運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1968-05-13 第58回国会 参議院 本会議 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年五月十三日(月曜日)   午前十時七分開議     —————————————議事日程 第二十号   昭和四十三年五月十三日    午前十時開議  第一 国務大臣報告に関する件(沿岸漁業等   振興法に基づく昭和四十二年度年次報告及び   昭和四十三年度沿岸漁業等施策について)  第二 石炭鉱害賠償担保等臨時措置法の一部を   改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  一、政治資金規正法及び公職選挙法の一部を改   正する法律案閣法第一〇八号)(趣旨説   明)  以下 議事日程のとおり     —————————————
  2. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 諸般の報告は、朗読を省略 いたします。     —————————————      —————・—————
  3. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。  この際、日程に追加して、  政治資金規正法及び公職選挙法の一部を改正する法律案閣法第一〇八号)について、国会法第五十六条の二の規定により、提出者からその趣旨説明を求めたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。赤澤自治大臣。    〔国務大臣赤澤正道登壇拍手
  5. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 政治資金規正法及び公職選挙法の一部を改正する法律案について、その趣旨とその内容の概略を御説明申し上げます。  昨年政府は、第五次選挙制度審議会答申に基づいて、政治資金規正法及び公職選挙法所要改正を行なうため、政治資金規正法及び公職選挙法の一部を改正する法律案を提案いたしましたが、審議未了となったことは御承知のとおりであります。  政府といたしましては、選挙制度審議会答申趣旨、並びにさき国会における論議の経緯などにもかんがみ、現実に即しつつ政治資金規制改善をはかるため、引き続き検討を重ねてまいりましたが、このたび成案を得て、この法律案提出した次第であります。  次に、この法律案内容について、御説明申し上げます。  まず、政治資金規正法改正についてであります。  第一に、政治資金寄付制限についてであります。  まず、寄付総額につきましては、個人のする寄付にあっては最高額を一千万円とし、会社その他の団体のする寄付にあってはそれぞれの団体規模に応じて制限を加えることといたしました。この場合、会社のする寄付については資本または出資金額労働組合等のする寄付については組合員等の数、その他の団体のする寄付については前年における経費の額を基準として、それぞれの団体規模に応じつつ、ある程度弾力的にその限度額を定めることといたしました。  また、これらの制限額範囲内において寄付をする場合には、政党及び政治資金団体に対する寄付については制限を設けないこととし、それ以外の政治団体または個人に対する政治資金寄付については、同一の者に対し、年間五十万円をこえてはならないことといたしました。しかしながら、現在の選挙制度のもとにおいて直ちにこれらの規制を行なうことは、必ずしも実情に即さないので、当分の間に限り、政党及び政治資金団体以外の政治団体並びに個人に対する寄付については、経過措置を講じつつ政党及び政治資金団体に対する寄付限度額の二分の一という別ワクを設けるとともに、その範囲内においては、年間を通じて、同一政治団体に対しては百万円、同一個人に対しては五十万円をこえて政治資金寄付をしてはならないことといたしました。なお、法人その他の団体の負担する会費にかかる収支報告書の記載については、三年間に限り、寄付以外の収入と同じ取り扱いとすることといたしました。  次に、国または公共企業体請負その他の契約関係にある者及び日本開発銀行等政府関係金融機関から融資を受けている会社のする寄付につきましては、当該請負その他の契約にかかる売り上げ高または融資額がそれぞれ売り上げ高総額または長期借り入れ金総額の二分の一をこえている場合においては政治資金の番付を禁止することといたしました。また、国から補助金等給付金交付を受け、または資本金等出資を受けているいわゆる特定会社その他の特定法人のする寄付につきましても、これを禁止することといたしましたが、これらの場合において、国と直接の関係のない地方公共団体の議会の議員または長の候補者等に対してする寄付については、適用を除外することといたしております。  なお、地方公共団体請負その他の契約関係にある者、地方公共団体から補助金等給付金交付を受けている会社その他の法人等のする寄付についても、国の場合に準じて、政治資金寄付を禁止することといたしました。  さらに、三事業年度以上引き続いて欠損を生じている会社のする寄付、匿名及び他人名義寄付並びに外国人等のする寄付につきましても、これを禁止するとともに、寄付のあっせんにつきましては、寄付者威迫を加えたり、賃金、下請代金等から天引きして寄付を集めることのないよう措置することといたしました。  以上の政治資金寄付制限と関連して、その違反者に対する所要罰則規定を設けることといたしております。  第二に、政治団体届け出並びに収支報告及びその公表等についてであります。  まず、政治団体届け出があったときは、その内容公表して、これを国民に周知することとするほか、会計帳簿及び収支報告書に記載すべき内容等について改善合理化を加え、政治資金公開趣旨を徹底するとともに、政党及び政治資金団体収支報告書には、当該団体の行なう自主監査意見を記載した書面を添付することといたしました。なお、収支報告書提出及びその要旨公表につきましては、年二回を年一回に改めることといたしますが、政党及び政治資金団体並びに上半期の支出額が三百万円をこえる政治団体にあっては、さらに六月三十日現在における収支報告書提出しなければならないことといたしました。  第三に、政党等の定義についてであります。  今回の改正によりまして、政治資金寄付に関しましては一定の制限が加えられることとなり、かつ、政党本位政治活動の推進をはかるため、政党に対する寄付政党以外の政治団体に対する寄付を区別して制限することとなりますので、政党政党以外の政治団体との区別を明確に規定することといたしました。  また、政党中心資金調達を容易にするため、各政党について一の団体を限って政治資金団体を設けることを認め、これに対する政治資金寄付については、政党と同様の取り扱いをすることといたしました。  このほか、党費、会費及び政治活動に関する寄付等についても、その内容を明確にして、規制合理化をはかることといたしております。  以上申し上げましたほか、これらの改正に伴いまして、個人または法人寄付政党または政治資金団体に対してした場合には、その寄付金について課税上の優遇措置を講ずることとする反面、政治家の姿勢を正す意味において、政治家個人に帰属すると認められる寄付については、政治資金寄付であることを理由として課税を受けないものと解してはならない旨を明らかにするとともに、その他必要な関係規定の整備を行なうことといたしております。  次に公職選挙法改正について申し上げます。  第一は、公職候補者等寄付規制についてであります。すなわち、公職候補者等選挙区内にある者に対してする寄付は、政党その他の政治団体または親族に対してする場合及び公職候補者等がもっぱら政治上の主義または施策を普及するために当該選挙区内で行なう講習会等において必要やむを得ない実費の補償としてする場合を除き、全面的に禁止することとするとともに、この場合の講習会等には、参加者に対して饗応接待が行なわれるようなものを含まない旨を明らかにいたしました。また、公職候補者等がその役職員または構成員である会社その他の団体がこれらの氏名を表示しまたはこれらの者の氏名が類推されるような方法でする寄付についても、政党その他の政治団体に対してする場合を除き、一切禁止することとしたほか、後援団体のする寄付等禁止期間を延長するとともに、後援団体以外の団体特定公職候補者等を推薦しまたは支持するものについても、後援団体に関する制限に準じて制限を設けることといたしました。  第二は、連座制等についてであります。いわゆる連座制につきましては、選挙運動実態にかんがみ、数個に分けられた選挙区の地域における選挙運動または多数の選挙人が属する職域または組織を通じて行なう選挙運動を主宰した者をも連座対象者範囲に含めるとともに、公職候補者または総括主宰者等意思を通じて選挙運動をした公職候補者父母配偶者、子または兄弟姉妹については、公職候補者と同属の有無にかかわらず、連座対象者範囲に含めることとし、同居している父母配偶者、子または兄弟姉妹については、公職候補者意思を通じているものと推定することといたしました。  また、選挙犯罪を犯し罰金の刑に処せられた者については、当該選挙犯罪がきわめて軽微なものである場合を除き、裁判所が情状により公民権を停止しない旨を宣告することができる制度を廃止することといたしました。  以上がこの法律案要旨であります。(拍手
  6. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。松本賢一君。    〔松本賢一登壇拍手
  7. 松本賢一

