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1968-04-13 第58回国会 参議院 予算委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月十三日(土曜日)    午前十時二十一分開会     —————————————    委員の異動  四月十三日     辞任         補欠選任      大森 久司君     宮崎 正雄君      任田 新治君     西村 尚治君      斎藤  昇君     津島 文治君      鈴木  力君     前川  旦君      矢追 秀彦君     北條 雋八君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         西郷吉之助君     理 事                 北畠 教真君                 剱木 亨弘君                 近藤英一郎君                 内藤誉三郎君                 加瀬  完君                 鶴園 哲夫君                 小平 芳平君     委 員                 内田 芳郎君                 大谷 贇雄君                 岡本  悟君                 梶原 茂嘉君                 小林  章君                 櫻井 志郎君                 津島 文治君                 中村喜四郎君                 西村 尚治君                 船田  譲君                 増原 恵吉君                 宮崎 正雄君                 八木 一郎君                 山本茂一郎君                 山内 一郎君                 吉武 恵市君                 岡田 宗司君                 木村禧八郎君                 瀬谷 英行君                 田中寿美子君                 千葉千代世君                 戸田 菊雄君                 野上  元君                 羽生 三七君                 前川  旦君                 森中 守義君                 原田  立君                 北條 雋八君                 宮崎 正義君                 片山 武夫君                 春日 正一君                 山高しげり君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  赤間 文三君        外 務 大 臣  三木 武夫君        大 蔵 大 臣  水田三喜男君        文 部 大 臣  灘尾 弘吉君        厚 生 大 臣  園田  直君        農 林 大 臣  西村 直己君        通商産業大臣   椎名悦三郎君        運 輸 大 臣  中曽根康弘君        郵 政 大 臣  小林 武治君        労 働 大 臣  小川 平二君        建 設 大 臣  保利  茂君        自 治 大 臣  赤澤 正道君        国 務 大 臣  木村 武雄君        国 務 大 臣  木村 俊夫君        国 務 大 臣  田中 龍夫君        国 務 大 臣  鍋島 直紹君        国 務 大 臣  増田甲子七君        国 務 大 臣  宮澤 喜一君    政府委員        内閣法制局長官  高辻 正巳君        内閣法制局第一        部長       真田 秀夫君        人事院総裁    佐藤 達夫君        人事院事務総局        給与局長     尾崎 朝夷君        総理府人事局長  栗山 廉平君        総理府恩給局長  矢倉 一郎君        総理府特別地域        連絡局長     山野 幸吉君        総理府青少年局        長        安嶋  彌君        行政管理庁行政        管理局長     大国  彰君        行政管理庁統計        基準局長     片山 一郎君        行政管理庁行政        監察局長     諸永  直君        防衛庁長官官房        長        島田  豊君        防衛庁経理局長  佐々木達夫君        防衛庁装備局長  蒲谷 友芳君        防衛庁参事官   鈴木  昇君        防衛施設庁長官  山上 信重君        防衛施設庁総務        部長       財満  功君        防衛施設庁施設        部長       鐘江 士郎君        経済企画庁調整        局長       赤澤 璋一君        経済企画庁国民        生活局長     八塚 陽介君        外務省アジア局        長        小川平四郎君        外務省北米局長  東郷 文彦君        外務省経済局長  鶴見 清彦君        外務省経済協力        局長       上田 常光君        外務省条約局長  佐藤 正二君        大蔵政務次官   二木 謙吉君        大蔵省主計局長  村上孝太郎君        大蔵省主税局長  吉國 二郎君        大蔵省国際金融        局長       柏木 雄介君        文部省初等中等        教育局長     天城  勲君        文部省大学学術        局長       宮地  茂君        厚生省薬務局長  坂元貞一郎君        厚生省社会局長  今村  譲君        厚生省保険局長  梅本 純正君        農林大臣官房長  檜垣徳太郎君        農林省農林経済        局長       大和田啓気君        農林省農政局長  森本  修君        農林省畜産局長  岡田 覚夫君        食糧庁長官    大口 駿一君        通商産業省貿易        振興局長     原田  明君        通商産業省繊維        雑貨局長     金井多喜男君        労働省職業安定        局長       有馬 元治君    事務局側        常任委員会専門        員        水谷 国一君    参考人        日本銀行総裁   宇佐美 洵君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十三年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十三年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十三年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) ただいまより予算委員会を開会いたします。  昭和四十三年度一般会計予算昭和四十三年度特別会計予算昭和四十三年度政府関係機関予算。  以上三案を一括して議題といたします。  これより締めくくりの総括質疑に入るのでございますが、その取り扱いにつきましては、委員長及び理事打合会協議いたしました結果、お手元に配付いたしました質疑通告表の要領により取り運びたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  それでは、質疑に入ります。鶴園哲夫君。
  4. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 三木外務大臣、夕ベおそくお帰りになりまして御苦労さまでした。今度のこの第三回東南アジア閣僚会議に御出席なさって、簡単に報告をしていただきたいと思います。
  5. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 国会審議のさなかに二日間海外に出張いたしました。これは、いま御指摘のように、三日間の東南アジア開発閣僚会議政府代表として出席をするための出張であったわけでございます。  東南アジア開発閣僚会議、これは日本のイニシアチブで生まれた閣僚会議で、回を三回重ねるということによって相互の理解というものが一段と深まった感じを受けました。みな各国それぞれの立場というものに対して理解を持ち合って、そういう理解の上に立って、東南アジア開発を進めようという、そういう気分が自然の間に会議の中に生まれてきたということでございます。しかも、そのためには、アジアが一国中心考え方ではやはりだめなんで、もちろん自己努力というものが中心にはなるけれども、その上に加えて地域協力、これが軸になって国際的な協力も受けなければ、ただいきなり自分努力あるいは地域協力というものを抜きにして、国際協力というものに依存する型ではだめだということで、これまた自己努力地域協力必要性というものがだんだんみなの考え方の中に徹底してきた感じがいたしました。しかも、今回の会議は、ベトナムの新情勢なども生まれてまいりまして、大きくアジアが動いていくということを背景にしておっただけに、みなが、やがて平和の日がくる、そうなれば本格的に平和建設というものを進めなければならぬということで、そういう点では非常に真剣味が加わった感じがいたしました。  そしてただ一年に一ぺん会議をするというだけではなくして、やはり次の開催国、今回は、タイのバンコックが次回の開催地でありますが、そこに共同の作業委員会というものを設けて——これは常設であります。そしていろいろ会議に出た提案、これに対して必要なものは再検討を加えるし、次の会議の準備をしようという、そういう常設機関を設け、あるいはまた研究部会というものを設けて、調査研究もこれができる、常時調査研究もできるというような仕組みもつくることに全員の意見一致を見たわけでございます。こういうことによって開発貿易を通じて、東南アジア経済の成長を高めていこうということで、この会議としてはいろいろ新しい情勢のもとに開かれた会議であっただけに非常に有益な会議であったと思っております。  そうしてまた日本に対する期待、信頼というものが一段深まった感じを受けました。われわれも日本自身の国力の限界もありますけれども、何としても今後長期にわたって国際問題の中心舞台東南アジアはなってまいりましょうから、日本東南アジアの安定、進歩のためにできるだけの寄与をする責任、役割りというものを痛感いたした次第でございます。  簡単に御報告申し上げます。
  6. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 ベトナムの新情勢のもとで東南アジア閣僚が特に外相を中心にして行なわれたわけなんですが、中国問題についての感触はいかがですか。
  7. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 今度の会議の性格が経済開発というのでありますから、まともに政治問題というものを取り扱った会議ではない、背景にはありますけれども。やはり経済開発中心でありましたから、したがって、政治的な観点よりも、何としてもやはり安定のためには経済開発を進めて国民生活安定向上がなければ、これはもう政治的安定も達成できるものではないということで、非常に経済開発、それを通じての政治、社会的な安定というものが中心に論ぜられましたので、意識の中にはあったでしょうけれども、まともに中共問題というものが会議議題としては出ませんでした。
  8. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 まともに出なくても、三日間いろいろな折衝があったと思うんですが、そういう間の中における感じですね。それから、もう一つ、この東南アジア閣僚会議の具体的な成果があったように報道されているんですが、農業開発基金とか、あるいは漁業開発センターとか、そういう問題についての具体的な成果があったように言われておりますけれども、具体的にはどういうことになっておるわけですか。
  9. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 具体的な成果については、これは前回から引き続きでありますが、アジア開銀の中に農業開発基金という、これは日本が提唱したわけでありますが、これがだんだんと実行期に入ってきた。これに対して具体的にこの資金の運用というものに対していろいろ論議をされた。それから漁業開発センターというのが、これはもう実際に活動ができるのも間近いような状態で、これに対してもいろいろな注文がつけられ、あるいは養殖などについてももっとこういう開発センターなどもつくるべきではないか、こういう従来やっておったことに対して、一応これが一つ実施期に入りつつあるということが一つでございます。それと、いろんな話し合いをして、東南アジア経済開発のために必要ないろんな提案が行なわれた。これを処理するための、いままでなかったのですが、一年一回寄るだけだったのが、常設委員会をつくりたい、それから研究部会をつくりたい、こういうことで、ただ思いつきにいろいろ言うのでなくして、もう少しやっぱり長期的な視野に立って、いろいろ思いつきでない、計画的にこの東南アジア経済開発というものを考えていかなければならぬ、こういう一つ提案が行なわれて、これが全会一致で可決されたということも成果としてあげられると思います。  また、中共に対しては、みながやはり中共と接続しておる地域が多いわけですから、それについて、まあ経済開発閣僚会議であったわけでありますから、そういう自分の国の独立あるいは自由というものを守るためには、やはり基本的には経済の安定というものが必要だ、それはもしこれが政治的な会議であれば、いろんなほかの問題というものが論じられたと思います。しかし、経済開発会議でありますから、基礎になるものはやっぱり経済の安定である、それを除いて、ただ軍事的だけに解決しようとしてもできるものではない、どうしてもやはり基礎になるものは国民生活安定向上というものがなければ、これはやはり国の自由も独立も確保できないんではないかということが会議の底を流れておった精神でございます。したがって、会議の中で非常に対中国に対するその国のいろんな解釈というふうなものがまともに論ぜられるような会議の性質ではなかったということでございます。
  10. 羽生三七

    羽生三七君 一つだけ関連。今度の会議では、会議の正式の議題としては経済中心だったということはよくわかりますが、新聞報道によると、外務大臣は意欲的に個別的な会談各国とおやりになったというように報道されております。そこで、その場合にたとえばイギリスアジアからの撤退後の問題、あるいはアメリカのベトナム戦争解決後の動向等に関連して、各国がある種の不安を表明したということが伝えられておりますが、そのことは直ちに軍事的なことを意味するとは思いませんけれども、日本に求めたものは単に経済上の協力援助だけなのか、その種の問題についても会議の公開の席上ではとにかく、個別的に何らかのお話し合いがあったのかどうか、この点をひとつお答えいただきたい。
  11. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) イギリススエズ以東イギリス軍撤退するという決定労働党内閣が行なった、これに対しては非常に安全保障上の懸念を持っておるということは御指摘のとおり事実であります。ことにシンガポールマレーシアなどは——五カ国だったと思いますが、ニュージーランドと豪州とイギリスマレーシアシンガポールと、英連邦の五カ国会議を開き、そうしてイギリスのこういう撤退というものを前提にしてどのようにして安全を確保していくかということを相談をしたい。だから、シンガポールなどでもこのアジアの中の安全保障というようなことで別の組織を考えてないようです。いまの五カ国によるイギリス軍撤退後における安全保障というものを、その五カ国の間で相談をして何らかの結論を得たいというのが考え方で、いまのアジア地域的な、何かこう軍事的組織というものは考えていないようであります。  それから、ベトナムについては、みなやはりベトナムに平和の曙光が見えたということを一様に歓迎をしておりました。そうして、まあこれからは相当長期にわたっていよいよこの貧困との戦いが今度は始まるのだ、われわれとしてもしっかりしなけりゃならぬということで、みながやはりベトナム戦争のあとの影響というものを考えて、本格的なやはり国内建設というものに取り組まんならぬという、そういう自覚というものが一段と強かった。それが先ほどもお答えしましたように、国内のやっぱり経済的安定というものが今後基礎になるという、そういう感じを一段と深めておるのが個別会談等を通じて非常に各国代表が強調した点でございます。
  12. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 農林大臣にお尋ねをいたしますが、今度のこの米審利害関係者を全部除外したということはどういう理由ですか。
  13. 西村直己

    国務大臣西村直己君) しばしばこの席を通してすでに申し上げたかと思うのでありまするが、米価審議会は、御存じのとおり農林省設置法によりまして、主要食糧の価格の決定基本を審議する機関で、学識経験者をもって構成する、それで、従来いろいろな立場権威の方が入っておったわけであります。しかし、その間に、御存じのとおり数回にわたって、なかなか異常な、答申を得られないような状態がありましたりしたものでございますから、利害が激しく対立する関係方々は、もちろんこれは御意見を聴取するという方向は考えるにしましても、委員の発令は除外させると、こういう経過でございます。
  14. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 利害関係が激しく対立する、そうして答申が出なかった、そこで、利害関係者は完全に排除した。大臣はこれ引き継がれたわけですが、前大臣がきめたことを引き継がれたわけですが、いまどういうふうに考えていらっしゃいますか。
  15. 西村直己

    国務大臣西村直己君) おっしゃるとおり、私としては引き継いだわけでありまするが、その後の経過におきまして、もちろん私といたしましても、その利害関係と申しますか、生産者消費者等代表者を入れるべきであるという非常に強い御意見があることも承知をいたしております。その間に国会等を通しまして御論議がかわされ、現在は各党間におきましてこの問題を協議するということで、私も協議の結果を尊重したい、それによって運営をしてまいりたい、こういう考えでございます。すみやかにその結果が出ることを望んでおる次第でございます。
  16. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 行政管理庁長官にお尋ねいたします。三十八年の九月、審議会等委員任命についての原則について閣議了解事項がありますが、それを説明願います。
  17. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) そのときの審議会内容を読んでみますと、こういうことになっております。「所掌事務利害関係がある者を代表する者を委員任命するときは、原則として、これらの委員総数委員定数の半ばを越えないものとする。」、このことだったと思いますが、このことですか。
  18. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 違う、違う。それ以外にあるでしょう。
  19. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) 全部読んでみますか。
  20. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 読んでもいいですよ。
  21. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) ずいぶん長くなりますね、読んでいくと。
  22. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 兼務はいけないというのがあるでしょう。
  23. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) あります。「委員の数は、原則として、二十人以内とする。なお、試験、検定、規格」——ちょっとどれでしょう。——読みますよ。「会議によく出席して、十分にその職責をはたし得るよう、本人の健康状態出席状況に留意し、これに該当しないような高令者又は兼職の多い者を極力避ける。兼職の数は最高四とする。」、これですね。
  24. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 行管長官にもう一つ。四十一年の十一月に、審議会等改善方針をあなたが委員長である行革本部できめましたですね。その内容について、この米審関係あると思われる点を説明してもらいたいのです。四十一年の十一月、行革本部決定
  25. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) 私が長官にならない前のことですからちょっと調べます。
  26. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 あのね、四十二年の十月、同じく審議会等について閣議了解事項があるわけでございます。その中で米審に特に関係のある点が二つあるわけです。その点をひとつ御説明いただきます。
  27. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) その点をもう一ぺん読み上げますから、どういう点が問題であるか御指摘願いたい。「所掌事務利害関係がある者を代表する者を委員任命するときは、原則として、これらの委員総数委員定数の半ばを越えないものとする。」、「(備考)上記のほか、委員任命にあたっては、昭和三十八年九月二十日閣議口頭了解各種審議会委員等の人選について」および昭和四十年八月十七日閣議決定関係閣僚協議会及び審議会等整理活用について」によるものとする。」、この二つだろうと思います。
  28. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 三十八年の九月、審議会等についての閣議了解事項、それから同じく昨年の四十二年の十月、審議会等についての閣議了解事項、この二つとも同じものをきめておるわけですね。  次に、農林大臣にお伺いしますが、農林大臣は二十二名の委員任命されたわけなんですが、その任命兼務状況ですね、御説明いただきます。
  29. 西村直己

    国務大臣西村直己君) これにつきましては、閣議了解は私存じておりますし、また尊重されねばならないと思います。ただ、そのときの状況がございまして、特に兼職数の多いものがありますので、具体的にどういうものであるか、食糧庁長官のほうから御説明いたします。
  30. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) お答えいたします。  ただいまの閣議了解におきましては、兼職最高は四ということに表現されておりますけれども、現在発令されております米価審議会委員の中で兼職数が四以上、四を含めまして四以上の方々の名前と兼職の数を申し上げます。ただし、この調べは二月十五日現在で調べておりますので、そのつもりでお願いいたしたいと思います。有沢広巳九、石原周夫十、稲葉秀三七、江上フジ四、円城寺次郎七、大来佐武郎六、小倉武一四、東畑精一六、戸苅義次四、馬場啓之助四、以上でございます。
  31. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これは農林大臣閣議了解事項は全く念頭になかったわけですね。三十八年に閣議了解事項といたしておりますし、昨年の十月に同じようなことを閣議了解しておるわけなんですが、全く念頭になかったと言っていいのじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  32. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 政府といたしまして、農林大臣の委嘱でございますから、もちろん政府方針に従って、その方針自体は尊重せねばならぬことは当然でございます。ただ、事柄米審というのは御存じのとおり大きな問題でありまして、各界に、米価基本決定するというような事柄についてはかなり専門的な知識のある人たちも必要である、こういうような各界権威方々をお願いするというので、やむを得ず兼職数の多い方々相当数任命になっておる、こういう経過であります。なお、もちろん手続上として、政府部内としては、兼職が多い等の場合におきましては、各省間の人事課長と申しますか、そういった会議もございますから、当時その会議了解も内部的には経ているということを申し上げておきます。
  33. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 事柄が大きいから閣議了解事項というのはどうだこうだというお話ですけれども、二十二名の委員のうち、四つ以上の兼職が十名あるんですよ。半数ですよ。半数近い。しかも六つ以上の兼職が六人もいるのです。ですから、二人や三人や四人がこれは余人をもってかえがたいというならわかりますが、二十二名の中の半数近いものがこういうふうな例外だということでは納得できない。しかも、事柄が大きいだけに、これは米審をこういう形できめれば大きな問題になるということは当然想定されるのですから、遺憾のないようにこれは処理し、任命すべきだったと思うのです。それについて、これは私は念頭になかったと思うのですが、どうですか。
  34. 西村直己

    国務大臣西村直己君) まあ具体的に数が十名であるか、あるいは何名であるか、これは別といたしまして、少なくとも兼職数の多い人がおるということは事実でございます。そして、それが少なくとも一名や二名でないことも事実でございます。ただ、それらの方々の大多数というものが——あの米価というようなものの問題というものはかなり専門的な知識を要することは鶴園委員御存じのとおりでございます。したがって、それに対しての信頼感と申しますか、なるほど納得のいくという人を選ぶような面もありまして、基本方針は尊重するが、そういうような当時やむを得ない措置をとったものと、こういうふうに私は解釈をいたしております。
  35. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 この審議会任命について関与いたします総理府総務長官の見解を承ります。
  36. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) お答えいたします。  本件につきましては、諸般の事情からやむを得ないものにつきまして人事課長会議におきまして一応これを了承する、かように存じております。
  37. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 先ほど行管長官が読み上げましたように、三十八年の審議会等についての閣議了解事項、昨年の十月の審議会等に関する閣議了解事項、その中で兼職四つ以上はいけない、四つまでだ。さらに利害関係者半数以下でなければならぬ。半数以下にしたい。これは答申等の問題があってもめる審議会が出てきたものだから、そこで半数以下に限る、こういう申し合わせをしておるわけです。その二つに完全に米審というのは全く反するのです、審議会は。行管長官どういうふうに考えられますか。
  38. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) 事の大小にかかわらず、一度きめたことは、そのきめたとおりにやるのが私は当然だと思っております。しかし、原則というところに、原則としてという原則というところにあまり重点を置き過ぎてそんなことをしたのじゃないかと思いまするが、私もその当時を回顧いたしますると、あまりにも不注意であったと、こう考えております。
  39. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いや、審議会等が非常に問題になっていることは御承知のとおりです。だから、閣議了解でも二回もやっておられる。昨年の十月やったばかりですよ。それに堂々と二つも違反する。反しておる。ぼくは行管長官がおっしゃるとおりだと思います。農林大臣どうなんですか、違うでしょう。
  40. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 私ども政府の内部の者といたしまして、できる限り閣議了解事項等は尊重してまいることはこれは当然であります。いわんや、兼職禁止の問題は、国会の議院運営委員会等におきましても、審議会のあり方等について兼職はなるたけ避ける、この趣旨は十分存じておる次第であります。ただ、事柄がどうしても専門的な事柄等になりますと、各界から見て納得のいく方々も入っていただかなければならぬ場合がある。そうなると、他の委員の兼任をやめてでもそのほうへ専念をしていただくというような意味合いもあるかもしれません。そうすると、兼職が減る場合がある。そういうような意味から、さしあたり御任命は申し上げるという、原則をやや弾力的に運用していくという点で、ひとつ御了承いただくような意味で任命があった、やむを得ない措置であった、まあこういうふうに御理解いただきたいと思います。  それからなお、昨年、四十二年の十月に、利害関係者半数以内にしろ、これもそのとおり尊重されねばなりませんが、米審御存じのとおり、利害関係者として入れているという形ではなくて、表面的には学識経験者として全部お扱いを申し上げておる、この点をひとつ御理解願いたいと思います。
  41. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いや、どこを見たった利害関係というようなことばを使ってあるところはないでしょう、審議会には。みんな学識経験、そんな利害関係というようなことばを使ってない。そういうような妙な言いのがれをされては困ります、もっと正確にやってもらわなければ。私は先ほど申し上げましたように、例外があるということは、原則はわかるんですが、二十二名の中で十名もいるんだというのでは原則にならないんじゃないかということを言っておる。それはぼくは行管長官のおっしゃるとおりだと思う。利害関係人を全部除いてしまった、排除してしまった。どこにそういうことを、これだけ審議会が問題になっておるのに、論議したところがあるんですか。その点、私は農林大臣、はっきりしておいてもらいたいと思う。
  42. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 繰り返して申し上げるようでありますが、学識経験者として、もっと根本にさかのぼりますと、生産者、消費者を入れねばならない、これは当然私どももこういう手続の中で、あの中に学識経験者としてお迎えするか、あるいは外に入れるか、当時の判断の問題だったと思います。それで、米審という一つ経過から見まして、これは大事な生産者、いわゆる売り手、買い手の御意見というものを米価決定に反映しなければならぬということは政府としても十分心得ておったが、米審という中にお入り願うかどうかという問題があった場合に、そういうような経緯から除外をした、このことについても御議論がありまして、ただいま各党間でお話し合いを続けておる結果をひとつ見届けていきたいというのが私の考えでございます。  それから同時に、今度兼職の禁止が閣議了解事項に対してあまりに多いんではないか。それはおっしゃるとおり私も確かにその点についてはわかります。ただ、米価というものの決定はいわゆる、かなり、と申しては失礼でありますが、かなり来歴もあるし、国民生活にも影響もあるし、また専門的な知識も相当必要であるというので、そういう方々を選ぶに際して、各省人事課長会議了解を得まして、そうしてこれは例外的にということでやっていったという経緯を見ますというと、やむを得ない措置であったんではないかというふうに兼職の問題を御了解願えればと、こういうふうに思っております。ただし、これらの問題を含めまして、各党間の話し合いの結果は私は尊重していかなければならない、こういう立場を現在とっているわけであります。
  43. 加瀬完

    ○加瀬完君 ちょっと議事進行で。いま鶴園委員の質問は、閣議了解事項兼職の禁止、それから利害関係者の排除という二項目を大幅に米審委員任命では破っているのではないか、閣議了解事項閣僚から破るような形で一体任命をするということはけしからぬではないかということを聞いておる。生産者代表を入れろとか、あるいは各党の了解を得られるならいいとか、そういうことを聞いているのではない、したがって、質問に対して正しい答えをしていただきたい。
  44. 西郷吉之助

  45. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 前段の兼職の問題につきましては、さっき私が申し上げたのであります。後段の問題、いわゆる利害関係者任命するときは、半数以上は入れてはいかぬという閣議了解がございますが、そこでやや御説明が足りなかったかもしれませんが、審議会には直接利害関係者を含むべきことをはっきり法律では明らかにしておるものがございます。例を申し上げますと、中央最低賃金審議会、社会保険審議会、農林物資規格調査会、これは利害関係者を含む、その場合にはある程度のものが入るんだから半数以上をこえてはいかぬ。それから法律上は単なる学識経験者の場合がございます。学識経験者となっている場合に、直接構成員に含んでいるもの、直接利害関係者を入れているものもあります。それから入れないものも運用上はございます、現実には。たとえば失業対策事業賃金審議会のごときは学識経験者としてございますが、当然、実質上の利害関係者を抜いているものもございます。米審の場合にいろいろな議論がありましたが、法律上は学識経験者として全部の方を御委嘱しておる。そうして、その中で利害関係者である実体的な消費者、生産者というものを今度排除される、もちろん御議論のあることは承知しておりますが、そういう関係でございますから、利害関係者任命するときはもちろん半数をこえてはならない、こういうことです。しかし、学識経験者としてございますから、この閣議了解事項の第二のほうの問題ではなくなってきておるわけです。兼職禁止の問題については当然これは原則に対して例外であり、それに対して御意見の点は私もわかります、おっしゃる点も。生産者、消費者を抜いて、しかも兼職が多いのはおかしいじゃないか、こういう議論もわかりますが、やむを得ざる状況兼職がふえた、こういう点、ちょっと補足して申し上げておきます。
  46. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 それは大臣ね、利害関係人を除いたということは、倉石さんは何べんもやっているんですよ。いま、それから考え来たったからといって、そういうふうなお話は承れないんですがね。利害関係人を除いたんだということは何回も言っているわけです。だから、私はいま申し上げましたように、兼職禁止あるいは利害関係者を全部除いたという点は、これは二回にわたる閣議了解等について問題が非常に多いということと、もう一つは、米価をきめるそういう委員会に、理論上もまたわれわれの常識上も利害関係人を完全にシャットアウトした、これは前代未聞ですよ、そういう審議会は。だから、そういうものについて、一体、総理はどういうふうにお考えですか、私は農林大臣の答弁ではこれは納得できない。
  47. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど来のお話を聞いておりまして、すでに閣議決定をしておる、これは尊重しなければならない。その観点に立って農林大臣ももちろん尊重すると、こういうことを申しております。また尊重した結果が今回のような任命をしたが、これがいわゆる原則に対して非常な広範な例外を認めたんだ、こういうことでただいま鶴園委員からおしかりを受ける、その点もわからないではありません。しかし、農林大臣が先ほど来答弁しておりますように、たいへん重大な審議会なんです。そこでそういう意味で、どうもいま兼職の点で非常に厳格にやると人が十分集まらない。したがって、審議会の性質上やむを得ず兼職の多い人が半分にもなる。しかし、その手続としては、特に例外でありますから各省の人事課長会議にもかけて、そうしてその了承をとって例外的な扱い方をした、かように実は申しております。これは鶴園君も一応はわからないではないが、その例外の認め方が多いじゃないか、こういう実はおしかりのように私は聞いたのであります。この点は両者の間の見解の相違であるというような気もいたします。もう一つの問題は、利害関係者委員から除外をした。これは先ほど来も農林大臣が申しておりますように、この審議会に直接入れることがいいのか、あるいは審議会以外におきましてもそれらの方の意見を尊重する方法があるのかどうか、こういうことで、自分審議会に入れなくてもいいんじゃないか、しかし、利害関係者を全然無視した、生産者の意向を無視する、こういうような考え方はないんだ、こういうことを申したように私は聞き取ったのであります。それからまたもう一つは、やっぱり米価そのものは農林省の決定でございますけれども、決定に重大なる資料を提供するものがこの審議会だ、かように考えます。理論的にはそれは一応わかりますけれども、この審議会の構成等は非常に長い歴史がありまして、また関係者の方々も非常に多いのであります。そういう意味で、この問題の扱い方はなるほどむずかしいであろう、かように思います。したがって、政府はただいまのような決定をいたしておりまして、理論的には私はその筋は一応御了承いただけるんではないか、かように思いますけれども、いままでの審議会の構成等の経緯にかんがみまして、各党でもただいま話し合いしておるようでございます。したがいまして、最終的には結論を待たざるを得ないんじゃないかと、かように思います。私は特に弁護するという立場でもございません。いまのおしかりはおしかりとして伺っておきます。こういう原則というものがはっきりして、それの場合に原則は尊重すると言いながら、例外の範囲があまり大き過ぎるんじゃないか、こういうおしかりは、私どもこれから先十分注意しなければならないことであると、かように私は思います。
  48. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私は、農林大臣から先ほどいろいろ説明がありましたのですけれども、これはどうもやはりこういう米の値段を審議する委員会利害関係者を全然排除した、これは終戦以来、二十三年以来毎年米価審議会委員任命をしてきたわけですが、二十年、一回も利害関係者を排除したということはないです。今回に限って利害関係者を全部排除した。価格をきめる審議会利害関係者がいないというのは前代未聞の審議会ですよ。しかも閣議了解事項については全く念頭にないかのごとき例外事項をつくっている。そういう審議会の解決を、これは総理大臣ね、いままで解決できないというのは、どうも私は動脈硬化もはなはだしい、硬直化もはなはだしいと思うのですね。各党の論議に待たなければならないというようなことも、もっとこれはさっぱりしたほうがいいんじゃないかと私は思うのですけれども、総理の御意見をお聞きします。
  49. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、いま鶴園君言われるように、利害関係者が入りまして、そうして政府決定するにいたしましても、審議会がりっぱな意見答申されるということは望ましいと思います。しかし、過去の実績を見ますと、二年間も答申ができなかった。この答申ができなかったゆえんはそこらに問題があると、こういうことになると、やはり政府——この問題は米価という重大な問題を決定する、そういう以上、やはり答申ができる、そういう委員会を考えるということがもっともだろうと思います。私はまた、そういう利害関係者を直接これに入れなくても、他の方法で利害関係者意見を聞く方法はあるでしょう。また、利害関係者意見を尊重する方法もある。かように私は思いますので、これは過去の実績が遺憾ながらわれわれの期待するような方向でなかった。そういうところにもやはり反省しなければならないんじゃないか、かように思います。
  50. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 それでは私は、いま総理大臣のお話ですが、そういうふうに思っていないのであります。あとほどそういう点について若干質問いたしたいと思いますが、農林大臣にお尋ねいたしますけれども、いま総理大臣のおっしゃるように、過去の答申状況ですね、無答申だったとかいうのがあった。それが利害関係者を除いたという理屈になっているわけですね。その状況をひとつ御説明いただきます。
  51. 西村直己

    国務大臣西村直己君) この点は具体的問題になりますので、経過等は食糧庁長官からお答えさせたいと思います。
  52. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) お答えいたします。  米価審議会において答申が得られなかったのは、昨年の七月の生産者米価決定の際の米価審議会と、それから一昨年、昭和四十一年の七月の生産者米価決定する審議会と二回ございます。この答申が得られなかった背景等を説明をせよという仰せでございますが、審議会答申作成の段階は、審議会の中の世話人等で秘密会でやっております議事の内容に触れる問題でもございますので、ここで何がゆえに答申が出なかったのかということを詳細に御説明することは御容赦いただきたいと思います。
  53. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いまの食糧庁長官の説明ですと、二回答申が出なかったということですね、その出なかった理由について、いま長官のほうから説明がなかったですね、大臣はどういうふうに見ておられますか。先ほどの答弁から言いますと明確なようですけれどもね。
  54. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 私から申し上げるのが適当であるかどうかでございますが、一応私の承っておるところによりますれば、利害関係というものが、どうしてもああいう場におきましては、御承知のとおり、激しく先鋭的に対立しやすい、また、過去においてその現場の姿をいろいろごらんになった、立ち会われた審議委員方々には、その実態あるいは運用がおわかりになっている方も相当あるわけでございますが、特にそれから利害関係方々の中には、それぞれの背景なり組織をお持ちになっておられますと、組織のやはり御意思によって非常に御主張をいろいろなさる。その場合は、どうしてもああいう審議会が、何かそこに全体的な中で一つの結論を得ようとする場合には、お互いに譲り合うというか、妥当な結論を出そうという場合に、なかなかそれが困難な姿を何回か通ってきたという、その過去の事実なり経過というものを参酌して今日の結果になっておる、こう思っております。
  55. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 答申が出なかったのが利害関係者を除いたという理由なんだと、なぜ答申が出なかったかと言えば、それは利害関係の対立からという簡単な論理だと思うんですね。そこで、それじゃあお伺いいたしますが、農林大臣は、米の価格というのはどういう手続できまったほうがいいとお考えですか、米の価格というのはどういう手続できまったほうがいいと思いますか。
  56. 西村直己

