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1968-04-16 第58回国会 参議院 文教委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月十六日(火曜日)    午前十時三十七分開会     —————————————    委員異動  四月九日     辞任         補欠選任      佐藤  隆君     井野 碩哉君  四月十日     辞任         補欠選任      井野 碩哉君     佐藤  隆君      竹中 恒夫君     大谷藤之助君      矢追 秀彦君     北條  浩君  四月十二日     辞任         補欠選任      楠  正俊君     米田 正文君  四月十三日     辞任         補欠選任      米田 正文君     楠  正俊君  四月十六日     辞任         補欠選任      加瀬  完君     小林  武君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         中村喜四郎君     理 事                 楠  正俊君                 佐藤  隆君                 小野  明君                 鈴木  力君     委 員                 北畠 教真君                 久保 勘一君                 内藤誉三郎君                 中野 文門君                 小林  武君                 千葉千代世君                 松永 忠二君                 柏原 ヤス君        発  議  者  小野  明君        発  議  者  鈴木  力君    国務大臣        文 部 大 臣  灘尾 弘吉君    政府委員        文部省大学学術        局長       宮地  茂君        文部省文化局長  安達 健二君        文部省管理局長  村山 松雄君    事務局側        常任委員会専門        員        渡辺  猛君    説明員        国立西洋美術館        館長       山田智三郎君        建設省住宅局調        査官       三宅 俊治君        自治省財政局財        政課長      首藤  堯君        会計検査院事務        総局第二局長   石川 達郎君    参考人        日本住宅公団総        裁        林  敬三君        日本住宅公団理        事        稗田  治君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選の件 ○参考人出席要求に関する件 ○国立学校設置法の一部を改正する法律案(内閣  提出、衆議院送付) ○女子教育職員育児休暇法案鈴木力君外一名発  議) ○産炭地域における公立小学校及び中学校の学  級編制及び教職員設置に関する特別措置等に関  する法律案小野明君外一名発議) ○教育文化及び学術に関する調査  (公立文教施設社会増対策に関する件)  (国立西洋美術館の絵画の購入に関する件)     —————————————
  2. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) ただいまから文教委員会を開会いたします。  委員異動について報告いたします。  去る四月十日、竹中恒夫君、矢追秀彦君が委員辞任され、その補欠として大谷藤之助君、北條浩君が選任されました。また、本日、加瀬完君が委員辞任され、その補欠として小林武君が選任されました。     —————————————
  3. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 理事補欠互選についておはかりいたします。  委員異動に伴い、理事に二名の欠員が生じておりますので、その補欠互選を行ないたいと存じます。  互選は、投票の方法によらないで、委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 御異議ないと認め、理事楠正俊君、佐藤隆君を指名いたします。     —————————————
  5. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  公立文教施設社会増対策に関する件について、本日、参考人として日本住宅公団総裁林敬三君及び日本住宅公団理事稗田治君の出席を求め、その意見を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  7. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 国立学校設置法の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、政府側から提案理由説明を聴取いたします。灘尾文部大臣
  8. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) このたび政府から提出いたしました国立学校設置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  まず第一は、国立大学学部設置についてでありまして、千葉大学に人文学部及び理学部を、愛媛大学に法文学部及び理学部をそれぞれ設置しようとするものであります。これらの学部設置は、既設の文理学部を改組してその教育研究体制整備をはかろうとするものでありまして、一方、これは大学入学志願者急増に対処する国立大学拡充整備計画の一環ともなるものであります。  なお、文理学部の改組につきましては、昭和四十年度から実施してまいりましたが、これをもって計画は一応終了するわけであります。  第二は、国立大学大学院設置についてであります。これまで大学院を置かなかった国立大学のうち、充実した学部を持つ茨城大学、大阪教育大学香川大学及び高知大学の四大学修士課程設置し、もってその大学学術水準を高めるとともに、研究能力の高い人材の養成に資そうとするものであります。  なお、この法律案昭和四十三年四月一日から施行することといたしておりましたが、成立時期がおくれましたので、これを公布の日から施行し、四月一日にさかのぼって適用することとするとの修正が衆議院で行なわれました。  以上がこの法律案提案理由及び内容概要であります。何とぞ十分御審議の上、すみやかに御賛成くださるようお願い申し上げます。
  9. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 以上で本法案についての提案理由説明聴取は終わりました。     —————————————
  10. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 女子教育職員育児休暇法案議題といたします。  まず、発議者から提案理由説明を願います。鈴木力君。
  11. 鈴木力

    鈴木力君 ただいま議題となりました女子教育職員育児休暇法案につきまして、その提案理由内容概略を御説明申し上げます。  わが国女子雇用者数は、年々増加し、昭和四十一年には九百三十万人、雇用者総数の三二%となり、この十年間に倍増いたしております。そして、女子雇用者中における中高年齢層も相対的に増加し、有配偶者は三五%となり、従来の若い未婚者、短い勤続年数という女子雇用者のイメージは消え去り、年長の既婚者、長い勤続年数という欧米型の特徴へ近づきつつあります。  この傾向は、教育界の場合も同様で、年々女子教員増加しております。すなわち、昭和四十年度における教員総数のうち、女子教員の占める割合は、幼稚園九三・二%、小学校四九・五%、中学校二五・七%、高等学校一七・六%、特殊教育学校四一・一%であり、県によっては、小学校で平均六五%に達しているところもあり、有配偶者割合小・中学校女子教員の三分の二を占めております。  このような女子教員増加傾向は、アメリカ、ソ連、イギリス、フランス等工業諸国における高い女子教員比率を見るまでもなく、今後さらに強まるものと考えられます。  ところで、わが国女子教員出産状況はどうかといいますと、昭和四十年度において、公立小・中・高校女子教員二十三万人中、約二万人が出産をしております。出生率は八・六%であり、これはわが国女子雇用者全体の出産率二・四%をはるかに上回っております。これらの母親になった女子教員たちは、その生児を親族に見てもらったり、子守りを雇ったり、よそへ預けたり、ごく少数保育所に頼んで勤務しておりますが、中にはこうしたこともできなくて、やむなく退職する人々相当数にのぼっております。たとえば、昭和三十六年度の公立小・中・高校における女子教員退職者六千二百四十九名中、三十四歳以下は六六・三%を占めており、その大部分の退職理由育児出産であります。つまり、教育界においては、出産者総数の約四分の一が育児のために年々退職しております。  こうした実情は、考慮されるべき幾多の問題があるように思われます。その第一は、今後一そう乳幼児をかかえる女子教員増加する傾向にあるものの、保育のためにやむなく退職する人々が多いということは、熟練度も高く、人間的にも成熟した女子教員を失うことであり、教育上の損失が大きく、国の教育投資の効果を減殺することになります。  第二には、保育のためにやむなく退職した女子教員が再就職したいという場合には、わが国では給与、年金、退職手当採用年齢制限等という制度上の障害があるほか、本人自身能力の停滞もしくは減退という問題もあり、非常に困難であります。  第三には、責任ある乳児保育施設がことに少ないわが国現状から、婦人職場進出社会的要請として促進されていることと関連して、私設の乳児施設が流行し、高い託児料に合わせて乳児を不注意から死亡せしめる等の事故が起こっておりますことは御承知のとおりであります。これは社会的現実の急速な進展に対して国の施策が著しく立ちおくれているその矛盾のあらわれというべきでありましょうが、このような現実の中で、婦人の多い職場ではっとに保育休暇もしくは保育休職制度が問題となり、電電公社では当局と組合との協約に基づいて、昭和四十年度から向こう三カ年間にわたり、育児休職制度をテスト的に実施することに踏み切っております。これはわが国で最初の試みと言えましょうが、このような問題は女子教員の多い教育界でも真剣に検討されており、日教組でも全国教育長協議会でも制度の実現を強く希望しているところであります。  第四には、世界的な女子雇用者増加傾向の中で既婚婦人雇用問題が国際的共通課題となり、一九六五年六月のILO総会において、「家庭責任を持つ婦人雇用に関する勧告」が採択され、育児のための休暇休職制や退職した婦人職場復帰の問題が取り上げられました。これは既婚婦人が直面する育児職場の両立という課題について、個人ではなく社会全体の責任として処理すべきことを提唱しているものと思われます。右の趣旨は、一昨年採択された「ILOユネスコ共同教員の地位に関する勧告」にも詳細に盛り込まれているところであります。  以上申しました諸点を考慮いたしました結果、この際、国公立幼稚園から高等学校までの諸学校において育児休暇制度を設け、女子教育職員育児のために退職することを防止することにより、経験ある女子教育職員を確保して教育水準維持向上をはかることを目的として本法律案を提出した次第であります。  法案内容といたしましては、第一に、国立または公立小学校中学校高等学校、盲学校ろう学校養護学校幼稚園に勤務する女子の校長、教諭養護教諭、常勤の講師、実習助手及び寮母を対象として、その生児を育てる女子教育職員から請求があったときは、その生児が満一年に達する日までを限度として、任命権者育児休暇を承認しなければならないことといたしました。  第二には、この育児休暇は、死亡や養子等のため育てる子がいなくなったとき、本人の再出産があったときや、本人休職または停職の処分を受けたとき、または、本人から申し出があったとき等には中途でも終了することを定めております。  第三には、育児休暇を承認された女子教育職員は、その期間中、身分は保有するが職務に従事しないこと、また、給与については、国立学校の場合俸給及び諸手当通勤手当超勤手当を除く)の百分の八十を支給されるべきこと、公立学校の場合はこれに準ずべきこと、また、育児休暇をとったことを理由に、本人が不利益な取り扱いを受けないこと、その他退職手当公務災害保障制度における運用について定めております。  第四には、任命権者は、育児休暇中の女子教育職員職務を補うために、正式採用教員を配置しなければならないこと、それが不可能または著しく困難なときは臨時的任用教員を配置することができる旨を定めております。  なお、これに関連して、附則において、文部省設置法公立義務教育学校学級編制及び教職員定数標準に関する法律公立高等学校設置適正配置及び教職員定数標準等に関する法律の、定員もしくは定数算定方法をそれぞれ改めております。すなわち、補充教員については、女子教育職員総数の二・五%とします。  第五には、附則において、本法施行期日昭和四十三年九月一日からといたしました。これは制度実施のためには若干の準備期間が必要であることと、二学期初めという教育上の配慮を行なったからにほかならないのであります。  第六には、同じく附則において、本法対象となる女子教育職員について、当分の間、普通免許状を有する女子助教諭養護助教諭をも加えることを定めております。これは教員需給のアンバランスから、免許状該当課目以外の課目臨時免許状によって担当している教員がいまなお多い実情に立っての当面の救済措置であります。  以上、本法律案提案理由内容概略を御説明申し上げました。何とぞ十分御審議の上、すみやかに御賛成くださいますようにお願い申し上げます。
  12. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 以上で本法案についての提案理由説明聴取は終わりました。     —————————————
  13. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 次に、産炭地域における公立小学校及び中学校学級編制及び教職員設置に関する特別措置等に関する法律案議題といたします。  まず、発議者から提案理由説明を願います。小野明君。
  14. 小野明

    小野明君 ただいま議題となりました産炭地域における公立小学校及び中学校学級編成及び教職員設置に関する特別措置等に関する法律案につきまして、その提案理由内容概略を御説明申し上げます。  石炭産業構造的不況に基づく合理化整備が、産炭地域における経済の破綻、離職者の大量の発生生活保護家庭急増自治体財政危機等を招来してから、すでに十年という歳月が経過しております。この間、国、地方公共団体等産炭地域振興対策離職者対策等が行なわれてまいりましたが、極端な経済的貧困社会不安による産炭地の荒廃した事態は解決されることなく、今日まで悪化の道を歩んできたのであります。このような現状は、教育の面に最も強い影響を与えているのであります。すなわち、子供抵抗力が弱いため環境影響を強く受けやすいとともに、教育の面での対策がおそくかつ不十分であったからであります。  産炭地域における教育現状について以下申し上げますと、まず第一には、保護者子供教育に対する関心がなく、子供教育が放置されていることであります。炭鉱閉山後、産炭地域に残された者は、その多くが老齢者病弱者労働障害者災害未亡人子供たちで、ほとんどが貧困家庭であり、朽ちてゆく炭鉱住宅で長年にわたる生活保護に依存しながら、将来に何の希望もなくかろうじて暮らしており、また、出かせぎ、家出、別居、離婚等による欠損家庭や共かせぎ家庭もきわめて多い実情であります。このような社会環境家庭環境悪化のもとでは、保護者子供教育に対する関心は欠除し、子供教育は完全に放置されているのであります。  したがいまして、学校がすべての教育活動を一手に引き受けなければならない状態の中で、教職員学習指導のほかに夜間の家庭訪問生活指導等献身的努力を払っているのであります。しかしながら、産炭地域における教育は依然として次のような憂うべき状況が続いております。  すなわち、第二には、非行少年問題児発生が著しいことであります。過去十年間その非行は年々若年化し、悪質化集団化の道をたどってきたのであります。福岡県のある町の例を申し上げますと、小学校児童数の二三・八%、中学校生徒数の五四・三%に相当する非行事件昭和四十年度に発生したことが報告されております。また、産炭地域の最も多い福岡県が全国で一番刑法犯少年発生率が高く、その半数以上が小・中・高校生で占められていることにもあらわれております。さらに、これら非行少年のほかにも、多くの問題児をかかえているのであります。  第三には、勉強する意欲を失い、長期欠席、怠学常習児童生徒の数がきわめて多いことであります。福岡県における産炭地域の全就学児童生徒数に対する長期欠席児童生徒数割合は、産炭地域外に比べてはるかに高い比率を示しております。  第四には、炭鉱閉山に伴う児童生徒の激減や、生活のため一カ所に永住することなく、転々と職場を変え住居を変える家庭が多いことによる児童生徒転出入の著しさは、子供の心理に大きな不安を与え、落ちついた生活態度を困難にするとともに、教師の子供の十分な把握による教育を不可能としております。児童生徒数炭鉱閉山以前に比べて五〇%以下になった学校はきわめて普通の状態であって、はなはだしい学校にあっては三分の一以下に減少しております。また、長崎県の例によりますと、転校歴三回から五回といった子供が多数存在するのであります。  第五には、一般児童生徒は、学習意欲に欠ける、怠惰で生活に活気がない、根気に乏しい、注意力散漫で落ちつきがない、情緒不安定で道徳意識が低い、陰うつである等、教育危機的状況を示しているのであります。  第六に、これらのことは、当然に学力の著しい低下を来たしております。たとえば、福岡県のある中学校の一年生の学級では、整数計算、九九算のできない者、アルファベットの読めない者、それぞれ三分の一近い数を占めていることが報告されております。  第七には、産炭地域における児童生徒の体位、衛生状態の劣悪や疾病の著しい増加が見られることであります。  第八には、産炭地域特殊条件生活環境から、特殊児童生徒数及び促進該当児童生徒数が著しく多いのでありますが、特殊学級に収容されている児童生徒はきわめて少数にとどまるのであります。福岡県の産炭地域について見ますと、特殊教育を行なう必要のある児童生徒数は、小学校において全児童数の一五%、中学校において全生徒数の一七%を占めておりますが、そのうちわずかに小学校三・五%、中学校三・三%が特殊学級に収容されているにすぎない状況にあります。  また、以上申し述べましたことは、一般家庭児童生徒等にも大きな悪影響を与えているのであります。  さらに、経済的貧困のため産炭地域における要保護、準要保護児童生徒数増加が著しく、窮迫した地方財政を圧迫すると同時に、他方教職員のこれら児童生徒に対する扶助費補助金等支給に関する事務量のはなはだしい増大をもたらし、学習指導の著しい障害となっているのであります。ちなみに、全児童生徒数に対する要保護、準要保護児童生徒数割合のはなはだしい例を申し述べますと、北海道においては九四・四%、福岡県においては七七・七%、長崎県においては六九・四%といった実態があり、四、五〇%を占める学校も数多い現状であります。このほか、市町村財政との関係上、保護対象とならないボーダーライン層相当数あるのが実情であります。  以上申し述べましたように、産炭地域における教育はきわめて憂うべき状況にありますが、これが対策については、他の石炭産業不況対策等に比べて着手がおくれ、わずかに四十年度から生活指導主事少数配置就学援助費補助率引き上げ等が行なわれるようになってまいりましたが、きわめて不十分な現状といわねばなりません。  したがいまして、かような教育環境のもとにある最も抵抗力の弱い児童生徒に対して十分な教職員を配置して学校教育維持向上を期し、また、激増した要保護、準要保護児童生徒教育に必要な補助をなし得るよう、疲弊した地方公共団体に対し国が一そうの援助策を講ずることが緊急不可欠のことと考え、この法律案提案する次第であります。  次に、この法律案内容は、石炭鉱業不況による疲弊の著しい地域及び、これに隣接し、当該不況による影響の著しい地域で、別に政令で定める産炭地域公立小・中学校について、次の特別措置を講じようとするものであります。  まず第一に、学級編制の基準について、同学年の児童または生徒で編制する学級は三十五人以内とする等の特例を定めることによって、不安な教育環境のもとに置かれている児童生徒教育水準維持をはかろうとするものであります。  第二に、もっぱら児童生徒生活指導をつかさどる教員を置かなければならないものとし、就学の奨励、非行の補導等十分な指導をはかろうとするものであります。  第三に、養護教諭を必置することとし、貧困家庭急増等により、児童生徒健康管理がきわめて重要となっている事態に対処しようとするものであります。  第四に、事務職員を必置することとし、要保護、準要保護児童生徒急増に伴い、扶助費補助金等支給事務が激増し、生活指導はもちろん日々の授業にも支障を来たしている現状を打開しようとするものであります。  第五に、義務教育学校における教育の教材に要する経費並びに要保護、準要保護児童生徒にかかる教科書費学用品費通学費修学旅行費給食費日本学校安全会掛け金医療費及び通学用品費に関する国庫補助金補助率を十分の八に引き上げることとし、これによって、窮迫した財政のもとで、合理化整備に関連して派生する諸般の財政需要や、せっかく措置された特別交付税一般財源のゆえに就学援助費に優先充当することの困難な事情など、援助措置が徹底を欠いている事態の解決をはかろうとするものであります。  なお、附則において、本法施行期日昭和四十三年四月一日とし、昭和四十七年三月三十一日限り効力を失うものとしております。  以上がこの法律案提案理由及び内容概要であります。何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御賛成くださるようお願い申し上げます。
  15. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 以上で提案理由説明聴取は終わりました。     —————————————
  16. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 先ほど提案理由説明を聴取いたしました国立学校設置法の一部を改正する法律案を再び議題といたします。  これより質疑に入ります。  なお、政府側より灘尾文部大臣宮地大学学術局長出席いたしております。  質疑申し出がありますので、これを許します。楠君。
  17. 楠正俊