    松本賢一君 私は、日本社会党を代表して、ただいま御説明のありました政治資金規正法改正案に対し、御質問申し上げたいと存じます。  昨年の七月三十一日、私は、臨時国会において、代表質問の第一に政治資金規制の問題を取り上げましたが、そのとき私は、「いま、この壇上に立って、さき国会の推移を考え、その終末を思いますとき、私の感想は、全く唖然たるの一語に尽きるのであります。」と、こう申しました。いま再びこの壇上に立った私の、このいまの感想を表現することに適切なことばは、私の貧弱な語彙の中には見当たらないのであります。(拍手)ただもう、天を仰いで嘆息するのみであります。「あきれた政治資金規制」、「底の抜けた改正案」、「完全に骨なし」、「世にもおみごとな心臓」、「野放し」、「青天井」、「奨励案」等々々、これらは私のことばではありません。権威ある各新聞の第一面から拾い上げたものでありますが、このように各新聞から最大級の悪評を一斉に浴びせられた法律が、日本政治史上かつてあったでありましょうか。(拍手)この改正案の製造元と称せられる松野調査会長でさえもが、みずから「かまぼこ」と言っているしろものでありますから、その内容については、いまさら口にするのも少々ばかげているのですが、せっかく政府が、総理公約手前、お出しになったのですから、一、二拾いあげてみたいと思います。  まず第一に、会社政党に対する寄付制限を、審議会答申はもちろん、去年の政府案——骨抜きといわれたあの案ですが、その政府案ですら二千万円の頭打ちであったものを、今度は、会社が大きければ大きいほど無限大寄付できるようになっている、つまり青天井になっているのであります。しかもこれは、空間的に無限であるだけでなく、時間的にも無限であって、無期限にいつまででも続けられるのであります。  第二に、派閥個人への寄付を当分の間、別ワクとして、政党に対する金額の二分の一まで認めてあるのであります。二分の一というと、しおらしく聞こえますが、これも無限大の二分の一なんですから、やっぱり無限大青天井なんです。ただ、時間的に「当分の間」という期限らしきものがついているだけであります。  そこで、総理にお伺いしたいのですが、いま私が指摘した空間や時間の無限拡大は一体何の必要があってなされたのか。あなた方はよく現実現実とおっしゃるが、この無限拡大現実的と考えておられるのか。従来の実績によっても寄付金額最高三千万円程度といわれておりますが、規制するというからには実績を少しでも押えるというのが現実的な規制であるはずであります。ですから、審議会答申案最高を二千万円に押えたのは、まことに現実的な規制であるわけで、私どももこれは一応認めようという態度であり、現に、あなたが出された昨年の政府案にも二千万円の頭打ちがとられてあったではありませんか。それをですよ、今度は大会社、たとえば、八幡製鉄なら党に対して一億円、派閥に対して別ワクで五千万円、合わせて一億五千万円の献金ができることになっている。さらにもっと資本金が大きくなればなるほど、たくさんの寄付ができる。いわゆる青天井ですね。一体これはどういうことなんですか。何の必要があってなされたのか、はっきりお答えいただきたいと思います。こういうことだから、規正法ではなくて奨励法だと言われてもしかたがないじゃありませんか。幾ら不感症総理でも、これでは大骨が抜けたとお感じになると思いますが、いかがですか。この点重要ですから、あいまいなことでなく、大骨が抜けたと感じるのか感じないのか、はっきりお答えいただきたいと思います。  さらに、派閥に対する献金について、「当分の間」とは一体いつまでのことですか。自治大臣は、「当分の間とは選挙制度が確立するまでのことだ」と言っておられるそうですが、だとすると、これはまさに車の両輪論というものであり、総理が昨年七月、この席で私に対し、「車の両輪論はとらぬ」と答弁されたのと全く矛盾することになりますが、この点いかがお考えでございましょうか。また、会費という名の献金公開について、つい先日も総理は横川氏の質問に対し、「真剣に取り組む」などと力んでおられましたが、これも三カ年お預け、税の優遇措置も三カ年は全額免除景品つきというわけで、何もかも無制限でなければ、「当分の間」か三カ年は野放し、ああ、また何をか言わんやであります。思うに、これは政治資金規制に対する自民党アレルギー体質によるものでありまして、ことに、派閥にとっては生命にもかかわるという恐怖感から、車の両輪論が生まれ、一つ車輪はつくっても、もう一つ車輪ができるまでは回転しないようにつくろうというのが、この改正案だと言うことができるでありましょう。  このような回転しない車輪は、野党が反対してつくらせないだろうし、万一できても、もう一つ車輪である小選挙区制ができるまでは回転しないから安心であるというのが、自民党の諸君の読みでありましょう。しかし、自民党のお家の事情はそれでよいかもしれませんが、佐藤総理の場合は、そうはまいりません。総理は、日本の首相であり、日本国民に対し、回らぬ車輪をつくるとは公約しておられないからであります。事、ここに至るまでに、総理は一体、何をなさったでありましょうか。私は、昨年、あなたの党内リーダーシップの皆無であることを指摘しましたが、あなたは、その後もこの問題について、自民党内の車の両輪論をはじめとする、ああでもない、こうでもないの論議に対し、あなたが国民公約された答申尊重の立場からの、何のリーダーシップも発揮されていないではありませんか。私の知る限り、あなたのなさったことは、昨年末の内閣改造で、この法案担当大臣である自治大臣を更迭されたことだけであります。しかも、その更迭は、この問題に対するあなたの熱意のなさを端的にあらわしたもの。と言うのは、答申案にやや忠実な自治省案なるものをつくった藤枝さんにかわった赤澤自治大臣は、人もあろうに、昨年の国会において、自民党を代表して質問した際、審議会答申を不可解とし、車の両輪論的反対演説をぶった御当人であります。  そこで、私は、総理にお伺い申し上げますが、四百人に余る自民党議員の中には、地方自治のベテランも数あることでありましょうに、一人の赤澤さんをあなたが選ばれた理由は、一体どこにあるのか。審議会答申を不可解だと言った御当人に、答申を尊重した法案をつくれということこそ、まことに不可解なことと思うのであります。昨年の議事録を拝見してみますと、お二人の意見は明らかに対立しておるのであります。その御当人担当大臣に選んだ理由について、不可解でない、明快な御説明を承りたいと存じます。  あわせて、自治大臣にお伺い申し上げますが、あなたは、総理公約である答申尊重に対し、明らかに反対意見であるにもかかわらず、なぜその担当大臣を引き受けられたか。しかも、就任早々記者会見で、「改正案には疑問がある」とか、「通常国会には提出できないかもしれぬ」とか、まるで総理公約を無視したようなことを公言しておられる。そのあなたが、なぜ進んで自治大臣に就任されたのか、あるいは進まぬながら引き受けざるを得なかったのか、その辺の事情なり、心境なりを明快に御答弁いただきたいと存じます。  自治大臣は、その後、委員会で、議員としての自分の意見は別として、大臣になった以上は、法案を通す責任がある。そのためには、よく与党とはかって、通る案をつくるんだと、こう言っておられましたが、総理の指示によりとか、総理の意向をくんでとは一度もおっしゃらない。私は、全くそのとおりだと思うのです。自治大臣が更迭してからというもの、総理はつんぼさじきに置かれたまま、政治資金規正法は、松野試案なるものを土台に、自民党選挙調査会の手によって事実上つくり上げられたようなものであり、総理公約は全く無視され、規正法奨励法へと、まさにコペルニクス的転回を遂げたのであります。この不始末の原因は、あげて、総理公約への責任感のなさと、党内リーダーシップ欠除とにあるのであります。  私は、総理に申し上げたい。あなたが何と抗弁なさろうと、いまここに提案された法案を、国民政治資金規正法とは考えないでありましょうし、あなたの公約を果たすに値するものとは、義理にも申し上げることはできません。また、昨年の国会におけるあなたの不名誉を挽回することはおろか、その上塗りをするものであると言わざるを得ません。このような法案でも国会提出しなければ、公約手前参議院選挙が乗り切れぬとの政府の判断によって、ともかく出してお茶を濁そうということになったのだと、各新聞はすっぱ抜いております。それは全く国民を愚弄するものであり、その責任はあげて総理に帰するものであります。(拍手)  佐藤さん、国民は一年待たされたのですよ。そのあげくが、こんなものを国民の前に投げ出して済むとお考えなんですか。国民はそれで納得するほどばかではありません。去年、私は、この壇上であなたの三つ責任を指摘して、あなたに総理、総裁の地位を去るべきだと申しました。三つ責任とは、第一が有言不実行、第二が党内リーダーシップ欠除、第三が政治不信を高めた責任でありました。(拍手)それに対してあなたは、謙虚に反省し、国民の皆さんに対しつつしんで遺憾の意を表すると言われました。そのあなたのことばから、このような法案が生まれていいものでありましょうか。私は野党の一議員であります。国会かけ引きから、ときにははったりを言ったり、言わずもがなの言辞を弄することもあるかもしれません。しかし、いまの私は違います。この政治の根本問題を論ずるにあたり、国民への責任を感じてものを言っておるつもりです。  そこで、総理に最後にお尋ねします。  一切の行きがかりを捨てて、この法案を撤回し、党内をリードして、少なくとも政治資金規制の名に値する案を参議院選挙後の臨時国会提出することを国民にお約束できませんか。それが今日、あなたが総理として国民を納得させる唯一の道であると考えます。さもなければ、国民参議院選挙において忌憚ない批判を下すでありましょう。この私の提案に対する御答弁をお願いして、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  8. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 松本君にお答えいたします。  政治資金規正法をできるだけ早くという約束をいたしましたが、なかなかできませんで、今日になりましてようやく御審議を受けるということになりましたことは、まことに私は残念に思います。同時にまた、遺憾に思います。ことに、ただいまその内容について、るる御批判がございました。いずれ、これらの諸点は、委員会審議を通じましてそれぞれの主張をひとつ明らかにしていただきたい。私は、この際大事なことは、出された法案をぜひ御審議いただくことであります。  で、この法案をつくりましたことが、ただいま言われるごとく、この答申案とよほど違うじゃないかというお話でございます。私は、昨年の国会における審議経過等にかんがみまして、それでこのたびは考え方を新たにいたしました。そうして、この際は、理想理想だけれども、とにかく成立さすことだと、そうして一歩でもこの問題と真剣に取り組んだその姿をひとつ理解していただくことだ、かように考えまして、今回法案提出いたしたのでございます。ただいま言われますごとく、改悪だとか、あるいは十分でないということは確かにございます。ただいま申し上げるように、この政治資金の問題は、選挙制度の仕組みであるとか、あるいは政治活動実態、あるいはこの民主政治歴史等ともからんでおりますので、まだまだわが国の民主政治はただいまその発展途上にあると、かように私は考えます。したがいまして、その民主政治を育成強化する面からも、この政治と金との悪因縁を断つという、これはぜひとも重要な課題として取り組まなければならないと思います。しかし、同時に、現状を無視して、そうして、いたずらに理想論あるいは観念論に走るということがあってはならない、ここに私どもの苦心があるのであります。どうかその点を十分御審議いただきたいと思います。  いまのようなお話をいたしますと、いわゆる車の両輪論ではないかというお話でございます。