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1968-03-25 第58回国会 参議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年三月二十五日(月曜日)    午前十時三十九分開会     —————————————    委員の異動  三月二十五日     辞任         補欠選任      青木 一男君     中村喜四郎君      鈴木 一弘君     矢追 秀彦君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         西郷吉之助君     理 事                 北畠 教真君                 剱木 亨弘君                 近藤英一郎君                 玉置 和郎君                 内藤誉三郎君                 加瀬  完君                 鶴園 哲夫君                 小平 芳平君     委 員                 内田 芳郎君                 岡本  悟君                 梶原 茂嘉君                 小林  章君                 斎藤  昇君                 櫻井 志郎君                 任田 新治君                 中村喜四郎君                 船田  譲君                 増原 恵吉君                 八木 一郎君                 山本茂一郎君                 吉武 恵市君                 岡田 宗司君                 木村禧八郎君                 瀬谷 英行君                 田中寿美子君                 千葉千代世君                 戸田 菊雄君                 野上  元君                 羽生 三七君                 前川  旦君                 村田 秀三君                 森中 守義君                 黒柳  明君                 二宮 文造君                 矢追 秀彦君                 春日 正一君                 市川 房枝君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  赤間 文三君        外 務 大 臣  三木 武夫君        大 蔵 大 臣  水田三喜男君        文 部 大 臣  灘尾 弘吉君        厚 生 大 臣  園田  直君        農 林 大 臣  西村 直己君        通商産業大臣   椎名悦三郎君        運 輸 大 臣  中曽根康弘君        郵 政 大 臣  小林 武治君        労 働 大 臣  小川 平二君        建 設 大 臣  保利  茂君        自 治 大 臣  赤澤 正道君        国 務 大 臣  木村 武雄君        国 務 大 臣  木村 俊夫君        国 務 大 臣  鍋島 直紹君        国 務 大 臣  増田甲子七君        国 務 大 臣  宮澤 喜一君    政府委員        内閣法制局長官  高辻 正巳君        内閣法制局第一        部長       真田 秀夫君        総理府総務副長        官        八木 徹雄君        総理府特別地域        連絡局長     山野 幸吉君        防衛庁長官官房        長        島田  豊君        防衛庁教育局長  中井 亮一君        防衛庁人事局長  麻生  茂君        防衛庁衛生局長  浜田  彪君        防衛庁経理局長  佐々木達夫君        防衛庁装備局長  蒲谷 友芳君        防衛施設庁長官  山上 信重君        防衛施設庁施設        部長       鐘江 士郎君        経済企画庁調整        局長       赤澤 璋一君        経済企画庁国民        生活局長     八塚 陽介君        科学技術庁原子        力局長      藤波 恒雄君        法務省入国管理        局長       中川  進君        外務省アジア局        長        小川平四郎君        外務省北米局長  東郷 文彦君        外務省条約局長  佐藤 正二君        外務省国際連合        局長       重光  晶君        大蔵政務次官   二木 謙吾君        大蔵省主計局長  村上孝太郎君        大蔵省主税局長  吉國 二郎君        大蔵省国際金融        局長       柏木 雄介君        文部省大学学術        局長       宮地  茂君        厚生省公衆衛生        局長       村中 俊明君        厚生省医務局長  若松 栄二君        厚生省援護局長  実本 博次君        農林政務次官   日高 広為君        運輸省鉄道監督        局長       増川 遼三君        運輸省航空局長  澤  雄次君        労働省労政局長  松永 正男君        建設省計画局長  川島  博君        建設省都市局長  竹内 藤男君        建設省道路局長  蓑輪健二郎君        自治省税務局長  松島 五郎君    事務局側        常任委員会専門        員        水谷 国一君    説明員        日本国有鉄道総        裁        石田 禮助君    参考人        日本赤十字社副        社長       田辺 繁雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十三年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十三年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十三年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) ただいまより予算委員会を開会いたします。  昭和四十三年度一般会計予算昭和四十三年度特別会計予算昭和四十三年度政府関係機関予算。  以上三案を一括して議題といたします。  一昨日に引き続き総括質疑を行ないます。  本日は、参考人として、日本赤十字社社長長田辺繁雄君が出席されております。  瀬谷英行君。
  3. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 在日朝鮮人諸君の帰国問題について最初にお聞きしたいと思うのでありますが、さきにコロンボにおいて日本赤十字並びに朝鮮赤十字話し合いが行なわれ、ある程度問題が煮詰まったかのように聞いたのでありますが、突如としてこれは決裂をしてそのままになっておるという状態であります。二月二十八日の衆議院予算委員会では、この問題でわが党の楢崎委員から質問があり、厚生大臣から善処したいという旨の答弁があったようでありますが、具体的には一体どういうふうにされるつもりなのか、まず厚生大臣にお伺いいたします。
  4. 園田直

    国務大臣園田直君) 二十五回にわたるコロンボ会談がまとまるに至らなかったのはまことに遺憾でありますが、これは人道上の問題でありまするから、赤十字のほうとも相談をして、それぞれその時期あるいはその他のことについて検討している段階でございます。
  5. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 日赤の方にお伺いしたいと思うのであります。  わざわざ御出席いただきましてありがとうございました。なぜこの会談決裂をするようなことになったのか、日赤としてはどのような権限を持ってこれに臨んでいたのか、その経緯等についてお聞かせ願いたいと思います。
  6. 田辺繁雄

    参考人田辺繁雄君) 在日朝鮮人帰還の問題につきまして、コロンボ会談をいたすにあたりまして、政府におかれましては、基本方針といたしまして、協定終了に伴う帰還未了者暫定措置について合意に達すること、これがために必要であれば、協定終了に伴う、協定終了後におきまして、新しく出国を希望する人々の帰還方法についての日本政府方針措置先方説明する。しかし、この場合において新しい協定は締結しない。こういう基本方針のもとに北朝鮮側交渉すべく、政府より依頼を受けまして先方交渉いたしておりました。もっとも、この問題につきまして、日朝赤十字社が協力をするということにつきましては、自主的な立場から話し合ったことは当然でございます。  なお、どういう経緯会談妥結するに至らなかったかという御質問でございまするが、二カ月余にわたりまして話し合いをいたしました結果、まあ協定終了に伴う暫定措置につきましては、完全に意見一致を見まして、合意書までできたのであります。ただし、先方の都合で署名捺印するまでには至らなかったのでありますが、第二の問題、協定終了後における在日朝鮮人帰還方法につきましては、私ども政府方針を詳しく向こう説明いたしたのであります。先ほど御説明申し上げましたとおり、赤十字は、政府から依頼を受けたその方針に従って政府方針説明するという立場でございますので、説明したのでございましたが、先方は、この会談取りまとめ形式につきまして、法的な拘束力を持つ文書形式、こういうことばを使いだし、終始これに固執せられましたので会談はうまくいかなかったのでありますが、最後に、赤十字といたしましては、文書取りまとめ形式等において意見一致しないこの際におきましても、帰還者立場に立って、ぜひすでに事実上合意を見た暫定措置に関する件につきましては署名しようではないかと提案したのでございます。そうすれば、当面の問題である暫定措置は解決するだけでなしに、すでに会談においてわれわれが日本政府方針として詳細説明したことは、そのまま実施されるのであり、かつまた、日本赤十字が、先方とその固有の業務について話し合ってまとまった事項についても、そのまま実施するのであって、帰還方法はこれによって明確であり、安んじて帰れるのでありますから、そうするようにすることが、帰還者立場に立って考えるならば、人道上最善の方法ではないかということを提案したのでございますが、これも先方のいれるところとはならず、残念ながら会談妥結に至らなかった次第でございます。
  7. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 意見一致を見た、法的拘束力を持つ文書形式のところでつまずいたというように聞いておりますが、日赤としては、相当権限を持ってこの会談に臨んだ、こういうふうに理解をしてもよろしゅうございますか。
  8. 田辺繁雄

    参考人田辺繁雄君) お答えいたしますが、先ほども申し上げましたとおり、協定終了に伴う暫定措置の問題につきましては、ある程度幅のある権限をもって臨んだのでございますが、新しく帰国を希望する人たち出国その他の方法につきましては、政府権限に属する事項根幹をなすものでございますので、政府が法律あるいはその他権限に基づいてきめられた事項を詳しく説明いたしたのでございます。もっとも、その間、先方より質疑がございましたので、政府とも打ち合わせの上、詳細質疑応答の形で政府方針説明した部分もございますが、要するに政府方針説明したのでございます。この点につきましては、赤十字権限と申しますよりは、政府権限に属すべき事項説明した、これが事実でございます。
  9. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 日赤には一昨日からおいで願っておりますので、一番最初にまずお聞きしたいと思っているわけなんでありますが、そうすると、政府の代行、代弁をつとめたということであって、実際上の最終的な権限政府にあるというふうに理解してもよろしゅうございますか。    〔委員長退席理事剱木亨弘着席
  10. 田辺繁雄

    参考人田辺繁雄君) 大体そのように考えております。
  11. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 総理にお伺いいたしたいのでありますが、帰りたい人を早く帰してやるというのが人道上の問題だし、取り立ててむずかしいことではないと思うのです。しかも、聞くところによると、交渉日赤が当たって、さんざん苦労しているけれども、最終的な権限政府にあるということになると、最後政府の腹できまることじゃないか。総理としては、この問題をどのように扱うおつもりなのか、お伺いしたいと思います。
  12. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この問題は、起こりました最初から、人道上の立場に立って解決すべきだと、かような政府方針でございます。したがいまして、今後も事態に対処して、人道上の立場からこの問題を善処していきたい、かような考えでおります。
  13. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 もう一度日赤にお伺いしたいと思うのですが、日赤としては、政府のほうから指示がなければ、再度交渉に臨むということはできないのかどうか、朝鮮赤十字との話し合いを進める具体的なプランがいまあるのかないのか、その点をお伺いしたいと思います。
  14. 田辺繁雄

    参考人田辺繁雄君) 赤十字といたしましては、今後もその使命にかんがみまして、人道主義立場から在日朝鮮人の問題を解決すべく努力する考えには変わりはございません。現在も何とかしてこの行き詰まった事態を打開すべく、いろいろ検討いたしておりますが、何分にも、先ほど申し上げましたとおり、本問題につきましては、その根幹をなすものが政府権限に属するところが多いのでございますので、われわれは、政府とも十分協議をいたしまして、先ほど総理からも御答弁ありましたように、事態に応じて善処していきたい。また、いろいろとその方針のもとに検討いたしている段階でございます。
  15. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 私がお伺いしているのは、具体的に朝鮮赤十字と再度話し合いをするプランがいまあるのかないのか、そういう機運は現在全然ないのか、あるいはあったとしても、政府のほうの方針がはっきりしなければできないというのか、その点をお伺いしているわけであります。
  16. 田辺繁雄

    参考人田辺繁雄君) 赤十字といたしましては、過去二回にわたりまして、約三カ月間にわたって会談をいたしまして、何とかこの話をまとめるように努力いたしたのでございますが、残念ながら解決するに至らなかったのでございますので、この経験にかんがみまして、会談再開を云々する前に、どうしたならば話し合いをまとめることができるのか、この点についてできるだけ早く、しかも慎重に検討をしなければならぬと思うのであります。いくら会談をしてもまとまらぬということでは相済まぬ次第でございますので、われわれは、政府十分協議いたしまして、さような道を見つけたいと、せっかく努力いたしておる次第でございます。
  17. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 日赤並びに先ほど厚生大臣からお答えをいたしましたので、瀬谷君おわかりかと思いますが、私ども政府当局としては、コロンボ会談がうまくいくようにと実は非常に期待をいたしておりました。これがほとんど妥結寸前というところまでいって、御承知のように、ついに最終的な調印を見ることができなかった、まことに残念な次第でございます。しかし、この種の考え方、これには従前から今日もまだ変わりございませんから、したがいまして、北朝鮮側におきましても、これらの方法を、これがその成果をあげるようにひとつお互いに努力すべきじゃないか、かように私は思います。これは抽象的に申し上げるだけで、わがほうとしては、一般外国人と同様に、出国したいという、それも人道上の立場からその希望に沿うように措置するのが当然だと思います。
  18. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 それでは、日赤にたいへん一昨日からお待たせしておりましたので、足を運ばせて申しわけございませんでしたが、それでは最後に、日赤としていま権限をもっと持たしてほしいというふうにお考えになっているのか、それからこの問題を進めるにあたってはどういう点が一番隘路でありやりにくい点であるということを感じておられるのか、その点をお伺いしたいと思います。
  19. 園田直

    国務大臣園田直君) コロンボ会談がまとまるに至らなかった理由は、一万数千名の暫定措置については同意ができたが、そのあとの措置について日本国方針向こう説明をしました。そうして文書の交換を求めたので、向こう側からいえば一方的に方針を押しつけたような感じにとられ、また日本側からそうではなくて今後の措置についての具体的な日本方針説明しただけであるという食い違いから、まとまるに至らなかったわけであります。したがいまして、これは日朝赤十字人道上の問題という立場からやればさほど障害はないと考えております。  そこで、なお念のために申し上げておきますが、政府責任と申しますものの、政府会談を制限はいささかもしておりません。ただ、最終的な責任はやはり措置予算等について政府にありますから、赤十字交渉を見守っていきたいと思います。今後の措置については、赤十字十分相談をして善処いたしたいと思いまするが、具体的に申し上げますることは、ややもすると人道上の問題が政治的な問題に移るおそれがありまするから、御了解を願いたいと思います。    〔理事剱木亨弘退席委員長着席
  20. 田辺繁雄

    参考人田辺繁雄君) 政府におかれましては、本問題を政治上の問題と切り離して人道上の見地から解決するという方針を明確に示しておられますので、今後、私ども赤十字といたしまして、政府十分協議を続けていきたい。赤十字としては、人道上の立場から、主張すべきは主張し、申し上げるべきは申し上げたいと思いますが、先ほどのような政府方針でございますので、私ども意見を十分御考慮してくださるものと信じております。
  21. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 それでは、日赤に対する質問は終わります。
  22. 岡田宗司

    岡田宗司君 関連。ただいまの赤十字の方のお答えですけれども、これは政府のほうと十分打ち合わせをして、会談再開をしてもいいというふうに受け取れたのでございますけれどもコロンボ会談が行き詰まりまして、そして今日に至っております。どちらかが先に会談をやるように話しかけなければ会談は開かれない、こういう状況にあるといたしますれば、日赤として北鮮赤十字に対して会談を再開するように何か至急に働きかけるおつもりがあるかどうか、それとも北鮮側から働きかけてくるのを待っておるというだけなのかどうか、その点を第一にお伺いしたい。  第二には、厚生大臣にお伺いしたいのは、この問題には、とかく韓国側からのいろいろな放送が聞こえてきておりまして、これが相当影響をしておるように思われるが、厚生大臣としては、この問題はあくまでも人道上の問題としてそういうような雑音に一切わずらわされないという態度でお進みになるかどうか、この二点をお伺いしたいのであります。
  23. 園田直

    国務大臣園田直君) 日赤政府に対する質問でございまするが、総理からもしばしば言われておりますとおりに、人道上の問題として、あくまで政治問題と切り離して善処したいということを言明しております。厚生省日赤もその方向に従ってやっておるわけでありまして、いま質問されましたようないろいろな問題がございまするから、朝鮮側から呼びかけるのか、日本側から呼びかけるのか、あるいは第三者が調停するのか、そういうことは今後の微妙な問題でございまするから、ただいままでの総理の御見解並びに政府日赤からの答弁によって賢明な岡田委員には御了承願って、現実にこれがよく解決されるように御理解を願えれば幸いでございます。
  24. 田辺繁雄

    参考人田辺繁雄君) 先ほど御質問の点は、なかなか微妙な問題でございますが、ここでどうこうお答えすることは差し控えておきます。慎重に検討して、善処したいと思います。
  25. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 それでは、冒頭お聞きしたいと思っておったことを、ここであらためてお伺いしますが、日赤に対する質問は終わりましたので、総理にまずお伺いしますが、重宗参議院議長島根県に参りまして、私は選挙運動に来たと、こういうことを言われた。議運了解を得て来たのだから国会の運営には差しつかえはない、こういうふうにおっしゃったそうですけれども、一応、自民党の総裁として、参議院選挙がことしあることはお互いにわかっておりますけれども、四十三年度の予算審議参議院でいまやっておる段階であります。そのときに、議長島根県のほうに行かれて、選挙運動であるということを公言したということになりますと、あまりこれはいいことじゃないような気がするのです。議長がそういうことをやると、これは議員が皆これにならってもかまわぬということになる。一体その点について総裁としてどのような御見解をお持ちになっておるのか、お伺いいたしたいと思います。
  26. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 総裁としては、ただいままで、当院の国会審議、それに力を入れるようにということを絶えず私は申しております。そういう意味の指導をいたしております。議長の場合は、これはもう参議院の問題であろうかと思いまするけれども、私、島根県においての発言等新聞に出ておりまして、実はびっくりしたのでございます。いろいろ尋ねてみますると、さようなことを申した覚えはない、かように言っておるようでございます。いわゆる選挙に来たということはない、かように理解しております。
  27. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 今度は予算委員長にお伺いしたいと思うのでありますけれども、いま予算委員長が中心になって予算審議をやっているわけですよ、参議院では。そのときに、議長国会を離れて参議院選挙ではぜひということを言っておったんでは、示しがつかないような気がする。その点は、予算委員長との間にその連絡がとられておったのかどうか、議運との間に話し合いがついておったのかどうか。委員長としては、一体、議長にこうやって出て歩いてもらうということが予算審議促進上はたしてよろしいとお考えになっておるのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  28. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) お答えいたしますが、私も新聞議長の記事を拝見いたしましたが、その後の詳細なことはよく存じておりませんが、いまお尋ね委員長はどう思うかということでございますが、もちろん予算審議は重要なことでございますが、議長議長なりのお考えでお出かけになったものと思いますけれども、詳細はよく承知しておりませんので、的確にはお答えいたしかねると思います。
  29. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いまの重宗議長の、島根県ですか、新聞に大きく報道されまして、私自身も実はびっくりしたわけなんです。言っている内容がびっくりするわけなんですね。議運了解を得て来ているのだ、選挙で来ているのだというような話なんですね。ですが、これはまあ事実を確かめてみませんと困りますので、ですから、議運の中でもいろいろいま話になっているようですが、議運理事会のほうで事実を確かめまして、その上で予算委員長のほうから報告してもらうという措置をとってもらいたいと思いますがね。
  30. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) ただいまの鶴園さんにお答えいたしますが、その件は、そういういまの鶴園さんのお申し出もございますが、私といたしましては、後日、理事会によく確認と御相談をいたしまして、善処してまいりたいと思います。
  31. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 後日というふうに言われましたけれども、何もそんなに日を待たなくてもいいんじゃないかと思うんです。きょうにでもさっそくこれは相談してもらっていいことじゃないかと思うんです。
  32. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 瀬谷君のいまのお尋ねにお答えいたしますが、ただいま議運委員会でいろいろ検討を加えておるそうでございます。したがいまして、その結果を待ちまして、さらに予算の各理事と御相談の上、すみやかに御報告することにいたします。  本題に入っていただきます。
  33. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 それでは質問を続けますが、厚生大臣が先ほど、この在日朝鮮人の帰国問題について私のほうから具体的に答えてもらいたいということを言いましたら、具体的には人道上の問題が政治的になるおそれがある、こういうふうに言われました。なぜ人道上の問題が政治的問題になるおそれがあるのでしょうか。私は別に政治的になるおそれというものはこれはないと思うのでありまするが、何を心配をしてそういうことを言われたのか、はかりかねる点がありますので、再度この点についてお答え願いたいと思います。
  34. 園田直

    国務大臣園田直君) ことばが遠当でなかったかもわかりませんが、人道上の問題として円満に、円滑にこれを解決したいという考え方からであります。
  35. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 衆議院予算委員会から一カ月ほどたとうとしておりますが、前向きの姿勢で善処をするというだけの話で、その間何ら進展がないとすると、抽象的なことばを聞いただけでは、一体いつのことになるのか見当がつかないわけです。だから、この問題については、じゃあ厚生大臣が主管大臣として責任を持っておやりになるということなのか。さらに、具体的にはどのようにやっていかれるつもりなのか。これはやはり、人道上の問題と言われるならば、政治的な配慮を抜きにして約束をされてもいいというふうに考えられますので、その点についてお伺いしたいと思います。
  36. 園田直

    国務大臣園田直君) 決して衆議院予算委員会後一カ月間放任しておったわけじゃございません。人道上の問題といたしましても、コロンボ会談で、二十五回の会談でまとまると思っておったのがまとまらなかったような状態でありまして、やはり相手のあることでございますから、こちらの赤十字向こう赤十字、あるいはスイスの赤十字等、それぞれ意向等も打診をしていく必要がありまするから、時間がたっておるわけであります。
  37. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 外務大臣にお伺いしたいと思います。  結局は、厚生大臣なりあるいは法務大臣のほうは、手続上の問題になっておると思うのです。中心はやはり外交方針、特に日韓関係等からいろいろな問題が出てきているのじゃないかと思うのでありますが、やはり外務省としても、この問題を前進をさせる、解決をするというためには、この韓国側の思惑というようなことは抜きにして、人道上というたてまえに立って事を運ぶべきではないかと思うのでありますが、その点外務省としての見解はどうでありますか。
  38. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 協定は切れておりますから、協定を再延長する考えはありませんけれども人道的な見地として検討をいたしたいと思っております。
  39. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 協定を延長する考えはないけれども——では、具体的に外務省としてとういう方法を講じようというふうにお考えになっておるのか。
  40. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) まあこれ各省とも関係がございますから、コロンボ会議に期待を寄せておったわけですが、それがわれわれの予期に反してうまくいかなかった、善後処置に対してこうしようということが話がまとまってはいないわけでございます。各省間で検討をいたしたいと考えております。
  41. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 総理にお伺いしたいと思うのですが、この帰国問題ですね、帰国問題を日本が進めるということは、韓国との関係その他で何らかの支障があるのかどうか。かりにあったとしても、そういう問題は別にしてこの問題を解決をするという確信をお持ちになっているかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  42. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほどお答えいたしましたように、外国人が帰国したいという、そういうものをとめる権利がこちらにはないわけでございます。人道的な立場から、外国人が帰りたい、そういう場合には、その線に沿って配慮する、これは当然のことでありまして、そういうことを先ほど来申し上げておるのでございます。
  43. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 私が聞いたのは、日韓会談以来、韓国のほうからいろいろな注文があったりなんかして、そういうことがこの問題の一つの障害になったという事実はないのかどうか。かりにあったとしても、そういう問題は別にして、問題を解決するために、総理としては努力をするおつもりがあるのかどうかということをお伺いしたわけです。
  44. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 北朝鮮の帰国問題が韓国側からいろいろ言われて、そのために支障を来たした、こういうことがあるかどうかということですが、私はさようなことを知りません。どうもない、かように聞いております。
  45. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 それでは、韓国側のかりにそういういろいろな横やりがあったとしても、そういうことには今後もかかわりなく問題を解決をするために尽力をするのだというふうに理解をしてよろしいのですね。
  46. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど来何度も申し上げておりますように、外国人が出国したいということ、その外国人の出国したいというその意向を私どもがとめる方法はございませんと申し上げております。
  47. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 南北朝鮮の問題は平和的統一が望ましいということは、口では言えることですが、現実の問題としては、そのように簡単なものじゃない。プエブロ号事件が起きてから相当日数がたちますけれども、そのプエブロ号が返されたという話を聞いておりません。考えようによると、この問題は、まかり間違うと第二の朝鮮戦争になるおそれがある。いまだにその火種が残っているわけです。この問題は一体その後どうなっておるのか、外務大臣からお伺いしたいと思います。
  48. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) プエブロ号事件はアメリカと北鮮側において交渉を続けておるのであります。双方の意見の食い違いがあって、なかなか妥結に至らないわけでございます。われわれとしては、一日も早くこういう問題が話し合いによって解決ができるということを日本政府としては強く希望しておるわけでございます。
  49. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 この問題については、もしアメリカ政府の言うように公海上で拿捕されたとすればはなはだ遺憾だということを総理は言明されましたけれども、はたしてアメリカ側の言うとおりであったかどうか、いまとなってはたいへんあやしくなってきているような感じでありますが、アメリカ側の言うとおりでなかったとすれば、どういう見解をお示しになりますか。
  50. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまお尋ねの点がたいへん争点であり、各国とも、これが一体とうだろうということで注目しておるところだと思います。私は、事実がもっと明確にならないと、想定のもとにいろいろなことを考えることは、これは不適当だ、さように思いますので、その発言だけは差し控えさせていただきたいと思います。
  51. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 それでは、想定のもとに見解を示すことは差し控えたいということであれば、先ごろ総理がアメリカ側の見解に従えばという想定のもとに発表されたことも軽率であったということになるのじゃないですか。
  52. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、アメリカ側の説明によれば、ということではっきり断わっておりますので、これは私自身の発言が軽率であったとは思いません。そういうことも無視して私自身が結論を出したらたいへんだと思いますが、しかし、これはちゃんと断わってございますから、さような意味で、私は軽率だとは思いません。
  53. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 どっちの言い分が正しいかわからないときには、アメリカ側の想定が事実であればということだけでもって言うのはやはり軽率じゃないでしょうか。これは北朝鮮側の主張というものもあるわけです。全然相反している。そうすると、やはり両方の言い分というものがどっちなのかわからぬわけですから、そうなれば、やはりどちらにもくみしないという態度でもって日本政府としては臨むのがほんとうじゃないかと思うんですが、どうですか。
  54. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私の感じでは、ただいま申し上げたとおりであります。
  55. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 それじゃお伺いしますけれども、南北朝鮮の間でプエブロ号事件はたいへん一時は緊張しましたけれども、現在のところは特に火をふくという形勢にはないように思われるのでありますが、その点はたしてどのような見通しを持っておられるのか。日本政府としてはあらゆる場合を想定しておかなければならないと思うのでありますが、その点についての見通し等についてはどうでありますか。
  56. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 朝鮮半島における動向というものは、御指摘のように、非常に重大な関心を日本は持たざるを得ないわけであります。現在のところは、プエブロ事件の未解決がございますし。また、北からのゲリラ部隊が相当国連などに報告せられておるのを見ましても、昨年あたりは激増しておる。そういう点で、安定した状態だとば見えないわけでありますけれども、しかし、北鮮も朝鮮の統一を武力によってしようという考えは私はないと思います。また韓国においても、あるいはアメリカもまた武力によって朝鮮の安定をはかろうという考えはないわけでありますから、いろいろなそういう安定した状態ではないけれども、朝鮮半島に重大な事態が起こって、そして極東の安全を害するというような大事には至らないものである、こういうふうに見ておるわけでございます。
  57. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま外務大臣から詳細に答えましたから、私からつけ加える点はございませんが、一番大事なことは、南北朝鮮の間におきまして問題が起こるとたいへんなことである、隣国としての日本は。したがいまして、このプエブロ号の問題やあるいはその前のゲリラの侵入等の事態につきまして、政府はあらゆる注目をしておる。そうして問題が火をふかないように、これを心から実は願っておるような次第でございます。やや落ちついてきたのではないかと、さような見方もありますが、その点ではたいへん明るいような感じもいたしますけれども、しかし、事柄は何と申しましても外国の事柄でありますし、南北の問題はそう簡単な問題ではございません。なお、今後の動向について十分注意していかなければならない、かように私も思っております。
  58. 森中守義

