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大橋和孝君 どうもありがとうございました。特にそういうことで
お話を承って非常に私もありがたく思いますが、まあ一言申し上げるならば、やはりこの医学というものはどんどんと進歩してまいりまして、
一般的なこの水準がずんずんと上がってまいります。たとえば、現在の水準
から考えますと
過失でないものが、五年もたった時限では、それがもうそんなことをすれば大きな
過失ということに医学の進歩している場合もあるわけでありまして、これは当然
医者というものはその進歩に沿うところのあれをしていかなければならぬと思うのですが、これと同じことはやっぱり
交通事故でも言えるように思うわけであります。たとえば
交通事故でも、免許更新のたびごとにいろいろこういうことをやられているわけでありますが、それがしかしなかなか行なわれていない。実際にやらない人がある
から、こういうことが起こるわけでありますけれ
ども、そういうこと
から考えますと、やはりこの
交通事故でもそういうことで注意をしておる、
医者のほうでもそういうことをやっておるということになりますと、非常に
解釈の上においていろいろ問題が起こってくるのではないかというようなことも私は想像しているわけでありますが、いずれにいたしましても、
目的あるいはまたそういうところ
から、十分な、そのことそのものによって配慮していただかなければならぬと思っているわけであります
から、どうかひとつそういう点はお願いをしたいと、こういうふうに思います。
それ
から、この前、
衆議院のほうでは、武見
医師会長が出られまして
いろいろお話があったのを私見せてもらいまして、非常に私は同感な点も多いわけであります。特に先ほど
から私が申し上げましたようないろいろな
事例の中では、起こってみれば非常に気の毒な状態にはなるけれ
ども、まあ非常なあれがあって問題だと思うわけでありますが、たとえて言うならば、武見さんが言ったように、盲腸の
手術をしましても、何と申しますか、人間が対象であるために非常にいろいろな変化が起こってくる。こういうようなことで、たとえば盲腸を
手術して、それが普通にいっておりましても、その人の体質が非常に癒着しやすい体質であると、こうなれば、癒着を起こして腸捻転で死んでしまう場合もある。そうすると、やっぱり前の
手術をしてもらって、じきそれが起こったのだ
からあの
手術が悪かったのではないか。これは患者の側
からしてみればそういう疑いも起こる。これはいま警察庁のほうにも伺ったわけでありますが、だ
から、患者の訴えがある
からして、それはやっぱり適当にやらなければいけないということになってまいりますと、まあそれも
考えてみれば、このごろでは水準が上がりまして、癒着を防止するところの薬があるわけであります。注射があるわけであります
から、もしそれを使っていないとすれば、本人のほうで癒着がくるほどの症状でなかったとするならば使わないわけでありますが、使わなかったらそれが起こるかもしれないということになれば、やっぱりこれは
過誤の問題は十分に起こってくる。まあ調べてもらったら起こってきたということになるわけであります。こういうようなことが機微の問題になってまいりまして、こういうものがびしびしきまりますと、非常に、それは先ほど
から申したような診療に
影響してくる。最近非常に新しいものでは、武見さんも言っておりますが、ちょっと大きい設備のいい病院では、やはりまあ電子、あれを用いまして、自動的な監視装置というものができております。たとえば心電図、あるいはまた心音図、あるいはまた呼吸の数というものはみなコントロール・センターでもってあらわれておる。そこにおれば患者の状態は十分わかっておるわけでありますけれ
ども、患者にしてみれば、
医者が来ないということでもって、その結果が悪くなったらやっぱり
注意義務が足らなかったのではないか、これなんかも非常に起こるわけであります。いろいろこの医学が進歩すると、逆にそういうふうな、患者さんにはいままでのような習慣があって、そばで手を握っておればそれで完全な注意が払われておったというふうに
解釈され、一方は、機械によってそれがやられているため注意が足らなかったという訴えになる、こういうようなことが非常に起こり得るわけであります。また、最近何か非常に問題が出てくるのは、たとえば前日まで検査してもらってどうもなかったと言われておったが、わずか一週間か十日の間に死んでしまった。心筋梗塞が起こったのだったらわかるはずじゃないかということでもって、そのときにやったのはあまりにも注意が足らなかった、こういうようなことも非常に起こってまいります。先ほど来ちょっと例をいただきましたが、麻酔の問題というものに対しても非常にこれが行なわれておる。こういうようなことをずっと拾ってまいりますと、非常にいろいろなことが起こってまいります。で、私がいつも心を痛めるのは、それがそれだけならいいと思いますけれ
ども、これは非常なところにはね返ってまいる問題である。また大きなところ
から申しますと、私はこれは問題に当然なってくるように思うのでありますが、たとえば、このごろ心臓の移植だとか、あるいはじん臓の移植というものを盛んにやられておる。これがやられる過程におきましては、おそらく外国でもそのようにやっておるわけでありますが、たくさんの人々がなくなっている。もっともそれは、ほっておけばその人もどうせなくなる運命にある人ではあるが、そうは思いますけれ