私は、過日も申し上げましたように、政治資金規正法案は、いわゆる選挙制度、それと一緒には出さない、それにからまして出さない。政治資金規正法案だけを出したことで、この車の両輪論というものにこだわっていないことはおわかりだろうと思います。したがいまして、この際は、この法案だけについて十分御審議をいただきたいと思います。  次に、今回の案は、ただいま申すように、実際に即したものということでいろいろ猶予期間等を設けております。ただいまの法人寄付法人会費等につきまして、当分の間——年間は暫定的な猶予期間を置いたのでございますが、今回の改正では、この資金公開の原則、これはぜひ守らなければならない、かように思っております。したがいまして、法人会費というような制度は今度は考えない。また法人自身は、現在の社会制度から、日本におきましてはこれを無視するわけにいかないから、法人もやはり資金寄付はできる、かように考えます。ただ、それをいままで会費等で納めておる場合におきましては、いままでは公開しなくてもよかった、こういうようなことがありますから、その経過規定といたしまして、三年間のうちに、出すほうも、また受けるほうも、問題が起こらないようにという意味で、その新しい制度になれるような意味で、今回三年の期限をつけたのであります。また、「当分」の問題については、後に自治大臣からお話をするだろうと思います。  次に、指導力問題等について、いろいろ御心配をいただいておるのです。まことに御好意は感謝いたしますけれども、私どもの党のことは党にまかしていただきたい。私にまかしていただきたい。  次に、赤澤君をなぜ選んだか、かようなお尋ねでございますが、申すまでもなく、大臣は適材適所、こういう意味で私は選んだ、こういうことははっきりいたしておきます。  次に、私の責任についていろいろお話がございました。私も確かに謙虚に反省をし、国民に対しまして、今日になりましてこの法案を出したことについて、まことに遺憾に思っております。この点については、国民に対し私がはっきり遺憾の意を表していることを、この会議場を通じまして表明いたしたいと思います。  そこで、一切の行きがかりを捨ててこの法案を撤回し、新しく出し直せ、こういうお話でございますが、これは御意見として私は伺っておきます。どうか委員会における審議を通じて、皆さん方の御意見をはっきりさしていただきたいと思います。(拍手)    〔国務大臣赤澤正道登壇拍手
  9. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) お答えいたします。  政治資金規制の問題は、ただいま総理も申しましたとおりに、選挙制度の仕組み、政党活動の実態国民政治意識などと、きわめて密接な関係があることは言うまでもありません。非常に複雑な問題でございます。日本民主政治の将来のために、現実に立脚しながら一歩でも前進するという意味で、この改善を進めていかなければならない重要課題であるという認識に立っております。現時点で考え得る改善策を立案したものであります。この問題に対する私の基本的な考え方、姿勢は一貫して変わっておらぬつもりでございまするので、自後、委員会のいろいろな質疑を通じまして明らかにいたしたいと考えております。  寄付制限を、とほうもなく底抜けにしたじゃないか、無限大にしたじゃないかということをお述べになりました。派閥個人に対する寄付制限も、答申や前回の政府案とずいぶん離れているのはどういうわけか、こういうことでございます。現在の選挙制度政治現実を踏まえながら、将来あるべき姿に向かって前進するという意味では、ある程度柔軟な規制措置をとることはやむを得ません。ただいま両輪論などにお触れになりましたけれども、私も終始審議会の席にありまして痛感いたしております。それは、この審議会に対する前総理の諮問は、言うまでもなく、いかにして金のかからない政党本位選挙ができるか、その仕組みを考えてもらいたい、こういうことであったわけでございます。その結論も出ましたけれども、それには一顧も与えないで、お金のことばかり議論をされている。金の面で政治家が全部姿勢を正すということは、私ども大賛成でありますし、また、私ども党のほうもみな、さように考えております。さように考えておりまするけれども、それに先立って解決しなければならぬ問題も多々あるということを、私ども考えておるものでございます。  それから、公開制ということにつきまして、これは総理がきわめて明確にただいま申されましたが、政治資金規制の唯一の骨とも言っていいものは、私は、公開制の原則をいかにして守るか、これをどう担保するかにあると考えております。今度も、国民批判を仰ぐというたてまえから、つまり、ガラス張りでやるというたてまえから、この会費寄付とみなして、同じような規制を加えることといたしましたが、しかし、現在までの法人会費の扱いの沿革や実態から考えてみまして、三年に限って、激変緩和という意味猶予期間を設けたのでございます。  それから、寄付をする側においても、寄付を受ける側においても、円滑に新しい規制に従うことができるように、また、これを犯しますれば罰則もあるわけでございまするので、円滑にやるというだけのことでありまして、決して他意はございませんので、そこはお含みおきをお願いいたします。(拍手
  10. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 多田省吾君。    〔多田省吾君登壇拍手
  11. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、公明党を代表して、ただいま趣旨説明のありました政治資金規正法及び公職選挙法の一部を改正する法律案に関し、総理並びに関係大臣に若干の質問をいたします。  私は初めに、このような空前絶後の悪質なる改正案を、おくめんもなく、また厚顔無恥にも、しかも、提出時期をこんなにおくらせて提出してきたことに対し、心からの憤りを感ぜずにはおられないのであります。(拍手)  総理は、口を開けば、「第五次選挙制度審議会答申を尊重し、小骨一本抜くことはしない」、あるいは「答申が出た暁には、その趣旨を尊重し、勇断をもってその実現に努力する」等の名言を吐きながら、実際には、少しも答申を尊重せず、昨年の政府案よりもはるかに後退した、底まで抜けた改正案提出したのは、まことに国民を愚弄するもはなはだしいと言わざるを得ません。(拍手総理は、その政治責任をどう感じておられるのか、まずお伺いしたい。  私は、もし総理に一片の良心だにも残っておれば、いさぎよくその二枚舌と食言の罪を国民に謝し、党内を指導する力がなく、政権を担当する資格がないことを率直に反省して、総辞職するか、あるいは即刻このような汚らわしい改正案は撤回して、少なくとも答申に沿った改正案を再提出することを強く要求するものであります。(拍手)  そもそも、この政治資金規正法改正は、一昨年以来の共和製糖事件等、一連の黒い霧事件続発に際し、総理自身が、「政界の一部で公党の道義にそむき、国民の不信と疑惑を招いたことは遺憾であり、国民に申しわけない。積年の病弊を根絶するため、積極的かつ具体的措置をとることが私の義務である」とか、あるいは「政治資金規正法改正国民の至上命令である」と言っており、さらに、本年三月の参議院予算委員会でも、「政治資金、これはむずかしい問題を幾つも包蔵しておる。しかし、こういうことでくじけては相ならないと考えておる。私が総理といたしまして、また一党の総裁として、これこそ勇断をもって臨まなければならないものだと、かように思っている」と答えておられるが、今度の改正案のどこにこの総理の発言が生かされているのか。今度の改正案を見ると、会社政治献金は事実上無制限であるし、その上、派閥個人についても別ワクで許し、しかも政治献金は一切非課税、さらに会費名義のものは三年間公開しなくともよい、特定会社献金も事実上の野放しになっているという、おそるべき悪法であります。これでは政治献金があまりにも巨額で、特定会社の利益に結びつき、政治腐敗の温床になって、一連の不祥事件が生まれたという現実に対処して、総理は一体、この底の抜けた改正案で、総理の言う積年の病弊を根絶して、あなたの政治責任を果たせると正気で考えておられるのかどうか、聞きたいものであります。  今度の改正案が発表されたとき、先ほどもお話がありましたが、各新聞は一斉に、「底まで抜けた政府案」「答申あとかたなし」「国民はだまされた」「参院選用に急いで作成」「野放しより、なお悪質」「永久に抹殺せよ」「あきれかえる改悪」「小骨一本抜かぬどころか、背骨まで抜いてしまった」「換骨奪胎」、「ハゲタカに食われた答申」等、その内容の改悪ぶりを報道しました。答申を尊重すると繰り返し公約しながら、答申はすでに、あとかたもなくなってしまっております。今度の改正案の柱となる重要な答申事項が一体残っておるのはどこか、どこにその個所が残っておるか、明確に示していただきたいものであります。  ある作家は、新聞のコラムに、「生きた教育」という題で次のような傾聴すべき主張を述べております。その一部を御紹介しますと、「それにしても政治家のずうずうしさには、いまさらのようにおそれいった。みえも外聞もなく献金を無制限に近いものにし、献金する側にはその分の税金をかけないということにした。つまり、いままでは法に触れていたところを合法化して、なわつきが出ないようにしたのだ。かくて政界と業界のなれ合いは大びらなものになってゆく。こうなると政界疑獄も少なくなるし、日通事件のように政治献金をひねり出すために脱税作業をしなくとも済む。これまでの悪事を法律改正することでたちまち善事に変えてしまう所存である。現代の政治家がこれほどまでに良心を持っていなかったとは思わなかった。これほどまでに国民をだまし、新聞を足げにするとは思わなかった。これは青少年へのいい教育となろう。現在の政治とはこのようなもの、政治家はかくも大たんなる詐欺漢で、そのため法令はどのようにでも変えられることを示す絶好の教材である。日本の将来をになう青少年よ、よく見ておきたまえ」と、私も全く同感であります。総理は、施政方針演説のたびに、青少年に期待する等とおっしゃっておられますけれども、いまや青少年は、ぼろい金もうけは政治家に限ると、あざ笑っております。こんな前代未聞の悪法を提出する総理を、これから永久に日本の将来をになう青少年は何と思うでありましょうか。  次に、寄付限度額について、総理並びに自治大臣に二、三お尋ねいたします。  会社法人団体寄付は全廃すべきであるとわれわれは主張してまいりました。答申では、五年後は個人献金に限る、暫定措置として会社献金は二千万円を限度としており、昨年の政府案も二千万円を限度としていたのに、今度の改正案会社資本金に応じてきめる方法で、事実上限度額がないありさまであります。ちなみに、資本金約千五百億円の東京電力は政党に一億一千五百万円、派閥個人には別ワク法案実施後一年目は八割の九千二百万円、合わせて約二億七百万円の献金ができ、八幡製鉄は一億八千万円、関西電力は一億六千三百八十万円、中部電力及び富士製鉄は一億五千三百万円となり、しかも金額無税ですから、かえって政治献金奨励法政治資金ふんだくり法になっていることは明白であります。(拍手)しかも、特定会社寄付制限も、国または地方公共団体との契約額が二分の一以上、政府関係金融機関からの融資額が二分の一以上の特定会社のみを寄付禁止ということで、昨年の政府案の十分の一以上という規制から大幅に後退して、その結果、政府と二百億円以上も契約のある、かの日通も、大手を振って献金できることになっているのであります。これでは、全くの骨抜きではありませんか。これで政治資金規制になると、まともに総理は正気で考えておられるのか、お聞きしたい。  次に、法人会費公開制についてであります。現在、自民党国民協会や佐藤派の資金源三団体等は、何十億、何億という献金を、ほとんど会費という名義にして会社名を届け出ておりません。不明朗きわまる話であります。