    ○森中守義君 関連。
  59. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 簡単に。
  60. 森中守義

    ○森中守義君 外務大臣に伺っておきたいと思いますが、先ほどのプエブロの問題のときに、ここに私は正確な資料を持っておりませんので、詳しくは申しませんが、かなりの時間沈黙を守っていた日本政府が、外務大臣と駐日米大使との会談が行なわれた直後に、少なくともアメリカの主張する領海外であったという、これを支持したいという言明が行なわれたのは、大使と外務大臣との会談の結果、かなり強引に、日本もアメリカと同様な見解を明らかにしようという、こういう話によったんじゃないですか。その点が私はかなり重要な問題だと思います。一度ひとつ明快に、大使との会談の内容がどうであったか明らかにしておいてもらいたい。
  61. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) もし強引——まあ、強引ということばが適当であるとは思いませんが、私が強く言ったことは、アメリカに対して、朝鮮半島において次々にいろいろな問題が起こるけれども、どうか問題を平和的に解決してもらいたい、朝鮮半島においてこれ以上緊張が続くことは日本としても非常に不安なことであるから、問題の平和的解決を、アメリカの自重を求めた、これが一番強く言った点であります。  プエブロの領海の問題は、総理もお答えになりましたように、これはもしアメリカ側の言うような公海上のできごとであれば、公海の航行の自由というものは日本は非常な関心を持っておる、海洋国ですから。これは至るところにおいて公海における航行の自由は確保されなければなりませんので、そういう関心を背景にして言ったことであって、これは実際は問題の解明をされなければこの問題はよくわからない点であって、この点を解明されない前に強引にアメリカから押しつけられる理由はありません。むしろ、こちらが言ったのは、アメリカが冷静に事を処してもらいたいということを強く言ったのが大使との会談の内容でございます。
  62. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 それでは、朝鮮半島の緊張について、一応外務省のほうからアメリカ側に対しても要請をした。そうすると、先ごろ伝えられたアメリカと韓国が日本海において演習を行なうという問題についても、日本の外務省としての一つの意見を述べて、そしてこれをやめさせたと、こういうような事態になったのでありますか。
  63. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) ちょうどあの演習の地域は、アメリカが言ってきました地域は、御存じの漁期に向かって相当日本漁船の出漁区域がかかっておったわけでありますから、こういうところで長期にわたって演習をすることは好ましくないという見解を述べたのであって、その見解によってかどうかわかりませんが、アメリカが演習を取りやめたことは事実でございます。
  64. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 日本政府としてそういう見解を表明をしたことで演習を取りやめたかどうかわからぬけれども、ともかく結果的には演習が取りやめになった、こういうことは非常にいいことだと思うのです。外務大臣の努力に対して敬意を表明したいと思います。一つぐらいほめておかなければならぬと思う。  そこで、この南北朝鮮の間に依然として緊張が続いていることは事実なんですね。われわれは、これが一度火をふいた場合には、ベトナムとは比較にならないくらい重要な問題になるのではないかということをおそれているわけです。だから、かりにそういう間違った事態が発生をしても、日本としては南北朝鮮の紛争に対しては、あるいはアメリカと北朝鮮との紛争に対しては介入しない、タッチしないという立場をとるべきではないかと思うのでありますが、総理としてはいかがですか。
  65. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この韓半島で問題が起きればベトナムの比ではない、それは確かにそのとおりであります。したがいまして、南北の間に話し合いなり、国連がきめたその方向で問題が片づくことを心から願っております。ただ、その意に味おきまして、私ども国連中心の外交を展開しておりますから南北両方におきましても、ぜひ国連の勧告の決議の行なわれた方向で問題が解決するように、かように実は心から願っておる次第であります。万一問題が起きたらどうなるか、こういうお話でありますが、その際におきましても、日本の憲法のもとにおいて、私どもが、日本が出かけるということは考えられない。しかし、在日米軍、これが日本から出かけることは考えなければならぬ。そういう場合になると、これはたいへんなことだと、かように思います。そこに不安があるのでございますから、問題は、問題が起こらないように事前に最善を尽くすと、これ以外には方法はないのじゃないか、かように思っております。
  66. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 問題が起こらないようにと言っても、日本が当事者ではないわけですからね、何しろ、朝鮮半島の問題は。心から火をふかないように願っているというような答弁がございましたけれども、こっちのほうでどんなに願っておっても、向こうで起こした事態についてはどうにもならぬわけであります。日本としてとり得ることは、かりに問題が起きても日本としては介入しませんと、隣のうちの夫婦げんかみたいなものなんですから、どちらに味方をするというようなことはこの際差し控えなければならぬというのが基本的な立場じゃないですか。そういう立場を堅持するということがいまの総理答弁趣旨であるというふうに理解してよろしいですか。
  67. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) そのとおりでございます。私どもは、平和憲法のもとにこういう事態に臨まなければならない、かように考えております。
  68. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 そうしますと、先ごろ衆議院でもわが党の岡田委員のほうから問題を提起いたしましたが、松前・バーンズ協定というのがございますが、この協定は一体今日存在しておってなお有効であるというふうに考えてよろしいのかどうか、お伺いしたいと思います。
  69. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 瀬谷さんにお答え申し上げます。  松前・バーンズ協定は今日も有効に存在しておる、こう考えております。
  70. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 その内容はどのようなものでありますか。
  71. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 日米双方におきましてスクランブル体制等をとりますときの協定でございます。
  72. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 非常に簡単な説明でありますけれども、どういう目的で、どういう構想で、どういう運用で、どういう文章になっているのか、この点を明らかにすることはできませんか。
  73. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 昭和二十八年に、北海道に領空を侵犯する飛行機がたくさんございまして、当時の岡崎外務大臣がマーフィー駐日米国全権大使に対しまして申し入れをいたしまして、岡崎・マーフィー協定なるものができました。その結果、米軍がスクランブル、すなわち緊急発進をいたしまして北海道の領空を侵犯した飛行機をぜひ領空から出ていってくれと、こういうような措置をたびたびとりまして、昭和二十九年以来は漸次そういうことはなくなったわけであります。それを受けた下協定といったような意味のものが松前・バーンズ協定でございまして、両国の緊急発進に関する下取りきめでございます。
  74. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 安保条約との関係はどうなっておりますか。
  75. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 岡崎・マーフィー協定なるものは旧安保条約の施行細目と心得ております。それから昭和三十四年にできたのは松前・バーンズ協定でございまして、旧安保条約の施行細目ではございますが、新安保条約の第六条にのっとりまして、やはり施行細目でございまするから、旧安保、新安保を通じまして有効に存続いたしておると考えておる次第でございます。
  76. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 国会にかける必要はなかったのかどうか。
  77. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) お答え申し上げます。  安保条約以上の権利義務を設定したものではございませんから、安保条約の施行に関する下取りきめでございまするから、国会にかける必要はない、こう認めておる次第でございます。
  78. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 安保条約を中心として条約、協定、これは国会において一応審議をされて、今日、六法全書にもちゃんと載っているわけです。ところが、この松前・バーンズ協定は、実際問題は日本とアメリカと、双方のスクランブル体制についてきめてあるということでありまして、かなり突っ込んだ問題であります。こういうことが国民の目に触れないままで実際上有効であるということになるとたいへん問題だと思うわけであります。だから、この内容は明らかにして、しかも、国会の審議に際しても、十分にこれをそしゃくをする必要があったのではないかと思うのでありますが、防衛庁長官としては、どのような見解をお持ちですか。
  79. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 瀬谷さんにお答え申し上げます。  安保条約あるいは地位協定等の国会の御審議にかけました条約類似の協定あるいは条約それ自身等のような取りきめをしておるとすれば、もちろん国会の御審議をわずらわして、あるいは批准を仰ぐというようなことが必要だと思っておりますが、この松前・バーンズ協定は旧安保の細目として昭和三十四年でございまするか、旧安保条約の施行に関する取りきめでございまして、これがないと、旧安保が有効に働かない、こういう考えでやっておるわけでございまして、新安保といたしましては、条約第六条に基づきまして、米軍が日本の施設あるいは区域を含む基地を使用し得る、日本の平和と安全のために使用し得る、その条約の施行に関する、いわば施行規則とも申すべきものでございますから、国会の御審議にかける必要がない、こう考えておる次第でございます。
  80. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 この内容を資料として提示することはできないんですか。
  81. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 瀬谷さんにお答え申し上げます。  これは衆議院予算委員会におきましても提起せられたる一つの事案でございまして、その内容はいま予算委員会理事会におきまして継続的に検討するということになっておりますが、当院における予算委員会理事会等におきましても、もしそういうことが起きましたならば、私がまかり出まして、そうして御説明申し上げて御了解を得たい、こう考えております。全体としては特別に秘ということではございませんが、相手方のあることでございまして、相手方といたしましては秘にしてほしいという要望でございます。でございまするから、こちらも信義の原則に従いまして秘扱いをいたしておるわけでございますから、また、だんだんお聞きでございましたならば、各種の会議等におきまして、瀬谷さんにもお答えいたしたい、こう考えておる次第でございます。
  82. 岡田宗司

    岡田宗司君 関連。ただいま松前・バーンズ協定についてのお話がございましたが、この協定は元来、防衛庁においては秘密とされておったのであります。たまたま過日の衆議院予算委員会において、岡田春夫君に指摘をされて、これが明らかになった。おそらく、これと同じような協定が、これは旧安保条約に基づくものである、あるいはまた、現行安保条約に基づくものであると、たとえば日本の海上自衛隊とアメリカの海軍との間に、あるいは、その他のいろいろな実施細目にわたる協定があろうと思うのであります。私はその内容をいまここで明らかにせよとは申しませんが、松前・バーンズ協定以外にも、そういう協定があるのかないのか、概括的なお答えでよろしゅうございますから、増田防衛庁長官からお答え願いたい。
  83. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 平時において緊急発進をいたすというようなことは、アメリカといたしましては、在日空軍においてあるだけでございまして、その他のたとえば陸上部隊あるいは海上部隊等におきましては、取りきめは一切ございません。
  84. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 それでは、この資料は、理事会でもって請求があればというお話でありましたから、理事会に対してやはり提示をしてもらいたいと思いますが、いかがですか。
  85. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 瀬谷さんにお答え申し上げます。  理事会等において御審議くださる場合には、でき得る限り申し上げたい、でき得ない点はお含みを願いたい、申し上げられません、こういうわけでございますから、御了承願いたいと思います。
  86. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 これはできる限り審議をしたいんだが、できない点はかんべんしてもらいたい——どこができなくてどこができるか、これはまたわからないわけですから、たいへんに疑問が持たれるわけです。私が心配するのは、総理は先ほど、南北朝鮮の間でかりに紛争が火を吹くようなことがあっても日本は介入しないんだという原則的な方針を打ち出されました。しかし、この協定は韓国なり日本なりアメリカなりが、相互にこれは関連をしておるわけですね、かみ合っておるんじゃないかと思う。で、その共同行動、特に交戦準則といったようなことをきめているんじゃないかと思うのでありますが、もし事があれば日本だけがこの協定と別々に行動する、知らぬ顔しているということはできない性格のものじゃないかと思うのでありますが、その点はどうでしょう。
  87. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 瀬谷さんにお答え申し上げます。  先ほど来申し上げておりますとおり、条約ないし協定等をもぐって松前・バーンズ協定なるものを締結しておるわけではございません。すなわち、国会の審議にゆだねべき——審議を願うべき安保条約あるいは地位に関する協定以上のものではございません。それの施行に関することでございます。  それから交戦準則ということを、いま御発言になりましたが、アメリカ空軍には交戦準則というようなものもこざいましょうし、また、わがほうにおきましては、一定の場合にどういうような行動をとる、実力行動をとるといったようなことがございましょうが、これは相互別々のものでございまして、何ら関係はございませんが、ただ、緊急発進等は、北海道の領空がしばしば第三国機によって侵犯されまして、当時、緊急発進の措置がなかったものでございまするから、岡崎外務大臣がマーフィー駐日全権大使に申し入れをいたしまして、ぜひ米空軍によって領空侵犯を排除してもらいたい、その協定でございます。それを受けた細目でございまして、現在、細目の協定はございますけれども、実際に働いている部面というものは、ほとんど米空軍は日本本土内にはないわけでございます。実際問題としてないわけでございます。ただし、細目的の取りきめはございます。アグリーメントと言い得るかどうか、私は単なる、それぞれの、日本におきましては航空自衛隊、向こうにおきましては、米空軍がスクランブルをするときのお互いの申し合わせというような程度でございます。
  88. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 緊急発進といったような必要が生じた場合には、事前協議といったようなことは、その余裕がないものというように、常識的には理解できると思うのですが、その点はどうでしょう。
  89. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 事前協議は安保条約第六条に基づいてなす三項目についてあるだけでございまして、緊急発進というようなものは、この取りきめに従いまして、もし米空軍が日本本土内において緊急発進をして、領空侵犯をしたり国際法に違反したり航空法に違反して侵入せんとする飛行機に対して行なうという場合には、取りきめに従ってお互いに瞬間に話し合いができますから、その話し合いは、いわゆる第六条による岸・ハーター交換公文による事前協議というものではないと思っております。
  90. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 瞬間において話し合いができるという話でありましたが、その領空外に戦闘機が飛び出すのには幾らも時間がかからないと思う。先ごろのプエブロ号事件に基づいた日本海の非常に緊張した事態、こういう場合に事実問題として、事前協議といったようなことは滞りなくできるものかどうか、非常に心配をされるのでございますが、この松前・バーンズ協定が生きているとすれば、事実上は安保条約の事前協議というようなことはあまり意味をなさなくなるということになりはしないかと思うのでありますが、どうでしょうか。
  91. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 事前協議のカテゴリーに入らないと言っているだけのことでございまして、すなわち、事前協議というのは、日本国内における米軍の配置の重要なる変更、日本国内における米軍の装備の重要なる変更、日本の基地、あるいは区域——施設及び区域を含んで全体として基地と言っておるのでありますが、その基地を根拠として極東に機闘作戦行動をとる場合には事前協議が要るということでございます。  そこで、その他の場合、つまり、第六条でない場合、日本国内を守る場合、ことに緊急発進というのは警察的行動でございまして、日本の領土、領海の上の——領土、領海の上は領空と言っておりますが、領空を侵犯せんとする飛行機に対して警戒措置を講ずる、警告を発する、それで退避したほうがいいでしょう、国際航空法に違反してはいけません、これだけのことでございまして、そのための用をなすために米空軍も日本に駐留いたしておりますし、わが航空部隊も存在いたしておる次第でございまして、事前協議というものとはカテゴリーが違うと考えておる次第でございます。
  92. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 ベトナム戦争の場合は、アメリカが事実上制空権を握っておる。きわめて一方的に航空機の戦闘というものが行なわれておるように承知しておりますけれども、これが朝鮮半島で事が起きた場合に、われわれがあっと思っている間に、双方から空の上で衝突が起きるということになると、日本に基地を持っているということだけで、事前協議といったようなことは吹っ飛んでしまって、そうして、この松前・バーンズ協定というものが、実際の戦闘行動に役に立つといったようなことになりはしないかということをおそれるわけであります。そこまでの心配をする必要はないものなのかどうか、その点をお伺いしたいと思っております。
  93. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) まず、日本の航空部隊の緊急発進から申し上げます。日本の航空部隊の緊急発進はどういうときにするかというと、航空法に違反して日本の領土、領海、領空上に侵入せんとする飛行機に対しまして、警察行動として緊急発進をするわけでございまして、これは平素、総理大臣、長官の命令によって、それぞれの航空部隊が臨機即応にいたすわけでございます。でございまして、決して戦闘目的で出撃するわけではございません。戦闘目的で出撃するとするならば、これはもう法第七十六条による防衛出動でございまして、原則として国会の承認——得られない場合には、事後において国会の承認を得て、内閣総理大臣が下命をされまして、そうして戦闘行動として出撃する場合でございまして、この日本の航空部隊が警戒行動として緊急発進をする場合に、万々一武器を使う場合がございましても、それは警察官の武器使用と同じでございまして、刑法三十六条に該当する場合以外はないわけでございます。でございまするから、戦闘作戦行動で緊急発進をするんだという点は、ぜひ誤解のないように願いたい。緊急発進というものは、警察的行動として、警告をして、日本の領空を侵犯してくれるな、これだけのために緊急発進をするだけでございます。
  94. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 日本の場合について言われましたが、アメリカの場合については、どういうことになりますか。
  95. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) アメリカの空軍が、日本の領土、領海上の領空において、もし戦闘作戦行動を最初から意図して発進するというようなことがありとするならば、それはアメリカの大統領の命令がなければいけないと私は考えております。
  96. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 B52が沖繩から飛び立っていったり、あるいはまた、日本の基地に出入りをしたり、エンタープライズが日本海に出かけていったりする、こういう一連の行動というものは、日本の国民の知らない間に、相談なしに行なわれているというふうにわれわれには受け取れるわけです。こういうようなことが実績として積み重ねられた場合に、その事前協議といったような条項は気休めの文章にすぎないということになりはしないかということをおそれるわけです。だから、そういう問題について、気休めではなくて、ちゃんとした一つのブレーキである有効なブレーキであるというふうにわれわれが理解をできるものかどうか、また、それができないとすれば、一体どうしたらよろしいのか、そういう点の懸念があるわけでありますから、最近のもろもろの問題と関連をして、防衛庁長官の見解をお聞きしたいと思うのです。
  97. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 瀬谷さんにお答えいたします。  沖繩における行動等は、これは外務大臣もしばしばお答えいたしておりまするし、総理もお答えいたしておりまするが、施政権の関係におきましては、わが国の本土と違うわけでございまするから、安保条約はそこまで及んでいないわけでございます。  それから航空母艦が寄港したりいろいろする場合、この場合に安保条約第六条によって事前協議が必要であるかどうかということは、戦闘作戦行動を日本の基地においてすでに下命されておるというような場合には、日本を基地とする戦闘作戦行動は事前協議の対象である、第三番目でございます。第一は配置の重要なる変更、第二は装備の重要なる変更、これはいずれも国内の米軍におけるものでございまするが、今度は国外へ出ようとする場合、それは戦闘作戦行動として日本の施設ないし区域を含んだ基地を使う、こういう場合には事前協議が必要でございまして、それは戦闘作戦行動の命令を受けておるかいなかという客観的事実によってきまるわけでございまして、主観ではきまらないわけでございます。そういう命令が下っておるという事実を押えまして、その事実があるならば事前協議をすべきであるということをこちらから安保条約第四条によっても申し入れができるということは、外務大臣がしばしばお答えしておるとおりでございます。
  98. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 警察的行動と戦闘作戦行動と、ことばは違いますけれども、実際問題としては非常に区分けのしにくい問題じゃないかと思う。で、プエブロ号の問題で日本海に非常に緊張した状態が生じた際に、日本の自衛隊としてはアメリカの要請によってどういう行動をとったのか、何らの心配するような行動はとらなかったのだというふうに防衛庁長官としては断言できるのですか。
  99. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) プエブロ号によりまして南北両半島の間におきまして紛争が起きたという場合に、アメリカ軍の何ら要請は日本の自衛隊に対してございません。わが自衛隊、特に航空自衛隊でございまするが、航空自衛隊は平素の行動をとっておるにすぎないわけでございます。すなわち、スクランブルをいたしております。
  100. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連。仮定の問題ですが、先ほど瀬谷君から、朝鮮半島にもし緊急事態が起こった場合という仮定の問題が出ておるわけですけれども、この場合に、日本から直接米軍が北へ行くような場合は、これはもちろん論ずるまでもなく事前協議の対象になるのですが、韓国へ一たん着陸をして、それで北へ行く場合には、どうなるんですか。
  101. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 羽生さんにお答えいたします。  日本を基地とする直接の戦闘作戦行動が事前協議の対象になるわけでございまして、韓国の某飛行場に着陸して、それから後にいろいろな行動をとる、そういうようなことは、安保条約第六条のいわゆる日本を基地とする直接の戦闘作戦行動とは考えていないわけでございます。
  102. 羽生三七

    ○羽生三七君 韓国へ一たん着陸しようとしないと、戦闘地域に飛んでいく場合は、当然それは事前協議の対象じゃないですか。もしそれを除外するなら、これは私非常な大きな問題点だと思う。
  103. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 羽生さんにお答えいたしますが、いま朝鮮の北と南との間におきましては、紛争はございまするが、戦闘が行なわれているとは考えていないわけでございます。戦闘であるならば、もちろん大韓民国へ日本を基地として出撃する場合というものは、戦闘作戦行動になると考えております。
  104. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 それはなんですか、いまのお答えは、日本を基地とする場合には、韓国へ寄ってそれから行動する、韓国でなくとも——これは仮定の問題でありますので、韓国でなくとも、沖繩であっても、どこかに寄っていく場合には直接の戦闘行動にはならぬ、しかしストレートで飛んでいく場合には戦闘行動になる、こういうことなんですか。
  105. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 飛行機と船とその他によって、いずれも態様は違うと思いまするが、船の場合でしたならば、日本の基地において戦闘作戦行動の命令を受けた——アメリカの本国かあるいは太平洋軍司令官かその点はわかりませんが、とにかくその艦長あるいは機動群の司令等が受けておる、こういう場合には事前協議の対象になると思っております。それがいかに規模のちっちゃいものであっても、そうだと思っております。それから飛行機であるならば、一応どっかへ着陸するというようなことがあって、そのときにおそらく命令を受けるでしょうから、日本におって戦闘作戦行動の命令を受ける——これは日本以外の極東のことを言うわけでございますが、その極東に対する戦闘作戦行動を日本におって受けたという場合には、日本の基地がどこであろうとも、これは事前協議の対象になる、安保条約第六条に該当するものである、こう考えておる次第でございます。
  106. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 アメリカの空軍が戦闘の命令を受けたかどうかというようなことは、事前にアメリカが日本連絡を一々してくれれば別ですけれども、そういうことをしなければわからぬわけですね。そうすると、事前協議というものが行なわれないまんま、事実上の命令を受けて作戦行動をするという場合もあり得るでしょう。そういう点は、別に向こうさんを信頼するからそんなことはないんだというふうにお考えになるのか、一体そういう点はどうでしょうか。
  107. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) いま現実の問題として、第五空軍というのが日本とそれから大韓民国と沖繩とを管轄しておりまするけれども、単なる移動の場合でも相談をいたしております。単なる移動の場合ですら相談をいたしております。いわんや戦闘作戦行動に日本の基地を使うという場合は、もちろん相談をすべきものである、事前協議の対象になる、事前協議をしなければ第六条違反になる、こう考えております。すなわち、国際条約でございまするから、信義の原則に従って、これを日米双方とも厚く順守すべきものである、こう考えております。
  108. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 移動の場合でも相談をするというお話です。それほどアメリカの行動というものは慎重に日本相談をしているんだというふうに聞き取れるわけですよ。事実そうであってほしいと私ども思いますけれども。それならば、王子の野戦病院のように、これは戦闘行動とは直接関係ないと思うのでありますけれども、こういう問題について事前に十分な相談を受けているのかどうか、これは外務大臣にお伺いしたいと思う。
  109. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 王子は旧安保の時代から施設として提供しておったわけです。昭和三十六年、一般の陸上施設として、新しい地位協定によって提供したわけでございます。四十年の末に病院をつくりたい、こういう連絡がございまして、これは防衛施設庁にこれを連絡をいたしたわけでございます。
  110. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 私どもが心配をしておりますことは、事が軍事行動であれば、事前協議といったような条項があったとしても、日本の国民がつんぼさじきに置かれている間に、とんでもないことが実際に行なわれるのじゃないかという心配をしているわけです。いままで、松前・バーンズ協定をはじめ、いろんな問題について不安がありましたから、衆議院でも参議院でも質問をしているわけでありますが、防衛庁長官のお答えによれば、ともかく細目ことごとくアメリカからは事前にすべて相談があるんだ、こういうお話なんであります。だから、それはそれとして、もしそうであればまことにけっこうなことなんでありますけれども、そのくらい慎重にいろいろな相談をするならば、東京のどまん中に野戦病院を設置をするというような問題は、やはり慎重に相談があってのことではないかと思うのであります。御承知のように、地元では反対をしております。総理大臣のところに、美濃部知事をはじめ、東京都議会議長も陳情に参ったそうでありますけれども、これらの陳情に対して総理としてばどのようにお考えになっておるのか。
  111. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) この王子の陸軍病院は、すでに提供された施設内の変更でございまして、法的には政府からかれこれ言う筋合いではございません。ただ、その環境その他から申しまして、決して政府としても好ましいものとは考えておりません。したがいまして、ただいま厚生省、防衛庁を中心といたしまして、その範囲内における、何と申しますか、取り扱いの改善等についてアメリカ側といろいろ調整中でございます——と承知いたしております。
  112. 園田直

