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1968-04-25 第58回国会 参議院 文教委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月二十五日(木曜日)    午前十一時四分開会     —————————————    委員異動  四月二十三日     辞任         補欠選任      近藤 鶴代君     平島 敏夫君  四月二十四日     辞任         補欠選任      北畠 教真君     西田 信一君      平島 敏夫君     近藤 鶴代君      久保 勘一君     井野 碩哉君  四月二十五日     辞任         補欠選任      井野 碩哉君     久保 勘一君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         中村喜四郎君     理 事                 楠  正俊君                 佐藤  隆君                 鈴木  力君                 小野  明君     委 員                 大谷藤之助君                 久保 勘一君                 剱木 亨弘君                 近藤 鶴代君                 内藤誉三郎君                 中野 文門君                 吉江 勝保君                 岡  三郎君                 加瀬  完君                 千葉千代世君                 松永 忠二君                 柏原 ヤス君    国務大臣        文 部 大 臣  灘尾 弘吉君    政府委員        文部大臣官房長  岩間英太郎君        文部大臣官房会        計課長      井内慶次郎君        文部省初等中等        教育局長     天城  勲君        文部省大学学術        局長       宮地  茂君        文部省管理局長  村山 松雄君    事務局側        常任委員会専門        員        渡辺  猛君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国立学校設置法の一部を改正する法律案(内閣  提出、衆議院送付)     —————————————
  2. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) ただいまから文教委員会を開会いたします。  委員異動について報告いたします。  昨二十四日、北畠教真君が委員辞任され、その補欠として西田信一君が選任されました。     —————————————
  3. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 国立学校設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  前回に引き続き、質疑を続行いたします。  なお、政府側より灘尾文部大臣宮地大学学術局長が出席いたしております。  質疑の申し出がありますので、これを許します。小野君。
  4. 小野明

    小野明君 前回岡委員質問の中で、これは予算分科会鈴木委員質問にもあったわけでありますが、やはり総括定員法との関係で宙に浮いておる二千七百名でありますか、これをどうするかという問題が国立学校にとってはきわめて重大な関連があると言わざるを得ぬと思うのであります。この点について文部省のほうでその後検討をされておれば、それにどう対処していくかということについてお伺いをしておきたいと思うのであります。
  5. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) ただいまのお尋ねでございますが、現在としましては、前回岡委員にお答え申し上げた程度のお答えしかございませんので、そのようにひとつ御承知おき願いたいと思います。
  6. 小野明

    小野明君 そうしますと、大体いつごろをめどにこの善後措置を講じられるか、その辺の含みでもあれば伺わしていただきたいと思うのです。
  7. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) これもお答えしにくい問題でございますが、私どもとしましては、前回も申し上げましたように、全体の定員法成立をいたすのを願っておるわけであります。そのほうが中心になるわけでございますから、いつごろということをいま申し上げるわけにもまいりませんけれども、このままで国会が過ぎてしまって手がつけられないというような状態になることはどうしても避けていかなくちゃならぬと思います。そのような心づもりで文部省としてはいろいろ考えておるわけでございます。
  8. 小野明

    小野明君 そうしますと、大体国会の会期というのもめどがついておるのでありますけれども、その辺もまだ確たるめどというものはつけかねるということでございますね。
  9. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 総定員に関する法律成立について政府としても極力国会のほうにお願いしておるわけでございまして、これと違ったやり方というふうなことについて、いまかれこれ申し上げることは私としてもできかねるわけでございますので、御了承いただきたいと思います。
  10. 小野明

    小野明君 それでは、次の質問に移りたいと思うのですが、大学局長お尋ねをしたいと思いますが、この前、文理学部改組につきまして、一応四十三年度で終了のめどであると、こういう御説明があったと思うのであります。資料の中にも大体そのようにしるされておるのでありますが、そうしますと、今後の学部改組あるいは拡充といった計画がありましたら、ひとつ御説明をいただきたいと思います。
  11. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 文理学部改組につきましては、かねて御答弁申し上げておりますように、終戦後新学制ができました際に、大体旧制の高等学校等を包含した大学が一応文理学部といったようなものを設けましたが、その性格もあいまいでなく、また何となく文理の教養を身につけるということでなく、もっと充実した教育を行なうようにといったようないろいろな理由が学校からもあげられ、中央教育審議会でもそういった御検討もありまして、計画的に文理改組をするようになってまいった次第でございます。それと、その他の学部の、かりにそれを改組したり拡充したりということがあるとしましても、文理学部改組と直接の関係はない問題でございます。そこで、文理学部改組をいたします場合でも、いろいろ定員的にも非常に増員を必要としますし、また予算的にも相当な研究を要します。こういうようなことから、直接その他の学部との関係はございませんが、ただ年次的に学部等充実していきます場合に、予算定員等関係から、文理改組ということがあった時代と終わった今後の時代では、そういう意味では関連もあり関係もあろうかと思います。それと若干文理改組性格は違いますが、従来は、特に四十一、四十二、四十三年間は、大学生急増期間でもございましたし、急増対策ということも一部加味して行ないました。ところが、そういう問題もなくなりましたので、今後におきまして、文理学部と同じように計画的にどの学部をどういうふうに改組拡充するかということは、文理学部ほど計画性は持っておりません。そういうことで、たとえば昨年、薬学部とかあるいは山梨、三重に経済学部とか工学部とかというようなことも考えておりましたが、それは予算のことで実現を見ませんでしたので、今後はそういったようなものを進めていきたい、かように思います。
  12. 小野明

    小野明君 そうしますと、この文理学部の場合は一応かなり計画的に行なわれてきたのでありますけれども、その他の学部改組統合——改組統合といっては問題がありましょうが、学部改組という問題については、学部種類とかあるいは適正規模、こういった問題について計画というのはないわけでございますか。
  13. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) たとえば大阪大学文学部等は、一応文学部の中にあります社会科学的なものを取り出しまして、社会学部というのを文学部から独立してつくろうという計画もございました。したがいまして、文理改組とは違いますが、学部によりましては、大阪大学にそれが一例ございますが、そういうようなこともあろうかと思います。しかし、いま文理改組のように文学部から社会学部を独立して計画的にいきますといったような計画的なものは持っておりません。
  14. 小野明

    小野明君 それでは、各大学からいろいろこう要求が上がってきたのを待って処理するというやり方であるのか、それとも文部省のほうで計画的に、この学部改組にあたってはこういう方針である、あるいは適正規模についてはこう考える、こういった方針を示すというようなことはないのですか。
  15. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 学部新設の場合の考え方ということであろうと思います。それで、現実問題といたしましては、大学予算要求時期あるいはその前からいろいろ要望現実の問題としてはございますが、具体的には大学が御要望になるものを取り上げております。しかし、それは大学要望されるということからじゃなくて、地域性考えましたり、あるいは社会的な需要ということも考えますし、またその大学が、たとえば単科大学であるか、あるいは二学部大学であるか、もっとたくさんの学部であるか、そういうようなことから、たとえば二学部ではどうも学校運営上おもしろくないという問題が従来からあるような学校につきましては、三学部をつくるということが強い大学考えでもあるし、文部省などとしてもそのほうが管理運営上いいだろうといったような場合もございますので、総合的に勘案していたします。ただ、その場合に、大学が好みもしない、大学が必要としないのに、無理無理文部省がこれをやらすということは実効の上からいかがだろうかということで、現在まで大学が好まない、大学要望もしないものを押しつけるとかということはしないできたという沿革はございます。
  16. 小野明

    小野明君 先般、私ども大分を視察いたしました場合に、大分大学にたしか工学部医学部を増設してもらいたい、こういう要望があったように記憶をいたしておるのであります。非常に具体的になるわけですが、その点についてはどのように処置をされているのか、あるいはそういった要望をお聞きであるかどうか、お尋ねをいたしておきます。
  17. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) いま大分大学工学部医学部というお話でございますが、私のほうで聞いておりますのは、工学部ということを言っておられることは、私、直接聞いていないのですが、大学課長は聞いているようでございます。しかし、それを予算要求として出してくるまで熟した要望ではないように感じております。
  18. 小野明

    小野明君 そうすると、これは私ども文教委員の視察の際に要望があったということであって、文部省のほうには具体的に工学部設置してもらいたい、そういうのはまだないわけですか。
  19. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) そういった御要望は聞いてはおりますが、具体的に予算時期に大学としてはぜひこれをといったように予算として、その予算時期に大体大学の意思はコンクリートになるものでございますが、そういう意味におきましてはまだございません。要望としては文部省のほうにいろいろ述べておられることは承知しております。
  20. 小野明

    小野明君 そこで、この要望現地からあることは、まあ間違いがないと思われますが、大分大学工学部設置をするということについてどうお考えになりますか。
  21. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 大学に、工学部に限らずいろいろ学部をつくります場合は、先ほど申しましたように、いろいろな事情を考え検討いたしております。したがって、大分大学は現在教育学部経済学部の二学部でございます。そういったような二学部大学につきましてはいろいろ問題もございますし、その他工業関係技能者養成が必要でございましょうから、将来の問題としては検討に値する問題と考えておりますが、すぐ来年度からどうというようにはまだ文部省としては考えておりません。
  22. 小野明

    小野明君 そうすると、まだ具体的には何も検討しておらぬ、この設置必要性、こういうものについては別にいまのところそう痛切なものではない、このように受け取ってよろしいのですか。
  23. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 文部省で全体の大学につきまして学部をつくったり学科をつくったり、あるいは具体的に予算要求します場合に、大分大学だけについて見ますと、なるほどもっともだというような感じのもの、これは大分に限らずいろいろございます。しかし、国全体としてどうするかというようなことは、国家財政観点もございますし、また国全体としての技能者養成とか、その他いろいろな問題を考えなければいかぬ。そういう観点からは、明年すぐ予算要求で大蔵省に大分工学部をつくるというところまで文部省としては考え方が熟していないという段階でございます。
  24. 小野明

    小野明君 やはり、その大学が地元の大学考えてもおらぬようなことを、これは全般的な問題なんですが、あなたのほうで、ここにつくれとかなんとか、こういうことを私としては申し上げておるわけではないんです。今後の学部の増設をしていく場合に、学部種類適正規模、こういったものについては、やっぱり何らかの指導方針といいますか、こうすべきであるという方針が要るのではないか。その点は中教審検討に待つといえばそれまででありましょうけれども前回お聞きをいたしたところでは、中教審も四十四年末これに答申を出すといわれるのであります。で、大学入学希望というのは、やっぱり量、質ともに重視していかなければならぬというのは、前回も私、意見を申し上げておるのです。そういった点からも、現地要望もあわせながら、やっぱりこういう方針で増設するんだ、学部新設についてはこうだと、その点は国家社会要請という問題もあるでしょうけれども国民要望ともかみ合わせながら一つ方針をお立てになるべきではないか、こういう気がしてならぬのであります。そういった観点から、やっぱり私が知っておりますのは大分大学工学部の問題がその中にはまってくるので、そういった指導方針から考えますときに、こういった問題をどうお考えになるのか、こういうお尋ねをしておるわけです。そういった全般的な問題、今後の方向等について御見解があれば、お尋ねをしておきたいと思います。
  25. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 御趣旨の点は私もごもっともであると思っております。したがいまして、中央教育審議会ではもっと基本的な大学適正規模とかいろいろな問題をやっていただきますが、一例を申しますれば、大学生急増も済みましたことですし、そういう意味で量よりも質ということで質的充実をはかっていきたい、そういったような考えを持っておりますので、先生の御趣旨のような方向に、ただ中教審だけにあずけるということでなくして、文部省自体、局としても十分考えていきたいと思っております。
  26. 小野明

    小野明君 次の問題に移りたいと思うのでありますが、国・公立大学の果たすべき役割りを、私はむしろ私学が非常に大きくその欠陥を補っておる、こういう現状にあると思うのであります。というのは、国立大学及びその学生の数にいたしましても、非常に自然科学系重点がある。人文科学社会科学の倍くらい自然科学が持っておる。それで、国家社会要請がそこに重点があるからと、こういう受け方をした結果が、こういう一つのアンバランスな結果を招いていると思うのですが、その点を私学の、私立大学比率を見てみますと、これが人文と自然では逆になっておるわけですね。これは局長も御存じだと思うのです。大学の数自体にいたしましても、私立大学というのが非常に国の施策を補っておる、こういう結果が見られると思うのです、数字の上からいいますとね。そこで、まあこの私学振興ということを当然政府としても今日まではかられてきた点が若干見られると思うのであります。そういった点から、私立大学振興策、この拡充施策についてどのようなお考えをお持ちであるか、これをまずお尋ねしておきたいと思うのです。
  27. 村山松雄

    政府委員村山松雄君) 私立学校実態振興必要性につきましては、お述べのとおりだと思います。文部省といたしましては、私学助成策の基本的な方角につきまして、過去二年にわたりまして、臨時私立学校振興方策調査会に諮問いたしまして、昨年六月答申を得ております。この答申に基づきまして、今後の助成策拡充に全力を尽くしてやってまいりたいと、こういう角度で、たとえば昭和四十三年度予算におきましては、従来からやってまいりました助成策拡充するほかに、新たに、経常的教育研究費助成のために、四年制の私立大学を対象として約三十億の補助金を計上いたしております。
  28. 小野明

    小野明君 これはあとで管理局長のほうにはお尋ねをいたしますが、大学局長にその前に。  このいただいた資料によりますると、国立人文社会科学系で一万四千百四十七、自然科学系で三万二千八百七十七、こういう倍以上の定員があるわけですね、入学定員ですが。私立で見ますと、人文社会科学系で八万七千十五、自然科学系で今度逆に四万七百五十五、半分になっておる。公立関係で見ますと、人文社会科学系で五千四十五、自然科学系で二千八百三。こういうふうに人文社会科学系自然科学系が、国立とは逆になっておるわけですね。そこで、この国家社会要請ということが、自然科学に多く重点を置かなければならぬということを、大学局長もこの前の御答弁であったかと思うのですが、その欠陥公立とかあるいは私立で補っておるようなこの数字が出ておるわけです。これを見ますときに、今後の国立大学をどういう方向拡充していかなければならぬか、あるいは従来これは偏重という結果がひとつ出ておるわけですがね、こういった点についてどのようなお考えをお持ちであるか、ちょっとお伺いしておきます。
  29. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) いま資料数字をお述べになりましたが、この実態につきましては、実は国といたしまして、科学技術振興といったような見地からもそうでございますが、科学技術者養成科学技術振興といいます場合は、私どもといたしましては、それを国立だけでカバーするのではなくて、公私立も通じて、わが国の大学全体でそういう方向に力を入れようというふうな基本的な考え方持ちました。  ところで、私立学校からは、これは直接私立学校側からの御要望も強かったわけでございますが、私学で比較的経費の高い理工系学部学科というものは経営に非常に支障があるのだということで、むしろ私学側要望としては、国はもう極端にいえば文科系はやめてしまって、理工系だけしたらいいのだとまで極論される関係者もおられるようなことでございまして、そういったようないろいろな観点考えまして、特に大学生急増対策等におきましても、理工系文科系比率は七、三といったように、理工系を七、文科系を三というふうに、国立では意識的にやったわけでございます。  しかしながら、その結果の数字で、それでは今度文科系私立にばかりたよって国立はどうだという、またそういう観点も出てくるわけでございますが、したがって、まあ私どもといたしましては、国立だけのことを考えないで、常に公私立大学のことも考え、国全体としてこうありたいという考えからやっておりますし、それから、特に文科系をふやさないということでございませんで、いま申しましたように七、三の比率ではございますが、文科系も必要だと思われるものは国立もふやしてきておるという現状でございます。  まあ将来、大学生急増対策は済みましたので、今後はもっと特にこういう学問が必要であるということは社会趨勢等からいろいろ出てこようかと思いますが、そういう観点検討していきたい。その場合も、国立だけではなくて、やはり基礎に公私立のことを考えていくのが当然であろう、こういうふうに考えております。
  30. 小野明

    小野明君 これは大臣お尋ねしたほうがいいかと思うのでございますが数字としてはいまのような結果になっておるわけであります。非常に人文社会科学系というのが国立段階では軽視をされておる。その軽視をされておる分を私立公立がむしろ補っておられる。で、局長の御説明によると、これは意図的におやりになったんだと、こう言われるわけであります。しかし、まあ文部省だけがそうかといいますと、たとえば科学技術庁関係科学技術基本法で見ましても、非常に国の施策として自然科学系というのが重視をされてまいっているわけです。で、まあ学問というのが調和を保って研究されなければならぬということは、もう先刻御承知であろうかと思うのですが、国の施策として自然科学にウエートがかかり過ぎておる。政府方向としてもそうである。ところが、私立がそれを補っておると、こういうのは、やはり国民教育に対する要求というものと背馳をしておるんではないか、あるいは学問全体の発展ということを見た場合に、そういった観点がちぐはぐな国の施策になりつつあるのではないか、こういう気がしてならぬのであります。こういう点について大臣はどのようにお考えであるか、お聞かせをいただきたいと思います。
  31. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 大体大学局長がお答えいたしましたようなことと思うのでございます。いわゆる技術革新時代でもございますので、科学技術振興ということが非常に大きな国家的要請にもなっておるわけであります。そういう観点もございますし、また学生が急増するというふうな観点もございまして、今日まで御承知のような姿で大学拡充整備をやってきたと思います。しかし、今後の問題として考えます場合には、もちろん基本的にいろいろ御検討は願っておりますけれども、やはり科学技術の問題は、あくまでも日本も世界の中で優位に立つような教育をしていかなければならぬと存じますけれどもお話にありましたように、科学技術ばかりに片寄っていくということは、これは避けていかなければならぬということは当然だと思います。したがいまして、今後の大学の内容の充実と、こういうようなことを考えます場合には、私はやはり人文系の面について、これをおろそかにする、こういうふうな態度で進むべきではなく、やはり調和のとれた姿で進んでいかなければいかぬ、この方向でまず考えてみたいと、かように思っております。
  32. 小野明

    小野明君 それと、いま管理局長が御説明になったわけでありますが、最近私学白書というものが出されました。これを文部広報が抜粋をしておるわけですね、これに出ておる数字によりますと、授業料入学金等を見てみますと、文科系で約十六万円ですね。入学初年度納付金です。それから、理科系になりますと、二十二万四千円になる。それから、医科歯科系になりますと、六十七万円という膨大な数字があがっておるのであります。国立に比べますと非常に懸隔がある、こういうことが一目瞭然であります。それから、消費者物価に比べてのこういった大学の必要な経費、こういうものを見てみますときにも、消費者物価の上がりが四倍であるときには教育費が六倍であるというようなことも指摘をされておるのであります。これは国民の家計に与える影響というものはきわめて大きなものがあるのです。  こういう現実、しかも私立学校にはいま意図的にそういう調和をとらしておるというような、とらさざるを得ないというような結果を招いておると思うのですが、私学振興というものがいま管理局長が御説明になった程度でよろしいものかどうかですね。さらにこれを拡充するとすれば、その方向というものはどういうものであるか、その点で方針があれば大臣の御見解をお聞きをしておきたいと思うのです。
  33. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 私学現状から申しまして、政府として積極的に私学振興方策を講じなければならぬ、言えかえれば、助成問題等についてもっと積極的でなければならぬという点については、私どももそのように考えておるわけでございます。ただ、先ほど管理局長がお答え申し上げましたような、臨時調査会を設けて、その対策についての答申をいただいておるわけであります。文部省といたしましては、その答申趣旨を尊重いたしまして、この方向で積極的に進んでまいらなければならぬと存じますが、しかし、答申にもございますように、それだけでも片づかないものがある、もっと根本的に考えなければならぬものもあるように指摘せられておるわけであります。そういう根本的な問題についての考え方というものもまとめてまいりまして、初めて私学に対する振興方策というものもはっきりしたものが出てくる、こういうことにもなろうかと存ずるわけであります。  考え方としてはそうでございますし、また問題意識についても、われわれもこれを十分に問題にしなければならぬというふうに考えておりますが、実際問題として、ざっくばらんに申し上げますというと、これは大問題だと思います。私学のあり方の問題についても十分検討を加えて、また私学側においてもいろいろくふうもしてもらわなければならぬ点も多々ありますと同時に、国との関係においてどうあるべきかと、こういう問題もありましょうし、何よりもまず第一に財政的制約というものも実際問題として出てくる問題でございますので、基本的な解決ということがきわめて望ましいことではありますが、実際問題としては非常に骨の折れる課題として私ども考えております。できるだけ、しかし、私学振興につきましては今後ともに積極的な努力をしてまいらなければならぬと存じております。  とりあえず、私は私学の方々にもときどき申し上げるわけでございますけれども政府としてもできるだけの努力はしてまいりたいと思いますけれども、一面、私学のほうの側におかれましても、今後私学の経営についてもっと合理化する道がないものであろうか、あるいはまた、その経営についてだれが見てもわかるようなはっきりした姿で経営をし、私学に対する財政的な意味における、あるいは経営的な意味における国民の信頼というものがもっと高まる必要があるのじゃないか。これは私、率直に申し上げまして、私学側の努力と、そして私どもの努力というものが両々相まって、私学振興策振興に対する施策をもっと充実するためにやってまいりたい、さように存じておるような次第でございまして、根本的には大問題で、なかなか一朝一夕に解決のできる問題とも思えない要素がございますけれども、とにかくいまのままでは不十分だということは、これはもうわれわれよく認めておるところであります。いま申し上げましたような趣旨で努力をしてまいりたいと存じております。
  34. 小野明

