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1968-03-21 第58回国会 参議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年三月二十一日(木曜日)    午前十時二十三分開会     —————————————    委員の異動 三月二十一日     辞任         補欠選任      北條 雋八君     宮崎 正義君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         西郷吉之助君     理 事                 北畠 教真君                 剱木 亨弘君                 近藤英一郎君                 玉置 和郎君                 内藤誉三郎君                 加瀬  完君                 鶴園 哲夫君                 小平 芳平君     委 員                 内田 芳郎君                 大谷 贇雄君                 大森 久司君                 岡本  悟君                 梶原 茂嘉君                 小林  章君                 小山邦太郎君                 櫻井 志郎君                 塩見 俊二君                 白井  勇君                 杉原 荒太君                 任田 新治君                 船田  譲君                 増原 恵吉君                 八木 一郎君                 山本茂一郎君                 吉武 恵市君                 岡田 宗司君                 木村禧八郎君                 瀬谷 英行君                 田中寿美子君                 千葉千代世君                 戸田 菊雄君                 野上  元君                 羽生 三七君                 前川  旦君                 村田 秀三君                 森中 守義君                 鈴木 一弘君                 宮崎 正義君                 矢追 秀彦君                 片山 武夫君                 春日 正一君                 市川 房枝君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  赤間 文三君        外 務 大 臣  三木 武夫君        大 蔵 大 臣  水田三喜男君        文 部 大 臣  灘尾 弘吉君        厚 生 大 臣  園田  直君        農 林 大 臣  西村 直己君        通商産業大臣   椎名悦三郎君        運 輸 大 臣  中曽根康弘君        郵 政 大 臣  小林 武治君        労 働 大 臣  小川 平二君        建 設 大 臣  保利  茂君        自 治 大 臣  赤澤 正道君        国 務 大 臣  木村 武雄君        国 務 大 臣  木村 俊夫君        国 務 大 臣  鍋島 直紹君        国 務 大 臣  増田甲子七君        国 務 大 臣  宮澤 喜一君    政府委員        内閣官房内閣審        議室長        兼内閣総理大臣        官房審議室長   橋口  收君        内閣法制局長官  高辻 正巳君        内閣法制局第一        部長       真田 秀夫君        総理府総務副長        官        八木 徹雄君        警察庁警備局長  川島 広守君        防衛庁長官官房        長        島田  豊君        防衛庁経理局長  佐々木達夫君        防衛庁装備局長  蒲谷 友芳君        経済企画庁調整        局長       赤澤 璋一君        経済企画庁国民        生活局長     八塚 陽介君        経済企画庁総合        計画局長     鹿野 義夫君        法務省刑事局長  川井 英良君        公安調査庁長官  吉河 光貞君        外務省アジア局        長        小川平四郎君        外務省北米局長  東郷 文彦君        外務省経済局長  鶴見 清彦君        外務省経済協力        局長       上田 常光君        外務省条約局長  佐藤 正二君        大蔵政務次官   二木 謙吾君        大蔵省主計局長  村上孝太郎君        大蔵省主税局長  吉國 二郎君        大蔵省関税局長  武藤謙二郎君        大蔵省銀行局長  澄田  智君        大蔵省国際金融        局長       柏木 雄介君        厚生省医務局長  若松 栄二君        厚生省社会局長  今村  譲君        農林政務次官   日高 広為君        農林大臣官房長  桧垣徳太郎君        農林省農林経済        局長       大和田啓気君        食糧庁長官    大口 駿一君        通商産業省通商        局長       宮沢 鉄蔵君        通商産業省貿易        振興局長     原田  明君        労働省労政局長  松永 正男君        労働省労働基準        局長       村上 茂利君        労働省職業安定        局長       有馬 元治君        建設省都市局長  竹内 藤男君        建設省住宅局長  三橋 信一君        自治省財政局長  細郷 道一君        自治省税務局長  松島 五郎君    事務局側        常任委員会専門        員        水谷 国一君    参考人        日本銀行総裁   宇佐美 洵君        財政制度審議会        会長       小林  中君     —————————————   本日の会議に付した案件昭和四十三年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十三年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十三年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和四十三年度一般会計予算昭和四十三年度特別会計予算昭和四十三年度政府関係機関予算。  以上三案を一括して議題といたします。  本日は、参考人といたしまして、財政制度審議会会長小林中君と、後刻、日本銀行総裁宇佐美洵君の出席をお願いいたしております。  なお、予算委員会は連日正確に朝十時に始めたいと思いますので、政府関係閣僚各位も、いろいろ御都合がありましょうが、十時にできるだけ御出席を願いまして、委員会も十時に正確に始めたいと思います。御注意申し上げておきます。  それでは、一昨日に引き続き総括質疑を行ないます。木村禧八郎君。
  3. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は日本社会党を代表いたしまして、財政経済を中心に総括質問をいたしたいと思います。  第一に、政府経済見通し経済運営経済政策、第二、いわゆる財政硬直化公債政策国民生活、第三番目に、四十三年度予算憲法財政法との関係、この三点に重点を置いて、これから順次質問いたしたいと思うのでありますが、その前にただしておきたいことが一つございます。それは暫定予算です。これはいつごろ、どの程度の規模で、どういう内容で提出される御予定であるか、まずこの点を総理にただしておきたいと思います。
  4. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 御承知のように、ことしの予算審議は、たいへん皆さんから熱心な審議をいただきましたために衆議院のほうの審議を終わるまでに相当の日時がかかりました。そのために年度内成立ということは困難な状態だと、かように思っております。その点について参議院皆さんに特にまた御協力を願うように、いろいろ御相談申し上げておると思います。その御相談が近く固まるのではないだろうか、かように思います。政府といたしましては、年度内成立を心から期待いたしておりますけれども、ただいまのような状況では、それを期待することは無理ではないか、かように思っております。しかし、その暫定を組むといたしましても、できるだけその期間は短いものにしたい、かように思いますので、今後皆さん方の御審議並びに御協力を心からお願いする次第であります。
  5. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この暫定予算をお出しになる予定であるということははっきりいたしました。そこで、これまで暫定予算を五回組まれておりますね。過去の暫定予算を見ますと、占領下及び国会解散のとき以外には組まれておらないのであります。今回はそういう事態でないのに、暫定予算が組まれる。衆議院で絶対多数をとられておる。参議院でも絶対多数を自民党はとられております。絶対多数をとっておりながら、暫定予算を組まざるを得ない。予算年度内成立させることができなかったということは、これは不信任と同じではないかと思うのであります。この点については、総理、いかがにお考えですか。
  6. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 衆議院段階における審議経過等をごらんになれば、一応御理解いただけるかと思います。私は、政府に対する不信任、かようには考えておりません。
  7. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この点について論議する前に、暫定予算がもし不成立に終わった場合は、どういうふうにされますか。
  8. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 予算不成立に終わった場合は、もちろん重大なる事態だと、かように考えます。
  9. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 重大なる決意ということは、総辞職をされるということでございましょうか。暫定予算が通らないときですよ。
  10. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 重大なる事態考えますということを申し上げたのでございます。ただいままだ仮定の状態でございますから、そういう点について私がただいま私の決意を申し上げることは差し控えさしていただきたいと思います。
  11. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは今後の前例になりますが、この際、やはりこの点明らかにする必要があると思うんです。憲法財政法上、暫定予算が通らなかったときにはどういうふうになるのでございますか。
  12. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 暫定予算が通らないと執行する予算がないということですから、これはたいへんな問題でございます。
  13. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 たいへんな問題だけじゃ済まされない。なぜ財政法なり憲法規定がないのですか。
  14. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私はただいまのような状況から勘案いたしますと、暫定予算成立しないということはまず考えられないと、かように私は確信をしておる次第でございます。
  15. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 暫定予算成立しないだろうという場合があるのです。今回のような場合だけでないんですよ。今回の場合というのは、もし暫定予算衆議院で、これが本来ならば平時において、まあ占領下あるいは解散以外のときに、政府責任において本予算が通らない、暫定予算を出してきたら、それに対して野党が拒否をする、不成立せしめるという場合と、さらに衆参両院の召集も、参議院緊急集会も不可能な場合があります。あるいはまた、参議院緊急集会暫定予算成立せしめない場合もございます。さらにまた、暫定予算政策的経費を盛り込んだとき、それが政策争いになって、これが不成立の場合も予想されるわけなんです。そういう場合、どうするか。そういう場合、総理が言われたのは、これはたいへんなことになる、混乱するから。そこで何とか措置考えておかなければならぬわけですよ。そうしておきませんと、その混乱責任をだれが負うかです。もし混乱の場合、野党不成立せしめたという場合、野党責任になるとすると、政府はそれにつけ込んで政策的経費を盛り込んでくる危険があります。そういう政策的経費を盛り込んできて、もしこれが成立しなければ大混乱になるという、その責任野党に負わせる、そういうことになれば、政策的経費は多分に入ってくる危険もあるのです。したがって、これは法制局長官、どうなんですか。憲法財政法に、暫定予算が通らないときどうするか、何ら規定がないのはどういうわけなんです。この際こそ、こういうことについてはっきりとこれをきめることが、これは国会責任ですよ。いい機会じゃありませんか。そういう場合はどういたしますか。
  16. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) お答え申し上げます。  お説のとおりに、暫定予算成立しない場合にはどうなるか、これは暫定予算財政法上つくった制度でございますが、これはまあ通常予算成立しない場合の備えとしてあるわけでございまして、その暫定予算がまた通らなかった場合の話でございますが、これは申し上げるまでもなく、旧憲法には実はそういう場合の措置規定してございました。前年度予算を使うという、かりにそれを持ってきて、そういう場合の欠陥に対処するという規定がございましたが、現在の憲法にはそういうような規定は好ましくないという考え方でございましょう。そういう規定は現在ございません。したがって、憲法の上から言えば、やはり予算というものは国民生活——国民の生存と言ってもいいかもしれませんが、そういうものと切っても切り離せないものであるから、やはり国会が良識をもって少なくも暫定予算成立させるであろうというような考え方に立っているんだろうと私は思います。もしそれが、そういうことが許されないものなら、やはり法律のたてまえとしてはどうするかと言われれば、何か考えなければいかぬのかもしれないということになってしまうような気がいたします。憲法なり法律というものは、やはり一国の機関に与えられた任務というものは、やはり通常は、それが通常の形としては、法に従って、あるいは法の期待にこたえてそれが成立する、あるいは法の期待するところが実現するということを一応前提としているものであろうと私は思います。いずれにしても、理論的にぎりぎり言われれば、いまの憲法には、暫定予算成立しなかった場合に対処する財政予算上の措置としては、旧憲法のような備わった制度がないと申し上げざるを得ません。
  17. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ないからどうするかと聞いている。
  18. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) お答え申し上げます。  先ほども申し上げましたように、暫定予算成立しない場合にはどうなるかというお尋ねでございますが、これはいままでの暫定予算国会の御審議に付します際にも、しばしば同じような態度でまいりましたし、御説明も申し上げましたが、特別な、いわゆる政策的な事項といいますか、そういうものは暫定予算には盛らないことにいたしております。したがって、通常政策的なものと、そうでないものとの区別は、必ずしも明瞭には言えないにしましても、通常言われるような政策的経費、これは暫定予算には盛らないことにしておる、そうして、あとは国の政治が、とにかく予算成立するまでの間における国民に密着するようないろいろな行政措置がとれるように、最小限度のものに限られておりますので、われわれとしては、とうていそういうたぐいの暫定予算成立をしないということは考えられないというふうに思っております。
  19. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはもう全然あなたは勉強していないんですね、法制局長官。怠慢ですよ、これは。憲法に、あなた、ないって言ったでしょう。財政法にもない。ないときはどうするかと、なぜ、ふだん研究しておかないんですか。私がこういう質問するのは、いままでも暫定予算でこういう議論はあったんです。政策的経費を盛り込むとか、盛り込まないとか、これは何回もあったんです。ところが、いまの暫定予算は、これまでは、二十三年度、二十四年度、二十八年、三十年、それから四十二年と、これでこれまでは五回編成しているんですよ。しかし、そのときは占領下か、あるいは解散のとき以外ではないんですよ、みなそうなんです。今回は初めてそうでない異例の措置なんです、これは。だから問題にしている。そういうときに、政策的経費を盛り込んできたとする、たとえば具体的に、鉄道運賃暫定予算に組み込むということも聞いているんです。そういう場合に、それが争いになったらどうします。あるいは国立療養所特別会計予算について、これが特別会計も、まだ法規が通らないのに、これが組み込まれたらどうするか、そういう政策について論争が起こって、どうしてももめて通らぬことが予想されるのです。いままでと違うんです、異例なんです。本来なら総理がこれは総辞職すべきなんです。そうでしょう、絶対多数をとりながらこれは通らなかったんですからね。本予算不成立であった、暫定予算を組まざるを得ない。この点について、今回の総理責任もさることながら、これは国会としてこういうことがないとは言えない。さっき言いましたように、いろいろな緊急集会開けない場合もありますし、当然これは研究しておかなければならない。ちょうどいい機会なんです。この際明らかにする責任があるんです。どうですか。なぜ勉強しておかなかったんです。
  20. 村上孝太郎

    政府委員村上孝太郎君) 憲法財政法に現在予定されておる財政支出及び債務負担権限というものは、暫定予算成立しない場合には、そこで空白ができて、非常に国民生活混乱を生ずるということは、ただいま法制局長官がおっしゃったとおりであります。ただいまおっしゃいましたように、法律その他の案件がすべて現在、いまだ審議中の段階にあるときに、暫定予算をどうするかということにつきましては、これは先ほども申しましたように、従来の暫定予算の中には、そのときどきの条件によりまして、たとえば、すでに来年度の財政計画の全貌が出ておりますときには、たとえば社会保障関係の新しい予算を盛るとか等等ということもいたしましたけれども、原則としては、骨格的なものをその中に置いておくというのが原則でございます。特に、このたびのように本予算成立するのがおくれまして、そのつなぎとして暫定予算を出すという場合には、これはこの暫定予算が否決されます場合、あるいは通らない場合には、すでに他に全く方法がないわけでございますから、憲法予定しておりますあらゆる場合を想定して、予算空白を避けるという意味からすれば、そういういまだ成立してない法律案等々に基づくことを前提としないで、骨格的な暫定予算というものを提出する。それが否定されるということは、現在の憲法財政法のもとにおいては予想しておらないルールである、こういうふうにお考えを願いたいと思います。
  21. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 答弁になってないですよ。憲法財政法にないから、しかも、暫定予算不成立の場合も予想されるのでしょう。混乱が起こるというのは、その混乱が起こるのをほうっておくのですか。何らかの制度的な措置を講ずるのか、あるいは、どっかで何かの措置を講じなけりゃならないじゃないですか。そんなあいまいな答弁じゃだめですよ。
  22. 村上孝太郎

    政府委員村上孝太郎君) これは御存じのように、ほかの国におきまして、あるいは旧憲法時代においては、そういう措置があったわけでございますけれども、現行憲法の八十五条によりますれば、支出あるいは債務負担をする権限というのは、ほかに暫定予算成立しない場合にはあり得ないわけでありますから、したがって、そういうことは民主主義的な財政処理原則からは、ルールとして憲法は予想してないと、こう言わざるを得ないところでございます。
  23. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 おかしいですよ、予想してないじゃないです。私は私なりの解釈がありますけれども、政府考えを言ってください。そんなばかな話はないですよ。
  24. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) どうも私並びに主計局長のお話ししたことを繰り返すようなことになって恐縮でございますが、いずれにいたしましても、この現行憲法のもとでは、国会議決経ずし国費支出するということは、原則的にといいますか、基本的にこれは認めておりません。国費支出するには国会議決を必要とするということになっておりますので、その議決形式としてわれわれは予算というものがあると考えております。で、その予算成立をしないのに国費支出するというのは普通には考えられないことである。したがって、先生が何かほかに方法があるではないかということをおっしゃっておられますが、まあ、いまの憲法で、昔の旧憲法にありますような前年度予算を使うという、法に従ってやるという、方法でも規定されればともかく、そういう例外的な規定は一切ございませんので、いま御指摘のような場合に、憲法及び財政法のもとで何かする措置があるではないかと仰せられましても、私はそういうものは許されないものだと考えております。
  25. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 暫定予算不成立の場合が予想されることははっきりしたでしょう。こういう場合に不成立の場合が起こると、もし不成立なら国民生活に大混乱が起きると予想されるでしょう。ところが、憲法財政法で許されてないというんでしょう。それなら何かを考えておかなきゃならないんじゃないですか。そのことを聞いている。このままでいいんですか。ないんなら何かを措置しなければならないでしょう。なぜ研究しないんですか。ほうっておくんですか。
  26. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) やはり先ほども申しましたように、暫定予算でございますから、この予算成立するまでの間における空白事態に対処するためで、そのためには、政策費等は除きまして、通常行政を果たしていく最小限度といいますか、国政を継続していくに足るだけのものを実はお願いして暫定予算をするわけでございまして、これについて暫定予算成立しないということは、われわれとしては、とうてい予想しがたいところでございます。もしも憲法上何かこの国会なり、あるいは内閣なり、どこでもよろしゅうございますが、法律期待しておるところを、もしもそれが法の期待どおりに、国の機関がこれを実施しなかったらどうなるかと言いますと、これはまあ、たいへんなことになりまして、一々の場合にいろいろ考えていかなければならぬものがありはしないかと言われれば、そうかもしれませんが、法律は、あるいに憲法は、国の機関としては憲法なり法の期待するところに従ってものごとが動いていくということを考えてできているものだと私は思います。そうでなければ、これはほんとうにたいへんなことになりますが、そういう場合について一々考えるわけにもまいりませんし、いまの予算の場合についても、私はその一例ではないかと思います。
  27. 加瀬完

    加瀬完君 関連。法制局長官の御説明によるとですね、結局、木村委員の指摘したようなことの生じた場合は、法的には措置の範囲がないということですね。そういう事態になったとき、政府としては、一体どういう態度をとるのか、政府暫定予算がかりに通らないような場合の責任木村委員は聞いておるわけです。それが法律的に措置がないから、たいへんなことになるだけじゃなくて、たいへんな場合はどうするんだということを聞いておる。政府のひとつ所見を伺いたい。
  28. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 予算がないという場合、これはもうたいへんなことだと、これはよくおわかりだと思う。だからたいへんなことを起こさないように、政府暫定予算成立さす最善の努力をする、こういうことです。
  29. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 まだ政府からはっきりした答弁伺っておらないので、途中ですが、実は参考人財政制度審議会長の小林氏に御足労願っておりまして、お約束は十一時までというお話だったんです。しかし、特に十一時十五分まで延ばしていただくと御了解得ましたので、途中ですが、このまませっかくお出ましをお願いして御質問申し上げないのは失礼でございますので、この際小林氏に質問いたしたいと思うのであります。  で、小林さんは、財政制度審議会長として、四十三年度予算に非常に大きな関係のある財政硬直化の問題につきまして報告をされているわけですね。で、政府からどういう諮問を受けられて、どういう報告をされましたか。その報告の中で、一番日本の財政硬直化を打開する方法として、どういう点に一番重点を置かれて報告をされているか、今後やはりどういうふうに日本の財政硬直化を打開すべきかという点について、まずお伺いいたしたいんです。
  30. 小林中

    参考人小林中君) ただいまの木村先生の御質問ですが、四十三年度は、財政制度審議会としては、財政硬直化是正の第一歩を踏み出すべき年だから、これは政府がしっかり緊縮政策を徹底してやらなければいけないんだと、そういうふうな答申を実はしているわけでありまして、御承知のとおり、この財政の硬直化という問題は、多年にわたりまして、醸成をされてまいった問題でありまして、したがってその根は深く幅は広いものでありまして、これを徹底的に改善をしていくということになりますと、一朝一夕にはとうていできないものでありまして、私はある程度の期間を要していかなければならないんだと、こう考えております。したがいまして、財政制度審議会といたしましては、昨年は九月から実は審議会を開いたようなことで、時間的に非常に詰まっておりましたので、そういうふうな根本的な問題よりは、まず第一に四十三年度の予算のあり方というものを検討してまいりまして、その中に、財政硬直化を是正していく第一歩の年であるから、こういうふうなことをしていくべきだということを提起しておるのであります。そうして、じゃあ先生の言われるように、これをどうしたら解決がつくかと言われますと、私はやはり、財政の硬直化というものが、法律とか、制度とか、慣行とかというものにしばられまして、従来歳入が予想以上に多かったもので、これは高度成長の結果だと思いますがね、したがって、安易にそういうものを反省する必要がなくて、その上に積み重ねてまいって、今日において財政の硬直化がほんとうに目立って非常に強くなってきた。御承知のとおり、当然増並びに準当然増と考えられるものが財政の九割近くを占めているというような状態になってきている。このままで放置しておいたならば、私は国の財政というものが危機に瀕するのじゃないかと、こういうふうにいま考えておるのです。したがいまして、これをどういうふうにして是正をしていくかということになりますと、これは私どもの考え方を率直に申し上げますが、先ほど申しましたように、その原因は、法律、あるいは制度、あるいは慣行等によって起こってきたものでありまして、これを思い切って洗い直して、そうして新しい制度をある程度つくっていこうと、そうして現在の経済環境なり国際環境なりに合ったような考え方財政というものを見直していかなければならぬじゃないか、こう考えております。それにはどうしてもある程度の期間を要しますので、それはそういうことに御了承を願いたいと思いますが、ただこの問題は非常に重大な問題でありまして、政府でもよほど断固とした決意を持ってかからなければならないのでありまして、実際にこういう問題と取り組んでまいりました場合は、いろいろな障害が私は起こるのではないかと思いますので、政府決意が非常に必要であると思います。財政制度審議会といたしましては、本年の四月半ばごろから審議会を開きまして、あらゆる問題を、第一部、第二部、第三部の三つの部会に分けまして、その部会の担当する問題は、大体第一部会が食糧管理制度、地方財政、公共事業。第二部会が社会保障、恩給を含んでおります。文教、科学技術。第三部会が経済協力、国鉄、鉄建公団を含めての問題であります。給与制度財政投融資。こういうふうな区分けをいたしまして、この部会ごとに根本的の検討をしてまいりたいと思います。したがいまして、こういう問題は、先ほど申しましたように、根が深く幅が広いのでありますから、今後少なくとも二年間くらいの期間を要するのではないかと思います。そういうことで結論が得られれば、私どもはまことにけっこうだと考えております。
  31. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ただいまの御答弁をいただきまして、制度的に——財政制度あるいは会計制度ですね、予算、決算、いろいろの制度的に財政硬直化をもたらしている点が非常に大きいということで、いまのお話しで、いろいろと基本的にはたいへんな大きな問題で時間もかかるが、しかし当面としていろいろ御答申、御報告されておるのです。その中で二点伺っておきたいのです。  その一つは、この財政制度審議会というのは財政法の附則の第八条によって設定されているわけです。したがって、「国の予算、決算及び会計の制度に関する重要な事項を調査審議させるため、大蔵省に財政制度審議会を置く。」ということになっておるのでありますが、この御報告を拝見しますと、制度以外に広範に政治にまで及んでいるのです。この報告が政治にまで及んでいる。特に、四十三年度は実質減税はすべきでないということまでにも言及しているのです。学者の間では、行き過ぎではないか、財政制度審議会限度を越えておるのではないかということは一つの問題であります。いまの食管会計でも、その他社会保障、いろいろ財政制度だけの観点から問題はもちろんありますけれども、しかしそれは、労働問題とも、あるいは社会保障、それから農業政策、そういったものと広範に関連があるのでありまして、あまりにこの財政制度審議会がそれを範囲を越えて答申するということになると、大蔵省の何かそこに下請機関みたいになって、大蔵省は民主的に審議会の報告を尊重したということで、民主的に考慮したような擬装ポーズをとって国民をごまかすような危険がないかということを危惧するわけです。この点一つ。  もう一つは、この食管制度について、暫定予算を組むべきでない、こういう御答申をしているのです。これは重大問題なんですが、ああいう御答申を、報告を軽々にされることは、非常に問題じゃないかと思うのです。ことに政治的に非常に問題になってくる。この点は、さらに今後は、単に補正なし予算を組む、組まないというだけではなく、将来は間接統制にまでこれを持っていく必要があるやに、そういう意見があるやに聞いているのです。ですから、そうであるかどうか。この答申、報告は、補正なし予算を組むべきである、食管については将来間接統制にすべきだという御意見なのであるかどうか、この二点について伺っておきたい。
  32. 小林中

