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1968-04-10 第58回国会 参議院 本会議 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月十日(水曜日)    午前十時四分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第十一号   昭和四十三年四月十日    午前十時開議  第一 物品税法等の一部を改正する法律案(内   閣提出、衆議院送付)  第二 皇室経済法施行法の一部を改正する法律   案(内閣提出衆議院送付)  第三 地方公務員災害補償法の一部を改正する   法律案内閣提出)  第四 国立病院特別会計法の一部を改正する法   律案趣旨説明)  第五 最低賃金法の一部を改正する法律案、最   低賃金法案(衆第一号)及び最低賃金法案(参   第九号)(趣旨説明)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、請暇の件  以下 議事日程のとおり     —————————————
  2. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。  この際、おはかりいたします。  谷村貞治君から病気のため二十六日間請暇の申し出がございました。  これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。よって、許可することに決しました。      ——————————
  5. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 日程第一、物品税法等の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  まず、委員長報告を求めます。大蔵委員長青柳秀夫君。    〔青柳秀夫登壇拍手
  6. 青柳秀夫

    青柳秀夫君 ただいま議題となりました物品税法等の一部を改正する法律案趣旨は、最近における税負担の状況並びに国際競争力強化等の見地から、パッケージ型ルームクーラー等品目について、その税率を漸進的に引き上げ、または非課税措置を延長するとともに、すでにその目的を達成したものと認められる小型カラーテレビ等品目については、基本税率を適用することとする等、所要改正を行なおうとするものであります。  なお、本案につきましては、衆議院において、施行期日を四月十日に改め、所要調整措置を講ずる修正が行なわれております。  委員会における審議の詳細は、会議録によって御承知を願いたいと存じます。  質疑を終了し、採決の結果、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告申し上げます。(拍手
  7. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  8. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 過半数と認めます。よって、本案は可決せられました。      ——————————
  9. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 日程第二、皇室経済法施行法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  まず、委員長報告を求めます。内閣委員長井川伊平君。    〔井川伊平登壇拍手
  10. 井川伊平

    井川伊平君 ただいま議題となりました皇室経済法施行法の一部を改正する法律案につきまして、内閣委員会における審査経過と結果を御報告申し上げます。  本法律案改正点は、最近の経済情勢にかんがみ、内定費定額を千六百万円引き上げて八千四百万円に、後続費算出の基礎となる定額を八百万円引き上げて七百二十万円にそれぞれ改定することであります。  なお、本法律案は、衆議院において、施行期日につき所要修正が行なわれましたが、その詳細は会議録に譲りたいと存じます。  質疑を終わり、討論に入りましたところ、別に発言もなく、採決の結果、本法律案全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告申し上げます。(拍手
  11. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  12. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 過半数と認めます。よって、本案は可決せられました。      ——————————
  13. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 日程第三、地方公務員災害補償法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  まず、委員長報告を求めます。地方行政委員長津島文治君。    〔津島文治登壇拍手
  14. 津島文治

    津島文治君 ただいま議題となりました地方公務員災害補償法の一部を改正する法律案につきまして、地方行政委員会における審査経過及び結果を御報告いたします。  本案は、地方公務員の公務上の災害で、精神または神経系統の機能に障害を残し、服することのできる労務が相当な程度に制限されることとなる場合の障害補償について、地方公務員災害補償法別表規定整備しようとするものであります。  委員会における審査の詳細は会議録に譲ります。  質疑を終局し、討論に入りましたところ、別に発言もなく、採決いたしました結果、本案全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告申し上げます。(拍手
  15. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  16. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 総員起立と認めます。よって、本案全会一致をもって可決せられました。      ——————————
  17. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 日程第四、国立病院特別会計法の一部を改正する法律案趣旨説明)。  本案について「国会法第五十六条の二の規定により、提出者からその趣旨説明を求めます。水田大蔵大臣。    〔国務大臣水田三喜男登壇拍手
  18. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 国立病院特別会計法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。  この法律案は、従来一般会計で行なってまいりました国立療養所経理を新たに国立病院特別会計において行なうこととするものであります。  御承知のように、国立療養所は、これまで、戦後におけるわが国結核対策を推進する上に大きな役割りを果たしてまいったのでありますが、これに加えて、近年は国民疾病構造の変化に伴う各種の長期慢性疾患重症心身障害進行性筋萎縮症等の新たな医療需要にこたえることが強く要請されているのであります。しかしながら、現在の国立療養所施設の多くは相当老朽化しておりますので、このような時代の要請にこたえるためには、すみやかに、かつ、計画的にその整備を促進し、充実した医療を行ない得る体制を確立する必要があります。  今回の改正措置は、国立療養所特別会計に移すことにより、その収支を明らかにし、なお足らないところは一般会計から補足する措置を講じまして、その経理を明確にいたしますと同時に、ただいま申し上げましたような国立療養所の実情にかんがみ、特別会計において借り入れ金の導入、資産効率的活用予算弾力的運用等を行なうことにより、その施設設備整備を促進し、あわせて経営円滑化をはかろうとするものであります。  なお、国立療養所うちらい療養所につきましては、その特殊性にかんがみ、引き続き一般会計において経理することといたしております。  次に、この法律案の概要について申し上げます。  新たに国立病院特別会計において国立療養所にかかる経理を行なうことといたしましたことに伴い、同会計病院勘定及び療養所勘定に区分いたしますほか、療養所勘定においても施設費を支弁するため必要があるときは借り入れ金をすることができることとし、また、各勘定相互間の資産の移動に関し必要な規定を設ける等、所要規定整備をはかることといたしております。  なお、昭和四十三年度の暫定予算の期間中に行なわれる支出及び債務負担並びに収入国立病院及び国立療養所にかかるものは、暫定予算が失効することとなった場合には、この会計の各勘定において行なわれたものとみなすことといたしております。  以上が、国立病院特別会計法の一部を改正する法律案趣旨でございます。(拍手
  19. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。田中寿美子君。    〔田中寿美子登壇拍手
  20. 田中寿美子

