に営業から離れるとか、物的施設の譲渡も当然伴うとか、そういう条件は当然、私どもつけなければいかぬと思いますけれども、仲買人の大型化のために営業権の譲渡をこの資金で処理をしていきたいという気持ちで現在相談中でございます。
  183. 北村暢

    北村暢君 大臣、これはきちっとやはり法律解釈上先ほど業務方法書の運用の問題と法律解釈の面で、私は法律の解釈はやはり明らかにしておいていいんじゃないかと思うのですが、解釈上では、仲買の近代化というものは大型化というものが入っているのだということで解釈はしておいて、そして運用の問題は設備資金ということが主体ですから、そのところで運用の問題としては交互にどういうふうに対処するか。業務方法書によって、これがほかの面とも関連があるから、関係省――やはり大蔵省なり通産なり関係あるでしょうから、その点はこれから折衝して、農林省の考え方を認めてもらうということをしていいと思うのですが、法律の解釈としてはやはりはっきりしておいていただきたいと思うのです。
  184. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 仲買人の業務に必要な施設の法律的な解釈といたしましては、単に物的施設ばかりでなしに、無体財産権等を含むというふうに解釈としては考えております。
  185. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 仲買人の大型化は、さきの衆議院の農水委員会でも強い要望がありまして、私たちも当然のことだと考えまして、処理してまいりたいと思います。
  186. 北村暢

    北村暢君 終わります。
  187. 瓜生清

    瓜生清君 大臣に一点だけ質問いたします。きょう農林関係予算大臣説明書の中に、農政の当面する課題についていろいろ幾つかの項目をあげて述べておられますけれども大臣としては、この中でどこに一番重点を置いた施策をやろうとされておるのか、その点をひとつお伺いしたいと思います。
  188. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 実は、これ自体が必ずしも十分農林省なりあるいは私のあれを尽くしているわけじゃございません。特に農業の面につきましては比較的述べておりますが、水産あるいは林業の面につきまして比較的短く書いてはございます。しかし、当面、何と申しましても大きくわれわれが国会各位並びに国民各位に御理解を願ってやってまいりたいのは、昨年の秋以来推進してまいりました農業構造改善に対する具体的な指針というものを出し、それをことしの予算で、あるいは法律にいろいろ御提案申し上げております構造改善上の問題、これを中心にして、日本農業近代化なり、生産性向上、ひいては農業関係従事者福祉――福祉と申しますか――所得向上、こういうものをはかってまいるところに中心を置いてまいりたい、こういう趣旨で申し上げたわけであります。
  189. 瓜生清

    瓜生清君 私はもう大臣にはありませんから、中座されてもけっこうです。  そこで、食糧庁にお伺いしますが、いま例の日本通運の問題が相当世論の批判を浴びておりますが、その中で、いわゆる米の独占輸送という問題がございますが、その問題についてはいまどういうような話し合いなり措置がとられようとしておるか、その点を。
  190. 大口駿一

    政府委員(大口駿一君) 米の輸送に関しましては、食糧管理制度が始まって以来日本通運を相手方といたしまして運送契約を締結して今日に至っておるわけでございまして、このよりな運送契約を結んでおりまする根拠といたしましては、需給調整を全国的な規模でやります場合に、全国的な組織を持っておる運送人として最も適格性があるということで日本通運に対する契約を結んで今日までまいっておるわけであります。  昨年の暮れに、私どもとしましては、従来の日本通運のみを米麦の輸送の輸送人としておることに対しまして、新たに全国通運という会社、すなわち新たに通運免許を持っておりまする会社の全国組織として生まれておりまする全国通運も何らかの形で米麦輸送に参加をさせようという方針のもとに実務者の間で現在研究をやっておるのでありまするが、このことを考えました一つの動機と申しますか、理由は、食糧の需給状態が戦争中並びに戦後のような非常に急迫した状態から現在はだいぶん緩和いたしておりまするので、いわゆる緊急輸送という必要性がだいぶん昔と比べればゆるやかになっておるということが第一点。それから第二点といたしましては、運輸省において通運業者を育成をするという方針のもとに、日本通運のほかに、通運免許を持った業者を育成をするという通運行政を進めておられることも考え合わせまして、私どもとしましては、単なる荷主であるというのみの見地からではなくて、やはり国の機関としてできるだけ公正な立場で米麦の輸送を担当させるということから、能力に応じて全国通運にも若干参加をさせる道を開くということを実務的に研究させておるわけでありまして、できるだけ早く結論を出してその実施の緒に移したいと思って、現在おおむねその実務者の研究が完了しかけておる段階でございます。  そこで、実務者が研究しておりまするおもなポイントとしましては、契約の形をどういうことにするかという問題が第一点。第二点は、運賃の支払い方法なり代金授受を両者の間でどうするかという問題、それから第三、これが一番大きな問題でございまするが、日通以外の業者がどの程度の割合で業務に参加をするかという三つの問題か大きな問題でございまして、いずれ実務者同士の技術的な研究の結果が固まるのを待ちまして、大臣の御指示を得た上で最終的な結論に運びたい、かように考えております。
  191. 瓜生清

    瓜生清君 その実務者というのは具体的にどういうメンバーです。
  192. 大口駿一

    政府委員(大口駿一君) これは日本通運では実際に食糧の輸送を担当いたしておりまする課長並びにその課員、それから全国通運におきましては、全国通運のたしかあれは常務という役柄だったと思いますが、それと、食糧庁におきましては、実際に輸送を所管をいたしておりまする業務第一部の部長並びに課長並びに担当官、こういうことでございます。
  193. 瓜生清

    瓜生清君 私ちょっとそこに問題かあろんじゃないかという気がするのです。ということは、食糧庁は、言うなら荷主の側、それからマル通なりあるいは全国通運というのは運送する側、いまこれほど大きな批判を浴びている問題を関係者だけで協議するということ自体少しおかしいんじゃないかというような気がするのです。ということは、もっと公正な第三者の意見を聞くというような、そういう手段というものが必要じゃないかというふうに感じるのですが、その点に対する配慮というものはあるのかないのかお聞かせ願いたいと思います。
  194. 大口駿一