    国務大臣園田直君) 二十一日に、厚生省と在日米軍のオール准将及び王子の病院長と任意に会合いたしました。ただいまの病院設置について関係がございまするから、この際御報告申し上げますが、王子に設置される病院は野戦病院ではなくて軍の総合病院であるということ。なおもう一つは、ジョンソン基地の野戦病院が王子の病院に移転するのではなくて、ジョンソン基地の野戦病院は、それぞれの病院に分散をして、患者を送り、終わったあとはこれを閉鎖をする、こういうことになっておりますが、なお、特にいま問題になっておりまする伝染病のことについて、地元並びにその他非常に心配をしておられるようでございまするから、私はそういう関係から会合したのでございまするが、一つは、王子陸軍病院は、いわゆる野戦病院ではなくて、完全な病院機能を有する総合病院である。ベトナムで負傷した軍人等は、野戦病院及び中間病院を経て当病院に搬送されるものであって、直接ベトナムから王子軍病院に運ばれるものではない。二つ目には、厚生省の防疫担当または地元保健所長は、随時王子陸軍病院長をたずね、防疫対策について協議できること。この第二項は、ただいまありまする覚え書きでは、基地内に立ち入って検査する権限はございません。そこで、伝染病については、両方及び地元の保健所長が情報交換をすることになっておりまするが、情報交換だけでは非常に心配でございまするから確認の方法をとりたい、なおまた何かあった場合には両者で協議をしてこれに対策を講じたい、こういう意味で、病院長をたずね協議するということになったわけであります。三番目は、今後も必要の都度、王子陸軍病院問題について本日のメンバーで会合を持ち、防疫上の諸問題についてその解決に当たるものであること。なお、必要ある場合には、地元保健所長を加えることに同意する。その次に、病院の規模は、ベッドは四百、隔離病棟——いわゆる伝染病用の病棟は置かない。四番目に、昭和四十一年一月三十一日合衆国のE・A・チャップマン少将から外務省の安川北米局長にあてた文書の中で、米軍は検疫伝染病患者についてはその感染力を失うまで日本に搬入しない。これは国際伝染病規程にきめてありまするペスト、コレラ、発しんチフス、天然痘、黄熱、回帰熱、こういうものでございます。  なおまた、念のために申し上げますると、米軍の病院は、第一戦の救護所、そのあとの収容所、そのうしろの師団収容所、そのうしろの野戦病院、そのうしろの基地病院、一番最後が総合病院の軍病院であって、これは軍人、軍属、家族等も含めた総合病院でございます。
  113. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは、瀬谷君の質疑続行中でございますが、午前の審疑はこの程度にいたしまして、午後一時十分に再開することといたします。これにて休憩いたします。    午後零時五分休憩      —————・—————    午後一時四十七分再開
  114. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) ただいまより予算委員会を再開いたします。  まず、委員の異動について御報告いたします。  本日、青木一男君、鈴木一弘君が辞任され、その補欠として、中村喜四郎君、矢追秀彦君が選任されました。     —————————————
  115. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 午前に引き続きまして質疑を続行いたします。瀬谷君。
  116. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 王子の野戦病院の先ほどのお答えでありますけれども、あれは実は野戦病院じゃないんだと、こういう意味のお答えがあったのですけれども、名称は野戦病院という名称を使う使わないにかかわらず、ベトナムにおける傷病兵を収容して、そこで治療をしたりしているという事実に変わりはないんじゃないですか。
  117. 園田直

    国務大臣園田直君) 先ほど申し上げましたのは名称だけの問題ではなくて、組織及び収容する患者、収容する患者は、各兵たん病院あるいは基地病院、あるいはその他から収容する者でありまして、内容から見ましても、四百ベッドと申しますると、これは単なる小規模の病院であります。なおかつ、隔離病棟等も設置いたさないということを確認いたしましたので、名称だけではなくて、現在開設されたる王子の軍病院は、総合病院でございます。
  118. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 総合病院ということでありますが、要するに軍病院であるということは変わりはない。で、米国の軍人をここに収容する、傷病兵を収容するという点において変わりはないとすると、事実上は、気のきいた野戦病院ということになってしまうと思うのです。こういう設備は、地位協定に基づいてやはり日米合同委員会というのもあるわけでありますが、地元で相当熾烈な反対運動が起こるというような性格のものは、合同委員会にかけて、そういう手順を踏んで、一応地元の意見も尊重するということが望ましいことではないかと思うのでありますが、この点の手順は踏んでいるのかどうか、お伺いしたいと思います。
  119. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) むろん、これについては、合同委員会にかけて——下部機構であります合同委員会にかけられたものでございます。
  120. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 合同委員会にかけて、そして日本側も、つまり政府も、その点については承知をしておるというふうに理解してよろしいのですか。
  121. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) この合同委員会には施設庁が出て、そしてその場合に話がまとまったものでございます。
  122. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 いつ、どういうふうにして……。(「日時、内容」と呼ぶ者あり)
  123. 山上信重

    政府委員(山上信重君) 補足してお答え申し上げます。  この王子キャンプは、従前から米軍に提供されておりまする提供施設でございまするので、この内容をどういうふうにするかということは、地位協定によって米軍にまかされておる次第でございます。したがいまして、これを病院にするということにつきましては、先ほど外務大臣から御説明のありましたように、四十年の末にこういう通告がございましたが、特に同意を求めるということではなくて、通告をいたしてきている次第でございます。  なお、それに基づきまして、当方といたしましては、これらにつきまして運営が一般に悪影響のないようにということで、万全の措置をとりたい。こういうふうに考えておる次第でございます。
  124. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 ちょっと話が違うような気がするのですが。合同委員会にかけたかどうかということを聞いたら、合同委員会にかけられた、こういう話なんですが、いま政府委員答弁では、通告があった、通告があったので、それに基づいて事務的な処理をしているかのように聞き取れるのでありますが、ちょっと話が違うような気がするのです。一体、合同委員会にかけられたものか、通告があっただけなのか、その辺はどうなっておるのですか。
  125. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) これは、いま政府委員から補足答弁いたしましたとおり、昭和四十年の十一月末に、病院を開設いたしたい、その旨を米大使館から外務省を通じて通告があったわけでございます。そこで、日米合同委員会は施設等に関していつも開いておるわけでございまして、この問題につきましては、日米合同委員会すなわちアメリカ局長、それから駐日軍の参謀長、これがこもごも議長になる委員会でございます。その日米合同委員会がしばしば開かれておりまして、その下部機構である施設特別委員会においてこの問題を審議いたしておるわけでございます。  状況は以上申し上げたとおりであります。
  126. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 最初は、合同委員会をやったというふうに聞こえたのですが、政府委員答弁では、通告があったということですが、その通告があったというのは、下部機構でもって処理済みであると、こういう意味なんですか。
  127. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 昭和四十年の暮れに、病院を開設いたしたいということが米大使館から外交を通じて外務省に通告がございました。それから、爾来しばしば合同委員会を開いておるのでございます。いつ何回開いたということはあとで詳細に申し上げますが、いつも、施設あるいは区域に関しては日米合同委員会が開かれているわけでございます。今回の、問題のこの施設につきましては、日米合同委員会の下部機構である施設特別委員会の議題になりまして、しばしば審議いたしておりまするが、この状況は、先ほど厚生大臣からも申し上げましたが、総理大臣もたいへん前向きで心配されております。したがいまして、その範囲、それから周囲の環境に害悪を与えてはいけない、伝染病は困る、あるいは患者の外出は困る、ヘリコプターで患者を輸送して来ては困る、それから付近に急患があった場合には、一般病院であるから急患の処理をしてくださいと、各般の要求を施設委員会においていたしておるわけでございまして、この要求が、漸次、紳士協約ではございまするが、合意に到達していることは厚生大臣が申し上げられましたが、その厚生大臣が申し上げておる点等につきましては、また、いま私が申し上げた点は、日米合同委員会の下部機構である施設委員会で審議した内容でございます。
  128. 加瀬完

