○達田龍彦君 私は、日本社会党を代表して、今日、国民の重大な関心と大きな政治問題となっております、アメリカの
原子力潜水艦ソードフィッシュ号にかかわる異常放射能事件に関して
質問を行なうものであります。
すでに一部
報道され、国会でもたびたび取り上げられているように、この事件は御承知のとおり、去る五月六日、佐世保港においてアメリカ
原子力潜水艦ソードフィッシュ号の入港中に起こった異常放射能にかかわる事件であります。私はこの問題を本
会議で取り上げるにあたり、
政府に対し、強い憤りと不信を表明するものであります。(
拍手)
それは、六日、佐世保における測定の結果、異常放射能が認められたにもかかわらず、
政府は故意に公表を避け、隠蔽した事実であります。この事実を故意に隠蔽した
政府の意図は、国民が常に
原子力潜水艦に抱いている危険性を
政府がおそれて公表を避ける意図であったことは間違いありません。との
政府の態度は、いかに弁明しようとも、断じて容認できないものであります。これこそ
政府みずからが、国民が
原子力潜水艦に持っている不安と疑惑を一そう増大させただけでなく、原子力平和利用三原則の基本精神を踏みにじった憎むべき行為であり、佐藤内閣に対する国民の不信はまさにきわまれり、と言わなければなりません。(
拍手)一体、
総理はこの
政府の欺瞞的態度についてどのように国民に責任を感じ、また、その責任をとろうとされておるのか、まずお
伺いをいたしたいのであります。
御承知のとおり、
原子力潜水艦の寄港は、三十九年八月二十八日、日本
政府が正式に
承認したことによって、今日まで二十数艦の寄港を許してきたのであります。わが社会党は、当初から一貫して
原子力潜水艦の入港反対の立場を貫いてまいったのであります。
その反対の主張と理由の一つは、安全性の問題にあったのであります。世界の唯一の被爆国である国民感情を無視し、しかも、安全性に大きく不安と不備のある
原子力潜水艦を寄港させることは、国民の
生命と
財産を危険にするばかりでなく、日本の安全と平和をおびやかすからであります。今日、日本
政府が
原子力潜水艦の安全性を主張しているのは、科学的に実証された安全ではなく、アメリカ
政府が安全を保証しているから、これを信頼する以外にないという安全性であり、全くの政治的安全性であります。しかしながら、この
政府の主張する安全性が、わが社会党が当初から主張したごとく、いかに安全性のないものであり、何ら科学的根拠も裏づけもないものであるかは、今回のソードフィッシュ号の異常放射能測定により、完全に実証されたのであります。
従来から安全性の問題点として激しく論議してきたことは、衝突など不測の事故による海難の問題と、原子炉から出る冷却水や廃棄物の投棄の処理の問題にあったのであります。しかし、これもたとえば海難事故の一つをとらえてみても、アメリカ
政府の説明では、今日まで百回以上各国の港に寄港したが、事故がないから安全であると言っているのでありまするが、日本のような船舶の出入りのきわめて多い港で、かりに百一回目に事故が起こらないとは、だれも保証できないのであります。また、冷却水や廃棄物の処理についても、アメリカの立場は原子力の軍事利用が重点であり、日本の立場は平和利用である限り、基本的に処理についても大きな相違があるのであります。ましてや、
原子力潜水艦が軍艦である以上、核推進装置の設計
構造に関する資料は軍事機密に属することとして、アメリカ
政府がこれらの資料を安全審査のために提供しない立場をとる限り、科学的な安全を
確保することは全く不可能であります。アメリカ
政府が安全を保証しているから、これを信頼するという安全でしかあり程ないところに大きな不安と危険があるのであって、今日の事態を招いた最大の原因もここにあるのであります。
そこで、私は
総理に
お尋ねをいたしたいのは、今度検出された異常放射能の原因について、まず徹底的な究明が行なわれなければならないことは言うまでもないのであるが、その場合、従来までアメリカ
政府が軍事機密として提供しなかった資料の提供がない限り、科学的でしかも完全な原因の究明は不可能と
判断されるが、一体どうお
考えになっておるのかお
伺いをいたします。(
拍手)
さらに、日米合同
調査では、資料入手に優位性を持つアメリカの立場が強調され、結論づけられる可能性が非常に強いが、この日米の専門家からなる合同
調査の機構、運営及び性格を明らかにしていただきたいのであります。この点
科学技術庁
長官にお答えをいただきたいのであります。
次に、私は今回の事件により、はしなくも暴露された放射能に対する監視体制と
調査体制の不備を
指摘しないわけにはまいりません。事件
発生以来今日まで十数日を経過しているにもかかわらず、いまだにその原因の究明ができないのは、放射能に対する監視体制と
調査体制が不備をきわめていたことがあげられるのであります。そこで、過去においても数回異常が測定されているのでありますが、これらの異常測定の原因と結果についても、このずさんな監視体制と
調査体制ではほとんど検査も
調査も行なわれず、
政府の一方的な
判断で処理されていたということは絶対に間違いがないのであります。これが佐藤