    楠正俊君 文部省にお尋ねします。  この大学設置法内容に入る前に、少しく昨日行なわれました国立大学教養学部長の、あれは会議というのですか、懇談会というのか、あの件につきましてお尋ねしたいのですが、まず第一に、あの会議がどういう意図で行なわれたのか、文部省がどういう名義でだれあてに文書をどういう形で出されたか、それについてお答え願いたい。
  18. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 昨年来いろいろ学生の暴力行為が、学内学外、特に学外におきましては羽田事件以来いろいろ社会的にも批判を受けるような行為が繰り返されて行なわれております。一部では破防法の適用とか、あるいは騒擾罪適用とかいったようなことが議されるまでの行為を行なっておるということは、まことに文部省としては遺憾なことであるということで、たびたびこれはいろいろな国会の委員会におきまして大臣も述べてこられたところでございます。  ところで、こういう問題につきましては、大学の学長さん方とも、昨年来、前の劔木大臣のとき等は特に数回もそういう懇談会を持っております。ところが、こういう問題につきましては、学長にも十分大臣と懇談していただく必要もありますが、またやはり大学はそれぞれ学部大学を構成する重要なユニットになっておるわけでございます。直接学生を預かっておりますのは、まあ学部単位といったような形にもなっております。ところで、まあ新学年を控えまして、もうすでに新入生も入ってまいりましたが、とりわけこういった暴力行為に参加する学生、これはリーダーはまあいろいろベテランの古い学生もおるんでしょうが、一般に低学年、いわば教養課程に属する学生が参加数においては多いということはいなめない事実でございます。こういうようなことから、私どもといたしましては、いろいろ国会で大臣も議員さん方との質疑応答もなされておりますし、また大学におきましては、これは全教官が一致してこういう問題については取り組んでいただく必要もございます。  そういったようなことで、特に教養部長としては、教養課程の学生を預かってもおりますし、そういったような観点から、私ども文部省の考え方も申し上げ、また大学として、いろいろ世間では言われても、大学自身はいろいろくふうをして努力しておるわけですから、そういうような実情についても御報告いただき、あるいは忌憚のない意見も述べてもらう、そうしてともどもにこういった問題の解決にみんなが力を合わせて努力していきたい、こういう意図からとりあえず開いたわけでございます。  時期といたしましても、これは大臣はもちろんですが、局長が中心になって学部長さん方とお話し合いをするにしましても、国会等にいろいろお呼び出しもございますので、時期的にもう少し早くしたいと思っておりましたが、まあ昨日になったわけでございます。そういうことで招集いたしたわけでございます。  それから、招集状は、そういったことから教養部長会議を開きたいと思いますので関係者の出席方について御配慮を願いたいということを、学長あてに私の名前で出した次第でございます。
  19. 楠正俊

    楠正俊君 いまの局長のお話で私よくわかったのでございますが、やはり各学部の中に自治会があって、その自治会から全学連というのは構成されているようですから、この全学連の三派が非常な社会問題になっているという現時点でこういったことが開かれたということは、非常に私は当を得ていると、こう思うのでありますが、東大の大河内学長は、これは大学の自治の侵害になるというような見解から断わった。私はどうもそれが、大河内学長の言わんとする大学の自治の侵害だという意味が私にはわからぬのだけれども、文部省はそれをどういうようにお考えになっておられるか。それからまた、徳島大学も断わったというようにも聞いておりますが、徳島大学の場合はどうなのか。その点を御説明願います。
  20. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 別に、会議を開きましても、たとえば数十名の会議に二人や三人欠席されるということはありがちなことで、今回の会議に限ったことではないと思うんでございますが、まあ結果的には、東京大学以下四つの大学が欠席いたしました。このことは、私、新聞の方々にも申し上げたんですか、四大学ではございますが、いまお尋ねのように、徳島と東京大学理由があるようでございます。あとの鹿児島大学と島根大学は病気で、鹿児島大学学部長が病気で代理の者が来ておりました。それから、島根大学の教養部長は東京へ来ておったようですが、何か急に血圧の関係とかいうことでした。私はけさここへ出がけに、その御当人の教養部長が見えまして、電報でも連絡しておきましたが、新聞にも欠席した東京大学や徳島と同列なような考えで欠席したようにも思われるようなことになっておるんで申しわけないということを、私出がけでしたが、何か言っておりました。  そういうことで、徳島と東京でございますが、徳島は詳しい事情がわかりません。学長に連絡しましたが、ちょうど不在で、事務局長に連絡しましたが、行っておるばずだと思うんだけれども、新聞には来ないということになっておるようだということで、調べて、どうも行っていないようですと、はっきりいたしません。東京大学につきましては、これは実はそれだけで事務局長が来られたわけではございませんで、入学式の多少トラブルはありましても、東大は心配された入学式が行なわれたという経過報告を主にして来たんでございます。まあ東京大学といたしましては、いろいろ今回の会議の開かれ方がちょっとふに落ちないといったような御趣旨で、これはいずれもう少し正式に詳細なことは確かめてみたいと思いますが、そういったようなことで、きのうの会議には出席できない予定だという話を事務局長から聞きました。まあこの詳細はもう少したちまして、と申しますのは、東大は卒業式以来、入学式を控えまして、非常に日夜学長以下苦労もしておられるし、いろいろ疲れてもおられたことでございましょうし、そういうことで事務局長から一応のことは聞きましたが、十分でございませんので、また後ほどもう少し、今後のこともございますので、確かめたいと思います。  新聞にも伝えられておるところでございますが、私どももある程度国立大学協会の方々とは御連絡したつもりでございますが、何と申しますか、ある意味では連絡不十分と申しますか、誤解に基づくような点もあるんじゃないかというふうに私は考えておる次第でございますが、そういうことで出席されなかったということでございます。
  21. 楠正俊

    楠正俊君 いまの局長の、どんな会議の場合でも一人や二人の欠席はあると。それとちょっと今度の東京大学の学長の場合は全然違うんであって、血圧が高いとかそういった理由ならば問題ないけれども、私がいま質問しようとしておることは、学長が大学の自治の侵害であると、ああいった懇談会を開くのは。そういったことに対して私いま局長に聞いておるのであって、その前に一人や二人休むのは当然だからと、そういうようなことは、ちょっと局長として言うべきじゃないし、おかしいと思うですね。自治の侵害であると新聞に言っておりますから、学長が。それについて文部省はどう思うかというその答弁を願いたい。
  22. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 新聞にはいろいろ載っておるようですけれども、私が事務局長を介して聞きましたところでは、自治の侵害だというような、あまりそういうことでございませんが、まあ新聞で伝えられるように、文部省の公的な見解とかいうことであれば、これは学長にお示しになるべきであって、ばらばらに学部長と話し合われるということは順序が違うのではないか、そういうことが中心であったようでございます。したがいまして、お尋ねのその学部会議を開いてやることは大学自治の侵害というふうには直接聞いておりませんが、かりに、事実は別として、先生のお尋ねというふうに仮定いたしますと、私は、学部会議を招集したということで、かりにその文部省の見解を示したところで、それが大学の自治を侵害するということではなかろうと思いますが、しかし、直接に私が聞きましたのは、そういうことでなくて、まず学長会議でやったらどうだ、あるいは学生問題なら学生部長会議をやったらどうだといったようなふうに聞きました。ばらばらにやるのはちょっと筋がおかしいのではないかというふうに聞きましたが、そういうことで、私ども、学生部長会議というのは、これはしょっちゅう開いてもおりますし、随時やってもおりますし、また統一的なのは、昨年暮れからことし二月にかけまして三回に分けてもいたしましたし、また学外でのこうした学生問題について、またまとめて学生部長会議を開かなくてもよいというふうには思います。  まあ何にしましても、先ほど申しましたように、直接、機会を得ますれば、学長さんにも御意見も承り、私どもとして間違った点があれば今後改めるにやぶさかでございませんが、何ぶん直接お聞きもいたしておりませんし、一応私どもとしての考えもございますが、それを直接のお話でなく、伝え聞きとか新聞ということで、ここで私が一々あげつらうのも一方的になるおそれもございましょうから、この程度で御了承いただきたいと思います。
  23. 楠正俊

    楠正俊君 それで、昨日二、三欠席があったようですが、行なわれた懇談会のこの模様と、その成果、それについて簡単にひとつ御説明願います。
  24. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 答弁者のほうにお願いしますが、時間に制約がある程度ありますからできるだけ簡明率直に御答弁をこれからお願いします。
  25. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 行なわれました中身は、学生問題につきまして、内容的には自治会の問題、自治会費の問題等いろいろございます。それからまた、教養課程の教育上の問題といたしまして、これは学生問題に関連いたしますが、学生の留年の問題であるとか、あるいは教育課程の変遷、あるいは教養課程におきます教官、あるいは施設設備、研究費、そういった予算関係の事項等多々ございます。  その成果でございますが、これはそれなりに意義もございましたし、私どもとしては相当の成果があったというふうに感じております。このことは、終わりまして昨日新聞記者会見をいたしますとき、参加者の中から三名の学部長も同席されまして、意義があったと、当初自分らが考えたような会議の運営のしかたでなく、非常に意義があったというふうに言っておられました。
  26. 楠正俊

    楠正俊君 その問題は一応これで終わりまして……
  27. 中野文門

    ○中野文門君 委員長、ちょっと関連して。これは大臣にお尋ねをしてもよいのですが、楠君の質問に対しまする局長の御答弁ですが、春風駘蕩たるあなたの御性格の半面のあらわれとは存じますけれども、文部省として一つの会議を招集して、何校かの国立学校の人たちが来なかったと。その来ない理由について、天下の大新聞がいろいろ記事にしております。そういうことに基づいての楠君の御発言だと思うのでありますが、新聞に書いたことの真否は別として、ただ、天下の公器としての新聞の記事でございますからして、一週間や一カ月に一ぺんずつ出す新聞なんかとは影響が違うと思います。そういうようなことを前提として、文部省が招集なされた会合に、一つの目的を持って、一つの見解を持って意識的に出席をしない学校、しかも、それが東京のおひざ元にあるというだけでも、相当ここで問題があろうと思いますが、その質問に対して、たくさんの人たちを招集して、その中で二、三校の人が欠席したことがそう問題じゃないのじゃないかというようなそういう、ちょうど気持ちよい春風を受けたような気持ちの御答弁のように聞くのですが、私はそのようなことであってはたいへんと思うものですが、これは大臣、いかがでしょうかね。そのこと自体が、いろいろな学校の運営管理の問題、あるいは国立学校と文部当局との関係というようなもろもろの問題が、そういう文部省の高官の心がまえから影響するところがたくさんある、出てきておると私は今日思うのですが。  たとえば、大学自治とは何ぞや。新聞の伝えるごとく、今回の文部省の御招集に対して、日本一の国立大学と自他ともに許されておるような東京大学の学長が、こんな会合を招集されることが大学の自治の干渉であるとかいうような——言ったか言わぬか別ですが、私も新聞の知識しかありませんが、そのようなことを中心にして取り上げたこの国会の参議院の文教委員会の席上において、劈頭に——御都合がよければ御出席くださいとかいうような普通一般の案内状とは違うはずですよ。招集状ですよ。当該指定した人が来られなければ、かわりの人が来る場合もございましょうし、このような真剣な問題に対して、あなたのお人柄とはいえ、どうも大ぜい集まったから三人や四人欠席したってたいしたことはありませんよ。口角あわを飛ばして議論する必要はありませんよというふうに受け取られたら、その一点が、その心がまえが文部省大臣以下全部にあるとすれば、今日の大学の混迷はそういうあなた方の心がまえにあると私は言わざるを得ぬのでありますが、大臣、どうでございましょう。  そのように文部省は、しかも他を語るがような感じでもってこういう問題を考えておられるとは思えませんけれども、大学と名のつくところは、官立、公立、私立、いろいろございましょうけれども、いやしくも国立大学の、しかも目と鼻の先のおひざ元の東京大学の一角からそういうような反抗的意図と申しましょうか、その会議招集自体に反抗的な、しかもそれが大学自治の侵害に関係があるというようなことが伝えられる限り、この点について私は文部当局のはっきりしたかまえと申しますか、説明を、この席で楠質問に御答弁が願いたいと思います。  しかも、きのうの会合でございますが、目と鼻ですよ。電話一本だって日本国じゅうどこでも即時通話のところが多い。ましてや、目と鼻の東京の町の中にある大学と、そういうことについて平素何ら意思の通いもないのか。何か、予算だけ取ってやれば、文部省はあとは大学が自由自在にやれよと、そういうこと自体が、大学の自治の尊重だと文部省はお考えになっているのか。私は関連質問であるが、はなはだこれは今日の大学管理運営の問題の根源を、根本を文部省ははき違えておるのではないか、かように思います。お答えは一口でけっこうです。
  28. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 先ほどの大学局長のお答えの中で御指摘にありました個所は、私も聞いておりまして、適当でないと思います。ただ、私は局長の心持ちをよく知っておるつもりでございますが、あのような表現をいたしましたことは、これはことばの使い方を間違えたものだと、このように存じます。  ただ、今回の問題につきましては、私も国会におりましたりしておりまして、若干用意が足りなかった点もあったのではないかと思うのでございますが、従来大学学部長を文部省が招集するというような例はあまりないと承知いたしております。それを今回やったわけでありますが、その心持ちは、実は私も新聞を見まして、私の気持ちが十分に出ていないような気がいたしておったのでありまして、私自身が記者諸君に説明すればよかったといったような気持ちも、率直にいって、したのでありますが、私も、今日のような大学事態でありますので、文部省大学との間が疎遠であってはいけない、大学文部省の間は、近ごろよく言われることばでありますが、この間も国大協の先生方ともお話をしたのでありますが、どういうつもりですかというものですから、いわば対話を促進したいのだということを実は申したのでありまして、学部会議文部省の公式見解を指示するとかなんとかというような、そんなかた苦しい考え方をしておったんではない。むしろお互いに言いたいことを言って、互いの気持ちを知り合う、わかり合うということが、いろいろ問題を処理する上においても必要なことじゃないか。その点から考えますというと、どうも長年の一つの習慣、ということもおかしいのでありますが、長年のあれといたしまして、やや両者の間に疎遠な点があるのじゃないか。したがって、今回招集するという形自体にすぐに何がしかの反発を生ずるような状況というものも現在まだ私はあると思います。それじゃ困るのです。そういうことじゃ困るわけでありますので、お互いにひとつ事務レベルで寄って話し合うこともけっこうだろうということで私が認めたのでありまして、もし国立大学に対して正式に——正式ということばも適当でないかもしれません。文部大臣として正式な見解を申し上げるということであるならば、私が招集をいたしまして、私が直接国立大学の学長にものを申し上げるということになる筋合いのものだと考えております。そういう意味の会議でもなんでもありませんし、また指示とか命令とかというようなことで両者の関係があってはならぬと思います。とにかく双方がよく心持ちを知り合って、そうして大学側からいえば、文部省の連中のものの考え方というものはそういうことかというようなこともわかってもらう。また、こちらから考えますれば、大学側のやっていることについていろいろ実情を知らせてもらう。また同時に、各大学間におきましても、互いの状況を話し合いするとか、あるいは連絡をするとかというふうなことが必要なことだと思います。そういう意味で、実は一口でいえば、お互いの対話を促進したいというような心持ちで今回の会議を開くことを私は認めたのであります。当初から文部省が何か公式見解を持って大学に向かって命令するとか指示するとか、そういうかまえでもってこの会議を開くことを考えたわけではございませんけれども、その間の気持ちが十分に徹底していなかった、こういう面もあるのであります。  東京大学は、事務局長かなんかが参りまして、欠席をするというようなことを言われたそうでありまして、出席せられた諸君の中には、文部省の今回の取り扱いについては十分に気持ちがわかりかねて、最初からどういう性質の会議なんだというような話も出たように聞いたわけであります。そういうことでありますので、両者の間にまだ十分な意思の疎通を欠いておる。また、やり方によりますというと、何かこうかた苦しい気持ちになってくる。こうなりましては、このような重大な問題を控えておるときでありますので、双方ともにこれはよくないことだと思いますので、できるだけお互いの意思が疎通し、互いにともども考えていく、こういうふうな姿であってほしいと思います。そういう心持ちで招集したわけでありますが、第一回のことでありましたので、多少手違いの点もあったと存じますし、また意思の疎通を欠いた点もあったと思います。そういう点はまあ今後よく話し合いをすればお互いの理解をできることだと思います。東京大学等に対しましても、われわれの心持ちのあるところをよくお話しすれば、これはもちろん御理解のいただける問題だと、かように存じております。  漸次まあそういうふうな機運を醸成いたしまして、今日の大学の問題について互いに協力して考えていく、また対処するという姿勢をつくっていく、そういうつもりでやったことであります。不手ぎわな点もあったと存じますけれども、この点はひとつ御了承いただきたいと存じます。  まあ局長の発言につきましては、私から適当な発言でなかったということを申し上げることによって、御了承いただきたいと思います。
  29. 楠正俊

    楠正俊君 昭和四十三年度の大学急増対策の概況について、まずお伺いします。
  30. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 文部省におきましては、四十一年度、四十二年度、またこの四十三年度にわたりまして、高等学校を卒業して大学に志願する者が急激に増加するということで、四十一年度来大学生の急増対策を講じてまいったところでございます。四十三年度におきましては、国立大学を、当初の計画といたしまして約三千名、公立大学は千名、私立大学は一万五千名、このような計画を立てまして、この大学生の定員増をはかってまいりました。ところで、国立大学のほうは実際には二千七百一人という予算で実施いたしておる次第でございます。
  31. 楠正俊