    ○加瀬完君 ちょっと関連。外務大臣から、合同委員会でまとまったという御発言があった。ところが、いまの長官のお答えは、下部機関で審議中だ、とこういうようなお答えのようであります。どうもその点がはっきりしませんので、明快に御説明いただきます。
  129. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 明快にお答えをいたします。  これは要するに、あの施設は、先ほども言いますように、旧安保の時代から施設を持っている。その施設を、昭和三十六年に一般の陸上施設として地位協定によってアメリカに提供した。もとは地図局というのがあったのを、それを病院に変えた。病院に変えるについて、いま、下部機構としての施設特別委員会ですか、そこでいろいろ話し合いがあるわけでございます。そのときの話し合いでは——これは、当然にアメリカは条約上はあそこで病院をつくることが可能なんです。これは地位協定によって可能なんです。しかし、条約上可能であっても、住民に与える——いま、増田防衛庁長官が、防疫あるいはまた騒音、風紀等のことについて触れられたようでありますが、何ぶんにも人口の稠密地帯でありますから、そういう点を十分気をつけてもらいたいということで、むろん、これは認めるとか認めないとかということではないのです。地位協定で、すでにアメリカは、おれるわけですから。病院をつくれるわけですから。そういうことで注意を与えて病院を開設することになったわけです。しかし、われわれとしましては、なるべくアメリカの施設というものは、都心から離れたほうがいい、こういう方針のもとで、ほとんど整理されているわけです。王子というものは数少ないアメリカの施設の一つです。いままで都心にあったものはごくわずかなものでしたがって、病院は相当年月をかけて建設したものですから、いますぐにこれをどうこうというわけにいきませんが、しかし、なるべくそういう施設はやっぱり都心から離れたほうがいい。そのことで住民の間にいろいろ反対が起こったり、日米関係にも必ずしもいい結果とは思いませんので、今後とも計画的になるべく施設を都心から離れるような努力を合同委員会を通じてやろうというのが方針でございます。
  130. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 合同委員会方針に必ずしも沿ったことにはならないと思うのです、王子に開設するということは。で、防衛庁長官のお話では、四十年に話があった。その病院の開所式をやったのはついこの間、四十三年です。いままで三年あります。地図局だったのが今度病院になった。地図をこしらえるところと病院では、ずいぶん違うわけです。目的変更も著しいわけです。だから、こうなると、この病院を開設するということについて日本側としての意思表示というものを明らかにしておく必要があるんじゃないか。都知事もわざわざ陳情に見えている。都知事の陳情に対して総理は会わなかったようですけれども、これは、都民を代表した都知事が来ているのだから、やはり都知事の陳情に対して耳を傾ける必要があると思う。一体、総理がお会いにならなかったのは、都知事の要望どおり陳情の意には沿い得ない、自信がないということからお会いにならなかったのか、この問題は今後どういうふうに処理なさるつもりであるか、総理からお伺いしたいと思います。
  131. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 都知事が私をたずねてきたと言われますが、事前に私はさようなことは知りません。たぶん国会審議その他で私自身が多忙であったために、そういう機会がなかったのじゃないか、かように思います。後になりまして、新聞記事を見まして、都知事がなるほどぼくのところにたずねて来たのか、こういうことを実は記事で見ました。そうして先ほど来このことについては私自身も心配しておりますので、都知事に会えばそのままを話し合ったろうと思いますけれども、ただいまも申しますように、私自身は、都知事の来たことを知らない。先ほど厚生大臣から政府自身が心配している点については、るる説明をいたしました、そのとおりでございます。さように御了承いただきます。
  132. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 都知事がこういう問題でたずねて来たということを、われわれ知れば、おとといは加瀬さんの質問していたときなんですから、私ども総理を引きとめて、会っちゃいかぬなんというやぼなことは決して言いません。まあ今後こういう問題がありましたならば、都知事とも会って話をしていただきたいと思います。都心から離れたほうがいいというのは、だれが考えたって同じだと思う。しかし都心といったって、東京都から離れればいいというものじゃない、これは。埼玉県からこっちへ移るということですが、埼玉県だってやはり困る。もとへ戻されちゃ埼玉県だって困る。そこで東京、埼玉、千葉、神奈川、こういうところはもう東京都と同じようなものですからね。やはりこういうところからは離してもらわなければいかぬ。本国へ行ってもらったらいいと思う、アメリカの。総合病院なんですからね、野戦病院というのは戦地にあるから野戦病院、戦地でもってテントか何か張って収容するのが野戦病院、それが総合病院ということになれば、これは日本に置く必要ないですよ。ハワイなりアメリカ本土なりに持っていくというのが私は妥当だろうと思う。そういうふうに合同委員会等では主張すべきではないかと思うのですが、どうもうまく主張できなかったのか、あるいはアメリカ側の要望というものを受け入れざるを得ないというような事情があったのか、その点についてお伺いしたいと思うのです。
  133. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 日米安保条約を結んで地位協定によって米軍が日本に駐留しておるわけです。病院はつくってはならぬ、本国へ行け、そういうわけのもので私はない。病気というものはだれでも、やはり家族もございましょうし、いろいろあるわけですから、これはやはり合理的に考えなければいかぬと思います。そういうことでわれわれはいま病院が開設になったわけですから、これからやはりアメリカ軍側に対して強く今後われわれとして要望していきたいのは、このことが伝染病などに対して付近住民に非常にやはり不安を与えることのないように、また騒音などに対して、付近住民の生活を害することのないように、風紀上の問題を起こさないように、こういう点では十分にアメリカ側と今後とも折衝を続けまして、そういうことの迷惑をできるだけ少ないような努力をいたします。長い目で見ればなるべく施設というものが住民との間にいろいろな問題を起こさない地域に、施設をできるだけ移す、これは長期的な政府考え方でございます。
  134. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 長い目で見たって、短い目で見たって、東京のど真ん中にこういう傷病兵を収容する病院を置くということは、常識的には不適切であるというふうにだれも考えると思うのです。王子に野戦病院を置いてもかまわないような時代は、百年ぐらい前の彰義隊が戦争をやったころならあの近辺も野戦病院には向いていたかもしれないのですが、いまはそうじゃないのですからね。こういうところに置くべきではないという立場に立って私は交渉すべきじゃないか、置くことを肯定した上で何とかもろもろの問題は考えようというのは筋じゃないと思うのですがね。根本的にはやはりここに置くべきではないという考え方に立つべきだと思うのですが、その点どうでしょう。
  135. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) まあ置くべきでないか、あるかという問題よりも、このことによって付近の住民に対して非常なやはり心配を与えておるということは、日米両国関係の上からいっても必ずしも好ましいことではない。しかし、いま病院ができたばかりでありまして、相当建築にも時間がかかっておりますから、やはり将来の問題としてわれわれはアメリカ側と話もいたしたい、こう思っておるのであります。
  136. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 総理に伺いたいのですけれども、野戦病院の問題でも、あるいはいろいろ問題になっておりました事前協議の問題にいたしましても、どうも安保条約に基づく問題は事前協議といったようなことが空文になって、何もかも事後承諾でもって納得させられておるかのような印象を受けるわけです。それから防衛庁の問題にしましても、防衛庁の予算というのは非常に大きな予算です。ところが、汚職問題が起きた。汚職問題が起きたが、防衛庁長官自体が何も知らないうちにいろいろな汚職の問題が蔓延をしているかのように聞き取れるわけなんですよ、長官の答弁からも。これは汚職を犯した人間個々を責めるということよりも、汚職を犯すような下地があるところに問題があるのじゃないか。つまり、防衛予算というのは国の予算のうちでも、われわれが具体的に突込んで、この内容がいいか悪いかということの審議しにくいような状態にある。秘密のベールに隠れておるという点が多過ぎるわけです。だから、なるべくそういう秘密のベールの中に入らないような方式を考える必要があるのじゃないかと思うのですが、その点では予算編成上から考えてみても、相当国民の前に疑惑を残さないようにする必要があると思いますが、その点は総理としてどういうふうにお考えになりますか。
  137. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 防衛予算、これが防衛庁だけ特別な形で予算を編成しておるなら、ただいま言われるように何か秘密、そういう意味でのベールの中に入っておるのじゃないか、かような批判も当ろうかと思います。しかし。瀬谷君もすでに御承知のように、各省とも同じような基準でただいま予算を編成しております。したがいまして、私は防衛庁だけが秘密のベールに包まれておる、かようなことは当たらないと思います。ただこの予算編成上の問題から、もっと目的や、さらにその目的に沿った予算であるような別な編成方針考えられないか、こういう御指摘をいただいております。ことに決算を通じての予算編成への注文もなかなかきびしいものがあります。そういう意味で大蔵当局におきましても、絶えず改善をはかるようにつとめております。ことに外国等におきましての予算編成の方式なども参考にして、絶えず前進するつもりでございます。したがいまして、今後とも改善されたい、改善していく、かように御了承いただきたいし、また瀬谷君御自身からも名案あれば、そういう点もお示しをいただきたいと思います。ただ、いまのことばづかいの上で問題にしておるわけじゃありませんが、どうも汚職が次々に起きておる。汚職が前もってわからない。まあ、前もってわかっていて汚職ができるというような、そんなことはございませんから、もちろんわかっておればさようなことは防げることでございます。したがって、この点は私、別に防衛庁長官の怠慢だ、こういう意味ではない。とにかく、もっと国民が信頼するような、そういう予算をつくる、そういう方向で最善を尽してまいりたい、その意味では皆さん方の御協力もお願いしたい、さように思っております。
  138. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) いま総理の言明で御了解と思いまするが、防衛庁の、あるいは自衛隊の最大多数のものは、きわめてりっぱに正しく公正に仕事をいたしております。私は防衛庁全体に対して何か形容詞を使ったように言われておりますが、形容詞を使ったことは一ぺんもございませんから、りっぱな防衛庁にするように一生懸命努力する、それから機密が多過ぎる、少な過ぎるという問題でございまするが、自衛隊法五十九条がございます。それから国家公務員法百条がございまして、その内容はほとんど同じでございます。すなわち公務員たる者は機密は守らなくてはならない。その処罰規定の内容もほとんど同じでございます。その範囲におきましては、国家の機密というものは守られてあると思っております。  そこで、防衛計画、その他機密を要する点が相当ございまするが、しかし、国会議員に予算を審議願う点におきましては、でき得る限り、皆さまに申し上げまして、皆さまのコンセンサスを得ると、こういう態度で臨んでおる次第でございます。
  139. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 新しい戦闘機をどこに注文するかということも、これは機密になっておるわけなんでありましょうが、ただ、われわれが審議する場合に、一機五億円である、五億円が安いか高いかといったようなことは、ちょっと国民には見当がつけにくいわけなんです。それだけに、この種の内容について汚職の誘惑にのらないような方法を、防衛庁としては、特に念入りにやる必要があるのではないか。つまり、常識的に、高いとか安いとかいう判断がしにくいものが多過ぎるわけですね。だから、やはり、そういう点については考慮する必要があるのではないか。あとになってからいろいろぼろが出て、防衛庁長官がまあ非常に気まずい思いをするというようなことは、この機会に、やはり再検討してみる必要があるのではないか。その方策について考えておられるのかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  140. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 瀬谷さんのお説はたいへん有意義なお説だと思います。拝聴いたしまして善処いたしたいと思います。  そこで、兵器でございまするが、兵器は自動小銃から航空機、護衛艦に至るまでございまするが、いわゆる国防産業というものでございますが、これを一面から考えまするというと、通産省関係の重工業にも関係いたしまして、そちらの方面からも役人にこちらに出向してもらいまして審議をさせておりますが、なお通産大臣、通産省の補助機関等とも連絡をいたしまして、そうして重工業的見地から、私どものほうは武器の関係から、両方の見地は違いまするが、これが妥当であると、こういう線を出しておるつもりでございまするが、将来とも、瀬谷さんのおっしゃったことを参考にいたしまして、いやしくも武器産業に一銭一厘の不正も許さないと、こういう態度で臨んでいくつもりでございます。
  141. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 物価安定推進会議が、先般、公共料金の安定化について決定をいたしまして、答申が出されておるのでありまするけれども、この物価安定推進会議関係の方、きょう、見えておるわけですか。——物価安定推進会議の当事者に来ていただきたいと思ったのでありますが、旅行中で見えてないそうでありますので、この推進会議が企画庁の諮問機関になっているということですから、企画庁長官にお伺いしたいと思うのですが、これは、いつ諮問をして、どういう形でもってそれを実施するようになっているのか、その権限はどの程度のものであるのか、その点をお伺いしたいと思います。
  142. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 物価安定推進会議は、昨年の二月に開催を決定いたしたものであります。総理大臣の諮問機関として、産業界、労働界、言論界、消費者等々、関係のある各界の最高権威と思われる人々に御参集を願いまして、そして、従来、その前にやっておりました物価問題懇談会を一年余りやってみまして、結局、物価の問題というのは、基本的には、制度であるとか慣行であるとかというところまでさかのぼらなければ、ほんとうの解決はできないということを関係者がみな感じたものでありますから、今度は少し高い次元で総理大臣の諮問機関とし、またお集まり願う方もそういう方にお集まりを願って、そうして諸種の慣行、制度等の改廃について審議を願う、こういうことになったわけでございます。この開催については閣議決定をいたしております。したがって、事の性質上、特に諮問をするという形をとらずに、問題になりましたことについてその会議自身がイニシアチブをとってやっていくという形をとっております。そうして会議は幾つかの部会に分けまして、その部会ごとに問題を取り扱うことになっておるわけでありますが、その部会では必要に応じて各省あるいは関係者を招いてヒヤリングをやっております。そうして一応部会としての結論が出ますと、それを総合部会に持ち込み、さらに物価安定推進会議で全員の出席のもとに提案を決定する、それを総理大臣に座長から提言としてお渡しをする、そういう形で過去一年余り運営されております。ただいまのところ、非常に適切にかつ有効に運営されておると考えられます。
  143. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 ついでにどういうメンバーによってこの答えが出されているのか、それらの内容についてもお知らせ願いたいと思うのですが。
  144. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) メンバーは、先ほど申し上げましたように、産業界、労働界、言論界、消費者等々、合計三十一人ほどでございます。
  145. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 名前をあげてください。
  146. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 一々名前を申し上げるより、後ほど資料を提出さしていただいたほうがよろしいのではないかと思うのです。いずれもその方面における最高権威の方々であります。
  147. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 どういう方法で選考したんでありますか。
  148. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 先ほど申し上げましたように、およそ物価問題の根底にあると思われる制度、慣行についてのいわば再検討といいますか——ということを中心に考えられてきたわけでありまして、問題が多岐にわたりますので、総合部会と第一、第二、第三という部会を設けてやってまいっておるわけであります。
  149. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 じゃ後ほど資料を出してもらいますけれどもね、ちょっと具体的にどういう人がこれに参画しているのか、よくわからないわけなんですよ。だから、その名前だけでもあげてくれませんか。
  150. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それではお求めでございますから、少し早口になりますが、申し上げます。関西電力社長芦原さん、東京大学名誉教授有沢さん、産経社長稲葉さん、富士銀行頭取岩佐さん、経団連の植村さん、三井不動産の江戸さん、日本経済新聞の円城寺さん、埼玉県全国地域婦人団体連絡協議会の大友さん、森永乳業大野さん、信越化学小坂さん、中立労連会議議長佐藤さん、読売新聞の白神さん、商工中金の高城理事長、一橋大学の都留さん、東京大学の東畑さん、全日労総同盟顧問の中地さんでございます。それから灘生協の永谷さん、富士製鉄の永野さん、一橋大学の中山さん、東部鉄道の根津さん、全国農業会議所の長谷山さん、一橋大学の馬場さん、主婦連の春野さん、関西主婦連の比嘉さん、総評の堀井さん、国民生活研究所の松隈さん、全購連の三橋さん、消費科学センター三巻さん、朝日新聞の森さん、毎日新聞の山本さん、中小企業代表の渡辺さん、こういう方々でございます。
  151. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 一応各界の人々を網羅したという形をとっているというふうに理解されますが、この答申の中で「政府は、国鉄について抜本的な再建計画が確定されないままの状況において、料金の引上げについては慎重な態度が望ましく、少なくとも基本料金の引上げは、これを認めるべきではない。地方公営企業については、現行の財政再建制度の活用をはかるべきである。」こういうのがあります。ところがこの前の質問にもありましたけれども昭和四十三年度予算が成立しないうちに、四月一日から国鉄の定期だけは値上げをされようとしております。この推進会議の趣旨から言うならば、国鉄の定期値上げも、一応基本料金ではないかもしれないけれども、この再建計画が確定されるまでは待つということが望ましいことになるのではないかと思うのですが、その点はどうでしょう。
  152. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) この問題につきましては、部会で非常に長いこと研究がなされまして、関係各省、国鉄等からも十分ヒヤリングをして提言になったわけであります。そうしてその間に基本料金でない、ただいまの問題になっております定期券の割り引き率の引き下げについても、いろいろ議論があったように承知をいたしております。そうしてその結果は、ともかく物価安定推進会議としては、いろいろ問題はあろうけれども、基本料だけはこれはやはり国鉄の再建計画の確定を待って議論すべきであるということになったようであります。これが総合部会で最終的にまとまる過程を、私としてはたまたま出席して議論を拝聴しておりましたけれども、むしろ現在問題になっておるようなものの値上げについても、あるいは割り引き率の引き下げについても、もう少し待つべきではないかという議論と、いやここまで来たら、その部分は定期の割り引き率があまりにも大きいので、これはむしろやむを得ないのじゃないか、問題は基本料金に限るべきではないかと、両方の議論がありまして、結局総理大臣に対する提言は、基本料金ということになったわけであります。そういう経緯が現実にございました。私としては、まあちょうどそこらのところが妥当な提言ではないかと思って拝聴いたしておったわけであります。
  153. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 家計に影響するという度合いにおいては、定期券の値上げのほうが、一般の運賃の値上げよりも大きいのではないか、こういう気がするわけです。それだけにせっかくここで物価安定推進会議が結論を出すのならば、この再建計画の構想がはっきりしないうちに値上げだけが、しかも四十三年度予算の審議を待たずに行なわれるということは、ちょっと当を得ていないのじゃないかという気がするのですけれども、その点については、総理にお伺いしたいと思うのですが、やはりこういう諮問機関に対して諮問をして答えを出す。答えが出た以上は、この答えというものは尊重するという態度をとるべきではないかと思うのです。事実上は、まあ答えは出たけれども、犬の遠ぼえみたいなもので、聞き流しにするということでは、これば意味をなさないでしょう。総理としては犬の遠ぼえのように聞き流しにするつもりなのか。これはやはり権威あるものとしてこの答申を尊重するとこういうお気持ちなのか、子の点をお伺いしたいと思います。
  154. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この問題は、私自身が中山座長からも提言を受けまして、ちょうどいま予算審議中でありますし、また計画も進めておる際でございますから、その際に出されたもので、現在の予算についてはどういうような感じをしておられるかということを重ねて伺ったのであります。それにつきましては、ただいま詳細に宮澤長官が説明いたしましたし、基本運賃についての問題ですということでありまして、このただいまの定期運賃、手直し程度の定期運賃、この問題は触れておりません、ということでございます。お尋ねにもございますように、提言は十分尊重するつもりでございます。私、別に違背したとかあるいは無視したとか、こういうようなことでないことを、重ねて御説明しておきます。
  155. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 無視したような、無視するような考えはないと、こういうことなんですね。しかし、国鉄の問題については、この物価安定推進会議の答申の前に、何回もいろんな答えが出ておるわけです。それらの答申というものは、はたして尊重されているのかどうか。たとえば昭和三十九年には国鉄基本問題懇談会の意見書が出ている、四十二年九月には自民党政調会の国鉄基本問題調査会の答えが出ている、さらに国鉄の監査報告書というのは毎年出ている。こういう報告書なり意見書なり、答申書なりというものが出している結論というものは、共通点があるわけですけれども、毎年毎年答えだけは出ておるけれども実施されておらないというのが実情じゃないでしょうか。その点はどうでしょうか。
  156. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 御承知のように、物価安定推進会議の問題は、ただいまの説明で一応御了承を得たかと思います。ただ国鉄の財政状態、これはたいへんただいまむずかしい状態になっております。したがいまして、これについての分析もいろいろ行なわれ、またいろいろこれについての対策も提言されております。しかし、瀬谷君も御承知のように、なかなか簡単なものでない。これは国鉄に関係のある問題でして、私も瀬谷君と同様に心配している次第でございます。私は、いまの提言あるいは提案を、そういうものを軽視したりあるいは無視はいたしません。しかし、よって来たるところがたいへん根深いものでございますから、これと取り組む、その姿勢にはほんとうに決意を必要とするのではないかと思います。物価安定推進会議が提言しておりますのも、さような点でございまして、とにかくこの問題はさらに掘り下げて、そして基本的態度、それを十分精査してしかる上で対策を立てる、それまではつなぎの方法でまず考えるべきじゃないか、かように私は提言を期待しております。
  157. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 国鉄総裁にお伺いしたいのですけれども、国鉄の赤字というふうに一言で片づけられておりますけれども、いま私が指摘をしたような基本問題懇談会の意見書をはじめとして、監査報告書なり自民党政調会の基本問題調査会等のそれぞれの答えというものは、国鉄の財政のあり方について同じように触れておるわけなんです。そうすると、赤字というふうに一がいに言われておりますけれども、はたしてその赤字の内容の主たるものは何であろうか、何が原因なのか、そういう点について総裁としてはどのようにお考えになっておりますか、お伺いしたいと思います。
  158. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) 国鉄の赤字でございますが、国鉄の赤字が最近において出てきたのは、三十九年以降であります。三十九年においては三百億、それから四十年においては千二百三十億、四十一年においては六百一億でありますが、三十九年の三百億は、これは収入がなかなか伸びない、経費は非常にふえてきたということが主でありますし、四十年のこの千二百億は、基本問題懇談会で運賃概算計画を実行するについて、その一つとして運賃の値上げをしろ、こういうことで四十年から実行するということに決定しておったのでありまするが、内閣のほうの物価問題から、物価に及ぼす影響が大きいから、これはひとつ延ばしたらいいだろうということで、結局十一カ月延ばした。それによって国鉄の一応この収入の減ったこと千三百億、それがつまり原因で千二百億のマイナスになった。それで、四十二年におきましては、六百一億のマイナスが出てきた。これは、収入というものはなかなか思うようにいかぬということと、そして経費というものが非常にふえ方が大きいということのほかに申し上げておかにゃならんのは、第三次計画でもって四十年から始めたのでありますが、四十年、四十一年、四十二年で工事資金として使う額が一兆五百億、つまり金はこれだけ使ったのだが、しかしこの投資効果の上がるのは六、七年の後である。そこへもってきて、この投資金に対する利息というものと償却というものは、これは年々見ていかなければならぬ。このつまり積み重なりがこういうようなことになった次第でありまして、さっき懇談会のことでお話がありましたが、懇談会ではまず第三次計画を実行するについて、運賃の値上げをやったらいいだろう、つまり基本料金の引き上げというものについては、懇談会がちゃんとうたってくれた。それからさらに、定期割引きもこれを是正したらいいだろうということで、これも四十一年から実行したのであります。もっとも、このときには通勤だけでもって、通学にはやらぬということで、そのほかには、つまりこの懇談会としては、公共負担の是正をやらにゃいかん、さらに納付金というものもこれをやらにゃいかんと。さらに、出資も政府がしたらいいだろう。ということは、これは通勤輸送の改善というものは、これは住宅政策の一端である。非常に金がかかるが収入が少ない。国鉄がこういうものを自分の資金でやっておった日には、利息と元金の償還で国鉄の独立採算というものは維持できんと、政府が出資するのは当然じゃないかと、こういうことにやってきたんでありまするが、なかなかその後強硬に交渉したのでありまするが、目的を達していなくて今日に至っておる、こういうふうな事情でございます。
  159. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 工事資金をはじめ投資が非常に多いと。それは赤字線区を含めて投資をして、その投資をしたものに利息がつくということになると、この借り入れ金というものが国鉄の財政の中で占める割合が非常に大きいということになるんじゃないかと思うのですが、その借り入れ金なるものは、一体どのくらいの金額になっておるのか、この借り入れ金の償却というものはいかにすべきだというふうにお考えになるのか、その点をお伺いしたいと思います。
  160. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) 国鉄の借り入れ金は、四十年については三千二百七十六億、それから四十一年が約そのくらいですか、四十二年が四千百五億、これが実に国鉄の財政不健全なるところは、工事費が四十二年においては三千二百二十億に対して借金が三千二百七十六億、つまり工事資金よりは借金のほうが多い。多い金は、利息と元金の償還に使われている。四十三年のごときにおいては、工事資金が三千七百八十億に対して借金が四千四百六十五億、つまり借金のほうが六百八十五億多い、約七百億多い。これは実に、きわめて不健全なる私は数字だと思う。もっとも、これにつきましては、さっき申したように、子供が生まれてくる投資というものが、四十年、四十一年、四十二年、一兆五百億もあるということの原因をなしておるのでありまするが、しかしどうしても国鉄の将来の財政の立て直しから言えば、基本問題懇談会及び調査会あたりで強くうたっておりまするような公共負担の問題、それから納付金の問題それから政府の出資の問題というようなことについて解決するということは、絶対に私は必要だと確信しておるのであります。
  161. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 この工事資金——そういう資金が先行をして、しかもそれに利息がつくということになると、いかに収入が多くとも、こういう借り入れ金の利息にあらかた持っていかれるということになってしまうわけでしょう、そういう点は根本的に解決しないことには、どういう方法考えてみたところで、赤字という問題は残るんじゃないんですか、赤字という問題が国鉄から消えるということはないんじゃないでしょうか。その点はどうなんですか。
  162. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) この工事資金の私は性質の問題からくると思っております。たとえば幹線の輸送力増強というものは、これは結局工事が完了して十分に動き出すようになれば、その輸送力というものを利用することになれば、その子供というものは生まれてくる。ただそこまで五、六年の間というものの利息というものとこの償却というものは、それはその後において私は十分にペイしていくことができると思う。問題は通勤、通学の問題、これはわれわれは第三次計画を策定いたしましたときには、約五千三百億というものでもってやることに考えたのでありますが、その後における通勤、通学の利用者が非常な勢いでふえてきまして、とてもこんな五千三百億ではできぬ、どうしたって七千億以上の金をかけにゃならぬ、問題はつまりこれです。これが金ばかりかかって、とても利息の支払いまではできるものじゃない、これがつまりやっかいなんです。これに対してはことしも——ちょっとこれは脱線になりますが、定期の割引きの是正なんかは、ここからきたんです。つまり利息のつかない金をどこからか持ってこなければいかぬ、幸いに国会が今度のわれわれの予算を御承認くださいますというと、そこに三百億という定期の是正による金が入ってくる、これは利息がつかない金です。三百億の金が入ってくれば、七分五厘の金でも四千億だけはつまり借金して、その借金を通勤のほうに使うことができるというようなことでありまして、こういう公共負担の是正、それから納付金だとかというようなものは当然、つまり国鉄がいましょっておる荷物で、政府が何とかしてくれにゃならぬやつが、ちゃんと本領に戻してくだされば、私どもは何にも心配する必要はないだろうと、こういうふうに考えております。
  163. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 その利息のつかない金というけれども、今度定期の値上げによって浮かぶ金は、たかだか三百億ですね、これは利息がなるほどつかないかもしれないけれども、いわば一種の大衆課税ですよ、酒やたばこも上がる。しかし酒やたばこなら、いまいましいからやめちまえということは、やってできないことはない。だけれども通勤定期の場合は、いまいましいから歩いて行こうというわけにいかないでしょう。そうするといやおうなしのこれは大衆課税ですよ。こういう問題に、事実上の大衆課税におんぶしていくということは、私は公共的な仕事をやっていくという意味から言うと、ちょっと筋が違うのじゃないかという気がする。  運輸大臣にちょっとお伺いしたいのですが、いま総裁は納付金の廃止等は、当然考えなきゃいけないとか、あるいは政府出資等も考えてもらわなきゃいかぬ、こういうような意味のことを言われましたけれども、これらの問題について、運輸大臣としてはどのように処置をしたらよろしいとお考えになりますか。
  164. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国鉄総裁が窮状を訴え申し上げたとおりでございまして、まことに同感であります。われわれはその線を実現しようと思って、今後とも努力をいたします。
  165. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 先般、自治大臣は運輸大臣と違ったことを言った。せっかくだけれども、納付金はやめてもらうわけにいかぬ、こう言った。そうすると、この納付金制度のあり方というのは、自治大臣としてどのようにお考えになるのですか、来年度に直接関係してくることなんですがね。
  166. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 国鉄の経営が苦しいことは、私どもよくわかりますが、ただ苦しいからといって税金をやめてくれと言われましても、なかなかそうはいかないわけです。で、納付金は、御案内のとおりに固定資産税と同じものでございますが、これは地方財政の基礎を確立するという意味もありますけれども、税金で一番大事なことは、負担の公平であると思います。やはりまあ同種の企業など、私鉄その他も同じように固定資産税を負担しておるわけでございますし、また個人であれ、法人であれ、破産しかかっておる人からもちゃんと固定資産税をいただくことになっておりますので、なかなかそこはむずかしい。しかしながら、国鉄の窮状もわからぬことはございませんから、相談しようということにはしておりまするけれども、このたてまえをくずすことはなかなか困難であると考えております。
  167. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 自治大臣は、いま税金をやめるわけにいかぬと、こう言った。固定資産税と同様なものであるというように納付金のことを言った。はたしてこれは税金なり固定資産税と同様なものというふうにみなしてよろしいのかどうか。これは総裁からお伺いしたいと思います。
  168. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) 私は遺憾ながら自治大臣とは意見を異にするのであります。御承知のとおり、この地方税の税法によりますというと、これは二十八年に発布されておるのでありまするが、国鉄には固定資産税はかけてよろしいと、しかし、それはつまり各市町村、その他にやっかいになっておるのです、町の中にある宿舎ですとかなんとか。これは喜んで私どもは幾ら苦しくても払うんです。しかし、この納付金というものは何であるかというと、これは大体において、地方開発のためにですよ、国鉄が血を流して鉄道を敷設し、血を流して経営している。それが現在、そしてこの地方の町村というものの大部分は非常によくなってきている。マイナスの町村が非常に少ない。大部分はプラスだ。この三十一年にですね、地方納付金を納めるときには、町村の大部分というものはマイナスだったんです。それで国がその助け舟に出るやつが弱き国鉄にこれをひっかぶされた。これは事実なんです。国鉄としてはそういう時分に私は押し返せばよかったと思うのです。それでしかも金額としたってわずか三十五億というようなことにしたのですが、年々年々これがふえていく。いまや百三十億も払わにゃならぬ。第三契約が完成する四十六、七年になると、二百億近くの金を借りにゃならぬ。三十一年から今日まで千億払っている。こういうようなことで、国鉄としてはつまり私は義理がないと思うんです。まあ涙というものは十分に出したのじゃないか。これ以上にね、永久化して、さらに国鉄から搾取するようなことはこれはいかぬ。これはひとつ自治大臣にもう少し人情味を持って筋の通ったことをやっていただきたいと私は思います。
  169. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 総理にお伺いしたいと思うのですけれどもね、まあ筋を通すということになると、地方自治体の財政に対して、どういう形でもってこの地方自治体の財政を助ける方法をとったらいいとお思いになるのか。これは国鉄の納付金というものは、一つの便法と思うのですね。こういう便法のために、今度は国鉄が財政的に苦しめられて、合理化計画等によって働く者を苦しめるとか、さらには運賃値上げという形でもって定期の値上げを行なうと、こういうふうにとばっちりがとんでもないところにいくわけなんです。そうすると、この地方財政の救済政策がですね、これは形を変えて大衆課税ということになってしまうと思うのです。こういうようなあり方はちょっと問題があるのじゃないかと思うのですが、その点はどうでしょうか。
  170. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私からお答えいたします。  いま国鉄総裁がいろいろ言われましたが、国鉄の赤字は、結局いままでは、国鉄の経営は黒字線の黒字をもって赤字線の赤字をカバーする、そうして全体としてのバランスをとるというのが、伝統的な姿でございました。それがいまくずれてしまって、黒字線の数も、黒字幅も減ってくるし、赤字線と赤字幅がふえてくるということで、全くバランスがくずれてしまったというところに、国鉄の赤字の一番大きい問題がございます。これはもう輸送構造の変化のために、国鉄が独占的な企業力を失ったということからもきておるものでございますから、この問題をとらえて、根本的な対策をするんでなかったら、国鉄の再建は私はできないと思います。したがって、このほんとうの再建対策ができない間に、国が少しくらいの出資をするというようなことで、この国鉄が当面している問題は、私は解決しないというふうに考えているわけです。ただしかし、国鉄の悩みのうちで、この通勤輸送対策というものは、これは相当真剣に考えなけりゃならぬ。これは国民経済の要請に応じた、いわば国鉄にとっては公共負担でございますので、この問題で国鉄が非常に投資に悩み、ピーク時の混雑を解消するために、それだけの設備をしなけりゃならぬ。あとの時間はそう輸送力はなくってもいいというようなことになっておるのに、そのピーク時の輸送対策をしなけりゃならぬということは、国鉄としては、相当投資の効果が薄いものでございますので、これについては、私ども十分国でも考える必要があるということで、今度はわずかな国の出資というようなことでは解決しない。これは根本対策を立てて、これができたらその上に国の財政援助をしようという方針で、とりあえずは、この通勤輸送対策に対するめんどうを見たいということから私ども考えて、これに投ずる財政融資はもう思い切って見る。そうしてこの三次の計画の間においては、国が一定の利子を補給して見てやる。結局二兆九千億のこの全部の計画に及ぶ資金の利子を少し見るということで、総額は一千億近くなろうと思います。こういう形でこの通勤輸送対策というものは、とりあえず見ておきながら、根本対策を早く立てたいというのが私ども考え方でございます。したがって、この再建計画というものをどうしても立てなけりゃなりませんが、その再建計画というものができている期間くらいは、私は自治大臣、国鉄総裁、いまいろいろ言い合いましたが、これは国鉄も相当赤字線で地方開発のために犠牲になっておるんですから、固定資産税をまけろというんじゃなくて、再建期間中くらいは、これはやはり地方が国鉄を助けてやってもいいんじゃないかという気が私はいたしまして、そういう考えのもとに、今度の予算の内示をいたしましたが、どうも政府部内でその話がつきませんでしたので、これはあとへ見送るということで、ことしは実現できませんでしたが、いま総理にその点の御質問がございましたが、私への気持ちということを聞かれましたら、やはり計画は必要だと、計画が立ったらその期間くらいは考えてもいいんじゃないかというような気がいたします。
  171. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 通勤輸送対策は、ともかくめんどうを見たいというふうに大蔵大臣おっしゃいましたけれども、めんどうを見たいというけれども、一番最初やるのは通勤費の値上げでしょう、四月一日から、手っ取り早いところ。これはめんどうを見る前に横っつらを張るようなものなんですね。で、横っつらを張っておいてからめんどうを見るというふうに約束をするのかもしれませんけれども、自治体の場合は、自治体の財政をどうやって救済するかということは、納付金の問題とは別個に、じゃ考えるというふうにおっしゃるのですか。ただがまんしろということでは、自治大臣また一言なかるべからずということになっちゃうのじゃないかと思うのですが、その点はどうでしょうか。
  172. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私は、物価安定推進会議できめた提言はいいと思いますが、根本策が立たない間は、基本料金をいじるなということは、私はもっともだと思いますが、いま言った通勤輸送対策のほうは別でございまして、当面急を要している問題でございますから、一部受益者にいまの割引は相当高率でございますので、ここを調整するというくらいのことは必要でございますし、それに政府の財政援助というものを加えて、このいわば国鉄の悩んでいる公共負担的な問題については、やはりこれは別個に切り離した対策が必要だ、こういう考えから、国の利子補給もやりますし、国鉄側も高度の割引についての調整はするということになったわけでございます。
  173. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 関連。国鉄の納付金は確かに問題でありますけれども、国鉄の負担金も地方はあるわけですね。なお、当然国が持たなければならない分についての超過負担もあるわけです。したがいまして、超過負担あるいは法律に基づかないもろもろの負担金というものをどう統制するかということを、国が方針を立てませんと、単に国鉄の納付金だけの問題で地方財政の解決にはならないと思うわけです。納付金でもらう分よりも、むしろ負担金で出す分のほうがはるかに多い、この現状というものを解決しなければだめで、これはむしろ国の財政対策というものが、地方にとりましては、必ずしも一〇〇%の満足を与えておらないということになろうかと思いますが、大蔵大臣いかがですか。
  174. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) そういう問題は、さっき申しましたように、いつまで赤字でおっていいと……。ただ事業する以上は当然融資いたしますし、融資すれば、金利が出るのですから、これを別におそれる必要はない。要するに、全体計画ができて、そうして将来、この赤字が消えるという、はっきりした対策ができるなら、それでいいんでございまして、国鉄は、ただ苦しい苦しいというだけではなくて、根本対策を立てて、そして再建策を立てて、これによればこういう形で国鉄の赤字はなくなるのだという、やはりめどのついた対策を立てるべきだと考えます。その過程において、いま言ったような問題が、いろいろ適切に当然考慮される問題だと思います。
  175. 加瀬完