    政府委員(大口駿一君) いま申されておりまする、これほど大きな批判があるときにということでございまするが、私ども、従来の日本通運との米麦運送契約は会計法の規定に基づいて随意契約によってやっておりまるが、その支払う運送賃の算出の方法は、毎年一年間の運送実績を運輸省の定めまする公定料金、たとえば、入出庫賃の場合は倉庫業法に定める入出庫賃単価、それから駅出しの料金であります場合は、通運事業法に定めます通運料金、鉄道は鉄道の切符で実費を払っておりますし、それから船を利用いたしまする場合には日通が、船会社に入札をさせしました落札価格で払っておりますし、また港の作業につきましては、港湾事業法に基づく一定の認可料金を使っておりますので、ほとんど大部分のものが認可料金を基礎にして算出をした全国プール単価でやっておりますので、運賃が過大に支払われておるのではないかということに対しましては、私どもは従来とも万全の措置を講じておるつもりでございます。たとえば、運送賃をできるだけむだにしないという意味で、全国の運送の結びつきをできるだけ合理的にするという意味で、米につきましては昭和三十八年から、麦につきましては昭和四十年から、いわゆる電子計算機によりますLP計算というものに基づいた運送計画を立てまして、それによって運送させるとかというようなことで、運送賃の節減ということについては、従来とも十分研究を重ねて実施に移しておるつもりでございます。  それから、契約の形の問題につきましては、私は、実際問題といたしまして、ほとんど認可料金で占められておりまするようなものを実際に競争入札に付するということは、あまりに実益がないということも実態上の理由でありまするし、また、会計法に基づきまする「予算決算及び会計令」の規定に基づいて随意契約をやっておりまするので、従来とも運送賃の支払いの実態なり、やっておりまする形については、会計検査院等でいろいろお調べをいただき、また御注意によって是正をすべきものは是正していくということでやっておりますので、今回全国通運に参加をさせて、やりますることにつきましては、私どもは、運送賃を節減をするという見地では、必ずしも全国通運を参加をさせるということではなくて、むしろ通運業界全体の育成という運輸省の政策に呼応いたしまして、できるだけ公正に機会を与えるという趣旨で参加をさせるということで考えておりまするので、私どもは、まず実務的にそれがどういう形でできるかということの研究が先であるということでやっておるわけでありまして、ただいま御指摘の、第三者の意見を聞くべきでないかということにつきましては、私どもは必ずしもその必要がないとは思っておりましたけれども、しかし、いろいろそういう御指摘でありますれば、全く官僚独善におちいらないような、結論に至りまする前にそのような配慮を加えることを研究いたしたいと思います。
  195. 瓜生清

    瓜生清君 大体わかりましたが、私、やはりそういう点、官僚独善なんていうことは言いませんけれども、やはり重大な問題として起こっておるわけですから、できる限りこの利害関係の当事者だけがそういう話をするという行き方じゃなしに、いま私が意見を申し上げましたような形をとられるのがいいんじゃないかということを強い意見として申し上げておきたいと思います。  そこで、この全国通運と日本通運と大体二団体に委託するわけですが、目下検討中ということであるけれども食糧庁としては原案が何かおありなんですか。たとえば、全国一律の、まあ二神並列であるとか、あるいはその一定の地域に個々にやらせると、日本通運の場合は全国組織ですからいいわけですけれども。それからまた、両者をこう比較して、そのある時期はこうするとかいうような、そういう構想といいますか、原案といいますか、そういうものはあるのですか、ないのですか、お尋ねします。
  196. 大口駿一

    政府委員(大口駿一君) 必ずしも一定の原案を持って事に臨んでおるわけではございませんが、まず契約の形の問題から申し上げますと、私どもは、政府の食糧輸送に関する契約はやはり商法に基づく運送契約という形でやっておりまする関係上、契約の相手方でありまする運送業者はやはり通運事業法による免許を有する運送人であることが法律上の必要条件ではなかろうかと思っております。その点で、全国通運の構成メンバーであります個々の地方の運送業者はそれぞれ通運免許を持っておられるわけでありまするが、全国通運という会社そのものは通運免許を持っておられないのでありまして、日本通運と全国通運とをそれぞれ並列をさした二本の契約にするということが現在の段階ではちょっとできにくい事情が実は一つございます。  それから、シェアの問題でありまするが、ただいま申されましたように、一定の地域に限る方法、時期で限る方法、いろいろあろうかと思いまするが、これはもう少し研究が煮詰まったところで最終的に結論を出したいと思っておりまするが、これを考えまする基本は、およそ政府の大事な食糧を輸送いたしまする場合に、積み出し地における運送人と、それから、目的地における受け取る運送人と、違った運送人が扱うという形は、途中の事故その他の責任が十分追及できないということがありまするから、これはやはり発地も着地も同一運送人が責任を持つ体制でやり得る範囲ということが当然な基本的な制約になろうかと思いまするので、そういうことを念頭に置きつつ、将来シェアその他をきめていく一つ基本ではなかろうかと思っております。
  197. 瓜生清

    瓜生清君 食糧庁はそれでけっこうです。  次、畜産局の方、お越しになっておりますか。ちょっと牛乳のことでお伺いしたいのですが、何か聞くところによると、最近いわゆる原乳業者と、それから乳業会社との間に値上げの問題について話し合いが行なわれておるということを耳にするのですが、そういう事実があるのかないのかということが第一点。それから、あるとすれば、関係当局としてどういうような情報を持っておられるのか、その点を伺います。
  198. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) 御承知のように、牛乳生産者が生産いたしました生乳の販売につきましては、いま二つの制度がとられておる。一つは加工原料乳とそれから飲用乳。加工原料乳につきましては不足払い制度によりまして補償価格というものをきめまして、政府が、乳業者が払いました残りの不足分を、補償価格との差額の残り分を政府が事業団を通じまして補給金として出すというたてまえをとっております。それから飲用牛乳の価格につきましては、これは生産者と乳業者とが交渉によりまして協議をいたしまして価格をきめるということになっておるわけでございます。大体毎年度一回取引価格をきめるというのが現実慣行でございます。そこで昨年度の末から生産者と乳業者とが四十三年度の取引価格について話し合いを進めておるというふうな状態でございます。いままで聞いております範囲では、数回交渉をいたしておるわけでございますけれども、なかなかまだ妥結点に到達するというふうな状態ではない、なお依然として交渉が続けられておるというふうに承知をいたしておるわけでございます。
  199. 瓜生清