    小野明君 管理局長お尋ねをいたしますが、いま大臣が言われたように、私学経営といったものには非常にいろんな問題がこの中にあるわけであります。それらにどういう問題点があり、どういうそれは改善をしなければならぬのか、この点についていま検討されておると思うんですが、そういった内容についてひとつ局長から御説明をいただきたいと思うんです。
  35. 村山松雄

    政府委員村山松雄君) 経理上の問題点というやや狭い角度から御説明申し上げますと……
  36. 小野明

    小野明君 いや、全般的にひとつ、経理上も問題でしょうけれども
  37. 村山松雄

    政府委員村山松雄君) 私学経営の問題ということは、何と申しましても、教育研究活動を活発にするためには財政的需要が多いと。その財政的需要の多いのをまかなうための収入としては、学校法人の収益事業あるいは基金収入、寄付金、まあそういうものは比較的少なくて、大部分は学生納付金にたよらざるを得ない。学生納付金の引き上げもいろんな意味で限界に達しておる。そこで、残された道は、当座の苦境を切り抜けるためには借り入れ金にたよる。借り入れ金の利子に追われるというようなことが経営上の問題点だろうと思います。それから、経理上の問題といたしましては、現在の私立学校あるいは学校法人の組織を、従来の財団法人と違って、たとえば理事を五人以上にして同族を含めないとか、あるいは評議員会を必置にするとか、あるいは監事の権限を強めるとかといういわゆる内部監査組織を強化して、内部監査によって明朗化するというたてまえで、行政的な監督規定はないわけでありまして、自主的に合理的な経営をすることが期待されておるわけでありますけれども現実には間々ふなれその他の事情もあって問題が起こっているというのが実情であろうかと思います。  これに対する対策としては、経営の問題としては、必ずしも十分ではございませんけれども助成の方策をかためていくと。それから、経営経理の合理化については、調査会答申でも言っておりますように、内部監査だけではなしに、外部監査的なことも考えていくというようなことが指摘されておりまして、その意味においては、私学自身も、私学団体においても、たとえば経理準則を定めて合理化するという動きが進められております。そういう自主的な動きと相まって、文部省としても場合によっては制度的にも考える必要があるのではなかろうかということで、実は答申に基づいて助成方策を拡充する機会に、私学振興、経営の合理化も含めて、何か立法措置も必要ではなかろうかというようなことも考えたこともございますが、何さま問題が多岐にわたっておる関係もあり、また私学側の意向も必ずしも熟さないという関係もありまして、さしあたって制度的に何かをやるということは、しばらくなお検討することといたしまして、事実上の動きを私学側文部省側となるべく意思を疎通させながら進めておるという実情でございます。
  38. 小野明

    小野明君 先般来日大の事件が新聞に報じられておるのであります。若干最近は内部自体で再検討しつつある、こういう報道もあるわけなんですが、女の会計の方が自殺をする、あるいは二十億のヤミ給付がある、これは私学一つの大きな問題点が口をあけた、こう言わざるを得ないのであります。それで、この点について私が管理局のほうに資料要求をしておりました。ところが、一向に御報告がないので、まさか文部省の中には、そういったものを出してはならぬというようなこともないと思うのですが、資料をお待ちしておりますけれども、一向に今日までお知らせがない。非常に私は不満に思っておるのです。私はほかの委員会はどうであるか知りませんけれども、お願いいたしましたら、ひとつ率直にお出しいただくように私はお願いをしておきたいと思うのです。きょうは、その資料がございませんから、ひとつ日大の事件というのはどういう問題なのか、管理局長のほうで握っておられる限りひとつ御報告をいただきたいと思います。
  39. 村山松雄

    政府委員村山松雄君) 新聞に報道されたいわゆる日本大学の例の事件というものは、東京国税局の直税部資料調査課によって行なわれた日大の所得税関係の調査ということでございます。税関係の調査にはいろいろございまして、強制的な査察などがあるわけでありますが、日本大学が現在受けつつあるのは任意の調査ということでございます。時期としましては、二月八日と三月二十二日と二回に分けまして、日本大学のほとんどすべての学部、それから一部の高等学校にわたって、その観点からの調査が行なわれたわけでありまして、国税局としては日本大学の給与、特に諸手当関係に源泉徴収漏れがあるのではないかという疑いで調査したもののようであります。  これに対して日本大学側としては、従来とも所轄署の指導も受けて所得税徴収事務は行なっておるので間違いないと思うが、調査によって間違いが判明すれば是正をいたしたい。それからそれに関連して、内部の機構などについても若干検討を加えたいということでございます。
  40. 小野明

    小野明君 その程度でありますと、大体新聞にも書いてあるのです。こういう問題が発生をいたしました場合には、管理局としてはどうなんですか、やはり報告を待っておるということなんですか。あなたのほうから、どういう事件か報告を出せと、こういうふうに御要求をなさるのですか。どういうふうに処理をされるのですか。
  41. 村山松雄

    政府委員村山松雄君) この種事柄につきましては、まあ大学としては現行法では報告の義務は必ずしもございませんし、文部省としても報告を求めることができるという程度でありまして、強制的に調べるというたてまえにはなっておりません。本件の処理といたしましては、新聞に報道された限りにおきましてもなかなか大きな問題であると考えまして、日本大学説明を求めておりましたところ、実はごく最近簡単な御報告があり、なお調査中であるからということで、詳細の点については後日に送っておるのでございます。
  42. 小野明

    小野明君 そうしますと、新聞に大口脱税とかあるいは裏帳簿でヤミ給与、こういうことがでかでかと書かれておるのですけれども、その真偽についてはまだはっきりしない、また調査の権限もない、こういうことですか。
  43. 村山松雄

    政府委員村山松雄君) ほぼそのとおりでございます。
  44. 小野明

    小野明君 管理局としては、どうですか、これだけ大きな問題でありますが、管理局としてはというよりも、文部省としてはこの問題をどう扱われるんですか。
  45. 村山松雄

    政府委員村山松雄君) これは国税局において所得税法に伴う権限を持っての調査であり、したがって、結論が出ると思います。その結論に従って文部省として現行制度でできる指導、助言を日本大学に対していたしたいと思います。
  46. 小野明

    小野明君 それは結論の出るまでということになると、かなり時間もかかるのではないかと思いますが、なるべく早くこの問題を、われわれ文教委員でありますから、経緯等についてもお知らせをいただきたいと思うのであります。軽々に、私どもこの事実を誤認をした上でこういう問題を取り扱うということは、やはり避けたいと思っておりますし、事実は一体どうなのかということをはっきりひとつお知らせをいただきたい。再度この場でお願いをしておきたいと思うのです。  それで、やはり最初の問題に返りたいと思いますが、私学助成ということがやはり私は当面の急務でなければならぬと思うんですが、それかといって、こういう問題があったのではたいへんでありますし、それだけに大臣の言われた私学のあり方について根本的な問題をえぐり出した上で再検討していくという御答弁があったように思いますけれども、それはそれといたしまして、当面のやはり問題点は、助成策を強化をしていく、そうしてこういう事件がないように処置をしていく、やはりそういうことがこの際政府施策として最も望まれることではなかろうかと、こう考えるわけであります。  それで、とりあえずの施策といたしまして、経常費の補助、こういうことがやられたわけであります。その中で、経常費といいましても、人件費は除外されて教育研究費に限られて補助をされておるようになっておるのですが、この配分についてはどのようになさろうとしておるのか、それをひとつお尋ねをしておきたいと思います。
  47. 村山松雄

    政府委員村山松雄君) 四十三年度予算に計上されました三十億の経常的教育研究費は、対象は四年制の大学であって、費目は教育研究に供される有形物に対して補助する、こういうことになっております。  配分のやり方につきましては、現在、私立大学側の意向も徴し、大蔵省と協議して、補助要項をつくって実施いたしたいと思っておりますが、基本的な考え方は、助手以上の本務教員数、これは指定統計で正確な数が把握できるわけでありますが、これに対して一人当たり平均の金額をきめて、金額を人数に掛けて大学当たりの基本金額を出して、それで実情に応じて若干の調整を加えて、これを定額として補助すると、こういう考えでいま折衝しております。
  48. 小野明

    小野明君 あれですか、いまの御説明ではよく私も理解をしかねる点があるのですが、大体私立大学すべての教官に行き渡るわけですが、どういうことですか。
  49. 村山松雄

    政府委員村山松雄君) 考え方といたしましては、私立大学の本務教員数を計算の基礎といたしますが、これは教員個人に渡すのではなくて、そのように計算された金額を定額といたしまして大学に補助交付いたしまして、大学が受け取ったものを指定された用途、たとえば教育研究用の機械器具等の購入に充てて教員の用に供する、こういう形になります。教員個人の金として渡るというものではございません。
  50. 小野明

    小野明君 先ほど有形物と言われたのはそういう意味ですね。そうしますと、教育研究費のほかに人件費を補助するかどうかということが大きな問題であろうかと思いますがね、この人件費の補助についてはどのようにお考えですか。
  51. 村山松雄

    政府委員村山松雄君) 先ほど御説明申し上げました臨時私立学校振興方策調査会答申におきましても、人件費は非常に問題が多いとしまして、結論を将来に送っております。そういう関係がありますので、われわれ行政当局としては、人件費問題はさらに基本的な検討がなされたる後に取り上げるか取り上げないかを判断すべき課題だ、かように考えております。
  52. 小野明

    小野明君 その検討というのは、どういう素材についてどういう検討を加えられるわけですか。
  53. 村山松雄

    政府委員村山松雄君) 検討の方法について的確な具体的な方針はまだきまっておりません。
  54. 小野明

    小野明君 経常費全体についてこの補助をしなければならぬというのが私はやっぱり前提でなきゃならぬと思うのですね。それと、現行やはりこの私学の援助としては三点ばかりあるようですがね。学校法人の減免税措置と、それから研究用設備とか教育用の施設補助とか、それから長期低利の融資とかいうような三点もあがっておるようですが、その従前からなされておるこの拡充策の三点をさらに改善をしていくという、さらに条件を引き上げていくという、長期低利にいたしましても、利率にしても問題があるわけですね。この点を若干軽くしていく、あるいは償還年数を長目にもっていくとか、そういったことで施設費から来る学生負担をなくしていく、こういった方向検討というのは当然私はなさるべきではなかろうかと思うのですが、そういった点についてどうですか。
  55. 村山松雄

    政府委員村山松雄君) 四十三年度予算におきまして、従来からやっておりました理科設備あるいは研究設備の補助金を若干ずっと増額をはかっております。それから、私立学校振興会を通じて、主として施設に対する貸し付け金でございますが、これにつきまして貸し付け財源の増加をはかるとともに、貸し付け条件、まあたいへんわずかでありますが、償還の期間だとかあるいは利率につきまして多少の改善を試みております。
  56. 小野明

    小野明君 多少の改善ということでは、やっぱり問題が私は解決しないと思うのです。ですから、たしか私学の連合会ですか、私学振興会のほうからも、償還の年数とかあるいは利率とかいう問題について、さらに軽減をはかってもらいたいと、こういう切実な要望があると思うのです。こういう点をさらにひとつ積極的に御検討をいただいて、教育上における私学が果たしている役割りがきわめて重大であるだけに、早急にこういった救済策というものが講じられてしかるべきであろうと思うのです。  そこで、この辺でひとつ、この問題に関する大臣のいま一歩進んだ御見解を承っておきたいと思うのです。
  57. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 先ほども申し上げましたとおり、当面必要とする施策方向は大体調査会答申にも出ておることでございますので、その線を尊重しまして、もっと積極的にやってまいりたいということを私は申し上げたつもりでございますが、いま御指摘になりましたような、今回は新しく教育研究費、経常的なものが認められたわけでございますが、これの拡充ももちろんはかっていかなくてはならぬと思います。同時に、御指摘になりました税関係でありますとか、あるいは資金融通の関係でありますとか、そういう面につきましても、決して文部省も放任しておるわけじゃございません。なかなか思うように目的を達しかねているのがいまの状況でございますけれども、ますます熱意を持って財政当局とも話し合ってまいりたいと思っております。
  58. 小野明

    小野明君 次の問題をお尋ねいたしたいと思いますが、最近大学に非常に捜査の手が伸びておりますね。けさも国学院大学ですか、強制捜査をされたと、こういう報道がされておるのですが、いままで捜査をされた大学、最近ですよ、どうも羽田事件とかあるいはその他の事件に関連をしてだろうと思うのですが、捜査を受けた大学名、それから容疑の内容ですね、そういった問題について御報告をいただきたいと思います。
  59. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) いま小野先生の言われた捜査というのが、いわゆる私学の先ほど来の御質問のような経理関係ではなくて、その他のものも含むようでございますので、突然の御質問で、ちょっとこまかい資料を持っておりませんが、例の学生の事件に関連しましては、九州大学で、先般学内で教養部の学生会館に数十名の学生が入りまして、いろいろ派閥的なことからいわゆる乱闘を起こしたという問題で、福岡のほうの警察が九大に入った事件、捜査をした事件がございます。それから、最近では、京都大学で、医学部のある学生大学院の入学試験を受けるべく入学試験場近くに行きましたところ、これに反対する学生によって本人の意に反して試験を受けることができなかった。当人はそのために階段を引きおろされたとか、あるいはからだに多少打撲傷を負ったとか、まあいろいろのことがあったようでございますが、このために京都のほうの警察が京都大学を捜査したという事件がございます。そのほか、例の三派全学連の関係では、法政大学と、それから中央大学学生会館でございましたか、まことに失礼でございますが、思いつくままに幾つかの例を申し述べましたが、もし御必要でございますれば、ちょっと時間をかしていただいて詳細な報告資料はお出しいたしたいと思います。
  60. 小野明

    小野明君 必要でございますればというお話ですがね、これはあなたは大学学術局の局長ですからね、どこの大学へどういう事件で警察が入ったというようなことは、やっぱり当然あなたのほうとしてはちゃんと資料を常にお持ちでなくちゃいかぬ、これはどういうふうな事件である、これについてはどうという。どうも仕事に不熱心なことではないですかね。これは、大学というのは教育をする場ですからね、警察が入るなんというのはきわめて重大な事件なんですよ。ですから、それを必要であれば後日提出しますということでは、ちょっとお粗末じゃなかろうかと思いますがね。
  61. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 最近の例といたしましては、先ほど申し上げました四つだと思いますが、先生の御質問趣旨が多少広いようでございましたので、もちろん最近といいましてもごく最近のことを申しましたので、一年以上も前というと多少あるというような感じもいたしましたので、申し上げました。決して不熱心ではございませんが、御了承願います。
  62. 小野明

    小野明君 どうも心がけの違いじゃないかと思うんですがね。もっとやっぱりこういう問題は私は敏感であってほしいと思いますね。そうでないと、これは大学の自治にも関係のある問題でして、やっぱりきちんとした対策というものが考え方はいろいろあるにいたしましても、踏み込んだということはたいへんな事件ですから、慎重にひとつお取り扱いをいただきたいと思うんです。  それから、国学院大学もあるんじゃないですか。それをひとつ。
  63. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) けさ新聞に載っておった件でございますか。
  64. 小野明

    小野明君 そうですよ。
  65. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 実は私のほうもけさ新聞で見ました段階で、まだ大学から詳細な報告を受けておりませんので、それ以上のことを存じておりません。
  66. 小野明

    小野明君 たとえば捜査に学内に入るというような場合には、何ですか、大学当局には警察庁は連絡をしないんですか。あるいは大学学術局あたりにも、文部省にも、そういう場合には、事前にやれというのはちょっと捜査の必要上無理かもしれませんが、本日こうだったというようなことはやっぱり報告をしてもらう必要があるんではないですかね。その点についてはどういうふうにお考えですか。
  67. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) まあいろいろ警察のほうの捜査は、これはいわゆる強制捜査でありますれば、捜査令状も持って、ちゃんと施設に入るときには責任者にそれを見せて入っておると思います。ただ、入ります場合に、いろいろ事情もございましょうが、御指摘のように捜査をしたあとすみやかに文部省としても状況を把握すべきだと思います。そういう点につきまして、今日ただいま新聞に載っておる実情について私のほうがまだ大学から報告を聴取していない、警察からも十分な報告を聴取していないという点については、これは私のほうの責任であろうと思います。今後こういうことは間髪を入れず詳細に報告を聴取してきたいと考えております。
  68. 岡三郎

    ○岡三郎君 ちょっと関連して。いや、そういうことではなくって、慣例としていままで警察庁のほうからもそういうことがあったと思うんですがね。やっぱり、義務とは言わぬけれども一つの義務的な姿勢において文部省のほうへ連絡が。従来そういうことは全然ないのですか、いわゆる手落ちだとかなんとかいうことじゃなくって。それはどうなっているの、実際は。
  69. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) これは実は文部省が警察と仲がよいといいますと、これまた響きが悪いのですけれども、いろいろ事件がございますので、私のほうとしましては警察と必要な限りの連絡はとりたいと思いまして、私のほうもお願いしますし、向こうからも連絡していただくようにはしております。しかし、これは当然警察は連絡すべきだということは無理で、むしろ私のほうが情報も聞きに行き、今後の大学の指導等の参考に必要なわけですから、私のほうがより一そう熱心に連絡をとるべきだと思います。したがって、こういう場合には文部省に慣例として必ず連絡して捜査に入るとかいうことはございませんが、できる限り連絡は十分してほしいという要望はしておるところでございます。
  70. 小野明

    小野明君 あなたが聞きに行くというようなことはどうですかね。そのことが、まあ教育の場であるだけに、どこどこの会社を強制捜査をしたというようなことではないわけですね。で、先般もこの委員会を通じまして警察庁のほうに、警察の学内出動基準に関する通達、こういうものが最近新聞に報じられておるんだが、これについてこの内容をお知らせいただきたい、こういうふうに要請したところが、警察庁のほうから、これは内部であるからということで、けられておるわけですね。これは私は委員長名で要求しておるわけですからね、この点についても私は非常に不満なんです。  それで、警察庁がおらぬから、あなた方にやかましゅう言うのもこれは筋が違うかもしれませんが、こういう問題についてやっぱり当然警察庁側から大学側なりあるいは学術局あたりに通知があってしかるべきではなかろうか、こう思うんですよ。で、この点については、学内に踏み込む場合の基準とかいうような問題については局長はどのようにお考えなんですか。
  71. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) まあ私どもといたしましては、大学が平常の場合において学内に入ります場合、これは学問の自由、大学の自治ということから、避け得るものはこれはでき得る限り避ける、また入らなければならない場合でも大学要請があってから入るといったような、両者に非常によい意味でのそういうならわしができるということをかねて期待をしておるところでございますし、まあそういう場合には大体そういう慣行が保たれておると思います。  ところが、いまの強制捜査といったようなことにつきましては、強制捜査についてまで何か慣行とかというふうになりますと、任意捜査とのけじめもあまりつかないような場合もあろうかと思いますし、警察のほうの事情を私よく存じませんが、別に警察庁を弁護するわけではございませんけれども、やはり強制捜査の場合とそうでない場合には、やはり違った観点があるんじゃなかろうかというふうに考えます。しかし、それにしましても、強制捜査をされた場合、あるいは先ほどお尋ねの何かまとまった通達のようなものを管下に流されるというような場合は、十分連絡してほしいということは警察のほうにもお願いしているところでございます。お答えになりましたかどうか、一応その程度考えております。
  72. 鈴木力

