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1968-03-19 第58回国会 参議院 予算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年三月十九日(火曜日)    午前十時二十三分開会     —————————————    委員の異動  二月六日     辞任         補欠選任      高橋雄之助君     大森 久司君  二月十四日     辞任         補欠選任      吉田忠三郎君     戸田 菊雄君  三月一日     辞任         補欠選任      片山 武夫君     向井 長年君  三月十二日     辞任         補欠選任      北條 雋八君     宮崎 正義君  三月十四日     辞任         補欠選任      向井 長年君     片山 武夫君  三月十六日     辞任         補欠選任      平島 敏夫君     杉原 荒太君  三月十九日     辞任         補欠選任      宮崎 正義君     北條 雋八君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         西郷吉之助君     理 事                 北畠 教真君                 剱木 亨弘君                 近藤英一郎君                 玉置 和郎君                 内藤誉三郎君                 加瀬  完君                 鶴園 哲夫君                 小平 芳平君     委 員                 内田 芳郎君                 大谷 贇雄君                 大森 久司君                 岡本  悟君                 梶原 茂嘉君                 小林  章君                 小山邦太郎君                 斎藤  昇君                 櫻井 志郎君                 塩見 俊二君                 白井  勇君                 杉原 荒太君                 任田 新治君                 船田  譲君                 増原 恵吉君                 八木 一郎君                 山本茂一郎君                 吉武 恵市君                 岡田 宗司君                 木村禧八郎君                 瀬谷 英行君                 田中寿美子君                 千葉千代世君                 戸田 菊雄君                 野上  元君                 羽生 三七君                 前川  旦君                 村田 秀三君                 森中 守義君                 鈴木 一弘君                 北條 雋八君                 矢追 秀彦君                 片山 武夫君                 春日 正一君                 市川 房枝君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  赤間 文三君        外 務 大 臣  三木 武夫君        大 蔵 大 臣  水田三喜男君        文 部 大 臣  灘尾 弘吉君        厚 生 大 臣  園田  直君        農 林 大 臣  西村 直己君        通商産業大臣   椎名悦三郎君        運 輸 大 臣  中曽根康弘君        郵 政 大 臣  小林 武治君        労 働 大 臣  小川 平二君        建 設 大 臣  保利  茂君        自 治 大 臣  赤澤 正道君        国 務 大 臣  木村 武雄君        国 務 大 臣  木村 俊夫君        国 務 大 臣  鍋島 直紹君        国 務 大 臣  増田甲子七君        国 務 大 臣  宮澤 喜一君    政府委員        内閣法制局長官  高辻 正巳君        内閣法制局第一        部長       真田 秀夫君        総理府総務副長        官        八木 徹雄君        総理府人事局長  栗山 廉平君        防衛庁長官官房        長        島田  豊君        防衛庁経理局長  佐々木達夫君        経済企画庁調整        局長       赤澤 璋一君        経済企画庁国民        生活局長     八塚 陽介君        法務省刑事局長  川井 英良君        公安調査庁次長  長谷 多郎君        外務省アジア局        長        小川平四郎君        外務省北米局長  東郷 文彦君        外務省経済局長  鶴見 清彦君        外務省経済協力        局長       上田 常光君        外務省条約局長  佐藤 正二君        大蔵政務次官   二木 謙吾君        大蔵省主計局長  村上孝太郎君        大蔵省関税局長  武藤謙二郎君        大蔵省理財局長  鳩山威一郎君        大蔵省国際金融        局長       柏木 雄介君        文部省大学学術        局長       宮地  茂君        農林政務次官   日高 広為君        通商産業政務次        官        熊谷太三郎君        通商産業省通商        局長       宮沢 鉄蔵君        通商産業省貿易        振興局長     原田  明君        中小企業庁次長  沖田  守君        自治省行政局長  長野 士郎君        自治省財政局長  細郷 道一君        自治省税務局長  松島 五郎君    事務局側        常任委員会専門        員        水谷 国一君    説明員        大蔵大臣官房財        務調査官     細見  卓君     —————————————   本日の会議に付した案件昭和四十三年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十三年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十三年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付) ○公聴会開会承認要求に関する件 ○参考人出席要求に関する件     —————————————
  2. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) ただいまより予算委員会開会いたします。  昭和四十三年度一般会計予算昭和四十三年度特別会計予算昭和四十三年度政府関係機関予算。  以上三案を一括して議題といたします。  まず、委員長及び理事打合会におきまして、三案の取り扱いについて協議を行ないましたので、その要旨について御報告申し上げます。  総括質疑は、本日から開始いたしまして七日間といたしました。その質疑総時間は千五十六分とし、各会派への割り当ては、自由民主党及び日本社会党はそれぞれ四百十六分、公明党百二十八分、民主社会党日本共産党及び第二院クラブはそれぞれ三十二分といたしました。質疑順位は、お手元に配付いたしました順位によってやってまいります。  以上、御報告いたしましたとおり取り運ぶことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     —————————————
  4. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 次に、公聴会開会承認要求に関する件についておはかりいたします。  公聴会は、来たる四月一日開会することとし、公聴会の問題、公述人の数及び選定等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 御異議ないと認め、公聴会開会承認要求書を議長に提案することといたします。     —————————————
  6. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 次に、参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  三案審査のため必要な参考人出席要求につきましては、あらかじめ委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  8. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは、これより総括質疑に入ります。羽生三七君。
  9. 羽生三七

    羽生三七君 私は、日本社会党を代表してこれから質問に入りますが、衆議院予算審議の段階で重要な問題となった非核三原則に基づく国会決議の問題、あるいは米審の問題あるいは防衛庁に関する資料提出問題等、幾多重要な案件が未解決のまま本院に送付されたことは、はなはだ遺憾であります。しかし、それを理由として審議をおろそかにするわけにはまいりませんから質問に入ります。  そこで、まず第一番に、先日の金プール七カ国会議をはじめとする最近の国際経済の動向についてお尋ねをしたいと思います。金プール制の実質的なこの解体は、金の二重価格制を採用したにいたしましても、実質的にはこれは解体同様の事態になっております。この国際通貨体制の重大なる危機に際して、わが国はこれに対処する有効な手段を持たず、また、この事態を打開するための国際的な発言力もなく、ただ事態の推移を見守るだけに終始したのが最近の事情であります。これは、わが国は今日までドルにのみ依存し、金を軽視した結果にほかならないと思います。政府はこれについて、これは結局日本がこれまでとってきた経済成長並びに金は利息を生まないと、こういう理由から今日の事態を招いたという説明をしておるようでありますが、その説明のいかんにかかわらず、これは十分反省を要する問題だと思います。ところが政府は、今回のこの金プール会議の決定及び今日の国際通貨体制の現状を見て、新聞報道で見る限りは、楽観的というのはどうかと思いますが、それほど深刻には考えていないように見受けられます。日本にはたいした影響はないのかどうか。もしあるとするならば、どう対処しようとするのか、まず、この点からひとつ総理の御見解を承りたい。
  10. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この問題は、政府は楽観しているというような御批判ですが、決してさようではございません。これはたいへん重大なる問題でございます。私がちょうど昨年ワシントンを訪問いたしまして、十月でございましたが、もうその当時、政財界、産業界を通じての問題は、ポンド並びにそれの余波を受けてのドル、それが一体どうなるだろう、こういう問題だったと思います。したがいまして、わが国を出発するさきから水田大蔵大臣とも十分相談をし、そうしてこれらについての対策万全を期して実はアメリカに出かけたのであります。御承知のように、ワシントンジョンソン大統領との会議では、たいへん重大な、沖繩返還、小笠原の返還等の問題がございましたが、同時に国際経済の面におけるポンド危機、これをたいへんワシントンでも心配もし、私どもとひざを交えて話し合った一つであります。ただその状態につきまして、あるいはやや問題を小さく見たかもわからない。しかしながら、その当時からすでにこの問題がきざし、そうしてそれに対しての対策を、それぞれの大国がとっていたということは、これはもう間違いはないのであります。  さらに、もっと申し上げれば、その前に行なわれた日米経済閣僚懇談会、さらにIMFのリオデジャネイロにおける総会等々におきまして、やはりポンドドル、いわゆる国際基調通貨あり方ということが実は問題になっておったのであります。したがいまして、私どもは、日本経済あり方について、すでに昨年引き締め方向に踏み切り、そうして今日までいわゆる緊縮の方向予算も編成し、あるいは金利あり方等もきめてまいりました。公債の発行もそういう意味でこれを縮減してきた。これら一環の政策をお考えくださると、政府もこれについて十分注意は払っていたということは御了承できるのじゃないかと思います。  私は率直に申しますが、こういう事柄は、十分注意をいたしましても、なかなか実態どおりの把握はできていない、そういう非難はあろうかと思います。私はそういう意味で、もっともっと重大なる、そういう事態に発展することを実はあまり希望いたさないものですから、そこらにはやはりある程度希望的観測もございまして、やや甘かったのではないか、かようにも思います。これは私率直に御披露する次第であります。なお詳細等について不明な点がございましたら、大蔵大臣からお答えさせます。
  11. 羽生三七

    羽生三七君 大蔵大臣あとでよろしい。  そこで、今回の二重価格制というこの処置は、結局アメリカのメンツを立てる暫定的な意義しかないと、いずれは二重価格制でなしに、金の公定価格引き上げを必至とするという観測も非常に有力であります。金二重価格制というきょうの事態に当面して、国際通貨体制、これはどうなるであろうか。短期及び長期見通しをひとつ大蔵大臣から承わりたい。
  12. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 十六日の国際金融会議においてきまりましたことは、金の二重価格制度ができても、米国が一オンス三十五ドルで売ることを停止しないという強い態度、またそれに応ずるために、法定金準備制度を撤廃するということをやった米国決意態度を了承して、各国はこのIMF体制をくずさない。結局ドル中心として為替平価がきまっており、このIMF中心とする通貨体制というものをくずさない。この平価を守るということを各国がきめたということは、これは大きいことでございまして、したがって、これは一アメリカドルに対する義理立てとか、そういうものじゃなくて、現行の世界国際通貨体制というものを、これは全部が守るんだという決意を示したことでございまして、したがってこれだけの国際協力英米決意があったら、ある程度この不安が解消する方向へ向かうだろうと私どもは考えておりましたが、現にきのうの自由金の相場を見ましても、四十ドルでとまるというようなことは、やはり相当今回の措置に対する大きい効果であろうと考えますので、私は、これによって国際通貨体制がくずれるというようなことは今後ないだろう、これだけは守り通せるだろうというふうに考えております。
  13. 羽生三七

    羽生三七君 まあ四十四ドルが四十ドル程度に一時下落したということはわかりますが、はたしてそれが今後とも持続的に維持されるかどうかは、今後の課題になるだろうと思いますが、これはあとから承ります。  そこで、日本外貨保有高は非常に少ないことは御存じのとおりであります。特に金保有量は少ないわけであります。現在程度外貨保有量で今後の国際経済に、はたして立ち向かえるのかどうか、有効に対処できるのかどうか、これは非常な問題だろうと私は思います。  そこで、今後経済成長国際収支との関連、これは詳しく説明すればおわかりになると思います。経済成長国際収支との関連で、従来の政策重点を転換する必要が起こることはないか、これはどうですか、大蔵大臣、詳しく……。
  14. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いままで日本通貨準備が少なかったということは確かでございますが、これは成長政策とのやはり関連において十分でなかった、水準が低かったということが言えようと思います。外貨を持つのがいいのか、あるいは外貨を犠牲にしても、将来の輸出力の基礎になる生産力という財産を持つほうがいいかという問題がございまして、日本成長政策をとっておったために、外貨を多くする余裕がなかったということが言えようと思いますが、これは三十年代の日本の急速な成長時代政策の結果であるというふうに思われますし、今後は、もうすでに労働力の問題を中心として、三十年代の成長政策というものは現実において日本ではとれません。したがって、日本成長政策というものは非常に今度はしぼられたものになっていくだろうと思います。それに対応して外貨準備というものは徐々にふやしていかなければいかぬと私どもは考えますが、またこれが現に今後は徐々にふやしていく方向がとれるだろうというふうに考えています。三十年代の成長政策というようなものは今後は日本ではとれない、これに伴って外貨もふえていく、またそれが可能であるというふうに考えております。
  15. 羽生三七

    羽生三七君 いままでは高度成長が天井にぶつかったときに、それをチェックするために、いつも外貨収支のところで引き締めをやったわけですね。ところが、私がいま尋ねようとするのは、この高度成長の結果として、それを重点に置いたためにこの今日の事態を招いておる。私は高度成長が全部いかぬとは言いませんよ。内容さえよければ、均衡のとれたものならば必ずしも反対ではないが、しかし、いままでのような政策を続けておる限り、やはり国際収支にも相当なウエートを置かなければ問題の解決にはならぬではないかということを聞いておるわけです。そういう理解でいいですか。
  16. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私どももそう考えます。
  17. 羽生三七

    羽生三七君 そこで、今後国際収支を安定させる場合に、外貨準備をふやすのでしょう、そういう努力をする。その外貨準備をふやすということの中には、金保有をふやすことも含まれているのかどうか、あるいは金よりも外貨蓄積というこれまでの方針を継続するのかどうか、あるいはこれからでも金を買うことがあるのかどうか、これを承りたい。
  18. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 外貨準備がふえるに従って、その割合でやはり金をふやしていくということは、金の保有をふやしていくということは望ましいものだとは考えます。しかし、今度の十六日の会議のあれで見ましても、国際的に金はもう通貨用金としては、今後SDRというようなものの創設とからんで、大体十分だと思うと、よって自由金市場各国通貨当局は金を買わないというようなことをきめましたが、はたしてそういう方向でいくかどうか、ともかくとしまして、金を各国通貨当局はあまりふやさなくてもいい方向へお互いが協力していこうじゃないかということをきめたということは、これからの一つ方向であろうと思いますし、そういう列国の動きとからんで、まず私どもは、何をおいても通貨準備をふやしていくということを宣明いたしますが、その間において、金をふやすかどうかというような問題は、今後の情勢によって考えたらいいのじゃないかというふうに考えています。
  19. 羽生三七

    羽生三七君 この機会に外貨準備内容説明していただけませんか。これはいままで秘密にされてきたわけですが、しかし、これほど重大な時点になって、三億三千万ドル金保有だけはわかっておるけれどもあと二十億足らずの外貨保有内容がどうなっておるか、だれもわからない。差しつかえない範囲でひとつ説明していただきたい。そうなれば、日本国際経済に立ち向かえるどれだけの力を持っておるか、大体よくわかると思うんです。ぜひひとつ示してください。
  20. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 大体金の保有IMFゴールドトランシュと入れて五億一千万ドル、これが金の保有でございます。それから、そのほかは短期証券、それから預金というもので運営しておりますが、これが十四億ドル以上でございます、十五億ドル弱。大体この運用は半々程度になっているということでございます。こまかい数字が入り用でございましたら、発表できる範囲事務から発表します。
  21. 羽生三七

    羽生三七君 説明してくれませんか、もう少し。
  22. 柏木雄介

    政府委員柏木雄介君) 昨年十二月末の二十億ドル外貨準備のうち、金が三億三千万ドルIMFゴールドトランシュ、このうちには普通のゴールドトランシュとスーパー・ゴールドトランシュを含めまして二億一千万ドル。それから証券預金等外貨が十四億六千万ドル、以上でございます。
  23. 羽生三七

    羽生三七君 そこで、アメリカイギリス等の公定歩合の引き上げやこの世界的な金利高で、わが国ユーロダラー取り入れが困難になるだけではなしに、逆に日本から逃げ出す公算も相当あるわけです。その辺の見通し対策はどうか。これは日銀に承る筋かもしれませんが、総裁来ておりませんので、大蔵大臣から承りたい。
  24. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 世界金利高傾向の中でございますので、ユーロダラーが流出するというようなことも考えられまして、この成り行きは私も最も注目しておるところでございますが、いまこの十六日の会議で見ますと、欧州各国金利をできるだけ上げない方向に協力する、金融引き締めを回避するような措置をとろうということを欧州各国が合意したということでございますので、その関係によって、私どもが当初心配しておるよりは少し心配が薄らいできたような感じがいたしますが、しかしこれは非常に流動的な問題でございますので、この関係だけは十分注視して善処したいというふうに考えています。
  25. 羽生三七

    羽生三七君 いや、善処じゃなしに、その心配はあるのかないのか。
  26. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 普通なら高金利傾向でございますから、相当心配があるというんですが、この間の会議で、欧州ができるだけ金利を上げないで、金融引き締めを回避するという方向で協力するということをきめましたから、これによる影響が今後どういうふうになるかということを考えますと、当初の心配よりは少し心配の度が減ってくるんじゃないかというふうに考えます。
  27. 羽生三七

    羽生三七君 まあそういうことでいけばよろしいですが、外資の流れが激しくなった場合、あるいは流入が困難になった場合、政府としては、民間外資取り入れの制限をゆるめるのか、あるいは政府としては——これは本来日銀ですが、政府としては、IMFからの借り入れ予約、あるいはニューヨーク連銀との間のスワップ協定、これはワクをふやしたようですが、これを発動するのかどうか、そういう対策も考えられておるのかどうか。
  28. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私は、まずさきユーロダラー取り入れの規制を若干ゆるめるという方向で進みたいと思っております。IMFスタンドバイは、まだいまのところ考えておりません。
  29. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連。ただいま外貨準備の問題について質疑が行なわれておりますが、今後一体どの程度日本外貨準備を、これを保有するつもりか、この適正外貨準備、これは前に通産省で試算したことがございますね。大体輸入の、あの当時の試算では四割くらい、まあ常識では大体三割といっていますね。四十三年度の輸入は大体百一億ドルですから、三十億ドルぐらいの外貨準備が適正だと思う。ところが、いま二十億ドルでしょう。それをさらに割っているでしょう。そういう状況なんですよ。だから、今後これを適正の水準まで伸ばすのかどうか、まずこの点をひとつはっきり政府はきめなければならぬと思う。そうしてそれに向かって努力する。ところが、今後はむしろどんどん減るような状況でしょう。その点どういうように考えるか、これが第一。  第二番目は、外貨準備内容についてのお話がありましたが、預金等について、これはいろいろ内容ございますから、短期であるのか、さらにまた長期に振りかわれてというようにも聞いております、いわゆるドル防衛協力によりまして。そうですから、さっきの金の準備以外のアメリカに対する預金とか、あるいは証券とか、その内容をはっきり、こまかく言っていただかないと、流動性があるのかどうか、わからぬのです。  第三番目は、前にもアメリカに、ドルは金にかえないということを政府は約束してあるはずでしょう。いつごろから約束されたか、いつごろから。この三点について伺います。
  30. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) どれくらいの外貨保有が適正であるかということについては、別に定説はございません。国内において学者の中でも、極端な学者は、要らぬという学者まであるくらいでして、そうでないのは、少なくとも各国並みの水準は確保しなければならぬと言うのでございますが、さっき申しましたように、やはり高度成長政策に制約されて、日本保有は特に水準が低かったということははっきりしておりますので、いまおっしゃられた程度の、日本の貿易規模から見ましたら、三十億ドルぐらいの外貨を持つことが必要だろうというのが、大体諸方面の私は最近の一応適正な意見ではないかというふうに考えています。で、成長政策の今後のあり方とからんで、やはり経済政策にそのつど波を打たせないように、それくらいの外貨保有水準は確保したいというふうに考えています。  その次は預金の問題でございますが、これは衆議院でもお話しいたしましたが、長期短期、いろいろございます。要するに、これが必要なときにすぐ引き出せて使えるように時期をそろえてございますので、たとえばいまから半年以内には全部預金の半分はみな期限がくるというふうに、期限で長短いろいろのやりくりをしておるという状態になっております。もう一つは何でしたか。
  31. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ドルを金にかえないということを約束したのですね、アメリカに対して。
  32. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) そういう約束は全然ございません。
  33. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは、私は、これはじかに聞いたわけじゃないのですけれども、藤山愛一郎氏の発行している「国民サロン」という雑誌があるのです。この二月号に、「日本は、ご承知のように、この前のドル防衛のときに、大体アメリカに、金は買わないという約束をいたしております。昨年のリオデジャネイロの会議でもそういう話が出ております。」、こういうふうに言っておるのです。ですから、もう昨年からアメリカに対して、ドルは金にかえないという約束をしておるのじゃありませんか。ですから、この間のドル防衛協力の問題でも、いま日本アメリカに預けている預金とか証券等について、これを長期に切りかえる必要があるのか、ないとかといっているんですが、そんなことをしなくても、金以外の、ドル準備は金にかえないという約束をしているんでしょう、ドルは。もしこれを切り下げたらどうなります、切り下げたら。さっき大蔵大臣は非常に楽観的なことを言っていますが、きょうの新聞をごらんなさい、全部。今度の金プールが金の売却停止をしたのは、これはアメリカドルの切り下げにいく一里塚である。この次に来るものは、アメリカの連銀が他国の政府あるいは中央銀行に対しての金の売りどめのそういう措置がこの次に来るのである。あるいは、それをやれば、さっき大蔵大臣が言いましたように、IMF体制の崩壊になるから、その措置はとらないで、一挙にドルの切り下げにいくであろうというのが、もうほとんどの新聞は書いているんですよ。それだのに、現在のこの状態を維持できるだなんていう楽観論は、世界どこをさがしたってありませんよ。これは今後の日本の財政金融をやっていく上に大きな前提条件なんです。その見通しがそんなに甘くてよろしいのですか。いままでも非常に甘い政策をやってきたから、この段階になって日本の国益をものすごく損失せしめる状態に持ってきたんじゃありませんか。それだのに、なおかつ今後もそういう見通しを誤っているような御発言ですが、これはもう世界の常識に反しています。あんまりプロ・アメリカのサイドからのみ見るからそうなんです。私はアンチ・アメリカになれとは言いません。言いませんけれども、少なくとも客観的な立場でものを判断しなければ今日のような誤りをおかすのですから、その点についてはもっと客観的に、冷静に判断をする必要があるんじゃありませんか。この点について伺います。
  34. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 外貨の余裕に伴って金を買おうとすることなら、いつでも金は買えます。で、もしこれが通貨用金が一オンス三十五ドルで買えないという事態が来るというときになりましたら、これを買わなかったということがよほど問題になるかもしれませんが、さっきも申しましたように、世界各国IMF通貨体制を、みんな国際通貨体制を守るという決意をしておる以上、そう簡単にこの問題がくずれるとは思いません。したがって、日本が買おうと思えばこれはいつでも買えることですが、しかし金で運営するほうがいいかどうか。いままでには、対米クレジットの問題で、日本成長政策とからんだ問題がございましたから、あえて無理して、流動性を犠牲にして金を買わなかったということでございまして、これはアメリカに対して買いませんという約束によって買わなかったということではございません。
  35. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 関連はもう一問ぐらいに……。
  36. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣は、IMF体制を維持することは、アメリカが金の買い上げ値段を引き上げないということ、つまりドルの切り下げをやらないことがIMF体制を維持するというように理解しているようですね。これは私はおかしいと思うんです。アメリカが金の売却停止をやれば、これはIMF体制の崩壊になります。しかし、それをやればIMF体制の崩壊になるから、むしろドルの切り下げをやる、しかもIMFに参加している国が同時にやる、こうしたことがIMF体制の維持になるのじゃありませんか。そのことが考えられているんですよ。むしろ、アメリカドルを切り下げないように努力することがIMFを崩壊に導くから、この際思い切って切り下げるべきだと、しかもアメリカだけでなく参加国全体が協力して同時に切り下げる、このこと自体がIMF体制の維持になる、こういうことはみんな専門家の一致した意見ですよ。アメリカのファースト・ナショナル銀行の頭取でさえそう言っているでしょう。アメリカ財界ではもうそういう議論になっているんですよ。そうでしょう。ですから、大蔵大臣は何か誤解していますよ。アメリカドルを切り下げることはIMF体制の維持につながらないというんですが、そうじゃなくて、現在ではもうドルが一九三四年に切り下げてから物価が二倍以上上がっているんですから、もうドルの価値が実質的に半分に下がっているんです。ですから、ドルを切り下げたほうが安定するんじゃないかというのが世界の大方の専門家の意見なんです。この点いかがですか。
  37. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これは、二重価格制ができたということは、いま言った意味世界通貨体制のほうは維持するというための一つ措置というふうに見られますし、簡単にこのドルの切り下げをここでやるというような事態は来ない——これは来させないための国際協力でございますので、この心配は私はないだろうと思います。
  38. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 関連。  いま大蔵大臣の御意見ですと、今回の二重価格制をとることによりましてドル危機が緩和される、そうしてIMF通貨体制は維持できるであろう、こういう楽観的な見通しが述べられましたけれども、しかしドル危機そのものの根本原因というものは取り除かれておらない。それが取り除かれないで、どうして今後ドルの安定がはかられるでしょう。とにかくドル危機の一番の根本的原因は、私が指摘するまでもなくベトナム戦争です。このベトナム戦争を縮小するかやめるか、そういう方向をとらないで、アメリカがどうしてドル価値を維持していくことができるのですか。いままでのドルがこういう危機になったのは、これはベトナム戦争が第一の原因であるということは、これはもう私が指摘するまでもなく、今後それがエスカレートしていけばいくほど、アメリカのたとえば増兵が行なわれるというようなことがあれば、その支出はどんどん増加していく。たとえアメリカがいま増税をやりあるいは財政緊縮をやりましても、この根本原因がある限りは、それは除かれない。その点どうお考えになりますか。
  39. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) アメリカの国力は非常に大きいのでございますから、その国力の範囲内でアメリカがベトナム支出をどうするかということは、私は批評はいたしませんが、いずれにいたしましてもベトナム戦費が膨大になったためにアメリカの財政が大さい赤字を出しているということは事実でございます。この赤字を埋める措置をしなかったらドル不安というものは解消しないというのが、これは世界のいままでの見方でございまして、それをやらなかったためにこういう事態を起こしたとすら私は思っておりますが、ようやく今度の会合におきまして、アメリカがこの大きい赤字を解消するために思い切った増税をやる、そうして経費の削減をやる、アメリカ自身がこの財政の赤字を解決するための思い切った財政金融政策をとるということを前提にして、今度の国際協力がいろいろ相談されておるようでございますから、この点においては、このドル不安の一番根源となる問題が解決される方向へ私は来ておるものだというふうに考えています。
  40. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 岡田君、あまり関連が続くので、もう一問くらいで御本人に戻してください。
  41. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 ただいま、アメリカで財政の緊縮なり増税なりが行なわれることによってドルの安定をこれからやっていくことはできるのじゃないかというような見通しでございますけれども、はたしてベトナム戦争のエスカレート、その費用をちゃんと押えていくことができるのかどうか。たとえば、ベトナム戦争への支出はどんどん増していく、一方において緊縮をする、増税をやる、はたしてその増加分をそれだけでまかなえるか、そこに一つの疑問がある。その見通しはどうか。  さらに第二は、もしアメリカが増税をやり、緊縮をやる、そういうことからくる世界経済への影響、特に日本経済への影響、それがもとになって日本国際収支は一そう悪化するというときに、そしてまたそれに伴って日本外貨準備も減っていくというときに、あなたの言われるように、いま日本が持っております二十億ドル内外の外貨準備をはたして維持できるか。昨年から本年、いままでにかけての国際収支状況から見て、むしろ日本外貨準備は減る傾向にあるじゃないか。それは政府自身も認めておるでしょう。その現在のままでなくて減る傾向にあるものを、どうやってふやしていくか。しかも、そのふやすためにその前提というものはないじゃないですか。その点どうお感じになりますか。
  42. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) ドルがとにかく国際通貨体制の基盤でございますので、ドルが不安になり動揺するということが、たとえば各国の、円にしろ、マルクにしろ、フランにしろ、いいことではございません。そういう意味で、やはり通貨体制を維持するためにドルが安定してくれなくては困るというのが世界の要望でございます。ですから、安定することはどうしても必要だというための協力はしなけりゃなりませんが、今度はそれじゃドルを安定させるのにはどうしたらいいかということになりますと、アメリカに思い切った引き締め政策をとってもらうということになりますので、そこからくる各国の受ける影響はみんなマイナスということになりますので、日本だけのこれは問題ではございませんで、一方ドルを安定させなきゃならぬ、しかし安定させるためには過渡的に国際環境のきびしさをみな甘受しなきゃならぬ、こういう二つの問題がいま同時に起こっているということでございますので、これを緩和する方法として、黒字国が緩和政策をとっていく、世界全体をインフレの方向へ持っていかない責任を黒字国が持とうというような、今後そういう国際協力が行なわれますので、その間に処して日本がどうやっていくかということになりましたら、何としてもやはり日本自身の経済体制の強化をする、そうして日本が他の国よりも強い輸出力を培養して、そうして国際的ないろんな波にもかかわらず日本が貿易で伸びる道を選ぶ、自分自身で。やはりこうなると、国内政策が一番大事なところへ迫られているというふうに私どもは感じますので、今後一段といまの政策を堅持していく必要が出てきているものというふうに考えています。
  43. 羽生三七