    瓜生清君 私の調べたところでは、牛乳は昭和三十五年、三十六年、三十七年と、三十五年の場合十四円が、一円ずつこう毎年上がっていっておるわけです。三十九年に十八円に値上がりしてから去年の四月まで約三ヵ年間いわゆる市販の牛乳というものの価格が据え置かれたが、去年それが二十円になったわけです。そこで私は伺いたいのは、確かにそういう交渉をやっておって、そして、いわゆる自由企業ですから政府がそれに対して強い介入をするということはできないにしても、市販の牛乳についていままでの経過を見ておりますと、どうも上がるような気配がしてしょうがないわけです。そういう見通しはいかがですか。
  200. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) お話しのように、昨年十八円のものが二十円に上がったというふうなことになっておるわけでございます。その前は三十九年でございますか、三年たって上がったというふうなかっこうになっております。御承知のように、牛乳の生産につきましては相当合理化は進んでまいっておるわけでございますけれども、何としましても、労賃その他諸物価の値上がりというものがございますので、生産者の生産費もある程度上がってきておるという実情にあると思います。それからメーカー段階あるいは小売り段階でございますけれども、メーカー段階につきましては、競争の結果かなり合理化が進行しておるというふうに承知をしておるわけでございます。小売り段階につきましては、御承知のように、わが国におきましては配達制でございます。基本的には配達制がとられております。そこで労賃の値上がりというものがかなり大きいというふうなこともございまして、全般的なそういった労賃その他の物価の値上がりのもとにおきまして、やはりある程度は値上げをせざるを得ないということは考えられるわけでございます。ただそれでは四十三年度はどうかと、こういうことの御質問だろうと思うのでございますけれども、現在生産者とメーカーとが交渉いたしておるというふうな段階でございますので、これがどういうふうな形になりますか、現在のところ、にわかに判断いたしかねるわけでございますけれども、全般的な空気といたしましては、できるだけ値上げをしないようにというふうな空気が一般にありますことは事実であろうというふうに思っております。
  201. 瓜生清

    瓜生清君 現在市販の牛乳が一本二十円、その原価構成を見ますと、生産者価格が九円六十六銭、たいへん数字がこまかくなりますけれども、そして乳業会社の経費が三円三十四銭、卸価格が十三円になるわけですね。それに小売り店のいわゆる販売費というものが七円ぐらいついて、トータル二十円になる。そこで私が値上がりするんではないかという危険性を感じますのは、いまあなたも御指摘になったように、言うならば、一本の牛乳でも配達する。変なたとえだけれども、わずか二十円の牛乳でも一々各家に届けているわけです。比喩が悪いけれども、七十円のハイライトを、電話をかけて一箱届けろという制度にはなっていないわけです。そこで、おっしゃったように、人件費の高騰というのが必ずこれは起こってくる。しかも従来は、新聞の、何といいますか、配達する人であるとか、あるいは牛乳の小売り店につとめている人だとか、まあいわばそういった階層の人たちの賃金が非常に低かったわけです。だから、これはやっぱり上げていかなければいかぬと思うのです。そのことが、今後どうしてもやっぱり小売り価格の訂正というところに結びついてこないと、乳業会社だって合理化しているでしょう、あるいはまた生産者のほうもやっているでしょうけれども、私はこの賃金の問題というのはばかにならないと思うんです。そういうことからしますと、まああなたはいま、多分ことしは値上げしないという方向に行くだろうというような判断のようだけれども、私はどうもそれが信じられないというふうに、これは私の主観ですけれども、思うわけです。そこで、そういうようなものは、確かに農林省のほうとして上げるのはやめろと、こういうふうな指示は行政措置としてできないと思いますが、何かのサジェスチョンというようなものは従来の場合も与えてこられたと思うのです。今回の場合にも、かりに、どうもこれは値上げになりそうだという場合に、一体どういう態度を農林省としておとりになるのか、それを聞きたいと思います。
  202. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) 従来市乳価格につきましては行政指導価格というのをつくっておったわけでございます。昨年から、たとえば国民生活審議会でありますとか、そのほかの意見がございまして、指導価格を従来のように行なうことは適当でないという御意見が非常に強かったわけです。そういうことにかんがみまして、行政指導価格を設定するということはいたさないという方針にいたしたわけでございます。そこで、まあ自由に形成される価格ということになるわけでございますが、したがいまして、生産費が上がりコストが上がってくるということになってまいりますと、これについて値上げを抑制するということもなかなかむずかしい問題であるというふうに私たちは考えております。非常に不当に値上げがされるというような場合におきましては、これはまあ別途の問題であろうかと思いますけれども、正常な状態におきまして値上げが行なわれるということを阻止するということはなかなかむずかしいというふうに思っているわけであります。私たちといたしましては、むしろコストをなるべく上げないようにするというふうなことに指導の重点を置くべきではないかというふうに考えておりまして、四十二年度から小売改善モデル事業というものを始めまして、これに対しまして助成を行なう、あるいはまた小売り業者の合理化に資しますために、新しく生鮮食料品の流通近代化の資金をつくりまして、それによりまして合理化を促進するというふうなことをいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  203. 瓜生清