    鈴木力君 関連。いまの問題ですが、何か大学の捜査の基準を警察でつくっていると、いまちょっとそういうふうに聞いたんですが、大学を捜査する基準を警察側のほうでつくっておって、それが事実だとすれば、その扱いについては、部外秘とか、いろいろそれはあるかもしれませんが、しかし、その是非は別にしても、私はそれを文部省に隠して警察でやっているということだとすると、ちょっとひど過ぎるんじゃないかと思うのですが、やっぱり文部省大学の自治を守ってやるという立場ですから、入れとか入るなとかという命令権はないにしても、そういう基準を文部省は知らない、それは警察のことだから私のほうではかまいませんという態度では、ちょっと愛情がなさ過ぎると思うのですが、その点はどうですか。
  73. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 小野先生のお尋ねになられた点でいま鈴木先生の関連お尋ねのところですが、これは捜査の基準ではございませんで、警察と大学関係で、強制捜査ではございません、要請があったときには入るとかいった、あれは何と申すのでしょうか、立ち入りの場合の基準的なものという名目であり内容でございます。  で、その内容を概略申し上げますと、先ほど申し上げましたように、警察が大学に職務上入っていくという場合、これは大学のことであるから十分慎重にして、大学要請があったときに入るとか、要請がなくても入るときは、第三者として客観的に学内で乱闘が起こり人命に傷害を与えているような場合には入るとかということで、全体の流れは、警察として大学に当然入り得る場合でも、一般と違ってできる限り慎重にやれといったような内容のものでございます。
  74. 鈴木力

    鈴木力君 もう一点だけ。そうすると、立ち入り基準は警察によってつくられ、それは文部省には報告になっている、こういうことですね。
  75. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) その問題、いつでございましたか、数カ月前に新聞に大きく載ったわけです。それで、これはどこの委員会でしたか、私もすぐ質問を受けましたが、当時どのようなものをお出しになったかということを私のほうも尋ねに行き、そういった基準的なものであれば一応私のほうにも連絡してほしかった、今後はできる限り連絡してほしいという要望を伝えました。はっきり申しますと、連絡はございませんでした。そのとき、新聞に載ったときには連絡はございませんでした。
  76. 鈴木力

    鈴木力君 もう一点。私はそういう基準の中身は時間もありませんからあまりどうこう言いませんけれども、警察側が大学に立ち入り調査をする基準をつくったというような場合には、これは少なくとも文部省に報告をするというのが警察のたてまえだと思う。警察がいないところでこの議論もおかしいのですけれども文部省はやはり要求をして、そうして少なくとも文部省当局としてはそれを持っておるべきだ。あるいはもし文句があれば、文部省側からも異議の申し立てとか、そういうことをするべきだ。それで、あと部外秘とか扱い等については、これは私のほうからいまどうこう言いませんし、中身もそういう事情ですから聞きませんけれども、その点はやはりきちんと文部省側のほうからもやっておいてもらいたいと思います。
  77. 小野明

    小野明君 私の申し上げたかったのもそういった点なんですよ。たとえば、学内に出動する場合の基準と、こういうものが通達として下部に流される。同時に、これはやっぱり大学局のほうにもそういう知らせがあってほしいし、あるいは大学当局にもそういった問題の周知方といいますか、事前に了解を求めると。入らぬことが望ましいのですけれどもね。そういった点があってしかるべきではなかろうか、先ほど申し上げたように事が大学教育の場でありますから。その点について局長としても再度警察庁にそういった点をきちんとやっぱり申し入れをしていただきたい、こう思うのです。同時にまた、どこどこの大学に踏み込んだ、これは新聞でしかわからなかったということでは、ちょっとやはりお粗末ではなかろうかと思うのです。そういった点についても、あわせて警察のほうにきちんとやはり要求をしておくということが必要ではなかろうかと思います。いかがですか。
  78. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 警察のことですから、事柄によりましてこれは秘密的に扱わなければならないこともあろうかと思います。しかし、それにしましても、大学に関するような問題、文部行政に関連のあるような重要な問題につきましては、できる限り連絡を密にするように、要望も従来からもしておりますが、今後も要望していきたいと思っております。
  79. 小野明

    小野明君 この点はやはり、われわれが大学の自治を守るといった場合にも、きわめて重要なことであろうかと思うのです。それで、この点に関しては、局長の御答弁もあったわけですが、私は大臣の御見解もこの際いただいておきたいと思うのです。
  80. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 問題となっております事柄につきましては、警察側と文部省側との間に密接な連絡が望ましいことは申すまでもないことでございます。先ほど局長もお答えいたしましたが、従来も連絡をしておることと私は思っておりますけれども、さらに一そう密にするように警察側との間の話を進めてまいりたいと存じております。御了承をいただきたいと思います。
  81. 小野明

    小野明君 それで、学内出動の場合に、これはことばじりをとるのではありませんが、非常に警察と文部省が一緒になってやるというようなことがないように、事は逆の意味でありますから、ひとつ大臣もこの点はしっかりおやりをいただきたいと思うのです。
  82. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) ちょっと補足いたします。一々の事柄について事前に文部省に相談するとかなんとかいうことは、警察としてはむずかしい問題だと思います。ただ、大学との関係においてどういうふうにやるかというふうな方針は、こういうものをはっきりしたものをお互いが持っておるということが必要ではないかと思います。また、事後の報告等についてはぜひやってほしいということでやっていきたいと思っております。
  83. 小野明

    小野明君 それでは、局長お尋ねをしておきたいと思うのですが、大学紛争というのが非常に多いわけですね。(「設置法をやれよ」と呼ぶ者あり)先般おたくからいただいた資料によりましても、これは四十年以降の分にいたしましても、授業放棄等に及んだ主要なものに限ったと、こういう点ですが、五十五件なんですね。こういう問題について文部省の基本的態度ということをお尋ねをしておきたいと思うのです。  いまそこで不規則発言があったけれども、これは国立学校の問題を論議する場合に、警察がどうだとか紛争の問題がなくしては、私は議論ができないと思うのですよ。審議はできないと思うし、これは大きな大学の自治を守るという前提のもとに審議を進めなきゃならぬと思うし、私どもその立場で質問を申し上げておるのですから、再度、局長大学紛争に対する基本的な態度というものをお聞きしておきたいと思います。
  84. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 先生から資料要求がございましてお出し申し上げましたが、インターン制度など教育制度の問題等の紛争、あるいは私学に多いのですが、学費値上げ問題についての紛争、あるいは学寮、学生会館の管理運営の問題さらには処分の撤回とか学園移転、統合とか、もっと進みますと、大学学部の名称の変更についてまでいろいろ紛争が起こっておる。そのトータルの件数が五十五件あるという資料をお出しいたした次第でございます。  こういう紛争には、いろいろ事項といたしましても違った点もございますし、また非常に尾を引いた問題もありますし、短期間で済んだ問題もいろいろございます。したがいまして、それに対しての基本的な態度ということですが、なかなかお答えしにくいのですけれども、やはりこういう紛争があるということは、これは事の理由のいかんを問わず、私は紛争があるということはよくないことだと思います。紛争のない静かな学園であることが望ましいわけでございますので、そういった意味では、これは学生とか学校とかといったようなことじゃなくて、みんな虚心たんかいに反省する必要はあろうかと思います。しかし、中には、私、大学としても、紛争を起こさせないためには相手側の要望をのめば紛争はないわけですが、しかし、のめない問題までものんでひたすら紛争だけを起こさないということも真の解決になりません。したがいまして、学校当局も大いに気をつけなければいけませんが、学生に対しても十分な指導をし、また学生としても自分の置かれた身分あるいは四年なりの大学生活を実りのある生活にしていくといったようなことを心から考え直して、両者がともどもにこういう紛争のないような形にもっていくべきであると、文部省としてもそういうことで協力すべきことがあれば大学に対してできる限りの協力をし、必要であれば指導もすべきであるというのが基本的な態度であろうかと思います。
  85. 小野明

    小野明君 大学の自治とかあるいは学生自治に関しまして、これは国大協が見解を出しておるわけですね。これ、いわゆる第三常置委員会の理事会の決定ということで、国大協全体の決定事項とまでは言えないけれども、ただ、総会に対しては報告事項になっているからと、こういう前書きがあるわけです。で、この国大協ですね、これが大学の自治、あるいは警察の出動、学生の自治等に関しまして出されておる見解とですね、文部省が持たれておる見解というのは食い違いがありますか。あれば、どういう点ですか。
  86. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 国大協の第三常置委員会はこういった学生運動についていろいろ検討する常設の委員会でございます。その委員会が過般四十三年二月九日に出されました御意見につきましては、文部省としては大体同感でございます。
  87. 小野明

    小野明君 そうしますと、この中でですね、この重要な点は私は三点ばかりあると思うのです。まあ確認をする意味お尋ねをしておきたいと思うのですが、この「警官の導入によって秩序が回復されるものと安易に考えるべきではない。」、したがって、「大学自身の力では秩序を保持するこすが全く不可能となったときには……、警官を導入することもやむを得ないが、その場合大学要請に基づくものであることが必要である。」と、こういうふうに報告されておるわけです。この点もこのとおりであるか、あるいはそのとおりに大学局としても努力をされておるものであるかどうか、お尋ねをしておきます。
  88. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) このお読みになられましたその個所だけで云々するということではなくて、この報告に盛られておる全体の考え方におきましては、私どもは同感でございます。
  89. 小野明

    小野明君 全体に盛られておるといっても、これは文部省が出されておるものですね。文部省で書かれておる限りについて、私は質問申し上げているわけです。ですから、その部分を抜き出して言われるとどうもおかしいがと言われる意味はどういうことですか。
  90. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) ちょっと、先生がお読みになられた個所を見つけているのに見つからなかったものですから、趣旨として私のほうは同感であるということを申し上げた次第です。もし、恐縮でございますが、どの辺かということを御指摘いただけば、それによってお答えいたします。
  91. 小野明

    小野明君 私は要点だけいま申し上げておるわけですね。だから、これ読んだものよりも聞かれたほうが正確かもしれません。この大学自身の力で秩序の維持が困難になった、警官の出動もやむを得ないが、その際も大学要請に基づかなければならぬ、大学要請に基づくべきであると、こういうふうにまあ言われておる。この点はやはり同意されたわけでありますから、そのとおりに努力されてこられたし、また今後も努力されるものであるかどうかということをお尋ねしておるわけですね。
  92. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 「警官を導入することもやむを得ないが、その場合大学要請に基づくものであることが必要である。」とここに書かれております意味は、大学要請をするのに機を誤たず適正な判断で要請をし得ると、そういう前提で、「大学要請に基づくものであることが必要である。」というふうに書かれておるものと私どもは了解いたしまして、その点は同感でございます。
  93. 小野明

    小野明君 そういうことはあなたの書類に書いてありますか、私のこれには書いてないが。そういうことばは書いてない。この裏に書いてあるのかどうか知らぬが、文字に関する限りはそういうことはないですよ。
  94. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 先生のお尋ねの個所は、「大学は暴力を物理的に排除する力を持っていないので、学園の平和と秩序を回服するために、警官を導入することもやむを得ないが、その場合大学要請に基づくものであることが必要である。」、こう書かれておるがどうかという御質問だと思います。それで、こう書かれておる意味は、大学としては、良識の府でございますので、大学要請をするという場合は、適切に要請がなされるということを前提としてお書きになっておられるものと感じます。したがいまして、そういう意味において私どもも同感だということを申し上げた次第でございます。
  95. 小野明

    小野明君 読み方はいろいろありますけれども、ともかく結論としては、やはり大学要請ということが前提条件であるということがきちんと書いてあるわけですね。そのように解釈してよろしいですか。
  96. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) この書かれておる文章の解釈が人によっていろいろあろうかと思いますが、私どもとしましては、大学要請に基づいて警官が出動する、そのことはそのように考えております。ただ、それを非常に形式的に、ともかくどういうことがあっても、警官が入ってくる場合は大学要請しなければ絶対にはいれないというふうに形式的な考えになってまいりますと、前提として、大学要請をするのは、機を誤たず適正な判断で大学は警察の要請をするものであるという前提を置いて、そういう前提であるであろうと私のほうは解釈するし、そういう意味で同感であると、こういうふうに申し上げております。
  97. 小野明

    小野明君 これはコンニャク問答みたいになるが、あなたの言うようなことは少しも書いてないじゃないですか。そのとおり読む場合には、解釈のしかたはいろいろあるにしましても、(「そうだ」と呼ぶ者あり)いまそこで内藤さんもそうだそうだと私の意見に賛成しておるが、(「不規則発言だ」と呼ぶ者あり)局長の解釈はおかしいね。
  98. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 私は、ここで書いてあります「大学要請に基づくものであることが必要である。」という趣旨は同感でございますと一応申し上げております。しかし……(「それですわればいいんだ」と呼ぶ者あり)
  99. 小野明

    小野明君 それで、その次はですね、もう一点は、その前に、いまの項ですが、「学外における行動が処分の対象になる場合には、その事実が確認された後、その行動が学生の本分に反するかどうかを慎重に検討し、教育指導の観点から処分の可否を決定すべきであろう。」、まことにあたりまえのことが書いてあるんですが、この点もこの書いてあるとおりに受け取ってよろしいですか。
  100. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 趣旨は同感でございます。
  101. 小野明

    小野明君 最初に、国大協の見解と全く私ども同じでございますという答弁がありますから、それで私はこの了解をしておきたいと思います。  で、大臣お尋ねをしておきたいと思うのは、大学の自治ということがいろいろ問題になっておるのであります。先般のある新聞にも、大学の自治をどう考えるかということで、大河内東大総長はじめ各大学の学長が述べられておるのであります。この点も大臣はお読みであろうかと思いますが、この際大臣に、大学の自治はどうして尊重されなければならぬか、大学の自治とは一体何なのかという点についてお伺いをしておきたいと思います。
  102. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 私も内容は正確に覚えておりませんが、大学の自治という問題について、その道の方たちの意見というものが新聞に出ておる。なるほど大学の自治という観念はむずかしいものだという気がしたのであります。各学者諸君の考え方にもいろいろあるようでございます。そういうふうな、人によって若干意見が違っているとか、あるいはニュアンスが違っておるとかいうふうな観念ではないかと思うのでございます。したがって、専門の学者の皆さんでさえそうなんでありますから、私どもがいわゆる大学自治という観念を的確に御説明申し上げるということは非常に困難なことでございますが、ただ、まあ私はそうむずかしくこの問題を取り扱うほどの能力もございませんけれども大学は、何と申しましても、種々いわれておりますように、学門研究の府でございます。その自由を保障しなければならぬというふうなところから、日本の大学の自治というものは認められておる、このようにも考えておる次第であります。どこからどこまでが大学の自治かということになりますと、いろいろ議論があろうかと思いますが、基本的にはそうだと思います。
  103. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) ちょっと速記をとめて。
  104. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 速記を起こして。
  105. 小野明

    小野明君 いろいろお尋ねをしておきたいと思うことがたくさんありますけれども、もう一問でひとつ終わることにいたしたいと思います。  昨年発足をいたしました特殊法人日本学術振興会、この業務実施の状況ですね、これについて、どういった業務をやられておるか、お尋ねをしておきます。
  106. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 学術振興会におきましては、いろいろ学術振興についての事業をやっておりますが、特に研究者にいろいろな——具体的に申しますと、神戸大学等におります先生が東京大学に来る、そして研究をしてまた帰られるといったような、自分の場所を離れて研究をなさる、そういうようなのを流動研究員と言っておりますが、それはわが国だけではなくて、外国の人もまた日本へ来てそういうことをする必要があれば、外国人も流動研究員で、こういった流動研究員の事業、あるいは大学大学院を卒業した助手級の人、あるいは助教授の若手の人といったこういう若手の方々の研究を推進するために奨励研究員制度というのを持っておりますが、そういった流動研究員事業あるいは奨励研究員事業、これはわが国、外国いずれもそうでございます。そういうような事業あるいは国際共同研究事業、学術普及の事業、こういったような事業を行なっております。総予算は二億五千四百万円でございます。
  107. 小野明

    小野明君 もう少し、総括的な御説明でなくて、具体的に説明をいただけませんか。
  108. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) たとえば流動研究員事業につきましては、三十六名の流動研究員の研究助成をする。二千二百万余りの予算でございます。それから、奨励研究員事業は、前年よりも二十五人増員いたしまして、百二十五人の方の研究助成ということで、四千二百万円ばかりの予算をもっております。外国人流動研究員事業費、昨年よりも二人増しまして六人の方、九百五十四万円ばかりの経費でそういう事業をいたす。それから、外国人奨励研究員事業、これは十五人の方に対して八百八十六万円の事業費を計上してやっておる。それから、国際共同研究事業は二千四百万余りでございます。その他資料等をつくりまして、学術普及事業、これが約三百万。大体そういったような事業がおもなものでございます。
  109. 小野明

    小野明君 この国際協力関係事業、研究事業ですか、この内容はどんなものですか。
  110. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) まあおもなるものは、日米教育文化共同研究事業というのが中心的なものでございます。
  111. 小野明

    小野明君 それと、日米科学協力事業費というのがありますね。
  112. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) はい。
  113. 小野明

    小野明君 これが予算はおそらく二億円だと思いますがね。二億円程度じゃないですかね。この二つの中身はどういうことをおやりになるのですか、具体的に説明をしてくれませんか。
  114. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) この日米科学につきましては、これは日米間の学者でいろいろ相談いたしましてテーマをきめておりますが、四十三年度からは、終戦直後のわが国が占領下に置かれておった時代、その当時のもろもろの資料関係が年とともに散逸したりしますので、そういった戦後のこの数カ年間——何年までかはちょっとはっきり記憶いたしておりませんが、その間の諸般の諸資料を集めるというのが、一つの両者が到達した事業であったかと思います。それからもう一つは、日米間の国民の文化程度を、ただ所得の点だけではなくて、いろいろな所得以外の生活程度、生活上の問題、諸般のことを要素として日米の国民の文化水準の調査検討をやろうというのが、大体二つがいまのところ四十三年度として両方が、日米間で一致したテーマであるように聞いております。それから、その他二、三双方が出し合っているテーマが、それをどれにしぼっていくかというような相談を目下しておるというのが実情であったかと思います。
  115. 小野明

    小野明君 これは日米だけで持たれておるのですか。名前は国際関係ということであれば、その他の国々ともこういった教育文化なりあるいは科学協力事業、そういった事業がなされておるものかどうか、その点はいかがですか。
  116. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) この日米科学のほうは、予算的に金額が多うございますので、日米科学として一つ費目を起こしておるようです。それで、国際共同研究事業のほうは、中に日米教育文化共同研究事業が一千万ございますが、あとの千五百万ばかりはその他の国との共同研究事業でございます。ちょっと、突然の御質問でございましたので、私は手元に資料持ちませんので、その程度で御了承いただきたいと思います。
  117. 小野明