    楠正俊君 そうしますと、四十四年度以降の大学志願者数、それから合格率、それから進学率、そういったものの推移、これをどういうような見通しを持っておられるか。
  32. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) これは一応の見通しは立てますが、年度年度で計画いたしたものと——国立はほぼ数字どおりまいるわけですが、公立、特に私立大学におきましては、御承知のように、大学設置がまあ認可にならないものもございますし、また学科の定員増につきましては届け出事項にもなっておりまして、計画と実際問題が違いますので、たとえば四十四年度につきましての正確な計画は、この四十三年度が終わってもう一度修正をするというようなことでやっておりますので、そういう前提で一応今日までに考えておりました数字を申し上げますと、四十三年度は済みましたが、来年四十四年度におきましては、この年から志願者が減るというふうに見込まれます。と申しますのは、高等学校の卒業生が定員として今年度の卒業生よりも減ってまいりますので、そういったところから浪人の推計等もいたしております。  そこで、数字的に申しますと、大学の入学志願者は、今年計画を立てましたものと実質と違いますが、四十三年の三月の大学入学者の実員を四十六万余りと仮定いたしましたが、一応来年も大学の定員が減るようなことは、特に私立大学としてはしないという前提で、多少無理はございますが、昨年と同じ数が入るであろうというふうに計画を立てております。それから、四十五年におきましては、それより若干、四十六万を割るくらいな数字ではなかろうか、こういうふうなことで、合格率といたしましては、四十四年度は約六四%、四十五年度は六八%くらいのものが入るという見込みのもとにいろいろな計画を進めておる次第でございます。
  33. 楠正俊

    楠正俊君 この大学急増期というのは、これからだんだん減ってくるわけですね。そうしますと、今後は本格的に大学の質の充実ということに文部省は取り組まなければいかぬのですが、その方策、それについてこれも簡単にひとつお述べ願いたいと思います。
  34. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) いままで過去三年間は、特に大学生の急増ということで、国立大学に例をとりますと、学部学科の増設等も——先ほど申しました数字は、ただ現在あります学部学科に五人なり十人のものをふやして、トータルにおいて何千名という計算をいたしませんで、学部学科等の新増設というようなことも考えておりました。しかし、これは急増ということが何といたしましても念頭にあったわけでございます。ところで、来年度以降におきましては、そういう急増対策ということではなくて、たとえて申しますと、学部学科の増等も、私ども急増がなくなったからもうやらないということでなくて、今後ともやりたいと思いますが、それは全体として地域的に、あるいはその大学としてこのような学部学科を備えるべきであるといったような、主として大学自体あるいは地域のバランス、こういったようなことを考えて学部学科の増設もやっていきたい。それから、学部学科の増というよりも、むしろいままではそちらに重点を置きましたが、今後は質的な面の改善に重点を置きたいと考えております。具体的には教官あるいは施設、またいろいろな基準経費がございますが、そういったようなものの質的な充実に力を注ぎたい、こういうふうに考えております。
  35. 楠正俊

    楠正俊君 この教養部がですね、年々設置が進められておりますが、内容か非常に貧困だ。そのために、高等学校から大学に入る、非常に希望を持って大学に入っても、教養部の内容が非常に貧困である。夢が去って、その情熱をどこかにぶっつけたいというようなことから、全学連運動に入るというようなことが言われておるのですが、この教養部の内容の貧困さ、これにつきましてどういうようにこれを今後充実させていくか、その何か具体的な方策を考えておられるか。
  36. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) これは先ほど申し上げました、実は昨日の教養部長会議でもそういうことが議せられました、たとえば学生のいろいろな活動とも関連いたしまして、そういう正面から学生問題の対策も必要であるが、同時にじみちな、間接的ではあっても、教養部をもっと充実していくということが、教養課程の学生にほんとうに大学に入って勉強しようという意欲を起こさせることにもなる、間接的にああいう学生運動が逸脱したところから正規な方向に向かっていくことにもなるのだという観点で、いろいろ昨日も意見が出ておりました。私どもがかねて考えておるところと同じでございますが、具体的に申し上げますと、たとえば教員の定数と申しますか、教員の数におきましても、専門課程のほうですと、教授、助教授、助手というふうに学科目制、講座制で基準がございますが、ほぼ考えておるような数字で教員の配置がなされております。ところで、教養学部のほうはとりわけ助手が少のうございます。こういったようなことで助手の充実ということが焦眉の急でございますが、教授、助教授の数等も少のうございますので、そういった点に重点を置くということ、それから施設関係でも、専門課程と教養課程では、一人当たりの基準坪数が教養課程は非常に低いわけでございます。そういう点をできる限り専門課程の基準と少なくとも同じくらいまでに上げていきたい。それから、そのほか学生経費とか教官研究費、こういったような基準経費も、何といいましても教養課程の学生数が非常に多いのですけれども、とかく、国の財政等の関係からもございますが、専門課程と同じように教養課程がなされていない、そういう点も今後の努力を必要とするのではないか。いろいろございますが、具体的な問題を申し上げますと、以上のような点、か中心になろうかと思います。
  37. 楠正俊

    楠正俊君 昨日の毎日新聞に出ているのですが、これはもうすでに予算の分科会で社会党の先生が質問されたように伺っておりますが、行政機関の職員の定員に関する法律案、これがまだ成立する見通しが現在のところはないわけですから、かりにこれが成立しないとすると、この国立学校設置法案が通ったとしても教官の発令ができないというような矛盾が起こるわけで、特に困るのは九州の芸術工科大学、あれは本年度から発足するわけですが、学長と事務職員五人の定員だけは確保されておって、あとほかの教官が発令できない。どういうふうになるのか。これは国会の問題で文部省のほうにお聞きするような内容でないかもしれないけれども、しかし、あなたのほうで何か腹づもりがあるのじゃないか、こう思いますので、さしあたりそれが通るまでの間どういう対策を立てようとしておられるのか、その点について御説明願います。
  38. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 国立学校設置法の改正をお願いしておりますが、きわめて形式論でございますが、この設置法に関連する部分といたしましては、分離改組の二大学大学院を置きます四大学、これだけの関係しか形式的には改正がないわけでございます。したがいまして、このために増員になります教官数というのは十名に満たない程度の数でございます。そういうことで、きわめて形式的に、法律改正ということだけではその程度でございますので、あまり非常な——支障ということは比較的には軽微でございますが、先ほどお尋ねの国立学校設置法の改正というよりも芸術工科大学は、これは自動的にこの四月から発足できるように昨年法律改正がなされております。しかし、定員としましては、先ほど仰せられましたように、現在準備室に六名の定員しかついておりませんが、これが新年度四十二名の定員になります。したがって、純増三十六ということにもなりますし、そのほか今日まで、たとえば昨年あるいは一昨年学科増等をいたしましたこういうものが、学年進行で自動的にふえてまいります。そういうようなことで教官の定数も相当数ふえまして、一応私どもといたしましては定員法でお願いしておりますのは、二千数百名の純増という数字になっておるわけでございます。したがいまして、この国立学校設置法の改正と離れました場合には、多くの教職員の定員増がないとこれは事実非常な教育に支障を来たすということで、非常に心配しておりますが、ただ、先ほどのお尋ねでございますが、私どもといたしましては、国会に各省を通じての総括の定員法が出ておりますし、文部省の分もその中に入っておりますので、文部省だけが都合が悪いからどうということを、実は申し上げたい気持ちはのどまでございますけれども、一応これは各省を通じての総括定員法のことでございますし、それが通らない場合に文部省としてはこうですということを、いまこの段階でこの席で申し上げるのもいかがかというようなことから、御無理なお願いかもしれませんが、一刻も早く、まだ審議期間もございますし、総括定員法が審議が促進されて通りますことを心からお願いしておるということ以上に申し上げかねますのを残念に思います。
  39. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 楠君、時間がありませんので、問題をまとめていただきます。
  40. 楠正俊

    楠正俊君 第五十五国会のときに本法案が可決された際の附帯決議で、「近年における電波通信技術の発達とその重要性にかんがみ、国立電波高等学校の高等専門学校への転換を図ること。」という附帯決議がついているのですが、私も熊本の電波高校に国会から視察に行ってみたり、いろいろの電波高校の先生に会って聞いてみますと、いまの高等学校では二級の試験も通らない、外航船に乗るには一級でなければ使いものにならない、こういった科学技術の進歩しておる現在、高等学校だけでは意味をなさない、どうしても専門学校に昇格させなければ就職先においても困るし、それから新しい機械等が現に入っているのを見ましたが、これも高等学校ぐらいではその機械をもう見るだけで操作までいかない、無意味である、せっかくりっぱな機械が入っているのにほんの見学する程度でもって操作まで教えられない、といったような苦衷を彼らは訴えておったのでありますが、今回これを提案しなかった理由、それから今後の方針ですね、それをお聞かせ願いまして、私の質問を終わります。
  41. 宮地茂

    政府委員宮地茂君) 第五十五回国会の参議院文教委員会でいま楠先生が仰せられたような附帯決議がついておることは私ども承知いたしております。ただ、商船学校につきましては商船高専になりましたが、これとの関連でもすぐにというような要望もございますが、ただ、商船高専につきましては実質的に年限はまあ五年近くやっておりますが、電波のほうは一応三年でもございますし、専攻科一年ございますが、そういうようなことで、商船とすぐということにもならない点もございますし、また、もともと商船高専をつくります場合のいきさつ等も、六、三、三、四の学校制度、これに対しまして一種の特例的な学校制度をつくるというようなことでもありましたし、そういうことで工業についてだけ高専をつくるということで発足いたしました。これに対する評価は非常によいというようなこともございまして、今日まで、電波に限りませんで、農業とか商業とか、こういったようなものにつきましても、設置の要望が関係者から出てまっております。とりわけ電波につきましては、国立高等学校が三校もございますし、そういう関係で文部省としてもこの問題は真剣に考えなければならない問題でございますが、以上申しましたようなことで、すぐ発足するということにつきましても、いろいろ検討を要する問題がございます。こういうことで現在電波も含めまして、その他のたとえば農業、商業、こういったようなものについて高等専門学校としての道を開くことがよいかどうかということをいま根本的に、関係者にお集まりいただきまして、そういう会議を過般来開いております。そういうことで今後十分検討さしていただきた、こう考えております。
  42. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 本法案に対する本日の質疑はこの程度にいたします。     —————————————
  43. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 教育文化及び学術に関する調査中、公立文教施設社会増対策に関する件を議題といたします。  なお、政府側から灘尾文部大臣、村山管理局長、三宅建設省住宅局調査官、また参考人として林日本住宅公団総裁、稗田日本住宅公団理事が出席いたしております。  質疑申し出がございますので、これを許します。松永君。
  44. 松永忠二

    ○松永忠二君 文部省で出していただきました資料のところで、第二次五カ年計画の進捗状況が出ております。この進捗状況から、どういう点が問題だというふうにお考えになっておられるのか、この点をまずお聞きしたい。
  45. 村山松雄

    政府委員(村山松雄君) ごらんいただいておりますように、公立文教施設整備費では五カ年計画に対しましてほぼ一〇〇%に近い実施がなされております。その中で名目的に申しますと、中学校の屋内体育館あたりが進捗率が低いわけでありますが、実質的に申し上げますと、むしろ中学校の屋内体育館は必要なものに対してできている率は高うございます。これは要するに予算のワクに対して窮屈であったということでありまして、むしろ実質的に一番窮屈なのは小学校の校舎、それも社会地域における校舎の建設がなかなか需要に追いつかない。名目的には九五%の充足率を示しているわけでありますけれども、これは予算のワクに対しまして四割も実施のほうをふやして、やっとそういう充足率になっておるわけでありまして、これでも現実の需要に対してなかなかまかない切れない、こういうところに問題がございます。ほかにもこまかい問題はございますが、一番大きい問題は、現在社会増に対して、特に小学校校舎においてなかなか需要に追いつかない。それから、最近の新しい問題としては、いわゆる騒音とか大気汚染とかそういうものに対する公害対策、これが従来予算のワクとしてそういうものを取り上げていなくて、緊急やむを得ないものを実施上部分的に取り上げておったわけでありますが、これは将来は計画的に取り上げなければならぬ課題になるのではなかろうか、かように存じております。
  46. 松永忠二

    ○松永忠二君 お話がありましたように、第二次五カ年計画は、小・中学校学級編制の基準が改正をされる、あるいはその施設基準が引き上げられたというようなことを中心にして、第二次五カ年計画は樹立をされた。ところが、事実上はお話のように社会増で相当食われたというような、そういう考え方を持つわけでありますが、いよいよことして第二次の五カ年計画が終わるわけでありますが、第三次の五カ年計画を立案する用意があるのかどうか。また、この第三次五カ年計画を樹立をするとすれば、これについてはどういう問題を中心にして計画を立てていくつもりなのか、この点をお聞きをしたいわけであります。
  47. 村山松雄

    政府委員(村山松雄君) 四十四年度以降の問題につきましては、公立文教施設について従来やってまいりました不足の充足にいたしましても、あるいは危険校舎の改築につきましても、まだまだやる必要がございます。それに加えて、社会増対策あるいは公害対策という新しい要素も入ってまいります。そこで、引き続き計画的にやりたいと思っておりますが、新しい年次計画においては、従来の不足の充足あるいは危険校舎の改築のように、全国ほぼ一様にあらわれる問題よりは、むしろ社会増とか公害とか、ある特定の地域に集中的にあらわれる現象に対する対策ということのほうが、公立文教施設の年次計画立案にあたって重要な要素になるのではなかろうかと思います。そうなりますと、計画の立て方も五カ年計画というようなやり方がいいのか、あるいは長期的な見通しは持ちつつも、毎年度正確な実態調査を基礎として、修正しつつ計画的に学校建設を進めていくのがいいのか、いろいろ問題がございます。そこで、例年やっております実態調査を今年度はさらに緊急な問題に焦点を当てて正確にやって、長期的な見通しを立てて、さらに公立文教施設整備の年次計画を進めていきたい、かように考えておる次第でございます。
  48. 松永忠二

    ○松永忠二君 文部大臣にお伺いいたしますが、いまお話がありましたように、重点的に計画を立てていかなければできない。特に五カ年計画とかいろいろな計画については、なかなか実際上予算の際に閣議決定をすることが困難になってきておる状態があるわけです。しかし、実情は現在の五カ年計画社会増の相当影響を受けておるし、社会増とかあるいは過密過疎に伴う公立文教問題については、どうしてもしっかりした計画の上に立って実現をしていかなければできないわけです。こういう問題について大臣としてはどういう御決意を持っておられるか。この点は必ずそれに見合うだけの計画を樹立をして、それでその実現をはかるというような御決意があると思うのでありますが、この点について大臣のお考えをお聞きしたい。
  49. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 明年度以降の問題につきましては、いま管理局長からお答えいたしましたようなことでございますけれども、従来の五カ年計画が、一応五カ年たったといたしましても、なお続けてやらにゃならぬ問題も多々ございますし、同時に、先ほど来お話に出ておりましたところの社会増あるいは公害とか、こういう問題が放置を許さないような状況にある地域もだんだん出てきておるわけでございますので、私としましてはそれらの問題について真剣にひとつ取り組んでまいりたいと、せっかく検討してみたいと、かように考えておる次第であります。
  50. 松永忠二

    ○松永忠二君 文部省が考えている社会増というのは、具体的にどういうケースを押えて社会増と言っているのか、社会増に対する対策についてはそこに出ておりますが、この点が一つ。それからもう一つは、社会増による公立文教施設の投資の増大必要量というものは一体どういうふうな推定に基づいて行なって長期計画を立てているのか、この点をひとつ具体的に、そんなにこまかくなくてもいいんですが、お答えを願いたいと思います。
  51. 村山松雄

    政府委員(村山松雄君) 社会増につきまして厳密な定義は文部省でも持ち合わせておりませんし、政府でそういうことをきめたということも承知しておりません。ただ、何と申しますか、常識的に申しまして、人口が従来の住民の出生率増加等によって自然にふえるのではなくて、住民の異動、それもかなり大規模な、たとえば住宅団地の造成とかあるいは工場団地の造成による従業員の増加だとか、そういうかなり人為的な住民の増加に伴って子供がふえる現象、これを俗に社会増と言っておるわけでありまして、社会増現象によるたとえば子供増加だとか、それに伴う学校建設の所要の見通しなども、そういう常識的な社会増という前提に立って、都道府県教育委員会の御報告を基礎として計画を立てております。なお、住宅の増加見通しなどにつきましては、当然のことながら建設省その他政府部内の所管の向きとも協議いたしまして、その数字を基礎として、いまの五カ年計画学校建設計画も立てておる次第であります。  今後の問題として、私どもとしては、社会増というのが単に結果として与えられて、それに対する学校建設を追っかけてやるということでなしに、社会増現象を規制することは困難かもしれませんけれども、何と申しますか、法令につきまして検討を加えて、できればややこれが計画的に進むように調整をはかって、それを前提とした学校建設計画を進めたいと思っております。そこで、現在でも、たとえば住宅地造成事業に関する法律ですとか、あるいは都市計画法ですとか、そういうもので学校も含めた公共用地の設置計画などもある程度なされることになっております。また、都市計画法につきましてはかなり根本的な改正案が立案されておる状況でもあります。そういう前提となる国土計画といいますか、特に都市計画計画性の高まりと関連いたしまして、学校建築もできるだけ不足のないように対応させていきたい、こういうぐあいに考えております。
  52. 松永忠二

    ○松永忠二君 社会増というのは、文部省が言う社会増というのは常識的なとらえ方をしているというんですが、これはやはりはっきり規定をしていく必要があるのじゃないか。この資料の中に、社会増といってその他出ている。社会増というのはどこをつかまえて社会増としてきているのか、社会増という場合にそれを明確に規定をしていくというようなことが必要だと思うのです。私が申しましたのは、社会増を一体どういうふうにつかまえていくのか。これは横浜市のをいただいたのですが、横浜では昭和四十八年ごろまでずっといわゆる自然増の生徒増加、それからいわゆる異動に伴う増加数、そういうものによってどれくらいな児童になっているのか、そのために必要な小学校中学校の校舎は何校であるとかいうことが明確になっているわけです。だから、今度社会増によるものを中心として計画を立てていくのには、具体的にこういうものをとっていけばいわゆる社会地域というものを明確にしていくことはできるし、それをつかまなければ結果的にはその社会増に伴ういわゆる文教施設の計画ができない。だから、こんなことはいまごろ手をつけることじゃなくて、もうすでに文部省としては資料を持っていると思うのですが、そういう一体調査というのはできているのですか。これからやるのですか。また、今度の、もう来年に迫っている、いよいよ完成した第二次五カ年計画のあとで、計画を立てていく資料はもうすでにお持ちになって、計画を検討されているのか、これから調べるのか、こういうことについてもう一回お聞きしたいわけです。
  53. 村山松雄