    羽生三七君 ただいまの、そういうことから起こる結果については、私これから質問する予定でありますが、そこで、総理は先日衆議院予算委員会で、ドルと円は一体化している、それが実情なので、ドルを安定することがまず必要だと、こう答弁されております。まあある意味ドルと円を運命共同体のようにお考えになっている。しかし、各国の協力にもかかわらずドルが維持できなくなったときにはどうなるのか。だから、これはドルと円が心中することになる。ところが、中には、円のほうが先に参っちまうんじゃないか、心中じゃない、こっちが先に死んじまうんじゃないかという説もあるくらいでありますが、それはとにかくとして、いま大蔵大臣の最後のところにありましたけれども、円独自の防衛策を考えなければいかぬのじゃないか。その意味で、総理ドルと円は一体だからドル防衛がまず先決だと言われましたが、それはいま日本がすぐドル依存から即時脱却なんて、それはできないでしょう。しかし、時間をかけてもそれから脱却して独自の防衛策を考えるべき時期が来ておると思いますが、これは総理からひとつお伺いしたい。
  44. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま大蔵大臣がお答えいたしましたように、自国の通貨、これを強化しなくて、他国の通貨の強化に狂奔すると、そんなばかなことはだれも考えておりません。これはもう社会党の方も、私どもも、自国の通貨が強く、そうしてそれが安定しておる、こういうことを願うから、いろいろなお尋ねもあり、今日起きているのだと、私はかように理解しております。したがいまして、ただいま、国際決済通貨としての、国際基調としてのポンドあるいはドル、これはたいへんいまむずかしい状態になっておる、貿易振興上から見ましてそういうものが役立っておるというのが現状でございます。そういう意味においてのドルと円の一体化といいますか、協力関係、これは無視はできない。しかし、その基本におきましては、ただいま言われるように、自国の通貨、これが強い、安定したものでなきゃならぬ、これはもう申すまでもないところであります。したがいまして、私は、しばしばドルに対する強化もいたしますけれども、円を弱めてまでこれに協力する、そんなことは考えません。たびたび申し上げているのは、そういう点であります。
  45. 羽生三七

    羽生三七君 ただいまの関連質問にもありましたけれども、とにかく今回の二重価格制をとったということは、七カ国金プール会議がこの制度をとったことは、アメリカ自身がみずから国際収支を改善してドルの信用を回復させることを前提としての制限つきの暫定措置です、これは。それですから、それが実際には、若干国内で増税等も行なわれるでしょう。しかし現実には、輸入課徴金とか、あるいはその他のいろいろな外国に犠牲を求めるような政策ドル防衛をやろうとしておる。そうして、自国の最大の問題である、このドル危機の最大の原因であるベトナム戦争、これはいま関連質問があったとおりですが、これは縮小し、あるいは解決するどころか、むしろ今度は増兵をしようというんでしょう、拡大をしようという。ですから、若干の増税、あるいは国内緊縮政策をやりましてもおそらく三、四十億ドルでしょう。このベトナム戦費のウエイトから見れば問題にならぬ。したがって、これは一時しのぎの政策ではあっても、終局的には私は相当重大な場面に再び際会をする、ただ時間の問題ではないか、こう考えられるのですが、もう一回その判断を承りたい。  それですから、結局外国にむしろ犠牲を求めているのだ。やはりそれでもドル防衛に協力をしていくのか。あるいはその場合に、きょうの新聞を見るというと、ケネディラウンドの繰り上げ実施を条件に輸入課徴金を取りやめてもらうとか、いろいろな、あるいは公定歩合も引き上げるのではないかという説が出ておりますが、もう少し具体的に考え方をお示しいただきたい。必ずそうなりますよ。
  46. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) さっき私はベトナムにどう金を使うかというようなアメリカの国内政策については別に批評しないと申しましたが、もし増額するというような場合には、それによってアメリカの赤字を消す措置をもっと強くとればいいということでございますし、これをやらないでいたずらにベトナムの戦費を増すなんということになりましたら、もうドル不安というものは解消しない。で、アメリカ国際収支上の赤字というものは三十何億ドル、四十億ドルと言われていますが、その中に占めるベトナムヘの支出というものはわりあいに少ないと思います。アメリカの赤字についてはそのほかの要因が大きい比重を持っておりますが、しかしそのためのいろいろ国際収支対策をしようとしても、いずれにしろ国内の財政赤字というものがはっきり始末されない限りは、この米ドルヘの不安というものは解消しない、これがやはり根本だと思いますので、この点をアメリカがしっかりしないということでしたら、これはやはり米ドル不安というものは解消しない。今度はこれをやるということが大体前提でございますので、今度はそういう処置は私はとられるというふうに思います。大体これはとられることは間違いないというふうに考えております。
  47. 羽生三七

    羽生三七君 それは何らかの措置がとられることは間違いないけれども、しかし私たちがいま指摘したような形でとられる可能性はほとんどないんじゃないか——これはもう少し様子を見なければわからぬと思いますが、まずいま指摘したことは間違いないと思います。  そこでもう一つは、二重価格制は結局私一時的な鎮静剤にすぎないと思うので、これは短期的に見ると、ドルブロックと金ブロックとに分裂して、国際通貨体制の維持が非常に困難になるのではないか、混乱するのではないかと、こう思われますが、この点はどうお考えになりますか。必ずそういうことになります。
  48. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) たとえば、国をあげるのはどうかと思いますが、欧州の一国においては、そういうブロックの対立というのが、分裂というか、やはりそれをいまおそれておるという傾向も出てきました。そういう意味において、そうならぬような協力をまたするという方向にそれらの国が動いているという事態も出てまいりましたので、これは今後のやはり国際協力一つの問題でございますが、今後の動きについてはいまのところまだはっきり申し上げられませんが、これはその中心になっていると見られる国の政策、考え方というものも今後相当変わってくるような模様でございます。
  49. 羽生三七

    羽生三七君 蔵相は、衆議院説明でも、またいまの御発言の中でも、結局この危機を打開する道は、国際通貨体制、このIMFを守ることだ、こう言われましたが、実はIMF体制そのものがその機能を十分発揮していなかったところに今日の問題点がある。問題はある意味では逆なんです。そこで、金プール会議の参加の資格のない日本ではありましたが、IMF日本も参加国であるから、当然いろいろ発言権が出てくるわけでありますが、この二十九日にストックホルムで十カ国蔵相会議が開かれる。これは日本も参加する。何か大蔵大臣は国会の都合で行かれないので、日銀総裁というふうに承っておりますが、その場合に、日本はどういう形での国際協力をしようとしているのか。七カ国会議では、その共同声明で、SDR——特別引き出し権制度の設定を予定しているというし、また英国に対して供与する信用の総額をIMF借り入れ予約を含めて総額四十億ドルとする方針になっている。これは共同声明の中に出ております。したがって、蔵相が、あるいは日銀総裁が二十九日のストックホルム十カ国会議に出られたときに、どういう国際協力をするのか。つまり、蔵相がIMF体制を守ることがこの国際通貨体制危機を、混乱を静めることだと言われるなら、どういう形で守るのかという具体的なことがなければ、どっかの国がやってくれるのだろうでは困ります。今度は金プール会議と違って日本が参加国なんですから、発言権があるのですから、一つの構想、お考えというものを、IMF体制を守るとするならばどうしたら守れるだろうかということをお聞かせ願いたい。
  50. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 基軸通貨国にのみ今後責任を負わせるという行き方は、決して国際通貨体制を強化する道ではないということで、いわゆる国際流動性の問題としてこの四年間世界各国が集まって研究した結果、いわゆる特別引き出し権というものを創設するということに意見がきまりました。これによってIMF体制が今後機能を相当助長されるということははっきりしておりますので、したがって早くこれを発動させたいというのが各国の希望であると思います。今月末に開かれる十カ国会議は、この問題を中心とした会議でございまして、いま一部意見がきまらないところがございますので、代理会議によってとうとうきまらなかった問題を、今後蔵相会議において一挙にこれをきめて、早く発足させたい、この相談が月末のことでございますので、日本もこれに参加してこの相談をまとめるというようなことによる協力をしたいと思っております。
  51. 羽生三七

    羽生三七君 まとめるほうへ協力するつもりですね。
  52. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) そうです。
  53. 羽生三七

    羽生三七君 その次ですね、金の二重価格制は必然的に必ずこのアメリカドル防衛政策の強化を招くことは、先ほど申し上げたとおりです。ところが、さきに日米ホノルル会議では、中期債、この買い入れは一時見送りになっております。今後再びこの問題が持ち出されることは、これは輸入課徴金との問題もありますけれども、これは一連のドル防衛策の一環として、再びこの中期債の問題が持ち出されるのじゃないかという懸念は十分にあります。どう対処されますか。
  54. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) ホノルル会議では、結局黒字国の協力というものが一番この際必要であるというようないろいろの認識の問題を討議し合ったのでございますが、大体日本の事情も承知しておりますし、日本の協力の範囲ということもこれは大体わかっているところと思いますので、今度の問題を中心にして、さらにそういう問題を向こうから申し出られるというような可能性は、私はないと思います。
  55. 羽生三七

    羽生三七君 いや、あったときに断わりますか。可能性の問題じゃないです。あったときはお断わりになりますか、要求があったときに。
  56. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 両国のお互いの経済事情を討議し合い、理解を深めてハワイ会談を終わっているのでございますから、そう日本にむずかしい、可能でない協力を求めるということは、私はあり得ないと思っております。
  57. 羽生三七

    羽生三七君 その場合には、十分そのホノルル会議のときの方針を堅持してもらいたいと思います。  それから、アメリカイギリス等引き締めを強化することで日本の輸出が停とんすることは、先ほど関連質問にあったとおりです。そこで、来年度の国際収支ですね、当初見通しより悪化して、これを修正する必要が起こるのじゃないかと思う。宮澤企画庁長官、いかがでありますか。このここにある政府見通しどおりにいくとお考えになりますか。
  58. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) アメリカ、フランス、ドイツ等々の国の経済成長というのは、こういう事態にもかかわらず、私はやはり相当高いと思っております。したがって、ただ一ついやな要素といえば、この基準通貨がぐらぐらいたしますので、貿易の契約が非常にやりにくいと、これが私は悪材料だと思っておりますけれども、これもしかし、そういつまでもこんなことが続くはずもございませんので、私としては、国際収支見通しというものはいま変える必要はない、こういう考えでございます。
  59. 羽生三七

    羽生三七君 実はですね、自民党のある種の会合で、柏木国際金融局長が、本年四−七月ごろ外貨危機が到来するのではないかと述べたことが、新聞に伝えられておりますが、こんな甘い判断でよろしいのですか。金融局長がそういうことをはっきり言っているのですよ、自民党の会合で。
  60. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 総理大臣が先ほどから、政府は現在の事態を決して甘く見ておるわけではないということを言われました。それが私どものこの問題に対処する基本的な態度でございますけれども、それを前提にして考えますと、いまあらしがこう吹いておりますから、あまり強気なことを申すのは、ちょっと共感を誘わないかもしれませんけれども、しかしいつまでもこんなあらしが吹いているはずはないので、私はこれが結局どういうつめあとを残すかということだけが問題であって、どう考えてみましても、私は人類の英知というものが黄色い金属などに負けるはずはないというふうに考えるものでありますから、たいへん強気のことを申すようですが、しかしこれは私の信念なんで、事態を甘く見ているわけではございません。したがって、やはり世界全体が成長するということは、私は一九六八年においても見通しどおりであるという考えであります。何か外貨危機が来る来ないということでありますが、私は、そんなものは来ない、来そうならいくらでも処置する方法がある、こう思っております。
  61. 羽生三七

    羽生三七君 人類の英知に期待をかけておるようですが、金や通貨というような問題は、英知以外の動物的な衝動で動く場合もあるのですから、その判断は甘いと思いますが、それはとにかくとして、これがこの問題の最後になりますけれども、現実の情勢から見て、引き締め政策あるいは公定歩合の引き上げ等については、新聞報道のとおり、当面特に特段の手は打たない、情勢の推移を見守るということなのですか、どういうことなのか、その辺の判断が一つと、それからもう一つは、結局、貿易を拡大しなければ、輸出を振興しなければこれは問題にならぬが、対中国貿易を考えられて、これは総理大臣、その輸銀使用なんかもケース・バイ・ケースなんて言わぬように、もう吉田書簡を失効さしたらどうですか。私は今までにそういう質問をしたことはなかったのです、実を言うと。というのは、政府がせっかくああ言っておるのですから、善処しているだろう、余分な質問はしないほうがいいといってむしろ避けておった。しかし、今日のこの貿易の実情を見るならば、あるいは外貨事情等を見るならば、やはり中国貿易の拡大も一つの重要な要素になるのではないか。それから、吉田書簡というのをそっとしておいて、輸銀使用のケース・バイ・ケースと言われますけれども、むしろこれを無効とするところに当面の意義があるのではないか、それを私は考えるのですが、いかがでありますか。
  62. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど来、いま起きておるゴールドラッシュについてもいろいろとお話しがございました。近く開かれる十カ国蔵相会議、これもワシントン会議できめたいわゆる金プール諸国の考え方、これをさらに拡大強化しようというのにほかならないと私も思います。したがいまして、ただいままだ具体的な措置がとられたわけではございません。ただいまのような程度の話が外へ出ただけで金の価格もやや落ちつくのじゃないか。その金額も四十数ドルのものが四十ドル程度になったといってそれでもうこの話が終わったとは、私はかようには思いません。思いませんが、少なくともこの問題をめぐるいろんな波紋、それはもっとその経過を見る必要があるのじゃないかと私は思うのであります。ただいま一応想定して私どもがとってきたこの予算の縮減方策なりあるいは金融なり等の一連の措置をこの際にさらにまたどうこうするという考えはいまございません。おそらくこういう事柄は、しばらく推移を見てやらなければならぬ。もちろん、こういう金融の問題でありますし、生きた問題でありますから、時期を失しないで処置をとることがこれは大事なことであります。したがいまして、政府はただ、いままでの処置がこれで万全だと、かように申すわけではありませんから、さらに十分注意していくつもりでございます。そこで、ただいまお話しがありますように、一つは国内の経済情勢のあり方、または対外的には貿易を拡大すること、ことに輸入よりも輸出振興に重点を置いての措置をとるべきだと思います。したがいまして、国内の引き締め方策、これが徹底すれば、輸出に必ず向かわざるを得ないし、また、中小企業なども設備近代化などでこの輸出貿易に協力するような処置をとりたいものだと思います。しかし、これは日本だけの問題ではありませんし、各国とも、こういう事態に当面いたしますと、輸出振興に目をつけるだろう。したがいまして、輸出競争はますますきびしさを増すものである、かように考えます。したがって、国内の経済が強固でない限り、私どもが対外的に輸出貿易を十分思うようにこれを伸長さすことはできないことである、かように思いますから、今日大事なことは、ただいまの政策のもとにおける国内経済の体質を強固にして、そうしてその力で対外的に輸出貿易、輸出競争にひけをとらないようにする、かように努力するつもりであります。また、輸出貿易を拡大する場合におきまして、私どもは、いままでもそうですが、国によって差別をするということをできるだけ、極力避けてまいりたい。私は、いまお尋ねになりました対中共貿易にいたしましても、これはいわゆる政経分離のもとではあるが、貿易は拡大したいと、また、人的交流もそういう意味ではしたいんだということを申しております。しかし、なかなかこの政経分離のもとにおける貿易の拡大にはいろいろ困難があると見えまして、つい最近古井君、あるいは田川君等が参りまして、いろいろLT貿易の継続、あるいは長期的な契約なぞにも話し合いをいたしましたけれども、まあ、一応一年限りの中共貿易の妥結ができるような道まで今日まで入ってきております。私は、貿易を望むというそういう姿から申せば、もっと長期的な貿易契約があってもしかるべきだと、かように思いますけれども、両国間の関係においてそこまで今回の交渉を進めることはできなかった、これは私は遺憾に思います。しかし、全然交渉がないよりも、一年でもできたということは、これは両国間のために将来に期待を持つという意味で、私は好もしいことではないかと思います。せっかくそういう芽ができたのでありますから、その芽を育てたい、かように思います。  そこでさらに、ただいまお話しになりました吉田書簡の問題でございます。まあ、吉田書簡というものは、いわゆる吉田書簡でございまして政府間のものではございません。したがいまして、これを撤回するとか、あるいはこれを無効にするとか、こういうような筋のものでないことは、これはもう羽生君も御承知だと思います。問題は、この吉田書簡がねらっておるところのもの、いわゆる輸銀の資金が一体どういうように使われるか、これが政経分離のもとにおいては使われない、そういうようなことが依然として続くのかどうなのかという問題だと思います。これは政府の統一見解といたしましては、政府は、それぞれのケース・バイ・ケース、具体的なものについてそのつどきめていこう、そのつど考えたらいいじゃないか、こういうように考えておる次第であります。ただいまもお話がありましたように、私は、最近の貿易の傾向から見まして、あらゆる国との貿易を拡大していかなきゃならない、かように思います。また、お尋ねではございませんでしたが、それだったら、一体貿易の決済方法はどうなるのか、これはまあいわゆる東側のルーブル、こういうものは一体どういうような態度であるのか、これを考えてみても、どうもこれに十分国際決済基調通貨としてのものがあるとも実は考えられませんし、またさらに、いまの他の使いなれたポンドが弱い、あるいはドルがどうしたとかいいましても、使いなれたポンドドル、こういうようなものがやっぱり国際基調になっている通貨だと、こういう点についてはゆるぎがないようでございますから、そういうことを考えると、やっぱり先ほど来質疑でやりとりいたしましたように、この国際基調通貨をやっぱり強固にするとせっかく金プール諸国の申し合わせができたのですから、この話をさらに具体化する、そうしてこの際は何といっても一オンス三十五ドル、これを守っていく、二重価格にする、これはすでに御承知のことだと思いますが、一九三四年に一オンス三十五ドルができた。もうそれから三十四年たっています。おそらく一定の価格でこんな長く続くということはないんだと思います。だから、そこでいろんなスペキュレーションが行なわれ、金についてもいろいろな話があるだろうと思います。また、わが国の実情を考えてみましても、わが国なぞは、もう明らかに金というものについてはこれは二重価格をとっておる。そうして二重価格のもとに生活をしておる。したがって、日本における金はもうすでに六百六十円だ、六百八十円だと、こういうようなことがいわれております。この点はよく御承知のことだと思います。しかし、私どもが金に兌換しない円を使っていても何らの不安を感じていないのであります。これは申すまでもなく、アメリカドルとそういう点がプールされたということでありますから、私は、今日ドルが一オンス三十五ドル、これを堅持すると、かように申しておる限り、また、私どももその政策に協力するということであるならば、この基調は変わらないでいくだろうと思います。私は、したがって、もうすでに日本自身がただいまのような点では先べんをつけておる。だから、日本国民とすれば、この実情について十分の理解を持っているのじゃないだろうか。少し甘いかもしりませんが、私はそういうふうに考えております。これらのことを考えて、今後の処置にも万全を期していく。何と申しましても、しかし、金にリンクされている、つまり金為替政策を私どもは採用しているのでありますから、そういう意味で、やっぱり金というものも無視はできない。いま二重価格の方向へ踏み切った、かようなことでございますから、その政策あり方ワシントン会議の結果それがどういうような波紋を描くか、さらに私どもは考えなければならない。それは先ほど来いろいろ指摘になりましたユーロダラーの取得の難易等にも関連いたしまして、わが国の金融・産業界にも重大なる影響があるのだ、かように思って、この結果を十分私は見守りたい、かように思います。
  63. 羽生三七

    羽生三七君 実は吉田書簡が、正式の国家間の条約でも、あるいは交換公文とか、そういうものでもないんですから、個人の書簡ですから、問題はないと言えば言えるんですが、しかし、これに明確な終止符を打つことに意味がある。これはこう言えば、それだけでどういうところに重点があるかおわかりになると思いますが、この問題はこの程度にします。  そこで、これから外交、防衛問題に入りますけれども、実は四十三年度予算に直接関連する財政、金融、経済、あるいは物価、農業、中小企業、社会保障、労働等の諸問題がありますが、これはこのあと木村委員をはじめ同僚議員がすべてこの問題に触れられますので、私は外交、防衛問題についてこれからお尋ねをいたします。
  64. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 ちょっとその前に関連
  65. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは簡単に。
  66. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 羽生委員が外交、防衛問題に入ります前に、先ほどの宮澤経済企画庁長官の御答弁に対して若干関連質問を行ないたいと思います。  先ほどの宮澤経済企画庁長官の御答弁はきわめて楽観的でございますけれども、信念に基づくものか、希望的観測かしれませんけれども、私どもとしては納得できないのでございます。まず第一に、あなたは、日米間の貿易の問題についてはお触れにならなかった。先ほど大蔵大臣が言われましたように、もしアメリカ政府が財政の緊縮をやり、あるいはまたドル防衛のために、たとえば輸入課徴金のようなものを取る等々をいたしますならば、日本の輸出の三分の一を占めておるアメリカヘの輸出というものがかなり大きな影響を受けるであろう。すでに日本の各種業界におきましてもそれを予想しておるようでございますが、この点についてはお触れにならなかった。その見通しはどうなのか。アメリカの緊縮政策、あるいは増税政策、そしてまた輸入課徴金等に見られるような政策日本の輸出にどういう影響を及ぼすかということをまずお伺いしたい。  それから第二点は、今回の金の二重価格制がいろいろな原料物資の国際価格に及ぼす影響はどうなのか。おそらく日本輸入する原料等につきまして、この結果、低落をして、日本が原料を輸入するのに有利になるとは考えられないのであります。いろいろの高低はありましょうけれども、むしろそういうものの価格は今後上がっていくのではないか。そうすると、それはやはり日本の貿易収支の上に非常な重荷になってくる、赤字を増すことになるであろう。そういたしますと、それが日本の国内における生産費にもはね返ってまいりましょう。輸出価格もそれにつれて上がらざるを得なくなるのではないか。そういうことを考えてまいりますというと、あなたの言う楽観論というものは、これは根拠がなくなるのではないかと思うのでありますが、この点はどうお考えになっておりましょうか。  また、今回の措置によりまして、おそらく、いわゆる先進国の低開発国もしくは発展途上の国に対するいろいろな経済援助というものも縮小されてくる。これが日本の輸出に及ぼす影響等も考えますならば、そうして、日本としても今後長期低利で金を貸して輸出するということも困難になってくるとするならば、それから来る輸出の縮減も考えられる。そういうふうな状況にあって、どうしてあなたの言う楽観論というものが根拠を持つのか、そこらをお聞かせ願いたい。
  67. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 私は、いたずらに事態を楽観しているわけでは、先ほども申しましたように、ありませんで、それには二つの面がございますから、いかにもこれは一方的に何かたいへんなことになるというような考え方には、私はくみしないということを申し上げているわけであります。  三つお尋ねになりましたから、申し上げます。  まず、アメリカが増税をやる結果、アメリカの経済がデフレートして、日本からの対米輸出が落ちるのではないかということについては、私はそう思いません。アメリカはここで、御承知のように、増税をやりませんと、相当のインフレーションになって、その結果、その反動が来るのではないかということが、ほとんど一般に認められているわけであります。したがって、そのためにはさらに高金利にしなければならないという問題すらあるわけでございます。したがって、アメリカが増税をやるといたしますと、これは一方で戦費を調達する役に立つでありましょうが、他方で、アメリカ国内の経済の繁栄が行き過ぎないように、つまり、逆作用がないようにという役割りを果たすものと思われます。したがって私は、アメリカの増税がかりに夏前に実施されましても、アメリカの経済は後半期に入ってなお好況であるという見方をいたしております。したがって、その点はわが国からの輸出に悪い影響はないというふうに考えます。  それから課徴金でございます。この点につきましては、本院におけるお尋ねあるいは私の申し上げますことは、当然ガラス張りで、すぐに外国に伝わると考えなければなりませんから、非常に正確なお答えを申し上げにくうございます。いずれにしても、私どもの立場は、これは世界貿易の保護主義的傾向に拍車をかけるおそれが十分ございますから、こういうことはすべきでない。これを防ぐために、かりに必要であれば、世界各国と共同してケネディ・ラウンドの、先ほど羽生委員の言われましたように、実施の促進をはかってもいいというぐらいに考えております。この問題につきましては、日本の輸出にどのくらい影響があるかということは、先ほど申しましたような理由でただいま申し上げませんが、この問題がしかしふらふらしているということは、貿易の契約をまとめます上に非常に悪材料であることは確かであります。  次に、金の二重価格の問題を御提起になりました。そうして、それが一次産品の国際価格を上げるか、上げないかということについてお尋ねがあったわけでございますが、まあ、いま二重価格ということを申されますから、私もさからわずに二重価格ということを使いますけれども、実はパリとか、チューリッヒとかいう私的市場で三トンや五トンの金が何十ドルになろうと、私は実はたいした問題じゃないと思っているのでございます。大体いま利食いをする人は売りますでありましょうが、その次に今度売ってくるのはだれなんだ、買ってくるのはだれなんだということを考えますならば——まあ、南アがどうするかということは私は一つ問題だと思いますが、これは今度の金プール会議の声明を見てもわかりません。が、これだってしかし、年にそうたくさんの産金があるわけじゃない。せいぜい十億ドルかそこらだろうと思います。したがって、何百億ドルというものを各国の自由諸国の中央銀行が持っている。それに対して三トンや五トンの金がどう取引されようと、私はたいしたことではないという考えを持っておりますから、実はあまり二重価格ということは気にしておりません。  それから、しかし、二重価格が一次産品にどういう影響を与えるかということは、いまから想像がむずかしゅうございますが、まず、しかし、この結果、デフレになるのか、インフレになるのかという判断すら、実は分かれておるわけだと思います。したがって、自由市場ができた、自由価格ができたからといって、一次産品が値上がりするというふうに考えなければならない理由は、私はそうだときめなければならない理由はないと思います。むしろ、いまUNCTADで議論になっておりますように、一次産品の値段はずっと下げぎみなんでございますから、それが上がるだろうと考えることは、下がるだろうと考えるのと同じように、私はいずれとも言えないと思います。  それから、最後に言われました問題は、つまり、わが国外貨保有状況が悪くなるであろうから、したがって、発展途上国にクレジットで与えておる輸出が、少し勢いがそがれるのではないか、いわゆる、わが国からの資本流出がおのずから制約を受けるのではないだろうかということだと思います。私はそれはあり得ることだと思いますけれども、しかし、結局、ここのところは、さっき大蔵大臣の言われましたように、ユーロダラーとかなんとか、そういうものが今後わが国にどういうふうに流入してくるかということに関係があると思います。私のただいま考えておるところでは、これも強気のようで、はなはだ共感をそそらないかもしれませんが、ともかく、これだけの強い経済、それはやはり国民の勤勉と英知にささえられておるわけでありますから、その経済が信用を失うということは考えられないのであって、政策運営さえ間違わなければ、私は相当の資本流入はやはり長短期とも続くと、こう考えておりますので、まあ多少確かに発展途上国に与えるクレジットは制約を受ける。これはもうそういうことは確かにあると思いますけれども、しかし、それなりの資本流入もある、こういう考え方をしております。
  68. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 関連
  69. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 関連はなるべく簡単に願います。
  70. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 最後の点でもう一点お伺いしたいと思うのですが、このユーロダラー日本に、日本の経済が強固であり信用があるならば流入してくるだろうという想定のもとに立っておられるのですけれども、しかし、現在、アメリカですでに金利が上がる、あるいはヨーロッパでもすぐそれにならう、こういうことになってまいりますと、日本でもさらにそれを上回る金利を上げなければユーロダラーは来ないのではないか、一体、日本はそういう場合にやはり金利を上げるようになるか、ユーロダラーを誘致するために、どういう手段をとるのか、その点はどうお考えになっておりますか。
  71. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) そこが問題でありますけれども、御承知のように、金プール各国蔵相の共同声明を見ますと、まあアメリカ、イギリスには、その経済運営についての犠牲を促しておるわけでありますけれども、ヨーロッパの各国金利引き上げなどのことをしない、むしろ経済成長をやっていくということを合意したと書いてございます。したがって、あれから判断をいたしますと、かりに英米にどういうことが起こっても——私は起こらないのではないかと思いますが、金利の面で。起こるかもしれません、これはわかりません。ヨーロッパの国がいわゆる高金利戦争に入るということはしまいということを言っておるのでございます。だから結局、これはそういう声明をしたことが、文字どおり協調体制がとられていけばそれでいいのであって、また、現実に見ましても、いま西独でも、フランスでも、ここで金利を上げていく情勢にあるかといえば、御承知のように、そうではなくて、むしろ金利を下げたいという方向にございますから、私はおっしゃったようなことはおそらく起こらないで済むのではないか、どちらかといえば、そういう感じがしております。しかし、これは一がいに断ずることはいたしませんが、協調体制はそういう方向にあると思います。
  72. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連羽生委員がこれから外交、防衛の質問に移る前に、先ほど総理羽生委員質問に対しまして、日中貿易に関連いたしまして、輸出入銀行の資金の今後の活用についてはケース・バイ・ケースでお考えになるということで、また、今後の日本の貿易、国際収支等を考えますと、輸出振興に努力しなければならぬという話がございましたが、そこで、ここで新しく日中貿易に非常に障害になる問題が起こってきていることは、総理も御承知のとおりだと思うのです。ケネディラウンドに関連しまして、中国の米と銑鉄については関税引き下げの恩恵を与える、しかし、その他については差別関税にはなるわけですが、引き下げを適用しない。そうなりますと、中国からの輸入はどうしても減りますから、今度は日本の輸出が減ってくる。この問題は、また具体的には、他の大蔵委員会あるいは商工委員会等で御質問したいと思いますし、同僚議員も質問すると思うのですが、この際、この点について総理に十分配慮願いたいと思うのです。この点については、総理のほうでもいろいろ御検討と思うのでありますけれども、ケネディラウンドの適用を早めるという話も伺っているものですから、この問題も早急にやはり処理しなければなりませんので、いわゆるケネディラウンドの関税問題ですが、関税定率法第五条の便益関税の適用によって、中国もケネディラウンドの関税の引き下げの適用を受けられるように、総理の特段の御配慮をひとつお願いしたいと思うのですが、いかがですか。
  73. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまのお話は、協定関税と国定関税の問題かと思います。御承知のように、中共との間には、いわゆる政経分離という形でございますから、国定関税が適用される。したがって、ケネディラウンドで安くなったものが適用されなくなるから、輸入にたいへん不便だろう、こういうお話だと思います。わが国の国定関税の実情は、御承知のように、中共貿易に対しては約八〇%、その程度はほとんど協定関税と差がないような扱いを受けておるように私は覚えておるのです。したがいまして、ただいま、ある程度のものに影響があること、これはやむを得ないかと思います。しかし、その点をさらにもっと掘り下げてみる必要があるだろうと思います。ただいま言われますように、ドル防衛からもっとケネディラウンドでも早く実施し、そうして、いわゆる拡大均衡の方向に持っていけ、こういうことになれば、ただいま御指摘になった点も一応よく検討してみる必要があるだろうと思います。そういう意味で、この点は検討さしていただきます。
  74. 戸田菊雄