    参考人小林中君) ただいまの御意見で、大体おまえの話を聞いていると、法律規定してある財政制度審議会の領域を越えた話ではないか、こういうふうな御質問だと思いますが、実は私どもは実際に予算の上でどういう効果をもたらすことがいいかということを考える問題でありまして、必ずしもそう法律に——これはまた非常に異論があると思いますが、効果がどういう形で起こるかということを考えるほうが先に立ちまして、法律問題の解釈も、解釈のしようにもよると思いますが、その程度のことは、実際の財政制度審議会という立場であり、また現在の日本の財政の立て直しを考えるべきかりに義務があるとすれば、どうしてもそこまではわれわれも検討していかなければ、中途はんぱなものになって、ほとんど役に立たない結論になると、かように考えまして、これは大蔵省の出先になってわれわれがとやこういたすわけではないので、むしろわれわれの決議とか勧告は大蔵省には非常に御迷惑で、たとえば四十三年度の予算の問題でも、大蔵省としては非常にむずかしいことをわれわれは実は言っているような次第で、私は、この財政制度審議会にかかわらず、政府の各審議会というものが各省の仕事に結局ぴったりマッチする必要は一つもないのだ、審議会は審議会の独特の立場において主張するものは主張していったらいいじゃないか、しかし各省は審議会の答申を尊重をしてそれにできるだけ近づくように努力をしていくのだ、こういうことが審議会の真意だと、かように考えるのですがね、いかがでしょう。  それで、いまも木村さんがおっしゃったように、食管制度の問題は当初予算に組むのはどういうわけだ、こういうことだと思いますがね。私は、給与の問題でも、食管制度の問題でも、当初予算に組むべきものであって、補正予算というものは実際には普通は組むべき性質のものでは実はないのじゃないかと、こう考える。特殊の場合、非常な大きな災害でもあるとか、あるいは予備費でまかないがつかぬような問題が起こった場合には、これは補正をすべきだと思いますが、恒常的に、毎年同じような問題がある場合は、それは補正でやるべきでなくて、当初予算でやるべきではないかと、かように考えます。
  33. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 御意見拝聴いたしまして、その点には御了解できる点もございます。尊重すべき点もあると思います。  ただ最後に、食管制度の問題につきましては、今度は補正なしの予算を組む。いままではずっと補正があったのですがね。でも今後は補正なしにするという場合ですね。将来は食管制度もだんだん改廃して間接統制でやっていく、こういうお考えのその大前提として補正なし予算を組む、こういうお考えかどうか、食管につきまして。その点はどうですか。
  34. 小林中

    参考人小林中君) これは、私の個人の考えを申し述べてはなはだ恐縮の次第でございますが、私は、食管制度というものは当初予算に当然繰り入れまして、そうして将来、今後は、米価の値上げがある場合には、これは需要者に当然それは転嫁してバランスをとっていくんだ。そうして、いまのような、従来のようなやり方をしていったら、国の財政負担がますます多くなりまして、これはわれわれが問題としておりますところの財政硬直化の大きな一つの原因になる危険性があるのだ。これはどうしても、どっかでそういうふうなやり方を変えて、順次国の負担財政負担を少なくしていく。ただ、従来において食管特別会計ですかの数字が相当大きなものになっておりますが、これも機会のあるごとに減らしていくような考え方をどうしても政府当局としては持つべきだと、こう私は考えるわけでございます。
  35. 村田秀三

    ○村田秀三君 関連。小林財政制度審議会会長のただいまの答弁でお伺いをいたしますが、食管について補正はあり得ないという御意見でありますが、そうしますと……。
  36. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 村田君、耳が少しお遠いので、少し大きい声でお願いします。
  37. 村田秀三

    ○村田秀三君 これは、食管会計は補正予算ということはあり得ない、こういうお話でございます。そうしますと、ただいまの食管法では、七月に生産者米価を決定するようになっておるわけであります。しかもそれは、米価審議会の答申を経て農林大臣が決定をするということになっておるわけでありますから、その際に生産者米価に異動が生ずることも当然予想されるわけであります。そうしますと、あなたの答申の中には、当然この食管法も改正すべきである、あるいは米価審議会という制度も何らかの変更を要すべきであるという答申もおのずから付随しないと、ここでは矛盾があるのではないかと思われるわけでございまして、その点ひとつお答えをいただきたい。  さらに、それに引き続いてのお話でございますけれども、かりに途中で生産者米価等の異動があった場合には、これは当然スライドして消費者にそのさやを寄せる必要があるというお話でございましたが、これもまた今日の食管法の根本に触れる問題でございまして、その問題についても食管法を改正すべきという御意見を明らかに持っておるのかどうか、この点についてお伺いをいたします。
  38. 小林中

    参考人小林中君) これは私個人の意見としてお聞きを願いたいと思いますが、消費者米価が上がるとか下がる、変化した場合には、当然スライドすべきだと私は考えております。それが、現在の米価が法律に違反するんだということで、法律自体をそれをおまえは変えなくてはいかぬと考えているのかという御質問だと思いますが、私どもがこういう問題を根本的に検討をした結果におきましては、法律を変えべきだという結論になるかもしれません。あるいは、ならずに、現在の法律の運用によって何かそういうふうな方法考え出すことができるかもしれませんが、大体においては、いま言うとおり、スライドをしていくべきことが当然だと考えておる次第でございます。
  39. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 木村君、参考人に対する質疑はこれでよろしゅうございますか。
  40. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ええ。
  41. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) よろしゅうございます。  それでは、先ほど木村君の御質問に対しまして、総理大臣から答弁いただきたい。——それでは、参考人といたしまして日銀総裁が見えておりますので、統一見解を示す前に、それに対する質疑をいたします。
  42. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 日銀総裁に伺いますが、お約束の時間は十一時から十二時までということでございましたので、審議の途中でございますが、せっかくお出まし願ったので、この際御質問いたしたいと思います。  新聞で承知したのですが、きょう日銀総裁が、政府の経済閣僚懇談会ですか、協議会にお出ましになって、金の問題、国際経済は非常にいま混乱動揺しておりますが、そういう問題についてお話をされた。さらに二十九日には、蔵相会議には、大蔵大臣が行かれないで、日銀総裁が出席されるようでございますが、あすこでSDRの問題が出ると思います。総裁として、この金問題を中心として、今後国際経済の問題が、日本の金融政策にも、あるいは財政経済政策にも重大な影響があると思う。この見通しと今後の対策等につきましてどういうお考えを持っておるか、この際承っておきたい。中央銀行総裁として、承っておきたいのです。
  43. 宇佐美洵

    参考人宇佐美洵君) けさの経済閣僚の協議会におきましての話は、これはもうきわめて、何と言いますか、検討、いろいろな情勢を持ち寄って話す機会でございますので、そこでどういう発言をしたかというようなことは申し上げないほうがいいと思うのですけれども、率直に申し上げまして、御承知のように、十六日、十七日、ワシントンで金プール各国の具体的には共同声明で発表されておるとおり、これはいろいろな点から考えまして、やはりいまの情勢としてはこれ以外に方法はないと思います。ただ問題は、英米が問題になっているそれぞれの国の経済をどうするかということと、それからこれに対しまして、金プール諸国はもちろんでありますが、これに出席していない日本を含めて各国がどういうふうに協力するかという問題に帰着するのだろうと思っております。そうしてその方向は、まだ発表されてから間がありませんので、具体的にはこういう方向に向かっているということは言えませんけれども、いまのところ金価格も、あれだけ暴騰しましたのが、やや下がってまいりましたし、また為替も安定のほうに向かっております。またユーロダラーにしましても、いまのところ安定に向かいそうだというようないろいろな指標が出てきております。その意味において、木村さんがおっしゃったように、二十九日からやります十カ国会議が非常に重要な一つの会議であろうと思っております。これに私が出席することになると思いますが、そのとき、日本の立場は、むろん大蔵省とよく打ち合わしてまいりますけれども、やはり、いまのところは、各国が協力してこれをやるという点が大事だろうと思います。したがって、SDRの問題にしましても、議論はいろいろございます。これはもう御承知のように四年がかりで議論しておることでございます。いろいろ議論はありますけれども、何とかして具体的の一つの成果としてこれをまとめるように努力しなければならぬ、かように考えております。これが逆の方向に向かいますと、やはりいけないと思います。各国とも十分連絡をとりながら、議論は議論としまして、これをまとめる方向に努力するということがやはり大事であろうと思っておるわけであります。
  44. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 一昨日わが党の羽生委員がこの金問題について質問いたしまして、また岡田委員も関連で質問いたしましたが、政府のこの問題に対する見方が非常に甘い。それでこの金問題に端を発する今後の世界経済情勢の分析についても非常に甘過ぎる、こういう感を抱いております。その第一は何かといえば、金というものに対する認識が私は非常に欠けていると思うのです。特に大蔵大臣なんか、SDRに非常に期待を持っておるようです、金以外の流動性について。これがそもそも間違いなんです。やはり金というものは、なぜこんなに動揺したかといえば、世界の国際通貨は金なんですね、ドルじゃないのです。やはり最後は国際貨幣は金なんです。金にドルが結びついておったから国際通貨であるのですけれども、それに対してドルがあまりとらわれ過ぎておったから、認識が浅いのですね。今度はSDRの会に行かれまして、かりにドルの切り下げになった場合に、日本は同率に切り下げられるかどうか、問題なんです。専門家の間では、日本は円が安過ぎるから、この機会に円高にする。アメリカが半分に切り下げた場合、日本も半分切り下げ得るかどうか、これも疑問なんです。そうなったらたいへんなんです、今後。そういう問題も含めて、もっと真剣に考えなければならぬと思うのですが、総裁、いかがですか。
  45. 宇佐美洵

    参考人宇佐美洵君) 金の問題について非常に甘く考えておる……。
  46. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 政府が。
  47. 宇佐美洵

    参考人宇佐美洵君) 御質問は、私も含めてのような御質問でございます。決して政府も金の問題はそんなに軽く考えてはおりません。これはやはり非常に重要な一つの国際通貨の基礎になっておるのは事実でございます。しかし、同時に、いまドルが世界における経済の地位からいいまして、また各国がドルで世界じゅう通用しておるという現状から見ますると、金と同様にドルも、これはいま国際通貨としてわれわれは考え、これを軽く見るのも私は、これは私の意見でございますが、いけないと思います。それで、現在におきまして、いま木村さんは、学者の間でもいろいろ問題があるとおっしゃいましたが、私も存じております。しかし、現在の状態からいいますと、やはり金が、今度は各国がとりましたように、やはり三十五ドルで守ろうという考え、そうして、各国もこれに協力しております。また、同時に、ドルについても、これを堅持しようと思って、アメリカ自身も、まあこれに対しての批判があるかもしれませんけれども、ドルを守る努力をしておるわけであります。したがって、私どもは、まあ学者がいろいろ御検討になるのは当然だと思いますけれども、われわれは、やはり金を切り上げも——切り下げですか、切り下げもしないし、また、ドルもいまの金とのリンクを続けるということに各国が協力して守っていこうということが非常に必要だと思うのであります。  議論としては確かに私もあろうかと思いますけれども、現在大事なことは、そういうことでなくて、現在国際通貨制度、これを守ることがやはり一番大事なことだと思う。むろん政府もそういうお考えだろうと思っておりますが、私もそういうことで日本の円も維持していくということが何よりも大事だと、かように考えております。
  48. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 時間ございませんから簡潔に伺っていきたいと思うのですが、この金問題についてはあとでまた政府に伺うことになっておるのですが、昨年来の景気調整政策につきまして、日本銀行は、昨年九月、公定歩合一厘上げましたですね。それから、政府も三千百十二億繰り延べをやったんですよ。その効果が全然なかったのです。基礎収支で十億五千万ドルも大幅な赤字になっておりますね。私は、景気調整政策が間違ったと思うのです。総裁はどう思うか。それが本年になって一月六日に、また一厘上げましたですね。今後また四十三年度予算は、これは抑制型予算じゃないということは御承知のとおりです。むしろかなり四十二年度の繰り延べを入れますと、相当刺激的予算になるわけです。したがって、このままでは国際収支の赤字がますます多くなる。三億五千万ドルに私は維持できないと思うのです。もっと多くなると思うのです。その上に、今度の国際経済の混乱でしょう。ですから、容易ならぬ事態になっていると思うのです、これまで。ですから、政府財政政策に失敗する、金融政策においても私は失敗したと思うのです。この点について、第一に伺いたいのは金融政策ですね。  それから、第二は、国債政策もまた破綻したと思うのです。いま国債の利回りが政保債とか、あるいは事業債より利回りがいいなんていう国どこにありますか。全く私は国債政策破綻したと思う。これに対して、総裁は、今後どうこの国債の問題についてお考えか、これは重大な問題だと思う。国債依存の予算組んできて、公債政策が破綻しちゃったのですから、この点についてはどうお考えか。  それから、第三番目は、ドルが切り下げ——切り下げについてはいろいろ意見があります。むしろ、切り下げて、フランス、その他金を持っているところが、IMFに拠出する。切り下げて、もうかった分を拠出するとか、あるいはそれを後進国に援助するとか、そうしたほうがむしろ賢明ではないかという意見もあるわけです、御承知のように。しかし、切り下げにいくまでの過程がたいへんだと思うのです。ドル防衛政策でデフレ政策が起こってきますから、そうして、為替相場はしょっちゅう変動するわけです。切り下げないということがはっきりわかればいいのですよ。ところが、いま金プールの金売却停止はドル切り下げへの一里塚じゃないかと、こう専門家は見ているわけです。そうすると為替リスクをそれは負ったのではたいへんだから、どうしたって商取引が停滞する。これはきのう企画庁長官も指摘されたのです。為替の変動ですね、これは重大だと思うのですよ。そういう点にどう対処していくか、切り下げに至るまでの過渡期ですね。またはっきり切り下げぬとわかればいいんですが、それまでの動揺ですね。それを金融政策でどういうようにしていくか、この三点について伺いたいのです。
  49. 宇佐美洵

    参考人宇佐美洵君) まず金融政策が失敗でなかったかという御質問なんですが、私はそう考えておりません。というのは、確かに日本の国際収支がだんだん悪くなってきましたので、九月に公定歩合を一厘引き上げました。そうしてさらにいわゆる窓口規制をやったわけであります。しかし当時の情勢は、やはり私ども、各企業の流動性も高うございますし、また国際競争力もつけなきゃならぬ、あるいは労働力のほうからいいましても、設備投資もしなきゃならぬ、いろいろの要求がございまして、それ一つ一つはいずれももっともな要求であるわけであります。したがって、急激に引き締めるよりも、これを浸透することによって、だんだんこの浸透度を加えていけば、国際収支はだんだん改善するのではないかと思っておったのでございますが、十一月のポンドの切り下げ以来、国際情勢が急にきびしくなってきました。それらの問題について予見しなかったんじゃないかというおしかりもあるかもしれませんけれども、当時の情勢から今日まで来ているこのきびしさというものを、予見はなかなかできなかったわけであります。したがって、そういうきざしが出てきました場合には、われわれは金融政策をさらに変更しなきゃならぬというので、一月にさらに再引き上げをして、そうしてまた一−三はかなり窓口規制を強めたわけであります。こういうことで、要するに一言で言いますと、国内も、さらに国外も非常に流動的でありますので、流動的にこれをわれわれも対処していくという態度でなければいかぬ。そういろいろ先を見通していっても、なかなかそのとおりにはいかぬというのが現状でありますので、そういう点を見通しながらこれからもやってまいりたいと、こう思うのでございます。  それから国債政策が破綻ではなかったか、もう破綻しているんではないかという御意見でございますが、国債発行につきましては、当初は御承知のような事情で出てまいりました。しかしその後も日本の経済事情が、やはり財政のほうから相当公共投資をはじめ、いろいろやらなきゃならぬということで、われわれとしましては、お出しになるのはいいけれども、やはりその何といいますか、発行額あるいは条件というものは、金融情勢あるいは国内の経済情勢によって勘案してもらわないと困るということは、この発行に踏み切られて以来、終始言っているところであります。これに対しまして政府も 御承知のようにいろいろの変更を加えられて今日に至っておるのであります。ただ何ぶんにもなお公社債市場が非常に未発達でありますので、ごらんになりますと非常にうまくいっていないようなお感じもあるかと思っておりますけれども、しかしそれに対しましても、今後の情勢によって、政府に対してはやはりいろいろの、ことに発行額につきましては御考慮を願いたいということは、今後も情勢によってぜひ要請していきたいと、かように考えておるのであります。まあそういうことで、決して私は金融政策も、あのときの事情、ことに今後のやり方によっては失敗だと思いませんし、また国債についても、これから政府が情勢によって適当にやっていただければ、決して破綻というようなことにはならぬと確信いたしております。  為替の問題につきましては、やはりこれから非常に注意してまいらなければならぬと思いますが、しかしいま、先ほども申しましたとおり、われわれはやはり、金あるいはドル、これを堅持する方針でやっていっております。で、いろいろの見通しにつきましては、学者などいろいろおっしゃっておりますけれども、しかし、われわれに現在大事なことは、こういうむろん研究は研究といたしまして、その堅持すると、いま各国が守ろうとしていることを堅持するという方針に協力していくことが一番大事だと、かように考えております。
  50. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 為替変動ですね、ドルとかポンドの。為替変動に対して、為替リスクがたいへんだから、貿易に非常に障害があるから、それに対して金融政策としてどうするかということなんです。
  51. 宇佐美洵

    参考人宇佐美洵君) 私どもはいまの一ドル三百六十円というものを堅持してまいります。これはもう全然動かす気持ちはございませんし、それはそのときの需要供給ですから、わずかのところは動くかもしれません。現に最近も三百六十一円とか二円とかになっております。しかしすぐに三百六十を中心にして戻ってまいりましたんで、いまの情勢は何ら心配もございませんし、またこの方針は、ぜひとも最後まで維持しなければならぬと、かように考えております。
  52. 田中寿美子

    田中寿美子君 関連。私は土曜日に日銀総裁に御質問申し上げるはずになっておりましたけれども、土曜日欠席なさるそうでございますので、きょう、非常に残念ですが、簡単に三つほどのポイントについて質問させていただきます。委員長のお許しを得まして御質問したいと思います。  ただいまも御説明がありましたように、いまの状態で円の維持ということが非常に大切なことであるということをおっしゃっておりましたが、かねてから私は、物価と通貨の関係について日銀総裁にお伺いするつもりであったのですが、物価の急激な上昇、ことに三十五年以降、高度経済成長政策をどんどん進めてまいりました三十五年以降に物価の値上がりがひどいんでございますね。これは政府統計によりましても、三十五年から今日まで五〇%は上がっておる。その根底には、個々の物価を値上げさせる要因の一番根底には、政府の金融政策があるんです。その金融政策によって通貨の発行を非常にふやしていく、こういうところにあると思っているんです。事実、物価指数が政府統計で五〇%上がったということは、貨幣の価値がそれだけ下がっている、私たちの購買力も下がっているわけです。そこで、いまのような管理通貨制度のもとでは、どうしても貨幣の増発はしやすくなると思いますが、さらに四十年度から国債発行政策に踏み切ってから、よけいに通貨の発行額が非常にふえているんですね。これは指数で見ましても、日銀調べですが、三十五年を一〇〇としまして、四十二年は二七六ですし、四十三年度は約三倍の通貨発行量だと思います。それが、特に四十年以降は毎年二十九%、四十一年までが二九%ふえる。四十二年には四〇%ふえている、通貨発行量が。つまり国債政策に踏み切って、その国債及びその他の政府の保証債なんかを結局日銀が引き受けして、そして通貨をたくさん発行しているのですね。だから、これは反対の面から言いますと、貨幣の価値が下がってきている。これが物価上昇の一番根底にあって、国民が非常に悩んでいると、物価の問題が非常な苦しみの根底にあると私思っております。今年度このような状況の中で、さらにいまのようなぺースで通貨を発行していくべきだとお思いになっていらっしゃるのかどうか。一応、適正な通貨発行量というのは、どういうものをもって証明なさるのか、その点を第一点にお伺いいたします。
  53. 宇佐美洵

    参考人宇佐美洵君) 通貨の御質問でございますが、確かに最近ふえております。これは経済がだんだん拡大してまいりますとふえてまいることは当然でございますが、特に最近におきましては、消費が非常にふえ、また所得もふえてきたことも大きな原因であろうと思っております。したがって、この通貨というものは、これまた、おっしゃるのは発行通貨だけだと思うのですが、そのほかに銀行預金等の、いわゆるいろいろな通貨の考え方もございますけれども、しかし、いずれにいたしましても、発行額が経済の膨張によってふえてきておると、これをどうやって直すかと、確かに最近は、ことしになりましてからやや増加率は下がってまいりましたけれども、しかし、いずれにしても、成長が高いときはどうしても通貨がふえるわけでございます。したがって、それは総合的に経済全体を、たとえば生産あるいは物価、あるいは国際収支等、いろいろの問題を合わせて考えないと、通貨だけ押えようとしても押えられるものではございません。よく、日本でも現在とっておりますけれども、通貨の限度額ということがございますが、御承知だと思いますが、それらにつきましても、毎年のように限度額を引き上げておるのでありまして、経済が伸びますと、どうしてもそういうことになります。しかし最近各国で、何といいますか、先進国といいますか、中央銀行法を改正しました国は、いずれも限度額というのをやめておるのであります、最近の傾向は。なぜかと言いますと、限度額を設定することよりも、そういう経済全体の変化をどう考えるか、また、これに対してどう対処するかということが先決でございまして、その問題を論じないで通貨だけを論じても、私はなかなか直らない。通貨を押えようといっても押え切れませんので、一般の経済の状態を直していくということが必要だと思うのであります。私どもは、経済成長に伴いましていわゆる通貨、この成長通貨をふやすのは当然だと考えておるのであります。
  54. 田中寿美子

    田中寿美子君 たぶん成長通貨だからだいじょうぶだとおっしゃるだろうと思っていたのですけれども、事実、貨幣の価値は下がっています。こういうふうなことで、これはたぶんインフレということばを避けられると思うのですけれども、私たちはインフレだと思っているわけなんです。  それで、いま日銀総裁が、限度額をもうきめないような方向にいっている国があるようにおっしゃいました。私は第二点として、現在通貨発行には歯どめがない、最高限度額に歯どめがないということについての御意見と対策を伺いたかったわけなんですが、いまのそのアメリカのドルを中心にした国際通貨の危機の中で、日本の円もやはり危機にあると思います。また、国際収支の改善もしなければならないと思うのですが、いままでの総裁のおことばによりますと、限度をはずしても、ほかの要因を考えて、かまわないのではないかというように聞こえたのですが、日銀法によりますと、三十条、三十一条、三十二条のあたりですが、最高発行限度額の規定がございますね。この規定は非常にあいまいな規定でして、大蔵大臣もあるいは日銀総裁も、その気になったら無制限に発行できるような規定だと私思うのです。そのことは非常に危険なことなんじゃないかと思っているんですが、日銀法三十二条では、日銀券発行額に対して同額保証が必要であるということがありますね。ところが、保証物件として規定されているもの、金、銀、地金、外国為替を除いた物件、つまり政府保証債、国債、政府貸し付け金、債券などですが、そういうものの保証限度を大蔵大臣が定めるということになっておりますね。しかし大蔵大臣はそれをいつでも変更できるような制度になっておりますね。実際上、日銀法の規定というのは、銀行券の増発を押えることができないような仕組みになっているのですが、さらに、その保証物件の保証充当限度というのも、これも大蔵大臣が、これ発表されないし、大蔵大臣がきめて閣議にはかるということになっているので、ほとんど事後承諾、あるいはもう既定のことを、きめて承諾するということになっております。もちろん、私は大蔵大臣が悪い人だとも思っておりませんけれども、悪い意図でやられるとは思いませんが、大企業や財界などの圧力のもとでやられるところの政府の大蔵大臣ですから、へたをして大蔵大臣の独裁的な権限があるということになりますと困るのですが、通貨発行額の限度額に対していまの御説明ですと、歯どめも要らないということでございますか。
  55. 宇佐美洵