昨年の政府案は、法人会費公開にしていたのに、今度の改正案は、法人会費を三年間公開という不明朗な内容にしております。佐藤総理もたびたび、法人会費公開制を公約し、自治大臣も常に「筋だけは通したい」と言い、四月十五日の参議院予算委員会においても、「公開制を貫く考えがあるか」との質問に、はっきり「ございます」と答え、さらに、「公開の方向をとりたい」「決して公開の原則に反することを計画しておるわけでなく、また、そういう方法を検討しておるわけではございません」、こう明言しながら、このように後退した改正案を出したことは、明らかな食言であると思いますが、どうですか。  次に、総理並びに大蔵大臣に、法人献金の税の優遇措置についてお尋ねいたします。  極端な法人税の優遇措置は、全く答申のすりかえであります。しかも、法人税について、従来の損金算入限度額のほかに、政治献金をすべて課税対象からはずしているのは、ひどい改悪ではありませんか。特に政府は、財政硬直化とか財源難を理由にして、国民の怨嗟の声を無視して、五月一日から、酒、たばこを増税したばかりではありませんか。それで、政治献金を無税にするとは、全く国民を踏みにじり、税の公平負担の原則を無視したものと思うが、一体、総理並びに大蔵大臣は、これを何と心得えているのですか。  また、自民党は、「しあわせとくらしを守る自民党」というスローガンを掲げておりますが、政治献金限度額をはずし、極端な税優遇措置をとっていることは、政府与党が献金ルートや金もうけにのみ政治感覚を働かしているということであって、国民大衆の「しあわせとくらし」は完全に無視している現状ではありませんか。(拍手)もしこんな悪法が通ったら、後世の人々は何と言うでしょう。国民が重税で苦しみ、生活難に悩み、そのため一家心中のごとき悲劇もあるのに、政治家は財界と腐れ縁を結び、無税の献金を受け取り、金もうけに狂奔しているのは、国民の血をすする吸血鬼と何ら変わるところはないと批判されるのを、心から憂えずにはおられないのであります。  また、税の優遇措置について、大蔵省は当初反対していたのが、最後に賛成したのは、改正案が通りっこはないからという安易な密約を結んだとの声も聞くが、いずれにしても、あきれ返った話で、大蔵大臣は一体、何を考えておるのですか。  最後に、総理、自治、法務大臣に、実質審査、罰則、連座制について若干お伺いいたします。  届け出に対する実質審査を行なうための法改正、組織整備をする気はないかどうか。  法律上罰則を設けていながら脱法行為の防止ができないような法律は、法律として効果なく、不適当ではないか。これで十分な取り締まりができると思うかどうか。今回の改正案の罰則は軽過ぎるのではないか。  最近、連座制にからんで当落に関係するような重要な選挙裁判が、最終判決まで九年もかかっている。これでは連座制を強化しても意義が薄い。選挙裁判の迅速化に関し、責任ある回答をお願いしたい。  また、かりにこの改正案が強行採決等で通ったとしても、もしもその違反に対して、佐藤総理がかつて政治資金規正法違反で起訴されたが、恩赦によって救われて今日の地位を得たという故事にならって、明治百年恩赦を行なって、結局この種の違反の身も皮もはいで、何もなくしてしまう気なのではないかという疑惑がありますが、これはどうですか。  以上、このような悪質きわまる、腐り切った改正案は即時撤回して、少なくとも答申に沿った改正案を再提出すべきことを強く要求して、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  12. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 多田君にお答えいたします。  政治資金は、政治自身にやはり金が要ります、しかし、その金は、正しいものであり、やっぱり合法的なものであり、明朗なものでなければならない、これは御指摘のとおりだと思います。私も、かような意味政治資金と取り組む、その姿勢には今日も変わりはございません。  ただ私は、この際申し上げたいのは、昨年の審議の経過にかんがみまして、私どもがこの際に法律を成立さす、一歩でもこの規制の実があがるよう、その方向へ向かって前進すると、これが必要なのではないか。私は、政治資金規制につきまして選挙制度審議会答申をしまして、やっぱり政治資金は党費とまた個人寄付によってまかなうのが本筋だと、しかしながら、それには、まだまだ現状ではそのとおりはできないから、五年の猶予をかすと、こういうような答申をしておられます。この点にかんがみまして、われわれは、他の現在の政治活動の実際、あるいは選挙制度の仕組み、あるいは国民政治についてどういう感じを持っているか等々を勘案いたしまして、そうして、実現のできる法案を今回考え、そうして皆さん方の御協力を実は願っておるのであります。したがいまして、ただいま言われますように、りっぱなものでなければいかぬ、理想のものでなければいかぬ、かように仰せられましても、私は、理想理想、しかし現実現実、こうして現実と取り組む、それがやはり政治家政治の姿勢ではないか、かように考えておる次第であります。  そういう意味におきまして、ただいま廃案——いろいろの御批判をいただきました。しかし、私は、甘んじてその御批判は受けるつもりでございますが、今回の法案にいたしましても、答申の基本的な精神は十分尊重しております。そういう点をとくと御審議をいただきたい、これが私の皆さんに対するお願いでございます。  次に申し上げますが、積年の病弊は、これで根絶できるかということであります。確かに積年の病弊というものは、これを一度に解決する妙薬はなかなか見つかりません。私は、積年の病弊と真剣に取り組みまして、そうして忍耐強くこの病弊を根絶する、なくする、そういう意味の努力をこの上とも続けてまいるつもりでございます。  答申事項について取り上げたものは何があるかというおしかりでありますが、公開の原則につきましては、できるだけこれを守り抜こうということで努力いたしたのであります。先ほど来、赤澤君からもこの点については触れましたから、これは割愛して、先の説明に移らしていただきたいと思います。  会社寄付金に限度がない、どこまでも無制限じゃないかということでありますが、寄付というものは、大体寄付者の分に応じてその寄付をするということであり、これが相当性の尊重だ、かように私は思います。この点は分相応の寄付をする、こういう意味で、今回のような標準ができたのであります。御理解をいただきたい。  三年間会費の非公開につきましては、先ほど説明いたしましたから、これを省略させていただきます。  税の優遇措置につきましては、これは大蔵大臣から後ほど詳細にお答えいたしますが、ともかく政治そのものは悪ではないはずであります。私どもは皆さんとともども政治に携わっている、政治そのものは悪ではない。問題は、ただいまの資金そのものが不明朗である、あるいは非合法であるというところに問題があるのであります。そこで、この際に必要な資金はやはり出していただいて、りっぱな政党をつくり、りっぱな政治をする、そうして国民をしあわせな暮らしにする、これが私ども政治の目標でなければならぬ、かように思っております。  次に、罰則についてお尋ねがありました。法務大臣自治大臣からお答えをいたしますが、ただいま御指摘になりましたように、罰則、連座等の規定はあっても、明治百年の恩赦ということがあったら何にもならぬじゃないか、こういう御指摘でありますが、政令恩赦を実施することは考えておりません。(拍手)    〔国務大臣赤澤正道登壇拍手
  13. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) お答えいたします。  総理大臣がみな述べてしまわれましたので、つけ加えるところがないのがたいへん残念でございますが、しかし、政党政治活動の費用を、党費、個人寄付によってまかなうべきものであるということは当然なことだと考えます。このことも特別委員会でずいぶん議論になりましたが、まあ現状はやむを得ない、やはり五年間を目途として、そういう線で近代的な運営ができないものかということでございましたが、いろいろ研究いたしました結果、やはり答申意味考えてみました場合に、一方では政党の組織化、近代化が進んで、政党中心政治活動選挙活動が行なわれるという条件が整備されるとともに、他方、国民政治意識が向上して、政党を中心として国民大衆が積極的に政治に参加をするという体制が確立されて初めて、政治献金個人に限るという理想実現の道が開かれる、かように私たちは考えております。こういう条件がないことには、なかなかむずかしいことでございまするので、理想理想として、一歩でも現状より前進することが最も望ましい、民主政治の発展のために必要である、かように考えております。  それから、三年間猶予期間を——激変緩和の期間をつくりましたことにつきましては、ただいま総理がお述べになりました。  それから、税のことを非常にやかましく御指摘になりました。あとで大蔵大臣も申し上げるようでございまするけれども、私、この成案を得る過程におきまして、いろいろ世評を耳にいたしました。多田先生は別でございまするけれども、何か非常に誤解があるようでございます。これはやはりこの政治活動を近代化す、わが国の民主政治の進展を側面的に助成する、こういった見地から、政党及び政治資金団体に対する合法的な明朗な寄付に対してのみ優遇措置をするのでありまして、政治寄付をするものをみんな無税にしていたら、これはたいへんなことでございます。ここのところが非常にむずかしい厳密な制限をつけておりまするので、それをお含みの上、いろいろな御審議、御説明をいただいたほうがいいと思います。  それから、寄付青天井だとか、先ほど松本先生の御質問にもございましたけれども、何か会社はみな寄付をしなければならぬというような法文でもあるかのごとき印象を受けておりますが、資本金が何百億の会社でも一銭も寄付をしない会社がたくさんあるわけでございます。中には、やはり自分たちの営業をやる上において、自由主義経済の原則を守ってくれる政党を育成しなければならぬという好意的な考え方の会社もあるようでございまして、こういう方は進んで寄付して、大いに自民党を近代化して、りっぱに伸びてほしいという方々が寄付なさるわけでございます。ほかの会社も全部寄付するわけでもございませんので、その点はひとつ御了承いただきたいと思います。  それから、最後の、何か私ども国民のしあわせな暮らしというものを無視しておるかのごときおことばでございました。私ども、党といたしましても、また、政治家といたしましても、自粛自戒しながら国民の期待に沿う政治を行なわなければならないということは、言うまでもないところでございます。私は、あの戦争にも参加いたしまして、戦後、憲法改正議会から席を得まして、今日二十年余もこの中央政界におります。この間に、私は、国民の生活が向上しなかったとも考えておりません。また、豊かにならなかったとも考えておりません。しかしながら、政治の終局の目的というものは、これはただいま私がつまらぬことを申し上げる必要のないことでございまするが、私どもはもちろん、こういう政党そのものが国民の信を失うことがあってはなりませんので、自粛自戒をするという意味で、今回のこの法案を皆さんの御審議を経まして通していただきたいと考えておるものでございますけれども、どうか、そういった意味で、この法案をつくっておりまするので、次の委員会の席におきましてはいろいろ内容を明らかにしていただいて——国民にもこの案についてたいへんな誤解があるようでございます。何か、腐っている、腐っているということを言われる方があるものでございまするから、私ども、たいへん心外に思っておる点がございます。しかしながら、そういった点を次第に明らかにしていただきたいと思いまするので、何ぶんともよろしくお願いいたします。(拍手)     〔国務大臣水田三喜男君登壇拍手
  14. 水田三喜男

