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木村美智男君 大体こうあらましが出たような状況なんですが、非常に臨検監督等に熱意を持ってやられているということについては、私これはたいへんけっこうなことで、これからもひとつ進めていってもらいたいと思うんですけれども、ただ、いまの毎勤の統計で言われたことは、少しやっぱり問題が抽象化するんで、このハイタクあるいはトラック、さらにダンプみたいなものを、そういったようなことについて、労働省として特に
調査をしたような関係があれば実はその
調査資料をほしい。というのは、なぜかというと、私の手元にはこの二九通達前における労働時間の状況というものが、大体いま毎勤の統計の
基準の区分けに沿って出たものがあるんですが、二九通達以後の関係についてないわけです。そこで、その方向としては、傾向としては多少改善をされているように思うんですけれども、しかし、実態はまだだいぶ改善されていないように現実に受け取っているもんですから、そういう意味で、この通達を出した
あとに何らかの形で
調査がなされておればひとつ資料として出していただきたい。賃金体系の問題についても累進歩合の関係が一九%改善をされたということなんですが、なかなかどうもその点がうまくいってないように思うんですよ。それで、参考までに私のほうから申し上げておきますと、大体、
運転者の賃金の関係については、これは
法務大臣おられるもんだから、
法務大臣によく
刑法との関係で実は知っていただきたいわけですが、
昭和四十年から四十一年の関係ですけれども、まあハイヤー、タクシーの場合の四十一年度における賃金の状況を見てみますと、大体五万円以下というのが六割から七割、五万円以上というのが三割から四割というのが一般的に言えることです。それで、この比率から見ましても四万円から四万九千九百九十円というところが、これが大体二八・五%で最高を占める。それから大型貨物の
運転者の場合には同じように二七・七%というのがこれがやはり最高だ。それからバスの
運転者はこれまた二八・六%、大体二七%から二八%、約三分の一に近いものが四万円から五万円の間にあるというのが今日の大体
運転者の賃金状態だという
数字が出てきているわけですね。こういう事態も全体の今日の賃金の中から言うと決して高いものではないんですよ。むしろ、先ほど言われているような中小零細が多くて、しかも、労働時間というのは無制限な超過勤務をやらされているといったような関係を見てみると、きわめて賃金状態が低いということがこれはまあ一応言い得るわけです。そこで問題は、単に賃金額全体が低いということであるならば、これは
交通事故という問題についての関係は比較的それでも救われると思う。ところが、いま労働省で言われている累進歩合というものが問題である。これは
大臣も御存じだろうと思うが、都合上、名前は省きますが、こういう例をひとつ
大臣も知っておいていただきたいと思う。大体累進歩合というやつは、たとえばAの会社をとってみますと、月の水揚げが十万円という場合には、たいがいその歩合というものは一割ぐらいを出している。月に十万円ということは、一日の水揚げが七千七百円、それが月にして十万円。これは御
承知のように、二十四時間一昼夜交代勤務で、朝八時に出ればあしたの朝八時までということで、その日は明けで、また翌日出る、こういう勤務ですから、月に全部働いても週休をやるたてまえで十三回しか働けない。そうして一回が七千七百円で、これでちょうど十万円、歩合というのはちょうど一割。ところが、その歩合も十万円から十一万円になるとその歩合率が変わってくるわけです。一万円上がるごとに歩合の率がふえていくわけです。したがって、この計算をひとつしてみますと、たとえば月十三万円の水揚げをやっている者の歩合給は幾らになるかというと、この会社では一万九千二百五十円という歩合給、ところが、水揚げをかりに十七万円上げるとすると、歩合給は幾らになるかというと三万五千八百五十円、そうすると、月に十三万円かせいだ者と十七万円かせいだ者とわずか四万円の違いですけれども、歩合給は一万六千円の開きがそこに出てくる。これがいまの累進歩合
制度の賃金体系であります。これなんかはまだいいほうで、もっとひどいのは、一日一万円の水揚げでいくと三十万円ですね、かせげば大体五%という歩合になっていくわけです。これでいきますと、一日一万円の水揚げしかやらぬ者は一万五千円です、歩合が。ところが一日一万三千円かせいでいけば、これは月にして大体十七万円ぐらいです。これは三万五千円の歩合給をもらっている、そうすると、賃金で二万円開いてくる。だから、私はさっき馬の鼻づらにニンジンをぶら下げている賃金体系だと言ったのです。だから、一万円ずつ水揚げをしていくと平均が上がる。こういう賃金体系ですから、いやでもおうでも、生活上もうかせがなければならないという賃金体系に仕組みに今日なっている。これは乗車拒否の問題であるとか、
