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1968-05-07 第58回国会 参議院 法務委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年五月七日(火曜日)    午前十時二十一分開会     —————————————    委員異動  五月七日     辞任         補欠選任      野々山一三君     木村美智男君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         北條 雋八君     理 事                 青田源太郎君                 梶原 茂嘉君                 秋山 長造君     委 員                 紅露 みつ君                 山本茂一郎君                 大森 創造君                 亀田 得治君                 木村美智男君    国務大臣        法 務 大 臣  赤間 文三君    政府委員        内閣総理大臣官        房陸上交通安全        調査室長     宮崎 清文君        警察庁交通局長  鈴木 光一君        法務大臣官房司        法法制調査部長  川島 一郎君        法務省刑事局長  川井 英良君        運輸省自動車局        長        鈴木 珊吉君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局総務局長   寺田 治郎君    事務局側        常任委員会専門        員        増本 甲吉君    説明員        警察庁交通局交        通指導課長    綾田 文義君        法務省刑事局刑        事課長      石原 一彦君        通産省重工業局        次長       本田 早苗君        労働省労働基準        局監督課長    藤繩 正勝君     —————————————   本日の会議に付した案件刑事補償法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○公海に関する条約実施に伴う海底電線等の損  壊行為処罰に関する法律案内閣提出、衆議  院送付) ○下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の  一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○参考人出席要求に関する件 ○刑法の一部を改正する法律案(第五十五回国会  内閣提出、第五十八回国会衆議院送付)     —————————————
  2. 北條雋八

    委員長北條雋八君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、野々山一三君が委員を辞任され、その補欠として木村美智男君が委員に選任されました。     —————————————
  3. 北條雋八

    委員長北條雋八君) 刑事補償法の一部を改正する法律案公海に関する条約実施に伴う海底電線等損壊行為処罰に関する法律案及び下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案、以上三案を便宜一括して議題といたします。  政府から順次提案理由説明を聴取したします。赤間法務大臣
  4. 赤間文三

    国務大臣赤間文三君) 刑事補償法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。  刑事補償法による補償金の算定の基準となる金額は、昭和三十九年の改正によって、無罪裁判またはこれに準ずる裁判を受けた者が未決の抑留もしくは拘禁または自由刑執行等による身体の拘束を受けていた場合については、拘束一日につき四百円以上千円以下とされ、また死刑の執行を受けた場合については百万円とされているのでありますが、最近における経済事情等にかんがみ、これを引き上げることが相当と認められますので、この法律案は、右の「四百円以上千円以下」を「六百円以上千三百円以下」に、「百万円」を「三百万円」に引き上げ、いわゆる冤罪者に対する補償の改善をはかろうとするものであります。  以上がこの法律案趣旨であります。  慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願い申し上げます。     —————————————  公海に関する条約実施に伴う海底電線等損壊行為処罰に関する法律案について、その趣旨を御説明いたします。  政府は、このたび、公海に関する条約に加入することとし、今国会にその承認を求める案件を提出しておりますが、同条約は、第二十七条において、すべての国は、自国の旗を掲げる船舶または自国管轄権に服する者が公海に敷設された海底電線海底パイプラインまたは海底高圧電線を損壊する行為処罰するために必要な立法措置をとるべきものとしておりますので、同条約の加入にあたり、右の要請に応じようとするのが、この法律案であります。  この法律案は、故意または過失によって海底電線海底パイプラインまたは海底高圧電線を損壊する行為についての罰則を定め、さらに、故意によるこれらの罪の未遂を罰することとしております。なお、海底電信線保護万国連合条約に規定する海底電信線を損壊する行為は、既存の海底電信線保護万国連合条約罰則によって処罰することができますので、この法律適用対象から除き、処罰規定重複を避けることとしております。  このほか、この法律案は、付則において、右の海底電信線保護万国連合条約罰則につき所要整理を行なうこととしております。  以上がこの法律案趣旨であります。  慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願い申し上げます。     —————————————  下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。  この法律案改正点の第一は、相川簡易裁判所名称及び所在地を変更しようとすることであります。相川簡易裁判所庁舎は、近年著しく老朽し、改築を要する時期となっておりますところ、その所在地である新潟県佐渡相川町は、同裁判所が管轄する佐渡西端部に位しておりますため、この際他の適当な地に庁舎を新営することが検討されていたのであります。ところが、このほど佐渡のほぼ中央部に当たる佐渡郡佐和田町に適当な敷地が確保され、昭和四十三年度中に新庁舎の開設が可能となりましたので、相川簡易裁判所所在地を変更し、これと同時に、その名称佐渡簡易裁判所に改めようとするものであります。  改正点の第二は、下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律別表整理でありまして、市町村の廃置分合名称変更等に伴い、簡易裁判所管轄区域を定めております同法の別表所要整理を行なおうとするものであります。  以上が下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案趣旨であります。  何とぞ、慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますよう、お願いいたします。
  5. 北條雋八

    委員長北條雋八君) 三法案の自後の審査は都合により後日に譲ることといたします。     —————————————
  6. 北條雋八

    委員長北條雋八君) 次に、参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  刑法の一部を改正する法律案審査のために、明後五月九日参考人出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
  7. 北條雋八

    委員長北條雋八君) 御異議ないと認めます。  なお、参考人人選等につきましては、これを委員長及び理事に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  8. 北條雋八

    委員長北條雋八君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  9. 北條雋八

    委員長北條雋八君) 刑法の一部を改正する法律案議題といたし、質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  10. 亀田得治

    亀田得治君 刑法二百十一条の改正についての質疑をいたしたいと思いますが、まあ質疑事項は相当多数にわたるわけです。まあ私としては、いわゆるこの交通政策という面につきましては、相当他の質問者との重複があろうかと思いますが、できるだけその点は避けていきますが、しかし、法案自体のこの法律的な検討という面に直接関連してくることがありますから、そういう点についても若干触れていくことになろうと思います。  で、二百十一条をどう改正するかという点についてのやり方ですね、これはいろいろ考えられると思うのです。その点についての私なりの具体的な案もあるわけですが、それはむしろ部分的な質疑を終えたあとに、最終的にひとつわれわれの見解も出しまして、お伺いしたいと思います。  最初にまずお聞きしたいことは、現在の自動車運転者に対する取り締まり当局の偏見というような点を少しただしたいわけです。といいますのは、交通事故が非常に多い、それに対していろいろ社会的な批判がある。もちろん私自身もこの批判は持っておる。しかし、その場合に、形の上では、事故を起こす、あるいは害を加えるというのは、運転者という形が出てくるわけですね。一般に交通事故に対する批判が多い。二つのことが重なって、必要以上に、まじめに正規運転しておる人々、そういう人たちが、警察検察庁において不当な扱いを受けておると私は見ておるわけなんです。で、こういうことは抽象的に論じてもなかなか明確ではありませんので、非常に最近の具体例一つここに私提示をして、見解を承りたいと思うのです。  その具体例というのは、昭和四十三年三月九日の大阪簡易裁判所判決——これは無罪判決ですが、その中で指摘されておる事柄です。これは私の法律事務所の若い弁護士が担当してやった案件ですから、まあ実体的な中身の説明も別個に聞いておるのですが、簡単に申し上げますと、こういう事案なんですね。  被告人とされたのは関口政義という人で、これは電車車掌ですが、被害者というのは三宅正太郎ですね。この三宅さんというのは魚屋さんです。この方が、電車がとまって、電車からおりて、そうして安全地帯中央にこの方が立っていたわけですね。で、車掌被告人にされた関口さんは、きちんと、三宅さんがおりて、そうして電車と三十センチないし四十センチ離れておったということも確認をして、そうして発車の合図をして、電車が出ようとしたわけですね。ところが、そのとたんに、安全地帯中央に立っていた三宅さんが、何かのはずみで、両手に荷物を持っておったんですが、その一方の荷物電車に触れたわけですね。発車のときはそうではなかった、離れているのです。それが何かのはずみで触れた。触れたとたんに、自分のからだが傾き、多少よろめいたわけでしょう。そうしたところが、運悪く、ちょうど電車反対側、つまり、安全地帯がまん中にある、電車がこちら、その反対側の二、三メートル左うしろ自動車があったやつが来て、そうして三宅さんに傷害を与えた。約一カ月治療を要するという傷害。  簡単に申し上げると、事案はそういうことなんですが、ところが、自動車運転手橋本隆というのですが、橋本さん並びに関口さんが起訴されたわけです。私は、一体、形はなるほど、電車に触れ、あるいは最終的には自動車に触れたのでありますが、いま申し上げたような事態であることは、警察、検察の段階でもほぼ明らかであったようです。にもかかわらず、二人を起訴した。幸い関口さんのほうは、これは正式裁判で争って無罪になった。ところが、自動車運転をしていた橋本さんのほうは、結局それは、そんな裁判というような忙しいことにいつまでもかかり切っておれぬということで、あきらめて服罪してしまっておるわけです。で、関口君にいたしましても、電車車掌としてそれはたいへんな苦痛ですよ、費用もかかるし。おそらく私は、相当意地のある人とか、あるいは資力のある人とか、そういう方でない人は、ずいぶん泣き寝入りをしているのじゃないか、この橋本さんのように——と私は思うのです、こういう案件を具体的に見るにつけ。いやそれは本件だけじゃと、だから裁判が必要なんで、裁判所でちゃんとそれが無罪になったからいいじゃないかと言うて私は済まされる問題ではなかろうと実は考えておるのです。そういう点について、刑事局長でけっこうですが、考え方を聞かしてもらいたいのです。  警察のほうからも、警察がまず最初扱うわけですから、どういうやり方でやっておるのですか。形だけをとにかく一応とらえて、文句があれば裁判所に行って言えというふうなことでは、実際上困るわけですね。その点どういうふうに見ておられるか、ひとつお答え願いたい。  まず大臣から先に。
  11. 赤間文三

    国務大臣赤間文三君) 亀田委員の、形だけでやらぬで、ひとつよく実質、内容まで慎重に調査した上でいろいろなことをやれということ、これは私も全然同感でございます。そうあるべきものだと思います。  ただ、いまの話を私はいま初めて聞きましたが、やはりそれが裁判になりましたから、私は無罪にはっきりとして、それはやはり形の上で取り扱ってきたから、これは無罪にやるべきであるという判決が下ったであろうとも考えます。私考えますのは、いまお話しになりましたように、やはり金がないためとかいろいろなために訴訟が困難だという人は全国相当多いと考えておりまするので、法務省としましては、御承知のように、法律扶助制度をつくって、できるだけひとつ貧乏なために訴訟ができぬ人を救おうということで、今年も五百万ほどふやしまして六千五百万ほど計上して、これでそういう貧乏なために訴訟のできぬ人を少なくする。私は、将来思い切ってひとつ、この貧乏なために訴訟その他ができぬ人を救うためには、六千五百万円の扶助金というものをふやす、そういうふうにしていきたい、かように考えております。  それからもう一つは、刑事事件国選弁護でまあやりますが、いま私が申しましたのは民事のほうのやつですな。民事のほうのことに法律扶助制度を開いておる、これが六千五百万円。まあ刑事のほうは国選弁護制度がございますので——要するにいずれにしたって、刑事民事ともに、貧乏なために訴訟ができにくいということのないように、思い切って力を入れていかなければいかぬと考えております。  それから、やっぱり大事なことでありまするので、御注意がありましたように、こういう事件はやっぱり慎重に、形だけでなくて、実質までよく勉強をして取り扱うという心がけをすべきであるということは、これは当然のことに私もこの点については考えておる次第でございます。
  12. 亀田得治

    亀田得治君 ちょっと補足してください。
  13. 川井英良

    政府委員川井英良君) 一件一件のケースにつきましてはたして過失があるかどうかということを慎重に調べた上で処理を決するということがやはり大切だと思います。非常に事件が多いためにいろいろな問題が出ているのではないかということはひそかに憂えているわけでございますけれども、しかしながら、いままでの取り扱いといたしましては、まあ一例でございますが、業務上過失起訴率大体七〇%から七五%のところをここ数年間上下いたしておりますので、三割ないし二割五分が検察官の手元で過失がないかあるいは過失が薄いということで不起訴処分にされているわけでございますので、何でもかんでも形のあるものを、また警察から送致を受けたものを右から左に回してというわけではなくて、やはり慎重に検討がなされているものと一応考えております。  ただ、この種事件本質に関係する問題だと思いますが、御承知のように、大正十四年の有名な大審院判例がございますが、おおよそ自動車運転者はい、ずれのときといずれのところとを問わず常に人に危害を加えないように努力しなければならない、そのために多少自動車の効用を滅するようなことがあってもやむを得ないのだというリーディング・ケースがこの種事件指導的な立場をいままでとっておったわけでございますけれども、戦後になりましてからいろいろまたさらに理論の発展がございまして、この注意義務の度合いを判定するというようなことにつきましても危険の分配というような原則が活用されまして、この種事件についての注意義務の評価について新しい分野が開けてきておるというような事情にも相なっておりますので、その辺のところは引き続きまた、今後のこの理論の展開と解釈と運用にまって、さらにこの種事件の妥当な処理を慎重につとめていかなければならない、かように考えております。
  14. 亀田得治

    亀田得治君 警察の方、どうですか。
  15. 鈴木光一

    政府委員鈴木光一君) 警察庁といたしましても、この種事件につきましては、形にとらわれることなく、また、従来非常に車の少なかった時代には、すべて事故が起きると運転者が悪いのだという考え方がとかく支配しがちでございましたけれども、現在のような大量の交通時代になりまして、運転者注意義務ということにも従来と違った考え方で臨まなきゃならぬということで、われわれもただいま刑事局長からお話のありましたような観点から調査を遂げるということで指導をしておる次第でございます。
  16. 亀田得治

    亀田得治君 まあその歩行者注意義務なりあるいはその運転者同士のいわゆる信頼の原則といったような問題については、これはまたもう少し議論を進めた上でお聞きしたいと思いますが、私がいま最初検討してほしいと言っておるのは、扱い方ですね。まず運転者過失があるという推定から出発するわけですね。それは、近ごろのたとえばマイカー族とかあるいは若い人が高速道路でまるでレースみたいなことをやるとか、そんなものと違いまして、正規のやはり営業として運転をしている人は、みな家族もあるのだし、事故が起きたらどういうことがあとに控えておるかみな知っているわけでして、非常にこれはやはり慎重にだんだん私はなってきていると思うのです。だからしたがって、悪いのは運転者だというふうな推定に立ってまず出発する、そしてその反対の証拠なりそういうものが出てきたりあるいは疑わしいものが出てきたら省くというような私は一般的にはやはり態度じゃないかと思うのですね。その点を私はもう少し考え方を改めなければならぬと思うのです。いま刑事局長の御答弁の中でも、大正十四年ですか、大審院判例、これはいまの自動車事故ともう全然状況の違うころのものですね。また、運転者に対するいろいろな教育にしても、全然これはもうまるっきり当時といまでは違う。そういうものが何かまだ土台になっておるというふうなこともちょっといま感じを受けたのですが、私はそれではやはりちょっと古過ぎると思うのですね、そういうものを土台にして、交通事故についての考え方をいろいろ発展させるということは。そういう考え方が、さっき私が当初具体的にあげたような例の中に入ってくるのですよ。起訴率が七〇ないし七五%だから、この数字だけを見ても相当慎重だ、こう言われますけれども、それは数字というものはなかなかいかようにでも見れるわけでして、数字だけで簡単な結論はなかなか出ない。むしろ過失というものは、いろいろなものが重なり合って、結局事故が発生しておる。五分五分だというふうなこと自体から、なかなかむずかしい問題が出てくるわけです。その結果がこういう数字になっておるだけであって、窃盗なら窃盗という場合には、犯罪自体がはっきりしていますからね。だから、いろいろな事情とか、小さいものはまあかんべんしておくとか、そういうものは別として、ほかの犯罪は大体そうです。ものごと自体がはっきりしておるから、それは起訴率も情状などを抜けば当然高くなる。これだけ社会的な非難がありながら七〇%ないし七五%しか起訴できないということは、これは交通事故のやはりむずかしさの本質がそこに私は出ていると思います。そういう意味でこの数字を見るべきなんで、この数字があるから、おれのほうでは三〇%ないし二五%はちゃんと慎重に検討しておろしておるのだから、あとはだいじょうぶだというふうなことには、これは読めませんよ、この数字を。どうですか。
  17. 赤間文三

    国務大臣赤間文三君) その読み方もいろいろあって、亀田委員のお説もなかなか傾聴に値しますが、犯罪の性質がやはり始めから、お話のように、大体もうけがをさせればさせたほうが悪いのだという先入観念とか、お話のように古い観念にとらわれてやるということは、これは全く私は好ましくないと考えております。そういうものにとらわれぬで、客観的に、また具体的に、実情に合うように、しかも慎重にひとつ事件を取り扱っていくべきで、ものにとらわれる考えはなくしていきたいと考えております。やはり交通事故というのは、機械をあやつる人のいろいろな問題もありまするが、一方においては、やはりそこへ飛び込んでくるとか、あるいは不注意歩行者とか、いろいろなものが相当やはり考えられるので、そういう特殊な事情がありますので、決してものにとらわれた、既成の概念でなく、ひとつ慎重に今後取り扱うようにして進めていきたいと、かように思います。
  18. 亀田得治

    亀田得治君 ともかくそれは慎重にやってください、その出発点を。裁判所へ行けばいろいろな理論が構成されておりまするが、なかなか検察官が権力をもって攻撃をかける、それに対して運転者が対抗していくというのは並みたいていの努力ではないのですよ。われわれそういうケースを扱うからよくわかるのですがね。先ほど来、法務大臣から、いろいろな訴訟費用扶助というふうな制度も拡充しておると言われまして、それはまあ私は非常にいいことだと思うのです、そのこと自体は。だけれども、金だけではないわけですね。金さえ与えればそれでいいというものでは絶対ない。これは運転者にとってはたいへんなんですよ。第一、精神的な苦痛もあるし。それから、行政処分などは、裁判になっておる間はこれは見合わしておるのですか。警察のほう、どうなんですか。公安委員会がやるわけですね。
  19. 鈴木光一

    政府委員鈴木光一君) 正式裁判係争中の事件につきましては、できるだけその結果を待ってやる。しかし明らかにわがほうが行政的に認定いたしまして差しつかえないものについてはやるということで、原則的には裁判を待ってやるということになっております。
  20. 亀田得治

    亀田得治君 それは全部裁判を待ってやるべきじゃないですかね、正式裁判というちゃんとしたルートがあるわけですから。それが確定しないうちに行政処分だけ先行してしまう。ところが無罪になったらどうなるのですか。えらいすまんかったと言うて頭を下げただけではこれは済まぬ問題ですわね。
  21. 鈴木光一

    政府委員鈴木光一君) そういうことがございますので、慎重にやるという方針でございますが、行政処分でございますので、私どものほうが捜査した結果、明らかに運転者過失があるという認定のもとにやる場合が非常に多いわけでございますが、非常に問題があるということで、係争中のことにつきましては裁判を待ってやるという形になっております。
  22. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、原則、例外というようなことを言っておられますが、パーセントでどれくらいになるのですか、裁判を待ってやるというのは。実際そんなに待ってくれているのですか。パーセントでどれくらいになるのですか。
  23. 鈴木光一

    政府委員鈴木光一君) パーセント数字は持ち合わせございませんけれども、非常にむずかしい事件で、これは無罪事件につながるかもしれぬというようなことについては、裁判の結果を待ってやるということでございまして、きわめてそれは例としては少ないと思います。
  24. 亀田得治

    亀田得治君 その辺、運転者にとってこれは非常に重要な問題なんです、その点が。だから、裁判無罪になったものについて行政処分が先行した事案というものがないかどうか、そういう点をお調べになったことあるでしょうかね。ともかく検察庁警察庁は、起訴する場合は確信をもってやるわけでしょう、それなりに。
  25. 鈴木光一

    政府委員鈴木光一君) 的確な数字の持ち合わせございませんけれども、人身事故行政処分をしたというもののパーセンテージを見ますと、たしか七〇%ぐらいを行政処分にしまして、あとの三〇%ぐらいは行政処分が年間を見ますとないという数字が出ておったと思いますけれども、そういうことから言いましても、ただ事故があったから、人身事故があったからすべて行政処分をするのだということにはならぬと思います。
  26. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、人身事故があった場合、三〇%ぐらいが行政処分が保留されておる、そういうふうに理解していいのですね。
  27. 鈴木光一

    政府委員鈴木光一君) そうでございます。
  28. 亀田得治

    亀田得治君 そういたしますと、次に、そこまで調べられておるかどうかわかりませんが、事故があって起訴して、行政処分をした、しかし結局は無罪になったという場合の、その措置というものはどういうふうになるのでしょうか。刑事関係は一応規定もありますが、行政処分の関係ですね。とにかく営業停止とかそういうことになるわけでしょう。生活に直接響くわけですが、そういうものはちゃんと補うようなことをやっているんでしょうか、しっぱなしということになるんでしょうか、どうでしょうか。
  29. 鈴木光一

    政府委員鈴木光一君) 行政処分には免許の停止処分と取り消し処分がございますけれども、かりに裁判の結果無罪という状況が出た場合に、まあ取り消し処分をしておった場合には、それを再審査するということはあり得るわけでございます。理論的には行政処分刑事処分とは別の観点からなされるわけでございまして、その間の問題につきまして刑事裁判を待って救済ができるものはしていくという考え方でございます。
  30. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、まあ何ですわね、救済できるものはすると言いましても、たとえば行政処分で取り消しまでしてしまったというものの救済というものは、これはどういうことになるんでしょうか。前の取り消し処分、これをさらに取り消すという処分をするんですか、あるいはあらためて資格を与えるというふうな行政措置をやるんですか、どういうふうになるんですか。
  31. 鈴木光一

    政府委員鈴木光一君) 先ほど申し上げましたように、理論的には行政処分行政処分としてやるという考え方でございますが、私の聞いている範囲では、取り消し処分で無罪事件になったというのは、たしか最近——二、三年前に埼玉に一件ございましたけれども、それにつきましては、御承知のように、取り消されましてから一年たてば受験ができるとと、再び再取得できるということでございまして、たしか埼玉の場合には再取得してからその問題が起こったということでそのままになっておりまするが、かりに途中でそのことがわかったということであればさかのぼってはいたしませんけれども、本人の不利益にならぬような——理論的には必ずしもそうする必要はないと思いますけれども、本人に不利益にならぬような行政上の措置を講ずるようにしたほうがよりよいのではないかというふうに考えております。
  32. 亀田得治