    政府委員(村山松雄君) 社会増について定義をきめるべきだという御指摘でございまして、でき得ればそのとおりだと思いますが、定義をきめるということになりますと、とかく窮屈になって、運営がかえってやっかいになる面もございます。そこで、現段階では、やや常識的に、住民異動によって人口が急増する主として大都市を含む周辺地域、これは都道府県で勘定いたしますと十七都道府県くらいがそういう地域に該当いたします。また、社会増対策として、文部省が実際に公立文教施設の予算などを運用する場合には、必ずしもその十七都道府県にもこだわりませんで、部分的に急激ないわゆる社会増が起こるものにつきましては取り上げるというような弾力的な扱い方をいたしております。たとえば定義をすることになりますと、社会増による人口急増地帯などでは、子供増加がはたしてその社会増によるものであるか、すでに居住している住民の出生の自然増によるものか、そういうものの仕分けということは実際問題として困難でありますので、現実には社会増の激しい地域にあっては、その増加要因をそれほど厳密に分析しないで、社会増現象ということで優先取り扱いをしているというのが実情でございます。  今後の問題といたしましては、社会増というのは、たとえば僻地などに比べますと、きわめてこれは流動的であります。そこで、やはり社会地域というものを指定をして、それを対象に厳密に計画を立てるということはむずかしいのではなかろうかと思います。大体常識的に都道府県教育委員会の協力を得て把握できる社会地域社会増現象というものを押えまして、関係各省における国土計画計画性の増加と相まって計画を立て、修正しつつ実施していきたい、こう考えている次第であります。
  54. 松永忠二

    ○松永忠二君 はっきりお答えをいただきたいのは、そういう資料はもうすでに持っているのか、ことし調べるのか、この点はどうなんですか。
  55. 村山松雄

    政府委員(村山松雄君) いわゆる社会増、過去の実績はございますが、問題なのは将来の見通しであります。将来の見通しについては、これはどうしても、それぞれ設置者である市町村あるいは都道府県の教育委員会の関連公共団体内におけるまあ将来の立地計画、それから従来の経験からする将来の推定等によってやらざるを得ないわけであります。文部省では、毎年五月一日現在で実態調査をやっておりますので、過去の実績並びに将来の予測についてもその限度において把握しております。来年度につきましては、ことしの五月一日現在の公立学校の実態調査をそういう趣旨を含めて将来の計画が立つようにやることを、都道府県の主管課長にもこの趣旨を説明して協力を求めて、まあ従来よりさらにできるだけ正確な数字を把握して、それに基づいて計画を立てていきたい、こう考えております。
  56. 松永忠二

    ○松永忠二君 御答弁を伺うと、過去の実績はいままでの調査で推定できる、それからまた明年についてはまた調べていくという話だけれども、もっと確実に、その従来の過去のある一定の年数から、将来の、昭和五十年なりあるいはその程度までのことは、いま零歳の子供、現に生まれている子供についての数はわかっているのですから、それを推定していけばはっきり将来その程度の年数はもう明確になると思うのですよ、推移の数はですね。ただ、移動については、従来の推定の率によってやっていけばいいわけで、ある程度こういうものについてははっきりしたものを持っていて、現実にどれだけ困っているかということを明確にしていかなければいけないと思うのです。社会増のために、いまのやっている計画がすでに相当な割合を、お話のように四割なり五割、そういう予定以上に多くなっているという現状がある以上、もっと将来を見通して、現に生まれている子供が将来学校へ出てくるわけですから、そういう点で明確なやはり数字を持っていかなければいけないものだし、そういうものを持って実際に実行していってもらうべきだと、そう思うのですが、これはひとつ、お話では、将来大体どういう推移をとっていくだろうかということについて明確な資料を、まだ出すだけのものはないというお話がまあはっきりわかったわけです。  建設省にお聞きをいたしますが、建設省は住宅五カ年計画を立てて、政府の施策住宅を二百七十万戸予定をしているわけです。この中で日本住宅公団の建設が三十五万戸あるわけですが、これは大体計画をどういうふうに立てているんですか。どの資料に基づいてこの計画を、一応地域的な分布を考えておられるのか、この点をひとつ簡潔にお聞きをしたいと思います。
  57. 三宅俊治

    説明員(三宅俊治君) 建設省が、住宅建設五カ年計画に基づきまして六百七十万戸の全体の計画を立てまして、それを地域別に分けます場合には、厚生省の人口問題研究所の調査推計、それから国勢調査、住宅統計調査等を参考にいたしまして、その六百七十万戸を地域別に分けておるわけであります。その地域別に分けました——これは地方計画でございますけれども、この地方の住宅建設計画に分けましたその数字の中で、所得階層、住宅需要の実態動向等を勘案をいたしまして、地域別なそのワクとして各地方ごとに張りつけをやっておるわけでございます。したがいまして、住宅公団が建設する住宅につきましては、その地域別の需要動向、所得階層等とのにらみで張りつけをいたしておるわけでございます。
  58. 松永忠二

    ○松永忠二君 いまのお話にあるように、一応住宅五カ年計画なんかというのは地域的な配分もきまっているわけです。それは、厚生省の人口調査ですか、研究所の資料をもとにしてやっておるわけです。こういうことができている以上、もっと的確な調べをすれば、ぼくは教育について社会増がどの地域にどの程度出てくるかという推計というようなものはもう出てこなければいけないし、また、もうすでに新しい計画を樹立をしようとする以上、そういうものをある程度示されていて、いかにこの地域急増の施設が必要であるかということを明確にしていかなければ予算だって取れやせぬと思うのですが、これと比べてみて、私はやはりその公立文教施設社会増の計画の基本的な統計資料の把握のしかたというようなものがやや不十分だというようなことを考えるわけですが、これは早急にひとつ的確なものをつくって、一つの町でも、昭和四十八年まで、現に零歳の者が将来学校に来るところまで予定をして、この生徒増の計画ができるわけですから、こういうことについては、もっと的確なものを持っていてこの検討をしていく必要があると思うわけです。  そこで、こういうふうな社会増によって、特に私がいま問題にしている文教施設の投資というものが非常にその地方の財政に大きな影響を及ぼしてきている、あるいはその他の面で影響を及ぼしてきているわけですが、地方財政にいかに影響を及ぼしているかというような具体的なものを把握をしているものについて、ひとつ自治省のほうからお聞きをしたいわけです。抽象的な言い方ですので、埼玉県の福岡町、それから新座町ですか、この一帯の二つの町が、この社会増に伴う文教施設の投資をすることがどんなにその地方の財政影響を及ぼしているかという具体的なものを、自治省はどういうふうにつかんでおるのか、この二つについて承りたい。
  59. 首藤堯

    説明員(首藤堯君) 大都市周辺等におきます人口増等に伴いまして、文教施設の増設等のために地方団体が非常に財政上の負担をこうむっておるということはよく承知をいたしております。ただいま御指摘の福岡町そのほかにつきましては、ただいまここにデータを持ち合わしておりませんので、具体的にお答えを申し上げることができないのでございますが、自治省といたしましては、そのような実態を踏まえまして、義務教育の施設整備につきましての国庫補助負担金の配賦等が、十分にそのような状況を勘案をしながら配分をされ、所要の施設の増設ができますように期待をいたしておるのでございますが、事業が決定をいたしましたものにつきましての地方負担等につきましては、交付税もしくは地方債、このようなものをもって十分に適切な財源措置をしてまいりたいと思っておりますし、かつまた、人口急増等の土地においてしばしば問題になりますのは学校の施設を設置いたします際の用地の取得費でございますが、このようなものにつきましても、地方債の充当等について十分気を配ってまいりたいと、このように考えておる次第でございます。
  60. 松永忠二

    ○松永忠二君 福岡町、新座町については、こういうところの町の問題を取り上げるということをすでに事前に連絡をしておいたんです。何も資料持ってこないというようなことじゃ、これはまことにどうも不十分じゃないかと思うんですが。埼玉県の福岡町は、四十三年度予算が八億九千九百万円あって、その中で教育費が五億三千万円だ。その中で学校用地費が四億で、町は四億三千万円の地方債を出すと、こういうことであります。新座町は、六億の中で四八%が教育費で、大体これは中・小学校の建設費に使われているということだ。これはたいへん地方財政を圧迫をしている。横浜市については、四十三年から四十八年にかけて、小学校を七十六、中学校を二十七つくらなきゃいけない。その用地費が約百四億で、教室建設、施設の建設費が百十億、二百十四億をこの文教施設に使わなきゃできぬということで、財政的に非常に大きな影響を及ぼしているという具体的なものがあるわけだ。これはたいへんなものだと思うんです。  それじゃ、教育関係のほうではどういう一体影響があるというふうに把握をされているか、これをひとつ局長のほうからお聞かせ願いたい。どういう関連の一体問題が起こってきているかということです。
  61. 村山松雄

    政府委員(村山松雄君) 社会増、あるいは逆に過疎等によって、教育にも大なり小なり影響があるわけでありまして、そういう事態をいわゆる教育困難地域というぐあいに言っておりますが、そういう問題についての所掌は初中局でやっておるわけでありますが、管理局の立場で見ますと、端的にいって、社会地域は地元市町村財政で負担するにはかなり過大な教育費の負担がかかっておる。ということは、学校の建設ないしその内容の充実に追われるという結果になりますので、端的にいえば、校舎が間に合わなくてすし詰め現象を起こす、あるいはとりあえずはプレハブによる授業をやる、極端な場合には二部授業がまた再現するというようなことになろうかと思います。私どもとしては二部授業をやっているという例はあまり聞かないわけでありますが、すし詰めやプレハブによる必ずしも正常ならざる授業が社会地域において起こっておる、憂慮すべき事態だということは承知いたしております。
  62. 松永忠二

    ○松永忠二君 管理局長だって、局長として初中局長もおやりになるし、また管理局長だから施設だけのことをやればいいというわけじゃないので、一応こういうような社会増に伴って文教行政の中にどういう問題が起こってくるかということは明確にやっぱり把握をしておく必要があると思う。私はあなたから御答弁がいただけるものと思ったんだが。  現に出ているものは、過大規模学校が非常にある。たとえば、児童数が二千二百七十七人という一つの学校には、ここに出てきている資料で、六十一学級というのが一つあるというようなふうに出ている。小・中学校で、ここは過大規模学校が四十三学級から四十八学級以上と、四十三学級以上を取り出しているけれども、三十学級以上くらいのものも相当過大規模学校だと言わなきゃいけない。そういう過大規模学校が非常に出現をしてきているというのが一つじゃないかと思うんですよ。それからまた、施設が非常に不備だ。そういう社会増のところには、プールも屋内体操場もほとんどできていない。で、職員室や特別教室をみんな教室に使っているという、こういう問題がある。それから、その次には交通、公害の問題が出てきて、この委員会等でも視察に行かれたわけでありますが、埼玉県の福岡町のごときは、五つの小学校が町の東側に全部偏在をしている。しかも千人くらいの子供が一キロ半くらい、下級生の足で四、五十分県道を越え歩道橋を越えて通っているという、こういう問題が出てきている。それからまた、先ごろ新聞に出てきている、越境入学の問題が出てきている。埼玉県の新座町から練馬区の大泉第三小学校に通っている子供たちの越境入学の問題、それを返せという問題で紛糾をしてきたことは、解決をいたしましたけれども、こういうふうな具体的な実態の問題があるわけです。それだけでなくて、小学校の先生が不足をしてしまって、神奈川、千葉、埼玉などではそういう点も出てきておる。こういう点について、一連の問題を文部省として一体どういうふうな対策を打っているのですか。具体的にもし何かあったら、おわかりになっていたら、ひとつお聞かせをいただきたい。
  63. 村山松雄

    政府委員(村山松雄君) 先ほど主として施設の面から申し上げたわけでありますが、施設以外に、社会増によって学齢児童急増しますと、いろいろな問題が起こることは御指摘のとおりでございます。それに対しては、まずもって設置者である市町村長、それから県の教育委員会並びに文部省がそれぞれの立場で協力して、できるだけ社会増によるひずみ現象の防止といいますか、除去につとめておりまして、建物につきましては最優先的に取り上げて、できるだけ建てる。それから、教員の問題につきましては、これは大学学術局の所管でありますが、全国にありますいわゆる教員養成を主たる目的とする大学学部の定員というものは、都道府県における教員の需給の見通しに従って調整をはかる。あるいはさらに都道府県段階だけでなしに、社会増の半面には減少もありますから、広域的な需給の調整をはかる。それから、教材その他の面につきましても、できるだけの措置をやって、それぞれの立場で協力して対策を立てて実施しておるわけでありますが、御指摘のように、なかなか需要に対して間に合わない。何とかできるだけ間に合わせるようにしようと苦慮しつつあるのが現状でございます。
  64. 松永忠二

    ○松永忠二君 大臣もお聞きをいただいているように、非常にいろいろな問題が起こっているということです。しかも、それを一つをとらまえてみてここで議論をしあるいは質問をしてみても、十分問題になるような点がたくさんあるわけなんで、したがって、いまの地方財政を単に圧迫をしているだけじゃなくて、教育そのものについて非常な大きな影響を持ってきているわけであります。  その中で一つ具体的な問題として、ちょうど公団の総裁が来ておられるので、その関係のことを少しお聞きをしたいわけですが、五省協定というような名前で呼ばれているが、この資料の中に、「宅地開発又は住宅建設に関連する利便施設の建設及び公共施設の整備に関する了解事項に基づく公立文教施設の実施状況」という資料をここにいただいたわけであります。これは文部省のほうから出してもらったわけであります。これで見ると、昭和四十二年度に二万六千四百二十平方メートルの文教施設についてそういう措置が行なわれたという資料が出ておるわけであります。これは昭和四十二年度には六万一千戸公団の住宅が建っているわけです。これと比べると、面積がやや少ないというふうに私たち思うのですが、この五省協定というものは完全に守られて、要求によって完全に実施されているのかどうか。つまり、公団によるところの一千戸以上の住宅団地について施設をして、これを貸せるというか、後ほど金を返してもらう、そういうふうな約束でつくられた校舎の面積は完全に、この条件に当たるものには全部それが実施をされているのかどうなのか、この点をひとつまずお聞かせをいただきたい。
  65. 稗田治

    参考人稗田治君) 住宅公団の住宅建設または宅地開発にあたりまして、文教関係の学校施設につきまして、五省協定の中にもうたわれているわけでございますが、これは完全に地元の要求を満たしておるかどうかというお尋ねでございますが、五省協定の形に変わりましたのは四十二年、昨年でございますけれども、学校関係につきましては、公団出発当時から地元の要求に応じまして学校の建てかえ施行をしてきたわけでございます。それで、五省協定になりましてその他の施設が加わってきたわけでございますが、ただいまのところ、学校関係につきまして地元公共団体の大体御要望を完全に満たしておるということは言えるかと思います。  それから、先ほどその前に、四十二年度の全体の戸数が六万一千戸である、それにつきましてこの学校関係に充当した金額、事業規模というものが少し少ないんじゃないかというお尋ねでございますが、六万一千戸のうち郊外に団地をつくっていくという数は全部ではないわけでございます。二万五千というのは分譲住宅というので、その学校を新しく公団として建てかえ施行をしなければならぬほどの規模でないものもございます。それから全国に、給与住宅関係に主として使われておりますが、特定分譲というので、注文に応じまして会社、工場等の職員住宅を建設して譲渡するというような戸数も入ってございます。なお、賃貸住宅にしましても、既成市街地の便利なところへいわゆる市街地施設つきのげたばき住宅というような形で建てるものは、既設の学校で間に合っているわけでございます。そういうことで、四十二年度におきまして学校関係の予算としましては十二億円でございましたが、それによりまして校数で申しますと二十八校建設をいたしたわけでございます。大体間に合っておるわけでございます。
  66. 松永忠二

    ○松永忠二君 そうすると、完全に五省協定は守られているというふうに御答弁があったわけでありますが、そこで、五省協定の中には宅地開発十万坪以上、三十三ヘクタール以上の宅地開発についてもそういうことを考えている。実施をする。公団が昭和四十二年に相当継続、新規で大きな坪数を住宅用地として造成をしているわけですね。ところが、宅地開発に伴う公団の関係では文教関係に一銭も金が出ていないのですね。だから、あなたは公団で、公庫ではないが、公団と公庫を含めて、公団にも公庫にもそういうことができるようになっておるわけです。公庫のほうでも宅地開発に伴うものはゼロです。そうすると、公団はここに五省協定できめられている十万坪以上の宅地開発をやっていないわけですか。それからまた、どういうわけで文教施設にはこの金が出ていないのか。この点をちょっとひとつお聞かせをいただきたい。
  67. 稗田治

    参考人稗田治君) 五省協定の中に宅地関係の十万坪以上という場合に適用することになってございますが、現在ついておりますこの予算では、宅地関係につきましての関連公共施設というのは、街路でございますとか、下水でございますとか、水道、そういったような施設が積み上がって書かれておるわけでございます。それじゃその宅地開発のときの学校施設はどういうことになるのか。これは宅地開発がある程度完成してその土地が使えるような状態になってまいりますと、住宅建設部門のほうにその敷地が移るわけでございます。それからまた、民間に個人分譲として宅地を公団が処分いたす土地もございます。そういう段階になりますと、先ほど申し上げましたような住宅建設部門関係の学校施設費の金をもってこれを建てるということになってくるわけでございます。公団の賃貸住宅の団地に対応する必要な学校だけでなしに、公団が個々の個人に分譲しましたそこに定着する人口についての児童数、それも含めまして学校建設を始めるわけでございます。
  68. 松永忠二