    瓜生清君 その市販の牛乳については、これから消費量もどんどん伸びていく、そういう傾向にあると思うんですが、指導価格をとるべきではないという根拠は一体どうなんです。
  204. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) 指導価格をとりますと、要するに、競争が制限される。したがいまして、合理化をいたしまして、消費者に安くサービスをして供給するという努力がなくなる、そういうふうなことで、やはり競争原理というものがあったほうがよろしいというのが、指導価格制をとるべきでないという意見の根拠であるというふうに思っておるわけであります。
  205. 瓜生清

    瓜生清君 しかし、問題は、指導価格を幾らにするかというところにポイントがあるわけであって、競争の原理と言えば、自由経済の中だから、その考え方はわからぬわけでもないけれども、牛乳のように、私がいま指摘したごとく、これから消費はぐんぐん伸びていく、あるいは学校給食にも適用される、そういう時代なんですからね。二十円なら二十円、二十二円なら二十二円という値段を科学的な根拠に基づいて分析すれば、私は、自由競争のよさというものを阻害する結果にならない、むしろ、それをやらないから、あるいは人件費が上がったとか、いや政府の助成費が足らないとか、そういう理屈をたくさんつけて、値上げの方向へ持っていくんですよ、これは。だから、そういう点は、私はむしろ、それはある一定の時期までですよ、いつもいつもそういうことやれないでしょう。また、牛乳のみに限定してそういったことをするということは、これは行政の行き過ぎかもしらぬけれども、いまのいわゆる牛乳の生産なり消費なり、あるいは価格なり、それからまた、余ったものは何とか始末しなきゃ腐っちゃうという、そういう特殊性なり、なまもの、そういったことを考えると、私は、どうもそういう指導価格をするのはおかしいという論拠が少なくとも今日ただいまの時点じゃ合わないじゃないか、やっぱりそういう考え方に変わりありませんか、もう一度だけ、くどいようですが、伺います。
  206. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) いま先生も御承知と思いますけれども現実には二十円で売られている牛乳もありますし、十九円もあります。十八円もあるわけです。これはやはり競争によりまして、サービスする、そこで、できるだけ合理化をして安い価格で届けられるものは届けるというふうなことから、そういうふうな形が成立していると思うわけです。したがいまして、一律に指導価格を設定をいたしますと、そういうふうな安くできても安くしないで、指導価格に固定をしてしまう、ここでそれだけ合理化の努力を怠るということも考えられるわけです。そういうふうな点から、現段階におきましては、やはりまだ合理化の余地があるというふうなことを考えますと、競争原理によりまして競争して合理化をするというふうなことが適当ではなかろうかというふうに判断をいたしておるわけでございます。
  207. 瓜生清

    瓜生清君 私は、きょうもう時間の関係もあって、これ以上議論をしませんが、ただ、牛乳というやつはわれわれの生活の中へ今日では大きく入ってきているわけですから、どうか、いわゆる農林行政の中で牛乳が大衆品となっておるということをよく御存じだと思いますから、値上げをしなくても済むような方法を強力に講じてもらいたいということを要望して終わります。  それから次の問題は、農業改良普及員制度というのがございますね。これについて簡単にひとつわかりやすいように説明してもらいたい。
  208. 森本修

    政府委員(森本修君) 農業改良普及員制度というのは、御案内のように、農家に対しまして科学的な技術なり、あるいは経営的な問題を普及するといいますか、教育をするというために置かれている制度でございまして、普及員の資格は、これは県の職員であります。ただ、普及員制度は、国と県の共同の事業というたてまえになっている。したがいまして、国におきましても、県に置かれるところの普及員に対しましては、それ相当の助成をしているということであります。現実に普及員がおりますところの場所は、各県に農業改良普及所というのがございまして、そこに普及員が駐在をして、それぞれ現地に出向いで活動をしているというのが、簡単に申し上げますと、概要でございます。
  209. 瓜生清

    瓜生清君 私、これは農家の人に聞いたんですが、何か広域普及所というのと一般普及所というのと、二種類あるそうですね。そうなんですか、その点どうですか。
  210. 森本修

    政府委員(森本修君) まあ、ものの言い方はいろいろあると思いますが、従来は普及所というのが数にいたしましても二千から千五、六百というふうな形で置かれておったわけですが、前はもっと数が多かったと思いますが、最近はできるだけ担当の地域としては広く、しかし、また、そこに置かれる普及員としては、できるだけいろいろな技能を持った人を多く集めるということで、普及所の広域化というのを推進しているわけでございます。そういう形で出てまいりました普及所をいわゆる広域普及所というふうに呼んでおります。従来のような形で置かれているのを一般の普及所と称しているわけでございます。
  211. 瓜生清

    瓜生清君 専門技術員というのがありますね。これをいわゆる農業試験場に返すという計画があるそうですが、事実かどらか、お聞きしたいと思うんです。
  212. 森本修

    政府委員(森本修君) 試験場に返すというふうに言われますと、たいへん語弊が出てまいります。私どもが四十三年度から、実は専門技術員は、できるだけ試験研究の関係と緊密な連絡をとり、かつまた、主要な農業地帯にできるだけ改良普及員と一緒になりまして、農家に指導をしやすいような形で、県内のしかるべき場所に駐在をするというふうなことを推進をしたいということになっております。もちろん、専門普及員が全部が全部そういう形にはならないわけでありますが、必要な人員については、さようなことでやっていきたいということを言っております。その人が由張りますところの場所は、原則として県内にありますところの試験場なり支場なりといったようなところへ実際は出張りまして、そこでひとつ前線の活動をやっていただくというふうに思っているわけであります。決して専門技術員を試験場に返すというふうなことばで表現せられるようなことをやろうとは思っているわけではございません。
  213. 瓜生清

    瓜生清君 これは農政局からもらった資料なんですが、その専門技術員の数というのは、昭和四十一年、四十二年、四十三年、ほとんど変わっておりませんですが、それは何ですか、ふやすというような計画があるのかないのか、伺いたいと思います。
  214. 森本修