    亀田得治君 埼玉のその案件というものですね、これをちょっと具体的に、それは文書でもいいですが、いつ幾日どういう事件があって、どういう処分をして、最終的にはその人はどういうふうに行政上扱ってもらったのか、これきちっと書いてください、一ぺん、よろしいですね。それで、いろいろそれはできるだけ救済するんだと、こう言うておりますけれども、救済ほんとうにするんなら、その間の生活費なり、あるいは減収部分なり、場合によっちゃ慰謝料まで入ってきますわね、そういうことまでそれはめんどう見ないんでしょう。だから、そんなものほしかったら裁判起こしてくれということをおそらくおっしゃるんだろうと思いますがね。思いますが、それはなかなかあなた、行政処分を受けただけでもあっぷあっぷしているのが、とてもそんなことはできるものじゃないんですよ。だから私は、ともかく、交通事故のあった場合に、最初警察が手をつけるその段階においては、やっぱり、事件そのものを全体の裏表きちっと見抜くという、そういう訓練を絶えずやってもらう。そうしていきませんと、警察官に対する信用というものが出てきません。ともかく、第一線の日本の交通関係の警察官、これのする判断だったらだいじょうぶというくらいになってきませんと、わしはいかぬと思うのです。ところが、現在そこまでいっておらぬ。何といってもこれはいっておりませんから、したがって、刑事処分があった場合の行政処分をどうするかという問題は、これは慎重にやってほしい。相手に不服があって争う、これはそんな並みたいていでは争えませんよ。たいてい、ぼくらいろいろ相談を受けましても、この点を追及すれば何とか法律的には免れるのじゃないかというふうなことを教える場合があっても、それじゃやりましょうとはなかなか来ぬ。家へ帰って相談してみると、奥さんのほうが、まあそんなことをしているよりも、早く収入のほうを別途考えてくれというようなことが多いのですよ。したがって、私は、行政処分のほうはより慎重であってほしい、ことに争いのあるやつは。だから、争いのあるやつは、原則として争いの結果を待ってほしいのですね。そんなことを言ったら、皆さんのほうは、そんなことをしたらみんな争うだろう。行政処分がこわいのですよ、運転の方は。皆さんよく知っている。ともかくひっかかったから五千円なり一万円の罰金をすぐ払う。だけれども、停止とか、取り消しとか、これはともかく生活上たいへんなんだから、それを何とか考えてほしいというのは、もう共通の心理ですね。その一番痛いところをもっと私は慎重にやってもらわぬと、軽いほうは正式に裁判に行って、ああでもないこうでもないと言っている、実質的には非常に影響力のある行政処分を、そんなあなた、やってしまうということは、いかぬと思うのですよ。ほんとうは法律でそういうことははっきり規定してもいいのですね、そのくらいに思いますよ、実際は。刑事すら、一審が重かったら二審、最高裁まであなた、三審まで行けるのですからね。それはもっとも行政処分になっても訴訟上は争う方法がありますけれども、それはなかなかたいへんです。あなたのほうから吹っかけられた刑罰でしょう。争うだけでもたいへんなのに、こっちから訴訟を一々起こせるものではない。だから、絶対にそういう、原則的にはともかく、争いのあるものの行政処分は待つということにしたからといって、そんなことをしたらどれもこれも正式裁判を求めてうるさくなってたいへんだと、そんな心配は絶対要りませんから、私ははっきりしてほしいと思う。これは自治大臣、国家公安委員長の権限かもしれませんが、そうすることが私は公平だと思うのですが、これは法務大臣、どうですか。他省の権限のことかもしれぬが、これはしかし常識です。
  33. 鈴木光一

    政府委員鈴木光一君) 亀田委員のおっしゃるとおりでございますが、ただ申し忘れましたのは、行政処分をやる場合に、制度的に九十日以上の停止をやる場合、それから取り消しはもちろんございますけれども、聴聞制度というのがございまして、本人の言い分を十分聞いた上で行政処分をする。本人のみならず、参考人も呼んだ上で行政処分をする。それからさらに、その行政処分について不服がある場合には、行政不服審査法というのがございまして、それによって不服の申し立てもできるという、制度的にはそういう手続を経て行政処分をなされるということになっておることを御了承願いたいと思いますが、まあそういう制度にはなっておりますが、その上になお慎重にやるべきであるということについては全く同感でございます。
  34. 亀田得治

    亀田得治君 最初のお答えになったのと多少お答えのニュアンスが前向きになってきたように思うんですけれども、これは理屈から言えば、刑事処分の対象と行政処分の立場というものがおのずから違うんだというふうな理屈のあることは、これは私もよく知った上で言っているんです。それはまあ違うでしょうが、しかし実態が何んといっても起きておる事故についてのことですから、そのことの善悪が一方で正規の法廷で争われておるんですからね。それと切り離して行政処分を先行させる、これは私はもう原則としてやらぬと、ストップする——いままでどうも逆なようでありましたが——というくらいにしてほしいんですがね。それをしたからといって、非難を受けることはない、私は当然だと思うんですがね。法務大臣、さっきちょっとお答えになろうとしたようですが、あなたの考え方はどうですか。
  35. 赤間文三

    国務大臣赤間文三君) 亀田委員のお説も、私はなかなか大事なことと思いますが、私の考え方はまた違う。なぜかといいますと、亀田委員の説は、私はもっともな点が十分あって、お答えとしては、もうとにかく慎重に、軽率なことはやらないで、慎重な取り扱いをやるということは、従前にも増して慎重にやらなければならぬということだけは、これは私もはっきり申し上げます。ただ法務大臣の頭にあることは、何といっても一年に六十五万人の人間が——死んだのは五千か三千——けがをするというなみなみならぬ大不幸が起こっておる。どうしてもこれをあらゆる方面から少なくするということがもう今日差し迫っている問題じゃなかろうか、こういうことが頭に非常にこびりついておる。行政処分を減らせば犯罪が半分にでもなるというんだったら、即刻私は大いに馬力をかけたいと思うが、そんなにやっておっても、やっぱり六十五万の人がいまや——なおまたこれは非常にふえるんじゃなかろうかという心配をしておる、そういう点。しかしまた、行政処分をやって、本人が生活に困ったり、塗炭の苦しみにあわせるということは、これまた非常に好ましいことではないので、何もそういうことで憎むという考えは好ましくないのでありますが、よほど慎重にはやるべきではあるが、全然行政処分をやめてもということには、私はそういう考えにはならぬのであります。いまもう大事なことは、あらゆる面からこの六十何万人のあれを減らすという点に頭が一ぱいになって私はきておる、かように考えております。いま言いましたように、お説の点は非常に理屈がありますし、ごもっともで、慎重にやるということについては、私は全く同感でございます。
  36. 亀田得治

    亀田得治君 まあ、行政処分を減らせとかなんとか言っているんじゃなしに、的確にやってくれ、こういう意味のことを言っているわけですよ、的確にね。六十何万あるといま大臣言われて、これを減らすことに行政処分が役立つならどしどしやったらいいというような意味のこともちょっと言われましたけれども、そこですよ。事故が多い、すぐそれが頭にきて、運転者にのしかかってくる、それを私は法律家として言っているわけなんです。これは政策論としては、国の責任があるわけでしょう。歩行者の責任もあるわけでしょう。あるいは雇用者の責任があるわけでしょう。いろいろな問題が総合されておるわけですからね。そう運転者だけ目のかたきにするようなことでは、これは長続きしませんよ。運転者のほうも負担にたえかねて限度に来ているんですね、限度に。各論をだんだん進めていくうちにはっきりしますが、限度に来ているのです。だから、最近の裁判所に行きますと、それらの点の考慮が相当強く出ているわけなんですよ、それらの点の考慮が。これは人間に不可能なことをしいたってだめなんですからね、できっこないんですから。だから、そういう意味で申し上げているわけですから、いやしくも争っておるものについては、これは原則として行政処分を待ってもらう。これはひとつ公案委員会にでもかけてもらって、回答願いたいのです。私はそれは当然だと思うのです。これは回復できませんよ、間違った場合に。先ほど一つの例だけ具体的にこちらにいただくことにしましたが、おそらくそれを検討すれば、なるほど形の上じゃ何か名誉回復できたようなことになっているかもしれぬが、実質損害というものは決して回復されているものではないと私は思っているのです。ですから、これはひとつ検討してください。検討できませんか——検討にも値しないというようなことじゃ、私はちょっと行政としては行き過ぎていると思うのです。
  37. 鈴木光一

    政府委員鈴木光一君) 行政処分刑事事件の結末を待ってすべてやるということは……。
  38. 亀田得治

    亀田得治君 いや、すべてじゃない。有罪か無罪か争うわけです、事件を。さっきから言っているのですよ。
  39. 鈴木光一

    政府委員鈴木光一君) わがほうが、これは非常に問題である、一応事故が起きたけれども本人の過失の点について問題であるというものについては、従来も、行政処分は直ちにはやらないで、刑事裁判の結果を待ってやるという考え方でやっておりますので、御趣旨の線に沿った運用がなされておるというふうに私は考えておりますが。
  40. 亀田得治

    亀田得治君 だいぶいろいろやっているうちに変わってきたようですから、まあその程度にしておきますが、これはひとつ運用面として要求しておきます。  それから、刑事局長にお尋ねしますが、先ほど私が指摘した判決ですね。この中で、検察官がこういう主張をしているのですね。三宅正太郎というまあ被害者ですね、安全地帯に立っていた。その人が大きい荷物を持っていた。つまり、それを持っておりてきたわけですが、電車の中へ入っておったわけですね、その人が荷物を持って。これは、大阪市路面電車乗客取り扱い規程第三十六条に、「乗客には膝に乗せることができる程度のものに限って車内に携帯させることができる。」、こういう規定があるんです。この規定に反して車掌がその人を電車に乗せたのが第一違法であるという理屈を引き出しておるのです。だから、もう出発点がそういうところに——第一おまえが悪い。しかし裁判所では、それは別な問題じゃないか。第一それはお客さんの便宜のためにやっているわけで、だから私はもうこういうところに、本筋のところの過失が危うくなると、関係のない時点のずっと前のことまで引っぱり出してきて、そうしてにらんだ以上はこいつを処罰するのだというふうな考え方が出ているわけですね。裁判官もちょっとしゃくにさわったとみえて、カッコして、こういうことを検事が言っているが、これは別の問題だというふうに軽くはねて説明しておりますが、こういう考え方は第一線の警察検察官にやっぱり隠然としてあるのじゃないですかね。途中で、どうもこれは被害者のほうのミスが多いということがわかれば、さらっとする。だからといって、私は何も運転する人がそれだけ注意を散漫にしていいということを絶対に言っているんじゃないんですよ。こういう問題を扱う第一線の検事、警察官に、どうもにらんだ以上はこれを有罪にしようという気持ちがあるのですね。刑事局長、あなた検事の何はよく御存じでしょうが、どうですか。あなた、こういうことを判決にまで書いてあるんですが、どう思いますか。いやそれはそれでいいんだ、とにかくにらんだ以上はあらゆる知能をしぼってやっつけるのが検事の義務だ、こういうことでは、どうも二百十一条、刑を重くして、そういう調子でやられますと、一般のまじめな運転者が心配する。いろいろ反対運動があるでしょう。一般の交通事故に対する世論というものがわかりながら、直接運転しておる関係の人には根強い反対があるんですよ。私は、この第一線の扱う人の態度、これは非常に影響しておると思う。これがたまたまこの判決に出ています。どう思いますか。そういう傾向でしょう、刑事局長
  41. 川井英良

    政府委員川井英良君) その具体的なケースの内容をよく検討しておりませんので、一般論としてお答えしなければいけないと思いますけれども、人の非違を剔抉し、犯罪の捜査に従事するというふうな者は、感情に走らないで、あくまで冷静に、しかも厳正に、また科学的に、合理的に、その過失の有無を探究して公正な処理を行なうということは理想でありまするし、また私ども本省に勤務する者としては、そういう観点から検察の監督なり指導なりにつとめておるわけでございますが、いろいろまた有益な御指摘もございますので、なお一そうそういう面についてさらに慎重な配慮と指導を行ないたい、こう思います。
  42. 亀田得治

    亀田得治君 それは実際、第一線の警察官、検察官の態度というものは非常に重要ですよ、法全体の運営なり信用という一面から見て。一方で無謀運転などについての取り扱いの強化ということを言われながら、しかも社会的に大体そういうことは是認されておりながら、なかなか根強い反対が出てくるというところの根源というものは、やはりこれは静かに考えてみる必要ありますよ。だから、そういう意味でひとつ、これを私この間連休で帰ったときにもらってきたので、おたくのほうからもらったわけじゃないですが、お貸ししますが、ちょっと検討してもらって、考え方をきちんと一ぺん聞きたいのです。私はこれが、この一審判決が出たあと、担当検事は控訴すると言うておるという話を担当の弁護士から聞きました。しかしそれは、起訴自体が何か意地になったような関係があるのだから、そればおかしいじゃないかと言うて、上司の方に相談したら、あああんなものは控訴しませんと、きわめて軽いのですよ、その返事がね。名前までここで言わぬほうがいいけれども、だからそんなことではいかぬと思うのですよ。まあひとつそれを要求しておきます。  それから、そういう立場からもう一つ私が気になる判決があるわけです。三十年の四月十八日の東京高裁の刑事一部の判決ですね。被告人は藤掛信一、これは新聞等にも報道された事件ですね。第一審が東京の中野簡裁、二審が東京高裁の事件ですが、この判決をずっと私見まして、どうしてこんなことが起訴にまでなっているのだろうかと、たいへんこれも第一線の扱い方に非常な不注意があると思っているのです。刑自体もほんのわずかの罰金ですから、これはあなた、納めてしまえばそれきりのものです。ところが、どうしてもこれは承知できぬということで、この人が二審まで行って、そうして無罪をかちとっておる。それは罰金の何十倍という費用を使っている。たまたまそういうことができる人であったわけでしょうが、これは御存じでしょうが、それはどういうふうに見ていますか。
  43. 川井英良

    政府委員川井英良君) 当時追い越し違反に過失犯の規定がない時分の道交法の解釈をめぐっての問題でございますが、これは取り締まり当局の間でも、また学界の方面でも、この解釈をめぐりまして甲説、乙説があったようであります。検察官は積極説をとって一応起訴して、二審でこれが過失犯を含まないものだということで無罪の言い渡しがあってこれが確定したものと、こういうことになっておりまして、この判決が契機となって現在のような道交法の改正が行なわれた、こういういきさつの事件でございます。この法律の解釈と運用の場合に疑問がある場合にどういうふうな態度をとるかということは、これまた私どもとして非常に慎重に考究しなければならぬところでございますけれども、当時の道交法の解釈の立場、それから道交法違反の実態というふうなものにかんがみまして、検察庁としては積極の見解をとって、裁判の結果を見た、こういうふうな事案でありますので、いまから振り返ってみますというと、いろいろ多少批判はありましょうが、当時の状況といたしましては、場合によりましてこういうふうな措置をとるということも許されるものではないかと、こういうふうに思っております。いずれにいたしましても、慎重な配慮を要することは、これはもう言うまでもないことであると思います。
  44. 亀田得治

    亀田得治君 しかし、この道交法なり道路取締令違反等について犯意が必要でないということが争われたというんですが、過失犯を罰するのは特別の規定が必要なわけで、そんなものは何もないわけでしてね、道交法についているわけじゃない。したがって、それは当然犯意が必要ですよ。だから、そういうことが争われたというのは、一体どういうことなんですか。刑法学上当然なことだと私は思うんですが、一体どういう人が犯意が必要だと言い——そんなことを特に言う必要ないでしょう、一般の人はそう考えておりますから。で、その異論があったというのは、それは検察官だけじゃないんですか、学者でもそういうのがあったんですか、どんな人があったんですか。
  45. 川井英良

    政府委員川井英良君) たとえば、道交法の中に免許証の不携帯というようなものがございますけれども、これは多くの場合に、免許証があるのにめんどくさいから持っていかないというような例はむしろまれでありまして、うっかり忘れて不注意でもって免許証を携帯しない、持っていると思ったら、それがたまたま調べられたら持ってなかったというような場合が非常に多いことは、これは取り締まりの実際に徴してよくあることでございます。そういうふうな場合に、免許証不携帯の場合について、これは過失犯だと思いますけれども、故意がないと思いますけれども、不携帯については。そういうふうな場合について、この法律はそういうふうな故意のない過失的なものを処罰しない規定かどうかというようなことについてずいぶんいろいろ議論が戦わされたということは、これは御承知のとおりだろうと思います。それから外国人登録令違反なんかも、やはり同じような、登録証の不携帯の事犯がある。この種の取り締まり法規の特別法の中には、明らかに過失によってという明文はございませんけれども、その法律の立法の趣旨、それからその法条の考えております立法の趣旨というようなものから考え合わせまして、明文の規定はないけれども過失犯を含むものだと、こういうふうな解釈があることは、これは最近のことじゃございませんで、前々からそういうふうなことが一般に議論されておる。そういうふうな考え方のものをいま御指摘の本件のようなケースに当てはめたということが軽率であったかどうか、私こういう御指摘だろうと思っておるわけでございますけれども、一方において、なるほどそういうふうな法条はあるといたしましても、それはごく例外のことでございますので、それをあらゆる類似な面について類推的に考え、あるいは拡張的に考えるということは、これはきわめて慎重な配慮がなければならぬことは、申すまでもないことだと思いますが、このいま問題になっている道交法の法条に過失犯は含むという、こういう解釈がいまから考えてみまして適当であったかどうかということにつきまして批判があることは、私も承知しておりますし、私は私なりの意見がございますけれども、特別法規にはそういうふうな事例があるということは、これはまた一方において考えなければならぬことでございますのでそれをどの程度にまた適用していくかということのその限度の判断はまことに慎重でなければならない、こういうふうに考えております。
  46. 亀田得治

    亀田得治君 その免許証の不携帯というような、何というか、状態ですね、わざわざ自分からつくり出すわけじゃない、いつの間にかそうなっているということ自身を対象にしていると大体読める、そういうものはね。だから、初めからそうなんです、それは。だけれど、いやしくも事行動をするその結果について処罰をするということについて、犯意が要るの要らぬのというような議論を戦わすこと自体が私ばおかしいと思う、そんなこと。だからそういう意味で、ともかくつかまえた以上は何とかものにしなければならぬというものだから、そういう議論が判例の中にも書いてありますがね、検察側からの主張として。非常に無理なんだ。無理なことをあまり言わぬほうがやっぱりいいのですよ、それは。  それともう一つは、この事件で私たちが非常にやはりこれは軽率だと思うのは、それじゃあ、その過失犯を罰するという見解を検察側はとっておられるわけですね、この事件で。しからば、その過失の認定が一体どうかという点になりましても、これがはなはだ、判決の中にあらわれておる双方の言い分をわれわれ見ただけでは、認定自体がおかしいじゃないかという感じを強く持つわけですね。それ持ちませんか。ここが追い越し禁止区域かどうか、はっきり表示もしていないのですね。いろんな証拠によって確定された事実をまあ要約しておりますがね。そんなあなた、場所も、そういう場所であるということもはっきりしておらぬ。それから、従来の経過を見ると、ちょいちょいここで追い越し違反というものがあったようですね。だから、場所がはっきりしていないからそういうことになる。そういうことがたびたびあったら、国のほうで直しておかなければならぬでしょう。それから、この人は、昭和二十四年に運転免許証をもらって、それからその問題が起こるまで自家用車をずっと運転していて、交通違反とか事故を起こしたことがないのですね。一回だけ警笛を鳴らすべき所で鳴らさなかったので注意を受けた。まあこまかいところまでこれは調べたものだと思いますが、そういう人なんです。だから、そういう善良な運転者が、追い越し禁止区域だとも知らない。これも、事実調べの結果だと、初めてこの場所を通ったようですね。それに対して、いや過失があってもいかぬのじゃ、過失の認定自体を粗漏にやっておる、こんなことは私は全く許せぬと思うのです。それでおこってこの人は、やっぱり正式裁判——これは幾ら金を出してもこんなものに従えないということでこうやったものだと思いますがね。これは最初警察が扱ったわけでしょうが、これはどういうふうにこういう判決が出て反省していますかね。本人に訓示でもちゃんと与えておるのですか。これは新聞に報道された事件ですから、おそらくそういう交通関係の警察官などは見ておると思うがね。出たけれども、何も上から言うてこぬわというのでは、これは話にならぬと思うのです。どういうふうにこういうものが出た場合扱っておられるのかね、両方からひとつちょっとお聞きします。
  47. 鈴木光一

    政府委員鈴木光一君) 御指摘になった事件について詳しく存じておりませんけれども、一般的に申し上げまして、私どもは現在の段階で、お話に何かありましたように、標識が明確になされておらないという場合には、もう事件としては——警察官が違反を認知をいたしまして、それについて標識がないじゃないかといったような場合には、現場の措置で事件にしないというような指導を現在はしております。それで、過去においていろいろな——これは三十年の事件でございますが、過去において非常にやはり問題のあった取り締まりがあると思います。われわれはそういうことを、判例等にあらわれたものを十分検討いたしまして、警察官の取り締まりというものについて、そういう判例を十分生かして、苛察にわたらない取り締まりをするという教訓にしておるわけでございます。
  48. 亀田得治

    亀田得治君 まあそのいまの案件にしても、普通の人ならここまで争いませんよ。よほどそれはもう反省してもらわぬといかぬです。こういう無罪になった人、この三十年の事件行政処分関係ですね、これはどうなっておるんでしょうか、お調べ願って、さっきの埼玉のやっと一緒にね。  それじゃ次に、歩行者との関係ですね、この関係を私少し検討してみたいと思うのです。日本の交通事故の特徴ですね、歩行者とのぶつかりが多い。これはどれくらいになっていますか、資料で、全体の事故の。
  49. 鈴木光一

    政府委員鈴木光一君) 死亡事故についてだけ申し上げますと、歩行者交通事故によって死亡したというのは、全死亡した人の数の三四%程度になっております。大体四十一年、四十二年、三四、五%程度というのが率でございます。
  50. 亀田得治