    ○加瀬完君 国に責任があると思うのですよ、むしろ、国鉄ではなくて。
  176. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 関連。いま大蔵大臣は、交通対策に抜本政策をとらなければいけない、こういうことを言われているのですが、わが社会党としては、過去何回か、政府にそれらを要請してきている。ですから、むしろ、そういうものがなってないというのは政府責任じゃないかと思う。ですから、その抜本対策が、いつごろ政府としては総体考えられるのか、この問題が一つ。  もう一つは、通勤対策については、いま瀬谷委員が指摘をされましたように、大衆課税となるから、そういう問題については、できるだけ政府としても支援をしたい、こういうことを言うことは、その点では私も認めますけれども、しかし、もっと基本的にさかのぼれば、一体、日鉄法の第五条にはどういうことがあるのですか。これは明らかに、国鉄の投資形態というものが、政府がやるのが基本じゃないか、それを全然政府が言いのがれを言ってやらないわけでしょう。そうして戦後は全然投資もせず、戦前の荒廃状況をそのまま放任しておったところに、いま国鉄が大投資をして、金を使ってやっていかなければいけないという非常に苦しい状況があるのだろうと思います。そういうものですから、政府が本来、国鉄に対する投資計画というものをやらなければいけない、こういうことであるのですから、その辺の理解を十分深めてもらわなければいけないというふうに考える。  もう一つは、私が理解する限りでは、現在国鉄には二百四十三線区くらいあると思います。このうち、かろうじて黒字となるものは、私の理解では二十線区くらい、あとはほとんど政治路線といわれる赤字線区です。そういう中において、独立採算を強要されて国鉄がすべて経営の中でまかないなさい、こういうのが政府の態度ではないか。そういうところで一体国鉄が、いま大蔵大臣の指摘をされましたように、一千億もする利子を払ってばく大な投資をやっておる。それが全部国鉄の労働者や国鉄の経営者にすべて責任が負担させられる、こういうのがいまの実態ではないかと思う。ですから私は、そういう国鉄の経営の内容に政府が無理じいをしている点が多くあるから今日の状況を生んでいるのだろうと思うのです。そういう面洗っていっても、やはり財政的にてこ入れを、政府がもっとめんどうを見てやるのが私は至当じゃないかと、こう思うのですが、その辺はどうですか。
  177. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いま物価安定推進会議、ここの提言は、経営再建特別委員会をつくってこの問題と取り組めという御提案でございますが、それよりも早く、もう政府部内においてこの問題とは取り組んでいまして、いま財政当局と国鉄と運輸省に、実に緊密にこの問題を引き続き検討しておる最中でございまして、遠からず私はこの再建計画が出ると思います。こういうものが出ない間に、ばらばらにいろいろな国家の財政援助ということも、実際は効果がなくて、問題の解決にはなりませんので、私どもも、これはいまこの再建策を、関係者でこれは緊密な連絡でやっておりますが、近く結論が私は出ると思います。そういうものが出てから、初めて国はどういうことをすべきかというような問題を私ども考える。それまでに、とりあえずいま国鉄の悩んでいるうちの一つの大きいいまの通勤輸送対策については考える、そうして三次計画についての利子補給も、約九百何十億、一千億近い利子補給を国が確保するという対策を今年度立てたということで、引き続きこの本体のほうの再建計画を立てたいというふうに考えております。
  178. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 遠からずということなんですけれども、いままで何年も前から同じようなことを繰り返して、同じ議論を繰り返してきているわけです。わりあいと結論は簡単だと思うのですね。先行投資で、本来ならば国が考えなきゃならぬ分を国鉄に全部しょわせていたというところに原因があったわけです。ですから、いまのような制度を繰り返していく分には、昭和四十三年度で九千三百億の収入を見込んでいるわけですね、国鉄は。しかし、いかにこの収入がふえたとしても、ふやしたとしても、同じように借金の利息にあらかたとられるということになると、さいの川原で石を積んでいるようなもので、総裁がどんなにがんばったって私は問に合わぬと思うのですよ。こういう制度をどのように改良したらいいかとお考えになっているか、総裁からお伺いしたいと思います。
  179. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) これは、さっきから繰り返して申し上げますように、まず政府及び国会がつまり国鉄にしょわしておるお荷物なんです。つまりそのお荷物の大きなものは公共負担、これを国鉄のひとつ肩からはずしてもらいたいということです。  その次は、さっき納付金の問題、これは私はやっぱりどこまでも筋を立ててもらいたい、もう相当に御奉公してきたんです。この辺で御満足願っていいんじゃないかと私は思う。  それからさらに赤字線の問題でありまするが、最近の情勢からいくというと、地方の線というものは、収入はふえることはふえるが、きわめて徐々である。しかも、経費というものは遠慮会釈なくふえてくるということで、赤字線による総額というものは相当なものだ。いま私どもは、この赤字線経営の問題について委員会をつくりまして検討しておりますので、この結果を運輸大臣を通して総理大臣のところへ出しまして、そうして御判断を願うことになると思いますが、これは何とかやっぱりしてもらわなきゃいかぬ。しかも一方には、新線建設というようなものがまた別に新しく出てきている。こいつも何とかして、もしもやるなら政府がひとつ保証してくれるというようなことに考えてもらわないと、現在の赤字線は解決しても、またあとから出てどうにもならぬ。これはひとつ、たとえば公共負担のごとき、これは御承知だと思いますが、昭和二十四年から昭和四十二年までに、国鉄がしょってきたやつが一兆二百億なんです。全くこれは国鉄というものが政府のお荷物をしょったと、さらに昭和二十四年からの運賃の問題でありまするが、時まさにインフレーション、インフレーションになるというと問題が物価問題、そこでいわゆるインフレーションによって国鉄の経理というものは遠慮会釈なくふえていく、そこで運賃の値上げを議会へ出し、政府にお願いする、ところがインフレーションのときには物価問題、物価問題に響くからいかぬとこう言われる。今日の通勤の問題と同じことですね。これで運賃はしょっちゅう安く押えつけられてきている。そのために国鉄は自己資金をつくることができない。二十四年から三十一年までに工下経費として使ったものは五百億くらいなんです。それが今日の輸送力の不足で、過密ダイヤの原因になり、通勤輸送の交通地獄だと、こういうことなんです。これについては、政府アンド国会においてもう少し国鉄に対して愛の精神を私は示してもらいたい、こういうことです。
  180. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 通勤輸送の逼迫ということは、結局私は住宅対策の不備からきていると思うのです。だから住宅問題の不備のまま通勤輸送を云々しても始まらぬと思うのです。都市計画ということを考え、住宅対策ということを考えていくということが必要だろうと思うのでありますけれども、そういう根本問題について建設大臣は構想がおありになるのかどうか。  それから独立採算と公共負担というのは、私は両立しないと思うのです。これは総理にお伺いしたいと思うのですけれども、ベトナム戦争とドル防衛は、やはり両立しないと思うのですけれども、これと同じように、独立採算と公共負担というのも両立しないと思うのです。これを両立させるためには、赤字のわかっておる新線建設なんかは考えなければならぬと思うのでありますが、これをどういうふうに処置されるおつもりか、お伺いいたします。
  181. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 住宅問題と通勤施設がちぐはぐで、よくマッチしていないという点は、これは都市周辺の全体の傾向として認めなきゃなりませんので、運輸当局とも連絡をとりまして、そういう点については十分の配慮をしていく。要するに住宅政策を強く推進してまいりますためには、都市並びに都市周辺の土地問題とまっこうに取り組まなければどうにもならないというところに立ち至っているという認識を持たざるを得ないんじゃないかということで検討をいたしておるわけでございます。最善の努力を払ってまいりたいと考えております。  私はお時間をお借りしまして、この際、ゆうべと申しますか、今暁と申しますか、鹿児島、宮崎の地震の情報を手にいたしておりますから、御参考までに御報告を申し上げます。  先月の二十一日、二十二日、えびの、吉松方面を襲いました地震、政府といたしましてはそれの復旧対策を急いでおります矢先に、昨晩、同様の地帯に——吉松、えびのを中心にしまして、かなりの地震が起こっております。まことに被災者の方々にお気の毒に存ずる次第でございますが、大体の様子は、えびの、吉松で震度五の弱。震度三の地帯が熊本、鹿児島、宮崎、枕崎、阿久根、牛深、都城、雲仙。  被害の状況は、宮崎県におきまして、住宅の全壊、山腹の崩壊によって一戸。道路被害が、国道二百六十八号線、県道えびの−真幸線と申しますか、崩土及び亀裂によって交通が不能に陥っております。鉄道は、京町−古松間、地盤の沈下のため不通になりました。また、えびの町柳水流において断水になっております。なお、今暁停電もいたしましたけれども、四時五十分ごろ電灯の点灯が回復いたしております。その他の事情はなお調査中であります。  鹿児島県におきましても住宅の全壊が一戸、半壊が三十六戸、断水ば鶴丸、原口にて断水をいたしております。八時半ごろ給水のため国分自衛隊の出動を要請をいたしております。国道二百六十八号線、町道に崩土がありまして通行不能に陥っているというような状態でございますが、ただいままでのところ、人命の損傷は幸いになかったようでございます。  あわせて御報告いたします。
  182. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 独立採算制と公共負担、これはなかなか両立しないという御指摘でございますが、私が申し上げるまでもなく、公社あるいは地方公共団体の公企業体、これらは原則として独立採算でその運営をはかっていくというのが本来の筋だと思います。同時にまた、これらの事業そのものがたいへん公共性の高いものでありますから、そういう意味におきまして、公共性の使命を十分に果たす、こういう意味で運営されなきゃならない。でありますから、私は独立採算制と公共負担というものは矛盾すると、かようには必ずしも私は思いません。事業の性質上、その公共の目的も達し、また同時に独立採算であるべきものだ、かように思いまするが、ただ問題は、この公共負担が非常に強度のものが要求されるとか、あるいは負担し切れないようなものまで公共負担という名目でそこに課せられておる、かように相なりますと、その点は考えていかなきゃならぬだろう、かように私も思います。
  183. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは瀬谷君の質疑は終了いたしましたが、この際、十分間休憩いたします。    午後三時九分休憩      —————・—————    午後三時四十一分開会
  184. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) ただいまより委員会を再開いたします。  午前中の委員会において、瀬谷君並びに鶴園君から御質疑のありました議長の旅行の問題につきましては、理事懇談会において、議運委員長が出席されまして、議運委員長及び理事の方々が議長に会われ、議長の真意及び釈明を聞き、これを各党に持ち帰り検討中である旨、中間的経過の御説明がございました。  以上、御報告申し上げます。     —————————————
  185. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) これより質疑に入ります。矢追君。
  186. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 本論である外交、防衛問題に入ります前に、午前中におきまして、保利建設大臣より御報告のありました宮崎のえびの、さらに鹿児島の吉松町の地震の問題につきまして、今後の復旧の見通しについてお伺いしたい。ことに、この地震は群発性地震といわれ、さらに今後地震が続く、このようにいわれておりますが、その点も含めまして今後の復旧見通しについてお伺いしたい。
  187. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 先月の二十一日、二十二日に起きました被害に対しましては、政府としましては、必要な予備費等の支出を願いまして、ただいま復旧に全力をあげておったところでございます。昨晩の状況は先ほど申し上げましたとおりでございまして、建設省の関係としましても国道の亀裂、そういうものも生じておりますから、重ねて至急調査をいたしまして、適切な措置をとって誤りのないよう期したいと考えている次第でございます。
  188. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 もう一つお願いしたいのは、今後起こり得る地震を含めての上で、群発性地震に対する処置も考えておられるかどうか、その点についてお伺いしたい。
  189. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国鉄関係におきましては、三月二十五日未明の地震によりまして、吉松−京町間、吉松−都城線ですね、この中の吉松−京町間に路盤の沈下六カ所、橋梁の変状一カ所がありまして、この区間は列車運転を中止しております。あとは異常ない模様でございます。
  190. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 地震の性質はどういう性質のものであるか、またどういうことであるか、私のほうでは実はつまびらかにいたしませんのでございますけれども、しかし、とにかく対策については十分研究をしてまいるつもりでございます。御了承願います。
  191. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 地震の予報やいろいろの警戒の問題でございますが、気象庁から専門家を常駐させておりまして、常に観測をやっております。それから東大からも参りまして、両方で緊密な連絡のもとにやっておりますが、漸次鎮静に帰しつつある模様でありまして、それほど大きなものが起こるというデータは現在のところございません。  なお、全般的な概況報告を受けましたところによりますと、日本列島には数年来大地震がないので、かなりのエネルギーが蓄積されてあるので、やはり地震が起こらないとはいえない。どこに起こるか、その辺の正確なまだデータはございませんが、ある程度の警戒を要する段階だということでございます。気象庁といたしましても、いろいろ手配をいたしまして、国民の皆さま方に不安のないように措置を講ずる所存でございます。
  192. 小平芳平

    ○小平芳平君 関連。いまの運輸大臣の御答弁で、研究をさらに進めている、この点は長野県の松代でずいぶん長い間にわたって非常に不安な思いをしたわけですが、そのときに、もっと予算があれば、より正確な予報ができるのだというようなことを聞いたこともありましたが、そういう点はどうかということ。  それから建設大臣に。一番不安なのはやはり住宅問題だと思うので、さしあたっていま大臣からは道路の復旧についてのお話がございましたが、住宅の復旧について、特にいますぐ耐震性の住宅をすべて建築するというわけにもまいらないかと思いますので、木造の場合だったらこういうようにすることがこういう効果があるということは、すでにこのえびの町で、前の地震で半壊になった家屋がこういうふうにしてあったところはこういうふうに助かったというふうな点も新聞で報道されております。したがって、住宅の全壊、半壊の人に対する復旧の措置、この点について、建設省として普通のほかの災害とは違った、やはりまた起こり得るかもしれないというこの地震の復旧に対する建設省の考え、今後の措置、この点についてのお考えがあればお聞かせいただきたいことと、特にその点に注意をして研究していただきたいと思います。いかでしょうか。
  193. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 地震の予知等につきましては、やはり地殻の微細な震動の記録及び地殻の移動等に関する精細な、また継続的な資料の調査が必要の模様であります。松代地震等の経験もございまして、そちらの学問も急速にいま進みつつあるようでございますが、現在の情勢は十分とはいえませんが、必要不可欠な分くらいの観測網は張りめぐらしておりまして、非常に深甚の注意をもって見守っておるという状態でございます。
  194. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 住宅の復旧につきましては、特に配慮をいたしておりまして、住宅金融公庫からも人を現地に行ってもらって、そうして指導をいたし、災害復旧として可能な限りにおいて最大限の便宜を与えるように指導いたしております。なお、この間倒れたじゃないか、どういう構造でいったらいいかということは、これはなかなかむずかしいところでございましょうが、現地でもいろいろくふうもされておりましょうし、住宅当局におきまして今後十分研究を積ませるようにいたしたいと思います。
  195. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 それでは最初に、沖繩返還問題につきまして総理にお伺いいたします。  去る十九日の本院予算委員会におきまして、総理は沖繩の返還について、核つきであるならば国民の信を問う、このように言明されましたが、この国民に信を問うということはどういうことであるか、具体的にお話を願います。
  196. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 去る十九日の私の発言、私もまだ沖繩返還の内容をきめておるわけではございません。ただ私がいままで沖繩返還問題については白紙だということをしばしば申しますために、白紙ということはどういうことだと、こういっていろいろお尋ねがあり、またそれからいろいろ仮定の問題まで引き出されております。で、私が白紙だと申しましたのは、ただいまの沖繩の軍基地の模様も十分はっきり私は握っておりませんし、また、今後の防衛、米軍基地として基地のあり方ということもこれはよくアメリカと相談しなければならないことではないだろうか、かように思うのであります。また、その後返還が実現するまでには国際情勢の変化もありましょうし、また、科学技術の進歩などもあるわけでございます。したがいまして、私がどういう形で返還が望ましいか、これは依然としてまだきめてない、いわゆる白紙の状態でございます。で、羽生君からいろいろ聞かれまして、一つの仮定の問題を提供されました。それに私自身が答えて、そういうようなことでもあればというのを申したのでございます。これは私の本来の白紙という事柄に一つの方向を示したものではございませんから、誤解のないようにお願いしたいと思います。したがいまして信を問うといたしましても、ただいままだその信をどういう形で問うかと、そういった具体的な問題については全然検討はいたしておりません。
  197. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 まあ白紙ということをずっとおっしゃっておりますけれども、ただいま仮定ということを言われたと、そういうことで核つきであるならばと、こう言われましたけれども、そういうことを総理が言われるからやはり核つきではないかと、こういう疑いがどうしても起こってくるわけです。その意味におきましても、やはり私どもといたしましては、そういう仮定にせよ核つき返還をほのめかされたと、こういうふうにどうしても国民もとりたくなるでしょうし、私どもとしてはとらざるを得ない。その点についてはどうお考えになりますか。
  198. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 当時答えたのは、ただいまお答えしたとおりの気持ちでございます。しかし、新聞の報道その他では、よほど私が核つき返還を何か予定しているかのような印象のある報道がされております。今日ただいま矢追君から重ねてお尋ねがございましたので、私の真意を明確にすることができたと思いまして私自身も喜んでおりますが、まだもちろん方法もあげておらない、具体的なものではない、これまた重ねて申し上げておきます。
  199. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 この白紙論がずっとあるんでありますけれども、両三年の間にめどをつけるという、こういうことははっきり言われたと思います。しかし、この両三年にめどをつけるということは昨年最初に言われた。また、本年の総理の所信表明においてもやはり両三年と言われた。そうなると、いつになれは両三年——だんだんだんだん延ばされてきてですね、いつがしまいか。ことしになったんですから、両三年ではなくて来年とか、あるいは再来年とか、はっきり言われてはどうかと、こう思うんですけれども、いかがでしょう。
  200. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは私が昨年末ワシントンに参りましてジョンソン大統領と話しし合ったときに、両三年のうちに返還のめどをつけたいと、こういうことが日本のわれわれの率直な願いだと、こういう話をし、また、そのことを受けて、ジョンソン大統領は返還の方向でとにかく継続的に協議しようじゃないか、こういう共同コミュニケが出ております。したがいまして、昨年からもうすでに半年たっております。そういう意味ではそれはそれだけ短縮されてもいいだろう、こういうように数学的には出てくるんだと思います。でありますから矢追君がそういうことを言われるのも、もう一つの大事なことは、何といっても沖繩が二十数年間異民族の支配を受けている。そういう意味で沖繩の同胞としては一日も早く日本に帰りたい、復帰したい、そういう意味の交渉政府も積極的にぜひ持ってほしい、両三年——いつまでたっても両三年ということを言わないで、その交渉をしろというお気持ちだと思います。また政府自身も、私もそういう気持ちでただいまおります。できるだけ早くアメリカとの話し合いに入りたい、そういう点でめどをつけるようにそういう会議を持ちたい、かように私も考えております。ただ、ただいまの時期は必ずしも適当な時期でないようでございますので、もう少し私ども検討すべきものもございますし、またアメリカ側にも考えていただきたいものもある。したがって、本年はとりあえず小笠原の祖国復帰、これを実現し、そうしてその模様とにらみ合わして沖繩の早期復帰への継続的な協議に入りたい、かように考えております。
  201. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いまのお話伺っておりますと、やはり本年は小笠原が返還になったと、それがどうなるかをきめてから方式をきめる、あるいはいつ返るかをきめる、こうなるから私は国民が納得できない。それはアメリカとのいろんな交渉で条件等をつけなければならぬ面はあると思いますけれども、やはり外交というものはある程度線をきめてかからなければならない。それを努力していくのがやはり政府としての態度であると、このように思うわけでありまして、その点についてもう少し明確に総理として言えないものかどうか、重ねてお伺いいします。
  202. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはできるだけ早くということでございます。また私はあらゆる機会を通じてそういう機会をつかみたいということでいろいろ努力をいたしております。ただいま高瀬君がアメリカに参っておりますが、これなどももちろんこういう沖繩の祖国復帰についての一つの話し合いといいますか、布石、そういうことの内意を求めるものでもございますし、また外務大臣が絶えず駐日大使といろいろ話し合いをしております。まあその後の状況はどうだろうかと、いろいろ事前協議ではございませんけれども、随時協議をしているというのが現状でございます。
  203. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 先ほど国民の信を問うというところで、日本国民の信を問うことはわかりましたが、もしそういう場合、沖繩住民の意思はどのように尊重されるのか。
  204. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 沖繩の同胞の意思、その考え方は十分考慮しなければならないと思います。私は絶えずこの問題について考慮すべきことは、今後の国民世論の動向、これも一つの大きな問題だということを情勢の変化とあわせていつも念頭に置くべきだということを申しております。したがいまして、矢追君もその点では御理解をいただいておるかと思います。沖繩の方々、これは一日も早く祖国復帰を願っておる、かように私は確信しておりますので、政府としてはその方向で努力すべきではないか、かように考えます。いろいろのその方向について、これは私が言うとおりにいたしましても、あるいはいろいろな条件などもあろうかと思いますけれども、これらの事柄について、ただいまの段階でそういう点にいろいろ触れることは私はあまり意味がないことのように思いますし、いましばらくこれには時間をかしていただきたい、よろしくお願いいたします。
  205. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 私が聞いているのは、本土でありますと、解散あるいは総選挙という手段がございますが、沖繩の場合、住民の意思を尊重する場合は具体的にどういう形をおとりになるのか、まあ将来のことでありましょうけれども、お伺いしておきます。
  206. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほどの場合も、本土の場合もとおっしゃるが、先ほどお答えいたしましたように、まだそれは具体的に私は考えてない、この返事で御了承いただきたいと思います。
  207. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 では、沖繩の問題でやはりその両三年の返還の問題、あるいは核基地論等がございますけれども、ここにおいて私どもとしては、どうしても核基地というものが問題になってくると思います。沖繩の持つ核基地というものはどういう価値があるのか、どういう力を持っているかということを評価されているか。
  208. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 沖繩にあると想像されております、しかも前の国防長官のマクナマラ氏が言明されたところによりますと、メースBが三十六基ございます。そのメースBというのはキロトン級の核でございまして、到達距離は二千二百キロと言われております。それから、われわれの想像でございまするが、ナイキハーキュリーズが若干ございまして、これは核、非核の両用である。その辺はしかとわかりません。核、非核両用のナイキハーキュリーズがございます。
  209. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 総理はしばしば、日本の安全は日本の持つ自衛力、それと安保条約、さらにアメリカの核抑止力と、こう言われておりますが、その中には沖繩の核基地が含まれておるのかどうか。
  210. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、いわゆるアメリカの核の抑止力というものがわが国の安全保障に役立っているということを申しておるのであります。沖繩のメースB等の基地、これについてはアメリカのマクナマラ長官も議会で証言をしておる。その証言によると、両三年の間はこれは存置するようになるだろう、かように申しております。したがいまして、この議会における証言そのものがメースBの評価、これをあらわしておるんではないだろうか、かように私は思います。したがって、全然意味のない、役立たないものならば、ただいま存置するというようなことは言わないだろう、かように思いますので、このことから沖繩の核基地が持つ意義を評価をしてもいいんじゃないかと、私はかように考えます。
  211. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 マクナマラ長官は二月一日の国防報告で、沖繩のメースBは予定の七二年より二、三年早く撤去されると、このように示唆をされておりますけれども、こういう状態になっても核基地を撤去させることはむずかしいかどうか、その点はどう考えておりますか。
  212. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、マクナマラ長官が証言したように、これを撤去した後に他の方法をとるのかどうか、これは撤去してあそこには核基地を置かないというのかどうか、そこのところはちょっと不明でございます。したがいまして、こういう点をも含めてアメリカ側と十分協議する必要があるのじゃないか。先ほど冒頭に申し上げましたのはそういう点でございます。
  213. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 マクナマラはそういうように言っておりますし、さらに先日エドワード・ケネディ上院議員は、沖繩返還の拒否は誤りであると、このようにも言っておりますし、また前駐日大使のライシャワー大使もやはり、沖繩は核抜きでいいと、こういうようなことも言っております。先ほど総理が言われたこともわかりますけれども、こういう科学技術の進歩、またメースBの撤去もある程度サゼスチョンされておるわけですから、だから、沖繩も核抜きで返せと、返してもらいたいと、こういう姿勢をやはり国民の前にはっきりした上で外交交渉に当たられると、そういう姿勢をとられて私はいいと思うんですが、依然として白紙であるとか、そういうように言われる点を私たちはどうしても核つきを疑いたくなると、こういうことでありますので、その点について総理の所信をお伺いしたい。
  214. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ケネディ上院議員や、またライシャワー前大使、これなどの御意見はたいへん、個人の意見にしろ、もろちん私はそれを評価すべき点であると、かように考えております。まあ問題は、この種の意見が各方面で出てくることは、問題が解決するのにもたいへんしあわせじゃないのかと、かように思います。しかし、何といいましても、責任のある立場ではただいまないのでありますから、ただいまのような日本の安全確保、長期的観点に立っての日本の安全確保、これはまことに重大な事柄でございますから、そういう意味で私は慎重にこの問題と取り組んでおるわけであります。もちろん、そのケネディさんやライシャワーさんを全然度外視する、全然評価しない、こういうことでないことは御承知のとおりでございます。
  215. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 私が言っているのは、そういうこともあるし、いま総理もそのように評価しておられるのですから、だから、核抜きで返還を要求しているという姿勢でいくということを言われても決して悪くないと思うのですけれども、何かそういうことを言えば安全保障に差しさわりがあるのか、何か中共の脅威が大きくなるとか、そういうお考えの上でやられるのかどうか、お伺いしたい。
  216. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 矢追君の言われるように、こういう問題は、私は慎重な上にも慎重を期すべきではないだろうか、かように実は思うのであります。一国の安全保障という問題でございます。したがって、ただいまの矢追君の御意見は御意見としてもちろん拝聴いたしますが、私は先ほど来申し上げるような状態で、いままでも米軍基地のあり方というものについて、私はただいまはっきりした考え方を持っていない、このお答えを重ねるだけでございます。御意見を全然無視するというわけではありません。そういう御意見もよく拝聴いたしておきます。
  217. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 次に、非核三原則の問題でありますけれども、この非核三原則を総理は言われた以上、今後日本政府は、いままでもそういうふうにやってまいりましたけれども、今後ともとっていかれると思いますが、この非核三原則は永久的なものと考えてよいかどうか、お伺いします。
  218. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 矢追君も御承知のように、一つの政治の目標というものはございます。また、その目標を達成するためにどういうような施策をとっていくか、こういう問題もあると思います。私どもが唯一の被爆国である、そして核をにくむ、その立場に立って、私どもはこの世から核兵器というものがないように、絶滅を期したい。そういう一つの悲願、そういうもとにおける一つの目標を立てておると思います。この点では与野党ともに私は同一だろうと思います。しかし、これから先いろいろ科学技術も進歩してまいりますし、また世論もそういう意味では動いてまいるだろう。現実の問題として考えますと、ただいま核兵器のあること、これはもういなめない現実でございます。私は、そういうもとにおいて日本の安全を確保する、こういう場合に、私どもの政治目標を直ちに決議し、そして国民を未来永劫に縛っていく、これはやや事態としては行き過ぎではないだろうか、かように私は思うのであります。しかし、国会の決議そのもの、これは十分皆さん方が、ただいま申すような点はわかり切ったことですから、それを含んで御審議なさると思いますが、国会が決議されたら、私ももちろんこれに従うということをいままでも申してきておるのであります。  問題は、政治の目標、同時に現実の問題と、これを一緒にしないようなことが必要ではないだろうか。したがいまして、各国とも核兵器というものをにくむべきものだとは言いながらも、国会でまだそういうことを決議したところはどこにもない。日本がひとつ先べんをつける、これはたいへんいい態度だと思いますが、これはちょっと現実離れがし過ぎているのではないだろうか、こういう気もしないわけでもありません。また、今後の兵器の発達、これは科学技術の進歩によりまして、はかり知ることのできないようなものであります。ただいま核兵器はできたばかりだと、かように言っても過言ではないのではないか、かように思いますので、ただいまそれだけを未来に引き続いて国民を縛っていく、これは私やや慎重さを欠くのじゃないだろうか、かように実は心配しているところであります。ただいま自民党の総裁としても、さような立場で自民党の諸君がいろいろ考え、この核三原則、核政策に対する決議案を提案している、こういう事実も私は十分知っているわけでありますから、そういう意味でただいまの決議案は慎重に扱われるものだ、かように私は思うのであります。
  219. 黒柳明

    ○黒柳明君 関連。総理お尋ねいたしますが、先ほどの沖繩のことでちょっと関連してお伺いしたいのですが、沖繩にあるB52また核は極東の緊張に対する抑止力である、従来こういうふうに政府答弁を私はお聞きしておりますが、せんだって三木外務大臣が、もしB52が沖繩からベトナム爆撃に行っていれば、これは戦力になる、こういうことをおっしゃったわけですが、また総理大臣も、ベトナムに行っていると思いますと、このような発言を衆議院予算委員会でされたわけであります。そうすると、総理大臣も、B52は抑止力であったと、こういう従来のお考えから、戦力、こういうお考えに変わった、あるいはそういうこともあわせてB52は持っている、抑止力でもあり戦力でもある、こういうふうにお考えかどうか。  それから、もう一点は、当然沖繩返還の問題は目の前だと思いますけれども、その焦点は、核つきであるかいなかの問題です。であるならば、ただいまの御答弁のように、何かアメリカが、マクナマラが、いまもって三十六機ある、こう言ったと、このような政府の発言じゃなくして、もうちょっと沖繩にある、軍の機密もあるでしょうから、米軍に、わが日本政府として知ってもらえる、し得る可能性の範囲ぐらいは、もうちょっと打診もしあるいは調べもして、そうして国民の前にそういうものをもっとオープンにして、そのことによって、先ほど総理が言いました沖繩の信を問うということはまだ未知数だが、その信を問う一つの要素としても沖繩の状態というものをもっとオープンにしていかなければならない。特に核の問題については、でき得る限りのことを打診をし、私たちに教えもすることが政府立場じゃないか。そのことがさらに沖繩に対する国民の好意というものをつくり、返還の方向に向かって進めていくのじゃないか、こう思うのですが、この二点についていかがでしょうか。
  220. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) B52、これはかつて核 兵器を積んでおるいわゆるスリーBの一つだ、ヘ ビー・ボンバー、こういうことが言われたのであ ります。そこで、沖繩に出かけたB52、これが核 を積んでいるか積んでいないか、かようなことを 考えますと、私は積んでいないという実は結論 を、そういう考え方をしているのであります。御 承知のように、ベトナム戦争ではアメリカは核は 使わない、またその他の場合におきましてもアメ リカは進んで核兵器を使わない、こういうことを 実は申しております。したがいまして、ただいま 戦闘に参加するB52、これは核兵器は積んでいな い、かように考えるのが正しい考え方ではない か、かように思っております。  そこで、B52は御理解をいただくといたしまし ても、ただいまのメースB、これは核基地である こと、これは先ほど防衛庁長官が申すように相当 の威力。長距離な、長距離にわたって一つの効果 を発揮する。したがって、これは戦力ということ は言えるかと、かように思います。しかし、その 基本的な態度においては、みずから進んでこうい うものを使う、こういうことはない、この前提だ けは国民の前に大いに理解していただきたいと思 います。  そこで、メースBの実態については、その機数 やあるいは性能等も一応わかっております。私 は、この沖繩の軍基地、これはまあ補給基地とし て十分の働きをするのだ、あるいはまた四万五千 名の兵隊がいるという、そういう意味で臨機な処 置がとれるのだと、こういうようなことが言われ ております。おりますが、同時に、さらに私はこ の基地の性能をもつと正確に把握すべきじゃない か、かように思います。この点は、ただいま軍の機 密もございましょうから、そう全部が公開される ものだとは思いませんけれども、少なくとも政府 の最高者がアメリカと交渉する場合に、その実態 を十分把握しないで、そうして交渉するようなこ とがあっては国民に対して申しわけがないという のが私の考え方でありますから、そういう意味で 現状の把握をもっとすることと、さらに今後そう いうものがどういうように変わっていくのか、そ れも十分話し合ってみたいのであります。ただい ま一部で言われておりますように、あるいはケネ ディさんが言ったと、あるいはライシャワーが 言ったというように、沖繩にメースBがなくても ポラリス潜水艦があるからもうだいじょうぶだ と、あるいはもっと後方の基地で事足りるので、 沖繩にそういうものを置く必要がないのだ、こう いう説も出ておりますから、そういうことであれ ばたいへんしあわせだと、かように思いますし、 そういう点を十分考えて、日本の長期的な安全確 保というものに私ども考え方を踏み切らなけれ ばならぬのだ、かように実は思っておるのであり ます。  私は、ただいまお尋ねになりますことはもっと もしごくだと思います。ただ、事柄が軍の機密に 属したりする事項もございますので、全部を国民 の前に明らかにはできないだろう、しかし少なく ともアメリカに対して沖繩の返還を要求する交渉 を持つ政府としては、もっとその実情を把握する 必要がある、かように思っております。
  221. 黒柳明