    田中寿美子君 私は、日本社会党を代表して国立病院特別会計法の一部を改正する法律案について、佐藤総理並びに関係大臣に対し、若干の質問をいたしたいと存じます。  政府は、昭和四十三年度予算編成にあたり、財政硬直化を口実にして、酒、たばこなど間接税の増税を行ない、受益者負担原則を振りかざして、国鉄定期代引き上げなど、公共料金中心とした物価値上げにより、国民大衆からの収奪をもって財源調達をはかる一方、社会保障国庫負担を削減し、総合予算主義の名のもとに、公務員給与ベースアップ分、あるいは生産者米価の上昇にワクをはめるとともに、消費者米価のスライドによる引き上げをもくろむなど、もっぱら国民生活犠牲において、みずからの経済政策の失敗を糊塗しようとしています。これは、佐藤総理が当初に掲げた高度の福祉国家看板に反するものであり、われわれ国民はどうしても納得できません。  政府は、財政硬直化をしきりに宣伝していますが、それは、過去における自民党政府放漫インフレ財政と、直接的には四十年度以降の国債政策が四十二年度に行き詰まり、破綻したことに原因があります。  これに加えて、ここに指摘せねばならないのは、防衛費が重大な財政膨張あるいは財政硬直化の要素となっていることであります。なるほど、四十三年度予算における防衛関係費伸び率は、補正後予算に対し九・一%と、総予算伸び一一・八%より低くなっていますが、国際収支が赤一字であるのに、前年度より四十二億円もふえております。イギリス西独など、国際収支赤字となっている国は防衛費を削減しており、イギリス一億ポンド、西独は四カ年で九十億マルクを削減しております。ところが、わが国防衛費は、四十二億の増額のほかに、直接予算面にあらわれていないもの、すなわち継続費百二十六億円、うち四十三年度分十九億八千四百万円、国庫債務負担行為が千五百八十億円、うち四十三年度分九十億三千五百万円と、きわめて巨額にのぼっております。これらは、第三次防衛整備五カ年計画の遂行上、長期固定的な経費支出を予定したものであり、これこそ将来にわたって予算膨張を義務づけるものであります。一方に国民福祉の増進を犠牲にしながら、このように将来の防衛予算膨張を固定化することは、平和憲法逆行する軍国主義的予算と言うべきであり、総理福祉国家を口にされるのとは矛盾するものであります。佐藤総理は、防衛費よりは社会保障費をこそ拡大させるべきであるとお考えになりませんか。私は、最初に、昭和四十三年度予算に対する総理の反省を求めたいと存じます。  次に、私は、三点について佐藤総理にお尋ねいたします。  第一は、社会保障基本理念についてであります。総理は、かつて、高度の福祉国家建設を唱えられた以上、社会保障についての理念理想を持っておられるはずだと存じます。それはどのようなものであるか、御説明をいただきたい。  私は、所得の格差の著しい現在の日本のような資本主義国家において実現すべき社会保障とは、貧困や疾病災害死亡、老齢による労働不能の状態から国民生存権を守るため、国民所得を再配分することであると考えます。福祉国家と呼ばれる諸国社会保障に対する考え方はここにあります。日本国憲法二十五条も、国民生存権保障しております。総理は、国民所得の再配分によって、すべての国民生存権保障するのが社会保障理想であるとお考えになりませんか。ところが現在、わが国社会保障率は約六%、振り替え所得率は五・五%で、欧米諸国に比べて著しく低い水準にあります。また、予算総額に占める社会保障費比率は、四十二年度一四・二一%に比べて四十三年度一四・〇一と後退しております。これは社会保障逆行ではないでしょうか。総理は、社会保障考え方をどのように把握されますか。福祉国家看板はもはやおろされたのですか。  質問の第二は、社会保障受益者負担原則を当てはめることについて、どう考えられるかということであります。大蔵厚生当局は、財政硬直化の打開のために、受益者負担原則社会保障にも当てはめております。大蔵大臣諮問機関である財政制度審議会は、大蔵省の意を受けて、わが国社会保障に占める医療保障の比重が大き過ぎるから、その比率を低め、他の社会保障部門とのバランスをとり、なるべく国旗の負担を減らし、保険料徴収診療費徴収をふやして、受益者負担させるべきであるという建言を行なっております。総理は、医療を受けることは受益考えられますか。それはむしろ災害死亡補償などと同じく、現在の労働条件社会環境交通事情などの悪条件からくる災害補償考えるべきではないでしょうか。わが国社会保障費に占める医療費割合が六〇%を占め、年金その他の比率が著しく低い現状では、むしろ低い部門をこそ高めるべきであって、進んだ部門引き下げてバランスさせるのは逆行であるとお考えになりませんか、お尋ねいたします。  質問の第三は、以上のような社会保障逆行の傾向の中で、ただいま問題になっております国立療養所特別会計移管の問題について、総理のお考を伺いたいのであります。私は、今回の試みは社会保障制度の重要な柱であるところの医療保障の一角をくずすものであると考えます。なぜなら、現行国立療養所は、その経費全額国庫負担でまかなう、営利を離れた公的医療機関であります。これを一般会計予算圧縮目的特別会計移管することは、将来、企業経営営利化に向かうおそれを十分内蔵しております。この際、そのようなおそれのある特別会計への移管を中止し、わが国公的医療制度中軸としての国立療養所を、これまでどおり国庫負担で維持される気はおありになりませんか、お尋ねいたします。  次に、大蔵大臣にお尋ねいたします。  国立療養所という被保護者またはボーダーライン層の多い、長期慢性疾患者のための医療機関までも、財源節約のために特別会計移管することは、社会保障の本質を離れ、あまりに財政中心主義に走ることではないでしょうか。本来、社会保障は、後退させない限り、財政負担は増大していくのが当然であり、政府は進んで増額政策とすべきであります。しかも、社会保障費増額は、かつて社会保障制度審議会の答申にもありましたように、国民亜活を安定させ、消費需要を喚起し、景気を調整する役目を果たすものであって、財政硬直化要因として考えるべきものではありません。大蔵大臣は、国立療養所問題を財政中心主義で処理することをやめ、従来どおり国庫全額負担する気はありませんか。  次に、もう一点、大蔵大臣にお尋ねしたいのは、四十三年度予算編成の過程において、厚生省原案には国立療養所特別会計移管の構想はなかったのであります。大蔵省のイニシアチブによって特別会計移管原案が示され、厚生省がそのまま受け入れております。医療保障という政策的な予算が、財政当局から発案されたことについて、私は大きな疑問を抱きます。なぜそうなったのか、大蔵大臣の解明を求めたいと存じます。  次に、厚生大臣に対し、数点についてお尋ねいたします。  第一に、社会保障を担当する大臣として、社会保障受益者負担原則を当てはめることをどう考えられますか。社会保障理想は、全国民に一律、無差別に所得医療とが保障されることであります。厚生省当局が率先して、受益者負担原則社会保障に対して振りかざすのは不当であり、誤りであると考えますが、いかがですか。また、大蔵省財政上の理由から、国立療養所特別会計への移管を発案し、厚生省がそのまま受け入れるのは、社会保障担当の省として不見識であります。厚生大臣はどのように説明されますか。  第二に、私は、今回の措置によって国立療養所特別会計移管することは、国立療養所本来の公的医療機関性格を変えてしまい、営利化するのではないかと心配いたしますが、この点を厚相はどう考えられますか。  戦後二十二年間、一般会計で運営されてきた国立療養所は、現在、全国百六十カ所、五万四千余の病床を持ち、結核精神重症心身障害児進行性筋萎縮成人病などの患者収容し、わが国における長期慢性疾患中軸的医療機関としての役割りを果たしております。一般会計で運営されてきたのは、これらの収容患者医療長期にわたり、その六二%が低所得層からの公費負担患者であるため、採算を度外視しなければ医療保障し得ないからであります。今回の特別会計への移管によって、国立療養所経営営利化しないと保障できますか。政府は、絶対に独算制にはしない、収支赤字は幾ら出ても、一般会計からの繰り入れで補うと言っております。であれば、経営上変わることはないのですから、なぜ特別会計に移さねばならないのですか。この点が明確でないために、国立病院実例などに照らして、将来企業経営本位になり、独算制に移されるのではないかとの疑いを持たざるを得ません。絶対に独算制にしないという保障がありますか。最近、国立病院差額ベッドがふえていますが、それは国立療養所にも及んでおります。これをふやしていくのは、公費負担患者収容を減らし、営利化に向かう印象を与えております。今後差額ベッドをふやさない約束をしていただけますか。  政府は、特別会計に移すことによって、療養所土地の一部を売って設備施設改善に充てるから、老朽化した国立療養所が生まれかわるのであると説明していますが、政府にその意思があれば、一般会計においても可能であります。厚生大臣は、営利化独算制を排除し、現行一般会計の中で設備近代化医療充実をはかる意思はありませんか。  第三に、今回の措置で、僻地医療中心となってきた療養所を廃止し、公的医療機関が縮小される心配があります。厚生省の四十三年度の整備計画では、現在の二十一施設を統合して、十施設にすることにしていますが、これは経営合理化のために公的医療機関の縮小を意図しているのではないでしょうか。国立病院の場合、赤字施設国立療養所県立病院に移譲された実例を見ていますので、この際、国立療養所が将来国民医療機関として占める重要な役割りを考慮し、絶対に縮小しないと保障できますか。  第四に、政府は、特別会計に移行する最大の利点として、借り入れ金ができることをあげています。私は、四十三年度借り入れ金十五億円は、将来元利返済などが負担となり、医療の低下、医師や看護職員の待遇の悪化を招きはしないかと憂えます。借り入れ金についての将来の計画を明らかにしていただきたい。  第五に、治療費の二割引きは、従来の患者にはそのまま、新規患者でも自己負担あるものには適用するといいますが、それでは二割引き廃止の必要はどこにあるのですか。やはり収入をあげるためではないでしょうか。結核社会病ですから、その治療費は全面的に公費で見るのが当然で、二割引き制度は廃止すべきではないと考えますが、いかがですか。  なお、この点については、自治大臣にもお尋ねします。これまで、国立療養所患者公費負担額の八〇%は国が、二〇%は地方自治体が引き受けてきました。今回二割引き廃止で、地方財政への十数億のはね返りが心配されています。そのために、命令入所患者収容すら制限される心配がありますが、いかがですか。厚生省は、地方交付税にこの負担分を八億六千万見込んでいますが、これで足りるのですか。また、地方交付税性格からすれば、これが必ず二割引き廃止分に使われる保障がありません。であればこそ、今日までに五十一の地方議会が、負担増をおそれて、二割引き廃止反対の決議をしています。自治省は、二割引き廃止によって地方財政は少しも圧迫されないと確信されますか。  厚生大臣に対し最後質問いたしたいのは、ハンセン病療養所のことであります。現在、十一施設一万床は一般会計に残してありますが、今後とも必ず一般会計として、厚生省医務局所管のもとに運営されますか。患者の漸減に伴い、将来民間に移管するようなことはありませんか。ハンセン病療養所も同じく老朽化しています。この施設設備改善や、医療内容充実については、どういう計画を持っておられますか。  最後に私は、大蔵大臣並びに厚生大臣に対し、重要な疑問を投げかけます。国有財産であるところの国立療養所敷地売却は、はたして正当なことでしょうか。国立療養所行政財産であり、行政財産国有財産法により売却できないことになっております。そのため、特別会計に移して、敷地普通財産への切りかえを容易にして売却しようとするものであります。行政財産であるところの国有地売却してはならないのは、それが営利に用いられてはならないからであります。大蔵厚生両省国立療養所土地売却財源確保のための得策であるかのように宣伝すること自体、妥当な態度とは思われません。これまで売却した国立療養所敷地は、どのような方法で、どのような用途に使われるのですか、明らかにしていただきたい。この点が明らかでない限り、疑惑を招きます。たとえ売却が合法的であるとしても、国民のための公的医療機関の将来の遠大な展望に立つならば、景勝の地に広々とした敷地を持つ国立療養所土地売却はできるだけ避け、結核をはじめ、重症心身障害者、その他成人病治療などのために、国庫をもって維持し、社会福祉社会保障の完備に備えるべきだと考えます。この点、大蔵大臣並びに厚生大臣の明確な答弁を要求いたします。  以上をもって私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  21. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 田中君にお答えいたします。  四十三年度の予算の総体につきましては、編成方針その他について予算委員会におきまして十分論議を尽くした、かように私考えておりますが、ただいま、四十三年度の予算軍国予算だと、こういうような御批判でございました。なるほど、私どものかねてから申しておる福祉国家建設、そういう意味で、社会保障関係は最重点施策に取り上げておりますが、その意味におきまして、これにもっと力があってしかるべきではなかったかと、こういうような意味合いは、わからないではございません。しかし、御指摘にもなりましたように、今回のような困難な予算編成にあたりましても、社会保障関係は、前年に比べまして一五・三、かような増加率を示しております。  また防衛費は、はるかにそれより低い一〇・幾らの増加率でございますから、ただいま言われたようなことは当たらないと思います。ただその場合に、イギリスやドイツの例を引き合いに出されて、そうして西独やまたイギリスはうんと減額しているじゃないか、かようなお話でございますが、わが国防衛費はもともとたいへん低い額でございます。いわゆる国民所得に対する割合は御承知のように一%ちょっとこしているという、たいへん低いものでありますから、西独イギリスの例は日本には当たらないと、かように思いますので、この点は十分御理解をいただきたいと思います。  そこで私は申し上げたいのですが、社会保障は、申すまでもなく、御指摘にありましたように、所得の再分配でございます。したがいまして、この再分配、かような点で万遺漏なきを期するが、同時に社会保障をどういうように政府考えているかというお尋ねですが、私ども考えておるところでは、その再分配は御意見のとおりでありまするが、第一義的な目的、これは何と申しましても、すべての国民が健康でかつ文化的な生活を享受することができるようにする、これが社会保障の第一義的な目的だと思います。また、その意味におきまして、この社会保障財源国民負担によりましてまかなわれるものである。また、制度性格目的等に応じまして、国民の納得のいく方法でこれがまかなわれていかなければならないと、かように考えます。  そこで、お尋ねになりました受益者負担の問題でありますが、これは社会保障の効果を減殺するようなことがあってはならないと、かように思いますので、この受益者負担についてはその点を特に留意すべきだと思います。  また、今回の特別会計への切りかえ、これはいわゆる営利的な方向へ走るんではないかと言って、たいへん御心配でございますが、私が申し上げるまでもなく、国立療養所は今日まで結核対策のその中心的な役割りを果たしております。したがいまして、今後もそれを果たしてもらうつもりでおりますし、後ほど各大臣から詳細に御説明するでございましょうが、その施設もたいへん老朽化しております。また、施設の中身も充実させなければならない。こういうようなところから、今回、特別会計にする。それによりまして、いわゆる借り入れ金等が自由にできるようにして、急ぎ設備整備をすると、こういう方向に取り組むのでございます。特別会計になりますと、とかく独立採算と、こういうことになるのではないかと言われますが、今回のこの場合は、いわゆる独立採算制をとるものではございません。独立採算制をとれば、御指摘になりましたように、営利に走るのではないかというような危険もございますが、独立採算制をとるものでない。これを御了承いただきまして、今回のこの改正にぜひとも御賛同いただきますようお願い申し上げます。(拍手)    〔国務大臣水田三喜男登壇拍手
  22. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 大蔵省がイニシアチブをとったために、何かあるのじゃないかという憶測を生みましたことは、非常に恐縮でございますが、これはもう先ほど提案の趣旨説明をいたしましたように、老朽化した設備を急速に近代化さすこと、医療内容を向上させるために特別会計に移して、弾力性を持って運営したいというのが趣旨でございます。最初、予算規模の圧縮のウインドードレッシングじゃないかというようなことも言われましたが、そうではございません。国立療養所の現状から見ましたら、この特別会計に移すことが最もいいという考えで、厚生省と相談した結果、とられた今回の措置でございます。で、もし特別会計にこれを移したら、国立療養所営利化して、そうして公共的な性格をなくしていくのじゃないかという御心配でございましたが、これは、ただいま総理がお答えしましたように、この療養所の療養ということから来る特殊な性格にかんがみまして、これを営利的に独立採算制によって運営するということは不可能でございますし、これは考えられないことでございます。正常な、正当な経理によって生じた収支の差額は全部一般会計からこれを補給するという原則でございますので、一般会計としましては、今後むしろふえるというようなことがあっても、財政を節減するためにこういう措置をとったというわけではございません。現に今回の予算で見ますというと、四百二十億の支出に対しまして国庫は二百五億、四九%を一般会計から持つというような措置をとった次第でございまして、今後もこういう運営をしてまいりたいと考えております。  それから、国立療養所土地の問題でございましたが、建物は旧軍事保護院時代からのものを厚生省が戦後引き継いだものでございまして、もう木造の建物は耐用年数が来ておる、これをこのまま放置できないぐらい老朽化しておりますので、これを早急に整備して近代化をはかるという必要がございます。このためには、一般会計からの繰り入れと資金運用部の借り入れというようなもののほかに、なお病院の整備をやって、その結果、余剰となった土地を処分するということによって、急速に設備整備を私どもははかりたいというふうに考えております。したがって、療養所に差しつかえるような土地をみだりに売るということは考えておりませんが、整備の進むに従って、その地域で余剰が出るというものは、これを処分したいというふうに考えております。ただ、その場合に、都市計画とか、あるいは国土開発計画、あるいは住宅政策というようなものとの関連において、なるたけ社会的、公共的に有効な用途に活用するように、この処分については十分慎重を期してまいりたいと考えておりますが、今度の特別会計に移した一つのやはり理由としましても、余剰があるなら、これは処分して、設備充実に充てたいという考えでございますので、この点はひとつ御了承願いたいと存じます。(拍手)    〔国務大臣園田直君登壇拍手
  23. 園田直