    亀田得治君 死亡事故以外のやつはどうですか。資料に載っていたら、ちょっと御指摘願えば。
  51. 鈴木光一

    政府委員鈴木光一君) 死亡事故については、先ほど申し上げましたように、三四%ないし三五%でございますが、全事故になりますと——負傷事故も含めますと、大体二五、六%ということになっております。
  52. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、傷害関係はパーセンテージが相当低いわけですか。
  53. 鈴木光一

    政府委員鈴木光一君) そういうことでございまして、傷害事故につきましては、御承知のように、最近は特にそういう傾向が顕著でございますけれども、自動車自動車事故が非常に多うございまして、追突事故その他がふえておりまして、対歩行者事故というよりも、自動車自動車という事故が非常に最近ふえてきておりますので、したがって、パーセンテージにいたしますと、死亡事故よりもずっと下回るということになるわけでございます。
  54. 亀田得治

    亀田得治君 それで、死亡者の三四%ないし三五%、これはほかのものに比べたら一番パーセンテージとしては多いわけですか。
  55. 鈴木光一

    政府委員鈴木光一君) ほかのものと言いますとどういうことかと思いますが、要するに、事故が起きまして、事故の形態といたしましては、車対車の形態と、車対人の形態と、それから車の単独事故——自分がひっくり返しているということになりますので、その割合をちょっといま調べておりますけれども、その中において三四、五%ということになるわけでございます。
  56. 亀田得治

    亀田得治君 いずれにしても、全体の三分の一をこえるものが死亡事故においてあるということは、これはきわめて重大な点なんですね。しかも、日本ではこれが特徴的なこととして言われておるのですね。だから、この面をどうしたら改善できるのかということは、やはりもっと考える必要があろうと思うのです。そのためには、もちろん、歩道と車道の分離、あるいは通行人がいろいろ注意をするといったようなことも必要でしょうが、私は現在の道交法の規定自体そういう点についての配慮が非常におくれておるのじゃないかというふうに思うのです。端的に申し上げますと、歩行者のことを道交法できめておるのは、十条から十五条まででありますね。第二章「歩行者の通行方法」、ここで六カ条ですか書いてあるのですが、これはほとんどが任意規定でしょう、どうです。
  57. 鈴木光一

    政府委員鈴木光一君) ほとんどは直接罰則がついておりませんので、十五条にありますように、警察官が指示いたしまして、その指示に従わなかった場合に罰則がかかるということになるわけでございます。
  58. 亀田得治

    亀田得治君 罰則のあるのは、十五条と、それから十一条にも罰則がかかっておりますね。しかし、これは行列とかそういう関係でしょう。実際に、この十一条なり十五条にはちょっと罰則が通行方法についてかかっておりますが、具体的にこれは適用されたことはあるんですか。罰則はきわめて遠慮されているんですが、遠慮されているものすらもほとんど使われていないんじゃないですか、実情はどうなんですか。
  59. 鈴木光一

    政府委員鈴木光一君) 歩行者の違反につきましては、件数はきわめて少のうございますが、全くないということではございません。
  60. 亀田得治

    亀田得治君 もうちょっと詳しく。私はこの辺が一つの大きな盲点だと見ているんですよ。だからもう少し詳しく説明してください。
  61. 綾田文義

    説明員(綾田文義君) 歩行者の場合には、御承知のように、第五条の信号無視の場合は直ちに罰則がかかるわけでございます。
  62. 亀田得治

    亀田得治君 いや、それ十一条、十五条の関係ですか。
  63. 綾田文義

    説明員(綾田文義君) この場合はほとんどありません。確かな数字ではございませんが、毎年歩行者の検挙件数は全国で大体約千名前後だったと思います、地裁に送致をして、そうして処罰をされた者は。しかし、御承知のように、歩行者の場合には、現場における指導というものは、それの数十倍、数百倍の指導は現場においていたしておるわけでございます。
  64. 亀田得治

    亀田得治君 その千名ほどと言われますのは、十一条、十五条の関係ですか。
  65. 綾田文義

    説明員(綾田文義君) いいえ、違います。五条も含めてでございます。一番多かったのは信号無視、それからその次が横断禁止場所におけるさくを乗り越えて横断をしたというふうなものでございます。
  66. 亀田得治

    亀田得治君 それはどの罰則になるんですか。横断禁止場所というのは十三条、罰則ないでしょう。
  67. 綾田文義

    説明員(綾田文義君) 十三条の二項でございます。
  68. 亀田得治

    亀田得治君 十三条ね。しかし、これは罰則ないでしょう。
  69. 鈴木光一

    政府委員鈴木光一君) ここに四十二年の統計がございますので申し上げますが、歩行者で違反を取り締まりました件数がここにございますが、検挙件数は年間二千二百二十五件でございますが、その内訳を申し上げますと、信号無視が千五百八十三件、左側通行が百四件、車道通行が三十五件と、横断歩道外横断が六十六件、斜め横断が十八件、車両の直前直後横断が三十二件、横断禁止場所横断が百十八件、通行禁止制限十六件、その他二百五十三件になっておりますが、先ほどもお話があった信号無視は直ちにいくわけでございますが、あとのやつは、警察官の指示に従わなかった、警察官が一度注意してそれに従わなかったという場合になされるわけでございます。
  70. 亀田得治

    亀田得治君 ちょっと、その一覧表をですね、二、三年分のやつつくってくださいな、大体どういうふうになっておるか。いまおっしゃったのは何年でしたか。
  71. 鈴木光一

    政府委員鈴木光一君) 四十二年でございます。大体、おおむねこの二、三年ではこういう数字になると思います。四十一年が合計が二千六百十七件でございますから。その内訳の数字も大体大同小異でございます。
  72. 亀田得治

    亀田得治君 それを、いまおっしゃったようなやつ、該当法条別に表をつくってください。その中には、たとえばデモなんかのやつは入るんですか、入らぬのですか、この規定には。たとえば十一条違反ですね、行列でしょう。こういうところへは入ってこないんですか。
  73. 綾田文義

    説明員(綾田文義君) この条文で取り締まった場合には入ると思いますが、御承知のように、デモの場合には、道交法とそれから公安条例、それから道交法が関係しない場合の公案条例だけの場合もございますので、道交法としてはこの規定によって取り締まったものだけが入っているということでございます。
  74. 亀田得治

    亀田得治君 それで、デモの場合には十一条というものは使っておらないと理解していいんですか。
  75. 綾田文義

    説明員(綾田文義君) そのことは、実はあんまりつまびらかでございませんけれども、全然使っていないということではないと思います。
  76. 亀田得治

    亀田得治君 その点もちょっとはっきりしてくれませんかな、さっきの一覧表の中で。もしデモに関するものが相当あるんだとしたら、これはまたちょっと多少見方を変えた角度から見なきゃなりませんからね。私がいまここで問題にしたいと思っておるのは、一般の通行者、これと車の関係というものをもう少し深めて論議したいと思っておるんで、もしそういうものが十一条の中に入っておるんなら、その件数は幾らとカッコでもして明らかにしてほしいと思うのです。案外そういうことばっかしに使っているのと違うのかね、ほかのほうはあまり使わぬで。
  77. 綾田文義

    説明員(綾田文義君) 私の知っている範囲では、ほとんど、この条文はそういう場合に使ったようなことはあまり聞いておりません。なお、該当法、これらの条文について調査をいたしてみます。
  78. 亀田得治

    亀田得治君 この道交法、いまの歩行者の通行方法の中の直前横断ですか、これが三十二件とおっしゃったですな、さっき、たしか。三十二件ですか。
  79. 綾田文義

    説明員(綾田文義君) 三十二件でございます。四十二年の統計で三十二件でございます。
  80. 亀田得治

    亀田得治君 この直前横断というやつは、これ十三条に規定してあるんだが、これは罰則がないわけだな、十三条自体には。それはどこから出てくるのかしら。
  81. 鈴木光一

    政府委員鈴木光一君) 先ほど申し上げましたように、十五条の警察官の指示に従わなかったような場合ということになるわけでございます。
  82. 亀田得治

    亀田得治君 本来は、こういうことは、警察官の指示があって初めてそれの犯罪性を持ってくるというもんじゃないでしょう、直前横断なんというのはね。これは最も危険な横断ですわね。それが本条では罰則がついておらぬ。なるべくそういうことはせぬほうがいいと書いてあるだけなんですね。ところが、道交法の七十一条をちょっと見てください。七十一条の三号「道路の左側部分に設けられた安全地帯の側方を通行する場合において、当該安全地帯歩行者がいるときは、徐行すること。」と、これは運転者に対する注意義務規定ですわね、義務とされている。これは罰則の対象になっているのですよ。それで、こう歩道がある。ここに一般の道路がある。自動車がこっちに行く。歩道に人がおる。おまえはゆっくり行けと——自動車はゆっくり行けと。人がこう飛び出していくのは、これ罰則の対象にならぬ。飛び出すということがなければ、これはずっと行けるわけですよ。しかも、歩道におる人は、全部が渡るわけじゃない、渡らぬほうが多いわけです。渡るか渡らぬ者が歩道におるのにかかわらず、運転者にはゆっくり行けと、こういう道交法のたてまえになっているんですわね。これは用心にこしたことはないという立場でこういう三号のような規定ができているんだと思いますがね。しかし、それはゆっくり行ったって、ほとんどの人が渡るわけじゃないんだから、実は相当これは強い注意義務規定ですよ。罰則がついておる。一方のほうは、直前横断しても、警察官の指示のあった場合は別だが、きょうは混雑しておるから横断してはいけませんとか何とか言うて特に注意のあった場合は別として、一般の場合は任意規定で罰則もない。これは非常な片手落ちじゃないかと思うんですね。だから、一般的に運転者に非常にきつく出てきているんですよ。どうなるかわからぬようなところまで譲歩せいと無理なことを言うてやらしておいて、一方ではそれをしない。ほんとうは自動車のともかく前を横切るなんというのは、これは絶対禁止しなきゃいかぬことですよ。道交法にはそうなっておらぬですがね、これは。こういうところに、道交法——これは私は一つの条文だけを取り上げて言っているだけですが、全体の仕組みがともかく運転者についてはあらゆるところから規定していますよ。このとおりやっておったらなかなかタクシーなど商売にもならぬのじゃないかと思うような、感じのするような強いものなんです。これは人命尊重けっこうですよ。だけど、今日の時代では、運転者だけにそれを強く求めるということは、もう限界が来てると思うんだ。道交法は、そういうアンバランスな状態でこれ規定されているんですな。両者比較すると、この点私は非常な欠陥があると思うんですがね、検討しなきゃいかぬと思うのですが、どういうふうに見てますか、警察では。
  83. 鈴木光一

    政府委員鈴木光一君) 御指摘のように、現在の道交法につきましては、歩行者保護、歩行者優先という立場から、歩行者について違反がある場合でも、直罰という形は原則としてとっておりません。それはやはり、歩行者保護、歩行者優先という考え方から出たわけでございますが、御指摘のように、現在のような交通事情になった場合に、これでいいかどうかということについては、やはり検討すべき問題だというふうにわれわれは考えております。現在、私どもは、道路交通条約がございまして、これに加入しておるんでございますが、この道路交通条約が、ことしから来年にかけまして、全般的に改正されるということになっておりますが、その中で、やはり歩行者についての注意義務を非常に従来よりも強くするという形の条項が出ております。私どももそういう方向に進みたいと思いますが、ただ問題は、それに罰則をかけるかどうかということについては、これは任意になっておりますが、そういう点も含めまして、罰則をかけるのがいいかどうかということも含めまして、検討をいたしたいということにはしておるわけでございます。
  84. 亀田得治

    亀田得治君 そういう点じゃ、世界的に見てどうなっておるんですか。私たちが部分的に聞くのでは、たとえばオーストリーでは横断歩道以外のところで渡った場合には罰金を取られるとかいうふうに聞いておるんですがね、どうですか、法務省のほうでわかっていたら——大体あんまり歩行者のことを研究しておらぬのじゃないですか。運転者をどういうふうにしてやるかというような面だけ研究相当詳しいようですが。
  85. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) 歩行者に対する交通法違反に対する罰則をどうするかという点につきまして、私のほうで全世界を調べたわけではございませんが、私たまたまアメリカに三年以上おりました体験から申し上げますと、歩行者に対する罰則はないようであります。むしろ交通道徳の問題ということでございまして、たとえば、いわゆる交通安全週間というものが行なわれますときに、マスコミ等の協力で、違反をしている人の写真を新聞等に出しまして、こういうことをやると命があぶないぞということで、もっぱら道徳的なもので処理していこうということであろうと思います。たとえば、横断歩道のないところでの横断を見ていますと、日本でありますと、自動車が来なければ、かりに横断歩道が百メートル歩くところにございましても、そこを横切ろうとする心理がわれわれにも働くわけでございますが、アメリカの町を歩いておりますときには、だれしもが百メートルあるいは二百メートルの横断歩道のところに行きまして渡るというようなことになっております。これは子供のときからの交通教育というものが徹底しているのではないかということが第一点と、もう一つは、町並みがそのようにやはりつくられているのではないか。言いかえますれば、大都市におきましては、いわゆる八百屋、雑貨屋、グロウサリーというようなものがビルの一隅にあるわけでございます。日本の場合で見ますと、大体まあ街頭にも並んでいる。そうするとすぐ横切ってそこに行きやすいのでございますが、アメリカの場合でありますと、そこに行くのにやはり大きなビルの一隅に入っていくというふうな感じがございますので、直ちに横切ってそこへ直進するという気持ちにはならないのではなかろうか。私ども、歩行者について罰則をどの程度つけるか、つけた場合にどうするかという点につきましては、警察庁とも協議いたす立場にあるものでございますが、歩行者優先という単なる標語というよりも、その前提となる交通道徳というものを高めるというほうにもう少し努力していきたいと、かように考えております。
  86. 亀田得治

    亀田得治君 だから、歩行者優先というか、そういうことばかりがただこうばくと使われるものだから、歩行者は何してもいいんだと、自動車おまえとまれという観念をまた逆に植えつけるんですよ。だから、いまあなたもちょっと指摘されたように、それは根本は、何といっても交通道徳、またその教育、そういう問題に私はなると思うんです。だけれども、そのことが社会的に非常に重要だということになれば、そのあなた交通道徳に反するんですから、反したものをほっておいていいかどうかということは、当然私は問題にならなきゃならぬと思うんですよ、道徳に反するんだから。そうでしょう。刑法の各条みんなそうでしょう。刑法だって、根本は、それはあなた教育であり道徳ですよ。だけれども、それに反した場合にどうするかというのは、刑罰法規の段階になってくるわけですからね。それは道徳の問題だ、教育の問題だというのではいかぬと思う。単なる行政的な問題じゃなしに、道徳の問題、教育の問題だというところになってきたということは、つまりこれは人類全体の問題になっているということなんですね、言いかえたら。それなら、反道徳的なことがあったらおきゅうをすえると。まあ人を処罰するというようなことは、これはあまり言いたがらぬものですけれども、しかしまあ私はこういうふうに見て、やはりそこまで進まなきゃなかなかうまくないと思うもんだからこれは言うているんです。いろいろ考えた末言うているんです。あいつ国会で何か歩き方間違えたら罰金取れというようなことを言うたということを言われたら、これはまた一方的な批判になるわけですが、しかしこれは当然考えるべきことでしょう。人の家に入るのに裏口から入る、まあそんな程度はいいかもしらぬが、土足で家に上がったと、これはみんな道徳に反する、そんなことは。だからその点、そういうことを案外警察でも検察庁でも何か軽く考えているんじゃないか。道を歩くのは天然自然の現象だ、それは道がついている場合はそれでいいですよ。そうじゃないのですから。だから、そういうふうになってきませんと、いたずらに運転者だけが負担を負う結果になる。しかも、これは人間ですから限界があるというのです。幾らやってもそれはうまくいくものじゃないのです。だから、いま世界的なことを言うと、あまりそういうふうなものはないようですね、いまのお答えですと。ないようですが、ちょっとこれは検討の余地がありますよ。そういうことをしないで、歩行者優先、それだけを言われても、これはとても私なんか、車の直前横断なんというものは、実際傷害が起こらなきゃそれでよかったという点で、それはそれでいいのですけれども、個人として。だけれども、それはやはりぼくらは放置するのはよくないと思うのです。それは運転者にとっては大きな負担ですからね、そういう者がいつあらわれるかわからぬという感じで運転するということは。これどうですか、ひとつ積極的に検討できませんか。
  87. 鈴木光一

    政府委員鈴木光一君) 先ほども申し上げましたように、歩行者保護、歩行者優先の観点からそういう規定になっておりますが、もう一つ事課長が指摘されましたように、歩行者については安全教育という観点で、われわれもこの歩行者の通行方法に関することについていま街頭で指導をするということで、その指導に従わなかった者に罰則がかかるという、現在の段階ではそういう方法をとっているわけでございますが、これを直罰にするということについてはよほどまだいろいろ考えなければならぬことがあろうかと思いますが、検討事項ではあると思います。  事故の諸外国の例では、やはり、事故が起きた場合に、刑事罰は科せられておらなくても、道交法に規定されておれば、民事裁判等でそれが当然考慮されるわけでございまして、そういう点で解決しているようでございます。  もう一つは、日本の歩行者の交通道徳というものが、この道交法をつくった段階では、大いに交通道徳をこれによって高揚していこうということでつくったわけでございますが、必ずしも予期しておったような歩行者の交通道徳がよくなっておらないという現状でございます。大部分の者が交通道徳に従っている、きわめて少部分の者が従わないということになれば、罰則という方法もあろうかと思いますけれども、まだまだ私は、交通道徳の観点から歩行者というものを安全教育していく——これが学校、地域における教育、それから警察官の街頭における指導を通じての教育、いろいろな面でもう少しやはり私は歩行者についての交通道徳というものが高揚してこなければならぬと思います。それが、大部分の者はその道徳に従うようになった、きわめて悪質な者だけが道徳に従わないという場合に初めて罰則をかけるのが至当じゃないかというふうに私は考えたわけでございますけれども、そういったような歩行者の実態、そういったものの関連で直罰にするかどうかということは検討いたしたいとは思っております。
  88. 亀田得治

    亀田得治君 まあそこらのところ、歩行者のほうの乱雑な歩き方は反社会的なことなんだということがやはりきちんとあらわれるような、そういう法体系にしてもらわなければ私はいかぬと思う。  それで、またこれは判決ですが、昭和四十三年ですか——ことしの四月十八日、これも新聞で報道されて私も知ったんですが、神戸地裁の姫路支部の判決ですね。藤本智明が被告人で、これがまあ無罪になっているんですが、これは道路から飛び出してきて衝突して死亡した、こういう事件ですね。これに対して、この判決はいろんなことを書いておりますが、ちょっと読んでみますと、「元来歩行者は、前記のような車の往来の頻繁な道路を横断するに当っては、前以て左右の安全を確認しなければならないのが当然であり、また、多くの歩行者がそうしているのであるから、被告人が」——これは運転者ですが、「被告人被害者を発見するや否や、その不意の道路横断を予想して早期に警音器を鳴らし、毎時約二五キロメートル程度の低速からさらに減速、徐行すべき業務上の注意義務があったとするのは、」当を得ておらぬと、こう言っておる。そうすると、大体さっき引用した道交法七十一条の三号などは、これはもうちょっと時代おくれというか、そういう感じがするわけですね。だから、裁判官も実際のケースに当たってみて、それは運転者に酷だという考えを持つもんだから、やはりこのような判決が出てくるわけです。歩行者自身が道路を渡る場合——ここは交通頻繁な場所のようですね、それは当然右左の安全を確認してそれから行くべきなんで。ところが、検察官のほうはそういうところにあまり力を入れないで、そうして、ともかく運転者はいつこう人が出てくるかもわからぬから、速力を落として警笛を鳴らしてと、こういう義務があるかのごとく主張したんだが、その主張は通らない。しかし、道交法の現在の規定なり精神からいうと、どうも検察官のほうの考え方に似通っておるわけですね。だから、そういう意味で、歩行者自動車との関係についての現行法のあり方というものが、すでにこの交通事情の実態を反映して、裁判等においては相当変わってきてるんじゃないかというふうに私は思うんです。こういう点を、これはどういうふうに法務当局などはごらんになっておりますか。
  89. 川井英良

    政府委員川井英良君) 私は、車と人の問題で、交通の取り締まりのしわ寄せを車のほうに寄せるか人のほうに寄せるかというこの方針の問題ではないかと思います。車を利用する者が非常に多くて車を利用しないで歩いている者は少なくなるというふうな社会の実態の場合におきましては、おそらく交通道徳と称せられるその規範が国民のものになって、あぶないところを横断するというようなことは自然にまたなくなるんではないかというふうな気がするわけです。そこで、たとえば路面電車を撤去いたしまして全部車の通過する車道にして、そうして横断歩道はやめて橋をもって、あるいは地下道をもって横断歩道にかえるというような施設が行なわれているところにおきましては、おそらく先ほどの七十一条の三号なんというものは初めから問題にならないわけでありまして、徐行せずに定められた規則の範囲内でもって車は直行することができる、また歩行者は安全にそこを横断することができるということになろうかと思うのであります。もしも国じゅうの全部の施設がそういうふうになりますれば、この七十一条の三号という規定は当然に必要なくなるのじゃないかと思います。したがって、国全体としての車の保有台数というふうなものが方針をきめる面についての大きなめどになるのじゃないかと思います。  もう一つは、所々におきまして、完備されたところもありましょうが、また完備されないところもございますので、そういうところにおいてはまた別な規範がそこに働いてくるということは、これは社会の進歩とともにやむを得ないことではないかと思います。方針といたしましては、車がものすごいスピードで伸びていく、したがって車を持たない者が次第に少なくなってくるというふうな時代の趨勢を踏まえまして、常時敏感な感覚でもってこの交通法規の改正検討と取り組んでいくというのが取り締まり当局の基本的な考え方ではないかというふうに思っております。基本的な考え方はそうでございますが、ただいま御指摘の判決は、私も判決文を一応読んでまいりましたが、この場合におきまして、具体的な状況で、この裁判のような考え方が正しいか、あるいは公訴を提起した検察官考え方のほうがこの具体的事実においては正しいかということにつきましては、これはいろいろ議論の余地があるのじゃないかと思います。具体的なケースにつきましては議論の余地があろうかと思いますが、基本的な大きな方針としては、車が伸びてまいりますので、この伸びていくことに歩調を合わせて取り締まりの法規があり、取り締まりの実態、運用というものについておくれないような鋭敏な感覚と細心の配慮が必要だということにつきましては、全く異論がございません。
  90. 亀田得治