  75. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 関連は簡単に。
  76. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 簡単に。この間、私も本会議で関税格差拡大の問題について総理にお伺いをしたのでありますが、そのときの総理の答弁では、ケース・バイ・ケースで、善処とは言いませんでしたけれども、検討するという答弁であったのであります。で、いま私の調査によりますと、総理は約八〇%品目が適用になっておるという言い方をしておるのでありますが、私の調査でいきますると、五百九十五品目のうち三百六十品目が適用がある、その他は全部適用外になっておる。それが日本国民の生活と非常に密接不可分の関係にある品目が多いのであります。そういうことで非常に日本国民全体の生活にも多大の影響がある。ですから早期に——ケネディラウンド実施が七月と聞いておりますけれども、それまで具体的な品目等の検討は、あるいは、そういう数字の内容の検討があれば、やはりいま総理がおっしゃられたように、十分拡大の方向でいっていただきたいと思いますが、その辺はどうですか。
  77. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私が事務当局から得た資料、これはいまの日中貿易で現実に取引がある、そういう品物のうち、金額的に、その約八〇%が国定税率とそれから協定税率の間に差がない、こういうように実は聞いたのでございます。したがいまして、ただいまのお話のように、なおいろいろ問題があるようですから、その辺はさらに検討させます。これはただいま事務当局から説明さしてもいいと思います。——きょうはいないようですから、それじゃ、いずれ私のほうで十分検討させます。
  78. 羽生三七

    羽生三七君 さて、これで外交、防衛問題に入りますが、実は、衆議院予算審議の段階で、外交、防衛問題で与野党間にコンセンサス——合意が成り立つことのできるような情勢にほとんどなかったということは、私、はなはだ遺憾といたします。そこで、この問題については、対話を、与野党間の対話を実り多いものにして国民の審判に待つ、こういうことでいきたいと思います。これは総理のほか閣僚の皆さんにも、ぜひお含みをいただきたいと思います。  そこで、まず、結局、この衆議院の論議がことごとく与野党間で食い違った最大の理由は安全保障のあり方だと思うのです。したがって、これは私は安全保障の問題を、まず最初に私の考えを述べて、それから総理の見解を承りたいと思います。  さて、この国を守るには軍事力、防衛力が必要だという概念は、確かに長い歴史的な過程を持っておることは、これは事実であります。もっとも、それゆえにかえって国を滅ぼしたという事例もありますけれども、とにかく、一般的には、そういう通念が今日までの歴史の流れをなしてきたことは、疑いもない事実であります。また、それぞれの国が固有の権利として自衛権を持っていることも、疑う余地はありません。要は、その自衛の手段と方法にあると思います。軍事力の場合は、昔の弓矢、刀、あるいは鉄砲、それから戦車、タンク、飛行機の時代、さらに原爆、水爆、ミサイル、さらにABMという、こういう兵器の革命的な変化を迎えて、今日ではいまや、一歩誤れば人類共滅という事態にまで発展してきたのが、今日の世界情勢であります。このような時代における一国の安全保障が、兵器中心の古いありきたりの防衛概念をそのまま踏襲することで達せられるのかどうか、それでよいのかどうか、そういう基本的な問題からまずあらためて考え直さなければならないと思います。特に、世界に類例のない平和憲法を持つ日本としては、防衛の手段方法については、それにふさわしい新しい選択をしなければならぬことは当然だと思います。社会党やその他の野党の考え方は非現実的である、あるいは単なる理想論である、こうして片づけようとしている限り、合意は一そうむずかしくなるであろうと私は思います。したがって、私はこの安全保障、防衛という問題は、実は相対的な問題であるという立場からお尋ねをしたいと思います。それはどういう意味かと言うならば、社会党あるいは野党の主張なれば一〇〇%日本は安全だとか、政府与党の主張が一〇〇%これは間違いであるとか、あるいは、その反対に、政府与党の政策なら絶対安全で、社会党あるいは野党の主張は、これは絶対間違っておるとか、そういう性質のものでは私はないと思います。どちらの政策に、より安全性があるか、どちらが、より高い安全度を持っているか、そういう相対的な比較の問題であると私は考えます。そういう意味で、幅広い選択をしなければならない。まず、国の安全を考える場合には、その国の地理的な条件、国を取り巻く国際環境、歴史的な条件、さらに国民感情、その考慮と検討の対象となるべき条件は多種多様であろうと思います。日本自身についてこれらの条件を考慮する場合、私は何らの理由なくして——これは念を押しておきます。何らの理由なくして日本が他国から直接の攻撃侵略を受ける危険性は、われわれが予見し得る近い将来——私は「永久」ということばは使いません。われわれが予見し得る近い将来においては、まずなかろうと思います。この場合、「まず」ということばも使っておきます。しかし、他方、わが国の置かれている現実はどうか。極東の平和と安全という名のもとに、エンタープライズの寄港、B52の沖繩からの発進、さらに、プエブロ号事件に見られる朝鮮の緊張、つまり、これらは日本に直接のかかわりのない問題にもかかわらず、米軍の行動によって国民に多くの不安を与えている。ベトナム戦争がどのような成り行きになるか、あるいは朝鮮で再び火を吹くことはないか、これらの問題について国民多数が憂慮していることは言うまでもございません。これらの問題の成り行きいかんでは、アメリカに基地を提供し、その作戦行動に実質的な便宜を供与している日本が重大な危険性を招来するであろうことは、あえて指摘するまでもなく明瞭であろうと思います。この場合、さきにも述べましたように、日本に対する外国からの直接の攻撃侵略は、予見し得る近い将来に、まずないとは思うが、しかし、極東の平和と安全の名のもとに、実質的に他国の戦争に介入するがごとき政策をとる場合には、そこには当然危険が予想されます。この二つの条件を比較した場合に、どちらに危険性が多いか、これは言わずして明らかであると思います。そういう意味で、私は問題は相対的であり、政府政策とわれわれの政策との比較の問題であろうと思う。私は、いま私が述べたわれわれの考え方のほうが、これからあと具体的にさらに述べますけれども、他国からの、理由もない外国からの直接攻撃侵略はまずあり得ないであろう。しかし、政府のいまとっている立場から言うならば、そのほうに危険の度合いがより多い、これは総理笑っておいでになりますが、私はそう確信をしている。あとから実証を具体的にあげてゆきますけれども、そういう立場で私はこの安全保障の問題を考えなければならない。こういう基本的な問題をまず提示して、総理の見解を承ります。
  79. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの羽生君の御意見は、さすがに私は参議院の良識だと思います。こういう問題こそ、対話の形において十分意見を交換して国民に納得してもらう、そういうことをとるべきだろうと思う。そういう意味で、私は、ただいまのお話はたいへんけっこうなことだと思います。それはいずれの国民といえども、いま基本的に述べられたように、自分の国を愛し、自分の国を思い、自分の国を守り、自分の国に尽くすという、そういうことを考えない国民はどこにもいない。これは私、幾ら党が違っておりましても、それは同様だと思います。それは皆さん、自分の祖国、それを思い、守り、尽くすということは同じだと思います。また、御指摘になりましたように、自衛権も否定はしておられない。したがって、一たん侵略を受けた、こういう場合に立ち上がる、そういう気持ちは必ずある。平和憲法、平和憲法と言われるけれども、自衛権は否定しておりません。したがいまして、私は、それまでの考え方においては私どもと全然同じだと思います。おそらくまた、すべての国民がこの話を聞きましても、国を守る、あるいは国を愛する、そういうことについては、だれも異存はない。また、自衛の措置をとる、このことについても、いずれもなにはない、異存はないと思います。それがただいま御指摘になりましたように、一体どういう方法でやるのか、その手段方法等が実はそれぞれ問題になると思います。私は、その点がおそらく国民としても納得がいくように説明してほしいということじゃないかと思います。ところが、いままで議論すると、何だか愛国心を言う、あるいは防衛ということを言えば、右傾、右寄りだ、あるいは昔の軍国主義に返るのだ、そういう玄関のところで実は議論されて、とんでもない状態になっている。私はその基本はおそらく皆さんと私どもとは同じだ。その右傾だとか、あるいは軍国主義化だとか、こういう話は国民の耳にはぴんと来ないと思う。また、そのとおりなんです。それを言ったからといって、右傾ではない。愛国を言ったから右傾で、愛国を説かないところが左傾だというわけでもないだろうと思いますし、そういうことはないのです。ただ、その手段方法にいろいろの問題がある。  そこで、話を進めてまいりますと、ただいま言われますように、日本が地理的な、あるいは歴史的な条件等から見て、外国から侵略を受けるような危険がいまあるかどうか、こういうことを御指摘になりました。過去におきまして、日本から出かけたこともありますが、また、もっと昔には、やっぱり外国から来たこともある。私ども、やっぱりこの国の安全を確保するという場合には、いろいろなことを考えなければならない。平和憲法のもとにおいては、たいへん私はしあわせなことは、日本が出かける、攻めていくということは、もう平和憲法では禁止しております。したがって、国民のこれは総意で私ども平和憲法を守ろう、その立場に立つと、日本が戦争をしかけるとか、あるいは侵略を開始するとか、そういう危険は絶対にない。これはもういま日本で持っておる自衛隊自身にいたしましても、急迫不正の侵害に対して立ち上がるだけである。したがって、私はその危険はない。だから、平和憲法のこの解釈においても、おそらく皆さん方と私どもの間に大きな違いがあろうとは思いません。問題は、そういうような状態で、いまどこから攻めてくるということはないが、一体、この国の安全を確保するのにどういう形がいいのか。平和憲法のもとにおいては、戦争は放棄している。第九条第一項で私どもは平和主義に徹しておる。しかし、通常兵器による急迫不正の侵害に対して、この国を自衛する、その自衛の立場で自衛力を持つということ、これは認められ、ただいまそれをやっております。これはどうも通常兵器に限られておる。しかし、最近の科学技術の進歩から見まして、通常兵器で事足りるかどうか、ここに問題がある。そうして、それも、お説のように、これなら絶対に安全だ、かように確信の持てるようないまの防衛体制というものは現在はないというのが通説でございます。したがって、一国だけで一国だけの安全を確保する、こういうことは困難である、まず至難だと。安全保障体制のもとにおいても、これならば絶対に安全を確保される、かように断言できるかというと、なかなかそういうものはない。しかし、国民の総意によって、私どもは安全を確保するために、十二分の、環境の事情にいろいろ対応するように、すべての準備をいたしまして、そうして安全の確保に最善を尽くしていく。これが、ただいま自衛力を一方で持つが、同時に最近の核兵器は持たない、そういう立場から日米安全保障条約のもとにおいて、わが国の安全を確保しよう、これが私どものとっておる政策であると思います。私は、まあ、この点におきまして、これで十二分にもう安全が確保された、かように私申すわけじゃありませんが、現状においては、これ以外にないのだと。しかし、そのことが、どこか攻めてくる国があるのだと、かようなことを想定するわけのものではありません。私が申し上げたいのは、現実に世の中には核兵器というものがあるのだ、存在しておるのだ、この存在を無視してこの国の安全を確保しようという、そういうことはやや乱暴ではないのか。核兵器がある限りにおいて、私どもの安全を確保するのも、やはりこれに対応する処置がとられなきゃならぬ。しかし、私どもの憲法、私どもの国情等からいたしまして、私どもは核兵器は持たないと言っておる。そこで、アメリカとの間の安全保障条約によって、核の抑止力、アメリカの持つ核の抑止力によって、そうして戦争を回避し、そうして、この国の安全を確保する、これが実は私どもの考え方であります。私はその意味におきまして、皆さん方の考え方が非現実的だとか、かように私申し上げる必要はないように思う。私は、国民自身も今日まで私ども政策を支持してくれたと思っております。私は、このもとにおいて初めて日本の安全は確保され、私どもが平和のうちにいわゆる経済発展を期することができたと、そのほうへ努力を向けることができた、そうして日本が平和国家として今日世界に重き地位を得ることができた、かように私は思っております。したがいまして、国民多数の方は今日までのこの政策、これには変わりはないと、これを必ず支持するものだと、かような確信をしております。  以上であります。
  80. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 羽生さんの質疑の途中でございますが、午前の審議はこれで終わりまして、午後一時再開いたします。  これにて休憩いたします。    午後零時四分休憩      —————・—————    午後一時十二分開会
  81. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) ただいまより予算委員会を再開いたします。  午前に引き続きまして質疑を続行いたします。羽生三七君。
  82. 羽生三七

    羽生三七君 先ほどに続いてお尋ねをいたしますが、まず、今日の世界でどういう地点が重要な国際紛争や戦争の危険性をはらんでいるかということであります。これはベトナムはいうまでもございません。次に朝鮮があります。さらに中国、これは中国——台湾の問題であります。続いてドイツがあります。これら諸国は、いずれも第二次世界大戦の終戦処理、その結果としてイデオロギーや東西勢力の政治的対立の上に、国家の分裂という不幸な事態を余儀なくされているそういう国々であります。危険の根源はそこにあります。もちろんこれ以外にもイスラエルとアラブの紛争もありましたが、これは千年、二千年の長きにわたる歴史的背景を持っている特殊なケースであります。さらにインドと中国、インドとパキスタン等の国境紛争もありましたが、これは言うまでもなく国境紛争を中心とする問題であります。これ以外にもキプロス問題やあるいは民族独立闘争に関連する若干の問題はありますが、とにかく今日の世界における戦争や危険の大部分は、国家の分裂を余儀なくされているというアブノーマルな状態のもとに起こっております。正常な状態のもとに起こった大規模な戦争は、第二次大戦後二十四年間、一度もありません。特に日本の場合、平和憲法を順守して、日本にかかわりのない他国の戦争に基地を提供したり、作戦行動上の便宜を供与しない限り、つまり外国の攻撃を受けるような理由をみずからつくらない限り、危険にさらされる事態は私は起こらないと思う。ですから、そういう事実認識から私は質問を進めていきたいと思います。どういうふうにお考えになりますか。
  83. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 午前中もそういう点でいろいろ意見を交換いたしましたが、私はいまのような羽生君が御指摘になるような直接攻撃、そういう場合のものは、いまはっきりどこがどういうようにするとか、こういうような御心配はないように思います。しかし、まあ侵略の態様というものはいろいろございますから、一概に直接的な侵略ばかりが侵略だと、こうも言えないのじゃないかと思う。最近の外交攻勢等によりましても、それはやはり見方によってはこれが一つの侵略だとか、あるいは経済的な交流にしても、たいへん活発にやると、経済侵略というようなことばが使われるように、この侵略の態様というものは、ただ簡単に兵器をとってどうこうというものではないだろう、かように私は思います。
  84. 羽生三七

    羽生三七君 いや、その御答弁では問題にお答えになっているとは思いませんが、そこでプエブロ号事件からにわかに朝鮮の緊張が高まり、その結果、B52の沖繩からの発進が激しくなったわけですが、政府はこれを当時抑止力と言った。これは語るに落ちるというものです。こういう事件がなければ抑止力を云々するような事態は起こらなかった。エンタープライズの第七艦隊主力が元山沖に急行するようなこともなかった。また北ベトナムの戦争拡大の契機となったトンキン湾事件も、いまや新たにアメリカ国内で歴史の審判にさらされようとしており、古くはU2型機の事件もあります。したがって、これらの事件を見れば、緊張や危機は現実に存在するというよりも、むしろアメリカによって製造されている、トラブルメーカーのアメリカによって製造されているケースが多い。私は全部とは言いませんよ。少くともそのケースが多いのではないか。この事実はお認めになりますか。
  85. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) アメリカによって戦争原因というものがつくられておるという羽生さんのお説には、われわれは同意できません。いろいろな戦争が起こってくる場合には双方ともいろいろな言い分を持っておるわけであります。今日の世界で、一方的に戦争の原因をつくれるということは今日の国際情勢ではない。いろいろ立場が違って、そうしてたとえばベトナムを例に取って言われていることだと思いますけれども、ベトナムは、アメリカとすればベトナム政府が要請して、そうして三代の大統領が約束しておる。なにも北ベトナムを、アメリカが北ベトナムの政府を転覆する意思はない。力によってある政治形態を押しつけることがよくない。そういうことで南ベトナム政府の要請によるという立場を取っておるわけでありますから、戦争の原因、また私として、北から南への浸透があることもこれは否定できないことですから、一方的に一つの国をあるいは侵略者であるとか、こういうふうに断定することは私は事実に反すると考えております。
  86. 羽生三七

    羽生三七君 時間があれば、ベトナム問題のところまで質問が進む余裕があれば、いまのお答えに反論をいたします。  そこで、私は戦争と平和という問題をいろいろ考えてみたのですが、先ほど私が申したようなことから、だから日本が安全だといって社会党が腕をこまねいておってよいというわけではない。それらの条件を検討した上で安全保障のために外交上のあらゆる可能な限りの手段を積み上げなければならぬことは、これは当然であります。たとえば外交政策としては、これはもうすでにしばしば言われていることでありますが、社会党としては、日本を取り巻く周辺諸国との不可侵条約の締結、あるいは核非武装宣言を行なうとともに、これを基礎として国連において核軍縮のための積極的な役割りを果たす、あるいはアジア太平洋非核武装地帯の設定、あるいは原子力の平和利用、特に核爆発については、平和利用と軍事利用との区別が明確になった時点においては、社会党も核の平和利用については積極的なこれの推進をしたいと思っております。その他、わが党が先般来、まあ中国の国連加盟等もありますが、先般発表した数多い政策で明らかになっておりますけれども、これを一々申し上げていると時間がたいへんかかりますので、これは省略させていただきます。  そこで、終局的には、私どもは日米中ソの太平洋集団安全保障条約に要約されると思いますが、この機会に特にお尋ねしておきたいことは、先日新聞報道によると、日米のテレビ討論会で木村官房長官が、将来は中共を含めた日米中ソ四カ国の同盟という新しい関係に入ることが必要で、日本はその橋渡しをする時期が来ることも考えられる、こう述べておられますが、この官房長官の発言に対して、総理はどういう御見解をお持ちになるでしょうか、お伺いいたします。
  87. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) いまお話しがありましたのは、フジテレビの企画で、日米間、アメリカは上院議員のマンスフィールドさんでありますが、その際に、マンスフィールドさんのかねての持論が、将来西太平洋におきまして、新しい日米ソの関係が最も望ましい形である、それが長期展望においては将来の西太平洋の平和を確立するゆえんである、まあこういう持論をマンスフィールド上院議員がかねてから持っておられます。それに関連いたしまして私が申し上げたことは、現時点では、いまの中共の内部関係その他から見て、近い将来にそういうことはとうてい考えられないが、長い将来、非常に長期的展望においては、将来そういう新しい関係もあり得ることである。私は同盟とか、そういうことばは一切使いません。新しい関係が望ましいということは、これはわれわれも考え得ることであるという程度のことを述べたわけでございます。
  88. 羽生三七

    羽生三七君 総理はいかがでしょう。
  89. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、いまの問題は直接聞いておりませんから、どういうふうなことであったか、木村君にいま答弁させたのですが、現状はとにかく、いまのような状態がいつまでも日中間に続いていくだろう、こういうことはまあだれしも希望しないことだろう、かように私は思います。しかし、遠い将来というか、あるいは近い将来というか、現状で、今日の段階でそういうことが考えられるかというと、ちょっと無理じゃないか、かように思います。しかし、これからどんどん発展していかなきゃならないし、改善されていかなきゃならないし、そのことは極東の平和はもちろんのこと、世界の平和維持のためにもわれわれが努力しなきゃならないことだ、かように思います。たいへん不明確な話ですが、これから出ていくだろう、これから発展するだろう、そういう関係をまあいかに頭のうちに描いておるかというようなお尋ねだろうと思いますが、ちょっとただいまの段階では、私、次を申し上げることはいかがかと思いますので、差し控えさせていただきたいと思います。
  90. 羽生三七

    羽生三七君 これはまたあとからもう一度触れます。  総理は日米共同声明で、これは衆議院でもしばしば触れられたことですが、「中共が核兵器の開発を進めている事実に注目し、アジア諸国が中共からの脅威に影響されないような状況を作ることが重要であることに」合意したと言います。その「影響されないような状況」ということをひとつ説明していただけませんか。
  91. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まあ今日、中共自身が核兵器を開発しておる、これはもう事実でございます。そういう事実があると、その隣国であるもの、あるいはそれにつながっておる地域、これらのものが全然無関心ではあり得ない。だから、したがって、こういうことについて関心を示しておると、これは納得がいくだろうと思います。また、私が昨年東南アジア諸国を回りましたが、それらの国々の首脳者と話し合ってみると、まあそれぞれの国情が日本の場合とは同一じゃございまん。同一じゃございませんが、それらの国々の首脳者がひとしく言っておることは、中共の核兵器の開発、これはたいへんな問題だと、中にはその脅威を露骨に示しておるものもあります。私どもはそういう事態を十分認識しなきゃいけない。しかし、まあ幸いにして、中共自身も核兵器を進んでこれを使うことはないということをしばしば声明しておりますから、われわれはその声明に信を置くと、そうして不安動揺のないようにすると、これが最も必要なことではないだろうかと思います。で、私は日本の行き方としては、これはもう問題なしに平和憲法がありますし、そのもとにおいて、足らない日本の安全確保、日本の安全保障のために日米安全保障条約、その核の抑止力に頼っておるというのが現状でございますから、日本については全然心配ございません。私は東南アジア諸地域のそれぞれの国も不安動揺をすることのないように、中共自身の声明、これが守られることを心から希望しておると、かような状態でございます。
  92. 羽生三七

    羽生三七君 まあいずれこの中国問題というものを頭において、そうしてアメリカの核抑止力に依存するという、そういう結論になられると思うのですが、今日の中国が核開発で当面アメリカの実勢には及ばないにしても、やがて核の量、質、運搬手段も含めて、アメリカとの差を縮める政策を推進することは、これは当然であります。そうすると、一方アメリカもその差を縮められないように一そう核兵器の強化を進めることも、これも当然である。それでは際限のない矛盾の拡大再生産で、ますます軍拡になるのは必至であります。問題は、むしろこのアメリカと中国双方の核を引き離す、どうしたら引き離せるか、それが今日課せられた課題ではないんでしょうか。核兵器があるから、中国のそれがあるからアメリカに依存するんじゃなしに、米中双方の核兵器を日本から引き離すという、そういう安全保障のあり方を選択することが私は重要だと思います。いかがですか。
  93. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私もその点においてはお説に賛成でございます。
  94. 羽生三七