    ○黒柳明君 もう一問だけ。
  222. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 簡単に。
  223. 黒柳明

    ○黒柳明君 ええ、簡単に。それは、総理おっ しゃいましたように、アメリカが積極的に使うも のじゃないと、そういう戦力にせよ、ともかく戦 力であるならば、それに対する報復攻撃というこ とが私は考えられる。戦力というものはそういう ものだと思うのですが、総理は、この戦力に対し て全然報復攻撃というものはゼロである、可能性 はない、このようにお考えでしょうか。要する に、沖繩をまあどこかが攻撃するという可能性は ゼロであると。私は、戦力というものはやっぱり 戦いなんですから、攻撃されれば攻撃する、こう いうものが戦力である、私はこういうふうに字引 きで承知しているのですが、総理のお考え、どう でしょう。
  224. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 攻撃されれば攻撃する と、これはお説のとおりだと思います。いま私ど もがアメリカの核抑止力によって平和を保障して もらう、安全を保障するというのは、ただいま言 われるそのとおりの問題なんです。だから、アメ リカあるいは日本、これが攻撃を受けた、その場 合に、私どもは何も持ってないけれども、アメリ カは強力なる核兵器を持っておる、その報復力、 これが問題でございますから、戦争を引き起こす ような危険がなくておさまっておる、かような状 態でございます。
  225. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いま関連質問がありましたので、 またちょっと戻りますが、いま総理は、アメリカ の核抑止力でこれはおさまっておると、先ほどか ら私が言ったことについても、非常にアメリカの そういういろいろな考え方はしあわせだと、ここ まで言われておるのですから、くどいようであり ますけれども、だから、私は総理として沖繩返還 への姿勢を、マクナマラの言う七二年から二、三 年早いということは来年ということですから、ま あうまくいけば来年とれるかもしれない。じゃ、 来年のうちに核基地をとって、そうして日本へ返 還することも可能なまでにきておる。だから、私 はこういう姿勢で折衝をこれからやるのだ、こう いうことを私は国民の前に言明されても何ら差し つかえないし、またそうすることが総理の非核三 原則の上からも最も望ましい姿勢である、こうい うように思うのですが、いかがですか。
  226. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 矢追君に重ねてお答え いたしますが、どうも矢追君の考え方を間違って おるとかどうとかいうのじゃございませんが、矢 追君の考え方もたいへんけっこうな考え方でよく 伺っておきます。しかし、私はただいまの状態で は基地についてまだ白紙の考え方でございます、 かように申しているわけでございます。誤解のな いようにお願いいたします。
  227. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いま非核三原則を国会でやらない 理由をお述べになりましたけれども、スタンフォ ード大学のフーバー研究所というところでは、 「非公式討論のあとで地域内諸国に最も広範に受 け入れられるような一連の軍備管理、軍縮措置を 一国あるいは数カ国連合で宣言する。」こういう ことを提案しております。すなわち、一国でそう いう核軍縮なり、核を持たないと、そういうふう な宣言をすることが、第一歩として将来何カ国か そういうことをやっていくというきっかけにな る、こういうことを言っているわけです。日本が 先べんをつける必要はないと総理はいま言われま したけれども、平和憲法を持っている以上、やは り日本が先べんをつけてやる姿勢を持つことが私 はむしろ日本の平和を守り、さらに世界を核戦争 の危機から救っていく道ではないか、こう思うの ですけれども、この点はいかがでしょうか。
  228. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私はまあ国会でこそ決 議はいたしませんが、一国の政府がこの非核三原 則を言ったということは、たいへん世界に先べん をつけたのじゃないか、かように思っておりま す。どこの国も、核兵器を持たないということは 言いましても、さらに進んで、つくらず、持ち込 みもしない、こういうことを言った国はないよう に思います。そういう意味で私は日本が先べんを つけた。このことは国会よりも政府自身でけっこ うなんじゃないだろうかというのもひとつあるん です、基本的に。したがいまして、皆さん方も政 府のこの考え方、その点は賛成できるということ で大いに鞭撻していただきたいような気もするの でありますが、私は先ほど来申しましたように、 国会というものはこれはもう最高の権威でありま すから、私が申すまでもなく、国民を縛ってい く、かようなことを考えると、どうもこの縛るこ とについてはもっと慎重であっていいんじゃない か、かように思います。  それから政府が具体的に政策を立て、具体的に 進めること、このことが現実の問題としては政府 のこの態度でいいんじゃないか、かように思いま すので、この政府の態度を御賛成いただくなら、 ぜひとも国会の決議もさることですが、まずこの 政府の態度を支援してやると、御協力を願いたい と、これをひとつお願いします。
  229. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 私がわからないのは、国民を縛るという考え方はどこからきているのですか。
  230. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは、私が申しますのは、いまやや非核三原則がいかにも同様の結論のようにも思いますけれども、各党の間で相当の相違がある。これだけの相当の相違があることがこの問題を本来の姿に扱わないことにもなるのじゃないかと思います。このごろの新聞などをごらんになると、非核三原則の国会決議、これはたぶんに党略的なものがあるというような批判等も出ております。したがいまして、私はそういうことはいかがだろうか。これはもう国民の民族のほんとうの崇高な一つの理想、そういう実現をする、そういうものだとしてこれと取り組む、そういうことが望ましいのじゃないか、かように思います。
  231. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 政府の発表である三原則ならばいいと、国会の決議になるといろいろ考え方が違うし、党利党略がからんでくると、その点がちょっと納得できません。
  232. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま私が、間違っているかわりませんが、自民党も一つの案を出しており、また野党三派でも必ずしも一つの案にまとまっていない、かように聞いております。したがいまして、それぞれがそれぞれの決議を出そうとしておる。そこに一つの問題があるのじゃないか。私はこういう問題でこそ、国会を形成しておる各党が、ほんとうに虚心たんかいに日本の安全ということに思いをいたし、民族の不幸、これを避ける、こういう意味で取り組んでいくべきじゃないか。本来からいうならば、この種の決議で各党がまちまちのものが出るはずがない、かようにすら私自身は考えているのであります。
  233. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 まちまちのものが出るわけがないと言われましたけれども、核兵器を持たない、持ち込まない、そうしてつくらない、これでは私は一致している。これはもう超党派でできると思うのですが、いかがでしょう。
  234. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは私ここで議論してもいかがかと思いますが、そういうことだが、いま二つか三つの案、決議案が出されて、これからどういうように扱おうかという、せっかくいま審議されているのでございますから、私はそういうことが、いま矢追君の言われるような簡単なことでない、これはやはり背景というものがそれぞれ違うのだ、そこに問題があるのだということを申し上げているのです。
  235. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 背景が違うと言われますけれどもさっき、総理が言われたのは、要するにアメリカの核抑止力によって日本は守られている。日本は核を持たなくてもつくらなくても持ち込まなくても安全である。この点ははっきりしていると思うのですが、将来、国会で決議をして縛ってしまうのであれば、将来いろいろな情勢の変化でどうなるかわからない、あるいは核を持ち込まなければならないかもしれない、核武装しなければならぬかもしれぬと、こういうふうな、結局そこにあいまいさといいますか、疑いというのがどうしても出てくるわけです。だから私は縛るのではなしに、むしろそういうことを決議をして、やはり世界に一歩先んじて、先ほど言ったようなアメリカのこともありますし、ほとんどの人は日本が先に非核を世界に広く宣言をして、それを推し進めていくということにどこも反対もしないと思いますし、日本国民全体もおそらくその気持ちは強い、かように思います。そういう意味でやはり国会の決議というものを核兵器という問題からやる方向にもっていくべきだ、このように思うのですけれども、重ねてお伺いいたします。
  236. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまの日本民族から申せば、世界の唯一の被爆国、そうしてどうしても核をにくむ気持ちが感情的に走らざるを得ないと思います。私はこのことはたいへんけっこうなことだと思います。また、核兵器というのはそういう意味で人類を滅亡に導くものだ、そういうものをなくする、ほんとうにそういう形でありたいと思います。しかし、核兵器そのものを考えてみまずと、まだようやく戦後、——まあ戦時中開発され、二十年ばかりたったものであります。これの小型化等がいろいろ議論されており、あるいはまた同時に核拡散防止条約等もいろいろ議論されている。核軍縮ということもあるけれども、まだ核軍縮というものに全部の意見はなかなか一致しない。私どもの政治目標からいえば核兵器をなくする。で、日本が決議したからといって、日本国民はその決議に縛られ、それを尊重してまいりますけれども、しかし、世界から核兵器がなくなるという状態ではない。そういうもとにおいて日本の安全はどうして確保されるかということも考えなければならない。私は、これから核兵器も、いろいろ科学技術は進歩してまいりますから、どんな変化が出てくるかわからない、かように思います。あるいはもっと、同じ核といいましてももっと進歩したものが出てくるかもわからない。したがって、そういうときにどういうようにするかは、もっと国民の皆さんともども考えたらいいのじゃないだろうか。現在の政局を担当している政府が、こういう問題をどうするか、そのことが一番問題なんじゃないだろうか。政府自身は核兵器は持たない、製造もしない、持ち込みも許さない、これは非常にはっきりしている。そこで、国民のほうからいえば、御心配はないのじゃないか、かように思うのであります。私はそれ以上に今日いろいろのことが考えられますけれども、これでいいのじゃないだろうか。ただ、私どもがこういうことを考えるにいたしましても、日本の場合は、現実に核兵器が存在する限り、アメリカの核抑止力に日本の安全保障を頼っておる、そのもとに安全を確保している、かように考えております。しかし、各党におきましてこの日米安全保障に対する考え方がそれぞれ違っております。私は、公明党の方があるいは段階的解消ということを言っておられる、あるいは社会党や民主社会党がどういうようなことを言っている、一々紹介はいたしませんが、そこらに変わり方はございます。したがって、わが国の安全を確保するという、そういう場合に、その背景になるもの、基礎になるもの、これからやはりスタートしてこなくて、日本の安全は確保されるんだということにはならない。核兵器を憎むその気持ちだけからの非核三原則、これを決議したって、大事なのは、日本の安全を確保することなんです。それについての保障がないと、私は、非核三原則の、この核兵器を憎むその気持ちが率直に出たからといって、国民には別に、感情的にはそれでいいかしりませんけれども、大事な日本の安全を確保する、こういうことでは足らないのではないか、かように私は思います。
  237. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 まあ議論が平行線ですので、次の問題に移ります。  この非核三原則、いま盛んに言われましたが、これはもちろん政府方針でありますので、自衛隊にも適用されておると、こう考えますが、そう解してよろしいでしょうか。
  238. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) そのとおりでございます。
  239. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 それではお伺いしますが最近共同通信社から出されております「この日本列島」という本の中に、自衛隊の大宮の化学学校のことが出ておりまして、そこてCBR——Rの問題につきまして、放射能兵器と、こういうふうに書かれてありまして、要するに、核戦争を予想した上でのいろんな訓練が行なわれておる、こういうことが載っておりますけれども、このことについて御承知おきかどうか、御説明を願いたいと思います。
  240. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 化学学校あるいは技研等におきましては、CBRの研究はいたしております。また教えてもおります。Cは、すなわち化学関係でございます。これは毒ガスその他に対する防御関係のことを研究いたしております。Bは、バイオロジカル——生物学的の関係でございまして、これは細菌とか、あるいはリケッチアとか、あるいはビールスというようなものを用いられた場合にこれを防護する防衛関係として研究いたしております。それからRは、ラジオアクティビティすなわち、放射能に対する人体の害をいかに除くか。万一、核兵器等か使われた場合に、——こちらからは全然、非核三原則でございます、佐藤内閣の方針を決定しているわけでございます、ただ万一に、そういう攻撃を受け、侵略を受けた場合に、放射能から人体を健康に守る、そのことの研究をいたしております。これは白血球が非常に減少してまいりまするから、白血球の減らないようにという関係も研究いたしておりまするし、また、放射能の関係をとういうようなことで——水で洗ってしまって護衛艦を放射能の害から守るようなことも研究しておりまするし、また、人体における、どういう装具をつけたならば放射能から守られるであろうか、一たん放射能を受けた場合、先ほど——繰り返すようでございますが、白血球の減少というような形になってあらわれまして、最後に、白血病患者になって死という転帰をとるわけでございまするが、そういう転帰をとらないための防衛措置としての研究をいたし、教授をいたしておる次第でございます。
  241. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 教育と研究はいま言われましたが、訓練はやっておるかどうかお伺いいたします。
  242. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 若干の部隊に対して訓練をいたしております。
  243. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 万が一核攻撃があった場合と、こう言われますけれども、万が一の核攻撃が行なわれた場合どうするかということを考えること自体が私はちょっと解せないのであります。万が一の核攻撃がないために、先ほどから総理が再三言われているように、日米安保条約と自衛隊とそしてアメリカの核抑止力と、このようにおっしゃっておるわけです。そうすれば、万が一の核攻撃に対する研究あるいは教育、訓練というものは私はなくてもよい。むしろそういうことをやっていることは、核戦争があるのじゃないかと、そういうように政府考えているとすれば、国民がそれに対して抱く不安というものは非常に大きいのじゃないかとこう思うのですが、いかがですか。
  244. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 矢追君にお答えいたしますが、御承知のように、アメリカの核抑止力、これが戦争を抑止する力だとかように申しましても、これで万全だと、十二分にその目的を達している、こういう保証はなかなかない。私はそういう意味で、自衛隊が万全の上にも最善を尽くすという意味で、ただいまのような、万一核攻撃を受けた、こういう場合にはどうするか、そういう場合に守る方法、これをやはり訓練するのはあたりまえだと思っております。
  245. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 若干の訓練はやっておると言われましたが、その内容等についてお知らせ願いたい。
  246. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 政府委員をして答弁させます。
  247. 中井亮一

    政府委員(中井亮一君) お答えいたします。  CBRの防護の見地からの教育訓練をある程度やっていることにつきましては、ただいま長官から申し上げたとおりでございますが、その内容でございますが、学校について見ますと、主として陸上自衛隊の化学学校、衛生学校で行なっております。化学学校につきましては、CBRの防護とこれに関する器材の補給整備の業務というようなものに関して必要な知識技能を修得させるための教育を行なっております。衛生学校では、衛生科の幹部に対しまして、CBRの負傷者の取り扱い、治療技術に関する教育を行なっております。それから部隊につきましては、CBRの防護に関する知識と防護器材の使用要領等についての教育を行なっております。部隊のCBR防護の基礎訓練は、大体、部隊によって少しずつ違いますけれども、年間で十時間ないし二十時間程度のことでございまして、たとえば防護マスクの取り扱い、装脱の、装着したりそれをとったりするような訓練、あるいは救護のための若干の訓練、あるいはまた海上自衛隊でございますと、護衛艦についております甲板散水装置というのがございますが、そういうものを装備しておりますので、それを使う、あるいはからだを洗うような装置がついている護衛艦もございますので、そういうようなものの使い方等を護衛艦隊等で年間に十時間前後訓練をしておる、こういうようなのが部隊における訓練の状況でございます。
  248. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いつごろから始められたのですか。
  249. 中井亮一

    政府委員(中井亮一君) 化学学校ができましたのがたしか十年ぐらい前でございますので、そのぐらいのころからそういうような知識を与える、あるいは訓練をぼつぼつと実施している程度でございます。
  250. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 ぼつぼつ実施していると言われましたけれども、やはり年々それは進歩し、拡大してきておると、こう考えてよろしいですか。
  251. 中井亮一

    政府委員(中井亮一君) まだ十分というわけにはまいっておりません。持っておりますものも、防護マスクとか、わずかに化学防護衣という程度のものを少しずつ、あるいは、また、放射能の計測器というようなものを若干所持している程度でございますので、十分な徹底した訓練といいますか、十分な訓練をできる段階にまでまだ至っておりません。
  252. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 これは将来だんだん充実をさして、将来大きな核戦争を予想した上で大きくされていく計画なのかどうか、長官にお尋ねしたい。
  253. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 私どもは、いま政府委員が補足答弁申し上げましたとおり、ある程度の研究はいたしております。それから防衛医学関係のことで研究いたしまして、相当成果を得たものもございます。白血球が減少しないということで、これは対ガン関係において非常な有益なる調査になっていることでございます。そこで、将来もし攻撃があった場合どうするかというようなことにつきましては、まだ検討中でございまして、中立国スウェーデンのごとく、徹底したR対策というものはまだ講じる段階ではございません。
  254. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 私の聞いているのは、年々それを充実する方向に持っていくのかどうかということです。
  255. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) まあ、多少ずつは向上するということは言えると思います。
  256. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いま防護防護と言って、何か守ることならいいような考えでありますけれども、この防護訓練の中には、やはり攻撃というふうなことも教えられ、訓練をされておると、そういうふうに十分疑いもあるわけです。その点についてはどうですか。
  257. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 核攻撃を受けた場合の身体、護衛艦その他を水洗するとか、そういうようなことの訓練でございまして、攻撃的のことなんかは夢にも考えていないわけでございます。
  258. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 この訓練の教材の中にいろいろな教材があると思いますけれども、この中に攻撃に関するような教材は一切ないかどうか、お伺いします。
  259. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 核といえば、結局放射能の害の対策でございますが、放射能に対しましてどういうふうに防衛をするか。できれば、まあスウェーデンのごとく、全国民を防衛するといったような、永世中立国であってもあれくらいの配慮をしております。そこで、われわれの防衛医学として研究いたしました白血球が減らないという薬が二つ発明されております。これは相当りっぱな発明だそうでございまするが、そういうようものは、やはり国民に対して対ガン関係におきましてもいい薬だそうでございまするから、ガンの関係の放射能の減少と、それから白血球の減少と、放射能を受けた関係の白血球の減少とはほとんど医学的に同じだそうでございます。そういうようなことも研究しておるわけでございまして、積極的に核武器を行使するとか、そういうことは夢にも考えておりません。
  260. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 聞いているのは、教材の中に、攻撃に関する戦術訓練、あるいは核兵器の攻撃を考えた上での教材とか、そういう訓練のしかたがこの防護訓練の一環としてあるかどうかということを聞いているわけです。
  261. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) そういう教材は全然ございません。
  262. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 では、お伺いしますけれども、「対核防護訓練の参考」という書物が防衛庁の中にありますけれども、それについての書物は長官御存じでしょうか。
  263. 中井亮一

    政府委員(中井亮一君) いまお尋ねのものは、おそらく特殊武器防護という、教範になるまでの間にいろいろと教育訓練上必要な資料として出されているものの中の一つにあるいはあるかもしれませんが、現在はそれを有効に使っているものではございません。
  264. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 過去にはそれでは参考資料としてつくったと、こう解してよろしいですか。
  265. 中井亮一

    政府委員(中井亮一君) おそらくお尋ねの件は、相手側がどういうふうに使うかということで、参考のために部内で印刷をしたものの一つではないかと思います。米軍が教材に初めにくれたものを翻訳をして隊員に渡したものがございますので、そういうたぐいのものの一つではないだろうか、そういうふうに私のほうでは理解しております。
  266. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 どういうものかわかりませんけれども、この中にやはり攻撃というふうなことが書かれておるわけです。私、現物を持っておりますけれども、それじゃお伺いしますけれども、「図式教範原子武器の効果と防護」という教材が一つあるわけですけれども、これを説明してください。
  267. 中井亮一

    政府委員(中井亮一君) 私が先ほど御説明したアメリカの教材の翻訳をしたものの一つではないだろうかと思いますが、現在は使っていないものだろうと思います。
  268. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いまのその、だろうじゃだめでありまして、もう一度もとへ戻しますけれども、この資料はあるのかどうかですね。
  269. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 自衛隊創設当初、警察予備隊とか、あるいは保安隊と言った当初には各般のものは翻訳したものもございます。でございますからたとえば陸軍、海軍、空軍なんて書いたそういう翻訳もあるんです。しかしながら、これは向こうのものを参考に翻訳しただけのものでございまして、われわれが教範として自衛隊を訓練している場合には、防衛庁長官が決裁をしたものが責任を負える教範でございます。
  270. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 じゃ、参考資料ならどんなものがあってもかまわないと、こういうことですか。
  271. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 自衛隊創設当時の各種の翻訳したものはやめろということでやめさしているわけでございます。ずっと前からでございます。
  272. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 自衛隊創設当時に翻訳したものもある。では、最近これに類する翻訳ものは絶対ないと、こういうふうに言われるんですか。
  273. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 私ども責任を負える自衛隊の訓練をしている教範というものは、長官決裁のものが公式の教範でございまして、それ以外のものは教範ではございません。
  274. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 じゃ、教範でなければ、どういう翻訳もの、どういう参考文献等が自衛隊の中に幾らあってもかまわないと、こういうお考えですか。
  275. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) かまわないということは考えていないのでございまして、たとえば「ミリタリー・バランス」なんかは私ども一生懸命読んでおります。あるいは自衛の年鑑等は一生懸命読んでいるわけでございまして、これには原子力推進のしかも、ポラリス型、あるいはポセイドン型のものがどういうふうに出るかというようなことは、それぞれ文献として研究はいたしておるわけでございますが、われわれは、あくまでも総理のおっしゃっておる非核三原則を厳守するものでございます。
  276. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 私が申し上げたいのは、じゃ参考資料なら何でもいいというふうになぜなるかといいますと、いま長官が言われたように、教範として長官がちゃんとこれならいいときめたもの以外はやらない。じゃそういう参考資料ですね、じゃ要らないじゃないですか、つくる必要ないじゃないですか、どうですか。
  277. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 矢追さんにお答えいたしますが、かつてあったということでございまして、しかも、創設当時はいろんなものを翻訳いたしまして参考にしたでございましょうが、教範として訓練しておるその教範というものは、長官が決裁をしたものが責任を負える教範でございます。あとの参考資料の各般のものはあるかもしれませんけれども、それは原文でもございましょうし、日本文でもございましょうが、しかし、責任を持って提出できる筋合いのものではない、こう考える次第でございます。矢追さんもこれは御理解願えるのではないかと私は思います。
  278. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 教範以外のものはあってもかまわないと、しかも、自衛隊創設当初からのものだと、こういうふうに言われますけれども、では、私、具体的にお伺いしますが、昭和三十九年につくられた「対核防護訓練の参考」、これも創設当初から翻訳されたり何かしてずっときているような参考文献と、このように言われるわけですか。
  279. 中井亮一