    亀田得治君 予定の時間のようでございますから、一応ここで中止いたしますが、本件のこの判決を見ても、ともかく車の直前に飛び出すなんということは、やはり警察官の指示がなければ、任意法規だなんというのは、それはもう絶対に時代おくれですよ、世界がどうなっておっても。そういうことがなければ、死亡事故というものはだいぶ減るのですから。自動車が歩道まで上がってぶつけるというのは、それは悪質なやつですよ。死亡事故なんというのは、最も大きな原因と思われる直前の横切りなんということは、そんなものが一般的に任意法規だなんということは、絶対に了承できない。こういう判決というものは、明らかにその法律自体批判しているのですよ。だから、そういう意味でひとつ、私はどの程度という結論は自分では持っておりませんが、十分これは総合的なひとつ検討を要求しておきます。
  91. 北條雋八

    委員長北條雋八君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分から再開することにいたして、これにて休憩いたします。    午後零時三十分休憩      —————・—————    午後一時四十七分開会
  92. 北條雋八

    委員長北條雋八君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、刑法の一部を改正する法律案議題とし、質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  93. 木村美智男

    木村美智男君 刑法の一部を改正する法律案につきまして少しお伺いをしたいと思うのです。私は、法律の問題は、これはもう全くのしろうとであります。あるいは質問としてたいへん幼稚な質問になるかもしれませんが、この提案理由説明を読んでみますと、今度の刑法の一部改正についての法律案は、「最近における交通事犯の実情等にかんがみ」、こう書いてありますし、それから二百十一条の改正についても、「最近における交通事故とこれに伴なう死傷者数の増加の趨勢は」、そういうことで、自動車運転に基因する業務上過失致死傷事件あるいは重過失致死傷事件の実情を見ると、数においてふえておるだけでなしに、質的にも高度な社会的非難に値する悪質重大事犯が続出しておる。したがって、この法定刑の最高限あるいはそれに近い刑が裁判において出される例が次第にふえているのだ、こういうふうになっていると思うのです。そうしますと、これは刑事局長にお伺いをしたいわけですが、今回の刑法の一部改正というのは、交通関係、特に自動車運転に起因する悪質重大事故がふえてきているので、処罰上困るからこういう改正をするんだと、こういうふうに理解をしてよろしいのかどうか、まず第一にそこから伺います。
  94. 川井英良

    政府委員川井英良君) 仰せのとおりでありまして、この立法の動機は、まさに最近の交通事故、特に自動車運転に基因する事故の多発とその悪質化ということがこの立法の動機でございます。
  95. 木村美智男

    木村美智男君 私聞き方があるいは的確でないのかどうか知りませんが、私の理解では、刑法という法律は、二百十一条もちろんなんでありますが、交通事故についてだけ関係をしているという意味であるのかどうかという意味を含めて実は伺ったわけで、したがって、二百十一条も、業務上過失というその業務ということばから解釈をすると、必ずしも交通事故だけに限らないということになるのに、提案理由説明はオール交通事故になっているから、一体どうなのかという意味でお伺いしたわけです。
  96. 川井英良

    政府委員川井英良君) 刑法の二百十一条の改正、こういう方法をとりますので、まさに御指摘のとおり、交通事故ばかりではございませんで、あらゆる一切の業務に基づく行為であって、しかもそれが人の生命、身体に危険を及ぼすおそれのあるもの、そういうふうな行為に対しましては、すべて適用があると、こういうことは申すまでもないことでございます。ただこの一部改正を思い立つに至ったその立法の動機は交通事故の多発と悪質化である、こういう意味でございます。
  97. 木村美智男

    木村美智男君 動機が、要するに自動車事故ということが直接的に改正になってきたんだという趣旨ですね。そうしますと、少し聞きたいと思うんですが、業務上過失致死傷というものは、最近——四十年、あるいは四十一年、できれば四十二年もほしいと思うんですけれども、どういう状況になっているか具体的に数字で示してもらえますか。
  98. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) 最初に、二百十一条が適用されますのは、業務上過失致死傷事件と重過失致死傷事件と双方ございますので、その双方につきまして申し上げます。統計のございます近いところから申し上げてまいりますが、昭和四十一年度におきまして検察庁で受理いたしました人員は三十五万三千六百五人でございます。それから四十年度は二十九万二千五百人でございます。三十九年度は二十五万三千四百二十三人でございます。三十八年度は二十万二百九十人でございます。それから昭和四十二年度——最後に申し上げますが、そのうち受理いたしました人員は、これは業務上過失致死傷事件のみでございますが、四十四万一千百六十八人でございます。それで実は、昭和四十二年度におきまして、全刑法——刑法に該当する罪として検察庁が受理いたしました人員は八十七万二千五百十二人でございますので、実に五〇・六%が業務上過失致死傷事件と相なっておるわけでございます。
  99. 木村美智男

    木村美智男君 事件全体がそういうことですが、実際に何といいますか、懲役刑なり、禁錮刑なり、そういう関係で科刑をされた、そういう数字について伺いたい、交通関係とその他に分けて。
  100. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) 裁判所の統計は、第一審、すなわち公判を開いていたした分とそれ以外の分に分かれておりますが、公判に付された分について、科刑されたものについて申し上げます。統計が昭和四十年度までしかございませんので、それを起点として申し上げますが、昭和四十年度におきまして、禁錮三年になりましたのは六人、二年以上が六十五人、合計七十一人でございます。昭和三十九年度におきましては、三年が二十人、二年以上が三十五人、合計五十五人でございます。三十八年度は、三年が二十人、二年以上が二十九人、合計四十九人でございます。なお、このうち自動車事故がどれだけであるかという点につきましては、統計上明確にされておりませんが、大体九九%近くまでが自動車事故でございます。
  101. 木村美智男

    木村美智男君 いま数字をお伺いしたのですが、おっしゃっているように、その自動車事故が九九%だというこの関係なんです。これはしろうと考えかもしらぬですが、自動車事故が九九%という二とは、やはり問題の扱い方としては、いわゆる刑法は一般的なもの、普遍的なものに適用されていくということから考えていきますと、どうも九九%を占めるような自動車の事犯というものを取り締まるために刑法をいじるということについて、これはどうもしろうととして考えて何か適当でないんじゃないかというような気持ちを持っているわけなんです。この辺はどういうふうにお考えですか。
  102. 赤間文三

    国務大臣赤間文三君) まあよく言われますのは、道交法の規定を改正してやったら、性質上一番便利で、かつ含まれるんじゃないかという説がいろいろ聞かされるので、いろいろ研究をいたしてみました結果、道交法は、御承知のように、行政取り締まり法でございますので、もしこういうものの大部分が自動車の関係だからといって行政取り締まり法規である道交法に規定するということになりますと、これはどうなるかというと、刑法の体系及び国民の人身事故事犯に対する論理的価値判断を混乱させるような私は結果になり、刑罰の公平性というものが破壊される、どうしてもこれはやはりこういうものを刑法に規定するよりほかに方法がない、こういうふうな結論に達しているわけでございます。事実は、さっき述べましたように、九九%まで自動車関係ということでございます。が、刑法の論理的価値判断を混乱させず、公平性を保つためには、ただ自動車だけというわけにはいきません。二百十一条は業務上の過失、特にそうして今度の改正の要点は、木村委員も御承知と思いますが、下はちっとも上げてないんです。下のほうは上げてない。ただ上で特に悪質重大なものに限ってまあ刑の三年以下であったのを五年以下に上げるというようなことで、下はちっともいじらず、何も全体の刑を重くするというようなことじゃなくて、上だけ上げて、そうしてやっていこうと、そういうふうな考え方でございます。この点を御了承をいただきたいと思います。
  103. 木村美智男

    木村美智男君 大臣、いまですね、交通事犯が九九%あるんだから、それをどういうふうにまあ扱っていくかという問題ですが、法律そのものが目ざしているところは、これは直接的には処分ということに、あるいは処罰ということかもしれませんけれども、究極のねらいはやっぱりそういうことを通して事故をなくすということ、人間を守るということでしょう。そういう観点からいくならば、道路交通法というものでもって規制をしていくことは倫理的な価値判断を混乱をさせるという大臣の御説明は、私ちょっとやっぱり納得できない。九九%が交通事犯なんだから、それを道交法というものによってむしろ直接道路交通関係にしぼって、そうして取り締まっていくということが、かえって実際の問題としては現実的な取り扱いになるんじゃないか。刑法が罰するところに目的があるということならば、それは倫理的な価値判断という意味合いからいってあるいはそういう言い分も成り立つかもしれませんが、私は少くとも、これは処罰そのものに目的があるんじゃなくて、事故を防ぐというところに目的があるんだから、それを何によってやるかという場合には、最も現実的な方法で、しかも的確にですね、国民の皆さんに理解をされるような方法で、そうしてそのことにしぼって効果があげられるような姿でやはり取り締まりをしていくような、そういうものにしていくことのほうが、これは最も実情に合ったやり方じゃないかというふうに考えるものですからね。どうも刑法でやらなければ国民の倫理的な価値判断が混乱をするんだという説明は、大臣どうも私理解に苦しむんですけれども、何かもう少し御説明の方法がありますか。
  104. 赤間文三

    国務大臣赤間文三君) 木村委員のお説、一応ごもっともに思うんでありまするが、やはり私は、刑罰というものは、人類に科せられる刑罰は公平であるということは、これはもうどうしても要求せられることだと考えます。たとえば自動車でやられた場合、あるいはまたその他の場合においてやられたというような場合においても、ただそれが悪質とかあるいは重過失というようなことは、これは各ものに通ずるものであるし、刑罰の公平性を破壊せぬでやっていくということになれば、私はやはり刑法に規定するよりほかに方法はないのじゃないか。一般には、お説にお述べになりましたように、わかりよいというような点は、これはお説のとおりに、道交法その他でやればわかりがいいようにも、私もそう思うんでありまするが、いわゆる刑罰の公平性ということがもうわれわれとしちゃ一番大事な要点だと考える。こういう点から言うと、どうしてもこれはやっぱり刑法に規定をしなければぐあいが悪いのじゃないかと、こういうふうに考えるわけであります。
  105. 木村美智男

    木村美智男君 この公平という問題なんですがね、これはしかし、ものさしの置きどころで少しやっぱり変わってくるような気がする。どうしてかといいますとね、交通事故がとにかく九九%という圧倒的な、もうそれだけだと言ってもいいぐらいの、そういう現象が起こっていることを、何とかひとつ食いとめて、そしてこの種事故をなくしていこう、あるいは人の命を守っていこうという観点から考えるならば、もし大臣の言うようなことで罰の公平ということを重点に考えていくと、私はやっぱり、交通事犯以外にもそれ相当のやはり具体的な事件というものが相当起こってきているという立場で刑の公平という問題が議論をされていくということであるならば現実的にわかるけれども、いまの時点の中では、一つのものさしで現象が起こっていようが起こっていまいがやはりそれが刑の公平なんだという言い方は、一見私も公平のように感じますけれども、実際問題として、現実にある法の取り締まり罰則というものを変えていくわけですからね。変えていくとなれば、やはり事実、実体のあるものに対して適切な手を打っていくというところが現実のやっぱりやり方じゃないのかという意味では、この刑の公平は、一般論としては何かわかるような気がするけれども、どうも今回のこの政府側の提案理由を読んでいる限りにおいては、何だかしらぬがどうも罰則第一にだけ考えているような、午前中の亀田委員の質問から見ても、運転者が悪いのだというどうも先入観、そういうようなものがやはり先に立っているものだから、何かこの罰則を加重していくことだけが先走っていって、現実的には取ってつけたような理屈で、刑罰は公平でなければならぬというふうに言われているような——これは率直な受け方ですよ、法律の専門家じゃないからね。そういうことなんで、大臣、それはあるいはやりとり何ぼやっても同じことなのかもしれませんが、ちょっと私は、しかしこの種問題は、目標とするところが事故の絶滅であり、事故から人間を守るというなら、それにやっぱり直接的な効果を持つような取り締まりの方法というものを罰則の上でも考えるというのが筋じゃないのかというふうに、どうしてもこういう考えが一つあるわけです。  それからもう一つは、聞くところによると、どうも過失犯というものは、大体従前から禁錮刑が科刑をされてきて、あまりこれについてたとえば懲役といったようなものはいままでのこの刑法の体系の中ではとられてなかったというふうに聞いているわけです。そういう意味で言えば、ここに刑の根本法である刑法をやはり禁錮刑を懲役刑に改めるということは、ある意味ではやっぱり画期的なことだ、こういうふうに思うんですよ。それだけに私は、前の質問にも関連をするわけですけれども、九九%がやはり交通事故だという、そういうことを考えていくならば、過失によるものについての懲役刑を採用していくという問題は、これはやはりたいへんな問題を提起しているような気がするんで、むしろこれは法律家の検討にまかしたほうがいいかもしれませんけれども、こういうような点は、十分これは専門家がほんとうに意見を煮詰めて、そうして日本のやはり刑体系の中で将来にわたって誤りのないような、あるいは国論の統一をできるような、それだけの基礎というものをしっかりと持った上でやはり改正というようなことにしていくことが、それぐらいの慎重な態度が必要なんじゃないかという気持ちがするものですから、そういう点でどうもこうすっと理解が入っていかないわけですが、この辺はどうお考えですか。
  106. 赤間文三

    国務大臣赤間文三君) 事故を少なくするということは、これは木村委員とわれわれ、それが大きな目的であることは、これはもう全く同じ感じでございます。それから、懲役刑などはよほど慎重ということもよくわかりますが、これは単に日本のいままでのいろいろなのを見るのみならず、外国の実例なども調べまして、外国にも懲役刑などもありますし、あまり日本の刑が外国に比べて軽過ぎるというわれわれ考え方でおるので、こういう一年に六十数万人の死傷者ができるのに対して、外国に比べてみても刑が軽過ぎる、比較的軽いという点も比較研究をいたしてきたのでございます。それかといって、一般にお説のように、何も人を罰するのが目的ではありません。事故を少なくするのが目的だから、決して高くするというのが目的でない。下のほうは一つも上げないことにしまして、悪質重大なものについて最高のところを上げるという点で、あらゆる面から検討が行なわれてこれに落ちついたものと私は考えておるのであります。やはりこれは、私は考えてみますると、業務上の過失、重要過失というようなものがあって、それが職種によって刑罰がどうも違うというようなことになると、私は非常にまた人間に対する刑罰の本質からいうてぐあいが悪いのじゃないか。たとえば道交法のようなものは、性質からいっても、御承知のように、行政取り締まり法で、刑法とは全然違う。刑法にしてみれば、先ほども言いましたように、体系というものを維持していかなければならぬ、体系を乱さぬようにしていかなければならぬ、その他刑罰の公平性を考えなければならぬ点から考えて、それから、いま言いましたように、下は一つも従来よりも刑罰を特に重くするという考えじゃなくて、悪質乱暴なものについて刑を重くする、あらゆる面から考えていって私は矛盾のない改正である、そのように考えておる次第でございます。  それからもう一つは、お述べになりました中で、やはり一般に注意を促して事故を少なくするというのが一番大きなねらいでございます。これはもう私は、いつも注意願っているが、事故をなくすることにやはり注意をする。注意の集中できぬようなことはまた慎むというようなことも持ってくる。要するに、注意ができるような状態といいますか、注意をいつもやっていくという状態において注意を喚起していくということが非常に必要なことで、もちろんあらゆる面から事故の驚くべき大不幸、人類の大不幸を少なくせにゃならぬのでございますが、一方においては、私はすべての方法で——何か一つだけでぴちっといくというわけにはなかなかいかないと思いますので、やっぱりあらゆる方法を通じて事故を少なくするということがあれじゃないか、こういうふうに考えております。  もう一つ特に私が考えておりますのは、たとえば、文化が進んでくるに従いまして人の値打ちというものが高く評価されるということは、これはもう当然でございますので、私は特殊の乱暴なる悪質なるものに限って刑が高くなるということは当然なことじゃないかと、こういうふうに考えておる次第であります。
  107. 木村美智男

    木村美智男君 大臣、私、体系の問題は、ある程度刑法学者に——まあ刑法学者というか、法律学者にまかしていい問題だと思うのです。私たちがどうこうということはないのですが、大臣が言うように、どうもその辺が今度の刑法改正のやっぱり私一番問題点じゃないかと思うのは、日本の刑罰というやつは外国に比べて軽過ぎるという大臣の言うことですね。私は大臣が言っておることが矛盾しておると思うのだがね。人間の価値ということが高まってきているという意味は、逆に言えば、お互いが人間を尊重するということで、したがって、文明が進めば、ほんとうは法律のやっかいにならずにみんなが道徳律によってそれを基盤として共同生活が営まれていくというようなところまでいくのが本来あるべき姿なんで、だからそういう観点からいくならば、私は、刑罰が軽いということは、諸外国に比べて軽いことけっこうじゃないかとむしろ思うのです。軽いことが悪質重大事故を惹起をしておる原因になっておるのだということになれば問題だけれども、そういう起こってきている結果が同じであれば、刑罰は軽いことのほうがよっぽど、これは人間的に日本国民の道徳観念が高いという、むしろそういう問題になるのであって、だからそういう観点から言うならば、これはどうも今度の刑法改正というものの根本的な考え方というものが、何だか罰則を強化していけば事故なんというものはなくなるようなそういう考え方——だから、さっきも申し上げたように、結局運転者というものをやつければ事故はなくなるという、そういうやはり考え方に、どうもそれが先行して、ほんとうの人間尊重とかなんとかというならば、やっぱり普通常識的に運転していれば事故が起こらぬような、やはり運転者のからだの状態であるとか、あるいは生活条件、あるいは道路の事情なり、安全施設なり、そういったようなものが整備をされて、なおかつ事故の起こってきた原因は、本人の注意義務が足らなかった、そういうところにウエートがかかってきているという段階であれば、私はこれは罰則を強化するということもその点はわかる。大臣も言われているように、あらゆる方法をもって事故をなくしていくということなんです。そのあらゆる方法が、要するに、最も人間尊重の観点からいっても、あるいは教育その他の観点からいっても、罰則を強化するというのは本来最後でなければならない。その他事故を起こすようないわゆる悪条件となっているそのものをなくしていくということが先行しなければいかぬのに、今回の刑法改正というやつは、罰則強化が先行をし、それによって事故がなくなるかのようなやはり考え方で、これは最近どうも新聞やテレビなんかでも相当そういうキャンペーンを張っているものだから、やはり国民はほんとうに何か今度は刑法罰則を強化すれば事故が減るような錯覚を——私はあえてそう言います。ということは、罰則を強化して事故が減るくらいなら、去年だって道交法を改正したでしょう。あれだって相当な罰則強化です。これは具体的にあとで伺いますが、法律を強化して、ちっとも事故は減るどころの騒ぎじゃない、ますますふえていっている。そういうことからいって、ここはもう根本的にこの際事故撲滅のポイントは何なのかということをやはり考えるべき時点に私は来ているのじゃないかと思う。そのことは、決して、従来から言われてきているように、罰則を強化するということによって、これは理屈上もそうですけれども、現実的にも事故がなくなる、人の命が助かるという状態には実はなっていないということを考えてみると、どうも今回の刑法改正のやはり根本のその出発点に問題がある。なるほどそれは、刑法学者として机の上で仕事をする場合には、刑の公平ということも考えなければならぬでしょう。あるいは体系というものも、これは学説的におかしくないようなものを整えなければならぬということは、それなりに私も理解できますよ。しかし、われわれが現実のやはり生きた人間を扱う政治の場面で最も大事なことは何なのかということになれば、それはやはり事故をなくしてそうして人間の命を守っていくというところが最重点にやはり考えられなければならぬ問題という、こういう観点からいくならば、どうも少し罰則強化が先行をして、とにかく処分をすれば事故がなくなる、こういう考え方に、どうもそういうにおいが強く出ておって、私の申し上げているような観点というものが実際薄いのじゃないかということが、具体的なたとえば事故防止対策の面一つとっても、これはもうそういうふうに言えるので、それで大臣の言われる倫理的な価値判断といったようなことについては、刑法改正してやっていくことによって、私は倫理的な価値判断というものはほんとうの意味での人間尊重という意味からいけば逆じゃないか、本末転倒じゃないか、そういうふうに考えられるので、この点はいずれにしても一致できる問題ではないかとも思いますが、大臣、私の見解についてはどういうふうにお考えですか。
  108. 赤間文三

    国務大臣赤間文三君) 罰が先行しておるんじゃないか、そういう考えを持っておらぬかという御意見でありますが、絶対に刑罰を先行していこうというような考え方は毛頭みじんも持っておりません。しかしながら、木村委員も御承知のように、年々歳々六十万からの人間が死んだりけがをされたりするということは、これはもう私は驚くべき大事件だと考えておるんであります。これはもうやはり、いまお述べになりましたように、国といたしましても、地方としても、あらゆる方法でもってこれを少なくするということは、理屈の問題でなくて、差し迫った私は重要な問題に考えておるんであります。それで、われわれといたしましても、事故を少なくするということを根本に置いておるのでありまして、そういうあらわれとして刑法の一部を改正する。それと、私はやはり、さっき言いましたように、だんだん文化が進んでくれば、人命は尊重されるべきものであるということは、私はもう文化が進むに従ってあれだと。昔であれば、人をひき殺しても、わりあいにいまよりはそれに対する考え方というものは、まあどっちかといえば、いろいろ意見があるかもしれませんが、私は、文化が進んできた今日において、人命に影響を及ぼすというようなことは、これは驚くべき重大なことに考えておる。それで、悪質なることによって人をひき殺して、そうしてそれがわずか三年以下の刑罰で目的を達するという考え方は、私はとらない。少なくとも外国の例ぐらいで、五年以下の懲役、刑罰を料せられるというようなことは、私は倫理的な点から見てもむずかしい問題じゃない。やるほうが私はむしろ人命尊重に合うのじゃないかというような私は気がするんです。それで、やはり人命を尊重するので、たとえば賠償にいたしましても、罪にいたしましても、人類に対する危害その他のものはやはりだんだんよけいやかましくなってくる、私はやはりそういう傾向である、こういうふうな考え方に立っております。ただ、いまお述べになりましたように、あくまでも罰を先行させるということは、これは私も木村委員と全然同じ考え方で、それは本末転倒のものであって、罰は先行させたくないと考えております。しかしながら、これをやることが私は何といいましても六十数万の死傷者の数を減らすことには役立つということを考えておる。ただしかし、これだけでもってどうということではなくて、お述べになりましたように、ありとあらゆる——あるいは教育という点からいえば安全教育ということも必要でありましょう、歩道橋も必要でございましょうし、根本の道路の改修も必要でございましょうし、また従業員等が過度の、何といいますか、くたびれるような労働管理をしないようなことも、これは大きな問題でございましょうし、それは私はありとあらゆる方策を各部局、部局で通しでもってこの大事故というものをできるだけ減少をしていくということで、どこか一つところで受け持ってくれというわけにはいかぬのじゃないかという考え方を私は持っておる。それかといって、何もこれが今日差し迫った問題でなければあれですが、今日はもうどんどん毎日たいへんな交通事故その他が起こっておるのであって、急を要する重要な私は人道的な問題じゃないかとまで考えておるのであります。そういう点から、この刑法の一部改正は、これは今日の時勢ではやむを得ないのじゃないか、かように私は考えておる次第でございます。しかしながら、一般に刑を重くすることが目的でないことは、お述べになりましたとおりで、その点は私もよく承知をいたしまして、何も一般の刑を上げるというようなことはやらぬために、下の刑は一切上げていないのでございます。下の刑は、刑を高くするということにいちずに考えておるわけじゃなくて、ただ悪質なものについては、上を「三年以下ノ禁錮」を「五年以下ノ懲役若クハ禁錮」、こういうことに上げる、こういう趣旨でございまするので、どうぞその点御了解をお願い申し上げる次第でございます。
  109. 木村美智男