    国務大臣(園田直君) 第一のお尋ねは、受益者負担に対する御意見でございますが、受益者負担原則を振りかざしておるわけではございません。もちろん、医療については公費理想でございますが、社会保障財源は、御承知のとおりに、国民経済でございまして、いわゆる租税の形をとるか、保険の形をとるか、あるいは関係者に一部負担をしてもらうか、こういうことを現今の国家財政ともにらみ合わしてやらなければならぬ問題でございまして、もちろん、その一部の費用負担を願う場合においても、負担する方々の能力等を十分勘案して、社会保障の効果を減殺しないように注意して実施したいと考えております。  次に、特別会計が国療の営利化または医療機関の縮小になるのではないかという御意見でございまするが、療養所の使命は、結核あるいは精神病、脊髄、あらためてこれに加えて重症心身障害あるいは筋ジストロフィーなど、民間の病院ではなかなかとりにくい特殊なものを、国家の力でこれを解決していきたいという使命でございまするから、特会に変わりましても、この使命は変更することなしに、経理の適正化をはかって、その収支の不足は、大蔵大臣が申し上げましたように、一般会計から繰り入れる。なおまた、借り入れ金あるいは不用土地の処理など、特別会計の利点を利用して、早急に近代化整備したいという考え方のもとでございまするから、御意見のように、十分注意をいたしたいと考えております。  次には、療養所国立病院差額ベッドの問題でございまするが、希望者もありまして、若干の差額ベッドを設けております。しかし、これは今後ふやす意思はございませんので、この点も御意見のとおり、注意していきたいと考えております。  なお、国立療養所がいままで僻地医療の任務を果たしてきたことは、御指摘のとおりでございますが、特別会計移行後も、この僻地医療の任務は変更しないように、十分注意していきたいと考えております。  なおまた、統合についての御意見がございましたが、これはいままでの統合の計画がございまするが、特別会計によって統合するということは考えておりませんので、これはいままでの年次計画に従ってやるつもりでございます。  なお、借り入れ金患者負担にならないかという御質問でございまするが、施設近代化整備等をはかりまして、そして収支の不足は一般会計から将来とも繰り入れることによって患者負担にならないように注意をいたしております。その支払いの方法は、借り入れをいたしますと、五年据え置き、二十年間の均等償還、利率は六分五厘、詳細については法律案審議に従って御報告を申し上げます。  次に、治療費の二割引き制度の廃止の問題でございまするが、御承知のごとく、旧軍事施設引き受けました直後においては、その当時はまだ医療保険とか、あるいは各種の医療公費負担制度がなかったわけでありまして、完備されていなかった。しかしながら結核については非常な必要性を迫られておりましたので、ここで二割引き制度をつくったわけでございまするが、その後公共医療制度は逐次保険と相まって完備をしてまいりましたので、ここで二割引き制度は廃止してもいいと考えたわけでありますが、特別会計移行によって国立療養所患者さん方には、従来の患者、新しく入ってくる患者及び外来の患者、従来の者はそのまま、新入患者と外来患者については、自己負担のない者はこれはそのまま二割引きを存置する、こういうことにいたしております。  ハンセン氏病の療養者は従来どおりにやるかという仰せでございまするが、これは従来どおり特殊のものでございまするから、一般会計でやるつもりでございまして、逐次整備計画に従って明年度も整備いたすことにいたしております。  なお、不用土地の財産の償却についての御意見でありまするが、この不用土地については、整備によって生ずる余剰土地を必要やむを得ざるものだけやりたいと考えておりまするが、必要やむを得ざるものであって、しかも、余剰地といえども、将来の医療需要の変動等を考慮をし、あるいはまたやむを得ず処分する場合におきましても、地方公共団体の用に供するということを優先的にし、住宅、教育施設社会福祉施設等の用を考慮をして、いわゆる行政財産の中の公用財産の取り扱いに準じて十分注意して、みだりに処分することがないように注意していきたいと考えております。(拍手)    〔国務大臣赤澤正道君登壇拍手
  24. 赤澤正道