    政府委員(中井亮一君) 先ほどから長官の御説明しておられます核防護に関係をした教範というものは、昨年の八月につくりました「特殊武器防護」という教範でございます。それまでにいろいろと出されていた参考のものを一つにまとめましてそういう教範にまとめあげたものでございますので、それまでにおそらく参考になるものはずいぶん幾つも出ていたわけでございますが、そういうものを一つの教範にまとめ上げたということでございます。その中にいろいろと参考になることはもちろん書いてあります。
  280. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 では、教範にまとめたのなら、その参考となったその中にはどんなことが書いてあってもかまわないと、こういうことですか。
  281. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 最近のものは、いま教育局長が申し上げましたとおり、特殊武器防護教範」でございまして、これが責任を負えるものでございますし、こうして、核武器による攻撃的のようなことは全然ございませんということをこの際明確にいたしておきます。
  282. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 参考にしてつくられた教範で、教範なら攻撃はないと、それでは、それ以前に、参考資料であったとしても、つくられたものに攻撃というものはあったと、こういうことですか。
  283. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) おそらくそれはないと思いまするけれども、しかしながら、外国のものを翻訳したというようなことは、一時創設時代にはあったかもしれません。しかしながら、核兵器によるこちらから攻撃というようなことは夢にも考えないわけでございます。
  284. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 夢にも考えないと言われますけれども、私はなぜこういうことを聞くかというと、核の防護だと、そのための訓練だと言いながら、やはり攻撃ということを考えていると、そういうことを私は言いたいのです。と言うのは、いまの答弁でも、いままでの参考資料には攻撃ということはなかった、しかし、翻訳ものだからあるかもしらぬ。たとえ翻訳ものであったとしても、訓練の参考とする以上は、やはりその攻撃というもの、核攻撃というものに対する指揮を教え、さらにそれをやはり実施訓練というものに移されておったと、こう私は解したいのですが、いかがでしょう。
  285. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 私どもはヘーグの陸戦法規、あるいはジュネーブの国際公法、その他すべてあつく順守するわけでございまして、化学兵器にいたしましても生物学兵器にいたしましても、あるいは核兵器にいたしましても、積極的に攻撃武器として使うということはこれらの国際法規に全部違反するわけでございます。でございまするから、こちらは、違反してそういうものがわれわれに対する万一の場合に侵略地として使われた場合に、われわれを防護し、国民を防護する、こういうことで技研等においては研究をし、また、隊員等には教育をし、訓練をいたしておるわけであります。
  286. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 さっき長官は創設当時云々と言われましたけれども、私が言っているのは、この書物がこういうことが書いてあるのです。「この参考は、三十九年度初めて部隊等にその実施を命ぜられた対核防護訓練に関し、具体的な基準を示して訓練の実施を容易にするとともに、練度の、」これは「斉一」となっていますが、「一斉」の間違いだと思います。「一斉進歩をはかることを目的として作成したものである。さらに四十年度以降においては、これを参考として、内容、時間等は、三十九年度の成果と各部隊の実情を勘案の上、適宜修正して実施されたい。」、こういうことがあるわけです。だから三十九年、四十年、さらに四十一年、四十二年と、その年の訓練を参考にして次の段階の核防護の訓練をやっておると、こういうふうに解したいわけです。この点いかがです。
  287. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) おっしゃったことはそのとおりでございまして、核に対する防護の訓練をいたしておるわけでございます。こちらが核を兵器として、攻撃の武器としての訓練に向けるということは絶対にないわけでございます。この点は誤解を起こすといけませんからもう一ぺん申し上げますが、教範はございましょうとも、これは対核訓練でございます。核に対する訓練でございまして、核兵器の訓練では全然ないわけでございます。
  288. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 長官、全然ないとおっしゃいますけれども、ここにこういうことがあるので私は非常にこわいことだなと思ったのですが、「攻撃防御等の戦術教育」、カッコして「図上戦術、現地戦術等」と、こういうことがあるのですが、これはいかがですか。
  289. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 詳細は政府委員から答弁させますが、攻撃、防御とございましても、核兵器による攻撃ということでは全然ないということをこの際明確にいたしておきます。もしそういうことが不明瞭なことばであるならば教範を改めますが、まず私の感じでは、その字がすぐ核兵器に及ぶというふうに考えるのは常識上いかがなものでございましょうか。われわれは核兵器に対する防御方法を研究しておるだけでございます。
  290. 中井亮一

    政府委員(中井亮一君) いま攻撃ということばについての御質問かと思いますが、普通、図上訓練その他をやります際には、相手側が攻撃をしてくる場合に、こちら側が防御の立場でやるという、普通の図上訓練でございますと、そういうのと、あるいはこちらが占領されている日本の国土を取り返すというために相手側の守っているところをこちら側が攻撃していくということは、占領を取り返すというときのためにやるわけでございますが、この対核訓練というような場合には、もっぱら相手側の核を使っての攻撃に対して、こちらは守るということだけを訓練をする、あるいは図上で訓練をするというふうなことをやっておりまして、相手側の攻撃ということを一応考慮しない限りにおいては、それを守るほうの訓練もできませんので、相手側の攻撃ということはいろいろと考える場合には出てくるわけでございます。
  291. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いまの長官の答弁政府委員答弁と違うと思います。政府のほうは攻撃ということもいま言われましたが、長官は絶対攻撃は考えないと。
  292. 中井亮一

    政府委員(中井亮一君) 私の説明があるいはおわかりにくかったかもしれませんけれども、核の問題に関しましては、私どものほうでは守るということ、防御するということをもっぱらやっておりますわけでございまして、こちらが攻撃をしようというようなことを訓練の中に含めているということは絶対ございませんので、御了解いただきたいと思います。
  293. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 私はなぜこういうことを言うかといいますと、こういうふうなことからだんだんと核戦争というものに引きずり込まれておる。いままで総理は、非核三原則だ、アメリカの核抑止力で日本は守られている。万が一か何か知りませんけれども、そういう核戦争というものが想定された上で自衛隊で年々その規模を増大しつつこういう訓練も行なわれている。守るためなら攻撃の練習もしなくちゃならぬ、演習もしなきゃならぬと、それではそのうちに装備にも核弾頭をつけて、仮定上であっても演習をすると、こういうふうなことになってきたら一体どうなるか。こういうことが行なわれていることを国民が聞くだけでも、私は国民は非常に恐怖になると思う。極端な言い方をすれば、自衛隊がそういうことをやっているなら、国民も核戦争に対しての防御をしなければならぬ。防空訓練でもやるようにしたらどうですか。
  294. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 私と政府委員の話は全然一致しておるところであります。そこで、攻撃云々という字を核攻撃というふうにあなたのほうで演繹されては困るのでございまして、侵略によって日本のある地区が取られてしまった、それを取り返すには攻撃がいるんだと、こういうことを教育局長はお話ししておるだけでございまして、それをすぐに飛躍されまして、核兵器を攻撃武器として云々というようなことがあればたいへんなことだというふうにおっしゃいますことは、国民の誤解を引き起こします。私どもは、核兵器を攻撃として考えては全然おりません。また、防御的の核兵器も考えていないのでございまして、核兵器が侵略的の意図のもとに使われた場合に、その放射能からいかに防衛官を守るか、自衛隊員を守るかということの訓練をしておるだけでございますということを、再三再四ではございまするが、明瞭にいたしておきます。
  295. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 じゃ、自衛隊だけ放射能から守られて、国民はどうでもいいんですか。
  296. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) その問題がおそらくあろうと思います。そこで、スウェーデンは、永世中立国でございまするが、全国民を守るためにシェルターをつくるとか、それぞれの防空訓練をするとかいうことをいたしております。そこで、わが国におきましても、コンセンサスを得るならば、各種の訓練をいたしておりまするから、将来そういうことを考えないということは、やはり全国民、一億国民の生命、身体、財産、平和、人格、安全というものをお守り申すのが自衛隊のつとめでございますから、自衛隊さえよければどうでもいいという、そういう論理はちょっと私にはうなずけないのでございまして、全国民をお守り申すという立場において自衛隊は存在し、訓練をいたしておるのでございます。
  297. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 私が言うのは、自衛隊がそういう核戦争を想定した上において訓練をぼつぼつ始めているということは、もちろん万が一でしょうけれども、核戦争というものがあるのではないかと、こういうことをわりあい近くに計算しておられるのではないかと、このように思うわけです。こういうことを言うと、すぐ、国民に恐怖を与えるとかなんとか、言われますけれども、実際かなり行なわれている。小さいものであるかしらないけれども、だんだんと規模は増大してきておる。いま、長官は、スイスの話を例にとられまして、将来は国民にもやはりそういうことをやっていったほうがいいというふうな意向に見受けるわけですけれども、その点はどうですか。
  298. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) スイスのことは私は言いませんで、スイスもいわゆる国民皆兵でございまして、国家を守ることに、中立を守ることにきわめて熱心でございまするが、スウェーデンは、核関係につきましては、シェルターをつくったり、また、防空壕の中において四日間も生活できるというようなことも研究いたしております。そういう研究をしておることは、核戦争を誘発するものであるというふうな論理にはならないのじゃないか。スェーデンの状況なんかは、私はこの目で見てまいりましたが、この数年前のことで、長官になる二、三年前のことでございまするが、やはり一生懸命国民を守るためにスェーデンの政府は努力をしておるという姿を見てまいりました。そこで、わが国どうするかということは、これは財政の関係もございましょうし、私が最初矢追さんに申し上げたのは、コンセンサスを得てということを前提として申しておりまするから、その点はどうぞ御認識願えれば幸いでございます。
  299. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 総理にお伺いしたいのですが、先ほどから、非核三原則、あるいはアメリカの核抑止力、これによって日本は守られている、現在自衛隊は核なしで守るために進んでいくと、こう言われているわけですから、やはり万が一の核戦争ということは絶対にあってはならない。そういうことがあれば、日本国民の多くは、この前に長崎あるいは広島で焦熱地獄の中で苦しみ抜いて死んでいったような事態が起こるわけです。万が一が絶対あってはならないために、総理は、安保条約と、そうしてアメリカの核抑止力にたよっておられると、こう言っておられるのですから、いまのような自衛隊の中での防護訓練がだんだんエスカレートしてくるということは、私は決して好ましくないと思うのですが、その点はいかがですか。
  300. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、自衛隊が防護訓練をしていることを別に不都合だとは思いません。また、攻撃云々がいろいろ議論になりましたが、私が申しましたように、日本は核兵器を持たない、製造もしない、持ち込みもしない。持たない者が攻撃するような方法はないのです。だから、その前提において、その前提の三原則を先ほど言われましたが、それはちゃんと守られておるのです。防御的な一たん攻撃を受けたときに、どういうようにして身を守るか、同時に、国民を守るか、そのための訓練だと、かように御了承いただきたい。
  301. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 そうやってだんだんいわゆる核アレルギーの解消ということに政府は持っていこうとされておると私どもはどうしても解したいわけです。核というものはおそろしいものだ、こういうことをやはり全世界に言っていかなければならないと、こう思うのですけれども、最近のいろいろな話から伺ってみますと、何か核というものはこわくないような風潮が一部に流れておるように私は非常に憂えるわけですけれども、その点はいかがですか。
  302. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま言われますように、こういうことから国民を教育するというような、そんな間違った考え方はしておりません。どうか、いまやっていることそのままをお受け取りいただきたいと思います。
  303. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 次の問題に移りますが、防衛庁の問題でこの間からいろいろ秘密漏洩事件あるいは自殺した人まで出てくるというふうな非常な不祥事態が起こりましたけれども、今回私が申し上げたいことは、自衛隊の医官が非常に不足をしております。その医官が不足しているために海上自衛隊の中でも困りまして、いろいろな手は打っておられると思うのですけれども、海上自衛隊横須賀教育隊衛生科におきまして一つの不祥事件が発生をしております。そのことについて防衛庁長官は御承知でしょうか。
  304. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 横須賀の自衛隊の中で、まあ医師は一般に自衛隊においては不足で困っておりまするが、特に横須賀におきましては充足率が足りません。困っておるという事実は承知いたしております。
  305. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 詳しく説明をしていただきたい。
  306. 浜田彪

    政府委員(浜田彪君) お答えいたします。  横須賀の教育隊には、専任の医官がおりませんで、委託医師をお願いいたしまして診療をやっているのが現状でございます。
  307. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 その委託医師は、毎日ちゃんと出てきて治療を行なっておったかどうか。
  308. 浜田彪

    政府委員(浜田彪君) 横須賀の場合には、毎日来ているというふうな報告を受けております。
  309. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 もし、毎日来なくて、そのかわりに衛生長というのが医者でもなければ薬剤師でもないのに注射をしたり投与をしていた場合はどうなりますか。
  310. 浜田彪

    政府委員(浜田彪君) 医師でもない者が医療行為をするというふうなことは、医療法違反になりますので、そのような実態はないと思いますが、ただ、私たちがやっておりますのは、あらかじめ準備しました家庭常備薬程度のものを隊員が希望します場合には渡しているような実態がございます。横須賀の場合に、もし御指摘のような事実があるとれば、厳重に注意をいたす所存でございます。
  311. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 注射をした場合はどうですか。
  312. 浜田彪

    政府委員(浜田彪君) お答えいたします。  注射につきましては、医療行為でございますので、そのようなことはないように厳重に注意したいと思います。もしそのようなことがあれば、私たちのほうで考えたいと思っております。
  313. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 厚生大臣、こういうふうな場合はどうなりますか。
  314. 園田直

    国務大臣園田直君) 自衛隊の病院、診療所等は、国で開設をしております診療所、病院と同じ扱いでありますから、厚生大臣が規定に従い監督する権限を与えられております。艦船につきましては船員法に準じまするが、これは自衛隊法で排除したものですから、船員法に準じております。したがいまして、横須賀においてどんなことがあったか詳細に存じませんが、救急箱から薬を出してやったとか、あるいはその程度であれば別でありますが、医療行為をやったということであれば問題でありますから、十分検討して、防衛庁とも連絡をしたいと考えております。
  315. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 衛生長が注射をした場合はどうなるかと聞いておるのです。
  316. 園田直

    国務大臣園田直君) 医師にあらざる者が、注射をしたり、あるいは処方箋を出したりした場合には、これはもちろん違反になるわけであります。
  317. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 実際、横須賀におきましては、先ほど衛生局長は毎日ちゃんと来ておると、このように言っておられますけれども、来ていない事実が明らかになっておるのですが、その点はいかがですか。
  318. 浜田彪

    政府委員(浜田彪君) お答えいたします。  調査いたしまして、そのような事実がありますれば厳重に注意したいと思います。
  319. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 調査いたしましてと言われますけれども、調査されたのではないのですか。
  320. 浜田彪

    政府委員(浜田彪君) 現在、調査中でございます。
  321. 黒柳明

    ○黒柳明君 関連。あまりにもでたらめだ、局長答弁は。
  322. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) さっき二度もやったからいいでしょう。矢追君が終わってからやりなさい。——簡略に。
  323. 黒柳明

    ○黒柳明君 局長、それからそこに課長もいらっしゃる。あなた方調査したじゃないですか。私がこの問題についてどういうことになっていますかと言ったときに、調査資料を出したじゃないですか、そっちから。もしもこの事実がうそだとあんた言うのなら、首をかけますか。首をかけると私暴言を吐くようですけれども、あまりにもでたらめ過ぎる、いまの答弁は。ちゃんとこの内田という人は、これは申しわけないことをしたけど、このことを苦にしておなくなりになっているじゃないですか。私は非常に不幸なことだと思います。何から発しているか。要するに、根本は、医官の不足である。そうして、医託医が来ない。来ていやしないじゃないですか、毎日なんか。どうしてそういううそをつくんですか。共済病院の岩崎という医者に電話をかけて聞いているじゃないですか。もし、あんたが言ったように、調査をしていません、毎日来ています、医師法違反はやっていません、そのことがほんとうであるかうそであるか、あんたの良心にかけて、ここでほんとうであると言うのだったら、私はうそであるという証拠を出します。どうですか、断言できますか、ここで。また、あんたは、いま調査中であるとおっしゃったけれども、もう二週間も前じゃないですか、調査したのは。私たちの前にあなたは調査してあるんじゃないですか、すでに。まあちょっと声を高めたようですけれども、あまりにもでたらめ過ぎる。この問題を長官が知ってや知らずや、あまりにもでたらめ過ぎるから私は言うんです。もし、この問題が、あんたがおっしゃるようだったら、私はあやまりましょう。もしもだけど。この問題が、あんた、うそをついていたら、大問題ですよ。こういう問題を隠して公式の場において自分が知っていることをうそついたとなったら、大問題ですよ。私は事実を出しましょう、そうしたら。どうですか。ほんとのことを言ってくださいよ。
  324. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 矢追さんと黒柳さんの御質問にお答えいたします。  いま調査中であるということはこれは事実でございまするが、しかし、私は、本日このことを聞きまして、厳重に正確に調査せよ、そうして、もし医師法違反の疑いがあるならば、厚生大臣ともきょう話をいたしまして、厳重に措置せよ、こういうことにいたしております。医官が不足であるということは非常に遺憾のきわみでございまするが、処置だけは厳重にいたします。それからまた、委託医師が毎日でも来るように、来ない場合には町の診療所へ行って診療を受けるように指導いたす所存でございます。
  325. 黒柳明

    ○黒柳明君 委員長
  326. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 何回も関連するのは……。もうわかったでしょう。
  327. 黒柳明

    ○黒柳明君 でたらめですよ、いまの答弁は、あまりにもでたらめ過ぎる。
  328. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 担当の大臣が答弁しました。
  329. 黒柳明

    ○黒柳明君 担当の大臣だって答弁が間違っている。  局長、それじゃ一点ずつ聞きましょう。あんた、医師法違反だということを認めたじゃないですか。
  330. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 黒柳君、静粛に。
  331. 浜田彪

    政府委員(浜田彪君) ただいま長官からも御指示がありまして、厳重に調査いたしまして処置をいたしたいと思います。
  332. 黒柳明

    ○黒柳明君 ただいままで調査した範囲でいいから報告しなさい。医者は毎日来ていますか、ほんとうに。来てやしないじゃないですか。
  333. 浜田彪

    政府委員(浜田彪君) 横須賀の教育隊の場合には、内田一尉という方が衛生隊の科長でございまして、医師がいないときに注射をした事実がございます。私たちも厳重に調査をいたしまして……(「うそだ」と呼ぶ者あり)
  334. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 静粛に。
  335. 浜田彪

    政府委員(浜田彪君) これが一部ございますが、ただ、詳しく調査をしようということでやっておりましたけれども、残念なことには、内田一尉は、二十日の朝心筋梗塞のために、私たちのほうで厳重に調査をいたしましていろいろと資料をとっております段階でおなくなりになりました。一応事実だけを調査の段階で御報告申し上げておきます。
  336. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いまの答弁で、私は、横須賀の海上自衛隊におきましては医師法違反が事実行なわれたと、こう解したいのですが、いかがですか。
  337. 浜田彪

    政府委員(浜田彪君) そのように考えます。(「何」と呼ぶ者あり)
  338. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 静かに、静かに。答弁が聞こえない。
  339. 浜田彪

    政府委員(浜田彪君) そのとおり、御指摘のとおりでございます。
  340. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 長官にお伺いしますが、このような事実があったということをなぜ最初からすなおにお認めにならないのですか。
  341. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 私は注射のことまでは存じませんでしたが、しかし、いま政府委員が申し上げたところがほんとうのところでございます。そこで、本人は心筋梗塞で他界をいたした、こういうようなわけでございまして、医師法違反の疑いがある本人はもういないわけでございますから、将来の問題といたしましては、私は、委託医師は毎日来るように、来れない場合には地元の診療所で診療を受けるようにすべきである、こういうふうに指導をいたします。
  342. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 まだ疑いというように逃げられるのですが、衛生局長は、はっきり医師法違反をやった、薬事法違反もやったと、こういうことを言われるわけですけれども、それでよろしいですね。
  343. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 注射ということばはたったいま聞いたばかりでございまして、そこで私は、本日あらためて厚生大臣とも相談いたしまして、調査を、なるほど黒柳さんの御指摘のとおりしておるでございましょうが、やはり正確なところを調査いたし、それから本人はもうこの世の中にいないわけでございまするが、将来他の部隊においても医師法違反のごときことがないように、そのために私は、私自身の命令によるいま調査を再び開始さしておる次第でございます。というのは、遺憾な事実がこれから他の方面において、他の自衛隊において起きないためでございまするから、黒柳さんの御期待にも沿うゆえんである、こう考える次第でございます。
  344. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 厚生大臣はいままでの話の経過を聞かれて、どう断定されますか。
  345. 園田直

    国務大臣園田直君) ただいまの質問経緯によりまして、担当の責任者である厚生大臣としては、まことに申しわけないことであります。  次に、この方の処置でありますが、医師法違反でありましても、本人がなくなられておりますので、本人を処罰するわけにはいきません。したがって、今後の問題でありまするが、承りますると、防衛庁の医官の充足率は三九%と承っております。したがいまして、もともと自衛隊の医官の不足ということがこのおもな原因でありまするから、おしかかりを受けたことを契機に、防衛庁とも相談をしまして、医師の充足については長官の責任でございまするから、長官のほうにお願いしなければならぬ。  もう一つは、研究すべき問題があると思います。いまの内田という人が正規の方であったのか、あるいは昔の衛生隊というようなものであったのか、看護婦であるならば、これは医師の指示によって注射等はできるわけであります。したがいまして、今日は衛生兵とか看護兵というものが、自衛隊法で一般の法律を排除してない。たとえば艦船については一般の船員法を排除してあるのでありまするから、そういう点も十分検討して、この医師の不足をどのようにするかという対策を講じなければ、このままでは、注射だけは往々にしてそういう事件が起こりがちでありますから、十分具体的に防衛庁と相談してやりたいと考えております。
  346. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いまの厚生大臣答弁の中で、全面的に医師法違反であるという断定がないと思うんです。というのは、どういう経歴を持っておられたか、そういうようなことも言っておられるわけですけれども、衛生局長、どうですか、経歴を。
  347. 園田直

    国務大臣園田直君) 私が申し上げたのは、いまの内田という方が、経歴によって医師法違反になるかならぬかという意味ではございません。いかなる身分でありましょうとも、注射等なされたなら、これは明瞭に医師法違反であります。しかしながら、なくなられましたから、この方を処罰するわけにはまいりませんが、ただ単に将来の問題として、医師の不足をどうやって充足するかということと、もう一つは、もしその方がかつての衛生隊であるとか、あるいは看護隊であるとかいうものであるならば、これは特殊な教育をやったはずでありまするから、看護婦さんであるならば、医師の指示によった場合には注射はできるわけでありまするから、少なくとも衛生隊だとか衛生兵という組織があるならば、防衛庁のほうで研究をされて、それぞれの教育等もされて、軽微な注射などの医師の指示によってやるものはできるようにすべきだということも将来検討すべきではないか、こういうことでございます。
  348. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 私は、なくなった人のことを責めるわけじゃないんですけれども、一度念のために衛生局長から、過去にそういう経歴があったかどうかお聞きしたい。
  349. 浜田彪

    政府委員(浜田彪君) なくなられました内田一尉は、昔の衛生下士官でございます。現在では一尉まで昇進された方でございます。
  350. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 現在の資格は何ですか、医学関係の。
  351. 浜田彪

    政府委員(浜田彪君) 医学関係の資格は持っておられません。
  352. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 何もないわけですか。たとえば衛生検査技師の資格があるとか、そういうのはないのですか。
  353. 浜田彪

    政府委員(浜田彪君) 船舶衛生管理者の免状を持っておられます。
  354. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 ほかにこういうふうな事実がいままであったかどうか、その点についてこれから調べると言われますけれども、ほかにも私どものほうには申し出ている例があるわけです。したがいまして、先ほど長官が言われましたけれども、私はこれで非常におそれることは、とにかく、お役所というのは、直ちに調査ばかりやって、そうして、こういうことをやらしちゃいかぬぞと、それしか徹底しないわけです。あと、ではどうしたら対策が講じられるか、いまいろいろ言われましたけれども、ただ、医者が足りない、足りないところは外へ連れていったらいいと言いますけれども、自衛隊自体ああいう構成からいって、非常にそういうことはむずかしいと思うわけです。だから、そこをどうやっていくわけですか。一番根本問題は、私は、医官不足にあると思うわけです。これをどうしたら医官がふえるか、この問題をまずお聞きしたいのですが、どういう所信で臨まれますか。  ただふやす、努力しますじゃいけない。この問題は何もきょう初めて言い出したわけではないわけです。前々から内閣委員会等では問題にあがっていることで、防衛庁長官も十分御承知だと思うのです。私は何も、これを持ち出したのは、理由は、自衛隊の人たちがこういうふうなずさんな治療を受けている、非常にあぶない診療を受けていることによって、いろんな病気が出た場合、災害のときにも自衛隊は出動するわけですし、特に災害の場関係などは相当の細菌の感染を受けることも十分考えられます。そういった場合、非常に大きな問題だと私は思うわけです。何もこの問題は、自衛隊が医師法違反している、けしからぬ、それで終わりじゃないわけです。この点について長官、今後、医官の充足についてどのような御方針でふやそうとされておるか、それをお聞きしたい。
  355. 園田直

    国務大臣園田直君) ただいまの御意見、私もさように考えております。先ほど申し上げましたのは、船舶衛生管理者という資格を持ちながら、その船舶衛生官という資格を法的には与えて全然ないわけです。したがいまして、昔の軍隊であったならば、衛生下士官というものは、注射なり、あるいは軽微な、医師の指示によるものは許されておったわけでございますから、それぞれの能力のあるものは、それぞれの過程において、法律をつくるなり、あるいは何らかの方法で、そういう医師の指示によって軽微なものはやっていいというような方法を講ずることも一つの方法であるかように私は申し上げたわけであります。
  356. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 医官の充足対策につきましては、非常に苦慮いたしております。ことに歯科医官が不足でございます。一般医官もそうでございますが、このことにつきましては、私この一、二年非常に苦慮いたしております。  そこで、どういうことをすればよろしいのか。貸費学生の制度は持っておりますが、この貸費額が非常に少ないから、その額を上げるということも考慮に入れております。それからなお、医官だけの給与を——町医になった場合には、非常にほかの方に比べまして、役人をしておるお医者さんに比べまして収入がよいわけでございますから、どうしても町医、その他の方面に流れます。そこで、こちらの方面におきましても相当の待遇改善をする、給与をよくするということも考えております。  それからなお、部内の衛生関係の施設、設備はよくいたしたい。これは病院関係におきましては、全体としては、厚生大臣のおっしゃったとおり、充足率が三九%という貧弱でございまするが、中央病院その他の病院におきましては七六%というよい実績を示しております。結局、無医村のお医者といったような立場と同じように、派遣部隊の、僻地における自衛隊の医官が不足なわけでございまして、一人勤務のお医者というものに対する特別の待遇を研究いたしておる次第でございます。
  357. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 待遇の問題で、自衛隊、すなわち防衛庁に行っている場合、やはりほかの省との関係が出てくると思うのですが、その点について防衛庁を優遇できることが可能であるかどうか、その点いかがですか。これは厚生大臣と両方に。
  358. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) これはやはり財政当局と話しまして、公平を期するという財政当局あるいは内閣全体の方針もございまするから、しかしながら、一面におきまして、自衛官の医官は特に充足率が悪うございまするから、特に給与を願うという特別な配慮も私は内閣といたしてしていただけるのではないか。そういう方向で、貸費学生の貸費額の増額、給与の増額、それから各種衛生施設の充実整備、この三点にしぼりましていま検討いたしております。多少こちらがよくても、充足率が非常に悪いわけでございまするから、特別の御配慮を財政当局なり総理なりにお願いいたしたい、こう考えておる次第でございます。
  359. 園田直