    木村美智男君 たいへんくどいようですが、これはやはりここが基本的な問題なんで、もう一度申し上げたいのですが、大臣言われるように、私もそれは今日の交通事故というものについては、特に私の質問は、いままでの仕事もそうだったし、それから現在所属している委員会もそうですから、人一倍交通事故問題についてはやかましいんです、その点では。だから、大臣の言われる、まさに驚くべき今日の交通事故というのは大問題だ、その認識は別に変わっておらぬわけです。問題は、どうしたら一体これが少なくなるのかということについて、何と言ってみたところで、いまの政治情勢の中では、それは多少のことはやられております。大臣が言うように、あらゆる施策がとられなければならぬ。その中の刑法一つなんだ。だから、ことばどおり、あらゆる施策が、たとえば今度大臣刑法を通すような熱意というものを、安全施設の問題でもいいんです、あるいは道路の改修の問題でもいいんです、あるいは交通規制の問題でもいい、そういう点がすべてそういう努力がされておる、その中にせめて同時並行的に刑法という問題が出されてきておるということであれば、私はこれはそれなりに理解ができると思う。これが罰則第一主義ではないかという意味は、そういうあらゆる施策ということが口にはあらわれ、演説になっておっても現実に有効な手だてが講じられ、予算というものがきっちりきめられて、そういう措置がちゃんとなされておるのかというと、そこがいっていないのじゃないかということなんです。その点を心配をするから——大臣は何か六十万の事故というようなものがどのくらい減ると見通しておるのかわからないが、大いに役立つと言っているわけです。私は、いまのような状態が続く限りは、昭和四十三年度をたとえばあと事故件数を統計にした場合に、ことしの統計が、死者の数においても、あるいはけがの数においても、事故件数においても、これが大幅に減るなんという予想は、刑法改正によって私はそういう事態は生まれてこないと見通しをするから、そこが大臣と分かれ目なんです。どうしてかというと、結果としては、私は、重い刑罰を受ける人が多くなったということ、それだけの結果に終わりはせぬかということを心配しておる。そういう関係が今度の刑法改正という問題にはある。だから私は、いまのような大問題で、悪質重大事犯というものについて、禁錮三年だけでよろしいのだということを私は言っているのではない。それならそれなりに、たとえば道路交通法というものによって取り締まる中でやり方というのもあるのじゃないかという意味を申し上げたわけです。そうすれば大臣は法体系上それはうまくないのだと言う。私は逆に、刑法をいじること自体が、九九%という問題だから、それは従来過失について禁錮刑で処理したものをランク・アップするわけだから、そういう意味では、むしろ法体系をくずすのは、刑法をいじって懲役刑にしていくことのほうが法体系をくずすことになるのじゃないかというふうに申し上げているわけです。これは見解の相違ということになるかもしれませんが、そういう意味で、私今度の刑法改正についてはどうも納得ができない。それで、いまの点は、お答えいただいても、いただかなくてもしようがないと思うんですが、この刑事局から刑法の一部を改正する法律案の資料として出された、重大な人身事故の具体的事例というもの、これで刑事局長にお伺いしたいんですが、大臣もさっき多少そのことに触れられたわけですけれども、ここには科刑三年以上と二年以上の具体的な事例が百七十九件載っているわけです。これを見ますと、懲役刑七十八件、禁錮刑が百一件ですけれども、懲役刑は大体最高四年半ということになるわけですが、これについて、三年半が一件、三年が四件、それから二年から三年が一件というようなことで、一番多いのは、一番低い二年というのが五十三件ある、こういう状態にこれはなっています。それから禁錮刑のほうは、最高が四年だけれども、三年半が一件、三年が五件、それでずっとありまして、二年というのが六十七件、これは圧倒的に二年が多い。こういうことで、実際のこれは過去六年の処断だと思うのですが、これを見てみますと、少なくとも——私もまたしろうとなのかわかりませんが、提案理由の中にあるように、もう要するに法定刑の最高限、それが次第にふえてきている、上限に近い判例がどんどん出ておるんだ、こういうふうにあるけれども、ちょっとこれを見たら、いやそうではないんじゃないかというこれはやっぱり判断をするわけなんです。で、懲役のほうでも二年というのが五十三件で圧倒的に多いんですから——最高四年半に対して二年か。それから禁錮のほうも、最高四年に対して二年というのが六十七件、いずれにしても六割から七割、一番下になっている関係が多いんで、そうすると、もう最高刑の事例が多くて現在の状態ではまかない切れないんだという理由にはちょっとならないように考えるわけです。これは一体どういうことですか。
  110. 川井英良

    政府委員川井英良君) 先ほど交通局長から、禁錮三年という法定刑をこえて言い渡しがあった過去二、三年間の統計の御説明を申し上げました。それから、ただいま御指摘のこの資料でございますが、現在は懲役刑がございませんので、懲役刑で処断をされているのは、刑法の二百十一条とそれから道交法の規定とのいわゆる併合罪の関係ということで、その道交法の罪でもって処断したのがここにあらわれておる懲役刑であるわけでございます。そこで一例でございますが、不幸にして人をひき殺したとかあるいはけがをさせた、その場からそのまま届け出をしないで逃走した、こういう場合には、現在道交法で現場から逃走したというだけで懲役三年の法定刑が定められております。それから、人をひいた、人命に損傷を与えたという点では、刑法のほうで禁錮三年という刑罰がきめられているわけでございます。禁錮と懲役の関係は、刑法でもって懲役のほうが倍重い、こういうふうにきめられておりますので、その人をひいて逃げたという例を考えてみますというと、過失ではありますけれども人の生命に損傷を与えた、何のとが罪もない人の生命を断つ、あるいはその身体に傷害を与えた何人も許すことのできない行為が禁錮三年という刑罰で済まされており、そこから届け出を済まさないで逃げたという行為が懲役三年という刑罰で律せられておる、こういうことでございますので、裁判官がこういうふうな場合に刑罰を量定し、その刑を判決主文でもって言い渡す場合に、非常にいろいろアンバランスがそこに感ぜられるわけでございます。先ほど冒頭に大臣が、刑罰はあらゆる面において公平でなければならない、こういうふうに申し上げましたのは、こういうところにもその事情があらわれておる、こう思うわけでございます。それが一つと、もう一つは、併合罪になりました場合には、重い罪の一倍半ということになりますので、まさに御指摘のように、三年六カ月とか四年六カ月とかいうふうな刑が量定されておるわけでございます。これは併合罪の範囲内において量定されるのでそういうことができるわけでございますが、ちょっとくどいようでございますが、殺人罪とか窃盗罪とかは死刑、無期とか十年以下の懲役ということがきまっておりますけれども、窃盗なんかは懲役十年などの刑罰がいくなんていう場合は全然ないわけでございます、さがしましても。日本の裁判の現状は、定められておる法定刑の下のほうに集中しておるというのが実情でございます。ところが、二百十一条の関係は逆でございまして、むしろ上のほうに集中してきているというのが非常に大きく私どもとして注目しておる傾向でございます。下に集中するか上に集中するかということをとらえまして、私どもといたしましては、二百十一条の関係は裁判所の刑罰の関係では頭打ちの状況を呈しておる、こういうようなふうに申し上げたわけでございます。
  111. 木村美智男

    木村美智男君 併合罪を適用している関係でという事情はわかるわけですが、しかし私は、いまの説明でいくと、どうも机の上での刑の公平だとか、あるいは体系上の問題、むしろそういうことが重点になってこの刑法改正という問題が出てきているような感じを受けるのです。それはなるほど、いまのような併合罪の関係からいい、あるいは強盗殺人といったような関係からいうならば、これは実際の科刑をする上にあたってアンバランスの矛盾を感ずるという、それは確かにそういう事情もあるでしょう。しかし、私はそこに過失という問題が結果としてそういうことになっているという一つ事情もあるのじゃないかと思う。もしそれがいわば強盗であり殺人であるといったような問題についてアンバラがあるというようなことであったならば、これは全然問題ない。しかし、事が過失ということの関係の問題ですから、したがってそういうアンバラの出る事情もあるということもある程度事情としてはぼくらは理解できる。しかし、それは机の上でいろいろ法体系の問題や刑の公平という問題を考えている人たちにとっては、これはどうもやはり何となくすっきりしないし、その気持ちもわかるような気もしますよ。だけれども、私がさっきからくどく言っておるように、どうも刑罰第一主義、罰則先行主義じゃないかという理由は、実はそこにあるわけです。だから、なかなか実際に、たとえばぼくらはまだそれはやったことがないからどっちもわからないですけれども、財閥にこじきの気持ちはわからない。こじきに大企業の社長さんの気持ちなんていうのはなかなかわからないというようなズレが私とのいまの議論の中にあると思うのですよ、どっちがこじきであるかは別にして。そんなことはいいですがね。そういう点があるから、なかなかかみ合っていない、議論としてでなくて、気持ちの上でね。そこがどうも、いわゆる大臣が、いや決して罰則先行じゃないと言うし、私はどうも罰則が先行しているのじゃないかと言う、ここのところですね。これは人間尊重という一つのことを取り上げてみても、私はほんとうの人間尊重は——事故が起こって人が死んでいるから、これをなくすために罰則を強化する、それが人間尊重だと大臣は言われる。私は、人間尊重というもののほんとうのものは、まず事故をなくすことにある。事故をなくすことによって、とにかく人間をほんとうにこれは大事にするということになっているんだ。その事故をなくすことは何かといえば、罰則は一番あとでよろしい。何が先行しなきゃならぬかといったら、今日野放しになっているこの車を何とかせなきゃいかぬじゃないか。道路はこのままでいいのか。こんな狭いところに——一升ますに三升も入れるような自動車の条件にしておいて、そしてさらに安全施設だってようやく最近——去年、一昨年あたりからかろうじて歩道橋というものを初めてつくり始めたといったようなそういう状況。運転者はどうかというと、あと大臣もよく聞いてもらいたいと思うけれども、馬の鼻にニンジンをぶら下げて引っぱり回されるような給与条件なり労働条件に置かれておる。こういった状態の中において、罰則が先行していってほんとうに事故がなくなるのかどうかという問題を考えていくと、私はそういう条件というものをなくす強力な施策がやはり進められ、もう最後のところどうも運転者の不注意以外に——事故は大体七〇%、八〇%運転者の不注意なんだという結論が出たら、私はもろ手をあげて刑法改正に賛成する。それを、そっちの施策をさっぱり進めぬでおいて、刑法改正だけ先に行っているから、どうあっても、さっきから言った人間尊重も、どうも大臣の考えておる人間尊重と私の考えておる人間尊重とかみ合わないと言っている。私がこじきでもいいでしょう。どうも大臣のような財閥の御曹子のような気持ちと私の気持ちがどうもかみ合わないという話をわかりやすくそういうたとえをしたのだけれども、ほんとうにそこのところが実は刑法改正の根本問題というふうに考えるものです。どうですか、これは何ぼやっても尽きないのですけれども、大臣どうですか、いま私が申し上げておることについて、そういう熱意で、刑法の問題だけは私はほんとうに敬意を表する、大臣がこの問題についての熱意というやつ、それと同じような熱意を政府全体が持ち、今日のやはり具体的な政策の中に如実にあらわれるという形の中で、一緒に、しかも、いまも法制審議会ですか、ここで刑法には根本的な検討を加えているというから、それならいま言ったこととあわせて、とにかくその問題を何もここで刑法改正だけ先にやらぬでもいいじゃないかという気持ちが私はやっぱりあるものだからそれで申し上げておる。これはどうなんですか。
  112. 赤間文三

    国務大臣赤間文三君) 私は木村委員の話は理解のできるところも非常に多いのですが、ただ意見がどうしても食い違うところが、最後にこれをやったらよかろうというのが、どうもこれは私と意見が違う。私は、とにかく六十数万人の人間が現実に死んでいる、けがされている、こういう大珍事が起こっているから、もうありとあらゆる施策をもう一刻も早くやってこれを減らすというのがわれわれに課せられたつとめじゃなかろうか。道路にしても、財政の許す限り、車がふえるのだから、何のかんの言わないで、道路を補修するということは目下の急務です。これをなまけるというわけにいかぬので、政府は命がけで道路をやらなければならぬ。道路もまた考えてみると、国道その他はよくなっても、私も地方に参りますと、地方に非常にトラックなり自動車が多くなっているから、もうこれまた、地方町村道と申しますか、ああいうものの交通ももう焦眉の急でやらなければ事故が、不幸がふえるかもしれず、その他過剰労働からくる問題もありましょうし、私は木村委員と意見が違うのは、とにかくできることから即刻ひとつこれを断行して、一人でも二人でもけが人を少なくするようにすることは、私はもう非常に欠くべからざる緊要事に考えておる。たとえて言いますと、刑法のようなものでも、これを早くやればやるほど私はこの死傷者の数を減らすことに役立つんじゃなかろうか。おくれればおくれるほど不幸な人間を多くするようなことになるんじゃなかろうか。それですべてのものが急ピッチにできなければ成績が十分上がらぬことはお説のとおりでありますが、やっぱり何もかもそれ相当の理由がありまして、金が要るとか、いろいろな関係があって、全部のものが一度に私は完成せられるということは現実としては望みにくいから、あらゆる分野で、できるところからもう超スピードでこれを断行してもらうということによって大事故を減らす、そういう私は考え方です。そういう点から言いまして、この刑法の一部改正のようなものも、もう食い違いもだいぶ合うてきたような気がしますがね。ひとつ認めてもろうて、もう食い違いもだいぶ減ったから、この辺でひとつやってみいと、そのかわり法律改正したら、これとあわせて、歩行者にも、すべての国民にやっぱりこれとあわせて注意を喚起して、まあ二割でも三割でも減るようにやれというひとつ援助、励ましをいただきたい。私は、さきにもお話がございましたが、なかなか減りにくい傾向にあるかもしれませんが、ほっといたらどんどんまたふえるんじゃないかという気が、私、地方を回りますと、車がめちゃめちゃにふえつつありますから、農村あたり非常に車がふえたから、まだ事故がふえるのじゃなかろうか。一日も早くこれはひとつ注意を喚起しにゃならぬというような考え方で、木村委員のおっしゃることもよくわかりますが、刑法改正だけは即刻、ひとつ大体御了承をいただくようにお願いがしたい、こういう熱意で一ぱいでございます。
  113. 木村美智男

    木村美智男君 頼まれて了解できる話と、頼まれてもなかなか了解できない話とあるわけですよ。この刑法問題というのはね、これはちょっと私が犠牲を払って、たとえばあそこまで使いに行ってきてくれだの、ちょっとしゃべってくれだのということでなら了解できる話だけれども、ちょっと性質が違うな大臣、これはね。そこに実はやっかいな点があるんだけれどね。大臣、もうちょっとかみ合わしてみたいと思うんだが、私、刑法改正が最後でいいじゃないかという言い方はね、これは大臣が刑罰第一主義と思うから刑法は最後でいいと言ってるんであって、いみじくも言ったように、あらゆる施策というものが並行して進んでいく、そういう中の一環として、刑法も法制審議会というものがあって抜本改正検討しているだから、これでやってる中で、これがあらゆる施策と一緒に進んでいけばいいのであって、今日この時点で刑法だけぽかんと持ってきているから、だから、私はそれは刑罰先行の考え方じゃないか、だから一番あとでいいんだと、こういう言い方をしているのであって、決してこれはどうでもいいんだとは言ってない。そこんところはだいぶ近寄っているわけだ。大臣、ここであなたがほんとうに今日の実情というものをわかってもらえばだよ、これはやっぱりちょっと刑法改正は、ここでほんとに刑法改正したら事故はもう三分の一に減っちまうというようなことが明確に考えられるような、そういう判断ができるいろいろの条件が整ってきていれば、これは大臣、なるほど木村君、お前はおれの意見のほうへ寄ってこいと、こう言えるわけだ。ところが、そうは考えられぬと言うんだ。大臣だって自信持ってだよ、じゃ六十何万件のうち死んでいる、不幸にしてなくなられている者が十六万人。だから事故件数は十万件くらいになる、その死ぬ人は大体一万人くらいだ。この刑法改正で取り締まるのだと、あなた自信を持って言えるなら私は考え直しますよ。そんなことにならぬと思うのです。いろいろの条件が一ぱいあるから。これからその話を少ししたいと思う。もうこの本論の刑法の話は大体煮詰めるだけ煮詰めたです。あと大臣が多少譲歩してくれるか、気持ちの上で、そうか、それならもうちょっと時期を待とうかという気持ちになってもらえるか、ぼくのほうで大臣が言われていることが大体無理もなかろうということになるか、それは先にしたいと思うのですが、とにかくぼくも決してそんなに食い違っちゃいない、その意味では。だから、あなたのほうは、法制審議会でちゃんとやっているから、その筋のところにもう一回乗っけてみたらどうか。私のほうもできるだけこの点はあらゆる施策ということを進めるという問題とあわせて、これも一番あとでいいという考えでなくて、まさにその一環として検討してみると、こういうくらいのことは、私はきょうは申し上げることはできると思う。ただ、そういうことをするについても、問題がたくさんある。それを指摘せざるを得ないのです。たとえば大臣、環七に歩道橋をつくった関係で環状七号線のあの事故が現実にうんと減っているわけです。それはおそらく警察庁はあの統計をつかんでおられると思うのです。だから、私は交通施設といったものに、ほんとうに本腰を入れられて、相当のぜにを使ってやはり取り組まれていくという、これは一つの問題ですよ。そういうことをこの際あらゆる施策を、大臣の言うように全力をあげてやってみようじゃないかという気持ちなんです。そうでしょう。たとえば、交通安全基本法というものが出てきても、なかなか政府は腰をあげてくれないじゃないですか。大臣、あらゆる施策をとか、そっちを一生懸命やると言ったって、交通安全についての基本法すらでき上がらないという状態です。だから、これは罰則先行だと言うのです。そういうものもやった、歩道橋のほうも今日の予算の中では最大限、だれが見てもなるほど熱を入れているという形が出ている。車についても、ただ野方図にほっぽっておくのでない。道路のほうの関係も、高速道路は最近少し当初の趣旨からいうとはずれてきているようだけれども、ほんとうの日本の生産面に使われるような高速道路になってないじゃないですか、レジャーとか、観光のほうに専門に使われる高速道路になっている。名神高速道路もそうだ、東名もそれに近いような状態が出ている。そういったことであっては、私は事故はなくならないという現実の材料がずっとそろうものだから、なかなか大臣、それはあらゆる施策の一環なんだと言っても、刑法をここでぽんとやるというのは、どうしても先行だという気持ちがぬぐい去ることができないのです。そういう意味で、大臣、具体的なことを少し聞いておいていただきたい。大臣とのやりとりはどうも抽象論になってしまうから、だから、少し私こまかい問題を聞かしてもらいたいと思うのですが、いまもちょっと触れましたけれども、私その歩道橋を設置したことによって、ほんとうに七号環状線の事故というものは減っていると聞いているのですが、具体的にどういう関係になっておるかということを、数字的に私つかんでないものですから、これちょっと聞かしてもらいたい。警察庁かどうかわかりませんが。
  114. 鈴木光一

    政府委員鈴木光一君) 安全施設を設置いたしまして、当該安全施設を付した付近の事故が減っていることは事実でございまして、御指摘の七号環状線につきましても、歩道橋をつけたために、その付近に従来起こっておった事故が減っておるということは事実でございます。いま具体的な資料を持ち合わせておりませんが、安全施設を施した部分につきまして事故が減っているということは、抽象的でございまして申しわけございませんが、事実でございますので、それだけ御報告申し上げたいと思います。
  115. 木村美智男

    木村美智男君 大臣ね、私、抽象論だったけれども、警察庁で言われているように、この安全施設、歩道橋をつくった関係で環七にだけ例をとっても事故が減っている。確かに裏づけされているわけです。だから、大臣、そういうことで、安全施設というようなものをやることによって私は相当の事故を減らしていくということは可能だというふうにこれは考えるので、一応、警察庁にお願いしておきたいのですが、たとえば端的な、環七とか、あるいはその他でもいいです、歩道橋をつくった大体関係のところですね、この辺で一応事故の関係がどういう移りになっているか、四十年から今日ぐらいまでの問に何個所かひとつ摘出をして、資料として出していただけませんか。
  116. 鈴木光一

    政府委員鈴木光一君) 建設省の関係もございますので、建設省と、総理府のほうと協議いたしまして提出いたしたいと思います。
  117. 宮崎清文

    政府委員(宮崎清文君) ただいまの御質問の点は、もちろん私たちといたしましても重大な関心を持っているわけでございまして、御承知のように、先ほど先生も御指摘になりましたように、現在三カ年計画で安全施設の整備を鋭意実施中でございますので、その効果測定はぜひともいたしたいと思いまして、よりよりそのデータを集めるべく準備をいたしております。時間の点につきまして若干時間がかかるかとも存じますが、なるべく早い時期に御要望の資料をまとめまして提出いたしたいと思います。
  118. 木村美智男