    羽生三七君 そこで、それじゃどうしたらそういうことができるか。たとえばいま申し上げたように、この核兵器の全面禁止とか完全軍縮をうたっても、現実に中国が国際社会から除外されて、目的が達成されるはずはないのです。その意味で、中国を国際社会に復帰させる努力が重要な課題となることは当然でありますが、しかし、私は中国のいま国連加盟とか、あるいは重要事項指定方式には触れません。私が提起したい問題は、核兵器に関する世界軍縮の首脳会議を開いてはどうかということです。これは国連なり、あるいは日本を含めて、しかるべき国がイニシアチブをとればよろしい。この努力を政府に求めたい。  周知のように一九六三年、中国は核兵器全面禁止に関する世界首脳会議の開催を提案して、その中で中国は、断固として核戦争に反対し、全般的軍縮を主張し、核兵器の全面禁止と徹底的廃棄を主張してきたと述べ、さらにこの目的を実現するために、アメリカを含むアジア太平洋地域核非武装地帯の設置を提唱しております。さらに引き続いて、第一回原爆実験後、一九六四年、周首相の提案として、さきの提案と同様の世界軍縮首脳会議の開催を呼びかけて、その中で、その第一歩として各国首脳会議が、核兵器保有国と核兵器を近く保有する可能性がある国が核兵器を使用しないことを保障し、核兵器を持たない国に対して核兵器を使用せず、非核武装地帯に対して核兵器を使用せず、相互間にも核兵器を使用しない義務を負う協定を達成すべきである。こう述べ、最後に、中国政府はこの提案が、貴国政府の好意ある考慮と積極的な反応を得られるよう誠心誠意希望する、こう結んでおります。  さらに、一九六五年ドゴール大統領は記者会見でこう述べております。すなわち、現状から見て、ワシントン、モスクワ、ロンドン、北京、パリがかつて国際連合を創設するために相互理解に達したと同じように、これら諸国が相互に理解し合うことが必要であり、フランスはみずからそのような合意の成立を支持する用意がある。そうしてその場所としてはジュネーブが適当であろうと語っております。  だから、問題は、中国の核の脅威を云々する場合、それと対抗するためにアメリカの核に依存するというのではなく、中国やフランスも含めて核禁なり核不使用協定をどうして結ぶかということが問題の焦点であります。そういう本質的な問題について、平和外交を推進するために、中国やフランスの言っているこの世界軍縮首脳会議の開催のために、日本が積極的な役割りを果たすべきではないか。また、そういう方向こそが、日米共同声明にうたっておる中国の核に影響されないような状況をつくる最も正しい道ではないか、私はこう考えます。  でありますから、そういう要請にもかかわらず、貴国政府の真剣なる考慮を求めるという要請をしたにもかかわらず、中国を国際社会に入れないで、一方的に中国の核脅威だけをうたっても始まらない。問題は永久に解決しない。だから、ほんとうならば、私は国連の機構そのもの、五大国が拒否権を持つ機構そのものの改組をこれは要求したいのですが、これは時間の関係で割愛したいと思いますけれども、この提案はひとつまじめに検討していただきたいと思います。首脳会議のことですから、総理がお答えください。
  95. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 中共が軍縮会議、国際会議に入ってくることはわれわれも賛成です。中共を入れたほうがいい、国際会議に。どうしても、核の問題を取り扱ったときには、中共も入ってこないと、そういう取りきめは非常に片手落ちになりますから、入ってきて軍縮会議がなされることが、一番これは好ましい形だと思います。ところが、いままでも部分核実験停止条約、あるいはまた今度の核拡散防止条約にも、中共は、入らないと、こう言っておりますが、これはやはり中共がこれだけ人類の大問題になっておる核問題、この点については国際的に協力するという態度が出てこなければいけない。そういう態度が出てこないと、一方的に核の五大国会議といいましても、いろいろな点でお互いの核に対しての不信感情というものがあって、軍縮などという、各国の理解の上になければ成立しないですからね、軍縮というものは。そういうことで、中共が進んで核の問題に対して国際会議に出てくるような中共であってほしいと心から願うものでございます。
  96. 羽生三七

    羽生三七君 中国が入ってこないというけれども、入れさせないのだから、はいれっこない。入るように窓を開いておいて、それでも入らなかったら、そのときにいまのような発言が認められる。
  97. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 中国は核に対しても、いまのような核拡散防止条約に対しても、何かこう、いま持っておる国だけを固定化するようなことはいけない、むしろやはり核開発はみながやったらいい、そうしてそういう核兵器が分散することによって、核の軍縮が達成できる、むしろ。独占よりもやっぱり拡散したほうが核軍縮を達成する道だというような、フランス、中共などはそういう立場をとっているやに私は見受けられるのです。そういうことで、やはり基本的な立場が、いまの核を持っておる国だけでこれを押えるというのではなくして、むしろやはり拡散したほうが核軍縮を達成できるのではないかと、そういうふうな基本的立場にあるのではないか。そうでなければ、核軍縮の問題に対しては、中共が入ってくることに対して反対する国はどこもありません。全部歓迎しております。そうでなければ、国際的な一つの条約の外に中共あるいはまたフランスなどがおるということは、条約の目的を達成しにくいですから、これに対して入ってくることにだれもこれを歓迎しない者はありません。  そういうことで、どうか、中共などもそういうところから国際協力、人類の一番大きな脅威である核に対して国際的に協力するという態度が出てきてくれることをわれわれは希望し、また世界も歓迎をしておるということは間違いないと。だれもこれを入ってくるのをいやだという者はどこもありません。全部歓迎であります。
  98. 森中守義

    ○森中守義君 関連
  99. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 森中君。簡単にお願いいたします。
  100. 森中守義

    ○森中守義君 いまの外相の答弁はこういうことだと思うのですよ。核会議だけに限定をして中国に入ってこいということの前に、いま一つ問題がある。その前に当然国連に入れるか入れないかというのが、言ってしまうならば、中国を核会議に誘い込めるかどうかということになり、その問題を踏まえなければ、いまの答えだけでは意味がない。むしろ問題は、国連に入れるかどうかということが前提にならなければ決着がつかない、私はこう思います。いかがですか。
  101. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 私は必ずしもそうは思いません。これはやはり国連という問題もございますが、核という最大の課題ですから、核戦争をどうして防ぐかということが、もう人類これほど大きな問題はない。ほかの問題は小さい問題です。この問題について中共も世界と協力しようということは、直接の関連があるとは思いませんが、国連問題は、御承知のように、これは核軍縮のようにすぐにみなが、核を持っておる国が全部寄ってやろうといったら、これはだれも反対ないわけですが、中共の国連加盟については、いままだ国連で重要事項指定方式と、どういう形で加盟問題を解決するかという、まだ入り口で停滞をしておることは事実であります。したがって、この問題が解決しなければということでは、なかなか、核拡散防止条約なども国連にかかるわけでありますから、多少国連加盟と核軍縮あるいは核の問題というものは時間的ズレがあるわけですから、そういうので、国連は国連、核軍縮は軍縮として解決するほうが実際的だと思う。間接的には言われることはよくわかりますけれども、いま現に国連で問題になっておる核拡散防止条約、こういうふうな問題について、これが中共が入ってくるというようなことになれば、これは別の形の軍縮会議ども、核軍縮なども開催が可能でしょうし、事態は変わってくると思いますが、これは別の問題として取り扱うことが実際的だと思っております。
  102. 森中守義

    ○森中守義君 関連
  103. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) もう一点簡単に願います。
  104. 森中守義

    ○森中守義君 少しばかり機械的過ぎるのじゃないか。御指摘のように、核拡散の防止条約、防止関係会議にしても、これはやはり国連という基調を踏まえたものなんです。それと中国側に立てば、前段になるものはほったらかしておいて、一向に入れようという気配を見せないで、これだけに誘い込まれても、なかなか簡単にいくものじゃない。そういったようなことが一連の問題としてとらえられなければ、国連は国連、核は核という分離した状態でかっこうをつけようとしても、容易にこれは解決するものではない。これは私は一つの常識だと思う。したがって、先ほど質問者からもお話がありましたように、執拗に中国を国際社会に復帰させない、容易に入れさせようとしない、これが一番問題じゃないか。そうなれば、やはり国連で中国の扱いがしばしば議論されながらああいう状態に置かれているところに問題がある。このことを、私はいまの外務大臣の答弁ではいささか納得がいかない。むろん、私は、他日質問の時間もありますから、その辺のことについてはいま少しお尋ねしたいと思っておりますけれども、要するに、核は核、国連は国連という分離の方式をわが国としては今後も貫いていくのかどうか、その辺の所見をいま少し明確にしておいてもらいたい。
  105. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 分離をしておるというわけではないんですけれども、実際問題として、国連の中国問題というものは非常にやっぱり時間のかかる問題ですわね、解決までに。したがって、核のほうは、現に核拡散防止条約でも結ぼうという現実の日程にのぼってきているわけです、条約を結ぶ結ばぬという。そういうので、私も関連がいろいろあると言われるそのお気持ちはわかるんですよ。しかし、現実にまだ国連における中共問題の解決ということは時間がかかりますね、実際問題として。だから、現にこの核拡散防止条約は、国連の総会に提案をされていると、こういうことで、時間的にズレがあるから、この核という人類最大の課題に対して、中共も国際的に協力して——中共自身も核戦争というものを希望しているとは私は思わない。中共もまた核戦争の防止を望んでいるに違いない。そうなってくるならば、やはり核兵器の問題については、国際的な協調が中共はとれないであろうかと。いろいろ中共にも言い分があろうけれども、人類最大の課題に対して中共もまた協力の態度をとることがやはり人類を安心さす道ではないかということで、現実の問題として一方は具体的になっておるし、一方の問題はまだ時間がかかるというので、それを申し上げておるのでございます。
  106. 羽生三七

    羽生三七君 それで、それは国連加盟の問題と並行してやらなければならぬことは当然であります。ただ、代表権の問題がありますから、そうすぐ簡単にはいかないと思う。そこで、私が先ほどお尋ねしたことは、それを進めながら、同時に——それじゃ国連が中国に招請状を出したことがありますか、一度でも。だから、核拡散防止条約でも、あるいは世界軍縮首脳会議に、片方のほうは、世界軍縮首脳会議については、せっかく向こうが提案をして、貴国に深甚なる反応を期待する、誠心誠意これを願うということを向こうは言っておるのでしょう。ですから、日本がイニシアチブでもとって、それを国際社会、国連の場なりあるいは国連を離れてもよいし、世界軍縮首脳会議という形で何らかの核問題に対する討議の場をつくってはどうか、そういう役割りを日本は果たす意思がないかと、これをお尋ねしている。ですから、先ほどの外務大臣のお答えと別に、総理からひとつお聞かせいただきたい。
  107. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、いま森中君の関連質問を含めてですが、中共自身が核兵器を持っておると。しかし、進んでまず先に使うというようなことはないと、こういう声明をしたことだけでもたいへん各国は安心したというか、したがって先ほども私が引用したように、この声明が無にならないようにということも申しております。私は、いまの首脳会議を開くということも、これは可能な状況であり、そういうことは考えられることだろうと思います。しかし、日本自身がいまジュネーブの軍縮会議のメンバーでもないと。そういうところに日本自身、しかし国連の場においてそういうことが発言できやしないかと、こういうことも考うべきだと思います。  そこで、私、申し上げたいのは、この核兵器について、先には使わない、攻撃的な使途はしないと、そこまでは言われたんだと。そうすると、やっぱり核拡散防止条約、不拡散のこの条約についても、中共自身の態度を明確にすることも可能なんじゃないか。私は、そういうことがあると中共に対してもみんな安心して、そしてつき合いがだんだんほぐれていくんじゃないだろうか、かように思います。  私は、とにかく自分たちの態度を核兵器の使用についてはっきりし、たいへん好感を持たれた。その後の状況を見ると、今度は核の兵器を各国が持つことが核軍縮に役立つのだというような議論をしておると、どうも一体何を考えているんだろうか、こういうように思う。あるいは、いまの程度の、五カ国程度が核を持ったのは、これはまあ拡散ということには入らないんだと。もっと数が多くなったときに初めて拡散されたというんだというような議論までするようでは、これは中共がしたというわけではありません、そういう議論が世界にあることは、これは御承知のとおりであります。そういうような状態ではなかなか話し合いの糸口というものはみつからないのじゃないか、かように私は思います。いま米ソ自身で条約草案ができ、そうしてジュネーブの軍縮会議にそれをかける、お互いにもう核軍備の競争だけはやめよう、そういうような基本的な了解ができるようであります。私はそういうものに対して、中共自身も独自の立場から必ず自己の意思を表明することもできるのじゃないか。それを表明してくれると、いま言われておるような会議を開催するにも非常に安心してその前進ができるのじゃないか、かように私は思います。こういう点はお互いに理屈のやりとりではなく、問題は、この問題をいかに解決するかという真剣な問題ですから、これは日本だとか、あるいはアメリカだとか、ソ連だとかという一国の問題ではない、世界人類全体のために核兵器のあり方、それを中共はこういうように考える、こういう態度を表明されることが望ましいのじゃないか。また、そのことがやっぱり国際協調、また国際協議の場を広げることにもなるのじゃないか、私はかように思います。
  108. 羽生三七

    羽生三七君 問題は、そういう場をどうしてつくるかが問題なんです。それを私言っているんですが。そうすると、これから少し具体的な問題に入ってくるのですが、時間がなくなるのでまたの機会にいたしますが、そこで総理は、このアメリカの核抑止力に依存する政策に踏み切ったわけですが、これは一九六五年首相訪米の際の共同声明にある、大統領は米国がいかなる武力攻撃に対しても日本を防衛する云々というくだりを、そのよりどころにしていると思いますが、ところが、これはあとにも関連することですが、安保の中には私は核はないと思っております。これはもう別個のもの。そうすると、日本に核政策を導入するというような重大な問題を、こういう包括的な解釈で強行していいのかどうか、この種の重大問題を。ですから、これは核のことは一言も触れておりませんよ。それから、安保条約の中にも核は含まれておらない、これは明らかに。したがって、その場合に核依存政策導入ということになれば、具体的にジョンソン大統領と何らかの話し合いをしたのかどうか、核問題について。日本の一方的な解釈なのか、ジョンソン大統領と核について何らかの話し合いをしたのか。ただ日本を守ってやるという中には核が入っているのだという日本の一方的な解釈なのか、その辺はどうでありますか。
  109. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 御承知のように、日米安全保障条約では、日本が攻撃を受けた場合、侵略されるとかというそういうことに対しても日本を守る、そういう何で、どんな兵器が使われるということはメンションはしておらない。しかし、私が一昨年アメリカに参りまして、ジョンソン大統領と会って話し合ったときに、まあ最近の核兵器の発達等から見まして、通常兵器による侵略よりも、より広範なる攻撃ということを考えなきゃならないような実情だと、そういう点で話し合った結果、アメリカはいかなる攻撃に対しても日本を守ります、これが安全保障条約の目的であります、これははっきり言っておる。そこで、私はみんなにただいまのような話をしておるのであります。  このことが積極的に安全保障条約に書いてないじゃないか、これは拡張だ、こういうようなお話のようにもとれたのですが、御承知のように、もうすでにさきの戦争によって日本が核攻撃を受けた、これはもう現実の問題であります。その後の各国の軍備状況はどんどん整備され、そうして核兵器の発達はすばらしい状態であります。ただいままでのところは、各国ともみずから進んで核兵器は使わない、そういう宣言はしておりますが、とにかく核兵器を持っておる。また、持っておる以上必ずそういうものは使うだろうと一応考える。これに対しての万全の策を立てるというのがこの国のあり方、安全保障のあり方ではないかと私は思います。これはその使う危険があるから、いつでもそういうものを使うかわからないから、ただいまのような安全保障条約を結ぶんだと、こういう意味ではなくって、これはもう各国が声明しておるように、積極的な核戦争というものはないもんだ、かように考えましても、わが国日本の安全を確保するためには、核兵器が存在する限り、やはりその攻撃に対する対策というものを立てなきゃならぬ、これが私に課せられた責任だと、かように思っております。総理としてはそこまで考えて対策を立てなきゃならぬ。したがってワシントンにまいりました際もジョンソン大統領と、その点について忌憚ない意見をいたしたのであります。それがいま言われるような、いかなる攻撃に対しても日本を守ると、こう言ってくれた、かように私は思っております。
  110. 羽生三七

    羽生三七君 それはよくわかりましたが、そのときに核問題を含めて討議をされたのかどうか、それを聞いておるんであります。一般的な安全保障の問題じゃないのです。
  111. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま日本の、攻撃に対してどういうような態様を考えておるか、あらゆるものを考えておるということであります。
  112. 羽生三七

    羽生三七君 そうすると、安保の中には、記録見てもわかりますように、これは核は含まれておりません、ほとんど。新たなる問題提起ですね。そう理解してよろしいですね。佐藤総理になってからの新たなる問題提起。
  113. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私はさようには考えません。日本の、攻撃を受ける、その場合に、一応予想されないものだと、かように言われますが、日本が核攻撃を受けたことは、もうさきの戦争で一応経験済みであります。また、その後もこの核兵器の発達はどんどん進んできている、かように考えますと、これは近い距離ばかりじゃなく、ずいぶん遠方からも、この核兵器、これはICBM等は有効に働くんですから、したがいまして、核兵器が存在する限りあらゆる攻撃を考えなきゃならぬ。日米安全保障条約は、やっぱりそういうところまでも発展するもんだ、かように思っております。
  114. 野上元

    ○野上元君 関連。  ただいまの核拡散防止あるいは核軍縮等についていろいろと議論が出ているわけですが、総理にお聞きしたいのは、抑止力というのは一体何か。米ソのいわゆる核兵器が抑止力なのか、あるいはイギリス、フランスあるいは中共等が持っておる核兵器はどうなるのか。あるいは抑止というが、一体何を抑止しているのか。おそらく戦争を抑止しておるというふうに私は考えられるわけですが、したがって今日の平和は、あなたの論法からいけば、核の抑止力があるから平和が保たれておる、こういうふうな論法です。もしそれが事実とするなら、核拡散防止やあるいは核軍縮やあるいは核全廃は、抑止力がなくなる、通常兵器になるということが、各国が自衛権を持っておるとすれば、あなたの理論からいえば通常兵器は持ち得ると、そうすると通常兵器が、全世界が通常兵器によって武装される、そのときには核抑止力はないわけでありますから、戦争も再び起きるという理屈になるわけですね。そうすると、核抑止力を言いながら、核を軍縮したり、あるいは核を拡散したり、あるいは核を全廃するという考え方は明らかに矛盾しておるじゃないですか。その点は一体どのようにお考えになっておるのか。戦争の道を歩んでおられるのか。核全廃によって通常兵器の戦争を望んでおられるのか。それともどういう、核抑止力というものはどういう、これ全廃したときにどういう効果が発揮されるのか、そういう点についても明らかにしてもらいたい。
  115. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 野上君にお答えいたしますが、ただいま問題の核兵器が特に憎まれている。そこで、その問題がいま議論になっておりますが、本来平和、世界を保つという意味からいえば、これは核であろうが、通常兵器であろうが、そういうものがなくなることが望ましい。だから完全軍縮というものは、核兵器をも含めての完全軍縮が言われておる、かように私は思います。これは理論的にも別に矛盾はないものだと思います。ただ問題は、核兵器のようなたいへん強力な破壊力を持つもの、これは人類を滅亡に導びくものだ、そういう文明を望み、世界の平和を望みながらも、その兵器のために人類が予想しないような破滅になる、そういう意味の核兵器、これを非常に憎んでいるんだと思います。だから核兵器について議論をいたしますと、そういうものならばこれは持たないにこしたことはないじゃないか、だからいま抑止力というものをまずお尋ねですが、私はこう考えているのです。  核の抑止力というものは、これあるが故に戦争がないのだ、戦争が起こらないのだ、そういう抑止力、その戦争抑止力をこの核兵器は持っておる、かように私は思っております。いまアメリカとの安全保障条約——日米安全保障条約、アメリカの強大なる核兵器、その力に日本は頼っておる。したがってこれにまともに攻撃するところのものはない、戦端を開いてくるところのものはない、そこで核の抑止力というものは十分働らくと思います。同時にそのことは、私は力はあまり問題ではないと思いますが、核を持つということ自身おそらく戦争はなくなる。したがって、一たんもしも開かれれば、その報復が必ず働らくのだ、かような意味における核のおそるべき力が発揮される、それも同時に戦争の抑止力になる、かように私は思います。でありますが、完全軍縮を希望し、そうして、その意味においては核兵器をも含めて、そうして完全軍縮であるべきだ、したがって、いま核兵器拡散防止条約等を締結しておりましても、その中にやはり核兵器の軍拡はやめようとか、完全軍縮への努力をしようとか、いろいろの問題が出ております。したがって、通常兵器だけで戦争を依然として継続しようというような考え方では、いまの核兵器の絶滅はなかなか期せられない、かように私は思います。そういう意味で野上君のお尋ねになった点を十分私が解明したわけではありませんが、私どもの考えている立場のほんの一部を申し上げたわけであります。
  116. 野上元

    ○野上元君 私、関連質問ですからあまり長くは申し上げません。ただ私も質問の時間を与えられてはおるのですが、別の問題なものですから、ひとつだけ聞いておきたいと思います。いまの総理のお答えでは、私は納得できないのですが、時間がございませんから、この点は一応後日に譲るといたします。  ただ、いま総理の言われたのをじっと聞いておりますと、いわゆる核の全廃というものは、最終的には通常兵器の全廃をも含んでおる。そうして世界の平和を実現するのだ、したがって、今日のようなダモクレスの剣のもとにおける平和というものは、真の平和ではないのだという考え方があるわけですね。これは私もよくわかります。それならば、あなた方が言っておられる憲法九条の自衛権の問題はどうなる。いままであなた方は自衛権というものは、国家の固有の権利である、だれでも国を守ろうとする権利がある、そのためにある程度の武力を持つことはやむを得ないという考え方をしばしば述べておられるわけです。したがって、この自衛権の問題とあなたの言っておられる通常兵器を含めての軍備の全廃ということは、一体どういうことなのか。やはり社会党の言う非武装完全中立ということが最終的には正しいのだ、こういうことをあなたが認められたことになるのですが、その点はどうですか。
  117. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) その大事な点は、現実はどういう状態におかれておるかということです。私はおそらく社会党の諸君も、私どもも、この世界が平和である、これを念願しておるという点においてはちっとも変わりはないと思います。しかし、現実の問題として、全部が同じような状況に置かれない、そこに問題がある。核兵器を持っている国もあれば、核兵器を持たない国もある。通常兵器でも積極的に相手に脅威を与えるような軍備を持っている国もあれば、ただ単に自衛力、それも非常に局限されたものだけを持っている国もある。あるいは完全に形式的には中立だと言っておるが、スイスのごとく国民皆兵の状態におかれておるような国もある。いろいろ態様があるんです。その現実の態様はいま望んでいる姿じゃないのだ、だから現実にはいかに処していくか。それが、私は総理として、現実の問題で日本の安全を確保する、そういう場合にどういうような態度でいいのか、それが実は問題なのです。私どもがしばしばここで批判してはまことに恐縮に思いますが、非武装中立論というのは、現実離れがしている。理想なことはわかる。理想もいいけれども、しかし、現実はさような状態ではいけないのだ。この国の安全を確保するには事足りないのじゃないか。やはり総理として、この国の安全を確保しろ、安全を保障しろ、そういう立場になると、回りを十分目を四方八方じゃない、十六方にまで目を光らして、そうして実情をつかんで、そして安全保障の確保に万全を期さなければならない。そのことを私どもは主張をしているわけであります。
  118. 羽生三七

    羽生三七君 これから具体的な質問に入りますが、衆議院段階で必ずしも明らかでなかった問題がありますが、それは非核三原則は認めるが、アメリカの核抑止力には依存する、ということは、具体的にはどういうことか。つまり、日本には持ち込まない——持たず、持ち込まない、その場合には。しかし、アメリカの核抑止力には依存する。また、アメリカの領域及びアメリカが現に使用している日本以外の領域の基地を利用するというのか。あるいはポラリス等海上の核を想定するのか、実はこれは核抑止力依存ということを言うだけで、具体的にどういう態様、どういう配備のもとにアメリカ日本の核抑止、核で日本を守るというのか、それがなければこれは説明になりませんよ。抽象的な核抑止力なんていうことでは問題にならないと思う。そこで、先ほど、ジョンソン大統領と話をされたときに、そういう問題にも触れられたのかどうか、そんなことは何もきまっておらぬのに、日本を守ってやると言われても、そんな重大な問題をそんな簡単なことで片づけられては困りますので、逐次、私は具体的に入っていきますから、まずこの点からお伺いいたしたい。
  119. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 普通言われておりますアメリカの核兵器、これは非常な防御力がある。そのいわゆるスリーBと言われているそのもとにおいて、ただいまの安全保障というように私は考えております。日本に、日本自身が製造しない、持ち込まない、持たない、この三つのことを申しましても、それはいわゆるアメリカの持つ核抑止力、それにはただいま抵触はしない、かように考えております。
  120. 羽生三七

    羽生三七君 それは私の質問に十分答えられておらないのです。どういう配置で、軍事上の秘密でどうしても言えぬということなら別ですよ。そうでなかったならば、日本には持ち込ませないのだし、領海も事前協議の対象になるというのだし、そうなれば本土以外と——それならそれはアメリカの本土か、アメリカの支配している領域か、グアム島あるいはタイの基地あるいはポラリス潜水艦か、そういうどのような態様で日本の安全を保障するとアメリカは言ったのか。そんなことは何にも知らぬ、ただ核で守ってくれるのじゃないか、そんな重大な問題を簡単に片づけられちゃ困る。それを私は聞いている。
  121. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま申しました三B、たとえばポラリスあるいは大陸間弾道弾、あるいはヘビイボンバー、そういうものが守るということをはっきり申しております。それがどこにどういうように配置されているか、これは私はここで申し上げる筋合いのものじゃないと思います。
  122. 羽生三七

    羽生三七君 それでは、ここに外務省が先日発表した文書があるのですが、そこでアメリカの核戦力に依存する場合、日本米国の核戦略に参加するかどうか、外務省の文書には、そんなものに参加する意思はないという。もちろん核に反対だから核戦略に参加するなんということはあり得ないことだけれども、しかし、核抑止力に依存するという以上、核戦略を何も知らないうちに、あなたまかせなんですか、これはもう基本的な問題ですよ。日本アメリカの核抑止力に依存する場合には、どういう態様の核戦略、それに参加するのかどうか。外務省の文書は参加しないと言っている。これは妙な話ですよ。核戦力に依存しようと言いながら、戦略には参加しない、それじゃあなたまかせですか、どうされますか。
  123. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 外務省の述べた見解は、いわゆる核抑止力、これは日本の安全に対して核抑止力というものは大きく寄与している。しかし、そのことは核兵器を持ち込むという意味とは別個の問題。また、アメリカの核戦略に日本が直接参加して、そうして一緒になって核戦略について相談するという意味でもないと、そういうふうに私は解釈しておるのであります。
  124. 羽生三七