    国務大臣園田直君) 防衛隊に勤務する医師を特別に優遇していいかどうかは、これは防衛庁長官の所管でありまするが、それと関連しまして、一般の医師の待遇等も今日人事院の規程によって定められております。その基準が一般公務員よりもよいという程度でありまして、やはり人命をあずかる、しかも特殊な教育を受ける医師としては、待遇問題についてもう一ぺん検討しなければほんとうの医師の充足はできないのじゃないかと考えております。
  360. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いま財政の問題が出ましたので、大蔵大臣にお伺いします。大蔵大臣、財政当局との問題。
  361. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) その問題は人事院がきめる問題になっておるそうでございますが、要すれば十分研究すべき問題だと思います。
  362. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 こういう問題が私は起こってまいりますやはり根本は、日本の医療制度の問題が大きくそこにあると私は考えるわけです。やはり医療制度自体を抜本的に前進をさしていかなければならないのじゃないか。現在の日本の人口に対する医師というものは十分と考えられておりますか、厚生大臣
  363. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 十分とは考えません。やはりこれから研究すべき問題だと思います。
  364. 園田直

    国務大臣園田直君) 医師の充足については、年々文部大臣と相談をしてふやしておりまするものの、まだなお実際の必要に応じては不足でございます。したがいまして、医療制度には、御指摘のとおりに、保険の抜本対策と相まって、医療制度を長期的な展望からそういう点も考えていかなければならぬと考えますが、やはり医師の不足というものは、何といっても、もう一ぺん医師の技術を持った公務員その他の待遇問題を検討しなければならぬと考えております。
  365. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 本年度の、いま問題になって、卒業しませんけれども、卒業の医師ですね、それから今年度入学の各大学の医学部の定員はどれくらいふやされたのかどうか、文部大臣に伺いたい。
  366. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 医師の養成は、御承知のように、国立、公立、私立の大学で行なっておるわけでございます。現在、国立、公立、私立を合わせまして四十六学部あります。入学定員は三千九百八十人ということになっております。  なお、ただいま厚生大臣からお答えがありましたが、医師の需給関係は、厚生省の御意見を伺いまして、よく相談をいたしまして、文部省のほうでは医学部の拡張あるいは新設をやっておるわけでございます。三十七年度以来逐年医学部の定員増を行なっておりますが、昭和四十三年度におきましては、国立の四大学について八十人、公立大学について二十人——これは一カ所であります。それから私立大学——これも一カ所でありますが、二十人、計百二十名の定員増を行なうことといたしておる次第であります。  御承知のように、医学部を一つつくるということはなかなか容易でない。医学部の拡張なり、または必要に応じまして新設なり、今後ともに厚生省とよく相談をいたしましてやってまいりたいというふうに考えております。
  367. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 結局、本年度百二十名定員がふえただけでありますので、これが卒業いたしますまでには六年かかります。まあ登録医制がどうなりますかは別といたしまして、実際いままでのとおりであれば、要するに七年たって初めてわずかの人がふえると、こういうことになるわけです。七年たてば、相当人口もふえると思います。このような状態では、ますます医者は足りなくなる。無医村もまだまだたくさんあります。いまの自衛隊の医官の問題も含めまして、こういうふうな充足の率であれば、私は将来憂うべき状態になると思うんですが、厚生大臣はいかがですか。
  368. 園田直

    国務大臣園田直君) 御指摘の点を十分考慮しながら、充足に努力したいと考えております。
  369. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 そういうふうに言われますけれども、現在、御承知のように、いろいろこの登録医制度をめぐりまして、各大学におきましてストライキ、試験のボイコットが行なわれております。この状況を文部大臣、厚生大臣はどのように判断し、いま医師法の改正案が上程されて、衆議院で現在検討されておりますけれども、このままの線でいかれるのかどうか、方針をお伺いしたいと思います。
  370. 園田直

    国務大臣園田直君) 医師法の一部改正は、すでに衆議院に御審議を願っておるところでございまして、いろいろ委員会において委員各位の御意見等を承っておりまするので、こういう点を十分考慮しつつ善処したいと考えております。
  371. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 私どもとしましては、現在御審議を願っておりまする医師法の改正がすみやかに成立することを期待いたしております。御承知のように、いまこの問題をめぐりまして、大学で学生が、あるいは卒業試験を拒否する、あるいはストライキをするというふうなことが行なわれておるわけであります。これらも、良識ある学生としてよく考えていただき、なるべくすみやかに解決に向くことを心から願っております。
  372. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 心から願っているという、そういう何か傍観者的な立場で私は文部大臣がおられることは残念であると思うわけです。このいまの医学部の学生のやっておることを文部大臣はどう見ておられるのか。どこにその原因があるか。彼らの主張するところは十分おわかりだと思いますけれども、このままでやはり解決を望むなんと言っているだけではいけないので、現にもう犠牲者も出ておるような状態です。こういう段階において文部大臣としてどう考えられますか。
  373. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 医師法の改正は現に国会でも審議中でございます。また、国会におきましてもいろいろな点を勘案せられまして、いろいろ御意見が出ておるわけでございます。適当な結論が得られるものと考えている次第でございます。この問題に関しまして、現に医学生がいろいろ問題を起こしておりますけれども、その要求の中にはとうてい容認しがたいものもあるわけでございます。そういう問題について各大学がこの医学生に対していろいろと説得につとめているわけでありますけれども、はなはだこれが受け入れられない、これが現状であります。
  374. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 容認しがたい要求があると言われますけれども、私は、医学部の学生というのはほかの学部の学生と違って、いままで全般的に学生運動等にはわりあい参加しない、いわゆる良識ある学生が多かったと思っておりますけれども、やはり今回医学部の学生が全国的に言っておる要求というのは、当面無理な点があるかもしれませんけれども、私は、医療の根本問題からいけば当然の要求であると、このように解しておりますけれども、この点、厚生大臣、文部大臣、いかがでございましょうか。
  375. 園田直

    国務大臣園田直君) 学生の諸君の言い分の中に、まあ一つは誤解もあるし、あるいはまた、政府のほうで学生諸君の言い分が了解できる点もあります。たとえば、研修生の名をかりて低賃金でこれを国立病院に使用しようとするのではないかとか、あるいは身分が不安定であるとか、あるいは、この法律は「つとめなければならない」と規定してあるが、実際は登録制ということで、これを強制しているのではないか。そういういろいろな点がございますが、そういう点については閣議の御意見等について承り、できるものはそれぞれ善処し、将来に向かってやるべきものは将来に向ってやりたいと、こう考えておりますが、ただ、研修の科目の学生の管理とか、あるいは医務局の管理とか、そういう本質的な問題についてはこれは容認しがたいところでございます。
  376. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 こまかい問題については委員会でもどうせ上程されるでしょうからここでは触れませんけれども、ひとつお伺いしておきたいことは、たとえ現在上程されております医師法改正案がかりに通ったとして、一部修正等も言われておりますので、たとえ一部の修正があったとしても、基本的な線はあまり変わらないような私は感じを受けるのです。それで、はたして今後の医療制度というもの、現在のお医者さんに対する待遇、あるいは現在の日本の医療制度が解決されるかなり前進的な法の改正案であるかどうか、それとも暫定的なものであるのかどうか、その点いかがですか。
  377. 園田直

    国務大臣園田直君) いま提案しておりまする医師法の改正は、これは目的が医師の数を充足するとかあるいはその他の問題ではなくして、個々の医師の素質を向上せしむるために各方面の意見を聞いて、審議会の意見を経、やったものでございます。医師の充足については別個のことで検討しなければならぬと考えております。ただし長い間の問題でありまして、過渡期でございますから、これの研修の目的はいままでと違って、医師の資格を持った者が、医師の資格を持ちながらさらにみがきをかけるというのが目的でございまして、そのためには何といっても研修期間中各病院の教育体制を整備することが必要でございます。昨年までの教育体制の準備の予算は一億でございますが、本年度は飛躍的に文部省、厚生省合わせて八億の予算を準備しております。しかしながら、それでも決して十分とは考えておりませんので、こういうものについての改正については逐次向上する目標を持って努力したいと考えております。
  378. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 私が聞いておるのは、医官不足の問題はもちろんそうでありますけれども、いま言った医者の実力が今度の改正で十分よくなるかどうか。ということは、病院とかあるいは大学の附属病院、あらゆる病院における研修が急には改善されないことはもう当然です。それをまずやらないで、ただ法改正だけをやっていけばいいというような基本姿勢は私はよくないのじゃないか。これに対して今後どう進めていくのか。
  379. 園田直

    国務大臣園田直君) 私も同様の意見を持っておるものでありまして、単に法律改正だけやれば素質が向上するとは考えておりません。法律改正によって制度を変え、その制度の目的を達するために研修生が研修をする各病院の教育の人的向上、準備、あるいは施設の準備等が完全にいきまして初めてこの法律の目的が達成するものであると考えております。そういう意味で昨年度よりも予算を七億ふやしまして八億の予算を計上してそれで準備しておりまするが、それでも十分であるとは考えておりませんので、さらにそういう研究目的を達成するための質を向上することによってこの研修制度の目的を達成したいと考えております。
  380. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 ちょっと防衛庁の医官のほうからほかのほうにそれましたが、もう一度防衛庁のほうに戻しまして、簡単な質問をもって防衛庁関係を終わりますが、本年の初頭に防衛庁長官が自衛隊で年頭の訓辞をされまして、その中で、国防省に昇格をするということと、それから諸官の称呼である一佐あるいは一尉というものを昔の将校のように大佐とか大尉にしたいと、こういうことを発言されたと新聞に載っておりますけれども、これはどういうお考えなのか、お伺いしたい。
  381. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) その新聞記事は私の発言の真相をとらえていないのでございます。自民党の総務会におきましては、国防省昇格を早期に実行いたしたい、こういう決議がございます。そこで私が申したことは、防衛庁が国防省になることは望ましいと思う。それから、各種の称呼でございまするが、いまも、一尉と言われますと私は少尉というふうに普通間違えるのです。三尉というのが大尉と、こう間違えるようなわけなんです。世界的に通用するということも、これは日本の自衛隊は特有のものでございますから、それは言えないのでございまするが、しかし、いま三佐が大佐であるとか、一佐が少佐であるとか、こんなふうにあべこべに考えて私もちょっとときどきまごつきます。そういうようなわけでございまするから、やはり世界的に通用する——もっとも自衛隊のあるところは世界にないわけでございまするが——世界的に通用するようなことはが望ましいということは申しましたが、しかし、国防省にいたしましても、称呼にいたしましても、時が——すべてのことに時があるということが伝道の本などに書いてありますが、すべてのことに時があるというので、その「時」のほうに力を入れたわけでございます。
  382. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 私は戦後派なものでこういうふうに感じるのかもしれませんが、明治生まれの方をはじめといたしまして昔の軍隊に郷愁を感じておられる方がかなりおられます。どうしてもこういうことを言われますと、何か昔の軍隊へと行くのじゃないか。最近のいろいろな右傾化——と言うと総理はいつもおこられますけれども、一連のことから考えて、何かそういう疑惑を持つのはいかぬのかもしれませんけれども、感ずるわけです。そういった点について、こういうふうなことは私はあまり好ましいものではないと考えるのですが、総理はどのようにお考えになりますか。
  383. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 国防省あるいは防衛省、そういう昇格の計画のあることは知っております。しかし、こういう事柄はこれは国民の納得のいくような時期に実現をする。無理をしてもいけないことであります。また一佐、二佐、こういうのはちょっといま明治生まれというようなことを言われましたが、私にはどうも耳なれないことばが出ましたが、私にはどうも耳なれないことばであります。ときどき、防衛庁長官が言うように、間違いが起こるようであります。これも昭和生まれは間違わない、こういうことも言えぬかと思いますが、これも国民全体が納得のいくような、呼びやすいような名前であったほうが望ましいというふうに私は思います。こういうことはいまどうこうしようということではございませんので、そのうち、国民の意向によりましてそういうものをきめるときが来るだろう、かように思います。
  384. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 次にまた外交問題に戻りますけれども、安保条約についてお伺いをしたいと思います。  この安保条約につきましては、非常に米国の一方的な権能が大きいように私は解しておるのでありますが、七〇年の時点におきまして、総理は自動延長あるいは改正——破棄は考えておられないと思いますが、自動延長、改正、どっちの方向をもって進もうという方針でおられるのか、お伺いしておきたいと思います。
  385. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いままであらゆる機会に説明いたしましたように、安全保障体制、これはわが国の安全の確保のために絶対必要だ、したがって、さようなものを堅持するということを申しておりますが、その形はいかにあるべきか、そういうことについては、まだきめたことはございません。これもしばしば発言しておるとおりでございます。
  386. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 総理は自民党の総裁でもございますからお伺いしますが、自民党としても、次の参議院選挙を前にして、どの方針でいくかということはまだおきめになっていないわけですか。
  387. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 自民党でも同じように思っております。まだきめてないのであります。
  388. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 衆議院におきましてもいろいろ問題になりました事前協議でございますけれども、事前協議の趣旨というものはどういうものであるか、外務大臣から御説明いただきたい。
  389. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 安保条約第六条によって、アメリカの軍隊は、日本の施設、区域、これの使用を許されておるわけであります。しかし、日本に非常に重大な影響を与えるような事柄に対して、政府が知らないうちにそういう問題が起こることは好ましくございませんので、やはり政府が同意を必要とする重大なことについて——重大とは、配置、装備あるいは直接作戦行動についてであります。だから、六条によって与えられておるアメリカの区域、施設の使用に対する制限の規定である、こう考えておるのであります。
  390. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いま制限の規定である、こう言われましたが、その制限はあくまでも日本が戦争に巻き込まれないための歯どめである、まあ、しばしば前からも言われておりますが、そう解してよろしゅうございますか。
  391. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) むろん日本が望んでおることは平和でありますが、とにかく戦争が起こらないようにするというのが、やはり安保条約それ自体を結んでおるこれが理由でもあるわけですから、当然に全体に安保条約の精神はそういうことが貫かれておるわけです。この事前協議は、とにかく日本政府の同意なくしてアメリカは重大な軍事行動ができない、これに対する制約である。
  392. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いま外務大臣はかなりはっきりと制限ということを言われました。重大な変更等に対する制限なんだ、もしそうであるならば、この事前協議はアメリカの一方的なイニシアチブのみであってはならない。やはり日本にもイニシアブというか、そういうものがあってもいいと思うのですが、外務大臣は、衆議院予算委員会におきましても、事前協議はアメリカ政府のイニシアチブで日本政府とやるわけです、だから日本のイニシアチブではない、こう答弁されておりますが、その点いかがですか。
  393. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 私は、この条約のたてまえとして、装備とか配置、作戦行動、こういうものに対しては、アメリカが日本と協議をするというたてまえになっておりますから、第六条に言う事前協議は、これはアメリカのイニシアチブ、それから日本は第四条によって、どうもこれは事前協議をする必要があるのではないかと言って、第四条によって協議を求めることができるわけで、向こうは六条から来る、こっちは四条から来るので、アメリカだけが一方的だとは言えません。しかし、事前協議という六条における事実は、アメリカの装備とか、あるいは配置とか作戦行動とかいうアメリカ自身の軍事行動に関連をいたしておりますから、アメリカがイニシアチブをとるのは当然であるけれども、四条によってそれを日本が求めることは常に可能であるということでございます。
  394. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 四条においてそういうことが可能であると、こう言われますが、それでは、その事前協議の、三つ一応うたわれておりますが、その基準はいつどこでどういうふうにしてきめられたものか、お伺いしたい。
  395. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 一つは、この安保条約の条約締結の協議をした場合において、これは藤山外務大臣とマッカーサー、それからもう一つは、岸・アイゼンハワー大統領の共同コミュニケ、アメリカは日本政府の意思に反した行動をとらない、もう一つは、アメリカの安保条約の国会の批准におけるハーター発言、この安保条約はやはり事前協議による拒否権を日本が持っておる、この三つの点がこういう根拠を持つものでございます。
  396. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 私の言うのは、その事前協議の、たとえば装備の変更であれば、一個師団あるいは一タスクフォース、そういう基準がきめられておりますが、その基準はどうしてきめられておりますか。
  397. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 事前協議そのものの拒否権について質問があったと考えてお答えしたのですが、その基準は、やはり安保条約の条約締結の場合における藤山外務大臣とマッカーサー大使、こういう安保条約締結の協議の場合にこれが了解を得ておる。文書にはしておりません。いわゆる紳士条約にはなっておりますけれども、両方がその安保条約の協議を通じて了解をされている事項でございます。
  398. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 どうして文書になっていないのですか。
  399. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) そのときに、やはり交換公文でちゃんと事前協議の条項があるわけで、それをどこへ基準を置くというのは、やはり両方のそういうアンダースタンディングでいいという解釈で文書にしなかったものだと思っております。
  400. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 したがって文書がないということは口約束であると、こう考えまして、この事前協議の基準をこちらから変更していく、こういうことも可能なわけかどうか、お伺いしたい。
  401. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) それ絶対不可能という——両方の意見一致すれは不可能ではありますまいが、いま政府がこの基準を変える考えはございません。
  402. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 こういうことを聞いたかと言いますと、いまの基準だと、実際問題、この間からエンタープライズが来たとか、あるいはB52が来たとか、いろいろなことがありましたけれども、大体政府の統一見解は、事前協議の対象にならない、こういうふうなことが非常に多いわけです。実際、その一タスクフォースというものが日本に来るということがあり得るかどうか。かなり相当大規模なものでございまして、日本には来ない、そういう非常に高い基準で事前協議がきめられているということ自体が、やはりアメリカにかなり強い権能を持った安保条約であると断定せざるを得ない。だから、現在の日本立場からいいまして、やはりそういう基準も少しは下げていってもいいじゃないか、こう考えるからそういう質問をしたわけですけれども、現在の基準というものはかなり高過ぎると私は思うのですが、外務大臣はどうお考えになるか。
  403. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 矢追君は一方的だと言われますけれども、これはやはり、この条約というものは、日本の防衛に対してアメリカが責任を負うことだ。ところがアメリカのほうに対して日本が助けに行く軍事行動の義務は負ってない。日本を防衛する責任をアメリカは負っている。日本はアメリカを防衛するという、アメリカがいろいろな場合において、日本が防衛の責任を負うてないわけであります。しかも、安保条約によって日本防衛の責任を負うておるのは、アメリカが負うわけでありますから、アメリカに対して便宜を供与するということは、何にも義務を課してないのではないのです。日本防衛の義務をアメリカに課しておるのですから、便宜を与えるということは、これは当然のことであります。しかし、その便宜というものが、日本の重大な、非常にバイタルな問題については、政府の同意を必要とするという制約を加える。そうでなければ、何かアメリカに対して何でもかんでも事前協議というものにかけて、そしてバイタルでないような問題までかけて、そしてアメリカがそういう施設や区域を使うことが非常に迷惑なことをアメリカがしておるというような形で事前協議を考えることは安保条約の本質に反するのではないか。したがって、日本とすればこの条約は一方的だとは思わない。アメリカは、アメリカの国会においても、この条約はアメリカが一方的に義務ばかり負わされているという批判を、アメリカの政府はアメリカの国会でこの批准の場合においても非常に受けた事実がある条約でございます。
  404. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いまの大臣のお話聞いておりますと、それではその事前協議というものは、かなり抽象的といいますか、その基準が——一応はっきり具体的に一個師団とか、一タスクフォースとかきめられているのですが、いまのお話聞いていると、何もそんなことをきめなくても、日本の国にとって非常にアメリカが配置の変更をやったり装備の変更をやったら迷惑である、そう断定したときは、これは事前協議の対象とする、そういうふうにしたらいいのであって、非常に高い基準を設けているということを私は問題にしているのです。いまの大臣のお話であれば、何もそういうことをきめなくても日本の国がアメリカが来たら非常に困る、非常にたいへんな状態になる、むしろ日本が戦争の脅威にさらされる、そうなった場合には事前協議の対象となる、そういうふうにしたほうがいいのじゃないか、その点どうですか。
  405. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 物事には、何かやはり基準がないと、これはいろいろ国民としても、どういう場合に事前協議にかかるのであるという基準を、そのときどきで政府が判断しますということも何か不安でありますから、一応の基準というものを日米両国できめたような経過だと、私は理解しております。
  406. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 一応その基準はきまっておりますけれども、じゃ、その基準どおりになっているかというと、私は特に装備の変更の場合、核弾頭、核を持ち込む場合は事前協議の対象になる、そういうふうにいわれている。実際、安保締結の当時、こういうふうな核というものは問題になっておったのかどうか、その点お伺いします。
  407. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 旧安保条約のときに一番やはり論議になったのは核装備の問題です、最大のやはり論点であった、核装備の問題が。だから、これは、ずっと、新安保ばかりでなしに、旧安保以来やはり最大の論点の焦点は核装備であったということがいえます。
  408. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 では核ということはどうして明文化されていないのか、一番重要な問題であるのに。
  409. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) いま核ということになっておるわけですが、核というと、やはり対核弾頭ばかりではない。政府は、ミサイル核基地、こういうものを入れて装備の重大な変更であるといっておるので、これは端的には核というよりも、そのほうの表現のほうがいいという解釈だったと思います。
  410. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 私はおそれますことは、そうやって核ということをはっきり明示していなければまた時代が変われば、これは日本の安全保障のためならばかまわないと、そういうようなことになって事前協議の対象からはずされると、こういうふうなおそれがあるのではないか、こう考えるのですが、その点いかがですか。
  411. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) まそういう御心配は絶対にありません。これは装備の変更ということは、もう核である、これは国民だれも知らないものはない。だから、そういう核と言わないからといって核を持ち込むというようなことが、少なくとも政府はこれを強く、国民に対してこれほど厳粛な約束はないのですから、核と言わないからといって核を持ち込むようなことは絶対にありません。
  412. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 時間がだいぶなくなりましたので、また一々お聞きしたいと思うのですが、時間がなくなればまた一般質問のほうに回したいと思いますが、この事前協議の対象につきまして三点確認をしたいのですがこの三月の二十日に、米第五空軍の作戦本部の一部が韓国に移ったと、こういう場合はどうなんでしょうか。
  413. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) どうも失礼いたしました。質問が少し聞き取れなかったので、もう一ぺんひとつおっしゃってください。
  414. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 三月の二十日に米第五空軍の作戦本部の一部が韓国へ移動したと、こういうふうに発表になっておりますけれども、これは事前協議の対象になるかどうか。
  415. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 出ていく、そういう直接戦闘作戦行動でなければこれは事前協議の対象になりません。行く場合においても、単なる移動というのではならない。直接戦闘作戦行動のために日本を基地として出発するときに事前協議の対象になるということでございます。
  416. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 直接戦闘作戦行動であるかどうかはどうやってチェックができるのですか。
  417. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 客観的な経過で何にも戦争もないのに行くわけじゃない。戦闘行為が行なわれているという客観的な情勢、条件というものは、これはだれの目にも明らかです。何にもないところへ戦闘作戦行動ということはあり得ないので、これはやはり客観的にもだれにもわかることだと思います。
  418. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 そうは言われますけれども、実際戦争というものはそういうふうなことでわかるかどうか。この間、プエブロ事件等の場合ですね。あのときは戦争にはなりませんでしたけれども、あそこでもし戦争が始まってたと仮定した場合、エンタープライズがどうなるか。ただ客観的にわかるというふうな甘い見方といいますか、そういうようなのでは私はだめなんじゃないか、こう思うのですが、いかがですか。
  419. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 戦争が起こったらわかるのじゃないでしょうか、戦争が始まったら。これはやはり戦争が、わからぬうちにやる戦争というものは、やはりそういうのはちょっといままでにもあんまりないと思う。わかると思いますよ、戦争が起これば。だから、プエブロ事件でそれがもし、そういうことはあり得ないことですけれども、戦闘行為が起これば、それで日本の基地から出発をするということには、むろんこれは事前協議の対象になるということでございます。
  420. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 戦争の一番最初がわかるとしたら、これはたいした私は洞察力だと思うんですけれども。それはいろいろな緊張で、客観情勢からそうであるかもわからないが、実際、その一番最初の攻撃が、爆撃が行なわれたと、そのときはもう行なわれたあとですから、あとで事前協議——事後協議になるんじゃないか。その点どうですか。
  421. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) これはやはり形式的に言えば、戦争が起こらなければそういうことはないんで、戦争が起こるという事態がまあ客観的にあることが条件でしょうけれども、作戦命令が出ますわね、作戦というか、直接出撃命令、直接戦闘作戦命令、これが出て、これに対して行動が伴う。ここでやはり直接戦闘作戦行動に日本の基地を使うという事態になる。だから、やはり命令があり、行動があるということでしょう。しかし、命令と行動というものは、まあ戦争という事態がそういう命令と行動を起こす原因だと、こういうふうに考えていいんだと思います。
  422. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 矢追君、時間がまいりました。  以上をもちまして、矢追君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十六日午前十時に開会することといたしまして、本日はこれにて散会いたします。    午後六時十一分散会