    政府委員(森本修君) 別段、専門技術員の全体の数をふやそうということでやっておるわけではございません。実際、専門技術員が現実におります場所は、御案内のように、県庁に実はおるわけなんで、で、県庁におったのでは、いま言いましたような試験研究機関との連携なり、あるいは主要な農業地帯に対する実際の活動なりということが不便でありますので、まあ駐在をするといいますか、現実におる場所を、県庁からそういったしかるべき場所に移して、もう少し活発な研究活動なり試験研究機関との緊密な連絡をはかれるようにしたい、そういう趣旨でございます。
  215. 瓜生清

    瓜生清君 それは私はちょっとおかしいと思うんです。なぜかといったら、結局、ことしの予算説明書にも書いてありますけれども、いわゆるいまの農政の当面する問題点を解決するために、これはもう一番最初に農業生産基盤整備農業技術開発普及の促進ということが麗々しくうたわれておるんです。それがいわゆる農業構造改善というものをこれから、さっき大臣もおっしゃいましたけれども、強力に、しかも、そこに力点を置いて進めていくということをおっしゃっておるのに、四十一年から人間が一人もふえないと。それは公務員削減というような、そういう別の面もありますけれども、そういったことは一体どうなんです。矛盾しておりませんか。局長いかがですか。
  216. 森本修

    政府委員(森本修君) 数がふえればたいへんけっこうなことでありますけれども、全体の財政その他の事情からいきますれば、そう希望どおりにはまいりません。そこで、私どもは、できるだけ専門技術員の質を向上するなり、あるいは活動を機動的にするということで、質と活動の効率化といいますか、そういうことによって、できるだけ一人の人が多くの働きができるというふうなことに力点を置いてやってきたし、また、今後もそういうことで対処したいと思っておるわけでございます。
  217. 瓜生清

    瓜生清君 それは通り一ぺんの答弁であって、実際こういうふうな専門技術員が足らない現地では、こういう声が強いんです。しかも、いまは、農林省の専門技術員よりは農協の指導員のほうが力があるという批判さえあるんです。だから、確かに予算の制約がある。あなたのおっしゃるような質の問題もある。そういう制約があることはわかりますけれども、政府がこの広範な農業改善の事業というものを強く推し進めていくというその際に、三年間に全然人がふえないという、こういうことでは実際に仕事になるのかならないのか、それを案じておるわけです。その点を私は、何というんですか、時間がもう来ましたからやめますけれども、よく考えてもらわないと、言うならは、昔の古い頭の人たちが専門技術員になっているという批判もある。それから、その人たちにものを頼むよりは、農協のほうがよっぽどましだと、こういうことは農民の間で公然の事実としてささやかれておるんです。ですから、その点に私は大きな配慮を加えてもらいたい、こういうふうに思うんです。これは答弁要りません。  それから、もう一つの申し上げたい点は、この専門技術員というのは、何かそういうことの指導ばかりですか、行政事務をやっておるということを聞いておるのですが、そういうあれはあるのですか。その点だけはひとつ答えてください。
  218. 森本修

    政府委員(森本修君) 専門技術員は、先ほど言いましたように、農家のほうで現実に当面しておりますところの技術的な諸問題を、できるだけ試験研究機関に取り次ぎまして、そこで試験的な解決をしていただくということ、また、新しい試験研究の結果、技術が生まれましたならば、それを農家のほうにできるだけ受け入れやすいような形で編成がえをしていくといったようなこと、そういうことと、普及員に対する教育指導といったようなことが使命であります。したがいまして、私どもとしては、できるだけ他の行政事務ではわずらわせられないというふうなことで、県庁を督励指導いたしております。あるいは現実には多少そういうことはあるかもしれません。しかし、それは何といいますか、趣旨としては沿わないわけでありますから、できるだけそういうふうなことがないように指導していきたい。  なお、数の問題がありましたけれども、できるだけ私どもとしては、御質問の趣旨にもございましたように、現在の技術員の問題は、技術員自体の素質をあげてまいる、また、できるだけ新しい技術を身につけていただくということが差し迫った課題であろうというふうに思っておりまして、そちらのほうが問題を解決するための優先的な処置であるというふうなつもりで取り組んでおるわけであります。
  219. 瓜生清