    参考人宇佐美洵君) 歯どめを要らないではなくて、歯どめは経済全体が歯どめにならなければいけないと、こういうことを申しておるのであります。やたらに発行額が伸びますと、確かにインフレになり、インフレの現象というのはそういう現象でございます。したがって、これを歯どめが要らないというのじゃなくて、そういうことよりも、そういうことよりもというよりも、それだけなんですが、やはり経済全体を適正にやっていくと、で、その間に経済全体が適正に成長しておれば、それに見合う通貨は、これはおのずから歯どめになるのではないか、かように考えております。  それから片一方において、日本銀行がただもう、かってに出しているんじゃない。内容と背景は、やはり金であるとか、あるいは有価証券、あるいはまた日本銀行の貸し出し、また外国取引、いろいろなものが背景になっておりまして、そうその無制限にどんどん出しているのじゃなくて、それぞれ担保といいますか、そういうものは十分確保しておるのであります。それは日本銀行のバランスシートを見ていただきますと、すぐわかるだろうと思います。決して無制限ではございません。
  56. 田中寿美子

    田中寿美子君 さっきお尋ねしたことで、昭和四十年以降、特に四十一年から四十二年にかけて四〇%も通貨がふえているということについてはどう思うかということはまだお答えいただいておりません。それから、通貨発行の適正量というのはどんなふうに考えていらっしゃるか、これもお答えいただいておりません。  で、第三点は、いまもうすでに言われたことで多少想像つくのですけれども、かつて日銀法改正の問題が問題になったことがございます。通貨発行限度額について、かつては通貨発行審議会というもの、これは昭和二十二年にできて二十七年に行政整理でこれはもうなくなってしまった。昭和三十五年に金融制度調査会が、やはり日銀の発行最高限度額については制限を設けておかないと、現在の日銀法によると、意図すれば、蔵相でもあるいは日銀総裁でも独裁的に通貨発行する可能性もあるというようなことで、適当に制限の措置をとらなければならないというような答申がされております。そして一時日銀法の改正が問題になったこともあるのですが、そのまま立ち消えになっている。で、総裁は、日銀法をそのように改正するか、あるいは通貨発行最高限度額を押えるような、審議会その他のような措置をとる必要はないとお考えになっているのでしょうか。
  57. 宇佐美洵

    参考人宇佐美洵君) 日銀法の改正は、私よりもむしろ大蔵大臣がお答えになったほうがいいと思うのでありますが、この現在の日銀法は戦時立法的の色彩が非常に強うございます。私は、いまの時勢に合うように、ぜひ直してもらいたいと思っておるのであります。ただこれは、日本——各国ともそうでありますが、金融全体の基本法のようなものである。したがって、これが改正につきましては十分審議しなければならぬと思います。したがって、現在のようなときよりも、もう少し経済が安定したときがよかろうかと、これは私だけの個人的の考えでございますが、いずれはいろんな点で直さなければならぬ、かように考えております。
  58. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 田中君、いいですか。
  59. 田中寿美子

    田中寿美子君 四十二年に通貨のふえた理由と、適正な通貨量を。
  60. 宇佐美洵

    参考人宇佐美洵君) ふえた理由は、やはり全体の経済が非常に伸びたということだろう。これは先ほども申し上げたとおりであります。  それから、適正の通貨量ということは、これはなかなかむずかしい問題でありまして、やはり先ほど申し上げましたとおり、経済に見合う成長通貨でなければならないと思います。ただ、通貨というものは日本銀行だけで通貨発行しておるのでありますけれども、しかし、預金通貨、その他たくさんございますので、そこいらをあんばいして考えなければならない、かように考えておるのであります。確かに現在は通貨が前年度比一七%もふえるということは私は高過ぎると思います。で、これはやはり現在の引き締め政策が浸透してまいりますと、だんだん下がってくるのではないかと思います。その意味から言いましても、引き締め政策は必要だと考えておるのであります。現に最近は一五%ぐらい下がっております。
  61. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 田中さんの関連はそれでいいんですね。
  62. 田中寿美子

    田中寿美子君 はい。
  63. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もう一点だけ総裁に伺いますが、日銀の政保債ですね、この保有高が非常にふえてきているのですね。四十年三月末で千二百九十一億でありましたが、四十二年十二月末では六千五百五億、非常にふえているわけです。これは結局、国債を発行すると一年は買いオペの対象にならない、あるいは貨し出しの担保にならぬから、政保債を買って資金を流して、そして国債を引き受けさせる、こういう操作をやっているのじゃないかと思うんですね。で、だんだん今度は国債の保有高がふえて、最近では——ことしの一月末では四千九百七十五億、五千億近いのです。結局、さて回り回って日銀券になりつつあるのではないか。この点はいかがですか。
  64. 宇佐美洵

    参考人宇佐美洵君) いまのような、政保債は確かにふえております。しかし、これを国債と同じようにやはり金融調節として買っているわけであります。そして売り手の側のことも考えなければならないわけでございます。現在政保債を金融機関が持っておって、そういうものを政保債のほうから売ってくるという場合には、政保債から買っているわけであります。
  65. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それが結局国債の日銀引き−受けに実質的になるんじゃないですか。
  66. 宇佐美洵

    参考人宇佐美洵君) いや、私どもはそういうごまかしをやっているつもりはないのであります。
  67. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 結果としてですよ、ごまかしで一はなくて。
  68. 宇佐美洵

    参考人宇佐美洵君) 結果としましても、なぜそれだけ買っているかということについては、いまここに資料を持っておりませんけれども、経済成長に伴いまして買っているわけであります。あくまでも、国債にしろ、政保債にしろ、資金調節として私どもはやっているつもりであります。
  69. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 関連。
  70. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは簡単に、戸田君。
  71. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 ただいまの木村委員の質問に関連いたしまして二点ほど総裁にお伺いしておきたい。  その第一点は、四十年の国債発行のときに福田大蔵大臣は、インフレ防止の政策として国債の消化は市中消化でいくのだ、こういうことを言っておったのでありますけれども、現在の実態を見ますと、一年を経過いたしますると、大体私の調査ですと、九割は日銀預かりとなっている。こういう状況について、具体的なその預かり数量というものをお答え願いたい。  それからもう一点は、公社債発行条件と応募者利回りが二月以降改定になり、国債だとか、政保債とか、地方債、こういったものは一連に上がったわけでございますが、従来の政府態度は、長期金利につきましては低利政策でやってこられたわけでございますが、この利回りの値上がりによって相対的に金利が上がっていくのではないかと思う。こういう問題について、さらに当然事業債等についても利回りを引き上げろ、こういう意向が多く出ているというのでありますが、この辺の問題を一体総裁はどういう見解を持っているかお聞かせ願いたい。
  72. 宇佐美洵

    参考人宇佐美洵君) 私どもは、金融政策の方針といたしまして、前はもっぱら日本銀行の貸し出しで出しておりました。ところが、三十八年でございましたか、現在の制度を取り入れまして、私どもはいわゆる金融調節方式と言っておりますけれども、つまり、なるべく貸し出しはしないで、オーバーローンにならないように貸し出しの面で。そうして必要な資金は、所有しております有価証券を買い上げる。そういう方針に現在しておるわけでございます。したがって、ただいま御質問のように、確かに有価証券のほうはふえておりますけれども、しかし同時に、貸し出しのほうは減っていると思っております。で、表面は貸し出しはそんなにふえないんじゃないかという御質問があろうかと思いますが、それは大部分外国為替関係の貸し出しはふえているが、ほんとうの意味の各銀行に対するいわゆるオーバーローンというものはだんだん減っているという状態でございます。
  73. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 数字的に、何割程度。
  74. 宇佐美洵

    参考人宇佐美洵君) 申し上げますと、国債のほうは、ただいま四十三年二月、この二月までに買いオペは五千七百九十三億やっておるわけであります。そうしてそれは累計の買い入れ比率としましては七三・八%になっております。それから貸し出しのほうは、一時よりも四千億ぐらい減っておるのではないかと思っております。ここに数字を持っておりますので、いずれごらんに入れることにしたいと思います。
  75. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 事業債。
  76. 宇佐美洵

    参考人宇佐美洵君) 事業債の金利の傾向ですか。事業債につきましても、現在いろいろこういうふうに金融を引き締めてまいりますと、事業家のほうはやはり事業債を出したいということになろうかと思います。ところが引き受け側は、やはりこういう状態でございますので、なかなか発行難になってくるわけでございます。今後は私どもが、やはり事業債でもあるいは金融債にいたしましても、それぞれ業界で自主的にひとつ調整してもらいたい、かように思っております。情勢によってはあるいはわれわれの指導も必要かとも思いますけれども、いまのところは、なるべく自主的にやってもらいたい、それで調整してもらう。それには証券会社もよく事情を知っているわけですから、発行者側と引き受け側とがよく相談して、しかし、情勢はだんだん調整が必要のときに来ているのであると、かように考えます。その間において、あるいはまた金利の利回りの問題、金利の問題も出てこようかと思いますけれども、そこいらはできるだけ自主調整でやるのが一番いいのじゃないか、かように考えております。なぜならば、それらのことはそれぞれの企業の直接関係するところでございますので、やはり自主調整をやってもらいたいと思っております。しかし、うまく行かない場合は、われわれも何とかその間に介入が必要になってくるかもしれません。
  77. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 木村さん、日銀総裁の答弁はそれでいいですね。
  78. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いや、羽生さんが関連質問……。
  79. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それじゃ、関連でございますから、簡単に。
  80. 羽生三七

    ○羽生三七君 一昨日、日銀総裁、お願いしておりましたが、時間の食い違いでだめになりましたので、簡単に二点だけ。  一つは、先日来、いま沈静したかと思いますが、円売りドル買いで、かなりドル売りを日銀ではやったようですが、それはどの程度か、いまその情勢は同じく続くのか、一応沈静しておると思いますが、その見通し。  それからもう一つは、IMF総会に御出席になるわけですが、先ほど木村委員も御指摘のように、日銀あるいは日本政府当局としては、金をやはり今後の通貨の重点とある程度考えていかれるのか、あるいは、金を無用の長物とする新しい国際通貨体制、第三通貨といわれておりますが、そういう体制を指向しておるのか、基本的な考え方をお聞かせいただきたい。これだけです。
  81. 宇佐美洵

    参考人宇佐美洵君) 平衡操作におきまして最近ドルを相当売ったではないかという御質問でございます。確かにこのドル不安といいますか、今度の問題が起きて買い手が出てきたことは事実でございます。その事情を聞きますと、やはりカバーを取っておきたいということでございます。その金額はちょっと申し上げかねますけれども。
  82. 羽生三七

    ○羽生三七君 その金額を聞きたい。
  83. 宇佐美洵

    参考人宇佐美洵君) いや、そんなに……。これはもう最後に行きますと、何といいますか、外貨準備に出てきますから。ただ、そういう、今日のところはどうだ、あしたがどうだと言われると困りますから、いまちょっと数字は申し上げませんけれども、確かに日本銀行の今月平衡操作は相当にやったことは事実でございます。しかし、それも事情を聞きますと、為替銀行なり、あるいはさらにその向こうにおります商社あるいはメーカーなりが、やはりこの際カバーを取っておこうということに、まあ言えば、実需に、今までは安心しておったのだけれども、実需に転換してくるということになってきたのではないかと思うのであります。しかし、この方策が出まして、そうして十九日あたりからは今度はやはり日本銀行に対してドルを売ってくる銀行もあるわけです。したがって、さらに話を聞きますと、ユーロダラーも相当つないでおるという為替銀行も相当ございましたので、まあ、こういう情勢になると、いかなる場合でも、少なくとも日本が自由為替のたてまえをやっております以上、必要なものはやはり売ってやらぬといけないのじゃないか。しかし、現在において、そういう情勢になってきまして、おそらく売り越しにはなると思いますけれども、しかし、十九日あたりは、今度は逆に日本銀行へ買ってくれというものも出てきております。きょうはどういうことかまだ聞いておりませんけれども、そういうふうに実需に基づくものは、もうこれは当然そのほうが安定することになる。ただわれわれ注意しなければいけないのは、思惑があってはいかぬ。その点は厳重に注意しておるつもりです。  それからもう一つ……。
  84. 羽生三七

    ○羽生三七君 IMF。
  85. 宇佐美洵

    参考人宇佐美洵君) IMFに行きましたときは、私はまあこれから大蔵省と十分打ち合わせして参りますけれども、やはりあすこには各国の大蔵大臣あるいは中央銀行総裁が来ますので、できるだけ各国の情勢を聞いてくる。また、自分で見てくる、ということをすると同時に、先ほども申し上げましたとおり、各国の協力によってIMF体制を強固なものにしなければならぬその意味において、各国が議論ばかりしていないで、たとえば、これはたとえばで、それだけではないと思うのでありますが、SDRなどを早く決定するということも一つではないかと思うのであります。今度はストックホルムでありますので、どれくらいの人に会えるかどうかわかりませんけれども、努力して、いまの情勢あるいはことしの経済の動きをできるだけ聞いてきて、そうして今後の金融政策なり、さらに各方面にも御報告したいと思っておるのであります。
  86. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 木村君の質疑の中途でございますが、午前中はこの程度で休憩をいたし、午後は一時十分から再開いたします。    午後零時十分休憩      —————・—————    午後一時二十四分開会
  87. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) これより委員会を再会いたします。  午前に引き続きまして質疑を続行いたしますが、午前の木村君の質疑に関しまして政府から発言を求められております。これを許します。総理大臣。
  88. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 御指摘の場合については、憲法財政法規定がありません。したがって、この場合に講ずべき措置がないのであるから、政府としては、暫定予算の性格にかんがみ、その編成及び成立には責任をもって最善を尽くす考えであります。なお、法制上の整備の問題につきましては、今後慎重に検討することといたしたいと思います。
  89. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この際、総理からそういう御答弁ございましたが、私は、なぜこの問題を取り上げたかということを明らかにいたしまして、そして一応この問題についてのここで処理をいたしたいと思います。  先ほど私がこの問題を提起するにあたりまして述べましたように、今度の暫定予算はこれで六回目なんです。過去五回の暫定予算は、御承知のように、第一回は昭和二十三年、これは芦田内閣のときですね。占領下で、四、五、六、三カ月組んでおります。これは占領下であります。また、二十四年におきましても、これは芦田内閣が総辞職しまして、吉田内閣の閣僚の親任式がありましたが、政府は三月の本予算の編成を終えましたけれども、年度内国会での成立が困難だったのですね。そこで、四月十五日までにかかる暫定予算を編成した。これは占領下であるのであります。昭和二十八年です、三回目は。これは、衆議院解散によって二十八年度予算不成立になって、三月十八日の参議院緊急集会で四、五月分の暫定予算を組んだわけであります。さらに、昭和二十八年五月二十一日に第五次の吉田内閣が成立しまして、六月分に必要な経費について、四、五月分に引き続いて暫定予算をもってまかなうこととしまして、五月二十五日暫定予算補正を国会に提出しました。それから三十年、これも衆議院解散によりまして、四、五の二カ月の暫定予算を組んでいるわけですね。それから四十二年、これも衆議院解散で四、五の暫定予算を組んでおります。  ところが、今回は解散もないわけです、占領下でもない。そういうもとで、自民党は国会で多数を占めておりながら予算が通らなかった、不成立なんですね、の予定ですよ。暫定予算を組むということは、年度内に本予算成立しないということなんです。これは、先ほど総理もちょっと言われましたが、いわゆる倉石発言に端を発して、そうして衆議院空白が起こったわけです。しかし、強行採決しようと思えばできないことはなかったと思うのですよ。しかし、なぜ強行採決ができなかったかといえば、世論の批判があったからでしょう。それじゃ、あの当時、政府は倉石問題を国会審議空白の問題にすりかえようとしたのですけれども、あれは憲法上重大な問題だというので、それで各世論は、空白について野党を、責任を追及しなかった。むしろあたりまえだと。このぐらい重大問題なんだから、あげて政府責任なんですよ。したがって、政府年度内に本予算成立さすことができなくなり、暫定を組まねばならなくなったことは、これは実質的には不信任なんですよ。そうでしょう。世論から不信任を食ったと同じことですよ。ですから、総辞職をすべきなんです。私は、暫定予算を出す資格なんかはないと思うのです。ですから、暫定予算が出てきた場合、これは争いが生ずるであろう。そこのところ、暫定予算が通らない場合が起こり得る。これまでとは……。占領下とか、衆議院解散のときは、われわれも経験ございますが、これはあまり問題なくどんどん通ったわけなんです。スムーズに通りましたよ。今回なぜ私がこういうことを申すかというのは、いまの話のような経過から、当然佐藤内閣は、予算不成立によって、ほんとうは辞職しなければならないのに、暫定予算を出してきている。したがって、この暫定予算争いが生ずる、そのとき暫定予算が通らなかったらどうするか。そのとき、野党責任だと——混乱が起こる、あるいはまた暫定予算が通らなければ混乱が生じる、野党責任だといって、故意に政策的経費を盛り込んでくる危険もあるのですね。そういうことが予想されるので、私は、暫定予算が通らないときはどうするか——あるいはまた、衆議院解散したときに、参議院緊急集会、これは、いろいろな事故、天災等で緊急集会が開かれない場合があるのですよ。そういう場合に、やはり暫定予算不成立の場合もあるのです。ですから、そういうときにどうするか。ただ、しょうがないと混乱にまかしておくことはできないのです。これはもう、責任ある政党として、われわれはどうするかということを考えておかなければならない。政府考えなければならない。国会考えなければいけないと思うのですよ、両方。  ところが、いままでの御答弁では、それに対して、何ら、ただ、しょうがない、しょうがない、ということだけだったわけなんです。これは非常に怠慢と言わなければならない。ことに法制局は非常に怠慢である。そういうことについては一応国会でもお考えになる必要もある、ぐらいな答弁はしてもよかった、ほんとうは。政府にも責任がある。私は、これは与党、野党の問題をこえて、ひとつこの際に、これをはっきりしておかなきゃならない私はいい機会だと思ったんです。そこで、問題を提起したんです。しかも私は、実質問題については、もうこれは、ほんとうは総理はこれで辞職しなきゃならない、暫定予算を出す、そういう資格がなかった、そう思うんでございますが、これは議論になりますから、一応私はさっきの御答弁で、これは非常に不満足だったんですけれども、一応理事会で話し合いがついたようでございますから、審議協力する意味で、この点は一応了解いたします。  それでは質問を続けたいと思いますが、午前中、きょうの経済閣僚協議会ですか、におきまして、金問題を中心としていろいろ協議されたやに聞いております。一昨日、羽生議員の質問に対しまして、政府はこの金問題を中心とする国際経済の変動の推移について分析、見通しが甘いんじゃないかと、こういう質問に対して、かなり政府の見解は甘いように思われた。きょうの経済閣僚協議会、そこでこの問題についてどういう評価をいたし、どういう分析をし、どういう見通しを立てたか、それで今後どうされようとしているか、どういう対策を講ぜられようとしているか、この点について、その経過と今後の対策について伺いたいと思うのであります。
  90. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまお尋ねになりましたように、今日の金問題、これは、わが国だけの問題ではなく、国際的に見まして、これより重大な問題はないと思います。国際経済にどういうような影響があるか、また、どういうようにこれに対処すべきであろうか、そういう基本の問題についてしっかりと腹がまえをこしらえて臨まなければならない、かように思いまして、会議を持ったのであります。しかし、御承知のように、ようやくいわゆる金プール七カ国の会議が終ったばかりでありますし、また、共同コミニュケを出したばかりでありますし、近くロンドンの金市場も再開されるという状況でありますから、それらの事柄を見ないと、十分わからないと思います。今月末開かれる十カ国蔵相会議、それなどもこの問題と真剣に取り組む、かように思いまして、これとも十分に関係を持ちまして、そうして今後の動向に対処したい、その時機を失せないようにいたしたいものだと、かように思っております。
  91. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 非常に抽象的なお話だったんですが、もう少し具体的にお伺いしたいんですが、一昨日、羽生委員の質問に対して、経済企画庁長官は、今後のドルの問題、これが切り下げられるか切り下げられないかという見通し等、あるいは円の将来の問題についても、非常に楽観的な、まあ強気というんですか、見解を述べられている。新聞では、黄色い金には人類は負けない、人類の英知が金色の金属に負けるようなことはあり得ないと、こういうたいへん高い姿勢の御発言でありました。それだのに、なぜ金に苦しんでいるのですか、いま。金に苦しんで、これが克服できないで弱っている。どうしてそういう強気の楽観的な御見解が出てくるのか。その基本について、これまで——これはあなたの御発言だけじゃないんですよ。経済企画庁その他大蔵省にしても、全体として、政府の国際収支あるいは金というものに対する認識が甘いんです。その根拠はあるはずなんです。もう少し理論的に科学的にひとつ御答弁願いたい。
  92. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 一昨日も申し上げましたように、決して事態を楽観しておるわけではございません。そうして、金というものが長いこと価値の根源というふうに多くの人によって考えられてきた、そういう信心のようなものがございますから、それは急になくなるものとも思っておらないわけであります。しかし、他方で、一国の経済の信用力というものは、やはり根本的にはその国民の持っておる勤勉であるとか、エネルギーであるとか、技術であるとか、いわゆるその生産性が信用のもとであるというふうに私どもは考えておりますので、長い間の慣習は急に改まるというふうには思っておりませんけれども、たとえば、ドルの力はアメリカの金保有があるからドルの信用があるのだというような、やや一方的な考え方には必ずしも賛同できない。背後にあるものは、アメリカの経済、その信用である。日本の円の信用力は、やはり日本の経済の持っている力である。そういう面も決して見のがすわけにはいかない。一昨日も、円がひょっとして頓死するのではないか——これは比喩的な意味でおっしゃったに違いないとは思っておりますけれども、そういうことは私どもには考えられない。その面のことも御考慮に入れていただきたいという意味で申し上げたわけであります。
  93. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 はっきりしました。そうなんですよ。あなたの言うとおり。いままでいわゆる経済企画庁を中心とするケインジアンの経済の考え方は、いわゆる生産力理論なんですよ。そうでしょう。いわゆるパイ理論というのもそうなんです。生産力さえ高ければ諸矛盾が解決するという、そういう考え方、アメリカの経済力があるから、したがってドルは心配ない、こういう言い方なんです。これが間違いなんですよ。これはソ連の、あなたもよく御存じだと思うツガンバラノフスキーのいわゆる生産力理論。ところが、この国際貨幣の問題、通貨の問題やドルの問題は、アメリカの生産力の問題じゃないのですよ。あなたはそう言っている。国際収支の問題なんです。そこで問題なんですよ。あんなにアメリカが経済力がありながら国際収支が赤字なんです。そこでドル不安が出てくるのでしょう。だから、そんな、ただ生産力があるからいい——日本の場合だってそうですよ。日本の場合だって、円は心配がない、生産力があるから、世界第二位、第三位と言うけれども、そうじゃなくて円が不安になるのは国際収支が不安になるのですよ。そうでしょう。それで、貨幣論からいっても、金こそが国際通貨なんですよ。国際貨幣なんです。ドルがそれに結びついておる。ベトナム戦争によって、ドルが国際通貨であるということをいいことにしてインフレーションをやった。ベトナム戦費をそれでまかなったのです。だからドゴールが非難しておるわけです。それでベトナム戦に、ドルをインフレにして戦費をまかなって、アメリカ以外の国にドルが蓄積した、それが金にかわらなくなったのですよ。交換が困難になった。そこらに問題があるのですよ。それから国内経済においてもそうなんです。前に池田内閣のときには下村君が教祖だった。今度は、佐藤内閣ではあなたが教祖みたいな強気を言うのですよ。それは間違っておるんですよ、いわゆる生産力理論というのは。むしろ、佐藤総理は、池田内閣の経済政策を批判されたんです、生産第一主義で人間性が失なわれたと。それで社会開発を言い出したのでしょう。だから、生産力理論は、これは間違いなんです。いままでなぜ国際収支に非常にこんな赤字が出てきて、それで楽観論が生まれたかといえば、大蔵省の為替局でも何でも、みんなそうなんですよ。生産力理論にとらわれて、アメリカに生産力があるからドルが困らない。日本は生産力があるから、それで円は困らないと言ったわけでしょう。ところが、国際収支は大幅な赤字になって、非常な危機になってきたのです。問題は国際収支です。その点ですよ。これは、あとで経済見通し等についても伺いますが、根本にそういういままでの間違ったケインジアンの考え方、これが、国際経済に対処するにも、国内経済に対処するにも、そういうところに一つ基本的に誤りがある。これはいかがですか。
  94. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) まだ教祖と言われるには、ほど遠いわけでございますけれども、(笑声)やはり、そういういわゆる重金属主義の考え方というものを根本的に間違いだと言っておるわけではございませんが、しかし、わが国経済あるいは世界経済に非常な失業者がたくさんあるということは好ましくないことでありますから、その問題をどうやって解決するかということを考えると、いわゆるその金属主義だけでは解決できない面があって、そういうことから私は、その必要に基づいて、また理論でもそうでありますが、ケインジアンの考え方が出てきたと思うのでございます。ですから、その観点から言いますと、もし金というものがそれほど大事なものであるならば、世界経済の成長が新産金の増加によって制約を受けるといったようなことは、なぜそうならなければならないのか、それ以外の方法はないのかということを、やっぱりわれわれ経済に関係あるもの、考えたっていいわけであります。それであきらめてしまうことはないと思います。また、もしドルの信用というのが生産力によってバックされているものでない、それは金があるからだと言われるなら、それなら、今日ドルとフランと、どっちを支払い手段としてわれわれが選ぶかということになれば、それはやっぱり問題があろう、フランを選ぶという方はそうそうおられないのではないかと思いますので、木村委員の言われることは、もちろん私、間違いだなんて決して申し上げませんけれども、それ以外の考え方も十分にあるのだということを申し上げたかったわけであります。また、これはいずれ他の機会にでも御教授にあずかりたいと思っております。
  95. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それで、大蔵大臣に伺いたいのですが、これから蔵相会議で今後のやはり国際通貨の問題、流動性についても議論が出てくるわけですから、それは日本としても、こういう点については、さっき羽生委員もちょっと言われましたかね、金というものに重点を置いて考えていくのか、それとも、金以外のまあ流動性について考えていくか、こういう話があった。どうも大蔵大臣は、この前の御意見から見ましても、SDR等に相当やはり、金以外の流動性についてどうも私は過大の期待をしているのじゃないかと思う。これについては、御承知のように、一昨年のヘーグで会議がありまして、フランス、EECあたりから強い三つの条件が付せられているでしょう。だから、一応これが成立しても、その運用については、これは強い条件が出され、特にその中でアメリカの国際収支の改善というものは一番重要なんだと……。そうでしょう。そう簡単にこれは実現できる問題じゃないですよ。この運用について、かりにできても。しかし、その基礎になるのは、やっぱり金なんですよ、最後はやはり金というものに結びつくから。いまの資本主義制度で、最後にいろいろ規制ができるのは金なんです。英知ではできない。人間のあれでは。社会主義じゃなければできないのです。結局、頭脳で、英知でマネージできるのは社会主義計画経済ですよ。それ以外は金でしょう。そこなんですよ。だから、いまの、好むと好まざるとにかかわらず、資本主義の経済なんですから、そこのもとで、やはり金というものをいままで軽視しておったのです。私は、いろいろ考えてみたら、結局、生産力理論にこれはとらわれておったのですよ。だから私は、ほかの理論もこれは尊重するように言われましたが、私ももちろんそれは謙虚に研究しますよ。ケインズの理論もしなきゃなりません。しかし、率直に言って、日本経済をいままでリードしてきた考え方には、生産力理論にとらわれた点が相当にあるのです。この点は反省しなきゃならぬ点だと思うのです。ことに、日本経済は、ここで、世界経済においても国内経済においても大きな転換期に立っておるのですからね。そのときに、これまでの政策について、理論的にも実践的にも、どこに誤りがあったのか、これは反省してみる必要があるのですよ。そういう意味で私は言っているのであって、そこで具体的に、大蔵大臣、いまの点でどういうようにお考えであるか。
  96. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 金の問題では、木村先生とは、だいぶ長い間いろいろ御意見を承り、また、私もよく述べている問題でございますが、国際通貨の中において演じた金の役割り、これまでの役割り、また、いま演じている役割りを私どもは過小評価するわけではございませんが、この役割りが、今後もこのとおりの方向で続くかということは私は問題だと思っています。で、金の生産が国際貿易の伸展に追いつけないというところから国際流動性の問題が出て、これを何年間の間世界の各国がこの趨勢を見て、そのためにこの金と一応離れた新しい準備資産というものをつくることはできないかという模索が始まったと、この事実から見ましても、金の役割りというものが今後やはり変わっていく方向にあるんだろうということを考えますというと、私は金の維持を否定しているわけではございませんが、世界のいま模索しようとしているこの動向、ようやく昨年曲がりなりにも各国の同意を得たこのSDR、この問題をやはり発足させて国際流動性に対処するという方向へ私どもが協力することが、やはりこれからの行き方だろうというふうに私は考えております。
  97. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は、その金の問題、重要視はいたしますけれども、そればかりではないのです。やっぱり国際収支なんです、問題はね。だから蔵相会議でも、SDRの問題でも、EECあたりは国際収支を非常に重要視しておるのですよ。ことに、今後アメリカが国際収支の改善にほんとうに努力しなければ、あれですね、なかなかみんな拒否権を発動して、これは認めませんよ。だから、そういう意味で私は言っておるのです。生産力だけじゃないのだ。国際収支というものは非常に重要なんだということを私言っておるわけですがね。  そこで、もう一つ、具体的に伺いたいのですが、新聞では、今後の新しい国際経済の変化に対処するために、四十三年度の予算で、公共事業費等で留保を、弾力的に運用するために、二、三千億ですか、金額はわかりませんが、留保をする必要があるんじゃないかということも新聞では伝えられているのです。それは事実なんですか。
  98. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 四十二年度の繰り延べ措置、これがもうあとわずかでございますが、今年度内に解除するということは不可能でございますので、四十三年度に繰り越すことにいたしました。したがって、四十三年度の予算とあわせて執行されるということになっておりますが、これをすぐ初年度早々繰り延べるとかいうような方針は、まだ予算が通らないときでもございますし、この方針は、いまのところはきめてはおりません。しかし、国際情勢のいろいろな変化によって機動的にいつでもいろいろ経済調整、財政の調整というようなものはやると、こういう態度では終始したいと思っております。
  99. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 四十二年度の繰り延べを四十三年度で使うということは、いつおきめになったのですか。
  100. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これは、最後に繰り延べを解除しなかったものは来年度に繰り越される、法令によって繰り越されるということになろうかと思います。
  101. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは、最近の閣議で確定かなんかしたんですか。
  102. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いま申しましたように、この繰り延べを解除するという措置をとりませば繰り越さないのでございますが、解除するという措置をとらない限りは繰り越されることになります。
  103. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 昨年の九月に三千百十二億ですね、あのときにおきめになったんですか、繰り延べ。
  104. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 繰り延べの対象は御承知のように繰り越し明許費、また継続費としてあらかじめ国会議決を受けておるものでございますから、繰り延べの措置を昨年九月にとったと。このとったあとで解除しなければそのまま翌年度に繰り越しになるということになります。
  105. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは修正予算をなぜ組まないんですか。それから、まだ四十三年度予算が通らないから言うわけにいかないと言われましたが、新聞では二、三千億留保しないと、予算が大きくなっちゃうですね、繰り延べ分がプラスされますから。それも留保する場合には、繰り延べる場合には修正予算をお出しになるんですか。
  106. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これは国会議決を得た内容の変更ではございませんので、そのまま時期的のただ調整をするにすぎないのでございますから、内容を変える予算の補正ということは必要でございません。
  107. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは財政法の何条に基づいておやりになるんですか。
  108. 村上孝太郎