    木村美智男君 それはできるだけ早くひとつお願いしておきます。  それから、これどこの関係になるかわかりませんが、横断歩道なり、地下道なり、あるいは信号をつけたとかいう、そういったようなことで、その事故が前よりもどういう状態にあるかというようなことについて、調査を現実にやっておるかどうか、これどこへ伺ったらいいのかわかりませんが。
  119. 鈴木光一

    政府委員鈴木光一君) 横断歩道、信号機につきましては、警察関係の安全施設でございまして、ただいまの調査の一環として当然含まれるものと思いますので、資料はその中に含めて出したいと思います。
  120. 木村美智男

    木村美智男君 たいへん恐縮ですが、先ほど私、道路交通法については、これはどうもあまり、残念ながら、三十五年、三十八年に改正したはずですが、それ、言ったことが間違っちゃ恐縮なんで、道路交通法を改正した三十八年前と三十八年以降ですね、大体、事故防止の結果がどういう状態になっておるかということね。で、去年また改正したのじゃないですか、反則金制度やその他の関係。そういう意味で年度の時点をとらえてもらってもいいですわ。これはもう調査するまでもなく、できているのじゃないかと思うので、もし資料の中でいまわかるのだというなら、ちょっと御指摘をいただいてそれでけっこうです。いまここにないということであれば、それもひとつあわせて提出いただきたい。
  121. 鈴木光一

    政府委員鈴木光一君) いま御指摘のお話の点は、道交法が、三十五年に現在の道交法ができまして、その後、三十八年、三十九年、四十年、昨年もやりましたので、改正はほとんど毎年にわたって改正してございますが、罰則の強化につきましては三十九年が大体中心でございます。それによって、その三十五年以来の事故の件数がどういうふうに推移しているかということにつきましては、資料がございますので、提出できると思いますけれども、その程度でよろしゅうございましょうか。
  122. 木村美智男

    木村美智男君 事故の推移。
  123. 鈴木光一

    政府委員鈴木光一君) 事故の推移につきましては、いま手元に統計がございますので、説明員から読み上げさせます。
  124. 綾田文義

    説明員(綾田文義君) 交通事故の死者数及び負傷者の推移でございますが、昭和三十六年は一万二千八百六十五名死者数がございます。負傷者が三十万八千六百九十七名、三十七年が——以下死者と負傷者と次々申しますが、一万一千四百四十五名、負傷が三十一万三千八百十三、三十八年が一万三千三百一名、負傷が三十五万九千八十九名、三十九年が一万三千三百十八名、負傷者が四十万一千百十七名、四十年が一万二千四百八十四名、負傷者が四十二万五千六百六十六名、四十一年が死者が一万三千九百四名、負傷者が五十一万七千七百七十五名、四十二年が一万三千六百十八名、負傷者が六十五万五千三百七十七名、以上でございます。
  125. 木村美智男

    木村美智男君 道路交通法の関係では、まあその資料を出されたわけですが、やっぱりこのいまの数字を見ましても、これは大臣、どうもね、罰則強化という観点からいったら、法律改正をしてとにかく罰則を強めることによって事故をなくしていくという方向にはね、この意味から言うとどうも考えられない。三十九年の道交法の改正罰則強化したことによって、四十年に死者が多少、ここのところでは千人ばかり前年を下回ったというこれだけが唯一の結果であって、あとはオール、これは全部プラスですよ。だから私は、大臣ね、抽象論として論争しているのじゃなくて、現実にやっぱり道交法を改正した結果が、死人もふえていっていれば、これは負傷者もふえていっているのですよね。特に四十一年から四十二年に至っては、十四万近くふえているのだね、けが人が。こういう状態だから、私はやっぱりこの意味でも、有力な何というか、私、言わんとする、罰則強化で事故をなくしたいという大臣の気持ちはわかりますよ、しかし、この種問題は、気持ちの問題で片づく問題でないですよ。やっぱり具体的に、ほんとうにこの今日の事故防止は、何が事故の原因になっておるかということを科学的にやっぱり究明をする。それに応じて具体的な対策をとらなければ、これは大臣大臣のせっかくの願いは悲願に終わるし、同時に、そういうことをあんまり国民に言うことは、期待だけ大きくさして実際ははねっ返りのほうが大きくなってくるから、だから、私はあんまり何か今日の国民感情にね、やっぱり乗っかっていくようなやり方は、政策的、にはきわめて、あるいはいいように思うかもしらぬけれども、結果として長い目で見たら、これはたいへん考えてみなければならぬ問題だと思う。したがって、私はさっきから言っておりますように、どうも政府がやってるのは、金のかかる歩道橋をつくる問題であるとか、あるいは車をある程度制限をすれば抵抗が業界からものすごくあるとか、金のかからぬやつとか、抵抗のないやつとか、そういうことで手っとり早くやるなら、罰則改正をやれば、これはなるほど手っとり早いし、やったような印象を受けるでしょうが、そういうところに今日の事故防止対策の致命的な欠陥があるのだということを私は実は言いたいわけなんだ。だから大臣、今度は少し譲る立場にくるかどうかわからぬが、いま、一つの例は、交通安全施設の問題、罰則強化の問題、この二つの点では少なくとも、大臣、勝負あったよね、ぼくのほうが。具体的に現実に合ってることだね。罰則強化によって事故は減らないということは、統計がちゃんとこれは示している。交通安全施設をつくることによって事故件数が減ってるということ、この二つについては、少なくとも私の言ってることはやっぱり妥当性が裏づけされていますよね、現実に。だから、どうもさっきから私は事故のほんとうの防止対策ということになれば、いままでの貴重な資料が警察庁においてもあるわけだから、これを具体的にやっぱり検討をして、そうしてそこから、大臣の言うような、あらゆる施策というやつを本腰を入れてやっぱり取り組まないと、刑法改正したって、ほんとうの話、これは事故はなくならない。ただ罰則の重い刑罰を受けた人だけが多くなったということになるだけで、したがって、刑の公平だとか、あるいは法体系ということを問題にする学者なり、そういう法律を専門に扱ってる人の気持ちだけは満足させるかもしらぬが、ほんとうの意味の人間尊重だ、事故撲滅だということにはあまりこれは役立たないということに結論としてなっていくのじゃないか、途中でまたそういうふうにきめつけるつもりはございませんけれども、どうもそういう感じがするものですから。  そこで、私は交通施設の問題を先ほど申し上げたのですが、次に、運輸省のほうとそれから労働省の関係で少し伺いたいと思う。運輸省には、最近また乗車拒否問題が出てきたということがあるのですが、私はほんとうは、大臣、こういうことはどんどん政治の場でも言ったらいいと思うのですがね。夜中の二時ごろに銀座あたりで乗車拒否があったなんていうことは、あったっていいと思ってるのです、私はこれは。大体、銀座というのは、あれは夜つとめるところじゃないのだから。夜も、まず一時過ぎ二時ごろ乗車拒否したからといって銀座あたりで騒ぎが起こったって、そんなことをしゃっちょこ立ちして騒ぎたてる必要はごうもない。むしろそういうことを言わないで、何でもかんでも乗車拒否——ぼくなんかもときどき受けるわけですが、昼間、国会前で乗せられないと。よく見たら回送車の看板を掲げていたから乗車拒否でないということはわかるわけだけれども、事情の知らない者は乗車拒否だと見ます。かりにそういうことが、回送や何かであるのじゃなしに、実際に拒否をされているといえばこれは大問題だが、しかし、夜の夜中、銀座で酒でも飲んでいたやつが夜中の一時過ぎ二時過ぎに車に乗れないからといって、これは乗車拒否問題だなんてそう力こぶを入れて騒ぎ立てる問題ではないと私は思う。むしろ、二時過ぎたらタクシーはないものだという慣行を世の中につくっていくことが大事だ、この二時というのは根拠のない話じゃないのですよ。これは運輸省のちゃんと省令でもってぴしっと出してある。二時帰庫ということで、二時に帰ってこなければ、それこそ処分を受けるような態勢にいまあるわけです。だから、そういう意味で申し上げているのですね。そういう慣行をつくりたいと思う。しかし、ことばがどうも——乗車拒否といった問題は悪いので、この前いろいろそのことが問題になりまして、運輸省のほうが運輸規則の改正をやって、そうして少数の一部悪質運転者を雇わないようにしようじゃないかということをやったのですが、そのことについて、二十八日ごろの新聞がだいぶ書き立てているものだから。——自動車局長見えられましたが、最近起こっている乗車拒否というものは一体どういう事態なのかということ、そうしてそのことは運輸規則の改正の問題と関連をしてどういうことになっておるのかということをひとつ聞かしていただきたい。
  126. 鈴木珊吉

    政府委員鈴木珊吉君) 乗車拒否対策といたしましては、御承知のように、昨年の十月に道路運送法に基づきます運輸規則の省令でございますけれども、これを改正いたしまして、たとえば日雇い運転手の雇いの禁止とか、それから新規に運転手を雇い入れた場合には、五日間の教育をしてから実務につけるとか、あるいは乗務員証というものを使用者は運転手に持たせる、それを車に掲示する、そういったような一連の防止対策を実施するための省令の改正を行ないまして、本年の一月一日から実施いたしたわけでございます。御質問の件はその点についてかと存じますが、四月の十九日、それから四月の十日、三月の二十三日、三回ばかり東陸におきまして乗車拒否の何といいますか、抜き打ちの監査をやりました。これは警視庁のほうとも御連絡いたしまして、御協力を得ましてやっております。その結果、たとえば非常に悪質なものにつきましては、これは法人も個人もございましたが、名前は申し上げられませんけれども、たとえば車を四両延べ二十日間使用を停止するというような処置をとったのも多くございますし、それからまた文書で警告をしたのも多いということで、そういったような現場の監査によっての違反摘発という手を実は打っております。それから、さらに違反摘発ということではなしに、先ほど私申しましたような、たとえば乗務員証を車内に掲示しているかどうか、そういったような点、あるいは運転記録をちゃんとつけているかどうかという点につきましての抜き打ち検査等も、この改正省令が実施されましてから東京あるいは大阪でやっております。なかなかまだ当初なものでございまして、もちろん成績は十分というふうに私ども見ておりません。たとえば乗務員証を掲示すべきものを掲示していないというような例が多くございました。たとえば東京駅と四谷駅と品川、去る三月に東京陸運局で行ないましたこれは百九十一社の会社でございまして、四百二十七両の車につきましてそういう街頭監査を行ないましたところが、乗務員証を持っていない、不携行というのは一割近くございました。また、地図を持っていないというのも約一割五分ございました。また、大阪でも同じく大阪駅とか、あるいは新大阪駅とか、堺とか、上本町とか、難波とか、そういう駅でやりました。やはりそういったような省令の取りきめの規則の不励行というのが多うございました。大阪でも五百五十四両延べやりましたのですが、一割くらいはそういう乗務員証を携行していなかった。それから地図を持っていないのが二七%にも及ぶというような次第でございまして、まことに私どもといたしましても、こういった規則が守られてないということにつきまして、事業者がまだ旅客に対するサービスという観念につきまして、徹底した何といいますか、サービス精神というものに欠けているのではないかというふうに実は私見ておるわけでございます。またしばらくこの成り行きを見ておりまして、こういう点につきまして、非常にひどいものにつきましては、特にいろいろな処分をしていきたいというふうに考えておる次第でございます。以上、現況でございますけれども、そういったような現況でございます。
  127. 木村美智男

    木村美智男君 局長、乗車拒否の問題について何らか監査の結果ないですか。
  128. 鈴木珊吉

    政府委員鈴木珊吉君) 乗車拒否の結果につきまして、先ほども申し上げましたけれども、たとえば東京陸運局におきましては法人、個人ございましたけれども、法人の悪質なものにつきましては車両の使用停止という処分を、たとえば何両何日、四両二十日あるいは五両二十五日、そういったような行政処分をいたしております。
  129. 木村美智男

    木村美智男君 それが要するに運輸規則の改正という問題との関連ではどうなってますかということを聞きたいわけなんですが、つまり省令改正は、日雇い運転手という問題を排除するというところに重点があったわけです。そうすると、乗車拒否をした企業であろうが、個人であろうが、運転者は一体、その中に日雇いというものがどの程度あったのかということです。もしわからなければあとで資料でもいいですがね。
  130. 鈴木珊吉

    政府委員鈴木珊吉君) まことに申しかねますけれども、まだその結果が出ておりませんので、手元にございませんので、出次第また御説明申し上げたいと思います。ごかんべん願いたいと思います。
  131. 木村美智男

    木村美智男君 それじゃいまの監査の結果について資料をひとつ御提出をいただくということでお願いしておきます。  そこで、もう一つ問題が、運輸行政としてもちろんいろいろ監督をされ、あるいは監査をされておるということで、ほかの委員会でもある程度私伺っておるので、事情承知をしておりますから、労働省のほうに少し伺いたいと思うのですが、昨年の二月九日に、要するに通称二九通達というものを労働省から出した。これは事故防止ということもその中の大きなウエートになっておりまして、大体いま働いておる労働者の労働時間が全然めちゃくちゃだ。特に零細企業においてはそれがひどいというようなことから、勤務時間の基準を示した。それから賃金体系等についても、非常に酷使をする。本給が安くて歩合給がやはりウエートが高いといったようなことで、事故が起こりやすいような賃金体系になっておるというようなことから、これをある程度事業者に注意を喚起をして、そして是正をしていこうという意味で、労働省から通達が出されたのですから、そこで、労働省にお伺いをしたいのは、去年の二九通達が出される以前と出された後においてどういうような違いが出てきたのかということ、この問題ですね。数字的に少し、ありましたら説明をいただきたいし、こまかいことがきょうわからぬならば、大体傾向だけお話しいただいて、資料をあとでお出しいただく、そういうことでひとつお答えをいただきたい。
  132. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) ただいま御指摘のございましたように、昨年の二月九日に自動車運転者の労働時間等の改善基準という通達を発しまして、鋭意強力な行政指導を行なったわけでございますが、その結果どうなっておるかというお尋ねでございますが、まず私どもといたしましては、通達そのものが、ただいま先生から御指摘がありましたけれども、労働時間がまず第一に出てまいりますが、労働時間につきましては、御承知のように、労働基準法は一日八時間、一週四十八時間を原則にいたしておりますけれども、しかしながら、労使の協定で、いわゆる三六協定を結びますと、いわば成年男子については無制限な時間外労働あるいは休日労働が許されるというところに問題がございます。大きな企業でございますと組合も大きな組合ということで、そこにおのずから常識的な線が出てくるわけでございますが、自動車の関係は主として中小零細企業が多いということもございまして、やはり政府一つの目安を示す必要があるのではないかというふうに考えまして、その改善基準を出したわけでございます。この改善基準を出しまして、大いに関係業界等でも自主的にその順守を期待いたしますと同時に、労働基準監督機関といたしましては、従来の労働基準法に基づきます監督をこの際非常に強化をいたしまして、たとえば昭和三十七、八年のころは、年間約四千件程度の監督にとどまっておりましたものを、昭和四十一年は九千百四十一件、昭和四十二年は二万一千八百九十件という臨検監督をやっておりました。非常に活発な現場指導、監督も加えておるわけでございます。そういった行政面の指導の強化、それから関係労使の自主的な順守態勢ということから順次成果が上がってきておるというふうに思いますが、具体的に申し上げますと、たとえば、昭和四十一年と四十二年を比べましても、毎月勤労統計調査における労働時間というものを見ますと、製造業では月間〇・九時間ばかりふえておりますが、ハイタクの場合は逆に〇・九時間ばかり減っておる。特にトラックの場合には二・六時間ばかり減っておるというような結果が出ております。特に零細企業の面でタクシーの運転者について言えば、十人から九十九人の事業場では、これは賃金構造基本統計調査の資料でございますが、月間でやはり十三時間減っておるというようなことでございまして、必ずしも通達の効果だけとは思いませんが、そういう傾向になっております。  それから、この改善基準にのっとった三六協定の締結状況でございますが、ことしの一月の末に調べましたところでは、大体四五%の事業場がすでにこの改善基準にのっとった三六協定を結んで監督署に提出しておるということでございます。ことにハイタクの場合は六三%、トラックの場合は四九%というふうになっております。ダンプ等がございますので、平均では四五%ということになっておりまして、漸次成果が上がってきておると思うわけでございます。  もう一点の賃金体系のほうでございますが、これは最低保障給六割ということと、それから走行を刺激するような給与体系を改めてもらいたいということを骨子としたものでございますが、これも労働時間と違いまして、直接法規に基づく監督というわけにはまいりません。賃金は元来労使が自主的にきめるべきものでございますので、そうはまいりませんが、しかし強力に指導をいたしまして、特にことしは都市部のタクシーを中心に、賃金改定期にはぜひ極端な累進歩合制だけはやめるようにという指導をいまやっておるところでございます。資料が少し古いのでございますが、昨年十月までの状況では、改善基準が出ましてからハイタクで一九%の事業場が累進歩合制を改善しておるという数字が出ております。以上のような状態でございます。
  133. 木村美智男

    木村美智男君 大体こうあらましが出たような状況なんですが、非常に臨検監督等に熱意を持ってやられているということについては、私これはたいへんけっこうなことで、これからもひとつ進めていってもらいたいと思うんですけれども、ただ、いまの毎勤の統計で言われたことは、少しやっぱり問題が抽象化するんで、このハイタクあるいはトラック、さらにダンプみたいなものを、そういったようなことについて、労働省として特に調査をしたような関係があれば実はその調査資料をほしい。というのは、なぜかというと、私の手元にはこの二九通達前における労働時間の状況というものが、大体いま毎勤の統計の基準の区分けに沿って出たものがあるんですが、二九通達以後の関係についてないわけです。そこで、その方向としては、傾向としては多少改善をされているように思うんですけれども、しかし、実態はまだだいぶ改善されていないように現実に受け取っているもんですから、そういう意味で、この通達を出したあとに何らかの形で調査がなされておればひとつ資料として出していただきたい。賃金体系の問題についても累進歩合の関係が一九%改善をされたということなんですが、なかなかどうもその点がうまくいってないように思うんですよ。それで、参考までに私のほうから申し上げておきますと、大体、運転者の賃金の関係については、これは法務大臣おられるもんだから、法務大臣によく刑法との関係で実は知っていただきたいわけですが、昭和四十年から四十一年の関係ですけれども、まあハイヤー、タクシーの場合の四十一年度における賃金の状況を見てみますと、大体五万円以下というのが六割から七割、五万円以上というのが三割から四割というのが一般的に言えることです。それで、この比率から見ましても四万円から四万九千九百九十円というところが、これが大体二八・五%で最高を占める。それから大型貨物の運転者の場合には同じように二七・七%というのがこれがやはり最高だ。それからバスの運転者はこれまた二八・六%、大体二七%から二八%、約三分の一に近いものが四万円から五万円の間にあるというのが今日の大体運転者の賃金状態だという数字が出てきているわけですね。こういう事態も全体の今日の賃金の中から言うと決して高いものではないんですよ。むしろ、先ほど言われているような中小零細が多くて、しかも、労働時間というのは無制限な超過勤務をやらされているといったような関係を見てみると、きわめて賃金状態が低いということがこれはまあ一応言い得るわけです。そこで問題は、単に賃金額全体が低いということであるならば、これは交通事故という問題についての関係は比較的それでも救われると思う。ところが、いま労働省で言われている累進歩合というものが問題である。これは大臣も御存じだろうと思うが、都合上、名前は省きますが、こういう例をひとつ大臣も知っておいていただきたいと思う。大体累進歩合というやつは、たとえばAの会社をとってみますと、月の水揚げが十万円という場合には、たいがいその歩合というものは一割ぐらいを出している。月に十万円ということは、一日の水揚げが七千七百円、それが月にして十万円。これは御承知のように、二十四時間一昼夜交代勤務で、朝八時に出ればあしたの朝八時までということで、その日は明けで、また翌日出る、こういう勤務ですから、月に全部働いても週休をやるたてまえで十三回しか働けない。そうして一回が七千七百円で、これでちょうど十万円、歩合というのはちょうど一割。ところが、その歩合も十万円から十一万円になるとその歩合率が変わってくるわけです。一万円上がるごとに歩合の率がふえていくわけです。したがって、この計算をひとつしてみますと、たとえば月十三万円の水揚げをやっている者の歩合給は幾らになるかというと、この会社では一万九千二百五十円という歩合給、ところが、水揚げをかりに十七万円上げるとすると、歩合給は幾らになるかというと三万五千八百五十円、そうすると、月に十三万円かせいだ者と十七万円かせいだ者とわずか四万円の違いですけれども、歩合給は一万六千円の開きがそこに出てくる。これがいまの累進歩合制度の賃金体系であります。これなんかはまだいいほうで、もっとひどいのは、一日一万円の水揚げでいくと三十万円ですね、かせげば大体五%という歩合になっていくわけです。これでいきますと、一日一万円の水揚げしかやらぬ者は一万五千円です、歩合が。ところが一日一万三千円かせいでいけば、これは月にして大体十七万円ぐらいです。これは三万五千円の歩合給をもらっている、そうすると、賃金で二万円開いてくる。だから、私はさっき馬の鼻づらにニンジンをぶら下げている賃金体系だと言ったのです。だから、一万円ずつ水揚げをしていくと平均が上がる。こういう賃金体系ですから、いやでもおうでも、生活上もうかせがなければならないという賃金体系に仕組みに今日なっている。これは乗車拒否の問題であるとか、交通事故の問題であるとか、また、神風タクシーが再現したと世の中から言われている根本は何かといったら、もう今日の給与体系を変えなければ絶対だめだ。運輸委員会では、大体、運輸大臣以下もうこの事情はだいぶわかってもらっている。ぎょうは法務委員会だから私特に申し上げるんですが、とにかくそういう形での累進歩合をとっている上に、なお一つ悪いことがある。というのは、十三回つとめる中で一回休んで十二回しかやらなかったという場合がひどいんです。一日休むと、とたんに少なくて五千円、多ければ約一万円ダウンするんです、月給が。大臣、これはね、あなたびっくりするかもしらぬけれども、基本給でまず十三分の一カットする。それから職務給でこれをカットする。皆勤手当というやつが三千円ぐらいつくやつを、一回休むと千円ばたんと削る。その他奨励手当だ、深夜手当だとたくさんある。一日休んだら、とにかくばしっと削ることになっているから、じゃあ二日休んだら一万五千円削るのかといえば、そうではない。その一日を休むということがたいへんなことだ。そうすると、一日休んだために五千円から一万円月給が減るわけですから、それを取り返すためにはあとの十二日の中で、今度は、さっき言った水揚げを上げていって戻す以外にない。したがって、神風タクシーにならざるを得ない、こういうことになっている。この賃金体系を直さなくて、何ぼ夜中に監査をやったり、それから乗用車協会を集めて経営者に訓示垂れてみたって、これは絶対に直らぬ。ここのところを直さなければならぬ。したがって、大臣に知ってもらいたいのは、こういう給与体系にしておいて、それでタクシーやトラックの事故をなくそうということで何ぼ刑法改正しても事故はなくならないと、私が言っているのはそこにある。こういう事実を一つ一つやっぱりなくしていくということがほんとうの事故対策で、これをやってもなおかつ不注意によって事故を起こしているというんなら、これこそ刑法改正のその趣旨は私はわかるということを言っているんです。何でもかんでもいけないのだと言っているんじゃない。こういう労働条件にし、こういう賃金体系をとっておいて、そして刑法改正すれば事故がなくなるんだと考えているのなら、ちょっと世の中を知らな過ぎるんじゃありませんかということを言っているわけです、私はね。だから、そういう意味でこれは申し上げたわけですけれども、それでいま労働省のほうも通達を出して、少し前よりは幾らか改善の方向にあるんですが、なかなかどうして、今日のタクシー業界というのは、これは昔のよく——私はそう思っていないんだけれども、まあ雲助に返りつつあると、こう言われる。そういうことになってきているんですよ。だから、そういう問題点を解決することがまず前提として相当やられていって——私はそれが一〇〇%できないうちはだめだなんて言わぬですよ。それが、なるほどこういう状態が改善をされて、労働省が言うように、六〇%は基本給だ、そうしてまあ一日休んだからといって大きなカット、ダウンになるようなことにはならないというやはり強力な行政指導というものがそこにされて、事業者に対してやっぱりもうちょっときちっとさしていかなければ、交通事故はなくならぬという点を十分ひとつこれは御認識をいただきたい。特に法務省のほうとして、刑事局長さん、私はそういうようなことをよく理解をされて法規を扱ってもらわないと、実際には、ほんとうのところ善意でもって事故をなくすために刑法改正するわけだけれども、結果は私が言ったように、ただ罪を重くされた人間が多くなっただけで、ちっとも事故はなくならないということをさっき申し上げたわけですが、というのは、こういうことなんだという意味なんですよ。これはひとつ大臣、どういうふうに考えられますか。これは最近になって私の感じでは、一運輸省、一労働省にまかせておくべき問題ではなくて、全体的な事故防止対策のやはりキャンペーンを張るくらいに値する問題だ、こう思っているのです。あるいはこの刑法改正に取り組む法務省も含めて、政府全体が、あるいは行政機関をあげて、やはりそういう問題を直していくという、そういうことになっていかなければ、なかなかこれはなくなっていかないということなんで、このあらゆる施策のこれは一環なんですがね。どういうふうにお考えになりますか。具体的な例を引いて私お伺いしているわけです。
  134. 赤間文三