    羽生三七君 それでは、全部核の場合、アメリカ日本を守ってくれるという場合、核で。すべてその態様、いかなる戦略をとるか、アメリカまかせなんですか。日本は何にも発言権なしに、ただアメリカにまかして、どうぞ御自由に日本を守ってくださいという、そんなばかなことは、子供だましならできますが、議会じゃ通りません。いかなる態様でそれをアメリカが予定しておるか、いかなる態様を予定しておるか、これをはっきりしてください。
  125. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 核というものの、総理がいまも言われたように、核の論理というものは、やっぱり抑止力ですから、戦争を起こさないということが第一義的な意味です。しかし、もし日本が攻撃を受けたような場合には、これはアメリカの核戦力というものが、日本防衛のために役立つことになるでしょうが、そういう場合においては、日本が、日米の共同というものはありましょうけれども、直接核戦略に参画するというようなことにはならない。なぜかと言えば、持ち込まないのですからね、核兵器を。やはり核戦力に、核に対して直接……(「戦力との関係はどうなる」と呼ぶ者あり)直接核戦略に日本が参画するという形ではとらない、こういうふうに私は思います。
  126. 羽生三七

    羽生三七君 それではすべてアメリカに一任するのですか。アメリカに一任するのですか、すべて。どういうことをやろうともアメリカの言いなりということですか。
  127. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは、問題は、いまそういうような非常な国際緊張があるかどうか、そういう認識の問題も一つございます。通常の状況のもとにおいては、先ほど来申し上げるような核兵力、核兵器の抑止力、それにだけわれわれはこの国の安全を確保してもらうように頼んでおればいい。しかしながら、もっと事態が進展して、好ましいことではございませんが、国際緊張というものがあれば、また、それを具体的に日本の防衛ということを考えなきゃならないという場合には、さらに一朝有事についてもっとこまかく相談しなければならない。しかし、ただいまさような状態ではございません。また、さような御心配のないようにお願いしたいと思います。
  128. 羽生三七

    羽生三七君 これは確かにいまは抑止力に依存する、そうすれば、アメリカの抑止力に依存すれば戦争は起こらない、したがって、いまそんな戦略等は考えておらないと、こういうことだと思いますが、いやしくも核抑止力に依存するという大方針を打ち出した以上は、これは具体的にどういう態様でアメリカが——それは地点まで明白にして言う必要はありません。これは日本としては何も発言権なしに、すべてあなたまかせと、こんなばかなことはあり得ざることだ。これはどうしても私は了解できませんね、これは。
  129. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) まず、総理がいつも発言されております非核三原則がございます。したがいまして、あらゆる場合におきまして、アメリカの核装備、あるいは核の機動部隊等にわれわれが何らかの形において参画するということは絶対にないわけでございます。このことをまずもって第一に羽生さんに御了承得たいと思っております。  第二に、アメリカの核抑止力がどれくらいあるか。総理が言われておりますとおり、三Bでございます。すなわちミニットマンが一千、タイタンが五十四、一千五十四のランチャーがございます。そのランチャーに備えられるたまというものはどれくらいあるかと、数万個でございます。それから、その次にはポラリスが四十一隻ございまして、一ポラリスには約〇・七メガトンの核弾頭を持っておるのが十六ランチャーございます。四十一に十六かけますというと六百五十六でございます。そのうちで西太平洋にしょっちゅう遊よくしておるらしいと思われておるのは七隻でございます。七隻のものに十六をかけますというと、西太平洋にあるべき〇・七メガトンの核弾頭が想定されるわけでございます。それから、B52というものは五百九十五機ございまして、これはしばしば両院において申し上げておりまするが、東洋においては核弾頭等を搭載しておりません。西洋におきましてはアラスカその他グリーンランド近所をアラート、警戒していつも飛行しておりましたのがございましたが、先般の事故以来やめておる模様でございます。それから、アメリカ本土からスペインの上空まで往復する、こういうものもございました。まあこれらの三つのものが存在しておることによって核戦争を未然に防止して、全世界の三十一億の人類並びにわが日本の一億の国民を安心さしておる状態であると、こういうわけであります。
  130. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 関連
  131. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) じゃあ岡田君、簡単に。
  132. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 ただいま増田防衛庁長官の御答弁を聞いておりますというと、ただアメリカにミニットマンやタイタンが幾ら、あるいは、また、ポラリス潜水艦が何隻あって、〇・七メガトンの何を何発積んでおる、あるいは、またB52が配置されておる、そういうことを言っておるだけで、このアメリカの核抑止力なるものと日本との関係については何らお触れになっておらぬ。あなたは日本防衛庁長官で、日本がいま西アジアにおいてどういう位置にあるか。たとえばアメリカの仮想敵国がソ連であり、あるいは中国であり、それらが西太平洋においてもし衝突をした場合、戦争が起こった場合に日本は一体どうなるのか。そのときにアメリカの核抑止力がいかに働くか、そうして日本がどういうような地位に置かれるか。その際の日本アメリカとの関係というものをあなたは考えておられないのです。そうだとすれば、あなたは防衛庁長官としての役目はつとまらぬことになると思うのですけれども、あなたは、アメリカと日米安保条約を結び、そうして日本が日米安全保障条約によって平和と安全を守られておるとするならば、しかも、その日米安全保障条約に核抑止力というものが働くことを想定しておるとすれば、その点を明らかにしないでどうして防衛庁長官がつとまりますか。私は、その点について総理に、一体アメリカの戦略、そうしてアジアに事が起こってそういう戦争になったときに日本がどういう位置に置かれ、その際にアメリカの核抑止力とはどういう関係に置かれるか、それをはっきりさしていただくと同時に、それをより具体的に防衛庁長官からお答え願いたい。
  133. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まず私に冒頭のお尋ねですが、御承知のように、アメリカ自身は日本の憲法を守るわけじゃありません。憲法どおり拘束されるわけじゃございません。しかし、アメリカ自身も、しばしば言っているように、まず最初に核兵器は使わない、こういうことを実は申しております。これは日米間の基本においても同じくそういう考え方であります。同時に、日本が一体どうなるのか、日本は平和憲法のもとにございます。したがいまして、日本自身は外国との紛争を処理する上において武力を用いる、こういうことはございません。これは戦争を放棄しております。そうしてこれは日米安全保障条約を結んだ日本におきましても、ここには何ら変わりはございません。また、日米安全保障条約のもとにおけるアメリカは同時に日本を十分尊重し、日本の意向に反するような行為はいたさないわけであります。だから、したがいまして、この日米安全保障条約、これは万一の場合には日本を守ってくれる、こういう状況であります。でございますから、その点では御心配ありません。
  134. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 ただいまの万一の場合は日本を守ってくれる、その万一の場合とはどういうことなのか、その万一の場合における核抑止力はどういう形で発動するのか、また、日本はその際アメリカの核抑止力の発動、これは抑止力じゃなくなって、実際に撃つことになるわけですけれども、それとの関連はどうなるのか、そこの点を伺っている。そうしてその点について防衛庁長官から、そういうことでアメリカとの間に何らかの打ち合わせ、あるいは計画、そういうものがすでにできておるのか、あるいはそれを研究中であり、さらにこれから進めていくのか、そういう点をお伺いしたい。
  135. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほどもだいぶん時間をかけて申しましたように、核の抑止力、これは申し上げるまでもなく、戦争抑止力であります。したがって、戦争はないものだと思います。しかし、その際にも核兵器は現実に存在するのですから、私どもアメリカとの間に安全保障条約を結んでわが国の安全保障のために万全を期している。  そこで問題になりますのは、こういうような万全の措置をとって核戦争抑止力を期待しておりますが、万万が一そういう攻撃を受けた、こういう場合に一体どうなるのか、そのときにはアメリカの核兵器の報復力、これが働く、こういうことが考えられます。したがいまして、ただいまのような報復力が働くということを考えると、これに真正面から戦争をしかけてくることはないだろう、これがいわゆる核の抑止力ということであります。  なお、そういう点についてのアメリカとの打ち合わせ等については、防衛庁長官からお答えいたします。
  136. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) お答え申し上げます。  まず、羽生さんの御質問に対してもちょっと触れるかと思いまするが、安保条約第五条によって日本アメリカとともに日本を守っておるわけでございます。そこで、その中に武力行使ということがございまするが、その武力行使の内容を明瞭にいたしたのが一昨年の一月十三日の佐藤・ジョンソンのコミュニケだと思っております。佐藤・ジョンソンコミュニケによって別段新しい権利義務が加わったとは私ども思っておりません。日米安保条約第五条によって、日本の施政権下における領域が武力攻撃を受けた場合に、日米共同して日本を守ってくれる、こういうことの内容をきわめて明瞭にしてくだすったのが佐藤・ジョンソンコミュニケである。すなわち、いかなる攻撃に対してもということでございます。  それから、岡田さんの御質問でございますが、アメリカの核抑止力にわれわれは依存しておることは、これは事実でございます。その核抑止力というのは、いま総理がおっしゃったとおり、強大なる報復力がありまするために他国からの核戦争を日本にしかけてくることはない、あるいはアメリカに他国からしかけてくることはない、こういうことで、これは人類の常識上から考えて核抑止力を備えておるわけであります。核抑止力とは核戦争をじゃまする力ということ、直訳して申せばそういうことばでございます。核戦争をじゃまして、そうして人類が被害を受けないということでございまして、いつも私が申しておりまするとおり、一発でもあれば、もう私は今後のことは——これから後の将来でございますが、連鎖反応を起こしてしまいまして、人類が破滅に瀕することはきわめて明瞭でございますが、このことはもう世界の指導国家の良識人がみんなわかっていることでございまして、そこで、アメリカはいま強大なる核抑止力を持っておる、それは人類を破滅から防ぐために、核戦争がないために持っておるものでございます。そこで、東洋におきましてはSLBMというものがございます。すなわち、七隻の合計百十二発の〇・七メガトンの弾頭を持っております潜水艦が遊よくをいたしております。これは非核三原則によりまして日本の領海の中にはいないということになっております。それでございまするから、これは御安心願いたいのでございまして、あと日本がB52とか、これは具体問題で言わなくちゃいけませんから、要するに三Bでございます。B52とか、あるいはポラリス潜水艦の四十一隻だとか、あるいはICBMの、ミニットマンの一千ランチャーとか、タイタンの五十四ランチャ一等に参画することはございません。したがいまして、共同防衛計画でそのことを関知するかしないか、これは私どもは各種の資料によって調査をしてわかっているだけでございまして、そういうものに対して防衛計画に参画するということは絶対にないというのが非核三原則のたてまえである、こう考えている次第でございます。
  137. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 委員長、もう一問。
  138. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 岡田君、非常に長くなりますので、簡単に願います。
  139. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 ただいまの御答弁、防衛庁長官のお話ですというと、日米安保条約の第五条に基づいて、アメリカ日本が攻撃をされた際に日本を守るという義務があるということを言われた。さらにそれが佐藤・ジョンソン会談によって確認された。そうして、それに基づいてアメリカ日本が攻撃された場合に日本を守るのだ。そうして、そのあとでまた同じようなことを、アメリカのポラリス潜水艦がどうだこうだということを言われたわけですが、そのうちで、極東に、つまり日本の周辺に特にポラリス潜水艦七隻が遊よくをしておるということを指摘されたということは、いまそこにポラリス潜水艦七隻がまず日本の防衛に寄与しておるのだということを具体的に言われたと思うんですが、そうなってまいりますれば、やはり日米安保条約第五条、あるいはその次の佐藤・ジョンソン会談で確約されたことは、アメリカが具体的に日本に対してこうこうこういう方針で核戦力を使うんだということを明示したにひとしいと思うのですが、いかがですか。
  140. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 岡田さんにお答えいたします。  御意見の部分もだいぶあるようでございまするが、私が申しておりますのは、西太平洋に七隻が遊よくしておるらしいという情報を得ておりますと、こういうことでございまするが、あなたは、それはすぐ日本だというふうに演繹されますと私は困るのでございまして、西太平といっても相当広うございます。西太平洋に七隻のポラリスが遊よくしておる模様でございます。これはインフォーメーションとして私が得ております。  それから、安保条約第五条に武力行使ありたる場合と書いてあるから、一ぺん受けておいて、それから立つのだというお話でございまするが、日米安保条約の目的とするところは、また、そこの国々が国連憲章第五十一条に基づいて集団安全保章条約をつくっておりまするが、その目的とするところは武力攻撃なからしむるということでございまするから、武力攻撃がないということをお互いにひとつ期待し、協力を願いたい、こう思う次第でございます。
  141. 羽生三七

    羽生三七君 もっといまの問題に関連して申し上げたいこともあるのですが、少したくさんお尋ねしたいことがありますので、進めます。たとえばもう一ついまのことに関連するのですが、日本に核基地の使用を認めさせることは、もうアメリカとしては自信がない、ほとんど不可能だ。そこで、日米海上核戦略というものがかなりアメリカじゃ具体的に考えられておるようです。もちろんそのアメリカとの核戦略に参加する意思はないと言いますから、これも当然否定されるだろうから、私はあえてこれはこれ以上申しませんが、しかし、具体的に問題を煮詰めていけば、そういうものが出てこなければ、アメリカの核抑止力に依存しておれば問題はないのだ、日本は何もそれの戦略にも参加しない、そんなばかげたことありません。やる場合には、必ず極東のアメリカの戦略と日本の戦略とが食い違う場合もある。その場合には拒否権を発動するのかどうか、具体的な問題いっぱいあるのですね。あるが、さらに問題を先に進めます。  そこで、問題点の一つは、要するにこの問題は、政府沖繩やベトナム戦争について答弁する場合には、しばしばそれは施政権がアメリカにある以上やむを得ない、条約上の義務であるからやむを得ない、これはしばしば答弁に出ております。そこで、私のお伺いしたいのは、アメリカのその行動そのものには同意しがたいが、条約上の権利が先方にあるからしかたがないということか、それとも、アメリカの権利や義務とは別に、日本アメリカの極東戦略の、いままでのところ全部合意する条件になったから合意したのか。合意するって、これは拒否権のことじゃありませんから、別に事前協議をやったわけじゃないから、合意とか拒否とかいうことじゃございませんが、いままでのアメリカの行動そのものは全部日本も同じ意思でやっておるのか、条約上の義務なのか、施政権がアメリカにあるからやむを得ないのか、日本アメリカの行動と同じ意思なのか、それを聞かしていただきたい。それがはっきりするといろいろなことがわかってきます。これは総理からお答えいただきたい。
  142. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま私にお尋ねですが、ちょっと私つかみかねているのです。いま抽象的に、一般に日本は対米一辺倒、向米一辺倒、あるいは追随政策だとか、こういうことを皆さんからしばしば批判を受けますけれども、そうじゃなくて、日本には日本の独自の考え方がある。その独自の考え方のもとに、日本の安全の確保、これに最善を尽くしておるというのが現状でございます。  そこで、ただいまのベトナム戦争ならベトナム戦争、これは、日本は、御承知のように、戦争に軍事的には参加しておりません。これもはっきりしておる。そうして、日本は、一日も早く和平が招来されることを心から望んでおります。エスカレートしないようにとしばしばアメリカにもその点を申し出ておる、これはもうすでに御承知のとおりであります。でありますから、ベトナム問題だとは思わないのですが、お尋ねになりますのが、あるいは沖繩をB52が使っておるとか、あるいは直接戦闘作戦に使っておるとか、こういうことかとも思いますが、沖繩については、これは申すまでもなく、アメリカが施政権を持っておる。したがって、アメリカが現状においては自由に使える状態である。だが、私どもは、あすこに住んでおる百万の同胞、これを考えますと、百万の同胞が、不安だとか、非常に動揺するとか、こういうことがあったら、これはたいへんだと思います。したがいまして、B52が沖繩に出てまいりましたことについても、その沖繩同胞の不安を一掃するように十分考慮してほしいと、こういうことをアメリカに申し出ておる、こういう点はすでに御承知のことだと思います。したがって、いまのお話は、どういうような具体的な点について不明確だと言われるのか、あるいはまた、せっかくそこまでは行ったがたよりないじゃないか、こういうおしかりなのか、その点をもう少し具体的に聞かせていただきたいと思います。
  143. 羽生三七

    羽生三七君 それは、たとえば、具体的に言えば、エンタープライズが来たときに、これは事前協議の対象にならぬとか、あるいは、B52の場合も、沖繩島民の不満はあるが、しかしこれは施政権がアメリカにあるからやむを得ないとか、そういうことですね。その場合に、それは施政権があるからやむを得ないということなのか、安保条約上の義務だからやむを得ないのか。日本も抗議をするような気持ちにはなれないと、日本アメリカの行動と考えは同じだと、そういうことなのか、それを聞いておるんですよ。日本アメリカの意思とは違うけれども、文句を言いたいけれども、これは施政権が向こうにあるからやむを得ないとか、条約上の義務だからやむを得ないとか、これはいい悪いは別にわかりますよ。意思がアメリカの意思と一致しておるのかどうか、それをお聞きしておる。
  144. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) アメリカの意思と一致しているかどうかというと、アメリカの意思もはっきりしませんが、私ども日本の意思というものははっきりしておるわけです。これはもう憲法のもとにおける日本の意思はきまっておるわけです。したがって、その立場から、国際法上の権利義務のある事柄にしても、私どもがそれぞれの実情を披露して、そうしてアメリカの善処方を望んでおる。これで完全に一致しているものなら、別に善処方を望むようなことはないだろう、かように御了承いただきたいと思います。
  145. 羽生三七

    羽生三七君 たとえば、B52の沖繩移駐問題で、これは移駐であって常駐ではないと。ベトナム戦争が片づけばやがて引き揚げるだろうと。これは問題は逆なんですよ。ベトナム戦争が片づいてしまえば、引き揚げるなんてあたりまえの話なんです。戦争中だから問題なんです。ですから、そういう場合に、沖繩の場合は現に施政権があるからやむを得ないと言われておるが、日本の本土内において起こるいろいろな問題です。その問題についても、たとえば一例をあげますよ。ポラリス潜水艦が領海を行ったり来たりすれば、これは事前協議の対象になる。単純な領海通行、いわゆる無害航行の場合はこれは国際法上やむを得ないと。その場合も、国際法上、事前通告を求めることはできますね。ところが、通告を求めて何になるか。通告を求めて、必要があれば拒否する、それがなければ、かえって通告を求めて日本が合意すれば日本の意思が加わることになる。むしろある意味ではやらぬほうがいい、そんなことは。ですから、事前通告を求めることに意味があるのではない。その場合に、必要によって日本が拒否権を行使することができるかどうかということ、また、行使する意思があるかどうか。そうでなかったら、事前通告を求めて、どうぞ御自由にポラリスお通りくださいなら、日本の意思が加わる。かえってまずいことになる。それをお尋ねしておるんです。たとえて言えばそういうことなんです。これは外務大臣から。
  146. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) ポラリス潜水艦、これは、しょっちゅう日本の領海を行ったり来たりするということならば、事前協議になるわけです。しかし、いままでそういうこともございませんし、これからも私はないと思いますが、一つの議論としては成り立ち得るでしょう。それは、公海から公海へ抜けるような場合に、通過するよりほかにないというときにそれを通過をするということで、ほかに航路があるのに何もわざわざ来るというようなことではないわけですから、そういう場合に、ただ通過して通るというものまでに対して拒否権ということは、国際法においても無害航行権というのが一つの大きな原則になっておりますから、したがって、そういう公海から公海への通過の場合ならば拒否をしようという考えはありません。しかし、それが、いま言ったように、領海に入って、そうして出たり入ったりするとなると、当然に事前協議の対象としてこれは協議にかけなければならぬということになります。拒否する場合もある。
  147. 羽生三七

    羽生三七君 それで明確になったんです。実は、衆議院の段階では、拒否権はあるかと聞いたところが、アメリカもそう理解しているらしいというところでとまっているわけですね。いま、はっきり、拒否権があるということをおっしゃったから、それがなかったら、こんな事前協議なんか全然意味がありませんよ。かえって日本の意思が加わるから、私はやらないほうがいいぐらいだと思う。そのことが明白になれば、それでよろしいわけです。  そこで、B52の沖繩移駐の場合に、今回はこれを認めたわけですね。ところが、さきに台風避難の名目で飛来したときには抗議をして中止させたことがある。あの時点よりも答弁が後退した理由は何でしょう。かつてそういう先例があるにもかかわらず、日本態度が後退した理由です。
  148. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 後退をしておるとは私は思いませんが、あの場合は板付へB52が台風避難で来ると。そうして、それが結局は来なかったんですけれども、あの時点で、まあ台風といってもB52が板付に対して相当な数来るということは、それがまたベトナムに対して行くというような、いたというような発表もありましたから、そういうことは日本としては好ましくないという意思表示、どういうことばであったか、しかしそういう意味のことばを言ったわけであります。今日のところは、日本として何もB52に考え方が後退したというわけではございません。
  149. 羽生三七

    羽生三七君 先にたくさん問題を残しておりますので、いまの事前協議に関連してもう一つだけお尋ねをしておきます。  それは、衆議院段階で、山本質問に答えられて、総理は、単純な寄港なら第七艦隊全部来てもこれは事前協議の対象にならぬと、ほぼそれに近いことをお答えになっている。ところが、その前日の福田質問に対しては、事前協議の対象になる場合のことを、増田長官が、たとえば一機動部隊、その場合にはどうどうという内容を入れてうたっていますね。これは完全な食い違いですね。どっちがほんとうなんですか。寄港の場合でも、それが事前協議の対象となる装備の変更等になれば、これは当然事前協議の対象になる。これは総理の答弁と増田長官の答弁は、速記録を読んでみると、全然違っております。これをはっきりしてください。
  150. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) おそらくこういうことだと思うんです。寄港の場合は、配置の変更にしていないわけですね。そこを本拠としてそして行動する場合であって、出たり入ったりそこを本拠とするとき。ただ単なる寄港というものは配置の変更の中にしていないんですけれども、第七艦隊が全部入ってきたら、おるような所もありません、日本には。とても佐世保と横須賀で第七艦隊全部収容するというようなことはありませんし、まあそういうことは考えられませんけれども、たてまえとしては、単なる寄港であるというときには事前協議の対象にはしない。それは本拠として出たり入ったりするところである。しかし、現実問題として、第七艦隊が全部日本に来るというようなことは、日本にはそういう施設、区域もございませんし、そういうことは現実問題としては考えられないということでございます。
  151. 羽生三七

    羽生三七君 そんなことを言っているんじゃない。事前協議の対象となる……
  152. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) ならないということでございます。
  153. 羽生三七

    羽生三七君 いやいや、そうじゃないんですよ。寄港の場合はまあそれでいいです。そうじゃなしに、ちゃんと事前協議の対象となるべきケースを具体的に出しているでしょう。
  154. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) それは、日本の施設及び区域を本拠としてその艦隊が活動するという場合には、これは事前協議の……
  155. 羽生三七

    羽生三七君 タスクフォースの場合はどう——タスクフォースは事前協議の対象でしょう。
  156. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) タスクフォースの場合は事前協議の対象になる、タスクグループの場合は対象にならぬ、こういうことで、一タスクフォースという単位をもって、しかも、日本の施設及び区域を本拠として出入りするときには、これは事前協議の対象になるというのが政府の解釈でございます。
  157. 羽生三七

    羽生三七君 だから、タスクフォースでも、寄港の場合には対象にならぬというのですか。
  158. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) ならぬということでございます。
  159. 羽生三七

    羽生三七君 それはおかしな解釈ですね。いままでだれもそんな解釈はしておりません。だんだん解釈が変わっていってしまう。タスクフォースというものを出して、そしてちゃんと基準を明示したのは、これは事前協議の対象となるからこそ明示したんです。ところが、今度は、寄港の場合なら一向差しつかえないと。たとえば、航空機なら、六十機ないし百機と言っておるでしょう。エンタープライズの場合には寄港を認めた。ところが、エンタープライズは何機積んでおりますか。ジェーン海軍年艦によれば、エンタープライズ一艦で六十機ないし百機積んでいる。完全なタスクフォースです。これが事前協議の対象になるとちゃんと政府が明示したんじゃないですか。それが、だんだん今度寄港なら一向差しつかえないなんて、そんな解釈をしておってどうして日本のほんとうの意味の自主性というものが守られてきますか。どうしたら抜け穴をさがせるかということばっかりじゃないですか、やっていることは。それはおかしいですよ。
  160. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 羽生さんとの間に根本的なこういう点に食い違いがあると思います。日本の安全保障、これは国として政治の第一義的な任務です。政府が国民に対して安全を保障するということは、第一義的な任務です。これを、日本だけの力では不完全であるから、日米安保条約を結んで日本の安全に対する万全を期しておる。したがって、日本がいやでしかたがないものが無理して入ってくるという観念ではないわけです。それなら、安保条約を断わればいいわけです。日本は必要であるといって安保条約を結んで、日本の防衛力に対する補完的な意味を持っているんです。いやなものが来るためになるべく抜け穴をつくっていこうというような、そういういやなものが来るという観念から考えれば、事前協議というものはきびしくして、入ってくるにも入ってこられぬようにすることがそれはいいんでしょう。しかし、一方において、こういう核兵器の時代において、アメリカに防衛の責任を負わしておる。いやいやという感じよりも、防衛の責任を負わしておるという日米の共同の責任の中に日本の安全が成り立っておるという角度から考えれば、国民がいやなのに政府が抜け穴をつくって事前協議を骨なしにしておるという、何かものの考え方の出発点に食い違いがあるのじゃないでしょうか。われわれはそういうふうには思っていない。だから、事前協議は政府が拒否権を持っているんですから、そういうときにはなるべく重要な問題にしぼるべきであって、小さな問題までみな事前協議にかけて拒否権を持つということは日米の安保体制というたてまえから適当ではない。しかし、重大なものに対して、政府の同意がないのに重大なアメリカの軍事行動が起こされるということはいけませんから、それに対しては事前協議を通じてアメリカの行動に対して制約を加えてある。しかし、根本においては、日本の安全保障に対してアメリカに責任を分担することを求めてあるから、何でもかんでもアメリカから来るものは全部いやなものが来るという観念とは違うということを申し上げておきたいのでございます。
  161. 羽生三七