    瓜生清君 これで私、終わりますが、最後に申し上げたいのは、このいまの農業改善普及という、こういう行き方については、これは非常にその方法としてはいいという共感を呼んでいるわけです。ですから、農業のいわゆる高度化ということに関連して、経営的な立場、あるいは経済的な立場、そういうものを農村に浸透さしていく、そのことについては非常に私はいいことだと思うのです。だけれども、そのアイデアだけがというと語弊があるけれども、ぐっと先行して、それに対する人間なり予算的な裏づけというものが一歩おくれをとっておる、こういう状態であるということ、よくこれはあとで調べていただけばわかると思いますが、調査をしてもらって、そういうふうなアンバランスの形にならないような指導を農林省当局でやってもらいたい、そのことを言って、私の質問を終わります。答弁要りません。
  220. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 きわめて簡単に二点ほどお伺いしたいのであります。  第一の問題は、米価審議会が一月以来御承知のような経過をたどりながら、現在なお何と申しますか、きわめて不確定な立場に立っているわけであります。大臣、御苦労されておると思います。私はこの機会に、米価審議会の問題に触れるつもりはありません。ただ、米価審議会は、申すまでもなく、生産者米価なり消費者米価、米価に属する事柄を審議のたてまえ、対象としておるわけであります。それはそれでけっこうだと思うわけでありますが、最近の新聞によりますと、財政制度審議会ですか、食管制度全体にわたって審議検討するということが報ぜられておるわけであります。もちろん、財政制度審議会ですから、財政の硬直化の問題をほぐしていく上において、食管制度の問題を検討することが必要だろうという見地から、そういうことが取り上げられておると理解をするわけであります。それはそれでけっこうなことで、私として、とやかく言う気持ちはありません。しかし、言うまでもなく、食管制度は単に財政の硬直とか財政の観点からのみ――財政というものは食管制度の上に大きな立場を占めますけれども、それで今後を判断していくという筋合いのものではなかろうと思うのです。一般農政立場はもちろんのこと、将来の日本人口食糧の問題にもつながり、日本の社会構造経済構造全体にも及ぶ非常に広範な実態に、すでに現在の食管制度はなっているわけですから、これを基本的に検討するとなれば、おのずからしかるべき仕組みが必要ではなかろうかと、かように思うわけですが、すぐにどうこうということを私は期待するわけじゃありません。米価審議会の問題もさることながら、それに触れる必要はないのでありますが、食管制度全体について、それを検討するといいますか、そういう情勢に相なれば、どういうふうにそういう点を大臣としてお考えであろうかということを第一に伺いたいのです。
  221. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 梶原さんは非常にこの点は御造詣が深い方でありますが、農林大臣として私もその点についてお答えしたいと思うのであります。  実は、食糧を中心にした問題、一つは価格の問題として大きな問題がございますし、それから、それから来る諸般の問題が、あるいは食管全体の問題をどうしたらいいかという議論を巷間あるいは一部強くされる方々もあるわけでありまして、私どもも、その論議の経過等は聞いております。特に財政面から、たしか財政制度審議会でございますか、大蔵省で諮問機関としてつくっている中に、部会を設け、地方財政、それから食管、公共事業等、部会を一つの部会にして扱うというふうに私どもは報道で知っておる段階であります。ただ、食管制度そのものは、ただいまお説のように、単に財政だけの観点だけで論ずるのでは事足りないことは、もうお説のとおりでございます。もちろん、財政の面からこれを解明していくことも必要があるかもしれませんが、同時に、食管制度自体国民のいろいろな面に非常に深い関連を持つ。国民経済全体の中に、農業の面あるいは社会入構造の面、国民経済全体の中で非常なウエートを持っている問題だけに、私どもとしても、この問題の扱いは慎重に扱っていかなければならない、これが私の姿勢でございます。  そこで、当面は私としては、いずれにしても、本年度の米価決定というものは、ある時期にはやらなければなりません。それを、諸般を勘案いたしまして、食管の現在の根幹というものを守りつつ、食管制度の運用については改善合理化を加えていくということは、当然われわれの任務として考えてまいりたいと思うのでございます。私のほうの審議会は、したがって、政府といたしましては、米価審議会というものが運用がされました暁におきましても、農林省設置法に基づくあの法の精神に従って御諮問申し上げて、御意見等を伺ってまいりたいと、こういう考えでございます。
  222. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 当面私は、ただいま大臣の言われたことであろうかと私も思います。ただ、相当有力なと申しますか、財政制度審議会におきまして、いろいろ食管制度の基幹にふれる事柄が論蔵、検討される。農林省にありまする米価審議会は、結果、どういう構成になるかは別といたしまして、これは現行食管制度における米価を対象にするわけであります。で、米価のあり方等につきましての相当今度の予算の編成の姿からいいましても、いろいろスライド制その他が検討されるでありましょう。それはそれなりに一つの結論が出ることでありましょう。しかし、おそらく、そういうふうな性格の米価審議会でありましても、いろいろな客観情勢その他から、単に米価の審議だけで、何といいますか、論議が行なわれていくかどうか、若干の疑問を持つものであります。米価審議会の問題には触れないと申しましたけれども、前農林大臣が一月に新しい構成をやって、毎月審議をしていくという際に、一般からも、私は誤解であったと思いますけれども、単に米価のみならず、広く食管制度の問題をやるのではなかろうかという観測が行なわれたわけであります。私はそういうことはないと思います。そこで、いろいろの、米価審議会として、単に米価だけじゃなしに、いや間接統制がどうこうとか、いろいろの論議がないわけではありますまい。