    国務大臣赤間文三君) 詳しくお述べになりましたのでよくわかりましたが、とにかく不自然なことはもう即刻これを取りやめるように、みんなで力を合わせていくということがやはり事故防止の一つの策になると思いまするので、私は先にも言いましたように、あらゆる面から事故防止に役立つと思うことは全部これを取り立てていく、こういうことでありたいということを申し上げたいと思うわけです。なかなか不合理な点がまだいろいろあると思いますから、省、各部各局みんなが力を合わせてこの事故防止に取り組んでいく、こういうふうにやっていきたいと考えております。
  135. 秋山長造

    ○秋山長造君 関連。労働省へちょっとお尋ねしますが、総理府から出された四十二年度版の交通白書、その一七〇ページの上に表がありますね。その表は四十一年度まで出ているのですが、四十二年度の数字がわかりますか。
  136. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) 四十二年度は年度では出ておりません。歴年で四十二年は出ております、時期の関係で。監督実施事業場数が二万一千八百九十でございます。それから違反でございますが、労働時間(男子)四七・二%休日(男子)二九・一%、割増賃金三二・七%、それから送検事業場数が二百六十五となっております。
  137. 秋山長造

    ○秋山長造君 監督を実施された事業場の数は、この三十九年、四十年四十一年、四十二年度、こう急激にふえておるわけで、それだけ事業場の監督に力を入れておられるということにはなるだろうと思うのですけれども、ただ、その違反者の比率というのはちっとも減ってないわけですね。むしろ労働時間にしても年々急カーブでふえている。それから休日の違反はまあ横ばい、割り増し賃金も横ばいで、ほとんど改善のあとがこの数字から言うと見れぬということが出ていますね。この事業場というのは何ですか、これは同じ事業場をまた去年やり、ことしもやるというのが含まれているのですか、それとも全然年によって新しいのをやっているということですか。
  138. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) 監督対象事業場が昭和四十二年度で申し上げますと、道路運送事業が三万六千七百七十四となっておりますので、相当の、六割近くの監督実施率になっておるかと思います。毎年のものが重なる場合もございますし、新しいものも入ってまいります。ただいま違反率の御指摘がございましたが、これにつきましては、実は全産業を通じましても違反率は必ずしも改善されておらない、むしろふえている項目もあるわけでございます。ただ、私どもは国勢調査のように全部の事業場を調べまして、そこにおける労働基準法違反の実施状況というものが出てくるならば、先生御指摘のような一つの順法状態を示す数字と見ることもできるかと思いますが、私どものやや内部のことになって恐縮でございますが、私どもは違反が多いであろうと思われる事業場をまず選ぶということ、それから監督官が違反を発見する熱意と技法の熟達というようなことによって、違反率はむしろ上昇する要素が非常に強いということ、最近特に研修等でも指摘をいたしましてやらしております関係で、そういった努力の成果というものが一面で出てまいります。一面では御指摘のように順法状態が出てまいります。その両方が相殺される面がございますので、私どもはこの数字の増減についてはあまり神経質には考えておらないわけでございます。
  139. 秋山長造

    ○秋山長造君 その両方が相殺されるということは、これはわかります。まあそういうこともあるだろうということはわかるんだけれども、ただしかし、それにしてもこれだけ交通白書にわざわざこうやってスペースをさいて、こういう表まで出しておられるんですからね。これは何か読む者に示唆を与えるために出しておられるものだと思う。あなたのほうでたいしたものじゃないというなら、こんなことは出す必要はないんですね。出しておくということは、読む者がこれを見て、なるほど交通事業場については労働基準法違反というものがなかなか減らぬもんだなあ、なかなかこれ問題だなあということを端的に知らせるために出したわけでしょう、この表は。だから、あなたもそう全然問題でないような意味でおっしゃるんじゃないだろうけれども、これはやっぱり問題だと私は思うんですが、どうですかね。
  140. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) ことばが不十分でございまして、全然問題でないということではございませんで、先生御指摘のように、違反が非常に多いものであるということをむしろさらけ出しまして、国民の皆さんにも知っていただきたいということで、隠しだてせずに出したものでございます。ただ、違反率というものにつきましては、技術的に言いますと、そういう要素が両方ありますので、御参考までに申し上げた次第でございます。
  141. 秋山長造

    ○秋山長造君 その相殺されるという意味はわからぬことはないのです。わからぬことはないですが、たとえば送検の数にしても、まあ急激にこれは監督実施した数もふえているからでもあるんでしょうけれども、まあけた違いに送検数もふえている。それはまああなたのおっしゃるように、いままでは手が届かなかったのを今度は徹底的にやったから、何もいまに始まったことじゃないんで、前から潜在しておったのが顕在化しただけだというまあ説明のしかたもあるだろうけれども、ただ、まあそれで片づけようと言ったら、こういう統計数字はすべてそれに似たようなものは数字が伴ってくるから、あまり統計数字そのものの意味がないと思う。やっぱりこれだけの数字が出ているということは、労働省のほうでまあ相当力を入れてやってはおられるが、なかなかこれ徹底し切れぬと、やっぱり次から次へと違反がふえていって、したがって、全般論としていえば自動車業界における労働基準法の徹底ということはまだ前途ほど遠い。実態はさっき木村委員がるるおっしゃったような状態じゃないかと思いますので、これはあなただけ責めてもしようがないので、これは運輸省の関係になるから、また別の面から大いに責任を持ってもらわにゃいかぬけれども、何といってもこういう通牒、通達を出されて大いにこれを励行してもらわにゃいかぬし、一そう力を入れてもらうよりしかたがない。われわれとしてはあなた方にたよるよりしようがない。やってもらいたいと思うが、なかなかこれは長年のこういう業界における惰性というか習慣というか、そういうものはまことに根強いものがあって、もうほとんど——これはこの数字では全部ではない、何%ということに、三分の一とか四分の一という程度になっておるけれども、ほんとうにあなたのおっしゃるように厳正に労働基準法を適用してやったら、もうほとんど一〇〇%近くこれもみなかかるんじゃないですか。それがいまの実態じゃないかという気がするのですがね、いかがでしょうか、この点もあわせて。
  142. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) 順法状態が必ずしも良好でないということは、まさに相当高い違反率をこうやって示しておる実態であろうかと思います。ただ、私どもといたしましては、あらゆる面でPRもいたしますし、また監督、指導も加えまして、また業界自身にも労務管理改善推進方を依頼いたしまして、業界が自主的に、とてもこれではいけない、最近のように労働者不足、運転者不足になってまいりますれば、とてもこういう昔ながらの労務管理状態ではいけないという機運をつくっていただくようにいろんな角度から努力してまいりたいと思いますし、また、私どもだけではもちろん力が足りませんので、関係各省にもお願いして順法状態の改善ということにさらに努力をいたしたいというふうに思います。
  143. 秋山長造

    ○秋山長造君 その点は一そう徹底してやってください。  それから数字のことで、この表の中に、ここに書いてある四十一年のこの欄の送検事業場数五十五とありますね。これは間違いではないんですか、五十五というのは。せんだって、私は法務省から御答弁を聞いたのだったか、どなたから聞いたのだったか、ちょっと答弁をされた方を覚えていないのですが、四十一年は送検数は三百五十四件と私聞いて記憶しているのですが、五十五ですか、私の聞いたの間違いですか。
  144. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) 五十五という数字は最終的には間違いございません。ただ、先生御指摘のようなことがありましたのは、一番この数字がはね返りました原因は、例の一昨年の暮れでございますか、愛知県の猿投町の事件でございます。あれを契機に年末にダンプの一斉監督をいたしました。かなりびしびしやったわけでございます。その結果、送検の手続が年度の切りかえ時に移ってまいりまして、統計処理土翌年度に変わったというようなことで、数字が二、三動いたことがございまして御迷惑をおかけしたわけでございます。最終的にはそうなったわけでございます。
  145. 木村美智男

    木村美智男君 せっかくおいでをいただいておって時間の関係でお伺いをせぬということでもうまくないので、少しまだ法務省警察庁関係もあるんですが、ちょっとはしょって問題をあとへ残します。  そこで、通産省のほうから伺いたいんですが、警察庁の先ほどのお答えの中にも、最近の事故というのは車対車の事故がやっぱり急激にふえてきているという実はお話もあったし、新聞等でも私もそういうふうに見ておるわけです。で、この点は国民の素朴な考え方からいうと、とにかく昨年ですか、四十二年度で三百四十万台も車が製造されているわけですね。この状態でいくと、もうすでに一千万台こえているわけですから、ほんとうにどこまでいくかわからないほどどんどん車がつくられていっているわけですけれども、人命尊重、事故防止というような観点からいうならば、これは一体野放しにしておっていいものかどうか。国民の素朴な考え方では、車が多過ぎる、何とかしてくれぬかということは、これはもうほんとうに皆さんが口をそろえて言っていることです。このことについて、今日、行政官庁ないし政府が何一つものを言わぬ。あるいは考え方を持っているのかどうかわからぬけれども、これは私はやっぱり一つ問題点じゃないか。大臣の言われる、あらゆる施策をというものの一つの問題点として、やっぱりこれも考えてみなければならぬのじゃないかというふうに思うんですけれども、所管官庁として、通産省は自動車の生産数量についてはノータッチなのか。あるいは何か行政指導的なものをやっているのか。あるいは今日の死者数は一万六千、けが人六十万というような状態に対して、この問題については一体どう考えているのかということをちょっと聞かしてもらいたい。これは大臣見解をひとつ聞かしていただきたい。
  146. 本田早苗

    説明員(本田早苗君) 先ほど来、交通事故問題あるいは交通渋滞等の問題がきわめて大きな社会問題になっておるということで、この解決が当面緊急な問題であるというところにつきましては、先ほど法務大臣からお答えになりましたように、基本的には、やはり道路の整備を中心とする道路交通環境の改善であるとか、あるいは交通規制の強化であるとか、あるいは交通安全教育の徹底をはかるとかということと同時に、また自動車自体についての安全性の向上をはかるための試験研究開発を強力に進めるというふうな、総合的な解決が必要であるというふうに考えておる次第でございます。ただ、いま先生御指摘のように、最近の自動車需要が非常に根強くあって、車の数が急速に増加しておる。これをこのままでいいのかという点につきましては、御承知のような最近の経済社会情勢を反映いたしまして、自動車に対する需要が非常に根強くあるという状態でございまして、ただ、これに対しまして生産面から供給を制限して自動車保有を押えていくという形でまいりますことは、需給の関係から供給不足の状態にするということで、需給の均衡がくずれた状態に伴ういろいろの問題が生ずるということがございますので、非常にむずかしい問題で、急速に強行してまいるのは必ずしも適当でないというふうに考えておる次第でございます。
  147. 木村美智男

    木村美智男君 いや、需給のアンバラになるから生産規制はいま直ちには適当でないと考えておる、何も必ずしも生産を規制しろとばかり言っているわけじゃないですよ。しかし、今日の何というか消費要望というか、これが非常に強いという話だって、半分はマスコミもあるのですよ。テレビのスイッチをちょっとひねってごらんなさい、これは今日の自動車の宣伝というやつは、これは私は、一時は薬や化粧品類がたいへん多かったけれども、最近ではやはりこれはもうナンバーワンといったら、まずこれは自動車の宣伝が一番、特にスタートダッシュがものすごく早いとか、出発してから百メートル走る間に、これはものすごい速度で行くとかいって非常にスピード感をあおるというような関係、そういうことが半分あると思うのです。ほんとうに需要の関係がもう間に合わないのかどうかという問題は、これは静かに考えてみなければならぬ問題である。だから、私は決して生産規制が、一ぺんにやったらこうなるくらいのことはこれはやはり常識的に考えられることだけれども、たとえば、持つについて、自動車のある程度税制的な問題であるとか、あるいは自賠責の補償額を引き上げることによって掛け金が上がるとかいうような関係、そういうこともやはり考えながらレジャー大事にやっていくのか、あるいは業界の発展ということが大事なのか、いわれる人命尊重が大事なのか、事故防止が大事なのか、やはりこういう根本問題にいまやぶつかってきているのじゃないかということが私の言いたいところですよ。したがって、時間的にある程度余裕を持ってやるか、やり方についてはいろいろの方法があると思うのですが、そういうことについて、一体これはどうしたらいいかということについて政府は考えていますかということなんです。これはひとつ通産大臣に来てもらって答えてもらおうと思ったのですけれども、政府の重要な一員として法務大臣からひとつこの点伺いたい。
  148. 赤間文三

    国務大臣赤間文三君) 道路の整備をいたしておりますけれども、道路の整備よりも、お述になりましたように車の数がよけいふえる、これがやはり一つ事故の多発化の原因ということ、これはもう事実に考えております。ことに昔は都会に自動車が多かったのでありまするが、今日は都会はもちろんのこと、農村もやはりなかなか車が多くなって、私は山形県にちょっと行ってまいりましたが、山形県の農村を回りましても、やはりあそこのくだものを運ぶための車、のみならず、やはり青年が乗る車というようなもので、非常に全国の農村まで車が普及をしつつあるので、その力の強いのには驚くくらいでございます。そういう点からいたしまして、まず政府としまして考えておりますことは、大体国道とか、そういうものは整備をせられたが、一番大事な町村道がまだ整備せられておらぬというので、四十三年度から思い切ってひとつ財源も考えて、町村道の整備をやろうということをいよいよ実行に移そうと考えておるのであります。しかしながら、それをやりましても、やはりいまお述べになりましたように、それに伴って車が私はまたやはりふえるのじゃないか、そうして、それならばひとつ一方においては何か車のほうについて特別な考えをせいという、これも非常にごもっともなことでございまするが、御承知のように、いよいよ近く車を買うときには税金が今度はとられる、新車等を買うときにはもちろん税金を納めなければならぬというようなことにもなりました。お述べになりました税金の問題もいよいよ始まるのでございます。なお、私はそれにつけ加えて、やはりできるだけ安全設備をやらせることも必要だ、安全の設備を各自動車についてやはりちょうど考えさせる時期にも来ているのじゃないか。それから一方におきましては、もう世界有数の自動車の生産台数になりましたので、輸出方面も思い切ってこれは輸出の振興策を講じていくということも講じていきたい。お述べになりましたような税金を取ること、それから町村道の整備をどうしてもやらなければならぬこと、それから車自体の安全性の確保、海外への思い切った輸出の振興をやらせるというようなひとつ方法を講じていきたいと考えております。
  149. 木村美智男

    木村美智男君 大臣いろいろ考えておられるようですけれども、私はやはり輸出はそれは大いにけっこうで、私もむしろ自動車産業を輸出重点にこの際政策的にも変えていったらいいのじゃないかという気持ちを持っているわけです。豪州なんかでは日本の自動車はダンピングをやっているじゃないかということで、いま問題になっておるようですけれども、しかし、この時点で輸出をふやすということについては私も賛成です。しかし、輸出はこれは表に行く車なんで、車の数がふえているという問題は何も表に出す、輸出の車を何ぼふやしてもいいと思うのです。国内の車の問題を何とかしなければならぬのじゃないかと、こういう立場から申し上げているのですよ。そうすると、自動車取得税は確かにそれはあります。これはしかし、取得だから、買うほうにかかってきているのでしょう、お酒みたいに。生産者から取るわけじゃないのでしょう。そこら辺にも一つ問題がある。生産者のほうの関係で、多少プライスが高くなるという、アップになるという関係でいえば、大臣の言われる安全性の問題、これを強化することによって自動車は多少コストが高くなっていくでしょう。それはあると思うのですが、町村道の整備くらいでは、ちょっといまの車の増加に追いつかないですよ、これは。ここのところを一体どうするのかという実は問題です。私は車の安全問題はあとで触れようと思っておるのです。とにかくこれはもうまさに公害ですよ、車そのものが、今日では。という状態ですから、それに触れたいと思うのですけれども、どうもいま政府全体が、内閣自体が今日自動車を、車をどうするかということについて方針を持っていないじゃないですか。ことさらこれを避けている。私は人命尊重、そうしてとにかくおこられようが、気に入られまいが、国民のためになることはやはり言わなければならぬ、そういうことをやらせるのが政治だと思うから私は言いますよ。だけれども、政府自体はこれを口にすることを何かタブーと考えているのじゃないですか。そこら辺にもやはり今日の交通事故の根本的な問題が一つあるような気がするのですよ。だから、人がいやがることや銭のかかることはやらないで、金のかからない刑法改正というようなところへいっているのじゃないかと、腹にもないことをおれが言うようなことにもなる。実際そこら辺をほんとうは通産大臣に聞きたいところなんです。もう少し、やはり刑法まで、従来の禁錮刑を懲役にしてまでも取り締まっていこうということなんだから、そういう考え方に立っていくならば、やはりその要件となっている、大きな一つ交通事故発生の要件になっている車の問題というものは、何かここに政治的なやはり対策がとられなければ、やっているがなかなか効果があらわれないという問題と違って、私から言わせればもうノータッチだ、いま政府は。しかも、もうテレビ、新聞その他を通して今日のモータリゼーションというのはこれはものすごい。それこそ何かの形でやっていかない限り、私は今日の交通事故の原因は、いわばこのモータリゼーションに一つ大きな問題があるというふうに実は考えるのです。通産省なんか、悪口言わせてもらうならば、逆にモータリゼーションをあおっちゃいやせぬかと言いたいのだ。ほんとうは自動車業界と一緒になって少しあおり過ぎていやせぬか。輸出のほうなんかぼくはじゃんじゃんやってもらっていい、しかし、国内の問題については、多少輸出の問題とバランスをとって逆にふやしながらこっちをあれする、全体としてはおのずから無理のない調整ができるというようなことを、とにかくもう長期計画を政府が立ててみたらどうなのか。そして政府自体が、これは経営者といえども今日の交通事情については頭を痛め、そのために車両の構造改善もやらなければならぬという事態にあるわけですから、そこにやはり一脈利益の一致する点があると思うのです。そこのところに立って今日のモータリゼーションの中における国民の被害というものをできるだけなくしていくという立場で、とにかく車の問題について何らかの手を打つべきじゃないのか。大臣、直接それには触れないですよ、さっきの答弁聞いていても。そうでしょう。私はどうするのかと言ったのに、車のことには触れないで輸出だの町村道だの安全だの、そういうあっちのほうの話ばかりしている、そうでしょう。聞いたことに答えてくれなければ質問の答えになりませんよ。
  150. 赤間文三

    国務大臣赤間文三君) 税金を。
  151. 木村美智男

    木村美智男君 税金は、取得税の話は私聞かぬでも知っている話です、それは。そういうことで車の問題をどうするのか、大臣、これ、きょうここでさっきの答弁以上に出ないのならば、閣議でひとつ相談してください。佐藤総理の言う人命尊重という点からいけば、車の問題をほうっておいたら、何ぼ人命尊重言ったってだめだという意見が言われている、国民は素朴に、何か数字的なことはわからぬけれども、車が多過ぎる、何とかたらないかと、こう言っている。このことを政府が口にすることはタブーになっているようだけれども、一体どうなんだということで、これは総理大臣に出て答弁してもらう、どこかの、物価の委員会か何かで、公害の委員会でもいいですよ。したがって、いずれにしても大臣、やはりきょうの答弁のようなことではこれは済まされないです。閣議で一回相談してくれませんか。質問は、閣議で相談をしてくれませんかということ、どうでしょう。
  152. 赤間文三