    羽生三七君 そうでないんですよ。そんなこまかい問題に一々アメリカに抗議を申し込むなんというのは、世界最大の問題はいまベトナム戦争でしょう。それが沖繩から攻撃に向かっておるんです。この間の朝鮮問題だって、もし火を吹いたらどうなりますか。それほどの大問題にも唯々諾々として御承諾なさっておるのに、こんな小さな問題と言えるか。じゃ、これ以上の大問題というのはどういうときですか。これほどの大きな問題はないじゃないですか、いま。それにすらほとんど何らの異議も申し立てずにやっておるのに、これから先が思いやられますよ。もっと発展したらどうなりますか。だから、日本アメリカが防衛するということで、その代償として日本はむしろ極東の平和と安全の名のもとに基地を提供しておる、ある意味においては。ところが、その安保の代償は、あまりにも高価で、あまりにも重いということです。これをよく認識していただきたい。そこが私たちとの考えの分かれ道です。しかし、まあ時間がなくなりますので先に進みますが、今度は沖繩問題です。  総理は、いま、沖繩返還問題では白紙とおっしゃっておる。へたなことをやれば外交技術上みずからの手を縛ることになる、そういうように言っておられますが、私はこれはたいへんな間違いだと思います。この問題は外交上のテクニックの問題ではありません。これは、日本の基本的な姿勢を打ち出して、それで返還を迫る以外にないと思うんです。国会の答弁でじょうずに何か外交上のテクニックを使うような発言をすれば、それでアメリカが気をよくして返すとか返さぬとか、そんな問題じゃないと思う。根本的にこれは外交上のテクニックの問題ではない。日本沖繩返還あり方を具体的に明示して、そうしてアメリカ返還を迫るべきである、こう思いますが、いかがでありますか。
  162. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 沖繩問題は、ただ単なる外交上のテクニックの問題ではないと私も思います。なぜ私が白紙ということばを言っているか。沖繩問題、これは一日も早く祖国返還が実現するように念願しておるのは、ひとり沖繩の百万の同胞だけの考えではないだろうと思います。私は、日本国民全体が、前戦争の結果、異民族に支配されておるこの沖繩、これを祖国に一日も早く復帰さすべきだと、こういう考え方だと思います。  そこで、その観点に立って私どもが何を考えるか。沖繩に対してアメリカがいわゆる領土的野心というものを持っているとは私は思いません。アメリカ自身が非常に魅力を感じているのは、あそこの基地の問題、軍基地の問題だろうと、かように思います。このことは、同時に、わが国並びに極東の安全、これに関連する問題でございます。で、私どもは、いま、残念ながら社会党の言われることと基本的態度を異にしております。この戦争によって失った地域を、当時の占領軍であるアメリカの理解と協力のもとに日本に復帰させようとするものであります。したがいまして、ただいまのように、この占領は不都合だから何でもかんでもわれわれの主張を通すんだ、こういう意味アメリカにぶつかれという社会党の考えでは、私はこれが実現しないと思う。その社会党の考え方が別であれば、それはまた後ほど伺いますが、私はいままでさように聞いております。私は、やっぱりアメリカの理解と協力のもとにこれを実現したい。  そこで、これは外交交渉の問題になると思います。外交交渉の問題になりますと、相手方のあることであります。したがって、一方的な考え方だけを明確にしてもいかぬと思います。ことに、この沖繩の場合におきましては、私は、残念ながら、ただいまの状況において沖繩アメリカの軍基地のあり方がどういうような実情であるか、これを十分把握いたしておりません。メースB、そういうものもあるといわれております。さらにまた、四万五千の兵隊がここにおって、そこで一朝事あるときにはここから出かけまして、そうして極東の安全の確保に働きをするといっておる。現状自身についても、一応、ただいま申すような点は耳には入っております。はっきり米軍責任者から現状における防衛力、防衛態勢はかくかくのものだという話はまだ聞いておりません。さらにまた、今後この軍基地を極東の安全と平和を確保するためにどういうようにアメリカは使おうとしておるか、これはアメリカから十分話を聞かなければならないと思います。私は、日本日本の平和憲法のもとにおいて自衛隊を持っておる、そのことについて、一応皆さん方も、これは現状においてはやむを得ないと、かようにお考えだろうと思います。そのもとにおける考え方と沖繩を基地にするアメリカの考え方、そこには必ずある程度の相違があるに違いないと思います。沖繩はいままでアメリカが施政権を持っていたから、アメリカ自身は一つのプログラムをちゃんと持っているに違いない、しかし、これが本土に返ってくる、日本に返ってくるとすると、いままでのような考え方だけで、アメリカの考え方だけでも、これは通せるか通せないか、そこに一つの問題がある。しかし、こういうこともこれから先、科学の進歩によってどんなに変わるかわかりませんから、そういういまから固定した状態だ、かように前提を置いて、そこで考える必要もないことのように思います。さらにまた大事なことは、極東をめぐる国際情勢も変化していくということでございます。いまのような状態をいつまでも持続することは、私は賢明な策だとは思いません。先ほど中共に対する考え方にもその片りんをあらわしたつもりでございますが、そういうことを考えると極東の国際情勢も変わってくるだろう。また、何よりも日本国民の考え方、世論の動向というものも大きく変わるに違いないと思います。また変わらなければならないと思います、そういうような未定、あるいは今日から予見することのできない条件が幾つもあるのでありますから、この際に一つの前提を置いて、そうしてまっしぐらに進むということは、必ずしもこれが最善の方法だとは思えないのじゃないかというのが、私のいわゆる白紙であると言うゆえんでございます。
  163. 羽生三七

    羽生三七君 いまのお答えの中で、「よく実態がよくわからぬが」とおっしゃいましたが、衆議院の川崎君の質問には、沖繩返還後は、基地をアメリカが自由に使用といっても、これは許さない。これははっきりしておりますね。もうこれは速記録にはっきり載っております。川崎寛治君の質問にはっきり答えております、総理が。よろしゅうございますか。これは速記録、ちょっと部屋に置いてきましたけれども、これは明白に答えている。沖繩返還後は基地をアメリカが自由使用といってもこれは許さないと、明確に答弁しておる。これは間違いありませんか。
  164. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) たいへん申しわけございませんが、川崎君に私直接聞かれたか、ちょっと記憶はないように思います。
  165. 羽生三七

    羽生三七君 いやいや、これはもう速記録に明白に載っておるんですから、それを言っていただけばいいのです。これは速記録に載っておるから。
  166. 加瀬完

    ○加瀬完君 委員長、速記録で確かめてから答えてもらいたい。
  167. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) いまの羽生さんのあれは、速記録を見まして、そうしてお答えするようにいたします。
  168. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま当時の記憶しているところの者の話を聞き取りましたが、日本に返ってきたらアメリカがかってに使えないだろう、こういうことを言ったので、いわゆる自由使用というのはそういう意味じゃないか、かように実は申しております。これは日本に返ってきた以上アメリカが自由に使用しようと言ってもそれは無理だろう、こういう意味だろう、かように申したわけでございます。
  169. 羽生三七

    羽生三七君 そうするとあれですね、やっぱり返還の、実は私はちょっと誤解しておったかもしれません。基地の自由使用は認めないと言うから、残るのは核だけだ——返還の場合の条件ですよ。それはもう基地の自由使用というものは拒否して、そうして核だけがあとに残るのだ、そういう理解をしておったのです。そうすると、基地そのもののあり方返還条件の中の対象になるわけですね、核だけでなしに。
  170. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはそういうことを含めてこれから話ししなければいかぬことじゃないかと思います。御承知のように、日米安全保障条約ができた当時、この本土における米軍基地というものはたいへん強力なものでありました。しかし、どんどん変わっていった。そうしていま残っておるのは航空隊が主体であり、そのことは補給基地としての日本あり方。で、この際に重ねて申しますが、日本に対しては核兵器を持たず、持ち込みも許さない、こういう基本方針で考えております。ただ、沖繩の場合に、現実にはいまメースBがある、そういうことをも含めて、一体どういうようになるのか、ここらを話し合って、そうしていかなければならぬ、かように考えております。
  171. 羽生三七

    羽生三七君 ところが実際には、核の問題を別にしても、極東における、アジアにおける沖繩が果たす役割り、戦略上沖繩が果たす役割り、こういうことが問題で、これまた非常にむずかしい条件が出てくるんじゃないか、たとえば総理が国際情勢の変化と言われた。この場合、私は昨年もお尋ねしたことがあるのですが、ベトナム戦争が片づいたときを予定して、牛場次官が、ベトナム問題が片づけばと言われたと思うのですが、それはあとから否定した。ベトナム戦争が続いておっても、片づかなくても返還返還で求めなければならない。これは当然であります。しかし、もし極東の平和と安全という名のもとにアメリカが極東行動をやる場合には、沖繩が、ベトナムが片づけば、その次は中国、朝鮮、次から次へ問題を持ち出して、前進基地としての沖繩の地位というものから、そう簡単に国際情勢の変化が期待できるのかどうか、よほどの強い決意日本が持たなければだめじゃないかと思う。  そこで、来年総理は訪米されると言われますね、時期はわからないが。衆議院でそう答えられた。ところが私は、来年かどうかわかりませんが、近く訪米される予定があっても、それまでに、はたして国際情勢が変化するかどうか。科学技術の発達は、何か、私はメースBが撤去されるような状況が起こるのか、私は、今度は新型を持ってこなければならない、メースBが古いということになったら。そんなことはともかくとして、総理が近く訪米される、近くというのはいつになるかわからないが、もしもそれまでに、総理が、総理の言う科学技術の発達、国際情勢の変化、これで沖繩が返るような条件がそんなときにできますか、それを聞きたい。それは国際情勢の変化とは何を言っているのか。ベトナム戦争が片づいたときを言うのか、何を言うのか。
  172. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまのようないろいろな問題があるから、実は白紙というのが一番いいかと思って私は白紙ということを言った。ただいまのようなことをいまから確かめないと、返還の問題を交渉するにしても交渉に困る。そういう意味では十分相互に話し合わなければならない。かように私は思っているのです。で、幸いといいますか、国民の輿論、世論から申せば、一日も早く返還を実現するように、かように申しておりますが、私は昨年参りまして相談したところでは、二、三年のうちに返還のめどをつけよう、こういう申し合わせになっております。したがって、継続的にとにかく交渉を持つことになります。したがって、ただいまのようなものを、あらゆる情勢を分析して、そうして考えていかないと、返還事態はなかなか考えられないということであります。  そこで、来年は訪米するかと言われますが、これは端的に私の訪米について聞かれたわけではございません。この点はちょっと私も慎重にお答えしたつもりですが、それで、沖繩問題の解決のためには総理は出かけるかと言うから、日本総理は出かけるだろう、こういうことを申したのでございまして、ただいま私自身が訪米するということをきめられると、うそを言ったことになりますので、私は、とにかく日本総理が行ってきめるべき事柄だと、かように私は実は思っております。
  173. 羽生三七

    羽生三七君 この問題は、実は沖繩問題をだいぶんいろいろ用意してきたんですが、沖繩の問題の一番最後になるのですが、こういう質問をしたほうがいいかどうか、実はちょっと疑問ですが、アメリカの欲する条件でなければ返還は困難だというような場合、それをのんでも返還に応じたほうがいいというのか、あるいは日本の望む形まで待つほうがいいと思うのか、その返の総理の心境は、これは答えにくい問題でしょうが、聞かしてください。
  174. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) それはたいへんいま困難だという私の答弁についても理解のあるお立場だと思います。私はそれを先ほど来それとなしに申し上げたと思っております。いま沖繩の同胞百万、これは一日も早く日本に復帰したいと、この念願だと思います。私は異民族に支配されるということは、たいへんな民族としてたえられないような状態じゃないかと思います。今日沖繩にそれぞれの人権問題が次々に起こっております。これらのことを考えると、私は、たいへんこの沖繩の方々が苦労、たいへんな苦痛を忍んでただいまやっておられる。こういうことを考えると、私はそのほうに非常な重点を置いてものごとを考えたい気持ちがございます。それかといって、やはり総理として、また日本の全体が非常に迷惑を受けるような、将来に禍根を残すような、そういう状態でこの問題を解決するわけにもいかない、ここに迷いのあることを、これを私は率直に申し上げて、ただいまの答えにならない答えをいたします。
  175. 羽生三七

    羽生三七君 これは条件のむずかしいことはわかるけれども、非核三原則を打ち出した以上、それはもう明確に沖繩についてもそれを適用する姿勢で、返還交渉にどんなにむずかしくても、私はそれを貫かれることを期待いたします。  そこで、これは三木外相にお尋ねをいたしますが、ベトナム問題が片づいたあとでも、なおかつアメリカがアジアにおいて軍事力を維持することをあなたは期待されるかどうか。これは実にASPACの問題、いろいろと関連するのですが、もうあと時間がなくなったですので、この点を、ベトナム戦争解決後のアメリカのアジア政策はどのようなものとなるであろうか、アメリカ軍の駐留をなおかつ希望するか。
  176. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) ジョンソン大統領もしばしばボルチモア演説などでも、アジアの平和建設のために十億ドルアメリカは出すというような演説をしておりますし、ベトナム問題を片づければ、アメリカの今日のような軍事力が極東に必要とするとは思えませんし、アメリカが、極東の平和建設のために全力をあげて寄与するアメリカであってほしい、こう私は願っています。
  177. 羽生三七

    羽生三七君 軍事力を維持するということですか、どうもはっきりしないな。
  178. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 今日の持っておるような軍事力を必要としないと、アメリカは。
  179. 羽生三七

    羽生三七君 それはけっこうです。  そこで、最後に、この非核三原則に基づく国会決議の問題についてお尋ねをしたいと思います。私は、純粋な合理的な質問をするつもりです。施政方針では三原則を打ち出されました。これは総理の施政方針演説がここにありますが、追加の一原則は載っておりません。三原則だけが載っておるのです。追加の一原則は答弁の過程で出てきた。それから、これは施政方針の中で一言半句も出ておりませんね。それからもう一つは、沖繩問題に関する衆議院の答弁の中で、総理はこう言っております。最終的には国民がきめることである。同時に、また、政府だけでこの世紀の大事業を片づけようとは思わない。こう施政方針で述べておる。沖繩問題の最大の中心は核でしょう。この問題ですよ。そうすると、施政方針演説でも三原則をうたっただけ、非核三原則を。アメリカの核抑止力依存なんていうことは、施政方針で一言もうたっておりません。答弁の過程で突然出てきた。しかもそのような重大な核の問題を、これは沖繩の場合ですね、きめる場合には、この世紀の大事業を政府だけで片づけようとは思わないと、国民の世論を聞いてきめるというのです。それならば、政府は、どうしてこの世紀の大事業であるという核問題に対して国民の審判を受けるか。ですから私はここで問題を提起します。  というのは、総理は施政方針演説で核三原則だけを述べたんだから、とりあえず、この核三原則に基づく国会議決の非核武装宣言に同意されてはどうですか。よろしゅうございますか。それから核、アメリカの核依存の問題はこれは留保する、国民の審判を受けるまで留保する。国民の審判を受けるとは、たとえば衆議院の解散等の、世紀の大事業であるから、政府だけでは解決しようとは思わないと言っている。沖繩返還についても、国際情勢の変化及び科学技術の発達とともに世論の動向と言っている、その世紀の大事業と言われる沖繩返還の中の中核をなす核問題です。しかも施政方針演説の中では、一言半句も四原則、アメリカの核抑止依存ということは言っていないんです。答弁の過程で突然出てきた問題です。ですから、まず非核三原則に基づく国会決議をやって、同意されて、そしてアメリカの核抑止力に依存するというような問題は、国民の審判を受けるまで留保する。これが合理的じゃないですか。この種の提案すらなおかつ合意されないようなことで、どうしてナショナル・コンセンサス、この合意が実現できますか。最大の私は譲歩です。これが譲歩ですよ。これはひとつぜひ聞かしていただきたい。
  180. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この核兵器三原則——つくらず、持たず、持ち込まない、この三原則だけでもひとつ決議してくれ、衆議院でたいへんこの問題で時間をとりました。私は、その衆議院の段階で政府の主張を、重ねてこの機会に申し述べようとはいたしません。衆議院と参議院とは、それはもちろん二院制度ですから、もう一度詳しくやったって、やるのが当然かもわかりませんけれども、しかし、それはもうやらない。  この点で結論だけ申しますと、国の日米安全保障条約、その問題がいつも背景になりまして、そうしてわが国の安全の確保ができている、かように私考えておるのであります。この背景をとって、そしてこの問題だけを決議しろという、これが国会であろうが、私はどうもその点でわが国の安全保障上たよりなく実は思うわけであります。したがいまして、私の考え方も率直に申しました。しかし国会、最高の機関がこの決議をなされたなら、この決議に私は従うことはやぶさかじゃないということをたびたび申しております。これはこの決議をするかしないか、予算委員会でうんと論議するよりも、これは他の場合、他の場所があるだろうと思いますから、適当な場所があるだろうと思いますので、そちらでこの決議はいかにするかということを十分御審議をいただきたいと思います。もちろん私はその場合に、その決議に私が反対だからといって、私は総裁としての立場で他を権力的に押えつけるつもりはございません。党内で考えられることならば、その考え方に従うという気持ちでございますから、その点を誤解のないように願います。  もう一つは、ただいまの沖繩に現実にあるメースBが、これは核基地でございます。それで沖繩返還の問題とからんで、ただいまの問題が議論になっている。これを羽生君はさらに沖繩の問題にしないで、ただいまは安全保障条約自身の問題として、この核兵力の、核抑止力にたよることを国民世論に聞いたらどうか、こういう御提案のように実は伺ったのであります。私は、安全保障条約についていまさら国民に聞かなくってもいいんじゃないだろうかと、かように思います。今日までもあらゆる選挙を通じ、単独のことではございませんが、必ず安全保障条約のもとにおいてわが国の繁栄をもたらされた。でありますし、また同時に、この安全保障条約のもとで私どもは平和に過ごすことができたということで、これは国民も承知して過去の選挙を終えたと思います。したがっていまは、私は絶対多数の方々が、この日米安全保障条約そのものについては国民の支持を得ている、かように確信をしております。ただいま、あらためてそれだけで国民に信を問う必要はないのじゃないだろうかと思います。ただ、いま言われます沖繩返還問題にからんで、万一ただいまの御提案になりますような核基地つきとかいうような問題があれば、それはあるいは国民に信を問うようなことも必要になってくるのではないだろうか、こういうことも私の考えのうちに行き来している、そういう問題であることをこの際御披露いたしまして、ただいま沖繩返還の問題で具体的にかくかくの方向でいくというものまでまだきめていないので、その点では誤解のないようにお願いをいたしますが、万一そういうような問題があれば、それこそ国民に聞くべき事柄だ、かように私は思います。
  181. 羽生三七

    羽生三七君 先ほど来申したように、くどくなりますが、簡単にこの安全保障の問題、安保で国民にすべて支持を受けておるからと言われておりますが、アメリカの核抑止力に依存するなんという重大な問題は安保の中で論議されたことはないのです。論議されても、みなそんなことは拒否するような答弁が全部貫いていますね。これはもうはっきりしているのです、安保の過程で。しかも、施政方針演説の中ではっきり三原則だけを出されて、その抑止力依存ということは出していないのです。答弁の過程で突然出てきたのです。これほど重大な問題ですから、しかも二年後には安保条約の期限の時期が来る。ですから、そういう意味で、これはやはり信を国民に問うてはどうか。衆議院の解散問題を他院がかれこれ言う筋のことではありませんが、そういう形でこの信を問わなければ、こんな重大な問題を、こんなものは国民の支持を得ているという簡単な解釈では困ります。
  182. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 解散は簡単に私口にはいたさないつもりですが、羽生君のただいまの社会党を代表しての御質問、その中の御意見としてこれは拝聴しておきます。一応記憶にとどめておきます。
  183. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 羽生さん、大体時間が来たようですが。
  184. 羽生三七

    羽生三七君 もう時間がないから、これで終わります。いずれにしても、残念ながら、いまの質疑の中でも、衆議院と同様に、与党、野党の間に十分なるコンセンサス——合意ができない。あまりにも距離があり過ぎる。これははなはだ残念ですが、しかし私はやはり、社会党がいままで述べてき、またとっている政策のほうがより日本のために安全であるという確信を持って、総理が核抑止政策、核抑止依存に見せられる熱意、防衛庁長官が防衛力増強をされるその熱意を、平和外交に転換されることを切に期待して、私の質問を終わります。(拍手)
  185. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 以上をもちまして羽生三七君の質疑は終了いたしました。  なお、午前中の質疑の中で、木村禧八郎君より総理大臣に対する関連質問がございましたが、その際事務当局の答弁が留保されておりますから、この際発言を許します。
  186. 武藤謙二郎