これは即座に諮問しないけれども、おのずからそういう論議も展開されることはあり得るだろう、相当そういうことが混迷をもたらす結果にならぬとも限らないのであります。私がお伺いしたいのはそれじゃないのでありまして、御承知のように、昭和二十八年から九年にかけましては、内閣に、吉田総理のもとで食管問題の相当規模の調査会が設けられまして、これは一年以上かかったと思います。農林大臣が幹事役で、これは保利さんでしたけれども、おやりになったこともあると思います。三十六年から七年にかけまして、御承知のように、河野さんが農林大臣のときには、これは非公式でありましたけれども、食管制度全体についての検討といいますかが行なわれたのであります。したがいまして、それはいつになるかわかりませんけれども、やはり政府自体としてこの問題を検討するというふうな時期と、また、それに適当した審議というものが必要になるのではなかろうかというのが私の質問なのであります。すぐにいま設けるということは、これはおそらく適当であるまい。やはりそういう情勢とそういう時期が必要である。いまその時期だということを私は言うつもりはありませんけれども、何らか、しかし、このままでは、これはまあ将来のことだから、にわかに断定はもちろんできませんけれども、食管制度の根幹を堅持する――私は大臣意見を同じくしますけれども、堅持をする堅持をすると言いながらも、実態は堅持できない実態にもうすでになっていくということも全然ないというわけでもないような感じがします。そうなったときは、農政全体の立場からいいましても、また、食糧管理の立場からいいましても、非常に思わしくないことになる。その間、今度の財政措置どうこうというわけじゃありませんけれども予算編成の上において、財政制度審議会方面の意向が、それがどうこうというわけじゃありませんけれども、やはりスライド制の方向が適当だ、補正予算は組まないのだというようなことが、結果において、何といいますか、食管制度のあり方というものをそういう面からきめてしまうというような結果に今回はなりつつあるように思われるのであります。そういうことでは、農林行政といいますか、農林大臣立場からいって、いかがであろうかという感じがするものですから、お伺いしたわけであります。いますぐどうこうというわけじゃありませんけれども、やはりそういう面での用意といいますか、心がまえとしては、やはり食管制度を堅持するというもとにおきましても、考えていくことが必要であろうかと、こう思うわけであります。御答弁をどうこうというわけじゃありません。  それから第二の点は、御承知のように、昨年の産米が異常な生産高でありまして、長い目で見まするというと、食糧の需給の度合いというものは、これは常に変化をする性質のもので、ある時点におきましては、相当過剰な時代が続く、ある時点においては、不足の情勢が続くということを、過去も繰り返してきましたし、将来もおそらくそうであろうと思います。したがって、ある時点になりますと、また窮屈な情勢にわれわれは直面することも避け得ないことだと思いますけれども、当面、こういう異常な需給の情勢に直面いたしますると、先はどうこうと、将来少なくなることがあるであろうというだけでは、これ、ちょっと始末ができないほどの私は需給の情勢であろうと思います。おそらく、これはことしの米作の結果が非常に大きな作用をするでありましょう。もしことし、昨年ほどでないとしましても、相当豊作だということになりますと、そういう情勢のもとにいかに食管制度を堅持するかは、たいへんなことであろうと。私にはどうしても案がない。もし相当、作が悪くなりますと、これまた相当ものごとを考えるのに考えやすいと思いますけれども、なかなか――かりに平年作、普通でありましても、われわれの直面しておる需給情勢の大きな変化は、これはこれまでにない事柄だと私は認識をしておるわけであります。  それに関連するわけですけれども、数年来ケネディラウンドの問題がいろいろと検討されました。ちょうど昨年の予算審議の最終段階でいよいよ煮詰まってまいりまして、宮澤長官も急速行かれたわけであります。そのときの問題は、前からありましたけれども、ケネディラウンドに関連をいたしまして、先進国といいますか、農産物の輸入国であっても開発途上の国に対して食糧援助をするということであります。それを義務づけるかどうかということが問題であったと記憶いたしております。われわれの国の食糧状況からいって、義務づけをすることは適当ではないというのが、大体当時のわれわれの考え方であったと思います。しかし、一面、何らかできるならば援助をしてもいいじゃないかという考え方も一部にはあったと思います。私個人としては、食糧援助もこれはできる限り考えたほうがいいじゃないかという考え方を当時も持っていたわけであります。大体長い懸案もまとまりまして、国会におきましても、国際穀物協定が審議されておるわけであります。内容が二つに分かれて、従来の小麦協定と新しいケネディラウンドの関連から生まれました食糧援助協定ですか、この二つのものが、一つの形が二つに分かれて、現在、国会でも検討されつつあるわけであります。わがほうといたしましては、これまでのいきさつもあり、食糧援助協定ですか、その必要な条項については留保して草案には署名したようであります。これが条約の形でどういうような関連を持つか、いずれこれは外務委員会等でずいぶん検討されると思います。それはそれでいいのでありますが、この国際食糧援助協定に基づきまする条項に関連いたしまして、農林大臣はどうお考えになるであろうか。もちろん、形は条約でありますので、こういう問題に対する行政の所管といいますか、権限としては、これは外務大臣とか経済企画庁長官ということであるかもしれませんけれども、小麦協定にいたしましても、食糧援助協定にいたしましても、その内容は何といたしましても、農林大臣のこれは責任に帰する事柄である、かように私は思うわけであります。したがいまして、率直に言って、外務大臣に聞いても始まらぬ問題であると、内容につきましてはですね、そういう感じもしまして、この機会に大臣の御意向を伺いたい。経過等については、長官なり局長、適当にひとつお話しいただいてもけっこうであります。
  223. 西村直己