    国務大臣西村直己君) もちろんこれは広い意味において、狭い意味において、いろいろ手続ということばのとり方がいろいろあるのでございますが、現在は米審というのは、御存じのとおり、最近では価格そのものを具体的に決定する場ではございませんけれども、方式とか、そういうようなものを大体決定するようでございますが、そういうものでさえも、実はなかなか決定が困難な状況に立ち至ってしまったという点は、国民の期待するところに沿うてないわけでございます。方式の決定につきましては、いろいろな議論は出ると思いますが、私どものほうとしては、現在のいわゆる審議会の議を経て、そうして、審議会の議と申しますか、審議会基本をあれして、政府が責任を持ってきめていく、これが一応いまの段階ではまあああいう形をとらざるを得ないのではないかと思っております。
  57. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いま農林大臣がおっしゃたことは、いまの法令のとおりですね。しかし、三十五年ごろから昨年までの米審の経緯から見て、こういうふうに法令できまっているような方向に動いておりますか、米価がきまりますときに、それをお尋ねします。大臣がおっしゃるとおりにきまっておるか、動いてきているかということです。
  58. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 別に私は法令あるいは法律的に違った形でいっているとは思っていません。
  59. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いや、米価審議会答申を出して、それを農林大臣が尊重をして価格を決定をするという、法令どおりにいっていないんじゃないかと私は思うんです。もう一ぺん重ねて聞きます。
  60. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 鶴園委員のおっしゃるのは、どういう点をおさしになって、法令どおりいってないのかということ、ちょっと私には解しにくいのでございますが、その点をお示し願えれば御答弁をさらに申し上げたいと思います。
  61. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いや、実際米価決定状況新聞報道等詳細に見ておりますと、はっきりしておるんじゃないですか。法律できまっておる法令できまっておるということは、形式的じゃないですか。実質はそうじゃないでしょう。私はそこに問題があると思うのですが、それを聞いているわけなんです。法令どおりいってないじゃないか。法令できめていることは、まことに形式的になっているんじゃないかということを伺っている。
  62. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 別にそれにおいて、私は審議会を開いて、そして米価基本に関する事項の諮問をいたし、それが不幸にして残念ながら答申が得られない、その結果、政府の責任において米価決定をする、その間にいろいろな意見は出てまいりますけれども、米価決定の責任は政府においてきめている、それはそのとおりでございます。
  63. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 では、大臣がおっしゃるように、米価審議会が審議をして答申を出して、それを農林大臣が尊重して価格を決定するという、法令というのははっきりしておるのですね。しかし実際三十五年ごろから、答申というものと政府決定というものは、非常にズレがだんだん出てきた。それで米審は、米の価格を論議する機関になっちゃった。最終的には政府と与党との間できまるという状況になってきたでしょう。特にこの三、四年というのは、非常に激しいものがある。それはお認めになるでしょう。だから米審というのは、言いほうだいのところだ、米価決定というのは与党がやるのだという、そういう風潮ですよ。
  64. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 米価というものは、御存じのとおり、国政の上で非常に重要なものでございますから、あらゆる方面が関心を持つ、また、したがって、政党政治におきまして、各政党が関心を持つことは、これは当然だと私は思うのであります。そこで特に今日は、政府というものは、政府・与党一体というたてまえは、政党政治の上でとられておるのでありますから、政府与党のほうから強い意見があるいは出てくるということは、これは当然のことでないかと私は考えておるのでございます。
  65. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 総理にお尋ねしますが、私はそこの点はある程度はっきりさしておかないといけない。つまり農林大臣がおっしゃるのは、筋としてはわかりますがね。実際問題として、この二、三年の米価決定というのは、十円、二十円というところまできめちゃう、私は行政と政治の混乱が起きているのだというように思うのです。この点はある程度はっきりさして行政をやっていただかないと困ると私は思っておるのです。その点について。
  66. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 米価決定は、どこまでも政府が責任を持ちます。先ほど来話がございますように、政党政治でございますから、与党がそれに関心を示すことは、これまた御了承いただけるかと思います。どこまでも責任は政府だ、政府に責任がある、かように御了承願いたい。
  67. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 一国の総理が、行政と政治との関係についてそういう形式的な論議じゃ困ると思う。ですから、行政と政治との関係については、政府としては、ある程度はっきりした見解を持っておいていただかなければ困ると私は思うのです。米価について大きな方針をきめるのは与党です。けっこうです。しかし十円、二十円、三十円というところまでこまかく、与党でなければきめられないということは、これは行政に対する干渉だ、あるいは行政と政治の混淆だというふうに私は思いますね。もう一ぺん聞きます。
  68. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は党の総裁でもありますし、ただいま言われまするように、政党自身が行政の細部に入ること、これは好ましいことでございません。これははっきり申し上げます。ただいま申しますように、行政の決定権、これはもう政府にあります。だから政府が責任を持ってそういうことはきめますということをはっきり申し上げておきます。
  69. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 実際この二、三年の間の米審というのは、要するに、米の値段というのは農林大臣、大蔵大臣あるいは与党の三役、そこできまるのだ、だから米審では言いほうだいなことを言う以外にないと思う。へたに妥協したり調整なんか、生産者なり、あるいは利害関係者やりますと、与党にいった場合には足引っぱられる。もともと、いまのような状況の中では、米審で妥協も調整もつかないのはあたりまえじゃないかと私は思う。その点について農林大臣の見解を承りたい。
  70. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 御存じのとおり、米価の問題というのは、率直に申しますと、古くて新しい問題で、なかなかいかなる国でも主要食糧の価格決定、これはわが国におきましても長い歴史を持ち、また理屈だけでいけない。米の問題は、国民感情からいっても、あらゆる意味で大きな問題である。ですから、その点はわれわれは慎重に、国民あるいは生産者の納得せしめる線で押えていく、これは政治の一番大事な点だと思うわけであります。  そこで、いまおっしゃるような点につきましても、やはりわれわれとしては、ただいま総理から御発言がありましたように、政党には政党の役割りがあり、政府には政府の行政上の強い責任、大きな責任がある、こういうことをよく自覚しながらやってまいる。そして同時に、その間における法律上の審議会の機能というものも効果的に発揮できるように私たちとしては考えてまいりたい、こういう考えでおります。
  71. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私の伺っているのは、いままでのような米審のやり方では、これは調整つかないのはあたりまえじゃないか。最終的には与党がきめるということははっきりしているわけです。米審答申出せば、それで金をはじけるのですから、しかしそこでまとまったのでは、今度与党と政府との間できまるということがはっきりしているのですから、米審利害関係者は調整したり妥協したりできないじゃないですか、その点を聞いているのですよ、それはどうですかと。
  72. 西村直己

    国務大臣西村直己君) おっしゃる点もわかりますが、しかし同時にまた、今度は米審自体に出ておられる利害関係方々も、それぞれの組織の意思そのものを一歩も譲れないという非常に強い御意見でやってきておられた姿もあります。そこらを考えまして、今回はこういうような措置でひとつやってみたらどうかというのが先般の一つ考え方ではなかったのじゃないかと私は思うのであります。
  73. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私はそれではいつまでたっても、今度の中立米審でも、これはかりに発足しましたとしましても、かりにですね、発足しましたとしましても、この答申とは別に、これは政府与党の間でほんとうに幹部のところで米価が具体的にきまるのだということになりますれば、答申は無意味ですし、やる必要ないと思うですよ。私は法令どおりにこの審議会というものは動かすべきじゃないかという主張者なのです。米価については、大方針については政党がそれは十分関心を持って政府に対していろいろ言うことはけっこうだ。ただ総理大臣がおっしゃるように、いや政府の権限でというような抽象的なことばでは非常に不足している。いま米価の問題についてはぎりぎりのところに来ているのですから、そういうことばでは私は不適当だ。ですから、法令どおりにやるのだということになれば、これは私は妥協も調整もつくだろうと思う。その点どうですか。
  74. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 米審というのは、御存じのとおり農林省設置法に、その何といいますか、職責と申しますか、責任が、主要食糧の価格の決定基本というふうにきまっております。それは私も、できるだけそういうふうにやってまいりたいと思うのであります。
  75. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 重ねてこの米審について、私は先ほど来から申し上げましたように、審議会任命等について、閣議了解事項に著しく食い違っている、反している。同時にこれは価格をきめる審議会利害関係者を全部排除するという、こういうむちゃな審議会なんです。そういうものではいつまでたっても解決つかない。これはどうも硬直化もはなはだしいと思うんですけれどもね。もう一ぺん総理大臣の見解を承っておきます。
  76. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 鶴園君も、米価決定、これはなかなか農村、生産者にとりましても、これ重大なものである、また政府の農業政策の基本から見ましても、やはり米価、これが一つのポイントである、価格政策である、こういうようにまあたいへん重大なものでございます。ところで、ただいま審議会一つとりましても、審議会委員だけにまかす、そうしてこういう審議会委員の諸君がおきめになって、政府とその間におきめくださればそれで満足だと、そういうようなものでは実はないですね。でありますから、この審議会を開けば、その際に生産者の大会も開かれるし、またそれぞれの団体がそれぞれのルートを通じて意見を述べる。米価決定するその時期になれば、たいへんな問題が引き起こってくる。私は、これはまあこの審議会自身の責任だとは思いません。これはもう全部が、価格はどういうようにどこへ持っていったらいいか、こういうことだと思います。そこで、ただいまのような民主政治、そのもとにおきましては、各党に対しましても生産者が、それぞれの団体がそれぞれのルートを通じてそれぞれその意見を述べる、それがいまの現状だろうと思います。私は、民主政治というものは、そういうように各方面の意見を十分聞く、そうして尊重し、そうしてそこに何らかの一定、統一した意見、そういうものがまとまればたいへんけっこうなんですが、これがまとまらないと、ただいま言うような政府の責任において決定せざるを得ない。いま与党においてそれが決定するんだと、こういうような御批判も受けますけれども、ただいま申し上げますように、実際問題等と取り組んでみれば、民主政治のもとにおいて、各方面の意見を聴取され、またそういう意味で自分たちの意見を十分述べる、こういう機会が与えられている、かように私は考えますので、必ずしも与党がそれらについて深く掘り下げて意見を述べる、それはけしからぬ、かようには私は思いません。  しかし、そういう事柄があるにいたしましても、とにかく決定、最終的決定政府が責任を持ってやるんだと、したがいまして、こういう米価決定のしかたが当を得ない、こういうことであれば、国民全体としての批判を必ず受ける。その批判は政府が受けるんでございますと、こういうことを実は申し上げたつもりであります。そこで、私は、各方面の意見がそれぞれによって述べられる、だから先ほど来の、審議会委員にならなくとも、生産者意見を述べる機会は与えられておるじゃないか、また政府もそういうものを積極的に取り入れるように、いまの団体が政党に対する陳情あるいは請願だけでなしに、何か政府自身が生産者代表意見を聴取する方法が、審議会以外に考えられれば、その方法も考えてしかるべきじゃないか、こういうことを実は申して、生産者を締め出したことが必ずしも不都合だと、かように私は申すつもりはないのであります。その生産者意見を聞かなきゃならぬということは申しております。  もう一つは、最近の実情、これはたいへんそれぞれの団体を通じその意見を述べることが活発でございますから、なかなか米価というような重大な問題は決定しかねる。そこにいろいろ、しばしば過去において混乱を生じたこともございます。しかし、政府はどうしてもそれをきめざるを得ない。だからこれをやっぱり政府の責任においてきめる、こういうことを先ほど申したのであります。問題は、やはりこういう時代でございますから、各方面の意見は十分聞き、そうしてそれを尊重し、そうしてしかる後に政府がきめる、決定する、こういうことであってほしいと思います。また審議会の、米審のあり方等につきましても、今回くふういたしましたのも、そういう意味で米審米価決定の際だけに開くような米審では本来の法の目的とするところに沿わないのではないか、だから米審というものは年じゅう開き得るようなそういうものがほしいのではないか、また、それによって初めてほんとうの法の目的を達成することができるのじゃないか、これが実は今回取り組んでおる一つの問題だと思います。私はそういう意味で、鶴園君と基本的にものは変わっては、意見が食い違っているとは思わないが、ただいまのような実情等からいたしまして、この点はさらにわれわれも慎重にくふうし、また各方面の意見も、そういう意味で調整をして、一つのコンセンサスが必要じゃないか、かように思っております。
  77. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 宮澤経済企画庁長官にお尋ねいたします。  長官は、昨年の十月、四十三年度の予算編成のさなかに、世にいう宮澤提唱なるものを、十一項目を出されたわけですが、その中で、米の値段についてストップすべきだというような発表をされておるわけですが、その米を一年間凍結するというのか、米の値段をストップするのだという考え方についてお尋ねします。
  78. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) これはもうこのままではいけないということは、たくさんの世間の方が感じているところもございましたが、改善策はやはり相当各方面の討議の結果生まれるものでございますから、それまでの間、現状をこれ以上長くしないほうがいい。こう考えてああいう提唱をいたしました。ねらっておりましたところは、米価を凍結することも非常に不自然な状態でございますから、長続きができない状態でございますから、そういう状態に置いたほうがむしろ改善策が出てくることを促進するであろう、こう考えたわけでございます。
  79. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 とにかく農民の賃金といわれる米価を一年間ストップせよ、これは強力な意見です、一年間ストップせよということは。いまお話のようなことなのかなあ、もっとあるのじゃないかという考えなんですけれども、それだけのことですか。
  80. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) ただいま申し上げた以外に他意はございませんでした。
  81. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 宮澤構想、提唱というのが出ましてから数日しまして、これは新聞に解説記事のごときものが出たわけですが、ほぼ同じ解説記事が各紙に報道されたわけです。その中で、生産者米価のストップについては、前提として都市と農村との所得格差はすでに終わったのだということが前提にあるというふうに報道されたのですが、長官、そう思っていらっしゃいませんか。
  82. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) あの当時私が自分で説明をいたしませんでしたために、いろいろな解説が行なわれました。それはそれといたしまして、都市と農村との所得の格差をどう見るかということでございますが、農家経済調査や農林省の毎月勤労統計などで判断いたしますと、現金については大体私は八五%ぐらいのところにいっておるのじゃないかという判断をいたしております。それで農家のほうが、どうしても自家消費というものが自然に多うございますから、これを加えていく。それから資産で申しますと、これはもう土地とか家屋とかいうものでございますから、都市の勤労者と農家の間では、これは問題にならないぐらい違うかと思います。経済状態全体として、したがってとらえますと、まあまあ均衡点に近いところに来かかっておるんじゃないか。この二、三年ことにそういう現象が顕著であるように思います。
  83. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 農林大臣にお尋ねいたしますが、農業基本法の第一条、政策目標として二つのものが載っております。いまの長官の答弁のような考え方だと、基本法の目的は、一つは達成されたということになると思いますが、いかがですか。
  84. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 御存じのとおり、農業の一つの特性というものがございまして、一つは、土地というものによって制約をされておる。もう一つは、自然条件によって制約をされておる。それからもう一つは、国民の食糧というものの確保、安定供給ということ、こういう大きな使命を持っておる。これが私は農業の特性だと思うのでございます。したがって、その中においての農業従事者の生活を安定させながら生産向上をはかっていく、こういう意味でいくということを、一つの農業基本法としては大きな命題にしていかなければならないと思います。したがって、私は、わが国のいまの農業の実態から見ますと、まだまだこれは私どもとしては、改善はされておりますけれども、努力していかなければならない、こういうように思います。
  85. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 農林大臣と企画庁長官との間の意見が食い違っておりますね。だいぶ違うようですよ。
  86. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それはそうではないと思いますのは、先ほど私に対するお尋ねは、農家の所得についてのお尋ねでありましたので、農業の所得についてのお尋ねではございませんでした。申し上げるまでもなく、農外所得が五〇%ぐらいございますので、農家所得としてはそうなるということを申し上げました。ただ、その農業というものが現在のようにやはり生産性が低い、製造業に比べて三割程度でございましょうか、この状態はどうしても改善していかなければならないというふうに考えますので、これは農林大臣のただいまの御指摘になった点でございます。
  87. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 農林大臣、もう一ぺんはっきり、基本法の第一条に農政の目標が書いてありますね。この二つを説明してもらって、どういうふうにその目標がなったのかということをまず説明を願いたいと思います。
  88. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 私、先ほど申し上げたのと別に変わっていないと思います。基本法の目的は、農業の生産性、特にわが国の農業は、御存じのとおり、申し上げるまでもなく零細である、それから近代化がおくれておる。こういうようなこと、それから、その上にわが国の土地のいろいろな制約、自然条件が加わっておる。そこで私どもとしては、生産性の向上、それから所得の向上、こういう二つの目標に向かってやはり今後とも改善、くふうをしていきたい、こういうことでございます。
  89. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 生産性の格差の是正、所得の格差の是正、二つの政策目標を持っておったのですが、経済企画庁長官の話ですと、後者のほうはすでに終わったような解釈になりますがね。大臣は終わったというふうに解釈をしておられるのですか。
  90. 西村直己

    国務大臣西村直己君) いま申し上げましたように、日本の農業というものは非常に零細性でございまして、兼業も多い。それで自立農業というのは一〇%に達するか達しないかのところでございます。大部分は兼業農家の形、したがって、農業そのものの所得というものは低い、また効率も悪いというような点から見ますれば、格差の均衡というものに対して、農業の面から見た格差均衡というものは、やはり今後とも努力をしてまいらなければならぬと考えております。
  91. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 長官どうです。
  92. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) いま農林大臣の言われましたとおりですが、私どもとしましては、農家に対して、農業外の所得がふえていくような施策を片方でやっていく必要があると思います、兼業農家が多いのでございますから。他方で農業自身の生産性を上げていく必要がある。先ほど現金所得で八五%ぐらいまできたと申し上げましたが、これからがやはり問題でありまして、製造業ではまだまだ生産性が向上していくと思いますけれども、農業自身では、それほどくふうをいたしませんと、これから先追っついて生産性が向上していけるということはなかなかむずかしいということで、それだけの施策が要るというふうに考えるわけでございます。
  93. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 農林大臣は、この所得格差の点について、もう少しはっきり説明してくださいよ。宮澤長官と同じような考え方を持っておられるのかどうかと聞いている。長官は、農家の所得というものは都会と比べてもう遜色はなくなったという考え方ですよ。おおむね遜色はなくなったという考え方ですよ。特にこの二、三年顕著だというお話、農林大臣はどうなんですか。
  94. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 私は宮澤長官のおっしゃることと、そう矛盾はしないと思います。私のほうといたしましては、何と申しましても、零細な農家というもの、零細農業というもの、零細農業というのは、これが多いのは日本農業、事実でございます。したがって、これは農外所得というものをふやしていって、農家としての所得を上げたいという、いわゆる国民経済全体の中から見られた経済企画庁のお考えというものも一つ受け取れるのであります。しかし、われわれとしては、やはり農業というのは、農家の所得と同時に、日本の農業生産を上げまして、食糧の安定確保、そういう大事な使命も、兼業農家も持っておりますし、また、そんは同時に裏をひっくり返せば、農業所得を上げてもらわなければならないわけでございます。所得増でございますね。農業からくる所得増というものも、効率的になると同時に上がってもらう。こういう二つの面から考えてまいりますと、まだまだわれわれとしては自立経営農家もふえてもらいたい。兼業ももっと効率を上げてもらいたい。そうして、所得を農業の面からもふやしてまいりたい。こういう考えでございます。
  95. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これは確かにお話のように企画庁長官農林大臣との意見は食い違っていないように思いますね。しかし、それは農業基本法を論争したときとはたいへんな違いじゃないですか。これは兼業を奨励していくとか、兼業のほうも所得を上げていくのだというようなお話ですね。そんな話だったのですか。これをひとつ説明いただきましょうね。
  96. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 私は兼業を奨励するということばは使っておりません。そりゃやはりわれわれとしては自立経営という、中核農家というもの、いわゆる農業だけで食べられる農家ですね。そうして、それが中核になって、現実に兼業農家が多いわけです。また残念ながら、いまのところ兼業についての農村の労働力の流出と申しますか、そういうような面から兼業がふえていくような部分もまだあります。そこで、現実の事実をつかまえて、やはりそういうものも、そりゃ農業の兼業の部分においての近代化というか、協業助長といいますか、そういう努力をしながら、しかし、同時に自立経営、農業で食べていかれるような農家というものも、これを力をつけると同時に、また、それも中核農家がふえていって、全体としての農業、農村、これが豊かになって、近代化することを望む。それが初めていわゆる都市と農村とのバランスのとれた農業経済、こういう考えでございます。
  97. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いま宮澤長官のお話も、やはり農家の農村地帯と都市地帯との生計費といいますか、所得格差というものはやはりもう終わったのだという考え方ですね、これは間違いないですよ、そういう考え方に、いまのさっきからの長官の説明ですと。長官もそう言うし、農林大臣のほうもそういうような考え方のようですね。だからこれは農業政策というものはうまくいかない。初心に返らなければいけませんですね、これは、基本法ができたときの。おかしなことになったものですね。私は非常に重大だと思うのですね。  では米価に移りますが、生産者米価の構成の最も大きい要素、これは何ですか。
  98. 西村直己

    国務大臣西村直己君) これは生産者米価の中におきましては労賃、資材費、その他地代、利子、いろいろございますが、それらを含めまして生産者米価というものは決定をされていくのであります。内容につきましては食糧庁長官から御説明させます。
  99. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) お答えいたします。  生産者米価の算定は、最近数年間は生産費・所得補償方式という方式でやっておりますが、これを簡潔に御説明をしますと、米の生産に必要とする生産費をもとといたしまして、その生産費の中の家族労賃に相当する部分を、労働時間に応じて一般の製造業賃金の一時間当たりの単価に評価がえをして算定をした額を基準としてきめております。したがいまして、米価基本は生産費ではございまするが、この評価がえいたした部分の金額が相当な金額にのぼりまするので、何が一番大きいかと申されれば、この所得補償をするための評価がえをした部分が相当大きな金額になることは否定できないと思います。
  100. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 食糧庁長官にお尋ねしますが、どのくらいの割合を占めているのですか。それと、そういう評価がえをする労賃の出し方ですね。
  101. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) ごく概略で申しますと、労賃部分が全体の三分の二と御理解をいただきたいと思います。
  102. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 計算方法、一時間の計算方法。
  103. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) 労働時間は生産費調査による労働時間を使いまして、評価がえをいたしまする時間当たりの単価は、五人以上の製造業の労賃の単価を使って計算をいたしております。
  104. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これも同じく食糧庁長官にお尋ねしますが、去年の生産者米価決定するときの製造工業の五人以上の賃金の上がりぐあいですね、そして生産者米価は去年幾ら上げたか。
  105. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) ちょっといま資料をさがしておりますので、お待ちいただきたいと思いまするが、米価の値上がりは一昨年に対しまして千六百四十数円の値上がりだと思います。
  106. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは、ただいま鶴園君の質疑中でございますが、午前はこの程度にいたしまして、一時に再開いたします。  休憩いたします。    午前十一時五十六分休憩      —————・—————    午後一時十四分開会
  107. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) ただいまより予算委員会を再会いたします。  午前に続きまして質疑を続行いたします。鶴園君。
  108. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 食糧庁長官の回答が残っております。
  109. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 午前中の鶴園さんの質疑に対する答弁が残っておりますね、それをお願いします。政府委員
  110. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) 先ほどお尋ねの問題でありますが、昨年の米価算定時における評価がえに使用いたしました都市近郊労賃の水準と一昨年の水準との比較の伸び率は一一〇・八八になります。
  111. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 去年と比べてことしの賃金の上昇率はいかがですか。  前年同月対比で大体推定つくわけですが、それと物財費のパリティはどういう状況になっていますか。
  112. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) お答えいたします。  本年の米価を算定をいたしまする際の賃金は、米価決定時に最も近い資料をもってやるわけでありまするが、一応最近における賃金指数の対前年同月比の足取りを御参考までに申し上げますと、今年の二月が昨年の二月に対して一三・一、一月が一三・九、十二月が一六・二、その前が一三・三、その前が一二・五、大体そういう状況でございます。それから物財並びに雇用労働の伸び率を、先ほど都市近郊労賃について申し上げましたと同じ手法でもって、昨年の米価を算定いたしますときの物財、雇用労務費の水準と一昨年の水準と比較いたしますと、伸び率は一〇二・八二でございます。
  113. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 前年がこの生産者米価の構成に六〇%の影響力を持つ賃金が八・八%、本年がどうやら一三%を優に越すというような状況で動いておるようでございますが、そういう意味からいいますならば、相当生産者米価というのは引き上げざるを得ないのではないかと思うのですが、食糧庁長官に伺います。
  114. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) お答えいたします。  本年の生産者米価をいかなる算定方式によって算定をするかという技術的な問題はまだきまっておりませんが、いずれにいたしましても、食糧管理法の第三条の規定に基づきまして、生産費及び所得補償という考え方で算定をされるものと思いますが、米価の算定につきましては、生産費の中に占める労賃、これはただいま御指摘のように値上がりの傾向にございまするので、これは米価を算定いたしまする際には値上がりの要素であることは御指摘のとおりであります。また物財並びに雇用労働も値上がりの傾向を示しておりまするので、その意味では米価を引き上げるファクターかと存じまするが、他方、米価の算定にあたりましては、労働生産性並びに土地生産性の上昇、すなわち労働生産性と申しますれば、家族労働の労働時間が逐次、機械化その他の影響によりまして、年を追って減少いたしております。それから土地生産性の上昇と申しまするのは、米の生産の反当たり収量が土地によって変化がございまするが、全般的には逐次上昇いたしておりまするので、これらの生産性向上の結果、ただいまのような米価の算定の考え方におきましては、これは米価の値上がりを逆に抑制をする作用かと存じまするが、これらの要素がどのような形で具体的に組み合わされるかということをいまの時点で的確に予測することは困難だと存じまするが、労賃並びに物財等の傾向については、ただいま御指摘のとおりかと存じます。
  115. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 農林大臣にお尋ねいたしますが、昨年は、生産者米価決定的な影響力を持つ、つまり六割の影響力を持つ賃金の値上がり状況が八・八%、そうして生産者米価は九・二%上げたわけですね。本年は労賃が、先ほど長官が話しましたように、一三%をこすような状況で推移しておるわけですね。もちろん、いま長官の話がありましたように、時間減少、反収増加という問題があります。しかし、これは、三年平均になるわけですから、三分の一になってしまうんですね。そういう意味からいえば、本年は昨年の九・二%よりも上がるのではないかというふうに、的確ではないんですが、推定できるのではないかと思うのですが、いかがでございますか。
  116. 西村直己

    国務大臣西村直己君) まあ都市近郊労賃、資材費の値上がり——ただいま食糧庁長官がお話し申し上げましたとおり。一方、生産性の向上、これもまあ抑制の要素にはなっております。それから、それらを勘案いたしまして食管法によりまして出してまいりますそのときの方式その他の問題には、いろいろ前提はあると思います。そこでまた、昨年とられましたあの積み上げ方式、あれ自体が、はたしてあの要素——ああいうものをいろいろ反省、検討はされなければならぬ面はあろうと思います。しかし、いずれにしましても、労賃が上がり、資材費が上がっている傾向のもとにおいて、生産者米価が上がるであろうということは一応予測はできますが、昨年の指数と申しますか、九・二という指数そのものを上回るかという簡単な私には断定を下せる段階ではございません。
  117. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 では、それだけの数字が出ておりますれば、これは大臣、非常に技術的な問題ですが、長官に伺っていいですが、これは的確ではありません——先ほど長官が言うように、的確ではないが、大体の推測はつきますでしょう、これだけあれば。長官に伺います。これは的確には言えないけれども、昨年よりもこれは上がるというふうに自動的に判断できるのではないか。
  118. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) お答えいたします。  米価を算定いたしまする際の生産費調査がまだ全く集計ができておりません現時点において推測を下すことは、非常に危険でありまするので、私から推測を申し上げるわけにはまいりませんが、先ほど鶴園委員も申されましたように、反収の伸びというのは、確かに過去三年平均の数字をとりまするから、反収が伸びても三分の一のウエートであるかもしれませんけれども、しかし、昨年の反収の伸びは従来の年に比べて非常な伸びでありまするので、三分の一のウエートで働らきましても相当なものかと思います。しかし、いずれにいたしましても、いまこの時点で、私から昨年の上げ幅よりも上か下かということをお答えすることには材料があまりにも不足でございまするので、ちょっと申し上げかねると思います。
  119. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 三十五年ごろからの消費者米価の上げ率ですね、この状況を説明してもらいたい。
  120. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) お答えいたします。  それぞれの年の対前年引き上げ率の資料をいまさがしておりまするから、とりあえず、ここに持ってまいりましたのは、三十五年当時の消費者米価を一〇〇といたしまして、現在の消費者米価が幾らになっておるかという三十五年との比較で、最近二、三年間をさかのぼって申し上げますが、四十二年の数字が一六四・一でございます。その一年前の四十一年が一四二・九、四十年が一三〇・六、こういう数字になっております。
  121. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 この消費者米価佐藤内閣になりましてから連続大幅に値上がりになっているように思うものですから、三十五年ごろからの数字を伺ったのですが、これはあとでひとつ説明をいただくことにいたします。  次に、これは生産者米価と消費者米価の問題について、農林大臣、大蔵大臣経済企画庁長官、お三人とも、正常化するのだというお話をなさっておられますが、正常化というのはどういうことなんでしょう。
  122. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 政府への売り渡し価格、それから今度生産者米価のほう——これは再生産価格、御存じのとおり。それから消費者関係は、関係米価中心にして消費家計関係の安定、それを目標にして、上限、下限、その他物価関係等の経済情勢に応じて政府決定する、こうなっておる中で生産者米価、消費者米価決定するわけであります。ただ、食管法全体のそういう中で考えた場合におきまして、生産者米価に対して、まあマージンであるとか、経費であるとか、管理費であるとかいうような諸経費を加えまして、さらにそれを割った消費者米価というものが今日出ておるわけでありまして、そういうような面において、これは正常な状態を欠いているのではないか、こういう意味で、できれば、食管の制度というものを考えた場合に、正常な食管制度の運営、こういう趣旨で申し上げたわけであります。
  123. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 大蔵大臣はいかがですか。
  124. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 消費者米価生産者米価、それぞれ決定する方式は違っておりますが、そうかといって、この二つ米価を包摂している特別会計、これを崩壊するようなことのないように運営していくことは当然望まれますので、したがって、そこにはおのずから正常な関係というものができてくるべきだろう、こう思います。当面少なくとも、全く逆ざやというようなことは、両米価の正常な姿ではないというふうに考えております。
  125. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 生産者米価は、先ほど以来話がありますように、引き上げざるを得ない状況だと——これは物理的にそうです。生産者米価を上げましたときに、消費者米価はどうなさるのですか、具体的に聞きたいのです。どういうふうに期待しておられるのですか。同額上げられるのか、同率上げられるのか、そこのところを伺います。
  126. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 生産者米価がきまりまして、消費者米価、それぞれの食管法のたてまえによってきめるわけでありまするが、もちろん生産者米価そのものが食管会計の損益の中において相当のウエートを占めておりますから、食管の会計の損益勘定の中において他の要素も多分にございます。同時にまた、消費者の家計安定ということで一つのその目標が出て、基準が出ますので、これらを勘案いたしましてまいりますから、私はこの国会で申し上げましたように、すべてが機械的にスライドしていくとか、そういう趣旨ではむろんないと思いますが、少なくとも、生産者米価が上がりますれば、消費者米価に影響はあると、これは申し上げざるを得ないと思います。
  127. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 生産者米価が上がりましたときに消費者米価を同率に上げますと、たとえば生産者米価がX%上がったときに消費者米価もX%上げるということになりますというと百三十億ぐらいの赤字が出るのですがね、どうなさいますか。
  128. 西村直己