    政府委員村上孝太郎君) お答え申し上げます。財政法によりまして、先ほど大臣の申されましたように、議決を受けました予算の内容を変更する場合には、これはおっしゃるように修正予算が必要でございましょうけれども、現在のところ、執行部面につきましては、支払い計画の承認あるいはまた支出負担行為実施計画の承認を大蔵大臣がするようになっております。この執行面における大蔵大臣の承認の時期をずらすことによって当時における公経済の需要を抑制しようという措置をとったわけでございます。これをいま大蔵大臣おっしゃいましたように、年度末までにもし日本の景気というものが変わってまいりますれば、これを解除して支払い計画の承認を与える、あるいは支出負担行為実施計画の承認を与えるわけでございますけれども、依然まだ日本の経済の現状というものは解除をする段階に至っておりませんので、結局今年度内においては支出負担行為実施計画なり、あるいはまた支払い計画の承認をするいとまがないことになりまするので、これは先ほど大蔵大臣のおっしゃいましたように繰り越されるわけでございます。
  109. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 何条ですか、何条でやってますか。
  110. 村上孝太郎

    政府委員村上孝太郎君) 財政法の三十四条に支払い計画の承認の規定がございます。それ以下のところに、三十四条の二というところに支出負担行為の実施計画の承認を大蔵大臣がするようになっております。
  111. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは繰り越し明許費で一応承認を得ているのですか。
  112. 村上孝太郎

    政府委員村上孝太郎君) 今回、昨年の九月の財政関係の景気抑制策の対象になっておりまする経費は、繰り越し明許のあるもの、あるいは継続費ということでございますので、これをそれぞれの規定に従って繰り越すわけでございます。
  113. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは財政法上違反ですよ。あとでこれまた具体的に伺いますが、企画庁長官、そうすると、新聞によりますと、新しい国際経済情勢に対処するために、経済社会発展計画にかわるべき新しい計画を何かおつくりになる作業をしているというふうに伝えられているのですが、その点について。
  114. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) そういう一部の報道は私も読みましたが、ただいまそういう計画を持っておりません。
  115. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この点についてはまたあとで伺いますが、そこで、今度は四十二年度の経済見通しと実績見通しとについて伺いたいのですが、もういわゆるこのQE作業というのはできていると思うのですが、最近の。それで、当初見通しと最近の実績見通し、どうなっていますか。国民経済計算に基づいてその点はおもなる指標についてお述べ願いたい。
  116. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) いわゆるクイックエスティメートは、まだ私ども正式に政策判断の資料としては使っておりません。したがいまして、ここで御紹介をすることはできないわけでございますが、ただいまの段階で、最近、ことしの一月の暮れでございますか、来年度の見通しを立てますときに四十二年度の見直しをしておるわけでございますけれども、大体あのときにきめましたこと、すなわちこれは資料として御報告してございますが、それとあまり変った点はございません。ただ、国際収支の収支じりが資本取引の関係等で多少まあよくなると申しますか、赤字が多少減るというようなふうに見られますが、それ以外には大きな変化はただいまのところございません。
  117. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 具体的にですね、国際収支は総合収支で、基礎収支でどのくらい赤字になるか、それから民間設備投資は当初見通しの金額が幾らで実績見通しはどうなったか、それから伸び率がどうなったか、あるいは鉱工業生産の当初見通しと実績見通しはどうなったか、この点について伺います。
  118. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) いわゆる企業設備につきましては、ほ、三割近い対前年比の増加があって、二七・五というふうに考えているわけであります。これは当初では、これは昨年の三月でございますが、一四・八と考えたわけでございますから、ここは非常に大きく狂ってまいりました。その他では、この一月の二十六日に決定いたしましたところ、すなわち鉱工業生産指数で申しますと一一九であります。その辺のところはあまり大きくいまのところ動いていかないのではないかというような感じでございます。それから国際収支でございますが、これは七億ドルの赤字を一応予想しておったわけでありまして、その中で貿易収支の黒字を十二億ドルと見ているいわけでございますいまが、多少その当時、一月の末に比べまして、輸出の伸びと輸入の伸びとの関係が少しこれよりも悪いのではないかという感じがいたします。ただその点は長短期の資本収支でカバーされるといいますか、長短期の資本収支を私どもかなりかた目に見ておりましたのが、やや資本の流入が多いということでございますから、差し引きいたしまして七億ドルの赤字というのが、七億ドル台というのを割ることはおそらくたしかであると思います。それが六億ドル台の、六億ぎりぎりであるか、あるいは六億何千万ドルであるか、この辺のところは何ぶんにも資本収支でございますためにいまのところまだはっきり申し上げることができません。しかしいずれにいたしましても、傾向としては、貿易収支が改善されて国際収支がよくなったのではなくて、いわば借り入れ金の性質を持っております資本収支のほうが思ったよりもよかったという形で赤字幅がやや縮まる、そういうことでございます。
  119. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 基礎収支についてはどうですか。
  120. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) そういたしますと、それは貿易収支が十二億ドルを少しちょと割り込むかもしれない、これは黒字でございます。それから貿易外収支は十二億四、五千万ドル、これはこれでよろしいと思います。移転収支二億内外、これもこれでよろしいと思います。そして次に長期貿本で八億二千万ドル程度の赤字を見ておりましたが、これはこれより多少いいかもしれない、多少この赤字が少ないかもしれない、そこまでが基礎収支でございます。あとは短期と誤差脱漏で三億五千万ドルの黒字を見ておりましたのが、これがどうももう少しふえそうだ、こういうことでございます。
  121. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 基礎収支をはっきり聞いておるのに、最初は七億ドルの総合収支の赤字といいますけれども、基礎収支では十億五千万ドルでしょう。それが多少減るくらい程度のところですね。それからもう一つ聞いておきたいのですが、輸出入の伸び率です。その当初の見込みと実績見通しはどういうようになっているか、輸出入の伸び。
  122. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 輸出につきましては、当初の見通しは一一一・八でございます。一割八分のプラスでございます。輸入は一一五・〇、一割五分のプラスをみております。結果といたしましては、輸出の伸びは七ないし八、一〇七・〇から一〇八・〇くらい、輸入の伸びはどうも二〇%程度と思われます。
  123. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いまの企画庁長官の御説明でわかるとおりに、当初見通しと実績ではものすごい大きな開きが出ているのでしょう。国際収支が十億ドル以上も基礎収支で大きな狂いを生じている。それから民間設備投資も最初は六兆二千億でしょう、それが実績見通しでは七兆五千億くらいになると思うのですがね、結局。それはQE作業であなた大体あれされればそうなってきますよ。四半期別にやっているようでありますけれども。そうしたら六兆二千億が七兆五千億くらい、こんな大きく狂っているのでしょう。それからいまの輸出入見通しでも、輸入は一四・八%の見通しが二〇・八%じゃありませんか。輸出が一一・一の伸び率が七・七しか伸びてない、こんな大きく狂っているのですよ。  それで総理に伺いたいのは、こういうような大きな狂い、いままでもずいぶん当初見通しと実績見通しと狂いましたが、資本主義経済だからしょうがない、しょうがないでいってきましたけれども、しかし総理は一番のこういう大きい狂いが生じていてもいいと思っているのですか。それとも実績見通しと当初見通しとあんまり狂わないようなそういう経済見通しなり分析を、あるいは運営をしようとされておるのか、どっちなんですか。
  124. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまさらお答えするまでもなく、非常な狂いのあるということは望ましいことではございません。できるだけ見通しを立てたそれに近い数字が実績にも出ること、これが望ましい、これはもう答えるまでもないのであります。ただ、弁解がましくなりますが、四十二年の予算編成の際に、四十二年度の経済のあり方、これはたいへんむずかしい状態であった、したがいまして、途中におきましてもそういうものに臨機な処置をとるという、こういうことを最初に年度の初めに申し上げるようなことはほとんどないのですが、特にそれらの点も断わったような実情でございますから、私は四十二年度がある程度大きな相違があったということ、特別な経済情勢のもとであった、かように御了承いただきたいと思います。
  125. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは四十二年度だけじゃないんですね。たとえば池田内閣でも、あの高度経済成長政策をとった昭和三十六年が当初見通しとうんと狂ってしまったのですよ。ですから、この際なぜそういう狂いが生ずるかということを、これはもっと詰めて考えてみる必要があるのじゃないかと思うのです。その根本の原因が一体どこにあるとお考えか、こんなに大きく狂うのは。
  126. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 私どももそういう方法を実は考えておりまして、今度の社会経済発展計画でエコノメトリックを使いましたのは、実はいわゆるアフター・ケアといわれておる段階で、どの部分が間違ったかということをはっきり指摘できるようにという、そういうためにモデルを使ったのでございます。したがって、そういう計算は当然やらなければならないことになっておりますし、またいたそうと思っております。概して見通しが狂いましたのは、この表現はちょっとあるいはお気に召さないかもしれませんが、どうも経済の成長力というのを過小に見過ぎたという場合が多いように思います。
  127. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 なぜ過小に見積もるようなことが出てくるかということをもっと詰めて考える必要があると思うんです。私は、これまで毎年毎年予算と関連して経済見通し出てきます、そこに一つ問題があるんじゃないかと思うんですよ。経済見通しは何も予算の編成期だけでやるものじゃないんですね。ところが予算のときだけ出てくる。まず予算説明の資料みたいな形で出てくるんでしょう、そこに問題があるんじゃないですか。特にこれは大蔵省ベースで経済見通しやるわけでしょう、実際は。まず歳出がある。歳出ありきだ。それに歳入を合わせる。それには総生産はどのくらいにする、国際収支はどのくらい、そういうベースでやるから、国会答弁用に何かそれにつじつまを合わせるようなやり方してきているんじゃないですか。  それともう一つ、いま経済の伸びを小さく見る見るというのは、これは通産省にも私は原因があると思うんですよ。通産省はなるべく設備投資を控え目に控え目に大蔵直に言うんですよ、そうでないと設備投資押えていかれるから。そういうやはり技術的な面にも問題があると思うんです。そういうものをもって詰めて、なぜ何回も何回もこんなに狂うのか、そこはもっと詰めて、私はもっと根本にさかのぼってこれは検討する必要があると思うんです。アメリカなんかでもあるいはソ連でも、予算と関連しましてこういう詰めは相当最近近代的ないろんな操作によってやっているでしょう。一つは、たとえば防衛費についてはマクナマラ方式というのがありますね。防衛長官よく御存じでしょう。そういうような、もっと詰めて、科学的にもっと経済見通し予算との関係を合理的にする、そういう努力をする必要があるんじゃないですか。
  128. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 政府全体の見通しでございますから、各省のいろいろな考え方がいろんな形で反映してくるということは確かにあることでございます。が、私どもとしては決して、結局はそれは妥協の産物になりますけれども、あり得ない姿を書こうということは考えたことはありませんで、あり得る範囲でまず各省が一致したところというようなものを出しておるつもりでございます。ただ、確かに予算編成というものと非常に密接でございますので、たとえば歳入のはじき方なんかについては、かなりいろいろ考えなければならないというような気持ちを持ったりいたしますので、これはやはり方向としては、いま木村委員が言われましたように、たとえばPPBSのようなそういう方向を考えてみたいと思いまして、実は私どもの経済研究所で昨年からその作業を始めました。しかし、いまの段階ではまだシステム・アナリシスの方法論をどうすべきかというところ程度でございます。考えてみますと、国の財政経済の目的が何であるかということが価値判断としては非常にいろいろむずかしいものを含んでおると思います。ただ利益をあげればいいとか、ただ戦争に勝てばいいとかいうのと違ってまいりますので、たいへんにむずかしい問題をたくさんはらんでおるといますが、ただいまとしてはまずその方法論を開発してみよう、そうして、できるならばこれを比較的目的の限定された公共事業のようなもののコスト・ベネフィット・アナリシスに使ってみたい、費用対効果分析に使ってみたい、こう思っておるわけでございます。
  129. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私はいままで予算とずいぶん取り組んできて、実績と経済見通しで、当初見通しと非常に狂うというので、だんだんいろいろとまあ調べてみたんですけれども、だんだん調べると、政府予算というのは、よその制度もいろいろ最近調べてみましたが、まあ極論言っちゃ悪いけれども、大福帳みたいですよ、まだ日本の予算は。ほんとうに裏づけとしての科学的な効果を検証したことあるんですか。たとえば、これは企画庁長官もいまPPBSのこと言われましたが、それと関連して、たとえばアメリカではベルマンのDPですね、ダイナミック・プログラム、あるいはソ連でこれは相当進んでいるそうですよ。ソ連ではポントリヤギンの変分法というのがあるのです。これによって、与えられた資源を最大に活用する方法です。それを予算がどうして最大限に活用できたか検証する方法なんです。それが非常に進んだのがあるのです。ソ連にもあるんです。アメリカにもあります。どちらの方式をとるか、これはまた別問題ですけれども、そういう研究もあり、よそではやっているのですね。さっきのPPBS方式でもそうです。特に私はその点について伺いたいんですが、あとで……。それをお答えいただいたあと増田長官に、防衛費の使い方について、あなた衆議院で非常に問題になったでしょう。それで、発注の値段が知らないうちにどんどんふえちゃったとかなんとかあなた答弁してますけれども、そんな防衛費の使い方でいっていいのですか。アメリカの最近のマクナマラ方式をあなた少し研究されたかどうか、それは必ずしも全部いいというわけじゃないのです。いろいろやはり問題点もあるようです。ありますけれども、もっと防衛費の組み方などを科学的にやらなきゃ、相当大きい予算なんですからね。そんなあなた、これこれからなお需品費やなんかどんどんふえるのですよ。二兆三千四百億になるときに、いままでのような大福帳的なやり方では許されないのですよ。また、国会に出す資料だって、あとで質問いたしますが、各目明細に防衛庁の予算として出してくるのは何ですか、ほとんど国庫債務負担行為としてしか出てこないじゃありませんか。積算の基礎といいながら、単価も員数も何も出てこないのですよ。特にアメリカのPPBSですと、いろいろな、一つの政策に対して、いろいろな代案を幾つもつくるんですよ、比較的な代案を。たとえば飛行機なら何社に発注したときは単価は幾らでこういう性能。B社に発注したら単価は幾らでこういう性能、こういうのを比較して国会に費用として出すべきですよ。それの判断を国会に求めるべきですよ。そうしないで、何か一社といろいろ裏で交渉しちゃって、最後にきまっちゃって、国会でこれがほんとうにこの単価が正しいのか、全体の日本の経済目的が効果的かどうか、予算からいって効率的かどうか、そういう判断の材料を出してこないのですよ、国会に。これでどうして予算が適正かということがわれわれ判断できましょうか。各日明細の今度は出し方をかえて、もっと詳細に単価と員数について積算の基礎を明らかにするように今後すべきということと、もう一つはマクナマラ方式をもう少し、これはいろいろ欠陥もあるといわれておりますが、必ずしもそれだけに限らないのですけれども、もっと科学的な防衛費の編成のしかた、それから国民がすぐ見てよくわかるような、そういう点について努力されることの意思があるかどうか、伺いたい。
  130. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) マクナマラのもとでPPBSが効果をおさめましたのは、私も詳しいことは存じませんけれども、一定の目的を達するために幾つかの兵器があった場合に、そのうちでどの兵器を採用することが最も効率的であるか、あるいは予算額が一定でありますときに、どれに発注をするのが一番効率的であるかというように、比較的目的観がはっきり限定されておったというのが、やはり一つの成功した理由であると思います。これを財政全般に推し進めるということになりますと、もひとつ複雑なファクターが入ってまいります。しかし、現実にわが国の場合を考えてみますと、たとえば財政全般にこういうことを考えるといたしますと、予算そのものの各支出に、いわゆるコード化するようなことが、コーディフィケーションが必要であることになってまいるかと思います。そういたしますと、何十年やっておりました予算の一つ一つの費目について、これはどういう性格を持っているという、それに従って分類をして番号をつけるような、非常に大きな作業——作業ばかりではなく、これをもとのところから費目の目的を洗うわけでございましょうから、そういう大きな作業が前提になると思うのでございます。そういうことは、だんだんと大蔵省とも話をぼつぼつし始めて実はいるのでございます。いずれにいたしましても、しかしこういう問題を国会で御提起いただくことは、私どもとしては非常にしあわせに思っております。なお、具体的には経済研究所長も参っておりますので、もしお入り用であればお答えいたします。
  131. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 決算委員会におきましては、しばしばこの問題が取り上げられております。決算の結果が次の予算編成に少しも反映しないというようなことが問題になりました。反映しないということは、結局やはり予算の、財政制度の問題に、予算制度の問題に関係していることでございますので、二期も前の経費がどう生きて、今後どういうふうに効率を発揮させるためにはどうすればいいかというのは、全貌がつかないということは、やはり予算制度の一つの欠陥だと思いますので、私どもも今後目的費用を明確にして、事業別予算ということに、もう少しくふうをこらさなければならぬということで、いま財政当局もこの研究に入りまして、いいところはどんどん今後取り入れたいと思います。
  132. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 木村さんにお答え申し上げます。私どももマクナマラ方式は必ずしもベストとは思いませんが、これを参考にいたしているわけでございます。すなわち、コスト・エフェクティブということは重要なる参考の方針といたしまして、大蔵省と折衝する場合におきましても、最も経済的であって、最も効果的な武器を備えるこういう意味合いにおいて考慮しているところでございます。すなわち、企画、計画、予算編成方式、これらはコスト・エフェクティブネスという方針を参考といたしているということを申し上げておきます。
  133. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は、次に財政硬直化の問題を質問しようと思ったのですが、時間がなくなりましたので、最後の、憲法財政法と四十三年度予算との関係について伺います。  先ほどの繰り越し明許ですね。あれは国会に修正予算を出さなければならぬと思うのですがね。とにかくいまの繰り越し明許では、あれ前に改正をいたしましたが、国会の承認をやはり必要とするのですよ。もしそうでなかったらどうします。新憲法では増額修正をわれわれできるのですから、そのときに政府が都合によってその年度に使わないとなったらどうなります。旧憲法と違うのですから、どうしたって年度に使わない場合には修正予算を出すべきですよ。どうなんですか。
  134. 村上孝太郎