    国務大臣(赤澤正道君) 今回の措置に伴いまして、御指摘のとおりに地方財政面でも負担が若干増加いたします。しかし、この引き当てにつきましては、地方交付税の基準財政需要額の算定に組み入れておりますので、地方団体や患者の方に迷惑がかかることはないと思います。(拍手
  25. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) これにて質疑の通告者の発言は終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。      ——————————
  26. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 日程第五、最低賃金法の一部を改正する法律案最低賃金法案(衆第一号)及び最低賃金法案(参第九号)(趣旨説明)。  三案について、国会法第五十六条の二の規定により、提出者から順次趣旨説明を求めます。小川労働大臣。    〔国務大臣小川平二君登壇拍手
  27. 小川平二

    国務大臣(小川平二君) 最低賃金法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。  最低賃金制につきましては、昭和三十四年の法施行以来今日までにその適用を受ける労働者は中小企業を中心として約六百万人に達するとともに、その金額も逐次改善され、賃金の低廉な労働者の労働条件改善と中小企業の近代化に役立ってまいりました。  この間、わが国経済の高度成長の過程において、若年労働者を中心とする労働力の逼迫等により一般の賃金上昇は著しいものがあり、このような中で、なお改善から取り残される労働者に対し、より効果的な最低賃金制度を確立して、その生活の安定と労働力の質的向上をはかっていく必要はますます大きくなっていると考えます。  かかる事情にかんがみ、政府は、昭和四十年来中央最低賃金審議会に今後の最低賃金制のあり方の御検討をお願いしていたところでありますが、昨年五月同審議会より答申が提出されました。その答申に基づきまして、最低賃金の決定方式については、業者間協定に基づく決定方式を廃止し、最低賃金審議会の調査審議に基づく決定方式を中心とすることに改めることが適当であり、また、このような措置を円滑に進めるためにはある程度の経過措置が必要と考え、ここに最低賃金法の一部を改正する法律案を提出いたした次第であります。    〔議長退席、副議長着席〕  次に、この法律案の内容につきまして概略御説明申し上げます。  第一には、最低賃金制度をより効果的なものとするため、業者間協定に基づく最低賃金及び業者間協定に基づく地域的最低賃金の二つの最低賃金決定方式を廃止することといたしております。  このことに関連して、最低賃金審議会の調査審議に基づく最低賃金につきましては、労働大臣または都道府県労働基準局長は、従来、その他の方式により最低賃金を決定することが困難または不適当と認められるときに限り審議会の調査審議を求めることができることとされておりましたが、その要件を除き、賃金の低廉な労働者の労働条件改善をはかるため必要があると認めるときは、調査審議を求めることができることといたしております。なお、最低賃金審議会が調査審議を行なう場合においては、関係労働者及び関係使用者の意見を聞くものとするとともに、労働大臣または都道府県労働基準局長の最低賃金の決定に先立ち、関係労働者及び関係使用者は異議の申し出をすることができることといたしております。  第二には、業者間協定に基づく最低賃金及び業者間協定に基づく地域的最低賃金の二つの決定方式の廃止に伴う必要な経過措置を定めることといたしております。すなわち、現在まで業者間協定に基づく最低賃金決定方式が広く実施されている実情にかんがみ、その廃止に伴い無用な混乱を生ずることのないよう、法施行の際現に効力を有する業者間協定に基づく最低賃金及び業者間協定に基づく地域的最低賃金は、法施行後なお二年間はその効力を有することとし、その間においてはなお従前の例により改正または廃止することができることといたしております。しかしながら、その期間内に最低賃金審議会の調査審議に基づく最低賃金が新たに設定または改正されたときは、その最低賃金の適用を受ける労働者については、業者間協定方式による最低賃金はその効力を失うものといたしております。  以上が最低賃金法の一部を改正する法律案趣旨でございます。(拍手)     —————————————
  28. 河野謙三