    国務大臣西村直己君) まあこの数字の問題につきましては、食糧庁長官のほうからお答え補足してもらっていいわけでありますが、いずれにしましても、私どものほうとしては、一つは本年度は補正は組まないということを十分念頭に置きます。しかし、また食管法のたてまえがあり、そうして生産者の再生産を維持していく、家計の安定も維持する、その中できめてまいりまして、食管の赤字を出さぬようにしながらやってまいる。米価のウエートというものは大きいものでありますが、食管の他の要素というものも十分勘案してこれはきめてまいりたい、こう思っております。
  129. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) 先ほど鶴園委員がX%と仰せられたのでございますか。
  130. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 そう。
  131. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) そのパーセントがきまらない段階で百三十億という計算をどのようになすったのか、私ちょっと理解できないのでありますけれども、先ほど来大臣申されておりますように、食管特別会計の損益に影響を及ぼしますのは、米価を幾ら上げるかという問題重大な影響があることはもちろんでございまするが、他に、経費の問題でありますとか、手数料の問題でありますとか、いろいな問題がかかわりあってまいりますので、ここで的確に本年の両米価関係を機械的な計算で申し上げるのはちょっと困難かと思います。
  132. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私が言っておりますのは、何%上げるというわけにいきませんから、かりにX%上がった場合にはどうだということを伺っているのです。私も、大体百二、三十億の赤字が出るのではないかと言っている。もちろん経費の節約の面もありますよ、それを除外して言っているんですが、そんな簡単な論議ははっきりしているでしょう。だから、補正予算は組まないとおっしゃるから、そうすると生産者米価と消費者米価関係はそうルーズな話じゃない、もっときちっとしたものだと私は思っております。
  133. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) お答えいたします。  現在の予算の数量を前提として生産者米価を一%値上げをいたしますると大体百億前後、それだけで百億前後という数字になりますが、先ほど来、その米価だけでなくて、他の要因もあると申し上げましたが、食管特別会計の食糧管理勘定の中でいわゆる経費として組んでおります金額を項目別に申し上げますと、集荷経費百六十一億、運賃百四十九億、保管料二百七十九億、事務費三百十三億、金利四百三十八億、合計千三百四十億、こういう経費で実は組んであるわけでありまして、これらの経費は実行上いろいろな要因で変動いたしまするので、これらの変動要因とも総合的に勘案して判断をせざるを得ないということを先ほど来申し上げておるわけであります。
  134. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 それはわかりますが、あとでそういう点につきましてももう少しはっきり伺いますけれども、ただ補正予算を組まないということになりますと、消費者米価生産者米価との関係が、もう少し考える範囲が狭まっていると思うのです。うんと狭まっていると思うのです。それを聞いておるわけなんですから。ですから、出産者米価をX%上げた場合に、同率上げるのか——X%なのか、それとも同額なのか、これを伺っておるわけです。その点をはっきりさして——もう少し考えられる範囲というのは非常に狭まっていると思いますよ。長官ね、あなた、一%上げると百億くらいの——理論上は百億くらいの赤字が出るということですね。それで、生産者米価がX%上がったときに消費者米価をX%上げますと、消費者米価生産者米価の間にはもともと二五%の差があるでしょう。同じ率で上げた場合には、一%か二%くらい差がつくわけです、消費者米価生産者米価の間に。そうすると、一%差がつきますと百億ぐらい、二%つくと二百数十億という計数上は出てくるじゃないか、こう言っているわけですから。あとは、あちこちの節約の問題は別としてですよ。ですから、同率上げるのか、同率という考え方なのか、同額という考え方なのかということを聞いておる。
  135. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) お答えいたします。  ただいまの現時点における生産者米価は玄米百五十キロ当たり一万九千五百二十一円でございまして、消費者米価は同じく玄米百五十キロ当たりに換算をいたしますと一万九千六円になりまするので、御指摘のように消費者米価のほうが安いわけでありまするから、かりに同じ率をかけますとその差は開くということは御指摘のとおりでありまするが、しかし、その開いたことの結果の金額がただいま御指摘になりましたような大きな金額にはなると思いませんので、先ほど来申し上げておりますように、他の経費の要素、あるいは輸入食糧の数量なり買い付け価格の変動要因等もあわせて考えますると、そう機械的なことは申し上げられないということを先ほど来御説明をいたしておるつもりでございます。
  136. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 そういう事務的なことじゃ、非常に困りますね。いま長官がおっしゃるように、一万九千何がし、生産者米価は。消費者米価も一万九千何がし。その間の差は五百何円しかない。ですから、生費者米価は、これに諸掛かりとか、運賃とか、手数料とか、そういうものが加わるのです。もっとうんと高くなるわけですから、だからその差はトン当たり三万円でしょうということです。トン当たりにすれば二五%差があるでしょうと、わずか五百円じゃない。だから問題になるわけでしょう。生産者米価と同額上げた場合と同率上げた場合じゃ非常な差が出てくる。
  137. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) お答えいたします。  生産者米価に経費その他を加算をいたしました、いわゆる財政負担を全然しないと想定をした場合のコスト価格の水準と現在の消費者米価の開きは、ただいま鶴園委員が御指摘になった数字になろうかと思いまするが、現実に米価の値上げ率を計算いたしまする場合には、現在の生産者米価に対して何%、現在の消費者米価に対して何%ということで、そのことの結果トン当たり約三万円の損失が出ておりまして、それが食管特別会計の繰り入れの二千四百十五億の前提になっておるわけでありまするから、コストを加算をした金額と消費者米価と比較をして計算をするとは若干趣が違うのではないかと思っております。
  138. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 どうも進まなくて困ったですけれども。よく言うでしょう、スライドとげたばきスライド。スライド的な方向を考えておられるのか、げたばきスライド的な方向を考えておられるのかと聞いておる。
  139. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) お答えいたします。  生産者米価が値上がりをしました場合の損失だけを取り出しまして、他の経費あるいは他の要素が全然動かないという前提で、しかも補正なしということであれば、あるいは御指摘のようなことになるかと思いますが、いずれにしても、先ほど来大臣がお答えになっておりますように、生産者米価の値上がりによって消費者米価に影響があることはあるけれども、機械的なスライドということになるかどうかは現時点ではわからないということを申しておられるのは、他の変動要因があるから申しておられるわけでありまして、そういうことからいたしますと、スライドということばに当てはまるような米価改定になるかどうかということを現時点で申せと仰せられましても、私は申せないのでございます。
  140. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 昨年の政府の買い入れ米の数量はたびたび補正改定されたようですが、その内容を御説明いただきたい。
  141. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) 四十二年産米のまだ最終買い入れにはなっておりませんが、今年——四十三年度予算を編成をいたしまする場合の四十二年産米の買い入れの数量の見込みは九百八十万トンでございます。
  142. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 委員長ね、経過を聞いているのです。何回も変えていますから、改定していますから。だから、当初予算に幾ら組んで、補正した結果は九百八十万トンだったと、その経過をちょっと聞いている。何回も改定している。
  143. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 食糧庁長官、いまの御質問のとおり、その経過をもう少し詳しく説明してください。
  144. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) お答えいたします。  四十二年度に会計年度予算を編成をいたしまする際の、予算の前提になっておりまする四十二年産米の買い入れ数量は七百七十五万トンでございます。その後、作柄がわかりまして、昨年の秋の補正予算を編成をいたします際の前提になりました四十二年産米の買い入れ数量は九百五十万トンでございます。その後さらに買い入れが進みまする見込みによりまして、予算総則に定めております手続によりまして逐次弾力条項を発動いたしまして、最終的に弾力条項を発動いたしました基礎になっております数字は九百八十二万トンであります。
  145. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 七百七十五万トンと最初予算に組んだけれども、できぐあいがよくなったのでこれを補正で改定をして、約百七十七万トンふやして九百五十二万にした、さらにその後もっと農民が売り始めたのでもう三十万プラスして九百八十二万トンにしたと、こういう意味ですね。そこで、本年の総合予算主義のもとにおける買い入れ数量、その根拠。
  146. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) お答えいたします。  四十三年度予算の編成の基礎になっておりまする四十三年産米の買い入れ数量は、年度内八百万トンという数字で組んでおります。根拠と申しますと、過去における、昭和四十二年、つまり昨年産米は、作況指数が一一〇を上回るという非常な大豊作でしたので、一応現時点で予算を組みまする場合の数量としましては、ほぼ平年作という前提で組みますると、過去における最高である四十二年産を除いた年における最高の数字たる八百万トンを予算編成の基礎として採用いたした次第でございます。
  147. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これは、八百万トンという組み方をしているのですが、昨年に比べると約二百万トン近く少ない数字ですね。百八十何万トン少ない数字なんですが、それはいま常識は九百万トンぐらいは集まるというふうに言われているのじゃないですか。
  148. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) お答えいたします。  四十二年産米の政府の集荷量九百八十万トンという数字は、四十二年産米の作況が平年に対して一割以上も豊作であったという年に初めて実現をした数量でございまして、作況の状態がわからない時点において予算を編成いたしまする場合には、一応作況は平年作ということを前提として編成をすべきであろうと思いますので、その平年作を前提といたしました場合には、昨年産米を除いた過去における最高の買い入れ数量ということで予算を編成をいたしたのでございまして、ただいま九百万トンが常識だというふうに申されましたが、私どもは、ことしの作況が現時点においてはまだわかりませんので、先ほど申し上げたような考え方のもとに、来年度予算の基礎数字といたした次第でございます。
  149. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 正確に言いまして、これが九百万トンというふうに普通いま言われておるわけですが、いま年々農村の人口が七十万ぐらい減っていくわけですよ、毎年ですね。それだけでも相当なものだし、政府としては農民が売るという場合には断わるわけにいかぬわけでしょう。しかも、農家の消費量というのは年々下がっているわけですね。そういう中で、本年が千三百五十万トンぐらいというのは、普通言われているわけでしょう。生産できるだろうと言われている。八百万トンというとたいへんな——百万トンくらいの差があるというふうに言われておるのですが、これはまあ不確定だといえば不確定ですね。そこら辺はどういうふうに考えておられます。
  150. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) お答えいたします。  確かに、農家の人口が年を追うて減っておりまするので、全生産量に対する農家で保有を必要とする数量が逐次減っておる傾向にあることは、ただいま御指摘になりましたとおりでございます。しかし、生産量は、私どもが一応平年という前提で組んでおりまして、まだ現時点でことしの平年作がどうであるかということはわかっておりませんが、私どもの予算編成をいたします際の考え方として、ただいま鶴園委員がたびたび御指摘になっておりまするが、私どもは、現在の予算の基礎になっている数字が、最近のいろいろな材料をもとにして、著しく過小な数字であるというふうには、実は考えておらないのでございます。
  151. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これは非常に、この八百万トンという数字は、ことし約一千万トン近く買うわけなんですが、そういう意味で非常に不安定な数字だということははっきりしましたが、かりに八百万トンではなくて九百万トン、昨年よりはまあ百万トンぐらい多い数字で集まった場合、つまりこの予算に組んである八百万トンより百万トン多い場合、どの程度の赤字が出るのです。
  152. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) お答えいたします。  現在の生産者米価と消費者米価並びに中間の経費を前提といたしますると、一トンにつき三万円弱の損失が出ることになっておりますので、他の要素全部固定して百万トン買い入れがよけいになった状態を計算いたしますと、約三百億の損失増ということになると思います。
  153. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 一千万トン近い米を政府は買い入れるわけなんですが、ことしの十一月以降持ち越し米、つまり古米となる数字はどの程度ですか。
  154. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) お答えいたします。  現在の需給計画上で本年の十月末の米穀年度末に持ち越します数量は、精米トンで二百三十五万トンを予定いたしております。
  155. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 去年は六十何万トンの古米持ち越し米があったわけですが、去年の六十万トンを売り払うのにどの程度までかかったわけですか、何月ごろまでかかったわけですか。
  156. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) お答えいたします。  古米の売却はおおむね二月をもって終了いたしましたが、一部三月、四月に残ってごくわずか売却をいたしております。
  157. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 六十万トンのその古米を処理するのに五カ月かかったわけですが、今度は約四倍の二百四十万トン近い古米というものを処理する、これはどういうことになるのですか。古米の古米というのができますね。古々米というのができる。
  158. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) お答えいたします。  昨年の十月末の古米の持ち越し量約六十四万トンについての処理の状況は、先ほど申し上げたとおりでありまするが、本年の秋にはそれと比較にならない数量の古米の持ち越しが予想されまするので、私どもとしましては、できるだけ持ち越し古米には品質のよい米を充当するように、現在からすでに売却にあたって保管・管理上若干問題が起きそうな米をできるだけ早期に売却する等の方法を講じております。六十四万トンの米を売るのに四カ月かかったので、二百万トンの米はその四倍というふうな計算にはならないのでありまして、まあ消費者にできるだけ御迷惑をかけない範囲で、古米と新米との区別を、できるだけ古米の処理をそれほど長い期間を要しないような配慮でやってまいるつもりでありまするが、いずれにいたしましても、ことしの秋以降の古米の処理には、相当な関係者の協力のもとにやらなければならないほどの数量であろうというふうにわれわれは認識をいたしております。
  159. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 去年の六十四万トンの持ち越しというのは戦後最大の持ち越しだというふうに言われているのですが、ことしはまたそれが二百四十万トン近くなるわけですから、これは超戦後最大の古米ができるわけですけれども、食糧庁はこれを保管することについて十分自信を持っておられるのでしょうか。いろいろ疑問が出ておるようですけれども、保管すること、品質を損傷しないで保管できるかどうか。
  160. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) お答えをいたします。  昨年産米の非常な大量な買い入れに伴いまして、政府の手持ち数量が非常に大きくなりましたことに伴いまして、倉庫の保管スペースの確保については非常に苦労をいたしたのでありまするが、おおむね買い入れ手持ち数量のピークでありまする十月、十二月末は何とか倉庫の保管スペースの確保を切り抜けたのでございまするが、今後の問題といたしましては、ただいま御指摘のような品質保全の問題が非常に大きな問題でありまするが、従来から、政府手持ち米の品質保全については、十分倉庫業者を督励をいたしまして、注意をいたしておるところでありまするが、本年の場合は、特に定期的に水分の調査を抜き取りでやっていくとか、あるいは虫の発生状態を適期に発見をして薫蒸を施すとか、いろいろ例年よりも増した倉庫業者の見回り監督等に万全を期し、食糧事務局の職員を督励をいたしまして保管・管理に万全を期するよう措置をいたしておるつもりでございます。
  161. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 きのうの——おとついでしたかね、毎日新聞でしたか、新聞に、やれ豊作で臨時倉庫に入れたものだから集団的な米どろぼうがあらわれたというようなことが載っていましたですね。私は、これを見まして、これはよっぽど注意しなければ困るなと思ったんですが、一県当たり百俵くらいですね、しかも十五の都道府県にわたって。ですから、これは計画的、それから集団的、トラックを持った窃盗ですね。その状況はどうですか。
  162. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) お答えをいたします。  米の盗難防止につきましては、従来とも、まず倉庫業者の見回り監督等、防犯体制を万全を期しておるつもりでございまするが、不幸にして発生をいたしました盗難の件数を会計年度ごとに申し上げますると、昭和三十八年度は十五件、数量で二十六・五トン、昭和三十九会計年度は、件数で十三件、数量で二十五・四トン、四十会計年度は、件数で十七件、数量は二十四・九トン、四十一会計年度は十七件、二十九・六トン、四十二会計年度は二十六件、七十・七トンという数字が私の手元に集まっております。
  163. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 この古米ですね、それから古々米になるわけですね、いまの状況ではですね。そういう場合に、売り払うのに非常に苦労されるだろうと思うのですが、本年もこの六十九万トンを売り払うのにたいへんな苦労をされたわけですね。今度は二百四十万トンという古米を持ち越すわけですが、さらに本年若干でも豊作になりますと、これはたいへんな米を持ち越すことになりますね。そういう場合に、値引きをして売れと、そうでないと消化できませんぞという非常に強い意見がありますね。一%でも二%でも値引きをしますと、これはすぐ百億やそこらの赤字になりますね。さらにまた、もしこれは十万トンも——二百三十万トン、四十万トンくらいの持ち越し米の中で一割でも損傷があったという場合には、これまた二百数十億の赤字になりますね。いかがですか。
  164. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) 昨年の持ち越し古米の処理にはたいへん苦労をいたしたわけでありまして、その点について御理解を賜わりまして、たいへんありがたいわけでございますが、本年の秋の二百三十五万トンという数字は、確かに御指摘のとおり非常に大きな数字でありまして、昨年の秋に比較にならない苦労を要すると思います。  古米格差の問題につきましては、販売業者すなわち米屋から、歩どまりの低下が見込まれること等を理由といたしまして、すでに相当な要望の前ぶれが来ております。私ども、現時点において、本年の米の作柄等がまだわかりませんし、この秋どのような具体的な方法によってこの古米の処理をするかという問題については、現在この席で申し上げるだけの腹案を持っておりませんが、いずれにいたしましても、この秋の古米の処理によって食管特別会計に非常に大きな損失を与えるということは絶対に避けたいという気持ちで事に臨んでまいりたいと思っております。
  165. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 大臣、いま若干論議しましたが、まあ八百万トン組んでいるけれども、百万トンくらいというのは、これはもう集まるというふうなのが常識になってるわけですね。百万トンよけい集まるということになると、三百億の赤字になるわけですね。それから一割でも損傷を生ずるということになりますと、これまた三百億円の損失になるわけですよね。でっかい価格を持ってるものが三百億の損失になるでしょう。古米になって、古米だということで値を下げなきゃならぬ。古古米だということで値を下げなきゃならぬということになりますと、これまた百億、二百億の赤字になるわけなんですよ。大臣の考えを聞きたいんですがね。私はだからそういう意味で非常に不安定だ、こういうように思っているのです。
  166. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 確かに古米が、と申しますか、持ち越し米が非常に多量で、この処理については相当留意していかなければならない。また、各方面の御協力も願わなければならないということは事実でございます。ただ、食管の損益につきまして、できるだけ赤字発生をセーブしていく、この努力もしなければならない。それだけに米の問題というのは大きな関心事になってることは御指摘のとおりであります。私どもといたしましては、したがって、食管会計という中に、もちろんいまの米価の問題もあります。同時に、その他大きい、千四百億円にわたるところの他諸経費、たとえばその中には、金利が四百億円も占めておる、こういったようなものも考えつつ、いろいろな面から留意をしてまいって万全を期してまいりたい、こういう考えでございます。
  167. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 大蔵大臣にお伺いしますけれども、補正予算は組まないとおっしゃいますね。ですから、私がいま申し上げましたように、非常に不安定な要素の上に立っとるんですがね。百万トンよけい集まるなんて、今度だって農林省三回変えたんですよ。七百七十五万トンと組んでおって、これはいかぬというので九百五十万トンにして、またいかぬというので三十万トンふやして九百八十万トンにしたんですよ。今度八百万トンと言うけれど、信用するわけにはいかない。非常に不安定ですよ。百万トンぐらい集まるとみな言ってるのです。三百億というのでとてもいま農林大臣のおっしゃる経費の節約や何かでは間に合わない。一割の損傷を生じただけでも三百億の損失が出ますよ。持ち越し米のですね、一割の損傷が出た、だから古古米になった、古米になったということで安く売るとなると、これでまたすぐ百億か二百億の赤字を出さざるを得ない、補正予算は組めないと、こういうことになりますよ。
  168. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 不安定といいますか、不確定のいろいろ要素、むろんございましょうが、過去の平年作を見て、そのうちの最高の数量を一応基準にしているということでございますので、はたしておっしゃられるように、平年作の最高に、さらにそれ以上の政府が買い入れを必要とするのか、もっと少ない数になるか、これはもう不確定でございますので、私はやはり補正予算は組まないという立場で主務の官庁が両米価の適切な調整をやることによって、補正なしで済む方式を、これは必らず確立してもらえるものとまあ期待しておるところでございます。
  169. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 期待はけっこうなんですけれども、補正予算を組まないというたてまえについてですね、ですから、常識的に言って、これは非常に不安定だと、だから、そのときになったら、そのときひとつ考えようじゃないかということになっておるでしょう、農林省と大蔵省の話は。それでなければ常識上おかしいですよ。農林大臣、いかがですか。もし補正でも組んだらえらいですよ。
  170. 西村直己

    国務大臣西村直己君) まあ八百万トンの来年度の買入れ目標、四十三年の。これ自体が妥当であるかどうか、これもずいぶん予算編成当初に検討されて、平年における最高と見ていいだろう、また今年の作況がどうであろうかということを考えてまいりました場合に、一応現在の段階では妥当である。そうすると、あと、米価のあり方ももちろん関係します。それから、その中における食管のいろいろな要素、これらを勘案してまいりまして、私どもとしては、できるだけその中でもって処理をしてまいりたい、こういう考えでございます。
  171. 羽生三七

    羽生三七君 関連。総合予算主義で出発した明年度予算ですから、補正は組まないという気持ちはよくわかります。また、そうするように運営していきたい。それは了解します。しかし、いま鶴園委員指摘されたように、あらゆる要素を総合して、米価の問題だけではなくて、さらにベースアップの問題、これは人事院勧告が出てからでなければわかりませんが、ベースアップの問題。それから予測し得ないような問題の中に災害もある。あらゆる問題を考慮して、大まかに予備費を取ったということはよくわかります。しかし、どうやっても、結局、差し繰りが困難で、補正を組まざるを得ないような条件で起こる公算が多い。そういう見通しです。したがって、いまここで、絶対補正は組まんなんて言っていると、それこそいま鶴園君の言ったように、あと問題が起こる。だから、大まかに財源の確保をしたけれども、そういう補正を組まざるを得ないこともあると言われたほうがはっきりするんじゃないですか。
  172. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 同じようなことを私のほうに言わせてもらえば、この補正予算を組まぬということでこういう予算の編成方式をとったのは非常にいい、その方針でひとつしっかり今年やってみろと言って、激励してくださってもいいので、この間言いましたように、なぜ補正予算組む、組む、組むことあるべしということをそうここで言わせなければならぬかということも問題で、ひとつその方針はいいからやってみろ、お手並みをひとつ見てから批評するということで、今年ひとつ私の方針どおりやらせていただきたいというふうに私は考えます。
  173. 羽生三七

    羽生三七君 そうなるだろうという予測ですよ。当然の
  174. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これは大蔵大臣、非常に不安定な米価の問題だけ、米の問題だけ取り上げましても非常に不安定なんですよ。ですから、そんなにしゃちこばらなくてもいいんじゃないですか。こんなものを常識的に言って補正を組まないとがんばられるのがおかしいですよ、かえって。そのときになったらそのときに考えるんだということでいいじゃないですか。特に米は非常に不安定なんです。しかも金額がでっかいですから、大臣どうですか。そんないいかげんな話ないですよ。非常識ですよ。
  175. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) まだ、いま言ったように、不確定な要因をたくさん持っているときでございますから、いまのうちからそれを予想してかかる必要は私はないと思います。
  176. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 総理は昨年渡米される直前に、突如として閣議で、各省庁一局削減という指示をされたわけですね。いまこれが法案となって国会に出ております。総理の各省一局削減の目的ですね、これはどういうことだったのか伺いたいわけです。
  177. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 行政機構の再編成、簡素化と真剣に取り組みたい、こういうところから実はスタートいたしました。したがいまして、これにはいろいろの批判もあるようです。渡米前突如と言われますが、この問題は私も十分検討いたしまして、たまたま渡米前のその時期に発表したということでございます。各省とも非常に協力をしていただきまして、また、ただいまも御指摘のような皆さんの御協力も得ておる、かように私は確信を得ておる次第でございます。
  178. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 行政管理庁長官は、このいまの各省庁一局削減をどういうふうに受けとめて、基本的な考え方をどういうふうに持っておられたのですか、伺います。
  179. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) 根本的な行政改革の最初の出だしだと、こういうふうに受けとめまして、この問題とは真剣に取り組んでおる次第であります。
  180. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私が伺ったのは、真剣に取り組んだのはいいんですけれども、この各省庁一局削減についてどういう基本的な考え方を持っておられたのかと、こう伺っておるわけです。
  181. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) 一省庁一局削減だけは、佐藤内閣の政治姿勢でもありますので、額面どおり必ず実行したい、こういう気持ちで取り組みました次第でございます。
  182. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 新聞の報道によりますと、十一月二十八日の閣議行政管理庁長官は各省庁一局削減について見解を述べている。閣議が終わったあと記者会見をやって、この各省庁一局削減について私はこう思うのだという見解を明確に示しておられるのですが、この見解をここで示してもらいたい。
  183. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) 鶴園委員は人が悪いと思います。あれは、新聞記者の諸君を相手にいたしましていろいろな内容について発言したやつなんでありまして、そのときの気持ちを申し上げますと、私はほんとうに各省庁から出てまいりました一省庁一局削減は、額面どおり受けとめまして額面どおり返上をしてきたのだと、こういうふうに思っておったのであります。ところが、内容を見ますると、額面どおりでないものも相当あったものですから、私の気持ちを不規則にぶちまけたのがあの記事になっているのだと思いますが、それをいつまでも暗記しておいでになります鶴園委員は、どうも人が悪いようであります。正確な発言であったならば、りっぱな発言であったならばどうか御記憶にとどめておってくださいましてもけっこうでありますが、ああいう発言はなるべくお忘れになってくださると非常によいと思いますが、ともあれ、私はほんとうに佐藤内閣の政治姿勢でありまする一省庁一局削減だけは額面どおりやったみたいと、こう思いまして、ほんとうにやってみたのでありますが、やるについては、非常に困難も伴いましたけれども、やることはやったのでありまするから、やった点だけはどうぞほめてくださるようにお願いを申し上げます。
  184. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 どうも人が悪いと言われるのですが、これは長官がおっしゃるように、囲み記事みたいなこまかいものは出てないのです。でかく出ているんです。小さいものなら私見つからないのですが、でかく出ているものですから目についちゃう。それによりますと、十一月二十八日の閣議長官は、各省庁一局削減というのはこういうものなんだということをはっきり言っておられるのですよ。それを見ますと、局と局との形式的な合併なんというのはだめだと、局を部に格下げするようなもの、これもいかんのだ、廃止する局というのは課以下のものにしてもらわなければ困るのだ、こういうふうな発言なんです。これはなかなか各省庁一局削減についての基本的な考え方としておみごとだと思うのです。そこで、合格するのは大蔵省と経済企画庁と行政管理庁の案はいいと、それ以外はみななっていない、こういう発言なんです。実にはっきりしているのですよ。囲み記事なんかじゃないのです。
  185. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) どうもありがとうございます。私はお役人になったのは初めてであります。ほんとうにこの行政改革の中で、一省庁一局削減だけは思い切ってやってみたい、やりがいのあるものなんだ、そういうようにそのときは考えたのであります。ところが、取り組んでみますと、そう簡単なものじゃ実際ないのです。こうして、一月、二月、三月、四月たってみますると、もっとあのときにはやり得たんじゃないかということも考えられまするけれども、何せ初めてでありまして、取り組んでみまして、あれが実は精一ぱいだったのでございます。その精一ぱいの前の最初のことばがそうなってあらわれたのでありまするから、ほんとうに精一ぱい取り組んであの程度だったということは、私顧みまして実は情けない点もありますけれども、何せ最初だったものですから、ほんとうに精一ぱいやったんであります。
  186. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 各省庁一局削減についての初めのほうはよかったのですね、行政管理庁長官の構想は。あとはかっこうつかなくなっちゃったんですね。ですから、まじめに一生懸命やられて結果はああいうことだというお話ですから、それ以上伺わないことにいたしまして、ただ、このときに、行管のほうはいい、あとはなっていない、大蔵省と経済企画庁と行管はいい、それ以外はなってないということを言っておられるのですが、その御本尊の行管はどうなさいました、それから。
  187. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) その点、不思議なんですよ。私、行管に参りまして、一省庁一局削限と言いながら、行管は削減しない方針をとっておった。それですから、それじゃ自分が担当者でありながらそのようなことでは人に求めることができないじゃないか、こういうように思いまして、理屈はどうあろうとも一局だけは削減せよ、こういうそのとき指令を出して、総理府本庁の統計局と一緒にそういうやつはやめさして、そうして一局削減をやらしてみたんでありまするから、その新聞記事が出ておったとすれば、それは新聞記事の間違いとは申し上げませんけれども、私のことばが間違っておったのじゃないかと思いまするから、そうでありましたならば、そこは、いまからではおそいんでありますけれども、訂正さしていただきます。
  188. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 行管長官はどうも少し悪いくせがありますね。いいくせなのか悪いくせなのか知りませんが、どうも新聞記事はおかしいのだというようなことをおっしゃいましたですが、あとでもう一つ問題がありますから、ひとつ取り上げておかなくちゃならぬと思います。ただ、行政管理庁の一局削減はこれは一局削減になっているのですか、どうなんですか。初めは局を削減して、総理府統計局に合わせると、こうおっしゃっておったが、その案はよろしいとあなたはおっしゃった、自分で。これは合格だ。そうしなかったでしょう。妙なことになっているでしょう、いまは。
  189. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) 私が長官にならない前の案は、総理府と一緒にすると、こういうような考えでおったのですよ。総理府のほうでは一局削減はしない方針だったものですから、それでは額面どおりでない、こういうことで、自主的にこちらのほうで一局削減をやろう、総理府のほうでも一局削減やってもらえ、こういうようにしたのであります。最初のやつはそうでなかったわけであります。総理府と一緒にするという案だった。そいつを、私になりましてから、自主的に一局削減する、こう出たわけであります。そういうことであります。
  190. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 それじゃいまはどうなさいました。もっと具体的に話してください。御本尊ですよ。
  191. 木村武雄

    政府委員木村武雄君) 御本尊のほうは、管理局と統計基準局を一緒にすることにいたしました。そして統計基準局は廃止することにしてあります。
  192. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 確かに統計基準局は廃止しましたけれども、統計主幹というのを置いたでしょう。これは局長と同じでしょう。当初のあなたのお考えとは全くこれは違いますね。
  193. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) 局は廃止いたしましたけれども、在来の仕事があるものですから、やはりそいつを何とか締めくくっていくものが必要だと、どうしてもそう言うんですよ。しようがないんですね、そいつは。そいつを要らないと言ってみたって、事務当局が要ると、こう言うんですから、しようがなかった。行政が私はスムーズにいけば非常にいいものだと思いまするけれども、やはりジグザグコースをたどらなければほんとうの行政改革というものはできないかもしれません。私の考えどおりにいかないかもしれません、いろんなことがありましてですね。どうか野党が思い切って応援してくださいよ。お願い申し上げます。正直な話です。
  194. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 局は廃止して局長はいなくなったけれども、そういう似たようなものがないと非常に困るんだという事務当局の意見があってやはり局長と同じようなものを置いたと、こういう話なんですよ。非常にむずかしいものだというお話なんですね。それじゃ、なぜ総理は各省庁一局削減というような方針を出されたのか。いま御本尊がそうおっしゃっている、むずかしいものだと。うやむやになってしまっている。じゃ総理は一体どういうわけで各省庁一局削減というものを出されたのか伺いたいですね。
  195. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) 私、先に答えますよ。  それはむずかしくない人もあるかもしれませんよ、くろうとであったならば、私はしろうとだったものですから、非常にむずかしいと考えたのでありまするが、それはほんとうに取り組んでみると、やはり、まず局をやめろということが一番大きなことで、局長一人だけでもやめさせるなんということはたいへんなことでありまして、それから逐次行政改革は末端まで浸透さしていかなければならない問題だ、こういうように考えておりまするので、局をやめるなんということは、局長一人やめさせるなんということは、それはもうそう簡単なものじゃなかったことだけは、私は正直に申し上げなければなりません。しかし、それを端緒にして、ほんとうに行政改革は末端までいくべきものだ、そして今度最初にその問題と取り組んで、一局削減に成功したものですから、これからは根本的な改革、三年間で根本的に改革をやろうという自信を持ち得たわけでありまして、発生は非常に小さかったのでありますけれども、結果が非常に大きなものになったのであります。それだから自信を持ったわけであります。
  196. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 木村行管長官のただいまの答弁で御理解いただけるかと思いますが、私もかつて官僚の出身、また鶴園君も御経験がそうだと思いますが、官僚機構というものを簡素化する、あるいは機構と取り組むということは、実はたいへんなむずかしい問題であります。勇気を必要とするのはもちろんであります。ただいまそのことを決意いたしまして直ちにすぐ実効があがるものと、かようにも考えませんが、各省の協力を得て、まず第一歩を踏み出す。したがって、ただいまも一言簡単に触れておりますが、あと三年計画というようなことを言っておりまするが、私はまず仕事の中身を変えなければならない。御承知のように、毎年毎年法律がたくさんできておる。法律ができるたんびに役人、公務員の数がふえてくる。しかし、もうすでに目的を達した法律もあるはずであります。また、ことに、もっと民間の協力を得るために役所の機能も民間中心に移行していかなければならない、かようにも思います。少し政府がめんどうを見過ぎている、こういう気もいたします。そういうような点では、まず法律も減らしていかなきゃならない。先ほど審議会の構成についても御意見がございましたが、審議会も多過ぎる。各種の調査機関にいたしましても、これも多過ぎる。もっと民間で自主的にやれるものがうんとあるわけであります。それらの点を考えると、まず先に公務員自身の機構、その機構をもっと簡単にしようじゃないか。その意味で、これもずいぶん乱暴な話ですが、不要なものを整理する、そして必要なものはふやすということ、これが本来の筋だと思いますけれども、さような議論をしていたらなかなかものが進まない。だから、各省庁いろいろな理由があるだろうが一律にひとつ思い切って減らしていこうじゃないか、こういう、まあずいぶん乱暴な決定をしたわけであります。ところが、幸いにいたしまして、いま言われるように、中には、どうも形だけ整えて実質はそうなっていないじゃないか、こういうような御批判を受けるものもあろうかと思いますけれども、しかし、いまの実情等から見まして、第一歩を踏み出した、かように御理解いただいて、そしてこれが一歩だけで成功するものではありません。これをさらに進めていく。ことに私どもは非常にくふうをこらしますのは、いわゆる行政整理——出血整理ということにいつもなりがちでございます。こういう時代に出血整理などをする考えはございませんから、そこで、相当の時間をかしていただいて、そして国民の負担を軽減することができれば、そういう方向に進み、また、民間の積極的な協力、その力も十分発揮できる、こういうような機構にする。こういうような方向で、これから取り組んでいくつもりであります。すでに行政管理庁のほうでは、行政制度についての臨時調査会が答申をしております。これなぞも全然手を触れておりません。しかし、それにまずひとつ先べんをつける。こういうようなわけで、今回取り組んだのでございます。いろいろ御批判もあろうかと思いますが、これはただいま申しているように、これだけで終わるわけではない、かように御了承いただきたい。またさらに、これによって出血整理なぞ政府は考えていない。これも御理解いただいて、むしろ各党の御支援を願いたい、かように私は思っておる次第でございます。
  197. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 総理のせっかくの御答弁なんですが、私どうしても納得のできない点がまだありますので、もう少し伺わしていただきたいと思いますが、総理府の一局削減はどういう形になったわけですか。これは総理府総務長官でよろしゅうございますが、総理府の一局削減。
  198. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) お答えをいたします。  ただいまいろいろとお話がございましたように、一局削減という方針は、機械的な問題ではなく、行政の簡素化、能率化の点でございますが、総理府といたしましては、従来ございました青少年局、私はこの青少年問題の重要性から考えましても、これを国家行政組織法の八条機関といたしまして、局を改めまして対策本部ということにいたしまして、より機動的な姿において、ことに本部長を総理大臣になっていただくことによりまして、一そうわれわれが期待をする青少年問題と取り組んでいきたい。しかも、それは能動的な、機動性を持った姿にいたしまして、局は削減いたしますが、能率の点におきましてはあげてまいりたい、かように考えて処置をいたしました。
  199. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 長官、それが一局削減ですか。
  200. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) 行管長官からもお話のございましたように、一応形といたしましては局はなくなりましたが、対策本部という姿において違った行政効率をあげていかなければならない、かように考えておる次第でございます。
  201. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これは総理大臣の足元の総理府が、一局削減だと言いながら、青少年局を廃止したけれども対策本部ができちゃった、局長が次長という形で残っちゃった。これじゃ一局削減にならないじゃないですか。そういうことをされるから各省全部一局削減にならない。名前だけ局がなくなっただけで、かわって部ができてみたり、何とか審議官というのができてみたり、そういうことにならないのでしょうか。行管長官どうですか。これは総理の話かもしれないけれども、あなた答弁うまいようだから。
  202. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) その御指摘のとおり、かっこう悪いですね。実際かっこう悪いと思います、私も。しかし、これもやむを得なかったのです。非常に折衝しましたけれども、青少年対策というものは非常に重要な問題なんですね。そして青少年対策行政をあずかっておる各省庁を調べてみましたところが、十二の省庁にまたがっておるのですよ。おのおの青少年局ができましたけれども、行政というものはいまだ一元化されていなかったのであります。やはり青少年対策というものは非常に重要なものでありまするから、どんなにしても将来一元化する必要があるだろうということは万人が等しくお認めになったことなのでありまして、そいつを非常に考えましてあとあとに備えたのであります。いま非常にかっこうの悪いものなのであります。ほんとうに御指摘されると私は汗顔の至りだと思います、これだけは。しかし、将来に備えなければならない。それで機構は縮小いたしましたけれども、使命の重大さに生きようじゃないか、こういうことで青少年対策本部という形ができたのであります。しかし、機構は確かに縮小されたのでありますから、青少年対策からいいますると、一歩後退して二歩前進するという体制かもしれません。
  203. 加瀬完

    ○加瀬完君 ちょっと関連。国民は、総理をはじめいまの閣僚の皆さんが行政改革という名のもとに一局削減をするということを非常に拍手をもって期待をいたしておったわけであります。これによって非常に複雑になった行政機構も簡素化されあるいは能率化されるであろう、しかも、財政的にも負担の軽減もできると喜んだわけでございますが、いま長官の御説明のように、初めの張り込み方のとおりには効果があがらなかった、あがらないのにはいろいろ複雑な事情がある、こういうお話でございます。せっかく国民の期待するような方針を掲げて、何が、どこが理由でスムーズな行政改革の効果があがらないのか、これは国民は詳しく聞きたいと思います。ひとつ長官から、どういうポストが、あるいはどういう機構がせっかくの良案にブレーキをかけているかつぶさに御説明をいただきたいと存じます。
  204. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) 先ほども申し上げましたとおり、一省庁一局削減という問題だけは、いまの佐藤内閣の政治姿勢だけは貫いたつもりであります。しかし、それだけで行政改革の全部じゃない。全くのはしりなのでありまして、根本的な改革はこれからの両三年の間に行なうというわけで行政改革の三カ年計画案というものをいま鋭意立案中なのでありまして、八月一ぱいまでの間にりっぱな納得のいくような行政改革の案をつくるべく努力中なのでありまして、それをごらんになりましてほんとうの御批判を賜わりたい。いまは完全舗装の前の道路工事をやっておるようなものでありまするから、若干でこぼこがあるのでありまするが、それだけをごらんになりますと、効果がないじゃないか、こういうような御批判はごもっともだと思いまするけれども、三年の後にはりっぱな舗装道路をつくって、そのときに誤りがあったならば御批判は甘んじて受けなければならぬと思っておりまするが、どうか三年間だけごしんぼうしていただくようお願いいたします。
  205. 加瀬完

    ○加瀬完君 私の質問はそういうことじゃないですよ。名前を変えても形はそのまま残っちゃった、それには組織や人の抵抗があったというようなお話に受け取れる、じゃあ、せっかくおやりになろうとした長官のお考えをはばんでいるものは一体何だ、それを聞かせていただきたい。
  206. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) はばんでおるものはたくさんあったのです。いろいろあったのでありまするが、それをかいつまんで申し上げますると、理解がなかった、こういうことになるのじゃないかと思います。そういう点で、あとから思い切って努力いたしまして、そして誤解を抱いておいでになりまする人々や局や課に対しまして一生懸命になって、精力的に、それは誤解だということをお話し申し上げましたところが、御納得いきまして、今度の政府提出の一省庁一局削減の法律案になったのでありまするが、最初はほんとうに誤解がありまして抵抗があったのです。民間にも抵抗がありました。その抵抗を排除しながらここまでたどりついたのでありまするが、まあ、統一したことばで申し上げますると、理解が足りなかった、こういうことだと思います。
  207. 加瀬完

