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亀田得治君 たとえば、いま
局長から、
酒飲みとか、無
免許とか、その他
無謀運転——無謀に実はそのひっかかりがあるという
説明がありましたが、しかし世間では
無謀運転という
ことばを使ってるんですよ。
無謀運転はいかぬ、私は
刑法はそれを取り入れたらいいと思うのですよ。その
中身は、これはやはりだんだん実際によって固められていくことになるんじゃないですか。大体二百十一条の
過失なんというものはそうでしょうが、
刑法自体からは何もわからないんですよ。だから、どういう程度ならいけないということは、これはだんだん積み重なっていくわけでね。しかし、おおよそのことはわかってるわけだ、
過失でも、無謀でも。それはおおよそさえわかっとりゃいいんで、
あとは
裁判所の仕事ですよ。だから、そんな従来から使っておる
ことばだけで処理していこうなんていったら、それはあなた時勢におくれてしまいますよ。それはそのほうが便利かもしれません、それはね。だけど、それは適切じゃないですよ。だからたいした
理由ないんですよ。私
たちはもっとはっきりしなさいということについての反論を聞きましてもね。まあ時間があれば、その十一案を全部
一つずつ
中身を分析してお聞きしたいところですがね、実際のこと。といいますのは、こういう安易な
立法作業をやってもらいたくないわけです、われわれ。
刑罰法規ですからね、やはりどんぴしゃりと、必要に応じたところでぴしゃりと当たっている、そういうものでなきゃいかぬですよ、それは。一般の人はわからないです。
刑法の一部
改正やってる、いや
無謀運転のことだというと、ああそうですが、それで初めてわかる。何でそんなわからない
ことばをわざわざ使わなきゃならぬような
作業をやるか。だから、ぜひそういうことはひとつ反省してほしい。
もう
一つは、過去の
刑法改正の
作業を振り返ってみましても、具体的に
社会現象に対して必要とされる
条文ということが出てきた場合には、それほど
反対が起こっておらぬのですよ。それも含まれるかもしれないが、ほかのやつも包んでいこう、こういうものが
説明の上ではっきりしている、あるいは
運用上でもそういうことになるのじゃないかと思われるような
提案が来た場合には、いつもこれは紛糾しておるんですよ。非常に新しい例では、たとえば
凶器準備集合罪ですね。
昭和三十三年ですか、当時は暴力団がいろいろの
凶器を持って、そうして列車を買い切って出かける、こういうものは、それは
大分なら
大分に着かぬうちに神戸でつかまえてしまえ、これはみんな
必要性を認めたわけですね。ところが、
条文のつくり方
自体がいろいろ憶測される、それで相当あの点はもめたわけですね。ところが、その後の法の
運用を見ておると、やっぱり心配したような
運用になっておるわけです。
裁判所ではどうなっていますか。いままで無罪になったのな
どもあるでしょう、起訴して。だから、そういう広げるような
立法のしかたというものは、私はよくないと思う。ところが、新たな
事態が出てきておる、おそらく
取り締まり当局はそう言うだろうと思うのです。それは、そのときはそんなことは予想されぬことでしょう。予想されぬのに、新たな
事態が出たから、先見の明があったようなことを言う人もおるかもしれませんが、そうじゃない。
事態は本暦的に違うわけですから、
形式のところだけを見ろと、同じだと、こういうふうに言う人があるでしょうが、それはあなた別の
政治的立場から見たら、非常に違うわけです。だから、新たに起きているそういう
事態を肯定するということじゃないんですよ。私はそれは、それに対する適切な
方法を
考えたらいいのです。ともかくめんどうくさいから、ひとつつくるときに何でもいけるようにやっていこう、こういうことは、これは間違いだと思うのです。そういうことじゃないやつは、すっとスムーズに通ってきておる、そう思いませんか。
準備集合罪の問題についてだけ
——ほかのやつはみんな具体的につくっているが、これだけです、ちょっと幅を広げてつくっているのは。
立法当時の
政府の答弁では、
運用上そんな広げることはないと、こういうふうに答えているが、実際はそうなっておらぬ。そういうことをきらうわけなんです。まじめな
運転者がたとえば、ミスをおかした、やはり
最高が五年ということであれば、だんだんそっちに近づけられるのではないか、これは心配するのはあたりまえです。それは、処罰する
立場の人とは、また受け取り方が違うわけです。だから、そういう不安を与えぬようにして、なるほどと、そうして
全会一致、全国民こぞって、ひとつこれでいこう、これでなければ教育的な効果は半減されますよ。
法制審議会は、われわれの先輩なり、りっぱな
法律専門家がたくさんおられるわけですが、案外ちょいちょいそういう
意味では間違いがあると思うんです。
刑法にとらわれ過ぎて、
自分の専門の学問にとらわれ過ぎるわけです。
法制審議会は大事な機関ですから、尊重されるのはいいのですがね。たとえば、三十五
国会でしたか、毀棄罪を非親告罪にするという
改正を
国会に出されたことがあります。何回でしたかね、ちょっと覚えておりませんか、
局長。三十五回だったと思いますが、私の記憶では。これは
法制審議会でも、その毀棄罪を非親告罪にする、また
準備草案もそういうふうになっておりますね、これは。なっているでしょう、
準備草案。どうですか、これは。