○竹田現照君 私は、
日本社会党を代表して、ただいま
議題となりました
海外経済協力基金法の一部を改正する
法律案に対し、
反対の意を表明するものであります。
今日、いわゆる南北問題が歴史的な課題として登場し、先進国と
発展途上国との間の格差の解消が真剣に
検討されつつあることは周知の事実であります。
わが国が、東南アジアにおける唯一の先進国として、開発途上にある諸国に対して応分の援助を果たすべきことが
期待されていることも否定できないのであります。
昭和三十五年に本法の成立にあたって、わが党が
附帯決議を付して賛意を表しましたのも、こうした世界史の流れの中で、
わが国もその国力にふさわしい貢献をすることに心から
拍手を送ったがためであります。
しかるに、今回の法改正の背景並びにその
内容を見るに、基金法の本来の
趣旨を著しく逸脱するばかりか、そのねらいはきわめて政治的であり、
国民的
利益とまっこうから反した危険なものと言わざるを得ないのであります。
第一に、今回の改正案は、その目標をインドネシア援助に置いている。そのことは、深刻なドル危機によって窮地に追い込まれたアメリカの強い要請を受けて、ドル防衛
協力の一環として東南アジア援助の肩がわりを行なうものであります。すでにドル防衛
協力が
日本の国際収支悪化を助長し、外貨準備を弱め、ドルよりも円の防衛すらおぼつかない危険な状態にあることを
政府は十分認識すべきであり、安易な考え方は直ちに捨て去るべき時なのであります。
第二に、基金法の改正によって、基金を通じて開発援助に加えて商品援助が行なえることとなり、消費物資の援助ができることとなる点であります。
これに基づいて、昨年きめられたインドネシアヘの六千万ドルの援助が
実施されるわけでありますが、これによってインドネシア援助拡大のためのパイプが開かれることになったのであります。報道によれば、すでに
政府は一億ドル程度に上積みする意向を固めたと伝えられております。これは、アムステルダムにおける債権国
会議で、
日本が援助することを要請されたインドネシアの焦げつき債権三億二千五百万ドルの約三分の一相当分であります。
佐藤総理は、今
国会開会中の三月二十八日に、
日本の援助増額要請のため来日したスハルト大統領に対して、野党の追及をおそれて確約を与えなかったのでありますが、会期末に至り、増額を打ち出そうとしていることは、明らかに
国会軽視であり、
国民を侮辱するものであります。
基金法施行以来、最大の貸し付け国は韓国と台湾であり、これにいまインドネシアを加えることは、とりもなおさず、これは中国を取り巻く反共体制の
強化であります。同時に佐藤内閣の中国敵視政策の端的な証明であり、佐藤・ジョンソン共同声明による安保体制
強化と軌を一にするものでございます。基金法の目ざす開発と援助を待つ国々は、これら諸国のみでなく、インド、ビルマ、カンボジア・北ベトナム、さらには北朝鮮、中国をも含む広範な国々であるべきであり、真に援助の必要とされ、また、援助が
効果をあげる国々にあまねく行き渡るべきであります。この点において基金法改正はまさに逆コースであります。
第三に、インドネシアの持つ債務は、一九六六年六月末現在、二十三億五千三百万ドルとなっており、
わが国の債務は債権国中きわめて少額であるにもかかわらず、債権国として果たした
役割りは、債権国
会議以前に三千万ドル、債権国
会議後に六千万ドル及び四千五百万ドルの再融資と、最高の援助をしているのであります。その陰に、政界、財界の策動があり、
特定商社の暗躍が見られたことは、この支払いを受けた大手十六商社が、四十一年七月から今日まで、約九千万円の政治献金をした事実からもほぼ推定されるのであります。しかも、焦げつき債権に対しては、輸出保険特別会計からの保険金支払いが百八十二億円にのぼっており、インドネシア焦げつき債権を持つ大手商社債権の九〇%が穴埋めされたのであります。このように海外援助費が黒い霧のもとに乱用されつつあることは、すでに本院におきまして同僚議員によって追及されたところであります。この巨額の援助がどのように使われたかといえば、昨年の六千万ドルの援助に対するルピアの積み立て金の大半は、軍人を含む
政府職員の給料支払いに充てられたことが
審議の中で明らかにされたように、過去においても
目的を果たさないダムの
建設、役に立たない
船舶の建造等、例をあげれば、援助に伴う汚職やスキャンダルには切りがありません。
第四に、現在、経済援助の多くの割合を占める円借款、再融資等は
国会の議決事項となっておらず、
国会の
権限は
政府予算として
提出された資金並びに国庫配分について
審議されるのみにとどまり、その他一切の行為は、
政府並びに輸出入銀行、海外経済
協力基金等にまかされ、その
運用をはじめ、対象金額の決定等、
政府の
権限はきわめて大きいのであります。しかるに、年々膨張する援助費に比較して
国会の
権限が微弱であり、これを
強化し、経済
協力の取りきめは、すべて
国会の
承認ないし議決事項とすべきであります。
基金法の改正により、商品援助が加わることにより、業務が拡大されるわけでありますが、基金業務の範囲、輸銀との関係など、その位置づけについて多くの問題を残していることは、すでに
審議の中で明らかにされたとおりであります。
国民の血と汗の結晶である税金が、国の機関を通じてルーズに海外にばらまかれ、
国民の代表がこれを十分に監視、監督できないような法改正は、とうてい許すわけにはいかないのであります。
最後に、
政府は、本年度予算編成にあたって、財政硬直化を口実にして
国民生活を圧迫し、
国民大衆に犠牲をしいる予算を組んでおきながら、海外
協力費については、防衛費などと並んで、本基金をはじめ輸銀等に対して優遇するなど、本末転倒の予算を組んだのであります。しかも、きびしい国際経済情勢の中で、ベトナム和平も道が遠く、いつドル切り下げが起こるかもしれず、景気引き締め
強化が必要となっているおりから、中小零細
企業の倒産は激増の一途をたどり、低所得層の
生活はますます押し下げられているのであります。
国民生活を忘れて、誤った対外援助に走ることの愚は、
国民のきびしい審判をいつの日か受けること必定であります。
政府は、いまこそ、これまでの経済
協力のあり方を正し、
国民の
利益と被援助国の民衆の自立と福祉
向上にかなった経済
協力の道を探り、真の南北問題解決のため、国際平和と善隣友好の原則に徹することを要望いたしまして、
反対討論を終わるものであります。(
拍手)
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