    ○副議長(河野謙三君) 衆議院議員田邊誠君。    〔衆議院議員田邊誠君登壇拍手
  29. 田邊誠

    衆議院議員(田邊誠君) 私は、提案者を代表いたしまして、最低賃金法案につき、提案理由並びにその内容の概要を御説明申し上げます。  戦後、わが国経済は、著しい荒廃と混乱の中から再出発したにもかかわらず、異常な成長を遂げてまいったのであります。今日、その経済成長率は実に、先進国でも世界第一位を示す状態に立ち至っておるのであります。しかし、この経済の高度成長の中には、国民の勤勉で低廉な労働力の提供がその重要な要素として存在しておることを忘れることはできないと思うのであります。  もちろん、今日までの社会機構の中では、労働市場はごく一部の例外を除いて常に買い手が値段をつける買い手市場でありました。しかしながら、現下のわが国の情勢は、経済成長が招来したひずみを是正し、格差を解消することが急務であることが叫ばれ、また、若年労働力の不足の事態が起こりつつある状況にあり、労働市場も大きな変革を来たしつつあると言えるのであります。  この事実に着目するとともに、今後わが国が近代国家として、国際競争下にあって正しく発展し、真の福祉国家としての実をあげるためには、まず、勤労国民の労働力を大切にし、その価値を高く認めることが肝要であると言わなければなりません。  申すまでもなく、最低賃金制度は、ときとして団体協約によって最低賃金をきめる制度を含むこともありますが、通常は法定最低賃金を設け、賃金についての最低限度を国の法律によって強制する制度でありまして、歴史的には極貧階層救済のための労働者保護立法として発足したのであります。次いで、貿易競争からくる国際緊張を緩和する役割りを果たし、これが国際連帯を強める結果となり、ILO二十六号条約の採択と、次いでこれが批准が七十カ国以上に及ぶまでに至って来たのであります。さらに第二次大戦後は、労働者の最低生活水準を保障する制度として受け取られるように発展してまいったのであり、今日最低賃金制度は、労働の価値の正しい評価と、再生産に必要な生活をなし得るに足る賃金を、国家によって保障することを常識とする制度となっておるのであります。  しかるに、わが国の労働者の賃金の現状はいかがでありましょうか。わが国の工業生産が造船の世界第一位、化学繊維の第二位、自動車、鉄鋼、セメントの第三位など、世界有数の地位を占めていることは周知の事実であり、これに比べて国民一人当たりの所得が世界第二十位前後という低位にあることも動かせない現実であります。さらに月二万円以下の低賃金労働者が八百万人も存在し、内職労働者で低い工賃に呻吟している層が二百万世帯にも及んでいるのであります。  この生産と所得、経済成長と賃金の著しい不均衡を是正し、労働者の生活の安定と労働能率の向上をはかるとともに、産業の平和を維持するためには、労働者に最低賃金を保障し、規定することが絶対に必要不可欠であると信ずるのであります。  現行最低賃金法は施行後十年になんなんとしておりますが、適用労働者数は昨年十二月末現在で、中小企業労働者千三百万人のようやく半数に近い六百十一万人であり、しかもそのうち現行法の中核をなす、悪名高い第九条の業者間協定方式によるものが二千二件、四百六十七万人も占めておるのであります。さらに、適用労働者数の七六%は、依然として日額五百五十円以下、月額換算一万四千円以下の低い賃金決定を受けている状況にあるのであります。  このことによる低賃賃金労働者の存在が、他の労働者の賃金に多大の悪影響を与え、一方、法的規制賃金として、米価決定の重要な要素である生産費中の労働力評価の基礎ともなり、農民所得水準を押える役目もなしているのであります。さらに、生活保護基準、失業保険の最低額、失対賃金、国民年金とも関連し、国民生活水準を低く規制しておるのであります。さきに指摘したとおり、この国民犠牲の上に、表面上のわが国経済の高度成長と繁栄が築かれてきたことを、看過することは断じて許されないのであります。  われわれは、現行最低賃金法が、わが国の低賃金構造の裏づけと、政府の低賃金政策を合理化する役割りを果たし、一方、国際貿易市場で歴史的にわが国の信用を失わせてきたソシアルダンピングの原因をなしてき、さらには業者間協定によって、賃金は労使の直接交渉で決定すべき原則と権利を踏みにじり、低開発国においても適用可能といわれるILO二十六号条約に違反する指摘すら受けてきた経緯にかんがみ、この際、新しい時代に即応した正しい最低賃金法の実施に踏み切るべきときがきたことを認識し、ここにこの法案を提出した次第であります。  以下、法案の内容について御説明申し上げます。  まず、第一に、最低賃金の適用については全国一律制を採用いたしたのであります。わが国のように、いまだに産業別、業種別、地域別の賃金格差が存在し、なおかつ低賃金労働者が多数残されている状況では、この制度の実施があくまでも必要であると思考いたすのであります。それぞれの格差賃金をきめることは、最低賃金制度の本来持つ効果をなくさせるからであります。なおこの上に労使の団体協約に基づく産業別、地域別に拘束力を持つ最低賃金の拡張適用の制度も確立することといたしました。  第二は、最低賃金額決定の基準は、生活賃金たる原則を貫き、労働者が人たるに値する生活を確保するために必要な経費である生計費と一般賃金水準の動向などを考慮してきめることといたしました。  第三には、最低賃金額の決定及び改正は、最低賃金委員会において行ない、同委員会に強力な権限を与え、その決定に一般的拘束力を持たせ、行政機関も追認せしめることといたしたのであります。  第四に、最低賃金委員会は、六カ月に一回、必要生計費及び一般賃金水準に関する調査を行ない、その結果を公表するとともに、基礎となった必要生計費が三%以上増減したときは、最低賃金額の改定を決定しなければならないとしておるのであります。  以上、この法律案の概要について御説明申し上げましたが、この際、賃金支払い能力の問題と関連して、この法案による全国一律制最低賃金の実施は、中小零細企業の存立の基礎を脅かし、経常を困難にするのではないかという論に対して一言言及しておきたいと存じます。  そもそも、今日わが国中小企業が常に経営の危機に立ち、相次ぐ倒産に見舞われている原因はどこにありましょうか。このことは政府の大企業偏重の財政、税制政策に基因し、これに呼応する小規模企業への強い金融引き締めと、大企業からの下請単価の切り下げ、下請代金支払いの長期手形化による遅延などの圧迫が中小企業の基盤を不安定にしておる要因ではありませんか。その結果としてのしわ寄せが、労働者の賃金、労働条件に転嫁されていることを考えるとき、中小企業家と、そこに働く労働者は、ともに大企業の共通の犠牲者であるといえましょう。一律制最低賃金の実施は、大企業による下請単価の切り下げを防止する歯どめになると同時に、労働力の再生産を円滑にし、労働能率を高めることから経営改善一と近代化に役立つ結果ともなるのであります。そのためには、格差賃金の残存よりも、最低賃金は国が責任を持つという規定のほうが中小企業家自身も歓迎する制度であると確信するのでありまして、日本経済の二重構造を解消し、中小零細企業の経営安定のためにも、中小企業への国の保護、助成政策の推進と相まって、この全国一律制最低賃金の実施が必要であるゆえんがここに存在することを深く認識していただきたいのであります。  国民の待望するこの法案について、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたしまして提案理由にかえます。(拍手)     —————————————
  30. 河野謙三

    ○副議長(河野謙三君) 小平芳平君。    〔小平芳平君登壇拍手
  31. 小平芳平

    ○小平芳平君 ただいま議題となりました最低賃金法案につき、提案者を代表いたしまして、提案理由並びに内容の概要を御説明申し上げます。  申すまでもなく、国家が強制力をもって賃金の最低限を規定する労働者保護の立法、すなわち最低賃金制は、近代国家に不可欠の制度であります。ゆえに、ILO三十六号条約(最低賃金決定制度の設立に関する条約)は、一九二八年のILO総会で採択されて以来、七十二カ国が批准を終了しております。わが国は、先進工業国として大きな躍進を遂げながらいまだにこれが批准されないのは、政府の労働政策の重大な欠陥と言わざるを得ません。近代産業国家においては、いかなる労働者に対しても、労働者の最低生活保障するとともに、企業間の不公正な競争を防止し、経済の健全な発達と産業平和、労働市場の近代化を達成することがきわめて重要であります。  すなわち、企業にとっても、必要以上の低賃金、低生産性は、決してプラスとはなりません。むしろ、賃金水準を安定し向上していくことにより、良質の労働者を得、企業の機械化、近代化を促進することが必要なのであり、また、国民経済の面から見ても、賃金の上昇とともに労働者の生活が向上し購買力が上昇し、有効需要を喚起し、経済活動が活発となっていくのであります。それは、企業と労働者がともに繁栄する道にほかなりません。  しかるに、わが国最低賃金法は、昭和三十四年四月に成立しましたが、その内容はいわゆる業者間協定がその主体となっておりまして、ILO二十六号条約の労使平等の原則に反しているのであります。労働者側の参加しない業者間協定のごときは、悪法の最たるものであることは言うまでもありません。政府もようやくその非を認め、今回最低賃金法の一部を改正する法律案を提案いたしました。しかるに、われわれは、この政府案では、労使平等の原則を十分に尊重しない非民主的な要素を指摘せざるを得ません。また、現行の最低賃金の原則でも、本来の労働者保護の精神を十分に確立しているとは言えません。  そこで、公明党は、大衆福祉実現のために、すべての労働者に最低貸金を保障することといたしました。  次に、法案の内容について御説明いたします。  まず、第一に、すべての労働者に健康で文化的な生活を営むために必要な賃金の最低額、全国一律最低賃金を十八歳の労働者に必要な生計費の全国平均によって算出することにいたしました。  第二に、右の全国一律最低賃金の決定または改正は、中央最低賃金委員会がこれを行なうこととし、同委員会は、労使おのおの十人及び公益五人の委員をもって構成することといたしました。  第三に、中央最低賃金委員会は、一定の地域内の十八歳の労働者に必要な生計費が全国平均に比して著しく高い場合に当該地域についての最低賃金を決定することができることとしました。  第四に、以上のほか、労働協約に基づく一定の地域内の産業別最低賃金を認めることができることとしました。  何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。(拍手
  32. 河野謙三

    ○副議長(河野謙三君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。柳岡秋夫君。    〔柳岡秋夫君登壇拍手
  33. 柳岡秋夫