    ○松永忠二君 この五省協定によって実施をされているのは施設だけであって、用地については全然関係がされていないわけですね。
  69. 稗田治

    参考人稗田治君) お尋ねのは学校用地についてはどうなっているかということでございますが、大規模の宅地開発の場合には大きな町づくりでございますので、幾つかの近隣単位ごとに初めから学校の用地というものを都市計画上決定いたしておるわけでございます。で、それを公共団体のほうに買い取っていただく、こういうことになるわけでございますが、五省協定にもその点は書いてございますが、国庫補助金や起債等の裏づけのない、地方公共団体が単独で支出しなくちゃならぬという金につきましては、十年まで割賦を延期できることになっておるわけでございます。そういうようなことで宅地開発のほうで用地を公共団体のほうに分けますときは、三年据え置き、あと七年、前後十年というふうなことで五省協定の最大の期限で譲渡する、そういうことをやっておるわけでございます。  なお、宅地開発といった大規模でなしに、二、三千戸の宅地を住宅建設する場合に速成でつくるときがございますが、そういうときは地元公共団体と打ち合わせをしまして、こちらが、公団が取得しました用地の一部を学校用地として買い取っていただく。その買い取り方につきましては、それはやはり補助金や起債の対象になっておりませんので、十年まで割賦年限を延ばすことができる、そういうことでやっておるわけでございます。
  70. 松永忠二

    ○松永忠二君 私が聞いておるのは、この五省協定のところにははっきり、施設の建設を行なうことができると。だから、いわゆる十万坪以上、千戸以上の宅地開発やあるいは集団住宅の建設にあたって、この施設の建設についてはこういうふうな協定が行なわれている。しかし、用地についてはそういうことが行なわれておらないでしょう。あなたがおっしゃったのは、そういう便宜をはかるということがあるというだけであって、五省協定の対象になっておるものは用地を含めておらない。要するに、この文教のいわゆる施設だけについてそういう措置が行なわれておる、こういうことじゃないのですか。
  71. 稗田治

    参考人稗田治君) この建設ということばの定義、内容がどういうふうになっておるかということにつきましては、いろいろ議論もあるかと思いますけれども、やはり学校を建てるということになれば、用地が要るということは当然でございますので、住宅建設関係では、従来から建設という場合には用地取得費も建設の一部である、かように考えておるわけでございます。  ただ、お尋ねの点につきましては、その用地費に国の補助なりあるいは起債といったような手当てがあるのかどうかというお尋ねかと思うのでございますが、そういうような点につきましては、文部関係のことでございますけれども、われわれ聞いておりますのは、現在はないように聞いております。
  72. 松永忠二

    ○松永忠二君 あとからおっしゃることは私たちも承知をしておるのです。そうすると、結局、この宅地開発でもあるいはまた住宅建設でも、とにかく学校の施設用地を含めて、要するに公団はこういう措置を行なっていると、こういうわけですね。  そうなったらば、そういうお話だとすると、なぜ一体宅地開発を行なったときにきちっと必要な用地だけを先に明確にしておいて、それを取得させる措置をやらないのですか。全然ゼロにしておくということは私はおかしいと思うのです。将来、家が建ってきたときに初めてそれを考えるということじゃなくて、その宅地開発をしたときにすでにもうそういう施設建設ということに用地が入っているというのならば、そういう措置を行なっていくのはあたりまえだと思うのですが、その点はどうなんですか。
  73. 稗田治

    参考人稗田治君) まあ公団の事業で、住宅建設部門と宅地開発部門と、こう大きく分かれるわけでございますが、住宅建設部門の関連公共施設費というのは学校用地を対象にしてよろしいということで、予算がついておるわけでございます。それから、宅地部門のほうの関連公共施設費の対象の中には学校用地は入っていない、こういうことでございますけれども、宅地開発事業というのは相当長期の工事期間がかかるわけでございます。短いもので五年とか七年とか、そういう長期計画で大きな町づくりをする。したがいまして、それが完成しましてでき上がった段階では、住宅建設部門のほうに移ってくるということでございますので、ただいまのところ、このために支障があるということにはなっていないわけでございます。
  74. 松永忠二

    ○松永忠二君 支障がなければ別に聞くわけじゃありません。支障があるからお聞きをしておるわけなのであって、すでにもう住宅ができてしまってからではどうにもならない。学校用地の取得が非常に困難になってくるという状態があるから、そこで初めて、すでに宅地開発をしたときにそういうことをきちっとしておく必要があるということを私は聞いているわけであります。  そうすると、まあ現実には、とにかく住宅建設に伴うものは学校用地と施設についてめんどうを見てやる、宅地開発については要するにそれは住宅ができてからの問題だと、こういうお話であったわけです。そこで、一体いま問題になっているのは、公団が児童数生徒数増加をするであろうという予測と比較して、現実増加数というのが非常にまあ違ってきているというところに問題が出てきているようです。公団は一体児童生徒数を予想する場合に、どこまで予想をしてその費用をめんどう見るのか。つまり、公団住宅に全部人が入って、それらの児童生徒数がピークになったときのことを予定をして、それに見合うだけの敷地なりあるいは校舎を予定をしてやっておられるのか、またこういう点についてその後実際にできてみたところが、こんなに生徒児童がふえるつもりはなかったけれども、現実には非常に児童生徒の数がふえてきたというような場合には、これを修正をしてその後明確に追加をしてこういう措置を行なうということをやられておるのかどうか、この点はどうですか。
  75. 稗田治

    参考人稗田治君) 公団の住宅団地の場合は、御案内のとおり、まあかなりどちらかといえば間数の少ない小世帯向きの住宅が多いものでございますから、最初建てました場合に児童の数という、大体のこちらの推定がございます。それは一世帯当たりが〇・三人と、そういったような勘定で最初学校建設をするわけでございます。しかし、だんだんと世帯が成熟してまいりますので、それでは足りなくなって、学校の増築という問題が出てきておるわけでございます。それにつきましては、文部省の大体の学校の基準に従いまして、〇・四五人まで、つまりあと〇・一五でございますが、その分というものは増築をいたしておるわけでございます。で、まあ文部省の一世帯当たり〇・四五人という大体の基準は、おそらく全国的に大きく観察した数字であろうと思いますので、大体その辺で普通のところは落ちついていると、そういうような感じでございます。まあ場所によっては特異な現象が起きるところもあるかと思いますけれども、一応間に合っておるんではないかと思います。
  76. 松永忠二

    ○松永忠二君 総裁にお聞きしますが、〇・四五人という数を示したわけですが、これは公団ができたためにオール公団住宅の児童生徒を収容する学校というわけです。これは〇・四五というものを予想しておっても、まだもう少しふえてくると、とにかくピークのときに必要なだけの敷地あるいは建築費というものは公団としてめんどう見てもらわなければできぬという気持ちを持っているわけですね。こういう点については、まあ現在では〇・四五人以上にふえたものについては公団としてはめんどうを見ることはできないという考えなのか、そういう点をなお検討するということなのか。  また、その償還の条件というものは、原則として三年以内、一年据え置きで二年償還、まあ利子は六分五厘ということになるわけです。特別の場合に十年以内を認めるというような措置になっているけれども、現実にはこの利子、償還というものが非常にたいへんになってくる。お話のように、用地についてめんどうを見てくれたとしても、別に用地についてはその後文部省としては補助対象にはなっていないわけですから、全部これは起債でめんどうを見てもらうことができるかできないかということなんで、非常な負担になるわけです。したがって、私の言っていることは、公団住宅で最初予定したものよりも非常に多くなったものについては、これは別にほかから何も来ているわけではないということは明確になっている以上、公団でこの協定を完全に実施してもらうべく、修正を後ほど認めてもらう必要があると思うのです。それは償還の条件というものを、まあ三年以内なんというようなことでなしに、もう十年というようなことに延長させていくという、こういうふうな措置について、公団としてはどんなふうに考えているのか、総裁にひとつ伺っておきたいと思います。
  77. 林敬三

    参考人(林敬三君) 先ほど来お尋ねのありますこと、るる承った次第でございまして、公団が大規模の団地をつくりますと、それが地元の市町村に財政的な大きな影響を与えるということ、まさに仰せのとおりでございまして、私ども、つくります前にはその点でいろいろと県あるいは地方公共団体とは協議をいたしまして、まあその問題が一番大きな一つの問題でございます。それからもう一つは、別のことになりますが、交通の問題、あとまあ地価の問題、土地入手の問題ということ、いずれも頭を悩ましておりますが、特にこの学校をつくりますことのための地方財政の負担というものをいかにして調整するかということが一番の大きな問題で、苦慮し、また最大の努力を払って今後もまいりたい問題でございます。  そこで、五省協定によって現在処理を進めておるのでございますが、五省協定はやはり、これはまあ私のほう、実施の公団の側から政府の五省のことをかれこれ言うと少し越権かと存じますけれども、まあ関係者として申しますならば、これはやはり時とともに内容が変わってきております。私が就任して三年ほどになりますが、就任当初の五省協定というものはもっと厳重な、もっとまあ要するに力の、やるべき分量の少ない、こういうものであったわけでございますが、それを最近に至って、たとえば償還期限を十年ということにまで延伸をしてもらい、また地方公共団体のこの負担のぐあいとか苦しさというものと学校のまた必要というものとのにらみ合わせによって、今後もこれは時代とともに改善され修正されていく必要のあるときは修正されていくべきものだと存じておりますが、四十二年に五省協定ができましたので、現在はこれに基づいてその範囲においてのこの原則に従って最善を尽くすという態度をとっておる次第でございます。  それで、御承知のように、当初はあれは若い夫婦者とか、二人とも共働きとか、そういう人が多くて、子供がいても小さくて、いろいろ予定ではじきますよりも学齢児童が少ないわけです。それが四、五年から六、七年たちますと、ちょうどそれらの子供が大きくなりまして、あるいは子供さんを生みまして、そして急激にこの団地というものは学齢児童がふえていくこと御指摘のとおりでございまして、いろいろと、自治体も御苦労だと思いますし、また私どものほうもいろいろ苦慮しておりますが、そういうようなわけで、公団住宅建設当初の小学校の規模というものは一戸当たり〇・三人で計算をし、その後増築分については〇・四五を限度としてその必要に応じて増強をしていくということに、この五名聞でもその基準が大体話でなっておりますので、それに従ってやっております。これはしかし基準に基づく一つの標準でございまして、個々には具体的に、それより少しふえてつくらなきゃならないものもございますし、もっとそれよりぐっと低く押えてやっていいものも出てくるわけでございます。  それで、やはりある程度団地を都市計画的につくりますときに、その学校用地の規模というものの将来も考えまして、そしてピーク時においても困らないというような見込みを立てて宅地造成のほうはつくっております。それから、住宅建設のように、宅地造成のような大規模でないもので、すぐにしかし団地が一両年のうちにできていくというようなところになりますと、将来の需要ということも考えますが、現在の状態というものとのにらみ合わせで、教育委員会あるいは自治体当局、それと私どものほうで相談をして、一応のこの敷地というものをきめてまいるわけでございます。  現在の償還条件は、一番長くて十年ということでございますが、これは三年を原則とするということに五省協定でなっておりますが、実際はその例外のほうの適用のほうが多いのでございます。しかし、なかなか自治体でも経済力の強いところがございまして、そしてそんな長くなくてもいいというようなところもあるわけでございまして、三年ないし十年ということで償還の期限というものをいま実施しているような次第でございます。将来、しかしどうしても十年以上にしなければならないという状態が出てくるときにおいては、また五省協定の方々と私どものほう、実情訴えまして、そしてその間の措置というものについての例外を認めていただく。あるいは十年をもっとふやさなければいけないという段階になりますれば、私のほうとしても実施者としての意見を申しまして、五省協定というものに対してよろしくお願いをしていかなければならないということだと存じます。  それから、なおもう一つつけ加えますと、先ほどのお話の中で、宅地開発をやっているところは学校用地というものをあまり考えないのかというような御疑念を持たれたようにも承りますが、むしろその六十万坪、八十万坪、二百万坪、三百万坪と、こういう大きな大宅地開発を山林原野を切り開いてやっているわけでございますが、これは五年ないし十年かかるというようなことでやっておりますが、そういうときは都市計画に基づきましてきちっとここの住区ならばここの住区に何校要るということで、その中の一番中心のいいところを学校用地にしてリザーブしておくのであります。そしてそれができ上がりましたときに地方自治体にこれを買い取ってもらう。分譲するわけです。ところが、自治体はすぐには経済がたいへんでございますので、それは十カ年賦ぐらいにいたしまして、しかもできるだけこれはこういう小学校用地ですから格安にいたしまして買い取っていただくような制度にしておりますので、むしろ宅地造成のところのほうが小学校はいい場所ができるわけです。二千戸ぐらいのところをぽこっと住宅地を買いますと、その近くに小学校をつくるということになって、むしろ場所が悪くなるというような状態でございます。しかし、いずれにしましても、この問題はたいへん大事な問題でございますし、また団地において住む人の暮らしが豊かになるように、またその子供教育というものが目的に沿うてやれるように、そのための施設というものについて、私どものほうの施設をつくりますほうとしましても、将来とも最善の努力を尽くしてまいりたいと思っております。
  78. 松永忠二

    ○松永忠二君 お話の大きな宅地開発にはそういうものがあるということは、これは承知しております。現実にその公団、公庫が宅地開発に金を出していないということを言っているわけなんで、文部大臣にはお聞きをいたしませんけれども、この償還の条件、それから現実にたとえば埼玉県の草加松原団地とか武里団地については、公団の考えているピークの数と市町村の考えているピークの数と違ってきているわけです。そのために用地の取得とか建設について非常に困難をしている現実があるので、こういうふうなことについては、ひとつ修正をする必要があるものは修正をして、この五省協定を完全に実施してほしいということであります。  時間もありませんので、そう一、二点ですが、そこで、建設省のほうの関係をお聞きをするわけであります。宅地開発あるいは住宅団地を建設する際には、やはり公共施設の義務づけをしなければいかぬじゃないか。用地とかあるいは学校施設について義務づけをしておかなければいかぬと思うのです。ところが、現実問題として、宅地造成事業に関する法律については、道路、あるいは下水、あるいは公園、緑地、河川、水路、消防などについては義務づけがあるけれども、文教の施設については義務づけがないわけです。それから、公共用地の取得に関する特別措置法にも学校適用されていないわけです。住宅公団が実施をするものについては、住宅公団法に基づいて義務づけがされているのですが、ただ結果的にはその認可を受ける際にそういう用地を予定をして認可を受けるというだけであって、義務づけがされているのかどうなのか。この点は住宅公団法の第三十一条とか、施行規則の第八条というところに、公共の用に供する施設ということが出ているわけでありますけれども、これははっきりした義務づけなのかどうか。また、宅地造成事業に関する法律、公共用地の取得に関する特別措置法については義務づけがない。したがって、これは住宅建設や宅地開発を大規模に行なうものは、こういう五省協定のようなものでやるのじゃなくて、法律で明確な義務づけをして実施をしていく必要があると思う。この点について建設省と公団側の意見をひとつお聞きをしたいわけです。  答弁は簡潔にしてください、もう一つ用地問題を聞いて終わりにいたしますから。
  79. 三宅俊治

    説明員(三宅俊治君) ただいまの御質問の点につきましては、法律上は明文としての具体的な義務づけではございません。いわゆる精神規定としての義務づけと考えられると思います。したがって、結果的には公団側等として当然のこととしてそれを順守できるように守っていくべきものであるというふうに考えております。
  80. 松永忠二

    ○松永忠二君 先ほど公団の総裁がお話しになったように、大きな宅地、大規模な宅地造成については、そういうものをきちっと入れてあることは事実ですよ。しかし、入れなければできないという義務はきちっときめられてないわけです。それからまた、お話のように、宅地造成事業に関する法律の中には、これは明確に落ちているわけです。公共用地の取得についての措置法の中にも落ちているわけです。したがって、この義務づけはないわけです。だから、結局あとから問題になってきて用地の取得が困難になってしまう。初めから予定をされて、義務づけられてくるというと、そこに問題は解決してくる。しかし、義務づけをするなら、その用地は一体どこで金を出すのか。地方公共団体が出すとするならば、お話のように十年も先に完成をするものまで予定をしておかなければ、後になって地価が上がって手に入らないということになれば、これは財政的な措置をどっかでしてやらなければ、地方公共団体だってそれはやれない。あるいは民間の企業が大規模の宅地造成、住宅団地をつくる場合に、義務づけをしてみたところで、その義務づけをしたものがみんな入るいわゆる個人に引っかかってくるわけです。それで非常に高い土地を買わなければならぬし、高い住宅を買わなければならぬという結果になってきている。だから、こういうようなところを法律的に整備をしていかなければ、やはりいま非常に困ってきている急増に対して地方自治団体、公共団体が適切な手を打つことはできない。そういう問題について文部省が積極的に、やはり法律整備をすることについて各省との間に交渉をして問題の解決をしていかなければできないと思うんです。だから、下水だとか道路だとか、そういうものはみんなちゃんと義務づけがしてあるのに、住宅ができればもう子供学校へ行かれるということはわかっていながら、何で一体文教施設について義務づけがないのか。学校へ行かないつもりで住宅を建てるつもりなのかどうなのか。住宅公団では盛んに、そういうものをしている、しているとおっしゃるけれども、それは道徳的な義務であって、かりにそういうものをうっちゃってみたところが、結局それを法律で規制をするものは現実にはない。いまニュータウンをつくっていく場合に、それが実施をされていくということはあるけれども、一体その金だってどこから出すだろうか。みんな地方団体が出さなければいけない。それを負担し切れるのかどうかという問題がそこに残ってくるわけです。だから、こういう点について、特にひとつ後ほど文部大臣のほうからも一括お答えいただきたい。  それから、せっかく自治省のほうから来ていただいておりますが、自治省が実施をしておる社会増の措置がやはりあるようであります。たとえば義務教育施設の整備事業債についてことしは二十億を認めておる。しかし、これまた公共用地先行取得事業の中には全然文教のものが入っていないわけです。したがって、学校については縁故債やあるいは共済資金で七分五厘、七年償還のものを実施をしておるわけであります。これまた非常に負担が重くなってきておることは事実なんです。そうなってくると、自治省の関係ではどうしても政府資金で用地を買収するというか、先行取得できるようなそういう起債、政府資金のワクの拡大をしてもらわなければできない。それからまた、償還の年限を延長するとか利子補給をするというような措置を考えていってもらわなければできない。それからまた、ことしは自治省でも交付金の算定の中にいろいろくふうをされてきたようであります。しかし、もともと公立文教施設というものは減価償却の算入方式をとっているわけです。道路とか水道については当該年度事業費算入方式をとっているわけなんですが、これまたこういうふうに急激に負担が重くなってきているときには、交付税の積算のやり方についても、これまた検討をしてもらわなければできないという点があるわけです。自治省はそういう点にとにかく一歩ずつ努力をされている事実を私はやはり認めるけれども、これまた起債、政府資金のワクの拡大、償還期限の延長、利子補給、あるいは交付税に対する算定方式のやり方というものも改善をしてもらわなければできない。こういうことについて文部省は一体どういう交渉を自治省としたのか。したけれども、これがこういうふうにできなかったのかというようなことも、実は私はお聞きをしたいわけだけれども、こういう問題は残っているわけなんです。  こうなってくると、私たちはどうしてもばらばらなものを一つにまとめて、やはり臨時の特別措置法のようなものをつくって完全を期するということが必要じゃないか。特に今度、来年度から新たなそういうものの計画を立てる時期において、この問題を解決をすることをやってもらわなければならない。そうしてお話のような建設省のほうの関係の法律についても、この文教施設を拾い上げてこの中に入れてもらうような措置等をやっていってほしいと私は思うのです。こういう点について、まあひとつ文部大臣、あるいは建設省、住宅公団、それからまた自治省のほうからお聞きをして、そうして強くこういうことを要望をして質問を終わりたいと思う。
  81. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 松永さんのいわゆる社会増の問題の御質問、先ほどからずっと伺っておったところであります。将来の見通しをもっとしっかりつけるようにという御意見もごもっともであります。できるだけそのようにいたしたいと思うのでありますが、特に急激に大きな団地ができましたような地域に対する処置の問題につきまして、これはいまいろいろお述べになりましたように、非常に多くの問題点がまだ未解決と申しますか、あるいは十分な解決を見ないままに残っておるような気がいたしておるわけでございます。私も就任以来このような実情をいろいろ伺いまして、何とか現在よりもさらに進んだ解決の方法を考えなければならないのだ、そういう心持ちがいたしておりまして、まずもって文部省のほうで今日の事態に対しましてどこをどういうふうにやったらよろしいかという問題をひとつ考えて、頭をまとめてみたい、そのまとまったものについて、関係の皆さん方に、これまでもいろいろ御協力はいただいておりますけれども、よく御相談をして、事態の改善に進んでいきたい、こういうことで、実は事務当局に文部省としての考え方をまずひとつ立ててみたらどうかということを申しておるようなわけでございます。何とか早く結論を得たいものと思っております。  ことに、いろいろ公団のほうにはお世話にもなっておりますし、また建設省、自治省等のお世話にもなっておりますが、町村としましては、究極するところ、やはり財政的な問題が一番大きな問題になってきやしないかと思うのであります。いまの町村でその財政的な負担をしょい切れる状態でないというところがだんだんとあらわれてくるようにも思いますので、これらの問題につきましては、関係各省ともよく御相談いたしまして、現在のやり方というものだけでは解決し切れないものがあるように思いますので、特別な措置も考案してみたい、こんな心がまえでもっていま事務当局にいろいろ検討を促しておるところであります。また御協力もいただきまして、何とか適当な解決策を見出しまして、これをもって関係各省その他とも御相談をいたしまして、政府としての考え方もきめて前進してまいりたい、こういう考え方をいたしております。
  82. 首藤堯