    政府委員村上孝太郎君) 先ほど申し上げましたように、公共事業費等一定の経費につきましては、あらかじめ予算におきまして繰り越しの明許の御認可をいただくわけであります。この経費を大幅に削減するとか、あるいはその中身を変えるというふうな、旧憲法時代におけるような実行予算が意図しておりましたようなことの修正をするようになりますれば、おっしゃるように補正予算を必要とするでありましょうけれども、この繰り延べの措置と申しますものは、要するに、このお認め願った予算経費の内容を変えるのではなくて、その執行の時期を調整するにすぎないのでありまして、昨年の九月には、そうした経費の執行がいま早いというふうな時期的調整を加えて留保しておった。それが年度末において支出負担実施行為計画の承認であるとか、あるいは支払い計画の承認ということの間に合わないということになりますれば、それがかねていただいている繰り越し明許費の規定に従って繰り越されるということでございますから、経費の内容に変更を加えるわけではない。執行の時期について調整をするということは、現在の憲法財政法上少しも差しつかえない。それは過去における三十二年度、三十六年度の両年度におきましても同じような方法によってまいったわけでございます。
  135. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 最近はいわゆるフィスカルポリシーと称して景気調整のために多額の繰り延べをすることは、これはやはり修正予算を出さなければいけないですよ。大蔵大臣が、ただ支出権限で延ばすなんということは、これは単年度主義に反するものでしてね。  それからもう一つ、時間がありませんから、これはまた他の機会に徹底的に私は伺いますが、予備費ですね、本年度予算の一つの特徴は、やはり予備費なんです。公務員の給与費がここに組み込んでありますが、しかし、これも私は、国家公務員の給与費として幾ら組んであるのか、この点まず伺いたい。
  136. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 金額は、これを幾らと特定して金額をきめてあるわけではありません。全体の予備費を組んでおるわけでございまして、この内訳は、何が幾ら何が幾らというふうに特定してあるわけじゃございません。
  137. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうすると、公務員の給与のベースアップの予算は、これは組んでないのですか。入ってないのですか。
  138. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 要するに、予備費は予定しがたい予算の不足に充てるためのものでございますから、人事院勧告があるかもしれぬというような事柄の予見はできましても、金額の予見というものはできませんから、したがって、予備費の中に予見した金額を盛ってあるというものではございません。こういう事態が起こったときに対処し得るように全体としての予備費を準備しているということでございます。
  139. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それじゃ人事院がかりに一五%のベースアップを要求したときに、五百億以上になったときは、その千二百億の予備費の中からそれはまかなえますか。
  140. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いままでは、こういう人件費とか公務員給与費とか、あるいは食管への繰り入れというような大きい補正要因をそのまま残して当初予算を組みました。ずいぶん冒険な話でございますが、幸いにして経済の成長期でございましたので、年度の途中において何とか補正要因を満たす財源というものが生まれたというのでございますが、もう今後はこういうことは望めません。これははっきりしてまいりましたので、私どもは、当初においてできるだけの予備費を用意するということにして、再び年度の途中でこういう補正のないようにということから、今度の予算においては、いわゆる総合予算主義というものをとって、これを年度の途中で、もうそういう財源が見込めないから補正はやらぬということで、そうしてあらゆる節約とかいろんなものを考えて財源をこしらえて予備費の充実をはかった、こういうことでございますので、勧告が行なわれましたら、この予備費の範囲内において最善の努力をするというよりほかしかたがないと思います。
  141. 田中寿美子

    田中寿美子君 関連。ただいまの大蔵大臣の御説明ですと、予備費千二百億取ってあります中で、公務員の給与については幾らということをまだきめていないというふうにおっしゃいました。ですけれども、地方財政計画の中に八百億組んであります。それが公務員の給与引き上げに関連して地方公務員も引き上げるということを予定して、地方公務員の給与のベースアップ及び災害対策費として八百億組んでありますが、大体それから逆算していきますと、公務員の給与費は五百億ぐらいを考えていられると思うんですけれども、いかがですか。
  142. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 人事院勧告の内容を、これは予見することができませんので、したがって千二百億円の中で幾らを予定しているかということはございません。金額を特定してございません。
  143. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 関連は、田中さん、一回ぐらいにしてください。でないと、進行せぬものですから。
  144. 田中寿美子

    田中寿美子君 もう一つ関連して。いまのお尋ねしたことに触れてないんですが、地方財政計画の中に八百億組んでいらっしゃるのは、それは政府の方針だと思うんです。ですから、そこに金額が出ているんです。自治大臣いかがですか。
  145. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) お答えいたします。ただいま大蔵大臣が申し述べましたとおりでございまして、まあ以心伝心と申しますか、やはり来たるべきことが大体予想されますので、一般行政費の中に災害費も含めまして、八百五十億円予算を計上いたしております。
  146. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これは御承知のように、今年度のような財政のときに、いままでのような見方をして、何とかなるだろうといって、食管の赤字やあるいは公務員給与に対する勧告、これはそのときなるだろうというようなやり方をしたら、これは全くどうにもならない。人事院の勧告が出ても、もうゼロ回答をしなければいかぬというような事態に本年度はなるということを私どもは考えておりますので、したがって、そういう事態を避けるために、食管に対する事前の費用を当初から計上しておくということをいたしましたし、同時に、人事院の勧告に対処するために、過去いろいろ補正予算の場合において、予備費がどれくらい必要だったかという過去のいろいろな経験もございますので、そういうものを勘案し、そうして予備費の充実をはかったということでございますので、これは現実に勧告が出されましたら、この予備費の中において私どもは最善の努力を尽くして解決したいと思います。    〔「関連」と呼ぶ者あり〕
  147. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) もう関連はあまりたくさんやらぬように。進行しませんから。木村君にひとつやらせてください。あまり関連ばかりやっては進行しませんからね。進行してください、木村君。
  148. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 じゃ一問だけ、どうですか。
  149. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) なるたけ進行さしてもらいたいんですけれども、それじゃ簡単に一問ね。一回。
  150. 村田秀三

    ○村田秀三君 関連して。いまの大蔵大臣の答弁を聞いておりますると、これはまあ人事院勧告と米審が予備費の中で相当関連を生ずるわけであります。米価の問題は先ほど財政制度審議会会長考え方政府が踏襲するとするならば、これは七月に米審がきめたところの米価をそのまま告示して、そうして消費者米価スライドということであるから、かりにその方法をとるとするならば、これは予算上問題が起こらないと思う。しかしながら人事院勧告が予算をこえて勧告された場合、それをゼロ回答する以外にないというような態度をお示しになるとするならば、従来人事院勧告は最大限尊重するというこの考え方が否定されたものと理解するほかないと思います。その間の考え方について御答弁をいただきたいと思います。  また、いわゆる予算を越えて勧告がなされた場合、補正を組むのか組まないのか。これも含めてしかと御答弁をいただきたいと思います。
  151. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 考え方は反対でございます。私の申しましたのは、従来のような予算の組み方をやった場合に、大きい補正要因を残して当初予算を組むのですから、その場合にかりに人事院の勧告が出ても、これをどうこうしようとする財源が、自然増というものはことしは見込めないだろう、もし見込めないというようなことでしたら、人事院の勧告が出ましても、政府はゼロ回答せざるを得ないというような事態になることは困るので、人事院の勧告を尊重するためには、あらかじめ当初において財源を洗いざらい出して、その中でいろいろ経費の優先度を考え、そうして最初にこの予算の配分をしておくということをやらないというと、これは人事院の勧告を尊重できないということを考えて、今年度はこういう予算の組み方をした、そうしてそのためにはいままでよりもいわゆる予備費の充実をはかったということでございますので、考え方としては、できるだけ勧告を尊重したいということからの措置であります。
  152. 村田秀三

    ○村田秀三君 納得できない。
  153. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 木村君にひとつ、質問者に戻ってください。
  154. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この問題については明らかにして、この点についてはもう一問だけでぼくは譲りますから。
  155. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) どうぞまあひとつ木村さんやってください。進行してください。あまり関連ばかりされると時間が……。
  156. 村田秀三

    ○村田秀三君 この質問に関しての再質問です。
  157. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 関連ですからね、満足しないから何回もやるということはやめていただきたいと思うんです。進行しませんから、木村さんひとつ、本人の木村さんに戻って継続してください。木村さん。
  158. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もう一問だけ許していただけませんか。そうすれば解決します。もう一問だけひとつ……。
  159. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 木村さんが質問なさればいいでしょう。ひとつ続行してください。
  160. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 やはり問題を明らかにしたいから……。
  161. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それじゃ、進行のために簡単にね。
  162. 村田秀三

    ○村田秀三君 まことに簡単な問題だと思うんです。それを強引に大蔵大臣は固執をしておられるので、いわゆる問題が長引く、私はこう思います。理論的に考えで、予見することができない人事院勧告、これは一千二百億で間に合わない結果になるかもしれないのであります。その際に、いわゆる尊重するという態度を堅持する限りにおいては、これは一千二百億をこえる勧告が出た場合には、それに上積みするところの予算措置を当然必要とするということは、これは三つ子の計算においても当然なことであります。とするならば、いわゆる予備費をこえるところの勧告がなされ、あるいは米審の決定がなされた場合に、いわゆる補正措置をとるのかとらないのか、このことを聞いておるのであります。いろいろ財源を捻出してやりくって予備費をたくさん盛ったから、それで事足りるという問題ではないわけであります。予算を認めるか認めないかの根幹的な問題でありますから、明快なる答弁をいただきたい。
  163. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 今回のような予算の編成のしかたをしたということは、御承知のように従来のように年度途中で予算を補正するという、慣行的な、もう習慣となったこういうやり方を是正したいと、なるたけこういう予算の補正をなくするような総合予算を組みたいということからきておるものでございますから、もし勧告が出たというときには、先ほどから申しまするように、私どもは最善の努力をするということであって、また必要があればどんどん補正予算をやりますよというのは、これは今回の予算の編成方針から見ましても、できるだけそういうことを避けようという趣旨でございますから、私どもは、できるだけ補正予算のあれによらなくて善処したいということを、御答弁申し上げておるわけでございます。
  164. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いま予備費の問題になっていますが、大蔵大臣、財政制度審議会でもベースアップの予算を予備費に計上するのは問題になったんじゃないですか。予備費は「予見し難い予算の不足に充てるため」なんですから。なぜこれをですよ、たとえば公務員給与調整基金というような項目でなぜ計上しなかったか。しかも、これは予備費予備費でそういう計上をしますというと、昔の責任支出みたいになってしまうのですね。そうでしょう。国会はそれに何に使うかわからないのをですね、予備費として認めたら。ですから予備費は、ここに、二十四条で書いてありますように、規定しているように、「相当と認める金額」、なるだけですね、これはもうなるたけ少ない金額に限定すべきだと、大体まあ一%前後というのが、これまでの経過なんです。なぜこれを、予備費は予算ではございませんから、正確にはね。なぜこれを予算に計上しなかったか。これはそういうことをどんどん、こういうことが習慣になると、予備費予備費でね、昔の旧憲法的な責任支出みたいになりますから、財政法にこれは精神に反するのだ、なぜ財政制度審議会で問題になっているように、公務員給与調整基金としてなぜ計上しなかったのか。
  165. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 予備費はやはり予見しがたい経費の不足に対するものでございますから、公務員の給与の問題におきましても、いままでの例から見て、事柄としては勧告があるだろうということは予見できますが、金額についての予見というものは全くできない。したがって、こういうものは、従来もそうでございましたが、今回の場合においても、これを予備費として準備しておくということは、少しも違法なことじゃないと思っております。
  166. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は予備費にしましても、繰り越し明許にしましてもね、この民主的財政のいろいろなこの制度を、だんだんこれを弾力的弾力的と称して緩和してしまうと、いわゆる財政民主主義をだんだん形骸化し、空洞化すると、こういう傾向が非常に強く出てきているのですよ。また予算自体のこの編成のしかたでも、さっき申しましたように、まるでもっと最近諸外国でやっていることと比較すれば、昔から比べれば進歩していても、いまのうんと進んでいる国から見れば大福帳的みたいですよ、まだ。まだまだ。そういうことで、国会審議権を制約するような方向にどんどん進んでいくことは非常にいかぬですよ。  私ひとつ具体的に、いわゆる財政民主主義の原則に反する一つの例として、いわゆる財政民主主義の原則の中には、明快とか公開性の原則があるわけです。ところが予算がわからないように組まれておる。そこで私具体的に伺いますが、外務大臣ね、インドネシアの焦げつき債権に対するリファイナンスの交換公文、これについて、これは国会にお出しになるかどうか。まずこれから聞いておきます。
  167. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 国会にこの問題を出す考えは持っておりません。
  168. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その理由をお伺いします。
  169. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) これは御承知のように、まあアムステルダムの会議において、各国とも、これがすでに日本が支出をした日本のこの援助に対して、これを支払いを繰り延べるという処置でありますから、国会の承認を得ようとは、私は思っておりません。
  170. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 違いますよ、そんな問題じゃないですよ。——では正確に言います。これはですね、昭和四十二年六月二十八日、インドネシアの対日延べ払い債務に対する再融資に関する交換公文です。これは外務大臣がこれは協定を結んでいるのです。それをなぜ国会に出さないんですか。債権債務に関する問題じゃありませんか。
  171. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) もし間違ったらまた訂正させていただきます。(笑声)私の知っている限りでは、この交換公文は、国と国とでこの債権債務の約束をしたというようなものではございませんで、日本の輸出入銀行がやることを、輸出入銀行がこういうことをするんなら、政府としては、これに反対するのじゃなくて、そういう方向に協力してやるという、実際は輸出入銀行の問題でございますが、これを両国でそういう話し合いをしたということで、直接国が債務を負うとかいうような問題ではないので、国会にかける事項ではないというふうに私は聞いております。
  172. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣、違うですよ。外務大臣三木武夫氏がインドネシア共和国外務大臣アダム・マリク閣下に対し、こういう交換公文を交換しています。国と国ですよ。輸出入銀行だけじゃないですよ、そんな問題じゃないですよ。前に借款と同時にやっている。前の借款とそれから無償援助、あのときに同時にやっているのです。
  173. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 三千万ドルは、これはやっぱり輸出入銀行の関係だと、私も思います。一千万ドルは予備費から出しましたから、前の臨時国会の場合に、いろいろ国会でも御論議を願いましたけれども、国会に報告をいたしましたということでございます。
  174. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 違うんですよ。それは衆議院予算委員会でわが党の北山さんが質問したのは、借款の問題です。それと無償援助の問題ですよ。これはそうじゃないんですよ。これは焦げつき債権に対する輸出入銀行のリファイナンスの問題です。それを国がやっているんですよ。いまはっきりとここにありますよ、交換公文に。この国の債権債務に関することを、なぜ国会に出さないかというんです。
  175. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 私の記憶しておるところでは、あのマリクとの三千万ドルに対して……。
  176. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 四千五百万ドル……。
  177. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 四千五百万ドルは、最初申し上げますように、これはアムステルダムの国際会議によって、インドネシアの経済の非常に緊迫した状態にかんがみて、これは各国とも支払いを猶予しようということが国際的にきまり、これに対して、これは関連をしたものは輸出入銀行でございますから、政府財政支出を伴うような問題でもございませんので、国会の御承認を受ける必要はないという考えでございます。
  178. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これははっきり政府が、外務大臣がジャカルタで四十二年六月九日に、インドネシア共和国政府との間に、対日延べ払い債務に対する再融資に関する交換公文になっている。それでこれが政府負担にならないと言いましたけれども、これから具体的に伺っていきますが、たいへんな負担ですよ。そこで私は伺いたい。このインドネシアの焦げつき債権の内容とそれから債権国会議のその経過を伺いたい。どういう内容ですか。あなた政府負担にならないと言うけれども、とんでもない話です。
  179. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 輸出入銀行の関連で、政府自身の債権債務関係というよりも、輸出入銀行としては負担になることは事実でございましょう、これが取り得べき債権が繰り延べられるわけですから。この詳細は、政府委員から答弁をさすことにいたします。ちょっとお待ちください。(「休憩休憩」と呼ぶ者あり)
  180. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは、十分間だけ休憩いたします。    午後二時五十四分休憩      —————・—————    午後三時四分開会
  181. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは、休憩前に引き続きまして委員会を再開いたします。(「まだ来ていないじゃないか」と呼ぶ者あり)いや、もうジャストです。いま来ますから。いま呼びに行っているのです。もうちょっとお待ちください。  それでは審議を再開いたしますが、先ほど審議が中断いたしましたが、関係政府委員の方には、予算審議中必ず出席されるように注意を申し上げます。  佐藤条約局長
  182. 佐藤正二

    政府委員佐藤正二君) たいへんおそく参りまして、まことに……。  先生に私からお答えするところは、六月の交換公文は国会にかけるべきではなかったかという点だろうと思います。御承知のとおり、この交換公文は、この交換公文自体にも書いてございますように、「日本国の関係法令に従い、かつ、予算の範囲内において、」ということをうたっております。国会の御審議を願う条約につきましては、法律事項ないしは財政事項が入っております条約について国会の御審議を願っているわけでございます。この交換公文自体は、そういう事項が、全部いわゆる予算の範囲あるいは法令の範囲という意味で、行政権のワク内でできるというふうに解釈いたしまして、国会に御審議を願わなかったのであります。
  183. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 続いて上田経済協力局長
  184. 上田常光

    政府委員(上田常光君) たいへんおそくなりまして申しわけございません。  このインドネシアの債権につきましては、債権の支払い期限が到来しておりますものについて支払いがたまりますのでございますから、御承知のとおりに、一九六六年の九月十九日から二十日まで、東京でインドネシアの債権国会議を開催いたしまして、この東京の会議におきまして、一九六六年の六月末までの支払い遅滞債権、及び一九六六年七月から六七年の十二月末までの支払い期限到来債権を繰り延べることにいたしたのでございます。次いで、パリにおきまして、同年十二月の十九日から二十日の間に、同じく債権国会議を開催いたしまして、この会議におきまして、東京会議の合意に基づく繰り延べ対象債権の一〇〇%を繰り延べる、返済条件は一九七〇年末までは据え置き、一九七一年から八年間不均等分割払いとする、繰り延べの利子はできる、だけ低くする、かつ、一九七〇年までの据え置き期間中の利子の支払いによりインドネシアの国際収支に追加の負担を課さないように配慮する、こういうふうにきまりまして、それに基づいて先ほどの交換公文をいたしたわけでございます。
  185. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 先ほど外務大臣が、財政支出を伴わない支出であるから、そこで国会にかける必要もない、こう言われましたですね。それでは、これからの審議の過程で、財政支出を伴うことになったら、国会にかけますか。
  186. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) いま局長から、政府委員から御答弁しましたように、法令の範囲内、財政の範囲内ということで行政処置としていたしたということでございますから、新たなる財政処置を伴うということになれば、方法論は別として、国会の御承認を得なければならぬことは当然だと思います。
  187. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この交換公文には、借款と贈与の場合と違って、予算の範囲内ということは書いてないですよ。借款と贈与の場合には予算の範囲内及び関係法令と書いてありますけれども、これには予算の範囲内とは書いてないですよ、こっちのほうは、リファイナンスのほうは。いかがですか。国会支出を伴うようになったら出しますか。違うのですよ、借款のほうとは。
  188. 佐藤正二

    政府委員佐藤正二君) 先ほどのお話が六月の交換公文のことと思いましたものですから、そういうふうにお答えいたしましたのですけれども、千万ドルの贈与の交換公文につきましては、これは別に予算のあれということは書いてございません。ただ関係法令に従って行なうものとすると、こう書いてございます。これは実は、事実問題としては予算の範囲内で行なっております。
  189. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 答弁になってないじゃないか。贈与のほうは、日本国の法令に従い、かつ、予算の範囲内においてとなっていますけれども、リファイナンスのほうは、予算の範囲内というのはないのですよ。これは四十二年の六月九日の交換公文です。どこに予算の範囲内なんて入っていますか。
  190. 佐藤正二