    ○柳岡秋夫君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま趣旨説明のありました最低賃金法の一部を改正する法律案について、総理並びに労働大臣質問いたしたいと思います。  賃金は、労働条件の最たるものであります。労働者保護の基本法である労働基準法は、その第一条において、「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。」と宣言し、ILO憲章もまた、その前文において、社会状態を改善する主要な手段の一つとして、「妥当な生活賃金の支給」を掲げております。そして去る昭和三十三年、すなわち現行最低賃金法制定の前年に、ジュネーブで開かれた最低賃金制に関する条約・勧告専門家会議は、その報告書において、「妥当な生活賃金という原則は、すべての最低賃金制度の根拠になければならないものであり、したがって、最低賃金を決定するにあたっては、労働者の通常の必要を考慮しなければならない」と述べております。さらに、本年はあたかも世界人権宣言二十周年の国際人権年に当たりますが、その人権宣言は、「何人も、労働する者は、人間の尊厳にふさわしい生活を、自己及び家族に対して保障する、公正かつ有利な報酬を受ける権利を有する」とうたっているのであります。このように、いやしくも賃金と名のつく限り、その内容は真の意味で人間らしい生活を営むことのできるものでなければならないとされているのであります。  今日、日本人の平均的な生活に必要な経費の基準といたしまして、人事院の標準生計費があります。これによりますと、最低賃金法の制定をされました昭和三十四年において、標準生計費は、一人当たり七千九百三十円であり、同じ年の労働省の調査で、定期給与が八千円に満たない労働者の数は百九十四万三千人でありました。そうして法施行後八年を経過した昭和四十二年の標準生計費は一万五千五百六十円で、定期給与一万六千円に満たない労働者の数は、四十一年の統計で百九十万八千人であります。すなわち、法施行八年の実績は、標準生計費以下の低賃金労働者を減少させることができなかったのであります。  標準生計費とは、言うまでもなく、厚生省国民栄養調査に基づく、日本人の栄養所要量等をもととして算定した生計費でありますから、これを下回ることは、必要な栄養量を摂取できず、人間として生存することさえ不可能となるのであります。のみならず、労働省発表の最低賃金決定状況によれば、四十二年度末で、賃金日額六百円未満の労働者は五百四十九万人であり、最低賃金適用労働者の九〇%を占めているのであります。日額六百円未満ということは、月収が一万五千円未満ということであり、これまた標準生計費に満たない低賃金労働者であります。労働省が最低賃金行政八年の成果として誇っているものは、実は膨大な低賃金労働者を法の名によって固定化したものにほかならないのであります。このような結果をもたらした原因は、一体どこにあるのでしょうか。  その第一は、政府が法の制定にあたって、労働基準法との法的関連を断ち切ってしまったことであります。労働者に人間らしい生活保障するという賃金の根本原則は、最低賃金法に取り入れられず、捨てて顧みられないまま、今日に至っているのであります。  そこで、総理にお伺いしたい第一は、最低賃金法の名のもとに、労働基準法第一条に違反する労働条件を膨大につくり出したということを、まずお認めになりますか。  第二は、最低賃金法は、本来、労働基準法に法的根拠を有すべきものでありますから、その旨を明記する意思はないかということであります。  原因の第二は、最低賃金決定基準の中に、企業の支払い能力という要素を大きく取り入れたことであります。最低賃金の決定基準については、最低賃金決定制度の実施に関するILO第三十号勧告におきまして、労働者に適当な生活水準を維持させるべきことを第一とし、あわせて生計費類似の賃金ないし一般賃金水準を考慮すべきことを掲げているのであって、企業の支払い能力には全く言及していないのであります。ところが、現行最低賃金制の大宗をなすところの業者間協定は、その性質上、ほとんど業者の支払い能力のみを考慮することによって締結されてきたことは疑いをいれません。「労働者に生活賃金よりも低く支払うことによって存在を続けている企業は、この国では存続する権利を持たない」と宣言したルーズベルトのことばは、最低賃金制そのものを貫くところの普遍的な原理であります。  すなわち、労働者の健康と精神とを破壊することによって成り立っている企業活動は、もはや企業活動の名に値するものではなく、一つの罪悪行為と言うべきであります。しかりとすれば、国が最低賃金制の名においてこのような最低賃金を認め、助長することは、労働者に対する罪悪であるのみならず、企業に対しても、このような行為が合法的であるという誤認を生ぜしめているという意味におきまして、まさに二重の罪を犯しているということになるのであります。政府は、この際、最低賃金決定基準から、支払い能力の原則を除くべきだと考えるのでございますけれども総理の所見をお伺いいたしたいのであります。  次に、制度運営における誤りの一つとして、地域性の固執を指摘したいのであります。本来、わが国の経済構造に根強く存在をいたしておりまする地域格差は、高度成長政策の強行によりまして拡大されております。国民所得の六〇%、労働力の五〇%が南関東、東海、近畿の三地方、いわゆる太平洋ベルト地帯に集中しているのであります。経済構造の地域格差は、そのよって来たるところが複雑であり、これを是正する方策も単純ではあり得ないのでありますが、わが国の最低賃金制が全国全産業一律方式の導入を時期尚早ないし非現実的であるとして、当初から放てきし、いたずらに地域性を固執したことが、賃金構造の地域格差を解消することなく、ひいては経済構造の地域格差を拡大する一翼をになっていることも否定できない事実であります。若年労働力の不足を背景として、格差縮小傾向の著しい中卒初任給においてすら、全国平均に対して南九州八〇%、東北八二%、北海道八六%という格差を示し、さきに述べた労働力の集中を招来しているのであります。他方、四十一年の勤労者世帯について消費者物価の地域差を見ると、最も低い四国、九州が全国平均の九六%、東北九六・九%というように、物価の地域差はきわめて小さくなっております。にもかかわらず、世帯実収入の格差は、九州八七・三%、四国九〇・六%、東北九二・一%の開きを示しているために、消費水準は、九州九一・七%、東北九二・九%、四国九三・六%と制約せざるを得ないのであります。  消費者物価の地域差がほとんどないということは、必要生計費にもさしたる差がないということであります。したがって、地域性と支払い能力とを固執し偏重する考えを捨てれば、全国一律最低賃金を実現し、他の経済諸政策と相まって、賃金の地域格差解消へと向こうことができ、ひいては、経済構造の地域格差解消という、わが国経済政策の戦略目標を達成する一助となり得るのであります。いまこそ一律最低賃金制に踏み切る客観的条件は熟しており、また、その必要性の大きいときはないと考えるのでありますが、総理の決意を伺いたいのであります。  次は、業者間協定についてお伺いいたします。  この方式がILO第二十六号条約に適合しないことは常識でありますが、その常識が政府の根本的認識になっていないことは、はなはだ遺憾であります。今回の改正案において、業者間協定方式を廃止する理由があいまいであり、中央最低賃金審議会の答申においても、この点の説明が不明瞭であります。同方式が条約に違反する旨の強い指摘に基づいて、現行法を同条約に適合せしめるための検討を審議会に追加諮問したのは四十一年二月でありますが、政府に常識があるならば、少なくとも業者間協定の締結を促進するようなことは慎むべきにもかかわらず、労働省当局は、さながら突貫工事のごとく、第一線の基準監督署にノルマを課し、一方的に企業の支払い能力を評価し、業者を説得して拡大をはかったのであります。このことは、佐藤総理みずからが、昨年の六月、衆議院会議において「現行法でも二十六号条約に適合している」と言明しているように、政府の誤った認識によるものであります。総理のこの点についての根本的認識を明らかにしていただきたいとともに、世界の常識に従って、業者間協定方式は条約に適合しないものであることを明確にすべきと思うのでありますが、総理のお答えを願いたいのであります。  次に、改正案の経過措置を見ると、業者間協定による最低賃金の効力を、法改正後なお二年間存続させ、その間使用者のみの発意による改定を認めることとしているのは、条約不適合の状態を二年間延長しようとするものではないか、労働者からの異議の申し立てがない場合、または、申し出があっても、行政官庁が効力存続の決定を行なった場合は、これをそのまま審議会方式による最低賃金とみなすとしているが、これは条約に適合しない方式で定めた最低賃金を永久に存続させる措  昭和四十三年四月十日 参議院会議録第十一号置であり、条約に適合させるための改正ではなく、したがって、同条約の批准は将来にわたって不可能となる道理になりますが、条約批准の意思と時期について、総理から明らかにしていただきたいのであります。  次に、最低賃金審議会の構成について伺います。  賃金は、本来、労使対等の交渉によって決定さるべきことは言うまでもありません。したがって、最低賃金決定機構の構成と機能とは、あくまでも対等関係にある労使を中心とすべきものであり、公益委員は補充的ないし補助的役割りを果たすべきものであります。ところが、わが国の最低賃金審議会の公益委員は、その人員において、また権限において、全く労使の委員と同等であり、ILOの規定する線をはるかに逸脱し、労使委員の果たすべき機能をそこねているのであります。ILOは公益委員について、労使はもちろん、官庁からも影響を受けることのない独立不偏の存在であり、しかも最低賃金の専門家であること、さらに公益委員の選任にあたっては、労使の同意を要することを規定しております。そこで労働大臣にお伺いしますが、この際、公益委員の選任にあたっては、このILOの規定に従う意思はないか、また、特別委員制度の廃止をする考えはないかということであります。  最後に、家内労働対策について二点、労働大臣にお尋ねしたいと思います。  第一点は、家内労働審議会の答申時期であります。政府は、昨年末、四十三年三月までに答申を得て、通常国会に家内労働法案を提出すると言明してきたのでありますが、去る三月半ばに至って、ようやく「家内労働法制度検討上の問題点」がまとめられたにとどまり、最終答申を経て法制化に至る道程は、なお長いものと想定せざるを得ないのでありますが、答申と法制化の時期の見通しについて伺います。  第二点は、家内労働審議会に対する労働大臣の諮問の内容は、「法制的措置を含む今後の総合的家内労働対策をいかにすべきか」というものでありましたが、まとめられた問題点からは、流通過程の規制、税制、時間規制など、重要なポイントが落ちており、全体に消極的、後退的色彩をぬぐいがたく、総合的家内労働対策とは称しにくいものとなっております。対策の総合性、積極性を私は強く要望するものでありますが、労働大臣のこの点についての見解を承りたいと思います。  今日、日本の全労働者が、みずからの生活と権利を守るために春闘を展開いたしておりますときに、私は政府の積極的な労働者保護の姿勢と、明確な答弁を要求いたしまして、私の質問を終わる次第であります。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  34. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 柳岡君にお答えいたします。  現行最低賃金法、これは現状に即しないということになりましたので、今回改正しようと、かような提案をしておるわけであります。しかしながら、制定当時におきましては、最低賃金法は、やはり当時の経済情勢には対応した、マッチしたものと、かように私は考えております。したがいまして、最低賃金法は労働基準法とともに労働条件改善することに役立ったと、かように思います。先ほど御指摘になりましたように、六百十一万人がこれに該当しておるということでありますが、こういう点で、やはり改正は必要でございますが、過去の評価はそれなりにしていただきたいものだと思います。  ただいま御提案として、労働基準法とこの最低賃金法との関係を明確にしろと、かように御指摘でありますが、いまの労働基準法でははっきり「賃金の最低基準に関しては、最低賃金法の定めるところによる。」と、かように規定いたしておりますから、両者の関係は私は明確である、かように思っております。このたてまえをどこまでもとっていくべきだと思います。そこで、最低賃金法をこのたび改正する——政府提案と社会党やあるいは公明党の御提案とは相当違っております。したがって、ただいまのように支払い能力を原則の基準から除いたらどうだと、こういう御提案がございます。申すまでもなく、労働者の生計費が最低賃金をきめる場合の重大なる要素であることは私が申し上げるまでもございません。同時にまた、類似の労働者の賃金、これとの比較均衡をとると、こういう意味でこれまた参考になると思います。また、いわゆる事業の支払い能力、これは当該事業の支払い能力ではございませんで、通常の事業の支払い能力、これを考えるのでございますから、これまた経済、産業のたてまえから、その混乱を防ぐという意味で私はもっとものことだと思います。したがいまして、中央最低賃金審議会が答申をいたしました三つのこの条件、これは今日の状況においてはこれでよろしいんではないか、かように思いますので、これを除くことには私は反対でございます。しかし、今回の答申がこれが最低賃金の最終的な決定と、こういうわけのものではございません。賃金は絶えず流動し向上していかなければならないのでありますから、今後も引き続いて、いわゆる中央審議会がこれらの問題と取り組んでまいるつもりでございます。  地域格差の問題についても言及になりました。これは申すまでもなく、現状においては地域格差のあることはお認めになると思います。あるいは全国一律制、業種別あるいは地域別等々のいろいろな議論がございますが、これらにつきましても、ただいまの審議会におきましてさらに引き続いて検討をするということをお約束いたしておきます。  次に、ILO条約二十六号との関係でございます。現行最低賃金法でも私は二十六号に適合するものだ、かように思いますが、しかし、少なくとも議論のあることは私も否定いたしません。したがいまして、これはILO条約二十六号批准の場合に、現行のままでは問題のあることは認めざるを得ない。しかし、今回の改正によりまして、二年間の経過規定を経れば、もう業者間協定というものはなくなりますから、しかる上は二十六号に正面から取り組んでちっとも差しつかえない状況になるものだと思います。したがいまして、この二十六号条約の批准、これはただいま申し上げます問題のなくなったときに十分検討し考えてまいる、こういうことをお約束いたしておきます。(拍手)    〔国務大臣小川平二君登壇拍手
  35. 小川平二