    ○加瀬完君 どうもわかりませんね。
  208. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これは行管長官、そういうおかしな話ではないと思うのですね。ただ、総理大臣がせっかく突如として各省庁一局削減という案を出されて、結果はこれは非常におかしなことになっちゃったですね。行政組織が悪くなっている。非常に悪くなった。で、どだい悪くなって、まあ世評としてようやく合格したのは経済企画庁だけだと、こういうのですが、あとはみんなアウトだというのですよ。アウトならいいんですよ、まだ。悪くなっている。そういう点をどう考えておられますか。
  209. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) 悪くなったとおっしゃいますけれども、悪くはなっていないと私は確信を持っております、それだけは。今度この法案が御理解を得まして通過いたしまして実施いたしましたならば、半年を出ずして、よかったと、こういう声が必ず出るだろう、こう思いまするが、いまやっぱり批評がいろいろあるようでありまするが、それはまだ結果としてあらわれた批評じゃないと思っております。結果としてあらわれる批評は、この法案が通過して後、半年を待たなければならないだろうと、私はこういうふうに思っておりまするが、やっぱり最初に抵抗した人々なんかはそういう悪い批評を立てておるかもしれませんけれども、それがだんだんなくなるだろうと、私はこういうふうに見ております。ともあれ早く実施すること、いつまでもたなざらしにしておかないで、ともあれ、この法案を早く通してもらいまして実施することだと、私はこういうふうに考えておりますから、どうぞ早く通して実施せしめてくださいますよう幾重にもお願いいたします。
  210. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これは行管長官、局というのは行政組織の大黒柱ですからね。局というのは柱ですよ。その柱を一律に一局ずつ減らせなんというべらぼうな話はないと私は思うのですよ、五十あろうと。ですから、総理がもう少し検討調査された上で言われるのはいいんですよ、それが何か突如として一局削減だということを言われるから、これは行政組織の柱である局を無理やりにゆすって倒すものですから、妙なことになっちゃう。そういう意味で、これは総理のほうで慎重な検討の上そういう発言をしてもらいたいと私は思うのです。特に行政機構というのはそうだと思いますがね。総理の見解を承ります。
  211. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) さすがに公務員出身ですから御理解があると思いますが、確かに局は行政機構の中心です。この中心にメスを実は入れる。したがって、局長一人減らしたという簡単な見方もございますが、その柱にやはり手をつけなければ、まあ硬直した行政機構の改革には手がつかないのです。ただいま整理のほうは十分効果をあげなかったという御批判はございましたが、毎年毎年、機構は拡大の方向をたどっておりまして、少なくとも、今回の行政機構の整理——一省庁一局整理、こういうことで、今回くらい局の増設あるいは課の増設等のなかったときはないだろうと思います。したがって、この効果も——間接的な消極的な効果ですが、これもやはり念頭に置いて評価していただきたい。ただいま言われるとおり、確かに局にメスを入れなければ、行政機構はよくならない。ずいぶん乱暴な話のようですが、私の長い公務員生活の経験から、この際、思い切ってやろう、やはり目をつぶって一省庁一局削減、こういうことでないと、これはそれぞれの必要があってできた局でありますから、そう簡単には、減らせない。だから思い切ってこれをやったのでございます。したがって、ただいまのような御批判のあることは当然だと思います。先ほどもお断わりしたのでございますが、これはいろいろ理屈を言えば、それぞれの必要があってできた局でありますから、いまさら不要になったというようなものはおそらくないだろう、こういうふうに思います。そういう点が、思い切った政府の行政機構改革に取り組んだ姿勢だ、さように御理解をいただきたいと思います。
  212. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私は、局というのは行政組織上最も根幹をなすものでありますから、それを簡単に各省庁一局削減だということでは非常に不満足だ。もう少しこれは慎重に検討された上に処理すべき問題だというふうに思うのです。その意味で、私は今回の処理については不満足なんです。  次に、行管長官に伺いますが、あなたのところで、監察局ですね、あなたのところの監察局は、郵政省と共同をして行政監察をやる、しかも、それは労働組合との関係で、郵政省でやりにくい面があるから、行政監察の名をかりてというのか、一緒になってこの郵政省の監察をやろうということがあったということ、しかし、それは一年たな上げになったという新聞報道がありますね。これは事実ですか。
  213. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) それは事実じゃないです。私のほうの庁は御承知のように、三つしかありません。非常に数も少ない局なんでありまして、一つ整理いたしますると、二つになってくるんであります。そのうちの一つの監察局が、なれ合い監察をやるなどということになりましたならば、そのような監察局なんていうものは置いておく必要がなくなってくるんであります。それでありまするから、共同で監察をするなどということがあったならば、もってのほかと私は思っておる次第であります。そんな局であったならば、むしろ廃止してもいいじゃないかというようなきつい気持ちも私は持っておるのでありまするから、そのようなことは新聞記事を見まして聞きましたけれども、全然ありませんと、こういうことでありました。私はそれでよかったと、こういうふうに思った次第であります。
  214. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 行政管理庁長官、これでいいんですか。それじゃ長官ね、そういう御発言になるんなら、行政監理委員会の議事録をひとつ見せてください、二月の。うそだとおっしゃるなら。直ちに持ってきてもらう、うそだと言うんなら。だめですよ。
  215. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) 私からその経過を御報告を申し上げまするが、こういうことだったのであります。私が長官になりまして、そして監察についての経過を聞いておったのであります。いま郵政省の監察をやっておるのだ、こういうことでありましたが、いろいろな改革を郵政省がやっておいでになる。その改革の途上において、監察をやるなんということはいかがかと思う。それで、やめたらどうだ、そして一切の郵政事業の改革が行なわれたあとで監察することが一番いいと思います。だからやめたらどうかということは、私が監察局に言ったのであります。それからもう一つは、いまそれよりも大きな監察をしなければならない問題があるのではないか、たとえば生鮮食料だとか、あるいはお米の問題だとか、それから牛乳の問題、肉の問題など、当面国民生活と日常不可分の関係のあるものが、いまたくさんあるのだ、それを思い切って監察してみたらどうだ、こういう忠告をしたところが、郵政のほうもやりながらこれもやるという能力はないのだ、こういうことでしたから、郵政のほうはやめろ、そして、こっちのほうに監察を切りかえなさい、こう言って私が命令したのであります。そして命令したことを二月の監理委員会の席上において、いまやっておったやつはやめたいと思う、こういう話を私がしたのであります。そのことは記憶にありまするが、そのことは記録にも残っていると私は思いまするが、あれは私が自主的にやめさせたのであります。いろんなことがあってやめたのじゃありません。経過はそういうことなのであります。
  216. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 それは納得できないですね。行政監理委員会の議事録をひとつ出してもらう。二月ですからね。これを見ればはっきりすることです、これがうそだかどうだか。
  217. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) 議事録はいまないそうでありまするから、すぐ持ってこさせまするが、まあ持ってくるまでの間、他に御質問があったら御答弁申し上げます。
  218. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 鶴園君、いま書類は持ってまいりますが、その間ほかのほうを。
  219. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 委員長、これはうそだと言われたのじゃ、これは進めるわけにいきません。議事録を見てから。
  220. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) 私はうそだとは言わないのです。その議事録に載っているはずだ、こういうことでありましたから、私の記憶していることはこうだということを申し上げたのであります。
  221. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いや、一言で言えばうそだということでしょう。
  222. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) いや、そうじゃないのですよ。うそだなんということはたいへんなことですよ。かりそめにも、うそだなどということばは使いません。
  223. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 あなたここで言っていることは、そうじゃないと言ったでしょう。
  224. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) そうじゃない。議事録に載っていると、こうおっしゃったでしょう。私は、私の記憶にありますることはこうだ、こういうふうに申し上げたのでありまして、あなたのおっしゃったことがうそだなんということは決して申し上げません。私も政治生活長いですからね、あなたの面目をつぶすようなことはかりそめにも言いませんですから。
  225. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いま言いましたことを、ここへ書いてあることを言ったのですね。そういうことは事実無根だという言い方ですね。私の記憶ではかくかくであるという説明をされたわけです。事実無根だということは、これはうそだということなんですから、それは私としては看過できない。それは議事録を見ればはっきりすることじゃないかと、こう言っているんです。
  226. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) いまの、鶴園君、長官が言い直したように、それは違うというふうに言われたから。
  227. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) 鶴園さん、あなたのおっしゃったことが事実無根だとは言ったんじゃないですよ。ただ、私の記憶はこうだということを申し上げたのでありまして、速記録を見なければわかりませんから、それですから、私はそうは申し上げていないんですよ。その点だけは。ただ、私の記憶はこうであったと、こういうことを申し上げたので、そういう点は——まあ、あまり気にかけないでくださいよ。
  228. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 鶴園さん、大体御了解になったと思うから、進行してください。鶴園君、大体御了解になったと思いますが、どうです、質問を続けてください。
  229. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いや、私がさっき言った行政監察を郵政省と共同でやるという、しかも、それは労働組合の関係もあって郵政省と一緒にやるんだ、それで、郵政省のまあやることをバックアップしようというわけですよ。共同監察ですよ。しかし、労働組合に対して、行政監察の勧告を利用しようというわけですよ。それは許せないと私は思うんです。ところが、そういうのは違うんだというお話です。彼の記憶によると、そうじゃないんだというお話ですから、それは困りますと言っているわけですよ。それは、このやつは、さっきも長官おっしゃったように、行政監理委員会長官しゃべっておられるんだから、その議事録があるんだから、それを見せなさいと、そうすれば明らかになりましょうと、私はこう言っているんです。
  230. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) いま聞いたんですがね、監理委員会の議事録というやつはダイジェストしてあるんだそうです。それで、全部テープにとっておくんだそうです。そのテープをお聞きになりますると、みなわかる、こういうことなんでありますが、(「テープを持ってこい」と呼ぶ者あり)テープを持ってこいとおっしゃれば持ってこないこともありませんけれども、そんな長いテープをこれから二時間も四時間もかかるようなテープなんですよ。それで、いまダイジェストしたやつを持ってこさすようにしておりますから。監理委員会の議事録というやつはそういった内容だそうです。テープしたやつから引き抜いたやつだそうです。
  231. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 テープを聞く必要はないから、その議事録を持ってきてくださいと、こう言っている、そうすれば明らかになりますと。
  232. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) いま取りに行っておりますから。
  233. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 持ってこないじゃないですか。
  234. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) いや、持ってきますよ。(「テープを」と呼ぶ者あり)テープはあとにしてくださいよ、テープは。
  235. 森中守義

    ○森中守義君 委員長
  236. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) いま……。
  237. 森中守義

    ○森中守義君 委員長のお許しを得ましたから……。
  238. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) いや、まだ許しておりません。まだ許してない。——いま、森中さん、議事録を持ってくると言いますから、その関連をやると、こんがらがるよ。
  239. 森中守義

    ○森中守義君 私の質問も同じことを聞いたのですよ、同じことを。ところが鶴園君に言われたのと同じように答えた。その事実はないと、新聞がかってに書いたのだと言わぬばかりの言い方だったから、私もぜひひとつそのテープを持ってきて聞かせてもらいたい。そうしないと、きのう私は簡単にいなされたことになりますからね。簡単に引き下がれない。
  240. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) いま資料持ってきますから。
  241. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) 内容はわかりました。鶴園さんがごらんになったのは議事録だと思いますが、その議事録はダイジェストしたやつだと、そのダイジェストしたやつの中には、そういうふうに思われる節もあると、そういう議事が出ておると、こういうことなんであります。しかし、それはテープからとったやつなものですから、テープをお聞きくださいますると、そうでないことが完全にわかると、こういうことだそうでありますから、それは鶴園さんのいままでのお話も、それをごらんになっているお話かと思いまするから、ごもっともだと思います。しかし、テープをお聞きになりますると、そうでないことが全部がわかりますから、はっきりおわかりになる、こういうことでありますが、まあテープを持ってこい、テープを持ってこいと、こうおっしゃいますけれども、それはそれでよくわかりますが、何とかその点はどうぞ。
  242. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 鶴園さん、大体おわかりいただけたと思いますが。(「議事録とテープは違うというのだから」と呼ぶ者あり)静かに。
  243. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) お答え申し上げます。  議事録の記載事項に、鶴園委員が御指摘になったことがあったことは事実でありますが、要約のしかたに問題があり、御迷惑をおかけいたしました。事実は、私が申し上げたとおりでありますから、御了解をお願い申し上げます。
  244. 森中守義

    ○森中守義君 関連。私には全然違うことを言っておる。私には違った答弁をしている。食言だよ。
  245. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは簡単に要領よく。
  246. 森中守義

    ○森中守義君 いまの、創作だか合作だか知らぬけれども、かりにそういう文章の表現で行管の長官が言われたわけですが、きのう、第三分科会における同様の私の質問に対する長官の答弁が全然違っておる。私に対しては事実を否認されましたよ。だから、その辺がどうしても私は釈然といたしません。事実があったにかかわらず否認するということができますか。だから、あらためてひとつ長官からもう一回答弁をしていただきたい。
  247. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) 先ほどお答えしたとおりでありまして、議事録の記載事項に鶴園委員から御指摘になったことがあったことは事実でありますが、要約のしかたに問題があったので、森中委員にも御迷惑をおかけいたしましたことは申しわけありません。事実は私が先ほど申し上げましたとおりでありまするから、どうか森中委員も御了解くださるようにお願い申し上げます。
  248. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 今度の予備費の中に、公務員の給与改定の財源を準備したということについて、大蔵大臣の説明を伺います。
  249. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 御承知のように、予備費は一般会計千二百億円計上してございますが、これは災害とか、あるいは人事院勧告とか、あらかじめ予見できない予算の不足に充てるための経費でございまして、したがって、予見できないことに対する経費でございますだけに、この予備費の中で何に幾らを予定しているというような、そういう金額を特定しているものではございません。
  250. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 それは大蔵大臣、この千二百億円の中に公務員の給与改定の金を組んであるということでしょう。
  251. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) そうでございます。
  252. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 特定してないとおっしゃいますけれど、いままあ約五百億円というふうに言われているわけですね。ですから、これを五百億というわけに、なかなか大臣としては予備費の関係上言いにくい点もあろうと思いますけれども、しかし、私、衆議院の大蔵委員会あるいは本院の予算委員会等における大蔵大臣の答弁を見ますと、やはり去年あるいはその前の勧告等の実績も十分勘案して予備費の中に組んでありますというお話だったですよね。昨年の勧告の実績を勘案して組んである。そうすると、ほぼ五百億円程度というふうに推定ができるんじゃないかと思いますがね、いかがですか。
  253. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 過去のいろいろ災害そのほか事務費の精算不足というようなもの、いろいろな補正要因を勘案して、そうして全体として千二百億円、予備費の充実をはかったということでございまして、この災害がどうなるか、また、人事院の勧告、どういう勧告が出されるかということは、全くこれはわかりませんので、全体としてこれだけの予備費を計上しておいて、それらの財政需要に対処しようということでございますので、いまおっしゃられるように、五百億円というような金額は全く私のほうで特定しておるわけではございません。全体としていままでの実績そのほかは当然勘案して予備費の計上をいたしましたが、その内訳はどっちがどういうふうになるかというようなことをいまはっきり考えてきめておるわけではございません。
  254. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 自治大臣にお伺いいたしますが、これはこの間の予算委員会田中委員が質問いたしましたときにお答えになっておられるわけですが、災害、それから地方公務員の給与のために八百五十億組んだというお話でしたが、去年は災害のためにどの程度の金を組んでおられますか。
  255. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 明確な数字は後ほどお答えいたします。
  256. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いやいや、それが出ないとちょっと話が進まない。
  257. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 自治省、事務当局だれか答弁を。
  258. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 事務当局が出ておりませんので、ただいま電話で問い合わせまして、すぐお答えいたします。——詳細は間もなく電話で言ってくると思いますけれども、昨年はたしか、地方財政計画には災害費は組んでおらぬはずでございます。
  259. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 委員長、正確なところを。
  260. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) ええ、いま……。
  261. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 昨年度は、計画では五十億準備いたしておりますが、決算では、大体実績は百五十億見当出ておる模様でございます。
  262. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 自治大臣、どうも私うっかりしましてね、自治大臣質疑の通告をやっておりませんでね、うっかりしました。恐縮です。間違いありませんですか。百億じゃありませんか。
  263. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) きょうは通告がありませんでしたので、事務局がおりません。ですから、大体電話でいま問い合わせましたけれども、実績は大体百五十億と。大体地方財政計画には、御案内のとおり、予備費みたいな便利なものがないものでございますから、しかし、実際はこうして災害のあることは大体予定されますので、去年はその引き当てで五十億準備しましたけれども、決算見込みでは百五十億になるということを申し上げたわけでございます。多少数字の出入りは違っておりましたら、後ほど御答弁いたします。
  264. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 もう一つ自治大臣にお尋ねいたしますが、昨年の公務員の人事院勧告の実績は五百十四億なんですね。調整手当と、それから暫定手当を差し引きますと、五百十四億なんですが、その場合の非補助の地方公務員は幾らと。——大蔵省わかるんじゃないかな。どうですか。
  265. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 主計局わかりますか、大体。
  266. 村上孝太郎

    政府委員村上孝太郎君) お答え申し上げます。  昨年度の地方の公務員のベースアップに必要とした経費は七百四十九億円でございます。
  267. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 国家公務員は五百十四億円、去年の実績ですね。地方公務員が七百四十九億。今回、地方公務員も同じ七百四十九億——七百五十億というふうに見られてるんですけれどもね。ですから、こういう点からいって、大蔵大臣としましたは、昨年の実績等も十分勘案をして予備費に組まれたと言うんですが、ほぼ五百億と見ていいんじゃないですか。ワクの問題を言ってるんじゃないです。大体そういうような見積もりで組まれたんでしょうと言っている。
  268. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 先ほどから言っておりますように、額が幾ら幾らということは決定しておりません。総額でのからみ合いで準備をしているということでございます。もし額が大体特定できるというものでしたら、先般大蔵委員会でも木村委員から御質問ありましたように、これは給与の基準費として別にワクを特定しておいていいじゃないかということでございましたが、私どももそういうことを当初は考えました。これはとてもむずかしいことでできない。全体として対処し得る方法を考えるということで、千二百億に準備するということをしたのでございまして、これだけは全くいまのところ、幾らかということを予見しておりません。
  269. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 委員長一つだけ。自治大臣に伺いますが、地方財政計画では予備費というものがないのです。お話のように。そこで、四十三年度の地方財政計画ですね、これは私、見たんですが、どの項目に、どこに国家公務員の給与費に当たるようなものが組み込まれているのか、全然組み込まれていないことはないと思うのです。国のほうでは予備費は一応——金額はいま大蔵大臣が明確にできない、これは勧告があってから、千二百億のうちどれだけ使うか確定するわけです。一応組み込んである。地方財政計画のどこを見ましても、見当たらないのです。予備費というものはないのです。一体どこにどういうふうにこれが組み込んであるか。全然組み込んでないならたいへんだと思うのです。それを教えていただきたい。幾らさがしてもないわけです。
  270. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 一般行政経費八百五十億円ということで引き当てております。
  271. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 一般行政経費と言いますと、幾らの中にどれだけ。
  272. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 一般行政経費の項目で八百五十億円組んでありまして、これはその人件費の引き当てだけではなくして、災害の応急の手当てもあわせて組んであるわけでございます。
  273. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そういうものがないのですよ。地方財政計画のどこにあるのですか、そういうものはありませんよ。
  274. 村上孝太郎

    政府委員村上孝太郎君) 私からお答え申し上げます。  私から御説明するのが筋だと考えますが、私の理解しているところでお答え申し上げまして、もしそれが間違っておれば自治省のほうから訂正していただきたいと思います。  この地方財政計画の歳出の項の中に一般行政経費というのがございます。一兆一千七百二十一億円という数字があがっていると思うのです。その中の国庫補助負担金を伴わないものという事項の中に整理されているわけでございます。
  275. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 自治大臣、どうも通告いたしませんで恐縮なんですが、重ねて昨年のこの国庫負担を伴わない災害の予備費、災害費というものは幾ら組まれたのですか。それが五十億というのですか。それを正確にしていただけせまんか。
  276. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 先ほど申し上げましたとおりに、正確な数字を持っておりませんけれども、御指摘のとおり五十億でございます。
  277. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 まあ私は大蔵大臣、どうもはっきりしないで困るのですがね、逆に聞きますよ、大蔵大臣。いままで内閣委員会で、この公務員の給与改定についての幾らかの金を予備費に組んだらどうかということを盛んにわれわれ主張したのです。それに対して大蔵大臣は、それは予備費の性格上入れるわけにはいかぬと言って拒んでこられたわけですよ、三十九年以来。今回予備費に組まれたというのは、予備費の性格が変わったわけですか。それとも解釈が変わってきたわけですか。この公務員の賃金についての。
  278. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 過去においてこれは適当でないと私が言いましたのは、さっき申しましたような給与予備費というものを特掲するという考えに対することでございまして、これを幾らと特掲することによって、これは人事院のあるいは勧告を拘束するということにもならぬとも限りませんし、またその反対のことも考えられますので、そういう形で給与の費用を事前にとっておくことはなかなかむずかしいということを言いましたのですが、今回のような形で起こり得る事態に対処し得るように、他の不足と思われる経費とからみあわせて総額でこれを準備しておくということでしたら、これはこのほうがより合理的であるというふうに考えて今回はそういうふうにしたわけでございます。
  279. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 その総額は幾らなんですか。
  280. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 総額が千二百億円。
  281. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いや、自治省の八百五十億というのがありますから、ほぼ昨年の実績を勘案して、自治省としては七百五十億円程度のものを組まれたというふうに見られますが、そうしますと、逆算しますと、国家公務員のほうはほぼ五百億円、これは昨年度の実績。昨年度は五百十四億でしたから、ほぼ昨年の実績と、こういうことになるわけですね。だから予備費の関係でいままで大蔵大臣ががんばってきたものだから、つまらぬことで怒りを買っておるわけですね。  そこで宮澤経済企画庁長官にお尋ねいたしますが、長官は昨年の予算編成のときに、先ほど申し上げました米価と同じように、十一項目の宮澤提案をなされたわけですが、その中で、公務員の給与は、これは当初予算の中に組んで、そして消費者物価の値上がりの幅の中にとどめるべきだと、こういう発言をしておられますね。その説明をしていただきたいのです。
  282. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) あの当時考えましたことは、行財政の硬直化ということもここまでまいりましたので、これを打開するためにはやはり政府自身がまず国民に向かって範を示すべきだというふうに考えまして、そのためには公務員諸君に対してもまことに気の毒ではあるけれども、国民の税金で給料をもらうわけでございますから、この財政の許すぎりぎりのところでしばらくの間がまんをしてもらうことはできないだろうか。ただ、もちろん消費者物価も上昇しておることでございますから、その分だけは見なければ、実質上の生活の切り下げになってはこれは気の毒なことであろう、これは私個人の考えを申しておるのでございますが、そういう考え方をとるとすれば、全体を総合予算主義でやるとして補正を考えないとすれば、あらかじめこれは組んでおかなければそれすらもできないことになるのではないかと、したがって、もしそれをやるとすれば、前もって給与表も法律の形で変えておかなければならぬわけだと思いますが、そういうことを年度の初めから実行できるように準備をしてやるべきではないかという考え方を、まあこれは一つの可能性として私としては考えてみたわけでございます。しかし、その後まあ現実には先ほど大蔵大臣の言われましたように、やはりそういうことはなかなか可能でないので、一般の予備費として相当なものを取っておいて、そしておそらくは人事院の勧告もあることでございましょうから、それに即応できるような体制をあらかじめ総合予算主義で取っておく、こういうことに現実には変化してきたわけでございます。
  283. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私は、宮澤長官のこの消費者物価の値上がりの幅の中にとどめるべきだというお考え方が今度の総合予算主義の中でいれられているというふうに見ているわけなんです。  大蔵省にお伺いいたしますが、消費者物価の値上がりは四・八%と見ておる。公務員賃金で四・八%上げまして十二カ月としますとどの程度になりますか。四・八%上げて十二カ月分。
  284. 村上孝太郎