    国務大臣(水田三喜男君) いわゆる政治資金に  ついての税の特例についての考え方は、実は、昨年、政治資金規正法国会提出するときにすでに政府の方針はきまっておったものでございます。今回、別にこの方針を変更する必要はないと認めましたので、今回の提出の際は政府の中で論議はございませんでした。と申しますのは、いろいろな政治の弊害を除くために政治資金規制する必要があるということは十分認められますが、反対に、政治活動というものは高度の公共性を持った活動でございまして、現実政治がいい悪いということと、正しい政治活動が高度の公共性を持つものであるということとは別な問題でございますので、そういう意味から、その政治活動を助成する政治資金についてはやはり合理化をはからなければならないということを考えまして、政治に対して寄付する個人寄付金というものはまず優遇することにいたしましたし、また、法人につきましても、無制限では困りますが、りっぱに制限を持っておる。今回は、さらに、いままで会費とか党費といって制限外に出ておったものも、この政治資金制限内に入れてこれを規制するというような措置をとったものでございますので、やはり暫定的にこの特例を認めることがいいという考えから、昨年と同じ方針を今度も税制にとっていると、こういう次第でございます。(拍手)    〔国務大臣赤間文三君登壇拍手
  15. 赤間文三

    国務大臣(赤間文三君) 今回の改正による政治資金規正法違反に対する罰則は軽過ぎるのではないかという御質疑の第一点でございます。今回政府が提案いたしました政治資金規正法改正法案の罰則は、いずれも犯罪行為の性格あるいは罪質、さらに現行の政治資金規正法の罰則の体系及びこれとの関連のある公職選挙法の罰則等との比較、こういうもろもろの事情を慎重に観察をいたしました結果定まったものでございまして、今回新たにつけ加えました罰則は、総ワク制限違反に対する罰則、赤字会社寄付禁止に対する罰則、特定会社寄付禁止に関する罰則でございまして、まことに私は適当であると、かように考えております。  次に、裁判があまり長引くので、たとえば、連座の刑に処せられるという者があっても、六年を過ぎてしまって非常に効果が薄くなるような、裁判が非常におくれるということについての御質疑でございます。選挙違反事件の裁判の促進につきましては、検察官はかねてから裁判所に協力をいたしまして、すみやかに裁判が行なわれるように極力努力をしてまいっておる次第でございます。しかしながら、現状におきましては、相当日数を要するものがありまするので、昨年の十二月に最高裁判所を中心といたしまして、訴訟関係人の間で百日裁判に関する申し合わせが行なわれております。検察官といたしましても、その趣旨にのっとりまして、百日裁判が現実に行なわれまするように、今後一そうの努力をしてまいりたいと考えておりますので、御了承を願います。(拍手
  16. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。      —————・—————
  17. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 日程第一、国務大臣報告に関する件(沿岸漁業等振興法に基づく昭和四十二年度年次報告及び昭和四十三年度沿岸漁業等施策について)。  農林大臣から発言を求められております。発言を許します。西村農林大臣。    〔国務大臣西村直己君登壇拍手
  18. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 先般国会提出いたしました「昭和四十二年度漁業の動向に関する年次報告」及び「昭和四十三年度において沿岸漁業等について講じようとする施策」につきまして、その概要を御説明いたします。    〔議長退席、副議長着席〕  まず、「昭和四十二年度漁業の動向に関する報告」について申し上げます。この年次報告は、「第一部漁業の動向に関する報告書」と「第二部沿岸漁業等について講じた施策」とに分かれております。  水産物の最近の需給状況を見ますと、昭和四十一年の漁業生産量はこれまでの最高を記録いたしましたものの、その需要は、国民所得水準の上昇とともに増大しており、生産の伸びを上回る傾向にあります。このような需給の動向を背景といたしまして、水産物の輸入は、高級魚介類を中心として増加しており、四十一年にはこれまでの最高となっております。また、水産物の価格は、生産地ではかなり上昇いたしましたが、消費者価格は、四十年中の上昇率が高率であったことや冷凍品の供給量が増加したこと等により上昇率は小幅の上昇にとどまりました。  次に、漁業経営体数及び就業者数について申しますと、いずれも近年その減少傾向が鈍化いたしております。すなわち、経営体数は前年と同水準でありますが、その内訳を見ますと、業種により増減が見られ、経営体全体の構成が変化しつつあります。また、漁業就業者数も昨年よりわずかに減少いたしましたが、引き続き高齢化、女子化の傾向が進んでおります。  また、沿岸漁家の平均所得は、近年上昇の傾向にあり、四十一年には都市勤労者世帯の所得と均衡するに至りましたが、これを一人当たり所得で見れば、都市勤労者に比べるといまだかなり低位にあるのであります。  中小漁業経営におきましては、業種、階層により経営の好、不調がありますが、収益性は、趨勢としてはほぼ安定した推移を見せております。また、雇用者の賃金水準は、かなり上昇しておりますが、労働環境にはなお改善の余地が多く残されております。  以上が第一部の概要であります。  第二部は、このような漁業の動向の中で、政府沿岸漁業等について講じた施策を述べたものであります。  最後に、「昭和四十三年度において沿岸漁業等について講じようとする施策」は、以上のような漁業の動向を考慮いたしまして、政府昭和四十三年度において講じようとする施策を明らかにしたものであります。その大要は、新漁場の開発等水産資源の維持増大、漁港等漁業の生産基盤の整備、沿岸漁業及び中小漁業の近代化に重点を置いて諸施策の推進をはかることといたしております。  以上「昭和四十二年度漁業の動向に関する年次報告」及び「昭和四十三年度において沿岸漁業等について講じようとする施策」についての概要を御説明いたした次第であります。(拍手
  19. 河野謙三