    説明員(首藤堯君) ただいま御指摘をいただきました点、まことにごもっともなことだと存じます。学校用地につきましては、昨年は地方債で約百七十六億ほど許可をいたしたのでございますが、御指摘のように政府資金の額が少のうございまして、昨年度といたしましては政府資金はそのうち十億でございました。本年度も、四十三年度もまた昨年を上回るようなおそらく起債の申請なり許可なりがあろうかと思います。政府資金は一応二十億用意をいたしておりまして、この二十億の額は決して十分だと思っておりません。今後ともなお長期低利の資金という意味での政府資金の確保に努力をいたしたいと思います。  それから、第二点の地方負担につきましての事業費補正の扱いでございますが、交付税の扱いでございますが、これは御指摘のような措置を四十三年度からとることにいたしまして、四十三年度は国庫補助事業の裏負担につきましては、平均をいたしまして七五%ほどの起債措置をいたしますが、残りの二五%につきましては、これを交付税の中で事業費補正というかっこうで持ち込みまして、交付税でもって実態に合うような措置をする、こういう措置に一応切りかえたのでございます。このために措置をいたします予定の交付税の額は約九十六億円程度になろうかと思っております。  それから、そのほか人口急増地帯に対します各地方公共団体財政の困窮問題がございますので、人口急増補正を強化をいたしましたり、あるいは都市的な経費にかかります態容補正を合理化いたしましたりいたしまして、交付税全般で二百十二億ほどの需要の増加をはかったのでございます。  もちろん、このような措置をとりましても、これでもって完全に十分だと申すわけにはまいらないわけでございまして、御指摘のように総合的な施策につきまして、十分各省とも打ち合わせをいたしまして、事態の解決に努力してまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  83. 三宅俊治

    説明員(三宅俊治君) ただいまの御指摘の点につきまして、住宅行政の担当側といたしましても、十分関係の方面と連絡をとり、検討を進めてまいりたいと存じます。
  84. 林敬三

    参考人(林敬三君) 団地をつくります上に必要な公共施設、特に学校設置ということ、これはもう当然絶対に私どもとしてもなさなければならないところでございまして、法律にどう書いてあろうとも、これは必要で絶対にやっていかなければならないものだという気持ちでいたしております。公団法では、いわゆる設置につとめなければならないと、こう書いてございますが、これはつとめなければならないということ、そのときの予算であったり五省協定とかいろいろな範囲の中で最善を尽くしてぜひこれはやれということと私ども了承して、決して道路、下水より順位をあとにするという気持ちは毛頭ございませんし、また実際にもそういうことはできないと思います。今後も、つとめなければならないという精神規定になっておりますけれども、これはやるべきである、こういうことに解釈をして公団としてはいたしたいと存じます。  この予算といたしましては、一昨年の九億弱、それが昨年十二億になって、本年は一躍倍になりまして、二十四億ということになりまして、まずまず五省協定の線をこれでやっていけるという感じを持っておるのでございます。  それで、御指摘のありましたように、私どものほうというのは、これは勤労者庶民のための住宅をつくるものでございますので、また公団でどんどんお金を出しますと、それがみんな家賃や地代にはね返ってしまって、勤労者のための庶民住宅でなくなるというような、目的を失うおそれもありまして、私どものほうは非常につらいのでございますが、相当渋くがんばっておるという面も出てくるわけでございます。しかし、教育は大切でございますし、団地に入る人は特にまた教育熱心でもございますし、そうでなくても、当然これについては最善を尽くしてまいりたいと存じます。  御指摘のありました武里団地などについてのいろいろな食い違い、これは極力なくすようにつとめてまいりたいと存じますが、あるところでは非常に学校だけりっぱなものが先にできてしまって、先生だけそろってしまって、生徒が二十人とか三十人とかというところもできて、ちぐはぐになりましたり、あるいはあるところはプレハブでバラックまでつくっても間に合わないというような御指摘のようなところも出るということで、ピークの見通しの早過ぎたりおそ過ぎたりということ、これはいずれも、こちらで弁解的に申しますれば、地面を買うというようなことのむずかしさ、見通しのとおりにいかなかったり、あるいはこちらから見れば、教育委員会あるいは地方自治体というものと、こちらとそちらとなかなかそれぞれ意見がありましたりなんかして食い違いがある。また、こちらの工事の都合があったりしまして、いろいろなそごを来たしていること、はなはだ遺憾に存じますが、これもそういう違いのないように今後一そう戒めてまいりたいと存じます。  現在はこのようにしてどうやらこの問題をやっておるということでございますが、今後は、先ほど文部大臣からもお話がありましたように、やはり大問題で、実際の姿と今後のいろいろな推移というものとをにらみ合わせながら、この問題について遺憾のないよう適切なる進展というものをはかっていきたいと存じます。
  85. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 本件に対する本日の質疑はこの程度にいたします。     —————————————
  86. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 教育文化及び学術に関する調査中、国立西洋美術館の絵画の購入に関する件を議題といたします。  なお、政府側から灘尾文部大臣、安達文化局長、石川会計検査院第二局長、山田国立西洋美術館長が出席いたしております。  質疑申し出がありますのでこれを許します。小林君。  なお、委員長から当局のほうに要請いたしたいと存じます。理事会の申し合わせである程度時間に限度がございますものですから、御答弁には要領よく具体的に御答弁をいただいて、御協力をお願いいたします。
  87. 小林武

    小林武君 文部大臣にお尋ねいたしますが、この問題は第一回目に質問いたしましたのが四十一年の二月十七日、これの質問の趣旨に対して文部省に回答を求め、これは委員会委員長から、文部省においては早急にこれについて回答をするように、こういうことをおきめいただいたが、それがされたのは四十二年の五月九日、約一年たっておる。これを受けて、今度は四十三年の四月の十六日に至ったわけであります。  問題は簡単でございまして、四十一年の二月十七日に私が問題にしたのは、アンドレ・ドランの「ロンドンの橋」、ラウル・デュフィの「アンジュ湾」、もう一つこれに関係がございますが、モジリアニの「女の顔」という一点、この三点はルグロという男から買った。このルグロという人物は一体どういう人物であったか。私のほうの主張は、贋作をやっておる国際的にかなり注意されている人物である、したがってその絵については心配はないのか、私は心配があると思うから、十分な手当てをして、国立美術館としてはやはり責任を持つ態度をとらなければならないという趣旨のことであります。しかしながら、文部省並びに美術館の立場は、美術館長はじめ専門家の一つの絵に対する知識あるいはそれを見分ける目について信頼をいただきたいという強い答弁でありました。なお、私は二度目のときには、もしもルグロに司直の手が伸びてくるというようなことになるならば——その当時そういう危険性があった。フランスでも大問題になった。そういうことになるならばこれは重大なことになるが、そのときの責任はどうするつもりかという質問もしておるわけだ。四十三年の四月の十六日に至るまでの間に、ルグロは国際逮捕状なるものが出て逮捕されたとも私は聞いておるわけです。しかし、そのことについて、文部省は何らのわれわれに対する報告もなければ、この間において前館長の富永氏はすでにやめられたという話、そういうことから、私は文部省としてはこの経過を詳細におつかみになっていることと思うが、一つは富永さんの進退ということはどういうことなのか、これはやめられた理由をまず明らかにしてもらいたい。このことと関係があるのかないのか、さらに先ほどから申し上げておるような事情の中に、文部省あるいは西洋美術館はこの絵に対してどんな一体対策を講じておられるのか、ますますこれは本物であるというような信念をお持ちになるような材料があるのかどうか、まずその点をお尋ねしたいわけです。  少し長くなりましたが、前の大臣なものですから、多少説明をしないというとおわかりにならぬかと思ってやりました。問題は、私から見れば、館長の進退というものについては、ちょっとやっぱり不審な点がある。それからもう一つは、ここまできたら、その絵に対して、新館長にいたしましても、あるいは文部省といたしましても、何らかの手当てを講じているのか、その二点であります。簡単でけっこうであります。
  88. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 問題の作品が本物であるかにせものであるかという事柄につきましては、西洋美術館において極力検討いたしました。さきの第五十五回国会において小林さんの御質問に対して富永前館長から本物と説明をせられておりまするので、私どもはそれがほんとうであるかうそであるかというようなことについては、鑑定する能力はもちろんないわけでございます。富永前館長が本物と説明しておりますので、一応それを信じてはおりますが、購入先のルグロなる人物につきまして、ただいまお話もございましたように、これがフランス警察に逮捕されたと、このようにも聞いておるわけでございます。このような事態でもありますので、その真偽につきましてはより慎重に検討を加えなければならない、かように存じております。ただいま西洋美術館において慎重にこの問題について調査検討をいたしておる段階でございます。  また、富永前館長が今回退任せられましたが、これはいわば後進に道を開くとでも申しますか、そういう趣旨の退任として私は取り扱っております。今回の問題との関連において退任せられたものではないということを申し上げておきたいと思います。
  89. 小林武

    小林武君 会計検査院にお尋ねしたいのですが、会計検査院法によって、私の考えでは少なくともこの絵に対しての御検討をいただいたのではないかと思うのでありまするが、検討したのかしないのか、したなら一体どういうしかたをして現在どういう態度であるか、お尋ねをしたい。
  90. 石川達郎

    説明員(石川達郎君) 会計検査院の検査をやりますのは、まず第一に書面検査がございまして、個々の支出につきましてその心証を得るに足る十分な書類を取り寄せて検査をいたします。それからさらに、現物の確認を要するものが工事とか物品とかにありますので、それらにつきましては、これは全部ではございませんが、実地検査を行なうというたてまえで検査をいたしておるわけでございます。  そこで、ただいまお話のありましたこの二点の絵につきましては、これは三十九年度の決算の問題でございますが、三十九年度に送られてまいりました証拠書類、すなわち契約書から価格の協定書等につきまして一応支出の心証を得たわけでございます。実地検査でございますが、実地検査はこれは全部の役所に毎年行くというわけにはまいりませんので、三十九年度の分につきましての実地検査はいたしておりません。そこで、これが本物であるかにせものであるかという問題でございますが、西洋美術館におきます購入価格の問題なり、あるいはそれがどの程度の価値のあるものであるかという点につきましては、それぞれこれは法令上の機関ではございませんが、購入委員会というようなものが設けられておりまして、その判断に基づいて購入されているようでございます。われわれの立場で、さらにそれにつけ加えて、それが正当であるかどうかというような、そういうような能力は率直に申しましてわれわれも持ち合わせておりません。したがいまして、西洋美術館の御判断にそういう点は従わざるを得なかったわけでございます。
  91. 小林武

    小林武君 会計検査院は能力の限界ということを絵の場合だけおっしゃるのですか。
  92. 石川達郎

    説明員(石川達郎君) 絵の場合だけとまあ申されるとちょっと何でございますが、特にこの美術品というようなものになりますると、これは非常に個性のあるものでもありまするし、その判定、そういうことにつきましても相当主観的な要素が入ろうと思います。その主観的要素につきましても、それぞれまあこれは専門家にゆだねざるを得ないというのが実情であろうかと存じます。
  93. 小林武

    小林武君 あなたとあんまり論争する気もないけれど、会計検査院というのは、たとえばにせものの絵をたくさん買ったと、事実そういうことがかりにあったとする。あなたのほうはそれに対していろいろな疑義が出されたと、そういう場合でも、この絵に対しては、あなたたちは能力の限界があるから、買った者がこれは正しいんだと言ったからよろしいと、そういうことですか、簡単にいえば。私は、それはあれですよ、火事の火元に行って、これは漏電であったか失火であったかということを尋ねると同じことだと思うんですがね。会計検査院法というのはそういう法律ですか。どうなんですか、これは。第二十二条、第二十三条、第二十条の権限、第二十八条の資料の提出及び鑑定等の依頼。そうしてその結果において、予算執行職員等の責任に関する法律、この法律によって、予算執行職員が故意または重大な過失により国に損失を与えたというときには、これについての弁償責任の有無にまであなたたちは関係しなきゃならぬのでしょう。能力の限界というのは何ですか。あんたたちの能力の限界とは何です。能力がなかったら、やめなきゃならぬですよ。いや、あなたたちは一体どういうつもりなんですか、財産というものに対して。国の財産に対してどういうお考えを持っておりますか。  私は、いろいろ手だてを尽くしたということについて、それに手落ちがあったというようなことを責める気持ちは毛頭ありません。こういう種類の問題ですから、なかなか苦労があったということを述べていただけばけっこうだけれども、先ほどのようなお話だというと、この種のものはどうなってもいいんだということになるんじゃないですか。そういうことですか。
  94. 石川達郎

    説明員(石川達郎君) この種のものはどうでもいいというそういう気持ちは、これは毛頭持っておりません。ただ、能力の限界というおことばでありますならば、あるいはそういう意味では能力の限界であるかと存じます。これはひとり美術品の問題に限りませんで、たとえば現在日進月歩の技術面の検査におきましても、実はわれわれもトップクラスの技術系の職員というものを採用するということも事実上できかねます。さような場合におきましては、これは先ほども法律の条文にありましたように、まあ鑑定に出すとか、そういうような措置をとりましてこの心証を得ておる、こういうような実情でございます。
  95. 小林武

    小林武君 しっかりしてください。あなたのほうでやるならば、西洋美術館でそういう問題が起きたなら、世の中にはいろんなその方面の専門家がほかにないわけでもないんです。在野の方もいらっしゃるし、あるいは美術館の直接の関係者じゃない方もいらっしゃる。これはしかし、美術品というようなものはばく大な金額のものだということを御承知になっている、私よりかも。でありますから、あなたのほうではいろんな手だてを講じてみて、これ以上どうにもならなかったということなら、私は責める気持ちはないですよ、これは確かにいろいろな問題点があることですから。しかし、いまのようなことでは私は納得ができませんが、まあしかし、会計検査院というものはその程度のものであるということならば、私はあなたに対して質問することはないですがね。  それでは、美術館長にお尋ねいたします。美術館長は前の速記録をお読みになったと思うんです。富永さんの説明ですね、お読みになったと思います。だから、その点については私は多少新しい情報もありますしね、それからお伺いしたいこともあるわけです。  その前にちょっとお尋ねいたしたいんですが、モジリアニの「女の顔」というのが、これは同じ時期にルグロが持ってきた絵なんですが、これは四十年度に買っているんですが、この関係はどういうことで、ルグロから買うのに、なぜこれ二つに分けて買ったんですか。これについてお答え願いたい。
  96. 山田智三郎

    説明員山田智三郎君) 私の事務引き継ぎの程度で聞きましたところでは、これは一緒に持ってきたものではないそうでございます。別の次の年に、モジリアニの「顔」は別のときに持ってきて、それを購入したというふうに聞いております。それですから、次年度になったと思います。
  97. 小林武

    小林武君 そうすると、日本にルグロは二度来たということになるわけですか。
  98. 山田智三郎

    説明員山田智三郎君) 私はその来て買ったかどうかわかりませんけれども、作品がこちらに来て、そうしてそれを美術館でもって館長以下館員が見て、そうして買ったんだと思いますが、私はそのときおりませんので知りませんが、そういうふうに解釈しております。それはルグロ自身が来たかどうかは存じません。
  99. 小林武

    小林武君 あなたにこれをお尋ねするのは私は無理だと思いますけれども、これは文部省局長にお尋ねするんですが、これはあなたのほうの局長もまたその当時当事者でもなんでもなかった。関係なかったのだが、これは事務局のほうでは知っている方もいらっしゃると思うんだ。富永さんの答弁では二度来たような話ではないですがね。どこで買ったということも答弁の中でおっしゃっている。これは持ってきたやつを二度に分けたという、これは予算的な操作が必要だったわけですか。
  100. 安達健二