    国務大臣西村直己君) ただいま米が需給緩和している、それに従って、あるいは米の輸出、あるいは少なくとも先般のケネディラウンドの際における食糧援助協定の考え方に従ってそういうものを扱ったらどうかというような御趣旨のように御質問の御趣旨を受け取っているわけであります。私も、実はこれは大臣立場で念頭にあるのでありまして、現在の需給の緩和の中で、どういうふうにしてこういう問題を検討したらいいか、実は外務関係にもこういう問題について下相談はやってもらうようにはしております。ただ、国内米というものを外国に出すという場合において、非常に研究すべき課題が幾つかあると思います。これはもう御存じのとおり、一つは、いかなる価格というような問題が出てまいりますし、それからもう一つは、いろいろな他の条件、それから特に日本の国内産米というものがそれぞれの国、あるいは、その輸入国に対して品質あるいは嗜好、こういうものとうまくマッチし得るか、それから今度は、それのいろいろな輸送、保管、いろいろな形の問題もついて回ると思いますので、われわれとしては、やはりこれは研究をひとつ食糧庁のほうでもしてもらいますし、同時に、関係の省でも研究はしてもらう、こういうふうに考えておるのでございます。
  224. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 もう一つ、それに関連するのですけれども、これもこの国会審議されておる問題ですけれども、例のわが国の発展途上諸国に対する経済協力基金ですね。あれの改正が御承知のように、新しく対象を広めまして、消費物資まで対象に入れる計画であります。消費物資に対しても必要な資金面の協力をしようということであります。この消費物資は単に消費物資であるので、私の判断では、当然に食糧が入ってもしかるべきだと、かように見ておるわけであります。私、そのほうの説明意見もまだ聞いておりませんけれども、ひとりぎめに実はしておるわけであります。農林省あるいは農林大臣のほうでは、どういうふうにお考えになっておりますか。
  225. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 農林経済局長から説明申し上げます。
  226. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 海外経済協力基金法の一部改正案がこの国会に提出されております。まだ国会審議を受けておらない段階のようでございますが、政府提出案の解釈といたしましては、本邦からの物資の輸入に必要な資金の貸し付けの物資の中には、当然食糧も含まれ得るというふうに理解をいたしております。
  227. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 これからは私の希望であります。  私はまだ行っておりませんけれども大臣行かれたかと思いますけれども、御承知のように、晴海でアメリカのフリーマン農務長官自身が来られて、相当規模のアメリカ農産物のディスプレーといいますか、展示が行なわれた。終戦以来今日まで、アメリカとしては、小麦等を中心にしながらずいぶん日本の市場を開拓してこられたと思うのです。アメリカとしては相当犠牲を払ってこられたと思うのです。そのこと自体は、私はとやかく言う筋はないので、当然のことであり、アメリカの立場に立てばけっこうなことであると思います。また、わがほうとしても、食糧不足のときから今日まで、相当の利益といいますか、まああったわけであります。おそらく将来もあるであろうと思います。けっこうなことだと思っております。ただ、今度の国会の総理の施政方針演説でも、日本世界第三の工業国だということが施政方針に入っております。そのとおりでありまして、これももちろん異存がない、けっこうな喜ぶべきことだと思います。アメリカは世界第一の工業国であって、世界第一の私は農業国だと思います。米の輸出のことを言いますと、大臣もいま言われましたように、それは向こうの消費に向くかどうか、品質が違うとか、価格の段差が大きくて、それでは問題にならないとかいうことで一蹴されるのが最近の情勢であります。しかし、日本がいわゆる後進国時代、明治から今日まで、どれだけ日本米を海外に出すことに努力をしたか、それは日本がちょうどいまの発展途上にある国と同じであったからだと言われればそれまででありますけれども、ずいぶん努力したと思います。相当出したと思います。これは統計に示すとおりであります。古い話じゃありませんけれども、御承知のように、昭和八年は大豊作でありました。ちょうど去年と、レベルは違いますけれども、初めての七千万石台に乗って大騒ぎをして、農林省自体は倉庫もないと言って騒いだ年であります。あの時分に初めて農林省はロンドンに駐在官制度を設けました。なぜ駐在官制度を設けたかといえば、ヨーロッパ大陸に内地米を売ろうというのでありました。伊藤佐君――なくなりましたけれども一が任命されて一年か二年か知りませんけれど、向こで努力をしたわけであります。明治以来、ヨーロッパ人はずいぶん内地米を食ったのであります。なるほど価格は現在高い。それはそのとおりであります。しかし、これは食管制度の運営の上において、非常に生産者価格に重点が置かれてきた私は一つの結果であると思います。普通であれば、これだけの大豊作であれば、価格は当然に下がるべき性質であるべきであったと思います。私、下がっていいということを言うわけではありません。一般の市場――マーケットプライスというのが戦前確立されて、量とか、そういうものと全然別に生産者価格というのが形成されているのが現在の実態であります。だから、むずかしいということもよく私は承知をいたしております。しかし、私は、日本の米作――米というものは、少なくとも自由諸国の中ではトップだと思うのであります。アメリカよりもはるかに――インドは、ちょっとあれは別でわけがわからない。中共さんは御承知のような性格ですから、よくわからない。その他の米産国の中では私は断然トップの国だと思う。これまでもたとえば、そういう方面との間の中間的な米の交流の機関を、ライスバンクをつくろうとか、いろいろな構想もありました。それもけっこうだと思います。率直に言って、輸入するだけが能じゃない。第一流の米の国からいえば、技術援助もけっこうだ。しかし、余裕があれば出していいじゃないか、そういう方向に持っていくことがやはり農業政策という点からいっても正しいのじゃないか。ヨーロッパにしても、フランスにしたって、ドイツにしたって――まあドイツは少し別にしても、工業の面からいいましても、やはり大きな先進国でしょう。しかし、やっぱり相当の輸出をしておるのです。イタリアだってそうです。日本だけがなぜ、いや品種が違うとか、値がどうこうだからだめだと初めからきめてかかることに間違いがありはしないかと思う。私はこの前、晴海でアメリカさんのパーティーがあったときに行ったのですよ。ぼくは、そのうちにアメリカに日本農産物のディスプレーをやると、これはものによっては可能だと思います。しかも、東南アジアにしても、中近東にしても、食べるものが、主要食糧かあり余っておるわけじゃ決してない。だんだん窮屈な状況になりつつある。幸いに、日本は米がとれていくわけであります。そして一般財界方面では、経済方面では、これは非常に無理をしてやっているのだ、そんなもの減らすなら減らして、加州米でやったらいいだろう、その身がわりには、ひとつ何か自動車か何か出したらいいだろう、一つ考え方ですけれども、やはり農政立場からいって、できるものはひとつ伸ばしていって、そうして国際的に価格維持ができるように努力すればなるであろう。その努力も何もしなくて、輸入のバランスを合わしていくという消極的な態度であれば――麦がそのとおりであります。トウモロコシもそうであります。それから大豆もそうであります。数年前、アメリカの大豆のディスプレーが東京の町で行なわれましたね。私は行ったんですよ。若い女性連中がたくさん来ておりました。赤ん坊の最良の栄養品は大豆であると書いてある。見てみると、きな粉なんですね。ああいう日本の女性は日本で大豆がつくられているということも知らぬだろうと思うんです。こんなことでいいだろうかという感じをそのとき非常に受けたわけであります。幸いに、ことしは米が多い。これはこなしようがないと実は心配しているわけです、国内で。しかも、今度の食糧援助協定にいたしましても、金で出してもいい、あるいは物で出してもいい。選択の自由はまかされておるわけであります。金で出すくらいであれば、物で出したらいいでしょう。それから経済協力基金にいたしましても、消費区域に出して、純粋のコマーシャルベースの形をとるかしらぬけれども、実質的には相当援助でありましょう。かれこれ考えれば、そういうものに積極的に、余って始末にあぐむようじゃ困るものを活用していくということをまずお考えいただいたらどうであろうか。そこには技術上いろいろな問題があるということは重々承知いたしておりますけれども、まず、そういう点に農林大臣はじめちょっと前向きになって御研究をいただきたいということが、私の希望であります。よろしくお願いします。
  228. 任田新治

    ○副主査任田新治君) 以上をもちまして農林省所管に関する質疑は終了したものと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二分散会      ―――――・―――――