交通事故の問題であるとか、また、神風タクシーが再現したと世の中から言われている根本は何かといったら、もう今日の給与体系を変えなければ絶対だめだ。運輸
委員会では、大体、運輸
大臣以下もうこの
事情はだいぶわかってもらっている。ぎょうは
法務委員会だから私特に申し上げるんですが、とにかくそういう形での累進歩合をとっている上に、なお
一つ悪いことがある。というのは、十三回つとめる中で一回休んで十二回しかやらなかったという場合がひどいんです。一日休むと、とたんに少なくて五千円、多ければ約一万円ダウンするんです、月給が。
大臣、これはね、あなたびっくりするかもしらぬけれども、基本給でまず十三分の一カットする。それから職務給でこれをカットする。皆勤手当というやつが三千円ぐらいつくやつを、一回休むと千円ばたんと削る。その他奨励手当だ、深夜手当だとたくさんある。一日休んだら、とにかくばしっと削ることになっているから、じゃあ二日休んだら一万五千円削るのかといえば、そうではない。その一日を休むということがたいへんなことだ。そうすると、一日休んだために五千円から一万円月給が減るわけですから、それを取り返すためには
あとの十二日の中で、今度は、さっき言った水揚げを上げていって戻す以外にない。したがって、神風タクシーにならざるを得ない、こういうことになっている。この賃金体系を直さなくて、何ぼ夜中に監査をやったり、それから乗用車協会を集めて経営者に訓示垂れてみたって、これは絶対に直らぬ。ここのところを直さなければならぬ。したがって、
大臣に知ってもらいたいのは、こういう給与体系にしておいて、それでタクシーやトラックの
事故をなくそうということで何ぼ
刑法を
改正しても
事故はなくならないと、私が言っているのはそこにある。こういう事実を
一つ一つやっぱりなくしていくということがほんとうの
事故対策で、これをやってもなおかつ不
注意によって
事故を起こしているというんなら、これこそ
刑法改正のその
趣旨は私はわかるということを言っているんです。何でもかんでもいけないのだと言っているんじゃない。こういう労働条件にし、こういう賃金体系をとっておいて、そして
刑法を
改正すれば
事故がなくなるんだと考えているのなら、ちょっと世の中を知らな過ぎるんじゃありませんかということを言っているわけです、私はね。だから、そういう意味でこれは申し上げたわけですけれども、それでいま労働省のほうも通達を出して、少し前よりは幾らか改善の方向にあるんですが、なかなかどうして、今日のタクシー業界というのは、これは昔のよく
——私はそう思っていないんだけれども、まあ雲助に返りつつあると、こう言われる。そういうことになってきているんですよ。だから、そういう問題点を解決することがまず前提として相当やられていって
——私はそれが一〇〇%できないうちはだめだなんて言わぬですよ。それが、なるほどこういう状態が改善をされて、労働省が言うように、六〇%は基本給だ、そうしてまあ一日休んだからといって大きなカット、ダウンになるようなことにはならないというやはり強力な行政
指導というものがそこにされて、事業者に対してやっぱりもうちょっときちっとさしていかなければ、
交通事故はなくならぬという点を十分ひとつこれは御認識をいただきたい。特に
法務省のほうとして、
刑事局長さん、私はそういうようなことをよく理解をされて法規を扱ってもらわないと、実際には、ほんとうのところ善意でもって
事故をなくすために
刑法を
改正するわけだけれども、結果は私が言ったように、ただ罪を重くされた人間が多くなっただけで、ちっとも
事故はなくならないということをさっき申し上げたわけですが、というのは、こういうことなんだという意味なんですよ。これはひとつ
大臣、どういうふうに考えられますか。これは最近になって私の感じでは、一運輸省、一労働省にまかせておくべき問題ではなくて、全体的な
事故防止対策のやはりキャンペーンを張るくらいに値する問題だ、こう思っているのです。あるいはこの
刑法改正に取り組む
法務省も含めて、
政府全体が、あるいは行政機関をあげて、やはりそういう問題を直していくという、そういうことになっていかなければ、なかなかこれはなくなっていかないということなんで、このあらゆる施策のこれは一環なんですがね。どういうふうにお考えになりますか。具体的な例を引いて私お伺いしているわけです。