    国務大臣(小川平二君) 最低賃金審議会の公益委員についての御質問でございましたが、公益委員は、公正で、かつ労使の双方から十分信頼をされております学識経験者の方が任命されておるのでございまして、御指摘のありました趣旨は十分生かされておると考えております。  さらに、審議会の特別委員会制度を廃止すべきではないかという御質問でございますが、申すまでもないことでございますけれども、最低賃金制の問題は、ただ労使間の問題たるにとどまらず、関連するところが非常に広いのでございます。したがいまして、関係行政機関から意見を徴するということも、この制度の円滑な運営に寄与するものであると考えます。したがって、現段階におきましては、これを廃止する考えは持っておりませんけれども、最低賃金制につきましては、審議会の構成をも含めて審議会で検討をしていただくことになっておりますので、その結論を待ってさらに研究いたしたいと考えております。  家内労働対策につきましては、率直に申しまして、家内労働の実態が非常に複雑でございまして、これを正確に把握することが困難であるという事情もあり、審議会の審議の予定が延びておることは事実でございますが、審議会におかれては、前向きの態度できわめて精力的に審議を進めていただいておるのでございます。去る三月十九日の総会におきまして、家内労働法制検討上の問題点についての小委員会報告を、御審議の上、採択していただいております。この小委員会報告におきましては、緊急な必要性が認められ、行政的にも実効ある実施が可能なものを法制検討の対象として取り上げる、かようなことになっておるのでございまして、その他の問題については行政指導を推進することによって逐次条件の成熟をはかっていこう、段階的に法制的措置を講ずることが望ましいものである、かような結論をいただいておるのでございます。政府といたしましては、遠からざるうちに総合的対策についての答申がいただけるものと期待いたしております。答申がありますれば、できるだけすみやかに立法化をはかりたい、かように考えておる次第でございます。(拍手
  36. 河野謙三

    ○副議長(河野謙三君) 柳岡秋夫君。    〔柳岡秋夫君登壇拍手
  37. 柳岡秋夫

    ○柳岡秋夫君 再質問をいたしたいのですが、総理の先ほどの答弁について、今回の最賃法の一部改正の理由というものは、あるいは、そのよってきたるものは一体何かということについて、もう一度確認をしたいわけです。現行の最賃法が、先ほど申し上げましたように、非常に多くの低賃金労働者を法の名のもとにつくり出している、したがって、そのことを総理は認めたから今度の改正になっておるのか、あるいは、現在の最賃法が二十六号条約に適合しない、したがって、そのことを認めたので、今度は適合するように改正をするというのか、この点をひとつ明確にしていただきたいと思います。    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  38. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほどもお答えいたしたのでございますが、現行最低賃金法を制定した当時は、それが経済の実情に合っていた。しかし、今日は合わない。そこで、ただいまのような中央最低賃金審議会が答申を出しで、そして改めようと、かように申すのでございます。ただいま言われますように、こういう問題は、絶えず労働者のためにも、また経済のためにも、実情に即し  昭和四十三年四月十日 参議院会議録第十一号たものをきめることが、まず第一でございます。そういう意味で、中央最低賃金審議会が実情に合うものを答申していただく、かように考えております。(拍手)     —————————————
  39. 河野謙三