    政府委員(安達健二君) いま事務当局に聞きましたところ、二度に分けて送ってきたということでございます。
  101. 小林武

    小林武君 ちょっとそれは違うんじゃないですか。絵は日本に持ってきておったのですよ、本人が。それはいままで何度かの質問でやっているんですよ。そうしてぼくはホテルでやったのかと言ったら、ホテルじゃなくて美術館に持ってきたと、こう言っているのですよ。送ってきたなんて、そんなこと言ったらだめですよ。それは何かで送ってきただろうけれども、その場合には送ってきたと言わないんです。本人が持ってきたと言うんです。送ってきたのは荷物として送ってきたけれども、日本流にいえば、そうじゃない。だめですよ、そんな答弁。うそ言ったらだめですよ。絵も見ないで買ったということになるのですよ。そうしたら、なお悪くなるのですよ。あんた、そんな答弁したら。
  102. 安達健二

    政府委員(安達健二君) 二回目のときは持ってきておりません。送ってまいったそうでございます。
  103. 小林武

    小林武君 これは重大ですね。どうして送ってきたものをいきなり買ったわけですか。当人の説明も何も聞かないで買ったんですか。
  104. 安達健二

    政府委員(安達健二君) 前から写真送ってきておるわけでございまして、それについては購入委員会等にもはかり、審議をし、そうして実物等を見た上で買うということにいたしたわけでございます。
  105. 小林武

    小林武君 ちょっとおかしくありませんか。写真見て、あれですか、これ買おうということにして、実物来たからそのあれを買ったわけですか。私はそう聞いておりませんよ。大体、富永さんのあれだというと、購入委員会を開いてやられた、こう書いてある。絵はやはりみんな一緒に見たんじゃないですか、三枚一緒に。これはだれもが知っていることですよ。
  106. 安達健二

    政府委員(安達健二君) もちろん、写真を見てからこれは買うと決定したわけじゃなくて、写真を見、さらに実物を送ってきたものを見て、その上で購入したということはもちろんでございます。
  107. 小林武

    小林武君 そのことは、ちょっとそれじゃあとにいたしましょう。しかし、あなた、それだんだんうそを言うとあと悪くなるからね、ほんとうのことを言ったほうがいいですよ。  館長、この絵は大きさどのくらいの絵なんですか。
  108. 山田智三郎

    説明員山田智三郎君) いわゆる十五号でございます。——ドランですか、それともモジリアニでございますか。モジリアニの絵はデッサンですから、非常に小さい絵でございます。はっきりサイズを申しますと、二十五センチメーターに十八センチメーターでございます。
  109. 小林武

    小林武君 これについてはかなりにせものであるというようなことを言っている人がいるんですが、これは日本のあれじゃなくて。そういうあれは聞いたことございますか。
  110. 山田智三郎

    説明員山田智三郎君) 私もそういう説は聞いておりますし、それからまた、小林先生が前にも御指摘になったように、買った先が相当問題にすべき商人だということになっておりますから、私が館長として新しく今度就任しましたらば、こういう作品の真偽をきめるのが私の責任ですから、もちろん研究をしたいと思っております。事実すでに研究を始めております。しかし、まだ私の意見を申し上げる程度には至っておりませんけれども、研究さしていただいております。
  111. 小林武

    小林武君 これから富永さんがこの前にお述べになったことのうちの何点かについて確認をいたしたいのでありますが、と申しますのは、これは聞くのはおかしいんですけれども、こういう説明を聞いて、前の文部大臣は、私はとにかく富永さんのあれを信じますと、こういうお話。ですから、その後変化が起こったことですから、今度は新しい館長さんはこれに対してどういう御見解をお持ちかということをお尋ねしたいのです。  そのお尋ねいたしますのは、作品に対する調査のことでいろいろ冨永先生からお話があった。キャンバスが手づくりで——いろんなお話ございました。これはもう一九〇五年から一九〇八年までの制作のもので、こういうお話でございますから。私の聞いておるところでは、そういう時代の絵の具とかキャンバスとかいうものは、パリの場合にはあると、こう言うんですね、買えると。これは非常に大昔のものであるならば、なかなか、キャンバスを見て、これは昔のものじゃないということもあるだろうと思いますけれども、非常にその点、力説されましたんですが、私が聞いたところでは、いまでもその当時のものならば購入できるというお話ですが、これは専門家としての先生の御意見はどうでしょうか。
  112. 山田智三郎

    説明員山田智三郎君) 古いキャンバスが、そのころのキャンバスが買えるというのはお説のとおりでございます。そういうことは可能でございますけれども、ですから、それだけでもってこれがその当時描かれたという証拠にはなりません。しかし、ですから、これの真偽につきましては、まだいろいろの要素を、ファクターをいろいろ研究して、いろんな要素を見出して、それから帰納するよりいたし方ありませんで、もちろんそれ一つでもってきめるわけにはいきません。  ただ、この富永前館長が言われたことは、おそらく、それと同時に、プレパレーションのしかたが非常にドランの特徴が出ているとか、それからワクにはめ方が非常に粗末なはめ方がしてありまして、むしろ偽作をするような人はしないようなやり方をやっておるもんですから——もちろんまたこの偽作をする人がまたそういう買う人の心理を逆に利用しているかもしれませんから、それだけで証拠にもなりませんが、そういうことがあるもんですから、富永館長はそういうことを言われたものだと思います。ですから、古いというだけでもちろんこれがその当時の絵だという証拠にはなりません。それはお説のとおりでございます。
  113. 小林武

    小林武君 先生のお話のとおり、富永先生のおっしゃるのも、いろんな点で申し上げているわけです。しかし、材料の点というのは特に強調された一つの点でありますから、私は、その専門家としての強調というようなものがやっぱり全然変わらないものであるとかなんとかいうなら、また別であるけれども、およそ贋作やろうというのは、人をだまそうというのですから、その道ではまただますような技術を使うわけですから、だから、私はそれについてはこの一点だけでどうなるということは考えておりません。ただ、富永先生の強調の中の一点がやっぱり問題があるということになると、いわゆるその点では富永先生のほうが逆に考えなければいかぬことだと思います。それから、ジョルジュ・イレールの「ドラン」という著書、これについては、全部を網羅されたいわゆる総合目録的な著書じゃないということと、フランスの近代美術館では、これはもうとにかくあまり権威のあるものでないという照会に対する回答、そうしてこの絵に対してぼくはイレールの「ドラン」のことを申し上げたら、そういう御回答であった。だから、どういう一体記録にこの絵はあるわけですか。どういう本にあるかということですね。
  114. 山田智三郎

    説明員山田智三郎君) 問題になっているドランの絵は、ちゃんとした信頼すべきドランに関する著書には載っていないと思います。しかし、それはドランの作品をたくさん載せた図書はございません。たとえばイレールの本をいま問題にされましたけれども、まだほかに英国のデニス・サットンという人がドランの本を書いております。デニス・サットンの本に出ております作品でイレールに出ておりませんのがありますし、またイレールに出ておりましてデニス・サットンの本には出ていないのもあります。  それから、ニューヨークの近代美術館でフォーブの展覧会をしましたときに、相当ドランのフォーブ時代の作品を出しましたのですけれども、そのとき出たフォーブの作品は必ずしも、たとえばイレールに出ておりませんし、これはドランの作品を網羅しているような本はございませんし、そういう本に出ていないからといって悪いというふうには言えないわけでございます。それはしかし、そういうことは言えると思います。
  115. 小林武

    小林武君 信頼すべき本というものに載っていないということは、まあ問題だと思うんですよね、これは。ただし、総目録的なものは現在出版されないとすれば、これはドランの作品がたくさんあって載っていないというのは、それが全部総目録がないとすれば、全部が網羅されたものがないということは、これは言えると思うんです。しかし、ジョルジュ・イレールの「ドラン」の中にあるような作品ではやっぱりないということだけは、これは言えると思うんですね。その点はちょっと、富永先生はこの点で著書の権威のないことを盛んに主張されて、なくたってだいじょうぶだと言うから、私はいまのような質問をしたわけです。  それから、この点も非常に強調されたんだが、所蔵した、だれが持っておったかということです。アンボワーズ・ボラールがこれを持っていたということなんですが、これはどういう根拠によるんですか。
  116. 山田智三郎

    説明員山田智三郎君) これは私も根拠は存じませんが、おそらくそういうふうにいわれたからではないかと思いますが、私が調べたところでは、証拠はございません。アンボワーズ・ボラールが持っておりましたという証拠はございません。
  117. 小林武

    小林武君 その点については富永館長は、ボラールが持っておって、その次はカイゼール、その次ルグロに渡った、絵の経歴というものは大事なんだということを非常に強調された。しかし、私はボラール、が持っていなかったということを、これは原文ではございませんけれども、翻訳したものを持っておるわけです。ボラールには非常にこれは近い者です。ボラールには個人コレクションというものはありませんでした。彼は独身であり、妻がなかったので、その必要がなかったのです。そんなわけで、彼は、たとえば一九〇九年にピカソが描いてくれた肖像をも平気で他人に渡し、すべてをそのつど商品として売却していたのですと、こういうボラールの画商としてのやり方、収集家としてボラールはこれだけのものを持っていたということはないという最後の彼のあれまで知っている。これは名前はあまり言わないほうがいいんですけれども、そういうあれがある。そうすると、私はどうも、単にこれはもう日本のものに、日本で買ったものなんですから、私からいえば、疑いがあるなら、お互いにりっぱな絵を見るということのたてまえからいえば、そういう言いわけじゃなしに、検討していくという態度が先に立てばぼくは文句はないんです。しかし、こうだから、こうだからというようなことを言うと、ボラールの所有というあれはないと、こういうこと。そうすると、先生のお話ですというと、そういうあれもあまりはっきりしないということになるのですがね。  購入価格の問題についてもいろいろ問題がありますけれども、そのことを抜きにして、鑑定書の問題ですね、鑑定書の問題についてずいぶん強調していらっしゃる。ドラン未亡人、それからパシッティ、ショレール、これについてはすでに速記録で読まれるようなことを、いまでも富永前館長の言われたとおりであるとお考えになっておりますか、西洋美術館のほうでは。
  118. 山田智三郎

    説明員山田智三郎君) ちょっと、それにお答えする前に、ボラールのことを一言さしていただけるとありがたいのでございますが、よろしゅうございますか。
  119. 小林武

    小林武君 ええ、どうぞ。
  120. 山田智三郎

    説明員山田智三郎君) このボラールが、おそらく、富永さんが持っておりましたということを考えたのは、これはコレクションという意味じゃなくて、ボラールは商人でありましたから、たくさん持って、それを売っておったわけです。そういう意味かと思います。  それから、ボラールは一九〇六年にドランに対し、特に注文をしまして、ロンドンで絵をかかしておるのでございます。で、それがたしか九枚くらいかかしております。そうしてそれはどれがどれという証拠はあがりませんけれども、そういう関係から、おそらく、もし、ボラールが持っていたというふうに言われると、その意味でボラールから来たのではないかというふうに言われたのではないかと思って、私、決して富永前館長はコレクションという意味ではなかったかと思います。これはそれで、ちょっとそういう意味ではなかったかと思ったので……。  それから、いまの鑑定書でございますけれども、鑑定書は、これも小林先生が前にいろいろ疑問点を提出されたこともありますし、それからその後、ボラールに対しては芳しくない報道がされていますし、あの鑑定書の真偽についてはもう一度調べたいと思いまして、いまちょうど別の用事で館員の一人の穴沢さんがつい先日出張しましたので、その実物を持たして、パリで真偽を当たらせることにしております。  それから、その鑑定書でございますけれども、私個人としましては、ああいう鑑定書は、いいとか悪いとかは別にしまして、営利機関ではない美術館というものが美術品を買うときは——ああいう鑑定は実は普通のコレクターのための鑑定書でありまして、結局商売人なんでございます。それでございますから、私としましては、美術品を買うときはああいう人の鑑定はあまり当てにしないで、もっと専門家の、向こうの美術館の専門家だとか、それからいわゆる学者の専門家がおりますので、そういう人たちの鑑定をもっと期待したいと思っております。
  121. 小林武

    小林武君 まあ別段ここでやりとりをしようとは思いませんけれども、やっぱり、ボラールの問題については私はそうは思わない。そのあとの絵の問題については、だれだれが持っていたと、その並べられた人がいずれも絵を商売にして売る人じゃない、ボラールの場合だけは画商であるという。そういう画商、しかし、収集家でもあると、こう言いましたね。だから、私はやっぱり、富永さんのお話はこれは私たちしろうとに言っているのですが——この中に専門家がいらっしゃるかもしれませんが、大体しろうと衆のところに話している。だから、ぼくはやっぱり、そういうまぎらわしいことをおっしゃったとすると、変だと思う。画商が絵を買って絵を売るのはあたりまえのことです。店を通るものは全部その人の収集したものなんだということを言うのは、私はちょっとおかしいと思う。だから、富永先生のお話の中には、ちょっとこういうところで議論するのは、いまのようなお話ならちょっと納得できないのですけれども、それはしかし、先生に申し上げてもしょうがない。  なぜ私がこういうことを言うかというと、これは回答書、答弁要旨にあるのですね、富永さんの。その中で一項を設けて、両作品の鑑定人及び鑑定書の信憑性について、ということを強調されております。やっぱり私のほうも、これはしろうとですから、当初において鑑定書というものはあったほうがいいんじゃないか。そうしてまた、やっぱり、いろいろ先生のお話のような学者とか美術館とか、いろいろなところでけっこう。それもいい。しかし、そういうフランスの鑑定人というようなものがあるとすれば、それの鑑定書もあったほうがいいだろうという議論、いまでも私は変わっておらぬ。あらゆるものを集めて、そして十分実物について検討されているということになれば万全であろう。万全といったところで、この種のものは変なものをつかまされないとは絶対言わない、私はそれをつかんでもたいした恥ではないと思っているんですから。それを突き詰めていって、これがにせものか本物かということが明らかになれば——これから一ぺんや二へん、また何べんつかまされるかもわからないけれども、それを恥と思っておったら、それこそおかしい。恥と思ってそれを日本人全体に見せるほうがもっと恥だと思う。だから、私は恥だとは思っておらぬ。この強調点については、格段この問題はないんです。こういう点について非常に慎重であったということ。  ただしかし、一体そのパシッティというのは、これは今度のルグロの顧問なんですわね。このことはこの中で富永先生がおっしゃっている。顧問なんですよ。そして先生もお読みになったと思うが、この中にはパシッティというのは共犯だと、あるフランスの記者が断言したと書いてある。それから、この記事の中には異母弟であるところのいまのショレールですね、ショレールが兄貴についてやっぱりどうも困るということを書いている。そうしたら、パシッティというのは最も信頼すべき者だということを、何か駐仏日本大使館ですね、えらいことまでやるもんだと思っているんですけれども、大使館のあれだというようなことまで書かれている。こういう一体あの富永前館長の判断というものは、いまだに西洋美術館の中で通用しておるのかどうかということなんですよ、私は。そうしてルグロが逮捕されたということになった場合に、いわば鑑定人で信頼すべき者は同じ穴のムジナの顧問であったということですね。しかも、この中にはショレールのことも書いているんですけれども、ショレールは富永さんに手紙出したそうですね。間違っていたとこの中にそう書いている。あの鑑定について、あれはほんものだと言ったけれども、父親のそのショレールのあれがたいへんイカサマの鑑定書が出ておって、それであれはあれだからといってよこして、富永さんはそれについて何の返事もない。こういうことになると、私はルグロとパシッティの関係、これと富永さんとの間のずっとあれが、どうも富永さんがだまされた、たいへんなことになっているのじゃないかと思うんです。そういう点については一体西洋美術館というものは、事が全然波風の立たぬときはいいですよ、この三年ばかりの間に非常にもう問題が起きているんですから、いまも何か調べるようなお話でございますけれども、そういう問題についての検討をなされないかどうかということですよ。
  122. 山田智三郎

    説明員山田智三郎君) まずパシッティのことでございますけれども、富永さんがパシッティは信頼すべき人であると答弁されましたのは、おそらくこれは事実信頼さるべき人であると考えられていたからと存じますが、これは世の中にはそういうことがございまして、日本でもそういうことはたびたびございまして、信頼さるべき人であった人が案外会社のお金を使っておったということが、つい最近もございました。それと同じような場合の富永さんは犠牲者かと思いますが、事実パシッティはちゃんと公認の鑑定人として登録されておりますし、それからそういうフランスの鑑定人のリストにもちゃんと載っております。普通はそういうフランスの公認の鑑定人は信頼すべき人であるということになっておりますから、それでそういうふうに言ったのかと思います。  それで、しかし小林先生がおっしゃったように、パシッティは事実この共犯かどうかわかりませんけれども、ルグロにだまされていたかもしれませんし、それからそういうこともあり得るかもしれませんが、とにかくショレールの鑑定書はあやしいのだというふうにも考えられましたので、それで、先ほど申し上げたように、穴沢館員に実物を持たせて——写真ではぐあいが悪いと思いまして、実物を持たせて、そうして調べさせているわけであります。  それから、作品自体でございますが、私としては、ルグロがどうのこうのと言うよりも先に、作品自体を調べるのが一番大事だと思いましたから。しかし、作品自体を、私が就任いたしまして、検討いたそうと思いまして、いろいろ館員とも相談して検討を始めました。しかし、私が個人で検討して個人の意見を述べるのはわりあいに簡単でございまするが、館としてはっきりその作品の真偽をきめるのにはやはり非常に周到な用意が必要でございますので、まず科学的な研究をしたいと思いまして——実は富永館長時代にも、これはもちろん小林先生の御質問に答えるため、だったと思いますが、科学的研究を進めておられまして、レントゲン写真もとってございました。しかし、今度は私が責任者となりますと、まだいろいろの科学的研究の方法もあると私は考えますので、科学的な研究、たとえば非常に特殊な赤外線写真なんかによる研究調査もできますので、それは非常に特殊な赤外線写真でございますから、普通に簡単にはとれませんが、それの撮影をしてもらう準備をしておりますし、それから複製写真ももう一度とり直す準備をすでに芸大に依頼をしております。そういうように、ただ前にこれを買ってあるから、それでそのままこれをいいものとして置いておこうという、そういう考え方は決してございません。作品については新しく綿密な調査をして、そうして真偽を確かめてみたいと存じております。
  123. 小林武