    政府委員武藤謙二郎君) 先ほどの総理の御答弁の中で、中共からの輸入品の中で関税の格差のなくなるもの八〇%、関税の格差の残るもの二〇%と申されましたのは、金額のウエートでございます。で、品目数で申しますと、関税の格差のなくなるものが二百七十八品目、それから残るものが三百四十五品目でございます。それで、残るものの中で、ケネディラウンドの関係で格差の残るものが三百四十五品目、従来から格差のあるものは十一品目でございます。三百四十五品目の中で、生糸と絹織物と二品目で約金額では半分になっております。
  187. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 塩見俊二君。
  188. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 関連して。
  189. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 質問じゃないでしょう。関連質問関連質問ということになるのでね。もう質疑は終了いたしましたから。いまのは木村禧八郎君の関連質問に対する答弁なんですよ。そのまた関連質問ということになると、きりがないのです。
  190. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 総理の見解を重ねて聞いておきたいのです。
  191. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 関連関連ということになると、きりがないものですから……。  塩見君。(「簡単に」と呼ぶ者あり)それでは、三十秒ぐらいの質問らしいですから、自席でお願いいたします。戸田君。
  192. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 いま関税局長が申されたように、生糸とか絹類が非常に中国との貿易で依存度が大きい。八〇%出ているわけですね。こういった国民生活と密着をしている各種品目がたくさんあるわけです。こういった問題についてわれわれ一番重視するのは、関税定率法の第五条、この規定の適用をぜひ総理は前向きで検討し、善処してもらいたい、こういうことなんです。ちょっとつけ加えますけれども、四十三年の三月十三日、衆議院の大蔵委員会でありますが、わが党の同僚議員の質問に対しまして、政府は二つの理由をあげて、現在結論的には中国を承認しておらないから関税定率法第五条というものは適用できない、こういうことを言っておるわけですけれども、この関税定率法の第五条というものは決して承認するしないということが根本的な問題にはなっていないと思う。そういうことから、この適用というものは、過去英国やあるいはソビエトとの間でも結ばれたためしがありますし、また戦後日本とインドネシアとでやられたためしもあります。そういう歴史的な経過も踏まえて、ひとつ総理は第五条の適用について十分善処してもらいたい、このことをひとつ私は申し上げておきます。
  193. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまちょうど衆議院の大蔵委員会でもこれが問題になっておるそうです。ただいまあげられましたように、生糸、絹織物、これはちょうど国産のものとかち合うので、そこらに一つの問題があります。ある程度の保護的なものがあったと思います、過去において。もう一つは、魚がたいへんな問題だというので、これらのものを各品目を掘り下げてちょうどいま検討中で、大体いまの御期待に沿うような方向にいま進みつつあるのじゃないか、かように私は思います。なお十分指導するつもりでおります。     —————————————
  194. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 塩見俊二君。
  195. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 私は、きょう午前の委員会におきましても議論がなされましたが、いま日本の国民の最大の関心事であり、また日本の国民の非常に心配をいたしておる問題でございますので、まず金・ドルの問題につきましてお伺いをいたしまして、あと順次、国際収支の問題、また明年度の予算案を中心とする諸問題につきまして、自由民主党を代表してお尋ねをいたしたいと思います。  まず、金・ドルの問題につきましては、今月の十日にバーゼルにおきまして開かれました金プール会議におきましては、各氏が非常な重大決意を秘めて出席をしたということが新聞に伝えられておったのでございますが、その結果は全く効果をあげず、ついにパリには金価格の暴騰という事態が起こり、あるいは金の市場が閉鎖をされる、あるは国際取引も非常に不円滑になるというふうな最悪の事態になってまいったのでありまして、この十六日に再び開かれたこの金の会議につきましては、世界の国民も、また日本の国民も、非常な期待を持って、かたずをのんで見守っておったと思うのであります。今回のコミュニケによって発表せられましたその結果を見てみますると、おおむね予想せられておるとおりであったのでございまするが、私は、日本の国民も、また大多数の世界の国民も、大いにこれを歓迎をいたしておると思うのであります。そこで、この問題に関連いたしまして若干お尋ねをいたしたいと思うのであります。  まず、今回の金の価格の二重制につきましては、このコミュニケにも明らかでありますとおり、アメリカ準備金制度から解放せられ百十数億ドルという金を持っておるわけでありますし、また自由主義諸国の金が四百億ドルと言われておるのでありまするが、これらはもはやゴールドラッシュで驚かされるようなこともなく、完全に自由市場から縁を断ったわけでございまして、私は、少なくとも一応ドルは安定をし、また円に対する不安もなくなったというふうに考えておるのでございまするが、こういった総合的な点につきまして総理大臣から一言承りたいと思います。
  196. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、先ほど羽生君からも聞かれ、これについて大蔵大臣からるる説明いたしました。こういう問題でいろんな論議をかわすこと、そうして逆にいろいろ不安をかき立てる、こういうふうなことがあると、せっかくものごとが解決しようとするそのやさきに、私は、たいへん悪影響といいますか、このねらい、たいへん心配していろいろ立てて、そのことが逆な方向に働くのじゃないかと、実は心配して先ほどの質疑を聞いていたのです。私は、大蔵大臣からお答えいたしましたように、金プール七カ国の中央銀行総裁が集まり、さらにアメリカの財務長官、IMF事務総長その他が参加して、そうしてきのうきめたこと、その結果、私は、必ずこれは鎮静するものだ、かように思っています。したがいまして、一時たいへんな騒ぎをいたしましたが、これでおさまる方向に行くのではないか、かように思っております。
  197. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 それでは、この金の二重価格制につきまして、これが円滑に実施できるかどうかというような点には、若干なお問題が残っておるように思うのでございまするが、そういった点について、ひとつ国民の心配のないようなと申しまするか、問題の事態をひとつ明らかにしていただきたいと思いますので、二点ばかりお尋ねをしたいと思います。  まず第一点は、今回のこの金プール会議は、何と申しましても七カ国の会議であるわけであります。したがって、IMFの所属国だけでも、この国を除いても百になんなんとしている国が存在をするわけであります。それで、今回のコミュニケを見てみますると、今後公的保有金は通貨当局間の交換にのみ使用せらるべきものである、したがって今後は金市場に金は放出しないということを発表しておりますし、また今後通貨当局に対し民間市場で売却した金の補てんをするための金の売却は行なわない、非常に重大な決意が述べられておるのであります。しかしながら、先ほど申し上げましたとおり、こういった世界の国々が非常に多いわけでございますし、現実的にこの高い金の自由市場があるわけでございますので、ここで行儀が悪い姿になるということは心配ではないかと思うのであります。したがって、そういった面につきまして、十分に国際協力、相互信頼、節のある各国態度というものが望まれるわけでございまするが、こういった点について、政府としても、やはり日本としても、協力、努力すべきだと思うのでございまするが、そのあたりの問題について大蔵大臣からお伺いいたしたいと思います。
  198. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 七カ国のこの合意がはたして世界各国を拘束するかどうかということは問題でございまして、今後まだこの問題は相当いろいろなことがあろうと思います。しかし、IMF体制を守るということは、ひとり七カ国の方針だけじゃなくて、いま世界各国の方針となっておりますので、これが体制をくずさない、今度の措置が一番いいものだ、適切なものだというふうにおそらく各国は思っておることでございましょうし、したがって私は今後世界各国がこの方向に協力するという体制が必ずできると思っております。また、フランスにおきましても、この十五日に蔵相が国際協力の用意ありということも言っておりますので、今度はフランスを入れた会議、また主要十カ国の会議というようなものを通して、IMF全体のいろいろな点に対する措置をとられるでございましょうし、私はこれはIMF加盟国が共通の問題として実効ある協力ができるのじゃないかというふうに考えております。
  199. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま大蔵大臣がお答えをしたので、もう私が発言する必要はないように思いますが、こういう問題が起こるにつけましても、各国の相互信頼並びに相互協力を積極的にやらなければいかぬと思います。ただいま話し合いだけできて方向はきまった、さらにこれを具体化し、実施に移す、そのための十カ国蔵相会議等が開かれる、そうしてこれが軌道に乗るものだ、かように私思っております。これこそキーカレンシーを維持する、こういう方向、そうでないと国際経済はなかなか保てない、かように私は心配もいたしますが、同時に、そういう方向各国の協力、これを積極的に展開すべきだ、かように思います。
  200. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 私は実はフランスの態度についてお伺いをいたしたかったのでございまするが、いま大蔵大臣から先に御答弁をいただいたようなかっこうになったのでありますが、これは非常に重大な問題だと思いますので、重ねてお伺いをいたしたいと思います。  フランスは全く金に固執するといいますか、巨大な金を蓄積をし、また、今回のゴールドラッシュ後におきましてもパリで金の暴騰を許すというような、国際通貨に対してはむしろ挑戦的な態度をとってきたとすら思えるような感じがするわけであります。しかしながら、このフランスの協力がなければ、今回の共同コミュニケの結果というものは、これは実効をあげることは困難ではないかと思うわけでありまして、どうしても私はフランスを積極的に協力せしめなければならぬというふうに感ずるわけであります。おそらくこれは同感だというお答えをいただくかと思いまするが、それに関連していまお話がありましたが、今月末に開かれるという十カ国蔵相会議にはフランスも出席をするのかどうか、あるいはまた、たしかきょうあすあたりに声明が出るということだけを伺っておりまするが、この共同コミュニケに対するそういう声明の事実があるのかどうか、もしすでに行なわれていれば、その内容もあわせて重ねてお伺いをいたしたいと思います。
  201. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 国際協力の場において私どもが接触した限りにおきましては、フランスの態度というものは私どもは正当に理解しておるつもりでございます。いろいろいわれておりますが、その主張の根底には、ドルアメリカに偏在しておったときからだんだんにドルが放出、分散していって今日に至ってきますというと、アメリカよりもEECのドル保有高が非常に多くて、EECの比重が多くなっている。しかるに、IMEは英米中心とする体制であるので、ここでやはりEECの発言権を増す体制にこれを改めたいというのがまずフランスの考えの一つ。それからもう一つは、このSDRを通じて各国、特に英米とフランスの意見が長い間分かれておりましたが、その考え方を申しますと、フランスはいま、特にEEC諸国は国際流動性には困っていない。流動性に困っているわけじゃない。もしアメリカがこの国際収支の均衡を確保してドルが流出しなくなったというときには、いろいろ国際流動性の問題が欧州にも出てくるだろう。しかし、それをやらぬ限りはドルがどんどん流出してくるのですから、流動性の問題には困らないのだ。だから、SDRについてそう急がなくてもいいし、考え方も違うぞということを主張しておったのがフランスの立場でございますが、今度、フランスの主張というものは相当にここで入れられたと思います。やはりアメリカ国際収支の慢性的赤字を解決するという強い措置をとったということと、それから、SDRをやはり発足させるためにはある程度EEC諸国の意見を聞かなければいけない。やはりIMFの協定にEECの意見が今度は加わった改定がある程度行なわれるだろうというふうに私ども考えています。そこでいま、今月末に開かれる十カ国蔵相会議の一番の問題は、やはりフランスが、SDRがかりに発足しても、このSDRの配当を辞退する権利を認めろということで、これは非常にこの出発に際して好ましいことではございませんので、この問題が未定であったために、今回これを解決するためにみんな集まるというのが一番の主要議題でありますので、いま申しましたように、フランスのいろいろな主張が入れられてくるということと呼応しまして、私は、この問題は十カ国会議で円満に解決するのではないかというふうに考えています。と同時に、フランスはいろいろ非協力のようでございますが、実際はアメリカに対して、一九六二年から六六年までの間に、十一億ドル債務を操り上げ償還やってアメリカに現に協力している。裏ではそういう協力もやっていますし、ただいろいろな主張があって今日まで対立の形をとっておりましたが、こういう事態になったらある程度協力の用意ありということを十五日に声明しておりますので、どういう今後声明書が出るかはわかりませんが、私は、今回のことを契機に国際協力はそういう点では一歩深まる方向に行くのではないかというふうに予想しております。
  202. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 フランスの協力を積極的に求めるように日本としても努力をすべきだと思う次第でありまして、どうかそういう方向で御努力をいただきたいと思うのであります。  それから次に、けさの委員会ですでに議論があったのでございまするが、私は日本の国民が非常に心配をしておると思いますので、重ねてお伺いをいたしたいと思うのであります。  今回のコミュニケによりましても、ドル価値の維持のためにはアメリカ国際収支の大幅な改善が高い優先度を持つといういわば大前提になっておるわけでございますので、私は、おそらく今回はアメリカも決心をして増税その他の緊縮政策を断行するというふうに思うわけでございます。また、そういうことになりますると、金利の上昇、さらに公定歩合の引き上げというようなことも予想されておるわけでありまして、こういったようなことと関連をして、やはり私は、日本の三〇%のシェアを持っておるこの輸出貿易というものに一体悪い影響が出やしないかという心配をしておるわけでございまするが、けさ宮澤企画庁長官は、そういうような心配はないような御答弁のようであったのでございまするが、私自身にもその点に若干の不安がある次第でございまして、その点についてもう少し根拠を持ってお答えいただければありがたいと思う次第でございます。
  203. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 先般アメリカの連銀が公定歩合を〇・五%上げましたときに、本来アメリカだけの現在の事情、すなわち増税案が通っていないという状況では、おそらく連邦準備の総裁として、理事長としてはもう少し上げたいという気持ちを持っておったのではないかと思います。  したし、御承知のように、イギリスの公定歩合が八%というところから下がりそうな方向にございませんこともあって、アメリカとしてはあの程度で一応控えたいということではないかと思うのでございます。そこで、今回金プール中央銀行総裁がポンドに対してクレジットをさらにふやしたということで、及び、おそらく今明日中に英国の新しい予算が発表になるわけでございますが、それらをあわせまして、ポンドというものは当面信用を回復していくのではないだろうか。そういたしますと、八%というものを必ずしも動かさなければならない、上のほうに動かさなければならないということが起こらないで済むということを私どもは希望しております。そういたしますと、他方で、アメリカはおそらく増税案が今度は成立するというほうに動いていくと思いますので、多少の希望的な気持ちもございますけれども、これ以上両方の金利が上がらないで済むのではないか、他方でヨーロッパの各国は、先ほど申し上げましたように、本来金利を上げたくないということでございます。そういたしますと、一昨年のような非常な金融梗塞というものがアメリカにこれ以上来ないで増税案が通過をして、そうして、いままで心配をされておったアメリカの経済はそのブームからさらに進んで破裂するような、いわゆるバストというほうに行かないで、そしていまの調子で強含みで——どうしても強含みと思いますが——運営されていくのではないか。そうであるといたしますと、アメリカ日本からの輸入というものは、その面から非常に減る、影響を与えるということは私はないように思うのでございます。問題は、むしろ課徴金のような問題がはっきりいたしませんで、それが対米成約に、輸出入の成約に悪い影響を与えておる。私はむしろそのほうを要因としては心配をいたしております。いまの国際金融の原因から対米輸出が特に影響を受けるということは、少し長い目で見ましたら、なくて済むというふうに私は考えております。
  204. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 これからの問題でございますので予測は困難かと思いまするが、私は、少なくともこういう措置によって日本の対米輸出の措置をさらに強化をしなくちゃならぬ、もっと配慮をしなくちゃならぬということだけは間違いがないと思いますので、その点は政府にこの点を申し上げておいてこの問題は終わりたいと思います。  次に、いわゆる第三の通貨といわれるいまのSDRの問題でございまするか、これはやはりこの共同コミュニケによる国際通貨の安定というものと一連の関連にあり、あるいは、これがむしろバックになっておると思うことでありまして、したがって、これが早期実現に努力をしなければならぬと思うのであります。まだ未調整部分があるようでございまするが、そういったような調整も行ない、そうしてこれを早期に実現する。あるいはまた、これは当然国会の批准を要する問題だと思いまするが、そういったような調整の問題、あるいは国会の批准というようなことも考えて、一体どういうような経過なり、あるいは大体いつごろこれが動きだすか。と申しますのは、その間もちろん国際的なこれ以上の通貨の変動はないと思いまするが、やはりこれを早期に実現して、これと一緒になって通貨を守ってくいという姿でなければならぬと思いますので、そういった今後のお見通し等についてお伺いをいたしたいのであります。
  205. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 昨年の総会では、三月一ぱいに成案を得てそして各国の批准を求めるということでございました。そうしますというと、大体今年度一ぱいはかかって、早くても来春になるだろうという予想でございますが、情勢がこうなってきますと、各国は、やはりSDRは早く創設することがいい、また、これがぐずついていることは国際通貨の一つのまた不安の原因にならぬとも限らぬ、できるだけ早いほうがいいというのが国際的な空気のようでございますので、今月末の十カ国蔵相会議で大筋の話がまとまってきますというと、もうそこで成案が準備されて、各国の批准を求めることになろうかと思いますが、各国ともこれを早めるという方向へ協力するということになるのじゃないかと思います。そうしますというと、本年中にもこれはできるというような可能性も私はあると思います。
  206. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 これは大きな問題ではございませんが、国内問題として政府の今後とる産金政策についてお伺いをいたしたいと思います。  その前に、日本の民間需要量、それから日本の金の生産額の数字を事務当局のどなたかお示しをいただきたいと思います。
  207. 柏木雄介

    政府委員柏木雄介君) お答えいたします。  四十二年度の新産金の見込みは、大体十五・三トンでございます。
  208. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 民間需要量は。
  209. 柏木雄介

    政府委員柏木雄介君) 一方、需要量のほうは大体二十三・二トンで、新産金でまかない得ない分は、大体政府輸入しましたものを放出してまかなっております。
  210. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 ただいまの数字でも明らかでありますとおり、約八トンばかりの金は現実に外国から入れなければならぬ状況にあるわけでありまして、さらに明年度におきましては十トンくらいの差があるのじゃないかというようなことも承っておるのであります。このような、一方に金の自由市場ができまして、そうしてこの自由市場の価格は自由にせられるというような国際情勢の変化にもなりましたし、また、自由市場の金の価格は当然、何ドルになるか、四十ドルになるか、五十ドルになるか今後の推移を見なければわからないわけでありますが、とにかく高くなることは、これは間違いないことで、こういうような情勢の変化もございますので、日本の産金政策についてもこの際検討する時期ではないかと思うわけであります。あるいはいまの六百六十円ですか、これをさらに引き上げるという問題もございましょうし、あるいはこれが都合が悪いということになれば、やはり積極的に金の開発を行なう。もちろん、資源は少ないわけでございまするが、採算制の点でまだ放置された資源は日本に残っておると思うのでございまして、こういう際にその産金政策というものを強化していくお考えはないのかどうか、お伺いをしておきたいと思います。
  211. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 金の自由市場ができまして、相当金の値段が上がるということがございましても、わが国の金は非常に高い値段でございます。したがって、産金奨励のために、いままでのことから見ましたら、一グラム四百五円に対して六百六十円というのですから、六、七割の関税をかけて擁護すると同じような産金の保護をやっておりますので、今回のこの二重価格制ができて外国に自由市場ができましても、まだ日本の金のほうが高いと思いますので、これを簡単に変えるというわけにはいかぬじゃないかと思います。そういう保護政策に合わせてこの採鉱費の予算措置も適宜やっておりますので、私は、もう少し海外の様子を見ないというと、いまのところでは日本の産金政策も相当、これ以上はどうかというような気がしております。
  212. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 私は、いま十トンといいますと六十億ドル程度のものではないかと思いますが、しかし、これはまさに国際収支にとりましてはそのものずばりの問題でございまして、国際収支の改善が最高の課題といわれておるときでもございますし、やはりこの金融政策というものについては、今後さらに御検討を願いたいと思いますが、総理大臣いかがでしょう。
  213. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま大蔵大臣答えたように、金の二重価格ができると、いま一グラム四百五円で政府が購入している。それは例の一オンス三十五ドルといいますか、それとちょうど対応しているわけですが、自由相場だと、その六割増し、六百六十円というような相場が立っております。したがって、今度四百五円というものが必要でなくなるというか、その購入をやらないとすると、産金のほうも必ずふえるだろうと、かように思います。産金がふえれば自由市場の金の価格というものがいまのままで維持できるか、これまた少しずつ変わっていく、こういうことも考えなければならぬ。大体日本の金の価格、これはまあ他の国よりも高い。そういう意味で金の密輸入が次次に行なわれておる。その状態から見ましても、日本の価格は、特に自由市場のほうが高い、こういうことが言えるのじゃないかと思います。こんなことを考えると、どちらにしても産金ができれば、おそらく今度は採算がとれる範囲で、産金業者のほうも——産金者といいますか、産金企業のほうも目をつけるのじゃないか。市中で六百六十円に売れるものを、四百五円で政府に買い上げてもらったんじゃたいへん損ですから、その辺にもマージンが出てくるから、今度は金を掘ることも少し活発になるのじゃないか。それが国内においてそういうものが保有されるということになれば、総体として、やっぱりルートに乗らなくても、国内にあるということでさらに信用が高まる、かように私は思いますが、今日、いずれにしても、政府が直接保護までしてやる必要はないことじゃなかろうか、かように考えますが、なお、国内の産金の実情等もう少し把握して、その上で対策を立てるべきじゃないだろうか、かように思います。
  214. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 それでは次に、国際収支の改善に関連をしまして若干お尋ねをいたしたいと思うのであります。まあ経済企画庁の本年一月二十六日に発表せられました「昭和四三年度の経済見通しと経済運営の基本的態度」、この中には、明年度の赤字三億五千万ドル、そうして輸出の目標は百二十一億五千万ドルということに相なっておるのであります。この問題に関連してお尋ねをいたしたいと思いまするが、その前に、ことしの赤字を七億ドルというふうに予想せられておったのでございますが、その問題からお伺いをいたしたいと思います。この一−二月の貿易収支が非常に好転をしておるということを承っておるのでございまするが、その点について、企画庁長官ですか、大蔵大臣ですか、その点についてお答えをいただきたいと思います。
  215. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 一−二月の貿易収支の収支じりは、季節調整をいたしてみますと、確かに従来よりもいい傾向を示しておると思います。でありますが、季節調整そのものもだんだんわが国も変化が激しゅうございますので、必ずしもこれをこのまま信用していいかどうかということもございますので、私どもといたしましては、この貿易の基調が完全にいいほうに向かいつつあるということを、最終的にはまだ判断するには少し早いように思います。  ただ、国際収支全体といたしましては、長短期の資本の流入が、私どもどうしても、こういうものはわかりませんので、控え目に見るわけでございますけれども、思ったよりもいいものでございますから、したがって、総合収支の赤字は、あるいは思っておりましたよりも多少少なくて済むかもしれない、そういう感じはただいまいたしております。
  216. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 いま一度企画庁長官にお伺いをいたしたいと思います。  いまの一−二月の貿易の好調というのには、まあ予定されておりまするアメリカの鉄鋼スト、あるいは輸入課徴金等を考えたこれはかけ込み輸出じゃないか、こういうふうな議論をする者が一部にあるのでございますが、そういった点についてのお考えを伺いたいと思います。
  217. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) その点は、すでに契約を相当前にいたしておると見られますので、その一−二月の段階でかけ込みというようなものはおそらくないと申し上げてよろしいのではないかと思います。ただ、この少し先のことを申し上げますと、鉄などは六月、七月ごろまでの契約をいたしておりますから、そうしてそれは、いま御指摘の鉄鋼ストを考えてのものがございますので、かりに課徴金というようなものが起こってまいりますと、そうして鉄鋼ストの見通しいかんでは、先のものがキャンセルされるという危険は、少し先のことでございますがあると思いますが、一−二月の中にそういうものがあったとは考えておりません。
  218. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 それでは、明年度の国際収支についてお伺いをいたしたいのでございまするが、まずその前に、その基礎条件ともなろうかと思いますので、OECDが去年の暮れですか、発表いたしました、世界経済のことしの見通しというものについて、これもちょっと数字を事務当局からお伺いしたいと思います。主要国だけでけっこうでございます。そうして昨年の数字もあわせて伺えますと……。
  219. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) OECDでは、暦年になっておりまするが、実質の成長率で、一九六七年の場合、アメリカが二・五でございます。六八年の場合四・五を見ております。それからフランスが三・七五が六七年で、四・五が六八年。西ドイツは、六七年はマイナス一でございまして、六八年を三・二五。イギリスが、六七年が一・五、六八年は三あたりを見ております。わが国については、OECDは昨年を一二・五、今年を九という見方を、これは昨年の十二月でございます。したがって、十一月のポンド切り下げが入っておりますが、その後の情勢を織り込んでおりません。三月ごろになりまして、つい先ごろでございますが、 OECDのもう一ぺん内輪の会議がございましたときに、多少これらの六八年の見通しを修正して、アメリカとイギリスについてはもう少し低く、逆にフランス、ドイツ、イタリアについてはもう少し高く、わが国については、この九%よりは多少低いものというものを実際上は考えておるらしゅうございますが、公表はいたしておりません。
  220. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 ただいまの長官のあげられました数字によりますると、全体的に世界経済は拡大の方向にあるということで、日本国際収支の将来には明るい材料だと思うのであります。しかしながら、先ほど後半で述べられましたとおり、その後の世界情勢というものは非常に急変をしておるのでありまして、わが国でも九%の成長率が実際七・六%というふうに、日本ではそういうふうな訂正をした数字で見込みをされておるわけであります。しかしながら、全体として私はやはり拡大傾向であるということには間違いないように思いまするが、しかしながら、今後の国際通貨の情勢等を考え合わせまして、十分にこれは慎重に見守っていかなければならぬと思うのであります。  次に、世界貿易につきましても、その伸び率を OECDで発表しておるようでございまするが、これも、昨年、本年の両年につきましてお示しをいただきたいと思います。
  221. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) OECD全体につきましては、六七年の輸入が五であり、六八年のそれが七と見ております。輸出のほうは、大体おのおの六見当を見ております。世界全体は、たしか六八年を六・五と見ておるはずでございますので、これは六七年に比べますと、一ポイント余りの上昇になるという見方をしておると思います。
  222. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 主要国の経済が先ほど申し上げましたとおり相当拡大の傾向にあり、これが日本の貿易にプラスであることは間違いがないと思いまするが、先ほど申し上げました、この国際通貨の不安は一応除去されたと思いまするが、しかし、金利の上昇や、あるいは引き締め政策というようなものの効果もこれから出てくると思うのでありまして、そういったような点と関連をして、明年の国際収支の赤字が三億五千万ドルで済むかどうか。あるいは、百二十一億五千万ドルの輸出というものの達成が可能であるかどうか。これはなかなかお答えにくいかもしれませんが、ひとつ、その見込みにつきましては、国民も非常にこれは知りたいことだと思いますので、お教えをいただきたいと思います。
  223. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それで、ただいま申しましたように、OECDは、昨年の十二月以後今年に入りましてから、ヨーロッパの国の成長率をもう少し高くすることができるし、それが必要だということを、内輪ではございます、公表はいたしませんが、いっておるわけでございます。そして、今度の金プールの中央銀行のコミュニケにも、同じことをいっておるわけでございます。したがって、ここに一つ期待が持てるということ。それから、アメリカの成長率はもう少し低いほうがいいということをいっておりますけれども、これは、先ほど申し上げましたようないろんな事情から考えますと、そう簡単に低くなれない事情がやはり片方ではあるように思われます。そういたしますと、世界貿易全体の六・五ということはおそらく可能でありまして、わが国のそれに対する弾性値が二・何がしということになるわけでございます。そういたしますと、一割五分ぐらいなことになるのでございますが、これは本来、所信表明の際にも申し上げましたように、相当のやはり努力を本来必要とする数字であったと思います。そこで、今回のように、基準通貨のうちで、ことにポンドについてはいろいろな不安要因がある。いま現在でもポンドの契約というのは御承知のように非常にやりにくうございます。ディスカウントが大きいものでございますから、先物が売れないというような要因が今日現在あるように思います。で、それがまあわが国の成約のたぶん二割ぐらいを占めるわけでございますから、そういう不安定要因——課徴金も不安定要因でございます。早くこういう不安定要因がおさまって契約がなされませんと、どうしても年度のあとのほうへ非常に大きな重荷がかかってくることになると思います。こういう不安定要因を早く除きまして、国内の財政金融政策の運営がしかるべくいきますならば、私は、一五%の輸出増ということは可能である、そんなに無理なことを望んでおるのではないというふうに考えております。しかし、非常な努力を必要といたします。
  224. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 まことに満足すべきお答えを私はいただいたと思っております。  次に、しばしば国会において問題になっておりまして、大蔵大臣もしばしば御答弁をなさっておる問題でございまするが、やはり私も重要な問題であると思いますので、外貨準備の問題について二点ばかりお伺いをいたしたいと思います。  日本外貨準備は、一九六〇年からとってみましてほとんど二十億ドル前後を動いていない状況でありまして、この間に輸入貿易は二倍になっておるというようなことでありまして、何かバランスを少し失っているのじゃないかという感じがするわけであります。特に、今回の国際通貨の混乱にあたりまして、日本世界の三番目の工業国である、あるいは日本の経済が充実して国際的な地位が高まった、こういうことがいわれ、われわれもそのとおり信じておりまするが、こういった金プールにも参加をしていない、あるいは金がなくてできないのかもしれませんが——といったような非常に重大な国際通貨の危機の問題のときに、日本として正式に発言をする場を持たないというようなことにつきましては、やはり私は正貨準備が少なかった、少な過ぎたんじゃないか。こういうふうな観点から見ましても、将来、日本外貨準備というものを、いまやれとは私は決して申しません。やはり貿易の順調なとき、あるいは国際収支のよいときには、やはり外貨準備を増加するということに努力をしなければならぬと思うのであります。  また、けさほど三十億ドルというお話がございましたが、私は、その金額はなかなか判定が、何ぼがいいかという判断はなかなかできないと思うのでありまして、いわば日本も先進国の中に入っておりますので、フランスやドイツのようなふうにやれとは決して申しませんが、やはり先進国で信用を得られるような、国際的に信用を得られる程度というようなところを目標にして、外貨準備を拡大をしていったほうがいいんじゃないか、かように考えますので、大蔵大臣の御所見を承りたいのであります。
  225. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 午前中にも申しましたが、日本外貨準備が少なかった理由は、やはり成長政策にあったと思います。過去十年間における日本の設備投資を見ましても、四十兆円をこすということでございますから、この外貨犠牲はたいへんなものでございます。かりにこれだけの生産力日本が持たないで来ましたとすれば、外貨の蓄積はもっと大きいはずという計算が出ると思いますが、こういう成長期に処したために、外貨準備水準が少なかったということは事実でございます。したがって、こういう成長は今後四十年代は望まれないことがはっきりしておりますので、この過程において、漸次やはり外貨準備をふやしていって、この水準を上げるということへ私どもは骨を折りたいと思います。そういう事情から、日本は十分の外貨準備を持たないということで、国際的な発言権が少なかったというようなことでございますが、金を持たないために、金プールヘは加入できませんでしたが、しかし、日本のこれだけの生産力というものは、決して世界経済の中で無視されるものではございません。十カ国の会議、こういう国際経済会議の中にはもう日本はりっぱな一員としての役割りを果たしておりますし、今回のワシントン会議におきましても、こういうことを七カ国がきめるというようなことについて、日本にも当然連絡がございましたし、私は、過去の日本の国力から見て、国際経済の中における役割りが小さかったということは認めますが、今後、日本はどんどん発言権を増していく過程にいまあるんだというふうに私は考えております。
  226. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 ではこの問題はこれにしまして、別の観点からもう一つお伺いをしてみたいと思います。  日本の経済というものは、常に国際収支というものを軸にして、あるいは引き締めをやり、あるいは解除するというような政策を今日までとってまいっておったわけであります。ところが、この二十億ドルという天井では、すぐ十六億ドルがデッドラインだとかいうようなうわさも出て、これは非常に——たった四億ドル範囲であるいは引き締めたりあるいはこれを解除する——小さい波動に対しても非常にドラスティックな政策をとって、そのために中小企業やその他にも深刻な影響を与える、もう少し長期的な観点に立って財政金融というものの操作をやるべきじゃないか、こういうような議論もあるわけでありまして、私は、これはもっともな議論だと思うのでございまして、したがって、そういうような観点からも、やはり外貨準備というものを拡大していくという方向政府としても努力をしていただきたいと思うのでございますが、この点について御所見を承りたい。
  227. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 全く同感でございます。いま言ったように、外貨準備水準を上げるということと、もう一つは、やはりSDRが創設されるということは、日本にとっては大きいことだと思います。金の保有高によって割り当てられるものではなくて、IMFの出資の割合によって割り当てられるのですから、これの割り当てが出てきますと、これは日本国際収支の天井を上げる大きい作用をなすものでございますので、こういう問題の解決と合わせて、今後、いまおっしゃられたような方向へ進めていきたいと思います。
  228. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 次に、通産大臣にお願いをいたしたいと思います。  ヨーロッパやアメリカとの貿易関係につきましては、概略すでにいろいろお話を承ったのでございますが、やはり日本の明年の百二十一億五千万ドルというものを確保するにあたりまして、私は、やはり日本周辺国といいますか、最近にわかに成長し、むしろ半工業国にまで発展をし、また外貨準備等も相当にたくさん持っておるというような国になりました韓国それから台湾、香港それからタイ、フィリピン、マレーシア、こういった六カ国の貿易というものが非常に重大ではないかと思うのであります。現に大体日本貿易の二〇%のシェアを持っておるわけであります。他の東南アジアの諸国は、パキスタンを除いて、ほとんどたいした増進は期待できないのではないかとも思うのでございますが、ただ、これらの六カ国の昨年の貿易の傾向を見てみまして——時間が要りますので、私が申し上げますが——昨年の傾向を見てみましても、順次第一四半期から暮れに至ってだんだん減少の傾向にあるわけであります。したがって、この東南アジア貿易といいますか、これら六カ国との貿易が順調に今後伸びるということが輸出の目標を確保する道だと思うのでありまして、そういう心配とあわせて、これらの諸国との貿易の見通しあるいは対策等についてお伺いできればお願いを申し上げたいと思います。
  229. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 東南アジアに対する経済協力につきましては、御指摘のとおり、きわめて日本にとっては重要な問題でございます。一九六六年の経済協力の実行額は三億八千四百万ドルということになっております。これの主要部分が、いまおあげになった六カ国を中心とするものであります。それから東南アジアに対する経済協力、わが国の経済協力全体に占める東南アジアの割合は、実に七一%余であります。そういうことで、東南アジア、ことにいまお示しになった六カ国との経済交流は、これは大いに進めていかなければならぬ。また、これらの国の内容も漸次非常に向上しつつあるわけであります。その方向につきましては、いろいろ資本の協力あるいは技術的協力等をはじめとして、各般の産業にわたっていろいろな協力をやっているわけでございます。特に一次産品の開発に——まあほかの文明国と比較すると調整のぐあいも悪いし、保管のぐあいも悪いし、輸送の点についてもすべての点についてまだまだというところでございまして、したがって、今後それが全部商品に反映してくる。それを漸次協力をして、これを引き上げまして、そうして経済力をつけて、それらとの協力、交流関係を増進したいという方針で、いませっかく努力しているところでございます。
  230. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 もう少し端的にさらにお伺いをしたいと思いますが、これら六カ国の明年の貿易額は相当伸びると思うが、どの程度伸びるのかということについてお答えをいただければまことに幸いだと思います。
  231. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) やはり第一次産品の商品としての価値を高めることに協力をするという点ではなかろうかと思います。それからまた、それの加工に関する軽工業、あるいはまたあの地域における漁業の向上のために技術的な協力をするというような点であろうかと思います。
  232. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 それでは次に移りまして、海外援助対策の問題について、これは方針の問題でございますが、お伺いをいたしたいと思うのであります。  日本の対外援助も特に東南アジア援助というものが漸次強化をされてまいっているわけでありまして、私どももも全くこの政府の方策に心から賛成をいたしている次第であります。しかし、ただ私はここで申し上げたいのは、まだそこまでいっておりませんが、かりにOECDの言う総所得に対して一%というふうな線を一応標準として、かりに日本国際収支がどうもぐあいが悪いというようなときには、たとえば〇・七%にするとか、あるいは景気のいいときは一・三%としてこれを補うとかいうような弾力的な援助政策というものは、これは各国とも、私は被援助国にも理解を得られることだと思うのでございまするが、今後こういった対外援助につきまして弾力的な運営をやられるというふうなことをお考えかどうか。これは総理大臣にお伺いしたいと思います。
  233. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 塩見君の言われるとおり、どこでもその国の国際収支などの事情がありますから、そのときの事情に応じて弾力的に低開発国の援助をするということが原則だと思います。しかし長い目で見れば、東南アジアなどは日本の平和といいますか、日本の安全繁栄にも通ずるわけでありますから、ただ日本でいろんなことがもう終わってしまってからやるというのでなくして、相当日本自身も努力するという姿勢が必要である。原則は弾力性を持っていいけれども、ただいろんな理由をつけてできるだけごめんこおむるという態度でなくして、できれば積極的に援助するという姿勢のもとで弾力的な運営をするということだと思います。
  234. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 それでは次に、昭和四十三年度予算関連をして若干お伺いをいたしたいと思います。  大蔵大臣も経済企画庁長官も、財政演説、経済演説で、口をそろえて、ことしは財政硬直化の打開の第一歩を踏み出したということを演説をせられておるのであります。私も確かにこのきびしい国際情勢の中で、財政のあり方について、この慎重なきびしい反省が加えられたと思うのでありまして、この点につきましては深く敬意を表しておるのであります。現に予算の規模なり財政投融資計画の規模におきましても、伸び率は十年間最低である。また公債並びに政府保証債も巨額な減額が行なわれ、あるいはまた、このいわゆる総合予算主義というものも採用せられ、また総理の直接の指示によりまする一省一局削減あるいは公務員の定員縮減、こういうふうな方策がとられましたことは、まことに私は政府のこの御努力、またその結果に対しまして、深く敬意を表する次第でありまして、私は心の底から昭和財政史にとうとい一ページを画したと信じておるのであります。しかしながら、なお両大臣も言っておられますとおり、財政硬直化打開の第一歩をこれは踏み出したにすぎないわけでありまして、さらに第二歩、第三歩の前進をするというためには、いろいろの困難な問題を 勇気をもって、そうして国民の支持を得て実行してまいらなければならぬと思うのであります。したがって、そういった問題に関連をして若干お尋ねをいたしたいと思うのであります。  まず政府の言われる総合予算主義に関連をして、簡単にお尋ねをいたしておきたいと思います。所信表明の施政方針にもありましたとおり、政府は公務員給与については予備費、これは七百億か千二百億に増額せられておりますが、予備費を組んでおる。まあ補正予算は組まないんだというような御方針かと思うのでございまするが、まあ人事院の勧告を尊重するというたてまえと、それから補正予算を組まないという方針と、双方をこの予備費の中で両立をさしていくお考えであるのかどうか。あるいはまた、実際公務員給与に関する人事院の勧告が出てから、もちろん予備費を中心にするが、若干弾力的なことも考えておるというようなことであるか、そのどっちであるか、この点だけをひとつ大蔵大臣にお伺いしておきたいと思います。
  235. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 人事院の勧告をあらかじめ推測するわけにはまいりませんが、勧告が出てきても対処し得るように予備費を今回は非常に増額をしてございますので、この範囲内において人事院の勧告を実現するように最大限の努力を払いたいというのが私どもの考え方でございます。
  236. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 食管についても同じ、繰り入れ額についても同じような方針が打ち出されまして、補正予算を組まぬでもいい、そういう方式を確立すると所信表明演説で述べられているわけであります。私はその実現を期待をしておるのであります。もしかりに、一つの場合を想定して、かりに物価の事情等によってその点が困難になりましても、私は自然増収はほとんど見込み得ないという私自身の判断を持っておるわけでございまするが、なかなか窮屈な明年度予算だと思います。しかし私はこういう際に昭和四十年のような赤字公債を財源とするような補正予算というものは絶対に組むべきじゃないという確信を持っておるわけでございまして、この問題につきましては、そういう観点から、昭和四十三年は絶対に赤字公債を財源とする補正予算を組む考えはないという点をひとつ承ればこの問題についてはけっこうでございますので、御答弁をいただきたいと思います。
  237. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 四十年のような税収不足という事態がないとも限らないと私ども心配いたしておりますが、しかし既定予算範囲内において、いかなることがあっても赤字公債は発行しない、これだけはもうはっきりした方針にしたいと思います。
  238. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 それでは公債の問題について若干お尋ねをいたしたいと存じます。  ひとつ資料をお願い申し上げたと思います。まずGNPに対する各国の軍事費の負担ということについて数字をいただきたいと思いまするが、大体代表的な自由主義諸国四カ国ぐらい、また共産圏の国四カ国、また中立の諸国四カ国という数字をひとつ最初にお示しいただきたいと思うのです。事務当局からでもけっこうでございます。
  239. 佐々木達夫