    ○副議長(河野謙三君) ただいまの報告に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。川村清一君。    〔川村清一君登壇拍手
  20. 川村清一

    ○川村清一君 私は、日本社会党を代表して、ただいま説明されました昭和四十二年度の漁業の動向に関する年次報告、いわゆる漁業白書に対し、佐藤総理並びに関係大臣に若干の質問をいたします。  まず、佐藤総理大臣にお伺いします。  質問の第一点は、水産物の需給関係についてであります。  国民食生活の高度化は、動物性たん白質食糧として水産物の需要を年々拡大しているのであります。これに対し、生産の伸びは停滞あるいは鈍化しているとこは、御承知のとおり四十二年度は七百十万トンの生産をあげており、これはいままでの最高でありますが、需要を満たすことができず、総額六百三億円に及ぶ輸入を行なっており、輸入の伸びは、ここ五年間に実に七倍に及んでいるのであります。国民生活の向上により、たん白質食糧の需要のますます高まることは必然であり、現在、日本人一人一日当たりの摂取量二十六グラムが、欧米並みに五十グラム程度まで向上することを理想とするなら、もちろん畜産物への依存度が高まるとしても、なお水産物の需要が拡大されることは明らかであります。水産庁は、昭和四十六年には九百万トン、五十一年には一千万トンにまで需要が伸びるだろうとの見通しを持っておりますが、一方、生産のほうは大体七百万トン台で頭打ちでないかともいわれております。このことはきわめて重大であります。総理は、食糧政策の上から、日本漁業の現状をどのように考えられているのか、農業とともに国民食糧の自給体制を確立するという基本姿勢で、漁業生産向上のための施策を勇断をもって講じなければ、将来きわめて憂慮すべき事態が招来されることは明瞭であります。この際、総理の自信ある御見解をお伺いいたします。  質問の第二点は、生産拡大を阻害する要因は国の内外に存在します。  まず遠洋漁業についてでありますが、世界の海に活躍した日本の国際漁業は、いまやきびしい国際情勢下、至るところで締め出しを受けており、既得権を持つ漁場において、あるいは操業の禁止、あるいは漁獲量の削減等の規制を受け、まさにじり貧の状態であります。白書は、現在、わが国が加盟している主要漁業条約あるいは協定について、またはわが国近隣の低開発諸国の漁業の現況について詳細報告はしておりますが、これに対する方針、対策等については、何ら触れておりません。総理は、この現状をいかに認識し、どのように対処せんとするのか、その基本的方針を明らかにしていただきたいと思います。  さらに、先般、領海及び接続水域に関する条約をようやく批准いたしましたが、領海の幅は条約上規定はされておりませんので、世界各国の領海の幅はまちまちであることは御承知のとおり、領海三海里国、十二海里国、二百海里国、三海里国でも専管水域十二海里を宣言している国も多数あります。このことが国と国、両国間による個別条約あるいは協定によって問題を解決せざるを得ないことになり、非常に複雑でもあり、不便でもあります。何とか世界の海洋国の話し合いの中で、円満に領海あるいは接続水域の幅を規定できないものか。この際、日本政府が、一九六〇年のジュネーブ会議のごとき会議の開催を提唱してみてはどうか、総理の御見解をお伺いいたします。  次に、日本の漁業は、なぜ世界の国々からきらわれるのか、この際、謙虚に反省すべきであります。率直に言って、日本漁業は世界の国々から強い不信感を持たれておるのであります。過去の遠洋漁業は、利益追求のみを目的とした資源を無視した収奪漁業であった点を深く反省し、信頼を取り戻さなければならないし、さらには進んで、新漁場の開発、関係国との協調による資源の国際管理並びに合理的利用、あるいは漁獲物の高度利用等に努力すべきであります。これに対する総理の御意見を伺いたいと存じます。  質問の第三点は、経済の高度成長に伴い、独占発展のしわ寄せを受け、国内漁場は狭められ、沿岸中小漁業はその犠牲になって、生産は縮小されるとともに、漁民生活が苦しめられている現状を、総理はどのように把握され、これに対処してどのような施策を講ぜられようとしているのか、お伺いします。  白書は、ノリ養殖の経営体数は年々大幅に増加してきたが、伸び率が鈍化しているのは、既存の漁場が次第に失われているのが最大の原因であると、具体的に指摘しておりますし、漁船漁業及び内水面漁業においては、工場及び都市排水、船舶廃油の投棄、あるいは事故による船舶燃料油の流出等による公害が生産を阻害する要因であることを、事実をあげて大胆に提起しております。しかるに、水質汚濁を防止する対策は何らなされていなし、補償についても何もない。特に納得できないことは、最近、阿賀野川における水銀中毒事件に見られるような、長期にわたる科学者の研究の結果の結論に対し、厚生、通産、科学技術庁の同じ政府の省庁の見解が相違するのは、いかなるわけか。通産はもとより、科学技術庁までが大企業の代弁者的役割りを演じているという印象を国民に与えたことは、まことに遺憾であります。この際、総理責任ある見解を、国民の前に明らかにしていただきたいことと、沿岸中小漁業を守るためにも、公害防止のための決意を明確にお示しいただきたいのであります。  なお、これに関連して、中曽根運輸大臣にお尋ねしますが、運輸省が考えておられる海上交通法の構想は、沿岸漁民から漁場を奪うことにならないのかどうか、御答弁を願います。  次に、農林大臣にお伺いいたしますが、関連する事項については、運輸、労働の両大臣からも御答弁をいただきます。  質問の第一点は、漁業経営体の構成変化の中で、白書は、大臣許可漁業経営の問題について注目すべき分析を行なっております。  すなわち大経営の経営規模拡大する一方で、規模の小さい経営が減少しており、近年の経営常体総数の増加の中で、上層では大臣許可漁業を営む経営体が増加し、下層では逆に減少する傾向が見られる。四十一年十一月現在で、大臣許可を有する企業体三千四百八十二企業中、わずか一件しか持たない企業体五八%に対し、十一件以上持つものが二十八企業もある。このことは収益の高い大臣許可漁業において、大企業や、一握りの上層階層に許可が集中してきていることを示しているものであり、競争の激化と、現在の許可制度に内在する欠陥がこのような結果を生んだものであり、許可の集中を防ぎ、中小企業下層の経営を改善する措置が講ぜられなければならないと思うが、これに対する御見解をお尋ねします。  質問の第二点は、漁業人口の動向についてであります。  漁業就労者の年齢構成が若年労働者階層が逐年減少し、高齢化していることについてはしばしば指摘されてきました。今年の白書が、就業者中に占める女子就業者の増加している実状を明らかにしていることは一つの特色であります。女子は、これまで主として養殖業に就業していましたが、最近では、漁船漁業への就業も増加し、一航海一週間近くの操業にも従事する実例もあり、減少する男子労働力にかわり、婦人労働力が沿岸漁業の重要な、にない手になってきつつあるということは、労働の再生産の場としての家庭における家事時間を圧迫し、生活上のひずみが増大することであり、主婦の健康を守る立場からも新しい問題として早急に検討し、強力な対策を講ずべきであります。これに対する御所見をお伺いいたします。  質問の第三点は、労働条件及び労働環境についてであります。  漁船労働者の労働条件や労働環境の改善については、白書は克明に分析し問題を提起しております。総理府が実施した漁船乗り組み員の意識調査で、船内生活に関する乗り組み員の要望を見ても、陸上生活では想像もできないような事項に関する要望が高い比重を占めており、また現在の労働条件についての不満を見ても、給料が少ないなどのほか、給料が不安定である、睡眠時間が少ない、労働時間が長い、休日が少ない等、不安定な賃金、長時間労働に関することが多くあげられているのであります。さらに、船内設備の中で改善してほしい設備として、寝室、食堂、換気装置、洗面所、便所等をあげているような段階であります。漁業労働賃金調査報告によれば、漁業における賃金の支払い形態は、固定給と歩合給を併用するものが二七%、最低保証つき歩合給四五%、全額歩合給二七%であり、全額固定給は一%にすぎません。最低保証つき歩合給は、その最低保証額が一万円から一万五千円程度であり、実質的には全額歩合給とほぼ同様の性格のものであり、これが漁業労働者の賃金の実態であります。  さらに、漁船乗り組み員の労働時間は、四十一年運輸省の資料によれば、平均一日当たり一一・二三時間、連続休息時間八・一〇時間であります。漁船乗り組み員は海上労働として最も長時間労働に従事しており、これが、漁船乗り組み員の意識調査に、船内生活において睡眠をとることが最も楽しいこととしてあらわれているのであります。一航海当たりの出漁日数も長くなる傾向を示している漁業が多く、これらに伴い、乗り組み員の疲労が増し、海上労働という特殊性もあり、他産業より危険の高い労働環境下に置かれている関係上、他の船舶乗り組み員に比較して、労働災害、疾病による労働損失が高い比率を示しております。  次に、漁船の海難事故は減少傾向にあるとはいえ、四十一年で千百四十五隻に達しており、うち全損海難が一八・九%を示しております。近年の漁船装備の向上から、安全度がかなり増加したにもかかわらず、依然として海難事故発生が多いのは、乗り組み員の技術水準の低さ、経営間の過当競争、歩合制賃金制度からくる無理操業、運航技術の未熟等に基因するものであります。  このような労働情勢に対処して漁業の安定的な発展をはかるためには、これまでのような豊富な人力と低い賃金に依存する安易な経営や労務管理から脱却して、省力的な生産方式を導入するとともに、より合理的かつ近代的な労務管理方式を確立するよう、政府の強力な施策がなされなければなりません。このことに対し、農林、運輸、労働各大臣から、所管事項に関し所信のほどをお聞かせ願いたいと存じます。  最後に、大蔵大臣にお尋ねいたします。  申すまでもなく、政策を裏づけるものは予算であり、予算の伴わない政府の政策は、単なる抽象的試論にすぎません。私が質問で申し上げましたように、日本の漁業は、ますます増大する国民需要に応じて生産拡大という至上使命をになっております。しかるに、沿岸中小漁業においては、公害による水質汚濁、あるいは米軍及び自衛隊の射撃演習場設置等によって漁場は逐次狭められており、その反面、生産拡大のための基盤整備事業や、新漁場開発のための資源調査、あるいは、水質汚濁防止のための具体的対策、沿岸漁業振興のための特別金融措置等による積極的な施策が強力になされておりません。農業の土地改良事業に匹敵する漁港の整備計画とその実施状況を見ても、第一次計画の実施率はわずかに三二%、第二次計画では七二%、現在第三次計画実施中でありますが、終了年度四十五年まで、あと二年を残したのみで、その進捗率は六三%にすぎないのであります。沿岸構造改善事業にしても、その実施が不徹底なものに終始しているため、沿岸漁業の生産の伸びは横ばいの状態を続け、価格の高騰により漁業所得はふえたとはいえ、一人当たりの所得は、なお他産業従事者に比較してかなり低位にあるのが実情であります。これは、要するに、水産関係予算のあまりにも少ないことに最大の要因があると判断いたします。国民が生きるための大切な動物性たん白質食糧七百万トンも供給している水産関係予算が、農林省総予算六千五百四十億円に対し、その五%にも及ばないわずか二百八十四億円などということは、一体大蔵大臣は、漁業に対し、どの程度の認識を持たれているのか、疑わざるを得ません。この際、食糧産業としての漁業の重要性を再認識されて、誠意ある所信を表明されますことを期待して私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  21. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 最近の水産産の需給の問題についてお尋ねがございました。四十二年はたしか七百七十万トン、これが最高であったかと思います。しかしながら、国内産が七百七十万トンでも、やはり需要はそれを上こしておりますので、その間のアンバランスはございます。また、最近になりましても、その需給のアンバランス、差はますます拡大しようといたしております。したがいまして、この水産資源の確保について、特に新しい漁場を開発するとか、さらにまた、水産業界の構造改善をいたしまして、そうして従事者の生活向上をはかるとか、供給の面と就業者の地位の向上、この二つがわが国の水産業に課せられた課題だと、かように思っております。そういう意味で、各方面におきましても、いろいろ活躍しておる、ことに遠洋の新しい漁場、深海漁場の開発等に力がいたされておるようであります。なお、四十六年の需給見通しを数字で申しますと、国内生産が七百六十八万五千トン、需要は八百八十九万五千トン、かようになっております。したがいまして、安定的な供給をはかるためには、この上とも努力していかなければならない、かように思います。  次に、わが国の漁業は、申すまでもなく先進国といたしまして、国際漁業の秩序ある発展について従来から努力してまいっております。国際的な規制もだんだん強まってきております。御指摘になりましたように、これらの点が生産拡大を阻害する要因としてあげられるわけであります。国際的な規制としては、資源の保存と水産物の有効利用、さらにまた、確立された国際法の原則に立脚して、関係国と協調していくことが大事だと思います。わが国の漁業もそういう方向におきまして、ただいま活動しておるわけであります。  次に、領海及び接続海域の問題についての御意見をまじえてのお尋ねがございました。一九六〇年ですか、国際海洋法会議では、領海の幅員や漁業水域の制度につきまして関係国の合意は成立を見ませんでした。したがいまして、ただいま国際的な一つの定まった意見があるわけではありません。そこで、従来から問題が起こりますと、関係国は具体的な問題に即して協議をし、実際的な解決をはかっておるというのが現状であります。このような解決の積み重ねが現在混乱している漁業秩序の確立に必ず資するものだと、かように考えております。そこで、ただいまも提案がございましたが、世界会議をこの際に開催して解決するという考え方は、確かに一つの研究に値するりっぱな考え方だと思います。しかし、過去におきまして国際会議が開催されなかった、実が結ばなかった等の点もございますから、研究に値することではありますが、実現の可能性や会議運営の見通し等考えまして、慎重にこの問題と取り組んでいくことが必要だと思います。また、わが国が国際不信だと、かような意味で、新漁場の開発や国際的協調、さらにまた漁獲物の高度利用あるいは技術協力等をしろというお話は、御意見はそのとおりでございまして、私もその説に賛成でございます。  次に、公害問題についてお触れになりました。都市化並びに工業化が進んでまいりますと、工場、船舶等の排水、廃油等の問題がございます。また、水質汚濁の問題が起こって、沿岸におきましては、これはたいへんな重要な、ただいま当面しておる問題でございます。どうしても沿岸漁業の資源維持培養のために、これらについて、水質の汚濁を防止することが必要だと思います。そこで、水質保全、さらに、また、公害対策基本法等を十分生かしまして、そうしてこれらについての対策、いわゆる水質汚濁を、これを監視し、また、それに対する防止対策をとると、こういうことをしなければならないと思います。例として、ノリあるいは真珠等の養殖についてお触れになりましたが、確かにこれらの点は必要なことでありますし、急を要する問題だ、かように思います。  阿賀野川問題につきましては、これは、ただいま科学技術庁が関係省の調査の意見を取りまとめるという役をいたしております。できるだけ早く取りまとめまして、そうしてこの問題についての終止符を打ちたい、かように考えております。  以上、お答えをいたします。(拍手)    〔国務大臣西村直己君登壇拍手
  22. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 御質問のうち、所管に関する事項だけ申し上げます。  大臣許可漁業が大漁業へ集中している傾向が強過ぎやせんかと、この点についてどうだという御質問でございますが、指定漁業のうち、いわゆる農林大臣の許可漁業でございますが、母船式捕鯨、それからサケ・マス——母船式のサケ・マスでございますが、遠洋トロール、こういったようなものは、漁船、船型が御存じのとおり大きい。それから高度の資本装備を必要とする、こういう漁業につきましては、資本の面から、大企業に集中する傾向があるということは事実でございます。ただ、これらの漁業を除きますところのカツオ、マグロ漁業などは、これらも指定漁業でございますが、これらの大部分につきましては、中小の漁業者がこれに従事しておりますから、総体といたしましては、指定漁業の許可が大企業に集中しておるというふうには考えないのでありますが、この点は大事な点でありますので、今後許可制度の運用におきましても、指定漁業の許可が、不当に大企業などに集中するというようなことがないように、運用上十分配慮してまいりたいと考えております。  それから、第二点であります漁業従事者の高齢化、特に女子従業者がふえた。漁家の主婦が漁業に従事しておる傾向が多くなった。この点について、いろいろ弊害も出ているのじゃないか、こういう御指摘でございます。これは、御指摘の点がございます。そこで、これも漁業の種類によりまして、対応の仕方、やり方が変わってまいると思います。特に、一般的に、申し上げるまでもなく、省力技術であるとか、生活改善、いろいろの点を考えていかなければなりませんが、特にまあ漁業の種類の中で、沿岸浅海養殖漁業というような、たとえばば、ノリのような、こういったところが非常に拡大してまいりまして、そこへ女子の労働力が誘導されると申しますか、投入されている。そこで、これらは、ただいま申しましたように、健康管理であるとか、生活改善であるとか、省力技術であるとかというような問題と同時に、やはり、全般の問題の一つとして、男子後継者の労働力の確保、これは当然教育であり、あるいは近代化の問題であり、同時に、漁村をあげての環境整備、住みやすい、若い者がいやすい漁村づくり、こういう点から解決をはかってまいりたいと思います。  次に、労働条件あるいは環境の改善でありますが、これは、先ほども申し上げましたように、まだ問題は相当残っております。逐年改善はされております。賃金関係等も合理化はだんだんとなされておりますが、まだ残っておりますので、この点につきましては、関係大臣のほうと協力いたしまして、指導を強化する。特に指定漁業に従事しますところの船員設備基準——漁業に関しますいわゆる環境、船内居住基準と申しますか、居住環境をよくするというような労働環境づくりは、改善につとめてまいりたいと思います。  それから海難でございます。これもたいへん日本の漁労の上では大事なことでありまして、海事関係法規の準用であるとか、いろいろそういう点を、関係の海上保安庁等々と十分これを協力しまして、今後とも事故の絶滅を期してまいりたいと思うのであります。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘君登壇拍手
  23. 中曽根康弘