    小林武君 この問題を取り扱えば、私はルグロという男がどれだけの一体贋作をやって、どれだけの一体大きな仕事をしているかということ、これがやはり問題だと思う。私は富永さんに対して、だまされたというには、だまされ方がいかにもひどいと思います。ルグロというのは信頼すべき人間だという証言をここでやられ、それからその他に十年間ばかりのルグロという人間の動きを見て、十年の間にルグロにあやまちが一つもなかったということをここでもって、いわゆる照会の結果得た回答であるということを言っている。ところが、五年ほど前からフランスのルゴフィック警部というのが彼をつけておって、そうしていままでに五百点ほどの贋作があって、百点だけははっきり突きとめたが、あとの四百点はどこに行ったかわからないと。そういうようなことは、われわれならばそれはわからぬ、だまされてもいいが、しかしながら冨永さんでも、それから西洋美術館の方々でも、私はフランスなんかに行くことは、国際的なそういう市場の関係とか、先ほど来鑑定人のお話を先生から承りましたが、鑑定人でも、この文書によると、若手の鑑定人というのはフランスの美術界の信用問題から非常に古い人たちに対して抵抗している。ショレールなんというのはいわゆる若手の人たちである。だから、そういうことに対してもはっきりした態度をとるということは、この文書の中にも見えるわけです。そうすれば、その傾向ということを日本のトップクラスの専門家が読み取れぬというところが、どう考えてもわからないのです。これが何か商売だったらどういうことになるのか。これは絵の商売ならそういうことでいいのかもしれぬけれども、他の商売ではそんなことではおさまらないと思うのですよ。これはそんなことやったら、国際競争場裏に入っていてどんなことをやられるかわからぬわけですから。だから、私はそれについてはどうしても納得できないという気持ちがあるのです、ルグロを一体信用のおける人物だというようなふうにおっしゃることが。  それで、お尋ねしたいのは、ルグロが現在ここまできているのですから、その贋作の問題、ルグロという人物はどうかということをやるのは——直接絵に向かって先生たちがいろいろ検討するということも大事なことだと思う。しかし、ルグロなる人物がどういうあれで、その背後にはどういうものがあって、だれがこの贋作のあれをやっているかということは、当然御検討なさっていなきゃならぬと思う。なされていないとすれば、私はいささか疑いを持たざるを得ないというような心境なんです。この点について美術館は一体どういうふうになさっておるのか。ルグロについてのあれはどうです。
  124. 山田智三郎

    説明員山田智三郎君) ルグロについては、確かにお説のとおり非常に悪い商売人であることは確かでございます。そういうことは私も考えております。それから、ほかの美術館員もそうだと思っていると思いますが、しかし、ルグロの悪いことは確かなんですけれども、ただああいう悪い商売人というものは全部にせばかり売るとは限らない。(笑声)それで、何点かは相当、これはりこうな商売人であればあるほどそういうことをしていまして、本物も売っておりますから、それでルグロが悪いことは私はよくわかっておりますけれども、相当の権威者である富永館長が買われたもんですから、私としてはそう簡単にルグロが売ったんだから悪いだろうというふうには言いたくないわけでございます。  こういう例があるんです。前にワッカーの事件といいまして、ゴッホの贋作を十何点つくった男がありまして、これは十何点かどうかはっきりしませんけれども、十七点ばかり贋作らしいものが出てまいりました。これを調べると、みんなワッカーの手から出ておるものですから、それでワッカーが怪しいということになったのですけれども、今度は裁判のときに、その十六点だかちょっとはっきりは忘れましたけれども、もう何十年も前のことですから。その裁判のときにその作品の真偽を鑑定するということになったが、ヨーロッパの一流のゴッホの鑑定家たちが、これは贋作であると一致した作品は非常に少ないんです。あるものは、ある作家、ある鑑定家、これは非常な権威者たちでありますが、これは贋作だと言いますと、今度はもう一人の人が呼び出されると、いやこれは真作であれば贋作だというふうに、たいへん分かれまして、結局その記事をずっとたどって読んでおりますと、確かに贋作だというのが数点出てまいりますが、中にはやはり真作も入れて売っていたらしいのです。  ですから、ルグロはおそらくは真作を入れて売っていましたでしょうし、富永館長に売りつけるのに特に悪いものを持ってくるほどのばかでもないと思いますから、ルグロとしても相当注意していたと思いますから、ルグロが悪いということは確かに御指摘のとおりでございますけれども、私としては注意して作品自体の研究をしたい、こういう次第なんであります。
  125. 小林武

    小林武君 どうも、はなはだ失礼な言い方ですけれども、いまの館長さんもちょっとだまされそうな気持ちになってきます。まずこの記述にばかり私はたよるわけではありませんけれども、私はそうは思わないのです。やはりそういうものには買う場所というのがある。買う人というのは、やはり同じだまされるにしても、これは個人が好みでやるのはけっこうです。だまされても中にはいいのもあるだろうからというのはけっこうです。しかし、西洋美術館か物を買うという場合には、前から主張しているのですけれども、やはり筋のいいところから買うということが正しくはないか、こう言っているのですが、ルグロについてこういうことを書いていますね。ルグロはまず大物をねらうということ。これはそうですわ、山師は大物をねらわなければだめなんですよ、それは絵ばかりでなくて。それで、富永さんも大物のうちだったことだけは間違いないということなんです。  この「芸術新潮」四月号にこう書いてある。「ルグロは、最初に大物を狙う。」と。この最初に大物をねらって、アメリカ、カナダ、次いでねらわれたのが日本だという。そうして日本に来ては、「最初に、西洋美術について最も権威があるところに接近し、そこを籠落するというのも、うまく狙いをつけたものである。」と、こう書いておる。私は、そういうやり方がこの人の手口として出ているんでしょう。そのほかにもありますわね。たとえば作家の未亡人に対してやらせるとか、それから展覧会をぐるぐる回しておいて、そうしてその間に箔をつけるとか。手口はこればかりではない。この前にもそういうことを聞いている。  そのことについていまのようなやり方というのは、富永さんという特定の人の名前をあげたからまずいのですけれども、大体西洋美術館としてはだらしないと思うよ、ほんとうのことをいって。何で選んでそういう冒験をやらなければならないかということですよ。しかも、彼はたいへんりっぱな人物だというけれども、すでに警察でいろいろとごやっかいになっている。そういうことを承知で、それではいままで西洋美術館では取引をやっておったのですか。これはどういうものですか。美術館の館長に聞いてもしようがないのですが、そういうことを承知で、あぶなくてもいいからやれというようなことでやっておったのですか。
  126. 安達健二

    政府委員(安達健二君) もちろん絵を買う場合に、その購入先が信頼すべきものである、そうしてその絵自体も信頼すべきものである、こういうことでそういう要件を満たして買うということが必要だろうと思うわけでございます。そういうことで、私どもはその絵自体がいいものを買ってもらうということに主眼を置きつつ、それらの点についての購入は館自体、そうして館に置かれますところの購入委員会、選考委員会、あるいは価格の委員会その他で適正に行なわれておると、こういうように考えておるわけでございます。
  127. 小林武

    小林武君 いまの答弁には何だか、いずれも責任のない人ばかり相手にしているのだから始末悪いけれども、これ三十九年に買ったのだが、富永さんはそのとき購入委員会、それから価格評定委員会ですか、そういうものがありますと言ったが、私のところに来ている資料によると、これは館から出したやつだが、そういうものがあるのは四十一年なんです。三十九年に買うのに四十一年にできたやつでやっているというのはおかしいですよ。ここらあたりがインチキですよ、大体。黙って聞いていればいい気になっている。この前はなるべくぼくは文句を言いたくないと思ったからやめて置いたけれども、そうでしょう。あのとき三十九年の話をしている。あなたたちも黙っておったが、ぼくはこれをめくりながら、おかしい話だと思ったのです。ここにちゃんと館長何とかと特別書いてある。そうでしょう。大体、だますだますという気でやっているんじゃないの、われわれを。そうでないですか。四十一年三月三十日館長裁定と、こういうふうに書いてある、この規程は。その規程をもって三十九年から物を買っているというのはおかしいじゃないですか。
  128. 安達健二

    政府委員(安達健二君) 私、先ほどの御質問が一般的に絵を買う方針というお話でございましたので、現時点において申し上げたわけでございまして、もちろん選考委員会といいますか、それにかわるべき購入委員会というのは三十九年からもちろんあったわけでございますが、価格の審査委員制度はいま御指摘のとおり四十一年の三月から設けられたものでございます。
  129. 小林武

    小林武君 一体あれはなぜ出さぬのですか、それじゃ。ないから出さぬのでしょう。そういう規程があったら、出るはずでしょう。なぜ規程出していないんですか。三十九年当時の規程は出ていないんですよ、これには。
  130. 安達健二

    政府委員(安達健二君) 選考委員制度はもちろんその当時からございましたが、価格の審査委員制度は四十一年の三月からということでございます。
  131. 小林武

    小林武君 いまになってからかれこれ言ってもしようがないというような気持ちがぼくの中に若干あるからいいんですけれども、大体この答弁要旨なんというものは初めからごまかすようなことばかりです。まずこの冒頭に書いてある、いかにこの作品の購入方法について私たちは一生懸命になってやっているかということを言っているんだけれども、そういう問題になったのは昭和三十九年の話です。四十一年のものを出してきてわれわれに言ったところで、そんなものは話にならぬですよ。いろいろ問題が起こったからいまこうなりましたというなら、話は別だ。しかしながら、富永さんの説明は長々とこの速記録の中でやっている、慎重にやっていますと。そうでしょう。三十九年のときあまり整っておりませんでしたけれども、いまこうやっていますと言っていますが、私は値段の問題でも文句言っているんです。
  132. 安達健二

    政府委員(安達健二君) この前の富永館長の説明の際にも、その購入の選考委員会に諮問して購入の可否を決定していると。なお、昭和四十一年度からは購入選考委員と価格評価委員を委嘱して価格の適正を期するような制度を設けましたと、こういうように答えられております。
  133. 小林武

    小林武君 だから、話が違うというんです。三十九年の価格のことを言っているんだ。二千二百八十万円、その価格が高いとぼくは言っている。そうしたら、それに対する回答がそれなら、そうとるでしょう。ぼくらいいかげんにだまされていると思ったら大間違いですよ。聞いてておかしいと思ったけれども、あまり館長をいじめてもしようがないことだから、黙っておったんです。そういうだまし方が特にその場合に許せない。  その後ルグロがつかまえられている。富永さんの言っていることは、先ほどから言っているように、たくさんの問題点がある。パシッティとショレールの問題、これは兄弟だ。先代のショレールの子供だ。その兄弟二人ともこれは本物ですと言っている。しかし、ショレールのほうはどう言っているかといったら、別だ。富永さんのほうに、あれはにせものでしたと、こういって手紙よこしているという。それに対して富永さんは何らの回答もないとこの中に書いてある。そうしたら、一体疑惑を持たぬほうがおかしいじゃないですか。だから、私は先ほど大臣に、今度の問題で責任をとらしたのかと聞いているんです。西洋美術館というものはそういうことをやっても何ら問題にならぬということになると、問題だと思う。だから、きょうは会計検査院に来てもらった。
  134. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 委員長から申します。問題があるようですから、少し事情を詳しく説明してください。
  135. 安達健二

    政府委員(安達健二君) ショレールの鑑定書の問題につきましては、富永館長のところに手紙が来た。それで、富永館長がちょっと日は忘れましたけれども、フランスにいらっしゃる際にその人に会って尋ねたいということでさがされたけれども、ついに会う機会がなかった、こういうことでございました。それから、今度、先ほど館長から御説明申し上げましたように、穴沢技官が訪仏する際に現物を持ってさらにこれを確かめる、こういうふうにいたしておるわけでございます。
  136. 小林武

    小林武君 文部大臣にお尋ねいたしますが、それほど明らかにだんだんなってきた。私は劔木さんには、これはもう責任の問題ですよということを言った。その責任の問題を問うたときに劔木文部大臣は、私は西洋美術館を信頼しているんです、こう言った。それは大臣の答弁としてはあたりまえだと思う。しかし、文部省のほうへ、それをショレールがそういうことで、あの鑑定書はにせものでございましたという事態が起こった。あるいはドラン未亡人というのはどういう人かといったら、いまやはっきり鑑定能力がないと言われるような老齢になっておる。目も見えないらしい。こういうことも私はその当時言ったはずです。それならば、一体そういう場合には文部省においては責任についてはっきりさせるというあれはないのですか。私は灘尾文部大臣という人は厳格をもって鳴っていると思うのだが、そういう点については、まあいいかげんにしておけということになりますか。私はわからぬですよ。しかも、それが突発的に起こったものなら、ちょっと困るなということになるかもしれないけれども、この問題は三年越しですよ。われわれのことばでいえば、一体国会の議論をなめるにもほどがあるということを言いたい。
  137. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 先ほど最初にお答えいたしましたように、私としましては、この問題につきましては、事の真相につきましても十分究明してもらいたいと思いますし、絵の真贋につきましても、まだ結論の出ていない問題であります。新館長を中心にしまして、精密なる調査を遂げてもらいたい、そのように思っております。決してこの問題はいいかげんな問題とは私は思いません。そういうことでありますので、できるだけ正確な調査を遂げて、その上で考えるべき点は考えていくということにもなろうかと思いますけれども、ただいまのところは、最初に申し上げましたように、あくまでも調査を積極的に周到に進めてもらいたいものと、かように存じております。
  138. 小林武

    小林武君 会計検査院にお尋ねしたいのですが、予算執行職員等の責任に関する法律第四条、「予算執行職員が故意又は重大な過失に因り……国に損害を与えたと認めるときは、その事実があるかどうかを審理し、弁償責任の有無及び弁償額を検定する。」、この第四条はこの問題とどういうかかり合いになりますか。
  139. 石川達郎

    説明員(石川達郎君) もしこれがにせものであるということが確定いたしまするならば、むろんこれは国損ということになろうかと思います。国損があり、また予算執行職員に故意または重大な過失、さらには法令または予算違背というような条件を検討した上で、予算執行職員の責任を問うということになりますが、この場合の予算執行職員といたしましては、支出負担行為担当官、つまり契約をいたす職員でございますが、これは西洋美術館におきましては館長がこれに当たっておられるようであります。それとその絵を本物といたしまして検収いたしました職員、これは事業課長がそれに該当しているようでございます。そういう方がその責任をとるということになろうかと存じます。  ただ、これはあるいはおしかりを受けるかも存じませんけれども、この事態発生いたしましたのが四十年の二月でございますから、それから三年経過ということになりますので、除斥期間経過ということで、現時点においてはその責任を問われない、かようなことになります。
  140. 小林武

    小林武君 それだから、あなたにぼくは先ほどちょっと大きい声を出したのですけれどもね。時効になるというのはぼくは知っておるのですよ。だから、会計検査院というものがほんとうに法に規定されたとおり法の精神を十分に生かすということになると、これはもう三年前に起こったことですから、あなたの能力の限界ということはぼくもわかっておるのです。それはわかるけれども、あらゆる手だてを購じてみて、そうしてやる必要がなかったか。私聞いているところでは、あなたのほうで西洋美術館に行ったということを——これは情報ですよ、行かれたという話を聞いておりますよ。それは事実かどうか知りませんけれども、そういう話を聞いているんです。そうだとしたら、まるでほんとうにこれは情けない話だと思ったですね。一方的な発言だけでやられたのではないかという、そのとき非常に疑惑を持った。しかし、これは行かないということになれば、私の単なる情報を聞いての間違いだったということになりますけれども、しかし、ここまで来ると疑わざるを得ないという気持ちになる。  一体、本来ならば、これは重大だということでやはり大騒ぎしなければならぬ問題だと思うんですよ。私は、速記録をずっと読んでくださればわかるように、絵に対する、こういう美術品の購入に対してはやっぱりもっと予算を国は出すべきだというたてまえなんです。そのために、こういういろいろな妙なことがないように、疑惑を持たれないようにしなければいかぬということが質問の趣旨だということを、前から何べんも言っているんですよ。そうなれば、あなたのほうだってそれに対するそういう考え方がなければならぬ。ところが、三年たったら時効になるというようなところまで来て、私が質問しなければまあそれも言わないで済ましてしまうというようなことでは、これはちょっとおかしいのではないか。  まあ、この点は私は会計検査院に対して苦言をひとつ呈しておきますが、今後こういうことのないようにしてもらいたい。美術品なんというものは他人のかかわり知るところでないというようにお考えになっては困る。しろうとであろうとだれであろうと、いい絵を見るあれはあるんです。そういう機会をよけい持ちたいというのはあたりまえだ。そのことのために、やっぱり努力をしなきゃいかぬと思うのですよ。  それで、文部大臣にお伺いいたしますが、これはそうするとあれですか、もう時効になったからどうということもない、本人がやめてしまったからどうにもならぬということになりますか。私は責任追及やるわけでありませんけれども、今後この問題については十分にひとつ御決意を持ってこれを検討してもらいたいと思うのです。この前も私は、これパリのあるところから、フランスにその絵を持って来て、やっぱりしかるべき者が、関係者でない者が鑑定をして、真疑を確かめてはどうかというあれがあった。私はまあそれについては、そのほうがいいんでないかなと思ったことがあったのです。そうやってもだめで、それはにせものか本物かわからぬ場合もあると思うのですよ。しかし、それだけの手だてを講じたということが日本の西洋美術館の権威を高めることになると思うのですよ。それほど熱心だということ。そうして、いいくらかげんにやっておいて、ルグロがつかまったと。ルグロが日本に来て、一番大物がだれだれと、西洋美術館という最高権威のところをごまかせば大体わが事成れりということ、これはそれこそ恥じゃないですか、大体。そういうことは手ぬるいいままでのやり方から出てきていると思うのですよ。  私はもうこれ以上質問をいたしません。新館長にお願い申し上げることは、もうきびしい態度でこの問題の処理に当たっていただきたいと思います。もう四回目の質問はやらさないようにしていただきたいと思います。このことを申し上げまして、ぼくの質問を終わります。
  141. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 本件に対する質疑はこの程度にいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時三十四分散会      —————・—————