    政府委員佐々木達夫君) ただいまお尋ねがありました防衛費のGNPに対する割合について御説明申し上げたいと思います。いろいろ取り方がございますが、一応権威のあるものといたしまして、イギリス戦略研究所編のミリタリー・バランス一九六六年・六七年版及び一九六七年・六八年版、両方の資料から申し上げたいと思います。一九六五年度の防衛費は、ソ連は百四十四億ドルでございます。中共が、これは推定でございますが、五十五億ドル、ポーランドが九億二千八百万ドル
  240. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 パーセンテージだけでいい。
  241. 佐々木達夫

    政府委員佐々木達夫君) チェコが七億一千五百万ドルアメリカが五百四十二億ドル、イギリスが五十九億三千七百万ドル、西ドイツが四十六億七百万ドル、フランスが四十二億千五百万ドル、それからインドが十億四千二百万ドル、スウェーデンが八億ドル、スイスが三億五千二百万、ユーゴが同じく三億五千二百万ドルでありまして、GNPに対する割合は、ソ連が四・六%、中共が一〇%、ポーランドが三・四%、チェコが三・四%、アメリカが八%、イギリスが六・八%、西ドイツが五・七%、フランスが四・八%、インドが三・八%、スウェーデンが四・六%、スイスが二・五%、ユーゴが四・七%という数字になっております。なお、六六年、六八年度版につきましても、大体似たような数字が出ております。
  242. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 日本の数字を御説明願いたいと思います。
  243. 佐々木達夫

    政府委員佐々木達夫君) ただいま御審議願っています四十三年度の予算案はGNPに対しまして、これは先般の来年度の見込みでございますが、に対しまして〇・八八%、それから四十二年度のいま執行されています予算額につきましては〇・九一%でございます。
  244. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 ただいまの数字でも明らかでございますとおり、日本の軍事費といいますか、防衛費というものはGNPに対しまして、もう格段に低いわけであります。世界各国にも例を見ない、おそらくは世界の歴史にも例を見ない割合ではないかと思うのであります。ソ連、中共、アメリカの十分の一、また共産あるいは自由主義諸国の大体四分の一程度、また中立諸国に対しましてもやはり四分の一程度という、非常に軽い負担になっておるのであります。こういう現状でございまするが、防衛長官、こういう現状につきまして御所感があれば承っておきたいと思います。
  245. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 塩見さんにお答え申し上げます。  ただいま経理局長から御答弁申し上げたとおりのパーセンテージでございますが、われわれは昨年きまりました二兆三千四百億、その本年度分は四千二百二十一億円でございまして、国民総生産から比べますというと、一%を〇・二%ばかり割るわけでございます。本年はことに財政硬直化に対処しなければいけませんから、この線でよろしい。昭和四十六年までは二兆三千四百億でよろしい、こう考えておる次第でございます。
  246. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 次に、おもな諸国の成長率をお伺いしたいのでございまするが、時間もございませんので、私が先ほどお答えをいただきました主要国の経済成長率をここで読み上げてみたいと思います。昨年の日本の成長率が一二・五%、イタリアが五%、西ドイツがマイナス一%、フランスが四・五%、イギリスが一・二%、アメリカ二・五%。こういうふうな数字を見てみますると、確かに日本経済成長というものは、世界の脅威であり、またずば抜けて高い経済成長率を日本は持っておるわけでございます。  その次に、さらに数字をお伺いしたいと思いまするが、これはなかなか会計制度が違いますのでお答えしにくいかと思いますので、私が一応調査をした結果を申し上げまして、そうしてこれに適当でないという点がございましたら、政府側から御指摘をいただきたいと思うのであります。それは予算の公債に対する依存度の問題でございます。御承知のとおり、もちろんイギリスとフランスはゼロ、それからアメリカが大体八%、それからドイツが最近数年間を見てみますると五%程度ということでございますが、日本の公債に対する予算の依存度、割合は、昭和四十一年、これは補正後におきましても一六%、それから四十二年には一四%、明年も圧縮はいたしましたが、やはり一一%弱というような数字に相なっておるのであります。そこで、私はこの三つの数字をかみ合わせてみたわけであります。すなわち軍事費の負担というか、軍事費の予算に対する圧力は世界で最低である。そうして経済の成長率は世界で最高である。予算の公債に対する依存度は、これも世界で最高であるということになりますと、なかなかこれは奇妙な数字ではないかと思うわけであります。すなわち、経済は高度に成長し、現にことしは九千億以上の自然増収を出しておる。こういうふうな成長経済であり、一方では軍事費の圧力が非常に少ない。その中で世界最高の公債の依存度ということにつきましては、やはり私は公債政策自体に反省を加えなければならぬ問題があるのではないかと思うのであります。もちろん、政府はことし相当の公債の縮減をやられまして、その努力は多とするわけでございまするが、やはり当面、私は財政制度審議会の答申にもありましたとおり、まあふえてやはり五%程度ぐらいの目標にして縮減をしていくということが、節度ある財政の態度ではないかと思うのであります。この点についての御所見を承りたいと思います。
  247. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 財政の持つ景気調整機能を発揮させるというためには、やはり国債の依存率を少なくして、財政に柔軟性を持たせておくことが必要だ。こういうことから、財政制度調査会におきましては、いろいろ研究された結果、報告としまして、ここ数年の間に国債の依存度は五%程度を目標にするようにと、さしあたり四十三年度は一〇%程度が適当だという答申を得ました。で、やはりそういう方向がほんとうであると考えます。私どもは本年度の予算編成においては、大体答申の線に沿った一〇%台の公債発行ということにして、昨年の当初予算に比べて相当の縮減でございますが、やはり自然増が見込まれる以上は、これと対応してまず先に公債の依存度を減らすということが、これからの財政政策重点だというふうに考えて、本年度はそういうふうにした次第でございます。
  248. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 いま大蔵大臣から、景気調整機能の回復のために、という御答弁があったのでございまするが、私も確かにその点からも重要であると思うのであります。現在の公債、もちろん日本は社会資本の充実がおくれ、あるいは社会保障もおくれておるわけでありまして、こういったような点に相当の金をつぎ込んでいかなくちゃならぬというような事実はわかるわけでございまするが、やはり公債というものが、フィスカルポリシーの手段として、相当有力な道具でありますし、現に四十一年度債を発行するときにおきましては、政府はこの財政資金による景気の浮揚をはかる、あるいはデフレ・ギャップを埋めるんだというようなことで発行をしておるわけでありまして、したがって景気の回復期にはこれを縮減をすると、逆に言えば、縮減をするということでなければ、景気調整機能の活用はできないわけであります。まあそういうふうな意味におきまして、やはり身軽になると申しまするか、ただいまお話がありましたような、通常の年は漸減をとって、五%程度にしていくという方針を今後続けていただきたいと思うのであります。政府はことし、昨年の暮れから景気が過熱の気味になりまして、一連の緊縮政策日銀と一緒にとってまいられたのでありまして、その中にやはり公債の発行額を実際に減少しておるという御努力には、私も深く敬意を表するのでございまするが、その間、その点でまだ数字が明確でございませんが、途中でお伺いしたいのでございまするが、この四月の出納整理期間を含めて、一体本年度の当初計上の公債額から幾ら執行上減額されるか、お伺いしたいと思います。
  249. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 昨年七月の調整措置によりまして、公債の発行を、当初の予定額から七百億円削減をいたしました。現在発行の残っておりますのは一千億でございますが、これはこの月末になりまして、歳入のぐあいを見、まだ景気の浮揚に立つものもございましょうし、こういうものを見て、それだけの分は、やはり国債を削減したいと思っております。そのあとは一部市中消化と一部は資金運用部で引き受けるということをもって処理をしたいというふうに考えております。
  250. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 ちょうど公債問題の途中になりまするが、関連をいたしますので、中間でひとつお伺いをいたしておきたいと思うのであります。  まあ、テレビで見ました日銀総裁の談話、あるいは新聞にちらほら出ておるのでございまするが、昭和四十三年度予算の繰り延べについて、大蔵省では何か具体的に御計画があるかどうか、お伺いできたらこの際お伺いしておきたいと思います。
  251. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 昭和四十二年度の繰り延べ措置は、この内外の経済情勢から見まして、これを解除するということがむずかしいと存じますので、これを四十三年度に繰り越すことにいたしました。このことを一応頭に入れて、本年度の予算の編成もやってございますので、当初早々からこの執行の調整というようなことはしなくても済むと思いますが、しかし経済情勢が大いに変わりますので、情勢に応じては、いつでも機動的な是正をする、財政運営をやりたいと、この態度は持しておりますが、一応前年度からズレてくることも考えに入れた予算の編成でございますので、この点は出発早々どうこうということはなくっても済むのじゃないか、というふうに考えております。
  252. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 私がこの質問を申し上げましたのは、まあ国際収支状況等、私は明年度は相当にきびしい環境で財政経済を運営をしていかなければならぬと思うのでありまして、たまたまいまその問題を伺いましたのは、それにも関連すると思ったからであります。明年度そういったような余裕金が予算上出てくるといったような場合におきましては、あるいは自然増収がいま困難と思いまするが、かりに出てくるというような場合には、やはりこれを財源として、この公債の圧縮につとめてまいる、実行上つとめてまいるというような御方針かどうか、その点承りたいと思います。
  253. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) そのとおりでございます。来年はぎりぎりの財源を見積もってございますが、かりにそれよりも自然増収が多いというときには、あげて国債の削減に優先的に充てる、こういう方針でいきたいと思います。
  254. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 実は日銀総裁にもお伺いをしてみたいと思っておりましたが、ちょうど時間の都合が悪いそうでございますので、政府側からお答えをいただきたいと思います。まあ、昨年の四月ぐらいから、この公債の個人消化というようなものが非常に困難になり、また公債の市場価格というものが漸次低落をしてまいりまして、まあ九十円台を割るのではないかというようなことで、非常に心配をされておったのでございまするが、政府は二月にこれが発行条件を変更せられ、またこの五十万を別ワクにする公債の優遇措置を提案をしておられるわけでありまして、こういうような公債の発行条件の変更あるいは免税措置、これはいずれも条件の変更、また条件をよくするということでございまするが、これともう一つ関連をいたしまして、この公債の市中消化の問題でございまするが、この私の調べたところによりますると、この昭和四十一年債と申しまするか適格債、一年計画の適格債のうちで、日銀の買いオペによって約八〇%が日銀に吸収をせられておるというような状況で、いまのこの免税措置、条件の改定あるいは八〇%が日銀に吸収されておるということについては、やはり考えなくちゃならぬ問題があるのではないかと思うわけであります。もちろん日銀は、日本の資金量全体をにらみ合わせまして、買いオペによる適切な資金の調整をやっておるわけでありまして、私は買いオペが悪いというようなことは、毛頭申し上げるわけではございませんが、ただ市中消化に対するこういったことが、どうも市中消化のたてまえから見ておかしいのではないかというような点を指摘しているものが非常に多いわけでございまするが、こういった点について、これは総裁に伺おうと思いましたが、企画庁長官でも大蔵大臣でもけっこうでございますから、ひとつお答えいただきたいと思います。
  255. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) まあ、公債の発行は、その時の経済情勢を見て量的な規制もいたしますし、いろいろ消化が円滑にいくようなことをやってまいりました。日銀の公定歩合の引き上げという短期的な資金措置でございますので、量を調整するというようなことで対処できるかと思いましたが、相当この金融情勢は、長期化する見込みが出てきましたので、そこで条件改定の問題もやはり考える必要があるということでいろいろ対策を立てて、いま市中消化を円滑にやっていこうとしておるのでございますが、これと日銀のオペは、そう直接的に関係があるものでございませんで、日銀の買いオペは、やはり必要な通貨の供給手段として日銀が経済情勢に応じてその額をきめ、やっておることでございまして、これはこれでやってもらうということと、私どものほうは発行の時期を選び、市中の金融情勢に対応したいろいろの措置をとって公債の消化につとめるということをやっておるのでございますが、まあ、こちらでやると同時に、日銀に買わせるのだとか、いろいろな御批判もあるようでございますが、これは直接には、いまのところ関係ございません。
  256. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 公債問題につきまして、私やや詳しくお尋ねをいたしたのでございまするが、これは真剣に、安易な気持ちじゃなくて公債問題には対処していかなければならぬという私の気持ちからであります。また、日本国民にとって、軍事公債その他が、インフレという貴重な代価を払ってゼロになったというような苦い経験が、まだぬぐい去られてしまっておると言えないわけでありまして、したがって、公債の信用を確保し、そしてこの公債が最も堅実な貯蓄であるという国民の信頼感を得ることに、私は、財政当局も、また政府も、あるいは国民も、やはりそういう努力をしてまいらなければならぬと思うのであります。また、ほんとうの財政経済調整機能を果たす上におきましても、やはり身軽でなくてはならぬと思いますし、そういったような観点から、最初に戻りまするが、やはり秩序ある財政というものは、公債を、できるときには縮減をしていくという基本的な線をもって、ひとつこの問題をお扱いいただくように希望いたしまして、公債問題の質問は終わりたいと思います。  次に、税制の問題についてお伺いをいたしたいと思います。  私は、こういう国際情勢下にある日本状況、あるいは国際収支の改善というものが日本の経済あるいは政治の最大課題ではないかと思うのでありまして、こういうふうな時期には、イギリスも増税をやり、あるいはドイツも増税をやり、また、アメリカもいま増税をやろうといたしておるのでありまして、こういった時代に、やはり公債という武器、あるいは増税という武器、こういうような武器をいろいろと取りそろえ、財政経済の調整をやらなければならぬと思うのでありまして、ことしは増税をすべしという意見も相当有力にあったのでありまするが、しかし、いまの状況で実質増税がゼロになったということは、これは政府当局の非常な努力のたまものであるということで、私は高く評価を申し上げたいと思うのであります。所得税の軽減につきましては、これはもう物価調整等の意味からいたしましても、当然の減税、やらなければならぬ減税でございますので、こういう情勢の中でも減税をやられたということを、私は非常に適切であると思うのであります。また、長年そのままに据え置かれて、実質的な減税を毎年続けられてまいりました酒、たばこをもってかわり財源としたということにつきましては、これも、好ましいとは申しませんが、この際としては万やむを得ないかわり財源で、ほかにさがしても、これが一番いい財源だということにつきましても、政府の努力に深く敬意を表する次第であります。深く敬意を表しておりますが、ただ一点だけお尋ねをいたしたいと思います。  これは若干小さい問題でございますので、場合によっては主税局長からの御答弁でもいいかと思いまするが、私は、青色申告と白色申告の権衡の問題についてお尋ねをいたしたいのであります。その前に、多年の懸案でありました青色申告者に対する完全給与制というものが本年から実現を見たことは、まことにこれは好ましいことだと思っておるのであります。  そこで、まずお伺いしたいのは、いままで、これらの方は二十四万円の専従者控除を受けておったのでございますが、完全給与制になっての控除額は一体どの程度政府は見込んでおるか、その点ひとつお伺いしておきたいと思います。
  257. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 確定申告の期限が三月十五日で、税務署に届け出があったところでございますので、これからこの問題は調査したいと思っておりますが、いまのところ、どれくらいになるかということは、はっきりちょっと想像はいたしかねる。今度初めてのことでございますので、今度の届け出によって大体の数字はわかるだろうと思っております。
  258. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 減税予算の見積もりの場合の単価としての金額は幾らでございましょうか。
  259. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) それは相当高いのがあるだろうと思われると同時に、また、安いものも考えられるというようなことから、一応従来どおりの二十四万四千円とさしてもらいます。
  260. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 それでは、お答えは求めませんが、私の意見を言わせてもらいたいと思います。  現在の二十四万円が二十四万円で済むということは考えられてはいないと思います。二十四万といえば、中学の卒業生の月給でございます。したがって、やはりこの金額は、実際やってみたら、やはり完全給与でございますので、相当上回ってくるのじゃないか。あるいは、それが二十七万円になるか、八万円になるか、三十万円になるか、三十二、三万円になるかということは、これは、おっしゃるとおり、結果を見てみなければわからないでしょうが、私は、これはやはり相当程度上がると思うのであります。  それで、白色の申告者の専従者控除というものは、これは十五万円に据え置かれておると思いますが、次に、ついででございますが、関連をいたしておりますので……。それでは、住民税、事業税の青色白色の去年とことしの専従者控除の金額をお教え願いたいと思います。
  261. 細見卓

    説明員(細見卓君) お答え申し上げます。  住民税、事業税同じ金額でございまして、昨年、四十二年までが八万円でありましたのが、今回十一万円の改正案が提出されておるわけでございます。
  262. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 その次に、もう一つ、青色申告者の最近三、四年の数字をひとつお教えいただけますか、国税のほう、個人。
  263. 細見卓

    説明員(細見卓君) 申し上げます。  三十七年からここに手元に数字がございますが、青色申告者の数で申しますと、三十七年が五十五万九千人、中間を飛ばさしていただきまして、四十一年が九十七万五千人で、納税者に対する割合を参考のために申し上げますと、三十七年が三六%であったものでありますが、これが四七%になっております。なお、これは、農業とか、全部突っ込んでおりますので、営業所得者だけで見てまいりますと、五八%という数字を四十一年度に示しております。
  264. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 以上の数字を基礎にしてお尋ねをいたしたいと思います。  まず、この完全給与制になれば、私は、その控除額が二十四万円より以上になるということは、これは確実だと思います。白色のほうは十五万円で据え置かれておる。それから住民税、事業税を見てみますると、青色申告と白色申告の格差が拡大をしていっておるんですね。そこで、私は、もちろん、青色申告というのは、中小企業の近代化のために、あるいは経営の合理化のためにも、あるいは税務のほうの徴税上の能率化のためにも、やはりこれは相当奨励をして優遇措置を講ずるということには異論はないわけであります。しかしこれは、たしか昭和二十六年からこの制度が採用されまして、そしていま白色として残っているもののおおむねが、私は、どうも税理士も雇えない、記帳能力も少ないというような人たちが白色の中に相当多数含まれておるんじゃないかと思います。したがって、やはり税金というのは公平でなくちゃならぬ、租税負担の公平というたてまえから見ると、こういうふうに白色と青色の間に格差があり、その格差が拡大していくということは、いささかここに疑点があるんじゃないかと思うのであります。ただ、先ほど数字をいただきましたが、五十五万人から九十七万人というふうに青色申告がまた相当にふえておる時代でございますので、やはりこの制度の効果はあると思います。思いますが、やはりもう一つ、この負担の均衡という立場から、もう再検討してもいい時期に到達をしてきておるんじゃないか、かような感じがするのでございまするが、大臣の御所見を承りたいと思います。
  265. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 青色申告の法人企業のほうは、もう普及率が八〇%ということになりましたので、ほとんどの法人が採用しているというところまで来ましたが、まだ個人においてはそこまでいってない、半分ぐらいしかいってないというようなことでございまして、まだ普及の余地が相当あるために、できるだけ青色申告の普及という方向へ努力しておりますが、しかし、将来の問題としては、この格差をなくしていくことが望ましいことでございますので、いま言いました完全給与制の実施によって、青色申告のほうの実際の数字が出てまいりましたら、これとの対応において、白色申告のほうの問題もこれに対応して解決していく、格差を開かせないようにするというような態度は、これからやっていきたいと思っております。
  266. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 時間がなくなりましたので、自治大臣にお伺いをいたしたいのであります。  国の財政の硬直化の問題がいろいろ言われておりまするが、私は、地方財政の硬直化が実際はもう少しひどいのではないかとすら考えておるわけであります。たとえば、府県制をとりましても、明治百年——明治百年と歴史をともにして、昔のままの府県制がそのまま今日まで存続をしておるというようなことでございまして、したがって、この府県制の問題、府県の問題につきましては、すでにこの合併に関する法律案が提案になっておるわけでございまするが、これを促進をするという政府のお考えはないのかどうか、ひとつお伺いしたいと思います。
  267. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) ただいま合併の促進法を提案いたしておりますが、一日もすみやかに御決定をお願いいたしまして、促進いたしたいと思います。
  268. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 次に、市町村合併につきましては、私は、今日まで非常に大きな実績と、そうして地方自治の上に大きな貢献をしてまいったと思うのであります。しかしながら、今後の問題を考えてみますると、やはりもう一ぺん、ひとつ新しい角度から合併を促進をする、あるいは広域行政を強化するという方向でまいらなければならぬと思うのであります。自治省では拠点都市ということをお考えになっておるような新聞も見たのでございまするが、この拠点都市も、周辺の合併を伴わない拠点都市というものは、私はそうたいした意味がないと思うのでありまするが、合併はなかなかそう急に……。いろいろな事情がございましょうが、方針としては、やはり拠点都市には合併というふうに、さらに新しい角度から合併を促進をしていくというようなことについての御所見があれば承りたいと思います。
  269. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 市町村合併につきましてはかねて努力いたしまして、最近は、弱小町村というものはだんだんなくなってまいりましたが、まだ、いろいろな角度から広域行政が要請されておるわけでございます。その一つに府県合併なども考えられるわけでございまするけれども、やはり地域全体の盛り上がりがなければ、なかなか制度をつくりましても、うまくいきません。制度は新しくつくってまいりますけれども、やはり行政指導はそういった方向へ進めてまいりたいと考えております。
  270. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 それでは、時間もございませんので、最後に、定年法の問題についてお伺いしたいと思います。  まず第一に、政府は、この国会に提案する予定であるかどうか、承りたいと思います。
  271. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 提案するつもりでおります。
  272. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 私は、まことにけっこうな御答弁をいただいたと思います。実は、この定年法の問題につきましてはいろいろ問題がございまするが、実際、いまの他方財政、行政の実情から見れば、もう私は、定年法を断行しなければならぬ時期だと思います。もちろん、各自治体、団体によって事情が違いますので、政府が考えられておりますとおり、やはり条例によってそれぞれの特殊事情に応じた適用をやるということにつきましては、政府の深く考えておられると承っておる方針にも大賛成でございます。したがって、これが提案並びに成立につきましては、政府の御努力を要請いたしまして、大体時間がまいりましたので、これで私の質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。(拍手)
  273. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) これにて塩見君の質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたしますが、次回は、明後日午前十時に開会いたします。    午後五時八分散会      —————・—————