    国務大臣(中曽根康弘君) 漁船乗り組み員の労働条件及び労働環境につきましては、一般の商船乗り組み員に比べまして、十分でございません。そこで、昭和三十七年以降、これらに関する改善指導要綱、あるいは改善措置要綱というものをきめまして、御指摘となりましたような全歩合制の改革、休日、休暇の設定、それから長期雇用制度への切りかえ、食糧の改善——食べものでございます。それから安全基準の確立、居住性、船内衛生等につきまして、格段の指導をしております。  なお、漁船の船主関係において、まだ近代化されないところが多々ございますので、労務管理の講習会を開きまして、法令その他の知悉徹底を期し、励行をやらしております。  なお、漁船の労働時間等、設備基準につきましては、現在、船員中央労働委員会におきまして審議中でありまして、その答申を待ちまして行政措置をやるつもりでおります。  第二に、事故防止でございますが、最近の事故の一番大きな原因は、積み過ぎということが多うございます。そこで、満載喫水線の拡張をいたしまして、これを厳守させるということ、それから無線設備を搭載することを強制しております。事故防止の一番大事なことは、天候気象に関する知識を徹底させ、その通報を迅速に行なうということでございまして、この点につきましては、気象庁とも連絡をとりまして、大いに励行していきたいと思っております。  なお、漁船につきましては、集団操業をやるということが事故防止についても非常に大事な点でございまして、この集団操業につきましても、水産庁と連絡をとりまして、これを進めていくつもりでございます。万一事故が起きました場合には、巡視船をすみやかに派遣し、あるいはさらに遠洋の場合につきましては、二千トンの巡視船をいま派遣いたしまして、マリアナその他に対する保護をいたしておりますし、YS11という飛行機を持っておりますので、これらによりまして至急に現場の発見及び救難を行なうようにやっております。なお、救難用の方位測定局を整備するということも重要でございまして、この点も、予算をとりまして、計画的に励行しております。  それから、海上交通法について御質問がございましたが、近時十万トン、二十万トンの大型タンカーが出てまいりまして、これが瀬戸内海や浦賀水道のような狭水道を通りますので非常な危険性が出てきたわけでございます。大型タンカー、十万トン以上になりますと、ストップをかけまして、逆のエンジンをかけて逆推進をやりましても、四千メーターくらい行かないととまらないという危険性があるわけでございます。したがって、霧であるとかもやがかかっております場合には、漁船との衝突の可能性がかなりありまして、万一事故が起きた場合には、ばく大な油が流れ出しまして、関係方面に大きな損害を与えるわけでございます。そこで、海上交通法という法律をつくりまして、そういう場合の予防のための措置をいろいろやりたと思っておるのでございますが、漁業関係の補償の問題につきまして、まだ話し合いの調整がとれておりませんので、この問題を調整つけまして、すみやかに、できるだけ近い機会に国会に提案したいと考えております。    〔国務大臣小川平二君登壇拍手
  24. 小川平二

    国務大臣(小川平二君) お答えいたします。  漁業は天候等自然の条件に制約される面が多うございまするし、労働慣行の点でも特殊性を持っております。ただいま、実情につきましてきわめて詳細に御指摘がございましたように、労働条件の面につきましても非常に近代化がおくれておりまするし、労働環境の点でも改善を要する余地が非常に大きい、かように考えております。しかし、最近漁船員の確保が困難になってきておるということを背景に、労働条件の改善についての関心が高まってまいっておりますので、この機会に、労働省といたしましては、運輸省、水産庁とも連絡をとりつつ、労務管理の改善を進めまするために、賃金形態の改善、適正な労働時間の確立に重点を置いて、今後も行政指導につとめてまいる所存でございます。  労働災害につきましては、これを小型漁船関係の災害に限りましても、昭和四十二年における死傷者数が推計三千五百二十九人、なおかつ、きわめて高い数字を示しております。そこで、災害減少の対策に関しましては、全国で二十七カ所の漁業関係労働災害防止協議会を設置いたしまして、これを通じて、災害防止について、各方面の指導を行なっているところでございます。  女子労働者の健康福祉につきましては、農林大臣からも御答弁がございましたが、労働省といたしましても、この確保につとめてまいる所存でございます。(拍手)    〔国務大臣水田三喜男君登壇拍手
  25. 水田三喜男

    国務大臣(水田三喜男君) 水産関係予算が全農林予算に対して少し地位が低過ぎやしないかという御質問でございましたが、率直に申しまして、やはりこの点は再検討の必要があるのじゃないかと私は考えております。で、本年度の予算におきましては、この二百八十四億円という予算は、昨年度に比べますると、特に昨年は特別の調査船をつくったりなにかしましたからで、こういう費用を省いてみますと、一割ぐらいの伸びになっている。それから、漁港予算そのほかは、一般の公共事業に比べて、漁港を中心にする公共事業予算のほうが伸びております。一般よりは伸びておりますが、しかし、はたしてこの水産関係の社会投資が全体と比べて比重がどうなっているか、立ちおくれがないかということについては、やはり問題があると思いますので、今後これは十分に主管官庁にも検討していただくと同時に、私どもとしても、次の問題としてこれは十分考慮したいと考えております。(拍手)     —————————————
  26. 河野謙三