    小野明君 それでは、この事業内容についてひとつ私のところまで資料を出していただきたいと思います。  それで、ここで問題なのは、この法律案成立する際に、日本学術会議と緊密な連絡のもとにと、この修正案が入っておるわけですね。これは劔木前文相時代成立したもので、その点は十分日本学術会議との間にこの法律のとおりに緊密な連絡があっておるものと思いますが、その点はいかがですか。
  118. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) そういうお尋ねのような点がございましたので、それに基づきまして、学術会議のほうからは、たしか会長、副会長以下大体十名前後の方だと思いますが、それと学術振興会のほうは会長、理事長、理事等、それに文部省局長、審議官、課長等で連絡会を持っております。今日まで私が出席したのは二回でございますが、もう一回あったかと思いますが、二回か三回程度今日まで連絡会を持ったはずでございます。
  119. 小野明

    小野明君 それでは、資料を出していただくということでありますから、それはそれが出ましてからひとつまたお尋ねをしてみたいと思いますが、先ほども管理局長にお願いをしました日大の問題も、現在であなたが握られておる状況、あるいは結果が出ましたら結果ということで、ひとつ常時私ども委員のほうにはお知らせをいただきたいということをお願いしまして、少し時間は早いですが、私の質問をこれで終わります。
  120. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) その前に委員長から一つただしておきたいと思うのですが、管理局長のほうですが、先ほど日大の関係について資料請求がなされておりますが、委員会のほうには請求されたのではなく、小野さんからこれは直接請求されたことと思いますが、今後この資料を出せるかどうかということと、それから日大の報告がこの委員会になり後刻できるかどうか。さらに、いまの日米学術研究資料提出はよろしいかどうか、それをちょっと報告願います。
  121. 村山松雄

    政府委員村山松雄君) 日本大学の件につきましては、大学からの報告は参っておりますので、それを基礎とした御報告はできると思います。  国税局の関係でございますが、これは目下調査中ということで発表できないということでありますので、その関係のこまかい点につきましては御説明ができかねるかと思います。
  122. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 学術振興会の事業費等の資料要求であったと思いますが、具体的にどの程度のものにしますか、小野先生に十分承りまして、できる限り御趣旨に沿った資料を提出いたしたいと思います。
  123. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 午前の委員会はこの程度とし、午後は一時三十五分に、四十分間の休憩で再開いたしたいと存じますので、御協力をお願い申し上げます。  休憩します。    午後零時五十五分休憩      —————・—————    午後一時五十分開会
  124. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) ただいまから文教委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、国立学校設置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。  なお、政府側より灘尾文部大臣宮地大学学術局長が出席いたしております。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。柏原君。
  125. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 文部大臣にお聞したいと思いますが、福岡教育大学の付属小学校の収賄事件が報道されておりますが、この結末はどのようになりましたか、お聞きしたいと思います。
  126. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 経過につきまして政府委員から御説明いたさせます。
  127. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 福岡教育大学の付属福岡小学校におきます教官の収賄事件につきましては、まことに大学を所管する文部省といたしましても申しわけないと存じております。  事の経緯を簡単に申し上げます。この問題は、今日まで六名の付属小学校の教諭が逮捕送検され、かつ起訴されております。逮捕送検されました理由は、四十三年度付属福岡小学校の入学者選抜にあたりまして、六名の教諭がそれぞれ、多数の志願者の父兄から、合格できるよう有利な取り扱いを受けたい趣旨のもとに、現金または小切手の供与を受けた事実、並びに合格者の父兄から謝礼として現金または小切手の供与を受けた事実が、送検され、また起訴された理由でございます。その他四名の者が書類送検となっております。  この問題につきましては、まだ司直の手で今後いろいろと調べが進むわけでございますので、いまの段階におきまして私どもが確定的なことは申し上げられませんが、それにいたしましても、こういう不祥事件を起こすに至ったことは遺憾なことでございますので、そういう意味から、大学におきましても、この問題についての調査対策委員会を設けて、この調査もいたしております。  それから、措置といたしましては、起訴された者は、直ちに公務員法の規定に基づきまして休職を命じております。起訴者以外の書類送検された四名の教諭につきましても、自宅謹慎を命じておる次第でございます。また、これら教員の補充につきましては、福岡県教育委員会とも十分連絡をとりまして、今日まで七名の、いままで公立学校の教諭をしておられた方七名の方を新たに採用いたしまして、四月から始まりました新学期に備えておるような状況で、教育には支障がない状況でございます。  また、こういうことにかんがみまして、入学試験のあり方、ひいては付属小学校のあり方につきましても、福岡大学でも十分調査し検討するということを学長も申しておりますが、文部省におきましても、こういうことだけでするわけじゃございませんが、こういうことも大きな一つの理由でもございますので、今後付属学校の入学試験のあり方、さらに付属学校のあり方につきましては、十分検討して、関連ではございますが、こういう問題の絶滅を期していきたい、こういうふうに考えております。
  128. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 ただいまのお答えで、入学試験のあり方とか付属小学校のあり方を検討すると、こういうふうにおっしゃっておりますが、文部大臣として、どこにそういう問題があったのか、またこれについてどう指導すべきかということについてお考えになっていると思いますけれども、その点いかがでしょう。
  129. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) いろいろな要素があろうと思いますので、現場の大学におきましても、また文部省といたしましても、あらためてひとつ検討したいと、こういうことを局長が申し上げましたようなわけでございます。付属小学校が何か特別選ばれた学校というふうな気持ちで世間の皆さんから見られるというようなことも、あるいは入学試験をむずかしくしておる、問題を起こす一つの理由にもなろうかと、こういうふうにも存じておるわけであります。そればかりでももちろんないと思いますけれども、付属小学校というものは、ただ単に特別なエリートを養成するとか、あるいはまた特別な層の方たちの子弟だけを預かるとかいうふうなわけのものじゃなかろうと、前々から文部省としても考えておるところでございますが、それらに対して大きく性格の違ったような付属小学校になっておるとすれば、その辺については十分反省をしなければならぬと、また選抜の方法等につきましても必ずしも一様ではないようでございますが、現に福岡大学等で行なわれておりますような選抜方法が適当なのかどうなのか、こういう問題についても再検討する必要がありはしないか、こういう意味で先ほど局長検討するということを申し上げたわけでございます。
  130. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 こういう事件が起きた原因が、一般の父兄が付属小学校は選ばれた学校だ、エリート学校だというふうに思っているから、入学の問題などもきびしくなる、そういう点もこの問題が起きる原因であるというようなお話ですけれども、付属小学校のあり方自体に私は問題があると思うのですね。そういう問題について文部大臣が触れていないように思いますけれども、いかがでしょうか。
  131. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 私は、付属小学校のあり方について、本来の付属小学校設置の目的にかなったようなことになっておるかどうかという点をやはり再検討する必要があろうと存じております。その意味で再検討ということを申し上げたわけであります。  なお、先ほどお答えの中に漏れておったと思いますが、まあ制度がどうであるとか試験がどうであるとかいうようなことでこの問題はただ検討するというものじゃなかろうと、学校の先生方の心がまえの問題というものも非常に大切なことではないかと思います。他にいろいろ原因もございましょうけれども、やはり教師として身を持することに清廉潔白な態度をもって身を持していかなければならぬということは、当然要請されるべきことであろうと思います。そういう意味におきましても、関係の先生方の今後の反省を望みたいと、かように存じております。
  132. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 いま大臣のお答えの中に、付属小学校設立の目的にかなったような教育が行なわれているかどうかは疑問であるというようなばく然としたお返事ですけれども、実際はその目的にかなったような内容になっていないと思うのですね。その点について、もう少し現状の付属小学校の内容というものを大臣は知っていらっしゃるかどうか、またどういうふうに具体的にお考えになっているか、お聞きしたいのです。
  133. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 付属学校の目的にかなったような教育現実の付属学校教育として行なわれておるかどうかという点でございますが、私どものほうといたしましては、付属学校には二つの性格があるというふうに考えております。一つは、教育の理論その他いろいろな点につきまして、大学教育学部等が実験をしていかなければいけない、そういう実験学校的な性格を持つ。もう一つは、今後、小・中学校の先生になっていくものについての実習学校、この二つの性格が付属学校としては大事な性格であろうと思います。したがいまして、この性格にのっとったような教育運営がなされることを期待しておるわけでございます。  先生御指摘のように、そうではなくて、そういう目的はあっても、付属小学校であればよい中学校へ行くように、付属中学校であれば競争率の高い高等学校に合格するような、いわゆるそういう受験本位のエリート学校になっておるんじゃないかという御指摘と存じます。この点は、率直に申し上げまして、多くの付属学校の中には心ならずもそういう結果になっておる学校がなきにしもあらずということを率直に感じます。そういう点につきましては、いろいろな理由がございましょうが、本来の付属学校のあるべき姿に立ち返ってもらいたい。そのためには、文部省もあるべき姿をもう少し検討もしたいし、大学も十分これの趣旨に沿ったような運営もしてもらいたい、これが私ども考えでございます。
  134. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 いまお答えになった点は、やや認めていらっしゃるように受け取りますけれども、実際現場の先生方に聞いてみますと、確かに付属小学校からはいろいろな研究的な資料も出されている。指導法の研究や発表もされている。ところが、そういうものを見ても、またそういう研究会に臨んでみても、実際現場の教員について見ますと、何の役にも立たない。特殊な子供をきびしい条件へ入れて、条件をそろえて、そこで行なわれている研究とか指導なりというものは、実際には十人十色の子供を扱っている複雑な教育の現場では役に立たない、こういう声がほとんどだということが言えると思うんです。そういう点、文部省としては何の関心も持たないで、これから検討しますとかなんとかおっしゃっておりますけれども、付属小学校は最近できたものではなくて、戦前からもありましたし、その延長みたいな付属小学校が現在も経営されているわけです。それについてもう少し真剣な気持ちでその問題を取り上げていただきたいと思うんです。
  135. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 付属小学校につきましては、終戦後新制大学になりまして間もなく、文部省といたしましては教員養成学部を置きます大学の学長さん方に対しまして、大学付属学校設置要綱というものをつくって、それを示しておるところでございます。それは先ほど来申しましたような、付属学校としては設置の目的趣旨は実験学校と同時に実習学校という性格を持った付属学校をつくるのである、したがってこれにのっとって入学試験をやるように、あるいは運営もしていくようにという指導もいたしておるところでございます。それで、たとえば具体的には付属学校にもいろいろな型の付属学校がございますが、いわゆる普通の学級、これにつきましては、一般に教育研究及び実習の見地から、素質の異なる各種の児童生徒をもって構成することが望ましいのであるから、規定の学級数の範囲内で極力この趣旨に従って学級編制はしなさい、あるいは入学選抜につきましては、きわめて著しく能力の劣る者等は除外するとしても、その他についてはできる限り入学の点数を争うということだけに合否の重点を置かないように、そのためには、たとえばテストを行なう、そしていわゆるはなはだしい不適格者を除外すれば、あとは定員超過をするときは抽せんによってやるようにとかいったような、こまかい指示はいままでもやっておるところでございます、十分この趣旨に沿ってもいろいろな欠陥もあろうかと思いますが、福岡大学付属学校におきましては、入学試験のやり方が多少——いわゆる抽せんということは前後に全然やっておりませんし、いろいろな点で今回のような事件に結びつく原因になりかねないような点もありますし、その他いろいろ教育上にも問題がございますので、大学自身も研究していただくように、これは文部省のほうで要請する前に、学長自身がぜひ自分のほうで調査、検討したいと言っておりますし、また文部省としても、単に福岡大学だけでなくて、全般の付属学校の問題としてもなお一そう研究していきたい、こういうことでございます。
  136. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 私がお聞きしているのは、付属小学校と銘打って経営して、そして先ほどおっしゃったように実験学校として付属小学校は設けられているんだ、こういうことですが、その実験学校として研究されたものが、実際の教育の現場で役立っているか。こういうふうに役立っている、現場の教員たちからは、非常に付属小学校から出されている資料が参考になったとか、指導法が生きて実践されているかということが問題なんですね。そういう点で、事実こういう資料が役立っているか、指導法が実際の教育の場で大いに活用されている、その事実があるかどうかですね。
  137. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) これはいまの教員養成大学教員養成学部の前、昔師範学校と言っておった時代から、付属小学校がその地域の小学校教育に果たした役割りはきわめて大きいと思います。新制大学になりましても、付属学校でいろいろ学級の編制並びに付属学校の先生方が協力していろいろな実験を各学科目にわたりまして、あるいは学校運営についていろいろな研究をしておりますが、それはその地域の小学校教育、中学校教育で非常に私は役立っておるものと思います。いま直ちにそれでは具体的にどういう研究テーマがどのようにということは申し上げかねますが、一般的に役立っておるというふうに私ども考えております。
  138. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 いま、役立っていると思われるというお返事です。しかし、現場の先生方にお聞きになればわかると思うのですが、何の役にも立っていない。特殊な子供を集めて、特別専門的にそれは研究はされているけれども役に立っていないという強い声は、文部省としても耳を傾けてお聞きになったほうがいいと思うのです。実際その指導法も、実際の教育効果をあげていない。やはり現場の教員は、十人十色の子供を前にしてどう教育効果をあげていったらいいかということにみんな悩んでいるわけです。その事実を認めていただいて、もう少し、実験学校として権威ある付属小学校研究としてはこういうふうにしていこうというような、そういう積極的なお考えがあってもいいんじゃないかと痛感するわけです。
  139. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 私ども、現在の実験学校、実習学校性格を持つ付属学校が、その趣旨に沿って運営されておると存じますが、中には、それはそうとしても、十分な効果があがっていないというような点もあるいはあろうかと思います。したがいまして、私どもその地域の教育に役立っていると思いますが、柏原先生のように、なおかつ役立っていないところもあるのだというようなことにつきましては、文部省はもちろんですが、付属学校自身も率直に反省し、そういうことが事実であるとすれば、これは検討して、そういう批判の起こらないように、実験学校、実習学校の使命を果たすような運営をするように、文部省学校もつとめるべきだと思います。また、つとめたいと思います。
  140. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 くどいようなことですけれども文部省として、そうですが、確かに役立っていないんですかとは言えないと思うんですね。ですけれども、実際はほんとうに役立っていない。何でこんな資料を出しているのか、何の役にも立たない、付属小学校というのは特別な学校だ、こういう声が全部の声だということをもう一回ここで申し上げておきます。ここでそれ以上に、それを認めなさい、認めなさいと言っても、お認めにならないでしょうけれども、事実そうだということは、やはり文部省としても、うすうすは感じていらっしゃるんじゃないでしょうか。
  141. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 先ほど来申し上げておりますように、付属学校の目的なり性格なり、そういうようなことも十分検討し、さらに一そう付属学校としての存立の意義があるようないろんな検討も改革もしていきたいということを、私も申し上げ、大臣もそのような趣旨のことを申されました。したがいまして、私ども目的どおりに付属学校が完ぺきに運営されておるということは必ずしも言えないと思います。あるいは御指摘のような点があるということに対して、絶対にないということを立証するすべもございませんが、したがいまして、先生のような批判的な声には率直に耳を傾けて、そういう批判が起こらないように、今後文部省大学も十分謙虚にそういう批判を聞いて、改善につとめていきたい、そういう考えでございます。
  142. 岡三郎