総理がいうところの人間尊重の政治の実態であり、国民不在、人命軽視が佐藤内閣の政治の本質であると言われてもいたし方ないのであります。しかも、このずさんな監視体制のもとで発表はすべて、異常がなかったという発表であり、全くでたらめであります。この監視体制は見ようによっては、異常なしという
報告をするための監視体制であって、事故や異常を
発見、解明するためのものではないと言っても言い過ぎではないと
考えるのであります。これが佐藤
総理が言う、アメリカ
政府の言う安全性を信頼した監視体制のあらわれであるとするならば、国民を愚弄するもはなはだしいと言わなければなりません。
そこで、
科学技術庁
長官に
お尋ねをいたしまするが、今後のこの監視機能と
調査機能の両体制をどう根本的に立て直そうとされるのか、御
方針を承りたいのであります。また、そのずさんな監視、
調査の両体制の不備のために、今回の異常放射能の原因究明ができなかった場合の責任は、一体どこに責任があり、だれがおとりになるのか、その態度を明らかにしていただきたいのであります。
さらに、この放射能測定の結果は、原子力利用三原則にのっとり、そのつど結果の
報告ではなく、測定表を含む
関係資料を国民に公表すべきであると
考えるが、いかがですか、具体的にお答えをいただきたいのであります。
次に私は、今回の事件
発生後における
政府の政治姿勢についてお
伺いをいたしたいのであります。
先般、
政府は原因究明の目的をおって、科学者による専門家の
調査を行なわれたようであります。その結果、異常放射能の原因は、一部に言われた電気系統のスパーク説や、レーダー影響説でないことが、科学的に検証された結果判明したのであります。したがって、他の原因ではないことが解明された以上、原因は放射性物質と
考えることがきわめて常識的であります。したがって、その源泉を持っているソードフィッシュ号を疑うのは当然であります。専門家もこれを認め、
新聞等に公表しているところであります。ところが、ふしぎなことに、日本の外務省は、「アメリカ
原子力潜水艦が原因だという可能性は全くない」とか、「専門家による
現地調査は原潜には無
関係であるという前提に立っての原因
調査である」とか言っているのであります。アメリカの国務省や国防省の言明ならともかく、日本の外務省がこういう
発言をするのは本末転倒であり、日本の国権と国益を守る立場にある外務省のとるべき態度ではなく、断じて許すことのできないところであります。まして、本事件の本質究明は、政治的干渉を排して、純科学的立場で究明されるべき性質のものであります。今日までこの種の
関係事件が、この外務省筋の態度に象徴されるように、純科学的立場を没却し、政治的立場で
判断され、処理されていたところに大きな問題があり、今日の事態を招いた要因があるのであります。この外交姿勢こそ、自主性も独自性もない従属と追従の外交であり、
総理が常に好んで使う日米一体化外交の本質を端的に示しているものと言わざるを得ないのであります。
そこで、外務大臣に
お尋ねいたしたいことは、今回の事件に対して、外務省はどういう外交
方針をおとりになるのか。また、今日までアメリカ
政府との間にいかなる具体的外交
対策をとられたのか。特に、去る三十九年の八月二十八日、
原子力潜水艦の寄港
承認を前にしてアメリカとの間に取りかわしたいわゆる口上書の中で、安全性にかかわる部分の変更を求めるべきであると
考えるが、その意思があるのか、お
伺いをいたします。
最後に、
総理にお答えをいただきたいのであります。
今回の
原子力潜水艦ソードフィッシュ号の異常放射能事件によって明らかにされたごとく、
原子力潜水艦に対する危険性と国民の疑惑はますます深まり、同時に、日本
政府に対する国民の不信感はさらに強くなっておるのであります。さらに、
現地佐世保市民や長崎県民は、放射能汚染による人体と
生命に及ぼす影響の悲惨さと苦しみを身をもって体験しているのであります。戦後二十三年の今日、いまなお放射能汚染によるいわゆる原爆病のために病床に伏し、あるいは不自由なからだで生活を続けている原爆被災者の現実の生活をまのあたりに見ているだけに、今回の放射能放出事件は最大のショックであり、その不安と不信と怒りは言語に絶する深刻なものがあるのであります。長崎県民や佐世保市民は、今日初めて暴露された
政府の全く無策の安全
対策と、現実となった
原子力潜水艦の危険性について、いまさらのごとく、国民不在、安全無視のこの現実の前に、怒りよりも恐怖の中におののいているというのが、偽らない市民や県民の感情であります。したがって、この国民の
政府に対する不信と疑惑と恐怖の感情を解消するための
総理に残された道は、ただ一つであります。それは、原因究明まで
原子力潜水艦の日本寄港を認めないことはもちろん、今後一切の
原子力潜水艦を含む原子力艦隊の寄港を断わる決意を国民の前に明らかにすることであると
考えます。(
拍手)この決意を表明することこそ、国民に不安と不信と恐怖を与えた最高責任者としての責任ある態度であると確信いたすものであります。
総理の決意と御
所見をお
伺いして、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣佐藤榮作君
登壇、
拍手〕