    ○副議長(河野謙三君) 鈴木一弘君。    〔鈴木一弘君登壇拍手
  27. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 私は公明党を代表いたしまして、ただいまの昭和四十二年度漁業の動向に関する報告等につきまして、主要な数項を総理並びに関係大臣質問をいたします。  まず第一に、わが国民が動物性たん白質の六〇%を摂取している水産物の需給と価格についてであります。  四十一年のわが国の漁業生産量は七百十万トンで、これまでの最高記録に達しましたが、伸び率は、前年に比べ、わずかに二・八%と低く、一方、水産物の需要は、所得水準の向上とともに、年々大幅な増大を示しております。このため、水産物消費者価格は高騰し、白書によれば、その消費者価格指数は、三十五年を基準として、四十一年は一八一・〇となっており、野菜を除く他の食糧品価格を大幅に上回っております。一方、輸入水産物の額は、四十二年には六百三億円と、国際収支の赤字の中で著しく増大し、三十六年のそれに比べて、実に七・四倍に達しているのであります。このように需給のアンバランスを来たしたのは、政府がこれまでとってきた漁業振興政策の欠陥と、漁業資源の開発をなおざりにした結果と断ぜざるを得ないのであります。漁業振興対策の基本方針と需給の見通しについて、総理大臣並びに農林大臣の今後の方針をお伺いいたします。  第二は、沿岸漁業の衰退についてであります。  そのうちの一つは、水質汚濁問題であります。わが国沿岸漁業生産は、養殖漁場の開発を行なう反面、漁場環境の公害による被害が年々増加しており、漁場放棄が各所で見られます。その大部分は水質汚濁によるものであり、いまにして、この傾向を阻止するため、強力な手を打たなければ、わが国の沿岸漁業のかなりなものが、都市化の波に洗い流されてしまうのは目に見えております。事態をこれまで放置しておいたのは全く政府責任と言わざるを得ません。今後の対策と政府責任について、総理の御見解を承りたいのであります。  次は、構造改善事業についてであります。画期的な沿岸漁業の振興策として鳴りもの入りで打ち出された事業も、実施以来すでに七年が経過し、一部地域では、事業の終了したものも出ておりますが、沿岸総漁獲量は、三十八年以来全く停滞しているありさまであり、何ら成果らしいものはあがっていないと言わざるを得ないのであります。世帯員一人当たりの所得を見ても、四十一年の漁家平均は十六万八千円で、都市勤労者の二十二万三千円に比べて、わずかに七五%程度であり、所得格差は全く改善されていないのであります。この結果、経営体の減少、若年労働力の不足等が全国にわたって起こっており、沿岸漁業はまさに危殆に瀕していると言っても過言ではない状態であります。こうした沿岸漁業の停滞は、エビ、ブリ、サワラなど、高級魚の輸入急増を招いているのであります。農林大臣は、このような沿岸漁業の現状と今後の対策について、どのようにお考えであるか、その所信をお伺いいたします。  第三に、大資本漁業と中小漁業との格差についてであります。  大資本の事業活動の規模は年々増大し、そのシェアは拡大してきております。その活動は、生産から加工、流通、消費へと、一貫した機構が組み立てられて、強力な体制のもとで、中小漁業者の分野にまで進出し、収益の増大をはかり、中小漁業者を圧迫している現状であります。したがいまして、中小漁業、特にその下層の保護育成をはかる施策を強力に講ずべきであると思いますが、農林大臣の所見と対策をお伺いいたしたいのであります。  第四に、国際漁業関係についてであります。  わが国の水産業をめぐる国際環境はきびしくなってきております。わが国はこれまで、異常なまでに、公海の自由の原則と、領海三海里の原則を固執してきたのでありますが、その結果、今日、内外ともに種々の弊害があらわれてきております。まず、国内については、近年、わが国の沿岸に、ソ連や韓国船団、北鮮船団等の大型外国漁船が三海里の水域まで出漁してきている現状であります。こうして進出してきた外国漁船とわが国漁業との競合が至るところで激化してきております。たとえば、去る五月三日、北海道北部海域で操業中のわが国エビかご漁船のロープが北朝鮮船団のために切られ、被害をこうむったことが報道されておりますが、外交交渉の場を持っていない同国に対する賠償請求をどのようにしたのか、過去においてもこのような事例がしばしばあったと聞いておりますが、どのように処理されたか、今後これら漁民の操業をいかに保護していく方針か、関係大臣の御答弁をお願いしたいのであります。  日ソ漁業交渉において、大陸だなに関する問題を提起したソ連側に一方的に押されたまま、カニの漁獲量について難航し、サケ・マス漁獲量が九万三千トンという最低量に決定されたのであります。この例に見るように、国際漁業交渉は急速に複雑化していく現状にあるのでありますが、これに対処する確固たる方針が政府にあるのか、非常に危ぶまれるのであります。  現今の国際海洋界の趨勢は、領海あるいは専管水域十二海里を設定する方向にあるこのようなときに、三海里に固執する逆行ぶりは、そのまま国際的に孤立化していくわが国の姿とも言えるのであります。このように、わが国を取り巻く国際環境はまことにきびしいと言わざるを得ないのであります。今後どのような基本方針のもとで海洋政策を推進していくのか、総理並びに農林大臣の所信をお伺いいたします。  第五に、資源の調査とその開発についてであります。  白書によると、四十二年度には新大型漁業調査船である三千二百トンの開洋丸を建造して、底魚資源の調査を行なったと報告されておりますが、漁業国として長年世界に誇ってきたわが国が、いま一隻の大型調査船を誕生させたというのは、おそきに失したとも思われるのであります。先進国の漁業資源を含む数々の海洋資源の総合的開発と海洋調査に傾けた情熱は、しばしば書籍等によりうかがわれるのであります。しかして、さきに述べました国際漁業も、資源を維持しつつ漁獲するという科学的調査の裏づけのある交渉が指導権を持つ時代となったのであります。遠洋、沿岸を問わず、資源調査の重要性は変わらないのであります。去る二十二日の行政管理庁の勧告にも、水産資源の開発の必要性が強調されておりますが、その物の見方が、当事者では一歩立ちおくれているの感が受けられるのであります。このように、これまであまりに貧弱であった水産資源の調査研究と海洋開発を今後どのように進めるのか、基本方針についてお伺いいたします。  第六に、労働力の減少についてであります。  農業や林業と同様に、ここでも若い労働力の流出は著しく、四十一年における漁業就業者数は六十万七千人で、前年より〇・八%減少し、しかも老齢化、女性化しながら、なお減少の傾向にあります。今後の漁業振興政策の上から就業労働力をどう確保しようと考えているのか、また、漁村の生活環境の改善は最もおくれております。生活改善普及事業、住宅、社会教育、保健衛生など、都市との格差のない文化生活が営める今後の施策について、総理並びに関係大臣の所信をお伺いいたします。  最後に、この年次報告は、沿岸漁業等振興法第七条の規定に基づくためか、「その他の漁業」についての記述がきわめて少ないのでありますし、わが国漁業の動向と漁業政策の全般にわたる方針の判断を誤らないように樹立する上からは、当然「その他の漁業」に関する一切の報告を含めた年次報告とするべきであると、このように考えますが、総理並びに農林大臣の所信を伺って、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  28. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 鈴木君にお答えいたします。  わが国の水産物の需給の関係並びにその価格についてのお尋ねでございます。需給は、先ほども申しましたように、需要が非常にふえております。なかなか国内供給というものがこれに対応をしていない、そこで、御指摘のように価格の問題が起こる、それがしばしばお互いの生活に重圧を加えている、それは御指摘になりましたとおりであります。したがいまして、私ども政府といたしましても、この水産物の増産をはかるといいますか、漁獲量をふやし、供給を安定的なその路線に乗せる、同時にまた、価格があまり変動しないように、いわゆる安定供給あるいは水産物の利用度を高める等々によりまして、水産業者の、また従事者の地位を高める、これが政治の課題でございます。私は、たいへん努力をしてきておりますが、なかなか生活も向上しておりますので、需要を押えるわけにまいりません。そこで、供給を豊富にするということにできるだけの努力を払わなければならないと思います。これは沿岸、沖合い、遠洋、それぞれの漁業によりまして態様は違いますが、この構造改善と相まって生産量をふやす、さような方向で努力されておる次第でございます。先ほど数字などは申しましたから、これはそのほうに譲らせていただきます。  したがいまして、いまの漁業振興の基本的な方針は、水産資源の維持、増大にありますし、漁業の近代化にあります。この方向で安定供給と漁業従事者の地位の向上をはかるということは、ただいま申したとおりであります。これが基本的な政策であります。今後は未開発漁場の調査開発、さらに沿岸漁業の構造改善、中小漁業の経営近代化等に努力していくつもりであります。  次に、水質汚濁の問題についてお触れになりました。都市化、工業化が進んでいる今日でありますので、水質の基準を設けまして、そしてこの水産業を育成また維持する、こういう方向で努力していくつもりであります。  大資本と中小資本との漁業者間の分野の問題並びにその調整についてのお尋ねがありました。これらは構造改善ともからんでおりますし、若年労働者が不足している今日でありますので、特にこまかな留意をしなければならないと思います。しかし、中小漁業はおおむね順調に拡大発展しておると、かように思っておりますが、しかし、特殊の業種、階層によりましては、なお不安定なので、いわゆる中小漁業振興特別措置法、これの運用をいたしまして、その振興をはかることに留意する必要があります。  また、大漁業と中小漁業との分野はそれぞれ異なっておりますので、自然に分野が定まる、かように思いますが、しかし、漁業許可制度の運用等にあたりまして、先ほど農林大臣がお答えいたしましたように、大資本漁業と中小漁業との調整をはかり、調和のとれた発展を期していかなければならないと思います。要は、この許可制度の運用にある、かように私は考えております。  次に、公海自由の原則と領海の問題、専管水域の問題でありますが、わが国は三海里説をとっておる、また、それが公海自由の原則にのっとりまして、わが国益を維持している、こういう考え方でございますので、一方的にこの領海を十二海里にしたり、あるいは漁業水域を一方的に設定するような考えは、ただいまのところございません。  遠洋漁業政策と国際漁業政策についてのお尋ねがありました。申すまでもなく、世界各国の漁業が、最近になりまして各方面に盛んに進出し、活発化しております。したがいまして、わが国は先進漁業国として、他の諸国と競争の立場に立つわけであります。そこで今後、この国際漁業の秩序ある発展を期し、同時に未開発漁場の開発に乗り出す、そうして関係国と必要な協調を保っていくということをいたしたいと思います。  なお、最近の日本沿海におけるソ連、あるいは北朝鮮等との漁業の摩擦においてお触れになりましたが、それらは農林大臣から説明をいたさせます。  次に、労働力の不足等から見まして、漁民の生活環境の改善策をはかること、これは緊急な仕事だと思います。漁村の生活環境、これは恵まれておりません。道路や住宅、また飲料水の確保すら事欠いておる、かような状態でありますから、生活改善普及事業として、これらの問題と真剣に取り組んでまいるつもりであります。  最後に、年次報告では、「その他の漁業」といって、たいへん簡単にしているが、これをもっと詳しく説明しろと言われる。確かに遠洋漁業のうち、トロール船の生産などはぜひとも国民に知っていただきたい、かように思いますので、今後あらゆる方面の資料を整えまして、そうして、この報告の充実をはかっていくようにいたしたいと思います。(拍手)    〔国務大臣西村直己君登壇拍手
  29. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 総理から大体お話がございましたので、残った分だけ補足を申し上げたいと思います。  特に私から申し上げたい点は、安全操業の中で、北鮮その他から障害を受けた。たとえば、底びき網がロープを切られたという事件がございました。確かにございました。しかし、その詳細については、正式な報告がないので、国交のない国ではございますが、こういった事柄につきましては、できるだけわれわれのほうといたしましても、実情を明らかにしていく。それから、いろいろな船が拿捕された——北鮮あるいは中国あるいはインドネシア、フィリピン等々でございますが、それ以外は全部返してもらってはおるのでありますが、そのつど外務省を通しまして、損害賠償の請求権は保留いたしながら、いろいろ折衝しておるのであります。  それからなお、公海自由、領海問題あるいは専管水域の問題、それから同時に、各般の交渉を行なっております、インドネシアその他におきまして。一口に申しますと、国際漁業の点では、環境はきびしい面もありますし、それから一つは、卑俗なことばで申しますと、海洋の陣取り合戦みたいな面があることはあるのであります。ただ、わが国が漁業におきまして相当な先進国である。そこで、アジアを中心に、太平洋を中心に、できる限り具体的にケース・バイ・ケースで秩序を立てながら、その中から一つの国際協調の基盤を固めながら、その中において将来に向かっての道を開いていこう、国際的な孤立化というおことばもありましたが、それよりは、じみちながら、実績なり具体的な事実を積み上げながら、関係国と必要な協調をはかりつつ、領海の問題を将来検討するとか、あるいは専管水域の問題を片づけるとか、そういうような扱いをいたしてまいりたいという考えでございます。  それから、もう一つ総理の御答弁の中に入っておりません点で、資源調査の点でありますが、資源調査につきましては、わが国の近海はきわめて開発が進んでおって、世界的でも最も有効に利用されている海域であります。ただ、現在未開発のまま残されている資源のおもなものは、四百メートル以上の深さを持った深海における底魚類でありまして、これにつきまして、当面、日本海を対象として開発研究を推進いたしております。それから、遠洋の深海資源の開発につきましては、国の大型調査船を中心として推進をはかっておりまして、本年度はニュージーランド沖、ニューファウンドランド沖に調査船を出す予定でございます。  大体、以上補足を申し上げます。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘君登壇拍手
  30. 中曽根康弘

    国務大臣(中曽根康弘君) まず、漁船の拿捕の問題でございますが、昭和四十二年度を調べてみますと、ソ連関係が四十七隻、米国が三隻、インドネシアが一隻、フィリピンが一隻、エクアドルが一隻、モーリタニアが一隻、ニュージーランドが一隻であります。現在までに返ってこない船は、ソ連関係が四百四十五隻、七十九名、韓国が百八十三隻、米国が一隻、二十名、スペインが一隻、二十七名、中共が百九隻、国府が三十隻となっております。海上保安庁を通じまして領海に対する注意を厳格に与えまして、事故防止を期しております。  次に、北洋の問題でございますが、第一管区海上保安本部におきまして、巡視船十七隻、航空機四機をもっていろいろ警戒しております。一番の多発時期は、漁船の遭難は冬、それから五月から八月にかけてのサケ・マスの時期でございますが、このときにはほかの管区からも応援船を派遣いたしまして、気象、海象の注意、あるいは積み荷の過載の防止等につきましていろいろ手当てを講じております。(拍手
  31. 河野謙三

    ○副議長(河野謙三君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。      —————・—————
  32. 河野謙三

    ○副議長(河野謙三君) 日程第二、石炭鉱害賠償担保等臨時措置法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。石炭対策特別委員会理事小野明君。    〔小野明君登壇拍手
  33. 小野明

    ○小野明君 ただいま議題となりました法律案について、委員会における審査の経過と結果を御報告いたします。  本法律案は、鉱害基金と鉱害復旧事業団を統合して石炭鉱害事業団とし、この事業団に、現在、基金が行なっている鉱害賠償担保の管理及び賠償資金等の融資業務と復旧事業団の鉱害復旧業務をあわせ行なわせるとともに、新たに地方鉱業協議会に鉱害賠償に関する紛争裁定を行なえるようにし、これら改正に伴い、法律名も石炭鉱害賠償等臨時措置法に改めようとするものであります。  委員会におきましては、残存鉱害量の調査と長期計画の必要性、復旧計画の策定と鉱害処理の迅速化、鉱害紛争の裁定の適正化、地方鉱業協議会の構成等を中心に質疑が行なわれましたが、詳細は会議録に譲ることといたします。  質疑を終わり、討論なく、採決の結果、本法律案は全会一致をもって衆議院送付案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、吉武委員より各派共同提案による附帯決議案が提出され、これも全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  以上報告いたします。(拍手
  34. 河野謙三

    ○副議長(河野謙三君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  35. 河野謙三

    ○副議長(河野謙三君) 過半数と認めます。よって、本案は可決せられました。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十一分散会      —————・—————