ども、その
手術をしたために、まだ二年ぐらいもった人がすぐ死んでしまったということにもなり得るわけであります。これは新しい技術を開拓するためには、心移植なり、じん移植なり、こういうようなものがやられる場合には、相当の大きな生命を奪うということになっているわけで、先ほどおっしゃいましたように、
医療の中にはある
程度のそういう危険率は見込まれておるということは、それはわかるわけでありますけれ
ども、こういう問題が、刑の
改正ということに対しますと、こういうことがおそらく私は非常な不安というものを
国民に与えて、そうしていろいろなことがはね返ってくるのではないかというふうなことが、まあ先ほど申したように、それが民間の訴訟なんかにも
影響するでありましょうし、あるいはまたいろいろなことになりますと、私は新しい医学の進歩というものを非常に妨げるという形になってくる、こういうふうに私は危惧するわけであります。で、当然、そういうふうなことで、もしそういうような、心移植して数十名の方の命を早めたとするならば、これはひとつやらないほうがよかったんじゃなかったか。その本人さんに対しては、当然そうなってくると思うのであります。もちろんその間には、やるまでには、家族の人との話し合いをして
了解のもとにやっております
からして、比較的それが起こらないとは思いますけれ
ども、法のたてまえ
からいけば、そういうことになることがもうほぼ決定的になっている者に対して
手術を加えるわけであります
からして、これは、命をそれだけ短くするということは当然だということを自覚してやっておる。これは非常な故意なことになるわけでありますけれ
ども、そういう点を
考えてみると、今度の
法改正にも
一つのつながりが出てまいりまして、そういう事柄を十分に把握をしていただかないと、私は非常に今後の
医療行政の中では後退をするのじゃないか、また医学の進歩に対しても悪くなるのじゃないか、あるいはまた、診療
内容に対しても、慎重さを増すために非常に後退をするのじゃないか、もっとそれを使えば多数の人たちの命にまた
影響するのではないかというふうなことも
考えられるわけであります。そういう点で、おそらく、心臓移植あたりでも一例が成功いたしておりますので、今後は、これが全部できることになればたくさんの命を助けることになると思いますが、そのために少しの命が早められる。これは非常に
解釈問題になることが多いと、こういうふうに思います。そういう
観点から、ひとつこの
法改正が、まあ先ほど来御決意を承っておりますので、絶対そういうことには
影響はさせないのだということは私はわかりましたけれ
ども、それを
国民がどういうふうに把握するかということが私は非常に問題だ。いま
法務省のほうで、あるいはまた警察庁のほうで、そういうことを十分御
承知の上で処理はしてもらっております。また、それがだんだん、そうだということで
国民にもわかっていくとは思いますけれ
ども、
法改正にあたっていろいろ議論されていると、何だ、反対するのがおかしいじゃないかというような形になって、そういうことはもっときびしくやるのがあたりまえじゃないか、注意をするのがあたりまえじゃないかというようなことでPRされてまいりますと、これは非常にそういう方面に
影響してくるだろうということは確実なような感じがするわけです。そういう点につきまして特に配意をしていただくということをもう
一つ申し上げてお願いをしておきたいと思います。
同時に、
厚生省に対して、私は厚生
大臣にも
お話を聞いておきたいと思ったのですが、
厚生省におきましても、そういうものであるということを
国民に知らせるべき見解は明確にしておいていただきたい。それを明確にするために法を弱めるという
意味じゃありません。決して。そういうことになって誤解されてはいけないと思いますけれ
ども、今度の
法改正によって、そういうことにまでいかないのだということは十分にPRできるような形を、
厚生省自身の
責任においてやっていただきたいし、
法務省においてもそういうことを
考えていただきたい、警察庁においても現場の指導としてやっていただきたい。この三者の方々
からそういう
意味を徹底していただかない限り、この
法律は私は非常に悪いもんだと思います。
もう
一つ、ここで、私
ども法理論ということは全然しろうとでわかりませんけれ
ども、この
医者の側
から、あるいはまた
医療行政の
立場から見て、今度の
法改正を見るならば、私はこういうことで、たとえば
運転のこと、いま
考えておられるところの非常に悪質なものだけにやるならば、ごく悪質なものだけの
法律で規制してもらえばいいんじゃないか。同時に、下のものをその中に便乗させるようなことは、いままでの
法律はいままでの
法律にしておいて、いまの
お話では大体そういう線を出ないという
お話であります
からして、そのままにしておいて、今度悪質犯のほうを取り締まろうとするならば、悪質犯のほうだけを別なものにして、もっときびしくやっていただくほうが筋が通るのではないか。そんなふうにすれば、こんなつまらぬ
悪影響を
考える必要はないのではないか、こういうふうに思った次第でありますが、その見解についてもひとつ御見解を伺っておきたい、こういうふうに思います。