    ○岡三郎君 ちょっと関連して。私は答弁はよくわかったけれども、実際にこれを現場に実践してもらいたいと思うんですよ。ということは、とにかく付属というとエリート学校のような形に全部がなっていると思うんです。間々、代用付属のような形で、農村部面にそういうものを持っているところもあります。しかし、いま柏原先生が言ったように、現場に直接役に立たぬというのは、選ばれた層というものに対していろいろとやっているから、現場のほうの構成とは全然違う。だから、われわれのほうとしては、せっかく実験学校として付属を設けるならば、現場と同じような構成の中で、ひとつ現場の先生が苦労している問題について解明していくというふうなところに、実験学校であり、研究的な学校の価値があると思うのです。いまのところは特殊層の教育で、ある意味では受験学校ですよ。受験学校に堕しているという傾向が強い。だから、付属から何名上に受かったとかなんとかということをもっぱら父兄も自慢し、それから学校側もそういう指導をする。そうでなかったら——私はそうでない学校を参観したいと思う。それはりっぱだと思う。しかし、われわれは寡聞にしてそういうところを知らない。だから、実際の町場にある、農村にあるそういうふうな構成の中において、直接その研究が具体的に現場で苦労している先生方に役に立つ、指導的な学校としての価値を持つというふうにぜひなるように、どうしたならばそういう生徒の構成になるかということについては、現在の公立の小学校が行なっているような学区域の編成を持つとか、何かそういう点についていろいろ研究検討されて、それは一つですが、いろいろ双方を入れる、たとえば東大の付属あたりは双生子の方々、これを入れる。そうして双生子教育というものについてどうするとか、それから東大は全部抽せん制ですよ。そういうものについてはやはり一定の条件は設けるけれども、これに適合した者は抽せんにしてこれを入れるというふうな形で、極力その現場の層と同じような形の中で実験学校としての価値を研究面に注いでいく、こういうことになっていると思うのですから、その点をひとつやってもらいたいと思うのですよ。いまの募集形式でやって、いまのテスト形式でやったらば、これはなかなか直らぬと思うのですがね。この点について、東京における付属学校でもそうですよ。これはある意味で受験学校ですよ。そういうふうに私は解釈するのですが、現場の指導を、直接的に全国的に役に立つような実際の場にこれを直してもらいたい、こういうふうに私は文部大臣に強く要請するのですがね。  この前の御答弁を聞いて、答弁内容については納得いたしておりますが、実際問題としてそれには手を触れなければ口頭禅に終わってしまう。そういう点で私は柏原さんと同意見なので、この点については無理を皆さん方にしろと言っているのではなくして、それが国民の願うやはり一つの学術研究の中における実験学校の存在意義であるというふうに強く考えますので、この点をひとつ強くお願いしたいと思うのです。
  143. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 御要望の御趣旨はよくわかりました。十分ひとつ検討さしていただきます。
  144. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 同じようなことですけれども、実習の場として付属小学校は大いに意義があるというお話でしたが、この実習したものが確かに役立っているかどうかということは、また私は疑問だと思うのです。なぜかといえば、特殊な子供を——特殊な子供といっても、家庭の状況のいい子供、また頭のいい子供を集めて、そうしてそれを対象にして実習される実習というものが、やはり現場へ行った場合には何にも役に立たない、こういうことが言えると思うのですが、それについて大臣はどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  145. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 政府委員からひとつ。
  146. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) たとえば東京の付属学校に例をとりますと、そこで教えた、実習をした学生が卒業して郡部の片いなかの学校に行ったというような場合、自分が付属学校で、それがかりにその地域の学校、地域制のような学校でありましても、現実に赴任した学校は片いなかであるとか、あるいはそれよりももっと繁華なところ、あるいは特殊な地域であったとかいうことで、一般的にこれは付属学校の実習に限りませずそういったような実習的なところは、現実に職場に行ったときと相当違う部面もあろうかと思います。ただそういうことで、本人が卒業して行くところ、そのものそっくりの学校ということはむずかしい問題だと思います。したがいまして、どういうような学校に行きましても、一応基本的に教師として必要な実習ということに、勢いわずかの付属学校につきましてはそういうことにならざるを得ないと思います。でございますので、一がいには申せませんが、ただ非常に優秀な子供ばかり集めた付属学校で教えても、現実にはそんな優秀な子供ばかりいない何々村の学校に行った場合あまり役に立たない、そういうことはございましょうが、しかし、さらばといって、いろいろな型の付属学校もつくり得ない。したがいまして、公約数的なものにならざるを得ないと思います。  したがいまして、付属学校が全く受験本位の、中学校なら優秀な高等学校、高等学校なら優秀な大学へ一人でも多くという、そういうことばかり競う学校であってはいけない。まあそういうことで、先ほど来申し上げておりますように、付属学校は著しく能力の低いような者につきましては、実習学校としてはぐあいが悪いであろうということで、それ以外のものであれば、著しく能力の低くない者は、できればある程度のテストをすれば、あとは抽せんで入れるとか、あまりよりすぐるというようなことはしないほうがいいのじゃないかといったようなことで、通達もいたしておりますし、学校としてもそういうことに努力しておると思いますが、現実の問題としては、御指摘のような傾向になりかねない現状でございます。ですから、そういう点は今後十分あり方について検討していきたい。  それから、全く付属学校でございますので、実験学校であると同時に実習学校ですから、教員免許状を持たない卒業前の学生が実習をするわけですから、あまり優秀であるのもどうかと思いますが、あまり悪いのもどうか、いろいろございますが、今後十分そういう点については留意して検討さしていただきたいと思います。
  147. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 まあ、実際に赴任した学校がいろいろな条件のもとにある学校だ、そういう学校を予想して付属小学校の中でそうした教育はできないというようなお話ですが、教育の技術というものは私は一つの身につけなければならないものがあると思うのですね。農村の子供だから、また都会の子供だからといって、子供自身には私は変わりがないと思う。そうした子供を教えていく基本的なものというものは、私は付属小学校で実習生として勉強する以上は、そういうものは身につけなきゃならないと思うのです。そういうものは、特殊な頭のいい子供や家庭環境のいい子供を対象にしたのでは、私は全くそれを身につけることができないのですね。そういう意味で、先ほどから意見が出ておりますように、そういう特殊な子供を入れるということをまず改めるのが先決問題だと思うのです。そういう点についてもう少し積極的な文部省としてのお考えがあってはどうか、こういうふうに思います。
  148. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 先ほど岡先生からも御指摘ございましたが、東京大学の付属高等学校は双生児だけ入れておるというような、いわゆるそういった特殊というようなことは、これは学校性格によって必要な場合もあろうかと思います。ところが、先生のおっしゃる特殊というのは、非常に上級学校に進学し得る、しやすいような、そういった能力だけを養う、あるいはそういう能力を持ったもの、そういったいわゆるエリート学校といわれるようなそういう特殊な学校は、これは一般的に私どもはよいとは思っておりません。したがいまして、そういう点を含めまして検討していきたいと思いますが、さらばといって、地域と全く同じようなものであれば、これは付属学校でなくて、その地域の学校を代用付属にしても間に合うというような意見も出てまいりましょうし、また、大学の教員養成学部学生は、付属学校だけではなくて、代用付属に行って、あるいは農村の学校を教えさしてもらうとか、そういうような予算措置も講じ、学校によってはそういうこともいたしている次第でございます。
  149. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 教育実習をするのですから、教育技術というものを身につけなければ何も実習の意味はないと思うのです。そういう教育の技術というものは、頭のいい特殊な子供を対象にしていたのでは私は会得できないと思うのです。頭のいい子供、家庭環境のいい子供だったら、たいして教育者が教育技術的なものを施さなくてもどんどん勉強もしていきますし、いい成績も自分からおさめていくと思うのです。そういう意味でも、私は特別な子供、いい子供だけを集めている付属小学校というものは、実習の場としては最も不適当だ、こういうことを申し上げたいわけです。また、事実そうした教育技術を身につけようというような真剣な実習がされていないで、進学のための学校になっている。この二点から、今後実習生にもほんとうの教育技術を身につけていけるような付属小学のあり方というものに改革すべきだと思います。その点いかがですか。
  150. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 先ほど来たびたびお答えもいたしましたし、先生もそういうことをおっしゃっておられるように存じますので、御趣旨におきましては、そのように私どももつとめてまいりたいというふうに考えております。
  151. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 付属小学校はいま全国でどのくらいありますでしょうか。
  152. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 国立大学の付属の幼稚園は、四十二の大学に四十三校ございます。小学校は四十九の大学に七十一校、中学校は五十一の大学に七十五校、高等学校は十三の大学に十六校、盲ろう養護学校等は十二校、合わせて付属学校は二百十七校ございます。
  153. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 こうした付属小学校にはやはり入学試験というものが行なわれておりますでしょうか。
  154. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) これは入学試験ということもいろいろ中身が、いわゆる点数だけを競うようなあれもございましょうし、そういう学力だけを見るのではなくて、その他の面を見るというテストもあるわけでございますが、一般に、全然早いもの勝ちで志願順に受け付けて定員に満ちたら切るといったような極端なことはございません。したがいまして、何らかの形の選抜はいたしております。これは先ほど申し上げましたように、著しく能力が劣る子供、これは普通の地域の小学校ですと、義務教育であれば、普通の子供であれば入れておりますが、実習学校というような性格から、著しく能力が劣る者は除外するように、それ以外は抽せんでもよいではないかといったようなことを指導いたしておりますので、こういった範囲内での何らかの選抜はいたしております。
  155. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 試験をやらないで付属小学校に入れる方法が検討されておりますですか。
  156. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 極端な例は、抽せんというのが試験をやらないでやる方法だと思いますが、柏原先生のおっしゃいます試験というのが——失礼いたしました。多少系統的に資料、表をつくっておりますので、それに即して申し上げますと、抽せんだけで決定している付属学校が小学校、中学校に各一校ございます。それから、著しく不適格であるという者を除きまして、あとは抽せんでやっているというのが小学校三十六校、中学校十一校、このようにございまして、あとはいろいろな組み合わせのようなかっこうでございますが、試験をやらないで実験学校、実習学校の生徒としてふさわしいものを入れるということにつきましては、ちょっと、試験をやらないでという前提がありますと、そういう検討はいままでやっていないと思いますが、試験というのは何も点数だけを競う試験ではございません。いろいろな見方をして、ともかく適正に入れるという研究はいろいろしておるようでございます。
  157. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 先ほどお伺いした福岡教育大学付属小学校の収賄事件も事実起きております。また、いろいろ付属小学校のあり方には、その効果があがっていないというのが現実なんで、こうした点を考えてぜひ再検討をやって、付属小学校がその付属小学校としての目的にかなって、教育の全般の職場の先生方に有効に役立つような付属小学校にしていただきたいということをお願いいたします。
  158. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 答弁必要ですか。希望ですか、要請ですか。
  159. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 希望です。
  160. 鈴木力

    鈴木力君 関連して。いまの付属の問題の続きでしてね、お伺いしますが、付属中学校から高等学校の入学試験を受ける場合、そのときには内申書を出すわけなのですが、この付属の中学校の内申書を、一般の中学校の内申書と差別をして入学試験に使っている学校が幾らありますか。たとえば、最近問題になっておるのは富山県の富山大学の付属ですか、多少問題になったと思うんですが、ああいう区別をして、付属の中学だけに特別の内申書をつくらせるようにして使わしているところが幾らあるか、伺いたいのです。
  161. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 御指摘のような資料はいまちょっと持っておりません。
  162. 鈴木力

    鈴木力君 こういうことです。たぶん富山大学の付属だと思いますが、内申書で成績評価が5、4、3、2、1と、こうありますね。普通の中学の場合には、全体の総体評価の場合、5が何%で、4が何%、3が何%、そのパーセンテージをきめているわけですね。たぶん5が四%とか三%とか、少ないわけです。付属の中学における5は二〇%とか、4は三〇%と、そのパーセンテージ、評価のしかたを違えて高等学校の入学試験をやっている。それで、いろいろと多少問題になっているのに、大学のほうでは、おれのほうは成績が全部いいんだから普通の中学と同じ評価で入学試験をされては損だから、これが正しいんだという談話を出している。そういうことが記憶にあるんですけれども、ことしの入学試験で。もし資料がないとすれば、きょうの質問は、そういう区別をした内申書を認めた入学試験の方法を文部省は是とするか非とするか、これを伺いたいし、それからあとでちょっと調べてもらいたいと思います。たぶん富山だと思う、はっきりしないけれども。私の知っているところではまだあるようです。それを是とするか非とするか、資料がなくても判断の御答弁はいただけると思う。
  163. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 速記をとめて。
  164. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 速記を起こしてください。
  165. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) ただいまの小野先生の御質問でございますが、御指摘のような実情、実態を遺憾ながら私ども十分に把握いたしておりません。したがいまして、実態に即さないで、一般的なお答えをすることもいかがかと存じます。したがいまして、大学等の当事者の意見も聞くなり、あるいは十分調査の上、正確なお答えをさせていただきたいと存じます。御了承を願います。
  166. 松永忠二

    ○松永忠二君 関連。いまの問題は、この前、岡委員質問をされて、いま柏原委員質問されて、私は、やはり問題は重要であるから、こういうふうに党派の違ったところからやはり繰り返し質問があるんだと思うのですよ。私はこの前、局長のほうから、選考の方針について文部省の出してあるものを読んで、そんなりっぱなものがあるのに、それが守られていないというところに問題があると私は思ったんですよ。それからまた、大臣が九州の地方へ行って発言をされたことを新聞で見ると、この問題については、とにかく付属の選考のやり方教育については十分にひとつ改めていかなきゃならぬということを申されている。これは全く私たち賛成なんです。先ほどから岡委員も言われているように、いろいろ議論をするけれども、それは具体的に行なわれなきゃ何にもならぬじゃないかということを言っているわけだ。私はぜひひとつ、せっかくいま議論がされているところでありますので、私は文部省の出している方針が、選考の方針が完全に守られておれば、こういう問題は起こってくる余地はないと思うのですよ。それというのは、ある程度のものは落とすとしても、そうでないものについてはいわゆる抽せんとかそういう機械的な選考でやるということが指導されて実施されていれば、いま心配しているものはほとんどなくなってくるのじゃないか。しかし、現実はあなたがおっしゃることとは全然違った方向で付属の学校の選考が行なわれていることは事実ですよ。そうでないと言うなら、われわれ幾らでも例を出しますよ。福岡の付属の先生の問題は、決して福岡の付属の先生のことじゃなくて、全国における付属の先生にやはり類似したようなことがありはせぬかという心配を私たち抱いているわけです。文部省はどんな指導をしているんだろうとわれわれ思ったらば、文部省の指導している項目というのはまことに適切だとぼくは思うのですよ、この前聞いた範囲では。それを完全に実施をするように、特にひとつ大臣、また局長にもお願いしたい。単に何か時間延ばした質問しているわけじゃないのであって、付属の小学校教育問題についてああいう議論がされている。しかも、国立学校設置法の議論をしているこのときに話をしないことには話はできないじゃないかということで、われわれもしているわけなんですよ。だから、直接ぴたっと関係ないにしても、事実上文教委員会で議論をするにはなかなか、やはり国立大学の問題は大学法律を議論するときでなければ、十分な議論はできないのでやっているのであって、意図的にそういうことをやっているのではないので、この点ひとつ大臣の御決意を聞いて、それをひとつ局長は必ず実施をするということであれば私たち納得ができると思うのですが、特にひとつ大臣の御発言を願いたいと思うのです。
  167. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) この問題につきましては、いま松永さんのお述べのとおりでございまして、文部省の従来示しております方針が着実に実行されておれば、問題はよほど少なくなってきているだろうと思うのであります。いろいろまた不幸な事件も起こったことでございますので、思いを新たにいたしまして、もう一ぺんこの問題について文部省としても検討をし、また各大学につきましても注意を喚起いたしまして、それぞれ改善策について検討するようにいたしたいと存じております。実はそのことは大学局長にも私のほうから命じているわけでございまして、何らかの成果を期待し得るものと思っております。
  168. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 大学の問題が取り上げられておりますので、それに関連して簡単に三点だけお聞きしたいと思います。  これは私学振興の問題ですが、四十三年度の大学生急増対策においても従来どおり私立大学が占める比重が非常に重い。これに対して私立学校私学振興策拡充の内容というものがあるかどうか、またありましたら簡単にお聞かせ願いたいと思います。
  169. 村山松雄

    政府委員村山松雄君) 私立大学が志願者の増加に応じて学部学科設置するそのこと自体は、私学自体の発意に基づきまして、文部省は基準に合えばこれを認可するということで、格別に奨励はいたしておりません。  ところで、問題は設置せられた学部学科の運営についての助成の問題でありますが、これにつきましてはいろいろの角度から検討がなされているわけでありますが、現在のところでは、昨年出されました臨時私立学校振興方策調査会答申に基づきまして、従前やっておった助成はこれをできるだけ強化する、それから新たな助成方策としては経常的な教育研究費に対しまして四年制の私立大学を対象として物件費的なものについてこれを助成するということで、これにつきましては新たに約三十億円の予算を計上いたしております。今後とも、従来やってまいったこと並びに今後新たに取り上げました教育研究助成拡充してまいりたい、かように思っております。
  170. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 もう一点ですが、英国においても私立学校には非常な、経常収入の七〇%以上を国費でまかなっておりますけれども、わが国でも私立学校授業料を国費でまかなって国立学校並みにできないかどうか、こう思いますが、その点はいかがでしょうか。
  171. 村山松雄

    政府委員村山松雄君) 大学の制度は国によって異なっておりまして、イギリスのごときは、これを私学と言ってよろしいかどうかにつきましては議論が分かれますが、国が直接設置したものでないという意味私学でありまして、これに対して助成が行なわれていることも御指摘のとおりでございます。  わが国の場合は、国・公・私立、これは学校教育法上は平等のたてまえでありまして、ただわずかに義務教育段階の小・中学校については市町村に設置義務が課されておる。それから、国・公立の義務教育段階学校につきましては、授業料を徴収しないという規定があるだけで、その他の面におきましては学校教育法上国・公・私立は平等のたてまえで、これを設置するのはそれぞれの発意に基づき、基準に合えば認可が行なわれる。認可せられた私立学校経費については原則として設置者負担で行なう、足らざる面をできるだけ国あるいは公共団体の助成をする、こういうたてまえで、具体的な方策については調査会での答申を基礎としてやっておるわけでありまして、授業料を取らないでいい程度まで助成を行なうというようなことは調査会でもここまで示しておりませんし、私どもも少なくとも近い将来にそういう段階まで私学助成を行なうという用意はございません。
  172. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 以上です。
  173. 松永忠二

    ○松永忠二君 国立学校設置法の一部を改正する法律案関係予算案というものは参考資料としていただいてあるわけですけれども、これをちょっと説明していただきたいと思います。
  174. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 文理学部改組といたしまして五千六十三万七千円、二大学分でございますが、それは千葉大学と愛媛大学でございます。  で、千葉大学文理学部は今度人文学部と理学部に分かれます。教養部はつくりますが、これは学部ではございませんが、それに伴います経費が二千三百七十四万五千円でございます。で、この文理学部改組することによりまして、定員を、学生定員は百六十五名ふえまして二百八十五名でございます。この学生定員に伴いまして、学生一人当たり積算校費というものがございますので、純増分の百六十五人の学生一人当たり校費が増加してまいるわけでございます。職員につきましては、教授四人が増員になりますが、この教授四人は、いわゆる振りかえと私どもが俗称言っておりますもので、現実にあります講師の定員のうちの三人、助手の定員のうちの一人、計四人を教授に置きかえるものでございますので、いわゆる振りかえで、純増はございません。その他設置費が千三百二十七万。こういうことでございます。  愛媛大学につきましては、法文学部と理学部をつくります。二千六百八十九万二千円。学生定員は、千葉のときにも申し上げましたような形で、百十人増員になりまして、これについての学生校費が増額になります。職員定員は十名の教授を増員いたしますが、この十名の振りかえといたしましては、助教授一、講師三、四人が振りかえでございますので、純増六名の教授ということになります。設備費が九百九十九万九千円でございます。  また、大学院の設置につきましては、国立学校設置法で御審議いただいております四大学大学院を置くことによって八千万円余りの増額を要するわけでございます。これは内訳は、学生定員——修士でございますが、四大学で二百六人、これも同じように二百六人について学生当たり校費がつきます。職員の定員につきましては、従来学部のうち充実をしたものに修士課程をつけるとい4ことで、修士コースが置かれましても、そのために学部の教授定員を増員するということは従来から行なっていないところでございます。  以上が概要でございます。
  175. 松永忠二

    ○松永忠二君 これはどういうことなんでしょうか。学生定員がふえて、職員はゼロあるいはまた置きかえで、教授の数が非常に少なくなってきている。これはあれですか、普通の場合の大学設置基準等に示されているようなそういう配置とどういうふうな関係になるのですか。それをお聞かせ願います。
  176. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) これは私ども大学をつくります場合に、私立大学公立国立大学も同じでございますが、いろいろ大学をつくりたい、まあ大学をつくるという場合は、基礎は学部でございますが、その場合に大学設置基準というものができておりまして、一応その設置基準を一つめどといたしまして、その設置基準を少なくとも下回らないように、国立は教官定員の措置をしておる、その結果でございます。
  177. 松永忠二

    ○松永忠二君 そうするとあれですか、これは設置基準に伴う定員が完全に配置をされているけれども、百六十五人学生定員がふえても、職員のほうは四人しかふえない、こういうことなんですか。これはあるいは定員について幾ぶん削減をしていくという考え方でこういうものをやられておるのか。まあわれわれ常識的に考えて、百六十五人の純増と百十人の純増ということになると、これだけの教授では足らぬのではないか。講師、助教授の振りかえをやって、あと講師、助教授にどういうふうに助手や講師をするのか、これで基準に合致をするのかどうかということを、あるいははまた特別な事情があって、増員はされても、現実定員はそれだけふやせないという事情でそうなっているのか、その点をひとつお聞かせ願います。
  178. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) いま松永先生のおっしゃいましたあとの段の、要するに増員はしても一方削られるから、差し引きゼロになるのだという計算ではございません。それと、これは実は全体の四カ年間で完成していきます。学生文理学部改組されましても一年生から入ってくるわけで、学年進行で——今度改組しました愛媛でございますと、法文学部と理学部に分かれる。これは来年は一年生だけでございます。四年後に完成していくということで、学年進行で教官の増員をする、その初年度分に当たっておる、そういうことでございます。
  179. 松永忠二

    ○松永忠二君 そうすると、こういう把握でいいわけですか。従来基準として置いている教授、助教授、助手の人数、これは何ら変動なしに増員される学生定員に伴って増加をされているんだと、その初年度、これで少しもそれに影響されている配置ではないと、こういう把握でよろしいのですか。
  180. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 大体そういうことでございます。
  181. 松永忠二

    ○松永忠二君 わかりました。そうすると、これは例の三%とか、五%減とかということとは全然関係のない、そういうものには影響されない定員配置になっていると、こういうことですか。
  182. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) さようでございます。
  183. 松永忠二

    ○松永忠二君 それでは、続けてお聞きをいたしますが、ここで文部省に出していただいた「予算要求額事項別表」の「教官当積算校費」、これはもちろんこの予算の中にも考えられているわけでありますが、この教官当たり積算校費というのは五%の増加を見ているというわけでありますが、これは一体現実にどんな内訳をもって各大学に伝達されているのか、これをひとつお聞かせください。
  184. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) これは教官当たり積算校費は、申し上げますと、大きく分けまして講座制と、修士講座制と、学科目制と、この三つの大くくりに分けております。それから、それぞれのくくりの中を実験系、非実験系、それから医学部、病院等では臨床と、こういうまた三つのくくりに分けまして、わかりよく申しますれば、非実験と申しますのは、これは文科系のもの、実験と申しますのは理工系のものでございます。  で、教官当たり積算校費と申しますものは、使われ方といたしましては、教員の給与等は別途給与費がございますが、その他のいろいろな教育研究をやります場合に、大きな設備は設備費として別にございます。したがいまして、先ほど来私立学校経常的教育研究費のときに管理局長が答えましたが、私立にたとえますれば、そういった経常的なものに充てられておる経費でございます。で、いろいろいま申しましたような分け方でそれぞれ一人当たりの単価を出しまして、それにその学校の教授、助教授、講師、助手、こういった人の定員を乗じまして、全体の金額を積算し、各大学に配分しておるという実情でございます。
  185. 松永忠二