    政府委員村上孝太郎君) ただいま正確に計算した数字を持っておりませんが、大体一%百億円程度というふうに概算をいたしてくださればけっこうだと思います。
  285. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 そうしますと約五百億ということになるわけですが、ですからまあ四・八%十二カ月分、約五百億というものが組まれたということになるのではないかと思うのです。そうしますと、この考え方は所得政策のやはりはしりというふうに見なければならぬのじゃないかと思いますが、いかがですか。これは大蔵大臣でもけっこうですし、企画庁長官でもいいですがね。
  286. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) これにつきましては、しばしば申し上げておりますとおり、いわゆる所得政策というようなものをやりますための基礎的な研究もございましょうし、また労使間にそれだけの信頼関係も生まれていないと思います。また諸外国の例を見ましてもなかなか成功いたしておりません。のみならず、もし所得政策のことを本格的に考えるといたしますと、まず賃金のみならず、企業の配当であるとか、あるいは利子率であるとか、そういったようなものをも一応規制するのが本来の所得政策でございましょうから、そういうことになればますます問題は複雑化してしまって、いよいよ実行の可能性がない。私どもはしたがって、いま好ましいことでもないし、できることでもない、こう考えております。
  287. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 大蔵大臣にお尋ねしますが、大蔵大臣は特定したわけではないのだ、五百億という金ではないのだと、特定ではないのだというお話ですが、それならば千二百億使ってもいいということになるのですか。
  288. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 人事院の勧告を待って善処したいというふうに考えております。
  289. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 人事院総裁にお尋ねいたしますが、総裁は今度の総合予算主義の中における公務員の賃金の組み方は前進であるというふうにお考えのようですが、前進なんですかね。私は総合予算主義の中からくみ取れるのは、非常に公務員の賃金について政府一つ考え方を出したというふうに見ているわけなんです。いままでは考え方はあっても表面には出ていないのですが、今回はある程度考え方が出ていると思うのですが、そういう中でも前進だというふうにお考えなのですか。
  290. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) まず、私どもの基本的な考え方を一口申し上げさしていただきたいと思います。私どもは従来、今日もそうでありますが、堅持しておりますところは、せめて民間の給与水準並みの給与は公務員にもぜひ保障していただきたい。もちろんそれは公務員の生活問題でもありますばかりでなく、公務員としてやはりせめて民間並みの人材はきていただかなければ困るというのが根本の考え方であるわけであります。したがいまして、例年民間企業との比較をとってまいっておるわけでございますが、本年もその行き方は堅持してまいるつもりであります。  そこで、今回の予算の組み方について、私はかねがねこれは前進であるということを申し上げておりますが、それは御承知のとおり従来の例を見ますと、勧告の後になって財源を新たにおさがしになる。ほとんどその大部分は自然増収の有無いかんに運命が託されておるというような形であったわけです。それをいささかでも当初予算で準備をして、その財源を保留していただけば、あと足りない分はまたそのときのこととして上積みしていただければ済むのでありますからして、私どもとしては今回の行き方はそういう意味で前進である。勧告の後もまたその財源問題はあらためて完全実施せられますように、十分私としても努力いたしますし、国会、与野党あげての御支援をお願いしなければならない、こういうことでございます。
  291. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 大蔵大臣にお尋ねしますが、大蔵大臣は、昨年の実績をくんだものでも何でもないのだ、あるいは給与についての政府考え方がこれで表明されておるわけでもないのだというふうに受け取っていいですか。
  292. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) そのとおりだと思います。私どもは所得政策を行なおうという意味からこういう措置をとったわけではございません。
  293. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 総理はこういう答弁をしておられるのですよ。私どもの考え方と違うような人事院勧告が出た場合においては、その時点で積極的に尊重して努力したい、こういう言い方をしておられますけれども、いかがですか。
  294. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま私ちょっと記憶がございませんが、私どもが何か予定したような考え方があって、人事院勧告を待っている、こういうわけではございません。あるいは何か誤解を受けるような発言がありましたら、それは訂正して差しつかえません。別に一定の予定を立ててどうこうというわけではございません。
  295. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 鶴園君、時間がまいりました。  以上をもちまして鶴園君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  296. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 次いで内藤誉三郎君。
  297. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 最初に沖縄問題についてお尋ねしたいと思います。  昨年秋の佐藤・ジョンソン会談で、沖縄の返還の大方針は確定したのでありますから、あと残された問題は、返還の時期と基地のあり方という技術的な問題にすぎないと思うのであります。日本本土における非核三原則と米国の核の抑止力に依存するという政策の調和点が沖縄であろうと思います。沖縄の基地は全島一大要塞の感じがありまして、日米安保体制のかなめであり、極東の安全と平和のためにきわめて重要な地位を占めておりますので、いま直ちに基地能力の低下を来たすようないかなる措置もとるべきではないと思いますが、外務大臣いかがでしょうか。
  298. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 沖縄問題については、まあ小笠原問題、この協定が済みまして、国会の御承認を受ければ、沖縄問題の話し合いをしていく。そういう場合に、まあ二十数年アメリカ支配のものであったのですから、いろいろな問題がある。むろん基地の問題もあるわけです。こういうものをアメリカとの間に率直な話しを継続しまして、できるだけ早い機会に、いま御指摘のような国民の悲願が達成するような努力をしたいと考えております。
  299. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 沖縄の基地のあり方は、総理もたびたびお話しのとおり、科学の進歩、国際情勢の推移、世論の動向等により弾力的に考えるべきものであるが、われわれが日米安保体制のもとでアメリカの核の抑止力に依存している以上、わが国の要望は尊重されるにいたしましても、最終的には日本の防衛に、特に核の防衛に責任を有するアメリカの軍事的判断にゆだねられるべきものと思いますが、外務大臣これはいかがでしょうか。
  300. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これはアメリカの軍事的判断というわけにはいきません。これはやはり沖縄は日本の主権を有する地域でありますから、それは潜在的であろうと。したがって、アメリカの軍事的要請によって沖縄の今後における基地のあり方でもきめるわけにはいかない。やはり日本長期的な日本安全保障という見地から、国民感情もありますし、そういうものをやはり体してアメリカとの協議をすることが当然でありますから、アメリカの軍事的要請によって沖縄の基地のあり方をきめるという考えは持っておりません。
  301. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 日米安保体制空洞化のために基地撤廃を主張している人々が本土及び沖縄にもありますが、私はこれでは沖縄の施政権の返還はとうてい期待できないと思うのですが、この点外務大臣どうお考えですか。
  302. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 沖縄が日本並びに極東のやはり安全保障に果たしておる軍事的役割りというものを無視することはできないと思います。しかし、どういう基地にしてもその基地が継続、基地がやはり存続されるにしても、どういう基地のあり方かということは大問題であります。したがって、そういうことが日米間で今後話し合いをしていく場合において重要な問題点になる。したがって、これは日米間で両方が話し合いをすべきものであって、両方のやはり理解、信頼の上に立って話し合いをすべきである。したがって、いまのそのままの基地の姿でなければこれは沖縄問題は解決できないのじゃないかとかいう、一つの固定してものを考える必要はない。これからのやはり両国の協議の結果に待つべきである、そういうふうに固定した前提に立つべきではないと考えております。
  303. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 沖縄の基地のあり方は、将来最終的には本土並みとすることは私も当然だと思いますが、現在四、五億ドルの住民所得のうち約二億数千万ドル、六割程度が基地収入に依存しておりますので、沖縄の住民としては、心の中では、私はたれ一人として基地が撤廃されるということを予想してないと思うのです。先日の朝日新聞の調査によりますと、当分の間基地問題をたな上げして施政権の返還を求める段階的復帰論というものが実現可能な案として有力に考えられておる、こういうことでございましたが、これに対する外務大臣の御所見いかがでしょうか。
  304. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 沖縄の基地というものが、いま言ったいろんなどういうタイプの基地になるかは別といたしまして、沖縄の基地というものが全部撤廃できるというふうにはなかなか考えられないのです。しかしながら、この沖縄経済というものを考えた場合に、いま基地経済に依存しておるから、そういう見地からいまの基地のあり方を変えることはできないというふうに考えるべきではない。それは、その情勢の変化に応じて沖縄のやはり経済がやっていけるようなこれは責任が政府にもあるし、そういうことで将来の沖縄の経済というものの方針、計画などを考えるべきだと思います。
  305. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 いま沖縄で一番要望されていることは、基地問題をたな上げしても、異民族支配から一日も早く脱却するために施政権を返還することである。そのためにはどうしても本土との一体化計画が必要である。一体化計画というのは現状固定化だという説もございますが、私は一体化の伴わない施政権の返還は空論であり、非現実的だと思うのであります。そこで一体化の具体的計画を策定して、沖縄住民に、返還の希望と、ある意味で安心感を与えることが必要だと思います。そのために政府はすみやかに返還の具体的プログラムをつくる必要があると思いますが、この返還の計画ですね、大体いつごろに、何年間ぐらいでおやりになるか、総務長官にお尋ねいたします。
  306. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) お答えいたしますが、本土との一体化の問題は、佐藤・ジョンソン会談にも両三年をめどといたしまして本土復帰ということをうたってありまするごとくに、具体的な計画と真剣に取り組んでいかなければなりませんが、それにいたしましても、現在の沖縄の制度文物と日本との間には非常な格差があるわけでありまして、これを少なくとも本土復帰の場合に障害になりまするような諸懸案を除去するだけでも相当の日子が必要でございますし、まあかような意味から、今度発足いたしました諮問委員会におきましても、まず最初に、日本に対しまして根本的な調査をしてもらいたいという依頼もございまするし、また民政府におきましても、いわゆる大來委員会と言われる調査を根本的に依頼いたしましていたしておりまするし、向こうの琉球政府におきましても研究会を持っておる。また日本側におきましても、総理の諮問機関でございまする大浜委員会等におきまして、一体化の小委員会を持ち、同時に計画を策定いたそうといたしております。それからまた民間の経団連あるいは商工会議所、そういうふうな五団体が沖縄の民間との間に懇談会つくっておりまして、ここにおきましてもやはり計画を持っておりまするが、しかしながら、何を申しましても、諮問委員会のほうから正式に依頼のありましたこの調査団につきましては、本日も新聞でごらんだったとは存じますが、中間的な打ち合わせをいたしまして、可及的すみやかに本格的な調査をいたしまして、そうして、この諸懸案になっておりまする各方面に向かっての基幹計画、あるいはまた段階的な調整の具体的な計画を立てる予定でございます。
  307. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 次に、中国問題についてお尋ねいたします。  ベトナム問題が解決の曙光を見出しましたことは、世界平和のためにまことに喜ばしいと思うのであります。平和的解決に今後一そう努力していただきまして、特に紛争解決後の経済援助と民生安定に政府の一段の努力を要望するものでありますが、このベトナム戦争が解決した後に残る大きな問題は、これはやはり中国問題だろうと思います。総理は、第一次及び第二次の東南アジアの訪問によりまして、東南アジア各国中共の脅威を感じていたことを見聞され、そのことが佐藤・ジョンソン声明にも出ていると思いますが、中共の脅威は、各国に対する内政干渉と武力行使にあったと思うのであります。特に朝鮮動乱、金門、馬祖に対する砲撃、ベトナム戦争あるいは中印国境、インドネシア内乱等に顕著にあらわれておると思うのでありまして、その意味で脅威を感じているのではなかろうか。しかし、これに対して、イギリスの歴史学者のアーノルド・トインビーさんは、中国は一八四〇年のアヘン戦争以来イギリス、ドイツ、フランス、その後はロシアあるいは日本に侵略され、いま米国の封じ込め作戦により、かつて日本がABCDラインによって包囲されたような危機感を感じ、その恐怖心から眠れる獅子がほえているような感じであるというような同情的な見方をしておりました。私は、根本的には中共及び米国の相互の不信感が非常に根強いことであろうと思うのです。しかし、さらに中国問題の処理を困難にしているのは、台湾と米国及びその同盟国の動向があるからだと思うのであります。台湾及び米国等の国々も、中共の内政不干渉、紛争の武力行使の放棄、平和的処理を望んでいることはこれは確かであります。中共が今日のような政策を続けていけば、ますます世界じゅうで孤立していくことは過去の例から見ても明らかであります。この辺で日本が米中の橋渡しをすべきではないかと思うのであります。第一回の佐藤・ジョンソン会談におきましても、佐藤総理は、わが国は中国とは地理的、歴史的に密接な関係があるので、米国とは立場を異にすることを明らかにされてこられました。特に文化的にも人種的にも共通した基盤があるのでありますが、しかし、台湾及び米国をはじめ自由主義諸国の信頼を裏切らないように、これらの諸国の理解の上に日中改善を進めることが肝要であろうと思います。特にこれら諸国から信頼を持たれておるところの佐藤総理にして初めてこの橋渡しが可能であろう、こう私は思うのであります。懸案の日韓問題、小笠原・沖縄返還を解決された佐藤総理が、最大の課題である日中改善に乗り出すべき時期が来たのではなかろうか。この際別にあわてて政策転換をする必要を認めませんが、日中改善の方向に踏み切るべき時期ではなかろうかと思います。  特に先般LT貿易が、一年の期限つきではございましたが、継続しましたことはまことに喜ばしい。その際中共は政治三原則を持ち出しましたが、わがほうも積極的に政治三原則を提唱したらどうかと思うのです。それは独立の尊重と内政不干渉、紛争の平和的解決、武力行使を絶対に禁止する、こういうような三原則を持ち出しまして、これを足場に米中の橋渡しをされたらどうかと思うのであります。この基本原則が日中のみならず、東南アジア、世界各国に対して保障されるならば、輸銀の使用に対してももう少し積極的にお考えいただけないものかどうか。  私は、佐藤内閣が日中改善、米中の橋渡しを決意するなら、近い将来佐藤・毛会談、あるいは佐藤・周恩来会談のようなものを期待するものでありますが、とりあえず、佐藤内閣に対する誤解と不信がございますので、その誤解と不信を一掃するために何らかの形で親善使節団のようなものを派遣いたしまして、わがほうの政治三原則の確認を求めて、日中改善の一つのムードをつくり上げたらどうかと思うのですが、これに対する総理の御所見を伺いたいと思います。
  308. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 内藤君から日中間の問題についていろいろ取りまとめられてお話がありましたが、基本的な考え方と申しますか、いまのような日中間の関係がいつまでも続くと、かように私は思いませんし、また日本のためにもアジアの平和のためにも、これは日中間の関係がさらに改善されることを、これは心から願っております。しかし、事柄にはそれぞれ順序がありますし、チャンスがございますから、そうわれわれの願いどおりにすぐ今日どうこうというものにはならないと思います。  ただいまも御指摘になりましたように、ベトナム問題で三月三十一日にジョンソン大統領があれだけ重大な決意を発表し、北側もこれに対応する柔軟な態度を表明しておる。両国とも世界的に称賛を得て、またそれを支持されておる。しかし、いままだ話し合いの場所もきまらない。したがって、今日もベトナムでは激しい戦闘が続いておる。そういうことを考えますと、まだまだベトナム問題の最終的解決、それまでには相当時日を要するものではないか。また逆戻りする危険すら実はあるのではないかと、たいへん心配しております。したがいまして、まずわれわれは、このせっかく話し合いの糸口を見つけようという、両国のそういう態度について賛意を表し、同時に、これを見守って育てていって、そうして恒久平和がここに実現するように、そういう意味の協力をしなければならないと思います。  そういうことが早晩できるだろうと、そういうことを前提にして、ただいまの中共日本との関係、あるいは中共とアメリカとの関係、あるいは中共と国府との関係等々の問題をただいまるるお話しになりました。しかし、その前提が前提でありますだけに、一足飛びになかなか結論にも達しかねると思います。私は基本的には、トインビー博士の言い分ではないが、それはもう一八四〇年代以来中国が列強の侵略を受けた、そういうところに一つの問題があるだろう。しかし、中共はさすがに各国の植民地になったわけではない。まあ各国からかじり取られたというような感じもする今日でございますけれども、しかし、これもだんだんもとのりっぱな中国大陸に返りつつある、かように思いますから、それらの点は、トインビー博士の言論は別といたしまして、今日の前向きの状態でどういうふうにしたら世界の平和、アジアの平和にお互いが貢献し得るか、かように私は考えるべきじゃないかと思います。  そこで、日本立場は、私がアメリカに参りまして二回ジョンソン大統領と話をした。第一回の場合は、もうはっきりアメリカと日本立場は違う、したがって、日本は隣の国でもあるし歴史的にも古い関係がある、この関係では政経分離の形において貿易の拡大をはかっていく、アメリカがどういうような態度であろうが、日本はこの方針でいきます。いくからアメリカもこれを理解協力をしてほしい、そういう態度をはっきりしたわけであります。二度目の昨年参りました際は、中共のその後の核兵器の開発がだんだん進んでおりますから、そういう問題が一つの論点になったということではございますが、しかし、日本の態度としては、在来からの政経分離の立場中共との貿易あるいは人的交流、これをやっていくことにおいては変わりがない。したがって、私は日本に対する中共側からのいろいろの要求はございましょう。これは今日の佐藤内閣に対する北京放送あるいは北京における批判等でつまびらかにしておりますが、しかし、私ども考えますのに、中共自身もやはり共存政策を打ち出すこと、これが何よりも必要ではないか。私どもイデオロギー的に相違もし、あるいは政治形態が違っておりましても、お互いに独立を尊重し、内政不干渉、こういう問題はイデオロギーを越して両国間の共存が可能である、かように実は思うのでありますから、そういう意味でみずからが孤立主義をとらない、そういうような反省もぜひ必要なんじゃないかと思います。私はこれは別に中共を非難するという意味で申すわけじゃありません。われわれの希望がそこにあるんだ、そうして共存政策をぜひとってほしい、こういうことを実は言っておるわけであります。  でありますから、期限が到来したというLT貿易、これが今回再開されたということ、これはまだ一年の期限でございますから、再開されたといいましても、まだまだ不十分でございますし、また両国の貿易関係などを考えれば、長期の期間のやっぱり協定が望ましいことであるし、民間協定にしろ長期のものが望ましいように思います。そういう事柄をやっぱりこういう機会に希望意見として述べる。  それについて、ただいま、中共側から三原則が出れば、当方からも三原則を出せ、こういう話を言われますけれども、私は主張そのものはお互いにそれぞれあるだろうと思います。そしてその間にそう議論、まあ筋を立てて議論するほどのことはない、基本的に何といっても共存政策に立ったんだ、このことが一番大事だ、かように思います。お互いにときには率直な遠慮のない意見を述べることも適当ですが、お互いにわかったことはほどほどにするのも一つの行き方でございますから、そういうことで共存政策が打ち立てられればたいへん私は都合がいいのではないかと思います。  ただ、中国の場合には国府、国民政府がありますし、北京政府があるし、二つの実力を持った国があります。これが中国は一つだ、こういうたてまえをとっているために、一つの私どもなかなか割り切れないものをいつも感じておる。いまのような形で共存政策を続けるにしても、どうも隔靴掻痒の感があって、もう一つ思い切ったものができない、こういううらみがございますが、しかし、現実の問題としてそれぞれの力、この貿易、条約上の権利義務はもうすでにわれわれ持っておりますから、その権利義務を遂行すると同時に、現実にある北京の中共政府とも政経分離の形でつき合いを進めていく、かように実はただいま考えておる次第でございます。  それについて先ほど、親韓使節を出したらどうか、また米中の橋渡しをしたらどうか、こういう話であります。私どもアメリカに行くたんびにワシントンでジョンソン大統領のアメリカの中国、中共に対する態度、これは緩和はできないものか、こういうことをしばしば指摘してまいりました。そのつどワシントンで申しますことは、自分たちは中共と人的交流はしたいのだ、新聞記者諸君の交換もしたいのだ、しかしそれらのことがいままで実現しないでいる、こういうようにアメリカ側では申しております。したがって、私は一部で言われるいわゆる封じ込め政策あるいはアメリカ自身が一切の交際を断つと、こういうものではないように思いますし、また現実の問題としても、ポーランドでは両大使がしばしば会談を持って話し合いをしておる。かような機会は開かれておりますから、これはむしろはたでいろいろ議論しておるこの状態は、両国間の親善を深めると、そういう方向へやはり協力する、こういう立場でポーランドの会談なんぞも見ていけばいいが、どうもこれの見方も非常に冷い見方をしている、こういうことが両国間の接近にあまり役立っていないだろうと思いますので、これはやはり各国がこういうせっかく芽ばえた両国間の話し合いの場をやはり育てていく、こういうことを望ましいのではないだろうかと思います。私ども日本がこの立場にありますから、しばしば米中間の橋渡しを、その役をしろ、こういうことを国内からも、また外国からもしばしば要望されます。私はそういうことについて、もちろん日本が果たし得ることがあれば、アジアの平和と世界の平和のために私は果たしていきたいと考えるのであります。しかし、あまりにも隣にいるために、実情をはっきり知っておりますだけに、どうもこういう点にあまりいま直ちに行動に出ることが当を得たものではないようにも思います。やはり橋渡しをするについては十分効果があがるような方法が望ましいのです。それには、先ほど申しました共存関係に立つのだ、このことで、その考え方で私は話はできると、かように実は思っております。  また、ただいまの状況のもとにおきまして親善使節を出したらどうか。つまり、私どもの党のほうからも党員がわざわざ出かけて、LT貿易、それの再開について話し合いをいたしますが、私がそういうものもとめていない。また、こういう事柄がやはり親善のそういう使節の一部でもある、かように御了承いただきたいと思います。  また、お話しになりました輸銀の問題、輸銀を使用したらどうか。まあ最近問題になりますのは、野党諸君からしばしば聞かれるいわゆる吉田書簡、これはまあ吉田書簡というものは政府の取りきめではございませんから、いわゆるこれを緩和するとか、あるいは撤回するとか、そういうようなものではございません。そこで、いまの貿易をやる、現実に日中貿易が行なわれております、そういう観点から見まして、この輸銀を使うことについてはケース・バイ・ケースで処理していく、在来の方針を重ねて申し上げるわけです。  ただ、私重ねて申し上げますが、今日在来の方針をただいま変えるという考え方はございませんけれども、しかし、いまのような状態がこれが今後とも長く続くことが望ましい姿ではない、これは改善されなければならないものだと、かように思っておりますし、また必ずそういう時期が来るだろうと、かように私はそれを期待するものでございます。
  309. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 次に、文教問題についてお尋ねします。  佐藤総理が施政方針演説で文教を五大政策の一つとして樹立されたことに対し、心から感謝と敬意を表するものでありますが、その改革について、私は今後非常な決意と勇断を望みたいのであります。  三派全学連に対しましては、治安対策ももちろん重要でありますが、根本的には教育の問題であろうと思います。六、三、三、四の新学制がある意味で失敗し、その欠陥が早大、中央、法政、明治等の各大学に、あるいは羽田、佐世保、成田、王子等随所に露呈し、各方面にうみが吹き出した感じがするのであります。この傾向は大学のみならず中・高にもあらわれておるように思われるのであります。先日、東大の卒業式ができなかったことは、明治の学制発布以来初めての重大事件でありまして、東大の自治は暴力によって内部から崩壊したのではないかと思っております。東大のわが国の教育界、特に全大学に及ぼす影響が甚大であるだけに、このことは看過できない重大問題であります。実は本日は東大の大河内総長においでいただきまして、学生対策に対する所見を伺いたかったのでございますが、都合により御出席ができなかったので、大河内総長のお書きになりました「私の大学論」、「私の教育論」というここに二冊の本がございますので、この本を中心に文部大臣及び総理に御所見を伺いたいと思います。  大河内さんは、「最近のこの続発する学生問題は非常にその根が深い。社会における学歴偏重の結果、いまや大学は学問、教育の府ではなくなり、卒業証書というレッテルを売り出す機械になりつつある」ということを述べながら、まず第一に、「高校以下の学校が大学入試のために予備校のようになり、自主的判断力が養成されていない。特に付和雷同的である。人間形成に欠くる点がある。」、こういうことを述べられております。第二に、大学の一般教養でありますが、「高校で大学入試のために全精力を消耗し尽くし、放心状態で大学に入学してくるが、大学の一般教養の中身が高校の焼き直し、内容はもっとお粗末なものがあり、若き青年の情熱を燃やす魅力に乏しい。教授陣が弱体である。したがって、ある者は碁、将棋、マージャンに、他の者は全学連等の学生運動に熱中する。題目は安保でも、授業料値上げでも、学生会館でも、何でもよろしい。」、第三に、「大学の管理体制は学部教授会の自治が絶体的なもので、総合大学としての統一体の意思形成ができないので、総長はいかんともいたしがたい。」、第四に、「教師に教育に対する情熱がない。若い者は学位を得るため、あるいはマスコミに非常な関心を持ち、老大家は政府審議会のメンバーに、あるいは大企業のコンサルタント的役割りに興味を持ち、総じて大学以外のアルバイトが多過ぎる上に、大学のマスプロ化の傾向に伴い、学生との接触の機会が非常に少なくて、指導力に欠けている。」、第五番目に、「世界各国の傾向と技術革新の時代に対処して、東大、京大のような大学は大学院中心の大学にすべきである」との結論でありました。  私はこのほか、新学制における指導理念の欠如、教師のあり方及び教員養成の問題等についてもお尋ねいたしたいのでありますが、まず第一に、大河内総長の御指摘をまつまでもなく、大学入試はわが国教育界の最大のガンであると思います。戦前の複線型教育制度に比し、単線型の六、三、三、四の制度は、著しく教育の普及が行なわれた反面に、その内容は画一的で悪平等であり、世界じゅうに類例のない試験地獄を現出したのであります。まさに高校以下は大学受験のための予備校化している、人間不在の教育が行なわれているというゆえんであります。これに対する文部大臣の御見解及び対策を伺いたいと思う。
  310. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) お答えいたします。  大河内総長の御意見といわれるものをお述べいただきましたわけでございますが、私は、その大河内総長の御所見につきましては、今日の状態を見ました場合に、おおむね同感でございます。高校以下の児童生徒の教育につきましても幾多問題がありますことは、これはむしろ内藤委員もよく御承知のとおりであります。われわれといたしましては、文部省の立場におきまして学生指導要領の改正、そういった面を通じましていろいろ改善に努力はいたしておるところでございますけれども、なかなか思うにまかさない。ことに入学試験に追われて円満な姿において教育が進んでおらないというような点は、まさしく今日の教育界の最大の病弊ではないかと思うのであります。その改善が非常にむずかしいということはよく内藤委員が御承知のところでありますが、どこまでも経験を積み、また経験を反省しながら改善に努力してまいりたいと思います。
  311. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 次に、大学の一般教養は本来人間形成のために必要であるとの理由から設けられたにもかかわらず、内容は高校の焼き直しで、魅力に乏しいと言われておる。大学生としての誇りと喜びと希望を与えるものではなく、むしろ全学連運動の温床となっていると言われておるのであります。いまの大学は、最終学年は就職で忙しいので、専門教育を施す期間はわずかに一年にすぎない。これでは技術革新の時代にとうてい対処できないと思いますが、一般教養について文部大臣はどう考え、どう改善されていくお考えですか。
  312. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 大学の一般教養につきましては、かねがね問題とせられておるところでありますが、特に今日の大学の学生の状況を考えましたときに、現在の一般教養のやり方につきましてはひとしく何らかの改善を加えなければならぬというのが皆さんの声であろうと私は思うのであります。文部省におきましても、この問題につきましては常に留意いたしておるところでございますが、内藤さんも御承知のように、中央教育審議会やあるいは大学基準等研究協議会におきましても、この一般教養のあり方についていろいろ検討してきたところであります。特に一般教育と基礎教育との関連のあり方につきまして、人文、社会、自然の三系列間の科目の数でありますとか単位の数でありますとか、そういうふうなものの画一的配分を改めるとか、あるいは一般教育の内容を高等教育機関の学生の理解にふさわしい高度のものとすべきである、こういったふうないろいろな意見指摘せられておるところであります。  われわれ、この一般教養の重要性、特に現在の事態にかんがみまして、これら答申の趣旨を十分尊重いたしまして、その改善のためにさらに検討を急速に進めてまいりたいと思っております。
  313. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 次に、大学の管理運営についてでありますが、最近のこの六三制の単線型教育の例外として登場したのが五年制の工業高等専門学校で、この工業高専は教育、訓練ともにすばらしい実績をあげて、産業界からも非常に高く評価され、短大程度ではございますが、四年制の新制大学以上の成果をおさめていると言われているのであります。私は、正直、この新学制にはある程度失望しておりましたが、この工業高専のすばらしい成果を見て、日本の教育の前途に光明を見出すことができたのであります。  この高専の校長は各方面から文部大臣が選考し任命したりっぱな方でありますが、制度的には、教授会もなく、校長の全責任で学校が運営されております。特に低学年は全寮制に近いのであります。  私は、学長の任命問題は本日はふれませんが、一体大学の責任者はだれなのだろうか。三派全学連で、たくさんの学生が検挙され、百数十名の者が起訴されているにもかかわらず、ほとんど処分されていないとはどういう理由であろうか。学校教育法によれば、学生の処分は学長が行なうはずでありますが、この辺についての文部大臣のお考えを伺いたいと思います。
  314. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 大学の管理運営ということが、今日非常に大きな関心を呼んでおるわけであります。最近の学生のあの動きというものに対しまして、大学みずからはもちろんのこと、関係者一同、また国民も非常に心配をいたしておるわけであります。それに伴いまして、いわゆる大学の自治というこの大原則も危うくなっておるのではないか、はたして大学の自治は完全に守られておるのかどうか、こういう点についても重大な疑問が投げかけられておるわけであります。大学の管理運営についての問題が、大きな関心のもとにいろいろ検討せられておるところでありますが、その中にいま内藤委員の御指摘になりましたように、一体、大学の運営にあたって責任者はだれなのか、こういう声すら出てくるようなことでございますから、御承知のように、もちろん学長が最高の責任者でありますけれども、大学の内部におきましては、評議会とか、あるいは教授会とか、ことに各教授会の力というものは相当強いようであります。したがって、最高の責任者であるところの学長にいたしましても、この各教授会の意見というものを尊重しつつ大学の運営をやっておるのが実情であろうと思います。そういう点におきまして、問題は、各教授会がほんとうに大学の自治を守るためにしっかり努力してもらわなければならないということは疑いをいれないところと思います。われわれといたしましては、全大学、全学が一致いたしまして、今日の事態を改善するように、学長を中心にして努力してもらいたい、そういうつもりでございます。
  315. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 いまお述べになりました教授会というのは、学校教育法によりますれば、「重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない。」とあって、「教授会の組織には、助教授その他の職員を加えることができる。」、こうあるだけでありまして、構成及び権限が明らかでございません。そもそも、教授会を学校教育法に規定したゆえんのものは、国・公・私立を通じて、教育及び研究のための機関として置いたものでありまして、大学の管理運営の機関ではなかったはずだと思うのであります。現行制度の中では、大学の管理機関としては学長であり、これを助ける評議会が中心となるべきであろうと思いますが、教授会の権限が強いためになかなか思うようになりません。ところが、教授会のほうは、学校教育法に一応の根拠がございます。ところが、肝心の評議会は文部省令で置かれておるのにすぎない。学部教授会と全学評議会との関係が明らかにされておりません。学長と学部教授会の関係も明らかでない。学部教授会の運営の実態は、決議機関のような扱いをしておりますが、法律的には決議機関か諮問機関か、これも明確になっておりません。  私は、いまや大学の管理運営の実態は、東大総長のお話のごとく、学部教授会中心で、学長、評議会等も十分な機能を果たすことができない。ある意味で集団無責任管理体制に陥りまして、大学の管理機能が麻痺しているのが現状ではなかろうかと思います。新制大学の発足と同時に、大学管理機関組織権限を明定する必要に迫られたにもかかわらず、大学管理法がしばしば流産いたしまして、暫定的にびほう策に終始した結果ではないでしょうか。私は今日の国立大学の管理運営に制度的な欠陥のあることを強く指摘し、明確なルールの確立と責任体制の確立されることを要望するものであります。  次に、大学の教師のあり方につきましては、大河内総長のお話もございましたように、しかし、この傾向はひとり大学のみでなく高校以下についても同様であります。教師は一般の労働者と異なるはずだと思います。ILO、ユネスコの教員の地位に関する共同勧告によりますと、教師は専門職として位置づけられております。一般労働者の労働基準法を教師に適用している国が日本以外に世界中にあったら、文部大臣、私は寡にして聞いていませんが、お教えいただきたい。  それからこのたびの教育公務員特例法の一部改正案に教職特別手当が制度化されましたが、これは超勤の一率支給と見てよいと思う。そこで、世界中で教員に超勤手当を出している国があったらお教えをいただきたい。この際、超勤手当など出さないで、抜本的に給与改善をすべきではなかろうか。あらゆる教育改革の根本は教師の姿勢を正すことにあり、そのためには教師の待遇改善をはかることが先決であろうと思います。教師が一般労働者と同様に赤旗を振ったり、デモ、ストライキを行なった結果が今日の教育を招いたのではないでしょうか。夏目漱石が総理の母校熊本五高で創立記念日に述べた祝辞の冒頭に「それ教育は建国の基礎にして師弟の私塾は育英の大本たり。師弟の間が路人の如く、秦越の如くんば教育は絶えて亡び国家の元気沮喪せん」とあります。私はまさに至言であり、今日の教育の実態を見ますに、非常に嘆かわしく思うのでございますが、これに対する総理及び文部大臣の御見解を伺いたいと思います。
  316. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 教育行政についての最も経験の多い内藤委員からの御質問でございますが、生徒が、生徒に教える先生にお答えをするようでまことに恐縮いたしますが、ただいま労働法とか、あるいは超過勤務手当等の外国の制度についてのお尋ねでございます。私もつまびらかにしておるわけではございませんが、各国状況は、その国の教育程度がそれぞれわが国と違っておる、いわゆる労働の基準等に関する法律の適用範囲におきましても、わが国と各国とはおのずから異なるものがあるように思うのであります。たとえばアメリカ、イギリス、フランスあるいは西ドイツ等についていえば、一般労働者に適用されるいわゆる労働の基準等に関する法律は、西ドイツを除いて、教員には適用がないように聞いておるのであります。間違っておりましたら御指摘を願いたいと思います。  次に、教員に超過勤務手当を支給しておる国があるかどうかということでございますが、これも給与に関する制度は各国さまざまでございます。公立の初等、中等学校の教員についての給与とその決定の基盤となる勤務時間との関係が制度的にやはりまちまちであるようであります。お尋ねの意味における超過勤務手当の支給いかんということにつきましては、わが国と各国状況を比較することはどうも困難な点があるように思いますので、御了承いただきたいと思うのであります。  なお、今回の教職特別手当は超過勤務手当じゃないか、それを一率に支給するものじゃない、こういうお尋ねでございます。あるいは見方によればさようにも言えるかと存じますが、少なくとも私どもが教育特別手当を出そうという心持ちは違っておる、われわれはいわゆる教員の時間外勤務の実態というものに即しまして、何らかの給与の改善をしたいということでやったわけであります。従来の一般に行なわれております超過勤務手当はそれに対する施策としては不適当である、この考えのもとに教職特別手当を一率に支給することにいたしました。その点はやはり普通の労働者の諸君と学校の教師の諸君の勤労の状況は趣が違っておる、また性質も違っておる、そういう前提のもとにこのような制度を考え出したわけでございます。このように御了承願いたいと思います。
  317. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 私は戦後の教員養成にも問題があったと思います。新学制によって、大量の教員が必要になったために、単位さえ取れば簡単に教師になれたところにも問題があるように思います。戦前は、御承知のとおり、給費制度のもとに全寮制で教育が行なわれ、兵役の義務も免除され、恩給も他の公務員に比して二倍の加算が行なわれ、年功加俸等他の公務員に比して類例のない優遇が行なわれ、教師の地位は高かったと思う。私は、イギリスのオックスフォードやケンブリッジのようなカレッジ・システム、これは英国では英国教育の真髄でありますが、全員が奨学金をもらって補導教官付の全寮制度で教育を受け、りっぱな成果をあげてきました。私は、少なくとも教員養成についてはこういう制度を検討してみる必要があろうと思います。  最後に、文部大臣に大学院問題と学制改革についてお尋ねいたします。  私は従来制度いじりにはあまり積極的でございませんでして、その運営及び内容の改善で解決できるという確信で努力してまいりましたが、そこにはおのずから限界があります。わが国教育界の病根は根深く随所にうみが吹き出るような重態に陥いりまして、国家の前途はまことに深憂にたえません。この際、英断をふるって学制改革を断行すべき時期にきているように思うのであります。さきの工専の成功は私たちに勇気を与え、学制改革に希望が持てる証拠であります。大河内先生や天野先生が早くから提唱しておられるところの東大、京大等旧制帝大を大学院のみを置く大学院大学とする構想がございます。すでに新制大学はもはや学のうんのうをきわめるところではなくなって、大学院大学こそその目的を達成できるところであります。技術革新の時代に現在の新制大学では世界の趨勢から取り残される。大学院大学が創設されれば有名校に殺到する試験地獄の弊害も除去され、地方大学の充実も期待できる。どこの大学からも東大や京大のような名門に入学できるからかえって教育の機会均等が保障される。大学生も上級の大学院がございますので、四年間真剣に勉強するようになるであろう。  次に、大学の一般教養課程を廃止して専門教育を徹底さしたらどうか。一般教養のうち人間形成に必要な倫理、哲学、宗教等は必修科目に指定し、四年間に履習させ、語学や数学等の基礎科目は高校に移す。このため高校の負担が重過ぎる場合は、特に将来大学院に進学する生徒のためには中学校と高校と合わせて六年制の高校を創設したらどうかと思う。特にイギリスのグラマー・スクールとか、フランスのリセー、ドイツのギムナジウムのように六年間みっちり大学進学のための基礎を行なう体制を確立すべきではなかろうか。現に東京の麻布高とか、あるいは神戸の灘高、教育大の附属高校等では実績をあげ、実証済みであります。  さらに幼児教育の問題でございますが、日本の教育界で忘れられておったのが幼児教育であります。バイオリンによる鈴木メソッドは日本及び世界の教育界に異常な旋風を巻き起こしております。満三歳から六歳まで精神的発達が著しく、母国語を聞き、話すすばらしい生命力に着目して、どの子も育つ育て方一つということで愛情と真心で幼児の能力を開発していることはまさに二十一世紀への希望であります。満四、五歳の幼児がビバルディの協奏曲、その他世界の名曲を自由にこなしております。  私はこの際、二十一世紀に対し六三制に根本的に検討を加え、わが民族の魂を育て、英知と能力を開発するために、内閣総理大臣のもとに文政審議会なんか適当な機関を設ける必要があると思う。六三制を推進するために文部省に中央教育審議会が設けられておりますが、従来のいきがかりにとらわれず新しい観点に立って各界権威者を網羅した審議会を設けてはどうか。これに対する総理及び文相の見解をお尋ねいたします。
  318. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 戦後わが国の学校制度はいわゆる単線型の六三制という制度に切りかえられたわけでございますが、まあこれによりましてわが国の教育の普及が一段と進んだということなどは、これは積極的に評価し得るものではないかと思うのであります。しかし戦後の学制には御指摘のとおりにいろいろ今日までの経験から申しますというと、問題を生じてきておるわけでございます。国民の適性能力を十分に伸ばす、そういうように点から申しますというと、必ず改善を要する点もあるのじゃないか、このように声も高いのであります。昭和三十七年に行ないました、先ほどお話がございましたが、高等専門学校制度の創設、これらも従来の単線型学校体系の欠点を是正するための一つの措置であったということもできるであろうかと思います。  なお、将来のわが国を見通しまして、お話にも出ましたいわゆる幼児教育から出発いたしまして大学院に至るまでのすべての教育につきまして、現に新制度が行なわれましてから二十数年たっておるのであります。この辺で一度、過去の経験を振り返って見まして、そうして将来を展望して、しっかりした教育制度を打ち立てる必要があるのではないか、この検討をすべき時期ではないか、こういう考えのもとに昨年以来御承知のように、中央教育審議会長期総合教育計画の問題として御検討を願っておるわけであります。われわれとしましては十分ひとつ時間をかけてりっぱな答申をいただけるように心から期待をいたしておるものであります。その間、お話も出ました幼児教育を振興いたしますとか、あるいはまたいわゆる大学院だけの大学をつくる、こういう問題も含めましても、私も非常に関心があるわけでございますが、十分御検討を願いたいものと存じておるような次第であります。  なお、このような検討の結果として、大きな改革が行なわれるというふうな場合に、特別りっぱな審議会をつくってやったらどうかというお話でございます。お話としてはごもっともなことと思うのでございますが、現在といたしましては御承知のように、中央教育審議会はわが国の最高水準の方をもって構成しておると思うのであります。そこで十分御検討を願った上で、さらに何らかの機関を必要とするかどうか、その際にひとつ検討さしていただきたいと思っております。
  319. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 きょうは大河内先生にお越しいただくつもりで、さらに詳細に質問したかったのでございますが、きょうはお見えになりませんので、この辺で私の質疑は終わりたいと思います。
  320. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 内藤君の質疑は以上をもって終了いたしました。     —————————————
  321. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 次いで、岡田宗司君。
  322. 岡田宗司

    岡田宗司君 日銀総裁が参考人として御出席になっておられます。時間が制約をされておるようでございますので、私は本来なら、最近の国際情勢の変化の問題あるいはまたそれに対処する日本の外交政策についてお伺いをして、それからと思っておりましたけれども、そういう事情から、まず日銀総裁にお伺いしたいのであります。  過日、ストックホルム会議に御出席になってまいりました。あのストックホルム会議において決定されましたことは、これは世界の経済に非常に大きな影響を持っております。そうしてまた、将来の日本経済にもこれは重要な関係を持つものだと思うのであります。いろいろここで決定されました問題については、批判もございますけれども、出席をされました日銀総裁から私は、この会議経過並びにそこで生まれました結果、それに対する日銀総裁としての評価これをまずお伺いしたいのであります。
  323. 宇佐美洵

    参考人(宇佐美洵君) ただいま御質問がございました、過般、ストックホルムで行なわれましたいわゆる十カ国蔵相総裁会議のことについて申し上げたいと思います。  今度のストックホルムの会合のいわゆる特別引き出し権によって世界の流動性をふやそうということにつきまして、実は昨年の九月、リオで行なわれましたIMF総会におきまして、三月末日までに原案をつくれということでございましたので、ぎりぎりでございましたが、IMFの理事会においてできました原案をその十カ国の会議に持ってこられまして、その討議をしたわけでございます。そこでいろいろの議論は別にいたしまして、結果から申しますと、フランスの完全なる同意は得られませんでしたけれども、しかしその他の国々は大体、次の三つの点で合意ができたと思っておるわけであります。  その一つは、申すまでもなく、いわゆるSDR制度の確立、それからもう一つはIMF体制の改善、第三に現行の公定金価格一オンス三十五ドル、この堅持が大体の中心であったろうと思うのであります。そのほかに十カ国の委員は英国と米国がそれぞれの国の国際収支改善に非常に努力をしているというので、全員一致で、これはフランスも入りましてその努力を高く評価したということがあったわけでございます。で、フランスはSDRの最終的の決定に対して態度を保留いたしまして、むろん賛成した部分もございますが、総体として態度を留保いたしたのでございますけれども、私は、フランスのいろいろ申しておることを、今度の声明にもありますとおり、かなり取り上げておるのでございまして、またEEC五カ国が、ほかの四カ国は全面的にこれを支持しておるところから見ますると、フランスが申しておりますように、最後的の案がいまこれからできるわけでございますが、その案が決定したあとには、それに参加する可能性も十分あるんじゃないか。これは私、フランスのことでございますから、とやかく予想申すのはいけないかもしれませんけれども、私としてはそういうふうに見ておるのであります。  それでSDRができたら一体どういうことになるのかということでございますが、その前に、これがいよいよ実施されるまでにまだいろいろの手続が要るわけでございます。現在理事会におきまして、この十カ国の申し合わせを含めまして原案をつくっておる。おそらくまだ私どものほうには原案決定の、最後的決定の通知はまいっておりませんけれども、近日中にできるのではないか。そうしますと、これを百七カ国のIMFに加盟しております国に全部その理事会できまった案を送ります。本来言いますと、理事会を招集するところでございますが、今回は文書あるいは電報等だろうと思うのでございますが、書面で送ることになっておる。そうしてそこの各国がこれを受諾いたしますと、さらに手続といたしまして、今度はそこで各国の返事をもらいましてからそれぞれの国におきまして批准をいたすわけであります。日本におきましても当然に、いま御承知のようにIMF関係でいきますと、法律としまして国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律というのがございますが、そこにはIMFの条項がございませんので、これに加えるという手続が必要かと思うのであります。そうしましてその返事を集めまして、そうしていよいよ各国がこれを承認すると、受諾するということになりましたら、そこであらためて今度は幾ら発行するのかという問題になるわけでございますが、それらの手続に相当のまだ時間がかかるのではないかと思います。私どもはまだ予想を立てるのは早いのでありますが、まあことしの暮れあたりになるんではないか、まあそういうふうに考えておるわけであります。  そこでSDRがもういよいよ最後的にきまったといいまするときにどういうふうに配分されるかということは、最後の総務会においてきまるわけでございますけれども、まだどれくらいさしあたり出すかということもはっきりきまっておりません。ただ各国といたしまして、いまIMFにクォータという出資金を中心にしました計算方法がございますので、それによってそれぞれに分けてくるんじゃないかと思っておるのでございます。じゃ、これを日本にかりに、これはもう全く仮定の問題でございますが、一年間に十億ドルくらいSDRを出すということになりますと、日本が、われわれのクォータは三・四でごさいますので、三千四百万ドルぐらい日本にくるということになるわけでございます。これをもらいましたら、今度はそれを必要なとき——必要なときというのは、貿易上国際収支の関係のみに、これは民間にその金が行くというような性質ではございませんで、各国の間でこれを国際決済のために使うわけでございますが、それをSDRの範囲内におきましてある国に、また大体黒字国に売ることになるわけでございます。これを売りまして、そうして交換可能の通貨、たとえばドルをもらってくるということになろうかと思うのであります。それで一体、どのくらいのこれが効果があるかといいますと、ただいま申し上げましたとおり、当初はきわめてわずかなものでございますし、それではそれがそんなに意味がないのかといいますと、私は、今度の会議の効果を御質問になりましたが、結局世界じゅうの国がそろって通貨制度をよくしようということ、あるいはこれから流動性が——アメリカが国際収支が改善してまいりますと流動性が足りなくなりはしないか。そういうときに各国の同意のもとに、人工的ではございますが、そういう一つの制度をつくったというところが、国際通貨制度の強化の上において非常に意義深いものだろうと考えておるのでございます。そうしてこれは、ただいま申し上げましたとおり、全体から見ますと大した金額でもございませんので、これによって日本の外貨の天井が非常に高くなるとかあるいはまた高度成長をまたやってていいのだということにはならないわけでございます。むしろそうではなくて、こういう一つのみんなの協力によって国際金融制度が確立しまして、そのもとをなすものは、各国がそれぞれ国際貿易につきまして節度を持って、各国がそれぞれ自分の国の国際収支を強固にし、節度を持った、バランスがとれた形で発展するというのが最終的の目的だろうと思うのであります。  そういう意味から、やはり私は、こういう制度ができて世界じゅうの各国協力してやるという点は高く評価いたしますが、やはり根本的に大事なことは、自分の国の国際収支を常に節度ある方法によってバランスをとるようにしなければならぬ、そのためには現在私どもがとってあるいは政府がおとりになっておる政策を、なおこれはいまこのSDRというようなものができたからといって決して変えるべきものではなく、むしろいよいよわれわれは国際収支改善に努力しなければならぬ、こういうふうに考えておるところでございます。
  324. 岡田宗司