    政府委員佐藤正二君) リファイナンスのほうは——間違えまして、リファイナンスのほうにつきましては、これは支出でございませんで、融資したものでございますから、予算の範囲内ということは抜けております。
  191. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ですから、質疑の過程で、結局、それは国の予算支出を伴うということがはっきりしたら出しますかというのです。これを聞いておるのです。外務大臣はさっき、支出を伴わないから出さないと言ったでしょう。出すことが明らかになったら出しますか、国会にかけますか。
  192. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 支出を伴えばむろん国会で御承認を得なければならぬ。
  193. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ところが、いままで支出を伴っているのに国会に出さなかったのは、どういうわけですか。
  194. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) リファイナンスの場合は支出を伴っていないわけですが、木村さんが、支出を伴って出さなかった場合にはどうだと言うので、何か実例がおありになるのかもしれませんが、そういう場合には御提示を願いたいのでございます。
  195. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これから審議の過程で明らかになりますから。もし支出を伴っていたらどうします。
  196. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 具体的に実例を——こういう問題はどうだという具体的な実例としてお話し願えれば、非常にお答えするのにも具体的になると思います。
  197. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これから明らかにしていきますが、その前提としてさっき私質問したのを、政府委員答えてないでしょう。焦げつき債権は全体で幾らですか。それから商社別に、どこの商社にどれだけこれは払っているか、これ輸出保険特別会計に出てくるわけです。それをはっきり商社別に、商品別に、その焦げつき債権が、これは保険となって払われてくるのですから、リファイナンスしたものは。それを詳細に資料を出してください、それに基づいて質問していきますから。そうなってくるとはっきりしてきますから、国の支出が伴うことがはっきりしてきます。(「委員長、資料を出せるのか出せないのか、はっきりしてください」と呼ぶ者あり)
  198. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 外務省の政府委員答弁しなさい。
  199. 上田常光

    政府委員(上田常光君) ただいまの先生の、商社別の焦げつき債権の内容を出せといういま話がございましたけれども、これは輸銀の帳面を一一調べて御報告しなければならないので、ちょっとこれは提出しかねると思います。
  200. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 資料を、じゃあ輸銀のを調べればあるのでしょう。そうしなければ百六十二億にのぼる焦げつき債権の処理があいまいでわからないじゃありませんか。どう処理されたかということ、われわれの責任ですよ。これを明らかにしなければ、われわれの責任です。これはみんな国民の税金なんですよ。
  201. 柏木雄介

    政府委員(柏木雄介君) 一昨年の六月末におきまする中長期の債権が四千四百四十九万九千ドルございまして、そのうち、六月末で未払いになっておりましたのが四百四十万三千ドル、それから短期と申しますか、六カ月超二年までの債権でございますが、これが三千三百二十五万七千ドル、先ほどの中長期と申しましたのは二年超のものを申し上げております。それでこの短期のうち、同じく六六年六月末で未払いのものが七百十五万六千ドルでございます。それから、先ほど外務省の政府委員から御説明いたしましたように、六六年の七月期以降デューになりまして、つまり弁済期が来て、これをファイナンスの対象といたしましたのが、それが中長期のもので、六六年七月から十二月までで二百八十七万八千ドル、六七年の一−六月で四百四十万三千ドル、六七年の七−十二で二百七十八万一千ドル、同じく短期のもので、六六年七−十二月で期限到来分が千五百三十一万四千ドル、六七年一−六月でデューの繰り込みが六百十五万二千ドル、六七年の七−十二月で五百十三万二千ドル、以上でございます。
  202. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 われわれに出した資料によりますと、この資料の中に各国別の焦げつき債権の内訳が書いてありますね。この中に日本の分も一部出ております。ですから、各国別の、それも一九六六年六月末現在の外務省の経済協力課で出した数字と、それから今回われわれに資料として出された数字と、かなり違いがあるんですね。その点をはっきりさしてもらいたいのと同時に、それから商社別に、要するに国民にわかるように——この予算は、あとでお話しますように、非常に入り組んでいて、国民にわかるようになっていない、われわれの税金が焦げつき債権の処理に使われているんですけれども。そこで、商社別に、焦げつき債権は世界全体で幾らか——債権会議全体で幾らか。そのうち日本が幾らか。それが輸出保険特別会計にリファイナンスが回って、どこの社へどういう品目——これはプラント、あるいは消費物資があるかもしれません。それにどれだけ保険として払われているか、この点を明らかにして——それを明らかにすれば、国費から払われているということがはっきりしてきますから。商社別に見ないとわからないのです。
  203. 柏木雄介

    政府委員(柏木雄介君) インドネシアに対する全体の各国の債権は、たしか木村委員のお手元に参っておりますのが、二十三億七百万ドルだと思いますが、その場合の日本の債権が一億三百万ドル……。
  204. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 両方で二億二千三百……、これは既済分と残高の両方ですか。
  205. 柏木雄介

    政府委員(柏木雄介君) それはインドネシア側が主張している数字と思いますが、その中にはたとえばプラント輸出でまだ船積みしていない分までも含めて入れるとか、利息を入れるとか、いろいろやっておりますが、私どものほうで把握しておりますのは、現に債権になっている分だけでございます。
  206. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これから来るもの一億八千五百万ドル、それに期限が来たものが四千二百万ドル、これでいいんですか。
  207. 柏木雄介

    政府委員(柏木雄介君) 期限が来ていわゆる履行遅滞——弁済期が来て未払いになっているもの、それが要するにリファイナンスの対象になります。それが先ほど申し上げました数字でございます。  それから、商社別の数字でございますが、これは日本輸出入銀行で一件一件審査してやっておりますので、私どものほうではどの商社に幾らリファイナンスしているかという数字は把握いたしておりません。
  208. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それとですね、これは商社別に出してもらわなければ本格的にならない。国民の税金が焦げつき債権にどういうふうに使われているかを明らかにしなければならない。ところが、アンタラ通信の伝えるところによりますと、インドネシアの海外焦げつき債務は全体で二十五億ドルであるという。大蔵大臣が再三発言しているのですね、再三。IMFの二十三億ドル、さっきのね。それから推測すると、これは二億ドルも多くなるのですよ。これから推測してみますと、日本の焦げつき債権は三億ドルぐらいになるという推定になってくるのです。金額に非常に差があるのですがね。この点はどういうふうに説明したらいいのですか。それと、外務省が六六年六月末現在で、経済協力課ですよ、これ発表されたのは。その数字と、それからさっきお話のありました、われわれに配付されたこれですね、この資料と少し違うように思うのですが、六六年と六七年ですね、日本の債務について少し違うように思うのですが、いかがですか。
  209. 柏木雄介

    政府委員(柏木雄介君) IMFで調べました数字は、これは六六年六月末、同じ時点でございますが、その時点におきまして、債権国全部で二十三億五千三百万ドル、そのうち日本の分が二億二千三百万ドルでございます。私どもと数字が違うわけでございますが、これを検討いたしますと、標準決済の関係での差は非常にわずかでございまして、先方の把握している数字が二千二百七十二万に対して、私どもの把握している数字が二千五百三万でございますが、中長期、短期の債権につきましてはそこに八千万ドル近い差がございます。私どもが把握してわかっております一つの相違は、私どものほうでは、賠償担保借款につきましては、これは確実に回収できる債権でございますが、賠償費を差し引きいたしますのでデューの履行遅滞という問題が起きない。現に、六六年の六月以来履行遅滞は一ぺんも起きておりません。それが四千七百万でございます。そのほかに、先ほど申しましたように、船積みしていない分とか、いろいろございまして、結局私どものほうで把握している数字が、先ほど申し上げました一億何がしという数字にこの賠担を加えたものが全部で約一億五千万ドルでございます。それとIMFの二億二千三百万の差がさっき申し上げた数字でございます。
  210. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もう少し整理して伺いたい。これはインドネシアのほうで発表した数字だと思うのですがね。この中で共産圏ですね、共産圏の債権と非共産圏の債権と分れております。共産圏のほうの債権はどうなっているのですか。それとさっきのお話と、これがまた違うのです。インドネシア政府の出したものとこれと、またさっきの数字と違うのです。何か非常にそこが割り切れないのですが、はっきり何か統一して説明していただきたいのですよ、どれがほんとうなのか。
  211. 上田常光

    政府委員(上田常光君) ただいま先生が御指摘になりましたように、数字が、確かに各国、各役所で出します数字が、インドネシアと日本、あるいはIMF等々と必ずしもきちっと全部一致しないのは、これはわれわれも非常に仕事をする上には不便を感じているのでございますけれども、たとえばわが国のいまの債権にしましても、IMFでつくりました表の中にありますわが方の債務だとか、それからわが国がわが国の立場で集計しております数字と食い違ってきております。これはまあ理由はちょっと、外国のことになりますので、私ここで申し上げていいかどうか、はばかりますが、わが国のとっております統計と、インドネシア側のつくって出しております統計と、必ずしもきちっと一致しない場合があるのでございます。この点はひとつ御了承いただきたいと思います。
  212. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 つまり、インドネシアでは、いわゆる九・三〇事件で、革命が起こって、中央銀行がつぶれたりなんかしていますから、非常にいろいろな混乱があったと思うのですよ。ですから、なかなかたいへんだと思いますけれども、しかしわれわれ、あとで詰めていきますように、われわれの税金でリファイナンスになる。結局、一般会計から産投に繰り入れて、産投から輸出入銀行に繰り入れて、輸出入銀行から輸出保険特別会計に繰り入れているのです。こういう関係になっているのですよ。だから、外務大臣が国費を伴わないと言うのは、とんでもない話なんです。非常に大きな金額を国民の税金で支払い、焦げつき債権の処理に使われているのですよ。ですから、重要問題として、しかも金額はよく合わないでしょう。それが商社別に、大体八〇%商社に保証するんでしょう。しかも、地方自治体が一五%保証するんですよ。九五%保証する、住民の税金とわれわれ国民の税金で。だから、この経理を明らかにしなければ、国民に相済まぬですよ。そういうものは国会に出されないのです、この交換公文は。そこを問題にしているのですよ。そこで、まず明らかにしてもらいたいのは、債権国会議、債権国会議と言っていますけれども、共産圏が入っているのか入っていないのか。この資料によりますと、かりにIMFのこれを見ましても、二十三億幾らですね。この中で共産圏諸国が大体十三億ドルぐらい占めているのです。共産圏のほうが多いのですよ。それなのに、このインドネシアの資料を見ると、共産圏はノン・パーティシペーティング・クレジターとしるされていて、参加していないのですよ、債権国会議に。それで債権国会議が成立しますか。しかも、さっき法令に違反していないと言っていました。輸出入法令に違反するのですよ。違反するのです、明らかに。これはあとで明らかにしますけれども、債権国会議が成り立たないのですよ。成り立たないのに、債権国会議ですね、なぜ共産圏の債権のほうが多いのに入れないで開催してどんどん進めているのか、この点を明らかにしていただきたい。それで、共産圏諸国の内訳を聞きたいのです。商社別のはぜひ出してもらわなければなりません。商社別に、商品別に出してください。
  213. 上田常光

    政府委員(上田常光君) お答え申し上げます。  共産圏とインドネシアとの間の債権債務関係につきましては、これは共産圏諸国はそれぞれインドネシアとバイラテラルで交渉をするということになっておりまして、たとえばユーゴが六六年九月、六七年にブルガリア、ハンガリー、チェコ、それからソ連も六六年十月です。ルーマニア、ポーランドはまだ未定でございますが、そういうわけで、共産圏諸国のほうはそれぞれバイラテラルにインドネシアと交渉をしておりますので、今回の債権国会議には共産圏は含まれておらないわけでございます。
  214. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 全部共産圏そうなっていますか。共産圏の国別、債権別に示してください。
  215. 上田常光

    政府委員(上田常光君) 必ずしも共産圏全部やっているということではもちろんございません。
  216. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 だから、金額で示してみればわかりますよ。多くの金額を占めている共産圏が入ってないで、それで債権国会議全体と言えますか。
  217. 上田常光

    政府委員(上田常光君) そういう意味では、各国は、それぞれバイラテラルに共産圏はやるということであったものでございますから、共産圏が入っていないわけでございます。
  218. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 全部そうでもないというのですね、いま。  それから、もう一つ別の問題で伺っておきたいのですが、日本輸出入銀行というのは、これはファイナンスするときに何を対象としてファイナンスするためにできた銀行ですか、その目的。
  219. 柏木雄介

    政府委員(柏木雄介君) 輸出入銀行の目的は、その輸出入銀行法の第一条に書いてございますが、「日本輸出入銀行は、金融上の援助を与えることにより本那の外国との貿易を主とする経済の交流を促進するため、一般の金融機関が行う輸出入及び海外投資に関する金融を補完し、又は奨励することを目的とする。」とございます。
  220. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その対象は、主としてプラントとか技術ですか。そういうものですね。
  221. 柏木雄介

    政府委員(柏木雄介君) プラント輸出の延べ払いを奨励するのが当初設立の目的でございますが、その後数回の法律改正がございまして、ただいまではリファイナンス——問題になっております債権国会議におけるリファイナンスをやり得るように法律ができております。これは輸出入銀行法の十八条の二の第五項に、その債権国会議があった場合にはリファイナンスができるという規定を明記してございます。
  222. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そのリファイナンスの対象は、プラントとか技術ですね。消費物質は含みますか。
  223. 柏木雄介

    政府委員(柏木雄介君) 主としてプラントでございますが、プラントに限ったことでございません。
  224. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それじゃ、今度は海外経済協力基金ですね。今度改正しようとしていますが、そこでおもに消費物資をファイナンスの対象にしたいのだと、それはどういう意味ですか。
  225. 柏木雄介

    政府委員(柏木雄介君) このたび経済協力基金法を改正いたします趣旨は、要するに経済の安定のため、インドネシアに対しまする、さらにはその他の国に対しまするソフトローンのためでございます。物資、役務をソフトな条件で行うためには、現在の輸出入銀行の条件ではなし得ないような場合も予想され、それを今度整備するため経済協力基金法を改正するということで、目下法案を提案中でございますが、詳細のことは経済企画庁のほうから説明するのがしかるべきかと思います。
  226. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この商社別、商品別の資料をぜひ出してもらいたい。その意味は、外務大臣が国費を伴わないと言っているのですよ。ところが、われわれの調査によりますれば、これは結局輸出保険特別会計——これは通産省の所管でありますが、たとえば四十二年度はいわゆる返納金、回収金というものがあるのです。ところが、これが四十年には五億三千三百万円、四十一年は七億六千百万円でしたのが、四十二年は百五億九千百万円になっているのですよ。四十三年度は七十六億九千五百万円になっております。回収金というのは、これは返納金とも言っておりますが、これはインドネシアから回収した金です。しかし、そのお金はインドネシアにあるはずがない。これは輸出入銀行からリファイナンスしている金であります。そこで、輸出入銀行にどれだけ産業投資特別会計からファイナンスをされているかといいますと、産業投資特別会計からいまの輸出入銀行にファイナンスされているのです、さっきの金は、回収金は。そうしてそれは産業投資特別会計から輸出入銀行にファイナンスされ、それから産投会計のほうは一般会計から出ているのです。出ているのです。具体的な数字がありますから……。いま私は、時間もございませんから、詳細の数字にわたることはできませんが、しかもこの焦げつき債権を処理する輸出保険特別会計は、インドネシアのほうであの革命が起こって、それで支払いできないからリファイナンスする。それと同時に一般会計からまた入れているのです、直接にですよ。それから予備費でまた入れているのです、予備費で。こういうように予備費で入れたり、一般会計で入れたり、それから産投会計から輸銀に入れて、輸銀からまた保険特別会計に入れている。こういう回り回っているんです。これは普通の保険と違うわけです。なぜこれをインドネシア焦げつき債権でですね、処理、あるいは特別会計、そういうような形でなぜ処理しないか、普通の輸出保険みたいな形でこの焦げつき債権を処理しているのです。これは一般会計から出ているのですよ。外務大臣、これは回り回ってずっとそうなっているのですよ。ですからばく大な国費を伴って、国民の税金なんです。その税金がインドネシアの焦げつき債権に支払われている。商社別にこれを伺いたいのは、どういう商社に、これが焦げつき債権として処理されているかを私は要求するのは、われわれ調べたところでは、たとえば伊藤忠、住友商事、兼松江商、野村貿易、日綿、三井物産、三菱商事、東棉、丸紅あるいは泰豊貿易公司、それから韓東聯合有限公司、あるいは有聯企業公司、雑貨、化学品、セメントにわたりまして焦げつき債権、これを八〇%、この保険で埋めてもらって、しかも地方自治体が一五%また埋めているのです。九五%、しかしこれは九五%処理することは国際的に違反だそうであります。ところが、この輸出保険特別会計法律によると、こういうようになっているのであります。保険料率におきましては、この第一条の四に「輸出保険の保険契約の保険料率は、この法律による政府の保険事業の収入が支出を償うように、政令で定める。」と、政令で定められておる。ところが保険料を上げたという例を聞かないのですよ。こんなにたくさんインドネシアの焦げつき債権を処理するのに、保険料を上げてないのです。みんな国民の税金でやっておるのです。しかも、いまお話ししたそういう商社が、多額の自民党に対する献金をやっておるのですよ。私は詳細に調べましたよ。だからインドネシアの焦げつき債権と、それとこれとすぐに直接に私は結びつかないとしましても、とにかく、たとえば国民協会に対する献金を見ましても、なぜこのようにこういう商社——三井物産、三菱商事、伊藤忠、兼松、住友商事、東洋綿花、日綿実業、丸紅、これが五千百五十万円、これが大体昭和四十一年七月一日から四十二年六月三十日まで、しかもここでは申しませんが、いろいろ、たとえば対山社あるいは第一何とか研究会とか、それから協同主義研究会とか近代化研究会とか、あるいは新財政研究会とか、直接名前を言うと悪いから言いませんけれども、清話会とか、あるいは備後会、そこにも東洋棉花とか伊藤忠とか丸紅、三井物産が献金しておるのです。前の菅野通産大臣にも献金しておるのですよ。なぜこんなにこの対象になっておる商社が多額な献金をするのであるか、私はおかしいと思うのですよ。こういう関係があるから、そこでこの焦げつき債権を商社別に出してください。私はその資料が出されたら、また他の機会に詳細に質問いたしたいと思います。  私の持ち時間これで切れましたので、私の質問は非常に残念ですけれども、これは他の機会に保留して、私はこれで終わります。資料出すか出さないか、答弁してください。
  227. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) いまの木村委員の御要求の資料につきましては、当予算委員会の理事会で十分検討いたしまして、できるだけの協力をいたすことにいたします。    〔加瀬完君「政府から一応答弁させて、それであとの取り扱いを理事会で」と述ぶ〕
  228. 柏木雄介