    ○松永忠二君 これは教官当たり積算校費、あるいは俗にいえば教官研究費というんですね。これが増額をしてほしいということ、そしてまたそれが必要であるということは言われておるところです。従来これについてこういう言い方をされていたんですが、この点は内容はどうですか。文部省のとめ置き予算というのがある。それからまた、大学の本部の大学運営費というものが別途またある。それからまた、いま話のあったような講座制とか学科制、実験、非実験ということになってくるでしょうけれども、そういうものを取り除いていくと、純粋の研究費というものは非常に掲げられている費用より少なくなってきているんだ、こういう点を改めていかなければいけないということは、従来教官研究費でよく言われておる事柄です。これについては一体現実的に改善をされてどういうふうになってきているのか、いま現状はどうなっているのか、その点をひとつお聞かせをいただきたい。
  186. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 教官当たり積算校費と申しますものは、先ほど先生の御指摘になられましたように、一時、過去におきましては教官研究費という名称であったことがございました。そういたしますと、先ほど来申しておりますように、かつて言われたこの教官研究費と、いまの教官当たり積算校費ですが、これは学生一人当たりの校費もあるわけでございまして、それらが学校教育研究の経常的な経費の中心的な要素になっておるわけです。したがいまして、従来教官研究費という名前なんだから、教官の研究だけに使うのであって、ほかのものに使ってはいけないんだというようなことを大学の先生のうちではおっしゃる方もできてくる。それで、しかし、教官研究費という名称であるから研究にだけ使ってその他の経常費には使ってはいけないんだとなりますと、また教官研究費を細分いたしましていろいろしなければならない、いろんな問題も起こりますし、またそういう誤解はともかくとして、要するに教官当たり校費なり学生校費なり、こういうものをふやしていくということが一番重要なことだと考えまして、文部省におきましては過去今日まで、非常に地味な経費でございますが、一応こういうものを基準経費と呼んでおりますが、これを非常に重視しまして、毎年少なくとも一〇%アップぐらいを目標に過去から今日に至っておるわけで、ただことしは五%ということで、昨年、一昨年よりもアップ率が多少低いわけですが、一応そういうことでございます。
  187. 松永忠二

    ○松永忠二君 私の聞いてるのは、やはり教官研究費ではそういうふうな類推がされるので、「教官当積算校費」という名前にした。そうすると結局、純粋の研究費ですね、これが教官でいえば大学の経常研究費に当たるわけですね、これは。普通の科学研究費とはこれまた違う。まあ経常的な研究費、これは一体純粋と言っちゃいかぬけど、この中にある研究費というのは、全体の金額のどのくらいなパーセンテージになるんですか、それをひとつお聞かせいただきたい。
  188. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) ちょっと恐縮ですが、それは学校当たりですか、全体ですか。
  189. 松永忠二

    ○松永忠二君 全体。
  190. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 松永先生の御質問意味はわかるんですが、ただ、その分析のしかたが非常にむずかしいと思うんですが、この教官当たり校費のトータルは四十三年度二百七億一千三百八十五万六千円です。二百七億でございます。前年度は百八十九億でございましたので、十七億ばかりの増になっております。それに対して全体の国立学校特別会計の予算に対してこれが何%になるかということは、まあ計算すれば出ますが、むしろ純粋……
  191. 松永忠二

    ○松永忠二君 そうじゃありません。私の聞いているのはそういうことじゃなくて、よく文部省のとめ置き予算が六%くらいだとか、大学本部の大学運営費、光熱費とかあるいは共通図書費等が幾らとかというようなことで、それを差し引いてみると、純粋のつまり教官研究費は全体の中の三分の二だとか四分の一だとかということを言われたりするわけですね。で、そういうふうなことと、それからまた、あなたがおっしゃった学科目制の大学で実験科目の教授というのは一体金額は幾らになるか、あるいは非実験の助手というのは一体どのくらいな金額になるのか。これは従来、大学予算をいろいろ考えるときに、できるだけこれをひとつ拡大をしていきたい、そういうようなことを考えて、文部省自身も必要としてだんだん予算をふやしてきているわけですけれども、事実上、教官の一人当たりの研究費こういうものは一体この教官当たり積算校費の中で何割を占めているのか。それでまた、その単位、単価というか、積算の中で、一、二の例をあげて助手と教授というようなものについての数字を示してもらいたい、こういうことを言っているわけです。
  192. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) いろいろ御質問ございましたが、前段のほうの、いわゆるとめ置きというお話が出ましたが、実は、いろいろ言われますが、文部省はとめ置かないんです。文部省は積算どおり大学に配ります。ただ、配る時期が何回に分けて配るかということはございますが、これは全部配ります。ところが、大学におきましては、配られたものを大学本部のほうで共通経費として、教官校費学生校費、とりわけ教官校費というのは、教官の方がこれは自分の教官研究費だというので、非常にそれを、極端にいいますとそのとおり配分せよというようなことになりますと、本部として学校全体の共通的な経費の出ようがないということで、いま先生がおっしゃいますとめ置き云々の問題は大学内の問題でございまして、学校によって非常に違います。各学部に配った後に、学部から、学校全体の運営で要るだろうからといって、一ぺんもらっておいてまた出したり、あるいは初めからカットして一〇%は置いておけといったような配分のしかたをやっておるところもございまして、その問題であろうと思います。  それから、教官当たり積算校費のことですが、先ほど来申しましたように、大くくり、小さなくくり、そういうことで非常に種類が多うございますが、たとえば学科目制に例をとりますと、非実験の教授は教授一人当たり二十一万九千二百円でございます。それから、非実験の助教授は十二万一千百円、講師は九万三百円、助手は六万六千四百円。それが同じ学科目制でも実験系になりますと、教授一人当たり校費が七十二万八千二百円、助教授四十三万九千五百円、講師二十六万八千六百円、助手十二万円、これはもちろん年間の一人当たり校費、一年間にこれだけという積算でございます。  で、それをそれじゃ純粋に研究費に幾らでそうでないものに幾らということは、これは事実上その調査は不可能に近いというのが正直なところでございます。と申しますのは、これを大学全体といたしまして、積算は一人当たりで積算されておりますが、全体の金額として、その中から書物も書いてますし、あるいは小さな備品程度も買いますし、場合によりましては実験実習の場合の水道料、ガス代、こういう光熱水料にも使われますので、それのいま先生がお尋ねのような区分での把握ということはなかなかむずかしいというのが実情でございます。
  193. 松永忠二

    ○松永忠二君 あなたがいまおっしゃったのは積算の基礎を言われたわけで、それに対して数を掛けて、教官当たり積算校費というのは出すわけですね。私の言っているのは、従来教官研究費といったときにもやはりとめ置き予算というのはその中から出されていた。とめ置き予算と言っちゃいかぬけれども、いろいろ大学のいま言う光熱の費用であるとか、いろいろな費用も出されておった。できるだけ教官の純粋な研究費を高めていきたいというようなことで、いろいろ議論をされていたわけですね。私たちからいうと、やはり純粋にその研究費として使われるものは一体どのくらいあるのだろうかということを知りたいわけです。  それからまた、いまのお話だと、要するに大学の運営のためのとめ置き予算というのは各大学で自由にやられているということになると、これまたやっぱり一定の基準があってやられるのはけっこうだけれども、ちょうどよく問題になるのは小・中・高等学校ですね。先生の旅費は積算の単価がきまっているが、現実に使われている旅費は一般的にそんなに使われないで、非常に集約的に使われているところで問題があるというようなことを言われているわけなんです。そういうふうなことから考えてみて、私たちやはり運営に使われる費用と事実上その大学の先生の研究に使われる費用がどのくらいの割合になっているかくらいのことは、われわれとしても知りたいわけなんですよ。ただ積算の単価がきまっているというのじゃなくて、現実的にどうなんだということを知りたいわけなんです。そこで私お伺いをしたわけですが、またひとつ資料でもおありになったらお示しください。これは従来大学予算のときにはいつでもわれわれは問題にしてきたしする問題というので、お尋ねをしたわけであります。——よろしゅうございます。あとでまたひとつお出しください。  そこで、科学研究費のほうは一つここに出ているわけですが、これは非常に拡大をされて、最終的にいろいろ努力をされて金額もふえてきた問題なんですけれども、この科学研究費というのは一体どういうふうな内訳で使われているのか、この点をひとつお話を願いたい。
  194. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 科学研究費が四十三年度一応五十億、四十二年度より約八億増の五十億計上されておりますが、それの内訳といたしましては、これはいろいろな名称に分かれておりますが、総合研究、あるいは基幹研究、各個研究、試験研究といったようなもの、そのほかに研究成果の刊行費、あるいはガン等の特別研究費、まあこういったような種目に分かれておりまして、それぞれの申請者、研究者から申請がございますが、その申請も、いま私が申しましたような種目別に申請がなされておるわけでございます。その場合五十億になります。それをどのように各部門に配分するかということは、科学研究費の配分委員会でそういったこともあわせ検討して、その個々の研究者に配分され交付されていくということでございます。
  195. 松永忠二

    ○松永忠二君 この科学研究費のほかに、日米科学協力事業の研究費、受託研究費というのがあると言われているわけですが、これはあれですか。従来とは少し変わってきたんですか。こういうものについては、たとえば昭和三十九年度には日米科学協力事業の研究費が三億一千万円だった、受託研究費が一億四千万あったと、こういう金額が示されているわけですが、これは現状どうなっていますか。先ほど小野委員からも少し話が出ておりましたけれども、これはどういうふうに……。
  196. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) ちょっと御質問の御趣旨がどうもはかりかねるわけでございますが、先生、受託研究費ということと日米科学研究費、二つ合わせて言っておられますので、ちょっと私のほうで把握しにくいんですが、受託研究費につきましては、これは去年の秋ごろから問題になりました件でございまして、各大学が外部から委託を受けて、それに大学の機能上その委託を受けて貢献し得るといったようなものは、大学としてその委託を受けて研究をし、その成果を委託者に示すといったようなことで、受託研究制度というのがあるわけですが、そこのことと日米科学のほうはちょっとつながりがないんですが……。
  197. 松永忠二

    ○松永忠二君 別個です、別個。金額はどうかということです。どういうふうに把握しているか。これはもう全然ないんですか、あるんですか。それから、受託研究費というのは一体全然なくなっているんですか、あるんですか。
  198. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 受託研究費は予算に計上いたしております。国立学校では受託研究費という項目がございます。これは各大学が、これは一般の民間会社等からも委託を受けますが、その場合に受託料を取ります。それは国庫に入れさせます。そのかわりそれに見合う金として、受託研究費を歳出として予算に組んでおるわけでございます。
  199. 松永忠二

    ○松永忠二君 その金額を聞いているんですよ。金額を言ってください、ちょっと。——それじゃあそれはあとでひとつ出してください。私の聞いているのはね、金額を聞いているわけですから、どのくらいあるものか。それから、日米科学協力事業の研究費というのは現在は全然ないのかどうか。これは日米科学委員会できまった科学協力事業を中心とする経費としてこれはあるのかないのか、金額的にはどういう金額になっているのか、こういうこと。まあそれわかったら、ひとつ言ってください。
  200. 井内慶次郎

    政府委員井内慶次郎君) 受託研究費の点につきまして、数字をお伝えいたします。  昭和四十年度が大体一億六千三百万、四十一年度が二億四百万でございましたが、一応四十三年の受託研究費の、これは歳入予算と歳出予算と両方に予算計上いたしますが、四十三年度予算におきましては、歳入の予定といたしまして一応一億四千二十二万五千円。それで、この点は先生も御存じかと思いますけれども、翌年度の予算を組みますときに、前年度の大体七月末ごろに各大学から、翌年度どこの会社から幾ら受託されそうだという内訳を一応とりまして、それで予算計上を一応いたします。ただ、その当該年度に実際に進行してまいりますと、予算編成のときに予想していなかった受託が出てくるわけです。あるいは過不足がありますが、それが出てまいりますと、いわゆる弾力条項の適用と申しまするか、予備費と同じようなかっこうで、歳入がたくさん入ったら歳出予算も自動的に使っていくというような、こういうふうな扱いになっております。四十三年度予算におきましては、受託研究費の歳入を一応一億四千二十二万五千、こういうようにいたしております。
  201. 松永忠二

    ○松永忠二君 日米科学協力研究事業費、これあるのかないのか。
  202. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 日米科学のほうは、日本学術振興会の予算といたしまして、日米科学協力研究事業費一億九千四百万円が予定されております。
  203. 松永忠二

    ○松永忠二君 そこで、私お尋ねしたのは、大学の先生方に関係した研究費というのがどういうふうな項目の中に入っているかというような意味お尋ねをしたわけですけれども、その中の科学研究費の問題です。この科学研究費については、私の資料で間違いなければ、昭和四十二年は四十一億で、申請総額が二百四十一億円だったと、こういう話でありますが、昭和四十三年度についてはここに出ているように総額で五十億、小さい項目の科学研究費で四十五億六千万と、こういうふうに出ているわけですが、この現状はどんな状況でありますか。
  204. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 科学研究費の申請のありました課題件数は約二万で、四十二年度分が二万でございます。そのうち採択いたしましたのは四千二百件で、これは約申請の二〇%に当たります。それから、経費のほうで申し上げますと、それは申請経費の約一八%、四十一億円ということになっております。
  205. 松永忠二

    ○松永忠二君 本年度はどうですか。
  206. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 四十三年度は、研究費の総額は五十億でございます。ただ、それにつきましてまだ配分をいたしておりませんので、申請もいまほとんど、締め切りは近うございますが、募集中でございますので、トータルはまだ集計されておりませんし、これからそのうちの何件に配分をするかという件数は、大体ことしですと八月過ぎ、九月ごろになりませんと、四十二年度のような配分件数が確定いたしません。
  207. 松永忠二

    ○松永忠二君 そうすると、大体要求の件数、金額というのは、昭和四十三年についても大体のところはおわかりじゃないですか。全然わからないのですか。いろいろなものに金額も出ているので、そういうところに間違いがないかどうか。
  208. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) これは従来の数年間の実績を見ましても、申請件数もふえますし、したがって申請金額もふえております。そういうことから申しますと、昨年は約二百五十億ぐらいな申請金額でございましたが、ことしはそれより上回って三百億前後の申請金額になるのではないかと思います。現実には五十億の経費しかございません。それで、三百分の五十というのが実際に行く比率になろうかと思います。
  209. 松永忠二

    ○松永忠二君 これは、予算要求は幾ら要求をされたのですか、金額は。
  210. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 百億でございます。
  211. 松永忠二

    ○松永忠二君 そこで、科学研究費配分の現状というものについて、その状況をお話し願いたいと思うのです。
  212. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 科学研究費配分の状況……
  213. 松永忠二

    ○松永忠二君 ことしの、現在までに至っている状況。
  214. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 御質問趣旨は、科学研究費配分につきましていろいろ改善策を考えておる、それの今日までの経緯はどうかという御趣旨であろうと思いますが、お答え申し上げます。  この科学研究費の補助金につきましては、松永先生も先ほどからおっしゃられておられますように、研究者にとりましては非常に重要な補助金でございます。そういうことで、研究者はもちろん、文部省といたしましてもこれの金額の増額をはかると同時に、真に研究者のためになるようにこの経費が配分されることを常に頭に置いてきたわけでございます。ところで、この科学研究費の配分につきましてはいろいろ問題がございまして、一昨年来文部省に学術奨励審議会というものがございまして、そこの分科会でこの問題を検討しておられましたが、昨年学術奨励審議会が学術審議会に改組されました。そこでまた学術奨励審議会時代研究を引き続いて検討されました。その結果、昨年十二月に文部大臣あて御答申をいただきまして、それによりますと、従来から問題にされておったところですが、先ほど申しました科学研究費を配分する場合の区分、たとえば総合研究とか、機関研究、各個研究、試験研究、こういったようなものがございますが、これをもう少し適正な区分にしてはどうか。一例を申しますと、総合研究というものは大ぜいの人がほんとうに力を合わして一つの目標に向かって研究するわけですが、現実には個人個人の研究を単に積み上げた個人研究の集合体にすぎないといったようなものもありますし、中には研究者同士の研究関連することではございますが、研究連絡を中心とする事務的な経費のようなものも総合研究費の中で行なわれておった。こういうようなことから、これを今後総合研究はAとBに分けるといったようなこと、その他時間の関係がありますので省略しますが、いろいろ現在の区分についてもくふう研究をする必要があるということで、種目につきまして改善の答申がなされました。  それから、現実に金額の配分をいたします場合に、従来大体百二十名の方がこの配分に当たっておられたわけでございますが、非常に学問的な研究の専門分野、専門分科、こういうものは広うございますが、それを百二十人でやるということは必ずしも公正でない。むしろ人数をふやしてやるべきだ。したがって、それは四百名ぐらいにしたほうがいいであろう。と申しますのは、従来人数も少なく、また一つの申請件数に対しまして一人の人が審査をすれば、それで大体補助金の配分の合否が決定されるというようなことでございましたが、これをもっと慎重に公正にやるためには、一人の人の研究に対して三名の方が審査に当たってやるほうがより公正であろうということ、それとまた、そういう三名の人が一つの申請を見まして採点をしますと、ただ点数だけで高点順位にとるというのはどうか。したがって、最後に全体の問題をもう一度総合的な観点から見るための審査方式、いわゆる二段審査方式にしたほうがより的確ではないかといったようなことを趣旨といたします御答申をいただきました。  文部省といたしましては、これに基づいて四十三年度の科学研究費の配分をしようということになったわけでございます。ただ、この科学研究費の配分につきましては、直接そういう配分のことを審議していただく委員の先生、これは従来から学術会議の御推薦をいただいております。ことしもその学術会議の御推薦をいただくべく努力いたしたのでございますが、学術会議といたしましては、急に四十三年度からそういう新しい方式にするのでは、時間的にも委員を推薦するのに間にも合わないし、一年待ったらどうかと、一年待つべきだというようなこともございました。しかし、私どものほうとしましては、先ほど来申しますように、種々長い間問題にされておったことの改善案がせっかく答申になってあらわれた次第でもございますし、また先ほど申しておりますように、五十億の科学研究費も、そういう新しい配分方式にすると、従来の短所は改められていい形でやれるということで、五十億の予算もついておりますし、またその内訳として従来百二十名ばかりの審査員であったのを四百名にするといったような予算もついておりますし、そういうようなことから、文部省といたしましては、四十三年度から実施しようということ、ただそれに対しまして、学術会議といたしましては、いろいろお話し合いも申し上げたのですが、十分な御了解を得られませんで、学術会議から四十三年度は御推薦いただけなかったということは遺憾なことでございましたが、以上そういう経過で今日に至っておるということでございます。
  215. 松永忠二

    ○松永忠二君 そうすると、現在文部省の態度としては、これはどうするんですか、どういうやり方でおやりになるという考えを持っておられるんですか。
  216. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 学術会議のほうから以上のような経緯で御推薦をいただけませんでした。しかしながら、一方におきましては、研究者のほうからは四十三年度の配分申請もほとんど出そろっております。それで、一刻も早く新しい方法で科学研究費を研究者に配分いたしたいということで、学術会議から御推薦がいただけませんので、文部省のほうでその委員を選考せざるを得ないということになりました。  そこで、現実の具体的な問題といたしましては、学術審議会というのが文部省にございまして、そのほうで御答申もいただきましたし、その中には学術会議の会員をしていらっしゃる先生も六、七名おられますし、学術会議の先生方と劣らないような先生も各分野についておられます。そういう先生方も学術会議との関係もいろいろお骨折りいただきましたし、従来からのいきさつも御存じでございますので、直接にはそれらの先生方で御選考をいただいて、その方式で本年度は科学研究費の配分をしていきたいという考えでおります。
  217. 松永忠二

    ○松永忠二君 そこら辺、もう少しはっきり聞かしてください。学術審議会の人たちにお願いをして、その人たちでやってもらうんですか、学術審議会が推薦をした人を使うんですか、それともそうではなくて、まあ学術審議会の意見も聞くけれども文部省自身が選考するんですか。この点はいまどういうふうなお考えですか。その辺、もう少し明確に言ってください。
  218. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) これは従来からも、また今度の改正案でも、科学研究費の配分は文部大臣の権限でございますし、科学研究費配分の委員の任命権者も文部大臣でございます。したがいまして、文部大臣関係は従来と変わりはございません。ただ、文部大臣が任命権者であると申しましても、私ども大学局長とかあるいは課長とかだけでこういう選考をして、大臣にその人を発令してもらうということは、これは適切でございませんので、具体的に申しますと、学術審議会の先生方にいろいろ御相談も申し上げ、学術審議会の先生方からいろんな御推薦をいただき、それを文部省として文部大臣の責任において発令する、そういうかっこうでございます。これは考え方も制度的にも従来とそこは変わっておりません。
  219. 松永忠二