    岡田宗司君 SDRの創設につきましては、かなり過大な期待が持たれておったようであります。そうしてまた、それに非常に大きなウエートが置かれておったのでありますけれども、いまの日銀総裁の御説明ですと、その評価はSDRそのものにあるのではなくて、これを売り出すに至ったつまり国際協力にある、こういう点にあるように思います。しかしこのストックホルム会議におきまして、フランスがかなりきびしい態度をもって批判を加え、これは後にドブレ蔵相から明らかにされたところでありますが、私は今回のストックホルム会議の結果につきまして、もちろん国際協調が達せられたとは思いますけれども、フランスの批判も、そして、フランスのこれに対する態度もまた重要なものを含んでおると思うのであります。この点について日銀総裁は、つまりフランスのこの批判、あるいはフランスの態度についてどういうふうにお考えになりますか。
  325. 宇佐美洵

    参考人(宇佐美洵君) 二日間にわたる会議においてフランスはいろいろのかなり強いことばで述べたことはおっしゃるとおりであります。しかし、このコミュニケにもございますとおり、各国協力しなければいかぬという点には、この条項につきましてはフランスははっきり賛成をしておるわけであります。したがって、フランスがこれをいま脱退するとか何とかということは一言も申しておりません。ただ、この原案ができたときにさらに検討をして態度をきめると、こう言っておるわけであります。また、いろいろの議論の中でも、ただいま申し上げましたとおり、協力すべきものは協力すると言っておりますし、また、約五年にわたる流動性の問題の議論の間でも、常にフランスは、一方においていろいろな議論をしながら、協調的な態度をも示しております。したがって、まだ各国が正式に態度を——フランスが態度を決しておりませんから、ここではっきりとフランスも入るんだというようなことは私申し上げられないわけでございますけれども、ただいま申し上げましたとおり、これが世界全体のために非常になるという点で、私は、好意ある態度を示すんじゃないかと、かように考えております。また、この内容につきましてもいろいろ言っておりますけれども、結局のところ、今度の会議におきまして、SDR、あるいはIMF制度の改善については、かなりフランスの意見もいれてきておりますので、私は、フランスもいろいろこの問題につきましては考えるところがあるのではないかと考えております。
  326. 岡田宗司

    岡田宗司君 この会議におきまして、結局一オンス三十五ドルという金の従来の公定価格というものは維持されたかっこうになっております。しかし、これは、私に言わせれば形式的のものです。実際には金の自由市場ができまして、その金の自由市場と各国の中央銀行との関係というものは断ち切られてしまった。そして金の自由市場における金の価格というものは、これはいろいろな要素によって常に変動をする、こういう状況になったと思うのであります。で、ベトナム戦争が始まりましてから、ドルの危機、あるいは、また、ポンドの危機、ゴールドラッシュ、そういうものによって金の価格が非常に変動をしております。ストックホルム会議の後に一応落ちつきを示しておりますけれども、自由市場の価格が再び一オンス三十五ドルに戻って、そうして従来と同じような形で金の値段が安定するということは考えられないのであります。金の需要、これはいろいろな方面から起こっております。それでは供給のほうはどうか、これは必ずしもこの需要に見合うだけのものはない。といたしますれば、その面から見ても、金の価格というものは今後さらに、何といいますか、変動をするでございましょう。あるいは、一面におきまして金の生産のコストも上がってまいる、あるいは投機も行なわれるでございましょう。そういうような状況のもとにおいて金の価格の変動がひどいということは、一面において各国の中央銀行の間で三十五ドルを維持するといたしましても、これは架空のものにすぎなくなるのではないか。金が完全に国際通貨としての機能をなくなしてしまう、こういうことになりますれば別でありますが、そうでなければ、私は、その点について今後はやはり国際的通貨の不安というものが起こるのじゃないか。たとえIMFの改善、あるいはSDRの創設が行なわれましても、それだけではなお国際通貨の安定、あるいは、また、流動性の増大というような問題が起こるのではないか。先ほどあなたが指摘されました各国がその国際収支のバランスに留意をしていかなければならぬという点でありますが、特にアメリカ並びにイギリスの今日の状態を見ておりまして、はたしてそれができるかどうか、この点についての疑問がありますか、総裁はどうお考えになりますか。
  327. 宇佐美洵

    参考人(宇佐美洵君) 確かに金がいわゆる二重価格制度になりました点で複雑になってきたと、私もそれは認めます。しかし、一方において、各国協力によりましてSDRという制度がここに確立いたしまして、そしてそういう問題について各国が、これはSDRにつきましても、各国協力なしには意味がないのであります。ですから、各国協力してこれを盛り立てていくということになれば、おっしゃるような、ずっと先の先のことはわかりませんけれども、しかし、現在のところ、いまの制度が、この間ワシントンで金プールの国々が集まって決議をいたしましたが、各国とも、多くの国がこの決議に賛意を表しておるということも聞きました。そして今後SDRがだんだん発達していきましたならば、いまの国際金融制度もそう不安はないのではないか、かように考えておるのであります。
  328. 岡田宗司

    岡田宗司君 アメリカ並びにイギリスの国際収支は、なお不安な点を多く残しております。アメリカ並びにイギリスにおいてもそれ相当の努力はされてはおるけれども、なおその点について私どもは見通しはかなり困難であろうと思います。日銀総裁といたしましては、この見通しはどうお考えになるか。また、ストックホルム会議においてもこの問題は十分論議されたと思うのですが、各国のアメリカ、イギリスの国際収支に対するいろいろなきつい要望があったと思うのですが、その点はどういうふうなことでございましたか。
  329. 宇佐美洵

    参考人(宇佐美洵君) 英国並びにアメリカの国際収支につきましては、冒頭にも申し上げましたとおり、また、コミュニケにおきまして議論はいろいろございましたけれども、最後のコミュニケで、これはフランスも入って、両国の努力を高く評価したということから見ましても、多少時間のズレはございましょうけれども、両方とも国際収支は漸次均衡を保つような方向に向かうものだと思います。さっそく改善されるとは思いませんけれども、しかし、だんだんよくなっていく、かように考えております。
  330. 岡田宗司

    岡田宗司君 まずSDRが実際に動き出すのは本年の末、あるいは来年の春だと思うのでありますが、それまでにイギリス、アメリカ、特にアメリカの国際収支改善の見込みありや否や、この問題はベトナム戦争と関連があるのでありますけれども、このストックホルム会議の後にアメリカがベトナム戦争をデスカレーションする方向に、そして和平会談を求める方向に進んだということは、この会議においても何らか問題になったがゆえにそうなったのかどうか、この点についてどうお考えですか。
  331. 宇佐美洵

    参考人(宇佐美洵君) 会議の席上においては、ベトナムということばは一つも出ませんでした。
  332. 岡田宗司

    岡田宗司君 しかし、実際アメリカの国際収支の悪化の最大の原因はそこにあるわけです。ことばは出ないでも、おそらくそれが国際収支改善の要求のうちにあらわれておったんじゃないかと私は思いますが、まあそれはそれといたしまして、次に、これは大蔵大臣にお伺いしたいのでありますけれども、国際経済は相当きびしいものがあろうと思うのであります。アメリカのドル防衛のためのいろんな手段がとられつつありますが、これらはまた全世界に非常な影響を及ぼしております。輸入課徴金の問題もそうでありましょう。あるいは、また、輸入割り当ての問題も起こってまいりましょう。さらには、また、海外への旅行者に対する課税の問題、あるいは制限の問題、その他いろいろな問題がすでに投げ出されておりますけれども、しかし、アメリカのこの政策がはたして成功をするかどうか、これが成功しないとする日本にも非常に大きな響きを持ってくるわけでございますが、そういう場合を予想して、いまの日本の財政経済政策はこのままでよろしいのかどうか。
  333. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) やはり国際通貨体制がゆらぐことが一番経済政策を遂行する上においては支障を来たすことでございますが、いま見るところによりますと、さっき日銀総裁が言われましたように、一つはSDRが創設されるということでございまして、もしこれが創設されないと、金にリンクした新しい準備資産ができるという見込みがなかった場合のゴールドラッシュを考えたら、これはなかなかたいへんな国際通貨の混乱を来たすのではないか、ドル不安というものは簡単に抑止されるものではないというふうに考えられます。それと、もう一つ、やはりベトナム戦争が続くという限り、ドル不安というものは解消しないということであったろうと思いますが、御承知のように、和平の提案となった。この二つを軸にして各国経済協力というものが進んでいるということを前提にいたしまして、私は、一応ここでドルに対する不安というものは落ちつくというふうに考えます。そうしますというと、それを背景にして日本経済政策はどうやっていくかということになりますと、従来とってきたこの政策をこのままゆるめないで続ける。幸いに、いまこの効果も少し出てきているときでございますので、この効果をさらに浸透させるという従来の政策をもっとしっかりやること、できたら国際収支を予想したよりももっと早く回復するという、この政策を変更せずにやっていくことで対処できるのではないかと私は考えております。
  334. 岡田宗司

    岡田宗司君 たとえば公債の発行高を減らす、あるいは、また、本年度の四十三年度の予算の一定程度の削減をやる、あるいは、また、繰り延べや、そういうことの必要が起こるというふうに私どもは考えてるのですけれども、その点はどうお考えですか。
  335. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 昨年の予算を十分に私どもは吟味しまして、今年度は昨年度からの繰り延べのものも考えた予算を組んだつもりでございますが、したがって、予算出発当初すぐにどうこうという問題なしに一応進めるのじゃないかという見通しのもとにこの予算の編成をやりましたが、経済情勢のいかんによってはいつでも機動的な措置をとりたい。これは従来とってきたような態度を今後もとり続けていきたいと思っておりますが、いまのところでは、昨年来の政策が相当浸透してまいりましたので、ゆるめずにこれをやっていくことによって大体所期の目的を達するんじゃないかというふうに私どもいま考えております。
  336. 岡田宗司

    岡田宗司君 輸出入の面でございますが、去年は輸出の面で見込みがはずれた、輸入の面でも見込みがはずれた、そうして国際収支の面についても見込みがはずれた、本年度においても条件は必ずしもよくない、したがって、最高輸出会議においてきめました本年度の輸出目標がはたしてそれがそのままできるかどうか、あるいは輸入を抑制する点についても、一体そういうふうにいくのかどうか、私ども非常に疑問に思っているのでありますけれども、本年度のその輸出の目標は、はたしてあのままでいいのかどうか。これは国際環境のきびしさがあり、特にアメリカのドル防衛政策とも非常に関連があるのでありますが、その点はどうお考えになっているか。
  337. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 三十六、七年のときの経験もございますが、何といっても、やはり輸出を延ばすというのは内需の調整が必要であって、総需要の抑制という政策が功を奏してきますと輸出圧力というものは強まってきますので、したがって、国際情勢が若干きびしくても国内の輸出圧力が加わってくるというこの事態、こういう事態をつくっていくことが必要でございますが、そういう意味では、いまつくられつつあるということは大体言えようと思いますので、そういう意味におきまして、いま最初考えておったような輸出一五%増ができるかどうかというような疑問がずいぶん当初持たれておりましたが、最近の事情を見ましても、私はそれぐらいの輸出増が本年中には確保されるというふうに考えております。
  338. 岡田宗司

    岡田宗司君 日銀総裁が御退席になるようでございますので、総裁にお伺いしたいのでございますが、これは金利の問題でございます。公定歩合の問題、これは全般の経済情勢との関連もあり、また、国際情勢とも関係があるのでありますが、この金利を引き上げる、こういうようなおつもりはあるのでしょうか。また、引き上げるとすれば、いかなる条件の場合においてそれを引き上げることになるのか、その点についてお伺いしたいと思います。
  339. 宇佐美洵

    参考人(宇佐美洵君) ただいま大蔵大臣もおっしゃいましたとおり、現在私どもがとっております引き締めがだんだん浸透いたしております。したがって、現在の浸透度合いから見まして、現在において公定歩合は上げないでいいのではないか、現在の時点においては、そのままいまとっております政策を持続すれば効果が次第に出てくるのではないか、かように考えております。
  340. 岡田宗司

    岡田宗司君 しかし、やはり相当きびしさが要求されてくる、あるいは、また、アメリカ等においても金利の引き上げが行なわれて、ヨーロッパにおいてもさらにそれに追随するような事態が起こってくるとすれば、日本にもそれが波及せざるを得ない。ユーロダラーを取り入れる問題とも関連するでありましょうが、そういう場合には金利の引き上げということも起こり得るのかどうか、あるいは、また、一方において政府の予想していた以上に設備投資等がふくらんでいくというような場合にはこの金利政策は変更される可能性があるのかどうか、その点を伺っておきます。
  341. 宇佐美洵

    参考人(宇佐美洵君) ただいま、現在においてそういうことを考えていないと申しましたが、海外の情勢が変わり、あるいは国内情勢が変わってくれば、当然また考えざるを得ないと思います。しかし、現在その必要はないと考えております。
  342. 岡田宗司

    岡田宗司君 日銀総裁への質問はこれで私は終わります。  大蔵大臣にお伺いいたしますが、ただいま大蔵大臣が述べられたところは、現在のまあ引き締め政策をやって、これがだんだん効果を奏しておる、そうしてそれによって輸出の見込みについてはまず狂いがない、こういうお話でございましたけれども、この引き締め政策の効果がだんだんにあらわれてくるということは、やはり国内においてある種の犠牲を人為的につくり出して、そうしてそれによって輸出ドライブをやる、こういうことになるのではないでしょうか。最近の中小企業の倒産の状況、あるいは特に中小企業と抵抗力の弱いものが今日金融難で困っておる事態、あるいは、また、中くらいな企業にさえそれが波及しておるということがそれを意味するのではないか。私どもはその点を非常に心配するのですが、輸出ドライブもけっこうでありますけれども、その犠牲が弱者にしわ寄せをされるようなそういう政策ではこれはごめんをこうむりたいのでありますが、その点について大蔵大臣はどういう措置をとられるか、お伺いしたい。
  343. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 引き締め措置をとるにつきましては、私どもの一番心配していることはいまの点でございますが、これも過去に経験が十分ございますので、今回の引き締めをやるにつきましても、この点は初めから非常に留意してまいりました。若干この効果が出るのが、かりにおくれることがあっても、この中小企業にしわ寄せをして犠牲を負わせることを避けなければならぬということで今日までやってまいりました。引き締め政策をとりましても、手元資金を持っている大企業に響いていくということには相当時間がかかりますが、そこへいくまでの間に中小企業へしわ寄せがきてしまっては犠牲が大き過ぎますので、そうこないように昨年は年末対策も相当いたしましたし、また、今年になりましても、特に日銀の窓口規制がきびしくなりましても、中小企業金融には穴をあけて適用しないでやっていくとか、いろいろの措置をとりましたし、また、公定歩合が上がったときには、これはコールの金利が当然上がってまいりますが、今回は、御承知のように、公定歩合を上げましてもコールは多くしない、また、現になっておりませんが、そのために中小金融機関の金が都市銀行へみんないってしまって貸し付けの比率が落ちるというようなことがないように配慮しておりますが、いまのところ、これだけの引き締め政策をとりながら、全金融機関の中小企業への貸し出し比率というものはひとつも落ちておりません。むしろ少しずつ中小企業への貸し出し比率のほうが上がっているというような配慮をして、何とか三月まで動揺のないようにということで気をつけてまいりましたが、四月に入りますとまた散超期でもございますし、そういう点から、中小企業に対して四半期ごとの政府関係機関の資金の配分とかいうようなことでも十分考えられますので、そういう点を考えるということにして、きょうまで私ども一番苦心してきたのは、この引き締めによって中小企業への犠牲を負わせまいということでございましたので、幸いに今日まで私はこの点ではある程度うまくいっておるのじゃないかと考えております。倒産の件数が多いという問題がございますが、これはちょうど日本で倒産は、ほんとうなら不景気のときに多くあるはずでございますが、日本においては、不景気のときだけでなくて、好景気になっても倒産が多かった。両方倒産が非常に多いという統計を示しておりますことは、これは結局やはり日本の産業が二重構造を徐々に解消していくという構造的変化の過程に見られる私は一つの現象だというふうに把握しております。したがって、これへの対策は、やはり生産性のおくれた農業、中小企業の近代化への投資とか、いろいろ本格的な対策をもって臨む必要があると思いますが、いままでの倒産を見ますというと、今回の引き締めとの関係というよりは、むしろほかの原因のほうが多いという実情だと思っております。しかし、これから引き締め政策がほんとうに浸透してくるということになりますと、それとからんだ中小企業の倒産というようなものも十分注意しなければなりませんので、むしろ今後こういう問題を特に気をつけなければならぬそういう時期にきておるのじゃないかと思いますが、これについては私どもも万全の準備を持ち、配慮をもってやるつもりでございます。
  344. 岡田宗司

    岡田宗司君 中小企業の倒産について、いま大蔵大臣は、好景気のときにも不景気のときにもある、それは日本の中小企業の二重構造の特殊性からきておるものだ、したがって、現在の政府の政策には関係ないというようなお話でございますけれども、たくさん倒産しておるということは事実である。政府は、そのことが政府の政策によるものでないということで逃げておるけれども、しかし、現実に倒れて、そうして苦しんでおるのはこの中小企業の人たちで、そこへ今回の引き締め政策がさらに及んでくるということになりますれば、やはり犠牲は中小企業にしわ寄せをされて二重の苦しみを受けるということになるではありませんか。その点について政府はもっときめのこまかい、そうして大胆な中小企業政策を打ち出さなければならぬと思うのでありますが、もう少し具体的にそれを御説明願いたい。
  345. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 具体的には、さっき申しましたように、年末資金から始めて、ずっとこの第四四半期の通常金融に苦しいときの資金量をふやしたということと、規制でも、たとえば政府関係機関の貸し出し対象になっておるものは、過般の繰り延べのときにもこれを除くというようなことをいたしましたし、また、日銀の窓口規制でも、金融公庫、信用金庫、相互銀行を省くというような措置をとっておりますし、さらに、さっき申しましたようなコールとの関係において中小企業への資金が少なくなることを防ぐ措置も真剣にとっておりますし、その結果が現在のようになってきて、いま中小企業は三月まで大体最初予想されておったよりはよく切り抜けることができたというふうに思っています。そうして四月−六月の期間に入って、この期間を切り抜けることが私は非常にむずかしいと思います。また、この期間を切り抜けたら、いままでの引き締めの効果が出てくるところでございますから、この三カ月間ぐらいの中小企業対策というものを私どもがしっかりやったら、これで一応昨年来のわれわれの政策がうまくいくということになるんじゃないかというので、あと三カ月の中小企業対策については万全を期すつもりでおります。
  346. 岡田宗司

    岡田宗司君 これは宮澤経済企画庁長官にお聞きしたいのですが、対米貿易の面におきましていろいろな障害があらわれている。たとえば毛織物、化繊に対する輸入制限の問題、あるいは、また、輸入課徴金問題、これについては関税の一括引き下げを早期に実施するとすればあるいはそれが行なわれないのではないか、こういうようなこともいわれておりまして、日本もそういうつもりでおったらしいけれども、しかし、アメリカ側はかなりその点についてはきびしい。そうして過日のアメリカ側からの、何というのですか、回答というのか何というか、それによりますれば、たとえ関税一括引き下げが行なわれても輸入課徴金をやめるとはいわないというようなことでありますが、一体こういう問題について今後どういうお見通しを持っておるか。また、輸入割り当てもさらに行なわれようとしておるが、こういうことからくる日本の輸出に対する影響、それに対する対策、これはどうお考えになっておりますか。
  347. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 課徴金の問題は、何ぶんにも、アメリカ政府、それからアメリカ国会、EECの各国、いろいろ複雑でございますので、いまのところ正確に申し上げましたら、ちょっとどちらともまだ申し上げかねるというのが今日の実情ではないかと思います。当初英国あたりが考えました相当大幅なケネディ・ラウンドの繰り上げ、まあアメリカに対しましては、むしろ繰り下げ部分もあるわけでございますが、あるいはドイツあたりも同じようなことを考えておるようでありますが、EECが一応合意した案がそれより後退をしておるという点が一つ。それから、ASPの廃止を期限を切ってやれというようなことを言っておる。これらの点が、当初ドイツ、イギリスあたりが考えましたものよりも相当辛いものでありますから、そこで、アメリカとしてはなかなかこれでは課徴金をすぐに引っ込めるわけにはいかない。ことにASPの点は議会との関係もあります。それから、ASPのほかにいろいろな輸入制限措置をとらないという点についても、いま御指摘のような品目別の輸入制限ができれば、これも議会を拘束できるかという問題がアメリカ側にあるように思います。いまの段階は、私は、したがって、この条件をめぐっての交渉がもう少し続くのではないだろうかというふうに思っております。何ぶんにも、国際通貨問題については、アメリカ側はわが国EECの国等に相当の協力を要請をして、いわば借りの立場にまああるわけでございますから、それからの国がケネディ・ラウンドの繰り上げまでやってひとつ協力しようというときに、そうかってばかりも言えるものではないという気持ちは、これは米国政府には当然あるであろうと思うのでございますが、ただ、ASPとかその他の輸入制限措置とかいうアメリカの議会自身の動きに対して政府がなかなか責任を負いにくいという点もございましょうから、もう少し私はこの条件についてのいろいろの交渉が長引くのではないか。その帰趨をちょっとただいまの段階では申し上げられないというあたりが一応穏当ではないかと思っております。  それからアメリカ国内の輸入制限措置は、もう一昨年ごろから御承知のようにいろいろございまして、ただいまのところでは、上院、下院の両院協議会のようなところで一つこれを防ぐ関所がある。また、さらに進めば、大統領の拒否権という問題もあるわけでございまして、これらの点については総理大臣がしばしば実際に会談の上で、あるいは文書等をもって、ジョンソン大統領にも善処方を要望しておられるわけでありますし、また、他の国もそういうことをしておると思いますので、私どもといたしましては、アメリカ議会がそういう処置に出ないことを期待もいたします。また、大統領も、それだけの政治力を発揮してくれるであろうということを期待をしておるわけでございます。
  348. 岡田宗司

    岡田宗司君 すべて期待にかかっておるわけでありますけれども、しかし、現実にそれが日本経済に相当不安を与えておる。そのために、自民党からも使節団が出た。あるいは財界からも出ておる。効果が上がっておらぬわけでありますけれども、今後これに対して手をこまねいて見ておるわけではないのだと。どういう措置をとられるのか、これは総理大臣からお伺いしたい。
  349. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 政府といたしましては、あらゆる機会に当方の要望並びに強い意見を開陳いたしております。また、今後とも続けて十分アメリカ側が善処するように努力するつもりでございます。
  350. 岡田宗司

    岡田宗司君 一向具体的でないのでありますが、特にいかなる点に重きを置いて交渉をされるのか、あるいは要望をされるのか、その点をお伺いしたい。
  351. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ボーダータックスあるいは課徴金というような制度を設けることは当方でたいへん迷惑すると、国際経済の今後のあり方といたしましてもさような方向はとるべきではないということを機会あるごとに説明しておるわけであります。ただいまは、特使等が帰ってそれぞれから報告を聞きました。しかし、大使館もございますから、私どもの意見は絶えずあらゆる機会にこの点を強く要望しておる、かように御了承いただきたいと思います。
  352. 岡田宗司

    岡田宗司君 これは、経済企画庁長官のほうから、もう少し具体的に、どういう対策をとるべきかということについてお伺いしたい。
  353. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それは、輸入課徴金にいたしましても、これはガットで定めていないところのことでございますし、数量制限については、ガットに規定がないわけではありませんけれども、しかし、いまのアメリカがそれを必要とする状態にあるとは思えないわけであります。でありますから、結局、ことばは悪うございますが、いかにもわからずのことを相手がかりにしようとした場合にどういう策をとるかというようなことになるわけでございまして、それはやっぱりそのやり方は間違っておる、せっかく第二次大戦後出てきた自由貿易、アメリカ自身が指導したわけでありますが、最近はケネディ・ラウンドもやったわけで、それに反するではないかという、これはもう説得をする——考え方の上ではもうこちらが正しいことは間違いないわけでございますから、やはり説得をするということであろうと思います。問題は、アメリカ政府自身は品物の輸入制限ということはこれはもう明らかにいかぬということはわかっておるわけでございますから、政府を説得するだけではなかなかその効果が十分でないので、それで先般来いろいろなミッションが出ておるのであろうと思います。私どもは、日本が非常に迷惑することはもとよりでありますけれども、平和に生きていこう、繁栄していこうというこの世界の潮流にアメリカ自身がさからうといったようなことは、これは何としても間違いでありますから、そのことを忍耐強くやはり説得をするということであろうと思います。  もし、しかし、さらにそれにもかかわらず何かが起こったときはどうするかということになれば、私どもとしてもおのずから自衛の措置を講じなければならないと考えますが、また、その点はアメリカ側も当然承知をしておるわけでありまして、先般もアメリカの農務長官が見えましたときに、私、農林大臣と御一緒にこういう点についても実はお話をしておきました。機会あるごとにそういうことを申しておるわけでございます。
  354. 岡田宗司

    岡田宗司君 EEC諸国においても、アメリカに対する態度はわれわれと共通のものを持っておる。このEEC諸国との間に連携をとって、そして共同歩調でもってアメリカに要求すべきものを要求しておるのかどうか、その点はどうでございますか。
  355. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それは、私の知っております限りでも、わが国の外交の出先が非常に密接におのおののEECの国と連絡をとっております。
  356. 岡田宗司

    岡田宗司君 もし、強い要望にもかかわらず、たとえば輸入課徴金が実施される、こういうことがあり得る。EEC諸国におきましてはこれに対する報復措置というようなこともちらちら言われておるわけでありますけれども、日本としてはそういう場合に報復措置というようなことについても考えられておるかどうか。
  357. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) まず、アメリカが国内的にそういうことを決定いたしましても、これは当然ガットの場でウェーバーをとらなければならないと思います。わが国としては、当然、その際、賛成するわけにいかない。EECの多くの国もそうであろうと思います。それが第一の問題であります。  それから、それにもかかわらずということがどういうふうにして起こるか起こらないかは予想が困難でございますが、全く仮定の問題としてそれでもあったらどうするかということになれば、自衛の手段を当然講じなければなりません。ただ、いまの段階で報復というようなことばを使いますと、いかにもいわゆる貿易戦争に入っていくといったような印象が残ってはいけないと思いますので、私どもはそういうことがないことを前提にしているだけに、当然自衛の措置はとらなければならぬということを申しておるわけであります。
  358. 岡田宗司

    岡田宗司君 もしそういう事態が起こったとすれば、これはケネディ・ラウンドそのものは崩壊すると、こういうことになろうかと思うのですが、その点はどうお考えですか。
  359. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) ケネディ・ラウンドそのものは各国で約束をしておるのでございますから、形としては残ると思いますが、精神はそこなわれることになる。いわばケネディ・ラウンドで関税率を引き下げていこうというときに、突然その上へ上乗せをするわけでございますから、それが続く間はケネディ・ラウンドの精神というものは全く滅却されてしまう。残るものはなきがらのようなものではなかろうかという感じがいたします。
  360. 岡田宗司

    岡田宗司君 まあアメリカは世界一の強国であり富強国である。それがこういうような事態を引き起こすということは、これはまことにけしからんことである。同時に、私は、各国が特に日本などがアメリカに対してあまり経済政策等において追随的であったということが今日かようなことを引き起こすに至ったのではないかと思う。もっとわれわれはアメリカに対して、これは外交政策の問題ばかりではない、経済の問題についても、しゃんとした姿勢でもって今後臨んでいくということを、これは佐藤内閣あるいはその後の内閣の姿勢としてとってもらいたいと思うのでありますが、佐藤総理の御見解を承りたい。
  361. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私、まあたびたび本会議の席上等でも申しましたが、それぞれの国が国益を守り、国益を増進する、そういう立場でただいまの貿易もいたしておるのでありますし、ことに、もうしばしば申しますように、平和に徹していずれの国とも仲よくしていく、こういう立場貿易拡大の方向を努力しております。いま、アメリカとの貿易関係を見ましても、日本の輸出国でもある。三分の一程度輸出もしている。同時に、また、輸入も、原材料はじめ、アメリカから見ましても日本は最大のお得意でもある。カナダに次ぐものだろう、かように思います。そういうことも考えて、いたずらに肩をいからしてもいかないし、いずれもが仲よくやっていける、そして国益を維持し、増進する、そういった努力をすべきじゃないか、私はかように考えております。
  362. 岡田宗司

    岡田宗司君 次に、国際関係並びに日本の外交姿勢の問題についてお伺いしたいわけですが、三月三十一日、ジョンソン大統領が、次回には自分は出馬しないという態度を声明し、そして、北爆を限定し、北ベトナムに予備会談に応ずるように働きかけた。これに対して、北ベトナム側も応じて何らかの話し合いが始まろうとしておる。これは、私は、今後の世界情勢に大きな変化を与えるもんだ、最近の世界情勢一つのエポックを画すものだと思っておるのです。これはアメリカのアジア政策の変化の始まりであろうと思われる。その点は総理はどうお考えになりますか。
  363. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、いわゆるアメリカのアジア政策、これが一つの転機を来たしたと、かように言えるかどうか、ちょっと疑問を持ちます。しかし、少なくとも私どもが望んでいたアジアの平和、極東の平和、ベトナム問題その紛争、これが解決の曙光、糸口を見つける、こういうことになった。この意味におきまして、これが平和推進だと、かように考えられれば、いわゆる一つの転機とも言えるかと思います。しかし、いままでも、アメリカ自身がベトナムで戦っていたのが、南ベトナムの自由と独立を守る、そういった立場で戦っていたようでございますから、そのもとの基本的な考え方に変わりはない。しかし、武力によってこういう問題を解決しないで、話し合いに入ろうという。また、北側も、これに対応して、よしひとつ話をしようと。これはもう双方が世界の称賛をかち得ている問題だと。そういう意味では、確かに一つの一時代を画するものだ、これから新しい時代が開ける、そういうように期待を持つことも、これもいいことだ。私は、そういう意味で、この問題をぜひとも見守り、ただいま指摘された方向でほんとうの恒久的平和ができ上がるようにさらに協力すべきじゃないかと、かように私は思っております。まあ日本の場合は、かねてから平和が一日も早く招来するようにたびたび申しておりましたが、自分自身でそういう道は開けないにしろ、北並びに米、その間に話が始まろうとしている。私は、たいへん期待が持てると。かように思っております。
  364. 岡田宗司

    岡田宗司君 三木外務大臣にお伺いしたいのですが、これはやはりアメリカのアジア政策のある種の変化の始まりであると、こういうふうにお考えになっておるか、また、この話し合いがどういう方向に行くというお見通しを持っておるか、これは外務大臣としてはやはり一定の見通しを持たれておると思いますが、いかがですか。
  365. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) まあアメリカも最初から軍事的に解決ができないということは言っていますけれども、この問題を一方的な軍事的な勝利によって解決することはできない、政治的解決よりほかにないと、こういう態度をとっておったわけであります。それをいろいろ話し合いに入る機会というものを北ベトナムもアメリカもそれぞれに自分立場に立って考える機会がなかなか到来しなかった。したがって、話し合いに入るという事態が、全然アメリカの予期しなかったことが起こってきたとは私は思わないんです。しかし、おそらく、ベトナムの戦争が与えたアメリカに対する影響は、軍事的にアメリカは深入りし過ぎた、これから今後アメリカ自身があんまりオーバーコミットメントというものは考えにゃいかぬという、この新しいアメリカの世論というものが起こって、現にそういう動きがあるわけであります。しかし、世界の四十カ国ぐらいに対する安全保障の面においてアメリカのコミットメントがありますから、そんなにこのことによってベトナム戦争の経験がアメリカの対外政策というものに激変を与えるということはないだろう。しかし、ベトナム戦後におけるアメリカの対外政策というものは注目をしなければならぬと私は思っております。  そこで、いまハノイとアメリカとの話し合い、まだ場所でも話がなかなか両方の一致する場所がないようでありますが、これがあとに戻ることは私はないと思う。困難であっても、この話がもとに返って戦争がエスカレートするというような事態は私はないと思う。いろいろな紆余曲折はあるけれども、方向としては話し合いによる問題の解決という方向に動いていくであろう。ただ、しかし、これは、問題をとらえてみますと、場所でさえこんなになかなか話が一致しない。今度は、南ベトナム——いまはハノイとアメリカとの直接交渉であります。南ベトナム政府、ベトコン、あるいはまたその後における国際的な一つの保障の問題、いろいろ考えてみると、なかなか困難な問題が横たわっておりますから、戦争はエスカレートしないまでも、ベトナムに和平を達成するまでには非常に時間がかかると思います。相当時間もかかる。しかし、かかっても、やはりアメリカあるいはハノイも、あのジョンソン提案に対してハノイが応じたということについては、話し合いでひとつ和平へ持っていくという、話し合いによる解決へ持っていこうという意思があったことは事実です。したがって、瞬間はかかるけれども、方向としてはだんだんと話し合いに入っていく段階である。しかし、何段もの話し合いがある。直接の交渉から、最後にはやはり国際的な会議になるのでしょうから、そこまで行くまでの間にはいろんな段階があると考えておるので、いま見通しといっても、これは場所でさえなかなかきまらぬようでありますから、時間的にこうだということを見通しを立てることは困難だと考えております。
  366. 岡田宗司

    岡田宗司君 私は、アメリカの対ベトナム政策というものは失敗だったと思う。というのは、アメリカは、最初は、軍事力をもって北ベトナム並びにベトコンを圧服して、交渉の場に引き出して、そしてアメリカ側にあるいは自由主義陣営側に有利に解決をしようとした。けれども、これは、あのテト攻勢でもってそれが成功しなかったことが暴露された。今日、アメリカの軍隊は守勢に立っている。しかも、ばく大な軍隊の増強はできない。国内の黒人問題、あるいはドル危機の問題、これによって、もはやエスカレートすることはできないということは、いまあなたも指摘されたとおりであります。また、南ベトナム政府を助けてこれを強固ならしめるということも、今日の南ベトナム政府状況を見ておるならば、強化するどころではない。ようやくアメリカの軍隊の力の範囲しか影響力は及んでおらぬ状況だ。また、アメリカが非常に力を入れておったいわゆる平定政策なるものは、アメリカ自身も認めておるように、今日ちゃちゃむちゃくちゃになってしまっておる。といたしますれば、アメリカのベトナム政策はまさに失敗であった。ジョンソン大統領の英断、これに対しましては、佐藤総理大臣も、あるいは三木外務大臣も、その他の方々も、非常にこれを賞揚されておりますけれども、もちろんこの英断は確かでございますけれども、しかし、私は、それをアメリカのベトナム政策の失敗ということをごまかすために使われたのでは困ると思うのであります。三木外務大臣は、このアメリカのベトナム政策、これはアメリカの極東政策の一部でありますけれども、それが失敗であったと思いますかどうか。
  367. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) アメリカは、しばしば世界にアメリカの意図を明らかにして、ベトナムに軍事基地を求めている。アメリカはいつまでも駐兵する意図はない。南ベトナムにおける自由、独立というものが、力によって侵されることのない状態がくるならば、アメリカは兵を引くんだと。マニラ会議では、和平が達成したら六カ月以内に引くとまで声明をしたわけであります。したがって、アメリカの意図が軍事的に全体のベトナムを制圧していこうという戦争目的であるならば、これはやはりそういうことは今日ではできないのでありますから、失敗だったと言えるでありましょうが、そういうアメリカがいままでしたことに対して今度話し合いにおそかったけれども入ることになったわけですから、そういうことによってそういうアメリカが意図したものが達成を国際会議などにおいてできるということになれば、またやはりいろいろな評価がなされると思います。しかし、アメリカ自身がベトナム戦争に対して自分が予定したようにいかなかったことは事実です。しかし、ベトナムで行なわれた戦争というものは、まことに複雑な、普通の戦争ではないですから、そういう点でアメリカの考えておったよりもいろいろな障害が出てきたことは事実でありましょうが、これを失敗なりというふうに断定するということは、今後におけるベトナムがどういうふうに収拾されるかという結果を見ての評価があってしかるべきだと思います。
  368. 羽生三七