    ○副議長(河野謙三君) 鬼木勝利君。    〔鬼木勝利君登壇拍手
  40. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 ただいま議題となりました政府提出の最低賃金法の一部を改正する法律案について、私は、公明党を代表して、総理並びに関係大臣に対し、若干の質問をいたすものであります。  最低賃金制の目的とするところは、言うまでもなく、低賃金労働者の保護、不公正競争の防止及び産業平和の確立等にあり、近代国家として不可欠の制度であります。つまり、法律で賃金の最低限を規制するもので、使用者が賃金支払いを順守する規定を設けて、労働者を保護することを第一のたてまえとして、各国ともこれを実施し、一九二八年六月のILO総会において、二十六号条約、すなわち最低賃金決定制度の創設に関する条約が採択され、すでに七十七カ国がこれを批准しておることはもうすでに御承知のとおりであります。  しかるに、わが国現行最低賃金法はきわめて悪法であると言わざるを得ないのであります。労働者保護の立法としては、労働時間の制限や自由な労働組合運動の保障等は、すでにわが国においても確立されておるのであります。しかしながら、労働者が安心して労働に従事するために、その最低の生活保障する労働条件の最も基本となる賃金を決定する制度に重大な欠陥があると思うのであります。すなわち現在の最低賃金法は、業者間協定という、およそ最低賃金制度考えられない制度で、業者の間で一方的に賃金を決定する方式をとっておるのであります。これは政府の労働政策の後進性を如実に象徴しておるのであります。しかし、賃金の決定は、ILO二十六号条約の最低賃金決定制度の創設に関する条約にも見られるように、労使対等の原則のもとで交渉し、決定さるべきものであると思うのであります。特に賃金決定のごとき重大な問題については、労使対等でなくてはならないのは当然のことであります。したがって、業者だけで決定し、それを最低賃金と称する業者間協定のようなものは、それはわが国のみで最低賃金とただ名づけただけでありまして、世界の常識でいう最低賃金とは言われないのであります。これは明らかにILO二十六号条約の精神に反していると言っても過言ではないと思うのであります。現在七十七カ国が最低賃金に関する条約を批准しておりながら、わが国がいまだに批准できないのは、ここに私は原因があるんだと思うのであります。  そこで、総理にお伺いをいたしますが、われわれが常々主張するところの、真に労働者を保護するための最低賃金制の確立を再三要望いたしておりまするにもかかわらず、このような悪法を今日まで放置されてきた責任を総理は一体どのように感じておられるのか、それをお伺いいたしたいのであります。  第二に、政府の今回の改正案では、業者間協定の部分は廃止するようでありますが、最低賃金額をどのように決定するかという問題がございます。わが党は、基準生計費一本と、かようにいたしております。これは中央最低賃金委員会が決定するものでありまして、十八歳の労働者が、健康で文化的な生活を営むために必要な最小限の生計費を算定するのであります。算定の方法につきましては、理論生計費、すなわち、成人一人当たりのカロリーや、たん白質の量を科学的な基礎をもって算定し、しかして、生活に必要な品目を決定するのであります。この際、参考として、実態生計費調査が必要になると思うのであります。しかるに、政府案では、労働者の生計費の算定が明確でありません。しかも、類似の労働者の賃金を考慮することになっておりますが、これは賃金切り下げを招くおそれのあるものであります。さらに、最低賃金制という場合、弱小の企業の支払い能力を前提としておっては、賃金の切り下げを認めることであり、生活を脅かすことになり、労働者保護の趣旨逆行し、有名無実の制度考えられますが、総理及び労働大臣より明確なる答弁をお願いするものであります。  第三に、最低賃金額の決定にあたって、政府案は、審議会の意見を尊重して、労働大臣または都道府県労働基準局長が決定することになっております。しかし、これでは、本質的にILO二十六号条約の労使対等の原則にもとるものであります。特に、労働者の意見が十分に反映されぬことになり、まさに政府案は、国際的メンツを保つために、二十六号条約を批准しようとする糊塗的手段であり、真に労働者擁護の積極的な政策とは言いがたいのであります。やはり、わが国の現状としては、労・使・公益の三者構成による委員会で決定することが最も妥当であり、また、委員の任命については、労働者委員は、労働組合の推薦を、それから使用者委員は、使用者団体の推薦を受けることとし、さらに、公益委員は、両者の委員の同意を得た者をそれぞれ労働大臣が任命するという方向が望ましいのであります。また、賃金委員会は事務局を持ち、最低賃金の決定のほか、基準生計費の調査、実施の指導及び監督を行なうこととすべきであると考えますが、労働大臣のこの点の見解を明確に伺いたいのであります。  第四に、最低賃金を決定する場合に、業種別、産業別、地域別等に大きな格差があることは望ましい姿ではありません。わが党の案は、現状としては、最小限の地域差を認めることとし、中央最低賃金委員会が、一定の地域内の基準生計費が、全国一律、最低賃金決定の基礎となる基準生計費より著しく高くなったときは、当該地域内の最低賃金を決定することと、このようにしております。将来は、すべての労働者に平等に最低の賃金を保障することが、為政者として当然の方策と考えますが、この目標に対して努力する労働大臣の所見と決意を伺いたいのであります。  第五に、現在のように、わが国経済界の変動が非常に激しい場合は、決定した最低賃金も実情に合わなくなる可能性があるのであります。そこで、消費者物価が五%以上上昇した場合に賃金改正の決定をするスライド制は重要な要素でありますが、この点の労働大臣の御見解、さらに所得格差の是正についての方向とともに、労働大臣に御答弁を願いたいのであります。  以上の諸点につきまして明確なる見解をお伺いして、私の質問を終わりたいと思うのであります。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  41. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 鬼木君にお答えいたします。  現行最低賃金法、これが実情に合わないことは、先ほど柳岡君にお答えしたとおりでありますが、これを長い間ほうっていた政府の怠慢、こういう意味でおしかりを受けました。私は、今回、中央最低賃金審議会が答申を出しましたので、改正することに踏み切ったのであります。どうか、そういう意味でも、おしかりを受けたのでありますから、この国会におきましてぜひともこの法案を成立さしていただくよう、御協力をお願いいたしたいと思います。  さらにまた、その詳細につきましては、先ほど来の私の意見で、大体御了承いただいたかと思います。  ILO二十六号条約の批准、これはどうしても必要なことだと思います。先ほどもお答えいたしましたように、今回の法律改正されれば、二カ年の経過規定を経れば、今度は業者間の協定というものもなくなりますから、そういたしますと、議論なしに二十六号条約の批准ができるだろう、かように思いますので、その際に十分考えていきたいと思います。  次に、最低賃金を決定する場合に、公明党は、生計費だけで考えたらどうか、他の面を考えることは、いろいろ誤解を受けたり、他の低いほうに右へならえするということが、労働者の生活向上に役立たない、かような御指摘でございます。なるほど労働者の生計費が賃金の決定の場合の重大要素であることは、これは私ども認めます。しかし、類似の労働者の賃金、これとのやはり均衡をとらないと、労働者間の均衡を欠くということになれば、これは一つの社会問題でもございます。同時にまた、通常の業務——これは当該事業ではございませんが、通常の業務の支払い能力というものも勘案しないと、産業経済に及ぼす影響は大きい、かように思いますので、この三つを取り上げまして、そして最低賃金をきめていこう、こういうのであります。しかし、御指摘になりましたように、全国一律、地域格差をなくする、さらにまた業種別の格差がないようになるのが、これからのわれわれの目標でございますから、そういうことを考えれば、今後とも中央最低賃金審議会にいろいろ検討していただくことはございますから、ただいまのような方向で、さらに引き続いてこれらの点を検討していただくつもりでございます。お答えいたします。(拍手)    〔国務大臣小川平二君登壇拍手
  42. 小川平二

    国務大臣(小川平二君) お答えいたします。  いわゆる審議会方式によりまして最低賃金を決定いたします際には、あらかじめ最低賃金審議会に諮問をして、答申を尊重して行なわなければならないことになっておりまするし、また、労働大臣ないし都道府県基準局長が、審議会の意見によりがたいと考えた場合には、事前に再審議を求めなければならないということにもなっておるわけでございまして、労働大臣、基準局長が審議会の意見を無視して一方的な決定を行なうことはできないような仕組みになっております。イギリス、フランスあるいは西独等、いずれも同様の仕組みになっておることは御承知のことと存じます。したがいまして、これは委員会が決定権を持たなければ、労使対等決定の原則に反するものとは考えておりません。  それから、最低賃金審議会の委員の任命につきましては、労働者委員は労働組合の推薦を受けることになっており、使用者委員は使用者団体の推薦を受けることと現になっておるのでございます。公益委員につきましては、労使双方の同意を得た者を任命することが望ましいと思うがという御質問であったと存じますが、公益委員につきましては、現行法上は、特に労使の同意が要件とはされておりません。しかし、実際には、公正でかつ労使の双方から信頼される学識経験者が任命されておるのでございまして、御指摘趣旨に沿った運営がなされております。将来の最低賃金制のあり方につきましては、かような審議会の構成の問題をも含めて中央最賃審議会で御検討願っておりますので、結論を待ってさらに研究いたしたいと存じます。  それから、現在まで最低賃金は、地域、業種、職種等に基づく賃金や生計費の実情に応じて決定されております。したがって、それぞれ最低賃金の額に相違があるのでございますが、いろいろの御意見が存するところでございますから、これについても、中央最賃審議会の御審議の結果を待って研究いたしたいと存じます。  さらに、消費者物価が五%以上上昇した場合に、スライド制で最低賃金を引き上げるべきだ、かような御意見であったと存じます。もちろん、最低賃金の実効性を保ちますためには、消費者物価の動向ということについては特に考慮しなければならないことはお説のとおりでございますが、実際の決定ないし改定に際しましては、同時に、一般賃金の動向、国民生活水準の改善、あるいはこれと並んで通常の事業の支払い能力等の要因も勘案されているのでございまして、わが国の最低賃金の水準は、実際問題といたしまして、これまで、消費者物価の上昇を大幅に上回って上昇してきているのでございます。これらのうち、消費者物価の変動という要因だけを基礎にして最低賃金を改定する仕組みをとるかどうかということにつきましては、いろいろな考え方もおありかと存じますけれども、これまた審議会の検討を待って十分考えてみたい、かように考えている次第でございます。(拍手
  43. 河野謙三

    ○副議長(河野謙三君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午前十一時五十四分散会