    ○松永忠二君 学術審議会で推薦をしていただくと言いますが、これはどのくらいな人数の人を推薦してもらって、そうしておやりになるつもりなんですか。文部大臣の権限なんというようなことは別にお話をいただかぬでも、これは当然のことですから、あれですけれども、学術審議会にどのくらいの人を推薦してもらって、そうしてそれを委員に選考して、そうしてその人たちにお願いをする、これはどうですか。
  220. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) これは専門分野というものが幾つかの分野に分かれます。その各専門分野の中にまたそれぞれ細分いたしまして、専門分科というかっこうを従来からもとっておりますし、今後もとります。そういう形におきまして、それぞれの専門分科で人数が一定いたしておりませんが、構成といたしましては四百名を予定いたしております。四百名を決定するためには、四百名以上の人を一応候補者として考えなければ最後の四百名が決定いたしませんので、学術会議のほうへ文部省委員推薦をしてもらいますときは四百名の定数の一・五倍ないし二倍ぐらい、従来も百二十名でございましたが、その二倍に当たるものを候補者として御推薦いただいております。
  221. 松永忠二

    ○松永忠二君 私聞いておるのは、いま現在どうしてやるかということを聞いているわけなんです。いまから六百名を学術審議会で推薦してもらって、その中の人たちから答申を受けたような方法でやりたいというのか。ことしはそうではなしに、どういうようなやり方でやろうとしておるのか。
  222. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 学術審議会のほうで一応四百名の委員を選ぶために、文部省で四百名の委員を発令するについて、審議会としてはそれを上回る数字でいま検討しておられます。学術審議会としてはおそらく、四百名につきまして、こういう人々で構成されるのがよろしいであろうという、これは形式的には諮問とか答申とかいう形でなくてお願いいたしておりますので、実質的な御推薦があろうと思います。それに基づきまして、私どもとしましては、文部省としてもそれに責任が持てるという判断をいたしますれば、それに基づいて文部大臣の発令をするという手続になろうかと思います。
  223. 松永忠二

    ○松永忠二君 四月二十四日に日本学術会議が総会を開き、きょうも開いているようですが、最初の日に、審査委員の推薦を拒否した執行部の措置を追認をしておるわけですね。そういう事態から考えてみて、あなたのおっしゃったようなことが順当に進んでいくという見通しを持っておられて、そういうことをお考えなんですか。この学術会議が総会で、審査委員の推薦を拒否したいままでの執行部のやり方はよろしいというわけで、措置を追認したということは発表にもなっておるわけですね。そうすると、そういう段階で学術審議会から六百名の人を推薦してもらってその中から四百名選んでいくというあなたのいまのやり方が順調に進んでいくというふうにあなたとしては御判断をされて、そういうことを言われておるのですか。これはもう間違いなくそういう方向で解決できるというふうにお考えですか。
  224. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 学術会議のほうへは四百名に対して一・五倍ないし二倍というお願いをいたしました。しかし、学術会議のほうからは御推薦をいただけませんでした。それで、文部省としては、先ほど申しましたような形で、いま学術審議会のほうへ推薦を願っておる。で、現在の段階では八割方くらいの委員めどがついておりますが、少なくとも四月下旬、五月上旬を待たないうちに、最終的な決定をしたい、こういうふうに考えておりますが、そちらのほうは、私ども考えでは大体順調に文部省としての選考ということはいくというふうに考えております。  ただ、先生の御質問の御趣旨がよくわかりませんでしたが、一方、学術会議のほうではいろいろ総会を開いてやっているが、そちらのほうの関係は今後どうかという、あるいはそういう意味のお気持ちでありますれば、その点は、文部省といたしましては、ことしはやむを得ず独自の方法をとりましたが、四十四年度以降学術会議のほうで答申趣旨に沿った形で御推薦いただければ、ぜひ御推薦をいただきたいということをお話ししておる次第でございます。
  225. 松永忠二

    ○松永忠二君 私の聞いているのは、これから日本学術会議とどういうふうにするとかなんとかということを聞いているのじゃなくて、学術審議会の推薦を六百人してもらって、その中から四百人選んで、答申に合ったような方法でやるというようなことについて、まあスムーズにいくだろうかどうだろうかということを心配しているわけですね、問題は。いずれも学会を持っているわけですね。かりにその中の人が選ばれたとしても、その人たちが拒否をしてきたら、一体どういうことになるだろうか。むしろ学会の意見というものを相当尊重する中で学術会議というのはいろいろと運営をされているようですけれども、そういうふうな点で私は——まあそういう点について少しも心配なしに、ことしは時間がただおくれただけで、この配分というものはスムーズにいくものだというふうにお考えになっておられるんですか。それとも、そういう点について今後問題点もあるというふうに判断をされて、その措置を何とか考えていこうという気持ちを持っておられるのか。文部省としてはもう独自でやるんだという態度を三月ごろにきめられたんで、そのとおりやっていくだけだというお考えなんですか。  まあわれわれが心配することは、かりにそれじゃ四百名が選ばれたとしても、その四百名の人たちが各学会で相談した結果拒否をしてきたらどうなるか。私はこの際御遠慮したいというふうなことになってきたらどうだろう。特に、学術会議の総会等で現在の措置を認め、特にその中で学術審議会に入っている人たちが審議会の案を持ち出したことについていろいろ批判もあって、その人たちは今後はそういう態度はしない、学術会議の基本線に立ってやるんだ、というようなことまで報道されたり、確認されているようですから、そういう点から考えてみると、あなたの考えるような行き方にスムーズにいくだろうかということを私は心配している。こういう点はちっとも心配なしにスムーズにいかれるという御判断なんですか。
  226. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 四十三年度のやり方は、先ほど来申し上げておりますように、私はこれは必ずしもいい形ではないと。やむを得ない措置ではあってもいい形ではないという点で、私どもは非常によかったよかったという気持ちではなくて、そういう意味で非常に心配もいたしております。ただ、心配はいたしておりますが、要は、一刻も早く申請をされておる研究者に適正に科研費が配られるということが最上の目的でございますので、現段階におきましてはその最上の目的を達成すべく努力をしておる。  ただ、その見通しといたしましては、先ほど来先生がいろいろおっしゃいますようなことが、学術会議関係者にも言われ、審議会にも言われ、必ずしも先生がおっしゃいますように学術審議会だけの批評でもないようでございますが、現在のところはそういうことも十分頭に置いて八割方は大体了承されて、審議会にお願いして文部省のほうに御推薦いただく委員の選考は進んでおるというふうに私ども考えております。
  227. 松永忠二

    ○松永忠二君 そうすると、これはあれですか、これからの順序としてはどういうふうな……。いままで十二月ごろに申請書を出して、二月に締め切って、三月から四月に審査をする、そうして夏休み前に内定をするというふうなやり方をやっておられたのですけれども、これはどういうふうな順序になるのですか、これからの日程的なめどは。
  228. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 申請の締め切りは大体いたした段階でございますので、いま申しましたような形で審査委員の人選を極力進めております。   〔委員長退席、理事楠正俊君着席〕 したがいまして、私どもの目標といたしましては、先ほど申しました一段審査を五月中には行ない、二段審査は六月に行ない、内定といたしましては七月ないし八月までには内定し、おそくても研究者の手元に渡るのは九月末を越さないようにという一応の目標を立ててやっております。前年に比べまして一カ月余りそれぞれの段階でズレがきておるという実情でございます。
  229. 松永忠二

    ○松永忠二君 まあもともとこの話のいろいろ紛糾してきたもとも、この科学研究費が非常に重要だから従来のような順序で早くひとつ渡したいと、それについてはそのやり方は少し、いきなり持っていくのは無理ではないかということで、必ずしも二段階審査に絶対反対ということではない、一年かかって検討しようじゃないかというような案も実際出てきていたようであります。そういう意味でいうと、私はやはり従来どおりの、できるだけ早くやろうというこういうことについて学術会議も考えておられたのであって、重要性を認識をされている点は私は別に変わりはないと思うのです。  ただ、おっしゃるような予定でいくというお話がありましたが、その間にどういう問題が起こってまいりますか。まあ特に四月の十日には学術会議の学会代表を集めて懇親会やったようですが、この意見も、その結果は学術会議のきめた方向を正しいとしている。総会は総会で、これまたそれを正しいとしているというようなことで、今後どういうふうな方向に行くのか、特に心配になる点だと私たち思うのですが。  そこで、この従来の方式と新しい方式で特に学術会議が危惧を抱いたのは、どういうところに問題があるのでしょうか。いまお話がありましたように、審査に対し必ずしも一〇〇%肯定をしているということではないわけです。まあ改むべきものもいろいろあるということだけれども、特に学術会議が終始非常に心配をしたという点、あるいはまた危惧を抱いたというのは、どういうところに問題があるというふうにお考えでしょうか。
  230. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) これは昨年の秋ごろから今日まで非常に経緯がございます。したがいまして、若干私どもとしてはニュアンスが違うように受け取っておりますが、昨年の十二月二十日付で学術会議会長から文部大臣あてに出されました申し入れ書を見ますと、審査委員の選考方法について根本的な疑義を持たざるを得ないということでございました。ところで、今日の段階では学会、協会の意見を聞いておるし、急に発足することはまだ学会、協会の意見を十分に聞いていないから待ってほしいということで、だいぶ違うわけでございますが、まあ学術会議といたしましては、従来の方式の非は認められつつも、委員の選考等につきましては自分たちで考えておるのだから、まあ待ってほしいということではないかというふうに推測いたしております。
  231. 松永忠二

    ○松永忠二君 そのほかにないですか。いまお話のあったのだと、学会へ十分にはかってからきめたいということで、それが十分にできないからというお話もあったと思うんですが、そのほかにやっぱり具体的なことがあったんじゃないですか。そういう点はどういうふうに——もう御承知だと思うんですが、どうですか。
  232. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 多少時間もかかりますので、かいつまんで申しましたが、具体的に申し上げさせていただきます。  で、先ほど申し上げました十二月の二十日の、委員の選考について根本的な疑義があるという点、これは私どもといたしましてはどういうことであろうかとも考えましたし、またこういう問題につきましては、学術審議会の御答申をいただく前に中間答申というものも出ましたし、その前後におきましても学術会議の御意向を相当くんだ答申になっておるわけでございます。で、最後に御答申と学術会議との間の意見が満たされていなかったのは、これは朝永会長からのお話でわかったんですが、具体的な書類にはございませんが、その点を申し上げますと、学術会議としては文部大臣委員を推薦する場合必ず順位をつける。その順位を、極端にいえば順位どおりということですが、最大限順位を尊重してもらいたいと。それから、二段審査をするんなら二段審査委員と一段審査委員を分けて、個々に自分らの考え委員を推薦したい、その順位は尊重してもらいたい、まあこういうことでございましたが、答申趣旨はあまり、文部大臣が責任を負っておるんなら文部大臣が納得のいくような任命をすべきではないか。で、優先順位をつけてこられても、文部大臣の責任において理由があればそのプライオリティーを変更してもよいではないか。それが文部大臣が任命権について責任を負うゆえんではなかろうか。学術会議は学会に責任を負うとおっしゃいますが、文部大臣としては国民に責任を負わなければならぬ。科学研究費はこれは学者の御意向を尊重して、学者でお分けになるのはいいけれども、文部大臣としては、国民の税金がその財源であるから、学者の御意向を尊重するとともに、最終的には国民に責任を負わなければならぬ。こういう立場で任命権の所在もはっきりし、責任の所在をはっきりしたい。これは文部大臣文部省もそうでございますが、審議会の審議の経過もそういうことでございました。それで、学術会議といたしましては、それでは困るので、一段審査と二段審査をするんならしてもよいが、別々に名前を書いて持っていく、まあ文部省としてはそういうことは運用上の問題ではございませんでしょうかと。いろいろお話し合いもいたしましたが、その辺の確答が得られない以上といったようなお考えもあったんだと思います。  まあ、そういうようなことで、茅誠司さんが学術審議会の会長でございますが、いわゆる茅提案といったようなものをお出しになられまして、学術会議がそれほどおっしゃるんなら、一段審査、二段審査委員を別々にして、そうして序列もつけて申し出なさい、それでそれについて順位を変えるようなことがあれば理由を示しましょうというようないわゆる茅提案、茅調停案とかいわれておりますものが出たわけであります。しかし、その場合には、それはやはり茅提案はのまれなかった。で、それは前に言っておられたことからいいますと、文部省は言いませんが、茅先生のほうで調停をされたのは学術会議が言っておられたとほぼ一〇〇%に近い趣旨の調停でしたが、それがのまれなかった。その段階での理由は、学術会議としては、ことしの初めでしたか、学会、協会に意見を聞いておるのだから、それを待たなければ態度も決定できない問題であるということで、茅提案がのまれなかったというふうに承知いたしております。そういう意味で、最初学術会議のおっしゃるのと最近のでは多少ニュアンスが違っておるということを申し上げる次第でございます。
  233. 松永忠二

    ○松永忠二君 私はね、それだけあなたがこまかくいろいろなことを申されるということになれば、これはやっぱりその学術会議の人々の意見等を聞いてみないと、こういうような公の席で一方的にあなたの御意見だけ聞いて、それでいいとするわけに私はいかぬと思うのですよ、これは。これは後ほど理事会でひとつ御相談をしてください、この問題は。  で、まあいろいろな御意見、何も片方が全部悪くて片方が全部いいというようなことを言うわけではありません。しかし、まあ百二十人という数は少ないから数多くしたという話だけれども一つの部門についていえば二、三人程度だと。それよりは、百二十人で一人で部門を担当しても、結局自分一人で審議できないから、帰って学会の意見をみんなに聞いて、持ち寄ってきて話をすると。そうすると、今度の案でも最終的に五、六十人で会議できめると、こう言っているけれども、ほかの学会のことがわからない人が五十人集まって、そうしてその会議でものをきめると言ったって、なかなか容易なことじゃないと私は思うのですね。だから、学会というものが民主的であるかどうかということにはまた問題あるとしても、決して従来数が少なかったから特定な人が特定な考え方でやったんじゃなくて、学会へ持ち帰って学会の多数の意見を聞いているというような、向こうから言わせればいろいろ意見も出てくるように思うのですね。  それから、なぜそんなに学術会議が順位にこだわるのだろうか。これも別に学術会議だって文部大臣の権限を侵してまで自分のかってにやるというようなことを言っているのじゃなかろうけれども、かつてそういうことがあった。そういうふうにして学術会議が推薦をしたところが、その人を抜かしてしまって、そうしてやったという、そういう事例もあったので、また再びそういうことがありはせぬかというような心配もあったということを言われているわけなんです。  私はいろいろ文部省の立場を言われていることもわかりますけれども、やはりこういう問題は、これだけ学術会議が学会の代表を集め、あるいは総会等で回を重ね、あるいは特に学術審議会の茅さんあたりがあっせんしてもそれはうまくいかなかったというようなことになると、そう簡単な内容のものでもなかろうというように思うわけですね。  そこで、文部大臣に少しお聞きしたいのですが、文部大臣はこの問題についてどういうふうな立場というか、やり方をおとりになってこられたんでしょうか。
  234. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 文部省としましては、先ほど来御説明いたしておりますように、科学研究費の配分の方法の改善について学術審議会の御答申もいただきましたし、それにはいろいろその間において検討はなされたことと思うのでございます。その答申趣旨を尊重いたしまして、これを実行に移したいという考えのもとに、そのような説明をいたしまして予算をきめることもできたわけでございます。そういうことでありますので、私どもとしましては、この改善せられた案について学術会議の御支持のもとにこれを進めてまいりたいという考え方で終始しておるわけでございます。
  235. 松永忠二

    ○松永忠二君 文部大臣はそういうふうな立場でただ言われるのじゃなくて、学術振興会の審議の際にもいろいろ問題が出て、「文部大臣は、振興会の組織及び業務の運営に関し、日本学術会議と緊密な連絡を図るものとする。」というようなこと……
  236. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) それは振興会……。
  237. 松永忠二

    ○松永忠二君 振興会。だから、振興会と学術会議の緊密な連絡をとるのは文部大臣の責任でしょう。だから、茅さんが調停されるというよりは、むしろ文部大臣自身が学術会議と振興会に諮問をしたわけですからね。
  238. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 違うのです。答申は学術審議会です。
  239. 松永忠二

    ○松永忠二君 後ほどそれでは説明してください。  私は、文部大臣自身がむしろ調停の役に入ってやるべきものじゃないか。茅さんが調整をするというよりは、文部大臣自身がその調節をはかって、そうして円満に遂行するというやり方に努力をしていかれるような性質のものじゃないかと思うのです。この点は私のいや申しましたことは誤りでありましたら、ひとつお聞かせください。
  240. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) いまの私の記憶違いでなければ、先生の振興会とおっしゃるのはちょっとお考え違いじゃないかと思うのですが、学術審議会に科学研究費配分についての検討をわずらわしまして、その結果得ました答申を実現に移すのが私としてとるべき態度じゃなかろうか、このように考えております。私どもとしましては、われわれの希望するようにぜひ御協力を願いたいものであるという立場に立っておるいわば当事者でございまして、私がその審議会とそれから学術会議との間を調整するとか調停するという立場じゃなかろう、かように存じております。
  241. 松永忠二

    ○松永忠二君 そうすると、日本学術振興会というのは、一体こういう問題についてどういう関連をすべき性質のものなんですか。ここの業務として、研究費の配分とかいろいろなことが出ておりますけれども、これはどういう関係にあるものですか。
  242. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 学術振興会は特殊法人でございまして、いろいろ事業をいたしておりますが、先般来他の委員の御質問もございましてお答えいたしましたような、流動研究員あるいは奨励研究員、その他国際間の共同研究といったようなことを事業といたしておりまして、ここでいま先生に御論議いただいております科学研究費の配分には何ら関係がない特殊   〔理事楠正俊君退席、委員長着席〕 法人でございます。
  243. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 速記をとめて。
  244. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 速記を起こして。
  245. 松永忠二