    羽生三七君 関連して。本質論じゃないんです、簡単な問題なんですが、場所の問題に先ほど触れられましたが、ジョンソン大統領は、何回も、要請があるならばいついかなる場所でも出向くと、こう言われたのに、今度、場所そのものがきまらぬということでハノイがだいぶ文句を言っている。こういうところからすでに問題があるのじゃないですか。いかがですか。
  369. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) どういう理由があるのかわかりませんが、これはちょっと会うということではないのですからね、今度の場合は。相当長期にわたって話し合いをするというわけですから、本国政府との連絡、いろいろな点で、ただメンツばかりでなしに、その施設、いろいろの点で両方が便利な点ということを考えるのだと思います。相当腰を据えた外交交渉ですから、そういうことがあると思いますが、私も、その両方が言っておることに対して、どちらにも片寄らない中立の国でできないかというようなことで何か歩み寄りをしようとしておるように見受けておる次第でございます。
  370. 岡田宗司

    岡田宗司君 いま、三木外務大臣が、必ずしもアメリカの政策は失敗したとは言えないというようなお話でありましたけれども、アメリカは世界における超近代的兵器を持った国家であります。ところが、ベトナムは、経済力の弱い、工業力のない国である。しかしながら、この国が、あのアメリカの五十数万の近代的な武器、装備を持った軍隊に対してあれだけ戦った。しかも、アメリカは、今日、ベトナムにおいて逆に点を守ることにきゅうきゅうとしておるだけになってしまった。面はすでに失った。線もずたずたに切られておる。こういう状況は、これは特殊な戦争である、つまり、民族解放の戦争というものが普通の戦争形式をもっては軍事的に圧服できないということの実例ではないかと思うのですが、この点は外務大臣はどうお考えですか。
  371. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 普通の戦争ならば主力がぶつかるわけですが、今度の場合は北のほうの浸透もあるようでありますが、南のほうにおけるいわゆるベトコンの活動もあって、普通の戦争にいう戦争の形とは非常に複雑な背景内容を持った戦争であることは、お説のとおりだと思います。
  372. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、アメリカの近代的装備を持った軍隊といえども、こういうような戦争においては勝ち得ないということを認められますか。
  373. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 最初も申し上げたように、アメリカも軍事的に勝利を得ようということは言ってなかったようです。
  374. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうですかな。
  375. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) また——それはそうだと思いますよ。軍事的に勝利という……。
  376. 岡田宗司

    岡田宗司君 軍事的に勝利を認めないで戦争をやる将軍がおりますか。
  377. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) やはり、アメリカが常に言っておったのは、北からの浸透、南のほうが自由独立が守れれば、そうすればいつでももうこの戦争はやらないのだと、こう言っておったわけでありますから、私は、あのような形で、たとえば制限戦争といいますか、あれで軍事的勝利をアメリカが考えておったとしたならば、それほど誤りはないと思う。軍事的勝利はありませんよ、あの戦争で。北のほうだって、いろいろなことの制限を受けて、どうして軍事的な勝利が得られるんでしょうか。戦争というのは手段を選ばぬものかもしれない。だから、アメリカに対する評価は、どのようにあのベトナム戦争を今後収拾していくか、この収拾のしかたというものが、やはりいろいろな世間で疑問を持っておる人もおるでしょう、これに対する答えになる、こういうふうに考えております。
  378. 岡田宗司

    岡田宗司君 しかし、なんですね、あなた、ウエストモーランド将軍が言っているように、アメリカはいまでもベトナムにおいて軍事的に優勢である、これはお認めにならぬでしょうな。
  379. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 軍事的に何ですか。
  380. 岡田宗司

    岡田宗司君 ウエストモーランド将軍が、アメリカはいまでもベトナムにおいて軍事的に優勢であると言っておるけれども、これはまさかお認めにならぬでしょうな。
  381. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私は、ウエストモーランド将軍の個々の言というものをあまり注目していない。全体としてやはりベトナム、南ベトナム情勢というものを見ておるものでございます。
  382. 岡田宗司

    岡田宗司君 この問題はこれだけにいたしまして、次に、アメリカのつまりアジア政策のやはり一つに、これはまあダレス以来のなにですけれども、例のドミノ理論というやつがありますね。このドミノ理論というものがあって、そしてアメリカはベトナムをどうしても自由主義陣営の国として守らなければならぬ、これがくずれたら総倒れだというのであったわけです。今回、アメリカは、ベトナム戦争を平和的に片づける決意をしたということは、このドミノ理論というものが今日すでに破綻をしたと。つまり、アメリカのアジア政策の一つの基調であるドミノ理論というものが破綻をしたということを意味するのではないか。このドミノ理論に対する外務大臣の見解をお伺いしたい。
  383. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) ドミノ理論というものは一時盛んでありましたけれども、いまはそのドミノ理論というものが現実に、われわれもそうでありますし、ほかの諸国においても、非常にこれが有力な理論としての共鳴を受けておると私は思っておりません。
  384. 岡田宗司

    岡田宗司君 昨日、東南アジア閣僚会議からお帰りになって、各国の指導者と、ベトナム和平の問題、その後の問題等についていろいろお話しになったと思うんですが、その際に、アメリカの言うドミノ理論、つまり共産主義の脅威が次から次へ及んでいくというこの理論、こういう事態についてお話しになりましたか。そして、各国の指導者は、それについてどういう意見を持っておったか。
  385. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) ドミノ理論の話はむろんしませんでしたけれども、各国ともやはり安全を確保するということに対してはみんなそれぞれに心配をしておる。イギリス軍撤退などもありますから、そういう点で、いかにして安全を確保していくかということは各国が非常に懸念しておる大問題であることは、これはもう否定すべくもないのです。ただ、しかし、東南アジア開発閣僚会議というのが、やはりそれは軍事の面もあるでしょう、安全保障には。むろんこれは否定できない。しかし、軍事ばかりの要素で安全が確保できるというわけではないですから、一方においてはやはり政治の安定、国民生活の安定という、そういうものもあって、その経済の面から開発をはかり、安全を確保していこうという会議でありましたから、どうしても、話は、そういうものに対して軍事を増強していこうというような話というものではなくして、その国の独立を確保していくためにはいろいろ弱みを持たないような社会をつくらんならぬ、よその国に対しても。そういうために、国内の態勢、ことに経済の面、あるいは社会の面において開発を促進していかなければならぬということが各国代表の最大の関心事でありました。軍事的な面というようなものは、非常に懸念を持ちながらも、会議の主たるわれわれの話し合いの題目ではなかったということです。日本は、また、話されても、これに対して何も寄与する余地はありませんから、当然にその日本立場も先方の代表はよく理解しておるものだと思われた次第でございます。
  386. 岡田宗司

    岡田宗司君 いまの外務大臣のお話を聞いておりますというと、まあアメリカのアジア政策の基調の一つであったドミノ理論というものは、あなた自身はもう問題にしておらぬ。それからまた東南アジア閣僚会議にお臨みになって各国の指導者と話されても、いろいろな防衛上の問題はあるけれども、しかし、ドミノ理論というものに対しては、もはや何人もあまり関心を持っておらぬ、こういうことでございますか。
  387. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) ドミノ理論ということをだれも言い出した者はありません。いろんな安全保障上の懸念はあると思いますよ。しかし、それはドミノ理論というような上に立っていろいろ議論をしようというものではなくして、各国自己のやはり安全を守っていこうということに対しては関心を持っておるけれども、ドミノ理論からくるものではないということでございます。
  388. 岡田宗司

    岡田宗司君 それからもう一つ、アメリカ側でも、これはいままでいろいろ言っていたのですけれども、あるいはまた、よその国がアメリカのアジア政策についての批判をやっておる際にも言われておることですけれども、アメリカは、これは先ほど言われたオーバー・コミットメントの問題とも関連があるのだが、アメリカ憲兵論です。これもどうもこのごろ影が薄れたように思うのです。日本の中にそれを信ずる人もおるようでございますけれども、しかし、このアメリカ憲兵論というものは、あなたはどうお考えになりますか。
  389. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) あれだけ強大な国力をもってしても世界の憲兵にはなれぬ。
  390. 岡田宗司

    岡田宗司君 いや、御名答でございます。  それで、さてもう一つお伺いしたいのは、これはまた、アメリカのアジア政策の基本一つになっておるものは中国封じ込め政策であります。まあ先ほど佐藤総理は、ジョンソン大統領との会談の際、まあ封じ込め政策はないようなことを言っておられましたけれども、アメリカは中国封じ込め政策というものを伝統的にとってきたということは、これは事実でありまして、たとえワルシャワで米中会談が行なわれておりましょうとも、あるいは多少の接近があろうとも、しかし、このコンテインメントポリシーというやつは、アメリカの対中国政策、したがって、アジア政策の基調になっておる。これははたしてアメリカはそれを今後強行できるか、維持できるかどうか、その点についての外務大臣の評価をお伺いしたい。
  391. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) まあアメリカも中国との交流の歴史の中でコンテインメントポリシーというのは、時間的に見れば、そう長期にわたっておるわけではない。しかし、これはアメリカはアメリカとしての政策、そういう上に立って現在の時点ではやっておるわけであります。佐藤総理が昨年行かれたときも、相当両国の立場が、共同コミュニケなどにおいても、その違いが出てきておったわけであります。ただしかし、アメリカの同盟国である西欧諸国も、これにはだれも乗ってきていないのですから、日本自身でも、アメリカとは友好国であっても、中国との間に接触を保っていこうというのが、日本の外交の基本政策でありますから、これはアメリカがいかにその政策をみずからとろうとしても、同盟国の共鳴は得てない政策であることは明らかでございます。これが私の評価でございます。
  392. 岡田宗司

    岡田宗司君 どうも私の評価とたいへん一致する点があるので、私も非常に喜ばしいと思う。いずれにせよ、アメリカのコンテインメントポリシーというのは、アメリカの所期した効果はあげてない。そうしてあなたの評価のように、これはまあアメリカが何とそれをやろうと、どこの国もなかなか応じてこない。これは現実であります。そういたしますと、アメリカのアジア政策の四つの柱の一つが、やはりこれ実行不可能というか、あるいはまた効果をあげてない、こういうことになりますな、いかがですか。
  393. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) まあアメリカはアメリカとして、中共との間にいつまでも接触なしに、また、米中関係が改善なしにやっていけるとは思ってないと思います。しかし、現在の時点において、それがアメリカとしては賢明だと思っておるので、われわれがいろいろ日米会談において申しましても、この政策というものはいままで変わらなかったのでございます。しかし、これは中国にとっておる政策であって、ほかの東南アジア諸国に対しては、相当経済協力もやっておりますし、封じ込もうという政策はとっていないわけです。中国に対する政策であって、これはいろいろベトナム戦争とか、その後いろいろなことがあった、そういう現段階におけるいろいろな両国関係からも来ておるのでしょうが、将来においては、アメリカ自身もこういう政策というものの変化があり得ると私は見ておるのでございます。
  394. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、結局アメリカのアジア政策というものは、何一つ効果を生んでいないということになるわけですね。つまり、アメリカのアジア政策は失敗だったと、こう断定をせざるを得ない。この点佐藤総理大臣、いかがお考えになりますか。たとえば先ほど申し上げましたように、アメリカは、兵隊を出してとにかく軍事的優位のもとにベトナム戦争を解決しようとした、これはもうアメリカも放棄せざるを得なくなった。それから第二に、憲兵論もだめ、ドミノ理論もだめ、コンテインメントポリシーもどうも思わしくない、こうなったらこれはアメリカのアジア政策というものは失点だらけ、こういうことになるわけですが、総理はそれをどうお考えになるか。
  395. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうも簡単にわずかな期間の間に評価するということは、いかがかと私は思っているのです。いまのベトナムの問題にいたしましても、これは成功したとは私も申しません。しかし、これが失敗だったと、こうまで言えるかどうか。これはやはりいま話し合いをしてせっかく和平へいこうとしているのですね。これもどうも、あれ失敗だったのだといって、一方的にアメリカの政策の失敗を言えば、ほかのほうももっと出方もあるかもわからない、かように私も思いますから、だから、いまの段階で、ただいまのような評価をされることはいかがでしょう。私は、とにかく一番うれしいのは、ベトナムに戦いがやむという、それはまだやんではおりませんけれども、とにかく両者の話し合いの道が開けようとしている。これはもう歓迎するということで私は実は一ぱいなんです。これは、いまのところ、アメリカが失敗した、また、さらにその次に進んでドミノ政策、これがもうそんなことを言う人はない。将棋倒しの話は出ておらない、かように言われるが、これも一体、最近大きい声はないかもしれませんが、どこかにそんなものあるかもしれません。どうもそう簡単に何かのわずかの期間に断定することは間違いじゃないだろうか。私はここにむつかしさがあるのだと思いますね。国際情勢の変化というものは、ネコの目みたいに変わるものじゃない。そこで、ともかくもう少しよく事態を見きわめなければならぬ。外務大臣も言っておりましたように、アメリカはなるほど世界の憲兵たるの資格がない。しかしながら、四十国以上のものがアメリカと特別な同盟条約を結んがいるとか、そういうような形から見ると、これはいま簡単に何もかも変わったと、こう断定することは、私は、岡田さんらしくもない。もう少し時間をかけてごらんになってそうして評価される、私もそうしたいと、かように思っております。
  396. 岡田宗司

    岡田宗司君 どうも外務大臣と総理大臣と評価がだいぶ違うようです。しかし、これ以上議論しても時間がむだですからこれはやりませんけれども、さて、そこで、アメリカのアジア政策がそういうふうないろんな点で障害にぶつかる、あるいは変更を余儀なくされるというような状況になってまいりますというと、その上に立つアメリカの世界戦略、アジア戦略というものも、これ、必然的に変わらざるを得ないと思うのであります。これはまた日米安保体制の問題にも響いてくるでありましょう。私はこの問題に深く入っていきたいのでありますけれども、いま時間が足りませんので、これはまたひとつ外務委員会その他に譲りまして、私は、まずお聞きしたいのは、こういうような状況のもとにおいて、日本もまたベトナムに平和が実現されることに喜び、それを促進する態度をとると、こういうことでございますが、それならば一体日本は、どういう基本的態度を持ってこの平和の促進をはかろうとするのか。過日、福田幹事長は、ひとつ勝間田委員長に北ベトナムへ行ってもらいたいというようなことを言ってみたり、あるいはまた、東京で会談をやられるならひとつ東京を提供してもいいというような発言が、椎名外相代理からなされたり、あるいはまた、どなただったかが、これはアメリカに特使を出そう、そういって、これはジョンソン大統領からていよくお断わりを食ったりしておりますけれども、これはやはり基本的態度が明らかにされておらないから、そういうもの笑いみたいなことになるわけであります。さすがに三木外務大臣は、その特使はお断わりをされたようでありますが、これは私、正しかったと思うんです。ところで、どういう基本的態度を持ってこの和平促進にお臨みになるか。もちろん一国でできることじゃございませんけれども、しかし、基本的態度も持たないでもって、ただアメリカのジョンソン大統領の英断を大いにほめそやして、そのあとをただくっついて歩いていればいいというものでもないだろうと思うし、いま福田幹事長等の言われたようなことをただ口ばしっておれば、それで和平が促進されるものでもない。その基本態度、これをひとつ外務大臣から御説明を願いたい。
  397. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) まあいままでもこのベトナムの平和的解決について、われわれとしてはできるだけのことをしてきたつもりです。これは日本としては、おのずからやっぱり一国でできる力の限りはありますが、あらゆる機会において、ベトナムの早期平和的解決を望む世界の世論というものは、非常に強いものがあるわけです。こういう国々と話し合ったことによって、そのこともやはり今度の平和的解決の機運が出たことに対するわれわれのやはり努力も、そういう各国のわれわれの努力——むろんわれわれの努力ばかりであるわけではないわけですけれども、そういう各国努力が積み重ねられて、こういう話し合いでも始まろうかということに私はなってきたと思う。だから、これからも各国との間に連絡をとりながら、これからやはりいま話し合いをしようという会議を始める予備の会議のようですから、それが本格的な和平会談になり、それがまた単に戦争当事国ではなくして、国際的基盤において長続きのする平和がベトナムに到来するように、もう日本が働くというか、平和問題に日本としての果たさなければならない役割りは非常に多い。ことに戦後のベトナムを考えたときに、何としたって平和が来たという後には、この戦争で荒れたベトナムの平和的建設というものが始まるわけでありますから、そういう場合における日本は、日本のまた果たさなければならぬ役割りがあって、ベトナムというものに対する日本は、これはもうただ遠い国の西欧諸国とは違ったアジアの一員であるというところに、今後日本が果たす役割りというものは、戦争の本格的な平和解決、ベトナム戦後、これはたいへんに大きな役割り日本が持っておるというふうに考えております。
  398. 岡田宗司

    岡田宗司君 まあ非常に遠大なお話で、たいへんけっこうなのでございますけれども、この和平会談が動き出そうとしておる今日において、やはり日本としては、ある種の態度というものを示さなければならぬだろうと思う。ところがこれは示されておらぬ。あなたのほうの党の内部におきましても、二つに分かれていろいろ議論があるようでございますが、それはさておいて、たとえば佐藤・ジョンソン会談のときには、北爆の問題については、日本側は大体サンアントニオ方式を認めたようなそういう行き方で、それがあの共同声明にあらわれておるように思うのですが、今日では、それではもはや事態は片づかないような状況になっておる。私は、ウ・タント事務総長が非常に精力的に各国を回り、共産圏側とも接触をし、北ベトナムとも接触をいたしまして、そうして何よりもまず北爆を停止することが先決である、会談成立の先決である。そうして、またベトコンを、つまり民族解放戦線の代表を当事者に加えよということも強く表明をしておったわけでございますけれども、やはり私は、これが予備会談、さらに進んで和平についてのあるいは休戦会談、そういうものに移行する必要なステップではないかと思うのであります。佐藤内閣も常々、外交方針としては国連中心主義と言っておる。このウ・タント事務総長の精力的な活動の結果、ある種の見通しをもって発表されたこの見解というものを、日本政府は支持する、あるいはそれと協力をする、他に多くの協力をする国もございますから。そうして、国際的に一つの世論を形成して和平の促進に役に立ったらどうかと思うのでありますけれども、この点は、三木外務大臣どう考えますか。
  399. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いまアメリカとハノイとの間にせっかく話し合いを始めようというわけですから、あんまりここで第三者がいろいろなことを私は言わぬほうがいい。どこも言っておりませんよ。そうして、この会議の進展に応じて言う必要があったら言ったらいい。しかし、せっかくいま話し合いが始まって、そうして、いろいろ北爆の問題も当然話し合いに出るでしょう。そこにみな第三者がいろんな声を立てて——そういうことをしないで、やはりアメリカとハノイとの交渉にまかして、そうして、われわれはこの交渉が——予備会談でありますが、本格的な和平会談にこれがおもむくように、われわれとしては世界の各国とも、平和に関心を持つ国々ともお互いに連携を保ちながら、そういう方向に持っていくことで、いまあまりものを言わぬほうがいいというのが私の意見でございます。
  400. 岡田宗司

    岡田宗司君 それは佐藤内閣の腰がきまっていないから言えないからでしょう。まあそれはそれでいいのですけれども、とにかく、はっきり腰だけはきめておいていただきたいと思うのです。  そこで一つ、さらにお伺いしたいのは、もしあなたの言うように、いまのところは当分ウエイト・アンド・シーがいいとするならば、なぜ特使を派遣するなどということを持ち出されたのか。これは総理にお伺いしたい。
  401. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) とにかく、ベトナムで話がいま始まろうという、それにつきましていろいろの希望意見、期待意見等はございましょう。しかし、いま三木外務大臣からも申しておりますように、こういう際にいろいろ話をすることは、いわゆる事態をいい方向へ進めるのならばいいけれども、話がつくことのじゃまになるような場合もある。そういうことはなるべくしたくない。こういうのだと思います。私は、この三月三十一日に、ジョンソン大統領が大演説をした、その後の国内やまたは各党の見方等が、これの評価がずいぶん先ばしっていたのじゃないかと思います。もうベトナムにすぐ平和がきたような言い方をされたり、ところが実際は、ただいまも申しますように、まだ会談の場所もきまらない、これから先にどれだけの事態の難関に逢着するかわからない、これが一つの問題であります。またもう一つは、先ほどもお話がございましたが、アメリカのベトナムに対するたいへんな失敗なんだ、その失敗を糊塗しようとするための和平提案、こういうような見方がある。これなど私たいへんな間違いだと思うのです。そういう点をあまりとやかく言わないで事実を静かに見守るということが一番大事だと思います。また、先ほど来ここでお話を聞いていると、もう対外的政策の変わり方が非常にある、これを転機にして大転換でもするような言い方をされる。これなど私はたいへんな間違いのように思います。私は、国内のこの種の世論をどうしたら静まらせることができるか、かようにいろいろ考えたのでございます。ただいま私どもがアメリカに対しましていろいろな要望をしている。ジョンソン大統領からも、大使を通じて当時の経過なども詳しく知らせております。アメリカ自身が何らの見通しなしに、三月三十一日にあの演説をしたわけのものではございません。これは十分の打診があり、そしてその打診の上に立ってのそれは話でございます。したがいまして、大体私は今日その予定された道を歩んでおると、かように思っております。また、先ほど言われるように、特使派遣という問題を簡単に断わられたと言われますが、断わられたことはございません。これはちゃんと向こうでも手紙をよこしておりますから、さようなものではございません。ただ私はこういうもの、特使を派遣するということにいたしましても、チャンスが一番問題なんです。時期が、タイミングがある。タイミングにそのときを得なければ、いかような人が出かけましても、十分な効果はあげられない。このことは御承知だろうと思います。ことにアメリカ自身が黒人の騒ぎが次々に起きている。そういう際に特使を派遣いたしましても、そういうもので話ができるわけのものではない。だからそういう点で誤解を受けるような発言は十分慎んでもらいたい。一部の新聞に断わられたという話が出ております。しかし、それは新聞の誤報でございます。私はっきりその点間違っているということを申し上げておきます。
  402. 岡田宗司

    岡田宗司君 外交辞令で、はっきり断わったということはないんでありまして、それはそれでよろしゅうございますが、しかしいま総理が、日本の外交政策を転換すべきだということはこれはたいへんな間違いだと私はおこられたわけでありますが、どうも私をおこるよりも、党内でそういうことを考えている人もだいぶ出てきたようです。藤山さんもはっきり言っておる。松村さんも言っておる。赤城さんも言っておる。宇都宮さんも言っておる。あるいは川崎さんも言っておる。こういうような方々が、少なくともあなたの党の有力幹部の方々が、今日の情勢の変化、これに応じて、日本の外交政策をやはりすぐに一〇〇%変えろというわけじゃないでしょうけれども、徐々にもっとアメリカから独立したものに変えていけというような主張をされているということは、私これは正しいことであるし、また、そうあらねばならないと思っているわけであります。この新政策懇話会には、三木さんのグループの方も、中曽根さんのグループの方もおられるわけです。おそらくその人々の意見というものは、三木さんなり、あるいは中曽根さんなりにも十分通じておると思うんです。私は、過日中曽根運輸大臣が、吉田書簡の問題につきまして、野べ送りをした、こういう発言をされたということは、単に船舶の延べ払い輸出の道を開くため、そのために、吉田書簡はもうすでに野べ送りを済ませたんだと、こういう発言だとは思いません。やはりこれは、今日日本の外交政策は転換すべきである、その一つのあらわれとして、もはやここで吉田書簡というものは野べ送りしたほうがいいという、そういう深いお考えのもとにそういう意見も吐かれたと思うのです。つまり先ほど私が申し上げました中国封じ込め政策というアメリカのアジア政策の基本はくずれておる、日本はもはやこの中国封じ込め政策に従うべきではない、日本はもっと独立立場に立つ対中国政策をとるべきである、それをこの機会にはっきりさすべきである、そのために吉田書簡というものは、もはや野べ送りすべきものである、こういう見地から発表されたのではないかと思うのでありますが、中曽根運輸大臣の御見解を承りたい。
  403. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 外交政策の転換というような、そんな浅い考えで言ったのではありません。もっと深い根底を持って私は言っておるのです。それは前から言っておることでありますが、日本と中国との二千年の長い関係や特に明治以来日本人が中国大陸でずいぶん向こうに迷惑もかけております。過般の大東亜戦争等を通じましても両国の間には相当な傷があります。この傷はわれわれの世代においていやさなければならぬ、子孫まで渡してはならぬ、そういう哲学に基づいて考えておるのであります。
  404. 岡田宗司

    岡田宗司君 もし中曽根運輸大臣のお説がそのとおりであるとするならば、私は共鳴いたします。そうして中曽根運輸大臣は、いまや閣内において、党内において、その意見をどんどん進めていただきたいと思うのであります。  運輸大臣はさらに、どこかで演説をされた際に、たとえば、いま日本の外交の転換をすべきときである、そうして、これは自民党も社会党の右派と言われましたが、こいつはまあよけいなこと。さらに公明党、民社党等の間で話し合いをして、そうしてそのコンセンサスを見つけ出したいという意味の御発言をされたと聞いておりますが、もしそれが事実でありますならば、われわれはたとえ基本的な考えに相違がありましょうと、今日それはまじめに考えて、お互いの間で堂々と議論をして、そうしていまや大きな変化に遭遇しつつある日本において、われわれは何かの道を発見すべきだと思うのですが、中曽根運輸大臣はその発言をどういう意味でされたかお伺いしたい。
  405. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、浅沼発言、吉田書簡という、おなくなりになった方々の残したものは、もうお葬式と同時に野べ送りしたほうがよろしいし、私はしたものと思うと、こう申し上げましたのは、やはり何といっても国益を守るためには日本の政党が共同の広場に集まって足並みを一致させるということが一番大事である、したがって、社会党の皆さんも、もう少し穏健になっていただきたい、われわれ自民党も進歩的になる、そうして国民の要望する共同の広場に集まってこの大きな問題を打開すべきである、国民はそれを待ち望んでおる、そういう気持ちで申し上げたのであります。しかしまた一面におきましては、外交のことでありますから、相手の出方もあります。相手さまがどういう考えでこられるか、そういう動きもよく見て、国内国内同士でできるだけ結束していくというのが正しいと思っているのであります。
  406. 岡田宗司

    岡田宗司君 自民党の党内においても今後、外交、防衛論争というものは激しくなってくるであろうと思うのでありますが、佐藤総理は、それでもなお日本の外交政策、つまり現在の佐藤内閣の外交政策というものは何ら変わりはない、いまの方針をそのまま続けていく、こういうふうにお考えでしょうか。
  407. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) たいへんわが自民党の内部についても御研究なさっていただいてたいへんけっこうです。ありがとうございました。お礼を申し上げます。しかし、そういう冗談は別にいたしまして、基本的な問題は、これはいま急に変わるというものではございません。私はしばしば皆さん方にもお答えしておりますように、日中の関係がこのままでいい、そういうことではない。当然これは改善されねばならない。先ほども答えたばかりであります。しかし私が申しますのは、基本的な方針という、いわゆる平和に徹し、そして自由を守っていく、そしていずれの国も独立を尊重し、お互いに共存の立場でおつき合いしよう、この基本的な態度を変える必要はないというのが私の考え方でございます。また、私どもの党内におきましては、この考え方に反する考え方を持った人はおりません。ただいま、非常に急いでもっと中共との関係を調整しろと申しましても、これは時期的な問題がございますから、先ほども言われますように、だんだんというようなことばもありましたし、私は、いまのままで直ちに——そういうものではないと思います。したがって、いずれさような点は党内で一応の統一した見解がそのうち出てまいりますから、その辺は御心配のないように。これは私は総裁で、自由民主党のことは私考えてまいります。どうかその辺はよけいな御心配をなさらないで、社会党のほうをひとつよろしくお願いしたいと思います。
  408. 岡田宗司

    岡田宗司君 与えられた時間がだんだん少なくなりましたから、これはここらで——もっともっとお聞きしたいことがあるのですけれども——やめまして、次に、これは防衛庁長官にお伺いしたいのですが、例の新島ですね、水戸射爆場を新島に移転する問題ですね。あれはこの間茨城県知事にあなたが新島へ移すということを言われたので、私は、ははあ、いよいよそういうことになったのかと思ってびっくりいたしました。ところが、十日の日でしたか、かなり詳しい案が発表されたわけでございます。どういう経過でそういうふうにきまってあの案が発表されたか、これをお伺いいたします。
  409. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) お答え申し上げます。  水戸の射爆場が原子力の関係の近くにございまして、誤投下あるいは誤爆、つまり誤って物を投下するとか、あるいは誤爆というようなことも数回ございまして、昭和三十六年、三十七年における両院の科学技術振興特別委員会におきまして、すみやかに水戸の射爆場をどちらへか移すように、積極的に解決せよと、こういう決議がございました。そこでこれを受けまして、歴代の長官は非常に苦心いたしたのでありますが、昭和四十一年六月二十何日——日にちは的確に覚えておりませんが——松野・プレストン共同声明というのがございまして、新島の南端にもし設けられるならばと、これはコンセンサスを得なければいけませんから、もし設けられるならば、三百五十万坪にわたる水戸の射爆場は、その六分の一くらいでよろしい。つまり六、七十万坪にいたしたいということ、それからなお群馬県にございます太田の物量投下の飛行場がございます。これは広さが七十万坪でございますが、これは水戸の射爆場跡に七十万坪ばかり残る。そこへ移してよろしい。こういうことでございまして、本土におきましては、三百五十万坪ばかり民生安定のために助かるわけでございます。そこでわれわれはこの関東一円その他のところを探しておった。というのは、いま御承知のとおり米軍部隊は陸海は補給部隊あるいは修理部隊だけでございます。実力部隊としては空軍が三沢と厚木、横田に約一個師団ございます。二万人でございます。その一個師団のものが、三沢には近所に射爆場がございます。それから関東におきましては水戸にある。このまあ米空軍としては二つの射爆場があるだけでございまして、これに対してやはり日米安保条約上、施設あるいは地域の提供をするというような責務をわれわれは負うておる。そこで、横田、厚木の両アメリカ空軍の所在しておるところから、物量投下なりあるいは射爆なりの演習場を半経二百キロ以内のところに求めてほしい、こういうことでございまして、種々探しておりましたが、結局、新島の南端がまあ候補地になっておるわけでございます。これはあらゆる補償だとか、あらゆるコンセンサスだとかまた各省大臣ともコンセンサスを得なくてはいけませんし、地元の美濃部知事さんの御同意も得なくてはいけませんし、地元のまたあなた方のような国会議員各位からも御了承を得なくてはいけませんし、当の候補地である新島の方あるいは漁撈に従事しておる数府県の方々の漁撈者の同意も得なくてはいけませんが、とにかく昭和四十一年六月幾日かの日米共同声明の線に沿いまして、その中に、技術的の回答を近く出すであろうと、こういうことが書かれてございます。その技術的回答が去る十日ごろきたわけでございまして、それを新聞に一応発表したわけでございまするが、日米共同声明は一昨年の六月の下旬に新聞にも発表してございまするし、また内閣にも報告してあるわけでございます。
  410. 岡田宗司

    岡田宗司君 あの新聞に発表された案、あれはアメリカ側が一方的につくって日本側に提示したものなのか、それともあれを作成するにあたって、防衛施設庁が協力をしたものなのか、その点をお伺いしたい。
  411. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) アメリカ側も相当研究をいたしたり、また実地に視察をいたしております。日本側も実地に視察をいたしたり、上空を飛しょうしたりいたした、その一応のまとめたものが米軍の技術的回答でございます。
  412. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、あれは防衛施設庁も作成に参加しておった、こう解していいのですか。
  413. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) さようでございます。
  414. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、これはまあ施設庁長官の直接の責任ですけれども、最高の責任はあなたにあるわけですな。
  415. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) さようでございます。
  416. 岡田宗司

    岡田宗司君 新島移転の問題は、前々からうわさに出ておった。われわれも承知しておった。地元はあらかじめから、こぞって反対であるという態度をとっておる。自衛隊のミサイル射撃場の場合には、島内の意見二つに割れましたけれども、今回は全く一つである。美濃部知事も反対をしておる。そうしてまた都議会も自民党を含めて反対をしておる。このことはあなたはすでに御承知だったと思うが、どうでしょうか。
  417. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 都議会の模様、知事の御意向、あるいは地元の御意向等も存じております。
  418. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、防衛庁が加わってつくったこの案が発表をされて、さてそれを実施になるというときに、そういう反対があるということは初めから予想されておったわけだと思いますけれども、それにもかかわらず防衛庁がそれに参画をし、そうしてそれをいよいよ実施するということになりますというと、その反対をどういうふうにするかということについての何らかの考え方なり、あるいはその反対を説得するなり押えるなりという方法もお持ちになった上でおやりになったと思うんですが、どうですか。
  419. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) とりあえずのところは、日米両政府共同声明が一昨年の六月になされました。その技術的の関係を米軍が答えるということで、答えたものが新聞発表の段階でございます。そこで、まずもって、基地関係閣僚会議もございまするし、その幹事会もございます。そこで、各省のコンセンサスを得なくてはいけませんし、それから地元の知事さん、あるいは肝心の地元の新島村の村長、あるいは村民各位の御了解を得たり、また漁民の御了解を得るということにベストを尽くす所存でございます。
  420. 岡田宗司

    岡田宗司君 ベストを尽くす、どういう方法でベストを尽くすんですか。
  421. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) まず基本的には、この関東一円は共同社会を形成しておりまするから、そこで水戸は、年来、科学技術関係の両院の特別委員会の決議のとおりでございまして、非常に迷惑を感じておるわけでございます。これを民生のために開放することは、一面原子力開発関係につきましても危険がなくて好ましい。また、太田の飛行場等はぜひとも開放してほしいと、こう言っておるわけでございまして、三百五十万坪の膨大なる飛行場が、あるいは射爆場が解除されて、その代償として、新島の方に七十万坪分をがまんしていただく。私自身もまあ飛行機でだいぶ旋回して飛びましたが、分水嶺から南がよろしいというわけで、従来米軍が申し込んでおりました百三十万坪を六十万坪に削らしたのでございまして、七十万坪取ったわけでございます。そういうわけで、結局、だれかが犠牲を忍んでいただかなくてはなりませんが、その犠牲を忍んでくださる方にも同意を快く得て、そうして茨城の方にも群馬の方にも喜んでいただく、こういうことでなくてはいかぬと思いまして、これから一生懸命説得、御同意を得るために努力をする所存でございます。
  422. 岡田宗司