    政府委員(柏木雄介君) このためのリファイナンスは、インドネシアに対して輸出入銀行からリファイナンスをするのでありまして、個々の商社等にリファイナンスするわけではございません。また、一般的に申しまして、輸出入銀行と申しましても金融機関でございまして、融資先等、その他内容というものは、原則として公にしないわけでありまして、いまお話のございました商社の債権がどうなっておるかということにつきましては、その当該商社のいわば営業上の秘密、あるいは信用ということにかかってまいりますので……。
  229. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは逆ですよ。むしろ保険がつけば信用は増すんじゃないか。逆じゃないか、逆ですよ。いまのは答弁にならぬですよ。絶対出さなければいかぬですよ。国民の税金ですよ。大臣、国民の税金じゃないですか。
  230. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いま政府委員答弁しましたが、政府金融機関といえども金融機関であるために、融資先、その融資の内容等については、原則として公にしないことにしております。また今度のインドネシアの場合は、融資の相手方はインドネシア国そのものでございますので、どの商社に幾ら流れたかというようなことは、輸銀の融資の審査、あるいは自後の債権管理の過程において知り得たいわば第三者の事情でございますので、当該第三者の営業上の秘密、信用等にかかわる問題で、公にすることはやはり適当ではないだろうと、このように考えております。
  231. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) ただいまの問題に関しましては、理事会におきまして慎重に検討して善処いたします。御了承をお願いいたします。
  232. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちょっと最後に一問だけ。外務大臣の答弁が残っているんですよ。それは、国の支出を伴うときは交換公文をさっき国会にかけると言われたんですから。明らかになったでしょう。国の支出を伴うことが明らかになったのですから、あなた出しますかどうか、交換公文。かけますかどうか、はっきりしたんですから。
  233. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 輸出保険の点を御指摘になったのですが、補正予算国会の承認を受けているわけでございます。国の支出を伴うことは国会の承認を得なければならぬということは、これは大原則でございます。輸出保険の問題、御指摘のような問題は、補正予算国会の御承認を受ける手続をとっておることは御承知のとおりでございます。
  234. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 違いますよ。それは国の支出を伴うものは交換公文を出すと言われたのです。交換公文を。なぜ交換公文出さないのですか。あなた言われたように国の支出を伴っているじゃありませんか。
  235. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) この輸出保険の場合に交換公文を私必要だとは思わない。やはり補正予算を出して国会の御審議、御承認を得るということで、私はそれで交換公文というものを必要とするとは考えません。
  236. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 木村さんの質疑はもう時間が終了いたしましたから……。
  237. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 出さないんですか、交換公文は。結論を言ってください。出すか、出さないか。
  238. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 最初のリファイナンスは、政府委員からも御答弁いたしましたように、法令の範囲内、予算の範囲内ということで、行政的な処置として処理したので、国会に提出の意思はないとお答えしたのは、私も同意見でございます。
  239. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 以上をもちまして木村君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  240. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 次に杉原荒太君の質疑を行ないます。杉原荒太君。(拍手)
  241. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 自由民主党を代表して外交、防衛等の問題に関して総理大臣並びに関係大臣に質問いたします。どうかいずれも簡明に御答弁をお願いしておきます。  第一に、外交の問題に関し、まずベトナム戦争の平和的解決の問題からお尋ねいたしますが、政府はベトナム戦争の平和的解決のためには、あらゆる努力を尽くすという立場をとっておられると思う。なまやさしいことではないけれども、このベトナム戦争の平和的解決こそ、わが国当面の平和外交の焦点に違いありません。政府が見識ある外交を発揮されて、日本にも外交ありという実証を示していかれることを希望するものでありますが、政府の企図しておられるベトナム戦争の平和的解決の探求は、その範囲をどの程度まで考えておられるか。もっと具体的に申し上げますと、戦争当事者の間の平和的解決のための談判の開始ないし促進を外部から助けること、すなわち外交の専門用語で言うところの周旋ですね、グッドオフィセズということばがよく使われる。その周旋に限るのか。それとも、戦争当事者に対し調停条件を提示する、また勧告までも行なうということ、すなわち居中調停、メディエーションをも含んでおるのか、まずこの点からお尋ねいたします。
  242. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 外交界の大先輩である杉原さん、非常に専門的な御質問でありますが、御承知のようにベトナム問題は、これは国内問題も含んだ複雑な国際紛争であります。したがって、日本が入り込んで、ああしろ、こうしろというまだそういう段階だとは思わないのでございます。したがって、戦争の当事者が話し合いのできるような、いわゆる専門用語的に言えば周旋である。しかし、将来条件が整えば、居中調停いとうものにあらずという考えでございます。
  243. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 いわゆる周旋なりあるいは居中調停なり、それはいずれにいたしましても、ベトナム戦争の平和的解決の探求が実際に芽を出すに至るためには、これはわが国限りの単独外交の方式だけによるんじゃなくして、少なくともジュネーブ条約関係主要国との連絡協調によるいわゆる連合外交の方式によることも、これも実際に必要だと思うが、それにしても、ベトナム戦争の平和的解決の問題に関して、ジュネーブ条約関係主要国との間には、直接または間接にでも連絡は十分とれる状態にあるのか。外務大臣からひとつお答え願います。
  244. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) ベトナム問題の平和的解決には、ジュネーブ協定の精神が生かされなければならぬと私は思います。しかし、一九五四年のベトナム協定そのままを再現していいかどうか。そのときは中共が積極的に入ったのでありますが、今日中共が入り得るかどうかに対しては非常に疑問でありますので、精神は生かし、しかも、イギリスとか、ソ連のようなああいう議長国その他の主要なる国とは緊密な連絡をとるべきであるという杉原先輩の説に全く同感でございます。緊密な連絡を日ごろわれわれはとっております。非常に緊密な連絡をとっております。
  245. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 次に、ベトナム戦争の平和的解決のためのあらゆる努力を尽くすという立場をとっておられる政府としては、核拡散防止条約の締結の問題については、それとベトナム戦争の平和的解決と、両問題との関係を一体どのように見て対策を考えておられるか。お答え願います。
  246. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) この核拡散防止条約とベトナムの紛争とは直接の関係は私はないと思う。入り口が違う。しかし、両々相まって極東の、極東ばかりではなしに、世界の緊張を緩和し、平和前進のために役立つと考えております。
  247. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 この関係をそういうふうな角度から見ておられることは私も同感でありますが、このベトナム戦争の平和的解決のためには、条件の問題等いずれにしても、まずこれがために好ましい国際的環境をつくっていく。ことに、この米ソ関係の一そうの緩和をはかるということが必要に迫られてくる。しこうして、この米ソ関係の一そうの緩和をはかる上からして、何が一体それじゃ一番効果的のものがあるか、現状のもとにおいて、現実の国際情勢から見て。そう見てくると、今日のところ核拡散防止条約をつくることであると私は思う。米ソ関係の一そうの緩和をはかる上から私はそう見ておるのですが、このことは、さきのあの部分的核実験停止条約の締結が、あれが実は米ソ関係の緩和の一大転機をなした。そのことから見ても、この核拡散防止条約の締結こそが、この際現状のもとにおいて米ソ関係を緩和するのに実際上一番効果的なものだと推定することができると思うのです。核拡散防止条約の締結によって米ソ関係が一そう緩和されることは、ひいてはベトナム戦争の平和的解決をもたらす上からして、好ましい国際的環境をかもし出すことになると思う。ベトナム戦争の平和的解決のためにはいろいろの構想があると思うけれども、しかし、それらはいずれも米ソ関係の一そうの緩和ということと相伴なわなければ、現実に芽を出すことは私はむずかしいと思う。米ソ関係の一そうの緩和をはかるには、米ソ両国が主体になることはもちろんだけれども、今日の国際情勢のもとでは、米ソ関係の一そうの緩和のため実際上効果的なものとしては、この核拡散防止条約の締結の右に出るものは私はないと思う。この意味において、わが国が核拡散防止条約の早期締結の促進に積極的に協力する役を買って出ることは、それ自体が実はわが国としては、ベトナム戦争の平和的解決への外交努力、それの重要な私は一環であると思う。また、それと伴なってこそ、いろいろ考えておられるその他の平和的解決の構想も芽を出す機会が開けてくるものと私は思う。核拡散防止条約そのものについては、周知のように満たされなければならない諸条件の問題はあるけれども、この条約の本来の趣旨から見ても、また、ただいまごく簡単に申し上げたが、ただいま申し上げたこの条約の早期締結が、ベトナム戦争の平和的解決のため好ましい国際環境、すなわち米ソ関係の一そうの緩和をかもし出すことになるという見地からしても、わが国としては、やがて開かれる国連のいわゆる核防総会はもちろん、あらゆる外交チャンネルを通じて、核拡散防止条約の早期締結の促進に積極的に協力する外交を展開して、なるべくすみやかにベトナム戦争の平和的解決をはかることを当面のわが国の平和外交の最も最重点事項とすべきだと考えるが、政府の見解、腹がまえはどうか。お尋ねいたします。
  248. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 私も杉原さんと同じように、米ソ関係が緩和されていくことは非常に好ましい、国際関係の上においても好ましいことであるとは思いますが、核拡散防止条約を、米ソ間の関係を改善するために早く核拡散防止条約に賛成するというべくあまりにこの問題は重大な問題を含んでおります。全人類的な立場、日本の立場、プラスもあればマイナスもある。結局絶対のものというものはないのですから、選択の問題になってくるわけでございますから、そういうものを考えながら、公正な条約というものが締結をされるということに対しては努力をいたします。しかし、いまから日本は、国連に米ソの最終案が出たからといって、すぐにもうこれでけっこうだと言う必要はない。調印に至るまで日本はそういう角度から検討を加えて、しかも公正な条約の妥結に向かって努力をするというのが政府態度でございます。
  249. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 いま外務大臣の言われたことは、何も私の言わんとしていることと少しも矛盾していない。これはもうあまり触れる必要はない。  そこで、わが国が他の核兵器を保有しない国々にも働きかけて、核拡散防止条約の早期締結の促進に積極的に協力する外交を展開していくにあたって、それと同時に大事なことがある。それと同時に、わが国がむしろイニシアチブをとって、わが国を含む核兵器を保育しない国々の一致の要望として、核兵器保有国たる米ソ両国に対して、ベトナム戦争の核戦争への拡大の危険を防止するとともに、平和的解決に努力する旨の意思表明の確認を求めることを考えたらどうかと私は思う。そうすることが、核拡散防止条約のあの最終草案を見ましても、その前文の中に書いてあることを見ると、その重要なことの一つとして、当事国、つまり米ソ両国はもちろん含むが、それは核戦争の危険を避けるためにあらゆる努力を払うという旨の規定をはっきりと掲げておりますね。そういう点から見ましても、私はいま言ったようなことの措置をとるのは、これは筋の通ったことであり、また米ソ両国をしてそのような確認措置をとらせるということは、ベトナム戦争の平和的解決への端緒をつくるという観点からして意義あることだと思うが、まあいずれにしましても、この核拡散防止条約締結の問題と、それからベトナム戦争の平和的解決の問題との関係、実際上の関係、事柄それ自体は別個であっても、実際上の国際政治上の関係を見抜いて、そして次元の高い外交をやっていただきたいということを希望をして先に進みます。  それでは次の質問に移ります。次に中共の問題についてお尋ねいたします。佐藤総理とジョンソン大統領との会談の結果発表された共同コミュニケを見ますと、その中には、中共の核兵器の開発に触れて、佐藤総理とジョンソン大統領との、「両者は、中共が核兵器の開発を進めている事実に注目し、アジア諸国が中共からの脅威に影響されないような状況を作ることが重要であることに意見が一致した。」とうたってあります。「中共からの脅威に影響されないような状況を作ること」は、これは「重要である」に違いないが、そのようなことは、本来筋合いから言えば、そういうようなことは各国それぞれ自主的にやるべきことであって、他国から押しつけられたり、また他国に押しつけることではありません。そんなことはしかしわかり切ったことであるけれども、実際上その辺のところに根本の狂いや食い違いがあるために、かえって国際間の混乱を来たす場合がなきにしもあらずということは、これは国際政治史上幾多の実例がこれを物語っております。  そこでお尋ねいたしますが、三点ばかりお尋ねしたいことがあるのだが、これは時間の都合で私はずっと三点ばかり続けて言います。中共が核兵器の開発を進めている事実に注目し、アジア諸国が中共からの脅威に影響されないような状況をつくることが重要であることに意見が一致した、というこの共同コミュニケの文言は、これはそれによって具体的には一体どういう政策内容を意味しているかというと、おそらく共同の、共通の政策を予想しておられるのだと思うのですが、その日米共同の政策内容はどういうものを意味するかということが第一ですよ。  また、そういう政策は必ずその前提として情勢判断があるに違いない。また、それは中共の核装備が開発、実験の段階を終えて実戦配備につくという、つまりそういう現実的な脅威になってきますね、その周辺諸国に現実的脅威となる時期の見通しについて、どういう日米共通の情勢判断を基礎にしておるのか。非常にこれは情勢がむずかしいけれども、アメリカはある程度の資料を持っておるかもしれぬから、これはおそらくそういう共同の、共通の情勢判断を基礎としておるに違いないと思うが、それは一体どういう共通の情勢判断か。  また、もう一つちょっと加わりますけれども、必ずしも核兵器ばかりでなく、また中共の核武装があるなしにかかわらず、中共のいわゆる人民解放闘争方式による国際的影響力の拡大について、一体どういう日米共通の評価を、どういうバリュエーションを基本としておるものであるか、これが一つです。  それから、もう一点は、よその国のことはともかくとして、わが国として中共からの脅威、特に中共の核装備の脅威に影響されないような状況をつくるために、政府はいかなる対策を講ずる方針であるか。  以上のことをお尋ねいたします。
  250. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 佐藤・ジョンソン共同声明は、おそらく——おそらくというか、概念的なことを私は言ったと思う、概念的なことを中共の脅威に対して。核兵器を開発するということは、今日の世界では一つの脅威であることは事実ですわね。核兵器を開発すること、そういうことに心理的な影響を受けないようなアジアの強い体制をつくる、国内体制をつくるということを一般的に言われたものだと思います。それは脅威の受け取り方というものは、国の環境、発展段階によってみな違うわけです。軍事的に重点を置く国もあれば、経済的あるいは社会的な面、そういうものに重点を置く国もあれば、いろいろ違うと思います。一がいにその国々に対して各国に適応するということは、これはない。しかし、言えることは、国内の体制をしっかりする、社会的にも経済的にも安定した状態をつくり出すということが、この体制を整えていくということの基本であることは間違いないと思うのであります。  日本は、やるといっても、軍事的にはできないのですから、従来やっておるようなアジアに対する経済協力、社会、経済開発に対する協力というものを、国力の許す限り最大限度にアジアの開発のために協力しようということが日本のとれる政策の限界でございます。  また、中共が核開発をいたしましても、日本はアメリカの核抑止力というものが、これは中共に限らずどこの国の核に対しても、日本は抑止力として日本の安全を確保していこうというのが政府考え方でありますから、これはこの脅威を受けるものではない。また、中共の核開発については、一九七〇年代が来ればミサイルといいますか、運搬手段の開発が進んでいくということを一般的に言われておりますが、これはわれわれが確証をもってこの国会でお答えをするという性質のものでもないと考える次第でございます。
  251. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 外務大臣のいまの御答弁の中でわかる点もありますが、しかし、何かあれは概念的なものだからというふうなことでは、これはちょっと——あれは共同声明した以上重要な政策声明ですよ、あなた。だから、その点は——いや、そうしてまた事実それを考えてやっているに違いないと私は思うので、それを正直に言ってもらえばそれでいいので、何か概念的なことだからなんというふうな、それはちょっとひとつ改めてもらいたいと思いますが、しかし、これはそれ以上その点は言いませんよ。  総理からも一言……。
  252. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま外務大臣がお答えしたとおりで、よくおわかりがいただいたと思います。中共が各国の反対にもかかわらず核兵器を開発しておる、こういう事実、これを無視しない、これに関心を寄せるということは、これは当然のことだと思います。また、地続きの国々が大なり小なりこのことについて脅威を感じておる。したがいまして、ジョンソン大統領に私が会いましたときに、この現実の状態をそのまま文章にしたつもりでございます。  ただ、これに対する対策として、力には力をもってするということ、軍事的な同盟をするというような提唱は絡対にいたしておりません。申すまでもなく、政治的な安定、同時に経済的な発展をすれば、こういう脅威を感じなくても済むのですから、そういう意味の各国の協力、こういう点を特に力を入れてあの声明は出したのであります。  わが国の態度につきましても、先ほども申しましたが、わが国は、これは中共という意味ではございませんけれども、核兵器のある今日の状態で日本の国の安全を確保する、こういう立場に立つ。いま持っている自衛隊では足らない。そこで、日米安全保障条約、米国の核の抑止力によってわが国の安全を確保する、こういう政策をとっているわけであります。
  253. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 中共政策に関してもう少し簡単にお尋ねをしますが、故ケネディ大統領はかつて中共との連絡の改善の必要を力説して、次のような趣旨の政見を表明したことがございます。おそらく御存じのことと思いますが、私はこれは当時から非常に注意して見ておったのですが、すなわちどういうことかといいますと、ケネディは、中共はますます無視できないものとなってきておる、脅威を与える力を持ってきており、軍縮のような国際協定から除外しがたきものとなってきている、直ちに中共を承認したり、また中共が戦闘的態度を変えない以上国連に入れることに同意することはできないが、しかし、少なくとも中共と連絡を改善するようつとめなければならない、という方針を打ち出しました。当時と今日とを比べてみますと、中共が脅威を与える力はその後の核兵器の開発によって一そうふえております。中共の国際的態度がおおむね非妥協的であるということ、及び、アメリカが国民政府を承認しており中共を承認していないということの事実に変わりはありません。しかし、それにもかかわらず、アメリカと中共との間には依然、ワルシャワにおける米中大使会談の連絡ルートは閉ざされてはおりません。  およそ国際社会において最もおそるべきは、相互の誤解と誤算であります。特にこの核兵器の時代においては、相互の誤解と誤算ということこそ、国際関係を一挙に一瞬にして破局におとしいれてしまう致命的な落とし穴に違いありません。元来、相互の誤解と誤算を防止するという見地から、何らかの連絡ルートを持つということは、正式の外交関係のいまだ開かれていない国または政府の間にも、実際上必要な場合があります。現に、アメリカと中共との間にはそれが行なわれております。  そこで、お尋ねいたしますが、わが国の場合ですね、わが国の場合、承認問題とはこれは切り離して、別個の問題として、相互の誤解と誤算を防止する見地から、中共との間に何らかの——方法を限定するのではないけれども、何らかの確実な連絡ルートを持つことの可否、適否及び能否、つまり可否、いいというのか悪いというのか、あるいはそれが適当であるか不適当であるか、あるいは能否、可能であるか不可能であると見るのか、その可否、適否及び能否の問題について、と政府してはどのような見解を持っておられるか。持っておられるならば、それをそのままひとつお聞かせいただきたいと思う。
  254. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) ケネディならずとも、世界の平和を願う者は、中共が国際社会で協調できるような中共になってもらいたい、これを願わないものは私はだれもないと思う。したがって、中共問題は世界の平和のためにこれは大問題であります。日本も中共との間に接触連絡を持てというお話でありますが、現に、御承知のように、貿易あるいは人間の交流では日本は接触を続けておるわけであります。最近にも自民党の代議士が中共に行って、周恩来首相ともいろいろ話し合って帰っておるということは、なかなかアメリカでもやっていない大きな接触の面でございます。したがって、いま言われた中共との連絡接触というものが可能かといえば可能である、適当かといえば適当であると、こういうふうに考えておるわけであります。
  255. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 まあケネディならずともとか、あるいは私が何かそういうことを現実に——それは私ももっとすらっと聞いてもらえばいいことです。だから、ケネディならずともと言われますが、ただ、考えがどうだというより、現実の政策を、どういう政策をとるかということのほうが大事ですからね。まあしかしこれは……。  わが国の平和と安全を確保するための対外政策の上から見ると、承認問題とか、それから国連における中国代表権問題だけが、中共との関係における政治的問題のすべてではありません。中共とわが国との間に存在する事実上の関係が、険悪で危険な状態にあるか、それとも、その事実上の関係が平静で無害の状態にあるか、そのいずれであるかということが、わが国の平和と安全の確保上軽視できない政治的関心事に違いありません。また、それが貿易がスムーズにいくかどうかにも実際上関係を持ってくることでもあることは、これはまた言うまでもないことであります。  そこで、わが国では、池田内閣以来、中共政策に関して、政経分離ということがよく言われております。この政経分離ということばは、もともと周恩来が言い出したものだとも言われていますが、それはいずれにしても、その内容的意味は、政策上の考え方いかんによって必ずしも同じではないように思うが、現内閣の見解では、政経分離の方針とはどういう政策内容を意味するか。  続けてお尋ねしますが、また、いわゆる政経分離の政とは、具体的に何をさすか。承認問題や、国連における中国代表権の問題のほかにも、いわゆる分離さるべき政があるという見解か。  これは、私がこのことをお尋ねするのは、単にこれは用語の末節の問題ではありません。中共に対する政策内容の考え方の問題であります。その内容的意味のいかんによって、中共との関係の取り扱い方や、中共との関係そのもののあり方が違ってくることになるから、お尋ねする次第であります。
  256. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) ことばというものは便利なようで不便もあると私は思います。政経分離、政経不可分、こういったら、西と東と、もう妥協の余地のないほど違った考え方のように考えられますが、その意味を説明してみると、あんまりことばの違いほど矛盾はないのではないかと私は思う。中共のいう政経不可分というものは、中共のフィロソフィーを言っておるわけです。人間の営みすべて政治が支配しないものはないという、こういう中共自身のフィロソフィーからきておる。そうなったら、政治は分けられるのですよね、政治と経済は。日本はそういうフィロソフィーではなくして、現実の問題として、現段階における現実の表現の問題として、この問題を、政経分離と言っておるわけです。  したがって、あるいはいま御指摘になりました承認の問題とか、あるいは台湾の問題とか、国連の問題と、こういうものとからまないで、日本は中共との間に接触を続けていくことはできるのだと。そういうことは、そういうことをやることが可能である、まあ将来これが改善されることの希望のもとに、これがいつまでもいいとは思わぬけれども、現段階ではこれよりほかにないので、将来改善される希望のもとに現在では分けられると、こういう考え方でやっておるので、何か考え方の範疇が、中共と日本との違いがあるだけであって、内容を説明してみると、そんなにも西と東と違うようなものでは私はないと考えております。
  257. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 防衛問題に関し、昭和三十二年五月閣議決定の国防の基本方針なるものによりますと、国防の目的は、直接及び間接の侵略を未然に防止し、万一侵略が行なわれたときは、これを排除し、もって民主主義を基調とするわが国の平和を守ることにありとして、その目的を達するための手段として、一、外交施策の活用、二、民生安定等の国内対策、三、自衛力の整備、四、日米安保体制という四本の柱を立てております。この国防の基本方針が決定されてから約十年を経て、内外の諸情勢に幾多の変化が生じております。ことに中央の核武装の問題、沖繩返還問題等新たな事態が生じておりますが、この昭和三十二年五月閣議決定の国防の基本方針の再検討の必要の有無について、政府はどう考えておられるか、お伺いいたします。
  258. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 沖繩の返還と安全保障の問題、これは再検討という私は必要もないと、これは両立すべきものであると、どちらが、返還を先に取り安全保障はあと、安全保障を先に取り沖繩の返還をあとという問題ではなくして、これを両立さして沖繩の返還を達成しなければならぬと、これが政府考えでございます。
  259. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 これは防衛庁長官から答弁をお聞きしたいですよ。
  260. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 昭和三十二年五月の国防に関する基本方針はたいへんよくできておりまして、今日国際情勢がある程度変化いたしておりまするが、何らこの基本方針は変更する必要がないと考えておる次第でございます。
  261. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 国防の基本方針そのものの再検討の問題はともかくとして、この国防の基本方針の実施にあたって、この基本方針そのものをここでどうこうということをしなくて、その実施にあたって、日本が中共の核武装の脅威並びに沖繩、小笠原の返還というようなものとの関係においては、特にどのような部面を重視する必要があると認めておられるか、ごく簡単に。
  262. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 杉原さんにお答え申し上げます。  沖繩その他の関係も多少変わりつつございまするし、中共の核実験等もございまするが、中共の方面その他あらゆる方面につきましては、日本は非核三原則を堅持しておるわけでございまして、総理がたびたび言明されておるごとく、それに対処いたしまする方針といたしましては、アメリカの核抑止力に依存する、こういうことでございます。その他のことは基本方針といたしまして、昭和三十二年五月の方針を変更する必要がない。いろいろ文章等は変わっておりまするが、内容は昭和三十二年の五月閣議決定にかかる国防に関する基本方針を堅持しておる次第でございます。
  263. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 日米安保体制がわが国の国防の基本方針の大きな柱になっていることは深い理由のあることだと私は思う。わが国が、世界の有力などの国に比べてみても、防衛費の負担の割合がまた格段に少なくて、しかも戦争に巻き込まれるどころか、かえって国の安全が完全に維持されており、そうして経済が著しく伸びておるということは、これは何といっても安保体制に負うところ大なりと申さなければなりません。国連の平和維持の機能が十分になるまでは、日米安保体制を堅持することが、わが国の安全と繁栄のため、これは必要であります。この意味において、日米安保体制を堅持するということが、わが国の基本政策であるというならば、私は十分これは理解し得るところでありますが、佐藤総理とジョンソン大統領との共同コミュニケを見ますると、その中には、「両者は、日本の安全と、極東の平和及び安全の確保のため、日本国と合衆国との間の相互協力及び安全保障条約を堅持することが、両国の基本政策であることを明らかにした」と、こううたってあります。これについてお尋ねしたい点が二つあります。  その一つは、総理と大統領との会談が、極東の平和と安全の確保のための日米両国の基本政策に触れられた以上、単に安保条約のことだけではなくして、それを相伴って、——もちろんそれも必要であるけれども、それと相伴って、極東の善隣友好、国際緊張の緩和というための外交政策についても話し合いが行なわれたことと思うが、その話し合いの模様はどうだったか、お聞かせいただきたい。
  264. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 日米間の今回の会談は、やはりアジアにおける日米協力ということを背景にして、総理とジョンソン大統領で話し合われたわけですから、したがって、この極東の平和と安全というものも当然にこれはもう大きな会議の底流の中に、大きな底流というか基本になっていることは明らかでございます。それについて、日本は御承知のように、軍事的にはこれは極東の安全に寄与するわけにはいかないわけですから、したがって、日本ができる範囲内の、それはいま言ったような軍事以外の極東の平和安全に対してできる限りの日本は努力をしようということでございまして、そういうことがアメリカ、日本との間に、アメリカもまた極東の平和を望み、ベトナム問題がございますけれども、これはできるだけ平和的に解決を促進しようという意図が、これはアメリカとして明らかであります。そういうことで、アジア開発銀行などに対しても、これはやはり地域的な協力機構として、両国がこれに対してできるだけ力を入れていこう、あるいは農業開発基金なども両国が協力していこう、あるいは東南アジアに対する経済協力なども、これはどの国、どの国というわけでもありませんけれども、やはりできるだけ協力しよう、それから軍事以外の面で、相当きめこまかくアジアの安定のための協力というものが話し合われたことは事実でございます。
  265. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 いまの共同コミュニケの文言に関してもう一点。これは読み方ですけれども、私の読み方と本来読むべき読み方は違っておりはせぬか、ちょっと念のためにお伺いするのですが、いまのこの共同コミュニケの文言を、安保条約の期限に関する第十条の規定と照らし合わせてみますと、一体これは、この文言そのものは、条約の期限の切れたつまり昭和四十五年の六月二十三日、その日以後もこの条約は効力を存続するんだということを、両国政府間の首脳、つまり大統領と総理ですからね、その文章つまりそういう条約は、昭和四十五年六月二十三日以降も効力を存続するということが両国政府の首脳部間で公に確定されたと、その効果をそういうふうに読んでいいのですか。普通ならそう読みますがね。しかし、そこのところにちょっと私は疑問を持ったものだからお聞きしますが、どうなんですか。
  266. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 現に日米間には信頼関係が存し、両国とも日米安全保障条約を必要とする、こういう総理、大統領が話し合ったのですから、しかも安保条約は一九七〇年がまいりましても期限が切れるという性質のものではございません。したがって将来にわたって存続を確認し合ったと解釈されてしかるべきと思います。
  267. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 いま一番あとのところで答弁になりましたとはいうものの、これはつまりあの十条の規定と照らし合わせてみますと、あそこでいずれの国も十年の期限がきたら廃棄の通告をすることができるとなっている。だからそれを出して、それができる、できぬの権利関係のことではなしに、実際上廃棄の通告はしないという意思表示になっているかどうかということをはっきりしてもらいたい。
  268. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 政府は存続を必要とするというわけですから、一年前がきても破棄の通告をいたすわけはない、いたしませんということでございます。
  269. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 それはそれとしてわかります。安保条約の運用を誤らないことが安保条約の存在それ自体とほとんど同じくらいの価値を持った重要な、わが国の平和と安全にとって大事なことだと私は思うのです。おおよそ安全保障の連合体制につきものの大きな問題は、その連合体制に予見している共同の脅威なるものが、具体的には何をさすかというその認定の問題と、それからその脅威に対処して当事国が具体的にどういう共同の出方をするか、その反応のしかたについて、当事国の意見が一致しないという場合が往々にしてこれはよくあることであります。このことは、多くの同盟の歴史をひもといてみるまでもなく、NATOにおけるドゴール・フランスとアメリカとの関係一つをとってみても明らかですね。その他の点についても、安保条約の運用に当たっては、わが国の対米外交は、大局の上から見て、深い用意と高度の見識をもって臨まなければならないと信ずるが、一体今後、安保条約の運用に当たって、政府は、特にいかなる点に留意してやっていかれるか、お尋ねいたします。
  270. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 安保条約が日本の安全保障のために最も有効に効力が発生できるように安保条約を運営していかなければならない。有効に効力を発生するためには、安保条約というものを単に軍事面ばかりでとらえないで、もう少し広く、政治、外交、経済、社会信義、こういう総合的な判断のもとにこの運営をしていくという心がけが必要である、かように考えております。
  271. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 私も同感であります。また、いま言われた中にも含まっていることだと思いますが、特に中共の脅威、これをどう評価するか、その中共の脅威の評価及びこれに対処する考え、どういう一体方法でいくかという反応のしかた、並びに、さらにプラス、ベトナム人を含むアジア新興国の諸民族の驚くまでに根強い民族感情というもの、これの受け取り方について、日米両国の政府間のみならず国民の間の国民感情の間にも大きな食い違いが生じないようよほど留意をしてやっていかないと、大局を誤るおそれがあると憂慮するがゆえに、この点について政府の注意を喚起しておきたいと思います。
  272. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) それだから杉原さんへのお答えの中で、私は、単にこの安保条約の狭い軍事面だけでなしに、広く政治、経済、外交という広い角度から、また、人間のいわゆる新興国に起こりつつあるナショナリズムの問題、こういう問題も無視できない。こういう広い見地から総合的に安保条約というものの有効的な日本に対する安全保障上の役割を発揮できるようにしなければいかぬ、こうお答えしたゆえんであります。
  273. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 わが国の国防の基本方針の柱のうちで四つの柱がある。外交施策の活用という面、これは今後ますます私は重視されなければならぬことだと思う。これはいままでやっておられると思うが、しかし、それがためには、国の安全と平和の確保が外交の第一義的の重要性を持つのだという深い自覚のもとに外交が運営されなければならぬのは当然だと思う。そうして核時代の平和外交においては、以前の古い時代の常識では処理しきれないものがたくさんその間にあると私は痛感しております。たとえば核兵器の使用禁止に関する外交措置のフォーミュラのつくり方の問題一つを取り上げて研究してみますときに痛感されるように、核兵器に伴う特異の軍事的、戦略的要素に対する正当な理解をもし欠くならば、平和を希望して、かえって平和を失う結果になりかねません。そのことは、私は抽象的に言うのではなくして、具体的な経緯から見て、一般国民について言えるだけでなくして、直接、外交の局に当たっている人、政府の指導的地位にある人についても言えることだと思う。一体、核時代における平和と安全のための外交措置を策定し、かつ国民の理解を得て支障なく実施していくにあたって、以前と違って、政府は特にどういう点を注意し、反省し、また啓蒙してやっていく必要があると考えておられるか、ごく簡単でいいからお答え願いたい。
  274. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) いまは核時代と、こういわれておる。核時代における外交、これは従来のやっぱり外交とはかなり違ってきておる。しかし、それは端的に言えば、核時代において日本の安全をどのようにして確保するかということ。また、一方においては核軍縮であるとか、あるいは核兵器の破棄であるとか、こういうふうなやはり核戦争の防止というものに対する国際的協力、核戦争防止に関して、こういうことがやはり核時代における外交としてはきわめて重要な問題になっている。しかし、それにしても、杉原さんが御指摘になったように、国民が核というものに対して十分な知識を持たなければならぬということは私もそう思います。核というものに対して細心であれば細心なほど私はいいと思う、これは核に対して。しかし、国民がこの核というものに対して、核兵器、ことにこの場合は平和利用の問題を問題にしておるわけじゃないので、核兵器については十分な理解、あるいは知識、こういうものを持つ必要が私はあると思う。こういう点で国民に対する理解を深めるための努力は政府がするべきだと考えております。
  275. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 言われたことはそれとして、私は率直に言いますが、政府側にもっと勉強してもらいたいと思っております、核に関する外交と政策との関係を。これは相当しなければわからんですよ、何だか。いままでそういう点がおろそかになっておった。それはまた国民もさることながら、政府ももっと勉強してもらいたいという希望を、失礼ですが、こういう希望を申し上げておきます。  それで、わが国の平和と安全を確保するための外交の上から見ますと、特に大事なことは、対米外交とともに、アジア大陸方面に対する外交に違いありません。政府は、日米安保体制の堅持と相並んで、特に大陸方面に対しては、わが国の平和と安全を確保するためにいかなる基本政策をとっていったらいいのか。そして、なおまた続けて質問しますが、基本政策は基本政策、さしあたり、一体この日・米・ソ三国の間に、極東における善隣友好、緊張緩和のための特別の政治的了解を含むたとえば共同宣言のごときものをつくるための外交努力を試みる考えはないか。極東における善隣友好、緊張緩和のための日・米・ソ三国間の特別の政治的了解を含む共同宣言のごときものをつくる外交努力というもの、それはわが国自身の平和と安全のためばかりでなく、ベトナム戦争の平和的解決の探究に私はつながるものが実はあると思う。たとえば外務大臣はおそらくよく見ておられるだろうと思うが、第二十回、第二十一回の国連総会で採択された内政干渉の禁止及び国の独立、主権の保護に関する決議、あの内容、なかなかよく研究してできておりますね。ああいうものなども十分考慮に入れて、そうしていま私の申したようなことの具体策を進めていかれることをひとつ希望しておきます。
  276. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 杉原さんの言われた日・米、これは日本の日米友好関係の維持ということは日本外交の基本であります。これと大陸との善隣友好関係を促進するということは矛盾しまい。ことに日本は、やはり過去には大陸を支配しようとしてことごとく失敗したのが日本の歴史ですから、やはりどうしてもこれからは大陸との間に善隣友好関係を促進するということが日本の外交の基本にならなければならぬ。それについて、いま日・米・ソの三国で何らかの緊密に連絡するような機関というのですか、そういう体制をとれというお話でありましたが、どうでしょうかね。それはそれなりに意味はあると思いますけれども、極東というものの安定を考える場合に、中共を入れなくていいものでしょうかね。やはり極東の安定のためには中共というものを無視することはできない。したがって、日・米・ソ三国が緊密な連絡をとって極東の安定のために尽くすということだけでは、私は極東の安定というものはもたらされないのではないか。中共というものをそこにやはり考えなければならぬ。だから、いまの日本の外交は、それより、日・米・ソとかいうのじゃなくて、ソ連との間には、もう日ソ間ではきわめて緊密な連絡をとってやっておるし、日米間は申すまでもない。一ぺんに日・米・ソということで固まってどうということではありませんが、ここにアメリカに対して、ソ連に対しても直接二国間の外交として力を入れているということを申し上げたいのでございます。
  277. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 私は、何もここで機関をつくれの、三国だけで中共とはクローズするの、そんなことを言っているのではない。しかし、その問題は、いま申した点だけで先へ進みます。  わが国の平和と安全に直接重大な関係を持つ朝鮮半島の平和維持の問題について、これをかねてから政府では基本的な政策考え方を朝鮮半島には持っているに違いないと思いますが、また、プエブロ号事件や武装ゲリラ事件発生以来、当面の朝鮮半島の事態というもの、これは一時は非常に険悪でしたね、国民も非常に重大な関心を持っておった。また、あのプエブロ号事件というものは、あれは秘密にやっているものだから、まだ公に解決したという公表もされない次第だし、そこへもってきて、沖繩のB52以来、いろいろな問題がある。特に朝鮮半島の事態にはだれしも気にしておるということですが、政府は当面、朝鮮半島の事態をどのように見、また、どういう態度、方針をもって対処しておられるか。
  278. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 朝鮮半島の問題は、一時緊張を増したことは御承知のとおりでございます。しかしながら、やはり朝鮮の問題というものは、ベトナム、ドイツ問題とも共通する非常にやはりむずかしい問題だと思います。休戦協定もできたわけでありますから、やはり朝鮮が軍事的に緊張するのではなくして、民生の安定、生活の向上を通じて、やがては平和的に朝鮮の統一が達成できるような環境をつくってもらいたい。軍事的に緊張するようなことは絶対に避けて、そうして民生の安定、生活の向上というものを通じて朝鮮が一緒になれるような環境をつくってもらいたい。日本は韓国との間に国交を結び、韓国の経済的安定のために寄与しておることは御承知のとおりでございます。
  279. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 なお、今後の朝鮮半島の平和維持の問題を考える場合、注目すべき事実は、朝鮮戦争のあと始末が、単に休戦協定の段階に停滞して、平和協定ができていないままになっていることであります。しこうして、朝鮮半島をめぐっての米中相互の不信は、極東の空気を重苦しいものにしている大きな原因の一つに違いありません。平和協定の早急成立は困難だとしても、あの朝鮮戦争の死闘を繰り返さないことは、これは南北朝鮮はもちろん、米中双方にとっても、合理的に考えれば共通の利益に違いありません。朝鮮半島の平和維持に特別の利害関係を持つわが国がいわば媒介となって、朝鮮半島の平和維持問題について米中間の政治的了解をはかっていくということは簡単ではありませんけれども、そういう方向に向かって努力するということは、これはわが国にふさわしい平和外交の課題だと思うわけですが、どうか。日本はもちろん、アメリカの朝鮮半島に対する政策は、何ら侵略的傾向——アグレッシーブ・テンデンシーズに制せられるものではないと信じます。また、中共といえども、朝鮮半島に対して侵略的政策をとるものではないと言わざるを得ないでありましょう。そうすれば、日本、アメリカ、中共が、朝鮮半島に対する各自の政策は何ら侵略的傾向に制せられるものではないということを中外に宣明するような共同の外交措置をとることは不可能ではないはずであります。そのような、つまり相手国に対する各国の政策は何ら侵略的傾向に制せられるものでないということを中外に宣明することによって国際間の誤解を除去し、そして国際緊張緩和に資してきたというようなことは、これは外交史上にもよい実例がございますね。そういう点なども一方に入れておいて政府は努力するというお考えがあるか、具体的なことでどうというようなことは、そこまで私の質問ではやりませんが、考え方ですね。
  280. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 要するに、マクロ的に見れば、米中関係、朝鮮半島の平和と安定のためには米中関係が大事です。ミクロ的には、朝鮮自体の問題として平和と安定の問題は解決しなければならない。マクロ的にはおっしゃるようなことがあるのでしょうが、そのことのためにアメリカ自身も、武力的に北鮮に対してどうこうという意図はアメリカ自身も持っておりませんし、国連によって、休戦協定という線に沿って、やがて平和的な再統一というものを考えておるわけでございますし、また、中共自身が武力的にどうこうという意図が朝鮮半島に対してないといわれるような声明を中共自身がされるということは、それは朝鮮半島の緊張緩和に役立つものであろう、それは歓迎すべきことだと考えます。
  281. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 だんだん時間も少なくなりますし、実はもう少しわれわれも聞きたいと思ったのですが、しかし、これらの問題については、一昨日、塩見委員から質問がありましたので、それと重複しないということでせっかく要求もしておりましたから、ごく簡単に長官にお尋ねします。  昭和三十年代の高度成長を経て、これから四十年代の経済について、これからの数年間の経済の運営について、政府は何を大目標とし、そうしてどういう重点政策をとっていく計画であるか。これはまた質問自体が非常に大き過ぎますけれども、しかし、なるべく一般国民の方々によくわかりやすいように、ごく簡潔でいいから、平たいことばでごく簡単に経済企画庁長官からひとつお答え願いたい。
  282. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 昭和三十年代の反省にかんがみまして、やはりこれだけ成長する経済としては住宅が不足でございます。それから、道路でありますとか下水でありますとか、いわゆる社会開発関係のことがおくれておりますので、これに第一の重点を置くということでございます。  それから、第二には物価、ことに国民の最低生活に必要な物の価格は何とかして安定をさせたいというのが第二であります。  第三に、労働力が不足をしていくということがもうわかっていますし、また、日本の経済も国際経済と競争するようになりましたので、経済の能率をもう少し高めていく。この三つであろうと思います。
  283. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 将来に対する計画をお聞きしましたが、将来に対する計画もさることながら、当面の問題の現実処理、ことに各種災害に対する善後措置について、時期を失しないように関係国民に安心を与えるということは政治の一つの大事なつぼに違いありません。  そこで、私は政府のほうにお尋ねをしたいのですが、各種災害対策については、経験を重ねるにつれ、これは政府もおそらく同じだろうと思うのですけれども、制度、運用等の面にもまだまだ改善を要する点が少なくないということが痛感されます。昨年は非常な干害もあったが、その善後措置について、政府は現行法令のままで十分まかない切れたというふうに見ておられるか。また、現に各地でのノリ養殖の災害や、雪害だとか震災だとか、それらの善後措置を現行法のもとで十分とれるというふうに思っておられるか、あるいは今後のためにこういう関係法令の改正を検討する必要があるというふうに認めておられるのか、あるいは、また、災害基本法についても再検討を要すると私は思うが、政府は大体その辺をどんなふうにお考えになっておるか、その辺をひとつ。
  284. 八木徹雄