    ○松永忠二君 いま私の質問したところは、私の考えが違っていた点だと思うんです。ただ、私は、茅さんが出られてああいうことをやられていたので、むしろこういうふうな問題は、答申を受ける立場の文部大臣ではあるけれども、こういう間の問題について調節、調整をするというようなことについては、ただ単に答申の基本線だけを固執するというのじゃなしに、特に学術会議等との間に問題が出ているので、調整の努力を文部大臣が積極的にされていくということがいいのじゃないかという気持ちを持っていたので申し上げたわけで、だから、法的に文部大臣にそういう責任ありということを、私はさっきの振興会のあれからして、それには文部大臣が学術会議との間に緊密な連絡をとるということが出ておりますので、その点で申し上げたわけです。ただ、その感じとして、私はやはりこれだけ大きな問題になってきているので、文部大臣としてただ答申を受けたからそれがそのままだというよりは、積極的な調節の方法に努力をされるということを期待をしたいように思うわけです。  それで、特に私が先ほどから申しておりますように、私はそう簡単にこの問題が予定したような経過をとっていくだろうかどうかということについてはむしろ心配をしているわけです。そう簡単にはいかぬのではないかという気持ちもするわけです。それはさっきから申しましたように学会の代表にはかって相談をする、それも了承し、総会も相談し了承したということになれば、学者は学会に所属しているわけでありますので、私はこの際推薦の委員を固辞をしたいということがたくさん出てきた場合にどうなるだろうかという結果を心配をしているわけであります。  そこで、経過に対する質問というのですか、考え方をひとつお聞きをしたいのですが、昭和四十二年の十二月一日にこの学術審議会から答申を受けて、推薦を文部省が依頼をした。十二月の二十日に学術会議が文部省に新方式の実施を見送られたいという申し入れがあった。四十三年の一月の二十九日に文部省が推薦の依頼をした。二月の七日に学術会議のほうで時間がないと——四十四年から二段方式とするとしても、もう一年時間をかけて、一年検討をしていったらどうだろうか、時間的には不可能ではないかということを言った。二月の九日に学術会議は、学術審議会が答申どおりの新方式によることを再確認し、そうして茅さんが調停に出た。そうして二月の二十六日に調停案を学術会議がまあけった。そうして三月二十日になって文部省は独自の立場でやると、こう言っている。四月九日に学術会議が学会代表を集めて懇親会を開いた結果、従来の方針を確認し、四月の二十四日、きのり、きょう、あしたと三日間学術会議の総会があるが、その当初の日にこの問題がかかって執行部のとった措置を追認をするということで決定になった。経過を追っていくとそういう経過になっているようであります。  私たちは、両方どちらがどうこうという、そういう固執した考え方でなしに、どうも期間がなくて無理だから、一年間この問題について検討して、そうしてやっていきたい、ことしだけは従来の方法でやっていったらどうだろうかというふうな話が出たということについては、やや取り上げて問題にしてもいいのではないかというようなこういう感じを私たちは受けるわけなんですけれども、こういう感じ方は間違いなんでしょうか。特に、お話もあったように、この夏休み前に大体学術研究費の内定を見て、その間研究に取り組んでいろいろするというような順序からいっても、全面的にその審議会の答申を否認したんじゃなくて、一年間の検討期間を置いてそれをまた実施をしていくというような点について話が出てきたということについて考えてみると、この辺のところの考え方については弾力性があってもいいのじゃないかという気持ちを私たちは持つのですけれども、これは間違いでしょうか。もう何年間か非常に長い間かけてこの方式でやってきたので、これを答申が出たからその答申を直ちに実施をしていく、しかし申し入れの期間も非常に切迫をしておる中でこれをやっていくということについて、全然二段方式を否認したのじゃなくて、一年間の検討の期間を置いて実施をしていくというようなことをやっていこうということについて、もう少し弾力性のある受け取り方をしていってもいいのじゃないかという感じをわれわれ持っているのですが、これは間違いがあるとすれば、どういう点が間違いなんでしょうか。
  246. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) ただいま先生が経過をお話しになりましたところでもございましたが、学術会議といたしましては、十二月二十日付でおっしゃいましたところは、委員の選任について根本的な疑義があるということが中心でございました。その点につきましては、先ほど、文部大臣が調停というか、学術会議で話したらという御説もございましたが、そういう根本的な疑義があるということでございますので、私のほうといたしましては、学術会議のほうの朝永会長からのお話もございまして、学術会議には研究委員会というのがございます。その研究委員会の委員長さんと幹事さんお二人、こういう方とよく話をしてほしいということでございましたので、お話も申し上げました。そして運用上の問題ではなかろうかということである程度の御了解もいただけたわけでございますが、次に二月七日付で断わってこられた文書にも、先ほど来申しておりますように、自分らのほうでも関係学会、協会との意見も聞いておるし、これと連絡協議の上十分審議していく必要があるので推薦できないのだということで、今度は根本的疑義というよりも、学術委員の推薦方式というよりも、関係学会、協会に意見を聞いておるということでございました。その後、茅提案がありまして、それを断わられた二月二十六日の文書によりますと、今度は、昭和四十三年度から新方式で実施しなければならない理由がよくわからないというようなことになっております。  このようにいろいろ理由がございますが、私どもといたしましては、先ほど来るる申し上げておるところでございますが、最後に、学術会議がおっしゃるその他のことは解決したとしても、新方式で四十三年度から実施しなければならない理由がわからないという点でございますが、これは今回の改善案につきましては、中間答申段階でも学術会議とのお話し合いもいたしましたし、今日まで紆余曲折はございましたが、お話し合いもいたしました。ただ、一段審査、二段審査ということもある程度御了解もいただけてきた。新しいのは二段審査ということと人数がふえるということでございますが、この趣旨としては、大体そう学術会議のほうで反対をなさる点もないわけですが、したがって、そういうことはこれは昭和二十四年から学術会議のほうとの関係を持って科学研究費は配分してきておるわけですが、その昭和二十年代にすでに一段審査ではどうもぐあいが悪いのではないか、一人の先生が一件を見るよりも三人なり四人なり複数の先生が、同じ専門の先生がそれぞれの立場から見てあげたほうが親切だし科研費の公正な配分が行なわれるのじゃないかということで、昭和二十年代からすでにこの二段審査ということは問題になっておりました。そういうことがせっかく答申にもなりましたし、また種目を先ほど申し上げましたように、いろいろ現在の種目分類ではぐあいの悪い点もあることを直すということもそうむずかしいことではないというふうに考えますのと、何といいましても、昨年よりわずか八億で別にそう大きい金額ではないかもしれませんが、文部省としては五十億円の科学研究費というものを取ります段階において、こういう答申のありましたことも頭に踏んまえて大蔵省とも折衝し、いろいろ来年度から新計画でやるべく予算が計上されておる、こういうような観点から、来年度からやってもそう差しつかえないではないかということでやろうとしたわけでございます。  先ほども御指摘ございましたので、私がここで申し上げるのは意見というよりも、私はできるだけ学術審議会等にもお配りいたしました事実を申し上げておったつもりでございますが、多少意見があったとしますればあれでございますが、そういう経過をたどっておりますし、文部大臣が調停とかなんとか、そういうことは調停という立場でなくて、直接の話し合いに私ども十分意を尽くしてまいった次第でございますので、一刻も早く目的とする研究者に適正経費を配るという目的のために、文部省も努力いたしますし、今後学術会議として御協力賜われば非常にいいんではないかというふうに考えております。
  247. 松永忠二

    ○松永忠二君 私が申し上げているのは、昭和四十三年の一月二十九日の日に文部省が推薦を依頼した。従来二月に締め切って、三月、四月に審査をして、夏休み前に内定をした。一月二十九日に推薦依頼の申し込みがあって、それに対して二月七日に期間がなくて無理だからというのは、必ずしも期間がなくて無理だという言い方が、すべてどうも時間的にわからないということはないように私は思うのです。従来どおりのやり方をしようということになれば、そういうような言い方もあるのではないかということを言いたい。私のが間出遅いなんでしょうか。  大正七年以来計上され続けてきた科学研究費というのを書いたのを見たのですが、とにかくどうも長い間この研究費を計上してやってこられたものを、しかも、時間的にもそう余裕のない時期に、何も答申どおりにやらなければいけない筋合いではないし、一年間の検討をするというし、二段方式を全然否認しないというのですから、もう少し話し合いはできそうに思う。私は片方だけを責めているわけではありませんよ。両者とも少し話し合いができそうだと思うけれども、それにしても、あまりにも話し合いができないということを私は疑問に思うので、時間的な点を言っているわけなんです。  しかも、科学研究費がふえた。これはもう予算要求のときに相当大臣が努力をして、この私立大学研究費については特に努力をされて、大幅に認められてきたというようなことで、われわれも承知をしていたところで、したがって、まあ従来どおりできるだけ早くひとつやったらよかろうという気持ちを持っておる。ただしかし、実はこの研究費の配分についてはいろいろ批判があって、やはり検討を要するというところから答申も得られたことであるのか。これを検討していこうということを考えることは、決して文部省として不当なことではないし、そういうことについては、学術会議でもその必要性を全然認めないわけではない。二段方式という方式についても、一応そういう方式を認めているけれども、直ちにそれを今年度から実施するということでなしに、一年間の検討の期間を持って、一年間のうちに解決をしようじゃないか、しかも従来の例からいうと、配分の審査の時期にも来ておるのでということであるとすれば、両者はもっと話し合いができる状況、条件があるのじゃないかという感じを持っているわけです。  ところが、この問題は、終始その話がまとまると思ってわれわれが期待をしているのに、すべて全部が行き違ってきてしまって、いまや片方は総会を開いて確認をし合うというようなところに来て、せっかくこれだけの努力をもって計上されているものがこういう形になるということは、まことに残念だと私は実は思うのですよ。だから、こういう点について、やはりお互いに反省をしないと、自分たちのやっていることはちっとも間違いはないので、向こうのほうが無理なんだというようなことばかりでも私はないと思われる。この点については、なおまだあなたは順序よくいかれるようだけれども、これまたそういくかどうか、これからの問題だと思うのですがね。  で、私は、さっき申しましたように、大臣にこの問題について最後にお聞きしたいのは、私は、当面している大臣は責任者であって、しかも文部省に対して出された答申を文部大臣が尊重してやっていくということは、態度として当然であるけれども、相手の学術会議というものもりっぱなものであるので、特にそういうようなものについての意見の調節というものについては、文部大臣がやはり直接こういう問題について努力をされていかなければ解決のめどがつかないように私は思うので、こういう点について大臣の努力を特にお願いしたいと思うのですが、こういう点について大臣は、あなたは御自分でやられたわけではないのだけれども、この経過を見ておられてどういうようなお考え方持ち、今後どういうような立場に立ってこの問題を処理をしていこうとお考えになっておられるのか、その点をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  248. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) いろいろ御心配をいただいておるわけでございますが、私は率直に申し上げまして、この程度の改善案がどうして受け入れていただけないのだろうかというふうな実は気がいたしております。学術会議としてそれほどこだわる必要のない改善案ではないだろうかと、このようにも思っている次第でございます。  私としましても、何から何までこちらの言い分だけ通すというふうな必ずしも心持ちではございませんでしたけれども、この間に立っていろいろ御心配を茅先生がおやりいただいたわけでありまして、茅先生の私どもと御相談になった案ではございませんけれども、伺っておりますというと、茅先生のお示しになった案は、少なくとも現在の文部省としましては最大限の、何といいますか、譲歩ということばは悪いのでありますが、最大限われわれの気持ちをもとへ戻したような形の案であったと思うのであります。その案がどういうことになりますか、学術会議のそれに対する反応はどうであろうかと、かように存じておりました。私はやはり学術会議の方々にいろいろお話を願うのには、ちょうど学術審議会の会長でもございますし、茅さんが一番適任者じゃなかろうかと、そのように思っておりましたので、その案がどういうことになるだろうかと思っておりましたが、これも学術会議からお断わりが来た、こういうことでございますので、あの案ですらお認めが願えないということになれば、文部省としてもちょっと考えようがない、こういうふうな心境に到達いたしたのであります。しかも、一面から申しますというと、あまり遷延は許されない問題でございますので、学術審議会の方々にも御報告申し上げまして、文部省の今回とりましたような態度でもって進むことにいたしましたわけでございます。  ただ、しかし、こういう問題について、私は私の心持ちを先ほど率直に申し上げましたが、こんな問題で何もそうかたくおなりになる必要もないのではないだろうかというような気持ちも実はいたしておるわけであります。われわれのほうに何か考え違いの点があれば、その点は反省するにやぶさかじゃございませんけれども、気持ちからいえば、率直に申してそうなんであります。しかも、それでもかなり離れたような茅先生の案ですらお取り上げが願えないというのでは、一体どういうわけなんだろうかということをこちらから思わざるを得ないような気持ちがいたしております。  しかし、大事な国家の機関であります。われわれといたしましても、学術会議と衝突するようなことは望ましいことではございませんが、今年はいたしかたがなくいまのような状態で進みますけれども、十分にまた時間をかけてお話し合いもすれば御了解をいただけるのじゃなかろうかと、このような気持ちをもって明年に対処いたしたいと、そう存じております。
  249. 松永忠二

    ○松永忠二君 大臣のお考えはわかりました。しかし、私はこの程度のことがなぜのまれないのかということを考える場合には、いままでいろいろな問題を通して誤解を受けたり危惧を抱かせられるようなことが、全然なかったのじゃないのじゃないかというような感じもするわけであります。特に文部省のやっておる仕事の中で、全然条件を違えて考えれば、別にそれほど、取り上げるほどの措置ではないというような事柄であっても、事実上従来の事例から考えてみて類推するというような形で判断する場合がなかなか私はあると思うのです。だから、やはりこの程度のことならのむほうが当然だというお考えになるのと一緒に、その程度のことで疑義を抱かせられるということは、従来のやり方についてやはり少しは反省するというような点が私はあってもいいと思う。文部大臣としていままでの御見解を述べられたことを別にとやかく私は言うわけではありませんけれども、私たちは大臣がこの程度のことと考えられるものがいわゆる支障が出てくるということについては、やはりどこかにそれを解釈を異にしてやるような要素もそこにあるのだということを考えて、そういう点の考え方もひとつぜひしていただきたいということと、それからなお、ことしはまあこのとおりやりますというお話でございましたけれども、なおひとつ十分に今後の支障にならないような方策について努力をしていただくように要望して、この問題については私は質問を終わります。なお関連があるようですから……。
  250. 小野明

    小野明君 受託研究費の問題について松永先生の質疑がなかったので、この問題についてちょっとお尋ねをしておきたいと思うのですが、これは歳入の項目でしたか、その中にもあがっておりますが、今年度の予算歳入の基礎になっておるものと実際入るものとどれくらいの見通しをつけておられるのですか。
  251. 井内慶次郎

    政府委員井内慶次郎君) お答えいたします。  四十年、四十一年、四十二年、既往年度を見ますと、大体一億四、五千万の予算に対しまして、従来の経緯ですと、年間を通じまして二千万円前後が予算よりも大体ふくらんでくるような経緯なんです。それで、予算を組みますとき、できるだけ受託研究費の受け入れば、どの大学のどの会社から幾ら入ってくるか、歳出予算に幾ら計上するか、その内訳を明らかにして予算計上を一応はかります。そうして見込みがたくさん入りますと、弾力条項の適用ということをやってまいる、こういうふうにいたしております。  なお、この受託研究の中には、広い意味で使います受託研究と狭い意味での受託研究とあります。狭い意味での受託研究以外に病理組織の検査、いわゆる検査を頼む場合がございます。そういう場合は、たとえば百三十歳入にとって百歳出予算に計上する。それから、百とって百計上するのと、百三十とって百計上するのと、歳入と歳出の関係は二様に相なっております。
  252. 小野明

    小野明君 検査とか病理検査というようなものは、これは当然のものでありますから、それは別といたしまして、実際は大台をなしている会社等の委託が私は問題だと思うのです。なるほど、申請されたものは厳正に経理を行なわれていると思うのですけれども、申請された以外に一体どれくらいあるのかということが私は問題だと思うのですね。大学自体で金を扱わないことになっているわけですからね。その辺はしかし、報告のないものは処理のしようがないのじゃないか、こういう御意見も成り立つわけですけれども、それがスムーズに申請をされるような態勢という措置をやはりとらなければならぬのではないか。いままさか文部省が申請されたもの以外にはない、こういうことは断言はできないですね。ですから、そういったところから、大学自体がなるべくまあそういうことがないような措置というものを一体どのようにお考えになっておられるか、それをお尋ねしておきたいと思うのです。
  253. 井内慶次郎

    政府委員井内慶次郎君) ただいま小野先生の御指摘の点は、さきの予算分科会で御指摘をいただいた点でございますけれども、昨年の秋以来、いわゆる教官の別途経理あるいは教室での別途経理をなくしていくのだという取り扱い方につきましても若干の改善を加えまして、鋭意努力をいたしておるところでございますが、御指摘のように、本来受託研究費として歳入にとり歳出予算に計上して経理すべきもので、特別会計に公に入り公に支出するということになっていないものがまだあると私も思っております。それで、この点につきましては、受託研究費として受け入れて受託研究費として支出することが、何か外部から入ってくる研究費が使いにくくなるというふうな印象とか、そういう点も正直あろうかと思います。それで、文部省といたしましても、各大学の受託契約を結びまするのは事務局長でございますが、事務局長等とも目下相談をさらにいたしておりまするが、受け入れまして使えるようになるまで、正直昨年までは二カ月なり三カ月を要するというふうな不便な点もございまして、それで歳入が入ればすぐ歳出が使えるように、できるだけ文部省からの予算の配賦も大体見当をつけて、ワクだけできるだけ早くしておいて、歳入をとったらすぐ歳出が切れるように、そういうくふう改善もしておくべきではないか、そういった点、いろいろ私どもといたしましても特別会計の中にありまするこの受託研究の制度がほんとうに安定しなじんでまいりますように、いろいろ研究を進めなければならぬ、かように存じております。
  254. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 関連ですから、ひとつ簡潔にお願いします。
  255. 小野明

    小野明君 それで、そういうしきたりといいますか、まああまりよろしくない事態だと思うのですけれども、そのことのために、やはりその間に生じました発明とか特許とか、そのものの帰属というものが問題になってくるのではないかと思うのですね。それで、その辺の、たとえば受託研究の場合の発明とか特許というものは、これは一体どうなるのか。あるいはその他のものは一体どうなるのか。その辺の扱いは一体どうなっておるのですか。
  256. 井内慶次郎

    政府委員井内慶次郎君) 受託研究の場合の扱いでございまするが、私どもが各大学に、研究を受託されて経費を受け入れてやります場合には、幾つかの点を留意事項として示しております。その際に、いま先生御指摘のように、特許権を生ずるとか、こういう場合には、その特許権が委託者のほうに行ってしまうような条件で受け入れてはいけませんよと。あくまでも国立大学の教官の研究ですから、何らかの意味で国の研究を使い、国の設備等使うわけでございます。したがって、公の歳入に入れ公に支出いたします研究でございまするので、その特許等の権利は当然国であるという点は条件として明らかにしなければいけませんと、そういう私どもの指導をいたしております。
  257. 小野明

    小野明君 最後に。しかし、そういうふうにおやりになるといっても、特許というものは個人に帰属するものですよね。それをやはりどう規制をしていくのか、この辺がやはり当然問題になってくると思います。その辺の扱いはどうですか。
  258. 井内慶次郎

    政府委員井内慶次郎君) 特許関係の問題につきましては、国立大学の教官が行ないまする研究から発生する特許の扱いで検討すべき非常に多くの問題がございます。それで、御承知のように、特許法の関係大学のほうで勤務規則を制定いたしておりまして、ある研究をやりました結果発生した特許が、特許権の行使が国のほうに参るような勤務規則をつくっておるところとつくっていないところが大学としてございます。それで、つくっていないところにつきましては、特許が発生しましたときに、それを国のほうにその教官が寄付するというやり方でやっておる大学もあるのでございます。それから、勤務規則を制定するかどうかにつきましても、現在のところは大学の判断でやらしておるようなかっこうでございまして、ですから、勤務規則をつくっておる大学とつくっていない大学がまず第一にある。それから、勤務規則のない大学の場合に、教官がその特許等を国に寄付するというやり方が行なわれておるところと、そうでないところとがある。そこに二つの問題が介在いたしております。それと、もう一つは、特許等を得ました際に、その教官に対しまして国費をもちまして若干の補償をいたします。その金額が、現在の金額で妥当であるかどうか、この点も正直いってあろうかと思うんであります。  そこで、ただいま、昨年の秋、受託研究費で非常に問題がありまして、国立大学協会と文部省で構成いたしておりまする特別会計制度協議会で、どうやって受託研究費の扱いを改善するかという御相談を申し上げて、それに基づきまして若干の省令改正等もいたしたのでございますが、その際に特別会計制度協議会でも、どうしてもこの問題は特許問題にも関連する、したがいまして、特許の問題を引き続き検討しようじゃないかということにいまなっております。文部省といたしましては、特別会計制度協議会で検討いたしますと同時に、先ほど来、大臣あるいは大学局長からお答えございました学術審議会という審議会ができておりますので、この問題はやはり学術審議会で正式に取り上げていただくほかないんだろうかということで、これから本格的な検討をいたそうというような状況でございます。
  259. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 速記ストップしてください。
  260. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 速記をつけて。  暫時休憩いたします。    午後四時五十三分休憩      —————・—————    午後六時四分開会
  261. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) ただいまから文教委員会を再開いたします。  あすは、本会議終了後質疑を続行いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時六分散会      —————・—————