    岡田宗司君 だれかに犠牲を忍んでもらわなければならぬ、新島の人にはぜひ犠牲になってもらいたい、まあこういうわけらしいんですが、単にこれは新島だけの問題じゃない。東京の、つまり日本の首都ですね、そこの一部にアメリカ軍の射爆場が持ってこられる。水戸の場合よりさらに拡大されたものです。あれによりますと、ナパーム弾、あの悪評高いナパーム弾の演習まで行なわれるという。そんなことは新島の島民だけじゃございません。東京都民あるいは日本の国民としても断じて許せない。どうやって説得をされますか。アメリカのほうとは、共同声明があったりなんかして、あるいはまた日米安保条約だのなんかで日本でもってこのなにを供給しなければならぬ。それはまあ条約上の義務からいえばそうでありましょう。しかしあなたは、日本国民の立場というもの、これが日本国民にどういう影響を及ぼすかということを考えておられるのかどうか、その点をお伺いしたい。
  423. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) この関東一円につきまして、従来とも非常に方々で探索いたしたわけでございまするが、海面水域等が相当ございませんと、結局射爆の目的を達成しないわけでございまして、これは演習でございますから、訓練の目的を達成しないわけでございます。そこで数百平方キロといったような地域は、この日本国内にはございません、これは信州の方面も調べてみましたけれども。結局新島関係になりまして、それで地域といたしましては六十万坪で、海域といたしましては水戸と同じ百平方キロということになります。それ以上の犠牲はわれわれは考えていないのでございます。
  424. 岡田宗司

    岡田宗司君 閣内で、厚生大臣あるいは農林大臣等々からもいろいろ御意見があったように承っておりますけれども、それはまあ閣内のことですから、あなたが説得されればうんと言うかもしれません。しかし新島の島民あるいは知事、東京の都民、さらに多くの日本国民は、うんと言わない、そういったらあなたどうするんですか。これをやはりアメリカとの約束に従って実現しようとすれば、説得ができないとすれば、何か実力をもってでも、たとえば自衛隊を動員してでもおやりになるつもりですか。
  425. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) あくまでコンセンサスを得るために努力するわけでございまして、民主的方法で解決をつける所存でベストを尽くすわけであります。
  426. 岡田宗司

    岡田宗司君 民主的方法でベストを尽くすということはどういうことですか。これは何ですか、あなた自身新島へ行って、そうして一人々々島民と会って話をする、あるいはまた東京都知事ははっきり反対の立場を表明しておる、これを説得する自信ありますか。
  427. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) ベストを尽くしてやってみるというだけの自信はございます。それからあなたの指摘されました自衛隊を使うかどうか、そういうことは考えませんという意味で、民主的方法と申したわけでございます。
  428. 岡田宗司

    岡田宗司君 つまり実力行使で実現はしないと、これはお約束できるわけですな。  そこで次にお伺いしたいのは、もしコンセンサスが得られなかったならばどういう方法をとられますか。あるいはこれに法的措置で何かこれを実現する方法があるんですか。たとえば土地収用法とかその他とか、そういうようなことでこれを実現する、そういうおつもりですか。
  429. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 他の公共事業とはちっと違いますから、かりに土地収用法が適用できましても私は考えものである、慎重を期さなくてはいけないと考えております。
  430. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、土地収用法というようなものもいまのところは適用しようとは考えておらない、そう解釈してよろしゅうございますね。  そこで次にお伺いしたいのは、アメリカ側に対してもっとほかに考え方はないのかというような話し合いしたことはないのでしょうか。つまり条約上の義務だから何でもかんでも日本の国民に納得さしてこれを実現しなければならないのだというふうにお考えなんでしょうか。これは、やはり私はこうなってくると大きな政治問題だと思うんです。最近のエンタープライズの入港あるいは王子の野戦病院の問題あるいは今度の新島の問題、時期からいいましても、これは日本国民に対して大きな刺激になるんです。黙っておるわけにはいかぬ問題でしょう。私はこれは大きな政治的、社会的問題になると思うんです。それをあえて侵してまでもアメリカ軍の要求を忠実に実行されようとするのであるか、それとも、こういう事態であるからということで、アメリカ軍に対して、アメリカに対して、あなたがさらに何らかの方法で説得をして別な方法をとらすということはお考えになっておらないかどうか、それをお伺いしたいと思います。
  431. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 私は安保条約に限らずすべての条約は、やっぱり信義の原則に立っていると思っております。そこで駐日空軍だけは実力部隊でございます。駐日海軍や陸軍はそうではございません。その駐日空軍が訓練をいたしておるということのために、水戸をぜひ撤退してくれと、撤去してくれというときの当時の両院国会議員の心のうちは、何か代替地をというのが常識でございまして、それから新島ということは、ほとんど全新聞等にもしょっちゅう出ている問題でございまして、結局岡田さん御指摘のコンセンサスを得ていないということだけが事実でございまするが、やっぱり両国政府としては、対等の立場で安保条約を結んでおりまするが、われわれもやはり施設を提供する責務がある。その責務を果たさないで、ただ出て行けと言うだけのことは私はできかねる次第でございまして、新島がいけないならば御蔵島ということも検討してみたのです。あるいは信州の山の中というようなことも検討してみましたが、百平方キロにわたるようなものは、とてもこれは得られませんから、結局あそこが候補地になっておるわけでございます。しかし、陸地といたしましては、繰り返して申しまするが、六十万坪に限局したわけでございまして、太田の物量投下演習飛行場よりもさらに十万坪狭いわけでございまして、しかも太田が解除され、それから水戸が七十万坪残るだけで全面的に解除されるわけでございまするから、われわれこの関東地域社会としては、全体として考えて福音ではないかと、そういうことを美濃部さんにもお話をして、いま一生懸命コンセンサスを得るために努力をいたしているわけでございます。
  432. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 岡田君、時間がまいりました。
  433. 岡田宗司

    岡田宗司君 算術の問題じゃございません。これは、国民の信義の問題です。また同時に、国民のこれは生活の問題です。国民のプライドの問題です。これを考えなければならぬ問題じゃないですか。アメリカとの条約の義務の履行もけっこうでございますが、しかし同時に、国民の立場というものを、国民を無視してこういう問題を技術的に解決しようとされることは、私は断固として反対せざるを得ない。どうか、そういう点についてもう少しあなたも考えていたきだたい。  最後にもう一点お伺いしますが、在日アメリカ空軍は、第五空軍でしょう。そうすると、第五空軍のカバーする範囲というものは朝鮮まで及んでいるでしょう。あっちのほうにたくさん無人島もあるし、別に差しつかえないところもあるから、同じ第五空軍ならそっちのほうでさがしてもらって、十分に訓練してもらったらどうですか。それくらいのことを提案したらどうでしょう。
  434. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 岡田さんとは、多くの点で意見が合いますけれども、いまの点では合いません。すなわちわれわれのプライドを害したということにはならない。総理もたびたび言われておりますとおり、四十数カ国と国連憲章第五十一条に基づいてアメリカとの相互安全保障条約を結んでおるわけでございまして、これはわれわれ従属関係になっているとは思っておりません。相互安全保障条約並びに協力に関する条約でございますから。  それからそのあとのほうで、第五空軍は朝鮮と沖縄はカバレージの中に入っていることは、それは事実でございますが、この横田あるいは厚木等におる空軍は、いわゆる交換公文のいわゆる常時配置の空軍でございまして、向こうへ行って練習してきて、また五日もたったらこっちへ来いなんということは、ちょっとやっぱり信義の関係上言えないと思います。
  435. 岡田宗司

    岡田宗司君 できないことはないと思いますがね。とにかく国民不在じゃ困りますよ。じゃこれをもって終わります。
  436. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 以上をもちまして岡田宗司君の質疑は終了いたしました。
  437. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 前川君に答弁することが残っておりますので、この際前川君に発言を許します。前川君。
  438. 前川旦

    前川旦君 基地の問題が出ておりますので、特に理事会のお許しを得まして、一つだけ関連さしていただきたいと思います。  四月の三日の一般質問で、地位協定の第五条によって米軍が自由に日本の飛行場その他利用できる。しかし安保条約の第六条に基づく事前協議では、米軍に提供された施設及び区域からの直接戦闘作戦行動にのみこれが適用される。したがって、提供された施設及び区域でないところから、このような行動をとる場合には、事前協議の対象になるでしょうかという質問をいたしましたところ、外務大臣から、それは事前協議の対象にいたしますという答弁がございました。しかし、この問題はむしろ事前協議というよりも、それ以前の問題、安保条約第六条そのものに反する問題ではないかというふうに思われますので、事前協議の対象以前の問題ではないかと思いますので、その点について再度お答えをいただきたい。このように思います。
  439. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 前川君から先般そういうお話があったわけですが、安保条約のたてまえあるいは常識からしましても、日本にこの基地を提供してあるわけです。それを全然民間の飛行場であるとか、あるいはまた開港しておる港であるとか、そこから直接戦闘作戦行動に出るということは、それはもう安保条約もそういうととは考えてもいないし、常識にも反します。しかし先般前川君から、もしも万一そういうことがあったらどうかという御質問があって、私が答えたので、その場合にこの事前協議とは言えない。しかしそういうことはあり得ないですけれども、まあ関連的にそういうことを考えられるならば、むろんそれは同意を要する、その場合には。しかし事前協議そのものとは言えない。事前協議というものは交換公文によって、施設とか区域から直接戦闘作戦行動に出る場合ですから、しかしそういうことがありましても、これはわれわれとしてはこれに対して同意はいたさない考えでございます。     —————————————
  440. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 次に、木村禧八郎君。
  441. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 去る三月の二十一日です。私は本委員会で第一に、わが国貿易商社のインドネシアに対する巨額の不良焦げつき債権が、国民の税金をもって処理救済されていること。第二にその処理が憲法、輸出入銀行法に違反して行なわれていること。第三に救済された商社が、多額の政治献金を、財界の政治献金ルートである国民協会を通じ、あるいは直接に自民党本部及び自民党派閥に行なっておる事実を指摘いたしまして、商社別、輸出別の焦げつき債権処理の状況の説明及び資料を要求いたしましたところ、政府はこれを拒否いたしましたため、事実の究明が阻止されるに至りましたことは、周知のとおりであります。  その後予算理事会の決定に基づきまして、焦げつき債権処理の商社別、物資別資料の一部が不十分ではありますが、私の手元に提出され、十分間の特別質疑の時間を与えられましたので、質問をいたします。  まず、輸出保険特別会計から、いわゆるインドネシア焦げつき債権処理のため支払われた保険金の総額、並びにおもなる商社別支払い額について、所管大臣の通産大臣に説明を求めます。
  442. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) インドネシアに政変がありまして、そのために国内が大混乱、ついに輸出の債権の支払いが遅延するということに相なりましたので、いわゆる保険事故が発生した。それで保険の約款、保険契約に従いまして、これにつきまして約束どおり保険金を支払いました。その保険金の支払いが、全体の債務額の九〇%、あとの一〇%は商社においてまかなう、こういうたてまえ、それが今日まで支払った額は総額で百八十二億円、おもなる商社別の内訳はお手元に提出してあります。
  443. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それ読んでください。説明をしてください。
  444. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 日綿実業、三菱商事、住友商事……。
  445. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 金額別、金額を言ってください。
  446. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 一億円以上の商社について十二社ありまして、そして一番大きいのが日綿実業十九億、三菱商事十八億……。
  447. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 少し数字違いますよ。
  448. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 端数は省いております。
  449. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 端数じゃないですよ、百万円単位で言ってください。
  450. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 十九億三千万円、それから三菱商事十八億四千九百万、住友商事十四億一千八百万円、三井物産十二億七千百万円、丸紅七億九千四百万、野村貿易七億八千百万、東洋綿花四億七千七百万、豊田通商二億九千六百万、兼松江商二億二千九百万、大綿商事二億五百万、住吉貿易一億八千七百万、伊藤忠一億七千六百万、計九十六億一千三百万、全体の約半数ちょっとになります。御質問はそれだけでしょうか。
  451. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ただいま十二社のこげつき債権に対する保険金の支払い額が説明されました。これは皆国民の税金です。この国民の税金で救済を受けました商社が、財団法人の国民協会を通じまして、自民党本部に対し、また直接自民党派閥に対して、多額の政治献金をしておりますが、前記いまあげました一応十二社の政治献金を明らかにされたい。自治大臣に要求いたします。
  452. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) いま直ちにお答えはできませんが、すでに官報に公表はいたしてあります。
  453. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は普通の場合でしたら、別に要求いたしません。しかし、ただいま申しました国民の税金をもって多額の焦げつき債権の処理がされているのです。そういう商社が多額の献金をしておるのでありますよ。したがって、それについて、自治省はわれわれに明らかにしてもらいたい。大体わかるでしょう。いま十二社について言っている。全部ではありません。
  454. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 自治省は献金の届け出を受け付けて、そして一応計算などに間違いないか見はいたしまするけれども、金額を一々洗って調べることはいたしません。そこで受け付けたものを官報にそのまま公告いたすことにしております。
  455. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは、いま直ちにじゃないのですけれども、あとで整理して、さっきの十二社について資料を要求いたします。
  456. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) どういう資料を提出するわけですか、もうすでに官報に出しておるわけでございますので。
  457. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 資料として要求いたします。官報を整理して出す。
  458. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) なかなかどの会社が関係があるかということを、自治省では調査するわけにはまいりませんので、それは官報をよくごらんいただきたいと思います。
  459. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 官報に出ている。いますぐ言えというのは無理かもしれませんが、資料として出してください。十二社だとわかっているのですから。
  460. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) どういう資料の意味かよくわかりませんが。
  461. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 十二社が、国民協会及び自民党の派閥に多額の献金をしているのですよ。ぼくも一応調査しました。あります。ですけれども、これがぼくだけの調査では非常に粗漏であるといかぬから、とにかく自治省は権威がありますから、自治省が、官報に出ているならそれを整理して出してくだざい。
  462. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 官報に出たとおりでございます。それ以上のことは自治省では何にもわからぬわけです。
  463. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 十二社についてですよ。いま献金している会社について、できますよ。
  464. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) したがって拾えという意味ですか。つまり献金した会社を御指定になって、それを拾ってこいと、こうおっしゃるのですか。
  465. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうです。国民協会と派閥に献金しているのです。われわれだって拾えるのですから。しかし、それはわれわれのは粗漏があるといかぬから。
  466. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 官報に出ておりますので、官報でお調べになりました木村先生の資料は、たいへん正しいと思います。自治省がやりましても同じことになろうと思います。
  467. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうじゃないのですよ。われわれは粗漏があるといけないから、自治省でちゃんと出してみてくれ。
  468. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 自治省といたしましては、官報に掲載をいたしておりまするので……。
  469. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 木村さん、質問を続行してください。
  470. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ただいま自治大臣が、官報からぼくが調べたものなら正しいでしょうと言われましたから申し上げます。日綿実業は国民協会等三件二百五十三万円。三菱商事が近代化研究会、対山社、協同主義研究会等十五件千九百十二万円。三井物産が国民協会、それから備後会等十三件千五百十万円。丸紅飯田が国民協会、清和会、近代化研究会、対山社等十六件千九百四十四万円。東洋棉花、国民協会、備後会、対山社、弥生会等十一件千二百二十万円。伊藤忠商事、国民協会、近代化研究会等十三件千六百五十五万円。住友商事、国民協会等二件三百十万円。兼松、国民協会百五十万円、これだけで合計八千九百五十四万円であります。これ以外にまだ相当あると思うんでありますが、これは昭和四十一年七月一日から四十二年六月三十日までこの焦げつき債権処理の時期と符合しているわけであります。ですから私は、これは直接すぐに焦げつき債権処理に結びつくとは言いませんけれども、政治資金規正法等問題になっているでしょう。そういう際に、この巨額の焦げつき債権が国民の税金で行なわれている。そういう商社がこのように献金していいのかどうか、そうしてこの点についてはどういう意味にお考えでしょう。
  471. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この輸出保険という制度は、どこの国でもあるわけですね。したがって、この輸出保険をもらったところが一切何にもしちゃいかぬというものでもないでしよう。ただ輸出保険という制度でこれは輸出保護、そういう意味で各国でまとめてそういう制度を設けておる。これはりっぱな制度じゃないかと、かように思います。そういうことが、各会社の行動を制限する理由になるでしょうか。
  472. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 総理は実際御存じないわけです。輸出保険特別会計では、保険料をもって収支を償うことになっているのです。保険料は引き上げない、輸出入銀行からインドネシアに四千五百万ドルのリファイナンスしている。その金で払っていて、輸出入銀行の金は産業投資特別会計から出ていて、産投会計は一般会計から出ているのです。国民の税金で払っているのであります。そうでしょう。ですから、輸出保険特別会計の保険金をもって払っているのじゃないのです。回収金という形で、国民の税金で処理している、そこに問題があるのですよ。各国の例と違うのですよ、また日本の法令に違反していますよ。これは独立採算なんです、保険特別会計は。
  473. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 保険事故が発生いたしまして、先ほど申し上げたように、向こうの国立銀行に外貨がないものですから、それでとうとう保険事故が発生した。それでいままで支払った総額が百八十二億、しかし、そのうちほとんど大部分が一応、保険のほうで支払いましたけれども、リファイナンスによって金が入ったものですから、それで弁済をいたしまして、それで結局、二重取りになりますから、輸出保険特別会計のほうに金が返ってきた、大部分が回収されております。それでこの保険の問題は、別にその金でどうしろといったものではなく、保険事故が起こった場合には、国家がその保険の制度によってギャランティーしてやる。そうして勇敢に国外市場において活躍ができるような制度を、どんな国でもとっておる。これは別にどうということはない。それからリファイナンスのほうは、焦げついておる場合にはこれをリファイナンスいたしまして、書きかえて、そうしてその金で一応の期限が来たものを支払って、そうして借金を先に延ばす。これは別にインドネシアに限ったものではありません。いままでアルゼンチンにも、ブラジルにも、再三にわたってかようなファイナンスをして、その当座、手元が困っておる。それには十分に勢いをつけてもらって、そして楽に払ってもらう。こういうことで、各国ともリファイナンスをしておる。昭和四十年の九月三十日のあのインドネシアにとっては大混乱、政治的な。それでこういう問題が起こったのでありますから、あの混乱をそのままにほうっておいて一体どうなるか。これはもうたいへんな政治的混乱に発展する可能性がございます。日本といたしましては、あのインドネシアの非常に豊富な資源、ああいうものを考えると、ここを政治的な混乱の場にするということは、これはいかぬ。こういうことで、債権国数カ国、おもなる債権国が集まって、再三国際会議を開いて、そしてインドネシアのこの全く二度と再び起こるか起らぬような大混乱に際して、これをとにかく助けてやろうじゃないか。リファイナンスして、とにかく当座を切り抜けさして、そして体力をつけて、そして今度は払ってもらう。こういうことに国際会議相談をして、そのリファイナンスを日本は、日本の分についてこれをやっておる。その後そういうことで、保険のほうで一時救済いたしましたけれども、それはもう返ってきております。そしてその後は、リファイナンスが、債権の期日がきたものから、ことしもたしか六、七百万ドルと思いますが、これまたリファイナンスをしてやる。こういうことになっておるのであります。別に特別の意図をもってやったわけじゃない。むしろ大きな見地から、一時的な混乱というものを何とか救ってやって、そしてりっぱに立ち直らしてやりたい、こういうことで国際会議を開いてこれはやっておることなんです。その間に何か政治献金と妙なくさい関係があるというふうに考えるのは、これはとんでもない間違いであります。
  474. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私はくさい関係って言いましたか。取り消してください。
  475. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) というように思われるような語調でお話になりましたから、もしそうであるならば、ひとつ十分に認識を新たにしていただきたい。
  476. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 くさい関係でなくても、いま政治資金規正法で問題になっているじゃありませんか。正当な支払いであっても、政府から多額のそういう救済を受ける会社が、多額の献金をしていいかどうかということを聞いているのですよ。くさい関係とは何です。汚職とか腐敗のことを言っているのじゃないのです。
  477. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) くさいとは言われぬから私は訂正しまして、そう思われるような口吻がちょっとほのめいたから、それで御注意を申し上げた。
  478. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは、そういうような頭があるからそう言われるのでしょう。私はそうじゃないですよ。そういうことを聞いているのじゃないのです。これは当然インドネシアの革命が起こって非常に混乱したから、普通の保険と輸出保険と違うのでありますよ。したがって、これは特融——特別融資みたいなものでありますから、国民の税金が、はっきりこういうインドネシアのこの混乱による保険災害については、国民の税金で処理しているということをはっきりさすべきなんですよ。ところが、これじゃ国民わかりませんよ、これだけ見たんでは。輸出保険からただ出ている。四十年に急激にふえているのです。調べてみたら、輸出入銀行からリファイナンスされた。それは産投から行き、それもまた一般会計から来ているのでしょう。しかも調べてみたら、輸出入銀行のリファイナンスの条件に反しているのですよ。反していますよ。ですから、二つの点で反しています。  そこで私は聞きます。輸出入銀行法の第十八条九号の規定、時間がございませんから、これはどういう規定か、述べてください。
  479. 柏木雄介

    政府委員(柏木雄介君) お答えいたします。第十八条の九号は、「本邦の輸出入市場の開拓若しくは確保又は外国との経済交流を促進するため、本邦から設備等の輸入又は技術の受入れをした者で当該輸入又は受入れにより本邦法人又は本邦人に対して債務を有するものにおいて当該債務を履行することがその者の居住国(その者が外国政府である場合には、当該外国。以下この号及び第十八条の二第五項において同じ。)の国際収支上の理由により著しく困難である場合において当該居住国の政府政府機関又は銀行に対して当該債務の履行の円滑化を図るために必要な資金を貸し付けること。」。
  480. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いまの規定は、リファイナンスの対象は設備等または技術の受け入れの場合に限られているんです。そこで伺いますが、このインドネシアの焦げつき債権の延べ払い輸出の商品別ですね、これを述べてください。商品別に述べてください、内容
  481. 原田明

    政府委員原田明君) お答えいたします。  これも先般委員長に御提出したとおりでございますが、昭和三十八年度、一年のあと払いを認めましたものが、肥料、綿布、染料。三十九年度に二年の延べ払いを認めましたものが……。
  482. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちょっと、もっと内容と金額についてちゃんと述べてください。
  483. 原田明

    政府委員原田明君) 昭和三十八年度、一年のあと払いを認めましたものが、肥料七百二十万ドル、綿布四百三十万ドル、染料五十万ドル、計千二百万ドル。昭和三十九年度、二年の延べ払いを認めましたものが、綿布八百万ドル、染料百三十七万ドル、計九百三十七万ドル。三十九年度一年のあと払いを認めましたものが、自動車タイヤ四百九十万ドル、医薬品類百五十万ドル、紙類三百六十四万ドル、自転車部品五十万ドル、計一千五十四万ドル。昭和四十年度一年のあと払いを認めましたものは、紙類百六十三万ドル、セメント三百二万ドル、農業機械六十万ドル、アルミ製品二百七十五万ドル、その他六百六十五万ドル、計千四百六十五万ドル。昭和四十年度二年の延べ払いを認めましたものが綿布六百万ドル、以上が商品につきまして一年ないし二年のあと払いを認めたわけでございます。
  484. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ですから、いま輸銀法の十八条九号の規定に違反しているじゃありませんか。
  485. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) あれは「等」と書いてあります。「等」。
  486. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それで。
  487. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) その「等」に意味を含めてわれわれは解釈しておる。ですから商品の輸出についても、輸出入銀行はできる。かように解釈いたしております。
  488. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 「設備等」でしょう「又は技術」でしょう。設備あるいは技術、入っていますか、その中に。「等」ばかりじゃありませんか、全部「等」だ。
  489. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 従来、その「等」にすべて含まれる、この解釈のもとにずっと施行してきております。
  490. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはごまかしですよ。「等」が全部なんてありますか。全部「等」じゃありませんか。
  491. 原田明

    政府委員原田明君) 輸出入銀行法では「整備等」と言っておりますものの中に、整備以外の耐久消費財あるいはその他の消費財を認められるようになっておりまして、すでに過去におきましても、インドネシア以外でも、中共向けその他に肥料でございますとか、鋼材でございますとか、いろいろなものにつきまして同様な延べ払いが認められております。
  492. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そんなばかな話はありませんよ。インドネシア分については全部「等」であるということはおかしいじゃありませんか。私は、消費物資が全然リファイナンスしてはいけないとは言っておりません。しかし、この法律から言って、だれが読んだって、常識から言って「設備等または技術の受入」という場合には、「等」は消費物資とすれば、常識として言えば、これはある例外的なものなんです。全部「等」というのはおかしいじゃありませんか。設備はどれだけありますか。
  493. 原田明

    政府委員原田明君) リファイナンスで借りかえを行ないます場合には、全部それが可能に解釈することになっております。また、先ほど申し上げました延べ払い輸出の場合には、輸銀法に基づきまして、輸銀の業務方法書におきましても、鉄鋼製品または非鉄金属製品及び耐久消費財のうち、本銀行において貸し付けを行なうことが適当と認められるもの、またそのほか輸出契約に基づく対価の支払い条件その他の理由により、本銀行において、特に貸し付けを行なうことが適当と認められるものというものにつきましては、消費財でございましても、輸出を認めることになっておりまして、現にこの規定に基づきまして、三十八年から四十一年にかけまして、中共向けの鋼材または三十七年に同じく中共向けの肥料、三十八年にもアラブ連合向けのテレビ部品といったようなものにつきまして、同様の輸出が認められ、輸銀が融資をいたしております。
  494. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私はね、全部否定するんじゃないですよ。私は、この条文を見て、インドネシアのリファイナンスの条件としてちゃんと設備ですね、あるいは技術となっているのに、みな全部が「等」であるということはおかしい。だから、私は、これは限界を越えていると思うんですよ、そういう処理のしかたは。これはいかに理屈をつけても私はおかしいと思うんです。  それから、もう一つ伺います。輸銀法の十八条の二の第五項です。時間がございませんから、これについてまた御説明願います。
  495. 柏木雄介

    政府委員(柏木雄介君) 第十八条の二の五項を読みます。「前条第九号の規定による資金の貸付けは、同号に規定する債務並びにこれに類する債務で本邦法人及び本邦人以外の者に対するものの履行がこれらの債務を有する者の居住国の国際収支上の理由により著しく困難であり、かつ、これらの債務に係る債権を有する者の居住国(その国に係る当該債権の総額が他に比して著しく少ないもの及び日本国を除く。以下「主要な債権国」という)が相当数ある場合であって、これらの債務を有する者の居住国の政府が当該事由に基づき日本政府及び主要な債権国の政府の全部又は大部分に対してこれらの債務の履行期限の延長又はこれらの債務の履行の円滑化を図るために必要な資金の借入れのあっせんその他の措置をとることを求めている場合において、当該措置を求められた主要な債権国の全部又は大部分において当該措置がとられることが確実であると認められるときに限り、行なうことができる。」でございます。
  496. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この規定によりますと、「当該措置を求められた主要な債権国の全部又は大部分において当該措置がとられることが確実であると認められるとき」にリファイナンスができるんですよ。ところがこれに違反しているじゃありませんか。いかがですか。
  497. 柏木雄介

    政府委員(柏木雄介君) 主要債権国は日本、アメリカ、イギリス、ドイツ、豪州、フランス、イタリー、オランダ、ソ連でございますが、ソ連は、ソ連の持っております債権はほとんど大部分のものが軍事債権でございます。兵器を織り込んだ債権でございますのでこれらには入っておりませんが、その他のすべての主要債権国は入っております。したがいまして先ほどの十八条二項、十八条の二の部分の規定に該当しております。
  498. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 全部で二十八カ国です。債権保有国は八カ国しか入っておりません。主要な——ソ連は入っておりまして、全部の債権が二十三億のうち、参加していない国の債権は十三億です。これで全部または大部分と言えますか。
  499. 柏木雄介

    政府委員(柏木雄介君) ソ連の債権は二十三億のうちの過半数でございまして、これは先ほど申し上げましたけれども、特殊な債権でございます。その残りの債権の大部分はこの八カ国が占めております。
  500. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ソ連はおもなるうちに入っているじゃないですか。おもなる国で、ソ連、入っていないじゃないですか。
  501. 柏木雄介

    政府委員(柏木雄介君) ソ連は入っておりませんが、ソ連が必ず入るということは必要でございませんので、主要な債権国の全部または大部分において、当該措置がとられることが確実である。したがいまして、ソ連が入っておらなくても一向差しつかえないと存じます。
  502. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 二十三億のうち、入っていない国の債権が十三億あるわけでしょう。これで全部か大部分といえますか。もっと納得する答弁をひとつ。
  503. 柏木雄介

    政府委員(柏木雄介君) 先ほど御説明いたしましたように、ソ連は主要な債権国の一つでございますが、主要債権国の全部が措置をとることは前提になっておりません。主要債権国の全部または大部分、その中に先ほど申し上げましたように、主要な八カ国が入っておりますことで、法律上、一向差しつかえないと思います。
  504. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 常識から言って、これは因数と債権額と二つから見るべきものなんですよ。そうでしょう。二十八カ国のうち八カ国しか入っていないのですよ。しかもその中に主要債権国としてソ連が入っていない。債権の額が二十三億のうち十三億は債権国に入っていないのです。どうですか、これは両方から見るべきでしょう。
  505. 柏木雄介

    政府委員(柏木雄介君) 先ほどお読みいたしました法律には、主要国の大部分と書いてございます。主要国の主要な債権の大部分でございません。主要国の大部分でございます。
  506. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 債権と因数と両方から。
  507. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 法律の解釈は、いま大蔵省から答えたとおりでありますが、これに関連して、参考のために申し上げておきますが、なるほどソ連は二十数億のうち十三億でございますから、それはもう主要中の主要なる債権国でございます。それでもちろんソ連を誘ったのでございます。だけれども、自分はもうバイラテラルにやるということで参加しなかった。そして債権の内容はほとんど武器がおもでございます。普通の商売でできた債権ではない。著しく性質が異なっておるので参加をがえんじなかったのだろうと、これは推測でございますけれども、そういう事情でございますから、参考までに。
  508. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いま通産大臣が言われたとおりじゃないですか。主要中の主要と言っているじゃありませんか。ただ、武器の債権であるというだけ——しかし、この輸出入銀行のリファイナンスの条項には、武器だから、そういうことは何ら書いてないんですよ。そうでしょう。ですから、当然それはこの輸銀法に反するわけです。と申しますのは、もしソ連が、日本が援助してそうした金を今度はソ連が債権として取り上げるような場合ですよ。そうでしょう。焼け石に水みたいになるでしょう。そういう国も含めて債権国会議をやらないと、せっかく日本が援助しても、その援助の金はどんどんそっちへ行ってしまうでしょう。そのための規定じゃないですか。この規定の目的は何ですか。なぜそうきめたかね。
  509. 柏木雄介

    政府委員(柏木雄介君) IMFの資料によりますと、インドネシアの対外債務で六六年六月末現在のものは二十三億五千万ドル余りでございます。そのうち共産圏の、主としてソ連でございますが、十三億、その残りの債権約十億のうちこの八カ国で占めております分が九億近くございます。したがいまして、先ほど申し上げましたように、主要債権国の大部分というか、主要の部分が参加しておることには間違いないと存じます。
  510. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうでしょう。そういうソ連が入らない場合ですよ、問題が起こるんですよ。だから輸出入銀行法にはそういうリファイナンスの条項として条項があるわけです。  まあ時間がありませんから、次に伺います。この問題に関連しまして、分科会でインドネシアの経済情勢を聞いたんですが、好転しているといいますが、好転しているかどうか。最近の香港あたりの新聞等を見ますと、昨年の末から本年にかけて非常に悪化しているんですよ。これは通産省に通告してあります、前に分科会のときに。
  511. 上田常光

    政府委員(上田常光君) お答え申し上げます。  昨年は先生のおっしゃいますように非常にインフレが上昇いたしたのでございますけれども、その後最近はインフレの状態もやや鎮静に向かいまして……失礼しました。一年、間違えましたが、六十五年のたとえば物価上昇が約七倍、六十六年が七・四倍、昨年が二・一倍になっております。お米の値段など最近は前年、前々年と比較いたしますと、一般的に平静化しております。もちろんインドネシアの現在の状態では、完全によくなったとは申せませんけれども、前と比較いたしますと、相当安定化に向かっておると思います。
  512. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 木村君、時間がきました。
  513. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは香港の経済導報、そういう新聞があるのです。そういうのから総合いたしまして、最近これは非常にインドネシアの経済は悪くなっています。いま言われましたけれども、物価についても、国際収支も、それから財政につきましても、為替レートにつきましても、私、詳細な資料ございます。そんないま簡単な説明ですけれども、もっと詳細に、物価、為替それから貿易、財政、対外債務、こういうものについて。それから特に商品については、米、小麦ですね。これは昨年十二月からことしの一月まで一カ月に二倍になっているのですよ。それから通貨もものすごい膨張ですし、為替レートも非常に低落しております。いまのお話と非常に違いますが、じゃあ具体的に数字で示して下さい。
  514. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 木村さん、もう時間がきましたから。
  515. 上田常光

    政府委員(上田常光君) たとえば私がただいま、最近は非常に前々と比べればよくなったと申し上げましたが、短期にとって言いますと、一カ月のうちでもちろん変化がございます。このいま先生がおっしゃいましたような詳細な資料、ただいま手元にございませんから、後ほどそれは出すことにしてよろしゅうございましょうか。
  516. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 木村君、それじゃ最後にしてください。
  517. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは後ほどでよろしいです。よろしいですが、私は言いたいことは、結論として、なぜこういうことを要求するかといえば、今後インドネシアに対する援助の問題が起こってくる。そういう場合にインドネシアの経済情勢を正確に把握する必要があるんですよ。そうでしょう。ところが、分科会で質問したときには通産大臣は、相当好転しているというお話なんですよ。今後のインドネシアに対するこういうリファイナンスだってそうなんでしょう。あるいは今後援助をやる場合に、相当問題になるから、いいかげんな答弁じゃ困るわけですよ。われわれは要求しておったんですよ、物価、財政、貿易等、ちゃんと要求しておったんです。分科会で。ところがお粗末な答弁でそのときをすごしてしまった。だから私は要求している。ですから、最後に、じゃ今後インドネシアの援助の問題ですが、あれは三千万ドルですか、いま六千万ドルですか、四十三年予算には組んである。ところが分科会で宮澤長官は、いまの海外経済協力基金の資金からいくと、二、三千万ドルは上積みし得る余裕があるというようなことを言われたんですよ。もし二、三千万ドル上積みしますと、台湾とか韓国とか、その他向けの援助が減ってしまうのだと思うのです。そうすると、予備費も使わないということをいわれております。補正予算も組まないといわれております。そこで、それはどういうことになるのか、最後にこの点を伺いたい。それから資料は資料としてあとで出していただきたいと思います。
  518. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 木村君にお答えいたしますが、ただいまのようにいろいろ問題がございます。また当方といたしましても、まだ予算も成立しておりませんし、基金法の改正案、ただいま御審議をいただいて——昨日ようやく衆議院にかかったばかりでございます。まだ政府自身として権能が与えられておりません。したがいまして、スハルト大統領が参りましたけれども、その当時、金額を幾らにするかという約束はできない状況でございました。だから衆議院でもはっきりお答えをいたしましたが、まだ政府自身権限がない、したがって、大統領がせっかく来たのだけれども、日本で共同声明が出せないような状況になっております。でございますので、ただいまのようないろいろの点もこれから十分検討いたします。そうして法案成立の暁に私どもははっきりこの問題と取り組みたい。いろいろの点を御指摘になりましたが、それらはすべて御注意と私はかように拝承いたします。ありがとうございました。
  519. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 以上をもちまして木村君の質疑は終了いたしました。  次回は明後十五日午前十時三十分に開会することとし、本日はこれはて散会いたします。    午後七時五十四分散会