    国務大臣赤間文三君) それは、これまでたびたびこの問題については話し合いをしたことがあるのです、いろいろと交通事故の関係から。だけれども、たとえば自分で、マイカーとか何とかいうのも少しくらい制限したらどうかというような意見が出たり、あらゆる方面からの意見は、私はいろいろな方面から聞いたのでありまするが、結論といたしましては、やはり町村が非常な、物資の運搬から休養まで、ものすごい車の時代に変わってきておる、一時より。これは何としても町村道を整備拡充する、ひまは要るからというお話がありまするが、政府としては、もう四十四年から思いきってひとつ全国の町村道の整備拡充、車の通るような政策、これは大きな政策に考えていますが、私は車の事故防止の一助として考える。それからまた、ほかの省はものの運搬とか、いろいろなことを考えておりますが、法務大臣としては事故防止の一端に資するというので、思い切ってこの町村道の拡充、それから税金を地方公共団体に取らせるのも私はその一つの方法であると考える。そういう点は、いわゆる車に対するわれわれとしては可能なうちの重要な政策に考えておるのであります。それで、私個人としてはまたいろいろな考えを持っておるのです、車の増加を何とかして防ぐということについては。だけれども、やはり国民のすべての人が大体において納得をしてくれて、今日の時勢にも合うし、ごもっともな政策だという政策、これはなかなか話し合いましてもにわかに出にくいのであって、私の考え方は、いま言いましたような方法を政府が行なわんとすることに非常に協力し、また、その効果があがるように、まあ言いまするならば、税金を取る制度等による、車の抑止になるかならぬか知らぬが、その税金の取り方にもよりましょうが、税制面からそれにいくということと、やはり何としても道路の整備をどうしてもこれは国のために急ぐという、この二つを私は二大政策にしたいと考えておる。  それから技術の問題は、これはまたたくさんいろいろな説を聞くのです。たとえば都会に入ってくれば、都会の人口に思い切った、外から入ってくる乗用車がそこにひとまず入ってしまって、そこからは市内の円タクぐらいである程度間に合わせるような制度のようなものはできないかとか、いろいろな説を聞きますけれども、一利一害があってなかなかこれをどれをとるというわけにもまいらないというようなことで、木村君なんか、この方面にもあらゆる面にいろいろと御研究を積んでおるようで、ひとついい方法を教えていただくと、われわれはそれを実行に移すことに努力したい。非常にありがたいような、迷惑なような、車がふえるということは。どうも若い者が盛んに練習して、金を出して車を買うて非常に喜んでやっておるところをみると、これまたむやみと車を買うことを抑止するようなこともなかなかむずかしいのじゃないかとも思う節もありますので、どうかひとついい方法があったら、いつでも教えていただいたら、それを実行に移して、ひいては事故も少なくするようにしていきたい。ただ、非常に希望しておりますのは、何べんも言うようですが、やはりひとつ思い切った輸出の振興をやったら相当にいいんじゃなかろうかと私は非常に希望を持っておるのです。日本のトラックとか、いろいろなものがずいぶん出たのです。それからまた、乗用車は思い切って、これはアメリカと言わず、欧州と言わず、世界の至るところに日本の乗用車が出ていくのではなかろうかと考える。その次には、また飛行機でも思い切って海外に輸出する時代がくるとありがたいがというようなことで、いろいろ考えてはおりますが、ひとついろいろと御鞭撻と御指導をお願いしたいと思います。
  153. 木村美智男

    木村美智男君 大臣、輸出というやつは相手のあることだからね。現にそれはオーストラリアで問題にぶつかっておるんですよ、いま。日本の自動車業界は低賃金で労働者をこき使って、自動車を安くつくって持ってきておるんじゃないかといって問題になっておるんですよ。そのために、きょう質問しようと思ったら、通産省の関係が来ておられないんですよ。一緒に行っておるんですよ。そういう状態だから、そんな簡単に、輸出というのは相手のある話だから、自分がこう思っているといったって、社長さんが言うような答弁をここでしておってもだめですよ。トヨタの社長がいまのような答弁をするならこれはわかるけれども、法務大臣として言うなら、それはいただけぬね、だめです、それは。とにかくいま言ったように、大臣、あなた、ぼくと交代するなら、方法出しますよ、すぐ。だけれども、そうでないから閣議で相談してくれませんかと、こう言っている。それは私が法務大臣であり、刑法を提案するならちゃんと出しますよ、車の問題についてどうしろということを。それはそれくらいのあなた、やっぱり見識を持ってやってくれなければ困るよ。それは、ぼくがなるべくこういう話だから、でかい声を出そうが、小さい声を出そうが、おこっていようと笑っていようと同じだから、にこにこして言っているのをいいことにして、あなたそういう答え方ではだめですよ。そういうことだから人命尊重なんといったって、口先ばかりでほんとうにしんから考えていないというふうに思わざるを得ないのだ、あなたの答弁では。だから、そういうことじゃいけませんので、これは閣議でひとつぜひ相談してみてください。  で、私、警察庁の一−三月の全国交通事故調査結果が出ているわけですけれどもね。この中に、実は多くなった未熟運転ということが特に傾向として出ているわけですね。そこで、自動車教習所の関係やら免許の関係について少し伺いたいと思うのですけれども、この警察庁調査によりましても、とにかく一−三月の死者が三千名を突破したというのでしょう。これはもうまさに画期的なハイペースでいま進んでいるわけですね。負傷者も同じです。その多くの原因が車対車の事故がやっぱりその中で顕著になってきておるということと、もう一つはやはり未熟運転ということが強く言われておるわけですね。したがって、自動車教習所等の関係については、どういうようなことで教育をされているのかということについて、あるいは指導監督として特別こういう点に留意しているというような点があれば、これを少し伺いたいと思う。というのは、なぜかというと、最近の自動車教習所は特に営利本位に考えられるようなことがより多くなってきている。たとえば、私の近くなんかにも自動車教習所があるのですけれども、わざわざ習いに行く人を駅まで送り迎えですよ、マイクロバスでね。ここら辺までなってくると、どうもお客さん扱いをしておるというようなことになってくると、やっぱり私は問題だと思う、これは。あるいは不当表示防止法からいうなら、誇大広告ですよ、実地試験免除。実地試験免除というのは一体どういうふうな内容なのか、よくやってみると、なに自分の習っている教習所の毎日走らせて練習しているようなところで実地試験やるから、どこかへ持っていって特別やるのじゃないから実地試験は免除だと、こういうことなんだね。これは不当景品とか、不当表示防止法からいうと誇大広告で、これは法律違反ですよ、そういう意味からいうと。そういうことを考えても、最近の自動車教習所というようなものについても少しく技術訓練的なやっぱり真剣さというもの、あるいは事故防止というようなものの魂が抜けて、少し営利本位に流れてはおりやせぬのかという気持ちを抱くものですから、これはどういう状態になっておるのか、監督をされている部署からひとつお聞かせをいただきたい。
  154. 鈴木光一

    政府委員鈴木光一君) 自動車教習所の問題につきましてはいろいろ御批判のあるところでございますが、われわれのほうで指定自動車教習所を、特定の条件が備わっておりますれば指定いたしまして、そこで、われわれのほうで定めました教習課程を終了すれば技能試験が免除されるという制度になっておるわけでございます。その技能試験が免除されるというのを実地試験免除ということばで言いあらわしておるのだろうと思いますけれども、技能試験は免除することになっております。しかし、免除をするためには、その指定自動車教習所におきまして厳重なワクをはめまして、教習時間等のワクをはめるし、また、教える技能指導員につきましても厳重なワクをはめておるということで制度的に運営しておるわけでございます。その間、各県公安委員会が厳重な監督指導を行なって、そして定められた教習基準につきまして不正な問題がある場合には指定を解除するということで、この制度の運営の万全を期しているということになっているわけでございますが、まあ教習所につきましては、民間の経営の形をとっておるところが多うございまして、営業偏重にならぬように、先ほど申しましたようなワクの中で公安委員会が厳重な監督、指導を行なっていくということにしているわけでございますが、なお御指摘のようなことがあるとすれば、私どもとしてはさらに厳重な監督、指導を行ないたいと思います。  運転未熟の問題がございましたけれども、運転未熟というのは、かつて運転未熟というような原因分析をやっておりましたけれども、最近はそういう原因分析をいたしませんで、結局ハンドル操作の不適といったようなことがございまして、結局は安全運転の問題に帰するわけでございます。技能試験をやりまして、技能は一応身につけまして、また法規も身につけても、やはり安全運転の心得というものがそのほかにあるわけです。そういう安全運転の教習というものが、従来、指定自動車教習所に欠けておったということでございます。自発的にやっておったところもございますけれども、そこに着目いたしまして、先般来、安全運転の知識というものを警察庁の監修のもとに、指定自動車教習所の全国の連合会がございますけれども、そことわれわれと一緒になりまして、安全運転の知識という教科書をつくりまして、これを必ず教習所で教えるということに制度的に乗せたわけでございます。もっとも、現在の道路交通法の中に安全運転の知識を教えろということにはなっておりませんけれども、現在の段階では、事実上そういう教科書を使って教えていく、そうして、従来、運転未熟といわれておったような、いわゆる安全運転の心得に欠けておった事故、そういうものを減らしていこうということに着眼いたしまして、そういう方向に向いていることをこの機会に御報告申し上げたいと思いますけれども、そういうことで指定自動車教習所の営業偏重主義というものがかりにあるといたしますれば、そういうことのないように、りっぱな運転者を育てる。先般も指定自動車教習所の全国大会を開きまして、その際に優良なドライバーを養成するということがわれわれの使命であるということを、全国の教習所の管理者が一体となって確認いたしまして、今後、事故防止に努力するということもお互いに誓い合ったということもございまして、今後さらに御批判を受けないような教習所にしてまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  155. 木村美智男

    木村美智男君 私はこの教習所の関係について必ずしもそういうふうに思っているわけじゃないのですが、何か自動車教習所というと、どうしても警察との関係というものが、これはまあ私なんかの想像以上に密接な関係にある。それは職業の選択は自由なんだから、別にどうこうという筋はないはずなんですけれども、しかし、元警察官が教習所の教官なり重要ポストに相当やはりいるという関係から、これも邪推かもしれませんけれども、多少免許を与えるのにある程度顔をきかせるとかいうようなことなどがあるというような話やら、あるいは経営者の関係でも、タクシー業界指導委員というような大事なポストなんかには、やはり警察出身の人がいるとかいうような関係があるんだから、むしろ私はそういうことであるならば、なおのこと、法規に明るいのだし、かえってそういう立場というものを、あるいは過去の経験というものを生かして、そうしてほんとうにりっぱなドライバーの養成ということに、やはり言われているなら言われていることであっていいから、それを逆に災いを転じて福となすじゃないけれども、いわゆるそういう面を生かして、ほんとうの優秀なドライバーを養成するというようなことに、これはいま一段と、いまの安全運転の知識というようなことで重点をかえたという、そういうことであればなおのこと、そういう意味で監督に当たってもらいたいという、これは要望ですけれども、そういう点をひとつ要望しておきたいと思います。ただ、そこで、運転免許についてどうなんでしょう。ばらばらと自動車があって、多少はこう行ってもいいような時代といまは違ってきて、ものすごい、狭い道路に密集している自動車の今日の現況ですから、そういう意味でいえば、従来とられている運転免許の基準というものについて、これはレベルアップする必要があるのじゃないかという気持ちがするのですが、私、飛行機のほうなら運転したことがあるけれども、どうも自動車はいまだに運転できないので、あまりえらそうなことは言えない。えらそうなことは言えないが、何となく勘として、条件が違ってきたんだから、その免許の基準というものもやはりかえられていくことが必要じゃないか、そういうところにやはりレベルダウンするあれが、あるいは事故が多発するという関係が出てきているのじゃないかという気持ちがする。したがって、運転免許の資格基準というものをレベルアップするということについては、どういうふうに考えておられるのか。  それからもう一つは、私、過酷なようだけれども、重大な事故を起こしたら、やはり免許証をもう長期にわたって与えないというぐらいのやはりきびしい態度が必要じゃないか、本人の気持ちを満足させることはできないけれども、人を殺すよりはそのほうがよほどこれは社会のためになるし、人間尊重の立場から私はやはり正しい態度だと思うんですよ。そこら辺のことは一体どういうふうに考えられるのか。それで、私ただ新聞に多くなった未熟運転とでかい見出しとなって出ているから言っただけでなしに、これは警察庁なり交通局の資料を見ましても、やはり事故を起こしている中で経験が一年未満というのが圧倒的に多いですよ。これは七万七千八百九十九件あるわけですよ、一年未満が。二年になれば多少、七万が六万五千になるんですね。三年になると五万一千ですよ。四年までいくと三万七千、一万ずつこう減ってきているということで、やっぱり何だかんだといっても、経験がない、あるいは運転が未熟だということは統計的にも裏づけがされている、こういうふうに思うんです。したがって、今度はもう一つ別な面から言うと、何か無免許という形で検挙をされたり、あるいは警告を受けたりしていますが、この無免許というやつについて、もし免許証は取っているのだけれども、たまたま運転のときに免許証を持っていなかったのか、初めから免許を取ってもいないのに自動車運転したのかという、ここら辺は一体どうなっているのか。というのは、あとから言うことがあるわけです。つまり免許も取らないうちに自動車運転したような者については、何ぼ教習所に行って免許試験を受けに行っても、これには免許証をとにかく二、三年間は没、前科があるからというくらいの態度をきちっとしていかなければ、ただ無免許だからといっても、ちょっとうっかり忘れたというのとは根本的に違う、本来運転してはいけないという者が運転したということになるのだから。大体免許証を持っていなくて運転できるような者はやがて免許証を取るような人間だ、これは。だから、これについてはやっぱりチェックをしておいて、罰だから普通の者と同じように扱ってはならないのだ。そういう免許証を取らないうちに自動車運転したような者は、将来、免許証を取る試験を受けに行くときにチェックをできるように考えてみたらどうか。これは相当事故防止の問題としては私は大事なことじゃないかと思うんです。ちょっとこの無免許という、交通事故統計年報の五八ページの「交通違反取締・運転免許関係」とある一番上にある無免許というのは、一体持っているが忘れたのか、それとも初めから持たない者も含まれているのか、両方これを合算してここにあるのか、全然そういう者は載っかっていないのか、これはちょっと説明をしていただいて、あとは免許証の資格基準のレベルアップの問題と、いま言った重大事故を起こした場合には、少し長期間免許証を停止するというような関係とか、私は実質的に刑法改正よりはそういうことのほうが大事だと思う立場でこれは意見を申し上げているわけだがね。いまのような点についてどういうふうに考えておられますか。
  156. 鈴木光一

    政府委員鈴木光一君) 終わりのほうからお答え申し上げますが、無免許で違反を摘発した件数が非常に多いわけでございますが、先般のゴールデンウィークにも相当無免許で運転しておった者がございますが、この無免許というのはほんとうに無免許でございまして、免許は取っているけれども免許証を持っていないというのは免許証不携帯という別の罪名がございまして、その区分は明確にやっております。それで、無免許運転をした者がやがて受験をして免許を取るであろうということは当然考えられるわけでございまして、これは制度的に免許の拒否保留制度というものがございまして、免許試験には合格したけれども、過去に無免許運転でこういう事故を起こしているというような場合には拒否保留する制度がございます。それで、ちょうど取り消しと同じような事案をかりに起こしているとすれば、一年間は拒否するというような制度をとっておるわけでございます。  それから、運転免許の資格基準の強化の問題でございますが、これは教習所の問題に関連いたしまして、先ほど申し落としましたけれども、最近の交通事情がこういうことになっておりますので、かつては試験場の中で、いわば箱庭的なところで教習しておったわけでございますけれども、  一昨年から路上教習制度というものを設けまして、路上で必ず限られた時間は教習しなければいけないという制度をとりまして、現在のような交通事情にマッチした運転のできるような仕組みにしておるわけでございます。で、運転未熟の話が出ましたけれども、経験年数の浅い者は一般的にまあ運転未熟ということになろうかと思いますけれども、まあ私どものほうの——一年未満の者は事故は確かに多いわけでございますが、統計的な中をまた分析してみますると、免許を・取ってから半年ぐらいの間は非常に注意をして運転するので事故が少ない。ところが、一年ごろになると、なれてきてかえって事故を起こすということもございまして、運転未熟というか、まあ従来そういう原因分析をしておりましたけれども、これは警察官が恣意的にどうも運転未熟だ、経験年数が浅いから運転未熟だというような原因の分析をしがちなものですから、一体実態は何だ、ハンドルの操作が悪かったんじゃないか、スピードを出し過ぎたんじゃないかというような分析のしかたに変えているわけでございますが、そういう意味で運転未熟というのは経験年数が浅いからだということも必ずしも言えない。要するに、順法精神といいますか、そういうことにつながるのではなかろうか。半年くらいの間は一生懸命法律を守ってもう慎重に運転するわけです。ところが、なれてくるとあかんということになるわけです。そういうことがございまして、運転未熟ということに関連して、必ずしも教習所を出たての者が悪いのだということも言えない。免許取りたての者が悪いのだということも言えない。免許取りたてのときはそれ相応の運転をすべきであるということを教育しなければならない。なれるまではこういう運転をしなさい、高速道路に出たって、高速道路はなるほど百キロまでは出せるけれども、教習所を出てまだ半年くらいの者は、なるほど最高スピードの制限は百キロになっておるけれども、七十か八十で走りなさいというようなことを教えるということで、それがまあ先ほど申し上げました安全運転の知識という中でそういうことを教えていこうということでやっておるわけでございます。  それから運転免許資格の問題でございますが、基準につきましては、先ほど路上教習の問題を含め、また安全運転の知識を教えるということ、それから技能の検定につきましては、あるいは技能試験でもそうでございますけれども、まあかなりきつい技能試験をやっております。あれ以上のことを要求すれば曲乗りではなかろうかというぐらいに、かなりきつい技能試験をやっております。問題はやはり安全運転ということになろうかと思いますので、そういった面の、技能試験の面で強化するという面は、これ以上強化すれば曲乗りになってしまうぐらいの強いところをやっております。まあ学科試験や構造試験の問題もありますけれども、これをあまりむずかしくするということよりも、通常運転に必要なもの、これだけは知っててもらわなきゃならぬという考え方でやっております。  それから資格の問題につきましては、御承知のように、昨年、大型の免許資格の引き上げを行ないました。従来は十八歳で大型免許の受験資格がございましたけれども、二十歳以上でなければ大型の免許資格はないという改正をいたしましたし、それから四十年の改正のときには、従来、軽免許というのがございまして、十六歳で軽自動車運転ができるということになっておりましたが、この軽自動車というものを道交法上の軽自動車というものは廃止いたしまして、普通自動車と同じだ、普通免許だということで、構造上からいっても、それから運転の操作上からいっても普通自動車と変わらないんだ、ただ小さいだけだということでございまして普通免許にする、したがって、十八歳以上でなければ普通免許が取れないという仕組みにいたしまして、それはいろいろ中小企業等の雇用対策上の問題がございまして、三年間の猶予期間を置きまして、今年の九月一日からその軽免許の制度が廃止されるということになっておりまして、一連の受験資格年齢の引き上げ、先ほど大型で申し忘れましたけれども、二十歳以上でかつ運転経験が二年以上なければいけないということに大型免許の資格を引き上げた、そういうことで一連の資格の強化につきましては実施しているわけでございますが、この年齢をいたずらに引き上げるということもいろいろ問題がありますので、現在の段階ではこの程度でよかろうではないかというふうに考えている次第でございます。制度的にはそういうふうにいろいろの制度改正いたしまして、少しでも事故防止に役立つように努力しているつもりでございますけれども、何と申しましてもやはり安全運転の心がまえといいますか、そういうことに欠けるところが私どもは事故につながる、順法精神に欠ける、あるいは安全運転の心得というものをよく知らないというところから事故につながるんだというように私どもは考えております。もちろん事故というものは人と道路と車の複雑な相関関係ではございますけれども、人の問題につきましては、そういう考え方でいろいろ制度的な改正をやってまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  157. 木村美智男

    木村美智男君 いまのその無免許の問題は、文字どおり無免許だということなので、これはいずれにしましても意見もあるわけですが、実は委員長、私ようやく半分くらいなんですよ。そういう関係で、実はきょう私も大体四時半くらいまでのことを考えておりましたものですから、すでにこういう時間で、ちょっとあと十分、二十分なら延ばしてと思ったのですが、そういう関係でありますので、一応きょうはこれで私質問を終わらせてもらいたいと思います。  ただ、いままでの質問の中で、とにかく基本的に刑法の問題については考え方としてもまだかみ合わない点が一つあると思います。それから道交法等で取り締まりを強化したけれども、実際にはそれによって事故は減らないということは当局によっても立証されておるという問題、さらに、労働者の、運転手さんの賃金等についても極端な累進歩合制といったようなものや、あるいは労働基準法を無視した労働時間の状態にあって、運転手は非常に肉体的にも生活の面でも追いまくられておる。そういう状態に置かれて事故を必然ならしめるような条件が依然としてあるということ、あるいは車の規制の問題についても、これは政府側として明確な態度を今日持っていないというようなことで、逆に私が言うような交通安全施設をふやせば事故は減っているという結果が現実に出てきておるというようなことから言うと、どうしてもいまの刑法改正の方向というものは罰則第一主義的な考え方で、それが決して事故防止ということについて、いわば大きく一歩を進めるということにはまだまだどうもならないような気がしたわけです。まだ安全基準の問題であるとか、それから道路の問題であるとか、さらに救急体制の問題であるとか、お聞きしたい点も多々あるわけなんですが、そういう意味で、きょうは大臣、きょうの質問の過程を通して、私としてはまだ十分納得もいきませんし、また聞かなければならぬ問題点もありますので、相当時間を要する関係もございますので、私これできょうは一応質問を終わらせていただきたいと思います。長時間ありがとうございました。
  158. 北條雋八

    委員長北條雋八君) 本案に対する質疑は本日はこの程度にいたします。本日はこれにて散会いたします。   午後四時五十六分散会      —————・—————