    政府委員八木徹雄君) 御指摘のように、災害基本法によりまして、すでに中央防災会議あるいは地方防災会議、あるいはまた災害基本計画等、対策につきましてはそれぞれやっておりますけれども、御指摘のように、いま、災害の形態がだんだんと変わってきております。社会構造の変化あるいは都市化傾向等によって変わっておりますので、応急対策なり災害復旧につきましてはいまの基本法で十分だと思いますが、災害予防につきましては、その形態の相違に伴いまして、基本計画の再改定と、また、関連法律案の整備等、まだまだやらなきゃならないことがあると思いますので、前向きで検討してまいりたいと思います。
  285. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 農林大臣、答弁してくださいますか。
  286. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 災害につきまして要点をお答え申し上げます。  農林漁業の災害は、何といっても災害を事前に防除する姿勢、これが一番大事だと思いまして、適地適作なり、農地の保全、あるいは治山、これに重点を置いてまいりたいと思います。もちろん、一たび不幸に災害を受けました場合には、それぞれの関係法律を発動いたしまして、御存じのように、施設につきましては、暫定法、負担法、あるいは天災融資法、自作農の資金融通法等々ございます。公庫資金もございます。  特に、お話しになりましたうちで、干害でございます。昨年は、西日本は、干害で非常に御苦労されまして、お気の毒に存じますが、これにつきましても、法律措置することができる部分と、それからできない部分は応急対策要綱等をつくりましていろいろな助成はいたしておるのでございます。なお、干害が常襲しやすい地帯がございます。これからも将来干害が発生しやすい地帯につきましては、本年度の予算要求で若干の事業費等を用意いたしまして、ため池その他の造成をはかってまいりたいと、こんな考えでございます。
  287. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 ここで私も質問をうんと削減しますが、次の問題に移ります前にほんの一言だけお尋ねしておきたいことがあります。それは、総理とジョンソン大統領との共同コミュニケにうたってある宇宙空間の科学的研究及び平和利用のための衛星の開発、打ち上げについての日米協力というお話は現在一体どうなっておりますか。
  288. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 共同コミュニケの中に、日本が通信衛星を上げる希望があるならばアメリカは協力をするという、そういうようなアメリルの意図がありますから、宇宙開発とか、原子力の平和利用とか、あるいは海洋科学とか、こういう面について日米が協力していこうということがうたってあるわけでありまして、それによって通信衛星の問題も、アメリカがそういう意図を示してきておることは事実でございます。
  289. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 私は、その話が、共同声明の中に、両国政府はそれを検討するとあって、意見が一致したとあるから、それだから、その検討はいま現在話はどうなっておるかということを聞いている。
  290. 鍋島直紹

    国務大臣(鍋島直紹君) お答えいたします。  共同声明にうたわれまして、その後、アメリカのジョンソン大使が総理に面会をされまして、覚え書きをいただきました。これは宇宙開発に関するアメリカの協力でございます。そのものをもちまして関係閣僚協議会を開きまして、現在、そのアメリカの協力をどういう形で受け入れるべきか、それらの点について事務的にかつ具体的に検討中でございます。  私の基本的な立場としては、あくまで日本は自主的な開発を行ない、まあいわば全面協力というふうなことなくして、日本の国益のために国産技術の開発のために、それを基本にして、どうしてもいかぬところにはアメリカの協力を受けたいというような形で宇宙開発あるいは海洋開発等に乗り出したいと考えております。
  291. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 次に、沖繩問題に移ります。  佐藤総理とジョンソン大統領との会談の結果、沖繩については、施政権を日本に返還するとの方針のもとに、かつ、総理と大統領との間になされた討議を考慮に入れつつ、日米両国政府が沖繩の地位について共同かつ継続的な検討を行なうことに合意が成立いたしました。沖繩問題には、わが国の外交と防衛の基本的な重大問題が集中されております。沖繩問題が日米間の最大の問題であることは申すまでもありません。また、沖繩問題のあり方いかんは、アジア大陸方面との外交、防衛の関係に直接響いてくる基本的問題でもあります。さらに、中共の核武装問題が沖繩問題を一そう複雑化しておるという事実に目をつぶるわけにまいりません。そのことは、二面、沖繩問題の処理が簡単なことではないということを意味するとともに、他面、沖繩問題の処理には外交、防衛の広い視野から見た高度の国家利益に基づく判断が必至であるということを示すものであります。  沖繩の地位に関する具体的問題の処理は、すべて今後の日米両国政府間のいわゆる共同かつ継続的な検討の対象になるものであります。この意味において、これからの外交上の交渉案件でありますから、いまの段階においてそれらの問題に立ち入ってこまごまとお尋ねすることは差し控えますが、ただ一つだけごく簡単に触れておきたい。  沖繩の施政権返還はわが国民的要望に違いないけれども、沖繩は返ったが日本の安全は失われたというようなことでは、いわゆる元も子もないということになってしまいます。沖繩の施政権返還は、わが国の安全と両立させることが必要だと思うが、このポイントにつき、政府の基本的考え方はどうか、簡明にお答えをいただきたい。
  292. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 沖繩の返還問題は、きわめて複雑な背景を持った問題である。したがって、基本的な考え方はどうかというわけであります。一つには、二十数年にわたって異民族の支配を受ける、これはやはり清算しなきゃならぬ。日本への復帰をしなきゃならぬ。一方において、沖繩の持っておる安全保障上の役割り、これは評価せざるを得ぬ。こういう二つの問題を踏まえて、日米間の信頼、相互理解の中に早期に沖繩の返還を実現するということでございます。
  293. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 学生事件に関して、一つだけ簡単に。  私は、あの一部学生の佐世保事件が始まった当日、寒い日だったのですが、佐世保から遠くない郷里の町で党支部の会合を持っていましたが、そのとき集まっていた人たちが、すぐ近くで同胞互いに血を流しつつある佐世保の現況を聞いたときのあの深刻な表情を忘れることができません。一部学生の佐世保、羽田、成田等における常軌を逸した事件は、前代未聞のことで、多数の善良な忠実な国民は、驚き、かつ、あきれ、また、憂慮と憤慨の念をもって見ております。これに対していかなる善後処置がとられるかは、国民ひとしく注目しております。その結果いかんによって、政治に対する国民の信不信がおのずから決していくということにもなります。いまさらくどく言う必要はないのでありますが、私は、簡単に次の三点だけお尋ねいたします。  第一、これら一部学生の行動は、終戦後のわが国教育のゆがめられた面が集積的にあらわれたものとして、今後のわが国教育の正常化をはかる上からして切実な反省がなされなければならぬと思うが、この点、政府としてはどのように見て今後の文教政策考えておられるか。  第二、その原因のいかんにかかわらず、また、その思想や政治上の意見のいかんにかかわらず、これら一部学生のとった集団暴力的手段の選択は全く言語道断で、これに対する善後処置を誤るならば、本人たちの将来のためにも、また、公共の安寧、国内の平和のためにも、ゆゆしい禍根を残すことになることは言うまでもないと思うが、その善後処置について政府としてはいかなる方針をとっていかれるか。  第三、さらに、佐世保事件を起こした学生の行動に関連して、一部大学当局のとった態度は、法治国家のもとにおける大学のあり方として不可解千万だと思うが、これはいいかげんでは済まされぬことであるが、これに対して、政府としては、いかなる見解のもとに、どのように対処しておられるか、お尋ねいたします。
  294. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) お答えいたします。  最近の一部の学生諸君の行動はまことに遺憾な点がございまして、いまの民主主義社会体制と申しますか秩序を武装闘争でぶちこわすということを公言をしてやっております。しかし、つかまえてみますと、これが子供であって、まあ少年法の適用者、中には児童福祉法の適用者などがあるわけでございます。(笑声)しかし、幾らこういう少年や児童がやるといたしましても、ああいう凶器を持って人に被害を与える、また、中には通行人に失明者などができました、ああいう投石などをいたします者をほうっておくわけにはまいりませんので、私どもといたしましては、市民の平和を守ると申しますか、やはり従来同様にきびしい取り締まりをやるつもりでおります。
  295. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 杉原君、時間が参りました。
  296. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 文部大臣……。
  297. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 最近継続して起こりました一部学生の行動につきましては、われわれ文教行政関係者といたしまして、面目次第もない、そのような感じで一ぱいでございます。また、大学といたしましても、大学の名誉に関し、また、信用を失墜する行為でございますので、大学としましても深刻な反省を現に行なっておると思います。なかなかよってきたるところはきわめて複雑であり、多岐にわたる問題でございますが、戦後の教育のあり方について関係なしとはいたしませんけれども、それのみの問題でもないと、かように考える次第でございまして、各般の事項につきましてはそれぞれの分野におきまして十分検討を加えてまいらなければなりませんけれども、特に大学当局といたしましては、その一番大切な大学の自治というものが脅かされておる。また、教育上の必要ありとして認めました学生の自治というものが危殆に瀕しておる、こういう状況でございますので、特に学内の融和結束をはかりまして、また、学生と大学当局との間の関係をもっともっと考え直しまして、全学こぞって大学の自治を守り、健全なる学生自治活動が行なわれるようにということで懸命の努力をしていただきたいと思いまして、われわれとしましても、常に連絡を保って、必要な指導助言は惜しまないつもりでおる次第でございます。
  298. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 時間がなくなりました。
  299. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 わかりました。  最後に、いまわれわれの目の前に展開する世界の情勢を見ますと、西の世界ではいわゆる国際通貨危機の嵐、東の世界ではチェコ、ポーランドの自由化の旋風が起こっております。このときにあたって、ロバート・ケネディは、「いかなる人にも反対を唱えるためではなく」「新しい政策を提唱するため」という、いかにもロバート・ケネディらしいユニークな目的を、魅力に富んだ表現で、あざやかに打ち出して、大統領選挙への出馬の意向を正式に表明しました。わが日本も、歴史的激動のさなかにあって、目の前に参議院選挙を控えております。このときにあたって、国政指導の地位にあられる佐藤総理の御所信を結びのことばとして一言で表明していただきたいと存じます。
  300. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたします。  私は、日夜、りっぱな日本の国をつくり上げたいと思って精進しております。ただいまの御意見もよく取り入れて参考にいたしたいと思います。
  301. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 以上をもちまして杉原荒太君の質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたし、明日午前十時開会いたします。    午後五時四十分散会